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1986-04-16 第104回国会 衆議院 農林水産委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年四月十六日(水曜日)     午前十時五分開議 出席委員   委員長 大石 千八君    理事 衛藤征士郎君 理事 島村 宜伸君    理事 玉沢徳一郎君 理事 串原 義直君    理事 田中 恒利君 理事 武田 一夫君    理事 神田  厚君       上草 義輝君    鍵田忠三郎君       片岡 清一君    菊池福治郎君       鈴木 宗男君    田邉 國男君       月原 茂皓君    野呂田芳成君       堀之内久男君    山岡 謙蔵君       上西 和郎君    島田 琢郎君       竹内  猛君    辻  一彦君       日野 市朗君    細谷 昭雄君       水谷  弘君    吉浦 忠治君       稲富 稜人君    菅原喜重郎君       津川 武一君    中林 佳子君  出席国務大臣         農林水産大臣  羽田  孜君  出席政府委員         内閣法制局第四         部長      関   守君         農林水産政務次         官       保利 耕輔君         農林水産大臣官         房長      田中 宏尚君         農林水産省農蚕         園芸局長    関谷 俊作君         農林水産省畜産         局長      大坪 敏男君         農林水産技術会         議事務局長   櫛渕 欽也君         農林水産技術会         議事務局研究総         務官      土屋 國夫君         食糧庁長官   石川  弘君         林野庁長官   田中 恒寿君  委員外出席者         人事院事務総局         給与局給与第三         課長      武政 和夫君         公正取引委員会         事務局審査部第         一審査長    地頭所五男君         科学技術庁計画         局ライフサイエ         ンス企画課長  高橋  透君         科学技術庁振興         局普及啓発課長 田中 正則君         国土庁大都市圏         整備局筑波研究         学園都市建設推         進室長     谷口 哲彦君         大蔵省主計局主         計官      武藤 敏郎君         文部省初等中等         教育局中学校課         長       林田 英樹君         建設省建設経済         局宅地開発課長 村瀬 興一君         建設省建設経済         局民間宅地指導         室長      林  桂一君         建設省都市局都         市計画課長   伴   襄君         農林水産委員会         調査室長    羽多  實君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  生物系特定産業技術研究推進機構法案内閣提  出第二七号)      ――――◇―――――
  2. 大石千八

    大石委員長 これより会議を開きます。  内閣提出生物系特定産業技術研究推進機構法案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。竹内猛君。
  3. 竹内猛

    竹内(猛)委員 生物系特定産業技術研究推進機構法案について、若干の質問をしたいと思います。  まず最初に、この機構推進運営関係して安全性の問題をどう確立するか、こういう問題について質問をしますが、例えば私の住んでいる近くに科学技術庁厚生省関係をしている理化学研究所設置をされました。そのときに地域住民は、この理化学研究所筑波P4と言われておりますが、これに対して非常に心配をして反対をし、その公開を迫っております。そういう中で、現在町の方では安全条例というものをつくっていろいろ説得をしておりますが、いまだに問題は解明をしていない、そういうような段階です。今度の機構におけるところのハイテクの問題は必ずしも筑波の理研のライフサイエンス、P4とは違うと思いますけれども、特に五十四年八月、内閣総理大臣組換えDNA実験指針が決められておりますが、どのように安全の確保という問題について考えられているか、この問題についてまず最初にお伺いします。
  4. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 お答え申し上げます。  バイオテクノロジー開発に当たりましては、その適切な開発、特に先生今御指摘安全性確保の問題に十分注意する必要があると考えております。特にバイオテクノロジー技術の中で組みかえDNA実験でございますけれども、これにつきましては、画期的な技術でありますだけに万が一のことも十分配慮いたしまして安全性確保に努める必要があると考えております。  こういった考え方は国際的にも受け入れられているところでございまして、このため我が国におきましては、組みかえDNA研究を行う場合に、先生お話にありました内閣総理大臣の定めます組換えDNA実験指針に従うものとされているわけでございます。この指針につきましては、既に産業関係民間関係では、経団連を通じましてこういった研究開発に取り組む場合の企業に十分な周知徹底が図られておりますし、農林水産省といたしましても関係団体等に対しまして周知徹底しているところでございます。また農林水産省試験研究機関でございますけれども、それぞれこういった組みかえDNA実験を実施いたします研究機関におきましては安全委員会等設置しておりまして、そういった中で安全規則などを定めまして、その安全性確保に十分努めておる状況でございます。
  5. 竹内猛

    竹内(猛)委員 安全委員会をつくるということですが、どのような構成安全委員会をつくるのですか。
  6. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 ただいま申し上げました国の研究機関におきます安全委員会でございますけれども、安全委員会構成でございますが、これは各機関安全委員会委員長並びに委員を置きまして、それぞれこの道の研究専門家でございます。構成につきましては、先ほど申し上げましたようにそれぞれの研究機関専門家から成る委員会でございます。
  7. 竹内猛

    竹内(猛)委員 この安全性という問題は極めて重要な問題だし、その周辺の住民の皆さんの最も気になることでありますから、安全性の問題については次の問題とともに考えてもらいたい。  その運営の中でもう一つの問題は、官学産三位一体ということが言われております。それで、特定資本との癒着がないようにということが非常に大事であって、特定資本との癒着を排除するという点についてどのような考え方を持っているか。
  8. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 六機構支援対象といたしまする民間でございますけれども、具体的には民間企業農林漁業団体それから民法で設立されております公益法人等々が幅広く含まれているわけでございますが、こういった支援対象といたしまする関係民間の行うプロジェクト等につきまして、その民間対象選択につきましては、その能力とか体制が適切でありますれば資本金の大小あるいは業種を問わないことにしております。特に農林漁業関係技術研究につきましては、そういった特質を踏まえまして、地域に密着した特色のある地元企業研究活動、あるいはさらに地域振興の立場での地元農業団体地元企業、こういったものによりまするあるいは都道府県によりまする第三セクターの設立、こういったことを積極的に支援してまいりたいと考えておるわけでございまして、いわば地域ミニプロジェクト、こういったところにかなり意を配していきたいと考えておりますし、こういった中でプロジェクト選択をする場合に、十分その審査をしていただく専門研究者等を考えておりまして、そういった中立的な専門研究者によりまして公正、適切に行っていただく、そういうふうに考えております。  したがいまして、先生今御指摘でありまする大企業癒着というような事態は、こういった一連の措置によって生じないように考えておりますし、また御指摘の御趣旨につきましては十分本機構運営の中で生かされますように指導監督してまいりたいと考えております。
  9. 竹内猛

    竹内(猛)委員 例えば食品あるいは種苗農薬等研究をする、その結果一つ成果があらわれたときに、民間企業がこれを今度は大量に生産をする場合も、その契約についていろいろな問題が起こる。もちろんこの今の運営の中に、法律の中にも認可とか承認とか監督というようなことがうたわれております。また必要な指導を行うということにもなっているし、機構の中には評議員会を設けていくということも書かれておりますが、多額の金を出した者やいろいろの者がそこに発言をするということが往々にしてあるわけです。だから、審査委員会というものがあるが、できるだけ情報というものは公開をして自主的、民主的な運営ができるようにしなければならない、この点はどうですか。
  10. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 情報公開をするべきである、そういった御指摘でございますが、民間が行いまする技術研究は、当然のことでありますけれども民間企業活動一環ということで行われるものでありまして、その開発者の利益というような観点から申し上げまするならば、通常は特許出願というようなことで公開ということになるわけでございますが、最終的にはこの研究成果というものは、新しい技術でありますとか新しい製品ということで国民に広く利用され、公開されていくものと考えております。ただ、公開につきましてこの機構といたしまして、一つは、こういった研究のどの段階までの公開をいたすかというようなことにつきましては、いろいろとかかわる企業に対するこういった試験研究のインセンティブを十分与えていくという基本的な方針もありますので、この辺とのかかわり合いにおいてできる限り公開ができまするような、そういう検討、努力をしてまいりたいと考えております。
  11. 竹内猛

    竹内(猛)委員 この問題については、また私どもの各委員からいろいろな要求があると思いますから次に移ります。  次は、農業におけるバイオテクノロジーという新しい課題と任務にたえ得る人間をどうしてつくるのか。例えば機械化研究所に働いている九十一人の人員をそのまま引き継ぐとすれば、それなら金を取り扱うところには新しい人が入ってこなければならぬはずだ。そういうような人間を、例えばどういう企業がいいのか、どういうような方向がいいのかというかなり高度な判断のできる人材をつくることが必要だ、このことが必要ですね。人間の問題と、もう一つは、資金を集めてこなければならないということで、当初は十八億ですか、やがてさらにこれをふやそうということになろうと思いますが、その辺の人間の養成、それからまたお金を集めてくるというそういうことについて、これはどのような考え方を持っておられるか。
  12. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 この新機構の中でこの機構目的を果たすために必要な人材を、それに十分ふさわしい人材を集めるという努力につきましては、全く先生のおっしゃるとおりでございまして、そういう方向十分努力をするように指導してまいりたいと思いますし、さらに資金の問題につきましては、当初、六十一年度としては産業投資特別会計の三十八億の予算民間から出資を十五億以上ということでスタートを計画しておりますけれども、今後のこういう事業量あるいは民間のニーズ、こういったものを十分踏まえながら所要の要求措置を考えてまいりたいというふうに考えております。
  13. 竹内猛

    竹内(猛)委員 次に、特に足場というか基本が、既存の農業機械化研究所中心にしてやっていくということになりますから、機械化研究所取り扱いの問題について四点ほど伺いたいと思います。  まず第一に、従来の雇用関係、強制的に解雇するようなことはないのか、あるいは勧奨退職というようなことはやらないのか、一体雇用関係はどうなりますか。
  14. 関谷俊作

    関谷政府委員 農業機械化研究所職員については、この法律規定によりましてそのまま新機構に引き継ぐということでございます。したがいまして、従来の雇用関係はそのまま継続するということでございます。給与水準その他待遇についても従来どおり考え方でまいるということでございまして、このことに伴いましてお尋ねのような解雇、勧奨退職ということを行うことは決してございません。
  15. 竹内猛

    竹内(猛)委員 次いで、労働条件について伺いたいと思います。  現状労働条件の継承及び維持向上が図られるかどうか、現状より労働条件が下がることはないかどうか、これが一つ。  二つ目は、現状労使慣行は尊重されるのかどうかという問題。  三つ目は、新業務と従来の業務担当職員労働条件等に格差はないかどうか。  それから四つ目は、役職員構成については、内部人材登用を含め、適材適所による人員配置が行われるべきだと思うが、どうか。
  16. 関谷俊作

    関谷政府委員 従来の研究所職員労働条件の問題でございますが、これは従来どおり権利義務を承継するということの一環としまして、給与水準を含めた雇用条件労働条件についてはそのまま引き継がれるということでございまして、お尋ねのように、これが下がる、悪化するというようなことは決してないわけでございます。したがいまして、従来機械化研究所の中で成立しておりました労働に伴う慣行についても、従来どおり尊重されるというふうに考えております。  さらに、役職員等も含めた問題でございますが、機械化研究所につきましては、従来からできるだけ内部登用するということで、過去、内部登用により役員に任命した例もございますけれども、新機構においても同じような考え方で今後とも対処してまいる、こういうふうに考えております。
  17. 竹内猛

    竹内(猛)委員 しばしば天下りということが言われているわけですね。新しい機構になるわけですから、内部から登用して大いに士気を鼓舞してもらうように要望します。  次は、農業機械化促進業務はどのようになるかという問題です。  農業機械化促進業務充実が図られるかどうか、本来の業務が図られるかどうか。農業機械化促進業務を行う我が国唯一専門機関としての機能はどうなるのか。農業機械化促進業務農水省試験研究機関業務及び新法人民間研究促進業務との関係はどうなるのか。名称における、農業機械化研究所IAMはどうなるのか。これらの点はどうですか。
  18. 関谷俊作

    関谷政府委員 従来の機械化促進関係業務、内容的には研究型式検査中心でございますが、これらにつきましては法律上の規定としましても一字一句変えることなく機械化促進法の中に存置しまして、従来どおり業務を実施するということでございますし、関係予算措置等についても今後とも必要に応じ充実を図ってまいりたいと考えております。したがいまして、機械化研究所機能についても、機械化研究関係業務に対する要請は大変強いわけでございますし、農業の中で大変重要な部門でございますので、こういう状況に応じましてさらに機能の拡充を図ってまいりたいと考えております。  それから、試験研究機関との連携は、従来も機械化研究所においては、筑波等にございます国の研究機関あるいは県の研究機関との連携人材交流も含めまして活発に行っているつもりでございます。今後新機構に移りましてからも、同様に国あるいは県の研究機関と密接な連携を図ってまいりたいと思っております。  なお、いわゆるIAMというような名称の問題でございます。これについては、法律上の正式名称生物系云々という新しい機構名称になるわけでございますが、この機械化研究部門については、従来ございましたような業務が実態として続くわけでございますので、俗称と言っていいか通称と言っていいか、そういう形でIAMとか機械化研究所とか、そういうような実際上の名称は事実として続けていく必要があるのではないか、こう考えておりまして、そういう方向で何か現実的な方法を考えたいと思っております。
  19. 竹内猛

    竹内(猛)委員 日本で唯一機械化研究所我我現地を見せてもらいましたが、すばらしい研究をしている歴史もあるし、これから将来に向かって大いに発展をする可能性を持っているわけですから、これは大事にしてもらわなくちゃならない。そして、いい面をさらに前進させるようにしなければならぬと思うのです。そういう意味で、なお三つ質問します。  新業務農業機械化促進業務を合体する理由について。法律をつくったから合体することになったのか、それともそういう運命に来たのか、この辺について説明をしてもらいたい。  それから、特殊法人から特別認可法人へ移行した場合には具体的にどのような変化があるのか。また、変化がなければそれでいいわけですけれども、あるのかどうか。  本部はどこに置くのか。
  20. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 最初の、機械化研究促進業務民間研究促進業務を一体的に行うことの理由といいますか必然性の問題でございますけれども、このいずれの業務につきましても、農林水産業生産性向上を図るための技術高度化促進目的としているということで、目的を全く同じくしているそういう業務でありますし、さらに両業務とも民間との連携の強化ということを業務推進基本としているわけでございます。さらには、両業務の間の研究成果に関しての相互利用相互補完のメリットといったことも十分考えられますので、こういう観点から、両業務を一体的に行うことの有効性も考えまして、こういった形をとることに踏み切った次第でございます。  それから、この機構本部は一体どうするのかというお尋ねでございますけれども、この機構自体民間の発意に基づいて設立されます認可法人でございまして、事務所設置場所につきましても設立発起人によって検討され、今後決まるべき性格のものでございまして、現在の段階で固まっているわけではございません。  ただ、農林水産省といたしましては、農業機械化促進業務につきましては、機械化研究所業務とか資産とかこういったもの、あるいはその他の権利義務を一切承継している、そういったこともありますし、現に研究所のありまする大宮市におきましていろいろと現有施設を利用していくことが当然適当なことでありますので、この大宮市をその業務一つ主体場所と考えております。また一方、民間研究促進業務でございますけれども、こちらはこういった業務性格上やはり民間のユーザーの利便性というようなことも考慮する必要がありまして、こういった観点からは東京都に置いて実施するということが望ましいのではないかと考えておるわけでございまして、そういうことになりますと六機構業務二つ場所で実施されるということになるわけでございますけれども、機構全体としての管理運営に支障がないように十分指導してまいりたいと考えております。
  21. 竹内猛

    竹内(猛)委員 現在、機械化研究所には九十一名の職員がいる。その九十一名は九十一名としてそのままにして、あと民間の金の取り扱いやそういうものはまた別に人を集めてやって、人をふやすのかどうなのか、その辺はどうですか。
  22. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 機構全体の職員の数でございますけれども、これにつきましても先ほどの事務所の問題と同じように、この機構自体が今後発起人によりまする設立の申請、認可、そういった手続を考えますと、今後成立時までに具体的にそういった数が決まる、そういうことでございますが、これまでの作業過程の中ではほぼ百人程度の全体の職員でこの機構全体の運営を図ってまいりたいというふうな考え方を持っているわけでございます。ただ具体的には今後決められていく、そういうものでございます。
  23. 竹内猛

    竹内(猛)委員 この法案をつくるまでには大変各省庁との間で苦労されたということを聞いていますが、各省庁との調整というものについて、特に同じような研究をしている農林水産省の中で筑波研究機関がありますが、あれとの関係は一体どういうことになるのか。
  24. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 お答えいたします。  筑波にございまする農林水産省以外の省庁関係研究機関、こういったところとの関係については、直接的な関係はないと考えております。
  25. 竹内猛

    竹内(猛)委員 直接的な関係がなくても、筑波でも品種改良とか新しい種をつくるとか多くのものをやっている。それが二重になるようなことをしたらこれは甚だむだな話なんで、やはりそれをむだにしないために、農水省の中でも筑波とそれから機構との関係がなかなか難しいとすれば、それならよそのあるいは通産省であるとか科学技術庁であるとか厚生省であるとかという問題になればなおさら難しい。そういうことでは非常に困るわけであって、その連携というものを十分にとってもらわなければそれは全体として前の方に向かないじゃないですか。どうですか。
  26. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 先ほどのお尋ね、若干私が聞き違えていたようなことでありまして、大変失礼いたしました。  この機構の今後の業務推進農林水産省筑波中心にした関係機関、こういった間の連携につきましては、これは今先生お話がありましたような品種改良等を含め、あるいは遺伝資源のそういった民間への提供のあっせんとか、とにかく農林水産省関係研究機関とこの新しい機構業務関連との連携につきましては大変重要なことでありまして、これについては当然、今後の民間研究促進するという観点からも、国の研究機関との連携を強めることは極めて重要な役割である、そういうふうに考えております。
  27. 竹内猛

    竹内(猛)委員 ここで要望しますけれども、参議院の方では種苗に関する法律を議論した。そのときに一番問題になったのが役所の縦割り、セクショナリズムだ。こういうものを克服をして、やはり縦の方もしっかりするけれども横とのつながりをがっちりやってもらいたい。これは強い要望があるわけですね。せっかく筑波にあれだけの立派な研究所ができているのだから、あれを横目で見るというようなことではこれはやはりよくない。  そこで筑波の問題にこれから入っていくわけですが、筑波はあそこに二十二万の都市をつくろうということで、現在十五万で人口がとまっている。  ところで建設省に今度は尋ねるわけですが、都市整備公団が持っている土地が今三千ヘクタールぐらい恐らくあると思うのですね。その土地を分譲しようとしている。ところが民間研究所とか病院とかあるいは工場が入ってくる場合には、その敷地だけは売るけれども、これに附属する宿舎であるとか、病院の場合には、どうやら解決はしたけれども看護婦宿舎をつくるといっても土地の分譲がない。こういうやり方はおかしい。病院をつくれば看護婦というものはこれはつきものでしょう。工場をつくった場合にはその近くに宿舎があるのも当たり前の話だ。こういうことが常識的に行われないというのはどういうわけだ。だから現地では、そこに人間を住み込ませるためには、工場とそれに附属する建物ぐらいの敷地はちゃんと同じ値段で分譲したらいい。じゃないか、こういう声があるけれども、これはできないのかどうか
  28. 村瀬興一

    村瀬説明員 お答え申し上げます。  先生御承知のように、筑波学園都市の区域内につきましては国土庁の方で基本的な土地利用計画を定めておられます。したがいまして、研究所等が立地するような場所とそれから住宅を建設する場所というものが基本的に分かれておるわけでございますが、今おっしゃいましたような社宅のたぐいにつきましては、当然住宅を建設すべき場所でございますれば建設できるわけでございます。先ほど先生もおっしゃいましたように、病院看護婦宿舎でございますとかあるいは進出した企業従業員宿舎というようなものについても分譲した例がございます。  したがいまして、住宅を建てるべき場所につきましては、立地される研究所等の御意向、それから公団保有地でございます場合にはそこで公団住宅供給をすべきかどうかというようなこと、それから国土庁の方から伺っておりますところでは現在土地利用計画の見直しも検討されておるということのようでございますので、そういった動向を総合的に勘案いたしまして、必要な場合には先生がおっしゃいますような社宅として分譲するということもできないわけではございません。
  29. 竹内猛

    竹内(猛)委員 その住宅ができるはずのところに住宅が建ちにくいという事情が一つある。それはどういうことかというと、学園の内部の今研究者の移っているところに家を建てようと思えば、そこは第二種住居地域。これは商業地域であって、高い建物なら何ぼ高くても構わない。そのかわり地価も高い。ところが、旧町村は一種住居地域であって高さが制限されている。だから、公務員の皆さんがせっかくそこへ五十坪、百坪の土地を買って家を建てようとしても、大きなマンションやアパートができて日照権やプライバシーが侵されるということでなかなか住みにくいということで、年じゅうそこには争いが起こっている。この問題は何とかならないか。建設省、これはどうですか。
  30. 伴襄

    ○伴説明員 お答え申し上げます。  今の御質問は、研究学園都市の一部が二種住居専用地域になっておる、その土地に戸建ての住宅を建てておられる方がいて、近くにマンションが建つので住民間でトラブルが起こっているということの御質問かと思いますが、研究学園都市のこういった用途地域の指定につきましては、筑波研究学園都市建設法に基づきまして策定されました研究学園地区建設計画に定められた内容を踏まえまして、しかもその関係町村の基本計画との整合を図りつつ指定されております。  御指摘のように、第二種住居専用地域におきまして中高層の住宅、マンションが建つということで周辺住民とのトラブルが局所的に生じているということについては承知しておりますが、実は地元の方では、高度利用を望んで、したがって現在の二種住専のまま継続してほしいという方と、それから新たに土地を購入されてそこに戸建て住宅を建てて低層住宅としての住居地としてその環境を守りたいという人と、それぞれ立場の異なる方がいろいろいらっしゃいまして、どうも十分なコンセンサスが得られない状況にあるというふうに我々聞いております。  そこで、建設省としましては、こういう状況下にあって、一挙に二種住専を一種住専にできないというような状況にある以上は、一つの手法として、関係権利者の合意によりまして地区計画とか建築協定という手法がございます。その導入によりまして、例えば建築物等の壁面の位置の制限とかあるいは高さの制限等をきめ細かく住民合意の上で決めていただきまして、それで良好な住宅地の形成を図るということができるのではないかと思っておりますので、そういった方向地元関係地方公共団体当局とも相談してまいりたいというふうに思っております。
  31. 竹内猛

    竹内(猛)委員 大体そういう方向だろうと思うのですが、非常に難しい。  次いで国土庁国土庁は、先ほど建設省からも話があったように、今答えられたような問題があるほかに、特に科学万博で常磐高速道路ができたり広い道ができて、旧来の土地というものが変化をしてきた。そういう中において、今言うように工業団地が四つもできる、その中で土地利用というものが変わっていない。だから人間の住みつきが悪い。人間の住みつきが悪いから学園の内部には住みたくない、こういうことでほとんどの人たちが単独赴任という形で、後でこれは人事院の方にも話をするのだけれども、非常に経費がかかって困っている。この問題について、何とか土地利用計画を見直しをするということができないかどうか。
  32. 谷口哲彦

    ○谷口説明員 お答え申し上げます。  研究学園都市土地利用の考え方につきましては、先ほど建設省の方からも御説明ございましたけれども、法律に言うところの田園的な環境を残しながら快適な都市をつくるということで中心部をかなりコンパクトに整備をいたしまして、周辺部分は現在の田園的な環境を残しながら整備をしてまいるという基本的な考え方で、先生先ほど御指摘のございましたような土地利用区分になっておるものでございます。  しかしながら、御指摘のように特に今回の科技博後のあの都市をめぐる状況が、計画をいたしました当初、二十数年前に比べましていろいろ変わってきておるということも事実でございまして、国土庁といたしましては、昨年来有識者の方方にお集まりをいただきまして新つくば懇談会というのを設けまして、今後の都市のあり方についていろいろ御意見をちょうだいいたしたところでございますけれども、その中でももう少し広域的な観点から学園都市土地利用を再検討してみてはどうかという御指摘もございまして、現在少し見直しを始めた段階でございます。そういった将来展望を新しく描くその一環といたしまして、御指摘のような土地利用についても、基本原則は守りながらも、技術的な対応がいかにあるべきか、あるいは新たに浮上してまいりました新しい開発要因にどう対処していくか考えてまいりたいというふうに存じております。
  33. 竹内猛

    竹内(猛)委員 これはもうぜひ土地利用計画の見直しをして、せっかく移った公務員や民間研究者が学園の中や周辺に住めるようにしてもらわないと、今後もいろいろの点で差し支えをします。  次いで、建設省にもう一つお伺いしますが、ちょうど万博の前に谷田部町の松代の市街化調整区域を無理やりに開発をした。これについて住民が反対をしたわけですね。ところが、茨城県は開発審査会の議を経て、住民の反対を押し切って、その要請は却下をした。住民はこれについて不服だということで建設省審査を求めたはずですね。それが今日になっても回答がない、握りつぶしをしている。いやしくも公的な建設省住民の意思をそうやって握りつぶすということは一体どういうことだ。だめならだめ、いいならいいという形で理非曲直を明らかにすべきじゃないか。これはどうですか。
  34. 林桂一

    ○林説明員 御説明いたします。  先生の御指摘のように、茨城県の谷田部町のホテル諏訪という名前のホテルの開発許可の処分に関しまして、自治会代表の渡辺恵美子氏ほかの住民の方々がその処分の取り消しを求めまして茨城県の開発審査会に審査請求をし、これが期限徒過ということであったために却下の裁決がおりておりまして、さらにそれに対しまして建設大臣あて再審査請求が来ているということでございます。  それで、その再審査請求が出ましたのが五十九年の七月ということで、既に一年九カ月近くたっております。それで、これにつきましては補正等の手続とかいろいろ手続をいたしまして、現在内部で処理、検討しているという段階でございますが、先生の御指摘のように行政不服審査法の目的に照らせば、適切に手続を終了して裁決するということは当然のことでございますので、私どもも内部の処理をできるだけ急ぎまして、早急に裁決ができるように努力をしたいというふうに考えているところでございます。
  35. 竹内猛

    竹内(猛)委員 現にそういうような無理をして開発をして建てたホテルは今や経営にあえいでいる、四苦八苦をしている。そういうところに無理やりに許可をするということ自体に非常に無理があるという証拠が出ているから、結論は早く出してもらいたい。  私がなぜこういうことを聞いてきたかというと、筑波研究に携わっている人たちの給与の問題あるいは研究費の問題等に関係をしてくるから先ほどのややこしい問題を幾つか申し上げたわけですが、先日、人事院にもこの質問をしました。そのときに、ことしの十二月で移転手当が切れる、約四十億の手当が約八千名を超える者に出ておりますね。移転したというか、そこに働いている公務員が一万七百二十三名ですか、そういうことになっておりますが、その四十億の手当が切れるということで、これは労使を挙げて筑波地域では最大の課題になっている。この問題について人事院の方ともしばしばやりと力をしているのですが、先ほど言ったように住みにくい地域になっていて非常に金がかかるんですね。そういう点で、人事院の方にはその後何がしかの変化があったかどうか、私がこれを予算委員会質問したその後のことについて、人事院の方からちょっとお聞きしたい。
  36. 武政和夫

    ○武政説明員 お答え申し上げます。  筑波手当の関係につきましては、先生指摘のように本年末までに勧告を要することとなっておりまして、せんだって先生から伺いました点も踏まえまして鋭意検討を進めているところでありますが、具体的に申しますと、その後関係省庁から資料なり、ヒアリングを行っている、そういった状況に現在はあります。
  37. 竹内猛

    竹内(猛)委員 学園の内部住宅の建て方についても非常に住みにくい状態になっている。それから三年ないし五年で交代をしなければならない。この間、退職をした公務員の方々と話をしてみたけれども、とてもそこに永久に住むことができないと言うんですね。子供の教育の場合でも、三年や五年でかわってしまうのではそこには住めない。やはりその常磐線の周辺に住むか、もとの東京や千葉や横浜に住まなければならない。こうなると二重生活、単身赴任のような問題がある。  それから公務員の住宅は、これは一戸建でもあるしアパート式のものもありますが、非常にデラックスにできていて冷暖房に物すごく金がかかる、こういうようなこともあります。それから、住居と研究所あるいは役所が遠いために車で行き来をする、バスにおくれた場合にはタクシー、自家用車、こういうもので非常に金がかかるという形で、人事院の方では筑波は東京よりも生活費が安い、こういうように考えられているとしたらこれは大きな間違いだ、こういう強い要求がある。この点については、資料としては十分に整っているかどうか。現地では今生活調査をしていますね。こういうものもひとつ参考にしてもらいたいと思うのだが、この辺はどうですか。
  38. 武政和夫

    ○武政説明員 先ほども申し上げましたように、この手当の検討に当たりましては、関係各方面、組合の方々も含めましていろいろと御意見を伺っているところであります。  その際、例えばバス料金や水道料金が東京と比べて割高となっているとか、バスの運行回数が少ないとか、あるいは東京と比較しまして店舗が少ないために商品の選択の幅が小さいというような、これは例示でございますが、そういったものをるる伺っております。また、先生指摘の単身赴任の割合も全国平均に比べてかなり高いというデータも私ども持っております。  先生今御心配かと思いますが、そういった私どもが検討に当たって必要な顧慮すべき事項の一つとして重要な事項でございますので、この辺、これからも十分関係者からお聞きするなり、場合によっては私どもが現地に伺うなりして、そういう実態、実情というものを把握して結論を出していきたい、このように考えております。
  39. 竹内猛

    竹内(猛)委員 せっかく世界に誇れるようにつくった研究都市だが、建物ばかりが立派であってはどうしようもないので、そこに働く研究者が意欲を持って研究ができるようにするということ。それから、内部に移転手当をもらっている者ともらわない者の差別がないようにするためには、すべての働く者にそれが手当として出るようにしなければならない。これは要望しておきます。  そこで、今度は機構の問題に関連をしますが、研究費用というものは、機構の場合には一体国家公務員の研究とどういう関係になっているか、その点、研究費のことについてお尋ねします。
  40. 関谷俊作

    関谷政府委員 新機構は、民間支援業務の方は直接自分で研究を行うわけではございませんので、私の方の従来やっております機械化研究所機械化促進関係業務研究であると思いますが、この研究費等については、大体国の研究機関に準じて予算計上がされているような状況でございます。
  41. 竹内猛

    竹内(猛)委員 この国の研究機関というのが問題なんだ。この中で国の研究機関、理科系が年百四十四万、それから農学系が年百二十六万、それに九十一万と八十何万かのそういうものがあって、六十年の場合には一千五百七十九億七千六百四十九万七千円。これは国家公務員の研究費全体。その中の五二%が人件費であって、大体三二%が研究費になっている。あと若干旅費とかそういうものがあるけれども、これは徴犬たるものである。  ところで、筑波の場合を考えてみた場合に、例をとると、これも退職した部長さんから聞いたわけですが、百四十四万の中に光熱費、水道費、電話代、本を買う費用、時には交通費まで入っているという。そうすると、実際に使える金は四十万くらいしかない。これでは自分の身銭を切らなければ学会にも行けないし本も買えない、こういう状態だと言うのです。これは、大蔵省が来ていると思うけれども、会計の帳簿上の処理でそういう方法をとらないとできないと言っているのだが、こういうことは不当じゃないか。大体、研究室の費用というなら光熱費、水道費も入るけれども、研究そのものについてはこれはおかしい。これは一体どういうことになっているのか。この百四十四万というのは、一カ月に割ると十二万円。これは最高ですね。どうなんですか。
  42. 武藤敏郎

    ○武藤説明員 先生の御指摘研究員当たりの積、算庁費一人当たり百四十四万とおっしゃいましたのは、いわゆる人当研究費でございます。試験研究機関研究費と申しますのは、大きく言いますと二つございまして、一つは実態に応じて計上するもの、もう一つは頭割り、すなわち人頭割で計上するものでございます。  この人当研究費につきましては、試験研究に共通して必要な経常的な基礎的な経費、例えば備品費とか消耗品費とか光熱水費等を含めまして研究員一人当たりの金額に割り戻して単価を設定しているわけでございます。そういうことで、人当研究費というものは、そういう間接経費も含めたものとして計上し、執行されるということでございまして、非常に厳しい財政事情のもとでその単価をずっと据え置いてきているわけでございますが、それは基本的な部分の経費であるということで御理解をいただきたいと思います。
  43. 竹内猛

    竹内(猛)委員 ちょっとあとの関係もあって余りこのことについて発言ができないけれども、研究費ということで百四十四万、一カ月十二万、それから次の農学系が百二十六万、これは一カ月十万五千円ということだからかなりあるのだなと思ったところが、実を言うと今の話をひっくるめてですから、こういう形になるとなるほどこれは難しい。出張する族費、特に外国に行く場合においても身銭を切らなければならないし、休暇をとって自分で金を払っていく。今交流法案ですか、科学技術委員会法案が審議をされているようですけれども、あれなんかにも、休日に自分で金を出したものも公務出張としてほしいというような要求まで出ているくらいに切実な形なんです。それで、例えば文科系の者が外国に行く場合には、そのうちの五〇%、半分は国が出すけれども半分は自分で行け、こういうようなことになっているという話も聞いているけれども、こういうことでは本当に、あの筑波のように全国の少なくとも三割以上の研究所が集まり、四割の学者が集まっているああいうところにおいては、建物だけが立派であって研究の中身が今のような内容では、本当に士気を鼓舞して研究をするという形にならない。これは何とか工夫をしてもらいたいと思うのですが、これはいかがですか。
  44. 武藤敏郎

    ○武藤説明員 試験研究費の重要性につきましては我々も十分認識しておるところでございまして、科学技術庁に科学技術振興調整費というのが計上されておりますが、これが六十年度及び六十一年度とそれぞれ一〇%を超える大幅な増加ということでこれに対処しているわけでございます。数字を申し上げますと、六十年度は六十三億円から七十一億円に八億円増額いたしております。それから、六十一年度は七十一億円から七十九億円にそれぞれ増額しておりまして、国立試験研究機関研究費あるいは御指摘の旅費等にも配分できるような、そういう仕組みで工夫をしているところでございます。
  45. 竹内猛

    竹内(猛)委員 重ねて要望しますけれども、やはりこの研究者が国やあるいは今のできた機構の中で十分に安心して士気を鼓舞して研究ができるようにするためには、研究そのものの費用をちゃんと確保し、同時に水道であるとか電力であるとか、そういった関係するものは、会計上の問題があるとすれば別にしていく必要があるだろう、途中で民間研究所に抜け出していくようなことのないように、ひとつ今後十分に検討してほしいということを要望します。  最後に、突然、これはちょっとこの問題とはいささか離れて恐縮ですが、公正取引委員会と農林省の畜産の方に要望と苦言を呈さなければならない。  それは、三月に畜産物の価格が決定をした。加工原料乳においても、九十円七銭のものが、三円九十銭の引き下げを諮問をして、いろいろのいきさつがあって二円五十銭の引き下げで八十七円五十七銭という形になって、非常にこれは不満なんです。  ところが、今度は市乳については、最近、三大メーカーが、自分のえさを買わなければ乳を受け取らない、あるいは運搬費も生産者が持て。生産者というものは非常に弱いのですから、乳を搾ってもどこにも売るところがないから、どんなに抑えられてもそこに持っていかなければならない。しかも価格についても脂肪の面でも四十銭ぐらいを搾り取ってしまう。こういうようなことは公正取引委員会の――これは強者の立場ですね。自己の取引上の地位が相手方に優越する、そういうことを利用して大手の雪印、森永、明治、この三社が横暴をきわめていることになり、そして零細な酪農家が非常に苦労している。こういう問題は独禁法違反であり、これは早くやめてもらわなくちゃならない。この点についてはどうなっているか、ちょっと……。
  46. 大坪敏男

    ○大坪(敏)政府委員 私どもの方にも先生指摘のような事実関係につきまして、先日中央の酪農団体の方から情報が寄せられたわけでございます。そこで、早速関係県を通じまして事実関係を調査する一方、乳業者等の関係者から事情を聴取いたしたところでございますが、そのような事実を確認するに至っておりません。  もとより、ただいま先生がおっしゃいましたように、生乳取引に関連いたしまして乳業者が飼料の購入を強要するようなことがあれば、独禁法上の不公正な取引方法に該当する、そういうおそれがあるわけでございますので、私どもといたしましても早速乳業者並びに乳業者団体に対しましてこのようなことのないよう十分なる注意を喚起したところでございます。今後私ども十分注意を払っていくことといたしておりますけれども、仮にこのような事態が起これば、公正取引委員会とも十分相談をした上で、十分な是正措置指導をいたしたい、かように考えております。
  47. 地頭所五男

    ○地頭所説明員 お答えいたします。  事業者等の個々の行為に関しましてそれが独占禁止法に違反するかどうかにつきましては、実態に照らして個別具体的に判断を必要とする事柄でございますので、ここで直接的なお答えは差し控えさしていただきたいわけでございますが、一般論として申し上げますと、メーカー等がその取引の相手方に対して、指定した業者あるいは自己から別のものを購入するようにとか別のものを取引するようにということを条件づけて取引をする、こういうことの結果、公正な競争を阻害する事態が生じてまいりますと、御指摘のような不公正な取引方法に該当する問題が生ずることがあり得るわけでございます。
  48. 竹内猛

    竹内(猛)委員 ちょっと機構の問題からそれてしまったわけですけれども、大事な問題ですからそういう酪農の話をしましたが、今後もそういう独占禁止法に違反をするような動きのないように、ひとつ農林水産省の畜産行政の中においてしっかり指導してもらいたいということを要望して終わります。
  49. 大石千八

    大石委員長 辻一彦君。
  50. 辻一彦

    ○辻(一)委員 私は、きょうは本法案生物系特定産業技術研究推進機構法案について二、三質問したいのですが、この法案の内容を見ると一つの面ではちょっと心配があります。それはやはり遺伝子を組みかえたり非常にハイレベルのものをやっていきますから、微生物等の、組みかえ等によってとんでもない変異が出て危険を伴う場合等も憂慮されるし、それからまた非常にすぐれた技術特定のところが独占をして、結果として農家に不利益が来るという心配もあります。しかし、それには歯どめをかけるとして、またよい面では、ハイテクの技術を駆使して米の超多収品種の開拓、あるいは松くい虫に対する抵抗性の強い松を育て上げるとか、牛の受精卵移植の問題であるとか、野菜、メロン等における新しい品種の開拓等々、大いに生かせばまたすぐれた成果を将来に期待することもできると思いますので、私はきょうは懸念とあわせてその法案の四点について具体的に少し尋ねたいと思います。  その前に、バックグラウンドとして、米が一体どういう状況になっていくのか、あるいはポスト第三期水田対策、その中で他用途米等々の将来等について、若干前段として触れたいと思います。  それに入る前に、実はけさ読売新聞を見たのですが、新しいリン米農務長官が米の聖域にも踏み込む発言をしている。これは従来我々が幾つかただしてきた、聞いてきた内容と非常に違うので非常な懸念を覚えますので、これについて農相の、日本の政府としての考え方をまずお尋ねいたしたいと思います。  昨年の九月に、これはことしの二月の所信表明の質問にも述べましたが、羽田農相を団長にして六人でアメリカに十日間参りまして、テーマは日米貿易摩擦と農業問題というのでUSTRにも行って大分お互いにやり合ったということがありまして、その中で、詳しいことは別として、私は、米について米通商代表部はどう考えておるか、こういうことを特にただしたことがあります。それに対して、当時のヤイター代表は下院へ課徴金問題の法案の公聴会に呼ばれて行き違いになったのですが、かわって代理が答弁しましたが、要するにそれは、狭い国土で日本は農業をやっている、したがって米について自由化等共要求するのは無理に思う、こういう趣旨の発言をして、米については相応な認識をしているな、私たちはこういう理解をして帰った。  それから、この二月の農相の所信表明に対して私も質問で触れましたが、アメリカはそうは言っているもののだんだんと米の自由化も要求してくるんじゃないか、こういうことを聞いたのでありますが、それに対して農相はブロック前農務長官の発言等々も引用して、そういう心配はない、アメリカの農務省も、米の自由化を求めることは非常に大きな政治問題にもなりかねない、これは十分慎重であるし、そういう考えを持っていないということを確信を持って言っておられたと記憶しますが、新たに農務長官に就任したリン農務長官、しかもカリフォルニア州出身で加州米の産地であるとすれば、こういう発言をやるということは将来に対して圧力がますます強くなっていく懸念があると思います。これに対して、従来と非常に違った発言でありますので、政府としてどう対応するか、私は、米は単なる農業の問題だけではなしに、日本の社会の安定上の問題であるし、また重要な国家の安全保障上の問題である、そういう観点から見過ごしにできない発言であると思いますので、政府のこれに対する基本的な態度をひとつ伺いたいと思います。
  51. 石川弘

    ○石川政府委員 けさの新聞は私も読んでおりますけれども、何か政府としまして米の自由化を要求しているというふうにはとれませんで、米の重要性については非常に政治的な問題であるということも十分理解をしておると思っております。我我も機会あるごとに日本における農業の重要性、特に米の重要性なり国民の主食としての重要性はかねがね伝えておりまして、私どもが接触する限りにおいて近々にそういうことを要求してくるような雰囲気は全くないと思っておりますし、御承知のように国会における米の自給に関する決議もございます。私どもは、米につきましては完全に自給が可能な農産物でございますので、国内の生産を合理化しながら国内で自給をしていくという基本方針は全く変えておりません。
  52. 辻一彦

    ○辻(一)委員 食糧庁長官として、国会決議というこれは当然の御発言であると思いますが、私がお尋ねしたいのは、農相が去年もそういう通商代表部の場に現にいらっしゃって、しかも二月の所信表明に対する質問の御答弁もあり、それと明確に食い違っている、しかも相手が新しい農務長官ということになれば、これについての見解はひとつ農相からお伺いいたしたいと思います。
  53. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 私もただいまこちらでこの新聞を読ましていただいたのですけれども、これはどういう場で話されたのか。これは単独記者会見ということになっておりますけれども、我が国内にありましても、加工関係の人ですとか、あるいはまた一般論として安い米があるから輸入したらいいじゃないかという声もあります。そういう中で記者さんが、これについてはどういうお考えですかというようなことを聞いたときに、あるいは個人として、また米の産地の方としてこういう答え方をされたのかな、そんなことを私ども今感じますけれども、しかしアメリカの今までの公式の発言は、ブロック農務長官が来られたときにも私自身直接お会いしましたけれども、先ほどお話があったとおりの答えでございましたし、また日本の国としては米が主食であるということ、あるいは生産調整を国がみずから金を出しながら今現在やっておるという現状であるということ、それから水田の果たす役割というのが、主食を国民に供給するというだけではなくて、国土保全というような特別な役割も果たしておる、そういうことからもこれは堂々と説明することもできますし、また先方も理解してくれるというふうに私は考えております。
  54. 辻一彦

    ○辻(一)委員 中曽根総理が訪米して我が国の経済構造調整に至るまで言及されておる。アメリカ側がここ童で踏み込んでくるのは内政干渉に等しいという感じを受けますが、内需を拡大する、そういう中で日本の経済構造もこういうように変えていこうという話が出て、輸入志向の方向を非常に強く出している、それに乗ってリン長官の発言等も出ているという感じがするのですが、こういうリン農務長官の発言を誘発するようなこちらの構えがないかどうか。これについてどうでしょうか、農林大臣。
  55. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 実はこの問題は従来からもいろいろな人の口には上っておるのです。ただ、その言い方というのは、要するに自分たちも自由な貿易をする、そういう中にあって、ともかく我が国としては日本のほかのものと比べたときに最も比較優位であるのはスケールメリットを発現することができる農産物であるという考え方を、実は基本的にあの人たちも持っておるわけでございます。それは発言としてはいろいろな言い方があると思います。ただ、農務長官という立場ですから、私どもとしても十分注意しなければいけないなというふうには思いますけれども、これは日本側の方からの今度のああいうことによってどうこう、総理の発言によってどうのこうのというよりは、要するにもともと比較優位なのは農産物なんだ、だから日本さん農産物を買ってくれよということは、それぞれの立場の方がよく言っておられるということであります。
  56. 辻一彦

    ○辻(一)委員 リン農務長官は、私がちょっと気になるのはカリフォルニア州の出身だということですね。去年我々が行ったときにも、アメリカ政府の建前はこれについては強く言わないという内容であるが、しかし加州出身の国会議員からアメリカの加州米の内容をもっと日本の方に伝えろ、こういう声が随分強いということを聞きました。そういう点で、やはり加州出身であるがゆえになお気になるところでありますので、これについては、こういうことは絶対あってはならないし、衆参両院の満場一致の決議も十分生かされておるわけでありますから、これは大臣、ひとつ十分気をつけてやっていただきたい。特にアメリカで日本の大使館とも懇談した際にも出ておりましたが、アメリカは火がつくと抑えがなかなか難しくなるので、火がつくまでに十分な手を打ち、その内容を説明して頭にたたき込んでおくということが米については特に大事だと私は思います。この点、抜かりのない対策を今から考えるべきだと思いますが、その点を含めましてもう一度……。
  57. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 確かにリンさんはカリフォルニアの御出身であり、特にあそこでは日本の出身の方などが開発したジャポニカ系の米ですか、こういったものが産出されることは事実でありますから、いろいろな議員の方あるいは農業者の中からそういう声が出てくるでしょうし、また現地を視察といいますか行った人たちなんかがその米をたたえたり、こういった米がもっと入ったらというようなことを話したということを私は実はほかの新聞で見たこともございます。  そういう中で、これができればなという気持ちはあると私は思うのですよ。しかし、日本の国の状況、そして各国とも農業に対してはそれぞれ特別なものについては保護措置をとっておるということもございますので、そういったことをよく説明し、やはり米というのは単に主食というだけでなくて、一つの社会的な大きなものなんだというようなこともよく説明していきたいなと思います。  ただ問題は、加工ですとかいろいろな分野で、それにこたえるような生産というものをしていかないと、そういった人たちが自分たちの原料を求めるということはあります。そういうことで私どもとしては、今水田利用再編対策の中で他用途利用米という特別な価格の米を生産することまでお願いをしながら、何とか加工の皆さん方の理解も得よう、実はそういった努力も側面でしておるのだということであります。  いずれにいたしましても、いろいろなことを踏まえながらこれからもリン長官初め向こうの行政あるいは議会、関係筋の皆様方とも十分お話し合いをし、また農業団体農業団体として先方の農業者とのお話し合いの中でもそういうことをきちんと話していただくように、お互いに協力をしていきたいと思っております。
  58. 辻一彦

    ○辻(一)委員 この点は十分おわかりのことであると思いますが、念のために申し上げておきましたので、十分対処してほしいと思います。  もう一つ、それに関連してでありますが、日米間で残存十二品目についての交渉がいろいろやられております。四月二十二日というのが言うならば二年前の期限が切れる目になっているのですね。そこでいろいろと交渉中でありますが、アメリカのガット対応等もあり、これらについて政府としてはどういうように対応して考えていくのか、この点を念のために伺っておきたいと思います。
  59. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 この問題につきましては、この読売新聞の中にリン長官の発言というものが書かれておりますけれども、私どもは、現在までアメリカ側と対応いたしております段階におきましては、いまだに原則論を振りかざしておるということで、ともかく完全自由化、しかもこの品目は我我としてはガット違反であるというふうに理解しておるということで前回もガットに提訴し、今一応休戦状態になっておりますけれども、彼らはいまだに現在は原則論を言い募っておるということであります。  ただ私どもとしましては、それに対しまして、そういった自由化ということは、それは無理です、しかも私どもは、ガットに提訴されたときも、ガットで闘うといいますか話し合いましょうということまで言いながら提訴されたものでありますが、しかしアメリカとしても現実的な対応ということで前回肉とオレンジと一緒にこれを休戦することになったわけでありますから、私どもとしては一つずつのものについてよく見きわめながら現実的に対応するという対応姿勢というものをこれからもとり続けていき、何とか二十二日までに先方を理解させたいなということで、これからもいろいろな努力を続けていきたいというふうに考えております。
  60. 辻一彦

    ○辻(一)委員 それではさっきの本論に返って、ハイテク活用による米の品種改良について聞きたいのですが、その前段として、先ほど申し上げたように、ポスト第三期水田対策ということになると、米の備蓄の積み増し分は予定したところは大体年度末で終わりそうに思いますが、その状況と見通し。それからそうなれば十万ヘクタールというものが一体どうなるのかという問題があるのですが、これらについて、ポスト第三期対策を踏まえて考え方を聞かしていただきたい。
  61. 関谷俊作

    関谷政府委員 ポスト第三期につきましては今年秋までに確定ということで今鋭意検討しているところでございます。  お尋ねがございましたようないわゆる目標面積の規模につきましては、まさに従来の在庫造成分一年間四十五万トンというものは、この決定の時期の段階において、引き続きやるというよりはむしろそれはやらなくてもいいというような方向になる可能性が強いのではないか、これがポスト第三期検討の場合の一つの大変重要な要素でございまして、私どもそういうことだという結論を出したわけではございませんけれども、特に問題になります目標面積についてはそういう方向可能性が強いという状況も踏まえながら検討を進めてまいりたい。  また一方、奨励金の早期脱却という方向も既に打ち出しておりますので、そういう方向あるいは全体の予算との絡み合い、さらに転作先の作物としてどういうようなものを予定していくか、さらにそれに応じました奨励金のいわば仕組みというか体系づけ、これは奨励金というものが全くなくなる、次の別の手法をとるべきだ、こういう問題もございますけれども、そういう転作の進め方の問題、これらについては農政審議会でもいろいろ御検討いただいておりますし、私どもも農業者団体あるいは地方公共団体その他関係方面の御意見も十分聞きながら、これからまた結論を出すように努めてまいりたいと思っております。
  62. 辻一彦

    ○辻(一)委員 およその概念はそれでわかりますが、十万ヘクタールはどうなりますか。積み増し分がふえて目標が大体達成されるとすればさらに備蓄をふやしていくのか。あるいはそれでいいとすれば十万ヘクタールはどうするのか、転作するのか、休耕するのか、どういうようにやるのか、これについての考えを伺いたい。
  63. 関谷俊作

    関谷政府委員 その点がまさに、第三期において組み込みました四十五万トン造成というのを組み込んだポスト三期になるのか、それがゼロないし量的にもっと少ない規模でやるのか、大事な検討の内容になるわけでございます。したがいまして、先ほど申し上げましたように、今年秋までに決定する際に目標面積全体の規模としてどういうようなものを想定するかという場合の大変大事な検討の要素であり、それには当然のことながらその時期までの米の需給状況あるいは在庫の状況、そういうものが大変大事な要素になるのではないかと思っております。  したがいまして、そういう規模がどうなるかということはまだこれからの検討問題でございますので、それをどういうふうに転作に向けていくかというようなことについても、まだこれからの検討課題として私どもいろいろ御意見を聞きながら検討したいと思っているところでございます。
  64. 辻一彦

    ○辻(一)委員 一番大事な問題を今なかなか結論づけた方向が出ないのはわかります。これからであるということはわかりますが、私は、これは私見でありますが、積み増しが大体目標が達成されるとすれば、やはり何らかの形で十万ヘクタール転作等々を考えざるを得なくなっていく。その中で他用途米、特に私は飼料米、えさ米の将来ということを考えるべきではないかという感じがしております。したがって、これは今までの稲の品種改良方向、いわゆるおいしい米、いい米をつくるという方向ではなしに、味は悪くてもいいからとにかく病気や虫に強くて余計とれる、ここに一点集中したハイテクを活用した品種の開拓を考えなくてはいかぬのではないか、こういう観点から一、二お尋ねをしたいと思います。  十九年前に琉球大学の新城教授がハイブリッド米、F1、一代雑種をつくるのに成功したのが、日本の国内に生かされずに中国に渡り、そしてアメリカに渡って、数年前に日本へ逆上陸ということが言われたわけですが、売り込みはうまくいかなかったようです。いずれにしても日本の育種家にとっては、せっかくあれだけの成果を上げながらよその国へ行って日本へ逆上陸というのはいかにも残念な感じがしますが、その経緯は一体どういうことであったのか、この点ひとつお尋ねしたいと思います。
  65. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 お尋ねの件でございますけれども、新城先生がハイブリッド稲に関する理論を発表しまして、細胞質雄性不稔の発見をされましたのは、先生今おっしゃいましたように昭和四十三年ごろだと思うのですが、その直後に、実は中国でも海南島におきまして独自に、新城先生とは全然別な種類のものから雄性不稔の遺伝子を発見しておるわけでございます。それが昭和四十五年から四十七年でございます。向こうにもそういった状況があった関係で、昭和四十七年に中国の代表団が東京に見えまして新城先生と接触をしておりまして、新城先生から講義を受けております。そして、その講義を受けた後、強い要請があって、その雄性不稔系統を新城先生が提供しているというふうな、経緯としてはそういう経緯でございますが、中国がその後昭和五十四年に、アメリカからいろいろな要請があってアメリカに中国の開発したハイブリッド稲の親を手渡した、そういう経緯でございます。  先生お尋ねは、一体どうして我が国にそういったすぐれた材料がありながら我が国品種改良にそれをうまく使わずに中国に流れたのか、そういうようなことかなと思うのですが、それにつきましては、ちょうどその当時の我が国の育種事情がかなり品質重視というような状況にあったということは一つの背景、理由だと思います。もう一つは、やはり我が国の育種家も十分新城先生研究、あるいは育種家の中にもこういった研究をやっている者もおりまして、農林水産省の中にも全然別なこういうハイブリッドの理論研究あるいは雄性不稔の遺伝子の発見をした者もおるのですけれども、仰せこういったものの実用化を考えますときに、採種効率が非常に悪うございますし、それとやはりハイブリッドというのは食味とか品質をよくするということが極めて至難のことでございまして、そういう二つ理由から、我が国の実用化に向けて全く脈がないといいますか、これは余り物にはならない、そういうふうな判断が働いたと考えております。
  66. 辻一彦

    ○辻(一)委員 確かに十九年前というと四十二、三年ですから、いい米を余計とろうという時期ですから、品質重視の育種の方向からすれば、ある程度これが見過ごされたという事情があったと思うのです。ただ、育種という点からいえば稲のF1はなかなか難しいわけですから、それが成功したということは非常に大きな出来事であったのです。それが見過ごされたということは残念な気がしますが、それは当時、どういう米を求めているかという点にいろいろな問題があったわけでありますから、それは一応おいておきたいと思います。  そこで、今もなお良質のいい米を余計とるという研究中心であるのは変わりがないのですが、日本の米の需要等々を考えるとなかなか思うように需要がふえていかない。そして生産力は上がっていくとすると、どうしても米の過剰が起こりがちになっていく。しかし世界一優秀な土地改良をやって国費も投じ、そして立派な生産力を持つ水田をただ億かの方に使っていくあるいは遊ばせていくというのは、大事な国土を生かす上においてもいかにも残念なことではないか。そういう点で、水田の持つ機能を生かしながら、日本の将来の畜産の発展に備えたえさの問題等々を考えると、やはり他用途米の中でも飼料用に絞った米の開拓を考えてみてもいいのではないか。  一つの面ではいい米、良質多収とあわせて、今、味は人間が食べられなくてもいい、家畜のえさに十分なって、そして余計どれる、それから余り背が高ければ倒伏するし、コンバインも入らない、脱粒が多いのでは困るので、短稈、脱粒しにくい、病虫害に強いような、質が悪くても余計どれる、こういうものを、日本の育種陣、さらにこれからのバイテクの能力を最大限に活用すれば道は開けないことはないというように思うのですが、そういう可能性はどうお考えになりますか。
  67. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 収量を上げる、専ら多収ということで、そういうことを目標に定めましての育種計画につきまして、実はもう大分前ですけれども、昭和五十六年から農林水産省は、かなり全国組織を挙げましてそのプロジェクト研究を進めております。先生御承知のとおりと思います。逆七五三計画と呼んでいます。その計画の中で実施しておりますポイントは二つございます。  一つは、これまでの我が国の良質を中心にした育種の手法をもう抜本的に変えていく、それは育種の素材を従来のジャポニカの枠から散り外してインディカ、世界各国のそういった遠縁の遺伝資源を専ら利用しながら、相当範囲の広い材料の中から画期的なものを選び出そう、そういう計画でございます。  その計画にさらにあわせて、ハイブリッドの効果を含めたものを考えながら、計画としては十五年計画で五割収量を上げようではないかというのがこの計画の基本でございます。  先生今御指摘のバイテク手法でございますが、今の計画はそのハイテク手法という前提に立っておりませんけれども、今後の展開としてはさらに、最近細胞融合等におきまして画期的なそういうプロトプラストの再分化のような成果我が国で世界に先駆けて得られてきておりますので、こういった勢いを稲の育種、品種改良といった中に十分組み込んだ形で、バイテクを中に取り込んだ画期的な品種改良成果を上げよう、こういう方向に展開しつつありまして、案は昭和六十一年度からバイテク植物育種の総合的開発という大型な研究プロジェクトを計画しております。その中で稲を重点作物に据えながら、これはまだ将来の可能性を踏まえての研究ですけれども、先ほどの逆七五三計画とかハイブリッド稲とかあるいは葯培養とか、かなり見通しのある現在の研究方向に加えて、相当かけでありますけれども夢のあるハイテクというものをさらにその中に入れながら、抜本的な効果を期待して研究を進めたいと考えております。
  68. 辻一彦

    ○辻(一)委員 今お触れになりましたけれども、農水省の手持ちの稲の原種は、長い間の交配等等の関係で近親種の傾向がかなり出ておると思うのです。そこでインディカとかアフリカ種の野生種の遺伝子を入れるということが大事なんですが、これは自然交配が非常に困難である。そうなりますと、ハイテクの最高の手法を使って、細胞融合や遺伝子の組みかえ、これをやらなければできないと思うのです。今かなり詳しくお話があったのですが、こういう面に相当力を入れて、従来の育種と合わせてハイテクの最高手法を使って新しい稲の品種開択に取り組む用意が十分あるのか、もう一遍お尋ねしたいのです。
  69. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 お話しのように、今後の取り組みは今までより一層ハイテク手法を入れながら進めたい。ただ、一言申し上げておきたいのは、アフリカの稲とか世界各地の縁の遠い稲と日本の稲を交配することは比較的困難な場合があるのですけれども、現在研究で非常に力を入れておりますのは、媒介品種といいましてちょうど仲人役をするような品種があるということがわかりまして、そういう品種を中に介在して育種を進めますと非常に効率的に縁の遠いものの間に雑種不稔の克服が可能になる、そういうことがわかってきております。
  70. 辻一彦

    ○辻(一)委員 味のよい米の品種をつくる、そうすれば非常に名誉に思うけれども味の悪い米をつくるというのはどうも気が進まぬ、そういう考えが研究者の中にあると一つの支障にもなるのですが、そういう発想の転換は今研究されている皆さんの中でできますか。やってもらわぬといかぬと思うのですが、いかがですか。
  71. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 今、国の研究機関は主として稲の育種の極めて長期的な目標に立って先ほど申し上げましたような研究に取り組んでおります。それと、例えば先生地元の福井とかに指定試験地というのがございます。あれは国の委託でやっている試験地ですけれども、ああいうところが全国に数カ所ございます。こういうところは専ら現在普及している例えばコシヒカリの改良とかに全力投球していまして、国の研究者も現在まさに収量に絞って、超多収に絞って研究を進めておりますけれども、こういった面期的な収量アップができれば、その次のステップとして、さらにそれを材料に良質を加えていくということが育種の常道でございますのでそういう考え方で将来を考えながらやっております。
  72. 辻一彦

    ○辻(一)委員 この問題については大臣に一言お伺いしたいのですけれども、稲は何といっても今まで日本が育種で世界一を自認しておったのですが、お隣の中国やアメリカにそのお株を奪われそうな心配もありますので、将来ともこの稲の育種については最高の水準を保持できるような、ぜひそういう力を入れてもらいたい、こういうように思うのです。この面における大臣の決意を一言お伺いしたいと思います。
  73. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 先ほど来技術議事務局長の方からも細かくお答えしておりますから、もう子細にわたっては申し上げませんけれども、確かに育種の面で、バイオの技術あるいは新技術等が進められるときに我が国は少しおくれをとっているのじゃないかという話がございました。しかし、このところ全体的に大変な急ピッチで、これは私どもの研究所の方もそうでありますし、また民間の方でも非常に進んできておるということがございます。ただ問題としては、今いろいろとお話がありましたような原原種等について、まだその量といいますかそういったものが少ないのじゃないかというような話もありますけれども、雲南省からも導入いたしましたり、その他からもいろいろと導入する、そういう中で原原種の確保等についても今努めておるところであります。  いずれにしましても、稲の分野におきましてはやはり長い歴史があり、また育種の面でも我が国は今日までリードしてきておるということがございますから、これからも要するに基礎的な体制というものをきちんと組みながら、やはり稲の分野では日本がトップのレベルを維持していく、そんなつもりでこれからも研究していかなければいけない、これがまた我が国の努めでもあろうというふうに考えております。
  74. 辻一彦

    ○辻(一)委員 さっき事務局長指摘されましたし、大臣の決意を聞いて心強いのですが、私の出身の福井県の農業試験場は稲の品種改良に非常に熱心であるし、過去においても優秀な品種を随分と育て上げております。コシヒカリは新潟県原産のように言われますけれども、我が福井県原産なのでお忘れないようにお願いいたします。  次に、松くい虫の抵抗性品種の育成問題について一、二伺いたいと思います。  四国や山陰の方に始まったこの松くい虫が、太平洋岸また日本海沿岸をだんだん北上して、どの地帯も松くい虫の被害が非常に大きくなっている。これに対する対策は非常に大事だと思いますし、今までやってこられたと思いますが、そういう中で今林野庁の方では、抵抗性品種の選抜あるいは交雑等によってマツノザイセンチュウの抵抗性の強い品種についていろいろと苦労していただいておるようであります。簡単で結構ですから、ちょっと取り組みの要点を伺いたい。
  75. 田中恒利

    田中(恒)政府委員 マツノザイセンチュウに対しまして抵抗性を有する松を育成する目的の事業でございますが、これは昭和五十三年度からいたしております。マツノザイセンチュウ抵抗性育種事業といたしまして、松林の九〇%以上枯れておるような大変な激害地に生き残っておる松がありますので、そういう抵抗性があると思われる松を選んでまいりまして、これまで二万五千本ばかり選びました。それから挿し穂をとりまして、十本以上とりますので二、三十万本の挿し穂をつくるわけでございますが、それにマツノザイセンチュウを接種してテストするという方法でございます。そういう第一回のテストで九百四十本ばかり選ばれましたが、さらにもう一回それから挿し穂をとりまして第二次の検定をいたしております。こういうふうなことによりまして、五十九年度末までに抵抗性個体として九十六本を確定をいたしております。現在はその個体を用いまして採種園を造成しておるところでございます。将来はこの採種園から採種される種子をもちまして養苗をいた促したいと考えておるところでございます。  それまでにやはりしばらく時間もかかりますので、それまでの間の措置といたしまして、先ほど申し上げました第一次検定で合格した松、これが九百四十本ございますので、それから出た苗木の中からマツノザイセンチュウに対する抵抗性を検証いたしまして、それから供給される苗木と、もう一つが日本産のクロマツと中国の馬尾松との交雑種でございます、和華松と言っておりますけれども、これの苗木、これも本年度以降供給の体制に入っておるところでございます。
  76. 辻一彦

    ○辻(一)委員 時間の点から余り詳しくお伺いできないのですが、クロマツに中国の馬尾松の花粉を入れて、これを交配して和華松という抵抗性の強い品種を養成していこう、こういうことは伺っております。これが非常に可能性が高いとすれば花粉をもっと余計入れて大いに拡大すべきじゃないかと思いますが、この場合のネックというのは何に在りますか。
  77. 田中恒利

    田中(恒)政府委員 この和華松の種子生産につきましては、花粉親であります馬尾松が暖地産でありますので、関東、西日本等の比較的温暖な地帯で行う必要があります。これらの地域におきまして利用できる場でございますが、これは県有のクロマツの採種園を最大限に活用して行っているところでありまして、それらの関係から現在以上に生産量を増加することは困難な事情にございます。
  78. 辻一彦

    ○辻(一)委員 クロマツの採種圃が一つの母体でしょうから、それを急にふやすわけにはなかなか簡単にいかないと思いますが、これは最大限努力をしてほしいと思います。  そこで、今触れられましたが、大体クロマツと馬尾松による和華松は関東以西、西の方に非常に有効であるが、東の方や北の方、ここの松には必ずしもそうは言えない、こう伺っております。そうであれば、北の方に育つ抵抗性の品種の開拓の可能性というもの、中国の方に例えば北の方に強いそういう松がないのか、あるいは国内でもいいですが、そういう可能性はないかどうか、この展望はいかがか、これを伺いたい。
  79. 田中恒利

    田中(恒)政府委員 先生お話にございましたように、北の方の被害が点在型と申しますか飛び地型でございますので、抵抗性の松の選び方になかなか問題がございまして、現在検討、研究中でございます。中国で言われております抵抗性のある寒冷地産の松につきましては、マンジュウクロマツに抵抗性があるというお話も聞いておりまして、その可能性はあるものと考えておりますので、現在も研究を進めておるというところでございます。  寒冷地向きの抵抗性品種につきましては、今の被害の進みぐあいからいたしまして大変重要な問題と思っておりますので、今後積極的に取り組んでいきたいと考えております。
  80. 辻一彦

    ○辻(一)委員 これは今御答弁のとおり、ぜひ北の方の松くい虫対策、秋くい虫に強い品種の育成、これにもひとつぜひ力を入れていただきたいと強く要望しておきます。  そこで、大臣に一つお伺いしたいのですが、この間中国の林業大臣が日本の方に見えて北海道各地を視察もされておりますが、日中間の林業の面においてもかなりな協力が進みつつあります。私はちょっと中国に縁が深くて、一年に二回ほどは中国に行っていますが、林業の面ではいろいろな面で日本と中国がお互いに協力をする分野が非常に多いと思うのですね。これはぜひ力を入れていただきたいのですが、大臣として日中の林業協力についてどういう決意をお持ちであるか、それを一言伺いたいと思います。
  81. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 我が国といたしましては、まさに地球的な規模での森林の保全あるいは涵養を図ろうという観点から、積極的に今日までも海外の林業協力というものをしてまいっております。  先日、ちょうど呉学謙さんの会でも先生ともお話をしましたけれども、その前々日、私も林業部長、今日本では林業大臣でありますけれども、夜お会いいたしましていろいろとお話をいたしました。そのときにも、中華人民共和国においては相当造林というものをやっていかなければならない、そのために今日まで日本が人工造林をやってきた経過というものを勉強し、また現地も見ながら、そして除伐、間伐とか、そういった保育に関する全般も勉強したいというようなことを言われておりましたし、また今も少し御議論がありましたけれども、病害虫の防除、こういった問題についても自分としてはこれから日本といろいろな面で協力をしていきたい、そして自分たちもノーハウを持っておったりするというようなことがございまして、いずれにしましても我が国との関係というものをぜひともひとつ強く深めていきたいということを言われておりました。  そんな意味で、私どもといたしましても、今日までもいろいろな交流がありますけれども、これからもさらに中国といろいろな面で林業関係については話し合い、そしてお互いの国土の保全を図ると同時に、また林業というものを盛んにする面でもお互いに協力し合っていきたいというふうに思っております。
  82. 辻一彦

    ○辻(一)委員 三つ目に、私は牛の受精卵移植の問題について二、三伺いたいと思います。  この問題は二月のときにもちょっと触れたので簡単にお伺いしますが、アメリカのモンタナ州の大きな牧場等を見た感じでは、牛の受精卵移植は非常に実用化というか大規模な段階にも入っている。我が国は、いろいろ聞きますと、実験的には随分と進んでおりますが、まだまだその点では実用化の初期の段階にある。この差はかなり大きいように思いますが、これをひとつこれから大いに努力をして埋めていく必要があるのではないか。そんな中で、これからのこれの見通しが一つ。  それからもう一つは、アメリカにはエッグバンクがあって、受精卵等を貯蔵して世界のどこにでも送れる、こういうように言っておりましたが、将来日本にもこういうエッグバンクが、牛の受精卵等のバンクがつくられる可能性があるのか。  それから三つ目は、そういう場合に特定のところがそういうものを押さえておくようになると今度は農家には非常に不利になるわけですが、そういう心配はないかどうか、この三点についてお尋ねいたしたいと思います。
  83. 大坪敏男

    ○大坪(敏)政府委員 我が国におきます受精卵移植技術についてでございますが、主として家畜の改良の速度を向上するということを目的といたしまして、国や都道府県の研究機関中心となって基礎的な技術開発なり応用化に向けて取り組んでまいっているわけでございます。  このような受精卵移植技術が広く一般に普及されるためには、加えまして技術者の養成なり技術の高位平準化、さらには機械器具の開発等も必要となってまいるわけでございますので、このような段階に達するまでには、率直に申し上げましてなおある程度の時間がかかるんじゃないかというふうに見ているわけでございます。したがって、そういった段階で普及につきましてどのような体制で進めていくのが一番いいのかにつきましては、私どもは今後の検討課題と考えております。  ただいま先生指摘のように、米国のように企業採算ベースにのっとった民間の受精卵バンクのような体制も考えられるわけでございますけれども、我が国の場合におきましては、やはり、受精卵の秩序ある流通を確保するためには公的機関中心的役割を果たすことが望ましいのではないかというふうに考えている次第でございます。いずれにいたしましても今後の検討課題として検討してまいりたいと思うわけでございますが、御指摘のような民間企業が独占的地位を占めるとか、農業者が不利益を受けるというようなことがないように、その際は十分注意をしてまいりたい、かように考えております。
  84. 辻一彦

    ○辻(一)委員 もう一つ。例えば雪印乳業等では、受精卵の移植のような技術が非常に高度化をしていく場合に、農家の庭先技術だけではやはり問題がある、だから飼育委託にも限界があるというので、大規模な実験牧場をつくってやってみるというような構想もあるというように聞いております。こういう考え方が将来進んでいくと、大手企業は肉牛や酪農の分野にこういう形でどんどん進出をして、肝心の農家の手からそういうものが離れていくような懸念もありますが、そういう心配はないかどうか、それに対する歯どめというものは十分考えられるかどうか、この点をひとつ伺っておきたいと思います。
  85. 大坪敏男

    ○大坪(敏)政府委員 確かに、現在雪印乳業の研究所等、若干の企業におきまして受精卵移植技術研究が行われていることは事実でございます。ただ現状から申し上げれば、あくまでも国や都道府県の研究機関あるいは牧場等が主体となって、主導的立場でもって進められていることは現実でございますので、今後の展開につきましてもやはりこの種の国や県の機関中心的に進めていく、普及段階に入りましても公的機関中心的役割を果たすような方向で持っていきたい、かように考えております。
  86. 辻一彦

    ○辻(一)委員 あと五、六分でありますので、野菜の問題は残念ながら次回に譲って、きょうは割愛させていただきたいと思います。  そこで一つ伺いたいのは、今まで農林省のいろいろな助成や援助の方向は大体集団であるとかグループに対する助成ということが中心であるように思います。私はこれは大筋は正しいと思います。ただ、発明発見というよりも、新しいものを創造する技術的ないろいろな開拓になると集団とグループは必ずしもいいのができるとは言えない。個人のすぐれた創意というものも十分に生かされなければならないと思いますが、そういう意味で、これから本法が将来適用されるとする場合に、集団、グループでなくても、個人でもすぐれた創意等々が考えられる場合には、いろんな形で本法の助成をしていく対象になっていくのかどうか、これについていかがですか。
  87. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 本法の対象に個人はどうか、そういうお話でございますけれども、制度的にこれは個人でも一定のそういった要件を満たせば対象になり得るわけでございます。特に先生の今お話ありましたような農業者個人の創意工夫的な、営農技術の中で非常にアイデアがあってそういうものを実際に生かして新しい技術を進めているような、そういうケースの場合には、一般的には現在農業改良資金制度でそういった農業者の技術開発に対する無利子、無担保の貸し付けの制度がございまして、この機構対象よりも、後で申し上げました方が個人のそういうアイデア、創意工夫、こういうものを支援するのにふさわしいのではないかなというふうに考えております。
  88. 辻一彦

    ○辻(一)委員 詳しくは申し上げませんが、例えば前に参議院の農林水産委員会で活躍した工藤良平先生がいらっしゃるのですが、宮崎でキノコをいろいろ研究しているのです。中国とも連携するというような、内容としてもかなりすぐれたもののようですが、個人であるということで今まではなかなか研究助成の対象になっていないということです。本法の成立後は新しい状況の中でこういう問題もひとつ含めて考えておいていただきたい、これは要望しておきたいと思います。最後に、農業機械化研究所機構上は一緒になるわけですが、一つ農業労働災害防止という面から機械化研究所の役割も非常に大事なので、時間があればあれですが、詳しいことはもう申し上げられません。ただ数年前参議院の農水委等で、農業労働災害補償法の単独立法が必要である、こういうことで随分と論議をしてきた経緯があります。そういう点から、農業機械化研究所が統合されましても本来の仕事が後退することがないかどうか、この懸念がないようにしてもらいたいと思いますが、これについての見解。  それからもう一つは、農業労働災害防止と安全対策についていろいろと取り組んでおられると思いますが、その要点とこれからの取り組み、これについて伺って終わりたいと思います。
  89. 関谷俊作

    関谷政府委員 農業機械化研究所が従来行っております機械化の研究あるいは検査の関係でございますが、これは法律上も機械化促進法に基づきまして従来どおり実施をするということで、一切後退というようなことはない、こういうふうに私どもこれからも対処してまいる考えでございます。  特にその中で安全性、災害防止関係でございますが、これは一般的に行政の分野でも安全性、安全確保に必要な研修、知識の向上、そういう関係中心にいわゆる啓蒙活動も含めて実施しておりますが、機械化研究所自体としましては、研究面では、例えば安全カバーの装着というような機械自体の安全性向上、それから振動、騒音等による疲労防止、そういう面を通じました安全性向上と、さらに機械の安全性の測定評価方法の開発、こういう面の研究を行っておりまして、安全工学研究室というような専門の研究室も設けている次第でございます。  さらに安全鑑定の方につきましては、農業機械の二十八機種を対象にやっておりまして、大体出荷されております台数の九割程度はこの安全鑑定に合格した機種が占めておる、こういうことでございますが、これからもこの安全性の基準の問題も含めまして機械化研究所の非常に大事な業務として実施をしてまいりたいと考えております。
  90. 辻一彦

    ○辻(一)委員 終わります。
  91. 大石千八

    大石委員長 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時九分休憩      ――――◇―――――     午後一時九分開議
  92. 大石千八

    大石委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。日野市朗君。
  93. 日野市朗

    ○日野委員 議題となっております生物系特定産業技術研究推進機構法案について質疑をいたします。  ところで、私は今法案名を読み上げたのでありますが、どうも法案名が私にはぴんとこないのです。これは生物系特定産業というふうに読むのか、生物系特定産業技術と読んでいくのか、何とも奇妙な法律案の名前でありますが、大体この名称を決める経緯はどうだったのですか。非常にかいつまんでで結構ですから、ちょっと教えてください。余りにも難解な名称法案につけるのは、決してよろしくないと私は思います。
  94. 土屋國夫

    ○土屋政府委員 私からお答えさせていただきます。  先生のおっしゃいますように、この名称が大変長く複雑になっているということは私どもとしても承知をしておりますけれども、生物系の産業技術について研究推進していくという趣旨、ねらいでございますが、その際、生物系産業というのは大変広い概念でございますし、それらをすべて対象にしていくというわけにもまいらない、そこにおのずから一定の領域というものは特定せざるを得ないということ、しかも生物系産業というのは、ただ単に農林水産業だけではなくて、最近では非常に広い産業分野においてその技術というものが用いられているということ、そういういろいろ多様な対象というものをできるだけ広く取り入れていきたい、なおかつ、先ほど申し上げたようにその中である程度特定はしていきたい、そういうことと、それから研究をみずから行うのではなくて、民間活力の積極的な活用ということで研究推進していくというようなねらい、そういうことを総合的にできるだけ名称に正確に反映させたいという考え方で実はこのような名称になったわけでございまして、確かに指摘されますようなことは私どもとしても十分承知をしておりますし、こういうものはできるだけ簡素なもの、わかりやすいものであるということに我々としても心がける必要があると考えておるところでございます。
  95. 日野市朗

    ○日野委員 この研究推進機構ですが、これは農業機械化研究所なんかも取り込んでいくわけでございますね。そうすると、この名称でそういう機械化研究所のようなものまで包摂し切れるのかということになると、これはかなり違和感を感ぜざるを得ないと思うのです。きのうおいでになっていました農業機械化研究所理事長さんも、違和感がないと言えばうそになるというようなお話をしておられましたが、どうですか、これで機械化研究所の内容まで包摂しているんだと読むことに無理をお感じになりませんか。
  96. 土屋國夫

    ○土屋政府委員 お答えいたします。  法案の「定義」のところ、「目的」のところでその辺は私どもとしてもいろいろ知恵を実は出しておるつもりでございまして、「生物系特定産業技術」という定義の中には、現在機械化研究所で行っております業務というものも包摂し得るという判断でこの制度を考えておるわけでございます。もちろん、最近のいわゆるバイオテクノロジーに代表されるような技術がこの中心をなすことは間違いございませんけれども、しかし、そういうものに関する技術といったことも広く対象にしていく、農林漁業等に関する技術ということも対象にしていくということで、機械化研究所で行っておられます技術も十分そこには含め得ると考えておるところでございます。
  97. 日野市朗

    ○日野委員 我々が法律を検索するとき、六法全書であるとか法令集のたぐい、これの両次をずっと見ていくわけですよ。その目次で検索をしていくわけですが、農業機械化研究所のいろいろな業務の内容なんかについてそれを見たいというときに、この名称では普通の人はちょっと検索できませんわな。生物系特定産業技術研究推進機構法という法律でそこまで検索するのは、普通の人には無理ではないかというふうに思います。  それで、農水省は前に砂糖と蚕糸事業団を一緒にするときに両方並べて書いた、これはある程度、格好いいとは言えない名称、ネーミングであったろうと思いますけれども、内容は伝わったと思うのですよ。何かこれを見ていて少し格好をつけたなというような感じが一方でするわけですね。そして、こういうものは専門家の観域でわかればいいんだというような頭がなかったかどうか、そこいらは、ひとつ法制局も含めてちょっとセンスを伺っておきたいと思うのです。
  98. 土屋國夫

    ○土屋政府委員 私から先にお答えいたしますけれども、先ほど申し上げたような趣旨で大変欲張った構想の機構になっておりますので、それをなるべく正確に表現をしたいという趣旨でこのような名称になったわけでございますが、この定義等をよくお読みになっていただければ、私どもとしては、特に農林水産業関係機械化研究というもの以外でも、いわゆるハイテクだけを対象にしている制度ではございません、そのほかのいろいろな研究分野をもこの生物系特定産業技術研究推進機構対象にしていこうという考え方でございますので、それらのことをも広く入り得るようなということで、このような名称あるいはこのような定義をしているわけでございまして、確かに若干わかりにくい点は我々としても認識しておりますけれども、そういう意味で趣旨を何とかここでは体しているのではないか、御理解いただけるのではないか、そういうふうに考えておる次第でございます。
  99. 関守

    ○関政府委員 お答え申し上げます。  私どもといたしましても、法令ができるだけわかりやすい方がよろしい、何も専門家だけがわかっていればいいんだというものではないことは御指摘のとおりでございまして、かねてから、そういう点についても十分わかりやすくできないかということを法案審査段階におきまして心がけてきているつもりでございます。  ただ、先ほども農林水産省の方からお答えがございましたように、この法人対象といたします分野が非常に複雑でございますし、またその中で微妙な仕分け等の必要がある、それからまた対象となる技術が今発展しつつある、あるいはこれから大きく発展をしていくという技術でございますので、そういう点からもそれを今の段階でなるべく包括的に示すというようなこともございまして、御指摘のような着手複雑な表現になっているということは確かかと思いますけれども、ただ、私どもとしては、これを一つ法人の名前としてふさわしいものという観点で考えました場合、こういう表現にすべきものというふうに考えた次第でございます。
  100. 日野市朗

    ○日野委員 法律名称でございますが、法制局にこんなことを言うまでもないわけですけれども、これよりももっともっと長いのは幾らでもございます。それぞれに苦労しながら、その法律の内容ができるだけわかりやすいようにするという努力をしているのではなかろうかと僕は思うのです。ですから、余り短いコンパクトな名称にしなくとも、長さというものはある程度内容を明らかにする以上必要な場合が多うございますので、ぜひこれから、こういうようなわかりにくいようなときは、「生物系」ということと同時に「農業機械化の研究」ということも並べて書くという、先例だって今までいっぱいあるのですから、そういったものを十分盛り込むようにしてもらいたいものだというふうに思います。  特に、大臣、この農業機械化研究所の人たちというのは、今まで農業機械化研究所ということで誇り高い仕事をしてきた人たちだと思うのですよ。まさにすばらしい技術を自分たちのところに集約をして、それを発展させようということでいろいろな努力をして折られて、それに誇りを持ってやってこられたと思うのですね。そういう人たちが、今度は生物系特定産業技術推進機構職員、こうなるわけですわな。これで名刺に書いて出した場合、一体あなたは何をやっているのと聞かれるでしょうな。これは大変なことだと思うので、これは農水省の非常に大事にしなければならない日本におけるすばらしい人的資源ですから、そういうところの人たちがちゃんと誇りを持って仕事をやっていけるように、ひとつこれからも配慮をいただきたい。  これから農水省はいろいろ法案を出されるのでしょうけれども、この法案の内容、私見てちょっと気負いがあると思うのです。用語の使い方や何かでも気負いがあるなという感じがいたします。そういうことを感じますので、名称のつけ方なんかについてもひとつ十分に留意をいただきたいというふうに思います。  それから、もう一つ、今答弁者が法案の「目的」とか「定義」を見ればというようなことをお話しになりましたが、「目的」というのはページをあけてから見るのですな。じゃ、どの本に、どのところに書いてあるかということは、まず名前で探すわけですから、ひとつそこいらは留意をお願いしたいというふうに思います。  それから、「定義」の部分ですが、これまた非常に難解でございます。読み上げることはよします。皆さんの手元にあるわけでございますから読み上げることはよしますが、まず、私はこれを何度も何度も繰り返して見て、なおかつ難しい、わからない。率直に言って、十分にこの定義を自分の頭の中でそしゃくして自分のものにしたかと言われると、試験でもしたら合格点が取れるかどうかというようなところまでしか理解していないだろうと私自身で思っています。これはやはり定義の書き方そのもの、これ自体が非常に難解な用語でつづられていて、非常にわかりにくいものになっていると思うのです。おまえは頭が悪いんだと言われてしまえばそれっきりでありますが、私は日本人の平均ぐらいのところまではいっているんじゃないかと思っているのですよ。それから、法律は人よりは少しは余計に読んでいるんじゃないかとも思っていますし、それからバイオ関係についても、人よりは、平均よりは少しぐらいは上の知識を持っているんじゃないかと思うのですが、それでなおかつわからないのですね。  こういう難解な定義なんかをつくる。定義というのは、ここからすべてのものが発展していくわけですから、非常に重要なものでございますが、これは難解だとお思いになりませんか。大体、大臣、読んでみてどう思います、この定義、ばっとわかりますか。
  101. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 今先生から、少し気負いがあるのじゃないかという御指摘がございました。私が法案を提出しながら、この名称は大変難しい名前である、あるいは定義がなかなか難解であると言うことはあれでございますけれども、確かに、多くのものを目的としているために、それを表現するために長くなってみたり非常にかた苦しい定義になってしまっているという面があると思います。  しかし、先ほどからお話がございましたように、法律名称によって少なくもある程度のものがすぐ頭の中に浮かんでくるようなものでなければならない。実は冗談で、ひとつバイオテクノロジーでわかりやすい名称を生み出してくれないかということを言ったのですけれども、確かに一見したところ難しいというふうにも私も実は感じております。こういったことについても、確かにいろいろな目的は含んでいるにしても、もっとわかりやすく、一日見てみんながいろいろな目的がわかるような表現の仕方というものを、もっともっと我々も勉強しなければいかぬと思います。
  102. 日野市朗

    ○日野委員 私も法律で飯を食ってきた人間なものですから、いろいろな法律は読んでおりますが、難解度ではこれはトップクラスではあるまいかと思いますのでこういうお話をしました。特に、私、久しくおつき合いをいただいている農林水産省からこういう難しい内容のものが出てくるということになりますと、ある意味で非常に残念に思います。そういうことで、ひとつ注意を喚起しておきたいので、これからこういう形ではなく、もっと平易なもので表現されるように心がけていただきたい。  この点については、大臣、それから法制局にもそういうお心がけをいただきたいということでお願いしたいのですが、いかがでしょう。
  103. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 私どもも、これは国務大臣という立場からもいろいろと今までも議論がありました。どうも法律が長過ぎるぞとか、難し過ぎるぞという話もあって、そういうものをもっと平易にするようにということについて今日まで心がけているわけでありますけれども、確かに新しいいろいろな分野を含んでおるということで表現が難しかったのだと思いますが、これから全般的に法律の名前とかそういったものについてわかりやすいものにするように、我々としても心がけていきたいというふうに思っております。
  104. 関守

    ○関政府委員 お答え申し上げます。  先ほどもお答えを申し上げましたけれども、私どもとしても、法令を平易にする、わかりやすくするということについては、これは法案審査の上でも前々からも心がけております。  御指摘のように、確かにこの法案は、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、特にいろいろな分野について、それを込めた形で業務とか法人性格というのが定まってくる、そのもとになる定義であるということから、複雑あるいは難解になっている点は、御指摘のとおり多少そういうことはあるかとは存じますけれども、私どもとしては、今回、実は業種の種類について各号設けております。これも今まで定義では余りそういうことをやった例はないのでございますけれども、わかりやすくするための一つの手法としてそういうことも御提案をしたりしてやってきておりますし、今後とも、御指摘のような難解きを解消するようにいろいろな法令につきまして努力をしてまいりたい、かように考えております。
  105. 日野市朗

    ○日野委員 ここのところで思わぬ時間を食ってしまったので、では内容に入らせていただきます。  まず、第二条でございますが、「この法律において「生物系特定の産業技術」とは、その業務において生物の機能を維持増進し、若しくは利用し、又は生物の機能の発現の成果を獲得し、」こういう言葉がずっと並んでおります。「維持増進」だとか「利用」だとか「機能の発現の成果を獲得し、」だとか、こういう言葉がずっと並んでいるのですが、こういう言葉は、価値判断がこれから微妙に影響する言葉であろうと私は思うのです。  ここで今「増進」という言葉をとらえてみますけれども、例えば何が「増進」に当たるのか。生物の機能を増進するということ、それは一体どういうことなのだろうかということをひとつ御説明いただきたいと思います。
  106. 土屋國夫

    ○土屋政府委員 お答えいたします。  先生御承知のとおり、生物の機能としては、自己増殖機能、代謝機能等いろいろあるわけでございますが、そういう機能というものを、人間が何らかの形でそこに作用して、その機能がよりよく拡大されるように、拡充されるように、そういうことをねらいとするというのが「増進」ではないかというふうに考えておりますけれども、端的には、植物なり動物というものの成長を促進をする、そして生物としてのいろいろな機能がより発揮されるような、そういうことに作用するということが「増進」ではないか。ですから、植物の栽培とか家畜の飼養とか、そういうことがこの「増進」に当たるのではないかというふうに考えております。
  107. 日野市朗

    ○日野委員 生物の機能というのは非常に多種多様でございます。生物というのはまことに多くの機能を営むわけでありまして、その機能を増進をしていくということ、これは、今土屋さんがお挙げになったものは、増進といってもそれはだれでも肯定し得る増進だろうと思うのです。しかし、生物には好ましくない機能というのもいっぱいございますね。そういうものを見分ける尺度というのは、この法案では一体どのように考えていくのでしょうか。
  108. 土屋國夫

    ○土屋政府委員 お答えいたします。  この法案、制度は、申し上げるまでもありませんけれども、産業振興というのが大きな眼目、ねらいでございます。したがって、その増進という場合におきましても、生物を経済的に利用するために行う、あるいはそれに役立つ、そういう視点、観点からの判断をしてよろしいのではないか、またすべきではないかというふうに考えておりますので、そういう面から、有害な、あるいはそれに反する意味における増進とか機能の増強ということを考えているわけではございません。
  109. 日野市朗

    ○日野委員 今土屋さんがおっしゃったこと、有害なという一言でおっしゃったのですが、有害であるか有害でないかというようなことについても、これは非常に文化的なといいますか、文化的な価値の尺度をここに持ち込むと非常に妙なことになります。例えばアルコールをつくる技術、これは特に飲料のアルコール、酒をどんどんつくろうなどということになりますと、回教国ではそういうことは有害なことになってまいりますね。私は、そういう文化的な価値の尺度というのは、非常に大事なことではなかろうかと思うのです。  それから、もう一つの面でいいますと、私は技術というのは決して中立なものではあり得ないと思っているのです。そのときのそれぞれの国の政策によっても違うであろうし、産業を発展させるといっても、ではどのような産業を発展させていくのかという政策的な選択も入ってまいりましょうし、そういう点についてはどのように対処していこうとしておられるのか。この「定義」を見ておりますと、あたかも技術というのは中立なものと考えた上で立案しておられるように思えるのですが、いかがでしょう。
  110. 土屋國夫

    ○土屋政府委員 お答えいたします。  技術というものが、国民生活あるいは社会に対していろいろなインパクトを与えるということはお説のとおりでございますけれども、私どもとしては、第一条の「目的」にもそこは明確に規定をしておりますとおり、この農林水産業を代表とする「生物系特定産業技術高度化推進し、もって国民経済の健全な発展及び国民生活の向上に資することを目的とする。」ということをこの制度の大きなねらいにしているわけでございまして、その視点から先ほども御質問があったようなことにつきましても判断をしてしかるべきではないかと考えておりますので、特に農林水産漁業の発展というところを私どもとしては十分念頭に置き、そこに視点を合わせて判断をしてまいりたいと考えております。
  111. 日野市朗

    ○日野委員 私もこの「目的」は読んでいるのでございまして、読んでいての一つの問題提起を行おうとしているわけなんです。そういう価値的な判断尺度は一体だれがそれを立てていくのか。これは技術高度化推進するのに役立つのだ、そういう生物機能の増進なんだ、こう判断をする場合の判断する者はだれかということです。
  112. 土屋國夫

    ○土屋政府委員 確かに、いろいろな人の考え方の違いによって分かれるところが全くないとは私も思いませんが、この制度におきましては、そういうことをできるだけ少なくするという意味で、後で組織のところにもいろいろ出てまいりますけれども、評議員会とか、あるいはその他審査をするについては、その道の権威ある人、学識経験ある人、できるだけ大勢の方々に、そういうプロジェクトの採否についてはできるだけ客観的な公正な判断をしていただくようなことを考えておりまして、そういうことで最善の努力をしていくということが、私どもとしてはこの制度の仕組みとして重視している点でございます。
  113. 日野市朗

    ○日野委員 どうも議論が余りかみ合っていないようなんで、先に進んで、後からまたこの点を若干問題にしたいと思います。  この「定義」の中で、さっき法制局の方が言われたように、確かに号を設けてできるだけその内容を明らかにしていこうという努力をしておられるようでありますが、いわゆる生物系のいろいろな技術というもの、これはまさに今花盛りでございまして、電気屋が微生物を扱ってみたり、鉄鋼のメーカーが鉄をばい菌に食わして製錬をうまくやろうと考えてみたり、生物系の技術というものはあらゆる場面で活用されている。私、そのこと自体は結構だと思うのです。  ただ、第三号でございますね。ここで、政令で業務の内容を定めるということにしてあります。この定義を見ますと、政令で定めるということに関して「技術高度化を図ることが特に必要でかつ適切と認められる業種」ということで政令で定めることにしているわけですが、これを見ますと、非常にこれは広い範囲に範囲が広がり得るのではないかというふうに思います。この点はいかがでしょう。
  114. 土屋國夫

    ○土屋政府委員 お答えいたします。  第三号によりまして、この「政令で定めるもの」ということにつきましては、特に「技術性格を勘案し、」という大きな条件をこの三号の中で規定をしておりますけれども、そのほかに、大前提といたしまして、その第二条の前段の方にございますように、「生物の機能を維持増進し、」云々というところで、「若しくは利用する事業で」ということで、ここでおのずから一定の範囲が画されるのではないかというふうに考えておりまして、そういう意味ではおのずからそういうふうに限定されるというふうに理解しております。そう大変広く拡大をされるということではないというふうに承知しております。
  115. 日野市朗

    ○日野委員 どうなんでしょうか、農水省が、バイオテクノロジーと称されるものについては、こういった技術の元締めになってといいますか、産業に利用する場合は、農水省がそれの元締めになってこれをコントロールしていこうという意欲がある法律とも読めるのですが、そこいらはいかがなんでしょう。
  116. 土屋國夫

    ○土屋政府委員 お答えいたします。  先生今御指摘のように、私どもとしては、意欲として、農林水産省が特に最近のバイオテクノロジー関係についての技術開発について大きな役割を果たしていかなければいけないという認識と、またある程度の自信を持っているわけでありますけれども、ただ全体を眺めてみれば、最近は御承知のように技術というものが各産業で相当広く使われている、開発をされているという実態もあることは承知しておるわけであります。  特にこの制度は、冒頭名称のところでもいろいろ御指摘がございましたけれども、単に農林水産業だけではなくて、もちろん農林水産業中心ではありますけれども、いわゆる生物系産業というものを広くこの制度の対象にして取り入れていこうということで、私どもとしてはかなり欲張った制度であることは間違いございませんので、それがいろいろなところで複雑にしているということは否めない事実でございます。がしかし、その意欲はひとつ御認識、御理解をいただきたいと思っておる次第でございます。
  117. 日野市朗

    ○日野委員 大臣や事務局長もよく聞いていてくださいよ。土屋さんは非常に専門家でいらっしゃって、広い学識には敬意を表しますが、やはり政治向きのことになってくるとお二人にいろいろと御判断をしてもらわなければいけないことがありますから。  今聞いたこと、このバイオテクノロジーの点については、これを産業に生かしていくという点については農水省がイニシアチブを持ちたいという、そういう意欲を盛り込んだ法案だというふうに理解してよろしいですか。
  118. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 そのように強く考えております。
  119. 日野市朗

    ○日野委員 私も、このバイオテクノロジーの持っている可能性というものは非常に大きなものがありまして、これは積極的に利用していくべきものであるし、特に農水省がそれにかかわっていくということは正しい方向であろうというふうに思っております。これは厚生省や通産省なんかもいろいろこれにかかわっているところはいっぱいございますけれども、自然というものを全体的に見るという点では農水省が何といっても一番大事な役所でありましょうから、そういう点で、私は、ぜひとも農水省としては自然というものをトータルに見ながらこのバイオテクノロジーの問題について取り組んでいってもらいたいというふうに考えている者の一人なんであります。  そこで、一応その「定義」についてもう少し伺っておきますが、「農林漁業」と言ったり、それから「飲食料品製造業」とか「たばこ製造業」とかいうふうに一号、二号で書いてあって、あとはかなり包括的に政令で定め得るものだと考えているということでよろしゅうございますね。
  120. 土屋國夫

    ○土屋政府委員 お答えいたします。  産業分類等に基づいてこの政令指定が必要なものについては、この条件に該当するものについては今後とも指定をしていくということがあり得るというふうに考えております。
  121. 日野市朗

    ○日野委員 バイオテクノロジーの分野の一つとして、エネルギー問題に対するアプローチが言われておりますね。一例を挙げますと、ユーロホビアという植物の属がありまして、この成分というのは非常に石油とよく似ているということで、アメリカあたりではそれの実験プラントなんかがつくられている。もしそういうものが成功するということになりますと、石油植物とよく言っていますが、そういったもののプラントを経営していくということは農業に当たるでしょうか。
  122. 土屋國夫

    ○土屋政府委員 お答えいたします。  ちょっと十分その点については検討をしておりませんので、必ずしも正確にはお答えできないかもしれませんけれども、ここの「定義」といたしましては、先ほどから申し上げておりますように、「その業務において生物の機能を維持増進し、」とかあるいは「利用し、」とか、さらにその「機能の発現の成果を獲得」するとかいうことで条件を掲げてございまして、ここは農林漁業が代表的な業種ではないかということで、この一号あるいは二号、飲食料品製造業等を含めて書かれているわけでありまして、このような業種と類似のものについてはここに該当するのではないかというふうに考えているわけであります。  ただ、もう一つ申し上げておきますけれども、この生物系特定産業技術というもののいわば定義は、一つはそういう産業という面からとらえていることと、もう一つはその技術性格からとらえているということで、その二つの条件、二つの側面から判断をしてこの技術対象になるというふうに考えておりますので、先生先ほどお話がございましたようなことがそれに該当するかどうかは、ちょっと今の段階で即答申しかねる状態でございます。
  123. 日野市朗

    ○日野委員 この定義では、政令でかなり広範なものをカバーし得るというふうに思うのですがね。その前に「農林漁業」とか「飲食料品製造業」「たばこ製造業」というのをとりたてて二つ並べてあるわけですね。ですから私は、本当ならこの定義をしている第二条というのは第三号だけでよかりそうなものではなかろうかというふうにも思っているのですが、わざわざこの「農林漁業」というようなものを挙げている、そしてこれがかえって一つの縛りになってしまいやしないかということをちょっと心配をするのですが、いかがでしょう。
  124. 土屋國夫

    ○土屋政府委員 お答えいたします。  縛りになるかどうかということでございますけれども、私どもとしては、現段階において明確にわかっていることは、なるべくわかりやすくというようなことも含めまして、法律上でも明記した方がよろしいという判断で、いろいろ先ほど法制局の方からのお話もございましたけれども、わざわざここに例示をしたわけでございます。しかし、生物系産業というのは必ずしも農林漁業と飲食料品製造業及びたばこ製造業だけに限られているということを断定するわけにはまいらない、特に技術開発の進歩が非常に速いわけでございますので、今後どういう業種がそういうことになるかということはなかなか予見できない点もございます。  そういう意味で、主たるものは農林漁業あるいは飲食料品製造業、たばこ製造業という一号、二号であることは間違いないと思いますけれども、今申し上げたようなことを含めて将来へのそういう余地を残すために、このような規定をしていただいているということでございます。
  125. 日野市朗

    ○日野委員 バイオ技術というのはいろいろな方向に突発的に進むということがよくありますね。一つのものに向かって研究をしているけれども、それ以外のいろいろなものが見つかってくるということがよくあるので、かなり幅広い範囲を想定しておかなければならないのではないかというふうに私何か感じているわけでありますが、そうすると、かなり第三号の政令で定める範囲というものを幅広く自分たちの分野として抱えておくという必要が出てくるのではないかと思います。  それで、特に、厚生省にやらせたりそれから通産省なんかにやらせたりすると、余りもうからない分野でのいろいろな生物の機能やなんか、そういったものを切り捨てていくという傾向がややもするとあるのですね。例えば、廃棄物の処理というようなことはバイオテクノロジーを使ってやるべきではないかということが非常に有力に主張されていると思いますが、そんなところまで自然というもののリサイクルということを考え。ながらやっていけるところというのは、結局農水省ぐらいしかないのではないかというふうに思っているのですが、いかがでしょうか。
  126. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 先生のおっしゃるとおりでございまして、私どもも、農業自体、自然の生態系を利用し再生産確保する産業というふうに理解しておりますし、それで、今後の技術開発一つの柱はやはり生産性向上だと思いますけれども、もう一つの柱は、おっしゃるような一つのリサイクルシステムといいましょうか、先ほどユーロホビアのお話もございましたけれども、バイオマスの変換技術と申しましょうか、そういうことで来利用の資源を有効に利用したり、あるいは環境の保全技術、こういうような中にバイオテクノロジーを活用していく、これは農業の中における非常に重要な技術領域だと理解して考えております。
  127. 日野市朗

    ○日野委員 私、何か見ていて非常に魅力的であり、これはどうしても取り組まなければならないなと思うものに、一つは先ほども言ったエネルギー資源の問題がございますね。それとバイオリアクターというものも非常に重要なものになってくるのだろうと思うのですが、バイオリアクターということになると、この定義の中のどれに当たるのですか。
  128. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 バイオリアクターがこの定義の中で一番利用される領域は、飲食料品製造業であろうかと考えております。もっとも、先生おっしゃったようなほかの領域でもいろいろあるかと思いますが、通常はこの食品関係の製造工程の効率化、こういう技術の中で活用されると考えております。
  129. 日野市朗

    ○日野委員 私は、このバイオテクノロジーを幾水省で積極的に取り組んでいくということには賛成をいたします。でありますから、これは決して憶病にならずにぜひお進めをいただきたいというふうに思いますし、この法律ができましたら、可及的に広くこの法律の適用をしてもよろしいのではないかというふうに思いますので、そういうことを私の意見として申し上げておきます。  それから、ちょっとこの制度の構成上、役員の問題について伺わせていただきますが、役員は理事長、副理事長、理事、それから監事、こうなっております。それから評議員会が置かれることになっておりますが、それぞれの役職の役割分担、これについてちょっと説明していただけませんか。
  130. 土屋國夫

    ○土屋政府委員 お答えいたします。  法案の第十八条のところにそれぞれの役員の職務及び権限というものが明確に規定されておるわけでございます。御案内のとおりでございます。これは一般的な役割分担でございまして改めて申し上げるまでもないと思いますけれども、理事長は機構を代表してその業務を総理するとか、あるいは副理事長はその理事長を補佐して業務の掌理をするといったようなことで、理事、監事とございます。  そのほかに、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、この組織というものをより民間の御意見というものを反映させて運営をしていく、そういうねらいでもって評議員会というものを設けることにしているわけでございまして、この評議員会において重要事項を審議していただくということで、例えば定款の問題とかあるいは業務方法書の問題とか、そういうような重要事項というものを御審議をしていただく。その評議員としては、この機構業務等に非常に学識経験を有する者の中から適任者を選んでまいりたい、そういうふうに考えておるわけでございます。できるだけそういう民間の御意見というものを反映させた運営をしてまいりたいという趣旨でございます。
  131. 日野市朗

    ○日野委員 どうもこの評議員会の役割がよくわからないのですね。「その運営に関する重要事項を審議する機関」、こういうふうに第二十五条に書いてありますが、重要事項であるかどうかということになりますと、一つ一つが重要でないというものはないのですね。「重要事項を審議する機関」ということでは非常に抽象的過ぎる記載じゃなかろうかというふうに思いますし、それから、業務方法書ということで第三十条に、業務をどのように進めるかについては方法書を作成して主務大臣の認可だ、こうなっておりますが、じゃ業務方法書というのは何を書くのかというと、これも「主務省令で定める。」こうなっていて、ここいらはかなり白紙的であるというふうに私感ずるのですが、その重要事項にはどんな内容が含まれていくのかというようなことがどうにもはっきりしない。特にこの「業務」の規定がございますね。第二十九条の各項各号にございますが、これらの業務選択、例えば「必要な資金の出資及び貸付け」、これはどういうテーマに対して、またどういう団体に対して行うかというようなことは重要事項に入るのかどうか、そういう点いかがでしょう。
  132. 土屋國夫

    ○土屋政府委員 お答えいたします。  まず評議員会の役割ということで、先ほどちょっと触れましたけれども、重要事項として私どもが考えておりますのは、定款あるいは業務方法書、予算、事業計画その他業務運営基本となる重要事項というふうに考えております。  なかんずく定款でございますけれども、定款の記載事項ということで、第十六条にありますように、名称あるいは資本金、役員、その他業務及び執行に関する事項、財務云々ということで、公告の方法等も含めまして定款の記載事項になっているわけであります。このほか、業務方法書につきましては、出融資業務等を中心としてかなり具体的な業務の方法というものを明確に規定をするということで、これはほかの類似の機構法人等もございますので、そういうところとの均衡等も十分考えながら、重要事項についてはそういう意味できちっとこの評議員会等において御審議いただけるような仕組みにしてまいりたいというふうに考えております。
  133. 日野市朗

    ○日野委員 ではこの「業務」について、どのようなテーマに対して、どのような団体に対して金を貸し付けたり出資をしたりというようなことは、どこの機関で決めることになりますか。
  134. 土屋國夫

    ○土屋政府委員 お答えいたします。  その具体的な出融資の業務のまさに方法につきましては、対象あるいは条件その他につきましては、この業務方法書においてかなり詳細に定められるべき事項ではないかというふうに考えております。
  135. 日野市朗

    ○日野委員 そこで、さっき私が内容に入ってから一番最初に提起した問題が出てくるわけですが、どういうテーマを選ぶのだろう、どういうところにだったら金を貸すんだというような、今ここで具体的なケース一つ一つについて言えというようなことではございませんよ、その場合の準則のようなものは一体どこで定められてどのように機能していくのかということです。
  136. 土屋國夫

    ○土屋政府委員 お答えいたします。  出融資の対象とする研究プロジェクトにつきましては、民間から提出されます申請課題について、その試験研究目的とかあるいは試験研究研究手法とか、そういった点につきまして公正適切な審査を経て決定されるという仕組みにしたいというふうに考えているわけでありますが、そういう場合に、理事会とかあるいは評議員会とか、そういうところで定められている基本的な方針に即して、その分野において造詣の深い学識経験者などで具体的なプロジェクトを御審査いただきたい、そういうようなことを考えているわけであります。  現在私どもの方でいろいろ関係業界の方からお伺いしておりますプロジェクトの例といたしましては、例えばハイテク技術を応用した野菜、たばこ等の新品種の作製であるとか、あるいは動物のワクチンの問題とか、そういった技術開発、あるいはいわゆるバイオマス変換技術と称されていますけれども、低未利用資源の有効利用技術とか、さらには食品の製造手法の技術とか、そういった技術についての民間からの研究の需要が今後とも予想されるのではないかというふうに現段階では承知をしているところでございます。
  137. 日野市朗

    ○日野委員 いや、バイオテクノロジーのいろいろな基幹技術、その応用分野というのはずっといろいろな形で喧伝されておりまして、今私はそれ全体に焦点を当てて聞こうというふうに思っているわけではないのです。  どうせ大して資金が豊富なわけでもございませんので、ではその中のどれを選ぶかというようなことがこれから大事になってくるわけですよね。そうすれば当然価値判断が入ってこようというわけです。今日本の産業界でこういう技術が必要なんで、Aという技術、Aという分野、これをさらに進めなければならないんだという人もいるだろうし、いや、そうではないよ、Bだよ、Bの方がこれから必要なんだという人もいるだろう、いや、そうではない、Cだろう、Cの分野だろうという人もいるだろう、いろいろ出てくるでしょう。そういうときの選択をどのようにやっていくのか。私はさっき、技術というのは中立てはあり得ない、こう言いました。文化的な価値判断もしなくてはいかぬだろう、政策的な価値判断もしなければならないだろう、そういうものをどこで決めていくのか、こういうことを言っているのです。
  138. 土屋國夫

    ○土屋政府委員 お答えいたします。  先ほど来その手続等についてはお答え申し上げたつもりでございますけれども、具体的なそのような採否の判断基準といいますか、これはかなり個別的なものであって、なかなか画一的には決めにくいというふうに考えておりますけれども、私ども、基本的な考えといたしましては、まず、農政の推進方向に即しており、必要性、緊急性があることというのが非常に優先されるべき第一の条件ではないかというふうに考えております。  それから、技術的に見て、リスクは伴うもののある程度成功の可能性があるということも、この機構としては大事な点ではないかというふうに考えております。  それから、研究方法とか体制等が、いわゆる安全性も含めまして適切妥当であるということが大事な条件ではないかというふうにも考えているところでございます。  そのようなことをいろいろ総合的に判断をして決めてまいるわけでありますけれども、その具体的な判断に当たっては、その面における学識経験を有する人の公正な判断、適切な判断に期待したいという面も多々ございます。  以上のようなことで、この問題については具体的にはこれからこの機構内部において、そういった問題も含めまして、民間の方も含めてのそういう体制づくりがされることを我々としても強く期待をしているわけでございます。
  139. 日野市朗

    ○日野委員 今あなたは農業の振興について、こう言ったのです。そうですね。農業の振興に有益であろうようなものをまずというふうにおっしゃった。ところが、この農業の振興とはどういうものが農業の振興なのか。アメリカみたいな大農業システムでいこうというのもいれば、もっと日本の農業の伝統を生かした、小さな耕地でありながら日本の伝統的な農業というものを大事にした地域農業を目指していこうという者もいる。そこいらで構造政策にもろにかかわっているのです。どういう技術選択するかという場合、ではそこいらの判断はだれがやるのですか。
  140. 土屋國夫

    ○土屋政府委員 お答えいたします。  大変難しい重要な御質問であろうというように考えておりますが、これからの我が国農業の将来をどういうふうに描くのか、あるいはそれに必要な技術開発は一体何であるのかという視点が当然あってしかるべきであろうという御指摘はもっともでございます。私どもとしては、そういう意味でいわゆる農政の方向というものを農林水産省全体としていろいろ考えておるわけでございまして、そういう方向を十分この業務に当たっても念頭に置いて、その方向に反することのないように留意をしていくということが必要ではないかというふうに考えております。  具体的にはそれをだれが判断するかということでございますけれども、そこは先ほど来申し上げているように、その機構のそれぞれの理事者あるいは評議員その他学識経験者、さらにはそれを指導監督する立場にあります農林水産省なりその他主務官庁がその点については十分留意をして指導監督していくべき性格のものではないかと考えておるところでございます。
  141. 日野市朗

    ○日野委員 そうなってくると、評議員会構成をどうするか、どういう学者にどういう意見を徴するかというようなことは非常に重大なことになってまいります。そこいらはちゃんとバランスをとってやってもらわなくてはなりません。よく指摘されていることですけれども、学識経験者、特に学者で専門的なことに首を突っ込み過ぎた人には、全体的なバランス感覚がない人が、全部が全部そうだと言っているわけじゃありませんよ、かなりおりまして、そういう人たちがこの機構業務に携わるということ――そういう人がいるのも結構でしょう。しかし、バランス感覚をちゃんと持って全体を見て判断のできる人を選ばなければならないのではないかと私は思うのです。  ここのところがこの機構がうまく機能していくかどうかということの非常に大きな分岐点になるような気がするのですが、そういう人選についてのお考えはいかがでしょう。これは技術屋さんではちょっといけませんから、行政にもろに携わる政治的な感覚で話していただかなければならない。いかがでございますか。
  142. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 先生のおっしゃいますように、評議員あるいは審査にかかわる学識経験者、こういった関係の方々の人選の問題でございますけれども、評議員につきましては、関係者の意向が十分反映されるという観点がまず非常に重要だと思っておりますし、審査にかかわる専門の学識経験者も、おっしゃるように、単にそれぞれの学問的な領域の専門というだけではなくて、やはり公正といいますか広い識見を持った方々を選ぶということを基本にすべきであると考えております。  それで、なお全体としては、この機構の評議員等についての考え方といたしまして、生物系というか農林漁業の関連技術、こういったものの利用場面はあくまで農林水産業の現場でありますので、そういった農林水産業の実態にも十分かかわる、またそういう認識の十分あるような方々もこのメンバーに加わっていかなければならないと考えております。
  143. 日野市朗

    ○日野委員 話は尽きませんが、時間が来ましたので終わります。
  144. 大石千八

    大石委員長 細谷昭雄君。
  145. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 これまで竹内、辻、日野、同僚各議員から、今、日野委員から指摘されておりますように大変難しい生物系特定産業技術研究推進機構法案について質疑がございました。私は、今までの同僚議員から出されましたいろいろな疑問点をまとめながら、なお確認をいたしたい、そんな立場から質問したいと思います。  大きく分けて三つの質問ということになりますが、まず第一に、この法案の大変ユニークというか新しい部門であります民間研究促進業務について、二番目が機械化促進業務について、そして第三点が運営について、この三つに分けて質問したいと思います。今までの同僚議員の質問に対してかなり具体性を欠いておるというふうな批判がございますので、答弁なさる方々、大臣も含めまして、どうか踏み込んだ率直なお答えをお願いしたい、まずこのように御要望申し上げたいと思います。  第一点としまして、生物系化学の新技術開発研究というのは、先ほども議論がありましたとおり、法案に書いております定義に一、二、三とありますけれども、何といっても、農林水産業に寄与する、そのことによって国民生活の向上なり地域の活性化なり農業者自体に対する利便をもたらすことを目的としておることは言うまでもございません。そこで、そういう目的であるとすれば、特定生物系化学の新技術開発研究の分野というものを明確にすべきであると思うわけであります。政令で定めると言うけれども、この法案が用意されている以上は、あらかじめ具体的に研究領域なり技術領域なり分野なり、この内容について特定すべきじゃないか、それが我が党の意見であります。
  146. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 この機構対象といたします生物系特定産業技術の分野ということでございますが、先ほどもいろいろと御議論をいただきましたように、これにつきましては大きくは二つの縛りということで定義がされているわけですけれども、若干平たく申し上げますれば、一つの要件は、農林漁業あるいは飲食料品製造業、こういった業種におきます生物または生物機能成果に依存する産業、いわゆる生物系産業といいましょうか、生物を直接対象にする産業で用いられる技術でありますし、もう一つは、その技術の別な要件といたしまして、生物の機能等に密接に関連する試験研究を必要とする技術、この二つの要件で生物系特定産業技術を縛っております。  では、これは内容的には一体どういう技術領域であるかというお話でありますけれども、農林漁業等に役立つ新しい技術領域、これは生物機能等に関連いたしまする研究を伴うものでありますれば幅広く対象になり得るというふうに理解しております。  若干具体的に申し上げますれば、バイテク、バイテクと言われておりますけれども、例えば最近農業の現場で非常に活発に利用されておる組織培養とか、現在非常に基礎的な段階でありますけれども、将来技術である遺伝子操作とかによって生物の機能を利用していくようなバイオテクノロジー開発、あるいはこういった技術を応用した新品種の開発研究、こういったものは当然この機構対象技術として代表的なものと考えられるわけでございます。  しかし、こういったバイオテクノロジーに限定されるわけではありませんで、この機構対象技術領域は、例えば作物の栽培管理でありますとか家畜の飼養管理でありますとか、あるいは食品の加工工程でありますとか、こういったいろいろな技術高度化を図る上では、今日、新しい素材でありますとかあるいはメカトロニクスでありますとか、こういったものの応用領域が非常にあるわけです。こういう新素材あるいはメカトロニクス等を応用する技術開発、こういった領域も、バイオテクノロジーとは別な意味で、農林漁業に関する大変重要な技術領域であるというふうに理解しております。
  147. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 では具体的に立ち入ってお尋ねしたいのですが、皆さんの方で出しておられる資料、これは恐らく分野だと思いますが、この六ページに書いております試験研究には、バイオテクノロジー、新素材等関係技術の応用、メカトロニクスの応用、そして、画期的新品種等の開発、増殖から新醸造手法の開発まで、そしてそれは、農林水産業等の体質強化、食品産業等の発展、地域の活性化、それらに及ぶものだ、こういうふうに領域的に分野が非常に広い。  問題は、私が言っているのは、分野はわかるけれども、技術領域は何なのか。その技術領域についても、例えば皆さんの方で出しております「未来を拓くグリーンハイ・テクノロジー」、これは皆さんの方の農林統計協会ですけれども、書いているのは皆技術会議研究官なんですよ。この方共が言っておられるのですね。例えば細胞工学による新生物の作出から遺伝子操作、DNA技術、それから植物生理学の成長調整物質の研究、光合成のメカニズム研究、微生物利用の研究、バイオマス資源の変換利用技術研究、マリーンランテング計画、農業機械のメカトロニクスの応用、こういう技術分野も入っておると解するわけです、今の局長お話ですと。そんな広範なもので、そしてさっき議論にもありましたように、これは当面は十三億円なんですよ。もうそれを全部やるというのは不可能なんです。  皆さん方に資料をお願いしましたら、民間研究所というのは現在どのくらいあるのかといいますと、何と民間で千四百九十四社、そして働いておる研究員の方へが七千四百八十名。それに都道府県段階のものを加えますと、農林水産関係だけで四百五カ所です。そして八千二十九名。農林省管轄を除いてもかなり膨大な研究所なんですよ。したがって、こういう研究所研究テーマをすべて包含すると言ってみてもこれはもう効果がない。したがって、技術研究の領域についてもかなり特定すべきであるということなんですよ。金に限りがありますし、しかも目的は当面する農林水産業に寄与するということでありますので、今局長お話しの大変広い領域、何でも含むんだ、しかも無限に広がるんだという説明では納得しがたい、こんなふうに私は思うわけですよ。  もう時間がどんどん迫ってきますので、問題は、民間研究促進業務というものが対象とする技術開発部門というものは、いわゆるハードな応用部門に限られるのじゃないかと私は思うのです。基礎研究部門というのはどうしても公的な研究機関でやらなくてはいけない、こう考えますので、その点がどうだということ。  この場合、この融資がいやしくも企業の商業主義に毒され、利用され、そして後々この機構企業との癒着を云々され、いろいろな点で指弾されないようにするためにはかなり慎重な配慮が必要じゃないか、このように思うわけですよ。設立する段階で、このような指弾を受けないような研究の範囲をきちんと決め、そしてどこから批判されましても、少なくとも企業癒着にならない、特定企業の独占を許さない、こういう歯どめが絶対必要だ、我が党はそういうふうに主張するわけでありますが、その意の歯どめがありますか。
  148. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 まず最初に、対象とする民間研究がこういった新しい技術開発の中でどういう研究段階であるかというお話がございましたけれども、これはまず企業段階とか商品化段階といったものはこの機構対象にはしないということにしております。それで研究は、確かにバイオテクノロジーを初め基礎的な研究開発が非常に重要なところにありますけれども、さらにハイテク等につきましては基礎研究が応用開発研究に発展する可能性が非常に大きい特色もありますので、この機構の出融資等の対象といたしましては、基礎研究段階から始める研究も含めながら、中心的には応用開発というふうなところに重点がかかるかと思いますけれども、基礎から始めて応用開発、そういった研究民間が積極的に取り組めるような措置をしたい、そういう考え方でございまして、もちろん国等の研究は非常に基礎的な研究のところでその特徴があるわけでございますけれども、民間対象としてはそういうふうに考えてございます。  それからもう一つは、先生今御指摘の大企業独占についての歯どめは一体どうなんだ、同時に前前からお話のありますような安全性も含めてこれは一体どうなんだというような、そういうことと承っておりますけれども、この出融資の対象プロジェクト民間の創意と自主性といったことがその基本で、民間からいろいろな特色のある候補課題が上がってくるだろうと考えておるわけでございますが、これにつきまして、国の指導監督のもとに、先ほども申し上げましたように幅の広い学識経験者等から成りまする評議員会、そういったところの審議を経たそういうプロジェクト選定についての基本的な方針といったものに即応しながら、先ほど申し上げましたような中立、公正の立場の専門研究者といいますか学識経験者等に審査をお願いしていく、そこでこのプロジェクトの採否を決定いたすことにしておるわけでございます。  その際は、当然のことながら農林漁業の体質の強化を図ることに非常に重点を置きまして、そして政策上の必要性でありますとか緊急性でありますとか、あるいはその技術可能性といいますか技術の熟度と申しますか、そういうような観点、あるいは安全性の問題、こういった重要な要素につきましてそれぞれの研究計画の妥当性を総合的に検討してもらう、そういう中からふさわしいプロジェクトを選んでいく、そういうふうに考えておるわけでございます。  当然のことながら、そのプロジェクトの選定の基準として特に資本金の大小を問うわけではございませんし、むしろこの農林漁業関係技術研究というものは地域に密着をした、そういう地域振興といいますか、地域に特色のあるこういう研究活動に重点を置くということにも配慮したい、そういうふうに考えておりまして、資料なんかにもいろいろ加えてありますけれども、地域の件、例えば都道府県から農業団体、それから地域民間の第三セクターの設立、こういったことについては積極的に支援をしていくように指導をしたいというふうに考えているわけでございまして、こういった仕組みで、御懸念のような安全性の問題あるいは大企業独占、こういった事態が生じないような配慮を行っていき、なおかつこの機構全体の運営の中にもこういった趣旨を生かしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  149. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 私の聞いているのはまだ安全性のところまで行っていないわけですが、時間も余りありませんし、やはり必要なことだけ答えていただきたいというふうに思うのです。  大臣と科学技術庁にお聞きしたいのですが、今回の法律案というのは、全く新しい分野の、これは遺伝子組みかえを含む技術開発に関与しようという法律案でございます。したがいまして、我々としましてはこの生物系の技術開発についてはこれまでにない対応が必要だろう、こんなふうに思って、いろいろ不安を感じておるわけであります。もちろん、この技術については無限の可能性と夢を持っておることも事実でありますが、反面、マイナス効果ということもこれはあり得るわけであります。我々議論する場合にはこのマイナス効果の方をうんと出しますので、こういう何万分の一かの不安というのを除去していくということがあらかじめ必要だろうというふうに思うわけであります。  例えば、政府は昨年の八月に、組換えDNA実験指針、つまりガイドラインというものを出したわけであります。我々素人では大変難しいことでありますが、一体この指針を出すと後安心なのか。この問題について、まず国の方針、そしてどのようにして科学者の良心というものに訴えていくのか、そこら辺の問題について政府の考え方をお聞きしたい。  大臣には、これらの新しい分野に踏み込む農林水産省の立場、大臣のこれからの抱負、同時に、我々が不安に思っております生物系に対するマイナス効果をどう抑制していくのか、チェックしていくのか、こういうことにも触れまして御所見をお伺いしたい、このように思います。
  150. 高橋透

    ○高橋説明員 お答えいたします。  バイオテクノロジーの中でも組みかえDNA技術研究は特に重要な分野でございまして、その成果は、がんの本態の解明などの基礎的な研究からインシュリン、インターフェロン等の医薬品の生産、それから動植物の品種改良等の応用研究に至るまで、広い範囲において人類の福祉に大きく貢献するものでございます。  組みかえDNA技術研究は、生物に新しい性質を持たせるという面もございますので、研究実施に当たっては安全の確保に万全を期すべく、昭和五十四年八月に、内閣総理大臣が、科学技術会議の答申に基づきまして組換えDNA実験指針を定めておるところでございます。  現行の組換えDNA実験指針は、宿主として用いることのできる微生物等は大腸菌等性質のよくわかったものとし、安全確保のためにとるべき措置技術的な基準を示しております。  また、実験指針に示していない生物を宿主とする場合については、人も含むわけでございますが、科学技術会議ライフサイエンス部会におきましての個別の検討に基づく承認のもとで行われることとしているところでございます。この個別の検討に際しましては、安全性に係る内外の知見に基づいて十分に実験の安全性審査しております。  そして、組みかえDNA研究成果を直ちに人間に適用するということにつきましては、人間の尊厳の問題等もあって、極めて慎重な対処が必要と考えております。科学技術会議ライフサイエンス部会では、現段階では組みかえDNA研究成果を直ちに人間に適用するということは認めないこととしております。今後、研究の進展、諸情勢の変化等を考慮しつつ、組みかえDNA技術人間に適用する場合の安全確保について、必要に応じて検討を進めてまいりたいと考えております。  以上でございます。
  151. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 今いろいろと話がありましたように、バイオテクノロジーの先端技術、こういったものは、これからの農林水産業あるいは食品産業、この分野におきましても、生産性の飛躍的な向上ですとかあるいは国民経済の発展とかいったものにやはり相当大きく寄与してくれるであろうということを私どもは期待しながら、またこれから研究を進めていかなければいけないというふうに考えております。  しかし、そういった経済的な効果をもたらすということでこの研究が野放しで進められる、あるいはそういった中からもし安全性ですとかあるいは人間の尊厳ですとか倫理ですとか、こういったものを脅かすようなことになるとするならば、もしそういったものがあるとするなら大変なことになるわけでございまして、これはもう単に経済的な発展とかそういったものとは引きかえにできないものであるというふうに考えなければいけないと思っております。  五十八年ですか、ウィリアムズバーグ・サミットにおきましてこれは中曽根総理から発言があり、各国の首脳の皆様方も同意され、そして、それの話を踏まえまして五十九年に箱根、そして昨年はたしかランブイエ、そしてことしはたしかボンで話し合いがあると思いますけれども、生命科学と人間会議というのが開かれ、ここに参加する人たちは、単に技術者というだけでなく、幅広い学者の皆さん方ですとかあるいは宗教家の皆さん、そんな人たちも含めながらこの問題について議論をいたしておるわけであります。  今日までの内閣が出しました指針、こういったものを十分わきまえながら、また今、非常に次元の高い分野からもこういった問題についても指摘されておりますので、私どもは常にそういったものに対して配慮しながら研究というものを進めていかなければいけないというふうに思います。  ただ、とりあえず今、我々の方での農林水産あるいは食品産業、この分野において、そこまでのおそれはないというふうに思いますけれども、今科学技術庁の方からもお話がありましたようないわゆる組みかえDNA、こういった技術を進めていくということになりますと、これは非常に画期的なものでございますので、私どもとしても十分配慮をしながら対応していきたいと考えております。
  152. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 科技庁にもう一度お聞きします。  現在、この法案対象になっておる研究分野、技術開発分野というのは非常に広いわけであります。このガイドラインはDNAのいわば組みかえという分野だけてありますが、ほかの分野は、科学技術庁としてはガイドラインを設ける必要がないという判断ておりますか。
  153. 高橋透

    ○高橋説明員 バイオテクノロジーの種類には、細胞融合とか核移植とかあるいはトランスフェクションとか、組みかえDNA技術以外の技術もございます。しかし、これらの技術は組みかえDNA技術に比べて歴史もかなり古いものでございまして、経験も十分に積まれていて安全に行われているということがございます。  そういうことで、私どもといたしましては、組換えDNA実験指針のような指針は、ほかのバイオテクノロジー技術には当面必要はないのではないかというふうに考えております。  以上でございます。
  154. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 次に、少し立ち入って簡単にどんどん聞きますので、土屋さんだと思いますが、簡単明瞭に答えていただきたい。しかし、わかりやすく具体的にですよ。  まず第一に、融資が申請されます、そういう民間研究の場合、研究の中身、それから融資がなされたその結果、その研究成果というふうなもの、いわばそれらの企業業務の中身、こういうものを十二分にこの機構の中で管理、掌握されなければならない、こう思うわけであります。その対策はありますか。
  155. 土屋國夫

    ○土屋政府委員 お答え申し上げます。  この機構が具体的にいろいろなプロジェクト等の採否を決定し、そして出融資等を行っていくわけでありますが、もちろんそういうことについては、先ほど来申し上げておりますようにいろいろな角度から慎重に検討されるべきことでありますし、一たん採択が決定されたものについては、その試験研究推進状況について十分注意を払っていくということは当然でございます。  ただ、先ほど来いろいろお話がございましたけれども、この制度は民間の活力を増進する、民間技術開発に対してインセンティブを与えるということが一番の眼目でございますから、そうしたこととの調整を十分配慮しながら運営していく必要があるのではないかというふうに考えております。
  156. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 問題は、民間活力をいわば促進していく、その大きな眼目があるという反面、それでは企業秘密という名目で、何をやられておるのか、何を研究しておるのかというのを我々が知る自由は全く閉ざされておるのかどうか、そこに大変不安を感じるわけであります。今、土屋さんはいみじくも調和というふうな言い方をしましたね。どういう点でその調和をとるつもりですか。
  157. 土屋國夫

    ○土屋政府委員 お答え申し上げます。  確かに公的な資金を使っての御支援でございますから、それについて一般の方々にある程度のことが理解される、情報がある程度公開されるということは必要であると考えております。そういう意味で、例えばどういうプロジェクトが採択をされているのかとか、どういうような企業との間にそういうものが行われているのかとか、そういった状況について、先ほど申し上げたようなことと調和が保たれるような、あるいは差し支えないような、そういう範囲においてはできるだけ情報公開をしていく必要があるのではないかというふうに考えております。
  158. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 さらに、当初融資額は十三億というふうに一応なっております。この十三億の融資額というのは、皆さん方が今の時点で、年々ふやしていくつもりなのか、ある程度ここら辺というふうなめどがあるのかということが一つ。  それから、この十三億はどういう融資をされるつもりなのか。例えば融資件数をどういうふうにするとか、当面はどういう研究領域にしていくとか、こういう中身について一歩突っ込んだ質問をしたいと思うわけですが、現在考えておるものについて明らかにしていただきたい。
  159. 土屋國夫

    ○土屋政府委員 お答え申し上げます。  この資金計画は発足当初の資金計画でございまして、申し上げるまでもありませんけれども、十三億を融資業務に充てていきたいと考えております。  なお、次年度以降の問題でありますけれども、私どもとしては、この分野におけるそういう意味での資金需要というものはかなりあるというふうに考えておりますし、この制度をますます充実していくために、来年度以降においても資金的な裏づけをしてまいりたいというふうに考えております。財政事情厳しい折ではありますけれども、その点についての最善の努力をしてまいりたいというふうに考えております。  それから、件数その他についてですけれども、民間からどのような申請が上がってくるかということを具体的に把握、掌握をした上で判断をすべきことではないかというふうに思っておりますし、どの程度の資金規模のプロジェクトがあるのか、あるいはどういう研究領域のものが非常に需要が多いのか、そういうものを十分見きわめた上で判断をしてまいりたいということでございまして、現段階では、まだそういった意味で件数、内容といったようなことについては私どもとしては詰めたものはございません。
  160. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 そういう立場というのはよくわかります。  それじゃ、約束していただきたいことは、今お話がされましたように、これは公的な資金を投入する機構でございますので、国民の知る権利という点、そして企業秘密と調和できるという点で、少なくとも情報の管理、収集、そうして公開、こういう面については十分な配慮が必要だということを特に要望したいし、先ほどの点を確認したいというように思います。そしてまた、この予算というのが、これはプラス要素が非常に多いと思いますので、その点の努力はしていただきたいというように思います。  ここで要望したいと思いますのは、確かに法案にありますように、融資団体は、民間で共同研究をやっているとか地方公共団体とか農業団体とかというふうに、主に法人でございます。しかし、いわゆる農民、在野の皆さん方で個人研究をしておるという方も多いわけでありまして、そういうすぐれた研究の方にも対象を伸ばすことができないのかどうか、この点も要望をいたしたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  161. 土屋國夫

    ○土屋政府委員 お答え申し上げます。  その点につきましては、先ほど局長の方からもお答え申し上げたわけでございますけれども、この制度の対象としては必ずしも法人に限定をしているわけではございません。広く対象を考えておるわけでございまして、民間企業のほかに農林漁業団体あるいは公益法人、場合によっては個人にもというふうに考えておるわけでございます。  ただ、個人の場合には、果たしてそういうものに該当するものがあるかどうかということは若干疑問がございますし、また、個人に対しては別のもっと手厚い制度がございますので、むしろそういうものを利用されることが多いのではないかというふうに考えておりますけれども、それを制度として除外しているわけではございません。
  162. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 最後に、我が党として一つ問題提起をし、十分これに対して対処をしていただきたい、こう思って提起いたしたいと思うのですが、いわゆる安全性の問題、そして融資そのものを企業との癒着や公正さを欠くことなく厳正にしかも効果のある融資にしていくためには、法案に書いておりますような理事会それから評議員会では手に余る問題だというふうに私たちは考えたわけであります。そういう観点から、何といいましても、これは公正で高い見識、社会的に信頼される審査、チェックの機関というのが内部的に必要だ、審査委員会と申しますか、名称はいずれお考え願いたいと思うのですが、実際の融資をする融資対象をどうするか、そうしてその研究成果はどうだったのか、そういう点をやはり内部できちっと掌握する、それがさっき土屋さんの言われた調和を図るという唯一機関になるのじゃないかというように思うわけであります。我が党はこの点を提起をいたしたいというように思うのですが、もう手短に、やるならやるということで結構なんですから、お答え願いたいと思います。
  163. 土屋國夫

    ○土屋政府委員 お答え申し上げます。  先生からの御指摘を受けるまでもなく、私どもとしてはそういう各プロジェクトについて、厳正、公正な立場で判断をする、チェックするという体制はぜひとも必要であるというふうに考えておりますので、そういう体制の強化に配慮してまいりたいというように考えております。
  164. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 ぜひお願いしたいと思います。  それでは、二番目の農業機械化促進業務について確認をしたいと思います。  三つの確認でありますが、一つ農業機械化研究所の存続価値について、政府は将来にわたって必要かつ重要と考えておられるかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。
  165. 関谷俊作

    関谷政府委員 機械化促進関係研究にしましても検査にしましても、今後の問題を考えますと大変大事な問題がまだ多うございます。御承知のように、機械コストの低減でございますとか機械の安全性とかあるいは効率利用とか、大変問題は多うございますので、今回新機構関係業務はそのまま引き継がれるわけでございますので、さらに今申し上げましたような課題に対応しましてこれら業務推進してまいりたいと考えております。
  166. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 農業機械化促進法という法律がございますね。普通は、新しい法律の中で別の法律も引き継ぐということは非常に珍しいケースだと言われておるのです。今回はこの農業機械化促進法をそのまま継承するという形態をとっておるわけで、今局長が言われましたとおり、これまでの研究所機構というもの、機能、形態、そして予算研究内容、職員労働条件、こういったものはすべてそのまま継承する、少なくともそれを将来にわたって縮小したりないしは廃止したりという方向は絶対になさらないということになりますね。その点の確認をしたいと思います。
  167. 関谷俊作

    関谷政府委員 今回この新機構設立に際しまして私ども一番大事に考えました点は、今まさに先生お尋ねになったような点でございます。したがいまして、機械化促進法の中でこの業務を位置づけるという規定の仕方を今後もとったわけでございますし、お尋ねのような人員あるいは職員の引き継ぎ、予算、こういう関係についても、あるいは機構も含めまして、先ほど申し上げましたような機械化促進業務推進に遺憾のないように、これからむしろ課題に応じた十分な対応ができるような方向で対処してまいりたいと考えております。
  168. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 それから局長、先ほど日野委員から農業機械化研究促進について、特に構造改善と極めて密接な関係があるということを指摘されたわけであります。私も全くそう思いますし、日本の農業に課せられております条件の中でどう農業を機械化していくのか、それで経営を合理化し、そしてコストダウンさせていくのかというのは大きな課題でありますし、この前の土地改良法の改正の際にも我々はその議論をしたわけであります。  この構造改善なりないしは今後の農業経営という中で、私はどうしても農業機械化研究の置かれておる現状、そして課題というのは大きなものがあると思うのです。そういう点では、一つの抱負というか、こういう面でやっていきたい、こういうふうなお考えがありましたらぜひ披露いただきたい、こういうように思うのです。
  169. 関谷俊作

    関谷政府委員 農業構造改善あるいは経営の合理化ということと機械化というのは、両方が相互にかかわり合う関係がございまして、構造改善が機械化によって可能になると同時に、また、機械があるということによって構造改善が進む、こういう関係にございますので、これからの農業に課せられた課題を考えますと大変大事な問題でございまして、今私ども、昨日の参考人質疑でもお聞き取りいただいたと思いますけれども、例えば機械のコスト低減という面では、当面、汎用コンバインの開発のような、ああいう非常に機械の有効利用できる方策、これは現状では非常に経営費の中に占める農機具費の割合も高うございますので、そういう問題。  それから安全性の面では、やはり従来もやってまいりましたが、機械自体の安全性のほかに、その運用、操作の面で人体の疲労を非常に軽減するというような形でのものを含めました機械の安全性の追求、こういうような面、その他いろいろございますけれども、それから作物の部門としましては、稲作とかそういう関係はよろしいのですが、野菜その他については非常にまだ機械化がおくれております。そういう面での機械化の推進のために、少しでもそういうおくれている部門について役立つような機械の開発の基礎的な部面は、この業務でもってこれからも強力に実施していかなければいけないと考えております。
  170. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 機械化研究促進については、これは現状をさらに発展させていただくということは私ども望むところであります。  ただ問題は、農政という観点で考えますと、現在、我々日本の農村を見ましても、物すごい過剰投資になっておる。そしてそのことから経営にいろいろな点で問題が山積をしておりますし、固定負債というのもかなり多くなってきておる。そういう現状でございますが、新しい機械をつくりますと、農家はどんどん新しい機械に更新していく、そしてますます経営的には困難を来していくという、いわば機械化研究をされております研究員の皆さん方の欲しない方向に行っているということも事実でございます。先日、私ども大変すばらしい研究を見せていただきましたが、とどのつまり、バスの中でこんな話をしたのです。これはすばらしい研究をしておる、しかし現場は機械のために火の車になっておる、機械化貧乏解消研究所をつくってもらいたいという笑い話が出たくらいであります。  したがって、この研究成果をどう現場に還流させるかということは極めて重要な課題であります。それ自体が農政の課題でもあります。汎用コンバインの研究その他いろいろな農機具の改良、これはすばらしいことでありますが、それをそのまま個人個人に買わせるという方策はどうしても避けなければならない。何といいましても、便利な機械が出ますとすぐ買いたがる、そのことが農家のコストを高くし圧迫をしていくという悪循環、これをどう断ち切るか、これは別個の問題でございますが、これこそ農政で考えなければならない問題だろうというふうに思うわけであります。それについてひとつ局長のお考えをお聞かせ願いたい、こう思います。
  171. 関谷俊作

    関谷政府委員 先ほど、研究面では汎用機械の開発に努めているという点を申し上げましたが、今先生お尋ねの点はむしろ行政面で、これは国だけではなくて、自治体、農業団体、それから個個の農業者あるいはその農業者の団体も含めました幅広い取り組みを必要とする問題だと考えております。  過剰投資あるいは機械貧乏、こういうことでございまして、いろいろな点に問題がございますけれども、第一には、やはり先生お尋ねの中にございましたような、機械を導入するときあるいは買うときにどうもたくさん買うということでございますので、これは私ども従来から高性能農業機械導入方針というものを決めまして、その中で利用規模のいわば最低限度を決めております。こういうものを守って導入をしてもらう、特に補助事業あるいは融資等の場合にはそういう点を非常に厳しく審査してもらう、こういうようなことが一つでございます。  それから利用面では、やはり共同利用とか地域ぐるみでの利用、さらに、私どもが進めております農業機械銀行のようなああいうことで、機械作業をお願いする委託者とそれから受託者、引き受ける人の間を取り持ちまして、それによって利用の規模拡大を図っていくというようなことも進めておるわけでございます。  さらに、中古の機械が流通する組織、一種の中古機械市場のようなものを育成するとか、部品供給システムをシステム化していく、それからアフターサービスその他そういう面の充実とか、こういうこと全体を考えますと、先ほど申し上げましたように自治体それからさらに農機メーカーあるいは流通業者も含めました非常に幅広い運動的なことが必要であろうということで、実は昨年から三年間をめどにしまして農業機械高度利用促進の一種の対策というか運動というようなものを展開してまいっておりまして、これによりまして少しでも過剰投資の抑制なりコストの低減ということを進めてまいりたいと考えております。
  172. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 最後に一つだけ。研究所名称というものがさっきも問題になりましたが、機械化研究所というのは法的に消滅するわけであります。しかし、国際的なこれまでの蓄積された実績、そして今後の研究交流という点でも、現在の理事長も強く望んでおられるし、研究員の皆さん方もこれを望んでおられるというふうに聞いていますが、このIAMという国際的に通っておる名称というものを何らかの点で残す必要があるというふうに我が党は考えるわけでありますが、いかがですか。
  173. 関谷俊作

    関谷政府委員 この点につきましては、私ども今回の構想を検討する段階からこういう問題があるということを意識しておりまして、特に法案作成、御提出以後は、この辺の問題についてこれから新機構発足後の問題として考えなければいけないだろうということで、公式の機関名称としては新機構名称になるわけでございますが、この機械化促進業務については、日本語で言えば農業機械化研究所というか一種の研究センター的なもの、あるいは英語で言うとIAM、こういう実際の名称というか通称、これを何とか現実の面では使っていくような方向で考えたいと思っております。
  174. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 最後に、運営について確認したいと思います。  四つございますし、あと十一分ぐらいでありますので、お答えは簡潔にお願いしたい。  まず最初に、役員の任命は安易な天下りにならないようにという私どもの要望がございます。民間ないしは部内からということを含めまして、公正、有能な人材登用をしてもらいたい、こういう要望でありますが、この点についてはどんな考え方を持っておりますか。監督官庁としまして、確かに法律案では理事長は農林水産大臣が任命する、その他の役職員については理事長がというふうになっておるわけですから、何といっても農林水産省の監督指導というのは大きなウエートを占めるわけでありますので、これは本当は大臣に聞きたいわけですが、大臣おりませんので後からでも結構です。今主管の皆さん方からお答え願いたいと思います。大臣からも聞きます。
  175. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 お答えいたします。  設立時におきます役員でございますけれども、これは発起人が推薦した者のうちから大臣が指名する、先生今おっしゃったとおりでございます。現在の時点では役員になるべき者の過去の職業とかそういうものについての予測はできませんけれども、いずれにしても、機構の題的とか業務に即してふさわしい者が就任する、そういうことに最適の者がなる、そういうふうに今後検討されていくものと考えております。
  176. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 大臣、今大臣がちょっと中座していましたが、大臣に聞きたいことがあるのです。  今回、新しい機構が発足するわけでありますが、この初代役員というのは極めて重要だと思うのです。理事長を初め役職員。そこで、安易な天下り式の任命はやめてもらいたい。民間そして内部から、内部というのは職員研究員で有能な方がたくさんおられると思うのですけれども、内部も含めまして、公正、有能な人材登用というのは極めて大きいと思うのであります。それについて、これは農林大臣が理事長を任命するというふうに法案になっておりますので、大臣に大きな責任があると思うのです。理事長を含めまして役職員人材登用について、部内。民間を通じて登用する気があるのかどうか、この点についてお答え願いたいと思います。  それとあわせてもう一つ、これは大変重要な問題なんですが、同じ羽田大臣のもとでこの機構が監督運営されるわけでありますが、先ほどからお話がありましたとおり、一方の生物系特定産業、民間研究促進業務技術会議、そして機械化促進業務は農蚕園芸局と、それぞれの局長が主管なわけであります。こういうふうに指導監督というものが複雑になってくるわけでありますので、その業務の調整というのは極めて重要であります。一体この総務の窓口はどこに置くのか、同じ羽田大臣ではありますけれども、どこの局長がその窓口になるのか、この点もあわせてお伺いしたいし、大臣としてはどういう調整を心がけるつもりなのか、この点をお伺いしたいと思います。
  177. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 本機構は、まさに新しい時代の要請の中でこれを設立するということになったわけでございますから、この要請にこたえるきちんとした機能というものを果たさなければいけないと思っております。そういうことで、この機構をつくるということを議論いたしましたときにも、まさに今先生から御指摘のあったようなことが私どものところにもいろいろなところから実は耳に入ってきたものであります。  そういう意味で、ただ機構をつくるというのじゃなくて、ここから成果を上げるということを基本にしながら、大事につきましても幅広い角度から、私どもの方としても、これはただ、必ず内部の方から、あるいはお役所の方からとかなんとかということだけでなくて、そういったことを踏まえながらも幅広い範囲から適任者を考えていきたい、適材適所、これを貫いていきたいと私どもは考えております。
  178. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 さらに踏み込んでお聞きしたいのですが、これは事務局で結構です。先ほどから話がありました本部大宮に置くかということ、それから役員数は、本法に理事は五人以内とあるわけですが、大体何人置くのか、それから職員は、機械化促進部門は何名を擁するつもりなのか、民間研究促進業務については何名なのか、そうして総務関係は恐らく共通部門があると思うのですけれども、共通部門には何名を予定しておるのか、具体的に明らかにしていただきたい、こう思います。
  179. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 この機構の主たる事務所でございますけれども、これにつきましてはまだ現在の時点では決まっておりませんけれども、全体の沿革等から考えまして大宮に置かれるのではないかと考えております。ただ、いずれにしましてもこれについては今後いろいろな観点からさらに関係者の間で総合的に検討されて決められるというふうに期待しておるわけでございます。  それから職員の数は、全体としては機構のスタート段階は百名程度で運営されるようになるのではないかと考えております。これも設立時までに決まるわけでございますけれども、内部の両業務については、機構全体の円滑な管理が図られるように、共通部門等の役割も含めながら今後検討したいと考えております。
  180. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 局長機械化研究所の六十年度末職員定数は九十一名なんです。そして、新しい機構では新しい業務ができて、しかもその両方の調整機関が必要だということですが、百名といえばふえるのはたった九名ですよ。これもやるあれもやる、しかも立派にやるという今までの答弁ですけれども、九名だけでできますか。もうすぐ発足するという段階でしょうから、この点では百名程度ではなくて、もう少し踏み込んで明らかにしていただきたいと思うのです。  そのことも含めまして最後にお答え願いたいのですが、この法案が成立するのは恐らく五月二十日前後だと思うのです。そうして考えますと、皆さんの方ではこの秋設立をする予定でありますが、具体的に設立準備会、発起人会、出資の募集、農林水産大臣認可、こういう諸手続を考えると、設立予定日は秋から冬になるのではないかと思うのですが、そういう点のおおよその日程も明らかにしていただきたい。この二つです。
  181. 土屋國夫

    ○土屋政府委員 お答えいたします。  まず、後の御質問設立時期等についてでございますけれども、私どもとしては、この法案が成立をした場合においてはできるだけ早くこの制度を動かすことが責務ではないかというふうに考えております。いずれにいたしましても、準備期間等もございますので、それらを考えれば、先生お話のございましたように、秋十月ごろに何とか設立に持っていきたい。それまでの間に至る準備行為がなかなか大変な面がございます。さしあたって、発起人の問題あるいは出資、特に民間出資の募集の問題等々いろいろ具体的な問題があるわけでございますが、そういうことも円滑に進めるためには準備委員会といったようなものを設けて進めていくということが必要でありますし、そのためには各般の御協力を得ることが必要でございますので、ぜひともこの法案を一日も早く成立をさせていただいて準備に入らせていただければと考えているところでございます。  それから、職員の問題について御指摘がございましたけれども、先ほど局長からお話し申し上げましたとおり、私どもとしては、これも具体的な内容は発起人の方々あるいは新しい体制の中でこれからいろいろ御検討される余地は残しておく必要があると考えております。余りここであれもこれも決めるということは適当ではないと考えておりますので、そういう意味でまだはっきり決めていないことがかなり多くございますけれども、そんな事情でございますのでひとつ御理解いただきたいと思います。
  182. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 これで終わりますけれども、特に大臣、各局長にお願いしたいと思いますのは、こういう大変画期的な意欲的な取り組みをしよりという問題でございますけれども、反面、いろいろ我々には懸念、不安も存在するということも事実でございます。本日の討議を見ましても、そういういろいろな提案もいたしましたし、それに対する皆さん方の配慮についても要望いたしました。こういう我々が要望した点については、できるだけ的確に実現できるように努力をお願いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  183. 大石千八

    大石委員長 吉浦忠治君。
  184. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 生物系特定産業技術研究推進機構法案という、いわゆるバイオテクノロジーについて若干基本的なことを伺っておきたいと思います。  西暦二〇〇〇年、いわゆる二十一世紀の地球を考えてまいりますと、人口の伸びに対して食糧の生産が追いつかないのじゃないかという指摘もあるわけでありまして、限りある地球の耕地等は、どんなに努力をいたしましても現在の二倍にすることは無理であろうと思います。しかし、人口の方は発展途上国を中心に爆発的に急増しておりまして、二十一世紀、二〇〇〇年には現在の一・五倍になるのではないかというふうにも聞いているわけであります。それが今後食糧供給に大きな課題となって、現在ハイブリッドや耐寒あるいは耐病にすぐれた品種を探し出す等の形で進められてきているわけであります。そうした面から、今後バイオテクノロジーの食糧の分野への応用は、資源小国であります日本は特に避けて通れない問題ではないかと私は思うわけであります。関係者からもそういう期待がかけられていることも事実でございます。しかしながら、余りにも早い変化についていけないという困惑も反面あるわけでありまして、これは適切かどうかわかりませんが、例えば長い年月を要する朝鮮ニンジンの産地などは、バイオの技術が短期間に工業化されるようなことになりますと、産地性を失うというようなことで心配する向きもありはしないか、そういうふうに手放しては喜べないような状態も起こりはしないかという心配をいたしておるわけであります。  私どもは、本法案の審議に当たりまして業界の方々にも意見を伺いました。その中で、農水省は通産省等と比べてみますと、業界と一緒にやろうという、要するに業界を育ててやろうという姿勢が少し欠けていたのではないかという指摘がありました。今回やっと業界としても一対一で相談ができる、また相談に行くところができた、そういう期待が出ているようであります。私は、余りにも遅きに失した感があると思うわけであります。  そういうことが原因とは申しませんけれども、今日、欧米から立ちおくれているということも言われております。言葉をかえて言えば、そういう意味からもバイオは国際競争力の問題でもあるわけでありまして、私どもは日本の農業について、土地が狭いし地価も高い、こういう面からしても保護しなければならぬというふうに主張してきたわけでありますけれども、資本の蓄積なり労働力の水準なり技術開発力等々考えあわせてみますと、そうした弱点も大いに補充しなければならないというふうに考えるわけであります。そうなりますならば、我が国は、バイオの応用によって農業生産性を飛躍的に向上させる可能性を持つ国として、いわゆるバイオテクノロジー立国に最も適した国だというふうに言えるわけであります。  また、バイオにはバイオハザードという厄介な問題があります。これを越えなければならないわけでありますが、これについては後ほど言及しますけれども、その他、バイオテクノロジー立国を目指すからには、何よりも、いわゆる産学官の連携が密でなければならないというふうにも考えるわけであります。山積している問題等もたくさんございます。  そこで、まず大臣にお伺いしたいのは、今後このバイオテクノロジーをどのように推進していこうというふうにお考えなのか、この点からまず伺っておきたいと思います。
  185. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 バイオテクノロジーの発展につきまして、私どもといたしましては、やはり生産性を高める、特に我が国のように国土の狭いところであるからこそ生産性を高めるということ、その意味でもバイオテクノロジー技術等を駆使することが非常に必要であろうというふうに思っております。そういう中で、私どもの方といたしましても、研究体制を整備していこうということで、研究の基盤となります農林水産のジーンバンク整備、こういった措置もいたしております。  また、特に六十一年度におきましては、二十一世紀を見通したハイテク植物育種の推進、こういうものを中心に進めたいということ。もう一つは、地域段階でのバイオテクノロジー研究開発ということで、これは各県も大変熱心にやるようになっておりますし、また、各市町村なんかにおいても、バイオテクノロジーについて関心を持ち、そのための勉強機関なんかもいろいろと持つようなことをしております。こういったところとも十分連携を持っていきたいというふうに思います。また、今御審議をいただいておりますこの機構そのものが、またそういったものを支援することができるのではなかろうか、こういうことも考えております。  いずれにいたしましても、産学官というものが一体になってバイオテクノロジーの確立、そのためにこれから我々としても行政を進めていかなければいけない、こんなふうに考えます。
  186. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 今回の措置特別認可法人であります生物系特定産業技術研究推進機構というものが、大変長たらしいもので、当てはまらないからこういう言葉になったのじゃないかと思いますけれども、これが設置されるわけです。既存の特殊法人であります農業機械化研究所が改組統合されることになったわけであります。例がないわけではありませんが、同じ農業に関する技術といいながら、その違いは、いわばハードとソフトの違いがあるのではないか、こういうように私は思うわけです。いわゆる臨調答申による既存の特殊法人の整理統廃合によることは容易に理解できるわけでありますけれども、目的がこれほど違うものを統合するのは余りにも安易過ぎやしないかと私は思うのです。この点、どういうふうにお考えになるのか。
  187. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 新法人は、農林水産業を初めといたしまする生物系の特定産業に係る技術高度化推進するための民間におきまする試験研究支援業務、これを目的として設立されるものであります。  先生今御指摘の、このような民間研究促進業務機械化研究所で実施しております農業機械化の促進に資するための試験研究、検査等の業務でございますけれども、この両業務はいずれも我が国農業の体質強化を図るという点においては目的を同じくしていると考えておりますし、それからまた、両業務とも民間との連携あるいは研究成果相互利用、こういった点におきまして大変密接な関連を持っているというふうに理解しております。したがいまして、本機構で両業務を一体的に行うことは、今後の両業務推進の上で有効であると考えているわけでございます。
  188. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 雇用の問題についてお尋ねをしておきたいのですが、特殊法人職員は整理統廃合並びに民営化のたびに雇用不安に悩まされるわけでありまして、その際、国が責任を持って雇用を保障しなければいけないというふうに私どもは言い続けてきているわけであります。今回の農業機械化研究所は、先ほどから質問が出ておりますように、九十一名の雇用について給与や身分、こういうものを従来どおりに引き継がれるのかどうか、そういうふうに理解していいのかどうか、お答えをいただきたい。
  189. 関谷俊作

    関谷政府委員 今回、新機構への移行に際しまして、法律にも規定がございますが、その法律規定によりまして従来の研究所職員はそのまま引き継がれ、また、お尋ねのような給与水準を含めました処遇問題については従来と同様、こういうことで対応するということでございます。
  190. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 これまでの農業機械化研究所我が国の農機具の整備促進に果たした役割、これはもう例を挙げるまでもなく、労働力の省力化等で大きく評価されるべきものでありますが、私は、今後ともその役割の重要性というものは大事であるというふうに思うわけです。今回の改組によって農業機械化促進業務がいささかも縮小することがあってはならない、こう思うわけです。  そこで、その専門的研究なり、あるいは検査機関としての位置づけを明確にしておかなければならない、こう思うわけです。その点どのようにお考えなのか、見解を伺っておきたい。
  191. 関谷俊作

    関谷政府委員 お尋ねのありました点は、研究所を改組するという本案をつくるに際しましてまさに私ども一番重視した点でございます。その検討の結果によりまして、今回、農業機械化促進法の中で農業機械化促進業務を位置づける、それを新機構業務として継続するということでございまして、法律の条文としましても一字一句変えないままで従来の業務を位置づけたわけでございます。  内容的には、農業機械化促進のために従来どおり研究と、それから型式検査、さらには安全鑑定というような鑑定業務、これらを含めまして、お尋ねのような農業機械化促進ということが今後の農業の発展の上に大変大事な部門でございますので、そういう面について、これからいろいろ出てまいります課題に対応する上で遺憾のないように、今後ともこの業務推進してまいりたいと考えております。
  192. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 新機構が行う民間研究促進業務について伺っておきたいのですが、業界の方にお伺いをいたしましたときに、バイオに関連する施設等をつくるとしてもすぐ億単位の経費がかかる、まして危険度の高い技術開発を行えば資金の手当てで相当苦労しなければならない、これが実情だ、それでも先端施設をつくらなければならない、つくらなければ競争にならない、こういうふうに伺いましたが、最近は地方自治体の意識も高くなっておりまして、十分な設備をつくることを要求されることもあるわけです。技術開発に伴う資金について、公的資金の供給をお願いしたいとの声が出ているところであります。  今回、新機構に出融資の業務を付与されることは意義のあることだというふうに思いますが、そこで心配されるのは、出融資資金は国の公的資金を活用するものであり、国の政策と整合性を持つものでなければならないというふうに思うわけでありまして、この点から、行政の過度の介入になりやすいのではないかという心配があるわけであります。新機構をいわゆる民間活力導入のものと見るならば、何よりも機構の自主性の確保がなされなければならないと思います。そうでなければ、せっかくバイオに対し民間の関心が急速に高まって欧米との差を何とか縮めようとしているのに水を差す結果になりはしないか、こういうふうに思うわけであります。  当然のことながら、出融資に当たってはテーマの選定について高度の専門的知識が要求されますし、適切な指導もしなければならないというふうに考えますと、独自の試験研究が行えるまで機構の組織を整備し、きちんとしておかなければならないと思います。特に人材確保等をどのように行っていかれるのか、また本年度は十八億円の資金計画が考えられておりますが、相当の需要が見込めることから、次年度以降資金確保はどのように行っていかれるのか、人材の面、資金の面、お答えをいただきたい。
  193. 土屋國夫

    ○土屋政府委員 お答え申し上げます。  先生指摘のように、この機構民間技術開発に対して出資、融資等を通じて過度の干渉になるということは、この機構の趣旨に合わないのではないかということでございますけれども、私どもとしてもなるべくそういうことのないように、民間の活力の増進に本当に役に立つような運営をしていかなければいけないということを基本には考えておりますけれども、片や公的資金による支援ということでございますので、その辺についてもいろいろその趣旨が十分生かされるような、そういう運営が必要ではないかと考えております。情報管理等の問題については、先ほどいろいろ申し上げましたけれども、そういう配慮が必要ではないかというふうに考えております。いずれにいたしましても、この組織、機構運営に当たる者が非常に重要な役割を果たすわけでございまして、そういう意味では優秀な立派な人材をこの機構においても確保するという努力は必要ではない保かと考えております。  資金の面につきましては、当初は特に基本財産の造成ということもございますので、出融資等に向けられる金額は必ずしも多くはございませんけれども、次年度以降においてはその基本財産の負担というものが若干軽くなってまいりますので、新たな資金については民間への出融資等に振り向けられる財源としてできるだけ確保してまいりたい、そういうふうに考えております。
  194. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 欧米の例を見てまいりますと、例えばアメリカ等では行政と大学と研究所というのが一カ所にある、いわゆる相互に交流し合うというふうな点で大変よくできている。大学にはラウンドテーブルというふうなものがございまして、農業に関して何か問題が起こった場合に関係者全員を招集してラウンドテーブルで教授が対策について説明をする、そういうシステムができている。いわゆる行政と大学と企業との交流がすこぶるスムーズに行われている。こういう点が我が国の実態を見ますと余りにもかけ離れて、そういう交流が見られない、これは残念なことだと思うわけでございますが、こうしたことが先端技術開発の面で欧米から立ちおくれている原因ではないかというふうに言われている。我が国も、先ほど御答弁いただきましたが、産学官の交流を進めていくべきだと思うわけであります。この産学官、言葉では簡単でありますけれども、この提携について今後どのように進めていかれようとお考えなのか、お答えをいただきたい。
  195. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 先生指摘のように技術開発、特にバイオテクノロジーのような先端技術開発を進める上では産学官の連携が非常に重要であるというふうに認識しておりまして、農林水産省といたしましても最近その連携のあり方あるいは具体的な方策について非常に努力を払っている次第でございます。  具体的な面といたしましては、従来から共同研究の制度あるいは風と民間との間の流動研究員の制度、そういう制度を活用する一方、今度は民間の中で民間同士の共同研究、こういったものに対する助成等も行っておりますし、さらにはそういった産学官の連携の強化を具体的に図る体制として、バイオテクノロジー推進協議会というような協議会で全体の今後の連携方策を検討するような組織もつくってやっております。今後はこうした制度を一層活用いたしまして、この新しい機構によります民間と国の試験研究機関との共同研究のあっせん、こういったものを通じながら、産学官の連携強化をさらに強めてまいりたいと考えております。
  196. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 バイオはリスクの高い技術開発でありますから、新機構の融資条件も据置期間が五年で償還期間が十五年以内、利率は無利子、ただし成功の場合、成功の度合いに応じて所定の利率とする、支払い方法も元金均等半年賦払い、こうなっておりますが、この場合、リスクが高いことから成功した場合のみ利息を払うこととなった、それも成功の度合いによって利率を異にするというわけで、高度かつ専門的な知識に裏づけられた評価をしなければならないだけに、その判断はいわゆる微妙なものとなりかねないのではないかという心配があります。これからの問題でありましょうけれども、この際、成功の度合いとは何を基準にどこがその評価を下すのか、その成功したかどうかというものを明確にしておかなければいかぬ、こう思うのです。こういう点どういうふうにお考えなのかどうか。
  197. 土屋國夫

    ○土屋政府委員 お答えいたします。  先生指摘の点大変難しいかつ重要な問題であり、この制度のいわばかなめをなす部分ではないかと私どもとしても考えております。  現在考えております。その評価の方法、考え方でございますけれども、まず融資プロジェクトにつきまして理事会あるいは評議員会において基本的な方針を定めるわけでありますけれども、そういう生物系特定産業技術についての造詣の深い学識経験者などで、試験研究機関、各民間から出されます申請課題についての採否を慎重な検討の結果定めるわけでございます。そういう計画に照らしてみて果たして実際の試験研究成果が成功したかどうか、要するに計画どおり達成されたかどうかということを判断するところでありますけれども、しかしそこのところは大変専門的な知識を必要とする分野でございますので、それにつきましては外部のその面についての立派な学識経験者等にもお願いをいたしまして、慎重に技術的な観点あるいは場合によっては経済的な観点等も含めて御判断をいただくべきことではないかというふうに考えております。  どの程度その計画どおり達成されたかどうかということを、そのようなことでいろいろ評価いたしまして定めるわけでありますけれども、具体的な判断基準等につきましては私どもとしてもまだ明確なものを持っておりませんけれども、この制度と類似の既に発足をしております基盤技術研究促進センターの例もございますので、それらの制度も十分参考にさせていただいて、今後機構において十分その点についての検討をお願いしたいと期待しているわけでございます。そのようなことで、成功、不成功、あるいはどの程度の成功ということの段階的な評価も場合によっては必要になるかというように考えているわけでございます。
  198. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 新機構は、出融資業務のほかに、民間と国の試験研究機関との共同研究のあっせん、農林水産ジーンバンクが植物等の遺伝資源民間に提供することのあっせん、その他海外からの研究者の招聘、情報の収集、整理、提供及び調査等を行う、こういうふうになっております。これまで業界が大変な思いをしてデータを集めたり、あるいは人とのつながりを利用して研究所に問い合わせなどをしていたわけでありますが、そうしたことが今回からいわゆる機構のあっせんで容易にできるようになったことは、大いなる前進ではないかと私は思います。これからはデータベースの整備充実を図って、産学官を貫く情報網の構築、あるいは国有の試験研究施設を民間に通常の使用料を下回る対価で使用させる道を開く必要があると思うわけであります。  また、欧米との技術の差を縮める上からも、国際的研究協力を積極的に推進していかなければならないと考えるわけであります。機構業務一つとして海外の研究者の招聘を挙げておりますが、もう一歩進めて、研究者の派遣についても検討すべきではなかったかと思います。特に、日本は海外から技術は入れるが自分の持っている技術は出そうとしないという非難を受けているわけでありまして、技術の世界でもギブ・アンド・テークで国際的交流をどんどん進める必要があると思うわけですけれども、こういう点についてはどういう見解を持っておられるのか。
  199. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 特に、先生指摘の最後のところにありました海外との技術交流の問題で、こういった中で、この機構業務として海外から研究者の招聘はすることにしておりますけれども、海外への派遣をやっていないじゃないかというような御指摘かと思いますが、今後の技術交流の推進に当たりましては、単に海外の先進技術を導入するばかりじゃなくて、我が国のいろいろな研究成果を海外にも積極的に提供するあるいは国際的な技術発展に貢献する、こういった点に関しましてはまことに重要なことであると考えております。  このために、現在、農林水産省といたしましても、関係の制度を活用しまして大変数多くの研究者を海外に派遣いたしまして、国ペースの多くの研究交流あるいは技術協力を実施いたしておるところでございます。また、こうした国ベースの国際交流でございますけれども、こういった状況を見ますと、一般に、海外から我が国へ受け入れております外国の研究者と日本から海外に派遣しておるのを比べますと、日本から派遣する分が非常に多いのが実態でございまして、これは民間の場合にも大体同様な状況にあるわけでございます。  こうした状況から、特に今回民間研究促進という観点で、この機構業務としては、当面、海外へ民間研究者を派遣することよりも、海外から研究者を招聘して、研究フォーラムを開くとかいろいろなことがあるわけですが、そういったことで海外の研究事情を広く国内に紹介をするということの方が重要であると考えた点が一点でございます。  また、海外におきます技術開発研究動向の調査等につきましては、この機構みずからがその業務として実施できることとしていることもありますし、さらに、民間特定研究者を海外に派遣することにつきましては、その結果いろいろな成果を公表することといたしましても、こうした派遣された民間研究者の所属する企業を利するという見方もございますので、現在、そういった公平の確保という観点も考えて、今まで幾つかの点を申し上げましたけれども、当面本機構業務の中では海外派遣を取り上げなかった、そういう経緯でございます。
  200. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 最後に、バイオハザードの問題について若干お尋ねしておきたいと思います。  コーエンらの人為的なDNAの組みかえの成功以来、この技術に対する夢と危惧が表面化して、一九七五年にはアシロマ会議が開かれて、学者間でバイオハザードを防止しつつ慎重に実験を行うことが大筋で合意をされたわけであります。そのほか、アメリカではガイドラインが出され、我が国でも文部省、科学技術庁で実験指針が出されたことは周知のとおりであります。その後、規制の緩和の要請が出始めて、我が国においても八〇年に酵母が、八一年には枯草菌を宿主とする実験がP1レベルで行えるように緩和されるに至ったわけであります。  これら認定されました宿主-ベクター系は本当に安全なのか。一部では疑問を表明する学者も現にいらっしゃるわけでありまして、特に、枯草菌を宿主とする宿主-ベクター系は最も重大な問題があると言われておるわけであります。枯草菌は、その耐性が極めて強い胞子を形成するため、完全滅菌が困難で、しかも接合能力もあって、組みかえDNAが外部に伝播する可能性があると指摘されておるわけでありますけれども、この点、どういうふうに考えておられるのか、御説明をいただきたい。
  201. 高橋透

    ○高橋説明員 お答えいたします。  枯草菌の安全性についてのお尋ねでございますが、組換えDNA実験指針におきましては、実験の安全度評価に応じまして、物理的封じ込めと生物学的封じ込めの二種類の封じ込め方法を組み合わせることによりまして、実験の安全性確保することとしているところでございます。  指針に示されておりますB1レベルの宿主―ベクター系、BS1と言っております枯草菌でございますが、生物学的封じ込めの点で、アミノ酸及び核酸塩基という複数の栄養要求性を持つことにより、自然条件下での生存能力が低い枯草菌の株を宿主とし、他の生物に移行しにくいベクターと組み合わせて用いることにより、組みかえDNA実験により作製された生物の環境への伝播及び拡散が防止できることが認められており、実験の安全性は十分に確保されると考えております。  以上でございます。
  202. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 そのDNA組みかえの実験の場合に、施設あるいは設備による物理的封じ込めと、用いる宿主、ベクターの組み合わせによる生物学的封じ込めの併用をして、漏出とそれによる危険を防止することになっておるわけでありますけれども、こうした封じ込めで完全であるという保証はないわけでありまして、その機器の故障なりあるいは人為的なミスなり、あるいは扱う生物の予期しない変化が起こり得る可能性があるわけであります。しかも、微生物の漏出は放射能と異なりまして機器により検出されない何らかの異変となってあらわれるわけでありますから、気がついたときには手おくれだというふうに、そういう危険性があるわけであります。この点について対応策はあるのかどうか、お答えをいただきたいと思います。
  203. 高橋透

    ○高橋説明員 お答えいたします。  枯草菌の場合に胞子をつくるからそれがもし漏れた場合には危険ではないかということでございますが、実験指針で用いることにしております株は、枯草菌のマールブルク168株というものでございます。先ほども申し上げましたように、このマーブルク168株は栄養要求性の点で、アミノ酸及び核酸塩基に対する栄養要求性の突然変異というものを持っております。ですから、胞子になった場合でも、もし増殖した場合にやはりそういった特殊な栄養条件下でなければ生存できないということでございます。また、このマールブルク168株は遺伝学的及び生理学的によく知られておりまして、人を初めといたしまして動植物に対する寄生性、病原性及び毒素産生能はないというようにされております。したがいまして、実験指針のもとで用いておりますこの枯草菌マールブルク168株については問題ないと考えております。  以上でございます。
  204. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 最後に、引き続きまして科学技術庁と大臣にお尋ねをして終わりにいたしたいと思いますが、この遺伝子操作技術は、人間人間の生命を操作することにつながりかねない本質を持っているわけであります。したがって、生命操作と倫理ということを十分考えて今後これに当たっていかなければならないというふうに思うわけであります。最先端技術であるので、一部の専門家企業だけが情報を独占することになる点と、危険性を伴うため必然的に管理強化を招く、そういう点大変心配をいたしております。その結果、情報が機密にされ、あるいは少数の限られた当事者だけが情報を独占する、こういうことになりますと、民主主義と相入れないものがあるわけでありまして、そのためにこのような先端技術として、生命科学技術の場合、情報の十分な公開が確立して、それを市民が理解できるようにしなければならない、こう思うわけであります。こういう難しい点がたくさんございますが、そういう点どういうふうに科学技術庁はお考えなのか、大臣もどういうふうにこれに取り組もうとなさっておられるのか、その点をお伺いして終わりたいと思います。
  205. 高橋透

    ○高橋説明員 組換えDNA実験指針におきまして、指針に基準を示していない実験につきましては、科学技術会議ライフサイエンス部会において実験の安全性を十分に検討した上で、基準の追加に係る安全性評価のための実験、その他特に科学的知見の増大を目的とする実験として国の指導のもとに実施することとしているところでございます。  組換えDNA実験指針を運用する際には、申請者から得た情報につきましては、従来から申請者の了解のもとに必要に応じて公表してきたところでございます。例えば大量培養を行う際に二千リッターレベルで行ったときあるいはインターフェロンの承認をいたしましたとき、あるいは植物におきまして組みかえDNA実験をするとき、そういったときに申請者の了解のもとに公表してきたところでございます。今後とも国民の理解を得るために努力を払ってまいる所存でございます。
  206. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、生命工学といいますか、バイオテクノロジーというもの、これが食品産業あるいは育種、この段階では私どももそんなに大きな問題はないというふうに思います。ただ、今お話ありましたような組みかえDNA技術、これは非常に画期的な技術でもあるということでございまして、安全性というものについてはやはり私ども十分配慮していかなければいけないと思っております。  この問題につきまして、私ども日本だけでなくやはり世界的にも、非常にバイオテクノロジーに対するあこがれといいますか憧憬というものを持ちながらも、例えば、確かに生産性を高めるという一面があるかもしらぬけれども、もし安全性を脅かすことがあったらどうなんだろうか、あるいは人間の尊厳というものを失うようなことがあったらどうなのか、あるいは倫理的に一体どうなのかというような問題もございますので、非常に高いレベルで宗教家ですとかあるいは幅広い学者の皆さん方、こういた人たちが集まりながら今話し合いも進めております。私どもはやはりそういったものも注意深く見守りながら、少なくも安全性について損なうことのないようにしていきたいと思っております。  なお、情報につきまして、この点についても基本的には苦労した人たちの権利というものを守るということが必要でございましょうけれども、しかし、それによってまた恩恵を受ける人たちの立場というものも考えなければいけないと思っております。この点についても、新しい技術であるから余り公開してしまうことによって技術が横取りされてしまうというような心配も、実はこれは国際的にもございます。しかし、中には今度は逆に、国際的にもお互いに情報を交換すべきじゃないかということを呼びかけている国もございまして、そういったものを見ながら、ともかく新しい技術を人類が、本当にみんなが享受できるようなものにしていかなければいけない、こういうことを基本的な考え方に持ちながら、私どももその都度十分検討していきたいと思っております。
  207. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 以上で終わります。
  208. 大石千八

    大石委員長 水谷弘君。
  209. 水谷弘

    ○水谷委員 公明党の水谷弘でございます。生物系特定産業技術研究推進機構法案について若干御質問をいたします。ただいま吉浦委員から総括的な質疑がございましたが、多少重複するかもしれませんが、よろしくお願いをいたします。  私どももバイオの将来については大変大きな夢を持っておるわけであります。国も五十九年バイオ元年、六十年ジーンバンク元年、このように強調をされて、いよいよことしはハイテク育種元年、またはハイテク民活元年、このようなことをいろいろ言われております。大変厳しい財政事情の中で、本年もこのバイオの関係予算、これは大幅に拡充をされておりますし、また、今回新しい機構設立のために産業投資特別会計から出融資が行われることになっているわけでございます。そこで、いよいよこれが農林水産業のいわゆる産業の中に大きく踏み出してくる、こういう段階を迎えるわけでありますので、これが農林水産業に対してどういう課題を与えてくるか、そういうことを最初に重点的に御質問をいたしたいと思います。  まずテクノロジーアセスメント、技術の事前評価という問題について若干御質疑をいたしたいと思います。  我が国では既に固定化酵素などのバイオリアクターを利用してでん粉から甘味料である異性化糖をつくり出す異性化糖技術、また組織培養によるタンク内での生産とか、従来の農林水産業が大変な影響を受けてきた気象条件等の災害または病害虫、こういうようなものの影響を受けずに、安定的、効率的に植物が工場において生産できるというような方向性がこれから出てくるわけであります。先ほども議論がございましたけれども、いわゆる農業構造そのものの全体に全く大きな変化をもたらすという、将来これが五年やそこらでできるわけではありませんけれども、十年、二十年後にはそういう構造そのものを変えていかなければならない、こういう大きな問題になるわけであります。  そういう場合に今心配されているのは、特に企業においてこういうものが、付加価値の高い商品がどんどん生産されてくる。これが農家を大きく圧迫する形になるのではないか。さらにはいわゆる地域の特産地の農業が脅かされてくるのではないか。こういうふうな、農業そのものに対して、農業者にとってこれが一体どうなるのかという不安、実はこれが、夢があると同時に、実際に私どもが農家の皆さんといろいろな議論をする際に素朴に投げつけられる不安であり疑問なのであります。  こういうときに、農林水産業にとってバイオテクノロジーというものが実験、臨床からいよいよ本格的に量産化に入ってくる、そのような段階において、その事前評価、そういうものについてはしっかりしていかなければならないし、また将来の見通し、展望というものについては、農家の皆さん方、いわゆる生産者を度外視した議論というものは行われないはずであります。そういうことを責任を持って展望を開いていくのが農水省の大切な役割だと私は考えておるわけでありますが、それについての見解、またどう対処されていくのか、最初お尋ねをいたします。
  210. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 バイオテクノロジー中心にいたします先端技術の今後の活用、あるいはそれによるいろいろな農林水産業の展開との関係でありますけれども、今後、育種を初めといたしまして農林水産業あるいは食品産業等の非常に幅広い分野におきまして画期的な生産性向上あるいは生産工程の改良、こういった点で大変大きな重要な役割を果たす技術あるいはそういう生産の展開、こういうものが期待されると考えております。こういったバイオテクノロジー等先端技術推進に当たりましては、やはりその基本として、農林水産業などの生産性向上でありますとか、あるいは豊かな食生活の形成、こういったことに十分寄与するような方向技術開発を進めてまいりたいと考えております。  先ほど先生がお触れになりました、例えば細胞の大量培養でありますとか、ハイテクの技術によりまして特殊な付加価値の高い有用物質の生産というようなことが将来技術的にいろいろ進んでまいります。そうしまして、一般的な農業生産にむしろ肩がわりをしていくのではないか、そういう議論もよくあるわけでございますけれども、実際問題といたしましては、事実、例えばあの紫根ですか、口紅を大量細胞培養でつくった技術でありますとか、そういう特殊な非常に付加価値の高い天然色素あるいは薬効成分なんかを培養技術で大量に恒常的に生産するということが技術的な可能性は示されておりますが、農林水産業のような非常に基本といいますか、私は農林水産業は、特に農業は太陽のエネルギーと大地が基本にあって穀作あるいは非穀作といいますかそういうものがある。そういう特殊な天然色素あるいは非常に付加価値の高い薬効成分のあるもの、こういったものが部分的にそういう新しい技術でつくられるといっても、これは非常に限られた領域でありまして、細胞培養がいかにすぐれた技術であっても、そのエネルギー的な面あるいは栄養原料等のコスト問題、こういうような問題を考えますれば、そういう極めて限られたものであって、農業生産基本は変わらないのではないかというふうに考えております。
  211. 水谷弘

    ○水谷委員 確かに現段階、また現在の判断からは私もそう考えております。しかし、より総合的といいますか、二十一世紀の食糧問題等を考えた上でこういう新しい技術開発が行われていく。そうなっていくと、コストの面においてもいろいろな面においてどんどん研究をしながらコストダウンを図っていかなければならないし、より有用な方向にこの試験研究を進めていかなければならないということになると、実用段階になってきた場合には農業、農村、これが間違いなく大きく変化をしていかざるを得ない、私はこう思っております。  ですから、大臣にも所見を伺いたいのでありますが、そういう技術が到来した段階で対応しても、産業としての農業はそんなに簡単に機敏に対応はできないわけですし、また大勢の生産者の方がいらっしゃるわけでありますから、そういうことについてはより多くの生産者の微意見はもちろん、専門家の御意見も、またあらゆる産業の方々の御意見もあわせて、農水省はそういう将来の方向については真剣に取り組むべきだ。科学技術そのものについてのいろいろな検討等については別としても。その点は大臣いかがお考えでございますか。
  212. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 まさに今お話がありましたとおりでございまして、この新しい技術というものがこれからの人類の食糧、こういったものにも大きな役割を果たす、そういったことを目標にしてやるわけでございますから、まさにそういったものがただ一部の研究ですとかあるいは技術者の中に埋もれてしまうということではなくて、これが普遍をするということでなければならぬと思っております。その意味でそういったものにたえ得るような農業者あるいは後継者、そういった皆さん方も育成する、そういった幅広い準備というものが大切じゃないかな、そういったことについてももう今から準備を始めるべきであろうというふうに考えております。
  213. 水谷弘

    ○水谷委員 ぜひそうしていただきたいと思います。どのようなすばらしい、すぐれた技術であっても、それを利用し、生産をしてくださる方がいらっしゃらなければこれは何の価値もないわけであります。そういう方々が担っていただくためにはこれはよほど高度な学識も必要でしょうし、技術の習得も必要でしょうし、これは伝承されるものではございませんから、あくまでもみずからがそれを学び習得していかなければこれは自分のものにならないという、そういうバイオテクノロジーでありますので、そういうふうな方向に持っていくには、これはまた後で触れますけれども、もう本当に義務教育段階からこういうものは教育の中に本格的に取り組まれてこないと、将来の、実際、時代が来たときに大変だし、またそれが有用に社会に生かされない、そんな試験研究であってはならない、私はこういうふうに考えておりますので、しっかりしたお取り組みをお願いをしたいと思います。  次に、バイオハザードの問題、これはバイオ先進国では最近のことではなくてもう長い間これがいろいろ議論をされ、問題にされ、数々の改善、予防措置、いろいろなことが現在までやられてきておりますけれども、完全に解消されてはおりません。大変な潜在的な危険性というものが包含されている可能性もあるわけでありまして、いろいろ言われております。  いわゆる宿主、有用遺伝子が組み込まれる大腸菌、酵母等、またDNA供与体、有用遺伝子等を供与する生物及びベクター、いわゆる運び屋と言われているものですが、そういう微生物等のそのものの安全性は一体どうなんだ。また異種の遺伝子が組み込まれた生物、宿主ですが、これが未知の毒性や有害な機能を発揮しないかどうか。さらにまた、より強い病原性、感染性を獲得するに、至った細菌等が実験従事者へ感染し、さらに環境へ伝播しないかどうか。さらにまた遺伝子操作等によって大量に生み出される新品種の生物は、微妙なバランスの上に成立している自然生態系を大きく混乱させることはないか。またそれらは自然が長い間時間をかけて行ってきた進化にどのような影響を与えるか等々、利用される微生物等の人間に対する安全性また自然の生態系や進化等環境に対する影響、こういう点が常に心配をされるわけであります。  これらがこのバイオの試験研究をさらに一層進めるに当たっての重大な障害にならないように、これが前進するようにこれらの問題点を一つ一つ明確に排除していかなければならないわけであります。その点についての基本的な政府の見解、今後の方針を承っておきたいと思います。
  214. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 バイオテクノロジー開発に当たりましては、特に組みかえDNA技術、これにつきまして、先生お話しのように大変画期的な技術、そういうことでありますけれども、それだけに潜在的危険性というようなものがこれまでいろいろと心配をされ、そのための安全対策、これがとられてきたと考えております。既にもう十年以上になるんでしょうか、いわゆるアシロマ会議で世界的な学者が十分な議論をされて、その段階バイオテクノロジーや組みかえDNA実験研究推進とあわせて厳重な安全管理、これの方針が決まったと思いますけれども、その後アメリカのNIHのつくられたガイドライン、これに沿って我が国もガイドラインをつくり、それに従ってずっと国際的にも我が国もその組みかえDNA実験は続けられてきたと思います。  もちろんこういった中で関係民間研究機関民間研究所あるいは国立の研究所、こういったところにもそういった安全対策は周知徹底されておりますし、農林水産省研究機関におきましても安全委員会等をつくりまして、安全規則を設けてしっかりと、そういった先生今御心配のこの実験に伴う安全管理をやってまいっております。こういった状況の中で、十年以上でしょうか、実験段階では特別な問題を生じないで今日まで至っておりまして、いろいろ宿主―ベクター系やいろいろな用いるものについての基準緩和と申しましょうか、そういうような方向がずっと続いてきているようではありますけれども、最近に至りましてはこういったバイオテクノロジーの実用段階を迎えつつあるというふうに考えておりまして、今後は実験段階から実用段階に入る、こういう状況の中での安全性確保措置ということを十分考えていかなければならないのではないかと考えております。
  215. 水谷弘

    ○水谷委員 今事務局長おっしゃったように、実験段階から実用段階、さらにこれが広く生産に乗り出していく、こういう方向に向かうわけでありますので、全く違う安全管理という必要性が出てくる。  先ほど申し上げたのも主に実験室の問題が中心でございましたけれども、今その後で私もう一つ質問しようと思っておりましたことをおっしゃいました。いよいよそれが外へ出てまいります。そういう段階で、特に今度は農水省が本格的に安全管理については責任を持っていかなければならない。科学技術会議、また文部省、いろいろなところでそれぞれがガイドラインというものをつくっておる、また政府は大きなしっかりした明確なものがありますが、これからの段階と今までの段階、大分違うわけでありますので、私は農水省として新たな技術開発を進めるに当たってのガイドラインのようなものをぴしっとこういう時点でつくり上げていく方向に踏み出していただきたい、こう思っておりますが、もう一度お願いをいたします。
  216. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 農林水産分野におきまする実用化段階での安全対策につきまして、本技術研究開発の成熟の度合いでありますとかあるいは欧米諸国の動向、こういったものを重視をし、十分見きわめながら、今後その実用化段階で適正な安全性確保が図り得るような基準のあり方、こういったものにつきましても検討を現在進めておるところでございます。
  217. 水谷弘

    ○水谷委員 ぜひしっかりお願いをしたいと思います。  次に、いわゆるバイオテクノロジーが社会全体にどのように受け入れられていくか、こういう問題についてお尋ねをいたしたいのでありますが、科学技術庁と文部省、おいでいただいておると思います。  私どもは専門家ではございません。ですから国民の皆さんと同じような、素朴ないろいろな不安と希望とまざったような、そういう状況でいるわけであります。それと同じに、一部では微生物即ばい菌、短絡的なそういう思い込み、また遺伝子組みかえや細胞融合がすぐ人間にいろいろな形で押し寄せてくるんだなどというような、いわゆる科学知識の欠如や情報の曲解から生じてくる不正確な批判だとか、反対のための反対の動きというものが事実あります。やはりこれからの二十一世紀を展望する大切な科学技術の分野であるこのバイオテクノロジーが正確に社会に受け入れられていかなければならない。そういう観点から教育の面でこれはしっかり位置づけをしていかなければならないなと痛切に感ずるわけでございます。これらの取り組みについて現在の義務教育並びに高等教育の中での位置づけ、これはどのようになっているのか、どうされるのか、お尋ねをしておきたいと思います。
  218. 林田英樹

    ○林田説明員 お答え申し上げます。  初等中等教育段階におきまして学校におきましてどういうことを教えるかという教育課程につきましては、国といたしまして法令に基づきまして基準を示しておるわけでございます。いわゆる指導要領というものでございます。この指導要領の中にどのようなことを盛り込むかということは、それぞれの対象の児童生徒の発達段階に応じまして決定をするわけでございます。  現在の学習指導要領によりますと、例えば中学校でございますと、理科の一つの分野の中に生物の体の仕組みというふうなことを教える部分があるわけでございます。その中では、例えば生物と細胞というふうなことを教えることになっておるわけでございます。また高等学校におきましては理科Ⅰというふうな教科、それから生物というふうな科目もあるわけでございますけれども、こういう中でもう少し進んだ、細胞と組織の形成でございますとか、発生と形態形成、それから遺伝子と形質の発現というふうなことを教えることになっておるわけでございます。したがいまして、それぞれの段階に応じて基礎的、基本的なところを教えていくというのが基本的な考え方でございます。したがいましてバイオテクノロジー等につきましても、私どもも今後の社会にとりまして極めて重要な教育すべき分野だというふうには考えておるわけでございますけれども、それぞれ発達段階に応じて教える必要があろうとも考えておるわけでございます。  現在の状況を申し上げますと、バイオテクノロジーというふうなことがそのままで出てまいりますのは、高等学校の段階の教科書にかなり詳しく扱っている面もあるわけでございます。中学校におきましてはもっと基礎、基本の、先ほど申しましたような細胞とは何かとか遺伝とはどういう仕組みで行われるのかというようなことを教えているわけでございます。科学も発達をするわけでございますけれども、学校段階におきましてはそれぞれの発達段階に応じまして適切に基礎、基本を教えていきたいと思っておるわけでございます。
  219. 水谷弘

    ○水谷委員 基本的なことはよくわかります。もう一度お願いしたいのですが、今マスコミが非常に発達をしておりまして、茶の間でこういう問題がもうすぐ飛び出してくるわけであります。そういうふうな社会の進展というものが相当スピーディーに行われておるわけでございますので、その点はさらに一考をしていただきたい、こうお願いをしておきたい。答弁は結構です。  もう一つ科学技術庁にお伺いをいたしますが、バイオテクノロジー、こういうものが一般の人人に適切な情報として提供されるための努力といいますか、そういうものをどのように取り組みをしていらっしゃるか。非常に極端なとらえ方があるわけです。すぐにでもできるような受けとめ方をしていらっしゃる人もいれば、的確にそれをとらえていらっしゃる人もおります。やはり複雑な社会の中で正しい、正確な情報が国民に知らされていかなければならない、このように考えておりますが、どうされておりますか。
  220. 田中正則

    田中説明員 お答えいたします。  科学技術は今日、経済社会あるいは国民生活の隅々まで浸透してまいりまして、人々は科学技術の中に暮らしているという状況にも立ち至っております。一方で国民の科学技術に対する期待あるいは考え方といったものが非常に多様化しておりますので、今後、バイオテクノロジーを含めます科学技術の一層の振興を図るためには国民の理解と協力が不可欠であると考えております。  このような認識に立ちまして科学技術庁といたしましては、難しいと言われておりますバイオ、そういったものをわかりやすく正しく紹介するために、科学技術映画の作成でありますとかあるいはテレビ番組の放映あるいはパンフレット等、多彩な媒体を通じまして科学技術に関する普及啓発を行っているところでございます。また、この四月十四日からは科学技術週間が始まっておりますが、全国的に科学技術に関する、バイオも含みますが、講演会でございますとか映画会等の行事が関係機関の協力によりまして実施されているところですが、今後ともこのような行事あるいはきめ細かな広報活動を通じまして、国民の科学技術に対する理解の向上と協力の確保に努めてまいりたいと考えます。
  221. 水谷弘

    ○水谷委員 先ほども国際交流の点について吉浦委員から質問がございまして、事務局長の答弁を伺っておりました。いわゆる海外から受け入れる、そういうことに今回は限定をしてある、海外に派遣することは当面考えていないということでありますが、やはり日本のすぐれたいろんな技術、そういうものがたくさんあるわけでありまして、向こうから来ていただくだけではなく、こちらから大きく国際的に貢献するという面からもやはり一考された方がいいと思います。そういう必要はないとここでお決めにならない方がいいのではないか、こう思いますが、いかがですか。
  222. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 先ほど私もそういうふうに断定的に申し上げたつもりではなかったのですが、現状、例えば途上国の場合なんかですとJICAの関係で非常に多くの技術援助も出ております。そういうふうにいろんな関係で大変出ておりますけれども、今後は今のような機構全体の運営の中でいろいろな弾力的な考え方で対応したいというふうに考えていきたいと思います。
  223. 水谷弘

    ○水谷委員 ぜひそうしていただきたいと思います。  次に、今回の機構遺伝資源の提供というのがございますけれども、今、ジーンバンク、政府もこの遺伝資源確保については大変力を入れられております。遺伝資源としてこの地球上に生存する動植物、微生物、こういうものが重要な研究開発基本的な素材になるわけでありますが、農作物についていえば、特定の病気に強い抵抗性や耐冷性また耐寒性などの遺伝的特性を持った野生植物など、これも非常に重要な遺伝資源になり、また温泉や熱帯地域に生息する耐熱性細菌、これも大変有用な遺伝資源になる、野生の中、また我々が手をつけていないところにこういうたくさんの遺伝資源があるわけであります。  しかし総合的に見ると我が国は、鉱物資源などの天然資源に恵まれていないと同じく、この遺伝資源についても大変恵まれた立場にはないわけであります。今後大変必要になってくるこの遺伝資源確保こういうものについてより一層の努力をしていただきたいということ。もう一つは、原生種の豊富な世界各地の原生地域への遺伝資源の調査だとか収集だとか、また相手国と相互協力のもとにそういうことを進める、国際植物遺伝資源委員会、こういうものとの連携をより一層深めていくということが非常に大切だと考えておりますが、政府の基本的な現在のお取り組み、今後の方向お尋ねいたします。
  224. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 昭和六十年度、農林水産ジーンバンク元年というふうな言葉で表現をいたしておりますけれども、農林水産省といたしましては、将来バイオテクノロジー等の先端技術にとっても大変重要な基盤となる生物の遺伝資源確保については最大重要な課題と考えて取り組んでおるわけでございます。  このため、主として生物遺伝資源の宝庫と目される熱帯、亜熱帯、こういった方面からの遺伝資源の収集を計画的に実施しておりますけれども、例えば中国の雲南地方におきまして現在水稲の育種に関します日中共同研究を実施し、その四年目になっております。こういったものも、両国の遺伝資源の活用をもとにして両国共同ですぐれた品種をつくろうという共同研究でありまして、この中でも遺伝資源の交換が行われております。さらには、先ほど先生からお話がありましたような国際遺伝資源理事会、IBPGR、国際的な活動の中でも積極的にその遺伝資源の探索、収集の活動に加わって成果を上げている次第でございます。  こうしたように、今後の遺伝資源の効果的、有効な確保の方策の基本は、やはり国際的な研究協力を土台にして、その上で計画的に専門家遺伝資源の非常に豊富な国々に、そういった遺伝資源探索に派遣をし収集を図るということであると思いますし、あわせて遺伝資源の収集というものは、収集をした遺伝資源についてより速くその遺伝資源の特性情報の評価あるいは情報の整備といったものを通じまして有効な利用に供していきたいと考えております。
  225. 水谷弘

    ○水谷委員 次に、新機構がいよいよ発足をするわけでありまして、この特別認可法人、新機構民間のすばらしい意欲というものをより一層引っ張り出すという方向に向かっていかなければならないわけであります。従来から特殊法人についてはとかく国のいろいろな縛りがきつ過ぎて、なかなか自主性というものが発揮できないというような嫌いがございますが、そういう点については、これは指摘はされていると思いますが、余りにも過度な行政上の介入というものは行うべきではないというふうに考えております。  と同時に、この認可法人というのは他省庁に、農水省だけではなくていろいろまたがっていきます。そういう意味で、この機構が有用に運営されるように、支障がないようにしっかりとお取り組みをいただきたいという気持ちでおりますが、その点についてはいかがでございますか。
  226. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 本機構設立の趣旨でございますけれども、これは創造性豊かな民間研究活動促進しようということでございまして、これによりまして生物系特定産業技術高度化を図るということにあるわけでございます。したがいまして、本機構民間において発意された官民共同出資の認可法人ということで設立されることになっておりますので、この組織の運営あるいは業務推進に当たりましても、可能な限り民間の意向を反映して法人の自主性を尊重してまいりたい、これがまた重要である、そういうふうに考えております。
  227. 水谷弘

    ○水谷委員 出融資業務についてお尋ねいたしますが、民間が設定をした試験研究のテーマに対して、融資の対象とするかしないか、そういうものは一体この新機構の中のどこで判断をしていくのかお尋ねいたします。
  228. 土屋國夫

    ○土屋政府委員 お答えいたします。  民間から申請されました研究プロジェクトの計画等について、この機構内部において評議員会あるいは理事会等で定められた基本的な考え方に即してそれの採否を判断するわけでございますけれども、その際には、この分野における学識経験者の御判断等も十分仰ぎまして、そのプロジェクトがこの機構の趣旨、性格等について即応しているかどうか、あるいはそのプロジェクトが成功の見通しがあるかどうかとか、そういったことなども含めまして総合的に判断するという体制をつくる必要があると考えております。
  229. 水谷弘

    ○水谷委員 評議員会理事会、そういうところで決まっていくわけでありますが、どうか公正、公平に、適切、的確に行われるように、これはしっかりとお取り組みをしていただきたいと思います。  もう一つは、試験研究融資に当たって、五年間据え置き、そして六年目からということになっております。この六年目に研究の成功の度合いに応じて無利子になるか利子がつくかということが判定されるということでありますが、その成功の度合いというのは具体的にどういうふうに、例えばあと一年たてばもっといい結果が出るかもしれない、あと三年くらいたてばしっかりしたものになるかもしれないがというようなこともあるし、五年というので切るのが果たして妥当なのかなと思うわけでありますが、これはいかがでございますか。どういう根拠、五年は長過ぎるのじゃないかという人もいるかもしれませんが、このような時間とリスクが大変あるこういう研究が果たして五年というのはどうなんだろうか、素朴にそういう疑問を投げるわけですが、いかがでございますか。
  230. 土屋國夫

    ○土屋政府委員 お答え申し上げます。  この機構による特に融資でございますけれども、据置期間五年で償還期間十年という条件で、しかも成功した場合には一定の利子をということで融資をいたすわけでございます。五年たった段階においてその研究プロジェクトについて判断をするわけでありますけれども、成功する見込みがあるかどうか、あるいは成功したかどうかということについては、学識経験者等によって技術的な観点から検討して判断をしていただきたいと思っておるわけでございますが、この類似の制度もございますので、それらの制度の状況等も十分参考にさせていただきましてその判断をしてまいりたいというふうに考えております。ある程度の判断は五年たった段階で可能ではないかと考えておりますが、もちろん全体としては十五年の計画ということを考えている次第でございます。
  231. 水谷弘

    ○水谷委員 いろいろな意見があろうかと思いますね。そんなこそくな、成功の度合いに応じて利子を取るとか取らないとか、そんなことやめてしまえ、しっかりテーマ選定をして、こういう研究をしたいという、それを責任者が一生懸命判定して、ああこれなら有用な研究だなということで出資していくのですから、こういう大事な事業というものはそんなこそくな、度合いに応じて利子をどうこうというようなことは、個人的な考えてありますが、必要ないのではないか、こういうふうに私は考えております。  次に、農業機械化促進業務についてお尋ねをいたします。  昭和三十七年からスタートをしてきた農業機械化研究所、四半世紀たっております。我が国農業の進展を見れば、農業機械の進歩というものが我が国農業を大きく前進させてきた、その前進の陰に農業機械化研究所が大変大きな使命、役割を果たしてきた、こういうふうに思います。今回のこの新しい機構の中にこの業務が入り、研究所が入っていく。農林水産業の科学技術全体の進展を図るという面からすればいいのですが、率直に言って、農業機械化研究所の皆さん方のお気持ちは、おれたちの機関が何となくこれからどうなるのかな、バイオ、バイオと騒いでいるけれども、機械も大切だぞ、機械の方をいささかもおろそかにしてもらっては困る、こういうふうな不安があるのではないかと私は思います。  そういう意味で、この新しい機構がスタートすると同時に、従来にも増してこの機械化研究所、またこの農業機械研究という分野における国の取り組みをより一層強化し、そしてさらに農林水産業にとって有用な農業機械がどんどん開発されていくように取り組みをしていっていただきたい。間違っても農業機械研究が後退するようなことがあってはならない、こう思います。また、断じてそうさせないとお考えになっていらっしゃると思いますけれども、御所見をお伺いしておきます。
  232. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 農業機械が果たしてきた役割は今日の農業の発展の中に非常に大きなものがあったというふうに考えております目その意味で、新しい機構設立に伴いまして農業機械化研究所を発展的に改組することにはなっておりますけれども、この研究所が行ってまいりました農業機械化の促進に資するための農機具の改良に関する試験研究などの業務につきましては、やはり新機構がそのまま継承いたしまして、従来どおり農業機械化促進法に基づいて適正円滑に私どもは実施していかなければいけないというふうに考えております。したがいまして、今後の改組によりまして農業機械研究がもう一歩たりとも引き下がるようなことのないように私たちもさらに検討を進めていきたい、研究を進めていきたいというふうに考えます。
  233. 水谷弘

    ○水谷委員 以上で終わります。
  234. 大石千八

    大石委員長 神田厚君。
  235. 神田厚

    ○神田委員 バイオの問題について御質問申し上げますが、最初に、研究開発に伴う諸問題について御質問を申し上げます。  近年、バイオテクノロジーなどの先端技術の発展は目覚ましいものがありまして、二十一世紀に向けて、生産性の飛躍的向上はもとより、国民生活の向上や国民経済の健全な発展の面からも大きな期待が寄せられているわけであります。  そこで第一に、このようなバイオテクノロジーの発展は人間に多大な恩恵をもたらすと思われていますが、諸外国における研究開発成果はどのようなものがあるのでありましょうか、まずお教えをいただきます。
  236. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 諸外国のバイオテクノロジー研究開発現状についてでございますけれども、まず、組みかえDNA技術の関連でございますと、一九七三年に米国のコーエン、ボイヤーが異なる微生物の間で遺伝子の組みかたに成功したということは大変有名な話であります。その後、一九七八年に大腸菌を用いましてヒトインシュリンの合成でありますとか、一九七九年にはヒト成長ホルモン、さらに一九八〇年にはヒトインターフェロンと、相次いでこういったものに成功をおさめているわけでございます。  また、植物の分野でありますと、一九七七年にフランスにおきまして、植物用ベクターといたしましてTiプラスミドが開発されました。さらに一九八三年に、これを用いまして米国でインゲンのたんぱく質遺伝子をヒマワリに導入、発現させることに成功いたしました。さらにまた一九八五年には、同じく米国で、除草剤耐性を持つたばこの作出に成功しております。ただし、これらはいずれもまだ実用的なものとはなっておりません。  細胞融合技術でございますが、細胞融合技術では、植物の分野におきましては、一九六八年に我が国でプロトプラストの大量調製法が開発されております。それ以降、一九七二年に米国でたばこの種間融合個体の育成に成功しておりますし、一九七八年には有名な西ドイツのポマトの作出がございます。  こういったところが著明な成功例であります。
  237. 神田厚

    ○神田委員 鉱工業分野におきましては日本におきましても先端技術への取り組みは大変高いわけでありますが、農林水産業の分野におきまして非常に低いと言われております。諸外国と比較してこの技術格差の状況はどういうふうになっておりますか。
  238. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 諸外国と比較しての技術格差につきましては、科学技術庁の昭和五十八年度の調査があるわけでございますけれども、これによりますと、まず、米国と比べて遺伝子組みかえあるいは細胞融合等のこういったバイオテクノロジー技術開発あるいはこれらを作物育種に活用する場面、こういった面においては米国に比べて我が国の水準はやや低いとされております。なおまた、微生物を利用する技術につきましては大体アメリカと同等の水準、さらに発酵技術、これはやや高い水準、そういうことでございます。  さらに、ヨーロッパ諸国に比べまして、遺伝子組みかえ、細胞培養、作物育種、発酵技術、これらについていずれも水準は大体同程度というふうに調査結果が発表されております。
  239. 神田厚

    ○神田委員 そうしますと、今後農林水産業分野におきまして、バイオテクノロジー開発によりどのような成果が期待をされるとお考えでありますか。
  240. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 今後の農林水産分野のバイオテクノロジーによります期待される成果につきましては、先ほど諸外国の成功例なども申し上げましたけれども、まずは植物の育種場面におきまして、これは二十一世紀を見通してのバイオテクノロジー研究が今年度からかなり大がかりに始められることになっておりますし、そのほか、微生物関係でありますと、食品の関係のバイオリアクターの関係あるいはバイオマス変換技術、こういったところに今後の主要な技術の展開が期待されております。
  241. 神田厚

    ○神田委員 次に、ガイドラインの問題であります。  諸外国及び我が国におきましても、バイオテクノロジーなど先端技術研究開発に当たっては、それぞれガイドラインに沿って行われております。このガイドラインは現在がなり緩和されている状況でありますが、バイオの将来などを考えますと、いまだ不確定な要素も大変多い状況でありまして、研究開発に伴う未知の危険性についても、人間あるいは環境、さらには生態系等に及ぼす影響が大変多く考えられるわけであります。したがいまして、それらに対します政府の対処方針はどのようになっておりますか、お伺いいたします。
  242. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 バイオテクノロシーの開発に当たりましての安全性確保の対策でございますけれども、特に組みかえDNA技術に関連いたしましては、内閣総理大臣の定めます組換えDNA実験指針に従いまして研究を進めているところでございます。この指針につきましては、既に経団連を通じまして民間の各企業にも周知されておりますし、当省におきましても関係の団体等に周知徹底を図っているところでございます。また、農林水産省試験研究機関におきましても安全委員会等設置しておりまして、その中で安全規則を定めたりしてその安全性確保に十分配慮をしておるところでございます。  今後さらにこの技術農業生産の現場におきます活用が一層期待されておる状況にありますので、ただいま申し上げましたような実験段階での安全対策とあわせまして、今後、実用化段階での適正な安全性確保のための基準のあり方等につきましても、欧米諸国の動向等を見きわめながら検討を進めているところでございます。
  243. 神田厚

    ○神田委員 次に、民間研究促進業務について御質問申し上げます。  まず第一点は、今回提出されました法徴案の第二条におきまして、「生物系特定産業技術」についての定義がなされております。「農林漁業」「飲食料品製造業及びたばこ製造業」等に係る試験研究、こういうふうにされておりますが、その対象とするものが、何であるか、具体的な例示がありませんけれども、これについて御説明をいただきたいと思います。
  244. 土屋國夫

    ○土屋政府委員 お答えいたします。  具体的な例示がないということで御質問でございますけれども、「農林漁業」「飲食料品製造業及びたばこ製造業」、この三業に係る技術であるというのがまず第一の条件でございます。もちろん三号で政令で指定された場合にはその業種も対象になるわけであります。  そしてその中で、特に第二条の後半のところに、「その開発に当たり生物の機能又はその発現の成果の特性に密接に関連する試験研究を必要とするものをいう。」そういうことで技術特定しているわけでありますけれども、この関係につきましてはいろいろな大変広い範囲があるわけであります。育種関係はもちろんでございますし、例えば農林漁業に関する技術というのは、多くのものが農作物あるいは家畜等の特性というものに密接に関連する技術、そういう特性を十分配慮した技術開発ということになるわけでございまして、そういう意味ではこれも大変広い。農薬等においてもそうでございましょうし、それから施設栽培における施設の関係、それからいろいろ機械等においても、農業、農作物の実態に即応したそういう技術対象になるわけでございまして、そういうものに含まれるものはこの定義の中に読まれるものではないかと考えております。
  245. 神田厚

    ○神田委員 何か説明がよくわかりませんが、もう少し具体的にどういうふうなものだということがあれば親切だと思うのであります。  次に、開発された特許権の問題でございますが、この特許権の取り扱いがどういうふうになるのか。民間試験研究で得た成果が秘匿をされ、隠されてしまって、一部の企業だけの利益となったりするということになりますと、この法案の趣旨に反するようなことにもなりますので、その辺のところはどういうふうにお考えになりますか。
  246. 土屋國夫

    ○土屋政府委員 お答え申し上げますが、先ほどの説明でちょっと補足させていただきますけれども、性格としては先ほど申し上げたようなことでいいと思っておりますけれども、一つの具体的な例としては、例えばバイテクを応用した野菜とかたばこなどの新品種、あるいは高性能動物用ワクチン、あるいは魚類成長ホルモン等の開発といったようなことがまず一つ。それから、農林水産分野における低未利用資源の有効利用に関する技術、バイオマス変換技術等、それから食品製造とか酒類製造の新手法の開発、さらに、生物特性に即した新しい機能を備えた資材とか施設等の開発、そういったものが具体的には対象になるのではないかと考えております。  それから、ただいまの御質問で特許権の問題でありますけれども、申し上げるまでもなく、民間開発された技術は、この特許権の性格から研究開発者にインセンティブを与えるという趣旨でございますので、第一義的には民間研究された研究成果開発者に帰属するのではないかと思います。  しかし、このような研究成果につきましては、通常、特許出願という形で技術の内容が公開されるわけでございますし、最終的には新しい技術としてあるいは製品として、国民、消費者に良質あるいは低廉なものが供給されるということで、消費者にも十分その利益が及ぶのではないかと考えております。
  247. 神田厚

    ○神田委員 ですから、及ぶのではないかということではなくて、及ぼせるようにきちんと指導するなり、そういう機構的な中で検証が行われるようにしていただきたい、こう思うわけであります。  次に、機構は国際研究協力も業務一つとしておりますが、海外からの研究者の招聘についてはそこに触れておりますけれども、我が国から研究者を派遣するという問題についてはこれが盛り込まれていないわけであります。予算関係その他、大変少ない予算で発足をするようでありますのでそういう制約もあるいはあるかと思うのでありますが、研究者の派遣ができない理由、これはどういうところにあるのか。また、公益信託制度のような対応策を考える必要はないのかどうか、その点についてお聞きをいたします。
  248. 土屋國夫

    ○土屋政府委員 お答えいたします。  先ほどこの点につきましても局長から若干お答えがあったわけでありますけれども、我が国の、特に農林水産分野の海外研究との間における研究者の交流の実態というものから見まして、我が国からはかなり多くの研究者が既に海外に出ていっておられる、派遣されているという実態がございます。むしろ、海外からの研究者が国内に来る方がまだまだ非常に不足している。この制度は、国内における民間研究に対する支援という、そういう性格でもございますので、むしろ海外の優秀な研究者を国内に招聘する機会というものを積極的に持つということが有効ではないかということを考えておるわけでございます。  なお、特に国等における研究者の海外への派遣という制度は別にございまして、そういう面を通じては国の研究者を積極酌に海外に派遣をされ、出ていって、研究、交流に努めているわけでございますし、先ほど申し上げましたように民間においても同様な状況にありますので、この際私どものこの制度としては、海外の研究者の招聘ということに重点を置いたということでございます。
  249. 神田厚

    ○神田委員 この機構は国際的なレベルを確保するということであるわけでありますから、そういう意味では、知識の交換というものを含めて、海外に研究者を出すということを少し積極的に考えたらいかがかと思う。それができないということならば、何らかの形でできるような公益信託制度のようなものは考えないのかどうかということについて、再度御答弁いただきます。
  250. 土屋國夫

    ○土屋政府委員 お答えいたします。  確かに研究者の国際交流というものはこれからますます積極的に図っていくという必要がございますけれども、今先生の御指摘等の点については、今後検討させていただきたいと存じております。
  251. 神田厚

    ○神田委員 次に、出融資業務の問題であります。  機構が行います民間研究促進業務の主なものとして出融資業務があるわけでありますが、これは技術開発に当たって、リスクの高さから民間の取り組むことが難しいものに対しまして、出融資を行って民間研究促進させる、こういうことであります。原資は公的なものでありまして、その運用に当たっては、公正、適切かつ効率的であることが望ましいわけでありますが、民間から応募されるプロジェクト選択につきましては、機構のどの組織が、どの部分が対応するのか、また、プロジェクトの成否の判断基準についてはどうなっているのか、判断に当たって極めて高度かつ専門的なものが望まれますが、機構内に何らかのこれに対応する組織をつくるのかどうか、この点についてお伺いいたします。
  252. 土屋國夫

    ○土屋政府委員 お答えいたします。  この機構の出融資業務について、民間からの応募される、申請されるプロジェクトについては、この機構内部組織として、それを受け付けあるいは事務的にそれを処理するという、そのような組織が必要であるということは申し上げるまでもありません。それは何らかの形でそういう一つの組織が設けられるというふうに考えております。  なおそれだけではなくて、この機構がそのようなプロジェクトについて的確に採否を公正な見地から判断するための一つの組織といたしましては、理事会とかあるいは評議員会といったような、そういう大所高所から基本的なことを判断する組織のほかに、学識経験者等から成る審査をする仕組みというものを設ける必要があるというふうに考えております。そのような考え方で対応すべく、この機構に対していろいろ期待をしてまいり、指導してまいりたいというふうに考えております。
  253. 神田厚

    ○神田委員 次に、農業機械化促進業務につきまして御質問申し上げます。  今回、この機構設立に伴いまして特殊法人である農業機械化研究所は改組されることになりまして、その業務機構に承継されることになっております。機構研究所の改組により設立することとした理由一つには、六十一年度予算編成方針についての閣議決定におきまして、行革の推進を図る立場から、「各省庁の部局等及び特殊法人等については、既存機構の合理的再編成によるもののほか、新設は行わない。」こういう方針があったからであると思うのであります。  しかし、従来農業機械化研究所の果たしてきました役割は大変大きいものがありまして、機構のもう一つ業務である民間研究促進業務の内容と異なる業務一つ機構に盛り込むという積極的な理由がどこにあったのか、言いますれば、木に竹を接ぐようなものではなかったかという批判があるわけでありますが、その点につきましてはどういうふうにお考えになりますか。
  254. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 農業機械化促進業務民間研究促進業務とは、おっしゃるとおり業務の内容は異なるわけでございますけれども、両業務ともに我が国農業の体質強化を図るという点で、目的、趣旨を同じくするわけでございます。また、民間との連携、それから研究成果相互利用、こういった面におきましても密接な関連を有しておるわけでございまして、これらを本機構で一体的に行うことが今後の両業務推進上に有効である、それが積極的な理由でございます。
  255. 神田厚

    ○神田委員 余り説得力のない答弁でありますが、どこかでバイオのこういう研究機関をやらなければならないということで、農業機械化研究所にこれをくっつけたというわけでありますが、こういう性質の異なるものを二つ合わせますと、どうしても運営がうまくいかないようなところがありますから、その辺のところは十二分に農林省におきましてもよく見て、今後の運営をしていただきたいという要望をしておきたいと思っております。  それに関しまして、新法人設立に伴いまして、農業機械化研究所職員、資産、権利義務を、機構農業機械化促進業務を遂行するために承継する、こういうことになっておりますが、その承継に伴いまして、農業機械化研究所職員の待遇、その他処遇上の権利義務はどうなるのか、機構設立に伴いまして不利益の生ずることがないのかどうか、その点を確認をしておきたいと思います。
  256. 関谷俊作

    関谷政府委員 新機構設立に伴う機械化研究所の一切の権利義務の承継ということの一環としまして、御質問にございましたように、職員についても従来の関係がそのまま承継されるわけでございますが、それと関連しまして、従来の身分、処遇、さらに給与水準等も含めました従来どおりの待遇は、これは新機構に移行した後も続くということで、お尋ねのような不利益が生じない、そういう考え方で対応してまいりたいと考えております。
  257. 神田厚

    ○神田委員 この農業機械化研究所はいろいろ業務を果たしてまいりましたが、特に農作業などによる死亡事故等々の安全鑑定、農業機械の安全性の鑑定等の問題もとり行ってきたわけであります。  そこで、現在農作業による死亡事故が非常に多発しておりますが、そのうち農業機械・施設作業に係るものの比率が非常に高いわけでありまして、このような発生状況のここ数年来の推移及びその主な原因について、まず第一にお聞きしたいのであります。第二は、農業機械化推進業務一つに安全鑑定があるわけでありますが、安全性確保を図る上でどのような基準に基づき鑑定を行っているのか、また、政府は農作業事故防止につきましてどのような施策を講じておりまして、それがどういう成果を上げておるのか、この四点につきまして御質問をいたします。
  258. 関谷俊作

    関谷政府委員 農作業事故の発生状況でございますが、昭和五十九年で実施しました五十八年の暦年の調査結果でございますと、死亡事故が全国で三百九十九件ということで、これはちょうど十年前に当たります昭和四十九年の四百四十五件より件数としては減っておりますが、いろいろ就業人口対比等で見ますと、減るというよりは、就業人口当たりではむしろまだ必ずしも減っていないということでございます。そのうち機械作業に係る事故が五十八年の三百九十九件中二百七十五件ということでございまして約七割を占める。また、その内容としましては、機種別に見ますと、乗用型トラクターが最も多くて四割を占めている、しかも大体転落、転倒というものが主体になっている状況でございます。なお、傷害事故については、昭和五十九年の休業日数一日以上の傷害事故の抽出調査でございますが、就業人口対比で発生率を見ますと〇・六三%。この抽出調査の中では機械事故が半分ぐらいでございまして、この形態は、トラクターによるものあるいはコンバインによるもの等々がございます。  これに対する対策でございますが、まず機械化研究所関係におきましては、お尋ねの安全鑑定の問題それから型式検査の方の問題、両方、二つの対応をしております。型式検査については現在対象機種は十機種でございまして、この農機具の性能、構造等を検査します場合に安全性のチェックも行う。また、安全鑑定は二十八機種について実施をしておりまして、これは安全鑑定基準が決まっておりまして、大体機械自体の構造的な面の安全性等々について基準を設けて鑑定を行っております。この両方を合わせまして、現在出荷されております機械の台数のうちで、主要機種については、これらの型式検査または安全鑑定に合格したものの台数が今大体九割前後から九割を少し超えるというような状況になっておりますので、この辺の関係の仕事についてはこれからもさらに確実に実施してまいりたいと考えております。  そのほかの農作業安全対策でございますが、全体として今申し上げましたような農作業の事故調査を実施いたしますほかには、いわゆる県の研修担当者に対する安全研修、また今度県段階では市町村の農作業安全指導員に対する研修、こういうことで指導者の研修を行うということが第一点でございます。それから、市町村段階では農作業安全巡回指導でございますとか、特にこれから問題になります老人、婦人の方々に対する安全講習会を開催する、またさらに全国ネットでテレビ放映、普及啓蒙ポスター等も配布するということで、安全意識の開発にも努めておるわけでございまして、これらの政策をこれからも十分確実に実施してまいりたいと考えております。
  259. 神田厚

    ○神田委員 時間が来ましたので終わります。
  260. 大石千八

    大石委員長 中林佳子君。
  261. 中林佳子

    ○中林委員 法案の内容に入る前に、最初に大臣に少しお尋ねします。  農水省関係技術研究試験研究は、農林水産技術会議が大臣の意思決定の補助機関として計画の策定や調整を行っておりますが、六十一年度の予算で見ますと、この技術会議農水省試験研究機関の両方を合わせて約四百八十九億円、研究員数で約三千四百人と聞いております。大臣は所信において、技術研究の役割について、「農林水産業・食品産業等における生産性の飛躍的向上、農山漁村の活性化等を図る上で、極めて重要な役割を果たしていくことが期待されております。」と、このように述べられております。その立場から見まして、約四百八十九億円とそして約三千四百人の国の研究体制は十分な体制とお考えになっているのか。そして、さらに国としての農水関係研究体制を一層充実されていく方針であるのかどうか、この二点についてお伺いします。
  262. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 国の研究機関は今日まで大きな役割を果たしてきたと私どもは思っております。そして、十分かというお問いに対しては、私どもも予算を編成する過程の中にありましても、この分野においては他の分野に比べますと大きく積み上げたつもりでありますけれども、ただ、研究体制はこれでもう十分かというと、もっともっとやりたいなという分野、もっと促進させたいな、あるいはもっと拡充したいなという分野があると私ども率直に思っております。(中林委員「これからは」と呼ぶ)これからもそういうことでありますし、また特に先ほど来皆さんからもお話がありましたように、日本のこの狭い国土の中で高い生産性を上げていかなければいけない、あるいは食糧というものも来るべき時代に向かって確保していかなければいけないというときに、今から研究体制というものはさらに拡充しておく必要があると考えております。
  263. 中林佳子

    ○中林委員 先ほど数字を挙げたわけですけれども、農水関係試験研究予算は対前年比で見ますと一・七%増と、農水全体の予算が対前年比四・八%減という状況の中では確かに大幅増と言えるのではないかと思うのです。しかし、金額的に見ますと農水全体予算のわずか一・五%にすぎないのですね。大臣も今お認めになりましたように、お世辞にも国の基幹産業を支える研究体制が十分であるとは言えない状況だと思います。  こうした現状を直視するならば、政府といたしましても、農水関係試験研究を一層発展させるためにも、当然のことながら国が責任を持って国の予算と体制を充実していくことが大切だ、私はこのように思います。ところが、今回出されました生物系特定産業技術研究推進機構法案は、いわゆるバイテク民活センター設立法案とも言われていますように、国の体制充実どころではなくして、国が果たすべき役割を民間にゆだねるようなものである、このように思います。  大臣にお伺いしますけれども、バイテクなどという基礎的研究は、民活に頼るのでなくして国が責任を持って進めるべきだと私は思うのですけれども、その点、いかがでしょうか。
  264. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 確かに国で基礎的な問題について研究を進めていく、これは私はこれからも進めていかなければならないと思います。ただ、民間にあります活力というものは大変すばらしいものがありまして、多分この議論の過程の中でもあったと思うのですけれども、むしろ民間の活力というものを引っ張り出してあげる、こういったことをすることが今大切なときじゃないかなと思います。  今各国がどんどん切磋琢磨しておりますし、あるいは各地域におきましてもいろいろな発想というものが次から次へと出てきておる、そういう中に、私たちが望む、あるいは将来期待ができる基礎技術あるいはその応用技術、こんなものが生まれてくるのじゃないかなと私は思います。もちろん国もやりますけれども、民間の活力もどんどん引き出すような体制をしくことが、今、日本に求められている現状じゃなかろうかと私は思います。
  265. 中林佳子

    ○中林委員 大臣は国がこういうことも十分やるというふうにおっしゃいましたけれども、どのように弁明されましても、この中身を読む限り、この法案は国が果たさなければならない役割を回避している、このように見なければならないと私は思います。  そこで、法案の中身に入っていきますけれども、法案の第二十七条に役員や職員等の秘密保持義務が入っているわけですが、この法案と同じような内容を持つ通産省所管の基盤技術研究円滑化法にはこういう条項はありません。バイオテクノロジーは、バイオハザード、生物災害の問題、あるいは未知なる危険なものを含みますし、また遺伝子組みかえとか細胞融合など生命倫理にもかかわるような重要な基礎的技術研究であります。そういう重要性から国みずからもいま実験指針をつくっておられるわけです。しかも、この新法人民間人を中心に組織される上に、研究テーマや成果についての公表の規定や義務も全くこの法案では見当たりません。こうなると重大な研究が秘密体制のもとで進められることになって、私は極めて危険だと思うのですけれども、なぜこういう条項をお入れになったのでしょうか。
  266. 土屋國夫

    ○土屋政府委員 お答えいたします。  先生のおっしゃるとおり、この機構の役員、職員、評議員については、法二十七条で守秘義務を課すことにしているわけであります。これは、この機構に改組、発展的に入ります機械化研究所の現在の体制として既に役職員についてのそのような守秘義務が課せられているわけでございますし、その業務をそのまま本機構が継承するということでございますので、そういう意味からこの機構の役職員、評議員には守秘義務を課すことにしているわけでございます。  なお、技術研究成果等の公開等の問題については、必ずしも守秘義務を課す課さないということとは直接かかわりがないと考えております。といいますのは、この組織として公開すべきものはそういう守秘義務がありましても十分公開し得ると考えております。そういう意味で、この機構の公益的性格、特に検査業務というものもあわせ行うということとの関係におきまして、役職員につきましては守秘義務を課しているわけでございます。
  267. 中林佳子

    ○中林委員 確かに農業機械化促進法では同じ条項があることは私も知っております。しかし、農業機械では型式検査などということで企業秘密を守るということの上からその必要性はわかるわけですけれども、今回の法案はバイテクという非常に基礎的な研究になるわけですね。しかも先ほどもお話しいたしましたように、未知なる危険も含んでおります。また、アメリカなどでは細菌研究なども研究対象に挙げられている、このように聞いておりますと、軍事的利用にもあるいはなるのじゃないかとも考えられるわけです。ですから、農業機械の問題とは全く異質の研究です。そもそも、この委員会でも相当論議になっておりますけれども、機械化研究所をこの機構に取り込むこと自体が大変無理な話になっております。  秘密にするということになりますと、非常にそのような未知の問題を含んでおりますので、ますます危険な状況をはらんでくると私は思わざるを得ないのです。公表するということと守秘義務とは関係ないんだとおっしゃるのですけれども、それならば、公表のちゃんとした第三者機関なりを設けましてきちんとチェックできるような、担保できる条項がどこかに入らなければならないと思うのですけれども、このような国のお金を使ってやるような研究で全くその条項もないというようになりますと、私は当然この秘密保持条項というのは撤回されるべき、削除されるべきだと思いますけれども、その考えはありませんか。それが一点です。  それから、農業機械化促進業務をこの機構に取り込むことによって、将来にわたっても現状の体制を維持する方針であるということを明確に御答弁いただきたいと思います。
  268. 土屋國夫

    ○土屋政府委員 お答えいたします。  守秘義務をなぜ課したかということは先ほど申し上げましたけれども、この技術研究公開の問題等については、機構として必要なもの、特に民間における研究開発推進という趣旨から見て、調和のとれた形での公開し得るものは積極的に公開していく、それは機構として行っていくということと、それから、そのような審査等に参画する者の守秘義務ということとは相両立することではないかというように考えておりますし、現実にどのようなものを公開していくかどうかということにつきましては、私どもとしてはこれからいろいろ慎重に検討していく必要があると考えております。  そういう意味で、新たに公開についての規定を設けるということは、なかなか画一的にそういうことができるかどうか非常に問題があるところでございまして、できるだけ先ほど申し上げたような考え方でこの機構運営をしていく必要があると考えているわけであります。
  269. 中林佳子

    ○中林委員 守秘義務の問題は、従来の農業機械化促進法に基づいて型式検査などについての企業秘密を漏らしてはならないということ、これは当然理解できるわけですが、これをバイオテクノロージの研究の方にもかぶせていく必要は全くないと思います。そういう意味でいけば、こういう条項を法律で掲げればすべてかぶさっていくわけです。ですから、それは削除して、型式検査など従来の農業機械化促進法に基づく分野における部分については、当然内規でもこれはできる問題だと思います。  また、公開の問題で言えば、例えば国の機関でも、原子力安全委員会のように第三者機関を設けてやっているわけですよ。ですからそういう意味では、きちっとした担保がなければ、機構なり企業なりが公開したい、したくないと思えば、それは自由にできるということになってしまいますのでこの点にも大いに問題があることを指摘して、次に移ります。  最近、特に農機具事故は、先ほども数字をお示しになっておりましたけれども、非常に多くなっておりますし、その安全性研究の拡充というのは私もこの委員会で再三求めているところでありますが、それにもかかわらず、こういう特殊法人を廃止して全く性格の異なる研究を進める新たな機構にその業務を取り込む自体、国の研究体制の後退と見ざるを得ないわけです。しかも、先ほどの御答弁を聞くと後退するようなことはないとおっしゃっておりますけれども、一部には、将来的にはこの農業機械化業務を縮小する方針であるということも私は聞いているわけです。  そこでお聞きしますけれども、農水省農業機械化研究所の果たしている役割をどのように認識しておられるのか、また、なぜこの農業機械化研究所を廃止し、しかも全く性格の異なる研究業務を行う新法人にその業務を取り込まざるを得なかったのか、その理由は何なのか、この二点についてお答えいただきたいと思います。
  270. 関谷俊作

    関谷政府委員 農業機械化研究業務でございますが、これは今回の機構法の制定による後も同じでございますが、農業機械化促進法という法律がございまして、その中に型式検査等の業務農業機械化審議会の設置、それから冒頭に高性能農業機械導入の方針ということがございます。その一環として農業機械化研究等の業務が位置づけられていたわけでございまして、こいうふうに見ますと、やはり農業機械化促進、こういうものの中で機械化研究所業務というのは非常に大事な不可欠の一環をなしていたわけでございます。現実にも我が国農業機械化ということについての研究機関は国としてはこの一カ所でございますので、そういう意味で大変大事な業務でございますし、これからいろいろ機械のコストの低減なり有効利用、さらに安全性確保、こういう面から大変大事な業務だというふうに考えておるわけでございます。  今回こういう措置をとりました経過につきましては、やはり全体として、今回考えられますような民間支援業務については大変大事な業務である、しかしこれはいわゆる民間機関ではできないわけでございまして、国の出資もございますので、いわゆる特別認可法人というような形態でなければできない業務でございますので、それならば、せっかくある機械化研究所という機構を活用して、この支援業務もできるようにしようということで考えたのがこの発想の原点でございます。  ただ、私どもその場合に一番大前提としましては、ただいま申し上げましたような機械化関係業務の大事なことがございますので、これが後退することがあるならば私どもとしては当然こんなことは考えないわけでございまして、これが後退しない、従来どおり推進できる、こういう保証がありましたからこそこういう構想をとった次第でございます。
  271. 中林佳子

    ○中林委員 局長、一番大切な理由をお述べにならなかったわけですね。これは調査室の資料でございますが、私も農水省の方にたびたびなぜこういうことになったかという理由をお聞きしましたら、昭和六十一年度予算編成方針についての閣議決定で「各省庁の部局等及び特殊法人等については、既存機構の合理的再編成によるもののほか、新設は行わない。」つまり行革絡みでこういう全く異質なものがくっついたというのが一番の理由ではありませんか。それを全くお述べにならないで、必要だと思ったからというようなことでは、私はごまかし答弁だと言わざるを得ないということを申しておきます。ですから、私は、農水省の方々の説明を受けましても、こういう行革理論を押しつけて、従来の非常に大切な、本当に日本に一つしかないという研究体制が縮小再編されるということはもってのほかだというふうに思います。  いま一つ私どもがこの法案で問題だと思いますのは、随所に大企業奉仕の内容が貫かれている点です。支援対象としては、民間企業、団体、地域第三セクターなどが考えられているということですが、ハイテク研究では民間企業、中でも大企業が既に社内研究所設立して取り組んでおり、大きく先行しているのが実態です。農水省説明でも、産業投資特別会計からの融資は必ず返さなければならず、そうなると、企業への融資もおのずと企業研究体制が整った成功率の高い研究に融資することになる、このようにおっしゃっているわけですね。もちろん私は大企業研究開発の融資をすることがけしからないなどと言うわけではありません。問題なのはその融資条件ですが、どのような条件になっていますか。
  272. 土屋國夫

    ○土屋政府委員 お答えいたします。  融資条件につきましては、今後財政当局との協議などを踏まえて適正に決められていくものと考えておりますけれども、当省としては、試験研究費という資金のリスク性にかんがみまして、当面以下のような条件としたいというふうに考えているわけであります。  据置期間五年以内、償還期間十五年以内、これは据置期間を含みます。一般的には利子は無利子ということで、ただし成功した場合には成功の度合い等に応じて所定の利率とするというふうに考えております。なお、支払い方法につきましては、元金均等の半年賦払い、こういうことで、これは既に通産省関係でスタートしております基盤技術研究促進センターの例にほぼ準じて考えていきたいというふうに思っております。
  273. 中林佳子

    ○中林委員 そういう条件を聞いて私思いますのに、財界からは低利過ぎると攻撃の矢面に立たされている農林漁業の公的資金、それに比べてもはるかに企業側にとって有利な条件になっているでしょう。無利子だとか五年据え置きだとか、こういうようなことは、農民が借りようと思ってもとてもそういう条件はありません。  しかも、産投会計という公的資金を運用しながら、その研究成果、これも農水省説明によれば開発した企業に帰属し、公表の義務はない、こういうことでございますが、この点は間違いありませんね。
  274. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 企業開発をしました研究成果の公表の問題でございますけれども、民間が行う技術研究企業活動一環として行われるものでありまして、開発者利益の確保という観点から、通常は特許出願という形でその技術内容が公開されることが多いわけでありますし、最終的には新しい技術あるいは製品、こういった形で国民に広く公開されるものと考えております。
  275. 中林佳子

    ○中林委員 公表の義務があるかないかを聞いているのです。
  276. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 研究成果段階がいろいろございますけれども、一般にそういったものを義務づけるという性格のものではないと考えております。
  277. 中林佳子

    ○中林委員 ちゃんとお聞きしたことにお答えいただきたいと思います。そのとおり公表の義務は全くないんですね。  出融資事業のほか、国のジーンバンク資源のあっせんだとか国と民間の共同研究のあっせん、さらに情報提供と、至れり尽くせりの体制づくりがこの法案によってされるものであります。このほか、業務の中に受託研究も入っております。これは国の研究者がこの機構に出向し、場合によっては民間企業研究設備を借り上げて研究を行うことである、私はこのように理解しているのですけれども、それでよろしいでしょうか。
  278. 土屋國夫

    ○土屋政府委員 お答えいたします。  この受託研究につきましては、民間において資金等については十分能力があるものの、体制等において、人的能力等において非常に欠けている、不足している、そういう場合に、この試験研究を進めてまいりたいという民間に対しましてこの機構がそれを支援していこうという考え方でいるわけでありまして、当面、機構といたしましてはみずからそこで試験研究を行うわけではございませんので、またそういう能力を持ってはおりませんので、民間からのそのような需要、ニーズに対しては、それを他の研究機関に対して場合によってはあっせんをしていく、仲介をしていくという、そのような形での対応をしていくのが一番適切ではないかというふうに考えております。  特に農林水産関係につきましては、御案内のように……(中林委員「私の聞いたことに答えてください、こういう場合もあるかということです」と呼ぶ)全くそういうことはないということは私も申し上げられませんけれども、当面、先ほど申し上げたようなことでこの受託研究関係については業務を行っていくべきではないか、いかせようというふうに考えております。
  279. 中林佳子

    ○中林委員 法律というものはできましたらひとり歩きするのです。ですから、そういうことが全くないとは言えないということは、あり得るということなんです。そうしますと、今法律で禁止されております国の研究者の民間への出向の道を開くもので、今科学技術委員会で論議されております研究交流促進法の研究公務員の民間出向と全く同じことがこの法案でもやられようとしていることが明らかになったと思うのです。  以上、説明で明らかになりましたように、この法案は、一つには、未知の危険を秘めたバイオテクノロジーという重要な研究に機密研究体制を持ち込み、二つには、臨調行革路線に沿って既存の国の研究体制を後退させ、そして三つ目に、大企業の利益に国が徹頭徹尾奉仕する、こういうような重大な問題を含んでおります。私どもは、農業の発展にとってハイテク研究促進は欠くことのできない大きな役割を担っていると考えておりますが、そうであればこそ、本当に農民の利益に結びつくようなハイテク研究技術試験研究を国が責任を持って行うことが重要であると考えております。そういうことから考えて、今回の法案はそのような国の責任を回避したものであって、私は認められません。大臣は、この法案の撤回をする意思はおありではありませんか。
  280. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 今お述べになられましたことについての見解は、根底から私どもとは異にするということをはっきり申し上げざるを得ないと思います。  この研究体制をつくり上げていくということは、情報の機密性については、研究者の立場を保護するということもありますし、いろいろな国でも、公開にする公開にしないは、特にバイオの技術については非常な議論があるところなんです。そういうところがまず一点であります。  二点目の、機構については、私どもとしても、先ほど関谷局長からお話ししましたように、機械化研究所の方と一緒にやってどうなんだということを徹底して議論した中で、私どもとしてはこれでできるということで進めてきたということです。  それから、財界奉仕と言いますけれども、これは財界とか何か特別な経済界をあれするのじゃなくて、小さな研究をしている人たちもいますし、育種の研究をしている人たちもたくさんいらっしゃるわけなんです。そういった人たちを支援していこうということでありますし、そこで成功することはまさに国民に広く還元されるということで、私は、ほとんどの国民の皆さん方はこの研究機構ができることに対して拍手を送っておるということをこの機会に申し上げたいと思います。
  281. 中林佳子

    ○中林委員 時間があれば反論したいところではありますけれども、こつこつと研究していらっしゃるところもそういう支援は受けられるのだとおっしゃいますけれども、実は農水省から説明を受けますと、産業投資特別会計から借りたお金は必ず返さなければならないので、融資を受けられるところはある程度ちゃんと成功するようなところでないとだめなんですよという話なんです。しかも、現在農水省とタイアップしてハイテクの研究をやっているところを探してみると、大企業ばかりですよ。サントリー、明治製菓、麒麟麦酒、日立造船、日清製粉、三菱重工、三井造船、キッコーマン、日本車輌、挙げれば切りがないくらい大企業がずらりとやっているわけです。そういうところに一層メリットを持っていくことは明らかだということを申し添えておきます。  続いて、法案に関連して我が国の農林水産関係研究体制の問題について質問いたします。  冒頭に指摘しましたように、ここ数年来、農水全体の予算が大幅に削減されている中で、農水関係技術研究予算はわずかながらふえております。しかし、全体からいえば農水予算の一、二%という少額にすぎません。基幹産業の研究予算としては本当にお粗末です。  問題は、そのわずかながらふえている農水関係研究予算の中身です。試験研究は、大きく分けて経常研究プロジェクト研究にわけられます。そこで聞きますけれども、経常研究基本となる人当研究費の昭和五十七年から昭和六十一年の五年間の推移と、プロジェクト研究の同じ五年間の予算額の推移はどのようになっておりますか、わかりやすく簡単にお答えいただきたいと思います。
  282. 土屋國夫

    ○土屋政府委員 お答えいたします。  まず、人当研究費の単価でございますけれども、昭和五十六年度の単価改定以来、工学系の実験を伴う実験系Ⅰ、農林水産省関係では農業土木試験場と水工所がございますが、そこでは百四十四万円、それから、生物系の実験を伴う実験系Ⅱの研究分野、大半がこれでございますけれども、この実験系Ⅱの研究分野につきましては百二十六万円、それから、非実験系の分野で農業総合研究所がございますが、これにつきましては九十一万円の単価で据え置かれております。しかし、六十年度におきましては、これに加えて、各分野の重点基礎研究に対して、旅費を含めて実験系では約七万円、非実験系では約五万円相当額が科学技術庁の科学技術振興調整費に計上されて今日に至っております。  また、プロジェクト研究等の経費につきましては、五十七年度の三十二億円から年々増加いたしまして、六十一年度においては五十七年度の三二%増の四十二億円になっております。
  283. 中林佳子

    ○中林委員 五年間ずっと据え置かれております経常研究というのは、いわば各試験研究機関が自主的に研究課題を設定して人当研究費に基づいて研究を進めるもので、各研究機関にとっては持続的研究の根幹をなすものです。その人当研究費が五年間据え置かれているわけですから、これでは我が国の基礎的研究が発展しないはずだと思います。  私は、筑波の農林業関係研究員からいろいろお話を聞いてみますと、口々に、経常研究費が実質的には削減されているのと同じ状況なんで、とても腰を据えた研究などやれないと言っていました。研究者とは名ばかりで、書類や器具の後片づけや室内の掃除などの雑用が多く、一日じゅう駆けずり回っている状況だ、何とかパートを雇いたいけれども、それも年間八十ないし百万円もかかって、今の研究費ですら足りないのに、それもできない、こういうふうにおっしゃるわけです。確かに百四十四万とか九十一万というふうな状況では、とてもパートなど雇えるような状況ではありません。  大臣、このような試験研究の最前線にいる研究者の方々の声をお聞きになったことがあるのでしょうか。こういう要望に対して、これからどのように取り組んでいかれるおつもりでしょうか。
  284. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 私どもも、今まで党にありましてもこういった問題についての勉強会をしばしばやっております。そういう中で、研究者の皆様方の声もしばしば私も今日まで聞いてきております。もちろん研究費が多いこと、そして必要なものがすべて整えられることが最もいいことでありましょう。ただ問題は、私どもは限られた中で物事を進めていかなければならないということでありまして、万全なことをやるということはなかなかできないと思います。  しかし、私どもとしても、先ほど来申し上げておりますように、これからの新しい技術は非常に大切な技術である、そしてまた、本当に誇りと将来に向かって一つの希望を持ちながら研究者の人も研究していただける体制はつくっていかなければならぬという気持ちは持っております。そういう意味で、これからも所要の研究費あるいは研究予算等につきまして、何とか少しでも余計に確保するようには努めていきたい、このように考えております。
  285. 中林佳子

    ○中林委員 五年間も据え置かれる人当研究費でございますので、これは何としてもふやさなければならないということを強く要望しておきます。  筑波で聞いた話でいま一つ重要だと思いましたのは、今回の法案とも関係するわけですが、ハイテク関係でないと予算がとれないということなんです。先ほどプロジェクト研究予算推移の内訳をお聞きしたのですけれども、ふえているというふうにお話しになったのですけれども、確かにふえております。しかし、それはなぜふえたかというと、このプロジェクト研究に五十九年度からハイテク研究が入って、毎年五億円から七億円の予算が配分されているからなんですね。だから若干ふえてはまいっております。しかし、従来の特別研究だとか一般別枠研究などは実際は減らされている、こういう状況です。一般別枠研究などというのは、五十七年度は八億円余りあったものが六十一年度は三億円余りにどんと削られているという状況になっているわけです。  筑波研究員の方のお話ですけれども、ハイテク研究予算がとられて従来の研究が大変圧迫されているということとあわせてですが、ハイテク研究をやるにしても、従来の地道な研究が基礎になければとてもほかの先進国と太刀打ちできない、ところが当局は、ハイテクで華々しく新聞に載ることばかりを要求して、また、大蔵省から予算をとるにもハイテクの名を冠しないと難しいなどと言っていると、このように苦しい中身を打ち明けられました。農水省として筑波研究機関にこのような指導をされているのでしょうか。また、ハイテクに光を当てるために従来の地道な研究をないがしろにするようなことをしていらっしゃらないでしょうか。私はあってはならないと思いますが、その点についてどのようにお考えでしょうか。
  286. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 農林水産省試験研究機関には、先生も御承知のように農業生物資源研究所のようにいわばバイオテクノロジーの中核的な研究所から、農業土木試験場のように直接的にはバイオテクノロジーと余り関係のない試験場、あるいは熱帯農業研究センターのように研究の場を熱帯に求めておるところとか、いろいろな試験研究機関があるわけでございまして、それぞれの研究機関がそれぞれの研究目標に向かって精いっぱい研究を続けておるのが実態でございます。  バイオテクノロジーがここ三年間ばかり国の研究全体の推進の中で最も重点強化の分野ということで、私どもも積極的に人材確保でありますとかそういった方面の研究予算の獲得に向かって努力をしてまいったことは事実でありますけれども、先生のおっしゃるように、バイオテクノロジーはそれだけでひとり歩きをするとか成功する話じゃなくて、例えば品種改良でも、従来の育種の技術、この土台がしっかりしていなければ……(中林委員「そんな長い説明はいいですから」と呼ぶ)そういうことで、決してバイオテクノロジー以外をおろそかに扱ったりしていることは全くありませんので、御報告しておきます。
  287. 中林佳子

    ○中林委員 ではそういう指導はしてないということですね。そして従来の地道な研究活動、ここにも依然として十分な光を当てていく考えであることに間違いありませんか、確認しておきます。
  288. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 間違いありません。
  289. 中林佳子

    ○中林委員 私の地元の島根県に国の農林関係の試験場があるわけですが、そこに先日出向いて聞きましたら、やはり筑波と同じような要求が出てまいりました。  私が行きました島根県大田市にある農水省中国農業試験場畜産部、ここでは肉用牛の育種、繁殖、肥育や草地の開発利用、それから飼料作物の栽培などに関する試験研究をやっているということです。研究員十八人を含めて職員は六十人、牛百四十五頭を飼って施設数九十五棟、圃場、草地、山林を含めて約二百ヘクタール近い土地を管理しております。部長さんに会っていろいろお話を聞いたわけですが、やはり研究予算が少ないことが最大の悩みであると言っております。定員も予算もピーク時よりは減っている、こういうことでした。  農水省は、我が国の肉用牛研究の到達点、これをどのように見ていらっしゃいますでしょうか。
  290. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 肉用牛研究の到達点ということでございますけれども、肉用牛の品種改良から始めまして、飼養管理技術その他関連の試験研究については、まだまだ研究すべき問題を残していると考えております。
  291. 中林佳子

    ○中林委員 部長さんもおっしゃっていたわけですけれども、牛肉の輸入攻勢が強まっている時期だからこそ、生産コストの低減でかつ良質の牛肉が求められているわけで、むしろ予算研究員をふやしてしかるべきではないか、こういう情勢だからこそこういう研究への予算の拡充をと要求しておられました。ここの試験場でも特別研究枠で要求しているのですけれども、なかなか難しく、結局、経常研究費の拡充でしのいでいかざるを得ない、このようにおっしゃっておりました。  確かに、今はやりの華々しいハイテク研究ということではありませんけれども、広大な中国山地における和牛生産地域農業の基幹に据えるべく日夜地道な研究をやるという点では、私は本当に大きな意味を持つ試験場であると思うのです。  農水省としてもハイテク偏重の予算配分ではなくして、こういう和牛生産基本となる研究も特別研究テーマの一つに加えていく積極的な対応をぜひ示してほしいと思いますけれども、いかがでしょうか。
  292. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 今後そういう努力をするように考えていきたいと思います。
  293. 中林佳子

    ○中林委員 この畜産部ではみずからも予算捻出の努力をしております。例えば、ここで飼っている牛のえさは約六割を自給しております。研究施設も、新しいものもありますけれども、古い施設だとかサイロなども非常に大切に使っております。何よりも私が現地に行ってこれはひどいと思いましたのは、研究員の宿舎なんです。研究員は全国各地から来られておるわけですけれども、この宿舎は、この研究所が始まった昭和十二年に建てられた今から五十年前の建物なんですけれども、木造の宿舎でゴキブリと一緒に暮らしている、こういうふうにおっしゃっておりました。それで改築の要望も出しているのだけれどもなかなかそれも受け入れられないということでありました。  研究予算の増額もさることながら、やはりよい研究条件や環境を整えることが非常に大切だというふうに思います。農水省として、そういう全国の試験研究機関の周辺整備、これについてはどのようにお考えになっているのか、そして特にこの大田の畜産部宿舎の改築は検討されてはいないのか、この二点についてお伺いします。
  294. 土屋國夫

    ○土屋政府委員 お答えいたします。  研究場所宿舎などその周辺環境の整備については、研究の効率的かつ円滑な推進にとって大変重要なことであるというふうには私どもも考えております。大変厳しい財政事情のもとでありますのでなかなか思うに任せないところがございますけれども、今後ともそういう状況の中でも引き続き必要な整備に努めていきたいと考えております。  なお、中国農試の畜産部関係でございますけれども、ここにつきましても、五十八年度とか六十一年度、私どもなりに予算等を配分してその整備に努めているつもりでございます。
  295. 中林佳子

    ○中林委員 五十年前の棟が、まだ三つ宿舎がありましたので、ぜひ改築していただきたいと思います。  最後に、この大田畜産部に関連して御要望申し上げて質問を終わりたいと思いますが、この畜産部のあるところは、先ほどもお話しいたしましたように、中国山地でも特に畜産の盛んな地域であるわけですが、傾斜地が多く、えさとなる草地が確保できないという問題も抱えております。幸いにもこの畜産部では草地開発研究もやっており、その成果地域に返すことが求められていると思います。  ところが、地域の畜産農民が研究会を開いて何とか国の研究機関から直接研究員のアドバイスを受けようと思っても、畜産部の研究員も少ない上に、地域研究員が出かけていけないような体制ではないか、こういうふうに地域住民が話しておりました。実際に近くの町で、これは頓原町というところでございましたけれども、そうした会合を開いたときも、この畜産部から参加した研究者は、試験場に休暇届を出して参加する、こういうことになっております。農水省として、こうした地域農業に根差すべき地方研究機関研究員が積極的に地元交流ができるように指導されるべきだというふうに私は思いますし、聞きましたら、そういうところへ出かけていく手続が非常に煩雑だとも聞いておりますので、こういう研究機関地域にお返しができるように、研究員も気軽に出かけていく指導をすべきだというふうに思いますけれども、前向きな答弁をお聞きしたいというふうに思います。
  296. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 ただいまのお話につきましては、具体的な状況について直接まだ聞いておりませんし、今後、畜産部の実態を十分に伺って、その上で検討してまいりたいと思っております。
  297. 中林佳子

    ○中林委員 一般的には、そういう要望があったときには積極的に対応するという指導はしていただけるわけですね。
  298. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 国の研究者が、先生おっしゃったように現地に出向くお話でございますけれども、これにつきましては、やはり職務専念義務というような建前もございまして、最小限度の制限はありますので、その辺の実態がどういうことであるか、その辺と絡めて十分検討しないと何とも言えないと思います。
  299. 中林佳子

    ○中林委員 基本的な姿勢として、やはり国の研究というものは地域に返したり国民に返すのが筋だと思うのですね。ですから、難しいいろいろな問題は内部的にはあるのかもわかりませんけれども、姿勢としてはぜひそういう指導をしていただきたいということを要望して、質問時間が終わりましたので、私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  300. 大石千八

    大石委員長 次回は、来る二十二日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時四分散会