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1986-02-19 第104回国会 衆議院 農林水産委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和六十年十二月二十四日)(火 曜日)(午前零時現在)における本委員は、次の とおりである。   委員長 今井  勇君    理事 衛藤征士郎君 理事 島村 宜伸君    理事 田名部匡省君 理事 玉沢徳一郎君    理事 小川 国彦君 理事 田中 恒利君    理事 武田 一夫君 理事 神田  厚君       大石 千八君    太田 誠一君       鍵田忠三郎君    菊池福治郎君       佐藤  隆君    鈴木 宗男君       田邉 國男君    月原 茂皓君       野呂田芳成君    羽田  孜君       保利 耕輔君    松田 九郎君       三池  信君    山崎平八郎君       若林 正俊君    渡辺 省一君       上西 和郎君    串原 義直君       島田 琢郎君    新村 源雄君       辻  一彦君    日野 市朗君       細谷 昭雄君    駒谷  明君       斎藤  実君    水谷  弘君       吉浦 忠治君    稲富 稜人君       菅原喜重郎君    津川 武一君       中林 佳子君     ————————————— 昭和六十年十二月二十八日  今井勇君が委員長辞任した。 昭和六十一年一月二十七日  大石千八君が議院において委員長補欠選任さ  れた。 ————————————————————— 昭和六十一年二月十九日(水曜日)     午前九時三十分開議 出席委員   委員長 大石 千八君    理事 衛藤征士郎君 理事 近藤 元次君    理事 島村 宜伸君 理事 玉沢徳一郎君    理事 串原 義直君 理事 田中 恒利君    理事 武田 一夫君 理事 神田  厚君       上草 義輝君    太田 誠一君       鍵田忠三郎君    片岡 清一君       佐藤  隆君    鈴木 宗男君       田邉 國男君    月原 茂皓君       林  大幹君    藤本 孝雄君       堀之内久男君    松田 九郎君       三池  信君    山岡 謙蔵君       上西 和郎君    島田 琢郎君       竹内  猛君    辻  一彦君       日野 市朗君    細谷 昭雄君       駒谷  明君    水谷  弘君       吉浦 忠治君    菅原喜重郎君       津川 武一君    中林 佳子君  出席国務大臣         農林水産大臣  羽田  孜君  出席政府委員         農林水産政務次         官       保利 耕輔君         農林水産大臣官         房長      田中 宏尚君         農林水産大臣官         房総務審議官  眞木 秀郎君         農林水産大臣官         房予算課長   鶴岡 俊彦君         農林水産省経済         局長      後藤 康夫君         農林水産省構造         改善局長    佐竹 五六君         農林水産省農蚕         園芸局長    関谷 俊作君         農林水産省畜産         局長      大坪 敏男君         農林水産省食品         流通局長    鴻巣 健治君         農林水産技術会         議事務局長   櫛渕 欽也君         食糧庁長官   石川  弘君         林野庁長官   田中 恒寿君         林野庁次長   甕   滋君         水産庁長官   佐野 宏哉君  委員外出席者         通商産業省機械         情報産業局産業         機械課長    中田 哲雄君         農林水産委員会         調査室長    羽多  實君     ————————————— 委員異動 昭和六十年十二月二十八日  辞任         補欠選任   今井  勇君     近藤 元次君   田名部匡省君     上草 義輝君   羽田  孜君     藤本 孝雄君   保利 耕輔君     山下 徳夫君   山崎平八郎君     林  大幹君   渡辺 省一君     綿貫 民輔昭和六十一年一月二十七日  辞任         補欠選任   山下 徳夫君     片岡 清一君   綿貫 民輔君     山岡 謙蔵君 同月二十九日  辞任         補欠選任   若林 正俊君     渡部 恒三君 同月三十日  辞任         補欠選任   渡部 恒三君     堀之内久男君 同月三十一日  辞任         補欠選任   小川 国彦君     竹内  猛君 二月八日  辞任         補欠選任   新村 源雄君     佐藤 観樹君 同日  辞任         補欠選任   佐藤 観樹君     新村 源雄君 同月十二日  辞任         補欠選任   上草 義輝君     宇野 宗佑君   太田 誠一君     伊藤宗一郎君   鍵田忠三郎君     山中 貞則君   菊池福治郎君     藤波 孝生君   上西 和郎君     佐藤 敬治君   駒谷  明君     小谷 輝二君 同日  辞任         補欠選任   伊藤宗一郎君     太田 誠一君   宇野 宗佑君     上草 義輝君   藤波 孝生君     菊池福治郎君   山中 貞則君     鍵田忠三郎君   佐藤 敬治君     上西 和郎君   小谷 輝二君     駒谷  明君 同月十九日  理事田名部匡省昭和六十年十二月二十八日委  員辞任につき、その補欠として近藤元次君が理 事に当選した。 同日  理事小川国彦君一月三十一日委員辞任につき、  その補欠として串原義直君が理事に当選した。     ————————————— 昭和六十年十二月二十四日  農産物自給促進及び備蓄確保のための農  業生産振興に関する法律案安井吉典君外七  名提出、第百一回国会衆法第二八号)  総合食糧管理法案安井吉典君外七名提出、第  百一回国会衆法第二九号)  農民組合法案安井吉典君外七名提出、第百一  回国会衆法第三〇号)  流通食品への毒物混入等防止等に関する特  別措置法案宮崎茂一君外四名提出、第百二回  国会衆法第一八号)  地域林業振興法案島田琢郎君外七名提出、第  百二回国会衆法第二〇号)  鶏卵の需給の安定に関する法律案島田琢郎君  外四名提出、第百二回国会衆法第三八号)  採卵養鶏業への農外企業者等の進出の規制等  に関する法律案津川武一君外一名提出、第百  二回国会衆法第三九号) 昭和六十一年二月六日  土地改良法及び特定土地改良工事特別会計法の  一部を改正する法律案内閣提出第一五号) 同月十四日  農業改良資金助成法による貸付金等財源に充  てるための日本中央競馬会国庫納付金納付  等に関する臨時措置法案内閣提出第二八号) 一月二十三日  普及事業等交付金一般財源化反対に関する請  願(工藤晃紹介)(第一六五号) 二月六日  普及事業等交付金一般財源化反対に関する請  願(高沢寅男紹介)(第四一八号) は本委員会に付託された。 昭和六十年十二月二十八日  流通食品への毒物混入等防止等に関する特  別措置法案(第百二回国会衆法第一八号)の提  出者「宮崎茂一君外四名」は「宮崎茂一君外一  名」に訂正された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  国政調査承認要求に関する件  農林水産業振興に関する件(農林水産業の基  本施策)      ————◇—————
  2. 大石千八

    大石委員長 これより会議を開きます。  それでは、一言あいさつ申し上げます。  このたび農林水産委員長に就任させていただきました大石千八でございます。  農林水産業内外ともにいずれも大変厳しい、そして重要な段階に達しているところでございまして、委員長として、その責任を痛感しているところでございますが、見識の深い委員各位の御協力によりまして、その務めを果たさせていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げる次第でございます。  委員長といたしましても、誠心誠意公正で円満な委員会の運営に努めてまいる所存でございますので、委員各位の御指導と御協力を切にお願い申し上げる次第でございます。  簡単でございますが、以上をもちまして、一言委員長就任のごあいさつとさせていただきます。(拍手)      ————◇—————
  3. 大石千八

    大石委員長 それでは次に、理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い、現在理事が二名欠員になっております。これより、その補欠選任を行いたいと存じますが、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 大石千八

    大石委員長 御異議なしと認めます。  それでは       近藤 元次君 及び 串原 義直君を理事に指名いたします。      ————◇—————
  5. 大石千八

    大石委員長 次に、国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  農林水産業実情調査し、その振興を図るた  め  農林水産業振興に関する事項  農林水産物に関する事項  農林水産業団体に関する事項  農林水産金融に関する事項  農林漁業災害補償制度に関する事項 について、本会期調査をいたしたいと存じます。  つきましては、衆議院規則第九十四条により、議長の承認を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 大石千八

    大石委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  7. 大石千八

    大石委員長 農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  この際、羽田農林水産大臣から、農林水産業基本施策について発言を求められておりますので、これを許します。羽田農林水産大臣
  8. 羽田孜

    羽田国務大臣 昨年の暮れ、内閣改造におきまして農林水産大臣を拝命いたしました羽田孜でございます。  先ほど委員長からもお話がありましたように、我が国農林水産業を取り巻く内外情勢の厳しさを増す折でございます。その責任の重さというものを、今痛切に感じておるところであります。  なお、私は、本委員会におきまして、皆様とともに農林水産、これらの発展のためにともどもに勉強させていただきました。これからも変わりませず御指導賜りますことをお願い申し上げます。  それでは、農林水産委員会の開催に当たりまして、私の所信一端を申し上げます。  我が国農林水産業は、国民生活にとって最も基礎的な物資である食料安定供給を初め、健全な地域社会の形成、国土自然環境保全など、我が国経済社会発展国民生活の安定のため、重要な役割を果たしております。  農林水産業を取り巻く最近の経済情勢について見ますと、我が国経済は、その景気動向にはなおばらつきが残されているものの、全体として緩やかな景気拡大を続けております。しかしながら、財政は依然として不均衡の状態にあり、また、経常収支の大幅な黒字が続いていることなどから、諸外国との間で経済摩擦が生じているなどの諸問題を抱えております。  こうした中で、我が国農林水産業は、食料消費の伸び悩み、経営規模拡大の停滞、担い手高齢化などの諸問題に直面しております。また、行財政改革観点から、効率的な農政推進が求められるとともに、諸外国からの市場開放要求が依然として絶えないという状況のもとにあります。  このような状況のもとで、一億二千万人に及ぶ国民食料を安定的に供給するためには、国内生産可能な農産物は極力国内生産で賄うという方針のもとに、農業生産担い手育成農地水資源確保技術向上を含めた総合的な食料自給力維持強化を図ることが肝要であると考えております。  この場合、次の時代農林水産業を担う若い人たちが誇りと生きがいを持って農林水産業に邁進できるよう、我が国農林水産業体質強化生産性向上を積極的に推進し、産業として魅力ある農林水産業を確立していくことが重要と考えております。  また、今日の経済社会において農林水産行政展開するに当たっては、農林水産業役割施策内容等について、広く国民全体の理解を得ることが必要であります。このための努力を積極的に行い、信頼される農林水産行政を確立してまいりたいと存じます。  以上のような基本的な考え方のもとに、二十一世紀へ向けて、将来への明るい展望が開ける農林水産業農山漁村の実現を図るため、厳しい財政事情にはありますが、創意工夫の上、各般施策展開してまいります。  以下、昭和六十一年度における主要な農林水産施策について申し上げます。  まず、農業振興についてであります。  第一は、土地利用型農業体質強化中心として、農業生産基盤整備農業構造改善技術開発普及等を通じて、生産性向上を一層推進することであります。  このため、農業生産基盤整備につきましては、土地改良事業の進度の促進を図るため、国営土地改良事業財源として財政投融資資金を活用する制度拡充等措置を講じ、事業の着実かつ効率的な推進を図る所存であります。  また、農業構造改善につきましては、地域実情に即した構造政策方向づけを組織的に行うなど、構造政策推進体制を充実整備することとしております。  さらに、中核農家への利用権の集積による経営規模拡大促進するため、農用地利用改善団体等農地改良等を実施するのに必要な資金を無利子で貸し付ける制度を新たに創設することとしております。  バイオテクノロジーニューメディア等先端技術につきましては、農林水産業食品産業等における生産性飛躍的向上農山漁村活性化等を図る上で、極めて重要な役割を果たしていくことが期待されております。このため、産・学・官の連携強化によって、これまでも総合的なバイオテクノロジー等先端技術開発を図ってきておりますが、あわせて、民間技術研究に対する支援体制強化してまいりたいと考えております。  また、ニューメディア等情報化対策につきましては、農村地域等における先駆的、モデル的な情報システム化の構想を推進するとともに、各分野における情報システム化に関し、所要の措置を講じてまいります。  第二は、需要動向に応じた農業生産再編成を地域実態に即して進めることであります。  まず、水田利用再編対策につきましては、今後の農業生産基本方向に即し、米の生産計画的に調整するとともに、需要動向に安定的に対応し得る農業生産構造の確立を期するため、水田利用再編第三期対策を引き続き実施することとし、地域実態に即した転作定着化の一層の促進と他用途利用米制度定着を図ってまいります。  なお、米については、生産力需要とのギャップは一層拡大する方向にあり、今後とも米の需給を均衡させつつ、農産物の総合的な自給力向上を図っていくことが重要でありますので、水田利用再編第三期対策後の対策のあり方につきましては、長期的かつ総合的な観点から農業の将来を展望し、また、関係各方面の意見を十分お聞きしながら当面する農政の最重要課題として鋭意検討し、結論を得てまいりたいと考えております。  また、地域主要作物に係る各般生産対策を総合的、有機的に実施することとしております。  このため、新地域農業生産総合振興対策を引き続き実施するとともに、酪農肉用牛生産近代化基本方針に即し、酪農及び肉用牛生産について総合的な振興合理化を図ってまいります。  さらに、農業改良資金について、農業者自主性創意工夫を生かした活用を積極的に推進するため、資金内容及び貸付枠拡充を図ってまいります。  このほか、最近における技術開発進展等状況に対応するとともに、農業生産性の一層の向上を図るため、種苗関係業務を一体的、総合的に実施する体制整備するとともに、国及び都道府県主導的役割を堅持しつつ、主要農作物の種子の生産流通民間事業者が参入する道を開く等のため、必要な制度整備を行ってまいる所存であります。  第三は、多様化している食料需要に適切に対応しつつ、国民の健康的で豊かな食生活を保障することであります。  このため、我が国の風土に適し、国民の健康にもかなった日本型食生活定着促進を図ることを基本として、各般消費者食生活対策推進するとともに、農水産物消費拡大価格の安定に努めることとしております。  また、食料安定供給の上で重要な役割を果たしている食品産業につきましても、食生活多様化に対応した食料供給が円滑に行えるよう流通加工対策推進し、その体質強化を図ってまいります。  第四は、地域創意工夫を生かしつつ、農山漁村活性化を図ることであります。  農林水産業に携わる人々が意欲と生きがいを持てる健全な地域社会をつくるため、生産基盤生活環境の一体的、計画的な整備、都市と農村の交流の促進地場産業育成等を通じ、特色と活力あるむらづくりを進めてまいります。  以上申し上げました各般施策のほか、長期的観点に立って、開発途上地域における農林水産業開発への協力を一層推進することとしております。  また、国土資源に制約のある我が国として、輸入に依存せざるを得ないものについてはその安定的輸入確保に努めるとともに、輸入障害等の事態に備えて備蓄確保を図ることとしております。  このほか、金融自由化等に対応して、系統信用事業整備を図ってまいる考えであります。  林業につきましては、木材需要の低迷、経営諸経費の増高など厳しい情勢のもとにありますが、森林の果たしている公益的機能に対する国民の要請はますます高まり、かつ多様化しております。  また、戦後営々と植林された森林は、現在間伐期を迎えており、林業生産活動活性化とこれによる適正な森林管理を図り、国産材時代を確実なものとすることが重要な課題となっております。  このような森林林業課題に対し、国民の幅広い理解を得つつ、昨年の国際森林年の成果を踏まえ、森林資源保全・涵養に努めるため、各般施策を積極的に推進してまいります。  特に、森林林業木材産業をめぐる最近の厳しい状況の中で、その活力を回復させるため、森林林業木材産業活力回復五カ年計画に基づき、木材需要拡大及び木材産業体質強化に努めるとともに、間伐を緊急に実施するため事業量を大幅に拡充するなど林業活性化を積極的に推進してまいることとしております。  また、造林、林道などの林業生産基盤整備治山事業推進水源林整備を図るとともに、国民森林に対するニーズ多様化に対応した森林整備及び森林空間総合利用推進に取り組んでまいります。  国有林野事業につきましては、昭和五十九年に策定した改善計画に基づき、経営改善の一層の推進を図ってまいることとしております。  水産業につきましては、現下の二百海里体制の世界的な定着漁業経営の悪化などにより厳しい環境下にありますが、周囲を海に囲まれた我が国において、国民の摂取する動物性たんぱく質の約半分を供給し、また世界一の漁獲量を上げる重要な産業であることから、その振興を積極的に図っていくことが肝要であります。  このため、漁港、沿岸漁場等漁業生産基盤整備を行うとともに、つくり育てる漁業中心として我が国周辺水域漁業開発推進するため、栽培漁業振興先進的技術開発展開等を行うこととしております。  また、厳しい漁業経営の現状にかんがみ、漁業生産構造再編漁業経営の再建の促進など各般水産業経営対策展開してまいります。  さらに、消費者ニーズを十分に踏まえつつ、水産物消費価格流通加工対策推進してまいります。  このほか、粘り強い漁業交渉展開するとともに、海外漁業協力推進する等により、海外漁場確保に努めてまいります。  これらの農林水産施策推進するため、厳しい財政事情のもとで、農林水産予算につきましては各種施策について優先順位の厳しい選択を行いつつ、我が国農林水産業に新たな展望を切り開いていけるよう、必要な予算確保を図ったところであります。  また、施策展開に伴い必要となる法制の整備につきましては、今後、当委員会の場におきまして、よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。  最後に、農林水産物の市場開放問題につきましては、関係国との友好関係に留意しながら、我が国農林水産業の健全な発展との調和を図りつつ、国内需給動向等を踏まえ、適切に対処してまいりたいと考えております。  以上、所信一端を申し上げましたが、私は農林水産業に携わる方々を初め、国民各界各層理解を得つつ、我が国農林水産業の未来を切り開いていくため、全力を傾けてまいる覚悟であります。  委員各位におかれましては、農林水産行政推進のため、今後とも一層の御支援、御協力を賜りますよう、切にお願い申し上げる次第であります。(拍手
  9. 大石千八

    大石委員長 次に、昭和六十一年度農林水産関係予算について説明を聴取いたします。保利農林水産政務次官
  10. 保利耕輔

    保利政府委員 このたび農林水産政務次官を拝命いたしました保利耕輔でございます。  我が国農林水産行政は幾多の困難な課題を抱えておりますが、羽田大臣を誠心誠意補佐いたしまして、全力を傾けてこの難局に当たりたいと存じております。  委員各位の御支援のほどをお願いを申し上げまして、簡単でございますが、ごあいさつにかえさせていただきます。  それではこの際、昭和六十一年度農林水産予算について、その概要を御説明申し上げます。  昭和六十一年度一般会計における農林水産予算総額は、総理府など他省庁所管分を含めて、総額で三兆一千四百二十九億円となっております。  予算編成に当たりましては、厳しい財政事情のもとで、財政及び行政改革推進方向に即し、限られた財源の中で、各種施策について、予算重点的かつ効率的な配分により質的充実を図り、農林水産行政を着実かつ的確に展開するよう努めたところであります。  以下、予算重点事項について御説明いたします。  第一は、土地利用型農業体質強化を目指した構造政策等推進することであります。  このため、農業生産基盤整備につきまして、生産性向上及び農業生産再編成に資する事業等重点を置いて推進することとし、八千六百八十億円を計上いたしております。また、土地改良事業促進を図るため、国営土地改良事業財源として借入金を活用する制度拡充し、従来の一般会計における国営土地改良事業都道府県負担分について財政投融資資金を充てる制度改正を行うことといたしております。  また、農用地有効利用経営規模拡大を図るため、新たに、構造政策推進会議の設置、農地改良等に必要な資金貸し付け等を行うとともに、新農業構造改善事業等関連施策推進することといたしております。  第二は、需要動向に応じた生産性の高い農業展開を図ることであります。  このため、水田利用再編第三期対策を引き続き推進し、地域実態に即した転作の一層の定着化を図るとともに、統合・メニュー事業であります新地域農業生産総合振興対策及び畜産総合対策につきまして、新たな事業種目を追加してその推進を図ることといたしております。  また、農業者の自主的な創意工夫を生かしつつ、農業経営基盤の一層の強化を図るため、六十年度に引き続き農業改良資金制度拡充を行うことといたしております。なお、その貸付金財源に充てるため、日本中央競馬会特別積立金のうち三百億円を、六十一年度及び六十二年度の二年間に分けて、農業経営基盤強化措置特別会計に特別納付することとしております。  このほか、種苗関係業務を一体的、総合的に実施する種苗管理センターを設立することといたしております。  第三は、技術開発推進等により、農林水産業食品産業等生産性飛躍的向上等を図ることであります。  このため、産・学・官の連携強化による総合的なバイオテクノロジー先端技術開発推進するとともに、民間における技術研究推進するための法人として、生物系特定産業技術研究推進機構を設立することといたしております。  また、情報化時代に対処して、農林水産情報システムの開発整備推進することとし、特に六十一年度においては、新たに、農村地域等における先駆的、モデル的な情報システム化構想を樹立することとしております。  第四に、農林水産業にいそしむ人々が、意欲と生きがいを持てるような活力あるむらづくり推進するため、農業農村整備計画の策定、生産基盤生活環境の一体的な整備、山村等における定住条件の整備等を推進することといたしております。  第五に、国民に健康的で豊かな食生活を保障するため、日本型食生活定着促進を図ることを基本として、各般食生活消費者対策推進するとともに、農林水産物需給価格の安定に努めます。  また、食品産業技術水準の向上地域食品の振興を図るとともに、食品流通の効率化を進めてまいります。  以上申し上げましたほか、国際協力備蓄対策推進するとともに、農林漁業金融の充実、農業者年金制度、災害補償制度等の適切な運営等に努めることといたしております。  第六に、森林林業施策に関する予算について申し上げます。  まず、森林林業木材産業をめぐる諸情勢に対処して、その活力を回復させるため、森林林業木材産業活力回復緊急対策を実施し、これにより、木材需要拡大木材産業体質強化及び間伐林業活性化推進することといたしております。これに要する予算として、六十年度補正予算で四十億円、六十一年度予算で八十億円を計上いたしております。  また、国土保全林業生産基盤整備を図る観点から、治山、造林、林道の林野関係一般公共事業推進することとし、二千七百九十四億円を計上いたしております。  さらに、国産材供給体制整備林業担い手育成確保、松くい虫対策等を推進するとともに、国有林野事業経営改善を強力に推進することといたしております。  第七に、水産業振興に関する予算について申し上げます。  二百海里時代定着等に即応した水産業振興を図るため、漁業生産基盤たる漁港、沿岸漁場等整備計画的に進めることとし、一千九百三十二億円を計上いたしております。  また、我が国周辺水域漁業振興を図るため、新たな観点から二百海里水域の開発を進めることとし、産・学・官の連携によりマリノフォーラム二十一を通じた先進的技術開発等を推進するとともに、栽培漁業、新沿岸漁業構造改善事業等推進を図ります。  さらに、漁業経営をめぐる諸情勢に対処して、漁業経営再建資金の創設を初めとする水産業経営対策の充実強化を図るとともに、水産物消費流通加工対策海外漁場確保等を推進することといたしております。  次に、特別会計予算について御説明いたします。  まず、食糧管理特別会計につきましては、米の政府売り渡し価格の引き上げ、管理経費の節減等食糧管理制度の運営の改善合理化に努めることにより、一般会計から調整勘定への繰入額を二千九百六十億円にすることとしております。また、過剰米の処分に伴う損失を計画的に補てんするため、一般会計から国内管理勘定へ六百七十七億円を繰り入れることといたしております。  このほか、現行の特定土地改良工事特別会計につきましては、前に述べました国営土地改良事業の実施制度改善に伴い、名称を国営土地改良事業特別会計とするとともに、農業共済再保険等の各特別会計につきましても、それぞれ所要の予算を計上いたしております。  最後に、財政投融資計画につきましては、新たに設立する生物系特定産業技術研究推進機構への産業投資特別会計からの出融資三十八億円を含め、総額八千六百二十一億円を予定しております。  これをもちまして、昭和六十一年度農林水産予算の概要の説明を終わります。(拍手
  11. 大石千八

    大石委員長 以上で説明は終わりました。     —————————————
  12. 大石千八

    大石委員長 農林水産業基本施策について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。衛藤征士郎君。
  13. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員 私は自由民主党を代表いたしまして、ただいまの羽田農林水産大臣所信の表明に対しまして若干の質疑をいたします。  まずもって、大臣、御就任おめでとうございます。最も私どもが期待しておりました方が農林大臣に就任したということで、私ども心から歓迎を申し上げる次第でございます。大臣の御活躍をまず期待いたしまして、若干の質疑をいたします。  ただいま大臣が所信表明で述べられましたように、我が国農林水産業をめぐる情勢はまことに厳しいものがございます。農業所得は伸び悩み、また行財政改革のもとに農林水産関係予算は減少し、縮小し、また市場開放要求は依然として続いております。そのような中で、農林漁業者の中には将来に不安を持っている者が大勢見られ、若い世代の担い手の減少、いわゆる農林水産業の後継者の減少もこのような事情が反映しているものと思われます。しかしながら、私は、中曽根総理がいつもおっしゃいますように、農林水産業は生命産業である、国の基礎ともなるべき重要な産業である、これを守るためには、その体質を強化して、次代を担う世代にも魅力のある産業として育て上げることが重要であると思うのであります。  私は、農業生産再編成し、まず経営規模拡大を図り、生産性の高い、魅力ある農業をつくり上げていく上において何よりも大切なことは、農業生産基盤整備であると考えております。基盤整備された土地で近代的な農業を営み、農業だけで自立できる農家を育成していく必要があると思うのであります。  しかしながら、農業基盤整備状況を見ますと、財政事情の制約もあって、計画どおり進捗、進展していないのは遺憾でありますが、今後の農業基盤整備の進め方について農林水産大臣の所見をお伺いいたしたいと思います。
  14. 羽田孜

    羽田国務大臣 まず、激励を賜りましたことに心からお礼を申し上げます。私も懸命に努めてまいりたい、かように存じております。  ただいま御指摘がございましたとおり、確かに農業を進めていく、あるいは足腰の強い農業というものを進めていく、このための基礎になるのは何といっても基盤整備であろう、あるいは土地の流動化等を図る、その施策を進めるためにも農業基盤整備というのは非常に重要な施策であるというふうに認識をいたしております。  ただ、今御指摘がございましたとおり、今日の財政事情が非常に厳しい中におきまして、大事な基盤整備につきましてもどうしても減額をせざるを得なかった。第三次土地改良長期計画の進捗もおくれ気味に推移しているというのは事実であります。このために昭和六十一年度の予算におきましては特別会計制度拡充を行いまして、財投資金を積極的に活用いたしまして、確かに国費の面では落ち込んでおりますけれども、事業量拡大を図ることとしておりまして、今後とも計画の達成のために努めてまいりたい、かように考えております。
  15. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員 農業予算におきまして国費が落ち込んでおるけれども財投等でそれは十分にカバーできておる、まことにそうだと思うのでございますが、一般の農家の皆さんからいたしますと、財政投融資といいましてもなかなか理解できないものでありまして、やはりどうしても毎年、毎年度の予算が国の全体の中に何%占めておるかというような単純な比率をもって、農業がしっかりと守られていくのかあるいはどうであるかという判断をする人は多いと思うのです。  例えば、昭和五十年度から六十一年度の一般会計歳出予算に占める農林水産関係予算の構成割合を見ましても、だんだん減ってきておるわけでございまして、例えば五十年度一〇・二%、五十六年度七・九%、五十七年度七・四%、五十八年度七・二%、五十九年度六・八%、昭和六十年度六・三%、昭和六十一年度五・八%になっております。ちなみに、社会保障関係費でございますが、ほとんど横ばいでございまして、昭和五十年度は一八・四%、五十六年度一八・九%、五十七年度一八・三%、五十八年度一八・一%、五十九年度一八・四%、昭和六十年度一八・二%、ことしの厳しい予算でも昭和六十一年度一八・二%でございます。  こういうことを考えてみますと、私は大臣にはこれからも一層この一般会計予算、国費をさらに伸ばしていただきますような御努力をお願い申し上げたい、このように思う次第でございます。よろしくお願いいたします。  次に、バイオテクノロジーのことについてお伺いをいたしたいと思うのでございます。  御案内のとおり、バイオテクノロジー、今やまさに花形でございます。このバイオテクノロジー等の先端技術開発でございますが、これは農林水産業生産性飛躍的向上を図るためにも不可欠のものであると私は思います。大臣は、このバイオテクノロジー等の先端技術開発に対しましてどのような対策を講じられますか。大臣のお考えをまずお聞きしたいと思います。  特に、大臣が今後産学官の連携のもとに研究開発を図ると言っておりますが、大臣の言われる民間技術研究に対する支援体制強化とは具体的にどのようなことを指しておられますのか、お伺いいたしたいと思います。
  16. 羽田孜

    羽田国務大臣 前段の農林水産関係予算につきまして、確かに全体的に国の一般会計の歳出予算の中におきましても減額しておるという現状であります。これは確かに、食糧管理費、そういったものなどを少しずつ削減しながら、合理化しながらそういう中で生み出してきたわけでありますけれども、これからの足腰の強い農業というものをつくり上げるためには、どうしても基盤整備等を中心にいたしまして少しでも予算というものは確保したいというふうに考えておりますので、今後ともいろいろと皆様の御指導をいただきながら進めていきたいと思っております。  それと、基盤整備にプラスといいますか、基盤整備が基礎とするならば、そこに新しい時代農業というもの、あるいはこれは林業水産業も含めてでありますけれども、こういうものを考えましたときに、やはりバイオテクノロジーという新しい技術というものは非常に重要であると考えております。そこで、今御指摘がありましたように産学官の連携強化をしていく、総合的なバイオテクノロジー開発を行うこととしております。  まず、研究体制整備あるいは各種のプロジェクト研究の推進、研究の基盤となる農林水産ジーンバンクの整備などの措置を講じてきたところです。このほか、六十一年度におきましては、二十一世紀を見通したハイテク植物育種の推進地域段階でのバイオテクノロジー研究開発促進民間におけるバイオテクノロジーを初めとした技術研究を幅広く推進するための支援体制整備などによりまして、バイオテクノロジー研究開発拡充強化に努めてまいりたい、こんなふうに考えております。
  17. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員 ジーンバンク等々のいわゆるバイオテクノロジーによる今後の農林水産開発の構想が述べられたわけでございますが、私、大臣にお願いしたいのでございます。  構造改善事業を初め農業の基幹にかかわる基盤整備事業等々の、あえて言うならばハードの部門の予算が厳しくなりますと、どうしてもソフトウエア、ソフトの部門のこういうバイオの方に目が向きがちでございまして、そして花形であるだけに、このバイオテクノロジーというのは今後もてはやされると思うのでございますが、しかし、かといって、基幹的な構造改善事業予算を初めもろもろの事業予算がだんだん縮小していくようなことにならないようにお願いを申し上げたいと思う次第でございます。  例えば、圃場整備を初め国のかん排事業とかあるいは防災ダムとかあるいは県営農道であるとか、こういうもののいわゆる事業の工期の遅延が見られるわけでございまして、例えば国営のかん排でありますと、昭和四十七年度は九年九カ月くらいでできておったものが、昭和五十九年度で見ると十八年間かかる。倍かかるということになりますし、また県営の圃場整備事業を見ましても、昭和四十七年度は大体七年間ででき上がったものが、五十九年度になりますと十二年間はかかるというぐあいに大変時間がかかってくる。例えば大切な防災ダムにいたしましても、昭和四十七年度でありますと大体六年半でできたものが、五十九年度になりますと十五年はかかる、こういうようなことでございますので、この辺につきましても大臣の特段の御配慮をひとつお願い申し上げたいと思う次第であります。  次に、水田利用再編対策についてお伺いいたしたいと思います。  水田利用再編対策、御案内のとおり昭和六十一年度末で第三期の対策が終了するわけでありますが、これが始まりまして以来既に九年間経過するわけでございます。まず、この水田利用再編対策の成果についてどのように評価されておるのか、大臣の御見解を承りたいと思います。
  18. 羽田孜

    羽田国務大臣 実は、この水田利用再編対策、私がちょうど政務次官をやめるときにたしか配分をしてやめたか、あるいは配分の計画をつくってやめたというふうに思っておりますけれども。それからちょうど九年が経過しております。これは五十二年以降毎年度転作等の目標が達成される、大体お願いをしたよりは余計に達成してきておるというのが現実であります。この結果、米需給の均衡は確保されまして、過剰米の発生による財政負担の増大というものをさらに増大するものは防いできたというふうに思っております。  また全国各地で、水田に復することがなくて定着化が図られたと考えることができる転作、また米に匹敵する収益を上げる転作、さらには転作を契機に地域農業再編を図ろうとする動きが見られておるのが現実であります。しかし、かんがい農業基本的体質とする我が国農業生産構造を転換することはなかなか難しかったなということを今改めて思っております。定着性のある転作営農の育成にはなお相当な努力を要するんじゃないかというのが今ちょうど九年間たった感想であります。
  19. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員 ただいまの大臣の御答弁のように、いわゆる生産力は上がってくる、需要は減退ぎみである、こういうようなギャップが出てきておるわけでございまして、このギャップは一層拡大する方向にあるわけでありますし、また一方、国の財政事情はますます厳しくなる、こういうような状況になりまして、今後七十万ヘクタール以上の転作等を行う必要があるのではないかというようなことも仄聞しておるわけであります。  このような状況の中で、大臣はポスト第三期対策についてどのようなお考えをお持ちになっておられますか、お伺いいたしたいと思います。
  20. 羽田孜

    羽田国務大臣 この間、御案内のとおり、いわゆる米の消費拡大需要拡大ということで子供たちに弁当をと申し上げる、あるいは保温のための施設をつくる、各般施策を実はとってまいりました。しかし、残念ながら今日現在まだ需要が減退しておるという状況でございまして、これからさらにこの転作というもの、総合的な食糧の自給というものを図る、この施策は続けなければいけないと考えておるところであります。  このような考え方に立って先ほど申し上げたような施策をずっと進めてまいったわけでありますけれども、これからのポスト三期ということについては、まず需給均衡を着実に実現するよう、現下の諸情勢の中において財政が非常に厳しいという中にありますけれども、調整方策をとること、それから将来の水田農業のあり方を展望し、今後の需給状況も踏まえた農業生産構造再編成が図られるものとすること、三番目として、生産性が高く足腰の強い農業をつくり上げること、そして先ほど申し上げました食生活というもの、本当に米というものに理解を深める、日本型食生活、こういったものもやはり進めていくことが重要であろうとしております。  いずれにいたしましても、次期対策につきましては関係の各方面の皆様方と十分お話し合いをしながら私どもとしても進めていきたいと思っております。なお、生産者あるいは農業団体の関係の皆様方、あるいは市町村、こういった皆様方におかれましてもさらに積極的な御協力をいただかなければならないのじゃないか、こんなふうに考えております。
  21. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員 水田利用再編対策と並びまして、食管制度のあり方をめぐりましてさまざまな議論が行われておりますのは御案内のとおりであります。つい先日もNHKのテレビでこういうことについても報道しておりましたし、またとみにこの食管制度のあり方をめぐっての議論が出てきております。国民の主要食糧の安定供給を図る上で食管制度の果たしている役割は極めて大きいものと考えておりますが、経済、社会が大きく変化し、また消費者の嗜好の多様化あるいは流通分野の変化などが進行している中で、食管制度もこれに対してどのように対応すればいいのか、あるいは対応しなければならない問題点がいろいろと出てきておるように思います。食管制度につきまして大臣といたしましての御意見をお伺いいたしたいと思うのであります。
  22. 羽田孜

    羽田国務大臣 食管制度は、国民の主食であります米を政府が責任を持って管理し、その需給及び価格の調整と流通の規制を行うことによりまして、生産者に対してはその再生産確保し、また消費者の皆さんに対しては家計の安定を図るという重要な役割を今日まで果たしてきたというふうに認識しております。  本制度につきましては、経済事情や米の需給事情の変化に即応して必要な見直しが行われてきました。例えば、消費者の米の品質に対する要請にこたえて、市場原理の働きやすい民間流通の長所を生かすため自主流通制度が四十四年に始められております。また、過剰、不足いかなる需給事情にも対応できるようにということで五十六年に改正を行っております。また、改正食管法のもとでの小売業者については、新規参入やブランチ、店舗数を大きくふやしました。また、改正食管法の趣旨を踏まえたことで、昨年秋の集荷から販売に至る各段階における各種活動の活発化、合理化を図るための流通改善措置、こんなものも進めてまいったところであります。  いずれにいたしましても、政府の責任のもとに、集荷業者あるいは販売業者など民間活力を生かしながら米の安定供給を図るという制度としてこの運営を行ってきたところであります。これからも、時代の背景は変わる、それにきちんと対応する、そういうことで改善を図りながらも食管の根幹というものを守っていきたいと考えております。
  23. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員 けさのある新聞に、自主流通米について入札制を採用するというような報道がなされておりましたが、食糧庁長官、このことについて御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  24. 石川弘

    ○石川政府委員 今大臣がお答えいたしました政府の流通改善の中で、実は政府が売ります米は御承知のように今まで一定価格だけで売っていたわけでございますが、政府の売ります米に対して本当に需要がどのように動くかということをはっきりさせるために、政府が売る際に、一定の、例えば標準価格米の——原料のようなどうしても必要量を必ず届けなければいかぬものはそれを例外にしてございますけれども、今までの割り当て的なものから、割り当て的なものの一部を購入する卸売業者が、自分はこれくらいの値段という、これはもちろん大きな変動は許されませんので一定幅でございますが、価格を申し出まして入れさせる、価格を入れて、その需給に応じて引き取っていくという制度を実は販売改善でいたしたわけでございます。  それに関連して、自主流通が年間一本の価格で決めておりますことに対して何か入札みたいなことをしたらいいではないかという御意見があることは事実でございます。ただ政府は、一本価格でしか売れないものを実はそういう弾力性をつくるという意味で改善をいたしたわけでございますが、自主流通制度というのは、御承知のように売り手である集荷する団体と買い手である卸売団体が双方合意で値決めをしてよろしい。ですから、物によっては例えばタイトになれば値段が上がってまいりますし、逆に緩んでまいりますと値段が若干下がるという仕組みにしてございますので、これは何か年間一本決めでなければならぬということで規定しているわけではございません。  入札入札と言っておりますのは、何か正米市場みたいなことを頭に置いておるのでございますと、これは自主流通といえども米の価格の安定性が必要でございますから、そういうことを目指しているものではないとは思いますが、単に一本価格でなければならぬということには現在でもしてないわけでございまして、売り手側である集荷団体と買い手側の卸売団体の合意によればある程度弾力的な運営はできる。  実は昨年自主流通についていろいろな勉強会を開きました間で、そういう値決めの仕方についてもいろいろと将来的な問題として検討しようということになっておりますので、これは売り手、買い手双方の合意の上で、いろいろな見解はあり得るとは思いますが、何かいわゆる米の市場のような意味でございますと、そういうことは現時点では考えられないと思っております。
  25. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員 次に肉用牛の生産についてお伺いいたしたいと思いますが、今後牛肉の消費の伸びが必ず期待できるわけでありますし、また地域農業展開や農山村の振興を図るとともに、粗飼料基盤として国土資源有効利用を図るという利点を有しておりますし、将来の農業発展を築く上で極めて重要であると思っております。将来的には国際競争力を持ち得るようコストダウンを図り、経営体質強化に努めていくべきだと思っておりますが、肉用牛生産振興基本的な考え方を大臣にお伺いいたしたいと思います。
  26. 大坪敏男

    ○大坪(敏)政府委員 ただいま御指摘ございましたように、牛肉の需要は、かつてほどの高い伸びはないわけでございますが、増加を続けておりまして、今後とも安定的な伸びが見込まれているというふうに考えているわけでございます。また、先生御指摘のように、肉用牛生産は草地等国土資源有効利用なり地域農業展開や農山村の振興を図る上で極めて重要な役割を果たす部門であると考えております。このようなことから、肉用牛生産につきましては、長期的な視点に立ちまして総合的な振興、合理化、体質の強化を図ってまいりたい、かように考えておるわけでございます。  このため具体的には、まず、市場規模の拡大を通じまして生産性向上を図ってまいりたいと考えておりますし、また生産費の中で高いウエートを占めております飼料費及び労働費の節減を図るために採草地なり放牧地の造成事業促進していく。さらに飼養管理技術改善、最近特に、先生御案内のように肥育期間が長期化している状況があるわけでございますので、この肥育期間の短縮を図っていく、また同時に自給飼料を多給する、いわゆる低コストでも生産できる経済肥育の普及、定着を図っていくということを考えているわけでございます。  加えまして、中長期の課題ではございますが、バイオテクノロジーを活用いたしました受精卵移植技術、これは卵分割あるいは双子生産、さらには体外受精等々があるわけでございますが、この種の受精卵移植技術開発及び実用化につきましても積極的に取り組んでまいりたい、かように考えているところでございます。
  27. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員 ただいま畜産局長の御答弁の中にございました、いわゆる肉用牛の生産基盤を確立するためには、まずもって飼料生産基盤の確立といいますか、それが大切だ、こういうような御指摘がありましたけれども、私もそのように思っております。  最近、これは農林省の中ではないのでありますが、行革審の方でございましょうか、新聞なんかにちらりちらりと農用地開発公団のことにつきましての新聞記事が散見されまして、私は大変心配をしている一人でございます。農林省の意思とは全く無関係に、あるいは農業を守っていく我々の立場とは無関係に、一方的に行革審の立場であのような新聞記事が出るということは極めて遺憾でございます。  私は大臣にお伺いしたいのでありますが、農用地開発公団、これは我が国の飼料の生産基盤、特に畜産の飼料基盤を造成する上で極めて重要な役割を担ってきましたし、またこれからも役割を担ってもらわなければならない、このように考えておりますが、大臣いかがでございましょうか。農用地開発公団のことにつきまして大臣のお考えをお伺いいたしたいと思います。
  28. 羽田孜

    羽田国務大臣 ただいまお話のございました農用地開発公団、これを廃止しろという新聞記事、私もここに持っておりますけれども、今畜産局長からも申し上げましたように、まだこれから肉の需要は伸びていくであろう、そして特にこれから山村において畜産というものを主体にしていくという地域もたくさんございます。そういう中にあって、やはり草地というものがこれからも開発されなければならない。これを考えましてずっと過去を振り返ってみますと、およそ三割ぐらいのものはこの農用地開発公団によってつくられてきておるというのが現状でございます。そういう意味で、特に山間地ですとかあるいはそういったところに未利用地なんかがまだございます。こういうものはぜひこれからも開発して、やはりきちんとした飼料の供給というものをしなければいけない。効率のいい畜産を営むためにも、私どももまだこの事業は必要であるというふうに考えております。  そういう意味で、今の特殊法人問題等小委員会でこの公団の扱いについての検討がされるということでありますけれども、私どもは、今申し上げたような事情をよく説明して、まだこの事業というものは必要なんだということを理解してもらうように努めてまいりたい、かように考えております。
  29. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員 これから一層に必要になるという立場で、ひとつ大臣、農用地開発公団事業のこれからの充実、また事業発展のために御努力をお願いいたしたいと思います。  とりわけ、農用地開発公団の事業の中で極めてうまくいっている地域もあるわけでございまして、例えば阿武隈北部区域であるとかあるいは久住飯田とか、それぞれございますが、こういうところにつきまして、大臣、大変お忙しいと思いますが、できる限り御視察をされまして、行革審に対しまして先制パンチをひとつ出してもらいたい、このようにお願いをいたしたいと思います。よろしくお願いいたします。  大臣は、食品産業対策等々のことにつきましての所信表明をされたわけでありますが、今後の農政展開に当たっては、生産サイドだけではなくて流通とか加工、消費の面にも配慮をすべきだと私は考えております。今や食品産業は食糧の安定供給の上で重要な役割を果たしておりまして、今後流通加工対策をどう持っていくかが大きな課題となっております。また、国民の健康的な食生活を実現するために日本型食生活定着促進を図ることが一層大切であると考えております。  このような観点から、食品産業対策あるいは消費者対策展開されようとしております大臣の御意見をお伺いいたしたいと思います。
  30. 羽田孜

    羽田国務大臣 お答えいたします。  まず、私、申し上げましたのは、消費があって生産があるということであります。しかも、その消費の態様というのはいろいろな形がある。例えば直接消費者の皆さん方が買って、うちで調理するというものがありますけれども、今、加工食品、こういったものを買ってこられてそれを調理したり、そのまま召し上がったり、あるいは外食産業等を通じて食べられる方があります。いずれにしましても、今、食品産業は出荷額が二十六兆円ほどになっているということであります。また、この食品の製造あるいは流通、そして外食産業、こういったところに勤務されておる方も六百三十万人という非常に大きな分野になっておるわけであります。  いずれにしましても、消費者は、食料品について健康で品質がいいもの、そして簡便性などという新しい、多様化された要求というものを持っておるわけでございます。こういった消費者に対して、食品の表示の適正化など、その消費者対策というものを推進していく必要があるのじゃないかなというふうに考えております。  そして、食品産業は大手企業のものもございますけれども、これは中小企業のものあるいは地場産業、こういったものが多くございます。そんな意味で、こういった産業に対して農林水産省としましてもてこ入れをしていく、このことがひいてはやはり生産というものを安定さしていくんじゃないか、そして消費者にも理解されるという意味で、私は、これからも食品の加工あるいは流通、こういった問題についても目を配ってまいりたい、かように考えております。
  31. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員 次に、農山漁村活性化についての方策をお尋ねいたしたいと思うのであります。  我が大分県は、平松知事を先頭に一村一品運動ということで大変力を入れておるのでありますが、このような村起こしの運動が全国的に広まりつつありますし、また、隣国の中華人民共和国におきましても大変関心を集めている、このように承っております。これからは農林漁業者みずからが創意工夫を凝らしながら農山漁村活性化を図っていくことが大切であると思いますが、大臣の御所見をお伺いいたしたいと思います。
  32. 羽田孜

    羽田国務大臣 今大分県の一村一品運動、私どももきょうこちらにもいらっしゃる同僚議員の皆さんと一緒に大分県を視察したことがあります。先ほどの畜産団地なんかも視察をさせていただきながら大分県に入ったわけでありますが、そのときに知事さんから一村一品運動の話を聞かされたものであります。そして、今この動きというのは大変大きく広がっておりまして、これは全国の各県あるいは各町村においても、今この活動というものが盛んになってきました。そういう中で、生きがいとかあるいは農村そのものが活力を持ってきておるという現実も見ております。  そういう意味で、こういったものについてはまず私たちは今後とも進めていただきたいなと思うし、またそういった中で創意工夫というものが大いに発揮される、そんな基盤というものを私どももつくっていかなければならぬと思っております。そして、そういうことの中で、バイオテクノロジーですとかあるいはニューメディアなど先端技術開発あるいは普及を通じ、農林水産業の体質を強化するとともに、生産基盤生活環境の一体的な整備あるいは地場産業育成、都市と農山漁村の交流の促進、そういうことによって農山漁村、こちらの活性化というものを図っていく必要があろうかと考えております。
  33. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員 次に、対外農産物交渉につきましてお伺いいたしたいと思います。  一昨年の牛肉、かんきつ交渉、また昨年のアクションプログラムの実施あるいはMOSS協議など、近年のたび重なる市場開放措置我が国農林漁業に少なからず影響を与えております。これ以上の開放は関係者にとって耐えがたい側面があると考えられます。しかし、他方では、大幅な貿易黒字が存在する中で、国際経済社会の中で我が国に対して寄せられる期待と要請が大きいことも知っております。このような厳しい状況の中でありますが、今後輸入制限十三品目をめぐる日米交渉及びガットにおけるニューラウンドに向けての農産物交渉が間近に迫っております。大臣は農産物交渉につきましてどのようなお考えをお持ちでございますか、またどのような基本的なお考えで交渉に臨まれますか、お伺いいたしたいと思います。
  34. 羽田孜

    羽田国務大臣 お答えいたします。  私は従来から申し上げてまいったのですけれども、農、林、水ともでありますが、いずれにしましてもこれは国の一つの基本であるということ、やはり食生活というものはいろいろな外圧等によって左右されてはいかぬということ、また日本の四囲を囲んでいる状況というのは、大分食糧事情というのはよくなってきたというものの、まだ十分であるということは言えないと思うのです。そして、各国ともある程度生産が大きくなったときにこれは輸出するわけであって、ちょっと厳しい問題がありますと抑えてしまうという実情もございます。そんな意味で、主になる、基本になるものはやはり国内生産していくという体制はきちんとしなければいかぬと思っております。  それともう一点は、農林というものはただ食糧を提供するだけではなくて、国土保全という非常に重要な立場がございます。そういうことを考えたときに、そういうものを侵すような農産物輸入というのは非常に危険なんじゃないかな、このことは従来から私ども訴えてまいったところであります。  ただ、先方の国も、私どもが話し合うときに、ともかく日本の国と今いろいろな交渉といいますか交流をしているときに、自分の方は日本のいろいろなものをどんどん買い入れるけれども、残念ながら日本にまさるものというのは、比較優位である、いわゆる規模のスケールメリットを活用するところの農産物しかないのだというような言われ方を実はしております。そして、確かに我が国でも畜産の飼料等につきましては、これはむしろお願いしても今日は買わなければならないという実情もございます。そんなものを勘案したときに、友好というものを考えたときに、あるいは我が国として必要なものは安定して確保するというようないろいろなものを考えたときに、やはり国際的な関係というものも考えなければいかぬというふうに思っております。  ただ、現実の問題として、今十三品目なんという問題がクローズアップしておることはもう御案内のとおりであります。これは四月二十二日に一応期限が切れるということでありまして、昨年の暮れに、今まで行ってきたところ、五十九年に決めて行ってきたところ、これをレビューする会議があったわけでありますけれども、そのときの雰囲気を見ましても、彼らの場合には日本に対して、これは基本的には自由化というものを望んできております。しかし、私どもはやはり日本の農業というものを考え、そしてそのことを彼らに訴えながら、現実的な対応をしていきたいというふうに考えております。  また、昨年の十一月のガット総会で本年九月には閣僚会議を開催して交渉を開始することが決定された新ラウンドにつきましては、農林水産省として、農業だけが突出することなく、バランスのとれたパッケージを目指す必要があるというふうに考えております。これはいわゆるサービス業、サービスの問題、こういった問題については実はなかなか、まだまとまらないという状況もあります。ですから農産物だけを突出させるようなやり方はやはりいけないんじゃないか、こういうものを全部合わせてパッケージでやっていく必要があるんじゃないかなというふうに考えております。  また、農業については、現在の新ラウンドに向けてガットの貿易委員会で行われている作業をさらに促進して、農業の特殊性に配慮しつつ、農業貿易の現状を踏まえて、農業に関する国際的なルールの整備、これをつくっていくことが必要じゃないかというふうに考えております。
  35. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員 大臣におかれまして、対外農産物交渉につきましては十分農林水産生産者の立場に立ちまして交渉をお願い申し上げたい、このようにお願いいたします。  次に、林業振興につきましてお尋ねいたしたいと思います。  我が国森林国土の七割を占めておりますし、木材供給のみならず国土保全水資源の涵養、良好な自然環境保全等、狭小で地形が急峻な国土に住む一億二千万人の国民すべてにとって重要なさまざまな役割を果たしておりまして、我が国のような高密度社会において、森林を守り育てていくことは大きな課題であります。  しかしながら木材需要も伸び悩み、国内森林林業は厳しい環境にあります。このままの状態が続いていくならば我が国森林の荒廃を招き、将来にわたって大きな禍根を残すことになりかねません。特に戦後造林に励んでまいりました結果、人工林面積は今や一千万ヘクタールに達しておりますが、そのほとんどが幼齢林でありまして、今こそ間伐等の手入れをする時期でありまして、適切な対策が必要なときでもあります。  今日政府に課せられた大きな課題は、不振の中にある林業を早急に活性化して、緑豊かな森林を子々孫々にまで引き継いでいくことであると考えております。また政府は、対外経済対策の関連で森林林業木材産業活性化を図るため活力回復五カ年計画を実施することとしておるようであります。このような中で林業振興のためにどのような対策を講じようとしておりますか、大臣の御所見を承りたいと思います。
  36. 羽田孜

    羽田国務大臣 御指摘がございましたように、森林は木材などの林産物の供給だけではありません。農業と同じように、やはり国土保全機能というものが非常に大きいわけであります。これらの諸機能というものは健全な林業生産活動、これを通じて森林を適正に管理することによって初めて高度に発揮されるものでございます。このため森林林業の果たしている重要な機能について国民の幅広い理解をいただきながら、まず木材需要拡大、これを徹底してやらなければいかぬと思います。それから林業生産基盤整備林業地域活性化ということで、まさに今お話がありましたように、間伐等を進めるためにはどうしても作業道、そういったものなんかも必要であります。こういうものをきちんと進めていくこと、それから国産材主産地の形成、それからやはり林業担い手確保ということが重要な仕事であろうかと思っております。そして、治山事業、これらも推進しなければいけないと思っております。  今御指摘がございましたように、そういったことに私ども対処するために活性化五カ年計画、こういったものも仕組みながら、厳しい予算の中でありますけれども、きちんとした山というものを守る、そのためにやはり林業、林産業活性化させていこう、こういったことを目標にこれから進めていきたい、かように考えております。
  37. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員 大臣御案内のとおり、昨年の末の税調等に出てまいりました水源税の問題でございますが、こういう問題につきましては、もう山が泣き叫んでおる、一刻も早く手当てをしなければならない、そういうような立場からやむにやまれず水源税構想等も出てきたと私は思っておるわけであります。それは裏を返せば国の林業振興予算が余りにも少ない、こういうことだと思うのです。それで、ぜひとも大臣の御尽力によりまして、これから国の林業振興予算をふやしていただきますように特段の御努力、御尽力をお願いいたしたいと思います。  次に、松くい虫の被害のことにつきましてお伺いをしたいのでありますが、一時は松くい虫被害につきまして大変な議論がなされましたが、実はこの松くい虫被害、今でもかなり出ておるわけでございまして、その現状またその対策についてお伺いいたしたいと思いますし、また松くい虫被害対策特別措置法というのが六十一年度末で期限が切れるように聞いておりますが、今後の対処をどうされるか、お伺いしたいと思います。
  38. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 松くい虫の被害防除に関しましては、森林保護の最大の問題とも言えるかと存じます。  五十四年度が被害量がピークでございまして、二百四十三万立方メートルにも及んだわけでございますが、その後被害量におきましては減少傾向が示されております。昨年は百三十三万立方メートルになったわけでございます。本年も昨年程度であろうと想定されておるわけですけれども、しかし、この被害区域について見ますと非常に広範な範囲に及んできておるというのが現状でございまして、北海道、青森県を除きまして非常に広範な範囲に広がってきて憂慮すべき状況でございます。九州、四国、近畿等の被害が早くから発生しておりました地域につきましては減少傾向でございますが、これまで被害が軽微でありました東北地方、北陸地方それから東山地方、長野、山梨県等についてまで増加する傾向があるわけでございます。  したがいまして、この被害対策といたしましては、特別措置法に基づきまして、その対象となる松林の機能、被害の程度、態様に応じまして、薬剤の空中散布でありますとかあるいは被害木を破砕、焼却する特別伐倒駆除でありますとか、一般の伐倒駆除等を組み合わせまして行っておるわけでございますが、さらに被害地につきまして樹種転換を行ったりあるいは復旧治山による緑の回復を促進する等、総合的な対策を講じておるところでございます。  なお、御指摘のありました現行の対策特別措置法は、六十二年三月末でその効力を失うわけでございますので、林野庁におきましては、昨年の十二月から学識経験者等を構成員といたします松くい虫対策懇談会を開催いたしておりまして、その中でこれまでの九年間に及びますいろいろな貴重な経験の集積と申しますか、そういうものを分析いたしまして、今後の対策のあり方を鋭意検討を進めておるという段階でございます。
  39. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員 次に、水産振興につきましてお尋ねいたしたいと思います。  我が国は、南北三千キロメートルの列島に複雑な海岸線を有しておりまして、近海で寒流と暖流が交錯するという漁業条件に恵まれております。また、我が国は古くから国民は魚と親しみ、魚食を常としてきております。こうした中で、近年我が国漁獲量は年々千百万トンを超える水準で推移しておりまして、昭和五十九年には千二百八十二万トンと史上最高を記録し、我が国は世界に冠たる漁業国の地位を築き上げてきております。しかしながら、最近二百海里体制が本格的に定着し、諸外国との漁業交渉は難航をきわめており、また漁業経営は不振に陥っているなど、水産業は重大な事態を迎えております。  このような中で、漁業交渉を強力に推進することはもとより、つくり育てる漁業推進中心として、我が国周辺水域漁業開発を進めるとともに、経営対策強化することが重要となっているところであります。このような漁業振興のための施策について大臣の御所見をお伺いいたしたいと思います。
  40. 羽田孜

    羽田国務大臣 ちょうど私が政務次官になったときにやはりこの二百海里問題が起きまして、時の農林水産大臣、前総理の鈴木先生は常に、常にというか相当日にちをソ連の方で過ごさなければならなかったということを今改めて思い起こし、そして今、農林水産大臣になりましたときに、まさに二百海里というのを各国の主権は主張する、この現状というものを今考えながら、改めて何か深い感じを持っております。  そういう中におきまして、従来から、それ以来、今お話がありましたようなつくり育てる漁業というものをしなければいけない、特に国内の、国内といいますか我が二百海里内、この中のあれを整備しなければいけないということで、もろもろの施策をしてきたことはもう既に御案内のとおりであります。  そこで、さらに六十一年度におきましては、これは大分県も大変熱心であるようでございますけれども、産官学協同によりまして、先進的技術を導入して我が国の二百海里の漁業開発を進めるための研究開発事業、これを今実施しております。それから、これはたしか先生にいろいろとお力添えいただいたと思っておりますけれども、経営不振漁業者の経営再建を推進するための低利の借りかえ資金制度の創設、これらの施策を講ずることといたしております。  これからもこういった施策を一つずつ着実に進めることによって、我が国漁業振興というものを懸命に図ってまいりたい、かように考えております。
  41. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員 水産庁長官がいらっしゃっていますので、今当面して行き詰まっております日米漁業交渉、また日ソの漁業交渉の現状あるいは今後の見通しにつきまして、おわかりの範囲の中でひとつお願いいたします。
  42. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 御説明いたします。  まず日ソの方でございますが、御高承のとおり、一月四日に日ソ漁業委員会の第二回会議が中断をいたしまして、一月二十三日から再開をされましたが、再開会議がさらに今月の十五日中断ということになっております。  現在のところ日ソ間の一番大きな争点は、何と申しましてもソ連二百海里水域における我が国漁船に新しくいろいろ厳しい操業規制を課そうというソ連提案をめぐってであります。それで、このソ連側のポジションがそのまま貫徹されるという事態になりますと、ソ連二百海里水域におきます我が国漁船による底魚類の漁獲というのがほとんどできないような事態になりかねませんので、こういうソ連側のポジションを何とか再考してもらおうということで粘り強く交渉をやっておったわけでございますが、ついに十五日の段階で、ソ連共産党大会の都合もございまして、ソ連がこれ以上の交渉はできないということで一たん中断になったような次第でございます。  ただ、別れる際に日ソ双方の代表間で、日時を具体的に決めるには至りませんでしたが、可及的速やかに日ソ漁業委員会第二回会議の議事を再開する、外交ルートを通じて調整するということになっておりますので、私どもといたしましては可及的速やかに日ソ漁業委員会会議を再開いたしまして、我が国の北洋漁業の存立を確保し得るような条件で決着を見るよう全力を傾注したいと考えておる次第でございます。  アメリカとの関係につきましては、御高承のとおり昨年来アラスカ起源のサケ・マスの保護をめぐって日米間で断続的に協議が続いております。最近の協議は、今月六日からワシントンにおいて水産庁の斉藤次長と米側のウルフ大使との間で行われました。アメリカは若干の歩み寄りを示さないわけではございませんが、依然として我が国のサケ・マス漁業の存立に重大な危険をもたらしかねないような立場に固執しておりまして、事態はいまだ大変厳しいものでございます。  ただ、我が国漁業者に対する直接的な影響につきましては、従来アメリカは二百海里水域内で日本向けの割り当てを留保するということをやっておったのでございますが、いまだ完全に解けたわけではございませんが、二月四日、大臣とマンスフィールド大使との会見を受けまして、三万七千数百トンの放出が行われました。それから、斉藤・ウルフ協議の直後、また一万トン余のマダラの割り当ての放出がございまして、一月の放出に合わせて六万トン見当の数字が出ておりまして、ベーリング公海での操業とあわせて一応三月末までは操業可能な状態になっております。  ただ、先の心配が依然としてございますので、私どもとしては引き続きサケ・マス問題の早期決着ということで臨みたいと思っておりますが、決着に当たっては我が国のサケ・マス漁業の存立を確保するということを基本にして当たりたいと考えております。
  43. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員 日ソ漁業交渉の中断等によりましてかなり影響を受ける漁業者に対しては、つなぎ融資の措置、これをぜひお考えいただきたい、このことを重ねてお願い申し上げまして、時間が参りましたので私の質疑を終わります。
  44. 大石千八

  45. 島田琢郎

    島田委員 農林大臣、御就任おめでとうございます。大変厳しい情勢の中での御就任でございますから、大変期待も大きいし、またその任務の重さは当然御自覚になっていることだと思いますけれども、ぜひ頑張っていただきまして、大方の期待にこたえていただくように奮励努力をお願いいたしたい、こう思っております。  ところで、大臣の所信表明をお聞きしておりまして、羽田さんなら少しは今までと違った、金太郎あめみたいな農政じゃなくて、どこか踏み出して思い切ったことをおやりになるのじゃないか。正直言って、私も長いおつき合いでございますから、羽田さんが農林大臣になってほしい、こういうふうに期待をしてまいった一人であります。それだけにいれ込んでおりますから、裏切ったら怖いですぞ、私はこういう気持ちでおります。  ただ、現下の情勢はなかなか厳しいし、難しい。それは私も知っている。ではありますけれども、私があなたに抱いているイメージという点から言いますといま一つ、先ほどお読みになりました文章は総じて優等生の作文でありまして、はてな、羽田さんの特徴、羽田農政の目玉は一体どこにあるのかな。いただいたこの文章を一生懸命読み返しているのでありますが、どうもそこがわからないのです。ですから、期待にこたえていくためには、おれはこうだというものをこの機会に明確にしていただくことが大変大事だと思うのですが、どうでしょうか。
  46. 羽田孜

    羽田国務大臣 私もこの国会に籍を置いて以来、特に政務次官を務めて以来十年間ほど、委員あるいは党で農政に携わってまいりました。そういう中で、今日本の農業が置かれている状況が決して生易しいものでない、このことはよく認識をいたしております。しかし、生易しくない、難しいといっても、それでは日本農業はだめになってしまっていいのか、そんなものじゃない。やはりこれはきちんと発展させていかなければならないし、また発展させ得るものであると考えております。  そういう中で、私先ほど所信を申し上げたわけですけれども、別にそういう気持ちを持っているからといってとっぴなことができるわけでもないし、限られた枠の中で一つの方向だけはきちんと出していく必要があろうということであります。その中で私が進めていかなければならないものは総合的な食糧の自給力、これはきちんとつけていく必要があるであろう。  実は、誤解——誤解されているわけじゃないのでしょうけれども、よく自給率で議論がされます。しかし、この自給率というのは、日本で今大きな食生活の転換、その中で肉あるいは酪農製品なんかを摂取するようになってきた。ということになりますと、どうしてもコストの安い飼料を求めるということになりますと、輸入に頼らざるを得ない、どうしても自給率は下がってしまいます。しかし、本当に一たん何かあったときのためにきちんと対応する、それと同時に国内生産するものも、少しでもコストの低いもの、安いものをつくり上げていくために基盤整備、そういった自給力をつける必要がある、あるいはその中で働いていく担い手たち、力を持った担い手、こういった人たちを養成することが重要であろうと思っております。  もう一つは、そういった生産する人たちが生活する基盤もあわせて必要であろうということで、農山漁村の生活基盤も整備すると同時に、その中で活力ある生産にいそしめる、創意工夫が生み出せる体制もつくっていく必要があるのじゃないかと思っております。  具体的に、技術経営能力にすぐれた中核的な担い手育成確保するということ、そして先ほど申し上げた基盤整備、こういった基本を置いた上に新しい、これは先ほど衛藤さんの御指摘にもありましたけれども、これに全部頼り切るということはいけないのですけれども、可能性がうんと秘められている新しい技術、特にバイオテクノロジー、こういう先端技術、これの開発実用化を図っていく必要があるんじゃないかなというふうに考えております。  非常に難しい状況でありますけれども、将来に向かって何とか一つの日差しとでもいいますか、そういったものを目がけていきたいというふうに考えております。  まあ、今羽田農政なんというお話をいただきましたけれども、どうもいつも何々農政、何々農政、これは毎年一年ずつで変わっていってしまうんじゃしようがないのであって、やはり今までのものを継続しながら、その中で何を進めていくんだということを皆さん方とお話し合いしながら私自身も汗をかいていきたい、かように考えております。
  47. 島田琢郎

    島田委員 おっしゃるとおりでありまして、私は羽田農林大臣に過大に期待をかけているわけではないのです。ただ、こんな御時世だからそれは難しい。難しいが、しかしそういう中でも特にあなたの個性の生きた農政というものが展開できるはずだと私は思うのです。そう思うのですよ。  今までどうも農政通と言われる大臣が案外少なかったんですね。正直言うと、半年ぐらいここでやり合っていましても何となしにどこかひとつ肌身の合わないところがある。ところが、あなたとは、今までのあれからいくとこれはぴったり合うはずなんですね。久しぶりの農政通の農林大臣、こう思っていますからね。(拍手)まあ拍手は終わってからにしていただきたいのでありますが。私は、あなたの農林大臣就任が一年でいいとは思っていないんですよ。何年もやってほしいぐらいであります。それぐらい期待をかけているんです。  特に私は個性ある農政をぜひ展開してほしいと思うのですが、お話の中のくだりにありました中核農家、これは林業漁業も含めて、中核的な担い手でありますが、農林省が長い間そこに一つのスポットライトを当てて施策をお進めになってきた。農基法農政以来、担い手とか中核農家とかいろいろそのときどきの俗称は変わっていますけれども、要は、本当にそこに命をかけた人たち育成する、その人たちに日本の農業を担ってもらう、林業を担ってもらう、水産業をしっかり守ってもらう、ここに期待があったと思うのです。  ところが、残念ながら、その担い手と言われる、中核農家と言われているところが今一番困っている、実に困っているのであります。ですからそういう点で、少し別室言葉を使っていいますれば、農林省が旗を振ってこのようにやれと指針を出して目標を定めて、そこに一生懸命、農林省のそういう旗振りのもとで頑張ってきた人たちが実は困っている、ここに私は今日の農政の重大な問題点があると思うのです。あなたの問題意識がそこにあって、そこに羽田農政のポイントを置かれるということであるならば、私はよくわかるような気がするのです。そういう御認識というのがやはりないと、この大事な局面を迎えております農業の問題打開にならぬのではないか、私はこういうふうに思うのです。  そして同時に、特徴的なのはことしの農林予算ですね。ことしといいますか来年度、六十一年度の予算でございます。下がってきながらも、辛うじて何とか一〇%台を支えてきたのが、ことしはとうとう一〇%を割ってしまった。俗に大砲かバターかという話がある。今まさに、その平和の代名詞と言われております、大砲かバターか、つまりバターだというそこのところが、我が国はついに崩れてしまったわけであります。三兆三千四百億の防衛予算に対して農林予算は三兆一千四百億、二千億も逆転してしまったのですね。これはやはり我が国農業が将来に向かってどういう方向をたどるかということの一つの暗示と受けとめて、みんな大変心配している。いよいよそういう状態になったか。  そういう点でいいますれば、国民の大事な命を守る食糧を中心にした農林予算でありますから、これは断固として守り抜いてほしかったのでありますが、残念ながら、この調子でいきますれば恐らく来年は三兆円を割ってしまうという予算になるのではないでしょうか。これは重大だと私は受けとめるのです。なおそれでも農林行政に後退はないとおっしゃるのならば、私はその証拠をひとつ教えてほしいのです。
  48. 羽田孜

    羽田国務大臣 今の、大きな期待をお寄せいただいたことに対して心から感謝申し上げますと同時に、私自身、別に農政通でも何でもありません。ただ、農林関係の政策に相当時間をかけて皆さんと一緒に苦労してきたということだけは間違いない事実であります。それだけに、農林水産大臣に就任したことに対して、もう本当に心から実は責任といいますか、大変なところへ来たなというのが実は私の率直な気持ちでございます。そういう中で、ちょうど私が担当することになりましたときに、今御指摘のとおり予算が、確かに防衛費とちょうどその大きさが逆、小さくなったということも事実であります。ただ、それによってそれでは農政そのものが後退したのかということになりますと、私はそうでないというふうに考えております。  今、防衛費との関係での御指摘がありました。これは五十九年度の我が国一般会計歳出の数字でございますけれども、日本の場合には農林水産関係に六・八%、防衛費は五・二%であったのです。アメリカの場合にはこれが四・一に対して防衛費が二七、西ドイツが五・四に対して二八・二、イギリスが二・二に対して二・四、フランスが一〇・七に対して一八・一というようなことで、日本の農政費というのは、今日までも一般会計予算の中におけるシェアというものは非常に大きかったのではないかと思っております。ただ、残念ですけれども、間違いなく額においてあるいはシェアの点についても小さくなっていることは事実であります。  これは、今日まで国債を発行してきた、これに対する元本あるいは利子の返還のためのシェアというものは、実は一般会計予算の中で非常にウエートを占めるようになってきてしまったということがあります。その中で私どもの農政の方は今度逆に、この厳しい予算の中におきまして、食管費ですとかそういったもので少しでも縮減できるものはやはり縮減していこうということで減らしてきたということ、そしてあとふやすものについては財投等を使いながら知恵を絞ってきたということでありまして、確かに今御指摘のとおり額そのものは減ってきたというふうに思っております。ただ、そういう減らした分野もありますけれども、先ほどもちょっと触れましたような漁業の問題ですとか林業の問題、あるいは特にバイオの新しい要求、こういったものに対してある程度の増額を見ているというふうに私は考えております。
  49. 島田琢郎

    島田委員 所信の中で、諸般の情勢を考える中で「我が国農林水産業は、食料消費の伸び悩み、経営規模拡大の停滞、担い手高齢化」という三つの問題を挙げて、この問題解決に当たるという御所信が述べられているわけであります。  ところで、経営規模拡大、私は正直言って、規模拡大というのはもう一定の限界に達しているのではないか、こういう認識を持つのです。というのは、それを裏書きするように、先般も、これは農業会議所が出しております全国農業新聞によりますと、農地価格というのが引き続き鎮静化をした、これは三年連続の低い上昇率であります。現に私の周辺でもこういう事態に相なっておりまして、土地の価格の上昇率が低いというのは、決して悪いことだとは思っていないのであります。  ところが、この低いという原因は、単なる正常な状態におけるいわゆる上昇率の低下ではなくて、土地を拡大する、つまり自分の土地の面積をふやしてまで経営拡大をやるという意欲が実はなくなっているということの一つの証拠だろうと思うのです。経営拡大するというときは非常に買い機運が強くて、農地が売りに出されますと、農業委員会農地の調整に当たることが不可能と思われるほど土地の配分に大変苦労する。私も農業委員会長をずっと長くやってまいりましたから、その動きというのは非常に農家の意欲と裏腹にといいますか、ぴしっとくっついて、そして土地に対する買い機運というのが物すごいときには、営農に対する意欲というものは物すごく上昇の状態にある。ですから土地の動きというものは農業経営に対する農家の意欲を推しはかることのできる一つのバロメーターだと言ってもいいと思うのです。私は、このことを、そういう意味では喜べないと思うのです。  そういう状態を見ておりまして、私は、あえて経営規模拡大を推し進めようとお考えになっておる意図は、さらに農家の選別を強化することになるんではないかという心配がある、どうですか。
  50. 羽田孜

    羽田国務大臣 確かに土地の売買による規模の拡大は大きくない、これは御指摘のとおりでありますし、そして確かに、農業の構造を見ましたときに第二種兼業農家の皆さん方の方がむしろよろしくて、一番あれは二ヘクタールとか三ヘクタール、この周辺の方で、しかも専業農家の方々の経済事情というのは非常に厳しいという状況というものがあると思っております。そういう意味で、確かに営農意欲というものは薄れておるという面があると思いますけれども、しかし本当に日本の農業というものを効率よく、しかも生産性の高いものにしていくというためには、やはりまだ規模の拡大というものは進めていかなければいけないんじゃないかというふうに考えております。  そういう中で、例えば請負耕作というものなんかも、例の皆様方に御審議をいただきまして今進めております農用地利用増進法はかの農地三法、こういったものによっての土地の流動化も進められ、それが割合と、私たちが思ったようには今はどんどん進んでおりませんけれども、しかし、これは前に向かって進んでおるということを考えたときに、やはり規模の拡大に対する意欲といいますか、要求というものは今でもあるんじゃないかなというふうに思っております。
  51. 島田琢郎

    島田委員 もう当たり前のことを申し上げて恐縮なんですけれども、農家経済というのは、いわゆる交易条件というものが備わってないと農家経済は破綻をいたします。これは言うまでもないことであります。つまり、売るものが、売る農畜産物価格が一定の水準で上昇し、それを生産するコストというのが一定程度下がっていくという、この間が農家所得でございますから、この所得が縮まる、つまり売るものが安くて、行政価格でいえば連年据え置かれていて、これは上がっていかない。ところがコストは上がる。つまり、コストの三大品目と言われますのは、農機具と肥料とえさであります。これがじりじり上がっていく。つまり農家所得はどんどん狭まっているわけですね。  この所得があって初めて農家は、一家が安穏に暮らすことができる、そしてまた、きょうよりもあした、いい生活を目指して向上することができる。また子供を生み育てて教育もできる、こういうことになるわけであります。それがどんどん縮まっていて、逆に今度は固定化された負債がふえているという現状が、これはひとり酪農、畜産だけではなくて、ほかの業種にも広がっている、この実態は、私は昨年も一年がかりで佐藤前農林大臣と議論をいたしたわけであります。  政府としては、その実態については認めながら、正確に調査をしてみたい、こういうお話でありましたが、残念ながら昨年一年中にその答えは私のところに返ってきませんでした。しかし、引き続きこれはおやりになっているものだと思いますので、ぜひその実態を明らかにしてほしいと思うのです。農用地利用増進法というのができまして、そういう中で農地の流動化というのがどの程度進んだかといいますと、ほとんど進まない。そしてまた、それにかわるべきいわゆる利用権がどう設定されていくか、これが農地流動化のもう一つの尺度であります。それが思うように進んでない。  そういたしますと、一つは農家経済が大変苦しくなっていて、再投資をし、経営拡大を図るという力がなくなっている、弱まっている。ですから、あなたがおっしゃるように、幾ら期待して経営拡大はもっとやらなくてはいけないと思っているので、ぜひひとつ経営拡大を積極的に進めたいとおっしゃっても、実は農家の体質が大変弱っている。それにはカンフル注射のようなものがなかったら正常な活動ができないところまで弱っている、そういう階層も多く出ている。そして、それは特に中核農家層において出ているということを私は重視したい。ですから、そういう点に的確な御処置をぜひお願いしたい。これは時間がありませんので、私の意見だけ述べて終わらして、先に進みたいと思うのです。  もう一つ、食糧消費の伸び悩みということがあります。  そこで、ちょっと大臣、実は一昨年、私は予算委員会総括質問の中で中曽根総理に対しまして、日本型食生活というのを御存じですかと聞きました。そうしたら、総理大臣、知らなかったです。私は驚いたのであります。何となれば、これは民間がやっているのではなくて、農林水産省がお進めになっているのですね。このスローガン、御存じですか、大臣。——まあこれは、お断りしたように、私がつくったのでございませんよ。農林水産大臣の研究機関がございます、その中で日本型食生活というのを出されました。  PFC、このバランスが非常に整っているのが我が国食生活基本的な姿である、世界各国と比べまして大変栄養のバランスもいい、PFC三つがそろっている、こういうことであります。お出しになりました研究会が大変苦心をされてつくった、これはスローガンというほどのものではないのかもしれぬが、「あさコメミルクでバランスどおり」こういう言葉をおつくりになったのであります。それを頭に並べて、その下に全部言葉が入ってくると、なるほど日本型食生活、うなずけるのであります。私も、実はその頭のよさに感心いたしました。だから、私はこの言葉を忘れていないのであります。大臣、これはあなたのところでおつくりになったのだから、官房長、あなたちゃんとそれぐらいのことは知っていなきゃ。  この「あさコメミルクでバランスどおり」というのは下に文句があるのですよ、一つ一つ実によく理屈に合った文句がつくられているのであります。それを当時の農林大臣は、研究会から答申を受けて、よし、これで行こう、閣議で決定したのです、日本型食生活というのを。ところが、中曽根総理は御存じなかった。羽田農林大臣も責められません、おととしの山村農林大臣も、私に聞かれてわかりませんと言っているのでありますから。これでは困ってしまうのでございますが、これは農政審でも大変議論になりましたね。  私は、このバランスのとれた日本型食生活、これをもっと国民の間に積極的にPRすべきだとこの予算委員会で主張しました。そうしたら、そうしますと言いました。そしてまた、いろいろな点で予算もつけて、去年の昭和五十九年度の農業白書では、農産物消費拡大、米、牛乳、果実、野菜、これを大きな柱にしまして、いわゆる「日本型食生活の形成、定着を図ることを基本として、その強力な推進を図った。」とあります。「強力な推進を図った。」とある。しかし、その効果はあらわれたでしょうか。まず、そこをお尋ねしたい。
  52. 羽田孜

    羽田国務大臣 日本型食生活、確かに日本の土地に根差したもの、これがやはりそこで生活する国民の健康に一番いいものである、私どももそのように理解をいたしております。そして今、島田委員から御指摘がございましたように、日本の食生活というものを、これは一般的に見たときにも、国際的にも、このPFCというのはまさにちょうど正三角形であるということで、日本型食生活がいいのじゃないかということをたしかアメリカの委員会でも検討されたという話も私、記憶がございます。そういう意味で、米、野菜、魚プラス畜産物、油脂、果実、こういうものを加えた食生活というものを私たちは進めていかなければいけないというふうに思っております。  そして、特に近年、これはちょっと余計なあれになりますけれども、子供たちの健康状態を見ておりますと、子供のくせに、まだ小学校の子供たちが、肩が張るとかあるいは血圧が高いというような事象があります。こういうものを考えたときに、今私たちは常に、いろいろな政策を進めるときに高齢化社会に対応するなんということをやっておりますけれども、今のままいったら本当に大丈夫なんだろうかということを考えます。もちろん運動量の不足とかいろいろなものもありますでしょうけれども、その基本になっている食生活というものが非常に乱れてしまっておる。そういう意味で、ただ農林水産という発想の中だけじゃなくて、国民の健康維持ということからも、日本型食生活というものはこれからも論議し、そしてこれを進めていかなければいけないと思っております。  ただ、確かにその効果があったのか、今までテレビですとかあるいはパンフレットですとか、また各デパートを使ったり、また各自治体にもお願いしたりして、いろいろな行事も進めてきております。そして、こういった食生活について方々で議論されるようになってきた、あるいはお母さんたちの集まりなんかでもこういったものが議論されるようになってきたということで、私は一定の成果というものは上がっておるというふうに確信をいたしております。しかし残念ながら、それでは本当にどんどん普及しているかというと、どうもテレビなんかにおけるお料理教室の方が影響力が大きいということも言えると思っておりまして、まだまだ私たちはこういった問題について地道に普及活動というものをしなければいけないな、また研究もしなければいけないなということを思っております。
  53. 島田琢郎

    島田委員 確かに奥さん方の間では日本の食事のあり方についていろいろ新しい動きが出てきた。それは一つの効果の側面と見ることができる。私は否定しません。  ただ、私が申し上げておりますのは、今差し迫って牛乳の時期が来月来ますね、畜産物の価格決定の時期が来ます。そうしたら、牛乳の消費はどうなんだ、牛肉は食べられているか、豚肉は今あんな状態だ。そのうちに今度は麦の時期が来ます、麦価の決定の時期が。そうすると、パンがどれだけ食べられているか、めんがどれぐらい消費されているか。それがまた一息づいたら、すぐ米がやってきて、米を一体腹いっぱい食っているか。どんどん消費拡大という課題は一年じゅう尽きなく起こっているわけですね。ですからあなたが、日本型食生活定着化推進するとともに、農畜産物の消費拡大を図るべく積極的にやりますと、こうおっしゃっているから、それなら日本型食生活というものがどれだけいわゆる定着していて、そして我々のつくったものがどれだけ拡大して消費されているのか、その効果が本当にあったのですかということを今聞いたのであります。  ですから、精神的な面での効果ということよりも、今さしずめ牛乳の生産調整が既に起こっておるのであります。豚肉がああいう状態になっておるのであります。そして、今またささやかれているのが六十万ヘクタール・プラス十万ヘクタール、第三期の減反政策を強化する、こう言っておるわけであります。それはとりもなおさず消費拡大ができないから生産調整が行われるのではないのですか。そういう問題を目の前に抱え、足元に打ち寄せているそういう苦難の状況を、今農家は呻吟しながら、苦しみながらそこを乗り越えようと思っているんですね。ですから消費拡大というのは、さしずめ農林水産省の食糧を供給する立場からいえば、食べる者とつくる者との間をきちっと手を結ばせて、そしてそこを目玉にして進めていく上で、その真ん中に立っている農林水産省としての役割というものは非常に重要なわけですよ。  ですから、今までおやりになってきた日本型食生活というものについて私がそこを少し問題提起しながら申し上げているのは、単にあなたがそういうことを知っているとか知っていないとかの話じゃなくて、追い詰められているそういう状況のもとでひとつ打開しなければならぬのは、消費の停滞を食いとめて反転攻撃に出て、日本型食生活がいいのだから米をちゃんと食べる、牛乳も飲め、「あさコメミルクでバランスどおり」というのは、そういうことが中に書いてあるんですよ。それが具体的にならぬで単なるスローガンに終わっているところに物すごい危機感を私は持っているわけですから、そこは私の危機感というのではなくて、農家自身が今あなたに期待をかけている点なんです。ですから、羽田農政は個性ある農政として、こういうところにひとつ視点を据えて頑張ってもらいたいということの激励もこの中に含まれているわけです。
  54. 羽田孜

    羽田国務大臣 確かに日本型食生活、この見方というのは二つあると思うのですけれども、一つの点では、日本型食生活によって日本国民の健康を増進し、維持していくという一面があると思います。それからもう一つは、やはり日本型食生活定着する中で、こういう食事をしていけば、大体こういったものはこのぐらい食べられるであろうということでの一面があると思うのです。そういう中からやはりこれからの生産というものをあれしていかなければいけないと思う。  その中で、確かに今御指摘のとおりそういう宣伝——宣伝といいますかその中でやっておりますのは、やはり日本型食生活基本になるのは米であり野菜であり魚である。そして酪農、畜産物ですね、それから油脂、果実、こういったものをあれしていくわけなんですけれども、確かに今御指摘のとおり、米の場合にも残念ですけれどもまだ減少傾向があるということ。あるいは魚なんかにしても、大衆魚と言われるものが本当は一番健康にいいということで盛んに訴えておるのですけれども、これの消費というものもそんな大きくないということ。あるいは子供たちの健康にカルシウムなんかを、これは魚からもとるけれども牛乳からもとったらどうだということでやっておりますが、これも、どちらかというと生産の方が相当大きくなったことも事実でありますけれども、しかし今伸び悩みであるというのが現実であって、こういった面で、逆に生産する皆さん方が苦しんでいらっしゃるというのも、私もその点はよくわかります。そういった点を含めまして、やはり定着を図るためになぜこれがいいのだということについて、私たちももっと勉強しなければいかぬなというふうに思います。  ただ、御案内のとおり洪水のように流れていくマスメディアというもの、これもまた日本の場合には実は大変強い力を持っておりまして、そういった中でいろいろな面で理解をさせていくのに私どもも非常に苦労が多いということ、この点にもぜひ御理解をいただくと同時に、これこそ農業者の組織ですとかそういった皆さん方にもまたこれからもフル回転していただいて、本当の日本型食生活というものをつくり上げる、そうした中でまた生産というものが伸びていくというような状況をつくり出していきたいというふうに考えます。
  55. 島田琢郎

    島田委員 生産が伸びたということをおっしゃっているのですけれども、私は先ほど農家経済のお話をしましたが、もう経済的に追い詰められているんですね。ですから、とにかく価格が上がるか、量を生産するかの二者択一、あるいは両方欲しいけれども、農家は今、両方、無理なことを言ったってそれは通らぬだろう、仕方がない、一つでもいい、どっちか選択せざるを得ないということで連年価格据え置きに甘んじてきました。そして量を何とか確保して、それで生きる道を得たいということで努力しているわけであります。ところが両方とも元栓が閉められたらもう首根っこ押さえられたと同じで、息が詰まって死んでしまうわけであります。  ところが現実にはそういうことをおやりになっているに等しい、そういう記事が最近の「酪農経済通信」に出てまいります。これは一昨日付のものでありますが、六十年、暦年でありますが、輸入乳製品が史上最高の量に達したとあるのですね。私は二百七十万トンを超えるのではないかと思いましたが、二百七十万トンにほぼ近い二百六十六万トン、昨年の六%増輸入量があるのですね。大臣がおっしゃるように国内生産が伸びたら伸びたように、バランスをとっていかなければいけないのです。我々の胃袋はそんなに大きいわけじゃありませんから、先ほど申し上げましたように、牛乳も飲め、豚肉も食え、牛肉も食べろ、パンも食べろ、米も食えと言ったってなかなかそうはいかないわけでありますが、消費拡大が思うに任せないという御苦労のほどは私は百も承知なんです。  しかし、それではこんな法外もない輸入量はどうなっているのですか。素朴な国民感情として、農民感情として理解ができるでしょうか。できないでしょう。国内生産がふえたんで、日本の国民の胃袋もそんなに大きいわけではないから、入る量は決まっているんだからといったら、どこかセーブしなければいけないわけであります。それなのに、セーブなしにもう全くむちゃくちゃな、いわゆる洪水のごとく乳製品がこうやって入ってきている。  そして現に国内では第二次の牛乳の生産調整が行われておるのです。牛乳に赤色をつけているのですよ。大臣はもう先刻御承知でしょう。食紅を入れて真っ赤っ赤にして、生まれた子っこ牛に飲ませているわけであります。その子っこ牛は、母さんのおなかにいるうちは、おまえ、外へ出たら白いおっぱいたらふく飲ませるよと言ってくれたのに、真っ赤な牛乳を今飲まされているのであります。こういう事態であるのにどんどん洪水のごとく外国製品が入ってくる。この辺のところをきちっとするということをひとつお約束願えるだけでも羽田農政の一つの目玉になるのではないでしょうか。いかがですか。
  56. 羽田孜

    羽田国務大臣 今御指摘のございました乳製品につきまして、私ちょっと今手元に数字を持っていなくて恐縮なんですけれども、そんな洪水のようにふえているという実情があるというふうに見受けられないのですけれども。それから肉等につきましても、これは需要と供給を見きわめた上で進めてきておるものですから。  ただ、私どもとしては、先ほども申し上げましたように国内生産、特に主要なこういった国内生産について、日本の生産に非常に大きな悪影響を及ぼすような輸入は自粛しなければいけないということで、今日までもこういったものについては相当厳しく進めてきておるものでございます。この考え方については私どもとしても同様の考え方を持ち続けていきたいと考えております。
  57. 島田琢郎

    島田委員 これはたまたま、国内生産が伸びたから、こういうおっしゃり方でありましたから、私は、それならこの輸入はどうなっているのですかという問題提起をしたわけであります。これは後ほどまた串原委員が畜産、酪農中心にして大臣の所信をお尋ねしてまいるときにまたやっていただきますし、また来月はいやでも応でも畜産物の価格の問題でここで議論しなくてはいけませんから、その席にゆだねたいと思います。  さて、そういう点を考えてみますと、国民全体の理解を得る、コンセンサスを得る、先ほどちょっと申し上げましたが、食べる者とつくる者、こういう関係を明確にしていかなくてはなりません。そのために、我々がつくったものを喜んで食べてもらうということが大事であるという点についても、私は今日的な問題の重要さを承知いたしておるわけであります。しかし、国民全体の理解を得るというのもなかなか難しい話で、やれ農業過保護論が出てきてみたり、あるいはまた、農家や漁師は税金を納めるのが足りないなどと総理大臣みずから言い出す始末でございますから、農家経済はますます苦しくなっているのに、その理解を全体的に得ることはなかなか難しい。単なる一片の紙切れや通達ぐらいで国民全体の理解を得るということは容易なことではないと私は思います。ですから、この点についても、羽田農政の目玉としてお取り組みになれば、私は、こういう食糧問題の大きな打開の糸口が出てくるのではないだろうかと思います。  さて、そういうふうに見てまいりますと、基本農政というのは一つのほころびを見せつつある。いや、私の立場で申し上げますと、これは完全に破綻したと見るべきだ。そこを見直して新しい方向を打ち出さない限り、今日の状況を打開していくことはできないのではないかと私は思っているのです。  その一つの問題点として、先ほどあなたは自給率と自給力は違うというお話をされました。ところで、我が国の食糧の自給率はどの水準であるべきだと大臣はお考えですか。
  58. 羽田孜

    羽田国務大臣 これは非常に難しいあれでございまして、食糧の自給率ということからいきますと、今総合の自給率が七十数%ですかまで来ております。この水準は決して高いというあれではありませんけれども、しかしこの水準というのはいいところにいっていると私は思います。ただ、飼料穀物も含めた上での自給率ということになりますと三二%ぐらいになるということでございまして、これは要するに畜産というものをあれするために、これは先生よく御案内のとおりでありまして、粗飼料、そういったものでなかなか済ますことができない、濃厚飼料を与える、そのために穀物を輸入しておるというような実態の中で特別に下がってきてしまっておる。これは、日本の国土面積という中での、何というのですか、畜産物の摂取というものが大きくなってきておるという現状から、三二%、これを将来にかけていろいろな手当てをしましても、なかなか難しいなというふうに私は思っております。
  59. 島田琢郎

    島田委員 ところで、林業問題でお尋ねをいたします。  今さら緑豊かな森林を子々孫々にまで引き継いでいくなどと、そんなことは申し上げるまでもなく、あなたは特に林政では自民党林政調査会の会長さんもおやりでございますし、私は十四年に近い間あなたとのおつき合いがあって、林業問題では本当に肝胆照らしながらお話をさせてもらってきた仲でありますから、今さらのごとく質問するのはいかがかと、自分でもそう思っているのであります。  しかし、千五百億の国内林業活性化対策、これは補正でこの間、六十年度、ことしの分で四十億、六十一年度で八十億何がし、こういう予算であります。これは、千五百億と私お聞きしている中で五百億は国費、あとの一千億は融資ということではありますが、単年度で割りますと、五年間ということですから三百億ですね。それにしてはどうもこの予算の用意の仕方が足りない。メニューはいっぱい並んでおりますけれども、これで本当にやれるのかなという心配が一つあるのです。緊急におやりになるという中身もいっぱいありますから、その点など含めて、具体的には一体どのようにされるのか。もう既に六十年度が終わろうとしておるのであります、六十年度から五年間でありますから。そして目の前に六十一年度がやってくるわけであります。そうすると、この対策を急がなければならぬのであります。お金の用意も十分でないが、進みぐあいもどうも心配がある。具体的にこのようなことをやるということをひとつこの際お聞かせ願いたいと思います。  同時にまた、国有林の関係でございますが、六十一年度の予算は何とかつじつまが合っている感じでありますが、それにしても、あなたと私の間で一番大事な問題として合意を見ましたのは間伐対策でございます。これは一刻の猶予も相まかりならぬ。先ほども衛藤さんがその問題に触れておりました。百九十万ヘクタール、もう目の前で緊急に除間伐を進めなければならぬ、こういう問題が差し迫っているのであります。  過日、私は皆さんの自民党の藤尾政調会長とお会いしたときにも、島田君、そんな間伐なんというのは金があろうがなかろうがやらなきゃならぬのだよと、元気よく言ってくださったのです。会長そんなことおっしゃったって、銭っこつかなかったらどうにもならぬではないですかと言ったら、金なんかあろうがなかろうがと、また同じことを言いましたので、私もびっくりして、いやアバウトな人ではあるけれども元気いいなと思って、その元気に期待しながらとにかく頼むというお話をしてまいりました。  しかし、実際には予算上には元気よくお答えになったほどの予算が盛られていない。これも国有林、民有林を通しての問題であります。特に国有林問題につきましては、いわゆる財政上の問題はますます厳しさを加えてきている。恐らく私の認識では、昭和七十二年度までの収支均衡なんということはほとんど不可能だ、差し迫った話が来年度の、六十二年度の予算を組むことさえできないところに来てしまっているのではないか、私はどうもこういうふうに思えるのです。これに対して御所見を伺いながら、その対策に対しましてどのように進めようとお考えになっているか、聞かせてほしいと思うのです。
  60. 羽田孜

    羽田国務大臣 お答えいたします。  まず、五カ年計画でございますけれども、これにつきまして確かにその額をもっと大きくというお話、私ども党内の方で検討いたしましたときにも、もっと大きなものを何とかひとつしたいということでありますけれども、御案内のとおりの財政事情の中で、ともかくやり得るものをまずひとつやろうということでこういうことになったわけであります。  この内容につきましては、ともかくまず何といっても木材の需要をどうしても拡大しなければならぬ。それには木材というものについて、これは本当にいい製品である、やはり木というものは高温多湿の日本にとっては、住宅としてもあるいは人の集う場所としてもいいものだよということを知ってもらおうじゃないか。そのための対策というものをひとつやっていこうというのがまず第一の木材需要であります。この中では、モデル木造施設を建てましょうということ、あるいは活動のためのいろいろな対策費なんかも捻出しましょう、それから新規用途の開発、こういったものについても開発をいたしましょう、これがまず木材の需要関係でございます。  それからもう一つは、木材産業が今関税の問題その他でも問題がありますけれども、しかし今日現在、木材産業というのは非常に難しい状況にあります。そういうことで、例えば製材所ですとか、あるいは合板業の人たち、こういった人たちがほかのものに転換をしようということ、あるいはスクラップをしようというもの、こういったものにひとつ対応をしようじゃないかということであります。  それからもう一点は、川上の方の問題で、これをきちんとしなければ国土保全という問題にもやはり問題を起こすということと、二十一世紀にはどうしても国産材時代が来るであろう、そして先ほども御指摘がありましたけれども、一千万ヘクタール以上のものが人工林である、それが今ちょうど間伐の伐期にあるということで、今先生から御指摘がありましたとおりどうしてもこれを間伐をしなければ人工林はだめになってしまう。そういうことで、この間伐事業につきましては、林野の予算の中でもいろいろなところにはめ込みまして、林道ですとか、あるいは作業道ですとか、そういったものを進めよう、あるいは間伐材の需要拡大も進めていこうじゃないかということ、そしてその需要拡大のための、集成材といいますか、新たな技術によって新たな製品なんかもつくり出していこうじゃないかというようなことも進めよう、これは大変欲張った、予算の割には欲張っているとおしかりを受けるかもしれませんけれども、私どもの今つくった五カ年計画というものはそういう性格のものであり、具体的にはそういったことをやっていくんだということであります。  また国有林野事業につきましては、確かに木材の価格というものが低迷しておるということ、あるいは資源的な制約があって伐採量にもやはり限界があるということ、また事業運営全般にわたってまだ改善途上にあるということで、実は相当な経費がかかるということは御指摘のとおりでございます。  こういう中にありまして、国有林野事業というものは健全性を確立してその使命というものを十分達成してもらう。このために五十九年六月に策定した新たな改善計画に基づいて、事業運営の能率化あるいは要員規模の縮減と組織機構の簡素化あるいは販売対策強化など、自主的な改善努力に最善を尽くしているところでございます。また、今後ともこれらの施策の一層の推進を図るとともに、所要の財源措置を講ずることによりまして国有林野事業経営改善を進めていきたいということでございます。
  61. 島田琢郎

    島田委員 実は中国が四つの現代化を進めていく中に、私は昨年、三度中国へ参りましたときに向こうの漁業省の幹部の方とお会いをいたしましたら、その四つの現代化の中で今大変大きな目玉に据えているのが農家住宅の改善である、それは一億七千万戸を目標にして改造していくのです、従来のような土づくり、レンガづくりのうちから木材を多く使った住宅に変えていきたい、こういういわゆるロマンに満ちたお話を承りましたが、一億七千万戸に私は驚いた。年次計画で六百万戸やるそうであります。それでも三十年かかるんですね。そのために日本の木材が欲しいというお話であります。ところが残念ながら、突き詰めて聞いていったら、どうもお金で問題がある。解決がどうもできそうにない壁にぶつかります。  例えば、上海CIF価格で立米当たり百ドルあるいは百二十ドルくらいないと我々はペイしないのですね。ところが、向こうは五、六十ドルというのですから半値なんで、これは持っていくのには大変だ。そしてまた、一億七千万戸などという膨大な農家住宅の建設に我が国の木材供給をやったら日本の山ははげ山になってしまうということで、まあしかし、これは世界じゅうから本当に垂涎の的と言われるような大マーケットを目の前にしながら、我々もちょっと知恵を働かしてもいいではないかという問題意識を私は持って帰りました。これは後はと、また折があれば大臣とじかにいろいろお話をさせていただきたいと思っております。  さて、こういう「建設業界」という雑誌、実は私もとっておるのであります。私は農林漁業関係なのに「建設業界」こういうものに興味を持っている。たまたまこの中に、これは正月号なんでありますが、御承知のようにただいま四全総の策定作業が進められているわけですね。この中で元国土庁の事務次官をおやりになった下河辺淳さん、それから東大の教授で木村尚三郎さんという方が対談をされておりまして、NHKの川越さんという解説委員が司会をしながらお話をしているのが記事として載っておりました。表題は「二十一世紀国土づくりへの展望」という座談会でございますが、人と森林との共存が第四次の全国総合開発、四全総の国土づくりの原点だという点で大変興味ある発言をしているのであります。  そのくだりを若干読みますと、一全総から始まりましたこの計画は、一連の流れからいいますと、非常にジャーナリスチックな言い方をすれば、四全総計画論のスターターを努めるのは、それはまさに森ではないかと私は考えます、下河辺さんがこういう発言を口切りに行っております。現在、林業は企業として不振をきわめているから、森林管理はそう簡単ではない。だから一部の林業者が管理する時代ではないので、これはあくまでも日本の将来の文明のために国民全体でこの森林を考えていかなくてはならない時代に入っている、新四全総のいわゆる出発点はここから始めるべきだと提言しているのです。それに対しまして、木村さんも司会に当たった川越さんも、全く同感です、こういうふうにおっしゃっています。  きょうは時間がなくなってしまいましたからもう余り長くお話することはできません。こういう問題意識を持っている人たちが我々の周辺にいるということです。国土庁の元事務次官という高官でございますね。あるいは学者の中にもこういう人たちが出ている。ここに依拠しながら、私たちは緑づくりはまさに国民的な政治課題として取り組むべきである。これはもう言わずもがなのことでございまして、羽田農林大臣に申し上げるのは釈迦に説法というものでございます。ですから、こういうことを実は私たちは非常に注目しながら協力し合っていくべきではないかというふうに思います。  大事な漁業問題に少し時間をかけたいと思いましたのに、その時間がなくなってしまいまして、時間の配分が悪くて自分ながら嫌になっておるわけでありますが、この際、日米、日ソの交渉の経過につきまして、さっき衛藤さんの質問に対していろいろ長官がお答えになっているようであります。たまたま昨日の新聞だったでしょうか、小さな記事ではありますけれども、岡田利春さんがこの問題に触れまして、この救済に対する農林大臣の答弁がなされているようでございますが、つなぎ融資を行っていきたい、こういうことのお考えを固めたようでございます。とすれば、日ソ漁業問題というのは一体どこまで進展して、どういう腹で現在臨もうとお考えになっているのか。それから、ますます厳しくなっております日米漁業の現状、これにいら立って業界でも大変な動きが今出つつあります。こういう点を踏まえまして、この漁業問題にどのような姿勢で今後お臨みになろうとしているのか。  とりわけ、当面の日米、日ソの漁業交渉の進展というのは国民の極めて注視するところであります。これは一つ間違えますと、我が国の食糧問題にも大きな影響を及ぼすばかりか、長い間積み重ねてまいりました我が国漁業の伝統、水産業の歴史というものを一朝にしてふいにしてしまうということにもなりかねません。そういう点をこの際ぜひお聞きしておきたいと思います。
  62. 羽田孜

    羽田国務大臣 先ほど佐野長官からお話されたこともお聞き及びでございましょうから余り細かく申し上げませんけれども、日米につきましては、ともかく話し合いを進めている中におきまして、今六万トン近くのものが一応放出されておるというのが現状であります。しかし、これを今またサケ・マスに絡めながらやってきておるということでありますので、私どもとしましては、二百海里内の漁業とサケ・マス問題は別であるという姿勢で、これからも積極的にアメリカに対しても働きかけをしていきたいと思っております。  ただ、ソ連邦との関係におきましては、一月四日に話し合いが中断し、実はその後六日からずっと双方とも操業しておらないという今状況でありまして、この間アプラシモフ大使も二度ほど私の役所の方にお呼びいたしましたり、またシェワルナゼ外相が参りましたときは、これはパーティーの席でありますけれども、日本の現状というものについてお話を申し上げたところであります。この間、京谷さん初め皆さん、精力的に実は議論していただきましたけれども、御案内のとおり、今中断しておるというのが現状でございます。  残念ながら、先方の提案というものでは、これは私たちが望むところの魚はとれない操業条件になっておるということでありますし、また、金額をお支払いするにしても、とてもお支払いできるようなものがとれないであろうという現況でございます。ですから、譲るべきものは私たちは譲らなければならぬと思いますけれども、実際にとれないもので妥結してしまうということは、これは許されるものじゃありませんので、この点につきましても、再開されるであろう交渉の中で、今日までの長い歴史というものをやはりもう一度振り返ってもらいながら、それと同時に、単なる漁民というだけではなくて、実際にこれを加工している人たちもありますし、日本人の魚食民族というもの、この気持ちというものも理解してもらわなければならないこと、そして、日ソ関係が、八年間中断しておって、外務大臣との話し合いというものが今新たにこうやって起きようとしておるときに、一番その間をパイプでつないできた魚がおかしくなったのではしようがないじゃないかということをもう一度理解をしてもらい、物事というのは徐々に進めるのだということ、これについて私どもは訴えていきたいと思います。  それにいたしましても、今漁民の皆さん方は操業できないという中で本当に塗炭の苦しみの中にある、これは私どもよく承知しております。今の段階はまたどのような結果が出るというものでないものですから、この間はひとつつなぎ融資でやっていこうということで、その後についてはまだ、私ども、加工業の人たちも含めましてそれぞれ考えていきたいという考え方を今持っておりますことを申し上げておきます。
  63. 島田琢郎

    島田委員 終わります。
  64. 大石千八

    大石委員長 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十五分休憩      ————◇—————     午後一時三分開議
  65. 大石千八

    大石委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。串原義直君。
  66. 串原義直

    串原委員 羽田農林水産大臣の就任を心からお祝いを申し上げたいと思います。  まさに農政通と言われてきた羽田さんが大臣に就任されまして、関係者の期待はまことに大きい、私も長野県でありますが、とりわけ地元の長野県民の期待も大いに大きいわけでございます。ぜひ頑張ってもらいたい、初めに期待を申し上げておきたいと思う次第であります。  そこで大臣に伺いますが、穀物自給率が年とともに下がってまいりまして、今およそ三〇%ないし三二%、こう言われている状態でありますが、今日の日本農業、人によりますと後退に次ぐ後退を続けてきた日本農業の現実、こういう表現をする人もおりますけれども、その表現が一〇〇%適当かどうかの評価は別にいたしまして、穀物自給率が下がってきた。それから、日本農業は全体的に見て後退してきたということは否めない事実でございます。この現状を大臣就任に当たってどうお考えになりますか、まずこのことを伺いたいのであります。
  67. 羽田孜

    羽田国務大臣 まず、祝意を賜りましたことに対してお礼を申し上げます。  しかし、先生も県会時代から大変な農政通であられたので、またこれからいろいろな面で御指導いただきたいことを改めてお願いを申し上げたいと思います。  さて、今お話がございました穀物自給率につきまして、確かに三二%という状況にあります。ただ、先ほどもあれしましたけれども、主食用の穀物につきましては七〇%程度を維持しておるわけでございます。国土資源に制約がある我が国として、飼料用穀物は大部分を輸入に依存せざるを得ず、また、畜産物の消費拡大によってその需要が増加しておるというのが現状であります。残念ですけれども、残念というのじゃなくて、戦後、畜産物、いわゆる肉ですとかあるいは酪農、こういったものを非常に急激に大きく摂取するようになったという中で、どうしてもやはり飼料穀物を必要とする、これを日本でつくるのでは膨大な土地が必要だということで、他から輸入せざるを得ないというのが現状でございます。  そういう意味で、私どもとしましてもこの問題については非常に重要に考えておりますけれども、長期展望の中でも、およそ穀物の自給、いわゆる飼料用穀物を含めますと三〇%、飼料の自給率としては三五%ぐらいということでございまして、国土の割に人口が非常に多いという日本の事情、そして今申し上げましたように動物たんぱくというものをとるようになった今日の状況では、私はこの点はある程度やむを得ないかなと思っております。  ただ、できるだけ自給力向上するという意味で、麦とか大豆、飼料作物、こういったものの生産拡大、こういったものについてはやはり私どもとしてはこれからも努力していかなければいけないと考えております。
  68. 串原義直

    串原委員 先ほども触れられておりましたけれども、自給率を高めなければならぬというのは、これは我が日本農業にとって重大な課題だと私は思っているわけです。今大臣答弁のように、麦、大豆等の自給率も高めなければならぬ、努力しなければならぬが、とりわけやろうと思えばやりやすくて、努力するならば効果がある、これはえさ、飼料の自給率を高めるということだろうと思う。これは重大な課題だと思っているのです。これは農用地開発公団等々の任務もこれあり、大事にしていかなければならぬと思うのでございますが、この点に対して羽田大臣はより力を入れてみたい、こうお考えになりませんか。いかがです。
  69. 羽田孜

    羽田国務大臣 この問題につきましても農業再編成を図る、例えば過剰ぎみである米というものから飼料作物へ転換していく、こういうこともしなければなりません。  それからもう一点は、これはまだ確立されてはおりませんけれども、今バイオその他の技術なんかを活用しながら、例えば木材、こういったものなんかも飼料化していこうじゃないかというような研究も今進められております。そのほか、いろいろなものから飼料を求めるということも必要でありましょうけれども、今お話がございましたように、農用地公団なんかで進めております飼料畑、こういったものなんかも拡充する、こういったものが特に山間地なんかにおいてもまた必要じゃないかと思っております。
  70. 串原義直

    串原委員 先ほどの所信表明で大臣の考え方を伺ったわけでございますが、この所信表明の中にいろいろと述べられております。しかし、率直に申し上げて、これは聞いていて、この文章は、当然のことでありますけれども、農林省事務当局の手によるものであろう、私はこう思う。あなたの、羽田農林大臣としてのカラーというものが何となく感じられない。あなたの信念がぽっと出てこない。私の肌にさわってこないのですね。  しかし、大臣就任に当たっては重く大きい決意をお持ちになったはずだと思う。幾つかお持ちになったでございましょう。先ほど申し上げたように、そのお持ちになった抱負というものをぜひ実現するように期待をいたしますが、そうはいっても、なかなか全部あれもこれも実現をする、やりたいという願いが具体化するというわけにはいきますまい。しかし、その中でも、大臣就任に当たって、これはこの私の任期中にやりたいなというお考え、抱負は、一つあるいは二つはきっとおありだろうと思う。その辺について私は率直なところをお聞きしたいわけなんですよ。いかがですか。
  71. 羽田孜

    羽田国務大臣 今、私の所信表明は事務当局が書いたと言われますけれども、実は私、政務次官をやって以来今日まで、皆様と一緒にこの委員会で勉強しましたり、あるいは党の方でも責任者として務めてきております。これはまさに政権与党の一員といたしまして政府とともにいろいろな問題について検討してきたことでありまして、この中で私が申し上げました食糧自給力維持強化を進めなければいけない、あるいは我が国農業体質強化を図るための農山漁村活性化を進める、こういったことはまさに私どもやらなければならないとみずからが考えておりますし、また、具体的に申し上げますと、技術経営能力、こういったものにすぐれた中核的な担い手農業後継者の育成確保、これを特に考えております。  こういった点につきましても、まさに私自身が思いますのは、やはり農業という産業の中で生きる本当の産業人というものを育成しなければいかぬなというのが私の感じです。そして特に、これからの農業というのはバイオテクノロジーなどの先端技術が入ってきます。あるいはニューメディアみたいなものも活用されなければいけない。やはりこういうものに対応できる農業者育成する必要があろう。そして、そういった人たち農業に従事するときに本格的な農業というものがまた新たに始まっていくのではないかな、これは私みずからが率直に感じておることであり、また、そういうものを進めるために今申し上げたような基本的なことをきちんと進めていく必要があろうかと考えております。
  72. 串原義直

    串原委員 ただいま大臣は、食糧自給力向上等々の問題とともに、農業後継者の問題について力点を置きながら答弁されたのですが、実は私は大変ここに期待しているのですよ。農業後継者対策に思い切って取り組んでもらいたい、これは各方面の強い要請と声です。  しかし現実は、残念ながら、中学、高校、大学等々の卒業直後の若い後継者は、今、年間何人くらい誕生するのでしょうかというので農林当局へ聞いたところが、およそ五千人だというお答えがあった。私どもは、常に議論してまいります中で、日本農業の場合、中核農家をぜひとも将来ともに百万戸は確保したい、こういうふうに議論を展開してきているわけでありますが、そうだといたしますならば、三十年で一世代と計算をいたしますと、若い農業後継者というのはどうしても三万五、六千人、三万数千人は要ることになります。三万五、六千人ずつ年間誕生してこないと中核農家百万戸というのは確保していけない、こういうふうになります。そういたしますと、年間五千人の学卒農業後継者というものは、期待をする農業後継者に対しておよそ七分の一というような格好になってしまっているわけですね。これではまことに将来が心配をされる。したがってただいま大臣はそういう答弁になったというふうに思いますし、そのことに期待をするわけであります。  そこで、具体的にただいま農業後継者育成に対してどんなことをやろうとお考えになっていらっしゃるか、これが一つ。  私は、時間の関係もありますから私の方からあえて提案といいますか申し上げて、大臣の考え方をお聞かせ願いたいわけでありますが、農業後継者対策に対しては、やることは幾つかあろうと思う。あろうと思うけれども、特に具体的にこの機会に聞きたいのは、農業後継者に対する改良資金制度がありますね。これはたしか無利子の資金が上限貸付金額四百五十万円程度だったろうと思う。しかし、新しい農業後継者として農業をやっていこうという若い諸君に、君たちの将来をつくっていくために無利子農業改良資金制度は四百五十万円ありますよということで、それでは農業をやりましょうということになるかどうかということになると、まことに金額が少額過ぎるというふうに思う。  これは大臣御承知のように、エノキダケを新しく始めようとしても、長野県の場合二千万、三千万と要るわけですよ。それから畜産を始めようと考えても、少なくとも一千万は要ります。これは大臣がよく御承知のところであります。したがって、農業後継者対策には幾つかの制度、やることはあるでしょうけれども、特に農業改良資金農業後継者育成資金ですね、少なくとも羽田大臣のときに上限一千万——私は二千万と申し上げたいのでありますが、一千万くらいなものを確保してやるということに変えることはできませんか。いかがでしょう。
  73. 羽田孜

    羽田国務大臣 先ほど来御指摘がございましたように、やはり後継者の育成というものは、私どもこれから本当に農業というものを進めていくためにどうしても必要なことだと思っております。そのためには、何といってもやはり農業というものを魅力のある産業育成していくということが重要であり、また、住環境というもの等についても整備をしていかなければならないということで今日まで努力をいたしておるところであります。いずれにしましても、基盤整備の問題ですとか、あるいは今申し上げた環境整備の問題、こういったものの施策というものはこれからも続けていかなければいけないと思っております。  なお、これにあわせまして、高い経営能力を持つすぐれた農業後継者を育成する観点から、いわゆる改良普及員によりますところの農業後継者への農業技術等の指導、これは、ともかく先ほども申し上げましたように新しい技術が進みましたり、またバイオ等についてもこれがどんどん進んでくるということであります。そういったものに対応しなければいけないということで、こういった皆さん方の教育という問題についても徹底していかなければいけないのじゃないかというふうに考えております。  そして、今お話の最後に御提案があったとおり、確かに若い人たちが新たな意欲に燃えてこれから農業を進めていこうというときに、やはり資金が大きいこと、これはもうおっしゃるとおりで、これはできるだけ大きなものがいいというふうに思っております。ただ、財政事情も非常に厳しいというような中で、五十八年にちょうど百万円上げて四百五十万円にようやく実はしたということであります。しかし、私どもこれでいいとも思いませんので、こういったものについて改善ができるようにはこれからも懸命にひとつ努力をささげてみたいと思っております。  また、それと同時に、他の制度資金制度融資、こういったものもやはり上手にうまく活用していく必要があるのじゃないかなというふうに考えております。こういった点について、また改良普及員の皆さん方なんかもそういった面での御指導をしてくださるものであるというふうに信じております。
  74. 串原義直

    串原委員 大臣、ひとつ積極的に取り組んでください。  そこで、今お話がありましたように、農業後継者に対して他の金融制度もあります。総合的に利用するということで期待にこたえるということでなければなりませんが、先ほど私が申し上げましたように、一番期待を寄せられているのは改良資金の無利子四百五十万円なんで、これは財政事情もあろうけれども、先ほど申し上げましたようにまことにお寒い状態の農業後継者一年五千人、現実がこういうことでありますから、この皆さんの期待にこたえてまいりますためにも、財政事情は厳しいでしょうけれども、少なくとも限度を一千万近くまで引き上げる努力をぜひしてもらいたい。もう一度これの御答弁を願えませんか。
  75. 羽田孜

    羽田国務大臣 もうお気持ちは私も全く同感でありまして、そのための努力はもちろんささげていきたいと思います。  ただ、一遍に一千万——百万円ふやして四百五十万円にするまでも大変苦労があったものでございますので、私どもやはり現実的に物事を進めていかなければならぬということで、気持ちはよくわかりますし、やはりこれからの農業後継者の人たちが本当に農業産業と心得ながら物事をやっていくために確かに投資というものは必要でしょう、そして、単なる補助じゃなくて、やはり融資でみずからがやっていこうということでありますので、私どももその点について拳々服膺してまいりたい、かように考えております。
  76. 串原義直

    串原委員 次の問題に移りますが、農産物市場開放についての大臣の方針を伺いたいわけであります。  市場開放問題につきましては羽田大臣はとても柔軟な姿勢をお持ちである、こういうふうにあちらこちらで言われているわけでございますが、本当に基本的な考え方はどうなんでしょうか。  実は、一月二十一日の新聞報道によりますと、農林大臣が地方農政局長会議の冒頭のあいさつの中で、「日本でほとんど生産してないものや競合しないものについては身ぎれいにして、この際、本当に守るべきものを見極め、勇気をもって対処していく必要がある」、あるいは「国際的に自由貿易が基調になっている今日、何でも守ろうというのでは国際的に受け入れられない」、こういう意味のお話をなさったというふうに報道されているわけでありますが、私どもの理解では、とてもこれ以上市場開放に応じられない日本農業の状態ではないのかという認識に実は立っているわけです。  したがいまして、できるものはするというお言葉、身ぎれいにして対処しようという御意見、この真意というのは一体どの辺にありますのか。関係者としてはまことに関心が高いわけですよ。お答え願います。
  77. 羽田孜

    羽田国務大臣 このことは、私は、大臣に就任といいますかその以前からそれに関連した発言を実はいたしております。これは農業者の皆さん方の集まり、大会なんかでも申し上げているわけでありますけれども、別に現在のあれがどうこうということじゃなくて、これはそのころのことを頭に置きながらあれしておったのですけれども、例えば、この問題についてこのように枠を広げましょう、しかし実際に消化されないものもあるわけであります。そういうものをあれしますと、一体何だ、こんなものもまだ日本の国は残しておったのか、あるいは当事者の人たちも、まだこんなものもあったのかというようなことも実は現実にあったわけであります。そういうものがありますと、何だ日本は、出してくるものはこんなものきりじゃないかということで、今まで実は徹底して追及を受けてきてしまったということがあります、  ということになりますと、守るべきもの、どうしても日本の国としてこれは守らなければならぬというもの、そういったものにまでとんでもない余波が入ってきてしまうよということで、私としては一般論として実はそういうことを申し上げたということで、むしろ私自身は、向こうのいろんな国々にとっては、あれが全部そういったものを邪魔しているんだなんて指摘されているぐらいでございまして、ともかく日本の食糧というものはやはり国民に対して安定して供給されなければならないということが基本であるし、またもう一点は、食糧生産国土保全ということにも大変な役に立っておるわけでございます。そういった意味で私どもは、守らなければならないもの、これはきちんと守っていくんだという割合と強い姿勢であるということでございます。  いわゆる、この品目はどうだとかこれはどうだという個別的なことを頭に置きながら申し上げたのではなくて、一般論の中で申し上げたというふうに御理解をいただければ幸いであります。
  78. 串原義直

    串原委員 今まで私がこの委員会で質疑を交わしてきた歴代の農林大臣、この方々は、市場開放は安易に考えたくない、少なくとも、言われておりますところの十三品目についてはこれ以上拡大、自由化はしない、こういう立場で御答弁をされてまいりました。  したがって、先ほど私が伺いました農政局長会議における大臣の表現というものは、一般論として申し上げたんだという御答弁がございましたが、そうであるといたしますならば、従来この委員会で歴代の大臣が述べてまいられました、言われておりますところの十三品目についての枠拡大、自由化には安易に取り組まないと答弁されてきたその路線というものは同じように踏襲をいたします、こう受け取ってよろしゅうございますか。
  79. 羽田孜

    羽田国務大臣 日本の国は基本的には自由貿易の国であります。しかし、農産物というものについては、先ほど来申し上げ、またもう既に今までこの委員会でも議論されましたとおり、各国ともやはりこれとこれは守るんだというものを実は持っております。そういう意味で、私として別に今までの進め方、これについて全然違ったあれで臨むものじゃないということであります。  ただ、背景というのはいろんなふうに刻々と変わってきておることば御案内のとおりであります。そういう中にあっても、特にこの十二品目の問題は我が国ではガットで争うことさえ拒まなかったというぐらい強い姿勢で実は臨んでおったわけでございまして、私たちは基本的にこの問題についてはこうこうこうであるということを十分相手に納得していただくようにこれからも話し合いを続けていきたいということであります。ですから、別に基本的な問題について変わってはおりません。
  80. 串原義直

    串原委員 御答弁にありましたけれども、この十二品目については大事なところまで来ているんだ、だからガットの場で争っても守るんだという路線で今日まで来た、この路線は変えるつもりはないという立場で御答弁をいただきましたから——これは大変御苦労なさると思う、率直に言って。いろんな機会でより頑張っていただきますように強く強く要請をしておきます。  そこで次に、畜産の問題について伺います。  私がここで申し上げるまでもなく、畜産情勢はまことに厳しい。時間がありますれば何点がお聞きしたいのでありますが、時間がありませんから酪農問題をまず伺うわけでございますけれども、中央酪農会議の諮問機関でありますところの生乳需給委員会が六十一年度生乳需給計画の策定に関する答申をされたようであります。  それによりますと、六十一年度の生乳需要は最大でおよそ七百十万トンしか見込めない。つまり前年比で二・三ないし三・四%の生乳減産計画を進めなければならぬ、こう言われておるわけであります。これは農林省もその立場で理解をされているのか。そうだといたしますならば、農林省におきまして計画された酪農振興計画、六十五年度までを想定して行われておりますところの振興計画の数字と大分離れてくるということになるわけですね。これは私は大変な事態だというふうに思うのであります。農林大臣、この事態に対してどう受けとめていらっしゃいますか。
  81. 大坪敏男

    ○大坪(敏)政府委員 ただいま先生御指摘のように、中央酪農会議におきまして先般六十一年度の生乳需給計画なるものを発表したわけでございまして、そこに挙げられております生産の見込みないし飲用牛乳の伸び等につきましては先生の御指摘のとおりでございまして、生乳の生産につきましては、対前年比で、中央値でもちまして申し上げれば三・一%の減、つまり三・一%減らす必要があるというふうに考えられておるわけでございます。  私どもの方の需給見通しにつきましては、現在検討中でございますのでまだここで申し上げる段階ではございませんが、私どもの感じは、率直に申しますと、これよりもなお厳しい面がある一のじゃなかろうかというふうに考えているところでございます。  と申しますのは、まず問題は本年度の需給関係でございまして、先生御案内のように、本年度の特徴といたしましては、飲用牛乳の消費が夏場におきましても、通常でございますと前年を上回るその夏場におきましても消費が下回った。この飲用牛乳の消費は年度を通しましても前年度を下回りそうだというふうな見通しに立っているわけでございます。一方、生産の方が順調でございまして、したがいまして、結局残りました乳は加工用に回っていくというために、特にバターの在庫が累増していく、そういう状況にあるわけでございまして、そういった面で、私ども対応策といたしましては消費拡大等の面につきましては努力してまいりたいと思いますが、現在の需給関係等を考えれば、厳しい問題ではございますが、ある程度の減産ということは避けて通れないのではないか、かように私どもも考えている次第でございます。
  82. 串原義直

    串原委員 今、先ほどの牛酪会議の諮問機関である委員会が答申をした数字、見通しよりもなお厳しくなるであろうと農林省考えている、これは大変なことだというふうに思うのですけれども、こうなった要因はどんなところにあるとお考えなんですか。
  83. 大坪敏男

    ○大坪(敏)政府委員 何と申しましても、生産が順調な反面におきまして飲用牛乳消費が前年度を下回る、この事態は十一年ぶりでございます。そういうことから、結果的に残余の生乳は加工用に回るというような状態になっているわけでございまして、この事態はここ数年なかった大変大きな問題を抱えた状況にあるというふうに考えているわけでございます。
  84. 串原義直

    串原委員 各国々の乳の消費動向等々と比較をいたしましても、もっともっと日本は乳の消費が伸びなければならぬ、伸びることが望ましい、こう私は考えているわけでございます。今御答弁をいただいた状態は好ましい事態ではない、こう思う。消費拡大策について積極的に取り組まなければならぬ。どんなことをおやりですか。
  85. 大坪敏男

    ○大坪(敏)政府委員 私ども、今日の酪農、乳業の直面しております事態につきましては、縮小均衡の道をたどっていくのか、それとも拡大の道をたどっていくのか、その岐路に立っているのじゃないかというふうに考えているわけでございます。  そこで、私ども、生産者団体、乳業者団体、さらに販売業者の団体等とも相談いたしまして、この際、立場は立場といたしまして、お互いに同一の土俵に上って消費拡大のためにどんな知恵が出せるかひとつ検討してみようじゃないかということを申しまして、昨年の十二月からこういった関係の方々の御参加を得まして消費拡大のための懇談会を開催しております。そこにおきましては、従来の政策とか、そういった既存の枠組みにとらわれることなく、現実に即して、最も効果的な方策とは何だろうかという点につきまして今検討を進めているところでございます。  したがいまして、私どもといたしましては、この懇談会におきまして出ました議論あるいは結論等々を踏まえまして、政府だけではございませんで、あくまでも生産者団体、乳業者団体、販売業者、いわば官民一体の形として消費拡大に積極的に取り組んでいきたい、かように考えているわけでございます。
  86. 串原義直

    串原委員 今の懇談会を通じて積極的な取り組みを期待をしたいわけですけれども、今言われたところの官民一体となったこの懇談会、現実的で効果的な方法をと答弁なさいましたが、ちょっと抽象的な御答弁でございます。もう一足突っ込んで、こうやることが一番いいと今のところ考えておりますと、こういうお考えがおありになるだろうと思う。重大な時期でありますだけに、大事なところでありますから、御答弁を願いとう存じます。
  87. 大坪敏男

    ○大坪(敏)政府委員 まだ具体的にこの場におきまして御説明する段階に至っておりませんが、少なくとも牛乳に関しまして、かなり消費水準も高まっておるとは思うわけでございますが、牛乳自体が持つカルシウムその他の栄養成分につきましても的確な認識を消費者に抱いていただくとか、特に最近は競合する飲料もふえているわけでございますので、その中で牛乳についてどのような商品特性を生かしながら販売促進をしていくかとか、さらにはまた、販売を促進するにつきましては、やはりこれは生産者、さらに乳業会社、さらに販売業者、それぞれが知恵を出してやっていく必要があるわけでございますので、そういった関係者が軌を一にして販売拡張に取り組むような環境条件をどのようにして整備していくか等々につきまして、現在検討を進めておるという状況にございます。
  88. 串原義直

    串原委員 ここに一つの資料がありますけれども、六十年度の乳製品の総輸入量は生乳換算で二百六十万トン程度、こう言われております。そうすると国内生産のおよそ三分の一近く、これはおおよそですよ、三分の一近く乳製品で輸入が、生乳換算でされている。これはチーズその他乳製品ですね。  日本は世界一の工業国と言われております。したがいまして、外国に負けないだけの乳製品をつくり得る技術は十二分にあるはずだと私は思っています。したがって、これだけ大変な、国内生産の三分の一に相当する乳製品の輸入をするとするならば、国内で乳製品をつくっていく、そして消費を伸ばしていく、この対策を進めるべきではないかと思うのであります。いかがです。
  89. 大坪敏男

    ○大坪(敏)政府委員 確かに先生御指摘のように、六十年におきます乳製品の輸入量、これを生乳換算いたしますと約二百五十万トン、一方、国内の生乳生産が七百五十万トン前後でございますので、国内消費されます数量のおおむね四分の一が輸入されておると言ってもいいかと思うわけでございます。  ただ、これにつきまして、やや時間をいただきましてちょっと詳しく御説明させていただきたいと思うわけでございます。  私どもの現在乳製品の輸入に関する基本的な考え方でございますが、まず制度的な問題といたしましては、御案内のように、バターとか脱脂粉乳等々の指定乳製品等につきましては畜産振興事業団が一元輸入をするというふうな仕組みをとっておりますし、さらにそれ以外の主要な品目、例えばプロセスチーズ等につきましては輸入制限品目としておるということになっておるわけでございます。また、自由化されておりますナチュラルチーズにつきましても関税割り当て制度を採用いたしまして、国産のナチュラルチーズと抱き合わせ使用する場合には関税を免除するというふうな仕組みも取り入れまして、国産チーズの振興にも努めておるわけでございます。  そこで、現在六十年、輸入されております生乳換算二百五十万トンの輸入の中身はどんなものであろうかという点につきまして若干御説明させていただきたいと思うわけでございます。  まず、飼料用の脱脂粉乳、これが輸入乳製品生乳換算量の約二四%に相当いたしております。この飼料用脱脂粉乳につきましては、先生御案内のように、畜産農家に対しましてその子畜用の飼料として供給されておるわけでございまして、やや最近増加しておりますのは、これは豚の飼養頭数の増に伴うものでございます。全体の二四%はこのように畜産農家の飼料用として輸入されている脱脂粉乳があるということをまず御理解賜りたいと思うわけでございます。  また、量的にはわずかでございますが、三%程度でございますが、学校給食用の脱脂粉乳が輸入されておるわけでございます。これは給食コスト節減という目的で輸入をされておる、そういう実情にあるわけでございます。また、その他の脱脂粉乳が三%程度ございますが、これは加工貿易用として輸入されておるものでございまして、国内には流通しておりません。  また、バター、プロセスチーズにつきましては、先ほど申しましたように、事業団による一元輸入ないしは輸入割り当て制をとっている関係上、一般用としては輸入された実績は最近ございません。ただ、沖縄につきましては、復帰前からの経緯によりまして若干の割り当てを特別に行っておるということでございまして、これが生乳換算でいいますと一%程度のウエートを占めておるということでございます。  そこで、一番大きい問題は、生乳換算で五〇%を占めますナチュラルチーズの問題でございます。このナチュラルチーズの輸入状況につきましては、最近やや微増してまいっておるわけでございますが、先ほど申しました国産との抱き合わせての関税割り当て内のものにつきましてはやや減少し、輸入したナチュラルチーズがそのまま消費される、これは当然関税を支払うわけでございますが、そういったものがむしろふえてきておる。これは食生活の変化を反映したものと思うわけでございます。その他乳糖、カゼイン等もございますが、これにつきましてはウエートも低うございますし、かつまた、中には国内生産が行われていないものもあるわけでございます。したがいまして、輸入乳製品の問題として最大の問題は、輸入乳製品の生乳換算した中で五割を占める、かつまた最近ふえる傾向にあるナチュラルチーズを今後どのように考えていくかということでなかろうかと思うわけでございます。  そこで、この点につきましては、先生御案内のように、生産者団体の一部におきましては、この際積極的に今後の酪農、乳業の生きる道としてナチュラルチーズの国産化を図るべきであるという御意見がございまして、実は今北海道等を中心として真剣に検討がされているわけでございます。私どももこの考え方は一つの考え方と思っておりまして、重大な関心を持ってこの検討の模様を見守っておる、そういう状況でございます。
  90. 串原義直

    串原委員 今、大事な立場で答弁をいただいたように受けとめました。ぜひ積極的に、答弁をいただいた国内生産という立場で取り組んでいただきますように、検討していただきますように強く要請をし、この問題は改めた機会にまたこの場所で議論さしていただくこともあろうか、こう思っております。  そこで大臣、私、時間が参りましたから、端的にちょっと質問をいたしまして所信を伺いたいのでございますが、飲用乳の表示問題について、今公正取引委員会で汗を流しております。いろいろな形の飲用乳がありますけれども、生乳は一〇〇%、それから生乳が三〇%しか入っていない飲用乳については、そういう立場で三〇%なら三〇%ということで表示をしてもらいたい、こういうことを生産者も消費者も強く要請をしておるわけでありまして、公正取引委員会もそれはいいことだろうと言うのでありますが、業界がなかなか了解をしない。つまり、メーカーが承知をしないという立場でうんざしているようでございます。  私は、生産者、消費者の皆さんが期待をする方向で飲用乳表示がされるならば、消費はより伸びるであろう、業界のためにもなるであろうという立場で物価問題の委員会で質問をいたしましたところが、公正取引委員会もそう思いますという答弁でございました。したがって、乳の消費拡大酪農振興を担当する羽田大臣として、この表示問題はぜひ前向きに取り組んだらどうか、業界のためにもプラスになるであろう、こういうことで指導性を発揮してもらいたい、こう思うのでございますが、大臣いかがですか。
  91. 大坪敏男

    ○大坪(敏)政府委員 極めて技術的な問題にわたりますので、私から御説明さしていただきます。  先生御指摘の飲用乳の表示問題につきましては、昨年の四月に中央酪農会議が、飲用乳の消費状況にかんがみまして、今先生おっしゃいましたように原料生乳一〇〇%使用の表示を義務づける、そういったことを内容とした表示の適正化につきまして全国飲用牛乳公正取引協議会へ申し入れをしたのが発端でございます。同協議会におきましては、以上の問題のほかにLL牛乳の常温流通化等に伴います規約改正の問題も出てまいっておりますので、あわせてこれらの問題の検討を始めた次第でございます。  九月に入りまして、これは昨年でございますが、協議会におきましては規約等の改正の問題点の整理を行いまして、公正取引委員会承認を受ける段取りになったわけでございますが、それに先立ちまして、公正取引委員会では九月、十月の二回にわたりまして、利害関係者でございます生産者、さらには乳業者、さらには消費者団体等の意見を聴取したところでございます。その結果として、一部には意見が一致したものの一部には意見が一致しないという状態であったわけでございますが、当面関係者間の意見が一致した事項につきましては規約、規則の改正の承認が行われまして、ことしの一月から発効しておるという状況にあるわけでございます。  ただ、例えば加工乳等の商品名に牛乳という表示をすることの是非につきましては意見の一致を見ず、引き続き同協議会で検討を続けるというふうになったと聞いているわけでございます。  いずれにいたしましても、飲用乳の表示問題につきましては、私どもといたしましても昨今の需給状況から見まして生乳全体の消費拡大を図ることはぜひとも必要なことと考えるわけでございますので、現在公正取引委員会のもとにおきましていろいろ検討されているという状況でもございますので、私どもとして問題の解決に役立つために何かやることがあるかどうか、この点につきましては、公正取引委員会とも十分連絡ととりながら私どもなりの対応をしていきたい、かように考えております。
  92. 串原義直

    串原委員 時間が参りましたから終わりまするけれども、大臣、ただいま局長から答弁をいただきました飲用乳の表示問題、業界に対してぜひとも指導性を発揮してもらいたい。どうぞお願いします。
  93. 羽田孜

    羽田国務大臣 ただいま畜産局長の方から御答弁ございましたように、現在公正取引委員会の方でこの問題についてどうするかということを検討しております。  確かにおっしゃるとおり、消費というものが非常に多様化しておる中にあって、やはり消費者というものはきちんとしたものを自分たちが使いたい、また食べたい、飲みたい、そういう気持ちがございます。そういうことも私どもよく事情はわかっておりますので、今後の検討の成り行きを見ながら対応していきたいというふうに考えております。
  94. 串原義直

    串原委員 終わります。
  95. 大石千八

    大石委員長 辻一彦君。
  96. 辻一彦

    ○辻(一)委員 きょうは羽田農相に、所信表明に対して若干お伺いをしたいと思います。  私も、昨年九月に、日米議員交流というので羽田農相と一緒にアメリカで十日間いろんな論議をいたしました。そういう中で、非常に農政の専門家であると思っておりますし、そういう点で非常に期待をしておりますので、頑張っていただきたいと思います。  そこで、私は新農相の羽田農政の哲学を少し聞かしていただきたいと思うのです。  まず、農業新聞等を見ますと、タブーへの挑戦ということがずっと報道されておりますので、非常に難しい問題に挑戦するということは大変勇気のあることであるし、大変大事なことであると思いますが、一体新農相は、今まで言われておったタブーとは何を考えているのか、それについての考え方等、まずお伺いいたしたいと思います。
  97. 羽田孜

    羽田国務大臣 この問題につきましては、社会経済情勢、これの大きな変化がございます。こういった情勢時代の要請というものにこたえていくために、農政におきましても一つの固定観念というものだけではなかなかいかない、先ほど来皆様方からお話があります中にも、やはり一つの転換期であるというようなお話もございます。こういった中で幅広い視野に立ってひとつ柔軟に対応をしていこうということでございまして、今この問題がどうだということについて特定なものを、何か概念といいますか、そういったものを持ちながら申し上げたことではないということであります。
  98. 辻一彦

    ○辻(一)委員 ちょっと気が弱くなった感じがするのですが、新しい抱負としてタブーに挑戦ということはなかなか大変だと思うのです。やはり農相として、こういう問題には今まではなかなか手が触れられなかったが、この重大な転換期に当たって勇気を持って切り込むのだとか、あるいは取り上げていくんだとか、こういうものが胸中にあると私は思うのですが、それをせっかくだからちょっと聞かしていただきたいと思います。
  99. 羽田孜

    羽田国務大臣 これは本当に率直に申し上げて、特別にあれしているわけではありません。ただ、今日の農政に対していろんな批判がございます。さっき、農業基本法ですか、これについてももう一つの役割といいますか、あれは過ぎたんじゃないかというような話もございました。こういった問題について、私たちは一つの役割を果たしているということでありますけれども、そのように私は先ほど申し上げたわけですけれども、ともかくいろんな批判があります。  こういったものに対してやはり勇気を持ってお互いに議論をして、そして本当にその問題が今の時代にも適応できるのかどうか、こういったものについて、このことについて余り議論するのはやめておいた方がいいよということではなくて、やはりきちんと議論をする。議論をする中で、必要なものについては一般の方々にも理解をされるようになるんじゃないかという意味で、何かその垣根をつくらずにひとつ話し合っていこうじゃないかというつもりでございます。
  100. 辻一彦

    ○辻(一)委員 それは結構ですが、きちんと論議をするには、一体何をきちんと論議をする考えなのか、これは今度は一回論議をしてみたいというものが農相にあるんじゃないかと私は思うのですが、それをひとつ、差し支えはないと思いますが、なお聞きたいと思います。
  101. 羽田孜

    羽田国務大臣 先ほどかも申し上げておりますように、この問題ということではありませんけれども、例えば、もうはっきり申し上げまして食管の問題なんかについても今いろいろな議論があります。しかし、この問題についていろんな批判がありますけれども、それについてもやはりきちんと議論をする。これについて余り議論をするのはやめようということでは相手の方々にも理解していただけないということがあります。そういう意味で、そういった問題についてもやはり我々はきちんと受けながら議論をしていきたいというふうに考えております。
  102. 辻一彦

    ○辻(一)委員 羽田農政の哲学を聞きたいと思うのですが、なかなか片りんを出されないんで残念ですが、何でもタブー視をせずにひとつ大いに難しい問題にも取り組んで論議を十分やっていく、こういう構えのようでありまして、これは大事なことでありますから、そういう基本線を据えながらひとつ頑張ってほしいと思います。  もう一つ、地方農政局長会議における報道を見ますと、農相は身ぎれい論というか、これを展開されておるのですね。身ぎれいにというと、どれかをきれいにしなければならぬとか、いろんな考えがあるんじゃないかと私は思うのですが、身ぎれいにするという真意はまずどういうところからあるのか、これをちょっと聞かしていただきたい。
  103. 羽田孜

    羽田国務大臣 この問題につきましては、先ほど串原委員にも申し上げましたように、これは確かに記者会見でも申し上げましたし、それから農業者の集まりで自由化、枠拡大の反対の大会があったこともございます、そのときにも実は私、党を代表してお話し申し上げたことでありますけれども、何でも全部絶対反対ですよということだけではなかなか先方を理解させることができないということ。それから、今まで自由化してきた、枠の拡大をしたりしたものについて、あるいは関税引き下げしたものについても案外に輸入というものはなかったものもあります。こういうものを今改めて出しますよということであっては、なかなかまた日本はあれじゃないかということが言われてしまう。  守るべきものは一体何なんだということをきちんとあれしてやった方が先方に対して本当に力強いパンチを与えることができるのじゃないかという意味で、一つの一般論として申し上げたことである。これは実は従来から申し上げてきた問題であります。
  104. 辻一彦

    ○辻(一)委員 ガードがなかなかかたいのですが、その守らなければならないもの——そうすると、身ぎれいにするにはこれは少しきれいにしなければいかぬ、しかしこれは守らなければならぬ、それがやはり胸中にあると思うのですが、それはどう考えますか。
  105. 羽田孜

    羽田国務大臣 もう法律によってきちんと守られているものが今既にあります。これは米でもあり、あるいは畜産物でもあり、また酪農製品でもあるというふうに思っております。そのほか果樹なんかもその中に幾つかございますでしょう。そういった個々の問題をどうこうということじゃなくて、また、これは余り多くないから、このやつはいいだろうということになりますと、先ほどお話があった一村一品運動なんというものも、これもついえてしまうということになります。  ですから、その地域経済にどんな影響を及ぼしているのかということ、あるいは日本の国土というものにきちんと合った産品であるとか、大体今残っているものはやはり守るべきものだなというふうに私は思っております。
  106. 辻一彦

    ○辻(一)委員 対外的な交渉というのは非常に難しい問題を含んでおりますから、四月を目前にしてなかなかそれは言いにくいといいますか、難しい問題がありますから、私もそれ以上はおきます。  ただ、去年の農林大臣の対外交渉等の態度が、昨年は「慎重に」という言葉を使っておりましたね。ことしは「適切に」という表現になっておりますが、継続されておるとは思いますが、「慎重」と「適切」との差はありますか、別にないですか。
  107. 羽田孜

    羽田国務大臣 「慎重」と「適切」と別に言葉を私自身も使い分けたつもりはございません。ただ、「適切」ということはやはり相手にきちんと理解させるもの、その確信を持ってやるというくらいのつもりであります。
  108. 辻一彦

    ○辻(一)委員 それでは私はちょっと論点を変えて、日本で守らなければならない第一は、言うまでもなく米であると思いますが、これはもう異論のないところであると思います。そこで、所信の中にも、国内生産が可能な農産物は極力国内で賄う方針、これは当然であろうと思うのですね。  そこで、米に対して大臣はどういう考えを持っていらっしゃるか。米に対する哲学をお持ちなら、まずこの辺の考え方をちょっとここで聞きたいのですが。
  109. 羽田孜

    羽田国務大臣 米というものは日本人の食生活の中におきましてたしか二四、五%くらいのウエートを占めているということ、それから日本の農産物生産額の中でもたしか三〇%前後くらいを占めておるということ、そういう意味で、食糧という面でも非常に大きなウエートを占めると同時に、やはり農業者にとっても、複合経営したりいろいろな経営の仕方がありますけれども、やはりその基本になっておるということで、私は非常に基本的なものであるというふうに考えております。  もう一つは、私の郷里にも田毎の月なんてよく言われる、ちょうど戸倉、上山田というところの上にずっと田んぼがございます。この田んぼは、それこそみののかさを置いたら、一つ勘定したところがなくなってしまったという、実は大変小さな田んぼであります。そういったものは効率からいったら余りよくない。しかし、それらが一つのダムの役割を果たしておるということで、国土保全上からも非常に大きな役割を果たしておると思います。  それともう一つ、米というのはともかく沖縄から北海道までちゃんととれるように技術開発されてきたということ、これも非常に大きなものじゃないかなというふうに思います。  いずれにいたしましても、国の保全ということ、あるいは農業経営の中にあっても中心であるということ、国民食生活からいってもこれは主食であるということ、こういったことで、米というものはやはり非常に大切なものである、私はそのような認識をいたしております。
  110. 辻一彦

    ○辻(一)委員 私も、随分前でありますが、戦中、戦後にわたって三年ほど徹底して農業をやって、当時二町五反くらいの田んぼを自分でやったことがありますので、そういう意味で米は大変大事である、こういう認識を持っております。  そこで、今の大臣の考え方からいけばこれは当然でありますが、国会でも決議しておりますが、米はいかなることがあっても輸入はしない、国内で完全に自給をする、この方針はもう国会で決議しておりますので間違いないと思いますが、いかがですか。
  111. 羽田孜

    羽田国務大臣 そのように心得ております。
  112. 辻一彦

    ○辻(一)委員 そこで、これも仮定のようなことになりますが、日本の米はコストからいえばなかなか国際価格では比較するのが難しいわけですから、輸出というようなことは当然困難でありますが、米の輸出は、可能性としてはどうお思いになりますか、
  113. 羽田孜

    羽田国務大臣 米の輸出につきましては、今日まで開発途上国の食糧援助、あるいは国際価格等によりまして余剰米の処理——余剰米の処理なんて言いますと先方にしかられてしまいますけれども、実際に私どもは国際価格で売り渡したものがございます。そういう意味で、全然ないということは言えないのじゃないかというふうに私は思います。
  114. 辻一彦

    ○辻(一)委員 一般的な条件としての輸出はどうお考えになりますか。
  115. 羽田孜

    羽田国務大臣 米というものについて、今日の生産状況といいますか、特別な超多収穫品米というようなものができ上がって、また、よそから望まれるようなときがあればこれは全然別で、これはまさに仮定の議論であります。  ですから、私どもが平常考える中では米を輸出するために生産するということは考えないということであります。
  116. 辻一彦

    ○辻(一)委員 そうすれば、当然なことでありますが、米は輸入もしない、国内自給をする、また輸出もしない。水際に一線を引いて、国会決議を背景にして輸出もしないし輸入もしない、ここで米を守っていくという考えであるかどうか、その点いかがでしょう。
  117. 羽田孜

    羽田国務大臣 おっしゃるとおりであります。
  118. 辻一彦

    ○辻(一)委員 私も基本的にそのとおりであると思いますが、アメリカの態度を見ておりますと、この間九月にUSTR、通商代表部へ一緒に参りましたので、論議は大臣自身がやっておりましたからよく御存じのとおりでありますが、通商代表部でもっと穀物や農産物をふやしてほしいという要請が我々にあったときに、これは即座に論議を随分やりましたが、その中の一つは、世界各国、主要国がほとんど食糧の自給率を向上さしている。こういう中で我が国だけが、穀物自給率でいえば八〇%から三二%というように下がっている。これ以上は国家の安全保障上、下げるわけにはいかない、こういう論議をした記憶がありますですね。  そのときに通商代表部の当時の責任者は、狭い国土で日本は農業をやっておるのだから米はやむを得ぬでしょうね、ということは、市場開放を求めるということは難しいという感触の発言をしておったのですが、アメリカとしてのそういう見方を額面どおりに我々は受け取っておいていいのかどうか、アメリカが日本の米をどう見ているか、またアメリカ産の米をどう考えているか、これらについてどうお考えになりますか。
  119. 羽田孜

    羽田国務大臣 確かに近年アメリカは、米の生産というものは非常に生産性の高いものをあれしておるということは私ども承知しております。ただ、アメリカの農務省自体も日本に対して米の輸出を求めるということはしないということであります。  たしかあれはブロック農務長官ですか、日本に来られましたときにも、私どもちょうど米の問題で大きなあれをしておるときでございましたが、そのときに、日本に行って米のことは言っちゃいかぬと私は言われておりました、だから言いません、ただ、本当に困ったときがありましたらいつでも申していただければお手伝い申し上げますなんということを言っておりました。しかし、アメリカを出るときにも農務省からこの問題については余り余計なことを言っちゃいけませんよと言われたと言っておりました。ただ、一部の生産する人たちの中には、それは非常に発言の自由な国でございますから、いろいろな発言があると思いますけれども、アメリカ政府として日本に対してそういったことを望もうというあれはないというふうに私は確信しております。
  120. 辻一彦

    ○辻(一)委員 アメリカ政府の公的な態度は言われるとおりであろうと思いますが、ただ、アメリカは火がつくとなかなか抑えがつかないという国柄でありますので、やはりこの米の問題に触れれば日米関係は難しくなる、重大なことになりますよ、こういうことを常々警告をして、よく頭の中に吹き込んでおく必要があるのじゃないか。  これは日本の大使館のアメリカでいろいろ苦労している皆さんからも聞いた中に、やはり遅くならぬように、今のうちに米の日本における重要性をアメリカに嫌というほどわからせておくことが大事である、こういうようなことも聞きましたし、私も帰ってその意見を前佐藤農相にも伝え、また全国農協中央会の山口専務等にも伝えてみたのですが、まあ今は心配はないにしても、加州米を輸出しようという声がカリフォルニア州の方から上がって、そういうことを言っている国会議員もいるということも耳にしましたので、そういう対策というものを今のうちから十分やっておくということが日本の米を守る大事な一つの要件ではないかと思いますが、これに対する大臣の見解はいかがでしょう。
  121. 羽田孜

    羽田国務大臣 今日までその姿勢を私どもとり続けてきたということで、先ほどの、ブロック農務長官から日本に行って米の話はしちゃいかぬぞという言葉にもなったんじゃなかろうかと思っております。  いずれにいたしましても、私どもは、ただ食糧というだけでなくて、先ほど申し上げましたように、米、いわゆるかんがい農業といいますか、この農業というものはいわゆる国土保全的にも非常に大きな役割を果たしておるという、この観点からも、米生産というものを安易に私どもがやめたり、あるいはそれを余りにも多く狭めてしまうということになりますと、結果として国土保全も期せられなくなるということもございます。そういう観点からも私どもは折があるごとにこれからもそのことを訴えていきたいというふうに思っております。
  122. 辻一彦

    ○辻(一)委員 米を守っていくという道は、今度は国内で考えた場合に、ポスト第三期対策をどのようにするかということが非常に大事になってくると思うのです。米の需給の均衡をとるという考え方からすれば、六十万ヘクタールの第三期の内容では非常な難しさがあるというように読み取れますが、需給をにらんで、第三期対策以降、ポスト第三期の減反といいますか、転作というか、それをどのようにおよそ展望されておるか、お伺いしたいと思います。
  123. 羽田孜

    羽田国務大臣 この第三期対策の後をどうするかという御質問でございますけれども、私がちょうど政務次官をやっておりましたそのときに、水田利用再編対策、これを御審議をお願いし、そしてたしか割り当ての数字というものをちょうどつくり上げて退任したと思っております。それ以来、何とか米の需要拡大を図ろうということで、学校給食あるいはそのほかにも米というものを中心にして、先ほども議論いたしました日本型食生活なんということも唱えながら米の需要拡大を図ってきておりますけれども、残念ながら今日まだ米の需要というものが減退しておるというのが現状であります。  そういう意味でポスト三期も水田利用再編対策というものはやはりどうしてもやっていかなければいけないということ、そしてこのために、今後とも水田利用再編対策は、まさにその再編対策という名前が示すごとく、過剰になる米から不足する飼料穀物とかあるいは麦だとか大豆というものにひとつ転換してください、そのほかのものにも転換してくださいということでお願いしてきているわけでございます。  しかし、この九年間ですか、ずっと振り返りまして、ある程度定着したもの、あるいは米より以上の所得を上げるものなんというものも出てきております。それから、それによって地域ぐるみでひとつやろうということで、営農なんかについての再編成というものも行われてきた、私たちは一定の評価をいたしております。ただ、問題は、では本当に相当多くのものがそうかといいますと、まだ実は定着されておらないというものもございます。  そんなことも含めながら、どういう方向に持っていくのか、大体ことしの秋ごろまでにその方針を固めてまいりたい、この九年間の経過というものも振り返りながら秋までには固めていきたいというふうに考えております。
  124. 辻一彦

    ○辻(一)委員 固まるのは秋ごろと思いますが、既に三月の段階でかなりな論議を詰めるというようなことも聞いておるので、そういう点からいえば、一応の数字の見通しやめどもある程度立ちつつあるのではないかと思います。そういう意味で、六十万ヘクタールにおさまるはずはないのですが、一体数字としてどれぐらいのところでおよそおさまりそうに考えていますか。
  125. 羽田孜

    羽田国務大臣 その数字につきましては、まさに秋に固める中ではっきりとしたものを申し上げていけると思っております。今およそこんなものじゃないかということを予測することは、今コメントできません。
  126. 辻一彦

    ○辻(一)委員 では、六十万ヘクタールにおさまるのですか。
  127. 羽田孜

    羽田国務大臣 現在六十万ヘクタールをお願いしながら、残念ながらまだ需要がそれでもなおかつ減退しておるという傾向であるということであります。
  128. 辻一彦

    ○辻(一)委員 では、六十プラス、これが十なのか何万なのか、これからの問題でしょうが、とにかくプラスを乗せなければ第三期以降はなかなか展望はきかないというふうに感じますが、まだその正確な数字を言えといってもそれは無理と思いますが、しかし、六十じゃおさまらないとすれば、かなり上乗せをせざるを得ないというような見通しなのかどうか、そこらはどうでしょうか。
  129. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 六十万ヘクタールというのは第三期の目標面積でございますが、御承知のようにその六十万ヘクタールについては、各年四十五万トンの在庫積み増しを行うということが織り込まれた上で六十万になっておるわけでございまして、この四十五万トンという積み増し、面積にしますと十万ヘクタールぐらいになるんじゃないかということでございますので、ポスト三期を決めます際に、六十二年度以降の需給関係を見通した場合に、もしその在庫造成の数字がさらに積み増ししなくていいということになりますと約十万ヘクタールぐらいのものが上に乗っかってくることになるだろう、これは単純な従来の仕組みから出てきます数字でございます。  ただ、そういうふうに決めたわけではございませんので、これから検討する際に、その辺の在庫造成の問題が、積み増しの問題がどうなるかによりましてかなり面積はふえる可能性もあるんじゃないか、こういうことでございます。
  130. 辻一彦

    ○辻(一)委員 それは在庫の積み増しが一応終わった場合の常識的な数字といいますか見方であると思いますが、いずれにしても、その数字前後を考えざるを得ない問題があるようであります。  現在の六十万ヘクタールでも、今、麦と大豆の転作がかなり定着をしてきた。農家の希望としては、せっかくの麦、大豆の体系が定着しつつあるというか根づきつつあるので、これを何とか崩したくないというか守っていきたい、やっていきたい、こういう気持ちが相当強いように我々は歩いている中で感ずるわけですね。  しかし、片方では財政の運営というものがあるわけでありますから、その六十万ヘクタールの中、で行う麦、大豆等の転作を維持するのも簡単ではない。さらに、それに常識的な数字として十万上乗せするとすると七十万ということになりますが、それらを一体どうするかということは、秋までかからなくてはわからないと言えばそういう言い方もありますが、しかし、秋に向けて急に結論が出るわけではない、既にかなり論議をしておるわけでありますから、農林省としてはそこらをどう考えておるか、一度伺いたいと思います。
  131. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 ポスト三期の問題を検討します場合に幾つかの大変大きな問題がございまして、その一つは、いわゆる目標面積にわたる総体で幾ら転作をしなければならないか、こういうことでございますし、それからその次の大変これも大きな問題は、今まさに先生のお尋ねになりましたその転作の先として一体何をつくるという想定のもとに仕組むかということでございまして、麦や大豆、飼料作物というところが現在特定作物で転作のいわば重点のかかっておるところでございますし、そこについては従来ある程度定着的な実績、傾向も出ておりますけれども、そういう三つのものを主体にしていくとすれば、一体どの程度まで今後そういうものを転作として伸ばしていくか、あるいはそれへの取り組み方、奨励金の仕組み、こういうことも関連しているわけでございまして、転作のいわば内容というのが大変大きな問題になろうか、かように考えております。
  132. 辻一彦

    ○辻(一)委員 せっかく定着しかかった——したわけではないのですね。これを外したらまたもとへ戻っていくという心配もかなりあると思うのです。根づきかかった大豆とか麦とかこういう転作の体系を今後何とか維持をしていってもらいたいという声は非常に強いのですが、まず、今までやっている範囲内では大体そういうものを維持していける可能性があるのか、していく意思があるのか、これはいかがですか。
  133. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 従来の水田利用再編の中で問題なく定着しましたというふうに言えるものは、永年作物、果樹関係でございまして、麦、大豆、飼料作物のようないわゆる単年度の作物については実は大変見通しが難しいわけでございます。確かに、地域農業の中で非常に熱心に取り組んでいただいたおかげで、相当定着するというふうに見込まれるものもございますけれども、反面、毎年度作付するものでございますから、やはり何らかの政策というもので方向づけをしませんと、もとへ戻って米をつくる、こういう可能性は高いということも言えるわけでございます。  その辺が全体の面積、目標面積と絡みまして、どういうものに転作していくことに重点をかけるか、どういうものを内容として頭に描きながら政策を仕組んでいくか、こういう意味で、これから従来の定着化状況を見ながらよく考えていきたい、かように思っております。
  134. 辻一彦

    ○辻(一)委員 要望として、せっかく根づきかかったそういう体系をできる限りひとつ維持をして、発展していくように考えてほしいと思います。  そこで、相当常識的な数字というものが一応将来の数字として出ておりますが、そうなると、新しい転作の種目というものもやはり考えていかなくてはならない。この所信表明もしくは予算等の説明の中に、他用途米の拡大というようなことが出ておるように思いますが、これを一体どうするお考えなのか、伺いたいと思います。
  135. 石川弘

    ○石川政府委員 他用途米につきましては、御承知のように、いわば加工原料として用途がございまして、現在二十七万トン程度が消費されているわけでございます。  この需要につきましては、加工サイドからは、例えば現在主食価格で売っております清酒の世界からも何かそういう安い原料があればいいとか、あるいはモチ米等の世界からもそういうお話があるわけでございますが、こういう話はいずれも今主食価格で売っておりますものを低くとりたいということでございますので、むしろ私どもとすれば、生産者に高い価格で供給していたものを低くするということで何らプラスにならない、もう少し新しい用途で、なおかつ他用途米をお使いになりたいということでないと制度としてなかなか組みにくいわけでございます。もちろん二十七万トンが徐々には拡大すると思いますが、価格がああいう水準では急に拡大するとは思えないわけでございますので、これはやはり地道に他用途米の用途を拡大していく。御承知の、今の一万数百円の水準でございますと、徐々に拡大はすると思いますが、急速に大きく拡大する可能性はないと思っております。
  136. 辻一彦

    ○辻(一)委員 新しい他用途米の用途ということを今御発言があったのですが、何か新しい用途というようなことを考えていますか。
  137. 石川弘

    ○石川政府委員 実は、今までと比べまして非常に画期的にふえるというようなものはなかなか難しゅうございますが、例えば、玄米等をパッフドといいまして爆発させましたもの、ああいうもので少しずつそういう用途を広げたいというようなことが私どものところへ参っておりますが、量が画期的にふえるような意味の加工原料米はまだ私どものところには参っておりません。
  138. 辻一彦

    ○辻(一)委員 これは現在の他用途米とは一応別にして、かつて飼料用の米ということで、えさ米というので随分論議されて、私も五十三年に県内に二十五カ所ほど自分たちの仲間でつくってみたのですが、かなり期待をしてやってみたのですが、非常に稈が長くて、一トンくらいとれそうな段階になりましたら、倒伏する、脱粒が多いということでついに物にならずに、ちょっと運動としては下火になった感じがしますが、新しい意味の飼料とかえさとか、こういう問題について今農林省としては何ら構想というか考え方はないのですか。例えば、大臣の表明あるいはほかの新聞で見た記事だったかと思いますが、新しい米の使い方、そういうことについてもちょっと触れられておったようにも思いますが、そこらの考え方があれば伺ってみたいと思います。
  139. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 飼料用米につきましては、従来から、水田の持つ高い生産力を活用するなり作付規模の拡大に寄与するということで、いろいろな方面から期待をかけられ、我々も検討してまいったわけでございますけれども、今先生からも御指摘がありましたように、何とか超多収穫米をつくりたいということでいろいろな品種の組み合わせ等もやってまいりましたが、残念ながら現段階で的確な品種というものは育成されておりません。  それから、さらに価格関係でいいますと、最近でいいますと恐らく二万数千円じゃないと畜産農家は引き取らぬというようなことで、価格、品質両面でなかなか現段階で本格的にえさ米に取り組むということにつきましてはちゅうちょせざるを得ないという現状があるわけでございます。
  140. 辻一彦

    ○辻(一)委員 ハイテクが非常に発展して、育種の技術、期間も進歩してきたと思うのですが、今まで日本の稲を育種をした力を最大限に重点的にやった場合に、食べられなくても、味が悪くても超多収、そしてコンバインにかかるような稈が短くて粒が脱粒しないというものを開発する可能性は、知恵を絞って力を入れれば不可能ではないと思いますけれども、そこらの見通しというのはどうでしょうか。専門的でなくていいと思うのですが……。
  141. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 現在技術会議事務局で、俗に言う超多収米の開発を進めております。七五三計画ということで、十五年間で五割増収という品種をつくるわけですが、その中に二つの道がございまして、一つは、インド系のような外国の稲、かなり多収性のあるものを一応導入するわけですが、これが日本の気象のもとでつくれるようになるかどうかということでございますし、それからもう一つの道は、いわゆるハイブリッドで一代雑種の品種でもって相当雑種強勢の効果を発揮しましてかなり高いものが出るかどうか、この二つの道でございまして、いずれの場合も多収ということを重点に置きまして、従来のような食味、食べておいしい方は一応犠性にしてやっておるわけでございます。  そのいわば第一号的に出ましたものが西南暖地向けのいわゆるアケノホシというものでございまして、これは品種としてはできたのですが実際にはまだ使われておりません。この場合に、うまくいきますれば七、八百キロぐらいはとれるということのようでございますが、言ってみれば、日本のような非常に気象条件の特殊なところで、しかも外国の稲あるいはハイブリッドの持っているような多収性が相当発揮できるものができるかどうかということは、ただいま申し上げました技術の方の研究の計画の中の最重点としてやっておりますので、これはかなり期待のかけられる部門でございますが、現段階でどのくらいのものがいつごろの時期にできるかということについては、まだこれからの研究陣の努力の成果による、かように考えております。
  142. 辻一彦

    ○辻(一)委員 日本の稲の育種のレベルは非常に高いと思っておりますから、せっかく努力してもらっているなら、全力を挙げて頑張ってほしいと思います。  そこで、臨調の中で食管制度というものを間接の管理の方に移すべきだというような意見がちらほらあるということを聞いておりますが、私は食管の制度の根幹というのは直接管理ということが一番大事である、こう思っております。こんな方向は簡易に出させないようにすべきであると私は思いますが、これについて、さっきもほかの方の質問に対して食管の根幹を守るという農相の御答弁でありましたが、そこらの考え方についてひとつ伺いたいと思います。
  143. 羽田孜

    羽田国務大臣 食管のあり方についていろんな議論があること、私どもも承知しております。ただ、過去の歴史を見ましたときにも、ちょうど食管法の前に間接統制のようなことをやったこともありますし、自由取引みたいなこともありました。そういう中で、間接の食管みたいなものでもなかなか価格の乱高下というものを防ぐことはできなかった、あるいは膨大な資金を要したというような経験もございます。  そういう意味で、私どもは今日の食管制度というのは——あれはちょうど四十八、九年でございましたか、石油ショックで紙なんかが、トイレットペーパーなんかも大変な乱高下をしたことがありました。買い占めなんかがあったことがありましたけれども、しかし米の買い占めは起こらず、米の値段というのは別に上がらなかったということ。それから、この間、今度は逆に不足しました。不足といいますが、ぎりぎりのところまで実は行ったわけでありますけれども、そんなときにもやはり国民が安心しておれたというのもこの食管法というものがあったからではないかな、私は素朴にそう思っております。
  144. 辻一彦

    ○辻(一)委員 これはちょっと前の体験ですが、松村謙三先生が文部大臣を昭和三十年ごろにやっていらっしゃって、私も青年団の全国の会長時代に何回もお目にかかったんです。富山県の出身なので、米騒動の出発点、歴史がありますね。そこで、松村先生は中国と米の問題について非常に識見を持っておられましたが、今電話一本かければいつでも米屋さんが米を運んでくれる。これが非常に安心しておれるのであって、米や主食がちょっとでも足りないというような事態が何らかの場合起きたときに、もう半俵でも、三十キロでも六十キロでも在庫というか余分に持っていなくてはならぬというような不安があったときには大変なことになる、そういう意味で食管というのは将来とも大変大事だというお話をよく聞いたことがあります。三十年という日がたっておりますが、私は、食管の一番大事なところは一つはそういうところにあるのじゃないか。だからこれは、羽田農政、タブー挑戦はしてもらっちゃいかぬと思いますが、そこはどうでしょうか、心配ないと思いますが……。
  145. 羽田孜

    羽田国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、また米というものは非常に重要なものであるということも先ほどからるる申し上げたとおりであります。そういう意味で、私どもといたしましても、これはいろいろな議論があります、ですから議論をしていただきながら、そういう中で何とかひとつ皆様方の御理解を得ていきたい。  ただ、やはり食管というものは、時代の背景というものは確かに異なってきております。そういうことで、この間も流通改善というようなことを処置したりあるいは五十六年に法改正もしたということもありますから、その時代に合った、余りにもあれしたものについては整備を、何と言うんですか、少しずつ改善するということは必要だと思いますけれども、食管そのものの根幹というものはやはり守っていった方がいいのじゃないかなと思います。
  146. 辻一彦

    ○辻(一)委員 予算の問題についてちょっと私触れたいのですが、細かいことは別として、今までごく大まかに見たときに、食管の経費を削って予算の面で一般政策費に、数字としてはかなり合っておったような感じがするのですが、既に消費者米価がある程度上がって逆ざやというものが非常に小さくなってきたという、こうなると今までのような数字を合わすということは非常に難しくなってくるのですが、その中で、天井が決まっている、抑えられているときに、これからの農林予算編成というものもなかなか容易じゃない感じがします。これらを踏まえて、減額されがちな農業予算をどう守っていくかという点で、大臣のお考えはいかがでしょうか。
  147. 羽田孜

    羽田国務大臣 確かに御指摘のとおり、今年度の農政予算というのは減額をされました。これは、例の国債費というようなものなんかも伸びてくるという当然増みたいなものがあった。そういう中で、ほかの政策経費と同じように農林政策予算というものも削らざるを得なかったということでございます。  しかし、私どもとしてはそういう中にあっても重点的に配分をすべきものはする、例えばバイオのようなものについてはふやしていくというようなことをしながら、いろいろな——金のないときには、よく大蔵大臣も言っておりますけれども、知恵を使い、また汗を流しという話をしておりますけれども、大分知恵を使いながら対応してきております。ただ、そういったものも今お話しのとおり非常に難しくなってきているなということについては私もよく承知しておりまして、所要の額については何とかひとつ確保していくように今後とも懸命に努めていきたいと思っております。
  148. 辻一彦

    ○辻(一)委員 良質米奨励金が、去年の暮れに随分と頑張ったんですが、大蔵は二二%切り込んできて、それを七・七%に与野党問わず努力をして抑えたと思うのですが、この暮れからの方向を考えると、これへの切り込みがさらに加わる懸念があるんですが、それがあったときには農相ははね返す用意はありますか、いかがですか。
  149. 羽田孜

    羽田国務大臣 昨年カットせざるを得なかった良質米奨励金につきましては、最近の良質米の供給の状況というものを見ましたときに過剰の状況であるというようなことがございました。そういう意味で、自主流通米の健全な発展需要に見合った良質米の安定供給、こういうものを図ろうということで単価の縮減というものを図ったところであります。  私どもといたしましては、今後の自主流通米の健全な発展というものを見守りながらこれに対して対応していきたいというふうに思っております。
  150. 辻一彦

    ○辻(一)委員 見守りながら対応ではちょっと弱いのですが、それ以上の切り込みは許さないというような決意はありませんか。
  151. 羽田孜

    羽田国務大臣 前段でも申し上げましたように、ただこれは財政上の理由からカットしたものではございませんで、やはり自主流通米が多少過剰になってきて荷がもたれぎみというような関係も出てきております。そういったことで、私どもとしてはここで少しあれした方がよろしいであろうということでカットしたものであるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  152. 辻一彦

    ○辻(一)委員 その問題はもう少し伺いたいのですが、大臣、五十分に座を立たれるということでありますから、私、どうしても前の農水委以来懸案の問題がありますので、それを伺う時間をとりたいので、この問題はここでとどめておきたいと思います。  土地改良、基盤整備というものが非常に大事だという所信の表明をされておる、まあ予算の説明にもありますね。長期的に見たときに、かつては、今もそうですが、畜産の負担がかなり大きい、負債等が多い、こういう中で土地改良、基盤整備等の負担が将来だんだん重くなりはしないか、こういう懸念がかなりあるわけでありますが、ごく大づかみに言って、そういう一つの懸念に対する歯どめをこれからかけてほしいと思いますが、この点ひとつ簡単に伺いたいと思います。——局長が答弁になるならちょっと待ってください。  それならば、そういう問題の中で、昨年の四月に本委員会で論議をしましたが、国営農用地開発事業の償還条件がかなり重い、こういう中で条件緩和の問題等もかなり論議をし、それから昨年十二月には大蔵、農林両省においても別途協議ということで幾つかのケースについてはかなり論議が進んできたわけでありますが、その論議を踏まえてこれからどういう手順でさらに前進をするか、時間がございませんから、ひとつこの点もあわせて伺いたいと思います。
  153. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 先生御指摘いただきましたように、農業基盤整備事業につきましては、最近種々の事情から事業費が増高してまいっております。そのために農民負担も当然増加するわけでございますが、一方、最近の需給事情を反映いたしまして農産物価格は低迷している、かような観点から、私どもは農業基盤整備事業の受益者負担問題は大変深刻に受けとめているわけでございます。それにつきましてはそれぞれ対策を講じておりますが、時間もございませんので……。  ただいま御指摘の国営農用地造成事業の償還条件の緩和問題でございますが、この農業基盤整備事業の受益者負担問題の象徴的な存在になっているわけでございまして、来年、六十二年度からは償還が開始されるわけでございまして、私どもさようなところから条件緩和について財政当局に要求したわけでございます。  しかしながら、償還条件の単純な延長ということは非常に難しゅうございます。と申しますのは、制度の仕組みからいって、国は県から償還してもらう格好になっております。県は受益者に賦課できる。一方、大蔵省財政当局の認識では、相対的に国より県の方が財政的に豊かである、必要があるならば都道府県は条例を改正して償還条件を緩和すればいいではないか、かような主張でございます。  これに対して私どもとしては、確かに制度的に県から償還してもらうことになってはいるにしても、責任の所在がどこにあるかということは別といたしまして、国が事業をやった以上、国としても相応の措置を講ずることが県に対して協力を今後求めていくためにも必要であるということを強く主張いたしまして、財政当局もその点についてはようやく理解してくれまして、何らかの措置を地区の実態に即して考えなければいけないだろう、かようなことになりまして、引き続き協議ということでございますが、申し上げましたように、単純な償還条件の延長ということは非常に難しい情勢でございます。私ども今後さらに鋭意折衝を続けたいと思っております。
  154. 辻一彦

    ○辻(一)委員 局長から経過を踏まえて簡潔に御報告をいただきまして、いろいろ取り組んでもらうわけですが、なかなか難しさがありますが、かなり大蔵、農林当局の間で話が詰まってきた感じがします。  それから、佐藤前農相も、この件は羽田農相にしっかりと伝えたと私に言っておりますが、間違いなしに引き継いでもらっておるのか、そしてそれを前進さす構えを持っていらっしゃるのか、この点をひとつお伺いしたい。
  155. 羽田孜

    羽田国務大臣 御指摘ございましたとおり、前大臣の方からもこれは重要な引き継ぎの一つとして私ども承っておりますし、また県知事さんの方からも御要請がございます。今局長が御答弁申し上げましたことを踏まえながら、私どもも対処していきたいと思っております。
  156. 辻一彦

    ○辻(一)委員 大臣、結構です。どうぞ退席してください。  これは農相に伺いたかったのですが、政務次官、総合的な食糧の自給力を上げるという中で、自給力自給率はどんな違いがあるのですか。私の感じでは、どうも自給力というのは財界が発言し出した。食糧の自給率、穀物の自給率といえば八〇%から三二%にどんどん下がってくる、それじゃ余りにも低くなるので自給力というような言い方をして、それほどでもないということを表現しているような感じもするのですが、農林水産省として、自給力自給率はどういう違いがあるのかちょっとお伺いしたいのです。
  157. 保利耕輔

    保利政府委員 お答えを申し上げます。  自給率と自給力というのは、先生御案内のとおり率と力の違いでございまして、文字どおりでございます。  したがいまして、率の場合はパーセントであらわす、あくまでも数字の問題であろうかと思います。力の方はなかなか数字ではあらわしにくいけれども、どのくらいの力があるものだろうかということだろうと思いまして、あらゆる総合的な力というものを加味して考えるべきものだ、かように存じます。
  158. 辻一彦

    ○辻(一)委員 なかなか名答弁ですが、いみじくも今言われたように、自給力は数字であらわせぬということですね。  国際的な比較で言うときに、自給力といっても、数字であらわせない限りは比較はできないと私は思うのです。だから、例えばフランスの食糧自給率一二〇%、アメリカもほぼそれに近い、ドイツが七五、あるいはイギリスが六五というように、各国は数字であらわしておるのですが、我が国は哲学的解釈で、力ではなかなか表現できないと思うのです。これからそういうものを説明するときには、自給率という数字であらわすものでやってもらうべきではないかと私は思うのですが、いかがですか。
  159. 保利耕輔

    保利政府委員 自給率の中にも、私の承知しておるところでは統計上三つ自給率を出しておると思います。先生御指摘の自給率の低い部分、三二%というのはいわゆる穀物の自給率でございまして飼料を含んでおるものでございますが、主食用の穀物の自給率は約七〇%ちょっと超えたところだと思います。したがいまして、同じ率といいましても、定義によりましては随分違いがあるわけでございまして、この辺は十分にPRをしていく必要があるだろうと思っております。  また、自給力につきましても、これは実は非常に幅の広い表現だと私は考えるわけでございまして、土地でございますとか水資源でありますとか土地の利用形態でありますとか、あるいは農業担い手でありますとか、そういったものを総合的にとらえて出さなければならないので数字が出しにくいということを申し上げたのでございます。  したがいまして、現在言っております食糧自給率というものの考え方からいたしますと、これは数字として非常に出しやすい、しかし自給力というものはどこまで総合的なものを入れるかということで、現在も定義が必ずしも明確ではないので出しにくいのでございます。
  160. 辻一彦

    ○辻(一)委員 禅問答をしてもどうにもならぬですが、数字でわかる、比較してわかるやり方をやってもらいたいと思いますね。言われるように穀物自給率、主食の自給率、いろいろな言い方がありますけれども、外国と比べたときに自給力ではちょっと比較ができない。だから、わかる数字を使ってほしいと思うのです。  それはそれとしまして、最後に林政の問題で若干伺いたいのです。  国産材の需要拡大をするということが大変大事でありますが、それらについてはいろいろと努力をされている御答弁もありました。そこで、アメリカのシアトルの近くにタコマという木材の有名な輸出港がありますが、去年そこへ行ったときに、二万五千人の市民ドーム、四百メーターの競技場があって、そして自由にいろいろな競技ができる、それを完全な木造の建物で囲ってドームをつくって、一番上にはビニールのシートを張っておりましたが、あとは米松等の大きなはりを使って全部木造なんですね。学校であるとか駅であるとか、いろいろな公共施設にアメリカは随分木を使っているという感じが、あの地方ではしたのです。  我が国も今こういう面にかなり力が入ってまいりましたが、もっともっと国産材を本格的に住宅やあるいは公共施設に使えるように、そういう条件をつくっていくということが、西暦二〇〇〇年、国産材が伐採期に入る、それを迎えて日本の山を守るために非常に大事だと思いますが、一応の予算ややり方は伺っておりますが、これからそれにさらにひとつ努力をしてほしい。それに対する決意を伺いたい。
  161. 保利耕輔

    保利政府委員 木材の需要拡大するということは、山を守るという意味からも非常に大切であることは先生御指摘のとおりでございます。  木材需要については、林野庁としても農林水産省としてもその拡大に一生懸命努力をしておるところでございまして、細かい点につきましては、林野庁長官がおりますので御答弁をしていただきます。
  162. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 先生の御指摘がありましたように、需要拡大していくことが、産業としておのずから成る活力をもって林業、林産業発展する道と信じております。  それで、その辺につきましては、木造建築物の建設促進でありますとか新しい木材製材品の普及啓発、それから国産材の供給体制整備等に努めておりますとともに、関係省庁に対しましてもこの需要拡大につきましての御協力方を再々お願いなどしてきたところでございます。  そういうふうなことの結果、今日本造の公営住宅がだんだんふえてまいりまして、六十年度は一千二百戸台になってまいりました。それから、既に御存じとは思いますが、学校建築に内装も含めまして木造を多用することとか、厚生省で福祉保健センター等に使うとか、いろいろ各省庁で木材使用につきましての通達指導を広げていただいております。  そのように相当な補助事業におきます前進があったんではないかと思っておりますが、さらにこの森林林業木材産業活力回復五カ年計画におきましても、これはひとつ大きく踏み出しまして、日本の全国各地にこれぞ木造と言えるような象徴的な、タコマのそのようなものにはまだいろいろ制約があってできませんけれども、公会堂とか音楽堂とか、いろいろな展示施設に木造の象徴的なものをつくっていこうとか、あるいは中央地方を通じまして大々的な需要拡大のキャンペーンをするとか、本質材料を、最近のバイオテクノロジー技術を使いましていろいろ飼料とか肥料に原材料的にうんと使えるような方向も研究するとか、こういうことに大いに力を入れまして需要拡大を図ってまいりたいと思っております。
  163. 辻一彦

    ○辻(一)委員 時間が来ましたので終わりますが、要望だけしておきます。  一つは、間伐材が非常に大事ですが、これは需要開拓とコストダウンですから、今、中国に丸太材、間伐材の市場開拓の調査団を送ろうというような動きがあると聞いておりますから、ひとつ林野庁、しっかりと取り組んでいただきたい。そしてコストダウンは、林道も大事でありますが、もっと安くできる作業道に特に五カ年計画の中で力を入れてほしい。  それから最後に、去年は北海道、今度は福井県の小浜というところで全国豊かな海づくり大会が開かれますが、これは既に準備が進んでおりますが、ぜひひとつ成果が上がるように水産庁の方でも取り組んでいただきたい、そういうことを要望して、終わります。どうもありがとうございました。
  164. 大石千八

    大石委員長 午後三時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後二時五十六分休憩      ————◇—————     午後三時三十五分開議
  165. 大石千八

    大石委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。武田一夫君。
  166. 武田一夫

    武田委員 まず最初に、羽田農林水産大臣の誕生を我々も心から喜んでおりまして、その活躍に大変な期待を持っているわけであります。  恐らく、これまでこうした、内外ともに、与野党問わずに期待を持って迎えられた農林大臣は初めてじゃないかという気がいたしております。今後こういう傾向がどんどん出てくることを期待しております。  私もあちこちの農村を歩きましたが、農政については堪能でございまして、いろいろと外国とのパイプも強い方であるし、そういう点で非常に期待をしているということでございました。そういうことで農家の皆さん方も非常に期待をしているわけであります。私も、羽田大臣とは長い間、委員会を通してあるいはまたいろいろな会議を通して御指導をいただいてきましたが、人間的にもあるいはまた実務的ないろいろな仕事を通しても非常に期待をしておるところでございます。  日本の農業が非常に厳しい、言うなればことしは農政の再建をかけた元年ではないかと言う人もいるほどでございまして、内外ともに厳しいときに誕生されたということを考えますと、大臣の責任も大きいし、また、それだけのことをやらずしていけば、これまた農政全体、日本の農業全体に対する非常な失望にもなりかねないと私は思うわけでございまして、どうかその点ひとつ心にとどめられまして、今後御活躍をお願いしたいと思います。  そこで、最初にお尋ねをいたしたいのでございますが、昨年以来ごとしにかけて、ここ数年の農政の後退ということが言われております。さらにまた農業の地盤沈下ということも言われているわけであります。そういうことを指摘されますときに、そうした後退に歯どめをかけ、地盤沈下にまず歯どめをかけるという、そういうところからのスタート、そして、言うなれば日本の農業に明るさを取り戻していけるんだという、そういう再建に踏み込んでいくという大臣であってほしいと私は思うわけでございまして、まず最初に、この点につきましての大臣の御決意をひとつ伺いたい、こういうふうに思うわけでございます。
  167. 羽田孜

    羽田国務大臣 大変御丁重なお言葉をちょうだいしまして、本当に恐縮いたしております。私の方が、むしろ今日までこの委員会等の審議を通じましていろいろな面で御指導いただいたことにお礼を申し上げ、また、これからもさらにお力添えをいただきたいことをこの機会にお願いしたいと思います。  今お話がございましたように、また各委員からも御指摘がありましたけれども、どうも最近農政が後退しているのじゃないか、あるいは農業の地盤沈下が続いているのじゃないかという御指摘が続いております。ただ、私どもあれを見ましたときに、確かに農業を取り巻く環境というのは決して生易しいものじゃないということは言えると思うのです。というのは、やはり周辺のほかの産業というものは、今日まで割合と順調に、しかも相当な速度で伸びてきたということであります。しかし、これはもうどの分野もそうでありますけれども、農林水産業というのはそんなに急激にはっと変えられるものじゃないという中で、どうも後退があるのじゃないか、あるいは地盤沈下があるのじゃないかというようなことが指摘があります。  しかし、農林水産業というのは、農は国の基といいますけれども、村もこれがなくなってしまったらまさに農業も工業も生活もなくなるということでありますから、これはまさに林も国の基であると思います。また水産も、日本の場合はまさに四囲を海で囲まれておるということで、水産というものもやはり国の基であるというふうに考えております。そういうことで、決してこれはだんだんとばっていっていいものじゃないのであって、やはり発展していかなければならないものであるというふうに思っております。  そして、この重要なものを守るためには、そこに本当に農業をやろうという人たちがやはり生まれてきてもらわなければ、育ってきてもらわなければ困るということで、その意味でも農業の先行きというものを私たちみんなでこれから示していかなければいけないんじゃないかなというふうに思っております。  そしてそのためには、農業というのは、これまた先ほど申し上げたようにぽんとすぐに飛躍的に発展してしまうものじゃなくて、やはり地道な努力というものが必要であろうというふうに思っております。その中のやはり基本というのが基盤整備でもあろう、構造政策基本である基盤整備であろうというふうに思っております。そういうところに新しい時代の先端技術というようなものも取り入れながら将来の発展を図っていく、私はそこに明るい見通しというものを見出すことができるんじゃないか、その環境整備のためにこれからも懸命に努めていきたいというふうに考えております。
  168. 武田一夫

    武田委員 そこで大臣に、これは常識的な問題として、大臣は政治の本質というのは何であるというふうに考えるか、また大臣の座右の銘、信条というものはどういうものか、ちょっとお聞かせをいただきたい、こう思います。
  169. 羽田孜

    羽田国務大臣 やはり政治というのは、何といっても基本国民のどの立場の人も安心して生活ができる、そういう環境をつくり上げていくというのが政治じゃないかなというふうに思います。  そして、私自身の座右の銘なんという大それたものはございませんけれども、ただいつも思っていることは、やはり事を処するに当たって真心をもって対処するということ、それから、信条といたしましては、やはり真っ正面からぶつかり、そして行動をもって進んでいくというようなことかというふうに思います。
  170. 武田一夫

    武田委員 どうもありがとうございます。  その中で今、真心をもって対処するという、私、これは政治の本質の中で一番大事なことだと思うのです。安心して国民が生活できるように守っていくための一つの基本というのは、やはり真心と誠実だと私は思います。その誠実、真心のある政治が本当に一つ一つの施策の中に、あるいは政治の範疇の中で実現されていけば、私はその心は、受ける国民も農民の方々も間違いなく受けとめると思うのであります。それは、たとえ自分たちの意にそぐわないものであったとしても——万が一ですが、それは一生懸命やったんだという心は、私は間違いなく通る。以心伝心ということもありますが、一生懸命思えば思ったほどのことは必ず反応するものだ、こういうふうに思うのであります。  ですから、要するに私は今後の政治の原点として、誠心誠意農家の皆さん方のために、国民のために日本の農業というのをしっかり守っていく、そのための努力をするということに心を徹していただきたい。  私は、かつての農作業が、本当に汗水をたらしながら、地味でありますが誠実であった仕事を思い浮かべるわけでありまして、カルチャーという言葉がある、文化あるいは教養とかというけれども、その根底にやっぱり耕すという、汗水をたらして一つの物をかち取る、実りあるものにするというところに私は大事な政治の原点があると思います。そういう意味で、農業というものは文化のいわゆる一番のもとにあったんじゃないか。農業から現在の一切の生活というものが発展してくるということを思うときに、その原点たるものがこういうふうに地盤沈下とかあるいは後退とかと言われることは私は非常に残念でならない。そういう意味で、ひとつこのことを心に踏まえて今後の対応をお願いしたい。  そこで、日本の農業のいろんな歩みといいますか動きを見ていまして、要するに、基本的な国策の中で一番重要な、主要なものだというとらえ方をしているように思いますか。例えば、農業というのは生命産業であるとか農業は国の基ということはきちっと言っているのですが、しかし私は現実の日本の農政を、日本の政治を見ていますと、ほかの国々と比較すると恐縮でございますが、やはり恐縮でありますけれども比較せざるを得ない。海外へあっちこっち行ったときに、本当に農業に対する取り組みがすばらしいものを皆持っていた。中国に行ったときもあるいはまたブラジルに行ったときも。アメリカ、オーストラリア等へ行きました。一緒に行かしていただきましたが、農業を大事にするというのは、一つはそれは言葉だけでなかった。  例えば中国に行ったときは、万里さんが副首相の中で筆頭であって、もう農業にかけてはすごい勢いで、農業が国の発展を支えるんだ。それからブラジルに行ったときも、ブラジルの農林大臣も、農業発展こそが工業以上に大事で、我が国基本的な産業として大事なんだ、こういう話もした。こういうことを考えますと、この日本の基本的なものとしての農業、本当に国の基本的国策として第一次産業こそが非常に重要であるという、そういうことを具体的な一つ一つに示してほしいという気がしてならないのであります。  というのは、なぜ私はこんなことを申し上げるかといいますと、恐らくこれは午前中あるいは午後からあった質疑の中でもあったと思いますが、一つは、やはりこの農林予算というものが非常に切り込まれている。それはお金がないと言えばそれまででございますが、しかしながら、こんなに農林予算が毎年のように削減されるというのはこれでいいのかということ。新聞等にも、とうとう一般歳出に占める農水予算は九・六%、一割台を割って防衛予算と逆転してしまった、丸々ここ数年の間の予算というのは防衛費に持っていかれたんじゃないか、こういうような論評も出ている。今後このままで行くならば、大砲の陰に泣く農家という表現もあったのでありますが、ミサイルの陰に泣く農家、こういう予算ということが定着をしてしまったらどうなるんだ。  この間、中曽根総理がそのことを指摘されましたときに、食糧の安定供給に必要な予算確保している、こういうふうにして澄まして答えているのでありますが、私はそんなに澄まして堂々と答えられるだけの内容のものではないと思うのであります。  そういう意味で、大事な問題として、今後農業は国の基であるという基本理念を、しかとやはり羽田大臣の期間中——私は長くあってほしいと思います。しかも今そういう環境があります。例えば今度の中曽根内閣の閣僚の中で農林水産関係された方が何人いるかといったら、こんなにたくさんいるということもないんじゃないでしょうか。防衛庁長官しかり、ここの委員会で一生懸命御活躍なさった。山崎国土庁長官も委員長でありました。今井厚生大臣も委員長でありました。それから江藤建設大臣も農政のベテランであります。安倍外務大臣は農林大臣であった。渡辺通産大臣も農林大臣であった。こういうことを考えると、こんなに恵まれた環境にいる羽田大臣は非常に福運があるんじゃないか。こういう方々が結束したら、たとえいろんな雑音があったとしても、閣僚の三分の二以上が農業理解ある方々がそろったということはこれは希有なことでありますから、私はその力をフルに活用して、その意思を統一して、もう一度、農業が国の一番大事な基本的な基幹産業であるということをひとつ心にとどめると同時に、そうした施策をひとつ優先的に実行してほしい、そういう意味で、予算もこんな切り込みはもうさせてもらいたくないと思うのであります。  まず、この点、これで十分なる食糧安定確保、供給の対応ができるという総理のそういうことに、大臣として責任を持って当たれるかということをひとつお聞きしたい。これはちょっと酷なことではございましょうが、やはりタブーに挑戦する大臣でありますから、そういうことではっきり物を言ってもらうことによって我々国民は信頼をすると思います。本音と建前のない、正直な答弁を聞かしていただきたいと思います。
  171. 羽田孜

    羽田国務大臣 お話がありましたように、武田委員農業というものに対して大変な情熱を持たれておる、私どもも、またここにいらっしゃる皆さん方も——ともかく私自身も十年間、十年前に政務次官をやって、それ以後いろいろなところから誘いもありましたけれども、やはり農業というものは本当に大事なんだ、林業水産業は大事なんだ、そのつもりで実はこの農林水産行政とずっと取り組んできたつもりでございます。  確かに、御指摘のとおり、予算の面におきまして、今度はちょうど防衛費と逆転といいますか、少し減ったという事実はあります。しかし、先ほども申し上げましたように、先進各国の中で防衛費と農業予算の比率というものを見ましたときに、日本がやはり圧倒的にその中では高いといいますか、要するに防衛費が圧倒的に低いというところに実はあるんじゃないかと思っております。それともう一つは、国債費というような、これの償還に充てる当然経費というものが出てきたというようなこと、こういうことで、本当に私たちもこれでよろしいというふうに思っているわけではありませんけれども、残念ながらこれが減額されてきておるというのが現状であります。  林業にいたしましても、山が今ちょうど間伐の伐期にもあるということで、これにも何とか対応しなければいけないし、あるいは水源地というものを放置しておきますと、水害が起こったときに大変であるということで、これに対しても何とか対応しなければならないと思っております。また、水産の方にしましても、ちょうど二百海里の問題が定着してきた、そういう意味で沿岸の漁場というものも整備しなければいけない。そして、農業というものも本当に生産性の高いものをつくるために基盤整備はしなければいかぬ、実際にこれはおくれておるというのが現状でございます。  そういう意味で、農、林、水、どれをとりましても、やはりもう少しお金がふんだんに使えることができればというのが私どもの率直な、これはもう本当に偽らない気持ちであります。  しかし、今前段で申し上げましたように、税収もなかなか厳しくなってきておるという中で、財政も今非常に困難な状態にあることは御案内のとおりであります。そういう中で、やむを得ざる措置として全体の額そのものは削らざるを得なかった。しかし、その中で一部は消費者の皆様方に負担していただいたものがありましたり、あるいは財投というものを活用しながら国営の圃場整備等につきましても少しずつ前に進めてまいりたいということで、ともかく限られた予算の中である程度めり張りをつけながらこういった予算を組んできたということでございまして、おっしゃるお気持ちというのは私どもよくわかります。  これからもいろいろな角度から、例えば林業なんかにつきましても、この間水源税の問題で議論がありましたときに、やはり山は大事なんだということはみんなが認めてくれましたし、できれば一般会計からこれはみんな出すべきであるなんというお話もわざわざ付言してくださったようなわけでございまして、私どもとしてもみんなで農業の重要性というものを訴えて、そして少しでも予算を大きくできるように、今後もこれはありとあらゆる機会に努力はしてまいりたい、かように考えております。
  172. 武田一夫

    武田委員 今が谷間の農政でありますから、ここから山に登っていけるように、どうかひとつ——やはり足腰の強い農政と、いう点を考えると、武士は食わねど高ようじというわけにまいりません。そういう点もめり張りはきちっとつけて、山を登っていくという方向への御努力をひとつお願いしたい。  日本の農業の基盤というか、例えば農地、それから担い手、こういうものの対応を見ても、基盤整備なんかでも関係予算が一・三%削減されている。減っているわけですね。それから担い手の問題についても、要するに育成確保についても一・六%の減。そういう一つの例を挙げただけでも、めり張りの問題についてさえも、こういう大事なところがまた非常に欠けているということも私は指摘しておきたいと思うのであります。  そしてまた、食糧の自給率の低下というものが依然として歯どめがかからない。これなどは、ここ十五年たったら、二十一世紀の、いわゆる人口が爆発的に増加するというものに対する世界の食糧問題、これは私はあした時間があればやらしてもらおうと思っておりますが、何をもってこれに対応すみか。これは本当言うと遠い先のことではないのですね。今から考えておかぬと大変な問題になりかねないということが指摘されるし、勉強すれば、これはここ十年、十五年の間の大きな課題になってきそうな気がいたします。  さらにまた、農産物輸入の問題。ことしは、五月のサミットにかけまして貿易摩擦は今まで以上に大変な問題となって、日本が苦労するんじゃないか、その渦中に大臣があるんじゃないかと思うと、我々も非常に同情せざるを得ないのでありますが、そういうもの一切を、我が国の安全保障と国の繁栄ということを考えて、その若いエネルギーで克服してもらいたいというふうに思うわけであります。そういう点で、ひとつ今後とも御活躍をお祈りしておきたいと思います。  そこで、次に質問をいたします。  農政の今後のいろいろな課題というのはるるございましょうが、ポスト第三期の問題もあります。先ほど申し上げました貿易摩擦の問題もある、あるいは水産問題あり、あるいはまた林業活性化の問題等あり、たくさんございますが、まず最初に、農政の新長期ビジョンづくりというものに取りかかっているやに伺っているのでありますが、その状況、あるいはまたその骨子というものはどういうものをお考えになっているのか、もし差し支えなければお答えいただければありがたいと思うのであります。
  173. 羽田孜

    羽田国務大臣 昭和五十五年に、農政の長期ビジョンとして「八〇年代の農政基本方向」と「農産物需要生産の長期見通し」が作成され、その後、これに則して農政推進しているところでございます。  しかし、現行長期ビジョン策定後もう既に五年を経過いたしておりまして、この間、我が国農業を取り巻く内外の環境というものも非常に変化してきております。現在、農政審議会におきまして、現行長期ビジョン、これまでの成果の分析をしていただいて、そして検討のための、いわゆるフォローアップのための作業というものをしていただいておるという状況であります。現行長期ビジョンの取り扱い、こういったものにつきましては、この分析、検討の結果を踏まえながら一つの方向というものを示してまいりたい、このように考えておる段階でございます。
  174. 武田一夫

    武田委員 大臣は所信表明の中で、「次の時代農林水産業を担う若い人たちが誇りと生きがいを持って農林水産業に邁進できるよう、我が国農林水産業体質強化生産性向上を積極的に推進し、産業として魅力ある農林水産業を確立していきたい」、こういうふうに抱負を述べておられます。この文章を見ますと、非常にほのぼのとした希望のある文章であります。「誇りと生きがいを持って農林水産業に邁進できる」「産業として魅力ある農林水産業」、例えば、このことについてはこういうものがそうなんだという青写真の一端でもお聞かせを願いたいものだな。ちょっとでもそういうものがあれば、それが今度は拡大していきまして、いろいろと楽しい、夢のある話になっていくのじゃないかと思いますので。
  175. 羽田孜

    羽田国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、実は私自身も何もきょうから初めて農政に携わったわけではなくて、長いことずっとやってきておりますから、そんな簡単に一つの方向というものは示せるものでないということはよく承知しております。しかし、農業林業水産業というものはそれぞれが日本の国の一番基本であるということからいっても、これをなくすることはできない、しかもこれを発展させなければならないということで、ともかく農業というものを魅力のあるものにしなければならないという強い強い願望を実は持っておるところであります。  そのためにやらなければならをいことというのは、非常に地味でございますけれども、基盤というものをきちんとすること、それから規模の拡大というものを進めることが必要だと思います。そのほかに、これから新しい先端技術というもの、バイオテクノロジーなんかを中心にしながら期待でき得るものがございます。こういったものを進めていくこと。そして、市場の要請とかいろいろなものをキャッチするために、あるいはまたそのものの技術を駆使するために、ニューメディアなんというものの導入も図っていかなければならないのじゃないかと思っております。そして、そういうものに対応できるような、本当に農林水産業という産業担い手になれるような産業人というものの育成、それは今の新しい時代に対応できる人たちを養成する必要があるのじゃないかなと思っております。  私は、そのときにまさに労働集約型から知識集約型の農業産業というものが生まれてくるのじゃないかなという考えを持ち、それに向かってこれから皆さんと一緒にいろいろな施策を研究もし、また、それを示すための方向もつくり上げていきたいと考えております。
  176. 武田一夫

    武田委員 そうした産業としての魅力を備えた農林水産業、これは新長期ビジョン等の中に一つ一つ展開できるように御努力を願いたい。  私は、今度帰りましたら、間違いなく、農林水産業は魅力ある産業として、成長産業としてまた再建できるんだぞと言って、頑張るように若い連中にも話をしておきたい。確かに一部には一生懸命誇りを持って、生きがいを持ってやっている人がいますが、大体その誇りと生きがいがどんどんほこりをかぶって生きがいが薄れてくるという今までの経過を見ていますと、本当に気の毒でしょうがありません。一つのいい例が、農業高校なんかはその典型的な犠牲のもとに落ちぶれているということを考えると、若い後継者がどんどん出てくるときが今来たんだと言えるように御努力をお願いしたいと思います。  そこで、今農家の皆さん方の最大の関心事は、第三期以降の水田利用再編対策、減反の問題でございます。このことにつきまして、基本的に大臣はどのような考えで今後のポスト第三期を進めようとなさるか、お考えをお聞かせいただきたい。
  177. 羽田孜

    羽田国務大臣 まさに農業基本であります稲作について減反をしていかなければならないという状況、これは甚だ残念であります。ただ、先ほどからもお話ししますように、まだ米の需要が減退しておるという状況の中で、私ども、この三期までの九年間の実績というものを振り返りながらポスト三期というものにどう対応したらいいのか、今検討をしている最中であります。これも何とか秋ごろまでにまとめていきたいと考えます。  一応その基本的なものは、米の需給均衡を着実に実現するよう現下の諸情勢に即応して有効な調整方策をとること、それから、将来の水田農業のあり方を展望し、今後の需給状況も踏まえた農業生産構造再編成が図られるものとすること、それから、生産性が高く足腰の強い農業をつくり上げること、そして日本型食生活定着という観点に立って、今後とも米の消費拡大、こういったものについてきちんと対応ができるように検討を進めていくことが重要であり、また基本であろうかと考えております。  いずれにいたしましても、これからも関係の各方面の皆様方等の御意見を十分また伺っていきたいと思っておりますし、また、これを進めるに当たりましては、生産者、農業団体、また今日までもいろいろな角度から御協力をいただいております市町村、いわゆる自治体、こういった皆様方の積極的な御協力もいただかなければなし遂げることはできないであろう。そして、いずれにしても、この問題について生産者の皆様方の理解が得られるような方向を進めていきたいと思っております。
  178. 武田一夫

    武田委員 今大臣のお答えの中に、米の消費が減退している——最近ちょっと横ばいのような気がするのですが、減退はしている、今後またしていくだろうという見通しが出ていますね。その反面、七五三計画によって収量、単収を上げるという努力をしております。食うのは減る、つくるのはふえていく、そうなると、減反はとめどもなく続いていくわけであります。  そうすると、農家の方々は、それじゃその場合どうするのか、米の用途を拡大していく方法を選ぶのか、あるいは畑作物等への転換を目指していくのか、どっちなんだ。くるくる変わったら困る。そうでなくても、これまで減反でもって十何年間は心身ともに疲労こんばいするくらいの努力をしながらやってきている方々が多い。こう考えると、この点をどういうふうにしていくのかという一つの方向性だけは明確にお聞かせ願いたいなと思うのでありますが、いかがでしょうか。
  179. 羽田孜

    羽田国務大臣 先ほどの前段でも申し上げましたとおり、確かに生産性を上げる、そして片っ方ではまだ需要が減退しておるという現状であります。そういう中で水田利用再編対策というものを進めざるを得ないということであります。  余る米、そして不足する飼料、大豆、麦、こういったものを今日まで中心的な作物としてお願いしてまいったわけでありますけれども、さらに定着性の高いものに道を開いていかなければいけないということがあるわけでございまして、そのあたりをこれから秋に向けていろいろな皆さん方の御意見を伺いながら進めていかなければならない、まさに今先生から御指摘がありました悩みがあるということは言えるのじゃないかと思います。
  180. 武田一夫

    武田委員 日本の水田というのは非常に生産性の高い貴重な資源である。そういうことを考えると、そういう水田の維持というのは重要な課題であります。ですから、願わくは水田が水田として活用できるというところの中に活路を見出せるというものを今後も考えられる必要があるのじゃないか。  それから、今えさ米、いわゆる飼料米の話なんか出ていますけれども、これは余り広げますとコストの格差が大き過ぎますから、これはまた反発があります。  しかしながら、これは何か別な面でそれをできないか。例えば去年の収穫を見てみますと、秋田県や青森県なんかでは反当千キロを超した地域も出ておりますね。こういうこれから努力すれば収量が非常に多くとれる地域、またとれそうな地域がたくさんある。三年前でしたか、私は庄内地方に行きました。あそこはササニシキの本場でございまして、大体平均で七百から七百五十、八百ぐらいとっているわけですが、基盤整備も不十分だけれどもこれぐらいとれる、これから基盤整備をしっかりやっていけばササニシキでも千キロは楽ですよと自信を持って答えていた町長さんの確信ある言葉がまだ印象的に脳裏にあります。  こういうことを考えますと、要するにそういう多収穫、多収量のとれそうな地域等々をよく選択、研究なさって、それに品種管理改良等により多収穫のものをひとつ考えてコストダウンをする。多少の奨励金があったとしても、それによって財政負担をかなり削減することができるとか、これは私のつたない考えでございますが、というような取り組みとか、あるいはまた畑作振興の場合に当たっても、大豆だって今は余り芳しくないわけです。それから野菜は過剰ぎみです。麦も大体ため。となるとえさですよね。要するにホールクロップサイレージというような形での対応、これはどういうふうになるのかという研究開発なんかもひとつ御検討なさりながら、あらゆる可能性を探って対応していかなければ、要するにいつも同じ繰り返しで、農家の皆さん方はもう行きどころがなく、どうしようもなくなるというふうにならざるを得ないと私は思います。それだけに、あらゆる技術陣の総結集と、農林水産省だけでなく国全体としての英知を結集して、ポスト第三期は早急に、しかも慎重にやっていただきたい、私はこういうふうに思う次第でございます。  そこで、次にお尋ねをしたいのでありますが、最近、奨励金からの早期脱却ということも言われておりますが、これまで転作推進のためにはこ一の奨励金というものがあずかって力があったんじゃなかろうか、こういうふうに私は思います。  第三期対策ではこの奨励金の基本額が全体として引き下げられた、あるいはまた各種の加算額の体系も定転の定義化に沿って組み変えられたというふうに、この切り込みが臨調路線の一つの方向としてやられているわけでありますが、転作に一生懸命頑張っている——大臣は、地域の特産物とか何かですごい工夫をして頑張っている人たちがいるじゃないか、そういうことは自分たちの力で、自分たちの考えで自主的にやるものだということを何か記者会見で言ったような、ちょっとそういうニュアンスのことが載っていたような気がいたすわけでありますが、そういう方々への大きなエネルギーとして、潤滑油としての効果的な活用といいますか、これがやはり必要だろう。それによってそういう方々の努力や苦心というのが花開き、実がなるというような方向に持っていく必要があるんじゃないかということを私は痛感するわけでありますが、臨調路線に余り乗り過ぎないように、余り乗り過ぎますと途中で脱線しかねないと思いますので、ひとつその点も心にとどめていただきたいと思うのですが、いかがでございますか。
  181. 羽田孜

    羽田国務大臣 先ほどお話ありました超多収穫品種、こういったものについてポスト三期の中で生かすというのはまだちょっと難しいと思いますけれども、しかし、これはもちろん、農業技術会議ですか、そちらの方でも今いろいろと鋭意検討といいますか研究をしていただいておりますし、また、各試験場、それから民間の方でも今いろいろな試験ができるような体制もつくっております。そういう中で、将来に向かってはそういうことについても勉強していきたいと思います。  なお、ポスト三期についての奨励金の問題でありますけれども、この問題につきましては、現在その方向と一緒に奨励金についても検討しておるということでございます。いずれにしましても、この問題についてもこれから私たちは鋭意検討していきたいと思います。  なお、私が何か申し上げたというのは、あれは、こういうものもあるので、こういうものなんかもひとつ検討してもらったらどうかなと。ただ問題は、そういったものを検討しても、例えば一村でみんなの創意工夫でつくり出しても、そういったものの流通ということも実は問題がある、こんな問題についてもいろいろと考えてあげなければいけないのじゃないか。しかし、そういう独創的な発想なんというものも大いに期待したいなと。要するに転作作物というのはなかなか難しいなという中で申し上げたことが何かに載っているのじゃないかと思っております。
  182. 武田一夫

    武田委員 次に、農業振興といいますか農業を支えている大事な基盤というのは、先ほども話をしました生産基盤としての農地と、それを支える担い手の方々であります。  この問題で多少お尋ねしますが、農地、それから後継者、担い手、この問題も先行き非常に心配な問題が多うございます。日本は農地としては最低限五百五十万ヘクタールは確保しなければならぬということが農政審の報告にも出ています。農林水産省としてはそれを一つの大きな目標として進んでいるようでありますが、しかしながら農地の荒廃というのが進んでいる、二万ヘクタールぐらいは大体毎年農地から脱落しているということであります。新規就農者といいますか、これもなかなか思うように進んでいない、高齢化がどんどん進んでいる、担い手の問題についても深刻であるということでありますが、このいわゆる農業振興生産基盤としての人と土地とをしっかりと確保するための対応というのが羽田農政の大きな課題になってくるのじゃないでしょうか。この点についていかがお考えでございますか。
  183. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 ただいま先生から農用地の壊廃がかなり進んでいる、優良農地の壊廃がかなり進んでいる、どういうふうに農水省としてはその壊廃の防止を考えているのかということでございますので、多少、事実と制度的な御説明をいたします。後刻必要があれば大臣からお答えいたします。  まず、壊廃の現状でございますけれども、一時期、高度経済成長下では、四十七、八年当時六万ヘクタール台の壊廃が行われました。現在、年間三万ヘクタール台に落ちておるわけでございます。最近では公共用地とか鉄道用地というようなものが壊廃の主とした内容になっておりまして、住宅用地や鉱工業用地は減少ぎみでございます。  日本の国土条件の中で食糧の総合的な自給力確保するためには、優良農地を何としても確保しなければならない、農水省としてはこのような基本的なスタンスを持っておりますが、一方また、狭い国土の中で一般国民の住宅用地とか産業振興のための種々の工業団地とか、そういう都市的な需要にもある程度こたえていかなければならないわけでございまして、この両者をどうやって調和していくかが課題でございます。  これにつきましては、まず基本的には、農振法、都市計画法等土地利用法規を活用いたしまして、合理的な土地利用を図るように、優良農地を農振法のもとで農用地区域に線引きいたしまして、できるだけその農用地区域外に転用を誘導するようにいたしておるわけでございます。にもかかわらず、個別農地転用が農用地区域内等でもどうしても発生するわけでございますが、これらにつきましては、農地転用許可基準に基づきまして、生産力の高い農地とか集団的に存在している農地は極力保全するように、市街地に近接した農地あるいは生産力の低い農地に転用を誘導するように許可基準を運用しているわけでございます。  このほか、特に今年度予算等でお認めいただけるよう今御審議いただいておるわけでございますけれども、耕作機器等の低利用地について、地域農業集団による地域ぐるみの土地利用調整活動を通じて中核農家農用地等を集積させるための諸施策、さらにまた、農用地利用増進対策事業という制度を特に創設いたしまして、荒らしづくりが行われているような土地、あるいは実質的な耕作放棄地、遊休地等を種々整備するための必要な経費を無利子で貸し付ける、このような制度も用意いたしておるわけでございまして、これらの制度を活用することによりまして優良農地確保に万全を期するようにしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  184. 武田一夫

    武田委員 いろいろな努力をしながら優良農地確保をやっていくのは当然だけれども、その許可基準の緩和を求める声が強いとどうもそっちの方に引きずられていく、これはいけませんよ。幾ら市街地周辺といっても、国土保全とか緑地保全とかという生産手段との総合的なものが農地としての特質ですから、これはほかの省庁からの圧力なんかに負けては相ならぬと思うのです。佐竹局長羽田大臣の結束したスクラムでそういうものはガードを固くやっておかぬと、一たん食い込まれますと虫食いが始まっていくわけです。それを見ているとその周辺の若い連中は仕事をしなくなる、農業をしなくなる、これは一つの悪循環です。だから、きちっとした基準をつくっておかなければいかぬ。  それで、東大の大内先生でしたか、農地の流動化が非常に進まないと我々が嘆いていろいろと話をしたときに、農地の流動化を促進するためには、政策上いろいろなことをやらなくてはいけないけれども、その一つは、そうした転用期待というものに対する遮断が必要だ、ですから土地政策を確固たるものにしておかなければいかぬ、これは農林水産省だけの問題ではないわけでございますが、そういうことが一つの大きな条件。そうでないと、地価上昇に伴い農地も上昇する、こうなって、結局は資産的な考えに走ってしまう。こういうものを遮断する対応を農地についてはしかとなさなければならない。  それからもう一つは、やはり基盤整備をしっかりやってほしいという声がございます。基盤整備のための投資が、非常にきつい中でも頑張っていると言うけれども、先ほど申し上げたように、前年度から少し切り込まれているということはやはり問題じゃなかろうか。めり張りをつけるということになれば、こういうところにもう少しきちっとした投資をするということが大事ではないでしょうか。これから法案が出てくるわけでありますが、そのときに改めてこの問題については論議をしたいと思います。  それからもう一つは、やはり老齢化対策と高齢者農民に対する福祉の充実ということも言われております。  そういうことでしっかりと土地の流動化を進めながら、荒廃化を防ぎながら、やはり農業基盤としての農地確保に取り組んでほしいと思います。  また、耕地の利用率が非常に悪いわけですね。ですから、この耕地の利用率も六十五年の見通しては一一二%を目指すのでしょうか、この辺まで持っていくためには水田裏作等も含めた対応が必要だ。では日本の水田で裏作ができるのはどれくらいかというと、三〇%あったら精いっぱいだということを考えると、この点の対応もまだまだやらなくてはいけないのではないか、こういうことになってくるわけであります。  いずれにしましても、そういうことで農地確保が有事の際の我が国の大事な課題であります。五百五十万ヘクタールというものを丸々確保したとしても、いざという場合には、何かエネルギーに換算すると二千カロリーちょっとぐらいしか国内農産物では確保できないということになると、戦争中あたりの、あるいは戦後の昭和二十年、二十一年、あるいは昭和二、三年ころの栄養失調になりかねない栄養で、とても日本の国民の食糧の安定確保というものはおぼつかない。  こういうことを考えると、今でさえもそこまでいってない、今、恐らく五百三十四、五万か、せいぜい四十万くらいいっているのですか。すると、何でもないのに目標までいかないし、六十年でさえも三万六千三百ヘクタールというのが壊廃中です。拡張を一万九千なさっておりますが、通算すると一万七千というのがつぶれている、農地としてもう用をなさないわけであります。この点はひとつしっかりと守ってほしい、こういうふうに思います。  それから人間の問題であります。昨年の八月、全国農業会議所で土地と人間についてアンケート調査をしたのを発表しました。それによりますと、農業生産担い手は将来十分に確保されるかという問いに対して、回答者の四一%が、ちょっと無理だ、不安だということでございました。これから、特に山間のいわゆる山村地域農業の環境としては非常にいい山村地域がよくなってくるというのです。きれいな水があるし自然があるから、やり方によってはこういうところにいいものがどんどんできる、そういう条件として残されたところが山村だというのですよ。私もそうじゃないかと思います。この山村が特に深刻、大体五二%はそれはもう不可能である、こういうことであります。農林水産省の五十九年度の統計を見ると、専業農家の後継ぎ確保状況というのはわずか二五%ぐらいしかできないというのが出ている。  こういうことを考えますと、この担い手確保というのは非常に重要になってくる。高齢者をそのまま農業担い手としておくわけにはまいらないという時代でございますので、この点についてどういうふうな取り組みをこれからなさろうとしているのか、そのことについてまずお尋ねをしたいと思います。
  185. 羽田孜

    羽田国務大臣 農業後継者を確保するためには、先ほど来お話し申し上げましたように、農業というものを魅力ある産業に仕立てていかなければいけないのじゃないかということがまず基本であるというふうに考えております。そして、そのために、先ほどからもずっと申し上げておりますように、農業の基盤整備、あるいは生活の環境整備ということもやはり重要なファクターであるというふうに考えております。  そして、経営能力を持つすぐれた人を、後継者をあれするという観点から、改良普及員、こういった人たちを通じまして、農業後継者の農業技術、こういった問題についての指導もしていかなければいけないと思いますし、また、そのために農業者大学校等における実践的研修教育の充実、こんなものもこれから図っていかなければいけないと思います。また、自主的な集団活動、これも助長すること、あるいは経営開始等に要します資金の援助等の対策、これも推進しておるところでございます。  いずれにしましても、農業後継者という問題について、私どもとしてもやはりこれは非常に重要な課題であるというふうに認識しながら進めてまいりたい、かように考えております。
  186. 武田一夫

    武田委員 これは、いろいろと高齢者に対する対応も大事。高齢者の方々がUターンしてきて、ある程度耕せる土地を持ってきますとまた細分化されます。こういう方々の農地を何とか一ところに集合させて流動化を図りたいということになれば、そういう方々への対応もしなければいけない。ただ、今、長寿でありますから、そういう方々も健康のためには働きたい、それも農業の中で働きたいとなれば、そのための雇用として、また生きがい対策も考えなければいけない。これは高齢化社会を迎えた農業の難しさが非常に出てくると思います。そういう点で、これはそういういろいろな要素をしかと指摘されまして、十分な対応をお願いしたいなと思っておるのであります。  その中で、これは前から何回も話題になっておるわけでありますが、新規参入の問題です。これは本気になって羽田農政の一つの基本的な方向の中にしかと組み込んで検討をいただきたいものだ、こう思います。古いものに新しい血を注入する、その中に活力を与えることの必要性があるのではなかろうか、羽田大臣がおっしゃっているとおりであります。この点、大臣としては今後どういう方向でやっていくか。農地の取得の問題とかいろいろ難しいことはあるようでありますが、そういうこともひっくるめまして御所見を聞かせていただきたいと思います。
  187. 羽田孜

    羽田国務大臣 今の御指摘につきまして、農業という産業に、本当に自分でこの道で生きていこうという新たな参入者も必要ており、また、その人たち農業経営に大きな活力を与えたり、あるいは農村にもいろいろな面で新しい知恵を生み出してくれるのではないかということを私もたしか申し上げたことがございます。  ただ問題は、非農家出身で農業に新規参入する方にとりましては確かになかなか難しい環境もございます。ただ、今日までも全然入っていないということじゃなくて、ある程度の数は入っておりますけれども、その数は非常に少ないものであるということであります。そして、そういう方々が入ってこられるために、制度資金の融通あるいは就農の相談ですとか農業技術の研修、教育、こういったものについてもその対象としてきたところであります。  今後の農業体質強化を図っていくためには、次代を担う若い農業者育成していくことが重要な課題であることから、農家の子弟に限らず、新規参入者をも含めて、これまで以上に各般施策を進めてこたえてまいりたい、かように考えております。
  188. 武田一夫

    武田委員 次に、所信表明の十三ページだったと思いますが、「地域主要作物に係る各般生産対策を総合的、有機的に実施することとしております。」地域の問題というのは非常に重要です。できるならば地域農業の大体八割や七割でも任せておいて、その創意工夫の中で、町長さんあるいはまた農協の皆さんとか地域の皆さん方の総力を結集した中での農業振興をやっていったらどうか、それにかかわるお金は任せておけ、心配するなというぐらいのやり方をすれば非常にいいのじゃないかと私は思っているのでありますが、この十三ページにある大臣のお考えについて、これは具体的にどういうことを言っているのか、説明できるものがあったらお聞かせ願いたいなと思います。
  189. 羽田孜

    羽田国務大臣 今後の経済の安定成長の定着とか高齢化国民の価値観の変化等が進む中で、これに即応しつつ、農林水産業振興はもとより活力ある農山漁村地域社会を建設していくことは、我が国経済社会の健全な発展を図る極めて重要なものであろうと考えております。このため、農林水産業に携わる人々が意欲と生きがいを持てるような中核農家への利用権の集積による経営規模拡大構造政策を進めていくと同時に、地場産業育成していくことが重要じゃないかと考えております。
  190. 武田一夫

    武田委員 大臣、何か御都合があるそうですのでこの辺で結構でございます。またあした、よろしくお願いいたします。  それじゃ、次官がおりますので、申しわけないのですが、時間もあと三十分ほどありますから次官にお尋ねいたします。  水産問題でございます。  農業以上に、荒れ狂う海の実態というものは、関係者に大変な負担と苦痛と不安を与えております。北に行っても南に行っても、まるっきり安住の地がない。こういうことを考えますと、先ほど大臣も、農も大事、林も大事、海も大事と言った、その大事な海を守る、そして日本の漁業者、水産業を守るということも非常に重要な問題だと私は思います。日ソあるいは日米の漁業交渉については長官は非常に御苦労なさって、本当に太る暇がないくらいあちこちを飛び回りまして、お気の毒、でございます。しかしながら、これはやらなければならない問題として、この問題を妥結、解決させながら、生活を抱えている多くの人たちを守らなければならないと思うわけであります。  大臣の所信表明の二十四ページに、「海外漁業協力推進する等により、海外漁場確保に努めてまいります。」というくだりがございます。この件についてはどういうふうなことを考えておるのか。具体的に今こういう方向に進んでいるのだとか、あるいはこういうことを考えておるのだということがございましたら、技術的な問題は長官から、そのことに対する取り組みについては次官からお答えいただきたいと思います。
  191. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  この種の漁業協力によります漁場確保は、元来は開発途上国との関係でまず始まったわけでございまして、形式上、外務省の予算に計上されております水産無償を、開発途上国の二百海里水域での漁場確保を交渉してまいるための手段としていろいろ使ってまいっておるわけでございます。ごく最近の例でございますれば、昨年入漁協定の締結に成功いたしましたモロッコとの入漁協定の締結交渉の際にも、この水産無償が交渉上の一つの有力な武器として使われたわけでございます。  ところが最近になりますと、最近と申しましてももう数年来のことでございますが、先進国においても自国の二百海里内の漁業資源を自国の漁業発展のために有利に使いたいということで、こういう沿岸国側の希望にこたえながら交渉を進めていかないと漁場が確保しがたいということは先進国についても同様に起こってきている事態でございまして、こういう動きに対応して、最初は主として漁業者自身による洋上買魚とかそういう形での漁業協力中心でございましたが、最近に至りまして、例えば私どもの方でこの分野の仕事を担当いたしております海外漁業協力財団の協力事業はアメリカを対象としても行われるようになっておりまして、これは現に、アラスカの漁業関係者の日本に対する態度をできるだけ日本漁業の存続に肯定的な態度をとってもらうように、それなりに有効に機能しておるというふうに思っております。  それからさらに、入漁という形式ではなくて、我が国の水産会社が現地へ参りまして現地法人をつくりまして、そこで事実上現地法人の傘の下で操業を行う。アルゼンチンでございますとかソロモンでございますとか、そういうところで相当うまくいっている事例がございますが、こういうものにつきましても、私どもは海外漁業協力財団の仕組みを使いましていろいろてこ入れをしておるわけでございまして、そういうことを総体として念頭に置いてこういう所信表明の記述になっているわけでございます。
  192. 保利耕輔

    保利政府委員 魚は日本人にとっては昔から食べている大変大事なたんぱく源でございまして、これを確保するということは今後とも必要でございます。そしてまた、日本人は魚をとることが昔からうまいということもございます。  そうした漁業者の生活その他も考えて、今長官からお話がございましたように、海外漁業協力財団だとかというようなところを使いまして、入漁あるいは現地法人化というようなことでそうした漁民の活躍の場をつくるということは非常に重要なことだと思っておりますので、積極的に進めてまいりたいと思っております。
  193. 武田一夫

    武田委員 それから、漁業交渉の経過を見ていますと非常に御苦労なさっていますが、この見通しはどうなっていますか。現地の、私の塩釜周辺なんかも見通しの暗さに大変悲壮感が漂っておるものですから、長官の判断から、どういうふうになっていくかということの予想なりお考えをひとつ聞かしてもらいたいなと思っております。
  194. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  目下御心配が差し迫っておる順序から申しますと、何と申しましても、十五日で第二回日ソ漁業委員会の協議が中断してソ連水域で操業できない、そういう事態になっておられる皆さん方の問題が一番差し迫った問題だと思います。  それで、この点につきましては、ソ連側の態度は、基本的には、昨年までの日ソ間の相互入漁関係におきましてソ連側が日本側の半分もとっていない、そういうことによって生ずる日ソ間の受益の程度の不均衡を何とか是正をしたい。それからもう一つは、ソ連の自国二百海里水域での漁業振興ということを念頭に置きまして、自国の二百海里内の資源の保存のために、我が国の殊に着底漁具による操業を主たる対象として、従来に比べて飛躍的に強烈な規制措置を導入しようとしておる、そういうことがソ連側の交渉の基本的な姿勢になっているわけであります。  私どもの方から見ますと、一番の問題は、ソ連二百海里水域における我が国の漁船に対する規制措置を飛躍的に強化しようというソ連側の考え方が交渉妥結の最大の障害になっているわけでありまして、ソ連側はお金の問題も持ち出しておりますが、このソ連水域内の我が国漁船に対する規制措置強化という問題につきましては、少なくともその相当の部分につきましては金によって売り渡すつもりはないということをソ連側は言い続けておるわけであります。  私どもは、できるだけ早い時期に再度日ソ漁業委員会の協議を再開して、我が国の北洋漁業の存続を許容し得るような条件で妥結をすべく努力する決意でおりますが、中断前のソ連側の態度から見ますと、再開後の交渉も極めて厳しいものであろうということが想像をされます。しかし、現在のソ連側の態度というのは、日本側といたしましてはそれをのむくらいなら日ソの相互入漁関係というのは意味をなさないと思われるほど致命的な問題であると考えておりますので、この再開後の交渉に当たりましては、私どもとしては重大な決意をもって臨まなければならないと考えておる次第でございます。  日米間の問題につきましては、サケ・マスの問題についての日米協議が今月の六日から、一番直近時点での協議が行われたわけでございますが、これも不調に終わりました。この一番の問題は、サケ・マス協議が不調であるということを理由にいたしまして、アメリカがアメリカ二百海里水域内での日本向けの漁獲割り当てを留保する、そういう態度をとっていることが日本側から見れば最大の問題点であります。  この点につきましては、大臣を煩わして、二月四日マンスフィールド大使と対日漁獲割り当て放出問題を大臣から話をしていただきました。その結果、一月の一万トンに続きまして二回に分けて五万トン弱の放出が出まして、合計約六万トンの割り当てが現在放出をされております。これによりまして、一応私どもの目算では、三月までの日本漁船の操業につきましては、これはそれだけでやっていくというわけにいきませんが、ベーリング公海での操業あるいは洋上買い付け、こういう仕事を組み合わせて三月までの操業は一応曲がりなりにもやっていけるのではないかという状態になっておると判断をいたしております。  サケ・マスの問題につきましては、現在のアメリカ側の態度はいまだに我が国のサケ・マス漁業の存立に重大な脅威をもたらすような態度を相変わらずとり続けておりまげので、私どもといたしましては、せっかく日米が漁業条約で正当に認められている我が国の北洋サケ・マス漁業がその存立を脅かされることのないように、これを守っていくという決意でおります。  それにつきましても、そのために二百海里内の漁獲割り当てが人質にとられておるという状態は大変不都合な事態でございますので、六万トンは六万トンといたしまして、引き続きさらにサケ・マス問題と漁獲割り当てを結びつけることが不当であるゆえんをアメリカ側に強調して、割り当て放出を求め続けていく所存でございます。
  195. 保利耕輔

    保利政府委員 漁業交渉状況については今佐野長官から御説明のとおりでございますが、日本の遠洋漁業をこれからも守っていくということは非常に大事でございますので、ここで安易な妥協をすることは将来にとって禍根を残すのではないか、こういうふうに考える次第でございます。しばらくの間、時間をかけながら粘り強い交渉を続けなければならないと思っておりますので、御理解を賜りますようにお願いを申し上げます。
  196. 武田一夫

    武田委員 大変御苦労なさっていること、ひしひしとわかります。それにしても、この問題の渦中でそれによって生活を支えている方々の心中を思うときに、やはりこのままにしておいてはならぬという思いでございまして、どうか国を挙げて一生懸命努力して、早期にこの問題が解決するように頑張ってほしいな、こういうふうに思います。  そこで、ちょっと一つ、これは前からの懸案でございましたが、長官にお尋ねしたいのですが、塩釜がいよいよソ連の寄港の期限が切れまして、ほっとしているわけでございます。今度どこへ行くのか、それはわからぬけれども、皆さん方安堵の胸をなでているわけであります。  しかしながら、その後始末がまだ十分でないということで、私の顔を見ると何度もどうしてくれるんだと言う。どうしてくれるんだと言われても私は困るのでありますが、何とかしてほしいということで、要するに、このための補償と言うとおかしいのでありますが、一年間いろいろとお金をつぎ込んだ、そういうものに対するものを、こういう財政的に厳しい折でございますから、その分だけでもせめて何とか手当てをしてもらえないかということで、ソ連漁船入港による特殊財政需要等に関する財政措置というものをひとつぜひ水産庁のお力添えでということでございますが、この点はいかがなのでございましょうか。よろしくお願いしたいと思います。
  197. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えをいたします。  その問題は、昨年塩釜でソ連漁船の寄港をお引き受けいただくということにいたします段階から塩釜市からいろいろお話のあった点でございます。私どもといたしましても、正直申しまして処理可能なもの、処理不可能なもの、少し仕分けをする必要があるというふうに思っておりますが、小名浜の先例に即して申し上げますれば、小名浜の場合には、小名浜にソ連漁船が寄港いたしましたことによって生じました地方公共団体のかかり増し的な財政支出につきまして、自治省において交付税でしかるべく対処したということがございます。私どもも自治省に対して塩釜についても同様のお取り計らいをお願いしたいということをお願いしてございます。  宮城県の方からもそういうお話は自治省に上がっておるわけでございまして、私ども、その点については今後とも自治省と十分連絡をとりながら、私どもも宮城県、塩釜市に対して義理があるわけでございますから、好意的な取り扱いを自治省がしてくれるように誠意を持って自治省にお願いをするということを今後とも続けてまいりたいというふうに思っております。
  198. 武田一夫

    武田委員 どうか義理と人情でひとつけじめをつけていただきたい。というのは、これはこの次また入るところ、やはりいずれまた一年間こういうふうに御苦労をかけるわけでございますから、そのことを一生懸命やった誠意にはきちっとこたえていただかなければいかぬのじゃないか。何度も足を運ばせないようにしてほしい。随分通っているようでございますが、こういうときですから、財政的にも大変な中を来るということはある程度差し控えるようにさせた方がいいのではないか。それがやはり、いろんな苦労、困難があっても、後々の関係市町村にもそれなりの御協力や御指導がちょうだいできることになるのではないかと思いますので、ひとつけじめとしてお願いをしておきたい。  どうかそういう意味で、水産庁からも自治省に対する特交の増額という観点からの対応をお願いしたい、こういうふうに思います。  最後に、農産物の市場開放、貿易摩擦の解消の問題でございます。  私も冒頭に申し上げましたが、ことしは昨年にも増して貿易摩擦が激化するという雲行きではないかと思います。五月初旬ですか、東京でサミットが開かれます。日本の巨額な貿易黒字、今約五百億ドルと言われておりますが、これに対する各国の批判をどのように和らげていくかということが非常に重要になってくるのではないか。その際、必ずまた農産物の問題で自由化あるいは枠拡大等というようなとばっちりが農林水産省の方に来るわけでございます。そういうことを考えますと、その原因は我が農林水産省の方にあるのではないといいながら、国全体として対応しなければならないとなれば、農林水産省もその一員としてしっかりと対応しなければいけないと思うのでございます。  この問題について特に大臣は、きょうはいないのですが、あしたまた大臣が来たときにお聞きしたいのですが、大臣は、「日本でほとんど生産してないものや競合しないものについては身ぎれいにして、この際、本当に守るべきものを見極め、勇気をもって対処していく必要がある」というようなことを農政局長会議で言っている。これに対して、新聞等あるいはまた関係の皆さん方は、これは相当市場開放に積極的に、貿易の自由化に積極的に踏み込んでいくのではないか、これは今までの大臣にはない強い意思がここにあらわれているのではないかというように論評したりしている方がおるわけであります。  次官としては、大臣と夫婦みたいなものでございますから、しょっちゅうお話をしながら、この問題についてはどういうふうに受けとめておられるのか。また、サミットを迎えて、貿易摩擦の農産物の自由化、枠拡大の問題について、どういう決意でその日を迎えるかということについてお聞きをしたいと思います。
  199. 保利耕輔

    保利政府委員 農産物の市場開放問題にどう取り組むかという大臣に対する御質問でございますけれども、かわりましてお答え申し上げたいと存じます。  我が国は、その国際的な立場から、一層均衡のとれた国際経済関係の形成に努めていくことが現在非常に重要な課題となっておるわけでございます。  また一面で、農業国民生活にとって最も基礎的な物資でございます食糧というものを供給するだけではなくて、国土そしてまた自然環境保全など極めて重要な役割を果たしておるわけでございます。さらに、地域経済社会の健全な発展を図る上で、国土の均衡ある発展という観点から考えてみましても、地域経済社会が健全でなければならない、ここで果たしている農業役割というのは非常に大きいと考えております。  したがいまして、農産物の自由化の問題につきましては、片面では関係国との友好関係に留意をしながらも、片方で我が国農業の健全な発展、この両面の調和を図りながら、国内需給動向を踏まえながら適切に対処してまいりたい、このように考えておるわけでございます。  それから、先生から御指摘のございました大臣の善言葉の「身ぎれいにして」ということにつきましては、先ほどの御答弁の中では、もう今残っているものは本当に日本にとって重要なものである、そういう認識だというふうに大臣も考えておられると私は考えております。
  200. 武田一夫

    武田委員 食糧庁長官、おいでですね。  食管制度のあり方につきまして、またるる言われるようになりました。ことしは食管制度についていろいろな面で中身が検討されるときではないかということでございますが、長官としては、この食管制度についてどういう点を今後どのように中身に手を加えていきたいということで今進んでいるか、もし差し支えなかったらポイントだけでもひとつお聞かせ願えればと思います。
  201. 石川弘

    ○石川政府委員 現在いろいろな方面から食管のあり方についてのいろいろなお話があるわけでございますが、一つは、御承知のように四年連続の不作の後で豊作が二年連続して参りまして、流通の状態がかなり変わってきたというようなことが契機がと思います。  しかし、この米の制度は、やはりいつも豊作が続くということだけではございませんで、いろいろと需給の状態が変わってまいりますし、何と申しましても、現在、そのままの状態で放置をしますと需要を上回るような生産が起こるというような状態の中でのことでございますので、私ども、そういう足らないとき、余っているときという両方に対応した運用をしなければいかぬという前提で、御承知のように、五十六年度の法改正でいろいろと制度の組み立て方等にも変化をつけまして、政府米、自主流通米両方を通じて計画的に運用していくというようなこととか、流通につきましては、物を動かすことを抑え込むというのではなくて、集荷の業とか販売の業、そういう業を規制するという形でコントロールしていく、そういうように改めたわけでございます。  毎度申し上げますように、制度を改正しました後、御承知のような連続の不作の中で、どちらかといいますと足らないものを公平に分けるというような従来の考え方をせざるを得なかったような状況がございましたが、二カ年の豊作の中でかなりゆとりもとってこれる、そういうゆとりの中では、当然のこととしまして、需要者のいろいろな要請にこたえて極力需要に応じた供給ができるようにというような改正をすべきだと思っておりました。それで、昨年、御報告いたしましたような集荷、政府の売り方、それから卸小売の売り方というようなところに競争的な要件を入れましたいわば流通改善措置をとったわけでございます。  私ども、そういうことをより進めてまいりますことが現在のような事情に適合した食糧管理を進めるために必要だと考えておりますが、いろいろ論議をされておりますように、例えば、政府が責任を持って管理をするというような体制をかってありましたような間接統制的手法でやったらどうかというようなお話につきましては、私ども、過去のいろいろな行政経験、特に米と申しますのは、御承知のように生産に変動はあっても需要というのはほぼ一定というようなこと、それから貯蔵がきくけれども新古でいろいろと需要差があるというようなことで、商品として投機的に扱えば大変おもしろいということから、過去においてもいろいろなことがあったわけでございますので、そういうようなことを誘導するようなことでは、生産流通消費、その三つをなかなか責任を持ってコントロールできないということもございます。それから、一昨年の秋でございますか、衆参両院で決議をいただいているというような経緯もございますので、私ども、今与えられました法律、制度の中で、より弾力的に対応できるようなことが大切だと思っております。そういう考え方に基づいて今後の展開を考えていきたいと考えております。
  202. 武田一夫

    武田委員 羽田大臣も食管の弾力的運用云々ということを言われておりますね。その内容というのは長官のお考えになっているような方向のものかどうか、これは重要な問題ですから、その点をひとつ確認をしておきたいと思うのですが、どうですか。
  203. 石川弘

    ○石川政府委員 昨年秋の流通改善等の場合にも、直接大臣という形で御相談したわけではございませんけれども、いろいろと御相談をしました際に、そういう運用等について大変積極的に御理解をいただいているわけでございます。  いずれにしましても、そういう今与えられた基本の中でどうやったらうまく生産流通消費を誘導できるかというようなことで御相談をしてまいった経緯もございますし、そういうことをもとになさって弾力的とおっしゃっていらっしゃると私どもは考えております。
  204. 武田一夫

    武田委員 きょうの新聞を見ますと、「自主流通米にも入札制 六十一年産から本格採用」という記事がトップで出ております。これはそのとおりでございましょうか。
  205. 石川弘

    ○石川政府委員 けさほど実は衛藤先生からその趣旨のことを御質問いただいたわけでございます。私、けさ早く出てまいっておりまして、全然その記事も見ておらなかったわけでございますが、何か私の顔も出ておるようでございますけれども、全くそういう事実はございません。  衛藤先生にもお答えしましたように、これは多分、政府米の売り方に競争的な方法を入れたことに伴って自主流通も何かそういうことをするのではないかということで書いたらしゅうございますが、政府は一本価格でしか売らないというやり方をしておりましたので、需要の様子を見るために、これは入札ではございませんが、価格を提示させて物を売るという方法を去年の流通改善に入れたわけでございます。それが去年の暮れからことし一月、二月にかけてだんだん実行されてきたわけでございます。  自主流通の建て値はそもそも売り手と買い手が合意をすればかなり弾力的な方法でできるという大前提があるわけでございまして、御承知のように、今の場合は、全国流通をしますようなものは売り手、主として全農でございますが、全農と、買い手であります全糧連なり全米商連なり、そういうものとの間で相対で決めている。ただし、過去においてもそうでございますが、余ったような玉が出てまいります場合に別途またそういう値段を設定するというようなことがございまして、その決め方自身は両者が合意をすればかなり弾力的にできるわけでございまして、何か特別、入札ないし、人によっては正米市場みたいなことを言う方もありますが、そんな形でやらなくても弾力化はできる。  この問題は、自主流通の勉強をいたしました際に、建て値のあり方等について今後もよく勉強しようということになっておりますので、基本的には両者がいろいろと相談した上で私どもの方へ相談に来ることでございます。きょうの記事で私は一番びっくりしましたのは、食糧庁が決めたと書いてありますが、本来食糧庁が決めることではございません。そういう値段のつくり方について今後いろいろ相談に来ました場合、私どもは、自主流通といえども価格の安定性ということは必要なわけでございますので、そういう安定性を加味した上でいろいろなやり方があるのかどうか、今後相談には乗るつもりでございますが、食糧庁が何らかの方式を決めてこれをやらせるということではございません。
  206. 武田一夫

    武田委員 何せ経済紙としてのトップの新聞ですから、こういうのは本当に敏感でございまして、そういうことで恐らく予想記事が少し拡大解釈でこうなったものだということでありますが、その点はやはりどこからか何かそういうものの材料が出ていったんじゃないかという気がしてならないものですから、一応確認しておきたい、こう思ったわけであります。  時間も四、五分残っていますが、またあしたもありますので、この辺で私の質問を終わります。大変にありがとうございました。
  207. 大石千八

    大石委員長 神田厚君。     〔委員長退席、島村委員長代理着席〕
  208. 神田厚

    神田委員 羽田農林水産大臣、御就任おめでとうございます。また、大変御苦労さまでございますが、ひとつよろしくお願いを申し上げます。  限られた時間でありますが、以下、新大臣に対しまして農政基本の問題につきまして御質問を申し上げさせていただきます。  まず最初に、羽田農林水産大臣は、今日まで農林水産委員長初め、党の農林部会長、米価対策委員長、林政調査会長等を歴任をいたしまして、自民党内きっての農政通であることは自他ともにお認めになるところであると思うのでありますが、農林大臣は現在の農林水産業を取り巻く環境をどのように把握をしておられるのか。今回の農林水産大臣所信表明を見る限りでは、ここ数年来と全く同様の作文といいますか、所信が記されております。私は、大臣の真意がどこにあるのか、ちょっと不明でありまして、この所信表明自体につきましてはまことに不満の多いものでありますが、特に大臣はどういうことに農政中心を置いて進めようとしているのか、忌憚のない御意見をいただきたいと思うのであります。
  209. 羽田孜

    羽田国務大臣 今お話がございましたように、私自身皆さんと一緒に、それこそ長いことこの問題をずっと扱ってきておりますし、また政府与党のそちらの方の責任者としてこの問題を扱ってきております。そういう意味で、農政というのはやはり一つの継続であり、積み上げであるというふうに考えております。よく何々農政と言うのですが、私はどうも自分の羽田農政と言うこと自体、余り好きなあれじゃないので、今日まで積み上げてきておるものを前進させ、また今問題があるとするならば、そういったものを一つずつ展望を開いていくということにとどまるのじゃないかなというふうに思っております。  そういう意味で、何といっても総合的な食糧自給力維持強化、これを基本としまして、我が国農林水産業体質強化、これを図るとともに、農山漁村、これの活性化、これを進めることが重要であるというふうに考えております。具体的には、技術あるいは経営能力にすぐれた中核的な担い手というものを確保していくということがやはり基本でありましょう。それから、生産基盤、これの計画的な整備というもの、それを踏まえた上で、その上に新しい先端技術、いわゆるバイオテクノロジー等を含める先端技術、あるいはニューメディア、こういったものを取り入れていくことであろうというふうに考えております。
  210. 神田厚

    神田委員 私は一つ御提言を申し上げたいのは、日本の農業状況がどういうふうになっているのかというのは、この東京にいてここから見ていたのではわかりませんから、やはり全国各地の農業状況がどうなっているのかということについて、大臣のふるさとももちろん農村地帯でありますが、やはり全国の農村地帯を少し歩いていただいて、現実に地方においてどういうふうに農政展開をされて、農民はどういうふうに今の農業のことを考えているのか、また、農林水産大臣を初め農業関係者に何を訴えようとしているのか、こういうことをひとつ、歴代の大臣なかなかそういうことは余りやられませんでしたが、ひとつ全国を少し歩いてみて生の声を聞いていただきたいと思いますが、いかがでありますか。
  211. 羽田孜

    羽田国務大臣 先ほども申し上げましたように、従来から私こちらの方の関係をしておりましたので、折がありますと全国各地に出かけていきましていろいろな人たちとお話をしましたり、また皆様と一緒に現地を見、またいろいろな皆さんとお話し合いをする、そんなことをずっとやってまいりました。ただ、今立場は変わっておるということ、そういうことで、言われる方もあるいは今までとは違った見方をしながらお話しになるかもしれません。そういうことで、時が許せば私自身現地に出向いていくこともしてみたい、これはもうお説のとおりであります。
  212. 神田厚

    神田委員 私がこういう発言をしましたのは、農林水産省の次官をやっておりました渡辺文雄さんが栃木県で県知事になられました。そのときに一番先にやりましたことは、栃木県の市町村を全部、これをかなりの時間をかけまして訪ねて歩きまして、その市町村が持っている問題は一体何なのかということを全部聴取をして、今度初めてのそういう予算の中で、その市町村が要求をしている予算の中で一つは実行するというようなことをやりまして、かなりの現地の要望を組み入れた政治をやったということで非常に評価もされておりますし、市町村あるいはその住民も喜んでいる。  こういうことから考えますと、やはり百聞は一見にしかずでありますから、そういう意味ではぜひともそういうふうな形で大臣自身が、中央官庁の大変忙しいスケジュールはありますけれども、できるだけ農山村、漁村を回って現状をよく把握をしていただきたい、このようにお願いをしておきたいと思います。  ところで、農林大臣は農林水産大臣就任の記者会見で、自分は農政のタブーに挑戦をするのだ、こういうことを言っておられました。そして、その見直しを図るということでありますが、どうもよくわかりませんのは、農政部門のタブーというのは一体何なのか、こういうことで、私ども一体何を言おうとしているのかというふうに思っているのですが、いかがでありますか。
  213. 羽田孜

    羽田国務大臣 これは何というのですか、日本の農林水産行政というものをともかく一つの展望を開いていきたい、そしてそのために何か問題があるとしたら、これに対して、何かをタブーということでなくて率直にそういった問題について追求し、また話し合っていきたいという気持ちでございまして、これは特別に何を具体的にということを念頭に置いて申し上げたわけではないわけであります。  いずれにしましても、一つの流れの中に、固定的な観念にとらわれることなく、やはり柔軟にいろいろな問題について率直に話し合いながらそういうものを打開していきたいという気持ちのあらわれであるというふうに御理解いただければありがたいと思います。
  214. 神田厚

    神田委員 私どもは、今農政が大変いろいろな意味で追い込まれているといいますか、大変その環境が厳しい状況にあるところでありますから、タブーに挑戦をするということが逆の意味で農政活力を失わせるようなことになってはいけない、あるいは行政のペースから外れてしまうようなことで農業者自身が苦労するようなことであってはいけないというふうに思っておりますので、今後それぞれ大臣の方から具体的な提案が出てくるわけでありましょうからそのときに論議をしたいと思いますが、今まで推進をしてきた農政というのはそれなりに農林省の皆さんも行革やその他の中でいろいろ言われながら頑張ってきた部分もあるわけでありますから、その辺のところはひとつ慎重に御提言をいただきたい、このように思っております。  さて、次に保利政務次官にお尋ねをいたします。政務次官としてやはり大変厳しい農業の部門を担当するというわけでありますが、お二人、大臣も政務次官も非常にお若いし、そういう意味では多くの人たちが、この若いコンビで何か新しい農政推進してくれるのではないか、希望のある農政をつくり上げてくれるのではないかというような期待も非常に多いわけであります。その辺いかがでありますか。
  215. 保利耕輔

    保利政府委員 このたび大臣のもとで政務次官を務めさせていただいて、農政についてさらに勉強させていただくという大変いい機会を与えられまして、私もありがたく存じておるところでございます。  今、羽田大臣からお話がありましたように、柔軟な頭をもって農政に対応していかなければいけないというお話でございますが、時代がどんどん変わっている中でそれに対応していく行政というものが必要なんじゃないか、このように思っておるわけであります。しかし、行政というものは非常に広範で、しかも大きいものでございますから、簡単にかじが切れるというものではないということは私も承知をいたしております。しかし、大臣がいつもお話になっていらっしゃるごとでございますが、何か新しい方向のきっかけをつかむことができれば、こういうお話をしておられるのを私はよく耳にしております。そういったことを外しまして私は誠心誠意大臣をお助けをして、時代の変転をにらみつつ新しい農政の勉強をしてまいりたい、大臣をしっかりお助けをしてまいりたい、こういう覚悟でございます。
  216. 神田厚

    神田委員 ある防衛庁の政務次官は在任中に百何十カ所の基地を歩いたとかという話があります。大臣に先ほど御提言を申し上げましたと同じように、政務次官にもできるだけ多くの全国の農山漁村の現状を御視察いただきまして、それらの人々がどういうふうな考え方を持って、日本の農業にどういうふうな要求といいますか要望といいますか、そういうものを持っているのかというのを、ひとつじかにたくさんの機会にそれをお聞き取りいただきたいということを同じくお願いをしておきたいと思います。  次に、六十一年度の予算問題につきまして大臣に御質問を申し上げます。  所信表明によりますれば、昭和六十一年度予算は「各種施策について優先順位の厳しい選択を行いつつ、我が国農林水産業に新たな展望を切り開いていけるよう、必要な予算確保を図った」こういうふうに言っております。しかしながら、これが予算に具体的にどのように反映されているのか、優先順位の厳しい選択を行いつつ予算編成にその特色を出したということでありますが、それらの点につきましてちょっと御説明をいただきたいと思います。
  217. 羽田孜

    羽田国務大臣 まず農林水産予算につきましては、厳しい財政事情のもとで、農林水産業体質強化を図り、国民農林水産物安定供給を図る、これを基本として必要な予算確保を図り、各般施策推進したいというふうに考えております。  具体的に、農業につきましては、まず第一に、土地利用型農業体質強化を目指した構造政策推進するために、特定土地改良工事特別会計制度拡充などによりまして農業基盤整備事業拡充等を図ろうということであります。これは御案内のとおり財投の方から少し金を持ちまして、国費の方では確かに減っておりますけれども事業費の方は伸ばしたということであります。それと構造政策推進会議、これを設置いたしまして経営規模拡大を図るための施策推進することといたしております。  第二に、需要動向に応じた生産性の高い農業展開を図るために、水田利用再編の第三期対策推進するとともに、新地域農業生産総合振興対策及び畜産総合対策の充実を図ることとしております。また、農業者の自主的な創意工夫を生かしつつ、農業経営基盤の一層の強化を図るため、農業改良資金制度、これの拡充も図ろうといたしております。  第三番目に、技術開発推進による飛躍的な生産性向上をひとつ図ろうということで、先ほども申し上げましたバイオテクノロジー等の先端技術、これの開発推進するとともに、民間における技術研究推進するため、生物系特定産業技術研究推進機構、これを設立することにいたしております。  なお、今日、情報化社会、情報化時代というものを迎えております。そういうことで、農村に対しても情報等をきちんと確保する、これがこれからの新しい農業を進めていくのに必要であろうということで、グリーントピア構想、こういったものについても整備をしていこうということで事業を進めようとしております。  次に、林業につきましては、森林林業木材産業をめぐる諸情勢に対処して、その活力を回復させるために、森林林業木材産業活力回復緊急対策、この事業をやろうということで、これは五年間の計画をつくり、六十年から実は始めたところであります。  水産業につきましては、我が国の周辺水域の漁業振興、これがやはり一番重要であろう。特に二百海里問題が定着したときにこのことは一番大切であろうということで、新たに生み出し、しかもそれを育てる漁業というものをひとつしていこうじゃないか。栽培漁業振興のためにマリノフォーラム21、これを推進しようとしております。また、漁業経営をめぐる諸情勢にかんがみまして、漁業経営再建資金の創設を初めとする水産業経営対策、これの推進を図ろうといたしております。  厳しい予算の中でありますけれども、こういった問題に重点的に予算を配分し、少しでも先の明るい農林水産業というものへひとつ道を開いていきたい、このように考えております。
  218. 神田厚

    神田委員 昭和六十一年度予算は対前年度比九五・二%、昭和五十八年以降連続大幅な引き下げ予算であります。予算内容も、食糧管理経費を切り詰めてどうにか編成にこぎつけたというのが実情でありますが、来年度以降どういう方針でこの予算編成をするのか、それらにつきましてちょっとお考えをお述べいただきたいと思います。
  219. 羽田孜

    羽田国務大臣 農林水産予算は、国民の生活にとりまして最も基礎的な物資である食糧の安定供給にかかわる重要な予算でございます。そういう意味で従来からその確保に最大限の努力をしてきたわけでございます。そこで、厳しい財政事情のもとで五十八年度以降残念ながら先ほど来御説明しておりますように減額してきておるということでありますが、しかし、内容面におきましては極力予算重点的かつ効率的な配分に努めようということで、先ほど申し上げたようなことで配分をしてきております。  ただ、六十二年度以降の農林水産予算につきましては、ちょうど現在六十一年度の予算を国会において御審議いただいておるということでございますので、今予断を持って申し上げるということはできないわけであります。ただ、基本的には体質強化と農山村に活性化を図る、この基本、原点に立って私どもはこれから六十二年度に向かっても進めていかなければいけないというふうに考えております。
  220. 神田厚

    神田委員 この予算編成問題は、私どもの委員長が本会議の代表質問の中で、前大臣がつくった予算で新大臣が今後この予算のいわゆる論議をしなければならない、これは行政の流れといいますか、そういうものからいって大変問題のあるところだということを指摘をしたわけであります。我々も、前大臣がつくった予算羽田大臣が今度責任を持ってこれを審議をし、そしてこれを執行していくというふうなことでありますから、これらの問題は、ここに非常に問題が残っているというふうには思っているのでありますが、いずれ予算審議の中でもう少し具体的にそれらの問題についても言及しなければなりませんが、どうでしょうか、衆参同時選挙なんという話があります。六十二年度予算はぜひとも現大臣が、全然予算も一回もつくらないでやめてしまうなんということもなかなかあれでありますから、少し長く農林水産大臣をやっていただきたいと思うのでありますが、同時選挙についてはどういうふうにお考えでしょうか。
  221. 羽田孜

    羽田国務大臣 前大臣がつくられた予算という御指摘でありますけれども、先ほどから申し上げておりますように、これは政権与党という立場で、今ここにおります玉沢部会長なんかと一緒に、この予算そのものをつくり上げるときにも私どもも実は一緒に相談にあずかりながら、しかも毎日それこそ徹夜しながらこれをつくり上げてきたということで、当然我々与党の者であったという立場からも責任は持たざるを得ない。しかもその衝にあった者として、さあ、あの予算、おれ知りませんよということじゃ済まないということ、この責任は感じております。  なお、同時選挙につきましては、これはまさに私は前任は党の総務局長ということでありまして、選挙の方を専ら扱っておったのですけれども、同時選挙というのは、これはこの前のときにはちょうど大平さんが不信任に遭ったということがありましたから、そういう中で偶然行われたんじゃないかなということで、これは策してやれるものではないということでございます。これは私から申し上げる筋合いのものではないと思いますし、これはもう少し高い次元の話ではないかというふうに考えております。
  222. 神田厚

    神田委員 ニュアンスとしては賛成じゃないということでありますから、閣議で強力に御発言をお願いしたいと思います。  さて、この予算の問題に戻りますが、予算全体に占めます補助金の比率が六五%と非常に高いわけであります。しかしながら、補助金の問題は引き続き削減の傾向が強いわけでありますから、農林水産予算はまさに縮減の一途をたどらざるを得ないというふうなことでございまして、農林大臣は農林水産省の補助金行政、これをどういうふうに考えているのか、また、今後予算を減額しない方法として、極端な減額を避けるような方策として何か考え方を持っておられるのかどうか、その辺をお聞かせいただきたいと思います。
  223. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 農林水産業につきましては、自然条件に左右されやすいとか規模が零細であるとかいうことで、全国的な視野に立ちましてこういうものを調整していくという点からいいますと、補助金というものは重要な政策手段というふうに我々は心得ているわけでございます。  一方、補助金につきましては、ただいまも御指摘ありましたように、こういう厳しい財政事情の中で臨調等からいろいろと指摘も受けているわけでございますけれども、我々といたしましては、整理合理化すべきものは相当やってきておりまして、現在残っておりますものにつきましては、いずれも生産基盤整備でございますとかあるいは農林水産業の構造の改善あるいは先進技術開発というようなことで、将来の農林水産業にとってかけがえのない補助体系だと心得ております。今後とも厳しい財政事情というものは当分続こうかと思いますけれども、農林水産行政におきますこういう補助金の政策手段としての有効性というものを十分認識しながら、大臣の指示も受けて、農林水産業体質強化のための必要な補助金の確保につきましては全省挙げて頑張りたいと思っております。
  224. 神田厚

    神田委員 次に、六十一年度予算編成で大変問題になりましたものに良質米奨励金の問題があります。結果としましては平均七・七%の引き下げが行われたわけでありますが、大臣は当時自民党の責任者として財政当局と折衝に当たったというふうに伺っておりますが、この結果をどのように受けとめておられるのか。この問題は臨時行政調査会でも指摘されています事項でありまして、今後とも尾を引くものと思われますが、大臣の立場としてどのように対処しようとしているのか、お伺いをしたいと思います。
  225. 羽田孜

    羽田国務大臣 良質米奨励金は、良質米の生産を奨励するために五十一年に創設されたものでございまして、需要に見合った良質米の安定供給を図る上で一つの役割を果たしてきたというふうに私ども考えております。  ただ問題は、最近良質米が供給過剰基調となっており、現行の良質米奨励金水準を維持することが需給の不均衡をさらに拡大するおそれがある、そういう考え方もございまして、自主流通米の健全な発展需要に見合った良質米の安定供給を図る、この観点から、六十一年度の良質米奨励金を七・七%縮減をしたということでございます。ですから、これはただ臨調ですとかあるいは財政当局から指摘があったからやったということだけではなくて、やはりこのままいきますとむしろ問題があるかなという中で措置がされたものであるということでございます。私どもとしてはこれから、この縮減はいたしましたけれども、まだ良質米奨励金の果たす役割はあろうというふうに考えております。
  226. 神田厚

    神田委員 大臣が農林水産部会長のころなどには良質米奨励金は基本米価の一環であるからこれを守っていけというような、そういう形での主張の方に重きがあったかと思うのでありますが、私どもはこの問題につきましては、良質米奨励金のこういう削減というものは、そうでなくても米価が据え置かれているような状況の中ではやはりどうしても必要なものであるというふうに考えておりますから、これらについては特にそういうことのないように強く要望したいというように思っております。
  227. 羽田孜

    羽田国務大臣 今申し上げましたように、この良質米というものの制度といいますか、良質米というものは需給に合ったもので健全に発展していってもらいたいということでこの奨励金をつけてまいったわけでありますけれども、もう御案内のとおり良質米が量の面である程度ふえてきたということ、そういうことで実は一昨年あたりからこの問題が議論をされてきておりました。しかし、不作であったというような事情がありましたものでございますので、またもう少し時間をかけて議論をしよう、そして昨年の出来秋というものを見詰めてそれから措置をしようということで、やはり相当な量ができたというようなことを踏まえましてこういう措置をとらざるを得なかったということであります。  しかし、私どもは、良質米奨励金というのは全部もういいのだということじゃなくて、やはりそれなりの機能、役割をまだ果たしておるわけでございますから、このことについて、所要のものについてはこれからも確保していきたいというふうに考えております。
  228. 神田厚

    神田委員 次に、構造政策につきましてお話を申し上げます。  先ほどの予算優先順位の中で、構造政策を非常に大事にするのだ、こういうことでございました。従来からどの大臣もこれらのことについては強く主張をしてきたことでありますが、羽田大臣農政推進構造政策の果たす役割、これをどのように理解をしているのか、価格政策、生産政策のあり方と関連して御答弁をいただきたいと思うのであります。
  229. 羽田孜

    羽田国務大臣 我が国農業体質強化生産性向上を図っていくためには、農地の流動化を通じた中核農家育成経営規模拡大農用地有効利用地域農業の組織化など構造政策を積極的に推進し、規模が大きく、しかも生産性の高い農業構造を確立していく、このことが非常に重要なことであろうというふうに考えております。この場合、生産政策あるいは価格政策につきましても、構造政策の円滑な推進方向との調和が保たれるよう、その適切な運用を図っていきたいと考えております。
  230. 神田厚

    神田委員 構造政策推進で問題になりますのは基盤整備でありますが、この点につきましては、第三次土地改良長期計画の進捗率は昭和五十八年度から六十一年度四年間でわずか二一・九%であります。この計画の完全達成にまことにほど遠いものでありますが、こうした事業のおくれは構造政策推進に大きな障害となっているわけであります。今後進度の向上にどういう対策を講じるのか、この点について御答弁をいただきたいと思います。
  231. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 若干数字にわたる点もございますので、私から答弁させていただきます。  ただいま御指摘のように、確かに第三次土地改良長期計画の進度率、現在六十一年度予算を見込みましても約二二%でございます。五十八年から六十七年まで、十カ年でございますので、えらい低いように見えるわけでございますが、若干御説明いたしますと、毎年ある一定の伸び率を見込んで事業の進捗を考えておりますので、いわば複利計算されていくわけでございますので、二二%というと、四年たって二二%じゃ半分近く来てもまだその程度かというふうな御疑問も当然でございますが、その点もひとつ御考慮いただきたいと思います。  ただ、いずれにいたしましても、五十五年度以降公共事業予算が抑制されておりまして、そのことによって非常におくれぎみであることは、これはもう全く御指摘のとおりでございます。そのために各地で受益農民の方々に大変御迷惑をおかけしている点、私ども大変遺憾に思っているわけでございます。  何ゆえおくれるかということでございますが、基本的には今申し上げましたように公共事業費、国費の伸びがないわけでございますが、ただ国費が伸びなくても事業費を伸ばす方法はいろいろあるわけでございまして、昨年それから本年、六十年度、六十一年度とられました補助率のカットも、いわば国費を一定にして事業量を伸ばす方法でございましたが、私どもの土地改良事業等につきましては一般会計事業でやっておりましたためにその恩典に浴さなかったわけでございます。そこで、今後は国費は一定でも事業量は伸びるような仕組みに改正すべく現在法案を国会に提出いたしまして、御審議をいただいておるわけでございます。この方法によりますと、例えば六十一年度予算におきましても、国費は九八%程度でございますが、事業費の方は一〇二%というふうに伸びております。ただ、まだこの程度のことではおくれがカバーできるとは考えておりません。さらに何か有効な方途はないか、今後さらに検討してまいりたい、かように考えております。
  232. 神田厚

    神田委員 時間もありませんので、あと二、三御質問申し上げます。  農産物の自由化問題でございます。トマトジュース等の十三品目の自由化問題については、去る五十九年四月の山村・フロック会談で、米国はガット二十三条協議の手続を二年間凍結する、こういうことで合意をしたところでありますが、その期限がいよいよこの四月に来るわけでございます。  そこで、大臣にお伺いしますが、私ども大臣と一緒にアメリカの方を視察しましていろいろな意見を聞いておりますが、大変厳しい状況であります。米国側の姿勢は、米国農業の不況と新農業法における競争原理の導入を背景にさらに強く我が国に対しまして市場開放を要求してくるものと考えられます。一方、大臣の方の考え方は、一月二十日の地方農政局長会議の席で「日本でほとんど生産してないものや競合しないものについては身ぎれいにして、この際、本当に守るべきものを見極め、勇気をもって対処していく必要がある」こういうふうに発言をされたと言われておりますが、具体的にどの品目を想定されてこのような発言をなさったのでありますか。また私は、これまで守ってきた十二品目については地域農業にとりまして大変重要な作目であると認識をしておりますが、大臣の真意をお伺いしたいと思います。
  233. 羽田孜

    羽田国務大臣 御指摘のございました点、実は先ほど来申し上げておりますけれども、この身ぎれいにという話は記者会見で申し上げたことがあります。それから、あと農業者の団体の大会のときにも申し上げたことがありますけれども、これはあの時点で今これからどうこうするということよりは、むしろ過去にあった、そしていろいろな指摘がございました、こういうものもあったのかというような実は質問があったりなんかしました。何だ、そんなものまでまだ日本は持っていたのかというようなことで指摘をされます、こういうものについては身ぎれいにしようということを申し上げたわけでありまして、基本的に何をどうこうするというものでないということ、これは御理解をいただきたいと思います。  なお、十三品目につきましては、これは今御指摘がございましたとおり、五十九年の四月、アメリカにおきましてオレンジあるいは牛肉、こういったものの措置をしましたときに、十三品目についても一応の決着を見て休戦をしようということになっておりました。ただ、昨年の十二月の中ごろですか、この問題につきまして、一応今までの経緯、その後の動き方、こういったものについてレビューをしたようでございます。そういうものを踏まえながらこれから私たちは議論してまいりますけれども、今御指摘がありましたように、それぞれの産品、この十三品というものは、地域の特性ですとか、いろいろな大切な問題を含んでおります。そういうことで、私どもは基本的にはそういった我が国農業というものに悪影響を及ぼさないように、現実的な対応というものをしていきたいというふうに考えております。
  234. 神田厚

    神田委員 身ぎれいという言葉は日本語で非常に微妙なニュアンスを持っているわけでありますが、こういう微妙な日本語のニュアンスをアメリカの人たち理解をするかどうかはなかなか難しいことでありますから、ひとつその辺のところは十二分に、誤解のされないような形でお進めをいただきたいということを要望しておきます。  それじゃ最後に、日米の漁業問題につきまして水産庁長官にお伺いをいたします。  米国は、昨年来我が国のサケ・マス漁業に北米系のサケ・マスがわずかに混獲されることを理由に日本のサケ・マス漁業の禁止、縮小を求め、もし要求に従わないならば、本来割り当てるべき米国二百海里内の底魚等の日本への割り当てを行わない、こういうことを言っております。米国からの対日割り当ては、日本側のジョイントベンチャーの中止、解除があり、また国内の強い姿勢もありまして、これでようやく六万トンのクォータが放出され、当面何とかしのぐことができるのでありますが、四月以降の操業は皆目見通しが立たないのが現状であります。三千万尾のサケ・マスのうち、わずかに四十万尾の混獲を理由にする日本のサケ・マス沖取りの実質全面禁漁要求はまことに不当なものでありまして、また関係のない底魚を人質にして、魚質にするのですか、強要する姿勢は全く理解できないところであります。本問題につきましては、政府は安易な妥協はすべきではないというふうに考えます。安易な妥協をせずに、日米関係の将来に禍根を残さないように政府の厳然たる対処を求めたいと思うのであります。  またもう一つ、日ソの漁業問題につきまして御質問申し上げますが、シェワルナゼ外相の訪日など日ソ関係は良好になっているにもかかわらず、日ソの漁業交渉はまことに厳しい状況にあります。去る十五日に中断に至ったのでありますが、ソ連水域での漁業を期待していた沖合底びき、底刺し、はえ縄等の漁業は一月以来操業を中止しており、乗組員の給料の支払いなどにも支障を来すような状況になっておるわけであります。交渉の早期妥結が望まれるところでありますが、我が国漁業に対します操業条件の規制強化、百億円に上る漁業協力金の要求など、交渉は今後も難航が予想されます。交渉の再開の見通し及び妥結に至らない場合の暫定操業の確保につきましての考え方をお伺いしたいと思うのであります。  また当面、国内対策として、国際規制関連資金の融通、利息、借入金の償還棚上げなどを早期に実施すべきであると考えますが、御答弁をいただきたいと思います。
  235. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  日米関係でございますが、現在日米加漁業条約で正当に認められております我が国のサケ・マス漁業の貴重な漁場や漁期を安易に妥協すべきでないという先生の御指摘はまことにごもっともでございまして、私どももそういう心構えで対処をいたしております。  アメリカ二百海里水域における我が国の漁船の操業につきましては、これまた先生御指摘のとおり、これを人質にとってサケ・マスで日本をどうかするなどというのはとんでもないことでありまして、現在までのところ六万トン弱の放出は得ておりますが、さらにこの二つのイシューは切り離して処理されるべきものであって、割り当ては割り当てとして放出するよう引き続きアメリカに要求をしてまいりたいと考えております。  それからソ連との関係でございますが、現在のところ特に次の日取りが決まっておるわけではございませんで、できるだけ速やかにということで、日取りは外交ルートを通じて調整をされるということで、私どももできるだけ早くというふうには思ってはおりますが、ソ連共産党大会によって会議の日程がある種の影響を受けることは避けがたいのではないかと思っております。再開後の交渉、先生御懸念のように極めて厳しい交渉になるであろうということは私どもも同様に考えておりますが、何といたしましても伝統ある北洋漁業を、その存立を維持するために私どもとしては重大な決意を持って交渉に当たりたいと考えております。  それまで、妥結までの間についての問題でございますが、一月の私どもの経験から見まして、暫定操業というのは漁業者の切実な要望ではあろうと思いますが、漁業者がある程度意味のある暫定操業ができるようなアレンジメントは現状では到底ソ連側が受け入れるというふうには考えられませんので、私どもとしては速やかな本格決着ということを目標にして交渉に臨みたいというふうに考えておりまして、それまでの関係漁業者の金繰り上の問題等は、むしろ別途につなぎ融資等の方法で処理をすべく関係金融機関等とも御相談をしてまいりたいと思っておるところでございます。
  236. 神田厚

    神田委員 終わります。
  237. 島村宜伸

    島村委員長代理 津川武一君。
  238. 津川武一

    津川委員 農政問題で大臣に自給率、予算、水田再編対策水産業では対米、対ソ漁業交渉などについて質問してみたいと思っております。  そこで自給率でございますが、先ほどは保利政務次官からすばらしい新しいお言葉をいただきまして、私もそういうこともあるものですかなと思って感心しているわけでございます。  そこで大臣、五十九年度の皆さんの農業白書でこう言っております。日本の食糧の「自給率は、」ここでは自給率です、「三十五〜五十八年度間に九〇%から七一%に低下した。食料自給水準」今度は自給率でなく自給水準、こういう言葉を使っています、「自給水準を供給熱量ベースでみると、わが国では、国産食料による供給熱量は、五十八年度現在で国民一人一日当たり千三百六十一キロカロリーとなっている。これは総供給熱量の二千五百九十三キロカロリーの五割強にすぎず、」数を出してきております、「西欧諸国に比べ相当低い水準にある。」ここでも水準です。「また、西欧諸国では、イギリスをはじめ、年々自給水準が向上しているのとは対照的に我が国では低下傾向にある。」  政府は時には自給率という言葉も使う、かと思うと今度は自給水準、そうしていながら自給率を向上するとは言わないのは何なのか。このことと関連して、今の白書のことはもちろん大臣もそのとおりと思うでしょうが、まずこれを答えていただきます。
  239. 羽田孜

    羽田国務大臣 私ども自給率とあれしませんのは、自給率というのは、国によって耕地面積ですとかあるいは人口の違いというものもありますし、また食生活によっても差異があります。また経済社会事情等によりましてもその持つ意味というものが非常に異なるのじゃないかというふうに思っておりまして、単純に比較はできないのじゃないかなというふうに思います。  今英国がというお話がありましたけれども、日本の食生活の高度化というのは、これは高度化というのか変化というのか、ともかく非常にスピードの速いもので動いております。そういったことで、今日の非常に高度な食生活というものを維持していくとすると、どうしても畜産ですとかあるいは酪農、これを進めていかなければいけない。ということになりますと、この畜産や酪農に対する飼料、特に飼料穀物は我が国の耕地面積では今すぐ確保するということは非常に不可能であろうというふうに思っております。その意味で六十五年の長期見通しですか、これにおきましても、この飼料穀物等のあるいは飼料穀物を含めた穀物の自給率というものは決して今日より高いものにはしておらないということでございます。
  240. 津川武一

    津川委員 そうしますと、羽田大臣自給率の向上を目指すことは国の政治ではない、農政行政でない、こうおっしゃるつもりなのかどうかの問題です。  そこで四全総では、世界の食糧の需給は楽観を許さず、我が国に対しても世界の食糧の需給安定に貢献することがますます求められている、こういうことなんです。そこで国際的に日本が食糧の需給安定に貢献するということは、今みたいに外国からたくさん穀物を買ってくるのじゃなくて。それを減らす、もしくは外国に出してやる分だけの、輸出するような格好にするということが求められているわけでございます。  FAOの調査、そこに届けてありますか。——大臣、そこで黄色の線を引いているところを見てくださればわかりますが、一九八〇年で先進国の食糧の自給率平均が一〇七・二%、発展途上国の平均が九八・九%、社会主義国の平均が九三・一%、日本の五六・九%は何としても異常に低い。     〔島村委員長代理退席、委員長着席〕 ちなみに日本より低いのは、イスラエル、ヨルダン、シンガポール、マルタ、ポルトガル、ニューカレドニア、ボツワナ、アンチグア、バハマ、バーミューダなど十九カ国、この十九カ国はほとんど、都市国家だとか人口が日本の小さい都市にも達していない小さな国なんです。ここだけがこのように自給率が低い。そして今国際関係で食糧の需給安定で日本の貢献が求められているというのです。こういう国際情勢に対して日本はどう考えているのか。  中曽根内閣は、口を開けば国際国家日本の役割を強調する、そして国際社会への積極的貢献を唱えている。とすれば、今食糧の自給率を上げて、外国から輸入するものを減らして日本で賄うのをふやして、できたならば輸出する、こういう体制でなければなりませんが、私が今挙げた数字に対する感想と、この私の質問に答えていただきます。
  241. 羽田孜

    羽田国務大臣 確かに今先生からお話がありましたように、将来、ちょうど「二〇〇〇年の地球」ですか、それからFAOが出しておるのも、およそ人口は今日の一・四五倍ぐらいであろう、それに対して耕地面積はおよそ世界で四%ぐらいだろう。しかもその耕地面積というのは、新しく開発される農地というのは比較的生産性が低いところであろうということで、各国ともそれぞれが農業開発といいますか食糧を確保するために努力をしなければいけないということだと思うのです。そこで我が国としても、いろいろな難しい環境の中にありますけれども、自給力というものをきちんとつけて、そして足腰の強い農業というものをつくり上げていくのが必要じゃないかということであります。  ただ、今先生から御指摘ありましたけれども、先ほど来申し上げましたように、これほど食生活が大きく変わっている国というのは実は余りないということであります。ですから、今の高たんぱくの動物たんぱくというものをもし我々がこれからもとり続けるんだということ、この食生活を変えない限り、飼料穀物を国内で賄うというのは非常に難しいのじゃないかな。主食である米あるいはそれに従たる野菜、果実、こういったものについては一〇〇%あるいは八十数%ぐらいのものを実は占めておる、果物が七十数%になるかと思いますけれども、ちょっと数字の点は御容赦いただきたいと思います。それから魚も加えれば、この魚も大衆魚を含めれば一〇〇%ぐらいやはり賄っておるという状況でございますから、ただ自給率という数字だけで見るのはむしろ危険なんじゃないかな。それより、やはり足腰の強い農業をつくり上げながら自給力をつけていくことが大切じゃないかなというように私は今数字をお聞きしながら感じた次第であります。
  242. 津川武一

    津川委員 そうすると、大臣は自給向上ということは考えない、私、このことを国民に宣伝して、国民とともに自給率の向上のためにこれからも頑張っていきます。  そこで、大臣は食生活が変わった、たんぱく質がどうだと言う。その表を見てごらんなさい。フランスは一二二の自給率です。ここで、フランスの魚の食べ方と日本の魚の食べ方は一対十三、日本が十三。フランスの方は日本よりたんばく質、肉をうんと食べている。そして、ECから日本に輸入を要求されるものはたくさんの食品がある。そういう形で、日本よりも動物性たんぱく質をうんととっているところが一二二で日本が五割ちょっと、こういう点で、国民に向かってもう少し虚心坦懐に実態を話していただいて、農業白書が指摘しているように、四全総が言っているみたいに自給率が低下しているということ、水準でもいい、そこのところを強くやっていかなければならぬということが私が今大臣に要求することです。  そしてもう一つ、国民の世論もまたこうでございます。昨年一月の総理府「食料及び農業農村に関する世論調査」によれば、日本の食糧事情の将来について六四%の人々が不安を持っていると答えております。答えた人の理由として、日本の食糧自給率が低いからという人が六〇%、これは皆さんの言っているこの農業白書にそのまま出ております。もう国民は、多少高くても日本の人につくってもらわなければならないという、これが国の世論でございます。単なる農林行政自給率の向上を忘れてしまうのでなくして、この国民の世論にどうおこたえするつもりか、もう一度答えていただきます。
  243. 羽田孜

    羽田国務大臣 これは、今先生からフランスがというお話がありましたけれども、フランスの面積あるいは耕地面積あるいは人口それから今日までずっとあれしておる食生活内容、こういったものがどだい基本的に違っておる。まさにフランスという国は農産品の輸出国でございます。これはアメリカあるいはカナダ、オーストラリア、ブラジルといった国に次いで大きな輸出国であるということ、この辺からも違うのではないかなというふうに思います。  ただ、私は何も自給率を目指さなくていいと言っているのではなくて、今の食生活というものをこれからも続けていくとするならば、直ちに自給率を上げることは無理であろうということなんです。先ほどもどなたかの御質問にお答えをしたわけでありますけれども、例えば新しい技術なんかを開発しながらこの狭い国土で穀物をつくったりなんかして自給率を高めることは難しい。だとするならば、例えばまさに超多収穫品種というものを何か生み出すことはできないのかあるいは本質のものをバイオテクノロジー等を駆使しながらこういったものによって何とか飼料と化すことはできないのか、こういった問題について我々としても実は真剣に研究をしておるということでありまして、何も自給率は別に上げなくたっていいのだと今の政府が言っているのだということではありません。そういったものを全部含めて自給力というものを高めることがさらに大事ではないかということを申し上げているわけであります。
  244. 津川武一

    津川委員 自給率を上げることは困難だから自給率を上げることはやめたというのですか、困難でも幾らかでも上げていこうというのですか。
  245. 羽田孜

    羽田国務大臣 それは、基本的には自給力を高める中で自給率というものが上がる。ですから、長期見通しの中でも上がるものとちょっと無理だなというものと両方を区分けされておるものというふうに思っております。
  246. 津川武一

    津川委員 自給率のことではやはり数が問題を決定しますので、そういう立場から行政を進めていただくことを強く要求し、次の質問に入っていきます。  予算の問題です。  自給向上を本格的に追求するためには、農業を基幹的な生産部門として位置づけ、思い切った予算措置が必要だと思います。ところが、中曽根内閣の農林予算を見ると、口では農は国のもと、生命産業だとか、きれいごとを並べております。実にうまいです。実際にやってきたのは農業つぶしそのものではないかと思います。六十一年度で四年連続のマイナス、一般歳出に占める農林予算の比率はついに一〇%台を割って九・六。中曽根内閣発足前の五十七年には一兆円以上あった軍事費と農林水産費の差は、その後農林水産予算が年々削られ、軍事費は超突出で伸び続け、わずか四年目で、六十一年度の予算では逆転してしまったのでございます。この事実をどう説明なさるつもりですか。  予算編成に強く参加されたあなただ。軍事費は上げなければならぬ、海外援助費を上げなければならぬ、農林予算を上げなければならぬという議論にならないのですか。そのときに、軍事費が七上げるならばこちらだって一上げるとか二上げるとか、こういう論議でなければならない。財政が厳しいからといって、臨調行革が至上命令だからといって、軍事費が優先だからといって、農水予算が削られるのを黙って見ておったのではないのですか。皆さんは予算編成のときに軍事費はどこが削れるということを話したことはありますか。農水予算はあなたの大事な役人の人たちが営々苦労してやってきた予算で、ここには私はむだはないと思う。それを削るんだ。この予算編成に対して、この減った予算をどう見てどうなさるつもりか。前の大臣の継続だというから、大臣十分答えていただけると思いますが、いかがでございます。
  247. 羽田孜

    羽田国務大臣 防衛費につきましての議論というのは、これは入りますと大変、全然違う次元の方に議論が行ってしまうのです。というのは、よその国というのをこうやって今度比較してみますと、各国とも十何%とか二十何%という予算を軍事費にとっているわけです。やはり軍事というのは国家の安全というものを守るということで非常に大事なものであろうと思います。その中で、確かにもともとのあれがあれですから、そこの分野でとられたということもありますでしょう。それと同時に、やはり何とかひとつ日本の社会資本等を整備しなければいけないという中で国債費なんかが相当かさんできた。これに対する元本あるいは利子等を返さなければいけない、そういう中でこのシェアというのが圧倒的に実は大きくなってきたということで、残念ながら農林水産関係予算が今度はちょうど防衛とひっくり返りになってしまったというのはもう御指摘のとおりであります。  六十一年度予算につきましてはそういう結果になったわけでございますけれども、私どもとしても効率的な配分、これを少しずつでも努めていこうということで、先ほどから申し上げましたように施策の質的な充実を図ろうということで今日まで進めてきております。  おまえたち、これについて手をただこまぬいていたのかという御指摘がありましたけれども、これはもう新聞でも御案内のとおり、大蔵大臣とも夜を徹しながらどこをどうするかということを大変な実は議論をしながら、防衛費についてはもっともっと大きなものの増額の要請があったようでありますけれども、結局あそこでとどめたということであります。
  248. 津川武一

    津川委員 予算は農水予算だけでないのです。予算の中には当然国債費も入る、軍事費も入っている。その中で、あなたたちが予算を決めるんだから、当然軍事費をどうという議論でなければならない、そこのところを政治としてやっているんじゃないか。これからの予算編成に当たってもそういう議論をして正しい予算をつくることを私は要求していきたい。  そこで、質問を続けていきますが、その軍事費、五カ年の中期防衛計画で十八兆四千億円、これを、五カ年計画ちょうど五つで割ったものがことしふやす予算なんです。皆さんのところの土地改良長期計画、どうです。これも閣議決定。防衛力整備計画も閣議決定。そして防衛予算が決定どおり進んでおる。土地改良計画、どうなっています。  第一次計画、第二次の計画では、第一次では一〇四%、第二次では九五・二%、そこで当初計画を大体達成してきたが、五十八年度から始まった第三次計画は、四年目の六十一年度予算、あなたたちのつくった予算が執行されても二〇・三%、そうでしょう。どうして軍事費なら計画どおり一〇〇%やらなければならないのに、土地改良計画、土地基盤整備、今までの質問であれほど大事だと言っているものが二〇・三%。こういう形に対して農水予算を、本当に大臣が乾坤一てき考え直さなければならないと私は思いますが、もう一度重ねて、予算編成予算を練る、予算に対するあなたの態度を伺わせていただきます。
  249. 羽田孜

    羽田国務大臣 私どもといたしましても、厳しい中にありましてもやはりこれだけはどうしても必要だというもの、これを進めていく。それと同時に、私たち決して農林水産というものをこのままだんだんあれしていっていいということじゃないのであって、農林水産というものは今日までもやはり高いウエートの中に置かれていたことは事実であり、またこれからも私たちはそのつもりで予算要求すべきものは予算を要求していきたいと思います。ただ、限られた中でやっていくことでありますから、その中でやはり効率をよくしていかなければいけない。そういうことで、めり張りをつけなければいけないという気持ちで私たちはこれからも進めていきたいと思っております。
  250. 津川武一

    津川委員 揚げ足をとったり言葉じりをとらえるつもりは毛頭ないのですが、軍事費はめり張りをつけなければならなくて土地改良費はめり張りをつけなくていい、こういう気もあるんだよ、皆さんのところに。だからそこのところで一奮発してもらわなければならぬ。  時間がなくなったので、水田利用再編対策に対して一つだけ。  羽田大臣は就任後の記者会見でポスト三期に触れて、転作拡大、奨励金の削減が避けられない、こう言っている。しかも、麦、大豆は金がかかり過ぎて限界だという発言を行っている。あなたは食糧のときに何と言っているかというと、そこのところ、日本でつくれるものは重点的につくっていくと言う。麦は、小麦はこれは日本でつくれるものなんだ。しかもかつては百八十万ヘクタールが三十五、六万ヘクタール。大豆は十三万ヘクタール。小麦もこう減っているのだな。これに対して、食糧自給率の面で一番がなめの作目に対して、麦、大豆は金がかかり過ぎて限界に来た、転作拡大、奨励金の削減は避けられないと言うに至っては、何のところに重点を置いているのかわからなくなったわけです。そこで小麦と大豆を生産量、耕作面積、シェアを上げていく対策を伺わしていただきます。
  251. 羽田孜

    羽田国務大臣 今お話のあったもの、ちょっと私違うと思うのですけれども、金がかかり過ぎるからというのか、ただうんとふやしていくとすれば金がかかり過ぎるとあるいは言ったのか、ちょっとその辺のところ私もつまびらかでないのですけれども、ともかく今大豆について一応私どもが確保しようというものがある程度確保はされるようになってきたということはあります。ですから、なかなか今度それだけをまた進めていこうということでも難しいなということをあるいは申したのかもしれません。  いずれにいたしましても、水田利用再編対策というのは、お米が過剰になってきた、過剰になるものだけをつくっていましても、残念ですけれども自給率も上がるものじゃありません。そういう意味で不足する大豆だとかあるいは麦だとか飼料作物をつくろうということで今日までやってきているわけです。ですから、やはりそういう中で農業再編成というものを進めていかなければいけないんじゃないかなというふうに私どもは基本的に考えております。  ただ、今これをどうするのか、そのレベルというものをどんなふうにするのかという御質問については、これはちょうど今秋に向けて、ちょうど秋ごろに固めようということで農林水産省としては最重要の課題として今検討をしてもらっております。
  252. 津川武一

    津川委員 大豆耕作農民からは、大豆が後退させられるのじゃないかという心配がありますので、秋のその対策を期待して待っています。  次は農機具の安全性についてに移りますが、山形県川西町の須貝さんという方が私のところに見えて、乾燥機で火災が発生し、危うく納屋が火事になってしまいそうなところだった、操作ミスは考えられない、何か構造上の欠陥があるのではないか、ひとつ調べてくれと訴えられました。  その乾燥機、五十三年ごろ購入したもので、大島農機という会社の製作のTHの27という機種です。この方は、毎年丁寧に掃除もし、点検もし、必要な部品を交換するなど非常に大事に扱ってきたのですが、昨年の十月十日午後六時から十二時までの間セットして、三十分置きに注意して見ていましたが、十時ごろ乾燥機が火に包まれてしまったというのです。消防車が何台も駆けつけて大変なことになった。この方は、作業はやらなければならないためにこの機械をやめてしまった、新しい乾燥機を百三十六万円で買わざるを得なかった。そして同じ事故はこの川西町でほかにも二件発生していると言っています。一つの町内で三件も起きるというのは大変なことであります。  そこでいろいろ調べてもらったら、同じようなことが山形県内各地で起こっており、しかもその件数が毎年ふえております。五十七年十三件、五十八年十四件、五十九年十六件、六十年十九件となっております。この状態を通産省と農水省は覚えておりますか。通産省から先に答えていただいて、次に農水省に答えていただきます。
  253. 中田哲雄

    ○中田説明員 御指摘の山形県におきますもみ乾燥機の火災事故につきましては、私どもも承知いたしております。
  254. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 穀物用乾燥機の火災事故でございますが、ただいま先生のお話のございましたように、県の報告でございますと、五十七年十三件、五十八年十四件、五十九年十六件、六十年十九件、こういうようなことで、火災事故がこのところかなり多い、こういう実態を把握しております。
  255. 津川武一

    津川委員 通産省も農水省も覚えてくださって安心しました。  そこで、山形県の調査によれば、事故を起こした機種は、山本製作所の製作したものが九種、大島農機のものが十種類、静岡精機が六種類、サタケ製作所のものが六種類、ほかに三メーカーで六種類、合わせて七メーカで三十七種に及んでおります。  そして、これらの火災事故の発生の原因として、県当局が山形農団連という農民の組織との交渉の中で明らかにしたのですが、それによりますと、昭和六十年分だけで燃料パイプ油漏れが四件、Vベルトのもみ詰まりが四件、バーナーに問題のあるのが五件、点検不備が四件、電気系統の故障が二件、さまざまな原因があるようです。  そこで、先ほどの須貝さんのうちの小屋の火事になるところで、川西消防署が事故の原因について調べたその記録を見ますと、次のようになっております。  当該乾燥機は五十二年に中古で購入したものであるが、定期的に点検整備が実施されており、特に火災の原因となりやすいバーナー部分も清浄に掃除されており、すすなどは付着していない。空気孔の目詰まりによる出火は考えられない。したがって、何らかの原因により、燃焼と燃料の供給バランスが崩れたため不完全燃焼の状態となり、多量の油がたまったため、送風ファンにより霧状となった灯油に火がつき、内部に送り込まれたため、もみに燃え移ったものと思われる。これが消防署の調べた記録にございます。断定的なことは言えないが、どうも構造上に問題や不備があるようでございます。  そこで、政府に対するお願い。  山形県内には循環型のもみ乾燥機だけで現在三万台近く普及しております。全国的に静置型をも含めると百六十万台使われております。特に、大島農機の乾燥機は、これは須貝さんの焼けた乾燥機ですが、十年くらい前はなかなか人気があって、川西町で現在でも十年前のものも使っております。それだけに、まず事故の実態についての全国的な調査を行ってほしい。また、現在報告されている山形の事例について、その構造上の問題も含めて徹底した解明を行ってほしい、こういうことなのでございます。その点検の状況などは、そこに届けました表にもありますように、安全適合の検査を終わっているのが火事を起こしている、これは見られるとおり。そこでこの解明を行ってほしいことが通産省と農水省に対するお願い。  もう一つは、事故に遭った人への補償をどうするのか。二つ目は古い乾燥機などに対して当面の改善措置、例えば不完全燃焼が出た場合油をとめる装置だとか、油がたまった場合機外に出す装置だとか、バーナー上に消火器をつけるなどをメーカーの責任において実施して、火事が、焼けることが起きないように、こういうお願いといいますか要求といいますか、これも通産省、農水省に答えていただきます。
  256. 中田哲雄

    ○中田説明員 もみ乾燥機の火災の原因につきましてはいろいろあるようでございますが、これまでの調べによりますと、御指摘のように燃料がオーバーフローして着火したもの、あるいはバーナーにカーボンが付着しまして不完全燃焼を起こして火を起こしたもの等、いろいろあるようでございます。  これらにつきましては、私ども、もみ乾燥機が油を用いるものだということ、それから納屋などの室内で使用されることが多いということで、従来から安全性の確保にいろいろ注意をしてまいったところでございますが、機械安全化・無公害化委員会というものを設置いたしまして、火災防止、安全対策のための方策などについて検討いただいたわけでございまして、これの報告に従いまして、自動消火装置の装備あるいは燃焼方法の改善などにつきまして関係企業を指導しているところでございます。今後ともこのような指導をさらに徹底してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  なお、補償の問題につきましては、それぞれのメーカーごとに事故の際に機器の無償交換でございますとか、あるいは見舞い金等の手当てをしているようでございます。
  257. 津川武一

    津川委員 農水省に答えていただく前に、通産省、全国に百六十万台ぐらい普及されている、これを全部調査してくれるか。
  258. 中田哲雄

    ○中田説明員 これは事故の原因がいろいろ複合しておりまして、なかなか解明が難しいということもございまして、やはり一件一件、一つずつ解決をしていくということになろうかと思います。
  259. 津川武一

    津川委員 全国的調査を通産省はしてくれますか。ぜひ全国的に都道府県を通じて調査してほしいのです。
  260. 中田哲雄

    ○中田説明員 これまでの累積設置機数が大変多うございますので、一台一台につきましてはなかなか調査が及ばないところがあろうかと思いますが、メーカーを通じまして実態を把握していきたいというふうに思っております。
  261. 津川武一

    津川委員 そこで、この問題で最後に大臣にお尋ねします。  昨日来、肥料機械課の皆さんに御苦労していただいて、山形県で事故を起こした機種について安全鑑定を受けているのかどうか調べてもらいましたら、別表のとおりでございます。半分以上は安全鑑定の検査を受けた合格品で、三分の一ぐらいはこの制度ができる前に流通したものになっております。そこで、安全鑑定で合格したものがこれだけ火災事故を起こしております。これは安全鑑定のやり方に問題があることを示しておると思いますが、乾燥機の安全鑑定の基準そのものをもう一度見直す、改善する、内容を充実する、こういうことが必要になってまいったかと思いますが、大臣いかがでございます。
  262. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 お尋ねの安全鑑定でございますが、現在の基準でございますと、五十九年をとってみますと、そのときに流通というか、いわゆる販売された乾燥機のうちの安全鑑定に適合したものの台数割合、これは御承知のように、安全鑑定というのは型式についての安全鑑定でございますので、その九〇%くらいが合格した台数割合というのが我々の把握している数字でございます。  ところが、今回のような火災事故になりますと、それぞれの機械の状況なり運用の仕方によって事故が発生してまいりますので、私どもこの問題については、一つは、お尋ねがございましたような現在の機械化研究所の安全鑑定の基準についてもちろんチェックが必要でございますが、その前に、こういう乾燥機の火災事故のようなものの原因としてどんな類型化ができるか、その中で構造的な問題が非常に多いというような状況がございますれば、安全鑑定という名前をつけております以上、やはりこの鑑定基準についても検討すべきであろう、こう考えますので、先ほどたくさんの機械を全部調べるかどうかというお話もございましたけれども、事故の状況を調べてみて、これがどんな原因、特に構造的な原因で出てくるものがあれば鑑定面でもそれなりの対応が必要になってくるのじゃないか、かように考えております。
  263. 津川武一

    津川委員 この間、機械化研究所にお邪魔していろいろ教えていただきました。機械化研究所の方たちは機械の安全に非常に苦労されております。その苦労の幾つかを教えていただき、安全の検査の基準も教えていただいたし、見せてもらいましたが、不思議なのは、体に対する影響、これは大事なんです。ここのところをやられているんだけれども、機械のこういう焼けるとか火災とかいうことに対する安全基準がたった一カ所あるんです。それでは事が済まないので、これから安全検査の基準、体に対することはもちろんこれが最重点、と同時に火事があり、あの場合須貝さんがやけどもするし、家も火事になりそうだ、これにも改正を加える、こういう検討が欲しいのですが、いかがでございます。
  264. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 ただいまの山形の事故の原因について消防署の意見等も拝聴いたしましたが、そういう消防署の見方、専門家の見方等によりましても、いわゆる整備等の、使っておられる方の問題として出てくるものもないわけではないと思うのです。あるいは古くなったとか、それからよくあり得るのは、異常に大量のものあるいは水分の高いものを短期間に処理しようとしますとかなりオーバーに熱したりする、こういうこともあるかもしれません。  そういうことで、操作上の問題と構造上の問題というのは考えなければなりませんので、操作上の問題として指導する必要があることと、それから今御指摘のありました現在の安全鑑定基準の中で、こういう火災事故につながるような面については確かに基準の面で必ずしも重点が置かれておりません。そういう点については当面火災事故、これは乾燥機だけじゃなくて火を使いますほかのものもいろいろございますので、どの辺に原因があるか、やはり安全鑑定という面でそこまでもっと手を伸ばさなければならぬのじゃないかという問題がございますので、十分検討させていただきたいと思います。
  265. 津川武一

    津川委員 安全基準の検討をしてくれるというふうに私は受け取ったから、質問を進めていきます。  そこで、次は漁業問題ですが、けさ大臣の所信表明を伺ってびっくりしたのですが、漁業問題で対米、対ソの水産関係の行き詰まりをどうするということを具体的に言及してこなかったのです。問題が面倒だから逃げたのかなとも思ったのですが、日米も日ソも漁業交渉が行き詰まっており、関係者が非常に困っております。  私たちは、ソ連の主張もアメリカの主張も認めるわけにはまいりません。政府は水産外交といいますか漁業外交で一踏ん張りも二踏ん張りもしていただかなければならないと思っているのです。こんなふうに対アメリカ、対ソ連がこじれるに至った本当の原因というものの追求をして交渉に当たらなければならない、これが私の一つの気持ち、お願い、要求でございます。  そして、大臣も非常に不当なアメリカのやり方に対して苦労しているのは私も知っております。しかし、対米に関する限り卑屈になっておらないでしょうか。毅然とした強力な外交を貫かなければならないと思うのですが、この点はどうなっているかというわけです。アメリカに協力しますから割り当てをくださいという姿勢、そこにも問題がある。  その協力ぶりの一つ、二つを挙げてみますと、八五年、北太平洋においてスケソウ、カレイなど四十五万二千トンを買いなさいと言ったら、はいと言って買い付けております。八六年、底魚、その加工品五十二・五万トンの洋上買い上げの約束も割合に楽に約束しております。八六年からすり身製造工場をダッチハーバーに合弁でつくり、原点で五万トン、すり身で一万トンつくることもこちらで協力しております。八三年ワシントン、八四年シアトルに貿易連絡事務所を設けて情報を提供しております、五十四年から六十年にかけて、アラスカ湾、ベーリング水域で延べ十五隻のトリール船などによって資源の調査を十二回もやってあげております。これだけの協力をして、そして今大変な目に遭っているところに問題があるわけであります。毅然とした態度。  次に、日ソ漁業交渉ですが、ソ連もまたひどいです。漁区についても漁法についても協力金についても無理難題を持ち出して、北転船や洋底漁船漁業を困難と混乱に追い込んでおります。したがって、私たちは少なくとも昨年並みの漁獲量、漁法、どちらもソ連に承認させなければならないと思っているわけであります。アメリカには頭を下げての屈辱ですが、ソ連に対しては敵視政策をやめなければなりません。互恵の立場で真の友好、信頼を打ち立てる外交を展開し、その上での漁業交渉でなければならないと思います。  八戸に行ってみました。ソ連に対する敵視政策をやめてくれ、ソ連の漁船を日本の港に入れないというのでは友好でも何でもない、交渉が進まない。青森の自民党県幹事長はこう言っています、日本海での日米合同軍事演習はやめてくれ、私もそうだと思います。北洋が米ソ対決の場となり、日本とアメリカが一体となって軍事演習をやっておりますが、これでは漁業交渉も大変になります。日本海や北洋を平和の海にしなければなりませんが、この私の申し上げた立場、対米、対ソについて大臣はどう考えておるか、お答えを願います。
  266. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  まずは事実関係に属することでございますが、日本は確かに対米協力で洋上買魚その地先ほど先生が例示されましたような協力をいろいろやっておりますが、これをもってアメリカに対して卑屈な態度で交渉しておるというふうにお考えいただくのは私は不同意でございます。  と申しますのは、例えば洋上買魚その他はソ連、ポーランド、そういう社会主義国もそれぞれなかなか盛大におやりになっておるわけで、日本だけが特に風変わりなごまのすり方をしているわけではない。アメリカの関係で洋上買魚をやるというのは今や常識でありまして、どこの国でもやっていることでございます。殊にソ連などはパックウッド・マグナソン修正法を発動されましてアメリカ水域での漁獲割り当てを半減されるというようなとんでもないことをやられながらも、相変わらず洋上買魚を続けておるような実情でございまして、そこら辺のところは、アメリカ水域での入漁関係というのを横断的に比較をいたしますと、日本のやっておることは屈辱的ではないということを御理解いただけるのではないかと思います。  それからもう一つは、先ほど先生が数字をお挙げになりました洋上買魚等の数量は、これは業界間の協議で決めた数字でございまして、私ども役所が直接責任を負うわけではございませんが、アメリカとの洋上買魚につきましては、二百海里内の漁獲割り当てを留保されるということに対する日本側の対抗措置といたしまして、ある一定期間、具体的に申しますと二月の初めまで洋上買魚というカードをこっちも留保いたしまして、それは二月のアメリカからの放出を獲得するために有効な手段として行使したということは新聞紙上にも報道されているところでございますから、そういう点は我が国漁業者にとって役に立つような使い方をしているつもりであります。  それからまた、洋上買魚のアメリカ側のパートナーというのは、これはみんな対日漁獲割り当てを留保することに反対して、国務省とかアラスカ選出の国会議員とかに積極的な工作をしてくれている、言うなれば日本の漁業者の友人として行動してくれているわけでありまして、私どもとしてはそういうことも念頭に置かざるを得ないというふうに思っております。  そういう意味で、協力関係というのは、アメリカに対して決して私どもが卑屈だからやっておるわけではございませんので、アメリカとの交渉に当たっては、私どもは毅然たる態度で交渉をやっておるつもりであります。  それからソ連との関係でございますが、先生先ほど互恵というふうにおっしゃいましたが、まさにその点が一つの論点でございまして、互恵であるからソ連漁船にも五百メートル以浅でトロールをやらせるとか、ソ連漁船にももっとサバがとれるようにしてくれとか、そういう形でソ連側から日本水域でのソ連漁船の操業条件を改善する要求を突きつけられているわけであります。それがソ連側から見た互恵であります。  私どもは、我が国の沿岸水域での操業秩序を守るために、残念ながらソ連側の要求を入れるわけにいきません。そこでしからばということで、ソ連水域における日本漁船に対する規制措置あるいはお金の話とか、そういうもろもろのことが出てくるわけであります。だからそういう意味では、ソ連漁船の日本水域での操業条件の緩和を我々がソ連側の要求を受け入れないというのは、ソ連側から見ると甚だ非互恵的であるというふうに見えるわけでありますけれども、私どもはこの点は、我が国の沿岸漁業者の利益を守るためにやむを得ざることであるというふうに思っておるわけであります。  それから寄港問題につきましては、これは交渉の経過でございますから具体的にどうこうとは申し上げませんが、寄港問題について、私どもとしては現在の日本の体制下で許容し得る範囲内において十分弾力的な対応をしておるつもりでおります。
  267. 津川武一

    津川委員 そこで、いろいろ長官が話していましたけれども、業界です。業界では今までの協力を返上していいと言っている。そして、アメリカから買い付けているものを買わないように法律までつくれというふうに息巻いて言っているわけで、これは政府の態度だけでなく、業界がやっていると今までの協力を言っているけれども、業界自身がそこにアメリカへの協力、アメリカに対する、何というか屈辱的な協力というものを自分たちの体験で悟って、今度法案を提案しようとしているわけなんです。この要求はいかがでございます。この要求を大臣はどう考えて——アメリカとの交渉で、この業界のやり方を持ち出すべきだと思うわけです。そうでないとなかなか対米は解決しない。ここで日本人の本当の腹をはっきりと見せた方がよろしいんじゃないかと思うのです。  対ソの問題、私たちは互恵平等で、その国の事情、歴史を考えて、北洋の日ソの部分は共同管理してもよろしいと思っているわけです。そうしなければあの問題が解決していかない。そういう点で、アメリカにはあれだけ業界も政府も協力して、ソ連に対する協力が本当に足らないものがある。しかも、去年の塩釜におけるソ連漁船の上陸のときのあの妨害といったら、私は、ソ連の人はあれだけやられた日には恨み骨髄に徹してくると思います。そこいらのものを払わなければ、漁業交渉の対等な、平等な、フェアな交渉の場面がなくなってしまっているわけです。  この二点で、対米交渉をどうするか、対ソ交渉をどうするか、大臣、ひとつ所見を伺わせていただきます。
  268. 羽田孜

    羽田国務大臣 対米交渉の経過につきましては、もう今長官の方からお話ししたとおりでありまして、私どもは卑屈どころか、私が就任する早々にわざわざアメリカ大使を役所の方に招請いたしまして、また新年になりましてからもお呼びしながら話をするという措置をとりながら、毅然としてアメリカに対して要求をしております。いずれにしましても、このサケ・マスの問題と二百海里内の問題とは、これは別にすべきである、そこまで実は申し上げておるところであります。  なお、ソ連邦の方につきましても、今提案されてきているものはさらに新しい提案がなされておるということで、残念ながら今ソ連邦の方から我々に提案されておるものを、これを受けたらとても、本当に水をとりに行くような話になってしまうということで、これに対しても私どもはきちんとあれしております。  ただ、今の塩釜の問題というのは、確かにどうも国内にそういう感情が非常に強いものがある。こういうものにつきましても、きちんと、人様のあれというものを抑えてしまうことはできないという現実がある中で、これは非常に難しい問題でありますけれども、私どもとしても、これはまさに今話し合いのさなかの問題でありますからもう細かく申しませんけれども、いずれにしても、私どももいろいろな措置をあれしながら、我が方で譲るべきものを譲る、そういう姿勢で臨んでおるところであります。  ただ、私どもとしても本当にあれなのは、今日までずっと魚の問題というのは長い歴史があること、そして北洋の漁場というのは我が日本の長い歴史の中で開発してきたことであります。そういうことで、せっかくシェワルナゼさんも日本にやってくる、そしてまた安倍外務大臣も向こうに行こう、そしてまた向こうからシェワルナゼさんもやってくるというような話し合いが進んでおるときに、今までの本当に大事なパイプであったものを、ここでどうしてそんなに急に大きく変わろうとしているのかな、私は、率直に申し上げて、なかなかその真意が理解できないということであります。
  269. 津川武一

    津川委員 対ソの問題でもう一つ。  この間テレビで、日立のテレビを見られたでしょう。次の寄港地を皆さんの交渉で日立と決めたのかどうかわかりませんけれども、日立がどういう形でか候補に上がっておる。右翼がここにもう既に行っている。これがテレビで放送されている。ソ連の方がからっとくるのは当たり前なんだな。その日立のテレビの状況が大臣のところに行っていないとすれば、私は、水産庁のどなたかがあれは見ていると思うのだけれども、これはやはり事前に抑えていくというふうなことでなければならないわけです。その点を指摘しながら質問を進めていきます。  そこで、今度の問題で、二百海里が設定された、そして、対ソ、対米の交渉がこのとおり困難になってきた。被害を受けるのは、もちろん漁船だとかそういうものもありますが、二の被害を何としても頑張ってもとどおりにしなければならないと思うわけです。  八戸市に行ってみたら、八戸の機船底曳網漁業協同組合で、現在四隻の北転船、そして洋底びき二十一隻を持っておりますが、北転船は、二百海里が設定されたときには共補償のお金を出している。これを借りて返していく、利子を払う、これで大変なんです。今公海でとっておりますけれども、ソ連からも締め出され、アメリカからも締め出されて漁獲量は減ってきている。それでもう参った、バンザイだ。それから、二十一隻ある洋底の中で十二隻が休漁で係船されている。この洋底は、例年ならば二千四百万ぐらいの水揚げがあるのに今はゼロ。しかも、船員の借金は払わなければならない、借金の返済は待ったなし。どうしてもつなぎ資金と、今まで借りておった借入金の返済の猶予だとか条件の緩和が必要になっております。この点はいかがでございます。
  270. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  北転船の場合は、ベーリング公海での操業のそろばんの合いぐあいにつきましては別といたしまして、係船中の洋底船その他、ソ連水域へ出漁できずに泊まっている船の問題というのは、これは手当てをしなければいけない事態であろうというふうに思っておりまして、私どもも関係の道県あるいは関係の金融機関と御相談をしておるところでありますが、つなぎ融資等、しかるべく手配をしていただくように御相談をしておるところであります。
  271. 津川武一

    津川委員 次は、スケソウダラを材料とする加工業者の現状でございます。  塩釜の加工業者と懇談会をやってみました。二百海里前の時代はスケソウがうんと入ってきた。二百海里になってから共補償して減船した。共補償してやめた船はさることながら、減船した船は、仲間の船が少なくなったから、その分スケソウをとってくるつもりで出ていっておる。ところが、この状態になっているのです。スケソウが入ってこない。しかし、入ってこない前に、既にそういう国の政策に基づいてスケソウの供給はあるものと思って、スケソウの加工をしようとして団地をつくった。スケソウというのは物すごいはらわたが出る、残渣が出るやつで、それを処理する施設をつくったのです。スケソウが一匹も入ってこなくなったのでこの施設がお手上げになっている、こういう状況になってきているところに問題が出てくるわけです。  もう一つ。そこで、この加工業者を何とかしなければならないと思うのですが、実際に皆さんが経営改善強化資金をつくってくれたのです。一回はもらえて大助かりだったんだが、その後よくない。今度借りに行くと、保証人があるか、抵当があるか、これで金融機関に断られてしまっている。せっかく皆さんがつくったこの制度が、苦しんでおる業者のためになっていないのです。ここいらは水産庁がもう一回県、関係市町村もしくは協同組合、銀行あたりを指導しなければ道が開かれなくなっておりますが、この点いかがでございます。
  272. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  私どもは、そういうところでお金が流れるかどうかというのは、先生が御心配になっているような事態というのは、やはり金融機関の側から見ますと返してもらうべきお金でございますから、その返してもらえると思うかどうかということは、判断が間違った場合には最終的にリスクが金融機関に帰属するわけでございますから、基本的には金融機関の判断ということだろうと思っております。また、その金融機関の判断について、私ども行政庁がどの程度指図めいたことを言えるかということについては、またおのずと限度のあることだろうと思います。  ただ、それはそうといたしまして、余りにもひどいようなケースがあってはいけませんので、円滑な融通のために、引き続き適宜関係機関に対して指導、要請等は行ってまいりたいというふうに思っております。
  273. 津川武一

    津川委員 実際塩釜に行ってみたら、皆さんがお互いに保証人になっているわけです。したがって、一社がいくと全員いってしまう。それがもうできなくなってしまっているから問題が深刻で、制度があるのだから、何かこの借入の保証を、市なり県なり国に、保証するという制度があるのかないのか、そこいらを考えていくとあの業者たちが救われると思うのです。この点が一つ。  そこで、スケソウが入ってこないために、水産庁の指導もあって、スケソウのすり身のかわりにイワシで加工している。これへ移ったのです。国が三分の一補助して、県が三分の一補助して、自分たちが三分の一。行ってみましたら、イワシのすり身、ちくわ、本当においしいのです。食べてみると、少し色は黒いが本当においしいのです。ところが、思うように売れないのです。そこで、一生懸命こういうのを出しているのです。サーディンホール、これも食べてみました。大漁揚げ、これも食べてみました。十三、四種類つくっているのです。サーディンフライ。これも、去年私は、リンゴが、おととしスターキングが売れないので、大臣に頼んでNHKでリンゴ料理を放送してくれと言ったら、NHKが去年の十一月十五日に「津軽のリンゴ料理」というのを放送してくれたのです。それで非常に広がる。この人たちは、一遍イワシ材料のこれを何らかの形で放送してくれないか、このことを強く願っているわけであります。  そこで、市町村なり県なり国がこの保証人になるか、こういう点での宣伝、ひとつ答えていただきます。
  274. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  中小企業者に対する信用補完制度としては中小企業信用保証協会という制度がございますが、今先生のおっしゃっている御趣旨というのは、突き詰めていけば最後は、国なり地方公共団体なり公的なところで弁済不可能になった水産加工業者の借金をかわって弁済してやれ、そういう御趣旨であろうと思われますので、ちょっとそこまでは幾ら何でもいきかねる。要するに金融……(津川委員「金融機関を指導してくれればいいや、それでは」と呼ぶ)金融機関に対しては、余りあこぎなことを言わないようにということは申しますが、結局、成りかわって私どもがリスクをとるというのはやはり限度を超えておるように思いますので、そこら辺のところはひとつ御理解を賜りたいところであると存じます。  それからイワシの販路拡大につきましては、私どももイワシの加工食品の展示即売会をやりますとか、あるいはテレビの放映とかお料理のコンクールとかパンフレットを配るとか、あるいはお魚屋さんを相手にしたセミナーをやるとか、そういう仕事はいろいろやっておるつもりでございます。確かに先生御指摘のように、こういう時代でございますから今後さらにイワシの食用化を推進しなければいけないわけで、今後とも一層努力をしてまいりたいと思っております。  ただ、イワシの食用化が遅々として進まないように思われておりますが、数字を見ますと、昭和五十年代につきましても、五十年代前半は大体六十万トン台ぐらいで推移しておりましたのが、五十年代後半になりますとおおむね八十万トン水準に来ておるわけでありまして、関係者の努力はそれなりには成果を上げつつあると思いますので、今後とも一層努力をしたいと思います。
  275. 津川武一

    津川委員 今、日本の水産物の四割から五割近いものがイワシなので、その宣伝は僕も水産業界から聞きました。何かたくさんの魚の加工品の宣伝をやっておるけれども、十把一からげにやるからイワシのイメージが出てこない。一回イワシだけを中心にして、イワシの加工品というものを宣伝してほしいというのが業界なんです。この点、ひとつ佐野さん気をつけておいてください。  最後の質問でございますが、こういう形で北洋の遠洋漁業が二百海里で締め出された、今度米ソで締め出された。そして、これを材料とした加工業者がこうなってきている。そこで、北洋の遠洋漁業、北洋の仲合漁業、北洋における、北方における沿岸漁業全体を合わせると、この北における漁業の引っ張り役が遠洋漁業であった。加工もそこだ。そこで、スケソウがこうなったために、やはり北における遠洋漁業中心とした漁業をどうするかという検討を始めなければならないと思いますが、始まっていると思いますが、この点はいかがでございます。
  276. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  御指摘のとおり、まさにそういう見直しを行うべき時期であります。見直しは既に始まっているといえば始まっているわけでございまして、水産庁が、二百海里時代に入りましてから沿岸漁場の整備とかつくり育てる漁業ということを熱心に取り組んでまいりましたのも、今先生の御指摘のような展望を持ってのことでございますし、それから、最近に至りましてマリノベーションとかそういうことに取り組んでおりますのも、まさに先生御指摘のような事態というふうに認識をしておるからでありまして、私どもとしてはせっかくその方向で努力をしていきたいと思っておるところでございます。
  277. 津川武一

    津川委員 終わります。
  278. 大石千八

    大石委員長 次回は、明二十日木曜日午前十時二十分理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時五分散会