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貝塚参考人 貝塚でございますが、
参考人として
意見を述べさせていただく機会を得まして、光栄に存じます。
私は大学の教師でございまして、試験問題に対して答えるということはございますので、
財確法の
内容について具体的に
——財政全般につきましては後で御
質問がございましたらそのときに
意見を述べさせていただきたいと思いますが、
財確法につきましては基本的には
賛成でございますが、その点について幾つか申し上げたいと存じます。
六十一
年度におきます
特例公債の
発行につきましては、既にお二人の
参考人も言われておりますが、
公債依存度は着実に
低下しておりまして、例えば
実績ベースで申し上げますと、
昭和五十四
年度というのは全体の
公債依存度は三五%でございます。それがほぼ二〇%に下がっております。
特例公債の
依存度は二二%でございましたが、現在一一%に下がっております。
財政収支と申しますのは、
日本のような
経済社会においては
歳出の
必要性というものはだんだん潜在的には高くなっておりまして、大幅に
増税をしないという
状況のもとでは一挙には下げられないということでございまして、そういう
意味では
公債依存度の
低下は
財政運営において非常に
努力が払われたということだと考えております。したがいまして、全般的には
公債依存度あるいは
特例公債の
依存度が縮小の
方向にあるとすれば現在そういう道をたどっておりまして、そういう点では評価されるべきであろうと思います。
ただし、
財政体質の
改善が非常に進んでいるかということになりますと、
ストックの面では何といいますか、
政府の
負債の
残高、
借金の
残高は
ウエートがだんだん高くなっておりまして、それに伴って
利払い費がふえておりまして、確かに
フローといいますか、毎年毎年の
収入の面で申しますと
状態はよくなっておりますが、債権、債務の
関係は必ずしもそうではありませんで、むしろ悪化しているということであります。将来の
社会保障は、現在の
社会保障は非常に
黒字でございますが、
政府は
社会保障の将来の給付についてある
程度の約束をしておりまして、
大分先のことでございますが、これをもし仮に
負債であると考えますと、
相当大変なことであるということでもありますので、
フローとしては
改善しておりますが、今後とも
ストック面における
改善に留意すべきであろうと考えます。
以上が主として
特例公債の
発行に関することでございますが、第二番目に
国債の
繰り入れ等の
停止につきまして多少
意見を述べさせていただきたいと存じます。
現在、
日本の
財政制度というのは
国債整理基金というのを持っておりまして、恐らく
先進諸国ではむしろ珍しい事例に属していると思いますが、これは恐らく
財政のディシプリンを守るという点では制度的には
意味があるし、そうだろうと思います。
ただし、
現状のように
公債発行がある
意味では恒常化している
状況のもとで
国債整理基金をどういうふうに
運営するかということは、それほど簡単ではないように思います。ですから、現在の
国債の
繰り入れを
停止するということは、平たく言いますと、
基金の
積み増し部分をやらないということですので、早く借りかえをしなければいかぬということになります。したがいまして、ほかの選択としては、現在で
繰り入れしてそのかわり
公債発行の
フローをふやすかということでありますが、私はここで提案されておりますように、
繰り入れを
停止して借りかえが少し早くなるということはやむを得ないのではないかと思っております。それによって現在の
財政の
収支の
バランスの方は、
新規の
公債発行は避けるという
方向の方がいいのではないかと考えております。
三番目に、実を言いますと、今
年度は恐らく
NTTの株式の売却ということがありまして、思わざる
財政収入があり得るわけでございます。
その点について多少
意見を述べさせていただきますと、現在いろいろ
先進諸国でも、特に
イギリスから始まりまして
サッチャー政権、それから
レーガン政権、ある
意味では現在の
日本政府もそうなんですが、
民営化というのが非常に盛んになってきております。プライバティゼーションどいいましょうか、理由としては国営よりも
民営に移す方が経営の
効率性が高くなるということで、それ
自体は結構だという気がいたします。恐らく
NTTの場合もそういうことであります。それは結果として
財源として使えるということであろうと思います。
しかし、
一言多少率直な印象を申し上げれば、余り
財源対策的に
政府の
資産をそういつも売却するのが得策であるというわけではないと思います。これはやはり一時の
便法でありまして、要するに
民営化して
メリットがあるのであればそれはそうでありますが、余り
財源対策的にやるのは好ましくないのではないか。多少申し上げれば、
日本は
経済大国になっておりまして、
経済大国の
政府がどんどん
資産を売っているというのは
政府は貧乏になるということでありまして、やはりそこには限度があって、
便法としてそういうことはやむを得ないとは思いますが、そういう点で長期的には余りそういうことに
ウエートをかけるのは望ましくないというふうに考えられます。
NTTの場合は、最初申し上げましたように
民営化がそれ
自身メリットを持っているということでありますので、その点は別に問題ではございませんが、
一般論としてはそういうことではないかと思います。
最後に、
財政の今後の
見通しということについて
一言だけ申し上げたいと思いますが、
日本の
財政が現在がなり
赤字幅が大きいということはそうでありますし、先ほど申しましたように
資産、
負債の
関係で、
負債といいますか
借金の
残高が大きいということもそのとおりであります。ただしその
現状において、
日本経済において
財政の
赤字が悪
影響を持っているということではありません。
インフレは別に非常に鎮静化しておりますし、
民間の
設備資金とかいうものが締め出されているわけではありません。
アメリカ経済の
赤字とは
日本経済の
赤字は随分違った面がございます。
ただし、
現状はそうなのでありますが、そこで
議論が分かれますのは、要するに将来の問題で、
日本の
財政の
規模が拡大していくときに
現状のようなやり方を続けていって果たして大丈夫かという問題がいつでも最終的には
議論の分かれ目になりまして、
内需の拡大をするため
財政が幾らか力をかすべきであるかどうかというところは、最終的には
現状の問題というよりも将来の
財政を見込んだときに大丈夫かなというところが問題になっているということでございます。
財政のことにつきましては、御
質問がありました折にまた
私見を述べさせていただきまして、とりあえず
意見をこれで終わりたいと思います。どうもありがとうございました。(
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