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1986-03-24 第104回国会 衆議院 逓信委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年三月二十四日(月曜日)     午前十時四分開議 出席委員   委員長 宮崎 茂一君    理事 加藤常太郎君 理事 関谷 勝嗣君    理事 畑 英次郎君 理事 吹田  愰君    理事 鈴木  強君 理事 田並 胤明君    理事 中川 嘉美君 理事 西田 八郎君       亀岡 高夫君    近藤 鉄雄君       佐藤 守良君    高橋 辰夫君       額賀福志郎君    林  大幹君       渡辺 紘三君    阿部未喜男君       武部  文君    松前  仰君       山田 英介君    田中 慶秋君       永江 一仁君    佐藤 祐弘君  出席国務大臣         郵 政 大 臣 佐藤 文生君  出席政府委員         科学技術政務次         官       前島英三郎君         科学技術庁長官         官房審議官   川崎 雅弘君         大蔵政務次官  熊川 次男君         郵政政務次官  田名部匡省君         郵政大臣官房長 中村 泰三君         郵政省通信政策         局長      奥山 雄材君         郵政省電気通信         局長      澤田 茂生君         郵政省放送行政         局長      森島 展一君  委員外出席者         臨時行政改革推         進審議会事務局         参事官     重富吉之助君         大蔵大臣官房参         事官      塩田 薫範君         大蔵省主計局主         計官      佐藤  謙君         参  考  人         (日本放送協会         会長)     川原 正人君         参  考  人         (日本放送協会         副会長)    横井  昭君         参  考  人         (日本放送協会         技師長専務理         事)      矢橋 幸一君         参  考  人         (日本放送協会         専務理事)   川口 幹夫君         参  考  人         (日本放送協会         専務理事)   林  乙也君         参  考  人         (日本放送協会         理事)     松本 幸夫君         参  考  人         (日本放送協会         理事)     植田  豊君         参  考  人         (日本放送協会         理事)     井上  豊君         参  考  人         (日本放送協会         経理局長)   松村  勇君         参  考  人         (宇宙開発事業         団副理事長)  園山 重道君         参  考  人         (宇宙開発事業         団理事)    船川 謙司君         逓信委員会調査         室長      古田 和也君     ――――――――――――― 委員の異動 三月七日  辞任         補欠選任   田中 慶秋君     小平  忠君 同日  辞任         補欠選任   小平  忠君     田中 慶秋君 同月二十四日  辞任         補欠選任   長谷川四郎君     高橋 辰夫君   原 健三郎君     林  大幹君 同日  辞任         補欠選任   高橋 辰夫君     長谷川四郎君   林  大幹君     原 健三郎君     ――――――――――――― 三月十八日  有線テレビジョン放送法の一部を改正する法律  案(内閣提出第六五号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 三月十四日  通話料金格差是正に関する陳情書  (第一一一号)  電気通信基礎技術研究所設立に関する陳情書  (第一一二号)  北陸電気通信監理局の存続に関する陳情書  (第一一三号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認  を求めるの件(内閣提出承認第一号)  電波法の一部を改正する法律案内閣提出第三  六号)      ――――◇―――――
  2. 宮崎茂一

    宮崎委員長 これより会議を開きます。  放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件を議題とし、審査に入ります。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本件審査のため、本日、参考人として日本放送協会及び宇宙開発事業団当局出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 宮崎茂一

    宮崎委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――
  4. 宮崎茂一

    宮崎委員長 趣旨説明を聴取いたします。郵政大臣佐藤文生君。     ―――――――――――――  放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認   を求めるの件     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  5. 佐藤文生

    佐藤国務大臣 ただいま議題となりました。日本放送協会昭和六十一年度収支予算事業計画及び資金計画提案理由につきまして、御説明申し上げます。  この収支予算事業計画及び資金計画は、放送法第三十七条第二項の規定に基づきまして、郵政大臣意見を付して国会に提出するものであります。  まず、収支予算について概略を申し上げます。  事業収支におきましては、事業収入は前年度に比べ三十三億六千万円増の三千四百十四億五千万円、事業支出は前年度に比べ百二十九億六千万円増の三千四百十四億五千万円となっており、収支均衡を保っております。  資本収支におきましては、衛星放送等ニューメディア実用化のための施設の整備、老朽化した放送機器更新整備等のために、建設費として四百九十億円を計上し、資本支出は六百三十二億四千万円となっております。  資本収入は、債務償還に必要な資金不足額を補てんするため、昭和五十九年度及び昭和六十年度からの繰越金百八十三億二千万円のうち、九十九億二千万円を受け入れ、これにより、収支均衡を保っております。  なお、この繰越金のうち、残り八十四億円につきましては、翌年度以降に収支の不均衡が生じた場合の支出に充てるため、その使用を繰り延べることとしております。  次に、事業計画につきましては、その主なものは、あまねく全国において受信できるよう、テレビジョン放送においては、衛星放送継続に必要な設備整備を取り進め、ラジオ放送においては、中波放送局及びFM放送局建設を行うこと、視聴者意向を積極的に受けとめ、公正な報道と豊かな放送番組を提供すること、受信料負担の公平を期するため、受信料制度周知徹底を図り、受信契約増加受信料の確実な収納に努めること等となっておりますが、これらの実施に当たっては、極力業務の合理的、効率的運営を推進することとしております。  最後に、資金計画につきましては、収支予算及び事業計画に対応する年度中の資金需要及び調達に関する計画を立てたものであります。  郵政大臣といたしましては、これらの収支予算等について、慎重に検討いたしました結果、これをおおむね適当であると認め、お手元に配付されておりますとおりの意見を付することといたした次第であります。  以上のとおりでありますが、何とぞよろしく御審議の上、御承認のほどお願いいたします。
  6. 宮崎茂一

    宮崎委員長 次に、補足説明を聴取いたします。日本放送協会会長川原正人君。
  7. 川原正人

    川原参考人 ただいま議題となっております日本放送協会昭和六十一年度収支予算事業計画及び資金計画につきまして、御説明申し上げます。  昭和六十一年度事業運営に当たりましては、昭和五十九年度を初年度とする三カ年経営計画最終年度として、諸計画達成を目指すとともに、極めて厳しい財政状況にあることを認識しつつ、将来の経営の展開に備えることといたしております。  このため、収入の確保を図るとともに、経営全般にわたり、極力業務の合理的、効率的運営を推進し、視聴者の要望にこたえて、放送全国普及とすぐれた放送実施に努め、公共放送としての役割を果たしてまいる所存であります。  次に、昭和六十一年度の主な事業計画について、御説明申し上げます。  まず、建設計画につきましては、衛星放送継続に必要な設備整備を取り進めるとともに、テレビジョン文字多重放送及び音声多重放送について、全国ネットワークを完成するために必要な設備整備を行うことといたしております。  また、国際放送受信改善のための設備整備放送番組充実のための機器整備等を進めるほか、老朽の著しい放送設備の取りかえを実施することといたしております。  次に、事業運営計画について申し上げます。  まず、国内放送におきましては、ニュース報道番組充実特別企画番組積極的編成及び地域放送充実など、公共放送の使命に徹し、公正な報道と豊かな放送番組の提供に努めることといたしております。  また、衛星放送については、普及の促進に努め、文字多重放送音声多重放送について、放送地域全国に拡充するほか、音声多重放送については、放送時間の拡充を行うこととしております。  国際放送におきましては、ニュースインフォメーション番組、各地域特殊性に即した番組を編成し、放送を通じての国際間の理解と親善に寄与するとともに、国内の新送信設備による放送を開始するなど、受信改善に努めることといたしております。  契約収納業務につきましては、受信料負担の公平を期するため、受信料制度周知徹底を図るとともに、受信契約増加受信料の確実な収納に努めることといたしております。  広報活動につきましては、協会に対する視聴者理解と信頼を一層強固にするため、広報活動視聴者意向の把握と反映などについて、地域活動を基本としてきめ細かい施策を効果的に推進することといたしております。  調査研究につきましては、番組面において番組視聴状況等調査を行い、また、技術面においては、ニューメディア開発研究等放送技術の向上に寄与する研究を推進し、その成果を放送に生かすとともに、広く一般にも公開することといたしております。  以上の事業計画実施に当たりましては、経営全般にわたり業務効率化を積極的に推進することとし、要員について年度内二百人の減員を行うことといたしております。  また、給与につきましては、適正な水準を維持することとしております。  これらの事業計画に対応する収支予算について申し上げますと、事業収支におきましては、収入総額三千四百十四億五千万円を計上し、このうち、受信料収入については三千三百四億八千万円を予定しております。これは、有料契約総数において四十三万件の増加を見込んだものであります。  また、副次収入など受信料以外の収入につきましても、極力増加を図ることといたしております。  これに対しまして、支出は極力圧縮に努め、国内放送費などの事業運営費減価償却費支払い利息など支出総額を三千四百十四億五千万円にとどめ、事業収支におきまして収支均衡を図っております。  また、本年度債務償還のための必要額九十九億二千万円につきましては、昭和五十九年度及び昭和六十年度からの繰越金百八十三億二千万円の一部をもって充て、残余の八十四億円につきましては、翌年度以降の財政安定のための財源として、その使用を繰り延べることといたしております。  次に、資本収支につきまして、支出には、建設費四百九十億円、協会業務に関連する事業を行う法人への出資に二億円、放送債券償還等に百四十億四千万円、総額六百三十二億四千万円を計上し、収入には、これらに必要な財源として、前期繰越金減価償却資金放送債券及び借入金など合わせて総額六百三十二億四千万円を計上いたしております。  最後に、資金計画につきましては、収支予算及び事業計画に基づいて、資金需要及び調達を見込んだものでございます。  以上、日本放送協会昭和六十一年度収支予算事業計画等につきまして、そのあらましを申し述べましたが、今後の事業運営に当たりましては、協会事業視聴者の負担する受信料基盤としていることを深く認識して、引き締まった、効率的経営を目指すとともに、すぐれた放送実施して、協会に課せられた責務の遂行に努める所存でございます。  委員各位の変わらざる御協力と御支援をお願いいたし、あわせて何とぞよろしく御審議の上、御承認賜りますようお願い申し上げます。
  8. 宮崎茂一

    宮崎委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     ―――――――――――――
  9. 宮崎茂一

    宮崎委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。額賀福志郎君。
  10. 額賀福志郎

    額賀委員 自民党の額賀福志郎と申します。  本日は、NHK予算について質疑の機会を得まして、大変光栄に存じる次第であります。  ただいま川原会長から、六十一年度収支予算事業計画及び資金計画に関して御説明がございました。私は、この予算案に対して基本的に賛成の意を表しますとともに、若干の質問をしまして、六十一年度を含めた今後のNHK経営方針を明らかにしてまいりたいと考えるものであります。  ただいま川原会長からお話がありましたように、NHKは五十九年度から三カ年計画を立てまして、本年度最終年度に当たるわけであります。この三カ年の収支状況を概観してまいりますと、五十九年度受信料値上げがあったために二百五十七億円、六十年度は九十六億円の差益を生んでいるわけでございます。しかし、六十一年度はちょうどはかったように収支差益はゼロになっておるわけでございます。しかも、これは大臣意見書にもございますけれども、今後債務償還に必要な資金不足額九十九億円は、五十九年度、六十年度予算収支差益繰越金から差し引いて間に合わせるということでございます。言ってみれば、六十二年度以降は赤字の状況だということが明らかになっているわけであります。  そこで、NHK収入の九七、八%は受信料によると言われているわけでありますから、この受信料の問題について若干御説明をいただきたいと思うわけであります。  今NHK受信料を賄う一般家庭におけるテレビの普及受信機普及というものは頭打ちと言われているくらいの中で三カ年計画を立てたわけでございまして、この三カ年の間に一年度四十三万件ですか、の新規契約を果たすということでございましたが、五十九年度実績、並びに六十年度も間もなく終わるわけでありますが、この経緯。それから、六十一年度は、ただいまお話がありましたように四十三万件の新規契約を望んでおるということでありますが、そのもともとの根底が予定どおりなされていなければ、経営計画というものが成り立たないわけでありますから、これをよく説明していただきたいと考えるものであります。
  11. 松本幸夫

    松本参考人 お答え申し上げます。  今先生指摘のとおり、私ども受信契約増加ということを財政収入一つのベースに置いておりますし、同時に収納をより確実にやってまいるというこの二本立てで仕事をやっておるわけでございます。五十九年度、四十三万の計画を立て、また六十年度四十三万、六十一年度も四十三万ということで契約の増を考えているわけでございます。ただ、五十九年度につきましては、年度当初の成績が余り振るいませんで、それが年間を通しまして取り戻せなかったということで、二十五万二千件の増にとどまってしまっておるわけでございます。  ただ、六十年度につきましては、こういった五十九年度状況を踏まえまして、できるだけ早く、営業活動と申しておりますけれども契約増加ということも果たしてまいりたいというふうに考えまして、一月末までの契約状況契約増目標に対しまして八七%を超える契約の増を既に確保してございます。この二月、三月の年度末の努力によりまして、私としましては、六十年度につきましてはまずこの計画どおり数字が確保できるものと考えております。ただ、六十一年度、また四十三万の契約増という計画を立ててございますけれども、先般発表されました国勢調査の結果等を見ましても、かなり世帯の増加が鈍化しているという状況がございます。そういった中で、私どもとしましてはできるだけの努力値を加えまして、この四十三万の契約増加はぜひとも確保してまいりたいと考えております。  それから、この契約の増のほかに、収納を確実にやっていくということが、私どもとして大変重要なもう一つの様であると考えております。五十九年度につきましては、わずかながら計画に達しない収納額でございました。しかし、これも副次収入増加等もございまして、収入全体といたしましては目標額を確保し得たと考えております。そしてさらに六十年度収納状況は、今までのところ大変順調に推移しております。私どもとしては、六十年度計画いたしました受信料収入はまず確保し得るものという見通しを一応立てておる次第でございます。同時に、六十一年度につきましても、できるだけ早期に活動を展開いたしまして、収入を確実に上げてまいりたいというふうに考えて、より収納活動充実努力してまいりたいと考えている次第でございます。
  12. 額賀福志郎

    額賀委員 収納契約増について御説明いただいたわけでありますが、受信料回収経費節減するために、一方で口座料金とかいう制度を設けてやってまいられておりますが、これの普及程度、そしてまた、経費節減にどの程度効果が上がっておるのか、これについても御説明をお願いしたいと思うわけであります。
  13. 松本幸夫

    松本参考人 先生指摘のとおり、口座普及というものが私ども収納活動に極めて安定性を増してまいるという効果がございますし、同時に、訪問して料金をちょうだいいたすというよりもかなり安いコストでできるという効果もございます。私どもとしては、五十九年度口座料金を設定させていただきまして、口座普及努力してまいりたいと考えておったわけでございます。五十九年度から六十一年度の三カ年間に五百万の口座の増という計画を立ててございます。  五十九年度、六十年度の推移を見てまいりますと、これは着実に、計画にほぼ近い形で推移していると考えております。五十九年度だけの数字を見ますと、二百五十万の計画の増に対しましてやや達成していないような数字が出ておりますけれども、これは口座料金というものが五十八年度中に発表になりましたので、非常に速いスピードで五十八年度の二月、三月の時期に口座がふえまして、実質的に五十九年度口座の増も二百五十万の目標達成し得たと私は思っております。そして、六十年度につきましても百五十万の計画を立てておるわけでございますが、これも一月末の状況を見ましても基準達成率を上回る成績を上げておりまして、私どもとしましては百五十万の増加は確実に達成し得ると考えております。六十一年度につきましては、百万の計画でございますので、これもできるだけの努力を重ねまして、計画達成したい。つまり、この三カ年計画で立てました五百万の増加達成し得ると考えております。
  14. 額賀福志郎

    額賀委員 NHK受信料回収作業というものは大変な作業でございまして、これを何とか合理化を図るということで口座料金を設定し、なおかつそれが計画どおり順調に進んでいるということは大変喜ばしい限りであり、今後も一層の努力をお願いする次第であります。  また、NHKでは、数年前から大変華々しいうたい文句で、内部的な努力目標要員効率化計画というものをうたい出して今日まで来ているわけであります。これについても、NHK側のこれまでの徹底した努力の結果、実績がどういうふうになっておるのか、そしてまたそれが人員的にあるいは金銭的にどの程度効果を上げておられるのか。受信料経営基盤になさっているNHKでありますから、国民皆さん方にわかりやすく御説明をして、御理解を深めていただけたらありがたいと思うわけであります。
  15. 植田豊

    植田参考人 NHK要員効率化は、五十五年度をスタートといたしまして、六十年度までに九百十二人の純減達成いたしております。これは率にいたしまして五・四%の純減達成いたしたところでございます。公共放送という立場から、みずから厳しく律しまして、効率的な事業運営を目指すための効率化計画を進めております。  今後とも、私どもの自主的な努力としてこの努力継続してまいりたい、かように考えております。
  16. 額賀福志郎

    額賀委員 今後の計画についてはいかがなのか、それも含めてお願いします。
  17. 植田豊

    植田参考人 五十五年度以降の要員効率化継続いたしまして、現在は六十五年度を目途に一万五千人体制という目標を立てまして進めておるところでございます。この計画実現のためには、六十一年度以降五年間で千百人の純減を行うということになります。実施に当たりましては、重点項目を各年度ごとに具体的に定めまして、確実に実現を図りたい、かように思っておるところでございます。
  18. 額賀福志郎

    額賀委員 これは、一方で必要なところで増員をし、そして一方で人を減らしているわけでありますから、なかなかわかりにくいのですが、これを非常にわかりやすく説明するためには、各年度にこれくらい減らしたのだから人件費的には幾らぐらいの効果があったんだとか、そういう形で示していただければ国民皆さん方も大変わかりやすいんじゃないかと思うのですが、データがありましたらお示し願いたいと思います。
  19. 井上豊

    井上参考人 お答え申し上げます。  先生指摘のように、五十五年来要員効率化努力をしてまいったわけでございまして、一例を申し上げますと、六十年度あるいは六十一年度につきまして二百人の純減を予定し、実施に向けて今努力をしているところでございますけれども、例えば六十一年度の二百人に相当する人的経費節減額は、およそ十五億六千万円でございます。したがいまして、各年度これに相当する経費節減をしてきているわけでございます。
  20. 額賀福志郎

    額賀委員 六十年度の場合で二百人、十五億六千万円の経費節減になっておるということでありまして、まあNHKさんにとりましては大変な御努力であると敬意を表するものであり、これがまたNHK経営基盤を支えていく一つの大きな柱でもあると思いますので、今後とも御努力をお願いしたいと考えるものであります。  人員削減の問題とも絡んでくるわけでありますが、もちろんNHK収入の最大の基盤である受信料収入というものがどうも限界に来ているような感じの中で、何とか副次収入を上げていかなければならない。そういうことは、私がかつての予算審議の中で読ましていただいた質疑の中で、川原会長初め担当大臣がいつも申してこられたところと理解しております。  先般、二月の新聞を見ておりましたら、毎日新聞か何かに副次収入のことに関連して、「ビジネスづくNHK 財政難の打開めざす」というふうに書かれているわけでございます。この中でNHK島理事は、「よい番組を作って放送するのがNHKの社会への責任だが、それだけでは済まない時代だ。NHKにも応分の金が入るように経営努力をしないと、第二の国鉄になってしまう」、一方、NHK松本幸夫理事は、「苦しくなったら値上げ、ということは許されない。一方でメディアの多様化時代に対応しないと生き残れない。NHK番組の質を維持するためにも、行動の自由が欲しい」というふうに六十一年二月六日の毎日新聞企画記事に載っているわけであります。  NHKは、五十七年に放送法を改正して、放送に関連する団体に出資等ができるというふうになって今日まで来たわけでありますが、確かに予算収支状況を見ますと、副次収入というのは着実に伸びを示している。もちろん全体の収入の中の割合としては微々たるものでありますが、伸びているということで、今後NHKとしては公共的な使命の制約の中でこれを伸ばしていくという考え方だと思うわけでありますが、これについて基本的な考え方と、それからどういうような最近の出資状況あるいはかかわり合い方を持っているのか、また、それが財政収入と、あるいは今説明をいただきました要員計画人員削減ともやはり僕は密接な関連があるのではないかと思いますが、その辺の関連についても御説明をしていただければありがたいと考えるものであります。
  21. 井上豊

    井上参考人 先生お話しの中にもございましたように、大原則は、私ども放送法規定に基づきまして、何といっても第一に公共放送の使命を達成することが基本であろうというふうに認識をしているわけでございます。このように協会の基本的な業務を遂行していく中で、放送番組の多角的な活用でございますとか技術協力でございますとか、あるいはNHKがたくさん所有をしております特許の実施の許諾でございますとか、協会放送に付随いたします諸活動を通じまして、社会文化の向上でございますとかあるいは技術の進展に寄与をいたしまして、さらには視聴者との結びつきを一層高めていく中で副次収入増加努力をしているわけでございます。これによりまして、先生指摘のように、収支の基本構造を大幅に改善するようなことは当面不可能だというふうに思いますけれども、厳しい財政事情の中でございますので、少しでも視聴者の負担の軽減に努めるべく努力継続しているところでございます。  六十一年度につきましては二十三億五千万円の副次収入を予定しております。この五年間の中でほぼ倍増でございます。私ども引き続き、今申し上げましたように、基本使命を十分踏まえながら、副次収入増加にもさらなる努力を続けていきたい、こういうふうに考えております。
  22. 額賀福志郎

    額賀委員 今、公共放送の使命を守りながら、NHK努力目標としてできるだけ副次収入を上げてまいりたいということであります。  六十一年度予算計画の中で二十三億六千万円を計上しているわけでありますが、この主なものを具体的に挙げていただけますか。
  23. 井上豊

    井上参考人 今申し上げましたように、収入総額といたしましては、もう少し正確に申し上げますと二十三億五千六百万余でございます。  その主なものを申し上げますと、放送番組の多角的活用によりまして六億六千二百万余であります。それから、テキストをいろいろ出版をしているわけでございますけれども、テキストの出版収入によりまして九億六千六百万余でございます。それから、先ほど申し上げましたように特許の実施でございますとか技術協力ということで、技術協力収入といたしまして三億三千万円を予定をしております。それから、NHKホールというものがございまして、外部の利用にも供しているわけでございまして、このホールの利用によりまして二億七千六百万程度でございます。その他放送素材等の提供によりまして一億二千百万円を予定をしているところでございます。
  24. 額賀福志郎

    額賀委員 今のところ副次収入の考え方は、そういった公共放送の制約の中で考えていくということでございますが、後で質問をさせていただきたいと思うのですが、例えば衛星放送のチャンネルのやり方、そういったことと兼ね合わせてNHKが営業的な考え方のもとに仕事を多角的に拡大していくおそれ、この辺に接点があるわけでありますが、今後、「ビジネスづくNHK」とまで書かれたわけでありますが、会長さん、基本的にはやはり公共放送の使命と、それから財政収入を図っていくということの中で、この副次収入的な考え方をどういうふうにお考えなのか、改めて示していただきたいと思うわけであります。
  25. 川原正人

    川原参考人 我々としては、基本的にはあくまで公共放送としての使命を守り、それによって視聴者の期待にこたえていくということが基本でございます。ただ、もちろんそうはいいましても、受信料のみに頼っているという経営姿勢も、これまた視聴者からいろいろ批判もありますし、できるだけ副次的な収入増加を図っていきたい。そのためには、我々が視聴者に提供する番組そのものの中で営業するようなことは、これは絶対にいたしません。そのようなことはあくまで慎むべきだと思います。ただ、そうではなくて、私どもがつくりました番組をさらにいろいろな方面に活用していただく、あるいは番組だけにとどまらず、私どもが蓄積しておりますいろいろな資料、データあるいはノーハウみたいなものもございます。こういうものがもし社会に役立っていただけるならば、それはもっともっと積極的に活用したい、そういう面での収入を上げていきたい。  それからもう一つは、最近私どもが非常に力を入れておりますけれども、外国の放送機関と共同で番組を制作するということが外国の方からも望まれております。また、そうすることによって制作の経費を、簡単にいえば、半々で負担すれば半分ででき上がる。例えば既に何度も放送しております「シルクロード」とかあるいはこの四月から放送開始いたします「大黄河」のような番組はかなり中国側の負担も求めておりますし、でき上がった番組がかなり外国に利用されて、その面からの収入も上がっておりますし、また上げる計画、見込みが立ってきております。あるいは昨年ずっと、今もなお放送しております「ルーブル美術館」の番組等は制作費がフランス側と半々で、結局必要な制作費の半分で私ども番組をつくることができた。さらにこれはまた写真集の出版によっても私ども収入を上げることができております。こういう形のものはもっともっと力を入れていきたいと考えております。  衛星放送実施する場合等も、今までのような番組の制作の形態ではなくて、もっと外国の放送機関との協力等、あるいはスポーツの番組等ももっと新しい放送の仕方があるのではないか、そういうことを研究しているところでございます。
  26. 額賀福志郎

    額賀委員 まだまだ副次収入的な分野で、NHKのこれまで蓄積した番組編成のノーハウ、技術、そういったものが活用されてしかるべきだと私も考えるものでありますが、やはりきちっと節度を守った形で行っていかなければ、国民理解というものが得られないのではないかと心配するわけであります。  いずれにいたしましても、NHKさん側がいろいろな意味で経営努力をなさって、今日まで公共放送としての使命を達成してきたわけでありますが、よくよく考えてみますと、このNHK収支状況というものは、ここ数年収入は大体一%前後だ、一方経費支出というのが四%だということになりますと、構造的に収支のアンバランスが見られるわけであります。したがって、NHKの三カ年計画では、六十一年度で大体収支状況ゼロということでございますが、六十二年度以降は、このままで推移すれば相当な赤字を覚悟しなければならない。まだ若干繰越金があるからということであろうかと思いますが、こういった厳しい経営環境の中で今後のことを考えますときに、六十一年度予算編成に当たって、川原会長一番頭を砕いたというか苦労をしたというか、心配をした点はどういう点だったのか。また、大臣もおおむねこれで結構だというような意見書を述べておりますが、六十一年度予算編成を見て率直な御感想、御意見というものがあれば、簡単に御説明していただければありがたいと思います。
  27. 佐藤文生

    佐藤国務大臣 六十一年度NHK予算を見まして感じましたことを簡単に申し上げます。  その事業計画の中で、新しい放送サービスの推進や経営効率化等、経営計画の目的がほぼ達成されるであろう、こういう内容と判断をしまして、さらに収支状況計画に比べてかなり改善をされておるという以上のような点から、私はおおむね妥当であるということで意見書を出しまして、お手元に御配付しておる意見書の三つの条件をつけまして了承した次第でございます。
  28. 川原正人

    川原参考人 私どもが一番考えましたことは、六十一年度年度予算の編成だけではなくて、五十九年度経営計画をつくりますときに、現在の料金はこれをもって五十九年度から六十一年度までの事業計画を推進する、それに必要な料金であるという計算のもとに国会で御承認いただいたわけでございますが、しかし、そうだからといって、六十一年度三年計画を終われば、その後直ちに値上げということに簡単にいくわけにはとてもまいらない、そういうことでは、私どもやはりまた視聴者の信頼も得られないと思います。やはり六十二年度あるいは三年度、四年度とずっと先を見て、そのために六十一年度何をしておくべきかということを考えたわけでございます。  一方では、どうしても新しいいろいろな衛星放送を初めとして、あるいは文字放送とか新しいメディアを国民の福祉のために十分に活用していかなければならない、そのためにはまたどうしても経費がかかる。それから通常の番組にしましても、だんだん複雑な制作方法をとらなければなりませんし、海外のニュース一つとりましても、始終通信衛星等フルに使っての取材等行わなければならない、この経費がどんどんかさんでいく。あるいはスポーツの番組一つとりましても、アマチュアスポーツでさえ非常に多額の権料を必要とする情勢になってきている。しかも、ソウルのオリンピックという大変なものがいずれ将来に控えているという状況の中で、私どもはそれに備えて少しでも経費を節約していかなければならない。そのために要員も、本当はもっと必要な面があるわけでございますけれども、何としてでも毎年二百人くらいの実質的な正味の減員をしていこうということで、その辺が一番気を使ったことでございます。  幸いにして職員の努力等もありまして、これまでの二年間におきまして百数十億円の剰余を残しました。今年度債務償還に九十九億円使いますけれども、なお八十数億円の余裕を持ってこの年度六十一年度を多分終えられると今思っております。その先のことは、私どもさらに今すぐにお約束はできませんけれども、いろいろな工夫を凝らしまして、現在の料金を少しでも長く据え置いて事業の遂行に当たりたいと今考えているところでございます。
  29. 額賀福志郎

    額賀委員 厳しい財政状況の中で、会長としてはできるだけ長く現行料金で賄うように努力をしてまいりたいということであります。ということは六十二年度値上げはしなくても済むんじゃないか、さらにいえば、できるならば六十三年度値上げせずに努力をしてまいらなければならないという意味にとっていいのか、その辺の感触は会長、いかがなんですか。
  30. 川原正人

    川原参考人 ただいま六十一年度予算の御審議をいただいているさなかでございますので、なかなか先のことを申し上げるのは私としてもきついことでございますけれども、今申し上げましたように、この六十一年度予算このままで御承認いただき、遂行できるとすれば、少なくとも八十四億円の剰余を持って六十二年度に臨むことができるということでございますし、なお今、年度末に来ておりますけれども、六十年度予算実施の中でも極力経費の節約に努めておりますので、なお決算の段階で六十年度の方も、予算で予定しましたよりもゆとりを残すことができるのではないかと今思っております。  それらを勘案しますと、よほど経済条件等変動がなければ、六十二年度につきましては少なくとも現行料金でもって業務が遂行できる。ただし、六十三年度となりますと、これはどうしましても完全な赤字の状況に入ってまいりますし、それから、先ほど申しましたように、今非常に予測しがたいような大きな支出を余儀なくされる条件も出ておりますので、その辺をよく勘案いたしませんと、今何とも申しかねるというところでございます。
  31. 額賀福志郎

    額賀委員 六十三年度というとちょうどオリンピックの年なんですね。こう見てみますと、五十一年、五十五年というのはいろいろなオイルショックとか経済変動によって料金値上げせざるを得なかった要因があったと思うのですが、あとは大概オリンピックの年ごとに値上げをしてきたんですね。  いかにも単純明快なんですが、大臣意見書の中で一番目に「経費節減を徹底するとともに、収入の確保を図り、極力長期にわたり、受信者の負担増を来さないよう努めること。」というふうに言っているわけであります。今会長から御説明ありましたが、この「極力長期にわたり、」という意味は非常に私どもわかりにくいわけです。大臣の感触をちょっとお聞かせ願えればありがたいと思うわけであります。
  32. 佐藤文生

    佐藤国務大臣 極力長期にわたり、受信者に負担をかけないようにしてほしいという意味は、二番目に衛星放送について万全を期してほしい、それから三番目に国際放送について積極果敢なアクションを起こしてほしいという意味のことと連動してくるような気持ちでございます。したがって、NHKの方としてはできるだけ経費節減いたしまして経営合理化に努めて、それから収入を図っていく、そういうようなことをやって、受信者には余り負担をかけないように頑張っていただく。しかし、二と三番目の意見の中には大変いろんな要素が含まれておると思うわけであります。したがって、NHKも考えてほしい、しかし、郵政省としても、どのようにすればいいかということを等閑視はできませんよ、できる範囲内のことはやらなくちゃいかぬな、こういうような気持ちがございますので、三つの条件をつけた内容というのはそういう気持ちが入っておるということだけ申し上げておきます。
  33. 額賀福志郎

    額賀委員 ありがとうございました。まあNHKさん並びに郵政省の皆さんにも、できるだけ国民の負担にならないように、なおかつ信頼を得られるようにというような考え方で今後の運営を図っていってもらいたいと考えるわけであります。  予算編成というか、予算審議のたびに、NHKの中長期的な経営展望というか経営姿勢について論議がなされます。昨年、六十年度予算審議の際に、当時の左藤郵政大臣並びに川原会長も、このニューメディアの中でNHK経営基盤というものを、放送法、いろんな状況を再検討をし、調査研究を進めていきたいというような話でありました。これは既に一年たったわけなんでありますが、二十一世紀を展望するNHKのあり方を考える場合に、やはりいろんな意味で多角的に物事を考えて、そして指針を残しておかなければならないという意味で、まさに私は時宜を得たそういう研究調査の段階だったと思うわけであります。  一年経過しているんですが、その後これはどういうふうに展開をし、ある程度中間報告的なことができるのかどうか、御説明をいただければありがたいです。
  34. 川原正人

    川原参考人 我々は、部内的にはいろんなテーマについて、あらゆる角度から今議論を行っております。ですが、結論的に申し上げまして、やはり計画として確定しがたい非常に大きな要素が残されております。例えば衛星の問題一つとりましても、幸いにして先般二月に打ち上げました放送衛星の二号のbは予定どおりの軌道に乗り、放送機のテストも順調に始まっておりますけれども、やはりまず技術的にこれの安定度というものを十分確かめなければなりませんし、安定したとしまして、その先のサービス、普及促進のためにどのような番組を出すべきか、それから、これに伴う本放送に移した場合の料金の問題等も考えなければなりませんし、それらについてなかなか確定的な見通しが立ちかねております。特に、これはNHKだけで決定できる問題ではなくて、放送行政との絡みもございますので、その辺のところをもう少し明確にしてまいりたい。  それから、今大臣から御指摘がありましたけれども国際放送の問題につきましても、私ども、今の国際放送の聞こえ方では決して十分とは思っておりませんけれどもNHK受信料、財政の力だけでこれをどこまで改善できるかというと、甚だこれも私どもの力が十分でございませんので、国等の御協力がどこまで得られるだろうかということについて、いろいろなお話を続けているさなかでございます。  それから、先ほど申しましたように、番組の方一つとりましても、いろいろ大きな不確定要素がありまして、これも国際的な交渉事等も控えております。なかなかその辺の見通しが立ちにくいということで、具体的な形でかくかくの中期あるいは長期の計画であるというところをまとめるまでには至っておりません。大変申しわけないことですが、それが率直なところでございます。
  35. 額賀福志郎

    額賀委員 郵政省。
  36. 森島展一

    ○森島政府委員 ニューメディア時代放送のあり方ということで、郵政省といたしましても放送政策懇談会というものを設けまして、これは大臣の私的な懇談会ということで、昨年から二年間にわたって、有識者の方十五人にお願いしていろいろ御検討をいただいているところでございます。この懇談会では、ニューメディア時代における放送の役割、それから多様化する聴視者のニーズにこたえる放送のあり方、こういったことについての御議論をいただいておるわけでございまして、こういった御議論の結果を踏まえて御提言をいただく、こういうふうに考えております。現在までのところ、いろいろ問題点ということを検討され、これから六十一年度のうちに一つの御提言をいただく、こういうふうに御議論をいただいておるところでございます。
  37. 額賀福志郎

    額賀委員 今、川原会長、郵政省から御説明をいただきましたが、まだ論議の途中で何とも言えないということでありました。あと残り四分程度でありますが、川原会長から、今衛星放送について若干触れられましたので、このことについて質問をし、質疑を終わらしていただきたいと思います。  先週、BS2bについてトランスポンダーの火入れ式というか、機能テストが行われたというふうに聞いてわるわけであります。国民皆さん方が、鳴り物入りで始まったこの衛星放送について、どういう状況なのか、今度はうまくいくのかということで大変な関心を持っておるわけであります。今のところこれは順調にいっているのかどうか。  そしてまた、NHKさんでは、会長はこの衛星放送番組内容についてはまだ煮詰まっていないんだ、そこまでどういうふうにしていくか検討中だということであります。郵政省の側では、これは試験放送的なんだから、そんなに営業的な番組をやってはいけない、民間放送との調和もとらなけれはいけないとかいうようなことで、これから大きな合意というか、話し合いをしながら考えていかなければならないと思うわけでありますが、この点についてNHKさんが考えている番組内容に対する考え方と、郵政省側が指導する基本的な姿勢との間にはいささかギャップがあるようなふうに受け取っております。この点について、郵政省側では今後どういうふうに行政指導というか話し合いをしていくのか、この二つについてお聞かせ願い、そしてまた、NHKが今後も国民理解を得て公共放送の使命を速成することを心から念願して、質疑を終わらせていただきたいと思います。
  38. 森島展一

    ○森島政府委員 衛星放送につきましては、先ごろBS2bが打ち上げられまして、これによって、順調にいきますれば、試験放送という形で夏ごろには衛星放送が開始できるものと期待しておりますが、このBS2の段階におきまして難視聴の解消、こういうことが主目的でございます。したがいまして、NHKの総合と教育、この二チャンネル、地上でやっておりますものが、この難視聴解消という目的のため、これを主たる目的として衛星放送でもやはり行われる、こういうことになると思いますが、ただ衛星放送の特色を生かすということからいたしますと、地上放送では必ずしもうまくできないような新しいサービス、こういったものの実験開発、こういうことも衛星放送で早期に行うべきであろう。こういうことで、例えば高精細度テレビジョンNHKの方でハイビジョンと言っておりますが、こういったものの実験とか、PCMの音声放送の実験とか、こういったものは進めていかなければならないものと思っておりますし、また番組の上でも難視聴解消というこの目的を踏まえながら、衛星の普及ということができるような魅力的な番組を入れていくというようなことは考えていっていただきたいとは思います。  ただ、衛星放送で独自の番組ができるか、このような問題になりますと、これはやはりNHK業務のあり方、経営のあり方、それから受信料の問題、こういったものにすぐ関連してまいりますので、そういう幅広い検討を行いながら、その利用のあり方ということは考えていかなければならない、こういうふうに思っております。
  39. 川原正人

    川原参考人 同じ趣旨になるかと思いますが、つけ加えて申し上げておきたいのは、一つ放送衛星自体は、先ほどもちょっと触れましたけれども、二月十二日に打ち上げました二号bは、その後順調に予定の軌道に乗っておりますし、送信機も三つとも電源を入れまして、順調に働くことを確認いたしております。ただ、まだ長時間の運転等しておりませんので、それは繰り返しいろいろなテストを続けていくことになろうと思います。  それから番組につきましては、私どもとしてはもちろん衛星は難視聴の解消ということを主な目的として今日まで開発を進めてまいりましたけれども、ただこれだけ巨額の受信料を投入した衛星でございますので、その衛星の機能はできるだけ十分に発揮させたい。それから衛星を普及することも、これまた国会の附帯決議等にも言われているとおりでございまして、私どもできるだけ早く普及を進めたい。それにはやはり魅力のある番組サービスが出なければ、もうこれは地上の番組と同じものだけ出ているのでは、なかなか普及いたしませんので、やはり魅力のある番組、そして衛星の機能を十分に発揮できるような番組を編成してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  40. 額賀福志郎

    額賀委員 どうもありがとうございました。
  41. 宮崎茂一

    宮崎委員長 阿部未喜男君。
  42. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 きょうはどうもNHKの皆さん、お忙しい中を御苦労さんです。  大臣、実はきのう、私は新幹線でこっちに来ました。米原で新幹線がとまってしまいまして、四時間、それから徐行運転でこっちに着いたのがけさの午前二時でございました。しかしその間、その事故の状況、とりわけ架線の復旧の状況やあるいは東京の都市圏における雪の模様、そして交通機関の逐次再開されていく、山手線が動き出しましたとかあるいは京浜東北は動くようになりましたとか、こういう情報を汽車の中で耳にすることによってどんなに安心をし、落ちつくか、情報の伝達というものに従来に増しての深い感銘を覚えたところでございます。  その情報の伝達を含めてのNHKの大変なお仕事でございますし、とりわけ大臣指摘しておりますように、ここ数年のNHKの財政は極めて厳しい状況にありますし、また皆さんが財政を切り詰めて、はたから見ておっても血のにじむような努力をされておる、そのことについても私は十分承知をしております。しかし、やはりこの場ですから、NHK経営の基本的な問題について二、三点伺わしてもらいたいと思っております。問題を絞って、三点くらいにしたいと思います。  まず第一点は、私は、NHK経営姿勢のどこか基本的なものに欠落しておるものがあるように思われてなりません。例えば、私はかねてから、NHK受信料契約のあり方について、本来放送法の三十二条によれば、協会放送受信できる設備を持った者は契約しなければならない、こうなっておる、したがってテレビの受信機を対象に契約をすべきである。ところが、そういう放送法があるにもかかわらず、世帯を単位に契約をするということにNHKはなっておる。しかし今日、大体の世帯でテレビが一台というところは非常に少ないのじゃないかと私は思うのです。  ちなみに電話を見てくださいよ。電話は一軒の家に二台あっても三台あっても、全部基本料から使用料から取ることになっておりますよ。世帯を単位にして動かす自動車にしても、おたくは人数が多いから、二台目からは自動車税は要りませんとは言わないのですよ。自動車の台数によってちゃんと税金を取るのです。だから私はかねてから、NHKもこれだけマスコミが発達してきた中では、テレビの受信機を対象にして受信料をいただくという方法を検討されるべきではないかということを口を酸っぱくして申し上げてきました。しかし、捕捉が難しいとかいろいろな理屈をつけて、今日までできておりませんけれども、私は、二台目からは例えば一台目の半分の料金、三台目は三分の一でもいいのです。それだけ持てる力のある方々から負担をしていただいて受信料をもらう、そういうことになれば、今の財政はもっとずっと楽になるだろうという気がします。  あるいはまた、受信料の免除のあり方にしても、あの白黒からカラーに切りかわってどんどん収入がふえてきたときに、大臣の認可を得ては、これもよっしゃ、これもよっしゃしてどんどん受信料の免除をふやしていきました。今日の予算を見ると、年間百億を超えていますね。百十億くらいが受信料免除の対象になっているわけですけれども国民にはおのずから負担をする区分がある。例えば教育の問題、福祉の問題に金が要るときは、それは国が負担するのが原則であって、受信者にそれを肩がわりさせるということは本当ではないと私は思うのです。しかし、これもずっと続けたままなかなか直ってこない。今わずかに航空騒音の周辺か何かの肩がわりか何かさせたようでございますけれども、なかなか減ってこない。  数え上げればまだたくさんございます。放送衛星もありますが、そういう大きな課題について真剣に取り組もうとする姿勢に欠けているのではないか。冒頭言いましたように、基本的な経営の姿勢にどこか欠落したところがあるのではないか、そういう気がしてならないのでございます。これはきょう初めて申し上げておるわけではございません。委員会のたびに私が申し上げてきたところですが、今日までなぜこれが放置されているのか、これは会長からお考えを聞きたいのです。
  43. 川原正人

    川原参考人 今御指摘の点は確かに前々から御指摘をいただいているところでございますし、私ども決して放てきしていたつもりではなくて、かねて研究はしているわけでございます。ただ、結論的に答弁は同じような答弁にならざるを得ないというのは率直におわびしておきます。  多くを申しませんけれども受信機の台数ごとに料金が取れないか、取れれば恐らく私ども収入が相当ふえるということもこれはわかっております。ただ、先生も御承知のように、私どもには各家庭に入っての立入調査権ももちろんございませんし、それから受信機が何台あるかということを確認するすべがなかなかない。そういう状況の中でそのような料金体制に踏み切った場合に、実際にお持ちの方の何割までがお払いいただけるだろうか、そこでまた不公平負担という問題が今以上に拡大されはしないかということを大変懸念いたしますのが一つ。  もう一つ、これは多少言いわけになるかもしれませんが、各家庭、各世帯に同じような金額を負担していただいているというところに、また別の意味も、現状としてはあるのではないかという気持ちもありまして、そこのところがなお踏み切れないでいるのが実情でございます。もちろん、これはさらに検討を続けていかなければならぬと思っております。  それから、いわゆる免除の問題につきまして、これは私どもとしても、いわゆる国の社会福祉政策なり教育政策のあり方からいって、NHKがどこまでそのことを受信料の中で負担すべきかは大変疑問に思っております。したがいまして、これもかねがね国の方には、この免除分を国の方で負担していただけないものかということは申し上げているわけでございますが、国の方の財政状況の中でとてもそれはできないという御答弁。さりとて、それでは私ども受信料対策としてこの免除を打ち切って、生活保護世帯の方から受信料をちょうだいできるか、すべきかということになりますと、これまたNHKが、言ってみればそれこそ福祉切り捨てのような態度にもなりますし、それはまたすべきではなかろうということで、結論的に毎度同じような答弁をして申しわけないのですけれども、なお研究は続けておりますけれども、今なおそこは引き続き検討させていただきたいということでございます。
  44. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 大臣、今の質問ではどうお考えですか。
  45. 佐藤文生

    佐藤国務大臣 今の質問を聞きまして、なるほど自動車やほかの消費物資と同じように一台ごとに取れば、それはもうNHKは相当な収入になる、こう思いますが、現実的になかなかできないことだな、こういう印象を受けました。
  46. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 できないことはない、初めのスタンスが間違っておった。初めのスタンスが間違っておったのなら、どこかでスタンスを変えなければならないのですね。スタンスを変えようとしないから、これはできないんだと私は思うのです。確かに技術的に難しい面がないとは思いません。かなり難しい面があるのは承知ですが、それを研究し克服する姿勢に欠けておる、そこに問題がある。これはいずれこの次、決算のときまたやりますから、きょうは多くは申し上げません。しかし、そういう発想があるということについて、大臣もひとつ十分理解をしておいていただきたいと思います。  先ほど同僚の議員からちょっと質問がありましたが、何といってもこれは六十一年度NHK予算ですから、先のことを聞くのはいけないのですけれども、前、三カ年計画を出されましたが、今年度もまた来年度に百億足らずの金を繰り越すことになっております。そうすれば、大体この六十一年度NHK予算審査するに当たっては、次の三年くらいの中期的な展望を知らしてもらった方が、我々としては非常にやりやすい。受信料値上げをするかどうか、そういうところまで突っ込んだ議論をするつもりはありません。しかし、大体向こう三年間くらい、百億足らずの金を繰り越した後のNHKの運営はどうなるのだろうか、そのくらいのことは、議論をするに当たって我々も知っておきたい。その中期的なといいますか、三年間ないし五年間くらいな計画というものは全然ないのですか、出すに至っていないのですか。
  47. 林乙也

    ○林参考人 御指摘にもございましたように、六十一年度は五十九年度から始まります三カ年計画最終年度でございます。そういう点からいたしますと、六十二年度以降の収支見通しなどについても、いろいろ私どもとしても検討しておかなければならないということについては御指摘のとおりでございまして、私どもといたしましても、内部的にはそこらあたりについての一応の作業といいますか、検討はいたしております。受信料収入が毎年度ほぼ一%程度しか増が見込まれないという状況のもとにおきまして、公共放送としての業務達成いたしていくためには、やはり四%程度事業費の支出の増が必要となってくるのではなかろうかというようなことも予測されておりまして、そういったことを前提にいたしますならば、各年度収支約百億程度収入不足といいますか、赤字が見込まれるというようなことはございます。  ただ、今後のそういった収支見通しあるいは経営計画というものを確たる形の中で取りまとめていくためには、やはり私どもとしてもなお検討いたさなければならない点もございますし、特に放送衛星の二号のこういうような状況のもとに、それの一定の仮定のもとに作業をするということもいささか不確定要素が多過ぎるとか、あるいは将来のオリンピックなどのイベントというものについて、どういうふうな形で取り組むべきかというようなことなども考えておかなければならないことを思いますときに、こういうような形で見込まれますということを国会の御審議の場にお出しするというところまでには至っておりません。私どもといたしましては鋭意努力はいたしておりますけれども、そういうような状況にありますことを御理解いただきたいと考えるわけであります。
  48. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 事業を運営していくわけですから、不確定な要素が多いのはもうだれでもわかっておるのですけれども、ちなみに、NTTが電電公社のころ、五カ年計画をつくって、三カ年くらい経過したころからまた次のものをつくってずっと行ったわけですね。我々はNTTの経営展望というものが非常にわかりやすかったわけです。悪く言えば場当たりということになりますが、場当たりというのは失礼ですけれども、できるならば三カ年計画が終わるときには、次の三カ年計画くらいについて大体の見通しくらいは述べてもらえるように、これも経営の基本的な姿勢としてひとつ努力を願いたいと思います。  大臣、きょうはどうしても結論を出してもらわなければならない問題が一つあります。それは、さっき大臣もちょっとお触れになりましたが、国際放送の問題でございます。根拠法規は放送法三十三条に明確に記されておりますように、郵政大臣地域、時間、項目等を指定をしてNHK国際放送を命ずることができます。これをやった場合にはその費用は国が負担する、こうなっておるわけです。  ところがややこしいことに、NHKNHK自身で国際放送をいわゆる自主放送としてやらなければならない。そこで、NHK自体がやる国際放送とあなたが命令をされた国際放送とが混然一体になっておって、どこまでがあなたの命令分か、どこからがNHKの自主放送が、区別がないのですよ。しかし、法の定むるところによって、今日まで郵政省を通じてNHKに交付してきた、国際放送の費用を負担してきたことは間違いないのです。ところが、どこまでが国の命令分で、どこからがNHKの自主放送かで区別がないために、この負担について長年議論になってきておるわけです。  私はかねてから、こういうことをいつまでも議論すべきではないということで、大平さんが大蔵大臣のときにそのことを申し上げたら、大平さんが、国はそのために必要なものは出しますよ、これは会議録に明確でございますが、そうおっしゃったのです。そこで私は具体的に、それではこの際NHKの負担しておる国際放送全体の費用、大体五十億前後と私は考えておりますが、この五十億のうちでNHKが六割なら六割、五割なら五割を負担します、国がその残りの四割なり五割を負担しますという負担区分を決めてしまって出し合うことにすれば、いや足らぬとか足るとかということが起こらぬで済む。しかし、さっき会長もおっしゃっておりましたが、財政上の困難さがあって国際放送受信状況は極めて憩い。大臣指摘されておりました。にもかかわらず、国際放送が財政的な負担のために十分にやれない、その半分の責任は国にあると私は思うのです。したがって、きょう何ぼと何ぼというまでは私も資料がありませんから言えませんけれども、六、四がいいか、五、五がいいか、それは別にして、大蔵省とNHK、そして郵政省が監督官庁として中に入って、負担の割合を決める、これだけは約束してもらいたいのです。
  49. 佐藤文生

    佐藤国務大臣 何といいますか、国際放送の内容の分析から考えて、政府の負担とNHKの負担というものを決めたらどうか、こういう御意見だと思います。これは検討を続けます。
  50. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 大臣一つ忘れてはいませんか。その前に、「前向きで検討します」というのではないですか。「検討します」ということは「やりません」ということになっておる、「前向き」が入って初めて幾らか取り組む姿勢がある、これは国会答弁の常識です。どうですか。
  51. 佐藤文生

    佐藤国務大臣 とにかくやるという方向で検討します。(「やるなんて言わぬ方がいい」「言い直しなし」と呼ぶ者あり)いや、ちょっと言い直しといいますか、私としてはやりたい、こういう気持ちで検討させていただきます。
  52. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 やはり我が郷里の大臣は立派なものでしょう。  会長、どうですか。
  53. 森島展一

    ○森島政府委員 ちょっとその前に事務的に……。  先生の御指摘の件につきましては、従前より各大臣が、国際放送のあり方という点で検討を続けるということで答弁されてまいりましたので、私ども事務的にも大いに検討をしたわけでございますが、何しろ財政事情が非常に厳しいということ、これは先生もよく御承知のことだと思います。それから、先生おっしゃいますように、国際放送の中で自主放送郵政大臣の命令する放送、これが一体で行われてきておるということがございます。観念的に分けて、命令放送分について国が負担する、こういうことでございますけれども、実際にそれを分けては運営しておりませんで、実態としては一体としてやっておるということがございます。そこで先生おっしゃいますように、割合を何か決めるべきだ、この御趣旨はわかるのでございますが、実際に決めることは非常に難しいということで、私ども検討を続けてきた結果、まだ結論を得ておらないわけでございますので、その点を御理解いただきたいと思います。
  54. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 大臣、今お聞きのように、財政が厳しいからといって国際放送をゆるがせにするわけにはいかないのです。たくさんの在外同胞がおりますし、また、国際的にも日本の放送を聞いてもらわなければならない。だから、これは大蔵省の財政が苦しいからといってゆるがせにするわけにはいかないわけです。そうすると、大蔵省が出さなければ受信者がかぶってくるわけでしょう。それでは悪いから負担の割合を決めてしまって、要るものはお互いに出していく。我々受信者も、法律に定められておりますから、出さぬというのではないのです。NHK自主放送分については負担しましょう。しかし、片方、国も命令してやらして、費用を負担しますとなっておるのだから、それは国が出してください。ことしは財政が厳しいから出しません、それでは国際放送を半分にするか。これはそんなわけにはいかないのですよ、必然経費ということになるわけですから。したがって、割合を決めていくことが最も望ましい。  そこで、実は所管官庁の大蔵省にも御出席いただいているはずですが、大蔵省、見えていますか。政務次官は来ていますか。あなたでいい。政務次官、わからぬかな。
  55. 佐藤謙

    佐藤説明員 お答えいたします。  ただいまの御指摘につきましては、阿部先生からこれまでも何度も御指摘を受けている点でございます。ただ、この問題につきましては、厳しい財政事情の中で、郵政省の一般会計予算をどのように重点を置いて配分をしていくのかというような問題にかかわっておりまして、まことに恐縮ではありますけれども、あらかじめ比率を定めて予算を策定するのは困難ではないか、かように考えている次第でございます。
  56. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 ここからはもう政務次官ですよ。今私が申し上げましたように、国際放送というものの性格から、国も責任を持って命令してこれをやらせる、放送法にこう定めてあるのです。そのかわりにその費用は国が負担します。ただ、どこまでが自主放送の負担をすべき分なのか、どこからが国が負担をすべき分なのかが明確でない。しかし、今の御答弁のように、財政が苦しければ金を出しませんとなれば、国際放送をやめるか、さもなくば受信者に肩がわりをさせるということになるわけです。そんなばかな財政のあり方はないはずですよ。例えば人件費。予算が足らぬからといって人件費を出さずに、飯を食わせぬでおきますか。それはできないでしょう。ならば初めから決めて、国の予算が厳しかろうと厳しくなかろうと、国際放送の重要性から考えて法律どおりの運用をしてもらうべきである。ただ、区分が難しい。難しいから、それは政治的に話し合って割合を決めてください。一番困るのは今おっしゃった答弁です。国の財政が厳しいから金が出せません。それで通されては困るのです。これはかなり政治的な判断が要りますから、政務次官からひとつ御答弁を……。
  57. 熊川次男

    ○熊川政府委員 国際放送に対する阿部委員の、大変情熱を内包した御意見は、感銘深く拝聴いたしました。
  58. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 率直に言って、きょう突然聞いて、政務次官もなかなか答弁しにくいのはわかりますけれども、さっきの答弁では困るのです。財政が厳しくなれば金を出しませんというような大蔵省の考え方では、放送法三十三条を一体どう解釈するかという問題が起こってくるのです。さっきの方、どなたですか。――私の言っていること、わかったでしょう。もう一遍。
  59. 佐藤謙

    佐藤説明員 御答弁させていただきます。  先ほど申し上げましたように、私どもといたしましても、国際放送の重要性ということも考えているわけでございますけれども、その中で命令放送として、国の金をもって実施する放送分というものを、一般会計の中でどういうふうに配分していくかというのは、まさにそのときどきの予算編成過程の中で、命令放送に対して国がどれだけ負担をするかということを決めざるを得ない状況にあるということを御理解賜りたいと思います。  なお、六十一年度予算におきましても、いろいろな経費が軒並み三角になっているわけでございますけれども国際放送につきましては前年同額の十二億四千万円を確保しておりますので、ひとつその辺の事情も御理解いただきたいと存じます。
  60. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 政務次官、地方交付税なども割合、比率が決まっているのです。地方交付税の比率を変えるときは法律を変えなければできないことになっているのでしょう。だから、この場合も、財政がありませんから金が出ませんという理屈は成り立たないから、ちゃんと割合を決めておく。その割合に無理があるなら寸そのときにもう一遍議論すればいいのであって、だから割合を決められませんという理屈にはならないのですよ。そういう理屈が成り立つなら、地方交付税の三二%とか三五%という割合を初めから決められっこないんだ。  これはやはり割合を決めておいて、そこでどうしても財政上無理があるときは、三十五条ですか、三十六条ですか、国会の議決した予算の範囲内という言葉があるわけですから、それが適用できるはずなのです。ですから、まず割合を決めておく、しかしどうしても困難なときには国会で議決した予算の範囲でやらざるを得ない、こう理解をしなければならないと思うのですよ。だから、今おっしゃるように、財政が厳しいから出せないことがあるとなってくると、NHKとしても予算の立て方がないと私は思うのです。ただNHKというのはお人柄がいいから、そこで国が出せぬならうちが出しましょうといって、NHKが出しているのじゃないのですよ、あれは。受信者がみんな負担しているのです、早くいえば。だから、気楽にそうおっしゃるけれども、それでは困る。困るから、会長もしっかりそこのところを、予算が組めるように負担割合を決めてもらった方がいいならいい、悪いなら悪いでいいのですよ。悪いなら悪いで結構ですから、答弁してください。
  61. 川原正人

    川原参考人 私どもとしては、もはや受信料から国際放送の方に回し得る財政余力というのはほとんどなくなってきておりますので、できるだけ国の方で負担をしていただければありがたいと思っておりますし、その率がある程度定まれば、これはもちろん今よりも高いところで決めていただかないと困るわけですが、それはそれで財政の運営としては非常にありがたいことだと思っております。  それから、先ほど来郵政大臣の御答弁のお言葉、あるいは郵政大臣がここで御答弁にならない面でいろいろと御苦心になっていることは伺っておりますので、大変ありがたいことだと思っております。  ただ一点だけ、これは蛇足でございますが、申し上げておきたいのは、私としましては、いろいろな財政上の運営もあると思いますので、交付金の形でもっと比率が上がってくださればありがたいのですけれども、どんな形でもいいですから、国際放送受信改善に役立つような形で公的なお金を使っていただければ大変ありがたい。それからもう一つ、その際に、番組の内容、制作と編集につきましてはあくまでNHKにすべてお任せいただきたい。この編集権、NHKの自主的な運営ということ、この点だけはいかなる場合でも守らせていただきたいということを申し上げておきたいと思います。
  62. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 国際放送番組は法に明記されておりますから、余り御心配されぬでいいと思います。  実は大臣、今会長がお答えになったようなことで、一昨年だったですか、国際放送を強化しようということで、補正予算かなんかで百億ぐらいということで、ここにおいての先生方みんなで骨を折りまして、八〇%にいったらとまってしまったのです。ところが、さっきのお話のように、大蔵省さんの方が金がないというので、二億ぐらいに削られましてやられたことがあるのですけれども、それならそれで、国際放送全体強化のために、負担割合について、どうしても難しいならば、もっと強化するための資金をもっと出すというようなことも考えられないことはないでしょうけれども、やはり予算のあり方としては負担割合を決めておく、その上に立って新しい施設等をつくる場合には、その施設についても同じような割合で国が負担をする、そういう原則を国際放送については決めておくべきだ。せっかく大臣からいい御答弁をいただきましたので、それを頼りにしておりますから、任期中に仕上げるように期待をしております。  大蔵省、どうですか。やる気ありますか。
  63. 佐藤謙

    佐藤説明員 重ねての御指摘でございましてまことに恐縮でございますけれども予算編成のあり方といたしまして、命令放送に係る予算をその年にどれだけ計上するかということは、そのときどきの予算編成の中で予算をどういうふうに配分していくのかということにならざるを得ないのではないかと、どうしても申し上げざるを得ないわけでございまして、ひとつその辺の御理解をぜひ賜りたい、かように存ずる次第でございます。
  64. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 今は亡き大平総理に対して私は大変申しわけないと思うのです。要るものは出しますと、この委員会でお答えになった。今あなたは、予算が苦しいからなかなか難しい。話が全然違うが、今は亡き大平総理大臣は食言をしたことになるのですが、いいですか。
  65. 佐藤謙

    佐藤説明員 五十一年当時だと思いますが、先生と大平大臣の間で論議がございまして、大平大臣より「郵政大臣実施命令によりまする国際放送がりっぱにその目的を果たすに足るような予算を差し上げるようにいたしたいものと思います。」かような御答弁をしていることは承知しております。したがいまして、私どもといたしましては、まことに厳しい予算の中でございますけれども、先ほども申しましたように、この国際放送につきましてはできるだけの配慮をさせていただいているということでございまして、何度も繰り返すようで恐縮でございますけれども、六十一年度予算につきましても前年同額の予算を何とか確保させていただいている、かような状況にございますので、私どもの考え方もひとつ御理解を賜りたい、かように存ずる次第でございます。
  66. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 一つは大蔵省というところが、大臣よりも事務当局の方が強いのかどうか、私は非常に疑問を持つのですけれども、もう一つは、前年度予算がこうだったからということを基礎に置いてお話しになっておるのです。前年度予算、その予算の基礎というのが正しいか正しくないかを私は議論しているのです。正しいか正しくないかということになってくると、これは割合を決める以外にないのではないか。前年度予算が絶対のものとして、それと同じ額を出したからいいんだという発想と、今負担している割合が正しいか正しくないか――正しいか正しくないかの原則は、大平大臣がお答えになったように、国際放送のために必要なものは出しますというのが大体負担の原則になっているはずですよ。その負担の原則を忘れて、前年がこうでございましたから、それと同じですからよろしゅうございましょうなどという発想はおかしいのです。  政務次官、せっかくお見えいただきましたので、今私が申し上げましたことの答弁は要りません、政治家としてひとつ誠実に大臣と話し合って、大平大臣もお答えになったことですし、必要なものは出すというのが原則で、では必要なものとは何かということについて郵政大臣NHKと御協議をいただく、そしてその割合を決める、この方向で御努力を願いたいと思いますが、それだけはよろしゅうございますか。
  67. 熊川次男

    ○熊川政府委員 確かに先生指摘のとおり、その予算は年々、そのときに特色を生かしつつ御審議を賜るべきものだと思っております。また、前年のものを一〇〇%ベースにするという点は、一つの重要な参考にはなるでありましょうけれども、また新しいスタンスに立って、そのときどきに検討を加えなければならないファクターがあるだろう、これは認識しております。  加えまして、ただいま先生から御指摘、また御示唆のありました点については、ただいまの御意見を忠実に大臣に上申し、検討させていただきたいと思います。
  68. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 それでは次に参ります。  次は放送衛星についてでございますが、先ほど会長の御答弁では、いつから実用放送にするか、当分は試験放送だろうというお話のようでございましたが、これは大体どういう見通してございますか。
  69. 林乙也

    ○林参考人 お答え申し上げます。  BS2bの打ち上げにつきましては、打ち上げ後現在までは順調に推移いたしておるところでございます。この七月でございますが、NHKが衛星を引き取った後の計画といたしましては、2bの信頼性というものを十分確認するということにまず万全を期さなければならぬというように考えておりますし、またBS3への放送継続性ということにつきましても、これを見定めておくことが必要かというように考えておりまして、そういったことのために、当面は試験放送という形で行ってまいりたいというように考えておるところでございます。そして、その間に番組の面につきましては、二チャンネルを利用いたしましての本格的な放送へ徐々に近づけていく、魅力ある番組放送するように進めてまいりたいというように考えておるわけでございます。  現在2aの故障のゆえに、衛星放送受信できる受信機普及というものは全く停滞をいたしておるわけでございまして、私どもといたしましては、この技術の開発あるいはサービスの開発ということまでに相当の経費を投入して推進してまいりました衛星放送の成果が速やかに広く国民に還元されることが、現在の問題としては何よりも大切だと考えておるわけでございまして、衛星放送普及促進に積極的に結びつけていきたいと考えておる次第でございます。ただ、それとあわせまして、やはりあくまでも信頼性を見定める間は、試験放送ということで行わざるを得ないと考えておるところでございます。
  70. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 去年BS2aを打ち上げたときには、去年の五月から実用放送として受信料もいただきましょうということで、大体万全であったかどうかはともかく、一応準備は進めてこられたはずです。たまたまaが失敗をしたということで試験放送に切りかえたのですが、その経験を生かして今度はbを打ち上げて、うまくいきそうだ。ことわざに「あつものに懲りてなますを吹く」ということがあるのですけれども、この前失敗したから、今度は前よりももっと長い期間試験放送をせんならぬという理屈はない。この前失敗したのだからこそ、今度は失敗をせぬように、もっと早い時期から、苦しい財政の中で受信料がもらえるような計画をお立てになるという方が本当で、そんなにこの前のaほども自信がないbならば、上げるべきではなかったと私は言いたいのです。aで失敗したがbは大丈夫ということでお上げになったのでしょう。それがまた怖いというなら、bを上げずにもっと待っておけばよかったのです。上げたということは、相当の自信がある。少なくともaのような失敗はしないということでお上げになったのですから、なるべく早く実用放送にして受信料をいただけるようにしなければ、わずかでしょうけれども、しかし負担する側は三百六十億ですよ。大変な額なんです。  しかも、これを上げれば難視聴解消になって受信料も入ってきます、何もかもNHKがバラ色になるようなことを言って打ち上げたのですから、今度はひとつ余り慎重にならずに思い切っておやりになって、失敗したら失敗したてしょうがないじゃないですか。そのときは頭を下げて、済みませんがだめになりましたから受信料はやめます、こういけばいいのです。そうでなければ、いつまでたっても、今度はBS3との関係を見なければならぬといったら、これは昭和六十五年でしょう。昭和六十五年のBS3の状況まで眺めておって、投資した金は一体どうなるんですか。それは大変な話ですよ。しかも、大体去年の五月から受信料をもらえるように準備はでき上がってしまったはずなんですから、今度は怖がらずにやったらどうですか。
  71. 林乙也

    ○林参考人 確かに、「あつものに懲りてなますを吹く」というような厳しい御指摘でございます。私ども、厳しく認識しておるところでございます。  一言申し上げさせていただきますと、衛星放送計画というものは引き返すことができないということかと思います。2aの際にも、私どもといたしましては、それが正常に機能することを確信してスタートいたしたわけでございますけれども、あのような事態に相なりましたことを思いますときに、2bの場合にはやはり慎重の上にも慎重を期して、着実な推進を図っていかなければならないのではなかろうかと考えておるところでございます。現在まで順調でございますけれども、秋にやはり食の問題がございます。二回程度の食を正常に越すことができれば、それなりに安定しておることも確認できるわけでございます。そういうような状況を見定めながら、放送サービスの方といたしましては、二チャンネルによります試験放送の中におきましても、やはりそれなりに展開をしていくことができるのではなかろうかと考えておるところでございます。
  72. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 では、その問題は決算の方に譲りましょう。  きょうはせっかく科学技術庁お見えいただいておりますから……。実は前島政務次官、科学技術庁が宇宙開発事業団を通じてこの放送衛星に対して出資をされておるわけです。約六百億の六〇%がNHK、四〇%が宇宙開発事業団、こういう割合になっておるのです。  まず私がわからないのは、放送衛星を打ち上げるのに国が出資をしておるのですよ。交付金でもなければ補助金でもないのです。したがって、これは国有財産です。国有財産だから、出資証券が大蔵省の金庫の中には山のようにあるはずです、毎年毎年出資するんですから。一体そういう財政の運営というものはあるのだろうか。科学技術庁は一体どうお考えになっておるのだろうか。これが出資ではなくて交付金か補助金で、それは額が少ないから、足らない分についてはユーザーも負担して両方で一緒にやるというのは、私、話がわかるのです。出資である以上は、やはり国がリスクを負うて開発をする、開発をしたかわりにそのものを利用させて、今度はユーザーから金を取る、これなら私は出資という趣旨がわかるのです。ところが、行ったまま全く返ってくることのない、見返りのない金が出資でどんどん出ていっておる。これは政務次官、どうお考えですか。
  73. 川崎雅弘

    ○川崎政府委員 お答え申し上げます。  たびたび先生の方からもいろいろ御指摘がございますが、御案内のとおり、宇宙開発事業団というのは、我が国の宇宙開発利用の基幹的な技術をできるだけ自力で、早期に開発を進めるという使命を持っておりまして、これまでも人工衛星でありますとかロケットあるいは追跡管制システム等に努力をしてまいりました。  これらの経費につきましては、現在のところ我々の方で考えておりますのは、およそ四つほどの理由がございます。  一つは、こういう成果というのは後代の日本の社会において長く利益が享受できる、そういう意味で一つの技術、無形ではございますが、あるいは有形のものもございますが、こういった共通の資産的なものであるという考え方が第一点でございます。  それから第二点は、貴重な税金から成っております国費を投じておるわけでございますので、これらの成果について、これは特許であるとかあるいはノーハウであるとか、無形のものもありますが、こういうことについて国が何らかの権利を留保しておく必要があるだろう、これが第二点でございます。  第三点といたしましては、こういう宇宙開発利用という、汎国民的といいましょうか、非常に公共性、公益性というものがございますので、こういうものについてはまさに一民間企業にゆだねるべきではなくて、国が全体を調整しながら進めていかなければならない責任がある。そういう意味で国費を出す必要がある。  さらに、今のような出資という形をとることによって、数年にわたるかなり長いプロジェクトを進めていき、かつその成果がまた数年に及ぶというようなことを考えてまいりますと、こういう出資の方式というのが適当ではなかろうかというふうに考えて、これまでもこの出資金による開発を進めておる次第でございます。
  74. 前島英三郎

    ○前島政府委員 お答え申し上げます。  ただいま政府委員が詳細御説明申し上げましたが、私も政務次官を拝命いたしましてから一生懸命勉強いたしまして、宇宙開発事業団で行うこうした長期的かつ大規模なものというのは、有形、無形にとらわれず、国の財産であると思っております。そういう意味では、この資金投入方法というのは大変ベターである、このように私も理解しているところでございます。
  75. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 有形無形の財産が国民のものであり国のものであるということに、私は何も反対するわけではないのです。しかし、さっきの御答弁を聞く限り、だから出資という形態をとらなければならないということにはなりません。国がみずから開発をし、あるいは援助し、補助してやるわけですから、そのお金が出資でなくて、交付金であっても助成金であっても、それは同じです。出資と言う限りは、常識的に考えて、その出資したものに対する見返りがなければならない。有形無形という言葉を使われますが、およそ出資ならば、返ってくるものがあってこそ初めて出資で、そうでないものは交付金か補助金なんです。  仮に大蔵省の金庫の中に出資証券というものが山積みになった。将来これは一体どうなっていくのですか。毎年毎年膨大な金を出資、出資といって支出していく。その見返りは紙切れだけなんですよ。何も返ってこない。ならば、出資と言う以上は、私が申し上げたように、それを国が開発してしまう。開発してしまって、そのかわり、でき上がったものをユーザーに利用させて利用料を取る。その結果がプラスになるかマイナスになるか、それは別です。それなら出資で処理ができるでしょう。しかし、やってしまって何も返ってこないものを、出資証券ばかり積み上げていって、これは国の有形無形の財産でございますといったって、そんなものは国民が納得できますか。恐らくこれは出資であるから国有財産になるはずですよ。三年たったらなくなる放送衛星、五年たったらなくなる放送衛星が、国有財産でございますなどといって国の財産になったって、国民が納得できますか。それならば私が申し上げたように、はっきりとこれは補助金なら補助金、しかし、国も財政が苦しいから、ユーザーが少し持ってくれといってやるならわかりますよ。  これはちょっと聞きますが、NHKも出資ですか。
  76. 井上豊

    井上参考人 NHKの場合は建設費支出をしております。したがって、出資ではございません。
  77. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 これは建設勘定の中に入っているのです。そしてこれは支出です、NHKは。一つ放送衛星が、国は出資した財産であると言い、NHKは投資したもので、行く行くはなくなると考えているわけですね。これだけの食い違いが出てくるのです。おかしいでしょう。  ですから、きょうは私は直ちに結論というわけにはいかぬかもわからぬと思うのですけれども、あれを出資として扱うことには私は非常に疑問があるし、もし出資としてお扱いになるなら、ぜひ私が申し上げたように、毎年毎年同じ額を出さぬでいいから、何か一つのものをちゃんと、放送衛星なら放送衛星をやる。そのつくったものは全部国がリスクも何もかぶって処理をする。そしてそのかわりに、処理が終わった後は、実用化した後はユーザーに利用させる。そこで料金を取る。こうなれば出資でぴしゃっといくし、国民もなるほどと、そして開発のために赤字が出た、これはしようがないだろう、これで片がつくと思うのです。これをひとつ御検討してみてください。いいですか。
  78. 川崎雅弘

    ○川崎政府委員 お答えいたします。  ただいま阿部先生の方からいろいろ御指摘がございましたけれども、いろいろ財政当局等と協議をいたしております事項の中には――今宇宙開発事業団というのは、政府が持ち分を持っておりますいわゆる出資法人でございます。そういう意味で、出資ということについては、いわゆる政府がその出資法人の事業に対して出捐する場合に出資という形態をとるのだというような区分になっておりまして、いわゆる補助金、交付金というようなもののたぐいとは性格を異にしておるという点については御理解を賜りたいと思っております。  それから、料金方式というようなことも考えていってはいかがかというような御提案でございますが、これまで私どもの方では、いわゆる技術開発を専ら目的としている技術試験衛星でありますとか、放送衛星につきましても第一号のような極めて技術開発要素が強い場合にはすべて国費で賄って、技術的なノーハウあるいは特許の取得ということに徹してきたわけでございますが、たまたま実用の可能性が浮かんできておる場合には、ユーザーの方の御事情も十分開発の中に反映させ得るシステムとして、今のようなやり方を行っておるわけでございますので、その辺についても御意見に相違があろうかと思いますけれども、重々御理解を賜りまして、このようなものの開発に一層御支援を賜れば幸いかと思っております。
  79. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 政務次官、おかしいのですよ。なぜおかしいかというと、そういう開発のために必要な金なら、人件費もみんな出資ですよ。宇宙開発事業団の人件費もみんな含めて出資ならまだわかるのです。人件費は出資じゃないはずですよ。交付金か補助金かになっているはずです。そのように分けているはずですよ。ということは、言いかえればどっちでもできぬことはないということを意味しておるのです。それを、今までやってきたことにとらわれて、いつまでも出資だ出資だと言い張るけれども、その他開発のために有形無形の財産をつくったのだから出資だと言うなら、それをつくるために要した人件費もみんな出資ですよ。しかし、人件費は出資じゃないはずです。調べてみてください。それから、余りつまらぬことを言い張らずに、もう少し検討するという姿勢が政府にあってほしいと私は思うのです。  時間がなくなりましたから、最後一つNHKと開発事業団に保険について聞きます。これは今までの経過があるから私は賛成できないのですけれども、あの衛星は、NHKが六、事業団が四という持ち分がかります。しかし、NHKはこれを打ち上げまでは通信・放送衛星機構を通じて事業団に委託してあるはずです。だから、打ち上げまでの責任は事業団にある。それから、今度受け取った後はNHKにある。そこでNHKは六割と四割の持ち分に従って、受け取った後の寿命保険を掛けるのです。  ところが、打ち上げ保険についてもNHKは四割負担をするのですよ。そうでしょう。ところが寿命保険については事業団は負担しないのです。放棄するというのです。同じ持ち分がありながら、事故が起こったときにはNHKが掛けた保険だけしか寿命保険では返ってこない。打ち上げの方で事故があったときには、NHKが掛けた分も事業団が掛けた分も返ってくる。そんなばかな話がありますか。打ち上げは委託してあるのですから、委託した方についてもNHKが四割保険料を持つのならば、寿命保険についてもやはり同じように六、四で持ってもらって、もし事故があったときにはそれをNHKがもらうようにすればいいのです。打ち上げまでは委託して頼んでありながら、NHKが四割保険料を負担する。打ち上げた後は同じ四割、六割の持ち分がありながら、私のところは打ち上げをやったら、後はもう用がないから、壊れようとどうしようと構いません、保険は掛けませんと事業団は言うのです。NHKは六割しか掛けないから、もし事故があったときは六割しか返ってこないのです。  そんなばかな話を、黙ってあなた聞いたのですか。それなら、打ち上げまでの保険料を全部向こうの責任で持たせて、そのかわり寿命保険はこっちが持つ。これなら筋が通るでしょう。打ち上げまでの保険料は六、四で持ちましょう。打ち上げた後は、私のところはもう壊れても構いませんから、ユーザーのNHKの分だけにしましょう。それで、はいと言って引き下がったのですか。  これは郵政省、どうなんですか。
  80. 井上豊

    井上参考人 私どもはBS2aの苦い経験もございます。したがいまして、2bにつきましても、万一の事故などに備えるために打ち上げ保険、それから先生指摘のように、寿命保険につきましてもこれを付保する必要があるというふうに考えまして、宇宙開発事業団など関係機関と協力をしながら、昨年の十二月までにいろいろ折衝をしてきたわけでございます。  打ち上げ保険につきましては、先生御案内のように、世界各国の衛星の事故等が相次ぎまして、宇宙保険市場が非常に悪くなっている中で私ども掛けたわけでございますけれどもNHKのこの保険は、打ち上げ保険につきましては、私どもの持ち分といいますか、それに相当するもの、それから寿命保険につきましては、先生指摘のように、私どもが取得しましたコストに対しまして寿命保険を掛けたいというふうに考えております。
  81. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 それでは答弁になっていませんね。私が言うのがわかりましたか。持ち分は四と六だ。だから打ち上げ保険についてもNHKが六割負担をして事業団が四割の負担をする。打ち上げた後も六、四の持ち分があるのだから、これを同じように負担するというなら筋が通る。ところが、打ち上げまでは向こうが責任があるから四割入って、事業団が六割掛けて、打ち上げまでの責任はお互いに持ちましょう、負担し合いましょう。打ち上げた後は、持ち分を主張しながら、私の方は要りませんから、あなたの方だけは掛けなさい、事故があったって私の方は保険は要りません、こう言っているわけでしょう。おかしいじゃないですか。NHKは打ち上げも掛ける、寿命も掛ける。事業団は打ち上げの方だけは掛けるが寿命保険は掛けません。そんなばかな負担の仕方というのがあるのでしょうか。要らぬなら要らぬでいいです。掛けたものをNHKにくれてやればいいのです。そのかわり、逆に打ち上げにおける事故は、向こうが本来責任を持たなければならぬのだけれども、六割もNHKが上げましょう、こうなるのです。  委託という契約は本来そういう形のものなんですよ。持ち分でいくなら今私が言ったようになる。委託という形でいくならば、前者については全部事業団が持って、後者については全部NHKが持つ、こういう形にならなければおかしいのですよ。  今のところ持ち分でいっているわけでしょう。六、四の持ち分でいっているのなら持ち分のように掛けるべきであり、契約形式でいくならば、委託の間は向こうの責任で掛けてもらう、引き取った後はこっちの責任で掛ける、どっちかでなければおかしいのです。  事業団、見えていますか、これはどうですか。
  82. 園山重道

    ○園山参考人 先生指摘のように、保険につきましては、打ち上げ保険は両者これは大体半々という考え方で掛けております。寿命保険につきましては、まだこれからのことでございますが、これはNHKさんの方でお掛けになるということでございます。  この考え方は、打ち上げ保険と申しておりますのは単に打ち上げのときだけではございませんで、今回の契約によりますと、打ち上げてから百五十日間ということでございます。これはロケット、衛星両方込みにいたしまして、その間に故障が生じました場合には保険金が出るという形になっております。先ほどからのお話もございましたが、四割、六割ということでこのプロジェクトをいたしておりますが、私ども宇宙開発事業団の立場といたしましては、やはり開発ということに重点がございます。したがいまして、この衛星、ロケットを開発いたしまして、打ち上げまして、軌道上で百五十日間のチェックをいたしまして、これで大丈夫だということでお引き渡しできるという段階になりますと、開発としての目的はほぼ達したという段階になるわけでございます。  したがいまして、その後の、今度はNHKさんが実際に運用をやられるわけでございますが、そのときの衛星に対しまして、もしトラブルが起こりましたりしました場合には、当然私ども十分これに御協力申し上げるわけで、その間のデータ等は、これまた開発にとって有効でございますけれども、私どもの開発の立場から申しますと、百五十日たってお引き渡ししました後の寿命期間を全うするかどうか、これは一つのデータとしては有効でございますが、これに対して保険を掛けるということにはなじまないのではないかということで、私どもは百五十日たちまして通信・放送衛星機構さんにお引き渡しするわけですが、このときには、その衛星本体の事業団の持ち分に対しましても、これは無償でお貸しするという形にいたしておるわけでございます。そのようなことで、打ち上げから実用のフェーズ、区を分けまして、打ち上げ保険、寿命保険ということになっているわけでございます。  寿命保険につきましては、私どもNHKさんに御協力申し上げまして、満足なものが掛かるように、これからも努力をするところでございます。
  83. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 一向に御協力しておらぬのですよね。長くなって、時間が来たと言うし、吹田さんがにらんでおるから余り長いことやらぬけれども、しかしどうもおかしいのですよ。開発のための金は、うちは責任を持つのだ、だから開発をNHKは委託したわけですね。事業団に開発を委託した。そして打ち上げて百五十日間、これで間違いがありませんというときにユーザーが引き取る、こうなっておるわけなんですよ。ならば、ユーザーに引き取らせるまでのリスクは、これは委託を受けた方がそのリスクを負うべきである。しかし、引き渡してもらった後は、今度はユーザーの方でリスクを負わざるを得ぬだろう。保険というものはそういうものだと僕は思うのです。ところが、前段の開発にかかわる部分についても、おまえのところ保険を持ちなさい、上がった後、引き渡した後はおれのところは知らぬから、おまえのところが勝手に保険を掛けなさい、こういう理屈になるので、どう考えても私は納得ができないのです。  しかし、これいつまで議論しておっても、時間がないようですし、(「決算、決算」と呼ぶ者あり)吹田さんの御忠告もありますから、決算のときに譲ることにしまして、質問を終わりましょう。どうも御苦労さまでした。
  84. 宮崎茂一

    宮崎委員長 松前仰君。     〔委員長退席、関谷委員長代理着席〕
  85. 松前仰

    ○松前委員 けさ私は、新幹線で参りました。品川の駅で約一時間、とまったきりだ。新幹線の中の車内放送は一切情報を教えてくれなかったという状況でございます。電話をかけようと思いましたら、電話機はあるけれどもそこの担当者がいないということで、電話をかけられません。全く情報というものが、乗っている人からはかけられない、伝えることはできない、こういう状況でございます。情報化社会という時代になってこんなこともあるものかなと思って、私は大変びっくりしたということなんですけれども、結局そういうところに盲点があるということをよく知ったわけでございます。  なぜけさ来たかということになると、昨日の新幹線がストップしておった。阿部先生は無理して来られたそうでありますけれども、ストップしておった。国電の状況も、NHKから、その他民放からも放送がありまして、大体のところはわかっておった。しかし、私が判断しようとする時間帯、すなわち四時から六時の間、この時間帯で判断をして、こっちへ来るかどうかということを決めよう、そう思って放送で聞こうと思いました。そうしましたら、民放の方は情報を少しずつ流しておるという状況でありました。NHKは一番信用がおけるから、NHKの情報を知りたい、こう思いましてNHKを回しますと、相撲の放送であります。大雪だというのに相撲の放送だけがどんどん流れておる、こういう状況でございまして、結局私は判断をすることができなかった。しようがない、こういう状況では、こっちに来ても中央線もとまっておる、こういうことで、どうせたどり着くことができないからやめようということで、けさに回したわけでございます。  きのうの状況を見ますと、みんなが地方から東京へ出てくる、そういう情報を一番知りたい時点において、NHKは相撲放送がずっと流れておって、その東京の状況が報告されておらない。こういう点で大変私は、きのうの段階において、NHKの姿勢というものについて疑問を感じたわけでございます。きのうなんかは日曜日ですから、地方といいますか、地元へ帰っておる人たちはたくさんおって、きのうの夕方、それともけさこっちへ来るという人が非常に多いわけでありまして、そういうときにNHKがもっと的確に東京の状況報道しなければいかぬじゃないかな、私はそういうふうに思ったわけでありますけれども、きのうのことについてNHKは、今その反省といいますか、そういうものをやっておるかどうかということについてちょっとお伺いをいたしたいと思います。
  86. 川口幹夫

    ○川口参考人 時ならぬ大雪でいろいろな被害が出ました。特にお昼前でありましたか、西武線の事故が伝えられまして、NHKとしては緊急情報の提供ということに非常に努力をしたと思っております。先生がおっしゃった相撲放送の最中も、実は四時のところと四時半のところと五時、それから五時半、優勝の賜杯授与が終わった直後と時間を割いて放送するなど、昼間の時間にも相当多面的、多角的に報道したと思っております。  それから番組の中では、特別にニュースという時間をこさえなくても、随時テロップ等でダブらせまして、国電とか道路の状況などはできる限り細かに伝えたつもりでございます。  それから、ラジオの方でも同じように緊急態勢を組みまして、相当詳しくやったと思っております。
  87. 松前仰

    ○松前委員 詳しくやられたということでありますけれども、そういうものを聞きたいときに聞くことができない。しょっちゅうテレビを見ていればそれは聞けるでありましょう。相撲放送の中で半分ぐらいそれをやっているならわかるけれども、ほんのわずかの時間帯ですから、そこを逃してしまったら次まで待たなければならないわけであります。NHKさんが一生懸命やられておることはわかりますけれども、今の情報化社会という時代になって、やはりこれはもうちょっと考えなければいけないのではないかな、技術も盛んに発達してきておりますので、そういう技術も使いながら、もっと状況を的確につかんで、心配のないように伝えてもらいたいな、私はこういうふうに思うわけであります。  そこで関連して質問いたします。  音声多重について、地域放送全国拡充というものを考えていらっしゃるようでございますけれども、私もこの音声多重については、現状はよくわからないのですが、異種番組を出すということについてはよいことになっておるかどうか、その辺、郵政省お願いいたします。
  88. 森島展一

    ○森島政府委員 テレビジョン音声多重放送につきましては、五十七年に免許方針ということで、第一点として「同時に行われるテレビジョン放送番組に係る事項」、第二点として「災害に関する情報」、この二点を放送の事項として決めておりますので、この範囲内であれば自由にできるということでございます。したがいまして、第一点の「同時に行われるテレビジョン放送番組に係る事項」というのは、平たく言いますと補完利用、こういうことでございます。
  89. 松前仰

    ○松前委員 そうしますと、災害の定義があろうと思うのです。どこまでを災害というかということになるのですが、きのうのような場合には音声多重を使ってやってもいいということでありましょうか。
  90. 森島展一

    ○森島政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  91. 松前仰

    ○松前委員 そういうことでありましたら、私は音声多重の受信機を持ってないからわかりませんが、きのうの状況NHKとしては音声多重によって東京のいろいろな状況について報道したかどうか、その辺ちょっとお伺いしたいと思います。
  92. 川口幹夫

    ○川口参考人 音声多重による異種放送はしておりません。
  93. 松前仰

    ○松前委員 放送してないということで、私も大変残念に思います。音声多重の普及状況が少ないとはいいながら、きのうのような状況になりますと、やはり災害の状況というものは時々刻々いつでも知りたいわけですから、ああいうような事態になりましたら、どんどんそういう放送をやっていただいて、市民を不安に陥れないような形にしていただきたいと思うわけでございます。そういうことをやることによって、また普及も大いに進んでいくのではないかと思いますけれども、ちょっと普及状況というのを教えていただきたいと思います。
  94. 矢橋幸一

    ○矢橋参考人 お答えいたします。  NHKは、昭和五十三年に東京と大阪地区で音声多重放送実用化試験周を開設した後、順次放送地区の拡大を図ってきました。その結果、現在三十八都道府県で音色多重放送実施しておる状況でございます。電波のカバレージでいきますと八九%になっております。さらに、六十一年度におきましては、まだ実施しておりません十五地区に拡充いたしまして、六十一年度末までに全国の拡充を完了することになっております。  一方、昔声多重受信機の出荷台数でございますけれども、電子機械工業会の調べによりますと、昨年の十二月末で九百七十五万台と聞いております。今後、協会音声多重放送全国拡充によりまして、新規の普及もさらに進むだろうと考えておりますで
  95. 松前仰

    ○松前委員 私は、音声多重の普及について、甘い考えを持ってはなかなかできないのじゃないだろうかという感じがしてならないのでありまして、先ほどお話のありましたように、音声多重放送番組の内容は、今表でやっているのと同じものが主にあるわけですね。もう一つは災害。この二つに限定されておる。ニュースなんかを英語で放送するのが多いようでありますが、今の音声多重放送がそれだけじゃ、買わなくてもいいやというのが多いんじゃないかと思うのです。ですから、今情報化社会時代と言われておりまして、NTTも民営化していろいろなものが自由に使えるような方向に向かっておる、それでまた新規参入も出てくる、情報メディアのチャンネルはかなり自由に使っていかなければならぬというニーズがうんと出てきた、こういう時代において、いまだに番組内容について非常にきつい規制をかましてある、これはちょっと時代おくれじゃないだろうかと私は思うのです。  音声多重放送の内容で、災害以外の、全く関係ない異種番組をやることについて、郵政省はどういう考え方を持っておられますか。
  96. 森島展一

    ○森島政府委員 音色多重放送の異種番組を出すといういわば独立利用につきまして、五十七年当時も随分議論があったところでございますが、先ほど申し上げましたように、免許方針として、現在は補完利用と災害情報に限っております。これを今後例えば独立利用というような形で認めていくべきかどうかということにつきましては、ほかの音声放送、ラジオ、中波とかFM放送、こういったものに対する影響、それから音声多重放送のメディアとしての特性からして、どういう番組までやらせることが適当かといったことを慎重に検討していかなければならないと思っておりまして、すぐに独立利用を認めるということは、五十七年の経緯からいたしましても慎重に考えなければならないと思っております。
  97. 松前仰

    ○松前委員 ほかのメディアとの関連でいろいろ慎重に考えざるを得ないところはたくさんあろうと思いますけれども、せっかくNHKが一生懸命全国普及ということを目指して考えている、それなのに一向に受信機は伸びていかないということは、やはりこれは中身の問題になってくるわけでありまして、この今の情報化社会という時代において、ほかのメディアで足らぬところを補ってほしい。さっき申し上げましたように、今の放送のメディアだけですと、ラジオにしてもテレビにしても、東京の状況を知る時間帯というのは、時分割で非常に狭められておりますので、それ以外の時間帯にすぐ知りたいということになれば、ほかのものはもっとチャンネルを設定してやる必要があろうと思うのです。それにはこの音声多重というのは非常にいいわけでありまして、災害以外の問題についても、天気予報とかしょっちゅう聞きたいものがたくさんあろうと思います。  そういうことで、異種番組というものについて、五十七年度のときはそうであったかもしれないけれども、現時点はもうかなり情報社会についての考え方は変わってきている。そういうことなので、郵政省としてぜひともこれについて前向きに検討をしていただきたい。私はそう思うのですが、郵政大臣、これについていかがでしょうか。
  98. 佐藤文生

    佐藤国務大臣 新しいメディアとして積極的に普及していきたい、こういうぐあいに考えております。しかし、いろんな面もございますので、そういう他のメディアとの関係等も考慮に入れながら考えていきたい問題である、こういうぐあいに思っております。
  99. 松前仰

    ○松前委員 他のメディアとの関連ということになれば、先ほどお話ししましたように、現状のメディアでは、聞きたいとき、知りたいときにすぐ知るということが欠けているということがありまして、そういうことでこの音声多重というのは非常に有効だろうということなので、ぜひとも前向きに検討していただきたい。  それで、異種番組ということになれば文字多重放送ですね。これは異種番組ですよね。明らかに異種番組である、同じテレビのチャンネルの中でやりながら異種番組をやるということですから。そっちは異種番組がよくて、昔声多重はまだだめだというのも非常におかしな話でありますけれども、そういう意味で、ぜひとも前向きに検討していただきたいと思います。よろしくお願いします。  それで関連して、異種番組といいますか、そういうサブチャンネルの関連で、衛星放送の音声の問題でございますけれども、PCMを使っているということは知っている人が少ないのじゃないかと思います。ただ音が流れてきている、普通の地上の放送と同じような方式でやっているというように思っている方はたくさんいらっしゃると思うのでありますけれども、PCMを使っている。このPCMは、たしか二チャンネル以上四チャンネルまで使えるはずだったと思うのです。今二チャンネル使っておると思うのですけれども、残り二チャンネルを一体どうしていくのか。これは郵政省、一体どういうふうにお考えになっていますでしょうか。
  100. 森島展一

    ○森島政府委員 先生おっしゃいますように、衛星放送につきましては、その音声はPCMで放送をされるわけでございますが、その場合、AモードとBモードと二つモードがございまして、Aモードというのは地上のFM並みの音質の音声放送でございまして、この場合は、衛星放送としてはAモードでは四チャンネルまでの容量があるわけでございます。ただ現在では、そのうち二チャンネルだけを使う、こういうことにしております。それからBモード、これはCD、いわゆるコンパクトディスク並みの音質が聞こえるという音声放送でございまして、Bモードを使う場合には二チャンネルしか容量がない、こういう形でございます。  繰り返しますが、現在はAモードでも二チャンネル、それからBモードでも二チャンネル、こういうような放送をしているわけでございまして、お尋ねの点は、Aモードで四チャンネルの容量があるわけだから、残りの二チャンネルについてはどうしていくのか、使っていっていいんじゃないか、こういうことでございますけれども、この点はこれからのBS2の実験の中で、ひとつそういう四チャンネルを使ったような実験、さらには衛星全体の映像も含めたチャンネルの中でのPCMの実験、こういうようなことも実験のプログラムによっては出てくるかと思いますが、こういう実験を重ね、それからそういうものに対する需要といいますか、視聴者にどういうニーズがあるか、こういうことを確かめながら考えていきたいと思っております。
  101. 松前仰

    ○松前委員 衛星放送の音声の四チャンネル、このうちの二チャンネルはいろいろと異種番組に使う可能性があるからこの四チャンネルにするんだということで、郵政省が頑張った経緯があるわけなんですけれども、その残りの二チャンネルについての、異種番組を通そうとか、そういう議論が全然今まで起こってきていない。要するに文字多重はどんどんと検討は進められたけれども、そのほかのものについては、異種番組がいっぱい入れる余地があるチャンネルがあるにもかかわらず、それは一体どうしていくかということを全然検討されていないということになれば、これは後手後手に回ってしまうんじゃないか、私はそういうふうに思うわけで、ぜひともその辺についても十分考えてやっていっていただきたいと思います。  私がもっと気になるのは、BS3が打ち上がったときに、この四チャンネルというものについて、PCM音声というものが一体どうなっていくのか、そこが私は大変に疑問を感じる。というのは、BS3になって、もしハイビジョンでもやっちゃったら、PCM音声はやらないんじゃないか。そんなことになれば、今やっているのは一体どういうことなんだ、こういうことになるんですね。これはハイビジョンあたりをやったにしても、このPCMというのは続けるつもりですか、郵政省。
  102. 森島展一

    ○森島政府委員 ハイビジョンといいますか、これは高精細度テレビジョンというのが正式でございますけれども、そこで昔声放送をどういうふうにするかということは、高精細度テレビジョンそのものをこれからどうするかということの中で位置づけられるべきものでございますけれども、これは国際的にも今規格統一に向けていろんな努力がされておるところでございますし、国内でも技術的な検討を進め、それからBS2でもそういう実験をやる、こういうことでございますので、将来どうなるかという形についてはまだ検討が進行中ではございますが、PCMの音声放送のよさ、こういうものを当然高精細度テレビジョンの中でも生かしていくべきであろう、こういうふうに思います。
  103. 松前仰

    ○松前委員 結局郵政省は一生懸命頑張ったというのを私も知っているわけですよ。PCM音声にしなさい、しなさいといってNHK、かなり圧力をかけられた点もありますけれども。そういう経緯がありながら、その後全然これについて検討が進んでおらぬということでは、これは必要ないということですね。こういう必要ないものを一生懸命開発して、受信機の値段が幾らになりますか、十万円くらい多くなっていると思うのですけれども、そういう受信機の値段をつり上げる、高くするような使わない技術というものをあの中に入れて、それで普及がなされないということを言っているようじゃ、これはもう本末転倒なんで、郵政省としても余り将来見通しのないようなものはやってもらいたくない。これは郵政省としては一体本当に本腰を入れてやるつもりはあるんですか、ないんですか。
  104. 森島展一

    ○森島政府委員 PCMの音声放送のよさというもの、衛星放送でそういうものの特徴が生きていくということは、これは世界的に見ましてもそういう方向に行っているというふうに考えますので、私どもも本腰を入れてそういうPCMの使い方が生かされるような方法を考えたいと思っております。
  105. 松前仰

    ○松前委員 とにかく非常に難視聴解消というようなことで一生懸命やってきた時代においてPCMを強引に導入されて、そして受信機の値段が上がってそれで普及をしない。そしてあげくの果ては難視聴解消がなかなかできないじゃないか、NHKがたたかれる、こういうような図式になっている。これはちょっとやはり郵政省としても態度を変えて、もっと本当に普及させたいなら、本当にどうすればいいか、技術的にもどうすればいいかということをよく考えてやってもらわなきゃ困ると思うのです。BS3においても恐らくそういう問題が出てくる。そういう点では十分NHK意見を聞いてもらいたい、そのように思います。  ちょっと横道にそれちゃったんですが、会長がお戻りになりましたので、一言お伺いしたいのですけれども、先ほどから東京の雪の災害についての報道について、いろいろ一生懸命報道されたということを聞いておりますけれども、やはり地方に行きますと、東京へ行きたい人は東京の状況を本当に知りたいわけなんです。私なんか実は知人が阿佐ヶ谷でストップしちゃって、その後武蔵野の方に帰るのに帰れないという状況があって、そのときに交通機関がどうなっているかということを、私は阿佐ヶ谷からかかってきたのを電話でやっておったのだけれども、やはり家庭から指示するわけです、どうしなさいということを、ここがこうなっていると。実際に阿佐ヶ谷あたりでとまっている人はわからぬものですから。そういうときに、まだまだどうも地方に対しての情報は不足しているのじゃないだろうか、そんなような気がいたします。  東京ローカルはかなりやったようでありますけれども、私は、そういうことで今この時点で全国の、東京へ出てきたかった人がたくさんいると思うので、そういう人たちから声を聞いて、次のこういう災害の報道体制をどうしたらいいかということをぜひ御検討を早急にしていただきたいと思うわけでありますが、その辺の御意見をちょっとお伺いしたいと思います。
  106. 川原正人

    川原参考人 確かに御指摘のようなことがあったかもしれないと私ども思っております。どうしても我々大多数の受信者の要望をこちらがいろいろ推測しながら番組を編成していっているわけでございます。きのうの場合でも、何しろ東京あるいは関東地方が大混乱の状況でありまして、交通機関も道路も、それから停電等の事故も発生いたしました。ですから、関東地方の視聴者に対して最大限のサービスをしよう、特にラジオ等は徹底的にそちらの方に切りかえてやっていたように私も聞いておりました。  確かに、全国視聴者の方がまたどういう関心を持っておられるか、もちろん東京が大変だということについての一般的関心はあると思いますけれども、確かに、それではこれから東京に行こうとしておられる方々に対しては十分であったかどうかということになりますと、その点はこちらがいろいろ想像、推定をしながら番組を編成していくわけで、大多数の全国視聴者はもちろんその場所で生活しておられたと思うので、その方を標準にしたと思うのですけれども、相当の方が、おっしゃるとおり東京との行き来があったと思います。その点の情報がやはり少し足りなかったのかな、あるいはそれは我々の限界かもしれないなと思いますので、これはまた別の形の――今文字放送等も放送を始めておりますが、残念ながらまだ受信機がほとんど普及しておりません。文字放送などが普及すれば、視聴者の方の御要望に応じて、必要なときに必要な情報がとれるという形になりますので、将来はそういうことも含めてサービスに万全を期したいと考えております。
  107. 松前仰

    ○松前委員 万全態勢をとられたことはわかりますけれども、万全だと思っても、まだこういうところをやっておかなければいけなかったという、気がつかないところがあると思うのです。そういう意味で、今の時点でいろいろと地方の人たちの声といいますか、東京へ出たくて困った人たちの声を聞いておくといい。そういうことで申し上げたのでありまして、今やっていることがとんでもない不足であった、そういうことを言っているわけじゃないのであります。そういう意味でよろしくお願いしたいと思います。  放送というのは、さっきから話しますように、やはり災害というものに対しては非常に有効な手段なんでありまして、東海地震あたりで緊急放送システムというのをNHKの方でおつくりになって、東海地方の人たちは大変に喜んでいるわけです。しかしながら、どうもこの緊急放送システムというのは普及が思うようにいっていないんじゃないか、そういうことでちょっと疑問を感じておるわけです。今この普及状況というのは二万台ぐらいと聞いていますが、そうでしょうか。
  108. 矢橋幸一

    ○矢橋参考人 緊急放送システムの受信機は、これも日本電子機械工業会の調べなんですけれども、本年の二月末現在二万三千八百台と聞いております。
  109. 松前仰

    ○松前委員 二万三千八百台ということになりますと、静岡だけとってみても、県民の二%とかそのぐらいじゃないかと思うのですが、そんな状況では普及の見込みがどうもなくなってしまう、疑問を感じるということなんです。とにかくこの緊急放送システムを普及させないことには、幾ら災害に対するいろいろな手だてをしておいても効果がなくなってくるということになりますので、これをいかにして普及するかということについて、行政側としてはいろいろ指導なり対策なりを講じていかなければならぬと思う。恐らくそれはされておるのでありましょうけれども、この普及についてどういう方針を持っておられるか、郵政省、ひとつ説明してください。
  110. 森島展一

    ○森島政府委員 この緊急警報放送システム、これはNHK全国的に実施しておりますほかに、民放でも在京、在阪それから静団地区の社を中心にして十七社が実施しておるわけでございます。それで、何といってもこれは受信機普及しませんと、その緊急警報システムの効用が十分に発揮されませんわけで、私ども放送事業者それから防災関係機関、メーカー、こういった関係者を集めた連絡会を設けておりまして、そこでこの緊急警報放送システムの周知それから普及促進、こういった策をいろいろお願いしてやっております。最近におきましても、全国の都道府県の情報通信担当部長会議という席で、この緊急警報放送システムを周知しまして、これを市町村レベルまで住民によく知らせてほしい、こういうことも要望しております。
  111. 松前仰

    ○松前委員 普及に対してどういう方針を持っているかというと、いろいろ会議を開いて対策を練って、PRを周知徹底するように、こういうことだけで大体いつも終わるわけなんです。PRは当然どんどんやっていただいているわけですけれども、それでもなかなか普及していかないという状況があるのはなぜかというと、やはり今までテレビ、ラジオを持っている。テレビ、ラジオを持っている家庭に、そういう緊急放送システムを買いかえて入れさせるということになるわけです。そういうことを考えると、これはなかなか普及していかないと私は思うのです。ですから、これはどうしたらいいかというと、値段を下げるよりほかないんじゃないか、そう思うのです。  今現在結構高いそうであります。ここに資料がありますが、一万九千八百円から九千八百円というような受信機の値段、これは、普通の受信機よりは性能として見ますと高いわけですね。どうしても高くなるのはハードウエアがつくから、当たり前だと思うけれども、やはりこういう災害に対して本当に有効にこれを機能させるということになれば、値段を下げる何らかの手段が必要だ。これについて郵政省はどういうお考えをお持ちですか。
  112. 森島展一

    ○森島政府委員 おっしゃいますように、確かに受信機の値段を安くするということが大変必要だと思いますが、これにつきましては、先ほど申し上げました関係者の連絡会等でメーカーの方にもいろいろ要望しておりますが、私どもも、さらに何か方策がないか、こういうことを一生懸命考えていきたい、こういうふうに思っております。
  113. 松前仰

    ○松前委員 本当にこれは真剣に考えてもらいたいのです。というのは、今までのこういう災害に関するルートなんですけれども、津波に関していいますと、気象庁から出て、地方の気象台へ行って、都道府県へ行って、市町村へ行って、それで住民に行く、こういうルートが大体主に考えられておった。それと同時に、放送も正規のルートの一部として考えておる、こういう話を消防庁の方はしていたのですけれども、前のやり方ですと非常に時間がかかって困ってしまう、また、途中で情報が間違ってしまうということもあり得るわけですね。  そうすると、何が一番この災害について重要か、一番いいかというと、放送なんです。直接気象庁から情報が来て、放送局から住民に行くというやり方が一番いい、そして速い。津波なんかですと、日本海中部地震ですと、津波警報が発令されたのが津波第一波が来たときよりも後だというのですから、そのぐらいに津波というのは速い。東海地震の場合には五分で来ると言われている。それならば、やはりこういう直接住民に伝達するルートが一番いい。これを東海地方の人たちは要望しているのです。このシステムをどうしても普及して、それをきちっと運用していって防災に努めよう、それが一番いいということですごく要望しておりますので、そういう強い要望をぜひ知っていただいて、郵政省の皆様も現地へ出かけられて、その要望の声を聞いてもらってもいいと思います。ぜひともこれを普及させてもらいたいと強い要望がある。  現状ではどうも受信機の値段も高いし、なかなか郵政省も積極的な姿勢を示していないというようなことがあるので、どうかこれについては、何が何でも防災ですから、一生懸命郵政省として考えていただいて、普及ができるように方策を練っていただきたい。助成とかそういう方法もあると思うのですが、これについて、助成なんかはどういうぐあいに考えておりますか。
  114. 森島展一

    ○森島政府委員 緊急警報放送受信機に対して、まず税制の優遇措置、こういったようなことも私どもは必要なことと考えて、いろいろ昨年も考えまして努力いたしましたのですが、現在そういうことが実現いたしておりません。今後もいろいろそういった面の努力を続けていきたいと思っております。
  115. 松前仰

    ○松前委員 今後それについても、ぜひとも強い努力をしていっていただきたいと思います。  ちょっと話を変えます。  BS関係ですけれども、BS2bについて、トランスポンダーの状況その他もあろうと思いますが、つい一月前ぐらいでしたか、新聞に出ておりました。何か不調があった、こういうことが報道されておりましたが、現状について、トランスポンダー以外の部分を含めて、ちょっと簡単に事業団の方から御説明いただきたいと思います。
  116. 船川謙司

    ○船川参考人 それでは、BS2bの現状につきまして簡単に御説明いたします。  御承知のとおり、二月十二日に種子島から打ち上げまして、二月十五日にアポジモーターの点火、それから二月十六日には太陽電池を点火いたしまして三軸の姿勢が確立されたわけでございまして、その後、暫定的な静止位置である東経百十七度に静止させるための軌道制御を開始したわけでございます。当初、二月二十八日までに終了する予定でございましたが、途中、姿勢の変動が多くなるというふうなこともございまして、結局、三月一日に暫定軌道への投入が完了しております。  この姿勢の変動の原因につきましてはいろいろ検討しておりますが、その後、同じ状況で、四日ほどかけて再現試験を試みましたけれども、全く再現しませんので、非常に一時的なスラスターの誤動作が起こったものというふうに現在判断しております。  それから中継器につきましても、先週から中継器の試験を開始しておりまして、現在までに三系統の中継器を全部働かせまして、正常に動作することを確認しております。
  117. 松前仰

    ○松前委員 そうすると、現状では大丈夫だという状況だろうと思いますけれども、これから長いこと運用があるわけですから、慎重に取り扱っていただきたいと思います。  事業団にもう一つお伺いしたいと思います。  次の放送衛星として、今度メーカーがかわるということになっておるわけですけれども、メーカーがかわるというのにもかかわらず、いつでしたか、昭和六十五年度ですか、打ち上げというようなことが言われている。そしてまた、それに着々とNHKもお金を投入していかなければならぬ、こういう状況になっておりますけれども、そのメーカーがかわることに対して、特別な試験といいますか、そういうものは必要ないのでしょうか。
  118. 船川謙司

    ○船川参考人 お答えいたします。  BS3につきましては、先生お話しのとおり、メーカーを従来の東芝-GEの組み合わせから日電-RCAの組み合わせにかえたわけでございますが、かえました一番大きな原因は、BS2aで問題を起こしました中継器につきましては、むしろ国産に踏み切った方が間違いないということになりまして、中継器の実績につきましては、インテルサットの衛星その他どう見ても日本電気の方が実績が多いというふうなことで、中継器は日本電気。それでバスの方につきましては、実用放送に使うということでなるべく実績のあるものということで、RCAのバスを日本電気が使用して設計するというふうな構想を採用したわけでございます。特に日本電気のバスにつきましては、初めてのことでございますので、構体の熱構造モデルその他十分テストをする予定にしております。
  119. 松前仰

    ○松前委員 このRCAとか、メーカーをかえるというようなことがわかって私が非常に心配するのは、やはりこういう宇宙のものというのは本当に慎重に扱わないと、ちょっとしたことでもおかしなことになると思います。スペースシャトルの事故がそれを端的に示しているわけでありまして、本当に慎重に扱わなければいけない、こういうふうに思うのでありますけれども、打ち上げ時期だけは変わらないということは、どうも私は納得がいかない。郵政省としては、この打ち上げ時期というものをどうしても守らなければいけない理由というのは何かあるのですか。
  120. 奥山雄材

    ○奥山政府委員 BS3は、先生御承知のとおり、BS2における放送継続と、それから、新たに多様、増大化する放送需要に対応するということと、新しい放送技術の開発という三つの目的を持っているわけでございますので、その三つの条件を満足させるという見地から諸般の準備を進めてまいったわけでございます。しかしながら、その過程におきましてBS2aの事故がございましたので、その経験を生かして、再び不祥事を起こさないように所定の措置を講ずるための実験も行い、宇宙開発委員会でその保護措置が十分であるというお墨つきを一応もらったわけでございます。そのような路線に乗って2bの打ち上げを先般行ったところでございますが、2b以降の次の3に向けての放送衛星の寿命を考えますと、かつまた他方では、今度はBS3の場合にはNHKのみならず、新たに民間放送も入ってくるということで、いわゆる一般の商業上のペイラインにも達しなければいけないといったようなことから、さらに慎重の上にも慎重に信頼性を確保しなければならないといったことをすべて勘案いたしました結果、先ほど宇宙開発事業団から御答弁ございましたように、担当を東芝から日電にかえることによってこれらの諸条件がすべて満たされるという確信に達したのでございまして、その結果、六十五年度、六十六年度に3a、3bを打ち上げることに決定したわけでございます。
  121. 松前仰

    ○松前委員 郵政省は結局、あの時期にどうしても打ち上げなければいけないという理由がどうも今はっきりしない。要するに継続ということだけなんですね。BS、最初のあれから次に至る段階でもやはり継続だということで、時期をぴしっと決められてやった、急いでやったわけですね。そして結果としてはああいう形になってしまったということがあるのです。今度も、このメーカーがかわるというにもかかわらず、その打ち上げ時期だけは決まって動かしがたい。これは何かというと継続だ、それだけなんです。本当に郵政省としては、この放送衛星というニューメディアが今の社会でどうしても必要なのか、強い必要性を考えておるかということをちょっとお聞きしたいのです。
  122. 森島展一

    ○森島政府委員 これからの社会が高度情報社会ということで進むことを考えますと、その中で放送需要も多様化していく、高度化していく、こういう中で放送衛星というメディアに対する期待も、これは世界の中で見ましても、いろいろ放送衛星という計画が、足踏みしているところもありますけれども、大きく見ますと将来に向かって世界的にも動き出しておる。そういう中で、やはり私どもはそういう放送の多様化した需要にこたえるBSの計画は推進すべきだと思っておりまして、その推進の進め方、確かに着実に一歩ずつ進めていかなければならないということはございますが、今までの進め方を継続してやるべきものは当然継続性を保てるような形で進めなければならない、こういうふうに考えております。
  123. 松前仰

    ○松前委員 今の御答弁ですと物すごくこれは弱いですね。これは一般国民が聞いて、放送衛星、そんなにぼやっとした形でもってやるのか、そういうふうに思われても仕方がない。郵政省が一生懸命打ち上げ時期にこだわるその理由としては、これは全くおかしいですね。これはそんなことではやはりだれもが、打ち上げ時期はもうちょっと慎重に構えて延ばした方がいいのじゃないか、こう考えざるを得ない、そういう御答弁だったと思うのですね。だから郵政省は、本当にこれはやりたいんだということをもっと強く強く言うべきだと思うのです。そして、そのために万全を期して、絶対に大丈夫だという衛星をつくるんだということで今度の打ち上げ時期をぴしゃっと決めるということになれば、その間にいろいろなことをやっていかなければならぬ。そして、メーカーがかわるとなれば、その信頼性テストは郵政省で、国でもってやるぐらいのことを考えなければいけない。それは当然だと思うのですけれども、郵政省の姿勢は余りにもなまぬる過ぎます。  NHKの方は、恐らく内容について一生懸命考えていると思うのでありますけれども、いずれにしても放送衛星はもっと慎重に取り扱って――次の放送衛星のBS3については、先ほど話がありました民放の方も実は困ったなと言っているのですよ。そんなにお金ばかり取られていく、そして事故が起こっている、こういう状況じゃ困ったな、だけれども仕方がない、郵政省がとにかく打ち上げ時期を決めてしまった、そういうことで仕方がない。だから次の放送衛星、これを継続というただ単にそれだけの理由でその時期を決めるというのじゃ、やはり非常に弱い。とにかく信頼性がきちっと確保されて、絶対大丈夫だというまでは、やはり打ち上げることを延ばすということも考えていってほしいと思いますけれども、郵政省、郵政大臣、この点についていかがでしょうか。
  124. 奥山雄材

    ○奥山政府委員 繰り返しになって恐縮でございますが、2aに生じました故障につきましては、当委員会でもたびたび御論議いただきましたし、それに対しましては、少なくとも現時点で人間が考え得る限りの措置は施して2bを打ち上げたわけでございます。さらに3につきましては、先ほど来お話がございますように、NHKのみならず民間放送も入ってくるということで、慎重の上にも慎重を期さなければならないということは当然でございます。しかるがゆえに、当初予定しておりました六十三年の打ち上げを一年半延ばしまして、3aについては六十五年にし、bについては六十六年にしたわけでございます。  その間に、先ほど事業団から答弁申し上げましたように、これまで中継器について生じた故障の経過にかんがみまして、中継器において実績を有する日電をとり、またバスについても、既にサットコムシリーズで十分な実績を持っているRCAのバスを改良したものを使うといったようなことで、ほぼ所定の条件が全部満たされたというふうに考えておりまして、決してこれはスケジュールが先にあってこのような時期設定をしたわけではございません。あくまでも放送継続とあわせまして、衛星の信頼性の万全を期するという両方の面から見て、その条件が満たされたという上に立って判断したものでございますので、御了解を賜りたいと思います。
  125. 松前仰

    ○松前委員 とにかく信頼性、絶対大丈夫だという形でもって、確率で信頼性は言うのでありますけれども、その確率の線上にも乗っていないような放送衛星を打ち上げることはまかりならぬと私は思うのです。だから、そういう本当に技術的にこれで理論上も乗っているという状況になるまでは、打ち上げてはいかぬと私は思います。  そういう意味で、打ち上げ時期にこだわっているわけじゃないというお話がございました。ぜひとも郵政省も、打ち上げ時期にいつもこだわるという形はとらないでいただきたい。今まではどうもそういう節が見えておりました。そのためにいろいろの問題が起こってきたということなんです。どうかその点をよろしくお願いしたいと思います。郵政大臣最後にこのことについてコメントをお願い申し上げます。
  126. 佐藤文生

    佐藤国務大臣 宇宙開発への新しい技術開発の取り組みでございますので、先生の言われるような技術の完璧性を期しながら計画的に、段階的にこういうものは処置していくべきであろう、こういうぐあいに思っております。
  127. 松前仰

    ○松前委員 あとたくさん質問を残しておりまして時間が経過してしまいましたが、ぜひとも決算のときにはいろいろまたやらしていただきたい、そういう要望をして終わらしていただきます。
  128. 関谷勝嗣

    ○関谷委員長代理 はい、約束いたします。     〔関谷委員長代理退席、委員長着席〕
  129. 宮崎茂一

    宮崎委員長 中川嘉美君。
  130. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 まず、郵政省にお尋ねしたいと思いますが、五十八年十一月二十一日に旧行政管理庁が、特殊法人の業務の適正化、効率化を推進するために、各法人の監事及び監査機能のあり方について勧告を行ったわけであります。その中でNHKについても「監事の職務権限の明確化を図るための規定整備を行う必要がある。」と勧告をしているわけですが、中でもこの財務諸表及び決算報告書に監事の意見苦添付を郵政省並びにNHKに勧告をしておりますが、この勧告に対して郵政省はどのような回答をされたのか、お答えをいただきたいと思います。
  131. 森島展一

    ○森島政府委員 五十八年十一月に、先生おっしゃいますように行政管理庁の勧告で財務諸表、決算報告苦に監事の意見書を添付すること、それから監事の主務大臣への直接意見提出権を定めるべきだ、こういう勧告が出たわけでございますけれども、これに対しまして郵政省といたしましては、日本放送協会における監事の役割全体を考える中で引き続き検討してまいりたい、こういうふうに行政管理庁に回答しております。
  132. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 引き続き検討してまいりたいという御答弁ですが、その後の検討の経過といいますか、その辺はどうですか。
  133. 森島展一

    ○森島政府委員 NHKの監事と申しますと、経営委員会に対して責任を負うことになっております。行政管理庁の勧告の趣旨は、特殊法人の監事の任命の認可、こういったことが主務大臣にある、こういう例がほかは多いわけでございますので、そういったことから監事の意見書というものを財務諸表に添付して主務大臣に提出するということが適当であるから、そういうことを考えろ、こういった行政管理庁の勧告でございますが、NHKの場合、繰り返しになりますが、経営委員会に対して監事が責任を負う、こういうことになっておりますだけに、行政管理庁の言うような形がいいのかどうかということは慎重に私ども検討すべきであろうと思いまして、なお検討中でございます。
  134. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 何らまだ進んでいないというふうに考えられるわけですけれどもNHKに伺いますが、こういった資料についてどのような姿勢を示されたのか、この点いかがですか。
  135. 川原正人

    川原参考人 五十八年十一月の行政管理庁の調査結果については、これは郵政省から御連絡を受けまして、私どもの方から経営委員会には子細に説明してございます。  ただ、大前提としまして、この行政管理庁が取り扱いましにときの多くの特殊法人とNHKとは基本的な性格が異なっているというふうに私は考えております。つまり、NHKの場合は報道言論の機関として、できるだけ行政機関からの監督管理は最小限にとどめるというのが放送法の精神でもございますし、ありようであるわけです。そのために、NHK会長以下の執行部を任免し、あるいは監督するのは経常委員会というものがございます。経営委員会の非常に強い自主性というものが尊重されているわけです。かつ、監事というものはその経営委員会が任命し、経営委員会に対して監事は報告をするというふうになっているわけでございます。したがいまして、もちろん行政管理庁の趣旨は十分伝えております。それに対しまして経営委員会でも十分に御議論の上、今御指摘のような監事の監査結果の報告の形式については、やはり経営委員会がみずから判断すべきものであろうということで、経営委員会としては今まで監事の監査結果は十分に報告を聞いているし、今までの形式でよろしかろうという結論になっているものと伺っております。  しかし、もちろん監事が十分にいろいろな決算のこと等を監査すべきは当然でございまして、現在でも監事はその業務監査、特に決算等の監査に当たりましては、協会事業年度の財産目録、貸借対照表、損益計算書等につきましては担当役員から子細に説明を求めまして、私どもの役員が説明いたしまして、そしてその財務諸表が放送法とか施行規則に定めているような書式、内容に適合しているかどうか、これはもちろん確かめられておられます。それだけではなくて、いわゆる企業会計原則あるいはそれに基づいて協会で定めております経理規程等についても、決算諸表がきちんとなっているかどうか、これは監事が十分に監査しておられます。その結果を、これも子細に経営委員会に対して報告しておられまして、経営委員会はその方式でもって引き続き監事の仕事は十分であろうという御判断をしておられるわけでございます。
  136. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 やはり旧行政管理庁のこういった勧告ですから、当然そういった趣旨を踏まえて対応すべきだと私は思うわけです。  さらに、監事監査結果報告書の作成を指導するようにとの勧告もなされているわけですけれども、これに対して郵政省が「監事は、監査の結果を経営委員会に報告するに当たって、必要な具体的資料を用いて詳細に説明を行っているが、郵政省としては、改善意見趣旨を踏まえて、引き続き日本放送協会に対し、監査結果報告書の作成方要請してまいりたい。」こういうふうに回答しておられるわけです。しかしながら意見書並びに結果報告書がいまだに提出されてないわけでありまして、提出できないというなら、この逓信委員会において監査の意見を発表することは可能なのかどうか、この辺をお答えいただきたいと思います。
  137. 森島展一

    ○森島政府委員 このNHKの監事の監査報告書につきましては、行政管理庁の方の意見として、そういう報告書を作成して提出すべきだ、こういうことでございまして、これに対しましては、郵政省としまして、こういう監事の監査結果というものが現在経営委員会に対して口頭でなされておるというふうに聞いておりますが、これは報告書というような形でやるべきではないか、こういうことはNHKにも要望しております。ただ、報告書といったものを経営委員会に対して報告するということは、現在のこの放送法でも当然でございますが、それをさらに国会に提出するということにつきましては、これは監事の役割というものを考える中で検討しなければならない問題だということで、慎重な検討が必要だと思っております。
  138. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 どうも解釈がもう一つはっきりしないのですが、また、監事監査実施基準というのがありますね。この制定についても、NHKはつくっていないということで、旧行政管理庁の指導を受けて五十八年十二月につくっていますね。五十八年まで実施基準がなかったということはどんな監査をやってきたのか、至って不明確と言わざるを得ないと私は思います。これまで五十一年、五十五年、五十九年、三たびにわたって受信料値上げというものを繰り返してきたわけですけれども、たとえ今日NHKの財政が非常に厳しいというふうになってきているとはいっても、こういうことではまた値上げなどということは通用しないのじゃないかと私は思うわけです。  大臣、監査の報告書、意見書等をしっかり提出するように指導を強く求めますが、いかがですか。
  139. 森島展一

    ○森島政府委員 先生おっしゃいますように、NHKの監事の監査結果というものが、やはり書面ではっきり経営委員会に提出されるべきだと思いますし、提出されることが望ましい、そういうことで要望してきておりますけれども、これをNHKの決算書類に添付して国会に提出するということになりますと、これは放送法の問題になってきますので、そういったことが望ましいかどうか、これはまた国会の御審議にかかわることでございますので、私ども慎重に取り扱って検討してまいりたいと思っております。
  140. 佐藤文生

    佐藤国務大臣 ただいまの先生の御質問は、監事の監査結果というものを国会の方に提出してはどうか、こういう御意見だと思います。これに限らず、NHK経営計画、それから予算審議、こういうものは法律に基づいて国会の方で御審議を願ってやっていくということになっておりますけれども経営委員会に対する監事の責任という所在が明確になっておりますので、それ以上NHKにいろいろな面で郵政大臣として介入していくということについて果たしてどうかな、私はこういうような気持ちがございます。今先生の言われたそういう御意見をここでイエスとかノーとか言うのじゃなくして、やはり検討する課題ではあろうと思いますので、しばらくお時間をかしてほしい、こういう気持ちがございます。  放送の内容とか、あるいはいろいろそういうようなNHKが持っておる、法律でつくられたNHK、それから受信料というのは国民広くから徴収をしているといったような、国民生活に非常に影響があります特殊な法人でございますがゆえに、あらゆる面において御検討願うという点はお願いをしまして、今の一線以上に介入していくということについては、やはり慎重にケース・バイ・ケースで検討していきたい、こういう気持ちがあることだけを申し上げておきます。
  141. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 やはりNHK並びに郵政省、それぞれかなり解釈に主観といいますか、そういうものが入っているような気がするのです。この問題に突っ込んでいきますときょうは時間がちょっと足りないかと思い、また改めてこれはやらせていただきたい、こう思っておりますが、若干解釈に問題等もあろうか、しかしこれは大きな課題であろうと思います。  次に難視聴の問題についてですけれども、現在難視聴の解消の問題については、五十六年から五十七、五十八と若干減ってはきておりますが、五十八年に四十二万世帯まだ難視聴のところが残されている。それ以降はずっと現在に至るまで変化してないわけですが、四十二万世帯の難視聴解消を最大の目的として打ち上げたところの放送衛星、これだけでもNHKが三百六十六億円という莫大な予算をかけているわけですけれども、このことがNHKの財政を大きく圧迫していることも事実だと私は思います。それを承知で難視聴を解消しようと努力をしてこられたことも一応うなずけるわけですけれども、五十八年以降四十二万世帯の難視聴が減少していないというのは一体どういうことなのだろうか。難視聴地域の人たちは、放送衛星から送られてくる電波をキャッチしなければならない。それにはパラボラアンテナを購入しなければならない。しかし、こういったアンテナは大変に費用がかかるわけで、各家庭に置くわけにいかないのですが、パラボラアンテナを今設置すると費用がどのくらいかかるか、参考までにお答えをいただきたい。
  142. 森島展一

    ○森島政府委員 衛星放送受信いたしますためにアンテナ、それからチューナー、それと据えつけ費、こういうものを含めまして大体二十八万円ぐらいかかる、こういうふうになっております。
  143. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 一説によると五十万だ、六十万だというようなことも聞いたことがあるのですが、二十八万で果たしていいのかどうか。私がここで申し上げたいのは、長年の課題であった難視聴解消のために莫大な費用をかけて放送衛星を打ち上げた、後は、テレビを見たい山間僻地の人々はそのアンテナを買ってくださいというふうなことになると、果たして公正な行政と言えるのかどうかという問題です。  放送法に「日本放送協会は、公共の福祉のために、あまねく日本全国において受信できるように放送を行うことを目的とする。」このようにありますけれども、ここに一点資料がありまして、「過去三年間に廃止された国庫補助金名、金額および内容、廃止理由」こういった資料であります。これを見ますと、五十九年度ですね、「テレビ放送共同受信施設設置費補助金」「一億五千三百万円」、これが「テレビ放送難視聴解消を図るための共同受信施設設置補助」という内容になっておりまして、「廃止理由」は「事業計画の終了」、こういうふうになっているわけです。打ち上げたということは解消したということにならないと私は思うわけですけれども、四十二万世帯はまだ五十八年からずっと変化しないで今日まで来ている。これでは公正な行政を期することにはならないと私は思いますが、公正な行政というものを期するためにも、ぜひこの受信対策費を計上して、一日も早くこういった難視聴の解消に努力すべきだと思いますが、この点いかがですか。
  144. 森島展一

    ○森島政府委員 ただいま先生がおっしゃいましたように、このテレビ放送共同受信施設設置費補助金というものは五十八年度までで打ち切られております。これは、テレビの難視聴の世帯というものが非常に散在して、狭域化といいますか、そういうことで地上で難視解消を進めていくにはもう限度に近づいてきているということからして、衛星放送で一挙にカバーする、こういう趣旨で五十八年度までで補助金は打ち切られたわけでございます。ただ、御指摘のように、この放送衛星が上がっても、受信機が非常に高くつくということで、先ほどの四十二万世帯、これがすぐに衛星放送受信機を持つ、こういうことになかなかならないのが実態でございますので、この補助金を復活するということは現在の財政状況からまず不可能であろうと思いますが、この衛星放送受信機が低廉化するというのを待つだけでは、そういう散在した難視地域の方々のテレビを見たいという要望にすぐにこたえられないということから、私どもとしまして、地上でもいろいろ技術的に、例えば非常に高性能なアンテナをつけることによって地上波のテレビも何とか見られる、こういうようなところもございますので、そういう技術的なサポートとか、あるいは自主的に共同受信をしたい、こういうような場合のサポートとか、そういったことはこれからも大いに努力していきたいと思っております。
  145. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 今の御答弁を聞いていますと、何のために衛星を打ち上げたかわからないみたいなことになってくる。そのアンテナを高度な云々ということになりますと、何のために打ち上げたかということもわからなくなってきますが、これは時間がないので、最後にまとめて伺っていきたいと思います。  南大東島の難視聴解消、これは島に地上波が届かないということでNHKがそういうことを実行された。しかしながら、山間僻地も地上波が届かないわけです。同じなわけで、NHKが南大東島の難視聴の解消に努力されたのを悪いと言っているわけではないのですけれども、現実に四十二万世帯もあるこの難視聴地域をどうしていくか、これはぜひとも予算措置をとるべきじゃないかと思うわけです。  郵政省が今盛んに進められているCATVがありますけれども、これが山間僻地にまで、採算の厳しい中にあっても、同軸ケーブルを引っ張って、そして難視聴の解消に努力しようという動きも出ているわけです。これは本来国やNHKがやるべきじゃないか、このようなCATVや、自治体が共同受信施設をつくろうとするときに、むしろ国やNHKが補助を出すような手だてを考えるべきじゃないかと思いますけれども最後郵政大臣の御見解並びに決意のほどを伺って、質問を終わりたいと思います。
  146. 森島展一

    ○森島政府委員 先生おっしゃいますような、CATVによりまして難視聴を解消するという努力も続けられておるわけでございまして、それに対しまして補助金というような形で、山間部等において非常に散在した世帯に何とか援助できないか、こういうことは、私どももそういう何とかしたいという気持ちはいっぱいでございますが、先ほど申しましたように、財政事情から、まず難しいことであると思います。したがいまして、技術的に何かそこでアイデアによってうまい方法を探るとか、技術的以外にも何らかのそういう施策というものはこれからも考えていきたいと思っております。
  147. 佐藤文生

    佐藤国務大臣 CATVがだんだんと普及していく過程において、やはりCATV自体に対して法的にも、あるいはその普及の過程において、例えば建設省との関係において容易に有線が引かれるような措置とか、そういうような優遇措置というものは、CATVの普及のやり方について支援体制をつくっていくことは独自にやっていくべきだと思うし、またやっております。しかし、それに対して国なりあるいはNHKが補助金を出すということは、現況では財政的になかなか困難な状況である、こう思っておる次第でございます。
  148. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 終わります。
  149. 宮崎茂一

    宮崎委員長 永江一仁君。
  150. 永江一仁

    ○永江委員 昼休みもなしで御苦労さんでございます。けさほどから各議員の御質問がございまして、全部聞いておりましたので、できるだけ重複を避けながら二、三御質問いたしたいと思います。ただしかし、これは六十一年度NHK予算審議でございますから、予算審議の過程においては若干重複させていただきます。  NHK予算は、何といってもこれは受信料でほとんど賄っておる。そうすると、NHK経営という観点から見ると、この受信料をふやすということ、これが最大の問題になるわけでございます。昭和六十年度受信契約は四十三万件はふやす、さらに三カ年計画としては、六十一年度も同じように四十三万台をふやす、こういう計画になっておるわけでございます。まず六十年度契約達成見込み、そして六十一年度計画については全く変更がないのかどうか、この二点をお答えいただきたいと思います。
  151. 松本幸夫

    松本参考人 お答えいたします。  六十年度の四十三万の契約の増という計画でございますけれども、これは既に一月末の時点で八七%を超える進捗率を示しております。また、二月の状況もその後順調に推移しておりまして、私どもとしましては、四十三万の六十年度目標達成できるというふうに思っております。  六十一年度でございますけれども、六十一年度計画も、四十三万という長期計画計画をそのまま予算に計上してあるわけでございますけれども、先般発表されました国勢調査の結果を見ますと、世帯の伸び率が若干鈍化している、五十五年のときに想定いたしました世帯の伸び率に比べましてやや鈍化しているという傾向が見られますけれども、私どもとしましては、公平負担という意味から考えましても、従来の計画の四十三万を何としても達成して財政基盤の安定に寄与したいというふうに考えまして、四十三万の増を計上してございます。これも一層契約促進ということについて対策を講じまして、何としても計画達成してまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  152. 永江一仁

    ○永江委員 NHK経営の観点からも、この計画はぜひ達成していただきたいと思いますが、今御答弁がありましたように、世帯数は若干減ってきておる、それに比べて、事業所というような非世帯における受信契約が大きな位置を占めてくるのじゃないかと思うのでございます。  そこで、資料を見ますと、六十年度のいわゆる非世帯における契約率が、前年度が九一・九%が九一・四%に減っておるわけでございますが、六十一年度計画では、これがまた九二・五%に上昇するというふうな計画になっております。いわゆる事業所が非常にふえる中で、六十年度は率が減っておるのにもかかわらず、六十一年度は若干ふやせるという根拠はどういうところにあるのでございますか。
  153. 松本幸夫

    松本参考人 お答えいたします。  六十年度の数値がやや下がっているのに、また六十一年度は上がるのはどういうことかという御質問かと思いますけれども、これは、予算値をそのまま計算いたしますと先生おっしゃるような数字になるわけでございますが、六十年度非世帯の契約の増を五万と見込んでおりました。それが六万に実績がふえてまいりますので、予算値の数値よりも実績は高い数値にいくと思います。九二・二%ぐらいにいくのじゃなかろうかと思います。そうしますと、六十一年度末の数値も全体が底上げされますので、そこに今先生がお示しになられた数字よりも高い数字が出てまいるというふうに考えております。
  154. 永江一仁

    ○永江委員 そういうことで、世帯についての契約数をふやすということ、あるいは、いわゆる非世帯における事業所等の契約をぜひ努力をしてふやしていただく中で、NHK経営内容をよくしていただきたいと思うわけでございます。  午前中から、六十三年度には値上げをするんじゃないかという質問がありましたから、重ねてはお尋ねいたしませんけれども、何となく同じようなインターバルで、もう当然こうなってくる。何となくこの予算害の過去の経緯を見ておると、値上げをすればもちろん黒字になる、三年ぐらいでちょうどとんとん、そしてそろそろ値上げ数字上で見ますと、まことに失礼でございますが、余りにもでき過ぎておるような気もせぬではないわけでございます。そういう意味で、そういった経営努力の中でぜひとも六十三年度値上げということが阻止されるように、値上げせずに済むように、私といたしましても強く御要望しておきたいと思います。御答弁は結構でございます。  そこで、もう一点の側面でございます経営効率についてでございますが、いわゆる要員効率化ということで、六十五年までに一万五千人体制をとるということで頑張っておられる。このことも午前中の議論にございました。  そこで、数字的に申しますと、五十九年から六十一年の三年間に毎年二百人ずつ純減させて、六百人減らしてきたということは評価するわけでございますが、この一方五千人体制からいたしますと、昭和六十二年から六十五年のこの四年間に九百人減らすということからいたしますと、三年間で六百人、今度四年間で九百人ですから、実は昭和六十二年以後の四年間の方が非常に難しい、厳しいわけでございますね。果たしてそういうことが――大体数字というものは先細りということが一つのあれでございますけれども、このNHK計画によると、後年度に行くほどこの純減の数をだんだんとふやさなければいかぬという計画になっておるわけでございますが、果たしてこういう厳しいことが実行可能なのかどうか、また組合等との話し合いの中で、これは必ず六十五年には一万五千人体制にできるのかどうか、もう一度お答えいただきたいと思います。
  155. 植田豊

    植田参考人 御質問のとおりでございまして、六十二年度以降六十五年を目途としてさらに九百人の純減を行う計画になってございます。先生指摘のとおり、経営にとって大変厳しい道かと思いますけれども、私どもの自主的な決意として、ぜひとも実現を図ってまいりたいと考えております。  数点の重点項目を置いてございますので、若干御報告をお許し願いたいと思います。  第一に、スタッフあるいは業務管理体制を縮小しようという計画がございます。これは本部スタッフ要員のコンパクト化を図る、あるいは管理職の削減を図るということで、継続して努力しておる点でございます。  二点目に、業務の集約・再編成をしようということになってございます。企業務にわたって総合的見直しをする。この中には番組制作・報道取材体制あるいは技術体制、さらには事務処理体制というところまで徹底した改革を図りたいと考えでございます。  三点目に、地方局体制の見直してございます。管轄局、これはかつて中央放送局と言っていたところでございますが、管轄局の業務管理体制を見直す、地域放送あるいは地方局要員体制を総合的に検討するといった柱でございます。  もう一点は、これは午前中からもお話があった点でございますが、関連団体を活用してまいりたい、能率的な業務の分担体制を確立してまいりたい、こういう関連団体との協業の中で効率的な業務の展開を図ってまいりたい、このようなことを考えでございます。  以上のような幾つかの柱を軸に、NHKとしてはこの計画をぜひとも実現してまいりたいという決意でございます。
  156. 永江一仁

    ○永江委員 会長、いらっしゃいますね。この点について、去年も私同じようにお尋ねしたのでございますけれども、私どもは、この合理化、人員の削減、ただ、NHKで働いていらっしゃる方をとにかく厳しくさえすればいいというつもりはございません。何といっても官公労的な、いわゆるお役所的な体質のところは、人はふえる、そして給料は余り高くない、これが一つの通弊でございまして、昨年来この委員会でも電電の民営化をやったわけでございますけれども合理化をすると同時に、その見返りとして働いている人の給料がふえていく、これが相互作用として必要なのでございまして、私どもはただ労働条件を切り下げるためにこういうことを主張しておるわけではございません。逆に、この合理化の中でNHKの職員の給料をもっと上げていただきたいと私は思っておるわけでございます。  去年も申し上げましたけれども、職員の中には、NHKも民営化してもらいたいという声、声なき声があるわけでございまして、そういう観点からも、今の一万五千人体制をぜひ会長として決意を持ってやり遂げていただき、その形の見返りの中で職員の待遇はよくしていく。この相互作用の中において、ぜひともNHKの体制というものを合理化された体質というものに切りかえていただきたいと思うのでございますが、御決意をお伺いしたいと思います。
  157. 川原正人

    川原参考人 私としては今の、昭和六十五年に一万五千人まで人間を減らすということは、これは内外にお約束したことでございますし、何としてでも実現にこぎつけるつもりでおります。  ただ、御指摘のとおり、そのことは一人一人の職員には今までの仕事とはかなり違ったやり方を求め、それから今まで以上に密度の濃い仕事をしてもらわなければならないと思っております。当然、ただ締めるばかりでは職員の活力を失うおそれがありますので、いろいろな面で、例えば仕事にもっと張り合いの持てる方法とか、あるいは待遇のことも含めまして、できるだけ職員に明るい希望を持たせるように施策を講じていきたいと思っております。  ただ、何と申しましても、今世の中がここでまた円高の影響等を受けて景気がかなり厳しくなっておりますので、そういった中で私どもみずから合理化したから、その合理化した分はすべて職員の待遇にというわけにも必ずしもいかない面があると思いますけれども、その点は世の中の動きもよく見て、つり合いのとれた方法で職員に明るい希望が持てるような処遇をしてまいりたいというふうに考えております。
  158. 永江一仁

    ○永江委員 次に、これも午前中議論が若干ございましたが、国際放送につきまして、これは非常に重要だということ。特に海外に我が国の在留邦人がたくさんいるという中で、非常に重要度を増しておるわけでございますが、一点だけお尋ねいたします。  先般もいろいろフィリピンでもああいう情勢がありました。また南イエメンでも内乱があって、そこの在留邦人の唯一の情報源はラジオジャパンであったということが報道されておるわけでございます。一月十三日の南イエメンの状態について報道されておりますけれども、いわゆる情報源は午前九時と午後七時からのラジオジャパンだけだった、こういうことが在留邦人から言われておるわけでございますが、私ここでぱっと感じましたことは、午前九時と午後七時、先ほどの松前議員の、きのうの雪の話もありましたけれども、こういう本当に生死まで関係があるような緊迫した状況の中においてはもう少しそういう決まった時間、定時以外にも、海外在留日本人のために情報を伝達する、放送する、こういうことは非常に重要ではないかと思うのでございます。これは午前中のお話では、お金がないから、予算がないからということでは済まされないと思うのでございますが、何かこういう内乱状態が起こったところには、特に時間を延長するとか、定時以外に放送をするとか、そういうような臨機応変の措置はとれないのかどうか、お尋ねいたしたいと思います。
  159. 川口幹夫

    ○川口参考人 国際放送の大きな目的というのは、日本の国の状況とかあるいは主張とかを海外の外国人に知らせるというのが大きな一つの目的、もう一つは海外におります在留邦人のために情報を提供するということだろうかと思います。その点で私どもは今できるだけの努力をしておりますけれども先生のおっしゃった南イエメンの点については、実は一般向け放送の中で日本語で三十四回、英語では三十二回、一月十九日から二十三日までの間ですがやっております。これは全部八俣から出ております放送の同数でございます。  ところが現地では、八俣の放送というのはほとんど受け取れない、聞こえないという状況でございます。そこでガボンにありますモヤビの放送所というのを使いまして、そこからいわゆる中継放送でもって送っているのでございますけれども、このモヤビの放送所はアフリカ・ナンバーワンという放送局が持っているところでございます。実はアフリカ・ナンバーワンは、NHKのほかにフランスその他外国の放送局に賃貸をしております。したがって、あらかじめNHKはこことここというふうに二回とっておりますので、そこについては完全に確保できるのですけれども、そういう突発的なことが起こった場合には、関係各国とか放送機関との連絡調整ができないと実施できないという難点がございます。今度のことでも、幸いにして二回ずつやりました放送が、南イエメンに関してはほとんど完全に受けとめられておりましたので、まずは安心しましたけれども、今後の問題としては、そういう緊急事態における対応をどうするのか、これはもう既に交渉を開始しております。
  160. 永江一仁

    ○永江委員 今お話がありましたようにラジオジャパン、海外放送は日本の国のことを外国に知らせるあるいは在留日本人に知らせる、このメディアとしての非常に重要な役割はあるわけでございます。一方、我々日本の国民としては、海外のことが正しく受けとめられる、これはNHKとしても非常に重要な仕事であろうと思います。  そこで、きょうは時間がございませんので一、二点に絞ってお尋ねいたしますが、海外のいろいろな取材について、どの程度自由に取材ができておるのか。端的にお尋ねいたしますが、アメリカの農民の姿を取材する自由と北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国の農民の暮らしぶりを取材する自由度、これは全く同じであるのかどうか、お答えいただきたいと思います。
  161. 川口幹夫

    ○川口参考人 先生おっしゃるとおり、いわゆる自由主義国の情報の取材とそうでない国、例えば開発途上国でございますとか社会広義国でございますとか、そういうところの中では、必ずしも情報の取材については自由でないというところがたくさんございます。
  162. 永江一仁

    ○永江委員 NHKは不偏不党、そして中正でなければならない。私は、国内においてのそういった取材等は、まさに皆さんのNHKでございますから信頼をしておるわけでございますが、今私が心配いたしますのは、海外に行った取材がそういった制約を受けておるにもかかわらず、国内放送されたときに、そのことがもう一つ国民に明らかにされずに放送されると、非常に誤った情報を我々は受け取るということになるのじゃないかと思うわけでございます。この間のフィリピンの情勢その他につきましてもいろいろ報道されました。特に、それぞれの国の権力者の談話とかそういうものは同じでございますけれども、我々は、それぞれの国民の本当の私生活、庶民の姿はどれが本当かということを知りたいわけでございます。そういう意味で、国家的な非常な制約の中でそういった取材を受けたものは、一種のやらせ番組と言っても過言ではない。そういうものがあたかもそこの実態のようにもし報道されますと、これは日本国民にとりましても大変な問題だと思うのでございます。  そういう意味で、先ほど来国家権力から独立する――私は、NHKは確かに日本の国家権力からは独立して取材をし、放送しておると思いますが、一歩海外へ出たとき、外国の国家権力にどうなっておるのか。ある意味では迎合する、あるいは迎合とはいかなくても、取材の不自由さからやむを得ずそういった形になるおそれがあるのじゃないか。このことを私は非常に心配いたしますし、そういったことを我が党でも大変問題にしておるわけでございます。そういった取材の放送をすること自体に問題があるという議論もあることは確かなんでございます。私はそこまで言いませんが、少なくともそういった放送をするときには、これはこういう制約のもとに撮ったというコメントを入れるぐらいのことは、それが正しい本当の姿を国民に知らせる――これはいかにもありのままであると言うのかどうか、あるいはこの撮影にはその国の権力からのいろいろな制約を受けた、その中での放送である、こういうコメントを入れるかどうか、これが非常に重要なことじゃないかと思っております。  私もけさほど来、昨日の雪のことでいろいろありましたけれども、新神戸を六時半に出まして、東京駅に午前三時に着きました。本当に情報のちょっとした違いが、人間生活にとっては非常に問題だということを私も実感したのでございます。これは運輸委員会じゃございませんから、きょうは余り詳しいことは申しませんが、言うならば七時間も八時間も新幹線がおくれたわけですから、特急券の払い戻し――しかし、私が想像しておったように、東京駅はまさに午前三時はパニック状態でございます。払い戻しを受ける人が非常に並ぶだろうと思っておりましたら、新幹線の中では、払い戻しはするけれども非常に混乱をしておるから、それぞれ最寄りの駅で払い戻しをしてもらったらよろしい、ただし、東京駅でその判こを押してもらってください、そしたら最寄りの駅で特急料金の払い戻しをしますという放送があったわけです。ところが、実際に着いてみると、今度はその判こをもらうのに大変な人が並んでおる。しかも、よく聞いてみると、自由席の人の特急券は判こが要るが、指定券は日にちが入っておるわけですから、実際はこれは要らぬ。ただ一言それがついているかついていないかで、混乱状況は全然違うわけですね。  私は本当に情報の正しさということがいかに大事か、先ほどやらせ番組でないかというような例を申し上げましたけれども、確かにうそはついていない場合がある、うそはついていなくとも、一言足すか足さないかで全く違うイメージになるということが情報の恐ろしさだと思うのです。そういう意味で、私はNHKがこういった国家権力からの独立ということを声を大に叫ぶならば、少なくとも日本だけでなくて、外国の国家権力からも独立したという姿勢でこういった海外のものは取材をするということを、ぜひとも心にとめていただきたいと思うのでございますが、お答えいただきたいと思います。
  163. 川口幹夫

    ○川口参考人 おととい、三月二十二日の夜でございますけれども、「今、あらためてテレビとは?」という二部にわたる長い番組を実はNHK放送しました。これは昨年来問題になっておりますいわゆる過剰報道とかやらせ事件といった報道姿勢の問題、それからNHKに対してもいろいろな批判がございました。その中で、先生のおっしゃったような御趣旨のことを筑波大学の村松先生がおっしゃっておる。そのようなことについて私ども報道局の次長が答えたのですけれども、そのような場合の例えば取材制限に対して、日本人としてあるいはNHK報道者としてどのような態度をとるべきかということは、今後我々が一番考えなければいけないことだ。今おっしゃいましたように、あるコメントをつけることによってそれが非常にはっきりする場合はコメントをつける、あるいはカットすべきものはカットするというふうなことで、日本の公共放送NHKたる姿勢を何らかの形ではっきりとあらわしたい。私どももそのようにやっております。
  164. 永江一仁

    ○永江委員 時間が参りましたのでもうこの辺で終わりますが、要は、日本は取材の自由が日本国内においては非常にあるのです。ですから、我々日本国民は外国でも全く同じように、あのNHKのカメラが自由に行って自由に映しておる、当然こう受け取るわけなんです。その落差で非常に誤った情報を我々が受け取る危険があるということでございまして、この問題は非常に重要なのでございますが、あえてこれは郵政大臣にはお尋ねいたしません。不偏不党という観点から、これはやはり最高責任者の川原会長にお答えいただいて、私の質問を終わります。
  165. 川原正人

    川原参考人 確かに私ども、常にどんな権力、力からも自由に取材をし、表現をしなければならないと思っています。  御指摘のとおり、外国には必ずしも日本のように自由な取材が認められない場合が多々ございます。その点につきましては私ども十分に心をいたしまして、撮ってまいりました放送番組そのものが日本の方々に誤解を与えないように、その取材をしたときの条件なりその画面にあらわれている問題なり、あるいはどうしても画面にあらわすことができなかった問題について、できるだけ国民の方に誤解を与えないような形で放送してまいりたいと思っております。
  166. 永江一仁

    ○永江委員 終わります。
  167. 宮崎茂一

    宮崎委員長 武部文君。
  168. 武部文

    ○武部委員 私は、NHKの問題に入る前に、二点、郵政大臣の見解をお聞きをいたしたいと思います。  まず第一点は、今ここでNHK予算審議しておるわけでありますが、これは放送法第三十七条に基づいて行われておるのであります。ある方面で――これはある方面と言っておきますが、この法第三十七条に基づくような、国会でNHK事業計画なり収支予算資金計画を論議をしてその承認を得る、こういうことではなくて、郵政大臣の認可といいますか、そういうものに変えたらどうだ、こういう意見があるやに聞くのでありますが、これは極めて重大な問題でありまして、そのようなことはないと私は思いますが、まず郵政大臣はこのことについてどういう見解を持っておられるか、それをお聞きします。
  169. 佐藤文生

    佐藤国務大臣 先生の御質問があるということで、私も御質問の内容、今お聞きしまして、実はそういう話は私は全然聞いておらないわけでございます。したがって、そういう御懸念はない、こういうぐあいに思っております。
  170. 武部文

    ○武部委員 わかりました。結構でありますが、もう一点、国際放送であります。  国際放送の問題は、この委員会でも長きにわたって取り上げられた問題でございまして、八俣の問題は一応ああいう決着を見たわけですが、しかし先ほどもちょっと御答弁を聞いておっても、やはり国際放送予算の問題も出ておるようであります。パナマの方の問題も余り進展をしていないというようなことも聞きますが、予算にも限りがあるわけですから、このこともわからぬでもないわけですが、これまた一説に、外務省が、金がなければ自分らの方で出してもいいよ、こういうような動きが一部にあるように聞くのであります。金を出せば物を言う、これは当然のことでございますが、郵政省としてはそういう動きを承知しておられるか、あるいはそんなことは全くない、郵政省は国際放送について、主管官庁としてこれからもその方針を堅持していく、こういうお考えなのか、この点をひとつお伺いをしたい。
  171. 佐藤文生

    佐藤国務大臣 お答え申し上げます。  今までどおりに郵政省が責任を持って、NHKとともに国際放送に当たっていく、こういうぐあいに信じております。
  172. 武部文

    ○武部委員 結構でございます。この二つ、最初にちょっと郵政省にお聞きをしたかったのであります。  さて、NHKの問題で、私は順序はちょっと不同になりますが、一点目は、放送法第四十四条にこのような規定があります。NHKは「公衆の要望を知るため、定期的に、科学的な世論調査を行い、且つ、その結果を公表しなければならない。」こういう規定が法第四十四条の第二項のところにあります。  NHKはしばしば世論調査を行われて公表されておりまして、私どもそれを見ておる。NHKの世論調査というのは非常に信頼性も高い、このように思っておるわけであります。これとて予算の制約もいろいろございましょうし、そうしばしば行うこともなかなか困難でございましょうが、私は一つ、どうしても腑に落ちない点がございます。具体的な数字を挙げてちょっとお尋ねをいたしますので、お答えをいただきたいのであります。  昨年の九月から十月にかけて、全国紙の世論調査が相次いで発表されました。毎日新聞、読売新聞、朝日新聞、共同もございました。その前後にNHKもございました。くしくも内容は同じものがございまして、その数字に非常に差がある。これを私は大変疑問に思ったのであります。したがってこれをお聞きをしたいのであります。  順序が若干変わるかもしれませんが、読売新聞はその中の一つでありますが、中曽根内閣の支持率を挙げておるのであります。これは非常に政治的な問題ですから関心が高いのでありますが、読売新聞は五五・七という支持率を挙げました。対象人員三千人。毎日新聞は支持率三五%で、対象人員五千四百八十五人。朝日新聞は四六%の支持率でありまして、約三千人。NHKは対象調査人員千八百人、支持率最高六五・七%という数字であります。  お聞きのように、一番低い支持率は三五、一番高いのは六五・七、二倍近い差があります。これが九月から十月、わずかの期間のうちに集中的に報道されました。そこでこの調査は一体どういう内容をもって調査をされたものだろうか。国民の側から見ますと、調査の内容等について調べる人、ほとんどないと思いますが、あらわれた数字だけを見て、ああ、こんなこんな数字か、こう思うのですが、ここに私は非常に問題を感じたのであります。特にNHKの六五・七という最高の数字、それは高いにこしたことはないでしょうから、数字が出て喜んだ人もおるでしょうし、これはおかしいぞと思った人もおるでしょうし、いろいろな見方はありますが、それはそれなりに結構ですから、私は真実が知りたいのであります。  このNHKの六五・七という数字を出した千八百人対象の調査は、有効の率は七三・四。したがって千三百人足らずの回答しかない、こういうことになるわけでありますが、現在の日本の有権者の数は、二十歳以上を対象に調査してありますが、男は四千百万、女が四千三百万、合計八千四百万人という有権者であります。八千四百万人の有権者のうちの千三百人足らずの人を調べてこの調査の報告が出ておる、こういうわけであります。まあ多いにこしたことはないでしょうけれども、世論調査にはそれなりの根拠があるはずでございますから、NHKはこの千八百人を対象にしておられる、毎日新聞は五千四百八十五人、朝日は三千、読売は三千、こういう数字の差は一体どこに原因があるのか、根拠は一体何なのか、それをちょっとお知らせいただきたい。先ほど申し上げますように、法第四十四条には「定期的に、科学的な世論調査」こういう定めがございますが、これをちょっとお伺いをいたしたいのであります。
  173. 川口幹夫

    ○川口参考人 お答え申し上げます。  NHKの世論調査のやり方からまず申し上げます。やり方の方法は、層化二段無作為抽出法というやり方を使っております。この方法は、全国の市町村を地域あるいは産業構造などで、似ている幾つかのグループに分けます。そして、この分けられたグループから、必要な数の町、町名あるいは手とか地番とか、そういうものを無作為に選んで調査をするものでございます。このやり方で千八百というのが少ないか多いか、そういうことについては実は統計学上の一つの結果がございます。大体三千六百という数字一つのめどになるというふうなことが出ております。これを千八百、つまり半分にした場合は、誤差率というのが大体一・四%ぐらい出るであろうというふうなことも言われております。できるだけたくさんの数で調査するのがいいに決まっているのですけれども、これまでの経過から、大体この千八百人でもって調査をするということで、一応のめどにはなるだろうというふうに私どもは思っております。  もう一つは、先生の御不審のあった中で、例えば新聞の支持率とどう違うかということでございますが、実は、これは違うのが当たり前というふうなことを申し上げていいのじゃないかと思います。それは、NHK調査は内閣支持率という形では問うておりません。設問の仕方が、「では、あなたは中曽根内閣を全体的にどう評価しますか」という質問を出しまして、これに対して、「高く評価する」、「一応評価する」という二段階のお答えをしたものを一応の評価率という形で出しております。「余り評価しない」、「全く評価しない」という二つがいわゆる評価しないという層に入る、こういうふうに分けておりますので、したがって、いわゆる支持という形での数字とは当然違ってくるということはあろうかと思います。  この評価率ということについては、私どもの方では、発表する際に一応きちんと説明しようと言っておるのですが、大体新聞の方と混同されることがありますので、今後は十分気をつけたいと思っております。
  174. 武部文

    ○武部委員 実はそのことをお聞きしたかったのであります。確かに私は、後でこれをいただいて、なるほどそういう調査の仕方かなと思ったのですが、ほかの全国紙は全部「支持」で、するかしないか、NHKだけ「評価」という言葉を使っていますね。あらわれてくるNHK報道ニュースの際には、「評価」ということを口で言っていますよ。ところが、それがぱっと出てぱっと消えちゃうものだから、見ておる者には数字だけしかわかりません。したがって、評価であろうと支持であろうと、国民の側で見れば、すべての新聞は支持率を出しておるわけで、活字の題名は全部支持率になっておる。したがって、NHKも大体そのようにやっておるなというふうに見るのが国民の常識だと思うのです。  それは、支持か評価かによって中身は違いますよ。なぜNHKだけが評価という言葉を使われるのか、私は大変不思議に思ったのですよ。よそはみんな支持という言葉で、大体普通ならば支持というのが常識なのに、NHKだけは評価という言葉をお使いになるが、これは何か根拠があってそういうことをおやりになっておるのだろうか、この点大変疑問だったのですが、なぜそういう言葉をお使いになったか、それをちょっとお聞きします。
  175. 川口幹夫

    ○川口参考人 この調査は単に内閣のいわゆる評価率だけを調べるのではございませんで、「くらしと政治」という大きな項目になっております。したがって、一般国民が暮らしと政治についてどのような考え方を持っておるのかということを調べるためにやる調査でございます。したがって、その中で内閣のいわゆる評価あるいは支持、どっちをとるかということについては、私どもは、むしろ支持という形じゃなくて、どのような仕事の評価をするかというふうに考えた方が、「くらしと政治」という大きな命題からは適当であろうか、こういうふうに思ったわけでございます。
  176. 武部文

    ○武部委員 これは、いろいろな調査の仕方もございましょうが、国民の側から見て、皆さんの調査をどういうふうに感じておるかということをひとつ受け取ってもらわなきゃならぬと思うのです。そういう意味で、今、暮らしの問題と絡めておやりになったということで、それなりの理由はあるかもしれません。先ほど申し上げるように、たまたまその時期にほかの全国紙がみんなやって、同時に出ておれば、当然それと対比をして、ああ、どうしてこんなに大きな差があるだろうか――毎日新聞は前回よりも一挙に一一%下がっておるのですからね。その他の新聞も三・五下がったり、みんな下がっておるのに、NHKだけぐんとはね上がった。そうなれば、一体その数字をどういうふうに見るだろうか、私はそれをちょっと感じたのです。  ですから、一遍あなたの方も、評価なんということを言わずに、支持でやってみたらどうでしょうか。そうすれば、評価とどんな差が出てくるか、これも一つの科学的な調査だと私は思うのです。ですから、ほかの新聞と大体――向こうは五千も三千もやっておる。あなたの方は一番低い千八百でおやりになっておる。有権者七万人に一人ですよ、皆さんの方は。金のこともあるでしょうから、それは仕方がないにいたしましても、やはりこういう差が出てきたときには、これに対する分析はおやりになって、そうして今度は違った面でおやりになるということも必要ではないだろうか。私は別に高いからいいとか低いから悪いとかいうふうに言っているのではなくて、余りにも誤差があれば、国民の側から世論調査というものに対して疑問の声がわくと思うのです。私自身もそう思ったのです。おかしいなと思ったからいろいろ調べてみたら、そういう数字が出てきたものだから、この機会に、放送法ではちゃんと皆さんにはそういう任務が与えてあるわけですから、科学的な根拠に基づいて調査を進めてもらいたい、このことを特に要望しておきたいと思います。  次に、合理化に関連をいたしまして、関連会社のことをお聞きいたしたいと思います。  財政上非常に難しい時期にNHKは当面しておるわけですから、いろいろな合理化をおやりになる、これは結構なことだと思います。副次収入を考えなきゃならぬ、これもそのとおりだと思います。ところが、関連会社の設置の中でちょっと変わったやり方をNHKはおやりになった。このことについてお尋ねをしたいのであります。  現在あなたの方が出資をしてNHKエンタープライズという会社をおつくりになった、それからNHKテクニカルサービスという会社もおつくりになった。これは過半数の株をNHKがお持ちです。そういうことでつくっておられるわけでありますが、言うならば、あなた方が出資をされておるわけですから、この会社は放送法の精神を逸脱してはならぬ、こういうふうに私は理解をするわけですが、今度おつくりになった総合ビジョンという会社はNHKの直接出資ではない。今の二つの会社は直接に出資をしておられるわけですが、総合ビジョンという会社は、そのおつくりになった会社がみずから出資をしてつくった、言うならばNHKの孫であります。孫会社をおつくりになった。これは一体どういう理由でそういうものにNHKの出資会社から出資をさしておつくりになったのか、どういう目的でつくられた会社なのか、これをちょっとお伺いしたい。
  177. 植田豊

    植田参考人 まず先生指摘のとおり、NHKNHKエンタープライズという会社に出資をいたしましてこういう会社をつくりました。この会社には放送番組の制作あるいは購入、販売を委託しておるところでございます。このうち、番組の購入あるいは販売をめぐりまして、最近、市場の状況が非常に流動化しておるといいますか、変化してまいりました。資金力やあるいは情報力のある大企業が続々参入してまいるというようなぐあいになってまいりました。このために番組あるいはスポーツ放送の権利、放送権が大変高額化してまいる、あるいは単に放送の権利だけではなくて、出版でありますとか諸権利の包括的な売買がこのところ急速に進んでいるというような状況でございます。こういう状況の中で、NHKエンタープライズのみでやっていくのがいいのかどうか、実態を申しますと対応がかなり困難になってきているなという認識がございます。このためにNHKエンタープライズは、強力な情報網あるいは販売のネットワークあるいは販売のノーハウを持った広告代理店あるいは商社などと共同の出資をして総合ビジョンを設立した、こういう経緯のものでございます。  事業内容の主なものといたしましては、一番目に放送あるいはビデオソフト等の映像素材を企画、制作、販売する。二点目に映画、テレビ番組、スポーツ等の放送権の購入及び販売。三点目にハイビジョン、高精細度テレビジョン用のソフトの企画、制作、販売。四点目に映像素材あるいは催事等に関する著作物等諸権利の取得、管理及び販売といったことを目的に設立されてございます。
  178. 武部文

    ○武部委員 今お聞きいたしますと、総合的なソフトの供給ということをおっしゃったわけですが、言うならば総合ビジョンという会社は、今までのエンタープライズあるいはテクニカルサービスとは違って、商事会社的な性格を持つ会社のように私は理解するのです。それはいただきました資料を見ましても、これに出資しておる会社は、広告会社が博報堂等の三社、映画会社が東宝、銀行、商社、野村総研、こういうところから今のところは出資しておるようでありますね。したがって、これはまさに商事会社的な性格を持った会社だ。しかも、それは直接的なエンタープライズやテクニカルと違って間接的な出資でありますから、さっき言うように孫だ。これは子会社でNHKが直接出資しておれば、NHKは質の高い番組を提供する、当然こういう放送法の精神で子会社もそれを準用しなければいかぬ。これは孫ですからね。そうなれば、そこからちょっと変わったことが起きてくる。一体今の段階でなぜこんなものが必要なのだろうか、私は大変疑問に思うのであります。  そういうことで、出資しておる広告会社あるいは商社、映画会社、そういうものが参加しておるということになれば、そこでつくられるビデオソフトというものについては当然売れる番組、売れるものでなければならぬ、これが使命の中に入ってくるだろうと思うのです。そうすると、間接的とはいいながら、そういうものを通じてNHKにコマーシャル的な性格が入ってくる危険性があるのじゃないか、私はこのことを大変疑問に思うのです。そういうものを通じて出資しておる以上、参画しておる以上、彼らは商社であり映画会社でありますから、売れるものでなければ何にもなりません。今のところ金額は非常に少ないのですけれども、そういうものが大きくなればなるに従って、金も出せば口も出すという原則に基づけば、当然売れる番組、しかもこの参加しておる映画会社あるいは広告会社というものはコマーシャル的な性格、その会社の持っておる性格がそこに反映してくる危険性がありはしないかと考えるのですが、そういう点についてはどういうふうにお考えでしょう。
  179. 植田豊

    植田参考人 NHKといたしましては、多様な情報化の時代ニューメディア時代とも言われておりますが、先ほども申し上げましたように大変流動化しておる、番組ソフトの入手が非常に困難になっておるというような状況の中で、より豊かで多様な番組の編成をコンパクトな体制で実施する必要があろうと考えて、エンタープライズもつくりましたし、また外部のパワーもさらに有効に生かしたい、多角的に生かしたいということで総合ビジョンがつくられた、こういったことでございます。  先生指摘の点でございますが、総合ビジョンは独立した会社ではございますけれどもNHKとの関連で実施する業務につきましては、公共放送としてのNHKの立場を十分に理解して業務に当たることは当然の大前提であると思っております。また、NHK番組で今度の新会社との関連において放送することも今後起こり得ようかと思いますけれども、その際に番組基準を遵守するのはこれまた当然のことでございます。このような節度のある関係の中で効果的に業務を分担してまいりたい、また、このような形の中で財政負担の軽減を図ってまいりたい、さらには、副次収入増加に寄与していくことで受信者におこたえをしてまいりたいというようなことを総合的に考えておるところでございます。御理解をいただければと思う次第でございます。
  180. 武部文

    ○武部委員 今度初めて総合ビジョンという孫会社というようなものができた、そしてそれに参加をしておるものはどんなものかということを私は調べてみて、実はちょっと危険な考え方を感じたのであります。たとえ地味であっても質の高さを命題とするNHKなんですから、そういう意味ではその番組が質の低下を招くというようなことがあってはならぬと思うのです。そういう意味で、商社や広告会社が参入して、確かにNHKとしてはいろいろなことを考えられておるに違いないが、こういうものを通じてNHKの質の低下を招くようなことにつながるならば、これは大変なことだなと心配をしておるのです。そういうことがあってはならぬと思うのです。  会長、どうでしょうか。そういう中で今NHKというものが、やらせとかいろいろなことがありますが、そういうものの門戸にもし仮につながっていくようなことがあるとするならば、これは大変なことになる。そういう意味では、会長として、この問題についてひとつきちっとした考え方をお答えいただけませんか。
  181. 川原正人

    川原参考人 NHK番組が質的に低下するようなことは絶対に避けなければいけないと思っております。ましてその中にコマーシャル的な要素が入ってくるようなことは、これはあくまで排除いたします。  私どもがこういう会社を考えましたのは、もちろんNHKが直接出資するわけではございませんので、私どもがこの会社の設立に直接の口出しはできなかったわけでございますけれども、関連の会社を通じて私どもがこういう会社にある意味で参加しておく方がいいと考えましたのは、先ほど担当の理事からも申しましたように、最近のソフトといいますか番組調達方式が非常に変わってまいりまして、例えばアメリカの映画等を買う場合に、一テレビジョン局の資金力をもってしてはとても押さえ切れないような動きが出てきております。商社等の非常に大きな資本を使って、そういうものをいわば独占的に調達してくる。そうすると、結果として私どもが非常に高いものを買わざるを得なくなってくるような事態も予想されるものですから、そういう中にむしろこちらのある種の考え方を反映させた方がいい。そして多角的な使用の方法を考えてもらって、その中でNHKに対しては、むしろより安く番組の提供を求めることができるのではないか、そういうことも考えました。  それからもう一つ、これも具体的な例を申し上げますと、ハイビジョンという私どもの技術陣が開発しました新しいテレビジョンの方式があるのですけれども、これが実は電波に乗って放送の形式で出るより前に、映画の関係者が非常な関心を持ちまして、映画の制作の中にこれを取り入れていこうという動きがもう現実のものとなってきております。そうしますと、そういうものに対して私どもが直接出資をし、あるいは直接参加するということはできないわけでございまして、これに対して指をくわえて眺めているようなことがあると、せっかくNHKが開発しましたそういう技術あるいはノーハウというものが全く映画産業の中で自由自在に使われていく、それはいかに何でも私どもとしても残念でなりませんので、そういう過程の中に私どものノーハウ、あるいは逆にそういう映画産業とタイアップすることによって、私ども番組にまた新しいノーハウを導入することができるのではないか、そういうことも考えて、冒険する面もございますけれども、それから危険な面は私どもあくまで排除いたしますけれども、やはり新しい分野に乗り出していかないと、NHKの将来生きる道がだんだん閉ざされてくるということを考えまして、思い切ってこれに進出しようと決心したわけでございます。
  182. 武部文

    ○武部委員 お考えはわかりましたが、私は、お述べになったように危険な面がないとは言えないと思うのです。そういう意味で、コマーシャル的要素が入ってくるということになれば、これは受信料との関係がまた当然問題になってくると思うのです。そういうことから、ぜひこの総合ビジョンというもののあり方について、NHKは誤りのないきちんとした方針を堅持していただきたい、このことを強く要望しておきたいと思います。このことについては、これから経過が明らかにするわけですから、いずれまた改めてその都度指摘をしたい、こう思います。  次に、NHK合理化の問題に伴って組織の問題、効率化の問題についてお尋ねをいたしたいのであります。  私はいつもローカル放送の問題を委員会のたびごとに取り上げてまいりました。今管轄局と言いますね、背の中央局。これは今管轄局というような名前になっておりますが、管轄局、県複局それから通信部、これはいつも合理化の対象になってきた、こういう経過を承知をいたしておるわけですが、衛星放送の問題がこれからどんどん出てくるわけでございまして、本放送ということになれば、当然地上波はローカルが中心だということは、去年の当委員会でもやりとりをしたとおりであります。したがって、将来地上波はローカルが中心になっていかなければならぬ、こういうやりとりをしたし、私もそう思っておるのであります。  そういう場合に、昔の中央局、現在の管轄局、こういうものを一体NHKはどういう方針でこれからの組織に位置づけていこうとしているのか。これはもっとどんどん縮小して、管轄局というようなものはもう権限は全くない、一般の普通の局と同様に取り扱おうとしておるのか。それともローカル中心の、例えば私のところは中国地方ですが、中国地方の特別なニュースもございますね、近畿は近畿である。そういうものを取りまとめる、いわゆるローカルの中心、そういう局としてこれを位置づけておられるのかどうか、将来どういう方針なのか、これをお伺いしておきたい。
  183. 植田豊

    植田参考人 御質問が、従来中央放送局と言っておりました、現在管轄局と内部では言っておりますが、考え方でございますが、今後の協会業務の展開に弾力的に対応していく必要があろうというふうに考えております。その際、本部の機能、管轄局のあり方など業務全般にわたって抜本的な見直しを行いたいということで、現在検討中でございます。  検討の二、三の視点を御報告させていただきますと、まず本部につきましては、分権化及び責任体制の明確化を図りながら、組織の簡素化を図ってまいりたいと思います。  二点目に、現行管轄局でございますが、これを廃止し、新たな発想によります拠点的な局、今検討の過程で拠点局と言ってございますが、拠点局を新たな発想で設定をしてまいりたい、そういう検討の中で管轄局の要員体制について抜本的な見直しを行いたいと考えでございます。  三点目に放送局のことでございますが、本部、管轄局の権限を分権化するということを通しまして、各放送局長全国放送局長の権限拡大を図り、放送局本部直結型を志向したいというふうに考えておるところでございます。  したがいまして、以上の総合的な検討の意図するところは、各放送局がそれぞれの創意と主体性を生かして、地域サービスの拠点としての役割をこれまで以上に果たしてもらいたいと考えておるところでございます。このために、現在の本部と管轄局の機能及び体制を見直し、各放送局の最大限の活性化を図ってまいりたい、こういう考え方のもとに検討しておるところでございます。  なお、先ほどの先生の御質問に関して一言つけ加えさせていただきますと、新たな発想による拠点局がどういう形で置かれるか、これは全く今後のことでございますが、そのことと現行管轄局とのかかわりは、なおこの後私どもとしても十分検討してまいりたいと考えておるところでございます。
  184. 武部文

    ○武部委員 これは初耳でございましてね、今初めて聞きましたが、管轄局は、さっきから申し上げるように、今の日本の行政の中で中国地方、九州とか、そういうのが現実に存在をし、行政の出先機関もそこにある。また現在までの放送も、ローカルの中ではそれが中心になってやっておる。近畿ジャーナルというのですか何というのですか、中国地方ニュースとかいろいろなことがございますね。そういうものはこれからも存続していくのだろうと思っておったところが、今のお話を聞きますと拠点局ということ、管轄局を廃止して拠点局――拠点局というのは、その下にある例えば岡山放送局、山口放送局とか、そういうものをまさにもっと分権化をして、そこに権限を与えていこう、こういう考え方なのですか。それとも全く違う考え方ですか。なくするなら、それをどういうふうにして、例えば今管轄局は十ありましょうか、大きな局。それを全部なくしちゃって、例えば二、三十とか四十とか、そういうものの数を拠点局というふうにしようと考えておられるのでしょうか。ちょっと後の県内複数局それから通信部との関係がありますから、構想だけでも教えてくれませんか。
  185. 川原正人

    川原参考人 この問題は今まさに検討し、議論をしている最中でございますので、なかなか具体的に御説明が難しいのですけれども一つ例を申し上げますと、例えば従来管轄局といいまして名古屋というのがございます。そして名古屋の放送局が中心になりまして、東海から今度は北陸の方の局まですべてを、名古屋の放送局がいわば管轄をして運営しているわけでございますが、そういう形の運営が本当に今の実情に合っているのだろうか。例えば北陸の三局と東海の方の静岡とか名古屋という局、あるいは地元の方の御関心というものはかなり別なものもあるだろう。とするならば、従来の形にとらわれて、かつまた従来はそういう管轄局が下の――下のというのでしょうか、地方の放送局に対してかなり強い統制権も持っていたわけでございますが、それが本当にいいのだろうか。  むしろ、それぞれの県ごとにある放送局が、もっと自主性を持って仕事をしたらどうか。あるいはまた、中央局の指揮命令ではなくて、その隣り合った局同士が、もっと日常の市民の方々の生活圏なり経済圏なりに即応した番組を随時協力して組んでいった方が、より今の日本の社会に合うのではないか。そういう発想のもとに、今までありました形式的なそういう管轄局をこの際一度白紙に戻して、ここで新しい地方放送局のあり方を考えてみょうじゃないか。そう考える中で、従来の権限の持ち方も思い切ってこの際変えて、県ごとの放送局にもっと自主性、独立性を持たせて、その中で人員も業務ももっと簡素化といいますか、合理化していけるのではないか、そういう議論を今やっているところでございます。
  186. 武部文

    ○武部委員 私は、最初から言うように、ローカルの重要性というものを今日でも大変大事だと思っておりますから、NHK地域性が失われるようなそういう改革は逆行だと思うのです。したがって、管轄局の見直しとかいろいろなことを言われておるようですが、地域性が失われるようなそういう改革ではない方法で、欠陥があれば当然直さなければいけませんから、それはそれとして、やはりローカル重視という、それを基本に置いた改正の検討をされるならば、それはそれなりに意味があるだろう、このように思います。検討中のようですから、これはまた改めて論議することになろうと思います。  そこで、それに関連をして県内複数局の問題であります。  県内複数局というのは、そう数はございません。県内複数局というのは何局ございますか。(植田参考人「十二局」と呼ぶ)十二局。  これは、創設されたときは、それなりの意味があってつくられておった歴史があるわけですね。したがって、今日この複数局はそれなりに地方の教育文化、そういう面と結びついておる、こういうふうに私は理解をしておりますし、たまたま私のところに複数局があったものだから、前にもその話をいたしました。民放の本社がある、それと対抗して報道するためには、やはり今日までの長い歴史と伝統があるわけだから、余り大きな合理化によってこの存在価値がなくなるような改革の方法はとるべきではない、こういうことをかねがね主張してきたわけであります。  設立された当時かるの人員をずっと調べてみました。これはどんどん減っておるのであります。したがって、今この複数局の実態を見ると、営業活動とそれから報道の関係だけであって、ほとんど番組制作とかそういう問題にはどうもなっていない。どんどん縮小されて、まさに営業所的な色彩を持っておるように思えるのです。これでは複数局として存在をしている意味がだんだんなくなってくる。  ですから、ローカル重視の面からいっても、いろいろ中央の人は考え方があるでしょうが、今日県複局をどうしようと考えておるのか、この点をちょっと述べていただけませんか。
  187. 植田豊

    植田参考人 先ほど私十二局と申し上げましたが、十三局です。失礼いたしました。  NHKは、各都道府県に放送局を配置しまして、全国放送地域放送と両輪のサービスを実施しておるわけでございますが、放送普及の今日までの歴史的な経緯の中で、一部の県で一県に複数の放送局を、県内局と部内的には言っておりますけれども、配置してまいりました。  NHKの効率的な経営という立場から、これまでさまざまな角度で議論がございました。これまで県内局につきましては二回にわたる機能集約をいたしまして、要員を十三局合計で今日までに約二百五十人削減してまいったのは先生指摘のとおりでございます。現在、少数体制のもとで、これも先生指摘の点でございますが、報道の取材拠点、営業上の拠点、それから技術関係の送信所の保守といったことで、保守の拠点と部内的には言っておりますが、主としてその三つの業務の拠点的な扱いになってございます。  今後につきましては、先ほども申し上げましたような、本部を初めとした全国的な業務体制、組織の抜本的な見直しを今いたしておるわけでございます。最終的な願いといたしましては、各放送局の活性化ということを目標にしながら、このような全体的な見直しの中に県内局も位置づけまして、県単位ごとの要員配置を考えながら、徹底した見直しを行ってまいりたいと考えておるところでございます。
  188. 武部文

    ○武部委員 時間が来ましたので、もう二つだけ質問をさせていただきますが、そこで通信部です。  通信部は、聞くところによると、百八十あった通信部が百二十ぐらいになったということを聞くのです。私は、この通信部というのはNHKとして非常に大事なものだというふうに理解をしておったのです。NHKがいわゆる県庁中心のそういう報道であってはならぬ。そういう意味では、通信部の第一線が、たとえ交通が便利になったとはいえ、いつでも機動性を持って対応できるような、そういうものであってほしい。それから、特に受信者と第一線で接触する可能性も強いわけですし、そういう意味で、通信部というものはそれなりの意味を持っておる、このように見ておったわけですが、だんだん合理化の波が押し寄せて、百八十が百二十ぐらいになった、これは非常に残念なことだと思うのです。  先日、ついこの間ですが、私は、兵庫県の山の中のある鉱山、非鉄金属の鉱山でございましたが、円高でどうにもならぬというので、そこへ調査に参りました。十数名の団で行ったわけでありますが、その最寄りの通信部から記者が取材に来ておられました。丸一日我々と行動をともにして取材に当たられた。しかも、坑道の中、何百メートル下の水浸しの坑道まで入って、大変精力的にやられた。一緒に行っておった連中も非常にその活動ぶりを評価しておりましたが、ついておったライトマンは、聞いてみたら、通信部は自分一人になった、これは臨時だ、こういう話でございました。  まさに一日じゅう大変な機械を担いで、ライトを持って水浸しの坑内にまで入って、そして最後の取材を終わったら最寄りの新幹線の駅まで飛んでいって、最終の新幹線に乗って神戸へこれを運べば、あしたの朝ローカルで放送できるということで、それをまさにやってのけました。これはもう驚くべきことだったのですが、こういうことをたった一人でやっておる。合理化も確かに必要かもしれませんが、少なくとも一人ということではなくて、通信部を統合して例えば数名、そういうものが必要じゃないだろうかということを感じました。  先般、この逓信委員会は納沙布岬へ参りました。あそこは釧路でございますが、根室に通信部がありましたね。ここはたしか二人か三人おったようでございますが、それと今の兵庫県の通信部と比べたときに、大変大きな差があるなということを感じました。いつ何が起きるかわからぬ。しかも、それはローカルで特に関心の高いローカル問題だ。町長もみんな出てきていろいろな意見を述べた。それをみんな収録しておりましたが、そんなことを考えると、やはり通信部の任務というのは大変重要だ。しかも、そのNHKの通信部の職員が、せめて二人おれは何とかなるがなということを我々に言っておったのであります。  こんなことを考えますと、我々は、通信部の百八十を一挙に百二十に減らすとか、そういうことはやはりやめなければいかぬなということを感じだのですが、今後通信部をどういう方向に持っていこうとされておるのか、これをひとつお伺いしたい。もう時間が来ましたから、端的に答弁をお願いしたい。
  189. 植田豊

    植田参考人 御指摘のとおり、通信部の見直しを継続して実施してまいってございます。ただし、五十九年度、六十年度年度にわたりまして、地域放送をテレビ、ラジオとも一日三十分の時間増を実施をいたしました。この時間増に対応する地方局の要員体制を総合的に検討して、要員の重点再配置を行ったものでございます。  御指摘のとおり、その中で通信部に関しては減少しているのは事実でございますが、全体としての要員は必ずしも減っておるわけではございません。重点的な再配置を行ったものでございます。  ところで、この通信部につきましては、先生から大変ありがたいお話をいただきましたが、確かに地域に密着した取材ができるという利点は間違いなくございます。しかしながら反面、要員の有効活用という点から考えますと、設置箇所にはおのずから限度がございます。一方、交通通信手段も発達してまいりまして、放送局からの取材可能範囲が広がっておるのも事実でございます。社会状況の変化に伴いまして、従来の取材拠点としての重要度にも変化が生じておるという実態もあるわけでございます。このような観点から総合的な見直しを行ったものでございます。  今後につきましては、先ほど来申し上げておりますような全体的な見地しの中に位置づけまして、望ましい取材ネットワークといったものを検討してまいる必要があろうかと思います。  なお、御参考まででございますが、通信部を廃止した箇所につきましては、情報提供の協力者を開発いたしましたり、あるいは親局からキャラバンチームを編成いたしまして重点的な取材を展開したりいたしてございまして、地方のニュース取材の力は落ちていないのではないかと考えておるところでございます。
  190. 武部文

    ○武部委員 時間が来ましたが、私は、ローカルニュースがとかく県庁中心のニュースに陥りやすい、こういうことをかねがね感じておりました。したがって、NHKの本質からいってそういうことであってはならぬ。今答弁ございましたように、確かに機動性はできるわけです。しかしそれの中でも、やはり一人でやっておるということはいろいろな意味で問題がある。こういう点を直接私は感じだものですから。特に二、三人で一グループを組んで機動性を発揮できるようなことをしてでも、範囲が広くなっても、そういう通信部は必要じゃないだろうかと考えておりますので、ぜひこれもひとつ検討していただきたい。もう時間が参りましたから、このことを要望して質問を終わります。
  191. 宮崎茂一

    宮崎委員長 山田英介君。
  192. 山田英介

    ○山田委員 私は、国際放送に関連して、何点か質問したいと思っております。  当委員会でも、ここ数年、国際放送充実強化、整備等につきましてはたびたび審議、議論が交わされてきたところでございますが、それらも踏まえまして、御案内のとおり、我が国の国際放送の実情につきまして、大きな国の小さな声とか、あるいは経済大国の蚊の鳴くような声とか、このように言われているわけでございます。我が国の国情等を正しく海外諸国に認識をしていただけるように、送信施設の整備充実あるいは海外中継局の確保などが極めて緊急な課題である、このように私は認識をいたしております。  そこで、送信施設の整備につきましては八俣の送信所、五十九年度から六十二年度の四カ年計画整備建設中というふうになっているわけでございます。三百キロワット四台、百キロワット四台、完成の暁にはこのような送信体制ができ上がる。所要経費は百四十三億円と承知をいたしております。そのうちNHKの負担分が百三十三億円、国の負担分が約十億円、このくらいの比率であろうと伺っております。  もう一つは、国際放送実施経費についての政府の交付金でございますけれども、六十一年度予算案で見ますと十二億四千万円、これは六十年度と同額ということです。このいわゆる国際放送実施経費総額に占める国の放送交付金を見てまいりますと、六十一年度が二四・一%ということで、額は同じですが、全体の実施経費に占める割合が、六十年度の二五・七%と比べてみますと小さくなってきている。  これらのことから、国の負担分、それからただいまの放送交付金ともに、国際放送の果たす役割の重要性を踏まえて見てまいりますと極めて少ない額ではないか、私はかように思います。この点につきまして私は、もっと上積みをした予算措置を講ずべきであるという観点から伺うわけでございますが、NHKそれから郵政省、大蔵省の順で簡単にお答えをいただきたいと思います。
  193. 林乙也

    ○林参考人 お答え申し上げます。  ただいまお話がございましたように、国際放送の交付金は六十一年度予算におきまして十二億四千万でございまして、大体NHK国際放送実施経費五十一億五千万に対しまして二四・一%というように相なっておるところでございます。  NHKは、短波によります国際放送受信改善に力を注ぎまして、海外中継放送を拡充するとともに、ただいまお話がございました八俣送信所の整備を進めておる次第でございます。八俣送信所の整備が相成りました暁には、その運用のために必要な経費というものも今後大きく増加するであろうというようなことが考えられておるわけでございます。  国際放送の重要性につきましては十分認識し、かつ、それはNHKのみずから行う業務として運営していかなければならない責任を痛感いたしておるところでございますけれども、同時に、受信料と申しますのは国内放送受信者によってあかなわれるものでもございますので、おのずと国際放送業務に対する負担につきましては一定の限度があるであろうというふうに私ども考えておりまして、今後の国際放送充実強化というようなことを考えました場合に、正直なところ言いまして、国の交付金というものをさらに増加する方向で御理解いただければと考えておる次第でございます。
  194. 森島展一

    ○森島政府委員 国際放送につきましては、またその重要性ということにつきまして私どもひしひしと感じておるわけでございまして、そのために国の交付金の増額ということも年来大変努力いたしてまいりましたし、これにつきましては当委員会先生方にも大変御支援、御鞭撻をいただいているわけでございます。     〔委員長退席、関谷委員長代理着席〕  そのうち八俣送信所の増強ということにつきましては、先生おっしゃいましたように五十九年度から四カ年計画で、百四十三億円ということで進めておるわけでございまして、その中でも、国の交付金の中に国際放送充実の対策費ということで、五十九年度に二億五千万、それから大体そのレベルで四カ年続ける。こういうことで、八俣送信所の整備の費用はNHKが負担するということになってはおりますが、その中でも国の交付金から国際放送充実対策費が回る、こういう形にはなっております。しかし、先生おっしゃいますように、これからなお国際放送充実していくべきだという点では、NHKNHKなりに大変努力していただかなければならないわけでございますが、国といたしましても、できる限り国の交付金の増額ということに努めなければならないということは重々承知しているわけでございますが、御承知のとおりの財政事情で、その努力が六十一年度予算におきましても前年同額を保つのが精いっぱいだ。こんなことで、大変私ども努力がまだまだ足りないということを痛感いたしております。これからも何とか努力を続けていきたいと思っております。
  195. 佐藤謙

    佐藤説明員 御答弁いたします。  六十一年度予算におきます国際放送の交付金でございますけれども先生お話しのように十二億四千万円でございます。御存じのように現在の財政状況、非常に厳しい現状にございまして、予算要求におきましてもマイナスシーリングというような状況にございますけれども、その中で国際放送の重要性ということにつきまして私どもも十分認識しているところでございまして、何とかぎりぎりのところ前年同額の予算を確保することができた、かような状況にございますことをひとつ御理解いただきたいと思います。
  196. 山田英介

    ○山田委員 放送法の四十四条の五、これは「国際放送放送番組の編集等」ということでございます。申し上げるまでもありませんけれども国際放送の拡充ということは、国際親善の増進等、まさに国が予算的に責任を持つべきである、私はこのように考えます。NHKの負担分が多い、あるいは大きいということは、視聴料の値上げ等にもはね返ってくる一つの要因にもなるわけでございましょう。それから、国民は税金を納めているわけでございます。その税金で我が国の正しい姿、正確な姿を国際社会へ紹介する、認識をしていただく、こういう極めて重要な役割を担う国際放送は、納税者たる国民のこの税金をもって、国が責任を持って予算措置をしていくということは正しい考え方であろうというふうに私は思っております。大前提として、放送法の第三条にありますように、何人にも干渉ないし関与せられない、こういう大前提が当然あります。それからまた、確かに視聴料を財政基盤としてNHKは種々の事業を行います。第九条の二において、国際放送もその一つ、こういうことになっております。そうなっているからといって、ほとんどの所要経費NHKで負担させる、施設等を整備させる、あるいはまた放送実施経費を負担する、そのことは極めて当然のことであるということであってはならないのであろうというふうに私は思うわけでございます。  今佐藤主計官から最後に答弁がありましたけれども、確かに財政事情は厳しいということです。そしてそれはまた、今直接言葉としては御答弁ありませんでしたけれども、郵政省に六十一年度例えば二百四十億というような予算配分をしているのであるから、それは郵政省の中でもって国際放送分にどれだけのウエートを置くかという問題である、こういうようなスタンスかどうかがえました。シーリングの問題もあるという。これは具体的におっしゃいました。ですけれども、この国際放送の担う役割の重要性ということを十二分に意識をなされれば、いわゆる郵政省の中の政策判断の問題で片づけられない、もっと大きな観点からの迫り方が必要なんじゃないか、このように私は大蔵省に申し上げたいわけでございます。  したがって、国際放送の年間の予算につきましては、郵政、大蔵の折衝の中で独立の一つの科目として立てられて、NHKの政府の放送交付金の額というものが決まってくる、こういう仕組みになっておるわけでございますから、繰り返すようでございますが、一郵政省の中の政策判断の問題ではない。そういう国際放送の重要な役割というものを、大蔵省においてもしっかりとやはり認識をしていっていただかなければならないというふうに私は思うわけです。もう一度、恐縮ですが、主計官から御答弁をいただきたいと思います。
  197. 佐藤謙

    佐藤説明員 重ねてのお尋ねで恐縮でございますが、先生お話の中にもございましたように、国際放送の交付金の問題につきましては、私ども国際放送の重要性ということにつきまして認識を十分持っているつもりでございます。ただ、現実の問題といたしましては、やはり郵政省の一般会計予算の中でどのように重点を置いて配分をしていくのかということになってくるわけでございまして、その中でいろいろ工夫をし、郵政省の中でもいろいろな御工夫もされ、何とか六十一年度予算においては、ほかの経費がいろいろと前年を下回るような状況にありながら、国際放送の交付金につきましては前年同額を確保してきた、そういった事情にございますので、ひとつよろしく御理解をいただきたいと存じます。
  198. 山田英介

    ○山田委員 そういう御答弁でございますけれども、例えばマイナスシーリングとかゼロシーリングとか、そういう一つの厳しい財政事情のもとで予算編成をしなければならない、そういう厳しさというのは私もわかります。ただ、そうは言いながら、例えば防衛費あるいは政府開発援助、ODA等は、こういうマイナスシーリングの予算編成のもとでも、前年比で相当の比率で要するに予算が仲はされている。これは事実でございます。なぜ防衛費とかODAが別枠扱いで伸ばされているかということについて、時間がありませんので改めて御答弁は要りませんけれども、防衛費というのは、余り突出予算を組みますと、例えば近隣のアジア諸国に脅威を与えるとか、あるいは潜在的な脅威というのがあるとして、それをむしろまた顕在化させるような、そういう懸念もある。しかも、他の政策経費等を圧迫するというようなことがあります。  もう一つODAの方は、マルコス政権が崩壊をして、その中でいろいろ政府開発援助のあり方が今問われつつあるということは言えるわけでございますが、それはそれとして、ODAが適正に行われるということであれば、これは諸外国との平和友好とかあるいは国際親善等にも大きく貢献し得る、そういう事業ということになるわけでございます。いわば経済的な側面でということですね。国際放送というのは、あえて言えば放送文化あるいは国際放送そのものを通じて、世界の諸国と平和とかあるいは友好、国際親善ということを大きく推進、前進させることができるわけでございます。  したがいまして、こういう国際放送の果たす役割の重大性あるいは重要性というものを踏まえて、ODAと同様にこれは別枠扱いで、マイナスシーリングだ、ゼロシーリングだということがありますけれども、前年と比べて伸ばせるとか伸ばせないとかというのじゃなくて別枠扱いで、要するに国際放送の政府の交付金というものはやはり大蔵省の御判断で、大蔵省の決定として伸ばしていくべきである、別枠扱いにせよと私は申し上げたいわけでございます。一言御答弁ください。
  199. 佐藤謙

    佐藤説明員 先生御存じのことなものですから、さらにここで私が御説明するのもなんでございますけれども、例えば六十一年度予算におきましては原則、経常部門についてはマイナスの一〇%、投資部門についてはマイナスの五%というような概算要求基準を設定したところでございます。ただ、その中で人件費でありますとかこのODAでありますとか、あるいは国際条約の実施に伴います国庫債務負担行為の歳出化等のように極めて義務的性格の強いものにつきましては、これを例外的な取り扱いをしている、かような状況にございます。例えば防衛費につきましても、防衛費であるから例外扱いをしているということではございませんで、あくまでも国際条約の実施に伴う国庫債務負担行為の歳出化という、経費そのものの性質に即しまして扱いを決めている、かような状況にございます。
  200. 山田英介

    ○山田委員 そういう別枠扱いにすべきではないか、こういう意見があったことは、主計官、ひとつしっかりと踏まえておいていただきたいと思います。  それでは、放送法第三十三条の関係で二、三問ちょっと質問させていただきますが、国際放送実施の命令につきまして、命令放送と自主放送と区別して国際放送実施している国は、こういう仕組みのもとでは我が国が唯一であろうと思います。国内放送に対しては命令放送という仕組みはないわけです。国際放送に命令放送という形を取り入れた趣旨は一体何か、これは簡潔にお答えをいただきたいと思います。
  201. 森島展一

    ○森島政府委員 国際放送というのは、確かに諸外国では国が全面的にやるか、あるいはBBCのようなところが、これも国の税金というようなものを受けてやっている。こういう形でございますが、日本におきましては、NHK国際放送業務として行うというこの放送法九条の趣旨一つございまして、そのほかに国が命令するという放送が三十三条にございますので、この二本立てになっておるわけでございます。これは観念的には確かに別物というふうに私ども思いますけれども、実際上はこの効果を上げるために一体となってやっておる。どうしてこういうふうに分けたかという御趣旨は、これは沿革的なものという以外にはちょっと説明ができないわけでございますけれども、命令放送、自主放送それぞれを一体としてやるということで、実際には非常に高く海外でも評価される国際放送、こういう形になっておるわけでございます。
  202. 山田英介

    ○山田委員 この質問は一点だけ、あるかないかということをお答えいただければ結構なんですが、今も出ましたBBCの国際放送、これにつきましては、免許協定書の中で放送事項という点は政府の決定に係るものとなっているのかどうか、この点ちょっと、係っているかどうかだけ。
  203. 林乙也

    ○林参考人 外国の例でもございますので、詳細に、かつ的確に把握しているかという点につきましてはなお十分でない点があるかもしれませんが、現在のイギリスの国際放送実施機関としてBBCがあるわけでございまして、放送の対象国、使用言語、放送時間数は政府が決定するという形になっておりますけれども番組の編集につきましてはBBCが自主的に行うという形になっておるというふうに把握しております。
  204. 山田英介

    ○山田委員 したがって、放送法の三十三条にございます放送事項というようなものは、恐らくBBCでは政府の決定に係るものではない、そういうような御答弁かと受け取っておきます。  そうなりますと、「昭和六十年度国際放送実施命令について」、これは報道資料でございますが、これを見てまいりますと、「放送事項 次の事項に関する報道、解説 (1)時事 (2)国の重要な政策 (3)国際問題に関する政府の見解」こうございまして、放送事項に関しては極めて緩やかな命令の内容になっております。そして、それは「九条の二の規定による国際放送と一体として実施し、」こういう形をとっておるわけでございます。そうなりますと、国内放送には特段に命令放送というものはない。国際放送につきましては、国内放送と同じように番組審議会を置いて適正を図っておるわけでございますから、命令放送という仕組みそのものを置いた意味というものは、今日的に一体どういう意味を持っておるのかという点を問題点として、きょうは時間がもう終わりになりますのでこれ以上議論できませんですけれども放送法全体の中においても、国際放送に限って命令放送という仕組みを置いておることの意味は、今後いろいろな意味で議論されなければならないのじゃないかなと考えておりますので、私はきょうは問題提起として指摘するだけにとどめさせていただきたいと思います。  例えばイギリスがそうだから我が国もそれに倣って、そういう単純なことではないのですが、BBCの国際放送のあり方等も参考にして、これは当然NHKだけで解決できる問題ではありませんので、郵政省を含めてもう一回よく検討していく必要がありはしないか、こういうふうに考えております。簡単に指摘だけしておきますけれども、日本とイギリスの政府の放送にかかわるいわゆる命令とか決定における相違点というのは、まさに放送事項があるかないかという点と大きく言えるのじゃないかと私は思います。非常にきつい言葉で失礼かとは思いますけれども、この点から見れば、日本とイギリスの国際放送という対比の中で、放送事項の有無という点から見れば、日本は、政府は金の一部は出すけれども放送事項、そういう点で口も出す、システムとしてはそういうことが言えるのじゃないか。英国は、国際放送実施経費の分は全額国が出すけれども、しかし国は口は出さない、こういうようなシステムあるいは現実の姿というものがある。NHKと同様にBBCの放送に対する評価というものは世界的に極めて高い、こういうことも踏まえまして、こんなこともあるいは言えるのではないかと私は問題意識を持っているわけでございます。  いずれにしても、我が国の国際放送充実させていこう、飛躍的に発展させていこうということになりますと、この仕組みのあたりをもう一回みんなで考えて検討してみないと、なかなかうまいこといかないんじゃないかと私は今痛切に感じておるものでございますから申し上げているわけでございます。いずれまたじっくりと議論させていただきたいと思っております。  時間が参りましたのですが、最後委員長のお許しをいただきまして一問だけ。
  205. 関谷勝嗣

    ○関谷委員長代理 どうぞ。
  206. 山田英介

    ○山田委員 日本放送協会は、国際放送充実するという目的で寄附を受けることが可能であるか。  それから、これは私の個人的な考え方でありますが、例えば財団法人国際放送整理基金というような公益法人をつくりまして、真に国際放送充実とか発展を願う個人、法人あるいは企業等からこの公益法人が寄附を受け入れる、そしてこの公益法人から日本放送協会に交付金とか助成金というような形で、国際放送充実のために使ってもらいたい、こういうようなことができるかどうか。仮にそういう点を今後検討なさる御用意があるかどうか。  それから最後に、税制面からの支援措置があれば、その成果というものも一層期待できると思われるわけでございますが、仮にそういうようなことになった場合には、大蔵省はこれに協力するつもりがあるか。  これをそれぞれ御答弁いただいて、終わりたいと思います。
  207. 森島展一

    ○森島政府委員 NHKが寄附金を受けるということについては、放送法上は禁止されておりません。ただ、NHKが寄附を受けることによってNHKの自主性に疑義を抱かれるというようなことがあってはならない、こういうふうに考えております。  それから、国際放送充実する方法につきまして何かもう少し考えはないのか、こういうことでございますが、この辺は幅広く今後は検討させていただきたいというふうに思っております。
  208. 塩田薫範

    ○塩田説明員 御指摘の寄附金についての税制上の優遇措置がどうかということでございますけれども、いろいろの構想がございまして、それに対して税制上の寄附金の優遇ができるかどうか、そういったものにつきましては、事業の内容等よくお聞きした上で検討しているということでございます。今先生指摘になったような内容といいますかプランが、今伺った限りでは具体的にどういうものになるのかよくわかりませんので、具体的にどのような公益的な事業を行うのか、そういったお話を十分伺ったところで検討しなければいかぬものだろうというふうに思います。したがいまして、この場での確答は控えさせていただきますが、郵政省等から御相談がございますれば、慎重に検討してまいりたいというふうに思います。
  209. 山田英介

    ○山田委員 終わります。
  210. 関谷勝嗣

    ○関谷委員長代理 田中慶秋君。
  211. 田中慶秋

    田中(慶)委員 私は、この予算の関係に関連しながら、若干質問をさせていただきたいと思います。  まず一点は、放送衛星の予備機が二月に種子島の宇宙センターから打ち上げられましたが、その後の状況、さらにNHKはこれについてどのような運用計画を持たれているか、これが一点。すなわちこれはBS2号についてであります。同時に、BS3号の打ち上げ時期、見通し、そしてそれらに対する運用計画、これらについての見解をお伺いしたいと思います。
  212. 船川謙司

    ○船川参考人 BS2bの状況につきまして、宇宙開発事業団の方からお答えさせていただきます。  BS2bは二月十二日に種子島宇宙センターから打ち上げられまして、二月十五日に静止衛星軌道に持っていくためのアポジモーターの点火というのを行いまして、ドリフト軌道に投入することに成功いたしました。さらに、二月十六日には太陽電池パネルを展開いたしまして、いわゆる三軸姿勢制御も順調に行われまして、その後暫定的な静止位置である東経百十七度に静止させるための軌道制御を二月十七日に開始したわけでございます。その後、二月二十三日に行いました第六回目の軌道制御におきまして若干姿勢の変動が生じまして、軌道制御を一たん中断したわけでございますが、その後検討いたしまして、二月二十七日から再開いたしまして、三月二日に予定のとおり東経百十七度に静止してございます。姿勢変動の原因につきましていろいろ検討いたしましたが、これは軌道制御に使いますスラスターが非常に一過性の誤動作を起こしたものであろうというふうに現在判断しております。  それから、中継器につきましては、先週、三月十七日の週から試験を開始しておりまして、十七日には受信機系統についての試験、それから十八、十九、二十日と三系統ございます進行波管に火を入れまして試験をいたしました結果、非常に順調に働くということを確認してございます。  この後まだ長期の運用試験を続けまして、四月の下旬には本当の静止位置である百十度への移動を開始いたしまして、五月下旬に百十度へ持っていく、その後残った試験を続けまして、七月下旬にはすべてのチェックを終わる、そういう計画になってございます。
  213. 林乙也

    ○林参考人 BS2b、BS3の運用計画でございますが、ただいま御説明もございましたように、BS2b打ち上げ後現在までのところ順調に機能しておるということでございます。七月期に初期機能の確認をいたしました上でNHKに引き渡しを受けるわけでございます。しかし、その後秋口に衛星が地球の陰に隠れるいわゆる食の時期などもございまして、中継器の安定的な機能という点からいたしますと、やはり春だけでなしに秋の食も経過した上で、十分に機能できるかどうかという万全の形の確認というものが必要ではなかろうかというように考えておるところでございまして、NHKといたしましては、まず衛星の信頼性と放送継続性につきまして慎重に確認するため、なお当分の間試験放送として行うことが適当ではなかろうかというように考えております。  その後の件でございますけれども、本放送への移行につきましては、この安定的かつ継続的な機能が確認された段階で行うということを考えておりまして、その時期はいましばらく打ち上げましたBS2bの推移というものを見きわめた上で決定してまいりたいというように考えておる次第でございます。  それから、BS3でございますけれども、BS3はBS2による衛星放送サービスを継続するとともに、増大かつ多様化する放送需要にこたえることなどを目的として計画が進められておるところでございます。チャンネル数は三チャンネルでございまして、NHKが二チャンネル、一般放送事業者が一チャンネルを使用するということが決まっております。  打ち上げ時期につきましては、国の宇宙開発計画におきまして、本機3aが六十五年度夏季、予備機3bが六十六年度夏季にそれぞれ打ち上げられるということになっておるわけでございます。  3段階の衛星放送につきましては、民間放送事業者の参入によりまして新しい放送秩序が形成されるわけでございますが、その中におきましてNHKといたしましても、地上放送との関係を含めました公共放送としての総合的な放送サービスのあり方を目指して進めていく必要があろうかと考えております。このため、受信機普及状況視聴者の要望などを総合的に勘案しながら、衛星放送の特色を生かしました魅力ある放送サービスをさらに充実し、衛星放送の一層の普及促進を図りますとともに、ハイビジョン放送、PCM放送などの新しい放送につきましても、BS3における実用化を積極的に推進してまいりたいと考えておる次第であります。
  214. 田中慶秋

    田中(慶)委員 今、それぞれのアウトラインといいますか大ざっぱな日程をお伺いしたわけでありますが、例えばBS2については、最終的にはこれが安定された形での運用はまだ明確でないように思われますし、特にBS3については、今般民間参入ということもありまして、これらの運用が今後より注目されるところであります。  ただ、言えることは、これだけ放送衛星を打ち上げるのに巨額な費用を要するわけでございますから、そういう点では、その結果によって受信者の負担がより多い形になってはいけないのではないか、そのような心配がもう既にされているわけであります。そういう点では、この運用計画なり目的なりを明確にしておく必要があると思いますし、また、それに基づいてこのようなBS3号の打ち上げ計画も当然されていくものであろうというふうには思っているのですけれども、この辺についての考え方をもっと明確にお答えをいただきたいと思います。  極端なことを言えば、受益者負担という前提をするならば、受信者の皆さん方にどれくらいの負担になっていくのか、こんなことも明らかにする必要があろうと思います。その辺を明確にしていただきたいと思います。
  215. 林乙也

    ○林参考人 衛星放送につきましての放送サービスとその負担のあり方についてのお尋ねかと考えております。  衛星放送につきましては、放送として全国を一挙にカバーできるほか、ハイビジョンあるいはPCM放送など現在までの地上放送にはなかった新しいサービスの可能性を秘めたメディアであると考えておる次第でございます。これに対する開発の経費も相当の巨額に達するわけでございまして、私どもといたしましては、衛星放送のサービスが広く国民に還元、普及され、また受益感を持たれるような形で進めなければならないと考えておるわけでございます。  また、そのことと相まって、衛星放送業務に必要な経費をどのような形で受信者の方々に御負担をいただくのが公平なのかということにつきまして、地上放送受信者あるいは衛星放送受信者等との関連の中で、場合によりましては、衛星放送のサービスを含む新しい放送体系というものも今後考えていかなければならない。その時期といたしましては、BS2bの後半の段階あるいは民間放送事業者も参入いたしますBS3の打ち上げの段階ということが考えられるわけでございますけれども、なお情勢的にはいろいろ流動的な点もございますので、今後鋭意検討してまいりたいと考えております。
  216. 田中慶秋

    田中(慶)委員 いずれにしても、技術革新と相まって、それが受益者の負担になるようなことであってはいけないのではないかというふうにまず指摘を申し上げたいと思います。  それに伴いながら、今お話にも出ましたように、現在NHKではこのハイビジョン方式の実用化について研究されているわけですけれども実用化の見通しについてお伺いしたいと思います。
  217. 森島展一

    ○森島政府委員 NHKでハイビジョンと言っておりますのは、国際的にハイデフィニッションテレビジョン、高精細度テレビジョンというものでございますが、これはまだ国際的な規格統一が進められている段階でございまして、国際無線通信諮問委員会、CCIR、こういう国際的な場がことしの五月に総会を開いて、高精細度テレビジョンの規格について審議することになっております。  この規格といいますものにも、まずスタジオ規格というものと、今度はそのスタジオ規格にのっとって電波に乗せる伝送規格という二段階がございまして、ことしの五月のCCIRの総会で審議されるのはそのスタジオ規格でございます。日本がこのハイデフィニッションテレビについて世界的に規格を統一すべきではないかということを大変イニシアチブをとって進めておりまして、できる限りこの五月にそういった規格が決まればいいなと思っておりますが、これは各国の中で賛成する国もありますが、まだ早いというような国もあって、非常に難しい問題がございます。  国内におきましても、この技術的な検討は、郵政省では電気通信技術審議会という場で進めておりまして、それの結果を踏まえてCCIRにも対応しておりますし、それから、今度のBS2bが順調にいけば、いくことを期待しておるわけでございますが、その中でこの高精細度テレビジョンの実験もしたいと考えております。  まずこういった技術的な問題を一つ一つ解決していく必要がございますが、技術的な問題以外にも、この衛星放送のチャンネルの利用のあり方、その中で従来のようなテレビの規格を衛星方式としてとるのか、あるいは高精細度テレビジョンのようなものをどういう形で導入するか、こういう問題につきましては、技術的な問題ばかりでなくてチャンネル利用のあり方、地上放送との関係、それから視聴者のニーズ、あとは当然ながら受像機の経済的な問題、こういうことを総合して、BS2bにおけるいろいろな実験の開発を踏まえながら考えていかなければならないと思っております。  これをNHKで行うことにするためには、先ほど来の財源の問題、これは国民受信者にどういうふうに負担してもらうかとか、NHK業務のあり方にも当然関係しできますので、開発の動向を含めながら検討してまいりたいと思います。
  218. 田中慶秋

    田中(慶)委員 質問に対していま少し端的に答えてください。私は実用化の時期はいつかと聞いているのですから、回りくどく説明されなくてもいいのです、どういうものがハイビジョンであるかということも認識して質問しているわけですから。限られた時間の中で質問するわけですから。そういう点で、今全然答えてないでしょう。私の質問に明確に答えてください。
  219. 森島展一

    ○森島政府委員 大変失礼いたしました。くどくど申し上げましたが、結局現時点で高精細度テレビジョン実用化の時期ははっきり申し上げられないということで、大変長く説明を申し上げて失礼いたしました。
  220. 田中慶秋

    田中(慶)委員 そんなことを言われても、もう既に現実には実用化に向けてNHK研究をされているわけでしょう。研究をされているものが、いつになるかわからぬというようなことであってはいけないのじゃないですか。例えば料金体系だって、もう既に一部検討されているやに私は伺っているわけです。例えば今普通のテレビジョンであるならば白黒、カラーという形でそれぞれ料金体系が違います。同じように、ハイビジョンが入ってくるならば、またここに第二受信料的な要素を含めて、もう既に研究されているやに伺っているから私は質問しているのです。その辺を明確に答えてください。
  221. 森島展一

    ○森島政府委員 確かにおっしゃるような検討を進めておるわけでございますが、先ほど大変くどく申し上げた中にも、この放送政策の今後のあり方に関するもの、例えば公共放送のあり方というのはどこまでのものか、それの財源はどうするかという非常に大きな問題が含まれておりますので、こういった問題は、郵政省といたしましても今、放送政策懇談会というような場でも御議論いただいておりますし、早急に検討して方向を見出さなければならないと思っておるわけでございますが、そういった検討の段階でございます。
  222. 田中慶秋

    田中(慶)委員 これは大臣も含めてでありますけれども、例えば白黒からカラーになった経過、そして今、いずれにしてもハイビジョンというのは大変画期的だということで、その研究過程やあるいはまた実用化に向けて努力されていることはわかるわけですから、先ほど来のお話の経過でわかるように、宇宙衛星を上げる、そして、それに基づいて中継をされていく。BS2b、BS3、そしてまたハイビジョン、こういう形で財源というものをどこに――しかしNHKは、先ほどの寄附じゃありませんけれども、どこにも求められることはないわけでしょう。そうすると受信者負担ということに最終的になるわけですから、そういうことが明確な形の中で、幾らNHKだからといって、マイナスだから上げればいいというわけじゃないと思うのです。長期的なそういう計画に基づいてこれはやる必要があるだろう。会長さん、その辺について明確に答えてください。
  223. 川原正人

    川原参考人 私どもとしては、せっかくここまで技術的に開発してきたハイビジョンでございますので、できるだけ早くこれは実用化してまいりたい、同時にまた、これを将来のNHKの発展のための一つの手段といいますか方法にも十分に役立てたい、つまりこれによって何らかの収入を得るように考えていきたいというふうに考えているわけであります。ただし、社会的にはこれに対する御意見もいろいろありますし、放送行政上の手順もいろいろあろうかと思いますので、それが一日も早く実現することを期待しているわけであります。
  224. 田中慶秋

    田中(慶)委員 いずれにしても、技術革新に伴って新しい料金体系をそれぞれ検討する時期もあろうと思います。しかし、おくれているのは、例えば番組制作等について、民放は既に外注をぼんぼん使っている、こういう時期であるわけであります。ところが、NHKさんも外注について大分おやりになっているようでありますけれども、まだまだその辺は足りないのじゃないか。職員の問題とか体質改善について、いろいろな御検討をされていることはよく認識しておりますけれども、全体的に見たときに、国民の皆さん、それから受信料をちょうだいしている――こういうことになってまいりますと親方日の丸的な要素があるわけでございまして、そういう点での合理化というものがもっともっと足りない、こんなふうに私は感じているわけでございます。  ですから、片方においては今申し上げたように、技術革新に伴って新しいことをやっていかなければいけない。全体的にそれがすべて受益者負担という形で受信者にかかったのでは大変なことになりますので、そういう点での減量経営といいますか、外注等を含めてもっともっと減量経営をされるべきであろう、こんなふうに私は思うのですけれども、その辺いかがですか。
  225. 川原正人

    川原参考人 御指摘のとおり、私どもとしては、技術革新に伴いましていろいろな新しいサービスが可能になっておりますし、あるいはまた今までのテレビジョンの中でもっともっといろいろな手法を講じて、視聴者の方に喜んでいただける番組は出せると思っております。しかし、新しいことができるからといって、すべてこれを受信者の負担に求めることができないこともよく承知しております。その意味で、いろいろな観点から今NHKの中の業務を見直しまして、自己改革といいますか、合理化施策を着実に進めていっているつもりでございます。  その中で、御指摘のように番組の外注といいますか、すべての番組を何もNHKの職員自身の手でつくらなければならないとは私ども思っておりません。今よりももっと外の力をかりられるところがあるならかりてまいりたい。ただ、ここで私ども十分に気をつけなければいけないと思っておりますのは、私ども公共放送として、あるいはテレビジャーナリズムとして、安ければ、あるいは合理的に人手がかからなければどんどん外に番組を頼んでいいかというと簡単にもまいらない、やはりみずから最後まで職員の手でつくらなければならない番組もたくさんあると思います。そこの点のけじめだけははっきりしてまいりたい。  それからもう一つ、外注にすればすべて安いかというと、必ずしもそうではございません。これはきょう時間がございませんけれども、私どもも民放の経営内容等も十分データをもらいまして検討しております。外注すれば必ず安上がりというわけではございません。むしろみずからつくっている方が経費効率がいい場合もございますので、その点は十分に勘案してまいりたい。しかし、御指摘のとおり、今のままでいいとは決して思っておりません。もっともっと外の力をかりたいところはかりますし、関連事業もそういう意味で次々つくって、そちらの方に番組制作も委託できるものはしたいと考えております。  そして、今言われております六十五年度に一万五千人ということを一つ目標に掲げておりますけれども、私ども、これでもってすべて終わりというふうには考えておりません。さらにもう一段、合理化効率化も、進められるものはもっと進めてまいりたいと考えております。
  226. 田中慶秋

    田中(慶)委員 NHKはちょうど一昨年ですか、NHK自身の出資の問題についても検討されて、そして現在ぽんぽんNHK関連会社をつくっているわけでしょう。ですから、私はそれを含めて指摘をしているわけです。全体的に、はっきり申し上げて、関連会社やNHKの全体の今の要素からすれば、決して減量経営はされてないのです。今関連会社にこういう形でやっている、横流しをしているわけですから、もっともっと発想の転換をする必要があるだろう、私はこういうふうに申し上げているわけです。  例えばNHKが、NHKの関連企業という名称のものだけでも相当数今つくられているでしょう、出資もしながら。ですから、そういう点でうまい減量経営とさらに近代的な経営というものが、皆さんのところにそういう発想がもっと強くあってしかるべきだと思うのです。なぜ私が申し上げるかというと、確かにその中立性とかいろいろなことは大切であります。しかし、ポリシーが変わってなければできるわけですから、そういうことを含めて、ぜひこの問題についてはもっと精力的に取り組んでいただきたい。時間がありませんから、このことはまた別の機会にもう少し突っ込んでやりたいと私は思っております、いろいろな例を考えておりますし。  それともう一つは、NHKが関連会社をたくさんつくっておりますけれどもNHKという形の中で、国民がその名称といいますか、それについて大変戸惑っていることもあるわけです。こういう点を含めて、その辺は明確にする必要があるだろう。これはこれで答弁をいただきたいと思います。  大臣最後答弁をいただきたいわけですけれどもNHK放送番組の制作に当たっているわけでありますが、これらの計画、内容というものは、担当大臣として、その中立性を云々ということとは別にして、中立性であるならばあるらしく、その辺について大臣がもっと掌握をして、いろいろなことを含めて偏向のないようにしなければいけないであろうということも言われているわけでありますから、番組についての中立性という前提ならば中立性を含めて、NHKのこれらの問題についてももっと、やはり担当大臣として、それらに対する考え方をお伺いしたい。  時間が参りましたので、この二点に対する御答弁をいただいて私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  227. 佐藤文生

    佐藤国務大臣 今先生の御意見を聞きながら考えたことは、言うまでもありませんが、放送法NHKは高度な自主経営というものが保障されておるわけでございます。したがって、六十一年度予算を私が見ましたときに、実は今先生が言われたことが趣旨になってあの三つの条件をつけているわけでございます。したがって、NHKがより自主的に経営をしながら、その中でどのように国民が見てぎりぎりの合理化効率化というものがなされているかどうかということ。それから、技術革新に向かって突進していくために多額な投資が要る。それは、御承知のとおりに、衛星放送にしても国際放送にしても投資が要る。そのたくさんの投資をやらねばならない中で、経営合理化とそれから受信料を上げないでどうしてやっていくかという、今からの知恵の闘いになるわけでございます。したがって、今後十分その点を考えまして、郵政省、NHKともに頑張っていきたい、こういうことだけを私は申し上げておきたいと思います。
  228. 川原正人

    川原参考人 私どもがいろいろな意味の効率化施策を進めていくときには、今までの経営の基本的な考え方をそのまま進めていって、ただ数字だけ、数だけを減らそうとしても、それはできるものではないと思っております。その意味では、従来の仕事のやり方を根本から見直さなければならない。そういうことを含めまして、私どもさらに精進を進めてまいりたいと思っております。
  229. 田中慶秋

    田中(慶)委員 終わります。
  230. 関谷勝嗣

    ○関谷委員長代理 鈴木強君。
  231. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 大臣の御都合があるようでございますから、最初二つだけ大臣にお伺いをしておきたいと思います。  その一つは、面接NHK予算と関係はございませんが、いわゆる都民テレビの開設の問題についてでございます。  実は昨年の十一月八日に、前の左藤郵政大臣が新聞記者との会見で、東京に六局目の民放テレビの免許を与えることを検討しているというふうな発言がございまして、これは東京都内の皆さんを対象にするローカルテレビのことだと思います。その後、前の左藤大臣がおやめになったわけでございますが、先月の末でございますか、鈴木東京都知事が佐藤大臣を御訪問になられまして、この実現方を強く要請されたようでございますが、大臣として、この件についてはどういうお考えでございましょうか、これをひとつお伺いしたいのでございます。
  232. 佐藤文生

    佐藤国務大臣 先般東京都知事が参られまして、前郵政大臣お話をしたと同じように、東京都にぜひ割り当てをしていただきたい、その趣旨は、東京都民に東京都議会を中心にした動きが的確にわかるようにしたいというような内容でございます。そういうことでお願いしたいということで、前郵政大臣からも聞いておりますので検討させていただきます、そういうことでございます。
  233. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 これは多ければ多いほどいいというものでないと私は思います。東京には4、6、8、10、12と五チャンネルが企業として存在しているわけでございます。それらの既存の放送局に対する影響、また一面では都知事のおっしゃるようなこともあると思います。ですから、その辺の調和が非常に難しいと思いますので、ひとつ大臣に、慎重の上にも慎重を期してこの問題には対処をしていただきたい。今大臣としては、すぐ免許するというふうな気持ちは持っておらないのでございましょう。私は、慎重に検討していただきたい、こう思うわけですが。
  234. 佐藤文生

    佐藤国務大臣 慎重に検討するということでございまして、今どうこうするというような気持ちではありません。慎重に検討させていただきたいと思います。
  235. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 それではもう一つ。  NHKもそうでありますが、日本の放送界、これは何といっても言論と報道と表現の自由が生命だと思います。したがって、私どもNHK予算審議する都度、毎年毎年不偏不党、表現の自由を確保してやってほしいという附帯決議をつけておるわけでございます。せんだっても、マルコスさんの選挙の状況や、あるいはマルコスさんが外国へ亡命する状況を私どもずっとテレビで見ておりましたが、まさに一つのドラマを見ているような感じがいたしました。テレビの影響というのがいかに大きいか、思い知らされたのでございます。  そこで大臣にぜひ、言論、報道、表現の自由というものは断固として守っていくという決意をここで表明していただきたい、そして実行に移していただきたい、私はこう思いまして、このことだけをここで聞きたいのであります。
  236. 佐藤文生

    佐藤国務大臣 やはり放送法趣旨で、言論の自由、表現の自由というものは、私は一番守らねばならない趣旨だと思います。さらに、NHKは特殊法人として高度な自主経営というものが認められておるということでございますので、そういう考え方で私はやっていきたい、こう思います。  先ほど委員からの御質問がありまして、国が金を出す、内容についても口を出すのじゃないかと言われましたけれども資金はわずかでも出すようなことにもなるでしょうし、出さねばならぬでしょう。けれども、その放送の内容についてはどこまでもNHKの自主性を認めていきたい、これが私のNHKに対する考え方でございます。
  237. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 よくわかりました。この放送法第三条というものは厳然として存立をいたしておりまして「法律に定める権限に基く場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない。」、これが大原則でございます。この編集の自由は何者も侵すことができないと思います。大臣の今の御所信を伺いました。どうぞひとつその線を堅持してやっていただきたいと思って、お願いします。これで大臣は結構でございます。  それでは、NHK会長にちょっとお尋ねをいたします。  ちょうど日本でラジオ放送が始まりましてから六十一年。おととい、さきおとといですか、放送記念日。テレビはたしか三十三年になると思いますが、この間紆余曲折を経て、今日のNHKの立派な城を築いていただいたものと思います。しかし一面、今日は、財政面におきましてもあるいは事業の運営の面におきましても大変環境が悪い、そういう中に立たされていることも事実だと私は思います。  しかし、今会長以下全職員、また役員が一体になりまして、とにもかくにも全努力を尽くして、公共放送としての役割を果たすために頑張っていただいている、このことについては深く感謝をいたします。そして、五十九年につくられましたあの三カ年計画を私は拝見しまして、なるほど皆で努力した成果が数字の上にはっきりと出ておるということを確認できたのでございます。本当に感謝をしております。  今や我が国は、情報化社会の中に完全に入っていると思うのですね。そしてまた、二十一世紀に向かってそのスピードは一段と加速度を加えていると私は思います。このような情勢の中で、公共放送としてのNHKの果たす使命は非常に大きいと思いますし、また、国民NHKに寄せる期待も大きいと思うのでございます。川原会長は、このような重大な時期に会長職におられるわけでありますが、NHK公共放送としてどうしたら視聴者の期待に十分こたえることができるのか、その御所信を初めに伺いたいのでございます。
  238. 川原正人

    川原参考人 私ども、何といいましても経営の不偏不党、自律ということをまず最大限に大事にいたしまして、表現の自由を守っていくということが基本になければ、視聴者の信頼、国民の期待に沿えないものと思っております。そして、その上で、やはり今のラジオ、テレビ、こうした放送ジャーナリズムというものを本当に国民の生活の向上、特に心の充実に役立つような方向で物を考えていきたい。報道に当たっても、あくまで公正な立場を貫き、真実を伝えるということ、そしてその他の番組におきましても、日本の伝統と文化を十分に守り、新しい文化を築き上げていく、そういう気持ちで番組の制作に当たってまいりたい、それが公共放送の使命であろうというふうに考えております。
  239. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 番組面における会長の御所信はいつも伺っております。またきょうも伺いまして、不変であることがわかりましたが、私はもう一つの面で、財政的な面から非常に困難に逢着していると思うのでございます。  先ほども副次収入の問題等も質問の中に出てまいりましたが、原則として受信者からいただく金によって賄うのが公共放送の基本でございますけれども、いろいろとまた工夫をしまして、何とか副次的な収入をふやすことができないか、こういう面から、私はこれからの財政に対する心配をしておるわけでございます。先ほども質疑の中で、それじゃ六十二年から先どうするんだ、受信料を上げなくても済むのかどうなのか、計画をつくるのかどうなのか、いろいろな質疑がございました。明確なお答えはしておられないようでございますけれども、少なくとも六十二年度値上げをしないで済むということははっきりしたわけでございます。しかし、八十四億の繰り越しが果たしてうまく調整弁になるのかどうなのか、これは六十二年のことですね。六十三年になったらもう大変じゃないか、こう思うわけですね。  これはもう我々のNHKですから、皆さんが本当に努力をされ、そして効率的な運営をして、なおかつ、どうしても足りないということになれば、視聴者料金値上げにも応じてくれると私は思うのですね。問題は、その努力いかん、そして放送番組の内容いかん、こういうことになると思うのです。ですから、そういう経営面といいますか、経理面といいますか、財政面でございますね、これに対する心配をしておるのです。そこのところをちょっとあわせてお伺いしたい。
  240. 川原正人

    川原参考人 公共放送としてのもう一つ基盤は、御指摘のとおり、NHKの財政が健全であるということ、同時に、その財政を支えているのは受信料でございますので、私どもはこの受信料制度はあくまで堅持していかなければいけないと思っております。しかしながら、これから私どもがやり遂げていかなければならない仕事は、ますます経費も人手もかかる問題が多いわけでございますから、それらをすべて受信者の負担にお願いするということはもちろんできません。したがいまして、私ども、いろいろな形で副次的な収入もふやしていきたい、それから外部の企業の力も、かりられるものは、もしそれが合理的な経営に役立つものならば大いに活用してまいりたいというふうに考えております。  しかし、やはり番組の中に商業主義的な影響が入ってくること、もちろんコマーシャルそのものが入ってくること、これは厳に慎まなければいけないと思っております。したがいまして、そういう副次収入の増大に鋭意努力いたしますとともに、やはり今までの企業の中をもう一度再点検いたしまして、少しでも合理化できるものは合理化し、人間も減らせるものはさらに減らして、視聴者の負担をなるべくこれ以上増大しないで、現行の料金を少しでも長く維持できるように進めてまいりたい。そして、それだけの努力をしてなおかつ、どうしても私どもはもはやこれが限界というときには、あるいはもう一度視聴者にお願いする時期が来るかもしれませんけれども、それは少しでも先に延ばせるように努力をしたいというふうに考えております。
  241. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 会長の御趣旨はわかりました。ぜひその線でさらに御努力をいただきたいと思います。  それで、会長でなくて結構ですが、現在、NHKの資産の総額は一体幾らあるのでございましょうか。負債その他を差し引いて正味資産はどのくらいになるのか、ちょっとそこのところを教えていただきたいのです。
  242. 井上豊

    井上参考人 五十九年度末におきます状況を申し上げますと、資産総額は約三千億円でございます。これは先生御案内のとおり、全国津々浦々放送をくまなくということでございますので、放送設備等の固定資産が大部分でございますけれども放送債券の減債基金などが主な内容でございます。  一方、五十九年度末におきます外部資金の残高は約七百二十億円でございまして、この内訳は、放送債券がおよそ五百十億円、長期の借入金が二百十億円というふうになっております。(鈴木(強)委員「正味幾らですか」と呼ぶ)総額は、先ほど申し上げましたように七百二十億円でございます。
  243. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 長期の負債、これは何年くらいのものなんですか。
  244. 井上豊

    井上参考人 放送債券あるいは長期借入金につきましても、返済期限は十年でございます。
  245. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 ですから、固定資産として三千億円あるわけですね。そしてそのうち放送債券そして借金が七百二十億あるわけですな。長期借り入れが二百十億ですか。そうすると、これは当然簿価によって計算されていると思いますが、三千億円という固定資産から今申し上げた負債を差し引いたものが正味資産になるんじゃないですか。それはどういう計算をしているのですか。
  246. 井上豊

    井上参考人 今申し上げましたのは長期借入金、それから放送債券総額が七百二十億でございます。したがいまして、先生お尋ねの資産、負債それから資本という関係で申し上げますと、資産の合計はおよそ三千億でございます。それから負債の合計は千四百億ということでございます。したがいまして、資本はおよそ千六百七十億円、こういうことでございます。
  247. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 それでわかりました。ちょっとちぐはぐでわかりませんでした。  それではその次に、ソウルのオリンピックは再来年になりますね。会長、この放送権料について、私たちはモスクワのような不幸なというか、腹の立つようなことを知っておるわけです。ロスのときには、NHKが窓口になりまして、インポートの連絡をとって交渉に当たっていただきましたね。今度、ソウルの場合には、それはどういうふうな形になって合意されているのか。そして、交渉はまだ始まったかどうかわかりませんが、どうなっているか、そこをちょっと教えていただきたいと思うのです。
  248. 川原正人

    川原参考人 ソウル・オリンピックに臨む日本の放送界の姿勢は、原則としてロサンゼルスの場合と同じでございます。これは、既にロサンゼルスのオリンピックを実施しましたときにも、基本的には民放連と大体お話ができておりますし、その後も、そのことは折に触れて確認をいたしております。  それから、実際の交渉はまだ正式には全然始まっておりません。ただ、非公式にいろいろな話が流れてまいっておりますけれども、それにつきましてはまだ何とも申し上げかねる状況でございます。
  249. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 次に、さっき私が最初に申し上げましたように、五十九年度からの三カ年計画ですね。これによって差金が三百五十三億円できたわけですね。これは五十九年度、六十年度、そして六十一年度はゼロ、こうなっておるわけでございますが、そのうち資本支出に五十九年度百七十億、それから六十年度に百八十三億、それで六十一年度資本支出に九十九億を充当して、なお八十四億の金が残っておる、こういうわけでございますね。  そこで、ちょっと私は会長に伺っておきたいのですけれども予算総則第七条二項というのがございますけれども、それによりますと、全職員が非常な努力をして経費を節約をした、そういう場合には経営委員会承認を得て職員に対する報酬をするということになっているわけですね。私は、本当にみんなが一生懸命やったからこれができたと思うのですよ。額ではないのですね。その一生懸命やってくれた役職員に報いる意味において、額はたとえ幾らであっても、諸君の協力でこれだけの実績を挙げて六十二年度にこれだけの繰り越しができた、こういう意味からして予算総則の七条二項というものの発動ができなかったのでしょうか。私はできないように聞いているわけですけれども、できなかったのはどういうわけでしょうか。それは、財政が困難だという面でこういうことを言うのはちょっとちぐはぐになるようにお考えになるかもしれませんけれども、私はそうでないと思うのです。やはり職員の労苦に報いる。事業は人ですから、その人たちがそうしておけばまたやろうという気になってくる。そうすると、会長が考えるような効率化というものがもっと前へ進んでいくように私は思うのですよ。そういう意味からしてこの発動をしてほしかったわけですけれども、もししてあったらごめんなさい、どうでしょうか。
  250. 川原正人

    川原参考人 五十九年度においても、この予算総則の七条二項を使っての職員に対する特別な給与といいますか、それはやっておりません。もちろん、いろいろな角度から見て、職員の努力がなかったなどということは毛頭申しません。職員の努力も大いにありましたし、私どもも鋭意督励をいたしまして、いろいろな節約にも努めました。ただ、一方で五十九年度におきまして、やはり当初計画しました営業の受信者の増加等も、これも残念ながら目標までは達しなかったような事情もございます。  もちろん、片一方において節約もできましたし、あるいはまた衛星が結局一チャンネルしか放送ができなかったために、逆に用意しました経費が残し得たといいますか、残ったといいますか、そういう要素もありまして、一体職員の努力によるものがどれだけかということば、これはなかなか難しかったのが一つと、それからもう一つは、通常の予算、給与の中でこれは労働組合といろいろ協議いたしました結果、一応妥結に達したこともございまして、その範囲内で私どもは職員にある程度の処遇はできたというふうにも考えまして、もちろん十二分だったか、それでどうかということはこれはいろいろ議論はあります。それはありましたけれども、一応そういう労使の間で妥結しました条件の中で職員にも働いてもらっておりますので、あえてこれにプラスしてということは考えませんでした。また、それで職員も納得してよく働いてくれたというふうに今思っております。
  251. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 私は少し考え方が古いかもしれません。さっき申し上げましたように、協会財政状況が非常に苦しいということも百も承知でございますが、しかし、それとこれとをやはりごっちゃにしてはいけないと思うのであります。ですから、額はわずかであっても、その労苦に報いるための制度があるんですから、これはやはり御活用になって、そしてさらにみんなに協力をしていただくというようなことが、経営者としてはやるべき道ではないかというふうに私は考えておるものですから、なかったことは非常に残念ですが、今言っても後のことでございます。ぜひそういう点は――何か放送衛星の問題とそして職員の苦労がどこまで評価できるかわからなかったような、これは私が閥違って聞いたなら別ですけれども、そういうような物の言い方というのは、ちょっとこれはおかしいですよ。少なくともこれだけの繰り越しをしたことは事実ですから、それはみんなの努力だったわけじゃないですか。それに報いる道をやはり考えてやるということは、いかに財政が困難であってもやるべきことではなかったか、私はこう今でも思います。ですから、今後十分私の意のあるところを体してやっていただきたいと思います。     〔関谷委員長代理退席、委員長着席〕  それからもう一つ、適正な給与を維持すると会長は言っておられますね。この適正な給与というのは一体どういうものなんでしょうか。私たちは毎年この委員会で、他の報道関係、新聞関係、マスコミ関係に働く皆さんと比べて、まだNHKの職員の給与はかなり低いという事実を持っておりますね、資料を。したがって、何とかして同種の皆さんのところまでは引き上げていただく努力をしてもらいたい、こう願ってきておるわけでございます。一面では財政は不如意、非常に苦しい中でいろいろと折衝されていると思うのでございます。一遍にこれをやるといっても、今の協会の情勢の中では難しいことと私も思います。しかし、これから団体交渉もあるでございましょう。したがって、ぜひひとつ一歩でも二歩でも三歩でも、たとえ半歩でも一歩でも同種業者の方に近づくような、そして格差をなくしていくような努力をしていただきたいと私は切に願うわけですけれども会長の御所信をちょっと承っておきたい。
  252. 植田豊

    植田参考人 職員の処遇につきましては、予算に基づいて協会として努力をいたします。六十一年度の給与を具体的にどうするか、先生もおっしゃいますように、この後慎重な検討をしてまいりたい、社会情勢等も十分に見きわめてまいりたい。今日の時点では申し上げる状況にございませんところを御理解いただきたいと思います。  なお、これも御指摘のとおり、同業他社との格差是正がございますが、これも効率化を積極的に進めていく中で、協会財政状況、社会状況等を総合的に勘案しながら、今後も給与全体の問題として検討いたしてまいりたい、段階的に取り組んでまいりたい、かように考えております。
  253. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 せっかく春闘のさなかでもございますから、私もこれ以上は申し上げませんが、ぜひひとつ同種企業の皆さんと一日も早く肩を並べることができるような御配意を特にお願いをしておきます。  それから、私は主に放送番組の問題について、きょうこれからの時間を使いたいと思いますが、六十一年度事業支出総額は三千四百十四億円になっておりますが、このうちで放送番組の制作及び放送施設の維持運用費というのが実に総事業支出の六五・四%、二千二百三十二億三千万円となっております。これはNHK放送番組に最大の努力を尽くしておるという証拠だと私は思います。それで、今やっておられる総合テレビ番組あるいは教育テレビ番組、試験放送としての衛星第一テレビ番組、ラジオの第一、第二、FM、それからNHKが面接やっております文字多重、こういったものの放送番組、こういうところにどれだけの放送制作費というのがかかっておるのでございましょうか。
  254. 井上豊

    井上参考人 六十一年度国内放送費につきましては、番組制作に直接要する経費が四百五億でございます。また、報道関係のほか、番組制作に共通する経費番組の利用促進に要する経費等が二百二十四億でございます。お話にございましたように、そのほか技術施設の維持運用、回線の借用等通信施設の専用に要する経費が二百九十三億でございまして、合計九百二十二億でございます。  先ほど申し上げました番組制作に直接かかる経費四百五億の中で、お尋ねの総合テレビに対しまして、これは概算でございますけれども、二百九十一億円、教育テレビに四十八億円、ラジオ、これは第一、第二合わせまして二十三億円、FM放送に十一億円、衛星放送に二十九億、それからNHKが直接やっております文字多重放送に三億でございまして、この総計が四百五億ということになっております。
  255. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 それから、国際放送については、番組の制作費としては二十五億円になっておりますが、実際にNHK国際放送支出をしている金は幾らになりますか。
  256. 井上豊

    井上参考人 国際放送実施経費といたしましては、先ほどから議論がございました政府の交付金を含めまして、これは人件費等も全部含んででございますけれども、五十一億五千万円というのが国際放送実施経費でございます。番組制作の直接経費といたしましては、二十五億三千八百万円でございます。
  257. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 政務次官、いらしていただいて本当に御苦労さまです。ここではいつも国際放送について、今もお話しのように、五十一億五千万円の金を支出してNHK国際放送をやっているわけです。郵政大臣国際放送をやりなさい、こういうふうに言っているわけですね。NHKはそのやりなさいという方針に基づいてやっておるわけでございますが、もらえる金はわずか十二億しかない。あとのものはみんなNHKの我々受信者が払う受信料によってそっちに使われているわけですよ。極端に言うと、我々は国内放送をよくするために受信料を払っているのに、国際の方に使うのはおかしいじゃないか、そんな金があるならば国内の方の番組をよくしてくれ、そういう意見だってあるわけですよ。しかし、やる立場のNHKから見れば、わずか十二億しかもらえない中で国際放送をやれといったって、こんなものでできっこないですよ。だから結局、最低五十億近いものがなければ、まあまあこれが国際放送かと言われるような放送がやっとできるというのが現状でございますね。ですから、私たちは何回も何回もこの交付金をふやしてくれということで附帯決議をつけて、年中行事のようにお願いしているのですけれども、遅々としてこれは進んでいかない。何かこれは考えなきゃならぬじゃないかというところまで来ておるわけでございます。  田名部政務次官、御苦労ですけれども大臣とも協力して何とか、交付金をふやすことも当然ですし、その他、NHK公共放送で、放送実現番組の制作その他についてはちゃんと実績を持っておるわけですから、そういうことには関係ないと思いますので、何か知恵を絞って、そしてNHKのこの国際放送費に対して国がもう少し力を入れてやってもらいたい、こう私は常々思っておるわけです。ひとつ田名部政務次官から御所見を承って、ぜひ今後も努力していただきたいと思いますが、いかがでしょう。
  258. 田名部匡省

    ○田名部政府委員 お答えをいたします。  国際時代ということで、私どもも日本の立場を各国に正しく理解していただきたいということから大変重要なことだ、こう考えておるわけであります。しかし一方、財政難ということで厳しい財政事情にございまして、なかなか増額をお願いしても困難な面もございます。その中でも前年同額をこの六十一年度もようやく確保する程度ということで、大変恐縮でありますが、しかし、今申し上げましたように、日本の置かれている立場ということからいたしますと、これは最重要課題として取り上げて今後も努力していきたい、こう思います。  どうぞよろしくお願いいたしたいと思います。
  259. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 大臣とも手をつないでぜひひとつ頑張って、田名部政務次官のときにこれだけ上がったというような実績をつくって歴史に名を残してもらいたい、こう私は思うのであります。  そこで、これも会長に伺いたいのですけれども、さっきの御質問を聞いておりまして、番組の外注のことについては、従来私たちはできるだけNHKが直接番組の編集をしてくださいということをずっと言い続けてきたはずなんですね。NHKもその方針に基づいて、自分の手で番組編成をしてきておったと思うのですよ。ところが今度、エンタープライズというのですか、去年の一月十六日、そして今度はNHKテクニカルサービスというのが五十九年の十月九日にできておるわけでございます。テレビ朝日のやらせ事件なんというのも、これも外注であったように聞いておるのです。  さっきも、会長の御意思が、必ずしも進んでやろうというようなお気持ちではなくて、いろいろ財政困難の折からというようなことも考えて、NHKの委嘱による放送番組の作成というものをこのエンタープライズにしてもらっているのだと思うのですが、本来からいうとこれは逆なんですね。だから、もう一回、NHKが自主的に番組を編成しなければならないのだけれども、かくかくの理由によってエンタープライズに委嘱してつくってもらうんだ、そのメリットがどのくらいあるか、それで放送番組については絶対に協会の職員が制作するのと全く寸分の差もない、確実度は問題ない、こういうふうに言えますか。
  260. 川原正人

    川原参考人 番組の制作には恐らくいろいろな形があり得ると私は思っております。それから、NHKとしまして、例えばニュースの取材とか報道とかいうもの、これは外部に委託することは将来ともできないものだと思います。これはあくまでみずから取材し、その編集に当たらなければなりませんけれども、ただ、ある種の番組の中には、NHK自身が企画とか編集のところをきちっと握っておれば、実際の制作は外部に委託することも、むしろ合理的な場合があると思っております。それは、外部のそういう制作会社の場合には、NHKの委託にも応ずると同時に、さらにそのノーハウのある人手を活用して、それ以外の外部の社会に対していろいろなソフトを提供することもできる、そういうことによって合理的、効率的な事業運営も図れる場合がいろいろあると思います。  それからもう一つは、番組の中心部分でなくて、物によって補助的な作業の部分、これは切り離して外部の力をかりるということは十分できると思います。今でもそれはやっておりますし、その面がもっと拡大できる余地はあろうかと思います。  そういう形で私どもNHKが委託する仕事を、NHKも出資して、そういう会社をつくってやれば、全くNHKと関係のないプロダクションに外注するよりも、よりNHK企画意図が十分に受けとめられて、効率のいい制作ができる場合が十分ある。そういう意味でこの種の会社をつくり、さらに私どものみずから今やっている仕事の相当部分はそこに委託できるのではないか。しかも、それが経済的にも効果を発揮するということは十分考えられると思ってやっております。そして、そのことが、ひいてはNHKのより効率的な経営に役に立って、そして受信者への負担を少しでも軽減する、あるいは受信者に負担増をお願いしなければならない時期を少しでも先へ延ばせるということにつながっていくのではないかと考えておるわけでございます。
  261. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 NHKが独自に制作をすることと何ら変わりなくしかも費用もその方が安いという方法であれば、あえてそこにやることに対して私は反対するものではございません。いろいろと経営の万法も変わってきておりますから、その点はよくわかりますが、ニュースとか報道は絶対これは自分でやる、そのほかのものについてそういうふうな効率的な格好でやれるものはやりたいという御所信ですから、それはそれなりに私も了承をいたします。  ただ、どこまでやっていくかということがこれまた問題になるのですけれども、とりあえず六十一年度の外注費というのは総額で幾らになりますか。わかっていたらちょっと教えてください。
  262. 井上豊

    井上参考人 六十一年度の外注番組予算につきましては、具体的な制作でありますとかあるいは番組を改編する内容を選定中でございまして、最終的にはこれからでございますけれども、一応の目安として私どもが今持っておりますのは、衛星番組の一部の改編でございますとか、あるいは外国映画の日本語の吹きかえでございますとか、それから講座番組あるいは実用番組等の一部の制作ということを考えておりまして、現在のところは五億円程度を考えているわけであります。あるいはこの実施計画の中で、それが少し上向きになるであろうというふうに考えております。
  263. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 会長、そうしますと、これは無限にやるということではないわけでしょうね。しかし、さっき言ったように、非常に効率的に安くやれるということであれば、相当数をそこへ発注していくというような考え方でしょうか。それともできるだけNHK側がやって、そしてそっちでやった方が非常にいい、両立の形でというふうな考え方でございましょうか。当面は一部やってもらって、逐次両立して、それでだんだんと外注がふえていくのか、あるいはある程度で並列していくのか、その辺のパーセンテージはまだ決まっていませんでしょうか。質問が無理でしょうか。
  264. 川原正人

    川原参考人 外注の問題についてあらかじめパーセンテージを決めてというわけにはちょっとまいらないと思います。むしろそれよりも、やはり一つ一つ番組の性格なりねらいなり目的なりを十分に検討しながら、かつまた外部のそういう私どもが委託をする会社の力がどの程度伸びていくかということも見ながら、逐次判断をしていかなければならないのではないかと思っております。
  265. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 会長は、御所信というか、国会に対する御報告の中で、国内放送について、「ニュース報道番組充実特別企画番組積極的編成及び地域放送充実など、公共放送の使命に徹し、公正な報道と豊かな放送組番の提供に努め」たいと思いますと、こういうふうに言われているわけでございます。  四月以降いつも、ニュースの時間とか若干放送時間が変わっていくわけですけれども、六十一年四月から以降、変わるような点はあるのかないのか。そして、会長が例えば「特別企画番組積極的編成」ということをおっしゃっているのは、そこらの問題はどういうものを考えておられるのか。あるいは「地域放送充実」というようなことが言われておりますが、そこらはどういうものを考えておられるか。たくさんありますから、ちょっとそこら辺だけでも教えてもらいたい。
  266. 川口幹夫

    ○川口参考人 四月以降の番組の改編は、ただいまもう大体準備ができました。五十九年、六十年と非常に大幅な改定をいたしましたのですが、今回は小幅の改定でございます。ただ、五十九、六十にやりましたことの中で、これはどうも成果を上げてないといったものは大胆に見直すことにいたしました。それにつけ加えて、今先生がおっしゃいましたような特別企画というものを入れることにしたわけでございます。  大きく分けまして、昭和六十一年度の編成のポイントは大体六つの点でございます。  一つは、NHKならでは、あるいはNHKらしい、そういう番組放送していこうということでございます。これが特別番組として、例えば「ドキュメント昭和」とかあるいは「世界の中の日本」とかあるいは「地球大紀行」とか「大黄河」とか、そういった番組でございます。  それから二番目は、「世界の中の日本」と今言いましたけれども国際化の中の日本、今国際的な関連なしにはすべて考えられないような状態になっています。その日本のあり方を常に国際的な視野で見てみようという番組をふやしたい、あるいは通常の番組でもそういう視点でつくっていきたいということでございます。  三番目は、地域放送をもっと全国的に紹介しよう、あるいは地域の中で非常にすぐれたプランを、地域同士で例えばグループを組んでやるとか、そういった非常に地域のために役立つ番組としてさらに向上させたい、これが三番目でございます。  それから四番目には、今起こっている現実の問題、これがどうして起こったのか、あるいは今どうなっているのか、この先どうなるのか、そういう現実対応の番組をできるだけはっきりと、しかも前向きにつくっていきたいということでございます。例えば六時の時間帯などはそういう番組もございます。  それから五番目が豊かな教養、六番目が力強い娯楽番組、芸能番組というようなことを考えております。
  267. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 時間がありませんで大変残念ですが、一つだけ伺っておきたいのです。  NHKが四月から日中共同で制作をしたのですか、しようとしておるものでしょうか、大型ドキュメント番組「大黄河」というのが既に予告されておりますね。  ところで、この日中共同の制作については、費用分担はどうなっていくのか。それから、これは川原会長がヨーロッパの方に、高専務がアメリカの方に出向かれまして、欧米五カ国とオーストラリアから「大黄河」を買いたいというのですか、使わせてもらいたいということで、皆さんがセールスに行ってセールスが成功したようなんですが、これはエンタープライズ社を通じて必要な国に分けてあげる、代金はいただく、こういうふうな方式になるのでございましょうか。海外に対する売り込みというのは直接NHKがやるのですか、これはどうなんですか。
  268. 川口幹夫

    ○川口参考人 「大黄河」の制作につきましては、中国に対して分担金という形で百二十万ドル、今のお金にしますと大体二億円ぐらいでありますけれども、これを払う。制作費につきましては日本語放送版制作費大体一億七千万を予定しております。  このうち、今お話しになりましたプリセールという形をとりまして、海外の放送機関にいわゆる資金提供をしてもらって共同制作をやる、つくったものは各放送局でもって放送をする、こういう形をとっております。したがいまして、NHKがじかに交渉をして、そして共同制作としてその分担金をいただくという形になっております。ただいままでにアメリカ、イギリス、フランス、西ドイツ、イタリア、オーストラリア、韓国といったところが大体プリセールに応じております。
  269. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 外国にセールスをして売るのは、NHKが直接売れるのですか。それともエンタープライズとか何か会社を通じてやるのですか、どうなんですか。
  270. 川口幹夫

    ○川口参考人 共同制作という形でNHK本体がやります。
  271. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 もう時間がなくなりました。  それで「昭和」のことも聞きたかったのですが、いずれにいたしましても、さっき武部委員からも世論調査、こういったものも広報関係でやっておられるようでございますが、いろいろと番組に対する御意見もあると思うのです。私は毎日新聞の「マイクへ一言」というのをずっと毎日毎日見ておるのですが、非常に参考になり、今度はNHKの方から逆に質問に答えているような場面もありまして、誤解があればその誤解を解いてもらうというようなことで、この欄を私は非常に重要視しておるし、時には自分で書いて出すようなこともありますけれども、ひとつ広く広報活動を通じ――私もきょうは、大相撲とか高校野球とかあるいはそれらの放送権料、あるいはいろいろな国際問題等に対する番組、特に教育放送等についても伺いたかったのでございますが、時間がありませんから、これはまた決算のときに伺うことにして、これで終わります。ありがとうございました。
  272. 宮崎茂一

  273. 田並胤明

    ○田並委員 それでは、私は第一点、NHKの今後の財政見通しとその対策についてお伺いをしたいと思うのです。  郵政大臣おりませんので、次官の方にお願いをしたいんですが、まず大臣の今度のNHK予算に対する意見の中で、六十一年度債務償還に必要な資金九十九億円というのは五十九年度、六十年度の両年度繰越金百八十三億円のうちから充てていく、そのことによって収支均衡を保っている、協会の財政が非常に厳しい状況に置かれているというこの状況を認識して、経営の一層の効率化のための具体的方策について検討を行えということで、具体的には事業計画実施に当たっては特に次の三点について留意をするように、実はこういう意見書がついておるわけであります。その中で「極力長期にわたり、受信者の負担増を来さないよう努めること。」このように指摘をしているわけですが、この「極力長期」というのはいつごろまでを想定しているのか。  というのは、先ほどのNHKの各担当の人の答弁によりますと、例えば六十一年度、六十二年度はまあまあやっていける、しかし六十三年度は赤字になることが予想される、こういう答弁を午前中の答弁の中で一つはされておりますし、さらに本年度事業収支予算書を見てまいりますと、支出が本年度三・九%の伸び、収入は一%の伸び、これがずっとここのところ何年か続いているような状況ですから、このままいったらば、どう計算をしても、当然あと何年か後には赤字になるということだけは想定されるんではないだろうか。もちろんNHKの方も経費効率化経営効率化、いろいろな経費節減等々によってその努力はしていくけれども、しかし、例えば放送衛星の今後の打ち上げに要する費用であるとかあるいはその他もろもろの放送充実を考えていくと、今の受信料ではとても賄い切れない事態というのが早晩来るんではないだろうか、こういう判断をするわけです。  郵政大臣意見書の中で「極力長期にわたり、」受信料の引き上げはしないように努めること、こういう意見書がついておるわけでありますが、読み方によっては非常に矛盾があるような気がするんですね。今の「増税なき財政再建」みたいなものをNHKに求めているんじゃないか、こんな気もするわけでありますが、万全の努力をすることだけはお願いはするにしても、いずれにしたってかかるものほかかっていく、入るものは少ない、こういう中で収支が赤字になっていくということは事実でありますから、その辺、意見書をつければいいというだけじゃなくて、郵政省としてNHKに対してどういう指導をされていくのかということを一つは聞きたいということと、NHK自身がどういう経営努力をされていこうとするのか。  もちろん今までの論議の中で経営効率化人員削減だとか、こういうものはありますけれども、例えば六十一年度で五十九年度から始まった三カ年計画が終わるわけでありますので、そうすると、次の六十二年度からの三カ年計画の中で当然今言ったような事態が発生をすると思うのです。その場合、まだ具体的な検討段階で皆さんに明らかにする事情にない、こういう午前中の答弁があったんですが、少なくとも本年度予算審議するのはわかりますが、さらにそれ以降の具体的なNHK経営状況収支状況というものを一つの試案としてでも明らかにしておいてもらわなければいけないのじゃないだろうか、そういう感じがいたしますので、ひとつ郵政省とNHKの両方から回答を求めたいと思います。
  274. 田名部匡省

    ○田名部政府委員 お答えをいたします。  極力長期にわたってということはどういうことかということでございますが、一応五十九年から六十一年までの三カ年というものの一つ経営計画をつくっておるわけでありますけれども、この計画の中でも六十一年度予算において八十四億円を翌年以降に繰り越すことができた。私どもは、三年の計画だからもうそれでいいんだという考え方ではなくて、先ほど先生お話しになりましたように、人件費でありますとかあるいはもっともっと経営合理化を図って、最大限の努力をしていただきたい。幾ら努力をいたしましてもどうにもならぬという部分も、あるいは出てくるかもしれません。しかし、最初からそういう考え方では、国民の皆さんに御負担をということになりますので、精いっぱいの努力をしていただきたい。  その努力を見て、その結果であるいはどうしてもという部分が出てくるかもわかりませんけれども、私どもはそのように考えておりますし、また受信料についてもまだまだ努力をして、この部分でも徴収をうんと高めていきたい。そういう前提として、まず最大限の努力をしていただくということから、私どももまたなるたけ国民の皆さんに負担をいただかないような努力をしていきたい。先ほど申し上げましたように、三年の予算だから三年でやればいいんだという考え方ではない。そのことをNHKにもしっかりおやりいただきたい、こういうことであの三つのことを打ち出しておるわけでありますので、ぜひ御理解をいただきたいと思います。
  275. 林乙也

    ○林参考人 現在の受信機普及状況の中で、今後NHK受信料収入増加は大体約一%程度にとどまらざるを得ないであろうというようなことが予想されており、また、公共放送として必要な業務を遂行していくためには、やはりどうしても四%程度事業支出増加が必要となるのではなかろうかということ。そういった中で、六十二年度以降においても年々約百億程度収支の悪化が見込まれるということにつきましては、大体先ほど御説明申し上げたとおりでございます。  なお、衛星の問題あるいはオリンピック等の問題でなかなか計数的には取りまとめがたい点があるわけでございまして、ここに計数をもって御説明申し上げるという状況にないことを御理解いただきたいわけでございますが、業務の考え方といたしましては、やはり大きく申しまして大体五つの点を今後重点として考えてまいりたいというように思っておるわけであります。  その第一は、コンパクトで機動的な制作体制を整備しながら、すぐれた放送文化の創造に努めるということでございます。第二点目には、業務全般にわたりまして抜本的な見直しを行います。業務体制についても再検討を進めていきたい。組織の活性化、簡素化につきましては、効率的な事業運営を推進しながら、当面は一万五千人体制を目指す効率化計画達成を図るということにし、さらに新たな構想についても検討していきたいということでございます。四点目には、財政基盤の確立のため、NHK放送番組、技術等の多角的な活用、保有資産の活用など、財源の多様化方策を積極的に進めていきたい。第五点目には、経費の重点的、効率的使用及び節減を徹底する、特化経常経費については基本から厳しく見直すことにしていきたいという基本的な考え方のもとに、五十九年度から六十一年度までの経営計画においては推進もしてまいったわけでございますけれども、六十二年度以降におきましてもこの基本的な考え方を引き続き鋭意推進してまいりたいというように考えておる次第であります。
  276. 田並胤明

    ○田並委員 政務次官の方の答弁の中で、どうも聞きようによるとNHKだけに極力努力をしろ――ただ、郵政省としても国としても少し考えなくてはいけないのがあるのではないかと思うのは、一つには先ほど国際放送の関係がありました、分担金のあり方について。確かに額は去年と同額ですが、比率からいくとことしは昨年よりも下がっている。五十八年ごろですか、あれをピークにしてその割合というのが年々下がってきているという実態があるわけですから、これについても国として考えなくちゃいけないことではないか。  それともう一つは、放送衛星の二号a、この場合には国が四〇%の負担をしておったと思うのですね。ところが、放送衛星の三号になったらそれが三五%に五%カットされている。もちろんこれは何か基準があってそういうことをされるのでしょうが、それだけでも約三十数億円のNHKの持ち出し分がふえる計算になります。六十一年度以降ですよ、今までのは別として。というのも出てきますし、さらに、先ほどもちょっと論議になりました受信料の免除の関係、これは郵政大臣の認可を得なければ受信料を免除してはならないという放送法規定がありますが、それに基づいて教育関係だとか生活保護世帯であるとかあるいは社会福祉法人であるとか、こういうところに対して受信料の免除をしております。それが優に百何十億ですか、かなりの金額に上りますね。これを全額にしなくても、それを半額だけでももし国が受信者にかわって、国の当然の教育施策としてあるいは福祉施策としてNHKに交付という形ですれば、どのくらいNHKの財政がもつかという計算もできるわけです。したがって、そういうものについてはまた後ほど時間があれば質問させてもらいますが、そういう国の努力も一層求めなければいけないんじゃないだろうか、私はこのように思うのです。  NHKの方にちょっと聞きたいのですが、受信料の未収回収対策あるいは滞納契約の解消策、ちょっと資料を見ますと、受信料の未収が五十九年度で八十億円、六十年度で約九十億円、滞納契約が五十九年末で九十九万五千件、六十年九月で九十九万七千件、残念ながら両方とも、額も件数も年々ふえております、この資料によりますと。この場合に、どのような解消策をとられているのか、努力をされているのか。一生懸命努力をされていることはわかるのでありますが、これはばかにならない金額だと思うのですね。総額で百十七億二千三百万円というように、六十一年度予算では全額免除、半額免除の合計金額が示されておりますが、これは大変な金額ではないか、総予算が三千何百億の中の百十七億でございますから。そういう意味で、この解消策についてどのような取り組みを今日までされてきておるのか、ちょっとお聞きをしたいと思います。余り長くなくて結構ですから。
  277. 松本幸夫

    松本参考人 お答えいたします。  先生指摘のとおり、毎年末収金として償却しなければならない金額がかなりの金額に上っております。これは六十年度上半期末で滞納の数が九十九万七千件という数に達しておりまして、そういったことから出てくる未収金を欠損償却という形で落としているわけでございます。  大変言いわけがましくなって恐縮なんですけれども、今滞納という形になりますものは、単身世帯でございますとかあるいは共働きの方でございますとか、そういった形で昼間不在ということで、面接が困難な世帯が大変ふえております。単身世帯の場合は恐らく七百万をはるかに超えている、あるいは配偶者をお持ちで働きに出ておられる御婦人の方の数が八百万をはるかに超えているというような状況でございますので、なかなか昼間お目にかかれないということから滞納というような形が発生してまいってしまうわけでございまして、私どもとしてはできるだけお目にかかる努力をしたいというふうに考えておりまして、五十二年には特に問題の多い大都市圏で特別営業対策員というものを特別に委嘱いたしまして、夜間あるいはお目にかかりやすい時期にそういった方々にお目にかかるという対策も続けてまいりました。これは五十九年に廃止いたしましたけれども。五十八年十二月からは、職員とそれから委託者との仕事のあり方というものを見直しまして、できるだけ職員が夜間あるいは日曜の勤務時間を長くとるような形で、面接困難な方々に会っていただく努力をしていただこうということで、新しい業務体制もつくって、そういった方々に対応しているわけでございます。  しかし、こういった対策をいたしましても、なかなか滞納を減らすということが困難でございまして、先ほどふえているじゃないかというお話もございましたけれども、全体としては九十九万台で一応歯どめがかかっておるという状況と我々は考えているわけでございますけれども、また滞納の方々あるいは昼間不在の方々にお目にかかる努力というものが、コスト的に計算しますと非常に高いコストに当たってしまいます。そういった点で考えまして、私どもとしては、これから先のこういった滞納の方々に対する対応をどういうふうに効率的にやっていくのがいいのかということで工夫を重ねているわけでございますが、お目にかかれない方々に対しては、文書対策というようなものも強化するというようなことも考えておる次第でございます。
  278. 田並胤明

    ○田並委員 そこで、受信料の性格についてNHKの方に聞きたいのですよ。  というのは、放送法の三十二条によりますと、「協会放送受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送受信についての契約をしなければならない。」こういうふうになっていますね。これは義務契約だろうと思うのですよ。そうすると、この受信料というのは、よく学説で放送対価説だとか許可料説だとか税金説とか公用負担説だとかいろいろありますが、NHKの今までの方針でいくと、公用負担説をとっているだろうと思うのですね。まさか税金説とか許可料説なんていうのはないと思うのですよ。かつて、戦前は許可料説みたいなものをとっておったようですが、戦後は放送対価説なのかあるいは公用負担説なのか、いろいろあったようですが、NHKはこの公用負担説をとっていらっしゃる。先ほどの会長の鈴木先生の質問に対する答弁を聞いていると、何か放送対価説をとっているような感じなのですね、ニュアンスが。  例えば、受信料を払わないというのは、契約をされない家庭の中には、NHK放送が余りおもしろくないからだとか、聞きたくないからだとか、いろいろな理由がついているようですが、この放送法の解釈によれば、少なくもNHK放送受信できないような放送設備というものは、今の各電機会社がつくっているテレビの中にはないと思うのですよ。ということになると、放送するその対価として受信料を払うという性格のものじゃなくて、要するに公共放送が自主的にしかも中立性を保って公平な放送ができる公共放送としての役割を持つNHKに対して、国民が分担をする義務だ、こういうふうに解釈をするのが妥当なのではないだろうか。  また、NHKもそのようにとっているのだろうと思うのですが、もしそうなるとすれば、またそのことを国民の皆さんによく話をして理解をしてもらって、公共放送の重要性というものを認識をしてもらい、少なくとも戦前のような放送機関が軍部に牛耳られて、大本営発表みたいなことをされて、国民がだまされるようなことのない放送をきちっと守るためには、あくまでも受信料によってNHKという公共放送を守っていくのだ、そのための費用分担なんだというふうに国民の皆さんに理解をしてもらうことによって、滞納だとかあるいは受信料の未払いだとか、こういうものをなくす努力国民の支持と理解を得た上で、NHK努力をして徴収をする。もちろん、法律だけの解釈を見れば、当然債権、債務の関係ですから、民事訴訟を起こして法的な措置でもって徴収をすることも可能だと思うのです。その辺はどんなものでしょうか。
  279. 松本幸夫

    松本参考人 お答えいたします。  先生指摘のように、私ども受信料の性格につきましては、NHKを支える負担金ということで、そういう考え方をとっております。もちろん放送法で定められたものでございますし、同時に国会の事業計画あるいは予算承認によって受信料が決まるという形でございますので、大変特殊な負担金であるというふうに考えております。  そして、その負担金の性格から考えましても、我々としましてはできるだけその趣旨理解していただいて、お支払いいただくというのが私たちの基本的な立場でございまして、今訴訟というお話もございましたけれども、そういった手段によらずに、私どもとしてはできるだけ御理解を得て受信料を徴収してまいりたい。また、滞納あるいは契約拒否の方々に対しましても、粘り強い努力を続けてまいるというのが筋道であるというふうに考えております。
  280. 田並胤明

    ○田並委員 確かに今答弁のあったとおりで間違いないのでありますが、ただそうなりますと、この受信料の滞納であるとかあるいは意図的な未契約数だとか、こういうものについての努力はなお一層されなければならないだろう。単なる放送対価説をとるならば、うちはNHK切っちゃうよ、民放だけ見ているよ、民放は広告収入でやるわけですから、どうしても視聴者の方は放送対価説的な考え方を持っていると思うのですよ。NHK番組がいいから見る、見たいから料金も払う、実はその域を脱してないのじゃないかと思うのです。  ですから、逆に、今言われたように、公共放送の使命を全うさせるために国民が負担をする義務的な経費なんだ、義務なんだ、これは税金でもないし利用税でもないし、非常にあいまいもことはしておりますが、公共放送を守るための、国民のひとしく分担をする費用なんだということを、もっともっと国民の皆さんに理解と支持が得られるようなPRをNHKとしても積極的にやるべきだろう、このように思うのですが、いかがなものでしょうか。
  281. 松本幸夫

    松本参考人 受信料の性格がほかのいろいろな費用等と比べまして大変特殊な性格であるということも事実であろうかというふうに思います。それゆえにまた、十分なPRと理解を求めるという努力も当然必要であるというふうにも思っております。  私、広報の方も担当しておるわけでございますけれども、そういった意味で、営業活動広報活動あるいは放送を通じまして、できるだけNHKの性格なりNHKの使命というもの、あるいは受信料の性格というものもあわせて国民の御理解を得て、経営の安定に資してまいりたい、そういう努力を続けてまいりたいというふうに思っておる次第です。
  282. 田並胤明

    ○田並委員 ひとつ一層の努力を強く要望して、次の問題に移ります。  同じく、NHKの今後の財政見通しとその対策の一環として、先ほどちょっと大臣いらっしゃらなかったときに政務次官にお話をしておいたのですが、というのは放送衛星のBS3の関係です。先ほど申し上げましたように、BS2の場合は、分担比率は国が四〇%、NHKが六〇%、計五百九十九億円でこのBS2の打ち上げをしたわけでありますが、BS3の方は国の負担が三五%、NHKが六五%というふうになっております。  これは基準をどこに定めておるのかということを一つお聞きをしたいことと、仮に、これは国の予算の関係でこうなってしまったのだというのでは、ちょっとNHKに気の毒じゃないか。少くも本来ならば、午前中科学技術庁の方が来ておりましたが、国が責任を持って打ち上げて、さらにNHKなり民放が難視聴解消のためにユーザーとしてそれを使用して、実用段階に入ったら使用料を払う、そういう方式にしてあげてもいいのじゃないだろうか、本来ならば国の事業として。というのは、国鉄の財政赤字の大きな原因というのは設備投資ですよ。NHKに過大な設備投資をさせて、国鉄の二の舞になるようなことになっては困るわけですから、当然国として、公共的な部分として負担をすべきものについては、そのことによって国民全体が大変利益を受けるわけでありますから、そういうものについては無料でNHKなり民放に使わせるというんじゃなくて、多額の投資を必要とするものについては国がそれなりに宇宙開発事業団等によって打ち上げさせて、実用段階に入ったらNHKと民放がそれを使ってニューメディアの開発をしたり、あるいは難視聴解消に役立てていく、こういう方策をとるべきではないか、このように私は思うわけであります。  ですから第一点、この四〇が三五になった理由と、さらに二つ目の問題、いつのこの委員会でも出ているようでありますが、改めてそのことについてお聞かせを願いたいと思います。
  283. 奥山雄材

    ○奥山政府委員 まず第一点でございますが、BS3やBS2における放送サービスの継続とあわせまして、新しい放送技術の開発、さらには増大、多様化する放送需要に応ずるという目的を持っております。  ところで、国は放送衛星の開発の当初の段階におきましては、NHKを含めて一般の民間と言っていいかと思いますが、民間がこれに金を出すということは極めて危険が大きいということで、CS及びBS、正確に申し上げますと実験用中容量静止通信衛星並びに実験用中型放送衛星につきましては、一〇〇%国が経費を負担したところでございます。その後、BS2並びにBS3に至りまして、これが実用及び開発のいわゆる相乗り衛星であるということから、その両方の要素を勘案いたしまして、国がある一定の比率を持ち、またユーザー側も一定の負担をしていただくというように、その枠組みを決定したわけでございます。  BS2の段階では、ただいま先生指摘になりましたように、国が四〇%、それから民間といってもこの場合はNHKだけでございますが、NHKが六〇%でございました。ところが、BS3になりますと、先ほど来お話が出ておりますように、民間放送もさらに加わってまいりまして、一層いわゆる実用衛星としての色彩が強くなっていることも事実でございます。それに、国の財政事情ということを申し上げると大変恐縮なんでございますが、国の財政事情も確かに一つはございます。しかしながら、NHKの財政事情が大変窮迫しつつあることも、国としては十分認識しているところでございますので、その点は特にCS3とBS3の間で差を設けまして、CS3の場合には国が三〇%の負担であるところ、BS3においては三五%ということで、五%だけ国の負担を持ち出したということでございます。  なお、当然でございますが、BS3におきましては、ユーザー側といたしましてNHK並びに一般放送事業者が加わってまいりますが、トランスポンダーの利用割合に応じまして、ユーザー負担のうちの三分の二をNHKが負担する、こういうことになっているわけでございます。  それから第二点の、国が開発をしてユーザーはそれをリースする方法はいかがかという御提案でございますが、確かにこのような方法は大変貴重な御提言だろうというふうに私どもも受けとめております。BS2並びにBS3につきましては、先ほど申し上げましたように、ユーザーとそれから開発側であるNASDAがそれぞれ経費を一定の割合で分担をして、所有形態についてはそれぞれがその持ち分に応じて取得する、しかしながら利用については国の持ち分、NASDAの持ち分については通信・放送衛星機構を通じて全部ユーザー側にこれを利用させるという仕組みになっているわけでございます。  しかしながら、BS2並びにBS3後の実際の利用衛星、実用衛星を考えてみますと、ということはつまり将来の実用衛星、放送衛星を考えてみますと、先生指摘のとおり、さらに大型化されるわけでございますし、トランスポンダーを利用したいというユーザーはほかにも出てくる可能性もございますので、そういたしますと、危険、リスクの回避あるいは衛星特有の運用管理を容易にする、一元化するというような見地からも、将来の検討課題としてはリースを行うというようなことも一つの重要な検討の方向であろうというふうに考えておりますので、先生のせっかくの貴重な御提言を、今後の私ども研究課題にさせていただきたいと思います。
  284. 田並胤明

    ○田並委員 将来の放送衛星についてはリース方式も検討課題にしたいということで、これはぜひそのようにやっていただくことが、NHKの財政を健全化する一つの道になるんではないだろうかというように思いますので、ぜひその方向で鋭意検討していただきたいと思うのです。現実のBS3の問題については、残念ながらNHKが三分の二を持つというような取り決めなようでございますから、これはこれ以上追及をしてもどうにもならないと思いますが、いずれにしてもそういうふうにNHKが負担をせざるを得ないような状態があるということについて、ぜひ郵政省も十分認識をしていただきたいと思います。  次に、受信料の免除の関係ですね。これは法の三十二条の二項で受信料免除規定が決められております。大臣の認可を受けた基準によるものでなければ受信料免除をしてはならぬ、このようになっているわけであります。  ただ、先ほどもちょっと申し上げましたが、ことしの予算で全額免除が八十九万八千件、半額が二十七万八千件、合計百十七万六千件が全額もしくは半額免除の件数でありまして、金額にして百十七億二千三百万円。これは大変な金額でありまして、資料を見ますとこれは主に福祉、教育に関する施設の免除ですから、受信料を払っている人の負担を全額NHKに見させるのではなくて、午前中の質問にもありましたように、国の施策として当然本来なら全額国庫負担であるべきだ、これは受信料が免除になっている人にかわって国が受信料としてNHKに交付をする、こういう性格のものではないかと思うのですね。  そのことによって、例えば六十一年度で百十七億のうちの二分の一を国が見ても、大体六十億近くになるわけですよ。これをNHKの財政安定基金的なものにして、どうしても使わなくちゃならない場合はやむを得ませんが、少なくとも安定基金として積み立てておいて、将来的にNHK経営が安定できるような制度というものを考えていかないといけないのではないだろうか。あるいは邪道と言うかもしれませんが、少なくもNHKの安定基金に資するためには、特別に国からお金をいただくというわけにいかないわけです。放送の自主性、公共性、中立性、不偏不党性を考えるならば、なるべく受信料によって賄っていくというのが筋ですから。ただ受信料にかわるべきものとして、本来ならば当然NHK受信料として徴収できるものを、国の施策として教育あるいは福祉の向上のための一環としてやっている事業について国が口をぬぐっておるというのは、問題があるんではないだろうか。  たとえそれが半額であろうと三分の一であろうと、とにかくそういうものを受信者にかわってNHKに交付をするという制度をつくり、それを今後の安定基金の一つとして積み立てをするなり、取り崩しをするときには経営委員会承認を得て取り崩しをするとか、そういう形での長期的な経営安定のための方策というものを考えてみる必要があるんではないだろうか、このように思いますので、私見ではありますが、どのようなお考えをお持ちか、お聞かせを願いたいと思います。
  285. 森島展一

    ○森島政府委員 受信料免除につきましては、学校それから社会福祉施設等に対しましては全額免除、それから視覚・聴覚障害者に対しまして半額免除ということを実施しておるわけでございますが、学校に対する全額免除も、大学、高校等につきましての免除は既に廃止しております。  今後、受信料免除につきまして国庫負担にすべきではないか、こういう御趣旨でございますが、国庫負担にするということになりますと、免除対象者が支払うべき受信料を今度は国庫から補てんする、こういうことになりまして、いわば国からの助成、こういう性格のものになってくるわけでございます。これは本来は福祉行政それから教育行政、こういった観点から考慮されるべき問題であろうと思うわけでございまして、こういう点は関係官庁の方でそういう観点から判断されるのが望ましいとは思います。しかし、今までの経緯もございますので、NHKに対しましても関係方面といろいろ折衝、打ち合わせという方向で指導してまいりたいと思いますし、私どもも関係の方面と鋭意折衝をこれからは行っていくべき問題、こういうふうに考えております。
  286. 田並胤明

    ○田並委員 まだ数多く質問はありますが、時間が来ましたのでこれで終わりますが、郵政大臣、今お願いをしたように、ぜひひとつ関係各省と協議をしていただいて、国の厳しい財政事情ではありますが、これから極力長期にわたってNHK受信料値上げは抑えなさいと、せっかく意見として指摘をしているわけでありますから、それの裏打ちともなるべき努力を、もちろんNHK努力してもらいますが、NHK努力だけでは足らない部分として、一つの方法として今申し上げたようなこともありますので、ぜひ検討課題として前向きに御検討願いたい、このことだけ要望して終わります。
  287. 宮崎茂一

  288. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 御存じのように、ことしは国連で決められた国際平和年であります。NHKはこれまで、昭和五十四年の国際児童年、五十六年の障害者年、五十八年のコミュニケーション年、そして昨年の国際青年年に、キャンペーン番組としてスポットを頻繁に流すとか特別企画を組むなど意欲的に取り組んでこられました。国際平和年のことしも、当然いろいろ考えておられることと思うわけでありますが、どういう計画をお持ちか、それをお聞かせいただきたいと思います。そして、現時点では、これまでやってこられたような一分間スポットはまだ行われていないようでありますけれども、これには何か特別の事情でもあるのでしょうか、その点もあわせてお答えをいただきたい。
  289. 川口幹夫

    ○川口参考人 これまでNHKが取り組んできました国際何々年というときのいろいろなやり方がございます。例えば児童年のときはゴダイゴの歌を使いまして一分間のミニ番組放送しました。そういう形があるのですが、ことしの平和年につきましては、これは私どもそのことについて部内で十分討議をいたしまして、いわゆる平和の問題というのは、お祭り騒ぎとかあるいは具体的な問題として出すよりも、もっと大きな、それこそ人類がまともに取り組まなければいけない大きな問題であろうかと存じます。したがいまして、例えば一分間のキャンペーン、あるいは歌を使う、そういったものでやるべき性質のものではないのじゃないか、そういう感想を持ちました。したがいまして、番組そのものは、ことし、平和について幾つかの番組を取り上げようということで次々と企画をしておりますけれども、いわゆるキャンペーン的な番組については、そのやり方をこれまでの形とは大幅に変えようと思っておるところでございます。
  290. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 今の答弁、かなりひっかかりますね、お祭り騒ぎでやるようなものではないとか。そうしますと、これまで国連が決めた国際児童年だとか障害者年とか青年年のスポットはお祭り騒ぎということになるのですか。もちろん平和の問題は非常に大事な、まさに人類的な大きな課題です。しかし、だからそういうスポットはできないという理屈はないと私は思うのですね。  これも当委員会でお聞きしたことがありますけれどもNHK番組基準でも、第一項目目に「世界平和の理想の実現に寄与し、人類の幸福に貢献する」こういうことを明確にうたっているわけであります。昨年の予算審議の際にも、私がお伺いしましたことに対して川原会長はこのことを述べられて、去年の場合は特に「戦後四十年あるいは被爆四十年という節目に当たっても、さらにその決意を新たにして、真に人類の幸福に貢献するような、また世界の平和の実現に寄与できるような番組の制作に取り組んでまいりたいというふうに考えております。」こういうふうにはっきりと答えておられるわけであります。それだけに、ことしの国際平和年、これはNHKのそういう番組基準、理念にもかなうわけでありますから、大変意義のあることだと私は思うわけであります。ですから、スポットにしましても、NHKには優秀なスタッフの方がたくさんいらっしゃると思うのですね。知恵が出ないわけはないと思うのです。ぜひこれは大いに知恵を出していただいて、実現する方向で検討していただきたい、私はそういうふうに思うのですが、会長、いかがでしょう。
  291. 川口幹夫

    ○川口参考人 お祭り騒ぎというふうに申し上げたのは私の言葉の行き過ぎでございます。そういう意味じゃなくて、具体的な概念のあることを短い時間の中でキャンペーンするのは大変意味があるのですが、平和という抽象的な概念を一分間の中におさめてやると、どうしても表面的な浮ついたことになりはしないか、そういうことで一分間の番組としては考えてないということを申し上げたところでございます。  それから、六十一年度番組の中では、国際平和年にちなみまして、軍縮と平和をテーマにいたしました国連の共同制作番組、これはもちろんNHKがその一員に入っておりますけれども、「いま地球を考える」という五回シリーズを放送したいと思っております。それから、当然のことですけれども、八月の広島原爆の日、八月十五日の終戦の日、そういうところには、平和に関する番組を意欲的に、かつ集中的に編成していきたいと思っております。
  292. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 平和の問題が非常に抽象的だとかいう答弁でしたが、私はそうではないと思うのですね。戦争か平和かというような表現で極めて具体的なわけです。特に、私は昨年も言いましたが、日本は唯一の被爆国だということであります。核兵器をなくしてもらいたい、こういう願いが大変強いわけです。こういう具体的な現実があるわけですね。被爆者の方も、後遺症に悩んでおられる方を含めますと、いまだに三十万人もいらっしゃるという現実がある。平和というのは決して抽象的なことじゃないわけです。ですから、今の答弁はどうも納得がいきません。何かこういう平和の問題に積極的に取り組むのをためらっておられるような感じがしてならないのですね。  今おっしゃいましたが、キャンペーン企画で「いま地球を考える」というのが五回のものだ、これも大変少ないと思うのですね。国際平和年でありますし、特に昨年来核兵器をなくそうという声が全世界的に高まっているという状況があるわけです。それだけに、ことしはさらに力を入れていただいていいんじゃないかと思うのです。  NHKは被爆の問題、核兵器の問題では、一昨年の「核戦争後の地球」、それからまた昨年はETV8スペシャル「核戦争と地球破壊」、こういう番組を提供されて、これは非常に科学的なデータに基づいた、国際的にも高く評価された番組でありますが、そういう番組を送り出してきておられるわけであります。それだけに、ことしは国連が定めた国際平和年でもありますし、御承知のとおり我が国は非核三原則というのを国是にしておるわけでありますから、この年にこそ、受信者の期待にこたえて大いにそういう番組を送り出していただきたいと思うのでありますが、この点は会長にお聞きしたい。
  293. 川原正人

    川原参考人 世界の平和を実現するということは、これはもう御指摘のとおり、私ども番組基準の第一項目にうたいとげている問題でございまして、私ども番組を制作し放送するに当たってそれは常に頭にあることでございます。もちろん、核戦争等が地球に起こるようなことがあれば、それは本当に地球の破滅といいますか、人類の破滅につながることだと思いまして、私ども、過去においても鋭意いろいろな角度から取り上げてきたことでございまして、今後とも具体的ないろいろな研究とかそういうものの発展に応じて取り上げてまいりたいと思っております。  それから平和の問題は、確かに平和年に即してという形での番組企画につきましては、これからいろいろ考えてまいりたいと思いますけれども、私どもの日ごろの番組においても、いろいろな形でこれは放送しております。例えば中国残留孤児の問題を取り上げる場合においても、まさにあの番組を取り上げていること自体が平和というものを思い起こさせるきっかけにもなっていると思いますし、あるいは大型ドラマにおいて、今、戦後の女性の生き方等を取り上げた放送をしておりますけれども、こういう形の中でも、平和ということは十分に国民の方々に考えていただけるものと思っております。  いろいろな番組を通じまして、私どもは常に平和ということ、自由ということをうたいとげているつもりでございますので、今後ともそういう角度からいろいろな番組企画してまいりたいと思っております。
  294. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 今の答弁は結構でございます。  しかし、最初に申し上げましたスポットなどキャンペーン的、継続的な企画、これについて川口さんの答弁はああいうことでありましたけれども、やはり研究していただきたい、工夫をしていただきたいと思うのです。ですから、会長さんにこのことはお聞きしたいと思います。
  295. 川原正人

    川原参考人 これは私ども放送総局の方で、今までも全員で検討してきたところでございます。その取り上げるやり方が、一分間の中で平和というものをどういう角度で取り上げることがで走るか、いろいろ知恵を絞ったのですけれども、今のところいい知恵が出てきていないということでございますが、なお私ども、いろいろな角度から、そういうことが可能かどうか引き続き研究はしてみたいと思います。
  296. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 では、それはぜひお願いをいたします。  次に、放送衛星の問題でお聞きしたいと思います。  午前からの議論で、二月に打ち上げられましたBS2bは、今のところ順調に来ておるということであります。今度また失敗するようなことがありましたらそれこそ大問題でありますから、ぜひこれは万全を期していただきたいと思います。それから、前回のときにはちょうどNHK予算審議中に実は故障が起きておったのでありますけれども、そのことが報告もされないで隠されたままだったということがあったわけであります。そういうことがないように念を押しておきたい、そう思います。  衛星放送に関しまして、国民の立場から見て関心がありますのはやはり二チャンネル放送ですね。これが行われるようになった場合に、放送内容がどういう内容になるのだろうかということだと思います。この点で、衛星放送普及という観点から、NHKは新しい番組をどんどん乗せていきたいということ、そういう方向を考えておられるように思います。  電波タイムズですか、ことしの新年号ですね、川原会長が登場されているいろお話しになっておられるわけですが、この中でも、「今まで難視聴の解消を主な目的として打ち上げるんだと言ってきましたけれども、いつまでも難視聴の解消だけに放送衛星を使うというんでは、少し能がないというか、逆にもったいないといいますか、もっと国民の財産として、国民の皆様にせっかくの衛星の能力をフルに使って、利益を還元する方法をさらに考えなければならないと思うんです。」というようなお話もなさっておられるわけです。NHKの内部でも、衛星放送のための新しい企画やアイデア、こういうものを募っておられるというふうにも聞いております。  そこで、二チャンネル放送になった場合、どういう新しいサービス、新しい番組を考えておられるのか。それと番組の枠といいますか、地上放送の再送信でないものをやりますね、それとのかかわり、新しい放送番組枠をどの程度入れていくというふうに考えておられるのか、その二点をお聞きしたい。
  297. 林乙也

    ○林参考人 放送衛星二号の打ち上げ後の経過につきましては、既に御説明申し上げておるとおりでございますが、私どもといたしましては、先ほどから申し上げておりますように、2aのような事態ということを十分教訓にしながら業務を進めていかなければならないというように考えておりまして、現在、打ち上げ後非常に順調でございますが、また七月には初期機能の確認検査を経ました上でNHKが引き渡しを受けるわけでございますが、その後においてもなお当分の間、信頼性の確認を行うために試験放送という形で進めてまいりたいというように考えておる次第でございます。  そこで、BS2の放送につきましては、これは郵政の方で示されております放送衛星二号による放送の免許方針というものの中にも示されておるわけでございますけれども、それは「テレビジョン放送の難視聴解消に利用するほか、新しい放送技術の開発実験その他将来の衛星放送普及に資する利用を図ることが適当である。」というように、放送衛星二号の放送の免許方針が定められております。この大きな枠に沿いながら、NHKとしても今後の企画計画を進めてまいりたいというように考えておる次第でございます。  ただ、2aの故障の事態にかんがみまして、現在衛星放送受信機の生産そのものがほとんど前進を見ていないというように、普及についての停滞が見られるわけでございまして、この技術の開発あるいは放送サービスの開発の成果というものを国民に還元することによりまして衛星放送普及を図り、全体といたしましてこの衛星放送計画というものが国民受信者の方々に納得のいただけるいわば経済性と申しますか、そういったものを果たしていかなければならないというように考え、放送サービスの展開につきましても鋭意検討中でございます。
  298. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 もう少し質問にずばり答えていただきたいのですが、私がお聞きしましたのは具体的なんですよ。順調にいけば放送開始が十月からの予定ですね。その場合に、二チャンネルを使ってどういう新しい放送を考えておられるのかということなんです。今の御答弁のような経過じゃないのです。  この問題はこの前もお聞きしたことがありまして、川口さんがお答えになったのですが、そのときの答弁では、衛星放送の目的が難視聴解消でございますから、総合テレビ、教育テレビとも、少なくとも再放送を除くものは全部衛星第一、第二でやりたいと思います、そう答えておられますね。ですから、これは第一ではあきが約八%、第二では二八%、この二八%の中をいろいろ工夫することによって魅力ある放送にしたいと思っております、こういう答弁だったわけです。つまり地上で出しているものはすべて空からも送らせる、再放送以外ですね、そして残りを活用して新しいもの、新しい魅力をつけ加えていくんだ、そのほかにもハイビジョンとかその他の技術的な問題がありますけれども番組として、そういうお答えだったわけですが、年頭の川原会長の御発言などを読んでおりまして、この枠を踏み越えようとしておられるのかどうか、そこをお聞きしたいわけです。昨年の答弁のような枠内でやることを考えておられるのか、あるいは当面は制作能力の関係もありますからその枠でやっていくけれども、いずれは踏み越えることもあるんだということを含んで構想しておられるのかどうか、その点のお答えをいただきたい。
  299. 川原正人

    川原参考人 難視聴の解消ということは、少なくとも現在地上で行われております、私ども放送しております総合テレビジョン、教育テレビジョンの大事な部分はもちろん放送されなければいけないと思っております。そうは思っておりますが、ただこれだけの能力を持った衛星を上げて、やはり将来の衛星の使い方については私はできるだけ弾力的に考えていきたい。ただし、それはそうは申しましても、NHKが一方的に考えて一方的にやるというのではなくて、そういう衛星に対する視聴者の方の御期待、あるいは受信料をもって今まで賄ってまいりましたこれだけの投資に対する視聴者の方のお考え方というものをもちろん大事に考えていかなければいけないと思っております。それからもう一つは、こういう衛星に関して放送行政を担当しておられる郵政省等の考えももちろんあることだと思います。そういった各方面のお考え方の中で、しかしこうした各方面のお考え方あるいは視聴者の受け取り方も、やはり時代の変化といいますか、新しいニューメディア時代の発展の中で変わっていくものだろう、固定的なものではないだろうというふうに私は考えておりますので、さしあたっては川口が申しましたように、少なくとも今まで地上でやっておりました必要最小限のものは、もちろんテレビをごらんになれないところに供給したいと思いますけれども、これとてもいつまでも固定的に考えるのではなくて、やはり時代の変化、ニューメディア時代、高度情報社会の変化の中で、私どもはできるだけ積極的に考えてまいりたいと思っております。
  300. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 今の会長の御答弁ですと、さしあたっては地上で出しているものは、難視解消という大目的だから基本的にすべて衛星からも放送する。しかし、将来いろんな変化もあるだろうから、それにとらわれずに考えていくこともあるんだということですね。その点で私はやはりきちっとしておく必要があるのではないかということを感じているのですね。具体的に問題がなければ、いよいよ年内に放送が始まっていくわけですから。私自身も、衛星放送につきましてはいろんな可能性を持っているわけですから、それはふさわしい活用がされてしかるべきだろうと思っているのです。思っているのですが、難視聴解消という目的でこれまで国会でも議論してきましたし、国民にも説明されておるわけです。ですから、その大義名分と実際の可能性は矛盾する面がどうしても出てくるわけですね。そこを難視解消、難視解消ということだけ言っていて、実体は変わっていくというのではうまくないだろう。やはり、いずれ早い時期にNHKの新しい考え方といいますか、そういうものも広く提起して、国民意見も聞くとか、国会でも議論するということで進められるべきだと思うわけです。  時間が詰まってまいりましたので、郵政大臣にもこの点お聞きしておきたいのですが、今の議論は、要するに難視聴解消という名分でずっと行く限り、永久に衛星放送は八割は地上と同じものを流し続けるということになるわけですね。要するに地上での不平等をなくす、NHK放送がどこでも丸々聞けるようにするためにはそうなるわけです。八割は同じものを流す。そうすると非常にむだではないかという考え方が当然出てくるわけです。そこに絡んでの質問を今していたわけですけれども、こういう問題について、大臣として御見解がありましたら、お伺いをしておきたいと思います。
  301. 佐藤文生

    佐藤国務大臣 技術革新というのがどんどん進歩していきまして、その過程で我々が考えねばならないことを今佐藤委員が御質問なさったのだと思いますし、先ほどの田並委員が御質問なさった骨子も、NHK予算を十分に考えて、十分に活躍させるためには、教育問題、福祉問題のそういう負担というものを黙って見過ごしてはいかぬじゃないかということで、こういうぐあいに技術革新に伴って放置できない問題が残っておると私は思います。  したがって、第二放送衛星、第三放送衛星が現実に稼働する過程において、ただ難視聴対策だけで同じものが八〇%流されていいのか、あるいは枠を踏み出して新しいサービスを始めた方がいいのか、それをやることにおいての財源問題は果たしてどこから生み出していくのであろうか、NHK業務内容はどのように変化しなければならないのか、あるいは民放との関係といったような問題にどのような問題が起こってくるのであろうか等をやはり相当検討する必要がある、私はこう思います。  したがって、今の御質問の点は非常に重要な点でございますので、検討課題として私の方で受けとめていきたい、こういうぐあいに思っております。
  302. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 この問題でもう一つだけ、これは大臣にお伺いしておきたいと思うのですが、衛星から放送電波が流れるようになりまして、しかし果たして実際に難視聴地域の難視が解消されるのだろうかという問題が残るのですね。つまり、受ける側が設備を整えなければならぬという問題なんです。これは今のところは約三十万円かかるというんですね、アンテナとかチューナーとか工事費とか含めますと。将来ある程度安くなるだろうという話もありますけれども受信者にとってはちょっと大変な負担ですね。  この問題で一昨年もお聞きいたしまして、当時奥田大臣はこの負担が大変だという指摘に対しまして、「御指摘のように受信者の負担の軽減をいかにするかということに全力を挙げていきたいと思います。」そういうふうに答弁なさっておるわけです。この点についてぜひ佐藤大臣にも御努力をお願いしたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  303. 佐藤文生

    佐藤国務大臣 NHK衛星放送受信するためには、各戸にそれ相当の設備をしなくてはならぬということは先生の御意見のとおりでございます。したがって、その普及率の度合いというものが衛星放送の将来を左右する重要な部面であると思いますので、その負担の軽減を考えるためにどうしたらいいかということになると、私は技術的には専門家ではございませんけれども、第三放送衛星が、昭和六十五年前後に打ち上げる段階においてはさらにパワーの大きいものになると、各戸の家で受信するアンテナも小型になってくる、そういうぐあいに技術革新に伴って経費の負担を安くしていくということがやはり連動的に起こってくるのじゃないだろうか。専門家ではないけれども、私はそう思います。  したがって、こういう問題はやはりステップ・バイ・ステップに、着実に衛星放送というものの内容のよさ、それから、それが一軒一軒の家庭に、ああ衛星放送で鮮明になってよかったなというような、そういうことがだんだんとできて、積み重ねの上に技術の革新が起こってきて、軽易で、軽量で、そして鮮明な受信ができる、技術革新と並行しながら経費の負担軽減を考えていくということが大切ではなかろうか、私はこういうぐあいに思います。
  304. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 大臣への質問が続きますが、同僚委員に対する先ほどの答弁で、言論報道の自由はしっかり守られなければならぬ、NHK経営の自律性、自主性も確保されなければならぬ、番組内容についても自主性が保持されなければならぬという御答弁がありました。これは権力の介入、干渉ということはあってはならぬということだと思います。  そのことに関連してなんですが、大臣が就任早々のインタビューなどで、放送内容に目を光らせていきたいという発言をされたと報道されておるわけですね。そういう見出しの新聞もありました。私はちょっとどきっとしたのです。目を光らせるというのはちょっと穏やかじゃないという感じ。それで、同じインタビューで、放送番組への介入とか言論の自由にくちばしを入れるなどという気持ちは全くない、そうも言っておられるわけです。大事な放送行政の根本にかかわる問題ですので、どういう真意なのか、きちっとお聞きをしておきたいと思います。
  305. 佐藤文生

    佐藤国務大臣 私は、郵政大臣に任命されるまで、実は逓信委員会のメンバーでもなく、また、党の通信部会の方でもメンバーでなかったために、私は逓信委員会の動き、考え方、そういうことについてはどちらかというと素人の方に近い国会議員の一人でございました。しかし、私が常に家庭で見ているのはテレビであるという現実でございます。知っているのはテレビであり、NHK放送であり、民放の放送である。それしか知らないというのが私の偽らないそのときの気持ちでございます。  したがって、郵政大臣になって何か記者会見で言うことはないかというので、私は、家庭で見ておるテレビで、昨年一年間やらせ事件が起こって、これは変なことになってしまったなというような印象を受けたものですから、民放とNHKは違うのだろう、NHKというのはやはりどこか違った国民の信頼性というか公共性というものがさらに要求されておるし、信頼というものがNHKの財産だろう、それから民放はやはり親しみというかそういうものが財産だろう、そういうぐあいに考えまして、電波行政というものは大切だな、こういう意味のことを私は言ったわけでございます。  したがって、目を光らすというようなことは私は言わなかった気持ちでございます。あるいはそうとられたかもしれませんけれども、なってみれば電波行政の最高の責任者でございますから、自主番組とかあるいは各局にあるところの番組審議会というものは法律規定されている、その番組の自主規制というものを民放は民放なりに自分でやっている。そういうような法律に基づいたことをしっかりやってくださいよ、こういう気持ちが現在の気持ちであります。  ところが最近、つい二週間ほど前ですか、アメリカから永田町のある新聞記者の人が三年ぶりに帰ってきた。その人が私に、三年ぶりに日本のテレビを見て二つ感心したことがあると言った。一つは、三年前にアメリカに行くときには裸が多かったけれども、帰ってみて本当にびっくりするほど少なくなった。それから第二点は、民放の六時と七時の間と、十一時半と十二時の間のニュースの解説が実にわかりやすく国民に政治の仕組みを話すその手法に驚いた。これが日本の国民に対して政治を非常にわかりやすくした大きな功績ではなかろうか、こういうふうなことを言っておりました。  さらに、おとといNHKで三時間にわたって、民放五社でございますか、キー局五社の次長クラスの方を全部集めまして、テレビというものはどうあるべきかという三時間もの番組を見て、これはもう新しい時代に向かってのNHK、新しい時代に向かっての民放のあり方を局自身が考えていこうというその自主的な一つのドラマを見まして、私は放送の責任者として何にも言わないのに、やはり考えてやっているな、こういうぐあいに非常に感心をしました。そういうことが私は大切だと思っておるわけです。
  306. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 大事な問題ですので、重ねてもう一度真意を確かめておきたいことがあります。  それは「マスコミ市民」という雑誌があるのですが、これの二月一日付に「「11PM」の国家秘密法案批判に圧力をかけた自民党と民放経営者の弱腰」という記事が載っているのです。この中でこういうことがあります。昨年の十二月十三日に開いた自民党の総務会の総務懇談会で、前の左藤郵政大臣を招いて、テレビのチャンネルプラン問題を協議したが、その席上、大臣になられる直前でありますが、佐藤文生代議士がこう言われた。長くずっといろいろあるのですが、私がお聞きをしたいのは、「郵政省は民放局の新設を急ぐ前に、番組の内容について、もっと指導監督を強化すべきだ」と発言したというふうに伝えられているわけです。ここで「番組の内容について」ということになっておりますので、これはどうも放送法上も違うのじゃないかというふうに思っておるわけです。さっきの御答弁とも違っていると思うのですが、この点はいかがでしょうか。
  307. 佐藤文生

    佐藤国務大臣 昨年の暮れの自民党の総務会だと思います。内閣改造の前でございます。前の郵政大臣から、電波の割り当ての計画について説明がございました。その席上で、先ほど言いましたとおり、ちょうど八月のやらせの問題とかそういうものが起こって刑事事件にまでなっていくという事件があったので、内容まで言えということは言いません、郵政省として、民放で自主的に決めているところの番組基準、放送基準並びに番組審議会、そういうものが形骸化しないようにやってほしい、それを指導することは大切ではないでしょうかということを言ったわけでございます。
  308. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 では、またNHKの問題でありますが、最近臨時行政改革推審議会の特殊法人問題等小委員会NHKについて郵政省からヒアリングを行った。NHK業務などについて見直し作業を進めているというふうに聞いているわけです。NHK経営の自主性、それからきょう議論されております言論報道の自由、そういうものについてどう考えておるのか。放送法の精神といいますか、実体からいいまして行革審の対象にすること自体がおかしい、なじまないというふうに私は考えておるわけですが、どういうお考えか、またどういう見直しの作業を行っているのか、簡潔にお答えいただきたい。
  309. 重富吉之助

    ○重富説明員 お答え申し上げます。  行革審の方でNHKを取り上げましたのは、NHKは一応特殊法人の範囲に入っておりますので、特殊法人問題等小委員会で特殊法人の一般的活性化方策、それから個別法人の活性化方策ということで取り上げておるわけでございます。  先生御質問のとおり、最近郵政省からNHK業務運営等の実態につきましてヒアリング等を行いまして、現在検討中でございます。ただ、私どもは個別法人を二十近く検討しておるわけですが、NHKにつきましては言論報道機関としての特殊性を十分配慮する必要があるというふうに考えておりまして、その他の二十ぐらいの個別検討の特殊法人の場合と異なりまして、経営効率化の観点からのみ検討、審議を行っているところでございます。
  310. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 特別に配慮しているということで、経営効率化の観点からのみ検討しているというふうにおっしゃいましたが、実際にはそうじゃないのですね。  最近の報道によりますと、地方局を一県一局にするとか、経営委員会の活性化などを求める業務見直し案をまとめたというふうに報道されているわけです。地方局を一県一局とするとか、見直し案の中にそういう内容があるのですか。
  311. 重富吉之助

    ○重富説明員 ただいま申し上げましたように、現在特殊法人問題等小委員会で検討中でございますので、審議の具体的な内容についてはここで申し上げることはできませんけれども、私どもは、一応NHKというのは報道言論を担当する公共放送機関ではございますけれども、その経営の存立基盤国民一般が負担いたします受信料によっているということを考えますと、その経営合理化効率化というのは最大限にこれを追求する必要がある。と同時に、公共放送機関としての責任を果たしていくということが、我が国の国民からNHKは要請されているのではなかろうか。そういうふうに考えますと、経営合理化効率化を図ることがNHKの言論報道の自由を侵すことにはならぬのではなかろうかというふうに考えておるところでございます。
  312. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 それは行革審がやることではないのです。NHKがやればいいのです。国民受信料で賄われているということは、つまり財政的にも政府からも独立してやるということなんですね。実際に一県一局だとか、とんでもない話だ。どこに放送局を配置するか、そこは取材が重点か営業が重点かとか、そういうことはNHKが決めることですね。これは取材とか報道内容に密接にかかわるわけです。番組の編成に直接かかわるわけです。そこにまで踏み込むというのは明らかに越権行為であります。これはぜひそういうことはやめるべきだということを強調したいと思います。  時間が迫ってまいりましたので、この点で郵政省に見解をお聞きしておきたいと思います。小委員会では大体案はまとまったというふうに私は聞いているのですよ。あとは行革審として、答申を六月までに出していくということになるわけですね。その場合に行革審の設置法では、総理大臣が答申を尊重するというふうになっているわけですね。しかし、放送法上の権限でいいますと、総理大臣は国会の同意を得て経営委員を任命することができる、それだけなんです。政府としても、郵政大臣予算案意見を付して国会に提出するということ、あるいは国際放送どもありますが、そういうことだけであります。ですから、放送法規定を越えたことは、行革審が何を言おうともこれはできないというふうに私は思うのですが、この点、郵政省としてどう考えておられるか。答申が出される予定になっているわけですが、そういう内容の答申が出た場合に、一体郵政省としてはどうするつもりなのかという点です。  それから、時間が来ましたので、それを郵政省からお答えをいただいて、最後会長からこの問題についての考え方をお聞きしたい。参議院でも実はやりとりがありました。やはりNHK経営の自主性、これを貫いていただきたい、不当な介入、干渉は排除する、そういう立場でやっていただきたいと思うわけですが、最後会長の御決意もお伺いして終わりたいと思います。
  313. 森島展一

    ○森島政府委員 おっしゃいますように、行革審の方から答申が出ますと、これを尊重するということは当然でございますが、このNHKの言論報道機関としての自主性、特殊性、こういったことは十分私どもも行革審に対するヒアリングで申し上げておりますので、そういった点を配慮された答申になるもの、こういうふうに思っております。
  314. 佐藤文生

    佐藤国務大臣 NHKの問題が行革審において取り上げられて審議中であるということについて、それはおかしいではないか、こういう御意見だと思います。私は、この問題について、NHKというのがやはり法律に基づいてできた放送機関であり、広く国民の支持によって受信料を得て運営されておるという特殊法人である、こういうNHKの性格からして、行革審において非常に国民に影響のある放送機関として取り上げられたものと解釈をしております。したがって、この問題につきまして注意することは、放送機関でございますので、その放送の自主性というものはどこまでも重んじていただきたい、それを侵してはなりません、こういうことだけは絶えず主張しながら、答申が出た際においては、それを大切に尊重してやっていかなければならぬという法律に基づいて私はやっていきたい、こういうぐあいに考えております。
  315. 川原正人

    川原参考人 NHKは確かに、法律の解釈で申せば特殊法人という範疇に入るのかもしれないと思います。しかし、NHKはやはり報道言論機関として、自主自律ということを一番大事に考えなければならない企業体でございますし、放送法におきましても、NHKに対する公共的規制というのは国会を中心に行われる、そして企業の中では経営委員会という非常に特別な存在がございまして、経営委員会に多くの権限が任されている、行政的な管理監督は最小限にとどめるというふうな規定になっていると私は思っております。それから、もちろんNHK受信料という形で国民の多くの方に支えられているという点におきましては、私どもあくまで効率的な経営をしなければならないと考えておりますし、既にそういう観点ではみずから自己の手で大幅な合理化も着々進めていることでございます。そういう意味においては、あくまでみずから律するということがNHKの基本だろうと思います。  そういう点からいいまして、率直にいいまして行政改革という観点でもってNHKがその対象になるということについては、甚だ釈然としないものを感じております。しかし私どもとしては、郵政省を通じまして、その辺の趣旨のことは十分に行政改革審議会の当局にも意思を伝えていただいているわけでございますので、行革審においてもその点は十分配慮していただけるものと期待をしております。
  316. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 行革審が対象にすべきではないということを再度強調して、終わります。
  317. 宮崎茂一

    宮崎委員長 これにて本件に対する質疑は終局いたしました。     ―――――――――――――
  318. 宮崎茂一

    宮崎委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、採決に入ります。  放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件について採決いたします。  本件を承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  319. 宮崎茂一

    宮崎委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。     ―――――――――――――
  320. 宮崎茂一

    宮崎委員長 ただいま議決いたしました本件に対しまして、吹田愰君外四名より附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者より趣旨説明を求めます。吹田愰君。
  321. 吹田愰

    ○吹田委員 ただいま議題となりました放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件に対する附帯決議案につきまして、提案者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件に対する附帯決議(案)   政府並びに日本放送協会は、次の各項の実施に努めるべきである。  一 放送の不偏不党と表現の自由を確保すること。  一 協会は、厳しい経営環境を深く認識し、事業運営効率化の徹底と収入の確保を図り、極力長期にわたり受信者の負担増を来たさないよう努めるとともに、長期的展望に立って、衛星放送等の本格的ニューメディア時代に対応した経営のあり方についてさらに検討を行うこと。  一 衛星放送について、初期の目的が達成されるようその実施に万全の対策を講ずること。  一 国際放送について、その重要性がますます増大している現状にかんがみ、交付金の増額と必要な経費の確保に努めるとともに、番組充実受信改善に一層の努力を払うこと。  一 協会は、地域放送について、多様な地域サービスの展開を図る等その充実に努めること。 以上のとおりであります。  この附帯決議案は、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び日本共産党・革新共同の五党共同提案に係るものでありまして、案文は、当委員会における質疑の動向等を参酌して作成されたものでありますから、各項目についての説明を省かせていただきます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げる次第であります。  以上であります。
  322. 宮崎茂一

    宮崎委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  323. 宮崎茂一

    宮崎委員長 起立総員。よって、本動議のごとく附帯決議を付することに決しました。  この際、佐藤郵政大臣及び川原日本放送協会会長から発言を求められておりますので、これを許します。佐藤郵政大臣
  324. 佐藤文生

    佐藤国務大臣 日本放送協会昭和六十一年度収支予算等につきましては、慎重なる御審議の上、ただいま御承認をいただきましたことを厚くお礼申し上げます。  これまでの御審議に当たりまして各委員の提起されました貴重な御意見並びにただいまの附帯決議につきまして、今後の放送行政を進めるに当たり、御趣旨を十分に尊重してまいりたいと存じます。  ありがとうございました。(拍手)
  325. 宮崎茂一

  326. 川原正人

    川原参考人 日本放送協会昭和六十一年度収支予算事業計画及び資金計画につきまして、ただいま御承認を賜りまして厚く御礼申し上げます。  本予算を執行するに当たりましては、御審議の過程で種々御開陳いただきました御意見並びに郵政大臣意見書趣旨を十分生かしてまいりたいと考えております。  また、ただいまの附帯決議につきましては、協会経営の根幹をなすものでございますので、これを体しまして、執行の万全を期したいと考えております。  まことにありがとうございました。(拍手)     ―――――――――――――
  327. 宮崎茂一

    宮崎委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  328. 宮崎茂一

    宮崎委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕      ――――◇―――――
  329. 宮崎茂一

    宮崎委員長 次に、電波法の一部を改正する法律案議題といたします。  趣旨説明を聴取いたします。佐藤郵政大臣。     ―――――――――――――  電波法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  330. 佐藤文生

    佐藤国務大臣 電波法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び概要を御説明申し上げます。  航海の安全を確保するため、船舶の構造、設備等について定める条約として千九百七十四年の海上における人命の安全のための国際条約があり、我が国もその締約国となっております。同条約附属書が人命及び航海の安全をなお一層確保する観点から一九八三年六月に改正され、本年七月一日に発効することとなりますので、これに備え、郵政大臣の行う型式検定に合格したものでなければ施設してはならない無線設備機器の範囲について所要の措置を定める必要があります。  また、我が国における外国人、外国の法人、外資系企業等の社会活動、経済活動の円滑な遂行に資するため、相互主義を前提として、外国人等にも免許を与えることができる無線局の範囲を拡大する必要があります。  この法律案を提出した理由は以上のとおりでありますが、次にその概要を御説明申し上げます。  まず第一に、この条約の附属書の改正により主管庁の型式承認を要する無線設備機器として、新たに救命艇用無線電信、生存艇用非常位置指示無線標識、双方向無線電話が追加されましたが、これら船舶に施設する救命用の無線設備機器についても、郵政大臣の行う型式検定に合格したものでなければ施設してはならないこととし、同改正条約の発効に備えることとしております。  第二に、外国人、外国の法人、外資系企業等の開設する無線局につきましては、従来より、これらのものに陸上移動局、携帯局等の免許を与えることができることとしておりますが、近年の我が国内外の国際化の進展に対応し、外国人等の日常生活、または社会活動、経済活動になお一層資するため、無線標定移動局、陸上移動中継局、無線呼出局等の陸上に開設する無線局についても外国人等に免許を与えることができるよう、その範囲を拡大する措置を講ずることとしております。  なお、この法律は、昭和六十一年七月一日から施行することとしておりますが、新たに型式検定の対象とされた無線設備機器の型式検定は、この法律の施行前から実施することとしております。  以上がこの法律案提案理由及び概要であります。  何とぞ慎重御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
  331. 宮崎茂一

    宮崎委員長 以上で趣旨説明は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ります。  次回は、来る三月二十六日水曜日午前九時五十分理事会、十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時六分散会      ――――◇―――――