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1986-03-25 第104回国会 衆議院 大蔵委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年三月二十五日(火曜日)     午前九時三十分開議 出席委員   委員長 小泉純一郎君    理事 笹山 登生君 理事 中西 啓介君    理事 中村正三郎君 理事 堀之内久男君    理事 上田 卓三君 理事 野口 幸一君    理事 坂口  力君 理事 米沢  隆君       越智 伊平君    大島 理森君       加藤 六月君    金子原二郎君       自見庄三郎君    田中 秀征君       高鳥  修君    中川 昭一君       二階 俊博君    林  大幹君       東   力君    藤井 勝志君       宮下 創平君    村上 茂利君       山崎武三郎君    山中 貞則君       山本 幸雄君    伊藤  茂君       伊藤 忠治君    兒玉 末男君       沢田  広君    戸田 菊雄君       中村 正男君    堀  昌雄君       柴田  弘君    古川 雅司君       矢追 秀彦君    薮仲 義彦君       安倍 基雄君    玉置 一弥君       正森 成二君    簑輪 幸代君  出席国務大臣        大 蔵 大 臣  竹下  登君  出席政府委員        法務大臣官房審        議官       稲葉 威雄君        外務省経済協力        局長       藤田 公郎君        大蔵政務次官   熊川 次男君        大蔵大臣官房総        務審議官     北村 恭二君        大蔵大臣官房審        議官       門田  實君        大蔵大臣官房審        議官       亀井 敬之君        大蔵省主計局次        長        小粥 正巳君        大蔵省主税局長  水野  勝君        大蔵省関税局長  佐藤 光夫君        大蔵省理財局次        長        足立 和基君        大蔵省理財局た        ばこ塩事業審議        官        松原 幹夫君        大蔵省銀行局長  吉田 正輝君        大蔵省国際金融        局長       行天 豊雄君        大蔵省国際金融        局次長      橋本 貞夫君        国税庁次長    塚越 則男君        国税庁徴収部長  木下 信親君        国税庁調査査察        部長       日向  隆君        建設省道路局長  萩原  浩君        建設省住宅局長  渡辺  尚君  委員外出席者        公正取引委員会        事務局取引部下        請課長      鈴木  満君        経済企画庁調整        局財政金融課長  大塚  功君        経済企画庁調整        局経済協力第一        課長       小川 修司君        国土庁長官官房        参事官      工藤 尚武君        国土庁大都市圏  佐々木 徹君        整備局総務課長        大蔵省銀行局保        険部長      関   要君        厚生大臣官房政        策課長      岸本 正裕君        厚生省年金局資        金課長      丸山 晴男君        農林水産省経済        局金融課長    眞鍋 武紀君        資源エネルギー        庁公益事業部計        画課長      林  昭彦君        郵政省貯金局総        務課要員企画室        長        三宅 忠男君        労働省労政局労        政課長      澤田陽太郎君        建設省建設経済        局宅地企画室長  藤田  真君        建設省都市局都        市計画課長    伴   襄君        建設省住宅局住        宅政策課長    内藤  勲君        建設省住宅局民        間住宅課長    三井 康壽君        自治省税務局企        画課長      前川 尚美君        会計検査院事務        総局第五局審議        官        吉田 知徳君        参  考  人       (日本たばこ産        業株式会社社        長)       長岡  實君        大蔵委員会調査        室長       矢島錦一郎君     ――――――――――――― 委員の異動 三月二十五日  辞任         補欠選任   藤波 孝生君     二階 俊博君   山中 貞則君     林  大幹君 同日  辞任         補欠選任   二階 俊博君     藤波 孝生君   林  大幹君     山中 貞則君     ――――――――――――― 三月二十五日  天皇陛下御在位六十年記念のための十万円及び  一万円の臨時補助貨幣発行に関する法律案  (内閣提出第七三号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第七号)      ――――◇―――――
  2. 小泉純一郎

    小泉委員長 これより会議を開きます。  内閣提出租税特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため、本日、参考人として日本たばこ産業株式会社社長長岡實君の出席を求め、意見を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小泉純一郎

    小泉委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――
  4. 小泉純一郎

    小泉委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊藤茂君。
  5. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 大臣がいらっしゃる時間のうちに数点お伺いをいたします。  まず一つは、今審議されている法律にも関係をいたしますが、来年度予算税収あるいは歳出を含めた今後の財政運営の問題であります。  今まで同僚委員からことしの税収見込みどおりに確保されるのかという疑問が何遍か出されまして、議論がございました。大臣の方からは、議事録を読みますと、適切税収見通しであると思いますということのようであります。しかし、さまざまの経済変動要因が多いわけでございますので、予断を許さない、私も非常に厳しいのではないだろうかと思うわけであります。片や歳出の方にもさまざま問題が出てくるであろうと思います。現在もそうでありますが、これから四月一日以降ことしの財政運営をどうするのかというのは、今までに例がないほど大きな経済変動要素とぶつかっているということであろうと思います。  例えば円高金利引き下げ、これも第三次金利引き下げ可能性報道されている今日でございますし、それから原油値段の方も、けさ新聞を見ましたらOPECの総会がうまくまとまらなかったということで、新聞見出しでは十ドル割れもなんという前には想像もつかなかったような状況が生まれているわけであります。  それらを考えますと、今度の予算というのは、かつてない変動要因の多い年であろう。したがいまして、予算枠組みで決まったからそのとおり各省庁執行すればいいというのとは違った対応が求められる年ではないだろうかと思うわけであります。  まだ私も精査して勉強をしておりませんが、幾つ考えてみましても、例えば国債運用の問題があります。たしか借換債も含めて一%金利が下がりますと一千億以上くらいの銭目変動が出るのではないだろうかと思います。地方債公社公団公庫債なども含めた金利負担の軽減というものも生まれてまいります。  あるいはまた、外国から買うもの、例えば防衛費などを見ましても、油の値段、相当大きな変動だろうと思いますし、兵器の購入についても、今審議されている予算で見込まれている二百円ちょっとという数字からは大分違うわけでありますから相当の変動が生まれる、三百億以上じゃないかという感じもいたしますけれども、それらを考えますと、今度の予算案全体の中で千億単位変動要因が生まれることに実はなるわけであります。  そういたしますと、今特に必要な、国会でも論議されておりますが、幾つかの、ぜひやらなければならないし、やってもらいたいということもあります。さまざま対応できる条件もありますし、機動的な運用をしなければならぬ。要するに、予算で決まったからそのとおりに執行しなさいという、そういう枠組みとは違った運用が当然求められている事情ではないだろうか。そうでないと、進行途上か終わったころでも、こんなことでよかったのかということで、大蔵省の頭脳と権威を問われることになってくるのではないだろうかと思うわけでありまして、これがまず伺いたい一つの問題であります。  もう一つは、けさ新聞にも、宮澤総務会長が昨日中曽根首相に提言をしたということが報道されております。中身は、具体的なことがいろいろございますけれども、国債の償還は思い切って全額借りかえでやったらどうかとか、これは当委員会でも随分議論のあったところでありまして、そう簡単に割り切っていいのかどうか問題があると思いますが……。それから建設国債なども積極運用したらどうかという議論。今日の大きな変化状況でございますから、さまざまの御意見与党内部でもあるようであります。  また、対外的に見ましても、昨日の夕刊を読んでおりましたら、四月中旬のOECDの閣僚理事会のコミュニケの草案などがある新聞報道されておりましたが、内需を初めとしたさまざまなことが一層厳しく日本に要望されている。その後にはIMFの暫定委員会もあるようであります。また、これも報道によりますれば、閣議で外務大臣から、抜本的な思い切ったプログラムを組まなければサミットの主催国になる立場上非常に困るというふうな御意見もあったやに伺うわけであります。  いずれにいたしましても、今参議院で予算審議中でございますからなんですが、四月十日前後になりますれば、財政運用も含め、経済体制経済運用も含め、相当思い切った総合対策が必要である、内外ともにそういう時期ではないだろうかと思うわけであります。従来ですと公共事業の前倒しの比率を高めるとか、あるいは金利金融政策を機敏に運用するとか、特に最近は中小企業対策円高関係対策を強化するとかというようなことが常識では言われるわけでありますが、そのレベルからもう一歩突っ込んだ運用がないと、今年の税財政を含めた運用に差し支えるのではないだろうか。  以上二つの面から申し上げましたが、大臣の御見解を伺いたい。
  6. 竹下登

    竹下国務大臣 前段の問題は、御案内のとおり、今まさに予算審議中でございますから、見積もりが変わるかもしれませんというようなことを言える状態にはもちろんございませんけれども、歳出一つとってみましても、公定歩合の引き下げに誘発される各種金融商品金利低下、こういう問題が当然国債発行条件にも影響してくるということは考えられます。もう一つ為替、二百九円で組んでいるわけでございますからこれの問題、今後為替の動向が仮に今日のような状態で継続するといたしますならばその問題も考えられますし、未確定の要素でございますが、原油価格そのもの影響歳出面において出てまいりますから、安易に流れてはいかぬ。執行に際してはそういうのをきちんとした執行をしなければならぬと思います。  そして一方、歳入面におきましても、御説にありますように、原油価格が下がって、それだけで従価税であります石油税は、それはこの状態が続けば減収になるでありましょう。企業収益がどれだけプラスの方へ影響するかということも全く考えられないわけでもございませんが、いずれにせよ卸売物価等が今の状態であるならば、三角の状態で進んだときに名目値が下がってくるということからする税の見積もりの乖離というものがあるいは出てこないとも限らないというときでございますので、私自身の乏しい体験からしても、これだけ変動要因の多い予算を上げてもらったとして、抱えて運営に当たるというのは初めての経験でございますから、それこそ国会等での御議論を聞きながらよほど目配りした運用をやっていかなければならぬというふうに思います。基本的認識は全く等しいということであろうと思っております。  それから経済運営一つ私が心配なのは、予算を成立させていただいた後、今総理からも言われておりますし、経済企画庁事務方でも詰めておりますので、当面の経済運営ということについての対策を当然打ち出さなくてはならぬ。その際、今おっしゃいましたように、言葉の上ではまさに財政金融適時適切弾力的運用というのが通り言葉でございますが、さてそれに具体的に色をつけてかいてみますと、抽象的にすれば、いろいろなことを入れてみましてもやはり適時適切弾力的運用ということになります。しかし、その中で新たなる要因として円高に伴う中小企業影響等について具体的な施策としてどういうふうに物がかかれていくであろうかという問題。それから、気になりますのは、これは決してこの場をかりてお願いするわけではございませんが、まあこの場をかりてお願いしてもいい性格でございましょう。例の補助金法律が上がらない前に、弾力的執行ということについて本当はどの程度言及できるのかなというのも気がかりなところでございます。上げていただけることをひたすら念じながら、そういうことをかれこれ加えて今事務方で詰めさせておりますが、やはり国民皆さん方にある種の安心感感じていただけるようなものを打ち出していかなければならぬ。本当に私の乏しい体験の中でも、戦後の予算の超インフレのときは私どもの体験には全くありませんからわかりませんけれども、その後の体験からして、今おっしゃったようなすべての要因の中で執行していかなければならぬというのはよほど目配りしなくてはならぬ課題だという問題意識を等しくしておるということを申し上げるにとどめておきます。
  7. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 数回にわたって大蔵大臣をなさっている竹下さんが未経験の分野というわけでございますし、新しい知恵、新しい対応が必要だろうと思います。こういう変動のときですから、ざっと考えてみましても、ことしの予算の中でこの経済変動要因によって千億単位変動が生まれるということは確実なわけでございます。でございますから、折り目節目といいますか、そう遠くないいずれかの時点でそれらに対応する姿勢とか運用とかをきちんとしてやっていくことが国民に対する責任ではないだろうか、強く要望しておきたいと思います。  さらに伺いたいこともあるのですが、後ほど話題にいたします。  関連をいたしまして二点伺っておきたいと思います。後で東京湾横断道路関係する問題で伺いたいのでありますが、事務方の話は別にいたしまして、大臣に感想を伺いたいのです。  この間、ある経済雑誌を読んでおりましたら、これは社会党びいき雑誌ではございません、普通に読まれている雑誌でございますが、東京湾横断道路についての報道がございました。その中見出しを見ましたら、「東京湾横断道路 まやかしの民活第一号」「異常な中曽根首相の執念」「ツケだけが道路公団に残る仕組み」「建設段階で「甘い汁」の民間」「これでは青函トンネルの二の舞」、ちょっときついですけれども、これは中見出しなんです。  民活第一号とかさまざま言われますが、これについて各新聞の論調もございます。各新聞の論説でも大体のところは、「これが民活か」とか、「真の民活か」とか、あるいは「民活あり方を問う」とかいうことが報道されているわけであります。  確かに本来の民活でございましたら、民間責任で資金、技術を効果的に運用して、しかもパブリックな部面でコントロールできる、パブリックな部面で役立っていけるというふうなものをどうクリアするのかということもございましょうが、さまざまな異例特例措置があったわけでありますし、免税国債というのは阻止をしたわけでございますけれども、それにつけてもさまざまの特異な形があるわけであります。  大臣に伺いたいことは、こういうケースの免税債阻止をされましたが、このような非常に特例異例の形を民活モデルケース考えていく、第二、第三のさらにこれと同じような要求が次々に出てくるということになりますと、いろいろな意味でゆがんだ形も考えなければならぬ、想定せざるを得ないということではないだろうかと思うわけでありますが、ほかの大きなテーマでさらに第二、第三、第四とかいうことがあり得るとお考えでございましょうか、あるいはこういう形はまずとにかくこれだけというふうなお考えでいらっしゃるでしょうか。大体内需を中心にした日本経済の方途をどうするのかということが今最大の課題になっているわけでありますけれども、これは従来の内需喚起とは違って、産業構造日本経済の大きな転換期に立っている。経済界でもそういう認識が当然強いだろうと私は思います。  私個人の考え方で言いますと、そういうものをどうするのかといえば、四つくらいの大きなエレメントがあるように思います。一つは、公共事業にしてもできるだけ福祉型都市への改造を目指していく。住宅問題にしても今のような住宅態様で何戸建てる、どれだけ税制の面でも考えられるかということだけじゃなくて、国家目標国民目標として福祉型の都市にどうこの大都市を改造するのかということに国民全体が熱意を持って強力に取り組む、そういう目的のもとに公共事業が提供されなければならぬと思います。それをやるためにも、トータルフランは国でありますけれども、重心は地方におろして市民の身近なところでやっていくという形が必要であろうと思いますし、当然、内外から指摘されておりますように、生活のベースを上げるという意味での大型減税税制改革あるいは福祉レベルを落とさないということも大事だろうと思います。さらに言うならば、軍拡の経済予算というものから軍縮の経済への移行ということも大きな柱であろうと思います。  具体的なプログラムをどう組むのかは別にいたしまして、そういう四つくらいのエレメントがあって、そしてまたそれを執行するためには国と地方民間、さらには市民活力と申しましょうか国民の御協力、そういうエレメントを組み合わした一つの方程式を組んで考えるということが必要ではないだろうかと個人的には思っておるわけでございますけれども、東京湾横断道路の今回の仕組み大蔵大臣立場から今後のモデルケースとお考えになっているのか、今回だけのものなのか。またあわせて、経済構造変化というものが基調になるわけでありますが、今日内外から言われている民活あるいは内需ということについての御見識のほどを一言。
  8. 竹下登

    竹下国務大臣 非常に難しい問題でございますが、公共事業、あるいは公共的事業とでも申しましょうか、東京湾の問題というのは、これはまさに単独法でお願いしておるように、イージーにこれらの措置を波及させないということ、その意味においてはモデルケースというふうに言えるかとも思います。  実際問題、これがいわゆる企業採算ベースに乗っかるというのはやはり都市だから、いわゆる人口の集まっておる中央だからであろうと私は思います。私の島根県なんかでそんな大きな橋をかけたってそれはペイするわけもございません。したがって、公共事業執行に当たっては、やはり補正予算の場合が割に取っかかりやすかったのでございますけれども、傾斜配分のような感じというものが出ていかなければならぬのではないかな、こういう感じがしております。  ある友人が、建設省の諸君が、ゼロ国ではだめだ、真水をくれとよく言います。それで、それじゃその言葉をとりまして、地方真水都会泥水――泥水というのは余りよくないのでまあ塩水ということにしましたら、ちょうど橋がかかりますと大体塩水の上にかかります。なるほど、明石も塩水の上だし、東京湾塩水の上だし、ははあ、田舎は真水都会塩水というのもわからぬでもないなと思って私承っておりましたが、公共事業執行段階傾斜配分のようなことは考えられる一つのことではなかろうかというふうに思います。  今おっしゃいましたいわゆる福祉型都市の形成というようなことを考えてみますと、基本的に民活というのは、公がベースを整備して、そのベースを提供することによってその上に民間活力が働いていくというようなことにせざるを得ないのではなかろうか。都市においてもそういう格好にせざるを得ないのではなかろうかと思います。それから、今おっしゃいましたように、これも私見でございますが、今度の四全総なんかを考えてみますと、若干変わってきたなと思いますのは、今まで上で全国総合開発計画をつくって、その計画の中へ地方が自分を位置づけていくという手法から、地方から積み上げたものを上でどう調整していくかというように組みかえ方が変わってきたのは、私もよそ目で見ながら、やはり世の中の変化に応じて発想自身も変わってきたなという印象を受けておりますので、そういう基礎の上に立った公共事業あるいは公共的事業あり方というものの位置づけがなされていくようになっていくのではなかろうかいうふうな方向は、私にも莫然とながらわかるような気がいたしております。
  9. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 抽象的にお答えになりました。また、大臣先ほど補助金法案を早くとおっしゃいましたが、私が四つエレメントを申し上げましたのは、私はそれが正しいと思いますけれども、今日、中曽根内閣がおやりになっていることは全部逆だという考え方を持っているわけでありまして、いろんな議論はまた別途していきたいと思います。  大臣のお時間がございますから、簡単にもう一つだけ伺いたいと思うのです。  たばこ消費税の値上げの問題についての取り扱いでございますが、今までの質疑の中でも、なぜ初年度の決算も出ないこの時期に、しかも、こんなルール違反のやり方でやったのかという追及が多かったわけであります、野党側からすればですね。大臣の方は、一年限りであります、手順その他申し訳ないことをしましたというふうなお答え、また、では六十二年度はどうなるのか、それは税調で検討してもらいますということになっているわけであります。私は税調会長に伺ったのでありますが、たばこ関係者の御意見も当然伺いながら検討しなければならぬということを小倉さん言われておりましたが、私は、そういう質問に対する御答弁の姿勢を伺っておりますと、一度上げたものは下がることはないんだよと言わんばかりと言えば恐縮でございますけれども、そういうつもりということが見え見えみたいな気持ちがするわけであります。  私は、これが現実の政策ですから、国の財政あるいは市民負担を含めていろんな議論をしなければならぬと思います。しかし、折り目、けじめ、きちんとした節目がなければ信頼がないということ、これは政策是非論よりも政治と政策に対する信用、信頼の問題というふうなことではないだろうかと実は思うわけでありまして、今までのマル優問題の転変の経過までまだ竹下さんに申し上げませんけれども、きちんとした節目折り目というものがあって初めて政策に対する判断があり、国民の御協力なり国民の御意見も伺えるということではないだろうか。したがいまして、一年限りなら、当然でありますけれども、一年後はちゃんともとに戻しますというのが、一応でも筋だろうと思います。  私どもも何回か竹下さんに社会党として要望させていただきました。私ども、仲間といってはなにですが、関係ですから、横断的に時々、与党のたばこ・塩産業特別委員会の方ともおつき合いをして議論をしたりいたしておりますが、この間伺いましたら、何かそちらの与党の小沢辰男さん、会長ですか、この方から、「今回のたばこ消費税の値上げは、六十一年度限りの臨時、異例のものであって、六十二年度以降は六十年度のたばこ消費税水準に戻すこと」というような申し入れをなされているようであります。言うならば与野党共同のさまざまの議論がございます。私は、一年限りというのですから、六十二年度は当然前の水準に戻ります、その後どうするかについては、少なくとも白紙の立場から、たばこ産業関連者の意見も聞いて御相談をさせていただきたいと言うのが筋だろうと思うのです。  ですから、通り一遍の御答弁ではなくて、前歴まで申しません、今まであったほかの問題まで申しませんけれども、これは政策に対する信頼の問題として、こういうものはけじめ、折り目はきちんとつけて御理解いただくという姿勢をおとりになるべきではないかと思いますが、いかがでございましよう。
  10. 竹下登

    竹下国務大臣 おっしゃっていることと私どもの認識と余り違わないような気がいたしました。私も十二月二十日の晩に、赤字公債の増発でいくか、何かないかというときに、これは本当に決断をいたしまして、税調の答申も済んだ後だがなあということにも気がつきながら、とにかく今晩から頼んで歩こうや、こういうようなことでございまして、平素の私は、ある種の政策変更をするときには野党の皆さん方にも大体話して歩くのが竹下流でございますが、それをやらないでやったわけですから、その点は確かに初めからひたすらお断りした方がいいと思っております、率直に言って。  それから、基本的な問題といたしましては、税調である委員さんが今度のたばこの問題はけしからぬと主張した。そうしたら、婦人団体からどんどん電話がかかって、あなたもあれには賛成すべきだ、もっと余計上げてもいいといって電話がかかって困ったというような後の話をしていらっしゃいました。それは嫌煙団体にも関係があったのでございましょう。そういうこともありますから、税調であるいは全くたばこについては触れてくださいますなと言える立場にはない。したがって、いろいろな意味で間接税の問題は議論されていくでありましょうが、今の私としては、まさに一年間の臨時異例措置であって、これは私自身は今白紙の立場でございますというのは、率直にそう言えるのではないかと思っております。また帰ってまいりますので、これで参議院の予算委員会へ参ります。
  11. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 たばこの話に入りましたので、その関連の質問をさせていただきたいと思います。きょうは、長岡社長にお越しいただきまして、お忙しいところ、ありがとうございました。幾つか質問をさせていただきたいと思います。  まず最初に、長岡さんに伺いたいのでございますけれども、今回の消費税の引き上げ、また値上げと連動するわけでございますが、経営指標で申しまして大体どのような影響が出ますでしょうか。販売本数、販売金額、それから例えば税引き前利益などへの影響。経営のことですから、それらのことは大体で結構でございます。  それから外国たばこ、価格差の少ないものを今まで国内何カ所かで発売をいたしておりますが、これもふえるだろうと思います。外国たばこの方は円高差益がございますし、今回値上げはしないという状況のようであります。相重なってさまざまな影響が大きいというようなことであろうと思いますが、その影響の指数のポイントのところ、どのように経営計画ではお見通しになっていらっしゃいますか。
  12. 長岡實

    長岡参考人 お答え申し上げます。  今回の増税を受けまして私どものたばこは値上げをせざるを得ないと思っておりますけれども、御承知のように最近の我が国のたばこの市場は全体としての消費が完全に停滞ぎみである、うっかりしていると前年よりも下がりぎみの状態でございます。しかも前回の値上げのときを振り返ってみますと、そういう状態のもとでのたばこの値上げというのはやはり需要を減退させる大きな要因になるということが明らかでございまして、そういう意味で私どもは今回の問題を深刻に受けとめております。  現在のところ昭和六十一年度のたばこの全体の消費がどの程度に減るかというのは、これは幾つかの不確定要因がございますので、若干の幅はあろうかと思いますけれども、先ほど御指摘もございました輸入品との競争の関係から申しますと、輸入品の方は大体値上げをしないようなことを聞いておりますので、したがいまして、彼我の価格差がまた縮まる。それ以前の状態でも、最近の傾向として輸入品は年率一四、五%で消費が伸びておりますので、この伸び方に拍車がかかるのではないかということを考えますと、現時点におきましては、値上げなかりせば昭和六十一年度の売上本数大体三千億本強を考えておりましたところ、大体百億本近く落ち込むのではないかというふうに考えております。  これに基づく私どもの経営の状況がどうなりますかという点につきましては、相当大きな打撃はございますけれども、私ども社員全員が全力を挙げて少しでも会社の利益を上げていくように努力いたしたいと考えておる段階でございまして、今のところ、今回の増税に伴う値上げによって会社が経営上どれだけのダメージを受けるかということを計数的にはっきり申し上げることは若干無理ではなかろうかというふうに考えております。
  13. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 私なりに考えてみますと、恐らく販売本数で百億本以上のマイナスになるのではないだろうか。それは、今回の値上げと外国品との関係、両面あると思いますからどう案分できるかわかりませんけれども、恐らく百三十億本くらいの両面相まった影響が出るだろうというふうに思いますし、それからぱちぱちとはじいて六十年度の決算見通しあるいは六十一年度を考えてみますと、専売時代からの計数などもずっと並べてみますと、会社の利益の関係でも恐らく二百億とか二百数十億とかいうぐらいの相当甚大な影響が生まれるのではないだろうかという推測を実はするわけであります。  それで、主税局長に伺いたいのですが、昨年十二月、こういうことをあなた方は御決定になりました。そのときに、当然ですが、あなた方も説明に参りましたし、主税局長のもとにある方々にもいろいろと説明を求めました。どんな影響がありますかというふうに、ナンバーツーかナンバースリーか知りませんがその方々を含めて聞きましたら、今までの経験では、一本一円値上げで四、五十億本という御説明でありました。そういう御説明のまま実は年を越しました。  最近になって、これは法律で決まっていることですから、営業計画の骨格については、会社の方から大蔵省に書類が参っているということだろうと思いますが、何となく販売本数、売れ行きの見通しと税収の合計二千四百億というものとは大体合っておりますということを、ごくごく最近になって実はあなたのところから話を聞いております。  これはやはり主税局長か主税局の見識の問題だろうと私は思いますね。昨年のときには、確かにそれは会社の方等といろいろな御相談を多面的にしなければ見通しはできないでありましょう。しかし、それなりのたばこ産業を監督するというか関係をする分野も大蔵省の中にはあるわけでありますから、何か初めに千二百億か二千四百億の話があって、そのときには計数的な説明も何もできないでおいて、年がかわって最近になって会社の方から出てきてから何となくつじつま合わせの説明をしているという感じがするわけであります。感じではない、事実そういう経過であります。だれがどう言ったかなんて言いませんよ。  私はまだ十年にしかなりませんけれども、今までの歴代の主税局の皆さんは、やはりそれなりの見識を持って、そうしてまた、税は国民の汗の結晶でありますから、たたき上げの主税局ということになっているわけでありますから、緻密な計算と論理を持って試算なり積み上げをやってこられたわけでありますが、こんな経過というのは私は初めてであります。要するに、つかみで金をもらいます。後の見通しその他会社への影響、あるいは労働組合への影響はどうなのかというようなことは後からついてくるという状態でございますけれども、どう思いますか。
  14. 水野勝

    ○水野政府委員 まさに御指摘のように、今回の改正手続につきましては極めて特異な、臨時異例的な措置でございましたので、そうした面におきましても、従来の状況では考えられなかったような手続を私どもはしてまいっておるわけでございます。  五十五年、五十八年、それぞれの年におきまして値上げが行われております。そのときには、例えば四十億本とか三十億本とかといった減少があった、そのようなことは事実であったわけでございますが、今回の引き上げ幅に対応して前回と同じ程度に減少になるのか、その後におきますところのたばこ消費の動向、あるいは外国たばことの関連におきまして、そのくらいの影響で済むのかどうか、それは非常に大きな問題であったわけでございます。  現実を申し上げますと、まさに先ほど大臣が申し上げました二十日の夜と申しますか、午後と申しますか、夕方と申しますか、決断をされた、それに基づきましてどのような見積もりをいたすか、これは事務方としてはまさに徹夜で関係者と詰めさせていただいたということで、その時点においてもある程度の大ざっぱな感じを各方面からお聞きし、積算をいたし、その後、さらに関係方面と精査を続けてまいりまして、今日御提出申し上げているような数字に確定をさせていただいてきているというのがありのままの経過でございます。  その間、中途の段階におきましては、部内的にもまさに異例的なことでございましたので、若干円滑さを欠いた面もあるいはあろうかと思われますし、その中間の時点で先生方への御説明の仕方にもなおまだ不確定な要素もあったかと思いますけれども、大筋としてはそういうことでございましたので、御理解を賜れればと思うわけでございます。
  15. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 大変正直です。主税局長もこんなことはもう二度とあってはならぬ、そう思いますね。
  16. 水野勝

    ○水野政府委員 二十日から二十一日にかけまして政府の税制調査会にも運営委員会をお願いし、総会をお願いする、それからまた与党の方にもそのときになって御説明をし、お願いをする、その両方の機会におきまして、それぞれ、今回は極めて臨時異例措置であり、こういったことは今後は望ましくないという御指摘をいただき、また、そういうことは極力今後はないようにいたしたいと私どもも申し上げてきた次第でございます。
  17. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 ある意味では主税局長も被害者なのかもしらぬからあれなんですが、今の段階で国、地方を合わせた税収見込みが二千四百億。恐らく五月一日から従来の例を上回る影響があると思います。四月段階での仮需要、五月、六月段階どうなるか。あるいは、さっきの大臣の話ではありませんが、これを契機にたばこ離れということも予想されます。また、この春から外国たばこの方も価格差のほとんどない新商品を販売するというようなことになってまいります。これは、国産であろうと外国たばこであろうと税収の面では同じですけれども、さまざまな変動要因があるだろうと思います。  経過は別にして、今の時点であなた方はそういうさまざまの変動あるいは営業状況というもの、税収というものについてきちんと見通した試算をしておりますか。
  18. 水野勝

    ○水野政府委員 先ほど長岡社長から御説明がございました本数の推移、それから外国たばこの動向等、関係者等からいろいろ聴取をいたしましたり、従来の値上げの際の動向等を織り込んで積み上げまして、現在御提案申し上げております数字として確定をいたしておるわけでございます。
  19. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 私なりに従来の値上げのときの変動状況をプラスして考えてみました。必ずしも数字は合わないのではないかという気もいたしますが、私の計算でもえらく大きいという数字でもございませんから、まあそれくらいにしておきます。  大臣はいらっしゃいませんけれども有能な政務次官がいらっしゃいますから、社長と両方にお伺いさせていただきたいのでございますが、今日本たばこ産業は、製造部面、販売部面、それから葉たばこ農家なども含めて、国際的問題は別にして、国内的にもいろいろと難しい問題にぶつかっている。前にどこかの新聞を見ましたら、決算期を前にして明のNTT、暗のたばこ産業と言っておりまして、御苦労なさるなというふうに思っておりましたが、当面の対応もいろいろ大変であります。また、先ほど社長も言われましたが、産業構造全体が難しい時期でございますから、中長期のプログラムも、相当突っ込んだと申しましょうか、厳しいさまざまな努力をしなければならぬという状況にあることは私ども承知をいたしておるわけであります。当面、営業面でのさまざまの御努力をしなければならぬ問題、それから中長期的な意味での合理化その他を含めた問題もございます。前に大蔵大臣からも、世界一立派な労使関係というお話が当委員会でございましたが、こういう難しい時期を、お互いに自発性を生かし、参加の意欲を持ち、そしていろいろな知恵を絞りながら、良好な労使関係のもとにどう打開をしていくのかという視点が、御苦労なさいますが大事なところだろうというふうに思います。その辺のところで、特に今こういう点に配慮してやっていきたいというお考え長岡さんに伺いたいと思います。  それから、こういう無理なこと、ルール違反をやったわけでありますから、私は大蔵省側の対応が非常に大事だろうと思います。そうかといって、これは民間の企業活動をなさるわけでありますから、政府としてやることも、一定の限度というか枠内の問題になるわけでございます。中長期の面からいうと、株主は竹下さん一人ですが、例えば配当をどうするのか。それから、昨年の暮れの国会での共済の審議のときにも、大臣から十全の努力をしなければならぬという気持ちでいっぱいでありますというような、気持ちだけは精いっぱいの御答弁をいただきましたが、そういう気持ちに従って御努力もいただかなければならぬと思います。さまざまな対応の問題があると思います。  会社の方では新規事業分野の開拓、これもこの産業分野にふさわしいテーマで、しかも営業上も新たなウエートが持てるようにしなければならぬ。そういうことの認可に当たってもさまざまな条件があると思いますが、大蔵省としては積極的な対応をしていくということも必要だろうと思います。さまざまなことがあろうと思いますが、今回の値上げに伴う会社としての重点の置き方、それからそういう状況に対する責任を持った大蔵省対応ということについて一言伺っておきたいと思います。
  20. 長岡實

    長岡参考人 では、私から最初にお答え申し上げます。  まず、今回の増税に伴う会社経営に与える影響等にどう対処していくつもりかという点でございますが、たばこの需要が私どもが一生懸命努力すればどんどんふえるという状態にないことは事実でございますので、そういった大変厳しい環境の中でこの問題を受けてまいりますときに、私どもとして何を考えなければいけないかと言えば、やはり全員の努力によって消費の落ち込みを最小限度にとどめるということであろうかと思います。そのためには、経営上の努力はもちろん必要でございますけれども、特に外国の商品に負けないような新製品を開発して適時適切に市場に投入していくといったようなことを中心に考えてまいりたいと思っております。  それから全体の問題として、将来に対しての考え方でございますけれども、私どもは、日本たばこ産業の中核的な存在として、葉たばこ農業から小売店に至るまでの全体のたばこ産業を守っていかなければならない立場にあるわけでございます。そのたばこ産業株式会社として何が一番大事かと申しますと、これは私の私見ではございますけれども、国際競争に負けないような企業体質に育てていく、いわゆる国際競争力を持った企業に育てていって、そして将来にわたって会社の経営がおかしくならないようにしていく、これが日本たばこ産業全体のためにも、また我が社で働く従業員の生活維持のためにも大事なことであろうと考えております。そして、国際競争力を維持していくためには、やはりある程度の合理化が必要でございます。この点につきましては、伊藤委員も御指摘になりましたように、労使間で十分に前広に話し合った上で、できるものから進めていくということであろうかと存じます。  もう一点つけ加えさせていただきますと、それだけの努力をいたしましても、たばこ事業そのものは将来どんどん発展していくという状態ではございません。したがって、そういった点をカバーするためには、何とかして私どもがやるにふさわしい新規事業を早く軌道に乗せなければならないと考えております。会社発足後やがて一年という間に幾つかの新規事業を手がけてまいりましたけれども、いわば本命ともいうべき新規事業を、目下検討中でございますが、一刻も早く軌道に乗せていくことが社員の士気を鼓舞するゆえんでもあろうかというふうに考えております。
  21. 松原幹夫

    ○松原政府委員 お答え申し上げます。  ただいま長岡社長の方からお話がございましたように、たばこ産業株式会社におきましては、制度改革後も経営の合理化、効率化あるいは多角化に大変意を注いできておられまして、この厳しいたばこを取り巻く環境を乗り切るために大いに努力をしてきておられます。政府としては、こういったたばこ産業株式会社の自主性を大いに尊重しながら、日本たばこ産業全体の発展のために十分配慮してまいりたいと思っております。会社が今後とも経営の自主性を発揮されまして効率化、合理化に努力され、さらには経営の多角化も大いに推進されて、このたばこを取り巻く厳しい環境を乗り切っていかれることを我々としては期待しております。  また、こういったたばこ産業の効率的な経営を助長していくためには、やはりたばこ産業が合理的な範囲内で経営の多角化に乗り込むということが必要であろうかと思います。  現在、たばこ産業は、会社になりまして以来、種苗、園芸、不動産の高度利用あるいはたばこ関連の産業、こういったものに取り組んでおります。こういったような新規事業に出る場合におきましては、我々としては、たばこ産業の自主性を大いに尊重しながら、また、たばこ産業は現在何といいましても独占的な地位を持っておりますので、そういった地位を利用して中小企業に対して圧迫を加えるというようなことがないように、そういった点の配慮もしなければなりませんが、そういった兼ね合いをよく見まして今後ともたばこ産業の発展のために新規事業の認可等につきましては適宜適切に対処してまいりたいと思っております。
  22. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 たばこ消費税に関連をしてもう一点だけ伺っておきたいと思います。  アメリカ通商法のいわゆる三〇一条の問題についてでありますが、会社の方もいろいろと苦慮されていることだと思います。こういう問題ですから誠意を持って説明をしなくちゃなりませんし、また、日本の事情などにつきまして誠意を持って理解を求めなくちゃなりませんし、また毅然とした対応も必要であろうというふうに思うわけでございますけれども、この三〇一条への会社としての対応をひとつ社長から伺いまして、主として大蔵省側に見解を求めたいのであります。  三項目、内容に問題がございます。それぞれ大きな問題になるわけでありますけれども、関税に関連をして見解をきちんとさしていただきたいのです。  一昨年の審議のときにも附帯決議の中で、現行関税水準は守るようにということを言われております。また、私ども野党からも、また与党の特別委員会の方でも、これは強調されております。これは当然そういうことで鋭意御努力をされるのは当然であろう、国際的に見てもおかしくない、不当な話ではないと思います。この点が一つであります。  それから、ある外国の関係者の方からちょっとレポートを送ってまいりまして読んでおりましたら、特にこのタックス・オン・タックスに関連をしてでありますが、「日本たばこ市場における課税制度と公平なる競争について」というテーマのレポートを送ってきましたので読んでみましたが、その中に、タックス・オン・タックスの悪影響日本ではある、これは競争上の中立性において非常に不十分な日本対応である。どうやって改革をしてもらいたいかということを二つ言っております。  一つは関税の撤廃、これは論外ですね。もう一つは、消費税の従価部分ですね。従価部分を削除する、つまり消費税の構造を変えなさい、この二つが行われれば随分改善されると思いますというふうなレポートを読ましていただきました。大変無理な内容であろうというふうに思いますけれども、大蔵省側としてはどう対応なさったのか、これについてはどうお考えですか。
  23. 長岡實

    長岡参考人 最初に、会社としてのこの問題への取り組みについての考え方を御説明申し上げます。  今御指摘ございましたように、これは主として政府間の交渉事項になっておるわけでございますけれども、私どもとしては主張すべきことは毅然たる態度で主張するということはぜひ貫いていただきたいと思いますし、私どもも、機会がございます場合には、その点については安易な妥協というようなことを考えずに私どもの立場は十分に主張してまいったつもりでございます。今後ともそういう態度を続けたいと考えております。  会社としてできること、これは、例えば流通問題につきましては相当程度誤解があるようでございますので、そういう誤解の解消等には全力を挙げたいと考えております。それから、ここまで申し上げるのはいかがかと存じますけれども、アメリカの政府の後ろには巨大なアメリカのたばこ企業があるわけでございますが、そのたばこ企業との従来から続いてまいりました友好関係は、私どもとしては、こういう問題がありましてもあらゆる努力を通じて維持することによって日米のたばこ問題がこれ以上深刻化しないようにするという努力は続けておるつもりでございます。
  24. 佐藤光夫

    ○佐藤(光)政府委員 御指摘の関税についてお答えを申し上げたいと思います。  これまた御指摘のとおり、アメリカは関税についても三百一条を根拠といたしまして問題にしてきているところでございますが、まず第一に、累次にわたる関税の引き下げによりまして、現在の我が国のたばこに対する関税率というのはかなり低い水準になってきております。従価換算で大体二〇%ぐらいの水準でございまして、これは先進国の中でもアメリカと並んで一番低い水準に属するものではないかというふうに考えておりますのが第一点でございます。  それから、伊藤先生御承知のとおり、昨年の四月以降、八十年余り続きましたたばこの専売制を廃止いたしまして輸入の自由化を行ったわけでございますし、その後も、内外製品の公正な競争条件を確保するための措置をとってまいっているという状況でもございます。  さらにまた、先ほど長岡社長からもお話がございましたように、たばこの消費全体が停滞する中で、アメリカを中心とする外国製品は一五%というようなかなり高い伸び率を示しているわけでございます。こういう状況の中におきましては、この二〇%をさらに下げるというようなことは極めて困難な話ではないかというふうに私ども考えておるわけでございます。アメリカ側は、先ほど申し上げましたように、三百一条を盾にとりましてこの点をさらに問題にしているわけでございますけれども、私どもといたしましては、今申し上げましたような考え方に立ちまして、十分にアメリカ側の納得を得るように努力をしてまいりたいと考えておる次第でございます。
  25. 水野勝

    ○水野政府委員 たばこ消費税の税率の構造につきましては、民間への移行の際の税制度の組み方としていろいろ御議論をいただいたところでございます。御承知のように、従価税と従量税の混合した方式になっておるわけでございまして、現行におきましてはこれは大体八対二の割合になっておるということでございます。たばこ財政物資でございます点を考えれば、価格に応じた従価税といったものが原則ではないか。また、従来専売納付金時代は従価税的な仕組みの法定納付金率ということになっておったという経緯があるわけでございますが、他方、たばこという嗜好品に対する課税、消費税あり方としては従量税的なものになじむ面もあるといった面から、八対二になっておるということでございます。  八割が従価税ということになりますと、御指摘のタックス・オン・タックスということになるわけでございますが、これは内国消費税におきまして従価税的なものを課税いたします際には、日本に限らずどこの国でも起こるわけでございますから、もしそういうあれがあるとすればこれは十分にアメリカ側の理解を得なければならないと思うわけでございます。アメリカにおきましてもたばこにつきましては地方の小売売上税との関連ではこういった問題も起こるわけでございます。そういった点がございますから、誤解と申しますか、考え方の問題としては十分理解を得る努力の必要がある。  しかし、他面におきまして、先ほど申し上げましたたばこ消費税税制あり方といたしましては、嗜好品に対する課税のあり方として従量税的な部分といったものの存在価値もあるわけでございますし、また一面、今のようなタックス・オン・タックスの問題もある。そうした点もいろいろ勘案いたしまして、今回の改正におきましては、従価税部分へのはね返りを遮断するために課税標準の特例を設けることといたしておるわけでございまして、これによりますと、八対二の関係から大体七対三くらいになる。その点におきましては、その範囲におきましてはこの問題は若干緩和されておる、そのような内容となっておるわけでございます。
  26. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 長岡さん、ありがとうございました。  あと残った時間、東京湾横断道路関係について質問をさせていただきたいと思います。  東京湾横断道についての特別立法が建設委員会の方でこれから審議をされるということになっておりまして、その前に減税措置を含めた本法案が大蔵委員会で処理をされるというのは、建設委員会関係からしてもまことにいかがなことかというふうに私は思うわけでございますけれども、日切れの本法案でありまして、委員長並びに理事の皆さんの現場に混乱を及ぼさないようにという御配慮からそうなっているのだと思いますが、道路局長お越しでございますから、まず事実関係を伺いたいと思います。  この事業に関する政策判断、政策選択、これらについてはさまざま議論したいわけでございますが、これはまた建設委員会の連合審査もあるようでございますから別にいたしまして、特に私の方は地元が神奈川県でございまして、この計画については前から非常に頭を痛めてきた経過があるわけであり童す。建前論とか政策判断の問題は別にいたしまして、幾つか具体的な、また深刻な問題があるわけでありまして、そういうレベルでの質問をさせていただきたいと思います。  まず道路局長に伺いたいのですが、具体的な事業計画とか会社の中身について――議事録を読んでおりましたら、建設大臣は、法案が通ったらすぐ会社がスタートできるように鋭意努力をしていきたいと言われているようでありますが、あなた方の方は、この法案を国会審議をいただいてもしこれが成立した場合に、例えば年内にどこまで進行させるか。あるいは着工までの間のさまざまの問題があります。会社の問題もあります。アセスもあります。関係自治体との協議も当然必要であるわけであります。そういうことについて、大臣はそういう答弁をなさっておりますが、もう一歩具体的にどんなことを想定をされておりますか、これが第一点。  それから第二点。出資六百億、二百、二百、二百で、公団と自治体と民間。公団と自治体というパブリックな方が三分の二、民間は三分の一で、これが民活第一号というのですからちょっとおかしな気もしますけれども、特にそういう意味で申しますと、自治体の側の出資の問題。今までの関連でいいますと、これは一都二県、それから政令都市である横浜、川崎などということになるわけでありますが、こういうものの範囲も、あなた方の方は幅広く協力を求めるという姿勢であるかに実は伺っております。県の方でももっと広げるということもあるでしょうし、あるいは市のレベルでももっと広げる。今までの主要な関係の都と県と市と含めた五ぐらいではなくて、十ぐらいの範囲でお考えになるというようなことではないだろうかというふうなことも聞くわけでありますが、自治体の出資の範囲というものをどの辺までお考えになっておりますか。それから民間、何か今、期成同盟会に参加をされている範囲でとか伺っておりますが、そういうことでございましょうか。出資の関係の中身、これが第二点。  それから第三点、資金計画の問題でありますが、説明やら新聞報道やら読んでみますと、八千億円の事業費というわけでございますけれども、今まで青函トンネルでも三倍くらいになっていると思います。あるいは本四架橋の鳴門ルートですか、これでも何か二倍を超えているようなことに最近なっておるようであります。大体ヘドロの下のかたいところをシールドで掘るというわけでございますから、日本の技術が大変先端を行くにしろ、さまざまの不測のことも想定をされるだろう。まさか三倍にするような計画を内心持っているわけじゃないと思いますが、いずれにいたしましてもそういうことは全然考えないわけにいかぬだろうと私は思います。八千億円で完全に済むのかどうか、ああいうことについては、あなた方おやりになるにしろ計画どおりにはいかぬだろうと思います。そういうことが起こった場合には、つまるところしょい込むのは公団、パブリックの負担になるということなんですか。本来民活第一号というのですから、模範的にやろうと思ったら、民間の方もさまざまなリスク負担も含めてやっていくということにならなくちゃならぬというふうに思いますが、この資金計画について、これが三点目。簡単にお答えください。
  27. 萩原浩

    ○萩原政府委員 お答え申し上げます。  まず第一点の日程の問題でございますが、ただいま先生御指摘のように、現在衆議院の建設委員会の方でこの法案の審議をしていただいております。それで、この法案がまとまりましたら、日本道路公団は直ちに環境アセスメント、それから先ほど先生御指摘の出資その他を含めた自治体との協議に入ります。環境アセスメントは先般閣議決定されました手続に基づいて行いますので、いろんな手続がございますから、私どもの感じとしては大体九カ月くらいはかかるのではないだろうかと予測をいたしております。そして、この環境アセスメントが承認された暁におきまして建設大臣が事業の許可を与えるということになります。アセスメントが終了する以前に事業の許可を与えるということはいたしかねますので、アセスメントが終わりました後、許可を与える、こういうことになるわけでございます。  一方、会社の方でございますけれども、会社の設立は、この会社は商法上の株式会社でございますので、自由に設立していただくのは構わないわけでございますけれども、今の事業認可が出る前には、当然のことながら公団あるいは地方自治体がその会社に出資をすることはできないということになるわけでございます。したがいまして、民間だけの出資によります会社が出発をいたしまして、その後許可がおりる段階で初めて公団並びに自治体の出資を仰ぐという手続が恐らく予想される大体のスケジュールになるだろう、こういうふうに考えておるわけでございます。  それから第二点でございますが、出資金の問題でございます。ただいま御審議をいただいております法案の中で、地方公共団体がこの会社に出資をすることができるという条文がございますので、この法律を御承認いただいた後で関係自治体と御協議をいただくという手続を考えております。したがいまして、現在のところこの自治体の範囲というものについて確たるめどというものはつかんでおりませんで、この法律が御承認いただいた後、個々に御協議をいただいて範囲を決めていただくというふうになると存じます。  それから一方、民間の出資でございますが、今先生、期成同盟会のメンバーに限るのかという御指摘でございます。これは当然のことながら会社でいろいろ御考慮いただくことになると存じますけれども、期成同盟会のメンバーに限るということは恐らくあり得ないのではないかというふうに私どもは想像をいたしております。  それから第三点の資金計画でございますが、この東京湾横断道路、現在私どもは総事業費一兆一千五百億円を予想いたしております。この一兆一千五百億円の中には年率三%程度の物価の値上がり、これを見込んでございます。これはこのとおりになるかどうか、これから先のことでございますのでちょっとわかりませんが、一応三%の値上げを見込んでおります。そして、一兆一千五百億のうちこの会社が行います事業は九千百億円を予定いたしておりまして、九千百億円のうち六百億が出資金でございます。これは、民間地方公共団体、日本道路公団、おおむね三分の一ぐらいずつを予定いたしております。これも会社がその後お決めいただくことだと思いますが、一応六百億円、そして残り八千五百億円は借入金でございまして、この八千五百億円の内訳は、割引債を含みます政府保証事業債が三千八百億円、それから道路開発資金が二千五百億円、それから民間の借入金等が二千二百億円、このような資金計画考えております。  さて、このような資金計画で事業を実施いたしました際に、先生御指摘のいろいろの要因でこの建設事業費が一兆一千五百億円でおさまらなかった場合どうなんだという御指摘でございますけれども、このおさまらない要因にはいろいろの要因がございまして、さっき御指摘申し上げました物価の値上がり、このようなものは会社にとってはどうにもならない問題でございますので、このようなものは当然日本道路公団が総事業費を変更し、建設大臣がまたこれを認可して全額の金策をやるということになりますが、会社の方の責任で非常にぐあいの悪いことになったというような場合には、これは当然会社が負担するということでございまして、金額の違ってきた要因によりまして公団の負担あるいは会社の負担というふうに色分けていくことになると存じます。
  28. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 私ども神奈川県側の方から昨年九月五項目の要望がございまして、つい数日前に、三月二十日でしたか、県議会でも意見書が決議をされている。御承知のとおりだと思いますが。その第一項、中心は広域幹線道路網の整備というテーマになっているわけであります。全体を議論する時間がございませんから、二点だけお伺いしたいわけであります。  一つは湾岸道路、特に本年から五期分についても予算化をされましてスタートいたします。私は、大蔵省がこういうものは大蔵原案の段階から入れてもらうのが当然だろうと思いましたが、復活という扱いになったわけであります。昭和七十年が、六十九年度末といいますか七十年春と申しましょうか、めどになっているわけでありまして、ここまで来た御努力には敬意を表しますけれども、これから先十年を考えますと、これでいいのだろうかという思いがいたしてなりません。前前から千葉県側の湾岸道路は約八割完成、神奈川県側は一割、二割程度という状態が続いてまいりまして、強く要望が続いてまいったわけでございますけれども、これから十年ということを考えますと、今の道路事情、横浜横須賀道路とか十六号線とか含めて見ても、果たして見通しがつくのかという気がいたします。そうかといって、本年計画がスタートをして、いきなり何年繰り上げられるかということは道路局長でも言いにくいでしょう。しかし、そこまでは別にいたしまして、これからの進行状況、これからの交通事情などを含めて円滑な道路事情にできるように、これは横断道のあれには前提条件だと考えておりますから、適切な、また積極的な対応がなされるということは当然必要であろうと私は思いますし、またやっていただかなければならぬと思っているわけでございますけれども、その辺の積極的な取り組みの姿勢の問題が一つであります。  もう一つは、委員長の地元でもございますけれども、川崎市縦貫道路については、川崎市側が非常に苦労をなさり、これからも苦労をなさるところだろうと思います。これも地元の方からは、横断道をやるというのならばとにかく七十年前に完成を目途にという要望になっておるわけですね。完成を目途にといいましても、これは調査、アセス、都市計画の決定、事業への着手そして完成。十年といったって、これから着手することですから、考えてみたらもう長い時間じゃございませんね。やはり何かそれについてのもう一歩突っ込んだ御努力というものが当然必要ではないだろうか。調査費用が出るとか、一部着工とかありますけれども、幾つかの段階があると思いますね。全線一挙にというわけではありませんから、どこまではいつまでというターゲットを設けながら具体化をしていくというようなこともあると思いますね。特に神奈川県の強い要望でございますので、その辺今までに発表されているもの、あるいはここで着工するもの、それらについての姿勢を示していただきたいと思いますが、いかがですか。
  29. 萩原浩

    ○萩原政府委員 先生御指摘の東京湾横断道路に関連をいたします道路のうち、神奈川県側の非常に大きな問題はその二つの路線であろうと思います。そのうち湾岸道路につきましては、先生の御指摘のとおり、今御審議いただいております六十一年度の政府予算原案の中では、湾岸五期を今回着工させていただきたいということで考えております。三期、四期、五期、この三路線、間にベイブリッジも入りますけれども、それらを六十九年度あるいは七十年度までには完成させたいというふうに考えております。幸いにしてこの区間では、今回の五期の中に含まれます本牧のちょっと南の方、そこら辺でいささか用地の問題がございますが、その他につきましてはほとんど用地問題がございません。したがいまして、あとは建設の問題だけでございますので、この湾岸線の建設の促進につきましては今後懸命の努力をいたしたい。それで、一応の予定は七十年までということになっておりますが、そこまで延ばさないで、できるだけの努力をして早期開通に向けていきたい、こういうふうに考えている次第でございます。  それから、一方の川崎縦貫でございますが、これは先生も御指摘のように実はなかなか大変な問題が含まれてございます。  現在東京湾横断道路の起点といいますか、トンネルが入るところの浮島から国道十五号まで、これは同じく六十一年度に着手をいたしたいということで、六十一年度の予算原案の中に組み込んでございます。もしこの予算が御決定をいただきますと、直ちに都市計画決定の手続に入りたい、そして六十一年度中に何とか都市計画決定がいただけないものかどうかということについて最大限の努力をいたしたいと思います。これは国道十五号まででございます。  問題はその国道十五号から先でございまして、二四六あるいは東名と連絡するまでの間、約十四キロほどございます。この十四キロにつきまして路線をどこに設定するかということが非常に大きな問題がございまして、この問題について現在川崎縦貫道路計画調整協議会というものを設置いたしまして、この調整を図ってまいりたい。これにつきましてはとにかく地元の御了解を得るというのが第一段階として非常に大きなバリアがございますので、できるだけ早く地元の御了解を得て路線を決め、そしてもしできれば順次都市計画決定をしていって、できるだけ早く事業を進めてまいりたいというふうに考えております。  この川崎縦貫の問題につきましては、先ほどの湾岸道路の問題とは別の、地元の話がございますので、いつまでにどういうスケジュールでということはちょっと申し上げかねますが、できる限りの努力をしていきたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  30. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 湾岸五期分の前向きのお話をちょうだいしましたが、これは羽田部分も含め順調にいくようにお願いしたいと思います。  それから、地元からの大きな関連事項は工場制限諸制度という問題でございますが、これにつきましては通産省所管の法律、国土庁所管の法律など主要三法があるわけでございます。私は特に国土庁にお願いをしたいのですが、今度、今年と来年ですか、調査をなさる。その調査をベースにして検討なさる。今までよりは一歩前進という面があるだろうと思います。ただ、私はそれだけでは足りないのじゃないだろうかという気持ちがしてなりません。  これはほかの大都市でもそうだろうと思いますが、横浜市でも、川崎市でも、神奈川県でも、今日の都市構造の変化産業構造変化、就業構造の変化都市機能の変化などさまざまな問題についてそれぞれ鋭意勉強いたしております。工場制限諸立法というのは、たしか高度成長期の入り口か高度成長期の半ばぐらいに当時の状況のもとに制定された法律であります。国土の全国的な均衡ある利用というべースはもちろん当然だと私は思います。これは国土利用のプリンシプルであろうと思います。ただ、産業構造も非常に変わってまいりまして、例えば神奈川県とか横浜で見ましても、重厚長大の鉄鋼を初めとした重工業中心の時代から、高度情報化の進展に伴って先端部門がセンター的な役割というふうに機能が大きく変化をいたしております。言うならば日本の産業、日本の工業全体が発展するための技術開発の先端、種床をつくるような役割に移行している、これも大きな変化でございます。これが流出、ダウン、分散をするということは日本経済にマイナスだろうと思います。  就業構造の状況も大きく変わりました。大規模の社会増という状況はほぼなくなったという状態であります。また、私は横浜にいて思いますけれども、国際化の進展との関係ということも実は非常に大きな要素になっていると思います。日本のキャッチアップの段階からファーストランナーの技術開発の時代に入りまして、諸外国ともさまざまな交流や提携関係が必要であります。国際社会での役割分担を果たすために一体どういう立地条件が必要なのかということも大きな課題であります。いろいろ大きな変化が起こっているわけでございまして、そういう中での立地条件、国土の利用とは一体何だろうかというものを、皆さんもそうでしょうけれども、実は模索、勉強しているという段階であります。  私は、二年間調査をしてその上で検討するのも結構でしょうけれども、こういうことは当然ながら鋭意勉強すべきテーマだろうと思います。そういうものに基づいて現在ある法律をどうしたらいいのかなどの研究、検討が必要であろうというふうに思うわけでありまして、この工場制限諸立法の見直しということにつきましては、そういう意味も含めました切実な地元からの要望でありまして、今まで言われておりますところの二年間調査をしますというだけではなく、そういう研究努力も当然なされるべきであろうというふうに思いますが、いかがでございましょうか。  また、時間がなくなりましたから、もう一つ追加して終わりたいと思います。  もう一つは、公団になるのでしょうか、むしろ萩原さんの方がいいと思いますけれども、東京湾横断道というものについての経済効果、何か完成して三十年後に五兆円とかGNPを一兆何千億伸ばすとかというような試算を伺いました。五兆円のうち千葉県側が四兆円で神奈川県側が一兆幾らとか数字も出されておりますけれども、そのバランスは別にいたしまして、お互いにみんな発展するのはいいことですからそんな細かいことは申しませんが、ただ、何か雲をつかむような話とみんな受け取っているわけであります。     〔委員長退席、中村(正三郎)委員長代     理着席〕  今必要なのは、あなた方がこれをおやりになる、やりたい、ではこれをやった場合に物流はどうなりますか、人の移動はどうなりますか、あるいはまた周りの産業その他についてどういう影響を与えますか、具体的にどういう変動要因が起こるかということを分析して、そういう変動要因のメリットは結構ですが、デメリットが起こることをどう防止するのか。しかも東京湾を囲む首都圏の有力な自治体でございますから、有能な方々がいらっしゃいますから、そういうものをどういうふうにプランニングできるのか、言うならばそういう部面が実は非常に弱いと私は思います。公団の方でも随分たくさんの調査費を十何年か使っておったが、どんなシミュレーションをやったか知りませんけれども、今求められているのはそういうことだろうと私は思うのですね。そういうことをやはり鋭意きちんとやってもらいたい。それに基づいて関係自治体もそうですが、関係市民、県民、みんなが考えるという姿勢が必要だろうというふうに実は思うわけであります。法律が出てからですから遅いと言えば遅いので、こんなことは先でなければおかしいと私は思いますけれども、そういうことを積極的に、また緊急にやって、その上で具体的に問題がどうできるのかを考えるべきではないだろうかと思いますが、その二点、伺いたい。
  31. 佐々木徹

    ○佐々木説明員 お答え申し上げます。  東京湾横断道路建設に関連いたしまして関係自治体から工業等制限法を見直してほしいという要望が出されておりますことは私ども十分承知いたしております。  ただいま先生が御指摘されましたように、工業等制限法が制定、施行されましたのは昭和三十四年でございまして、当時から比べますと、おっしゃられますように産業構造も大変変わっておりますし、あるいは人口動態につきましても大都市への人口の集中というのも鈍化傾向にございます。そうはいいながら私ども、大都市の既成市街地におきます工業集積というものはかなり大きいというふうに見ておりまして、大都市への工業立地を抑制し、地方へ分散させるということを通じまして国土の均衡ある発展を実現していくということは国土政策の基本的な枠組みだというふうに考えております。  関係自治体からいろいろ御要望もございますので、現在、この工業等制限法によって本当に都市衰退がもたらされているのかどうかとか、あるいは工業跡地に住工混在が生じているのかどうかといったような実態調査を行っております。また、先生御指摘のように、六十一年度からは予算をかなり増額いたしましてもう少しきめの細かい、あるいは突っ込んだ調査を行いたいというふうに考えております。  そういうものを踏まえまして、この法律が制定された当時から比べますと、最近、状況がかなり変わっておりますので、そういう中で工業立地が本来どうあるべきなのかといったような国土政策あるいは工業立地政策が制定されると思いますので、そういうものとの関連においてこの制度はどうあるべきか検討してまいりたい、かように考えております。
  32. 萩原浩

    ○萩原政府委員 先生御指摘のように、この東京湾横断道路ができましたときの経済効果というものはかなりマクロ的にいろいろなモデルを使って試算をいたしました。その結果が先ほど先生御指摘の数字でございます。これらはいずれもマクロモデル的なものを使ってやったものでございまして、個々にこういう都市を張りつけるあるいは都市の開発をする、その結果、こう積み上げてこうなったというものでないことは先生の御指摘のとおりでございます。  東京湾横断道路が、予見といいますか、現実にでき上がるという想定のもとに、今後、関係の地域の開発がどうあるべきかということを真剣に検討すべき時点に来ておりまして、現在、東京湾岸地域整備連絡会議という場を設けまして、これは建設省の関東地方建設局が主体になりましていろいろな関係自治体と鋭意これから詰めていきたいと思います。この横断道路をお認めいただきました暁にはこの会議を活性化させましてできるだけ早くいろいろな地域計画を積み上げさせていただきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。またひとつよろしく御指導のほどをお願い申し上げます。
  33. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 時間ですから、終わります。     〔中村(正三郎)委員長代理退席、委員     長着席〕
  34. 小泉純一郎

    小泉委員長 戸田菊雄君。
  35. 戸田菊雄

    ○戸田委員 外務省からおいでになっていると思うのですが、最近報道等で、マルコス・リベート等の問題について、マルコス疑惑と日本企業の関係が云々されております。そこで、外務省でまだつかんでおるかどうかわかりませんけれども、米議会内で公表された内容、それから外務省が今まで調査をしたかどうかわかりませんが、調査をしておればその内容、それを公表していただきたい。
  36. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 三月二十日に米議会のソラーズ委員会で発表されました資料は、その公表されました分は非常に膨大な量でございまして、その後その中から日本の名前が出てまいりますものとかを急遽拾いまして、早速私どもも内容の分析等々を行っている段階にございます。たしか昨日であったかと存じますけれども、国会の方にも、御要望がございまして、私どもの集めましたものが全部網羅的かどうかよくわからないのでございますが、とりあえず集めたものを全部御提出申し上げたというふうに理解しております。  それから第二点の、外務省としてフィリピンに対する経済協力につきましてどういう調査をしているかという御質問でございます。先生よく御承知のとおりだと思いますが、一般的に経済協力、政府間では、先方の要請しております事業の採算性と申しますか実行可能性等を事前に関係省庁で精査いたしまして、それに加えまして、これは円借款の場合でございますけれども、今度は海外経済協力基金が、必要があればミッションを派遣して精査をするという過程を経まして、交換公文を締結いたします。  交換公文では、限度額というものを決めまして先方と約束をいたします。その後は、原則として公開入札ということを義務づけておりまして、公開入札で、先方の政府が日本の企業ないしはその他の外国の企業から広く応札者を募りまして入札を実施いたします。この入札の過程以降は、先方政府が関係企業との間で行う言うなれば商行為と申しますか、そういう形でもって決定をされるわけでございます。  向こう側の政府としましては、一番いいものを一番安い値段で獲得するために全力を尽くすということが期待される建前になっております。  その入札を行いました評価、入札でこういう形にしようということは先方政府から我が方に参ります。入札の評価については基金がそれを見ます。見まして、原則としては第一位の、一番低価格で応札したものが落札をいたしますけれども、これで結構だという話になりますと、今度は先方政府と企業との契約の段階になります。この契約をまた提出越しまして、海外経済協力基金において審査をし、承認をする、こういう形になっております。ここで一応協力としては事業が始まるわけでございます。  その後、もちろん先方の事業ではございますが、我が国としましても、これは外務省のみでなく、実施機関たる海外経済協力基金及び国際協力事業団が後追い調査、評価と申しておりますけれども、後追いの評価調査というものをやっておりまして、大体毎年百件くらいの、これは世界じゅうでございますが、後追い評価調査を行っております。フィリピンの場合には七、八件かと思いますが、評価調査が行われているという実情にございます。  ただいま、こういう事件が起こってその後どうなんだ、こういう御質問かと思いますが、第三点としましては、昨日この評価調査についての検討部会を開きまして、明会計年度、四月からの会計年度におきましては、この評価調査の重点をフィリピンに置いて進めていこうということで、今計画を練っているという状況でございます。
  37. 戸田菊雄

    ○戸田委員 きょうは本題じゃありませんからこの問題にそう触れませんけれども、私自身もまだ余り精査しておりません。ただ言えることは、海外の経済協力その他について相当莫大な税金を円借款その他でやっているのですね。ですから、何かリベート額の計算をやられているということでありますから、委員長、これはひとつ資料を、外務省で今持っている内容を全部ここへ提示していただきたいと思うのです。
  38. 小泉純一郎

    小泉委員長 理事会で諮りたいと思います。
  39. 戸田菊雄

    ○戸田委員 それで、質問通告を若干変更しましてたばこ消費税から入りますが、先ほど伊藤委員が相当詳細にやられましたから内容は省きますが、二、三の点について補足的に質問してまいりたいと思っております。  まず第一点は、今回の税制全般改正で、たばこ消費税は赤字法人課税に次いで額の大きいいわば税の改正要項になっているわけですね。いろいろと私がタッチしたところによりますと、十二月二十日、大蔵省税制改正大綱を決定する直前でありましたが、そのときに突然この消費税たばこの値上げが決められた、こういう状況ですね。全然両税調には諮られておらない。最終的には大蔵省の主計局と自治省財政局との合議で生まれた、こう言われているのですが、その辺の事実はどうですか。主税局全体も知らないということですか。
  40. 水野勝

    ○水野政府委員 税制調査会の答申は十二月十七日に取りまとめられておるところでございますが、地方財政対策につきましては、その後と申しますか、予算内示前の段階で鋭意折衝が進められまして、その段階で、こうした財源措置が不可欠であるというあたりからこうした問題が出てまいりましたのが十二月二十日午後からでございまして、急遽その夕刻におきまして、政府税制調査会、それから与党の方の税制調査会にも御相談を始めたということでございます。
  41. 戸田菊雄

    ○戸田委員 実際は主税局長も知らなかったのでしょう。きょうは自治省を呼んでおりませんが、そういう中でどこでやられたかわかりませんが、いずれにしても大蔵省主計局と自治省財政局、ここでいろいろとやられたことは間違いないようですね。こういったことはやはり今までのルールその他から大分違反をしますし、この決定の経緯というものは、言うなれば財政民主主義に違反しているのじゃないだろうか、私はこういう気がいたしますが、その見解はどうですか。
  42. 水野勝

    ○水野政府委員 二十日の夕刻におきまして、与党、政府との相談におきまして最終的にそうした方向が打ち出されたわけでございます。その時点におきまして政府の税制調査会、与党の方の税制調査会にそれぞれ御相談し、中身それから手続、両面につきましてお話し申し上げ、御相談をしたわけでございます。その結果におきまして二十一日にそれぞれ総会を開催いたしまして、それぞれ答申あるいは大綱が決定された後ではございますが、重要な問題であるということで再度総会を開いていただきましてそれぞれ経緯を説明し、事後的に御理解を得たという経緯になっておるわけでございます。
  43. 戸田菊雄

    ○戸田委員 ですから、両税調が決定したのは後追いですね、二十日に決めて、二十一日に総会を開いて決めたというのですから後追いなんですよね。だからこういうことがあってはいけないと私は思うのです。殊にたばこの専売公社が民営に移行する際に、これは我々がずっとやってきていますから主税局長も十分その内容はわかっていると思うのですが、例えばこのたばこ消費税については、たばこ消費動向等を配慮して決めなさい、こういうことをはっきり附帯決議にもうたっているんですね。そしてなおかつ、税調等の場で産業界を初め関係者の意見を徴し、可能な限り意見を反映すべきであるということを言っているのです。だからこういう附帯決議その他からいって、前回の決定からいって、やはりこういうものを手順としてきちんと踏んで、それで今回の取り扱いがやられるべきだ、こういうふうに考えるのですが、その辺はどうですか。
  44. 水野勝

    ○水野政府委員 御指摘のとおりでございます。したがいまして、極めて臨時異例措置であるということで税制調査会に御報告し、税制調査会では、まず内容も議論をする必要がある、また手続においても極めて異例措置ではないかということで、かなりな時間を費やして御議論、御検討をいただいたわけでございます。  その結果といたしまして、答申は既に出された後でございましたので、会長談話と申しますか会長の発言ということで総括をいただきまして、「本件につきましては、税制改正の手続としては異例なことであり、好ましくなく、また、その内容についても委員のうちには異論もあったところであるが、政府として真にやむを得ずとった措置であることは理解できる。」というふうな、御指摘のような事後的な追認の発言をいただいて総括をしていただいたわけでございます。その過程におきまして、極めて異例措置である、したがってこういった事例は極めて好ましくない、今後そうしたものは回避すべきであるという御議論を多々いただいたところでございまして、今後ともそうした方向で私どもとしては対処をしなければならない、このように考えておるわけでございます。
  45. 戸田菊雄

    ○戸田委員 結局、予算編成の行き詰まりで国債もこれ以上ふやせない、あるいは歳入欠陥が出てくる、そういうことで地方自治体に対する補助金の削減もやる、いろいろやってみて、最高に努力はしたけれどもどうにもならぬからということで、これは場当たり的なんですが、そういうことで今回の消費税の値上げということになったと思うんですね。その苦労のほどはわかるのでありますけれども、しかし今回の法律改正にもあるように、とにかく時限立法で一年だ、今回限りだ、今まで何回か、例えば法人の四三%引き上げの問題についても、あるいは国庫補助金の削減にいたしましても、年々時限立法でこうこうだということで約束したことがあるのですけれども、ちょうどその時期にいきますとまた先送りということになりかねない。だからこういう点のないように、この点はひとつはっきり六十一年度限りですと、政務次官、これは明確に御回答いただきたいのですがね。
  46. 熊川次男

    ○熊川政府委員 先生御案内のとおり、税制に関する各層各界からの、ひずみあるいは重圧感に対する御主張があるわけであります。また、ただいまのような先生の幅広い御意見なども踏まえて、御案内のとおり、今税制調査会で抜本的改正についての御研究を仰いでいるわけでありますが、間もなくこの答申が出ますので、それらを参考にさせていただいた上で、特に六十二年度については、そういった整合性のとれたものを考えつつ来年度は検討する運びになるのではないかと理解しております。
  47. 戸田菊雄

    ○戸田委員 これは法律改正で一年限り、今回限り、こうなっているのですから、それでひとつずばりいっていただく。六十二年以降の抜本見直し等に絡めてまた先送りというようなことのないように、この点は厳格に要望しておきたいと思います。  そこで、長岡社長が来ておりまするから、伊藤委員がずっと詳細いろいろとお伺いを立てましたので私は二点お伺いしておきたいのですが、今度の値上げによっておおむね百億本見当販売が減少するであろう、先ほどもこういう御答弁でありました。それに関連しまして、たばこ耕作者の減反はどのくらいか、それから百億本というのですから、そういうものの影響たばこ生産が減産体制に入るのかどうか。そうすると、労働者の条件等に対してもいろいろな影響が出るだろうと思うのですが、その二点についてひとつお考えをお示ししていただきたいと思います。
  48. 長岡實

    長岡参考人 お答え申し上げます。  先ほどもお答え申し上げましたように、今回の増税を受けての値上げによりまして、六十一年度に大体百億本ぐらいたばこの消費が減るであろうというふうに見込まれているわけでございますけれども、それを受けまして、たばこの製造の規模もその程度減らしていかなければいけない。したがいまして、それにつれて、そのたばこ製造に使います原料でございます葉たばこの使用量も減らざるを得ないということは事実でございます。  御指摘の、まず葉たばこの点でございますけれども、今回の値上げがなくても私ども、一年分の過剰在庫を抱えているという、葉たばこの需給関係につきましては非常に厳しい状況にございまして、この点につきまして、私どもといたしましては、毎年開かれます葉たばこ審議会の場において十分に意見の交換を行いながらどう対処するかということをお決めいただいているわけでございます。今回の百億本の減少について一体どのくらいの面積の減反につながるかという点は、そう直接的なものではございませんので、全体の状況の中で一体どの程度の耕作面積が必要とされるかという議論をしていただくつもりではございますけれども、機械的に計算いたしますと、百億本分の原料というのは大体二千ヘクタールぐらいに響く。しかし、これはあくまで機械的な計算でございます。同じように機械的な計算をいたしますと、製造規模が百億本減りますと、製造に従事している従業員の数につきましては約五百人ぐらいという数字が出ますけれども、この点もあくまでも機械的な計算でございまして、私どもといたしましては、あらゆる工夫を凝らし、努力をして、従業員の雇用の安定の問題につきましては、新規事業の開発等も含め考えていかなければならないというふうに思っております。  ただ、先ほどもお答え申しましたように、全体として厳しい環境の中で私どもが足腰の強い企業として生き残っていくためにはやはり国際競争力を身につけなければいけない。そういう点では、合理化も必至でございますし、それから耕作面積につきましても、あるいは葉たばこの生産性にっきましても、いろいろと合理化をお願いせざるを得ないと思いますけれども、これらにつきましては、労働組合とも耕作団体とも前広に十分話し合って、理解を得ながら進めてまいりたいと考えております。
  49. 戸田菊雄

    ○戸田委員 これは社長に要望でございますが、今農家で実際採算のとれる作物は米と葉たばこなんです。これしかない。殊に東北の単作地帯なんかはたばこに依拠している農家家計というものは相当多いのです。そういう点で、再度二千百ヘクタールということになりますと、それぞれ案分して減反ということになっていきましょうから、そういう点は今後の農家経営その他の問題も考えて、ひとつ審議会等で十分慎重な審議をやって対応をとっていただきたい。  それから、おっしゃられるように労働者が大体五百人くらい減産体制で、国鉄じゃないけれども余剰人員ということになると思う、これも私は死活問題だと思うのです。ですから、そういう点は事業拡大その他できるように経営環境ができているわけですから、知恵を出していただいて、そして自己吸収ができるようにひとつ御奮聞いただきたいと思うのです。要望を申し上げまして、ありがとうございました。  次に、住宅減税について若干お伺いをしたいと思うのであります。  今回改正の一つの目玉でございまするが、住宅減税というのをやられました。今回の改正の内容を見ますると、三年間税額控除方式、税額控除額最大で二十万円ですね。三年間で上限がありまして六十万円、こういうことになっている。民間金融機関から借りた場合、住宅ローン残高の一%をとにかくおまけしましょう。住宅金融公庫融資など公的ローンですね、この場合は残高の〇・五%、適用限度残額は二千万円、所得制限が現行年間八百万円であったものが一千万。ただし、対象は建物だけだ、土地は含まない、こういうことになる。そしてなおかつ、建物が建築後十年までの中古住宅でもよろしい、こういう状況になっております。  そこで、今住宅ローンのサラリーマンの家計を浸食している内容はどのくらいあると思っていますか、おわかりでしょうか。
  50. 水野勝

    ○水野政府委員 家計調査の面から見ましたところのローンの返済状況でございますが、全国勤労者世帯で見ますと三一%くらいの世帯がローン返済世帯になっておるわけでございます。  このローン返済世帯におきますところの返済額の可処分所得に対する割合といたしましては、最近年の五十九年分で見ますと一四%程度となっておるわけでございます。
  51. 戸田菊雄

    ○戸田委員 これは国税庁資料で私拾い上げたのですが、「各税の見積り方法 一般会計」全部の歳入見積もりがあるのです。これからずっと探ってみたのですが、これによりますと、国民一人当たりで貯蓄額が大体二百五万円、五十九年三月末ですね。最多層は百万円以下なんです。一般会計の見積もりによる給与所得関係納税人員三千七百五十四万人、給与総額が一人当たり三百九十五万円、課税所得見込み額一人当たり百六十九万円、こうなっているのですね。これは国税庁の今回の改正要綱に盛られている内容です。三千七百五十四万人の中で、百万円以下の貯蓄額というのが最多層である、こういう状況ですね。それから住宅ローンとか保険料とか強制的なものが貯蓄の五五%を占めています。  それで、今主税局長は、サラリーマンの世帯で住宅ローンがどのくらいかというと三一%と言いましたが、私が拾い上げた数字では四〇%になっている。これは可処分所得に対して一四%ということを主税局長はおっしゃられた。私の計算ですと毎月家計の一五%。やや低く押さえられている、こういう状況なんですね。  それで、昭和十一年九月を基準にして卸売物価は何倍になったか見てみましたら七百倍、消費者物価は千五百倍、給与は二千倍、住宅地が一万二千二百倍です。殊に東京とか大都市部は目下高騰中、だからこれはもっと上がりましょう。一番多いのですね。そうすると、マイホーム主義で家と土地を確保していくということになりますると大変な負担なんです。こういう問題について、現在一定の減税をやったのですから、その点は賛成です。賛成ですが、中身は先ほどおっしゃったとおりで、スズメの涙程度ということになるのでしょうね。だからこれからの内需拡大、景気浮揚その他を考えますと、社会党も住宅を起点にしてひとつやっていこう、政府も大体そういうことで考えている、この点では一致していると思うのです。ですから思い切った五年計画くらいの減税対応というものをやってみてはどうかと考えるのですが、その辺の見解と、建設省おいでになっていますね、六十一年度の各住宅の建設費、公営住宅その他いろいろありますが、どのくらいかちょっと種目別に説明をしてください。
  52. 水野勝

    ○水野政府委員 今年度におきますところの住宅取得促進税制の創設によります減税額と申しますか、減収額は三百七十億円でございますが、これは従来の住宅取得控除制度の上に加算される金額でございまして、根っこから申しますと四百数十億円になる。これが三年間でございますので、六十一年に取得される住宅につきましての三年間の累計でございますと千三百億円くらいの減税になるわけでございます。現在の財政状況からいたしますと、私どもとしては、これはぎりぎりの措置ではないかと考えるわけでございます。  確かに、アメリカ、ドイツ、こういったところではそれぞれかなりな措置があるというふうに言われておるわけでございますが、御承知のようにアメリカの場合におきましては、住宅ローンの利子でありましょうとも、一般の消費者ローンの利子でありましょうとも、事業用、非事業用にかかわらず利子はすべて所得控除するという、そもそもの所得税制がそういうシステムになっておるわけでございますので、制度自体として比較することが単純にできるかどうか。またドイツの場合におきましては、これはそもそも持ち家につきましては帰属家賃を所得課税の範疇に入れるということでございますので、そういたしますとそれに伴いますところの利子でございますとか固定資産税的な税でございますとか、そういったものはすべて控除するということにも相なるわけでございます。したがいまして、租税特別措置としてこうしたものと単純に比較できるかどうかという点は多々問題があるというふうに考えておるわけでございます。  ただ、住宅対策という点につきましては、今後におきますところの租税政策の中でも重要な地位を占めるものであると私どもは考えておるわけでございまして、そういった点からことし住宅取得促進税制といったものを創設することにいたしまして御提案申し上げておるわけでございますし、また、先般予算委員会におきまして総理から、なお抜本改革の中でもさらに検討はするという御答弁がなされておるわけでございます。また、先般三月四日の与野党幹事長・書記長会談での合意事項におきましてもこの点は取り上げられておるわけでございまして、こうした点につきましては私どもといたしましても十分配意してまいりたい、このように考えておるわけでございます。
  53. 渡辺尚

    ○渡辺(尚)政府委員 これはまだ御審議いただいておるところでございますけれども、六十一年度の予算ベースでの数字を申し上げますと、国庫補助住宅、これは公営住宅が主でございますけれども五万四千戸でございます。これは対前年で同じでございます。それから公庫住宅が五十一万戸、対前年で二万戸の増でございます。公団住宅は二万五千戸で一千戸の減でございます。その他を含めまして公的施策住宅といたしましては六十一万五千百三十戸、ちょっと細かい数字でございますが、前年に比べて約二万戸、一万八千九百四十戸増の計画を持っておるわけでございます。
  54. 戸田菊雄

    ○戸田委員 今主税局長が旧制度のものを累計として述べられましたけれども、今回は旧制度を廃止をして新制度、住宅促進減税、こういうように制度を改めましたね。だから旧来のものはそれぞれ引き継いで新制度でこれからはやっていく、こういうことになるのだと思うのです。そんな理解でいいですね。
  55. 水野勝

    ○水野政府委員 六十年中までに取得された方につきましては、若干の経過措置はございますが、六十年分につきましての制度を適用すればその後三年間旧制度が適用になるということでございます。  それから、六十一年からの取得につきましては住宅取得促進税制が三年間にわたって適用になるということでございまして、先ほど申し上げた三百億なり三百七十億円というのは、従来からございました住宅取得控除制度によりますところの減収額に上積みされることし改正によりますところのネットの減税額である、このように申し上げたわけでございます。
  56. 戸田菊雄

    ○戸田委員 そこで、今建設省の住宅局長が説明になられましたように、ことし住宅が五兆八千六百億、投資額としては最大だと思うのです。それで伸び率は大体一〇・七%、まさに著増ということになりましょう。今おっしゃられたような住宅建設をやっていくわけでありますけれども、これは所定どおりいきますか、この程度の減税から見た場合。
  57. 渡辺尚

    ○渡辺(尚)政府委員 ちょうど六十年度で第四期の五カ年計画が終わりまして、実は本日閣議決定がなされまして第五期の五カ年計画になっておるわけでございます。ここでは、御案内かとも思いますが全体で六百七十万戸という数を予定しておりまして、これを大体統計ベースに直しまして年間で単純に平均いたしますと百二十九万戸くらいになるわけでございます。これに対して、六十年度はまだ出ておりませんけれども、六十暦年では百二十三万六千戸という実績がございます。それで、そういうべースの上に先ほど先生からもお示しのございましたこういう住宅減税をやる、あるいはさらに金融公庫等のいろいろな制度改善を今お願いしておるわけでございます。こういったものもあわせて、この百二十九万戸といいますか、そういう目標を達成できるように努力していきたいというふうに考えておるわけでございます。
  58. 戸田菊雄

    ○戸田委員 結果的にはやはり土地政策だと私は考えているのです。  今、東京都内でサラリーマンが土地を買って家なんというわけにはとてもいきませんね。それから仙台だってそうです。今仙台市内の土地をというと、駅前は大体坪当たり五、六百万なのです。そういう状況ですから仙台市内だってどうにもならぬ。結局郊外に出ていく、こういう格好になる。これは大阪でも名古屋でも横浜でも都市部は大体皆同じだ。そういうところに居住する人は家になんかありつけない。これはやはり土地政策だと思う。だから建設省考えてもらいたいのは、国や地方公共団体がそういう土地については貸し与えて、建屋だけで済むというようなことになれば、私はもう少しマイホームというものが伸展をするのではないだろうかと考えます。  だって、各税見積もりの中で、給与所得者一人当たり三百九十五万ですから、仮にベアがあって四百万としても、生涯賃金、四十年勤めて一億六千万ですよ。その一億六千万から社会保険料、税金その他を引いて大体三六・一%、そうして教育費をということになると、これは住宅に回せる余裕はほとんど出てこない。だから、そういう面で我々も検討しなければいけませんが、土地政策を抜本的に考えていきませんと、この計画はやってみたけれどもなかなか思うようにいかない。あるいは無理して建てたけれども、サラ金地獄みたいな格好で返済不能の人が今四〇%を超している。そういう人は、せっかく建てた家と土地を手放してしまって、そうしてまた間借り生活ですよ。そういうのが現実ですからね。これは所管省としては真剣に検討していただきたいと思うのです。これは要望しておきます。  そこで主税局長、一方でそういう住宅減税をやっているのですけれども、今回の改正全体をいろいろ見ますと、圧縮記帳制度で初年度大体百五十二億円の増収、こういうことですね。圧縮記帳制度というのはどういうものかというと、企業が特定の政策目的に沿って土地、建物などを買いかえする際、今までの圧縮率は差益割合同率の十割としていた、これを二割削減して八割だ、こういうのですね。そして結果的に百五十二億円の増収を図る、こういうのです。片方では住宅減税というものをやっておって、今度は圧縮記帳制度で、それと関連する別な面は増収態勢をとる。私は極めて総合性がないと思うのですね。殊に住宅減税と含めて住宅取得資金贈与制度の拡充ということを一方でやっている。これも住宅減税の一つですからね。そういうことを制度としては今回やって住宅減税をやり、そうしてほかに融資の拡充といったものもやって、そうして何とか減税に値するそういう本体の制度を改正しようというときに、片方では増収態勢をとる、これは非常に総合性がないと思うのですね。ですから、一人企業ですか、大体そういうものが該当者だと私は思うのですが、そういう面でもぜひ総合的な判断をしていただいて、どうでしょう、こういうものはやめていただいたら。
  59. 水野勝

    ○水野政府委員 御指摘のように、今回圧縮記帳の特例についてその縮減を御提案申し上げておるわけでございます。この制度は御承知のように一定の地域から一定の地域に土地を譲渡されてまた再取得されるという場合のその譲渡益につきまして、従来一定の要件に該当するものであればそれを一〇〇%課税繰り延べ――いずれにしてもそれは次にお売りになったときには課税されるわけでございますが、その最初の時点では全額課税繰り延べをするという措置であるわけでございますが、この点につきましては金額的にはかなり大きなものもございます。  それからまた、とにかくその企業といたしましては、一度それを譲渡されてその収入を現実に手にするわけでございますから、そういう場合にこれを一〇〇%課税繰り延べするというのは現下の厳しい財政事情からいたしますといかがか。でございますので、その二割だけを今回圧縮の対象から外さしていただくということでございまして、引き続き八割は繰り延べさしていただく、その八割につきましてもいずれ次の譲渡のときには課税になるわけでございますので、二割だけはその譲渡のときに御負担をお願いしたい、こういうことでございます。  また、これは個人の企業には適用はいたしませんで、法人に限って適用することといたしておりますし、また、これは大法人の方に大体六割から七割程度の対象、金額的に見ましてそういった分布になっておりますので、中小法人に御負担が集中的にかかるということではないのではないかというふうに考えております。現在の財政事情からいたしまして、とにかくこの時点で現金を手にされたときに二割分だけはお願いしたいというのが私どもの気持ちでございまして、御理解を賜ればと思うわけでございます。
  60. 戸田菊雄

    ○戸田委員 一人企業というのは誤りですから、私、これは撤回しておきますが、今おっしゃるとおり法人そのものだ。  そこでもう一つは、例えば民活投資減税というのを今回やろうとしておりますね。これはどういうのかというと、対象施設、試験研究施設、電気通信技術開発施設あるいはニューメディアコミュニティー施設、人材育成施設、情報センター、国際見本市会場、あるいはまたポートターミナル、港湾業務ビル、各般に及んでいるわけです。私は、これはなかなかうまくいかないと思うのですが、一応そういうことで考えられておる。あるいは、通産省にまいりますと、研究開発、情報基盤の施設であるとかあるいは国際見本市会場等々、郵政省はテレコムプラザの建設とか、各省のアイデアはいろいろいっぱいある。しかし、いずれにしてもこれらに対して最終的には投資減税として二千二百六十億円見当、これを償却制度としておまけをいたしますということになっておる。  例えば、この旧制度、これは廃止したわけですが、基本的には今回の制度は同じですが、そういうことからきて初年度で三〇%特別償却と取得価額の七%税額控除、二〇%を限度といたします、この選択を適用させますよ、こういうことになっていますね。確かにテクノポリスあるいはハード、ソフト化、これからもしょせん貿易立国ですから、こういう機器の研究開発、私も必要だと思います。だから相当な金もかかる。それはよくわかりますが、同時に、今主税局長が言われたように、それだったら千三百億という旧制度を含めての住宅減税、これをせめて二千億見当の減税をやってみたらどうか、こう考えるのです。住宅政策、決して減税の部面ばかりというわけじゃないですけれども、一面では所得その他の関係考えていかなくちゃいけませんが、いずれにしても片方でこのくらい重要な問題を取り扱う、衣食住、三大要素一つ。最近は交通も入っていると言われますが、その一つですからね。この辺について諸外国は、西ドイツにいたしましてもフランスにしても、戦後じかにこういう問題に取り組んだ、そのことが今日の経済繁栄につながった、こういうことのようですから、ひとつ遅まきだけれどもそういう部面も再度検討してはどうかという気がするのですが、どうでしょう。
  61. 水野勝

    ○水野政府委員 御指摘のように、確かに設備投資関連の減税規模は、エネルギーの基盤高度化投資促進税制あるいは中小企業のメカトロ税制、こういったものを合わせますと千五百億程度のものになることはなるわけでございますが、これらはそれぞれ、中小企業の近代化と申しますか、ハイテク化と申しますか、こういったものに対する対策あるいはエネルギー基盤の高度化に対しますところの税制でございます。それぞれ必要なものであるわけでございますが、今回、先ほど申し上げました住宅取得促進税制は、六十一年、一年で取得されたものにつきまして累計しますと千三百億程度になるわけでございますので、若干これよりは少ないかもしれませんが、そうした投資促進税制にほぼ肩を並べられる程度のものの規模にはなっておるのではなかろうかと思うわけでございます。  住宅対策の重要性につきましては私ども、なおいろいろな方面から御指摘があり、十分理解はいたしまして、今後とも検討はもちろん続けてまいりたいと思うわけでございますが、先ほど申し上げたようなもろもろの税制の基本的な諸問題もございますので、そういった点を含めまして勉強をしてまいりたい、そう思っておるわけでございます。
  62. 戸田菊雄

    ○戸田委員 それからもう一つは、このローンの返済ですね。これは銀行局、きょう来ておりましょうか。――来ておりませんか。じゃ、ちょっとあれですが、仮に二千万借りますね、土地と家で。そうしますと、例えば住宅部分借入残高、六十一年末で銀行の場合六百万、金利が七・六八%、二十五年返済、それから公庫の場合で四百万円、金利五・五%、三十五年返済。今回はそれらに対しても若干控除額を引き上げまして減税措置をとりましたが、しかしそれにしても、仮に二千万借りますと、七・六八で計算すると――これは計算上七%にしてもいいです。そうしますと、おおむね一千四百万は利子ですよ。そして返済方法は銀行の計算方式をとりますと、二十五年ですとおおむね十二年ぐらいは利子返還だけです。十二年以降、中段以降になって初めてようやく元金支払いに入る。これはもう少し返済方法について、金利計算その他について検討する必要があるんじゃないだろうか。当初から均等償還、元金何ぼ、利子何ぼ、そして二十五年間追っていく、そういうことになりますと、元金が入った分だけ利子は減っていくわけですから、そういう方式をとっていく必要があるんじゃないだろうかという気がいたしますけれども、これは主税局長どう考えますか。
  63. 水野勝

    ○水野政府委員 御趣旨はわかりますが、私どもちょっと専門外でございますので、それにつきまして申し上げるのはいかがかと思いますので、御勘弁をいただければと思います。
  64. 渡辺尚

    ○渡辺(尚)政府委員 全般的なお答えを申し上げるわけにまいりませんけれども、住宅ローンにつきまして公庫の場合ちょっと考えてみたいと思いますが、現在一般的には元金均等とそれから元利均等と二つあるわけでございます。それで、もうこの辺は御説明するまでもないと思いますが、当初公庫の場合には元金均等をとっておりました。しかし、利用者の方々が初期負担を軽減してくれという要望が非常に強いということがございまして、昭和四十九年度から元利均等方式に変えたわけでございます。それで、お示しのようなことが本当にできるかどうかというのはちょっと私もわかりませんけれども、元本を先にかなり多く返すということになりますと、どうしても利子は払わなくてはいけませんから、現在の元利均等よりもかなり初期負担が高くなるということで、必ずしも利用者のニーズに合うのかどうか、疑問があるのではないかなというふうに考えておるわけでございます。
  65. 戸田菊雄

    ○戸田委員 利用者の希望もあって、それで二十五年なら二十五年の均等償還で結構でございます、そうすると元金は何ぼで、利子は総計何ぼになりますよ、それを最初に割っちゃってそれでやっているわけですよ。そうじゃなくて、元金も丸々半々ということではなくても、三割くらい入れていく、あるいは五割くらいにしていく、七割にしていくというようなことになっていけば、どうしたって銀行計算としては元金が入った分は総額が減っていくのですから、利息はずっと下がっていくことになる。二千万借りて、二十五年ですけれども、仮に千四百万の利子を支払わなければならない、これは暴利に近いと思うのです。だから、特別融資体制でこういう問題は検討していただきたいと思うし、所轄の建設省もこの辺の返済方式については十分検討していただきたい。時間がありませんから先に進みたいと思いますが、もし見解があればどうぞ。
  66. 渡辺尚

    ○渡辺(尚)政府委員 現実にそういう形が可能かどうか、ちょっと頭に浮かびませんけれども、現実の問題といたしましては、もしある程度お金をためて元金を減らしたいという方につきましては繰り上げ償還の方式があるわけでございますので、そういった御活用もお考えいただいたらどうかなというふうに考えます。
  67. 戸田菊雄

    ○戸田委員 そこで、非常に着目のいい一つの税額控除、これを今回やっておられるのですね、主税局長。例えば六十一年分、これを前の銀行六百万、公庫四百万でいきますと、銀行が残高が一%ですから大体六万円、六十二年分銀行が五万九千百五十八円、六十三年分銀行が五万八千二百五十円。あるいは公庫分に対しても、これは残高〇・五%でいきますと、二万円、一万九千八百二十二円あるいは一万九千六百十九円等々、ずっと減税になっていくのです。結局三年間で控除総額二十三万六千八百四十九円になるのですよ。そういう方法があるのですから、この返済方法についても私はできない相談じゃないだろうと思うのです。だから、これはひとつ後ほど当該大臣等にも要請していきたいと思いますが、そういう点を十分配慮していただきたい、こういうふうに考えるわけでございます。  何か本会議関係で若干時間を後回しということですから、これで終わりたいと思いますが、ただ政務次官、総体的には千三百億円となるかもしれませんが、これではやはりスズメの涙程度になるんじゃないか。先ほど建設省局長が言ったように相当数の建設をもくろんでいるわけですからね。大体五十一万戸、昨年より二万戸増ですよね。だからそういうものが果たして計画どおり実行されるかどうかということが問題です。  それから、一軒の平家建てを建てますとおおむね二万くらいの関連業者に影響してくる。かぎをつくったり家具をつくったり、あるいはセメントを塗ったりということで、関連業者がそのくらいあるということです。だから一人大工やそういった皆さんも仕事にありつけるということになるわけですから、そういうことが内需拡大、景気浮揚に相当寄与することは当然だろうと思いますから、そういう面でぜひ六十二年度の抜本見直しについても、この減税対応というのは十分御検討していただくように切にお願いしておきたいと思います。
  68. 熊川次男

    ○熊川政府委員 先生御指摘のとおり最近における住宅促進の要請は内需振興の面からも極めて高いわけでありますが、多くの先生方の当委員会におけるところの御主張なども十分参酌させていただいて、今回の制度は税額からの控除という非常に効果の強い、効率的なものである点などもあわせ考え、また新しくできたという象徴的な機能というか間接効果、心理的な効果というようなものも非常に大きいのではないかと思っておりますので、御理解を仰ぎ、これを見守りながら、また、先生の御意見なども十分酌み取らせていただきたいと思っております。
  69. 戸田菊雄

    ○戸田委員 それでは、これで午前中は終わります。ありがとうございました。
  70. 小泉純一郎

    小泉委員長 本会議散会後直ちに再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午前十一時五十五分休憩      ――――◇―――――     午後二時三十分開講
  71. 小泉純一郎

    小泉委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。米沢隆君。
  72. 米沢隆

    ○米沢委員 私は、ただいま提案されております租税特別措置法の一部を改正する法律案に関連いたしまして、特に中小企業の皆さんにとって大きな影響が出るであろうと思われる問題、すなわち特定資産の買いかえの場合の課税の特例の縮減措置の問題並びに欠損金の繰越控除の一部停止措置の問題、それから最近公然と議論がされ始めました赤字法人課税との関連性、そして将来の赤字法人課税の行方等々に絞りまして、当局の見解をただしてみたいと思います。  ところで、昭和六十一年度の税制改正は、国税関係をとってみましても増減差し引き初年度で三千四百十億円、平年度で千五百四十億円にも上る増税でございます。この中で今年度の特色は、実質赤字法人課税ではないかと言われる法人税の欠損金の繰越控除制度の一部停止措置で二千二百三十億円の増収を図るという、全体の増収の約六五%をこの措置でたたき出すという突出ぶりでございます。これに特定資産の買いかえの場合の課税の特例の縮減措置で三百四十億円の増収を図ろうというわけでありますから、この二つの措置で実に七五%を占めている、こういう数字になっております。そして、この上に本来ならば今年度で終わる予定でありました法人税率の特例をまた延長することになっておるわけでありますから、実質的にこの分を加えますとことしの増税分は初年度で八千億円にもなろうということでございます。  確かに政府は「増税なき財政再建」という表看板をかけておったはずでございますが、六十一年度税制改正で約八千億円の増収という問題は、この「増税なき財政再建」という看板とはどういう関係があるのか、まず国民にわかりやすい言葉で御説明いただきたい。
  73. 竹下登

    竹下国務大臣 国民皆さん方にわかりやすいという言葉になりますと、私が適当であるかどうかわかりませんが、要するに私どもは、「増税なき財政再建」ということはいわば退路を遮断をして歳出削減に取り組めという大きなかんぬきであるというふうに心得て今日までまいりました。そうして一方臨調のおおよその考え方というのは、国民負担率を大きく変えるような新たなる税制上の措置をとってはならぬということがいわば「増税なき財政再建」というものの一応定着しつつある定義ではなかろうかというふうに考えるわけであります。そうなりますと、言ってみれば毎年行っております増収措置の範囲内のものではなかろうかというふうに考えます。  ただ、今の御意見にもございましたように、法人税率の期限が来ますものをさらに抜本策が出るまでの間これを延長するという措置をとらしていただきましたのは、現在の厳しい財政事情と、いずれ抜本改正が行われるであろうという前提の上に立って一年延長という措置をとらしていただいたという次第であります。
  74. 米沢隆

    ○米沢委員 大臣は「増税」と「増収」とよく使い分けるのでございますが、「増税」と「増収」とどう違うのでしょうか。
  75. 竹下登

    竹下国務大臣 「増収」と私の頭の中で整理しておりますのは、新たなる税目ということでなくて、現行税制の中の手直しによって行われるものあるいは自然増収等を含めて「増収」、これは余り学問的ではございませんけれども、私の頭の中の整理はそのようになっております。
  76. 米沢隆

    ○米沢委員 奇妙きてれつな解釈だと私は思いますが、財政が大変厳しい折からいろいろと「増収」された、その中身は手直しであったとしても、そういうのは客観的に言うならば「増税」の措置だというのが国民にわかりやすい説明ではないか、私はそう思います。そういう意味で、「増税なき財政再建」という表看板はもう完全に死に看板になってしまった、こう言えるのではないか。そのあたりを認めるか認めないかは、それはいろいろと政治姿勢の問題等もありましょうが、私はそういう意味で、「増税なき財政再建」という表看板を掲げながら常に、「増収」という名前の「増税」をやってきたというその政治姿勢は厳しく問われねばならない、そういうふうに考えます。  この問題はまた後で議論するチャンスがあると思いますが、次に、先ほど冒頭申し上げましたように、今回の税制改正の中で、いわゆる中小企業の皆さんにとって極めて深刻な影響を与えるであろうと思われる特定資産の買いかえの場合の課税の特例の縮減措置、欠損金の繰越控除の一部停止措置、これで先ほど申しましたように七五%も増収されておるのですね。そういう意味ではこの二つの措置が一体なぜねらい撃ちをされたのか。特に、これに加えてたばこ消費税の引き上げ措置というものを考えますと、弱くて取りやすいところから取るという姿勢に見えて仕方がないのでありますが、何かこの二つの措置をねらい撃ちをし、たばこ消費税等が浮上してきた――たばこについては後ほどまた議論したいと思いますが、特にこの二つの措置がねらい撃ちされた何か特別の理由か必然性があったのでしょうか、その点を明快にお答えいただきたい。そしてそれを含めて今年度の税制改正をまとめるに際しましての基本的な考え方を簡単に御説明いただきたいと思います。
  77. 水野勝

    ○水野政府委員 昭和六十一年度税制改正に当たりましては、昭和六十年の九月、去年の九月に総理から抜本的な税制改革につきましての諮問をいいただき、その作業を続けている中途の段階でございました。  そこで、昭和六十一年度改正の基本的な考え方としては、原則としては現行税制枠組みは動かさないで対処するのが適当ではないかということを基本的な考え方とされたわけでございます。しかしながら、他面、厳しい財政事情のもとでございますので、昭和六十一年度におきましても、税負担の公平化、適正化を推進する必要があり、それとともに、抜本的見直しの妨げとならない範囲内においては何らかの増収措置を講ずることもやむを得ないのではないか、こうした考え方がまた二番目にあったわけでございます。  そうした考え方を背景として御指摘のようなもろもろの措置が講ぜられたわけでございますが、いずれにいたしましても抜本改革を控えておりますので、基本的な枠を動かさない、そういう大きな制約のもとでございますので、個別的にはやや異例なと申しますか、暫定的なと申しますか、そういったものも少なからず取り上げられておるというのが率直な姿ではないかと思うわけでございます。
  78. 米沢隆

    ○米沢委員 今の御答弁では、先ほど指摘をいたしました二つの措置が特段ねらわれておる理由を説明することにはならない、そう思います。特別にこの二つの措置がねらわれた理由、それから増収措置としても検討の過程ではいろいろあったはずですね、しかし、最終的にはここに落ちついたという理由は一体何ですか、必然性はあったのですか、そのことを聞きたいのです。
  79. 水野勝

    ○水野政府委員 極力基本的な枠組みは動かさないということでございまして、制度そのものを基本的に動かして増収措置を図るということは避けたいということであったわけでございます。  具体的に御指摘の繰り越し欠損の問題につきましては、五年間は繰り越せるという基本的な枠組みはこの際は動かさない、しかし、その年度が黒字である場合には直近一年の分につきましては一時停止させていただくということでございます。その後におきましての欠損の繰り越しは認められるわけでございますので、企業の負担の全体的なものはできるだけ動かさないようにしよう、ただ、一年間の停止だけはお願いしようということでございまして、ネットとしての御負担増につながるような基本的な変更は加えない、そういう意味での改正の方向であったということでございます。  それから、買いかえの特例の縮減につきましても、買いかえの特例は、一定の場合には譲渡益について一〇〇%課税の繰り延べを認めるというものでございますが、その繰越分を一〇〇%でなくて八〇%分だけに縮減をさせていただければということでございます。課税の繰り延べという枠組みは残しておりますが、現下の厳しい財政事情のもとで二割分はその譲渡の時点でまずお払いいただきたい。いずれにしても、中長期的に見れば法人としての全体の譲渡益について課税をお願いするわけですが、その二割分だけは早めて御負担をお願いしたいということで、これも基本的な枠組みはできるだけ動かさないようにしつつ、現下の厳しい財政事情のもとで増収を図らせていただきたいということからこうしたことをお願いできたらということで御提案を申し上げているところでございます。
  80. 米沢隆

    ○米沢委員 二つの措置についてはもう既に説明は聞いておりますから、今の説明がなくても基本的な枠組みを変えないで何とか増収措置はないかということで苦心された、これはわかります。しかし、なぜこの二つになったのか、その他に枠組みを崩さずにまだやれる増収措置はなかったのか、そのことを私は聞いておるのです。なぜここに落ちついたのか。改正の内容が枠組みを崩さない範囲での改正であるということはわかります。私はその説明を求めておるのではありません。
  81. 水野勝

    ○水野政府委員 「増税なき財政再建」の期間中におきます税制改正といたしましては、その基本的理念に極力抵触しないような枠内での増収措置はある程度は講じさせていただきたいということで、もちろん検討段階におきましてはもろもろの増収措置が取り上げられたわけでございます。しかし、いずれの点につきましても抜本的な見直しのところに関係してくるということで、枠組みに触れないという意味での改正にやや問題を残すのではないかというところから、各種の改正の手段につきましてはこの際は見送って、この二つと申しますか、そうしたところにお願いをしたということでございます。
  82. 米沢隆

    ○米沢委員 苦しい答弁のようでありますが、税務当局そのものが、いろいろな政治的な圧力等もあったのでしょうけれども、最終的には取りやすいところから取る、弱い者から取り上げる、そういう手段を選ばざるを得なかったという告白をされておるように私には聞こえるのです。答弁は結構でございます。  各論に入ります。  まず、法人の特定の資産の買いかえの場合の課税の特例の縮減措置がとられた考え方等については、単なる増収措置である、増収をお願いせざるを得なかったのだというふうにとったのでございますが、この課税の特例措置そのものにはそれなりに政策の意図があったわけですね。その意図されておる政策効果については全然考慮する必要がないというふうな判断に立たれたのか、あるいは縮減に値するような客観情勢が出てきたという判断の上に立ってこのような措置がなされたのか、その点を明快に答えてほしい。
  83. 水野勝

    ○水野政府委員 特定資産の買いかえの圧縮記帳の特例は、現在におきましても相当の政策的な効果なりを期待できる制度であるというふうには考えておるわけでございます。ただ、一〇〇%繰り延べをいたすか若干のものは残させていただくかということでございまして、半分まで縮減すると政策的な意図といったものもやや減殺されようかと思いますけれども、八割はとにかく現行制度のまま繰り延べを残す、二割程度の縮減をさせていただくということで、方向としては、その政策メリットへの期待を私どもはなおいたしておるところでございます。
  84. 米沢隆

    ○米沢委員 この特定資産の買いかえの場合の課税の特例は、昭和三十六年、租税特別措置法の一部改正法案で創設されたものですね。それからこの適用に当たりまして、土地条件等々無作為にこの特例が適用された結果、ちょっと政策目的から外れる部分もあるのではないか、そういう観点で昭和四十四年に改正がなされております。この改正におきましては、地域制限が設けられたり対象資産の縮減が図られていることは御案内のとおりでございます。結果的には、政策効果という点におきまして国土政策あるいは土地政策を取り入れたといいましょうか、そのあたりを重視した改正であったように聞いておるわけです。  それからの改正はありませんね。期限が延長されただけですね。
  85. 水野勝

    ○水野政府委員 御指摘のとおりでございます。  昭和三十年代にオリンピックその他もろもろのプロジェクトに関連しまして土地問題が大きくなってまいりました際に、土地を売って土地を買う、これは当初は無条件に買いかえの圧縮記帳といったものを適用しておったわけでございます。しかし、無条件と申しますか無目的的にこういう制度を認めるということは、かえって土地の買いあさりを奨励するような点もあるのではないかということから、御指摘のように昭和四十四年の改正におきまして、特定の政策目的に合致する場合にこの特例を適用するというふうにいたしたわけでございます。その後、もろもろの項目につきまして、あるものは追加され、あるものは若干の手直しがされというふうにはなってまいっておりますが、基本的な枠組みとしては昭和四十四年以来のものが続いているということでございます。
  86. 米沢隆

    ○米沢委員 今御答弁いただきましたように、四十四年の改正によりまして、新しい事業資産の買いかえの課税の特例措置はかなり厳しく制限的になったと言えると思います。しかし、今回の縮減措置が、特別措置の整理合理化という名目のもとに単なる財源探しの一環として行われることは、この制度ができ上がった趣旨からいたしましても、四十四年に改正されたときの趣旨からいたしましても、また、この制度が目的といたします土地政策、国土政策の重要性が大きくなることはあっても小さくなることはないという現状において、余りにも安易で便宜的に過ぎるという感想を持たざるを得ないのでございます。  それは二〇%縮減されただけであるから政策効果については従来とそう変わらないというような御判断があったようでございますが、そういうのは余りにも――これは今からやってみなければわからぬことですね。縮減措置がとられた後、もし、おれはもうだめだ、協力したくない、できない、こんな議論になったら一体どうするのですか。政策目的を実現するために大蔵省は何か担保でもしていただけるのですか。
  87. 水野勝

    ○水野政府委員 御指摘のように、土地税制につきましては昭和四十四年にかなり基本的な改正が行われ、現在に至っておるわけでございます。その際に、こうした事業用資産の買いかえも整備されたわけでございますが、また、個人所得課税につきましても、もろもろの買いかえあるいは特別控除、そういったものの枠組みができたわけでございます。その後、高度成長期やオイルショック等を経まして現在に至っている段階で見ますと、土地の譲渡益といったものは総体としては十数兆円に達するわけでございますけれども、そうした買いかえの特例、その他もろもろの制度の適用の結果といたしまして、課税対象になっている部分というのはかなり少ないわけでございます。そうした場合に、確かに土地といったものにつきましては、それが買いかえられていく場合に、その時点におきまして課税を求めていいのかどうかという基本的な性格論もあるわけでございますが、巨額な譲渡益があり、それのかなりな部分が課税外の世界に置かれているということは、現在の財政事情からすると若干いかがかという問題があるわけでございます。  ただし今回におきましては、個人のそうした譲渡益の繰り延べの点につきましてはとりあえず触れないこととして、法人につきましてもやはり一兆円近いこうした繰り延べ額があるわけでございますので、現在の財政事情等にかんがみまして若干の縮減をお願いできたらということで御提案を申し上げているわけでございます。
  88. 米沢隆

    ○米沢委員 二〇%くらいの縮減措置だから、財政厳しき折からそれぐらいはいただこう、それによっていわゆる混乱は生じない、こういうような判断だと言っていいですね。
  89. 水野勝

    ○水野政府委員 八割の繰り延べを残しておりますので、政策的効果はそれなりになお発揮されるものと考えておるわけでございます。
  90. 米沢隆

    ○米沢委員 この縮減措置が動き出してからの問題ですから、お互いにそれは予測はできませんが、少なくとも土地政策、国土政策の観点からは、この政策減税みたいなものは、繰り延べ措置みたいなものはかなり大きく働いておったと言っても過言ではないと私は思います。そういう意味で、こういう縮減措置がとられ、法人の皆さん方負担をお願いして、そして結果的にこの政策意図が混乱するようなことがあっては大変なことになるのじゃないのかな、私はこう思います。国土庁来ておられますか。その点について何か配慮でもありますか。
  91. 工藤尚武

    ○工藤説明員 先生おっしゃいますように、国土の均衡ある発展を図ることは国土政策の基本でございまして、そのため、過疎地域に新規企業の立地の促進を図るということは非常に重要であると考えております。過疎地域や低開発地域におきます事業用資産の買いかえ特例措置は、このための重要な柱でありまして、今後とも非常に重要な役割を果たすと考えております。  今回の措置によりまして繰り延べの二〇%の縮減が行われることは、その限りでメリットが減少するわけでございますけれども、今回の改正がこの制度全体に一律に行われたということ、それから現在の厳しい財政状況考えますと、ある程度やむを得ないではないかというふうに考えておる次第でございます。
  92. 米沢隆

    ○米沢委員 国土庁のお役人がそれぐらいの程度の感覚だったら、本当に国土政策には問題がありますね。  次に、青色申告事業年度に生じた欠損金の繰越控除制度について、直近一年間に生じた欠損金に限り適用を停止する。この措置をとられるようになったお考えは、先ほど来増収措置の一環だ、増収のみのためのこのような措置だ、こういうふうに考えていいですか。
  93. 水野勝

    ○水野政府委員 当面の増収措置ということでお願いをしたというのが主たる考え方でございますが、従来から赤字法人課税の問題もまたその背景としてはあったということは言えるかと思います。ただし、この赤字法人課税との関連について言えば、今回の欠損繰越金の一時停止措置はその年度といたしましては黒字の法人につきましての措置であるということから、そういう意味からいたしますと、赤字法人課税問題ということとは直接の関連はない。しかし、その背景としてはそういう点もあったということは言えようかと思います。
  94. 米沢隆

    ○米沢委員 後段の御答弁については後でゆっくりといろいろと議論をさしてもらいたいと思いますが、私は、このような措置がとられた一つの背景といいましょうか要因に、やはり政府税調の答申があったと思いますね。  この政府税調の答申は、今さら申し上げるまでもなく、「全法人の半数以上が赤字申告を打っている実態及びこれら赤字法人における諸般の経費の支出状況を踏まえ、これら法人についても、実質的に過大な負担を求めることとならないよう配慮しつつ、所要の措置を講ずることも考慮してよい」、この答申の今読み上げた後段の部分が皆さん方のこのような措置をとらせた最大の理由になっておるような感じがするわけでございます。  今、御承知のとおり、政府税調におきまして抜本的な税制の見直しということでいろいろ審議が進んでいますね。審議が進んでおるその最初に総理の方から政府税調にお願いをしたときのお話は、今までの税制に見直しのメスを加えて、「公平、公正、簡素、選択、活力」の理念に基づいて、これから先の望ましい税制あり方を模索してほしい、こういう御依頼の趣旨のお話があったと思います。しかし、私は、そのような観点から言いますと、今政府税調でそのような抜本改正の議論が、先ほど申しましたように五つの理念に基づいてされておるとするならば、目の前のこの六十一年度税制改正だって、少なくともこのような五つの理念が生きるような税制改正であってもらいたい、私はそういう感じがしてなりません。果たしてこのような欠損金の繰越控除制度というのは公平なのか、公正なのかあるいは簡素に当たるのか、選択に当たるのかおるいは活力に当たるのか。何かこれはこの理念に合致した措置ですか。
  95. 水野勝

    ○水野政府委員 御指摘のように、「公平、公正、簡素、活力、選択」、こうした観点からの税制改革につきまして諮問をいただき、現在作業が行われているわけでございます。そうした基本的な改革作業と極力触れないようにしながら作業を進めるのが六十一年度税制改正の基本的な考え方でございましたので、そこにはむしろ五つの原則に極力触れないようにはしながらということでございますが、しかし、大きくはその理念のもとでのものでなければまた基本的な税制改革とそごを来すおそれもあるわけでございます。  そうした意味におきまして、この五つの項目に触れるところのものではないというふうに私ども考えておるわけでございますが、この五つの中であえてどのような項目でということでございますれば、あえて申し上げれば公平、公正な負担をお願いするというところあたりに当たるものではないのかというふうに考えておるわけでございます。
  96. 米沢隆

    ○米沢委員 それは余りにも勝手な解釈だと思うのですが、私は、やはり六十一年度の税制改正も、今抜本改正を行われておる理念に基づいてなされることが本来の趣旨であろうと思う。その意味で、今度のこの欠損金の繰越控除の制度というのは、企業会計の原則からしましても、公平でも公正でもありませんね。簡素でもありません。あるいはまた選択する幅があるか、これもありません。逆に、活力という理念からは、中小企業の活力を失わせる、そういう措置でございまして、私は、この五つの理念に照らして、幾ら強弁をされても、公正、公平あたりが当たるんじゃないかと言われたって、これはごまかしの議論にすぎない、そう断ぜざるを得ないのでございます。  そこで、今回の措置は、赤字法人にも例えば外形課税的な手法ですべて課税するというような措置ではありませんから、赤字法人課税が始まったと言うのも言い過ぎだと思いますし、完全な意味での赤字法人課税と呼ぶにしては正しくないと私も思います。しかしながら、先刻御承知のとおり、当該年度に黒字が出ても、もし前年度の赤字を繰越控除できたならば本来なら課税がなされない場合にも、今回の措置によって課税がなされるということでございまして、これは実質的には赤字体質を持った企業に対して課税をするということにもなるわけですから、言葉をかえれば、丸々本格的な赤字法人課税ではないにせよ実質的には赤字法人課税的なものである、これは大蔵省も認めていただけるわけですね。
  97. 水野勝

    ○水野政府委員 御指摘のように、その年度だけの企業活動の結果としては黒字ではございますが、この制度がなければ前年度、直近の欠損金を控除することによって納税額がゼロとなる、そういうゼロ申告法人が御負担をいただくようになるという意味におきましては、従来の意味での欠損法人と申しますか赤字法人につきまして御負担をお願いをするという点は御指摘のとおりでございますが、やはりその年度としてはその法人の企業活動は黒字であった、こういう法人につきましての問題であるということであります。
  98. 米沢隆

    ○米沢委員 この措置はけしからぬではないかという意見に対しまして、政府は、先ほど申しましたように、税調の答申が最終的な根拠のような議論をずっとされておると私は思います。先ほど読み上げましたこのくだり、一体大蔵省としてはこのくだりをどういうふうに読んだかというのは非常に興味のあることなんですね。一回そのあたりを説明してもらえませんか。
  99. 水野勝

    ○水野政府委員 私どもといたしましては、法人税というのは、法人の純利益と申しますか企業活動によりますところの純剰余に対しまして御負担をお願いをするということでございますので、全くの赤字の法人につきまして法人税の世界で御負担をお願いをするという点につきましては、限界があろうかと思うわけでございます。フランスの立法例のように、赤字法人でございましても一定の金額をお願いをする、しかし、それが翌期以降の本来の法人税納付税額が出てきたらそれでもって相殺をするというような仕組みもその中間には考えられるわけでございますが、こうした考え方と申しますか、仕組みは、やはり法人税につきましての基本的な仕組みの変更になるものでございますので、六十一年度改正としては、こういった方向での解決と申しますか対処の方法はとり得ないところとされたわけでございます。  しかしながら、一方におきまして、純粋に赤字の法人であればそういうことでございますけれども、先ほど先生お読みいただきましたこの答申にもございますように、「諸般の経費の支出状況を踏まえ、」というあたり、これは本来であれば黒字であるべきところもろもろの操作によって赤字になっている、そういう問題も指摘されているのではないかと思いますが、そうした点につきましては、制度的な対処の方法もあり、また、税務調査の執行の面におきまして適切に対処をしていくという問題でもあろうかと思うわけでございます。  そしてもう一つの世界といたしましては、法人全体の五五%が赤字申告と申しますかゼロ申告を行っておられるという実態、これについてどのように考えるかという点から、この点につきましては、その年度としては黒字であれば若干の御負担はいただければというのが今回の改正の御提案でございます。ただ、その欠損金は、その年以降でできないからすべてこれで終わりというわけではございませんで、なお四年間にわたりましての控除の機会はそのまま残されておるというところでございます。     〔委員長退席、中村(正三郎)委員長代     理着席〕
  100. 米沢隆

    ○米沢委員 非常に簡単に、ばっさりと主税局長は切られますけれども、今答弁の中には大変重大なことが含まれておると思うのですね。「全法人の半数以上が赤字申告を行っている実態」、それがあるからこのような措置をするというのはどう考えても理解できませんね。「全法人の半数以上が赤字申告を行っている実態」があるから、この赤字法人が多いということを理由にして欠損金の繰り越しや繰り戻しを停止する理由になるとは到底考えられないのです。これもっと説明してもらいたいですね。何か赤字法人が節税という名前で脱税的なことをほとんどやっておる、そういう実態がもしつかまれておるならば、おっしゃるような意図はわからぬではありませんが、この中には円高不況だとか構造不況業種だとか、一生懸命もがいて頑張ってもどうしても黒字が計上できないというのが大半じゃないですか。節税をうまくやって、黒字だったのを赤字にしておるという法人は、それは疑えば切りがありませんでしょうけれども、そういうことが絶対あるんだ、ほとんどそういう状態にあるんだなんということを税務当局は調査で調べたことでもあるのですか。そういうことを調べもせずに、税務調査等でいろいろと挙がりますから一例はわかりましょうけれども、そんなことをすべてに押し広げて、いかにも赤字法人というのはけしからぬことをやっているんだ、したがって、ことし少々の黒字が出るようなところだったらもらってもいいんだという、そんな議論をされたのじゃかないませんね。これはもう一回説明してほしい。赤字法人が半数以上あるという実態に着目して、だから繰り越しや繰り戻しの停止をするんだというそんな理由をだれにでもわかるように説明してもらいたい。
  101. 水野勝

    ○水野政府委員 法人の企業活動はまさに事業年度を単位として行われるわけでございますので、本来でございますれば、それぞれの事業年度の結果につきまして法人税を御負担願うというのが一方において基本的な考え方としてあろうかと思うわけでございます。しかし、他方におきまして、企業はゴーイングコンサーンでございますので、ある年度におきまして赤、ある年度におきましては黒、そうしたものがある一定の期間は継続企業として活動が行われて、その中で中長期的にその企業収益が判断されるという面もあるわけでござまして、税制といたしましてもその点につきましても配慮をし、年度単位課税という原則にも配慮しつつ、そこは現在の時点では五年というところで繰り越しの範囲が定められているというところでございます。  そこらの点につきまして基本的に今後一体どのように考えていったらいいかという点につきましては、まさに税制の基本的な改革作業の一端になろうかと思いますので、その点につきまして今動かす、五年を四年にするとか六年にするとかという点は六十一年度改正としては適当ではございませんということでございまして、そこで五年という枠組みは残しつつ直近一年だけの分につきましては御負担をお願いしたいというのが繰り返し申し述べているような趣旨でございます。  その背景には五五%の法人がゼロ申告をされておるという点、この点につきましては、第一次ショック、第二次ショックという二回にわたるオイルショックの間におきましてこの赤字法人割合というのがかなり変化をしてまいっております。第一次ショック前は大体三分の一の法人がゼロ申告ということでございました。それが第一次ショック後になりまして五〇%近くになりましたが、その後、若干の低下を示したところ、第二次オイルショックがありまして五〇%を超え、さらにその傾向が少しずつ拡大してきているというのが現状の姿でございます。  企業はゴーイングコンサーンでございますけれども、それが中長期的に赤字が続くというのは企業活動としてはやはり不自然な面もあるわけでございます。その原因には、経費の支出状況もあり、欠損の繰り越しによるものもあろうかと思いますので、やはり本来の事業年度単位課税の観点からすれば、その年度に着目して若干の御負担をお願いをするというのも現下の財政事情からすれば一つ考え方ではないかということで御提案を申し上げておるわけでございます。     〔中村(正三郎)委員長代理退席、堀之     内委員長代理着席〕
  102. 米沢隆

    ○米沢委員 どうも私の質問に端的にお答えになっていただいていないのでございますが、もう先刻御承知のとおり、欠損金の繰り越しの制度とか繰り戻しの制度というのは本質的には税制上の恩恵でも何でもないんですね。さっきおっしゃったように、ゴーイングコンサーンという観点からいたしまして、課税所得の期間計算という人為的な制度によって生じた税額のでこぼこを消して本来あるべき税負担に置きかえる法技術にすぎないはずだ、こういうふうに説明されておりますね。そういう観点からいたしまして、このゴーイングコンサーンという立場からして、各期ごとのでこぼこを消して、本来の税負担あり方考えるという今とられておる措置にさお差して、逆に金を取り上げるためにわざわざ事業年度という制度をぴしっと確立して、そしてその間に黒字だったのだからよこせというこんな議論は、何か逆の議論になっているのじゃありませんか。私が端的にお伺いしたいのは、全法人の半数以上が赤字企業だからこんな措置をとるというその理由がわからないと言っておるんだ。
  103. 水野勝

    ○水野政府委員 先ほどの先生の御指摘のように、これは背景といたしましては全法人の五五%がゼロ申告をしているという点はございますが、今回の措置は、だから赤字法人に対して御負担をお願いをしようということではないわけでございます。そして、まさに御指摘のゴーイングコンサーンの点をどの範囲ぐらいまでゴーイングコンサーンとして見るか、これは現在の税制は五年でございますけれども、法人によりましては六年前、七年前、八年前の欠損金を抱え、配当ができないでいる企業もあるわけでございます。そこを税の立場からはどの期間で切るかというのは、税制に課せられております租税の歳入の調達機能との兼ね合いという面もあろうかと思います。継続企業としての会計基準の点もあろうかと思いますが、そこは税制なり歳入の機能との調和の点でどの程度にお願いをするか。原則は五年になっておる、その点はやはり財政状態との一つの調和点というものがあろうかと思いますが、そこを基本的に動かすというのは今回の改正では適当ではないということで、ある意味では暫定的な措置として直近一年の部分につきまして停止をさせていただいているというのが姿でございます。
  104. 米沢隆

    ○米沢委員 これは水かけ論みたいな議論になっておりますがね。  次は、「これら赤字法人における諸般の経費の支出状況を踏まえ、」こんなことをしていいのだという理由になっておりますが、これはどういうことですか。結構うまくやって黒字を赤字にしておるのだということをあなた方はおっしゃりたいつもりですか。
  105. 水野勝

    ○水野政府委員 この部分につきましての端的な意味を申し上げれば、この税制調査会の答申の意味としては、同族法人を中心としてその経費の支出状況、経理の操作等によりまして赤字申告、ゼロ申告を続けているという点は何らかの措置が必要ではないかということを示唆しているのではないかと考えられるわけでございます。法人でございましても、相当な期間常に赤字であるということは企業としては若干問題もあろうかと思います。それが継続して赤字である法人が非常にふえてきている。そこは経費の支出状況等に問題がないかどうか、そこらの点は制度として基本的に検討をする必要があるという御指摘であろうかと思いますが、そうしたものに対しまして今回の措置が端的に解決方法を出しておるというわけではございませんで、まさにそこは踏まえつつということでの今回の御提案でございます。
  106. 米沢隆

    ○米沢委員 今の話をもし適正に一生懸命計算をして申告されておる企業者が聞いたら、本当に頭にくると思いますね。税務当局は最初からそういう疑いの目で見ておる。疑うのが商売みたいなところがありますけれども、それにしても大半の赤字企業は何かうまくやっておるというふうに税務当局はいつも見ながらやっておるのだ、適正に青色申告等をやっている皆さん方からしたら、これは大変な食言問題じゃないでしょうかね。私はそこの部分は訂正してもらいたいと思いますね。  そして、今の話を聞いておりますと、先ほどお答えがありましたように、赤字法人が全法人の半数以上になるという理由について石油ショック後の低経済成長だとか、あるいは中小零細企業の赤字比率が高いというところから見ましても、結局資本の少ないところが大変苦労されておるというようなことについては今言及がありましたけれども、先ほどの答弁を聞いておりますと、最終的にはいわゆる節税をするために――確かに、零細企業等にとりましては個人企業形態よりも法人企業形態をとった方が税制上は有利であることは事実ですね。あるいはまた、個人企業の場合でも、白色の場合よりも青色の方が、青色の場合よりも法人企業の方が税負担は有利に働いておるということも事実だろうと思いますが、後段の話を聞いておりますと、いわゆる中小企業皆さん方に対する優遇措置みたいなものといいましょうか、中小企業立場からしたらこれは当然だとおっしゃるかもしれませんが、そういう制度そのものがどうも不自然に働き過ぎておるというふうに何か当局は考えていらっしゃるように私は聞こえたのですがね。実際そういうことなんですか。  例えば法人成りあたり、確かに法人成り現象によって赤字法人がふえておるというのは否定できない事実だろうと私は思いますね。しかしながら、法人成りを認めた現在の制度そのものが赤字法人を多くしていく原因であり、どうもそのあたりにメスを入れないと赤字法人に対して税金をもらうというわけにはいかないぞという感覚で今皆さん方は対処しようとしておるというふうに聞こえるのでございますが、そういうふうにとっていいのですか。
  107. 水野勝

    ○水野政府委員 およそすべての法人が正当な経理をすれば黒字であるところ、もろもろの操作をして赤字を装っておるというふうに私どもから申し上げたとすれば、そういう申し上げ方はしておらないつもりでございますが、そういうことでございましたら、訂正をさせていただきたいと思います。  しかし、一方、税務調査の実態を見ましても、赤字法人につきましてもかなりな事務量を投入して調査をさせていただき、その四分の一なり三分の一が黒字に転換をするというふうな現象もまた一方においてあることは事実でございます。また、法人の数は、年々大体五、六万から十万ぐらいずつ法人成りは続いておるわけでございまして、その当初においては大体同族役員の給与等あるいは地代、家賃、金利支払い、そういったものによりまして赤字であり、またそれが続くという現象が多いことも事実でございます。一方、納税者の大半を占めるサラリーマンにつきましては、これは絶対に赤字ということはあり得ないわけでございまして、そういった点からいたしまして、先ほど先生お読みいただきましたような経費の支出状況等に問題があるとすれば、それは同族役員の給与なりなんなりのあり方あるいは同族会社の行為計算につきましての問題の解明に努めるべき点であろうかと思います。そうした点はなお今後の基本的検討の課題としては残されておるわけでございますが、今回の措置は直接的にそういったものに対処しようというものではございませんで、そうした同族会社を中心とした赤字法人につきましてどのように対処していくか、そうした点につきましては、なお今後の検討課題であるというふうに考えております。  ただ、全くの赤字法人につきまして、法人税の世界で何らか御負担を求めていくということにつきましては、法人税の性格からいたしますと限界はあろうかという気がするわけでございます。
  108. 米沢隆

    ○米沢委員 直接的に対処するものではないけれども、結果的にはそんなふうにして同族会社等に問題があり、法人成り現象にも問題があるという認識があるから、ことし少々黒字が出たところは昨年のやつは控除しないようにしてもいいではないか、本来なら昨年のやつを控除したら税金を払わなくていいのに今回だけの措置として結果的にそれが払えるようにする、それぐらいは求めても結構ではないか。その裏には、おまえら適当にうまくやっておるじゃないかという背景がないとこんな議論は出てこないはずですね。
  109. 水野勝

    ○水野政府委員 繰り返すようでございますが、先ほどお読みいただきました「赤字法人における諸般の経費の支出状況を踏まえ、」というこの点につきましてどのように解釈しているかという御指摘でございましたので、これはそういう意味であろうかというふうにお答えを申し上げたわけでございます。  そしてまた、今回の措置が、そうした点の問題を正面から取り上げてそれに対処をしようとした方策ではございませんで、もしそういう問題があるとすれば、それは制度執行の面で今後本格的な考え方で検討すべき問題として、それはそれとして残されているということでございまして、今回の措置がそういうものを真正面から頭に置いてそれに対処を図ったということではございませんので、御理解を賜ればと思うわけでございます。
  110. 米沢隆

    ○米沢委員 今、政府税調が書かれた中身についてこういうふうに解釈するというふうに、何か客観的に、他人行儀的に説明をされましたけれども、税務当局はどう考えているのですか。政府税調が書いたそのとおりだ、だからこんな措置をとっても構わぬのだという議論になったというふうにとらざるを得ませんね、この措置が出てきたのだから。大蔵省はどうなんですか。人が言うのじゃない、あなたはどう考えるかということだ。
  111. 水野勝

    ○水野政府委員 その点につきましては、まさに現在税制調査会で所得課税、法人課税を含めまして基本的な検討が行われておるわけでございまして、先生御指摘の個人の場合、それが青色になった場合、みなし法人の場合、同族会社になった場合、それぞれもろもろの税負担変化があるわけでございます。もしそこらの点につきまして基本的に見直すべき点があれば見直す方向での対処がなされるべきであろうかと思いますが、現時点におきまして、税制調査会の検討の段階としてはまだそこらまでは行っていないというのが実態でございます。
  112. 米沢隆

    ○米沢委員 政府税調審議状況だとか政府税調が何を考えているかという議論じゃなくて、税務当局としてあなた方はどういうふうにこの問題をとらえているのかというのが私の端的な質問でございます。五十九年の措置、六十年の措置、六十一年の措置をずっと概括して眺めておりますと、少なくとも法人税体系の骨格は変えずに何か赤字企業から負担を求める方法はないものかとか、あるいはまた、先ほどの同族会社の経理に問題があるとか、法人成りにちょっと問題があるのではないかという認識は、まさに赤字企業の節税メリットを少なくする方法を何らかの形で模索し始めておる、そういうふうに政府税調の中でも――新聞等ではよくそんな書き方がなされておりますし、大蔵当局もそういう考えがあるというふうに考えていいのですね。
  113. 水野勝

    ○水野政府委員 基本的には、法人税の世界でございますので、私ども、赤字法人につきまして何らかの法人税負担をお願いするというのは限界があろうかと思っております。  それからまた、先ほど申し上げましたように、個人、それから個人の中でも給与所得者、事業所得者、その中の白色の方、青色の方、専従者給与を抱えておられる方、みなし法人を選択される方、そして同族会社に法人成りをされる方、それぞれの企業、事業形態に従いましてどのような税負担のバランスが公正であるか、そういった点につきましては私どもといたしまして問題点は持っておるわけでございまして、また、税制調査会でも検討がされるものと考えておるわけでございます。
  114. 米沢隆

    ○米沢委員 ところで、それぞれのスタンスにおいて解釈の仕方は違うと思いますが、赤字法人課税というのは当然のごとくにやるべきだというような話がこのごろいろいろなところで出てくるようになりました。これはあなた方がどう考えておる、税調がどう考えておるじゃなくて、客観的に勉強したいのは、赤字法人課税というのは一体どういう論拠で出てきておるのだろうか、そのあたり何か分析できますか。
  115. 水野勝

    ○水野政府委員 一つ考え方といたしましては、百数十万の法人があり、赤字法人で赤字申告をしている、しかしながら、もろもろの公共サービスの面ではいろいろ受益している、そういう議論があるわけでございまして、そういった法人につきまして何らかの負担を求めてしかるべきではないかという御議論と申しますか、そういう観点があるわけでございます。  しかしながら、そうした法人でございましても、法人税は納めてはおられませんけれども、固定資産税なり事業所税なりそういったものはもちろん御負担をいただいているわけでございます。そういった全くの赤字法人につきまして、受益の面から法人税の世界で何らかの解決をするということはいかがか、こういった点から、受益の面からの赤字法人課税と申しますか、法人税の世界での赤字法人課税というのは限界があろうかと思うわけでございます。仮にそうした受益の面に着目して御負担考えるとすれば、もろもろの別途の方向での法人課税と申しますか、企業課税として対処さるべきではないかと思うわけでございます。  もう一つの観点は、先ほど先生お読みいただきました経費の支出状況から赤字になっているという点があるのかないのか、この点につきましては、制度的にあるいは執行の面から対処すべき問題であろうかと思うわけでございますが、そういった点につきましての問題の検討はなおまだ十分な点には達していないというのが現状でございます。
  116. 米沢隆

    ○米沢委員 今、客観的な赤字課税についての論拠みたいなもの、いろいろと赤字課税をおっしゃる方々の考え方みたいなものを客観的に御説明いただきましたが、今度はそれと切り離しまして、先ほどからの議論で私、感じますのは、こういうことでいいのでしょうか。  今、政府税調が来年の抜本改正に向けていろいろ議論されておりますから、また問題の提起等はあるかもしれませんが、現在のところ、抜本改正を議論する際に、当局としては同族会社の経理のあり方や法人成りによって赤字会社がふえていくという問題については問題意識として持っており、そのあたりある程度チェックしなければならぬという意識は持っておるが、赤字法人そのものに対して課税するなどということは今のところ全然考えていない、そういうふうに考えてよろしいですか。
  117. 水野勝

    ○水野政府委員 まさにこれから税制調査会で検討がされるという段階でございますので、私どもの考え方と申しますか、そういったものを申し述べるということは適当ではないと思います。しかし、あえて申し上げれば、全くの赤字であっても受益その他につきましての考え方から御負担をお願いするというのは、法人税の世界では限界があるのではないかという気がするわけでございます。  それからまた、経理操作その他によりまして、あるいは法人成りによりましてと申しましても、やはりそこは近代の契約自由の世界でございますから、それぞれの納税者の方の御判断、御選択によって法人形態をおとりになる、それを税の面から好ましくないということでそこに制約を加える、制限を課するということはなかなか問題があるのではないかと思うわけでございます。  現時点におきましても、法人税におきましては同族役員に対しますところの過大給与の問題、過大退職金の問題、あるいは同族会社の行為計算の否認の問題、こうした制度はあるわけでございまして、現行制度でもそれなりの対処はされておる、しかし、法人成りといったものにつきましての問題を基本的にひっくり返すというところまではいける問題ではないのではないかという気がいたしますが、今後ともそれは税制調査会の検討課題ではなかろうかと思うわけでございます。  ただ、現在、個人所得課税でもろもろの検討が行われております。法人成りをいたしますと同族の方々がすべて給与所得者になる、それによりまして給与所得控除が適用になる、所得がそれだけ各同族の方々に分割をされ、それぞれに給与所得控除が適用になる。そこらは個人との関連でどのような課税バランスということを考えたらいいのか、そこらの点につきましては税制調査会でも時に指摘をされ、また私どもも問題意識を持っておるところでございます。しかし、この方向につきましては、今後、さらに掘り下げた検討が行われるものと思われますので、そうした方向につきまして私どもここで具体的な方向なり考え方をお述べする段階にはまだないわけでございます。
  118. 米沢隆

    ○米沢委員 質問の第一部はもう終わろうといたしておりますが、法務省の方、来ておられますね。最後に一つお聞かせいただきたいことは、今商法改正が法制審議会の商法部会で議論されておりますね。その商法改正の主たる内容は、例えば資本金二千万以上ぐらいを株式会社と呼ぼうとか、あるいは五百万以上ぐらいを有限会社にしようとか、いわゆる会社の中小の区分をはっきりさせて、そして結果的には計算書類の公開や外部監査に近いものを小企業にも義務づけることが必要ではないか等々の改正だというふうに私は聞いておるのですね。もしそういう中小区分を明確にするという商法改正が進みますと、見方によってはそれなりにまたメリットがあるかもしれませんが、逆な面から見ますと、小企業等についても、実体は個人だけれども法人形態をとっている会社だとか、あるいはこれは会社らしい会社だというふうに明確にされて、結果的には経理の公開とか外部監督あたりが厳しくなる等々のことからいたしまして、今大蔵省がおっしゃったように、何とかして赤字法人から金を取ってやろうというものと符合させて商法改正が始まっている、私はそんな感じがするのです。こういう中小の株式会社あたりが明確にされましてそれなりにいろいろな規制がなされていきますと、税務当局としてはやりやすい状況をつくるわけですから、そういうふうに私は考えるのですが、今商法改正の進捗状況は一体どうなっておるのか、そのあたりを法務省の方に聞きたい。  それから自治省の方、先ほどから赤字法人課税の議論を国税についてしておりましたが、今地方税の関係で特に事業税の外形課税ですね、これは昔から国税における赤字法人課税よりも地方税における事業税の外形標準課税あたりが実現性の濃いものとしてかなり議論されているような気がするのでございますが、自治省はその点についてどういうふうな見解を持っておられるのか、この二点だけで一部の質問を終わりにさせていただきたいと思います。
  119. 稲葉威雄

    ○稲葉(威)政府委員 商法改正の作業につきましては、昭和五十七年から引き続いて今先生御指摘の大小会社の問題を検討しております。これは戦後ずっと長い間の懸案でございまして、日本では、最低資本金という制度は、有限会社についてだけ資本金十万円とあるだけでございまして、非常に零細な会社が多い。そしてその後の状況といたしまして、現在株式会社百万、有限会社百万という数の会社がございますけれども、必ずしも法律がきちんと守られているわけではないという状況があるわけでございます。  商法という法律、これは先生御案内のように、税法などとは違いまして私法でございまして、私人間の利害関係をどのように調整するのが一番適当であるかという法律であるわけでございますけれども、その利害関係の調整のための基本的なルールとしての商法が守られないということは、我が国の司法秩序にとって非常に不都合であるという前からの御指摘があって、私どもといたしましては、それを是正しようということで検討しているわけでございます。  ただ、その是正の方法としては二通りございまして、一つは、法律の方が実態に合わないという部分をむしろ実態に合うように直していくという部分と、それから本来会社というもの、あるいは特にこの場合問題にしておりますのは、株式会社とか有限会社という有限責任の会社であるわけでありますけれども、そういう有限責任の会社として最低限度備えなければならない条件というのは一体何であるかという観点、この二つの観点からアプローチをいたしておりまして、現在検討をしているわけでございます。  ただ、この点につきましては、日本経済の将来像というようなものも踏まえまして、そういう経済の活力というものを失わせないようにする、しかし一方では、公正、公平な利害関係の調整ということもしなければならないわけでございまして、そういう調和点をどこに見出すかということで、最低資本金の導入あるいは計算の公開というようなものも含めまして現在審議をしておりまして、近くこれについての改正試案というものを出して広く関係各界の御意見を承るということを考えております。
  120. 前川尚美

    ○前川説明員 いわゆる赤字法人課税の問題に関連いたしまして、地方税ではどうかというお尋ねでございます。  御指摘のとおり、地方税の分野でそういった観点から問題になっておりますのは事業税についてでございます。もう御承知のとおりでございますから詳しくはるる申し上げませんけれども、現在事業税は電気供給業等四業種、これは収入金額課税でございますので、いわゆる赤字法人課税という問題は生じてこないわけでございますが、そのほかの事業につきましては、所得を課税標準にして課税をしておるという関係から、赤字の場合には税負担が出てこない、そこでこういう問題をどう考えるかという観点から議論をされてきているわけでございます。  御承知のとおり、事業税はいわば応益負担の原則に基づく物税として事業活動を行う者に課税をする、こういう考え方に立っている税でございますので、現実に事業活動を営みながら税負担がないというのは、地域社会における税負担、ともに地方公共団体等の供給する公共サービスの費用負担を分かち合う、こういう観点から見てやはり問題があるのではないかという点が一つあるわけでございます。  また、都道府県の場合、この事業税というのが非常に大きなウェートを占めておりまして、現在全国的にマクロで見ますと、都道府県税収の四割程度が法人関係の事業税の収入になっているということがございます。これが変動をいたしますとやはり行政サービスに少なからざる影響を与える、こういう点もございます。  そういった事業税の性格あるいは税収の安定性、こういうものを確保する見地から、事業税の性格に照らしてその本来のあり方にふさわしい課税標準を求めるべきではないか、こういう議論がずっと行われてきているのは御承知のとおりでございます。地方公共団体の間には、そういう意味で事業税に外形基準を導入すべきであるという非常に強い要請がずっと続いてきております。私どもも、事業税の性格なりあるいは税収の安定性ということを考えますと、こういった考え方にも大変もっともな理由があるというふうに考えているわけでございます。  しかしながら、御案内のとおり、この問題につきましては、企業課税あるいは間接税等税制全般を通ずる問題ともいろいろ関連する点がございますので、五十八年の税制調査会の中期答申におきましても、「課税ベースの広い間接税との関連を考慮して、検討すべきである。」とされているところでございます。現在税制調査会において税制の抜本改革がいろいろ検討されているところでございますが、自治省といたしましても、従来から論議されておりますこの問題について、これからの検討の中でどういう解決をすべきか、さらに煮詰めていく必要があるというふうに考えております。
  121. 米沢隆

    ○米沢委員 終わります。
  122. 堀之内久男

    ○堀之内委員長代理 正森成二君。
  123. 正森成二

    ○正森委員 当初の理事会での予定では、竹下大蔵大臣は昼間は御出席願えない予定で、対政府関係の質問を先にして、大臣には失礼でございますが夕方以降ということになっておりましたが、幸か不幸がお体がおあきになりまして出席しておられますので、質問の順序を変えまして大臣からも聞かしていただきたいと思います。したがって、政府関係機関の方には、三時半からの時間に質問すると言っていたのが聞けなくなる可能性がございますが、そのかわり、夕方以降の分は大臣は結構でございますからお休みいただきまして、聞かしていただきたいと思います。委員長、よろしゅうございますね。
  124. 堀之内久男

    ○堀之内委員長代理 どうぞ。
  125. 正森成二

    ○正森委員 まず第一に、先ほど情報が入りましたが、本日、平泉経企庁長官が閣議後の記者会見で、フィリピンの円借款問題は本来フィリピンの内政問題だ、例えは悪いが、女房に買い物の金を渡してもその金をどう使うかわからないようなものだ、こういうとんでもない重大発言をいたしまして、その結果、参議院の予算委員会が全面ストップをしたということだそうであります。あるいは竹下大蔵大臣が御出席願っておりますのもその反射光かもしれないのですね、よく存じませんが。  しかし、一体マルコス政権下の円借款問題のあり方を何と心得ておるのか。大体例えもよろしくありません。こういう重大な問題を、女房に買い物の金を渡してもその金をどう使うかはわからないようなものだというようなことで、日本政府側の責任あるいはその間に関与した東陽通商その他のさまざまの企業の責任、それを十分監督できなかった日本政府の責任、そういうものを免罪にしてしまって、一たん金を渡せば、女房が映画を見に行こうとお化粧代に使おうとそのほかさまざまな金に使ってもそんなことはわからぬようなものだ、こういう認識でいいのかどうか、私は、こういう重大発言に対して大蔵大臣にまず伺いたいと思います。
  126. 竹下登

    竹下国務大臣 こっちに出席ができましたのは、確かに今御指摘なさいましたように向こうの会議が開かれない状態になりましたので、当然所管委員会のこちらへ出席すべきであるということで、話を通じましたら出てもよろしい、こういうことでございまして、こちらへ参ったということでございます。  平泉さんの発言につきましては、そのとき予算委員会で追及されたことにつきましては、本人もおりませんし、私と江崎総務庁長官とがおりまして、総務庁長官からのお答えと同じようなことをあえて申し上げますならば、今日、今聞いたばかりで、一体何を言ったかもわかりませんので、その点はきょう感想を述べることは御勘弁いただきたいという趣旨でございました。私も確かめておりませんので、どう言ったかという内容につきましてはここで感想を申し述べるというわけにはまいりませんが、いわゆる円借款というのは、原則的に申しまして、政府間で決定をいたしますと、それから先はその政府がどういう業界の人と契約をされるかということについては、確かに相手国政府そのものの問題であろうというふうに考えます。ただ、それの使われ方が約束に反しておるような場合は、外務省がそれに対して当然異を唱える立場にあるということでございます。それが国内へどういうふうな影響があっておるかということについても、新聞記事の域を私も出ておりません。しかし、私どもが昨日予算委員会お答えをいたしましたことは、総理、外務大臣そして私もお答えいたしましたが、私の範囲で申しますならば、これは外務省がこれらに関していろいろ協議をなさった場合、あるいは私の方で言えば税務上の問題、それから外為法の問題があるかもしれません、しかし、調査に対する協力は当然のこととしてしなければならないというふうに私は答えました。外務大臣からは、各省庁と連絡をとりながら調査をしなければならないというふうなお答えがあったというふうに記憶をいたしております。
  127. 正森成二

    ○正森委員 事前に経企庁にも来ていただくように言うておきましたが、来ておられますか。――経企庁は、大臣が初めからおられると思いませんでしたので、四時ごろの予定で来るそうでございます。それでは、中途半端でございますが、経企庁にちょっと聞いておきたいことがございますので、この問題は四時からもう一度やらしていただくとして、それまでは、経企庁がおらなくて大蔵大臣にあらかじめお聞きしたいと思っておったことを聞かしていただきます。質問が途中で切れてえらいどうも失礼いたします。  これは大蔵大臣に、特にニューリーダーとしての竹下大蔵大臣にお伺いしたいことでございますが、宮澤総務会長がかねがね経済政策の転換を提言しておられましたが、昨日中曽根首相と官邸で約三十分会談されました。そして、内需拡大へ向けて積極的な経済財政運営へ転換するように提言されたと報道されております。これを見ますと、二十日ごろの新聞で、六十五年度に赤字国債依存体質から脱却するという目標を見直すというように言うておられました点は、まあ言ってみれば財政再建の旗印を下げてしまうようなもので、これは言うのを控えるというようなことで控えられたようでありますが、私の拝見したところでは、重要な点は三つぐらいございます。  まず第一に、国債の償還を全額借換債で行う。全額借換債で行うということになりますと、現在建設国債は六十年で返すことになっております。特例債は、本来は十年で返すことになっておりましたが、法律が変わりまして、これも六十年でよろしいということになっているのを、本来、もう借金は返さなくても残高はそのままでよろしいという考え方になるかと思います。  第二番目に、建設国債発行による公共事業推進、これは、建設国債は減額しないでむしろ増額するという考え方であります。  また三番目には、大型プロジェクトヘは三%ぐらいの利子補給というようなことを言われて、内需拡大へ向けて積極的な経済財政運営へ転換するようにということのようであります。  私が承知しておるところでは、これらはいずれも竹下大蔵大臣がここ数年堅持されてまいりました財政運営の方向、したがってまた、税制にも大きな影響をあらわすと思いますが、そういう考え方とは相当ニュアンスが違うように私には見受けられます。この問題について、財政担当の大蔵大臣としての率直な御意見、あるいは大蔵大臣を超えましてニューリーダーの一員としての新たな抱負という点でも結構でございますが、率直な御意見を承りたいと思います。
  128. 竹下登

    竹下国務大臣 まず基本的に、今後できるだけ早期に財政対応力を回復していくため、引き続き財政改革に最大限の努力を払っていく必要があり、かかる基本的考え方に立ち、今回提言をまとめられたということは私も評価をしております。そうして、その提言の個々の内容につきましては、財政改革努力を今後とも重ねていく上で、現実の政策運営上種々の問題が指摘されております。これらについて、宮澤さんであろうと、正森先生であろうと、いろいろな提言がなされていくということは、私はそれなりに好ましいことだというふうに思っております。  私は、今現職の大蔵大臣であります。そうして例えば今御指摘のありましたいわゆる永久国債論ということは本委員会等でも議論の出た問題でございますが、それについては、財政審で減債制度の根幹はこれを維持すべきであるという縛りの中で私自身政策スタンスをとっているわけでありますから、したがって、この問題について、今、一つ考え方でございましょうというようなコメントをする立場にはなかろうというふうに思います。  もう一つの問題は建設国債という問題でございます。確かに、私どもが昭和六十五年には赤字公債依存体質から脱却することをまず第一義的に考えておるということを申しておりますので、建設国債はその限りにおいては、六十五年に建設国債の依存体質からも脱却できるというふうには思っておりません。ただ、今日まで予算編成をたび重ねてやってまいりますと、いわば役所で言えば各省庁、社会福祉でありますとか、防衛でありますとか、公共事業でありますとか、もろもろのそういう区分からいたしますと、一方だけに経常部門に対して厳しい縛りをかけ、そして一方は縛りをかけないという手法というのは、率直に言って、概算要求基準をつくりますときにはなかなか難しい問題であります。  と同時に、確かに建設国債というのは、財政法を振り返ってみますと、昭和二十二年にできました当時の精神が変化をもたらしたのが昭和四十年の補正予算のときでございます。あれだけ厳しい議論をいたしまして、その後は昭和五十年のいわゆる赤字公債発行に踏み切ったとき。それで私思いますのは、いささかでもなれが生じてはいけないという意味においては、二十二年の財政法ができたときの考え方というのは基本に持っていなければならぬ旧四十年の公債発行は必ずしも建設国債とは銘打ってございませんけれども、性格は建設国債であったといたしましょう、そういたしましても、それが残高に置きかえられた場合は言ってみれば赤字国債と変わらない性格のものになってしまうという考え方は、今日、これまた財政審なりあるいはもろもろのオーソライズされた政府の諮問機関等からの提言あるいは報告、意見というようなものの中に縛られた形の存在としてあるというふうに私は思います。  三番目の問題は、いわゆる利子補給問題でございますが、六十年度予算で利子補給金が一兆を超しておったと思います。それが、国鉄の分を肩がわりをいたしましたので、たしかそれだけ六十一年度は減ったと思うのでございますが、それでも六千数百億だったかと思っております。そういうことを考えてみますと、利子補給というのは民間個人貯蓄を動員するための一つの手法であったとしても、これが累積をいたしますと、その一兆円とかいうものが示すように財政硬直化の理由の一つになるということもやはり念頭に置いておかなければならぬな。  私の場合は、今日までのいろいろな公的機関からの提言、意見等の縛りの枠内でのお答えになりますが、大蔵大臣でございますからやはりその方が適切であって、自分が仮に若干のニュアンスの相違の意見を持っておっても、それは現在の立場において申し述べることではなかろう。仮に大蔵大臣をやめまして、みずからの財政運営の反省という中で提言することもあるいはあり得るかもしれませんけれども、今の現状の立場においてはやはり諸審議会、公的機関等の枠内のお答えというもので自分の身を律しておくべきものだというふうに考えております。  一兆円の後は六千幾らと申しましたのは八千二百億でございました。数字を間違えましたから訂正させていただきます。     〔堀之内委員長代理退席、中西(啓)委     員長代理着席〕
  129. 正森成二

    ○正森委員 今のお答えは、大蔵大臣という公的な立場におありになる竹下大蔵大臣としてはいわば当然のお答えだと思いますが、結局のところは、宮澤総務会長の御提言は基本的な部分では同意できないという答弁であったと思います。それはある意味では当然のことで、例えば六十五年度赤字国債依存脱却ということで建設国債依存脱却となっていないのは当然でございますけれども、国債を減額しようとする場合に、御承知のように経常部門を四苦八苦して減らしましても、社会福祉関係とかいろいろございますので、赤字国債の減額には限度がある。その場合には、赤字国債減額だけではとても一兆円にいかないので、総体として、お金には色がつかないのだからということで建設国債も合わせて若干一兆円に近づけるという手法をとらなければならない場合が当然起こってくるわけです。ましてや国債の償還を全部借換債で行うなどということになりましたら、それはなるほど二兆円前後予算は浮いてくるかもしれませんけれども、それは結局国が借りたものは借りっ放しで返さないのであるぞよということになって、国債整理基金を置きました制度、趣旨そのものを否定してしまうような、言ってみれば革命的な、財政運営という歯どめのないものになりますので、大蔵大臣という要路におられる方としては今御答弁になったような答弁以外にはなかなかおできにならないだろうというように私も考えております。  そこで、次の問題に移りたいと思いますが、参議院の予算委員会で社会福祉特別会計という構想がいろいろ言われまして、それについては総理及び大蔵大臣もある程度容認するような趣旨の御答弁が行われたやに拝聴しております。  そして、社会福祉特別会計という厚生省の中心部分が考えております構想についての大蔵大臣のお考え。その場合には収入と支出を区分しなければならないわけですが、その収入の部分について、巷間伝えられるところでは、大型間接税あるいはEC型付加価値税というものを目的税の格好で行うならばあるいは受け入れやすいのではないか、これはNIRAなどの提言でも出ていることでございますが、こういう問題についての率直な御意見を承っておきたいと思います。
  130. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる社会保障特別会計構想という問題でありますが、外国に例があるかないかとかいろいろな質問がございました。勘定を区分しておるというものはありますが、一連して目的財源を持ってそれを直入した特別会計制度というのは今のところの勉強の段階では見当たらない、こういうことでございます。  ただ、いわゆる社会保障特別会計あるいは社会保障勘定の創設という提言というのは、それぞれ権威あるところからなされておるわけでございます。提言の例から見ましても、一橋大学の野口先生やら現代総合研究集団の大河内先生、社会党、民社党それぞれいろいろ考え、それからさらに前厚生大臣の増岡さんの試案という格好になっておりますが、そういう提言もございます。私どももこれについては今後、やはり高齢化社会というものは必然的にやってくるということになりますと、いわゆる今後の財政再建の進め方、社会保障に対する負担あり方等についてやっていくために示唆に富んだ考え方であるというところまではお答えをいたしております。  それで問題点はどこにあるかというと、社会保障関係費が言ってみれば聖域になって、いわば歳出の節減合理化努力が不十分なものとなりはしないかとか、二番目には社会保障だけが別枠という説明で他への納得がとれるのかというような幾つかの問題もあると思いますので、したがってこれは歳出歳入構造のあり方、それからまさに受益と負担との関係等について検討を重ねていかなければいかぬ問題だ、早急にこれは審議会でもつくってやってみたいと思いますというようなところまではいっていないという考え方でございます。  それから、それの目的税、確かにそういう意見もございました。そういうふうに福祉目的税というようなものを考えてみたらどうですか、あるいは年金に眠って所得賦課で考えたらどうですかというような問題もございますが、その問題を念頭に置いていわば税制調査会等で御審議をお願いしてみようというふうには今のところ考えておりません。
  131. 正森成二

    ○正森委員 それでは、今経企庁が来られたというように連絡が入りましたので、先ほどの続きをさせていただきます。  経企庁がおられないときに申したのですが、あなた方の平泉経企庁長官が、本日閣議後の記者会見で、フィリピンの円借款問題は本来フィリピンの内政問題だ、例えは悪いが女房に買い物の金を渡してもその金をどう使うかわからないようなものだ、こういうように答弁をされて、そのために参議院の予算委員会が全面的に審議をストップした。そして経企庁長官の罷免を要求する党もあるというように言われております。  この問題について竹下大蔵大臣に、あなた方がおられないときに御感想、御所見を承りましたが、こういうように言われたかどうかということもまだ確認しておらない段階であり、基本的には論評を差し控えたいということが中心の答弁がございました。あなた方は経企庁の職員でありますが、これはあれですか、下これに倣うで、大臣がそうおっしゃればあなた方経企庁の役人も全部そういう考えで今後も対処するつもりですか。
  132. 小川修司

    ○小川説明員 円借款の問題につきましては、経済企画庁関係三省と一緒にいわゆる四省庁体制ということでこの円借款問題の検討の一角になっておりまして、四省庁でいろいろ御相談しながらやっておるわけでございます。  それで、今の問題でございますけれども、この円借款に関連していろいろ問題が生じているということでございまして、それについては、実際に何が行われているかということをよく究明いたしまして、その上で関係省庁ともよく相談していろいろ対策を立てていきたいと考えております。
  133. 正森成二

    ○正森委員 役人として大臣の発言に対して論評はできないということで私の質問自体には答えなかったのですけれども、役人としてはやむを得ないだろうということで、その点は次の関連の質問に移ることにいたしますが、今これだけ問題になっていることについてこういうことを言う神経というのは相当なもので、あなた方経企庁全体として襟を正さなければいかぬと思うのですね。  そこで具体的な問題をちょっとお聞きいたしますが、フィリピンは第一次から第十三次まで、そのほかに特別の借款もありますが行われまして、その累計額は四千六百八十億九千九百万円という数字が外務省の交換公文などの累計から出ております。これは大部分が国民の税金と財投を中心とするお金から出ているのですね。それで伺いたいのですが、これまでに出ましたフィリピンあての賠償は幾らなのか、それから円借款が幾らなのか、その中で税金が幾らで財投の金が幾らなのか、それを答えてください。
  134. 小川修司

    ○小川説明員 円借款でございますけれども、これはいろいろな段階がございます。円借款の手続上交換公文を政府間で結ぶという段階と、それから経済協力基金と相手国政府との間で貸付契約を結ぶという段階の数字と両方ございまして、六十年度末現在で交換公文締結ベースでは四千六百六十七億、それから借款契約締結ベースでは三千九百九十四億ということになっております。  それで、今お尋ねの原資でございますが、これにつきましてはフィリピンの借款だけの原資構成ということが特別にあるわけではございませんで、基金全体の原資として一般会計からの出資金と財政投融資からの借入金、それから経済協力基金債、政府保証債という、大きく分けると出資と借り入れというような二つに分かれるわけでございますが、その原資構成で、これは昭和五十九年度末までの累計でございますけれども、借入金が基金全体で一兆七千六百十九億円、それから基金の債券が六百億円、それから一般会計からの出資金が一兆四千四百二億円ということでございまして、債券と合わせて借入金の割合が五六・七%、それから出資金の割合が四四・八%ということになっております。
  135. 正森成二

    ○正森委員 私も資料をいただきましたが、五十九年までの実績で見ますと、借入金が一兆七千六百十九億、それから資本金といいますか出資金が一兆四千四百二億、そのほかに基金の債券やら繰越分やら貸倒準備金やらいろいろありますが、締めて三兆二千百六十四億円ということで、ほぼ四四ないし四五%が出資金から出ているのですね。出資金あるいは資本金というのはもちろん基本的に全額税金であります。つまり、平たく言えば四四ないし四五%が国民の税金から出ており、残りの五五、六%が財投その他の利息のつく金から出ておる、こういうことになると思うのですね。  そこで、伺っておきたいと思うのですが、その出されたものの中から一五%がマルコスにBBBという名前でリベートとして渡されておるということになりますと、これは見方によりましたら、円借款というのはどのように使われようとも結局利息をつけて日本に返ってくるのだから我が国には損はないというようなことを新聞紙上で言うている人もおるようであります。あるいはまた、一部の党の中には、我が国の企業や商社というのは余分な金を出したのだから被害者であるというようなことを言うているような党もあるようであります。けれども、私どもは絶対にそうだとは思っておりません。フィリピン人民から見れば、マルコス一派に渡されたこういうリベートも含めて元金と利息を償還しなければならない。それは全部フィリピン人民の血税であるということになれば、これはフィリピンの人民にとっては黙過することのできない問題であります。     〔中西(啓)委員長代理退席、委員長着席〕  また、我が国の内部から見ましても、その原資というのが四十数%は税金であり、そして残りも財投であるということになれば、それが将来はあるいは返ってくるかもしれないけれども、現実に出ていく段階では、乏しい国家財政の中からやむを得ない金として海外経済協力基金を通じて出ていくということになれば、その年度の他の必要な歳出というのは抑えられて出ていくということになるわけであって、財政あるいは税制の上からいっても、これが我が国民に対して全く関係がなくて、結局は返ってくる金だからいいじゃないかというようなことには断じてならないと思うのですね。  しかも、大臣、聞いていただきたいのですが、そのことが戒厳令を出しておった独裁腐敗政権の延命に使われ、しかもプロジェクトが延命に使われるだけではなしに、その中から一五%がつかみ金で独裁者の恣意的なぜいたくあるいは恣意的な政治資金に使われていたとすれば、これはフィリピン人民にとっても日本国民にとっても断じて黙過することのできない重大な問題であると言わなければなりません。  そういう問題を、平泉経企庁長官が、例えは悪いが女房に買い物の金を渡してもその金をどう使うかはわからないようなものだなどと言うのはもってのほかの問題で、参議院では審議がストップしたそうですが、本来なら国会全体が平泉長官の罷免まで審議をストップしても当然の問題ですね、事実とすれば。大蔵委員会は現在日切れ法案を審議中ですから、私は、ここで質問をしないとかあるいは審議をやめるとか言いませんけれども、事態としてはそういう性質の発言を海外経済協力基金の責任官庁、監督官庁の長官がしておるなどということは、これはもう断じて黙過できないことである、こう思うのですね。  そこで、これが衆議院の予算委員会の最中ならこれは審議がとまるところですね。しかし、今大蔵委員会は日切れ法案の審議の最中ですからあえてそういうことは求めませんが、なぜこういうことが起こるのかですね。  それは先ほど竹下大蔵大臣の答弁の中にも一部出ておりましたね。本来は、円借款というのは相手国政府の要請に基づいてお金を出し、その金がどう使われるかは相手国政府の権限によって決まるというような一義的な、一般的な答弁でありますけれども、しかし、事前にプロジェクトを決める場合には、そのプロジェクトが妥当であるかどうかという事前のチェックは当然行うはずでしょう。それからまた、借款が行われた後でも、それがしかるべく使われたかどうかについては、外務省のルートなり何なりを通じてそれ相応のチェックができるはずでしょう。あるいはプロジェクトのそれぞれの購入代金等が妥当であるかどうかについても一定の点検はできるはずですね。  かつて、韓国の問題でソウル地下鉄問題というのがありました。その問題について、日本の企業が地下鉄の車両等の購入をしておるその価格が、たまたま日本で購入されておりましたので、日本の国内に比べて一両当たり一千万円も大きいということがわかりましたので、私がその不正を追及したところ、三菱商事を初めとして莫大なリベートを出しておったということをこの予算委員会のこの席に来てそれぞれの社長が認めたことがありました。そういうように、チェックしようと思えばできる場合があるのですね。それがなぜできないのか。  経企庁にまずこういう問題を決める上での仕組みと、それからこういう不幸な例が起こったとして、今後こういうことを起こさないために我が国としてどういうことができるのか、あるいは全くできないのか、それについて答弁を願いたいと思います。
  136. 小川修司

    ○小川説明員 円借款の手続でございますけれども、今先生おっしゃいましたように、相手国の政府から要請が参りまして、要請が参りますと、それに対しまして政府あるいは基金が必要に応じまして向こうに調査団を派遣いたしましてよく調査をしてまいりまして、その段階では、向こう側の事業計画の意義でありますとか、必要性でございますとか、事業の内容、規模の妥当性といったような、要するに適切さという点のチェックをいたします。それからまた、技術的な見地でございますとか、資金面でございますとか、事業の実施体制でございますとか、そういうことからその事業の達成の見込みがあるかどうかというようなことにつきまして十分な審査をいたしてまいるわけでございます。そういう政府べースあるいは基金の技術的な審査を経まして、大体これで妥当なものであるということになりますと、相手国政府との協議もございますけれども、そうなりますと交換公文という段階で政府間の取り決めが結ばれるわけでございますが、その後、大体それに従いまして基金とそれからその相手国の政府との間で、先ほどもちょっと申し上げました借款の実際の契約を結びます。その借款は基金との間で結ぶということになっております。  それで、その借款に従いましてその後実際の事業を行う。これは相手国の政府が行うわけでございますが、その段階で、事業でございますので、いろいろな入札でございますとかあるいはその入札の評価でございますとか、あるいは実際その政府と各調達の企業との間の契約でございますとか、そういういろいろな手続の段階がございます。これにつきましては、その各段階ごとに、例えば入札の場合でございますと、きちんと公開の公正な国際競争入札を行っているかどうかとか、あるいはその評価が妥当なものであるかどうかとか、それからその契約が妥当なものであるかどうかというようなことにつきまして各段階で基金がチェックをいたします。  そういうことで向こうの借入国政府とそれを納める納入の企業との間の契約が結ばれるわけでございます。その契約の各段階でチェックが行われるということでございますが、さらに、実際その契約に従いましていろいろな事業が進みます。その進むのに従いまして、基金といたしましては貸し付けの実行をいたします。その実行の段階におきましても、各支払いことに相手国の政府からその支払いの関係の証憑書類を求めまして、正当に当該の事業に支払われているということをチェックいたし、確認の上でその貸し付けの実行を行うというようなことをやっておりまして、いろいろな各段階で借款資金の適正な使用ということは十分チェックいたしておりますので、そういう意味で円借款がそういう形で適正な使用が行われているということは十分確認されているというふうに信じております。
  137. 正森成二

    ○正森委員 今の答弁がマルコス文書が発表される前の答弁なら、いや、なるほどよくチェックされているなというてあるいは聞いたかもしれないのですね。しかし、あのマルコス関係の文書が公表されて、一五%のリベートが公然たる事実であるということで、アメリカでも、特にアキノ政権でも徹底的に調べなければならないということになっており、現にその文書も公表され、私もその原文も見ましたが、BBBという暗号で、見積もりのFOB価格じゃなしに現実のFOB価格、アクチュアルとなっているのですけれども、それの一五%がBBB、つまりリベートとして明記されておる。この明記されておるBBBとそれからCIF価格、FOBじゃなしに運賃と保険料の最終価格とを合わせるとちょうど日本政府の交換公文の額になる。私は一、二のプロジェクトをチェックしてみたら、ぴしゃりと額が合うのですね。そういうような文書がアメリカとフィリピンで公表されておるということを知った上で今の経企庁の課長の答弁を聞くと、まさに漫画以外の何物でもない。今になっても至るところの段階で十分チェックしておりますとか言うておるのですね。  そこであなたに聞きますが、あなたは本当に、本気で今のような答弁をしたのですか。もし本当にチェックしておったのだとしたら、今アメリカやフィリピンで公表されている文書は一体何ですか。あれはうそですか。それとも、チェックしたはずでございますが、不十分で、十分チェックし切れませんでしたというように答えるのか、今になっても、なおかつ海外経済協力基金が十分にチェックしており、またチェックした、したがって、今アキノ政権やらアメリカの委員会で発表されているのは、あれは日本政府としては信用しておらないのだというように言うつもりなのか、ここへ来て答弁してください。
  138. 小川修司

    ○小川説明員 そういうことでいろいろの段階でチェックをしているわけでございます。先ほど御説明したようなことで各段階でチェックをしておるわけでございますが、これにつきましては、基本的には海外経済協力基金のそういう確認は、あくまでも事業計画適切さあるいは事業の達成の見込みという観点からその各段階のチェックを行っているということでございます。  それで、御指摘のございましたような問題がいろいろ言われているということにつきましては、冒頭にも申し上げましたように、事実関係としてどういうことが行われているのかということにつきましてその事実をよく解明した上で、いろいろ問題があればその辺は考えなくてはいけないと思っておりますけれども、とにかく今は事実としてどういうことが行われているかということの解明が第一だというふうに考えております。
  139. 正森成二

    ○正森委員 今に及んでもその程度の答弁しかないというのは、もう我々としては理解に苦しみますね。  それで、念のために伺っておきましょう。一部の報道によれば、プロジェクトが決まりましても、そのプロジェクトを実施する企業はいかなる企業であるか、その企業が現地のいかなる機関あるいはいかなる企業と実際上契約してそのプロジェクトを完成させるのかという点については、これは秘密であると称して発表しない、こういうことだそうですが、そういうことがあるから余計物事がはっきりしないのじゃないのですか。どうしていますか。そういう問題は全部公表しておりますか。あるいは公表していないとすればそれはなぜですか。こういうことが起こってもなおかつそういう問題は秘密のベールに包んでおくつもりですか。
  140. 小川修司

    ○小川説明員 いろいろな相手国の事業につきましてどういう企業が受注しているかということでございますけれども、この件につきましては、手続のところで申し上げましたように、あくまでも事業の実施主体は相手国の政府でございますので、基金はその政府に貸し付けを行っているということでございます。その調達の契約はあくまでも相手国政府とそれを受注する企業との間の契約ということでございまして、当事者はあくまでも相手国政府でございますので、そういう立場から、基金としてあるいは政府としてその企業名を公表するというのは差し控えるべきであるというふうなことが我々の立場でございます。
  141. 正森成二

    ○正森委員 それでは伺いますが、あなた方は知っていることは知っているのですか。知っていることは知っているが公表しないのですか。それとも相手国政府が契約するのだから、金が相手国政府のしかるべき機関に渡れば後はもう知らぬので、どこの企業がどういうぐあいにやったのかそれもわからぬ、こういうことですか。
  142. 小川修司

    ○小川説明員 いろいろな契約の承認とかそういうチェックの段階で知り得る立場にはございます。しかし、それを日本の政府あるいは基金として公表するかどうかということにつきましては、相手国政府との関係がございますので、こちらから公表するものではないということでございます。
  143. 正森成二

    ○正森委員 それは公表しないということは、どういう法律あるいはどういう内規、規則によって決まっているのですか。
  144. 小川修司

    ○小川説明員 これは相手国政府との関係を配慮したことでございます。
  145. 正森成二

    ○正森委員 だから、相手国政府との関係を配慮したというだけで、それを公表しては悪いという理由あるいはそれを妨げる法規は別にないんじゃないですか。そういうことをやって、そして実際上は相手国政府がどういう契約をしたのか知らないけれども、それを海外経済協力基金だけは何か文書の片隅にでも保管して知っておるけれども、それを何ら公表もしないし、チェックしようとしないということだから、一五%も二〇%もリベートを出して、そして実際上の契約価格はどうなっているかも知らぬで、それで済ませてしまうということになるのじゃないですか。あるいは契約価格では符合しているかもしれないけれども、その契約価格は著しく不当であるということも実際上は全くチェックできないで、相手国政府の言いなりにならざるを得ないということになっているんじゃないのですか。  借款というのは一国の、日本なら日本国民の税金、そして日本国民の貯蓄やあるいは厚生年金の積立金などから出されておる。受け取る方のフィリピン国民は結局のところそれを税金で返さなければならないというように、それぞれの人民に対して責任を負っているものが借款であります。そうだとすれば、それについて相互に明朗さを保障するようなシステムが借款の過程で確立されていなければならないと思うのですね。  先日、NHK等でラウレル副大統領兼首相が、今回からは円借款がそういうように使われないシステムを新しいアキノ政権は確立するというように言っておりましたが、結局政権のあり方によってはそういう疑いを持たれないようにチェックできるはずであります。それを、文書によれば役員会というような暗号名で実際はマルコス大統領の恣意的な処理に任せるということを今まで意識的にやってきたのじゃないのですか。  会計検査院に伺いますが、日本の場合なら会計検査院が政府機関との契約についてもチェックできるはずであります。ここに会計検査院法を持ってまいりましたが、その中では必要的検査事項というのと任意的検査事項というのがあるようであります。よく見ますと、任意的検査事項の最後の方に「国又は公社の工事の請負人及び国又は公社に対する物品の納入者のその契約に関する会計」というのは検査できるようであります。  しかし、これは文字どおり法律を解釈しますと、この「国又は公社」というのは当然日本国または日本の公社を指して、フィリピンなりあるいは第三国を指すものではないという解釈をとるとすれば、会計検査院は遺憾ながらその点については検査をできないというような解釈にならざるを得ないかもしれないと思うのですね。そうしますと、あなた方は国が資本金を出している海外経済協力基金だけは資料の提出を求めることができるということなのかとも思いますが、会計検査院としてできることとできないこと、及び今度のような事態を防ぐためにはどうあれば会計検査院として力を発揮することができるかについて、率直な意見を承りたいと思います。
  146. 吉田知徳

    吉田会計検査院説明員 お答えいたします。  まず第一点の、会計検査院法第二十三条第七号によりますところのこの「国又は公社の工事の請負人及び国又は公社に対する物品の納入者のその契約に関する会計」の条項でございますけれども、これは先生がおっしゃいましたとおり、会計検査院法は国内法でございまして、日本国それから日本の公社への物品の納入者、こういうことになりまして、検査の対象にならないわけでございます。  それから、国が出資しております経済協力基金が実施されます経済援助に対する検査でございますけれども、これは同基金、当然これは国が二分の一以上出資している団体でございますので、会計検査院法第二十二条の規定によりまして検査の対象になるわけでございます。したがいまして、私ども実際の検査に当たりましては、まず基金の本部におきまして経済援助に関します関係書類、例えば、申し上げますと交換公文でございますとか借款協定あるいは関係の契約書、こういった関係書類を見せていただきまして、それを検討いたしまして経済援助が適正に行われているかどうかという検査を実施しているわけでございます。  先生御承知のように、基金の行いますこの援助は、外国政府に対しまして円借款という形の融資でございます。融資の相手先に対しましては、現在の会計検査院法上検査権限はございません。それからまた、援助の相手が外国政府であるということでございまして、主権の問題との絡みもございます。したがいまして、援助にかかわりますところの外国政府等が行いましたところの契約の内容、金額の適否、これらにつきましては当然検査は及んでいないわけでございます。  ただ、検査院といたしましては、毎年一回ないし二回、海外出張を実施しております。その現地に赴きました際に、相手国に所在しております我が国の関係の出先機関の担当者の方々あるいは相手方の当局者というような方から協力を得てお話を伺いながら、事業が実施されております現場に赴きまして事業の実施の状況あるいはそれが有効に使用されているかどうかといった観点からの調査は実施して、状況の把握に努めているところでございます。  以上でございます。
  147. 正森成二

    ○正森委員 結局、会計検査院は海外経済協力基金を検査して、今のお話によりますと工事を実施しているフィリピン国内等の、あるいは日本企業の場合もあるでしょうが、そことの契約も見ることはできる、それから一年に一遍は行きましてその工事が実際に行われているかどうか現実に見ることができる、しかし、それ以上突っ込んだ当否は主権国との関係があってできないという意味の答弁だったと思います。  そこで私も、主権との関係でできないことまでをやるようにと言うわけではありませんが、アメリカで公表された資料を見ますと、非常に簡単な例でも、運賃と保険料がCIF価格のちょうど一割である。私は数十の事例を調べましたけれども、何ドルに至るまでぴたっと一割なんですね。そんな、CIF価格の一割が運賃と保険料の合計で全部統一されるなどということは、通常考えられないのですね。ところが、それが何十という事例について全部そうである。そんなことさえ海外経済協力基金あるいは会計検査院は不思議だと思わなかったのですか。私は、今ここに卓上の計算機を持ってきたのです。それで、さっきそこでポンポンとはたいていたのですけれども、全部CIF価格の一割が海上の運賃と保険料の額である。一ドルと違わないのですよ。そんなおかしな保険料と海上運賃があり得るなんということは、それだけで見たって異常じゃないですか。そんなこともあなた方はチェックできなかったのですか。
  148. 小川修司

    ○小川説明員 先ほどから御説明いたしておりますように、価格の点につきましては原則として国際競争入札を行わせてやるということになっておりまして、自由、公正な競争の結果その契約の価格が決まってくるということでございまして、基金といたしましてはその入札の手続が本当にちゃんときちんと行われているかどうかというチェックはいたしておりますけれども、その結果出てきた価格につきまして原価計算的にそれが本当に妥当なものかどうかというところのチェックは、事実問題として非常に難しゅうございまして、それはやっておりません。
  149. 正森成二

    ○正森委員 勇将のもとに弱卒なしと言うけれども、経済企画庁長官、悪将のもとに悪卒ありで、なっとらぬですな。  いいですか、海上運賃や保険料などというのは、何もその国へ行って土足でその国の主権を侵害しなくても、そんなものはチェックしようと思ったらどこでもできるじゃないですか。その海上運賃と保険料についてことごとく、一ドル、二ドルまでCIF価格の一割でぴしゃっと合った。何十という事例がですよ。そんなものが、おかしいと思えば、チェックしようと思えば幾らでもチェックできるじゃないですか。それもやらないで、実際上は何やらかんやらと言っておる。それはもう全然やる気がない。会計検査院もそんなことすら気がつかなかったのですか。  私がアメリカで公表された文書を見てみたら、一五%のリベートの出ているものについては全部CIF価格のちょうど一割が海上運賃及び保険料の額になっているのですよ。そんなおかしなことはないと思うのですね。何か考え込んでいるから、これ以上聞くと気の毒だから今度は国税庁に伺います。  これは本日ある新聞に出ている記事でありますが、この海上運賃と保険料というのも、これは現実のものではなくて、一割ということで水増しをされておる。それで、その水増しをされた部分についてもマルコス側は一五%のリベートを取っている。水増しされた残りの八五%は関係した日本側の企業がリベートとして実際上は受け取っているということが言われておるのですね。そうだとすれば、これは経理上リベートあるいは利益として計上されているか、裏金として蓄えられているかのどちらかであって、どちらの場合でも円借款に関与した企業については国税庁が厳重に調べてみる必要があると思うのです。  これは、国内でマルコス政権関係の元大使に相当な額が贈られたとか贈られないとかいう記事もありますが、そういう具体的なことについてはきょうここで聞こうとは思いません。けれども、今言いましたCIF価格の一割が常に海上運賃であり保険料である、そしてそれは現実の価格を反映しておらないで、そのうちの一五%は追加リベートとしてマルコス側に払われ、八五%は日本の企業に還流したと現実に証言しているフィリピンとの関係者がおるのですね。そうだとすれば、国税庁としては当然これを調査して、それが経理上明らかにあらわれておるか、あらわれていないならば、その金がどこへ行ったかということを調べる必要があるのじゃないですか。
  150. 日向隆

    ○日向政府委員 私どもといたしましても、御指摘の報道については承知しております。また、そのもとになったと思われます資料も外務省を通じて入手しております。  おしかりを受けるかもしれませんが、これらの資料や御指摘の事柄につきましては、新しい貴重な資料、情報として受けとめまして適正に処理してまいりたい、こう思っております。
  151. 正森成二

    ○正森委員 時間が参りましたので、これで終わります。
  152. 小泉純一郎

    小泉委員長 上田卓三君。
  153. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 きのうも当委員会で触れたわけでございますが、円高デフレが大変進行しておるように思うわけであります。当然、円高による差益で笑いがとまらないような利益を上げている人たちがおることもこれまた事実であります。伝統的な地場産業が急激な円高によって収支がとれない、もう店じまいをするしかないということで、転廃業、倒産の件数も日に日に多くなっておるようであります。  ちまたでは、竹下大蔵大臣円高大臣であるということで、中小企業家、零細企業家の恨みを買っておると私は思うわけでございます。ポスト中曽根をうかがうニューリーダーの一人としてこの状況に対して大蔵大臣はどのように考えておられるのか。仕方ないと思っておるのか。倒産に追い込まれて今苦しんでおる人々に対して言葉をいただきたい、このように思います。     〔委員長退席、中西(啓)委員長代理着席〕
  154. 竹下登

    竹下国務大臣 私がいわゆるストロング・エン・ミニスターというようなことは確かに外国の新聞に書いてございましたが、それをみずからの呼称としてみずからが誇っておるというようなことは全くございません。確かにG5におきましては、今のドル以外の通貨が適正な各国のファンダメンタルズを必ずしも反映していないではないか、こういう合意がございまして、その翌日から市場がそういう合意を受けまして円高基調あるいは非ドル通貨が高くなったという傾向が続いております。きょうの引けが百七十九円六十銭、こういうことでございます。毎日三十分ごとの報告を聞く、こちらも本当に真剣であるからそういうことをしておるわけであります。  この問題につきましては、なかんずく輸出産業、中小企業、そして韓国、台湾等からの追い上げ、それらと競争力が大接戦、こういうようなところに一番影響が出ておることは事実でございます。したがって、それに対しては、国会でスピード審議をしてもらいまして、中小企業者の事業転換等の法律が通って、そして産地を通産省の方で回って歩かれてその御指示によって私どもは協力していく、こういう姿勢を持っておるところでございます。  この問題が急激であっただけに、なかんずくそういう企業に対していわゆる円高のデメリットというものを非常に早目に与えておることは否定できないと思っております。ほくほくという言葉をお使いになりましたが、実際円高のメリットそのものが端的に出ておるのは海外旅行者が一番であろうと思っております。輸入品については、仕切った値段のものが入ってくるのに若干の時間がかかりますので、外国旅行者のような端的なメリットはまだ出ていないということでございます。しかし、いずれにせよ原燃料原資材をみんな買う宿命にあります日本といたしましては、タイムラグはございますものの、円高メリットというものもその時間に応じて出てくるものであろうという期待をいたしております。  一方、この円高によっていわば契約がなくなったりという方々に対する目配りは、きちんとやっていかなければならぬ課題だというふうな問題意識を持っております。
  155. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 私が質問しているのは、円高によって倒産に追い込まれ非常に苦しんでいる、そしてこの円高がどこまで続くのか、若干の国あるいは自治体の援助があっても、やっていけるのかどうかといって非常に不安がっている人たちに対して、大変申しわけないという責任感じておるのかどうかということです。まず、それを聞かせてください。
  156. 竹下登

    竹下国務大臣 財政運営をしておるものとして、急速な円高で苦しんでいらっしゃるということに対しては私なりの認識は十分に持っております。ただ、責任ということになりますと、私自身がいわば世界の市場を操作しておるというふうな誤解を受けてもなりませんので、そういう意味でなく、現在、日本大蔵大臣として、円高不況に悩んでいらっしゃる方々についての問題意識は十分に持って、それに対応しなければならない責任感じております。
  157. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 結局、責任感じてないのじゃないかと思いますね。やむを得ないじゃないか、わしだけの責任じゃない、こういうことになろうかと思います。そういう意味で、大蔵大臣は血も涙もない大臣だということにならぬようにお願い申し上げたいと思うのです。  いずれにいたしましても、昨日も申し上げましたように昨年九月のいわゆるG5、先進五カ国蔵相会議で、このままのドル高というものを放置できないではないか、当然アメリカの経済の実態に合っていない、恐らく急激なドル暴落が世界経済に与える影響、それをどう少しでも緩和するか、そういうようなこともあり、やはりここでG5としてドル高に対して介入をして下げさせよう、こういう一つの談合、僕はやらせということも申し上げたわけでございます。  そこで大臣、ドル高を是正するということは円高になるということでありますが、一ドル当たりどのぐらいのレートであれば適正であるかという一つの物差しが僕はあったんじゃないか、何しろ下げればいいんだということではなかろうと思うのであります。  そういう点で、きょうの為替変動も少し安くなっておるようでございますが、いずれにいたしましてもこの六カ月間で約七十円近く、四〇%近くの円の切り上げ、ドル安ということになるわけでありますから、私はこの数字というのは何かドル暴落そのものを表現しているのじゃないかと思っておるわけでありますが、恐らく後世の人たちはそういうような表現をするだろうと思うわけでございます。八年前の円高のときは、百八十円前後が一カ月ほど続いて、そして間もなく二百円前後ということで何とか落ちついたという経過があるわけでございますが、本当に大臣として今のこのドル高が正常だと思っておられるのかどうか。この一月末ごろでしたか、二百円ぐらいのときに、大臣はたしか百九十円ぐらいが適正水準ではないか、こう言うた途端に、二百円から百九十円を通り越して百八十円台にだんと円高になった。あんなこと言わなかったらこんなになってなかったんじゃないかなというようにも思わざるを得ないわけであります。  先般、参議院におきまして中曽根総理は明らかに、当時一ドル百七十五円でございましたが、これは行き過ぎておる、急激な円高によって現実これは行き過ぎておる、こういう発言をされておるわけでありますが、大蔵大臣としての考え方をお聞かせいただきたいと思います。
  158. 竹下登

    竹下国務大臣 総理がそのようなお答えをなさったのは私も聞いておりました。ただ通貨当局者は、自分の適正相場だけは自分が仮に念頭に幾らかのものを持っておったといたしましても、それを口外しないというのがお互いの取り決めになっております。少なくとも急速に過ぎるというようなことはこれは客観的に見て言えると思いますが、幾らが妥当かということだけは、やはりスペキュレーションといいますか投機を誘発するということになりますので、差し控えさせていただきたいと思います。
  159. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 総理は行き過ぎであるということ、大蔵大臣は当事者ということもあっていろいろ配慮して、それが行き過ぎであるということについてはコメントを控えたい、こういうことのようでございますが、いずれにしても当時、G5のあの会議のときは、一定のこのぐらいまでということがあったんじゃなかろうか。なしにやったのですか、僕はあったんじゃないかと思うのですが。そのことから見て、昨今のレートというものは正常である、このぐらいだと思っておるのか、いや、これは高い、やはり逆介入をしてもっと何とかしなければならぬと考えておるのか、その点は、国民がみんな心配しておるわけでありますから、やはり国民を安心させるという意味で当事者である大臣の発言を待っておるのではないかと私は思います。いたずらにそういう発言をしないということは、さらに混乱を引き起こすもとになりはしないだろうかと考えておりますので、お答えいただきたい。
  160. 竹下登

    竹下国務大臣 総理が発言されたことは、客観的にそういう発言はあり得ることだというふうに私も感じております。
  161. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 いずれにいたしましても、十一月からことし二月までの間に既に六十九件の円高倒産という数字が出ておるようでございますし、今後さらにかなり続発することは火を見るよりも明らかな状況ではなかろうかと考えておるわけであります。  そこで、この円高デフレ、特にそういう地場産業の中小零細企業に対して緊急対策が必要であるということでいろいろ考えておられるようでございますが、一つ予算の前倒しということもあろうと思います。これも最近、毎年やっていますよね、七〇%ぐらいの前倒し。実際それが八〇%になったからといってそんな大きな期待が持たれるのかどうかということで、我々としては若干懸念をいたしておるわけでありますし、また緊急融資というものも金利引き下げということもあろうかと思いますが、やはり一番手っ取り早いのは公定歩合のさらなる引き下げということになるんじゃないかと思います。  いずれにしても、片方においては財政の手を縛っておいて金利引き下げというようなことをしても、その効果というものがなかなか出てこないのではなかろうか。そういう意味で思い切った抜本策というのですか、今までのようなありきたりのやり方ではなしに、例えばきのう宮澤総務会長が中曽根総理に提言をしていますよね。本当に外需主導型じゃなしに内需主導型でもっともっと社会資本を充実して景気回復策をとるべきだ、こういうことを言われておるので、そういう意味では本当に勇気ある提言だと思うわけでありまして、恐らく内心ではそういう立場であったらわしが言いたいところだというように大臣は思っておられるのかどうか、よくわかりませんが、いずれにいたしましても、そういう提言は個人の意見というよりも、これはもう野党がしばしば言うてきた問題でもありますし、また政府・自民党の中でもそういう意見が、赤字国債の増発もやむを得ない、こういうことも含めて景気回復策が議論になっておるということでありますので、その点について竹下大蔵大臣の、この円高デフレに向けての決意というものを承りたいと思います。
  162. 竹下登

    竹下国務大臣 今おっしゃいました中で、まずいわゆる前倒し、こういう問題、よく私ども考えますのは、農村が疲弊したときに救農土木というような形でやりますと、これはそこにいらっしゃる方がそのまま今度は労務者にかわっていかれるという意味で即効性がございますが、今度の産地対策で必ずしもそういう即効性があるかどうか、それよりも経済全体がデフレ現象を起こさないための総体的施策としての前倒し、こういうようなことが議論をされるであろう、現にされておるというふうにも考えております。予算が通過いたしますや否や、恐らく一連した対策を総理主導あるいは経済企画庁が中心になられてまとめられるであろう、今も事務当局でそれぞれすり合わせをやっておると私も理解をいたしておるところであります。  それから緊急融資、これは法律を通していただきましたので対応できる措置であろう。  それから公定歩合の問題は、日銀の専権事項でございますが、いわゆる第二次の下げがこの三月三十一日から実効が出てくるわけでございますので、それぞれ判断があるところであろうと思っております。  それから抜本策、こういう意味におきましては宮澤提言、あるいは国会でそれこそ上田提言、たくさんいただいておりますが、私どもはこれらは謙虚に承るべきものであるという理解の仕方をいたしております。宮澤提言は、基本的に財政改革を進めていくことは評価しようという前提の上に立って幾つかの提言がなされておるわけでありますが、内需振興型へ変わっていくというのは、非常にスピーディーに仮にやりましても一日二日でできることではございません。が、まさに我が国の持つ産業構造そのものを将来転換していく方向にリードしていかなければならないであろうという基本原則は私も理解をいたしております。  建設国債増発問題につきましても、建設国債もしょせん残高になったら赤字公債と同じことになってしまうという悩みは確かにございます。が、私どもが行った施策の中で、補正予算で御理解をいただきました六千億の公共事業の契約を可能にしていただいた、債務負担行為でございますが、私は、あれらが前倒しの効果に対して直結していくのではなかろうかという期待も持っておるところでございます。
  163. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 やはり中曽根行革というのですか、「増税なき財政再建」こういうことでありますが、これはやはりどうしても、一方において軍事予算をふやすということがありますが、片方において教育予算福祉予算、その他自治体に対する補助金のカット、当然国が持つべき国庫負担を減らす、地方に転嫁する、こういうことで日本の景気に対してマイナスの効果を果たしてきておったのではないか。アメリカ経済がああいう状況でありますから、経済大国として日本が世界の経済をリードするという意味ではもっと積極的な財政対策をすべきであって、世界が今景気が落ち込んでいるから日本もこのぐらいでいいのだというのではなしに、逆に積極的に成長率をやや高めにしてリードしていくという積極策がなければならぬのではないか。そういう意味では非常に後手後手になっておって、私は、中曽根行革というのはもうやはり色あせてきたというのですか、もうそろそろ選手交代、こういうことになってきているのではなかろうか。そういう意味で、今度の円高デフレというこの状況のもとで一大転換をぜひとも図っていただきたいと思っておるわけであります。  そこで、きょう経企庁の方もお見えでございますので若干御報告願いたいわけでございますが、新聞報道などを見ますと、洋酒の一部あるいはアメリカの車あるいは洋書などは結構小売価格が下がりつつあるような感じはするわけでございますけれども、しかし全体としてもう一つ、消費者にとって輸入品が安くなったという感じは全然していないわけでございます。卸売物価については若干下がっておるようでございますけれども、消費者物価は下がっていない、こういうことでございます。そういう点で日本経済全体として今度の円高によるメリットというもの、それからそれの還元というものについてどのように見通しを持っておられるのか、お答えをいただきたい、このように思います。
  164. 大塚功

    ○大塚説明員 円高のメリット、デメリットでございますけれども、御指摘のとおり両面でございます。まず一般的に申し上げますと、円高が続きますと輸出数量が減少し、輸入数量は逆にふえてくるという形でGNPを引き下げる効果が働きます。これがマイナス効果ということになるわけです。一方、輸入物価が下がりまして、これが徐々に全体の物価に波及して全体の物価水準を引き下げてまいりますと、一方で家計におきましては実質的な購買力がふえるということになりますので、家計部門の消費がふえる。それから企業につきましても、原材料価格が低下するということでありますから、こういう面からは企業収益が改善するということでございまして、例えば企業の設備投資需要などが出てくるということでプラス面が出てくる。これを交易条件改善効果と申しておりますが、そういうことでございます。  ただ、この両効果の働くタイミングにつきましては、日本経済考えてみました場合には、まず相対的には輸出数量等に影響があらわれる、それから物価の低下が徐々に浸透していって交易条件効果が出てくるということでございますので、当面はやはりGNPを押し下げる効果の方が相対的に強いということであろうかと思います。
  165. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 通産省の方にお聞きいたしますが、電気、ガス事業については円高原油価格の低落で大体一兆三千億から一兆五千億ほどの差益が出るのではないかと言われておるわけでございますが、この差益を内需の拡大のために使う、また消費者に還元する、国民に還元するということは当然のことではないかと私は思っておるわけでございます。そういう点で料金の値下げあるいは料金体系の見直し、そして電気それから電話の線の地中化、共同溝で埋めるという具体的な還元策というものがいろいろ議論されておるわけでございます。ぜひともこれを早く実施することが大事だと思うわけでございまして、その中身と、そして実施については遅くとも五月ごろからやっていくんだという意気込みが大事だと思うわけでありますので、その点についての通産の考え方を述べていただきたい、このように思います。
  166. 林昭彦

    ○林説明員 お答えいたします。  円高あるいは油の値下がりに伴いまして電力あるいはガス両業界に相当大きな差益が発生するということは御指摘のとおりかと思います。ただ、現時点で例えば石油価格が先行きどうなるかということはまだ必ずしも明白でない、不透明なところがあるというようなこともございますが、私どもとしては、電力あるいはガスの需要家からの早期還元を求める声が非常に強くなっているということは十分承知しておりますので、こういう油の動向あるいは為替の動向というものの実態を十分に把握いたしまして具体的な対応を検討しているわけでございます。  現在有識者によります電力・ガス差益問題懇談会というものを設けまして、対応策の大枠につきまして論議をお願いをしておるわけでございまして、今月の二十八日に報告をいただけるという段取りになっております。この報告をいただきまして、電気につきましては電気事業審議会、ガスにつきましてはエネルギー調査会の都市熱エネルギー部会におきまして議論をさらに詰めていただきまして、私どもとしては六十年度の決算が明らかになります五月ごろにはめどをつけたい、筋の通った差益の対応の方策を検討したいというふうに考えております。  また、内需拡大に関しましても、御指摘のように例えば地中化といったようなことで社会的ニーズが非常に高い、あるいは設備投資の一層の積み増しという観点からも期待が高いということで、私どもとしても現在の差益問題懇談会でも検討をしていただいておりますけれども、特に電力が大きな設備投資をやっておりますので、電力業界にもお願いをいたしまして、中で委員会を設けましてそこで一層の積み増しあるいは前倒し発注の検討というものを進めてもらっております。私どもとしても、早急にこの結論が出てくるものというふうに期待をしているところでございます。     〔中西(啓)委員長代理退席、委員長着席〕
  167. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 経済あるいは企業というものは生きておるわけでありますから、そうして急激な円高ということで大変な状況にあるわけでありますから、それに対する対策というものは、平時じゃないわけですから、緊急時でありますから、早く手当てをするということが大事じゃないか。円高差益についてもある程度大まかな数字が試算されるわけでありますから、そういう点でそれの有効な使い道というものを早急に立てて実施に移す、こういう形にしていただかないと、庶民感覚からすると、中小零細企業の立場から見ると、どうも税金はがっちり取られておるが、やってもらうことはなかなかのんびりしている、こういうことになっておるわけでありますから、どうかひとつその点についても大臣の方においても篤と理解をしていただきたい、このように思います。  そこで、公取の方お見えのようでございますが、昨日の新聞でも、自動車の各社が部品メーカーに値下げの要求をし始めた、こういうようなことが報道されております。また、中小企業庁によれば、既に輸出産業の下請中小企業が下請代金の値引きやあるいは買いたたきなど不当なしわ寄せを受ける事例も目立ち始めている、こういうことを言われておるわけでございます。いかに円高だというものの、弱い立場にあるところの中小零細企業が不当なしわ寄せを受けるということはもってのほかではないか、こういうふうに思うわけであります。下請法の遵守あるいは不正取引の防止などに積極的に取り組んでいただかなきゃならぬ、こういうように思っておるわけでございます。  まず、公正取引委員会として実態調査に乗り出す構えだ、こういうふうに言われておるわけでありますが、その点についての対応策をどのようにされておるのか、具体的にお聞かせをいただきたい、このように思います。
  168. 鈴木満

    ○鈴木説明員 親事業者が円高を理由としまして既に決められている下請代金を減らしたり発注単価を一律に切り下げる等の行為が予想されますけれども、円高対応するために必要であるという理由であっても、既に決められた代金を減額することとか、あるいは発注単価を同種の発注単価に比べまして著しく低く定めることは、下請法第四条一項三号あるいは五号の規定に違反する行為でございます。公正取引委員会といたしましては、最近の急激な円高に関連しましてこのような下請法違反行為が行われることのないように、昨年十一月十九日に親事業者六千四十五社、それからこの団体でございます百八十三団体にこういうことのないよう要請をいたしたところでございます。  公正取引委員会といたしましては、円高に伴う下請取引の実態を把握するためにこの一月二十五日に製造業の資本金三千万円以上の四千四百十九社に対しまして特別調査を行いました。また現在、これらの親事業者と取引しておられる三万二千の下請事業者に対しまして、円高に関連して下請代金の買いたたきとかあるいは下請代金の減額等の行為を受けていないかどうかを調査をしているところでございます。さらにことしの五月、六月については五千二百社の製造業者、それからまた、その取引先下請事業者でございます一万八千社に対して同様な調査を行うこととしております。合わせますと、下請事業者約五万社に対して調査を行う予定でございます。  違反行為が起こってから防止をするということも必要でございますが、むしろそういった違反行為を起こさないようにしていただくために未然防止の努力を図っております。例えば輸出関連産業でございます電子機械業界の日本電子機械工業会では、昨年十一月に下請法遵守マニュアルを作成していただきましたが、ことしからは日本自動車工業会で同じようなマニュアルを作成していただくようお願いしておりまして、現在プロジェクトチームを組んで作成中でございます。  このように、公正取引委員会では、円高に関連して下請法に違反する行為が起こったり下請事業者が不利益を受けないよう下請法による指導の強化を図っておりますが、さらに具体的な下請法違反行為に接しました場合には、法の規定に従って厳正に対処する所存でございます。
  169. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 そういう弱い立場の人々に過重な負担がかからないように、厳重にひとつ監視監督、指導をしてもらいたい、このように思います。  そこで、大蔵大臣にさらに質問申し上げますが、新年度の税収見積もりは四十兆五千六百億円、名目成長率は五・一、実質は四%、こういうことでございますが、この予算編成のときの円レートは一ドル二百九円が前提の計算であったが、この前提が急激な円高によって早くも崩れつつあるという現状であろう、このように思うわけであります。  きのうも申し上げましたが、日経新聞によると、一ドル百七十五円の水準が続くとすれば成長率は一・九%前後に落ち込むのではないか、こういうことを報道しておるわけであります。このままの事態で推移するということになりますと、約二兆円あるいはそれ以上の大幅な歳入欠陥ということが予想されるのではなかろうか、こういうように考えておるわけでございます。もともと実質四%というものもちょっと高目の底上げのような感じを我々はしておって、新年度の予算によってそれが実際そういう効果が上がるのかどうかということで国会でも議論になっておるところであろう、こういうふうに思うわけであります。そういう点で、この税収見積もりはやはり検討し直す必要があるのではないかというように心配をいたしておるわけであります。  それは、六十年度についても、昨年末四千五十億円の歳入欠陥の見込みだということで、いわゆる国債の増発によってこれを補正する、こういうことをしたわけでございますが、これ自身も、さらに景気の落ち込みでなおかつ六十年度の歳入欠陥が生じないだろうかということで、一部政府内においても心配だという人もあるように聞いておるわけであります。  そういう点で、急激な円高によって六十年度の補正予算あるいは六十一年度の新年度予算についての見積もりの見直しということが考えられるのかどうか、その点についてお聞かせいただきたいと思います。
  170. 竹下登

    竹下国務大臣 あるいは正確を期するために主税局長からもお答えした方が適当かと思いますが、円高の定着が企業収益面に与える影響につきましては、物価の一層の安定化と原材料コストが低下いたしますので、そういう点においてはプラス効果があります。が、輸出産業については輸出数量の減少もあり得るといった、これはマイナス効果もあります。また、円高の定着は、従価税でございますいわゆる石油税、それから、そのウェートの高い関税についてはマイナス効果が考えられるのは当然のことであります。これは、課税数量がどうなるか、こういうこともございましょうが、従価税は余り数量が変わらなければ当然マイナス効果であります。ですから、円高が全体の税収にどのような影響を及ぼすかということにつきましては、慎重に今後の経済動向の推移を見守っていかなければならぬ課題だというふうに思います。  そもそもが、私どもも通していただきました補正予算においてはおっしゃるとおり減収を一応見積もって、そうして、今のところの税収の経過を見ますと今のところはまずまずだなという感じがいたしますが、この後三月期決算にどうあらわれてくるかというのが私どもも一番関心のあるところでございます。  それから、本予算につきましては、まだ参議院で審議中に私から言うわけにはいきませんが、総体としてかなり積み上げてきておりますので、ヒアリングをしたりいたしまして私は、現段階においては見積もりとしては最も適正なものをお出しして御審議いただいておる、が、今後の推移については十分注意していかなければならない課題であるというふうに考えております。
  171. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 円高のメリット、デメリット、こういうことで、一部ではメリットというものは五兆円の減税にも匹敵するというようなことを言う人もあるようでございます。しかし、大臣もお認めのように、深刻な円高デフレというこのことも事実あるわけでございまして、やはり予算の見込み違い、税収が大幅に落ち込むということも大いに考えられるわけでありますから、税収ということも考えて一日も早く大胆な円高対策ということを、財政出動も含めて検討していただかなければならないし、また同時に、その円高のメリットの部分をどうデメリットの方に導入するか、こういうことでなければならぬ、私はそういうふうに思っているのです。  そういう点で、ややもすればメリットの部分が金融の方に回って、最近の株の値上がりとかあるいは土地の値上がりに見られるように、そっちの方に行ってしまったのでは意味がないわけでありますし、また、円高差益が資本として海外に出て行くということではこれまた意味がないわけでありますから、やはり国内での内需拡大に重点的に充当するということでなければならぬだろうと思います。また、国民あるいは消費者に見える形で還元する、なるほどと納得できる施策が大事ではないかと思うわけでございまして、やはり結果が出るわけでございますので、この点ひとつ重大関心で、重大な決意でお取り組みをお願い申し上げたい、このように思います。  さて、税制の抜本的改正、こういう言葉がしばしば国会論議の中でもあるいは新聞の論調などでも出てきておるわけでございます。しかし、その具体的な中身になりますと、政府税調の検討結果を踏まえて云々と、こういうことでどうも全体像が明らかでないように思うわけでございます。選挙までは減税、選挙が終われば秋は増税、こういうような、国民はどうもペテンにかかるのではなかろうかというような警戒心が大いにあるわけでございまして、ちまたでは、EC型の付加価値税あるいは福祉特別会計の財源としての大型間接税の導入の検討、こういうようなこともちらほら出ておるところでございます。やはり、実施するところの減税は幾らである、そしてそれに見合うところの財源はどうするかということをわかりやすく国民に示すことが大事ではないか、こういうように私は思うわけでございます。そういう点で、基本的な問題は政府で方針を出し、具体的な技術面というのですか、そういう面については税調などで御審議いただくことが大事であろうかと思うわけであります。  そこで、八七年度ということになるかもわかりませんが、本当にどれぐらいな減税をしようと考えておるのか。我々は新年度で二兆三千億の減税、こういうことでございますが、学者とかあるいは文化人とか、また政治家の中では、思い切って五兆円ぐらいの減税を今こそすべきではないか、こういう意見があるわけでございまして、私どもも五兆円で決して多いことはないという感じがいたしておるわけであります。そういう点で大蔵大臣として減税額を一体どのくらいに考えており、また、その財源を一体どのように考えておるのか、ひとつ明確にお答えをいただきたい、このように思います。
  172. 竹下登

    竹下国務大臣 基本的には、おっしゃいましたように、税調審議を待たなければなりませんが、ただ、総理が申しておりますことは、いわば審議の手順についての御要望を申し上げた。すなわち、痛みはどこにあるのか、ひずみ、ゆがみはどこにあるのか、そういうところから審議していただいて、そして春ごろまでにそれらをおまとめいただき、総体的な問題は秋に答申をしてくれ、こういう手順を申し上げたわけでございます。したがって、私も、いわば税制調査会からの中間報告というのがあったといたしましても、仮にもしあったといたしましても、いわば減税規模、規模というような定量的なものは恐らく出ないんじゃないかなと思っております。定性的なものではなかろうか、これは想像でございます。  したがって、今仮に所得減税一つとって、五兆円といえば所得税の大体三分の一でございますから大変なものでございますけれども、そういういわば定量的なものを念頭に置いて税調審議をしていただくということは考えていないという考え方でございます。すなわち、定性的なお答えをいただいて、それに対して政策選択としてどのような数字を当てはめていくか、こういうことになりはしないだろうか。したがって、先般の幹事長・書記長さんの会談で、年内に成案を得る、こう言っていらっしゃるのは税調審議というものも横目ににらみながらお考えになった合意文書ではないかなというふうに、さすがだなと思ってこれを見ておるというのが私の実感でございます。
  173. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 先般大阪から減税列車が参りまして、代表者に大臣が会っていただいたというような経緯もございます。また来月は福祉列車ということで大阪から来るわけでございますけれども、いずれにしてもそれだけ国民は関心が深いということではないか、このように思っております。  田中内閣時代に二兆円の減税がありましたね。これは今で見ますと約四兆円くらいの値打ちがあるのではないかというように思うのですが、こういう状況ですので、どうか思い切った減税というものを、五兆円くらいは最低必要だということで強く要望申し上げたいと思います。  それではその財源はどうなるのかということでございますけれども、私もしばしば当委員会でも申し上げておるわけでございますけれども、利子配当課税などを強化するということも当然ありましょうし、また土地資産評価税などで十分賄うことができるんじゃないか。あるいは租税特別措置というものも、そういう必要な時期にできたわけでありますけれども、時代の趨勢から見てもう既に必要でないという部分もありはしないだろうか。あるいはまた逆に新たに創設しなければならない、そういう分野もあってしかるべきだ。そういう意味で抜本的に租税特別措置法というものも見直すということがなければ、一たんできたものは既得権としてそのまま残っていくということはいかがなものだろうか、こういうように思っておるわけでございます。  先ほども申し上げましたように最近の円高デフレ、こういう不況というものの中で、だぶついたお金が株や土地投機に向かって金融資産として回っておるということでありますから、そういうものを規制するという意味からもやはりそのための財源対策ということが大事ではないか、私はこのように考えておりますので、その点について特に大臣の方で御理解をいただきたい、このように思います。  次に、先ほどから問題になっておりますところの赤字法人の課税、これは主税局長も赤字法人に課税するんじゃない、黒字法人に課税するんだ、こういうことでありますけれども、やはりそれはずっと赤字法人の体質があって、時たま黒字になった、こういうことでございます。それに対して直近一年ということで、前年度の欠損については停止する、こういう形で、二年前でしたか、黒字の企業が赤字になるということで欠損の戻し、それに対する還付制度があったわけでありますが、それが一時停止されるというようなことがあったわけで、それの逆のような今回の措置ではないかというふうに思っておるわけです。これは、五〇年のシャウプ税制以来企業に対する課税というものが、税ということになれば単年度単年度ということになるわけですけれども、やはり企業というのは生き物でありますから、長い年月の中で赤字のときもあれば黒字のときもある、それをトータルしてどうするという形に流動的に対応していかなければならぬということではなかろうか、こういうように思っております。  そこで、中小零細企業に赤字法人が多いわけでございますが、そういう中小零細企業が何か脱税しているのではないか、わざと赤字を偽装しているのではないか、だからこれに対して税金を取り立てるべきだというような意見も――一部にはそういう悪質なものも新聞等で報道されることはよく知っておるわけでありますが、中小零細企業が特に円高デフレというようなこともあって非常に苦しい状況にあることはよく御存じのことではなかろうかと思っているのですね。  そこで、これは主税局長で結構でございますけれども、この企業に対する法人課税、課税というものはどういうことが正しいのか、そして今やろうとしているのはその中で許されるべき措置なのかどうかということをお答え願いたいし、またこういう制度というものは、アメリカでもイギリスでもどこでも、日本と同じような形で単年度で見ないで総合的に数年にわたっての動向の中で対処しておるというように思っておりますので、その点についてお答えをいただきたいと思います。
  174. 水野勝

    ○水野政府委員 御指摘のとおり法人税につきましては基本はそれぞれの事業年度課税でございますが、そこは継続企業の実態に即応して繰り越し等の措置が講じられているところでございまして、御指摘のように諸外国でもそれぞれの国に応じた措置が講じられているところでございます。  我が国におきましても、法人課税が始まりまして以来、全く適用を認めなかったり延ばしてみたり、いろいろ時代があったわけでございまして、それが御指摘のようにシャウプ勧告によりまして大体現在のような制度になって定着をしておるわけでございます。その中身は五年間の繰り越しでございます。  今回の措置は、五年間を四年間にするとか六年間にするわけでございませんで、直近一年のものを停止するということでございまして、これは全体の姿からいたしますと、やや暫定的と申しますか異例と申しますか、余り素直な形のものではないわけでございます。基本的にはこれは、何年間通算するのか、御指摘の繰り戻しも含めてゴーイングコンサーンに税制上との程度の配慮をするかという財政事情との兼ね合いで基本的に決められるべきものであろうかと思いますが、今回は厳しい財政事情のもとで、全くの赤字ではなくてその年度に黒字の法人について一年間だけの停止をさせていただくということでございます。そういう意味からしますと、御指摘の許される範囲がそうでないかという点からいたしますと、基本的な姿での改正ではございませんので、どちらかというと暫定的なものでございますので、今回はそういうものとして、ある意味では異例なものとして御理解を賜り、今後の抜本的な改正作業の中でこの本来のあり方についてなおさらに検討されるべきものではなかろうか、このように考えているわけでございます。
  175. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 欠損金の繰越控除制度、これは我が国だけではなしに、アメリカは五年ではなしに十五年ですよ。イギリスは無制限ですね。そしてドイツとフランスは我が国と同じように五年。こういうことのようでございまして、本来は企業に対する課税の場合はそれが当然のことであって、優遇を与えているというような問題ではないと私は思うのですね。アメリカの場合は十五年間見ている。優遇措置として五年間を見ている、そうではなくて、当然の行為として法人企業に対してはそれは許されるという立場ではないのですか。お答えください。
  176. 水野勝

    ○水野政府委員 基本は単年度課税でございますが、継続企業の実態に即応してある程度の通算期間を設けるということは、これは恐らく継続企業に対します自然な姿ではなかろうかと思います。それについて、今回最終的な結論を出してこうしたというわけではございませんで、厳しい財政事情の中で若干のものをお願いしようということでございまして、恩典として認められているものをここでどうしたとか、そこまでの根本的なものとしての改正をお願いするところまでには至っていないというところでございます。
  177. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 それでは、今まで中小企業の場合は恩典があるんだ、それをこういう苦しい状況のもとだから一部制限するんだというものではないということですね。ということは、直近一年間の停止というのは、本来的に言うならばこの制度にはなじまないということになりはしないだろうかと私は思うのです。  具体的な例で申し上げますと、そういう企業があるかどうかということは別にいたしまして、去年は八千万円の欠損金が出た、過去五年のトータルで二億円の欠損が出ている、そうしてことしは黒字になったという場合に、二億円のうちの八千万円については控除の対象にならない、こういうことになるわけですね。ことしの収入というのは、もうかったのではなしに、たまたま過去の損金を穴埋めするために資産を売却して二億円の利益が出た。こういう場合、本来ならば五年間見てもらっているわけですから税額はゼロ、こういうことになりますね。ところが、一時停止するんだということになりますと、前年度の八千万円に対して税がかかってきますね。恐らく五千万ほどの税金がかかってくるのではなかろうかと思うのです。過去の借金を清算するために資産を売ってせっかく二億円の金を得た、しかしそのうち五千万からの税金を取られるということになったら、その会社はもうつぶれる以外にないわけですね。そういう矛盾をはらんだ中身であるということはわかっていますか。お答えください。
  178. 水野勝

    ○水野政府委員 まさに企業を継続企業として考えてこういうふうな五年間の繰越制度があるわけでございます。したがいまして、その年としては繰越控除はできないわけでございますけれども、二年目、三年目、四年目というふうに、なお四年間につきましてはその部分の控除の機会は残されておるわけでございますので、そちらの方で御活用いただきましてその欠損金を消していただくようにお願いできればと思うわけでございます。
  179. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 私が今言ったケースが出てきたら、その会社はつぶれざるを得ないのではないですか。過去五年間に二億円の欠損金が出た、このままではどうにもならぬから資産を売却した二億円でこれを穴埋めしようというときに、たまたまこの五年の中の直近一年の繰越控除が停止されるということは、前年の赤字の八千万の部分に対しては課税がされるわけですね。これはどうやって税金を納めるのですか。
  180. 水野勝

    ○水野政府委員 直近のものは控除が停止されますが、その前の四年間の部分につきましては、ことし資産を処分されて利益が出た場合控除されるわけでございます。専らその前の年の部分だけの話でございますので、過去に大きなものがあり直近の一年もあったというときには、二年前から五年前のものについてはことしは控除されますので、まさに去年一年の分だけについて、しかもその年だけ繰越控除を御勘弁いただきたいというところまででございます。もし資産を大きく処分されて過去の大きなものを消そうというときには、二年以前のものであればそれは控除ができますので、そこを御活用いただければと思うわけでございます。
  181. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 それはわかっているのですよ。  五年間で二億円の欠損が出た、直近一年間はそのうちの八千万である、資産を売って二億円の所得を得た。そうすると、八千万を除いた一億二千万は当然面倒を見てもらえますね。しかし、直近一年間の八千万に対して税がかかってくるわけです。そのお金がないではないかというのです。二億円の資産を売っても、結局税金に取られて過去の赤字を清算できない。その企業は倒産せざるを得ない。倒産してもなおかつ税金を取られるという矛盾が出るのではないかと言っているのですよ。  そこで主税局長がおっしゃっているのは、それだったら二億円売らぬで、一億二千万円分ぐらいを売っておいて来年度につないでいったらいいということですか。しかし、それで一年間経過すると、前の一年間のものが今度また残されていくわけです。先へ送っていたものが全部、過去の分が残されていく、特典がなくなってしまう。特典という言葉はおかしいですけれども、そういう措置がなくなっていくわけですからね。企業というのは生きたものでありますから、そんな生易しいものではないということです。借金があっても、ある程度資産を売らなくても待ってくれるという状況であれば別ですよ。しかし、そういうことは少ないのではないですか。答えてください。
  182. 水野勝

    ○水野政府委員 まさにその年に資産処分をされた場合でも、古いのから御利用いただければ、そこはぎりぎり二年目までのものは控除されるわけでございます。直近のものが八千万円でございましたら、その部分はことしとしては、もしそのほかの部分で全部消せない場合には課税所得が出てまいりますが、一億二千万なり何なりといったものは控除をされますので、ことしの資産処分額がそれより大きかった場合には八千万の部分が若干食い込んではまいるわけですが、そこで大きな処分をされたらその部分につきましては、担税力をごらんいただいて何とか納税をいただければとお願いをするわけでございます。
  183. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 今私が申し上げた例で言うと、その納税のお金がないのですよ。どこで取るのですか。二億円の資産を売却して所得があれば、これは過去五年間の借金にまず充当すべきではないですか。それをあなたは、充当しないでそのうちの五千万円を税金として取ると言う。そのやり方は余りにもえげつないのじゃないですか。関西の言葉で言ったらえげつなさすぎますよ。そんな状況にある企業であっても税金を取るのですか。大臣、この矛盾をどうしますか。
  184. 水野勝

    ○水野政府委員 借金の方は別といたしましても、とにかく法人といたしましては、その年に処分をされ二億円なら二億円の所得が発生しましても、それは五年前、四年前、三年前、二年前のもので相殺されるということでございます。なお残余があれば、それにつきましてはその年としては控除はできないかもしれませんが、翌年にはまたそれは控除されるわけでございますので、二年目、三年目以降にはそれは控除されるんだということで御計画をいただきまして、納税の方に御理解を賜ればと思うわけでございます。
  185. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 その企業が来年まで続かないのですよ、倒産してしまうのですよ、その時点で。停止するわけです。私、言っているのは、来年も再来年もいける状況の企業であったらそれでいいのですよ。それも一つ成り立つと思うのですよ。しかし、資産を売却して過去の借金を清算しなきゃならぬ状況のもとで、直近の一年間の部分が停止せられてなかったらまだ生きる道もあると思うのですよ。しかしそれを、五千万円の税金をばしっと取られてしまったときに、その企業はそれで倒産してしまうじゃないですか。いや来年と言うたって、その企業にとってはもう来年はないのですよ。どうします。ない企業からどうもできないじゃないですか。
  186. 水野勝

    ○水野政府委員 繰り越しなり繰り戻し、現在は停止されておりますが、繰越制度を含めたそういったものは継続企業を前提といたしておりますので、その年度で処分をしてそこで事業が終わるというところの点につきましてはこういった制度が前提といたしておりませんので、これは通常の場合のように、五年前のものであっても二年、三年目のものでございましても、その企業が処分をしてなお控除し切れないで解散をされるという場合とそこは同じような状況のものではないかな、こんなふうに考えるわけでございますが……。
  187. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 いや、だから、企業が存続する場合はまあいいだろうけれども、もうそこでパンクしてしまうという状況の場合には、このことについては適用しないということを言えますか。
  188. 水野勝

    ○水野政府委員 そこは今申し上げた繰り返しになりますが、継続企業としての制度でございますので……(上田(卓)委員「継続企業の場合はそれでいいんだよ、継続できないんだよ」と呼ぶ)それは現在の控除制度でもある問題ではないかと思うわけでございます。個人につきましては廃業した場合の特例といったものはございますが、法人につきましては、まさに事業体としては継続企業というものを前提としております。全般的にそのように仕組まれておりますので、その点は御理解を賜りたいと思うわけでございます。
  189. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 直近一年間のこの停止ということに基づいてその企業が倒産するという場合を私言っているのですよ。だから、その点誤解のないようにひとつ理解を十分してもらわなければいかぬ。これは大臣、ひとつ十分考えておいてもらわぬと、そういうケースが出てきますよ。  それで、五年間の欠損があるということは、それは利子のつく金で、借金なんですから、やはり矢の催促というのがあるわけですよ。だから、それに対してどうしようかということで資産を売るということの中から、直近一年間これが停止ということでなければ何とか回っていくのに、今度の措置があったためにもうけつまずいて倒産ということになってしまうわけでありますから、何とかいけるような企業がみすみすこの措置によってここで事業体として廃業に追いやられるということについては、もうゆゆしき問題だ、このように思うのですね。  それから同時に、黒字企業であった、そしてことしは赤字であった、いわゆる繰り戻しというものが今まで認められておったにもかかわらずそれも認めてくれない、こういうような形。あるいは、去年八五年には、利子とか配当にかかる源泉徴収の税額還付の繰り延べなどをやられていますよね。そういうように、中小零細企業、いわゆる赤字体質にあるこの企業に対しては次々と強化をして、あたかも、赤字企業だといいながら実際は黒字なんだ、だからもっと課税しなきゃならぬのだというような、そういう予断と偏見での徴税攻撃というのはもってのほかではないか、私はこういうように思っておるわけであります。  ちょっと新聞で読んだのですけれども、十大商社が税金を納めてないというようなこと、全部が全部納めてないのかどうかは別といたしましても。あるいは上場企業の中で一割ぐらいですか、税金を納めてないというような大企業があるやに聞いておるわけでございます。あるいは、多くの大企業は世界的な企業でもあるわけですけれども、外国では税金を納めているから日本の国では税金を納める必要ないんだとか、そういうような形で、大企業の場合はいろいろな形で合法的に脱税をしている。そして中小零細企業の場合は、本当に税務署が調査に来たらもう手にとるようにわかるからすぐいろいろばれてしまうというような形で、それがでかでか報道されるという場合もこれはあるわけであります。それは悪質なものについてはどんどんやられることは当然だと思いますけれども、不当な徴税、そのことによってその企業が生命を失うというようなことのないように、生きた政治をぜひともしていただきたい、このように思います。  いろいろ申し上げたいわけでありますが、いずれにしてもそういうケースというのは税金倒産でございますよね。税金を納めなければ倒産しないのにかかわらず、そういう悪政によってその企業がつぶれる。税金倒産が今後起こらぬようにぜひともお願いを申し上げたい、このように思うわけであります。  時間の関係もありますから、たばこの問題について申し上げたいわけでありますが、たばこ消費税でございます。これは一年限り、こういうことですけれども、大臣、一たんたばこ値段、小売価格が上がりますよね。上がったやつ、一年過ぎたら来年の四月からまたもとの値段に下がるわけですか。絶対に下がりますか。
  190. 竹下登

    竹下国務大臣 これはまさに臨時異例措置としてこのことをやらしていただいた。来年どうなるかということについては白紙であると言った方が一番正確なのかなと思っております。  と申しますのは、後半の問題になりますけれども、いずれ間接税全体のあり方について税制調査会等で御議論なさるでございましょうから、今は白紙であるというふうにお答えするのが適当ではなかろうかと思っております。
  191. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 抜本的な税制改革、わかりますよ。しかし、現実問題として来年の四月から値段下がりますか。現実問題としてそんなケースありますかね。たばこがずっとこういろいろ改定されて、そして一年だけぱっと上がったけれども、一年済んだらまた値段が下がるというようなことになるんですか。そんなこと、国会議員を前にして、あるいは国民を前にして、そんな子供だましみたいな、一年限りです、来年は一応白紙ですというようなことで通りますかな。  大体、最近そんなのが多いですね。補助金の一括カット法案でもそうですよね。今回は三年ということでありますがね。あるいは国債でもそうです。十年間たったら国債は償還するんだと。ところが、償還する金がない、だから借りかえする。これは国民に対する一種のペテンですよ。まあ言うたらそうですよ。あるいは十一兆円の利子を渡すために十一兆円の利子のつく金を借金しなければならぬというようなことで、結局また十一兆円の借換債。で、二十二兆円になるわけでしょう、新年度の国債発行高は。  そういうことで、これは子供の世界では通用しないですよ。だから、学校の先生が小中学校の子供にうそついたらあかんと言うたって、いや、政治家は一年限りや言うて毎年続けているやないか、たばこもそうじゃなかったかということになるんじゃないですか。それだったら子供の中でも、一年限りやから千円ほど貸してくれや言うて、一年たったら、もう一年頼むわ、それはけしからぬ、それは竹下大臣も言うているやないかというような形になるのと違いますか。実際これは笑い事じゃないですよ。非行の原因になりますよ、これは。
  192. 松原幹夫

    ○松原政府委員 お答え申し上げます。  現在論じられておりますのはたばこ消費税のことでございまして、たばこ消費税は一年限りの臨時異例措置ということになっております。  それで、現行制度におきましては、たばこの定価というのはメーカーサイドで自主的に経営判断に基づいて決定することになっておりまして、現段階たばこ消費税そのものがどうなるかということがわからないのでございますので、来年の段階たばこの定価がどうなるのかということについては現段階ではお答えできないということでございます。
  193. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 できないじゃないよ。たばこ消費税が上がるんでしょう。それは一年限りだから今度は下げるということになれば、定価を下げるんですか。そうなるじゃないですか。
  194. 長岡實

    長岡参考人 お答え申し上げます。  私ども、アメリカ等外国の輸入品との激烈な競争のもとにございまして、これは価格競争も行われているわけでございます。したがいまして、私どもとしてはできるだけたばこ値段を上げたくないという基本的な考え方でやってまいりまして、今回の増税措置によりまして、値上げをお願いしなければ会社が赤字になるということで値上げの申請をいたしておるわけでございますけれども、一年限りの税制措置が終わったときにまた定価をもとに戻して私どもの企業が成り立っていけるかどうかという点につきましては、その時点になりませんとはっきりとしたお答えはいたしかねるというのが正直なお答えであろうかと存じます。
  195. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 いずれにしても国民をペテンにかけるような、一時逃れの答弁では話にならない、このように思っております。  時間もありませんからその程度にしておきたいと思いますが、いずれにしても、やはり外国たばこの導入というのですか、非常にシェアを広げておるというようなこともありますし、また国内でも、嫌煙権というのですか、私がたばこを吸わないから言うわけじゃないけれども、吸わない人もふえてきているわけですから、たばこ消費税の値上げを契機に、それならたばこは買わない、吸わないということになって、値上げをしたときには大体四十億本ですか五十億本ぐらい減る。たばこ産業の方の話では、今回、最低百億本、多ければ荷五十億本ほど売り上げが落ちるんじゃないか、こういうようなことも見込まれておるわけでありますが、しかし、せっかく民間企業になったんですから、そういう民間企業がやっていけないような施策というものはいかがなものであろうか、私こういうふうに考えております。  時間がございませんので、あと少しだけ申し上げたいと思います。  大臣、三月十五日に確定申告が終わったわけでございますけれども、サラリーマンの場合の還付という問題もありまして、還付も非常にふえてきておりますね。サラリーマンにとっては、中小零細企業の方だけじゃございませんけれども、そういう確定申告、自主申告という制度があればなあ、我々は源泉徴収で給料をもらったときに税金を取られておるということで、やはり本来は、サラリーマンも含めてすべての納税者は自分の税額は自分で計算して自主申告する、それが当然の国民に与えられた納税の権利ではないか、私どもはそういうふうに思っておるわけです。  そこで、聞きますれば、源泉徴収の中で必要経費を認めてもらうということに今あるわけですけれども、実額控除も云々ということで今税調の方でも御検討いただいておるということ、これも何か、実施する気がないのに選挙前だからサラリーマンに希望を持たせるような、どうもまゆつばものみたいな気がせぬでもないのですけれども、サラリーマンの必要経費について実額控除するという制度を我が国も、選択制で結構ですけれども、導入することは非常に大事ではないか、こういうように私は思っておるわけでございます。  そこで、その中の医療控除の部分について申し上げたいわけでございますが、税務署から「医療費控除を受けられる方へ」ということでパンフレットが出ていますね。そこで私が特に申し上げたいのは、大臣も眼鏡かけていられますが、眼鏡かけている人は多いですよね。成人に達した人であれば半分くらいは眼鏡をかけているのじゃないか。私かけていませんけれども、ちょっと私もかけなければならぬのかなというような感じするんですが、税務署の資料によりますと、「医療費の範囲」の中に一番、二番とあるわけですけれども、その二番に「診療や治療などを受けるために直接必要な次のような費用」、こういうことで一から三まであるわけでございます。その中で二番は「義手、義足、松葉づえ、補聴器、義歯などの購入の費用」、こういうことになっておるわけですが、私がここで申し上げたいのは、なぜここに眼鏡が入っていないのかということです。治療を受ける面あるいは医療の面からいうならば、眼鏡は医療控除の範囲に入っていいんじゃないですか。眼鏡を認めてないんですか。
  196. 塚越則男

    ○塚越政府委員 医療費控除の対象でございますけれども、所得税法施行令の第二百七条に定められておるわけですけれども、病気やけがなどのために治療等を要する場合には、本来の医療費のほかに、例えば通院費ですとか入院の際の部屋代、医療用器具の購入などのように治療等を受けるために直接必要な費用というものがございますので、これらの直接必要な費用については対象として取り扱っているところでございます。眼鏡につきましても、例えば手術後の一定期間に限りまして、目の保護のためにかける保護眼鏡というようなものがございます。こうした目の治療を受けるために直接必要なものは医療費控除の対象として取り扱っております。ただ一般の眼鏡でございますが、視力を矯正するためにかける眼鏡につきましては治療等のために直接必要なものというふうには認められませんので、この場合には医療費控除の対象に含めることをしていないというのが現在の取り扱いでございます。  御質問の、この中に眼鏡が入っていないのはどういうわけかということですけれども、この書き方は、(2)としまして「診療や治療などを受けるために直接必要な次のような費用」という注書きがございまして、その後に「義手、義足、松葉づえ、補聴器、義歯などの購入の費用」ということになっているわけですが、この「など」の中には先ほど申しました治療に必要な眼鏡、保護眼鏡というものは含まれるという解釈で来ております。
  197. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 義手、義足とか、そんなのもあるのですから、眼鏡もぜひ書いていただきたいと思うのです。「など」の中に入っていますということじゃなしに、ぜひとも入れていただきたい。  それから、医療眼鏡というのですか、治療の結果としての眼鏡であればいい、普通の眼鏡はだめだというのでは、それじゃ塚越さんの眼鏡は、塚越さんは大阪の国税局長をされておったので私よく存じておるのですけれども、次長のはめられておるのは普通の眼鏡ですね。治療用じゃないでしょう。しかし、それがなかったらだめでしょう。日常生活に不足するだけじゃなしに、眼鏡がなかったらだんだん目が悪くなるんじゃないですか。眼鏡をかける場合は、子供でもそうですけれども、お医者さんへ行って、そして目を調べてもらうんですよね。そしてお医者さんが眼鏡をしなさい、目が悪くなりますよ言うて、治療の一環として眼鏡を買ってかけているんじゃないですか。そうじゃないんですか。だから眼科へ行ったら当然その診察費も医療控除の中に入るんじゃないですか。それから、年に二回か三回矯正せにゃいかぬですね。そういうこともありますし、また近眼から老眼鏡に変わらにゃいかぬとか、大体あなたのところで認めているものでも、国が認めている眼鏡でも大体三万円ぐらいするんじゃないですか。普通の眼鏡をかけている人だったら大体二年か三年ごとに四、五万の眼鏡を買いかえなければならぬ、割れるとか、失うとかで。これがなかったら仕事ができないじゃないですか。これがなかったら目が悪くなるんじゃないですか。これは医療用じゃないですか。医療用と医療用でないのは何で区別するのですか。何度までは医療用の眼鏡や、何度までは普通の眼鏡やとか、そんな区別があるんですか。
  198. 塚越則男

    ○塚越政府委員 ただいま御説明いたしましたように、例えば手術後の一定期間に限って目の保護のためにかけるような保護眼鏡といったものは、治療に直接必要なものとして考えておりますが、先ほど御質問のありました、眼鏡をかける場合にお医者さんで診療をしてもらって、それに伴って診療の費用を払うというものは、当然医療費控除の対象となります。ただ、何度以上のものということでございますが、例えば矯正視力が一定基準以下のものにつきましては、これは障害者控除の対象となります。  医療費控除というものが設けられた趣旨を考えてみますと、疾病等に伴いまして不可避的に必要となるいろいろな経費がございます。そういったことで異常な担税力の減殺が起こったときにこれを面倒を見るという趣旨でございますが、そういったことから考えまして、やはり疾病と関係のあるものというところで私ども線を引かせていただいております。
  199. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 例えば腰を痛めると、ヘルニアなんかでもそうですが、コルセットをはめますね。コルセットをはめなかったら骨が曲がってきてそのままもとへ戻らないので、これは矯正するのでしょう。これは医療控除を認めていますね、コルセットは。そうでしょう。眼鏡を外したら、これはだんだん悪くなるのですよ。だからこれを矯正しなければいかぬ。だから、矯正自身もこれは医療活動の一つじゃないのですか。健康が悪くなりますよ、だんだん頭が痛くなるし。
  200. 塚越則男

    ○塚越政府委員 医療費控除の対象につきましては、しばしばこの委員員会でも議論をされておりまして、非常にいろいろな御意見があることは承知しております。ただ、非常にいろいろなケースがあるものでございますから、どこかで一つの線を引かなければならない。全国あちこちの税務署で統一的な取り扱いをしなければならないということで、そこでは私ども一つの仕切りとして、診療または治療に関連のあるもの、直接必要なものというところが線引きになっているわけでございます。したがいまして、コルセット等の例を挙げられましたけれども、それも治療に直接必要とする場合には医療費控除の対象となりますが……(堀委員「上田さん、ちょっと関連して」と呼ぶ)
  201. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 それでは、専門家に出てもらわなければ……。
  202. 小泉純一郎

    小泉委員長 関連質疑を許します。堀昌雄君。
  203. 堀昌雄

    ○堀委員 医療というものの概念の規定の仕方が私非常にあいまいになっていると思う。医療というのは、医師が診断書を発行して、それに伴って行われる行為は全部医療だと私は思うけれども、これは国税庁が答弁というのも本当はおかしいんで、大体これは厚生省の、何というのか、昔は医務局といったけれども、そういう行政の範囲の者が答えるべき性格のものだと思うのです。  というのは、大体眼鏡の問題で非常に問題があるのは、本来これは医師がちゃんと検眼をして、そうしてそれによって今の目の状態を診断して、眼科処方せんというものにこれはどういうディオプトリーの眼鏡を着用するのが必要かといって、本来医師の診断書に基づいて眼鏡店でつくられる、言うなれば医師が処方せんを書いて、薬局に行ってその薬局で調剤したものを買うということと医療行為としては同じであります。それがたまたま現状は、眼科医の診断書によらないで眼鏡を売買しておる問題がよくある。これは私は基本的には間違っていると思うのですよ。やはり眼科医の診断に基づく眼鏡処方せんというものが出されなければ、目というのはともかくあなた方非常に簡単に考えているけれども、目に障害が起きて見えなくなったらこれはどうなりますか。これは風邪を引いたのなんかと話が違うんですよ。  ともかく我々が生活をする場合に何が一番重要かといって、目が見えなくなるというのは最大のダメージですからね。そういう非常に重要な問題が、何か今の話を聞いていると医療行為の対象でないような話をしているけれども、これは大変な問題ですよ。きょうは時間がないからここまでにしておきますけれども、これはやはり眼科の教授を参考人に呼んできちっと科学的な判断のもとに対処をしないと、これは国税庁が一方的に判断するなんて、そんないいかげんな次元の問題ではありませんから。  きょうはここまでにして関連質問を終わりますが、四月になって改めて本式に、大学の眼科の教授その他の関係者を呼び、厚生省も呼び、国税庁長官も出て、大臣も出てもらって、そこでこれは一遍決着をつける、こういうことにしたいと思いますが、大臣、いかがですか。
  204. 竹下登

    竹下国務大臣 堀医学博士に答える能力が私にはありませんので、勉強させてもらいます。
  205. 堀昌雄

    ○堀委員 それではそういうことで、関連は終わります。
  206. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 もう時間ですから私も終わりますが、いずれにしても眼鏡はお医者さんの診断によって医療行為、治療行為の一環としてかけているということでありますから、ぜひともこれを考えていただきたい。  それに関連をして、例えば人工肛門用のパックとかあるいは車いすなども、補助でもらっているものは別ですけれども、自己負担の分については医療控除の対象に当然すべきだと思いますし、また寝たきり老人の問題があります。これは病院に入っていますと、紙おむつは医療控除の対象になるのですね。ところが病院に入れない、入りたいんだけれども入れない、そして家でお年寄りが寝たきりであるという場合、これは当然医療行為の一環として紙おむつがあるわけでありますから、これ等についてもぜひとも認めてもらわなければならぬ、こういうように思うのですが、これは眼鏡とあわせて後日お答えをいただきたい、追及したいと思いますので、私の時間も来て、答えたそうな感じでございますけれども、もう時間がないですから、ありがとうございました。
  207. 塚越則男

    ○塚越政府委員 眼鏡の問題でございますけれども、診療行為との関連ということでございまして、その後に、例えばここで例が挙がっております義手、義足等も、診療を終わって状態が固定した後でまた買いかえたようなものにつきましては医療控除の対象にしていないという問題がございます。眼鏡の場合にも、後で眼鏡屋さんで買いかえるというようなことも随分あるようでございますし、その点なかなか扱いの難しいところでございます。  紙おむつのお話がございましたが、これは当然には医療費控除の対象になっていないわけでございまして、例えば、病院でお使いになるようなものがほかのものと区別がつかない形で一括して請求されているという場合に限って医療費控除の対象になっているという点だけ、事実関係お答え申し上げまして終わりたいと思います。
  208. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 あなたがそんなことを言うから眼鏡を――眼鏡は現状を維持するというだけではないのですよ、これがなかったら悪化するわけですからね。だんだん悪くなるから矯正していかなければいかぬわけですからね。もうそれは結構です。
  209. 小泉純一郎

    小泉委員長 米沢隆君。
  210. 米沢隆

    ○米沢委員 先ほど約一時間にわたりましていろいろな問題を申し上げてきましたが、そろそろ本題に入りたいと思います。  まず最初に、先ほどからるる議論になっております欠損金の繰越控除制度、このものは一体どんな指示で出てきたものか、大蔵省はどういう認識をされておるか、それからどのような歴史を持つものか、この点について簡明にお答えいただきたい。
  211. 水野勝

    ○水野政府委員 この制度の歴史といたしましては、法人税が所得税の形で入りました明治時代、このときには欠損金は無制限に繰り越す、これが最初。これは明治三十二年の扱いだそうでございます。それが大正十四年に、事業年度課税の原則を明確にするということから、逆に、今度は施行規則で、現在で申しますと政令かと思いますが、欠損金の繰越控除は認めない、そういう制度になったようでございます。昭和十五年に法人税法が独立いたしまして、一つの税目として所得税から分かれました。このときには三年間の繰越欠損を認めるという制度になっております。これが昭和二十一年、戦後でございますが、今度は三年間が前一年というふうに短縮をされたようでございます。そして昭和二十五年、シャウプ勧告におきまして、青色申告者につきましては無制限の繰り越し、二年の繰り戻し、こういう勧告でございました。これに対しまして、成案として国会で御決定いただいたものは、青色申告書が継続して提出されております場合はこれを五年間として、従来の一年を五年に延ばした。こういうふうな経緯になっているようでございます。  この制度は、先般来るる御説明申し上げました赤字法人の問題につきましてはいろいろな議論があるわけでございます。しかし、受益といった面につきましての議論からは、法人税の課税の範囲ではこれは対処はできないのではないか、限界があるのではないかと先ほども申し上げたところでございます。  そこで、赤字法人につきましては、その五五%がゼロ申告になっているこの法人の実態につきまして、中身を検討いたします際に、本来全く赤字であるという法人、これは今申し上げたようなところから法人税の世界で処理するということはこれは限界があろうか。これが第一の種類。  一方、先般議員も御指摘いただきました税制調査会にある「経費の支出状況」云々という点でございますが、経費の操作等によりまして赤字になっている、こういった会社もあろうかと思います。しかし、これは制度面、執行面から対処されるべき問題であり、現行制度でもそれ相応の対策は講じられているところでございます。  そこで、全くの赤字、それから経費の支出云々によりましては赤字というほかに、五五%のゼロ申告の法人のグループの中には、その年度としては黒字でございますが、欠損金の繰り越しによってゼロ申告になっている法人、これが三つ目のグループとしてあろうかと思います。  今回はその三つ目のグループにつきまして繰越欠損制度、これは事業年度単位課税を原則としつつ、継続企業の実態に即応してある程度の通算を認める。そこは財政事情等との兼ね合いでございまして、先ほど申し上げた経緯等にもいろいろな変遷があるわけでございます。そこで今回は、厳しい財政事情のもとで、いわば五年間という原則は維持しつつ、このゼロ申告法人の第三のグループにつきまして、直近一年の部分につきまして停止をし、その分は若干いわば早取り的に御負担をお願いできないか、これが今回の制度の趣旨と申しますか、御提案申し上げている考え方でございます。
  212. 米沢隆

    ○米沢委員 この欠損金の繰越控除の制度は、今も御説則いただきましたように、明治の時代からその必要性等が云々されて、それぞれ変遷の経緯はありますが、大正の時代を除いて一貫して欠損金については繰越制度を認めよう、こういう形でやってこられたわけですね。結局これは、ゴーイングコンサーンの原則に基づいてやはりそのような措置がなされてきたと思わなければなりません。そういう意味では、戦後まさにシャウプ勧告によってこれがまた提案をされ、その後一貫して五年の繰り越し、二年の繰り戻しという制度が今やもう既に定着しておると言った方がベターではないのかな、こんな感じがするのです。  特に中小企業において、企業資本の維持というのは非常に大事な原則として一貫して守られてきた。今度の措置において、その対象になるところにおいては、ひょっとしたらこの企業の資本維持は著しく阻害される可能性があるのではないかな。そういう意味で私は大変心配しておるのでございます。商法においては、言うまでもなく自己資本の維持のためにタコ配をやめると厳しく規定されておりますね。しかし、今回のように欠損金の繰越控除あたりでも場合によっては少しぐらいスケベをしてもいいのだ、そんな議論をされるならば、商法でタコ配を禁止しておるという分野においても、その企業において何かそれぞれの理由があって、タコ配ぐらいはしてもいいんだよ、そんなことを認めることと同じになるのではないか、私はそこまで考えておるのですがね。  今まで主税局長ばかり答弁されておりますが、大臣、ゴーイングコンサーン、継続企業の原則だとかあるいはまた資本維持の原則等々、こんな措置で一時的であるにせよやはり阻害されることは非常に問題だ。私はその認識大蔵大臣として持ってもらわないと議論にならないと思うのですがね。
  213. 竹下登

    竹下国務大臣 歴史的な経緯を見ましても、今の議論を進めていけば、いわゆる企業継続の原則からすれば租税特別措置ではなく本来のあるべき税制の姿である、こういう議論にもつながるのではないかというふうに承っておったわけでありますが、今回の措置は直近一年ということにおいて、これで御協力をいただきたいというまさに財政上の立場からのお願いである、こういうふうに私自身は理解しております。
  214. 米沢隆

    ○米沢委員 いや、申し上げたいのは、いかに財政措置の問題であるにせよ、いわゆる近代企業会計における継続企業の原則、資本維持の原則、そこらまで浸食できるものか。もっとそのものは崇高なものとして、原則として常に確立されておかなければならない問題ではないかということを言いたいわけでございます。
  215. 水野勝

    ○水野政府委員 商法におきます御指摘のタコ配云々、配当可能利益、これはもうその会社のまさに純資産額と申しますか、それが基本になるわけでございますので、税制上はそこは五年で切ってございます。  それからまた、今回は、直近一年、その分は控除しないとはなっておりますが、企業会計の方の配当可能額の方は、これはそういった期限にかかわりなく商法上はそれによって制限がかかってくることになっておるのではないか、このように考えております。
  216. 米沢隆

    ○米沢委員 私は、その趣旨において同じことではないか、こう言っておるんですね。  それから第二の問題は、やはり法的安定性の問題だと思いますね。これはこの委員会でもいろいろと御質問があったと思いますけれども、大体我我国民法律に従って経済行為を営んでおるわけですね。したがって、こんな行為をしてもうければどういう税金がかかり、どういう出費が余儀なくされる、そういうのを予定しながら我々は経済行為をやっておるわけです。そういうことを一年さきにさかのぼって、おい、これからこんなことはいけなくなったぞ、こんなことになったら一体何を信じて経済行為ができるのかという問題ですね。  たまたま赤字が続いてきて、何とか黒字にでもしないとこれは大変なことになるぞと資産の売却等をされる。そのときはこの税法は決まってないわけですからね。そして黒字を出した。途端に今度はこの法律が出てきて、おいおい、今度はもう昨年の欠損金は控除できなくなったそうだ、こんなことを言われたら、彼らの一年間の経済行為というのは逆に法律そのものがみんなさかのぼって適用される、こういうことになって、これは大変問題じゃないですか。本当はこんな法律なんかつくるのはおかしいのじゃないかと私は思うのですよ。法律は遡及しないということになっているのだから。  確かにこれから先、欠損金の控除については直近の一年間は控除しないと今から決めることであるけれども、昨年一年間やられた行為というものは、こんな税法が出てくるなんということを承知しないで、意識もしないで、推測もしないでやったものなんですね。そんなことがわかっておったらもう少しうまくやったよ、資産なんか償却せずにこれが終わった後にやるよ、そんな企業だってたくさん出てくるんじゃないですか。そういう意味で、法的な安定性といいましょうか、法律の効果は遡及しないという、その点からこれは完全に違法だと私は思うのですね。  大臣、例えば政治資金規正法というのがありますよね。今個人や一企業から百五十万の枠がはまっていますが、これが今度改正になって去年から枠が百万になったそうな、そうなったらあなたはどうしますか。これは、これと同じことを言っておるのです。
  217. 水野勝

    ○水野政府委員 税制改正事項につきましては、増税と申しますか負担増になる場合、負担軽減になる場合、それぞれあるわけでございますが、そうした場合におきましても、どういう事業年度を単位として適用していくかという点につきましては、それぞれの制度と申しますか、改正内容の趣旨に従いまして開始事業年度でお願いをいたしましたり、終了事業年度でお願いをいたしたりしているわけでございます。最近の改正におきましては、税率引き上げ等を中心といたしまして財政上の理由からとられる措置が多いわけでございまして、こうした場合には、税率の引き上げの場合も含めまして終了事業年度で適用をさせていただいておるわけでございます。  この欠損制度について申しますれば、この三月までに終了する事業年度につきましてはこうした制度は適用はないわけでございます。また仮に、終了事業年度が新年度に食い込む場合でございましても、その年としては控除はできないわけでございますが、なお引き続き四年間は控除の可能性は残されておりますので、継続企業でございましたら、そこはその年間を通算すればその企業の期待可能性は貫かれておるものと私ども考えて、御理解を願えればと思っているわけでございます。
  218. 米沢隆

    ○米沢委員 確かに税務当局がおっしゃるような例ばかりを考えれば、今回は税金を納めても、これから来年も再来年もトータルで五年間あるじゃないか、あと四年間あるじゃないか、したがってそこで欠損金は控除したらいいんだよ、こうおっしゃるかもしれませんが、そのままその企業が赤字を続けていったならば、ここでも問題になったと思いますが、結局はもう控除してもらえないという人がこれは出てきますね。一体それはどうするのですか。所得のないところは課税しないのだからね、幾ら五年間あったとしても。それはどうするのですか。五年目にしてもう控除できない、結果的にはこういう措置をとることによって、出した分だけ丸損だ、控除してくれない。その対象者がこれは可能性としては出てくるのですよ。そんなのはほっといてもいいわけですか。
  219. 水野勝

    ○水野政府委員 まさに御指摘の、所得のないところ課税はないわけでございますが、その所得をどの事業年度まで通算して所得として見るか、これがまさに立法論として出てまいるわけでございまして、現在の制度は五年間を通算期間としておるということでございます。そういたしますと、当然六年前、七年前のものは控除はできない。そこはおのずと、制度としてはそこに差が出てまいりますのはやむを得ないかと思うわけでございます。  五年間を継続いたしましても、欠損金控除前でずっと赤字であるというような法人も、わずかではございますがあるわけでございまして、そうした法人につきましてはそういう控除の機会がなくなるということを否定するものではございませんが、これはどの程度の期間でそこを切るか、五年なのか六年なのか四年なのか、その年数で切ったというところによる影響はどこかで出てくるというふうにそこは御理解を賜り、この後四年間でぜひとも控除を適用していただけるようお願いをいたしたいわけでございます。
  220. 米沢隆

    ○米沢委員 現在の制度でも控除し得ない人がおる、これは現在の制度そのものが生きている限りありますよね。しかし今回の場合は、皆さん方財政が不如意のゆえに財政対策としてこういう措置を臨時的にやって、そのおかげで被害者になるというのは、現在の制度から出てくるものとは意味合いはちょっと違うのではないですか。同じですか。
  221. 水野勝

    ○水野政府委員 御指摘でございますが、やはり日本財政事情に合わせて五年で切ってあるという大きな姿、そこは一緒ではないかというふうに考えさせていただいているわけでございます。
  222. 米沢隆

    ○米沢委員 それはわかったと言うのだ、僕は。今の制度が生きておる、その制度によってやった場合に控除できない人が出てくる可能性もある、それはわかる。今回の場合は、財政措置のために直近一年間の過去のものは繰り越しさせない、控除できない。そして税金をかけて、それから次の期に何かやれるだろうと思いながらもやれないままに赤字が続いたときには、結果的には現在の制度を利用する限りドロップする人がおる。これは現在の制度で救われない人と違って、あなた方が財政の増収対策をやったおかげで新しく出てきたという層ですからね。こういうものに対しては何も配慮しなくてもいいのかということを言うのです。
  223. 水野勝

    ○水野政府委員 まず大半の場合といたしましては四年間で消していただけるのではないかと思うわけでございます。そして、五年間というものを前提としておりましたその財政事情がさらに厳しくなってまいりましたので、そうした財政事情に応じて、大半の場合は実質的な御負担は願わないようにしつつ制度改正をさせていただいている。その場合に、国の従来以上の厳しい財政事情に応じまして御負担を――例外的に残る場合があるという御指摘、その点は否定するものではございませんで、そこは従来以上にまことに厳しい財政事情になった制度改正であるということでお願いをいたしたいわけでございます。
  224. 米沢隆

    ○米沢委員 幾ら四年間で頑張ってくれといっても、だれも損したくて企業をやっておるのではありませんよ。何とかもうけたいと思ってやるけれども、仕方なく赤字になるところはたくさんあるわけだから、それをただ四年のうちに何とかしなさいよなんというのは余りにも無慈悲な話だ。  しかし、この話は幾らやっても、何しろ二千二百三十億円取ろうとしておるのだから、その分だけ被害者が出てくるのは当たり前ですね。根本的にこんなものはやめろと言わざるを得ないところでございますが、皆さんの立場からしたら、そこの部分は言わぬでもわかっておるぞ、二千二百三十億円分だけ泣けよ、こういうことですな。
  225. 水野勝

    ○水野政府委員 二千二百億が国としてネット最終的に国の収入になるということではございません。したがいまして、私どもとしてはことしの改正増減収額、初年度は二千二百億何がしと計上いたしておりますが、平年度化いたしました場合にはもう期待できない金額であるということで、平年度額としてはゼロで計上させていただいているわけでございまして、まさに六十一年度の財政事情に応じてぜひ御理解をお願いいたしたい、こういうことでございます。
  226. 米沢隆

    ○米沢委員 同じことですな、今言ったのは。  それで大臣、今までの議論を踏まえて、ちょっと極端な提案かもしれませんが、大臣にみんな答えてほしいのですが、私どもは今何とかして修正しよう、できればこんなものはやめてもらいたいと思うのですが、どうしても入るとするならば何とか修正させたい、こう思ってやっておるのですが、どうも自民党の皆さん方の御同意を得られません。  それで、私は逆に、最終的な修正案を出しますが、端的に大臣の答弁だけでも聞いておきたいと思うのです。  まず第一の修正は、この法人の中の中小企業基本法で定める中小法人を除くというような文章を入れたらどうか。お答えください。
  227. 竹下登

    竹下国務大臣 今度の場合、臨時異例措置として直近一年間、財政対策としての御協力をいただきたい、ひたすらこいねがうのみであります。
  228. 米沢隆

    ○米沢委員 中小企業すべてこれから除外するといいますとほとんど減収になってしまいますから、それは耐えられないということでしょう。  第二案です。できればこの法案の中に、対象の法人については政令で定めるとして、例えば円高不況で大変苦しんでいらっしゃる企業、構造不況業種で大変困っていらっしゃる企業、そのあたりは除外してあげる。それぐらいのことはできるのじゃないですか、大臣
  229. 竹下登

    竹下国務大臣 今回の措置で、財政措置として例外は設けたくないというのが本音であります。
  230. 米沢隆

    ○米沢委員 この前の円高の不況対策として臨時特別措置法ができましたね。あれでは円高不況に苦しむところは還付してあげるというものが生きてきましたね。あれはなぜそれが生きてきたのですか。
  231. 水野勝

    ○水野政府委員 繰り戻し制度も現在停止させていただいているわけでございまして、この措置は、本来はさかのぼって還付ができるという制度でございます。前回、円高のときに特定不況産業対策としていろいろの措置が講じられました際にこの繰り戻しの点も取り上げられ、そのとき、当時といたしましては原則以上に三年間の繰り戻し還付が制度化されたわけでございます。  今回の円高と申しますか特定不況産業対策といたしましては、従来以上のものを期待いたしたいところでございましたが、そもそも根っこのものが停止されている。しかし、過去の例におきましては三年間という通常以上のものが制度化されていた。そこらを勘案いたしまして特に例外的に一年の措置を、前回の例からいたしますと三分の一の幅のものでございますが、ぎりぎりのところで制度の中に含めさせていただいたということでございます。
  232. 米沢隆

    ○米沢委員 円高不況対策としてそのような三分の一であれ温情が出てくるならば、少なくとも現在円高不況、これから大変ですね。一ドル百七十五円ぐらいで推移しますと経済成長は一・九%だ、そんな調査も出ていました。これから大変な状況になりますね。ちょうど東京サミットのあたりは本当に倒産のラッシュじゃないかと私は思います。そういう円高不況で苦しんでいらっしゃる皆さん方ぐらいは除外するというのが政治ではないかなと私は思うのです。そのことを私は言うておるのです。還付ができるならば、この繰越控除だってその分だけは免除しましょう、それが政治じゃないですか、大臣、次の総理大臣
  233. 竹下登

    竹下国務大臣 あの際とりましたのはいわば赤字が出た場合の措置であって、今度対象になるのは黒字の法人という違いが判断基準の中にあり得るだろうというふうに考えております。
  234. 米沢隆

    ○米沢委員 修正してもらいたい第三案は、結局、先ほどの議論にありましたように繰越控除ができなかった金額、その分は現行制度では五年でしょう。ですから、ことしを入れますと四年間は赤字が続いたら繰り越しできないのだから、その繰り越しできる期間をちょっと延長してあげたらどうだ、十年ぐらいに延ばしたらどうだ。この案はどうですか、大臣
  235. 竹下登

    竹下国務大臣 失礼いたしました。  今持ち回り閣議のサインをしておりまして、その持ち回り閣議も今の修正案に対する答えではないか、まだよく読んでおりませんが、そういうことでございますが、いわば五年という基本原則そのものは生かしたい、こういう基本的な考え方であります。
  236. 米沢隆

    ○米沢委員 次の第四案は、今度の措置によって納付した法人税額のうち、控除することのできなかった繰越欠損金相当額については、六十三年四月一日以降開始する事業年度において繰り戻しの請求をすることができる。これぐらい入れられるのじゃないですか。
  237. 竹下登

    竹下国務大臣 正確を期するために水野局長からお答えしたらいいと思いますが、やはり五年という基本原則そのものはきちんとしたい、こういうことであろうかと思います。
  238. 米沢隆

    ○米沢委員 今の話は繰り越しの五年の話じゃないのですね。それでは、局長
  239. 水野勝

    ○水野政府委員 まさに五十九年度の改正で繰り戻しの停止をお願いし、今回それの延長をお願いしているところでございますので、繰り越しと絡めましてそこの部分を云々ということはいかがか。やはり繰り戻しはまずお返しをする方でございますので、これはまず第一次的に停止させていただいたわけでございますので、それを部分的に持ってくるというのはいかがかと考えるわけでございます。
  240. 米沢隆

    ○米沢委員 もう時間がなくなりました。  きょうは、たばこ産業株式会社の社長さんに来ていただいておりますから、最後にたばこの問題について御質問いたしたいと思います。  五十九年ですからちょうど一昨年、この委員会で専売公社の改革法案を議論いたしました。そのときの改革法案の趣旨説明によりますと、今回、外国との経済摩擦を解消し、一連の開放経済体制に即応するということで、外国たばこの輸入自由化に踏み切ったことに伴い、この際、たばこ専売制度を廃止し、今後、国際競争力を確保する意味からも政府による規制は必要最小根にとどめて、専売公社を合理的な企業経営が最大限発揮できるように公社から株式会社に経営形態を改めるなど、今後のたばこをめぐる厳しい環境に対応しようというのが法改正の趣旨であります、こう大蔵大臣は述べました。  ところが、今度とった措置はこの趣旨とは完全に相反する措置でございます。一体、どういう神経をなさっておられるのですか。
  241. 竹下登

    竹下国務大臣 今回の措置は、確かに今おっしゃいましたように、これは外国たばこも同じ条件になるとは申せ、民営化してますます自主性を発揮してもらいたいということを申し述べた当時から申しますと、私も、したがって、これを決断するには一時間ぐらい時間がかかりました。しかも、私が提案者でもございましたし、また長岡社長は、私的なことを申し上げてはいけませんが、私が最初大蔵大臣になりましたときの事務次官でもございました。しかし、その社長にも通告することなく決断せざるを得なかったということについては、今日もなお、長岡さん済みませんでしたという気持ちでいっぱいでございます。
  242. 米沢隆

    ○米沢委員 たばこの値上げなどというのは、昔だったら専売公社、今は日本たばこ産業株式会社が決意して、それで大蔵大臣にこれだけ値上げしたいと思うがどうでしょうかと認可を願う。今回の場合は逆に、大蔵大臣が値上げを決めてしまったようなものだ。そして、あなた、早く値上げを認めなさい。完全に逆でございまして、これは前代未聞の珍事だと私は思います。しかし社長、よくそういうものをのめましたね。
  243. 長岡實

    長岡参考人 今回の増税措置を私がのんだということではございません。大変ショートノーティスではございましたけれども、大蔵省から御連絡を受けましたときに、私としてはたばこ産業を預かる立場からして賛成できないということははっきり申し上げてございます。
  244. 米沢隆

    ○米沢委員 賛成しなくても、結局値上げはひとり歩きしておる。これは大変難しいものですね。これはどういうことですか。確かに、社長さんが認めなくても権力で引っ張っていくということでしょうが、僕はこういうのはおかしいと思うのです。しかし、幾ら大株主、一〇〇%政府が株主だとしても、いつまでいわゆる専売公社扱いするのか、たばこ産業株式会社を。こんな措置をされると私、本当に頭にきますね。幾ら臨時的な、どうだこうだ言われても、やったことは事実だから、こんなのは。  それで、今、日本たばこ産業株式会社が置かれている環境は決して楽なものじゃありませんよね。値上げをしたら確実に喫煙者は減っていきますね。将来的には本当にたばこなんか赤字をつくる材料になってしまうかもしれませんね。その上、今海外からどんどん入ってきますよね。円高で彼らはメリットを持っていますよね。値上げしなくてもいいですよね。ひょっとしたら値下げするかもしれませんよね。そういうものに対してこちらは値上げで対応するのですから、負けろということです。亡国的な行為だと私は思う、大げさに言えば。そして、アメリカは通商法三百一条、あれで次は完全にMOSS協議の対象ですね。製造独占までやめろ、こんな議論までやってきますよ。  そういう極めて厳しい環境の中にある。結果的には、日本たばこ産業株式会社が厳しいということはたばこをつくっている耕作者も厳しいということですから、商売をやっている、たばこを扱っている皆さんも大変だということですから、そういうものもひっくるめて、これからの日本たばこ産業株式会社は本当に生きていけるのですか。ちょうど専売改革法を議論するときでも、今から内部でもかなりの合理化をしなければならないとおっしゃっていましたね。今一生懸命努力されておもと思いますよ。内部で一生懸命合理化して、採算性のいい企業にしようと努力しながら、一方で政治的な圧力でこんなものがどんどん出てくる。一年先はまだわかりませんと言う。こんなのは一体どう考えたらいいのでしょうか、社長。大丈夫なのですか。
  245. 長岡實

    長岡参考人 率直に申し上げまして、今回の増税及びそれに伴うたばこの定価の引き上げというのは、今置かれている時期、環境等を考えますと、私どもにとって大変なことでございます。そうでなくても厳しい環境の中で、外国企業とも競争していかなければならないわけでございますから、今回の措置は相当重い負担として受けとめておりますけれども、私どもといたしましてはその重い負担をはねのけてでも何とか国際競争力を身につけて、国際競争に負けないような企業に育てるべく、私自身も努力いたすつもりでございますし、従業員全員にも呼びかけまして鋭意努力しているところでございます。
  246. 米沢隆

    ○米沢委員 その意気やよしとしますが、これから先、たばこそのものが衰退産業みたいな形になる。これから先、たばこ産業株式会社が生き残る道は新しい事業を展開して結果的にはそこでもうけていくということで、これは一生懸命頑張っていかねばなりませんが、新事業の認可だってやはり大蔵省が握っておるのだそうですね。そして、事務的にはいろいろうるさいのだそうですね。仕事ぐらいはもっと自由にさせたらどうですか、大蔵大臣
  247. 竹下登

    竹下国務大臣 今御意見でもお述べになりましたように、私としても悩みましたのは、経営者の皆さん、従業員の皆さん、二十六万の小売店の皆さんあるいは十万弱の耕作者の皆さんというようなことが非常に念頭にあったわけであります。したがって、一人株主のごり押しと言われたくないという気持ちもございましたが、最終的な決断は私自身が行ったわけであります。したがって、関連事業等につきまして最大限会社の自主性を尊重していくという考え方はこれからも持ち続けようと思っております。
  248. 米沢隆

    ○米沢委員 最後に、これは一年限りの措置、臨時特例措置ということでありますが、なぜこのたばこ消費税が出てきたかといいますと、例の地方との関係地方財源を探すために出てきましたね。補助金の方はそのままですね、地方にお願いしますという部分は残るのですから。結果的には地方財源は、ことしは措置できたとしても、来年、再来年、その次と、だれかが措置してあげねばなりませんね。その分については財源は何も見つかっておりませんね。そういう意味で、これは一年と言っておられますけれども、ひょっとしたら二年になり三年になるという可能性があるのですから、絶対に一年で終わるということは断言できますか。  たばこの値上げの方は、先ほど社長からお話を開きましたからわかりました。しかし、あなた方は特例異例措置でだった一年だとおっしゃいますけれども、地方財政関係はそのまま続きますからね。めどは三年ですか、今のところは。その分、何も新しい財源が見つかっておるわけではなし、来年から何か新しい財源措置をするという、まだそんなことも決められていない。これは一年でいいのですね。絶対に一年ですね。
  249. 竹下登

    竹下国務大臣 まさに臨時異例措置であるという基本認識に立っております。したがって、来年どうなるかということになりますと、地方財政の問題は別として、間接税そのものの議論税制調査会の後半においてなされる議論でございますので、現在は白紙でありますとお答えすべきであろうと思います。地方財政対策としてこれを受けとめた場合におきましては、少なくとも私どもと自治省と協議いたします場合には、マクロで協議をいたしますものの、心配をかけないということのお約束だけはいたしております。
  250. 米沢隆

    ○米沢委員 終わります。どうもありがとうございました。
  251. 小泉純一郎

    小泉委員長 正森成二君。
  252. 正森成二

    ○正森委員 今、米沢委員の方から非常に迫力のある赤字法人課税の問題が質問されました。私もこの問題について驥尾に付して若干の問題を聞かせていただきたいと思います。  赤字法人というのは昭和四十年代の全体の三〇%台から五十年代は四〇%台、五十七年にこれが五三%にふえまして、五十八年は五四・八%、五十九年は五五・四%と、全法人の半数以上が赤字申告ということで、その中で零細、中小企業の比率が非常に高くて、統計上はこれが全体の比率を押し上げていると思われます。  この現実を当局はどういうように見ておられるか、あるいはどんな構造的、制度的な原因があると思っておられるか、お伺いしたいと思います。
  253. 水野勝

    ○水野政府委員 赤字法人の動向につきましては、今委員御指摘のような推移になっておるわけでございます。四十年代は大体三割でございます。三割ぐらいの会社は赤字というのが常態的なものかと私ども思っておったわけでございますが、二回にわたるオイルショックで急激に上昇し、現在、オイルショック後ではございますが、また少しずつウエートが上昇しつつあるというのがまさに現況でございます。  もちろん法人成りの数もかなり多いわけでございまして、法人成りにいたしますと、そこは最初の年度あたりは赤字が多いわけでございまして、そういう要素もあろうかと思います。それから、先ほど来御指摘いただいております税制調査会の答申に「諸般の経費の支出状況を踏まえ、」という表現があります。同族関係者を中心に、給与、退職金、地代家賃、金利、こういった点の経費の支出状況に応じて赤字になっているというものもあろうかと思います。また、中小企業、厳しい経済環境のもとで大いに努力しつつも赤字の継続を余儀なくされている、そういう法人もあろうかと思います。  一律にこういうタイプがこのくらいというところまでは私どもも把握はいたしておりませんが、もろもろの種類があるのではないか、こんなふうに考えておるわけでございます。
  254. 正森成二

    ○正森委員 主税局長から答弁がございましたが、私が少し見させていただいた資料では、税経通信というのがあります。その六十一年二月号で、加藤六月さん、自民党の税調会長が対談をしておられますが、その中で非常におもしろい、おもしろいと言うたら失礼ですが、事態をよく見詰めた議論が出ているように思います。主税局長は手元にお持ちかもしれませんが、そこのところを若干読んでみますと、こう言っておられるのですね。  「そもそも赤字法人というのは三つの類型に分かれるのではないだろうか。」原文には数字が入ってないのですが、その一つは「がんばってもがんばっても赤字だという場合と、」二つ目は「今年はがんばって黒字になったけれども、過去五年間の繰越制度があることによってゼロになる赤字法人、」それから三つ目のタイプが「それから現在ある税制を使って赤字になる法人という三つの問題に絞りまして、公平・適正な税制にするためにどれとどれに手をつけるか、税制の問題として議論したわけです。本当は三番目が一番よかったのかもわかりませんけれども、抜本改正というときにどれを選択したらいいのかということがありまして、結局欠損金の繰越控除の一部停止に手を付けたんですが、そこへ至るまでには幅広い議論をやりました。」ということを言うておられます。  「本当は三番目が一番よかったのかもわかりませんけれども、」というのは、その少し前に加藤さんがこう言うておられるのですね。「がんばってもがんばっても赤字になるケース、交際費の定額控除の四百万円、三百万円を使って赤字になるもの、それからもう一つは全額損金算入になる広告費を利用して黒字から赤字に転落するものもありますね。」こういう表現があるのですね。ですから、恐らく加藤六月氏が言われました「三番目が一番よかったのかもわかりませんけれども、」というのは、「全額損金算入になる広告費を利用して黒字から赤字に転落するものもありますね。」これを指しておられるのじゃないかと、私はこの文章を読みながら考えたわけであります。  そこで伺いたいと思いますが、自民党の税制調査会長がこういう意見を述べておられることを承知しておられるかどうか、またこの意見についてどういうぐあいに税制当局としてお考えになっているかどうかをお答え願いたいと思います。
  255. 水野勝

    ○水野政府委員 六十一年度の税制改正案の取りまとめに当たりましては、政府の税制調査会とともに与党の税制調査会ともいろいろ御相談し、御審議を願っているところでございます。  そして、今御指摘のような赤字法人の問題につきまして、交際費、広告費、これがあるために赤字になっておる、特に交際費でございますが、資本金一千万以下の会社におきましては四百万円が控除になると申しますか損金算入を認められる、それがあるためにゼロ申告になっている法人、こういったものにつきまして、交際費課税の是正と申しますか見直しとあわせて対処できる方法はあるかないか、そういった点も検討の過程におきましては行われたものでございます。(正森委員「広告費は」と呼ぶ)  広告費の議論もございましたが、交際費の方は、資本金一千万円あるいは五千万円以下の会社につきまして限定的に現在は損金算入となっておりますが、交際費と広告費との関係にっきましては従来から長い間いろいろ議論がございまして、広告費自体と申しますのは交際費とは次元と申しますか性質がやはり違うのではなかろうか。しかし交際費、現在中小企業に認められておりますこれを見直す際には広告費をそのままでは済まないのではないかといったもろもろの議論があるわけでございますが、まず交際費を使って赤字になっているという点につきましての見直し自体はなかなか難しい面があるということからいたしますと、広告費にまでその方式を推し広めて見直しをするというところにつきましては、そこまでは至らなかったということでございます。
  256. 正森成二

    ○正森委員 そこで私も感じるのですが、私が言うておりますのは、決して定額制の交際費に手をつけなさいとかあるいは広告費に手をつけなさいということを積極的に言うているわけではないのです。それは誤解のないようにしていただきたいのですが、交際費や広告費についてそれだけ配慮したのであれば、他の委員も言われたように、今度の赤字法人の課税について、今回の欠損金繰越控除の一部停止ということをやりまして、みすみす赤字のものに、この制度なかりせば税金を納めなくてもいいものに税金を納めなければならないようにするということを合理化する理由というのは一層乏しいように思わざるを得ないのですね。  今、米沢委員が声を大にしてそれは酷ではないかというように言われました意見というのは、ごもっともな点があるというふうに私は思わざるを得ないのですね。私は、同僚委員がこの席で質問をされている内容に、他党の委員の場合に、御賛成できる意見もございますし、それから賛成できないなと思う意見もあります。それは米沢委員についてももちろん同様でありますが、米沢委員が今、修正案を提出することを前提としてだと思いますが、何点かについて大蔵大臣にただされました。その中には、どういう形で修正案が出されるか私どもはまだ詳しく承知しておりませんけれども、現在の中小企業の苦境からいえば、たとえ他党の提案であっても賛成するにしかるべきという案も含まれる可能性があるかもしれない、こういうように思っているのですね。  政務次官でも主税局長でも結構なんですが、再度、加藤自民党税調会長の御意見に関連して、御意見を承りたいと思います。
  257. 水野勝

    ○水野政府委員 「増税なき財政再建」のもとではございますが、何がしかの増収措置は講じざるを得ない、お願いをせざるを得ないという際におきまして、ただいまのお話の交際費の点、そのほか引当金、広告費等もろもろの点が検討課題となったわけでございます。しかし、これらの交際費にいたしましても引当金等にいたしましても、それぞれ制度改正をいたしますれば、その中身といたしましては、法人企業につきましてある意味では絶対的に負担をふやさせていただく。それに対しまして今回の一年繰り越し停止は、その年としては停止はさせていただきますが、その後の控除の機会はなお残されているという意味におきましては、「増税なき財政再建」のもとで、極力、実質的税負担につきまして影響をさせないような方法での増収策がやはり適当ではないがということから、今回の措置を御提案するところとなったわけでございます。
  258. 正森成二

    ○正森委員 今度のいわゆる増収が増収になりっ放しでなしに、将来にわたって引くことができるというのはあなたの言われるとおりで、それは大蔵大臣も本会議で答弁されましたし、私もよく承知をしております。しかし、繰り返し言うようですけれども、交際費だとか広告費に目をつけてくれということを言っているのじゃなしに、もしどうしても増収が必要であるとすれば、「増税なき財政再建」の定義からいいましても、例えば退職給与引当金の四割というのをもう少し実情に合ったように変えるということによっても増収は生み出すことができますし、それは定義によれば必ずしも増税という定義には当たらないというような解釈もあるわけですから、もう少しすっきりした税制あり方というものはあり得たと思うのです。それを今まで二回も三回も赤字法人に手をつけるということは、納得する理由が少ないのじゃないかということを申し上げておきたいと思います。  厚生省は来ておられますか。それじゃ、せっかく厚生省がおいでになっているようですから少し聞かせていただきたいと思います。  初め、質問通告をしましたときには三月六日の社会労働委員会議事録ができておりませんで、私どもは新聞とそれから一部の雑誌等に出ております議論をもとに質問通告をいたしました。それできょう、社会労働委員会議事録が出てきたようですから、それで正確なのを先ほど読ませていただきました。それで一たんやめようと思っていた質問を再度させていただくことになったのですが、議事録自体を読んでも、これは名前を挙げて失礼ですが、丹羽政務次官の答弁が、誤認に基づく答弁なのか、あるいは本当にそう思って答弁されたのか、よくわからない点があるんですね。議事録を全部読んでみると、直されているようでもあるし直されていないようでもある。そこで、その点を私が指摘しますから、それがどうなるかという事実をまず確定していただいて、その上で私の質問をさせていただきたいと思います。  念のためにその部分を読みますと、これは質問者は自民党だと思いますが、長野委員でございます。「まず最初に、数日前の新聞によりますと、行革審が四月に出す予定の報告の中で、年金と医療の負担を実は対国民所得比で二〇%以内にすべきである、そういう提言を出す予定だと言われております。果たしてこの二〇%以内に医療、年金を抑えるということが可能なのかどうか、本当にそれで高齢化社会を迎えてやっていけるのかどうか、厚生省としてどういうお考えなのか、あと医療も年金も個々には伺いますので、総論的なお考え方をまず示していただきたいと思います。」これが質問ですね。  それに対して答え、丹羽政府委員、こうなりまして、「新聞報道については承知しておりますけれども、中身につきましては、率直に申し上げましてまだ十分に把握しておりません。ただ、社会保障の負担率でございますが、六十一年度が一一%でございます。この内訳は年金が六・三%、医療そのほかが四・七%でございますが、私どもの試算では、ピーク時の三十五年後には年金だけで大体倍くらいになるんじゃないか、一二%くらいになるんじゃないか、そういたしますると一一プラス六で年金だけで一七%くらいまでふえる可能性があるわけでございます。」こうなっているんですね。  ここで切りますと、年金が二倍になるから六・三が二倍になって一二%をやや上回るというように普通の読み方なら読めるんですね。それを何と思われたか丹羽政務次官は「そういたしますると一一プラス六で年金だけで一七%くらいまでふえる可能性があるわけでございます。」こう言っておられるのですね。そうすると、年金は二倍じゃなしに三倍になるということにならないと、こういう数字は出てこないと思うのですねのそうしてみると、丹羽さんは勘違いでこう言われたのかなという気もするのですね。  その後で続いてこう言われているのです。「医療そのほかにつきましても合理化、節減を図っていきたいと思いますが、率直に申し上げまして、私どもは二〇%以内に抑えることを今後とも一つの努力目標にしたい、このように考えているわけでございますけれども、諸般の情勢は大変厳しいというのが偽らざる今の実態ではないか、このように考えている次第でございます。」  それで、新聞紙上などではこの後の部分が報道されまして、結局、社会保障負担を二〇%以内で抑えることは困難である、超える、と厚生省も言うておるというように報道されているのですね。そうしますと、これは前の前の大臣、渡部厚生大臣のときに予算委員会等で答弁されました内容、あるいは私が本委員会で吉原年金局長に対して質問いたしまして答弁された内容と、明らかに若干食い違ってくるわけですね。  ところが、丹羽さんのこの答弁が、「一一プラス六で年金だけで一七%くらいまでふえる可能性がある」というところが勘違いだとすると、後の方も勘違いだということになる。しかしそうじゃなしに、どうも医療関係国民所得の伸び率でおさまるというようなことにならないから、これが大幅にふえて総計で結局、目標の「二〇%以内に抑えることを今後とも一つの努力目標にしたい、このように考えているわけでございますけれども、諸般の情勢は大変厳しい」、こういう意味なら、この後段は正しいということになるのですね。  それで、今後質問するのに一体どちらの趣旨で言われたのか、また、厚生省の事務当局としては、その後政務次官に真意をただされて、どちらの趣旨でおっしゃっているのかということを確認されたのかどうかということも含めまして、議事録がきょう出てきましたので事前に申し上げる機会がなくて申しわけございませんが、お答え願いたいと思います。
  259. 岸本正裕

    ○岸本説明員 お答えを申し上げます。  この三月六日の議事録でございますけれども、丹羽政府委員、政務次官がお答えをした中身は、現在社会保障負担が一一%である。そしてその内訳としては、年金が六・三%、医療そのほかが四・七%、合わせて一一%である。そしてこの年金というのは、ピーク時の百年ちょっと前ぐらい、約昭和百年ごろには一二%程度になるんじゃないか。それは六・三から六%程度ですが伸びるんじゃないか、そういうことで、今の一一%という負担にその年金だけをプラスしても一七%になる。年金だけをプラスして――ちょっと厳密に言うと言葉が足りないところがありますが、今の一一%という社会保障負担に年金の伸びだけを足しても一七%になります。  そのほかに、まだこれから医療その他も高齢化で伸びていかざるを得ないと思う。それで、ちょっと時期ははっきり私も今わかりませんが、たしか健保法の改正の法案を国会で御審議いただいているときに、そのときの渡部恒三大臣が、この医療費の推移というものについての御質問に対しまして、この健保法の改正でお願いしているように、たしか五十九年度、六十年度に本人一割負担、六十一年度からは本人二割負担というような改革をもしお認めいただけるならば、六十五年ぐらいまでは一生懸命その適正化に努力をして医療費の伸びを国民所得の伸びの範囲内に抑えられるだろうと思う、こういうような御答弁をしたことがあるわけでございます。  ただ、昭和百年というような長期になりますと、医療費の適正化というのも、それはもう無限にあるわけでございませんし、今後の経済の動向によりまして医療費の伸びというのはかなり予測の難しい点がございます。  それで今申し上げたように、現在の社会保障負担と、比較的はっきりわかる年金の伸びとを加えた一七、それから医療につきましても何がしか伸びざるを得ない、そうなると二〇%以内というのはまあぎりぎりの線になるかもしれない、私どもとしましては、二〇%以内に抑えるということは、確かに国民負担を適正な負担に抑えるということで努力をしていかなければならない一つの目標であるというふうには思いますけれども、これが非常に安易に達成できるんだというふうに考えてはいない、こういう気持ちを表現したものだ、こういうふうに考えております。
  260. 正森成二

    ○正森委員 今の御説明で、「そういたしますると一一プラス六で年金だけで一七%くらいまでふえる可能性」というのが、ふえる方を年金だけカウントしてもという意味ならそれで意味が通じるわけで、それはわかりました。  それはわかったのですが、そういたしますと、健康保険法の改正のときに、健康保険法が変わらないでこのままいくとすれば昭和百年、二〇二五年には社会保障の負担が年金で大体一六%強、医療その他が八%強、合わせて二五%ぐらいだ、それが今度の改正、私どもは改悪だと思っておりますが、渡部厚生大臣が五十九年の春に、三月十五日ですが、法律の改正を認めていただくならば年金が大体一一から一二、そして医療その他が五%強で、合わせて一六から一七%が昭和百年の社会保障負担の予測になるという説明をされたと思います。この答弁は、私が吉原年金局長に対して、五十九年の暮れでございますが、国年、厚年改正案のときに質問したときにも同様の答弁が出ております。  そうしますと、このときも昭和百年というのを見て、もしこの法案を通していただくならば一六ないし一七%ということで社会保障負担がいくと言っていたのに、法案は全部通っているのに、なおかつ二〇%でも無理かもしらぬということになれば、明らかに昭和五十九年度のときの昭和百年の予測から見て大幅の変更であるということがいよいよはっきりしたと思うのですが、なぜそういうぐあいに変わったのですか。
  261. 岸本正裕

    ○岸本説明員 私ども、そのときから大幅に変更したというふうには考えておりませんで、計算の仕方でございますけれども、医療費というのが完全に国民所得の伸びと一致するとかその範囲内に抑えるというようなことは、これからの高齢化がどんどん進んでいく場合には実は難しいであろう、ただ、努力目標としてはそういうことでやっていきたい。まあそういうことでやっていきたいということでございますけれども、本当に中長期的に見たときに難しいというのも偽らざるところではないか、こういうふうに考えているわけでございまして、年金を加えて一七%、医療が若干ふえたとしても二〇の中にはおさまるだろうというふうに今も考えているわけでございます。  ただ、無条件に、楽観的におさまるだろうというふうにはっきり申し上げるというのはいささかちゅうちょがあるわけでございまして、今後長い、四十年間の間の社会経済変動によりましては、二〇という数字を絶対守れますということをここで断言する自信がないということでございますけれども、考え方は以前と変わっていないということでございます。
  262. 正森成二

    ○正森委員 考え方は以前と変わっていないと言いますが、五十九年段階の答弁から見て、社会保障負担が一六、七ぐらいで抑えられる、これは昭和百年をめどにしてですね。それが二〇%どころか、それもよほど努力しないと難しい、二〇あるいは二一ぐらいになるかもしらぬというのでは、明らかに数%の差があります。  現在国民負担率は幾らかといえば、昭和六十一年の見通しでは租税負担率が二五・一、そして社会保障負担率は、今この議事録にも出てきておりますように一一で、合わせて三六・一、これは新方式でありますから、旧方式の場合は三六・六ぐらいになるはずであります。ところが、今言いましたように社会保障負担率が一一から一六、七じゃなしに二〇、場合によったら二一ぐらいになるということになれば、国民負担率はそれだけで四六ぐらいにならざるを得ないということになります。これは行革審が、例えば瀬島氏などが四五ぐらいで抑えたいというのをもさらに突破するということになるわけで、国民負担としてはゆゆしい問題であるというように思わざるを得ません。  しかも、大臣、突然おいでになったところで申しわけございませんが、社会保障負担というのは、これは保険料等にあらわされている負担だけであって、例えば老人の医療につきまして自己負担が新たに導入をされました。あるいは健康保険の、今本人も一割負担、あるいは場合によったら二割負担になるかもしれないという自己負担は、これは統計上、社会保障負担の中には入らないわけでしょう。そうしますと、今までは社会保障負担の中に入っていたものを入れてなおかつ三五とか三六とかいうように低かったのに、今度はそれをのけた上でなおかつ四五ないし四六を突破するということになれば、実際上は、国民負担は改悪前に比べれば四五ないし四六をはるかに突破するということに理論上はなるのではないですか。  それについてまず厚生省から答えていただきまして、それについて大蔵大臣の、閣僚としての御所見を承りたいと思います。  時間ですから、これで終わります。
  263. 岸本正裕

    ○岸本説明員 私の答弁が少し言葉足らずで誤解されたかと思うのでございますけれども、従来からの考え方と変わったものではない。そして、よほど努力しても二〇%を超えるようなふうにおとりいただいたとしたらば私の言い方がまずかったのではないか、そういうふうには申し上げていないので、年金の増加分を加えて一七%、医療がいろいろな社会情勢によって若干動くとしても、私、二〇%の中にはおさめることはできるだろうという感じは持っているわけでございます。しかし、長いレンジの問題を、ここがちょっと誤解されたのかもしれませんが、二〇に二%とかそういうすき間でございますから、これをいろいろな予測できない変動があっても大丈夫だというようなことまでは言えないというのをつけ足したわけでございまして、そこのところはまあ言わずもがなというか、言わない方がわかりやすかったのかもしれないのでございまして、従来からの考え方と変わっていないし、年金を加えて一七%程度、それに医療を加えても二〇にはまだすき間はある、こういうふうに考えているわけでございます。
  264. 正森成二

    ○正森委員 一番最後の方は……。老人医療の自己負担とか本人の一割、二割負担
  265. 岸本正裕

    ○岸本説明員 私どもが今考えておりますのは、そのような現行の制度改革を織り込んだ上での推計をしてそういう二〇以内にはおさめられる、こういうような感じを持っているわけでございます。
  266. 正森成二

    ○正森委員 これで終わりますが、ということは、逆から言えば、前のように本人の一割負担がなく、老人医療費の本人負担がなければ、社会保障負担というものは当然上がらざるを得ないものである、こういうことですね。
  267. 岸本正裕

    ○岸本説明員 当然、今度の改革は国民の給付と負担の長期的な安定を図るための改革でございますので、そういうことになろうと思います。
  268. 正森成二

    ○正森委員 終わります。
  269. 小泉純一郎

    小泉委員長 戸田菊雄君。
  270. 戸田菊雄

    ○戸田委員 私も赤字法人課税について若干質問しておきたいのであります。  政府の六十一年度税制改正大綱では「青色申告事業年度に生じた欠損金の繰越控除制度について、直近一年間に生じた欠損金に限り適用を停止する、」「上記の改正は、昭和六十一年四月一日から昭和六十三年三月三十一日までの間に終了する事業年度について適用する。」こうなっておりますね。  これでまいりますと、継続企業の前提から見て問題があり、かつ、日夜を分かたぬ企業努力にかかわらず赤字経営を余儀なくされている中小企業の経営の早期改善を著しく阻害はしないか、またその機会を奪うではないか。あるいはまた、長期的視点に立った積極的な中小企業政策の必要が叫ばれている昨今でありますけれども、今回の改正で中小企業の活性化が損なわれないかどうか。こういう点について大臣はどういう見解をお持ちでございますか。
  271. 水野勝

    ○水野政府委員 今回、五年間を原則といたしております欠損繰越制度につきまして、現下の厳しい財政事情のもとでいわば異例的に、直近一年間に生じたものにつきましてその年度におきましては停止するということでございます。  したがいまして、一つの点は、その年といたしましては繰越欠損がなければ黒字である法人につきましての措置でございますので、これはある意味では元気な法人にお願いをしているというところでございます。     〔委員長退席、中西(啓)委員長代理着席〕  それからまた、二年目、三年目、四年目なりは継続して控除の対象になるわけでございますので、経営者に対しまして著しくその安定性と申しますか期待可能性を損なうものではないようにいたしておるつもりでございます。
  272. 戸田菊雄

    ○戸田委員 赤字法人課税については、課税のあり方が今日までもいろいろ論議されてきているわけですね。事業税負担の公平、適正という観点に立っていろいろやられてきている。  私の資料によりますと、赤字法人の全法人に占める割合は昭和四十年で三五・九%、五十年で四三・〇%、五十九年で五五・四%。法人数は五十九年は大体百六十二万社になっていますね、この十年間で二・五倍にふえているのです。これは、資本金五百万円以下が六〇%を超えている、こういう状況です。  一方、法人税も毎年増税されておりまして、五十一年から六十年度まで、この税制改正の純増収累計の大体七五%を占めている。国税収入に占める法人税と所得税の構成比を見ますと、法人税は、昭和三十年二〇・五%、四十年二八・三%、五十年二八・五%、六十年三一・八%、所得税は、昭和三十年二九・八%、四十年二九・六%、五十年三七・八%、六十年三九・二%。三十年間で大体一一・三%法人税でふえています。このくらい増収体制をやってきているのですよ。これはどういうふうに考えますか。
  273. 水野勝

    ○水野政府委員 法人税率につきましては、昭和四十九年度の改正におきまして、二兆円減税と言われました所得税減税の財源という意味もございまして、それまでの三六・七五%から四〇%に引き上げられたところでございます。また昭和五十六年度には、当時の大幅な赤字国債減額のための努力の一環といたしまして、その四〇%の法人税率を四二%にお願いし、さらに五十九年度には、所得税減税の財源といたしまして一・三ポイントの上乗せ措置をお願いいたしたところでございまして、この十年間を見ますと、税率の面でもそのような引き上げ措置をお願いし、そういったこともございまして、法人税収のウエートは、まあ横ばいながら十年間をとりますと若干上がっているという面はあろうかと思いますが、まずはおおむね横ばいかとも言えるのではないかと思うわけでございます。
  274. 戸田菊雄

    ○戸田委員 六十年の法人税弾性値は幾らと見ていますか。
  275. 水野勝

    ○水野政府委員 六十年といたしましては、機械的にはじきますと〇・八六という数字になっております。
  276. 戸田菊雄

    ○戸田委員 弾性値も年々ずっと下がってきている。  今、数字的に発表いたしましたが、この法人税負担の増が結果的には欠損法人の、赤字申告法人の急増の一因ではないかと見ているのですが、これはどうですか。
  277. 水野勝

    ○水野政府委員 六十年度におきましては〇・八六でございますが、その前の五十九年度は一・四六、五十八年度は一・三七とか、法人税は景気にかなり大きく左右されるものでございますので、傾向的にこれが低下してきているのかどうかにつきましては即断できない面があるのではないかと思うわけでございます。  それから、今申し上げましたように、税率を三六・七五%から十年後には四三・三に上げさせていただいてはおりますが、あくまでこれは法人税でございまして、法人に利益が計上された場合に適用されるわけでございますので、これが結果として赤字法人をふやしているということには直結はしないのではないか、こんなふうに考えておるわけでございます。
  278. 戸田菊雄

    ○戸田委員 先ほど来ずっと指摘がありましたけれども、今回の改正はどうも不明朗なんです。自民党税調は十二月十七日、政府税調も、六十二年度抜本改正の際にと、こういうことで見送った。ところが大蔵省はこの問題について何としてもやらなければいけないということで、強硬に突っぱねて今回この改正案というものが出てきたと聞いているのですが、その経緯はどうですか。
  279. 水野勝

    ○水野政府委員 まさに昭和六十一年度改正は、抜本的税制改革作業を控えておりますので、基本的な仕組みには極力さわらないような改正を考える必要があったわけでございます。しかしながら一方におきまして、もろもろの財政需要それから国債減額、こうした点からいたしましてやはり何がしかの増収措置はお願いをせざるを得ないというところから、いろいろな点につきまして検討をさせていただき、そうした結果として、法人につきまして絶対的な負担の引き上げとか制度の基本的な仕組みの改正とか、そういった点には必ずしも直結しないとの欠損金一時停止という措置に最終的には取りまとめられたという経緯でございます。
  280. 戸田菊雄

    ○戸田委員 いずれにしても税制上あるまじき行為だと私は思うのです。これはタコ配当に等しいと思っている。なぜかといえば、税制というものは、いわゆる中小企業基本法なり商法なり、こういう基本法に基づいて税課税というものが制度として創設をされる、こういうのが至当でしょう。そういうものが全部逆立ちになって今回やられている。  例えばタコ配当、こういうものに対しては商法の二百九十条でありまするけれども、「利益の配当」には「利益ノ配当ハ貸借対照表上ノ純資産額ヨリ左ノ金額ヲ」、資本金、法定準備金ですね。「控除シタル類ヲ限度トシテ之ヲ為スコトヲ得」こうなっているのですね。結局、黒字企業に対して、配当はいいやでよ。それが七%なり一二%という枠を決めて、商法上決まっている。それに基づいてやっているわけです。ところが、「前項ノ規定二違反シテ配当ヲ為シタルトキハ会社ノ債権者ハ之ヲ返還セシムルコトヲ得」と規定され、違反者に対しては「会社財産を危うくする罪」として「五年以下ノ懲役又ハ二百万円以下ノ罰金」、これは商法の四百八十九条。ここまで厳密に継続企業あるいは資本の保有、そういうものに対してぴっちりしているのです。さらに、中小企業基本法の二十五条に中小企業の育成、振興についてはぴちっと決まっている。  ここに法人の領域を全部決めて、それに基づいて税制というものは課税対象にしていくわけでしょう。そういうものが今全然無視されている、こういう状況じゃないでしょうか。この見解はどうとるのですか。
  281. 水野勝

    ○水野政府委員 まさに委員御指摘のように、法人税制といたしましては極力企業会計にのっとって仕組むというのが基本的な考え方であり、昭和四十年代初めの税制簡素化答申の中でも、そうした方向でもろもろの整備が行われているところでございます。  しかしながら、基本的には国としてどのような法人税負担をお願いをするか、それは企業経理とはまた違う面もあるわけでございまして、商法といたしましては御指摘のような配当可能額につきましての規定がある。しかし、あくまで欠損金を埋めるまでは配当はできない。これに対しまして、税制上といたしましては五年間の繰り越しということで、六年以前の分は切り捨てて、その限りにおきましては法人課税の対象に含ませていただいているというところで、税制上の措置といたしましてはそこには若干の割り切りがあるわけでございます。  今回の措置も、五年間それ自体をさらに改正して商法との関連を切り離していくというところまでの基本的な見直しではございませんで、あくまで現下の財政事情を踏まえての特別の一年間だけの停止措置であるというふうに御理解をいただきたいわけでございまして、これによりまして税制上、その年としては課税利益が発生し、法人税を御負担をいただくわけでございますが、その面につきましての商法上の計算としては、あくまで欠損金を控除した後の純資産額が配当の対象の利益となるわけでございますので、税制がタコ配を認めるような仕組みを持ってまいったというわけではございませんので、御理解を賜りたいと思うわけでございます。
  282. 戸田菊雄

    ○戸田委員 時間もありませんから、項目的にお伺いしてまいりますが、欠損金の繰越控除制度というのは、先ほど主税局長なり大臣から説明があったとおりだと私も思いますが、現代会計の前提である継続事業、そういう立場から見て必要不可欠のものである、現行税制の基礎となったシャウプ勧告においても、税の公平に著しく寄与するということで、あえてシャウプさんもこれを提唱している、そういう歴史的な経過を経て、企業資本維持の見地から基本的な制度として確立されたわけですね。そういう歴史的な経緯なり過去の公平税制の確保の意味からいろいろと検討されてこういった制度というものは確立をされた。だから、戦争中といえども、例えば東条内閣時代の賀屋興宣蔵相、小磯内閣の石渡荘太郎さん、あるいは鈴木内閣の広瀬蔵相等々、これを一貫して守ってきた。  先ほど言われたように明治三十二年から発足をしまして、いろいろな紆余曲折はありましたけれども、そういうことで一貫して中小企業振興育成というものを建前にして、殊に日本経済の中核をなすものですから、そういう意味合いでこういう税制対応でやってきたわけですが、それが今回、赤字法人ですから、法定上の資本金あるいは法定準備金、そして結局当期利益が――その当期利益があるならば、それから取るならそれは当然正当なことですよ。ところがそれが赤字で、資本金に食い込んでタコの足のごとくやっていくような状況の中で課税体制をとっていくということは、これは全く担税能力がないのじゃないですか、いわゆる死に体なんですよ。そういうものに課税対応をされるというのはやはり無理なんじゃないでしょうかね。どうですか。
  283. 水野勝

    ○水野政府委員 今回は五年の繰越期間というものを基本的に動かすわけではございませんで、現下の財政事情に応じまして直近一年の分につきまして一時停止をさせていただくという、全く財政上の措置から出たお願いでございます。  税制といたしましては、企業経理なり商法上の経理と極力合致するのが理想でございます。財政上ゆとりがありました戦後の時代におきましては、法人税制上は欠損と申しますか、利益に計上せず、逆に企業経理上は配当を認める、配当はしてもその分は法人税の面では利益としてはカウントしないという措置を講じた例もあるわけでございまして、財政事情によりましては、時にはこれを緩くし、あるいは時には御負担を願うということが戦後におきましてもいろいろあったわけでござまして、今回はまことに財政事情の厳しい折から御理解を賜ううとしておるわけでございます。
  284. 戸田菊雄

    ○戸田委員 財政の補てん等については後で若干触れたいと思うのですが、この一部停止の措置によって、特定年度の税負担額は中小企業は非常に過重になります。特に中小企業において企業資本の維持が相当難しくなる。  ですから、中小企業基本法の二十五条で「国は、中小企業の企業資本の充実を図り、事業経営の合理化に資するため、」云々「租税負担の適正化等必要な施策を講ずるものとする。」あえてここにぴしっとうたってある。そこで、私は一つ提案をいたしますが、いわば法人の領域を――不況業種とかいろいろありますから、この二十五条に基づいた特別融資その他を含めて特別対策をとっているところでしょう。そのくらい中小企業にははね返っている。だから一様に、画一的にそういうものを規制するのではなくて、そういう領域の中を検討していただいて、不況業種その他については除外するとか、そういう面をひとつ検討できませんか。
  285. 水野勝

    ○水野政府委員 税制上はまさに中小企業基本法等の精神にのっとりまして、租税特別措置の面におきましてももろもろの配慮をいたしておるところでございまして、今年度におきましても中小企業メカトロ税制の拡充その他必要な措置を講じておるわけでございます。また、現下の円高を背景といたしました事業転換を必要とする業種につきましては、御案内のとおり、先般特定中小企業者事業転換対策等特別措置法を制定させていただきまして、この面におきまして必要な場合には、逆の方向ではございますが、繰り戻しの特例を一年間講ずるなどの特段の措置は講じておるわけでございまして、そうした中小企業につきましての現下の経済事情、社会経済情勢に即応しました措置措置としてもろもろの対策を講じさせていただいているところでございます。  一方、この措置は、その事業年度としては黒字を計上されておられる企業の若干の御負担でございますので、御理解を賜りたいと思うわけでございます。
  286. 戸田菊雄

    ○戸田委員 大臣はどうでしょう。
  287. 竹下登

    竹下国務大臣 今、確かに企業の継続性、それからもう一つは、法的安定性とでも申しますか、そういう点を超して、財政事情からしてお願いをする。そして、基本的に五年間というものを守っていく。対象が黒字法人でございますだけに、言ってみれば、中小企業の転換等に関する特別措置法の場合の赤字企業に対する対応策とはおのずから性格を異にしておる。したがって、原則でもってやっていただきたい、こういうことをお願いしておるわけであります。
  288. 戸田菊雄

    ○戸田委員 時間がありませんので細かいことに触れておれないのでありますが、それからもう一つは、自民党の税調の村山さん等も言われておるようでありますが、改正法は立法に当たって原則として、その遡及適用、こういうものは避けるべきだ、こういうことを言われておりますね。しかし、今回の措置はこれに逆らうものじゃないでしょうかね。主税局長、どうですか。
  289. 水野勝

    ○水野政府委員 税制改正事項につきましては、その事柄の内容に応じまして、また財政事情に応じまして、その適用を開始事業年度とする、あるいは終了事業年度とする、あるいはその対象となる行為が改正後に行われたものを対象とする等、もろもろのタイプをとらせていただいているわけでございます。最近におきましては、先ほどの法人税率の引き上げ等を初めといたしまして、こうしたものにつきましては終了事業年度をもって適用させていただいている例が少なくないわけでございまして、この面から、財政収入に関するものにつきましては、その一環といたしまして今回は終了事業年度ということで採用させていただいているわけでございます。  ただ、この終了事業年度も、この法案を成立させていただいた後に終了する事業年度でございますので、企業につきましての期待可能性といったものを大きく損なうことのないように最小限度配慮させていただいている。最小限度と申しますか、極力そこの点は考えさせていただいておるわけでございます。  しかし、御指摘のような点の御議論はもちろんあると思います。ただ、この制度は、二年度以降につきましてはこれはまた繰り越して控除できるわけでございますので、そこは最終的にその御負担を期待可能性の外に置いたということでもなかろうかというところから御理解をいただければと思うわけでございます。
  290. 戸田菊雄

    ○戸田委員 今までも、今回の欠損金の繰越控除制度の一部停止、五十九年度における欠損金の繰り戻し還付の二年間適用停止、昭和六十一年度改正において同措置の適用期限がさらに二年間延長、延納制度の廃止、六十年度における利子配当等に係る所得税額の控除等の特例、これは還付の繰り延べですね、など、近年とみに何か中小企業に対してはいろんな角度で縮小その他をやっておられる。これは、やはり将来の中小企業育成振興その他について私はゆゆしい問題だろう、こういうふうに考えておる。そして今回の措置ですからね、これはなかなか大変だ。  御存じのように、月間一万七千件以上くらい倒産でしょう、今。そういう状況ですよ。それに円高が押し寄せてきている。しかし、税法、税制全体改正を見ますると、民活あるいはそういったものに対する促進税と称して片や減税をしておきながら、二千二百億何がしか、こういうものはいろいろやっていく。どうも、偏重なものになっているんじゃないかと思うのです。大に対しては非常に優遇措置をとっている、こういうふうにいろいろと見られておる。だから、そういう点についても十分な配慮があってしかるべきじゃないかと思うのですが、どうでしょう。
  291. 水野勝

    ○水野政府委員 御指摘のように、五十七年度から「増税なき財政再建」というもとでの税制改正でございますので、極力最終的な税負担の増加に結びつくようなものでないものでの増収措置というものを見つけ出したいというところから、延納の問題、繰り戻しの問題、所得税額控除の問題、そして今回、繰越欠損と、御指摘のような制度改正が続いておるわけでございます。  いずれにしましても、これらの措置は、最終的な御負担を増加をお願いするというものではないということでは共通しているわけではございますが、現下の財政事情からしてやや異例措置をお願いしておるわけでございます。こうした点もございまして、今後税制といたしましては、いずれ抜本的な改革をいたす必要がこういった点からも出てきておるというふうにも言えようかと思うわけでございます。  ただ、御指摘のように確かに中小企業としては数が圧倒的に多いわけでございますから、これが適用の対象となる法人の企業数としてはもちろん中小企業は多うございますけれども、五十七年度以来のこうした措置、これはいずれも大企業、中小企業ともにひとしく適用されるものでございまして、中小企業に特に集中してお願いをしているものではございませんので御理解を賜りたいと思うわけでございます。
  292. 戸田菊雄

    ○戸田委員 結局、死に体から生き血を吸って、そして何か倒産に誘導するというような課税体制じゃないかという気がするのですね。だから、憲法で言う応能負担の原則、所得に対して課税をするんだという大原則ですね、こういうことからも非常に離れているんじゃないかという気がします。これはまさに憲法違反の措置じゃないかという気もいたします。そういう、これは言ってみれば悪例ということになりかねない。  そういうことでありますから、私はここで――法律条項ですからね。可決決定されれば、文字どおり六十一年四月一日から実行される、こういうことですね。それでは中小企業に与える影響は大きいですから、そのための激変緩和として、仮に半年おくらすとか、一年延長するとか、こういうことはできませんか。どうですか。
  293. 水野勝

    ○水野政府委員 この点につきましては、まさにその事業年度といたしましては黒字を計上されておる企業につきましての問題でございますので、現下の財政事情からここは極力御理解を賜りたいと思っておるわけでございます。
  294. 戸田菊雄

    ○戸田委員 大臣、見解は……。
  295. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる四月一日以降ではなく、周知徹底の期間を置いてと、恐らくこういうような考え方だと思っておりますが、今年度の財政事情等々についての基本的な認識のもとにお願いした法律でございますので、やはり四月一日以降決算を迎える法人に適用することで御理解をいただきたい、このように考えます。
  296. 戸田菊雄

    ○戸田委員 私は、何とか検討してもらいたいと思うのです。最初二点を出したのですけれども、この点についてひとつ検討をいただきたいと思うのです。これが政令条項であれば、いろいろそういう面での、業種別の選択とかあるいは期間に対する施行期日の延長とか、こういうことができるのだろうと思うのですが、これは法律条項だから、決まればそのまま、オールマイティー実行ということになってしまうのですね。だから今の中小企業のいろいろな困難な状況、とにかく日夜、本当に朝早くから夜まで頑張っておるのですよ。そういう面を考えてみてもやはり検討していただきたいな、こう思っておるのですが、要望して終わります。ありがとうございました。
  297. 中西啓介

    ○中西(啓)委員長代理 堀昌雄君。
  298. 堀昌雄

    ○堀委員 本日は、どうも時間を大変節約しなければならぬ情勢でありますので、準備をいたしました質問のうちの三分の一だけをきょうはここでやらせていただきます。四月に入りまして一般質問の中で残りの部分をゆっくりとやらせていただくつもりであります。  最初に、この租税特別措置法の一部を改正する法律案の提案理由説明の中に、「第一は、内需の拡大等に資するための措置であります。」こういうふうになっておりまして、住宅取得者の負担軽減を図るための住宅取得控除制度を改めるという問題、また民間活力を活用するため云々、この二つがどうやら「内需の拡大等に資するための措置であります。」ということのようでありますが、一体内需拡大というのは何のためにやるのでしょうか。大蔵大臣、ちょっとお答えをいただきたい。
  299. 竹下登

    竹下国務大臣 これは、現在の経済情勢からいたしましたならば、外需依存体質でいたずらに貿易摩擦問題とか経常収支のいわゆる我が国と他の国とに非常に変化が生じておるとかいうものを是正するための措置として、内需志向型に変えていこうというのが現時点では存在しておると思っております。マクロで見ますと、やはり内需というものは国民生活に最も密着しておることでございますので、いつの時代にもこれは必要なことであるということが言えようかと思います。
  300. 堀昌雄

    ○堀委員 内需拡大というのは外需依存から内需の方にシフトをさせたい、こういうことだと思うのですけれども、一体この住宅取得者の負担の軽減をこういうふうに図って、どのくらい内需拡大になるという見通しでこういう税制をとられたのでしょうか。これはどなたでもいいから答弁してください。
  301. 水野勝

    ○水野政府委員 今回の住宅取得促進税制は、従来の住宅取得控除制度を抜本的に改めて発足しようとするものでございます。この新しい住宅取得促進税制と住宅金融公庫貸し出しの面での拡充、その他もろもろの措置をあわせて相当の効果があるものと考えておるわけでございます。
  302. 堀昌雄

    ○堀委員 相当の効果というのは全然わかりませんね。どのくらいの程度なのか、千億であるのか百億なのか、ともかくラウンド、台くらいは言ってもらわぬと、相当の効果なんというのは一億円でも相当の効果、十億円でも相当の効果、全部相当の効果です。答弁願います。
  303. 水野勝

    ○水野政府委員 そこらを、この措置だけによりますところの経済効果といったものを定量的にお示しするというか試算するというのはなかなか困難であるとされておりまして、経済企画庁建設省等ともいろいろ検討はいたしております。結論的には相当の効果ということでございますが、これによりますところの取得促進効果としてはおおむね二万戸程度ではないか、このような一応の試算がされておるわけでございます。
  304. 堀昌雄

    ○堀委員 二万戸でも結構です。  そこで、次の民間活力東京湾横断道路、これは大体どの程度の内需拡大になるのですか。
  305. 北村恭二

    ○北村(恭)政府委員 全体の工事規模がかなり長期間にわたりまして、大体一兆一千億程度というふうに言われていると承知しております。
  306. 堀昌雄

    ○堀委員 いろいろなものを内需のてこにすることは私はちっとも構わないと思うのですが、輸出の代替になるかというと、道路をつくったって輸出の代替になる性格でもないし、住宅二万戸とおっしゃるけれども、要するに今の住宅というのはどうも二戸建ての住宅という概念のようですから、そうすると土地の問題に全然手を触れないで二万戸建ちますよなんという話は問題があるし、第一、住宅金融公庫というのは土地を持っている人間でなければ金を貸さないわけでしょう。だから、要するに基本的にはこの土地の問題を何とか考えない限りこういうものをやったって所期の効果は上がらないだろうと私は思っているわけです。ですから、私はそういう意味で実は土地に関する税制の問題をここで少ししっかりやろうと思ったのですが、時間の制約がありますからこれは後に延ばすことにします。  そこで率直に言いますと、この前倉成EC議員団の団長が、ECから研修に来ている人が帰るので堀さんひとつ昼食会をやるから出てくれと言われて、私、そこで出席をしました。そして、皆さん一年だったか一年半だったかおられて、いよいよ皆ECへ帰られる人たちと一緒に食事の後で懇談をしましたときに、ぜひ日本内需拡大をやって我々EC諸国の物をしっかり買ってほしい、こういう希望が出ました。  そこで私は、この人たちが事実と違う認識を持ってECに帰って、結果的にはそういうふうにならなかったときには大変失望されるだろうと思って、そこで、率直に言いますけれども、日本で今多少内需が拡大をしても、実はそれによってECの商品が日本に輸入されることになるのは非常に小さなウエートしかありませんよ、皆さんどうか日本内需拡大に余り大きな期待を持たないでください、こういうふうに私はお話をしたわけであります。  なぜ私がそういう話をしたかというと、日本という国では大体あらゆるものをつくっているということですね。ですから、何かつくっていないものがあるとすれば、要するに分業上ないものがあれば、内需が拡大をしてそこだけは需要がふえてきたら買うということになるでしょうが、大体日本人が生活をする必要上のもので、日本ではつくっていないが欧州やアメリカだけにあるという品物は実はないのです。そういう意味で、日本は完全にすべての業種にわたって製品をつくっている。そうすると、それが日本人に合ったような製品になっているものですから、内需が拡大をしたから今の貿易収支、さらには経常収支がうまく減るようになるとは私には思われないわけであります。  私が最初に二つの内需拡大にちょっと触れたのも、この二つがうまくいったからといって貿易収支に、経常収支を含めてですが、この程度のものでは変化がないと私は思うのです。これは大蔵省、総務審議官でもいいですから答えてください。
  307. 北村恭二

    ○北村(恭)政府委員 我が国がこれから内需振興ということでいろいろと努力していることで我が国の貿易収支あるいは経常収支にどの程度改善の余地があると見ているかというお尋ねだと承知いたしますが、来年度の経済成長等で四%という成長を見込んでおります中で、輸出は今後やや鈍化傾向ということでございます。それから輸入もやはりなかなか増加しないという面もございますので、経済見通しといたしましては経常収支横ばいといったような見方をしてございます。  その後いろいろな情勢の変化等もございまして、こういった数字についてどういう影響があるかということはいろいろきめの細かな見方をしていかなければいけないと思いますが、私どもできるだけ内需に依存した、外需に依存しない経済成長の姿というものを日本経済の中につくり上げていかなければいけないということで、いろいろな努力をしていきたい。少なくとも来年度の経済見通しにつきましては外需依存が少し減った形になるというふうに見通しておりますし、六十暦年の数字が出ているわけでございますけれども、そこでも上期は内需依存度が三・五%、外需が一・三%、それから下期になりますと、それがわずかですが、内需が三・八%ということで若干ふえておりまして、外需依存度が〇・八%というふうに若干減っております。ですから、こういった傾向をできるだけ定着させていくということで経済政策をやっていかなければいけないのではないかというふうに考えているところでございます。
  308. 堀昌雄

    ○堀委員 今のお話では、内需がふえて相対的に外需が減っている感じになっていますけれども、外需が減っているのは、内需がふえたからというよりも為替変化が輸出に影響しているのだと思います。今どんどん円が高くなってきて、いろいろ国内に問題があるようでございますけれどもね。  そこで、けさ新聞でしたか、OPECの総会が結局物が決まらないで四月十五日に引き続き再開するということになったようです。そうしますと、今どんどん油の値段が下がりつつあるわけですけれども、さらに油の値段は下がるだろう。夕刊にはニューヨーク十一ドルというようなことが出ておりましたが、さらに下がっていくだろう。油の値段が下がるということはやはり貿易収支、経常収支にプラス面で働いてくるのではないだろうか、こんなふうに思います。まずそれが一つあります。もう一つは、為替影響によっていわゆるJカーブ効果というものがあるというふうに言われておるわけであります。これは、為替が下がっても一時その効果が出ないけれども、先にいけば出てくる。  そういうものを並行的に勘案すると、私はどうも今政府が見通しております経常収支五百十億ドルというものでおさまるとは思わないのですが、国際金融局長、そこらについてはどうですか。
  309. 行天豊雄

    行天政府委員 お答え申し上げます。  最初の、原油価格の値下がりの影響につきましては、確かに原油価格が値下がりいたしますと、その分だけ輸入支払いが減るという意味で黒字がふえる要素になるわけでございますが、現実の問題といたしましては、価格が下がりますと、当然そこで価格効果が働いて石油の輸入量がふえるだろうということも想定されるわけでございます。  現実に、石油価格が幾ら下がると輸入数量が幾らふえるかという計算は、その下がり幅とかそのときの日本経済状況あるいは日本の輸入市場の状況等に影響されるものでございますから、なかなか確定的にお答えを申すことができないわけでございますけれども、非常に粗っぽいことを申し上げますと、御承知のとおり我が国の現在の原油輸入量は年間で大体十二億バレルでございます。ですから、もし原油価格が下がっても輸入の数量に全く変化がない、恐らくこういうことはないと思うのでございますけれども、仮にそういう仮定を立てますと、一ドル下がれば原油のための年間の輸入支払いは十二億ドル減るという計算になるわけでございます。  したがいまして、実際に六十年度に輸入されました原油の平均価格は恐らく二十八ドル・バレルくらいだろうと思いますが、六十一年度の平均輸入価格がどのくらいになるかということはまだわかりませんけれども、粗っぽい計算としてはそういう数字が出てくるわけでございます。  為替レートの影響につきましては、まさに委員御指摘のように、円相場が上昇いたしますといずれは価格競争力の減少によって数量効果が出てきまして、輸出が減り輸入がふえるということで黒字を縮小する効果を生むわけでございますが、Jカーブ効果というのは相当期間、数カ月ないし一年くらい続く可能性もございますから、現実に六十一年度の貿易黒字に対してどのくらいの影響を与えるかということも、まことに申しわけないのでございますけれどもちょっと自信を持って申し上げるわけにはまいりません。  ただ、御承知のとおり民間機関等がいろいろと試算をしております。その中には、例えば為替レートが一〇%下がっただけで数十億ドルの黒字減少効果があるというようなものもございます。しかし、そういったあらわれ方も六十一年度は非常に少なくて、むしろ六十二年度以降ではないかという説もございます。  そういうことで、正確な数字は申し上げられないわけでございます。ただ、全体として申しますと、円相場の上昇は、ある期間を置けば恐らく非常に高い確度で黒字縮小の効果を持ってくるであろうということは申し上げて差し支えないだろうと思っております。
  310. 堀昌雄

    ○堀委員 今アメリカも欧州も、日本の経常収支の黒字は何しろ大変おもしろくない現象だというふうに見ていると思うのであります。この経常収支の黒字が、政府の見通しでは六十年度と六十一年度五百十億ドルで同じだとなっているのですが、これは同じはずはないので、必ずふえると私は見ておるわけです。経常収支の黒字がふえると、これだけ円高になっても一向効果がないではないかという気持ちが恐らくアメリカでも欧州でも起こってくるのではないだろうか、こんな感じがいたします。  しかし、私はこの前、行天局長がちょっと部屋においでになったときにお話をしたのですが、ともかく相場というものは、上がるものはどこかまで行けば必ず下がるものだし、下がるものはどこかまで行けば上がるものですから、そういうべースに対しての介入は、資本主義という市場メカニズムの中では余りやられない方がいいと思いますよという意見をちょっと述べたことがあるのです。     〔中西(啓)委員長代理退席、委員長着席〕  大蔵大臣、油もそうですし為替もそうですけれども、皆相場で動くわけですが、そういう相場に対する基本的な認識あり方というのはどういうふうにお考えになっているか、ちょっとお聞きしたいと思います。
  311. 竹下登

    竹下国務大臣 少なくともいわゆる市場至上主義ということがやはり原則ではなかろうかと思っております。  ただ、原油価格の場合は、OPECとか非OPECとかいうようなところで政治的思惑というものが間々感じられることはあるというふうに感じます。
  312. 堀昌雄

    ○堀委員 私は、油の問題というのは総論賛成、各論反対でなかなか決まらないと思うのですね。やはりカルテルをつくるには一定のシェアがなければできない。これはやはり今の資本市場の性格だと思っておりますから、今のOPECのシェアで、おまけにその中にサウジあるいは首長国連邦というような、非常にウェートの高いところと低いところがあればますます難しい。それ以外に非OPECの側に問題がある。おまけにイギリスが北海ブレントというようなことになっていますから、非常に複雑で、再度うまいカルテルが構築できるというのは当分は難しい。ではどうなるかというと、カルテルをするなり何をするにしても、一定のところまで下がって、その結果もうどうにもいかぬというところまで来なければ、もう一回それが上昇に転ずるのは難しいのではないかと私は思っておるのです。そして、下がれば下がるほど日本の経常収支の黒字は大きくなる、こういうことだと思います。同時に、そのことで円高が加速をして上へ上がっていくだろう。こういう要素にこの油の問題がはね返ると思うのですね。  そこで、対米、対欧州の関係ですが、日本は別に悪いことをしているわけではないのです、みんな勤勉に一生懸命働いているのですから。しかし結果的には、現象面ではアメリカや欧州の人たちが快く思わないようなことが続いている。私どもも、かつて国会に出てきてしばらくの間というものは、対米赤字がいっぱいありましてけしからぬなと思った時期があったわけでありますから、今アメリカや欧州の人たちがそう思うのは当然だと私は思っているのであります。  そうすると、ここで何らかのそれに対する対応考えておく必要があるんじゃないかというのが、実はきょう三十分間で質問をさしていただいているもとなんでありますけれども、その一つの大きな問題というのは、為替については、ちょっとさっき申し上げたように、やはり市場の関係に任せて、乱高下をする場合には調整をすることはこれは調整手段でありますから別でありますけれども、いわゆる介入によって為替の動きをコントロールしようというようなことはまず第一にやるべきでない、そのことによって、少なくとも日本がフリーマーケットを尊重しているということを欧州にもアメリカにも認識をしておいてもらわなければいけない、私はこう思います。それが一つです。  もう一つは、いわゆる金融商品といいますかそういう問題の中で、やはり欧州、アメリカとイコールフッティングだ、私どもは特別な対応をしていませんよということをひとつこれから御検討いただきたい、こう私は考えているわけであります。  そこで、国際金融局長に伺いますけれども、一九八四年の七月に、アメリカは非居住者に対して国債その他の証券類についての非課税の取り扱いをいたしました。それから今度は、八四年の八月から西ドイツも非課税の取り扱いをすることになりました。この非課税の取り扱いによって、両国の国債その他の証券の取引というものは飛躍的に増加をしておる、こういうふうに私は承知しておるのでありますが、その点についてはいかがでしょうか。
  313. 行天豊雄

    行天政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のとおり、米国及び西独におきまして非居住者向けの債券投資に関する税制の改正があったわけでございますが、まずアメリカについて見てみますと、これは商務省のデータでございますが、この税制措置がとられました八四年の第二・四半期を境にいたしまして、確かにこの非居住者によりますアメリカ向けの債券投資というのは相当ふえております。  例えば、第二・四半期の数字が七十億ドルということでございましたが、第三・四半期は六十七億ドルで余り変わりございませんが、第四・四半期になりますと百八十九億ドル、それから翌年八五年の第一・四半期は百二十一億ドル、第二・四半期百二十二億ドル、第三・四半期百九十二億ドルというふうに確かにふえておるわけでございます。  ただ、このうちのどの範囲のものが直接税制改正の影響であるのか、それとも、この時期かなり金利の方も動いておりますものですから、金利低下局面で債券の価格が上昇することによって投資がふえたという影響も無視できないだろうと思いますので、ちょっと直接にこの税制影響による投資の増加額というものを特定することは難しいのではないかと思っております。  それから西ドイツにつきましても、同じような数字をとってみますと、確かに八四年の第三・四半期を境にいたしまして非居住者による債券投資がかなり増加しておることは、統計上は事実のようでございます。
  314. 堀昌雄

    ○堀委員 税金というのは、国内で一つのシステムができて、そのシステムに基づいて課税が行われているわけでありますから、その国内のシステムを無視して処理をするということはなかなかできないかもしれませんが、これからの国際的な金融商品に対する我々の対応というのは、国内均衡との関係で問題を見るよりも国際間の均衡という面に重点を置いて、ひとつ課税対策についても軸足を移す必要があるところに来ているのではないだろうか。  要するに、貿易収支、資本収支ということで私どもの日本に黒字がふえる一方だというときには、税収の問題はそんなに大きな問題ではないわけでありまして、そうではなくて、そういう取引に日本の市場が開放されておるということは、今アメリカや欧州から日本は市場が閉鎖的であるといういろいろな議論があるときに、為替についてもまさにオープンな市場の対応をやっておるし、そういう非居住者に対する投資の問題についても非常にイコールフッティングでオープンにやっておる、これはそれなりに評価すべき問題だ、こうなることが当面非常に重要な課題だ、私はこう考えておるわけであります。  そこで、来年は税制改革の年になるようでありますね。ちょっとそこを大臣に伺っておきたいのですが、一部分ではなくて全体的に大々的な税制改革の年になるというふうに私は見ておるのでありますが、大臣いかがでしょうか。
  315. 竹下登

    竹下国務大臣 六十二年度というのは確かに、抜本改正の答申をことしの秋にいただきますならば、まさに大改正の年、こういうふうなことになるであろうと私も予測しております。
  316. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、これから年末にかけて、今私が問題提起をしました、国際均衡を中心とした証券、債券類の税制問題というものをひとつ前向きに検討していただくことは、私はやはり国際的な関係で非常に重要なファクターだと思っているのです。  後でもう一つこの四月になってからやらせていただくのはどういう問題かというと、簡単に言いますと、二、三分しかありませんが、農地の相続税の延納システム。大体、このシステムというのは、私が当委員会において医療用資産の延納システムというのをやったところが、私が提案をした医療用資産の延納システムは横へどけられちゃって、そうして農業用資産の延納システムというのができて、これが、二十年営農すればその延納の処理が完了する、こうなっているわけですね。  この間ちょっと国税庁で調べさせてもらいましたところが、東京都の一件当たりの延納金額というのは全国の平均の十倍です。十倍の延納をしてもらって、この間から朝日新聞で連載していますから皆さんも御存じだと思うのですけれども、ともかくこれが営農の意思のある畑地かなと思うようなものがいっぱいあって、まさにこれは相続税回避行為のために使われておる、こういう感じがしてなりません。これは今度ゆっくりと、すべてのデータを整備して、少なくとも東京都における市街化区域においてはこれは適用除外にするというぐらいのことはやってもらわないとまずいなと。そうすると、今の二十年が拘束をして土地の流動性が実は非常に拘束されているわけですから、これは結果的には今の土地の流動性を高めて、さっきちょっと私が言ったこういう式の住宅に対する減税やその他が有効に効くベースになるんじゃないだろうか、こう思いますし、もう一つ今度ぜひ検討してもらいたいのは、日本ではまだなじみがないのですけれども、これは大蔵省が検討するというのか、どこが検討したらいいのかよくわかりませんが、空中権の問題ですね。空中権の問題というのをひとつ大蔵省を中心に研究してもらいたい。  要するに、私が既にもう渡辺大蔵大臣のときにもこれは提案しているのですが、東京都都市大改造というものを考えるときにはどうしてもこの空中権という権利の設定がなければむだな費用がかかってしようがない、こういうことでありますので、そういう問題を含めて、実はその他たくさんありますけれども、この六十二年までにいろいろと私どもが考えられる税制改革についての前向きの問題を提起さしてもらって、ひとつ大蔵省として税制改正の中に生かしていただきたいというのが私の本日の質問の趣旨でございます。  どうかひとつ大蔵大臣、これからサミットもありますし、いろいろな国際的な問題の中で、私は、やはり日本政府が誠意を持ってそういう広い意味での市場開放に努力をしておるということがわかりますような方向で本日の私の提案を取り上げていただきたい、こう思いますが、大臣いかがでございましょうか。
  317. 竹下登

    竹下国務大臣 原則的に何ら非を挟むものはございません。確かに最近における経済取引の国際化、自由化の状況等から見ますならば、今後の税制考えるに当たっては広く国際的な視野に立つことが必要である、これはまさに御指摘のとおりであります。  考えてみますと、中曽根・レーガン会談というのが東京で行われ、そのときに、いわゆる日米円ドル問題について私と当時のリーガン財務長官に仕事が与えられ、それで日米円ドル委員会というものができて、その後、大場、スプリンケルを中心にして進んでまいりましたが、その中で、確かに証券参入でございますとかあるいは信託銀行の許可の問題でございますとか、非常にスケジュールどおりにいっておりますが、お互いが理論で一番行き詰まったのは税の問題でございます。それは、最初おっしゃいましたように国内には国内の仕組みがあるということからの問題でございますが、しかし、幸いなるかな、我が国の金融市場の国際化の要請にこたえるため、昨年度改正で、一定のユーロ円債等に係る非居住者受取利子につき所得税を非課税とする、いわゆる源泉徴収を廃止する、このようにいたしました。それから今年度の改正においては、さらに開設予定の我が国のオフショア市場における法人預金等について非課税措置を講ずることにお願いをしておるわけであります。ここのところまでは、随分議論しましたが、よくいったと私は思っております。  さらに、これを拡大して、非居住者の取得する債券、預金の利子等に関する源泉徴収を一般的に撤廃するという分につきましては、先ほど来の我が国の所得税制あり方としての基本的な問題があるということと、それから居住者課税における抜け穴、黒い目の外人とかいうような言葉を使わしていただいておりますが、したがって、非居住者に対する課税を実質的に担保しがたくなるといったいろんな問題がありますので、慎重に対応する必要があると考えますが、日米円ドル委員会の残った問題、いわゆるオフショア市場のところまでは進んでまいりましたが、これからの問題、やはり円ドル委員会というのは、国際金融局だけでなく主税局の人も近ごろは参加していただいておりますので、慎重に対応しなきゃならぬ課題だというふうに思っております。  それから農地の問題、空中権の問題につきましては、最近江崎さんの特命事項の中に入れられて、今議論が始まったばかりだというふうに聞いております。
  318. 堀昌雄

    ○堀委員 終わります。
  319. 小泉純一郎

    小泉委員長 沢田広君。
  320. 沢田広

    ○沢田委員 大変夜分になりまして、関係者の皆さん、心から敬意を表します。特に速記者の皆さんには御迷惑をかけると思いますが、これからぱたぱたぱたといきますので、どうぞよろしくお願いしたいと思います。  最初に生命保険関係でお伺いしておきますが、いわゆる告知義務というのがありまして、たくさんの判例その他も出ておるのでありますが、要すれば、「商法が危険測定上重要な事実または事項について無過失または軽過失による不告知または不実告知ある場合を告知義務違反に該当しないものとし、」こういうふうに判例の中で言われているわけであります。ところが、通常では、そこに書類が配られていますように、どの勧誘の本にもあるいは契約書の中にも重要な事実というようなことには一言も触れてない。  時間の関係で結論を言いますと、告知義務ということによって、契約をしながら、あなたにはこういう既往症があった、既往症があったから、これは告知義務を怠ったので保険金は払えない。こういうことは、言うならば法のもとの詐欺であるというふうに私は言わざるを得ない。  そういうことで、とにかく告知義務については平等の原則に立って対応してもらわなければならぬ。外務員が悪いのか健康診断をした医者が悪いのかあるいは会社が悪いのか、いずれにしてもその責任の所在を明確にしてもらう対応を法のもとに平等であるという原則に立ってやってもらいたい、これが第一点、答えてください。
  321. 関要

    ○関説明員 ただいま先生御質問の告知義務という制度は商法で認められている制度でございまして、保険制度の合理的な運営を行い、保険契約者間の公平性を保つために認められている制度でございます。それで、この商法の規定は、保険会社がその契約を受けるかどうかを判定するために必要と思われる重要な事項を契約者の方からすべて話さなければならない、こういう解釈になっているわけでございますが、実際の保険会社の実務といいますか現在やっておりますのは、そういう商法の広い告知義務の範囲をむしろ会社の方から狭めまして、一定の告知書というフォームをつくりまして、そこに挙がっております今先生がお話しになりました既往症の状況とかあるいは現在の健康状態とかそういった項目、これは会社によって少しずつ違いますが、普通二十数項目あると思います。そういった項目についてだけ正確に告知をしていたならば、それで告知義務が十分に行われた、その内容さえ正確であれば告知義務違反は問わない、こういう運営をいたしております。
  322. 沢田広

    ○沢田委員 だから、そういうごまかしで契約をしておいて掛金は納めさしておいて、さて死んでみたら、あなたにはこういう病気がありましたよ、そういう申告が漏れておりましたよ、だから保険金は払いませんということを保険会社は答える。これでは裁判をやる以外に解決の道がない。裁判をやるのは大変ですからね。例えばだんなさんなんかが亡くなった場合には大変苦労するということで、結果的には泣き寝入りが大変多いのです。  時間がないから具体的に言いますが、この間フィリピンで弾を二発頭に撃って死んだ人の保険金の問題が新聞にも出ていましたけれども、その点も保険金は一部の会社しか払わない。二発撃つんだから自殺ということはないはずなんです。それを自殺したかもしれないというようなことで払わないでしらばっくれているというようなことが許されるはずがないと思う。あるいは嘱託殺人かも、自殺かもしれぬなんということを、幾らフィリピンだからといったって、警察の診断書までできている。そういうことからいったらどうかなということにもなるわけで、その点どうなんですか。
  323. 関要

    ○関説明員 具体的なケースの御質問はちょっと適当でないと思いますけれども、ただいま申し上げましたように、告知義務全体は保険会社全体として適正に運営されているというふうに考えております。
  324. 沢田広

    ○沢田委員 そういうことでごまかしていくから、ちっとも反省が進んでいかないのです。その事実をここでやっている時間がないけれども、とにかく慎重に公正な立場で判断をしてもらうように特に求めておきたいと思う。  大臣、そこにあるように、重要な既往症の事実を告げなければ保険金はもらえませんよなんてどこにも書いてない。ただし、事実を教えなかった場合には保険金をもらえないことがありますよとその契約書にあるだけで、重要なとは書いてない。しかし、判例でも何でも皆、重要な事実について告げなければ、特にそのことが直接の原因でなければと、こうなっておる。  あなたの答弁を聞いたってしようがないから大臣に、しかももう一つの件は、保険会社の医者が診断をして、そしていい、それで契約を結んでおいてみたら、前に肝不全か何かがあった。しかし、一回治癒したとみなされたから第二の職場へ行ったのだと思うのです。ところが、これも保険金は支払わない。こういう形で、これは一々例を挙げていったら切りがないのでありますけれども、ではどこにそういう市民を守ってくれる条件があるのか、システムとしてはどういう形で市民の権利は保障してくれるのであろうかということなんだ。  だから、保険業務をやっている大蔵省は皆保険会社のお先棒を担いで、結果的に片っ方は泣き寝入りというのが今の現状なんだ。あなたの答弁はもう要らないですよ。ですから、そういうことでとにかく大臣には、公正な審査機関あるいは公正な査定ができるところの場所、そういうものをひとつつくってもらうようにお願いをしておきたいと思うのです。これは検討していただけるかどうか、その点だけお聞きをしていきたいと思います。
  325. 関要

    ○関説明員 告知義務という制度が十分適正に運営できるように、十分業界を指導していきたいと思います。
  326. 沢田広

    ○沢田委員 続いて減価償却の問題でありますが、今十万円以下は――金づちなどは随分長くもつものでありますが、十万円はしませんね。しかし、電気洗濯機なんかでも十万円はしない。耐久消費財という言葉で言われておるのでありますが、十万円以上はいわゆる固定資産台帳に載って減価償却対象となっていくわけですが、とれは余りにも据え置いておいて長過ぎる。だから、二十万ぐらいに上げていいのじゃないか。そのかわり備品台帳などの整備――昔我々が入ったころはそろばんまで備品台帳に載って、会計検査院の検査のときにはそろばんをのこぎりで切って二つにして員数を合わせたという例もなくはなかった時代もありました。そういうものまで備品勘定に入った時代もありましたけれども、今は税法上では十万円ということになっています。しかし、耐久消費財という立場から見れば二十万円ぐらいが相当ではないか、こういうふうに考えられるわけで、いろいろな物価が上昇してきたけれども、いまだに十万円のままである。そのかわり一万円以上の備品は台帳を整備するという義務を負わせる。これはテーブルとかいすとか、そういうものについては備品台帳を整備させるということで、いわゆる減価償却対象からは外すということでいいのではないのかということですが、いかがでしょう。
  327. 水野勝

    ○水野政府委員 確かに、昭和四十九年度に十万円と決められて以来、十二年間据え置きになっておるところでございます。ただ、これを引き上げますと、法人税上の減収額がかなりなものになるわけでございます。そうした点も配慮する必要がございますので、単に十二年間たっておる、物価スライド等々の理由からこれを直ちに引き上げるという方向にはなかなか難しい問題がございます。  しかしながら、今回税制の基本的、抜本的な改革作業の中で、耐用年数等につきましてはこれを取り上げる方向で税制調査会で示唆されておるところでございます。そういうものの中でこうした点も検討されるのではないかと考えておるところでございます。
  328. 沢田広

    ○沢田委員 では、善処を求めて、次に行きます。  交際費と広告費の解釈でありますが、大臣、タレントを呼んで人集めをしたという場合に、タレントと大臣、あるいは私であってもいいのですが、これは交際で呼んだというふうに思いますか、それとも人集めのために呼んだと思いますか。これは主税局ですか、やはり国税がどっちかなんですが、ひとつ答えてください。  そういうふうにタレントを呼んだ。だれでも構わないのですよ、お嬢さんでもおばあちゃんでもだれでも構わないのですが、とにかくタレントを呼んだ場合、どうしますか。
  329. 塚越則男

    ○塚越政府委員 タレントを呼ぶその目的でございますが、人を接待するためにタレントを呼んだという場合には交際費に当たると思います。
  330. 沢田広

    ○沢田委員 接待のためであるにせよ何にせよ、不特定多数の者を集める場合、これは広告費ですよね。不特定多数の者を集めて接待しても、これは広告宣伝費ですよね。特定の人を集めて接待した場合は、これは交際費ですよね、今の大蔵省の通達は。今の答弁はそのいずれにも該当しないのですよ。だから、人を集めようと思ってタレントを呼んだ分は、タレントさんとの関係は交際ではなくて、やはり人集めの広告費でしょう。ここにも偉い人がいっぱいいますが、呼ばれて行ったときは恐らく人集めのための一つになるのだろうと思うのです。そうなるとまた失礼ですからそれ以上のことは言いませんけれども、そうだろうと思うのですね。だから、そういう意味においては、それは広告宣伝に該当するべき性格のものではないのか。お答えください。
  331. 塚越則男

    ○塚越政府委員 例えば得意先を呼ぶというように、特定した人を接待するためにタレントを呼ぶという場合には交際費になります。そうでなくて、本当に一般の人という場合には広告宣伝費になろうかと思います。
  332. 沢田広

    ○沢田委員 それもまた違う。  要すれば、特定の人を集めておっても、その中にだれかを呼んで芸を見せたり歌を歌わせたりするということであって、その人との関係においては少なくとも交際費ではない。呼んだ費用は広告宣伝の費用、人を集めるための手段なんだ。あくまでもその人は見ず知らずの人なんだから、そういう関係においては当然交際費として扱うべき筋合いのものではないのではないか。
  333. 水野勝

    ○水野政府委員 交際費の定義といたしましては、「交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するもの」というふうになっているわけでございます。したがいまして、その呼んでこられるタレントの方その方は事業と関係はございませんでも、その呼んできて人集めをし、事業に関係のある方々につきまして接待なり何なりをするというときには、そのタレントの方をお呼びしてくる費用もこれは全体として交際費の中に入るのではないか、この法律、政令の規定からするとそんな感じがするわけでございます。
  334. 沢田広

    ○沢田委員 感じではなくて、例えばあなたの方の文書では、不特定多数の者に対する宣伝的効果を意図するものは広告宣伝費の性質である、こういうふうに書いてあるのですね。だから、結果的には、タレントさんを呼ぶということは、ある程度不特定多数の人を対象として人を集めるための手段、こういうことですから、その費用まで交際費である、その人を呼ぶことが交際であるということにはならないだろう。今呼ぶのに三百万とか二百万とかかかるんだそうですね。ですから、そういうものは交際費にはかからないのではないか。だから御検討ください、時間がなくなりますから。あなたの今の答弁では、大分やわらかい答弁でしたので前進すると思いますから、期待をしながら次に行きます。  大臣、続いて生命保険に戻りますが、生命保険はもらいますと二百五十万円だけ控除になるのですね。これは御存じだと思うのですが。ところが一般の相続税では死んだら四百万が基礎控除になるだけでして、生命保険だけはその上に二百五十万の基礎控除があるのですよ。なぜ生命保険には基礎控除を設けて、例えば一般の人が子供になり債券で渡しても二百五十万控除にならないのか。生命保険の金だけが控除になるというのはやはり公正を欠くのではないか、こういうふうに思いますが、いかがですか。
  335. 水野勝

    ○水野政府委員 相続税の基礎控除は二千万円プラス法定相続人掛ける四百万円、これが基本的な控除でございますが、それとは別枠で保険金につきましては法定相続人一人当たり二百五十万でございますので、それとは別でございますから、その分だけは保険金の部分については非課税限度かと申しますか課税最低限が膨らんでおるというふうに考えられるのではないかと考えます。
  336. 沢田広

    ○沢田委員 だから、そのことは承知の上で言っているわけですよ。その分にだけ特別な控除を税金の方でもしてやって、しかも加えてまた死亡した場合に死亡控除をふやすということは、例えば貯蓄しておいたのでは全部課税されてしまうが、保険金でもらった分についてだけ特別な待遇を与えるということは、これもいわゆる法のもとの平等性を欠くのじゃないか、取り扱い上不公正ではないのか、こういう問題があるということを申し上げて、これも対応についてはそれぞれ考えてください。これは年金の方ではないのですから、あなたのもらう年金もないのですから、そのつもりでいてください。  それから次に、信用保証業務の問題で、年金福祉事業団というのがあるのですが、これについてはこういう資料をお出しします。  その資料の中にあるように、民法の方の法人、いわゆる労働金庫とか労信協とか、そういう言葉で挙げられている団体の信用保証機関は現在以上認めないというなら、それは独占禁止法違反なんであります。それで生協その他については野放しなんだ。生協その他は自由に結構ですよということなんだ。  なぜ民法の三十五条だけを制限して、この分以上は認めない、こういう制限通達を出して全国を縛っているのか。自由競争の原則に立てば、あるいはもっと話し合って、一つの土俵の中に入って話し合える余地をつくっておくべきではないのか、こういうふうに思いますが、いかがですか。
  337. 丸山晴男

    ○丸山説明員 お答えいたします。  先生御質問の年金住宅につきましては、簡単に申し上げますと、年金福祉事業団が資金を持ちまして、又貸しをいたしまして、事業主あるいは年金福祉協会といった各県にございます協会がローン保証、信用保証をつけることによりまして、最近非常に資金量を爆発的にふやして今日までに至ったわけでございます。  そういうわけで、ローン保証会社につきましては、年金住宅につきましてのいわば最大の貢献者でございますが、あわせまして、大変ローン保証会社の数が多い。現在三十七を数えておりますが、多うございまして、その条件がまちまちであるということでユーザーが大変困りまして、年金福祉事業団あるいは私どもから全国の転貸法人にいろいろ相談いたしました結果、できれば各信用保証会社の統合一元化が望ましい、あるいはできなければ少なくともユーザーのために条件をそろえるような工夫をしてはどうか、こういったことで、当面各転貸法人の使うローン保証会社の数を三十七という数字に一応固定いたしまして、その範囲で条件をそろえるような努力をしてまいったわけでございます。  おかげさまで最近はほぼ条件がそろってまいっておりますので、先生御質問のように新規参入を認めてはどうか、こういった御意見も出ておるやに承っておりますが、まだまだ財務体質等で大分格差のある信用保証会社もございまして、いわば自由競争になった場合にもとのように条件をまちまちにするというおそれが全くないかどうか、その辺を十分検討する必要があるわけでございます。  いずれにいたしましても、年金住宅は被保険者の利用が非常に多うございまして、年間資金量一兆円台の大きな事業でございますので、このあたりで少し制度全体のあり方を見直しながら、あるいは関係各方面の御意見を承りながら、その全体のあり方についていろいろ見直しをしてまいりたいと考えておりますので、その一貫として先生御質問の点につきましてもどのようにした方がいいのか、統合一元化が望ましいのか、あるいは現在のままでもよろしいのか、あるいはいわばフリーにするのがよろしいのかということにつきまして総合的に検討してまいる必要がある、かように考えておるわけでございますので、よろしくお願いいたします。
  338. 沢田広

    ○沢田委員 生協は野放しであるということについてはどうですか。答えてください。
  339. 丸山晴男

    ○丸山説明員 お答え申し上げます。  非常に被保険者の住宅需要がふえてまいっておりますのは、事業主あるいは年金福祉協会からの又貸しの住宅いわゆる転貸住宅でございまして、先生御質問の生協といいますのは、いわば住宅生協といったようなものが分譲住宅をつくりまして、それを貸し付けるという仕組みでございまして、それにつきましては必ずしもローン保証をつけておらないというものもございますし、非常に数が少ないということで、特に検討の対象にはされておらないままでまいっておるわけでございます。
  340. 沢田広

    ○沢田委員 生協関係は、住宅生協その他も今日は大変伸びているわけです。ただしこっちの分野についてだけは制限をしてこれ以上は認めない、こういうそこにある文書のような指示を出していることについて、これは行政指導として妥当ではない。  私はもっと積極的に――その関係者、これで見ると百十一万七千件で、全額で四兆円ぐらいの保証。しかし、これは皆土地を住宅担保に入れてやっているわけですから貸し倒れというものについては少ない、こういうふうに思いますけれども、それでもなおかつその信用保証については――商工団体その他についてもこれは制限がないのですよ。大臣、商工団体その他について制限がない。この分だけについて、発足間もないから、未熟性があるからというので制限を加えたのがその通達なんです。それをいまだに金科玉条のごとく守っていることは妥当ではないと思いますので、これはほかのものと十分話し合ってもらうことは結構ですけれども、やはり公平な立場対応してもらいたい。こういうことで、その意向があるかどうかだけひとつその御返事をいただきたいと思う。  これは大臣、悪いけど答えてくれませんか。ここで黙って立っていたままでえらい時間稼ぎされていたんでは困ってしまう。
  341. 竹下登

    竹下国務大臣 私自身に完全に理解が行き届いておりませんので、理解をするようなことからまず始めさせていただきます。
  342. 沢田広

    ○沢田委員 続いて、いろいろありますが、金融機関の週休二日制についてはサミットを前にして特に緊急であり必要でありますので、週休二日制、この八月、六月、いろいろありますが、まず対応する農林、続いて労働、郵政、大蔵と聞きますから、並んでいて、やる気があるかないか、それだけお答えいただきたいと思います、もう時間がないですから。
  343. 眞鍋武紀

    眞鍋説明員 農協、漁協の系統組織におきましては、他の金融機関と歩調を合わせまして週休二日制の一日拡大ということを実施することを機関決定をいたしております。この決定に従いまして、八月から月一回、第三土曜日を休みにするということで混乱なく実施するというふうに承知しております。農林水産省といたしましても、このような週休二日制が円滑に実施されますように指導してまいりたいと思っております。
  344. 澤田陽太郎

    ○澤田説明員 労働金庫につきましても、他の金融機関と足並みをそろえまして八月以降、月二回土曜休業制を実施いたしたいということで、現在関係政令等の改正作業を各省間で進めておるところでございます。
  345. 三宅忠男

    ○三宅説明員 お答え申し上げます。  郵便局の土曜閉庁日の拡大につきましては、民間金融機関の動向等も考慮いたしまして、本年八月から月二回に拡大いたすことにいたしております。
  346. 吉田正輝

    吉田(正)政府委員 本年八月から月二回土曜休業制を実施できますよう、現在銀行法施行令等の改正作業を進めておりまして、近く公布の予定でございます。
  347. 沢田広

    ○沢田委員 あと二つばかりありますが、時間の関係もあります。  金利の自由化、証券の手数料の自由化、それから銀行と証券との調和。これは各国とも、ここに「世界の金融市場」というのがあるのでありますが、それぞれ金融機関と証券とが調和している。郵便と銀行、こういう争いもありますけれども、それぞれいろいろ調和を図っておる。こういう状況の中で、金利の自由化、それから証券の手数料等の自由化、そういうものにこれからはやはり必然的に行かなければならぬだろうし、証券と銀行、これとの調和も図らなければならぬのではないか、こう思いますが、いかがですか。じゃ、これを聞いて、まだ時間ありますね。それだけ一つお答えください。大臣ですか。
  348. 吉田正輝

    吉田(正)政府委員 先生御承知のとおり、金利の自由化につきましては大口定期預金の自由化などを着実に実施しているところでございまして、残る小口預金の自由化につきましても、大蔵省内で勉強します金融問題研究会でできれば夏ごろまでに中間的報告を取りまとめ、あわせて、郵政との話につきましては郵政省と別途話し合いを行っておるところでございます。これが銀行と郵政並びに金利自由化のところでございます。  証券の手数料につきましては、証券局長がおりませんので私としては御答弁を差し控えたいと存じますが、銀行と証券の業際問題につきましては、確かに機械化、自由化それから国際化というような各種の世界的現象を背景といたしまして、世界的にもいろいろ問題になっているところと思います。少なくとも我が国に関する限りはできるだけ垣根を低くして、固有の分野は別といたしましても、法制上銀行と証券の分離主義でございますので、ただいままでのところは垣根をできるだけ低くして固有の分野を守っていく、競争と協調を図っていくということではないかと思います。それから国際的に見ましたときには、やはりできるだけ法制の許す限りにおいて国際協調を図っていく、こういう形で進めたいと思っております。
  349. 沢田広

    ○沢田委員 この短い時間の中でなかなか詰めがたいものがありますから、ただ、検討する課題であるということは大臣否定はなさらないと思いますので、そういう意味で検討課題になっている世界的な問題である、こういう位置づけでひとつ御検討をいただくということで終わりますが、首を縦に振っているから検討してもらえる、そういう理解で次に行きます。  次に、住宅の問題で、これも調整区域の住宅緩和を図ろうと建設省考えておるようですが、その事実はありますか。
  350. 伴襄

    ○伴説明員 お答え申し上げます。  市街化区域の線引きによる拡大の話だと思いますけれども、これは定期的に、五年ごとくらいに都市計画の基礎調査をやりまして、必要な市街化区域の拡大ないしは縮小というようなことをやっております。
  351. 沢田広

    ○沢田委員 質問の趣旨と答弁が違いますが、時間が来ましたので終わりますが、最後に、地方団体も、今大蔵大臣が言ったように、次の段階の来年を考えたときには財政的にも大変転換をする一つのきっかけの年になるであろうということも述べられました。それを契機に地方団体が貸借対照表をつくっていくという考え方を制度化をしていくということについてどうか。  これは、これからは特に用地の買収あるいは学校生徒、子供の減少等々非常な変革の時期を迎えるわけでありますから、市民が的確にその市政を判断するための必要な要件として、財政試算でも結構ですが、貸借対照表的にいわゆる貸方、借方を明確にしていく、こういう形をとることが望ましいと思うのでありますが、その点は来年度でも一応試行的にやってみていただけないか、こういうふうに思いますが、いかがでしょう。そのお答えで終わります。考えてみると言うなら終わります。
  352. 水野勝

    ○水野政府委員 突然のお尋ねでございますし、また地方団体の問題でございますので、御指摘の点を関係者に伝えまして検討いたしたいと思います。
  353. 沢田広

    ○沢田委員 それではもう終わるのですが、必要性があるだろうと思って言っているのですから、必要性があるかどうかの判断だけしてもらえば……。するかしないかは別でもいいですよ、もし何なら。必要性があると思ったらひとつ方向をそっちへ向けて検討をしてもらいたい、こういうふうに思うのです。
  354. 竹下登

    竹下国務大臣 自治省とも相談してみます。
  355. 沢田広

    ○沢田委員 いや、大蔵省の問題なんだが……。  終わります。
  356. 小泉純一郎

    小泉委員長 坂口力君。
  357. 坂口力

    ○坂口委員 与えられました時間が二十分でございますので、私も超特急でやることにいたしますので、ひとつよろしくお願いいたします。  昨日の某新聞に、加算税の全面引き上げの記事が出ました。こういうふうな記事が新聞に出ましたときに、そのことを大蔵省にお聞きをいたしますと、必ずそんなことは検討した覚えがないという答えがいつも返ってくるわけでございますが、今回はどうでしょうか。大蔵省でこれは検討されたものでしょうか。それとも、これは全く検討されないことが新聞に出たことでしょうか。まずそこからひとつお答えをいただきたい。
  358. 水野勝

    ○水野政府委員 まさに委員御指摘のように、今回の記事につきましては私ども全く思い当たる点はないわけでございます。  と申しますのは、この加算税につきましては、昭和五十九年度の税制改正におきまして、納税環境の整備のための特別の部会も設けられ、いろいろ検討がされたわけでございます。その中の一環といたしまして、過少申告加算税につきまして若干の改正が行われたと申しますか、修正申告、更正に基づきます納付すべき税額のうち五十万円か期限内申告額かどちらか多い金額を超える部分につきましては、それまでの五%を一〇%に、倍にするという改正が行われておるわけでございます。重加算税につきましては、かつては五〇%でございましたが、五〇%の率は高過ぎるのではないかという昭和三十七年当時の答申がございまして、これを三〇%にいたした経緯もございますので、現在五%または一〇%の過少申告加算で三〇%の重加算税、これは現時点におきましてはまず適当なものではないかと考えておるわけでございますので、記事につきましてちょっと思い当たる点はないわけでございます。  いずれにしましても、税制調査会におきましてはすべての点につきまして今回抜本的な改革審議が行われるわけでございますので、その中での御審議を踏まえて適切に対処してまいりたいと考えておるわけでございます。
  359. 坂口力

    ○坂口委員 火のないところに煙が立ったのならば、それは構いません。しかし、やはり何かがあってこういう記事が出たといたしましたら、一考をしてもらいたい。  と申しますのは、脱税は決して好ましいことではございませんけれども、罰則を厳しくしたら脱税が減るというわけのものでもございません。したがいまして、こういう記事が出ましたのでどの程度のことが内部で討議をされているのかということをお聞きしたわけでございます。では、この問題は今はっきりとそうではないというお話がございましたので、これだけにしておきたいと思います。  それで、次には、納税に絡みましたお話をさらにお聞きしたいと思います。  税務職員の確保の問題につきましては、ことしも他の公務員が非常に減っております中で、税務職員の皆さん方の数が、微々たる数字ではございますが増加はいたしました。十分ではございませんけれども、他の分野との比較におきましては前進はしているというふうに我々も感じているわけでございますが、これはこれからまだもう少し増加をさせなければならないというふうにお考えになっているのか、もうこの辺のところで、難しいところだというふうにお考えになっているのか、その辺のところもひとつお答えをいただきたいと思います。  これはいつも議論になりますし、今さら数字を挙げるまでもございませんが、昭和四十九年と昭和五十九年、この十年間を比較いたしましても、申告所得者数にいたしましても法人数にいたしましても還付申告者にいたしましても、一・四倍、一・四倍、二・二倍と非常に多くなっているわけでございます。この辺、簡単で結構でございますからお聞きをして、次に入りたいと思います。
  360. 塚越則男

    ○塚越政府委員 国税職員の増員につきましては、適正公平な課税の確保の要請が強まっておりますし、また業務の増大とか経済取引の広域化、国際化といったような複雑困難化という問題もございます。また、厳しい財政事情のもとでの歳入官庁という立場もございまして、大変厳しい定員事情の中ではございますが、いろいろ御配慮いただいてきているところでございます。  今後とも適正公平な課税の確保を図るために事務の合理化、効率化等各般の努力をいたしますとともに、国税職員の増員につきましては、厳しい行財政事情のもとではございますけれども、関係各方面の御理解を得て、実態に即して必要な措置が講じられるように努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  361. 坂口力

    ○坂口委員 税務職員の待遇改善の必要性につきましても言触れておきたいと思うわけでございます。  こういう難しい職種でございます。納税者との間でスムーズに話を進めますためには、やはりある程度ゆとりを持ってこの人たちが職務につかなければ、ゆとりがありませんと納税者との間の感情的なもの等が高まりまして、ぎくしゃくとしたようなことも起こるわけであります。したがって、できる限りゆとりを持った職場にしてあけなければならない。それはまた国としても大事なことではないかというふうに思っているわけでございます。  職員の数の確保につきましては、厳しい中だけれどもひとつこれからも頑張って確保していくようにしたいということでございますが、待遇改善の問題でお聞きしたいのは、税務大学校の問題でございます。  これは以前にも米沢先生でしたか、どなたかからお話が出たことがございますけれども、かなりな期間勉強もされますが、これはいわゆる研修という形に終わっているわけでありまして、部内で長い間勉強を続けられましても、例えば短大卒だとか大学卒だとかというような資格が得られるわけではないわけでございます。したがいまして、非常に多くの勉強をされて短大に匹敵するような勉強をされましても、いわゆる文部省の言いますところの短大というような形ではありませんから、給与体系等におきましては何ら変化が起きない、こういうこともございますので、これらの点を、これはもう将来のことでございますが、やはり一考を要するのではないだろうか、そうしたことがより大きな励みになるのではないだろうかと思いますが、この点についてお考えでございましたらひとつお聞かせをいただきたい。
  362. 塚越則男

    ○塚越政府委員 税大普通科の研修でございますが、国税庁のⅢ種試験による採用者に対しまして公務員としての自覚を身につけさせますとともに、税務職員として必要な知識、技能等の基礎的な事項を習得させるということが目的でございまして、いわゆる部内研修として、その一環として行っているものでございます。  部内研修につきましては、従来から、国税職員の一層の資質向上を図るという観点からその充実に努めてきたところでございますが、御質問の点につきまして、税大普通科研修の期間の拡充ということになりますと、やはり定員の中の一部を割くということになります。ある意味では戦力の低下にもなるということもございます。また、予算面の制約、いろいろ物理的な面の制約もございます。短大ないし大学卒資格の付与ということにつきましては、やはりこれは、部内研修ということから学校教育法上の問題があるように聞いております。非常に難しい問題はあるわけでございますが、やはり先生御指摘のように、職員の資質の向上、能力の充実という面で大変大事な課題の一環でございますので、今後とも勉強をしてまいりたいというふうに考えております。
  363. 坂口力

    ○坂口委員 高等学校を出た人にその勉強があったからといって短大または大学の資格を与えるということはなかなか難しいだろうと思うのです。しかし、短大卒業と同程度の資格を認めると申しますか、同等の見方をすると申しますか、そういうことができればというふうに思うわけであります。その辺、ひとつ検討を十分していただきたいと思います。  それから、先ほどお聞きしました職員数も日本はなかなかふえないというふうに思っておりましたが、税務職員数のアメリカとの比較がございますけれども、アメリカもそんなに多いわけじゃないのですね。国民総生産で見ますと、日本に比べましてアメリカは三倍でございます。税務職員数は、日本が五万二千八百四十一人、これは一九八四年の数字でございます。それに対しまして、アメリカは八万八千二百八名で、一・七倍でございまして、それほどアメリカも多くはない、むしろ日本の方がまだゆとりがあるかなという感じもしないわけではないわけであります。職員一人当たりの徴収税額を見ましても、日本が六億一千八百万円、アメリカは十八億三千二百万円、アメリカは日本の三倍になります。それから、人口一万人当たりの税務職員数は、日本が四・四人でありまして、アメリカは三・七名。人口割りにいたしましても日本の方が多少ゆとりのある数字でございます。  これを見まして感じますのは、アメリカがこういうふうにして案外少ない人数で多くの仕事をしているのは機械化に対しまして非常に力を入れている。この機械化に対しましてADP関係予算日本が百三十四億、それに対しましてアメリカは何と二千六百億円、日本の二十倍を一九八五年度にかけているわけでございます。機械化に非常に力を入れている。日本の場合にも、人数をそれほどふやせないということならば、もう少し機械化に熱心に取り組んではどうだろうか。資料の情報事務でありますとかあるいは不正滞納等の電算機による管理、そうしたことももっと機械化によりましてできるわけでありますから、この辺のところをもっと真剣に取り組んではどうだろうか。この辺、大蔵省の中でございますから、自分のところに余りたくさん予算配分するのも気が引けるということで少し低目に抑えておみえになるのかよくわかりませんが、そんなことはないと思いますけれども、もう少しこの辺のところは税収を確保するために取り組んでいい分野ではないかと思いますが、いかがですか。
  364. 塚越則男

    ○塚越政府委員 御指摘のように、アメリカの場合非常に機械化が進んでおりまして、これも大変効率的にできる理由の一つだろうと思っております。  国税庁としましては、これまで、事務効率化、職員の事務負担の軽減という観点から、債権管理を含めました内部事務の機械化に努めてきたところでございますが、今後とも国税事務の運営に当たりましてはさらに機械化を進める必要があると認識いたしております。このため、部内に効率化を検討するための委員会というものを設けるなどいたしまして、事務の機械化のための検討を現在進めているところでございます。  なお、要員の確保ということでございますが、厳しい行財政事情のもとではございますけれども、関係方面の御理解を得て、実態に即して必要な措置が講じられるように引き続き努力してまいりたいと考えております。
  365. 坂口力

    ○坂口委員 えらい語尾がはっきりしませんでもやもやと終わりましたが、やるのですかやらぬのですか、それだけはっきりしてください。これからしっかりやるつもりなのですか。余分なことは要りません。
  366. 塚越則男

    ○塚越政府委員 先ほど申しましたように、部内で効率化を検討するための委員会などを設けまして、これから機械化を推進するための検討を進めることに力を入れてまいりたいというふうに考えております。
  367. 坂口力

    ○坂口委員 時間でございますので、今申し上げました全体にわたって大蔵大臣から所見をお伺いして、終わりたいと思います。
  368. 竹下登

    竹下国務大臣 要点をお答えいたします。  税務職員の確保、これは毎年毎年本委員会で決議していただきますその背景がありますばかりに、二けたとはいえ今までは十一人とか十六人でございましたが、今度初めて六十四名ということで、二けたでも上の方へ参りました。ありがとうございます。引き続き決議をお願いしますなんという大それたことは申しませんが、御支援をお願いします。  それから、待遇改善の問題は、これも毎年でございますが、遠慮しながらも特に私から人事院総裁にじかに陳情するということを繰り返しております。  税務大学校の格上げ問題については、学校教育法との問題は確かに越せない一線だな、率直に言ってこういう印象を持っております。  機械化の問題につきましては、さらに機械化を進める必要があると考えておるということであります。
  369. 坂口力

    ○坂口委員 では、終わります。ありがとうございました。
  370. 小泉純一郎

    小泉委員長 薮仲義彦君。
  371. 薮仲義彦

    薮仲委員 私は、ただいま議題となっております租税特別措置法の一部を改正する法律案、この中できょうは特に住宅に関連して大蔵大臣並びに大蔵省建設省に、懸念する点を何点かお伺いしたいと思うわけでございます。  貿易摩擦の激化に伴って内需拡大政策日本経済財政運営の中で非常に重要でございます。果たしてこの租税特別措置によって内需拡大の一つの大きな柱になっている住宅政策が進むのかどうか。特にきょうは閣議で五期五計も決定されたわけでございます。六十一年から六十五年まで、さらにはこれからの我々国民の住環境というものがきょうからスタートしていくわけでございますが、これだけの税制改正で果たして住宅建設が進むのかどうか。四期五計を振り返ってみましても、十分な達成率には至っておりません。そういう点を踏まえまして、何点かお伺いしたいのでございます。  最初に、ただいま申し上げましたように五期五計が閣議決定されましたが、今回の住宅取得に関する租税特別措置によります五期五計への影響大蔵省としてはどのように見ていらっしゃるのかお伺いしたい。
  372. 水野勝

    ○水野政府委員 今回の住宅取得促進税制におきましては、従来の住宅取得控除制度と違いまして、住宅金融公庫など公的機関からの借入金も含む、これを対象にする、さらには足切り限度を廃止するということで、少額の借入者にも幅広く効果が及ぶというような数々の措置を講じておるところでございまして、これによりまして相応の効果が期待される、このように申し上げてきているところでございます。
  373. 薮仲義彦

    薮仲委員 きょうの五期五計の閣議決定と並行して、建設省が宅地の需給見通しを出しているわけでございます。住宅建設とリンクして宅地の供給はないがしろにできません。今回の租税特別措置で行われているのは住宅を取得しやすくするための税制の緩和だけで、土地税制はいじっておりません。大蔵省は、土地に関しては一切関係がないというか、大丈夫だという見解なのですか。
  374. 水野勝

    ○水野政府委員 土地税制につきましては、昭和三十年代以来数々の検討が加えられ、また改正が行われてきておるわけでございますが、土地税制は、基本的には、これまでの経緯に照らしましても長期・安定的な制度であることがむしろ肝要ではないか。そうでないと、さらに制度が改正になる、甘くなるといった期待感が出たりいたしますと、かえって売り惜しみ、仮需要といったものを誘発したりいたしまして、安定的供給が阻害されるのではないか、こんなところから安定的な制度がむしろ望ましいのではないかと考えておるわけでございます。  現行の土地税制につきましては、個人については長期譲渡所得については二〇%、優良住宅地の供給については二五%、一般の場合は、四千万円を超える場合は普通の累進課税の二分の一相当の課税ということで各般の措置を講じておるところでございますので、土地供給の面からの土地税制の点につきましてはこうした制度が定着しております現行制度、これを現時点でさらに手直しをするという段階ではないように思われるわけでございます。
  375. 薮仲義彦

    薮仲委員 建設省お見えだと思うのですが、現在の住宅金融公庫の金利を規模別に言ってください。
  376. 三井康壽

    ○三井説明員 現在の公庫融資につきましては、個人住宅で申し上げますと、規模別、五十平米から百二十平米までが五・四%、中間金利口と言っておりますけれども、百二十平米から百四十五平米までが五・九%、大型住宅と言っております百四十五平米から百八十平米までが六・四%ということでございます。
  377. 薮仲義彦

    薮仲委員 大蔵省にお伺いしたいのですが、今財投金利は何%でございますか、それから財投をさらに下げると言われておりますけれども、どの程度下げる見込みですか。
  378. 竹下登

    竹下国務大臣 今の預託金利は六・三%、法律で六%以上となっております。第二次の公定歩合引き下げに連動した問題については、今検討中です。
  379. 薮仲義彦

    薮仲委員 それで結構だと思うのですが、これは我々も推測した数値は聞いております。  建設省、この財投金利が下がれば公庫融資も当然下がってくると思いますが、いかがですか。
  380. 三井康壽

    ○三井説明員 財投金利につきましてはただいま検討中ということでございます。私どもといたしましては、財投金利が幾らかの幅で改定されるということになりますと、それに相応いたしまして公庫につきましても貸付金利というのは下げてしかるべきではないかと考えているわけでございますけれども、いずれにいたしましても、財投金利が改定されるかどうか、改定幅もまだはっきりしておらない段階でございますから、それがはっきりしました段階財政当局とお話し合いをしていきたいと考えております。
  381. 薮仲義彦

    薮仲委員 今の住宅金融公庫の金利の中で、例えば百四十五から百八十平米、これは六・四%でございますが、財投が六・三でございますから、これを基準にいたしまして大体〇・一アップでございます。それから、一番標準的に言われる五十平米から百二十平米がそれから一%少ない五・四%になっておりまして、今大臣が明確になさいませんでしたけれども、近々この財投金利が下がって住宅金融公庫の貸出金利も下がるということはもう予測される事実でございます。  ここで一つ考え方が指摘されておりますので、これについて大蔵省はどう考えるか、これは日経の記事でございますが、出典を明らかにするために名前をはっきり言った方がいいと思うのですが、東京経済法律研究所代表の飯田久一郎氏という方の論文があるのです。これは私、必ずしも適正であるという立場には立っておりません。こういう見方もあるということですが、結論的に言いますと、家を建てるということと宅地供給というのはリンクしてなければかえって土地の高騰を招きますよという諭旨なんです。  言われているとおり読んでみますと、「五十三年以降、有効な土地供給策を欠いたまま、内需拡大のために住宅金融公庫が持ち家取得に対する低利融資を急速にふやしていったときは地価が四年間に四〇%も上昇した。」きょうは時間がありませんから建設省から当時の地価の上昇を聞きませんけれども、確かにこれは高いときで一六・数%上がっているのです。やはり適正な土地の供給を図らずに家を建てやすくすると問題がありますよ、こういう指摘があります。現在このように租税特別措置によって持ち家を建てやすくした、しかし土地の供給ということとリンクしないまま放置すると、逆にこれはかえって地価の高騰をもたらします、地価の高騰をもたらしますと住宅建設が難しくなって内需の拡大にはかえってマイナスになってきますよ、あるいはまた、その土地や住宅を買えない借地・借家人の方には地代家賃の上昇を招きますよ、こういう指摘がございます。私は宅地の税制についてはよく理解しておる立場にございますが、住宅政策というものは、住宅を建てやすくするにはリンクして土地の供給を円滑にしなければこの効果は出てこないというこの人の一つ考え方に私は納得できる部分がございますが、大蔵省はこれに対してどうお考えですか。
  382. 水野勝

    ○水野政府委員 この方の所論は従来から私どもも読ましていただいたりしているわけでございます。土地というものが、限られた、極めて供給者サイドの圧力の強い商品でございますので、住宅等につきまして促進措置を講じますと土地の価格の高騰を招く、それは単に土地所有者に所得移転を起こすだけではないかというふうなこの論者の指摘しているような点は確かにあろうかと思うわけでございます。  そこで、土地税制としてこういったものにどのように対処するか、この論者の考え方によりますと、土地につきまして譲渡所得課税を軽減いたしますと、土地財産というものは税制上さらに有利な資産になり、それだけ土地を手放さなくなる、この方の諭旨はそういうことでございます。しかしまた一方、土地を売ろうにも譲渡所得税が高いので手放さないのだ、あるいはその税金分も負担してくれれば売ってもいい、そういう声もまたかなりあるわけでございます。そうした点からいたしまして、土地供給につきましての土地税制あり方というのは、軽減すべきなのか重課すべきなのか、まことにいろいろな議論があるところでございますが、そうした議論の末といたしまして、現在、先ほど申し上げましたような二〇%と二五%という二段階の比例税率で割り切りまして、安定的なものとして適用していただくように現在に至っているわけでございます。  土地問題につきましてはいろいろな議論があるところでございまして、先生御指摘のような諭旨、一つのお考えとして私どもとしても参考にさせていただく点があるわけでございますし、御指摘のこの論者の言うところもまたわかるわけでございます。
  383. 薮仲義彦

    薮仲委員 一つの問題点として、いわゆる住宅を建てやすくする環境と同時に、宅地をどうやったら供給しやすくするかということについて、やはり五期五計のスタートでございますから、長期にわたって財政面から御検討を今後加えていただきたいということを私はここで大臣にお願いをしておきます。  この五期五計の中で建設省が宅地需給についての見通しを立てられました。簡単に申し上げますと、いわゆる前期の五カ年で住宅の建設目標は六百七十万戸、そのうちの三百二十四万戸は建てかえや高層化など既成宅地の活用で賄える。残りの三百四十六万戸が新規の宅地需要と見て、これに一戸平均の需要宅地百七十一平米を掛け、五万九千二百ヘクタールの供給が必要というのが建設省の見通しでございます。  そこで問題は、公的な供給として、住宅・都市整備公団あるいは地域振興整備公団等、あるいは地方公共団体もございますけれども、これらによって約四分の一の一万五千七百ヘクタールは公的な供給になります。残りは民間宅地の供給で四分の三見ているわけでございますが、その手法、こうやって民間宅地を供給するのだという手法をちょっと要点だけ言ってください。
  384. 藤田真

    藤田説明員 お答えいたします。  先生御指摘のとおり宅地の供給が必要であるというふうに考えておりまして、そのためには、例えば線引きの見直しでございますとか、あるいは開発許可の規模要件の引き下げの活用でございますとか、あるいは地方公共団体が規制をとっております宅地開発指導要綱の行き過ぎの是正、そういうことによって宅地供給をふやしてまいりたいというふうに考えております。
  385. 薮仲義彦

    薮仲委員 建設省からいただいた「宅地供給量の推移」、時間がありませんからこちらで言います。  五十六年度一万一千八百ヘクタール、五十九年度は一万八百ヘクタール、千ヘクタールほど現在は宅地の供給が鈍化しております。ここで指摘しなければならないのは、今申し上げたように、近年の宅地の供給量は多少減少傾向にある。五十九年度で一万八百ヘクタールしかない。しかし今の五期五計で、今後五カ年間の必要量を年度平均で単純に割れば、年間一万一千八百ヘクタール必要なはずです。そうすると、ここで千ヘクタール今までよりも宅地の供給をふやさなければならぬ。これはどうやってふやすのですか。
  386. 藤田真

    藤田説明員 お答えをいたします。  今申し上げましたような宅地供給のための線引きの見直しでございますとか、あるいは開発許可規模要件の引き下げ、これは条例でできることになっておりますが、そういうものの活用あるいは指導要綱の行き過ぎの是正、さらには、関連公共施設の整備の促進、こういうことを積み重ねまして宅地供給を進めてまいりたいというふうに考えております。
  387. 薮仲義彦

    薮仲委員 特に最近言われるいわゆる規制緩和、これはどういうことを考えていますか。
  388. 藤田真

    藤田説明員 規制緩和の中の宅地供給施策といたしましては、繰り返しになりますけれども、指導要綱の行き過ぎの是正でございますとか、あるいは開発許可の事務の迅速化をするために書類を少なくするとか、あるいは線引きの見直し、それから規模要件の引き下げ、こういうものが該当すると考えております。     〔委員長退席、堀之内委員長代理着席〕
  389. 薮仲義彦

    薮仲委員 もう少し具体的な問題で答えてもらいたいのですが、例えば今東京都で環状六号あるいは環状七号の中にある一種専住については規制緩和をして高さ制限の十メーターを緩和しようとか、あるいは容積率を都市計画の中で改善しようとか、こういうことは考えてないのですか。
  390. 伴襄

    ○伴説明員 お答え申し上げます。  環七または環六以内の一種住専見直しをして、今十メートル高度制限になっておりますので、それを二種住専なり住居地域にしたらどうかという話でございまして、これにつきましては東京都の知事さんは、マイタウン構想でなるべく減らそうという方向で指導しております。ただ、環六の中では全面積のわずか二・五%程度でございまして、残り九七・数%はほとんどその制限がかかっていないという状況にございます。  容積率につきましては、一般的には全体の用途地域の見直しとリンクさせてやっております。そして、よいプロジェクト、良好なプロジェクトのときにはスポット的にそこの容積を見直したり、あるいは特定街区とか総合設計といったような制度を活用いたしまして、容積の割り増し制度を活用していくという方向でございます。
  391. 薮仲義彦

    薮仲委員 そこで、建設省に今の問題でよく考えていただきたいのは、いわゆる容積率をふやす、今まで一〇〇%を二〇〇%にする、倍にする、あるいは高さ制限を緩和する、価値が倍になるわけですね。ということは、ある意味では地価を上げてもよろしいということにならないのかどうか。この容積率の緩和と地価の高騰との関係で、地価を抑制するために建設省が何かしかるべき手法というものを考えないと、単に規制緩和だ規制緩和だと無制限にやること自体は逆に地価の高騰を招きかねない。それについて、規制を緩和することによって容積率が二倍になれば、地価は単純に二倍になるとか、あるいは空中権の問題もございますが、そういうことを勘案しながら、いかに地価の抑制、というよりも適正な値段にするかということについて何か考えておりますか。
  392. 伴襄

    ○伴説明員 規制緩和によりまして地価が上がるという御懸念でございますけれども、一般的に用途地域あるいは容積をふやしまして、その容積にリンクして地価が上がるということがあると思いますので、私どものとっている方向は、そのプロジェクトを見まして、良好なプロジェクト、オープンスペースを生み、よい住環境、都市環境を生み出すよいプロジェクトにつきまして容積率を割り増す、あるいは用途を見直すという方向で、一般的に地価が上がらないような方向に持っていきたいと考えております。
  393. 薮仲義彦

    薮仲委員 今私が指摘したことを十分心にとどめておいて、五カ年たって地価の高騰を招かないように十分対処していただきたい、このことは指摘しておきます。  それから、四期五計の実績等を踏まえて、この租税特別措置との間でどういう関係があるかをちょっと考えたいと思うのでございますが、今度の租税特別措置というのはいわゆる持ち家の取得をよりしやすい方向へ税制を改正していこうという方向です。しかし、現在の国民のニーズというのはどういう方向になっているか、四期五計を振り返って、持ち家と賃貸の動向は今どうか、わかりやすい指標で教えていただけませんか、建設省
  394. 内藤勲

    ○内藤説明員 お答えいたします。  第四期と第五期につきまして、その六百七十万戸のうち持ち家系と借家系をどう考えているか、割合で申しますと、第四期では持ち家系を七一・四%(薮仲委員「パーセントじゃない、実績」と呼ぶ)その七一・四%に対しまして、実績は六三・七%ということでございました。  そういった状況を踏まえまして、第四期の計画に比べますと貸し家にウエートをかける、持ち家を落とす形で第五期の五カ年計画では六三・二%ということを想定しております。
  395. 薮仲義彦

    薮仲委員 今の答弁ではちょっとわからないので、これは大臣におわかりいただくために、時間がありませんから私のところにある資料で申し上げますと、四期五計の中で一番わかりやすいのでいいますと、例えば五十六年、持ち家が五十五万七千戸だったのです。六十年どうであるかというと、これは中間でございますけれども、これが現在で三十八万四千、五十九年にいっても四十七万三千戸と、五十六年から持ち家はだんだん建設着工戸数が減っておるのです。  逆に貸し家の方はどうであるかといいますと、例えば昭和五十六年、十八万九千戸なんです。それが五十九年の推計では、結果的に一番借金していますが、三十六万六千、これは約倍ですね。この四期五計の計画を底上げしていたのは何かというと、借家を建てるという方向が多かった。やはり持ち家志向というものを持っておっても、民間のデベロッパーというのは借家を建てる方向へ持っていった。  では、建設省にお伺いしたいのですが、今ここにあります国民の住宅需要実態調査、これも建設省の住宅局の資料です。これも私の方で申し上げましょう。これの三十八ページにこういうことがあるのですよ。  現在入っている人、この人が今後とも借家に「住み続けたい」一二・八%、「どちらかといえば住み続けたい」一六・八%、合計でざっと三〇%。それから「どちらかといえば住み続けたくない」一九・四%。はっきり住み続けるのが嫌だというのが一七%、合計で三六%。大体継続して借家にいたいという人が三割、それから住み続けたくないという人も三割台です。  今、この五期五計の着手に当たって、私は国民のニーズというのは借家にいくのか、戸建てにいくのかという大きな分岐点に立っていると思う。どっちが得だろう、これからのデフレ傾向の中でローンの負担考えると、それよりも賃貸を借りて楽しく人生を送っていこうという考えもあるかもしれない。そうすると、この五期五計の中で、潜在的には持ち家志向かもしれない、しかし、賃貸というのが非常に重要な国民のニーズという数字がこの建設省の資料の中に出てくるわけです。こういうようにいわゆる国民のニーズが借家の方にいっている理由をどう考えますか。
  396. 内藤勲

    ○内藤説明員 先生のお話にもございましたように、最近、貸し家建設が非常に進んでいる、そういったことにつきましてその原因として考えられるのは、まず需要サイドから考えますと、住宅価格が非常に高くなってなかなかそれを持ちにくくなってきた、そういったことが一つあろうかと思います。それから供給サイドから考えましても、税対策とかそういったことでなかなか供給しやすいような状況ができている、そういったことだと思います。五カ年計画につきましても、そういったことは踏まえているつもりでございます。
  397. 薮仲義彦

    薮仲委員 今答弁の中にありましたけれども、住宅価格と所得の乖離、どれが持ち家を困難にしているという指摘がございました。これは建設省、何か数字を明確に言えるようでしたら、五十九年度現在で所得と価格の乖離が何倍ぐらいになっているか、戸建てとマンションでわかる数字で結構ですから言ってください。
  398. 内藤勲

    ○内藤説明員 五十九年度につきましては、マンションの場合には住宅価格が所得の四・三倍、建て売り住宅につきましては六・三倍、そういう状況でございます。
  399. 薮仲義彦

    薮仲委員 大臣、ちょっと御記憶いただきたいのですが、これはいわゆる平均のサラリーマンの所得ですね、これは建設省は京浜地区でおやりになったと思うのですが。マンションを購入するときも年間所得の四・三倍、あるいは戸建てをやれば六・三倍、これでは住宅を取得しようと思っても収入と価格の乖離がひど過ぎる。野党が所得減税、所得減税、こう言う意味一つには、幾ら租税特別措置で住宅を建てようとしても国民の所得との乖離が六・三倍もあったのではサラリーマンには高ねの花でとても家は取得できないということがあると私は思うのです。この辺の内需拡大政策としては、租税特別措置と同時に、やはり所得と価格の乖離をどう埋め合わせるかということがあると思う。  ここでちょっと建設省に聞きたいのですけれども、建設省は、戸建てだったら、サラリーマンが何倍ぐらいまでだったらローンを支払って買えると考えて住宅政策を立てているのですか。     〔堀之内委員長代理退席、委員長着席〕
  400. 内藤勲

    ○内藤説明員 何倍が適当かというのはなかなか言えおいのですが、かつて住宅宅地審議会の答申などでも、個人の住宅の返済に充てる額は所得の二五%、そういうことの提案がございまして、そういったことを参考にしながら考えております。
  401. 薮仲義彦

    薮仲委員 建設省にちょっとお伺いしたいのですが、今日本の国では戸建てが六・三倍、マンションで四・三倍、これは海外は大体どの程度かおわかりですか。例えばアメリカとかフランスとか、海外は所得との乖離が何倍ぐらいで家が建てられるか。
  402. 内藤勲

    ○内藤説明員 欧米先進国といいますか、そういったところを例に見ますと大体三倍前後、ドイツなんかの場合には五倍程度でございますが、三倍前後の国が多いかと思います。
  403. 薮仲義彦

    薮仲委員 これは私の方に資料があって、恐縮なんでございますけれども、大蔵大臣に御理解いただくためにちょっと数字を念のために申し上げます。  アメリカで三倍、イギリスで三・六倍、西ドイツで五・三倍、フランスで二・七倍です、今課長お答えになったように大体三倍なんです。ところが、日本はその倍の六・三倍なんです。租税特別措置ということで税制を緩和したかもしれませんけれども、根っこにある国民所得と住宅価格の乖離というものをどこかで縮めてこないと非常に大変だと思うのです。それは建設省政策にまつこと大でありますけれども、国民所得とこの価格の乖離、所得を上げるというのは大蔵大臣の所掌だと思うのでございますが、この辺に対していかがでございますか。
  404. 竹下登

    竹下国務大臣 所得を上げるのが大蔵大臣の所掌かどうか、この問題は別におきましょう。しかし、やはり私は、十年も前でございますが建設大臣をやっておった当時いろいろ考えてみましたが、結局アメリカと日本と比べてみますと、可住地面積が人工一人当たりにして大体四十倍向こうがあるのじゃないか。そうすると、当時のことでございますが、あのロサンゼルス郊外が五万円で東京の高級住宅地が二百万、ちょうどまた経済原則に合うなという感じを持っておったことがございますので、基本的にはやはり土地問題というところがネックであろう。国民所得が上がるというのは、これはもちろんだれしも好むところでございますけれども、それと直ちにリンクさすという議論は住宅取得価格と所得の乖離という問題とはちょっと別の問題ではなかろうかと考えます。
  405. 薮仲義彦

    薮仲委員 今の大臣の御答弁、後ほど会議録をしっかり読ませていただいて、この住宅政策については私長年やっておりますので、大臣と別な機会にこの所得の乖離の問題についてはきっちりとやりたい。きょうは時間がありませんから次に論議を持ち越しておきます。  次の問題で、これは大蔵省に非常に粗っぽい計算をしてもらいました。大変忙しい時間の中で計算をしていただいて恐縮しておるのでございますが、土地神話という言葉がございます。現在の税制の中、また現在言われている預金金利の中で、もう非常に計数は粗いのですけれども、今土地を売って、仮にこれを定期性の預金等で蓄えて十年後に手元に入る金額と、十年間土地を持っていてその十年目に土地を売ったとき手元に残る金額。これは何を言いたいかといいますと、土地が何%上昇したならば将来持っていた方が得だ、しかし、土地が上昇しないのだったら今売った方が得だ、土地が年平均何%くらいで上昇していったときには今売った方が得だ、ここから下だったら売れ、ここから上だったら売らない方が得だという大体の限界線を出していただきたいと申し上げたので、これは非常に粗雑なものですけれども、大体どの程度とお考えですか。
  406. 水野勝

    ○水野政府委員 大変草々の間に計算をさせていただきましたので、一応先生にお示しした数字、今ちょっと計算をしてみましたら、計算にやや手抜かりがあったようでございまして、先生に申し上げた数字よりももっと低くなり、土地値上がり率り方が恐らく五%未満ではないか。なお正確に計算してお示ししたいと思いますけれども、そんな感じでございます。(「税金は」と呼ぶ者あり)
  407. 薮仲義彦

    薮仲委員 今、税金もあるぞということですが、これはちゃんと税金も入れて計算をしていただいてございますので、五%前後というのが一つのめどかもしれません。しかし、国民の中に土地神話が消えるということはこれからの宅地供給に非常に重要なことでございますので、この辺の取り組みも考えておいていただきたいと思います。  それから、これは大蔵省に特にお願いしたいことなんです。これはどうしても検討していただきたいのは、先ほど建設省民間の宅地造成の手法は幾つあるかと聞いたわけでございますけれども、特に今、民間の宅地造成業者、デベロッパーが地主さんから土地を買って、そこに優良宅地の造成ということで千五百万円控除がございます。そして小さな宅造業者がこれを一括していわゆるハウスビルダー、名前を挙げて恐縮でございますが、例えば大和とか積水とか大きなハウスヒルダーに一括売りたい。そうすると、ハウスビルダーはプロですから、それを公募して適正な値段で一遍でぽんと売ることも可能かもしれませんし、資金量も豊富ですし、販売能力も豊かです。そうすると、宣伝効果等もございまして、ある意味では我々国民の側から非常に買いやすいという場合がございます。  しかし、現行税制では、土地の所有者が優良宅地としてデベロッパーに土地を売却したときに千五百万円控除は効いておりますが、デベロッパーがハウスビルダーに一括売却した途端に千五百万円控除は消えてしまうのです。これは民間の宅地を供給するに当たって非常に困っているのです。これは課税の段階で、土地所有者がデベロッパーに土地を売ったときにハウスビルダーが公募するかどうかを必ずしも明確に掌握できないということで大蔵省はそれを却下するのです。それも結構かもしれませんけれども、民間宅地を潤沢に供給するためには、こういうところこそきちっと見て、公募要件が適正であるならば、むしろデベロッパーからハウスビルダーに土地を一括卸売をしてもその租税特別措置が効くような方向がどうしても必要だと私は思うのです。これをやらなければ、今宅地供給の非常な阻害要因になっているのです。何とかこれは検討していただきたいのですが、いかがでございますか。
  408. 水野勝

    ○水野政府委員 そうした御要望があることは従来から承っているところでございますが、ただいま先生御指摘のような、まさに一括譲渡した場合にそれが結果的に建て売り業者の素地供給と変わらないような結果になるおそれがあるということから、現時点におきましてはこれは御理解を賜りたい、このように考えておるわけでございます。
  409. 薮仲義彦

    薮仲委員 全く御理解しませんので、これはまたしつこく何回もこの委員会でやらしていただきますので、記憶しておいてください。  最後に、大臣、国鉄用地の売却なんです。これは確かに、国鉄の長期債務が三十七兆三千億で、国鉄の用地の売却で五兆八千億を何とか埋め合わせしたい、こういうことでございます。これは私、運輸委員もやっておりましたので、このことは基本的にわかります。ただしこれは、建設省あるいは国民立場から言うとこれで果たしていいのか。というのは、国鉄が一般公開競争入札で土地を高く売る。この新聞記事にもございますように「三・三平方メートル三六〇〇万円 国鉄宿舎跡地超高値で売れた」なんという新聞見出しがございますけれども、今国鉄の持っている土地は日本の歴史最後の一等地だと思うのです。駅周辺の最も恵まれた土地です。私は静岡ですけれども、静岡の駅南というのは開発がおくれているのです。そこに鉄道病院があるのです、二千坪。これがもしも一般公開競争入札で高騰したときに、駅南の都市開発というのが物すごくおくれてくるのです。  何を私が申し上げたいかというと、地方都市においては、駅周辺というのは、その地方自治体が五年あるいは十年前から都市計画の中に取り込んで、何とか我が町、我が市、我が村の駅周辺をきれいな町づくりをしようと思って長い間関係機関、建設省とも協議をして町づくりに努力しているわけです。それが今度は一般公開競争入札ですよ。今までは公共機関に対しては随契、特別にお分けしましょうということがあったのです。しかし、もしもこれが一般公開競争入札になったときに非常に困るわけです。こういう点も十分考慮していただきたいのですが、建設省、簡単に言ってもらいたいのは、現在の公共事業の用地費、住宅と都市計画建設省の事業費の中に占める用地取得費のパーセント、わかれば全国平均と三大都市圏だけ言っていただけませんか。数字だけで結構です。――わからなければ、私の手元に資料がありますから、建設省、間違っていたら後で会議録を直しておいてください。  五十七年と五十八年の資料が私のところにあるのですが、五十七年で申し上げますと、都市計画で二三・八%、住宅取得で二一%、これは全国平均ですよ。五十八年ベースで、都市計画で二四・五%、住宅事業で二〇・五%、大体二割。これが三大都市圏になりますと、今お答えいただけませんけれども、三〇%近くになるのじゃないか、用地取得にそれだけかかってくる。こうなってまいりますと、国鉄は高く売って国鉄の赤字は補てんされた、でも地価が高騰して、公共事業をやるときに国民の税金が違った形で用地取得に食われてしまって事業が進まない、あるいはそれが民間の宅地造成、住宅建設の大きな阻害要因になって、マクロの経済全体では国鉄を高く売ったことが国民経済全体を縮小させては何にもならないと私は考えるわけです。ですから、駅周辺の一等地でございますけれども、これが適正な価格で売られることがある意味ではマクロの経済の中で絶対必要ではないかと思うわけでございますが、この点、大臣の御答弁を聞いて質問を終わりたいと思います。
  410. 竹下登

    竹下国務大臣 国鉄用地に限らず国有地等につきまして、財政当局は可能な限り高く売りたい、こう考えます。それから、特に国土庁が地価対策からお考えになりますと、強制収用の場合は公示価格でやっておいて、勝手に売るときにはそれの数層倍する価格というものについては、国土庁は土地政策上好ましくないという意見がございます。それらを調和してどうするか、こういうことになりまして、今までの例で調和点を求めたこともございますけれども、いずれにせよ、公用、公共の用地ということからして随契約性格のものも探していかなければいかぬだろうというふうに考えますが、江崎さんの方で今、民活を含むそうした問題について大変な議論があるそうでございます。きのうも八時間だかおやりになったそうですが、抜本的な議論が今なされておるということでございますので、私が結論的なことを申し上げる段階には残念ながらございません。おっしゃる意味は私自身も時に触れ感じておることでございますので、しかと意見はちょうだいをいたします。
  411. 薮仲義彦

    薮仲委員 終わります。
  412. 小泉純一郎

    小泉委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  413. 小泉純一郎

    小泉委員長 この際、本案に対し、上田卓三君外二名から、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・国民連合の共同提案による修正案が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。米沢隆君。     ―――――――――――――  租税特別措置法の一部を改正する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  414. 米沢隆

    ○米沢委員 私は、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合を代表し、ただいま議題となりました租税特別措置法の一部を改正する法律案の修正案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  昨年九月の五カ国蔵相会議を契機とする急激な円高は、輸出関連を中心とする我が国の景気を急速に悪化させています。さきに経済企画庁から発表された全国の主要輸出産地における円高影響調査によれば、為替相場が今後一年間、一ドル百八十円から百九十円で推移すると、大半の産地で生産が大幅に減少し、甚だしきは前年比八〇%減少するとの予想すら明らかにされております。また、採算レートについては、すべての産地が二百十円から二百四十円の範囲内と回答し、そのうちの約六割が二百二十円に集中しており、一ドル百七十円から百八十円程度の現状からは大きくかけ離れているのであります。  さらに、同様のことは先般の衆議院商工委員会における多くの参考人から出された意見からも明らかであります。そこでは、一ドル二百二十円が企業が安定経営を続けられるギリギリの線だなどの意見が相次ぎ、中小企業を初めとする我が国産業を取り巻く現下の経済情勢の厳しさと、先行きの見通しに対する深刻な不安が強く訴えられたのであります。  このように、我が国産業、特に中小企業や構造不況産業などは今やその存立にかかわる危機的な状況に立たされており、かかる事態を克服するための政府の積極的かつ機動的な政策の推進こそが求められているのであります。  しかるに、政府が今回の改正案において法人の欠損金の繰越控除の一部停止を行い、結果として赤字法人に対する課税強化を図ろうとしていることは、政府の最大の公約たる「増税なき財政再建」に反することはもとより、円高不況にあえぐ我が国産業の苦境に追い打ちをかけるものであり、極めて遺憾であります。  特に、日夜を分かたぬ企業努力にもかかわらず赤字経営を余儀なくされている中小企業などにとっては、経営の早期改善が著しく阻害され、その機会が奪われるものであり、我々の極めて憂慮するところであります。  また、長期的視点に立った積極的な産業政策の必要性が叫ばれている現在、一時しのぎのこそくな財政資金調達の色合いの濃い、場当たり的な税制改正によって我が国産業の活力が損なわれていくことは、我が国経済の将来にとっても極めて重大な問題と言わなければなりません。  以上のような見地から、我々は、今回の政府提出による租税特別措置法の一部を改正する法律案については、諸般の事情にかんがみ、少なくとも以下の修正を行うことが不可欠だと考えます。  修正案においては、改正案における租税特別措置法第六十六条の十三の適用について、中小企業及び構造不況産業などへの適用を除外することとしております。  以上が本修正案の提案理由及びその内容であります。  何とぞ、慎重御審議の上、各位の御賛同を賜りますようお願い申し上げ、提案理由説明を終わります。
  415. 小泉純一郎

    小泉委員長 これにて修正案の趣旨の説明は終わりました。  この際、国会法第五十七条の三の規定により、内閣において御意見があれば発言を許します。竹下大蔵大臣
  416. 竹下登

    竹下国務大臣 この修正案については、修正案どおりの改正を行うと、昭和六十一年度予算影響を及ぼすことになりますので、政府としては反対であります。     ―――――――――――――
  417. 小泉純一郎

    小泉委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。中西啓介君。
  418. 中西啓介

    ○中西(啓)委員 私は、自由民主党・新自由国民連合を代表いたしまして、ただいま議題となりました租税特別措置法の一部を改正する法律案につき、賛成の意見を表明するものであります。  本法律案は、現在進められている税制全般にわたる抜本的見直しとの関連に留意しつつ、内需拡大等の要請にも対応するとともに、税負担の公平化、適正化を一層推進しようとするものでありまして、私は、政府の努力に対しこれを高く評価するものであります。  以下、具体的に申し上げます。  第一に、現行の住宅取得控除制度を改め、住宅取得促進税制を設けるなどのほか、東京湾横断道路建設に係る特定会社に対する出資額の一〇%相当額を所得控除する措置あるいはエネルギー基盤高度化設備投資促進税制を創設する措置等が講じられております。これらの措置は、住宅取得の促進、民間活力の活用等の見地から行われるものであり、内需拡大等の要請にかんがみ、適切措置であると考えます。  第二に、企業関係の租税特別措置等について、連年にわたる厳しい見直しに引き続き、特定資産の買いかえの場合の課税の特例の縮減等の整理合理化を行うほか、登録免許税の税率軽減措置についても所要の整理合理化を行うこととされております。また、国外関連業者との取引に係る課税の特例、いわゆる移転価格税制を設けることとされております。前者については、税負担の公平確保の見地から高く評価されるところであり、また、後者については、適正な国際課税の実現のため極めて意義のあるものと考えます。  第三に、法人税率の特例制度についてその適用期限を一年延長するほか、欠損金の繰越控除制度について、直近一年間に生じた欠損金に限り適用を停止する措置が講じられております。これらの措置は、なお引き続き厳しい財政事情にあることが勘案されたものであり、まことに必要やむを得ないものと考えるものであります。  第四に、たばこ消費税について、昭和六十一年五月一日から昭和六十二年三月三十一日までの間、その従量割の税率を紙巻きたばこについて千本につき四百五十円引き上げる等の臨時措置が講じられております。この措置は、昭和六十一年度予算における補助金等の整理合理化に伴う地方財政対策の一環としてなされるものであり、まことに当を得たものと考えるものであります。  その他、特定中小企業者事業転換対策等臨時措置法の制定に伴う措置及び中小企業の貸倒引当金の特例制度の適用期限の延長等の措置は、いずれも最近における社会経済情勢にかんがみ時宜を得た適切なものと考えます。  以上申し上げました理由により、本法律案に全面的に賛成の意見を表明し、討論を終わります。(拍手)
  419. 小泉純一郎

    小泉委員長 野口幸一君。
  420. 野口幸一

    ○野口委員 私は、日本社会党・護憲共同を代表いたしまして、ただいま議題となりました租税特別措置法の一部を改正する法律案について反対、同法修正案に賛成の立場から討論を行うものであります。  本案の内容は、その提案趣旨とは裏腹に、内需拡大はおろか税の不公平是正にも逆行する全く容認しがたいものであります。また、中曽根内閣が頑迷に死守している六十五年度赤字公債脱却の財政再建目標は、もはや全く達成不可能となっておりますが、政府は、税制の抜本改正を言うのみで、政府税調を隠れみのに一切の具体的な方針を示そうとせず、一時しのぎの場当たり的な対応で時を稼いでいるだけであります。しかも、減税案は参議院選挙に利用し、秋にはそのツケを財源措置として増税案を出すということは、全く国民を愚弄するものであります。  さて、本案の内容について申し述べますと、住宅取得促進税制は勤労者の住宅取得に多少の好材料をもたらすとしても、むしろ今日の住宅問題の核心は土地問題である現実を見るならば、地価の高騰を抑え、土地取得、住宅取得を促進する効果的な措置は何らとられておらず、全く不十分と言わざるを得ません。抜本的な地価対策を抜きにした制度の新設は不公平の助長をもたらすだけだということを申し添えておきます。  また、東京湾横断道路など一連の民活税制は、土地値上がりとプロジェクトの独占を当て込む大企業、大資本を利するのみで、何ら国民生活の向上に役立つものではないのであります。  まして、赤字法人の欠損金の繰越控除の一年分停止措置は、円高不況に苦しむ中小零細企業にまさに追い打ちをかけるものであり、赤字法人の実態を無視した全く血も涙もない措置であります。これでは、赤字から抜け出すために必死の努力をしている多くの中小零細企業に対して倒産しろと言うに等しいものであります。特に、最近の急速な円高によって、国内景気は急速に悪化しております。我が党は、公明党・国民会議、民社党・国民連合とともに、赤字法人課税問題に対して、特定産業構造改善臨時措置法第二条第一項に規定する特定産業に属する法人等に対して、その適用を除外するよう修正を要求するものであります。  最後に、政府税調の論議と経過を無視して予算編成の最終段階で突如引き上げられようとしておりますたばこ消費税については、このような暴挙は決して許すことができません。たばこの消費が頭打ち傾向を示し、外国たばこ日本市場進出が本格化しているこの時期に一方的に決定された消費税の値上げは、民営化したばかりの日本たばこ産業株式会社の経営を圧迫するのみならず、葉たばこ農家その他関係者に大きな影響を及ぼすものであると憂慮せざるを得ません。財政のつじつま合わせだけのために余りにも安易に決定された今回のたばこ消費税の引き上げは、到底賛成しがたいものであります。  以上、租税特別措置法の一部改正案が日本経済国民生活の発展にとって、また、税の不公平是正にとって全く逆行するものであるということを指摘して、私の反対討論を終わります。(拍手)
  421. 小泉純一郎

    小泉委員長 坂口力君。
  422. 坂口力

    ○坂口委員 租税特別措置法の一部を改正する法律案の採決に当たり、私は、公明党・国民会議を代表しまして、原案に反対、同修正案に賛成の討論を行いたいと存じます。  まず最初に、税制改革に対する政府の発言内容について言及せざるを得ません。  当委員会においても、我が党初め多くの委員から、税制改革に対する質問がなされましたが、答弁は終始一貫不透明であり、重要な点は政府税調を隠れみのとして見解を示さず、質問は議論に至らずに終わったのであります。全体像が不明のままこの法案の審議が終わりますことをまことに遺憾に思う次第であります。  次に、円高が進み内需拡大が叫ばれています今、税制面では減税が最大の課題になってまいりました。社、公、民、社民連の四党から二兆円規模の減税要求をしたことに対しまして適切な回答が得られず、内需拡大に大きな暗雲が立ち込めていることを指摘しておかなければなりません。  以上のように、税制改革税収の見込みなどに明確な方針のないままに、本改正案は砂上の楼閣のごとくつくられたものであります。  たばこ消費税の引き上げや法人税の欠損金繰越控除制度の適用の一部停止などは、財源あさり以外の何物でもありません。  特に後者の方は、円高影響等によって赤字経営を余儀なくされている中小企業にとって、経営の安定を著しく阻害するものであります。中小企業を頭から信用しないやり方は、自主申告制をとっている納税制度を根本から否定するものと言わざるを得ません。ここに修正案を提出した次第であります。  また、住宅取得促進税制は大きな期待を寄せられたものでありましたが、中身の薄い内容となり、内需拡大に役立つとは考えられません。少なくとも税額控除の額を住宅ローン等の残高の二%相当額までは引き上げるとともに、適用期間や対象を拡大すべきであると要求するものであります。  民間活力の導入につきましては、反対はいたしませんが、原理原則を明確にして、一部の者だけに甘い汁を吸わせたり、多額の赤字を残すような無計画は許すことができません。  六十一年赤字国債発行額は五兆二千四百六十億円に上り、六十五年度に赤字国債発行から脱却するためには、六十二年度以降毎年一兆三千億円ずつの減額が必要であります。五十八年度から六十年度までの三年間の平均減額実績の四倍に当たる額であり、もはやだれの目から見ても不可能であります。  したがいまして、税制改革は緊急の課題であり、一日も早く基本線を明確にするときであります。本法案の論議の中で、その期待は大きく裏切られました。ここに強く遺憾の意を表し、反対の討論を終わります。(拍手)
  423. 小泉純一郎

    小泉委員長 安倍基雄君。
  424. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 私は、民社党・国民連合を代表し、ただいま議題となっております租税特別措置法の一部を改正する法律案に対し、修正案に賛成し、原案に反対の討論を行います。  第一の理由は、国民の税に対する不公平感の解消と負担軽減並びに個人消費の拡大を図るために早急な実施が求められていた所得減税を当初予算段階において見送り、国民の期待を裏切っていることであります。  今後とも我が党は、あくまでも六十一年中における二分二乗方式などによる二兆円以上の所得減税の実施のため全力を尽くすものであります。  第二の理由は、先進国の中で最も重い我が国企業の実質税負担率を引き下げ、産業基盤の強化を図るための改正が行われていないことであります。  本案は、大幅な投資減税を見送るとともに、法人税の上乗せ課税の延長、赤字法人に対する新たな課税などを求めておりますが、これらは政府の最大の公約たる「増税なき財政再建」に反するばかりではなく、円高不況に追い打ちをかけ、内需拡大を妨げるもので、容認できません。  特に、我が党を初めとする野党が最小限の要求として提出した赤字法人課税についての修正案を政府・自民党が全く無視したことは、我が国産業の実態への無理解を示しており、極めて遺憾であります。  第三の理由は、我が党の要求した大幅な住宅、教育、パートなどの政策減税を見送り、国民生活の安定向上に資するものとなっていないことであります。  今や国民の生活態様は極めて多様化しております。かかる現状を十分踏まえつつ、政府が経済社会情勢の変化対応した税制を確立するよう求めるものであります。  第四の理由は、政府が来年度においても所得捕捉の徹底のための抜本策を講ぜず、キャピタルゲイン課税の適正化や貸倒引当金の見直しなどの不公平税制の是正に着手していないことであります。  その一方で、たばこ消費税の増税を十分な審議を経ずに強行したことは、極めて問題と言わなければなりません。  第五の理由は、政府が来年度を起点に、税制全般にわたる抜本的見直しの名のもとに、大型間接税の導入などの大増税の準備を着々と進めていることであります。  我が党は、国民に増税を求める以前になされるべき政策努力が不十分な現状下での増税には、強く反対するものであります。  以上が反対の主な理由でございます。  最後に、さきに与野党で合意された所得減税、政策減税の六十一年実施については、誠実にその約束を履行するよう政府・自民党に強く求め、私の討論を終わります。(拍手)
  425. 小泉純一郎

    小泉委員長 簑輪幸代君。
  426. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 私は、日本共産党・革新共同を代表し、ただいま議題となっております政府提出租税特別措置法の一部を改正する法律案について反対、社会、公明、民社三党共同提出の修正案について賛成の討論を行います。  反対する第一の理由は、大企業に対する特権的減免税を温存するだけでなく、民間活力導入を口実に大企業優遇措置を大幅に拡大しようとしている点です。  現行税制見直しは、価格変動準備金の廃止などわずかの縮減のみで、ほとんどの大企業優遇措置は延長されています。最大の問題は、東京湾横断道路建設促進税制民活関連特定施設整備への初年度一三%の特別償却制度、エネルギー基盤高度化設備投資促進税制、特定都市鉄道整備準備金など数多くの新たな大企業優遇措置が新設され、不公平をさらに拡大していることです。  反対する第二の理由は、大幅減税を求める国民の切実な願いに背を向けていることです。  この八年間、歴代自民党政府によって増税なしの所得税減税が退けられた結果、勤労国民の税負担はたえがたいものとなってきています。一方で、政府の内需拡大の目玉とされている住宅減税は、住宅を新たに取得する者にとっては幾ばくかの減税になっても、既に住宅ローンの重圧に苦しんでいる者には全く恩典が及ばないこと、さらに住宅政策の最大の問題である土地政策を欠いている点から見ても、庶民にとっては依然として住宅取得は高ねの花と言わざるを得ません。  我が党は、大企業、大資産家に対する優遇税制の見直しと一兆六千億円の軍事費削減を財源として、二兆五千億円の大幅減税の提案を行っています。内需拡大と言うのであれば、直ちにこの大幅減税を実施すべきであります。  反対する第三の理由は、財政のつじつま合わせのため専ら大衆課税の強化と中小企業いじめが行われている点です。  その典型が、国庫負担金削減による地方財政へのつけ回しのために行うたばこ消費税の値上げであります。今回の、全くルールを無視した、しかも、大衆課税となる間接税の増税による安易なつじつま合わせは断固反対であります。  さらに、赤字法人に対する欠損金繰越控除制度の一部停止措置についてであります。  赤字法人の大半は中小零細企業であり、今日、企業努力にもかかわらず赤字経営を余儀なくされている中小零細企業に対する積極的な振興策が求められているにもかかわらず、逆に課税強化となる今回の措置は、中小零細企業の見殺しと断ぜざるを得ません。  社、公、民三党共同提出の修正案は、この措置の適用を円高不況等で経営が著しく不安定な中小企業法人等について除外しようとするもので、原案の数多くある大企業優遇措置には全く触れていないなどの問題点があるものの、緊急避難的要求に基づくものであり、支持するものであります。  最後に、中曽根内閣が目指す税制改革は、大企業と大資産家への減税と軍拡のための財源を、最悪の大衆課税である大型間接税の導入によってすべての国民負担させようとするものであることがますます明らかとなってきています。それがたとえ福祉税という名の目的税にしようとも、何らその本質は変わるものではありません。  我が党は、このような反国民的な企てには断固反対するものであることを表明して、私の討論を終わります。(拍手)
  427. 小泉純一郎

    小泉委員長 これにて討論は終局いたしました。     ―――――――――――――
  428. 小泉純一郎

    小泉委員長 これより租税特別措置法の一部を改正する法律案について採決に入ります。  まず、上田卓三君外二名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  429. 小泉純一郎

    小泉委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。  次に、原案について採決いたします。  原案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  430. 小泉純一郎

    小泉委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ―――――――――――――
  431. 小泉純一郎

    小泉委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、中村正三郎君外三名から、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・国民連合の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。伊藤忠治君。
  432. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、案文を朗読いたします。     租税特別措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について所要の措置を講ずべきである。  一 税制度のあり方については、最近における社会経済情勢の推移と将来の展望を踏まえつつ、より公平で公正な税負担を実現するよう、幅広く意見を聴取し、抜本的に見直すこと。  一 退職給与引当金、貸倒引当金等の繰入率等について引き続き検討すること。    退職給与引当金の保全措置についても引き続き検討を進めること。  一 各種の租税特別措置については、随時見直しを行うほか、そのあり方について、抜本的改革の中で、基本的な検討を行うこと。  一 変動する納税環境、財政再建・財源確保の緊急性及び業務の複雑化にかんがみ、高度の専門的知識を要する職務に従事する国税職員については、年齢構成の特殊性等従来の経緯及び税務執行面における負担の公平確保の見地から、処遇の改善はもとより、職務をめぐる環境の充実、中長期的見通しに基づく定員の一層の増加等につき格段の努力をすること。  一 昭和六十二年度以降のたばこ消費税あり方については、たばこの消費動向や今回の措置が臨時異例のものであったこと等に配意しつつ、対応すること。  一 日本たばこ産業株式会社は、専売改革法成立時の附帯決議を尊重し、関係産業の雇用、生活の不安解消のため努めること。  一 政府は、日本たばこ産業株式会社の経営の自主性を尊重しその健全な発展のため、新規事業の合理的、積極的な拡大に配意すること。  一 現行の製造たばこの関税率水準及びたばこ事業法の製造の規定については、これを維持するよう努めること。以上であります。  よろしく御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  433. 小泉純一郎

    小泉委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  434. 小泉純一郎

    小泉委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。竹下大蔵大臣
  435. 竹下登

    竹下国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨に沿って配意してまいりたいと存じます。ありがとうございました。     ―――――――――――――
  436. 小泉純一郎

    小泉委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  437. 小泉純一郎

    小泉委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  438. 小泉純一郎

    小泉委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後十時三十一分散会      ――――◇―――――