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1986-04-23 第104回国会 衆議院 農林水産委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年四月二十三日(水曜日)     午前十時一分開議 出席委員   委員長 大石 千八君    理事 衛藤征士郎君 理事 近藤 元次君    理事 島村 宜伸君 理事 玉沢徳一郎君    理事 串原 義直君 理事 田中 恒利君    理事 武田 一夫君 理事 神田  厚君       上草 義輝君    太田 誠一君       片岡 清一君    菊池福治郎君       鈴木 宗男君    田邉 國男君       月原 茂皓君    野呂田芳成君       林  大幹君    藤本 孝雄君       松田 九郎君    山岡 謙蔵君       上西 和郎君    島田 琢郎君       新村 源雄君    竹内  猛君       辻  一彦君    日野 市朗君       駒谷  明君    吉浦 忠治君       菅原喜重郎君    津川 武一君       中林 佳子君  出席国務大臣         農林水産大臣  羽田  孜君  出席政府委員         農林水産大臣官         房長      田中 宏尚君         農林水産大臣官         房審議官    吉國  隆君         農林水産省経済         局長      後藤 康夫君         農林水産省畜産         局長      大坪 敏男君         水産庁長官   佐野 宏哉君  委員外出席者         国土庁計画・調         整局計画官   後藤 和久君         国土庁土地局土         地利用調整課長 山崎 皓一君         運輸省海上技術         安全局検査測度         課長      深川 勝英君         建設庁都市局都         市計画課長   伴   襄君         参  考  人         (農林中央金庫         理事長)    森本  修君         農林水産委員会         調査室長    羽多  實君     ————————————— 委員の異動 四月二十三日  辞任         補欠選任   上西 和郎君     田中 克彦君 同日  辞任         補欠選任   田中 克彦君     上西 和郎君     ————————————— 四月二十三日  土地改良事業等に関する請願(小沢和秋紹介  )(第三六〇四号)  同(正森成二君紹介)(第三六〇五号)  同(上西和郎紹介)(第三六七九号)  同(関山信之紹介)(第三六八〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農水産業協同組合貯金保険法の一部を改正する  法律案内閣提出第七六号)  農林中央金庫法の一部を改正する法律案内閣  提出第七七号)      ————◇—————
  2. 大石千八

    大石委員長 これより会議を開きます。  内閣提出農水産業協同組合貯金保険法の一部を改正する法律案及び農林中央金庫法の一部を改正する法律案の両案を議題とし、審査を進めます。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。串原義直君。
  3. 串原義直

    串原委員 まず初めに大臣に伺いたいのでございますけれども、このたびの法改正によりまして、農林中央金庫民間法人化を図るために政府出資資格廃止するとともに、総務庁特殊法人に関する審査調査等の規定の適用対象から除外する等々といたしておりまして、そうなりますと、農林水産業者組織する協同組合などに対し金融上の便益を与えることを柱とする基本的政策を維持しながらも、今後は民間法人として民間金融機関とほぼ同様の機関、ほとんど変わりない、こういう取り扱いになるときちっと理解してよろしゅうございますか、大臣に伺います。
  4. 羽田孜

    羽田国務大臣 今回の法改正につきましては、農林中央金庫農林漁業協同組合基本構成員とする協同組織体全国金融機関でございまして、これら協同組合に対して金融上の便益を与えることを第一義的使命とする基本的性格を維持しつつ、他の民間協同組合金融機関、例えば信用組合ですとか信用金庫、これの立法例に倣いまして規制整理合理化などを行い、そして民間法人化するため必要な措置を講ずるとともに、最近の金融情勢の変化を踏まえて業務の整備を図ることといたしております。
  5. 串原義直

    串原委員 私、ちょっと大臣答弁を明確に理解をできないのでございます。つまり、今回の法律が可決、施行となった場合、一般金融機関とどことどこが異なるのか教えてください。
  6. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 今回の中金法改正によりまして、金融業務なり金融サービス機能という点では一般金融機関並みにほとんど近づいて、また政府規制という点についても他の協同組合的な金融機関立法例等も参考にいたしまして規制の緩和も図っておるところでございます。  ただ、先ほど大臣が御答弁申し上げましたように、農林水産業関係協同組織金融面の頂点の機関といたしまして、業務機能は広がっておりますが、そこにおのずから専門金融機関としての、特に業務の相手方についてまず所属団体に対するサービスを優先するという点で専門金融機閥としての性格というものはあくまでも残っている。こういうふうに、業務なり機能範囲の問題と、それから担当する分野あるいはまた業務の相手とする者の特殊性という点では残るということと、両面で御理解をいただいたらよろしいのではないか、かように考えるわけでございます。
  7. 串原義直

    串原委員 つまり、大事なところですから改めて伺いますが、専門金融機関としての機能は保持するけれども、他の問題については民間金融機関と同じであります、ずばり申し上げますならばそういうことですね。
  8. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 民間金融機関というにもいろいろございますので、一つ一つと厳密に比較をした場合に若干の異同というものはございます。ただ、他の民間金融機関並み機能なり業務の弾力的な運営ができるようにするための措置というのは今度の改正の中でできるだけとるようにいたした、しかし、専門金融機関としての性格というものはあくまでも残し、農林中央金庫所属団体に対する金融サービス第一義とするという性格はあくまでも残している、こういうことでございます。
  9. 串原義直

    串原委員 つまり、専門金融機関としての役割機能は当然であるけれども、つまりは民間金融機関として特別に政府監督官庁からの規制監督を受けることはない、こういうことですね。
  10. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 政府規制との関係におきましても、例えば剰余金処分認可というものを今度廃止いたしました。これも他の金融機関等立法例に倣ったものでございます。  ただもう一つ、先ほど私が申し上げました専門金融機関としての性格を残すという点に係る政府規制というものが、例えば中金業務におきましては、先ほど来申し上げておりますような出資団体あるいはまた所属団体に対します金融サービス第一義として、それを妨げない範囲内でいろいろやる業務がございます。そういう専門金融機関としての性格に応じまして、例えば所属団体以外の者に対します貸し付けにつきましての一定の政府規制というようなものは、専門金融機関としての性格を残すという意味合いにおきまして他の民間金融機関にはない規制が残っておるということも事実でございます。
  11. 串原義直

    串原委員 つまり専門金融機関としての任務、これに対する規制はあるけれども、その他は民間金融機関としての考え方でよろしい、こういうことですね。
  12. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 大筋そのように御理解いただいてよろしいかと思います。
  13. 串原義直

    串原委員 それでは次に進みますけれども、国の委任または補助に係る業務実施状況については総務庁権限行使をなお留保するというのですけれども、これはどういうことなんでしょう。
  14. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 今回の改正の趣旨からいたしまして、農林中央金庫総務庁設置法との関係におきまして特殊法人業務に対する行政監察対象からは除外をすることにいたしております。しかし、国の委任または補助に係る業務に対する行政監察というものにつきましては、これは特殊法人であると民間法人であるとを問わないものでございまして、他の法人も一律の対象になっておりますので、農林中央金庫のみ対象外とすることはできないということでございます。  国の委任または補助に係る業務、例えば食糧代金の支払いでございますとか、あるいは農林中央金庫からも農業近代化資金を国からの利子補給を受けて貸し出すというような仕事もやっているわけでございますが、そういった国の委任または補助に係る業務につきましては、他の法人も一律に行政監察対象になっているということを御理解いただきたいと思うわけでございます。  行政監察と申しますのは、行政部内の第三者的な立場から行うものだということと、行政制度運営の全般的な改善を推進するということを一つの大きなねらいにいたしておりますし、また、行政の総合調整的な機能も持っているというような特徴がございますので、農林中央金庫に対しまして農林水産大臣なり大蔵大臣なりが主務大臣としての監督権限を持っておりますけれども、それとはまた別個の性格のものでございまして、主務大臣監督では代替し得ないものということで残っておるわけでございます。
  15. 串原義直

    串原委員 これは、私ここで余り時間をとりたくないのですけれども、ほかの機関と横並びでこの権限はまだ存在をするのでございます、言うならばそういう御答弁ですね。  私は、大蔵農林主務大臣監督だけで十分だというふうに考えているのですよ。このごろ、行政改革ということをよく言うでしょう。いろいろな行政簡素化ということを言うわけでしょう。そうであるならばこそ、この辺はやはり整理をしていくべきこれからの課題ではないか。それは今御答弁にはなりましたけれども、今御答弁になりました業務監督等々は農林省大蔵省、その主務大臣主務官庁、この監督で十二分にできると私は思う。幾つ幾つもいつまでも、民間団体になっても関係する官庁が連なっている、こういうことはそろそろ考え方を変えていかなければいかぬ。その辺が行政改革考え方の大事なところじゃないですか。従来からずっとこれとこれの官庁関係がありましたから、やはり若干ずつ監督権限を留保しておいた方がよろしい、こういう考え方ではいけないと私は思う。今御答弁になった業務の程度ならば、農林省大蔵省で十分だと私は思う。少し考え方を変えたらいかがですか。
  16. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 この問題は、総務庁の今までの権限のうち、ちょっとでも残しておくとか残しておかないとかいうものではございませんで、先ほど私の御説明がちょっと舌足らずだったかもしれませんが、行政監察と申しますのは、政府の中に行政各部がございます、各省がございます。そういうものが独自の観点からそれぞれ所掌事務に基づいて行政を行っているわけでございますが、それを第三者的な立場から監察をする、そういう性格のものでございます。そういう意味合いにおきまして、国の委任とか補助に係る業務実施状況について必要な調査を行って、目的に合っているかどうか、効率的に行われているかどうかというのを第三者的な立場から、いわばチェックをし、調査をする。そういうことを通じて行政制度運営の全般的な改善にも資する。そういう性格として、これは主務大臣監督権限とは性格の違う総務庁が持っております一つ権限であり、機能であるという意味で残っておるというものでございます。
  17. 串原義直

    串原委員 先ほど申し上げましたように、私はこの問題で時間をとりたくありませんからやめますけれども、国の委任事務補助に係る業務、この監督は、繰り返すようですけれども、大蔵農林主務官庁で十分だと思っています。この仕事第三者機関でなければうまくないなんという発想は別に立派なものじゃない。そんな発想をいつまでも持つ必要はないと私は思うのです。さっき行政改革ということを申し上げましたけれども、そういう立場で議論をしているときでありますから、行政について、監督権について交通整理をしながら、ぜひ大いに御検討ください。強く要請を申し上げて次の質問に移ります。  今回の改正によりまして、資本金の増額の場合は認可制から届け出制に改まりました。減資の場合には認可制にしたい。この理由を明らかにしていただきたいのであります。
  18. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 農林中央金庫増資につきましては、従来は、御案内のとおり法定資本金以上の増資所属団体に必要以上の負担をかけることになること等にかんがみまして、出資者総会決議主務大臣認可を必要とするというふうにしていたわけでございますが、今回の法改正によりまして、資本金法定廃止をされました。資本金の設定がいわば農林中央金庫自主性にゆだねられることになったことにかんがみまして、増資には、制度上、出資者総会決議を不要にいたしますとともに、基本的にこの増資経営基盤の強化につながることでございますので、主務大臣認可をその都度とるということにつきましても廃止をいたしました。ただ、資本金額状況を把握をしておきたいということで、主務大臣届け出だけやっていただければ足りるというふうにしたわけでございます。  他方減資につきましては、資本金と申しますのはやはり経営の最後のよりどころでございます。経営に及ぼします影響が大きゅうございますし、債権者保護観点からも主務大臣が関与する必要があるということから、主務大臣認可を要することにしたわけでございまして、この点は、銀行法等の他の金融機関立法例に倣ったものでございまして、他の金融機関立法例でも同様の制度になっているわけでございます。
  19. 串原義直

    串原委員 今回の改正によりまして、役員理事長さん以下それぞれあるわけでございますが、その役員のうち、理事任期を四年から三年にした理由は何でございましょう。
  20. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 役員任期につきましては、一般的に申しまして経営の安定という観点からは、業務への専念を考慮いたしまして、任期はできるだけ長期安定的なものにすることが望ましいという要請が一方でございます。それから、他方におきましては、業務執行に当たりまして所属団体意向を反映しながら責任を持ってこれに取り組ませるというためには、業務執行担当者役員でございますが、これの信任を問うといいますか、そういう機会を多くする。そういう意味合いにおきまして、極端に短くならない限りにおいて、任期は短い方がベターだという要請なり考え方ということも一方であるわけでございます。それのバランスをとって定められるということであろうかと思うわけでございます。  農林中央金庫の場合に、理事長、副理事長理事、監事、それぞれ職務が異なっておりますし、今回の法改正におきます任期の扱いにつきましては、理事長と副理事長はいわば業務運営のかなめの地位にある者としまして、業務運営全般にわたりまして高度な責任を持つ者であることから、今後非常に厳しさを増すと思われます金融環境に対処してまいりますために中長期的な経営の安定を確保していくということで、任期は変更せず従来どおり四年としたわけでございます。一方理事につきましては、実務を担当する者でございまして、その業績を定期的に評価し、そのことを通じて経営活性化にも資するということから、その任期を三年に短縮するということにいたしたわけでございます。
  21. 串原義直

    串原委員 どうも私はわからないのですね。今御答弁になったような理事長、副理事長任務理事任務、それはおありになるでございましょう。しかし理事長、副理事長任期四年、あとの理事は三年に引き下げるというこの発想がどうしても理解できない。つまり理事というのは農林中央金庫業務に対して共同責任ということじゃないのですか。
  22. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 農林中央金庫におきましては、制度上、対外的な代表権限を含めまして業務執行理事長が行うことになっておりまして、副理事長及び理事実務を担当する補助機関という位置づけになっておるわけでございます。  この理由につきましては、従来からそういう法制度になっておるわけでございますが、農業林業漁業それぞれの分野協同組合基本構成員とします協同組織体全国金融機関ということで、他の協同組合法制をとります法人と違いまして、農、林、水それぞれ性格がかなり異なります所属団体に対しまして指導的な立場において公正かつ中立的な業務運営を行うという観点から、理事長中心とした一体的な業務執行を図ることが特に要請をされるという考え方で今のような仕組みになっているのではなかろうかと私ども考えておるところでございます。今後の厳しい金融情勢に適切に対処してまいりますためにも、やはり今後とも全役員一体となったこういった体制を維持することが適当であろうと考えております。  なお、中金法と同時に提案されております貯金保険法の方で、貯金保険機構が借り入れをなし得る限度額というのが日銀と農林中央金庫について決められておりまして、これを今回引き上げたいということで御提案を申し上げているわけでございますが、俗な言葉で申せば農林中央金庫農林水産関係のいわば日本銀行でございます。日本銀行におきましてもほぼ同様の制度になっておりまして、日本銀行総裁、副総裁理事との間にも任期にたしか一年の差があったと承知をいたしております。
  23. 串原義直

    串原委員 今お話しになりましたけれども、つまり理事会共同責任であることが望ましい、理事会共同責任を負うて農林中央金庫運営に当たることがいいという意味の御答弁もありました。大事なところですから再度確認をいたしますけれども、今後の特に民間金融機関として存在する農林中央金庫運営、とりわけ理事会共同責任立場金庫運営に当たることが望ましい、こういうふうに理解しておりますが、明確に御答弁ください。
  24. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 私の方でちょっと舌足らずだった点があるかもしれませんが、私が申し上げましたのは、先ほど申し上げましたような農林中央金庫性格、いわゆる厳しさを増す今後の金融情勢ということを考えますと、対外的な代表権限を含めまして業務執行理事長がこれを行う、副理事長及び理事実務を担当する補助機関であるという今の体制を維持いたしまして、理事長と副理事長役員一体となった適切な運営をしていくことが望ましいということを申し上げたわけでございます。
  25. 串原義直

    串原委員 さっき御答弁をいただいたことを踏まえて私は今質問をしたわけでございますが、理事長責任を持って運営をする、言うならば副理事長以下は補助機関であるという考え方ではなくて、理事会理事長以下共同責任一体になって金庫運営に当たる、これが望ましい姿ではないでしょうか。こういうことを実は質問したのであります。どうですか。
  26. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 その点は先ほど申し上げましたように、農業林業水産業等性格の異なります所属団体に対しまして、全国的な最高レベル機関といたしまして指導的な立場で公正かつ中立的な業務運営を行うという観点から、理事長中心といたしました一体的な業務執行という現在の体制を維持することが望ましいというふうに考えておるわけでございます。
  27. 串原義直

    串原委員 農林中央金庫協同組合的な組織として存在するわけですね。御承知のように農業協同組合あるいは何々協同組合という場合の執行体制執行責任というものは、まず理事選任して、その理事の中から理事長、専務等々を互選していく。それから、任期は当然のことながら三年なら三年、ほとんど同じである、こういうことであります。  そういう立場から伺うわけでありますけれども、これからの民間組織金融機関としての農林中央金庫あり方というものは、まず理事選任する、その中から理事長以下執行体制を互選していく、この姿が協同組合的組織としては一番理想である、こう考えるわけでありますけれども、いかがですか。
  28. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 農林中央金庫は、農林漁業協同組合基本構成員といたします協同組織体的な金融機関でございますが、協同組合連合会ではございません。やはり単一法律によりまして設立をされました特定の目的を有する単一法人でございます。先ほど来申し上げておりますように、農、林、水と性格の異なる所属団体によって構成をされておる単一法律に基づきます単一法人でございますので、連合会というものとは性格がおのずから異なるというふうに考えております。  農林中央金庫執行機関でございます役員につきましては、農林中央金庫を代表し、その事務を総理する理事長、それから、基本的には理事長補助機関であり、理事長に事故あるときにその代理を行い、または理事長が欠員のときその職務を行うという副理事長、さらに理事長補助機関である理事、こういったものから構成をしているわけでございまして、このようにおのおのの役員につきまして役割が異なりますことから、総会においてそれぞれ適、不適を判断しながら直接選出をすることにいたしておるものでございます。  なお、今回の法改正におきましては、従来副理事長及び理事総代会同意を得て、出資者総会同意を得て理事長が任命するということになっておったわけでございますが、所属団体意向をより直接的に反映する仕組みにいたすことによりまして、所属団体農林中央金庫との間のより一層の関係なり直接の意思反映という仕組みをとった方がよかろうという判断に基づきまして、副理事長及び理事出資者総会選任というふうに方式を改めるという措置はとったところでございます。
  29. 串原義直

    串原委員 御答弁のように今回の法改正で副理事長理事総代会選任をするということになったことに対しては前進である、私はこれは評価するにやぶさかではありません。  しかし、私の申し上げておりますのは、それと同時に、農林中央金庫業務運営に当たって、理事会協同組合的に共同責任を持つ組織にしなければいかぬ。今お話がありましたように、理事長が実は責任者でございまして、副理事長以下理事はその補佐役でございますという発想は、民間法人化民間金融機関としてこれから歩いていくわけでございますから、自主的な運営をみずからやらなければならないという立場に立ては立つほど、理事会運営は一切共同責任でなければいけない、こういうふうに発想を変えていくべきではないのか。従来の特殊法人のときと同じ延長線上に責任体制もあってはいけない、それでは好ましくない、私はそう思う。少なくともできるだけ早い機会にいま一度この点については真剣に検討すべき事柄ではないのか、こう思うのです。  特殊法人の時代ならば、今御答弁になったような責任体制、それも一つの方法でございましょう。これからは民間金融機関として存在する農林中央金庫理事長以下一切責任を負うて共同責任という立場で頑張っていかなければならぬと私は思う。一切の責任理事長にあって、その他の副理事長以下理事補佐役でございます、こんなことであの巨大な組織運営できるかどうか、私は大分疑問に思う。従来の特殊法人のときの責任体制、これは検討しなければならぬのではないかと思う次第です。できるだけ早い時期に検討をするということで努力するつもりはございませんか。
  30. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 若干先ほど申し上げたことの繰り返しになって恐縮でございますが、現在の農林中央金庫執行体制あり方と申しますものが、必ずしも特殊法人なるがゆえに現在のような体制なり制度になっているというふうには私ども理解をしておらないところでございますし、また協同組合的な性格を持つ農林中央金庫でございますが、先ほど来申し上げておりますように、それでは協同組合と全く同じかといいますと、いろいろ違うところがございます。では、員外利用の制限が農林中央金庫協同組合そのもののような形であるかというと、それはないわけでございます。やはり農、林、水全体を抱えました全国の農林漁業関係専門金融機関としての特別の任務と公共性を持った、単一法律によって設立された単一法人でございます。  そういう意味で、私ども現在の金融自由化の進展の中での厳しい状況の動きも頭に置いて考えました場合に、ただいまの串原先生の御意見は御意見として私ども承っておきたいと存じますけれども、近くそのような線での改正をする必要があるという認識は持っておらないところでございます。
  31. 串原義直

    串原委員 では中金理事長さんに伺いましょう。  今まで私が質問をしてまいりました事柄、繰り返しませんけれども、民間団体になった中金運営というものは大変な努力が必要になってくる、これは当然のことであろうと思う。したがいまして、今後の運営あり方というものは、理事会は全理事、全役員が共同という責任体制の中で運営されていくことが望ましいと私は実は思う次第であります。協同組合的という表現を使いましたが、そのようにあるべきだと思う。理事長さんはそこをどう思いますか。
  32. 森本修

    ○森本参考人 先ほど来、後藤経済局長からいろいろ御答弁がございました。私、その応答を聞いておりまして、農林中央金庫という法人一つの特別の法人である、言われますように今回民間法人化はいたしますけれども、もちろん一般金融機関とも異なっております。また、農林漁業協同組合なりあるいは協同組織組織員としておりますけれども、いわゆる農協等の全国団体、全国連といったものとはまた一味違った性格を与えられております。  したがいまして、そういった特別法に基づく特別の金融機関である農林中央金庫役員制度あるいは体制、そういうものはいかなるものであるべきかということにつきましては、必ずしも他の団体の例をもって律し切れない要素があるのではないかと私は思っております。現在の体制におきまして私運営をいたしまして、制度的には今先生がおっしゃったような形にはなっておるにいたしましても、運営の実態からいたしますと、各理事、副理事長それぞれ責任感に燃え、また業務運営についても一体的な形で相談をしながらやってきておるわけでございます。  そういう意味におきましては、制度論としていろいろ御意見があり、また先生のおっしゃることもわからぬことはないわけでございますが、先ほど来申されましたような今回の役員制度なり選任方法の改正によりまして私ども精いっぱい運営をしてまいって、その実績に基づいて今後またそれぞれ検討を加えていくべきものではないか、率直に言いまして私はさような感じを狩っております。
  33. 串原義直

    串原委員 制度の上では理事長選任の方法、副理事長以下理事選任の方法、責任分野、決まっているけれども、実態はみんな一緒になって一緒の責任体制で、一体責任体制運営をいたしております、こういうお話でございましたね。当然そうあるべきだと思う。したがいまして、そうであるからこそ私は言っているのであります。内金の役員共同責任立場でそのつもりで本気になって一体的にやってもらわなければ配る。したがいまして、私はあえて今回の法改正に当たって真剣に検討すべきことではないでございましょうかという立場で申し上げているわけであります。  そこで私、大臣にも伺います。今まで議論してきた私の意見に対して大臣はどう思いますか。農林中央金庫理事長責任を持ってやっていくという今の体制である、副理事長以下理事補佐役でございますという運営あり方は、これはいささか検討すべき時期に来ているのではないか、こういうことを強調をしているところでございます。これはきょう改正しようではありませんかというふうに申し上げているわけじゃない。私の申し上げている立場で検討するという必要を政治家の大臣としてはお感じになりませんか、いかがでしょう。——いやいや、だめ、大臣に聞いているんだ、局長必要ない。
  34. 羽田孜

    羽田国務大臣 基本的に、今局長初め理事長、皆さんが答弁されていることは私は違いないと思う。ただ、民間の普通の企業でも代表権を持つ人と代表権を持たない取締役というのはおのずと権限について違うわけです。ですから当然、代表権を持つ取締役といいますか代表取締役、これを補佐しそしてそれが間違いを起こさないようにしていくというのがほかの取締役の仕事であろうというふうに私は思います。そういう意味で、先ほどからこうやってお話をお聞きしても、そんなに食い違っているあれじゃないと思うのですけれども、率直に感じまして。
  35. 串原義直

    串原委員 いや、違うのです。時間がないことを残念に思いますけれども、とにかく理事長がオールマイティーで、あとの副理事長以下は補佐役でありますという選任の仕方というものは検討すべき時期に来ているということを申し上げているのですよ。まず理事を一緒に選任をする、その中から理事長を互選をする、副理事長を互選をする、こういうシステムに、民間金融機関として存在していく以上考えていくべきではないのか、こういうことを私は申し上げているのですよ。協同組合的に考えたらいかがですかということを申し上げているわけなんですよ。いかがですか。
  36. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 私、先ほど大臣に先立ってお答えを申し上げたかったことを今申し上げるわけでございますが、串原先生のような御意見、お考えということにつきましても、私ども法改正の際にいろいろ今度の選任方法の問題などともあわせまして検討をいたしたわけでございます。その最終的な判断として先ほど私が申し上げましたような判断を下しまして選任方法についての改正を行い、そして執行体制の現在の仕組みなり制度につきましては現行の体制を維持しながら、先ほど理事長からも御答弁がございましたように理事長、副理事長理事一体となって業務運営に当たっていくということが農林中央金庫農林漁業関係の中枢的な全国機欄としての性格に最もふさわしいものだという判断から、今回のような形で改正案の提案を申し上げたという次第でございます。
  37. 串原義直

    串原委員 これはなかなか大事なところでありますから、時間がもう参りました、したがって議論を尽くすわけにはいきませんでしょうけれども、私は大変大事な問題点としてきょうは提起を申し上げておきたいと思います。大臣にもひとつ真剣に御検討願いたい、担当の局長にも真剣に御検討願いたいということを要請しておきます。さらに農林中金理事長さんにも、責任者立場からより一層具体的に掘り下げて御検討願いたいと注文を強く強く申し上げておきたいと思う次第でございます。  そこで、もう二つほど伺っておきたいわけでありますけれども、従来は、特殊法人ということもあり、農林中央金庫の設立の経過もありましたでございましょうが、歴代の理事長農林省出身者がずっと就任をしていらっしゃった。これは今回から民間金融機関として運営をされていくわけでありますから、指定席みたいなこういう格好で従来と同じように将来ともに継続するということにはならないと思うのでございますけれども、これはそういう理解でよろしゅうございますね。
  38. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 農林中央金庫役員の選出につきましては、昭和三十六年に政府任命制を廃止をいたしまして、農林中央金庫の行います金融業務について識見と経験を有する者の中から自主的に選任が行われてきているということでございまして、役員の中に国家公務員等を退職した者も選任されておりますし、また、たまたま国家公務員を経験された方が引き続いて理事長を務めておられる、そういうふうに選任をなされているということでございますけれども、これはあくまでもその方々の持っております農林漁業なり金融に関する高度な専門知識なり経験に着目をされまして、適材適所という観点から農林中央金庫内の一定の手続によりまして選任をされているものというふうに考えておるところでございます。
  39. 串原義直

    串原委員 つまり、繰り返すようですけれども、民間法人化される農林中央金庫、したがいまして民間機関としてこれから運営されなければならないし、それだけの責任体制をとってもらわなければならぬ。したがって、まさに役員選任も自主的に考えられなければならないのではないか。したがいまして、今たまたま私は、農林省から理事長さんがずっと歴代選任されてきた、こういうふうに申し上げましたが、理事長選任を含め、あるいは他の官庁から派遣されてきたでございましょう役員の指定席的な数についてももうこれから固定する必要はない、これはもう完全に農林中央金庫立場役員体制も考えていかなければならぬ、そうすべきだ、こう思っているし、これは当たり前のことを私は聞いているのでございますが、そういう理解でよろしゅうございますね。
  40. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 農林中央金庫役員につきましては、完全に出資者総会におきまして自主的に選任をされる制度になっております。あくまでも農林中央金庫の内部におきまして自主的に選任をされるのが適当であるというふうに考えております。
  41. 串原義直

    串原委員 時間が参りました。そこで中金理事長さん、急いで伺いますけれども、業務の増大、民間法人化によりましてそういうことも出てくるでございましょう。金融の自由化などによりまして新たな情勢に対処しなければならぬ、こういうこともあるでしょう。これらの情勢に的確に対応できる、対応していくということになりますと、今私の手元にありますところの農林中央金庫の規則に基づきまして役員体制もできておるようでありますが、この執行体制というのは従来と同様で十分であるとお考えかどうか、お示しください。
  42. 森本修

    ○森本参考人 時間がございませんので結論的に申し上げますと、お説のように業務の多角化あるいは金融自由化等経済環境の変化、そういうものに対応していきますために執行体制を充実強化しなければならぬということは当然だと思っております。  ただ、私ども従来から、経営の効率化ということをまた一方非常に重要な運営上の要素であるというふうに思って、役職員の数の増加ということについては極力抑制的に運営してまいりました。また、農協系統全体としても御案内のように経営の刷新強化運動というものを続けておりまして、その中でも三段階、やはりそういうふうな経営の効率化ということを重点にしてやっておりますし、今後もやってまいらなければならぬ。その両方の要素を勘案いたしまして、今後執行体制の問題については十分私どもは考えていかなければならぬというふうに思っております。
  43. 串原義直

    串原委員 最後になりますが、大臣にこれは伺います。  時間がありませんでしたから質問を深めることはできませんでしたけれども、民間法人化された農林中央金庫であっても、まだ何かしらこの監督官庁規制というものが、あるいは関連を強めていくというような方向が残っているように思えてならないわけであります。したがいまして、今後、この監督規制緩和という表現をあえて使わせていただきましょう、監督規制緩和につきましては大臣はどのようにお考えでございますか、お答え願います。
  44. 羽田孜

    羽田国務大臣 基本的にはやはりこれは農林水産関係の皆さん方の業というものをよりよく進めていくということ、この基本的な考え方民間になっても変わらぬと思います。  ただ、実際に運営していくに当たりまして、先ほども申し上げました例えば信用組合ですとか信用金庫、こういったところと同じような立法例に倣いまして、例えば剰余金処分に係る認可廃止するなどの規制整理合理化、こういったものなんかも行っております。それから、所属団体以外の者に対する貸し付けの認可など、専門金融機関としての金融秩序の維持、こういった観点から必要不可欠な規制については、これは廃止することにはしておらないわけであります。この結果、農林中央金庫に対する規制は現段階においては必要なもののみとなっておりますけれども、しかし、これからさらに金融の自由化というようなものが進展してまいるというふうに思っております。そういった時代というものを的確にとらえて、そういう中で所期の目的が達成できるように、この金融機関が対応できるように、私どもとしても常に見守っていかなければいけないし、必要があるときにはやはり見直しも行わなければならないというふうに感じております。
  45. 串原義直

    串原委員 時間が参りましたから終わります。
  46. 大石千八

    大石委員長 日野市朗君。
  47. 日野市朗

    ○日野委員 通告しておいた質問事項があるのですが、今ちょっと中原委員質問を聞いていておやと思ったところがあるものですから、串原委員質問と若干関連したところで一、二問質問させていただきたいと思います。  民間法人になるわけでございますね。純然たる民間法人ということになりますが、これを貫く精神は協同組合精神なんでございましょう。いかがでございましょうか。
  48. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 農林中央金庫は、農業林業、水産業を通じます協同組合の全国レベルの金融機関ということで、協同組合的な性格を持っておる専門金融機関でございます。ただ、これは例えば農業協同組合法とか水産業協同組合法に基づきます協同組合連合会というような準則法人ではございませんで、やはり特別の法律に基づいて設立されました単一法人である、そしてまた農林漁業に直接関係をする一つ専門金融機関としての役割を担っているという特殊性を持っておるものである、そういう認識をいたしております。
  49. 日野市朗

    ○日野委員 今、串原委員責任の問題を論じておられました。その責任というのは結局執行責任、代表の責任、執行の責任ということを論じておられました。その責任の内容はどのようなものであるかということについての論及が両者からちょっとなかったのですが、例えば農業協同組合であれば、何かへまをやったら理事者による連帯責任というようなことになりますね。そういう厳しさというものが協同組合についてはあるわけですが、この中金の場合はそういう責任の内容というものはどういうものになりましょうか。
  50. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 先ほど御答弁申し上げましたように、業務執行責任なり代表権限と申しますものは理事長が持っておるわけでございまして、理事はその補助機関としての位置づけに相なっておるわけでございます。
  51. 日野市朗

    ○日野委員 私の本日の質問次第から離れるので余り多く聞く時間は割けませんが、こうやって見て、農林中金の存立する基盤、それからそれを導く精神というものからいって、これからは理事長はやはり協同組合人というような位置づけをしていく方が正しいのではないか。国家公務員の能力については私は今ここで云々するわけではございませんけれども、私がさっき言いましたように、理事長とか理事などというものは可及的多数、組合人から登用すべきであると考えますが、いかがでしょう。     〔委員長退席、島村委員長代理着席〕
  52. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 役員選任につきましては、既に総代会での自主的な選任制度になっておりますので、全く農林中央金庫及びその所属団体の自治にゆだねられているところでございます。  やはり、構成団体の意向をできるだけ反映した業務運営という点で、今、日野先生のお尋ねがございましたような農林中央金庫自身の役員の中で系統人の方の声なり比重をもう少し大きくするという考え方も一方でございますが、他方では二十兆を超える大きな有数の金融機関でございます。日々変転をいたします金融情勢の中で非常に大量の資金を扱って所属団体のためにそれを直接に使用し、また外部経済との接点に立って適切な運用も図っていくということになりますと、そこに相当なやはり専門性なり経験、そしてまたそれに専念をする、農林中央金庫法には兼職禁止の規定がございます、そういうものとの兼ね合いをどういうふうに判断をしていくかということであろうかというふうに考えております。いずれにいたしましても、役員選任農林中央金庫自主性、自治にゆだねられておるところでございます。
  53. 日野市朗

    ○日野委員 余り時間は割きますまい。ただ、公務員以外にも偉い人間はいっぱいおりますよ。野に遺材ありでございます。そのことはひとつ私の方からお話しを申し上げておきたいと思います。  では、貯金保険法の方に移らせていただきます。  金融自由化金融自由化ということで、世間が大変かまびすしくなってきているわけでございます。これから本当に大変な時代を迎えつつあるわけでございますね。どうも。このごろは一億総マネーゲームというような感すらございまして、できるだけ自分たちの手持ちのお金を有利に運用していこうという機運がずっとみなぎっております。それだけ日本人というのは、まだまだ、マネーゲームを楽しむというところよりは、何とかして今まで自分たちが稼ぎためたお金を安全に、そしてできるだけ少しでもふやしていってという、むしろいじましさをにじませた日本のマネーゲームではないかと思うのですが、そういう中で、お金をできるだけ有利に運用していこうというようなことは、これは別にビジネスの世界ばかりではなくて、農山漁村においても同じような心情が農民、漁民といったような人たちをも支配しておるのではなかろうかというふうに私には思われます。  そこで、まず心配になってくるのは農協、漁協等の信用事業でございますね。農協、漁協の信用事業に対する依存率といいますか、これはどういうぐあいになっておりますでしょう。
  54. 羽田孜

    羽田国務大臣 信用事業への影響ということでありますけれども、金融自由化、中でも預金金利の自由化は、金融機関のいわゆる調達するコストのアップ、ひいては金融利ざやの縮小を招くことが予想されまして、金融機関全体の経営に重大な影響を及ぼす、こんなふうに考えます。特に、小口預金を中心とします農漁協系統の信用事業では、小口預金金利が自由化された場合に相当の影響を受けるであろうということが懸念されております。総合農協の場合には、その収益構造は、現在、信用、共済事業部門、これに大きく依存をいたしておりまして、また漁協の場合でも、信用事業が販売事業及び自営の漁業とともに黒字部門になっているということから、このままでは金融の自由化が農漁協の経営基盤を脅かす可能性も考えられるというふうに思っております。  このような状況に対処しまして、農漁協系統では、合併によって経営基盤を強化しなければいけないということ、それから、経営の刷新などの自助努力、これも進めております。農林水産省としましても、系統信用事業における余裕金の運用規制の緩和ですとか、あるいは都道府県を通じた経営改善指導の強化を行っておるところでございまして、今後とも系統団体の自助努力を見守りつつ、必要に応じて指導をしてまいらなければいけない、こんなふうに考えておるところであります。
  55. 日野市朗

    ○日野委員 まさに大臣今おっしゃったとおり、非常に大きな影響を及ぼすであろうと思われますし、利益の中で信用事業が上げている部分というのは、農協の場合は大体一二〇%ぐらいになるのではないか、漁協の場合は大体二〇%前後ではなかろうかというふうに思われるわけでありますが、信用事業に対する依存度というものがかなり強まってまいりまして、ここで信用事業が打撃をこうむることになりますと、これは農協、漁協のほかの経済的な活動全般について深刻な影響を及ぼさざるを得ないというふうに思っているわけでございます。  これから、銀行を初めとするいろいろな金融の専門家たちが農村、漁村にどんどん入り込んでくる。もう入り込んでおりますね。既に混住化政策なんかが進められて、農村に住んで町に働きに行っている人、これは給料は銀行振り込みというような形になっておりまして、農協なんかにははね返ってこないという状況なんかもあります。それから、そういった農村地帯、漁村地帯にもどんどん営業活動が進められていて、さて、農協や漁協が現在持っているスタッフでこれに対応できるのだろうかということを私は非常に深刻に見詰めているわけですが、ここらについての御感想をちょっと伺いたいと思います。
  56. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 御指摘のとおり、農協について申しますと、やはり信用事業と共済事業に非常に収益を依存しております。ただ、時系列で見ますと、ここ数年、信用事業、共済事業の収益に対する依存度が若干でございますが低下をしている。系統組織の中でもそのことについての認識はございまして、いろいろな努力は積み重ねられてきておるというふうに一応私どもも受けとめておるわけでございます。  ただ、今後、金融自由化が進んでまいりますと、今お話しのございましたように、一つはシェアの競争というのが非常に激しくなってまいる。それからまた金利の自由化、それから、全体的に今のように金融緩和というような状態でありますと特にそうでございますが、利ざやが縮小してくる、こういったことに対する対応をどうしていくかということでございます。  この点につきましては、昨年の秋の第十七回の農協大会あるいはそれに至りますまでに系統内部でもいろいろ議論をされ、経営刷新のためのいろいろな方策も決議をされているわけでございますが、大ざっぱに申しますと、経営体質の強化と事業運営の効率化、それから第二には組合員との紐帯の強化と事業体制機能の強化、第三番日が資金運用力、収益力の強化、こういうことであろうかと存じます。先般当委員会で御採択をいただきました農協の合併助成法なども経営基盤の強化ということに役立ち、またそういう中で合併をいたしますと、管理部門が簡素化されることによりまして、営農なり信用事業なりというものへの要員の振り向けということも可能になってまいるということがあろうかと思います。  それと同時に、今ちょっとお話ございましたように、農家が非常に均質であった時代と、今のように非常に多様化し、分化をし、混住化している中で、農協の運営のいろいろな慣行そのもの、例えば一戸一組合員制でございますとか、あるいはまた貸出金利などもどの組合員にも平等に適用する、いわゆる形式的な平等主義でございますけれども、こういうものも、他の金融機関との競争が非常に激しくなってまいりますと同時に農家そのものが分化してくるということになると、例えばおやじさんは稲作をやっているけれども息子は酪農をやっている、二人とも農協をよく利用しているという場合には二人制組合員になってもちっともおかしくないではないか。あるいはまた、協同組合というのは事業利用をベースにして成り立っている組織でございます。たまに、ごくわずかしか協同組合を利用しない方と、協同組合を非常によく利用して熱心に農業をやっているような方との間の貸出金利なんかについても、一定の客観的な評価で違いもつけていくということがないと他の金融機関と対抗できないというような面も出てまいってきているかと思います。  そういう意味の慣行の見直し、形式的な平等から実質的な平等への慣行の見直しということも含めていろいろな面で、そしてまた、最後は農協であり総合農協だ、農業であり協同組合でありまた総合経営だ。今、金融自由化の中で業態間の垣根が取り除かれるというようなことが進められておるわけでございますけれども、農協はもともと総合事業でございます。そういう総合農業協同組合、総合であり農業であり協同組合であるという原点に返って、その原点をどうやってフルに生かしていくか、その中で、組合員農家の生活、営農を含めたトータルな相談機能を充実していく、あるいはまたいろいろな面での決済機能、これは機械化の問題なども絡んでまいりますが、あらゆる面における対応をやっていかなければいけないのではないかと思っておりますし、私どもも、そういったあらゆる面で、お手伝いのできる限りにおいていろいろな環境整備なり指導もしてまいりたいと考えているところでございます。
  57. 日野市朗

    ○日野委員 私はアメリカの農家の人といろいろつき合いをしてみたことがございますが、彼らは経済雑誌、それもウイークリーマガジンというようなものを一生懸命研究をして、チャートをきちんと読み込みながら経営をやっているわけですね。日本の農家でも、日本経済新聞なんというのをとっている農家は珍しくなくなってきている。いろいろな経済情報、金融情報も日本の農家あたりまで入り込む、そして、それをきちんと読みこなせるだけの能力を今既に農家も持っているわけですね。そういう中でちょっと手を抜いたら、金融自由化の中で農協はお客さんをどんどん奪われてしまう危険性が非常に強いと私は思うのでございます。  こういう中で農協の体質も変わっていかなければならないのでありましょうし、いろいろな機能的な金融商品そのものも出さなければいかぬだろうし、まさに指導事業なんかももっと強化していかなければいけないのだろうし、いろいろな要因があると思いますので、そこらについての指導は、農協も自主的、自律的にいろいろやっておられると思いますが、国、農水省がやれることはすべてやり尽くしていくことがこの金融自由化の波に抗していく大事なことではなかろうかと私は思うのであります。  ここではその希望だけを申し上げるわけでありますが、私、どうにもならずに気になってしようがない、どうしようもないという問題点が二つあります。これは自由化の影響をもろにかぶった場合どうなるのだろうかという心配と同時に、もう一つ農林漁業そのものが、いずれも産業として構造的に下降線をたどりつつあるという気がしてならないわけですね。構造不況業種ではなかろうかと思います。農業にしても漁業にしても、固定化した負債をいっぱい抱えておりまして、ここから抜け出す道をだれも今探り得ないという現状ではなかろうか。こうなってきますと、農協がどんなに頑張ろうと、農水省の方でいろいろアドバイスをしようと、農林漁業のこういう構造的な不況からの立ち直りを目指すことがどうしても必要になってくるのではなかろうかと思いますが、その点はいかがでございますか。
  58. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 私の所管の範囲を超える大きな問題かと思いますけれども、まず前段にお尋ねのございました点につきましては、私どももやれることはあらゆることをやっていくというつもりで対応してまいりたいと思います。もちろん、系統の金融が健全に発展してまいりますための大きな一つの基盤は、農林水産業そのものの健全な発展がなければならないということは私ども十分に認識いたしておりまして、農林水産省としても、構造不況業種という名前が当たるというふうには私ども必ずしも考えていないわけでございますけれども、仮にもそういうふうなことが言われませんように一生懸命努力してまいりたいと思います。
  59. 日野市朗

    ○日野委員 今問題になっている貯金保険制度は、ちゃんと機能していくならば、農協の預貯金についてある程度の安心感を与えるに足る制度であろうと思うのです。そういう努力をしていながら、一方では、農民のこれからの農業の将来展望について悲観的な展望を与える材料が多過ぎるような気がいたします。  例えば今度のいわゆる前川レポート、略称して経構研報告といいますか、経構研レポートと言われるものが出されたりいたしておるわけでございます。農林大臣、あなたも経済関係閣僚ということでこの経構研レポートについて深くかかわりを持たざるを得ないわけでありますけれども、どのようにお考えになっておられますか。このレポートでは農林水産業に対する注文が出ている部分がございますが、いかがでございましょうか。
  60. 羽田孜

    羽田国務大臣 経構研は、もう御案内のとおり、日本が貿易収支が大変大きな黒字を持ってきてしまっておるという現況の中で、日本の経済構造をもう一度見直し、そしてその中でそれぞれの分野においてどう対応したらいいのかということで、総理大臣の個人的な諮問機関という形で進められたわけでありますけれども、しかし、総理の諮問機関でありますからこれが影響ないということはなくしかも、これが論議を進められる中で、昨日、こういったものを背景にして経済構造調整推進会議内閣の中につくられまして、これを進めることになっております。  経構研の報告は国際化時代にふさわしい農業政策の推進を提言しておるということで、農政についても触れておるわけですけれども、この中で特にあれしておりますのは、今後育成すべき担い手に焦点を当てた施策の集中あるいは重点化、これは農業政策というものをそういったところにめり張りをつけていくべきじゃないかという一つの指摘であろうと思いますし、二番目は構造政策を促進助長する方向での価格政策の見直し、合理化ということ、三番目は内外価格差の縮小と市場アクセスの改善への努力ということでありまして、この提言内容そのものは今後の政策努力の方向として私どももまんざら理解できないものではないし、むしろ考えたり議論していかなければならない問題であるというふうに考えております。  ただ問題は、例えば内外価格差の縮小という問題一つをとりましても、私どもはコストを下げて内外価格差を少しでも縮小していこうということで今日も努力しております。ところが、これだけ円高が進んできてしまうということになりますと逆にまたこの差が開いていってしまうということで、これは本当にちょっと弱ったことだなということを思いますし、またそういうものを見ましたときに、この内容をあれいたしましたときに我々にとって相当厳しい、また難しい指摘になっておるということを率直に私ども考えなければならぬと思っております。  そして内閣の方では、先ほど申し上げました推進会議がありますけれども、それと同時に、これは総理みずからも言われておりましたけれども、各関係の審議会、そういったところで調査審議を進めてもらおうということでありますし、ちょうど私どもの方は農政審議会におきまして、我が国の農業を取り巻く内外の環境条件の変化、これは間違いなくあるわけでございますので、そういったものを踏まえて長期的視点からあすの農業のあるべき姿というものを展望して、新しいビジョンというものを方向づけをしたいということで今検討をお願いいたしております。そういう中で、この経構研の提言というものも参考にして議論をしていただくということにしてまいることがいいんじゃないかと思っております。
  61. 日野市朗

    ○日野委員 大体総理の個人的な諮問機関というのが気に入りませんで、この点についての論議は随分行われておりますから私ここでくどくどと申し上げたりなんかしようとは思いません。しかし、我々は選挙をされて、バッジをつけてこの委員会の場に立ち、本会議の場に立ち、国政にあずかっている者には者としての一分がありますので、それをいかに総理が個人的に任命したかもしらぬけれども、そんな連中に頭越しにやられたらこれはかなわぬ話です。農水省は農水省で我々といろいろな話し合いをしながら一生懸命農業問題を考えていることも我々はよく知っておりますし、そういうところを頭越しに勝手にやられたら本当にかなわぬと私は思います。  それから、今大臣は、これは総理に対する義理立てもあるのでしょうが、個々の内容についてはうなずけるところもあるようなお話もされました。私もこれを手元に持っておりますよ。これを読んでみると、素人衆がお読みになったときにはすうっと通るような内容に読めないわけではない。しかし、現在どういうことが農政をめぐって議論されており、どういう方向が模索されているかということがちゃんと頭に入っている者の目から見れば、これはとげだらけ、いがだらけの内容になっているような感じがいたします。  例えば「徹底した構造改善を図る」ということは一体どういうことなのか。今構造改善局長おいでになりませんけれども、私なんかも随分この場で構造改善問題についてはいろいろ議論をしてまいりましな。構造改善問題がよそから見てなかなかはかばかしく進まないような印象を与えるかもしれないが、それにはそれなりの理由があって、これは進まないわけでありますし、それが一つの日本の農業あり方として健全なものを模索しているとも言えるのであります。それから「担い手に焦点を当てて施策の集中・重点化を図る」、こうは言っていますけれども、これはそれだけ取り上げて見れば、中核農家の育成ということなのかなということに読めば、無理してそうなんだよという解説をつけることもできるだろう。しかし、この報告書の全体の文脈の中で見れば、これは今のままでは手ぬるいですぞということを読もうと思えば読めるわけでございますね。そして「構造政策の推進を積極的に促進・助長する方向で」、つまりここでは今の農水省がやっていることは手ぬるいですぞということを言っているわけですな。「見直し・合理化を」図れということを言っている。それから「着実に輸入の拡大を」図れ、こう言っていますね。「国内市場の一層の開放に向けて」こういう文言もずっと並べられているわけでありまして、これを一読した人たちが、日本の経済を輸入型に切りかえていく、その中で農業一つのターゲットに据えたもの、こういうふうな受け取り方をした、これもまことに当然のところではないかというふうに思うのです。  私は大臣に、これはこれで括弧に入れてどこかにしまっておいて、従来我々がここで議論をしてきた方向、これは思いつきや何かで議論しているんじゃないのです。一生懸命みんなで苦労しながら、汗を流しながら、血を流しながら、こうやって関係者がみんなでやっている方向、その方向で進む、これは賛成意見、反対意見含めてですよ。これが前川レポートのようなもので一つのプレッシャーを受けて、こっちの方向にのめり込むということのないようにひとつお願いしたい。その点いかがでしょう。
  62. 羽田孜

    羽田国務大臣 先ほど日野先生の方からも、ともかく今、農、林、水というのが構造不況の中で先の見通しもないじゃないか、そういうものに対して民間化してきます金融機関がどう対応するのかというお話がありましたけれども、私どもはずっと長いことこの構造政策を進めてきておる、しかし残念ですけれども、今まだ期待するところまで進んできておらないというのが現状でありまして、本当にただこのままあれしますと、どうしても今先生から御指摘のあったようなことになっていってしまう。それでは農業者も困りますし、それと同時に、日本の食糧というのもきちんと安定して確保することができなくなる。国民に対して供給することもできなくなる。それと同時に、国土の保全も本当にできなくなるということで、私たちは現状というものを相当厳しく見詰めながら、その中でどうしたらいいのかというビジョンを示していかないと、農業者の皆さん方にもあるいは国民全体の皆様方にも納得していただくことができないであろうというふうに思っております。  そういう意味で、先ほど私は何も別に総理の方に対して御機嫌伺いのつもりで申し上げたんじゃなくて、一つの指摘というもの、この中で、本当に新しい時代の、しかもそれは将来希望のあるものも実はあるわけでありまして、そういう意味でそれに対応できるような担い手をやはりつくっていかなければならない。多少私たちが気に入らないような指摘でも、それをうまく活用していく、てこにしていくということは考えなければいけないと思います。  ただ問題は、今御指摘がありましたように、ここの中に書かれているものを見たときに、一体本当にどんなことをもとにして言われているのかな、これは率直に言って私でもそう思う面があります。そういった面については、むしろ今まで私たちの外に対する説明が不足しておったのかな、またこういったところの人たちに対してもそういった問題についてもっともっと説明していかなければいけないな、この経構研の背景にある国民の皆さん方にはもっともっときちんと御説明していかないと、誤解の中で、ひょっと耳を傾けてみたときに、よく聞こえるようなことがどんどん進んでいくということになると、ますますもって農林、水に携わる人たちが非常に不安になっていってしまうということもありますので、私どもはそういった点を踏まえ、外部に対してもっといろいろとよく理解いただけるような説明をすると同時に、またいろいろな問題に対してあるときには機敏にこたえていくこともそういったことを促すことになるんじゃないかなと思っております。  いずれにしましても、私どもとしても農林水産業というものが生々と発展できるような方向でこれをとらえていきたいというふうに考えております。
  63. 日野市朗

    ○日野委員 このレポートについては、出た以上全く無視ということはあり得ないでしょうけれども、我々が今までじっくりと取り組んできた一つの方向というものは十分に大事にしながら、こういうものに流されることなく進めていく、こういうことはお約束いただけますか。
  64. 羽田孜

    羽田国務大臣 私どもは長い農政の歴史を振り返りながら、そしてその都度、時の大きな流れをとらまえながら国会でも決議をしてまいりましたり、また皆様方と今日までずっと議論をしてきております。こういうものを踏まえて、新しい時代の農政をどう持っていくのかということをこれからもともどもに議論をして進めていきたいと思っております。
  65. 日野市朗

    ○日野委員 この問題をやっていますと、この問題だけで話題は尽きないのですが、制度の本来のところに入りたいと思います。  私もちょっと意外だったのです、不勉強だったのですが、この貯金保険の機構、そしてこの制度が今まで発動したことがなかったんだそうでございますね。何でそんなふうになったんだということで御説明を伺ったら、いや何かそういう事故があった場合は円満に解決してきました、こういうお答えなんですが、その円満の手法というものをひとつ教えていただけませんか。
  66. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 この貯金保険制度が今まで貯払い停止で実際に保険金を支払うということは、昭和四十八年に発足いたしましてから一度もございませんが、これは実は、一般金融機関に比べまして、農漁協につきましては系統組織ということもありまして系統の中で相互援助制度というものを持っております。それで、そういった貯払い停止のおそれが生ずるというような場合には必要な資金を供給をいたしまして、そしてまた経営の再建のための資金もそれに続いて供給をするというような仕組みを整えまして、それによって対応ができてまいりましたために、保険事故の発生、保険金の支払いという事態には至らなかった、こういうことでございます。
  67. 日野市朗

    ○日野委員 結局相互援助をやった、それはよろしゅうございましょう、それは協同組合のことでございますからそれをおやりになることは結構で、私も異存はないのですが、はて待てよと考えるわけですね。じゃその損失を埋め合わせていったお金というものは一体どこから出たのかということになりますと、これは余り円満な話でもない。結局、貯金保険でありますから保険料はちゃんと払うものは払っているわけでございますね。それで、事故が起きましたよ、そしたら保険の方でちゃんと見てくれるのがこれは円満というものであって、そうでなくてどこかで相互援助でお互いにうやむやにしてしまいましたでは、ちょっと言葉は悪いですが、どこかで払って実際はこの貯金保険の方のお金には手をつけなかったのでございますということになりますと、私には余り円満とも思えないのですね。何で保険から出さなかったのですか。余りお金もないことはよくわかりますよ。お金は本当に微々たるもので、ちょっとした事故が起きればこれは全部パンクするくらいのお金しかない、それはわかりますが、もうちょっと誠意があってよかったのではないかという感じがするのですがね。
  68. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 貯金保険で貯払い停止に対して保険金を支払うというのは本当に伝家の宝刀でございます。信用秩序の維持、そしてまた、金融業務の中で、預金をする方が金融機関にお金を預けて別に金融機関から担保をとっているわけではございません、これは預けるというのは信用に基づいて預けているわけでございまして、それを最終的に担保をするというととでございます。  農水産業貯金保険機構につきましては六十年三月末で二百十六億くらいの準備金の積み立てはあるわけでございますが、今、単位組合でございましてもある程度規模以上のもので一つそういう大きな事故が起きれば、それを全部保険金の支払いに充てるというふうなことになりますれば、これは直ちにそのくらいの金額が吹っ飛んでしまうということにもなるわけでございますし、保険事故というものは起きないのが一番幸せなわけでございまして、それ以前に相互援助制度に基づきまして信連等からの貸し付けが行われまして貯払いに支障のないように措置をされてきた。そういった資金面での手当てのほかにも、農協中央会等によりますいろいろな健全経営のための指導というようなことも含めまして行政、系統が一体になった再建指導をして、いわば保険の本格的な発動には今日まで至らなかったということでございます。  それはだれが負担しているのかということになりますと、相互援助資金制度と申しまして、これは農協が一定の預金をそのための資金として信連に預け、また信連が農林中央金庫に一定の資金を預ける、そしてまた、損失が出た場合の補てんのためのお金も系統で準備をするということで、この信用秩序の維持あるいは系統信用事業に対する信用の確保のための負担を系統全体で負担している、こういうふうに理解をしていただいてよろしいのではないかと思っております。
  69. 日野市朗

    ○日野委員 抽象的な議論をしておりましてもいけませんから、具体的なケースに基づいてちょっと教えていただきたいのですが、農協なんかの倒産というのは割とあるのでございまして、これは余り名誉な話じゃないのですが、私のところでも実は牡鹿農協というのが倒産をいたしました。倒産に至るというのはこれまた余り結構なことじゃないのですが、まともにやってどうしても間に合わなくなったというのじゃなくて、不正融資が行われてしまいまして、それで一挙に農協財政が破綻をしたということでございます。これは緊急資金貸し付けを相援の方から受けまして一億四千五百万ばかりお借りをして、またこれは残っているだろうと思います。ここでは預金者の損失に対してどのようなてん補が行われたかちょっと教えてください。
  70. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 宮城県の牡鹿農協につきましては、詳細は時間の関係で省略をいたしますけれども、先ほど来申し上げております相援制度を五十三年に発動をいたしまして、そして県の中央会からの人材派遣なりあるいは県それから県段階の中央会、連合会が対策委員会を設けまして対策を講じましてやったわけでございますが、再建に行き詰まりまして、五十五年に解散認可のやむなきに至ったものでございますけれども、この間、貯金等の払い戻しはすべて完了をいたしまして、貯払い停止の事態には至っておらないわけでございます。  相接の発動につきましては一定の金額を回収をいたしております。残りにつきましては相互援助積立金によります債務保証制度によりまして代位弁済が行われまして、なお一定の金額が相援貸し付けとして残っておる、こういう状態でございますが、貯金者の方々には御迷惑をかけないようにこの相援制度で対応をしたというふうに私ども承知をいたしております。
  71. 日野市朗

    ○日野委員 預金者の方ですね、これもいろいろ話し合いが行われまして、結局一〇〇%までは払っていないのじゃありませんか。一〇〇%支払ったんでしょうか。
  72. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 私どもが承知しておる限りにおきましては全部お支払いをしておるというふうに報告を受けております。
  73. 日野市朗

    ○日野委員 一〇〇%払ったかどうかというのはなかなか調べにくいところでございまして、いろいろ和解か何かの手段をも使いながらやったはずでございます。今ここでそこを一つ一つ、水かけ論みたいになってもあれですからなんですが、とにかくえらいショックを与えたこと、これは間違いないのです。  そして、私が何でこんなことを言うかといいますと、こういった協同組合の信用事業とか共済事業に対して組合員が金を出そうという気持ちにさせることが必要なんですけれども、こういう制度があっても十分には機能し切れないでいるというところに非常に大きな不安感を預金者、貯金者に与えるんじゃないかという感じがいたします。私さっきも言いましたように、情報化社会でございますから非常に情報が農民、漁民の中にも入り込みます。そうすると、これはもうよそに預けた方が得だわ、安心だわというような感じになったら、これはもう預金も貯金も集まってきません。そうすると、協同組合関係の信用事業、共済事業だけではなくて、経済事業に回されるべき資金も非常に危機的な状況になってきやしないか、こういうことを心配するわけでございます。これから、どうなんですか、ここで新しい制度改正が行われるわけでございますが、そこいらで、預金しよう、貯金しようと思っている人たちにこの制度改正で十分安心でございますよと言えるものが提供できるのでしょうかね。
  74. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 貯金保険なり預金保険につきましては、御案内のとおり一般金融機関と、農水産業協同組合系統の信用事業につきましては協同組合あるいはまた特に総合経営というような問題がありますので、別建てになっておるわけでございますが、一般の保険機構の預金保険の限度のアップ、あるいはまた業務機能を拡充をいたしまして信用秩序維持のためにいわばそういった保険事故の発生を未然に予防するようなところまで業務を拡充するというのと対応いたしまして、私どもも今回のような改正提出をいたしておるわけでございます。  なおかつ、農水産業の貯金保険につきましては、総合経営というような特性あるいはまた地域をベースにした組合という特性、こういったものを踏まえた特殊性も織り込んだ内容になっておるわけでございまして、保険事故については、これは実際に起こらないことが最も望ましいわけでございますけれども、今お話ございましたように、今後金融自由化の進展に伴いまして保険事故の発生の可能性ということも相対的には高まっていくのではないかという心配を私どもも持っておりますし、今回の制度改正を行いまして、相互援助の制度につきましても、機構からも資金援助ができるということで相互援助そのものも強化されますと同時に、法律事項ではございませんけれども保険金及び保険料の引き上げ等も行うことを考えておりますので、そういうことによりまして貯金者保護なり信用秩序に対する信頼感という点ではかなり大きな一歩前進が図れるのではないかというふうに考えているところでございます。
  75. 日野市朗

    ○日野委員 今の後藤局長のお話はよくわかるのですが、資金援助という新しい方法も取り入れられるわけですが、どっちにしても、責任準備金にしても運用益にしても借り入れを受けるにしても、そんなに大きな資金量はないわけで、これはまさに産業構造の中で農業が浮き上がってしまって危機的な状況になる、自由化の波にこれは耐え切れないなんということになったら、そのときは大変な事態になるわけであります。  そこまでいかない場合でも、資金援助はどのような基準に基づいて行いますよというような基準の明確化というものが必要ではなかろうかというふうに思います。この基準を明確化して恣意に流れないようにすることと同時に、基準を明確化してある程度の安心感を与えるということが必要であろうと思います。基準の明確化については考え方をお持ちですか。
  76. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 当然、こういう全国を対象にいたします制度でございますので、私ども行政の側といたしましても、また貯金保険機構にも運営委員会というものがございますが、そういうところでの御議論も踏まえながら一定の基準を考えていく必要があるというふうに思っております。     〔島村委員長代理退席、委員長着席〕  私ども御提案申し上げております法案にございますように、資金援助の対象としては、合併と狭い意味での信用事業再建措置というものがございまして、援助の方法といたしましては、相互援助制度を通じるものと、通じないで、農協合併をいたします場合に破綻を来している組合を吸収合併する組合にやるものとございますし、その手法としては金銭贈与、債務保証等六種類のものがございます。こういったものの組み合わせでどういうふうに選択をするのかということにつきましては、経営困難に陥った原因なりあるいは当該組合の事業の見通しなり地域の特性、機構の財務に及ぼす影響等を勘案して具体的には個別的に決まってくるわけでございますけれども、やはり適切な合併の相手がある場合には合併の方が効果的であろうというふうに当面の運用方針としては考えております。  ただ、実際問題として経営困難組合を吸収して合併をするという組合を見つけることがなかなか難しいという場合も多いかと思いますが、そういう場合に相互援助制度を通じて単独再建に対して援財をするという場合には、利子補給方式を用いますことが限られた資金の中で多額の貯払い資金を供給する上では有効ではないか。例えば一%の利子補給をやるといたしますと、十億の財源で一千億の資金が導入をされることになるわけでございます。今申し上げましたようないろいろな要素によりまして、どういう援助の仕方、どういう再建の仕方をしていくかということについては細かな検討が必要でございますが、いずれにしましても基準をできるだけ決めまして、公正な運営ができるような方向で考えてまいりたいというふうに思っております。
  77. 日野市朗

    ○日野委員 終わります。
  78. 大石千八

    大石委員長 竹内猛君。
  79. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 農林中央金庫法並びに農水産業協同組合貯金保険法の一部を改正する法律案に関連をして若干の質問をいたします。  まず最初に、農林中央金庫理事長の森本理事長にお伺いいたします。  理事長は、現職におつきになられてからもう既にかなり御経験をされていると思いますが、この間何が一番問題であったのか。何が問題であって、それをどういうようにこれから進めていこうとするのか、そのことについて御所見を承りたい。
  80. 森本修

    ○森本参考人 これもある程度の期間の経験のことでございますので一概には申せませんが、私がやってまいりました時期というのは、御案内のように経済が低成長になってまいりまして資金の流れも非常に従来とは変わるというような環境が一つございました。それから、農林漁業、御案内のようにいろいろな事情からいって、一口に言いますと大変厳しい状態であるということがございました。  また最近は、先ほど来いろいろ質疑を通じて問題になっておりましたように、金融環境、特に金融の自由化が進展をするし、将来またその進展が予想される、こういう中にありまして、例えば系統金融、農協金融にいたしますれば、御案内のように農家にあるいは農村に供給しておる資金のほとんど大部分が農協の窓口から農村、農家に流れておる、こういう状況であります。そういう意味からいきますと、農村、農家に対して非常に大きな役割、ある意味におきましては責任を持っておる組織であります。そういうものが、こういった激しい環境変化の中で一体十分やっていけるような体制をどう整えていくか、これが常時私の頭の中を去来している一番大きな課題でございます。  そのためには、単に農林中金ばかりではございませんで、先ほど来申し上げておりますように、系統三段階、体制を整えていかなければならぬ。また、いろいろな利用者のニーズに合うような機能なりサービスをどうやってやっていくか。あるいは大量の資金をお預かりしているわけでありますから、その資金を有利に、かつまた安全にどうして運用していくか、時々刻々変わります金融環境の中で、そういうことにつきまして日夜頭を悩ましておるというのが状況でございます。  そういう意味におきましては、いろいろやらなければならぬことはございますが、一つは、そういった情勢の変化に十分対応してやっていけるだけの情報なり知識なり、またそれを処理するだけの能力のある役職員、それを備えるということが一つでございますし、また、その役職員によって運用される機能、こういうものを十分整えてまいるというようなことも必要でございますし、いろいろそういう体制なり業務執行の各面について現在腐心をしておる、心を配っておるというのが最近の私の心境でございます。
  81. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 それでは、農林大臣に伺いますが、国際化、自由化、こういう時代になって、六十二年を経たこの農林中央金庫が、今度は市中銀行のような形でいろいろな制限というかそういうものが取り払われてくる、こういうような格好になるわけですけれども、この情勢の変化、それからこの新しい任務というものについて、農林大臣としてはこれにどのような対応をされるかということについて総括的にお伺いしたい。
  82. 羽田孜

    羽田国務大臣 今度の改正によりましても、いわゆる普通の市中金融機関ということではない、やはり本来の設立の目標、これは私は決して失われるものではないというふうに思っておりますし、またそうなければならないというふうに思っております。  ただ、問題といたしまして、やはりこういう金融が国際化していく、あるいは自由化されてくるという中にありまして、それに対応しなければいけないということで、例えば小さな組合、こういったものが近隣のものと合併をしていくということになってまいります。そうしますと、いわゆる農協と組合員との関係というものが薄れていってしまうのじゃないかというような実は心配もございます。そういったことなんかを、私どもとしてやはりそうあってはならないのであって、例えば支所ですとかあるいは出張所、こういうものがあるわけでありますけれども、こういうものの機能というものをやはり相当強化していく必要があろうというふうに思いますし、また組合員の意向、動向なんかにつきましても十分調査をするというようなことで、新しい時代の中でこのような制度の改変といいますか、今度の法改正をするわけでありますけれども、そういう中にあっても、やはり基本的には農林水産業、これを発展させていく、この考え方は損なわれるものではないというふうに考えております。
  83. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 農協合併に関して、先ごろの本委員会で議員立法で農協の合併の促進に対して決定をしたわけですが、現在四千三百三の農協がある。行政としては、市町村が三千二百五十三でありますから、まだ一町村に一組合という段階ではなくて、町村にもう少し組合の数は多いだろう。私の茨城県の場合でも、九十二の市町村の中で百十三の農協があります。そういう中で、農協そのものが赤字になっている農協が先ほど来の話の中であるわけですが、機構といいますかその中のお金というものは、今まで発動したことはないと言われるくらいに、まず少ない。これを予定どおりの合併の方向に進めていくためには一体どういう手段と方法をとるのか、この点についてはひとつ明らかにしてもらいたい。
  84. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 赤字農協の合併によりまして、その赤字農協の赤字をどう措置するのかというお尋ねかと存じますけれども、確かに御指摘のように、赤字農協の欠損金の発生を見ますと、小規模の農協あるいは山間地の農協といった経営基盤の弱い農協に発生する割合が統計上も高く出ております。合併によります規模拡大によって経営基盤が強化をされますので、合併後の農協におきましては、通常、合併に先立ちまして経営計画を立てまして、それによりまして赤字の計画的な解消を図ることにしているわけでございます。  しかし、現実には、赤字農協を対象とする合併の実現はなかなか困難な場合も多いということがございまして、今お話のございました、先般、当委員会でも御採択をいただきまして四月一日から施行されました合併助成法によりまして、被合併組合から引き継いだ繰越欠損金の損金算入の措置も認められましたので、これらの税制上の優遇措置についても活用するように指導をしてまいるつもりでございます。  それから、赤字ということと貯払い停止に至る、あるいはそのおそれがあるということとは必ずしもイコールではございません。収支と資金繰りというのはまた別でございまして、黒字倒産というようなこともあるわけでございますが、今回の貯金保険法改正によりまして設けられる資金援助業務、これによりまして、経営困難に陥った農協を対象といたします合併につきましても保険機構からの援助が行われ得るという道も開かれるわけでございまして、こういった合併助成法なり今回の貯金保険法改正によりまして、この赤字農協の問題につきましても対応として一歩前進が図られ得るのではないかというふうに考えておるところでございます。
  85. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 助成法は三年間の期間でこれをやれという、そして四千三百のものを千六百やろうという。そうすると、今のお話だと、山村僻地の活動の弱いところに赤字がある、この関係をどういうように考えていくのかどうか、もう一度お答えを願いたい。
  86. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 農協合併のあり方の問題でございますが、昨年の全国農協中央会の会長の諮問機関でございます総合審議会の答申の中におきましては「農協合併の目標規模」というようなことで、貯金三百億、正組合員戸数三千戸というような数字も出ておるわけでございますけれども、特に市町村区域未満農協及び正組合員戸数一千戸未満農協の合併を強力に推進するということになっております。しかし、これを機械的に全国一律に適用するということは、農協にもさまざまございますので、具体的には各県におきまして実情に即して合併目標規模等を設定する必要があるということはこの答申の中でも述べられておりますし、県段階におきまして合併推進方策を策定するに当たりまして、地域の実情に即した部門別の目標事業量なり取り扱い体制並びに合併後の経営効率等も吟味した方策を策定するということにされておるわけでございます。  私ども農林水産省といたしましても、基本的には農村社会の混住化でありますとか金融自由化の進展というものに対応いたしまして合併の推進が重要な方策であると考えておるところでございますが、地域の実情等にも十分配慮しながら、小規模農協、とりわけ正組合員戸数一千戸未満の農協等の合併に最重点を置いて指導を行いたいというふうに考えておるところでございます。
  87. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 農協合併の問題はそれぐらいにして、次の中金の問題に移りますが、六十年三月末の系統金融が三十六兆千八百六十一億円集まっている。関連産業への貸し出しが七兆六千八百四十八億、運用が十兆七千七百九十八億というように、農林水産業よりも運用、特に証券方面に力が注がれている。この流れは正常とは言えないと思います。本来農林水産業に活用されるべきものがその面に活用が鈍って、農林水産業から他のものに移していくということは正常じゃない。この点については理事長、いかがですか。
  88. 森本修

    ○森本参考人 御指摘のように、農林中金の持っております資金の運用についての最近の状況は、所属団体なり系統団体、そういうところへ貸し出しをする割合が割合としては漸次少なくなっている。最近では一〇%ないし一五%といったような状況に相なっております。したがいまして、今御指摘がございましたように、それ以外の分野への貸し付けあるいは有価証券への運用というものがかなり大きくなってきております。  私どもの仕事としましては、一つは系統内部の調整といいますか、ある地方で資金が余り、ある地方で資金が足りなくなる、あるいはある業種で余り、ある業種で足りなくなる、そういう業種間あるいは地域間の資金の調整、あるいは末端と言うとおかしいのですが、農協なり信連が貸し出しをしておりますが、それを補完する、そういった機能がございまして、その機能は十分果たしてまいらなければならぬと思っております。ただ、御案内のように、農協、信連、かなり資金が潤沢になってきておりますから、私どもに対して資金を要求するのが漸次少なくなってきておるという状況であります。しかし、そういった機能は、求められるものについては十分果たしておるというふうに思っております。  もう一つの役目は、系統内部で資金調整をいたしました結果、その帳じりを外部の金融市場との間で調節をしていく。現在では系統内部の資金が余っておるわけでありますから外部に運用する。それは制度あるいは法律によって与えられた範囲内で運用しておるわけでございますが、そういう運用をするということも私どもに与えられた重大な機能あるいは役目、こういうことになっております。その点についても私どもは精いっぱい努力をして、負託をされておりますところの資金を安全有利に運用する、またそれを通じて収益の還元を系統団体にするということをやっておるわけでございまして、これも私どもの大きな役割だというふうに思っております。  ただ、農林漁業の専門の金融機関あるいは系統団体の中央金融機関として今のような資金の配分で正常な状態であるかということになりますと、率直に言って系統内に対する資金調整の割合というのがもっと多い姿がノーマルな姿ではないか。もちろんその割合が幾らか、その金額が幾らかということは確定できませんけれども、そういった姿が正常な姿であるというような感じはいたします。  そこで、私どもとしましては、農村なり農家が持っておるところの資金需要に十分系統として今後抜かりなくこたえていくというふうなことには大いに努力をしなければならぬというふうに思っております。今系統の中で検討しております項目といたしましても、農業あるいは漁業に対する低利融資といいますか、振興資金と仮に呼んでおりますが、そういうふうな特別の系統内部の要綱融資を今後整備拡充をいたしまして、できるだけ農家に対する資金需要にこたえていく。あるいはまた、貸し出しの体制を、各農協にいたしましても、各事業が一体となってよく連携をとりながら貸し出しの管理をしていく、あるいは農家の経営の指導をしていく、そういう体制をもう少し確立をしていこうではないかということ。また、最近非常に問題になっております農家の負債問題、これについても系統独自で、もちろん政府でいろいろ今まで御苦労を願い、御施策をいただいておりますけれども、我々としてもやれることはやっていこうじゃないかというようなことを中心にいたしまして、いわば農業融資、農業金融活性化運動とでもいったようなものをこれから展開していこうということで、系統内部で寄り寄り相談をしているところでございます。
  89. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 日本の農業が、現在は国際的には自由化あるいは開放経済というような形、また最近中曽根総理が言うように産業構造を大きく転換をして、内需の活性化をし、あるいは輸出型をやめるというようなことから、特に問題になるのは、農協が合併をして大型になる、金庫の方は市中銀行のような方向に行く。市町村も合併をしようなんという動きもあるけれども、生産農民と農協なり金庫がだんだん遠くなってしまうのじゃないか。市町村が合併しようが農協が合併しようが、従来の集落というものは動くことはできない。どの程度の金融の枠なり権限を各支所に与えるか。これは後で問題にするけれども、現在畜産は、酪農にしても肉牛にしても養豚にしても、あるいは採卵鶏にしても、ほとんどが大型化の方向では赤字になって倒産しているものもある。そういうようなときに農協の窓口でこれを取り扱うわけだけれども、どの程度の権限を与えるのか。これはどういう方式をとりますか。官僚化する傾向になるのじゃないですか、なりませんか。それはどうですか。
  90. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 合併によって農協の農民離れが起きるのではないかということにつきましては、先ほど大臣からもちょっと触れられたところでございますけれども、私率直に申しまして、合併の仕方によってそういう心配が全くないということは言えないと思います。  ただ、合併のいろいろな事例を見ておりますと、事前に関係組合員の意向をいろいろな調査とか座談会ということで十分くみ上げながら、そしてまた支所、出張所の機能の充実、活用というところにも十分配慮しながら、合併によって経営基盤を強化し、そしてそれによって営農部門あるいは信用事業部門を強化して十分組合員との密接な対応ができる、あるいはまた場合によっては合併前に比べて組合の活動全体が活性化しているという例も十分あるわけでございます。これは系統の中でもそういう優良事例などをいろいろな形で紹介もされておりますけれども、私どもといたしましても、経済環境が厳しくなってまいります中で一定の最低限の経営基盤を確保し、他のいろいろな金融機関あるいはまた事業体との競争において劣後していかないための合併の推進ということは不可欠であると考えておりますと同時に、その合併によりまして組合員との間が遠くなるというようなことになりませんように指導に努めてまいりたいと考えておるところでございます。
  91. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 合併の法律については我々も賛成したのですから今さらここでいろいろ異議を言うこともないけれども、だんだん大型化していく中ではややもすると官僚化する傾向がないことはない。そこで、そういうことのないように要請して次に移ります。  先ほど串原委員なり日野委員の方から役員の選び方の問題についていろいろ意見が出ておりますが、私も同じような意見を持つ者の一人であります。このような役員の規定の改正をした趣旨はどこにありますか。なぜ役員改正をこういうふうにされたか。
  92. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 これは、今回民間法人化に伴いまして関係業務規定の整備も行ったわけでございますが、そういった今回の法律改正機会に、従来副理事長理事につきましては総代会同意を得て理事長が任命をするという方式でございましたものを、民間法人化と申しますのは、逆に申しますと民間的な法人として自分の足で立つ、自立化をする、そしてそのことは、また同時に農林中央金庫所属団体意向のよりよい反映といいますか、そういう方向を一つの今後の方向として考えました場合に、直接出資者総会において選任をするという方式をとった方がベターであろう。そしてまた系統団体の役員をしておられる方で農林中央金庫理事に就任されておられますような方々、感じから申しますとそういう単位組合の組合長さんであり県連の会長さんであるというような方は、大体組合長にいたしましても会長にいたしましても総代会とか総会というところで選任をされている。農林中央金庫連合会ではございませんということは先ほど来申し上げておりますが、全国レベルの理事に就任をいたします場合にも、直接にそういった総代会のような場で選任という形の方が気持ちとしてもすっきりするというようなお話もございまして、選任方法につきまして直接に総代会選任をするという方式に改めることにいたしたわけでございます。
  93. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 現行の役員の規定が、各種金融機関法律を見ても全く例を見ない理事長による副理事長理事の任命となっており、前回の法改正のときに際しても、それは官僚的ではないか、これは四十八年六月十四日に福島県選出の参議院の棚辺四郎さん、自民党の方からの意見が出ておって、批判が出ていた。その後の運営でも、甚だしく非民主的なあるいは非効率的または非開放的な、閉鎖性というほどまではいきませんが、そういった経営がなされたために内外ともに強い批判があり、関係者の要望が高まって今回の一連の改正になったと考えるが、そういうように理解をしていいですか。
  94. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 私ども、現在の農林中央金庫業務執行体制あり方なりあるいは実際の業務執行運営というのが非民主的である、あるいは官僚的であるというふうには考えておらないところでございます。
  95. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 官僚的でないと言っても、それは自分がそういう立場にあるから、官僚的だと言ったらおしまいになってしまうからそう言うかもしれない。それは腐ったって言えるはずがない。  そこで、それにもかかわらず今回の改正案を見ていると、理事長、副理事長及び理事はそれぞれ別個に総会、実際は総代会、事実は管理委員会の推薦に基づいて選出される。御承知のとおりに、前回四十八年の改正のときにおいても役員制度改正が議論され、出資者団体及び金庫内部からは、金庫の民主化の線に沿ったところの、すなわち経営デモクラシーの思想を踏まえた役員制度改正総会におけるところの全役員の選出、理事互選による理事長の選出を当局に要望したけれども、それは実現しなかった経緯がある。当局はこのことをよく知っているにもかかわらずあえて今日の改正案になったという理由は、出資者団体や金庫側の意向が変わったのかどうなのか。これはどうですか。
  96. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 私ども今度の中金法改正に際しまして農林中央金庫なり関係団体から御要望をいろいろ受けまして、業務規定の改正のかなり細かい事項まで含めまして御要望を受けまして、私ども内部で検討し、また同じく主務省でございます大蔵省との他業態との調整というようなものも経まして相当部分実現をいたしたわけでございますが、今お話の出ております役員問題につきましては、役員選任方法につきまして、今回御提案申し上げております副理事長及び理事総代会で直接に選任をするという御要望は私ども受けた覚えがございますけれども、それ以外につきまして正式にそういう御要望を受けたということはないというふうに考えております。
  97. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 民間金融機関役員制度協同組合法、銀行法とも、いずれも執行の意思決定機関として理事会、取締役会を設置をして、業務執行・代表機関理事会または取締役会によって決めている。今回の改正が、改正趣旨にあるとおり民間法人化の促進、徹底、こういう民間への移行という方向にあるとすれば、やはりひとり金庫役員制度のみがこのように不徹底かつ不適当な民間金融機関としてのまことに奇形な形式をとるということはやはり腑に落ちない、ここは民間金融機関化の線に沿って修正をされるべきではないか、どうですか。
  98. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 先ほど竹内先生と大臣との応答の中で、農林中央金庫が市中銀行化するというお尋ねに対しまして、大臣の方から、今回の法改正は自立化の原則に立って民間法人化をするということであって、農林漁業協同組織全国金融機関としての専門金融機関としての性格は何ら変わらないものであるという趣旨のお答えを申し上げたと存じます。  私ども、今度の政府出資の規定の、政府出資資格の削除に伴いまして一定の規制緩和を行ったわけでございますが、これは市中銀行化するというようなものでは全くございませんで、農林中央金庫が従来持っておりました基本的な農林漁業全体を包括をいたします全国金融機関として、特別の法律に基づいて設立された単一法人であるという性格には全く変更がないというふうに考えておりますことをもう一度申し上げさせていただきたいと思います。
  99. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 先ほど串原委員からもお話があったのですけれども、出資者が責任者になるということが正しい方向だと思うのですね。今回の役員制度は、理事の互選による理事長の選出を、どうして出資者代表が理事長に選出されないで——出資者ということになると、一般に役所から見るとこれは視野が狭いじゃないか、どうも見晴らしがきかない、こういうような話も一部にはありますが、どうしても出資者の代表というものが責任ある地位につくということが大事だ、こういうぐあいに私たちは考えるわけで、それを抑えるために今のようなことをやったとしか思えないが、これはいかがですか。
  100. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 農林中央金庫役員選任につきましては、出資者総会、具体的には総代会という形で行っておりますが、ここでの完全に自主的な選任ということに昭和三十六年以来なっておるわけでございまして、たまたまどういう前歴の方が理事なり副理事長なりあるいは理事長選任をされるかというその過去の事実はあろうかと思いますけれども、選任そのものは全く自主的に行われておるところでございます。
  101. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 次に、役員任期の問題についてちょっとお伺いしたいのですが、現行の役員任期理事長以下理事全員が四年、監事は三年ということになっているが、今回これを理事長、副理事長は四年、理事は三年としたこの根拠はどこにありますか。
  102. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 役員任期につきましては、業務執行なり経営の安定性というような観点からいたしますとある程度長期の者が望ましいという要請が一方にありますと同時に、他方では、総代会あるいはまた一般の株式会社等で申しますれば株主総会というようなところで業務執行に当たっております者の業績を評価をする機会をより多くするという意味では、むしろ余り長きにわたらずに頻繁にそういう機会を与える方がいいという二つの要請をどこで調和をさせるかという問題であろうかと思います。  御案内のとおり、理事長、副理事長というのは農林中央金庫業務執行のかなめに当たる方でございます。こういった方々につきましては、従来の四年という任期について、やはり経営の安定について長期的な視野で責任を持つという観点で従来どおりといたしたわけでございます。理事につきましては、先ほど申し上げました要請の後者を考慮いたしまして、そしてまたこれは、今回農林中央金庫民間法人化するわけでございますが、臨時行政調査会などにおきましていろいろ特殊法人認可法人についての役員任期などの御議論がありました場合も、理事長、副理事長、あるいは総裁、副総裁任期に対しまして、それは長期的な視点からの経営の、事業運営の安定性ということを考慮し、それ以外の理事については原則二年というような方向も打ち出されておるところでございます。ただ、農業協同組合法の世界におきましては一般的には理事は三年ということになっておりますので、そういったことも考慮いたしまして理事任期を三年といたしたわけでございます。
  103. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 同じ農協法によって、農協法というか農協の枠の中でいろいろ仕事をしておる者が、ある者は任期が四年、ある者は三年、ある者は二年というような、そういうことはおかしいんじゃないですか。金庫理事長、副理事長及び理事任期は第六次の法改正、昭和三十六年のときに五年が四年になった。五年というのは大体長過ぎる。もう五年もやっていれば品定めができるんだから。一期やればいいのに、大体皆さん立派な方だから年をどうのこうの言うわけじゃないけれども、みんな二期ぐらいやって、十年、八年という長い間やっておるから、こういうことで五年が四年になり、役員任期の統一を図るためには補欠の任期も前任者の残任期間に改めたのでありますが、今回それをまたあえて四年と三年に区別したのはどういう理由でそういうことをやったのか。まあいろいろ系統の中からもこれはおかしいじゃないかという御意見も随分あったけれども、内部からやはりこういうふうにしてくれという強い要望があったということですが、これはどうしても私たちは腑に落ちないところであります。
  104. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 ただいまの御質問には先ほど既にお答えを申し上げてあるというふうに私考えております。
  105. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 今の答弁は、これはちょっと受け取れない。不親切だ。
  106. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 それではもう一度申し上げます。  先ほど申し上げましたように、こういった組織業務執行に当たります者の任期を考えます場合に、一つは長期的な視点から経営の安定を図ってまいるという要請と、もう一つは、出資者なり所属団体なりあるいは株主といったような方々から業績について評価なりチェックを受ける機会をなるべく多くした方がいいという二つの要請をどういうふうに兼ね合わせるかということで考えられるべき問題だというふうに思っておるわけでございます。  そういった観点から、業務のかなめでございます理事長、副理事長、これはやはり長期的な視点に立って業務運営責任を持ってやってもらうという意味におきまして、従来の任期について特に変更を加えなかったわけでございますけれども、理事につきましては、先ほど来申し上げておりますような、政府関係団体に対する任期考え方ということもございますし、またできるだけ出資者総会のチェックの機会を多くする、そしてまたそれも、株式会社のように商法上は二年でございますが、二年ではいかにも短か過ぎるということで、農協法上の役員任期に合わせまして三年ということで四年から一年短縮をいたしたということで、結果的に理事長、副理事長が四年、それから理事が三年、こういう任期にいたしたわけでございます。
  107. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 どうしてもこれはかみ合わないし、理解ができないから、この問題は後の質問者の方へ譲って、僕はもう時間がないから、せっかく建設省や国土庁に来ていただいたし、その他の問題についても触れたいわけです。  この前の委員会のときにも申し上げたが、農林中金なりあるいは信連の金を借りているのは、多くは、困っているのは北海道、東北、北関東、南九州の方面の畜産農家が多いですね。行政の方針としては大型化をやれ、そして生産力を高めよう、こういうことで補助から融資へとう方向をとってきた。そのために各地区では規模拡大をしてまいりましたが、今三月の畜産物の価格の決定のときにもわかるように、加工原料乳は三円九十銭の引き下げ諮問をして、いろいろな動きの中で二円五十銭が事実上引き下げられた。豚の価格の場合には六百円が五百円台になり、鶏卵の場合には去年の六月の社会党、公明党、民社党、また別に共産党からの法案の提起もあり、農林省の方の通達による調査があって、一定の価格を保ってきたわけです。  しかし、その調査の中で、今増羽の数がどんどん出てきて、やがてひなが産卵をするようになるとこの秋ごろには価格が暴落するのじゃないか、こういう心配が出てきて、やはり法律でやらなければだめだ。需給安定の協議会もある、豚にもそういう協議会をつくってある、それから酪農もそういうふうにやって、自分の経営は自分で守るためにそれぞれが委員会をつくってやっているけれども、景気のいいときにはどんどんふやしていく、それが結局はまた自分のところに返ってくる。確かに豚なんかには畜産振興事業団もあるし差額関税制度もある、けれどもそれもなかなか活用できない、こういうような状態でありますから、特に養鶏の場合には今野党が法律を出して、そしてともかく需給と価格の安定をしようじゃないか、こういうように努力をしているときだけに、これからどうされようとしているのか。もう暴落するのは明らかなんですね。そしてしかも、やみ増羽ということが相当の量にふえていることも事実だ。この点についてだけお答えを願いたいと思います。  あと国土庁、建設省の皆さんには、大変恐縮だが、今の役員人事の問題でどうも時間をとり過ぎてしまって、質問ができなくなってしまって申しわけない。
  108. 大坪敏男

    ○大坪(敏)政府委員 最近の鶏卵の状況でございます。まず価格面で見ますと、これまで低迷を続けておったわけでございますが、昨年六月以降は回復基調に入ったということでございますが、ことしの四月に入りまして価格が三百円を割るという事態になっております。これは主として季節変動によるものでございまして、例年に比べますとなお高い水準にあるというふうに考えているわけでございます。  ただ、先生御指摘の、最近におけるえつけ羽数の増ということは、確かにそういう状況があるわけでございますので、私どもこれについては懸念いたしておるわけでございまして、三月に開催されました鶏卵の需給調整協議会におきましても、ひなえつけ羽数を対前年比一〇〇%以内におさめるようにということで強く指導した次第でございます。  そこで、私ども養鶏に関しましては、やはり潜在的な過剰生産基調があるわけでございますので、昨年七月に通達いたしました計画生産の改善強化策に基づきまして各般の対策を講じてまいりたい、かように考えているわけでございます。  ただ、先生の御指摘ございました鶏卵の需給安定のための法制化の問題につきましては、かねてからの先生の御意見は承っているわけでございまして、貴重な御意見といたしまして受けとめているわけでございますが、私どもといたしましては、我が国の養鶏業がこれまで専ら自助努力で発展をしてまいったという経緯もございますし、法律で強制するよりも、あくまでも行政指導の一層の強化を図りながら生産者による自主的な調整活動を助長していく、さらにまた、卵価安定基金制度なり配合飼料価格安定基金制度等々とも調整を図っていく、さらにまた、最近の養鶏の実態から見まして、大規模層をも取り込んだような、そういった組織体制の整備を今後考えていきたい、そういうことを通じまして対処していくことがより現実的ではないかというふうに考えている次第でございます。  なお、法制化自体につきましては独禁法等、他の法令との関係でいろいろ問題があると考えておりますけれども、現在養鶏協会等養鶏の関係の団体におきましていろいろな検討が進められておると承知しておるわけでございますので、私どももそういった御意見には謙虚に耳を傾けながら今後の対策につきましては万全を期していきたい、かように考えております。
  109. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 最後に局長要請しますけれども、やみ業者に対する二つの基金からの除外というこの通達の第二項目を実施をしてもらいたいし、そのことについて検査をしてほしい、以上申し上げて終わります。
  110. 大石千八

    大石委員長 午後一時半から再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時四十一分休憩      ————◇—————     午後一時三十一分開議
  111. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。辻一彦君。
  112. 辻一彦

    ○辻(一)委員 私も、午前中に引き続いて、中金法と農協の貯金保険制度等に絡んで、二、三の点を質問したいと思います。  まず第一にお伺いしたいのは、今度農林中金法改正になりますが、これは三十六年と四十八年とに次ぐかなり大事な改正であると思っております。そこで、一番大事な点は民間法人化するという点にあると思うのですが、一応論議の初めとして、基本的にこの民間法人化についてのポイントはどういうことであるか、簡潔で結構ですが伺いたいと思います。
  113. 羽田孜

    羽田国務大臣 今回の改正は、まさに臨調の答申を踏まえまして、新しい時代に対応するために簡素化するということが一番のあれであり、また監督規制、こういったものについてもある程度緩和していくということにあるというふうに思っております。  例えば、剰余金の処分に係る認可廃止するなどの規制整理合理化なども行っておりますし、しかしそうかといいまして、やはり専門の金融機関であるというこの秩序だけはきちんと守っていきたい、いわゆる農林水産業というものを助長していくためにある金融機関であるということだけは損なってはならぬということが基本にあるというふうに思っております。
  114. 辻一彦

    ○辻(一)委員 今大臣もちょっと触れられたのですが、臨調が五十八年三月の答申で、農林中央金庫について民間法人化を要するものとして指摘をしていますね。今回民間法人化を指摘された法人の中で、最も実態的に民間法人に近い、そういう性格を持っているというふうに見られたと思うのですが、臨調はどういうような判断基準でこれを行ったものか、これについて若干伺いたいと思います。
  115. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 臨調答申で申します民間法人化といいますのは、特殊法人につきまして、社会、経済情勢の変化に対応しまして的確な改革を進めますために、民間の活動にゆだねても差し支えないものについて、いわば政府資金等に依存する体質から脱却をしまして、自立的に経営し得るように業務組織を整備することだとされております。  農林中央金庫民間法人化に関しまして臨調でどういう議論があったかということの詳細までは承知をいたしておりませんけれども、実態面で申しますと、昭和三十四年以降政府出資を消却をいたしまして、既に長い間全額民間出資となっておりますし、役員選任につきましても、三十六年の法改正によりまして政府任命制が廃止をされ、自主的な選任になっております。それから第三に、事業の経常的な運営に要する経費について国などからの補助金に依存をしてないということで、いわば産業組合中央金庫として出発をしましたときの発足の経緯というものと、あとは、農林中央金庫法政府出資資格者として規定をされているという点を除きますと、実態的に自主的な業務運営が行われており、実態的に民間法人に近い状態の運営がなされているという点が特に考慮されたものと私ども理解をしているところでございます。
  116. 辻一彦

    ○辻(一)委員 そういう判断からこの改正案も出てきたと思うのです。  そこで、農林中央金庫は、従来、特殊法人として位置づけられてきたわけですが、今回の改正によって、この法人としての性格が変わることになると思います。  まず一つは、どういう性格法人になるのか、それから、今大臣から答弁がありましたが、基本的な性格を維持しつつ民間法人化を図る、こうされておりますが、この農林中央金庫の使命、役割等々に何らかの変化をもたらすことになるのか、あるいはそれはないのか、そこらについてお伺いしたいと思います。
  117. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 今申し上げましたように、これまでも農林中央金庫組織運営面で産業組合法を大幅に準用する等、協同組合的な金融機関としての性格を有しておったわけでございますが、今回の改正によりまして、政府出資資格者の廃止、それから、総務庁設置法に基づきます特殊法人に関する審査調査等に関する規定の適用対象から除外をするということのほかに、民間金融機関立法例に倣いまして、資本金、登記、準備金、配当、監督命令、罰則等の規定の整備をやろうとしているわけでございまして、この結果、農林中央金庫特殊法人としての性格から脱却をして、協同組合的な原則により運営をされる特別の法律に基づいて設立された法人として扱われるものと考えております。  それから、農林中央金庫の本来の使命、役割という点におきましては、今回、農林水産業なり農山漁村の環境の変化、また、金融自由化等の進展に伴います所属団体のニーズあるいは国民経済のニーズに対応する業務規定の整備は行っておりますが、農林漁業協同組合基本構成員とする全国金融機関としての使命なり役割というものについては、基本的には何ら変わるところがないというふうに考えておるわけでございますし、またそのようなものとして今回の法改正の規定も作成をいたしておるところでございます。
  118. 辻一彦

    ○辻(一)委員 そうすれば、農林中金特殊法人から本来的な協同組合性格を持つ方に法人としての性格が変わっていくということ、それからもう一つは、基本的にはこの中金自体が持つ使命というものには変わりはない、こういうものを発展的に考えていく、こう理解していいですか。
  119. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 基本的には、性格、使命に変わるところはないという御理解で結構だと存じます。
  120. 辻一彦

    ○辻(一)委員 そこで、次に伺いたいのは、制度民間組織になることから、政府監督規制金庫に対する関与の度合いは相対的に弱まっていくべきであると思いますが、今回の改正でどの程度自主性を認めることになるのか、そこらの見解をひとつ伺いたいと思います。
  121. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 考え方といたしましては、民間法人化するのに伴いまして、例えば剰余金の処分の認可廃止をいたしますとかあるいは資本金に関する規定の仕方を改めるとか、他の金融関係の法令などを参考にいたしまして規制あり方につきましても緩和を図っておるところでございます。ただ、基本的な性格が変わらないということでございますので、いろいろな業務運営の上で、農林水産業関係協同組織の頂点に立つ全国金融機関としての性格、それを維持するために必要な主務大臣監督なり規制という点につきましては、農林中央金庫特殊性という意味合いにおきまして、他の金融機関にはない規制も当然のことながら残るということになるわけでございます。
  122. 辻一彦

    ○辻(一)委員 もう一つそれに関連して伺いたいのですが、これから民間法人になっていくとすると、金庫経営の自己責任の原則の一層の強化、徹底が求められると思うのですが、こういうものに対して政府としてどういう方向で指導しようとするのか、これらについてひとつ伺いたい。
  123. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 先ほど申し上げましたように、これまでも、昭和三十四年に政府出資がなくなりましてから民間法人的な自主性のある運営をするように実態的にはなってまいってきておるわけでございますけれども、今までは制度政府出資の規定がございましたから、万一のことがあった場合には政府がまた出資をするという可能性も制度上は開かれておったわけでございますけれども、今回それを削除するということになりますので、いわば自分の足で立つと申しますか、自立化の原則に立って業務運営をやってまいるということでございます。  実態面で申しますと先ほど申し上げましたような従来からの運営がなされておるわけでございますけれども、これを契機に、私どももこの自立化の原則に立った、民間法人化をした農林中金というものを念頭に置きまして必要な監督を行っていく。  この際どこが革命的に変わるのかという点につきましては、今度の法改正で具体的に列挙されておりますような監督関係の変化ということ以外に直ちに大きく変わるということはないわけでございますけれども、民間法人化したということを踏まえて、私どもも、中金との関係において指導監督をしてまいる立場で、それを念頭に置いてやっていく必要があろうと思っております。
  124. 辻一彦

    ○辻(一)委員 今お話しのとおり、総務庁審査権も今度は外されるということになっているわけですね。ただ、国の委任または補助に係る業務実施状況についてはなお権限を留保されている、こうあります。しかし、金庫については大蔵大臣農林水産大臣主務大臣としての監督がある、こういう点から、これで十分じゃないかという考え方もありますが、これについてどうお考えになりますか。
  125. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 確かにそういう考え方一つ考え方としてあり得るかもしれませんけれども、行政監察と申しますのは、農林中央金庫主務大臣ということで申せば農林水産大臣大蔵大臣主務大臣であるわけでございますけれども、それぞれの各行政機関が分掌してやっております仕事の内容なり執行状況につきまして行政部内で第三者的な立場からやるというのが行政監察の趣旨でございますし、そのことを通じまして行政制度運営の全般的な改善の推進でありますとか総合調整をさらに強化するということをねらいといたしたものでございますので、主務大貫の監督権限というのとはちょっと性格の違うものでございます。  今回、国の委任または補助に係る業務行政監察についてだけは総務庁権限が残っているわけでございますが、この権限は、特殊法人であると否とを問わず、他の法人にも一律に国の委任または補助に係る業務をやっております場合には対象になるものでございますので、これは農林中央金庫だけを対象外にするということは制度上難しいということで、今御提案申し上げているような条文で結構ではないかと私ども考えておるところでございます。
  126. 辻一彦

    ○辻(一)委員 中金法改正されて特殊法人から民間法人になる、こういう場合に、一般的な意味の銀行の仕事業務の拡大として非常にふえていくと思うのですが、銀行への一般化というか一般的な銀行化ということが内容として考えられますが、銀行と違う点というのは、特殊法人から民間法人になった場合にどれくらいのところが一番違うのか、それをひとつ伺いたい。
  127. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 まず、農林中央金庫は、先ほど申し上げましたような専門金融機関としての性格を持ち、構成しております協同組合等への金融上の便宜の供与を第一義的な使命にしておりますので、広く国民一般対象にしております銀行と比べますと、おのおのの業務対象に制限があることは当然の制約でございます。  単に業務自体だけを比較いたしてみますと、銀行が行い得る業務のうち、定期積金の受け入れ、信託業務、それから金銭の収納その他金銭に係る事務の取り扱い一般というようなものは、農林中央金庫においてはなし得ないものでございます。しかし、実際上銀行は定期積金は抑制的に取り扱っているところでございますし、信託業務につきましては、もう御案内のとおり信託分離政策というものがございまして信託銀行のみに認められているというのが実態でございますし、金銭の収納なりにつきましては、農林中央金庫につきましては株式の払込金等の取り扱いあるいは公益事業法人業務代理ということで行い得ますところから、実態的には余り大きな差はない、ほとんど差はないとお考えいただいてよろしいかと思います。  ただ、業務範囲は別にいたしまして、所属団体というものに対する金融サービスを最優先にする、それを妨げない範囲内で、例えば関連産業貸し出しとか、農林水産業のいろいろな発達のための施設を行う法人に対する貸し付けをやるとか、そういう意味での相手方の制限と申しますのはこれは農林中央金庫の基本的な性格としてある。業務そのものの範囲としては実態上ほとんど差はないというふうに御理解をいただいたらいかがかと思います。
  128. 辻一彦

    ○辻(一)委員 実態的に言えば、銀行どこれから変わっていく民間法人中金との中身は余り差がない、こういう御答弁ですね。  それで、その中で、都市の銀行しか認めていなかった社債の受託業務を認めているということ、非居住者、海外からの預金の受け入れを認めているという点、この点は利用者のニーズにこたえるという点からいえば必要なことだけれども、またその農林中央金庫としての性格上からいって、これを超える懸念はないのかどうか、そこらの御見解をちょっと伺いたいと思います。
  129. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 二点のお尋ねでございますが、まず、社債等の募集の受託業務及び担保附社債信託業務につきましては、近年農林中央金庫の貸出先でございます関連産業法人等の資金調達の方法が多様化いたしておりまして、従来の金融機関から借り入れるという姿から、御案内のとおり最近は社債の発行でございますとか株式の時価発行でございますとか、そういったことによる調達が増大をする傾向にございます。農林中央金庫に対しましても、社債の募集の受託業務なり担保附社債信託業務要請が高まってきているわけでございます。  こういった社債を出しますような場合には、メーンになっておりますような金融機関にそういう業務を委託をするということが通常多いわけでございますが、農林中央金庫の貸し出しの対象になっていて、そういうところが社債を発行するというような場合にその要請にこたえられないということになりますと、やはり貸出業務の維持なり円滑化にも支障が生じるというようなことがございますので、こういった要請にこたえるために、貸出先のためにこの業務を行い得るようにするという意味合いでございます。  それから、非居住者からの預金の受け入れにつきましては、近年やはり所属団体または関連産業法人等の取引先におきまして、取引の関係の国際化というようなことがかなり進んでまいってきております。そのために外貨資金のニーズが大きくなってきておりまして、この傾向は恐らく今後一層顕著になるだろうというふうに見込まれておりますので、農林中央金庫におきましても、これらのニーズにこたえますために、為替リスク等のない安定的な外貨調達手段として、非居住者からの預金を受け入れ得るようにいたしたいというものでございます。  こういった業務の今後の実施に当たりましては、農林中央金庫の基本的な性格というものから逸脱をしないように、私どもの方といたしましても留意しながら指導もしてまいりたいというふうに思っておるところでございます。
  130. 辻一彦

    ○辻(一)委員 二、三伺った点からすれば、この特殊法人から民間法人に切りかわっていく、そのための政府監督権限等々も緩和をされて民間法人に大体近くなってきた。それから、業務の内容を見ても、これも一般の銀行に非常に近づいてきている。  これらを見ると、私は、さっき午前中から論議があったけれども、やはり農林中金がこういう基本的性格を保ちながら発展してくる中で、一つ前の影を残しているのは、今さっき午前中論議をされた役員の選び方という問題ですね。理事長、副理事長は四年で、理事三年という、ほかはかなり民主化されて、そして民間性格をたんたんと強めてきたにもかかわらず、残されたそこだけはどうも農林中金の出発点の影をまだ背負っているように感じますが、この点いかがですか。
  131. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 この任期の問題でございますけれども、役員任期につきまして一般的に申しますと、経営安定という観点から業務への専念を考慮してできるだけ任期は長期なものが望ましいという要請と、それから、業務執行に当たりましては所属団体意向をよりよく反映させるために業務執行担当者の信任を問う機会を多くする、逆に申せば任期は短くするという二つの要請のバランスをどうとるかという問題だというふうに考えられるわけでございますが、農林中央金庫役員の場合、理事長、副理事長理事、監事でそれぞれ職務が異なっておりますので、業務運営のかなめの地位にある理事長、副理事長は従来どおり、この厳しい金融環境に対処して中長期的に経営の安定を確保していくということからあえて任期の変更はいたしませんで四年としておりますが、理事につきましては、実務担当者としてその業績を定期的に評価をして経営活性化に資するということで、その任期を一年縮めるということにいたしたわけでございます。  任期考え方につきまして、完全に民間の株式会社というようなことで商法で考えますと二年というようなことになるわけでございますけれども、御案内のとおり、たしか商法の昭和二十五年の改正だったと思いますが、そのときに株主総会の信任を問う機会を多くするというようなことで、たしか三年から二年に商法の世界では取締役の任期を縮めて今日に至っていると思います。それに対しまして、同じころ、昭和二十六年であったと思いますが、農業協同組合法の改正が行われまして、そのときに、むしろ農協につきまして経営の安定を重視するという観点から二年から三年というふうに逆に延ばしたというようなことがございまして、従来のそういった法制的な流れから申しますと、どちらかというと経営の安定というようなことが農業協同組合の場合は重視をされてきたというような経過がございます。  それで、もっと信任の機会をふやして二年にするというような意見もございましたけれども、やはり農業協同組合と密接な関係にございます農林中央金庫でございますので、どんなに短くしてもやはり理事三年ということで、厳しい環境の中で理事長、副理事長につきましてはそのかなめにある者として現行の四年を維持した。いろいる議論が途中経過で率直に申しましてございましたし、私どももいろいろなことを考えました。その結論がこういうことに落ちつきまして御提案を申し上げておるということでございます。
  132. 辻一彦

    ○辻(一)委員 私も、一連のこの改正の順序を追いながら初めからずっと見れば、そういう意味では民主化もしている、前進もしていると思います。評価します。ただ、今言われるように、職務とか権限が違うから任期が違うというのもなかなか一般的にいろいろと理解しにくい点があるし、それから、全体で民主的に執行体制をとっていくというには、やはり合議によって連帯の責任を持つ、こういうのが一つの大事な点であろうと私は思うのです。  ところが、理事長、副理事長は四年任期で、これは最高の責任者で間違いないですね。しかし、あとは期間としては三年任期補助的な性格がかなり強い、こういう点は、本当にこれから役員の選び方においてもさらに民主的な形を発展させていこうという方向からすれば、まだ昔の、発足当時の影を背負っている、私はこういう感じがします。これは将来検討すべきものじゃないかと思いますが、大臣、これは金融の面からいってどうお考えになりますか。
  133. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 私どもいろいろ検討をいたしまして、その結果、これが最善の案だということで御提案を申し上げておりますので、現段階におきましてはこれが最善のものであるというふうに考えております。  ただ、金融情勢その他系統金融をめぐるいろいろな諸事情というのも非常にこれから激動してまいるであろうと思いますので、そういったことによりまして現在我々が考えておりますいろいろな考慮要件というものが非常に大きく変わってくるというような事態が生じました場合には、それなりにまた制度の見直しということが必要になることがないとは言えない、未来永劫これで常にベストであるということまで申し上げるべき筋合いのことではないと私どもは考えております。
  134. 辻一彦

    ○辻(一)委員 憲法論みたいに、それは未来永劫——問題があれば変わるのは何でも同じだと思います。  ちょっと理事長に直接伺うのはどうかと思いますが、参考にお伺いしたいのです。  さっき申し上げたように、確かに農林中金政府の任命制から出発して、そこから見れば随分民主化もされたし、それから、今日の金融全般の状況の中で当然内容も変化すべきであるし、それにふさわしい形で前進していると思います。しかし、そういうものを背景にした役員選出もまたさらに民主化されていくべきであると思うし、今百点の中で何点ぐらいになっているのか、ちょっと私は評価しかねますが、合格点であれば、さらに満点の方に近づくためになおこの問題は将来考えてみる必要があるのじゃないかと思います。これは理事長、いかがでしょうか。
  135. 森本修

    ○森本参考人 今お話がございましたように、農林中金の過去の六十年の歴史からいきますと、役員制度につきましてもかなり民主的な方向に来ておると思います。また、制度ももちろんそうでありますが、実際の役員あり方といいますか運営といいますか、そういう面におきましても、私ども、系統団体の意向に沿って仕事をするという意味では日常大変気を使っておるということであります。率直に言いまして、系統団体の意に沿って運営するという意味では、私は執行者として大変気を使って配慮しきておる、また全役員もそういう形になっておると考えております。  もちろん、役員制度あり方につきましては系統の中におきましてもいろいろな議論がございます。しかし、私ども、今回農林中金法改正されるという機会にどういうふうな内容を盛ってもらいたいかということを政府に対して要請いたしました。それは機能の面もございますし、いろいろな項目がございましたが、役員制度につきましては、副理事長理事選任につきまして今までは総代会同意を得て理事長が任命をしておった、それを総代会選任ということにしてもらいたい、そういう一点に絞って御要請を申し上げたということになっております。
  136. 辻一彦

    ○辻(一)委員 今までに比べればそれなりの前進は確かにあったと思いますが、なお将来、いろいろな問題の中で考えるべき点は考えていっていただきたいと思います。  そこで、農村、農業内に資金をどんどん需要する力といいますか方向がどんどん強くなれば心配はないのですが、なかなか農林漁業内に十分資金を生かし切れない。そうすれば、上に上げて、中金にお金が上がってくる、員外活用を考えざるを得ない、今こういう傾向になっておりますが、さりとてそれが余り進んでも、農外への、員外への利用といいますか、その面が余りにも大きくなっていけばまた中金本来の性格からも外れかねない、なかなか難しさがあります。  そこらのかじ取りといいますか、全般の方針として、中で十分生かすと同時にまた外にも生かす必要もありますが、余り過ぎればこれは中金自体の性格から外れる、ここらのかじ取り、兼ね合いが非常に難しいと思いますが、大臣、これらについての考えを一言お伺いしたい。
  137. 羽田孜

    羽田国務大臣 今度の改正をいたしますけれども、先ほども申し上げましたように、これは確かに何といっても所属といいますか、これを支えております農林水産、こういったものを中心にしていくことが基本であろうと思っております。  そういうことで、私どもとしましてもこれからも節度ある態度でこの機関運営されていくように十分見守っていきたいと考えております。
  138. 辻一彦

    ○辻(一)委員 中金はこういうようにして性格民間法人へと前進をしていく。  ところで、系統農協には三段階の金融機関があるわけですが、これらもこれから中で生かせなければ上へ上げていくというだけでもいかなくなると思うし、そこらの系統金融三段階に対する指導というものを政府としてどのように考えていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。
  139. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 確かに御指摘のように金融自由化が本格的に進んでまいる、あるいは他の金融機関との競争がますます激しくなってまいるという中で、系統信用事業三段階それぞれの機能を十分に発揮しながら、各段階の一体的な業務運営体制を強化することが大事だと思っております。私ども農林水産省としましても、系統組織と連絡を密にしながら、金融自由化の進展等の情勢変化に系統信用事業が円滑に対応し、健全な展開が図られるよう努めてまいりたいと思って、指導等の面で努めてまいりたいと思っております。  また同時に、きょう午前中に森本理事長からもお話がございましたように、系統資金を農林水産業の発展に資するように効率的に活用いたしますために、系統の内部におきましても、要綱融資等の形で、優遇した貸出制度につきまして、現在もある程度実施をしておりますけれども、そういったものの整備の問題でございますとか、貸付審査体制の整備も含めまして、三段階それぞれにおいて、できるだけ傘下の組合なりあるいは農林漁業者が資金を活用できるような努力ということを系統の方でも今お考えをいただいているようでございますが、そういったものに私どものいろいろな政策釣な手段というものでお力添えのできるところは力添えをしながら、それぞれの段階での業務機能を充実してまいるということにつきましても考えてまいりたいと思いますし、信連などのレベルでも、一定の体制が整ってまいりますのを見きわめながら、いろいろ資金の運用につきましての規制緩和というようなことも、これまでも進めてまいっておりますし、これからも実態に即して関係方面とも協議をしながら取り進めてまいりたい、そういうふうに考えております。
  140. 辻一彦

    ○辻(一)委員 時間が余り多くないので詳しくは聞けませんが、農協もなかなか大変だと思うのですが、特に今、漁協、漁村の経済も非常に難しい状況にあって、相当な借金を抱えてなかなか大変だと思うのです。しかも漁村の場合には、漁協の信用事業というのは非常に規模が小さく、しかしまた暮らしにも非常に結びついているというので、これからの漁協の信用事業というものを、今金融自由化という波の中でどう守って育てていくかという非常に難しいときにあると思うのです。余り具体的に聞く時間がないので恐縮ですが、これについてどう考えていられるかということをひとつお伺いしたい。
  141. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  漁協は、販売、購買、信用等各種の事業を通じまして、組合員たる漁業者の事業及び生活を支え、また、地域漁業のかなめとしても機能をしているわけであります。  その中で、漁協の営んでおります信用事業というのは、漁業者の漁業活動と生活に必要な資金の融通とか貯金業務を行っておりまして、地域社会の中で中核的な金融機関としての役割を果たしているということで、私どももその重要性は高く評価しているわけでありますが、近年におきまして漁業経営が大変不振な場合が多くて、貸し倒れが発生するとか固定化債権が増大するとか、そういうことで漁協の経営は総じて難しい状態になってきております。今先生御指摘のように、金融自由化の波に洗われる場合の抵抗力もいろいろな金融機関の中で最も脆弱な部分に属するものと認識いたしております。  したがいまして、私どもとしては漁協の経営基盤を強化して、事業運営の合理化、適正化、そういうことをやっていかなければいけないわけでありますが、何しろ手足もございませんので、都道府県を通じてそういう指導を強化してまいりたいと思っております。特に六十年から、漁協系統の自主的な努力を前提にいたしまして、不振漁協の経営再建と信用事業の実施体制の整備、信用事業運営面での改善合理化、これらのことを内容とした漁協信用事業整備強化対策というのを実施いたしておりまして、そういう仕事を通じて漁協の信用事業の体質を強化してまいりたいと考えておる次第でございます。
  142. 辻一彦

    ○辻(一)委員 長官に、ではまとめて二点お尋ねしますが、今燃油の価格がかなり大きな変化をしてきたので、この点は漁村にとっては燃費が非常に高いという点から一つのプラスの点になろうと思いますが、それにしても、今まで多くの融資を受け借金を抱えて、漁業信用基金協会の代位弁済事故が非常にふえてきている、保険金の支払い増加によって中小漁業融資保証保険収支が非常に悪くなって機能が低下をする、こういう中で、中央漁業信用基金に対して、あるいは漁業信用基金協会等について、ここがもうちょっと強化をされないと、もう地方の方では代位弁済の限界があってどうにもならないという問題が出ておると思うのです。政府の方は毎年いろいろな形で助成金や基金の増加等々で努力されておるとは思いますが、これについてこれからさらに強力に取り組んでもらいたいので、それについての考え方をひとつ伺いたい。  それともう一点は、私の方は若狭湾という方の漁村になりますが、韓国の漁船が随分島根の沖の方で問題を起こして、その後今度また若狭湾の方に出てくる。場合によると、保安庁の監視船が島根の沖合で見た船を、また北陸の方で二度見る、時間のずれで。こういうことも起こっており、西の方においても今いろいろなトラブルが随分とあります。詳細は申し上げませんが、そういう中で、外国との兼ね合いで非常に難しい問題ですが、全漁連等では、やはり韓国との関係においても二百海里の漁業水域を設定をしてもっと規制を強化をしてほしい、こういう声が日増しに強くなっているように思います。  この二点についてどう対応していくか、これから対処しようとするか、これをひとつ長官にお尋ねいたしたいと思います。
  143. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  第一の点でございますが、確かに最近の漁業経営の窮状を反映いたしまして、代位弁済も多うございますし、したがいまして中央漁業信用基金に対する保証保険金の支払い請求も相当の水準でございます。六十年の段階で八十五億七千七百万、六十一年が恐らく七十六億くらいになろうかというふうに見込まれております。私どもも、こういう事態を直視いたしまして、中央漁業信用基金に対しててこ入れをしなければいけないという点は先生御指摘のとおり考えておりまして、ここのところ相当思い切ってやってきたつもりであります。六十一年度は四十八億二千万の出資でございますが、前年の六十年度は当初予算四十二億であったものが補正で十億ふやしまして合計で五十二億、それから五十九年がこれまた当初予算三十四億に対して補正で十五億ふやして四十九億、それから五十八年が補正後の姿で五十八億ということで、ここ四、五年かなり思い切っててこ入れをしてきたつもりであります。今後とも私どもとしては信用補完制度の円滑な運営が確保されるよう精いっぱい努力をしてまいりたいと思っております。  第二点でございますが、最近韓国漁船の操業が全国的に大変厄介な問題になっておるということは先生御指摘のとおりでございまして、ごく最近も長崎県とか熊本県とかの漁業者が大挙して私のところへお見えになりまして、私自身つぶさに実情は伺っております。関係漁業者の皆さん大変なことでございまして、そういうこともございまして、大臣からの御指示で先ごろ韓国の臨時代理大使を私のところへ招致をいたしまして、厳重に抗議をいたしますとともに、韓国側で適切な対処をするように申し入れをしたところでございますが、もし韓国側がこのような状態を放置してこのような操業実態が続くということになりますると、私どもとしても、日韓間の漁業関係に重大な事態を招来しかねない極めて危険な状態に現になっておるというふうに認識をいたしております。  そこで、それでは二百海里をやったらどうかということになるわけでございますが、この点につきましては、現在の日韓の漁業関係におけるレジームあるいは日韓間の全般に与える影響というようなことももちろん考えなければいけませんが、同時に、我が国漁業の最近の置かれている状況の変化ということも踏まえて検討してまいりたいと思っております。
  144. 辻一彦

    ○辻(一)委員 これは短い時間でとてもやれることじゃないので、また一般質問等でさらに論議をしたいと思います。  時間が来たのですが、運輸省に来てもらっておるので一言だけ聞いて終わりたいと思います。  近畿運輸局の敦賀海運支局で、船舶検査員が予定配置をされておるのが、今舞鶴の方に行って、そして数百隻の漁船等々の船の検査が非常に不便を来しておる、こういう声が随分強いのです。いろいろな対策は立てておっていただけると思いますが、これについてひとつ今後心配のないようにやっていただきたいということで、一言お伺いいたしたいと思います。
  145. 深川勝英

    ○深川説明員 お答えいたします。  敦賀の海運支局管内におきます船舶検査につきましては、隣接しております舞鶴海運支局に配置しておる二名の検査官で実施しております。また、この地域の船舶検査の対象船舶が漁船も多いということでございまして、検査の時期が休漁期と申しましょうか、そういうところに集中する傾向も見えますので、このような時期におきましては、近畿運輸局、本局でございますけれども、そこから応援体制をとる等検査の執行に遺漏のないよう十分な体制をやっております。
  146. 辻一彦

    ○辻(一)委員 それはまた別の機会に譲りますが、ぜひ努力をお願いします。  それでは終わります。どうもありがとうございました。
  147. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員長代理 駒谷明君。
  148. 駒谷明

    ○駒谷委員 それでは私から、金融二法のうち、農林中央金庫法の一部を改正する法律案関係いたしましてお尋ねをいたします。  まず、この法案でございますけれども、現在の我が国の社会、経済事情、大変大きな変動が今起こっておるわけでありますけれども、農業漁業を取り巻く情勢も大変変化して厳しい環境にあるわけであります。こういうふうな中で、臨時行政調査会の民間法人化の答申に基づき、かつ系統金融の頂点に立つ農林中金に対する系統ニーズの多様化、金融の自由化の進展等金融情勢の急激な変化に対応して、今回制度の見直しが行われたと思うわけでありますけれども、まず今回の改正の基本的な考え方について大臣にお伺いしたいと思います。
  149. 羽田孜

    羽田国務大臣 農林中央金庫は、農林漁業協同組合基本構成員とする協同組織体全国金融機関であります。これらの協同組合金融上の便益を供与すること、これを第一義的使命としなければならないというふうに思っております。  今回の農林中央金庫法改正につきましては、このような基本的な性格というものを維持しながら、新しい時代の流れ、そしてまた金融の自由化等、そういったものに対応するために、自立化の原則に従って民間法人化するため必要な措置を講ずるということとともに、最近の金融情勢の変化というものを踏まえながら、業務の整備、これを図っていこうというものでございます。
  150. 駒谷明

    ○駒谷委員 今回の民間法人化についてでございますけれども、特殊法人から民間法人化ということに対する意義についてであります。農林漁業者の組織する協同組合等に対し金融上の便益を図ることが第一の大きな目的である、この基本的な性格、これは維持しつつという大臣の御答弁でありますけれども、民間法人化においてどのようにこの問題が位置づけられてくるのか。内容等をいろいろと精査いたしますと、基本酌な性格の変化というのが生まれてくるのではないか、一般銀行化ということに限りなく近い状態になるのではなかろうかという心配があるのですけれども、この点について、もう一度その状況等についてお伺いしたいと思います。
  151. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 今回、臨調の答申におきまして、政府資金等に依存する体質から脱却をしまして、自立的に経営し得るように民間法人化を図るということが答申の中で提言をされました。今回の法改正は、それを踏まえまして、臨調答申の中の民間法人の要件を満たしますために、出資資格者から政府を削除するということと同時に、特殊法人に関します総務庁設置法監督権限からも適用除外をいたしまして、あわせて一般の既存の民間金融機関でございます信用金庫なり信用組合等の立法例に倣いまして、業務運営に対する規制整理あるいは合理化という措置を講ずることにいたしたわけでございまして、確かに業務機能の整備なり拡充という点におきましては、最近の所属団体のニーズあるいは国民経済のニーズに適合いたしますように充実整備を図っておりますけれども、しかし、そういった業務の実行そのものにおきまして所属団体への金融上の便益第一義とするということにつきましては、法案をごらんいただいてもわかりますように大きな変更を加えているところはございませんし、先ほど大臣がお答えを申し上げましたように、基本的な性格が変わるものではない、またそういうことを意図しあるいはまた結果としてそうなるような制度改正ではないというふうに私ども考えてこの法案を御審議願っておるところでございます。
  152. 駒谷明

    ○駒谷委員 今度の農林中央金庫法律案提出の提案理由の説明の中に、「特殊法人経営の自立化及び活性化の一環として、」民間法人化ということで、この自立化、活性化というのが今回の改正の大きな一つ要請であろうと私は思うわけであります。先ほどからも申し上げておりますように、この農林中金につきましては、その発足のときからあくまでも系統金融という問題、そうして先ほどから第一義的にはこの内容は外さない、こういう御答弁でありますけれども、農業あるいは漁業林業の振興のためには、やはり今後ますます農林中金の存在というのは重要であるわけであります。そういう観点から、あくまでもそういう面を原点に置いた上での自立、活性化ということでなくてはならないだろうと私は常に思うわけです。  今回の改正の中で、例えば活性化の問題でありますけれども、ここに農林中金の主要勘定推移、これは年度末の残高が出ているのですけれども、預金については十五兆六千三百億円余り、そして調達・運用共通計二十一兆五千億という形ですけれども、貸出金についての所属団体、これは一兆三千五百七十億、これは運用の関係でも六%という形ですね、そして、関連産業については三六%、七兆六千億、それから余裕金が十兆七千億、こういう一つの推移を見ましても、かなり運用資金がだぶついている。このだぶついている資金を、やはり農林漁業振興のための方向にどういうふうに生かしていくかという問題ではなかろうかと思うのです。これは一つ活性化の問題を踏まえてですけれども、その点についてどういうふうに今回の改正の中で生かされようとされているのか、その辺のところをお伺いしたいと思います。
  153. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 お尋ねの中で、まず現在の農林中央金庫の資金ポジションと申しますか、そういうことにつきましての数字を挙げられたわけでございますが、先ほど森本理事長からもお話がございましたように、所属団体への金融サービス、特に貸し出しというものを第一義業務の執行を行っているわけでありますけれども、近年の全体的な金融情勢もそうでございますし、また、単協なり県の連合会の段階での資金事情も非常に潤沢な状況にございますために、農林中央金庫に対しますいわば所属団体の下部からの貸し出し等の要請というものは、相対的に非常に少ないわけでございます。  さはさりながら、そういう中でも、これも先ほどお話が出ておりましたように、系統独自でも、いろいろ要綱融資あるいはまた審査体制の整備、貸付体制の整備というものを通じて、できるだけ農林水産業にこの資金の活用、還元を図っていくという努力を今後も強化をしてまいりたいというふうに考えておられるようでございますし、私どももそういう方向に沿った指導なり環境整備につきまして、私どもなりにまたお手伝いなり努力をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  今回の法改正で、本来の業務以外の部分がまたさらに拡大するのではないかという御懸念のお尋ねであったかと存じますが、確かに、今回自立化、活性化ということでいろいろ規制の緩和もいたしておりますし、貸付期間の制限だとか貸し付けの区分だとか、こういったものにつきましても、現在の金融関係法令との横並びからいたしましても、また実務上も残すことはないということで徹底をいたし、また、金銭債権の取得とか譲渡の業務の実施ができるようにするとか、あるいは公益事業法人業務代理の仕事も新しくできるようにするということをいたしておりますが、これは、やはり制度的には所属団体が求める金融サービスに十分対応し得る体制を整えるという考え方から出ておるものでございます。  今回の改正によりまして新たに付与されました業務機能の具体的な運用に当たりましては、やはり農林中央金庫が系統金融の全国機関として、本来の使命を持った専門金融機関であるという立場を踏まえてその業務が節度ある態度で運営されますように、私どもとしても十分指導をしてまいるつもりでございます。
  154. 駒谷明

    ○駒谷委員 自立ということ、民営化という問題、従来、特殊法人として監督官庁の指導を受けてという形の規制がきつかったわけでありますけれども、民営化に進むにつれてそういうことをまた厳しくするということ自体も大変難しい問題であろうと思うわけであります。  特に、業務関係規定の今回の改正の中で、債務保証範囲の拡大あるいは金銭債権取得及び譲渡を行えることにした、預金受け入れ先の拡大、それから証券業界に対する貸し付けの追加等々、やはり新たな金融事情変化に応じた金融サービス機能の充実を図られているわけであります。こういう内容からみましても、所属団体及び取引先のニーズにどんどん対応できるような機能強化になってきているのではないかと思うわけですけれども、これに対するあり方の指導等をよくしなければいけないのではないかと思うのです。民営化、そして自立という問題との接点ですね。そういうことから、農水省としては基本的にどういうふうな考え方で臨まれる考えなのか、お伺いしたいと思います。
  155. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 債務保証の範囲の拡大あるいは証券業者への貸し付けを認めることが業務の無限定な拡大なりあるいはまた農林中央金庫性格の変更につながるようなことがないかというお尋ねであろうと存じますが、債務保証の範囲を関連産業法人等にまで拡大をいたしますことは、債務保証が貸し出しと並ぶ信用供与の一種でございまして、近年の金融取引におきましては、貸出先に対する債務保証、あるいはさらには、まだ取引先になってない相手方に貸し出しに先行して債務保証をやるというようなことがございまして、貸し出しと債務保証が一体的と申しますか互換的と申しますか、そういったものとして取り扱われる状況にございます。  農林中央金庫におきましても、取引先等の債務保証に対するニーズの高まりにこたえられなければ金融取引を円滑に行えなくなっているというような実情がございますので、貸し付けをなし得る者にまで債務保証の対象を拡大するということにいたしておるわけでございます。また、証券業者への貸し付けにつきましても、証券会社を通じまして農林債権の販売を行っておるわけでございまして、それを円滑に進める観点から、証券会社が農林中央金庫から農林債権を仕入れ、販売する間の、いわば在庫資金等の当座の運転資金の借り入れの需要にこたえ得るようにということでの改正でございます。  いずれにいたしましても、これらの業務農林中央金庫の基本的な性格に照らしまして節度ある態度で運用されるようにする必要があるという点は御指摘のとおりでございまして、債務保証につきましては、これが無秩序な貸し付けの拡大につながらないように、また、証券業者に対します貸し付けは農林債券の販売力の維持に必要なものに限るようにということで指導をいたしてまいりたいというふうに考えているところでございます。
  156. 駒谷明

    ○駒谷委員 きょうは理事長がお見えでございますのでお尋ねしたいと思います。  先ほど理事長の御答弁の中で、今回の改正にあります第十一条の役員選任方法、この問題についてちょっと今お伺いしたところ、選任方法について、特に今回の改正の方向にひとつよろしく努力をしてもらいたいというお考えのように伺ったわけでございますけれども、今回の改正によりますと、総代会理事以上の役員選任を行う。従来は理事長選任されて、そして総代会同意を得て副理事長並びに理事理事長が任命するというシステムになっていたわけです。総代会を重視して、理事以上を選任という形になった今度の改正点ですが、これは私の個人的な考えでありますけれども、総代会選任するということは、理事責任体制が確立するような方向に持っていく一つのプロセスではないか、そして、執行体制をこれから充実しなければいかぬという発想が根底にあるのではないか、そういうふうなことを感ずるわけでございますけれども、その点についてお伺いしたいと思います。
  157. 森本修

    ○森本参考人 先ほども申し上げましたように、副理事長理事選任方法を改善してもらいたいという要望を農林水産系統団体統一して要請をいたしました背景は、先ほど来いろいろとお話が出ておりますように、民間法人化ということになりますと、我々は今までよりも政府の手を離れて、みずからの責任と判断において運営をしていかなければならない。しかも運営する環境は、農林漁業の情勢にいたしましてもあるいは金融環境にいたしましても非常に厳しいものがあるということになりますと、運営の心構えとしては、我々の組織基盤であるところの系統諸団体と十分意思の疎通を図りながら、系統の支援を得、また系統の理解を得、そういう形でますます緊密な関係のもとに運営をしていかなければならない。  そうなりますと、役員選任方法につきましても、理事長総代会同意を得て任命するという形よりも、総代会において選任をしていただく今までの理事長なり監事の選任方法の方が、より系統の意思が理事選任、副理事長選任というプロセスの中に反映しやすいのではないか、そういうことを通じて系統団体と農林中金運営がますます緊密化するのではないかという考え方のもとに要請をしたのでございます。
  158. 駒谷明

    ○駒谷委員 それでは次に参ります。  関連産業の法人について従来貸し付けをなされていたわけでありますが、今回、債務保証あるいは手形引き受け等の対象にまで枠の拡大という改正になるわけです。関連産業の法人というのが私はよくわからぬのですが、いろいろあると思いますけれども、これに対する産業であると認定する何か基準というものがあるのではないかと思うのですが、この問題についてお伺いをしたいと思います。  それから、法律改正の出される前の金庫法では、貸し付けの決定あるいは関連産業であるという決定、融資枠の決定、これは中金中心でやられるだろうと思うのですが、当時は特殊法人という立場ですから、監督官庁としてそういう問題のチェックというものが行われていたのではなかろうかと思うのですが、今回そういう形になるとそれはどうなるのか、それも含めてお願いします。
  159. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 関連産業法人貸し出しにつきましては、所属団体に対する貸出業務を妨げない限度内におきまして農林水産業に関する事業を営む法人に対して融資を行うということでございまして、このことによりまして農林水産業の生産に必要な資材とか農林水産物の加工、流通等の産業分野の発展を図って農林水産業の発展に資するということを目的にしているものでございます。  それで、関連産業法人範囲につきましては主務大臣認可によっているところでございますけれども、具体的な内容といたしましては、第一には、農林水産業をみずから営んでいる会社というようなものもございますし、第二には、農林水産業の振興の見地から見て重要な事業を営む法人農業機械をつくっておりますとか肥料メーカーでございますとか農林水産品の加工の事業といったものがございます。それから第三には、農林水産業の振興を図るために必要な事業を営む法人ということで、農林水産業関係でいろいろなサービスを提供する法人がございます。山林を測量するとか農薬を散布するとかといった関係法人がその例に当たろうかと思います。それから第四には、農林漁業者の生活改善に資する物資の製造、流通の事業を行う法人所属団体と恒常的な取引関係を有するもの、電気製品でございますとかその他の一般的な日常用品で、単純に申せば農協の購買事業などで恒常的な取引関係を持っているものということになろうかと思います。それから第五には、農林水産施策なり農林漁業者の組織する団体に特に関連のある事業を営んでいる法人というものでございます。  なお、この関連産業法人に対します貸し出しは、農林水産業と関連する事業に必要とする資金について貸し出しをするということにいたしておりますが、今回の法改正において特段の制度の変更を加えておりませんので、従来と同じ基準で今後とも農林中央金庫が行ってまいるということで、制度的な仕組みの変更は今回の改正によりまして特に行われることはないというふうに御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  160. 駒谷明

    ○駒谷委員 今の御答弁でよくわかりました。  そうしますと、生産資材等の製造あるいは飼料、肥料等のメーカー、これに関連する内容として、飼料の輸入関係の業者、いわゆる商社のような関係もこれは含まれると理解してよろしいですか。
  161. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 関連産業法人貸し出しの中には、農林水産物だけではございませんで、生産資材も含めまして、先ほど私が申し上げましたような範囲内での流通業者が含まれております。これは、農林漁業者が生産する農林水産物あるいはそれを原料とします加工品、それから農林漁業者が生産活動をやるために必要な生産資材の円滑な流通を図るという観点で認められているものでございます。したがいまして、生産資材、肥料とか飼料の輸入業者につきましても、農林漁業者の経営に資するものということであれば、これは関連法人に含まれ、また貸し出しの対象になるわけでございます。
  162. 駒谷明

    ○駒谷委員 この問題に関連するわけでございますが、配合飼料の関係でございます。  飼料用の穀物の輸入の関係ですけれども、いわゆる畜産物のえさ、これについて全面的に外国からの輸入に頼っておる。内容的には、商系関係が大体五〇%近く輸入、商社五〇%、あと全農、それから専門系の関連の業界、こういう形で輸入され、そして一般の畜産生産者の方に販売が行われるわけであります。     〔衛藤委員長代理退席、委員長着席〕  この問題につきましては、大臣承知のとおり、六十一年の四月八日、経済対策閣僚会議で決定されました総合経済対策の中で、円高及び原油価格低下に伴う差益還元と価格の適正化という問題、これが大きく取り上げられて、そしてその中の第七項のところにありますように、円高による輸入品価格の低下の効果が、市場メカニズムを通じて国内の販売価格に適正に反映されるよう努めるとともに、必要に応じ関係業界に対して要請を行う等の適切な対応を図る、四月八日に閣議決定されておるわけですが、この一環の中に、配合飼料については全農さんのリードで積極的に、円高効果を含めて、原料コストの低下を反映して、二回にわたって価格の引き下げが行われているわけであります。そういう点、あと農林関係の品目については、それも含めて三十七品目についてはこれから調査する、こういうことになっておるわけですが、この配合飼料の関係についてどのような状況になっておりますか、これは経済局長から、現段階での状況をお伺いしたいと思います。畜産局ですか。
  163. 大坪敏男

    ○大坪(敏)政府委員 先生御案内のように、配合飼料価格につきましては、原則的には一−六月期、それに七−十二月期と、年二回価格が設定されるというのが通例でございます。その際には、私どもは、飼料穀物の国際価格がどのような状況にあるのか、さらにまた、フレート等はどうなっているか、さらに為替相場の動向はどうかということをチェックいたしまして、そのような動きが適切に反映されるように、その結果適正な価格が形成されるように、全農あるいは飼料メーカーに対して指導を行ってまいっているところでございます。  最近の配合飼料価格について見ますと、飼料穀物の国際価格の低下に加えまして、御案内のような為替相場の円高ということから、五十九年七月から連続五回にわたりまして、総計で申し上げましてトン当たり一万四千八百円、率で申しまして一九・一%の値下げが既に行われているわけでございます。特に、昨年の十月以降の急速な円高の進行に対応した形で、昨年の十−十二月期につきましては、期中改定といたしましてトン当たり三千円の値下げが行われましたし、引き続きましてことしの一−六月期につきましてもトン当たり二千七百円の値下げが行われたわけでございます。  そこで、先生ただいま御指摘のございました総合経済対策に関連するわけでございますが、一−六月期の価格を設定した時点に比較いたしましてさらに円高の傾向が進んでいるわけでございますので、こういった円高差益を配合飼料価格に適切に反映させるためには期中改定を行うのが適当ではないかというふうに考えておりまして、そういった点で関係業界を指導してまいっているところでございますが、おおむね結論に近づきつつございまして、近々にもその方向で決着を見る見通してございます。
  164. 駒谷明

    ○駒谷委員 この問題につきましては、各地域とも、畜産農家の皆さん方、飼料、えさが下がったということで大変喜んでおられるわけであります。  ただ、この下がり方の問題でありますけれども、先ほど畜産局長は、積極的にこの問題について業界と話し合っていくということでございますが、全農さんリードで値下げが行われた六十年の七月から十二月、これは定期の穀物の価格そのものが下がったということですが、十月から十二月、この二回にわたって行われている。十月から十二月が三千円値下げになっておるわけであります。六十一年一月から六月までが二千七百円の値下げでありますが、恐らくこの基準は、十二月ごろのいわゆる円ドルのレートの基準はちょうどその時期は大体二百円ということでありますし、きのうから大変な円の急騰になっておりまして百六十円台、これ自身がそのまま安定するのかどうなのか今のところわかりませんが、少なくとも、それからもう既に三十円から三十五円も変動を来しているという状況から見て、やはり毎日毎日えさというものは生産のために必要なものでありますし、農業者にとってはこれからの畜産のコスト低減という問題からいっても、これは今えさの比重が大変大きいわけですから、この点について大臣、これはもう積極的に、六月一日には電気、ガスが行う、こういう形でありますけれども、できるだけ早く、農家の皆さん方が喜べるように、やはりきちっと適正な価格を指導していただきたい、そういうふうに思うわけでありますが、大臣の御所見を伺いたいと思います。
  165. 羽田孜

    羽田国務大臣 この円高というものは、今いい面と悪い面と、いろいろな面で取りざたされておりますけれども、やはりいい面をなるべく生かしていかなければならぬということがございますし、また、この間の畜産物価格のときにも、今の円高というものがまだすぐに織り込まれておらないというのが現状である。ということは、要するにタイムラグがあるということを申し上げておったわけですけれども、しかし、私どもといたしまして、今お話しのとおり、ちょうどこれをおよそ見越したときには二百六、七円だったと思いますが、それから後、こちらに入ってきているものも相当安くなってきておるというのが現状でありますので、こういったものをやはり的確に飼料価格なんかに反映してもらいたいということで、局長初め担当の皆さんにお願いをしております。  今局長からもお話し申し上げましたように、一つの方向が、およそもう結論に近いものがだんだん見えてきたということでありますので、私どもも、なるべく早くこれを実際の飼料価格に反映できるように努めていきたいと思っております。  ただ、先ほどからのお話がありました中で、こういうふうに価格が下がっておると、また鶏なんかの増羽の問題、養豚なんかの増頭の問題、いろいろな問題で、本当はこれで農家は恩をついていいはずなんですけれども、それが、今度安くなったことによってまた増羽しておかしくなってしまうということがありますので、それぞれの組織の皆さん方も、十分そういったことをわきまえながら、お互いにせっかくのメリットをみんなが享受できるように、そしてまた徐々に製品の価格といいますか産品の価格を下げていくということが必要でございましょうけれども、しかし、これによってまた変な事態を起こしてしまっては困るなという余計な杞憂もしておりますが、いずれにしましても、農家の皆様方に少してもいい影響が出てくるように指導してまいりたい、かように考えております。
  166. 駒谷明

    ○駒谷委員 その点、できるだけ早くひとつ積極的にお取り組みいただきたいと思います。  金庫の担当される貸し付けに関連いたしまして、畜産の問題が出てまいりましたので、畜産の特別資金の問題についてお尋ねいたしたいと思います。  特別資金については、五十七年、五十八年、五十九年とずっと行われておるわけですけれども、その内容については、その都度その都度、緊急あるいは特別の場合に実施が行われておるわけであります。先ほど来申し上げておりますように、えさの価格が安くなったということで畜産農家にとっては条件的にはいいわけですけれども、なお地域によっては畜産経営が大変厳しい状況になっておるわけであります。  こういうことで、畜産経営について政府は規模拡大ということをいろいろと奨励なされておりますけれども、規模を拡大したからといって経営が安定したかというと、必ずしもそうではない。借入金の依存度が高くなり、また、脆弱な経営の体質のために借入金が返済できないというような構造的な困難に陥っている畜産農家もおるようであります。  酪農につきましては、五十六年度から六十年度にかけて経営合理化に関する資金の貸し付けが行われて借りかえが大体終わったという状況でありますけれども、六十年度から、畜産の特に肉用牛の経営について負債整理資金の供給を行うということで経営合理化資金の創設がされて、この六十一年度で二年目になるわけでありますけれども、この状況はどのように把握なされていらっしゃいますか、お伺いいたします。
  167. 大坪敏男

    ○大坪(敏)政府委員 畜特資金の中の肉用牛経営合理化資金の実施状況についてでございますが、この制度は、最近主として借入金に依存しまして経営規模の拡大を図った肉用牛経営ないしは素畜価格が高い時期にこれを購入して肥育を行った肉用牛経営等の中には、経営が非常に困難に立ち至りまして、毎年次の償還にも困難を来すという農家も出てまいったものですから、これらの農家を対象といたしまして、毎年次の償還不能なものを長期低利の資金に借りかえさせるという制度として、六十年度から三カ年計画で貸し付けを実行する。条件でございますが、利率につきましては五%以内、特認は三・五%以内、償還期限は七年以内、特認で十年以内、うち据置期間三年以内という貸付条件で融資をするわけでございますが、三年間におきます融資枠はおおむね五百億円を予定いたしておるところでございます。  そこで、六十年度につきましては、初年度であったわけでございますが、貸付実績は約百四十五億ということになっておるわけでございます。したがいまして、残る融資枠につきましては六十一、六十二のあと残る二年間において実行する、そういう計画でいるわけでございます。
  168. 駒谷明

    ○駒谷委員 全体の件数については一千八百件ということでございますけれども、現在、畜産局長は、把握された状況によって、この資金の規模という問題について、現在の畜産の経営状況その他いろいろな問題等踏まえて、どういう見通しをお持ちでございますか。簡単で結構です。
  169. 大坪敏男

    ○大坪(敏)政府委員 最近の肉用牛経営の実情でございますが、一時的には非常に低迷いたしました子牛価格が昨年の夏以降上昇を続けておりまして、和牛について見ますと、雄雌平均して約三十万円前後、雄に至りましては時としては三十五万という水準を示しているような地域もあるわけでございまして、やや過熱ぎみの感さえあるような状況でございます。  いずれにいたしましても、子牛価格が高騰をしているということは繁殖農家にとってみれば収入がふえることになるわけでございますし、一方では先ほど申し上げましたように、配合飼料価格につきまして値下げが相次いでいるという状況の中では、経営は著しく改善をしてきているというふうに見ているわけでございます。また肥育経営につきましても、現在出荷期に当たっているものはむしろ数年前の子牛価格が安い時期に導入したものでございまして、配合飼料価格の値下げ等もございますので、これも経営的には従来になく安定しておるというふうな感じがございます。  したがいまして、私どもといたしましては、先ほど申し上げましたように、全体として五百億、本年度につきましては百四十五億、確かに貸付件数は先生御指摘のように千八百件でございますが、こういった態勢で三年間にわたって実行すれば、問題のある肉用牛経営農家についての経営改善は相当程度進むのではないかというふうに考えているところでございます。
  170. 駒谷明

    ○駒谷委員 同じく金庫の扱っている制度資金の問題で近代化資金の関係でございます。  これにつきましては農業漁業の両方あるわけでありますが、時間が迫ってまいりましたのではしょりまして、現在の近代化資金、農業漁業両方とも共通するだろうと思うのですけれども、金利の方の関係は今どういうふうな制度になっておりますか。将来それを改めていく計画等があればお伺いをいたしたいと思います。
  171. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 最近におきます公定歩合の引き下げの動向を踏まえまして、五月一日から基準金利及び末端金利の引き下げを予定いたしております。農業近代化資金について申しますと、貸出金利の一般が五・〇、それから特利で特に下げますものが四・八五という水準に改定を予定いたしております。
  172. 駒谷明

    ○駒谷委員 この問題ですけれども、源資に関する金利が補給を含めて五%になるということですね。そうしますと、今度は利子補給金はパーセントが削減されるのじゃないでしょうか。何かもとが七・五%になるということで県、国の利子補給の分を削るという考え方が起きているのじゃないかということなんですが、その点はどうなんですか。これは漁業関係も含めて共通ですか、違っておれば水産の方もお伺いしたいと思います。
  173. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 御指摘のとおり、今回の基準金利及び末端貸付金利の改定によりまして、利子補給幅は縮まることに結果としてなるわけでございます。  こういった系統の原資に国と県が利子補給を行いまして中長期の施設資金を貸し出すというのが近代化資金の制度でございますが、この基準金利の方は、農協等の融資機関の資金コストあるいはまた農協が、プロパー資金といいまして普通に自前で貸しております資金の金利水準、あるいはまた市中貸出金利の実勢等を総合的に勘案をして定めるということになっております。また、末端の貸付金利の方は、これまでの基準金利の改定に伴いまして、これは制度金融にいろいろ、財投資金を使いました制度金融それからまた系統原資に利子補給をする制度金融、あるわけでござますが、こういった政策金融の金利体系というものがございまして、特に農業関係の場合には、農業特殊性ということで、一般金利水準が上がりましたときもかなり固定的に運用しているというようなものも少なくないわけでございますが、こういった政策金利体系の中で末端の貸付金利が定められるということになってまいるわけでございます。  したがいまして、政策金利の見直しの方とそれから基準金利の見直し、その結果的な差額として利子補給幅が今回の場合は縮小することになりますけれども、これはこういった金融情勢の中では起こり得る事態であるというふうに考えております。仮にまた金利が反騰いたして上がってくるというようなことになりました場合には、また政策金融としての趣旨を踏まえまして基準金利の改定を行うなど、適正な利子補給の確保に努めることにいたしたいというふうに考えております。
  174. 駒谷明

    ○駒谷委員 時間が参りましたので要望にとどめておきますが、最初のところで触れておりませんけれども、この近代化資金の問題については、年年この融資について、十分にその融資枠に見合った貸し付けという形になっていない、ずっとそれは減少している、件数もそういう形になっておるわけであります。これは漁業においても同じような状態ですが、兵庫県の場合、これについては全国平均よりかなり進んでおる。それは、何らかの形で農業者に対して少しでも金利負担を軽減するような方向を県独自でいろいろ苦労して考えておるわけであります。  これからの農業あるいは漁業についても、ますます経営の安定という問題あるいはその他いろいろな条件から、農業漁業に携わる人たちの近代化の問題、これは重要な政府の施策であろうと思うのです。そういうことで、今回は金利の補給についての引き下げという形でありますけれども、むしろこういうような状況のときには、五%、実質的には末端では〇・一%下がるということでありますけれども、実際にはもう少し農業者がそういうふうに設備投資をする、あるいはいろいろ手を加えていくという形の方向へやりやすいような状況に持っていくことがやはり本来近代化資金のねらいではないか。確かに農業者の所得が下回っておるわけですから、それだけにやはり意欲というものの減退というものもありますけれども、そういう面もこの際十分検討し、補給の問題については検討をすべきではなかろうかと思うわけであります。これは制度金融の問題でありますから難しいことはあろうかと思いますけれども、十分にひとつこれについては検討してたたきだい、心からお願いをいたします。  以上で私の質問を終わります。
  175. 大石千八

    大石委員長 吉浦忠治君。
  176. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 農林中央金庫法の一部を改正する法律案及び農水産業協同組合貯金保険法の一部を改正する法律案について、若干お伺いをいたします。  同僚の駒谷議員の方から農林中央金庫法等につきましてはきめ細かく質疑がございましたので、重複をなるべく避けて、要点だけをお伺いをいたしたいと思います。ただし、基本的な見解だけ再確認の意味で伺っておきたいと思います。  農林中金は、既に政府出資もされておりませんし、実質的に民営化されていたと言ってもよいのではないかというふうに思うわけでありますが、今金融自由化の潮流の中で、農林中金性格であります協同組合原則によって運営されるという方式が他の金融機関との競争の中で維持していけるのかどうか、いわば一般銀行化していくのではないかという懸念もあるわけであります。農林中金はいわゆる農林漁業協同組合全国金融機関としての使命を片時も忘れてはならないと思うわけでありまして、農林中金あり方ついてこの際明確にしておきたい、こう思うわけでございます。  そこで、いわゆる農林中金の自主的な運営というものを尊重しなければならないと思います。自主性のないところに責任は生じないのではないか、こう思うわけでありまして、今回の業務の整備拡充がそうした期待にこたえられるものかどうか、まずこの点をお答えただきたい。
  177. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 今回の業務規定の見直し、改正につましては、最近の金融情勢の変化なりあるいはまた国民経済のニーズの変化というものに対応いたしました業務機能の整備充実ということをねらいとして行うものでございます。  今お話がございましたような非常に厳しい金融情勢の中で、やはり系統金融の頂点に立ちます農林中央金庫が、所属団体のニーズに十分こたえていくために必要な機能の整備を図るということを第一に考えておるわけでございますし、また、先ほど来お話が出てございますように、所属団体に対します貸し出しその他の金融サービスを行いました上で、なおかつ近年のように資金に相当余裕があるという場合には、いわば系統金融と外部経済との接点に立ちまして、全国的な系統組織から集まってきた資金のスケールメリットというものも生かしながら、これを運用してその収益をまた還元をしていく、こういうことも現実的には一つ役割機能になってまいってきているという面もございます。そういった面にも今回の改正が資する面があろうかと思っております。  いずれにいたしましても、やはり所属団体に対するそういった広い意味でのサービス第一義とするという基本性格については、これを維持しながら機能の整備をしていくというのが今回の改正の基本的な考え方でございます。
  178. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 先般当委員会で日ソ漁業関係質疑が行われましたけれども、私はその機会に時間をいただけませんでしたので、ちょうどいい機会でございますので、少しばかり漁業関係からこの問題を取り上げてみたい、こう思うわけでございます。  大臣また水産庁長官も大変御苦労なさって、このたびの日ソ漁業交渉の結果、予想しなかった厳しい十五万トンという漁獲割り当て量で終了したわけでありますけれども、関係漁業者に与える影響というものははかり知れないものがあるわけでございます。大臣と長官は、十八日から釧路入り、あるいは十九日根室、稚内というふうに、現地の漁業者代表との会談もなさっておられますけれども、一日千秋の思いで出港を待っているわけです。  大臣がソ連からお帰りになってもうかなりの期日がたちましたけれども、一向にその協定ができ上がらず、出港ができない状態でございます。本来ならば一月一日から出港ということでございますから、大変なおくれでございまして、大臣の努力は先ほど申し上げたとおりで大変感謝を申し上げますけれども、この経緯がどうなっているのか、そのネックは何なのか。出港ができるということで漁民の方々は大変待ち焦がれているのに、この期待にこたえるように大臣が努力なさっていることはわかりますが、どういうネックがあるのか、お答えをいただきたい。
  179. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  大臣間の協議が終わりましてから後、京谷代表以下がモスクワで日ソ漁業委員会において細部の詰めを行っているところでございます。  具体的に申し上げますと、大臣間協議で処理されなかった事項、すなわち、漁獲割り当て量の魚種別、水域別、漁法別の配分とか、それから許可隻数枠、それから取り締まりその他の操業規制の問題、こういう問題について協議して、その合意内容を日ソ漁業委員会の議事録とかその他いろいろな文書に取りまとめる、そういう作業を行っているところでございます。それで、議事録等の文書に署名が済めばそれで最終決着ということになるわけでございますが、もうあと一息というところまで来ておりますが、きょうじゅうに署名を了し得るかどうかということになりますと、ちょっとしかとはお答えいたしかねますが、実態的にはもうほとんど最後の段階で、署名直前という状態でございます。  それで、具体的にソ連水域に出漁するということになりますと、妥結結果を前提にいたしまして漁業種類別にソ連に出漁する予定の船を決めて、許可証をナホトカで受領するということになりますので、最終妥結してから一、二週間ぐらいは出漁までにかかるのではないかというふうに考えております。
  180. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 続いてサケ・マスの交渉です。  これは近日中に開催が見込まれるわけでしょうけれども、現在行っている漁業交渉がきょうあすじゅうに妥結すれば、その後ということになろうと思いますが、五月一日の出港を控えて、これも同じように、漁業者の気持ちを考えますと一日も早い解決が望まれるわけでありますけれども、その対処方針というものはどういうふうに水産庁は考えていらっしゃるのか。  特に、私は、アメリカ等の母川国主義は、ソ連も同じような考え方できているのじゃないか、こう心配をいたしているわけです。そういう点で、長くなればなるほどこのつなぎ資金等の点も考えなければならないし、後でまた詰めてまいりますけれども、早期妥結の見通しは持っていらっしゃるのかどうか、お答えをいただきたい。
  181. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  日ソ漁業合同委員会は、元来は本年二月三日から東京で開催ということで合意があったわけでございますが、先生がただいま言及なさいましたように、日ソ漁業委員会の協議が延びたために延び延びになっておりまして、いまだに開催されておらないという状態でございます。先般大臣が訪ソされました際にも、大臣からカメンツェフ漁業大臣に対して、できるだけ速やかに日ソ漁業合同委員会を開催し、漁期に間に合うように早く妥結をするように、ソ連側の善処方を求められたところであります。  私どもとしては、漁期が切迫をいたしておりますので、できるだけ早く開催をして、早期に妥結をするということを目途として協議に臨みたいというふうに考えております。具体的にどういうやり口でやるかというのは、これから協議に臨むところでございますから、具体的に申し上げることは差し控えさせていただきますが、関係漁業者の操業が支障のないように、最善の努力を尽くしたいと考えております。
  182. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 十五万トンというこの厳しい漁獲最の設定、これは漁業関係者も恐らく政府の方も、大変な事態に至ったということで御心配なさり、また配慮なさったと思うのですが、特にこのたびは、底刺し鋼あるいは沖底等の多い特定の漁協、これは集中的に影響があらわれるというふうに思うわけでありまして、相当規模の減船を余儀なくされるというふうに思うわけでありますが、漁協対策を万全に行っていかなければならないということ、また、漁民の方々との懇談の席上でも御意見を伺っておられるようでありますけれども、その信用事業なりあるいは経済事業等に与える影響が深刻でありますから、そこで、減船によって影響をこうむるところの漁協対策を現時点ではどのようにお考えなのかどうか、お答えをいただきたい。
  183. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えをいたします。  確かに、今回の日ソの妥結の、最終的に決着がつくわけではございませんが、大臣間で話し合われたことだけに限って見ましても、深刻な事態であることは先生御指摘のとおりでございまして、ことに、底刺し網の漁業者が集中をしております根室周辺あるいはベルキナ岬以北の禁漁と東樺太の着底トロールの禁止の影響を集中的に受けます稚内周辺、こういうところで深刻な事態であるということは、この前大臣のお供をして、現地で直接関係者の皆さんから伺ったところでございます。  私どもとしては、漁業者の救済措置につきましては、これは当然所要の措置を講じなければいけないわけでございますが、漁業者に対する救済措置が、同時に、これらの減船者を抱える漁協への悪影響が波及をしていくということを緩和する効果もあわせて持つものであるというふうに考えております。  そのほか漁協プロパーの対策ということも必要なのではないかという御指摘と存じますが、この点につきましては、ちょうど昭和六十年度から漁協の信用事業整備強化対策に着手をいたしておりますので、この中で漁協系統の自主的な努力を前提として、不振漁協の経営再建と信用事業の実施体制の整備、信用事業の運営面での改善、合理化等を図ってまいることにいたしておりますので、これが結果的には、先生の御心配になっておられるような事態に直面をしております漁協に対する対策としても効果を発揮するものと考えておる次第でございます。
  184. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 確認の意味で伺っておきたいのですが、今回の日ソ漁業交渉の結果に基づく関係漁協の対策としては、昨年、カニ、ツブ、エビ等の減船対策として三十数億円の交付金が出されておりますけれども、今回もこのような同様の措置がとられるのかどうか、お答えをいただきたい。
  185. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  減船を余儀なくされる漁業者に対しましては必要な措置を講じなければならないと考えておりますが、具体的にそれがいかなる措置であるかということにつきましては、今後減船の隻数が固まって、そういう過程を踏まえて財政当局とも十分協議をする必要がございますので、所要の対策を講ずる所存でございますというところまでで、きょうのところは御容赦をいただきたいと存じます。
  186. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 大変苦しいことはよくわかっておりますけれども、やはり政府として的確なお考えをいただきたいと思うのです。  次に、乗組員についても、今後日米漁業交渉も厳しい状況になることはわかっておりますし、その他の漁業に転換もできないという、ままならないという状態でありますから、円滑な転職を図るという点では、漁臨法や漁業再建整備特別措置法、漁時法等をフルに活用すべきであろうと思うわけであります。また、つなぎのための救済事業なり離職者手帳交付対象を広げるというような措置も必要ではないかと思うわけであります。離職者が、直接に、また玉突きのように沿岸に帰ってきた場合に、沿岸にそれを収容する雇用の場があればいいけれども、それもあるわけじゃないということで、その点、離職者等の対策をどのように考えておられるのか、その対応策をお尋ねいたしたいのです。
  187. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えをいたします。  まず、離職者につきましては、いわゆる漁臨法、国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法に基づきまして、就職指導、職業訓練等の措置を所管省庁でございます運輸省、労働省にやっていただくことになるわけでございます。この中で、先生言及なさいました離職者手帳も発給をされるわけでございますし、それから離職者手帳の発給を受けた者につきましては、就職するまでの間つなぎとして、就職促進手当でございますとか、こういうつなぎの救済措置が適用されることになるわけでございます。漁臨法を発動してこういう措置が講ぜられますよう、運輸省、労働省にお願いをしてまいることにいたしております。  それから、離職者が再就職をする先がなかなか沿岸漁業には戻ってこられないというお話でございますが、この点につきましては、確かに我が国周辺水域の漁場は極めて欄密に利用されておりますので、そういう意味漁業経営上大変難しい問題を抱えているわけでありまして、なかなかその離職者を救済するために新しく沿岸での操業機会を与えるというわけにはいかないだろうというふうに思っております。ただ、私どもといたしましては、沿岸漁場の整備開発とか栽培漁業の振興とか、こういうことを通じまして漁村における雇用機会が増大するように努めていくことは可能でありますし、また私どもとしてなすべきことであろうと存じております。  それで御参考までに、現実に今離職者がどういうところに就職をしておるかということで、一番直近の例といたしましては、おととしの暮れに行いました北転船の減船がございますが、そのときの離職者のうち、再就職なさった方の九〇%ぐらいは再度漁業に就職をしておられます。これは別にその方々を救済するために新しく許可証を出したとかそういうことはないわけでございますけれども、現実にはそれぞれ漁業に就職をしておられる方が主体でございまして、そういう意味では、やはり漁業振興にいろいろ努力していくことが結果的に就業機会を確保していくことに寄与する道であろうと考えておる次第でございます。
  188. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 部分的に細かくお尋ねして恐縮ですけれども、単に漁業者、農協のみならず、加工業者なりあるいは船の仕込みをする関係業者にも相当な影響が出るわけでありますから、ひいてはこれは市町村の財政にも大きく影響するし、特に漁業が基幹産業になっているところはより深刻な影響を受けるわけでありますから、これは自治省も相当の配慮をなされるべきだと思うわけでありますけれども、当面、農水省として、この加工業者なり船の仕込みをする関係業者に対する対策をどのようにお考えなのか、お答えをいただきたい。
  189. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  今先生御指摘の点は、私も大臣にお供をいたしまして根室とか稚内で現地の方から大変深刻なお話を承ってきたところでございます。  それで一つは、加工業者なり関連業者の皆さん方がさしあたり金繰りにお困りになっておるという問題につきましては、主力であります北海道におきましては道でつなぎ融資の措置を講じてくださっておりますので、当面は道で用意をしてくださったつなぎ融資の制度でつないでいけるものと思っておりますが、それから先の問題につきましては、水産加工業者の経営への影響を見きわめました上で、必要に応じて水産加工経営改善強化資金の融通を行ってまいりたいと思っております。  それからいま一つ、これも現地でいろいろお話を承ったところでございますが、関係の業者の皆さん方の信用力が大変低下をしておるということがございます。この点につきましては通産省にお願いをいたしまして、中小企業信用保険法の倒産関連保証の指定をしていただくようにお願いをしているとこ有でございますが、通産省でも事態の深刻さを御認識いただいて前向きに取り組んでいただいております。  それから、何と申しましても原料の大宗をなしますスケソウダラの供給が大幅に落ち込むわけでございますから、原料転換対策ということを考えなければいけないわけでございますが、この点につきましては、水産加工施設資金の活用、あるいは事業転換対策につきましては特定中小企業者事業転換対策等臨時措置法がございますので、これを活用していただくという逆が考えられると存じております。  最後に、先生の言及なさいましたこれらの影響を一番深刻に受ける地方自治体の問題でございますが、この点につきましては、私どもから自治省に、十分この点を念頭に置いて御検討いただくようお願いをしてまいりたいと思っております。
  190. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 最後に、漁業の問題の最後ですが、今問題になっております日韓問題、いわゆる今回の日ソ漁業交渉を見てまいりましても、私はもう既に本格的な二百海里時代が到来したという感じをなお一層強くしているわけですけれども、これに対応するために、抜本的にいわゆる我が国全体の漁業あり方というものをこの際考え直すべきときが来たというふうに思うわけです。  例えば、韓国漁船の問題でありますけれども、今回我が国はソ連の二百海里から完全に締め出されたと言っても過言ではないほど厳しい状態。それなのに韓国漁船には我が国二百海里内で自由に漁獲を許しているというこのアンバランスな実態。方々で不法操業して目に余るものがある。聞いてまいりますというと、日韓間には竹島の領有という厄介な問題等もあります。これを解決できなければ漁業問題は進まないということも私もよく承知をしておりますけれども、日韓漁業条約も締結して既に二十年を経過しておりますから、その当時の状況と現在は大変な変わり方をいたしておりますし、現に、韓国に対しても我が国の主権を二百海里に広げて我が国の漁業の振興を考えるべきではないかという意見もある。罰則等においてもほかの漁船と韓国漁船の待遇が違うというふうな考え方もある。全漁連の方からかなり強硬な、国会に対するあるいは各党に対する要望等も強く出ております。長官も御存じのとおりでございます。  今後、日韓漁業条約の見直しを検討すべきであるというふうに私は考えますけれども、水産庁としてどういうふうにお考えなのか、お答えをいただきたい。
  191. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  私どもも今度北海道、現地へお邪魔いたしまして現地の漁業関係者の皆さん方からただいま先生のおっしゃったとおりのことを大変強烈にお話を承って帰ってきたところでございます。また同時に、先般来長崎県とか熊本県とか西の方の漁業関係者も、ただいま先生言及されました韓国漁船の日本周辺水域での操業実態について大変憤激をしておられました。こもごも私どものところへお越しになってその実情を訴えていかれたところでございます。  私どもとしては、こういう韓国漁船の操業実態が改められずにそのまま続くようなことであるといたしますれば、これは現在の日韓関係漁業の秩序を律しておる枠組みというものを震憾させるような重大事であるというふうに認識をしております。それから、北海道周辺の水域におきます漁業実態というものも、先生ただいま御指摘のようにさま変わりの事態になっておるということも私どももそのとおりと認識をいたしております。  したがいまして、先生の提起されました問題は、実は日韓間の現存の枠組みをどうするか、あるいは水産に限りませず、もっと広い日韓関係に及ぼす影響がどうかというようなこともあわせて考えなければいけない問題ではございますが、私どもとしても十分検討すべき問題であるというふうに考えております。
  192. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 時間がなくなってまいりましたので、金融問題に入りたいと思います。  現在、公定歩合が三回連続して下がりまして、本格的な低金利時代が到来したわけであります。しかしながら、現在、漁業者はたび重なる漁業不振によりまして、船をつくる意欲を持っていてもそのとおりにはいかないというのが現状でございまして、この際何らかの誘導をしなければいけないのじゃないかというふうに思うわけであります。今後の漁業経営安定のためにもその点が必要でありまして、今日、基準金利の低下に連動する形で従来のまま政府の補給金を近代化資金に投入して末端金利を引き下げるべきで、いわゆる利子補給金の一部を削減することは政策的にも好ましいものかどうか非常に疑問であるわけでありまして、この点どういう見解をお持ちなのか。  確認のためにお尋ねしておきたいのですが、今後、金利が上げ基調となったときに、今回一部削減した補給金をもとに戻すのかどうか、こういう点も含めてお答えをいただきたい。
  193. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 漁業近代化資金、農業近代化資金ともに、基準金利は、融資機関の資金コストなり、それからいわゆるプロパー資金の金利水準、それから市中貸出金利の実勢等を総合的に勘案して定めることにいたしております。  また他方、末端貸付金利についてでございますが、これは政策金利体系というものが一つございまして、制度金融には、財政資金を貸し出します公庫資金のような制度融資と系統原資を使いまして利子補給いたします近代化資金のようなものと両方ございますが、この中に一定のバランスを持った体系というものがございます。今回の例えば住宅金融公庫の金利の引き下げを見ましても、従来比較的高かったものの引き下げ率が比較的大きく、一番少ないところは〇・一五しか下がらないというふうなことになっておりますし、それから、今や超低金利時代を迎えつつありますけれども、公定歩合とそのまま連動しておりました預貯金金利につきましても、下げ幅に差がついてくるというふうなことが一つございます。  特に、農林漁業関係の政策金融につきましては、金利が高騰いたしましたときもなるべく固定的に運用するというようなことをやっておるものが多いという事情もございまして、末端の貸付金利がやはり政策金利体系の中での一種の整合性というようなものにどうしても配慮せざるを得ないということがありまして、結果的に末端貸付金利と基準金利との間の差が縮まるという結果になることは御指摘のとおりでございます。  利子補給幅というものがまず決まってというよりは、考え方としては政策金利の水準があり基準金利があって、その差を埋めるという考え方が理屈としてはあるわけでございまして、今日のような金融情勢のもとでは利子補給幅が従来よりも縮小するという事態もやはり起こり得るというふうに考えております。  今お尋ねの後段にございましたように、仮に金利が反騰いたします場合には、政策金融としての趣旨を踏まえまして基準金利の改定を改めて行うなど、適正な利子補給の確保に努めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。  なお現在、近代化資金につきましては基準金利が二回にわたって引き下げられまして八・五が七・五まで下がっておりますが、またその後に第三次の公定歩合の引き下げという問題が起きております。こういった利子補給仕組みをとっております制度金融は、最近のように余りに頻繁に金利の変動が行われますと、制度運営自身が非常に不安定になりまして困るわけでございます。基準金利につきましては、最近の三次の引き下げということがございますけれども、短期間の間に余りたびたび基準金利の変動はさせたくないなという気持ちで今考えております。
  194. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 今回の制度改正の発端になったのは金融制度調査会の答申によるわけですが、貯金保険制度特殊性等に配慮しつつ、基本的には預金保険制度と同様の方向で検討を行うことが望まれるとしておるわけです。四十六年に預金保険法が制定されたときに農漁協等が対象にならなかったのはそれなりの理由があるわけでありますが、今後はむしろその特殊性をいかに反映していくかという点を考えなければいけないと思うわけであります。  農協、漁協も一つの保険制度に同居はしておりますが、例えば仮払いの例をとりますと、漁業の場合は、私の地元の富津市等ではノリ養殖をしておりますが、これは年一回の種ノリの時期を外しますと一年間待たなければならないわけです。他に転作はできないわけであります。農業の場合は比較的柔軟に対応できると思いますけれども、貯金保険制度の運用に当たっては農業なり漁業特殊性を十分配慮すべきであるというふうに考えるわけでありますが、この点どのようにお考えなのか、お答えをいただきたい。
  195. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 いわゆる一般の預金保険機構と農水産業協同組合は別建ての貯蓄保険制度になっておりますけれども、これは信用事業だけではございませんで、ほかに経済事業等を行っているという特殊性と、系統組織というものがきちんと存在しているといった特殊性に基づいて独立の制度をつくっておるわけでございます。  ただ、農漁協をまた区分すべきかどうかという点でございますけれども、やはりこういった保険制度というものは本来できるだけ大きな集団をとらえてやった方が制度としては安定をするわけでございますし、農漁協の両系統を系統金融として位置づけまして、貯金者保護という観点から一定限度までの安全性を確保することによって信用秩序の維持を図る、そういった制度の本来の考え方なり建前から申しますと、農協と漁協とを同一に取り扱っても特段の支障はないのではないかというふうに私ども考えておるわけでございます。  御質問の仮払金の問題でございますが。今度の制度改正でこの仮払金の制度を導入させていただきたいというふうに御提案申し上げておるわけでございますが、これは、最近給与振り込みなどが非常にふえまして、給与が全部金融機関に振り込みになる、そこのところが貯払い停止というようなことになると当座の生活費にも困るというような事態があり得るという最近の実態変化に着目をいたしまして、日常生活に支障を来さないような最低限のものを正規の保険金の支払いの手続を待たずに渡せるようにということで、おおむね一カ月当たりのぎりぎりの生活費、現在は大体二十万円程度というふうに考えておりますが、これをとりあえず仮払いするということでございます。  貯金者の方々の中で事業をやっておられる方の事業資金のための仮払いということになりますと、個々人の職業なり事業規模に着目しなければいけませんので、こういう画一的な保険の仕組みにはなかなかなじみにくいというふうに考えるわけでございます。確かに御指摘のような問題は起き得ないわけではございませんけれども、そういった場合にはやはり信漁連等の金融機関によります融資その他の対応でやっていかざるを得ないのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  196. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 保険料率の問題で伺っておきたいのですけれども、将来は預金保険制度と同率でという考え方があるというふうに聞いております。  農漁協の場合は三段階制で、いわゆる農漁協と、それから県信連、中金といった系統融資を行っているわけですが、事故が生じた場合は三段階全体でカバーして、より上部機関が支えるのが実態でありまして、そうしなければ系統信用事業全体に信用がなくなってしまうという特性があるわけであります。その点、銀行の融資と異なるわけですけれども、三段階で支えることによって危険率も低い、こう見なければならないと思うのです。責任準備金の充実が必要であるわけでありますが、預金保険制度と保険料率を将来一致させる必要はないというふうに考えるが、この見解をどういうふうに持っていらっしゃるか、お答えをいただきたい。
  197. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 この問題につきましては、理論上の問題と実態上の問題とあろうかと思いますけれども、一般金融機関の預金保険と協同組合系統の貯金保険制度と、制度といたしましてはいずれもほぼ同じような金融商品なり預金を扱っている金融機関に関する信用秩序維持の役割を果たす制度、そして保険限度額につきましても現在三百万、これは法律事項ではございませんけれども、これを一千万まで今度引き上げたいというふうに考えておるわけでございますが、この辺も足並みをそろえておりますし、資金援助業務の内容も、若干の相違がございますけれども基本的には同様なものになっておりますので、考え方としてはやはり一致をさせてしかるべきものではないかというふうに私ども考えております。  実際に保険料率を定めるに当たりましては、対象金融機関経営に及ぼす影響なり、また激変緩和の必要性もございます。協同組合の中にも財務状況はいろいろさまざまでございますので、財務状況の比較的豊かなところに一律に合わせてしまうということになりますと、なかなかそれについてこれないところも出てくるということもございまして、そういったことも勘案をしながら決めてまいりたいと思うわけでございます。一般の預金保険に比べまして従来十万分の二だけこちらは低かったわけでございますが、一般の預金保険につきましては六十一年の四月から十万分の十二に実は引き上げられております。現在の系統の方の貯金保険料率につきましては、今後三回に分けて六十三年ぐらいまでかかって十万分の十二に段階的に変更をしていくというような考え方につきまして、現在関係団体において検討がなされておるというふうに私ども承知をいたしております。
  198. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 資金援助制度対象に合併があるわけですが、漁協の合併は、農協の合併と異なりまして、漁業権の問題等で非常に困難になっておるわけであります。今回、知事のあっせんというものがあるわけですが、一度あっせんがあれば実質は強制となってしまうのではないかという危惧も一方にはあるわけであります。漁協の特殊性からして、信用事業の側面からだけで合併を云々するのは本末転倒だと思うわけでありまして、漁業権の管理というより本質的な面から考えなければならないと思いますし、何よりも組合員の意志を十二分に尊重する、そして運用を行うべきであると考えますけれども、この点、どういうふうにお考えなのか、お答えをいただきたい。
  199. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えをいたします。  このあっせんの制度は、経営困難な漁協の貯金者を救済するために、適期における合併を漁協行政の担当者である知事がみずから推進することが望ましいと判断される場合に、そういうこともあり得ようかということで、自主的合併を補完するものとして設けられているものでございます。それで、あっせん自体は元来強制力のないものでございます。それから、知事といたしましては、合併をあっせんされる以上は、合併の実現可能性、特に先生今言及なさいました漁協の場合には漁業権の調整というのは重要な問題でございますから、知事はそういうことも含めて、できることかできないことか十分御判断の上であっせんをするとすればあっせんをしていただく、そういうことになるものと認識をいたしております。  それから、あっせんに基づいて合併が行われる場合でも合併は合併でございますから、やはり一般の合併と同様の手続が踏まれるわけでございまして、その過程で組合員の意思が重要な要素になることは当然でございまして、その点も知事は十分御勘案になりながらあっせんをしてくださるものと期待をいたしております。
  200. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 漁協の場合、相互援助制度に加入していない漁協が約二二%あると聞いております。そうした漁協には、連合会が援助の手を差し伸べても、その連合会貯金保険機構が資金援助を行わないというわけで、実際にはそうした漁協には漁連による資金援助の道は難しいことになるわけであります。しかし、こうした漁協について何らかの手を打たなければ、我が国の漁業の振興を図ることはできないのじゃないかと心配をいたします。  全国の相互援助制度は系統の独自につくった制度でありますから、その自主性を尊重してよりよい発展をしていただきたいと考えるわけでありますが、この点に関して、別途の援助取り決めをさせるとか、何らか法の趣旨が生かせる方向に持っていってもらいたいわけですが、その行政指導をどういうようになさろうとしているのか、この点、お答えをいただきたい。
  201. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  ただいま先生御指摘のように、相援制度というのは元来系統の自主的な制度でございますから、役所の立ち入り方もなかなか難しいところがあるわけでございますが、私どもといたしましては、まず第一義的には相援制度で未加入組合をできるだけカバーしてもらいたいと思っておりますので、相援制度の加入要件の緩和を図るというのが一つの方向で、ぜひ系統で御検討をいただきたいと考えておるところであります。  ただ、そうは申しましても相援制度に参加しない漁協というものが現に存在するわけでありますし、簡単になくなるものでもないと思います。そこで、今回の法律改正の中には全国相援制度に準ずる取り決めについて含めて手当てがしてございますので、その取り決めについての要件の具体化を待って漁協系統と協議を進めまして、この準相援制度の適用によって現在の相援制度に参加しない漁協にも機構による資金援助が極力及ぶように努めてまいりたいと考えている次第でございます。
  202. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 時間になりましたので、最後に一点だけ。  漁協経営の安定のために今の金融面での下支えが果たした役割は大きいものがございます。今後は、この保証のあり方をもっと考えなければならないし、また、借金づけになってはならないと思いますが、この方向としてはもう少し借りやすい状況をつくる、そして漁業活性化していくということも考えていくべきだと思うわけであります。  円高によりまして燃油等も八万円から五万円というふうに大きく下がってはおりますけれども、魚価は一向に上がらないし、また、漁獲物もそれほど多くないということで、依然漁業者の経営は非常に苦しいわけであります。大臣も長官も、漁民の方々から、どうすればいいんだ、なぜなんだというふうな声で叱咤激励を受けられたようでありますけれども、これがいわゆる本音でありまして、本格的な二百海里時代が到来して、我が国の漁業あり方、全体構想を考えなければいかぬときが来たのではないか、私はこう訴えたいわけであります。遠洋あるいは沿岸、需給、輸入、流通等々を考え直す時期が来ているのじゃないかと思うわけでありまして、この点、最後にお答えをいただいて、終わりにいたします。
  203. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  二百海里時代が到来いたしましてから既に一定の年数が経過しておるわけでございますが、昨今の国際漁業情勢を見ますと、二百海里時代の中でもさらに一つの画期を画す新しい段階に入りつつあるように私どもも認識をいたしております。  そういう客観情勢の中で、やはり我が国の周辺水域の漁業振興に重点を置いた今後の中長期的な水産政策のあり方ということを展望して、見直していくべき段階に来ておるというふうに私どもは認識をいたしておりまして、ただいまの先生の御指摘、まことに当を得た、私どもも日ごろから感じておったことでございます。そういうことを念頭に置いて、中長期的な見直しの仕事に取りかかってまいりたいと思っておるところでございます。
  204. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 終わります。ありがとうございました。
  205. 大石千八

  206. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 金融二法案の審議に当たり、まず両法案の提案の背景、趣旨について伺うわけであります。  農林中央金庫法は、臨調の最終答申を受けて民間法人化するため所要の改正案が提出されたのであり、これには、金融情勢の変化に対応したサービス提供が行い得るように制度面の手当ても考慮されているものだと説明されておりますけれども、農林中央金庫業務概要を見たとき、金庫総額二十一兆五千億円余の調達のうち、十二兆四千億円以上も有価証券や株式等に運用している体質で、金融自由化の流れの中、果たして真に農林漁業振興を重点に、今後法改正の本旨に沿って確実に改善、発展できるものかどうか。これは当事者の今後の取り組み姿勢にも関係しますので、森本理事長にこのことへの所信を伺いますが、その前に、背景、趣旨の概要、また今後の指導に対する所感もあわせて、一応政府の方からお願いします。
  207. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 今回の二法の改正の背景なり趣旨でございますが、農林中央金庫は、大正十二年に産業組合中央金庫として設立されて以来、もう長い歴史を持っておるわけでございます。昭和三十四年に政府出資がなくなり、三十六年に役員の自主的な選任制がとられるというようなことで、次第に特殊法人的な色彩をなくしますと同時に、業務面でもいろいろな整備が行われてきたところでございます。  このような状況を踏まえて、臨調の最終答申におきまして、「自立化の原則に従い民間法人化する。」ということが盛り込まれまして、これを受けて所要の法律案を今国会に出す運びになったわけでございますが、あわせまして、近年の金融自由化の進展等を背景にいたしました情勢変化に対応いたしまして、農林中金が十分な金融サービスの提供を行い得るように制度面の手当ても行おうということでございまして、農林中央金庫の基本的な性格を維持しながら、業務規定の整備を図ってまいるというのが今度の法案の趣旨でございます。  それから、貯金保険法の一部改正法案につきましては、これは昭和四十八年に発足いたしました制度でございますけれども、やはり、今後の金融自由化の進展に伴いまして金融機関経営環境が一層厳しくなるということで、昨年の六月でございますが、金融制度調査会から「金融自由化の進展とその環境整備」という答申が提出をされまして、その中で、今後、信用秩序維持のために預金保険制度あるいは貯金保険制度がさらに一層重大な役割を果たすものと期待をされるので、その制度の拡充整備を図るべきだという指摘がございました。一般金融機関につきましての預金保険制度改正とあわせまして、基本的には同様の方向で制度の拡充整備を図りたいというのが提案の背景なり趣旨でございます。  この両法案とも、そういう意味におきまして最近におきます金融情勢の変化に対応してまいるという共通の性格を持っておりますこと、それからまた、お尋ねの中で農林中央金庫の現在の資金運用の状況などについてのお話もございましたけれども、農林中央金庫の基本的な性格につきましては今度の法改正によって制度的な変更をこうむるわけではございませんので、その点は、私どもも今後農林中央金庫の指導監督をする立場におきましても十分踏まえて、適切に対応をしてまいるつもりでございます。
  208. 森本修

    ○森本参考人 ただいま後藤経済局長から今回の法律改正の趣旨につきまして御説明がございました。一口に言いますと、農林中央金庫民間法人化に伴う分、それから、最近のいろいろな情勢の変化に対応いたしますための機能の整備、こういうことになっておろうかと思います。  機能の整備の分は、私どもの所属団体あるいは系統諸団体のニーズの多様化、あるいは新しいニーズに適応する、対応するための改正という側面が色濃くなっております。申し上げるまでもなく、所属団体あるいは系統諸団体は、農林漁業の発展あるいは農林漁業者の経済的な地位の向上のためにいろいろの活動をしておる諸団体でございます。そういう諸団体の金融的なニーズにこたえていくということは、間接的には農林漁業の発展なり農林漁家の経済の向上に役立つというふうに私どもは思っております。  また、一部は、御指摘がございましたように、所属団体以外の、私どもの広い意味の取引の相手方に対するニーズヘの対応という側面がございます。そういう方々も、大部分は広い意味農林漁業に関連のある方々でございまして、そういう方方のニーズにこたえることが、また回り回って農林漁業の発展に資するといったような側面もございますし、余裕金の運用といったような色彩でございますので、余裕金をそういう方々に安定的に効率的に運用していくことによって系統団体からの預金の運用に資する、また、そういうものを通じて利益の系統団体に対する還元にも役立つ、そういうことで、私どもの使命を十分果たしていく上で御配慮をいただいた改正案になっておるというふうに思っております。また、そういう改正の趣旨を体して、私ども運営に当たってまいりたいと思っております。
  209. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 農林中央金庫は、今回の法改正により民間法人として自主的業務運営体制を整えることとされています。しかしながら、根拠法規を変えず、依然として特別の法律に基づき設立された法人であり、その法人としての性格をいかに考えればよいのか。私としては、系統三段階の頂点にあるという農林中央金庫の実態を考えれば、この際、農協法の全国連として位置づけるべきではなかったかと考えるわけでございますが、この点に関する見解をお聞きする次第でございます。  さらに、大臣には、自由化の進展の中で、今後農林漁業系統金融機関は、調達コストの増高、運用利回りの低下等による利ざやの縮小など、大きな影響を受けるものと考えられます。さらに、最近、若い世代を中心にいわゆる農協離れが進んでいるのも散見できます。かかる状況下で、系統全体として金融自由化にいかに取り組み、いかに対処すべきかについて、政府の見解を伺いたいと思います。
  210. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 まず、法改正後の農林中央金庫はいかなる性格法人になるのかという点でございますが、今回の改正によりまして、特殊法人としての性格から脱却をいたしまして、協同組合的な原則により運営をされます特別の法律に基づいて設立をされた法人という性格を持つものとして扱われるものと考えております。  それから第二点目の、農林中央金庫を農協法上の全国農協連として位置づけするべきではないかという点のお尋ねでございますけれども、これは、農林中央金庫が農協、農協連、漁協、それから水産協同組合連合会、森林組合、土地改良区等、農林水にわたります広範な団体を所属団体としておりまして、これらへの金融上の便益の供与を固有業務としておるものでございまして、農業以外の分野もカバーをしておりますし、また、業務面におきましても、農林債券の発行という権限を与えられている、あるいはまた農林中央金庫につきましては、いわゆる員外利用の制限というような、協同組合法制ではほとんど必ずついておりますような制約がないといういろいろな点がございまして、農協法の範囲の中にこれをおさめるということはなかなか難しい。農協連合会、農協法の目的を超えるものでございますので、農協法に規定をすることは困難であるというふうに私ども考えまして、ただいま御提出を申し上げておりますような形で制度改正を御提案申し上げておるわけでございます。  それから、今後の金融情勢が厳しさを増します中で、系統金融の中に若い人が農協を離れていくというような傾向も見えるということを含めてのお尋ねがございましたが、今後自由化の進展の中でシェア競争が非常に厳しくなってくる、あるいは利ざやが縮小してくるのではないかというような状況の中で、やはり地域に根をおろした協同組合としての組織基盤の強化ということは私ども非常に大事なことだと思っております。よく農協の職員が組合員のお宅を訪ねると、若夫婦が出てきて、農協の者ですと言うと、おじいちゃん農協の人が来たよと言って引っ込んでしまう、こういうようなことでは農協がこれから厳しい環境の中で生き残っていくことはなかなか難しいわけでございます。  最近そういう点につきましても系統でいろいろ検討が行われまして、青年部の活動の充実その他いろいろな創意工夫も含めて努力が行われておりますけれども、私どもも、若い世代も含めた農業協同組合の基盤の確立ということにつきましては、行政としてもこれから十分気をつけていかなければいけない大きな問題であるというふうに認識をいたしております。
  211. 羽田孜

    羽田国務大臣 今先生からお尋ねのございました金融自由化に対処するための系統金融あり方についてということでありますけれども、金利の自由化と金融業務の自由化、この二面で進んでおるというふうに考えております。こういったものに対して私どもとしても対応できるようにということで今度の法案も御審議をいただいておるところであります。  そして、今局長の方からもお話ししましたけれども、ともかく若い人たちの農協離れといいますかそういうものが起こってくるというのは、若い人たちの多様化するニーズというものにこたえていこうとする、しかし大きな組織である農協としては急激に変化をすることがなかなかできにくい一面もあるというふうに思います。そういう面で今後そういった若い人たちを引き込んでいく、そしてそういった人たちを本当の農業者として、中核農家として育てていくという視点に重きを置きながら、営農指導員の皆さん方なんかとも十分タイアップしながら金融というものも対応していかなければいけない、そんな時代に来ているのじゃないかなというふうに思います。
  212. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 いずれにしても、金融自由化の流れの中で農協も組織にあぐらをかいているわけにはいかぬわけでございますので、やはりその競争への対応は指導していかなければならぬと思っているわけでございます。  しかし、今回の業務規定の改正はこのような意味で広範なものにはなっておりますが、子細に見れば農林水産業の発展や所属団体の発展を図るためのものが見当たらないような気がいたします。このことは農林中央金庫性格上、極めて問題があると考えますが、この点について政府はどのような見解を持っているのか。
  213. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 先ほど森本理事長からもお話がございましたように、農林中央金庫は、系統団体から預っております預金に対しまして、一般金融機関を上回る預金金利のほかに、系統の頂点に立ちまして外部経済との接点の中で資金を運用してその収益を奨励金という形で還元をいたしましたり特別配当等による還元も行っております。それから、貸し付けにつきましても優遇金利を適用した貸し付けを行いましたり、債務保証あるいは為替、保護預かり等々の金融サービスの提供を行っておりますし、農林水産関係制度資金につきましても、いろいろな制度資金につきましての取り扱いをやっております。  今回の改正におきましても、所属団体の事業活動の円滑化のための業務関係の規定の整備ということをやっているわけでございまして、制度的に所属団体が求めております金融サービスに十分対応し得る体制を整えるためのものであるというふうに私ども理解をいたしておるところでございます。  今後とも、農林中央金庫が行っております特別の低利資金供給などにつきましては、必要な資金の供給につきまして十分指導もしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  214. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 今回の業務規定の改正の中には、預金受け入れ範囲の拡大、債務保証の対象の拡大等農林漁業専門金融機関としての分野を超えているのではないかと考えられる点があります。農林漁業組織への金融上の便益の供与という農林中央金庫の使命にかんがみ、他部門を対象とする過度の業務運営は慎むべきものだと考えておりますので、改正後の農林中央金庫業務運営には政府の万全の指導をまず要望しておきます。  次に、農水産業協同組合貯金保険法関係についてお伺いしますが、今回の貯金保険制度は、従来銀行等を対象とする預金保険制度と同内容のものとして設けられているわけでありますが、今回の改正に当たってどのような点で、農漁協の特殊性に配慮しているのか、この点をまずお伺いします。
  215. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 先ほどのお答えの中でちょっと触れましたように、昨年六月の金融制度調査会の答申におきまして、一般金融機関につきましての預金保険制度の拡充整備の答申が行われているわけでございますが、その際、この農水産業系統信用事業の貯金保険制度についても「その特殊性等に配慮しつつ、基本的には同様の方向で検討を行うことが望まれる。」こういうことがうたわれております。  ではどういう点について特殊性に配慮したのかという点でございますが、一番大きな点は、相互援助制度を通じて資金援助をやります場合、この援助対象といたしまして、合併だけではございませんで、信用事業再建措置、平たい言葉で申せば合併をしないでそのまま単独再建をすることを可能にいたしておるという点でございます。農漁協につきましては、経済事業等をやっておりますので、現実には隣接の組合以外合併を見込むということはなかなか難しゅうございますし、制度的に、協同組合でございますので他の業態の金融機関との合併の道がないという農漁協の特殊性から、このように措置をいたしたわけでございます。  それから第二は、適格性の認定を行います場合に、一般金融機関の場合には主務大臣大蔵大臣でございますが、農漁協の場合には都道府県知事がこの認定を行うということにいたしております。信用秩序の維持という観点からは全国普遍的な面があることは当然でございますけれども、農漁協の規模なり性格あるいは協同組合法上の通常の監査、指導の権限というようなことを考慮いたしまして、実態把握の面も含めまして、都道府県知事が行うことを一番適当ではないかと考えてこのようにいたしたわけでございます。この二点が一番大きな点だろうと思っております。
  216. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 次に大臣に、今回の法改正中心は資金援助業務の創設にあると考えられますが、現行の保険業務に加えて資金援助業務を行うこととした理由は何か。  また政府に、資金援助業務の財源も保険料として納入されたものである点は同じであり、慎重な運用に努めるべきものと考えます。安易に資金援助が発動されることがないようどのような運営方針をとるつもりか。また、資金援助の発動金額の見通しはどうか、一定の歯どめというものがあるのかないのか。一応この三点お聞きいたします。
  217. 羽田孜

    羽田国務大臣 最近における金融自由化の進展に伴いまして、金融機関経営は、利ざやの圧縮により苦しいものになるとともに、優良貸出先の減少などによりましてリスクが増大する傾向にあると考えられます。このため、信用事業を営んでいる農漁協につきましてもその経営が困難なものとなりまして、貯払い停止のおそれが生ずる可能性が高いものとなっているというふうに考えております。  貯金保険機構が設立された四十八年当時におきましては、いまだ金融の自由化は進展しておらず、農漁協の貯払い停止が生ずる可能性というのは非常に低いものであったために、直接的に貯金者などを救済する現行の保険事務のみでも信用秩序維持の政策的要請には十分沿うものであったというふうに考えます。しかし、最近における金融機関を取り巻きます状況を踏まえてみますときには、農漁協への貯払いの停止という事態がより現実的なものとして考えられる一方、貯金保険機構の有しております財源、今後の保険料率の引き上げの可能性などを考慮すれば、保険事故が発生した場合において保険金を支払う現行の仕組みでは信用秩序の維持が不十分になっていくと考えられるところであります。また他方では、個々の農漁協としても、金融自由化に対応し、経営の効率化を推進する方策として業務規模の拡大が志向されているため、この志向をも信用不安の生じている農漁協の救済に活用し得る環境になったところだというふうに考えます。  このような観点から、今回貯金保険法改正して、従来の保険制度を補完するものとして、既存の他の組合による合併等という民間業界としての自助努力を活用することによりまして、より効果的でかつ社会経済的に低コストで信用秩序の維持を図るために、貯金保険機構の新たな業務として資金援助業務を設けることといたしておるところであります。
  218. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 資金援助が安易に発動されないように十分留意すべきではないかというお尋ねでございます。  資金援助につきましては、そもそも対象になります吸収合併等はなかなか容易に行われるものではございませんし、また、資金援助手続なり機構の基金基盤の充実の必要性の面からも極めて慎重な取り扱いが当然行われることになると考えられますので、援助が非常に安易に発動されるというようなおそれはないものと私ども考えております。  まず、この資金援助は直接経営困難な組合に対して行われるものではございませんで、それを吸収合併いたします組合または相互援助制度に係る信用事業再建措置に対するものに限られております。吸収合併の場合にいたしましても、あるいは相互援助制度の適用を受けるに当たりましても、当然その経営困難に陥りました組合の役員というものは組合の総会等で経営責任を厳しく問われるわけでございますし、安易に機構の資金援助に頼ろうというようなことは現実には考えにくいのではないかというふうに思います。  また、仕組みの上から申しましても、資金援助手続を通じましての歯どめといたしまして、援助の申し込みに先立ちまして、組合の経営困難性あるいは資金援助が不可欠であるということ等につきまして都道府県知事の適格性の認定を受けなければいけないということになっておりますし、その際またあらかじめ主務大臣も承認をするというような手続が介在をいたしておりますので、手続面でも慎重な扱いがなされるというふうに考えておるところでございます。
  219. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 時間が来たので終わります。
  220. 大石千八

    大石委員長 次回は、来る五月七日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時三十八分散会