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1986-04-24 第104回国会 衆議院 内閣委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年四月二十四日(木曜日)    午前十時六分開議 出席委員   委員長 志賀  節君    理事 石川 要三君 理事 戸塚 進也君    理事 深谷 隆司君 理事 宮下 創平君    理事 小川 仁一君 理事 元信  堯君    理事 市川 雄一君 理事 和田 一仁君       池田 行彦君    石原健太郎君       内海 英男君    衛藤征士郎君       菊池福治郎君    塩川正十郎君       月原 茂皓君    中島源太郎君       二階 俊博君    堀内 光雄君       村岡 兼造君    上原 康助君       小澤 克介君    佐藤 徳雄君       野口 幸一君    矢山 有作君       山下洲夫君    鈴切 康雄君       日笠 勝之君    滝沢 幸助君       柴田 睦夫君    三浦  久君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 今井  勇君         国 務 大 臣         (内閣官房長官後藤田正晴君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 加藤 紘一君  出席政府委員         内閣参事官   荘司 晄夫君         内閣官房内閣審         議室長     的場 順三君         内閣官房内閣広         報室長     金子 仁洋君         内閣官房内閣調         査室長     谷口 守正君         内閣法制局第二         部長      大森 政輔君         国防会議事務局         長       塩田  章君         警察庁警備局長 三島健二郎君         防衛庁参事官  瀬木 博基君         防衛庁長官官房         長       宍倉 宗夫君         防衛庁防衛局長 西廣 整輝君         防衛庁教育訓練         局長      大高 時男君         防衛庁人事局長 友藤 一隆君         防衛施設庁長官 佐々 淳行君         防衛施設庁総務         部長      平   晃君         防衛施設庁建設         部長      大原 舜世君         経済企画庁総合         計画局長    及川 昭伍君         厚生政務次官  丹羽 雄哉君         厚生大臣官房総         務審議官    北郷 勲夫君         厚生大臣官房審         議官      木戸  脩君         厚生省健康政策         局長      竹中 浩治君         厚生省保健医療         局長      仲村 英一君         厚生省保険医療         局老人保険部長 黒木 武弘君         厚生省年金局長 吉原 健二君  委員外出席者         警察庁長官官房         審議官     安達 真五君         外務省北米局安         全保障課長   岡本 行夫君         厚生省保健医療         局老人保健部計         画課長     羽毛田信吾君         厚生省保険局医         療課長     谷  修一君         労働省労政局労         働法規課長   廣見 和夫君         内閣委員会調査         室長      石川 健一君     ————————————— 委員の異動 四月二十四日  辞任         補欠選任   田澤 吉郎君     衛藤征士郎君   中村喜四郎君     村岡 兼造君   井上 一成君     佐藤 徳雄君   嶋崎  譲君     小澤 克介君   新村 勝雄君     野口 幸一君   矢山 有作君     山下洲夫君 同日  辞任         補欠選任   衛藤征士郎君     田澤 吉郎君   村岡 兼造君     中村喜四郎君   小澤 克介君     嶋崎  譲君   佐藤 徳雄君     井上 一成君   野口 幸一君     新村 勝雄君   山下洲夫君     矢山 有作君     ————————————— 四月二十三日  旧台湾出身日本軍人軍属補償に関する請願外  一件(北口博紹介)(第三五一九号)  同(高沢寅男紹介)(第三五二〇号)  同外三件(永末英一紹介)(第三五六一号)  同(村山喜一紹介)(第三五六二号)  同(村山喜一紹介)(第三六三七号)  スパイ防止法制定に関する請願小宮山重四郎  君紹介)(第三五二一号)  同(戸塚進也紹介)(第三五二二号)  同(宇野宗佑紹介)(第三五六四号)  同(野田毅紹介)(第三六三八号)  石川県の寒冷地手当改善に関する請願外一件  (嶋崎譲紹介)(第三五二三号)  傷病恩給等改善に関する請願塚原俊平君紹  介)(第三五二四号)  同(稲村利幸紹介)(第三五六六号)  同(増岡博之紹介)(第三五六七号)  同(稲村利幸紹介)(第三六二一号)  同(小宮山重四郎紹介)(第三六二二号)  同(船田元紹介)(第三六二三号)  国家機密法制定反対に関する請願中林佳子君  紹介)(第三五六三号)  旧軍人恩給欠格者に対する特別法制定に関す  る請願玉置一弥紹介)(第三五六五号)  兵庫県の寒冷地手当改善に関する請願後藤茂  君紹介)(第三六一九号)  兵庫県波賀町の寒冷地手当引き上げに関する請  願(後藤茂紹介)(第三六二〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  安全保障会議設置法案内閣提出第九号)  厚生省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第二六号)      —————・—————
  2. 志賀節

    志賀委員長 これより会議を開きます。  内閣提出安全保障会議設置法案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。元信堯君
  3. 元信堯

    元信委員 安全保障会議設置法、きょうはまず逐条的に細かく法案について伺って、そこで出た問題があればまた後の時間を使って、そんな進め方で行きたいと思います。  まず第一条ですが、この法案の目的が「国防に関する重要事項及び重大緊急事態への対処に関する重要事項審議する機関として、内閣に、安全保障会議を置く。」というのですが、前段の「国防に関する重要事項」というのは国防会議からの引き継ぎということだと考えますが、新しくつけ加えられました「重大緊急事態」というのは、これはるる議論されてきているところでございますけれども、簡単にこの定義をまずしていただきたいと思います。
  4. 塩田章

    塩田政府委員 定義でございますが、第二条第二項に書いてございますように、我が国の安全に重大な影響を及ぼすおそれのある緊急事態であって、第一項の国防に関する事態を除いたもので、かつ、通常の緊急事態対処体制によっては適切に対処することが困難な事態をいう、こういうことでございます。
  5. 元信堯

    元信委員 「重大」というのは、国の安全に影響を及ぼすものを重大とこう定義されるのでありましょうが、「緊急」というのは、従来国防事態を想定する中で緊急という概念はなかったと思いますが、ここでおっしゃる「緊急」というのは大体時間的にはどの程度の急を要するものであるか、簡潔にお答えをいただきたいと思います。
  6. 塩田章

    塩田政府委員 抽象的に申せば、政府として緊急に対処しなければいけないということでございますけれども、今お尋ねの時間的にどのくらいの時間がということでございますれば、これは個々ケースによって違いますので、一概にどのくらいの時間というふうには申し上げにくいかと思います。
  7. 元信堯

    元信委員 しかし「緊急」というんですから、大体どれぐらいというのはあるんでしょう。例えば日で数える単位なのか、時間で数える単位なのか、あるいは週で数える単位なのか、時間の物差しはある程度はっきりできると思いますがね。
  8. 塩田章

    塩田政府委員 これは全く事態の態様によりますので、何をもって単位とするというふうにも申し上げにくいかと思います。
  9. 元信堯

    元信委員 こんにゃく問答でもう時間のむだですから先へ行きますが、緊急で重大である、こういう事態をだれが認定することになりますか。
  10. 塩田章

    塩田政府委員 最終的には総理大臣認定をされることでございます。
  11. 元信堯

    元信委員 後ほどその総理大臣にかかわって御質問を申し上げますので、先へ行きますが、第一条には「重大緊急事態への対処に関する重要事項審議する」、こう書いてありますが、この「対処に関する重要事項」というのは具体的にどういう内容でしょうか。
  12. 塩田章

    塩田政府委員 「対処に関する重要事項」と申しますと、まず第一に、対処措置それ自体も含まれます。対処措置が中心的なものでありますけれども、それ以外に、重大緊急事態の発生に備えて平常時から調査審議しておくような必要な事項もあり得ると思います。例えて申し上げますと、重大緊急事態への対処に当たって常に準拠すべき基本方針でありますとか、あるいは情勢分析重大緊急事態の想定でありますとか、あるいは重大緊急事態への対処に関する政府部内の情報連絡意思決定仕組み等についてのマニュアル作成でありますとか、そういったようなことが含まれると思います。
  13. 元信堯

    元信委員 二条において、会議に語らなければならないこととして、「重大緊急事態が発生した場合において、必要があると認めるときは、当該重大緊急事態への対処措置について会議に諮るものとする。」こういうふうに規定してあります。これで拝見しますと、重大緊急事態が発生した場合については、しかもその必要があるというふうなときには会議に語るとありますが、今の御説明によりますと、平豊からそれの準備に当たるようなことも書いてございますが、その平常のマニュアル作成と言われている部分ですが、そういう作業をする根拠というのはどこにありますか。
  14. 塩田章

    塩田政府委員 対処措置そのものにつきましては、御指摘のとおり二項に書いてあるように、事態が発生した場合の対処措置について語る、これは御指摘のとおりでございます。  今先ほど、平常のときからいろいろ重大緊急事態に関する事項としてもあり得ると申し上げましたのは、次の三項に書いてございますように、平素から、会議は、「意見を述べることができる。」という規定がございますが、この中に言うところの「重大緊急事態への対処に関する重要事項」というものの中には、今申し上げたような事態が起こったときの対処措置ばかりでなくて、それ以前のものが含まれておるというふうに解釈しておるわけでございます。
  15. 元信堯

    元信委員 二条の二項に「重大緊急事態が発生した場合において、必要があると認める」というふうに書いてございますけれども重大緊急事態が発生した場合でも必要がないというとき対処措置が要らない、こういうような重大緊急事態というのは存在しますか。
  16. 塩田章

    塩田政府委員 これは重大緊急事態が発生すれば必ず対処措置は要りますから、ここで言っている「必要があると認めるとき」というのは、この会議に諮った方がいい、この会議に諮って措置をするという必要を認めた場合でございまして、ここで語らないものについて対処措置が必要でないという意味ではございません。
  17. 元信堯

    元信委員 そうしますと、重大緊急事態は必ず対処措置を必要とするということでありますが、会議に語らずに対処措置をとるということがあり得るという意味ですか。
  18. 塩田章

    塩田政府委員 あり得ると思います。これももちろん総理判断ですけれども事態によってはいきなり閣議に諮って処理した方がいいと思われるようなケースもあり得るということで、考えておるわけでございます。
  19. 元信堯

    元信委員 具体的にはどのようなケースをそういうふうに想定されて、この法案を準備されましたか。
  20. 塩田章

    塩田政府委員 これもなかなか一概に申し上げにくいのですけれども閣議ということになりますと、内閣としての意思決定を必要なような案件でございますが、例えて申しますと、過去に全く同じようなケースがありまして、大体やり方もわかっているというような事態もあり得るわけですね。そういう場合に、もう内閣としての意思決定さえあればやり方は大体わかっているというようなケースも考えられると思います。
  21. 元信堯

    元信委員 そうしますと、今の御答弁によると、この会議に諮らずに対処措置閣議にいきなり諮る場合というのは、過去に事例があったもの、こう理解してよろしゅうございますか。
  22. 塩田章

    塩田政府委員 そういうふうに決めていただかなくて、私が申し上げたのは一つの例としてそういうことも考えられるというふうに申し上げましたので、そのように御理解いただきたいと思います。
  23. 元信堯

    元信委員 それならもう少し幾つか例を挙げてくれなくては困るので、この会議設置はしたが、これに語らずに対処措置をとるというようなものがあるとあなたはおっしゃるわけですから、その一つが過去に事例があったもの。今まで挙げられた例は三つしかありませんな。その三つがまた起こるとはちょっと考えにくいわけでありますけれども、それ以外にも恐らく、こういう法案として御準備なさったからにはそういう事態というのはあるんじゃないか、こう思うわけですね。過去に事例があったものだけに限るというならそれはそれでよろしゅうございますが、そうでないとすれば、この法案審議していく上で、一体何を考えておいでになるのかということは明らかにしてもらわぬと先に進まぬと思いますが。
  24. 塩田章

    塩田政府委員 これは今後どういう事態が起こるかわからない、将来起こり得る事態に対して対処しようとする考え方でできておるわけでございますが、その場合、これはあくまでも諮問機関でございますから、総理個々ケースによりましてここで諮問をして対処しようという判断をされるという場合にこれにかかるわけですが、この趣旨は、今先生御指摘のように、これにかからないでやるケースもある、理論的にはもちろんあると思っています。今申し上げたように、いきなり閣議ということもあり得るというふうに申し上げておりますが、実際は今申し上げたような類似のケースであれば必ずこれにかけるというふうなことになるだろうというふうに考えております。
  25. 元信堯

    元信委員 そうおっしゃるならそういう法文にすればいいのであって、法文でわざわざ諮らないこともあるような書き方をなさって、実際上にはこれが発動されることはありませんというような言い方はまことにふまじめじゃないですか。どうしてそういうふうに表現されませんか。
  26. 塩田章

    塩田政府委員 基本的にやはりこれは諮問機関でございますから、諮問機関としての書き方があるわけでございまして、私どもはこういう書き方が普通ではないかというふうに考えて立案したわけであります。
  27. 元信堯

    元信委員 ちょっと角度を変えて伺いますが、重大緊急事態という概念の中に、国防事態に至るもの、国防事態というふうには今は至らないけれどもそれに至るのではないか、そういう緊張関係といいますか、そういうものを想定されていますか。
  28. 塩田章

    塩田政府委員 それはあり得ると思っております。
  29. 元信堯

    元信委員 そうしますと、今申し上げました会議に語らない場合、これは国防事態の前のような事態というふうに考えますと、非常に時間的にも切迫した事態、緊急な事態、こう思いますね。そうすると、時間がないからこの会議には語らないでいきなり閣議に語る、こういう可能性というものは出てきませんか。
  30. 塩田章

    塩田政府委員 私は、先ほど来お答えしておりますように、必ずしも時間によってかけないこともあるというふうに考えておるわけではございません。時間的なことは余りウエートを置いてお答えしているわけではなくて、事態によって考えていくという考え方でございます。
  31. 元信堯

    元信委員 おかしいですね。それでしたら、この二条の二項は、「重大緊急事態が発生した場合には、当該重大緊急事態への対処措置について会議に諮るものとする。」これでいいんじゃないですか。なぜ「必要があると認めるとき」と、こういうふうに言うのですか。必要があるとないとの境目というのは、どうもあなたの答弁じゃわかりませんね。
  32. 塩田章

    塩田政府委員 これは、何度も申し上げますが総理諮問機関でございまして、これも既にお答えいたしてきておりますが、この重大緊急事態といいますものは元来各省庁がそれぞれ権限を持って対処すべき事柄であります。それが数省庁にわたるような場合になかなかそれが実際の問題として円滑にいかないということがございますから、内閣調整機能の一環として、こういうものをつくって方針を速やかに示してやろう、こういうことでございますから、そういう意味諮問機関として考えておりますので、必ずかけるという言い方よりも、総理の御判断で必要があるときは語るというふうにいたしたわけでございます。
  33. 元信堯

    元信委員 どうもここのところが、総理の独断で事が進められるようになるんじゃないかなという疑問を抱くわけですね。当初、前身でありますところの国防会議設置する法案審議をされているときに、国防会議の位置づけとして、過去の戦争の苦い教訓に学んで、これは総理大臣のいわゆる指揮権独走を諮る機関として設置をされた、そういういきさつはありませんでしたか。
  34. 塩田章

    塩田政府委員 過去の国防会議設置法最初につくった経緯の中で、今御指摘のような意見があったということは承知しております。
  35. 元信堯

    元信委員 そうでしょう。同様に、この重大緊急事態というのは国防事態に接続する概念であるということを今あなたはおっしゃいましたね。そういうときに、総理判断を補佐するため、あるいは抑制するためにこの会議設置している。この性格は残っていると思いますから、ここのところで、そんなに総理判断によって、しかもそれも、判断の基準が何にもなしに恣意的に諮ったり語らなかったりというのはまずいんじゃないですか。
  36. 塩田章

    塩田政府委員 先ほど来お答えいたしておりますように、もちろん最終的には総理認定でございますけれども、実際は、実務上は当然関係大臣あるいは官房長官、そういった方々の補佐を受けながら総理認定されるということでございます。  それから、もう一つぜひ御理解いただきたいのは、国防会議のときには御指摘のように総理独走といいますか、総理への権限集中を防ぐというような議論があったということは承知しておりますけれども、今回の場合は、重大緊急事態の場合は、いずれにしましても、これによって、この会議を招集して議論をし答申を受けるということによって、何もそこに新しい権限を生ずるとか権限を付与されるというものではございませんで、各省庁の任務に基づいて実際に実行されることを内閣全体として調整しスムーズにいくように方針を示すということにすぎないものでございますから、これによって新たに権限が付与されるということではないことはぜひ御理解いただきたいと思います。
  37. 元信堯

    元信委員 どうもそこのところがすっきり納得できないところが残るわけでありまして、重大緊急事態というのが国防事態とはすっきり別問題というのであればともかく、概念的にはお互いに隣り合っている、しかも重大緊急事態対処の仕方によっては国防事態に発展し得る、こういう概念であるわけでありますから、そこのところでの対処の仕方だけが総理独走抑制のための諮問機関から外れるというのは、何とも納得のいかない話であるとこの際指摘をして、先へいきたいと思います。  前回もちょっとお話がありましたが、二条の「次の事項」の三の「産業等調整計画大綱」というものが今までつくられたことがない、こういうお話でございました。一、二は盛んに議論されているわけですが、三については全く今日まで議論がなかった。このことについてはどういうお考えで全く触れられなかったのか。それから今後はどうされるおつもりなのか。改めて伺います。
  38. 塩田章

    塩田政府委員 御指摘の第三号の関係でございますけれども、ここで言いますところの「産業等調整計画大綱」といいますのは、自衛隊装備品等の調達を行う場合におきまして、自衛隊需要民間需要との間の調整をどうするかといったような計画を考えておるわけでありますが、例えて言いますと、有事におきまして燃料、特に石油の使用量調整自衛隊民間との間でどうするかといったようなことがその内容になるわけであります。ただ、現在までのところ、これが実際につくられていないという点は御指摘のとおりでございますが、私どもは現在この計画を必要とする情勢にないと判断をしておりますからつくっておりませんが、その理由としましては、現在、我が国における民間経済との比較におきまして、自衛隊のそういった装備品需要というものが比較的、相対的に非常に小さいものですから、特にここで計画を立てて調整をするというような必要性のある事情にはないというのが現状でございます。したがいまして、そういう意味でこの計画を立てておりませんけれども、将来どうかというお尋ねでございますが、将来につきましては、仮に我が国の安全が脅かされ自衛隊によってこれに対応せざるを得ないというような状況になりました場合に、今のような問題が必要になってくる可能性はあるのではなかろうかというふうに考えて、この規定を残しておるわけでございますが、現時点では御指摘のとおり必要ないというふうに判断しております。
  39. 元信堯

    元信委員 四号に「防衛出動の可否」というのが挙げられておりまして、これは会議に語らねばならないということになっているわけですね。防衛出動についてはこの会議の招集なしにいきなり閣議というふうにはいかない、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  40. 塩田章

    塩田政府委員 そのとおりでございます。
  41. 元信堯

    元信委員 そういたしますと、防衛出動会議に諮らなければならないけれども緊急事態は諮らなくてもよい、こう読めるわけですね。しかもこの緊急事態というのは防衛事態国防事態につながりかねないことである、こういうことになっている。そこのところはさっきからちょっと水かけ論になっていますから具体例で申し上げなければならぬと思いますが、今日まであなた方が三つ重大緊急事態の例としてよくお出しになるケースを見てまいりまして、もし今後さっきのお話じゃありませんがまたそういうことが起こった場合は、重大緊急事態として安全保障会議へ諮らねばならぬというような事態というのは、その中でありますか。
  42. 塩田章

    塩田政府委員 私どもがかねてから例として申し上げておりますミグの事件でありますとか、ダッカの事件でありますとか、あるいはKALの事件のような場合には、重大緊急事態に当たるとして会議に諮られることになるだろうと思っているわけであります。
  43. 元信堯

    元信委員 次に三条、四条、五条関係へまいりますが、これは組織と議長、議員ですね、五条までの間に定めたものですが。「議長は、内閣総理大臣をもって充てる。」として、「議長に事故があるとき、又は議長が欠けたときは、内閣法第九条の規定によりあらかじめ指定された国務大臣」を議長に充てるということになっておりますが、これはあらかじめ指定されていますか。
  44. 塩田章

    塩田政府委員 現在はあらかじめ指定されておりません。
  45. 元信堯

    元信委員 あらかじめ指定しない理由というのは、これは官房長官、いかがでしょうか。
  46. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 その条文のあらかじめ指定せられた国務大臣というのは、内閣法の方で、総理大臣に事故あるときあるいは欠けたるときというときの総理大臣にかわる国務大臣として、あらかじめ指定してある国務大臣が置かれる場合があるわけですね。それはいわゆる副総理、こう言っているわけですが、いま一つやり方は、その都度総理大臣が例えば不在になるといったようなときに国務大臣を指定するという総理大臣臨時代理、こういうやり方と二通りあるわけでございますが、その最初に申しましたことを想定してこの条文ではさような規定の仕方をしてある、かように御理解をしていただきたい、こう思います。
  47. 元信堯

    元信委員 現内閣においてあらかじめ指定しない理由というのはどういうわけですか。指定することはできるわけでしょう。
  48. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 現在は二通りのやり方がありまして、指定してある場合と指定してない場合がありますが、これはそのときどきの情勢によって総理大臣がそういう判断をなさってやっておるわけでございますが、過去副総理とあらかじめ指定してあった場合もございますが、最近はほとんどその都度の臨時代理の指定、こういうことに扱っているようでございます。
  49. 元信堯

    元信委員 最近の事例をちょっと教えていただけますか。
  50. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 一番最近の例としては、第二次大平内閣で大平総理大臣が病状悪化に伴って伊東内閣官房長官を指定したというのが一番最近の例でございます。古いときは内閣成立当初にあらかじめ指定した方も随分いらっしゃいますが、最近はこの例でございます。
  51. 元信堯

    元信委員 当時の大平総理大臣が病状悪化されたのは極めて急激な病状悪化ではなかったかな、こう思いますが、いわゆる心臓発作でお倒れになる前に指定されておりましたか。
  52. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 病状が悪化してから指定をした、こういうことでございます。
  53. 元信堯

    元信委員 お倒れになってからということでございますね。そうしますと、内閣法の九条の「予め指定する」、その指定する主体はだれに当たりますか、この第九条で。
  54. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 総理大臣が指定をする、こういうことでございます。
  55. 元信堯

    元信委員 総理大臣が極めて病状悪化して意思表示ができぬ、こういうケースであったと承知しますが、その場合はだれがしますか。
  56. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 大平さんの場合は悪化する直前、意思能力が十分あるときに指定をした、こういうことでございます。
  57. 元信堯

    元信委員 最近非常にテロの危険が高まっておると言われていますね。特にサミットを控えまして、過激派などは新兵器を次から次へ持ち出しまして爆砕をするなどと言っておりまして、これはもう実際に中曽根首相の命をねらうと言うに等しいことではないかと思うのですが、こういう状態のもとにあって、九条の指定というのはしておくべきではありませんか。
  58. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 そういうことのないようにやらなければならぬと思いますが、理論的にはそういうお考えも出てこようかと思います。その際には、先日のこの委員会でも法制局の方からお答えしましたように、臨時閣議を開きまして、そして残っておる閣僚が、この人になってもらおうといったことでその方がなっていくということを現在の法制は否定しておるものではない、こういうことによる措置がとられると思います。
  59. 元信堯

    元信委員 その根拠として「条理」とかいう余り耳なれないことが持ち出されたかというふうに思いますが、そんな苦しいことを言わなくても、ちゃんと内閣法でその指定ができる、にもかかわらず指定をしないというのはどうも無責任なように思えるのですね。ちゃんとしておくべきではありませんか。
  60. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 それはそれぞれの国によるわけでして、アメリカのようにあらかじめ序列が決まっておるという国もございますけれども、日本のような場合にはさような制度になっておりませんので、そのときどきの必要に応じてやっていく、こういうことでございますが、日本の場合もいわゆる副総理というものを最初から置いておくというやり方一つの方法だろうと思いますが、これはいろんな政治情勢その他を判断しなければなりませんので、最近は総理が外国へ行っているときの臨時代理を指定をするということにとどめておるのが実態でございますが、理論的には今元信さんがおっしゃるようなやり方もあり得る、かように考えるわけでございます。
  61. 元信堯

    元信委員 やり得るじゃなくて、やっておくべきじゃないかと思うのですよ。それと、官房長官のおっしゃる副総理という規定どこの内閣法九条の規定は必ずしも一緒じゃないわけですね。副総理というのはあくまで政治的な判断といいますか、そのときどきの、これは主に与党の内部の都合によるのでしょうけれども、閣僚の中のウエートづけとしてそういうことがされている、こういうふうに考えますが、この内閣法九条の規定というのは、事故あるときの代理者ということでありますから、事故がないと言い切れない以上、なぜこれをやらないのかまことに私は了解に苦しむわけであります。  最近、有事立法を唱える勢力もこれあり、あの場合はどうなる、この場合はああなるとやかましく言うわけでありますけれども、肝心の我が国総理大臣が突然欠けるという事態に全然対処してないというのは、どう考えても不思議に思えるわけであります。後ほど時間があれば少し事例を出しながらそういうこともあり得ないことではないということを申し上げたいと思っていますが、ぜひこれを検討しなければ、どうも本当ではないのじゃないかということを申し上げておきたいと思います。  実際、アメリカでは憲法で副大統領以下序列が決まっておりますね。にもかかわらず、過日レーガン大統領が狙撃をされたときには、あれはだれでしたかね、ヘイグ国務長官が、おれが代理者だと騒いで、アメリカ国内でも一悶着あったわけでありますね。我が国でも閣内にそういう要素がないとは言えないと私、今のところ思うわけでありますが、もし首相が急に欠けて、後の代理者をだれにするかというようなことがもめてなかなか決まらないというようなことになると、これはもう政治的空白が生じるわけで、とても許されることじゃないわけですね。  ちなみに、ついでで伺っておきたいと思いますが、首相がテロで倒れた、こういう場合というのは重大緊急事態に相当しますか。
  62. 塩田章

    塩田政府委員 総理の持っておりますところの国政における地位といったようなものを考えました場合に、総理に対するテロが、形は個人的なテロであっても、我が国にとってはいろいろな意味で重大な影響があるというふうに考えざるを得ない場合が普通ではないかと思います。したがいまして、もし仮に総理がテロ行為を受けるというようなことがあれば、私は重大緊急事態に該当するのではなかろうか。これは具体のケースでないとわかりませんけれども、一般的にはそういうふうに考えております。
  63. 元信堯

    元信委員 そうしますと、この安全保障会議の招集権者がいなくて代理者もいない。先に閣僚懇談会とやらをやらなければいかぬ、閣僚懇談会には法的な根拠はない、いわゆる「条理」によってしか決定できぬわけでありますが、その辺に異を唱える者などが出てくる可能性も大いにあると思いますが、緊急な事態ではあるわけですが、安全保障会議がその場合は設置できない、こういうことになるわけですか、総理大臣の代理者が決まるまでは。
  64. 塩田章

    塩田政府委員 総理大臣がそういう形でもしも欠けた場合に、これは何も安全保障会議に限らず国政全般に大変な影響があるわけでございますから、速やかに、先ほど官房長官がお答えになりましたような方法で選出されるものと我々は考えております。
  65. 元信堯

    元信委員 考えるのはいいけれども、それまでは安全保障会議は何もできない、こういうことなんですね。
  66. 塩田章

    塩田政府委員 その点は御指摘のとおりじゃないかと思います。
  67. 元信堯

    元信委員 いろいろな事態を想定しておいて安全保障会議が必要だというのがこの法案の提案理由でありますけれども、肝心のその総撹者が欠けた場合なんかについてはお手上げである、こういうことでありますから、その辺の熱意というのはどこにあるのかまことに疑わしく思われるわけであります。  次へまいります。六条で「議長及び議員は、非常勤とする。」それからその次に守秘義務が規定されているわけですが、「非常勤とする。」とわざわざ断る理由、これは全部閣僚に限っているものを、わざわざ「非常勤」と言い立てる理由というのはどこにありますか。
  68. 塩田章

    塩田政府委員 国務大臣たる地位については別にあるわけでございますが、この安全保障会議、現在で言えば国防会議の議員たる地位について非常勤であることを明らかに示したということでございまして、それ以上の特段の意味はございません。
  69. 元信堯

    元信委員 報酬とかそういうこととも全然関係ないわけですか。
  70. 塩田章

    塩田政府委員 関係ございません。
  71. 元信堯

    元信委員 要らぬことはばかにくだくだしく書いてある割に、肝心なことが抜けているというふうに思いますが、この守秘義務がここでも書いてあるわけですが、この守秘義務の担保、何らかの罰則その他、安全保障会議の特別な性格にかんがみて、一般公務員の守秘義務以上のものが何かありますか。
  72. 塩田章

    塩田政府委員 罰則はございません。
  73. 元信堯

    元信委員 一般公務員並みということですね。そうすると、この六条は、非常勤の規定にしろ、守秘義務にしろ、全く意味のない条項みたいに思うのですが、何でこんなものをつくりますか。
  74. 塩田章

    塩田政府委員 先ほど罰則がないと申し上げましたら、「一般公務員並みということですね」とおっしゃいましたが、一般公務員の方は御承知のように罰則がございます。その点はお断りしておきます。  いずれにしましても、この規定は御指摘のようにいわゆる精神規定でございまして、これによって罰則によって担保しようということでなくて、いわゆる精神規定として規定されたものでございます。
  75. 元信堯

    元信委員 七条に「必要があると認めるときは、関係国務大臣、統合幕僚会議議長その他の関係者を会議に出席させ、」こう書いてありますが、「その他の関係者」の範囲を伺います。
  76. 塩田章

    塩田政府委員 この点は特段の限定をいたしておりません。したがって、審議する内容によりまして、場合によったら民間の方でも出席を求めるということもあり得ます。
  77. 元信堯

    元信委員 民間の方が出席していますと、この出席した人は当然会議内容に触れますね。守秘義務は生じますか。
  78. 塩田章

    塩田政府委員 民間の方には守秘義務はございません。
  79. 元信堯

    元信委員 随分おかしな話ですね。六条で、何の担保もないにもかかわらずわざわざ守秘義務というものをつけておいて、七条では「その他の関係者を会議に出席させ」ることを認めて、そこのところに守秘義務がないということになりますと、この出席者からこの安全保障会議の秘密というのはどんどん流れ出すことになりませんか。
  80. 塩田章

    塩田政府委員 そこは、理論的には御指摘のようなこともあり得るわけですけれども、実際の運用の問題でもあろうかと思います。例えば民間の方にしましても、出席されまして必要かときに御意見を求めるということでございますから、ずっと会議におられるわけでもないでしょうし、また、民間の方を選ぶ場合にもそういった秘密についての保持について率直に申し上げれば信頼のいただけるような方を選ぶとか、その辺は法律の規定というよりも運用の問題ではないかというふうに思います。
  81. 元信堯

    元信委員 随分ルーズなことをおっしゃるわけで、信頼の置ける方だけでやっているのなら、閣僚だけで構成されているものに対してわざわざ守秘義務を言い立てる必要はないと思うのですね。閣僚はそういう意味では信頼が置けぬ、こういうことですか。
  82. 塩田章

    塩田政府委員 決して閣僚が信頼が置けないという意味ではございませんが、私がさっき申し上げたかったのは、その辺になりますと実際の運用の問題であって、法律上そこまで規定するのはいかがかということを申し上げただけであります。
  83. 元信堯

    元信委員 八条に「会議の議事に関し必要な事項は、議長会議の議を経て定める。」この「必要な事項」というのはどういうことですか。
  84. 塩田章

    塩田政府委員 通常、会議の運営に当たりまして、定足数でありますとか議決の要件でありますとか招集の仕方でありますとか、そういうようなことがここで言うところの内容になろうかと思います。
  85. 元信堯

    元信委員 この「会議の議事に関し必要な事項」というのは、秘密にまた指定するつもりですか。
  86. 塩田章

    塩田政府委員 また指定するつもりかというお尋ねは、現在の国防会議についてのことを念頭に置いておられると思いますけれども、今後もし安全保障会議発足ということになりますれば、当然そこで改めて安全保障会議の議事運営規則が諮られておつくりになるだろうと思いますが、そのときの決定でどういう扱いになるか、それはちょっと私、ここで申し上げるわけにはまいらないと思います。
  87. 元信堯

    元信委員 先走って言ってなんですが、国防会議にも同様の規定がありますね。それの取り扱いはどういうふうになっていますか。
  88. 塩田章

    塩田政府委員 国防会議の議事運営規則につきましては、秘密指定ということではございませんけれども、内部の運用のための規則ということで、従来から公表はいたさないという形で取り扱ってまいっております。
  89. 元信堯

    元信委員 公表させないというのは要するに秘密ということでございますね。そこの間に何か概念上の差がありますか。
  90. 塩田章

    塩田政府委員 いわゆる秘指定ではないという意味で申し上げたわけでございますが、実際いろいろと、例えば国会等の論議におきましても、中身については必要に応じお答えをしておるということでございます。
  91. 元信堯

    元信委員 七条に戻りまして、「統合幕僚会議議長その他の関係者」とありますが、だれが、いつの会議に出席して、どのようなことを述べだというのは、秘密に当たりますか。
  92. 塩田章

    塩田政府委員 だれがどの会議に出席したかは、全部公表いたしております。それから発言したことにつきましても、発言した事項については公表いたしております。その中身についてはいたしておりません。
  93. 元信堯

    元信委員 守秘義務が課せられない民間の人がそこへ一緒に出席をしておってお互いに話をした、このことについて外部へ向かって発言した場合は、どういう扱いになりますか。
  94. 塩田章

    塩田政府委員 その点は、先ほど申し上げましたように民間の方に守秘義務を課しておりませんし、ましてや罰則等もございませんので、実際上の問題としまして、そういうことのないようにお願いをするということになろうかと思います。
  95. 元信堯

    元信委員 法律というのは強制力をもって担保しなければ意味がないわけです。単にお願いするだけなら法律なんか要らないわけだ。そうでしょう。そうすると、今までの扱いで、恐らく安全保障会議もそれを踏襲するであろうと思うわけですけれども、守秘義務のない民間の方がその会議に出席をしておって、従来公表していないそういう性質の問題、発言内容がどんどん抜けていくということになりはせぬですか。あなた方の、国家の重大緊急事態に対する対処みたいなものがそこから抜けていくということは、法体系から見てまことに遺憾、少なくとも奇妙に思われるわけですが、いかがですか。
  96. 塩田章

    塩田政府委員 そこら辺までになりますと、先ほど来申し上げておりますように実際の運用の問題でございます。例えば民間の方に出ていただいたとしましても、必要な御意見等は伺いますけれども、今先生の御指摘のような重要な秘密がどんどん論議されるという場にはそのままいていただくかどうかといったようなこともございまして、そこら辺になりますと運用の問題として適切に対処すると申し上げるよりないわけであります。
  97. 元信堯

    元信委員 どうも釈然としませんね。  官房長官、何か御都合がおありだそうですから、どうぞしばらく御退席をいただいて結構です。(後藤田国務大臣「まだ、あと五分……」と呼ぶ)わかりました。それじゃ、おいでになるときにやっておかなきゃいかぬことをやっておきましょうかね。  では十一条までまいりまして、政令委任がしてありますが、この政令の内容についてはどのようなことをお考えになっていますか。
  98. 塩田章

    塩田政府委員 この政令につきましてはまだ原案をつくっておるわけではございませんけれども国防会議の施行令と大体似たようなことになろうか。ただし、今度事務局の構想が大分変わりますので、その点要らない規定もございますから、その辺は精査いたしますけれども、趣旨としては大体似たような規定になろうかと考えております。
  99. 元信堯

    元信委員 この法案が成立した場合、七月一日の施行を考えているわけでしょう。今政令の要綱がそんな程度で大丈夫ですか。恐らく検討が進んでいると思いますから、わかるところをもうちょっとはっきりおっしゃってください。
  100. 塩田章

    塩田政府委員 今申し上げましたように現在検討中でございますが、例えば今国防会議の方の施行令にございます幹事の制度でありますとか、あるいは情報提供について関係機関の協力を求める規定でありますとか、そういうようなことを規定するようになるのではなかろうかと考えております。
  101. 元信堯

    元信委員 それでは長官、結構でございますから行ってください。  それでは、この法文を多少離れまして、私は、先ほどから、首相が欠ける場合というのを今の内閣では全然想定をされておらない、まことにのんきなものだと思うわけであります。しかし、そういうことは世界じゅう見渡してみても決してないわけではないわけですね。そうしますと、我が国でもこういうことが起こらぬことはないと思いますので、多少飛躍があるかもしれませんけれども、幾つかのケースを指定して、そういう場合国家として一体どういうふうに対応するのか、できるのか、その辺のことについて伺ってみたいと思います。  ことしは二・二六事件の五十周年に当たります。再び二・二六事件が起こるかどうか。そんなことはあるまいと皆さん思うかもしれないが、後ほど申し上げますが、そういうことをやれといって一生懸命あおっている人もあるわけでありますから、まるでないとも言えないわけであります。  二・二六事件の概要は御存じのことと思います。岡田啓介首相はしばらくの間生死不明であった、教育総監とか侍従長とかそういう要路の人は暗殺をされあるいは重傷を負った、政府の機能は一定の間麻痺をしておったわけであります。同時に首相官邸、この国会を含む永田町一帯、三宅坂にありました陸軍省、それから山王下の方、このあたり一帯が反乱軍によって占領されておった、警視庁も一時点領されておった、こういう事態であります。  こういうことが再び起こったとする。昔と今じゃ官制も違いますからそのとおりというわけにいきませんから、ここで申し上げますと、総理大臣は生死不明である、まことに申しわけないが防衛庁長官官房長官は殺害された、それから大蔵大臣も殺害、国家公安委員長は重傷である、そういうような想定を置いたときに、こういう事態がもし仮に起こったとすれば、これは国防事態になるのですか、それとも重大緊急事態になるのですか。
  102. 塩田章

    塩田政府委員 大変大きな、大きなといいますか仮定のお尋ねでございまして、私どもまず申し上げたいことは、現状において、現体制においてそういうことはあり得ないだろうということをまず申し上げたいと思いますが、お尋ねの点につきましては、もしそのとおりの状況であれば、恐らく治安状態につきまして少なくとも治安出動を要するような状態ではなかろうかと思われますが、そうであれば第一項の方の私どもが言いますところの国防事態ということになろうかと思います。
  103. 元信堯

    元信委員 その場合は、国防事態であるかあるいは重大緊急事態に当たるのか、治安出動をするのかしないのか、だれがどういう手続で判断をしますか。
  104. 塩田章

    塩田政府委員 先ほど来のお尋ねの中にございましたように、内閣法第九条の規定による国務大臣が何らかの形で指定されて国務をおとりになるだろうと思いますが、その方が招集される、こういうことになろうかと思います。
  105. 元信堯

    元信委員 内閣法九条に当たる人は、今の状態で起こればないわけですよね。ない場合はどうします。
  106. 塩田章

    塩田政府委員 先ほどのお尋ねの中にございました、そういう場合にも何らかの形でと申し上げましたのは、具体的には残った閣僚の方が集まって臨時代理を指定される、こういうふうに聞いております。
  107. 元信堯

    元信委員 主要な閣僚が生死不明であったり動けなかったり死んでしまったりというような状態で、その残った閣僚にそういう権限はありますか。
  108. 塩田章

    塩田政府委員 そういう仮定までまいりますと、現行法で想定されてないような事態でございますから、ちょっと私からお答えは難しくなるわけでございますけれども、私としましては、先ほど申し上げたように残った閣僚で指定されるのではないかというふうにお答えしておきたいと思います。
  109. 元信堯

    元信委員 この場合の自衛隊の出動の形態については、これは防衛庁長官、治安出動ということになりますね。
  110. 塩田章

    塩田政府委員 事態によるわけですけれども、今お尋ねのような想定に立ては治安出動ではないかというふうに思われます。
  111. 元信堯

    元信委員 その場合、防衛庁長官が残念ながら欠けているという場合は、自衛隊の指揮はだれがとることになりますか。
  112. 西廣整輝

    西廣政府委員 本日の前段の質疑で出てまいりましたと思いますが、防衛庁長官が欠けた場合は当然のことながら新しき防衛庁長官が任命されるということで、その方が指揮をとることになります。
  113. 元信堯

    元信委員 あなたの答弁は、いつも最後の方では横を向いて言うからよく聞こえないけれども、新しい防衛庁長官が任命される間、何もしてないわけにいきませんね。その間はどうします。——最後までこっちを向いて、よく聞こえるように言ってください。
  114. 西廣整輝

    西廣政府委員 御質問が治安出動ということでございますので、その指揮は防衛庁長官がとりませんと、その間に勝手な指揮をとることはできません。
  115. 元信堯

    元信委員 その間は出動できない、こういうことなんですか。次の防衛庁長官が選出されるまでは全然動けない、こういうことなんですか。
  116. 西廣整輝

    西廣政府委員 治安出動については御承知だと思いますが、治安出動事態というのはいわゆる治安の事態でございますから、その主体は警察が行っておるわけでございまして、その足らざるところ、警察の力をもってしては十分対応できない部分について自衛隊がお助けをするということでございますので、その間は、仮にある程度の空白期間があるとしますと、警察としては苦しい状態で続けていただかざるを得ないということになろうかと思います。
  117. 元信堯

    元信委員 総理大臣防衛庁長官が欠けている間は自衛隊は動けないということだそうであります。その間はそれじゃ警察はどういう対応をするわけですか。
  118. 三島健二郎

    ○三島政府委員 警察は、国の治安維持につきましてその責任を有する立場でございますから、今御指摘のようなクーデターなどを含めましていかなる事案に対しましても、警察力を最大限に発揮をいたしまして治安の確保に努めるという立場でございますから、当然のことながらそのような事態に対応して警察の最大の力を発揮して、その鎮圧並びに治安の回復に努めるということになると思います。
  119. 元信堯

    元信委員 警察力では対応できないときに治安出動ということになるわけでありますから、警察の力というものも限界があるわけですね。そういたしますと、今幾つかの御答弁をつなぎ合わせて考えてみますと、もし仮に二・二六事件規模の反乱が起こった場合、しばらくの間少なくとも我が国というのは全くの空白状態が生じる、こういうことにならざるを得ないというふうに思います。  そんなことにならないようにシビリアンコントロールを強化せねばならぬ、かように考えるわけですが、念のために伺っておきたいと思いますけれども、今の自衛隊法の中では反乱に対する規定というのはありますか。
  120. 西廣整輝

    西廣政府委員 現在のような議会制民主主義をとっております我が国でございますから、当然民意を代表した議会がございますし、その議会で選ばれた政府があるということで、我々としては、しかもシビリアンコントロールが十分機能しているということでございますから、クーデターというようなことは予想されておりません。したがいまして、反乱というようなものに対する規定というよりも、要するに職務に対する不服従、そういったようなものの規定がございますが、その点については人事局の方から御答弁申し上げます。(「答弁」と呼ぶ者あり)
  121. 元信堯

    元信委員 官房長、自衛隊法を読めばすぐわかることじゃないか。何も難しいこと聞いているわけじゃない。
  122. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 ちょっと最後のお答えを聞き漏らしたものですから、あるいは……(元信委員「お答えを聞き漏らしたとはどういうことだ」と呼ぶ)聞き漏らしたものでございますからちょっと違う御答弁になるかもしれませんが、今反乱について自衛隊法上の規定があるか、こういうように伺いましたが、反乱そのもの、おっしゃっているような形の反乱というのが定かでない面もございますが、先ほど来御議論のございましたような形での反乱についての規定というものはございません。
  123. 元信堯

    元信委員 まだ答弁はあるの。——じゃ先に聞きましょう。
  124. 友藤一隆

    友藤政府委員 自衛隊法の罰則の規定がございまして、そこには、「上官の職務上の命令に対し多数共同して反抗した者」でございますとか「正当な権限がなくて又は上官の職務上の命令に違反して自衛隊の部隊を指揮した者」、こういう者については、それぞれの各条によりまして罰則がございます。
  125. 元信堯

    元信委員 罰則の内容をちょっと言ってください。
  126. 友藤一隆

    友藤政府委員 百十九条によりますと、「次の各号の一に該当する者は、三年以下の懲役又は禁こに処する。」ということになっておりまして、その中で、例えば第七号におきまして「上官の職務上の命令に対し多数共同して反抗した者」というものは規定がございますので、三年以下の懲役または禁錮ということになると思います。
  127. 元信堯

    元信委員 極めて軽い罰則だという印象を持ちますが、「上官の職務上の命令」というのはどういうようなものでしょうか。
  128. 友藤一隆

    友藤政府委員 職務はそれぞれ部隊、機関等の所管によりましていろいろあるわけでございますが、例えばそれぞれの任務に忠実に従うように指示をされておるわけでございますので、そういった職務の命令に従わないというような者が「職務上の命令」に従わない、こういうことになろうかと思います。
  129. 元信堯

    元信委員 下級者が上級者の命令を「職務上の命令」かどうかという判断をする基準は何ですか。
  130. 友藤一隆

    友藤政府委員 一応、上官の命令につきましては一般的には合法の推定を受けておりまして、特に重大な瑕疵があると申しますか明らかに違法であるという場合を除きまして、合法的な命令であるというふうに一般的には判断されるということでございます。
  131. 元信堯

    元信委員 その一般の範疇を外れた場合のことを伺っているわけですが、絶対に上官の命令は合法のものであると言い切れないわけですね。
  132. 友藤一隆

    友藤政府委員 お尋ねの趣旨がよくわかりませんが、一般的に先ほど申し上げましたように合法の推定を受けるわけでございますが、当然常識的に考えて自衛隊の任務なり一般的な職務というものから著しく逸脱しているというようなものについては、やはり合法の推定を外れるという場合もあろうかと思います。
  133. 元信堯

    元信委員 合法の推定を外れる命令を受けた場合、これが「職務上の命令」ではない、こう判断するかどうかというのはなかなか難しい。というのは、自衛隊法百十九条に「上官の職務上の命令に対し多数共同して反抗した者」は「三年以下の懲役又は禁こ」こうなっておるわけですね。そして八号に、「正当な権限がなくて又は上官の職務上の命令に違反して自衛隊の部隊を指揮した者」も同様、こうなっているわけでありますが、ここでは反乱ということを想定しているわけでありますけれども、もし反乱を決意した上級者、部隊の指揮者があってそういう命令が出たときに、それに対して下級の兵が抵抗するということは自衛隊法上許されるわけですね。
  134. 西廣整輝

    西廣政府委員 上官の命令であろうとも、違法な命令には従う必要がないというふうに考えております。  なお、先生お尋ねの件は、自衛隊法でどうこうというよりも、刑法で一般的に内乱罪というものが決められておりますので、それによって律せられることになると思っております。
  135. 元信堯

    元信委員 適法であるかどうかというのが実際には非常に難しい事例というのがありますね。これは反乱のように今から官房長官を殺しに行くのだと言えば、これはだれにでも見当がつくことではあろうかと思いますが、しかし教育の効果というのはなかなか恐ろしい。後からちょっと教育の問題に触れますけれども、君側の好を取り除くことこそ維新の大義だなんて吹き込まれると、そういうふうに思うこともないとはしないわけであります。そんなことがないようにしなければなりませんが。しかし、そういう歴然たるものはともかくといたしまして、いわゆる超法規的行動ということが最近たまさか論議されることがあるわけですが、この超法規的行動なる命令が出た場合には、下級者にはこれを拒否する権利があるというふうに承ってよろしいですか。
  136. 西廣整輝

    西廣政府委員 まずお断りしておきたいのですが、超法規的な命令を出すということ自身、我々は考えていない分野でございますが、全く仮定の問題としてそのような場合には、違法な命令に対しては従う必要がないというように考えております。
  137. 元信堯

    元信委員 そういうことは全く考えていないというのがベースにあるものですから、どうも答弁も投げやりに聞こえて仕方がないわけでありますが、そこで、最近の自衛隊の動向の中に、そういうことにつながりかねない極めて危険な要素があるということについて、少し事例を挙げて申し上げねばならぬだろうと思うのです。  ことしの二月二十四日付あるいは三月三日付のミニコミ紙「月曜評論」というものがございます。そんなに大して流通しているわけでもありませんし、大体この新聞は編集綱領からして極めて政治的な色合いが強い。右翼、こう言っていいと思います。例えば編集綱領に「月曜評論は左翼全体主義から自由を護るため」、こういう政治的スローガンを掲げた新聞といいますか週刊紙ですが、ここへしばしば自衛隊の幹部が登場をして、論文を書いたり対談を掲載したりしている。その対談の内容が不適当ということで、加藤防衛庁長官は、増岡前陸上自衛隊東部方面総監を処分といいますか御注意なさいましたね。それでその人は退官をして、盛んにあちこちで、あれは不当だとかけしからぬだとか今の内局は腰抜けだとか、いろいろなことを言っておるわけでありますけれども、この問題の対談の相手になった方が松原正さんとおっしゃる方で、早稲田大学の文学部の先生です。この方と防衛庁、自衛隊関係について幾つかお伺いをしたいと思うわけであります。  まず第一に、松原さんは、最近「自衛隊よ 胸を張れ」という本をお出しになりました。防衛庁長官、お読みになりましたか。
  138. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 概要の話は役所の方でちょっと聞きましたけれども、全体は読んでおりません。
  139. 元信堯

    元信委員 著者が自衛隊に一定の影響力を持っているようでありますから、お忙しいでしょうが、ぜひまたごらんになるとよろしいかと思いますが、いろいろすさまじいことが書いてあるのですね。  例えば、法は必ずしも守らにゃならぬというものでもない、「法は高々法に過ぎぬ」とか、あるいは自衛隊は「合法的に成立した合法的政権の政治的信念が自衛隊のそれと對立する場合、」非合法的手段によってこれを倒すに違いないとか、自衛隊といろいろおつき合いがあると称して主張しているわけですね。  ほかでもなかなか活発に活動されておりまして、「ラジオ日本」に「松原正の本音で行こう」、こういう番組を持っておいでになりまして、「防衛費一%問題などというものは、日本人は知的怠惰の国民であって、この秋津島には極楽トンボが充満をしておるようなありさまだからいろいろ議論をしても始まらない。何で決まるかというと、状況が変わらなければだめだ。状況追随の天候観測民族であるから状況を変える。どういう手段で状況を変えることができるかというと、言論では変わらない。頭山満が、天下のがくがく、君の一撃にしかず」と言ってテロを持ち上げた。これを引用して、自衛隊の決起をあおるような発言をあちこちで繰り返しているわけであります。  ところで、三月七日付のサンケイ新聞によれば、この人物がこの一年強の間に、陸上自衛隊で七回、航空自衛隊で十三回、計二十回講演をして歩いているというのでありますが、この事実をまず確認をしていただきますとともに、一人の人物がこれだけたくさん自衛隊で講演をして回るということがほかに例があるかということを教えていただきたいと思います。
  140. 大高時男

    ○大高政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生のお話の早稲田大学の松原教授でございますけれども、この松原教授につきましては、確かに自衛隊が昭和五十九年から本年に至りますまで二十件の講話を依頼いたしております。この松原教授に講演を依頼しましたのは、松原教授が昭和五十八年に、有識者ということで防衛庁の広報の対象になりまして部隊を見学されたわけでありますが、その際、部隊の方から、いろいろ著名な方にお話を伺って自衛隊員の一般教養を高めるという機会がある、ただ、非常に経費その他がかりまして、中央の名のある方々というかそういう者をなかなか呼べないというような実情をお話ししましたところ、自分の方からそれでは協力してもいいというようなお話があって、自衛隊の施設とか訓練状況を見ながらあわせて一般隊員に演説をやるというような形があったわけでございます。通常、こういった部外の先生でございますけれども、これは部隊等の長が適当と判断した場合に、教育訓練の目的に沿うとかあるいはまた行事の内容からしていいということで呼ぶわけでございますけれども、年間二千件くらい陸・海・空自衛隊を通じてあるわけでございまして、中にはこの松原教授のようにかなりの回数、部隊の方においでになる方もあるということでございます。
  141. 元信堯

    元信委員 かなりの方が松原教授のように部隊へ出入りをしているということですが、防衛庁では、だれがどこでどれくらい講演をしているというようなことは把握されているわけですか。
  142. 大高時男

    ○大高政府委員 自衛隊におきましては、各部隊の長が必要と考える教育訓練を行うことになっておりまして、これは自衛隊法上、また訓令上、部隊等の長の権限になってございます。もちろん訓令がございますので、その訓令の定めるところに従って、行事なり教育上効果があると考えた場合にやるわけでございます。ただ、部隊等の長において判断をしてお呼びいたしますので、全体としてどれだけやるということは、特に内局に対する報告というものを求めておるものではございません。
  143. 元信堯

    元信委員 今ちょっと御答弁に矛盾があるように思うのです。防衛庁、自衛隊の方では、全体についてだれがどれくらい講演して歩いているなどというようなことはわからぬとおっしゃっておりながら、これ以上たくさんやっている人もたくさんございますというのはおかしくはないですか。
  144. 大高時男

    ○大高政府委員 この件は、実はこの問題が起きまして元信堯生の方から、一体何回ぐらい、どれぐらい行っておるであろうかという御依頼がございまして、私どもの方でも、一度それじゃどれぐらい呼んでおるのか把握してみようということで、全体の数あるいはどういう方々が来られておるかということを掌握したということでございます。
  145. 元信堯

    元信委員 確かに私の方から、この松原さんがどれぐらい自衛隊へ行かれたかということは調査をしております。余りに多くてほかのことはわからぬというお答えだったと思いますが、例えば二十回以上講演されたような方はほかにございますか。
  146. 大高時男

    ○大高政府委員 お答え申し上げます。  それぞれ御講演に来ていただく方の御了承を得ておりませんので名前を申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、今陸上自衛隊の例で一つ言いますと、一人の方が、例えば五十九年から六十年でございますが、二十二回おいでになっている方もございますし、二十三回というような方もおいでになります。
  147. 元信堯

    元信委員 御当人の了解がなければ名前が言えないと言うのですけれども、この松原さんなんかは別にだれの了解をとったわけでもなくてあなた方は調べておっしゃっているわけですが、どんな人かおっしゃってもいいのじゃないですか。
  148. 大高時男

    ○大高政府委員 ただいま私が申し上げました方は、例えば一人は北海道のある会社の社長でございますし、いま一人は、ある小さな新聞でございますが、新聞の編集等をおやりになったOBの方、こういう方々でございます。
  149. 元信堯

    元信委員 自衛隊の部隊にだれがどんなふうに講演で回っているかというようなことは、何にも秘密にすべきことじゃないと思うのです。それどころか、今これからも申し上げますが、こういう非常に偏ったといいますか特異な意見の持ち主の人が講演で回っているなどということは、将来の自衛隊の教育のためにもゆゆしき問題だと思うのですよ。そうすると、我々としては、一体どういう人がそういう講演を引き受けているのか、そのことについては当然知る権利があると思うのですが、それをちゃんと出してくださいよ。
  150. 大高時男

    ○大高政府委員 それぞれ私どもの方でお願いしておいでになっておるわけで、私は、特に今先生が御指摘のような、偏った考えの持ち主とかなんとかそういう意味で名前を申し上げないわけではなくて、それぞれおいでになるにつきましては個人的な事情等もあろうかと思いますので、具体的な名前につきましてはぜひ御容赦をいただきたいと思います。
  151. 元信堯

    元信委員 言っていることに全然根拠がないと思うのですね。何も悪いことを頼んでいるわけじゃなし、あなた方は大いにこの人だと思って見込んで頼んでいるはずですから、どういう方にお願いしたかというようなことぐらい言って当然じゃないですか。そんなことも言えぬようじゃとても審議できぬですよ。
  152. 大高時男

    ○大高政府委員 講演に来ていただく方々につきましては、私どもの方からお願いして、それぞれの分野と申しますか、専門分野におきまして適当と思う方をお願いいたしておるわけでございますが、そういう名前を公表するということになりますと、おいでになる方々の今後の御講演にも影響しようかということで、ぜひ御了解をいただきたいと思うわけでございます。
  153. 西廣整輝

    西廣政府委員 先生御承知のように、日本の中に一部非常に過激な自衛隊に反対の方等おられまして、私が教育担当をしておったころも、講師の方の名前がたまたま出ましたら、そこに脅迫状が行ったりいろいろな問題が起きますので、この手の問題につきましてはプライバシーにも関することでございますので、御遠慮させていただきたいということでございます。
  154. 元信堯

    元信委員 そんなものはプライバシーであるはずがないんだよ。何を言っているんだ。(発言する者あり)
  155. 志賀節

    志賀委員長 それでは、防衛庁大高教育訓練局長に重ねて答弁を求めます。
  156. 大高時男

    ○大高政府委員 ただいま私が御答弁申し上げました数の多い人物を例示的に申し上げさせていただきますが、先ほど一人につきましては二十三回と申し上げましたのは札幌マツダの社長の山口潔さんという方でございます。それからもう一人は「防衛北海道」編集主幹をおやりになった、今はもうOBでございますが、新川輝国という方でございます。
  157. 元信堯

    元信委員 そんな人のところへ脅迫状が行くとはとても思えないわけですね。自衛隊で講演をしていたことがばれるとぐあいが悪い——我が党の石橋委員長ですら、求められて防衛研修所で講演したことがあるのですよ。それが言えないなどというようなことは、いたずらに審議を妨害する態度でまことに遺憾であると思います。  これほどの講演を松原さんという方が行うについでは、この方はもともとは何かシェークスピアの学者だそうでありますが、シェークスピアの学者が自衛隊でこれだけの講演を行うというからには、だれかがこれを紹介しているんじゃないかなと思うのです。そうでなければ、このシェークスピアの先生がこれだけ防衛庁の中で話をするということはちょっと信じられない。こういうような思想をだれかが隊内に広めようとしているというようなことを思うわけです。海上自衛隊にはないようでありますけれども、陸・空にかなり広範囲にわたってこういう講演が手配されたということについては、どなたがどういうような形で手配をされたのでありましょうか。そして、どういう場所でそういうことが行われたのか。  それからまた、聞くところによると、この松原さんという方は、自衛隊は金がなくて気の毒だということで謝礼を取らないというようなことを言っておられるようですけれども、そっちの方がおかしいのじゃないかなと思うのですね。そういう規定というのは一体どういうふうになっているのか。世の中ではただほど高いものはないと言われておりまして、うっかりただなんかで頼んでおると何を話されるかわからない。こんなような気もいたします。  どういう場所でされたか。また、そういうところへ講演に回るのは何か飛行機で回っているというようにも伝えられていますけれども、さようなことは事実かどうか承りたいと思います。
  158. 大高時男

    ○大高政府委員 松原先生につきましては、先ほどお答え申し上げましたように、有識者に対する広報活動を行いました際に、教授に部隊を見てもらった、その際教授の方からそういう申し入れがあったということで、ラジオ日本あるいはまたサンケイ等で著名な方でございますので、順次聞き伝えて各自衛隊で講演をすることになったというふうに理解をいたしております。  それから謝礼でございますけれども、今部外講師につきましては必ず謝礼を払わなければいかぬというわけではございませんで、もちろんお払いする額というのはあるわけでございますけれども、御辞退される方については御好意に甘えるということもあり得るわけでございます。  それからまた、この松原教授につきましては、自衛隊の実態を知っていただくということで一種の防衛の広報にもなりますので、例えばいろいろな駐屯地とか航空自衛隊の基地等に参ります際には輸送機等に便乗しておいでをいただいておるということでございます。
  159. 元信堯

    元信委員 この方をオピニオンリーダーに任命されておるわけですね。オピニオンリーダーというのはどういう制度であるのか。  また、こういう過激な思想の持ち主がオピニオンリーダーであるのは、私は自衛隊にとっても余り好ましいことではないというふうに考えますが、その基準などについて承りたいと思います。
  160. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 オピニオンリーダーについてでございますが、主として首都圏に御在住の有識者に対しまして、各種の資料をお送りいたしましたり部隊見学への招聘を行いましたり、いろいろな行事がございましたときに招待申し上げるというようなことをいたしておりまして、各年度ごとに、例えば大学教授でございますとか評論家でございますとか作家でございますとかマスコミの方でございますとか経済界の方でございますとか研究機関の方でございますとか、広くそういう中から御依頼申し上げているわけでございます。
  161. 元信堯

    元信委員 この松原教授は、御著書の中でいろいろなことを言っておられるわけですが、ちょっと見過ごせないのは、この人は超法規的行動を積極的に支持されているわけでありますが、それと同時に、超法規的行動などということは珍しくない、ちょくちょく自衛隊の中であるのではないか、こういうことを言われているわけなんですね。  一つ例を申しますと、この本の帯にも「自衛官必讀の書」こう書いて、「私の知る限り、まつたうな制服は皆、切羽の際にはまたぞろ文民統制なんぞは無視し、切腹覺悟で「超法規」をやるしかないと考へてゐる。そして、陸海空自衛隊には他にまだ生々しい「超法規」の實績がありはしないか。」こう書いてあります。「他に」というのは既にある、こういうことを前提にして言っておるわけですが、その実例としてかのベレンコ事件、ミグ25の飛来の事件を例に挙げて、「自衛隊は密かに演習の名目で、一部部隊を臨戰體制につかせ、政府に内緒で、北部方面總監に切腹覺悟で部隊を移動させた」、具体的には、北部方面総監は、隷下の第一一師団第二八連隊を函館に派遣し、田中総監陸将は近藤陸将師団長に対し、「ソ連機が来襲した場合は撃墜せよ」、五十海里以内、これは領空の外でも撃墜せよ、こういう命令をした、こういうふうに書いているわけですが、事実でしょうか。
  162. 西廣整輝

    西廣政府委員 ミグ25の事件が起きた際の自衛隊のとりました措置については、一昨日のこの委員会でお答え申し上げたと思いますが、それぞれの平時における現行法でとり得る範囲で警戒を強化するとかあるいは外出どめをするとか、いろいろな措置を講じておりますが、今申されたように、領海外で撃墜をせよというような命令を出したとか、そのような事実はございません。
  163. 元信堯

    元信委員 あるいはまた、二八連隊がL90高射機関砲と六一型戦車を函館空港のそばに配備をした、これもその超法規的行動だ、こう言っておるのですが、事実でしょうか。
  164. 西廣整輝

    西廣政府委員 これまた申し上げたところでありますけれども、当時、いわゆる緊急配備訓練というような形で、できる限り有事即応の態勢になり得るように、出動命令等が下ればそれに対応できるような措置、これは教育訓練で方面総監の権限の中ででき得る範囲のものについて措置したことの一つの中に、L90の部隊についても配備訓練を行っておることは事実でございます。
  165. 元信堯

    元信委員 別にそのことは、現在の自衛隊法等から見て超法規と言うには当たらないことなんですね。
  166. 西廣整輝

    西廣政府委員 配備訓練を行うことも教育訓練の一環でございまして常々行っていることの一つを、その時期にたまたまそれを適用してやったということで、現行法の範囲内の行為というように考えております。
  167. 元信堯

    元信委員 著書の中でそういうようなことを盛んに言っているわけですが、こういう人物が自衛隊のオピニオンリーダーとして採用される、あるいは自衛隊員に対してこういう事実と違うことをあたかも事実かのごとく言って回るということについては大きに問題だと思いますが、いかがでしょうか。
  168. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 オピニオンリーダーに松原先生をお願いしましたのは、先ほど申し上げましたように昭和五十八年度でございまして、オピニオンリーダーはこれまた先ほども申し上げましたように年度ごとにお願いをいたしておりますので、その五十八年度はオピニオンリーダーでございましたが、その後はお願いはいたしてはいないわけでございます。  伺うところによると、その著書にも書いてあったかと思いますけれども、先生は、五十八年にそのオピニオンリーダーにお願いをして部隊見学をなすったのを契機にして、自衛隊にだんだん御関心を持ちいろいろ勉強もなすったようでございますが、その後の経過を経て先ほど先生がおっしゃいましたような著書がこの三月に出たということでこざいまして、その著書の出たそういう先生で最初からあったわけではない、そういうことだと思います。
  169. 元信堯

    元信委員 余りばかなことを言わぬようにしてもらいたいと思うのです。この先生は初めはまことにまじめないい先生であったけれども、途中から途方もないことを言い出すようになった、こういうお話なんですね。そんなばかなことはないと思うのですよ。  この方は、例えば先ほど申し上げました増岡陸将との対談にあっても、その増岡陸将の問題発言を引き出すような発言をずっとされているのは「月曜評論」をごらんになったらよくおわかりだと思うわけですが、今の宍倉官房長のお話だと、途中まではいい先生であったけれども自衛隊を見せたら突如悪くなった、こういうように受け取れますが、そうですか。
  170. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 私の申し上げ方が悪かったのかもしれませんけれども、オピニオンリーダーというのは各界、先ほど申し上げましたように大学教授の方でございますとか評論家の方、マスコミの方、世の中でいろいろの面で影響力のある方、つまりオピニオンリーダー、その方に自衛隊を知っていただいて、その方を通じて自衛隊というものをよりよく、より広く皆さん方に知っていただきたい、こういうことがオピニオンリーダーでございます。  先ほど申し上げましたように、五十八年度の時点におきまして大学教授として先生にお願いした、こういうことでございます。そのことと先生が先ほど来御質問になっていらっしゃることとは、私は関係のないことだと思っております。
  171. 元信堯

    元信委員 関係なくはないですよ。この人はもともとシェークスピアの研究者であったわけでして、そんなに軍事問題に詳しかったわけではない。それをどういうわけだか、あなたたちがオピニオンリーダーにして全国の自衛隊を飛び回らせた結果、こういうような人になっちゃったわけだ。本人もこの本の中でそう書いていますけれども、そういうようなことは、現場の人から聞いてこういう認識を深めるに至ったと言っているわけです。オピニオンリーダーというのは、何でもない人をこういうクーデター主義者に仕立て上げることになりはせぬでしょうか。制度のあり方そのものを再検討する必要はありませんか。
  172. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 いろいろな方がおられますし、同じものを見ましてもいろいろな考え方をなさる方がおられるわけでございます。オピニオンリーダーにお願いするような方は各界のそれぞれの立派な方であると思ってお願いしておるわけでございますので、そういう方々がそれぞれのお考えがあるのは当然でございまして、私どもは、オピニオンリーダーをお願いいたしましてオピニオンリーダーを通じて自衛隊の広報を進めていきたいということについては、今後も進めてまいりたいと思っております。
  173. 元信堯

    元信委員 やればやるほど悪くなるというのがどうも私の印象です。  問題なのは松原教授の影響力というもの、この間のこれだけの講演活動、あるいは部隊訪問活動、第九師団なんかにはかなり足しげく行かれているように書物では拝見をするわけでありますけれども、今どの程度影響力を持つに至っているか、あるいは陸・空の幕僚長を含む将官の皆さんと会談をしたりというような機会もるる持っていると聞いておりますけれども、そういうようなことについて防衛庁は何かお調べになったことはありますか。
  174. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 調べたことはございません。
  175. 元信堯

    元信委員 どの程度の方々と合って影響力を行使されていると考えていられますか、あるいはまた内局の方にも親交があるやにおっしゃっているようでもありますけれども、官房長なども個人的な御交際はございますか。
  176. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 私についてのお尋ねでございますから私限りのことで申し上げますと、一度お目にかかったことがございます。電話は数回いたしたことがございます。
  177. 元信堯

    元信委員 あなたとは個人的にお知り合いであるということですね。先ほどの全国の部隊の講演に対して、あなたが御紹介の労をとられたことはございますか。
  178. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 それはございません。
  179. 元信堯

    元信委員 先ほどの増岡陸将の処分の件でございますけれども、伝えられるところによりますと、何か民社党がこの処分は不当であるとして防衛庁に抗議したというふうに報道されていますが、事実ですか。
  180. 友藤一隆

    友藤政府委員 お答えいたします。  民社党の先生方が長官室にお見えになったことは事実でございますが、抗議という内容なのかどうか、一応事実の説明を求める、それで先生方の御意見をおっしゃったと聞いております。
  181. 元信堯

    元信委員 どういう御意見でございましたか。
  182. 友藤一隆

    友藤政府委員 増岡陸将の発言について、特に叱正に値するような内容ではないのではないかというようなことについてのいろいろなお考えを示されたと承っております。
  183. 元信堯

    元信委員 最近、こういう問題について自衛隊の制服が、これは何党ということは申し上げませんけれども、政党に頼んで今言ったような行動に出ることがあると聞いておりますが、そういうことについてお調べになったことがございますか。
  184. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 そのようなことはないと存じます。調べたことはございません。
  185. 元信堯

    元信委員 どうも、最近私どもそういうことをたびたび耳にするわけであります。言うまでもなく自衛隊員の政治行動は厳しく禁止されているところでもありまして、そういうことのないように十分気をつけていただきたいと思うわけであります。  最後に防衛庁長官に、今申し上げましたクーデターの問題といいますか、自衛隊に対して超法規行動なり何なりを勧める風潮が一部にあることは御理解いただけたと思うのです。そういうものに対して自衛隊の方のガードがかたいかということになりますと、これも今見ましたように、そういう人物がかなり頻繁に部隊に出入りをして、講演も二十回もしているわけでありますけれども、単にそれのみならず、高級将官とも極めて親しくしておる、こういう事態にあるわけですが、防衛庁長官、どういう感想をお持ちになりますか。
  186. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 私たちの自衛隊員につきましては、現在の憲法の精神に従って、そして私たちの防衛の基本政策に従って、理解できるように日ごろからの教育をやっております。そして、その教育訓練は非常に多岐にわたり、かつまた、長い時間をとっておりますので、隊員は、私たちの現在の政策及びシビリアンコントロールの本質等について十分に理解していると思っております。  したがいまして、先ほどクーデターの可能性がないかとかいう前提に基づいた御質問でございましたけれども、私たちの現在の判断では、それは本当に仮定の仮定の遠い話であって、今そんなことが起こり得るわけがないという万全の自信を持っておりますし、私も政治家として、あちらこちらの部隊に見に行ったり、あるときには曹・士、末端の隊員にも会いますし、幹部にも酒を飲みながら話をしますが、元信議員の御心配になるような状況はございません。  そこで、私たちは、そういう教育に十分なる自信を持って、ある意味では余裕を持っていただいていいと思っておりますし、それに基づきまして、我々の政府・自民党の政策とちょっと違う意見もいろいろなところで自衛隊員に話していただいております。それのかなり高度のものといえば、例えば今防衛研修所において各政党のリーダーの方、防衛政策担当の方にも来ていただいております。自衛隊の存在をお認めにならない社会党のリーダーの方にも来ていただきその意見を開陳していただいておりまして、私たちは、そういった種々の意見を聞くことによって、その中からいろいろなものを吸収しながら、自分たちの現在の政策により自信を持つ、その信念に強靱性を持っていただきたい、こんなふうに思っておる次第でございます。  そこで、先ほどのクーデター云々のことでございますけれども、その点につきましては、今御指摘のような本も出版されたことでございますので、今後のことについては、各部隊の長が常識を持って判断していくと私は信じております。
  187. 元信堯

    元信委員 一般的に教養として、いろんな考えがあるということを学習するということはあながち否定をすべきではない、これはそう思います。しかしながら、一般の部隊のいわゆる下士官・兵に対してこういう極端な意見というようなものを繰り返し講演をするというようなことについては、これはちょっと尋常を欠いているというふうに思うのですね。これは言うならば非合法の勧めでありますから、社会党なんかの比じゃないわけですね。言ってみれば何とか派というような過激派と同じことでありまして、爆弾を投げた方が効率がいいなどというような意見については、とてもじゃないがまともな教養として取り上げるべきものじゃない、そういう範疇のものだと思うのです。  したがって、今の宍倉官房長のお話だと、今まで猫をかぶっていてよくわからなかった、しかしこういう本を出して天下に自分の意見を明らかにした以上、ちょっとこれから先こういう人を自衛隊で講師に使うなどということはよもやあるまいと考えますが、いかがでしょうか。
  188. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 先ほど申しましたように、私たちは隊員を信頼し、それぞれの部隊員の指揮官たちを信頼いたしております。したがいまして、それぞれの講師の選定につきましては、かなり現場のことでもございますので、それぞれの指揮官ないしそれぞれの部隊の長の判断に任せておるわけでございますけれども、先ほどからの御指摘のようにそういった内容の出版もされていることでございますので、今後につきましては、部隊の人間がそれぞれしっかりとした常識に基づいた判断をしていくと私は信じております。
  189. 元信堯

    元信委員 なかなか信じてというだけではいかぬことがある。そのいい証拠に、最高級幹部の一人である東部方面総監などという陸将にまで上った人が、こういう新聞で甚だ不用意な発言を行ってあなたに処分をされる、こういう事態になっているわけですね。ですから必ずしも信頼、信頼とは言っておられない。あなたの方でちゃんとした指導方針を出すべきところへ来ているのじゃないかなというふうに思います。  これの影響力が及ばないであろう、大丈夫であろうという考え方はちょっと甘いのじゃないかということを申し上げておきたいと思います。といいますのは、最近も、自衛隊の退官した将官が盛んに、そういう現在の自衛隊法なり何なりあるいは憲法に至るまで不満を並べて、そういうものを出版をする傾向がありますね。その傾向の中にこういうものも位置づけられるわけでありまして、それに対して今の防衛庁、自衛隊が余りに寛大といいますかなまぬるい態度をとっておりますと、これはそういう意見が受け入れられているのだ、こういうふうに解釈をして、ますますそういう傾向というのが拡大をするもとになるのじゃないかと思うのです。先ほどクーデターの可能性ども理論上の問題として申し上げましたけれども、今直ちにクーデターが起こるなどというようなことは私どもも思っておりませんが、ただ問題は、こういうものは芽のうちにそういう傾向を摘んでおきませんと、ある程度拡大してからでは手がつかなくなる。これは二・二六事件の教訓でもあろうというふうに思うのです。  そういう意味で、個別の問題について長官はなかなか言いたくなさそうでありますから、私もある個人をとらえて余り言うのもどうかと思いますけれども、全体としてシビリアンコントロールに対して疑義を差し挟むがごとき傾向というのが自衛隊の中に育たないよう、その点については確固とした指導をされるようにもう一遍防衛庁長官の決意を承って、質問を終わりたいと思います。
  190. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 シビリアンコントロールの点は、我が国の防衛政策の中で非常に重要な部分であり、最も重要な部分だ、こう考えております。  そこで、従来からこの問題につきましては、隊員がどう思うか、それからまたOBがどう発言するか、いろいろ論議になっておるわけでございますけれども、私たちの見たところ、そのシビリアンコントロールの原則がますます理解されずに悪い方向に向かっているのか、それとも戦後の隊員たちがよりその点を深く理解して摩擦のないような方向に行っているのか、どちらの方向に行っているかと言われれば、私は完全に後者だと思っております。特に戦後教育を受けた隊員たちが、それは防衛大学卒業の今後の幹部候補生も含めてでございますけれども、やはり民主主義国におきます防衛体制というものは国民の意思と無縁で行い得るものではないということは、だんだんますます強く認識されている、私は最近の内部の情勢を見てそう思っております。  したがって、その点には万全の自信がございますけれども、今委員指摘のシビリアンコントロールにつきましてしっかりとした方針で今後とも臨むべきであるという点については、私も全く異存ございませんので、常にその点については注意を払って運営してまいりたい、こう思います。
  191. 元信堯

    元信委員 終わります。
  192. 志賀節

    志賀委員長 鈴切康雄君。
  193. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 安全保障会議設置法に入る前に、防衛庁長官の方にいろいろとお聞きしたいと思っております。  まず、我が国は、「国防基本方針」に基づきまして国力、国情に応じた効率的な防衛力の漸進的な整備を図るために、当面の三年または五年を対象期間とする防衛力整備計画を、実は四次にわたって策定をされてきました。第四次防衛力整備計画が昭和五十一年をもって終了することに伴いまして、政府は五十一年十月「防衛計画大綱」を国防会議及び閣議において決定をされたわけでございます。それに基づきまして五三中業、あるいは五六中業、中期防衛力整備計画という段階を経過してきて、既に十年をたっております。で、「防衛計画大綱作成当時と現在の国際情勢を比較した場合にどのような相違があるか。やはり防衛をやる以上は、国際情勢あるいは軍事情勢というものの分析なくして防衛力の整備計画はあり得ないと私は思っておるわけでありまして、そういう意味から言いまして、「防衛計画大綱作成当時と現在の国際情勢はどういうふうな相違になっておるか。その点についてお伺いいたします。
  194. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 「防衛計画大綱」を設定したときと現在の国際情勢について基本的にどういうところが変化があるかということでございますが、国際情勢につきましてはいろいろアップダウンがあったり一張一弛しておりますけれども、基本的には大きな変化はないのではないかと考えております。  「防衛計画大綱」を定めましたときの国際情勢の認識といいますのは、米ソの対立は厳しくあるけれども、しかし双方が戦火を交えるような状況ではないということは現在も変わっていないと思います。また日本について言うならば、極東地域でかなりの緊張状態はあるけれども、また朝鮮半島におきまして分裂状況があってそこの緊張はあるけれども、しかし日本とアジア全体の状況について見れば、日米安保条約というものが有効に機能していて、そしてここで今すぐ有事になるような感じではない。それが大まかなところだと思いますが、その点については現在も変わっていないのではないかと思います。  ただ、あえて国際軍事情勢という面について言うならば、その後、ソビエトによります核及び通常戦力の増強はかなり厳しいものがございます。したがって極東地域、アジアをめぐる国際軍事情勢というものは当時よりは緊張感があるのではないか。そんなふうに大まかに見ておる次第でございます。
  195. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 今長官が言われましたことを要約いたしますと、大枠については変わらないということであるわけでございますけれども、私はやはり、極東における軍事情勢についてはその当時とはかなり変わってきている。今も図らずも脅威を感ずるというようなお話がありましたけれども、これは防衛庁長官でなくてもいいのですが、専門的な立場からもう少し、軍事情勢についてはどういうふうに分析をされているか、その点についてお伺いしましょう。
  196. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 細かくは政府委員よりお答えさせたいと思います。  ただいま私、緊張が強まっているというのはちょっと言葉が強過ぎたと思います。厳しさを増しているといいますか、それぞれの配備の数がふえて国際軍事情勢は厳しさを増しているという表現の方が適切かと思いますので、訂正させていただきます。
  197. 瀬木博基

    ○瀬木政府委員 ただいま長官の方より、現在の国際軍事情勢というものをとらえてみると厳しさを増している、その基本的な動向にはソ連の引き続く軍事的な増強があるというお話がございました。これは特に極東方面、日本を取り巻く極東においてその増強が著しいというのが遺憾ながら現実ではないかと考えます。  大綱を策定いたしました五十一年とその後十年たちました現在を比較いたしてみますと、地上兵力にいたしましても、当時極東方面に配備されておりましたソ連の地上軍がおよそ三十一個師団、三十万人であったものが、現在においては四十一個師団、三十七万人に及んでおりますし、その内容においても、戦車その他の近代的な装備が着実に増強されているという状態でございます。また航空戦力にいたしましても、およそ二千機であったものがその一割増し、二千二百機になっておるわけでございますが、そればかりではなく、その内容においても着実に新しい近代的な飛行機が増強されているということでございます。また海軍戦力につきましては、現在、太平洋艦隊というのは、ソ連の持っております海軍の中で最も大型がつ近代的な海軍戦力であると言ってよろしいのであると思います。  他方、我が国固有の北方領土においても、五十一年当時はソ連の陸軍兵力というものは実はなかったわけでございますが、その後着実に兵力が増強して、現在においては師団規模の兵力が配置されているというのが遺憾ながら現実であるということでございます。
  198. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 「防衛計画大綱」策定時と比較した極東ソ連軍の増強の状況については、あなたが今分析をされたそのこと自体はもうごく一部分であって、軍事情勢についてはもっともっと厳しくしなくちゃならぬのじゃないですか。例えばSS20の場合を考えてごらんなさい。大綱策定時は全くなかったのですよ。それが現在は四百十四基の約三分の一。そしてバックファイアがその当時なかったのですよ。それが現在約八十五機。それからベトナムのカムラン湾のあそこへ、ソビエトの言うならば海軍が、艦船が駐留しているじゃないですか。そういう重要な分析もなされないで、ただ単に陸上兵力はこうです、海上兵力はこうです、あるいは航空兵力はこうです、これでは軍事情勢の分析にならぬじゃないですか。
  199. 瀬木博基

    ○瀬木政府委員 まさに先生御指摘のとおり、ソ連の極東における軍事勢力を分析する際には、私が申し上げたというのは全く全体の中の一つの枠組みというか、全体のソ連の軍事力が増強されているということを端的に示すものとして申し上げた次第でございまして、全貌を考える場合には、それに加えて地理的な配置、ただいま先生の御指摘にあったような、かつてなかった外洋的な軍事基地を持つようになったソ連というものについても厳しく分析していく必要があるというところは、まさに先生御指摘のとおりだと思います。
  200. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 防衛庁長官、やはり軍事情勢というものは厳しく分析しなくちゃならないわけですね。なかんずく、大綱策定時にSS20はゼロだったのです。それが逐次極東に配置されたというような問題なんかも厳しくとらえなくちゃならぬだろうし、あるいはまたバックファイアにしてもそのときはゼロだったのですが、既にバックファイアが配備されたということについて、これは軍事情勢の中では重要な部分であり、もしこれが欠けてしまったら、それはいわゆるソ連の増強に対する我が国の軍事情勢の分析としては大変大きく欠ける点ではないかと思いますが、防衛庁長官、どう思いますか。
  201. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 先ほど国際参事官が最初答弁のときに、極東配備のSS20とか、カムラン湾におきますソ連の基地の新設の問題とか、それからバックファイアの問題等に言及しなかったわけでございますが、この点は日ごろから国際参事官も言っているところでございまして、最初答弁でうっかり落としているんだろうと思います。  国際参事官を中心に我々情報収集いたしておりますけれども、先生御指摘のように、その点は我々にとって非常に大きな関心を持っているところでございます。
  202. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 この話はちょっとこのままでおいておきまして、六十一年度概算要求は、当時五九中業の作成に際しての基本的考え方に基づいて要求されたというふうに私ども思っているのですけれども、その点についてはいかがでしょうか。概算要求です。
  203. 西廣整輝

    西廣政府委員 お答えいたします。  六十一年度予算の概算要求につきましては、当時政府レベルの五カ年計画をつくるということで、政府部内の調整中でございました。ただ、たまたま概算要求までに調整が完全に決着するのは難しいという見通しになりましたので、当時国防会議におきまして調整中といいますか、御討議いただいておりました五カ年計画の案というものを参考にしながら、六十一年度の概算要求をさしていただくということを防衛庁長官から御報告いたしまして、御了承いただいたわけでございます。
  204. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 五十九年の五月八日に防衛庁長官の発言要旨がございまして、防衛庁における五九中業の作成に際しての基本的考え方についてということで、「昭和六十一年度から昭和六十五年度までを対象とする中期業務見積り」という、いわゆる五九中業の作成作業を行うということで発表されたわけです。当然、各省それぞれ概算要求はその方針に基づいて出されてきているわけですから、防衛庁においても、いわゆる中期防衛力整備計画が出る前は五九中業によって概算要求をずっと煮詰めてきた、それはもう間違いない事実でしょう。間違いない。——何にもやらなかったのですか。それじゃ防衛庁は、六十年においてはいわゆる概算要求、各省が出すようなそういうものについての煮詰めは全く何にもやっていなかった、こういうことでしょうか。そんなことはないでしょう。
  205. 西廣整輝

    西廣政府委員 今先生の申された五九中業というもの、当然のことながら防衛庁としてはその原案をつくりまして、それを六十年に入りまして関係省庁とそれについて調整を始めておったわけです。それが引き続き、その後の情勢で、次の五カ年計画政府レベルの五カ年計画にしようという方針が大体固まりまして、それでは政府計画でということで、五九中業というものが政府レベルの五カ年計画というものに性格が変わって、その内容についての詰めをたまたま概算要求時になされておったわけです。ただ、政府レベルの五カ年計画が完全にこういう形で決めるという段階まで至りませんでしたので、そのまた各省で調整中の素案というものを一応参考にしながら防衛庁として概算要求案というものをシーリングの中でまとめて要求申し上げた、こういうことでございます。
  206. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 五九中業の素案というものはあったわけですよ。素案があって、そして初めて御存じのとおり中期防衛力整備計画へと進んでいったわけですからね。そういう意味からいって、まるっきりなかったなんというわけにはいかないわけです。  五九中業は、「「防衛計画大綱」に定める防衛力の水準の達成を期するもの」としてあったわけですけれども、中期防衛力整備計画については、「防衛計画大綱」の基本的枠組みの下こというふうになっております。となりますと、「防衛計画大綱」そのものと「基本的枠組みの下」とは内容的には大変に違ってくるわけです。もし同じだというふうにおっしゃるならば、なぜあのときに、防衛庁長官が発言をされたそのままを受け継いで中期防衛力整備計画はつくられなかったかということにもなるわけです。  そういうことから考えまして、「大綱」というものについては御存じのとおり大変に抽象的な面があるわけでございますが、それについての「別表」というものがございます。その「別表」については、言うならばこの「基本的枠組みの下」にやるということについては柔軟な運用をするというふうに受け取ってよろしゅうございましょうか。
  207. 西廣整輝

    西廣政府委員 先生のおっしゃったとおり、五九中業では、「大綱」水準をその五カ年計画の整備によって達成をするという長官指示に基づいて作業をいたしておりました。また、政府レベルの五カ年計画も同様に、「大綱」の基本的枠組みの中でこの五カ年の計画整備によって「大綱」水準の達成を目指すということで、そのねらいとするところについてほとんど変わりはないというように私は理解をいたしております。  さらに、政府レベルの五カ年計画におきまして、基本的枠組みの中でということであるので「別表」についてどうであろうかという御質問だと思いますが、その点につきましては、政府レベルの五カ年計画も、現在の「大綱」及び「別表」の枠組みをそのまま踏襲といいますか、その枠組みを守った形で整備をするということになっております。
  208. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 だから、ほとんど変わらないとおっしゃいますけれども、これは非常に微妙な言い回しで変わってきているわけです。五九中業は、「「防衛計画大綱」に定める防衛力の水準の達成を期するものとする。」ということで努力をしよう、努力目標だった。ところが中期防衛力整備計画は、「「防衛計画大綱」の基本的枠組みの下、これに定める防衛力の水準の達成を図ることを目標とする。」ということですからね、これは決して、ほとんど変わらないなんてそういうふうなことを防衛局長おっしゃると、それじゃ前のとおりにお直しなさいと私は申し上げたいと思うのですよ。実際は、ここのところは五九中業のときと変わってきているのです。言い回しが変わってきている。私は調べたんです。いわゆる大臣の発言の要旨のところとこれは大変に変わってきている。だから、変わってきているなら変わってきているでそれは理由はあると思うのですよ。これはほとんど変わりはないんですというふうなわけにはちょっといかぬと思うのですが、防衛庁長官、その点はどうでしょうか。
  209. 西廣整輝

    西廣政府委員 御案内のように、五九中業というのは防衛庁部内の参考資料ということで防衛庁限りでつくるものであったわけですが、その際いわゆる「大綱」水準の達成について、我々あるいは当時の防衛庁長官として、水準達成というものに対してかなり強い決意を表明するという意味で、「期する」という言葉を使っておると思います。その後、御案内のように政府レベルになりまして、関係省庁ともこれを調整をするということになりますと、いろいろな面で、主として経費枠その他の面でもさらにいろいろ削減をしなくちゃいけないとかそういったことも起きてまいりまして、「大綱」水準の達成という看板はおろさないわけでございますけれども、それなりに達成の度合いについてある程度の差が出てきているということで、おのずから表現も変わってきたというふうに御理解いただきたいと思います。
  210. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 五十一年十月二十九日「防衛計画大綱」並びに「別表」については、過日同僚議員から「別表」を変える考えはないかというふうに質問をいたしましたときに、防衛庁長官は、現在のところは変える考えはないというふうにお答えになりました。私、それを聞いておりましたから。——それで、中期防衛力整備計画は六十一年から六十五年の政府計画でありますから、なかんずく、三年での見直しに際しても「別表」については変更をされないということなのか。それとも五年間も同じような考え方なんでしょうか。その点はどうなんでしょうか。
  211. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 現在の中期防衛力計画は「大綱」の本文及び「別表」を前提といたしておりまして、それに基づいて作成され、そしてその最終目標値に到達したい、目標の達成を目指していきたいということでつくられております。  それで、三年後のいわゆるローリングでございますけれども、その点につきましては、そのときにローリングするかどうかも含めて決定するわけでございまして、現在、そのローリングについて云々と申し上げられる段階ではございません。なぜなれば、我々は、この五カ年計画の達成をとにかく一生懸命やろうということで、今その第一年目をスタートしたばかりでございまして、三年後のことにつきまして現在論じられる段階にはない、こう思います。
  212. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 「別表」については、陸・海・空に分かれ、基幹部隊と主要装備と自衛官の定数が決められていますね。防衛庁長官は、その枠組みの中で、例えば陸と空とのミサイルとしてホークとナイキの部隊があったが、その垣根を取り除き、新しいパトリオットの部隊に編成がえをするという構想を明らかにされましたけれども、そのほか長官としては何らかの構想をお持ちでしょうか。
  213. 西廣整輝

    西廣政府委員 「別表」につきましてはいろいろな機会で申し上げておりますけれども、我々かねがね申し上げておりますように、「大綱」の基本的な考え方というのは、現在のような国際情勢の基本的な枠組みの中で、いわゆる抑止と均衡といったような形がとられている国際情勢の枠組みの中で、我々としては小規模・限定的な侵略に独力で対応し得る防衛力をつくり上げたいということが基本でありますということを前から申し上げているわけでございますが、その際、限定的かつ小規模な侵攻というものも、周辺の軍備の動向なりあるいは科学技術の進歩、そういったものによって変動していくことは否めないわけであります。  そういったものに対応するために、我々としては、今回の政府の五カ年計画もそうでございますが、「大綱・別表」も含めてその枠内で何とかいろいろ装備の近代化をしていくとか、あるいはより効率化を図っていくということによって、対応可能な防衛力というものを維持したいということで研究し、かつ、五カ年計画をつくったわけでございますけれども、今後の問題として、さらにまた周辺の状況が変わってきたという場合には、現在の防衛力というもののより効率化というものを図っていく必要があろう。その際に、陸・海・空という「別表」の全体の枠でありますが、その中の仕切りみたいなものについて、それぞれにとらわれておったのでは場合によっては効率化を阻害する部分があって、それでは現行の総枠の中で対応できない場合もあり得るのではないかということも理論上の問題として申し上げたわけであります。そして、その際の一つの例として、防衛庁長官が、例えば防空機能である防空用のミサイルについて、どういう形でどこが持つかというようなことも一つの例ではなかろうかということで申し上げたわけでありますが、現在はまだ、先ほど長官御答弁申し上げたように、この五カ年間で、まさに「別表」は仕切りもそのままにして、何とか水準達成ができるということでやっておる最中でございますので、その後さらに周辺が変わったらどうなるかということについては、いずれも今後の問題でございますし、まだやっておるわけでもございませんが、そういうことも我々としては念頭に置いておかなければいけないし、研究することもあるべしというふうに御理解をいただきたいと思います。
  214. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 今の防衛局長の御答弁によりますと、まず枠については五カ年間は全く外さないのだ、そのままでいくんだ、パトリオット等の導入についても、そういうことになると、少なくとも陸と空というような問題が出てくる、出てくるけれども、それはやらないのだ、少なくとも五カ年間はそれでいくのだ、こういうふうに今御答弁されたのですが、それでいいのでしょうか。
  215. 西廣整輝

    西廣政府委員 おっしゃるとおり、現在の五カ年計画はそういうことで計画をいたしております。  ただ、先ほど来防衛庁長官も申し上げましたとおり、今後これを執行していき、三カ年について実行した過程で、周辺の状況その他でより効率化というようなものが、あるいは国内状況その他でより効率化というものが求められるということで、政府として三年で見直して次の五カ年計画等をつくれというようなことになりますと、その段階で改めて、そういった問題も含めて十分論議されるべきものであろうというように考えております。
  216. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それじゃ、先ほどの答弁を直したような形になりましたね。  それはそれとしても、防衛庁長官が、六十一年三月五日に予算委員会で、「例えば現在の別表では陸上の師団につきまして十三個師団、そして、その中で機甲が一個師団で、通常の普通の師団というものを十二といたしております。今後いろいろな自衛隊につきましての合理化、効率化を考えて、仮にここの部分を二対十一に直したならば、これが完全にもう大綱の改定になるのだろうかという議論がございます。」ということでございますけれども、そういうお考えをお持ちでしょうか。
  217. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 「大綱」の改定と申しますか、「大綱」の「別表」の改定にはなるわけでございます。それはしっかりと十二と一と、こう書き分けてあるわけでございますから、それは「別表」の改定になるわけでございます。
  218. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうなりますと、確かに「別表」の改定になるわけですね。「別表」の改定になる。「別表」の改定をしないというのが、そういうふうな、加藤防衛庁長官が六十一年三月五日に、こういうふうなことになればということでお話になったことは「別表」の改定になる。「別表」の改定になるということになれば、これはやはり、少なくとも今までは国防会議にかかってきた問題だと私は思うのです。ところが今回は安保会議というものを設置しようというわけですから、そういうふうな問題については、やはりシビリアンコントロールという一つの見地に立ったならば、「別表」の改定につながるような問題については、これは今度の安全保障会議におかけになるというふうに判断してよろしゅうございましょうか。
  219. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 そのとおりでございます。「別表」の中の間仕切りを少し外して、さっき言いました防空ミサイルの点につきましてより効率化を考えたような場合とか、先ほどの陸の師団のあり方についてその構成を変えたりするような場合は、これは「別表」の総枠の中ではありますけれども数を変えるわけでございますから、当然のことながら今度の場合の安全保障会議、そして閣議というものを正式に通る手続をしていかなければならないことでございます。
  220. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そういうことはぜひやらなければいけない問題だろうと私は思います。  さきに私は軍事情勢についてお伺いをいたしました。軍事情勢については、私は少なくとも、これからの防衛力整備の中には軍事情勢という位置づけは大変に重要な問題だろう、こう思っているわけでございますけれども、今回の中期防衛力整備計画ですね、これは六十一年から六十五年までは政府計画としてこれが十八兆四千億を拘束することになるわけでありますけれども、その前の五三中業、五六中業は防衛庁限りの見積もりであったわけですから、それらとは全然性格的なものが違う。性格的なものが違うのです。とすると、なぜこの五九中業の策定に入っておられた皆さん方が、中期防衛力整備計画という形で政府計画をしたときに、軍事情勢についてどうしてこれに盛らなかったのですか。どうして盛らなかったのですか、これは。
  221. 西廣整輝

    西廣政府委員 御指摘のように、防衛力整備計画等を策定いたします際には、まず最初に必要になりますのは国際情勢、軍事情勢をどう把握し、どう認識するかということであろうと思います。当然のことながら、今回の作業におきましても、国防会議でまず国際情勢、軍事情勢等について十分な討議がなされたと私ども思っております。  ただ申し上げたいのは、今回の五カ年計画というのはあくまで「大綱」の枠組みの中で行うということでございまして、「大綱」で定められておる、あるいは「大綱」で記載されておる情勢認識、そしてそれに基づく防衛構想、そしてそれに基づく整備方針といったものについては、現段階ではそういった大枠の枠組みについてはまだ変わっていないという認識に立ちまして、要するに「大綱」で定められている防衛構想なり整備方針というものはそのまま踏襲をいたしておるということで、そこを変更するような情勢変化は起きていないという認識でありましたので、情勢判断等については記載をされていないわけであります。  ただ、個々の装備の質をどうするかとか数量をどうするかといったような問題につきましては、「大綱」なりあるいは、かつての五カ年計画政府レベルでつくった当時の情勢判断に記載されていたものよりもより細かい段階のものでございますが、そういったものにつきましても、当然のことながらいろいろな討議がなされた後に整備の内容を決めたわけでございますけれども、それらについての個々の軍事情勢に対する考え方というものについては、今回の防衛力整備計画もそうでございましたが、今までもそういった個々の細かい情勢判断については記載をいたしていないということでございますので、御理解いただきたいと思います。
  222. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 御理解をいただきたいといっても、こういうふうなことがまかり通るということになりますと、実は私は大変に問題だろうと思うのです。  確かに、六十年の四月二十三日「我が国を取り巻く軍事情勢について」とか、あるいは六十年の八月二十日、「最近の国際情勢及び長期経済見通しについて」ということで、国防会議議論されたことがあるということは私も知っています。しかし「大綱」に基づいて結局は変わっていないんだというのは、これは結果論ですからね。「大綱」に基づいて変わっていないというのは結果論であって、しかし、それではなぜ「大綱」に基づいて変わらなくてもいいのかということについて、やはり軍事情勢を綿密にしないと、先ほどの答弁じゃないですけれども、大事な部分をみんな忘れてしまって御答弁願うようでは、これは基本的に、防衛力整備計画自体が欠陥の防衛力整備計画と言っても何ら言い過ぎじゃないですよ。買い物計画じゃないかというふうに言われます。  少なくとも軍事情勢を徹底的に分析して「大綱」に基づく水準にまで持っていこうというなら、私はそれはそれでいいと思う。だが、軍事情勢もなくて、例えば新防衛力整備計画は「整備方針」とか「主要整備内容」とか「整備規模」とか「所要経費」とか「計画の見直し等」というそれだけを取り上げて、そして中期防衛力整備計画ということで、これ自体を政府の言うならば決定として防衛力整備計画にしたということは問題がある、私はそういうように思うのです。  防衛庁長官、これは大変に重要な問題です。これから恐らくまた、ずっと月日がたてばそれなりの防衛力整備もやらなくてはならぬでしょう。だけれども、こういうふうな五九中業であったのが突如として政府計画に格上げをされた。格上げをされたときに軍事情勢など全然載っていない。こんなことは防衛力整備計画なんて言えませんよ。それについて防衛庁長官、どうですか。
  223. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 先ほど防衛局長が御答弁申し上げましたように、今度の中期防衛力計画の中では、いわゆる「防衛計画大綱」の総枠の中で定められております。そこで、軍事情勢が大きく変わって、そしてその中でその分析もしてないのではないかということでございますけれども、我々その点につきましては日ごろから分析いたしておりますし、そして「防衛計画大綱」自体も、諸外国の技術的な水準とかそういった状況の変化に対応できる弾力性を持たされて仕組まれております。その弾力性とは何かといいますと、第一には質の弾力性でございまして、それから第二には装備体系に基づく弾力性であります。それから若干の「大綱」自体が想定されております数量的な弾力性もあろうかと思いますけれども、そういったものの中で、今度の新しい状況の中でどのように対応できるかということは、防衛力整備計画を定めます国防会議の中で、我が方の能力見積もりとかそれから諸外国の動向判断とか、そしてその諸外国の状況判断によりまして我が方の能力見積もりが出てくるわけでございますが、そういった点につきましてはかなり詳細に議論いたしております。その能力見積もりというのを国会で出せということで予算委員会で大分御議論いただいたわけでございますが、その点については御勘弁いただきたいと思っております。  いずれにいたしましても、その辺の軍事情勢と我が方の能力の見積もり等につきましては、十分な詳細な検討をし、今度の計画になっているということを御理解いただきたいと思います。
  224. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 質の弾力性については、私は、質の弾力性、近代化というのは必要でしょうが、量の弾力性というものについては、そんな野方図に量の弾力性をやられたのではたまったものではないので、その点はちょっと異論があるのですけれども。  問題は、いろいろ検討された。それは検討はするでしょう。検討はされますけれども、いわゆる中期防衛力整備計画という一つの大枠の中に軍事情勢を盛らなかったということで僕は文句を言っている、問題があると言っているのですよ。それは検討はいいのですよ、どこで検討しようが何であろうが、そんなことは構わない。構わないけれども一つの中期防衛力整備計画という重要な政府のいわゆる決定されたものに対して、軍事情勢が載っていない。それは「大綱」に基づくものでやるならやるでも結構ですけれども、そういうものが盛られた上においてやらなければつながらないじゃないですか。これは全く買い物計画にしかならないわけですよ。これじゃ問題があるでしょう。もしやはりこういうようなことを次にやったらこれは問題になりますよと私は指摘をしているのですから、防衛庁長官、それは認めていただかなきゃいけないじゃないですか。軍事情勢というものは整備計画をするためには一番大切なもので、それを載っけてやらなければ日本人はわからない。あなたたちがやっていることはさっぱり国民にはわからない。だから私は、それは大切なことでしょうと申し上げているのですから、素直にお聞きになったらどうですか。
  225. 塩田章

    塩田政府委員 今の件につきまして、国防会議の立場から一言申し上げさせていただきたいと思います。  国防会議で昨年、五九中業方式をやめて中期防衛力整備計画の方式に切りかえたわけでございますが、その経過は、五三中業、五六中業、こういった経過の中でいろいろ国会等でも随分議論がございまして、防衛庁限りの内部資料であるということに非常に御議論がございました。そこで、政府計画に上げたらどうかということから始まって、去年の夏そういう議論をして、先ほど来防衛庁からお答えしているような経過をとったわけでございます。  その政府計画に上げるという際に、ここに書いてございますように、あるいはまた先生がおっしゃいますように、そういうものであれば当然軍事情勢、防衛構想、それが先立ってくるというのは当然でございますけれども、今回は、一方で「防衛計画大綱」の枠組みのもとという、「大綱」の枠組みの中で作業をしよう、かつ、今までのように防衛庁限りであるというのはやめよう、そういう二つの枠の考え方の中でやりましたものですから、表現としては御指摘のように軍事情勢が入っておりませんけれども、先ほど来防衛庁からお答えのように、中では随分議論をいたしました結果であることは御理解いただいておると思います。  そういう経過からいたしまして、今回国際軍事情勢は記載されていないけれども、そういう形の中期防衛力整備計画として整備をさしていただいた、こういうことでございます。
  226. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 これ以上私は言うつもりはないわけですけれども、やはり今までは五三、五六、確かにこれは防衛庁の内部資料で、そのことが国防会議に報告されたようで、そしてそういうふうな経過はあった。あったにしても、今度は政府決定ですからね。もう今までとは全然格が違ってきているわけです、実際には。あなたたちはそんなに格が違うなんて言うとそれはありがたいことなんて思うかもしれませんけれども、私どもはそういうふうに見ているわけであって、となると、やはりこれは、中期防衛力整備計画という以上は、軍事情勢というものをきちっとそれなりに分析をして、それに基づいて中期防衛力整備計画の中に、その分析と同時に——これはもう「大綱」の水準で何とかできるというなら私はそれでいいだろうというふうに申し上げたわけで、これからもこんなような買い物計画みたいなことをどんどんやられて、そして全然国民のわからないうちにどういうものが使われるかわからないという状態じゃまずいので、一言だけ御注意申し上げておきます。次に進みます。  タッチ・アンド・ゴーの訓練基地建設については、防衛庁としては候補地を三宅島に絞っておられるようでありますけれども、これは三宅村及び島民の反対は熾烈をきわめております。島民の八五%の反対署名が防衛庁にも提出されておりますけれども、地方自治というのはやはり島民の意思を尊重するということが民主主義の基本的ルールであります。反対しているものを無理やりに権力によって抑えつけるということはできないことでありますし、一方、米国が強く要請をしているタッチ・アンド・ゴーの訓練については、日米安保条約の観点からいうならば政府としても何らかの対処をしなければならないことは私どももわかるわけです。  そこで、三宅島に基地をつくる考えに固執しないで、例えば、現在のところ石油がだぶついておりますから、タンカー等も放置をされている現状であります。とするならば、例えば三十万トン級のタンカーを改造し、甲板に滑走路をつけることによって十分に訓練ができるはずであろうと私は思いますし、また場合によっては、民間によって新しくその目的が達成される船を建造することもまた私は可能ではないだろうか。しかし問題になるのは、日本国憲法に照らした場合、航空母艦や戦略爆撃機は持てないというのが政府の憲法解釈になっております。政府みずからが改造タンカーを持ち運航するということには若干問題が残るだろう、私はそのように思うのですが、これを民間においてそれを所有し運航させることによって政府が借り上げ使用するということになれば、一切装備がない改造タンカーであるならば何ら問題なく所要の目的が達成されるのではないかと私は思うのですが、これは艦船工学の学者や法律家も十分可能であると言っておりますけれども、防衛庁としてこういうふうなことについてやはり研究してみる必要があるのじゃないだろうかというふうに思うのですが、防衛庁長官どうですか。
  227. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 最初に幾つか鈴切委員の御指摘についてコメントしたいと思うのですが、一つは、現在三宅島に私たちがお願いしておりますことは、その特別の地点はアメリカの要求ではないということでございます。アメリカとしては、現在の厚木という場所では御迷惑をかけ過ぎるし、夜間の近辺の照明の関係から自分たちとしても不適当だと思うので、何とかほかの場所に探してくれないかという点でございます。三宅島にお願いできないかと申し上げているのは我々防衛庁といいますか、日本政府判断であるということを申し上げておきたいと思います。  それから第二に、今基地というお言葉でございましたけれども、いわゆる基地というものではございません。これは民間の人と防衛庁の方または米軍の方とでともに使わしていただきたいというものでございまして、いわゆる基地というイメージからきます、鉄条網が張りめぐらされて、カービン銃を持った人がその辺をうろうろして、そしてバラックの宿舎がいっぱいあって、常時数百人の米海軍の人たちがいるというようなものではございません。訓練が終われば、その晩のうちに飛行機はもとの場所に帰っていくというものであるということを御理解いただきたいと思います。  そこで、いずれにしても三宅島の反対が非常に強いのだから、いわゆる自治の精神に基づいてやるべきでないかというお言葉でございますが、私たちとしても、こういった施設とか基地の建設というものは地元の人たちの協力がなければなかなかできないものだというふうに思っておりますので、私たちとしては根気強く御理解を求めるように努力していきたい、こう思っております。     〔委員長退席、石川委員長代理着席〕  そこで、今のいわゆる浮体工法というものの可能性、考えられないかということでございます。私たちも、このタッチ・アンド・ゴーの練習場所を探す際に、一つとしては、既存の飛行場のどこかで引き受けてもらえないかということを検討いたしました。第二番目には、新しく飛行場をつくるという道があるのかな。そして三番目には、その浮体工法というものでどこかでやれないかということ。この三つでございまして、この三つにつきまして、施設庁で技術的に、また経費的に、また米側の、使用する側の意向等を含めまして真剣に検討してみました。  この浮体工法につきましては、もしそういうことがいろいろな意味で条件がいいし、それから可能であるならばということで真剣に検討してみましたけれども、今の段階ではとてもちょっと無理であるということの結論に私たちの役所として到達いたしました。本当に真剣に検討済みの結果、やはりこれは無理だという結論に達しましたので、その点は御理解いただきたいと思います。  なぜそういう結論に達したのか、政府委員の方より詳細にお答えさせていただきたいと思います。
  228. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  ただいまの三十万トン級のタンカーを改装して使ったらどうか、こういう御提案でございます。鈴切先生が、安保の必要性を認めつつ、かつまた、地方自治の立場から住民の意思も尊重する、そういう非常に困った状況にある施設庁に対しまして、何とか解決をする方法はないかという御真剣な御提案をいただきまして、その点は深く感謝を申し上げます。  せっかくの御提案なんでございますが、まず三十万トンタンカー改装という考え方について、残念ながら私どもは非常に難しいのではないかと考えておる次第でございます。  理由は、第一に、アメリカが要求しておりますのは陸上における訓練施設でございまして、海上の浮体構造物、これにつきましてはアメリカ側とも非公式に十分協議をいたしましたが、賛成を得られない。もしも正式提案があった場合にはアメリカ側はこれを断るということでございます。理由は、ミッドウェーが現在千フィートと言われておりまして約三百数十メートルだと思いますが、三十万トンタンカーがやはり三百五十メートルぐらいの長さでございます。このミッドウェーと同じくらいの長さのタンカーの上におりるためには相当の熟練度を要します。そのために陸上でタッチ・アンド・ゴーを繰り返すそういう訓練場が必要なんだというのがアメリカの要求でございまして、浮体構造物そのものに反対でございますが、仮にそういう選択肢を選んだとした場合、千八百メータルの要求でございますので、これはちょっと無理ではないか。  それから、でき上がりましたこの海上構造物を実際に使用いたしますのは、ミッドウェーが横須賀に入港をいたしました年間七、八十日、長くても九十日ぐらい、あと三百日近くはこの構造物は利用の方法がないわけでございまして、巨額な建造費を要するものについての費用対効果ということを考えますると、やはり防衛庁として考えておりますところの官民共用ジェット空港、民間空港としても使い、かつ、訓練所要を満たすために一時米軍にもこれを提供する、こういう施設の方が重要なんではないだろうかと考えております。  もう一つ理由がございます。これは地位協定の解釈の問題でございます。地位協定二条で言うところの施設、区域、これは固定し定着をした施設を言っておりまして、先生御提案の船舶は物品ということに相なりまして、地位協定上これが防衛施設庁の予算で提供し得る施設に入るかどうか疑義がございますので、せっかくの御提案でございますけれどもなかなか難しいのではないかと考えております。
  229. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 今御答弁で難しいというお話があったわけですけれども、村との間にもまた島民との間にもほとんど対話がなされないままに来ているわけでして、そういう意味から、私も、そういう方法も一つあるだろうということで御提案申し上げたわけで、私はこれ以上このことについて深く言及することはいたしません。  それでは、官房長官がおいでになりましたので、若干お聞きをしたいと思います。  昨二十三日、関係閣僚会議にSDI調査団報告が出されました。それによると、我が国の技術がSDI研究に応分の技術的寄与ができる、また参加すれば我が国の関連技術水準の向上に大きな影響を及ぼすとして、積極的な参加を強調しておりますけれども関係閣僚会議の雰囲気といいますか、それを踏まえて官房長官はSDI参加問題についてどういう御所見をお持ちになっていましょうか。
  230. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 昨日、第三次の調査団、これは官民合同の技術を中心とした調査団の皆さんでございますが、その調査の結果報告があったわけでございます。官房長官防衛庁長官、通産大臣、外務大臣、こういった関係閣僚で調査団の報告を受けるということで聞いたわけでございます。その技術的な調査の結論は、今おっしゃったように日本の技術の向上にも大きく役立つであろうという結論じみたものがあったわけでございますが、この問題は極めて重要な問題でございますから、私どもとしては、昨日は調査団からの報告を聞くにとどめまして、この問題をめぐっていろいろな解明をしなければならぬ重要課題が幾つかあるわけでございますが、それらは昨日は一切議論としては出ておりません。したがって、政府としましては、このSDI構想については理解をしておるという現状から昨日は一歩もまだ出てないというのが実情でございます。  きのうは報告の極めて省略した数枚のペーパーにすぎませんので、今後はこれは恐らくや相当な分厚い報告書が出るんだろうと思いますから、それらを見まして、これから先必要とあれば関係閣僚でさらに一層問題点を煮詰めた上で政府としての考え方を決めていこう、こういうことでございますので、きのうは何らのそういう結論じみたものは出てない、かように御理解をしていただきたいと思います。
  231. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 SDI参加の問題につきましては、実は聞くところによりますと、第二次の政府調査団——第一次、第二次ございましたね。これは政府調査団です。第三次は官民の調査団ですね。その第二次が訪米したときに、アメリカからこういうふうに言われた。参加の意思があるならば第三次調査団にはさらに詳しい資料とかを御説明いたします、こういうことがコメントされている。それに基づいて政府は第三次官民調査団を出して、今回その調査を終わられたわけでありますけれども、第二次の政府調査団が行ったときにそのようにして、参加の意思があるならばと、こういうふうなことで言われているわけですから、そうなった場合には、結局はもう既定の事実として参加ということ、これはいろいろの手続とかそういうものはあるにせよ、そういう状態であるならば、SDIについてはもう参加というふうに私どもはとらざるを得ないと思うのですが、その点はどうなんでしょうか。
  232. 岡本行夫

    ○岡本説明員 第一次、第二次の調査団の派遣に引き続きまして、技術的な側面から専門的により詳細に調べるために、今般の官民合同調査団を派遣したわけでございます。その過程で、先生御指摘のような米側の発言が第二回調査時にあったという事実はございません。私どもはあくまでも、我が国の参加問題の検討材料とするために今いろいろな情報を集めているところでございまして、米側もこの前提で私どもにいろいろ教えてくれたものでございます。我が国政府がこの問題についてはまだ慎重検討中であって、参加を前提とした取り組み方を米国との間で何らしてないということは米側もよく了知しているところでございます。
  233. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私はある程度調査をしたわけです。そういうふうなことはあなたはないとおっしゃるわけなんですが、そういうことになると、断ることもあり得るわけですか。
  234. 岡本行夫

    ○岡本説明員 現在、政府で、SDIの参加問題につきましてあらゆる側面から検討を加えておるところでございます。この検討には、今回行いました技術的側面からの詳細な調査も含めまして、そのほか戦略的側面、政治的側面、制度的な側面といったものについて総合的な検討作業を今行っているものでございます。この結果、我が国にとって最もよい解決の方法が最終的に政府の合意として出てくるものと信じております。
  235. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 官民合同の第三次調査団の報告を聞かれたわけでありますけれども、レーガン大統領は防御兵器であるということを中曽根総理に説明され、中曽根総理はそれに対して理解を示したと伝えられています。非軍事の科学技術行政を進める上で、昭和四十四年の宇宙の平和利用の国会決議もあり、参加についてはそう簡単なものではないだろうと私は思います。SDIはただ単に防衛面だけでは結論を出すことは済まされない問題である。となると、この判断についてはどこでおやりになるのですか。また、その手続というものについてはどういうふうにされるのでしょうか。
  236. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 その面につきましては、これは先ほどお答えしましたように、関係閣僚の間で今日までの調査資料等を十分点検をして、政治的な側面あるいは技術的な側面あるいは防衛的な側面、各般の多方面に目配りをした検討をした上で、日本政府としての態度を決定をしたい。したがって、現時点においては先ほど申しましたように理解をするにとどめておるわけでございます。
  237. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 このSDIの問題については大変に大きな問題を抱えているだけに、ぜひ慎重にあってほしい。外務大臣はかなり慎重な発言をずっと繰り返されておるわけでございますから、そのことを要望しておきたいと思います。  それでは、安全保障会議設置法につきまして、若干、時間の許す限り御質問を申し上げたいと思います。  臨調及び行革審の答申により指摘された、内閣の総合調整機能強化の一環として、重大緊急事態対処体制の整備を図るため、現行国防会議の任務を継承するとともに、重大緊急事態への対処措置等を審議する機関として、内閣安全保障会議設置しようとするものでありますけれども、あわせて内閣官房の組織の再編成がなされるというように聞いておりますが、なぜ今内閣機能の強化をしなければならないのか、政府の御見解を聞きたいわけでありますが、それにあわせて内閣官房の組織再編成の目的は何であるか、あわせてお聞きをいたします。
  238. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 鈴切さん御案内のように、最近の政府の仕事というものが大変複雑になってきております。そして同時に、適時適切な処理をしなければならないという事案が非常に多くなってきておる。ところが、日本の行政組織は各省にそれを全部分担処理をさせております。そういう前提に立って、内閣には従来から調整機能が与えられておるわけですが、審議室等でそれなりの調整の機能は果たしておったわけですが、最近の事態にかんがみますと、現状のままではなかなか内閣の総合調整機能を十分に、適切に発揮するということが困難になってきておるわけでございます。そこで、この総合調整機能の強化の問題は、第二臨調でも論議をせられ、また行革審からも御提言があって、それに従って今回内閣官房の組織の再編成ということをやっていきたい、こう考えておるのですが、実際はこの問題は、第二臨調以降の問題ではございません。  昭和三十八年の佐藤喜一郎さんの第一次の臨調、この際もこれは相当に真剣に論議をせられまして、場合によれば参与制度を置いたらどうかとか、あるいは副長官の数をふやせばどうであるとか、いろんな案がたくさんございまして、政府にもたしか、第一次の佐藤調査会からも検討をすべしという御提言をいただいておった。ところが、これを実行するのには、官邸の中を初め各省の抵抗が非常に強い課題でございます。  しかしながら、最近の実態は、そういった各省の抵抗を認めるわけにはいかないというぐらいの、政府全体としての総合調整機能を十分に発揮できるような仕組みにしないと間に合わなくなってきた。外交の問題を処理をするとすぐにそれは内政にはね返る、内政をやろうとすればすぐに外交にはね返る、ところがそれぞれの省庁意見がまとまらない、適時適切なる政府方針が決まらぬ、こういったようなことでございますので、従来からの総合調整機能はそれはそれなりでよかろう、しかしそれ以上にさらにやらなければならないという面について政府としての対応をどうするかということで、今回の改正案の御提案を、法律の面は安全保障会議でございますが、これをお認め願えれば、七月一日を目途に内閣全体の中の組織がえをやっていきたい、かように考えているわけでございます。
  239. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 現在の内閣官房は、内閣参事官室、内閣審議室、内閣広報室、内閣調査室の四つに分かれておりますね。組織の再編を行って機能強化をするということは、逆に今までは組織的な欠陥とか機能が十分に働かない面があったということになるわけです。今まで組織的な面での欠陥とかあるいは機能が十分に働かない面というのは、この四室それぞれどういう点があったのでしょうか。
  240. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 ただいま申しましたように、従来はそれなりに総合調整機能を発揮すべく従来の組織のままで今日まで努力してきたことは事実ですし、私はそれなりの成果はあったと思いますが、先ほど申しましたようにそれでは間に合わなくなった。しかもそれが最近だけの話ではない。これは昭和三十八年から既にもう佐藤調査会からこういう課題は長く論ぜられておりながら、各省の抵抗その他の関係で残念ながら実現ができなかった。それを今回、最近とみに内外情勢の高度化とでもいいますか、殊に内政、外交の関係が非常に密接になってきたといったようなことで、政府としての方針は適時適切にやらなければ間に合わぬというような事態になりましたので、今回はぜひひとつ各省の了解も得ながら改革を断行したい、かように考えているわけでございます。
  241. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 内閣官房の総合調整機能を強化するための組織の再編とあわせて、機能強化のための人事運用についてはどのようにお考えになっていましょうか。
  242. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 今でも審議室長とかあるいは内調の室長とかいろいろな室がありますが、いわばこれらの室長は結局中二階と言っていいと思います。部員は課長レベルあるいは課長の直前といったような人が来て、これはそれなりに非常に優秀な人材でございます。しかしながらいかんせん地位が低い、将来性もあるということになると、とかく役人は母屋の方に顔を向けがちでございます。これではなかなかうまく総合調整できない。そこでやはり、より広い、より高い見地に立って、母屋の事情は母屋の事情としながらも、国政全般をうまくやらなきゃならぬというような広い見識で物事を処理できるハイランクの人を置きたい。つまりはスタッフ組織を強化したい。人員をふやす気持ちはほとんど私どもは持っていないのです。そうではなくて、スタッフをもう少し強化をしよう、こういう考え方であります。  しかし、いずれにせよ、組織がどんなにうまくやってみてもしょせんは人の問題でございます。それだけに人選その他については、これからのこの内閣の運営に当たっては従来に増して十分配慮しなければならぬ、かように私どもは考えているわけでございます。
  243. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 外政調整室の室長総理直属の事務次官級の審議官ということにでもなれば、外務省の方針とは別に総理考え方が優先される結果になりはしないかという心配があるのですが、その点はどうお考えでしょうか。
  244. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 今回のこの内閣官房の組織がえで一番気を配ったのは、鈴切さんのおっしゃった外交の二元化ですね。これは絶対に防がなければならない。ただ、従来からこの外交二元化で、これはもう戦前もございましたから、いろいろの弊害を生んでおることは事実でございますが、そこで政府としては、総理外交といいますか首脳外交が最近非常に頻繁になってきているわけですね、しかし首脳外交が頻繁になったからといって外務省を頭越しに日本政府の意思が外国との間で行き来するというのじゃどうにもなりません、そうじゃなくて、あくまでも対外折衝というものは外交チャネルを通じてやる、この基本線だけは絶対に守らなければならぬ、こう思っておりますが、しかし、一方、首脳外交というものが最近数多く出てきておりますから、そこで外務省と官邸との連携というものが非常に重要になってきております。そこで、現在はどうなっているかというと、外務省からは総理秘書官が一人しか来ておりません。総理秘書官というのは将来性のある非常に立派な人であることは間違いありませんけれども、いかんせん地位が低い。そこで、先ほど言ったような考え方のもとに、もう少し地位の高い、常時総理を補佐をしながら、同時に外務当局との連携を十分にとり得るようなそういう人を選定をして、首脳外交が世界の常識になりつつある今日、絶対に二元化しないような組織に組みかえていきたい。これは私どもの念願でございますから、いずれにいたしましても、外交問題について外務省を頭越しに官邸の方がやるといったようなことは私どもは絶対にやるべきことではないし、あってはならぬ、かように考えているわけでございます。
  245. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 やはりこのところ、内閣官房長官が言われたように首脳外交というのが非常に多いわけです。しかも、場合によってはその中にほとんど人を入れないで話し合うということがあるわけですね。そうした場合に思わぬ問題が外務省の頭越しでされてしまうというようなことになると、外務省は一つの既成事実をずっと積みながら外交を進めていく、その方針とはかなり思わぬところで食い違いが出てくるということがあってはならぬだろう、そういう意味において調整ということは重要な問題だなというふうに私は思いますね。その点、外交において二元外交が行われるなんということになりますと、これこそ最も国益を損する、そういうことになりますので、ぜひその点は留意をしていただきたい問題だな、私はそのように思います。  安保会議設置はアメリカの国家安全保障会議を参考にしていると言われておりますけれども会議自体の位置づけ等が明確でないことにより、大統領の考え方でその形式、地位、効果等に大きな差が見られると言われております。今回の安全保障会議の性格づけは、例えば我が国における安全保障政策の最高水準の検討決定機関なのか、あるいは単なる総理大臣諮問機関なのか、さらには安全保障問題を処理するための一つ機関にすぎないものか、その点の位置づけについてはどうお考えでしょうか。
  246. 塩田章

    塩田政府委員 アメリカのNSCを参考にしたと言われますけれども、先日来お答えいたしておりますように、勉強はいたしましたけれども、実際に我が国の制度に取り入れるという点についてそんなに参考になったわけではないというのが率直な考え方でございます。  今の御指摘の点も、アメリカの場合は大統領の助言機関ということで、それを受けた大統額と、今度日本の場合は総理に対する諮問機関ということで、その受けた総理と、これは立場が大変違うわけでございます。似たように助言機関であり諮問機関である、そこだけ見ると非常によく似ておりますけれども、全体的に見ると大変違うということが言えると思います。  そこで、今御指摘の政策の決定機関がどうかというような点につきましても、アメリカの場合はそういう機能を果たしているようでございますけれども、日本の場合は、先日来お答えを申し上げておりますように、総理大臣への諮問機関であるということでございます。
  247. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 従前あった国防会議は、防衛庁設置法によるいわゆる総理の直属の独立機関であり、事務局はそれに付随をしておったわけです。少なくとも国防に関する機関としては最高のシビリアンコントロールの場所として位置づけられておりました。ところが、今回官房の中に安全保障室が設置され、各室と同じ並びで取り扱われるということになると、官房の所掌事務的な役割として取り扱われるおそれがあり、シビリアンコントロールということから見ると、従前からは随分弱体化されているのじゃないかという心配があるのですけれども、その点はどうなんでしょう。
  248. 塩田章

    塩田政府委員 形の上で御指摘のような点も確かにあるわけでございますが、法律的に言いますと、今度の場合も、安全保障室ができて安全保障会議に関する事務を処理する根拠は、今度の安全保障会議法に置いております。そういう意味では、国防会議事務局が構成法の中にあるということと法的根拠は同じでございます。  そこで、その法律に基づきまして今度は内閣官房に入るわけでございますが、一方、内閣官房に入りますと、今度は内閣官房としての持っておる総合調整機能というものもございますわけです。また、広い立場から事務全体の調整をしております官房長官の指揮を受けるという点も今度変わってまいります。そういうような点を考え合わせてみますと、私は、実質的に今の国防会議事務局よりも視野が狭くなるとかあるいはシビリアンコントロールの機能が落ちてくるとか、そういうことは実態的にはないというように考えております。また一方、今度重大緊急事態が入ることによりまして、情報活動といったようなものも安全保障室では加わってくるわけでございますが、そういう点からいってもむしろ機能は活性化するというふうに申し上げられるのではないかと思っております。
  249. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 臨調の基本答申では国防会議の機能の活性化が指摘されている。行革審の答申では「国防会議の機能の活性化という臨時行政調査会答申の趣旨の実現を図るとともに、国家の安全に係わる重大事に発展するおそれのある緊急事態に対する対処体制の整備等を推進するため、内閣に、安全保障会議設置する。」と述べられておりますけれども指摘された「国防会議の機能の活性化」についてはどのような考え方なんでしょうか。
  250. 塩田章

    塩田政府委員 御指摘のような答申が出ておるわけでございますが、一つ制度的に申し上げますと、今回国防会議を廃止して安全保障会議設置することによりまして、いわゆる国防事態と重大緊急実態とを一つ機関で統一的に取り扱うことになりますが、これはいわゆる有事に発展しかねない事態を有事に至らない段階で取り扱うということにもなるわけでありまして、こういうことによりまして、情報の収集とか分析機能の充実が図られるといった面は否定できない、つまりそういう意味で活性化されるという点は期待できるというふうに私は考えております。
  251. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 国防会議の機能というものは、これはそっくり安全保障会議の方に移るわけでして、そのこと自体は所掌事務というものは全く変わらないわけですけれども、その所掌事務自体が変わらないので、国防会議自体の活性化といったってどういうふうにするのですか。
  252. 塩田章

    塩田政府委員 御指摘のとおり、国防会議そのものは今回全然変えておりません。したがいまして、先ほどちょっと申し上げましたように、両方合わせることによるところのメリットが一つあるということをお答え申し上げたわけでありますが、もともとこの国防会議の活性化ということ自体が臨調の本答申にもあったわけでございますけれども、これはあの臨調の答申でも言っておりますが、要するに端的に言いますと、もっと会議を開くべきではないか、そのためのいろいろな体制を考えるべきじゃないかということで、今回の重大緊急事態の事務を一緒にやることとは一応別な答申をしておられるわけです。そういう面が確かにございまして、この今回の改正のあるなしにかかわらず、国防会議の活性化ということについては考えていかなければいけないなというふうに私どもも思っておりました。  たまたま今回の重大緊急事態を加えるということによりまして、これを契機にいたしまして、そういった点の先ほど申し上げたようなメリットと同時に、臨調の答申で言いますところの活性化ということにつきましても、これは多分に運用の面があると思うのですけれども、そういった運用の面でも十分に配慮していきたいというふうに考えております。
  253. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 臨調は定期的に開けということについても言っているわけですけれども、結局それについては国防会議としてのいわゆる活性化自体が問題だったと言うのですけれども、大体今まで国防会議が設けられてどんなふうな状態だったのですか。
  254. 塩田章

    塩田政府委員 今も、最初に御指摘ありました国防会議を定期的に開いたらどうかという答申につきまして、実は私どももそういうことも検討しておるわけでございますけれども、率直に申し上げまして、現状で国防会議を定期的に開くというところまではなかなかまいりません。まいりませんが、しかしそういった趣旨もございますし、今までの国防会議の運用というものの実態の反省もございまして、実は昨年から、例えば年に一回か二回かということでなくてもっと開こうではないかというようなことから、国際軍事情勢会議を開いてみたり報告を聞いてみたりしたわけでございます。ところが、たまたま昨年は中期防衛力整備計画の方の関係がございまして非常に回数を多く開いたものですから、それ以外のことでは特段の配慮もなく、十一回も開いたというふうなことになりましたが、元来、そういった経過からしまして、今回の改正あるなしにかかわらず、国防会議をもっと活性化したいなという気持ちは私どもとしては持っておるわけでございます。  今、最後のどういうもので国防会議を開いてきているのかというお尋ねでございますが、従前年に一、二回開いてきておったというのは、典型的に申し上げますと、八月の概算要求の後、その概算要求の要点、主要な事項、それから十二月には、政府案の予算案の決定の際に、その主要な装備の内容といったようなものを決定していただくというようなことで毎年開いております。それ以外には、そのときそのときで、例えばP3Cの整備方針でありますとかF15の整備方針でありますとか、そういったようなことは別途開いております。
  255. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 昨年の九月十八日に、中期防衛力整備計画で五年計画で十八兆四千億円という膨大な予算を決定する際、防衛庁と大蔵等の関係大臣と自民党幹部との間での決定が先行し、国防会議が完全に追認機関の役割しか果たさなかったと言われている。それは国防会議の大変な軽視であり、政府国防会議の運用の仕方に問題があったんじゃないだろうか、僕は実はそう指摘せざるを得ないわけです。  例えて言うならば、先ほどもいろいろ論議をされてまいりました、中期防衛力整備計画と五九中業とはその性質的なものは全く違うわけです。防衛庁の内部的な問題から政府の正式決定という中期防衛力整備計画の中にあって、最終的には「大綱」の水準ということになったんですけれども、しかしその中に、先ほどもずっと論議をしてきました国際情勢並びに軍事情勢という重要な問題が欠落をしてしまっている。買い物計画じゃないかと言われているようなそんな状態になってしまっているものに対して、なぜ国防会議でそのスタッフである皆さん方がそういう問題について指摘をしておかないのですか。指摘をしないでそのまますっと通してしまうなんて、そういうふうなことをやれば、国防会議はますますもって形骸化されてしまって、最終的にはそんなものは要らないというような格好になっちゃうんじゃないですか。少なくとも国防会議の皆さん方は防衛庁のかつてのOBであるわけですから、そういう点で気がつかないわけもないでしょうし、軍事情勢とかあるいはそういうものに基づいてどういうふうに判断をするということがなされなかったということは大変に問題があるだろうと私は思うのですが、その点はどう考えますか。
  256. 塩田章

    塩田政府委員 中期防衛力整備計画の策定に当たりまして政府・与党間のいろいろな調整といった点は、私ども直接関与いたしておるわけではございませんけれども、我々事務当局としましては、当然のことながら、国防会議におきますいろいろな議案につきまして、関係の参事官会議等を何回も何回も開きまして、そして調整をして上に上げていっているわけでございまして、決して御指摘のように政府・与党間の会議でいきなり決まったといったようなことではございません。その間に今御指摘のような、先ほどもちょっと申し上げましたが、従前の中業方式を政府計画にするということにつきまして、どういう形をとるかというようなことも当然随分議論はいたしております。その結果、先ほど申し上げましたように、一方で「大綱」の枠の中でやるということと、従前の五三中業、五六中業が防衛庁限りであるというのはよろしくないという二つの要請の中で、現在のような結論になった、こういうことでございます。
  257. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私が申し上げるのは、中期防衛力整備計画を、それはこれから五年間政府を拘束するわけでして、そういうふうな重大な決定に対して、買い物計画的なものだけではだめでしょう。少なくとも軍事情勢というものを加味した上において、「大綱」でいけるならいけるでそれは結構ですが、しかし、そういうものがほとんど何もなされないままに、入れられないままに、検討はしたかもしれませんけれども、正式な計画決定の中にそういうものが入ってないということは、そういうものこそ国防会議においてはやはりチェックをしなくちゃならぬ問題だろう。チェックをして、これはこういうふうなことだとやる、これがシビリアンコントロールですよ。中期防衛力整備計画の中にあって、言うならば欠落をしているそういうふうな問題がもしあった場合には、そこはやはりシビリアンコントロールで十分に生かしていかなければならないだろう、そう申し上げているのですよ。その点はどうなんでしょう。
  258. 塩田章

    塩田政府委員 その辺になりますとあるいは見解の相違ということになるのかもしれませんが、私どもとしましては、必要な情勢判断についての議論は十分尽くしたと思っております。それを具体的に今度の中期防衛力整備計画に書くか書かないかという点については、先生と見解は異なった結論になったわけでございますけれども、実質的には私どもは十分そういうことは尽くしているというふうに考えております。
  259. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 従来の重大緊急事態対処して、過去において問題解決ができなかったことがあったかどうか。平和的な手段をもってやったことが結果的に言ってかえってよかったのではないかと私は思っているのです。  国防会議はシビリアンコントロールということで制服の独走をチェックすることと、一方、有事に際しての対処規定しているわけでありまして、重大緊急事態は現実問題対処なんです。だから性質的には全然違うものであって、それを混同して一緒にやるということはちょっと問題があるのではないかと私は思うのですが、その点どうでしょうか。
  260. 塩田章

    塩田政府委員 私ども、それは一つ議論としてはわからないわけではありませんが、今回の考え方は、今度の会議で新たに取り扱うこととなります重大緊急事態というものは、国の安全に重大な影響を及ぼすおそれのあるそういう緊急事態であることはしばしば申し上げておるとおりであります。事態の推移いかんによっては国防問題に発展する可能性も否定できない面もあるわけでございます。したがいまして、これを統一的に取り扱うことは、内閣の総合調整の機能の強化という観点から見ても適当ではないかと考えた次第であります。
  261. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 六十年七月二十二日の行革審答申では、大規模地震のような自然災害のほか、大停電など六項目を緊急事態として例示しております。過去の事例としては具体的にどのようなことが重大緊急事態として挙げられるのか、また将来的にはどのようなことが重大緊急事態として予測されるのか、その点についてはどうお考えでしょう。
  262. 塩田章

    塩田政府委員 この点につきましてはしばしばお答えいたしておりますが、将来何が起こるかわからないということでございますので、将来的なことを申し上げるよりも、過去の例で申し上げた方がいいのではないかという意味で過去のことを振り返ってみますと、例えばミグ25の事件でありますとかダッカの日航機ハイジャックあるいはKALの撃墜事件、こういったようなものがもし今後起これば、これはここで言うところの重大緊急事態に該当するのではなかろうかと思います。そのほかにどういうことがあるかということは全くわからないと言えばわからないわけでございますけれども、例えば考えられますこととしましては、大地震等がありましても、過去の例で関東大震災のようなああいう大震災で、しかもあのときに起こった社会的な状況というところまでいくような事態がもしあるとすれば、これもやはりここで言うところの重大緊急事態に該当するのではなかろうかというふうに申し上げているわけであります。
  263. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 国民生活が混乱をしているとき、そのときは国民生活安定緊急対策本部、災害のときには災害対策本部を設けるとかの規定があります。治安の維持のため必要なときは、警察法で緊急事態の布告をして、警察を直接に指揮監督できるという体制があるのに、既存の法制で定めているそれを超える事態というのは、具体的にはどういうことなんでしょうか。
  264. 塩田章

    塩田政府委員 今も最後の例で申し上げましたが、例えば自然災害が発生したというような場合に、御指摘のように現在中央防災会議がございますし、もし災害が発生すれば災害対策本部というものが設けられて対処することになっております。それはそれで当然対処するわけであります。しかし、仮にそれが関東大震災のような大きな災害であって、単に災害対策としての措置だけでは間に合わないといいますか、対処し切れないというような状態もあり得ると想定されるわけでございますが、そういうような事態になった場合には、従前の通常の緊急事態対処体制では対処し切れない、適切に対処し得ない事態ということが言えるのではなかろうかと思っております。
  265. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 今後発生する事態で、重大緊急事態に相当するかどうかの判断はどのようになされるのか。その場合の判断基準と重大緊急事態の判定を下すまでの具体的なプロセスはどうなっているのか。
  266. 塩田章

    塩田政府委員 しばしば申し上げておりますように、判断総理大臣が最終的にはなさるわけでございますが、その総理大臣判断に当たっては、総理大臣は当然官房長官でありますとかあるいは関係の所管の大臣等にいろいろ意見を聞いて、その補佐を受けて判断をされるだろうと思います。またその前には、そういった事態が起これば、今度は安全保障室ができておりますが、事務的な情報収集でありますとかそういったことは当然安全保障室の方からいろいろお手伝いをする、そういうものを受けて最終的に総理大臣判断をされるというふうになるのではなかろうかと思っております。
  267. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 基準はどうなの。
  268. 塩田章

    塩田政府委員 基準ということでございますが、条文の第二条第二項にございますような重大緊急事態であって国防事態を除く、それから先ほど来申し上げております通常の緊急事態対処体制でできるものを除くということで、それ以外のものということでございまして、それ以外のものにつきまして総理判断される場合に、その事態の重大性、緊急性あるいは異例性、そういったようなことを判断されるに当たって考慮されながら判断されることになるだろうと思います。
  269. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 安保会議設置法の第二条二項では「重大緊急事態が発生した場合」と、あくまで「発生した場合」と限定しておりますが、例えば大規模地震の予知段階とか発生の可能性がある場合というのはかなり民衆の方々の動揺とか混乱があるわけなんですけれども、そういうものはこれに含まれましょうか、それともまるっきり関係ないということなんでしょうか。
  270. 塩田章

    塩田政府委員 この会議事態が発生したときにいかに対処するかということを検討するわけでございまして、今御指摘のように事前の段階につきましてはそれぞれの省庁の所管になろうかと思います。
  271. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そういうふうな問題について、「発生した場合」ということで、それだけに割り切ってしまうわけにもいかないのじゃないだろうか。例えば関東大震災以上の大きなものが今の科学技術によって予知された場合には、相当の混乱が予想されるわけですね。それに対して起きてからなんだというふうなことで済むのか、あるいはそういうふうなことが発生した場合にはいろいろの問題等も含めてかなり研究をしなければならない問題なのか、その点はどういうふうにお考えでしょうか。
  272. 塩田章

    塩田政府委員 いろいろな事態があり得ると思いますが、今御例示になりました地震で言えば、既に地震のそのための法律もございますし、国土庁が中心になって中央防災会議の方でいろいろな対策をとっておられると思っております。したがいまして、それはそちらの方でおやりになるということで、今度の安全保障会議の対象とは考えていないところでございます。
  273. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 重大緊急事態の中で一番緊急な問題は、先ほどもちょっと論議がありました治安出動にかかわる問題なんかもそうだろうと思うのですが、自衛隊法第七十八条には「内閣総理大臣は、間接侵略その他の緊急事態に際して、一般の警察力をもっては、治安を維持することができないと認められる場合には、自衛隊の全部又は一部の出動を命ずることができる。」とあります。また、七十九条には治安の出動待機命令が規定をされておりますが、ここにある「その他の緊急事態」というのは何を指しているのでしょうか。
  274. 西廣整輝

    西廣政府委員 自衛隊法に言う「緊急事態」は、最初にお答えしてありますように、一般の警察力をもってしては対処できないような事態ということでありますが、そのうち、間接侵略というのは外国の教唆または扇動によるものということで、外国の教唆、扇動とかかわりのない内乱なり騒擾なり、そういったものが「その他の緊急事態」というふうにお考えいただきたいと思います。     〔石川委員長代理退席、委員長着席〕
  275. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 政府が考えている「重大緊急事態」と一般の警察力をもっては治安を維持することができない「その他の緊急事態」とは、どういうふうに違うとお考えなんでしょうか。
  276. 塩田章

    塩田政府委員 自衛隊法七十八条の緊急事態等を比較して申し上げますと、警察の場合もそれから今の自衛隊法七十八条の場合も騒擾等の治安問題を対象にして規定されておりますが、今回の重大緊急事態というのは、必ずしも騒擾、治安問題だけではございません。そういう点がまず第一に違うと思います。  それから第二に、今回の重大緊急事態は、先ほど来申し上げておりますように、自衛隊の出動を要するような事態への拡大発展を防止するという観点から、それに至らない段階から、この安全保障会議で取り上げて審議をするということになる、そういう点も違うと思います。
  277. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 自衛隊法第七十八条に基づく治安出動、七十九条の治安出動待機命令についても、やはり安全保障会議のテーマとして会議にかけられるというふうになりましょうか。それとも、閣議で決定し直ちに治安出動を下令するということになるんでしょうか。その点はどうなんでしょうか。
  278. 塩田章

    塩田政府委員 現在の国防会議の法律、それから今度できます安全保障会議の第二条第一項で、治安出動について必要的諮問事項とは法律上書かれておりません。おりませんが、第五号で言うところの「国防に関する重要事項」として総理大臣が必要と認めた場合には安全保障会議に諮る、こういうことになると思いますが、恐らく御指摘のような事態はそういうことで諮られることになるというふうに思っております。
  279. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 警察の手ではどうにもならない場合においては、結局は自衛隊の一部ないし全部に対して治安出動をというわけですから、一つの警察力ではだめだという中にあってこれが自衛隊の方に移っていく以上は、これは相当緊急重大事態だというふうに私は思えてならぬわけですよね。だから、そういう意味において、法律的にはそういうふうにはなってないかもしれないけれども、しかし、それは安全保障会議ではやはり検討されなくてはならない問題だろうというふうに思うのですが、ちょっと後藤田長官、いかがですか。
  280. 塩田章

    塩田政府委員 そのとおりでございます。
  281. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 警察法七十一条発令下にあっては、自衛隊と警察との間にあって車両及び機材器具等必要なものに対しては貸与されるというような、そういうような取り決めがありましょうか。
  282. 西廣整輝

    西廣政府委員 治安出動を行う場合の国家公安委員会等との連絡あるいは警察との連絡についての取り決めはございます。
  283. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 その取り決めの中に、車両とかあるいはその他必要な器具等を貸すということは恐らくあるんじゃないですか。ありませんか、そういうふうな内容は。
  284. 西廣整輝

    西廣政府委員 取り決めの中で、取り決めの主要な内容と申しますのは、治安出動の際におきます治安の維持に関して、警察と自衛隊がどういう任務分担をするかということが中心になっております。  例えて申しますと、例えば暴動の直接鎮圧なりあるいは防護対象の警備に関しまして、おおむね警察力をもって担任し得る場合には自衛隊は警察の支援後拠となるということで、直接鎮圧の方は警察が主として当たるとか、あるいは防護対象の警備に関しましても警察力が不足する場合には自衛隊が逐次後方の防護対象からその警備を担任していくのだとか、そういったたぐいのをことを決めているわけでございます。
  285. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それでは、有事法制の研究について、昭和五十二年八月、内閣総理大臣の了承のもとに防衛庁長官の指示に従って開始されました。研究の対象となる法令の区分を、第一分類、これは防衛庁所管法令、第二分類、他省庁所管の法令、第三分類、所管省庁が明確でない法令として、既に第一分類と第二分類については研究結果がまとまって国会にも報告されたが、第三分類についてはいまだ発表されておりません。いつ、どのような形で発表されるのか、どのような手順で作業が煮詰められているのか、その点についてお伺いします。
  286. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 第三分類につきましては、所管省庁が明らかでないものということで区分されておる事項でございます。したがいまして、防衛庁の所管でないことだけは間違いないわけでございまして、私どもが取りまとめる立場にはないわけであります。私どもといたしましては、自衛隊の行動との関係において問題になるかなということを、内々事務的な段階でございますが勉強はしておりますけれども、それも、今そのこと自体も、取りまとめて申し上げられる段階でございません。
  287. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それはまた後でちょっと聞きますけれども、第二分類は、各省庁間にまたがる有事法制の研究でありますけれども、既に各省庁間の問題も洗い出しはしたわけですが、実際には問題点を列挙したにすぎないわけです。防衛庁としてはそれらの問題をどこまで煮詰めておられるのでしょうか。
  288. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 御承知のように、有事法制の研究の第二分類につきましては、一昨年になりますか、国会にも御報告したところでございますが、その後の進展というものは特に御報告すべきことはございません。
  289. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 有事における住民の保護、避難または誘導を適切に行う措置民間船舶及び民間航空機の航行の安全を確保するための措置、電波の効果的な使用に関する措置など国民の生命、財産の保護に直接関係し、かつ、自衛隊の行動にも関連するため総合的な検討が必要と考えられる事項、及び人道に関する国際条約に基づく捕虜収容のための取り扱いについては、それぞれどこが所管してこの問題の研究を行っていこうとしているのでしょうか。
  290. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 防衛庁がお答えする立場にはないわけですが、先ほど申し上げましたように、どこでそれを所管してやるかということも含めまして、第三分類につきましては政府全体で取り組んでいく、こういうことと承知しております。
  291. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 第三分類の場合においては、各省庁の所管が明確でない問題だけに、広い立場において研究を進めることが必要であると、今そのように防衛庁では判断しているようですけれども、そうならば、今回設置しようとする安全保障会議において第三分類の問題を検討するということになるのでしょうか。
  292. 塩田章

    塩田政府委員 今防衛庁の方からお答えがありましたように、どの省庁の所管かわからないということで、政府全体としてこれをどう取り扱っていくかということを決めなければならない、こういう立場にあるわけでありますが、一つには、自衛隊の行動に関連をしますので、その関連の範囲について防衛庁側の勉強も一つこれはしておられると思いますが、それとあわせまして、将来どの省庁が受け持つべきかといったことについて政府としてこれに取り組んでいかなければならないという段階でございまして、またそれ以上に進んでおるわけではございません。
  293. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 官房長官、第三分類については今御答弁があったとおり、防衛庁は、私どもの方は余り関係ないことです、防衛に関連する問題については若干研究はさしていただきますけれどもと、こういうことですね。となると、この第三分類、これは本当に緊急重大事態に実際に対処しなくちゃならない問題、この問題は政府のどこかでやらなきゃいけないといったって、それはどこでおやりになるのですかと言うと、まあ、やらなくちゃいけない問題ですと、こうおっしゃるのですけれども官房長官、これはやはり安全保障会議でも研究をしある程度結論を出さなきゃいけない問題ではないかと思うのですけれども、その点はどうなんですか。
  294. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 防衛庁の官房長がお答えをしておりますように、第一分類は防衛庁に関係のある所管の法律ですね、これは防衛庁の責任においてやらなきゃならない。それから第二分類は、防衛との関連はあるが、よその省の関連だということになれば、これはそれぞれの所管省庁に所管をさして、是正すべきものは是正しなきゃならない。第三分類は、どこかわからぬのだからこれは政府全体として取り組んでいかなきゃならない。こう思いますが、防衛庁の官房長は、第二分類、第三分類はよそのことだから、おれのところはと、こういう答弁ですが、それはおかしい。防衛出動に関連をして研究をしなきゃならないのですから、それが直らなければ防衛行動自身がぐあいが悪いのですから、これはやっぱり私は防衛庁で勉強すべきだ。しかしながら、それをやるのを防衛庁にやらせては気の毒だと思います。第二分類はそれぞれの役所でやってもらおう、それから第三分類は政府で取り上げる、私はそういう区分けをしてやらなきゃならぬと思います。ただ、それには野党の皆さん方も率直に言ってひとつ御理解、御協力をぜひ願いたい。  実際には、この問題は非常に難しい問題ですよ。しかしながら放置することはやはりぐあいが悪い。国民の命と財産を守るというのは政府としての最大の責任なんですから、それならば、それぞれの省庁が自分の分担に応じてきちんとやるべきことはやる必要がある。だんだんそういう時期に来ているのじゃありませんかと、私は率直に訴えたいと思います。  そこで、第三分類についてはどことも決まってないわけです。しかしながら、防衛出動に関連をしてこれは直さなければ動きにくいわけですから、防衛庁がそれなりに今勉強していると私は聞いているのです。そうならば、それの勉強の結果を見ながら、どこの所管かわからないのですから、政府が全体で取り組むということで、内閣で考えなければならない。そうなれば、今鈴切さんが御提起になったように安全保障会議でなしに、安全保障室ですね、事務の方のスタッフ、組織で勉強していかなければならぬ課題になるであろう。私はかように理解しております。
  295. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 官房長官はそういうふうにおっしゃるわけですが、防衛庁の官房長は、うちの方は全然関係ありませんと言ったでしょう。官房長官がそうおっしゃったんだから、その点についてはっきりしないとだめじゃないの。
  296. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 私が御答弁申し上げたことが多少言葉が足りなかったかと思いますが、第一分類は私の方の所管でございますから、これは勉強いたしまして、既に報告をたしか五十六年かなんかに出したと思います。それから第二分類の他省庁所管のものにつきましても、私どもの方で勉強いたしまして、他省庁調整いたしまして、その報告は五十九年の秋だったと思いますが、国会に御報告申し上げてあるとおりでございます。  それから先の作業につきましては、ただいま官房長官がおっしゃいましたとおり、第一分類につきましては私どもの仕事、第二分類については各省各庁との関係でございまして、私どもも全く関係ないわけでございませんけれども、そちらとの関係での仕事と心得ております。第三分類につきましては、私ども自衛隊に関連する問題につきましては勉強しておりますと先ほど申し上げましたのはそのとおりでございますが、第三分類の問題につきましては、自衛隊関係することだけでもないかもしれないというふうにも考えられるところでございます。その辺のところにつきましては政府全体でこれから取り組んでいくべき問題であろうか、このように申し上げたわけでございまして、私が言葉足らずだったと存じますけれども、私の申し上げたかったことは官房長官がおっしゃったとおりだと思っております。
  297. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 第三分類の問題については、やはり基本的人権とかあるいはまた国民の権利義務の問題が絡んでくるのです。絡んでくるけれども、しかしそれをほっておくわけにはいかぬでしょう。有事法制については第一分類、第二分類、第三分類ということでそういう縦分けをして、もう既に第一分類、第二分類は報告されたわけだ。第三分類のその問題だけをほっておけば、結局はもう中途半端ということになってしまうわけだ。有事法制を急いで全部やれということを私が言うわけはないんだけれども、しかし、やっておられる皆さん方がそういうようなあいまいさを残したんじゃ、これは有事法制じゃないだろう、私はそう申し上げているわけです。その第三分類について防衛庁は横を向いているわけだけれども官房長官はそれなりに、政府としても知恵を絞らなければならない問題であるから、いろいろな問題が上がってきたら安保会議にも研究させ、そして最終的にどうするかということは政府がやられると言うわけですから、それはそれで一つのこれからの取り組みの方向性というものができたわけです。私は、そういうことでぜひ進めていただきたいと思うわけでございます。  時間になりましたので、これで終わります。どうもありがとうございました。
  298. 志賀節

    志賀委員長 午後二時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後二時九分休憩      —————・—————     午後二時三十二分開議
  299. 志賀節

    志賀委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出厚生省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小川仁一君。
  300. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 今回の法案、精神・神経センターをつくるということ、それを国立高度専門医療センターと総称すること、そしてそれらの扱いについては今後政令によって処置すること、こういう三つの要点だと思いますが、その点について具体的な問題を含めて御質問申し上げます。  がんセンターにしても新しくつくられる国立精神・神経センターにしても、非常に高度な医療を扱う種類のものでございます。したがいまして、これを政令におろして、そして厚生省の機械的なあるいは恣意的な扱いに任せるということ、これは私には納得できませんので、こういう高度の医療、しかも非常にお金のかかる施設・設備、そういうものを含めて政令にゆだねるという考え方の根底にある思想性について、まずお聞きいたしたいと思います。
  301. 丹羽雄哉

    ○丹羽(雄)政府委員 個別の高度医療専門センターの新設・改廃につきましては、今回の改正で、先生御指摘のように政令で行われることに相なったような次第でございます。  まず、個別センターの総称でございます国立高度専門医療センターの設置目的は、法律で規定され、その変更につきましては従来どおり国会の審議を仰ぐことになっておるわけでございますけれども、先生御心配のようなことがないように、十分に民意を反映いたしまして適切な行政指導をこれから行っていきたい、このように考えている次第でございます。
  302. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 私が聞いているのは、非常に高度な施設・設備を有し、国民の生活にとっても非常に大事なものを政令に任せるという思想性を、あなた方の考え方を聞いている。行政組織なんかのことを聞いているのじゃないのだ。これを政令に下げる。今まで政令に下がってないのですよ。政令事項というのは小さな国立病院とか療養所ですよね。高度の研究センターを政令に任せるということはどういう考え方なんだという考え方を聞いている。
  303. 木戸脩

    ○木戸政府委員 私から、政令でやることになった経緯について御説明を申し上げます。  先生よく御存じのことと存じますが、この設置法の改正は、いわば昭和五十七年七月の臨調の答申、つまり行政需要の変化に即応した行政組織の機動的、弾力的あるいは効率的な編成及び運営、こういう観点に立ちまして「附属機関その他の機関」につきましては、特に法律により規制すべき特段の事由のある場合を除き、その設置・改廃は政令事項にゆだねる、こういう方針にいわば沿ったわけでございます。  ただ、国立病院の再編成問題につきましては、いろいろ経緯がございまして、この高度専門医療センターが生まれるまでにいろいろ内部の検討時期がありましたので、時間的に五十八年の一般的な国家行政組織法の改正あるいはそれに伴います各省の設置法の改正等におくれたわけでございますが、考え方はそういうことでございます。
  304. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 臨調の方や何かから出ている答申の中でも、全部をやれとは書いてない。あなたが読んだとおり特別なものを除きと言っている。私はそれに該当するのではないかと言うのです、こういう高度なものは。だから、ならして全部これで医療機関は政令になるのでしょうが、私は、考え方としてはこういう高度のものは政令に移すべきでない、こう考えるが、こういう高度の特別の状態のものに置いてもいいようなものまで下げる理由は何だと言うのです。
  305. 木戸脩

    ○木戸政府委員 先生の御質問でございますが、私どもといたしましては、法律で規定をするというのはやはり特別の場合だということで、例えばそれが国民に対する権限の行使とかそういうことであれば法律で規定すべきだと思いますが、確かに高度のものでございますが、いわばこれは国民に医療サービスを提供する、つまり国立病院、国立療養所の中でいわばそれより一段質的に地位の高いもの、こういうことでございまして、国民に医療を提供するというサービスの機関であるという点では共通でございますので、私どもはこれは政令でということにいたしたわけでございます。
  306. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 そういう論を言えば、厚生省だってどこかの省の課になってもいいわけになるんだよ。一般論でなく、特殊な状況にあるものは特殊な状況に置くべきだ、こういうのは臨調でもはっきり言っている。決してならして全部下げなさいと言っているわけじゃないのです。  しかもこれは、全国的に見ても一つか二つしかないような、また今まで法律では二つあったものを今度加えてたった三つ。これくらいは、今後国民の医療を考えるとき、国会で十分審議の対象になり得る、もっと充実しろとかもっと予算をつけろとかということも含めて対象になり得るものとして置かなければならないと私は考えます。同じような答弁でしたらもうお考えは聞きませんが、臨調の答申だからといって物を一律にお考えにならないように改めて注意をしておきます。  今あなたの方で国立病院の統廃合の問題をおっしゃいましたが、私の地元に花巻温泉病院というのがありますが、これについてお聞きをいたします。  花巻温泉病院というものの特徴をどんなふうに考えておられるか、これからひとつお答え願いたいと思います。
  307. 木戸脩

    ○木戸政府委員 花巻温泉病院は、主に温泉を利用いたしましたリハビリテーションが中心になっておりまして、あと救急医療のいわば二次の医療機関としての病院輪番制にも加わっているということでございますが、主に温泉を使いましたリハビリテーションということで特色があるものだというふうに理解をしております。
  308. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 温泉を使ったリハビリテーション、そういったような種類の病院は全国にあと幾つぐらいありますか。
  309. 木戸脩

    ○木戸政府委員 詳しくはちょっと手元に資料がございませんが、大体十四、五ございます。
  310. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 これを廃止しますとそういう特徴のある病院が一つ減ることになりますが、ほかに統合して温泉を中心にしたリハビリテーションの治療がどこかで、岩手県内あるいはその周囲で行われる状況が保障されますか。
  311. 木戸脩

    ○木戸政府委員 国立の温泉を利用した病院につきましても統廃合の対象になった施設はほかにも相当数あるわけでございますが、私どもといたしましては、温泉を使ったリハビリテーションというのが国の政策医療というふうには考えていないわけでございますが、やはりそこにはそういう特色もあるわけでございますから、いわゆる後の医療なりは統合した後の施設の中でそのようなものは生かしていかれるのが望ましいというふうに考えております。
  312. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 温泉を利用した病院を、温泉のないところへ持っていってどういうふうに生かすのですか。
  313. 木戸脩

    ○木戸政府委員 今申し上げましたのは、統合をした場合に、例えば花巻温泉病院と盛岡病院の場合は、統合後の新しい病院はリハビリテーションはやりますが、それは温泉を利用したリハビリテーションではないわけでございます。しかしながら、花巻温泉病院の後医療という問題につきましては、その医療の方法は他の医療機関が土地、建物を譲り受けてやるということはあるかと思うわけでございますし、ほかに統廃合の対象になったようなところでもそのようなこともあるかと思います。
  314. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 国でやるということは、あらゆる方向の施設を中心にしておやりになっていると思うのです。一般医療だけではなしに、いろいろな特徴のある医療施設をつくるところにまた国の医療施設のよさもあると思います。この病院、もちろん皆さん御承知と思いますけれども、レーザー光線を使ったリューマチの治療、あるいは脳卒中の温泉のリハビリ、非常に効き目があるというので比較的遠くからまでここにやってこられる。しかもベッドが百五十しかないから、入院できない人は、すぐそばにある花巻温泉や台温泉等に泊まって、ベッドがあくのを待っているという特色のある病院なのです。こういう特色を生かすことに医療行政があるのではないか。その特色を消してしまって盛岡へ移した。盛岡には温泉がございません。湯花を買っていくわけにもいかぬでしょう。そうすると、少なくとも温泉を利用したリハビリはこの地域から消えて去るということになる。非常に困ったことになると思うのですが、特徴を生かしたものを残すという考え方はありませんか。
  315. 丹羽雄哉

    ○丹羽(雄)政府委員 今度の国立病院の再編成の基本的な考え方は、戦後四十年たちまして国立病院・療養所のあり方そのものを再検討しようではないか、こういった観点からまずスタートしたわけでございます。  御案内のように、今ヘツド数が百四十万床ほどございます。年間にしまして四万床から五万床ほどふえておりまして、私的病院も大変充実強化されてきておるわけでございまして、そういう中にあって、国立病院というのは今までのような病院であってはならない、先生御指摘のような特色のある医療を行い、そして住民に質的にも十分に受け入れられるような病院にしなければならない、こういった観点から今度の問題を取り上げたわけでございます。  個々の問題につきましては審議官の方からお答え申し上げさせますけれども、そういったことでございますので、十分御理解をいただきたいと思います。
  316. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 おわかりになっていることと思いますが、あそこに花巻温泉という温泉があります。年間五十万人ぐらいの宿泊客がございます。このごろ、東京方面の子供たちが東北の方へ修学旅行にどんどん来まして、大変な数の修学旅行者が泊まっているわけであります。したがって、私は一つの立場から言えば、そういう状況の中に病院があるということも、国民にとっては非常に安心なことだ。別に花巻温泉が国際興業の経営だからそっちの肩を持って言うわけじゃないのですけれども、そういう一つの安心感みたいなものがこういう面からも非常に大事じゃないか。今マル適とかいうマークが出ておりましても火事が出て人が死んだりしますが、そういうことではなしに、修学旅行というのは御承知と思いますが大変な数の生徒を連れていくわけです。食あたりが出たり風邪を引いたり、大変なんですよ。あそこに病院があるために大変安心して持っていけるという病院なんです。  そういう形で、あの地区からあるいは地元市町村から全部が、残してくれと言っている。そこまで国が頼られていて、しかも患者からは頼られ、来る人たちからは頼られていて、なおかつ、機械的にベッド数だとかあるいは何とかという形だけで減らすという理由がわからないのですが、こういう一般的な温泉地あるいは修学旅行や何かが非常に多い、こういう地帯に病院が要るとお考えか。なくてもいいと思っておられるか。
  317. 木戸脩

    ○木戸政府委員 私は、今先生がおっしゃられました花巻温泉病院が、温泉を使ったリハビリテーションに大変役立っている、あるいは修学旅行の生徒さんが食中毒になったときに救急で担ぎ込まれるという実態、よく承知をしているわけでございます。ただ、国立として今後どういうものを残していくかということになりますと、やはり国立として残すだけの理由がなければいけないわけでございます。いろいろ御議論もございますが、私どもとしましては、やはり他の民間医療機関、他の公的医療機関がやらないような、あるいはそれをバックアップする高度専門の医療という観点に立ちますと、花巻温泉病院の立地条件、病床数、今後の発展状況等を考えますと、残念ながら国立として残すのは困難だということから、盛岡との統合を考えたわけでございます。しかしながら、温泉を使ったリハビリテーション、二次の救急としての医療を残す道は国立てなくてもあるわけでございますので、その辺は県、地元と相談いたしまして、後医療の問題は十分配慮してまいらなければならぬと考えております。
  318. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 これはゆうべ遅くなってわかったことなのですが、花巻温泉療養所はどういう経緯で発足したかおわかりですか。——じゃ私の方から申し上げます。これは戦争中に陸軍病院として、しかも結核療養を中心にしてできたものです。ただ、この陸軍病院が後で厚生省の所管になった時期がございます。このときに、地元の人たちは、戦争で負傷されたあるいは病気になられた皆さんのためになる土地だからほとんど無償で提供したが、厚生省がおやりになる病院なら譲るわけにはいかぬ、こういうことで裁判まで行われたことは御存じですね。
  319. 木戸脩

    ○木戸政府委員 沿革は先生のおっしゃるとおりでございます。ただ、裁判の件については不勉強でございますが、私は現在のところ承知しておりません。
  320. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 土地問題で三回も裁判になっているのですよ。戦争中にはその土地を陸軍病院に強制的に取り上げられたのです。農民が土地を離すというのがどんなにつらいものか御理解いただけると思うのですが、厚生省に譲られることになった途端に、返してくれというので、私の調査では三回も裁判があったのですが、その経緯は全然わかりませんか。
  321. 木戸脩

    ○木戸政府委員 今調べまして、後ほどお答えいたします。
  322. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 じゃそれを調べて、後で結構ですから、どういう結論になっていたかお知らせ願いたい。  私の調べでは、このとき花巻市当局が中に入って和解をしまして、将来はあくまで国立病院として存続、運営するという約束をしておられます。もし私の言うことが事実なら、その当時土地を提供した人にも仲裁に入った花巻市に対しても、厚生省はうそを言ったことになる。したがって、私の言ったことが事実なら、統廃合の枠から一遍外すことは可能ですか。
  323. 木戸脩

    ○木戸政府委員 国立病院につきましては、戦時中に今先生がおっしゃったようなケースがかなりあるようでございまして、土地の問題について訴訟等になっているところがあるわけでございます。先生がおっしゃったことが確認されましたならば、これは大変重要な事実でございます。ただ、私どもといたしましては、戦後四十年たって、今後の適切な役割分担の中で質的に強化を図るためには、国立病院・療養所の再編という問題はどうしてもやらなければいけない問題でございます。今先生がおっしゃったことにつきましてはよく検討して善処いたさなければならないと思いますが、このたびこの国会に出させていただきます病院・療養所の再編の特別措置の運営につきましても、そのようなことは十分配慮して、当時苦労された方々の善意を踏みにじるようなことがあってはならないと考えております。
  324. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 私の申し上げていることが正しいということを前提にして申し上げますから、それが違った場合には構いませんが、そうすると、どうしても統合するということになりますと国立病院として残すことになりませんから、土地を前の地権者にお返しになることも考えておられますか。
  325. 木戸脩

    ○木戸政府委員 具体的に当該国立病院の跡をどういうふうに利用するかということとも重要な兼ね合いがございますので、その辺もよく考えながら慎重に、多角的に検討させていただきたいと思います。
  326. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 慎重に、多角的にと言われても、事実は二つしかない。住民との約束、三回も裁判をやって、国立病院として存続させるという和解を花巻市役所が入ってやった。これは陳情の際に申し上げているそうですから、全然知らないわけではないだろうと思います。そうなると、この解決ははっきりしている。花巻市が間に立って和解したとおり国立病院として存続させるか、させなければその時点に戻って土地を地権者に返すか、このいずれかしかないと思うのです。それ以外の方法がありますか。
  327. 木戸脩

    ○木戸政府委員 事実関係をよく調査いたしまして、法律的にそれは民法上返さなければならないものだということであれば、返さなければいけないということになるかと思います。別の観点から、そこは国立てなくてもどうしても施設を残すことが必要なのだという場合には、またお話し合いをいたしまして、その地権者に御理解をいただいて、医療機関として利用するという道も考えなければいけないということも出てくるかと思うわけでございます。  いずれにいたしましても、事実関係を調べて善処いたしたいと思います。
  328. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 そうすると、地権者とも花巻市当局とも今の問題は話し合う、そして解決をしていく、こういうふうに聞いていいですか。
  329. 丹羽雄哉

    ○丹羽(雄)政府委員 先ほど来先生から御質問のあった問題につきまして、私どもまだ十分に承知いたしておりません。したがいまして、この問題につきましては、すぐに十分に調査し検討していかなければならないと考えている次第でございますけれども個々の問題につきましては、私どもは既定方針を今変更する考えは持っておりません。
  330. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 私も、ゆうべ遅く見つけた資料だと申し上げましたからここでそれ以上のお話を申し上げることは無理かと思いますので、これ以上は申し上げません。ただ、歴史的にこういう事実があったとすれば——審議官は民法とおっしゃっているが、登記してあるから国のものだから自由にできるというふうな物の考え方ではいけないと思います。こういうことは釈迦に説法かもしれませんが、旧当時代における強制収用、そして国立病院としての存続、これらを含めた一連の流れの中で、花巻温泉がもう国際興業の所有地みたいなことになっておるから、修学旅行や観光客のために必要だといって国際興業にお売りになるあるいは移譲されるというふうな形だけでは、素直な解決といいますかスムーズな解決といいますか、そういうことにはならないような気がいたします。  この問題についてはいずれまた別の機会にお伺いをすることにいたしまして、私もこれ以上言いませんが、一応この場では、基本方針に変わりがないとしても、この問題が解決しないうちは花巻温泉病院の問題は棚上げになっていてちょっと時間がかかる、そういうふうな状態にあると考えておいてよろしいでしょうか。
  331. 木戸脩

    ○木戸政府委員 事実をよく調査をいたしまして、先生の御指摘に従いまして検討をいたしてまいりたい、先生の御指摘はよく留意をしておきたいと思います。
  332. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 同時に、ここは南花巻と統合し、盛岡と統合するわけです。またもとへ戻りますけれども、温泉病院の特徴は、さっき言ったようにリューマチのレーザー光線治療や脳卒中の温泉リハビリのほかに、高速道路が通りましてから非常に事故の人たちも大勢参っております。ところが、南花巻に入りますというと、ここは精神病と重度心身障害児が中心になっている病院であります。こういう病院と病院をぽっとくっつけて、そして何か新しい病院ができるような感じになっても、非常に無理があるような気がするのです。それから盛岡へ移そうというお話もあります。移せる部分と移せない部分もあるような気がする。そうなりますと、お医者さんも含めてかなり大きな人事異動が行われることになりますか。
  333. 木戸脩

    ○木戸政府委員 統合いたしますと、職員は、その意思は尊重いたしますが、原則として南花巻温泉病院あるいは盛岡病院の方にいわゆる転勤になるわけでございます。
  334. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 盛岡へ通えないというほどのことはないと思いますけれども、二カ所へ分かれるということになりますと、人事問題でやはりいろいろややこしいことが出てくるんじゃないか。特に病院の性質がそれぞれ違いますから、なおさら難しい問題があると思いますから、十分な話し合いを行って納得できるような形でお進めいただけるでしょうか。
  335. 木戸脩

    ○木戸政府委員 先生御指摘のとおり、これは職員の労働条件に関することでもございます。後医療の問題とともに、この問題については先生の御指摘のように進めてまいりたいと考えております。
  336. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 わかりました。では、十分職員組合とお話しを願いあるいは医師の皆さんとお話しを願って、納得のいく人事をやっていただくようにお願いをしておきます。これは、前の私の話が解決した場合のことでございます。  それから、これは花巻温泉からちょっと話を変えますけれども、実は私の友達がこの前血液検査をしてもらったら、血液検査料は別だということで、一万八千円とかを取られたという話がございました。彼は、年齢は六十を超えてますから国民健康保険だと思いますが、三割なら三割というふうに考えておったので、別途お金を取られるということは私はちょっと腑に落ちなかったわけであります。先ほど来係の方と話をしてある程度わかりましたけれども。ただ、そういう高額のお金を特別の検査でぽっと取られたというふうな印象を持つということは、国民の方から医療に対する不信感が出てくる、あるいはお医者さんに対する不信感が出てくると思いますので、こういう点は一体どうなっているか、御説明願いたいと思います。
  337. 谷修一

    ○谷説明員 ただいまお尋ねのございました、血液検査をして一万八千円を取られたということでございますが、具体的にどのような病気でどのような検査を行ったのかというようなことによって若干変わってくると思いますけれども、一般論で申し上げれば、診療のために保険医療機関で血液検査を行ったという場合には、必要なものはすべて保険でカバーをされているわけでございます。お尋ねがございましたように、その場合に患者さんに十分な説明がなされたかどうかというようなことも関係あろうかと思いますが、医療の現場におきまして、お医者さんと患者さんの信頼関係というものは非常に重要なことだというふうに思っておりますし、そういう意味で、お医者さんの方から患者に対して十分な説明がなされる必要があると思いますし、また当然そういうことがお医者さんに期待をされているものだというふうに考えております。そういう意味合いにおきまして、十分に現場において説明がされて、十分な診療が行われるということが必要であろうと考えております。
  338. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 例えば血液検査にしても、いろいろな検査が一つの医院の中から離れて別に検査をする研究所ですか調査所みたいなのができたり、歯科医の方で言えば、技工士を自分の医院に持たないで技工士だけの集まりの事業所があったりという格好で、お医者さんがそちこちで検査自体を委託する傾向がこのごろ出てきているような感じがしますが、このようなことはどのようにお考えですか。
  339. 谷修一

    ○谷説明員 今おっしゃいますように、特に血液検査のような場合、外部に委託をして検査をするということは多くなってきております。外部に検査を委託すること自体は現在の保険診療の上では問題はございません。また現実問題といたしまして、検査が非常に高度になってきておるあるいは難しい検査が必要になってきているというようなこともございまして、そういったような検査について保険医療機関がいわゆる検査センターというようなものに委託をする例が多いということは承知をいたしております。
  340. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 私はそれはそれでいいと思うのです。ただ、患者に対する十分な説明がないと、保険とは別に何か検査料を取られたというような印象を持ったり、それが一万八千円ぐらいになるというとちょっとびっくりしたり、保険はきかないのだろうかと思ったり、お医者さんの方は全然説明してくれませんから、窓口で一万八千円と言われてびっくりするというふうな状況なんですが、医療にかかったこのような費用は、もう少しお医者さん自身が患者に親切に説明をしてやる。千円とか五百円の場合は別として、万を超えるような場合にはそういう指導みたいなものは厚生省としては行っていないのですか。それとも、行っていてもお医者さんは一切知らぬ顔しておられるのですか。どちらでしょうか。
  341. 谷修一

    ○谷説明員 医療機関で行いました医療の内容あるいはかかった費用等については、医療機関側あるいはお医者さんの方から患者に十分説明をする必要があると思いますし、また当然そういうことはお医者さんの良識として期待をされているというふうに考えております。
  342. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 では、これからもそういうふうにびっくりする患者さんがあることを前提にして、そういうものはよく説明するような指導を厚生省にお願いしておきます。  続いて、ここの委員会にはかかっておりませんが、老人保健関係についてお聞きをいたしますが、今度は前回と違って随分きつくなるようでございます。老人病院というのがありまして、老人病院に指定されない病院、されたくない病院は五割ですか、それ以上の老人を置いてはいかぬというので年寄りをどんどん退院させる、あなたはこれ以上よくならないから出ていきなさい、こういう格好で退院させるという傾向が出ていることは御存じですか。
  343. 仲村英一

    ○仲村政府委員 一般的に言いまして、入院の必要がなくなった患者さんについては私どもとしても当然退院していただくのがしかりだと思いますが、意図的にそういう形で退院を強要するというふうには、私どもとしても特に聞いておりません。
  344. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 入院患者のバランスの関係でそうなるのです。別に意図的ではなくても、若い人の入院している数が減ってきて年寄りだけが残ると、五割ですか六割ですからちょっと忘れましたけれども、より老人が多くなると、検査されては困るというので出てください、こういう状況があるのです。だから笑い話みたいな話だけれども、ぐあいが悪いから入院させてくれと言うと、頭が痛いかとか腹が痛いかとかいうことを聞かないで、お年は幾つですかと先に年を聞くという病院さえ出ている、こういう状況なんです。私もいい年になりましたので老人医療には非常に関心がありますから、こういう状態というものは決して望ましい状態じゃありませんね。
  345. 仲村英一

    ○仲村政府委員 今のお尋ねの六〇%でございますけれども、それはいわゆる特例許可病棟のお話だと思います。それは常時六〇%あると点数が違うということでそういうことが起こるという御指摘だったと思いますが、一方におきまして職員の方の定数が、こちらは他の病棟よりはもっと低くなるということで実際上の制度が運営をされておるわけでございます。
  346. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 特例病院ですか、ごらんになったことがありますか。
  347. 仲村英一

    ○仲村政府委員 現在ちょっと所管を離れておりますが、かつては拝見したことがございます。
  348. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 私個人の信条は、死ぬのも社会奉仕のうちの一つだろうと思っておりますが、しかしそう思ってない人もおられるわけです。行ってごらんなさい。とてもじゃないが病院なんというものじゃない。入り口からひどいにおいです。そして職員の数も足りません。ですから十分な手当てもできておりません。ああなりますと、私は、年寄りというのを現在の医療は随分粗末にするものだなということ、あるいは現在の医療が粗末にしているのかその病院が粗末にしているのかわからないけれども、非常に不親切だなという感じがするのですが、そういう状況を視察して、改善するといったような方策はおとりになっておりますか。
  349. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 老人病院と申しますかあるいは老人病棟でございますが、それにおきます構造・設備とかサービスにつきましては、入院患者が老人である、そして慢性疾患が大部分であるというような特性に留意をいたしまして、適切な配慮が行われるよう指導いたしておるわけでございますが、特に医療監視の機会等をとらえまして、その辺の遺憾のないよう一層指導の徹底を図ってまいりたいと考えております。
  350. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 人間だれでも自分自身の中に老いがあるのです。必ず人生の終わりにはいや応なしにそういう状況に立ち至るということを、だれもが考えておられると思うのです。その時期というのは収入も少なく体力的にも衰えているわけです。過保護にしろとは言いません。しかし、そういう状況というものをよく見詰めた老人医療というものが非常に大事になるというふうに、私は私自身のおふくろが九十二歳であるだけに、特にそういうことを思うわけであります。  そういう立場の中で、今度老人保健法でまた初診料千円、入院時は一日五百円で無期限、こう法律を変えられるようでありますが、大体、今国保の無拠出の年金をいただいている人たちはそれを支払えると思いますか。これは国保は厚生省の方だから詳しいと思うが、いかがですか。
  351. 羽毛田信吾

    ○羽毛田説明員 今、先生、一部負担に関連をして国民年金の無拠出の福祉年金の額のお尋ねかと思いますが、今度の六十一年度におきましては月額二万七千二百円ということに相なっております。
  352. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 それで、入っていられると思うかというのです、こんなに老人医療費を上げられてから。それはどういう計算になるのですか。
  353. 丹羽雄哉

    ○丹羽(雄)政府委員 まず、今回の老人医療費の一部負担の引き上げについて御説明をさせていただきたいと思います。  御案内のように高齢化社会が進む中で、老人医療費は年々大変増大いたしておりまして、現在四兆円に達しておるわけでございます。それで、現在一カ月外来四百円ということでございまして、割合にいたしますと一・六%の負担をお願いいたしておるわけでございます。これは裏返しをいたしますればその残りの九八・四%は若い世代が負担をしている、こういう実情でございます。  高齢化社会を迎えましてこれからの時代は大変厳しいわけでございますけれども、老人も現役世代も力を合わせて老人医療費を公平に負担していく、こういった観点から、今回無理のない範囲でひとつ改正をお願いしたい。そして、これがやがて二十一世紀においても安心して揺るぎない医療体制を確立することになる、このように考えている次第でございます。そういった観点から御了承いただければ幸いである、このように考えている次第でございます。
  354. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 全体的な予算計画はそうかもしれませんが。個人になりますとそういうことが大変難しくなるのです。実際に国保の最低五万幾らでしたか、その中でその老人の生活があるのです。一日五百円のお金を払うだけ以外の生活があるのです。食事は病院でもらったとしても、下着も着なければならないだろうし、午後四時ごろの夕食じゃどうにもならぬから、六時ごろには何が食べたいという気持ちも出てくるでしょう。そうなってきたら、現在の国保の無拠出の年金で、一日五百円の入院料を払って病院に入っておることはできないのですよ。無慈悲だと思いますね。大臣、こういう状況を無慈悲だと思いませんか。さっきから言っておるように、だれにも自分自身の中に老いがある、そのことを考えるなら、これはやはりおやめになる方が名厚生大臣としてうたわれるのじゃないかと思いますが、いかがでございますか。
  355. 今井勇

    ○今井国務大臣 お気持ちはわからぬでもありませんが、この老人保健法を私どもが御提案をいたしましたのは、一時ずっと鎮静化しておりました老人医療費というのがまたどんどんと最近上昇傾向にございまして、しかも将来ともお年寄りの数の増加とともにふえていく傾向が極めて強いものでございますから、どうしてもこの制度そのものを長期的に安定させていくために一部御負担をひとつお願いいたしたいということでしているわけでございまして、全体の医療費からいたしますと率で申しますとそんな大きな率ではないわけでございます。ただいま一・六%ぐらいでございますが、それを倍程度にいたしたいということで、極めてささやかと言ってはまたおしかりを受けるかもしれませんが、私どもがいろいろなことを考えましてお願いしている数字でございまして、どうぞひとつお認めいただきたいと思うのでございます。
  356. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 一・六%の倍と言うけれども、それは計算上のことかどうかわかりませんが、例えば一年間入院したとします、今までは三百円で六十日ですね。そうすると、今度改正になった場合は何倍になりますか。
  357. 黒木武弘

    ○黒木政府委員 現行の一部負担につきましては、御指摘のとおり一日三百円、それが一月で三、三が九千円、二月では一万八千円になります。したがって、現行は二カ月限りでございますから、一万八千円出していただければ一年間入院しても一万八千円ということでございます。今回は期限を撤廃いたしまして、一日五百円を入院されている間お払いいただこうというわけでございますから、月で一万五千円、したがって一年入りますと十八万ぐらいになります。そうするとちょうど十倍でございます。  ただ、これは、先生御指摘でございますけれども、私どもが今回の一部負担をお願い申し上げます趣旨は、政務次官からも申し上げたところでございますけれども、これから増大いたします老人医療費のことを考えますと、特にこれからはどうしても公平の原則で考えていかなければいけないだろうということで、私どもは、お年寄りも若い世代も公平にそれを負担していくというルールづくり、それからもう一つは、やはり若い世代も公平に負担をしていただくということで加入率の引き上げといったこともお願いしているわけでございまして、大臣から言いましたように、老人保健制度はお年寄りに必要な医療を確保するために本当にかけがえのない制度でございますが、それを将来にわたって安定的にやっていくことがむしろお年寄りのために必要なことではないか。老人医療費は、御案内のように現在一二%ぐらいの勢いでふえているわけでございまして、どうしても今回、国民すべてで支える制度の改正をお願いする必要があるということで御提案申し上げている次第でございます。
  358. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 あなた方は全体の数字だけ、上の方の数字のもてあそびを厚生省はしておられる。私は老人が具体的にどういう負担になるかということをお聞きしているのです。医療の本質というのは人間の命でしょう。行政じゃないですよ。今十倍になると言ったでしょう、老人が一年間入ると。十倍の負担ですよ。世の中にこんな大きな負担がありますか。何が値上がりしたといったって、何がどうしたといったって、十倍も上がるような負担はありませんよ。いかに暴挙だということがおわかりですか、厚生大臣。  それからもう一つ言いますが、長寿国だ、おめでたいとおっしゃっていながら、老人医療費がふえて困るという話をする、どうすればいいのです。死ねばいいのですか。話は非常にきれいに聞こえますけれども、具体的な中身で言うとこれは老人に死ねということです。十倍の負担ができない者は死ねということなんです。  どうか厚生省の行政は、一人一人の人間の命と一人一人の人間の経済的負担、こういう社会ですから、確かにそういう富める方もあってその程度の負担にはたえられる方もあるかもしれませんが、圧倒的に貧しい人間が多いのです。階級社会というのはそういうものなんです。その層にこういう無残な仕打ちをするということは、数字のマジックで考えるのではなくてその人一人一人の健康をどうするかという考え方でおやりいただきたい、こう申し上げまして、私の質問を終わります。  何か、今申し上げたことに反論がございましたらお願いします。なければ納得したと考えます。
  359. 今井勇

    ○今井国務大臣 反論と言うとまたおしかりを受けますが、私どもは御提案を申し上げているわけですから、御提案申し上げるからには、御提案するだけの理屈があり言い分があるわけでございます。いろいろお話を承りますと、確かに相当な値上がりになるわけでございますが、いずれにしても、この老人医療費というのは増加は避けられませんし、それをだれかが支えなければならぬわけですから、しかも今度の改正でもその大半は若い人たちがお支えいただくわけでございますから、本人の方々にもひとつ、今までよりも若干の増でございますけれども、支えていただけないだろうかというのが私どもの切なる御要求でございます。ぜひひとつ御理解をいただきたいと思うのでございます。
  360. 志賀節

    志賀委員長 市川雄一君。
  361. 市川雄一

    ○市川委員 今回の設置法でございますが、厚生省の御説明によりますと、設置法あるいは国立病院、国立療養所の再編成後には、厚生省の類型によりますとナショナルセンターという位置づけになっておるわけですね。そのナショナルセンターに位置づけられる国立のがんセンタークラスのものをつくる場合に、法律によらないで政令による、こういうことだろうと思うのですが、今までどおりの法律事項ですと何か不都合がありますか。
  362. 木戸脩

    ○木戸政府委員 私どもといたしましては、先ほどもお答えを申したわけでございますが、これから行政組織というのはやはりニードに従って弾力的に対処してまいりたい、こういうことがあるわけでございます。  ただ、私どもといたしましては、国立高度専門医療センターについては、設置目的だけは法律できちっと書きまして、所掌事務、名称等については政令に落とさせていただく、こういうことで医療ニードに機動的に対処をしていこう、こういう考え方でございます。
  363. 市川雄一

    ○市川委員 機動的に対処する上において不都合な点はどういう点ですか。
  364. 木戸脩

    ○木戸政府委員 先ほどもお答えを申し上げましたとおりに、この国立病院・療養所あるいは国立高度専門医療センターというのはサービス的な機関でございますので、他の各省の附属機関と同じように政令をもって弾力的にその設置については対処いたしたいというふうに考えているわけでございます。
  365. 市川雄一

    ○市川委員 だから、その機動的に、弾力的に対処するということは理解できるのですよ。それがなぜ機動的、弾力的に対処するに当たって政令でないと不都合なのかということをお聞きしているわけです。
  366. 木戸脩

    ○木戸政府委員 このたびの国立病院の再編成によりまして、私どもはやはり国立としてどうしてもやらなければならないものは再編・合理化の中で生み出していく、こういう考え方を持っておりますので、そういう考え方で、従来よりもやはりナショナルセンターというものはニードに応じてつぐっていきたいというふうに考えておるからでございます。
  367. 市川雄一

    ○市川委員 これはちょっと質問の答えになってないと思うのですね。要するに、例えば法律事項だと国会審議にかけて時間がかかり過ぎるとか、何かいろいろ理由があると思うのですよ。要するにその理由をはっきり言ってもらいたいわけです。だから、機動的、弾力的に対処しなければならないということは、何もこの問題だけじゃなくて、行政は絶えず機動的、弾力的に対処していなければならないのですよ、厚生省だけじゃなくて。厚生省もそうかもしれませんけれども。だから、そんなことだけの理由で法律事項から政令事項に直すということでは、何も説得力を感じないわけですよ。もうちょっと説得力のある説明をしていただきたい。大臣どうですか。今までの答弁じゃ何かよくわからない、本当に。
  368. 木戸脩

    ○木戸政府委員 何度も御説明をいたしますが、各省のいわゆる附属機関というものの扱いの並びの問題ではないかと思うわけでございます。これは、国立病院・療養所あるいは高度専門医療センターというのは権力的なことをやる機関ではないわけでございますので、これにつきましては、昭和五十七年の臨調の最終答申の一般原則に従いまして政令でその対処をさせていただきたい、こういうことでございます。
  369. 市川雄一

    ○市川委員 じゃ、臨調が言ったからそうしたのですか。
  370. 木戸脩

    ○木戸政府委員 臨調の答申にもあったわけでございますし、厚生省としても、その臨調の答申の線に乗っていく方が今後の病院、療養所あるいは高度専門医療センターの将来にとっていいという選択でございます。
  371. 市川雄一

    ○市川委員 だから、そのいいという選択をした理由を聞いているのです、さっきから。どうも返事がないですね。そういう意味で、この設置法は正直言ってよく趣旨がわからないのですよ。理由を聞くと、機動的、弾力的対処、こう言う。これはもう行政として当然過ぎるほど当然のことなんだ。今度は、臨調が言ったからだと言う。臨調が言ったんだけれども、厚生省としてはこういう理由で納得したとか、何かその辺のことを伺っているのですけれども、御答弁ありませんか、これについては。
  372. 今井勇

    ○今井国務大臣 私はこう理解しておるわけですが、今度の問題で、設置目的というものは法律で、特定の疾患その他の事項に関して、診断及び治療、調査研究並びに技術者の研修を行うということを特定するわけでございます。そうして、その基本的性格について従来どおりそういった国会の御審議をこれは仰ぐものでございますが、そうしてそれから出ます個別のセンター、これについてはやはり政令にゆだねたいということでございまして、その個別のセンターにつきましても御議論がありますれば、当然政府としても十分尊重していきますことは従来と同じことでございます。  組織の設置とか改編、いわゆる国政調査権が及ぶことはもちろん言うまでもございませんが、今回政令化をいたしましたその個別のセンターの設置等については、国家行政組織法の第二十二条に基づいて国会に報告をするということで私どもはさしていただきたい、こう考えているものでございます。
  373. 市川雄一

    ○市川委員 これ以上伺っても同じ答弁の繰り返したと思いますが、この法律の出てきた背景には、この委員会議論されている国立病院・療養所の再編成という問題があると思うのですね。  私の地元でも、国立横須賀病院というものが移譲対象に挙げられているのですが、そのことも含めて前提としてお聞きしたいのですけれども、厚生省でいただいた資料を拝見していますと、「現状と問題点」というところに、国立病院・療養所に期待されている役割を果たすためには、施設設備や医療スタッフの面から見て十分な体制ではない、あるいは国立病院・療養所が地域的に偏在している、こういう問題点、それから第三点として経営の効率化ということをうたっておられるわけですけれども、この国立病院が赤字になる、一般会計から繰り入れる、補てんをする、その赤字の原因というものをどういうふうに見ておりますか。
  374. 木戸脩

    ○木戸政府委員 現在、国立病院につきましては予算規模の大体二〇%近くの一般会計からの繰り入れをしているわけでございますが、まずその一は、やはり国立病院・療養所というものは非常に政策的な医療をやって、非常に不採算な医療をやっているという面がたくさんございます。例えばがんとか循環器の研究的な医療というもの、あるいは非常に結核の長患いの方の医療、あるいは重心の患者、筋ジストロフィーの患者等の医療、そういったような非常に不採算的な医療を取り入れているという面が大部分でございますが、やはり一方におきまして、もう少し経営努力によって節約もできるという面もあるわけでございますので、それで再編成の基本指針におきましては、やはり日常の経営努力というものも、厚生省としてもみずからうたって、その線に沿って努力をしよう、こういうふうにしたわけでございます。
  375. 市川雄一

    ○市川委員 国立や公立の病院がほとんど赤字になっているわけですね。そういう中でただ一つなのかどうかわかりませんけれども、鹿児島市立病院は経営が黒字なんですね。関係者の話を伺いますと、この病院の院長さんは、これは市立病院だというふうに自分は思っていない、一般の私立の病院と同じ自覚でやっておる、こういう非常に意欲的な面があるわけですね。  病院と国鉄を一緒にするのは大変恐縮なんですけれども、どうも国営というのか国立というのは、そういう経営的視点というのが非常に欠如しやすい体質を持っているわけですね。国鉄にしても、電電、これは今回は民営化になったわけでございますけれども、大体そうですね。もちろん病院は人間の命を扱うわけですから、何でも効率がよければいいかというとそれはないと思うのです。しかし、また反面、だれが見てもむだだとわかるようなむだをやっていいということはこれは許されないと思うのですね、貴重な税金を使っているわけですから。そういう人間の命を扱うんだという視点と、同時にまた、貴重な税金で必要な人に必要な医療がきちっと届く、こういうことも考えなければならないだろうと思うのですね。ただ再編成ということは言っておりますけれども、そういう意味での体質改善までメスが入っていくんですかどうなんですか。そういうことを考えているんですか。
  376. 木戸脩

    ○木戸政府委員 これは、今後国立病院はその守備範囲を明確にしていくということと同時に、やはり経営努力をしてできるだけむだを省いていくというのは、先生の御指摘のとおりでございます。
  377. 市川雄一

    ○市川委員 守備範囲を明確にして切り捨てるという感じだけが残って、経営の効率化ということはどうもいかないんじゃないのかな、そういう強い懸念を持っているんですけれども、守備範囲の明確化という大義名分に隠れて、どうも地域から撤退して、赤字を地方自治体におっかぶせていこうという感じがしてならないんですよね。そういう意味で、地域の一般的医療はもう国立病院のやることじゃないという、基本認識はこういう認識ですか。
  378. 木戸脩

    ○木戸政府委員 医療のあり方についてはいろいろな御議論があるわけでございますが、昨年の十二月に医療法というものが改正をされたわけでございまして、地域医療計画というものを県がつくるということになっておりまして、基本的な生活圏における医療、さらに広域的な高度あるいは特殊な医療、こういうふうに分かれておって、それぞれのレベルで医療機関が役割分担をする、こういうふうになっているわけでございます。  戦後四十年たちまして、民間の医療機関というものの整備も大変進んできているわけでございます。自治体あるいは自治体に準ずる日赤、済生会、厚生農業協同組合連合会等の公的機関の整備も進んでいるわけでございますので、私どもといたしましては、公と民間、公の中でも国と自治体というものはやはり適切な役割分担をすべきである、こういう認識に立ちまして、国立は主として他の医療機関がやらないような、他の医療機関をバックアップするような高度の医療あるいは特殊・専門の医療、こういうふうに守備範囲を決めたわけでございます。
  379. 市川雄一

    ○市川委員 ですから、国立と他の私立、公立の医療機関との役割分担、それはそれなりに結構だと思うのですが、ただ移行措置というのですか、これは十分でないといけないと思うのですよ。地域がそれなりに納得する、了解する、あるいは一方的に財政的な経営赤字を押しつけるというのじゃなくて、その移行期間が十年ぐらいでできるのかという疑問を非常に強く持つわけですね。  それで具体的に、横須賀にあります国立横須賀病院なんですけれども、これは横須賀市、逗子市、葉山町、三浦市、鎌倉市、人口約七十五万の四市一町、三浦半島の中核的な地域医療機関としての役割を果たしておるわけですが、これは伺うところによりますと、統廃合ではなくて、経営移譲の対象としておられるようですが、経営移譲の対象とした理由判断基準はどういうことでございますか。
  380. 木戸脩

    ○木戸政府委員 私どもが昨年三月に公表いたしました基本指針にも書いてございますが、経営移譲の基準といたしましては、地域の一般的医療の確保の役割を果たしている、しかし、その機能から見て、国が直営するよりも地域と関係の深い他の経営主体に経営を移譲することが適当なものは移譲するという基準になっているわけでございます。  横須賀病院につきましては、先生御指摘のとおりに、非常に横須賀市あるいはその周辺の住民の公的な医療に役立っているのは事実でございますが、それでは横須賀病院がいわゆる広域を対象とする高度の医療あるいは専門の医療として今後発展する可能性があるかということになりますと、遺憾ながら近隣には、横須賀病院よりも非常に医療のレベルの高い市立の横須賀病院とかあるいは国家公務員共済の共済病院とか、かなり高機能の医療機関があるわけでございまして、国立として存続することは難しい、しかしながら立派に地域の医療には役に立っているということで、これは医療機関としてはそのまま存続させることが地元の地域医療に役立つのではないかという判断で、移譲ということにしたわけでございます。
  381. 市川雄一

    ○市川委員 いや、それはちょっと違うと思うのですけれどもね。本当は国立病院が高度の医療をやってほしいという要望がずっと強くあったわけですよ。ただ、国はそれをほったらかしたというか、やらなかったわけでしょう。やいやい言われて、市が赤字を覚悟で市立病院を増改築して、横須賀市としては初年度は約十五億ぐらいの赤字を出すわけですよ。そういうことまでしで強いニーズにこたえようとしているわけで、だから国が本気で——三浦半島にはそういう要求は今でもあるわけですよ、もっと国立のきちんとした医療機関が欲しいという要望はあるわけです。例えば横須賀の隣の逗子市なんか、米軍住宅でもめているわけですけれども、私たちは、公的な総合病院というものを逗子にぜひつくってもらいたい、米軍住宅との兼ね合いの問題で、そういう議論が市の中に起きたぐらいでございまして、ちょっとその辺の考え方が私たちと違うのですけれども。  そうすると、具体的な基準というのは、ここに「経営移譲を行う施設の選定基準」、「近隣の医療機関の状況」「診療機能」「その他各施設ごとの特殊事情」、こうあるのですけれども、これについてもうちょっと具体的に御説明いただきたい。
  382. 木戸脩

    ○木戸政府委員 例えば医療機能として三次医療圏の例えば救命救急をやっているかどうかというような、そういう機能の面の問題が一つございます。それから、地元の市あるいは隣接の町村のいわゆる地元患者の入院患者に占める割合というような、そういう診療圏のようなものも具体的にございまして、そういったような客観的要素を加味いたしまして移譲というふうに出したわけでございます。
  383. 市川雄一

    ○市川委員 じゃ、もうちょっと具体的にお伺いしましょう。経営移譲の対象として今具体的に何かお考えになっていますか。
  384. 木戸脩

    ○木戸政府委員 経営移譲の対象につきましては、現在のところ、私どもの方にもあるいは神奈川県の方にも正式な引き受けたいというような申し出はございません。
  385. 市川雄一

    ○市川委員 私はぜひ国立の病院のまま存続してほしいというふうに思っておりますが、それじゃ議論がかみ合いませんので、申し出はないけれども、厚生省は何か経営移譲の対象としてどういうところに経営移譲するのが望ましい、そういう判断をお持ちでしょうか。どうですか。
  386. 木戸脩

    ○木戸政府委員 現在、国会の方に国立病院の再編等に関する特別措置法というのを出させていただいているわけでございますが、そこで対象にしておりますのは、自治体あるいは自治体に準ずる公的医療機関、日赤、済生会、厚生農業協同組合連合会というさっきの医療機関、それから学校法人、社会福祉法人、そういうようなものが当面は対象だというふうに考えておりますが、具体的にはやはり、地域の神奈川県なり横須賀市あるいは関係団体等の意見も十分に聞いた上で、その移譲先というものは決めなければならないと考えております。
  387. 市川雄一

    ○市川委員 大臣、自治体という言葉が今挙がったのですけれども、横須賀市に聞いてみましたが、横須賀市は寝耳に水で、ことしの一月十日ですか、突然新聞発表でこの再編計画を知って驚いたのですね。それで慌てて大臣のところへ行ったと思うのですよ。横須賀市としてはとても引き受けられない、横須賀市立病院がそれでなくても今赤字で、初年度十五億近い赤字が出るわけですから、それを清算しても一億近いものが毎年出ていきますから、とても引き受けられないし、ぜひ国立病院として存続させてほしいということを、たしか大臣のところに言っていったと思うのですよ。  十分地元と協議するというのだけれども、この法律は今社労の方では議論されてないようですけれども、法律が通ってしまえば、法律が通ったということで厚生省はすごく強い立場になるわけですよ。国の法律がもう通ったのだから、通ったという前提で押し込んでいく。今は法律が通ってないからまだ非常に低姿勢でおっしゃっているけれども、これはもうちょっと、法律を通す前に地元と話し合うという必要があるのじゃないですか。大臣、地元の関係自治体云々と言っているその自治体が知らないで、新聞発表で知って驚くようなやり方でいいのかというのです。法律が通ってしまえば、今度は法律が通ったのだからというので、国というのはかなり官僚的、お役所的に自治体に臨んでいくわけですよ。要するに、法律の通る前に神奈川県なり横須賀市なり関係意見を聞く、こういうことが必要だと私は思うのですよ。大臣、そういう考えはありませんか。
  388. 今井勇

    ○今井国務大臣 まさにおっしゃるとおりでございます。今、国立横須賀病院の移譲の問題が出ておりましたが、私どもは、とにかく全般的に、移譲の問題につきましては、適切な移譲先というものをまず見つけるべく最善の努力をするのは当然のことでございます。そのときに都道府県やら関係機関と十分協議しながら相手先を選定しなければなりません。したがって、十分な話し合いをこれからも積極的にさせますし、また、それをして皆さんの御協力を得なければこれは全くできないことでございますから、先生のおっしゃるように、移譲の問題につきましても十分にその関係機関と相談させてまいりたい、こう思います。
  389. 市川雄一

    ○市川委員 事前にですよ。法律が通った後じゃだめですよ。
  390. 今井勇

    ○今井国務大臣 これはもちろんのことでございます。
  391. 市川雄一

    ○市川委員 そこで、今後の厚生省の方針を伺いたいわけです。  今お聞きのように、横須賀市では、そういう事情があってとても引き受けられません、国立病院でぜひ存続してほしい、こう言っているわけです。仮に引き受け手がない場合、厚生省の基本的な方針はどうなるのですか。引き受け手があらわれるまでずっと国立病院で置いておく方針なのか、ある時期が来たら何か見直して見切りの処分方針を決めるのか、その辺の厚生省の考え方はどうですか。
  392. 木戸脩

    ○木戸政府委員 厚生省といたしましては、再編計画でいたしました移譲施設につきましては、国立医療機関として将来もそのまま運営していくことは考えてはいないわけでございます。しかし、受け入れ先が決まるまでは従来どおり国立医療機関として運営することとなるわけでございます。とにかくまだ再編について計画発表したばかりでございますので、受け入れ先の確保については最善の努力をしてまいりたいと考えております。
  393. 市川雄一

    ○市川委員 後段の質問に答えてくださいよ。それは前半の質問だ。
  394. 木戸脩

    ○木戸政府委員 再編は十年ということでございますので、途中で見直しということもあるわけでございますが、私どもといたしましては、先ほども申し上げましたような方針で、とにかく受け入れ先を探す努力をしてまいりたいと考えております。
  395. 市川雄一

    ○市川委員 努力をしたけれどもなかなかうまいぐあいに見つからない場合は、この再編計画でいうと十カ年ですね。ただし、三年もしくは五年ごとに計画の見直しを図るという言葉もここにあるわけですね。文書によると、見つからない場合は十年間は国立病院でずっといくということですか。とすると、十年後はどうなるのかという問題が起きてくるわけです、見つからない場合。それでは、十年後は完全に廃止しちゃう、こういうことですか。
  396. 木戸脩

    ○木戸政府委員 私どもとしては、三年ないし五年ごとに見直しをしてまいるわけでございます。ただ、十年たったときにどうなるかという点につきましては、私どもとして今、その十年後どうするということは申し上げられない立場にあるわけでございます。
  397. 市川雄一

    ○市川委員 十年後どうするかということを聞いているのじゃなくて、今あなたのところには申し込みが何も来ていないわけでしょう。では、必ずいいお婿さんがあらわれると確信しているわけですか。それとも、その確信がないなら、ずっと国立病院で存続させる。しかし、いつまでもそうはいかないわけでしょう、さっきあなたがおっしゃったように。もう国立病院として置かないとおっしゃっているわけです。だけれども経営移譲の引き受け手がない、その場合はどういう方針なのですかということを聞いているわけです。今だってその方針を持っているわけでしょう。この場合はこうしようとかああしようとか、その方針を聞いているわけですよ。
  398. 木戸脩

    ○木戸政府委員 先ほどもお答え申し上げましたが、見直しの時点で今後どういうふうにしていくかという点の見直しもあるわけでございます。
  399. 市川雄一

    ○市川委員 見直しの時点というのは、三年か五年の見直しの時点で今後どういうふうにするかといっても、答えは決まっているのです。厚生省としてはもう国立病院とはしない、経営移譲と方針が決まっちゃっていて、相手がいない、それで考えるとなると、もうこれはなくしちゃうという答えしか出てこないわけですよ、だれが考えたって。そういうことなんですかと聞いているわけです。それとも断固、経営移譲と決めたんだから経営移譲の相手が見つかるまでは国立病院できちんと存続させます、こういうことなのかどうなのか。
  400. 木戸脩

    ○木戸政府委員 極力見直す努力はいたしますが、この十年のうちに例えばその相手が見つからないというようなことがあった場合に、それは一方的に廃止をしてしまうか。そういうつもりはございません。
  401. 市川雄一

    ○市川委員 一方的に廃止はしない。とすると、これは厚生省が本気になって探すのですか。何か一般公募みたいに待っているのじゃないですか。だれかいませんかじゃなくて、積極的に動くのですか。神奈川県とかどこかに、自治体に探せといってやらせるのじゃないですか。それとも厚生省は本当に、病院に当たったりいろいろな努力をするのですか。どうもそういうふうには見えないのですけれども、法律が通ってないからいいけれども、法律が通っちゃったら後どうなってしまうのかなという心配を持つのですよ。だから、本当に積極的に探すのかどうなのか。三−五年で見直すわけでしょう。そのときに相手がなくても、一方的には絶対に廃止はしない、国立病院として存続はさせる、探す努力をするんだ、こういうことですか。
  402. 木戸脩

    ○木戸政府委員 探す努力はいたします。これから計画の実施に入っていくわけでございますので、まず第一義的には神奈川県と、それから神奈川県を介しまして横須賀市、その他とも接触をしていくわけでございます。厚生省としては積極的に厚生省の考え方を説明して、地域の医療の実情に合った経営の相手先を、厚生省として、地元の意見を聞きながら積極的に探してまいりたいというふうに考えております。
  403. 市川雄一

    ○市川委員 経営移譲に賛成しているわけではないのですけれども、どうも国立病院が赤字で——この国立横須賀病院も赤字ですよね。これを見てみますと、年間収支で五十七年度が一億一千六百万、五十八年度が一億二千万、五十九年度が八千万ですか、こういう赤字が出ていて、引き受け手を探すと言っても魔法使いじゃない限り赤字はなくならないわけですから、国が何か引き受け手に対しては財政援助する、その方針というのは具体的にどういう方針をお持ちなんですか。
  404. 木戸脩

    ○木戸政府委員 国会に出させていただきました再編の特別措置法案によりますと、いわゆる職員ごとその施設を経営移譲した場合には、その移譲を受けた者に対しまして運営費補助金を交付する、こういうことになっているわけでございます。
  405. 市川雄一

    ○市川委員 それはどのくらいの割合なんですか。
  406. 木戸脩

    ○木戸政府委員 まだ具体的に関係各省と詰めておりませんが、やはり赤字が出た場合にその一定額を一定の期間助成をする、こういう考え方を出発点にして、これから具体的にどうしていくかということを詰めていこうというふうに考えているところでございます。
  407. 市川雄一

    ○市川委員 それはいつごろ決まるのですか。
  408. 木戸脩

    ○木戸政府委員 これは法律の中で「政令で定める」ということになっているわけでございます。できるだけ早く詰めたいというふうに考えております。
  409. 市川雄一

    ○市川委員 これだけ赤字が出ているのがわかっていて、幾ら引き受け手を探すと言っても、赤字がそのままそっくり来るということがわかっていて引き受ける人はいないと私は思うのですよ。そういう意味で聞いているのです。それだったら、赤字が出た場合は国がどのくらい負担するのか、あるいはどのくらいの期間やるのか、そういう条件がはっきりしてなくて、引受手を探したり交渉することはできないのじゃないですか。その辺が話がおかしいじゃないですか。引き受け手を探しますと言うけれども、探す条件が整ってない。国の考え方はいつできるのですかと言うと、できるだけ早く。そんなことで引き受け手なんかあらわれますか。交渉のしようもないじゃないですか。探すと言ったって、これだけの赤字がある、一億だ。では国はどうしてくれるのですかと聞かれたとき、いや、それは後でもう一回考えますなんて言っていたら、だれも引き受けませんよ、そんなのは。その辺のことなんですよ。どうなんですか、それは。
  410. 木戸脩

    ○木戸政府委員 現在、国会に特別措置法を御提案しているところでございます。私ども、運営費補助金について関係各省と折衝をいたしますときに頭にございますのは、やや違いますが、国鉄のローカル線につきましての譲渡をいたしました場合の転換交付金という制度がございます。あの制度は、五年間赤字が出た場合にその二分の一を助成する、こういう考え方があるわけでございまして、そこを基本的な出発点といたしまして、今関係各省と詰めているところでございます。  いずれにしましても、これが詰まりませんと最終的に、具体的に、それではどこに、いつからお願いするかというようなお願いはできないわけでございますので、そこはこれから鋭意詰めてまいるつもりでございます。
  411. 市川雄一

    ○市川委員 ちょっと今聞き漏らしたのですが、それが決まらないと引き受け手との交渉ができないという意味ですか、今おっしゃったのは。できないから、早く鋭意やりますという意味ですか。どういう意味ですか。
  412. 木戸脩

    ○木戸政府委員 私どもといたしましては、法案を現在国会に出させていただいておりますので、これを通していただきました上で政令を制定する、それで考え方を明らかにして、それから積極的に経営移譲先を探してまいりたい、こういうことでございます。
  413. 市川雄一

    ○市川委員 そうすると、国立横須賀病院が地域で果たしている医療貢献、十分地域に根を張っている、これはどうしても医療機関として残さなければならない、あなた方の言葉をかりれば、国立という形態かどうかは別として、経営移譲ということを言っているわけですから、しかし医療機関としては残したい、また残していくべきだ、こういう認識はあるのですか。
  414. 木戸脩

    ○木戸政府委員 横須賀は、先生も御存じのとおりに病床不足地域でございます。神奈川県全般のリストアップにつきましては、神奈川県とはいろいろ非公式な情報を交わしておるわけでございますが、やはり私どもとしては、当該地域に医療機関は要るという判断で、神奈川県とそこの点は認識が一致しているわけでございます。
  415. 市川雄一

    ○市川委員 どうも、高度先駆的医療に国立の役割を明確化する、そして地域の一般的医療からは引き揚げてしまおう、そういう赤字を減らすためだけの視点でこれをやられたのでは、やはりこれはかなわないと思うのですね。そういうことはやるべきじゃないんじゃないか。ある程度理解できる面もあるのですけれども、やはりそれには十分な地元との協議、納得、それから時間をかけた移行ということを考えるべきじゃないかというように私は思います。  次に、これは要望でございますが、地元のことばかりで大変恐縮なんですけれども、川崎の北部、麻生区とか多摩区とか宮前区とか高津区とか、人口急増地域なんですね。救急医療の体制がまだ十分にとれておりませんでして、非常に市民からの救急医療体制の整備に対する要望が強いのです。  ちなみに、市の方で発表している資料によりますと、川崎の南部と北部を比べてみますと、病床数では南部の三分の一しかないですね。それから一病床当たりの人口で見ますと、南部の九倍の人口比になるわけです。それから人口十万に対する病床数で言うと、約九分の一になってしまうわけです。こういう人口がどんどんふえてきた、住宅ができた、だけれども、公的な医療機関による休日・夜間の救急医療の体制ができていないという非常に切実な問題を抱えているわけです。  そこで、これは厚生省に要望なんでございますが、川崎市多摩区内に国家公務員等共済組合連合会稲田登戸病院という病院があるのです。準公立病院というのですか、今この病院に、川崎市当局も再三にわたって告示病院として救急医療に協力してほしいということを働きかけをしているのですが、なかなか御返事をいただけないという状況でございます。この地域の状況というものを厚生省も御存じだと思います。ひとつ厚生省の方から、これは大蔵省が所管していらっしゃるようなので、こういう休日・夜間の救急医療についてぜひこの稲田登戸病院が告示病院としての協力をしてくれるように、まあ地域に協力してやってくれ、こういう働きかけをぜひしてほしいというように思うのですが、どうですか。
  416. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 先生のお話のように、川崎市の北部は人口急増地帯であって、人口対病床数が少ない、あるいは人口急増地帯における救急医療体制の整備については特に重点を置く必要がある、私どももまさにそのとおり考えておるわけでございます。  お話しの共済の稲田登戸病院でございますが、この病院は休日・夜間の輪番制病院の中に加わっていただいておるわけでございますが、今お話しの救急告示病院となるかどうかという点につきましては、原則的には当該地域において関係者間で十分お話し合いをいただく必要があろうと思っておりますが、厚生省といたしましても、その地域におきます救急医療体制に支障の生じることのないよう、必要に応じて県を指導してまいりたいと考えております。
  417. 市川雄一

    ○市川委員 要するに厚生省に少し御支援をお願いしたい、大蔵省の方に働きかけていただきたい、こういうことでございます。どうですか、端的におっしゃってください。
  418. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 所管の大蔵省にも、私どもの方から、先生の御主張、御趣旨につきまして十分話をしたいと考えております。
  419. 市川雄一

    ○市川委員 また話が変わって恐縮ですが、特別養護老人ホームということに大きな関心を持っておるのです、周辺の方々に在宅の寝たきりのお年寄りを抱えている方が多いものですから。  そこでお伺いするのですが、老人保健法の改正によって老人保健施設というものを創設するということなんですが、老人保健施設をつくること自体悪いというふうに思っておるわけじゃないのですけれども、特別養護老人ホームにかわってそれで済ませよう、こういうことなのか。それともそうではなくて、老人保健施設は施設としてつくるけれども、特別養護老人ホームは従来どおりやはり必要性を持ちながらやっていくのだ、こういうことなのか。その辺の厚生省のお考えはいかがでしょうか。
  420. 黒木武弘

    ○黒木政府委員 今回改正法で御提案を申し上げております老人保健施設についてのお尋ねでございますけれども、今回老人保健施設の制度化をお願いしている私どものねらいと申しますものは、今後寝たきり老人等の要介護老人が非常に急増してまいる、こういうことに対応して新しい施設が必要である、こういう認識に立っておるからでございます。  現在、こういった寝たきり老人の方とかその他の介護を必要とされる老人は、長期入院患者で約二十二万人、それから御指摘がありました特別養護老人ホームで約十一万人、それから在宅の寝たきり老人ということで二十七万人、合計六十万人と推定されておるわけでございますけれども、高齢化の進展に伴いまして、二十一世紀にはこれらの老人の方々が百万人を突破するのではないかというふうに推計をいたしておりまして、これら要介護老人の方々の施策というものが非常に緊急であろうというふうに認識をいたしておるわけでございます。  そうしますと、特別養護老人ホームとの関連におきまして、そういった老人ホームはもう必要ないのかというお尋ねでございますけれども、私どもは、これからのふえてまいります要介護老人の方々というのは、医療的なニーズと生活のニーズをあわせ持つ方々だというふうに考えておりまして、そういった両方のニーズを満たせる中間施設として、いわゆる老人保健施設をお願いしているわけでございます。  しかし、すべてがそうではございませんで、やはり老人の方々には治療の必要とされる老人がいらっしゃいます。これは今後とも、老人病院等を中心にして病院で面倒をあるいは治療をしてもらう。それからやはり、お世話を中心にして考える必要がある老人の方々が今後もあるだろう、これは御指摘のように特別養護老人ホームでお世話をいただくわけでございまして、これも従来どおり整備していかなくてはいけないというふうに考えております。その中間として新しく老人保健施設をお願いするわけでございますけれども、この方々は、医療的なケアも必要だ、そしてまた生活的なお世話も必要だ、こういう方々を対象にいたしたいというふうに考えております。  これからの高齢化社会を控えまして、要介護老人の方々に新しい施設体系をどう整備するかということにつきましては、重ねて申し上げますけれども、老人病院といったような専門病院も必要でございますし、特別養護老人ホームも必要でございます。さらに新しい中間的な施設として、老人の方々のニーズにこたえるべく、老人保健施設の創設をお願いいたしたいということでございます。
  421. 市川雄一

    ○市川委員 特別養護老人ホームは今までどおり整備していく、こういう方針に変わりはないと。そこで、今中間施設という表現が出たのですけれども、特別養護老人ホームにお入りになっている方と在宅の方の負担の格差、これに不満があるわけですけれども、例えば在宅ケアで介護している方が非常に肉体的、精神的に参ってしまう、一週間か二週間ほど介護者が自分のリフレッシュのために旅行へ行ったりもう休みたい、そういう場合に預かってくれる場所、こういう役割も果たすのですか、この老人保健施設というのは。そういう役割を果たすのかどうか。仮にそうだとしても、結局入ってしまえばもう出て行きなさいということは言えない場合もあるでしょう。その辺の考え方はどうなんですか。
  422. 黒木武弘

    ○黒木政府委員 御提案申し上げています老人保健施設の機能と申しますか、どういう役割を果たすかということでございますけれども、この施設は、現在の老人病院、病院と同じように被保険者証と申しますか医療受給者証を持っていけば入院できる、あるいは入所できる施設と私どもとしては考えておりまして、その施設の主として管理医師の方のお許しを得れば入所できるわけでございます。そしてまた同じような手続で退院できるわけでございますから、非常に長期にわたる場合もあるいは短期間の場合も、それぞれの家庭の状況等も判断の上、主治医と申しますか管理医師の判断で、この新しい老人保健施設への入所が必要だという場合には、長短いろいろありましょうけれどもそれにふさわしい期間、処遇をしてもらえるということになろうかと思っております。
  423. 市川雄一

    ○市川委員 国立横須賀病院については、私たちとしてはぜひ国立病院として存続させてほしい、それがどうしても不可能であるならば、これは経営移譲ということであれば、地域の医療機関として十分成り立つような配慮を厚生省として十分やってほしい、このことを強く申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
  424. 志賀節

    志賀委員長 三浦久君。
  425. 三浦久

    ○三浦(久)委員 厚生大臣お尋ねをいたします。  前回、私が、群馬県の渋川病院等十の国立病院や療養所が移譲対象施設になっていながら、三年ないし五年後の見直しの時点で移譲の相手がなければ他の病院に統合することを厚生省が検討している、そのことについてさまざまな問題点を指摘をいたしました。厚生大臣はそのときに、次回に納得のいく説明をさせる、こういうふうに御答弁になりましたが、その結果どうなりましたでしょうか。
  426. 木戸脩

    ○木戸政府委員 それでは、厚生省の見解ということで申し上げます。  一、 今回の再編成は、国立病院・療養所が国立医療機関にふさわしい指導的役割を果たせるようその質的強化を図るものである。このため、統廃合すべきは統廃合し、他の経営主体に委ねることが適当なものは経営移譲しようとするものである。  二、 統廃合及び経営移譲の対象施設の選定基準としては、原則的には、統廃合は近接して国立病院・療養所があり、統合により機能の強化が図れる施設を対象としており、経営移譲は、診療機能として、一般的医療を中心とする施設を対象としている。  三、 従って、移譲施設であっても、統廃合の個別要件に該当するケースもあり、前回お答えした十施設はこのようなケースに該当してい   る。    このようなケースについては、移譲先を見つける努力をしていくが、移譲先の見通しが立たない場合、一つの選択肢として統合の方句もありうることを内部資料上コメントしたものである。    なお、統合となった場合に、後医療が必要な場合には、地元とも十分相談しながら適切に対処して参りたい。
  427. 三浦久

    ○三浦(久)委員 前回とほとんど基本的には変わってない答弁なんですね。それで、廃止をすべきだという要件と残すべきだという全く矛盾する要件の両方に合致するのだなんて、そんなことは常識上あり得ないのです。もしそういうことがあるとすれば、それは基準自体がまた大変おかしい、極めてあいまいなもので、基準の名前に値しないものだと私は言わざるを得ないと思うのですね。万々が一合のあなたの答弁が正しいと仮定をしたとしても、これは一たんあなたの方では、廃止すべきなのか、いわゆる統廃合すべきなのか移譲対象施設にするのか、そういう意味では移譲対象施設にするということを選択したわけだ。そうすると、移譲対象施設というのは引き受け手がなければずっと十年間は大体存続させる、引き受け手がなければですよ。そういうことをあなたたちの全体計画ではっきりさせているわけだ、医療の質も落とさないということを。そうであれば、今の時点で、それは三年ないし五年後の見直しの時点でもって引き受け手がなければ廃止だ、そんなことを検討するのは全く間違いだ。見直しの問題についても現在の時点でそんなことをやるのは全く間違っている。それはあなたたち、この前も言いましたけれども、あなたたち自身の見直しの規定を見ましても、これは引き受け手がなければ見直すんだというような規定にはなってない。疾病構造の変化だとか医療ニーズの動向だとか各種医療機関の整備状況、こういうものを勘案して総合的に見直すんだ、こう言っているのであって、引き受け手があるとかないとかというのはそういう見直しの基準にはないのです。ですから、あなたたちが一たん移譲対象施設として選んだのであれば、それはその手続に従って見直しも行うということでなければならぬと思うのですね。それでなければ、国民は何を基本にして、これは移譲対象だけれどもずっと引き受け手がなければ残るから安心だとか、そういうことを決めることができますか。ですから私はかなりでたらめなやり方だと思っているのですけれども、しかしこの問題、時間がありませんので私はその点だけ指摘して、引き続いて社会労働委員会で、特別措置法の審議のときにまたこの問題については十分に追及したいと思います。  田川新生病院の問題についてお尋ねするのですが、この田川新生病院は、生い立ちから見ましても胸部疾患ですね。けい肺、じん肺、それから肺結核、こういうものの患者さんが、最近は少なくなりましたけれども、当初は大変多かったわけですね。それで、現在でもこの地域では肺結核を扱っている唯一の病院になっております。そして特に、私はこの病院を見てきたのですが、呼吸器疾患ですね。胸部疾患というのでしょうか、胸部疾患と即同じじゃないと思いますが、肺結核とか肺がん、じん肺、けい肺、そういうような呼吸器関係に故障のある人々のリハビリテーションの施設があるのですね。これは私も初めて見たわけですが、広い庭をつくっておる、「療養庭園」と言っております。木がたくさんあります。そして花もたくさん生けてあります。そして道が何本もあります。休憩所もその庭にあります。そしてその道はそれぞれ勾配が違うのですね。全部勾配が違うのです。そして、病気の程度に応じてこの道を散歩しなさい、あなたはこの道です、そういうふうになっておるのですね。それで、これはどうして効くのか、何%よくなるとか、そういう数字はなかなか出ないそうですけれども、しかし、医療的に見ると非常によい結果を生んでいるというふうに専門の医師は語っておりました。ですから、田川新生病院というのはこういう非常に特色のある病院なんです。ところがそういう科が、あなたたちから言えば幸運にもこの移譲先が仮に見つかったとしますね、そうすると、こういういわゆるこの病院の特色が今後生かされるかどうかということを私はまた大変心配をするわけですが、この点についてはどうでしょうか。
  428. 木戸脩

    ○木戸政府委員 田川新生病院の現状につきましては、三浦先生御指摘のとおりでございます。私どもは、この病院が今先生御指摘のような状態にあるわけでございますので、やはりそれにふさわしいような経営移譲の相手を見つけなければならないと考えております。
  429. 三浦久

    ○三浦(久)委員 ところが、それが今のあなたたちのやり方では担保されないのです。例えばこの病院には内科、外科、呼吸器科、整形外科というのがありますね。今私が言った「療養庭園」なんというのは呼吸器科の問題だと思うのです。ところが移譲を受けた場合に、呼吸器科でこんなことをやっておるとどうも経営効率が悪い、余り手術もないし、ただベッドに入れて「療養庭園」を散歩させる、そういうリハビリじゃ余りもうからぬ、経営効率が悪いからこの科目をなくしたいと、引き受け手の病院がそういうように考えれば、都道府県知事に届け出をするだけで呼吸器科がなくなってしまうわけですね。何にもチェックする方法がない。あなたの方で、いや、それは移譲するときの契約に書くから大丈夫だとおっしゃるかもしれない。それは契約を結べば当座は守るかもしれませんよ。しかしその後事態が推移して、いや、状況が変化した、経営全体が悪化しているので、とても呼吸器科は置いておけないということだって可能でしょう。そうすると、それでもって呼吸器科を廃止するという届け出を出した場合、これはなくなってしまいますよ。そして木戸審議官、それを契約違反だからといって、じゃ契約を取り消します、もとに戻します、そんなことは不可能でしょう。もう私立の病院になっている、それをまた再び国立病院に戻すなんということは不可能なことですね。ですから、あなたたちが幾ら移譲契約で何かやっても、これは全然効果がないのです。そしてまた、経営が成り立つように一定の補助をすると言っていますけれども、それは赤字の半分程度を考えておるとか、期間も五年程度だというのでしょう。五年過ぎたらどうします。そうしたらもう呼吸器科というのは、——ここはいわゆる肺結核の唯一の病院ですよ。そして、そういうすぐれた「療養庭園」などというリハビリ施設まで持っている。こういう病院が将来もこういう機能を果たしたままずっと存続していくという保証は全くないのです。そうでしょう。ですから私は、こういう機能を、十五年間あなたたちは病院として使ってもらうんだということを移譲契約に書くと言っておるわけだけれども、じゃ十五年間、呼吸器科という特定の、国立病院としてあったときのその病院の特徴をずっと存続させるためにはどういうことを考えていますか。必ず存続できるという担保があるのですか。これをお伺いしたいと思います。
  430. 木戸脩

    ○木戸政府委員 法律的には、十五年以上たった場合の担保というのはないわけでございます。しかしながら……(三浦委員「五年。五年過ぎたら」と呼ぶ)これは現在法律案を国会に出しておるということで、政令をどうするかという問題でございまして、先ほどもお答えをしたように、一応今考えているのは、国鉄のローカル線の例に従って、五年間運営費の赤字の半分を助成するという点を基本的な出発点にして、病院の特性をどういうふうにして生かしていくかというのは、これから各省と詰めるところでございます。  それから、先生の今の御質問でございますが、私は、全体としての地域医療計画の中でそういう患者さんはどうするかというふうに考えて、結果的に移譲後でも、仮に移譲された後の田川病院でやるのがいいということになれば、それはやはりおやりになるのが適当ではないかと思うわけでございます。  ただ、私どもとしては、結核につきましては広域で考えていくということでございます。結核はやはり政策医療だと思っております。結核の合併症等いわゆる長患いの結核患者というのは、今後とも国立が最終的には拠点にならなければならないというふうに考えているわけでございますので、私どもといたしましては、仮に移譲先が見つかった場合に、地域と話がつけば、結核の非常に長患いで例えば福岡の東病院に行った方がいいという方がおられれば、本人の同意もあれば、その方はそちらの方に移っていただくということも考えていかなければならない、地域医療の連携で解決すべき問題だと思っております。
  431. 三浦久

    ○三浦(久)委員 そんな人任せな話がありますか。今まで自分がやっているものを人にやらせるなんて、そんなばかな話がありますか。東病院だってこの田川から何時間かかると思いますか。汽車で行ったってバスで行ったって物すごい時間がかかりますよ。何時間です。そうでしょう。その病院に入っていれば毎日でもお見舞いに行けるけれども、東病院に行ったら家族がそんなにちょいちょい見舞いに行けないですよ。そういうことだって考えなければいかぬでしょう。結局何の担保もないということなんだ。  そうして、この病院について医療法違反の問題があるのでちょっとお尋ねしますけれども、医療法というのは医療の従事者、また医療の経営者、管理者というのは守らなければいけないのですか、どうですか。
  432. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 医療法の規定は、医療機関がそれを守っていただく必要があるわけでございます。
  433. 三浦久

    ○三浦(久)委員 そうすると、この医療法で医師とか看護婦とか薬剤師、そういうものの人数が決められておりますね。そういう医療法の規定というのは国立病院・療養所にも適用はあるのですか。国立、私立を問わずすべての病院、療養所に適用されるのですか。
  434. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 医師、看護婦等の医療関係者の員数の標準はもちろん国立病院にも適用があるわけでございます。
  435. 三浦久

    ○三浦(久)委員 田川新生病院は現在医療法によると十四名必要なんです。ところが現在いるのは六名です。充足率はわずかに四二%になっていますが、それは確認できますか。
  436. 木戸脩

    ○木戸政府委員 私どもの計算によりますと、医療法上の必要数は十名ということでございまして、現員は五人でございます。
  437. 三浦久

    ○三浦(久)委員 それはいつの時点のものですか。
  438. 木戸脩

    ○木戸政府委員 五十九年度の一日平均患者数で見て、十人という数字を出しているわけでございます。
  439. 三浦久

    ○三浦(久)委員 私はここに、福岡県の田川保健所長から国立療養所田川新生病院に対して、「昭和五十九年度医療監視の結果について」、いわゆる立入検査をした結果について、こういう不適合な事項があるので通知します、という文書を持っています。これによると「定数十四名に対し現員六名(充足率四二%)で定数不足である」、一番最初指摘されておるじゃないですか。何が十名ですか。十四名ですよ。保健所からどういうように指摘されていますか。——私、時間がないものですから、ちょっと返事がないので続けて質問しましょう。  こういう、あなたたちの言っている十名必要なんだけれども五名しかおらぬ、五〇%しか医師数を充足していないというのは医療法に違反しているのですか適法なんですか、どっちですか。
  440. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 先ほど申し上げました医療法によります病院の従業員の数の標準でございますが、これは医療法で規定しておりますのは標準ということでございますので、これを満たしていないからといって直ちに法違反として罰するというような関係にはございません。
  441. 三浦久

    ○三浦(久)委員 冗談言っては困るよ、君。標準だから罰則の適用はない。しかし、あなたたちこの法律を見てごらん。どうしてそういう答弁するかな、あなたたちは。それじゃ守らなくてもいいということじゃないか。法違反じゃないのだろ、あなたの今の説明によれば。医師数の規定は標準であるから、それに違反をしても法違反とは言えないというのだったら、守らなくてもいいということじゃないか。あなたの最初答弁と矛盾しているじゃないか。  医療法の第二十一条の二項には何て書いてありますか。前項第一号の規定に基づく省令の規定によって定められた人員を有しない者については、政令で十万円以下の罰金の刑を科する旨の規定を設けることができるとありますね。十万円以下の罰金の刑を政令で定めることができるというふうになっているのですよ、この医師数が不足だという問題については。ところがこの政令は今ない。ないから罰則は適用にならないでしょう。しかし、その基準を守らなくてもいいとは、あなた一体何事ですか。法に定められているものをたった四二%しかあなたたち配置していないで、それでいいのだ、法違反じゃない、どうしてそんなことが言えるのだ。じゃ何名なら法違反なんだ。じゃ一人も来なくても法違反じゃないのか。そんなばかな答弁はやめてくれ。
  442. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 先ほど御答弁申し上げましたことを繰り返させていただきますが、医療法に定めておりますのは標準でございまして、この標準に反するからといって直ちに法違反として罰するのは適当でない、そういう御答弁を申し上げたのであります。
  443. 三浦久

    ○三浦(久)委員 あなた、さっきそう言わなかったじゃないか。法違反ではないと言ったじゃないか。それなら、法違反じゃないなら何で保健所がこういう勧告を出すのですか。  じゃもう一回聞きますが、法違反として処罰はされないが、医療法違反行為であるということは認めますか。
  444. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 医療法に定めております従業員の員数の標準には反しておるということでございます。
  445. 三浦久

    ○三浦(久)委員 その員数の標準というのは医療法で規定しているのじゃないか。何でそんな答弁しかできないのだ。医療法とそれに基づく施行規則によって医師数の標準というのは決まっているのだろう。その標準に違反しておれば医療法に違反しているということじゃないか。そんなことはだれだってわかる道理でしょう。——何を笑っているのだ。何がおかしいのだ。あなたたちは医師を四二%しか充足していない。例えば百名の定員があるところ、三人、四人、五人と不足したという事態じゃないのだ。十四名必要なところに六名しかあなたたちは配置していないのだよ。そういう医療法違反を公然とやっておる。医療法は守らなければならない。これはもう大臣もそのとおりだと思いますね。その医療法に違反をして、十四の定数のところを六名しかないということを保健所から指摘されています。ことしだけじゃありません。もうこの十年間、もっと先からずっと毎年毎年指摘されているのです。こういう違法な状態が続いていることについて、厚生大臣はどういうふうにお考えですか。これを早急に是正しなければならないとお考えですか。是正する意思はございませんか、どうでしょうか。
  446. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 先ほど来申し上げておりますように、医療法の員数の標準は遵守をしていただく必要がございますので、私どもといたしましては医療監視等を通じまして改善指導を厳重に行ってまいっておるところでございます。
  447. 三浦久

    ○三浦(久)委員 そんな人ごとみたいなことを言いなさんな。この国立田川新生病院からあなたたち本省に対して、人数をふやしてくれ、医師数をもっと増加してくれという要求は毎年上がっているではないですか。人を指導するのではなくて、自分が実行することがまず大事でしょう。  どうですか、大臣。十四名必要なのだからこれを少なくとも十四名になるべく近づける、そういう努力はすべきではないですか。法律を守る意思がないのですか。そんなことでどうして私立の病院が医療法に違反したときに指導ができますか。おかしいではないですか。大臣の明確な答弁を求めたいと思います。
  448. 今井勇

    ○今井国務大臣 田川新生病院の医師数が医療法上の標準数を満たしてないというのは、これは事実でございます。しかしながら、現在、定員の事情が非常に厳しい中ですべての施設について医療法上の医師等の職員数を充足することは、極めて困難であるわけであります。そこで今お願いしておるわけでありますが、国立病院とか療養所にふさわしい機能の充実を図ろうというので再編成をしよう、そして統廃合をやってまとめて、あるいは経営譲渡を行うことによって、生み出された要員についてきちっとした守るべきものを、医師等を初めとする医療スタッフを中心として再配置をしていこう、こう考えてやっておるわけでございます。
  449. 三浦久

    ○三浦(久)委員 それはあなたの言い逃れですよ。看護婦の二・八勤務体制のときにもそういう答弁をした。自分たちが守っていない。自分たちが守る意思がないから守ってないのですよ。それをこの統廃合ができたらやりますなんて、統廃合と関係ないではないですか。では十年前に統廃合の問題が出ていたのですか、五年前に統廃合の問題が出ていたのですか。統廃合をやるまで医師は充足しないということで、あなたたちはこの十年間やってきたのですか。そうではないでしょう。そんなことと関係ないのですよ。少なくとも現在そういう法違反の状態が続いているのだから、厚生省としてはその法違反の状態をなくす、そのために最善の努力をするということを答弁するのが当たり前ではありませんか。それをまだ国会で審議もしていないような統廃合問題とひっかけてやるなんというのは、私は大臣答弁として納得できない。
  450. 今井勇

    ○今井国務大臣 私は統廃合の問題にひっかけたわけでもないのですが……(三浦(久)委員「そう言ったじゃないか」と呼ぶ)まず全部を聞いてください。  毎年毎年定員を要求するわけでございますが、なかなか要求が満たされない。それで私も、そういう状況を考えますと、今お願いをしております国立病院・療養所の統廃合の問題がちょうど焦眉の急として上がっておりますので、これを契機にしてなお一層促進をしたいという気持ちを申し上げただけでございます。
  451. 三浦久

    ○三浦(久)委員 そうすると、統廃合ができなければこのまま法違反をずっと続ける、政府みずからが法律を守らないことを表明するということですか。
  452. 今井勇

    ○今井国務大臣 定員増は毎年毎年要求して、そういうことのないように努めているわけでございます。
  453. 三浦久

    ○三浦(久)委員 しかし、法律違反の事態が続いているのだからね。そうするとあなたたちは、毎年この田川の問題について、充足したいから医師をよこせという要求を本当に出していますか。
  454. 木戸脩

    ○木戸政府委員 田川病院からそのような要望が本省の方に来ているのは事実でございますが、定員の要求というものは、その性質上、田川病院に何人、こういう要求ではないわけでございます。私どもといたしましては医療スタッフの増の要求はしているわけでございますが、非常に残念でございますが、定員の事情が非常に厳しいということで、相当数の施設についてそのような医療法上の標準数を満たしていないということがあるのは事実でございますが、我々といたしましても、今大臣が申し上げたように、定員の要求につきましては、特に医療スタッフの要求につきましては今後とも努力をしてまいるつもりでございます。
  455. 三浦久

    ○三浦(久)委員 現場のお医者さんたちがどんなに苦労してやっておるのかということもよく考えてくださいよ。半分に満たないお医者さんの数でこれだけの患者さんをこなしていくというのは、夜も眠れない状態が何日も続いてやっておることなのですよ。それをあなたたちは、この二十年間ぐらい定数をほったらかしなのだから。そんなでたらめなことがありますか。人間の健康と命というものをどう考えておるのですか。医療事故が起こったらだれが責任を持ちますか。医療行政に携わっているのなら、もっと真剣に人間の命や健康の問題を考えてもらいたい。  これはまた機会があったら私はもっと追及したいと思いますが、きょうは同僚議員の時間がなくなりますので、これでやめます。
  456. 志賀節

    志賀委員長 柴田睦夫君。
  457. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 最初に、厚生大臣の所信を伺います。  厚生省は、政策医療として高度先駆的医療、特殊な疾病に対する医療など専門的に特化し、一般的医療は私的医療機関や自治体立などの公的医療機関にゆだねる、こうしておりますが、これは時代への逆行現象と私は考えます。今求められておりますのは総合的診療機能の発揮であります。  民間の小規模診療所はむしろ今は淘汰されておりますし、民間の医療機関は挙げて特殊化の競争を始めております。あちらが心臓ならばこちらは呼吸器だ、こういうぐあいですが、その結果、厚生省医療施設調査によりますと、一九八一年で専門、外来、入院実施病院は全病院の二七・二%にも達しております。  そういう意味で、医療の役割分担を言うなら、今国立医療機関に求められておりますところは、総合診療機能を強化することであり、その中で高度専門医療の充実を図っていくということではないか。そういう点から考えてみますと、今計画されております統廃合計画をやめなければならない、そして一般診療機能を強めなければならない、これが今日の要請だと思うのですが、所見を伺います。
  458. 今井勇

    ○今井国務大臣 地域におきます医療供給体制の中で、一般的な医療の提供というものは基本的にはやはり私的な医療機関及び地方の公共団体並等の公的な医療機関にゆだねまして、国立病院あるいは療養所というものは、より広域を対象とします高度な専門医療などの国立医療機関にふさわしい役割を果たすべきものであろうと私は考えております。
  459. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 それでは、結局現実の国民の要請にこたえることにならないということであります。政府は、国立病院・療養所の再編成につきまして、国民から期待されている国立医療機関にふさわしい機能を発揮するには、医療スタッフの増強と施設・設備の充実を図る必要がある、こう言いながら、この財源を国庫に求めるには限度がある、だから統廃合するのだ、こういう論理を展開しているわけですけれども、これは二重の意味で国民を欺いているというように考えます。  第一に、この憲法二十五条規定、これを受けた厚生省設置法の第四条、「厚生省は、社会福祉、社倉保障及び公衆衛生の向上及び増進を図ることを任務」とする。また、第八条に国立病院の規定があります。医療法にもやはり診療の整備を求める規定があります。これらは単純に訓示規定だ、目標規定だ、こういう考え方であってはならないわけでありまして、まさに具体的に国がこれをやらなければならないという義務づけをしている規定であると今日考えなければならない。これは裁判所などの判例でもだんだん示されてきているところであります。つまり予算の有無によって決められるというのではなくて、むしろ予算の中で憲法の要請を満たしていく、こういうふうにしていかなくちゃならないと考えるわけであります。  二番目には、国の財政状況が長期にわたって厳しい状態にあるというのですが、これは政府・自民党の今までの、アメリカまた日本の財界、こうしたところを中心にした、そういう要求を実現する政治の結果であって、その責任を国民の方に求めるというのが今回の措置でありまして、これは大問題であります。現に六十一年度予算を見ましても軍事費はふえておりますし、財界が要求しております海外援助資金を初め財界優遇の予算措置は十分にとられている。予算の指導原理になっているのがこうした軍事費などであるわけですが、これを改めれば、社会保障の問題、医療の問題も前進していくことが可能であるわけです。そういう点から、この統廃合というものは甚だもってけしからぬことであると思いますが、もう一度お伺いします。
  460. 今井勇

    ○今井国務大臣 我が国の医療機関は、マクロ的に見ますれば量的な確保はほぼ達成されつつありますけれども、人口の高齢化とか疾病構造の変化あるいは医学医術の進歩などによりまして、医療内容は非常に高度化かつ多様化してきているわけです。一方、先生おっしゃいますように、国立病院・療養所につきましては、その機能とか病院の現状、国家財政の極めて厳しい状況等を踏まえて考えてまいりますと、その果たすべき役割をこの際明らかにして、国立医療機関としてふさわしい機能を果たすことが強く要請されておるわけでございます。  そういう意味で、私どもは、この再編成ということを今御提案をし御審議を願っているわけでございまして、現在の事情から見ますと、これは避けて通れない道であると私どもは考えておるものでございます。     〔委員長退席、石川委員長代理着席〕
  461. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 私は、この統廃合計画は撤回すべきであるという強い考えてあります。  次に、国立国府台病院に関連してお伺いしますが、予定では、国立国府台病院のナショナルセンターへの統合は昭和六十二年以降となっております。統合する際に、国立武蔵療養所の機能整備にあわせて、ナショナルセンターにおける臨床フィールドとして特に時代の要請に即応していくと言っておりますが、いわゆる一般診療機能、診療科目とか病床数などこういうことが縮小されることはないのか。国府台の院長のお話によりますと、総合診療機能を持つということはもうほぼ確実であると職員に説明されておられますが、こういう面については従来どおりであると考えてよろしいのかどうか、お伺いします。
  462. 木戸脩

    ○木戸政府委員 国府台病院は、昭和六十二年度以降国立精神・神経センターに統合することになっております。国府台病院の役割といたしましては、現在約七百床、半分が精神科、半分がいわゆる一般総合病院、こういうことになっているわけでございますが、今後は、ナショナルセンターの病院としてふさわしい機能ということになりますと、新しい精神障害の形である心身症とか神経症とか、そういう患者を対象にいたします。しかし、そういう患者さんですと、どうしても従来の狭い意味の精神科の治療だけでは不十分だということで、総合的機能が必要だ、こういうふうに言っているわけでございます。  具体的な構想につきましては、具体的に診療科目をどうするとかベッド数をどうするとかといったようなことにつきましては、現在、施設長を初めその分野の専門家が入っていろいろ検討をしているところでございます。ただ申し上げておきたいのは、十分経過期間は置きますけれども、現在ある診療科目が全くそのままであるということにはならないんじゃないか。当然ナショナルセンターの新しい機能にふさわしい総合的機能ということの洗い直しをするわけでございます。
  463. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 そうすると、ちょっと具体的に聞きますが、今は風邪を引いても行ける、腹が痛いということでも行けるわけですが、そうした風邪だとか腹痛だとかは診てくれるのですか、診てくれないのですか。
  464. 木戸脩

    ○木戸政府委員 大変難しい質問でございますが、一般的に申し上げますならば、先ほど申し上げましたように国府台病院は精神・神経センターの中の新しい機能づけということになるわけでございますので、いわゆる一般的な医療を何でもかんでもやるということにはならないかと思うわけでございます。ただ、具体的に現在ある診療科目を減らすという場合には十分な経過措置のようなものが要るわけでございますので、その辺は十二分に考えていかなければならないと思っております。
  465. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 この国府台病院が、精神科だけではなくて、その一般診療において地域の最も重要な役割を果たしている病院であるということを忘れないでもらいたいと思います。  次に、国立習志野病院の移譲計画の問題ですが、今国立病院・療養所の統廃合計画については国民から広範な批判が集まっております。政府は、移譲対象となっている病院で、三年ないし五年で移譲先が決まらなければ統廃合の対象になるということもこの前言いました。その理由は、統廃合と競合する部分があるからだ。その対象病院を全国十カ所挙げましたが、千葉県の習志野病院の名前もそこに入っておりました。習志野の場合どこが競合するのか、具体的に説明をしてもらいたいと思います。また、どこと統合するというような計画があるのか、お伺いします。
  466. 木戸脩

    ○木戸政府委員 国立習志野病院につきましては、地域の一般医療を中心とする地元でも大変頼りにしておられる病院でございますので、移譲ということを考えているわけでございますが、この統廃合というのは、移譲にしろ統合にしろ、いずれにいたしましてもそれによって生み出された余力で国立医療機関全体の質を高めていくということでございます。  具体的には、実はここから約二十キロ離れたところに国立佐倉病院というのがございます。これは現在は、非常に少ない医療スタッフではございますが、腎移植のセンターを目指して、腎移植を希望する患者さんの登録等の仕事をやっているところでございます。私どもといたしましては、この佐倉病院はぜひとも充実をしていかなければならないと考えておるわけでございます。したがいまして、これは具体的には見直しの時点の話になるわけでございますが、私どもといたしましては、佐倉病院を充実するというのは非常に重要な課題でございますので、習志野病院について、後の医療をどうするかという千葉県なり習志野市との具体的な話がつけば、その移譲先がなくても、そしてしかも千葉県なり習志野市と話がつけば、これは移譲ではないけれども、後医療の見通しがつくということがあれば、将来、佐倉病院と習志野病院というのは統合の可能性もないわけではございません。そういう意味におきまして、先日ここで公表いたしました十カ所の施設のうちの一カ所に習志野病院が入っていたわけでございまして、これはまだ現在は、計画上は移譲ということになっておるわけでございますが、そういう二つの要件に該当すればそういう可能性もあるということで、あえてコメントをしたわけでございます。
  467. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 詳しくは言いませんが、佐倉と習志野周辺、これは生活圏が違っているわけです。  そこで、統廃合の基準となります立地条件、診療機能、こういう点から見てみますと、国立習志野病院というのは問題はないと思います。この病院の病床数は三百六十一で、原則対象の三百未満ベッド数の病院ではないわけです。それから経営効率にしても、いろいろな事例が赤字経営と言われますが、この病院は数年黒字が続いている病院です。いわば優等生の病院と厚生省から位置づけるべきものであるわけです。関東信越地方医務局に聞きますと、そもそも移譲の対象になるのさえなぜなるのかわからない、こう言っておりますし、習志野の病院長に直接お会いして聞いてみますと、今まで自分が納得のいくような説明もまだ受けていない、こういう御意見でありました。これは初めから国立病院として存続させないということが前提で、理由はどうだっていい、こういう考え方に立っているのじゃないかと思いますので、あえてお尋ねいたします。
  468. 木戸脩

    ○木戸政府委員 最初にも申し上げましたように、習志野病院が地域の一般的、基本的な医療に役立っている公的医療機関だというのは、先生おっしゃるとおりでございます。ただ、習志野病院の周辺には、大学の附属病院あるいは自治体の病院あるいは社会保険病院等々かなりたくさん医療機関があるわけでございます。それから千葉には国立千葉病院というのもあるわけでございますが、その他国立のいろいろな専門医療機関として、下志津とか千葉東とかたくさんの国立病院・療養所というのが千葉県内にあって、それぞれ国立としての機能を果たしているし、今後とも果たすということにしているわけでございます。やはり国と公、公と民間、その適切な役割分担ということからすれば、現在習志野病院のやっている医療というのは他の経営主体にゆだねて、それで病院として存続するのが望ましいということを考えておるわけでございまして、習志野病院が病院として将来存続するのがおかしいとかそういうことはないわけでございます。  それから重ねて申し上げますが、仮に統合というようなことになった場合でも、後医療の確保というのは非常に重要でございます。基本指針にもちゃんと書いてございます。そこはちゃんとするつもりでございます。
  469. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 移譲対象ですが、移譲先について聞いてみますと、千葉県も習志野市も今の財政事情のもとではとても引き受け切れない、こう言っておりますが、民間を含めてどこか移譲先を今検討されておられるのかどうか。その場合に、民間であるということになりますと、患者や住民の人たちは、医療水準がどうなるのか、とりわけ医療費がどう変わっていくのか、非常に心配があるわけです。民間に移ると新たに負担をしなければならない医療費はどれくらいになるのか、お伺いします。
  470. 木戸脩

    ○木戸政府委員 習志野病院につきまして、私どものところに直接正式に、ぜひ習志野病院を欲しいということを言ってきているところは、現在のところはないわけでございます。  統廃合の場合に気をつけなければいけないのは、やはり地域医療に支障を生じさせない、こういうことでございます。そのために、私ども、この国会に特別措置法というものを出させていただいているわけでございまして、先生おっしゃったような民間病院云々の問題も含めまして、やはり地域の医療に支障が生じない、突然大きな変革があるというようなことがないように、地元と十分協議をしてまいりたいというふうに考えております。
  471. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 もし民間病院というようなことになりますと、差額ベッドあるいは付添料、それから光熱費、暖房費、こうした国立病院では入院患者の負担にならなかったものが民間では患者負担となります。どれくらい負担がふえるか、このこともやはり国民の前に明らかにすべきであると思います。  ある入院患者に聞いてみますと、同じ治療を受けて、八千代市内の民間病院に比べてみますと、八千代の人たちも習志野病院を利用するわけですが、二、三万円違ってくる、習志野病院の方が安い。入院する患者がまず心配するのは、この費用であるわけです。それから、あわせて医療水準についてもやはり心配が生じます。地元のお医者さんも、現在習志野病院で働いている人たちも、特に現に病院にかかっている人たちはその点を一番心配をしております。一つは経営の問題で、民間では設備投資も自前だからその点で無理をしなければならない、医療の内容にどうしてもしわ寄せが来るという問題があるわけです。  そういう点から、民間病院になった場合に入院患者などの負担がどうふえるのか、それから医療内容、水準が下がるというようなことはないのか、お伺いします。
  472. 木戸脩

    ○木戸政府委員 先ほども申し上げましたように、地域医療に支障が生じないようにということは、やはり全体としての医療水準が下がらないように、こういうことでございます。  医療法が昨年十二月に通りまして、現在、県がいろいろ医療計画をつくっているところでございます。その医療計画の問題としても、県とよく相談をいたしまして、いわゆる移譲先という問題については対処をしてまいりたいと思います。  それから、民間病院になった場合にどれだけ差額がふえるのかということにつきましては、民間病院にもいろいろございますと思いますし、私どもの方で、今どういう民間病院が譲ってくれということもないわけでございます。具体的にどこの民間病院ならどれだけという資料は、私の手元に持ち合わせしておりません。
  473. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 おっしゃいますように、ともかく地域の中核病院として、開業医の方も、スタッフがそろっているここと相談しながら医療をやっていく、こういう方が多いわけです。それから地域の皆さんも、結局は習志野病院があるから、国立病院があるから安心だ、こういう期待を寄せております。ですから、これが移譲されるということについては大変な不安を持っておりまして、国立習志野病院を守る会が結成されました。そして移譲する、統廃合する、こういうことに対して反対運動が起きております。  この二月から今日まで二カ月間に、十万人を超える人々の反対署名が集まっております。習志野市だけで見ますと人口は約十三万人ですから、十万人というのは大変な数字であるわけです。ある老人会の代表の人は、この一カ月足らずで、前に連合町会の会長をやっておられた関係がありますが、三十四町会の二千四百世帯、これは全世帯になるわけですが、ここから一万人の反対署名を集めております。また船橋、習志野、八千代の各市議会も反対決議を上げております。こうした地域住民の声をどういうように受けとめているのか、お伺いします。
  474. 木戸脩

    ○木戸政府委員 習志野病院の存続に関する要望や決議が寄せられていることは承知をしておりますし、私のところにも何回か代表の方もお見えになったわけでございます。何遍も申し上げているように、習志野病院が地元の役に立っていることは十分承知をしております。習志野病院以外の国立病院も、戦後四十年あるいは戦前から地元に根づいて、医療に役立っているということは私ども十分承知をしております。しかしながら、これだけマクロ的に医療機関の整備が進んできた中で、今後国立は何をすべきかということを考える場合に、やはり国と公、公と民間の適切な役割分担というものが必要だ、そういう前提に立ちまして国立病院・療養所は、国立医療機関にふさわしい指導的役割を果たせるようその質的強化を図ることを目的として、あえてこの計画を出したわけでございます。  したがいまして、私どもといたしましては、その地元の要望と国の目指さなければならない方向と調和するのは、何と申しましても移譲の実施に当たっては地元の関係者の理解と協力を得ながら円滑な実施を図っていくということが大切だと思いますので、今後とも地元とはよく相談をして、地域医療に支障を生じないように努めてまいりたいというふうに考えております。
  475. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 移譲とか統廃合とかいうことになりますと、結局、今地域の人たちが地域医療を守ろうという立場、よい医療を考える立場から、この計画に広範な反対があるわけです。私もそれが正しいと考えておりますし、最初言いましたように、習志野病院の移譲というのが国の統廃合計画の基準から見ても理由にならないものであるということから、この移譲計画、統廃合計画は撤回すべきであるということを強く主張いたします。  次に、国立療養所松戸病院と柏病院の統廃合計画についてお伺いします。昭和六十一年度着手ということになっておりますが、第三地点はもう決まったのかどうか。検討中であれば、その状況と決まる時期の見通しについてお伺いします。
  476. 木戸脩

    ○木戸政府委員 統合場所につきましては第三の地点ということで、現在鋭意検討を進めているところでございます。何せ六十一年度の予算も最近通過したばかりでございますので、今後地元の柏市、松戸市、千葉県と相談しながら具体的に検討を進めてまいりたいと思っております。
  477. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 まだ決まってないということですが、昨年の九月十五日号の「自由新報」には、柏市内に建設することになりました、最近厚生省当局から友納代議士に相談があってその上で決まった、こういう記事になっております。これは事実でありましょうか。
  478. 木戸脩

    ○木戸政府委員 まだ決まったということはございません。元県知事をしておられました友納議員とお話をしたことはございますが、まだ決まったということはないわけでございます。
  479. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 ところが「自由新報」の今月の四月十五日号ですが、これは友納衆議院議員の「国会だより」という中に、柏市の米軍基地跡地に国立第二がんセンターを建設することになりました、私は厚生省から相談を受けましたので地元自治体にあっせんの労をとりましたとあります。また柏市長も、三月の議会で、米軍基地跡地に通信基地があったのですが、米軍基地跡地に内々相談があった、こう述べております。決まっていないのだったらこの公党の機関紙が間違ったことを書いているのだから、これは訂正を求めなければならないと思いますが、いかがですか。
  480. 木戸脩

    ○木戸政府委員 柏の米軍の通信基地の跡に広い国有地がある、こういうことでございます。私どもの方も、国有地と国有地というのは交換するというのがいろいろな面で便利なものでございますが、有力な候補としていろいろ例えば関係の大蔵省財務局等と話をしているのは事実でございますが、まだ正式に決まったというようなことではございません。
  481. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 決まっていなければ、ちゃんとこういう記事に対して訂正の申し出をすべきであるというように考えます。というのは、松戸や柏の人たちが非常に関心を持っている問題で間違ったことが伝えられるというのは、非常に問題があるわけです。  統合計画を見ますと、第二がんセンターをつくって松戸と柏の両病院を統合して、その結果柏が二百、松戸が四百、これを四百二十五床にするということになっております。当然一般診療や結核の方も機能が縮小されることになるわけですが、この統廃合の理由一つとして医療機関の量的確保ができているからだということを言っておりますが、この地域についてはそれは当たらないと思うのです。一つの資料として人口一万人当たりの必要病床数を見ましても、松戸、柏両市とも大きく下回っております。しかも二つの市とも人口急増地帯で、松戸市は昭和六十年現在で四十二万二千人、十年前に比べますと八万人ふえております。柏市も同様に二十六万九千人の人口だったのですが、六十年が六万六千人ふえております。そしてまた、この流れから言いますとますますふえ続けるというのがこの二つの市の特徴であるわけです。  全医労の松戸支部が地域で行いました医療アンケートによりますと、回答者の八七・七%が地域医療の供給体制に不足を感じております。地域医療をもっと充実させなければならないということを考えますが、この地域の問題について特に地域医療という観点で人口急増地帯、そういう面から検討している問題があるかどうか、お伺いします。
  482. 木戸脩

    ○木戸政府委員 先生御指摘のように松戸も柏も大変人口急増地帯でございますので、病床不足地域でございます。医療法の面から見ましても、病床不足地域については地方公共団体、それからこれに協力して国は配慮しなければならないということになっております。  具体的には柏病院の跡をどういうふうに利用するかあるいは松戸の病院の跡をどういうふうに利用するか、これは松戸市、柏市の意見も十分に聞いてみなければならないと思っておるわけでございます。再三申し上げておりますように、統合後の後医療の確保というのは非常に重要な問題だと私どもも考えておりますし、そういう姿勢で地元と折衝をしてまいりたいと考えております。
  483. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 時間が来ましたから最後に一つ、統廃合後の跡地利用はどうするのかという問題があります。柏の土地は四万六千平米、松戸は八万七千平米、合わせますと十三万平米になります。これは地域的には住宅地としてしか利用できない。工業団地だとかそういうものには不向きであるというところでありますが、住宅地というようなことになりますと、これだけの大きな土地ですから大手の企業が一括して買う。そうなると、今坪三・三平米当たり四十万円、これが一般的な時価と言われておりますけれども、これが半分くらいで買われるというような問題もあるわけです。統廃合は跡地利用の問題も含めて一緒に検討すべきではないかと思いますが、こういう点については考えておられるかどうか、お伺いいたします。
  484. 木戸脩

    ○木戸政府委員 先ほども答弁申し上げましたように、統合後の跡地利用、特に後医療という見地からの跡地利用というのは非常に重要な問題でございます。地元の柏市、松戸市、その他関係者とよく相談をしてまいりたいと考えております。
  485. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 要するに地域医療という観点にしっかり立ったものでなければなりませんが、今度の計画がそうしたものを全く無視したものであり、住民の声も聞かないものであるわけで、医療砂漠という状態に決してしてはならない、こういう立場から私は、この統廃合計画の撤回を求め、これを進める本法案に対して反対の意思を表明して、質問を終わります。
  486. 石川要三

    石川委員長代理 上原康助君。
  487. 上原康助

    ○上原委員 大分時間がたちつつありますが、厚生大臣、お若いのだからあとしばらく頑張ってください。  法案について一、二点お尋ねをさせていただきますが、提案理由なり趣旨説明を見ればわかることではあるのですけれども、「高度専門的な医療の進展に果たすべき国立医療機関の役割にかんがみ、特定の疾患等に関し、診断、治療、調査研究等を行う国立の高度専門医療センターの設置等を機動的に行うため、当該センターの名称及び所掌事務を政令で定めることとするとともに、関係法律について所要の規定の整備等を行う」ものだということなのですが、機動的な医療を行うためになぜ所掌事務を政令で定めることにしなければいかないのか、納得できないので改めて、どうしてこういう法律改正をするのか、御見解を求めておきたいと思います。
  488. 木戸脩

    ○木戸政府委員 このたびの改正は、六十一年度予算で認められました国立精神・神経センター(仮称)の設置を機会に、従来の国立がんセンターとか国立循環器病センターとあわせて高度専門医療センターというふうに類型化をいたしまして、これを法律の設置目的に書く、そして具体的に政令でがんセンター、循環器病センター、それから新しいセンターの名称と所掌事務を書く、こういうことになるわけでございます。  先ほどもお答え申し上げたわけでございますが、実は昭和五十八年に国家行政組織法の改正あるいはそれに伴います各省の法律の改正があったわけでございますが、実はその際にも、いわゆるサービス機関である各省の附属機関等は政令で対処するという基本原則もあったわけでございますので、国立病院・療養所の再編成のために作業が手間どって、その補充として、いわば五十八年の改正にはおくれたわけでございますが、このたび、私どもといたしましても、今後、国立病院・療養所としては、高度専門医療として伸ばすべきものは伸ばすという観点から、国立高度専門医療センターの設置目的を法律で書いて、個々設置につきましては機動的に政令で対処をさせていただく、こういうことにしたわけでございます。
  489. 上原康助

    ○上原委員 聞くほどでもないと思うのだが、そうしますと、五十八年の国家行政組織法の改正の段階でむしろ、私はそれに賛成ではないのですが、処理すべきものだったということにも受け取れるわけですね。そこが問題なんですよ。しかしこれは余り議論しようとは思いません、皆さんそうするというし、法の根拠が残念ながらそうなってしまったので。  そこで、従来、国立がんセンターであるとか、国立循環器病センターであるとか、あるいは国立精神・神経センター等々というふうに、すべて独立の法律で規定をされておったのが、ナショナルセンターというふうにくくられてしまうと、厚生省のお考えいかんによっては、勝手とは言いませんが、何でも統廃合ができて、ナショナルセンターの方にくくればいいということになってしまうのですが、そういう弊害は起こらないのかどうか。また、これからはどういうものが今度の法律改正によって政令事項として出てくる可能性があるのか。見通しを含めて説明をいただきたいと思います。
  490. 木戸脩

    ○木戸政府委員 国立高度専門医療センターについては、先ほども申し上げました設置目的で、はっきり「特定の疾患その他の事項に関し、診断及び治療、調査研究並びに技術者の研修を行う」ということで、きちっと枠をはめるわけでございますので、厚生省が恣意的にということは、私はそういうことがあってはならないと考えております。  なお、先生御存じでございますが、これにつきましてはやはり政令事項ということで、国会へは御報告をさせていただくということでございます。  それから、今後ナショナルセンターでどんなものを考えているかということでございますが、私ども近く考えておりますのは、母性・小児に関するナショナルセンターということで、現在世田谷に小児病院というのがございますが、これと非常に母子医療で実績のあります大蔵病院、これを連携いたしまして一つのナショナルセンターにしたい。それから、今国際医療協力が非常に重要でございまして、これは戸山町にございます国立医療センターとそれから中野にあります国立中野療養所というのを連結をいたしまして、新しい国際医療協力に関するセンターをつくりたいというふうに、近く考えておりますのはそのようなものでございます。
  491. 上原康助

    ○上原委員 いずれにしましても、私ども国家行政組織法の改正のときにも強く主張をいたしましたが、政令事項にしていく、あるいは省令にしていくということでは国会の審議権の問題とも関連しますし、またやはり、いろいろな法律改正があればこそ厚生行政なり各省庁のそういった行政運営に国会がより多く関与できるという立場からしまして、この種の法律改正には納得いきがたいということを指摘しておきたいと思います。  そのほか、いろいろこの政策医療ということ等についてもお尋ねしたいのですが、時間があれば、また関連する案件と関連をさせて、もう少しお尋ねしたいと思います。  そこで、きょうはせっかく厚生大臣もお見えですので、若干地域医療の問題等含めてお尋ねをさせていただきます。  最初にハンセン氏病問題、ハンセン療養所の件についてお尋ねをさせていただきたいと存じます。  最初に、昭和六十年九月、日付はございませんが、全国ハンセン病患者協議会から出された「ハンセン療養所の入所者に対する医療、看護及び環境を含めた生活待遇の改善等に関する要請書」というのがございます。これは厚生大臣、お目通しなさったのか。あるいはまた担当局長はこれをごらんになられたか。ごらんになられたとすると、それに対する所感をまず伺いたいと思います。
  492. 仲村英一

    ○仲村政府委員 ハンセン病の患者さんの団体の方々と私も数回お会いしておりまして、そのうちの一回のときにそういうふうな書類が出たものかと思いますが、私だけでなくて担当課長も何回もお会いいたしまして、予算の増額等についての御要望をお聞きしているところでございます。
  493. 上原康助

    ○上原委員 これは予算の問題もさることながら、今私が引用しました六十年九月の、日付はちょっと空白になっていますが、これはハンセン氏病に対する我が国政府なりあるいは社会環境がどうであったかということを鋭く、改めて指摘をしていることなんですね。これは厚生大臣にできればお目通しいただきたいと思うのですがね。  そこで私も、沖縄にも二国の療養所がありますから、時々お訪ねをしたり、いろいろ要請を受ければ、予算問題を含めて厚生省の方にも御要望をしてきたわけです。  一つは、基本的な見解についてお尋ねをするわけですが、ハンセン氏病の過去における歴史を顧みるとき、国策による犠牲と、ある面では人権弾圧というか、そういう面が非常に多かったということ。厚生省としても、特に行財政改革ということが叫ばれている昨今において、ややもすると、先ほどの国立病院とか国立療養所の統廃合問題も含めて言えるかと思うのですが、最近のいろいろな医療保険制度の改正改悪等の問題もそうでしょうが、要するに弱者の立場というものがだんだん、ますます行政なりそういった政治の恩典から見放されていくというか、皆さんは決してそうではないというお立場でしょうが、実態としてはやはり弱い立場にある人々がより犠牲を受けていく、あるいは負担を強いられるという厚生行政というか、医療行政、社会保障を含めてそういう状況になりつつあることはこれは否定できないと思うのですね。  したがって、このハンセン氏病の問題についてもいろいろありまして、八二年の十二月、当時の森下厚生大臣が全患協の皆さんに語っておるわけですが、「過去の過ちは社会の罪であり、国の罪でもあります。その誤ったハンセン病行政に対して償う気持ちで予算等の面あるいは施設改善等についても頑張る」、こういうことをいろいろ言っておられるわけですね。今の今井大臣もそういうお気持ちはよもや変わらないと思うのですが、基本的なこの対策なりあるいはこのハンセン氏病対策という、全般的な厚生行政に位置づける基本姿勢としてはどのようにお考えなのか、改めて聞いておきたいと思います。
  494. 今井勇

    ○今井国務大臣 私も実は、このらいの問題につきましては、政務次官をいたしておりましたときにも、長島愛生園、邑久光明園にも私自身が足を運びまして、患者の皆様やら医師あるいは看護婦さんとも一日ゆっくり懇談をいたしたことがございまして、この問題については私は私なりの十分な認識を持ち、またこれに対する対策も極めて大事であり、我々としてはどうしてもやっていかなきゃならぬ、そういうふうな気持ちでおるものでございます。  問題は、入院患者がだんだんと年を召してまいります。そういうことで、成人病などの合併症患者というのが非常にふえてくるわけでございます。また、体の障害というものがだんだんと進行していきますので、これからは、医療の充実というもの、同時に患者の処遇の改善、施設の整備というものを重点に、これが充実を図ってまいらねばならぬというふうに私は基本的に考えているものでございます。
  495. 上原康助

    ○上原委員 ぜひそういう御認識を持たれて、さらに御努力をいただきたいと思います。  そこで、何か現在、厚生省でハンセン病予防対策基礎調査検討委員会設置をされているのですか、いろいろやって、答申を急ぐべく作業が進められているということですが、その概要、またこれをどういう方向でおまとめになろうとしているのか、御説明を賜りたいと思います。
  496. 仲村英一

    ○仲村政府委員 御承知の藤楓協会へ委託をいたしまして、今先生がおっしゃったようなことを含めましていろいろ検討をいただいておるところでございます。まだ具体的なスケジュールについては確定をしておりませんが、各般の対策についての御検討をいただくというものでございます。
  497. 上原康助

    ○上原委員 先ほどもございましたが、この療養所の皆さんの平均年齢が六十三歳になっておる。そういう面では、新たな角度というか現時点における新たな対策というのか、そういう施策が必要だと思うのですね。そういうものを取り入れて、ひとつ十分御検討をいただきたいと要望しておきます。  それと、医療の充実についても、年々予算時期になりますと我々もある程度のお手伝いをしているわけですが、また現に改善をされてきているし、その点は敬意も表しておきたいと思います。しかし、先ほど大臣の方も御答弁がありましたが、高齢になるにつれて成人病あるいは他の病気との合併症というのがふえる傾向にある。また身体の不自由度も非常に増してきている。全国の十三の療養所の現状がそういう状況だと聞かされております。したがって、この合併症状に対処できるような医療の充実、つまり成人病対策とかあるいは眼科、整形外科等の面を含む専門医師の確保というものが、大変関係者から要望が強いわけですね。確かに医療法で言う、どういう病院にしても医療機関にしても、その基準を十分に充足をするというのは今の状況で難しい面はわかります。しかし、わかりますけれども、十分な努力はやらなければいかぬと思うのですね。そういう面で、こういったハンセン病療養所の今言う医療確保の問題、医療の充実化についてどのようにお考えなのか。六十一年度予算でもいろいろ検討をされ改善措置がとられるようでありますが、改めて方針をお聞かせ願いたいと思います。
  498. 仲村英一

    ○仲村政府委員 御指摘ございましたように、らいそのものにつきましては非常に見通しも明るい方向になってまいりましたけれども、私ども、国立療養所にお入りになっておられます七千五百人の患者さん方が、先ほども先生がおっしゃいましたように六十三・二歳という平均年齢で非常に高齢化をしているわけでございまして、先ほど大臣からもお答えいただきましたように成人病その他の一般障害が非常にふえてきたということで、私どもこちらの面に力を入れなくてはいけないわけでございますけれども、その点に関しましては、御承知かとも思いますが、医薬品等購入費などにつきましては対前年度比九・二%の増、あるいは入院の委託治療費等につきましても対前年度比一八・八%ということで増額をさせていただいたところでございます。  さらに、お尋ねの医師の確保でございますが、確かに医療機関全般につきましての問題があると同時に、特にらい療養所につきましては、その位置的な関係でございますとか専門性の問題ということで、私どもとしては非常に確保しがたいのが現状でございます。しかしながら、医療の対象がそういう方向へだんだん移ってきたということもございますので、何らかの方法で定員を確保してまいりたいと考えているところでございます。現在私どもが持っておりますお医者さんの定員で申し上げますと、私ども百四十一人の定員を持っておりますが、現員が百十八名ということで、充足率が八三・七%、やや足りないわけでございますので、できるだけ今後も増員を図ってまいりたいと考えております。  同時に、先ほどもちょっと再編成のところでも出てまいりましたけれども、国立病院同士のネットワークをうまく活用いたしますということで、例えば愛楽園の場合、御承知だと思いますが、沖縄療養所からお医者さんが行ったり、患者さんを移したりというふうなこともやっております。あるいは地元の県立の名護病院との機能提携もやっておりまして、医療の確保という点ではそういう工夫もさらに進めてまいりたい、このように考えております。
  499. 上原康助

    ○上原委員 ですから、医師、医療従事者の確保という面は、国立だから国が確保して配置すれば一番ベストなんですが、なかなかそういかない面もあるわけですね。これは無理言って、法律でこうなっているからこうしなさい、建前はそうでしょうが、なかなか現状としてはそうはいかない。そうであれば、地域医療とのタイアップをどうするかということも工夫せなければいかないでしょうし、あるいは一方は非常に窮迫しているが一方においては割とゆとりがあるという場合もあるかもしらない。ですから、そういう面の融通性、弾力性の運用というのは、これはもちろんその機関関係者、職員等の理解と協力が前提ではありますが、今局長から御答弁あったようなそういう面もぜひ御配慮をしていただきたいということ。  もう一点は、年々の要請書を見ましても、職員、医師の確保の問題、医療従事者の問題、医師、看護婦、医療施設等々は言うに及ばず、職員、医師も職員のうちに入るわけですが、増員をしてもらいたいというのが非常にあるわけですね。特に身体不自由者棟の配置の看護婦の増員とかあるいは賃金職員、これは臨時職員ということでしょうが、賃金職員の全員即時定員化の問題、これはもう年々同じように要求されてきていますね。なぜこの賃金職員というのがこんなにまで定着しているのかというのも疑問なんです。これもなかなか一概にはいかないと思うのですが、やはり必要度に応じて定員化を図るとか、いろいろな工夫が足りないのか、どうしても不可能なのか、ここいらももう少し前向きで、かつ、改善をする努力というのが必要じゃないのかということですが、こういった医療従事者だけじゃなくして、今申し上げた看護婦等、職員等の確保の問題は、現状はどうで、これからの見通しはどのようにお立てになっておられるのか、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  500. 仲村英一

    ○仲村政府委員 定員全体につきましては、十三園で……
  501. 上原康助

    ○上原委員 今、私は全般的なことを申し上げているのです。
  502. 仲村英一

    ○仲村政府委員 国立病院全体ということで……。
  503. 上原康助

    ○上原委員 そうです。
  504. 仲村英一

    ○仲村政府委員 私ども、先ほどもちょっと統廃合のところで出ておりましたが、一律に定員削減というのがかかっておりまして、それは一般的にすべての国家公務員法の総定員の枠でかかってきておりまして、それはもちろんそれなりに私どもとしては引き受けなくてはいけないのですけれども、それを上回る医療需要の増その他の、今おっしゃったような要員も含めた増員の因子を含めまして、差し引きで毎年何十人という形での定員はちょうだいしております。ただ、二百五十余りになります国立病院・療養所でございますので、一カ所当たりということになりますと非常に厳しいわけでございます。らいだけについて申し上げさしていただきますと、六十一年度の定員増は差し引きで十一人の増員ということで私ども確保できたわけでございます。
  505. 上原康助

    ○上原委員 それは厳しくても、声を大きくして言わないと余計厳しくなりますからね。  そこで、この賃金職員というのはハンセン病療養所全体でどのくらいいるのか。おわかりですか、今の賃金職員というのは。
  506. 仲村英一

    ○仲村政府委員 ただいま資料を調べまして御答弁さしていただきます。
  507. 上原康助

    ○上原委員 お調べになって、お聞かせをいただきたいと思います。  ですから、全体的に見てまだまだ改善すべきことが多いということと、冒頭申し上げましたように、ややもすると非常に旧態依然というか、そういった偏見によって、こういった療養をしておられる方々が、特にいろいろな面で医療部門で後退をしていくようなことがあってはならない、この点を強く要望しておきたいと思います。  そこで、具体的に沖縄の二国、愛楽園と南静園のことでお尋ねします。  これは、全患協から出されるいろいろな年々の要望書を見ましても、必ずといっていいほど「沖縄二園を総ての面で本土なみに引き上げる対策を促進して下さい。」最近はこういう非常にやさしい文章で要請書も出していらっしゃるのですが、そういうことは、まだ本土並みに達していない面が多いということを逆に言えば意味していると思うのです。しかし、これも相当改善されてきたことは間違いありませんで、私は記憶に残っているのですが、たしかあれは昭和五十二年か五十三年でしたが、今の通産大臣渡辺さんが厚生大臣をしているころ、施設が余りにも悪いということで取り上げて、年次計画でやりますということで、両国とも相当改善されてきたことは評価をしております。だが、医師数の定員が満たない状況であるということです。愛楽園の方は、現在お医者さんの数は定員十一に対して現員六名ですね、マイナス五。南静園が四に対してお二人しかいない、マイナス二。半分ですね。南静園は、医師二人のうち一人は外国なんかに留学中で、現在はお一人だという。医介輔でカバーをしているということのようです。看護婦の定員増も非常に強い要望が出されておる。  こういう問題も一挙にはいかないかもしれませんが、引き続きひとつ御配慮を願いたいということと、もう一つは、去年でしたか、夏場が長いものですから冷房施設を早目にできるように施設の改善を要望しましたところ、昨年の九月から改善されたようで一部については冷房設備がなされたようです。しかし、不自由者棟の第一C、これは建物の番号でしょうね、第一C、第二C、第三C、第五C、第六C、第七Cの管理センターには冷房設備がまだなされていない、早目にやってもらいたい。恐らくこの六十一年度でそういうことはやるのじゃないかという期待をいたしますが、ここらはどうなっているのか。  それと、公会堂の更新築をしてもらいたい。これは愛楽園の方ですが、何か四十二年に建築されたもので年数的にはさほどたっていないが、雨漏りもしている、塩害による損傷が著しいので、園内の諸行事や慰問講演のときなど非常な支障を来しておる、したがって六十一年度において更新築を願いたいという、六十一年度予算執行に当たってのいろいろな要望書が出ているのです。  今二、三の例を挙げましたが、これに列挙されている要望についてはどの程度見通しが立つのか、あるいはまた六十一年度でもし可能でないとするならば引き続きおやりになると思うのですが、そういった面の御計画はどうなのか、ひとつ御説明を賜りたいと思います。
  508. 仲村英一

    ○仲村政府委員 沖縄の格差是正ということで、私ども、沖縄二国の整備拡充について私どもなりに一生懸命努力してまいったつもりでございますが、なかなか厳しい、定員などは特に厳しい状況がございますが、先ほど申し上げました差し引き十一人の増員のうち、沖縄に六名を振り向けるという予定にさせていただいております。看護婦一名、看護助手二名、医師二名、不自由者棟の看護強化ということで一名、こういうことで一応の予定が立っているところでございます。  それから、いろいろ御要望なさっておられる中で、先ほどもおっしゃいました不自由者棟につきましては昨年度全部冷房が入りましたけれども、御指摘のとおり管理センターには入っておりません。これは今年度の予算でやる予定にしておると私は聞いております。ただ、愛楽園の公会堂につきましては、初めての御要望でもございますし、よく実情を調べまして、ことし着工というお約束にはならないかもしれませんが、実情を調べさせていただきたいと思っております。
  509. 上原康助

    ○上原委員 この冷房関係、今の施設改善の問題は、南静園の方も並行してやっておられますね。
  510. 仲村英一

    ○仲村政府委員 両国、並行してやらせていただいております。
  511. 上原康助

    ○上原委員 それともう一つは、これは全患協の方から出されているもので、厚生省の御計画の中には、国立らい療養所、こういうものは統廃合の対象外ということにもなっているかのようにも思うのですが、関係者は大変心配をしておりますね。今度の十年計画の中あるいはこれからいろいろやろうとする中で、こういう面はどうなるのですか。
  512. 木戸脩

    ○木戸政府委員 国立らい療養所につきましては、その歴史的な沿革、それから患者さんが今置かれている状態等を考えまして、再編成計画計画当初の対象には、らいの療養所は含めておりません。
  513. 上原康助

    ○上原委員 そこらもよく関係者にも御説明をして、不安のないように、十分期待にこたえるように御努力を賜りたいと思います。  次に、高齢者対策についてお尋ねをさせていただきたいと思います。  高齢化社会だ、そういう面で、人生八十年時代だとかいろいろ言われておるわけですが、結構なようで、果たしてどうなるかなあという不安もある。昭和五十九年度の厚生白書、これは六十年の十一月に公表されたものの表紙ですが、サブタイトルは「長寿社会に向かって選択する」、わざわざこう銘打っているわけですね。また、今回の厚生大臣の社会労働委員会における所信表明でも、「とりわけ、世界最高水準の長寿国となりました我が国におきましては、活力とぬくもりのある福祉社会を目指して、」云々、「社会保障制度を確立することが強く要請されております。」と述べておるわけで、その理念と意欲はそのとおりかと思うのです。  指摘をするまでもなく、十五年後の西暦二〇〇〇年の日本の人口構造というのは、六十五歳以上が全人口の約一六%、一五・六%程度に達する。四十歳以上は五割を超す。こうなりますと、だれしも年だけは同じようにとりますからね、厚生大臣。これだけは平等なんだ、金持ちも貧乏者も、健常者も障害者も、強い人も弱い人も。したがって、高齢者対策というものはこれからの国民的課題だと私は思うのですね。厚生行政だけでなくして、まさに政治の根幹にかかわる重要な問題と言っていいと思うのです。  そこで、政府全体としては、既に長寿社会対策関係閣僚会議も六十年七月に設置をなさって、何かことしの六月をめどに「長寿社会対策大綱」を策定しようとしておられると聞いておるわけですが、どういう方向なのかということと、やはりポイントというのは、お年寄りがふえるから結構ということでもなく、厚生大臣おっしゃるように「活力とぬくもりのある福祉社会」というもの、そういう中でしか生きがいなりまた長生きの味わいというのも出てこないと思うのですよね。しかし残念ながら、冒頭ちょっと苦言を申し上げましたように、老人保健法の改正問題にしましてもあるいは最近のいろいろな福祉後退の問題、そういうもの等を考えてみると、人生八十年といっても、一体老後がどうなるかという不安は国民全体としてますます大きいと思うんだね。特に年金とか社会保障面でまだまだ後追いの立場にある国民の多くの層は、国民年金などという面では私はそういう不安や懸念は大きいと思うのですよ。だが、実際問題としてそういう傾向にあるとするならば、今後の高齢者対策というものを、医療行政の面においても社会保障関係においてもあるいは雇用の面においても、総合的に着実に手がけていかなければいかない立場に今あると思うのですが、とりわけ医療あるいは社会保障、そういう立場で、厚生省としてはどういう御見解を持ち、またこれからどう具体化をしていかれようとするのか、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  514. 今井勇

    ○今井国務大臣 今のお尋ねの件は私も全く同感でございまして、私が厚生大臣になりましたときにも真っ先に申し上げたのは、先生がちょっと御引用になりました「活力とぬくもりのある福祉社会」をつくりたい、これは本当に私は前々からそう考えておりました。厚生大臣に就任以来、一つでもいいからあるいはその中の何かできるものがあるだろう、ひとつ私の在任中にでもその糸口をつけたいというふうなことで申し上げたことを御引用いただいたのだと思っております。  そこで、お説のとおりこれから高齢化がどんどん進むわけでございまして、医療にしても保健にしてもあるいはまた福祉の問題にいたしましても、これちがお互いに連携をとりながら、高齢者に対します施策の総合的な推進を図る必要性というのはますます高まってくると思っております。こうした観点に立ちまして、昨年長寿社会の対策関係閣僚会議設置されたわけでありまして、先生お説のとおり、本年半ばを目途に「長寿社会の対策大綱」を策定することとなっているわけでございます。  厚生省といたしましても、総合的でしかも整合性のある高齢者対策の推進を図るために、先般、省内につくりました高齢者対策企画推進本部というものの報告を取りまとめまして、皆様にごらんをいただいているところでございまして、この報告は全般的に精粗まちまちでございまして必ずしも完璧なものではございませんが、これをたたき台にいたしまして一つ一つできるものからやってまいりたい、そういうふうに基本的に考えているものでございます。
  515. 上原康助

    ○上原委員 そこで、それはいろいろ御検討というか立案なさっていくでしょうが、ただ、今の我が国における長寿と高齢社会に関する研究体制というのは全くないと言っても過言でないようですね。ほとんどない。民間には一応あるのですがね。そういう意味で、これからの高齢者対策というかそういう面では、もっと国立の高齢対策研究機関というものをやらなければいかないと思うし、科学的にそれをいろいろな面でやっていくということが必要だと思うのですね。そういう面はどういうふうにお考えなのか。  そこで、これは私らも前々からいろいろな方々の意向なども聞いて、沖縄振興開発計画にも、そういった沖縄の亜熱帯性、気候温暖を生かしたものをもっと活用すべきでないかという提言なりいろいろなものが出ていたわけですが、たまたまことしの四月十七日の朝日の「論壇」に、琉大教授の崎原先生が一つの提言をしておられるのですね。これはごらんになりましたか。局長はどなたがこれの担当かな。
  516. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 朝日の「論壇」に載りました崎原教授の御提言は拝見いたしました。非常にいろいろ三点にわたって御提言になっているということを拝見いたしております。
  517. 上原康助

    ○上原委員 今一番の問題、課題と言える長寿対策という面で、私は何も、地域がそうだからというだけのことでないですがね、厚生省で高齢者対策企画推進本部の報告も出てはおりますね。「長寿に関する研究の推進」という項を設けて、「長寿科学研究組織の設置」というものも掲げておられる。そういう面からしますと、時間の都合もありますから私の方から、これは実際そうなんだから申し上げますが、沖縄県は連続十三年金国一の長寿県でしょう。これは間違いないですね。
  518. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 連続十三年と申しますのは崎原教授の御提言の中に書いてあるのでございますが、これは百歳以上の長寿の方が十万人に対して何人ぐらいいるかという数字があるのでございますが、そういうことについては間違いございません。それからまた、平均余命全体をとりましても、県別にいいますと沖縄は全国一ということになっております。
  519. 上原康助

    ○上原委員 そこで、なぜそういった長寿県であるのか。あるいは年齢別に見てもそうだ。これも間違いないと思うのですよね。しかし、これは温暖、暖かいからだという人もいるし、沖縄はどっちかというとのんびりしてユックリズムだ——私は余りのんびりしているつもりじゃないんだが、そういう言い方もある。それと、変な言い方だが、沖縄料理というか、そういった蔬菜とかあるいは肉をうまく調合してとる、そういう面で塩分が少ないからだという見方もある。しかし、これを科学的に立証している面はないと関係者は言っているわけですね。そういうことと、高齢化社会に向けての国民の健康管理、ただ長生きすればいいわけじゃないから、やはり健康で精神的にも肉体的にも健全であるという、こういうことを立証していく国としての一つの確実なファクターによる、人間の寿命というか頭の細胞も含めて総合的に研究をする施設というものが私は必要だと思うのですね。そういうものをもっとやれば大いにいろんな面でよくなっていくでありましょうし、どうも今までは余りにもそういったソフトの面が取り残されておったのじゃなかろうかということで、この崎原教授も非常に強調しておられますが、ある面では沖縄は全国の縮図だと言える。また離島県であるということ等から、国レベルの問題を解明することにおいても役立つのじゃないのか。  さっき審議官もおっしゃっておりましたように、示唆に富んだ提言をなさっているわけですよね。きょうここですぐ結論めいたことまでは求めませんが、だが、どうしても実態がそうであるとするならば、それに学問的メスを入れるあるいは医療行政の面からも科学的にメスを入れていくという研究対象地域であることは間違いないのです。その面ではもう少し具体化して、皆さんが今進めておられるそういった長寿社会に向けての研究課題の中に、地域指定なりあるいは人口構造や食生活や日常生活のリズムとかいろんな面がもちろんこれは勘案されると思うので、そういう面でひとつよく御検討をなさってみたらというごとなんですが、どんな御見解をお持ちですか。
  520. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 崎原教授も言っていらっしゃいますが、天皇陛下の御長寿の御在位六十年の記念事業といたしまして、長寿科学の研究組織に関しまして検討の予算がついておるわけでございまして、崎原先生もそのことを御承知の上で沖縄につくったらどうか、こういうお話をされているわけでございますが、この研究機関の組織をどうするかというのはまだ決まっておりませんで、これはいろんなやり方が考えられるわけでございます。一つ中心的な機関をどこかにつくるというようなやり方、それから、そういう中心機関を設けませんで研究助成を中心にして、あと情報センターみたいなものを設けるというようなやり方もあるわけでございます。ソ連はウクライナのキエフにあるのでございますが、これはどちらかと申しますと中心機関を設けるやり方でございます。アメリカにはワシントンの近郊にございますが、これは一つの組織を持っておるのでございますが、研究助成費全体のほぼ七〇%がほかの機関の研究助成に充てられるというようなやり方をいたしておるわけであります。そんないろんなやり方がございますのと、研究内容が老化のメカニズムというようなところが一つの中心になりますので、ほかの研究機関との共同とかというようなことも重要でございますし、どういうふうに研究を進めるのが一番効果的かというような観点から、少し時間をかけて研究の進め方を検討いたしたいと思っておるわけでございます。  崎原先生の御提言も非常に興味深く拝見いたしたのでございますが、そういうことも含めまして、全体の研究の進め方がどうやったら一番有効か、効果的かという観点から、場所の設定、どこに置くかということも決まってくるかと考えておるわけでございます。
  521. 上原康助

    ○上原委員 ですから、確約めいたことをここですぐ期待はいたしておりませんし、そう簡単な問題でなかろうと思うのですが、しかし、ややもすると、情報化社会ですから研究機関が隣接している面がいいということで、日本のあらゆる研究機関というのは今東京中心なんですよね。もっと地方文化というものを取り入れたらどうですか。これだけマスコミが発達すると、情報関係においては、沖縄であろうが四国であろうが北海道であろうがさほど変わりませんよ、やりようによっては。もっと地方分散をした形で、地方のそういった大事な社会の営み、人間生活の、ある面では原点から研究をしていくということが私は大事であると思うので、これは研究機関の地方分散を図る意味でも考慮に値するということ。  もう一つは、復帰がおくれたということもあるし、戦前戦後を通して差別と犠牲を強いられたという、これは国策による面も大きいとは思いますが、沖縄には今国立の研究機関は皆無ですよ、厚生大臣。琉大以外はないのです。まあ最近ようやく交流センターができましたが、しかしこれはむしろ第三国との関係におけるセンターであって、また、今のこういった高齢化研究の機関を設ければそれともリンクはできるわけですから、そういう面からしても、これからの高齢化社会に向けての研究材料にはやはり事欠かないと私は思う。そういう意味で、今審議官から、いろいろ崎原教授の御握冒もあるので検討はしてみたいという御発言でしたが、厚生大臣、これまでのやりとりを聞いていて、どうですか。私はぜひそういう方向で進めてもらいたいという要望を含めて御見解を求めておきたいと思います。
  522. 今井勇

    ○今井国務大臣 今度の長寿の問題は、天皇陛下の御長寿をお祝いしてお金がついたわけでございますが、ことしついたばかりでございまして、これをどうするかという問題についてはいろいろ考えておりますけれども、委託費でやったりあるいは科学研究の経費でやったり、また本省におきましても、各界の有識者から成ります委員会を設けて、研究体制の整備とか研究内容をどうするかというようなことを相談しようということでございまして、研究所のようなものを大きくどおんとつくって、それでこうしようかというふうなものをまだきちっと決めたわけでもないわけでございますが、今の先生のそういう御意見も、これからのいろいろなものを考える上で貴重な御意見一つとしてメンションをいたしておきたいと思います。
  523. 上原康助

    ○上原委員 さっきは審議官が言っておったからあえてそこはそっとしておきたかったんだが、大臣までそうおっしゃるから触れざるを得ません。僕は天皇の在位六十年記念事業の問題と関連させて言っているわけじゃないですからね。こんなものと絡ませてあんなものを持ってきたら、またこれはしち面倒になってしまうんだ。その点は全く別の問題であるということと、冒頭申し上げましたように、どうしても高齢者対策というものをこれから二十一世紀に向けてやっていかなければいかぬわけでしょう。その場合の国としての、政府としての研究機関のあり方とか、あるいは実際に国民の生命というか寿命というか高齢構造というものが、なぜ長寿県であるのか、どうしてそうなっているかということは科学的に研究をしなくちゃいかないから、そのものを中期、長期にこれから考えていく一つの地域として考えてもらいたいというのが私のきょうの取り上げた趣旨であって、こんなものと関連させて取り上げることじゃないということは強く申し上げておきたいと思います。  大臣、これは御検討してみますね。
  524. 今井勇

    ○今井国務大臣 今の先生のお話、よくわかりましたので、いろいろまた検討させていただきたいと思います。
  525. 上原康助

    ○上原委員 ぜひひとつ、関係者の皆さんも御留意をしておいていただきたいと思います。  次に進みます。次は、せっかく大臣おいでですから、新国民年金の格差の問題について。これまでも吉原年金局長を初め再三お尋ねをするなり御要望をしてまいりましたが、新国民年金の適用施行によって沖縄の格差が生ずるであろう問題については、復帰特別措置法を政令で改正して十分な是正をするということを、沖特などでもあるいは分科会でしたかでも一応御答弁があったわけですが、是正措置の具体的内容がどうなっているのか。もちろん仮に適用になる対象者が出てくるにしても五年くらい先のことだという御説明もあったわけですが、やはり該当者にとっては若干不安は残るわけですね。したがって、改正の時期的めどというかそういうのはどうなっているのか。これはずばり厚生大臣の方から御見解を聞いておきたいと思います。
  526. 吉原健二

    ○吉原政府委員 御指摘の問題につきましては、現在、解決のための具体的な方策につきましてまだ政府部内でいろいろ検討中でございまして、いましばらく時間をおかしいただきたいと思います。
  527. 上原康助

    ○上原委員 これは大臣ももちろん御理解いただいておられると思うのですが、格差がないように是正いたしますね。
  528. 今井勇

    ○今井国務大臣 御要望のとおり努力いたします。
  529. 上原康助

    ○上原委員 ぜひ早目に結論が出るように特段の御努力を賜りたいと思います。  次に移らせていただきます。次は、医療問題ですのでお尋ねをさしていただくわけですが、できればこの種の案件というのは、こういう公式の場で取り上げるよりも、行政指導なりあるいは地域で解決をした方がいいのじゃないかという気持ちを私は持つわけですが、しかし、事医療行政と深くかかわっているという面と、私が調査をしたりいろいろ聞いた範囲においては、どうもこのまま放置をしておくわけにはいかない問題でありますので、要望を含めてお尋ねをいたしますが、沖縄県名護市にあります福寿草という病院は御存じですね。
  530. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 沖縄県の福寿草病院で、労使紛争等いろいろの問題が起こっているということは、沖縄県からの報告を受けております。
  531. 上原康助

    ○上原委員 沖縄県からどういう御要望というかあるいは報告を受けておられるのか、ひとつ説明できる範囲でよろしいですからお聞かせください。
  532. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 沖縄県からの報告でございますが、一つは、労使紛争が五十九年の六月ごろからいろいろ問題を生じておる、昨年の十月、十一月には五人の解雇者が出たということで、そういった労使の紛争があるということが一点でございます。それから二点目といたしまして、この五名の職員の解雇につきまして組合側から、解雇考の地位保全及び給与の支払いを求める仮処分申請が、昨年の十一月二十一日に那覇地裁に提訴されておる。それからもう一つは、入院患者数名による北部地区労事務所に対する襲撃事件というのがあったという点でございます。それからさらに、医療そのものの問題といたしまして、医療従事者が医療法の標準数に足りない、これは医師も看護婦も両方でございますが、医療法の標準数に足らない、また収容患者数が定床に比べて超過収容をしておるというような点が医療法上の問題であるということを聞いておりまして、特にこの医療関係につきましては、県の環境保健部から文書、口頭等によりまして、医療関係者の充足、それからまた超過収容の解消ということにつきましても、県から指導をしておるということを報告を受けております。     〔石川委員長代理退席、委員長着席〕
  533. 上原康助

    ○上原委員 そうしますと、あらまし報告は受けて問題の所在もおわかりかと思うのですが、これは医療法の面からあるいは医療行政のあり方からも、相当改善をしなければいけない病院であるということは理解できると思うのですよ。しかも精神病院ですね。そういう報告を受けて厚生省としては、どういう行政指導なりあるいは対策を講ずる御努力をしてきたのか、もしあればお答えください。
  534. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 先ほど申し上げましたように、労働争議それから医療従事者の不確保の問題があるわけでございますが、つい先日、この十七日でございますが、沖縄県におきまして院長、それから事務長を呼びまして、その二点につきまして指導をしていただいたところでございますが、今後とも、沖縄県に逐次改善状況等につきまして報告を求めまして、必要な指導を行ってまいる所存でございます。
  535. 上原康助

    ○上原委員 ちょっと消極的なような感じがして、どの程度問題をとらえておられるかを知るために、県がどういう報告をし、皆さんがそれにどうこたえようとなさったのか聞いたわけですが、事実関係は、今おっしゃったことを含めて、一つは労使関係が非常にまずいということ。これは労使の問題だと言ってしまえばそれまでかもしれません。しかし、労使が対立をする、関係がよくないというのは、そこに何か原因があるからそういう結果が生まれるわけですね。それが一つと、もう一つは医療法、医療行政の面からしましても、あなたは今おっしゃいませんでしたが、薬剤師が不在でしょう。しかも八四年、五十九年の十二月には調剤ミスの事故も発生しておりますね。これは事実ですか、薬剤師が不在でそういう事故があったということは。
  536. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 県の調査によりますと、五十九年十二月に、処方せんの読み違い等の調剤ミスがあったことが確認をされております。県では、そのようなことが二度と起こらないように調剤行為には厳重を期するよう、病院に対して指導をしたという報告を受けております。  それから薬剤師の不在の問題でございますが、例えば五十九年十二月から六十年二月まで一カ月ばかり不在であった、それから六十年に入りまして一度確保したわけでございますが、六十年三月以降八カ月間余りやはり不在の期間があった、それから六十年の十二月の二十日から六十一年三月三十一日までは薬剤師が確保できた、こういう状況でございます。
  537. 上原康助

    ○上原委員 それでいいのですか。それじゃよくないでしょう、どうなんですか。しかも無資格者が調剤をやっているわけですよ。
  538. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 これも医療法の医療従事者の標準数の規定でございますが、その規定によれば薬剤師は一人置かなければならないというのが標準でございます。
  539. 上原康助

    ○上原委員 それと、もう一つ病床の問題ですが、もちろんこれも、定床問題というのはなかなか微妙な面もありますが、定床は幾らですか。
  540. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 定床は、精神病床で百二十四床でございます。
  541. 上原康助

    ○上原委員 現在入院している療養者は何名ですか。
  542. 竹中浩治

    ○竹中政府委員 本年三月二十六日現在で入院患者数は百四十四名でございますので、二十名超過患者があるということでございます。
  543. 上原康助

    ○上原委員 一時期はそれ以上の場合もあったわけです、あえてそこは言いませんけれども。したがって、こういう実態の病院だということです。  それと、ではなぜこういうことが起きているかというと、病院管理者、経営者にも相当問題があると私は思います。それはいろいろ改善措置を要望しなければいけないと思うのですが、警察庁、おいでだと思います。  さっき答弁がありましたが、北部地区労、労働組合への襲撃事件があったとかいろいろな労使対立があるということなんですが、富村氏という人が入院患者としてこの病院に入院をしているわけです。実際問題としてこの人がそういった暴力事件を起こしておるわけです。この富村という方はどういう経歴の持ち主か恐らくわかると思うのですが、どうなんですか。
  544. 安達真五

    ○安達説明員 お答えいたします。  ただいま委員のお挙げになりました人は確かにおりますし、私ども一応捜査の対象として捜査いたしまして、現在公判中のものでございますので、詳細申し上げることは差し控えたいと思います。御了承願いたいと思います。
  545. 上原康助

    ○上原委員 差し控えるというのはどういうわけですか。
  546. 安達真五

    ○安達説明員 御承知のとおり本人はその病院に入退院を繰り返しておりますし、それから公判廷でのいろいろな証拠関係もございますので、ここで申し上げることは差し控えたいと思います。
  547. 上原康助

    ○上原委員 じや、どういう事件を起こしたかは説明できるでしょう。
  548. 安達真五

    ○安達説明員 現在、本人は、五件の事件を起こしまして、その五件の事件で公訴されてございます。
  549. 上原康助

    ○上原委員 厚生大臣も厚生省の皆さんも聞いていただきたいわけですが、私は冒頭に申し上げましたように、この種のことは余り取り上げるのはどうかなと思ったりしたんだが、本当は警察とか法の裁きで十分対策をとればいいことだと思うのですよ。しかし、そういった精神病院に入院をしている一患者が、明らかに組合を敵対視した行為をやっているわけです。しかも入院患者の何名かと共謀というか謀議をして、協議をした上でやっているわけですよ。  ことしの二月一日に、名護市北部地区労事務所を襲撃している。委員長、私はここに写真を持ってきてありますが、これをぜひ見ていただきたいと思うのです。ちょっとこれを大臣と担当者に。——これは一枚しかないのですが、これはこの富村という人がある建物のドアをぶち壊して侵入しているところなんだ。それから、これは事務所に入り込んでいって暴力行為を振るっているところなんです。これはその病院の近くで汚物を組合員にぶっかけているところ。もう一つ、これは棒切れを振り回して今にも襲いかかろうとしているところ。これはうそじゃない、みんな立派な証拠なんです。これは凶器を袋に包んで、これから一発やってこようかと出向いているところ。  なぜこういう行為をやっているのか。私は、これは背後にいろいろ問題があると思いますよ。実際、よく見てください。これはうそでも何でもないんだ。——いやいや、大臣にもお見せください。二月一日にあのように器物損壊で侵入しているということ。それで、その直後に組合員二名に負傷を負わせているのですね。流血事件になっているのですよ。それが告訴されたのです。そして約一カ月——これはあれですか。警察庁の方、来ているか。どのくらい勾留されたのですかをまず聞いてみましょう。
  550. 安達真五

    ○安達説明員 お答え申し上げます。  警察は、この事件につきましても厳正な捜査を遂げておりまして、先ほど挙げられました被疑者はその現場で逮捕しておりまして、二十日間の勾留をつけてございます。
  551. 上原康助

    ○上原委員 保釈はいつやって、だれが身元引受人になったのですか。保釈金は幾ら払ったのか。
  552. 安達真五

    ○安達説明員 これは警察の所管事項ではございませんので私がお答えするのはどうかと思いますけれども、参考までに申し上げますと、私どもは、この身元引受人は当該福寿草病院の院長でございまして、保釈金は百万円というふうに聞いております。
  553. 上原康助

    ○上原委員 こういう状態なんですよ、大臣。あれだけの暴力行為を振るって、逮捕され勾留されたのです。今二十日とおっしゃるが、私が聞いたのは一カ月くらいだったというのだが、差し支えがあっても困るのであえてきょうは病院の名前は言いませんが、今答弁があったように、病院の院長が身元引受人になっているわけです。しかも百万円の保釈金を出しているわけです。これに疑問を持たない人がいますか、皆さん。しかも精神病院なんです。こういう運営のあり方というのは常識では考えられない。しかも保釈後も同じ行為をまだやっているのですよ。  どうやっているかというと、ワゴンを宣伝カーみたいにつくって、盛んに街頭宣伝をやっているのです。本人が演説をふって、そこの患者五、六名と運転をさせて一緒にやっているわけですよ。入院患者と一緒にやっている。こんな病院経営ってありますかね。冗談じゃないですよ、本当に。  だから、私は、こういうことがなぜまかり通るのか。もし労働組合とか私なんかがそんなことをしたら、とてもじゃないが全く保釈どころじゃないよね。この警察の扱い方というか経過というものが、常識で考えて非常に疑問がある。したがって私は、きょうはここでこの問題を明らかにいたしましたが、ぜひ十分な捜査をして、早目に平常な病院の労使関係に戻るように、またこの病院が健全な方向にいくように、特段の行政指導なり関係者とのお話をすべきだと思うのですが、この点どうお考えかということ。  しかもこの人は、組合事務所に殴りかかっただけじゃないのですよ。名護市の市議会の議場にも乱入しているのですよ。事件の後、三月二十四日に、ほかの二人と一緒に名護市市議会に乱入して議事を妨害しているのですよ。警察、なぜこういう人が大手を振って歩かなければいかぬのですか。ちょっと考えられないのですよ。警察は捜査中だと言うのだが、こういうことをやってもなお釈放されたり自由に行動ができるものだから、労使の関係もうまくいかないということに結果的になっているわけだ。  そこで、時間が来ましたので、あとのこともありますから結びますが、厚生大臣、これは医療法の面からしても病院経営の面からしても問題がある。また、法秩序の面からしても問題があるということ。労働省も来ていると思うのですが、これは労働省はどういう対策をとっているのか。不当労働行為とかなんとかでやっているわけでしょう。今提出されているのでしょう。
  554. 廣見和夫

    ○廣見説明員 この件につきましては、先ほどお話がございましたように、解雇をめぐりまして仮処分の申請が出されているというふうに承知いたしておりますが、労働委員会の方への不当労働行為という形での申し立ては、現段階ではなされておらないようでございます。
  555. 上原康助

    ○上原委員 やはりその前段のことがあるからでしょうが、要するに厚生大臣、しかも精神病院で、薬剤師も置かないで勝手に調剤をしてやって事故を起こし、トラブルを起こしている。そして暴力行為は絶え間ないわけですよ。この人は私が聞いている範囲では前科九犯か十犯ですよ。かつては大問題を起こした経歴の持ち主なんですよ。そういう人をわざわざこういう精神病院に入院をさせて、そして患者と一緒になって、組合があると医療費がたくさんつくから、あなた方もっと医療費を取られるから、組合をつぶさぬとだめだということを盛んに教唆しておって、暴力行為を振るっているわけですよ。これが許されるというなら、世の中、法も何も要らないじゃありませんか。  したがって重ねて申し上げますが、医療法の面からしても、医療行政の面からしても、法秩序の面からしてもこれは問題である。また、こういう人が入院患者として病院を利用する限りにおいては、労使関係がうまくいくはずがないですよ、一種の暴力行為だから。そういう面でも、厚生省としても警察庁としてもよく協議をなさって、一日も早く健全な方向に持っていく最大の努力をやるべきだと私は思う。これを野放しにしておくいわれはない。ぜひそういう方向に強い姿勢で臨んでいただきたいと思うのですが、これまでのやりとりを聞いての大臣の所見と、どういう対処をなさろうとするのかをお聞かせいただきたいと思います。
  556. 今井勇

    ○今井国務大臣 医療機関に関します大変大事な問題でございますから、労働担当部局とも十分連絡をとりまして、まず医療に支障が生じないように強力な指導をしたいと思います。  それから暴力の問題でございますが、これはおっしゃるとおり、暴力の行使なんということは断じて許さるべきものではありません。その調査を今警察当局がなすっているようでございますから、その調査は警察当局にゆだねるべきものであろうと考えておりますが、その警察当局の調査の結果、医療法であるとかあるいは医師法等に照らしまして問題となるべき事柄がありますれば、しかるべき措置を講じてまいる考えでございます。
  557. 上原康助

    ○上原委員 これで終わりますが、警察も起訴中なんでということでしたが、僕はきょうは余り詳しいことは言いませんでした、どういう人でも人権の問題があるし。またあえて病院長の名前は言わなかったが、あなたが御答弁なさったように身元引受人になって、しかも百万円の保釈金を払った。これも、どう考えてもおかしいですよ。そういう面を含めて、もう少し迅速にこの種のことはひとつ対処をしていただきたいと思うのですが、いいですね。もう一度これは御見解を聞いておきましょう。
  558. 安達真五

    ○安達説明員 お答えします。  警察は、いかなる事案においても不偏不党、厳正公平な態度で臨んでおりまして、本件に関しても違法行為については厳格な措置を講じております。今後もしそういう違法状態があれば、これは直ちに厳正な捜査を遂げるということでございます。
  559. 上原康助

    ○上原委員 きょうのところはこの程度にとめておきます。厚生大臣も強い決意を申し述べていましたし、また警察もそれなりの対処をなさるということですから、いま少し見届けますが、放置できる問題じゃないのですね。早目にひとつ、労使関係もうまくいき、病院経営も健全化の方向に持っていくように、薬剤師の確保の問題とか、医療法の面からの十分な行政指導を強く要望して、これで終わります。
  560. 志賀節

    志賀委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  561. 志賀節

    志賀委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。小川仁一君。
  562. 小川仁一

    ○小川(仁)委員 私は、ただいま質疑を終局いたしましたところの厚生省設置法の一部を改正する法律案に対し、日本社会党・護憲共同を代表して、反対の討論を行います。  本法案は、高度専門的医療の発展を受けて、国立精神・神経センターを設置する内容であり、その設置そのものは極めて適切であると考えます。  しかしながら、これら高度医療はその対象が極めて限定されており、大多数の国民はその恩恵に浴することはできません。これら高度医療があまねく国民に対して施されるべきであり、地方分院等の整備について、今後の課題として要求をいたしておきます。  さて、本法案の背後には、厚生省が進めようとしている国立病院・療養所の再編計画があることは、先般来のこの委員会における審議によって明らかになりました。すなわち、厚生省が今国会に提出いたしております国立病院等の再編成に伴う特別措置に関する法律案がそれでありますが、この再編成は、国による地域医療の水準維持を望む当該地元市町村の熱望を裏切って、国立病院・療養所を統合し、廃止し、移譲して、地域医療を放棄するものにほかなりません。  今般の厚生省設置法改正では、国の一方的な再編の強行によって、従来法律事項であった高度医療機関を政令事項に落とし、国民の意思を反映すべき国会の審議を省き、厚生省の都合のみによって、国民の医療を奪うことに道を開くことにほかなりません。  この法律が成立すれば、国民は健康に暮らす憲法に保障された権利を奪われることは明らかで、私どもは、さしたる理由もないこの厚生省設置法に反対するものであることを申し上げ、反対討論を終わります。(拍手)
  563. 志賀節

    志賀委員長 三浦久君。
  564. 三浦久

    ○三浦(久)委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、厚生省設置法の一部を改正する法律案に対して反対の討論を行います。  反対の第一の理由は、本法案が、中曽根内閣が標榜する戦後政治の総決算、すなわち軍備拡大、国民犠牲の臨調路線の強行による福祉・教育の切り捨ての一環として、国立病院・療養所の縮小・再編成計画を行政組織の面から推進しようとするものであるからであります。国立病院・療養所の統廃合は、日本の総ベッド数を百六十五万床から百万床に減らすという計画の一環であり、地域医療からの撤退による国民医療の切り捨てであります。  反対の第二の理由は、ナショナルセンター設置について総称だけを法律事項として、これまで疾病ことの名称にしていたセンターを政省令事項としたことであります。厚生省は疾病構造の変化等に機動的に対応するためと称していますが、その意図は、国会の審議を抜きにして勝手に国立病院・療養所を統廃合できるようにしようということにほかなりません。行政組織の統廃合は国民の権利義務にかかわる重要問題であります。だからこそ現憲法で、行政組織法定主義が明確に貫かれているのであり、それを政省令にするということは、行政組織法定主義に逆行するものであります。  第三は、本法律案の附則による児童福祉法等四法律の改正についてであります。これらはいずれも統廃合促進の障害を除去する措置でありますが、とりわけ児童福祉法の改正による、筋ジス、重心の患者を、指定された国立病院などでも収容できるようにしたことは、この病気が長期間の治療を必要とするために、これまで、敷地も広く治療環境もよい療養所で治療効果を上げてきたことを無視して、ただ統廃合の理由だけで、患者を敷地も狭いビル型の病院に押し込めようとする措置であります。患者と治療効果を無視した附則の改正にも反対であります。  最後に、審議の中で明らかになりましたように、統廃合の全体計画では、移譲といいながら、既に内部では、移譲対象施設についても統廃合することを決めている、でたらめな選定基準のもとに作成された全体計画でありまして、これはまさに国民を愚弄するものであり、私はこの全体計画の撤回を強く要求いたしたいと思います。  全国の地方自治体のほぼ九割に当たる二千九百五十九自治体から、国立病院・療養所の縮小・再編計画に反対する意見書や決議が提出をされています。これらの意見書や決議のほとんどが、自民党、社会党、公明党、民社党、新自由クラブ、そして我が党による全会一致によって採択されたものであります。私は、広範な国民の医療に対する切実な要求に反して、国立病院・療養所を縮小・再編成し、国民医療の切り捨てを促進する本法案に、断固反対することを表明して、反対討論を終わります。(拍手)
  565. 志賀節

    志賀委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  566. 志賀節

    志賀委員長 これより採決に入ります。  厚生省設置法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  567. 志賀節

    志賀委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  568. 志賀節

    志賀委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  569. 志賀節

    志賀委員長 次回は、来る五月六日火曜日、午前九時四十分理事会、午前九時五十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時五十九分散会