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1986-03-07 第104回国会 衆議院 大蔵委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年三月七日(金曜日)     午後零時一分開議 出席委員   委員長 小泉純一郎君    理事 笹山 登生君 理事 中西 啓介君    理事 中村正三郎君 理事 堀之内久男君    理事 上田 卓三君 理事 野口 幸一君    理事 坂口  力君 理事 米沢  隆君       越智 伊平君    加藤 六月君       金子原二郎君    自見庄三郎君       田中 秀征君    高鳥  修君       中川 昭一君    野呂 昭彦君       東   力君    藤井 勝志君       宮下 創平君    村上 茂利君       山崎武三郎君    山本 幸雄君       伊藤  茂君    伊藤 忠治君       兒玉 末男君    沢田  広君       戸田 菊雄君    中村 正男君       堀  昌雄君    柴田  弘君       古川 雅司君    矢追 秀彦君       薮仲 義彦君    安倍 基雄君       玉置 一弥君    正森 成二君       簑輪 幸代君  出席国務大臣        大 蔵 大 臣  竹下  登君  出席政府委員        大蔵政務次官   熊川 次男君        大蔵大臣官房審        議官       門田  實君        大蔵省主計局次        長        小粥 正巳君        大蔵省主税局長  水野  勝君        大蔵省理財局長  窪田  弘君        大蔵省理財局次        長        足立 和基君        大蔵省理財局た        ばこ塩事業審議        官        松原 幹夫君        大蔵省銀行局長  吉田 正輝君        国税庁次長    塚越 則男君  委員外出席者        経済企画庁調整        局産業経済課長  黒川 雄爾君        外務大臣官房審        議官       太田  博君        文部省高等教育        局学生課長    佐藤 孝安君        通商産業省産業        政策局産業資金        課長       麻生  渡君        中小企業庁計画        部金融課長    土居 征夫君        中小企業庁計画        部振興課長    岩田 満泰君        労働省婦人局婦        人労働課長    藤井紀代子君        建設省道路局有        料道路課長    藤井 治芳君        建設省住宅局民        間住宅課長    三井 康壽君        参  考  人        (日本たばこ産        業株式会社社        長)       長岡  實君        参  考  人        (日本たばこ産        業株式会社常務        取締役)     岡島 和男君        大蔵委員会調査        室長       矢島錦一郎君     ――――――――――――― 委員の異動 三月七日  辞任          補欠選任   大島 理森君      野呂 昭彦君 同日  辞任          補欠選任   野呂 昭彦君      大鳥 理森君     ――――――――――――― 三月七日  自動車関係諸税増税反対等に関する請願(亀  岡高夫紹介)(第九六四号)  大型間接税導入反対等に関する請願草野威君  紹介)(第九八四号)  同(柴田弘紹介)(第九八五号)  国民本位税制改革に関する請願田並胤明君  紹介)(第九八六号)  同(浜西鉄雄紹介)(第九八七号)  同(松前仰君紹介)(第一〇二八号)  同(高沢寅男紹介)(第一〇七五号)  同(横山利秋紹介)(第一〇七六号)  消費生活協同組合個人年金共済事業に係る税  制上の改善に関する請願安井吉典紹介)(  第九八八号)  同(河上民雄紹介)(第一〇二九号)  同(後藤茂紹介)(第一〇三〇号)  同(高沢寅男紹介)(第一〇七七号)  同(上野建一紹介)(第一一二八号)  税制改革減税に関する請願外五件(福岡康夫  君紹介)(第九八九号)  同外五件(二見伸明紹介)(第九九〇号)  同(小沢貞孝紹介)(第一〇三一号)  同(遠藤和良紹介)(第一〇七八号)  同(小川新一郎紹介)(第一〇七九号)  同(木内良明紹介)(第一〇八〇号)  同(平石磨作太郎紹介)(第一〇八一号)  同(山田英介紹介)(第一〇八二号)  同外三件(池田克也紹介)(第一一二九号)  大型間接税導入反対等に関する請願外一件  (浜西鉄雄紹介)(第九九一号)  所得税減税等に関する請願小沢貞孝紹介)  (第一〇二一号)  同(河村勝紹介)(第一〇二二号)  同(中野寛成紹介)(第一〇二三号)  同(中村正雄紹介)(第一〇二四号)  同(西田八郎紹介)(第一〇二五号)  同(西村章三紹介)(第一〇二六号)  同(網岡雄紹介)(第一○八三号)  同(井上一成紹介)(第一〇八四号)  同(伊藤忠治紹介)(第一〇八五号)  同(石橋政嗣君紹介)(第一〇八六号)  同(上田卓三紹介)(第一〇八七号)  同(上原康助紹介)(第一〇八八号)  同(大原亨紹介)(第一〇八九号)  同(金子みつ紹介)(第一〇九〇号)  同(上西和郎紹介)(第一〇九一号)  同(川崎寛治紹介)(第一〇九二号)  同(川俣健二郎紹介)(第一〇九三号)  同(河上民雄紹介)(第一〇九四号)  同(兒玉末男紹介)(第一〇九五号)  同(佐藤観樹紹介)(第一〇九六号)  同(渋沢利久紹介)(第一〇九七号)  同(鈴木強紹介)(第一〇九八号)  同(関晴正紹介)(第一〇九九号)  同(多賀谷眞稔紹介)(第一一〇〇号)  同(高沢寅男紹介)(第一一〇一号)  同(竹内猛紹介)(第一一〇二号)  同(野口幸一紹介)(第一一〇三号)  同(馬場昇紹介)(第一一〇四号)  同(浜西鉄雄紹介)(第一一〇五号)  同(日野市朗紹介)(第一一〇六号)  同(細谷治嘉紹介)(第一一〇七号)  同(山中末治紹介)(第一一〇八号)  同(横江金夫紹介)(第一一〇九号)  同(渡部行雄紹介)(第一一一〇号)  同(伊藤茂紹介)(第一一三〇号)  同(岩垂寿喜男紹介)(第一一三一号)  同(上田哲紹介)(第一一三二号)  同(上坂昇紹介)(第一一三三号)  同(左近正男紹介)(第一一三四号)  同(佐藤誼紹介)(第一一三五号)  同(島田琢郎紹介)(第一一三六号)  同(関山信之紹介)(第一一三七号)  同(辻一彦紹介)(第一一三八号)  同(中村重光紹介)(第一一三九号)  同(藤田高敏紹介)(第一一四〇号)  同(堀昌雄雄紹介)(第一一四一号)  同(村山喜一紹介)(第一一四二号)  同(元信堯君紹介)(第一一四三号)  同(森中守義紹介)(第一一四四号)  大型間接税導入反対及び大幅減税等に関する  請願小沢貞孝紹介)(第一〇二七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第七号)      ――――◇―――――
  2. 小泉純一郎

    小泉委員長 これより会議を開きます。  内閣提出租税特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため、本日、参考人として日本たばこ産業株式会社社長長岡實君及び日本たばこ産業株式会社常務取締役岡島和男君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小泉純一郎

    小泉委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――
  4. 小泉純一郎

    小泉委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊藤忠治君。
  5. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 まず私は、ODA政府開発援助問題から少し質問をさせていただきたいと思います。  外務省の方にお伺いをしたいと思うのですが、近年、政府ODAに対する態度、姿勢というのは非常に積極的に取り組まれてきておりまして、六十一年度予算を見ましても、経済協力費が六千二百三十二億円、対前年度比で六・三%の大幅な伸び率となっているわけでありまして、私たちとしてはその積極的な姿勢を非常に評価をしている立場でございます。こういうことはいいことでございまして、軍備増強路線を歩むということではなくて、平和外交路線をさらに実のあるものにしていくためにも、物心両面にわたる開発援助、それの一つのあかしがODAの充実ということになるのではないか、このように考えるわけであります。  今日まで、予算にも示されますとおり、政府当局としてはODAの倍増五カ年計画、こういうものを立てられまして、その拡充に取り組んでこられているわけですが、国連総会の一九八〇年の決議にもありますとおり、GNP比〇・七%の国際目標早期達成日本政府としてもやっていこうという基本目標に基づいて取り組まれていくべきであろうと考えます。まず第一点、この点について外務省の見解をお伺いをしたいと思います。
  6. 太田博

    太田説明員 お答えいたします。  ただいま先生指摘のとおり、政府といたしましては、政府開発援助ODA我が国国際社会において果たすべき重要な責務であるという強い認識を持っておりまして、この認識のもとにこれまでODAの着実な拡充に努めてまいりましたけれども、今後とも引き続きODAの着実な拡充、これを図るべく、昨年の九月、本年を初年度といたしますODAの第三次中期目標、これを設定いたしまして、この目標のもとに今後ともODAの量及び質両面拡充に努めてまいり、我が国としての国際的な責務を果たすとともに、諸外国からの我が国に対する期待にこたえていく所存でございます。  なお、ただいま先生の御指摘ODAの対GNP比でございますけれども、これにつきましても、ODAの量を今後とも拡充していくという過程の中で対処してまいりたいというふうに考えております。
  7. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 今お答えをいただきましたとおり、積極的な姿勢で今後も取り組んでいかれるということなんでありまして、ぜひともひとつそういう立場でお願いを申し上げたいと思うのですが、なるほどおっしゃるとおり、今OECDのDAC加盟国の中では、金額的にいきますとアメリカに次いで日本が二番目になっているわけです。伸び率で見ましてもこれはアメリカをはるかに抜きまして、一九七七年から日本としても急速に積極策を実らしてきているわけですが、指数で見ましてもこれはダントツ日本がトップになっているわけです。そのことを私は否定するのではなくて、むしろそういう立場でこれからも積極的な取り組みをお願いしたいということなんですが、問題は、政府間のこういう援助というものはどうしたって大型プロジェクトになると思うのです。したがいまして、相手国にしてみれば政府次元プロジェクト開発にしましても都市型の開発というものにこれらの資金というのがどうしても使われていく、こういうことではなかろうかと思うわけでありまして、そのことが相手国開発援助に多大な影響を与える、開発に対して効果をもたらすという点では私たち理解ができるわけです。しかし、この政府間レベルのそういう援助だけでは、地方開発にどうこれが行き渡っていくのかという点ではなかなか思うように進まない、言いかえれば、政府間レベル開発援助といいますのはやはり一定の限界があるのではなかろうか、このように私は考えるわけです。  何が言いたいかといいますと、例えば都市開発なり相手国政府レベルプロジェクトODA資金が使われて開発をされていくということは、それはそれなりに大きな意味を持つのでしょうけれども、言うならば地方での、つまり社会的な不公平が依然としてある未開発のそういう生活レベルの中でどのように底上げを図っていくかということ、しみ渡るような実際の実効ある開発援助になっているかといいますと、そこまでは行き渡らないのではないか、実際に政府間レベルでは難しいのじゃなかろうか、このように考えるわけですが、その点についてどうでございましょうか。
  8. 太田博

    太田説明員 お答えいたします。  我が国開発途上国に対して援助を行う場合には、我が国の行います援助が、被援助国開発途上国開発のための真のニーズにこたえるようにとの観点から、十分な検討を行って実施しているところでございまして、特に、我が国の場合は、基本的には開発途上国要請に応じて援助を行うということでございます。その際に、ただいま御指摘がございましたけれども、単に都市中心あるいは大型プロジェクト中心にならないように、相手国要請を踏まえまして、例えば農業面におきまして地方農村開発あるいはかんがい、そういった分野における援助も十分行き渡るように配慮をしながら援助拡充に努めているつもりでございます。もちろん、さらにその努力を必要とするような分野あるいは国があるかとも思いますが、今後とも相手国要請を踏まえつつ、我が国援助が被援助国都市のみならず地方開発、工業のみならず農業あるいは農村地帯開発にも真に役立つようにという観点から、引き続き努力をしていきたいというふうに考えております。
  9. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 おっしゃる考え方、理解できるわけでして、政府レベル開発援助でも、末梢神経にまで行き渡っていくような援助の方法というものにこれからも最大限努力をいただきたいと思いますが、例えばフィリピンの場合、マルコスからアキノ政権にかわりました。この力はフィリピンの人民の勝利だ、こういうふうに言われているわけですが、どなたかの言じゃございませんが、毛針に引っかかっていた魚の力を余り軽く見ることはできないと思うのですね。  そういうふうに今政権がかわったわけですが、フィリピン日本からのODA、今日まで実に大変な金額がつぎ込まれているわけです。六十年度までの累積で四千六百六十七億円、これは有償資金協力ということになっているわけでして、無償資金協力でも六十年度までの累計で五百四十六億円に上っているわけです。技術協力では、合計をしますと三百八十一億円ですね。有償は比較的大きなプロジェクトなんでして、無償の場合にはいろいろな建物に対してこの資金が活用されているという内訳になっているわけですが、日本の今日までのフィリピンに対する援助額といいますのはダントツなんですね。これは日本が四五%のシェアを占めていまして、アメリカが一七・七%、オーストラリアが一五・七%というように、日本開発援助が最も多く投入をされているわけです。したがって、言うなれば多くの税金をつぎ込んでいるわけですから、それがどこかに消えてしまうというようなことになってはこれは大変なことでございまして、当然こういう援助資金というのはきちっと現地で使われている、その辺のチェックあるいはフォロー策、こういうものがそれぞれのプロジェクトごとにきちっとやられているのかどうか、この点についてお伺いをしたいと思います。
  10. 太田博

    太田説明員 お答えいたします。  我が国は、開発途上国に対して援助を行うに際しまして、その援助が適正かつ効果的、効率的に使われるということを確保するために、種々措置を講じております。今、先生指摘フィリピンに対する援助についても同様でございます。  その種々措置の主なものといたしましては、援助供与の決定に際しまして、いろいろな資料を入手いたしまして、事前調査団派遣する等によりまして、対象として取り上げるべき案件が真に的確なものかどうか、それからまた、実施可能かどうかについてまず十分事前検討を行います。     〔委員長退席堀之内委員長代理着席〕  それから、交換公文を結ぶわけでございますけれども、その中におきまして、相手国援助資金適正使用、それから施設、機材等の適正な使用、維持、これを義務づけるということをやっております。  さらに、公正な入札を確保いたしますために、入札ガイドラインを設定いたしまして、これに沿った手続がとられるような措置を講じております。  それから、コスト面で妥当かどうかということも含めまして、契約を審査して事前に認証するということをいたしております。  それからプロジェクトが、案件が実施されました後、事後でございますけれども、それが真に目的に沿った使用がされているかどうか、効果を上げているかどうかという点を含めまして評価を行っておりますけれども、これを一層充実するようにしているということでございます。  先ほど申しましたようにフィリピンに対しましても、従来よりこのような諸措置を通じまして、我が国は、重要な国であるフィリピンに対する援助が適切かつ効果的、効率的に実施されることを確保するよう努めてきたところでございまして、我が国フィリピンに対する援助が、フィリピン経済社会開発、民生の安定、それからフィリピン国民の福祉の向上、こういうことのためという所期の目的を果たしてきたものというふうに考えております。
  11. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 今の説明で、調査事前にやってきちっとその辺をやるというわけですが、調査団派遣が延べ三千六百二十人という数字で上がっておりますけれども、これは、おっしゃるようなそういう調査にこれまでずっと派遣をされてきた累積人員の数というふうに理解をしてよろしゅうございますか。  さらにもう一点、この無償資金協力の中で、食糧増産援助という項目がございます。この資金というのは、ほかの援助項目と比べまして非常に多いのです。大体各年度二十億ぐらい出ていますね。この食糧増産援助という表現なんですが、中身は何を言っているのか、その辺を含めて説明をいただきたい。  さらに三点目としては、機材供与という項目で、累積供与額が七十一億ですね、そういう数字になっているわけですが、この中身はどういう問題なんでしょうか、お伺いいたします。
  12. 太田博

    太田説明員 今、先生質問の三点についてお答え申し上げます。  まず最初の調査の件数でございますが、これは御指摘のとおり、円借款あるいは無償資金協力中心にいたしましてプロジェクトを実施する前にいろいろな段階派遣する調査団というのが主でございます。なおそのほかに、事前に例えば一定の地域について全体的にどういう開発可能性があるかということを調査する調査、あるいは特定のプロジェクトについてそれがフィージブルであるかどうかということを調査するフィージビリティー調査、あわせまして開発調査と言っておりますけれども、そういう開発調査というのもこの数字の中に含まれております。  それから、第二の御質問食糧増産援助でございますが、これは被援助国、この場合ですとフィリピンでございますが、フィリピン食糧増産に資するための援助ということで、中身といたしましては、相手国要請によりますが、肥料、農薬、農機具、これが食糧増産援助中身ということになっております。  第三番目に御質問機材供与でございますが、これは技術協力一環といたしまして我が国専門家派遣して、相手国に対して医療でありますとかその他いろいろな面において技術協力をする場合に必要な機材供与するということでございます。したがいまして、技術協力一環として機材供与という項目がございまして、その集計について御質問があったというふうに考えております。
  13. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 今の説明を聞いておりますと、そのようにきちっとやられている、相手国の当事者が入札する場合でもガイドラインを示してきちっとやっている、事前開発調査にもこちらから調査団派遣してやっている、相手を信用しているから間違いはない、こういう立場でのお話であったように思います。これは、大統領がかわりましたけれども、アキノ大統領の時代に政権が移り変わっても、その辺は相手を信頼をしてきちっとやっているので間違いはない、こういうふうに理解をしていいのでしょうか。
  14. 太田博

    太田説明員 お答えをいたします。  先ほど御説明いたしました援助の適正かつ効果的、効率的な実施を確保するための諸措置というのは、我が国援助供与するに際しまして、相手国あるいは政権のいかんを問わずそういう措置を講ずるということになっておりまして、今後も引き続き先ほど御説明申しましたような諸措置をとることによりまして、我が国援助が公正に使われ、かつ効果的、効率的に使用されることを確保してまいりたいというふうに考えております。
  15. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 政権がかわっても不安はない、これまでのとおり実効を上げるべく開発援助というのは継続してやられていく、こういうことなんですね。
  16. 太田博

    太田説明員 お答えいたします。  フィリピンの新アキノ政権に対する経済援助につきましては、外務大臣等が既に国会で御説明しておりますように、基本的にはアキノ政権がどういうふうな要請日本にしてまいるか、それによりましてそれにこたえる形で援助を行うことになりますけれども、今までどおり、あるいは必要な場合には今まで以上の援助フィリピンに対して行うというのが基本的な姿勢でございます。
  17. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 今回の政権交代に関連をしまして、この開発援助に不安があってはいけないというようなことで、新たに対策として手を打たれたことがあるのかどうか、あるいは現地の方から、一連の政変の中で言うならばこういう不安な材料もあるとかいうふうな報告が現実にあったのかなかったのか、その辺を含めてお答えいただきたいと思うのです。
  18. 太田博

    太田説明員 お答えいたします。  現在までのところ、アキノ政権といたしまして、フィリピンが御高承のとおり経済的に大変困難な局面にあるということを踏まえまして、日本からもぜひ援助を欲しいという、ごく一般的な形でございますけれども、希望の表明が行われております。これに対しまして、我が方といたしましては、これから具体的にフィリピン我が国からの援助にどういうぐあいに期待しているか等を検討するために、もしフィリピン政府が希望するならば、経済協力について協議をする協議ミッション派遣する用意があるという意思の表明フィリピン政府にいたしておりまして、これからフィリピン政府の具体的な要望に応じましてそれにこたえていきたい、そういうふうに考えております。
  19. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 今日まで大変な金額を投入してきているわけでして、それぞれのプロジェクトがずっと今建設の過程にあるというものも随分ありますね。これはどの辺まで進んできている、これは何年ごろには完成をするとか、これにはこういう問題があるということは恐らく把握をされていると思うのです。その辺のことをできるだけ詳しく資料としてお出しをいただきたいと思うのですが、どうでしょう。
  20. 太田博

    太田説明員 お答えいたします。  ただいま先生指摘のとおり、我が国フィリピンに対してこれまで行ってまいりました援助はいろいろございますけれども、それぞれのプロジェクトでいろいろな段階プロジェクトがございます。どういう段階プロジェクトがどのくらいあるかという点につきまして、できるだけ早く資料を整えまして御提出いたしたいと思います。
  21. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 次に、民間団体、NGOの問題について質問したいと思うのです。  政府間援助というのは政府としてもきちっとやられていて、規模も非常にふくらんでということなんですが、問題は、民間団体レベル開発協力というのでしょうか、そういう点については、残念ながら日本の場合には民間団体が少のうございまして、国際的に比較をしましても――順位で言うのはあれかと思うのですが、例えばアメリカなんかは四百二十九団体もあります。それからカナダが百五十団体ですか、その次がフランス、西ドイツとこういきまして、民間団体数字で上がっているので、これはOECDの発表なんですが、日本の場合には三十五なんですよ。しかも、実際の活動状況からいきますとなかなか思うように機能していない。しりから数えて三番目というようなことなんですね。  私がこのことを強調しますのは、先ほども申し上げておりますとおり、政府間レベル開発援助というのは今日まで積極的にやられてきていますけれども、社会的な不平等あるいは貧困、こういう状態を地域や生活次元から開発をすることによってレベルアップを図っていかなければ、大型プロジェクト中心開発援助がやられますと、その国にとってみますと新たな格差というものがむしろ広がっていくのじゃなかろうか、こういうふうに私は思うわけです。そういう観点からして、このNGOの果たす役割というのは非常に評価をされておりますし、そのことがまた待たれているのではなかろうか。海外青年協力隊の関係もそういう次元で大きな役割を果たしてきているわけですから、そういう点から考えまして、もっともっと政府としてもNGOを育てていく、そういう積極的な施策、姿勢というものを持っていただきたい、このように私は考えるわけです。  それじゃそういう団体をつくりなさい、つくりなさいと言うだけでは、これはなかなか思うようにいかないわけでありまして、具体的に民間レベルでの開発協力基金というものを設置をしまして、その組織に対してODA予算の言うならば一%くらいでもそこに投入をしていって、その基金を通じてNGOとしての活動がさらに弾みがついていくというふうにも思うわけでして、そういうことを私としては提言をしたいわけでありますが、その点についてのお考えをいただきたいと思います。
  22. 太田博

    太田説明員 お答えいたします。  ただいま先生指摘のとおり、我が国経済協力をより効果的に行っていくために、政府開発援助のみならず、援助活動に従事しておりますいろいろなNGOの活動を一層活性化、活発化していくということが望ましいというふうに考えております。このような観点に立ちまして、政府といたしましては、援助活動に従事しているNGOに対します補助金の交付、それからNGOとの連絡体制の強化、それから個別のNGO援助活動への支援などをこれまでも行ってきておりますけれども、今後ともNGOの活動の自主性維持の観点を踏まえつつ適切な協力を行っていきたいというふうに考えております。
  23. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 大蔵大臣にお伺いしたいのですが、ODAからNGOに援助している額の比較がございます。トップがアメリカの一千三百二十です。それから次がスイス、ニュージーランド、フィンランド、ドイツというふうにずっときまして、日本はしりから二番目、ブービーです。イタリアがブービーメーカー、こうなんですね。ODA金額としては非常に多いんです。多いんですが、民間団体に対する援助額日本は極めて低位にあるわけです。政府レベル開発援助民間団体レベル開発協力というものが同時並行的にやられていって初めて開発援助がトータルとして評価もできますし、相手国にしてもそういうことを望んでいるのではないか、私はこのように思うわけです。  したがって、私の方から先ほども申し述べましたとおり、この民間レベルの開発協力基金、名前はともかくとしまして、そういう基軸になるような、拠点になるような基金をつくる、そこにODA予算から一定額を、私は一%という表現をしているわけですが、そちらに拠出をする、そして民間団体の活動がそれを拠点にしながらこれから広がっていく、こういう予算の言うならば積極的な活用について大臣はどのようにお考えか、ひとつ積極的なお立場での御発言をいただきたい、かように思うわけです。
  24. 竹下登

    ○竹下国務大臣 まずODA全般の問題につきましては、伊藤さんから評価をしていただきましたように、九月の十八日でございました、十七日の晩から徹夜をいたしまして、安倍外務大臣と協議して決着をいたしましたのが今度のいわゆる七年倍増計画、四百億ドル以上、こういうものでございます。その五日後にニューヨークのG5がございまして、それから円高になって、したがって、円ベースにしますと二〇%くらいが増加になるというようなことで、私どもこれは大変喜んでおるところであります。  それの使い方と申しますか、私どももいろんな興味を持っておりますが、今のNGOいわゆる民間の海外協力団体、これが不活発であるということは事実でございます。したがって、これは外務省当局と相談しながら対応していかなければならぬと思います。ただ、私も平和部隊ができます折、もう二十五年前になりますけれども、最初の国際会議に出発して今日に至っておりますが、民間団体の場合は、例えば宗教団体でございますとか、仮に基金というようなことを考えました場合に、時に、必ずしもそれになじまないで、むしろまさに民間の自立そのもので意義があるようなものもございます。  しかし、いずれにせよ基金の問題ということになりますと、これから外務当局でいろいろお考えになる課題ではあろうと思いますが、今伊藤さんおっしゃったとおり、ほかは格好がついているけれどもNGOだけは国際比較等において著しく低位にあるという問題は、私も問題意識を十分持っておりますので、最終的には外務当局でお考えいただくことでございますが、一つの御提案ではなかろうかという印象だけは私も持っております。
  25. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 今も御答弁いただきましたとおり、これはどういうふうにやっていくかという点では、具体的に民間団体のいろんな実態も見ながら検討されるというので、そう簡単にいくとは思わないわけですが、さらにもう一歩飛躍をさせて活動をしていこうと思いますと、やはりそういう政府の積極的対応が大変大切ではないか、かように思いますので、今の答弁をいただきましてひとつ大蔵当局としても積極的に取り組んでいただきたい、かように思います。     〔堀之内委員長代理退席、委員長着席〕  次に、青年海外協力隊の問題なんですが、これは発足以来二十一周年を迎えておりまして、お聞きしますところ、この間に六千名の隊員が海外で活躍をされているわけです。今日、国際化時代を迎えておりまして、文化の面、人と人と心を通わせる、そういう実際の協力開発がベースになるということが一番大事なときに来ていると思うわけです。国内でも、若い皆さんがそういうことを肌身に感じながら、聞くところによりますと協力隊の応募者が極めて多いわけでございまして、競争率が十倍にも上る、ですから協力隊浪人が出ているなんということも聞いているわけですが、問題なのは、私たちはもっと多くの人を派遣できるような体制を組むための予算措置なんかを積極的にやっていただきたいと思うのです。ただ数をふやせばいいというだけの単純な問題でもないわけでして、諸外国からはこの海外協力隊をどのように評価をされているのか、そして実際この数をふやすべきだと私たちは思うのですけれども、本当にもっと来てくれというのがなければ、こちらが何ぼ数をふやしたってそうはいかぬわけでして、そこのところを諸外国、被援助国はどのように海外協力隊を評価をし、あるいはどのようにアプローチをしてきているのか、この点を説明をいただきたいと思うのです。
  26. 太田博

    太田説明員 お答えいたします。  先ほど先生も御指摘になりましたとおり、青年海外協力隊は発足いたしましてから昨年で二十周年を迎えまして、そのときに、青年海外協力隊がどういう活躍をしてきたか、それから今御質問開発途上国、受け入れ国でどういう評価をしているのかというようなことを中心に報告書をまとめました。その報告書でも明らかなとおり、我が国の青年海外協力隊、現在三十一カ国に派遣されておりますけれども、各国で極めて好評でございまして、特に草の根レベルにおける我が国技術協力ということで例外なく高い評価を受けております。  我が国は、海外協力隊の派遣隊員数を昭和五十七年度の四百三十名から本年度の八百名に約倍増してまいりまして、来年度の予算政府原案におきましてはこれをさらに五十人ふやして八百五十人ということで対処しておりますけれども、それでもまだ途上国からの要請には十分応じられない。大ざっぱな数字でございますけれども、大体途上国からの要請に対する青年海外協力隊派遣の充足率は五〇%前後にとどまっておりまして、各地域の開発途上国からの要請にこれからもさらにこたえていけるように、一層の努力を続けてまいりたいというふうに考えております。
  27. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 実際それだけ関係国からも要請を受けていますし、多くの隊員を派遣をしていきたいという態度表明をいただいているわけですが、実際に現地へ行くに従いまして、勤めている皆さんにしてみれば、身分保障の問題あるいは帰ってきて就職の問題、そういうのが出てくると思うのです。あるいはせんだってのアフリカでしたか、任地で災害に遣われる、とうとい命を落とされるという場合に、そういう隊員の補償の措置というのが政府としてあるいは関係団体の中できちっととられているのかどうか、その点についてお伺いしたいと思います。
  28. 太田博

    太田説明員 お答えいたします。  青年海外協力隊が派遣国におきまして心置きなく草の根レベルの技術協力ができるようになるためには、今御指摘の隊員の身分保障措置を強化することが極めて重要でございます。従来から、こういう観点からいろいろな措置を講じておりまして、例えば協力隊の事務局におきましては、帰国間近の隊員に対して国内の就職情報の提供を行うとか、就職希望の調査等を行う、あるいは専門家のカウンセラーによる進路指導等を行っているのが一つでございますし、それから現職参加を促進するための休職措置の適用、これの働きかけを行ってきております。また、公務員に関しましては、国家公務員の場合、各省庁に対しまして外務省から、派遣法の適用をできるだけしてほしい、それから地方公共団体につきましては休職条例等の適用をできるだけやるようにしてほしいという働きかけを行っておりまして、こういう措置によりまして隊員の身分保障、これができるだけ十分に講ぜられるように努めているところでございます。  それから、万一不幸にして現地で隊員が事故、災害等に遭った場合でございますけれども、従来から各種の補償、それから共済給付制度など国家公務員の補償措置に比較しても遜色のないようできるだけの措置をこれまで講じてきておりまして、また、六十一年度の政府予算原案におきましては、医療面での改善を図るために、協力隊の事務局の中に専任の医師、それから看護婦、これを各一名でございますけれども確保するということにいたしておりまして、今後とも、不幸にして事故あるいは災害が起きた場合に万全の対策が講ぜられるよう引き続き努力していきたいというふうに考えております。
  29. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 隊員が心置きなく十分活躍できますように、フォロー策については政府の方としてもしっかりお願いをしたいと思います。  次は、大蔵省にお伺いしたいのですが、実額控除制の問題です。  三月三日の読売の記事で、六十二年度には実額控除制が実現をするだろうというような、こういうトーンで記事が載っております。既にお読みいただいていると思うのですが、政府税制調査会が「「実額控除制度」を導入する方向で検討に入った。これまで導入に消極的だった大蔵省も「選択制なら可能」と態度を軟化させており、六十二年度にも実現する可能性が強くなった。」こういう表現なんですね。そうしますと、国民は新聞を読んでいまして、ああ税調でそういう方向でこの結論が出ていくんだな、言うならば選択制ですから、やっとサラリーマンの願いが、一〇〇%とまではいかないにしてもかなり認められるんだなと大きな期待感を持っていると思うのです。この記事はそういうふうに読めるのですけれども、大蔵省としては、そういうふうに私たち理解をしてもよろしゅうございますか。
  30. 水野勝

    ○水野政府委員 今回の税制改革は、ゆがみ、ひずみ、不公平感、重圧感を取り出し、その是正を図るというところに一つの大きな眼目があるわけでございます。また、昭和二十五年のシャウプ勧告以来の税制につきましての抜本的な改革を検討するということから、従来からの制度につきましては、すべての問題につきましてこれを根本から取り上げて検討するというふうな審議が行われておるわけでございます。  そういった意味におきまして、現在におきましては給与所得者につきましては平均いたしまして三〇%程度に当たります給与所得控除がございますが、その点につきましての御理解も必ずしも十分ではない、そしてサラリーマンにつきましての税につきましての御不満、不公平感があるということは、これは事実でございます。そういった点もひっくるめまして税制調査会におきまして特別部会で検討がなされ、この給与所得控除の問題につきましては現在専門小委員会検討にゆだねられておるところでございます。したがいまして、今後専門小委員会からその報告がまとめられて特別部会に提出され、特別部会、さらにはまた税調の総会におきまして掘り下げた検討が行われるという段取りとなってございますので、現在この問題につきましてどういう方向に審議が取りまとめられるかということにつきましては、なお私どもとしてもその動向を見守っておるという段階でございます。
  31. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 見守っておられるというのは、御答弁はわかるのですけれども、ここで言っていますこれは事実ですか。そうしますと、見守っているというよりも、「これまで導入に消極的だった大蔵省も「選択制なら可能」と態度を軟化させており、六十二年度にも実現する可能性が強くなった。」こういう議論というのがやられていることは事実であるし、大蔵省としてもそういうふうな税制調査会との連係プレーという面はあるわけです。そういう中でこういうふうな雰囲気になってきているというふうに書いておるわけですから、これはそう理解していいですね。
  32. 水野勝

    ○水野政府委員 この問題につきましては、近日中に専門小委員会の報告が取りまとめられて提出されてくるものと思っておるわけでございまして、私どもとしては、その議論の動向によりましてさらに検討、勉強させていただきたい、こんなふうに思っておるわけでございます。
  33. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 そうすると、一つの大蔵省に対する態度の評価のような記事なんですが、それはそうじゃなくて、今言われたように、報告がありますと、それを受けて大蔵省としては判断するのですから、これは見込み記事みたいなもので、そういうことはないんだ、全く白紙だというのか、そうじゃなくて大体この記事で言っているような雰囲気ですか、どちらですか。
  34. 水野勝

    ○水野政府委員 私どもとしても問題意識を持って御審議をお願いしておることは事実でございます。ただ、それがどういう方向での御結論になり、それを特別部会で御審議いただいてどういう方向になるか、これにつきましては、私どもとしても審議の結果を待つというところまででございます。
  35. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 調査会の審議をやられている大蔵当局としては、なかなか口を挟むというわけにはいかないでしょうけれども、一応の結論、答申が出ましたら、それを丸々受けてというか、もうそのとおりやらなければいけない、あるいは取捨選択をされる、どちらかなんでしょう。やはり大蔵省としては主体性を持って、これはいい提言だからこの部分は実際生かしていきたい、この部分は少し早い、これはだめだと選択をされるわけでしょう。だから、財政当局としては、この実額控除制に対して一定の態度というのをお持ちだろうと思うのですよね。税調がどうあろうとお持ちだろうと思うのです。でなければ、税調が一つの答えを出して、大蔵省にこうですよと言われたら、はあそうでございますか、一〇〇%やりますと言うわけにいかぬでしょう。そこのところを聞いているわけです。
  36. 水野勝

    ○水野政府委員 従来から、政府サイドといたしましては、税制調査会に御審議をお願いし、検討いただいたことにつきましては、極力それを尊重してまいるというのが私どもの基本的な方向であったわけでございます。ただ、いろいろ税制調査会からお取りまとめいただいた部分につきましても、そのとおりに政府としていたさなかった場合もあるわけでございますが、基本的にはその報告、検討の結果につきましては、それに即して対処してまいるというのが従来からの私どもの考え方でございます。
  37. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 ということは、実額控除制についてこれを実施をしなさい、そういう旨の言うならば結論が税調で出れば、それを尊重して大蔵省としては実行に移す、このように理解をしてよろしゅうございますか。
  38. 水野勝

    ○水野政府委員 いずれその報告が提出されると思いますが、何分にもこの問題は執行の問題にも非常に大きく影響する問題でございますので、その結果を一〇〇%直ちにというところまでまいりますかどうか。これは執行当局とも十分相談をいたす必要のある問題でございますので、その結果を待ちまして慎重に対処したいというのが私どもの基本的態度でございますが、このような問題意識を持って審議をお願いしているということはございますし、基本的には私どもの問題意識もお伝えして検討をいただいているところでございますので、その方向につきましては、基本的にはその方向で私どもとしても対処いたすのが適当ではないかと思っておるわけでございます。ただ、何分にも大きな問題でございますので、ここではっきりそうだ、また、こういう結論らしいとか、必ずそれを一〇〇%実施するとかというところまではなかなか申し上げ切れないわけでございます。
  39. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 御答弁いただきましたとおり、問題意識を持って検討いただいております、ですから、一定の結論が税調から出ましたら、諸般の情勢はもちろん勘案をしますけれども、それは尊重する立場で対応する、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  40. 竹下登

    ○竹下国務大臣 大筋そのとおりでありますが、要するに今度は抜本だものでございますから、したがって、予見を挟まないということを非常に気を使っております。だから、きょうのこういうような問答を整理して、大体は去年の国会の中の議論を主として全部報告したわけですから、そういうところから問題意識というものがおのずから出て、できるだけ予見は持たないようにという形で御審議をお願いしておるわけでございますが、今の御指摘の問題は専門委員会で精いっぱい御議論いただいておる、こういう状態でございますので、その後の運び方については今おっしゃった運び方になるであろうというふうに考えております。
  41. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 次は内需拡大策に関連をして建設省にお伺いをしたいと思いますが、住宅の関係なんです。三世代住宅の金利負担の軽減問題について質問申し上げます。  つまり、高齢化社会というのがどんどん進行していまして、家族構成も変わっていく、家庭生活のあり方も問われてきている昨今なんですが、これからは二世代、三世代が一つ屋根に住むという傾向が特に大都会を中心に進行するのではないかと私は思うわけです。もちろん家庭にはそれぞれ事情がございます。しかし、政府の方も年金改正とかあるいは財政再建の議論の中でもしばしば言われておりますとおり、とにもかくにも年金の受給者が多くなって、現役人口が減っていくわけです。日本の女性というのは子供は二人産みませんで、今は一・八人ですね。西ドイツがたしかトップだったと思うのです。そういう時代ですから、このままいったら、こういう言い方はどうかと思いますが、日本民族は滅びるのじゃないかと私は思うのですけれども、そういうふうな傾向がこれからずっと続くと思うのです。ですから住宅の取得の方法についても、高度成長時代のようにばんばんと住宅を各夫婦別につくっていくなんというような時代にはこれからはなかなかならない。土地を取得するのでも都会は非常に困難でございまして、こういうふうな事情が背景にあって三世代住宅という傾向が大都会を中心にこれからずっと強まっていく、このように私は考えているわけですが、現状の把握、認識について、建設省、どうでございましょうか、その辺の御見解をまず賜りたいと思います。
  42. 三井康壽

    ○三井説明員 高齢化社会に対します住宅政策についてのお尋ねでございますが、御承知のとおり我が国も本格的な高齢化社会に突入しているわけでございまして、そういった意味で、今おっしゃられました三世代住宅あるいは老人同居あるいは老人夫婦と子供夫婦との近居、隣居、こういった問題につきましては、住宅政策上大変重要な課題だというふうに認識しているところでございます。  昭和六十一年度から第五期住宅建設五カ年計画をつくらせていただきたいと思いまして、現在私ども案をつくっているわけでございますけれども、その中におきましても、高齢化社会にどう取り組むかというのは大きな課題でございまして、高齢化社会に向けて、それと、ベースとしましても居住水準の引き上げといったことと絡み合わせて議論をさせていただいております。  今回の第五期住宅建設五カ年計画におきましては、居住水準の引き上げという中に、最低居住水準という今までやっておりましたものと誘導居住水準、二つの居住水準をつくろうとしているわけでございます。この誘導居住水準の中に、世帯別、人数別に居住の規模というのを掲げているわけでございますけれども、特に五人世帯、六人世帯におきましては、今おっしゃられました二世帯同居をされるという場合にはそれぞれ規模を別につくりまして、大体二十平米ぐらい大きくしていかなければいけない、そういった目標を持って住宅政策に取り組むべきであるということを提言をさしていただいておるところでございます。  また、今までにも、今おっしゃられました高齢者対策としまして、例えば公営住宅におきましても、老人同居向けの住宅、これを特別につくっていこうということをしておりますし、さらに公団住宅におきましても大型住宅の建設、あるいは老人の同居される場合には分譲住宅等の場合におきまして優遇をするとか、そういったことをさせていただいておりますし、さらに住宅金融公庫の融資におきましても、貸付規模の引き上げでございますとか、あるいは二世帯住宅につきましての割り増し貸し付け、こういったことをやらせていただいておりますが、今後なお積極的にこういった問題に取り組んでまいりたいというふうに考えているところでございます。
  43. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 おっしゃるとおり、社会の趨勢がそういう傾向を強めておるわけでして、大型住宅を建設をして三世代が生活をする、ところが、これは個人の考え方にもよると思いますけれども、近いところで親子、夫婦三世代で住んでいくということができれば一番理想的だと思うのですよ。一つ屋根の中に三世代が住むというのは、これは長く生活をやっていくわけですから、特にこれから若夫婦の方は、できるならば玄関も別々、おふろも別々、台所も別々という分離住宅というのをやりたいわけですね。ところが、なかなかそうはいかない家庭の事情だってあると思うのです。私は分離住宅というのは大いに賛成なんで、そういうふうにして三世代が肩を寄せ合って近いところに住んでいくということになれば、これは高齢者の皆さんも家族の温かい雰囲気の中で生活がやれるのですから、理想的だと思うわけですね。ところが、分離住宅がなかなかその家庭の事情によってできない場合、大型住宅にならざるを得ない。そのとき、公庫の融資を受ける場合に、大型住宅の場合には、そういう事情があって意に反してやらざるを得ない、建てざるを得ないのですが、金利が高くて、分離住宅の場合には金利が安いわけです。ここのところがどうも私には解せないんですね。恐らく建設省のお考えは、大きな家をつくるのですからそれなりに財力もおありでしょう、しかし足らない分は公庫で資金を借りられるのでしょう、多少金利が高くてもいいじゃないかというふうな経緯なり発想がおありなのかもしれませんが、しかし、できるなら分離でいきたいのにその家庭の事情があってそれができない、大型にならざるを得ない、金は借りる、借りたら金利が分離住宅よりも高いというのでは、これはどうも気持ちが生かせない、そういうことなんですね。こういう事情を抱えておみえの御家庭というのは結構あると思いますので、このあたりについてどんなふうにお考えなのか、ひとつ御答弁いただきたいと思います。
  44. 三井康壽

    ○三井説明員 ただいま御指摘いただきましたのは、住宅金融公庫の融資につきましての御指摘でございます。  御承知でございますけれども、公庫融資につきましては、現在、段階金利制というのをとっておりまして、五・五%のいわゆる基準金利口、それから六・四%の中間金利口、さらに六・八五%の大型金利口と三段階制があるわけでございます。五・五%の基準金利口は御承知のとおり利子補給金という形で政府が国家財政の中から援助するという形でございますので、そういった意味合いから、現在、段階金利制につきましては規模別に決めさしていただいているというわけでございます。  そこで、こういった規模別をつくりましたときの理由に、従来からの実績を勘案いたしますと、確かに今おっしゃられたように、大型の住宅をおつくりになる方は、どちらかというとある程度年収も多い、それから年配も比較的高目の方がやっておられるということもありまして、返済負担率ということから見ますと三段階制をとりましてもほぼ同じぐらいになるのじゃないかということで、公庫融資の効率化と言ってはなんでございますけれども、良質の住宅ストックをつくるという意味を込めまして段階金利制を使っているわけでございます。したがいまして、現段階におきまして段階金利制を一つにするとか、あるいは金利の差をもう少し少なくするとかいったことは、なかなか困難な状況にあるわけでございます。しかし、御指摘の中で大型住宅をやはりもう少し優遇すべきじゃないかというふうなことにつきましては、三段階制の中で貸付規模を大きくしていくといった一つの大きな方法があろうかと思います。  六十一年度予算におきましては、住宅建設五カ年計画も六十一年度から始まるということもありまして、従来五・五%でお貸しをします口は百十平米までだったわけでございますけれども、これを十平米上げさせていただきまして百二十平米にさせていただく、中間金利口は百三十五平米から百四十五平米にさせていただく、さらに大型住宅につきましては百六十五平米を百八十平米に引き上げさせていただく、こういった形で、多少ではございますけれども大型化に努力をしていきたい。さらに、これらの中で二世帯の方々がお住みになるという場合には割り増し貸し付けという制度がございまして、これをお使いいただこうということで、割り増し額も六十年度は百四十万でございましたけれども百八十万に引き上げさせていただく、こういった形で努力をさせていただいているところでございます。
  45. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 内需拡大策とよく言われますけれども、民活一括化法案の中でも私たちは聞かしてもらっているのですが、さらには中小企業対策の部分だってありますよ。それはかなりパンチの効いた予算だって持っているじゃないですか、財投の関係を含めまして。ところが、こちらの方は金額的に、これはお金をやると言っているんじゃないのですね。公庫の枠で貸し付けをするわけですよ。そうすると、これはもう生活の問題なんですね。住むに家があれば別にそんな苦労しなくたっていいんですが、将来設計の中で恐らく該当者というのは、特にサラリーマンの方が多いと思うんですよ。そうしますと、その借金の金利負担を本当に生涯しょっていく。これは自分の城をつくる大事業なものですからね。しかも、国の全体の民間活力なり内需の拡大の政策からいけば、これは一つの部分にすぎないと私は思っているのです。これは政務次官にお伺いしたいのですが、そういうことを国家的な見地から考えますとどうなんでしょう。金利幅の格差が三段階あるわけですよ。そういう事情があってその方は小さい家には住めないわけですね。内心では若い我々だけで生活ができれば一番いいと思っているわけですよ。違うんですか。ところが御両親を抱えておみえになって、御長男であるかないかはともかくとして、御両親と一緒に一つ屋根で住まなくてはいかぬという家庭の事情があるのですね。意に反してかもわかりませんよ、今の若い皆さんからするならば。そういう場合に、小さな住宅で新婚ほやほやの気分でやっていこうかという人は少ない金利で借りられて、親をしょって、いろいろあるけれども我慢をしながら一つ屋根で生活をしていこうという人が高い金利を払わなくてはいかぬというのはどう考えても――高齢化社会の対応と言われているわけでしょう。あるいは内需拡大という点から見ても、このことの解消くらいできないのか。私は、この制度をずっとやってきていまして、これぐらいは本当に金利格差の解消を目指してひとつ腹をくくりたい、財政当局の立場でもそれぐらいのことは踏み出せないか、こう思うのですが、どんなものでございましょう。
  46. 熊川次男

    ○熊川政府委員 先生の高齢化社会さらには教育にまで踏み込んだ問題として非常に示唆に富む御意見かと拝聴いたしております。  特に世界に類例を見ないような急速な長寿時代を迎えている昨今、また、お年寄りの方の一番の悩みは孤独からの解放ではないか、こういうととも強く叫ばれております。そういうことをあわせ考えたときに、あるいは二世代でなしに三世代というようなことも、これは行政の面でもかなりこの促進方に留意をしなければならない問題かなと思っております。ただ、たまたま先ほどもお答えがありましたとおり、大きな居住用住宅を建てる方は負担能力も大きいという一般的蓋然性も高いわけですが、しかし最近においては登記法の完備もできておるわけですから、同じ一軒でも部分登記ができるような形態の場合は、これはあるいは屋根は一つでも三つの建物、不動産として社会的にも評価できるという法的措置もございますので、それらの措置もあわせ考えて、先ほど先生がお話しになりましたような、出入り口からいろいろなことがありましたが、総合的に勘案して御期待に沿うような方法も検討できるのかなど、こんなふうに考えておりますが、いずれにしても重要な御意見でありますので、積極的に検討すべき問題だと理解しております。
  47. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 いただけるような、いただけないような答弁でしたけれども、私は無理は言ってないと思うんですよ。私、反論しているのじゃないのです。これは借金してやるわけですね。とにかく金利に三つのランクがあるんですね。こういう矛盾が出てくるわけですよ。家庭の事情があって、一つの屋根に三世代住む。ところが、一方で分離住宅で親子寄り添って住むというケースは、悪く考えればこれは内緒でアパートに貸すこともできるんです。そうでしょう。わかりませんからね。分離住宅ですからね。転勤があって、若夫婦が子供を連れまして御両親を残して転勤されますとそこがあきますから、兄弟が入るかあるいはだれかが入ったとしましょう。家賃が取れますよ。この方は金利が安くて、一つ屋根に住まわれる方は金利が高いというのはどう考えたって僕は理解できぬわけですよ。これが大きな問題ならいざ知らず、とにかくその辺をうんと腹を固めていただければできる問題じゃないかと思うものですから、何かちょっとしつこく発言をさしていただいているわけです。その点についてもうちょっとうんと言えるような御答弁をいただきたいと思うのですが、どうなんでしょう。
  48. 吉田正輝

    ○吉田(正)政府委員 先生のいろいろの御主張につきましても、耳を傾けなければならないかとも存じますけれども、先ほど建設省の方からもお答えがございましたとおり、繰り返しみたいになりまして大変恐縮なんでございますが、建物の面積規模が大きくなるのに応じましてより高い金利が適用される制度になっているということではございましても、規模の大きな住宅は、経験的にも返済負担能力等では利用者の負担能力が相対的に高いということもございますし、それからこの金利自体、民間の住宅ローンなんかに比べて相当低くやっているようなことで、公庫の収支状況も考慮して定められているわけでございます。したがって、三世代が同居するような大きな住宅につきましては、三世代の住宅だからということだけで金利面の特別な配慮は難しいというふうに、恐縮ながらお答えせざるを得ない状況でございます。先ほど建設省が申し上げましたとおりでございますけれども、そういう相対的には市中金利の中で低い金利のもの、老人が同居するような二世帯住宅、これは市中金利からいいますと低いわけでございますけれども、その低い金利のものについては割り増し融資を行うというようなことは、それは相当に二世帯住宅についての配慮を行っている点もあるということをお酌み取りいただきまして、御理解いただきたいと存ずるわけでございます。
  49. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 何か答えがもとへ戻ってきた。議論する前にまで戻っていっているんですよね。そういうふうな立場で私は言っているのじゃなくて、建設省の方も言われまして政務次官の方もお答えいただきましたように、やはりそれは考慮しなければいかぬ問題だから、すぐにできるとかどうとかというのじゃなくて、この問題解決に向けて一歩でも二歩でも踏み出した姿勢でこれから検討していくということなんでしょう。今の答弁だったら、結局借りるやつが悪いんだから、文句あるんだったら標準住宅のAかBにしなさい、大型住宅を建てるからいかぬわけですよということじゃないですか。そんな答弁は聞けませんよ、私は。
  50. 熊川次男

    ○熊川政府委員 先生、ただ一方に御疑問がある点も御検討を仰ぎたいんですが、たまたま三世代住むという形で申請をして、安い金利あるいは大幅な融資が得られるような場合に、それが十分担保せずに、たまたま結果は一軒であったというようなことのないようにしなければ、公の金の有効活用という意味で、一種の脱法が行われては困るなという気持ちもございますので、この辺は、本当に必要な人、そして三世代が必ず住むという方法、そしてお年寄りも孫もともに喜びを分かち合えるような、そういった方策を見出す方向で、非常に先生の傾聴すべき御意見と拝聴しておりますので、この点、今各方面に問題点が内在する点も御理解仰ぎたいのですが……。
  51. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 わかりました。そういう立場でひとつ検討いただきますようにお願いをいたします。  次は教育減税に絡む問題なんですが、これは与野党間の問題ではございません。次元をちょっと異にしております。  文部省の方にお伺いしたいのですが、今一番親御さんの負担になっているのは、教育費の中でも下宿をして大学生活を送られる場合だと私は思うのです。  政策減税の中に言われておりますのは、高校教育レベルでの入学費だとか授業料の範囲が重点だと理解をしておりますが、私が申し上げたいのは、例えば東京で下宿をなさる私立大学の学生さん、年間に何と学費を含めますと百七十九万円も経費が要るわけです。月額に直して十四万九千円、国立の場合で年間百四十五万円、月に直して十二万一千円、まあ、およそこれだけの経費が要ります。家からの仕送りは平均しまして万八万七千円、私立の場合には十二万五千円、下宿をしますとそれだけの諸経費が要ると思うのです。  今は高学歴社会でありますから、子弟が大学へ行きたいという希望を持てば、親御さんは大変苦しいけれども下宿をさして大学へ通わしているというのが実態だと思うのです。大変経済負担が厳しい格好でかかってきているわけですが、そういうケースに対して、今は奨学資金制度はございますけれども、それ以外には特段の制度がないように私は思うのです。その辺の実態認識あるいはフォローしております制度の問題を含めましてどのようにお考えなのか、文部省の見解をお聞きしたいと思います。
  52. 佐藤孝安

    佐藤説明員 現在、日本育英会の奨学金制度がございます。そのほかに、民間その他の財団がやっております奨学金制度もございますけれども、日本育英会の奨学金制度について申し上げますと、先生指摘されました私立の大学の自宅外の通学者に関しましては、日本育英会の奨学金では四万一千円の額の奨学金を貸与いたしているわけでございます。  ただ、特に私立の場合で医歯系、医学、歯学系、それから薬学系の学生の場合におきましては、そのほかに月額三万または六万円、これは医学、歯学の場合でございます。それから薬学系で一万五千円の増額貸与を合わせて受けることができるようになっているわけでございます。
  53. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 結局奨学金制度ですか、これしかないということだと思うのですよね。  奨学金制度なんですが、この中身というのは、御案内のとおりに無利子の奨学金制度を受ける場合は、特にすぐれた学生生徒であって経済的理由によって著しく修学が困難な者に無利子で奨学金を渡すわけですね。ちゃんと制限の規定があります。有利子の場合でも、すぐれた学生であって経済的理由によって云々となっているわけで、しかも金額は、今お話しいただきましたとおり、その部分ということに相なるわけでして、結局大変だという状態を奨学金制度で満たせるものじゃないと私は思うのです。  義務教育でないものを国が全部どうのこうのするというところには限界がございますから、そういうことを私は主張しているのではありませんので、例えば下宿の大学生を抱える親御さんなどが貸付制度というのですか、これが低利な貸付制度を希望されるというケースというのは、その制度があれば随分私は手を挙げる人が多いと思うのですよね。そういうふうにしてフォローをしていくということも有効な一策ではなかろうか、このように考えるわけですが、その辺どうでしょう。
  54. 佐藤孝安

    佐藤説明員 現在大学生に対します採用の率でございますけれども、大体一二・七%程度の学生に対して貸与を行っているわけでございます。  経済的に恵まれない優秀な者に対しまして、教育の機会均等に寄与するという見地から必要な奨学制度を設けることは、私どもとしましては教育の基本的な施策というふうに考えているところでございます。  私どもといたしましては、五十九年度に日本育英会の制度の整備を図りまして、有利子貸与制度を創設いたしましたので、まず、私どもとしましては、その制度が完成年度途中でございますので、その制度の充実を図ってまいりたい、そのように考えているところでございます。
  55. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 なかなかはっきりしないお答えなんですが、いずれにしましても、私はまたこれは今後引き続きやりたいと思いますが、実際の話、子供さんを大学に下宿で通わせるという家庭の苦労というのは非常に大きいものがございまして、これは国のサイドとしても何らかの格好で援助をしていけるような、そういう施策が必要なのではないか、このようにも考えておりますので、そのことを強く訴えまして次に移りたいと思います。  時間の関係もございまして最後になりますが、赤字法人の欠損金の繰り越しの一部停止の問題なんですが、これはやはり私たちとしては、結論的に申し上げまして撤回してもらいたい、こういう立場であります。  それは言うまでもなくて、中小企業の経営実態というのは、大企業も大変なときなんですが、それ以上にやはり厳しゅうございまして、今回のような制度の改正をやるということが税収の面ではなるほど二千数百億円の増収対策にはなりますけれども、しかし、そのことによって、従来の制度であれば立ち直ることができたそのチャンスをそうならないようにしてしまうということになったのでは、これは角を矯めて牛を殺すたぐいになりかねないわけでありまして、もしこの赤字の問題あるいは制度を悪用しているというケースがあるとするならば、これはもう財務の指導なり調査、そういう次元で解決を求めていくしかないと思うのです。  いずれにしましても、中小企業対策としては、今回の欠損金繰り越し一部停止の問題は後ろ向きの法案である、このように私は考えますので、私の考え方を申し述べまして、答弁いただければいただいてもいいのですが、大変これは問題の一つだ、こう考えておるわけであります。
  56. 水野勝

    ○水野政府委員 今回の措置は、厳しい財政事情のもとで、直近一年分だけにつきまして控除を御遠慮願うということでございます。その対象となる法人といたしましてはもちろん中小企業も入りますが、中小企業ということに限らず法人一般にお願いしているわけでございますし、また、直近一年分がその次の年には控除はできないわけでございますが、以後四年間はその控除の機会があるわけでございます。そこはこれでもって絶対的に控除が否認されたということでございませんので、財政事情等を勘案したこの措置につきまして御理解を賜れればと思うわけでございます。
  57. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 時間の関係で詳しいことは申し上げられませんが、非常によく考えられたわけですね。この部分だけをつかまえて一部の停止をやることによって、それは制度そのものは残していくのだから、まあ言うならば一つの変形ですよ。しかしそこのポイントをとらえて言うならば、こういう制度に変えれば六十一年度予算を見るだけでも二千二百三十億円の増収対策になるわけですよ。しかし、そのことが中小企業にとってみれば大変な負担で、現行の制度でいけば再建ができたものが、これが一部停止を食らったがために、先のことよりもその時点でもって言うならば再起不能の状態に追い込まれるというようなケースというのがありますよ。  今もお答えがありましたけれども、それは企業であれば大小を問わずそういうケースというのはあるじゃないかという答弁なんですが、実態を見ますと、大手だとか大企業の場合よりも、赤字の問題、繰り越しの問題でいろいろ苦労しなければいかぬ事情を抱えているのはやはり中小零細企業に多いということです。それは当然数が多くなりますよ。ひとつかき集めようかと思いましたら財源がこれだけ集まるということなんで、数は多いわけですよ。しかしそれは置かれている企業の実態からするならば、絶対的条件がそうでしょうと私は言いたいわけですね。ですから、今回のこういう一部停止の問題については、これは内需拡大の関係からいっても、経済の活性化を図る意味からいきましても、どう考えても中小企業対策にはならぬ。積極的な対策どころか後ろを向いているという立場で、私はこれは撤回をしていただきたいということを強く申し述べて、私の質問を終わりたいと思います。
  58. 小泉純一郎

  59. 野口幸一

    野口委員 まず、大臣にお伺いいたします。  何度も同じことを聞かれて、実は大臣自身も答弁するのがいやになってきたのじゃないかと思うほどの話でありますけれども、やはりこの問題はどうしても避けて通ることのできない問題でございますので、ぜひ私にもお答えをいただきたいと思うのであります。  「増税なき財政再建」の問題でございます。これは昭和五十七年度から特にこのことが強調されてまいったと思うのですけれども、その路線に沿った政策を今やっておるとおっしゃっているわけでありますが、六十一年度に入りまして五年目になるわけであります。この間、一般歳出の伸び率の抑制、補助金削減、選択的な増税、私どもから言えば増税でありますが、それから、国債定率繰り入れの停止あるいは国債の借りかえなどをいろいろとおやりになってきたのでありますが、必ずしも十分な成果が上がっているとは思いません。そこで、多くの方々から、この「増税なき財政再建」というのは、スローガンか何か知らぬけれどももうそろそろおろすのがいいのじゃないか、いつまでもかたくなにこんなことを言っておってもどうしようもないじゃないか、そういうことをよく耳に聞かされるわけであります。  今年度の予算の編成の経過を見てみましても、非常に御苦労をなさっておることはわかります。後ほどまた申し上げますが、たばこ消費税のごときものを機関の審議をそれぞれ無視して独断でおやりになったことを見ましても、いよいよ詰まるところまで来たなというような気もしないではありません。また、先ほど伊藤委員質問の最後にありましたように、中小企業の赤字法人に対する課税の問題にしましてもそのような気がいたします。ことし限りの問題だなと思いますけれども、しかしいずれにいたしましても、竹下大蔵大臣が長年にわたってそのことを言ってこられたということについては私どももよく記憶をいたしておりますが、来るべきところへ来たなという感じがするわけであります。  そこで、まずお伺いいたしたいのでありますが、いわゆる歳出削減というのはもう限界に来ておる、こういう感じを受ける一人でありまするが、これ以上歳出を削減していきますと、政策的にも破綻を来すようなことになりはしないか。もちろん、私どもは軍事費の削減ということはやかましく言っておるわけでありまするから、軍事費さえゼロにしてもらえばそれはまた財源も出てくるわけでありましょうけれども、自民党内閣ではそうもなりますまいと思いますから、あえてそのことに触れないで物を申し上げておるわけでありますが、現行のままでいきますと、歳出削減というのはもはや峠に来たと見るべきであろうと思います。まず、この点からお伺いをいたしたいと思います。
  60. 竹下登

    ○竹下国務大臣 ここのところ、確かに五十五年度予算は概算要求基準を設けるときに一〇%増し、それから七・五、ゼロ、それからゼロ以下、こういうことで、今日まで概算要求基準をまず設けて、それを出発点としてその年度予算を組んできたということであります。だから、いわゆる概算要求基準なるものの中で、各省におかれてぎりぎりの工夫をしながら、私の言葉で言わせていただきますならば内なる改革、こういうようなこともいろいろやってまいりました。それがもう限界じゃないか。私も、来年また前年度同額以下の一般歳出の予算を組むということを考えると、本当にこれは容易なことじゃないな、こういうことは率直に感じております。しかし、私どもは安易に新たなる税目によって税収増をもたらすというようなことを考えないで、しかも、赤字公債を少しでも減らしていくという努力を続けながらということになりますと、「増税なき財政再建」というのは、今スローガンということでおっしゃいましたが、まさに理念としてその退路を断ったから今日まである種の削減というものができてきたのでないか。したがって、この理念というものを放棄するわけにはいかぬというので、かたくななまでに私はこの旗をおろさない、こう言ってきておるわけであります。今後とも、それこそ来年度予算を考えてみましても、六十二年度予算を考えても、その旗をおろさないままに積み上げていくということは容易なことじゃない。しかし、だれかがまたその衝に当たらなければならぬというような気持ちで毎日自分の気持ちの中でも反復しておるという状態であります。
  61. 野口幸一

    野口委員 竹下さんが大蔵大臣だけでおやめになっていく人ならば、その言い方も了といたしますけれども、少なくともニューリーダーの一人として将来日本を代表する政治家であるだけに、余りかたくなにこの問題を死守しておられますと、これは自分で自分に縄をかけているようなものでありまして、後で本当にこんなことを大蔵大臣のときに言わなければよかったと言わなければならぬ時期が来るのじゃないかと心配するのでありますけれども、しかし、これは学説的な言い方ではなくて庶民感情として考えましても、片や百四十兆円を超す大赤字であり、それを何とか減らさなければならぬ、これは命題なんです。その方法として、それじゃ「増税なき」という言葉を現時点でスローガンとして掲げておられるにしましても、もうはっきりと昨年よりもことしその国債発行額そのもの自体においても減らすことができなかったということがあるわけでありまして、それからまた税収の伸び率にしましても、随分ことしの場合も非常にぎりぎりのところまで伸び率を見込んで組んでおられるわけでございます。ことし考えておられるような状況で進めばいいのですけれども、進まなかった場合、またまた国債の増発ということにもなりかねない情勢だと思うのですね。  そういったあらゆる情勢を私なりに判断しましても、一体どうしたらこの百四十何兆円のいわゆる元本に食い込むことができるのか。ふやさないということがまず大事ですけれども、食い込むこと、返済をしていくんだということについては、何ら明るい見通しは立っていないわけですね。赤字公債脱却というのは赤字公債にこれ以上頼らないというだけでありまして、それだけでもできかねて、もちろん、先行きの百四十兆円をなくしていくという施策は今のところとられていないような気がいたしますね。そういたしますと、六十五年脱却さえ危ないのに百四十何兆円を積極的に返済をしていこうというその施策はどこから生まれてくるのかと言わざるを得ないのですね。だから赤字国債への依存を脱却するのにも非常に難しい、ましてやその元本の返済をしていくところに手をつけるということは非常に難しい。それであるのにもかかわらず「増税なき」という言葉でそれが貫けるのかどうなのか、本当に「増税なき」でいけるのかどうなのか。これはもう率直なところでありまして、ことしの十二月になれば政権交代があるとかないとか言われているのでありますけれども、仮に竹下さんが総理大臣になられても、かたくなにこのことを踏襲して六十五年赤字脱却という形をさらに進めようとされるのかどうか、非常に疑問な点があると思うのです。  これは六十五年にはもうできませんよね。大臣、どうですか、本当に率直に言って、現在のままでいったとして、六十五年にできると思いますか。
  62. 竹下登

    ○竹下国務大臣 非常に難しい問題だということは私も十分認識をいたしております。しかし、旗はおろせない、一たびおろせば歳出圧力に抗し切れなくなる、こういうことをいつも申し上げておるわけであります。  毎年毎年議論していただいておりますが、若干の変化があったとすれば、ことしの予算で、まだ決算も出ない状態にありますものの、一定の前提において評価額を決めていわゆるNTTの株式の売却、こういうことが一つ新しい変化であろうと思います。  それから、いま一つの将来可能性のある変化というものは、税制の抜本改正というものがいずれ答申をされ、六十二年度税制からこれが選択肢の中の一つに入るであろう。  しかし、二番目の問題につきましては、御案内のとおり、我々は今これを増収を目的として税制調査会に諮問しておるわけではございませんので、いわば直ちに増収措置としてそれに着目するわけにはまいらぬ。こういうことになりますと、まさに狭い狭い選択肢ではなかろうか。それはよく粗っぽく言う人は、建設公債を増発し、そして公共事業の特定財源をみんな一般財源に回してやれば、表面上の赤字公債依存そのものは終わるじゃないか、こんな議論もございますが、そういういわば手法をとるわけにもまいらぬ。だから狭い狭い範囲内において、私どもはやはり毎年毎年の予算編成の中で積み上げていかなければならぬ。そして国会の問答を通じて国民のコンセンサスは那辺にあるかを見定めながら政策の展開を行っていかなければならぬ。本当に、狭い狭い選択肢の中で苦悩しておるということであります。
  63. 野口幸一

    野口委員 悩んでおられることは事実でありましょうから、悩んでおられることについて私の方からとやかく申し上げるわけにはまいりませんけれども、だれが考えてみても現在のままで、あるいはまた先ほど言われるような形の中での税制改革をやっておっては、到底この百四十兆円の国債残高というものの解消にはならないのじゃないか、直感でそういうように思います。  そこで、それはそれといたしまして、六十二年度以降の税制改正について今大臣もちょっとおっしゃいましたが、公正、公平ですか、そういうことを目標として、増税を企図したものではない、こう言われておるわけであります。およそ税制を改革するに当たって増税は一切考えないということなんであります。それにこしたことはないわけですけれども、先ほどから言われておりますように、歳出削減もある程度限界に来ている、さらにまた、これ以上の国債を発行することも不可能であるということでありますから、当然一定の程度の国民に対するサービスといいますか、歳出は保っていかなければならないだろう。額というのはこれ以上減らすわけにはいかないだろう。  一方、私どももよく言っておるわけでありますけれども、内需拡大という命題からいきますと、これは可処分所得をふやしてほしい、またふやさなくては消費につながらない。そうなりますと、減税という問題が出てまいります。そうなりますと、この減税に対する金はどこから出てくるのかということが出てくるわけであります。減税という問題が出てくれば、それに対応する収入がなければ現在でもできないわけでありますから、当然出てくるわけでありましょう。その場合に、一体その財源は何によって求められるのか。増税とはということになりましたときに、昨年もちょっとお聞きをいたしましたけれども、大臣の認識と私どもの認識はちょっと違うわけでありまして、私どもは自分たちの懐から税という名前のつく金が少しでも多くなっていくことを増税と言う。だから、新たな項目を設けようと設けまいと税という名のつく支出が多くなることが増税であり、減ることが減税であると認識している、こう申し上げた。大臣は、そうじゃなくて、増税とは新たな税目を設けて、そこで新たな税収を図り得るようにするというのが増税だ、こういうような御意見があったわけでありますけれども、いずれにしても何らかの原資を求めていかなければ、その問題の解決にはならないわけであります。過般予算の折衝の中にありまして、減税問題について一定の合意を見たところでありますけれども、大臣はこれに対する原資をどのように求めていけばこの約束が守られると思っておられるのでしょうか。
  64. 竹下登

    ○竹下国務大臣 今税制調査会に諮問しております抜本的改正というのは、税制面ではレベニュー・ニュートラル、中立である、こう言っておるわけであります。したがって、この減税に見合うものは何らかの形でそれの穴埋めをしなければならぬ、基本的にはそのように考えております。  そこで税制調査会が春までに、言ってみればゆがみ、ひずみ、重圧感、それはどこにあるかというようなことを十分勉強されて、中間的な報告書になりますのか、中間的な意見の取りまとめが行われ、さてそれに対してはどのような見合う措置を行うかというのがその後の審議課題となって、秋には一括したところの答申がちょうだいできる。そうしますと、ちょうど四党の幹事長・書記長さんの申し合わせというものが六十一年中でございますから、大体税制調査会の進みぐあいと平仄が合うではないかと、こんな感じでもって私は見ております。したがって、恐らく四党の最高責任者の方々も、いわゆる減税問題についてまさか赤字国債の増発によってそれの穴埋めをするという考え方には立てない今日でございますから、いろいろな工夫で財源をも含めた御勉強がなされるであろうというふうに私は見ております。したがって、いわゆるゆがみ、ひずみ、重税感というものを除去するための見合いの財源はどうであるかということは、これからの税制調査会の討議の中で秋には結論が出していただけるものではなかろうかというふうに期待をいたしておるところであります。
  65. 野口幸一

    野口委員 大臣が言われておることは、それなりに、言葉そのものとしては理解をいたしますが、しかし、今日の状況で考えてみますと、減税をするにはそれなりの原資が要るということはだれが考えてもわかることでありまして、そうしますと、現在の税の仕組みの中で増収を図ることが可能であるとするならばどこのところでそれをやろうとするのかということになってまいります。  簡単に考えまして、所得税を減らすというのでありまするから所得税は増額できないわけであります。そうなりますと、現在の税制をそのままにしたと仮定いたしまして、所得税以外のところで財源をふやしていくということを考えるならば、一体どこにこういうことを求める場所があるいはまた税目があるのだろうか、もう一歩突っ込んでこう考えてみますと、到底私の頭では考えられない状況があるわけでありまして、当然新しい税目を何らかの形でこしらえなければ増収はできないのじゃないだろうか。増収というよりもむしろその原資を見出すことはできないのじゃないだろうか。  それで、大臣がそれぞれ答弁しておられる中にある言葉なんですが、これは多段階方式でもって改正をしなければならぬだろう、こういう言葉がございまして、多段階とはどういう意味かということについては私もまだ詳細に承っておらぬのでありますのでお答えをいただきたいのでありますが、さらに、今も言われましたニュートラルの意味につきまして、答申は増減税額をはっきり示さないということが予想される、厳密に数字がとんとんになるかどうかということはわからない、難しい、しかし考え方はおおむね平らかであろう、つまり全体としてはプラス・マイナス・ゼロというようなことがニュートラルという意味なんだ、こういうことであろうかと思うのでありますけれども、それに間違いございませんでしょうか。
  66. 竹下登

    ○竹下国務大臣 まず、いわゆる多段階ということについてひとつこの際考え方を申し上げておきたいと思います。  まず、ニュートラルということを前提として、全体を整合性のとれた体系とするために包括的な一体的な答申をちょうだいして、改革案を同時に策定して法制化する必要があろう、ただ、個々の税の性格上、実施のタイミングについては必ずしも一致しないこともあり得るかもしれない。しかし、納税者の方に大体こうなっていくんだなという展望を示すためにも、法制化は単年度であって、あるいはこれはいつの時代でもありますが、その実施期日等が違って完全に平年度化するには多年度がかかるのじゃないかと、こういう意味で申し上げたわけでございます。したがって、法案の作成そのものを多年度でやっていくということではなく、法案は単年度でまとめ、タイミングがございますから、それぞれの税目が完全平年度化するためにはあるいは六十二年は無理で、六十三年もかかるというようなことがあり得るのじゃないかというふうに整理してまいりました。  それから、このニュートラルというのは、全体として整合性、プラマイゼロみたいな感じの整合性のとれたもので、そこで所得税で何ぼ減税、何何で何ぼ増税とかいうようなことは、恐らく税制調査会の、どんな答申をいただいてもいいという建前ではありますが、税制調査会の従来の経過から、その性格からしてそういう形の答申は出てこないのではなかろうかと思っております。
  67. 野口幸一

    野口委員 突っ込んでお聞きをしますが、その場合、地方税の部分も含めて税制改正をやる、そういう税制改正とは、国税だけではなくて地方税も、あらゆる税に対してメスを入れるということでしょうか。
  68. 竹下登

    ○竹下国務大臣 御指摘のとおり、これは元来が内閣総理大臣の諮問機関であって、国税、地方税の全体のあり方についてという御諮問を申し上げる性質の審議会でございますから、自治省の関係ではございますものの、当然私はやはり地方税の改正というようなものも六十二年度税制であわせて行われるものではあろうというふうに思っております。
  69. 野口幸一

    野口委員 今の御答弁の限りでは中身は余りはっきりしませんけれども、はっきりと言えるのは、いわゆるニュートラルといいますか、収支がゼロになるというところまではいかなくとも大体平準化するというような意味合いだろうと思うのです。そういたしますと、税制を仮に直した、そのことによっていわゆるひずみや不公平感あるいはまた不公正感等が仮に除去されたということにいたしましても、それでは、残る百四十数兆円のこの国債残高は、今度はどのようにしてそれを減らそうとなさる構想でしょうか。
  70. 竹下登

    ○竹下国務大臣 建前は、これはいわゆる減債制度というものがあるわけでありますが、御指摘のとおりそれを停止しておるわけであります。ことしの場合は予算繰り入れも若干行わしていただいておる。だから、ここに一つの問題点がございます。したがって、減債制度自身を見直すべきじゃないか、こんな議論もありますが、今日まで、財政制度審議会等の意見で、惰性のように毎年繰り入れを停止していただいておりますものの、減債制度の根幹はこれは維持すべきではないかと、こう言われておるわけでありますので、私どもとしては、新たなる要素としては、それは確かに株式売却が一つはございますが、六十二年度予算編成のときまでにどうするか、こういうことについて、それこそ衆知を集めた議論をしなければならない問題だというふうに思っております。  もとより、これは景気等が大変よくなって、いわゆる自然増収部分が多くなってくるということはこいねがわしいことでございますけれども、全体に世界の中の先進国がみんなインフレのない持続的成長ということで、極端な高度経済成長というものは見込むべき時代ではないということを考えれば、自然増収に過大な期待を持つことも避けなければならぬという考え方で、毎年毎年の予算編成の際に衆知を集めて対応していきたいというふうに思っております。     〔委員長退席、中西(啓)委員長代理着席〕
  71. 野口幸一

    野口委員 一部でささやかれておりますように、国の資産をある程度売却をして赤字を埋めるべきではないかという議論がございます。土地あるいは国有林、先ほどちょっと大臣もおっしゃいました株の売り払い等があるわけでありますが、そういう考えはこの際ございますでしょうか。
  72. 竹下登

    ○竹下国務大臣 法律でお許しを得て国債整理基金に直入するという仕組みになっております株式の売却、これは方針として確定をしておるわけであります。  それから、一般論としての毎年の税外収入、すなわち土地の処分等、これも積極的にやろうということにはなっておりますが、この問題、例えて申しますならば現在の国鉄用地ということになりますと、これは必ずしも国の資産とは言えない。そして国鉄そのものがだんだん努力して減るにいたしましても、一応の試算として十六兆七千億という負債を持ち越す、こういうことになりますと、またその財産処分というのはそちらの方も念頭に置いていかなければならぬ。そうすると、その他の行政財産の処分ということになりますと、ただ公共用に供するもの以外のところでこれは選択肢が狭められておる。地方公共団体でそれはどうでも使いたいとおっしゃるものを競争入札で値段をつり上げて売るというわけにもいかぬ。そうしますと、公共用資産以外のもので、財政当局の方からいえば可能な限り民間活力の用にも供しながら余計税外収入を上げていくという努力もこれからは続けていかなければならぬ問題であります。  ただ、国有林までということになりますと、私も国有林の一部でもう市街化したところがあって、そうしたものが対象になるというようなことは常識的にわかりますが、伝統的国有林を皆売っ払っちゃうという考え方にはこれは立ちにくい。せいぜい毎年お願いしておりますあの「ふれあいの森林」でございますか、立木の分収権をお買いいただくというようなところが限度なのかな、こんな感じでございます。
  73. 野口幸一

    野口委員 またの機会にこの問題は引き続いて質問させていただくことといたしまして、次に移らしていただきたいと思います。きょうは、日本たばこ業株式会社社長の長岡さんに御無理を申し上げまして御出席いただきましてありがとうございます。たばこ消費税の関係につきまして、これから少しく御質問をさせていただきたいと思います。この問題は社長だけではなくて主税局にもかかわる部分がございますので、その際は主税局の方からお答えをいただきたいと思います。  まず、一番初めにお伺いいたしたいのは最近の喫煙者の動向、全国的にはどういう傾向があるかということであります。私が調べさせていただきましたところ、喫煙者率はだんだん下がっておりまして、今までの記録からいきますと、最低を示しているということだそうでございますが、その真偽をぜひ社長からお聞きをしたいと思います。  それから、その下がっていく傾向でありますが、どのようなプロセスと申しますか過程を経て下がっているのかということもちょっとお聞きをいたしたい。  同時にまた、外国たばこの販売状況はどのように進んでいるのか、この点。
  74. 長岡實

    長岡参考人 お答え申し上げます。  一番新しい資料で申し上げますと、昨年の五月に実施いたしました全国喫煙者率調査というのがございます。調査の対象は当然のことながら成年人口に対する喫煙者人口の比率を調査したものでございますが、男子は六四・六%、これはここ数年間漸減傾向でございます。女子は六十年度は一三・七%、これはここ数年間横ばいと申し上げてよろしいと思います。両者合わせまして全体といたしましての喫煙者率は、六十年の調査では三八・三%でございます。これはその前の年が三八・九ということでございまして、微減ではございますけれども、ここ数年間の傾向を見まして、全体の喫煙者率は低下傾向にあるということが申し上げられると思います。  今後の見通しでございますが、私ども大きな流れとしては、やはりこういった微減の傾向が続いていくのではないかというふうに考えております。  その中で、また後ほどお答え申し上げる機会もあろうかと思いますけれども、アメリカを初めといたします輸入品のたばこの売れ行きがどうなるかといったような問題が絡んでまいるわけでございますが、概略の数字で申し上げますと、昨年の四月に公社が会社になり、専売制度が廃止されて輸入自由化が行われるこの時点を待たずに、過去五年間ぐらいの期間で見まして、輸入たばこは年率一五%程度で伸びております。一方、全体の消費が先ほど申し上げましたように横ばいないし微減でございますから、我が社の製品の方がそれだけ若干数量が減っておるというのが大きな動きでございます。
  75. 野口幸一

    野口委員 たばこの中で特に外国たばこが最近特に売り上げが増加傾向にある。大体昨年とことしと比べましてどのくらいの比率で伸びていますか。
  76. 松原幹夫

    ○松原政府委員 お答え申し上げます。  先ほど長岡社長から御説明ございましたように、外国のたばこにつきましては、対前年度比で大体一四、五%伸びておりますが、現在のところ日本市場における輸入たばこのシェアは約二・四%程度になっております。
  77. 野口幸一

    野口委員 それは今後増加をしていくだろうと思いますが、大体どのような上昇率で伸びていくものと推定しておられますか。
  78. 長岡實

    長岡参考人 この点につきましては、実は制度改正の法案審議の際にも再三御質問をちょうだいいたしまして、私どもといたしましては、大体どのくらいの率で伸びていって何年後に輸入品のシェアがどの程度になるかということは、正直に申し上げまして私どもとしてもなかなか推計が不可能であるということを申し上げた記憶がございますけれども、ただ、そのときに私が付言して申し上げましたのは、今回の制度改正の一つの大きな理由として、日米貿易摩擦を中心に外国からの門戸開放というようなことを強く言われたことがございまして、その結果、専売制度を廃止して輸入自由化をいたしたわけでございますから、過去四、五年間一五%ぐらいの年率で伸びておったという事実とあわせ考えますと、やはりもう少し伸びる率はふえていくのではなかろうか。制度改正後何年とははっきり申し上げられませんが、数年間の間に我が国における輸入品のシェアが五%程度になることは覚悟しておかなければいけないのではないかということを申し上げた次第でございますけれども、制度改正後やがて一年になりますが、今までのところでは過去五カ年間の平均年率とそれほど大差がない様相を呈しております。したがいまして、今のところ、制度改正後に先ほど申し上げましたお答えを変更して何年後にはどうも何%になりそうだというところまで申し上げる段階には至っておりません。  重ねて申し上げますが、私どもとしてはやはり営業体制を将来どう整えていくかという問題にも関係ございますので、数年のうちには五%くらいのシェアになることを覚悟した上で今後の体制を整えていかなければならないというふうに考えております。
  79. 野口幸一

    野口委員 いずれにしても、日本たばこ産業株式会社にとっては売り上げが増加をしていくという傾向にあるわけではないわけです。  そういう状況の中で、例えば日米間の貿易摩擦の問題にしましても、今の関税率二〇%というのが未来永久に維持されるかどうかということについては、私どもは維持してもらいたいと思いますが、これはいろいろな関係がございます。大蔵大臣にも言っておかなければならぬのですけれども、これをいじってもらうと大変なことになりますから関税率を下げてもらっては困るのです。しかし、いろいろな関連からこれも下げざるを得ないというようなことが仮にありとするならば、またもっと急速に外国たばこの販売量がふえていくということも頭に入れて考えておかなければならぬだろう、こう思います。  そこで、これは一昨年のいわゆるたばこ産業株式会社に移行をいたしましたときの本委員会におけるところの法案の決定に当たりまして、次のような附帯決議を出しておるわけであります。十項目でありますが、「たばこ消費税の税率については、現行の納付金率の水準に配意し、国・地方の安定的な財政収入の確保という観点のほか、今後におけるたばこ消費の動向等にも即して適正な水準を維持するよう努めること。」これに対して大蔵大臣は、承知をいたしました、そのように努力をさしていただきます、こうおっしゃったのがおととしのつい先の話であった。舌の根も乾かぬうちに今回のこの値上げ、これは附帯決議に対する全くの冒涜であろう。いかがなものでありましょうか。大臣はその点どう考えておられますか。
  80. 竹下登

    ○竹下国務大臣 御指摘のことは、私もある意味において甘んじて受けなければならない私に対する批判だ、あるいは非難だと受けとめても結構だと思っております。  それで、理屈になりますが、私が幾らか支えられた一つのことは、「現行の納付金率の水準」そしてその次に「国・地方の安定的な財政収入の確保」、その「地方」という言葉について、今度はその消費税、一本九十銭、四十五銭と四十五銭というものは確かに臨時異例の措置として行いますが、地方の財源に使いますというのが幾らか心の救いだったかな、こういう感じは私も持っております。  しかし、この問題は実際のところ政府税調の答申をいただいた後であり、ぎりぎりの地方財政計画の際に最終的に浮かび上がった、赤字公債で充てるか何か考えるかという選択肢の中で行ったことでありますので、税調に対してはこれまた事後承認をしていただきたい、こういうことになりましたし、会社、労働組合あるいは諸団体、また国会のプロの皆さん方に対しても何ら事前に通報するいとまもなく行ったということについては、私は政治家として、その手法については今後このようなことは断じてしてはならぬというふうに思っております。ただ、私は大蔵大臣という立場上、法を犯して悪いことをしましたと言うわけにはまいりませんので、その点は平に私なりに誠心誠意弁解にこれ努めておる、これはもう毎日弁解してもいいと思っております。
  81. 野口幸一

    野口委員 私が質問する前にそちらの方から謝られるのですからどうしようもないのですけれども、しかし、手続の点については私もそれを肯定する立場ではもちろんございませんから、今の謝っていただいたことで了解というわけではございません。しかし、現実に法案として出てきておるわけでございまして、そのことで私どもも議論をさしていただかなくてはならぬと思っておるわけでございます。  そういうことなんですが、今私のお聞きしましたのは、しわ寄せでもうどうしようもない、国債発行がたばこの値上げかという選択に迫られてやったんだ、こうおっしゃる。しかし、先ほどもちょっと申しましたように、今の附帯決議では確かに「国・地方の安定的な財政収入の確保という観点」があるんだということは認めておりますけれども、同時に、やはり「今後におけるたばこ消費の動向等にも即して適正な水準」このことも十分頭に入れてやってもらわぬと、今も長岡社長とのやりとりを大臣もお聞きになっていらっしゃったと思うのですが、しかし、たばこそのものが売れないようになってきている現状から見ますと、単に収入源の確保という見方からだけの安易なたばこの値上げというのは困るということをはっきりと申し上げたいのであります。  同時に、税調にも相談しなかったどうのこうのというのがありますが、一番相談してほしかったのはやはりたばこ産業株式会社であろうと思うのであります。これが抜けていたということが私は一番嫌な感じがするところであります。もちろん裏では電話ぐらいかけて、長岡さんどうじゃいというようなことはあったのだろうとは思います。まあ長岡さんもかつては大蔵官僚の一人でありまするから、そこはそこで意思相通ずるものがあったのかもわかりませんが、いずれにいたしましても、表向きには御相談がなかったということになっているわけであります。  それはさておきまして、そういう傾向にあるときに、いわば一方的に押しつけられたたばこ産業株式会社としては、この値上げをどのように見ておられ、どのような観点でこのことを承知せざるを得ないなと言うに至ったのか、絶対拒否をしたいという気持ちがまだ残っているのかどうなんですか。
  82. 長岡實

    長岡参考人 たばこ消費税の税率をお決めになりますのは政府並びに国会でございますから、そのことについて私からとやかく申し上げる立場にはございませんけれども、たばこ事業の経営者の立場から申しますと、今回の増税、それを受けてのたばこの値上げ必至といったようなことは、私どもの経営には重大な影響があるというふうに考えております。
  83. 野口幸一

    野口委員 まだ国会で本法案が審議中でございます。まだ値上げすると決まってないのです。にもかかわらず、あなたのところは三月一日付で値上げの申請をしているじゃないですか。こんなばかなことありますか、あなた。まだ国会で値上げするかしないか――それは議案としては出ていますよ。三月の一日には本委員会ではまだその議論に入ってないのです。そのときに早々とあなたの方は値上げの申請をなさっている。これは逆に言うと、いわゆるたばこ事業法施行令第三条に基づいて、第三条は「会社又は特定販売業者が法第三十三条第二項の小売定価の認可を受けようとするときに同項の規定により定める小売定価の変更の実施の時期は、当該認可の申請の日から六十日以上を経過した日でなければならない。」こうなっておるものですから、五月から大蔵省の方はいわゆる税を取りたいということを言われておるので、その日に合わして三月一日におやりになったのだろうと思いますけれども、これは確かに越権行為だと思うのですよ。それはあなたのところのたばこ産業株式会社が、コストが高くなったからこれではやっていけない、もう少し値上げさしてほしい、こういうことでおやりになるのはいつおやりになっても構いませんけれども、今回の値上げは明らかに税を取られるということによって生じた小売定価の値上げであります。そうならば、国会でまだ決まってない段階に、まだ本委員会にも提案されるかされないというような状況のときに、されるであろうということでこれを三月一日に値上げ申請をなさるということは、私はもってのほかだと思うのですね。私たちから言うならば、国会軽視も甚だしいと言わざるを得ないと思うのですが、どうですか。
  84. 長岡實

    長岡参考人 今回の増税を私どもがどう受けとめるかでございますけれども、ただいま野口委員の御質問の中にもございましたように、私どもの見通しといたしましては、この増税を受けまして小売定価の改定をお認めいただきませんと私どもの営業の成績に大変大きな影響があるということは事実でございます。また一方、国及び地方公共団体の財政収入の確保の点、あるいは過去、昭和五十五年、五十八年等の定価改定の実施の時期、これは過去の例を見ますと大体五月ぐらいを値上げの時期と考えておりました。それで、まさに御指摘のとおり、これから法案が国会で御審議をいただく段階で値上げの申請をするというのはどうかという点はございますけれども、ただいまお触れになりましたように、たばこ事業法の施行令で申しますと、六十日を経過した日でないと定価の変更が認められないということになっておりますために、私どもはやむを得ずその六十日前に申請をいたしたわけでございます。  ただこれは、理屈を申し上げれば、国会で法案が成立した暁にはという一種の停止条件つきの認可申請であろうかと存じます。私どもとしてはこの認可申請を積極的に公表するつもりは毛頭なかったわけでございますけれども、たばこメーカーの方がこれを報道機関に明らかにいたしまして、報道機関からの強い要請もございましてやむを得ず発表した次第でございます。
  85. 野口幸一

    野口委員 それじゃ申し上げますが、認可の申請をなさった申請書の中に値上げをする理由はどうなっているのですか。
  86. 長岡實

    長岡参考人 現在認可申請書そのものを持っておりませんので私の推定ではございますけれども、今回たばこ消費税が増税されることになった、御承知のように一本九十銭でございますけれども、マージンを考えますと、私どもは一円値上げいたしましても私どもの会社の手取りは全然ないという状態でございますので、恐らく増税を理由として定価改定をお願い申し上げたものと存じます。
  87. 野口幸一

    野口委員 やはりそうでしょう。決まってないことを決まったことにしてあなた申請しているのじゃないですか。おかしいですよ、あなた。幾らツーカーの仲であっても、国会でまだこの法案が通過もしていない、審議もしていない段階で、値上げされるものだということにして――それはそうなるかもわかりません、わかりませんが、前もって、さかのぼって申請するというような行為は、これはあなた、この大蔵委員会をばかにしたような形ですよ。そう思いませんか。あなたのところのコストが上がってきてそれで値上げ申請をなさるというのなら、これは自由です。しかし、今回の理由が、あなた自身がおっしゃったように税の改定によってやるのだということになれば、税の改定が決まった後におやりになるのが正しいのじゃないですか。どうなんですか。
  88. 長岡實

    長岡参考人 御指摘の点は大変ごもっともだと存じますけれども、私どもの立場からいたしますと、値上げの時期がおくれればおくれるだけこれは経営には大変マイナスの影響があるわけでございまして、施行令の規定が「六十日」と書いてあることが果たして適正であるかどうかという問題にも触れるかもしれませんけれども、まだ国会の審議が始まる前に申請せざるを得なかったという事情は御理解を賜りたいと存じます。
  89. 野口幸一

    野口委員 せざるを得なかったということを御理解せいといったって、それはできませんよ。決まってないときに、あたかも決まったことにして出して、それを理解しろといったって、それは無理ですよ。それでは、施行令が悪いのだといって逆にあなた食ってかかっているのですか。施行令を直さすというふうにやろうと思うのだろうけれども、それならそれをそういうようにやってからやるべきであって、そのことを表向きの理由にしてやられるというのはおかしいと思いますよ。余りいじめるとあなた血圧が上がると悪いし、私も血圧が上がると嫌だからやめますけれども、本当におかしいです。  だから、こういう事態というものは、先ほどの大臣じゃありませんけれども、二度とやってもらっては困る。決まってもいないのに申請書を出すというようなことがあってはならないし、それはどう考えても手続上おかしいですよ。そうでしょう。増税と決まったときに初めて申請を出せるのでしょう、値上げの理由は増税なんだから。そうでしょう。決まってもいないときにそれを出すというのは、どう考えてみてもおかしいですね。これは正論だと思うのです、はっきり言って。だから、それはあなた方の失敗であって、今後はそういうことはいたしません、それはきちっと決まった日からやります、また法令の定めるところによってやらしていただきますということになるわけでしょう。最後にそれだけ答えてください。それで終わります。
  90. 長岡實

    長岡参考人 お答え申し上げます。  別に開き直っているつもりはございませんけれども、法令の整備等とあわせまして、そのような御指摘を受けることが次回以降にないように全力を傾けたいと存じます。
  91. 野口幸一

    野口委員 それではどうするのですか。
  92. 松原幹夫

    ○松原政府委員 本件につきまして私どものサイドからの御説明を申し上げたいと思います。  確かに先生おっしゃいますように、現行のたばこ事業法施行令におきましては、値上げをする六十日前に定価変更の申請をしなければならない、このようになっております。したがいまして、メーカーあるいは特定輸入業者の中には、現在報道されておりまするたばこ消費税の値上げが恐らく行われるであろうと見込みまして申請をした者があるということは事実でございます。しかし、私どもといたしましては、増税法案を成立させていただいたその時点におきまして、申請期日について特例措置を設けたい、このように考えております。したがいまして、成立した増税措置を前提といたしましてその時点で改めて定価申請等がございますれば、その定価変更の申請をその時点で審査をさせていただく、このように考えております。したがいまして、これからのその政令の措置につきましても、この増税法案が成立いたしました時点において措置をいたしたいと考えておりますので、私どもといたしましても国会の審議を無視してやろうという考えはございません。
  93. 野口幸一

    野口委員 具体的に言えば、この六十日というのを短くするというわけだ。そうでしょう。
  94. 松原幹夫

    ○松原政府委員 現在、政令については、この増税法案の審議の経過を見ながら政令案の作成を準備させていただいておりますが、政令案については増税法案が成立しました時点において決定さしていただこうと思っております。
  95. 野口幸一

    野口委員 その次は、たばこ消費税というのは負担するのは国民であります。それで、たばこを買ったときに同時に税金を払う、そして同時に税を納めるという行為をするわけであります。この問題、これからしゃべっていきますが、これは一昨年の、源泉徴収義務者が源泉徴収した際、その税金は次の納付期日までに一体どういう形をとるのかという質問にも関連いたします。  長岡社長御存じのように、小売業者は現金と引きかえにたばこを会社から買うわけです。売れる前に買うわけですね。ということは、税をあらかじめ徴収をして売ったとして、小売人はその税金も含めてたばこ産業株式会社にお払いをする、そういうことですね。そうしますと、税金の前納を小売業者はやっておるわけです。発生しないうちに、税の前納をやっておるわけです。  今の小売店が持っております店舗保有量というのは、あなた方も御存じのように、一定の量をその小売店の規模に応じて店に置いておきなさい、抱くだけではだめですよ、もういつも商品は一定の数量置いてください、こういうのがございますね。それはもっともな話だと思うのです。決してその制度が悪いとは言わない。ところが、それの代金は既に支払ってしまって持っている。現金購入ですからね。そうなりますと、今度はその納めた税金をあなたの方は一体どうなさるかというと、あなたの方は大体三十日から平均して四十五日間、納付期日は翌日の三十日ですか、そうなりますと平均して四十五日間会社の中で温めておられるわけです。その間に当然利子がつくわけであります。あなたの方はその分がもうかるんですね。ところが小売人は前もって税を納めて、そして小売するときに一人一人の方から金を徴収して穴埋めをする。まさに逆転といいますか、主客転倒だ。とにかく納税者の国民が納めるものをいわば先に支払いをして、協力をしているわけです。協力をしているたばこ小売人は何ら恩恵がないのですけれども、それを集めてかっさらっていくたばこ産業株式会社は、四十五日間その利息を稼ぐ、利ざやを稼ぐ、こういうことになっているわけであります。不合理と思いませんでしょうか。
  96. 水野勝

    ○水野政府委員 御指摘のように、たばこは消費税の一種でございますので、その税額部分は最終的には消費者に転嫁して御負担をいただくというのが税の本来の性格でございます。それは実質的な性格でございまして、一方税法の建前、原則と形式的な建前といたしましては、たばこその他、物品税もそうでございますが、消費税といたしましては、その課税物件を製造場などから移出いたしましたときに納税義務が成立し、納税申告と納付をいただくということでございますので、そこの点の実質的な転嫁関係と税の納付関係とは一応分けて考えていただければと思うわけでございます。
  97. 野口幸一

    野口委員 そこで問題なんですが、そうなれば当然お酒もそうなんですけれども、酒の小売店が酒の売上代金を支払うのは、いわゆる月末締めて、早いところで翌月の十日、遅いところになりますと先付小切手三カ月、日本酒だともっと長くなるところもあるという状態であります。だから、小売店も売り上げを一定の期間持っていてそして支払いをするという制度でありますから、言うならば消費税を一部分お預かりしてその間の利息を稼ぐことができるということになるわけです。ところが、今はたばこ小売店というのは先に金を払っているのですから、そのことでは何の恩恵にも浴していないわけであります。先付で支払いをしている。先に商品と引きかえに金を払っている。これは会社と小売人との関係だから国会で言う話ではないとおっしゃるかもわからないけれども、関連して言うわけですけれども、日本たばこ産業株式会社も、普通の商法に倣って当然後払い、いわゆる月末勘定で後払いという制度はできないものなのかどうなのか、それをひとつ御考究いただけないか。
  98. 岡島和男

    岡島参考人 お答え申し上げます。  小売業者の代金決済方法でございますが、これは現品の引き渡し時に現金または小切手ということになっておるわけでございます。今野口先生がおっしゃいましたように、先にお金をもらうということにはなっておりません。これは推測でございますけれども、たばこの代金の支払いを販売組合なんかがつくっております信用組合発行の小切手で行う場合に、信用組合の方に預金をするということがございます。それはあくまで預金の話でございまして、私どもの会社とたばこ小売店の間はあくまで現品の引き渡し時に現金または小切手ということで、これはキャッシュ・オン・デリバリーと申しますけれども、同時の方式ということで、先ほど言われましたような先に代金をいただくということはないというふうに承知をいたしておるわけでございます。
  99. 野口幸一

    野口委員 先に払っているというようなことは言っていませんよ。品物と引きかえに金を払っていると言っているのです。それは誤解してはだめですよ。そんなことは言っていないですよ。
  100. 岡島和男

    岡島参考人 どうもその点誤解がありましたので大変失礼いたしましたが、その次の問題といたしまして、小売の方が代金を会社に払って会社が実際に納税をするのはもう少し後ではないか、こういう御指摘であろうかと思います。  これは専売制度下におきまして、長い間の商慣習として、たばこについて先ほど申しましたキャッシュ・オン・デリバリーの方式が定着をしているわけでございます。専売制度下で定着してきたこういう代金の決済方法だけではなくて、私どもが臨席配達をするとか、一律のマージン制をとっているとか、定価制もそうかもしれませんが、そういう取引条件全体を制度改正後も続けているという関係があるわけでございまして、それは販売組合の方々の御理解を得ましてそういう方式をとらせていただいておるわけでございます。  今申しましたような仕組みを変えることになりますと、大変に膨大な事務手数と経費が要るわけでございます。私どもといたしましては、先生御承知のように今輸入品との競争を大変に激しくやっているわけでございます。そういう輸入品メーカーがどういうふうに出るかということも見ておかなければなりませんが、現在のところ、輸入品の方はマージンは私どもより率としては低い状況でございますけれども、向こうもキャッシュ・オン・デリバリーをとっておるわけでございます。向こうがどう出るかということとの競争関係というものが常に私どもの頭にあるわけでございます。それから今までずっと続けてきた取引形態というもの全体をどういうように考えていくかということにつきましては、そういう競争条件下であるということを前提にしながら今後の検討課題だというふうに思っておる次第でございます。
  101. 野口幸一

    野口委員 専売公社の制度が一般の民間の株式会社になったことでもあり、今までの商習慣がそうだったからといってかたくなにそのとおりやっていくというのもどうかと思うのです。ましてや日本たばこ産業株式会社がもう民間企業であるにもかかわらず、その預かった金というものを四十五日間保有しておってその間利息を稼いでいるわけですけれども、その利息は自分のところの収入になっておるわけです。これはどこの会社もそうなんですけれども、それはお取りになってもいいのです。いいんだけれども、それならば、例えば一般の普通の商取引は大体月末決済でやっておるわけですね。先払いというのはないのですよ。先払い、現品と引きかえという商法はほとんどないですね。たばこだけが旧来の商法を踏襲しておるわけです。これはやはり本当に、今も言われましたが、金が要るか要らないかということは別にして、もうそろそろこのやり方は積極的に一遍検討してもらわなければ困ると思うのです。少なくとも今日の商取引の常識から考えまして、現品と現金とを即時やるというような商取引は今ほとんど行われていないというような状況でありましょうし、この辺のところはやはり積極的な御対応をぜひお願いしたいということを申し上げておきたいと思います。答弁はいいです。  それで一たん値上げをいたしますと、今度は大体どのくらい消費量が減るかということですね。この前値上げしたときに大体どのくらい減りましたか。
  102. 長岡實

    長岡参考人 前々回と前回、五十五年定価改定、五十八年定価改定のときの例を申し上げたいと思いますが、五十五年定価改定のときには、もし定価改定がなければこのくらい販売できたのではないかという見込み数量が三千九十億本でございました。それに対して販売実績は三千四十億本、すなわち数量で五十億本、率で一・六%の減少でございました。また前回の五十八年定価改定では、定価改定がなかったならばという場合の販売見込み数量は三千百億本でございまして、販売実績が三千六十億本、すなわち数量で四十億本、率で一・三%の減少でございました。  しからば今回どうだろうかということでございますけれども、どうも私どもといたしましては前回並びに前々回よりもたばこの消費全体の傾向というのは一層厳しくなっておりまして、四十億本、五十億本の減少では済まないのではないかというふうに考えております。
  103. 野口幸一

    野口委員 どのくらいを見込んでおられますか。
  104. 長岡實

    長岡参考人 私ども、もし定価改定がなければ昭和六十一年度の事業年度でどの程度販売ができるであろうかという見込みを立てておったわけでございますけれども、その点から比べますと大体百億本程度の減少につながるのではないかということを考えております。
  105. 野口幸一

    野口委員 仮にその百億本といたしましたら、ある人は百五十億本とも言われておるのですけれども、まあ百億本としましょう、百億本にした場合、減収額は金額にしてどのくらいになりますか。
  106. 水野勝

    ○水野政府委員 税収の面につきましては、ただいまたばこ産業の社長の方から御答弁ございましたようなそうした消費の動向等を十分に参考にして減収額、増収額を立て、全体としての見積額を策定いたしておるわけでございます。
  107. 野口幸一

    野口委員 そんなことを聞いていないですよ。そんなことは当たり前じゃないですか。幾ら減るんだと言っているのです。
  108. 長岡實

    長岡参考人 売り上げで申しますと、百億本本数が減れば売り上げでは千億円近い減少になりますけれども、当然のことながらコストもその分だけ減ったりいたしますので、どの程度収益に影響があるかという点については、一方において本数は減りますが、定改がお認めいただければ金額的にはある程度ふえるという要素もありまして、会社の経営全体としては、財源確保の点もございますので、売上額についての減少はでき得る限り最小限度にとどめたいというふうに考えております。
  109. 野口幸一

    野口委員 わかります。わかりますが、少なくとも百億本なり百五十億本なり売れなかったら、その分だけの金額が減ってくる。実際ならばどういう状況になってくるか、あるいはまたそれが何カ月かかったらもとに復するかということも考えなければならぬ等々いろいろあるわけでありまして、まだまだこのなぞをきちっと追及する時間が欲しいのですけれども、ほかのことも質問しなければなりませんので、この辺でやめさせていただきます。  いずれにしましても、先ほど来申し上げていますように、今回の値上げに関係していろいろなことが私は不愉快でならないわけであります。大臣に言う前に先に大臣の方から謝りがありまして、今回以外はやらないんだ、こういうあれでありますから、もうそれに言ういとまがなくなってしまったわけでありますけれども、いずれにしてもこの問題は今後尾を引く問題であります。ことし限りというようなことを言っておられますけれども、恐らく税制の抜本の見直しの際にはこれが定着するような方向に持っていかれるだろうことは必至でありまして、先行きも同じように、まあ値下げがあるとは夢にも思っておりませんけれども、少なくともこういう見方……(「信じなきゃ」と呼ぶ者あり)信じなきゃといったって信じられませんよ。そういうような状態だと思いますが、いずれにしても今日の取り扱いのあり方、あるいはまた、それを受けた日本たばこ産業株式会社のありようについても、もう少しいろいろな立場からの御検討が必要だと思うのであります。  たばこ小売店が前もって金と現品と取引している。税の立場から言うならば一切の税を前納しているというような立場をとっているのに対して、会社の側はそれを四十五日間懐に入れて利ざやを稼いでいるというような不合理もありますし、全体的にやはり改正をしていく方向、商取引で今までの慣行だと言ってしまえばそれまでであります。しかし、今までは専売公社としてあるいは専売局として国の機関からの一つの仕事としてやっておられたわけでありましょうけれども、今日は民間会社になられたわけですから、一般の商取引のありように照らし合わせてやっていくのが正しいと思いますから、ひとつその辺はぜひ御考究をいただきたいということをお願い申し上げまして、たばこ産業株式会社関係を終わらせていただきます。  時間も余り残っておりませんが、最後になりまして恐縮ですが、先ほど同僚議員の伊藤君からもお話がございました赤字法人の欠損金の繰り越しの一部停止の問題であります。これは今日の中小企業の実態を全然無視したやり方だと思うのですが、中小企業の実態をどのように把握しておられますか。今、なるほど中小企業の中には皆さん方の考えておられるような脱税行為だとかそういうようなものは皆無とは言い切れませんけれども、それはもう微々たるものであると思います。しかし、全体には、今日、倒産件数も非常に多くなりまして中小企業が非常にあえいでいるという状況にあることは御存じのとおりだと思うのです。  そこで、このような措置をすることによってどのような影響が出るか、あるいは先ほどの主税局長の答弁によれば、何ら影響がないような、五カ年間の繰り延べで関係ないんだというような言い方をしておられますけれども、それは全く事実に反すると私は思っているわけでありまして、どのように中小企業というものを把握しておられるのか、ひとつその辺のところからまずお聞きしたいと思います。
  110. 水野勝

    ○水野政府委員 税制上は、中小企業につきましても税制としてできる限りの配慮はいたしておるところでございまして、企業関係の租税特別措置による減収額約四千億円ございますが、その四割以上は中小企業者向けの特別措置によるものでございます。  今回の欠損金の繰り越し一時停止につきましては、これは中小企業者ということを対象としたものではございませんが、もちろん会社の数としては中小企業が圧倒的に多いわけでございますから、中小企業の方に御負担を願う部分はあるわけでございます。ただ、この制度は直近一年の分につきまして一時停止をしていただく、その対象となりますのは、当然のことながらその事業年度といたしましては、その繰り越し欠損金の控除前では黒字である中小企業と申しますか、法人に御負担をお願いするということでございますので、赤字である法人の足を引っ張るというほどではないというふうにも考えておるわけでございますし、またそれはその一年は停止でございますが、なお四年間は控除の機会があるということでございまして、私どもこの制度が企業に全く影響がないとは申しませんが、この厳しい財政事情のもとでぎりぎりお許し願える限界ではないかというふうに考えておるわけでございます。
  111. 野口幸一

    野口委員 それは欠損がまず第一年度にあって、それが後は翌年からずっとなかったというようなことであれば私はそのことはわかりますけれども、その翌年もまた赤字だ、そのまた翌年も赤字だということになれば、永久にこの欠損金の繰り入れということはあり得ないということになりますならば――今日の中小企業の企業収益の状況から見ましてそういうことは当然考えられる状態であります。ある年だけぽこっと欠損金が出たというんじゃなくて、非常に難しい今日の経済情勢、円高・ドル安のあおりを食って、まともにやっていってもなかなか収益が上がらぬという状況の中で、追い打ちをかけるような今回の仕打ちは、まさに中小企業者にとっては死ねとも言わんばかりのありようであります。恐らく主税局長はまともに逝くことは難しい、そのくらいの恨みを買うものであると思いますが、本当に中小企業の方々にとっては死活問題として今日私どもにも非常に陳情をなさっていらっしゃるわけでございます。これはぜひとも撤回をしていただいて、新たな知恵のある方針をお出しいただかぬと、とてもじゃないが私どもはのめる内容ではないということを申し上げたいと思うのです。その意思ありや、もう一度。
  112. 水野勝

    ○水野政府委員 今回の措置は、昭和六十一年度税制改正に関しますところの税制調査会の答申にもございますその趣旨を踏まえ、また厳しい財政事情のもとで二千二百億円の計上をさせていただいて、これが重要な昭和六十一年度予算編成なり税制改正の一環をなしておるところでございますので、ぜひともこれはひとつ御提案申し上げたところに沿いまして御理解を賜ればと思うわけでございます。
  113. 野口幸一

    野口委員 この問題は、今はしなくもおっしゃいましたように、税制調査会答申をもらってやったのだということでありますが、税制調査会の答申をもらわなくともやられるときもあるのですから、何も答申だけ、その分だけ守らなければならぬわけじゃないでしょう、たばこの方はなくてもやれたのですから。一つの法案の中で、片方は答申があったからやるのだ、片方は答申がなくてもやる、そんなおもしろいことがあってもしかるべきものなんでありましょう。だから、そこはあなた自身が決断すれば、税制調査会なんかすっ飛ばして決められるんじゃないですか。どうなんですか。
  114. 水野勝

    ○水野政府委員 たばこにつきましても、大臣から御答弁申し上げておりますように、事後的ではございますが税制調査会の理解、追認を得ておるところでございます。その後におきましては、これを税制改正の一環として織り込み、昭和六十一年度予算の歳出歳入の中に織り込ましていただいているところでございますので、ぜひとも御理解をいただきたいということでございます。
  115. 野口幸一

    野口委員 理解できませんね。あなた、片一方では税制調査会を抜きにして勝手にやって、片一方では税制調査会を盾にしてこれは守らなければいかぬ、あるいはこういうふうにやるんだ、そんなばかげたことが一つの法案の中に挟まっておるようなことはありませんよ。一つの方は勝手に出した法案で、片一方は税制調査会を経てきた問題だから変えられないのだというのだったら、あなたの独断でやって後から事後承認をもらえばいいんじゃないですか、税制調査会なんて。そうでしょう。まして今度は、たばこ産業みたいによその方にまで頼みに行かなくてもいいんです、中小企業者に相談しなくてもいいんです、やめるのは。税制調査会をすっ飛ばしたらいいだけです。勇気を持ってこれを引き下げていただきたい。  時間が参りましたので私も終わります。言いたいことを言ったようですけれども、実は本当に矛盾している今回の租税特別措置法の内容であります。初めに大臣から先手を食らわせて先に謝られたからあの問題は言わなかったですけれども、少なくとも片一方は税制調査会の議を経なくて自分で勝手にやったという部分があり、片一方は税制調査会を経てきたものだから絶対これを通してほしいなんというようなことを言っても、税制調査会は宙に浮いていますよ。だから今後はそういうようなことのないようにしてもらわなければいかぬということをきつく申し上げますとともに、本法案のなかんずくこの赤字法人の欠損金の繰り入れの一部停止については、いさぎよく撤回なさることをお願いいたします。  以上で終わります。
  116. 中西啓介

    ○中西(啓)委員長代理 古川雅司君。
  117. 古川雅司

    ○古川委員 ただいま議題になっております租税特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、若干の質問をするものであります。  この法律案の内容につきましては、提案理由の説明によりますと、四つの柱がございまして、第一は、内需の拡大等に資するため、第二に、租税特別措置の整理合理化等のため、そして第三に、法人税率の特例制度の適用期限の延長等、そして第四に、たばこ消費税の税率の引き上げということになっているわけでございますが、提案理由の説明の前段に、「税制全般にわたる抜本的見直しとの関連」ということを述べておられるわけでございます。     〔中西(啓)委員長代理退席、委員長着席〕  さらには「税負担の公平化、適正化を一層推進する観点から」というふうにお示しになっているわけでございますが、ことし一月十四日の閣議決定による「昭和六十一年度税制改正の要綱」という資料によりまして、「昭和六十一年度の税制改正(内国税関係)による増減収見込額」の試算を見ましても、平年度千五百四十億、初年度三千四百十億という増収を見込んでいるわけでございまして、この法律案全体としては、これだけの大きな増税を目指すものというふうに当然とらえるわけでございますけれども、まずその点から御答弁願います。
  118. 水野勝

    ○水野政府委員 委員指摘のように、この法案によりますところの増収額は、昭和六十一年度三千四百十億円でございます。この点につきましては提案理由でも大臣から申し述べました。また一月十四日の「税制改正の要綱」におきましても、その冒頭におきまして「現下の厳しい財政事情に顧み、税負担の公平化、適正化を一層推進する観点から租税特別措置の整理合理化等を行うほか、たばこ消費税の税率を臨時措置として引き上げること」をお願いして、このような改正内容となっておるわけでございます。
  119. 古川雅司

    ○古川委員 そこで、この「税制全般にわたる抜本的見直しとの関連」ということになりますと、当然財政再建との絡みが出てくるわけでございますが、まずその点からお伺いを進めてまいりたいと思います。  昭和六十五年度に赤字国債依存の財政体質から脱却をする、そのために「財政の中期展望」をお示しになっているわけでございますが、六十二年度から毎年度一兆三千百億円ずつ赤字国債を削減しなければならない。実際には五十九年度には五千二百五十億円、六十年度は七千二百五十億円、六十一年度は予算案によると四千八百四十億円の減額しか達成されていない。しかも六十年度では、補正予算において四千五十億円の追加発行を余儀なくされているわけでございます。六十五年度をめどとした財政再建は初めからつまずいているのではないか。これまでの国会論議におきましては、大蔵大臣もその点は強く否定をしてきておられるわけでございますが、この国会ほどいわゆる「増税なき財政再建」という言葉がこれまで以上に多く使われた国会もないのではないかというくらい財政再建論議が高まっておりますが、大臣の所見をお伺いいたしたいと思います。
  120. 竹下登

    ○竹下国務大臣 確かに、今御指摘のありました六十五年度赤字公債依存体質から脱却する、これは容易ならざる問題であるということは事実であります。そのことはまさに「中期展望」なり「仮定計算例」なり一定の前提を置いたものにいたしましても、ごらんいただければ明らかであると思っております。さはさりながら、では現在のような財政状態をそのまま放置しておくならば我が国経済の活力自体の弱化も招くおそれがある。そうなれば物価とか雇用とか、また経済各方面に悪影響を及ぼしてしまいますので、いわば国際情勢の変化等に適切に対応していく力もなくなっていく。したがって、財政改革を進めて財政の対応力の回復を図るということは現下の最重要課題であるということはやはり変わりありません。したがって、六十五年度脱却という財政改革の努力目標の達成にはやはり全力を尽くしていかなければならぬ、基本的にまずそのように考えます。  で、六十五年度という目標年次、これを先に延ばすということをすれば確かに財政改革の進展は緩やかなものとなりますが、一方、一層の特例公債の増発を招くということになりますので、長期的に見ればやはり後世代の納税者に負担を回すその比重がますます大きいものになっていくということを言わざるを得ない。そして、現実問題として、一たびこの旗をおろしますと、それこそ今まで財政状態からして我慢に我慢をいただいておる、それの反動としての歳出増大圧力というものが吹き出しだとすれば、これまで進めてきた歳出合理化問題はまさに水泡に帰してしまう。そのような環境の中にありますので、私もかたくななと言われるほどにこの旗を引き続き掲げ続けて現在に至っておる、こういうことになろうかと思います。
  121. 古川雅司

    ○古川委員 大臣は、今国会で一環して今お述べになったような所感をお述べになっているわけでございますが、衆議院の予算委員会でも、我が党の政審会長正木委員質問に対して、今大臣がおっしゃったように、かたくななまでに財政再建の旗を掲げて進んでみたいというふうにお答えになっているわけでございます。しかし、一般にはもはや破綻しているということは既定の事実である。しかも、表面にあらわれない借金として厚生年金等への繰り入れ停止など後年度負担の繰り延べ額も十兆六千億円になるというように指摘されているわけでございまして、六十五年をめどにするというその再建策、財政再建を放棄するということは無謀なことでありますけれども、この六十五年という年次については再建策を考え直すということ、その含みを今以上にはっきりする段階に入ってきたのじゃないか、そういう感じを受けるわけでございます。重ねてお伺いいたしますけれども、いかがでございますか。
  122. 竹下登

    ○竹下国務大臣 古川さん御指摘のように、これは六十五年、容易ならざることであります。実際問題、年々努力をしてきましても、毎年毎年「中期展望」なり「仮定計算」の数字が、いわゆるこの平均して置く数字そのものがふえてきておるわけでありますから、それを六十五年までに集約して実現するというのは確かに容易ならざる問題でありますが、かといって、これを仮にもし何年か延ばしていきますと、その間の赤字公債は累増し、また一つには歳出削減意欲というものに水を差す結果にもなりかねない。そういうことを考えますと、新たなる要因としまして「中期展望」にも載せていただくことのできたいわゆるNTT株式売却等々を下敷きにしながらもまだ頑張り続けていかなければならないというのが、非常に狭い選択の幅の中で背負い込んでいかなければならぬ宿命ではないか、こんな感じすらいたしておるところであります。
  123. 古川雅司

    ○古川委員 大臣の御答弁の中にも十分そのお苦しみが察せられるわけでございますけれども、これは何も我々野党の側から指摘をしているということだけではなくて、最近は特に与党の中からも財政再建の目標や財政運営に疑問を投げかける声が出ているというように、これは報道でございますが、私たちも受けとめているわけでございます。また、財界の稲山経団連会長も、二月十日の定例記者会見で、増税なき財政再建を放棄するわけではないが、それ一点張りでは無理があるというふうに述べたと伝えられております。  本年の「財政の中期展望」は、結論として政府の財政再建策がもはや実現不可能になっているという現状を私たちに示しているわけでございますが、これをいわゆる政府の責任として問うのではなくて、むしろ公共のサービスの低下であるとか、あるいはしからずば増税かという、そうした負担を国民の選択に預けた格好になっている。この点に非常に危惧を抱くものでありまして、その点はどうなのか、見解をお示しいただきたいと思います。
  124. 竹下登

    ○竹下国務大臣 確かに「中期展望」あるいは「仮定計算」は一定の前提を置いたものであることは事実でございますが、その示す要調整額、こういうものの中にいわば負担増をお願いするか、あるいは逆に言えば、国民の皆さん方の側から見れば、最終サービスを受けるのも国民、負担するのも国民、であるならばそれには甘んじていくか、あるいはなおサービスそのものをいわば我慢するか、言ってみればそういうところの那辺に国民の皆さん方の合意が形成されるかということで、いわば国民の皆さん方の前に、国会の予算審議の手がかりに使っていただこうという趣旨からしてこのような「中展」とか「仮定計算」をお出ししておるわけであります。したがって、今古川さんと私が行っているような問答があるいはブラウン管を通じ、あるいはその他の手段によって国民の側に浸透する中に国民のコンセンサスというものをお互いが見定めていこう、こういうことになるわけであります。  ただ、税、こういう問題になりますと、初めから増収策を目標とするということではなくして、シャウプ以来いろいろ今日までゆがみもできました。ひずみもできました。そしてまた重圧感も現実ございます。そういうものをもう一遍改めて抜本的な角度からこれに対する見直し作業をしていただこうじゃないかと、その雰囲気といいますかその環境も、国会の問答等があったからこそ熟して、したがって、それを今諮問を申し上げて熱心な御審議をいただいておるさなかであります。  したがって、この問題につきましては、いずれ答申が秋にはいただけるでございましょう。それをまた政策選択の場にのっけて御議論をいただきながら、やはり毎年毎年の努力の中で財政改革の目標を達成していきたい。したがって、私どもは少しでも新たなる要素が出るようにと思って「中期展望」なり「仮定計算」なりをつくるわけでありますが、残念ながら今のところ、従来と違った新しい要素としては、先ほど来申し上げております一応の前提に基づいて評価をいたしました株式売却収入というものが「中期展望」等の下敷きにやっと上ってきたというのが今日の段階であります。
  125. 古川雅司

    ○古川委員 今日の円高デフレと物価の安定に伴いまして法人、所得税の税収が伸び悩んでおります。六十一年度に巨額の歳入欠陥が生ずるおそれが出てきたのじゃないか。六十五年までに赤字国債の発行をゼロにするために予算の編成時に赤字国債発行額の圧縮に努めておられるわけでありますが、実際には歳入欠陥が二年続けて発生をしてきたという財政事情、これはむしろ今後悪化する公算が多いのじゃないかという感じがするわけであります。  これは三月三日の新聞報道でありますけれども、今審議をいたしておりますこの六十一年度予算案、既に歳入欠陥のおそれを大蔵省自体がお認めになって非常に警戒心を高めている、このように報道をされているわけでございますが、この点はどのような認識で受けとめていらっしゃるのか。これは予算案が国会を通って成立をした後、見直しなり検討に入っていくということなのか、その辺をひとつお示しをいただきたいと思います。
  126. 水野勝

    ○水野政府委員 昭和六十一年度予算は、税収につきましては、先般御承認をいただいております昭和六十年度補正予算で見積もられました昭和六十年度税収を基礎に、それからまた昭和六十一年度につきまして政府経済見通しで予想されております経済の諸指標、こういったものを基礎にいたしまして適正に見積もったものでございます。  御指摘の法人税につきまして申し上げれば、その見積額は、税制改正を織り込まないところにおきましては六十年度当初予算額を一千億円程度下回る水準にも見ておるわけでございます。全体としての税収の伸びは、税制改正を織り込みませんと五・五%、これは結果として算出されます弾性値から見ますと一・〇八と、一・一を下回る水準に、これは結果の数字でございますが、なっておるわけでございます。全体といたしまして、現時点で私ども、この見積額は適正なものであると考えておるわけでございます。
  127. 古川雅司

    ○古川委員 局長のそういう御答弁をいただきますと、新聞の報道だけを盾にとって重ねてお伺いするのも非常に厄介なことなんですが、報道では、六十一年度は大体一兆円から二兆円という漠然とした数字を挙げまして、歳入欠陥に対する懸念を示しているわけでございます。これは大蔵省当局として全く考えてもいない、予測もしていないことがこういう記事になったのかどうか、その辺も甚だ疑問なところでありまして、その点を重ねて御答弁をいただきたいと思いますし、そうした歳入欠陥も心配をされている財政状況の中で、先ほどのお話に戻るわけでございますけれども、財政再建の目標を六十五年度にしっかり据えていくということは、とりもなおさず、先ほども少し申し上げましたけれども、これは大幅なあるいは大型な増税がこれから六十五年までの間に必ずあるんだという国民の皆さんの受けとめも甚だ根拠のないものではないと思うのです。これまで、その点はどちらかというと政府の思惑として見え隠れをしていたわけでございますが、どうもこれが見え見えになってきたという感じを受けるのでございますが、その点はいががでございましょうか。  あわせて大臣にお伺いをいたしますが、緊縮財政が今日のこうした停滞をもたらしている、あるいは財政の悪化をさらに推し進めているという批判がございますけれども、これには当然政府としても対応をしていらっしゃるわけでございますが、どうも明確ではございません。  いろいろな動きがあるわけでございますけれども、これまた新聞の報道によりますと、与党の宮澤総務会長が、六日、緊縮財政を見直す時期だという発言をしておられます。これは決して非公式な発言ではないと思うのでございます。私はそこに立ち会ったわけではございませんので詳細は存じ上げませんが、自民党の党本部で開かれた党中央政治大学院の研修会での講演であるというふうに伝えられております。緊縮財政を見直す時期というよりも、むしろ積極策へ転換を主張しているというふうにもとれるわけでございますが、与党の総務会長の御発言として大臣はこの点をどう評価なさるのか。  問題を幾つか続けてお伺いをいたしましたけれども、御答弁をいただきたいと思います。
  128. 竹下登

    ○竹下国務大臣 まず、党内また党内のみならず党内外で経済運営についてさまざまな意見があることは事実であります。それは、まさに民主主義の世の中でいいことだ、党内民主主義でもあり、議会制民主主義でもあり、また、国全体が民主主義でありますので、さまざまな御意見が出てくるのを私は決して嫌がるものでも否定するものでもありません。そういう意見の中で集約して政策選択を行っていくわけでありますから、それはそれなりに、まさに自由で民主な党でございますから、結構なことだというふうに私は思っております。  それから税収等の見積もりの問題でありますが、考えてみますと結局五十四年、五年というようなときは、いわばかつての公債政策の一番いい目が出たのがそのころではなかったかな、第一次石油ショックも第二次石油ショックも日本だけが、だけがというのは少し非礼かもしれませんが、どこの国よりも早くこれをある程度脱却することができた。それがしわが寄ったところが今日であり、その間の五十六年、五十七年というものは三兆円と六兆円の歳入欠陥があったわけでありますから、これはまさに世界の同時不況というものがもたらしたことが大きな原因ではなかったかというふうに私は思います。そうして五十八年、五十九年、これはどうやら、これは大蔵省の省議で決めた数字でも何でもございませんが、よく私が一%は誤差のうちなんということを言っておりましたが、まあ誤差のプラスの方で過ぎたわけであります。今、古川さんの念頭にありますのは、先般の補正で四千億円の赤字公債の増発によっていわば税収の減を補ったということでございますから、ほぼ一%ではございますものの、確かに、私なりに見積もりがそれだけ経済動向によって違ってきたことは事実であります。したがって、かつての五十六年、五十七年の経験を持っております我々でございますから、先ほど水野局長から申しましたように聞き取り調査をいたしましたり、そして諸指標を参考にしながら下から積み上げて見積もったものでございますので、まだ予算審議中にもう歳入欠陥確実ですなんということは、これは言うべくもございませんが、これは現状において最も適正な見積もりであるということを私は信じております。  ただ、先般の四党幹事長・書記長会談の何項目目でございましたか、今後の経済動向の変動に応じて適切な財政金融等、弾力的な対応をしなければならぬぞよ、こういうことが指摘されておりますので、これからも景気動向等を見ながら、なかんずく、予算が通過いたしますや否やこの執行問題等を含めて国会の意見を反映しながら経済財政運営の誤りなきを期していきたい、このように考えております。
  129. 小泉純一郎

    小泉委員長 古川委員の質疑中ではございますが、この際、公定歩合の引き下げ問題に関し、大蔵大臣から発言を求められておりますので、これを許します。
  130. 竹下登

    ○竹下国務大臣 ただいま日本銀行政策委員会からの届け出がありました。  日本銀行は、本日午後の政策委員会において、公定歩合の〇・五%引き下げを決定。これは三月十日の実施でございます。したがって、この結果、公定歩合は四・〇%となった、こういうことでございます。  したがって、これに伴いまして預金金利を引き下げる方向で、本日今から、ここでサインをしまして、いわゆる日本銀行政策委員会に対して発議を行う、こういう手順になります。  御質問の途中でございますが、お許しをいただいて御報告をいたします。
  131. 古川雅司

    ○古川委員 ただいま大蔵大臣から、公定歩合が四・〇%に引き下げられたという政策委員会の決定の報告がありました。  私も、ちょっと法案に関する質問を中断をいたしまして、この点について二、三お伺いをいたしておきたいと思いますが、これに関連して他の金融政策をとる予定はあるかどうか、まずその点からお示しいただきたい。
  132. 竹下登

    ○竹下国務大臣 今回の公定歩合引き下げが景気の維持拡大に資しますように、預貯金金利につきましても、可及的速やかに公定歩合の改定幅にフル連動する形で引き下げられることが望ましいと考えます。したがって、民間貯金金利につきましては金利調整審議会、十日にお願いできるようでございます。それから郵便貯金金利につきましては郵政審議会、これはまだ日にちは今わかっておりませんが、これからお願いをいたします。その審議を経て決める、こういうことになるわけでございます。したがって、郵政審議会は、招集後七日以内に開かれることに省令でなっておるそうでございますけれども、それらを含めまして、可及的速やかに招集の手続はとっていただかなければならぬであろう。具体的には、その議を経なければいわゆる金利問題というのは確定しないわけでございますけれども、手順はそういうことになろうかと思われます。
  133. 古川雅司

    ○古川委員 こういうことに決定をいたしましたので、自後の手順をひとつ速やかにお進めいただくように希望をいたします。  きのうも、夕方にこの公定歩合の報道がなされる直前まで、予算委員会の分科会におきましても大蔵大臣は公定歩合の引き下げについては否定をしておられました。これはもう当然軽率には口にできない非常に大事な問題であるわけでございますが、きょうはたまたまこうして大蔵委員会の開会中にそうした情報が入りまして、ここで今後の対策についてお示しをいただいたわけでございますが、あわせてもう一つここでお伺いいたしておきますと、昭和五十三年の円高のときには三・五%まで引き下げられたという経緯がございます。今回の円高による経済状況を本日発表になりました四・〇%ということで乗り切れると考えていらっしゃるのかどうか。状況によってはさらに引き下げということも、なかなか口にはしにくいと思いますけれども、五十三年の例を考えればあり得るというふうに認識をしていいのかどうか、その点をひとつお示しをいただきたいと思います。
  134. 竹下登

    ○竹下国務大臣 今回の下げ幅で公定歩合は四・〇%となりますが、日本銀行の専権事項として判断され、日銀政策委員会で決定された措置は、現在の状況下においては最善のものであると判断されておると思っております。これは為替相場だけでなく、いわゆる経済、物価、そして為替相場等を総合的に判断されるわけでありますが、今後もいわば内外の金融情勢というものについては注意深く見守っていなければならぬというふうに思います。  ただ、私の体験上、一つ加えますと、五十三年に行いましたときには三・五%というのがあったわけでございますけれども、いろいろな他の金利体系と、まあ言ってみればちぐはぐができまして、それで若干困ったという反省も実は持っておることはおります。  ただ昨日、ドイツ時間の六日でございますが、ドイツは〇・五%引き下げでございますから〇・三になった。ドイツとオランダが大体いつも一緒でございます。それからフランスは公定歩合という制度ではございませんが、これも引き下げられたというような、一応、協調利下げじゃございませんけれども、政策の協調の中の一環としての利下げというようなものが行われておるということ――失礼いたしました。〇・三という言葉を使ったそうでございますが、三%の間違いでございましたので、それだけは訂正させていただきます。
  135. 古川雅司

    ○古川委員 こうして四・〇%ということになりますと 今大臣がこれを評価していらっしゃいましたとおり、この事態によりましていわゆる総合経済政策を早期に実施をするということになるのかどうか、この点をお伺いしておきまして、引き続き法律案の内容の質問に移っていきたいと思います。
  136. 竹下登

    ○竹下国務大臣 十二月に行われました総合経済対策、俗に第二弾と言っておりましたが、その後一月三十日の公定歩合引き下げで、実質は先週の月曜日になりますか二十四日から、二十六日間かかって短期プライムレートにまでやっと連動したということであります。しかし、従来七十五日くらいかかっておりますから、その点は早い方だと言えば言えるわけでございます。したがって、その効果がさらに十二月の対策の押し上げに役立つであろうというふうな期待を持っておったところでありますが、今度一月から言えば再利下げ、こういうことになりますので、この効果ができるだけ早く出るようにお願いをしなければならぬと思います、審議会等々を初めといたしまして。そういたしますと、まあ、過去の体験、先般の例からいたしまして四月ぐらいまでには出そろうかな、そうなると、それが経済対策というよりも、その後の経済運営の下支えにはなるだろうと思っております。  ただ、御案内のように、去る四日の幹事長・書記長、四党の申し合わせで、予算が通過した時点でとにもかくにも経済の変動に目配りしながら適切な財政金融の弾力的措置を行えという、その一つの金融の弾力的対応というのはそのころ出そろうのではないかな。それを今度は執行の問題等でどう組み合わせていくか、それをどういう対策として打ち出すかということになりますと、私一人で決めるわけにはまいりませんが、そういう経済運営の中における、その一部である財政運営の一つの下支えになるであろうという効果は期待できると思います。
  137. 古川雅司

    ○古川委員 では、法律案の内容について質問を続けます。  第一の柱の「内需の拡大等に資するための措置」でございますが、これは、一つには「住宅取得者の負担の軽減を図るため」とされております。住宅減税の制度は年々拡充はされてきているわけでございますが、実際の適用人員は住宅取得控除だけをとっても、五十五年が九十九万人、五十六年が九十一万人、五十七年が七十七万人、五十八年が六十五万人、五十九年は四十七万人と、一貫して減少傾向をたどっておるわけでございます。これは、「民間給与の実態」あるいは「申告所得税の実態」という資料によるものでございます。これを大蔵省はどう分析していらっしゃるのか。きょうは建設省は呼んでおりません、住宅着工の状況についてはきょうはあえてお伺いしないわけでございますけれども、いわゆる内需拡大の決め手の一つに住宅があることは当然であります。これは試算でありますけれども、十万戸をふやす経済効果というのは、波及効果も含めて四兆四千億円というふうに言われております。これは、GNPを一・六%押し上げる、それによる税の増収は五千九百億円、これは一つの試算ではありますけれども、こうした効果評価されているわけでございます。先ほど実態を申し上げたわけでございますけれども、大蔵省はこの法案の提案に当たりましてこの点をどう考えていらっしゃるのか。まず、その点からお伺いしてまいります。
  138. 水野勝

    ○水野政府委員 住宅取得控除は昭和四十七年度から実施をされておるわけでございまして、その後の経過、適用状況等を見ますと、今、委員指摘のように、数としてあらわれておる数字はそのような推移をおおむねたどっておるわけでございますが、その間制度につきましてはもろもろの変化があったわけでございます。特に最初はローン分に対する控除ではございませんで、住宅を新築した場合にはとにかく最高二万円までの控除があるといったような制度でございました。それが途中からローンに対する控除ということに切りかわってまいりまして、ある時点ではそれが並行しておりましたが、最近に至りましては、ローン控除一本に重点的に絞るというふうに絞ってまいりましたので、この制度適用者の推移は御指摘のような数字にはなっておるわけでございますが、こうした制度はそういった重点的に絞る方向に適用を向けてまいったわけでございますので、私どもとしてはこの制度がそれ相応の効果があったと考えておるわけでございます。  今回は、さらに、この点につきましては、従来の住宅取得控除制度を改めまして住宅取得促進税制を設けまして、ローンの償還額でなくてローンの残高に対しまして適用する。また、従来ございました足切り額は今回全廃いたしまして、とにかくローンの残高のある方には広く適用するというふうにいたしておるわけでございます。それからまた、適用対象も、公的借入金につきましても拡大するといったことで、現在の財政状況からいたしましてはぎりぎりいっぱいの措置でございます。これが全体としての内需拡大策とも一緒になりまして相当の効果があると私ども期待をいたしておるところでございます。
  139. 古川雅司

    ○古川委員 大変景気のいい御答弁ではございますけれども、現在の鎮静化した住宅の着工状況の中では、これはよほど大型の措置をしないと、いわゆる内需の拡大と呼べる税の効果は薄いと思われるわけです。少なくとも、ぎりぎりいっぱい一%という財政事情を強調されましたけれども、これが一%でなく二%であればもっとはっきりした効果が期待できるのじゃないかという感じをまず持つわけでございます。  この内需の拡大に結びつく住宅投資の促進のためには、これは税制というのはあくまで後押し的な役割を持っているわけでございまして、昨年十月十五日の経済対策閣僚会議の「内需拡大に関する対策」、ここでも言っておりますとおり、住宅金融公庫の融資枠の拡大、宅地開発の円滑化。金融面はもちろん宅地供給の拡大も含むいわゆる抜本的な土地対策というものが並行して進められなければならない。その必要を強調しているわけでございます。特に住宅供給の現状を全国的に見渡してまいりますと、これは一概には言えませんけれども地方ではほぼ満足、あるいはところによってはもう余剰の水準にある。しかし、一方では、大都市圏でなお遠狭高という状況にあるわけでございます。こうした大都市圏と地方との二極化の傾向がだんだん強まってきているわけでございまして、そういう点では、今回のこの措置が局長の今お示しになるように果たして効果を上げ得るものかどうかという点に大きな疑問を持つわけでございます。この措置によって、この制度によって、一体どういう階層のどういう人たちが実際に住宅の着工に踏み切れるのか、恩恵を受けていけるのかということに対しては当然大蔵省も研究済みだと思いますから、その点の御指摘があればお伺いをしておきたいと思います。
  140. 水野勝

    ○水野政府委員 先ほど申し述べましたように、今回の措置は、住宅ローンを持っておられる方、住宅を取得し、その際ローンのある方につきましては足切りを適用することなく全体の方に適用するということでございまして、今回の措置が幅広く適用され、その効果を発揮するものと期待されておるわけでございます。  ただ、これが全体として定量的にどのくらいまでの効果があるかということにつきましては、なかなかそこらの点につきまして具体的な数字でお示しをするというのは計算、試算等が難しい面もございますので具体的には申し上げられないわけでございますが、相応の効果があると期待をいたしておるところでございます。
  141. 古川雅司

    ○古川委員 これは、今後の推移を見守っていかなければならないと思うのでございますが、我々国会議員の中でもいまだに借家住まい、アパート住まいしている人はたくさんいるわけでございまして、この中でも例えばこの措置によって、じゃ住宅を建てようか、家を建てようかということになるのかどうかということもこれは一つ疑問でございます、蛇足を申し上げましたけれども。  この内需拡大に資するための措置としてもう一つ、民間活力を活用するために東京湾横断道路の建設に関しての措置がございます。これは大変恐縮ですが、時間の都合でまとめてお伺いをしてまいりますけれども、このように受けとめていいのかどうか、確認をしていただきたいと思うのでございます。  東京湾の横断道路建設に際していわゆる第三セクター方式の特定会社による発行が認められている特別公共事業債、いわゆる割引債でありますが、そもそも現在の割引債自体が税金逃れの節税商品として、特にマル優限度を超える一部の高額所得者の人気を集めているのは事実でございます。今回このような割引債を現行の優遇税制を見直すことなくさらに特例として認めるというのは、これは非常に極端な言い方かもしれませんけれども、国が長期の税金逃れに手をかすことになりはしないか、不公平税制を助長するということになりはしないかという点がまず一点。  それから、これは他の事業にはむやみに拡大しないとしても、いわゆる内需拡大を民間活力の活用ということに頼らざるを得ない今日の状況、事態から考えますと、こうした同様の要求がこれから続出してくるんじゃないか。それに対して政府はどう対応していくのか。これは金融市場であるとかあるいはまた税体系に非常に大きな影響を残すと思うわけでございます。これが二番目。  それから三番目の問題として、特定都市鉄道整備準備金制度を創設することになっておりますけれども、結局はこれは運賃の値上げを前提として、その増収分を無税で積み立てて工事費に充てようとする。これはいわゆる民間活力ということに名をかりた利用者への負担の転嫁にならないか。  この三点についてまず政府のお考えをお示しいただきたいと思います。
  142. 水野勝

    ○水野政府委員 第一点の割引債の点につきましては、御承知のようにこれは転々流通いたします商品でございまして、特殊な、極めて特異な金融商品でございます。これが一六%の源泉徴収、分離課税となっておるわけでございますが、この点は、発行時の源泉徴収でございますので、一六%というのはある意味では相応な水準ではないかということも考えられるわけでございます。それから、これは法人に取得されます場合は分離課税で一応源泉徴収はされますが、分離課税で終わるということではございませんで、全体としての法人税の課税対象に入ってくるわけでございます。  それから、こうした種類のものが続々と御要望が出てくることはないかという点でございますが、現時点におきましては私どもとしては、これは極めて異例なプロジェクトである、これは他の例にはしないという了解のもとに御要望をいただき、また、そのように対処してまいるというのが現時点での私どもの考え方でございます。  それから特定都市鉄道準備金でございますが、あらかじめ運賃の中に織り込ましていただいて、これをもって工事費に充てるということのようでございます。したがいまして、ある意味では前取り的に運賃を利用者の方からいただくという色彩はあるわけでございますが、そのような工事が終了いたしました際には、その部分につきましては運賃の立て方の中で相応の配慮をするように制度が仕組まれているようでございますので、御指摘のような点も配慮されているというふうにも解釈できるのではないかと思います。これは税制ではございませんので、私どもとして完全に責任を持ってお答えを申し述べる立場にはございませんが、そのようにお聞きをしているところでございます。
  143. 古川雅司

    ○古川委員 今、この点について三点お伺いをしたわけでございますが、これは今後この法律が成立をして運用していくに当たって懸念をされる事柄でございまして、きょうは特にこれは強く指摘をいたしまして、今後の問題の論議に残しておきたいと思います。  この件に関連をいたしまして、今局長の御答弁の中で、今回の措置は極めて異例なものとしてお示しになったわけでございますが、今後他のいわゆる民間活力を活用していくプロジェクトとして大蔵省として受けとめる、抱え込んでいくというお考えを持っている具体的な推進の手法といいますか、そういうものを既にお持ちなのかどうか、その点はいかがでございましょうか。
  144. 水野勝

    ○水野政府委員 御指摘のございました東京湾横断道路に関しますプロジェクトにつきましては、こうした種類のものはこのプロジェクト限りということで私ども現時点では考えさせていただいておるわけでございます。  もう一つ、民間活力と申しますか、民間事業者の能力の活用につきましては、本日政府部内で成案が得られまして閣議決定をいたしておるところでございまして、いわばこれは草の根民活と申しますか、幅広い民活として活用されるものにつきまして、税制としても御協力をできる範囲内におきましては措置を講ずるということにいたしているものがございます。  これは税制としては一三%の特別償却を認めるというものでございますが、具体的なものとしては、この法案にも規定されておりますところの種類の設備、具体的に申し上げますと、研究開発関連施設、それから国際経済交流関連施設、情報化、電気通信高度化施設、その他もろもろの施設でございます。またそれは、その設置者が第三セクターであるか、第三セクターの設置する施設に関連して設置される施設であること、それからまた、その事業費が一定規模以上のものであること、こういった要件の充足されるものにつきましては私どもとして特別償却制度の適用をしてまいりたい、またその一部につきましては登録免許税の免税措置を講じてまいりたい、このような考え方で対処いたしておるところでございます。
  145. 古川雅司

    ○古川委員 では、法律案の内容の第二の柱になっております租税特別措置の整理合理化等の問題でありますが、これはいろいろお伺いしたいことがあるのですけれども、一つだけ、整理合理化について今後に残された作業のプログラムと申しますか、その点ここでお示し願えれば御答弁をいただきたいと思います。     〔委員長退席堀之内委員長代理着席
  146. 水野勝

    ○水野政府委員 現在、税制調査会に総理からの諮問がございまして、税制につきましては抜本的な見直しを行うということで作業をいただいておるわけでございます。したがいまして、租税特別措置につきましてもそうした基本的な方向に従いまして検討がなされるものと考えておるわけでございます。ただ現時点では、税負担の見直しの中におきましてもゆがみ、ひずみ、重圧感、そういったものをまず取り出して、それに対する是正策を中心検討するということでございますので、この抜本的改革作業におきましては、具体的に政策的な措置についての方向はまだ審議はなされていないわけでございますが、今後とも税負担の公平化、適正化、これを推進するということは税制の基本的な方向でございますので、今後この検討時期が参りました際には税制調査会で基本的な検討が行われるものと思うわけでございます。  ただ、租税特別措置につきましては、昭和五十年代に入りまして大幅な歳入欠陥を生ずるようになりましてから、負担の公平ということをより一層厳しくお願いをするという観点から昭和五十一年度改正以来かなり抜本的に見直しを行わしていただいてきておるところでございますので、現時点におきます租税特別措置につきましてはかなり縮減されたものとはなっておるわけでございますが、なお引き続きましてその見直しは行われていくべきものというふうに考えておるわけでございます。
  147. 古川雅司

    ○古川委員 第三の柱は法人税率の特例制度の適用期間の延長等でありますが、法人税率の特例制度についてはその適用期限を一年延長する。  まずこの点につきまして、法人税の基本税率は、昭和五十九年度の税制改正によりまして二年間の据え置きとして一・三%引き上げられて四三・三%になったわけでございますが、この適用期限の延長というのはいかにも便宜的であるという批判があるわけでございまして、公約違反であるというふうにも指摘をしなければならないわけでございますが、これは一体どういうことであるか。むしろこれは法人税法の改正というような手法によるのが筋じゃないかということもありますので、あわせて御答弁いただきたいと思います。
  148. 水野勝

    ○水野政府委員 御承知のように、現在の法人税率の一・三%割り増し税率は、昭和五十九年度税制改正等におきまして、厳しい財政事情のもとで相当規模の所得税の減税を行う反面、財政状況をこれ以上悪化させないということの措置といたしまして、法人税それから酒税等の負担の引き上げをお願いしたわけでございます。  ただ、我が国の企業の国際競争力、そういった観点から、経済情勢、動向等につきましては流動的な要素が当時もあったわけでございます。当時の税制調査会の答申等を見ますと、企業の税負担水準といたしましては相応の水準には参っておりますけれども、いろいろな財政事情からすれば、恒久的に引き上げることは別として、一時的であればなお若干の負担の引き上げをお願いする余地があるのではないかというふうな方向の答申がまとめられておるわけでございます。  そうしたところからの考慮もございまして、当時、これを法人税法の改正ということでなく、租税特別措置法ということで二年間の期限をもって実施されたわけでございます。その時点におきましても、これは二年という約束で、後はこれを廃止するということではございませんで、その二年後の全体としての財政事情、経済動向を見て、その時点で判断をするというふうなことで発足をしてまいったものでございますが、今回その期限が今月末で到来するわけでございます。やはり現時点で一・三%を外します際には五千億近い減収額を生ずるわけでございまして、現在の厳しい財政状況からいたしますと、ここ一年間さらに延長をさしていただければということでございます。  ただ、別途、税制調査会を中心にいたしまして税制の抜本的な見直し作業が行われておるところでございますので、その全般の検討の中でこの法人税の負担水準も見直し、検討が行われるものと思うわけでございます。そういったこともございまして一年という臨時措置とさしていただいているわけでございまして、今後の負担水準につきましては、申し述べました抜本改革の中での税制調査会の審議の中でさらに検討が行われるものと考えておるわけでございます。
  149. 古川雅司

    ○古川委員 この特例制度が二年間の措置で行われたということで、これは二年たったらそこで廃止するということではない、したがって今回この適用期限を一年延長するということはやむを得ないし構わない、そういう御答弁でございましたけれども、これは今局長が御指摘のとおり、今日の厳しい経済状況、財政事情から考えれば、五千億円という非常に大きな税収になるわけでございますから今回一年延長をするということになるのでありましょうけれども、一年と区切ったというその意味を税制の抜本改正ということに絡めてお答えになりました。これは、今後こうした適用期限を一年延長するという繰り返しになっていかないのかどうか。来年度もこういう事態に当然なるんじゃないか、あるいは税制改正の中で別の形での増税を既に期待もし、またそれを見込んでいるんじゃないかというふうにもとれるわけでございますが、その点いかがですか。
  150. 水野勝

    ○水野政府委員 ただいま申し述べましたように、抜本改革との関連もあり、一年という期限でお願いをいたしておるわけでございます。ただ、この四三%というのは留保所得分に対しますところの税率でございます。配当分につきましては三三・三%ということになってございます。  それから、抜本的改革といたしましては、法人税につきましてはその全体としての負担水準という問題もございますが、先ほど御指摘のございました租税特別措置、さらには引当金償却制度、耐用年数の問題、その他もろもろのものが全体とし検討されるものと思うわけでございます。全体の中でどのような方向に取りまとめられ、その中で税率の問題がどう方向づけられるかということは、まさに今後の税制調査会の検討結果によるところでございます。これらの点につきましては、現在税制調査会特別部会のもとでの専門小委員会検討がなされておるところでございまして、そうした報告の御提出を待って私どもとしても十分に研究してまいりたいと思っているわけでございます。
  151. 古川雅司

    ○古川委員 税制論議につきましてはいつも税制調査会ということを強調なさるわけでございまして、皮肉な言い方をすれば、大変便利な機関であるという感じを持つわけでございます。  この第三の柱のもう一つの問題点である欠損金の繰越控除制度につきまして、直近の一年間に生じた欠損金に限り適用を停止する措置を講ずることになったという、この点についてお伺いを進めてまいりますけれども、欠損金の繰越控除制度というのは、初期の投資負担を担税力の面から企業基盤が安定する後年度に回して企業の存続を保障していくというもともとの趣旨があったわけでございます。今回停止するという案は明らかにこの趣旨に反するのじゃないかということでございますけれども、この辺はいかがでございましょう。  特に、日本経済の底辺を支えている中小企業があらゆる分野で今大変な不況の中に苦しんでおります。造船などの例を挙げるまでもございませんけれども、こうした構造的な不況にあえぐ企業、大企業自体もそうでありますけれども、その下の下請の中小企業等は非常に大きな痛手を受けている、そういう時期でありまして、そのときに当たって今回の処置をおとりになったというのはそれなりの裏づけがあるのではないかと思うのですけれども、その辺は明確にお示しいただきたいと思います。
  152. 水野勝

    ○水野政府委員 御承知のように、法人税は原則としては事業年度課税をいたしておるわけでございまして、一事業年度におきます所得につきまして法人税をお願いする、その事業年度、事業年度独立で課税をお願いいたしておるわけでございます。これが原則でございますが、企業は継続企業でございますので、ある期間にわたりましては損益を通算するのが諸外国でも一般的な制度であるわけでございます。したがいまして、これをどこまで前後に通算するかというのは、ある意味では政策的な判断の問題であろうかと思うわけでございます。  御承知のように、日本は原則としては五年間ということで繰り越しがなされておるわけでございますが、現時点におきます厳しい財政事情のもとにおきまして、今回は直近一年分につきましての控除を停止させていただくということでございます。したがいまして、直近一年間に欠損のあったものを停止するということは、その年度といたしましては黒字になっている企業の問題でございますので、赤字である法人につきましてさらに御負担を願うというところまでのものではないわけでございます。  また、直近一年のものにつきまして控除は御遠慮願うわけですが、その後二、三、四年間にわたりましては引き続き控除できる機会があるわけでございます。五年間という一応基本的な繰り越しの制度の柱は維持しながら、今回財政事情厳しい折から特例、臨時的にこうした措置をお願いしたわけでございまして、そういう異例な措置でございますので、財政事情の観点等から御理解を賜ればと思うわけでございます。
  153. 古川雅司

    ○古川委員 これは国の財政事情の厳しさからやむを得ないということが大前提になると思うのでありますが、赤字法人に課税するということについては、確かに必死に努力している大半のまじめな中小企業の方々にとっては非常に耐えがたい苦痛としてのしかかってくるわけでございます。税制の根幹とか企業会計の本質にかかわる今回の措置でございまして、その辺、大蔵省としてはどう認識していらっしゃるのか。  もちろんけしからぬ法人もたくさんあるわけでございますが、全法人の五十数%が赤字法人であると言われていて、またその実態についてもいろいろ掌握していらっしゃると思うのでありますが、世の中には赤字決算を装って脱税を図る悪いやつがいる、したがって赤字法人にも課税しろという言い方、あるいは法人として公益の便宜を受けながら赤字を理由にその税金を負担しないのはけしからぬ、そういう論理が先に立って、先ほど申し上げたいわゆる善意の、まじめに努力している、苦労している中小企業に対しても苦痛を与えることに及んでいくのじゃないかと思うのでございますが、この点はいかがでございましょうか。
  154. 水野勝

    ○水野政府委員 赤字法人の問題につきましては従来からいろいろ議論がなされているところでございます。四十年代におきましては赤字法人の割合は三割そこそこであったわけでございますが、これが第一次オイルショックの際に四〇%を超えるところとなったわけでございます。その後回復のないままに第二次オイルショックを迎えましてこれが五〇%を超え、現在五五%程度となっておるわけでございます。  法人税はそもそも所得のあるところに課税をお願いするわけでございますから、真に赤字の法人に対しては法人税をお願いできる余地はないわけでございます。ただ、御指摘のように赤字を装っている法人につきましては、執行当局で厳正な調査、指導等を行い、その是正に努められているところでございます。それから、装っているわけではございませんが、同族法人にありがちな経費の支出状況等からどうしても赤字になりやすい傾向もあるわけでございます。そういった点につきましては法律の適正な適用によりまして是正を図ってまいる必要があるわけでございます。  そのように、赤字でないのに赤字になっているあるいは赤字になりやすいところにつきましては、いろいろな是正措置を講ずる必要があるわけでございますが、全く本来赤字である法人につきまして法人税をお願いするというのは、やや基本的な転換な要するのではないかと思うわけでございます。そのような法人につきましても、社会からあるいは国、地方公共団体からもろもろの利益を受けているというところから、何らかの御負担を願ってもいいのではないかという御議論もあるわけでございますが、これは法人税だけの世界ではなくて、その他もろもろの税を含めた広い観点から検討なされるべき問題ではないかと思うわけでございます。  今回の措置は、赤字法人――その年度としては赤字法人ではないのでございますが、欠損金の繰り越しによって税制の申告上はゼロ申告になる、赤字申告になるという法人につきまして、結果として欠損金の控除の否認によりまして若干の御負担をいただくということでございまして、その欠損金は二年、三年、四年、五年目には控除できるわけでございますので、その法人につきまして絶対的な負担をふやすということではない、そういう措置でございますので、今回の措置は純粋な赤字法人に対する負担の求め方の一つとして考えたということではございません。  ただ、先ほど申し上げましたように六割近い法人が赤字申告をしている。その中には、当年度が赤字であるもの、それから欠損金の繰り越しによって赤字になっているもの、この二種類がある。その中で、当年度は黒字ではございますが、欠損金の繰り越しによって赤字申告になっている法人につきまして、当年度につきましても黒字でございますところから御負担をいただきたい。しかしそれは、控除は今後もなお繰り越せるというふうな仕組みとして御提案を申し上げているわけでございます。     〔堀之内委員長代理退席、委員長着席〕
  155. 古川雅司

    ○古川委員 これは、私今お伺いをしておりますのは、あくまでもまじめな、真剣に努力をしている中小企業の経営者の方々の実態、その方々に大きな懸念になりはしないかということを心配してお伺いしているわけでございますが、昨年の二月二十二日の大蔵委員会の私の質問に対しまして、当時の梅澤局長も、いわゆる赤字法人に課税をするということについては何も決めていない、大蔵省も考えていないというふうに明確に答弁をしていらっしゃいました。今年度になりまして直近一年間に生じた欠損金に限り適用を停止するという措置に踏み切った。その間にはこれは事情の大きな変化があったのかということが一つ疑問に残るわけでございますが、その点を一つお伺いをいたしたいと思います。  もう一点。こうした今回の措置、いろいろ問題が生じてくるのではないかと思いますけれども、もう一つには、いわゆる現行税制のままで税務署のいわゆる税務調査を丁寧に実施をしていけば、今回のようなこうした措置をしなくても済むのじゃないかという議論も一つあるわけでございますが、この点はいかがでございましょう。
  156. 水野勝

    ○水野政府委員 本来の所得が赤字である法人につきまして法人税負担をお願いをするということは、なかなか現行の法人税の世界の中では難しい問題でございます。フランスのように、赤字でございましても一定金額を課税をお願いする、ただその税額は将来の黒字になったときの税額と相殺をするというふうな仕組みも考えられるわけでございますが、なかなかそこまで踏み切るのは現時点では難しい問題があろうかと思うわけでございます。  ただ今回の制度は、あくまで、その年度としては黒字になっておる、ただ欠損の繰り越しによって赤字と申しますかゼロ申告になっているという法人につきまして、その部分の欠損の繰り越しは一年間御遠慮いただいて、二年目、三年目以降から控除をしていただきたいということでございますので、赤字の法人に対して御負担を願うことにいたしたというわけではない点を御理解をいただきたいと思うわけでございます。  執行の面につきましては、国税庁の方から御答弁を申し上げることといたします。
  157. 塚越則男

    ○塚越政府委員 執行の面からの御説明を申し上げます。  国税当局といたしましては、限られた稼働量のもとでできるだけ効果的な調査を実施するために、各種の資料、情報を積極的に収集活用いたしまして、悪質な不正計算を行っていると認められる法人あるいは事業規模の大きな法人を重点に、調査必要の高いものから調査を実施しているところでございます。  赤字法人につきましては、その原因などを見ますと、景況、実態を反映しているもの、それから役員報酬等との関係から赤字になっているものなどがございますが、一方で不正計算によって赤字に仮装しているものなどもございますので、個々の赤字の態様を見きわめた上で、申告内容に問題があると認められるものについては的確に調査対象としているところでございます。  ちなみに、昭和五十九年度の調査状況を見てみますと、調査を行った法人全体の二五%が赤字法人に対する調査となっておりまして、赤字法人に対しては調査指導を通じて申告水準の向上に鋭意努めているところでございます。  調査結果につきましてもうちょっと詳しく申し上げさせていただきますと、赤字法人処理件数と言っておりますが、全体で百万九千件ほどございますが、そのうちの四万九千件について実地調査を行っておりまして、実地調査割合は四・九%となっております。  実地調査を行いました法人のうち、欠損金額を過大に申告していたために更正等を行った件数は四万一千件でございます。さらに、仮装または隠ぺいによって故意に欠損金額を過大に計上するなど、いわゆる不正計算を行っていた件数は一万六千件でございます。また、赤字から黒字に転換した件数でございますが、一万三千件でございまして、これは実地調査件数の二六・一%に当たるわけでございます。ほぼ四件に一件が黒字になっているというような状況でございます。  ただ、これは不正計算によって赤字に仮装しているなというふうに認められるようなものを中心調査した結果でございまして、これをもって直ちに赤字法人全体の実態をあらわしているものとは考えられませんけれども、今後とも個々の赤字の態様を見きわめた上で、申告内容に問題があると認められるような法人については的確に調査の対象にして、調査指導を通じて申告水準の向上に努めてまいりたいというふうに考えております。
  158. 古川雅司

    ○古川委員 今長々と御答弁をいただいたわけでございますが、時間も迫ってまいりましたので、最後にまとめてお伺いをしてまいりますが、この法人に対する措置と若干離れますけれども、こうした措置によりまして、国税職員の処遇改善の問題とか、こうした仕事がふえていくことに対する対応というものがまた非常に大変になってくると思います。  申告納税制度の導入から三十五年を経た現在でも、いろいろな形での不正が後を絶たないわけでございます。最近、また一つ大きな問題として、大規模かつ悪質な脱税が潜在をしていると言われております。この税務の執行環境と申しますかその悪化は放置できない状態であるわけでございますが、いわゆるこの税の優遇措置を悪用する、しかもそれが脱税コンサルタントというような形態に今発展をしてきている。これに税務当局が取り組んでいくのも容易なことではない。中小企業の実態にもメスを入れるべきですが、今回のこの措置によって仕事としては非常にふえていくでありましょうけれども、もっと大きな悪質なものに対して十分に手を入れていく、そういったことが先決問題ではないかという感じがするのでございますが、この点はいかがでございましょう。
  159. 塚越則男

    ○塚越政府委員 先生指摘いただきましたように、税務を取り巻く環境が大変厳しくなっておりまして、限られた稼働量のもとでいかに効率的に税務行政を運営していくかということが大きな課題となっております。私どもといたしましても、高額、悪質重点という基本方針のもとに的確な調査をしていきたいというふうに考えております。
  160. 古川雅司

    ○古川委員 きょうは、この赤字法人の問題に関連をいたしまして中小企業庁からも具体的な実態についてお伺いをする予定でおりまして、計画部の土居金融課長と岩田振興課長にせっかくおいでをいただいたのでございますが、大変恐縮でございますけれども、時間の都合で御質問できませんことをひとつお許しをいただきたいと思います。別途また御説明を賜りたいと思うのでございます。  最後に、第四の柱になっておりますたばこ消費税の税率の引き上げにつきまして、これは今まで数々の議論がございました。この点について最後に大臣から御答弁をいただいて、私の質問を終わりたいと思います。  今までのこの問題についての議論を聞いておりますと、臨時措置となさったということのねらいがどうもいま一つはっきりしていないわけでございます。また税調を無視して決めたということについては、先日この委員会で大臣が陳謝されましたのであえてそれ以上追及はいたしませんが、専売公社からたばこ産業株式会社になりまして、その最初の決算が出る前に増税が決定されたということも問題であります。さらにまた、この法案が成立をする前から既に税率引き上げの措置によってたばこの値上げが決定をされている、決定というよりも、これは大蔵省に対して今申請が出ているわけでございますが、この辺も非常に合点がいかないわけでございます。  このたばこの増税の、いわゆる国の補助金等の整理合理化に伴う地方財政対策の一環としての絡み、これはまた補助金整理の問題のときに御指摘を申し上げたいと思いますが、今回のこの税率の引き上げによってたばこが値上げをされる。民営化というのは合理的企業経営を最大限可能ならしめるという趣旨で行われたはずでありまして、税率の引き上げによって直ちにたばこの値上げというところに結びついていく、この辺の不自然さについても疑問が残るわけでございます。  これはいろいろと問題を含んでいるわけでございます。臨時措置として一年限りということでございますが、地方財政対策については一年に限らないわけでございまして、一年を過ぎた後六十二年度からはどうするのか。一年限りと区切っている以上、一年限りをまた繰り返していくのか、あるいは別な形にすりかえていくのか、その点お示しいただきまして、私の質問を終わらせていただきます。
  161. 竹下登

    ○竹下国務大臣 まず、手続問題についてやはりもう一遍おわびを申し上げます。これは確かに、地方財政対策ぎりぎりのところで判断を迫られ、したがって、根回しと言うのは適当でございませんが、各方面へ御連絡するいとまもなく、なかんずく政府税調にも既に決定したものを持ち込んでいわば事後承認をしてもらった、こういうことでございますから、これまた臨時、異例の措置であったということで、深く反省をいたしております。  それからこの一年限りというのは、そういうことでございますからまさに一年間の臨時、異例の措置としてこれをとらしていただいて、将来の間接税の一つ、あるいは消費税の一つとしてのたばこ消費税の問題につきましては、恐らく今後、後半の段階におきまして税制調査会等で御議論をいただく問題でございますので、臨時、異例であるということにはもとより間違いなく、臨時、異例の措置でございます。確かに、それもまた決算も、一遍も、出る前じゃないか、そのとおりであります。いかに外国たばこにしたところで同じ税率だから影響はフィフティー・フイフティーじゃないか、こういう議論もしてみましたが、やはりこれは決算前、まさに臨時、異例の措置であったとつくづくと思っております。  それからもう一つは、よく我々が常識的に言います施行令で六十日となっておりますので、ある意味においては停止条件つきの申請であって、むしろ民営化されたたばこ産業株式会社を責めるよりやはり我々が責められる問題だ、これもそんな気が率直にいたしております。したがって、今後の消費税のあり方そのものにつきましては、まさにこの税調の後半で御審議いただく課題であろうというふうに思います。  また、つけ加えさせていただきますならば、地方財政計画については将来とも穴があかないように措置を行うということは、この措置をとらせていただきましたとき、自治大臣と私との間で合意しておるところでございます。
  162. 古川雅司

    ○古川委員 終わります。
  163. 小泉純一郎

    小泉委員長 玉置一弥君。
  164. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 前段は、今回の租税特別措置法の中で大きな項目として取り上げられております民間活力の問題についてお話を伺っていきたいと思います。  最近、国の財政が厳しい折からできるだけ民間の資金を活用して、いろんな方面で停滞をしております事業を活発に動かしていこう、こういう動きがあるわけでございますし、ここ数年来もう既にそういう話が先行をいたしておりまして、いろんな形でプロジェクト検討がなされてきているわけですが、私たちが考えるに、民間企業の活用ということで話が進んでおりますけれども、実際にどこまで民間企業としての力が発揮できるのか。あるいは、従来公共事業につきましては国なりあるいは地方公共団体がそれぞれ企画をし、それぞれの地域のバランスをとりながらこの開発を手がけてきたわけでございまして、そういう意味ではいろんな地域計画なりあるいは国としての計画に基づいた事業の振興というものが行われてまいりました。そういう意味で考えていきますと、これからのいろんな事業についても、民間を主体にして考えていくのか、あるいは地域というものを主体にして考えていくのか、あくまでも国が主体になっていくのか、こういう問題点もあります。  一方では、民間というからには企業存続のための営利追求があるわけでございますし、資本を投下したならばその投下資本に対する収益を上げていかなければいけない、こういう問題もございまして、余りにも簡単に民間活力の導入という言葉が叫ばれ過ぎるのではないかという心配があるわけです。  きょう閣議がございまして、この閣議でいわゆる民活特別措置法案というものが閣議決定されるという話を聞いておりますけれども、これが実際どうなったのか、その辺についてまずお聞きをしたいと思います。これは通産省ですか。
  165. 麻生渡

    ○麻生説明員 本日の閣議におきまして、民間事業者の能力の活用による特定施設の整備の促進に関する臨時措置法案が閣議で決定をいたしております。
  166. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 本日の閣議決定された内容によりますと、工業技術の研究やあるいは電気通信など、六つの分野の施設を対象に投資減税の実施あるいは事業者の借り入れに対する国の債務保証など優遇措置を織り込んである、こういうことでございます。そして対象となる民活プロジェクトとしては、工業技術の研究開発や技術者研修施設、電気通信基盤高度化施設、情報化基盤施設、いろいろあるわけでございますけれども、今のところ六つですね。こういうことでございます。この法案に関しては、通産省、郵政省、建設省、運輸省、この四つの省庁が今までは個別に全部計画をされて進めてこられたということでございますが、今回法案作成に当たって一本化をされてきた、こういうことでございまして、それぞれ個別に進んでいたものが一本化されるほど各プロジェクトのねらいがそろっているのかどうか、こういう心配もあるわけです。  まず、今回の民活法案をベースにしてちょっと論議をいたしたいと思いますが、この民活法案作成に当たって、その民間活力導入についての基本的な考え方をお聞きしたいと思います。
  167. 麻生渡

    ○麻生説明員 今回、今お話がございましたような六つの施設を対象に民活を導入しようということでございます。  その基本的な考えの第一は、最近の我が国を取り巻きます経済環境を見てまいりますと、一つは技術革新、二つ目は情報化、三番目に国際化というような重要な変化が進行いたしております。このような課題に我が国経済なり社会がうまく対応していくというためには新しいタイプの施設が必要であると考えまして、先ほどの六つの施設を選び、政策的な意義を認めて整備を進めていこうということでございます。  二番目に、民活という考え方でございますが、このような施設は従来は直接民間が手がけていないわけでございます。法律的に見ますと民間も手がけられたわけでございますが、実態的には収益性の問題があり、あるいは投資の懐妊期間が非常に長いということがございましてなかなか民間では手が出にくかったということでございまして、いわば施設の性格は、相当公共性が高い一種の公共的な施設でございますが完全な公共施設でもないという分野でございまして、このような分野に民間の力で施設を整備していく、そのためには収益性なりあるいは投資の懐妊期間が長いということを補完していく必要があるということで、一定の税その他の助成を与えていくということによりまして民間による整備を進めていこうという考え方でございます。
  168. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 中曽根総理がときどき発言されておりますのは、民間活力の導入で内需拡大をということでございまして、内需拡大が起こるほど民活導入のプロジェクトが進むかという一つは懸念があるわけですね。  先ほども申しましたように、民間企業というのは資金の回転をよくして少ない資金で多くの利益を上げていこう、これが大体基本的な考え方ですから、それからいきますと、民活プロジェクトというのは非常に長期にわたる問題でございますし、例えば建設省所管の東京湾横断道路が出ておりますけれども、その話なんかによりますと三十年くらいかかって返していこう、こういうことになっているわけで、従来の民間が進んできた道と大分違うような気がするわけです。我々も民活の論議を数年前からやっておりまして、そのときに、民間企業にとってのメリットをどこに求めるか、こういう問題に絶えずぶつかるわけでございます。そういう面から見て、民間企業にとってのメリットは何か、それをどういうふうにお考えになっているか、お答えいただきたいと思います。
  169. 麻生渡

    ○麻生説明員 民間企業と申します場合に大きく二つございまして、施設そのものを整備する主体としての民間企業がございます。この整備をいたします主体としての民間企業でございますが、これは従来でありますと収益性が低いということでこのような施設の整備にはなかなか手が出なかったわけでございますが、今回のような一連の法律の仕組み及び助成措置を講ずることによりまして収益性の補完が行われ、新しい分野における事業が展開できるということであると考えております。また、施設ができました場合には、これらの施設は当然その地域のいろいろな産業に開放されるわけでございまして、その施設の利用によりまして関係企業は非常にメリットを受けるというふうに考えております。
  170. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 今のお話を聞いておりますと、というよりも先ほどからの話を総合して聞きますと、従来から公共的な性格のものであり、企業としては収益性が非常に低いというためになかなか手がけられなかった、こういうことでございました。  ちなみに、今回の六つのプロジェクトがありますけれども、このプロジェクトによって民間企業としてメリットのある金額は幾らになっておりますか。
  171. 麻生渡

    ○麻生説明員 この政府側の法案の準備が進むことに対応いたしまして、現在各地で民間側でプロジェクト検討が行われておるわけでございまして、そのプロジェクトが実際にどの程度具体化するかというようなことにつきましては、どこまでも民間が主体で行いますものですからまだ正確に把握できてないという状況でございます。したがいまして、このプロジェクトによって具体的にどれだけのメリット、端的に言いますと収益ということであろうかと思いますが、それが上がるかということも現在のところ計算できておりません。
  172. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 民間に対するメリットというのは、先ほど地域の利用だとか収益性が向上されるということでございましたけれども、収益向上というのは今税法の改正に出ておりますようにいわゆる投資減税だけだ、こういうことでございまして、あと信用保証はまた別問題ですね、収益とは余り関係ないですから。そういう面で考えていきますと、投資減税というのは収益を向上させるほど大きいメリットがあるのかどうか、こういう逆の質問になるわけですけれども、この辺についてはどういうふうにお考えになりますか。
  173. 麻生渡

    ○麻生説明員 今回の助成で行います税制でございますが、一つは国税でございまして、対象施設につきましての特別償却を一三%認める、それから地方税につきましては不動産取得税、固定資産税、これを二分の一にする、それから特別土地保有税を非課税にする、事業所税につきましても二分の一に軽減するというような恩典が与えられるわけであります。  したがいまして、これで幾らの収益の向上になるかということにつきましては、プロジェクトの規模なりあるいはその会社自体がどの程度の収益を上げておるかどうかということによって税のメリットが変わってくるわけでございますが、相当思い切った税制上の恩典でございますものですから、収益の補完という点では相当大きな効果があるものというふうに期待しておるわけでございます。
  174. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 今回の民活の方のプロジェクトでいきますと、いろいろ合計すると一兆一千億規模、大体そのくらいのプロジェクトが動くのではないか、こういうような目算があるみたいでございまして、今回の場合には、民活法案で国の方で出してきている金額というのはそう大したことはないと思われますけれども、地方にとってはかなり収入ダウンになるわけですね。この辺についてはどういうふうにお考えになっていますか。
  175. 麻生渡

    ○麻生説明員 地方税の減免分につきましては原則的には交付税によって補てんされるというふうに考えております。ただ、交付税は御承知のとおり富裕団体とかいろいろな基準がございますから、その地方の財政状態によって少し変わってくるわけでございますが、基本的には補てんされるというふうに考えております。
  176. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 今のお話を聞きますと、地方の減収分については国が補てんをする、こういうふうに受け取っていいわけですね。
  177. 麻生渡

    ○麻生説明員 原則的にはそのとおりでございます。
  178. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 個々のプロジェクトも大事でございますけれども、民間のメリット、これについて、なかなかそのぐらいで企業が乗ってくるかという気がするわけです。  今の場合には、建物を建てたりとか研究所とか、例えば私の地元で言いますと関西文化学術研究都市というものがございまして、この総事業費が大体四兆六千億ぐらいだというふうに今見込まれておりますけれども、京都府、奈良県そして大阪府にまたがる地域でこれだけの大きな規模の事業が行われる。そのうち民間投資としては大体三兆五千億くらいだろう、こういうふうに見込まれているわけでございますけれども、私たち地元で論議をいたしますのは、文化学術研究都市といって民間のいろいろな研究グループでありますとかあるいは基礎技術屋さんあるいはその先端のいろいろな産業、こういうものが地域に集まってくるというような構想で今進められているわけでございますけれども、実際のところ集まってくるメリットがあるのかどうかという心配がまずある。  それから先ほどの民活の話で、例えば事業所を建てた場合に後の採算を考えて、確かに建てたときには今おっしゃったような有利な特典があるわけでございますけれども、後、継続してやっていく場合に民間の企業の負担にならないかな、こういう心配をするわけでございまして、この辺についてどういうふうにお考えになっているか、お聞きしたいと思います。
  179. 麻生渡

    ○麻生説明員 関西の京阪奈のプロジェクトにつきましては相当大規模なプロジェクトと承知しておりますが、私の承知します限りでは、今回の私どもの民活法の対象施設として六つございますが、その中で関西で整備されるというのは電気通信研究所関係であろうと思っております。そのほかにいろいろ民間が整備を行うわけでございますが、これはいわゆる民間独自の研究所とかそういうものでございまして、今回の民活法の対象施設ではないわけでございます。
  180. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 いや、今はたまたま例を言っただけで、それについて例えば同じようなものが民間でやられた場合、移ったときにはメリットはありますけれども、移った時点での税制の特権ということで、ある年限で切られるわけですね。年限で切られた場合に、後どういうメリットがあるのか。そのときはいらっしゃい、いらっしゃいといって特典を与えて、ある時限で切るわけですから、民間というのはそれでついてきますかということも言いたいわけですね。  ですから、簡単に言えば、普通の個人でいえば家を建てなさいといって地域を指定し、来たら住民税もいわゆる住宅取得税も全部まけますよというふうにやります。そしてここへ来られる。それが三年間か五年間か知りませんけれども、大体ある年限区切ってやっておいて、ある程度たつと今度普通に戻すわけでしょう。そういう形になるのではないかというのと、それからもう一つは、来られたときには確かにその時点としては恩典がありますけれども、それがメリットとしてなくなるわけですね、どこへ行っても同じだというような関係もありますし。この辺から考えて、確かに企業が行きたい地域ならばそういうメリットはありますけれども、そうでないところへ引っ張ってこようとするような場合にはなかなか難しいと思うのですね。だから、そういうときにメリットというのは途中で切れてしまうということなのかどうか、それから、それでも企業が来ようとすると予測されるかどうか、その辺について聞きたいということです。     〔委員長退席堀之内委員長代理着席
  181. 麻生渡

    ○麻生説明員 今回の民活の助成の仕組みでございますけれども、これは特定の地域を指定いたしましてそこに企業を誘致する、あるいはいろいろな施設を誘致するという考え方ではございませんで、特段の地域指定はございませんが、ともかく対象となっております施設、この内容が助成するに値するというふうに考えられて主務大臣が認定をいたしますと、助成が行われるということでございます。したがいまして、企業が行きたいところで助成するとか行きたくないところに助成するとかということではございませんで、企業が、民間事業者の方がここで整備したいというふうに選択をいたしまして、そして整備計画をつくる、その整備計画の内客がいいか悪いかというところがポイントになるわけでございます。  それから第二番目の時限制の問題でございますが、この法律は十年を期間といたしております。このような期間内に整備を進めていくということでございまして、本来ならば民間事業者がいろいろな助成がなくても民間事業として定着すればもう助成は必要ないということになるわけでございまして、いわば民間事業として定着するまでの間助成を与えようということでございます。
  182. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 今回の法案の民活の事業範囲、それから今建設省なんかで既にやっておられます五十八ぐらいあるという事業、それぞれ性格がちょっと違うと思うのですけれども、民間活力導入の方法というのは今六つしか挙がっておりませんけれども、ほかにどういう方法があるというふうにお考えになっておりますか。
  183. 麻生渡

    ○麻生説明員 民間活力という考え方は非常に幅広い考え方でございまして、今回私どもが対象としますのは、どこまでも政策的に意義のあると考えます六つの施設について助成を行う、それによって整備を進めようということでございます。もちろん民間活力といいます場合には、このような体系で施設の認定をいたしまして助成をするというほかに、広く民間が入りやすいような環境を整備するという意味で例えばいろいろな規制を緩和するとかいうような方法もあろうかと思っておりますが、非常に幅広い中で今回の法律はどこまでも対象施設を絞って、その整備のための助成をしていこうという考え方でございます。
  184. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 今ちょうどお話にありましたように、いろいろな規制緩和をやりながらやろう、こういうのが本来の民間活力の導入の一番の手段ではないかというふうに当初は確かに論議されていたと思うのですね。ところが規制緩和の方が比較的遅くなりまして、プロジェクト優先にして事業認定というような形が先行してしまった、こういうふうに私自身受け取っているわけでございまして、まずそのプロジェクトというか、民間活力導入の論議の中での規制緩和、これについてはそちらでわかりますか。
  185. 麻生渡

    ○麻生説明員 この問題につきましては、政府全体といたしましては内閣にございます特命室が担当いたしまして全体の検討を進めておるという状況でございます。
  186. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 そういう意味で最初に特命室をお願いしたのですけれども、そちらでみんなわかると言うから。わかるのでしょう、みんな。わからないですか。  やはり基本的な問題というのが論議されないと、プロジェクトというのは要するにルールさえつくれば済む話ですから、むしろいろいろな民間企業が乗ってくるかどうかという心配があるわけですけれども、今度はそれと逆に乗り過ぎてきたら困るわけですね。というのは、事業認定の話になりますけれども、例えばある民間企業が今やっているような大手の住宅開発プロジェクトとかありますけれども、そういうのとか、あるいは国民何とか村みたいな、そういうものをいわゆる公共事業でやりたい。ところが、民間で代行させようじゃないかとか、そういうような話になってくると、今度は各地域がいろいろなものを計画してくると思うのですね。  それでまず、いろいろな民活の企画立案ということをどこでされて、事業認定をどこでされて、その基準がどうなっているか、これについて整備されているかどうか。これについてお聞きしたいと思います。
  187. 麻生渡

    ○麻生説明員 今回対象といたします六施設の整備につきまして民間側でどの程度の検討がなされておるかということでございますが、私どもが把握しておりますプロジェクトは相当数が多くございます。例えば通産関係でございますと、施設の中で工業技術の研究開発あるいは新しい企業の育成のための施設というものがございますが、このようなものにつきましては、熟度が相当高いというものは二十数プロジェクトあるというふうに把握いたしております。  このような検討の主体でございますが、これは当然そのプロジェクトによって違うわけでございますけれども、多くは地方公共団体あるいは地元の企業あるいは経済団体というようなところが中心になって検討を進めておるという状況でございます。
  188. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 今お話がありましたように各地方公共団体あるいは各企業、こういうものが今回の税制改正の様子を見て、新たにいろんな事業申請というのが出てくると思うのですね。現在でもかなりの数に上っていると思いますけれども、その辺から考えてみて、事業認定の基準をやはり明確にし、逆に言えば、地域配分というかそれも考えていかなければいけないと思います。  大蔵大臣がきょうの午前中の参議院の大蔵委員会で、この民活法案の事業実施に当たって各地域のバランスを考えてやりたいということをたしかお話しになったと思いますが、大蔵大臣いかがでございますか。
  189. 竹下登

    ○竹下国務大臣 きょう、いわゆる民活法というものの提出閣議が終わりまして、かねて関心を持っておりましたが、今も麻生課長さんからいろいろお話があっておりますように、きょう閣議で発言がありましたのは渡辺通産大臣からでございました。  参議院における私に対する質問というのは、民活法ができた、最初は東京湾の話からでございましたが、巨大プロジェクト都市に集中するではないか、東京湾、関西空港、明石大橋。だが、やはり地域にいろんなものがあってもいい。そういうときに、極めて私も初歩的な知識しかありませんでしたが、きょう渡辺通産大臣からお話があって、民活法が閣議決定をして提出することになりました、これらはいわゆる草の根民活とも言えるものの一つではなかろうかと思います、ということを答えますと同時に、したがって、やはり今度は公共事業というのは勢い傾斜配分ということを求められてくるようになる、しかしなかなか当初予算で傾斜配分というのは難しいが、私の体験からしても補正予算の場合なんかは傾斜配分というものが比較的やりやすいというような体験をお話ししました。  それからもう一つは、やはり質問に答えてのことでございますが、財政というものが極度に窮屈になって、そして、かつての日本経済の規模からしたら財政というものの果たす役割は大変なものであったが、今や、経済というものを支えるいろいろな柱がありますが、整理してひとつ金の面からとらえて財政ともう一つは金融。こういうことから言ってみると、金融大国とか金融強国とか言われるようになった今日、その中に民間のマネーゲームと言われるようなお金が進んで活力につながるようなものに投資される環境をつくることが好ましいではないか、こんなようなお話をしたところでございますので、草の根民活というようなお話はしましたが、私が詳しく内容を知っておるわけでもございませんので、民活事業の地域的なバランスをとるべきだというような意味の発言は必ずしもしておりません。
  190. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 いや、何かテレビで見るとそんなように聞こえたのですけれどもね。ただ逆に、国のいろんな公共事業とのバランスの問題があるということも考えていかなければいけないし、それから、これも政府部内での意見が出たということでございますけれども、今のお話で、大都市周辺にやはり集中をする、そして地域経済力があるところに集中をする、こういう可能性が強いんではないか。  こういうふうに考えていきますと、府県の力といいますかそういうもの、あるいは地域経済力、この両方を兼ね備えたところばかりに集中をする可能性がありまして、そういう意味で、いわゆる公共性のある事業と言いながら地域が偏ってしまう、こういう心配もあるわけでございますから、その弱い地域をどうするかということも、この法案というか、民間活力導入は片方では内需喚起であり地域整備ということにもなるわけですけれども、逆におくれた部分をどうするかという問題を考えていかなければいけない、かように思うわけでございまして、大臣はこれについてどういうふうにお考えになっているか、お聞きしたいと思います。
  191. 竹下登

    ○竹下国務大臣 その法案の内容を詳しく承知しておるわけではございませんが、言ってみれば、いろいろな形における草の根民活というのが出てくる、それの環境整備のために役立てば大変幸せなことであるという考え方は基本的に持っております。  いま一つは、きょうの特に参議院の大蔵委員会質問はやはりそれの――民活というのは、今玉置さんがおっしゃったような傾向にはあると思うのであります。したがって、よく建設省の皆さんが、これはジョークのうちでございましょうけれども、一般財源からの支出をよく真水、真水とおっしゃいます。それで、債務負担行為はあれは真水じゃない、こういう話がありますが、何かある建設省のお方が、田舎は真水、都会は塩水、こう書いておりまして、何のことかと思ったら、いわゆる塩水の上を橋がかかったり空港が塩水の中にできるから、それで真水、塩水、こう言ったという話を聞きまして、言い得て妙だなという感じを持ったわけでございますが、きょう主としてお答えいたしておりましたのは、したがって、地域地域によって公共投資というものについてのいわゆる傾斜配分的なものがあってしかるべきであろうという趣旨のことは申したことは事実であります。いずれにせよ、全国総合開発計画から始まって新全総からずっときまして、やはり地域の均衡のとれた発展ということは好ましいことであるというふうに思っております。
  192. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 今回のもともとの発想が、資金不足ということもあるけれども、民間活力の導入で内需喚起ということでございまして、内需喚起にハッパがかけられているというのが現状であろう、こういうふうに思うわけです。事業が大きいだけになかなか内需喚起するほどの早いスタートにはならないのじゃないかという心配もするわけで、単なる姿勢だけかなという気もするのですが、内需喚起に与えるような影響という面ではどのくらい詰めて検討されましたか。この辺についてお聞きしたいと思います。
  193. 麻生渡

    ○麻生説明員 現在日本の各地で、この国の体制の整備に対応いたしまして、先ほど申しましたような各企業あるいは自治体を中心プロジェクト検討が行われておるという状態でございます。どこまでも、これは民間の事業者が行うという事業でございますものですから、例えば国の公共事業の場合のように明確に幾らの事業になるということは非常に言いにくいわけでございます。  ただ、通産省関係でございますと、先ほど申しましたようにいろいろな構想がございますが、その中で相当熟度が高いなというものを拾い上げまして、その事業費の計算を試みにやっておりますが、ここ数年、五年程度を考えますと、その直接の事業費は約一兆円ぐらいになるのではないかというふうに予想しているわけでございます。
  194. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 今の一兆円のお話でございますけれども、この事業認定というのは各省別々にやるわけですか、一括してやるわけですか。
  195. 麻生渡

    ○麻生説明員 六つの施設ごとに主務大臣というものが決まっておりまして、例えば工業技術関係の開放型の研究所の場合でございますが、これは通産大臣が認定をするということになります。ただ、特定の都市開発区域というものを都道府県知事が指定した場合、そこでこの施設が整備されます場合には建設大臣も主務大臣という形になります。そのようなケースの場合には、認定は通産大臣と建設大臣に同時に出していただくということになりまして、認定そのものは両大臣の名前で一本で行うわけでございます。
  196. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 きょう出された民活法案というのは、六つのプロジェクトに限定をした法案ということに理解していいわけですか。継続して新しいものが出てくることはないということですか。その辺、お聞きしたいと思います。
  197. 麻生渡

    ○麻生説明員 今回の民活法案では、六つの施設に限定をいたしております。
  198. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 建設省にお聞きしたいと思いますが、建設省は東京湾横断道路の問題がございまして、これは総事業費が二兆五千億円ぐらいで、民間が一兆五千億円ぐらいを負担してやっていこう、こういう計画であるということでございます。  それで、今回提案されております法律でもこの部分についての投資減税をやろうということでございますが、東京湾横断道路そのものの、また同じことを聞くのですけれども、民間のメリットですね、それから将来の運営形態、この辺についてお聞きしたいと思います。
  199. 藤井治芳

    藤井(治)説明員 お答え申し上げます。  なお一番最初に、先生東京湾横断道路の事業費が二兆五千億というふうに申されましたけれども、私ども予算委員会等でも一兆一千五百億というふうに公式に御報告申し上げておりますので、よろしくお願いしたいと思います。  今先生から御質問の、この東京湾横断道路の事業の際の民間のメリットは何かということでございますが、いろいろな角度からの見方があろうかと思いますけれども、こういう東京湾横断道路のような大規模なプロジェクトというのは、こういう厳しい財政事情のもとでは、通常の考え方ではなかなか事業化ということはできにくいプロジェクトであろうかと考えております。そこで、私どもいろいろな工夫をさせていただきまして新しい方式で今回事業化のお願いをしたわけでございますが、そのことによっていろいろな需要を生むことに相なります。したがって、いろいろな需要を生むということは、こういう新しい方式を工夫することによって、本来東京湾地域にあれば非常にいろいろな意味の活性化の源になるプロジェクトを実現し、あわせていろいろな需要をこれによって生み出す、こういう意味の大きなメリットがまず考えられるわけでございます。直接的な需要が出る、こういうことでございます。  それからさらに、例えば房総半島一つあるいは神奈川県相模地方をとってもそうでございますけれども、現在神奈川県等では京浜工業地帯、いろいろな歴史的な背景を持って現在に至っておりますけれども、これの再活性化というような問題が非常に叫ばれている昨今でございます。また、房総半島においては新しい意味での活性化を、県の方でも三つのプロジェクト中心に議論をされている状況でございます。こういったようなものを通じまして、いろいろな波及的な民間活力を活用した需要喚起あるいは地域開発ができるようになる、こういう意味の民間にとってあるいは我が国経済の振興にとって大きな役割を持つものでございます。  また、もう一つ別の側面から考えますと、いろいろなところで民間資金というものは我が国において非常に有利な状況である、こういうふうに言われております。この民間資金の一番有効な、一番というと語弊があろうかと思いますが、これがこれからの社会資本の整備に向けられるということは非常に有効なものであろうということで、適切な民間資金の投資対象ということもあろうかと思います。  こういうもろもろのことを含めまして、民間のいろいろな御協力をいただきまして、今回の大規模プロジェクトを何とか事業化に向けてまとめ上げだというのが現状でございます。
  200. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 確かにおっしゃることは全部そうだと思いますけれども、新しい需要を生むというのは工事期間中だけでございまして、工事が終わりますと、規模拡大した企業なりその地域というものがどうなるか、これはまず考えなければいけないと思うのです。  それから、経済にとっては確かに大きなメリットがありますし、民間企業が工事にかかわっているときはいいですけれども、後のでき上がったものを運営する母体、これがまさに採算ベースに乗るか乗らないかというのも、金額、規模が大きいだけに大変な問題になってくると思うのです。というのは、民間企業が投資をするということで今おっしゃいましたけれども、民間企業が投資の回収を早くするということ、これをやることが必要になるわけで、そういう面で考えて、まず東京湾横断道路だけに限定をしてお聞きをしますけれども、これについて採算がとれると思いますか、あるいは事業形態が多分公団だと思いますけれども、公団にかぶせられた場合に公団そのものの負担にならないかどうか、この辺も含めてお聞きしたいと思います。
  201. 藤井治芳

    藤井(治)説明員 この東京湾横断道路につきましては、民間と地方公共団体及び日本道路公団に出資をしていただきまして、そして会社をつくり、その会社がこの横断道路の建設と管理を行う、こういう形態をとります。ただし、日本道路公団がこの道路を所有いたしまして、漁業補償とかあるいは地元のいろいろな細やかな対外調整等を行う、言ってみればこういう二人三脚の方式でこの建設に着手するわけでございます。そういう意味におきまして、このような方式は今までないということで先ほど新しい方式というふうに説明をさせていただきました。  こういう方式の採算性はどうなのかという御質問でございますが、この横断道路事業は、道路特別措置法の一般有料道路として許可を受けて実施するという建前になっておりますので、そういう意味では六%の資金コストを確保いたしますと、総事業費、先ほどの一兆一千五百億がかかるわけでございますが、私どもの推計では、供用当初の交通量が約三万台、これは約十年の工期を考えておりますから昭和七十年の交通量とおおよそお考えおきをいただきたいと思います、そして料金は昭和五十七年度の価格で普通の自動車で約三千円、約十年後にいたしますと、三%の物価上昇をおおよそ見込むという推計をいたしますと四千九百円に相当いたしますが、こういうような条件で検討いたしますと三十年程度で償還が可能であるというふうに私ども考えております。  ただ、今言いましたように一般有料道路でございますので、仮に将来経済事情の変動といったような問題が出まして採算が極めて悪化したというような場合が全然ないとは言えないかと思います。そういう場合は、従来の通常の一般有料道路と同様に、日本道路公団がその段階で必要な措置検討いたしまして国と一緒に対応を図っていく、こういうふうに考えております。
  202. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 今から考えるとちょっと高いような気がしますけれども、利用するとどうなんですかね。その辺は先のことでちょっとわかりませんけれども、今の分布状況からいくとそんなにしょっちゅう人が行き来をするという感じはしないわけです。そういうことを考えていきますと、よほど後のことも考えて対応をしていかなければいけないのではないか、こういうふうに思うわけです。  建設省の関係で、新しいプロジェクトというか民活事業として五十八くらいのプロジェクト、今はもっとふえていると思いますが、そういうプロジェクトがあるというお話を聞いております。これをもし今認定をされていくような形になりますと、先ほど言いましたように地域が偏るとか、ほかの地域とのバランスが崩れるとか、こういう問題に発展をしていくというふうに心配をするわけでございます。この辺について建設省としての一つの方向があるのかどうか、この辺をお聞きしたいと思います。
  203. 藤井治芳

    藤井(治)説明員 大都市周辺というものは人間がたくさん住んでおりますので、いろいろな交通需要も多うございます。こういうようなところでは、確かに一般有料道路事業のようないわゆる有利子の資金を使った道路整備が可能でございます。また、地方におきましてもそういう可能な場所も、また路線もございますけれども、全般的になべて言えば、地方は人口が少なく交通需要も少ないために、有利子資金による道路整備事業というものはとりにくいというのが一般的に言えようかと思います。  そこで、私どもはそういうことを考えながら、私どもがいただいております道路特定財源を最大限に有効に活用して、こういう有利子資金の道路整備とそれから一般の道路特定財源を中心とする道路整備とをうまく組み合わせて、全国から御要望の深い道路整備に当たってまいりたい、こういうふうに考えております。
  204. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 大蔵省にお伺いしたいと思いますが、今回の税制のメリットをどういうふうに考えておられるか。メリットというのは民活に対するメリットですが、この辺をちょっとお聞きしたいということと、それから先ほど民活法案としては十年の年限ということでございましたけれども、税制につきましてはたしか年限は書いてなかったと思いますが、この辺についてどういうふうに話し合いをされて、そしてどこまでやるか、こういうことについてお聞きしたいと思います。
  205. 水野勝

    ○水野政府委員 今回の税制上の措置といたしましては、ただいま御質疑をいただいております東京湾横断道路、その前にテーマとなっておりました草の根民活、こういったものも入っておりますが、さらに電線の地中化の問題、それから特定鉄道工事の、特定都市鉄道の整備のための措置、もろもろの民間活力の活用によりますところの内需拡大措置を税制全体として今般の税制改正におきましては相当取り入れさせていただいておるところでございます。現在の経済財政事情でございますので、民間活力によりますところの内需拡大、社会資本の整備、こういったものに対しまして、税制としても本年度におきましては積極的に取り組まさしていただいておるところでございます。  それから期限の点につきましては、税制上の措置といたしましては大体の場合期限を切らしていただいておるのが通常でございまして、今回の民活法案の関連で申し上げれば昭和六十一年四月一日から昭和六十三年三月三十一日までの間にということで、大方の租税特別措置と軌を一にしまして二年間という期限を設定をいたしておるわけでございます。税制といたしましては極力早い時期にこうしたものの整備を促進していただくということで、他の措置におきましても二年程度の期限を付しておるところでございます。また東京湾につきましては、これは五年間の一応の期限を付ささしていただいておるわけでございます。
  206. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 今回の金額から見ていきますと、民活法案に該当する部分は今一兆一千億ということでございますけれども、建設省関連のプロジェクトがかなりたくさんあるように聞いておりまして、これも何兆円という、かなり上の方ですね、金額になるというような予測が一応出ております。こういう状況でございまして、もともと内容が内需拡大ということでございますから、内需が拡大されることはいいわけでございますが、ただでさえも財政硬直化の折、財政の経済運営に占める割合、ウエートが非常に低下をしている、こういうふうに思うわけでございます。  そういう中で、いわゆる民間活力という形で外部からの動きが非常に活発になった場合に、果たして今までのように公共投資の関連という形で財政運営あるいは景気調整というものができるかというような心配があるわけでございまして、この辺について経済企画庁がこういう民活の各省の動きに対してどのようにかみ込まれて、あるいはこういう景気変動に対する景気調整機能をどういうふうに管理されていくか、これについてお聞きしたいと思います。
  207. 黒川雄爾

    ○黒川説明員 昨年の秋に経済対策閣僚会議というもので内需拡大策というものを取りまとめたのでございますけれども、その中で幾つかありますが、今後推進する対策ということで民活というものを取り上げました。そのときには公共的事業分野への民間活力の導入ということで、民間活力の中身としては、先ほどからずっとありました民間資金という問題と技術的経験あるいは経営能力、こういったものを非常に有効に使っていこうということでこういうものを大々的に取り上げまして、それで立法措置を含めてこれを進めていこうということを決めたところでございます。  それで、実際にこの問題は税制とか一般の予算と絡みますので、それは年末の予算税制のところで審議していただくということになっておりまして、年末の十二月の二十八日に経済対策閣僚会議、同じものを開きまして、公共的事業分野としましては、一つは大規模プロジェクトということで東京湾横断道路と明石海峡の建設に着手するということを決めまして、それから今お話のありました草の根民活でございますけれども、これも特償、特別償却制度を創設する、あるいは不動産取得税、固定資産税等の減免を図るということを決めまして、それで、この二つについては法案を提出しようということを決めたわけでございまして、これによって事業規模がどれだけかというのは、先ほど御説明ありましたようになかなかつかまらないのでございますけれども、こうやって内需拡大には着実に役立つものと考えております。
  208. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 今のお話で推測いたしますと、年度年度の予算のときに次年度の公共投資という形での対応ということになるような感じがするわけですが、プロジェクトの総額の話はともかくとして、各年度ごとに実施をされる事業、この総額をやはり絶えず把握をしてないと、いろいろな事業の動きといいますか、それが経済に影響するわけでございますから、その辺が十分景気調整機能と連動しないというように思うわけです。今、建設省の関係あるいは今度の通産省を含めた四省の関係、この辺についての連携としてはどうされていますか。これについてもお聞きしたいと思います。
  209. 黒川雄爾

    ○黒川説明員 きょうやっとこの法律を閣議で提出ということに決まったわけでございまして、まだ実際の運用の段階にはなっておりませんが、これから法案が通りまして実際の運用になった場合には、それぞれの省庁で主務大臣といたしましてお互いに協議していただく。そのほかに都道府県知事も指定したり通知するということもございますので、その段階で適切な調整が図られるものと思っております。
  210. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 ありがとうございました。通産省、経企庁、建設省、それぞれお忙しいと思いますので、ここで質問も全部大蔵省に集中しますので、どうぞお帰りになって結構でございます。  今お聞きになったように、特に投資減税の形を今回の税制、租特の中でとっているわけでございまして、これがやはり民間活力に響くだろうということで民間の参画がある、こういうふうに理解をするわけです。  私たちが従来から、内需拡大にはぜひ国内の一般企業の設備投資減税をお願いをしたい、こういうことで再三お願いをしていることがございます。今回のいろいろなプロジェクトに対しての減税措置、これは確かに東京サミットを迎えてとかあるいは公共投資の資金不足を何とか外部にゆだねてという感じがあるわけですが、こういうことを除いて考えていった場合に、類似の既存のいろいろなプロジェクトがありましてこれが民間としてやられている、こういうのがあるわけでして、この辺についてのいわゆる減税措置の拡大あるいは一般企業の設備投資に対する減税措置、こういうものにつながらないかというふうに私は思うのです。だから、今まで内需拡大をやるためには設備投資減税というものを徐々にはやっていただいておりますけれども、一般企業の中での、いわゆる耐用年数の見直しも含めて設備投資減税というものに十分手がけていかなければいけないのではないか、こういうふうに思いますが、この辺について大蔵省はどういうふうにお考えになっておられますか。
  211. 水野勝

    ○水野政府委員 一般的な投資減税につきましても従来から御議論はいただいておるところでございますが、現在の国際経済環境からいたしますと、我が国の全体としての設備投資水準を高めていくということにつきましては、それが我が国の企業の国際競争力をさらに強化して経済摩擦的な現象を引き起こすという問題もあろうかと思うわけでございます。また、現在の財政事情等からいたしますと、かなりな額を投じて一般的な投資減税を行います際、その効果と費用との関係、財政事情へ及ぼす影響等を考えますと、これも私どもといたしましては否定的な感じにならざるを得ないわけでございます。  今回の民間活力の活用によりますところの特定整備事業に係ります税制上各般の特別措置を請じております点につきましては、最近に起きました経済環境の変化に対処いたしまして国民経済の基盤の充実に資するような各種施設の整備を民間事業者の能力を活用して促進する、こういう観点から、税制上もできる範囲での措置を講じ、御協力を申し上げるという趣旨のものであると考えておるわけでございます。
  212. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 ただ、今回の民活法案だけに限定いたしますと、確かに公共性のあるもので、よほどのメリットがなければやらないだろうと思われるものが多いのですけれども、例えば建設省関係でいろいろなプロジェクト計画されておりまして、こういうものが出てまいりますとまた減税措置といいますか、こういう論議になってくると思うのですね。大きな事業だけということではなくて、各地域ごとに格差があるわけですから、小さな事業でも数多くという話にもなると思いますが、例えば建設省関連のいろいろなプロジェクト、大規模住宅開発みたいな形でありますとか公共的な建物というようなものに民活の方向が向いていった場合に、大蔵省としては、先例があるわけでございますから当然検討しなければいけないと思いますが、これについてはどういうふうにお考えになりますか。
  213. 水野勝

    ○水野政府委員 先ほども申し上げましたが、例えば東京湾横断道路、このような大規模なプロジェクトにつきましては、これは大規模な公共事業を民間主体により行うというこれまでに例を見ない性格のものであることにかんがみまして、この事業限りの特例措置として割引債の発行、それから株式の取得価額の一部所得控除、こういった特例を講じたところでございまして、このような大規模なプロジェクトについて今後仮にいろいろなものが提案されてくるといたしましても、現時点におきましては、これは本事業限りの特例措置であるというふうに考えさせていただいておるわけでございます。
  214. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 ということは、両方とも年限があるわけでございますから、設価投資減税といいますか、民活のいろいろな事業については、この場限りという言い方は悪いですけれども継続性はない、こういうふうに考えていいわけですか。
  215. 水野勝

    ○水野政府委員 これはあくまで一般的な民間企業の設備投資を促進するという観点ではございませんで、国民経済の基盤となるような施設につきまして、その公共性等にかんがみまして、従来はこれが公的部門の負担において整備されておったものを今後民間活力を活用してこうしたものの整備を推進する、そうした趣旨のもとに税制も御協力を申し上げる、こういう趣旨ではないかと考えておるわけでございます。
  216. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 先ほど通産とか建設とか、認定基準という余りはっきりした回答がなかったわけでございますが、逆に言えば、民活の事業に国がタッチをするものについてといいますか認定をする内容について、全部が全部こういう特別措置をとるということではなく、今おっしゃったような内容で大蔵省としては認定をしていく。ですから、事業認定即こういう特別措置につながることではないというふうに理解していいですか。それでいいですか。
  217. 水野勝

    ○水野政府委員 整備計画の認定があり、それに基づいてもろもろの施設が設置されるということでございますが、具体的には大蔵大臣の告示というようなもので設定をしてまいるということでございます。その具体的な設定に当たりましては、それぞれの主務大臣の御趣旨をも尊重して作業を進めてまいるということではないかと思います。
  218. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 では、認定基準は大蔵省としてはなくて、主務大臣がお願いに来て大蔵大臣がうんと言えば大体オーケーだ、こういうことに解釈していいわけですか。
  219. 水野勝

    ○水野政府委員 施設の性質、目的等につきましてはそれぞれの主務大臣の御判断なりで一応できるわけでございますが、税制上の特例措置を講ずるというものにつきましては、税制上からもそれが一定以上の規模であるものあるいは床面積の一定割合以上がそうした性質のものに専ら利用されるものであること、その他はかの特別償却や圧縮記帳などの特例を受けていないものとか、いろいろまた税制上の条件はお願いすることになろうかと思いますが、性質、目的等からいたしますところの建物、施設の内容につきましてはおおむね主務大臣の御方針を受けて対処することになるのではないかと思いますが、まだ具体的にはそこまでの詰めには至っておらないところでございます。
  220. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 ちょっと心配しますのは、こういうものがいろいろ出てきたときに、それぞれ頼まれたから減税というか特別措置をとったという形になっては困るわけで、基準というものを明確にして、やったならば類似したものはやるべきだ、そしてそうでないものは拒むべきだ、こういうふうに思うわけです。そういう面から、基準があるかないか、あるいはどういう話し合いをされたかという確認をしているわけでございまして、ぜひ一つの基準でこれからも物事を進めていただきたい、こういうように思うわけです。これについてどう思いますか。
  221. 水野勝

    ○水野政府委員 基本的には、その施設の内容等につきましては各主務大臣の御趣旨に即して対処をすることだろう、こういうことになろうかと思います。ただ、先ほど申し上げた税制上のもろもろの要請の点につきましては、これはこれで対処させていただければと思うわけでございます。先ほど施設につきましてのもろもろの要件もお願いをいたすつもりだと申し上げましたが、そのほか、その施設の設置者が第三セクターであるか、あるいは第三セクターの設置する施設に関連して設置される施設であるとか、こうした要件もまたお願いをいたすようにしたいと考えておるわけでございます。ただ、施設そのものの性質、目的、そうしたものにつきましてはおおむね各省の御方針に従うことになろうか、こういうことでございます。
  222. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 大体感覚はつかめましたので次に移りたいと思います。  先ほどから毎回、ほとんど全員が言っております欠損金の繰越控除の一部停止について重ねてお聞きをしたいと思います。  御存じのように前年度赤字分を今年度黒字の場合に落とせない、こういうことでございまして、簡単に言うとそういうことでございますね。これを六十一年四月から六十三年三月末まで二年間適用する、こういうことでございまして、先ほども話にあったようにどう見てもこの場限りの税制という感じがするのですね。  というのは、今何とかお金を捻出したいという気持ちは強くわかるわけですが、どう考えても、総額からいくと二千二百億ですか、大変な金額ですけれども、このお金が簡単に停止をされると、いよいよ黒字になってもうかったから今までの借金を返していこうとかあるいは経営体質の強化のために使っていこうとか、ようやく資金繰りがつながったとか、こういう企業にとって大変な問題なんですね。私たちごく一部の者が言っているなら別でございますけれども、いろいろな方々がすべて同じようなことを言われる。我々も地元に帰っていろいろな企業なり団体なりにお話を聞きますと、継続的にもうかっているところはいいわけですが、ともかく上がったり下がったりする、特に京都の場合は不況の業種がたくさんありまして、よくなりかけると例えば今回のように円高になる、あるいはまた今度円安になる、こういうようになってまいりますと、こういう制度がもろに効いてくるような形になるわけであります。そういう意味から考えていきますと、今までいろいろな悪い税制がありましたけれども、その中でも上から一番目か二番目か三番目かに該当するような、中小企業というか各企業にとってかなり致命的な税制という感じがするわけでございます。  いろいろなことを申し上げたいのですけれども余り時間がございませんので、この税制を考えつかれたポイント、何でこのようなものを思いついたのか、これについてお聞きしたいと思います。
  223. 水野勝

    ○水野政府委員 現行の法人税は一応五年間の繰り越し制度を採用しているわけでございますが、本来法人は、それぞれの事業年度単位で決策をしていただき、それに基づきまして納税をし完結をしていただくというのが原則であろうかと思います。ただ、法人はそれぞれ継続企業でございまして、ゴーイングコンサーンとして事業を続けておられる。その際に、ある年に赤字、ある年に黒字でありましても、その通算が全くきかないのはいかがかということから五年間の通算を措置いたしておるということではないかと思うわけでございます。  しかしながら一方、百数十万の法人のうちの五五%の法人が赤字申告をしておられるけれども、五年間の通算制度によってかなりの法人がゼロ申告をしておられるということも事実でございまして、この赤字申告割合が第一次オイルショック、第二次オイルショックを通じて、従来三〇%ぐらいでございましたのがほぼ五割から六割に定着をいたしておるという現象が見られるわけでございます。そうした場合に、この欠損の繰り越し制度というものを基本的に見直しまして、五年間というものを四年にするとか三年にするということも考えられるわけでございますが、これは法人税制を通じますところの基本的な体系にもやや関連することではなかろうか。ということになりますと、現時点で抜本改革を控えておりますので、五年を四年にするとか三年にするということはこの際は適当ではないのではないか。しかしながら、この際財政事情を勘案いたしまして、直近一年間の部分の繰り越しを停止させていただく、その後はなお四回の機会がある。とすれば、法人に絶対的に新たな負担をお願いするという制度にならない範囲で、法人の制度の抜本的な体系に影響を及ぼさないぎりぎりの範囲で、当年度としては黒字の法人に若干の御負担をいただければいかがか。  でございますから、五年を四年にするということでございますと、基本的な、あるいは形としてはすっきりした改正になるわけでございますけれども、今回は抜本改革を控えているということからやや臨時的な姿になっておりますが、この際はこういうことでお願いしたいということで御提案申し上げておる次第でございます。
  224. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 抜本改正の前だからいじれないということで繰り越し停止だけやるというのはおかしな話ですね。  それから、先ほどの民活あるいは東京湾の減税問題、これは両方足して幾らなんですか。
  225. 水野勝

    ○水野政府委員 東京湾の方は民間出資がおおむね二百億円程度と言われておりまして、これが初年度計算でまいりますと、減収額を計算いたしましても一億円未満になるのではないかと思われるわけでございます。  一方、草の根民活的なものといたしましては、先ほど来のいろいろな規模等を勘案いたしますと、一応十億円程度というふうに見積もっておるところでございます。
  226. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 これはそれぞれが地元に関することで言いにくいのですけれども、そういう小さいものからずっと拾い集めていくと、一年ぐらい延ばしてもいいのじゃないかというものが結構あると思うのです。そう言っては怒られますけれども、実際はそこまで腹を決めてやるならば、どっちが大変かということを考えていかないと、国の行政に携わる最高責任者の一人として民間に与える影響力は非常に大きいと思うので、ただ単に今二千億欲しいからということで片方では変えられないと言いながら自分たちだけが変えてしまう、こういうことをやられているわけです。立場上わかるのですけれども、やり方としては一番まずいところに手をつけたのではないかと思うのです。その辺について言われるとやむを得ないという話しか返ってこないと思うのですが、やめてもらいたいというのがいろいろな方々の要望だと思うのです。まず、これにどういうふうに対応されるか。  それから、去年ですか、納税の猶予というか何かそういう制度があったような気がするのですけれども、あれはたしか期間が短縮されましたけれども、この辺について例えば延べ払い制度なり猶予というような形がとれないのかどうか。  それから、五年間と固定して考えるならば、五年たったら返してくれという制度、いわゆる還付ですね。今借りるんだ、これは制度としては生きているんだ、こういうふうなことにならないのか。この辺についての御意見と、今後どういう形で検討していただけるのかについて御回答をお願いしたいと思います。
  227. 水野勝

    ○水野政府委員 昭和五十九年度の改正におきましては、五十二年以来の相当規模の所得税減税を行うということから、その財源措置といたしまして法人税の税率の暫定的引き上げ、酒税の負担の引き上げ等を行わせていただきましたが、なおそれでも足りないところでございまして、先ほどお話しの点かと思いますけれども、法人税の延納制度を停止したところでございます。――失礼しました。延納制度はその前でございます。五十九年度におきましては繰越欠損金の繰り戻し制度につきまして停止をさせていただいたところでございます。延納制度につきましては五十七年度改正でお願いをしたかと思います。昭和六十年度改正におきましては、所得税の税額控除を繰り越しさせていただいて、四年たった後還付させていただくというふうな措置を講じさせていただいたところでございまして、昭和六十一年度は繰越欠損金の直近一年間の停止というふうにさせていただいたわけでございます。  こうした措置は、税制の基本的な姿からいたしますと必ずしもすっきりしたものではないわけでございますが、現在のような財政事情のもと、しかも大きくは「増税なき財政再建」ということから実質的に法人に御負担を願うというような大きな改正は差し控えるべき状況にあるわけでございますので、そこで延納でございますとか繰り戻し制度、税額控除の停止あるいは欠損金の繰り越しの一時停止、こうしたやや一時的な措置をとらさせていただいているわけでございます。まさに、このようないわばやや臨時、異例的な措置を積み重ねておりましてもこれは限界があるわけでございまして、そういった点もございまして、税制につきましては、法人税も含め所得税を中心とし税制の抜本的改革に現在着手がされている。そうした抜本的な改革に至るまではもろもろの臨時的な措置を講じさせていただいているというのが現実の姿でございます。  こうしたものを恒久的な法人税制との関係におきましてどういうふうに考えるか、これは現在進められております基本的な税制改革の中であわせて検討がされることかと思うわけでございます。具外的に今回の措置につきましては、これは四年間なお控除の機会があることでございますので、その中でぜひひとつ活用を願いたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  228. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 五年間のあれがあるのですけれども、結局資金繰りからいくと一番苦しいときに該当するのではないか、こういうふうに思うわけで、一番悪い時期、もう一年ずらすとか二年ずらすとかというと余り問題はないと思うのですけれども、あるいは年限を短くするとかという方がまだ影響力は少ないわけですね。ただ大蔵省としてはことしと来年の税金が欲しいということで時期が集中したと思うので、その辺はぜひ私が先ほど申し上げたような方法をとっていただくように検討いただきたいと思います。  続きまして、例の、この感じからいきますと中小企業対策の中での融資の問題が出てくるかと思いますけれども、特に中小零細企業と申しますかこの辺の融資に対する担保、これが、前回もお聞きしましたけれども、大手の銀行取引、都市銀行との取引をされているところについては大体三割ぐらいしか担保の付保率といいますか、こういうものがない。そして相手銀行が地方銀行なりあるいは信用金庫なりに移ってまいりますと、相手方がだんだん小さくなってまいりまして、そういう企業になりますと担保の付保率というのが非常に高く、八〇%を超えてしまっている、こういうような状況でございます。こういうような状況で今回のような措置が行われますと、ますますお金が足りない、資金繰りが苦しくなる、そして担保はない、こういうような形になるわけでございまして、そういう面から考えていきますと、制度融資等いろいろございますけれども、この制度融資の枠の拡大、そして無担保保証といいますか信用保証の金額の拡大、こういうものをやっていかなければいけないのではないか、こういうふうに思うわけですが、これについてどういうふうにお考えになっているか、どういう方向にいくのか、これについてお聞きしたいと思います。
  229. 吉田正輝

    ○吉田(正)政府委員 中小企業に対する融資担保徴求の件でございますけれども、そもそもは、融資に際しましては金融機関は債務者の信用状況とか資金の使途などを見ながら自主的に判断していく問題でございます。しかし、中小企業の個別具体的な実情に応じまして、金融機関の経営の健全性を守るべきことは当然でございますけれども弾力的に対処することが民間金融機関についても期待されておりまして、私どもとしてもこれを注視してまいりたいというふうに存じております。  それからこの信用保証制度でございますけれども、先生指摘の点は信用保証協会の保証の点かと思います。ただいま信用保証協会においては担保微求についてはかなり寛大になっておるというふうに認識しておるわけでございますが、例えば担保や保証人を提供し得ない中小企業者に対しては無担保無保証の特別保証、限度三百万円がございますし、また担保を提供し得ない中小企業に対しましては無担保保証、限度一千万円が利用されるようになって、担保面でも配慮がされているわけでございます。今度の中小企業対策におきましても、この点について特別枠を設けるなどについていろいろと配慮させていただいたということでございます。
  230. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 無担保無保証の枠が三百万ですね。これがかなり長い間固定されていると思うのですが、その辺について問題がある。それから、先ほどもありましたように、いろんな事業転換とか中小企業の関係の金融という形で、あれは要するに無担保ですね、無担保の場合に一千万、それから担保つきの場合七千万ですか、何か今度拡大されましたけれども、こちらの方は確かにおっしゃったように今の時勢に合わせた形に変わってきていると思いますが、例の三百万の方ですね、この辺をせめて何とかできないかというような気がするわけで、この辺についてどういうふうにお考えになっているか、お聞きしたいと思います。
  231. 吉田正輝

    ○吉田(正)政府委員 全体としての保証の制度でございますけれども、業況の悪化している不況業種等に属する中小企業者につきましては、普通保証、無担保保証、特別小口保証ということで、通常の付保限度額に加えましてそれぞれ別枠で同額利用できる特例措置を講じておるわけでございます。  そしてこの限度の引き上げ状況につきましても、普通保険につきましては、三千五百万から五千万円、五十五年六月には七千万円、それから無担保保険につきましても、先ほど一千万円というふうに申し上げましたが、大体二年置きだったと存じますけれども、五百万円、八百万円、一千万円、それから特別小口保険につきましても、先ほど三百万と申し上げましたのも、従来百五十万円でございましたのを二百五十万円から三百万円というふうに漸次引き上げて、精いっぱいの努力をしているところでございます。  この保証協会等の制度、保証をしてそれに保険公庫が保険をつける、こういう制度でございますけれども、この制度はできるだけ活用することが中小企業者の無担保の借り入れあるいは無保証の借り入れ等で非常に便利な制度ではございますけれども、それだけに年々保証協会の経営それから保険公庫の経営も非常に困難な状況にあるわけでございまして、政府といたしましては、その補給金あるいは出資金等の増強を中小企業対策の中でも特に優先しながらやっているわけでございますけれども、今までのところ精いっぱいぎりぎりの努力を重ねました結果がこのような状況になっているわけでございます。御理解を得たいと思っております。
  232. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 最後に大臣に一言お聞きをしたいと思いますが、今、政府税調の中で六十二年度以降の抜本的な税制改正の論議が行われているということでございます。昨日も参考人の御意見の中にもあったのですけれども、国会の場での論議、これが一向に行われない。逆に言えば税調が隠れみのになっているような感じがしまして、何となくうわさでは聞こえてくるのですけれども、今税調で審議中だというような話によくなるわけですね。  うわさによりますと、参議院選挙前に減税案が出てきて、そして秋の終わりの方に増税案が出てくるというようなうわさも流れているぐらいでございまして、そういう面から考えていきますと、出てくるまで国会が全然タッチができない、こういうばかな話はないわけでございまして、やっぱりそれなりに反映させる、むしろ逆に、税調が骨子をつくるのですけれども、その中にやっぱりかみ込んでいくようなこともやらなければいけないし、出てきたときにそのままそのものを手をつけないで通すということはまずないと思うので、そういうことから考えていきますと、国会の場での論議というのをやはりぼつぼつやっていかなければいけないんじゃないか、あるいは場合によっては中間報告で二回ぐらい税調の方からやっていただくようなことも考えていかなければいけないんじゃないか、こういうふうに思うわけでございますが、これについてどういうふうにお考えになっているかお聞きをして、終わりたいと思います。
  233. 竹下登

    ○竹下国務大臣 まず、国民各界各層を肌で感じた代表はだれかというと、やはり国会だと私も思うのです。それで、五十九年の暮れに、幹事長・書記長会談等で六十年中に結論を出そうという話がありましたが、待てよ、こういうことで七月まで精いっぱい国会で議論をしてもらったのを整理して、そこで九月から税調ということになったわけでございます。したがって、きょうしておる議論もなお追加して正確に報告し、税調の方の審議の糧としてもらいたいという考え方で今日まで進んでまいりまして、したがって、政府としては可能な限り予見めいたことを申さないようにという姿勢でまいりました。  そこで、今度はこの間の新しい幹事長・書記長会談の申し合わせを見ますと、六十一年中に協議して結論を出すというのは、これは私の想像でございますけれども、税調の審議ぐあいを大体横目で見ながらお考えになったのかな、そんな感じがいたしますので、それがどういうふうな形で反映していくようにしたら一番いいかということも恐らく御協議になるだろう。私どもも非常に関心を持っているところであります。  そこで次の問題、一度でも二度でも中間報告か何かを出してそれで議論してみたらどうだ。それも一つの考え方だと思いますが、税調に縛りをかけるわけにもいきません。今、税調で考えていらっしゃるのは、いわばゆがみ、ひずみ、痛みはどこにあるかというのを春に整理する、そして、今度は総体的なもので、ニュートラルなもので後半に整理して答申しようということでございますから、中間報告というわけにはちょっといきませんでしょうが、例えば特別委員会報告とかいうようなものがなされた場合には、それがまた国会の議論の、たたき台と言っては失礼ですが、一つの糧としてもらうような方法はあるのかなと考えております。幹事長・書記長会談の話し合いも、最高首脳の方ですから、恐らくその辺を横目でにらみながらお考えになったのかな、こんな感じで、私もどういうふうな工夫をした方がいいかと思っております。  今おっしゃる意味はよくわかりますし、答申が出てからそれを議論するのも大事なことでございますが、中間の分は、国会の議論を向こうへ正確に伝えることも反映さす一つの方法であろうと思いますので、かれこれ幹事長・書記長会談の考え方とあわせて私どもも工夫してみなければいかぬと思っております。
  234. 堀之内久男

    ○堀之内委員長代理 水野主税局長から発言を求められておりますので、これを許します。水野主税局長。
  235. 水野勝

    ○水野政府委員 先ほど、延納につきまして五十九年と申し上げ、いや、それは五十七年だったと申し上げましたが、混乱をしておりまして、五十七年に半分に縮減し、五十九年に廃止と申しますか全部を停止しているというのが実態でございます。失礼いたしました。
  236. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 終わります。
  237. 堀之内久男

    ○堀之内委員長代理 簑輪幸代君。
  238. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 一昨日に続いて御質問させていただきたいと思います。  税制改革というふうに言われておりますものが一体どんなスケジュールで進んでいくのかという点について大変な関心を呼んでおりますところ、先日来、この税制改革については一遍にやるといろいろ問題もあるので、六十二年度以降二、三年かけて段階的に実施する多年度一括方式でやるという方向も示されているような報道がございますけれども、果たしてそういう方向を考えておられるのかどうか、明らかにしていただきたいと思います。
  239. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これはさる委員会で私の発言からいろいろな報道がなされたことでございますので、まず私からお答えいたします。  税制の抜本的な改革に当たりましては、いわゆるレベニュー・ニュートラルを前提としておりまして、また全体を整合性のとれた体系とするため、包括的、一体的な改革案を同時に策定して法制化する必要がある、だから法制化は一括して一遍にやる、こういうことです。だが、この改革案は所得税を初めとし税制全般を見直すものでございますから、個々の税の性格上、実施のタイミングについては必ずしも一致しない場合があり得るかもしれない。そこで、納税者に全体的な展望を示すためにも、この場合においても法制化は単年度にやって、よくあることでございますよね、施行日、だから平年度化を完全にしてしまうのはいわゆる多年度とでも申しましょうか、そういう意味のことで申し上げたのでございますので、法案作成の時期を数年間かかってやろうという意味で申し上げたわけではないということを、まず整理してお答えいたしておきます。
  240. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 そうすると、税制改革に伴う法律改正等については全体を一度に国会審議等に付するということにお聞きするわけですけれども、それは再三論議されておりますように、税調でいろいろな論議をし答申を経た後ということになるわけですが、最終答申を得て、そしてばたばたと国会で論議をし法律を制定していくことは問題があろうかと私どもも思うわけです。昨日の参考人の質疑の中でも暉峻参考人が言っておられましたように、中間報告的なものを国民にぜひ示してもらいたい。それが例えば大蔵委員会に報告をされて、そこで論議をされるということもあるでしょうし、あるいはまた広く国民全体に提示されるということもあるでしょうが、とにかく最終的な抜本見直し案が一度にどっと出て、それで、さあ次ということじゃなしに、事前に国民的討論に付することも含めて、中間報告をぜひ求めてほしいというような参考人の御意見もありました。私もそのとおりだろうと思います。  今、中間報告についての御答弁もありましたが、もう一度簡潔にお答えいただきたいと思います。
  241. 竹下登

    ○竹下国務大臣 税制調査会は可能な限り自主的に運営してもらおう、でございますが、前半にいわゆるひずみ、ゆがみ、痛みというものの審議をしてくださいと言っておりますから、それも本当は中間報告が出るとは決まっていないのでございますけれども、大体そんな方向かなという感じはしております。あくまでも自主的にやってみよう。  ただ、私も考えますのは、一つの方法だと思いますけれども、昭和五十四年以来の国会の審議は、税調の審議の何倍も審議しておりますから、むしろそれが向こうに反映するのが本筋かなと実際は思ってみたわけでございます。そうすると、今度は中間にどの程度のものを、専門委員会なんかの報告が出ればそれは入手できるでございましょうが、そういうふうにタイミング的に正確に中間に切れるものがあるかどうかということになると私も判断が明瞭にできないということでございますので、貴重な意見でございますから、もう少し勉強させてもらいたいものだと思っておるのが今の実感でございます。
  242. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 そこで、税制の抜本見直しの中で、少額貯蓄非課税制度、いわゆるマル優の行方がどうなるかということは非常に大きな関心を呼んでいるところでございます。たくさんの皆さん方からのお話を聞きますと、このマル優はぜひ存続させてほしい、ここに税金をかけるなどということはとても困るという声が多いわけです。ところが、いろいろな論議を見てみますと、低率分離課税の導入というようなことも言われておりますし、税調の答申などもございますし、そういう中でこのマル優の行方というのは一体どういうことになるのだろうか、果たして低率分離課税ということになってしまうのだろうかということで大変な心配もございますので、これをどうなさるのかという点について大臣の御所見を承りたいと思います。
  243. 水野勝

    ○水野政府委員 利子配当課税につきましては、五十四年度、五十五年度あたりからいろいろな角度から検討されてきているところでございますが、一応昭和六十年度改正におきまして、非課税貯蓄制度につきましてはこれを限度額の適正化でもって対処するということで国会に御提案をし、現在実施されておるところでございます。ただ、その過程におきましては、税制調査会におきまして低率分離課税というような答申がなされておったことは御指摘のとおりでございます。  こうしたことで一応は現在の姿になっておるわけでございますが、税制の抜本的見直しでございますので、この利子配当課税につきましても、その検討の課題になるということは当然予想されるところでございます。現在、個人貯蓄が五百兆になり、またそのうち三百兆近くは非課税扱いとなっているという点につきましては、課税標準の浸食といった面からも大きな問題があるのではないかと思われますが、いずれにしましても、今後の税制調査会での検討課題であろうかと思います。この点につきましては、検討のスケジュールといたしましてはやや後半の検討課題になるのではないかというふうに考えられているところでございます。
  244. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 マル優については貯蓄奨励という目的もあって設けられているというふうに伺っておるわけですけれども、一律に利子課税云々というふうにひっくくってしまうのはいかがなものか。貯蓄と申しましても圧倒的多数は四百万以下の貯蓄というところにあるわけでして、そういう意味からいえば、この貯蓄というのは、今日の段階で国民生活を営む上で、将来に備え、例えば老後の問題あるいは医療の問題、そしてさらに教育の問題等々不安がますます増大する今日の政治のもとで、生活防衛という観点から必死になって貯蓄をしているというケースが多いように私は見受けられます。そして同時にまた、ささやかな年金を当てにしながら老後生活を計画しておられる方々にとっては、この利子というものが重要な重みを持ってきているということをあわせ考えますと、マル優問題についてはもっと深い検討がされなければならないと思います。  減税財源の一つとしてこれだけ莫大なものが非課税になっているのに目をつけない手はないというような発想は、まことにいかがなものかと思われますが、どうでしょうか、減税財源の一つとしてこれは重要なものであるという認識なのでしょうか。     〔堀之内委員長代理退席、委員長着席〕
  245. 竹下登

    ○竹下国務大臣 そもそもが、今度のこの抜本改正に対する諮問がいわゆる増収を目的とするという基本的な考え方でやっておるわけじゃございません。したがって、仮に最終的な政策選択の問題はあり得るといたしましても、これは税のあり方そのものという角度から議論していただくわけでございますから、したがって初めから、あっマル優だ、これは減税に対する財源だ、こんな考え方でこの諮問を申し上げたことでは全くございません。
  246. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 どういうつもりで諮問をしたかはともかくとして、今日、重要な増収というか増税の対象として考えられていることは事実でございます。  そういう中で、実態を分析していきますと、零細な貯蓄者への課税というのはやはり問題があろうというふうに言わざるを得ないと私は思うのです。将来どういう方向になるかという点について大変な心配がありますけれども、例えば三五%源泉分離選択制というものが廃止されて利子配当の総合課税化するという方向を目指すのかどうか、その辺の方向性はいかがでしょうか。
  247. 水野勝

    ○水野政府委員 利子配当課税につきましては、昭和五十年代に入りましていろいろ論議され、いろいろな方向への答申もまとめられたりしてまいった経緯があるわけでございますが、一応、六十年度改正としては先ほど申し上げたような形になっておるわけでございます。その六十年度改正の際に当たりましてもいろいろ議論があったわけでございまして、総合累進課税を貫くべきであるという考え方、一方、利子所得は、発生の大量性、商品の多様性、浮動性等を勘案すると課税方式は簡明なわかりやすいものの方がいいのではないかといった観点もいろいろ述べられているところでございます。今後税制調査会で恐らく検討がされるわけでございますが、こうした全体としての所得税のあり方、その中での資産所得に対する課税のあり方、一方、利子配当所得の持つ特異性や金融の国際化、自由化の進展といったさまざまな事情に配意しつつ、幅広い角度から検討が進められるのではないか、こんなふうに考えておるわけでございます。
  248. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 税のあり方についてはやはり公平、公正ということが重要な問題であり、そういう点から考えましても、この源泉分離選択制が非常に大企業、大資産家優遇税制であるということも言われているわけですから、その点、やはり総合課税化すべきであるということを私は重ねて申し上げたいと思います。  続いて、大型間接税についてちょっとお尋ねしたいと思います。  まず最初に間接税というものについてどう見るかということなんですけれども、一九八五年九月の「くらしからみた税金白書」、これは日本生活協同組合連合会が調査に基づいて分析しております。  それによりますと、月収二十万円以下の世帯での収入に占める間接税の割合が平均で五・四八%であるのに対し、月収六十万円を超える世帯の平均が二・四七%である。比率で言えば、月収二十万円以下の世帯が六十万円を超える世帯の二倍以上の負担になっている。間接税の負担がこういう結果になっているという調査結果でございます。  収入全体に占める税金の割合は、月収二十万円以下の世帯で一三・五二%の負担となっています。月収二十万を超え四十万までの世帯がそれより低くて、五万円刻みでいいますと一二・一八%、一一・八五%、一二・三〇%、一三・四七%ということで、いずれも二十万円以下の世帯よりも低い負担となっている。これは、直接税の累進性が間接税の逆累進性によって相殺されてこういう結果になっているというふうに分析されているわけです。  税金の直間比率という点で見てみますと、収入の少ない層ほど間接税の比率が高く、月収二十万円以下の世帯では税金の四割以上が間接税となっています。現在の国民の家計から出されてきたこの結果、それは間接税の逆進性を明瞭に示しているというふうに思いますけれども、現状での間接税の逆進性についてどのようにお考えでしょうか。
  249. 水野勝

    ○水野政府委員 現在の日本の税制、国税の段階におきましては間接税は税収の約三割弱を占めておるわけでございますが、我が国の間接税は、酒、たばこ、自動車、ガソリン、こういったものがその圧倒的な部分となっておるわけでございます。そのうち、さらに酒、ガソリン等につきましては従量税を主体としておるわけでございます。こうした観点から見ますと、我が国のこうした非常に限られた物資、しかも、酒、たばこ、ガソリンといった、階層別に見ましてもその消費がかなり安定した割合を占めておるような諸物資、物品に対して偏って負担を求めておるということからいたしますと、その負担割合は所得階層別に見たらかなり逆進的になるということは事実であろうと思われます。委員指摘のこの報告書におきましても、その中での大きな部分を占めておりますのはたばこ税、ガソリン税、酒税でございます。物品税につきましてこの同じ資料を拝見しますと、これは割合、所得階層別に見て負担割合が上がっておる。これは物品税がその税率構造は従価税を主体としておるということからの現象ではないかと思うわけでございまして、現在のような限られた物資に従量税を中心として課税をいたす我が国の間接税の負担割合は、かなり逆進的な面を示すことがあるということは御指摘のとおりではないかと思うわけでございます。  ただ、我が国の税制の七割を占めます直接税につきましては、この表にもございますように、階層別に負担割合は累進をしておりますので、全体としての税負担の配分は累進的になっていると言えるのではないかと思うわけでございます。
  250. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 間接税というものの性質からいってそういう結果になるとは思うのですけれども、加藤自民党税調会長は、大型間接税は逆累進性であると言われるけれども僕は逆累進性では全然ないと思う、全然ないというとあれだけれども、というふうなことを述べておられます。ですが、大型間接税そのものが間接税体系をそのまま引き継ぐものでもあり、逆累進性になることは否定できないわけで、それを是正するためのいろいろな措置が仮にとられたとしても、それは逆累進性を否定するということには到底ならないわけですね。  付加価値税を実施しているフランスで発表された資料によりますと、「収入の最も低い階層においてもその消費支出中八・九%の付加価値税を負担しており、以下収入階層が上がるに従ってごく僅かずつ負担率が増えるものの、最も収入の多い階層でさえ一〇・六%の負担にすぎずその差は僅か一・七%となっている。一方収入は二四、〇〇〇フランから一八〇、〇〇〇フランまで、少くとも七・五倍になっているから、収入に対して明確な逆進性を示しているといえよう。 さらに職種別に負担率をみると、最も低いのは農民で九・二%、最も高い負担率を示しているのは中級幹部職、職人・小商人の一〇・四%でその差は一・二%しか開いていない。しかも驚くことに非就労者(失業者・年金生活者、母子家庭、などを含む)といえども九・五%の負担率を負っているのである。」というふうに言われています。フランスはこの付加価値税の逆進性を是正するための措置をとりながらでもこういう結果になってきているわけです。  それから、アメリカの財務省が分析しておるものによりますと、付加価値税と一般売上税とを分析しているわけですけれども、「この税制に本質的な逆進性からして、連邦付加価値税制もしくはその他の形態の一般売上税は、所得税に全般的に取って代わるものとして採用すべきではない。連邦売上税の実施は、高くつくし、時間もかかる。」これは創設コストとか以後の継続的な毎年の行政コストというものもあるようです。「したがって、連邦売上税を現行所得税の一部の代替としてのみ導入することも、それによって所得税の問題がいくらか緩和されるにしても、望ましいとは思えない。」ということで、採用していないということがあります。  こういう点から考えてみますと、大型間接税、それが付加価値税でありましょうとも、こうした逆進性というものが税の公平という観点から見て非常に重大な問題であると思いますし、断じて大型間接税は導入すべきでないと私は思います。そこで、大型間接税の逆進性についてどのようなお考えかを聞かせていただきたいと思います。
  251. 水野勝

    ○水野政府委員 間接税の問題につきましては、抜本的な改正作業を行っております税制調査会としての広範な検討領域には当然入ってまいるものとは思います。ただ、その検討の順序なり取りまとめの段階、順序からいたしますとこれはこれからの、後半の検討、審議課題ではないかと思われるわけでございますので、この点につきましては現在の時点でいわばまだ態度は白紙でございまして、この点についてなお御議論を申し上げるという段階には至ってないわけでございます。
  252. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 大型間接税も財源確保という観点で大変問題になっておりますが、一たび導入されるということになれば、財源確保の必要から税率が引き上げられるという懸念も再三表明されているところでございます。  それで、このアメリカの財務省の分析でも、「創設コストと以後の継続的な毎年の行政コストの規模からして、五―六%の率の付加価値税の導入は、賢明ではない。(専門家のなかには、一〇%以下での導入は、意味をなさないと考える人々もいる。)」こういうことが言われているわけです。  当初どのような税率で導入されましょうとも、あるいはそれが財源確保ではなく他の名目によって導入されましょうとも、それは後に税率を上げることによってしか財源確保の効果は上がらないわけで、やはり税率の引き上げへという懸念があるわけですけれども、大型間接税を財源確保という観点から考えられているというふうには言えないでしょうか。私はそのように思いますが、いかがなんでしょうか。
  253. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これもいわゆる増収目的ということじゃなく、税の基本的あり方という点から議論をされるべき問題でありますし、実際問題、過去の税調の中で一応の結論が出た時期もございましたね。したがって、いずれにせよ課税べースの広いという意味において議論の対象になる課題だと私も思います。  それで、原則的に一般論として申し上げますならば、それはどんな高額所得の方もどんなに低い方も、ハイライトを買えば値段は一緒でございますから、そういう素朴な意味における逆進性というのは間接税そのものには存在しておりますが、税体系全体でいわゆる所得の再配分ということから累進性をどう組み合わせていくかというのが税のあり方でございますので、だから逆進性のあるものすべてだめという論理は必ずしも適正でないかもしらぬ、現存しておるわけでございますから。  それから、フランスの例をお出しになっておりましたが、私も時に注意したことがあります。あなたのところは余り間接税依存が多いから、そこで歳出圧力に耐え切れなくて安易に税率を上げると、とうとう国民負担が五五%にもなったじゃございませんか、したがって、我が方は三六%で我慢をしてきましたから、ついに追いつけ、追い越せの対象にあなたの国は早目にとらえられたではないですかというような話は時にいたします。だから、それは注意していなければならぬことだと思います。今度のたばこの問題も私は実はそんな感じがして、みずからに言い聞かせておるのもその一つでございます。  それから、アメリカの場合よく言われますのは、とにかくヨーロッパのあれをやるためにあれだけの時間がかかったんじゃないか、あれだけの人手がかかったんじゃないか、だからとおっしゃっておるわけです、あの財務省ベースの考え方は。しかし、御案内のようにあそこは州税の方はセールスタックスの非常に多い国でございますから、国税の場から考えた考え方と、仕組みそのものが間接税が州税になっておるというところの国柄もあるだろうなというふうに感じております。いずれがいいと言っているわけじゃございませんが、一般論をあえて申し上げたわけでございます。
  254. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 間接税の逆進性というものがあるから一概にそれが悪いとは言えないというふうにおっしゃいましたけれども、現在そういう状況があるからといってそれが肯定されるわけではないと私は思います。やはり税の公平、公正という観点から考えてみたときに、現行の逆進性のある税制等につきましても検討さるべき問題であるということは指摘してきたところでもございますし、そういう点から、やはり今後問題になる大型間接税というのは、従来の間接税ベースでの問題点よりはより一層大きな逆進性という問題があるのではないかということを私どもは指摘しているところでございます。  間接税というのは、従来から税痛がないために導入しやすいということも言われてきましたし、そういう点からいっても非常に財政当局として魅力を感じる税制がもしれないけれども、国民サイドから見ると重税感ではなくて重税をなくしてほしいというふうに私はかねてから言っておるわけですが、間接税の中に潜り込んでくる税の負担、こういったものに対して国民としては承知できないという部分があるわけです。  さて、政府税調の答申で、「法人税の負担水準のあり方については、税制の抜本的見直しの中で今後検討していくべきもの」というふうにまた言われているわけです。これについて加藤自民党税調会長は、法人税率について、全体として下げる過程において片一方はとめておく方法なら考えられるかなというふうにして、高い税率の方を下げていくという形で格差縮小を考えておられるようです。税調の方も格差縮小という指摘をしているわけですけれども、それはこの加藤自民党税調会長と同じ方向がどうか問題があると思いますけれども、この法人税の格差縮小について大臣はどのようにお考えでしょうか。
  255. 水野勝

    ○水野政府委員 法人税の負担水準のあり方につきましても今後の抜本的な検討課題の中の一つとして審議されるものと思われますが、従来からの考え方からまいりますと、やはり法人課税につきましては累進課税といったものにはなじみがたいものであり、税率としては基本的には単一の比例税率であるべきである、これが一般的には従来からの考え方でございます。そういった考え方からいたしますと、この軽減税率制度については基本税率との格差を縮小する方向で検討することが適当であるというふうに言われてきておるところでございます。
  256. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 どういう方向で縮小するかということが大変重大な関心だと思います。いずれにしても、軽減税率の方へ近づけていく縮小なのかあるいは軽減税率の方をやめて引き上げていくのかということによって格差縮小の方向がまるっきり違うと思います。それにしても、結局中小法人にとってみればどっちになっても何のメリットもないということには違いないと思うのですね。  今回、租税特別措置ということで東京湾横断道路建設促進税制等々が、特に大企業向けの措置ということで新設されていますが、こうした措置はいわゆる抜本見直しの対象となるのでしょうか、これは例外措置となるのでしょうか。一年限りということではないようで、この抜本見直しが秋に出されるときに、このような東京湾横断道路建設促進税制というのが租税特別措置として今回設けられるとすると、見直しの対象にならずにずっと生き続けていくものなのかという点はいかがでしょうか。
  257. 水野勝

    ○水野政府委員 抜本改革の中におきましては、企業関係の租税特別措置、こうしたものも当然検討の対象になるものと思われるわけでございます。ただ、今回の税制改正で御提案申し上げております部分につきましては、民活関係が多いわけでございます。東京湾横断道路もそうでございますし、先ほど来の草の根民活もそうでございます。東京湾につきましては五年間の、それから民活特定施設については二年間の期限でございますが、今後の国際経済環境という点から勘案いたしますと、このような国民生活の基盤となるような施設について、民間の能力を活用し推進をしていくということから税制としてお手伝いをするという考え方は、近々のうちにこれが大きく見直されるということはどうも余りないのではないかという気はするわけでございますが、これは、年々の租税特別措置は国会に御審議をお願いしていくわけでございますので、現時点で確定的なことは申し上げる段階にはないわけでございます。  ただ、東京湾について申し上げますと、東京湾の特例は二つございまして、一つは割引債の特例でございますが、今後利子配当課税が見直され、検討される過程の中におきましては、当然これも一つの検討課題にはなるものと思われるわけでございます。また、出資の一〇%特別控除の点につきましては、一応出資の段階ではそのような措置は講じてはおるわけでございますが、これが例えば途中の段階で譲渡された場合にはその分は取り戻すとか、配当につきましての益金不算入措置はこの部分については適用しないとか、法人税の基本的な点には影響のないようには措置をいたしておるところでございます。
  258. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 お話を伺っておりますと、結局のところ、この措置については、民活ということで、抜本見直しの対象というよりはもう既にこれは例外として措置されているというような感じがしたわけです。それだとすると、租税特別措置を見直していくという方向とあわせ考えてみましても、何かもう既に結論を出して、これだけは特別扱い、優遇していくというふうになっている、私はこれは非常に問題だろうというふうに思います。抜本見直しというときにはすべてのものが対象になると言いながら、民活関連だけはもう結論が出してあるというような感じになるわけですから、そういうことはやはり大企業優遇であって、到底認められないというふうに言わざるを得ないと私は思います。  こういうふうな措置が拡大されていく一方で、今回増収措置の重要な部分を占めるものとして欠損金の繰越控除制度の直近一年間に生じた欠損金の適用停止を行っているということが非常に問題だと思います。欠損金の繰越控除制度は、初期投資の負担を担税力の面から企業基盤が安定する後年度に回して企業の存続を保障していこうとするものであるというふうに位置づけられています。今回の措置は、こういう趣旨から考えてみてこれに反するのではないかというふうに言わざるを得ませんが、どのようにお考えでしょうか。
  259. 水野勝

    ○水野政府委員 今回の措置は、まさに厳しい財政事情のもとで、当年度としては黒字である法人につきまして欠損の繰り越しによりますところのゼロ申告でなくて若干の御負担をお願いしたい、こういう措置でございます。また、その直近一年の部分につきましては控除はできませんが、二年目、三年目、四年目、四年間にわたりましては以後控除できる機会があるわけでございまして、その法人にとりまして負担を最終的にふやしていただくというわけではないわけでございます。したがいまして、私どもとしてもこれは平年度化すれば増収にはならないというふうにカウントしているわけでございますので、一方納税者から見れば最終的に負担となるものではないというふうにお考えいただき、御理解いただければと思うわけでございます。  それから、先ほどの民活関連は、抜本の中で見直しされないというふうにはもちろん私どもも考えておらないわけでございまして、当然これも全体としての法人課税なり租税特別措置検討の中で見直しはされるものと考えているわけでございます。
  260. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 今回の措置については、会計の原則ということから考えてみましても、継続企業の立場を一時的にせよゆがめるものではないかと思います。しかも、既に終了した事業年度の欠損金について遡及適用を行おうということになるわけで、実害という点からいっても、制度の法的安定性からいっても問題があると思います。  若干の負担というふうに言われましたけれども、今回の租税特別措置の中での全体の増収見積もりと赤字法人への課税の予定金額、それからその中に占める中小企業分というのはどれくらいのものか、わかりましたらお願いしたいと思います。
  261. 水野勝

    ○水野政府委員 この金額は二千二百億と確かに大きいわけでございますが、赤字法人と申しますか、こうした対象となる企業の数は非常に多いものですから全体としてはそうした金額にはなりますが、一社当たりはそれほど大きくはならないのではないかと思うわけでございます。全体として発生いたします欠損金と申しますのが毎年大体五兆円近くになるわけでございますので、それの直近一年分の停止の場合にもこの程度の金額になるわけでございます。  規模別につきましては、現時点でその区分をした数字はございませんが、法人税の税収は中小法人と大法人では大体六、四で、六が大法人の方ではございます。しかし、欠損申告割合は中小法人の方が圧倒的に多いわけでございますので、この金額の中小、大法人の割り振りは法人税収の割合の逆ぐらいの方向の割合ではないか、こんなふうな気がいたすわけでございます。
  262. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 したがって、中小法人への今回の措置の負担というものはかなり大きいものがあると思います。  そこで、中小業者からもこの措置についての反対の声もあり、この赤字法人課税というものは、今日中小企業が当面しているさまざまな困難な事態から考えてみましてもさらに追い打ちをかけるものではないか。赤字企業をどう見るかという点ですけれども、圧倒的に中小企業が多いということを今も言われましたが、それには構造的な要因、制度的な要因、いろいろあると思うのですね。そこら辺を正しく分析しそれに対応していかないと、日夜一生懸命企業努力をしているにもかかわらず赤字経営を余儀なくされている中小零細企業に対して非常に過酷な措置ではないか。むしろこうした企業に対しては、赤字を克服し積極的な振興策を講じて収入を上げ、納税できるようにしていくのが筋であって、赤字企業に課税をするという今回の措置というものは全く逆の方向ではなかろうかと思いますが、その点はいかがでしょうか。
  263. 水野勝

    ○水野政府委員 これはもうあくまでその年度といたしましては黒字の法人につきましての措置でございまして、赤字法人につきましてさらにその足を引っ張るというものではなく、またそれは当年度で控除できなかったらすべて終わりということでもございませんで、その後の四年間では控除できる機会は残されておるわけでございますので、その中で控除をしていただけるようぜひ御理解を願いたいと思うわけでございます。
  264. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 しかし、それはその年は黒字だからこそ税の問題が出てくるわけですけれども、黒字になるか赤字になるかというその判断の過程でこれが問題になってくるということはございませんか。
  265. 水野勝

    ○水野政府委員 その年といたしましては欠損金の繰越控除前は黒字である法人についてこの問題が起こるわけでございますので、あくまで控除前は黒字であった法人の問題であるというふうに私ども考えてはおります。
  266. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 ですから、問題となる部分については、前年の税制であるならば赤字になるわけだけれども新しい税制のもとで黒字になるという違いが出てきませんかということです。
  267. 水野勝

    ○水野政府委員 この税制、特例措置がない場合には全部控除し切れなくてゼロ申告になる法人が当然その中にあったであろうということは御指摘のとおりだと思いますが、その控除前におきましては本来は黒字であったということであろうかと思います。
  268. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 そういう理屈の問題はそのとおりだと思うのですけれども、現実にこの問題を深刻に受けとめて、ぜひこれをやめてほしいと言っているところは中小企業の中でも大変厳しい状態に置かれているわけですし、今日円高の問題なども加わりまして大変深刻な事態を迎えているということから見ましても、このような措置というのは、今日の時点でそういう効果が生まれるという点から見ればそういう被害が今日あるわけで、後ほどそれは回復できる云々と言われましても事業そのものはその時点でどういう内容かが問題になるわけですので、その辺のところまでちゃんと目配りをしてやらないと、私は中小企業に対する過酷な税制ではないかということを強く指摘しておきたいと思います。  続いてお伺いしたいことは、家内労働者の課税の問題なんですけれども、内職税制の問題についてはこれまでも再三論議されてまいりましたが、労働省は六十一年度税制改正要望で、家内労働者の課税最低限度額の引き上げ、パート並みの九十万円ということで要望をされたわけです。その要望は一体どうして出てきたのか、そしてそれはなぜ必要なのかということについて、まず労働省から御説明をいただきたいと思います。
  269. 藤井紀代子

    藤井(紀)説明員 家内労働者の多くは、家庭の主婦層を中心としました内職的家内労働者でございます。現行税制上その所得は雑所得として取り扱われているわけでございます。一方、同じく家庭の主婦層を中心といたしましたパートタイム労働者は給与所得として取り扱われているわけでございます。  パートタイム労働者と内職的家内労働者を比較してみますと、外と内で働いているというように就労の場所の違いはございますけれども、しています作業の態様を見てみますと類似しているわけでございます。それにもかかわりませず課税所得金額に差があり、税負担に差が見られますので、パートタイム労働者並みにその収入金額が九十万円までは課税されないように改正の要望を行ったところでございます。
  270. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 この労働省の要望は取り入れられることなく六十一年度の税制改正が審議されているわけですけれども、大蔵省としてはこれをどのように受けとめ、どうあるべきかという点での御意見がございましたらお伺いしたいと思います。
  271. 水野勝

    ○水野政府委員 家庭の主婦の方が御主人の配偶者控除の対象になると、その所得金額限度額につきましてはパートの方でも内職の方でも一緒でございまして、三十三万円までの所得であれば控除が受けられるわけでございます。ただ給与所得者につきましては、必要経費の概算控除として給与所得控除が適用される、それの最低保障額が五十七万円として規定されておりますので、その最低保障額と三十三万円を合わせると九十万円になるということでございます。内職の方につきましては、その内職につきましてそれぞれの必要経費があればそれはそれで控除されるわけでございますので、その収入金額の非課税限度がどうなるか、それは内職の態様によるものではないかと思われるわけでございます。  しかし、このように一見差はございましても、まさに今のお話のように内職の実態がパートの方、給与所得者と同じである、例えば源泉徴収票が支給されておりますとか給与の明細書的なものが出されておるとか、実態が給与所得者ということで認定できれば給与所得者として扱い、パートと同じような扱いになっておるものとされておるわけでございます。したがいまして、この点につきまして実態として大きな実質的な差異が出ているとは余りお聞きをしてないわけでございます。  ただ、この問題につきましては、毎年パートの問題に絡みまして給与所得の最低控除額を引き上げるべしという御要望が強く、だんだんそれが上がってまいりますと、ますますパートと内職の点につきまして御議論のような現象が拡幅してまいるわけでございます。したがいまして、この点は、細かいようではございますけれども、給与所得控除とは一体どういうものなのか、今のお話で、うちで働いておられる方に対して外に出ていかれる方はやはり時間的、空間的に拘束をされる、そういったものに対する配慮が給与所得控除の中にあるとすればそこは当然扱いが違うはずでございますが、そういったことから、給与所得控除のあり方あるいは課税体のあり方といった問題ともひっくるめてこれはどうも基本的に検討を要する問題ではないかという気がするわけでございまして、そういった点も含めまして、若干細かい点ではございますけれども、今後の抜本的な改革の中でその一環として検討が行われるのではないかと考えております。
  272. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 この家内労働者の課税最低限の引き上げ問題について、労働省と大蔵省とが検討されたこと、話し合いをされたことはあるのでしょうか。
  273. 水野勝

    ○水野政府委員 毎年、各省から税制改正につきましての御要望はたくさん承っておるところでございますし、その際には両省それぞれいろいろな考え方なりデータを示して検討はいたしておるところでございます。  また内職につきましては、これは内職につきましての必要経費の見方の問題でもございますので、国税庁におきましてもその点は無理のないように対処をいたしておると聞いておるところでございます。
  274. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 内職の税制問題で、このような非課税限度額の引き上げという要求と同時に、例えば現在行われている一人親方的取り扱いというものも考えられるのではないかという要望もあると思いますけれども、その点についてどのようにお考えでしょうか。
  275. 塚越則男

    ○塚越政府委員 現行の税制のもとで、請負契約に基づいて受けます報酬は事業所得とされますし、雇用契約に基づいて受けるものは給与所得とされるということになっておりまして、事業所得に該当する所得を一律に給与所得扱いするといったような運用は大変困難でございます。  御指摘の大工あるいは左官のいわゆる一人親方の場合でございますが、仕事先が一定ではございませんで、その契約内容が請負契約によるものと雇用契約によるものとが混在している、その区分が大変難しいという場合が多いところから、その実態に即しまして、収入の多寡に応じて一定の割合で給与所得と事業所得に区分するということを認めております。ただ、その人の収入の性質が請負契約に基づくものか雇用契約に基づくものか明らかに区分できる場合には、このような取り扱いは行っていないところでございます。  ところで、いわゆる内職の場合でございますが、給与所得に該当するものもあろうかと思いますが、大宗は請負契約の形態をとるものが多いのではないかと思われますので、御指摘の一人親方のような場合とは同じには取り扱えないというふうに考えております。
  276. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 実態はパートで働く場合と家内労働という場合とほとんど変わりがないということは労働省からも言われましたけれども、そういう現状を踏まえて、やはり働く婦人の要望にこたえる税制というふうになっていかないと、税の不公平感それから重税感というものをなくすことはできないだろうと思うのですね。そういう点まで含めたきめ細かい税制のあり方という点で、労働者の実態、それから家内労働者の労働の実態をも十分承知している労働省からこのような要望が出されたということは、十分な重みを持って受けとめていただきたいということをあわせてお願いをしておきたいと思います。  最後に、住宅減税と言われる措置についてでございますが、内需拡大策として住宅建設促進ということを目指して今回の措置がとられるという法案になっているわけです。  これについて野村総合研究所は、住宅取得能力の試算から政策効果というものを推定しております。住宅取得能力、これは住宅価格に対する資金調達能力の比ということですけれども、これは「一九七八年をピークに八一年にかけ低下、その後回復傾向にあるものの、七八年より低い水準にとどまっている。貸し家系が高い伸びを示しているにもかかわらず持ち家系が低調なのは、住宅価格が購買力を大きく上回っているため」と指摘しています。  今回の住宅減税効果について、住宅価格が大幅に上がらなければ一万数千戸ふえるというふうに推定しているようです。住宅価格が上がらないという保証はないわけですし、一方で土地問題について今回の税制は何の考慮も払われていないという状況から考えてみますと、住宅建設促進という政策効果がこれで果たして生まれるのかどうか。政策効果という点についてどう見ておられるのか、お尋ねしたいと思います。
  277. 水野勝

    ○水野政府委員 今回の住宅取得措置につきましては、従来のローン償還額に対しますところの措置でございますと足切り限度を設けておりましたが、今度はローン残高につきましての控除とするとともに、足切り限度を廃止するということで、少額の借り入れをされておる方につきましてもすべて適用があるというふうに配慮をいたしておるところでございまして、幅広く御活用いただけるのではないかと思うわけでございます。  それから、土地対策の問題につきましては御指摘のとおりでございまして、住宅取得促進措置を講じましても土地問題がそこに大きなウエートのあることは確かでございます。ただ土地税制と申しますのは、土地対策、土地制度はこれは一度動かしますと、頻々と動かしますとこれがかえってもろもろの仮需要を生んだり混乱を生じたりするわけでございます。したがいまして土地税制につきましては、ある一定の改正を行いましたらある程度安定的に適用するのが適当であると従来からされておるところでございます。  土地税制につきましては昭和四十四年以来非常にいろいろな措置を繰り返してまいりましたが、現時点におきましては一応安定した制度にはなっておるわけでございます。しかしながら、この点につきましては、最近都心部におきましての高騰が見られる等、なおいろいろ問題は見られるところでございますので、土地税制のあり方につきましては今後とも基本的に十分配慮してまいりたいと思うわけでございます。  とは申しましても、基本的に利用可能な土地が少ない日本におきましては土地対策というのは非常に難しい、その中におきましても土地税制の果たす役割は補完的なものにとどまらざるを得ないというのが従来からの税制調査会なりの考え方でございまして、なかなか難しい問題であるというふうに考えておるわけでございます。
  278. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 政策効果という点について、土地問題については別途論議をしたいと思いますけれども、今回の措置によって住宅建設促進という点でも非常に疑問があるだろうということを私は重ねて指摘しておきたいと思います。  何せ、この建設促進という点のみに目が向けられておりまして、新規建設という点だけなのですね。住宅政策としての視点は全くございません。したがって、さまざまな問題があるわけで、今回の税制について恩典を受けるというのはほんの一握りの人にすぎないということも指摘されています。既に家を建てて今日ローン返済に困っている人には何のメリットもありません。それからまた、住宅価格が非常に高いために到底手が出ない層、その人たちにとっても何の関係もない税制ということになります。結局一部の豪華な住宅をつくった金持ちほど多額の減税が受けられるという点から考えてみましても、逆に不公平な面がありはしないかということさえ指摘できるというふうに思います。  やはり住宅政策ということの中で事が考えられない限り、ただ新しい家をどんどん建てるということが内需の拡大につながるだろうからということでこういうところだけに目を向けるということは間違っていると思いますし、不公平だということです。私は、公的住宅建設という点での要求が決して少なくはない今日、そういう点での施策が充実されるべきだと思いますし、また既に借りている人の金利の引き下げというものもあわせて行うこと、それが広い意味での内需拡大につながるという点から考えてみますなら、当然全国民的に住宅に目を向けた対策というのが必要だろうというふうに思います。こういう公営住宅等の建設や既往貸し付けの金利の引き下げ等に十分の配慮をすべきだと思いますが、御検討いただけないでしょうか。
  279. 小粥正巳

    ○小粥(正)政府委員 御質問の前半の点についてお答えさせていただきますが、公営住宅の建設促進という点は、私ども、現在の極めて厳しい財政事情の中では予算上も精いっぱい配慮をさせていただいたつもりでございます。特に公営住宅につきまして今大変要望の強い問題は、かつてかなり前に建てられました公営住宅の建てかえ需要が大変多いということでございます。したがいまして、今回の予算におきましては大規模公営住宅団地再生プロジェクト、これを新たに推進することといたしまして、そのための制度の創設、予算措置を講じているところでございます。  それから、最近賃貸住宅の需要が大変多様になってきております。したがいまして、地域ごとの、今申し上げました多様な賃貸住宅需要に対応いたしますための地域特別賃貸住宅制度、これを今回の予算におきまして創設をし、予算措置を講じておるところでございます。  全体の建設戸数でございますが、何分公共事業予算を御存じのように前年に比べて規模を縮小せざるを得ない、こういう環境の中では精いっぱい配慮をいたしまして、公営住宅につきましては建設戸数を前年度と同じ四万九千戸のレベルを確保したところでございまして、こういう事情の中では精いっぱい配慮をしておりますことは御理解いただきたいと存じます。  後半につきましては銀行局長から。
  280. 吉田正輝

    ○吉田(正)政府委員 住宅金融公庫の既往貸し付けの金利を引き下げてはいかがかという御質問でございます。  そもそもこの住宅金融公庫の貸付金利でございますけれども、これは市中に比べますと大変低利で、長期の安定した資金を供給するために貸付契約後の金利変動に影響されないという、いわゆる固定金利制を採用しているわけでございます。低利で安定しているということで、いわば生活設計も立てやすいということで返済計画も立てやすい、こういう固定した金利の契約になっておることもございますし、かてて加えまして、公庫の収支状況、御承知のとおり貸付残高二十三兆一千七百九十二億が五十九年度末でございますけれども、年々多額の補給金を出しているような状況等の公庫の収支状況から見ましても、既往貸付分の金利引き下げはなかなか難しいとお答えせざるを得ない状況でございます。
  281. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 既往貸し付けの金利は下げないけれども、これから新しく借りる人にはこういう優遇措置がございますよというと、またそこで非常に不公平な感をぬぐえないという部分があると思うのですね。今いろいろ御説明いただきましたけれども、住民感情に合った適切な対応を金利の面でもぜひとっていただくように私は強く要望して、もう時間も参りましたので終わりたいと思います。
  282. 小泉純一郎

    小泉委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時六分散会