運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1986-03-24 第104回国会 衆議院 大蔵委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年三月二十四日(月曜日)     午後二時四十二分開議 出席委員   委員長 小泉純一郎君    理事 笹山 登生君 理事 中西 啓介君    理事 中村正三郎君 理事 堀之内久男君    理事 上田 卓三君 理事 野口 幸一君    理事 坂口  力君 理事 米沢  隆君       臼井日出男君    越智 伊平君       大島 理森君    佐藤 信二君       田中 秀征君    塚原 俊平君       中川 昭一君    仲村 正治君       西山敬次郎君    浜田 幸一君       宮下 創平君    村上 茂利君       山崎武三郎君    山中 貞則君       山本 幸雄君    伊藤  茂君       伊藤 忠治君    小川 仁一君       奥野 一雄君    沢田  広君       戸田 菊雄君    堀  昌雄君       古川 雅司君    矢追 秀彦君       安倍 基雄君    玉置 一弥君       正森 成二君    簑輪 幸代君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 竹下  登君  出席政府委員         大蔵政務次官  熊川 次男君         大蔵大臣官房総         務審議官    北村 恭二君         大蔵大臣官房審         議官      亀井 敬之君         大蔵省主計局次         長       小粥 正巳君         大蔵省主税局長 水野  勝君         大蔵省関税局長 佐藤 光夫君         大蔵省国際金融         局長      行天 豊雄君         国税庁間税部長 村本 久夫君         通産省産業生活         産業局長    浜岡 平一君  委員外出席者         林野庁林政部林         産課長     脇元 裕嗣君         参  考  人         (日本銀行総裁澄田  智君         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ――――――――――――― 委員の異動 三月二十四日  辞任         補欠選任   加藤 六月君     塚原 俊平君   金子原二郎君     西山敬次郎君   自見庄三郎君     仲村 正治君   高鳥  修君     佐藤 信二君   藤井 勝志君     浜田 幸一君   藤波 孝生君     臼井日出男君   兒玉 末男君     小川 仁一君   中村 正男君     奥野 一雄君 同日  辞任         補欠選任   臼井日出男君     藤波 孝生君   佐藤 信二君     高鳥  修君   塚原 俊平君     加藤 六月君   仲村 正治君     自見庄三郎君   西山敬次郎君     金子原二郎君   浜田 幸一君     藤井 勝志君   小川 仁一君     兒玉 末男君   奥野 一雄君     中村 正男君     ――――――――――――― 三月十四日  関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正す  る法律案内閣提出第四〇号) 同月二十日  国の補助金等臨時特例等に関する法律案(内  閣提出第四号) 同月十三日  国民本位税制改革に関する請願田邊誠君紹  介)(第一一九五号)  同(池端清一紹介)(第一三〇二号)  同(経塚幸夫紹介)(第一三〇三号)  同(辻第一君紹介)(第一三〇四号)  同(正森成二君紹介)(第一三〇五号)  消費生活協同組合個人年金共済事業に係る税  制上の改善に関する請願木間章紹介)(第  一一九六号)  所得税減税等に関する請願阿部喜男紹介  )(第一一九七号)  同(小川国彦紹介)(第一一九八号)  同(岡田春夫紹介)(第一一九九号)  同(奥野一雄紹介)(第一二〇〇号)  同(加藤万吉紹介)(第一二〇一号)  同(木間章紹介)(第一二〇二号)  同(串原義直紹介)(第一二〇三号)  同(小林恒人紹介)(第一二〇四号)  同(後藤茂紹介)(第一二〇五号)  同(佐藤敬治紹介)(第一二〇六号)  同(沢田広紹介)(第一二〇七号)  同(田邊誠紹介)(第一二〇八号)  同(田並胤明君紹介)(第一二〇九号)  同(竹村泰子紹介)(第一二一〇号)  同(細谷昭雄紹介)(第一二一一号)  同(矢山有作紹介)(第一二一二号)  同(横山利秋紹介)(第一二一三号)  同(和田貞夫紹介)(第一二一四号)  同(渡辺嘉藏紹介)(第一二一五号)  同(井上一成紹介)(第一三三二号)  同(井上普方紹介)(第一三三三号)  同(伊藤茂紹介)(第一三三四号)  同(上野建一紹介)(第一三三五号)  同(上原康助紹介)(第一三三六号)  同(小川省吾紹介)(第一三三七号)  同(小川仁一紹介)(第一三三八号)  同(小澤克介紹介)(第一三三九号)  同(角屋堅次郎紹介)(第一三四〇号)  同(佐藤観樹紹介)(第一三四一号)  同(佐藤敬治紹介)(第一三四二号)  同(佐藤徳雄紹介)(第一三四三号)  同(島田琢郎紹介)(第一三四四号)  同(城地豊司紹介)(第一三四五号)  同(新村源雄紹介)(第一三四六号)  同(田中克彦紹介)(第一三四七号)  同(田中恒利紹介)(第一三四八号)  同(田並胤明君紹介)(第一三四九号)  同(竹内猛紹介)(第一三五〇号)  同(辻一彦紹介)(第一三五一号)  同(土井たか子紹介)(第一三五二号)  同(中村茂紹介)(第一三五三号)  同(永井孝信紹介)(第一三五四号)  同(野口幸一紹介)(第一三五五号)  同(広瀬秀吉紹介)(第一三五六号)  同(前川旦紹介)(第一三五七号)  同(松浦利尚君紹介)(第一三五八号)  同(松前仰君紹介)(第一三五九号)  同(水田稔紹介)(第一三六○号)  同(武藤山治紹介)(第一三六一号)  同(元信堯君紹介)(第一三六二号)  同(安田修三紹介)(第一三六三号)  同(山中末治紹介)(第一三六四号)  同(山本政弘紹介)(第一三六五号)  同(横江金夫紹介)(第一三六六号)  同(吉原米治紹介)(第一三六七号)  同(渡部行雄紹介)(第一三六八号)  同(渡辺嘉藏紹介)(第一三六九号)  税制改革減税に関する請願(有島重武君紹介  )(第一二五五号)  同(石田幸四郎紹介)(第一二五六号)  同(木内良明紹介)(第一二五七号)  同(駒谷明紹介)(第一二五八号)  同外一件(沼川洋一紹介)(第一二五九号)  同(平石磨作太郎紹介)(第一二六〇号)  同外四件(渡部一郎紹介)(第一二六一号)  同(西田八郎紹介)(第一三〇六号)  同(安倍基雄紹介)(第一三〇七号)  同(伊藤英成紹介)(第一三〇八号)  同(伊藤昌弘紹介)(第一三〇九号)  同(小川泰紹介)(第一三一〇号)  同(小沢貞孝紹介)(第一三一一号)  同(神田厚紹介)(第一三一二号)  同(小渕正義紹介)(第一三一三号)  同(塩田晋紹介)(第一三一四号)  同(田中慶秋紹介)(第一三一五号)  同(塚本三郎紹介)(第一三一六号)  同(中井洽紹介)(第一三一七号)  同(永江一仁紹介)(第一三一八号)  同(藤原哲太郎紹介)(第一三一九号)  同(三浦隆紹介)(第一三二〇号)  同(横手文雄紹介)(第一三二一号)  同(吉田之久君紹介)(第一三二二号)  同(米沢隆紹介)(第一三二三号)  同(和田一仁紹介)(第一三二四号)  同(渡辺朗紹介)(第一三二五号)  同外一件(岡本富夫紹介)(第一三二六号)  同外一件(鈴切康雄紹介)(第一三二七号)  同(伏木和雄紹介)(第一三二八号)  同(二見伸明紹介)(第一三二九号)  同(宮崎角治紹介)(第一三三〇号)  同外四件(森田景一君紹介)(第一三三一号)  大型間接税導入反対大幅減税等に関する請願  (藤木洋子紹介)(第一三〇一号) 同月十八日  大型間接税導入反対等に関する請願経塚幸夫紹介)(第一四二四号)  同(工藤晃紹介)(第一四二五号)  同(佐藤祐弘紹介)(第一四二六号)  同(柴田睦夫紹介)(第一四二七号)  同(田中美智子紹介)(第一四二八号)  同(中島武敏紹介)(第一四二九号)  同(中林佳子紹介)(第一四三〇号)  同(野間友一紹介)(第一四三一号)  同(東中光雄紹介)(第一四三二号)  同(不破哲三紹介)(第一四三三号)  同(藤田スミ紹介)(第一四三四号)  同(三浦久紹介)(第一四三五号)  税制改革減税に関する請願武田一夫紹介  )(第一四三六号)  同外二件(福岡康夫紹介)(第一四三七号)  同(前川旦紹介)(第一四三八号)  同(阿部昭吾紹介)(第一五一四号)  同(江田五月紹介)(第一五一五号)  同(菅直人紹介)(第一五一六号)  同(小谷輝二君紹介)(第一五一七号)  所得税減税等に関する請願石橋政嗣君紹介)  (第一四三九号)  同(上田卓三紹介)(第一四四〇号)  同(上野建一紹介)(第一四四一号)  同(小川仁一紹介)(第一四四二号)  同(河野正紹介)(第一四四三号)  同(左近正男紹介)(第一四四四号)  同(沢田広紹介)(第一四四五号)  同(嶋崎譲紹介)(第一四四六号)  同(新村源雄紹介)(第一四四七号)  同(関山信之紹介)(第一四四八号)  同(田中恒利紹介)(第一四四九号)  同(武部文紹介)(第一四五〇号)  同(辻一彦紹介)(第一四五一号)  同(中村重光紹介)(第一四五二号)  同(馬場昇紹介)(第一四五三号)  同(浜西鉄雄紹介)(第一四五四号)  同(藤田高敏紹介)(第一四五五号)  同(細谷昭雄紹介)(第一四五六号)  同(細谷治嘉紹介)(第一四五七号)  同(村山喜一紹介)(第一四五八号)  同(森井忠良紹介)(第一四五九号)  同(八木昇紹介)(第一四六〇号)  同(山花貞夫紹介)(第一四六一号)  同(山本政弘紹介)(第一四六二号)  同(稲葉誠一紹介)(第一五一八号)  同(小川省吾紹介)(第一五一九号)  同(大出俊紹介)(第一五二〇号)  同(河野正紹介)(第一五二一号)  同(兒玉末男紹介)(第一五二二号)  同(上坂昇紹介)(第一五二三号)  同(永井孝信紹介)(第一五二四号)  同(日野市朗紹介)(第一五二五号)  同(堀昌雄紹介)(第一五二六号)  同(武藤山治紹介)(第一五二七号)  同(山本政弘紹介)(第一五二八号)  同(和田貞夫紹介)(第一五二九号)  大型間接税導入反対及び大幅減税等に関する  請願細谷治嘉紹介)(第一四六三号)  国民本位税制改革に関する請願阿部昭吾君  紹介)(第一五一二号)  同(江田五月紹介)(第一五二二号) 同月二十日  税制改革減税に関する請願阿部昭吾紹介  )(第一五七〇号)  同(江田五月紹介)(第一五七一号)  同(菅直人紹介)(第一五七二号)  同(阿部昭吾紹介)(第一六八八号)  同(江田五月紹介)(第一六八九号)  同(菅直人紹介)(第一六九〇号)  同外五件(草野威紹介)(第一六九一号)  所得税減税等に関する請願天野等紹介)(  第一五七三号)  同(網岡雄紹介)(第一五七四号)  同(岩垂寿喜男紹介)(第一五七五号)  同(上野建一紹介)(第一五七六号)  同(小川国彦紹介)(第一五七七号)  同(小澤克介紹介)(第一五七八号)  同(河上民雄紹介)(第一五七九号)  同(木島喜兵衞紹介)(第一五八〇号)  同(小林恒人紹介)(第一五八一号)  同(渋沢利久紹介)(第一五八二号)  同(松前仰君紹介)(第一五八三号)  同(吉原米治紹介)(第一五八四号)  同(渡辺三郎紹介)(第一五八五号)  同(阿部喜男紹介)(第一六九二号)  同(池端清一紹介)(第一六九三号)  同(岡田利春紹介)(第一六九四号)  同(小林道紹介)(第一六九五号)  同(佐藤誼紹介)(第一六九六号)   同(清水勇紹介)(第一六九七号)  同(新村勝雄紹介)(第一六九八号)  同(中村正男紹介)(第一六九九号)  同(矢山有作紹介)(第一七〇〇号)  同(山下洲夫君紹介)(第一七〇一号)  国民本位税制改革に関する請願佐藤誼君紹  介)(第一六八四号)  同(日野市朗紹介)(第一六八五号)  同(矢山有作紹介)(第一六八六号)  同(山下洲夫君紹介)(第一六八七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 三月十四日  北陸財務局等の存続に関する陳情書  (第三二号)  大型間接税導入反対等に関する陳情書外七件  (第三三号)  税制改正に関する陳情書外三件  (第三四  号)  自動車関係諸税増税反対に関する陳情書外三  件(第三五  号)  所得税等大幅減税に関する陳情書  (第三六号)  ワイン関税の再引き下げ反対に関する陳情書  (第三七号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正す  る法律案内閣提出第四〇号)      ――――◇―――――
  2. 堀之内久男

    堀之内委員長代理 これより会議を開きます。  委員長所用のため、その指名により私が委員長の職務を行います。  内閣提出関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案議題といたします。  趣旨説明を求めます。竹下大蔵大臣。     —————————————  関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 竹下登

    竹下国務大臣 ただいま議題となりました関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  政府は、最近における内外の経済情勢の変化に対応し、関税率減免税還付制度等について所要改正を行うこととし、本法律案を提出した次第であります。  以下、この法律案内容につきまして、御説明申し上げます。  第一は、関税率等改正であります。  まず、関税及び貿易に関する一般協定との整合を図るため、皮革及び革靴について関税割り当て制度新設を行い、これに伴う我が国アメリカ合衆国等との間の合意に基づき、電子式分析機器クラフト紙ゴルフ用具等関税率の撤廃または引き下げ等を行うことといたしております。  また、我が国市場の一層の開放を図る等の見地から、ブドウ酒等関税率引き下げ、魚の粉、マンガン鉱等関税割り当て制度廃止等を行うことといたしております。  第二は、減免税還付制度改正であります。  最近における石油化学製品等製造の実情にかんがみ、石油化学製品製造用原油減税制度新設等を行うとともに、昭和六十一年三月末に適用期限の到来する減免税還付制度について、適用期限を延長することといたしております。  以上のほか、昭和六十一年三月末に適用期限の到来する暫定関税率について、その適用期限を一年延長するとともに、所要の規定の整備を図ることといたしております。  以上が、この法律案提案理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  4. 堀之内久男

    堀之内委員長代理 これにて趣旨説明は終わりました。     —————————————
  5. 堀之内久男

    堀之内委員長代理 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため、本日、参考人として日本銀行総裁澄田智君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 堀之内久男

    堀之内委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔堀之内委員長代理退席委員長着席
  7. 小泉純一郎

    小泉委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上田卓三君。
  8. 上田卓三

    上田(卓)委員 それでは関税二法の質問をさしていただきたい、このように思います。  きょうは、日銀総裁参考人として御出席いただきましてまことにありがとうございます。法案審議に入る前に円高問題につきまして若干の質問をさしていただきたい、このように思います。  昨年九月のG5すなわち先進五カ国蔵相会議以後、急激にこの円高、そしてドル安状況が呈出いたしまして、日本経済は大変な混乱状態といいますか、円高デフレという言葉に表現されますように、それでなくとも経済状況が悪い、それに加えて円高デフレということで二重三重のパンチを中小零細企業が食らっておる、こういう状況ではなかろうかというように思うわけでございます。  二月から三月にかけて一ドル百八十円前後で安定するかに見えておったわけでございますが、先先週末から激しいドル売り、そして円買いに見舞われまして、ついに一ドル百七十四円六十銭という過去最高記録を更新いたしたわけでございます。日銀は先週火曜日ついにニューヨーク市場で逆介入に踏み切って、ここ数日は円は一ドル百七十五円から百七十六円前後にとどまっておるわけでございます。しかし、一ドル百七十五円の水準というものは、今日の日本経済にとってはどうしても耐えられない、やはり危ない危険水域と言ってもいいのではなかろうか、このように思うわけでございまして、そういう意味で、円急騰背景と今後の見通しをどのようにとらまえておられるのか、まずお聞かせをいただきたい、このように思います。
  9. 澄田智

    澄田参考人 お答えを申し上げます。  ただいまお話もありましたように、円相場は二月の半ば以降百八十円前後で推移しておったものが再び円高に進んだ、そして今までの最高値を超えたということは御指摘のとおりでございます。こうした円の動きの背景でございますが、年初来の原油価格の下落、これがますます大幅になってくる、こういうような見通しと、それから米国長期金利の低下といった事情に加えまして、ちょうど今月の半ばごろに発表されました米国景気指標がいずれもドル安材料ととられるような指標の姿であったということが背景であるように思います。そういう背景思惑的なドル売り・円買いが強まった、こういう事情だと思います。さすがに円高ドル安のテンポが速過ぎるというような感じが市場にもございまして、警戒感も出てきておった、そうしてここ数日の相場は幾分落ちついてきている、こういう状況だと見ておる次第でございます。  今後の為替相場見通しについてのお尋ねでございますが、為替市場に対応する当面の当局者という立場におきまして為替相場について具体的に申し上げることは、これは市場無用憶測思惑を生ずる、そしてそれが取引の材料に使われる、こういうようなおそれも非常に強いものでございまして、したがって、せっかくのお尋ねでございますが、その点に具体的に申し上げることは差し控えさせていただきたい、かように存ずる次第でございます。
  10. 上田卓三

    上田(卓)委員 日本国民が今一番心配をしておるのは、この円高がどこまで続くのか、こういうことであるわけであります。もう既に倒産企業が続出している。本当に転廃業しなければならないということで中小零細企業も悲鳴を上げておるわけであります。少し落ちついたとはいうものの、果たしてこのままで落ちつくのかどうか、また上がるのではなかろうか、こういうような心配があるわけでございます。特にアメリカの中には、一ドル百四十円あるいは百五十円ぐらいにすべきであるというような議論もあるやに聞いておりますし、最終的には百円ぐらいではないか、日米のそういう経済摩擦完全解消にはもっともっと円高にしなければならぬ、こういうような世論もあるやに聞いておるわけでございます。そういう点でやはり、どこまで上がるのかということで非常に国民心配を、危惧をしておるということでございます。  また同時に、それだけじゃなしに、例えば三月十八日の日本経済新聞などによりますと、このまま一ドル百七十五円の円高が続くと本当に深刻な状態になる、そして実質成長率は一・九%ぐらいに落ち込んでしまうのじゃなかろうか、こういうような試算も出ておるわけでございまして、これは税収にもはね返ってくることは当然のことではなかろうか、こういうように思うわけでございます。  現在、日本のそういう経済とにらみ合わせてどの程度が普通かということはなかなか難しいかもわかりませんが、大体一ドル百九十円から二百円ぐらいかなという気持ちの人たちが多くおるのではなかろうか、こういうふうに思っております。昨年末からことしにかけて円が二百円から百九十円台のときに、この辺が適正水準だ、こういうふうな政府考え方もあったやに理解しておるわけでございまして、そういう点で天井がはっきりしない、こういうことでございますので、一定の物差しというのですか、その都度その都度の都合よい数字じゃなしに、日本経済を維持していくためには、あるいは実質成長をこれぐらいにするためには一ドルについて円の水準がどれだけであるという一つの物差しというのですか、これが適正であるということがあってしかるべきではなかろうか、こういうふうに思っておるわけでございまして、二百円から百九十円台が適正水準だと思う云々ということを今もなお考えていられるのか、百七十五円ぐらいでいいんだというふうに思うているのか、いやこれでは高過ぎるというふうに思うておるのか、その点、もう一度ひとつ総裁からお答えいただきたいと思います。
  11. 澄田智

    澄田参考人 私どもといたしましては、為替相場我が国経済のファンダメンタルズを十分に反映するものであることが望ましい、こういう基本的な立場でございまして、昨年九月のニューヨークのG5の合意もそういうことでございました。それで対応している次第でございます。したがいまして、適正水準として特定の水準というものを念頭に置いて、そしてそれをターゲットとして対応するということは行っていないわけでございます。  また、適正水準といってもそれはいろいろ考え方があるわけでありまして、企業ごとあるいは産業ごとによっても異なるという面もあるかと思いますし、また我が国の巨額な貿易収支あるいは経常収支の黒字というものを考えた場合に、その適正水準ということは軽々に申し上げられない、こういうふうに思います。それに加えまして、先ほども申し上げましたように、直接の当局者といたしまして市場に対する無用憶測とか思惑とかこういうものが起こるのを防ぐというようなこともありまして、水準議論ということを申し上げることは差し控えておるわけでございます。そういうことで御了承いただきたいと存じます。
  12. 上田卓三

    上田(卓)委員 納得できませんね。やはり円高がどの水準にとどまるのかということが定かでない、だれも知らない、だれも答えられないということになれば、ますます国民の不安は募るばかりではないか、こういうふうに思います。  もともと今回の円高は、G5でいわゆる先進五カ国の大蔵大臣が談合で決めたんですよね、言うなれば。やらせの為替相場というのですか、私はそうだと思うのですね。話し合いして円高に持っていこう、ドル安に持っていこう、こういうことを決めて介入をした、こういうことから端を発しておるわけでありますから、そのやらせが、やらせの仕組みを超えて、思惑を超えて、あるいはそれが思惑どおりであるのかどうかわかりませんが、我々から見るとどうも思惑を外れて余りにも円高が進み過ぎた、余りにも市場任せになってしまったんではないか。そういう意味で非常に取り返しのつかないことになった、こういうように思っておるわけであります。そういう意味で、やらせの責任を大蔵省はとってもらわなければならぬ、政府はとらなきゃならぬ、こういうように思っておるわけでございまして、政務次官もおられますけれども局長おられますので、ひとつお答えいただきたいと思います。
  13. 行天豊雄

    行天政府委員 昨年の九月にG5が行われましたときの状況というのは、ドルがいかにも高過ぎる、単に円に対するのみでなく、主要国通貨全部に対しましてドルが異常に高過ぎるんではないかということで大方の意見が一致をしておった。あのときの特徴と申しますのは、実は市場の中にもそんな感じはあったわけでございます。ドル高というのが余りひどいじゃないか、しかし実際には毎日の売買の中ではなかなかドル高が修正されないということで、何とかマーケットの心理というものを変える必要があるんじゃないかということで先進五カ国の蔵相、中央銀行の総裁が集まりまして、そのときに決められたことは、やはり為替相場というものは本来各国の経済のファンダメンタルズを反映すべきものであるから、その点についての調整努力を一層強化していこうじゃないかということと、それからまた、市場に対して一種のサインを送ると申しますか、そういうことで、今のドルの高さというのはちょっと異常だという感じを市場に知らせようということであの会議が行われ合意が行われた、その一つの方法といたしまして協調した介入が行われたわけでございます。  私ども、あのときの状況から判断いたしまして、あの五大国の決定、それからそれに基づいて行われました政策協調の努力、それから協調介入ということは非常に効果があったというふうに思っておるわけでございます。  その後の動きは、まさに御指摘のとおりドル高の是正がかなり急速に進みまして、一時そういう動きが余り急激に過ぎるんじゃないかと私どもも思ったことがございます。私どもは、現在では、そういった動きにつきましては非常に注意深く市場の動きを見ておりまして、相場の動きはできればなだらかに動くのがいいことは御指摘のとおりでございますし、私どもも何とかそういうふうにさせたいと思っておりますけれども、何せ何千人何万人という人間が参加して動かしておる市場でございます、それからまた世界じゅうで見ますと一日に何百億ドルという金が動いておるものでございますから、こういった市場の力というものを無視して一方的に何かしようといっても難しい話でございます。私ども、そういった市場状況というものを絶えず注意深く見守りながら、できるだけスムーズに相場が動いていくように努力してまいりたいと今では思っておるわけでございます。その点ひとつ御了解願いたいと思っております。
  14. 上田卓三

    上田(卓)委員 ドルが余りにも高過ぎた、アメリカの実際の経済を反映していないではないか、こういうことから五カ国が集まって介入というのですか、やらせという言葉を使いましたけれども、ドル安円高に持っていこうじゃないかということで介入をした。ところが、その当時どの程度まで持っていけば一応成功だというように思っておったのかどうかということが一点私はあると思うのです。現在の百七十五円台ですか、その水準というのは当初予測しておったものなのか。いや、二百円から百九十円くらいだと思っておったんだけれども、行き過ぎておるんだ、これは大変だと思っておられるのか。少なくとも史上最高を更新した時点で逆介入というのですか、余りにも高くなり過ぎたではないか、こういうことから少しそういう介入らしきものがあったと私は理解しておるわけですが、それじゃ今の水準でいいと思っておるのか、もう少し円安に持っていかなければならぬと思っているのか。アメリカのそういう圧力も当然ありましょうし、圧力というのかどうかわかりませんが、もっと円高に持っていこうというように思っておるのか。  経済ですから、市場ですからある程度動くということは私自身はよくわかっておるのですけれども、余りにも大きいですよね。一時の高騰から見たらドルが四〇%から下がっていますね、それだけ円が上がっているということですけれども。これは考え方によればドルの大暴落ですよ。大暴落という言葉は余り使うてはいませんけれども、四〇%というたら大変な価値ですから、ここらあたりについて日本政府としての一定の物の見方というものを、幅というものを持っていかなければいけないのではないか。そうせぬと、経済人が右往左往して、円高によって笑いがとまらぬほどもうかる人もあれば、先祖伝来の伝統的な地場産業が一夜にして倒産するという本当に大変な状況が現実に現場で起こっているということを考えた場合に、この円高の問題について国民にある程度の、中小企業を中心とするそういう被害をこうむっている人たちに対して一定の安心感というものを与える必要があるのではないかと私は思うのですが、その点についてもう一度お答え願いたいと思います。
  15. 行天豊雄

    行天政府委員 お答え申し上げます。  まず、昨年のニューヨークのG5のときに何か目安があったのじゃないかという御質問でございますが、これは本当に正直なところ、特にこのG5の行動によって、例えば円とドルとの相場を幾らにしようというような目標はございませんでした。先ほど申しましたように、あのときの考え方というのは、あくまで異常なドル高というものを何とか流れを変えなければいけないということがねらいだったわけでございます。  現在の円ドル相場水準をどう考えるかということでございます。これは比喩が大変世俗的で申しわけないのでございますけれども、為替相場というのはまさにアメリカ経済日本経済の間の通貨の交換の比率でございます。言うなればこれは日本チームとアメリカチームの試合のハンディキャップみたいな話でございまして、それぞれのチームの中にはいろいろな選手がおるわけでございます、アメリカのチームにも日本のチームにも。ですから、日本のチームの中で非常に強い選手にとりましては、さっき委員御指摘のとおり非常にいいということでもございましょうし、そうでない選手もおりまして、そういった選手については現在の状況が非常に問題だというところは御指摘のとおりだと思うのでございます。ですから、チーム全体としてどういうハンディキャップが適当かということは、これは実は非常に難しい話でございまして、先ほどこれも委員御指摘になりましたけれども、現にアメリカにも日本にも、今の膨大な日米間の貿易の不均衡を解消するためには、百七十円どころではなくて、もっともっと円高でなくてはいけないという意見も多々あるわけでございます。そういうふうに全体としての適正水準が幾らかというのは、私どもわかればこれにこしたことはないと思うのでございますけれども、実際問題としてこれを確定することは不可能ではないかという気がいたします。  ただ、まさに御指摘のとおり、現在の相場でもっていろいろと困難な状況に遭遇しておるという企業があることも事実でございますし、そういった企業に対しましては、それぞれの対策を講ずることによってそういった産業の改善なりあるいは転換ということを促進していく必要があるだろうということでは全く御指摘のとおりだと思いますが、全体としての相場水準が幾らであるべきだ、幾らが適当かということは、これはまことに申しわけございませんけれども、恐らくだれもわからないということではなかろうかと思います。
  16. 上田卓三

    上田(卓)委員 それは無責任ですね。そんな無責任な話はないと思うのですよ。ドルが高いから下げようじゃないか、それでどの程度の水準でやったらいいかわからぬということは、初めから下げるということだけが一致して、どの程度下がればいいのだというようなことは全然考えていなかったのだ、こういうことですね。  ということは、逆に、円高が今後どうなるかわかりませんよ。しかし、仮にさらにどんどん上がるということになった場合、どの程度まで上がればどうだという物差しがなければ、それに対して介入も逆介入も何もできないんじゃないですか。ただもう見ているというだけのことになりかねないし、もっと言うなら、そういう日本チームの中で国際競争力が弱いメンバーがもう悲鳴を上げてしまって、これはえらいことだということで本当に政府・与党も大変だということにならなければ、その間はいいということになるのか。その点、私は非常に無責任ではないかと思うのですね。円高によって困る企業があればそれに対して別途対策を打てばいいんだというような形だけでは、私は納得できないと思うのですね。  そうでしょう、つぶれた会社あるいは転廃業しなければならぬという会社に対して手厚い保護をというのは、効果的なものをやっていませんよね、実際。おくれおくれになっているわけでしょう。それでは、その円高によって膨大な利益を受けている人たち円高差益に対して一体どうするのかということもいろいろ議論にはなっているが、それらは具体的にどういうような形で指導をして、国民にそれがどう還元していくのか、あるいは円高によって犠牲を受けた中小零細企業に対してどう手厚い援助がなされるのか。あるいは、それは今起こった結果だけでありましてさらに円高がどうなるかということになってくるわけでありますから、例で言うと、燃え盛っている火事が何軒まで燃え広がるのか、そのまま消えてしまうのか燃えてしまうのかもよくわからぬ。しかし、現実に被害のある者に対しては手当てをしようというような形に移るのが本筋ではないですか。これでは無政府状態のようなことになるのではないのですか。
  17. 行天豊雄

    行天政府委員 為替相場と申しますのは、先ほども申しましたように、通貨当局が例えば介入という手段によってどんな水準にでも自由に動かせるものではないと思います、これはもう申し上げるまでもないことでございますけれども。したがって、こういった介入というようなものが効果を持ちますのは、先ほども申しましたように、だれが見てもこういう水準はおかしいなということで何となく意見が一致しておる、しかし現実に市場の中ではそういったみんなのいわば理性がどうも働いてないというような場合、それを直すとか、あるいは日々の乱高下と申しますか、非常に激し過ぎてこれは正常な取引ができないというようなときに、これをならしていくというような意味では効果があると私は思いますし、今まで私どももそういう場合に介入という手段を使いまして市場対策をやってきたわけでございますが、基本的にはやはり日米なら日米というものの経済が、お互いにその政策の面においてもあるいは経済のいわゆるパフォーマンスにおいてもできるだけ調和がとれてくれば両国間の通貨の相場というものもしかるべき水準に安定をするというのも、これは過去の経験から見ても明らかであろうかと思います。  したがって、相場に対します対応といたしましては、やはり何と申しましてもそういう意味で経済政策の調整とパフォーマンスの調和を図るということが基本であり、その上に立って、市場の動きがそういったものを反映しないような不合理な動きになった、荒っぽい動きになったというときには介入というような手段も使いましてそれに対する対応を図るということでございますので、今私どもの考えが無責任という御指摘がございましたけれども、私どももそういう意味では相場の動きに絶えず非常に関心を払って、何とかそういう意味での市場の安定を図りたいと思っておるわけでございます。  G5以後のドル高の是正というのは確かに非常に急激でございました。しかし、現在の情勢がそういう意味で適当なのか、行き過ぎたのかというようなことは、まことに申しわけございませんが、私ちょっと判断する材料がございません、それは先ほど申しましたようにいろいろな背景事情がございますものですから。ただ、長い目で見ますと、そういうような努力というのは相場の面にもあらわれておりまして、いわば相場というものは上下に動きますけれども、これは一つの何と申しますか適正な水準というものに収れんをしながら動いておるということは、歴史的に言えば言えると思うのでございます。ですから、そういった長い歴史の流れの中で短期に起こってくるいろいろなぶれは、いろいろな政策手段あるいは介入というような手段も使いまして対応を図っていくということが必要だろうと思いますので、その点、通貨当局の対応というものには限界があるということは申し上げておかなければなりませんけれども、そういうことに対しては絶えず非常に強い関心を払って、できるだけの努力をしておるということを御理解いただきたいと思う次第でございます。
  18. 上田卓三

    上田(卓)委員 その問題はまた議論するといたしまして、現実に円高によって多くの犠牲者が出ておる。その救済策ですが、政府は来月、四月の総合経済対策を待たずして緊急対策というような形でこの対策を講じるような意向があるように聞いておるわけでありますが、その中身というものをまずお聞かせいただきたい、このように思います。
  19. 北村恭二

    ○北村(恭)政府委員 お答え申し上げます。  円高の影響がいろいろな方面に出ているということでございまして、政府として、これにどういうような対策をとるのが適当かということにつきまして前広に勉強しているところでございます。先般、十八日の月例経済報告関係閣僚会議というところにおきましても、最近の円高が急速に進んでいるということで経済にいろいろな影響が出ているという点を踏まえまして、どのような対応が可能かということについて関係省庁でよく検討するようにという総理の指示もございました。今、このような指示を踏まえまして関係省庁がよく協議しているという段階でございます。
  20. 上田卓三

    上田(卓)委員 中身が具体的に示されなかったのですけれども、恐らく公共事業の前倒し、これはもう毎年やられていることでありますけれども、そういうものをして集中発注をしようじゃないかとか、あるいは中小企業向けの緊急融資とかあるいは公定歩合をもう一段引き下げる、こういうようなこと等が考えられるのではないかと思うのですが、それ以外にありますか。
  21. 北村恭二

    ○北村(恭)政府委員 ただいま申し上げましたように関係省庁でそれぞれの分野について詰めている段階でございますので、現在の段階でどういう内容かということはちょっと申し上げる段階ではございませんけれども、今言ったような点も含め、できるだけ幅広く検討いたしたい。そういった内需振興あるいはただいま申し上げたような円高による影響に対する対策といったようなことで、やり得る措置がないかということを幅広く検討いたしたいというふうに思っております。
  22. 上田卓三

    上田(卓)委員 もうおしりに火がついているのですから、幅広く各省庁と打ち合わせして対策をといったって、次々ばたばたと企業は倒産し、もうにっちもさっちもいかない、自殺者も出るというような状況ですから、どうもこの大蔵委員会のこの議論、これを国民の皆さんが見たら、はあ、大蔵省の役人というのはそんなにのんびり、悠長なことだな、税金は矢の催促で取り立てを厳しくするが、実際その税金を使って何をしてくれるのかといったら非常にのんびりしておるな、ひょっとしたら、まだ円高が続くのだ、もっともっとなってからまた考えればいいのだ、今の状況ではいいのだ、かえって国際競争力のない企業はつぶれていったらいいのだ、そう考えているのじゃないかというように思いますよ、実際。  だから国際金融局長、先ほどの話じゃないですけれども、政府は、毎年度の名目成長率、実質成長率ということで、税収のこともこれあり、やはり一定の目標を立ててやっていると思うのですよね。そうすると、来年度実質四%の成長を維持しようということになれば、今のままでいけばどうなるか。先ほど私が言いましたように、日経あたりでは一・九%の伸びになるのじゃないか、こういうような試算もしているのです。それは一新聞社が勝手にやっていることであって、我々は関知しないということになるのかもわかりませんが、やはり経済見通しを出している以上は、一ドル百七十五円ぐらいで今のままで推移すれば成長率が達成される、日本経済はいろいろでこぼこがあっても全般としてはうまくいくのだということになるのか、もうこれでは行き過ぎだというように思っているのか、もうちょっと円高になってもまだいけるのだというように思っているのか、そこらあたりを明らかにする必要があるのではないですか。
  23. 北村恭二

    ○北村(恭)政府委員 まず、最近の経済動向ということからちょっと御説明させていただぎたいと思うのでございますが、つい先般経済企画庁から発表されました昨年十—十二月期の経済成長率というのが対前期比一・七%ということでございまして、これは単純に年率に換算いたしますと七・二%ということで、その内訳を見ますと、設備投資、住宅投資といったものがまだ根強く伸びているといったような現状にございます。もちろん円高の影響というのは徐々に出てくるわけでございますので、この一—三月期といったようなものがどういう姿になっているかということは注視してまいらなければいけないと思いますが、全体として見ますと、まだ景気が緩やかに拡大しているという傾向は続いているのではないかというふうに見ております。したがいまして、円高の影響というのが今御指摘のように輸出産業、特に中小企業といったようなところに大きく出ているということは御指摘のとおりでございますので、全体の経済成長の中でそういったいろいろな対策というものをどういうふうに考えていったらいいのかというのが今私どもに与えられている課題ではないかというふうに考えているところでございます。
  24. 上田卓三

    上田(卓)委員 例えば公共事業の前倒しですね、毎年七〇%ぐらいやっていますよね。それを八〇%にしたからといってそんなに大した経済効果は期待できないと私思うのですね。一番効果的だなと思うのはやはり公定歩合の引き下げということになるわけですが、このことは、だれももう一段下げるんだというようなことは言えないということはよくわかるのですが、しかし片一方において財政の手を縛っておいて金利の引き下げといったって、これは効果がないんですね。やはりここ四、五年のこういう中曽根行革というのですか、それは軍拡にもつながってくるわけですけれども、そういうけちけちムードというのですか、均衡財政というのですか、緊縮財政というのですか、そういう経済に対して政府は何もしないというか、あるいは手を縛るような状況のもとで、日本経済というのは窒息死寸前だと言ってもいいのではないかと思うのですね。  そこへ円高デフレで二重、三重のパンチということになるのですけれども、しかしまた一面、円高のメリットもあるんですね。恐らくそのメリットの部分はかれこれ五兆円ぐらいの減税に匹敵する経済効果もあるのではないかという人たちもおるようです。しかし、これ一つ見ましても、やはり日本の景気が、景気というのですか経済が、非常に不景気ぎみですね。実際どこへ行っても景気のいい話は余り聞かれないんですね。ところが、そういう円高差益で収益を上げている企業などは、国内の社会資本に投資するというのじゃなしに、財テクというのですか、そういう金融機関に走っている面があるのじゃないか、それがやはり最近の株の値上がりでもあるし、それから土地の値上がりだと思うのですね。こういうところへ余った金というのが行くというのは、私は非常に不健全だと思うのですよ。だから、もっと内需拡大に役立つ、そういう意味での円高差益の還元、あるいは直接消費者に還元するということも当然のことであろうというように思うのですね。あるいは電気とか電話線を地中に埋める事業についてももっと大々的に、十年のものを三年というのじゃなしに、また距離についてももっともっと延長して大規模なものをするとか、政府・与党の中にもやはりそういう積極的な財政論を打ち立てるべきではないかという意見もありましょうし、また建設国債を増発してでも景気対策、内需拡大という意見もあるやに聞いておるわけであります。  そういう点で、ここで思い切った、そういう今までの施策にちょっと色づけしたというのじゃなしに、もう抜本的な内需拡大のそういう対策を打ち立てる。もう遅きに失するというふうに我々は考えざるを得ないわけでありますが、そういう考え方について、どのようにお答えしていただけますか。
  25. 北村恭二

    ○北村(恭)政府委員 お話の中にもございましたように、円高経済に及ぼす影響ということになりますと、これはマクロで見ましたときにはいろいろなプラス面、マイナス面というのがございまして、一方では、プラス面で申し上げますと交易条件の改善ということを通じまして実質所得の増加、これが設備とか消費ということに好影響を与えるという内需拡大効果を期待するという面もあるわけでございます。今御指摘のように、内需拡大ということについては政府としても真剣に取り組んでいるところでございまして、昨年十月、さらに十二月と二回にわたりまして内需拡大策というものを講じております。御存じのとおり非常に厳しい財政事情の中ではございますけれども、そういったことについて六十一年度の予算においてもできる限りの配慮を払っているところでございます。  それから、御指摘のとおり金融面、これは公定歩合が二回にわたり下がっております。この効果というのも直ちにあらわれるものではございませんで、金利負担の軽減による企業収益の増大といったようなことを通じまして、設備投資等に好影響を与えるといった波及効果をねらっている面あるいは心理的な面というようなことを通じて経済の拡大に資するという面がございますので、若干の時間はかかるのではないかと思います。それから、やはり原油価格の低下が期待できる。現に、今月に入りましてから実際にそういった価格の低い原油が入ってくるといったようなこともあり、日本経済にこれからプラスの面をもたらすんじゃないかというふうに見ておりますので、こういった効果というのが本格的に出てくるということをマクロの面では期待することはできるのだろうと思います。  御指摘のように、いわゆる円高差益といったようなものも生じておりまして、こういったものも基本的には市場メカニズムを通じまして国民に還元されるということが望ましいと考えております。具体的な問題については種々な議論がございまして、政府部内でもよく協議して適切に対処をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。
  26. 上田卓三

    上田(卓)委員 経済というのはやはり生身ですから、後手後手に回るのじゃなしに、金融でもそうですけれども、対策をとるときにやはり一番いい時期にそういう手当てを打つということが一番大事だと思いますので、その点ひとつぜひともお願い申し上げたいし、また同時に、日本全体としては経済力があっても先ほどのお話のように日本チームの中には強いメンバーもあれば本当に弱い力のないメンバーもあるわけでありますから、そういう点でやはり外需主導型の貿易日本は依存しなければならぬということはよくわかりますが、やはりこの内需主導型の経済運営というものを考えていかないと結局はこの貿易摩擦、この貿易黒字の解消のために国内の弱い産業が犠牲を受ける、こういうことになるわけでありますから、そういう点で、やはりもう必ず出超になればその見返りが来ることは明らかなのでありますから、やってみなければわからぬというよりもそのことははっきりしておるのではなかろうか、私はこういうふうに思いますね。  例えば一ドル百七十五円で定着しても、日米経済摩擦は完全に貿易黒字が解消できるというような状況にないということも、これまた事実だと私は思うのです。やはり、一にも二にも社会資本の充実等によって日本の景気のてこ入れ、特に我我野党が要求しております二兆三千億円の、これでも少ないと思いますよ、大型とは言えないかもわかりませんが、最低こういう減税をするとかあるいはずっと今まで、公務員だけじゃなしに民間サイドにおいても相当賃金が抑制されてきたという経過があるわけでありますから、この際、特に円高差益で収益を上げている企業などは賃金を大幅に引き上げることによって内需拡大に貢献するというようなことも、春闘の足を引っ張るのではなしに、逆に道を開くというようなことも非常に大事ではないか、私はこういうように思っておるわけであります。時間の関係もございますので、どうか私が申し上げている点について十分ひとつ御理解をいただいて、各省庁と十分連携をとって対策を練ってもらいたい。  また、円高差益でもうけている企業について、結局は国民に還元されなかったな、結局は彼らだけが笑いのとまらぬ利益を上げたという、またそれの一部がどこかに回っているというふうな疑いの持たれないように、本当に日本経済の活性化のためにそれが使われておるんだということが目に見えるような形で使われるような指導をぜひともやってもらいたい、このように思います。  さて、関税二法の問題、特に私がここで申し上げたいのは、皮革、それから靴の関係で、通産省の方もきょうはお見えいただいておるわけでございますが、この法案につきましては、やはり日米貿易摩擦の解消、こういうことで、市場開放の一環として数量規制の撤廃あるいは割り当て制度の廃止、関税率引き下げなどを行おうという法律であるわけであります。  先ほども申し上げましたように、昨年秋以来の円高で、要するにG5の前は一ドル二百四十二円であったわけでありますが、それが百七十五円に、そういう意味では四〇%の円高ということになるわけでありますから、これだけで四〇%の関税率引き下げたと等しい結果をもたらしておるわけであります。そういう意味で、今回の法案が業界にとってはもうダブルパンチというのですか、円高で四〇%も実質効果を上げ、さらに関税率引き下げ、こういうことで大変な苦しい状況になっておるわけであります。  御存じのように、靴、皮革は伝統的な同和地区の地域産業でもあるわけでありまして、非常に零細な、本当に、従業員が三人以内、家族経営ですね、そういう下請関連企業がたくさんあるという状況があるわけであります。そして劣悪な住居、職場、そういう状況の中から、今なお結婚とかあるいは子供の就職とか、いろいろの形で差別が残っておる。今、地対法という法律があるわけですけれども、来年三月でそれが切れる、こういうことで、我々は部落解放基本法の制定を強く要求いたしておるわけでありますが、そういう点で、この法案によって、関税引き下げによって、数量規制から関税割り当て制に移行することによって、皮革、靴業界がどれだけの被害をこうむると見ておられるのか。そういう業界の実態と、それが今度の関税の移行によってどういう形で条件が悪くなるのか。通産省の局長がお見えでございますので、そのことをどのようにつかまえておられるのか御説明いただきたい、このように思います。
  27. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 御指摘のとおり、皮革、革靴産業は、いわゆる同和対策地域におきます重要産業でございます。私は、基幹産業という言葉もときどき使わせていただくわけでございますが、この地域の経済、生活の上で極めて重要な存在であると思っております。しかし、ガットの一般ルールとの兼ね合いで新しい体制への移行というものを求められておるわけでございまして、私どもといたしましても、いかなる対応の仕方が適切であるか大変苦慮しておるところでございますが、結局のところ市場アクセスの改善、他方で国内の重要な産業に対する配慮、こういうもののバランスを考えながら関税割り当て制度へ移行するという選択をいたしたわけでございます。私どもといたしましては、特に二次税率のレベルをいかに設定するかということで大変苦しんで御承知のような水準に設定したわけでございまして、現行の日本関税体系上最も高い税率ということになりまして、内外でも大変議論のあったところでございますが、今申し上げましたような観点から今回の法案提出に至ったと御理解を賜ればと思うわけでございます。  この税率による輸入が実際に行われるかどうかということになりますと、内外の需給状況とかさまざまな要因が絡んでまいりますので一概に現段階で明確な予想をすることは難しいのではなかろうかと思うわけでございますが、現在御提案申し上げておりますレベルで考えますと、国内業界に直ちに大きな被害が生じる可能性は小さいのではなかろうかと私どもは思っております。  しかし、合成皮革の進出等構造的な要因もございまして、この業界が苦吟、呻吟しているという状況にあるわけでございますので、従来からもそうですが、今後とも技術開発力の向上等を中心にいたしまして、国際的にその存立を確保していけるような国際競争力のある産業に育っていくようにきめ細かい配慮をしてまいりたいと思っております。
  28. 上田卓三

    上田(卓)委員 今、局長は、数量制限から関税割り当て制いわゆるIQからTQに移行する、こういうことで国内産業に余り大きな変化はないのではないかというようなことを言われたわけでありますが、局長も御存じのように、日本の靴、皮革、革製品全体に言えるかもわかりませんが、競争力が非常に弱いのですね。自動車とか電気製品というような産業に比べて、伝統的な産業でありながら非常に国際競争力が弱い。そういう状況で、ちなみにこれは二年前の数字でありますが、我が国がアメリカヘ輸出した靴が百四十万足である、ところがアメリカヘ外国から入っている数量が二億一千万足、全然比較にならない数字になっておるということでありまして、それだけでも国内の産業が大変圧迫されている、こういうことになっておるわけであります。  現在、数量規制の枠の約五〇%の百四万足の靴が外国から入っている。そういう意味では枠全体の二百四十五万足の五〇%程度の消化しか現在はないわけでありますが、今度新規算入というのですか、そういうものもございますし、また既に入っている靴の半分が途上国からの安いものであるというようなこともあって、IQからTQに移行することによって二百四十五万足の枠に達するのではないか、そういう意味で今まで入っておった総量の約二倍のものが入ってきかねない。特に円高の傾向もこれありで、大量に安い靴がスーパー、デパートなどで売られるということで、既存の貧弱なメーカーが大変苦しい状況に追いやられる可能性が多いと思うのですが、その点、局長はどういうようにとらまえておられますか。
  29. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 御指摘のとおり、今回御提案申し上げております法律では、靴の一次関税枠、昭和六十一年度につきましては二百四十五万足といったところが発射台になるというような前提で作成されておるわけでございます。六十年の実績が約百万足でございますので、この二つの数字の間にはある程度のギャップがあることは御指摘のとおりでございます。  ただ、二百四十五万足という数字でございますけれども、スポーツ靴を除いた革靴の国内生産が約七千万足でございます。もちろん軽視していい数字ではございませんが、これを分母とすると、仮にこの枠が全部消化されたとして三・五%程度というような数字でございます。それからまた、従来のIQ枠は先生御高承のとおり金額でございましたし、いろいろなグローバルその他の枠がございましたけれども、グローバル枠を数量ベースに換算いたしますと二百万足弱というくらいの数字であろうかと思うわけでございまして、これと現在考えております一次枠の大きさとを比べてみますと三〇%程度の増加というようなことになろうかと思います。決して軽視できる数字ではないと思うわけでございますけれども、極めて衝撃的な数字と言うにはちょっと微妙な数字であろうかというぐあいに思っております。また、実際にこれだけの枠が消化されるかどうかということになりますと、靴の需給状況でございますとか相手国との商談の具体的な様相等々により影響を受けるわけでございまして、一概に判断するのは難しいかなというぐあいに思っております。基本的には先ほど申し上げましたように、国内産業に直ちに重大な影響を与えないようにというような配慮のもとに対応してまいったつもりでございます。  こうした対応とあわせまして、やはり日本人のフィーリングに合った靴を日本の産業が供給していくというような努力をすることが、結果的には一つの輸入対策にもなるわけでございまして、その辺の対策と両々相まちまして、何とか今申し上げましたような見通しが現実のものになっていくように念じておりますし、また、なすべきことはなさねばならないと思っておる次第でございます。
  30. 上田卓三

    上田(卓)委員 前半の答えは、あくまでも希望的観測というのですか、輸入が余りふえないのではないか、ふえないでほしいというような意味合いにしかとれないわけでありまして、何をいいましてもこの一次関税枠が従来の実績の倍あるわけですから、やはりその範囲内で入ってくればこれはどうも言えないということになるわけでありますから、従来の数量の半分は途上国の安いものであるというようなことも考えれば、その枠の中でやはり大量に途上国の安い靴が入ってくる。これは消費者にとってはありがたいことなんですが、そこの兼ね合いをどうするかということが大きな問題にもなろうかと思うわけであります。  それと、第二次の六〇%の税率でありますが、これは禁止的意味というように説明をされておるわけですね。しかしもう既に、先ほど申し上げましたように、円高によって円が四〇%切り上がっている、こういうことですから、禁止的意味であるものがもう既に効果を失っているといってもいい状況ではなかろうかと思っておるわけでありまして、急速な円高も考慮した業界の影響などから、やはり抜本的にこの際見直すということがなければならぬと思うのですね。  こういう急激な円高の前の話し合いというのですか、ここまで円高になるということを果たして初めから予測しておったのかどうか。予測しておったらさらに私は問題だと思うのですが、恐らくこういうIQからTQに移行するということについては、これだけこうなるんだということは当初はまだ予想外であったんじゃなかろうかと思うのですが、その点どうですか。
  31. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 この二次税率に対しまして、先生御指摘の禁止的という形容詞を与えましたのは諸外国でございまして、私どもはそういう形容詞を、対外的な配慮もございますし、使ったことはないわけでございますけれども、先ほど申し上げましたように現行関税体系上は最も高い税率でございまして、どういう形容詞が適当かわかりませんが、極めて注目すべき税率であろうと思っておるわけでございます。  この税率を設定するに当たりまして、もちろん先生御指摘のように、現在のような円高を、神ならぬ身でございますので予測したわけでもございませんけれども、ある程度の為替変動というようなものは頭の片隅にはあったわけでございまして、そういう意味で、そういった含みがある程度はあったと申し上げるべきではなかろうかというぐあいには思っておるわけでございます。  輸入の動向につきましては、先ほど来申し上げておりますように、関税率以外にさまざまの要因というものが影響してまいりますので、一概には言い切れない面があろうかと思うわけでございます。ただ、最近の状況で見ますと、先ほど来先生御指摘のように、発展途上国からの安い靴の流入というようなものが最近の一つの大きな動きでございますし、問題点でございます。この点につきましては、幸いにいたしまして六〇%または一足当たり四千八百円の高い方というような仕組みになっておりまして、この四千八百円という部分は、結果的にはむしろ国内産業に対する保護効果という面ではややプラスに働くというような結果にもなっておろうかと思うわけでございます。  私どもといたしましては、先ほど来申し上げておりますが、こうしたことに加えまして、やはり技術開発面等におきまして一層の工夫を凝らしてまいりたいと思っております。なかなか限られた財政事情のもとでございますので思うに任せない面もございますけれども、まさにない知恵を絞りまして、全知全能を傾けていろいろと工夫をして、その面でもこういう事態への対応というものを考えてまいりたいと思っておる次第でございます。
  32. 上田卓三

    上田(卓)委員 一次関税の割り当て枠は絶対にこれ以上拡大すべきでない、いわんや毎年割り当て枠を一〇%ぐらいアップするなんということはもってのほかだ、こういうように思っておりますが、どうお考えですか。
  33. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 皮革産業あるいは靴産業も、いわば国際的な場に存在をしているということもまた事実でございます。そういう意味で、市場アクセスの改善というような大きな要請が、これらの産業分野にもかかってきておるところでございます。  しかし他方、先ほど来るる御指摘のございますように、これらの産業群が持っております位置づけというものも極めて重要でございます。なかなか苦しいバランスでございますけれども、その両方にらみながら適切な対応を図っていく必要があろうかと思っておるわけでございます。  今後、年々関税率審議会の割当部会におきまして今申し上げましたような諸事情を勘案しながら御検討いただきまして、関係政令で内容を決めていくわけでございますが、いわば両にらみのバランスをうまくとりながら適切な対応を図ってまいりたいというぐあいに思っておるわけでございます。
  34. 上田卓三

    上田(卓)委員 割り当て枠をこれ以上拡大しないということで、ぜひともこれは努力をしていただきたいと思います。  そこで、割り当て枠の範囲内で輸入品が入ってくるわけですが、そのことによって靴メーカーとかあるいはタンナー、そういう既存の業界が犠牲をこうむるわけですから、今回は新規参入も認めるということのようですが、やはりこの輸入枠については第一義的に直接被害をこうむる靴メーカーなりタンナーを最優先する、それが消化できないという場合は新規参入ということにもなるのでしょうが、第一義的にそういう既存の業界に優先的に割り当てることが一番大事だ、ぜひともそうしてもらいたいというように考えておりますが、どうですか。
  35. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 IQからTQに移行いたします際の一つの問題点といいますのは、やはり今の一次枠の割り当てをどういうぐあいにやっていくかという問題であろうかと思います。しかし、IQ制度と違いましてTQ制度になりますと、全体としての透明性というようなものがこの制度がガットのルールに適合したものとして動いていくための一つの条件ではなかろうかというぐあいに思うわけでございます。そうしたところから、いろいろと考え方もあるわけでございますけれども、基本的には、従来の実績者に対しまして適切な配慮を加えながら新規参入者にも機会を与えていくというような対応が大切であろうかというぐあいに思っておるわけでございます。ただ、現在の段階でこれを全体としてどういう組み合わせで対応していくかということにつきましては、なお細部の詰めを注意深くやらせていただければというぐあいに思っておるわけでございます。  なお、特定の事業者につきましてこれに特別の配慮を与えるというような形をとりますと、現在の関税割り当て制度のもとでもほかにも例がございませんし、また国際的にも不透明というような議論、あるいは差別というような議論がいろいろ出てくるおそれもあるわけでございまして、この点につきましては非常に難しい問題なのではなかろうかというぐあいに思っておるわけでございます。  いずれにいたしましても、この全体の制度の運用につきましては注意深く対応していく必要があろうかと考えておるわけでございます。
  36. 上田卓三

    上田(卓)委員 業界が非常に零細で、その仕事をすることによっていろいろなハンディを受ける、そういう状況のもとで、やはり地域ぐるみで産業を支えてきておるわけでありますから、そして今までの歴代の政府のこの皮革に対して、あるいは靴に対しての取り組みは十分であったとは私は決して言えないと思うんですね。他のいろいろな産業がありますが、その中で革製品に対しては非常に差別的であった。これは後で申し上げますが、そう言わざるを得ない、こういうふうに思うんですね。だからそういう点で、割り当て枠等の問題についてそういう十分な背景のもとに申し上げておるわけでありますから、そういう業界に対する犠牲が少しでも和らぐような方法でひとつ慎重に対処してもらいたい、こういうように思います。  そこで、通産省の指導のもとに三十六億円の基金でもって皮産連を中心とする活性化委員会が設置されるというように聞いておるわけでありますが、私は、まず一点は、こういう基金がなじむのかどうかということで、何かそれだけの予算を組めばもう対策をしたのだというようなそういう構え自身に一つ問題がありはしないだろうか、こういうふうに思うんですね。  例えば一九七〇年代の繊維に対する転廃業の対策として、当時の予算で二千億円ほどつぎ込まれていますよね。現在に直せば恐らく倍ぐらいなものではなかろうかというように思いますし、また最近の木材対策では千五百億円ぐらいがやはり予算化されているということを考えた場合、皮革に対しては余りにも少ない額と言わざるを得ないのではないか、何か涙金というような感じがしないでもないわけでありまして、額もさることながら、そういう基金制度がなじむのかどうかということで非常に懸念をいたしておるわけであります。  また同時に、この基金の運用でございますが、業界の中で今回最大の被害を受けるのはやはり靴、皮革の業界であるわけでありますから、そこに重点的にそのお金を使う、対策をするということは当然のことだと私は思っておるわけでありますが、そういう点についても局長の考えを明らかにしてもらいたい、このように思います。
  37. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 御指摘のとおり、六十年度補正予算におきまして三十億円の予算措置を講じていただいたところでございます。これは先生お話しのとおり、債務保証基金の造成を補助するという目的でございまして、補助率が六分の五になっておりますので、全体といたしまして三十六億円の債務保証基金が造成されるわけでございます。基金の六倍の範囲の融資が可能ということになっておるわけでございますので、これによりまして二百億円を超える運転資金等が必要ある場合にスムーズに供給できるというような体制が整えられたというぐあいに思っておる次第でございます。  また、先生御承知のとおり、従来から一般会計におきまして年々三億円程度の皮革産業対策費を計上いたしまして、市場開拓あるいは海外動向の把握等に投入をいたしているところでございます。また今回、中小企業の転廃業等対策につきましても、皮革関連業種を対象業種に指定いたしまして、転換の希望をお持ちの企業に対しましては所要の助成措置を講じられるように手当てをいたしたわけでございまして、私どもといたしましては、単にこの三十億に限らず、かなり幅広い措置を可能な限り、関係業界とよく御相談しながら動員をしてまいりたいというぐあいに思っているところでございます。  なお、この三十六億円の基金を造成をいたしますと、現在の金利でございますと年々約二億円程度の果実が生まれるわけでございまして、私どもといたしましては、この果実を使いまして技術振興といいますか、ハード、ソフト両面にまたがります技術の開発あるいはその普及に努めたいと思っておりますし、また人材養成にも努める必要があろうかというぐあいに思っております。こういった技術開発は、皮革分野もさることながら、特に靴の分野につきましては、例えばイージーオーダーシステムの導入でございますとか、あるいは足型についてのもっときめ細かい研究でございますとか、そういったたくさんの課題が存在をしていると考えておりまして、靴の分野での活用の幅というものは非常に大きいのではなかろうかというぐあいに思っておる次第でございます。
  38. 上田卓三

    上田(卓)委員 この業界は非常に零細な、また多くの関連下請企業あるいは賃加工業者の外注によって成り立っておる、こういうことでございまして、たとえこの業界団体、皮産連がいろいろな技術開発とかあるいは新製品の開発を行ったとしても、やはりその成果を個々の地域全体のものに波及させるという手だてがなければだめだ、こういうふうに私は思っておるわけでございまして、そういう意味で、そういうものの成否はやはり人材の養成というのですか、そういうものに私はかかってきているのではなかろうかというように思います。それと同時に、地域産業でございますので、地場産業の性格をたくさん持っておるわけでございますので、やはり地方自治体もこの問題についてプロジェクトチームをつくって対策をしなければならぬ、こういうことで非常に熱心でもございますので、業界団体そして国と自治体、地域が一体になって統一的にこの業界の産業育成対策をやらなければならぬと考えておりますので、その点ひとつ十分に御理解をいただきたい、こういうふうに思います。  さらに、先ほども申し上げたわけでございますが、通産省のもとで、これは各省そうでございますが、たくさんの審議会あるいは懇談会等がありますね。各種の諮問機関的なものがあるわけでありますが、皮革全般の抜本的な振興策を確立するという意味から、皮産連は皮産連として業界内部で委員会を設けて、業界全体をどうしていくのかということを検討されていることはよく存じておるわけですけれども、やはり通産省の指導のもとで、学者、文化人とか有識者、あるいは当然業界の人も入らなければならぬし、消費者も入らなければならぬだろうし、そのもとで働く労働者の代表もいるだろうと思うのです。各委員会審議会の構成は、私から言うまでもなくそういうメンバーが入っていると思うのでありますが、やはり審議会等を設立して抜本策を立てるという長期的な構えがぜひとも必要ではないかと私は考えておりますので、さきの私の意見と後段の審議会の問題についての局長考え方をお聞かせいただきたい、このように思います。
  39. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 私見でございますけれども、日本の皮革産業あるいは靴産業がその確固たる地位を確立するためには、この産業に携わる方々の間に日本人の日本人による日本人のための靴づくりという気持ちが定着をしていくことではなかろうかと思っております。このためにも、人材養成というのは先生御指摘のとおり極めて重要な課題でございまして、私どもといたしましても今後皮革関連の総合対策に取り組んでいこうという決意を新たにいたしておるところでございますが、その際人材養成ということに特に意を用いてまいりたいと思っておるところでございます。  また、確かに皮革産業対策は、中央で皮産連を中心に総合的な対策を講ずると同時に、地域地域におきまして地方自治体、関係業界が協力をいたしましてきめ細かい対策を講じていくことが必要かと思います。また、皮産連の講じます対策と地域地域での対策の間のきめ細かいネットワークも必要不可欠であろうかと存じております。従来から全国皮革行政連絡協議会を通じまして地元の地方公共団体との連携に努めているところでございますし、関係業界とも連絡を密にしておるつもりでございますが、この面にもさらに意を用いていく必要があろうかと思っております。  私どもといたしましては、先ほど来申し上げておりますような心構えで日本の皮革産業あるいは靴産業につきましては確固たる地位を築いていくことが基本的な方向づけであり、ビジョンであろうかと思っておるわけでございます。これを推進していきますためには、御指摘のとおり各方面の御意見を十分吸収し、また、これに耳を傾けていく必要があろうかと思うわけでございます。  現在の大きな行政の流れの中では、新しい審議会をつくることが可能かどうかなかなか難しいところではございますけれども、私どもといたしましては、必ずしも構えにこだわらず、御指摘のような趣旨に十分こたえられるような行政運営を図りまして、今申し上げましたビジョンの実現に全力を尽くして取り組んでまいりたいと思っているところでございます。(上田(卓)委員審議会」と呼ぶ)  今申し上げましたように、この問題につきましては、現在の行政運営のルールのもとではなかなか容易ではなかろうと思うわけでございますけれども、必ずしも構えあるいは形にこだわらず、しかし、先生御指摘のような各方面の意見を十分くみ上げられるように配意しながら対応してまいりたいと思っているところでございます。
  40. 上田卓三

    上田(卓)委員 局長、ここで答えられなかったら結構ですけれども、審議会等で、業界だけに任すのではなしに、通産省の指導のもとでそういう各界の意見も取り寄せて、幅広い形でそういう抜本策の検討機関があってしかるべきだと考えておりますので、強くそのことについて要望しておきたいと思います。  時間も来ましたのでやめますが、靴とか皮革とかいうものは、合成が出てきていることも事実でありますけれども、私は恐らく、人類が続く限りこれとのおつき合いは永遠だろうと思っております。皮革は皮革のよさというものがあるわけでございまして、量よりも質というふうにニーズも変わってきているということもこれまた事実であります。メード・イン・ジャパンという大きな中で皮革、靴がすばらしいものだということで国際的に認知をされるように、当然業界の発想の転換、あるいは人材の養成も含めて、あるいは技術の革新、あるいはファッション化、そういうものも当然大事だろうと思うわけでありまして、そういう意味で、この業界がもうなくなっていく業種、業界じゃなしに、今まで低迷してきたが、衰退してきたが、不死鳥のごとく生き返っていく、そういう日本経済を支える、あるいは地域の経済を支えるすばらしい業界として立ち行くようにぜひとも御指導をいただきたいということを申し上げ、最後に政務次官、一言で結構でございますから、私の最後の言葉を受けて、いいお答えをいただいたらありがたい、このように思います。
  41. 熊川次男

    ○熊川政府委員 先生のただいまの御意見、特に中小零細企業で成り立っております業界でもございます。こういった事情をあわせ考えたときに、これの受ける打撃も大変なものがあることを私たちもよく認識を深めまして、そして急激な打撃を受けないような配慮を十分めぐらしていかなければならないのではないか、こんなふうに考えております。
  42. 上田卓三

    上田(卓)委員 質問を終わります。
  43. 小泉純一郎

    小泉委員長 古川雅司君。
  44. 古川雅司

    ○古川委員 ただいま議題になっております関税定率法及び関税暫定措置法の一部改正案に関連をいたしまして若干質問をしてまいりたいと思います。  最初に、税関行政の問題点について少しお伺いをしたいのでありますが、申すまでもなく、貿易立国日本経済発展のためには、外国との玄関先の非常に大事な業務だと思います。  税関行政の重要性、特殊性ということは毎年この委員会議論がされておりまして、特に、要員の確保と処遇の改善につきましては、繰り返し述べられてきているところでございますが、毎年大臣の御答弁を聞いておりますと、非常に消極的で御遠慮がちであるという印象を受けるわけでございます。財政再建、行政改革という方向性の中で財務当局としては非常にはっきり言いにくい、また、大きな改革ができにくい一面もあると思いますけれども、今回のこの法改正を通しましても、制度が変わっていく中でどうしても税関行政の問題点だけは取り残されていくのではないかという印象を強くするわけでございます。最初に、その点の御所見をお伺いしたいと思います。
  45. 佐藤光夫

    佐藤(光)政府委員 先生御指摘のとおり、私どもの税関行政の業務の量、質が拡大あるいは複雑化してまいっていることは否めない事実でございます。輸出入の各許可件数あるいは出入国旅客の数の増、特に最近は、銃砲あるいは麻薬類等社会悪物品の摘発の増加ということがあるわけでございます。限られた定員の中でそれをいかにこなしていくかというのが私どもに課された使命であると考えておる次第でございまして、従来から申し上げておりますように、事務の重点化、効率化あるいは機械化ということを進めましてそれに対処してまいっている次第でございます。  今後ともそうした重点化、効率化あるいは機械化という努力を継続してまいりたい、かように考えておりますが、同時に御指摘のように要員の確保の問題がございます。定員事情の大変厳しい折からではございますが、私、関税局長といたしまして、関係当局の理解を得られるようにこの点についても最大限の努力を払ってまいりたい、かように考えている次第でございます。
  46. 古川雅司

    ○古川委員 この問題点につきましては、年々本委員会でも附帯決議に本委員会の意思を盛り込んで、当局に対して一層の御努力をお願いをしているわけでございます。  今御答弁のとおり、業務量にいたしましても膨大になる一方で、実質的には人員は減少の方向にある。しかもベテランを確保しにくいという実態も訴えられております。さらに輸出規制の問題であるとか、輸入に関する法令、条約等の複雑な絡みもございまして、ますますその審査は困難化をしているわけでございます。したがいまして、このまま推移していきますと税関行政そのものに支障を来す事態が来るのではないか。これは大きな問題になるわけでございまして、そういう点、OA化等でカバーをしていかれるということではありますけれども、これはまたOA化し切れない部分もあるわけでございまして、むしろその方に大きな問題が残されてきておるわけでございます。業務の件数、そしてまた、その内容の複雑多様化、あるいは社会的に許されない悪質事犯の摘発の問題、こういったことが非常に複雑化すればするほど、何とか努力をして要員の確保、処遇の改善を目指していきたいという目標だけでは、将来大きな憂いを残すことになると思います。  きょうは、大臣は出席しておられませんけれども、直接責任を持っていらっしゃる局長のお立場で、もう少し強烈にこの問題にお取り組みをいただきたい。各省庁の理解が得られないわけがない、そのように思うわけでございますが、いかがでございましょう。
  47. 佐藤光夫

    佐藤(光)政府委員 御指摘のとおり、税関の仕事は大変複雑膨大化してまいっていることは事実でございます。ただいまの先生の御発言を私どもに対する非常に力強い御激励と受けとめまして、力の及ぶ限り最大限の努力をいたしまして要員の確保等に努めてまいりたいと改めて決心をいたしているような次第でございます。
  48. 古川雅司

    ○古川委員 くどいようでございますけれども、単なる激励という意味だけには受けとめていただきたくない。また別の機会に大臣にもぜひ申し上げたいと思いますが、本委員会においては強い要請があったということを政務次官の方からもしかるべくひとつ大臣にもお伝えおきいただきたいと思います。  六十一年度予算案の中ではこの税関行政の問題点について改善の大きな一歩は期待できないような印象も持っておるわけでございますが、六十一年度についてはいかがでございましょう。     〔委員長退席、中西(啓)委員長代理着席〕
  49. 佐藤光夫

    佐藤(光)政府委員 六十一年度予算におきまして非常に画期的な税関行政の維持強化のための措置がとられているということは、残念ながら私から申し上げられるような状況ではございません。今まで減少傾向をたどってまいりました私ども税関職員の定員の減少が、いわば頭打ちになったということがあるのかなということをあえて申し上げれば申し上げられるのかなという気がいたしておるわけでございますが、先ほど申し上げましたとおり、最大限の努力を払って私どもの税関行政の適正な運営を期してまいりたい、かように存じておる次第でございます。
  50. 古川雅司

    ○古川委員 税関行政の問題点に関しましては一応その程度にとどめまして、順次法案の内容に入ってまいりたいと思います。  今回の改正内容につきましては、既にいろいろ御説明を伺っているわけでございますが、この御提案に際しまして、毎年大蔵省の方から、もしこれが期限内に成立しない場合の問題点を強調をしていらっしゃるわけであります。その資料をこうしてちょうだいをしているわけでありますが、一つ一つよく理解できると思うのであります。ただ、これはまた反対に、成立した場合にもいろいろ問題が残るということを私たちいろいろ心配をしてこれからお伺いをしていきたいと思っております。  大蔵省としては、この点はどのようにとらえて分析をしていらっしゃるか、その点ひとつお示しおきをいただきたいと思います。
  51. 佐藤光夫

    佐藤(光)政府委員 今回お願いをいたしております定率法及び関税暫定措置法の一部改正の法案の主たる中身は、先ほど来の御議論がありますような皮革交渉に伴う日米あるいは日・ECの合意を実施する、こういうものが主たるものでございます。そのほかに、例えばワイン類の関税率引き下げの一年前倒しというようなものもございますし、先ほどお触れになりましたような暫定税率の期限の延長というようなものも当然含まれているわけでございます。  私どもが懸念をいたしますのは、その暫定税率の延長の問題は毎年お願いをいたしている問題であえて申し上げるまでもないところでございますが、国際的な合意にかかわる問題が含まれているわけでございますので、これを期限内に御承認をいただき、実施をするという運びになりませんと、今申しましたような意味での国際的な合意が実現できなくなるというところが今回お願いをいたしております法律案の一番の問題点ではないかな、こんなふうに考えている次第でございます。
  52. 古川雅司

    ○古川委員 若干これは話がそれることかもしれませんけれども、いわゆる関税の手直しによって外国製品の輸入がふえるのかという問題が一つあると思います。  これは昨年の四月のことになりますが、中曽根総理がテレビを通しまして国民に強くお訴えになったことがございまして、そのとき総理は、原則自由、例外規制の方針で日本市場を開放していく、これを明らかにされたわけでございます。そのとき、本気でおっしゃったのか、あるいは多少希望的な気持ちをお述べになったのか、国民一人一人が百ドルの海外製品を買うようにというように訴えました。これは、テレビで国民に訴えたことでありますから、決してざれごとではないと思うのであります。これは大蔵省御当局だけに伺うのもどうかと思いますけれども、こうした関税についての法律改正等も絡めつつ市場開放をしていく方向に持っていきながら、こうした総理の意図されたことがこの一年の中でどのように進められてきているか。こうした関税引き下げ等でもって、果たして最初に申し上げた海外製品の輸入はふえているのか、この点はどのようにお考えになっているでしょうか。
  53. 佐藤光夫

    佐藤(光)政府委員 率直に申しまして、関税引き下げが輸入の増加に非常に大きく寄与するかというふうに問われれば、その点は、大きな効果があるというふうに申し上げると実体を誤るのかなというふうな気はいたしております。  前の臨時国会でお願いをいたしましたアクションプログラムの実行のための関税率引き下げのとき、この法律による全減収額というのは約八百億円だったわけでございます。非常に簡単な仮定を置きまして、なかなか難しいのでございますが、どれくらいそれが輸入増に結びつくかという計算を幾つかやってみたわけでございますが、率直に申しますと、二億ドルとか三億ドルというような一つの計算が成り立つわけでございます。したがいまして、現下の数百億ドルというような大きな不均衡と対比をした場合に、関税引き下げだけでそういう問題を解決できるような大きさの輸入増の効果があるかという御質問であるとすれば、それは率直に言ってそんな大きなものは期待できないかもしれないなという気はいたしておるわけでございます。  一つには、もう先生御承知のとおりでございますけれども、こうして我々が市場開放の努力をしているという、そこが自由貿易を守っていく上で重要な事柄なのかなというふうに思いますし、円高等の影響もございまして、最近の貿易統計を見ておりますと、輸入数量も一時の停滞を脱しましてここ数カ月若干上向いてきているというようなことは言えるのではないかな。しかし、それが御質問関税引き下げだけに由来すると言うと、これまた大きな効果があり過ぎるという表現になるかもしれませんけれども、事実の推移といたしましてはそんなような貿易動向になっていることもこの際申し添えさせていただきたい、かように思う次第でございます。
  54. 古川雅司

    ○古川委員 輸入品はなぜ売れないかという問題あたりになりますと、これはもう通産省の管轄の部分が非常に多くなりますので、ただ関税という点だけでお聞きするのは非常に的外れかもしれませんけれども、こうしたいわゆる貿易の障壁を一つ一つ取り除いていくという面においては関税もその一つの役割を果たしていることは確かであります。これは関税だけを責められませんけれども、今回御提案法律案の中身にいたしましても、この法律案が成立をいたしまして、そのことによってどれだけ輸入の拡大につながるのか、どれだけ輸入がふえるのかということは一つの大きな関心事になるわけでございまして、この関税の操作につきましては、当然その辺は試算なり見通しをおつけになっているのではないかと思いますが、その点についていかがでございましょうか。
  55. 佐藤光夫

    佐藤(光)政府委員 お答えいたします。  今回お願いをいたしております法律案に基づく関税収入の減少額というのは約二百三十億円でございます。  そうした減収を伴う関税率引き下げがどれだけ輸入の増に結びつくかということは、先ほど申し上げましたようにいろいろな計算がございまして、仮定の置き方いかんによりまして数字が異なるということでございますが、これは一つの推計でございますけれども、輸入の価格弾性値みたいなものにつきましてあえて一つの仮定を置きまして計算をいたしますと、〇・七億ドル、七千万ドルくらいの輸入の増がもたらされるのかなという計算がございます。あくまでも一つの推計にすぎないわけでございますが、一つの目安としてお受け取りをいただきたい、かように思うような次第でございます。
  56. 古川雅司

    ○古川委員 私、きょう外務省もお呼びしておりませんので、これは局長が既にお聞きになっているかどうかということは確認をしないままお尋ねをするわけでございますけれども、ことしの一月二十一日に安倍外務大臣がイギリスを訪問されたときに、サッチャー首相が非常に厳しいことをおっしゃっているわけでございます。これは報道で私も聞いたわけでございますが、いわゆる東京サミットを直前にいたしまして貿易黒字問題、これは当然大きな関心事でございますし、後ほどお伺いを進めてまいりますが、いわゆるECの対日戦略というものが非常に厳しい状況になっておりまして、安倍外務大臣に対してサッチャー首相は、関税を若干引き下げても問題解決にはならない、例えば欧州製のエアクラフトを購入するなどもっと大規模なことをしなければならない、そういう向こうの要求も含めた感想を述べているわけでございます。こうした日本関税引き下げあるいは輸入枠の拡大という措置に対しても、なかなかこちらの思うとおりに相手が評価をしていない。これはサッチャー首相に限ったことではないわけでございまして、年々、関税関係の法案の審議、当委員会の論議の中ではこの点が問題になるわけでございます。サミットを前にいたしまして、この点もいかがでございましょうか。サッチャー首相の述べたと言われるこうした所感に対して、大蔵省として感想をお持ちであればひとつお示しをいただきたいと思います。
  57. 佐藤光夫

    佐藤(光)政府委員 先ほど申し上げましたように、関税引き下げ措置が現下のこの貿易の不均衡を削減するという点での効果が問題にされるということでありますと、申し上げましたように、これに非常に大きなものを期待するのは難しいというか、非常に困難なところがあるかなというふうに思うわけでございます。しかしながら反面、現在の貿易の不均衡というのは私ども日本のサイドだけですべて解決できる問題ではないということがあるわけでございまして、諸外国が均衡のとれた世界経済の発展のために協調的な努力をしなければなかなか解決できない、そういう性格のものだろう。その中で、何といっても自由世界で第二位の経済力を持つ日本は率先して市場開放に努め、そのことによって自由貿易を維持強化していく必要があるのだろうなというふうに思うわけでございまして、その意味で自発的に関税引き下げ等を行っていくことに意味があるのではないかな、そういうふうに考えている次第でございます。  ちなみに、今回お願いをいたしております皮革の関係等につきましては、それなりにアメリカ側からの評価も得られておりますし、そのほかワイン等の関税引き下げの一年前倒しにつきましても、アメリカ、EC等の関心を有する国からそれなりの評価が得られておる、こういうふうに私どもといたしましては理解をいたしておるところでございます。
  58. 古川雅司

    ○古川委員 最近、さっきちょっと申し上げましたECの対日戦略の問題が非常に大きくクローズアップされているわけでございますが、これまた東京サミットを前にいたしまして非常に気がかりなことでございまして、ECの外相理事会が改めて我が国に対して非常に強い態度を打ち出してきたわけでございます。  今回ワインの問題が法案の中に含まれておりますけれども、そうした意味では酒類についても非常に細かくEC側の要求を示してきておりまして、むしろECの言い分を何としてもここで押し通したいという姿勢がうかがわれるわけでございます。当然向こうは向こうとしての戦略もあるかと思いますが、この辺はどう受けとめていらっしゃるか、お考えをお示しいただきたいと思います。
  59. 佐藤光夫

    佐藤(光)政府委員 先生御指摘のとおり、ECからはかなりアルコール飲料の問題についての要求が強く出されておるわけでございます。  四つほどEC側の要求がございます。  一つは、酒類についての関税が高いから引き下げてくれ、こういうのが一つございます。  もう一つは酒税でございますが、輸入酒に対して差別的な仕組みになっているというのが第二のポイントでございまして、これを是正してほしい、こういう要求が第二でございます。  もう一つは、先ほどおっしゃいましたようにかなり細かいことも言っておりまして、酒類のラベル表示の改善ということも申しております。これは、紛らわしいラベルをつけないで、日本のワインであれば日本のワインということをはっきり表示せいというようなことでございます。  それからもう一つ、最後に酒類の小売免許でございますけれども、スーパーマーケットに付与せいというようなことをECは言っておるわけでございます。  これに対する私どもの対応でございますが、それぞれにつきまして、今までにおきましてもあらゆる機会にEC側に対しまして、日本側の事情でありますとか考え方をるる説明をいたしてきているわけでございます。もしその説明等につきまして御質問があれば改めてまたお答え申し上げたいと思いますけれども、今後におきましても、機会をとらえましてECと十分話し合いをし、私どもはこう考えておるということを理解を求めていきたいというふうに考えておりますのが一般的な私どもの姿勢でございます。
  60. 古川雅司

    ○古川委員 今御答弁をいただきましたとおり、関税だけではなくて酒税という日本の国内の税の体系にも触れておりますし、御説明のとおりスーパーで売らせる、そういう販売系統にまで触れてきているわけでございます。もちろん、国内的には、スーパーで酒を売らせろということは日本のスーパー業界から強い要請として国税庁に寄せられていることは事実でありますし、それに対しまして、酒小売店においてはこれにまた非常に大きな懸念を抱いているというのも事実でございます。そうした国内の販売系統にまで触れる、繰り返しますけれどもそういう非常に細かい要求を突きつけてきている。これにどう抗していくのか、ある時点で、あるいはある条件によってはそうした要求ものまなければならないような方向なのか、その辺は国内の業界の非常に大きな不安もございますので、この際、ひとつ具体的にお示しをいただければ結構かと思いますが、いかがでございましよう。
  61. 佐藤光夫

    佐藤(光)政府委員 まず私からは、先ほど申し上げました第一の点、関税率の問題につきまして私どもの考え方をお答え申し上げ、その後、主税局長あるいは国税庁の間税部長からそれぞれ担当の問題につきましてお話を申し上げたいと思います。  関税率につきましては、なるほど日本関税率が酒類については高いことは事実でございます。相対的に他の国に比べまして高いということは事実でございますけれども、これは酒類のメーカーの問題にとどまりませんで、例えばワインでございますとブドウ栽培農家の問題、あるいはウイスキーでございますとこの原料である二条大麦の耕作農家の問題といったような農業問題がその底にあるわけでございます。そういう意味で、困難な国内事情の中でできる限りの関税率引き下げを従来もやってきたという経緯があるわけでございます。  さらに、その上に関税率を下げるというのがECの主張であるわけでございますけれども、先ほど申し上げましたようにそうした国内の事情あるいは従来の経緯を十分にECに対しましても説明していきたい、関税率の問題につきましてはかように考えておる次第でございます。  酒税の問題あるいは小売免許等の問題につきましては、主税局長あるいは間税部長からお答えがあろうかと思います。
  62. 水野勝

    ○水野政府委員 我が国の酒税の制度につきましては、お酒を種類、品目等に分類し、それぞれのお酒の担税力に応じ異なる税率を適用して酒類間の税負担の均衡を図っておるわけでございまして、その適用に当たっては、もちろん内外無差別でございます。  また、内国税でございます酒税の課税方式をどうするか、これはそれぞれの国の租税政策の問題でございますので、我が国におきますところの酒類消費の実態等を踏まえながら検討すべき国内問題であるというふうに基本的には考えておるわけでございます。  ただ、我が国の酒税の制度、内容は、原料、生産方式、消費、生産の態様その他もろもろの要素を加味いたしましてかなりきめ細かくいろいろな格差が設けられてございまして、この点についてはしばしば国会でも御議論をいただき、その税率格差について検討をすべきではないかというような議論もあるところでございます。  また、純粋に国内問題であるとは申しましても、やはりこれだけ経済、取引が国際化してまいりますと、我が国だけの観点から制度、税制の中身を決めて、それで全部済むというわけでもないような点もないことはないわけでございます。たまたま税制につきましては抜本的な税制改革の作業の途中の段階にあるわけでございます。この中では間接税の検討は後半の部類でございまして、現時点で具体的に取り上げられているということはございませんが、いずれこの問題、酒税の問題も取り上げられることであろうと思います。国内問題ではございますが、国際的な観点、視点といったものもやはり配慮しながら恐らく検討がなされるのではないかと考えておるわけでございます。
  63. 村本久夫

    ○村本政府委員 先ほど関税局長の方から御答弁申し上げましたように、いわゆる流通に関することでは、大きく申し上げまして表示の問題とスーパーに対する免許、そういったことが取り上げられております。  まず第一に表示の問題でございますけれども、先ほど関税局長も御答弁申し上げましたが、例えばワインについてフランス語あるいはドイツ語、そういうようなものを使って、日本のワインが日本のものではなくてヨーロッパ産のものと誤解されるような表示がされているのではないかというような指摘もございましたが、この点については昨年の五月、これはよくよく読んでみますと後ろの方にも製造者名等が酒団法に基づいて表示をされておりますので誤解はないはずでございますが、メーンラベルで誤解されるようなものについてはきちっと製造者名を日本語で書くようにというような自主的な措置が業界でとられているわけでございます。  また、ワインにつきましても、昨年の十二月、暫定的ではございますけれども、いわゆる輸入のバルクワインを使用しているものについてはそういった旨を記すというような措置もとられております。  こういった実情等を説明いたしますとともに、表示の点等につきまして、なお暫定措置にとどまっているというようなものは、対外摩擦の解消というためばかりではなくて、消費者によりよく情報を提供するというようなことも考えまして、公正取引委員会とも御相談をしながら逐次進めてまいりたいと思っておるわけでございます。  それから第二番目のいわゆる小売免許をスーパーに与えろ、もっと緩和しろというお話でございます。  現在小売免許に当たりましては、御承知のとおり酒税法の規定に基づいて、酒税の安定的な確保を図るということを趣旨として免許制度がとられておりまして、私どもその運用に当たっては公開通達によって免許基準を定め、当該地域の酒類の需給状況、既存小売業者の経営状況等を慎重に検討しているほか、消費者の利便等も十分勘案しながら適正かつ公平に運用しているところでございます。その結果、現在全国で十七万場を上回る酒の免許場があるわけでございます。したがいまして、免許制度の趣旨から申しまして、スーパーだけを取り出して特別の扱いをするということは法律の運用上も非常に難しい問題がございますし、また、現在酒の需要は必ずしも隆々としているものではなくてやや低迷ぎみでございますので、中小酒販店の経営にも影響を与え、それがひいては酒税の確保に支障を来すというようなこともあるわけでございます。私どもとしては、そういう輸入酒類の国内での消費を伸ばすためには、十七万場余にも上ります既存の流通網をいかによく活用していくかということにむしろ力を注ぐべきではないか。また、これを受けまして、昨年秋以来、輸入酒フェア等酒類の小売業界もいろいろ努力をしておるところでございます。  ECの主張に対しましては、今後も会議でよく先方の意見等も聞いてみる必要があろうかとは思いますが、こうした私どものとっております施策の考え方あるいは実情等につきましてよく説明をいたしまして理解を得るようにいたしたい、このように考えておるところでございます。
  64. 古川雅司

    ○古川委員 このECの対日戦略につきまして、EC側の言い分に対して今お酒の例を中心に大蔵省のお考えを伺ってきたわけでございますけれども、今後の交渉等において日本立場を明確にしていただきたいと思いますし、そういうことで国内のこうした業界に混乱を起こさないようにひとつ十分御留意をいただきたいということを要望いたしておきます。  関税とか日本の酒税の体系あるいは販売系統にも批判が及んでいるわけでございますけれども、非常に一般的な疑問として例えばこういう例があるわけです。  ウイスキーに例をとると、例えば輸入原価が七百円の酒があったとすると、それにかかるのが、まず関税が三百円程度、酒税が千七百円、それに総代理店とか卸、小売業者の流通マージンが入って六千円ないし七千円になる、こういう試算があるわけでございますけれども、大体そういうことなのか。諸外国の日本に対する批判のポイントはそちらの方にむしろ重点があるのではないか。言葉をかえれば、関税なんというのは問題外ではないかという気もするわけでございますけれども、その辺はどうおとらえになっていらっしゃいますか。
  65. 佐藤光夫

    佐藤(光)政府委員 今御指摘のように、特に高級なウイスキーあるいはブランデーの国内の小売値段は非常に高いわけでございます。その中に占める関税の割合というのは、今手元にございませんが、例えば三%くらいにしかならないということでございまして、そういう意味からいいますと、それが日本市場へのアクセスにとって非常に大きな障害になっているとは言えないという考え方もあるわけでございます。しかし、EC側から見ますと、例えばワインの場合、今回引き下げをお願いしておるわけでありますが、引き下げ後でございましてもCIF価格に対して三〇%、スコッチの場合大体二八、九%ということで、そうした関税率水準そのものがEC、アメリカ等の同様の関税率に比べて高いということが彼らにとっての関税引き下げの要求の一つの根拠になっている、こういうことではないのかなと思われるわけでございます。  酒税等につきましてはあるいは主税局長等からお答えがあるかもわかりませんが、私どもとしてはそういうふうに理解をいたしておるところでございます。     〔中西(啓)委員長代理退席、委員長着席
  66. 水野勝

    ○水野政府委員 プレミアムクラスのものにつきまして国産、輸入品を比較いたしますと、関税率といたしましては先ほどお話の出ておりますように三%程度で、酒税としてはどちらが高いかということになりますと、これは建て値にもよりますけれども、国産の方が倍以上高い。そして最終価格としては同じくらいになる。そこはいろいろな取引形態の特殊性によるものか、中間のマージン等の問題もかなりあるのではないかと私ども考えておるわけでございます。
  67. 古川雅司

    ○古川委員 今回の法改正によって関税引き下げ等があるわけでございますが、いただいた資料によりますと、改正に伴う関税収入の減収額が六十一年度で約二百三十億円というふうに見込まれている。これは円建て、ドル建ての相違もあると思います。為替レートの変動等によっても多少影響を受けると思いますが、大体二百三十億という見込みどおりなのか、内容はどういう割合になっているのか、その点をお示しいただきたいと思います。
  68. 佐藤光夫

    佐藤(光)政府委員 御指摘のとおり、今回お願いをいたしております関税改正関税収入に与える影響は二百三十億円ぐらいというふうに私ども見積もっておるわけでございます。  その内訳でございますけれども、日米皮革、革靴交渉に係る代償品目の関税の撤廃あるいは引き下げ、これが大体二百四億円くらいでございまして、その他の関税引き下げ等が二十六億ほどございます。その二十六億の内訳は、先ほどもちょっと申し上げましたワイン類四品目の関税引き下げの一年前倒しが十三億円程度ございます。その他もろもろが十三億円ぐらいございまして二十六億ということでございます。為替の変動等もあると思いますけれども、革の関係の二百四億円と合わせまして、トータル二百三十億円くらいの減収額に六十一年度なるのではないかと考えておるわけでございます。
  69. 古川雅司

    ○古川委員 最初からいろいろお話がございますとおり、皮革製品、革靴の関税引き上げ、そしてこれに伴う代償交渉の結果の操作ということで、いろいろな製品、いろいろな業界に関係が及んでいるわけでございまして、こうした関税収入の減少ということも出てまいりますし、業界に対するいろいろな影響等も当然出てくるわけでごぜいます。  これは特に通産省の管轄ということで、そちらの方で調整に非常に苦慮されたということは既に御説明を伺っているわけでございますが、業界もいろいろな影響を受け、また、こうした関税収入の減少という影響も現に日本政府としては受ける。そうすると、消費者としてはこうした関係の製品の価格が下がるということに期待をつなぐわけでございます。関税率という非常に小さい割合のものではそこまでは影響は出ないと言い切ってしまえばそれまででございますけれども、この辺はどう観測をしていらっしゃるか、お考えがあればひとつお示しをいただきたいと思います。
  70. 佐藤光夫

    佐藤(光)政府委員 御指摘のとおり、関税率自身がかなり低い水準になってまいっていることは事実でございます。それのさらに引き下げということでございますので、そのことによって輸入品の価格が非常に大きく下がるということを期待するのは無理なところがあろうかと思います。しかし、方向といたしまして、私どもはそのためにいわば市場開放をやっているということでございますので、消費者の立場にとりまして安い外国製品が入ってくるということを期待するわけでございますから、方向といたしましては輸入品の価格が下がるということが期待されているというふうに私どもは思っているわけでございます。  特に、今回の革靴等の関係で言いますと、代償品として関税率引き下げたものでございますとか、あるいは皮革とは無関係にワイン類の関税引き下げの一年の前倒しというようなものについて申し上げているわけでございます。
  71. 古川雅司

    ○古川委員 いろいろとお伺いを進めてきたわけでございますが、今回のこの法改正の中には、時間の関係で細かく申し上げませんけれども、石油にかかわるものあるいは非鉄金属、アルミにかかわるもの、今御説明をいただきました皮革製品、革靴にかかわるもの、こうしたいろんなものがあるわけでございます。業界でも、特に石油業界とか非鉄金属の業界とかそういったところにも一つ大きな打撃もあるのじゃないか。それでなくとも非常に停滞を続けている業界ではありますし、ますます生産の縮小であるとかあるいは業界そのものの衰退に拍車をかけるという懸念があるわけでございまして、その辺も十分考慮はいただいているとは思いますけれども、そういった点についてどうお考えなのか。あるいはそういうことになれば、今回のこの措置が、そうした業界の生産量の問題からいっていわゆる税の減収につながっていくという懸念もあるわけでございますが、その点も含めてひとつお考えをお示しおきいただきたいと思います。
  72. 佐藤光夫

    佐藤(光)政府委員 今回の関税率引き下げの対象になりました物資につきましては、それぞれの所管省庁と十分協議をいたして御提案を申し上げているつもりでございます。それぞれの所管省庁は、産業所管省といたしまして当該産業の事情等を十分把握をされた上で私どもとの協議の上、今回関税率引き下げを御提案申し上げている、こういうふうに考えられるわけでございますので、御指摘の業界等の事情は十分把握をし、理解をし、必要であれば対策を講じた上で今回の関税率引き下げをお願い申し上げておる、こういうふうに御理解いただければ幸いに存ずる次第でございます。  なかんずく皮革の問題につきましては、先ほど来御議論がございましたけれども、TQ制度というような制度をとり、かつ、きめ細かい国内対策等も講じていくということで業界の御理解は得られるのではないかな、こういうふうに考えている次第でございます。
  73. 古川雅司

    ○古川委員 政務次官が御出席でございますので、最後にお伺いをして私の質問を終わりたいと思います。  いわゆる関税行政の将来については今後もいろいろ問題が残るわけでございますが、こうして毎年のように関税率の低下ということが繰り返されているわけでございます。これではもう徴税機関としての税関の存在意義がなくなってしまうんじゃないかということも心配されるような事態でございまして、将来を展望してひとつ御所感を伺って、質問を終わりたいと思います。
  74. 熊川次男

    ○熊川政府委員 御案内のとおり、アメリカを初め各国の日本に対する貿易不均衛の是正あるいは市場開放の要求は非常に顕著なものがございます。また他面、自由経済の旗手としての日本の存在あるいは世界経済の活性化への維持発展のための日本の役割、こういうことを考えたときには、やはりこの関税の問題は、今先生が御指摘のような点を累次考え、そして新ラウンド開始に向かっての積極的な努力をしていくことが日本の今日における立場ではないだろうか、こんなふうに理解をしておりますので、御理解を仰ぎたいと思います。
  75. 古川雅司

    ○古川委員 終わります。
  76. 小泉純一郎

  77. 安倍基雄

    安倍(基)委員 時間がえらい短いので簡単にお答え願いたいと思います。  今度の関税法の問題ですけれども、私、実は去年の九月、文芸春秋の十月号に、私の「あえて「市場開放」に反対する」という論文が載りました。そのときの議論は、大分以前の東京ラウンドのときから比べると、当時は大体一五%ドルが上がっている。ということは、つまり輸出については一五%の補助金があり、輸入については一五%の関税が課せられたのと同じ状況ではないか。こういった円ドル相場のときに慌てて関税などを下げますと、例えて言いますならば、引き潮のときに防波堤を崩す、そのときには少しくらい崩したって全然問題はない、また逆に、崩したからというて輸入がふえるわけではない、ところが、上げ潮になってきたときに、円ドル関係が逆転したときにはこれは人ごとになるよということを私は書いたことでございました。  その後、いわゆるG5で急に円ドル関係が逆転してきたわけです。我々の市場開放論は当時における円ドル関係を前提としておった。それが今や全く逆になってきて、さっきも話がございましたけれども、四〇%近く逆に円が上がってきた。ということは、何と申しますか、自然の関税が減って逆に非常に上げ潮になってきた。となりますると、これはむしろ市場開放の問題をもう一遍洗い直す必要があるのじゃないかという感じがするわけです。現実問題として、そうどんどんと輸出が減らないじゃないか、輸入がふえないじゃないかという話がありますけれども、これはじわじわ必ず効いてくる。たまたま輸出などにつきましてはしばらくの間は惰性というかこの力で行くけれども、大きく響いてくるという時期が必ず来る。そういうときに、過去に決めたそういう市場開放策をそのままやっていってもいいのだろうかという疑問があるわけです。  この点、大臣に聞きたいのですけれども一応大蔵省の担当者からお聞きして、それから政務次官のお考えを聞きたいと思います。
  78. 佐藤光夫

    佐藤(光)政府委員 円高はその限りにおきまして関税の保護効果を弱めるということは、御指摘のとおりだろうというふうに思うわけでございます。ただ、同時にまた、先生もおっしゃいましたように、現在の数百億ドルというような大きさの対外不均衡が急速に解消する兆しもないわけでございます。特に、自由世界二位の経済力を誇る日本といたしまして、世界じゅうにややもすれば蔓延しがちな保護主義的な動きを抑えて自由貿易を維持強化していかなければならないわけでございますので、率先してこの市場開放に努力していく必要というのはやはり依然として存在するのではないかなというふうに私ども考えておるわけでございます。  それから二番目に、これまた御指摘のように、円高というのは、その限りでは関税の保護効果が弱くなるわけでございますけれども、関税率というものはもうちょっと長い目で設定してあるものではないかなというふうに考えるわけでございます。言いかえますと、これは釈迦に説法だろうと思いますけれども、為替レートは中長期的には購買力平価あるいはその国の経済的なファンダメンタルズの水準に収れんしていくものなのだろうなというふうに考えられるわけでございますので、長い目で設定をいたしております関税率は、短期的な為替レートのフラクチュエーションに即応して変化させなければいけないというものではないのではないかなという気もいたしておりまして、その二点から、御趣旨は非常によく理解でき、かつ、啓発されるところが多々あるわけでございますけれども、私どもといたしましては、引き続き関税率引き下げ等市場開放にできる限りの努力をしていかなければならないのかな、こんなふうに考えている次第でございます。
  79. 安倍基雄

    安倍(基)委員 今、長い目で見るとおっしゃるけれども、今の黒字がたまっているのは長い間のドル高の余勢がずっとあるわけです。あなたおっしゃるけれども、それじゃこれから円高がどのくらい続くか。実際のところはこれはしばらく続く可能性があるわけですね。私は、長い目で見るからこそもっともっと今考えなくちゃいけないんじゃないかと言うのですよ、実際のところ。もちろん関税は長い目で見なければならぬ。ところが、関税を何倍もオーバーするような為替変動があるわけですよ。私の言っているのは、黒字はもうじきだんだんとじわじわと縮まらざるを得ないのですよ。だから、長い目で見るからこそ現在の市場開放策をもう一遍原点に立って見直さなければいかぬ、私はそう思うのですよ。あなた、関税は長い目で見るとおっしゃるけれども、私どもは全く逆ですよ。長い目で見るからこそ、今、かつてドル高のときにやった市場開放を見直す時期じゃないか。特にそれと関連しまして、革の問題もありますけれども、安倍・シュルツ会談で木材について逆に前倒しみたいな格好でやってきている。まさに基本原則が変わってきているときに、昔どおりのものを、しかも、それを促進する。まさに為替レートに対する無知そのものじゃないか、私そう思うのです。その点につきまして、私の後輩だから余り強いことを言いたくないけれども、外務省のあれかもしれませんが、私がかつて言ったところの為替レートと関税の関係をそれだからこそもう一遍見直すべきじゃないか。それを逆に促進するとは何だ、サミットのための御機嫌取りかと私は思わざるを得ない。あなたの答えとともに政務次官の答えを聞きたいと思います。
  80. 佐藤光夫

    佐藤(光)政府委員 御趣旨はよく理解できます。おっしゃるとおり、仮にこれから円高がますます強まっていくと申しますか、そういう方向で為替レートが動いていくということであるとしますと、しかも、それが中長期的なトレンドだということだといたしますと、私もそれはそういう前提に立って関税率のあり方を見直さなければいけないのではないかというふうに考える次第でございます。そこがちょっと私の受け取り方が間違っておったのかなという気がいたしますので、そのことを申し上げておきたいと思います。  林産物の問題につきましては、御指摘のとおり、国内事情が大変厳しい状況にあることは私も承知をいたしておるわけでございますけれども、御指摘のとおり、一月初めの安倍・シュルツ会談におきまして、内外の事情を十分に考慮した上で合板等の関税率引き下げを行う、これは今回の法律案の中に含まれているわけではございませんで、来年度以降の問題でございますが、こういう合意がなされた、こういうふうに理解をいたしておる次第でございます。
  81. 熊川次男

    ○熊川政府委員 先生御指摘のとおり、最近における円高背景にはしておりますけれども、まだまだ貿易不均衡に対する諸外国の、特にアメリカ、ECを初めとした国々の風当たりは、市場開放というレッテルあるいはスローガンのもとに、非常に強いものがございます。確かに、この貿易不均衡の是正というものは、我が国の努力のみでは解決できないファクターも非常にあるわけでありますけれども、自由市場、自由貿易を標榜し、さらに自由主義国第二位の我が国に近隣友好の国々の人々が寄せる期待も大きいことを考え合わせるならば、世界経済の活性化のために市場開放に努力をしているという姿を見せるために、我が国の産業の実情も十分考慮しつつ、あわせて市場開放の努力もパラレルにしていくことがスタンスとして重要ではないだろうか、こんなふうに理解しております。
  82. 安倍基雄

    安倍(基)委員 私はもっともっと円が高くなるとは思っておりませんけれども、この状況で相当続く可能性はあるな。もうちょっと安くなるかもしれませんけれども、そうなったときに、私が一番最初にお話ししたように、ドル高による自然関税とも言うべきものが一五%あるというのが逆になってしまっている。でありますから、対外交渉ではもう一遍この辺は見直すべきじゃないか。もうちょっとゆっくり、もうちょっと様子を見てから、例えば木材にしてももうちょっと動きを見てから行ってもいいというくらいの提案があってもいいのであって、たまたまアメリカの選挙とかサミットとかそういうところに焦点を絞るから無理をするわけだ。我々が当時市場開放を議論したときと比べて大分環境変化がある。もうちょっと腰を据えて見直そうじゃないかというのが当然の政府の態度であるべきなわけですよ。それが、たまたましばらく黒字は減らないからやってしまおう、しかもサミットに間に合わせましょう、アメリカの選挙に間に合わせましょう、そういう意識では——もちろん私どもも日本のいろんな産業を関税でもってあくまで防衛しろとは言いません。さっきの木材にしても、革にしても、もともと競争力が弱いじゃないか、こういった円ドル関係のときに、むしろ腰を据えるべきそういうところを促進するとは何だ。これは大蔵省を責めるべきかあるいは外務省を責めるべきか、たまたま外務省は呼ばなかったものですから、もうちょっと時間を見て外務省を呼んで聞いてみてもいいけれども、そういう私が指摘したこと、余りにも円ドル関係が関税よりも大きな動きをしていますよということを指摘したにもかかわらず、逆の場合になっても前に敷いたレールを早く進めなくちゃ格好がつかぬという形で来ている。これは本当に僕は大問題だと思いますよ。今、熊川さんおっしゃったように対外的な問題はあるかもしれないけれども、基礎条件の変化というものをもっと外国に認識させるべきですよ。いかがでありますか。
  83. 熊川次男

    ○熊川政府委員 先生の御指摘の点、やはり私たちも深く認識をしなければならない、非常に示唆に富む点であることを深く肝に銘じつつ、他面においては、先生の御理解を賜っているとおり、我が国に対する市場開放の要請は非常に強いものがあって、私たちの経済の成り立ちあるいは民情あるいは文化、こういうものが異なるにもかかわらずこういう点を非常に強く要請している点で、時にはアンフェアというような言葉でもって要請している点もありますので、あらゆる点を考慮しつつ、ぎりぎりの今回の御提案をさせていただくわけでありますので、御理解を仰ぎたいと思います。
  84. 安倍基雄

    安倍(基)委員 熊川さんを責めるよりも、むしろこれは竹下さんあるいは外務大臣を責めなければいかぬ話だとは思いますが、その先では、やはり中曽根さんの姿勢です。外部に対して余りにいい格好をし過ぎると私は思う。これ以上あなたを責めてもしようがないからやめます。  それと革の問題が出ましたね、既に社会党の上田委員から。実はこれは随分外国から責められるかもしれない。しかし、特にこういった非常に差別をされている方々を、普通のところではなかなか雇ってくれないとか、いろいろなことがあるとするならば、雇用確保という面からも考えなくてはいけないのじゃないか。国の財政援助をするよりは、むしろ働いたところでもってちゃんと生活していけるという非常に社会的な意味で考えなくてはいけない。外から見れば、革の問題について日本は確かに袋だたきにされるような制限をしているかもしれない。しかし、それはそれなりの日本の内部事情がいろいろあるわけです。そういった人々が本当に自分で雇用を確保する、そして生活していくことができるように。人間というのは余計にお金をもらうより自分で働いたものでもって稼ぐというのが大切なわけですから、そういう意味で、私はこの問題につきまして——皆さん、ガットの問題で随分苦労はしたかと思いますよ。しかし、今のこれだけ円ドル関係が変わってきているという状況においてそれなりの配慮もしなければいかぬし、私はその辺ちょっと中曽根さんの政治が外ばかり向いていると思う。  私は何もナショナリズムで言うのではない。もちろんそれは国際的な関係があるのはよく知っています、私もそんな狭いあれではございませんから。ただ、例えば林業にあれだけの補助金を、補助金というか開放についてやるならば、こちらについてもそれなりに十分面倒を見なければいかぬし、頑張るべきところは頑張るべきじゃないか。我が国の国内の事情、特にこういった事情というのはなかなかわかりづらいかもしれませんけれども、そういうところを含めて十分な……。  前向きの施策といたしましては、本当に関税率も高くして余り影響がないようにしたのだというお話をするかもしれませんが、さっきお話ししたように円ドル関係があれだけ変わってくれば、ちょっとこれは関税率を高い率にしましたと自慢はできないわけですね。かつての円ドル関係であれば、それはこれだけの高い税率ですから、いわば一五%の自然税率、私が一五%と言っているのは、東京ラウンド当時におけるドルの値上がりで一五%自然関税がある、だから大丈夫だとおっしゃるかもしれぬが、今度は、当時から比べると逆転した格好になっている。そうなると、六〇%のあれがあってもそんなに保護にならない、競争力を持つことにならないという感じがするのですけれども、その点いかがでございますか。
  85. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 御指摘のとおり大変難しい問題でございまして、国際情勢と国内の産業事情両方をしっかりと踏んまえながらまたが裂けないように対応していかなければならないというところであったろうと思うわけでございます。  先生御承知のとおり、この革の問題につきましては、従来残存輸入制限という形で数量制限をやってまいったわけでございますけれども、既に革につきましてはガットでガットルール違反という判定を下され、また靴につきましても遠からずクロという判定を下されるだろうというような状況にあったわけでございまして、こういう状況を離脱しながら国内産業に重大な悪影響を与えない選択というようなことで、関税割り当て制度を選んだわけでございます。  先ほどもちょっと申し上げたわけでございますけれども、国内産業の状況、さらには先生御指摘のように為替レートの状況等も非常に微妙でございますので、かなり内外でも議論があったわけでございますけれども、現行関税率体系上最高の六〇%というようなレベルを設定をしていただこうとしているわけでございます。もちろん先生御指摘のような為替相場の変動がございますので、当初意図したものよりも現段階におきましては保護効果が薄れているということは事実であろうと思うわけでございますけれども、しかし六〇%というレベルも相当のレベルであることも事実でございます。私どもといたしましては為替レートの動きをさらに慎重に注意深く見守ると同時に、あわせて国内サイドでの競争力対応策、特にハード、ソフト両面にまたがります技術開発の面に意を用いまして、現在生じております問題点をカバーしていくというようなことで対応していきたいと思っている次第でございます。
  86. 安倍基雄

    安倍(基)委員 市場開放の問題は、基本的には強い産業が間接的に弱い産業を押し倒すという形なんですね。これは自由貿易ですからある程度やむを得ないわけですけれども、それはそれなりの配慮と申しますか、弱い産業に対する配慮、それをどう直していくのかという問題もございます。特にこの問題につきましては、雇用の確保とか、いろいろな仕事をちゃんと確保していかなければいかぬ。それに対して、いろいろな社会的な差別があってなかなか思うようにならないという要素も踏まえた上で、非常に広い立場から物を考えなければいかぬと思いますので、この点むしろ竹下大臣にお聞きすべきことかと思いますけれども、代理というか立派な政務次官でございますから、御決意のほどをひとつよろしく。
  87. 熊川次男

    ○熊川政府委員 先生、零細企業の苦労、汗と涙に報いられるような、そういった事情に非常に思いをいたして温かい御意見を述べられまして、私も感銘しております。なるほど製靴業は九人以下の従業員のところが約八割以上、また革靴製造業も七割以上が九人以下の従業員であるというような中小零細企業であります。そのような業界に対し余りしわ寄せがいってはならないなという点は私たちも真剣に考えております。しかしまた、先生の従前の御意見なども反映させていただいて、この技術研究費あるいは公害防止の対策といった方面にも相当の経費を盛らせていただき、いわゆる単産業の体質強化に努めているところでございまして、本年度も三億百万円ほど、昨年度を上回るものを計上させていただいて、鋭意努力を重ねていく所存でございますので、御理解を仰ぎたいと思います。
  88. 安倍基雄

    安倍(基)委員 革はそれぐらいにいたしまして木材ですけれども、この前木材の譲歩をするときに、結局は相当のお金を国が出しましょうという話が出ました。そのときに、補助金法案でもって補助金カットをしているときに、ちょっと関税引き下げるたびにそれをオーバーするような国費を出すのだったら関税をそのままにしておいたらいいじゃないかというような話もしましたけれども、今度のいわば前倒し的な動き、そしてまた円ドル関係の動き、特に最近木材につきましては、東南アジアからの問題も随分あるわけですね。でありますから、その状況を踏まえて果たして本当に競争力があるのかどうか、どうごらんになっているのかお聞きしたいと思います。
  89. 脇元裕嗣

    ○脇元説明員 先生御指摘のように、合板等の関税問題につきましては昨年の四月九日の対外経済対策におきまして引き下げを決定して、七月三十日のアクションプログラムの骨格で時期を六十二年の四月というふうに明確にしたところでございまして、先ほど来お話がありますように、ことしの一月十日、安倍外務大臣とシュルツ国務長官との会合におきましての共同報告において発表したところでございます。今回のこのアクションプログラムの骨格に基づきます木材製品の関税引き下げ措置は、我が国が置かれております国際的立場、また、我が国内の林業及び木材産業の実情を総合的に勘案しまして、当該業界を含む関係者の精いっぱいの努力を背景として決定をされ、世界に公表されたものでございます。  昨年も、先生から御指摘がございまして、国内対策をやり、一方では関税引き下げをするということについてはどうかというお話がありました。実は私ども、その際も申し上げたのでありますが、我が国の林業、木材産業というのは現在でも大変不況の中にあります。ですから、全体として対外経済対策として関税引き下げをしなければならないという事態があるとすれば、これは何はさておいても現在の森林・林業、木材産業の体質を強化することが大前提でございますということを申し上げて、この間来御説明申し上げておりますような千五百億円の対策費を確保したわけであります。御説のように為替レートの変動によりまして輸入価格に影響を与えるということは、そのとおりでございます。  合板におきましては、実は円高になる前からインドネシアからの輸入を中心に輸入量が急増しております。一方では、我が国の合板は原料は九五%が外材でございまして、その外材もまた円高の影響を受けるということで、これはいい影響になるわけでございます。そういうことでありますが、全体的に円高関税引き下げが相まって我が国の合板産業に影響を与えるというのは事実でございますので、千五百億円を効果的に活用することによって我が国の木材産業のかさ上げ、体質強化に努力してまいりたいと思っております。
  90. 安倍基雄

    安倍(基)委員 私は、何もそういったところへ金を出してはいかぬと言うのではなくて、要するに金を出さざるを得ないような状況のもとでは無理に下げなくてもいいじゃないかという話をしたのであります。その点は誤解のないように。  こういったことで、市場開放策というのはもう一遍新しい円ドル関係をもとにして考え直さなければいかぬ、私はそう思いますね。去年約束したから要するにそのまま突っ走らなければいかぬ、そしてその前倒しをするのだというのは、本当に主張すべきことも主張しないことだ。その点、もうちょっと中を見なさいよ。状況の変化を見なさいよ。その上でもう一遍考えなくては困るじゃないかということなんでございまして、ひとつ皆さん、きょう大臣おられませんけれども、熊川次官、この点よく私の意を酌んでいただきたいと思います。  もう時間がございませんけれども、次に移ります。  いわゆる税関職員でございますけれども、私も税関長を一年間やりましたが、麻薬とか密輸入とか、非常に神経をすり減らしておる。しかもまだ、結構難しいことを勉強しないと輸入製品などは区分けできないという要素もございまして、税関業務というのは社会の皮膚みたいなものだ、皮膚呼吸ができなかったらおしまいだよと私はよく言っているのでございます。いろいろ行財政の問題がございますけれども、大事なところにはきちっとお金を使わなければいかぬと私は思っておりますが、その点につきまして次官の御感想を聞きたいと思います。
  91. 熊川次男

    ○熊川政府委員 最近における情報化、特に我が国の国際化、国際国家を目指しての貨物の量の増大、輸出入の増大また旅行者の激増傾向、こういうものを反映し、仕事量の増大はやはり顕著なものがございます。他面、覚せい剤を初めとした、あるいは銃というような反社会的な犯罪を構成するような面も非常にふえつつあるのが現状であります。こういう面を考えたときに、いわゆる水際で征伐するというか対処するのが覚せい剤などには最も効率的なことであることも識者の挙げているとおりでございます。あるいは機械化をしてもまだまだ大変な事情にあることも先生御指摘のとおりでございます。  幸い、税関職員の大変な努力でそれを乗り切ってくださっておりますが、やはりそういった犠牲の上にいつまでもおんぶしているのは許されないことではないかと思いますので、先生の御意思を体して、現状を直視しつつ適切な対処をしていくべきだと認識しております。
  92. 安倍基雄

    安倍(基)委員 まだいろいろ聞きたいことはたくさんあったのでございまして、円高対策とかいろいろございましたけれども、きょうは時間が終わりましたからこれでやめます。
  93. 小泉純一郎

  94. 正森成二

    ○正森委員 今度、皮革、革靴などのTQ新設の代償措置ということでさまざまなことが決まったわけでございますが、私どもが承知しているところでは、この分野では米国との貿易だけを見ますと、金額では輸出が約十億二千万円、輸入が約十億七千万円で、日本側の輸出が少ない。しかも日本で使う原皮の九〇%以上を米国から輸入しており、日本の革靴生産が減れば原皮輸入も減りかねないというような状況だというように言われております。したがって、今度の措置につきましても、革靴のアメリカへの輸出はアメリカからの輸入より少なく、日本の革靴産業はアメリカに何の被害も与えておらないのに、巨額の輸出をしている自動車業界や電機業界の犠牲になるのはどういうわけであるかというような声が出ているのは当然であると言わなければならぬと思いますね。しかも、それに対してアメリカ側の当初要求をほぼ全面的にのんで、その上、一部の報復措置を受け入れるという形で決着し、その代償の大きさは第二次アクションプログラムにも相当する大きなものである。これは通産省が昨年の十二月二十一日に新聞紙上で言っておりますが、そういう状況だ。余りにも譲歩が大き過ぎるのではないかと思いますが、いかがですか。
  95. 佐藤光夫

    佐藤(光)政府委員 御高承のとおり、皮革、革靴の問題は大変長い歴史のある問題です。一昨年の五月にガットにおきまして、ガット違反であるという決定が革についてはなされており、革靴につきましても追って同様な決定がなされるような状況にございました。我が国といたしましてはガット違反というような状況からは速やかに脱却せざるを得ないということでございました。他方、国内におきましては、種々御論議がありますように、関連した産業は中小零細であるという状況がございます。この二つをあわせますと、今御提案申し上げておりますように、IQから関税割り当て制度、TQ制度に移行するというのが唯一の解決方法であったのだろうというふうに思うわけでございます。それ以上のドラスチックな自由化というのは国内的に非常に厳しい状況だったろうと言わざるを得ないと思います。  それからさらに、現在の貿易摩擦の状況等を前提にいたしますと、この問題を世界貿易が縮小均衡に陥るような方向で解決するわけにはいかないという状況にあったことも事実であろうかと思います。したがいまして、アメリカ側が大変ドラスチックな報復をするという形ではなしに、私どもができる限りの代償を出してこの問題を解決するということが要求されておったような状況だと理解をいたしておりますので、先生御指摘のように非常に過大な代償を提供したのではないかという見方もあろうかと思いますが、私どもが今申し上げましたような背景並びに経緯に立ちますと、こういう格好で本問題を解決せざるを得なかった、かように考えている次第でございます。
  96. 正森成二

    ○正森委員 アメリカ側は、アメリカ側の要求が通れば皮革や革靴関係で二億七千七百万ドルぐらいは輸出がふえるはずだ、新聞などによりますとこれは日本側の見込んだ三倍以上だというのですね。それで、強硬に日本の一方的譲歩を求めた。その態度について十二月二十二日の読売新聞を見ますと、通産省の幹部が最近の教育界をもじって「〃いじめ〃とは、こういうものか」というように嘆いた、こう言われているのですね。  そういうことをやられて、それでほとんどアメリカの言いなりになっておる。それはなぜかと言えば、二月三日の朝日新聞によると、「十二月初めまでの日米交渉は、まったくの物別れに終わっていた。そこに官邸周辺から伝わってきたのは、皮革交渉の決着にかける中曽根首相の強い意向だった。」「若杉審議官は「方向が決まった以上、米国の要求に近づくしかなかった。皮革交渉だけとらえれば、代償を出し過ぎたといわれても仕方がないが、」」こういうぐあいに書いてある。つまり、みすみす不当であると思いながら、中曽根総理のツルの一声で不当であるものを不当と言えないで譲歩する、こういう態度をとったのじゃないですか。
  97. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 先生御指摘の二億七千七百万ドルという数字は、日本が皮革及び革靴を完全に自由化した場合日本にアメリカからどれくらいの輸出が行われるか、もしそれが実現されない場合いかなる対応をアメリカ側として考えるべきかというプロセスで、交渉のある過程で出てきた数字でございます。  ただ、この数字につきましては大変微妙なところがたくさんございます。例えば、日本のマーケットの大きさをどういうぐあいに見るべきかというようなところは、また私どもが使いました日本の工業センサスとアメリカ側が使っておりました日本の原皮消費量からの積み上げ推算というあたりにかなりのギャップがあったことも事実でございます。ある程度水かけ論みたいなところがございます。また、マーケットは、あけました場合に果たしてどれくらいのシェアをとれるかということになりますと、例えば類似の韓国等のマーケットでアメリカがどれくらいのシェアをとっているかというようなところから推計するわけでございまして、ある程度数字の見方につきまして開きが出てくるというのはやむを得ないところではなかったかと思っております。  細部につきましては交渉事でございますのであれでございますが、最終プロセスでは、アメリカ側もかなり自分の数字につきましては、反省というとちょっとオーバーかもしれませんが、フレキシビリティーを持つようになっていたのも事実でございます。  私どもといたしましては、そういう状況下で、同時に先生御承知のとおり米国側が通商法三百一条というものを積極的に活用するという新しい政策を導入をいたしまして、この問題につきましてこの政策適用の第一号にするというような構えで、かなり広範な、約四十品目、ほとんど中小企業製品でございますけれども、交渉が妥結しない場合にはこういう分野に対しまして報復として関税引き上げを行うというような方針を打ち出しておりまして、そういうところまで問題が波及していくというようなことになりますと、これは大変大きな問題になるというぐあいに判断をいたしました。  確かに報復政策の第一号が日本に適用されるということは政治的にも大きな問題という御判断があったかもしれませんが、四十業種はほとんど私どもの所管業種でございまして、これらの分野に報復措置が講じられるということは、経済的、産業的に見ましてもゆゆしき大事でございましたので、相当苦しい分野があったのも事実でございますけれども、やはり代償を提供して拡大均衡の方向で解決するというような選択をせざるを得なかったわけでございまして、どうか御賢察を賜りたいと思うわけでございます。
  98. 正森成二

    ○正森委員 しかも、日本側がこういう代償を提供しているのに代償がなお不足だということで、皮革、革靴に一律四〇%の対日報復関税を上乗せする。現行が九%ですから合わせて四九%で、対象品目の日本からの対米輸出は事実上完全にストップするという評価さえあるありさまであります。  一方、日本はどうかと言えば、TQで六〇%の税率をかけるのは第一次の枠が超過後ですね。ところがアメリカは直ちに、最初から四九%の関税をかけるということで、本体よりも報復の方がはるかに大規模であるというように言っても言い過ぎではないと言われるくらいのことであります。  先ほど同僚委員からも質問がありましたように、中小企業が圧倒的多数を占める皮革産業、しかも我が国でさまざまの歴史的な経緯を抱えている産業であります。そこにTQ新設趣旨が生きるかどうかというのは、結局一次の税率枠の設定いかんにかかっておる。枠がどんどん拡大するということであれば、これだけ過大な代償を払い、かつ報復まで甘受する意味がなくなると言っても言い過ぎではないと思いますが、枠拡大についてどういう対応をされますか、お伺いしたいと思います。
  99. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 二点お尋ねをいただいたわけでございます。  第一点につきましては、私どもも非常に残念だと思っております。米国側の事情を推察をいたしますと、一つは、従来の数量制限がガットのルールに違反しているというような、いわば国際的な判断基準というものがあったのだろうなと思います。  それからもう一つは、先生御承知のとおりでございますが、米国でも履物の輸入が急増いたしまして、行政府からは何らかの輸入制限措置を講ずるべきであるという意見具申を行いましたのに対しまして、レーガン大統領が、まあよくわかりませんけれども、御自身のお父上が靴の小売業をやっておられたというような経験等にかんがみましてこれを拒否されたというようなことで、米国内の示しということかもしれませんけれども、国際的に靴の貿易について厳しい姿勢をとらざるを得なかったという背景がいろいろと働いていたのではなかろうかと思います。  基本的には、代償の提供ということでバランスがとれたと思っておるわけでございますけれども、いわば米国の内部事情としまして、いきり立つ靴業界に対するある程度の配慮があったのではないかなというぐあいに思うわけでございます。  しかし、今回、米国が講じました措置につきまして、今後米国側がガットの場でどういう手続をとっていくか、またこれがガットのルールに照らしましてどういうぐあいに評価されるべきか、まだまだ検討すべき課題は多いわけでございます。  私どもといたしましても、この問題につきましては、関係省庁とよく協議をいたしまして的確な対応をしていかなければならないと思います。やはり私ども生産原局の立場で申し上げますと、いつの日か、何とかこの問題を解消したいという気持ちは非常に強く持っている次第でございます。  それから、第二点の一次枠の運用でございますが、一つは市場アクセスの改善という国際的な要請、もう一つはいわゆる同和対策地域の基幹産業と言ってもいいような産業分野の将来の地位を確保するという、この両方をにらみながら、いわばまた裂きにならないように対応していくというのが基本であろうと思っております。その二つの動きをよくよく見据えながら、年度ごとに関税率審議会割当部会で広範な御意見を承りながら、関係政令におきまして適切な数量を定めていくということが基本的な対応の方針でございますので、御理解を賜ればと思います。
  100. 正森成二

    ○正森委員 政務次官がお控えでございますので伺いたいと思うのですけれども、貿易不均衡の問題を考える場合には、国会でも国益の点は十分に主張しなければいけないと思うのです。  例えば、ことしの三月十四日の毎日新聞に出ておりますが、アメリカの歳出小委員会でラドマン上院議員が日本のことを「彼らを正気に返らせるためにはバットでみけんにガーンと一発食わせねばならないかも知れない。進んでバットを振り上げるつもりだ」と言うております。一国に対して「彼らを正気に返らせるためにはバットでみけんにガーンと一発食わせなければならない」ということを国会でしゃべっている。それに対して我が国会が言うべきことを言わないということになれば、アメリカに幾らでも不当な要求をされるということになってくると思うのです。  これは私が言っているだけではなく、アメリカの識者も同じようなことを言っているのです。例えば、アメリカのスプリンケル大統領経済諮問委員会委員長は「米国貿易問題などない。あるのは議会の認識の問題だけだ。」「輸入急増、貿易赤字増大にもかかわらず米国の鉱工業生産は増加を続けている」「米国は脱工業化の道を歩んではいない」「議会は斜陽産業からの苦情ばかりに耳を傾けているので米国経済について誤ったイメージを抱いている」と言っているのです。つまり、アメリカ議会の言い分が必ずしも正当でないということは、アメリカの権威ある委員会でも認めているのです。  どこの議会の議員でも票が欲しいから、自分の選挙区の斜陽産業から言われたら、彼らの頭をガーンとバットで殴ってやらなければいかぬということを声を大にして言う。そうすると、その声が圧迫になっていろいろ無理難題を言う。それは、通産省の役人がいじめのようなものだと言うているとおりであります。  さらにもう一つ文章を引用いたしますと、こういう文章もあります。これはアメリカのマサチューセッツ工科大学のドーンブッシュ教授が言っていることで、昨年十月十八日の日本経済新聞に載っております。その中で同教授はこう言っているのですね。「日本米国の政策に毅然とした態度をとらないのもよくない。アル中の亭主を持った女房が、亭主の言いなりに酒を買ってきたらどうなるか。日本が正しいと思ったことは自己主張し、アル中の亭主を更生させるように米国をめざめさせなければならない。」私は、何も日本が女房でアメリカが亭主だなどとは夢にも思っておりませんが、アメリカの有力な教授がアル中の亭主の言いなりになっておってはいかぬと言って、自分の国をアル中の亭主に例えて、その言い分がいかにめちゃくちゃであるかということを言っていることは、我々として十分に耳に置いておかなければならないことだと思うのです。ですから、自民党が多数である現在、この法律が国会を通るのはやむを得ない。しかし、日本の国会議員はアメリカの議員よりは品がいいからバットでガーンとどつけというようなことは私は言いませんが、アメリカの識者もこういうことを言っているということだけは国会で議事録に残して、日本の国会議員も言いなりになっておるのではないぞということを記録にとどめておくことが国益のためにもなると思って私はあえて紹介したわけであります。  ほかにもまだいっぱいあるのです。しかし、時間が参りましたので、次官から一言政治家としての御答弁をお願いして、私の質問を終わります。
  101. 熊川次男

    ○熊川政府委員 民主主義を標榜するアメリカの議会において、あるいは一部の特異な議員もおるかもしれませんが、バットでたたくと言うのは、いじめに通ずることであるので余りよくないわけでありますが、反面において討論の国であり、個人の尊厳をたっとぶ、いわば民主主義の典型的な一つの国と見ていいのだろうと思います。そういう国であることは先生も十分御承知でございましょうから、ごく一部の例外的な議員というふうに理解してもいいのじゃないかと思います。例外にしてもそういう議員がいたからといって、我が国の国会議員でそれをまともに受ける議員はほとんどおらないのじゃないか、与野党を通じて見識の高い議員が多いと思います。
  102. 小泉純一郎

    小泉委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  103. 小泉純一郎

    小泉委員長 速記を起こして。  これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  104. 小泉純一郎

    小泉委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  105. 小泉純一郎

    小泉委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  106. 小泉純一郎

    小泉委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、中村正三郎君外三名から、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・国民連合の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨説明を求めます。上田卓三君。
  107. 上田卓三

    上田(卓)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、案文を朗読いたします。     関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、左記事項について配慮すべきである。  一 関税率の引下げに当たっては、国内産業への影響を十分考慮し、特に農林水産業及び中小企業の体質改善を併せ考えつつ、国民経済的観点に立って国民生活の安定に寄与するよう努めること。  一 輸入数量制限制度の廃止に伴う皮革及び革靴産業の困難な実情を考慮し、今後ともこれらの産業の体質の一層の改善に努めるとともに、関税割当制度の適正な運用の確保に努めること。  一 世界経済に占める我が国立場を踏まえ、国際的協調特に開発途上国への協力、新しい多角的貿易交渉への積極的取組み等を通じ、世界経済の活性化に引き続き貢献し得るよう努めること。  一 輸出入貿易の伸展に伴う税関業務量の増大に加え、覚せい剤、銃砲等の取締りの一層の強化が社会的要請となっていることにかんがみ、業務処理体制等の一層の見直しを行うことにより、税関業務の効率的、重点的運用に努め、税関職員の特殊な職務を考慮して要員の確保等その処遇の改善に努めること。 以上であります。  よろしく御賛成いただきますようお願い申し上げます。
  108. 小泉純一郎

    小泉委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  109. 小泉純一郎

    小泉委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。竹下大蔵大臣
  110. 竹下登

    竹下国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨に沿って配意してまいりたいと存じます。ありがとうございました。     —————————————
  111. 小泉純一郎

    小泉委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  112. 小泉純一郎

    小泉委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  113. 小泉純一郎

    小泉委員長 次回は、明二十五日火曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時五分散会      ————◇—————