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1986-04-11 第104回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年四月十一日(金曜日)     午前九時三十分開議 出席委員   委員長 矢山 有作君    理事 愛野興一郎君 理事 倉成  正君    理事 古賀  誠君 理事 高橋 辰夫君    理事 多賀谷眞稔君 理事 中西 績介君    理事 斎藤  実君 理事 小渕 正義君       久間 章生君    自見庄三郎君       松田 九郎君    三原 朝雄君       山下 徳夫君    岡田 利春君       細谷 治嘉君    沼川 洋一君       稲富 稜人君    小沢 和秋君  出席国務大臣         通商産業大臣  渡辺美智雄君         労 働 大 臣 林  ゆう君  出席政府委員         北海道開発庁総         務監理官    西原  巧君         通商産業省立地         公害局長    黒田 明雄君         資源エネルギー         庁長官     野々内 隆君         資源エネルギー         庁石炭部長   高橋 達直君         労働省職業安定         局高齢者対策部         長       清水 傳雄君  委員外出席者         自治省財政局交         付税課長    遠藤 安彦君         商工委員会調査         室長      倉田 雅広君     ――――――――――――― 三月十四日  第八次石炭政策に関する陳情書外五件  (第一六三  号)  国内探鉱助成策拡充等に関する陳情書  (第一六  四号)  産炭地域の振興に関する陳情書外百七件  (第  一六五号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  石炭対策に関する件      ――――◇―――――
  2. 矢山有作

    矢山委員長 これより会議を開きます。  石炭対策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岡田利春君。
  3. 岡田利春

    岡田(利)委員 石炭問題に関する所信表明に関連して質問いたしたい、かように存じます。  最近、石炭をめぐる情勢は、言うなれば円高の日照りの中で、また石油価格急落という相反するどしゃ降りの中で、大変な環境の中にあると私は認識をいたしておるわけです。特に、国際石油情勢を分析いたしてみますと、八四年までは前年対比二%増の需要動向でありました。八五年の場合には前年対比マイナス一・五%、いわば全般的な需給情勢は緩和の傾向が続いておるのであります。特に、最近の石油価格急落は、スポット価格で見ておりますと、一体どこまで下げてとどまるのか、その予想がつきにくい情勢にあると思うわけであります。しかし、エネルギー情勢は、そのときどきの現象にとらわれることなく、常に中長期的な視点に立って考えてまいらなければならない基本的な問題である、かように思います。  そういう意味で、まず私は、通産大臣としては、この石油価格動向について中期的にどういう見通しを持たれておるのか、その情勢判断について伺っておきたいと思います。
  4. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 石油価格動向を的確に当てる人は、世界じゅうにだれもいないんじゃないか、そういう前提をまず置きまして、しかし言われていることは、大体石油がこんなに急落すると思った人もいなかった。生産調整をやろうということでは一致しておるものの、しかしOPEC諸国も、だれが幾ら減らすかということになるとなかなか話がまとまらない。結局これから何回か会合もやるのでしょうが、不需要期に向かって、とても夏過ぎるまでは話はまとまらないのではないか、したがってその間は、石油価格低落傾向にあるというのが大体通説。  しかしながらノルウェーで、八十万バレル・パー・デーぐらいの生産現場でストライキをやれば、ぼっとスポット価格が十四ドルに上がるというようなこともございますし、今度は秋過ぎ、冬に向かって需要期に入り、しかも石油価格が非常に安い状態にあるということになれば、もうにっちもさっちもいかぬということで、わがまま言っていられない。したがって、大体話はOPECでもまとまるのではないか。アメリカにしても、石油が余り下がり過ぎて、自分の零細中小メーカーが片っ端からみんなつぶれていくということについては、喜んでいる人はありません。したがって、これもただ下がれば下がるほどいいというわけにはなかなかいかないということになる。アメリカ石油輸入国ですから生産調整に応じるなんということはもちろんありませんでしょうけれども、何となく石油価格安定という方向が出てくるのではないかということになります。余り暴落し過ぎて、しかも石油の井戸がどんどんふさがれていくという事態になると、結局もう二、三年を待たずして石油不足というようなことも考えられて、第三次石油ショックが九〇年代に来るのじゃないかという心配は大体だれしも持っているのです。  ということになれば、ともかくまあ消費国はなるべく安い方がいいし、生産国は高い方がいい。その幅というものはわからぬ。わからぬけれども、おのずから良識が働いて、二十ドル前後、二十ドルプラス幾らか、二十二ドルになるのか二十三ドルになるのか、あるいは二十ドルぐらいで安定してくれるのか、まだ先行きは実際わかりませんが、そう極端に暴落しっ放しでいることはまずないだろうというのが大体一致しているんじゃないかと思います。
  5. 岡田利春

    岡田(利)委員 石油価格がもし十五ドルを割るということになりますと、まさしく異常な事態だ、私はこう思うわけであります。  今通産大臣からもいろいろ答弁がありましたけれども我が国にとって重要なのは、やはり石油市場の安定ということが極めて大切なわけであります。特に我が国石油最大消費国であるという立場からして、そういう立場に立つことは極めて当然だと思うわけです。したがって、この供給価格安定化を図る。そのためには消費国生産国、いわば産消国対話というものがやはりどうしても大切になってくるのではないのか。そういう意味我が国は、産消国対話についてイニシアチブを積極的に発揮していく、こういう立場をとられることが望ましいと思うわけであります。通産大臣もそういう姿勢にあると私は漏れ承っておるのでありますけれども、そのような政策転換姿勢についてこの機会に承っておきたい、かように存じます。
  6. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これはあればいいのかもしれませんけれども、なかなかまとまらない。生産国の中がまとまらないくらいですからね。まず生産国の方がまとまってからの話。私は、決して産消国対話には反対はいたしませんが、できればいいのですが、生産国がまとまってからその後ということになろうかと存じます。
  7. 岡田利春

    岡田(利)委員 きのうパリでIEA国際エネルギー機関理事会が開かれておるわけです。その理事会の中において合意された事項はけさ報道されておりますけれども、第一点として、エネルギー市場長期的安定性を確保することが望ましい、第二点は、従来の省エネルギーなどエネルギー政策IEAとしては再確認をするということ、三番目には、備蓄については十分な水準を維持することが重要であり、現状は積み増しの好機であるので、積み増しをするという結論に達した、こういう報道が実はなされておりまして、引き続き四月のOECD閣僚理事会、あるいはまた五月の東京サミットエネルギー問題を討議するということについてもこの理事会合意をいたしておるわけであります。  そして、この中で果たした日本の役割は一体何であったのかということについて、日本は、今の状況が続けば代替エネルギー新規油田開発採算割れなどで困難となり、逆にエネルギー逼迫の時期を早める危険性があるとして、備蓄積み増しなど市況の立て直し策を積極的に主張した。私は、この主張は当を得ている、こう理解をいたしておるわけであります。こういう合意がなされておるわけでありますが、諸外国の状況も、情勢認識は大分変わりつつあるのではないか、こういう感じがするのであります。この日の理事会でも、アメリカ、オランダ、ノルウェー、ニュージーランド、スウェーデンなどが日本主張に同調して、日本の提案がいわば大幅に盛り込まれた。もちろん一、二の問題について慎重な表現がとられましたけれども、こういう合意に達しておると報道されておるのであります。  この理事会における日本主張というものは、当面の石油情勢に対する我が国主張をそのまま語っておるのではないか、こう思うのですが、このIEA理事会合意についてどのように受けとめておるか伺っておきたいと思います。
  8. 野々内隆

    野々内政府委員 IEAのガバニングボードの結論につきましては、けさ現在、私まだ公式な報告を受け取っておりませんが、多分御指摘のような方向ではないかと思っております。  ただ、そこで非常に問題なのは、価格の安定が必要であるという場合に、我々としてはまず安定についての国際的なコンセンサスを得、それから方法について議論をしたいと思っておるわけですが、欧米諸国は、コンセンサスを得るということは、直ちに価格あるいは生産数量についての政府の介入を意味するという感じを持っておりまして、その辺についての若干の基本的な認識の相違があり得る感じがいたしますので、正確な文面を見てみないと合意についてはわからないと思います。  しかし、今一時的にスポットが下がってはおりますが、非常に谷深ければ山高しという感じでございまして、私どもはそれを一番恐れておりまして、日本としては安ければ安いほどいいのですが、しかしそれがまた急激な上昇をもたらす。例えば先ほど大臣申し上げましたように、この秋の需要増加期に向けましてもし急速に上がるようなことになりますと、政策判断あるいは企業判断も非常に困るわけでございますので、その辺、何とか安定が大事であるという基本認識を国際的に得たいというふうに努力をいたしております。
  9. 岡田利春

    岡田(利)委員 そういたしますと、我が国としては一九八三年五月の第九回IEA閣僚理事会報告、この評価については大体現在もほぼ変わりがない、こう言えるのではないかと私は思うのであります。  同時にまた、そういう状況の中で、我が国長期エネルギー需給見通し、これは昭和五十八年十一月に策定されておるわけでありますが、現時点でこの長期エネルギー需給見通しについて見直すという段階ではないのではないかと私は思うのでありますけれども、この点についてどのように判断をされておりますか、伺っておきたいと思います。
  10. 野々内隆

    野々内政府委員 IEA見通しにつきましては、中長期的には石油が再び逼迫をするという基本的考え方については現在も変わらないと思っておりますが、具体的な数字についてあのままでいいかどうかというのは、常時評価が必要であろうかと思っております。  我が国長期見通しにつきましても、最近の見通しといいますと、五十九年は見通しの線の若干上に出ているようでございますが、どうも昨年は若干下にいっているのではないかという感じもしまして、当面長期見通しのラインに絡みながら動いているというふうに考えておりますので、よほど大きな変化がない限りは、このままの線でいいのではないかという判断をいたしております。
  11. 岡田利春

    岡田(利)委員 そういたしますと、石油代替エネルギー政策についても、今の御答弁からいえば、その基本方針については今検討し直さなければならないということはないのではないか、こう答弁の中から私は受けとめたのであります。石油代替エネルギー政策については、従来の方針を当分踏襲していくというお考えには変わりがありませんか。
  12. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 先ほど言ったように、石油価格見通しについては的確なことがだれにもわからない。我々のように非常に資源がなくて、みんな一〇〇%近く輸入しているというような国は、やはり石油が下がったからといって急に政策の変更をするということはできない。今までの備蓄政策省エネルギー代替政策、こういうものは今までどおり堅持をしてまいりたい、そう考えております。
  13. 岡田利春

    岡田(利)委員 最近の石油価格急落というものが、エネルギー源についてのいろいろな検討を呼んでいる。だがしかし、実際にエネルギー転換の真剣な検討が行われているのかといえば、そうでもないのではないか。ただ、いろいろな角度から議論は行われているのだと私は思うのです。したがって、通産省として今日の状況の中で、石炭から石油への再転換を一油から石炭への転換をするために代替エネルギー政策でこれを優遇したわけであります。今度は、この石炭から油に再転換をする、こういう動向があるのかないのか、そういう動向についてどう把握をされておるのか承っておきたいと思います。
  14. 野々内隆

    野々内政府委員 エネルギーにつきましては、常に長期的な観点から判断すべきであるというのが私ども考えでございますし、また一般産業におきましてもそういうことであろうかと思っております。したがいまして、例えば発電設備をつくりますにもリードタイムは十年以上かかりますので、十年後の石油価格石炭価格の相対的な関係というものを考えて、今投資意思決定をするとすれば、やはり従来と同様の代替エネルギー推進ということではないかと思っております。最近、各産業から動向について調査をいたしておりますが、今のところ産業とも長期的に石油が下がるという保証があれば話は別ですが、今のような状態では、直ちに石炭から石油に戻るというような考え方はないように見受けられます。  けさの新聞に、石炭への転換投資を延ばすような記事がございました。私ども、どうもまだそういう調査はいたしておりませんが、今意思決定をするものを若干延ばすということはあり得るかもしれないと思っておりますが、流れといたしまして、また再び石炭から石油に戻っていくということはちょっと考えられないというふうに思っております。
  15. 岡田利春

    岡田(利)委員 今日のOPEC供給ウエートが相対的に地位が下がってきた、これを回復しなければならない、それで増産に踏み切った。だが基本的には、私はOECD傘下のそれぞれの石油消費国代替エネルギー政策を積極的に進め、石油からの転換を長期的な視点でその政策を展開してきた、こういう路線がやはり石油価格急騰に歯どめをかけて、いわば従来の油価格急騰に対する一つの反省が生まれつつあるのではないのか、こう思うのであります。  そういう基本的な立場からいっても、従来のOECD我が国においても同様でありますけれどもエネルギー政策を急激に変えなければならぬというものはないのであって、むしろ着実に見きわめつつ従来の路線を深めていくというか、前進をさせていくというのが当面とらるべき姿勢ではないか、OECDもそうであるし、我が国も特にそうである、こういう点については一致できると私は思うのですが、いかがですか。
  16. 野々内隆

    野々内政府委員 消費国としましては、エネルギー政策のポイントでございます省エネルギーあるいは代替エネルギー開発石油備蓄等安定供給策、こういうものは着実に推進をすべきものと考えておりますし、この点につきましてはOECD各国とも合意いたしておるところでございます。ただ、具体的な安定のための手段につきまして、必ずしも突っ込んだ議論には入っていないということであろうかと思います。
  17. 岡田利春

    岡田(利)委員 今度は本論に入らしていただきますけれども、第八次の石炭政策に関する石炭鉱業審議会、今日、向坂正男委員長を中心とする検討小委員会が設置をされて、この検討小委員会において今進められていると承知をいたしておるわけです。しかも中間報告として、この第八次政策フレームワークに関する報告を行う、当初は四月中旬から下旬、最近は五月に入るのではないか、いずれにしてもそういう報告予定があると承知をいたしておるわけです。この報告の時期は、四月だ五月だといっておるけれども、いつになるのか、この点について御答弁を願いたいという点が第一点であります。  第二点として、このフレームワーク報告といいますけれどもとりようによってはいろいろあるわけであります。したがって、そのフレームワークのいわば骨子となるものについて一体どの程度のものを考えられておるのか、この点についてもその概略について、今考えられておる点について御説明を願いたいと思います。
  18. 高橋達直

    高橋(達)政府委員 第八次の石炭政策につきまして、先生御指摘のとおり、昨年の九月から石炭鉱業審議会において審議をお願いしているところでございまして、これまでに十三回の検討小委員会におきまして鋭意検討をしていただいているところでございます。  中間報告はいつかというお尋ねでございますが、現在の予定といたしましては、五月の連休明けに、小委員会上部組織でございます政策部会にこれまでの検討小委員会審議状況ということで御報告をしていただくという予定にしておりまして、その後、答申案骨子づくりに入っていくという段取りになろうかと思っております。  また、その内容がどのようなものになるかという点でございますけれども、これまでの審議といたしまして、国内炭をめぐる環境をどう認識するか、あるいは現在における国内炭の意義をどのように評価するか、生産面保安面、炭価あるいは需要確保のあり方、そういった事ごとにつきまして検討を進めてきたわけでございまして、そういった審議状況を御報告するということでございます。内容の点につきましては、正直申し上げましてまだ審議会検討小委員会での報告が固まっておりません。  いずれにいたしましても、石炭国内炭をめぐる環境は極めて厳しいという認識のもとにいろいろな問題点指摘するというのが一つでございまして、それらを踏まえて今後審議会として、また私どもといたしましても、石炭企業に今後の経営の方針をどう見るのかということを考えてもらう指針にいたしたい、かように考えております。
  19. 岡田利春

    岡田(利)委員 第八次政策政策期間が第七次政策のように五年間であるのか、あるいはまた第六次のように七年間であるのか、あるいはまた十年間であるのか、これは非常に重要な課題だ、こう思うわけであります。最近のエネルギー動向変化等考えて、一体その政策期間は何年であるべきなのか、このことは一つ政策流れを決定する面においても重大な影響を与える、こう私は思うわけであります。  私は、現時点考えますと、やはり政策期間は第七次と同じように五年程度のスパンが最も妥当ではないか、そう思っておりますけれども、こういう政策期間については既に検討が行われておるかどうか、あるいは政策期間について何らかの考え方が出ているのかどうか。そういう政策期間によって討議内容あるいはまた深めなければならない内容が違ってくるのは当たり前でありますが、この点いかがでありましょうか。
  20. 高橋達直

    高橋(達)政府委員 御指摘のように、これまでの政策期間につきましてはおおむね五年ということが原則のようになってきておりますが、今回の八次政策につきましても、審議のプロセスにおきまして期間の問題は討議をされておりまして、やはり現在に立って中期的に将来を見通せる可能な期間としては五年程度がよろしいのではないかという御議論もあるわけでございますが、一方において、エネルギー情勢の中長期的な観点に立ってこの際見通すべきであるという議論もございまして、そうなりますともう少し長い期間を要するかと思うわけでございまして、それらをいろいろこれからも御審議いただきまして適当な期間を決めていくことになると思います。
  21. 岡田利春

    岡田(利)委員 第八次政策審議も極めて重要でありますけれども、既に昭和六十一年度の予算が成立をして、四月一日からは昭和六十一年度がスタートいたしておるわけです。そういたしますと、昭和六十一年度石炭需給計画策定をどうするのか、これは第八次政策以前の問題として取り組んでまいらなければならない重要な課題であります。したがって、六十一年度石炭需給計画策定についてはどういう基本的な考え方で対処していこうとしているのか、まずこの点について伺っておきたいと思います。
  22. 高橋達直

    高橋(達)政府委員 六十一年度の問題は、御指摘のように第七次石炭政策期間期間内でございまして、本年度石炭需給見通しにつきましても、従来どおり石炭鉱業審議会需給価格部会審議をお願いいたしまして作成することとしております。
  23. 岡田利春

    岡田(利)委員 そこで、六十一年度需給計画策定に当たっての一つ問題点として、昭和六十年度末の貯炭状況在庫状況は一体どうなっているのか、このこともまた非常に重要ではないかと思うわけであります。特に南北を分析して、この在庫が一体北に偏っているのか、南北平等なのか、このこともやはり考慮に入れておく必要があると私は思うわけであります。もし年度末のがなければ一番新しい数字で結構でありますけれども、この点の御説明を願いたいと思います。
  24. 高橋達直

    高橋(達)政府委員 六十年度実績につきましては、まだ確定をしたわけではございませんが、私ども実績見通しによりますと、国内炭在庫貯炭状況につきましては、前年度末に比べましてややふえている状況でございます。また、九州、北海道のそれぞれの炭鉱状況を見ますと、炭鉱によりまして区々でございますけれども、昨年事故を起こしました炭鉱につきましては貯炭が減っているという状況がありますが、一方で生産性がかなり向上したというところもございまして、そういったところ需要との関係である程度貯炭がたまっているという状況になっております。
  25. 岡田利春

    岡田(利)委員 昭和五十九年度我が国石炭の総需要量を見ますと、一般炭が三千三百六十五万トン、原料炭が七千二百二十一万トン、合わせて一億五百八十六万トン、このうち国内供給が千八百五十万トン程度ということになっておるのであります。先ほど部長答弁しましたように、この六十一年度需給計画、なかんずく国内石炭需給計画については、第七次政策のいわゆる最終年度である、したがって、その需給計画基本的な流れというのは、昭和六十年度需給計画をほぼ基本的に踏襲する、そして需給バランスをとるということにならざるを得ないと思うのですが、この点についてはいかがですか。
  26. 高橋達直

    高橋(達)政府委員 基本的におっしゃるとおりだと思うわけでございまして、私どもといたしましても、各炭鉱生産基本としまして、従来どおり国内炭優先使用原則に立ちまして、需要家にその引き取りをいただいていく所存でございます。  ただ、御案内のとおり、需要家の方も、業界によりましてかなり景況が苦しくなっているというところもございまして、第七次石炭政策におきましても、この需要確保の問題については、基本的に需要家理解と協力が必要であるわけでございまして、石炭企業引き取り依頼の努力はもちろんとしまして、私どもとしても、その点については最大限の努力をしてまいる考えでございます。
  27. 岡田利春

    岡田(利)委員 これは当面の現存する炭鉱の実情から見れば、この一年間もそうでありますし、第八次政策を展望した場合も同様だと思うのですが、例えば炭鉱ごと生産の制限、いわば割り当て生産体制をとるとかそういうことは非常に難しいと思うのです。そのことは、相対的にコストアップの要因をつくることになる、こういう点に特に留意をしなければならない問題点だと私は常に思っておるわけです。今の部長答弁からしますと、もし問題があるとすれば、需給バランスをとるとすれば、貯炭を余計積み増しをしておくのか、それとも場合によっては生産抑制をやるのか、そんなことをやらざるを得ないようなにおいをあなたの答弁からちらっと感じたわけですね。そうではないのではないかと思うのですが、非常に重要な問題でありますので、この点についてもう一度考え方をお答え願いたいと思います。
  28. 高橋達直

    高橋(達)政府委員 国内炭需給の問題につきましては、第七次政策におきまして、需給計画の問題として石炭鉱業審議会に御意見を聞いて決める格好になっておりまして、その石炭鉱業審議会には、御案内のとおり生産業界の代表並びに需要業界の代表が入っておられるわけでございますので、そのあたりの調整がポイントになるわけでございます。  しかしながら、先ほど御答弁申し上げましたように、私どもとしても最大限需要家の方に国内炭を引き取ってもらうという考え方努力をしてまいるという考え方でございまして、その結果、生産基本的なところについてはその引き取りが確保できる、需要が確保できるという格好になることを期待しているわけでございます。
  29. 岡田利春

    岡田(利)委員 ここで北海道開発庁にちょっと伺っておきたいと思うわけであります。  北海道開発庁は去る三日に通産省に対して、北海道の電力に関して国内炭使用の負担軽減の要請をなされた、こう報道関係承知をしておるわけです。先般も口頭で説明を受けたのでありますけれども、この真意についていろいろな憶測が出ておるのであります。したがってこの真意についてまず第一点お伺いをいたしたいと思います。
  30. 西原巧

    ○西原政府委員 先生おっしゃいましたように、通産省の資源エネルギー庁に対しまして申し入れをいたしました。その趣旨は、御案内のように、北海道の開発は着々進んできておりますけれども、例えば企業誘致等に当たりまして大変に重要な要素として、土地であるとか水資源あるいは労働力、市場等の存在が重要でございますけれども、電力料金がまた大変に大きな影響を与えているわけでございます。  それから、御案内のように、北海道の中における石炭産業のウエートもこれまた大変に高こうございまして、現在国内炭が国外炭に対して高い、あるいは先ほど来お話の出ております石油に対して高い、そういうようなことがございまして、発電の方において使用する国内炭の量を減らすような動きが出るような感じを持っているわけでございます。そういたしますと、北海道としては大変に痛しかゆしでございまして、あるいはそのことによって電力料金は安くなるかもしれませんけれども石炭産業が影響を受ける、こういったことがございますので大変に強い関心を持っている次第でございます。そういうことで、電力関係の所管をしていらっしゃる資源エネルギー庁に対しましていろいろ御検討をしていただくようにお願いした次第でございます。
  31. 岡田利春

    岡田(利)委員 私の質問に的確に答えてないと思うのですね。今の答弁では、私の聞いた真意は一体どこにあるのかという点が非常に不明確なわけであります。  そこでいちょっと認識を聞いておきたいと思うのですが、これまで石炭が北海道の電力料金に果たしてきた役割はどういう役割だったのか。どういう認識を持っているのか。では、この認識を聞いておきましょう。いかがですか。
  32. 西原巧

    ○西原政府委員 私ども北海道の開発を担当いたしておりますけれども、かつては石炭開発が北海道開発の目的の大変に大きなウエートを占めておりました。また北海道の電力におきまして石炭は大変にたくさん使用しておりますし、そのことで大きなメリットを得ていたわけでございます。特に石油ショックのころには大変に安い熱源といたしまして大きなメリットを得たわけでございます。現在、先ほど来お話がございますような石油価格の暴落といいますか低下、あるいは国外炭に対して国内炭が高いといった問題が出てきて曲がり角に来ていると考えますけれども、これまでに国内炭が大変に大きないい面での影響を与えていたということは私どもよく承知いたしております。
  33. 岡田利春

    岡田(利)委員 質問して、答弁を聞いていて全然わからぬわけであります。  では、もうちょっと具体的に聞きますと、油と石炭価格、油炭格差と称しているわけですが、北海道電力において油が安くて石炭価格が高かった、こういう時代は今日まであったかなかったか、この点についての認識はいかがですか。
  34. 西原巧

    ○西原政府委員 石炭の方が油より高かった、そのようなことはなかったように私ども考えております。
  35. 岡田利春

    岡田(利)委員 そうですね。わずか一回、瞬間的にはあったんですね。それ以外は、油炭の価格関係では油よりも石炭が安かった。これが北海道の電力のエネルギー源の比較なんです。この点をまずぴしっと頭の中に入れてもらわないと私は非常に困ると思うのです。  北海道の電力料金が高かったというような印象が非常に流布されているのでありますけれども、歴史的に調べて、そうでないでしょう。例えば昭和二十八年から五十八年まで電力料金の上がったことが十回くらいあるのです。これを九州電力と比較しますと、二十六年のときには九州電力より安い。四十年、四十五年、五十年、五十五年、五十六年、九州電力よりも北海道電力料金は安いのです。九州電力より高かったのは、三十年と三十五年のときちょっと高かった。それと、五十七年、五十八年の二年、こういう歴史的な経過にあるわけですよ。  例えば東京電力と比べたらどうかということになりますと、四十年、五十年、五十五年、五十六年の改定時の電力料金は、東京電力よりも北海道電力の方が歴史的に見て安いのです。そうでしょう。それを何か、国内炭をたいておるから北海道の電気料金がずっと高いんだという観念的なものを払拭しなければならぬと思うのです。やはり経過というものは事実を正しく理解していく、そこから正しい政策が生まれる、このことを私は特に強調いたしたいのであります。  ですから、そういう認識に立って、短期的なこの問題についてはっと北海道開発庁あたりが資源エネルギー庁に物を言われるということは、もう少し深めて物を言われるならいいけれども、非常に誤解が生ずるのであります。やはり果たしてきた役割を正しく評価しながら、そして北海道の電力と石炭関係をどうしていくのか、こういう点をもう少し深めて考えて物を言わなければいかぬのではないのか、私は特にここでこう指摘をしておきたいわけであります。だから、外炭と国内炭の炭炭格差という問題で、これが長期的に続くという点から見て物を言われるとするならば、物の言いようももう少しあるのではないのかと思うのであります。  例えば、予算委員会における多賀谷質問にあるように、炭炭格差の問題を是正する、そして代替エネルギー政策を進めていく、地域の電気料金の格差を解消していくという場合に、政策的に水火調整金のような政策手法はないかどうか、こういう点について検討してもらいたいとか、あるいはまた今沖縄に電発によって石川火力がつくられているわけです。これなんかは徹底した政策火力でしょう。結局、電発に出資をして、九〇%ぐらいの点についてはむしろ支えていく。そして沖縄の電力料金というものを沖縄単独で九電力とほぼバランスがとれるように政策的にやっているのが今建設中の石川火力でしょう。あるいはまた電力用炭の内外炭を一手買い取り機関を設けるとか、そういう政策手法で物を言われるならばいいのでありますけれども、余り観念的に物を言われると非常に北海道の道民のみならず混乱を与えるのではないのか、この点特に厳しく指摘をしておきたい、こう思うわけであります。  したがって、北海道の電気料金が高目になるというのは、燃料源だけではなくして北海道電力が持つ主体的なものでしょう。全国の面積の二二%を持っておるのが北海道電力の供給範囲でしょう。二二%あるのであります。だからキロ当たりの電柱数は他の地域とは比較にならないわけでしょう。そこに公益事業として安定供給しなければならない。例えば酪農をやるといっても今動力を使うわけです。昔と違う。昔は風車発電でやっておったけれども、今全部三相で送電をする。どこまでも、五十町歩に一月ずつやらなければならない。これには一定の補助金を出して最近完了をしたのでありますけれども、そういういろいろなファクターがあるわけでしょう。  だから、北海道が広大であり、しかも札幌に集中しているけれども、全道的に過疎である。こういう一つの北海道特有の面を分析しないで、燃料源だけに求めるというのはいかがなものか。特に北海道を総合的に開発をする開発庁としていかがなものかと私は言いたいのですが、今私が一連の質問をしてきて、見解を述べながら主張している点について開発庁としてはどうお考えになりますか。
  36. 西原巧

    ○西原政府委員 ただいま先生御指摘のように、北海道の電力を相対的に高くしている理由の一つに送電コストが高いということがあるということは私どもよく承知いたしております。それ以外にもたくさんの要素があるように聞いておりまして、先般の当委員会での資源エネルギー庁の長官の御答弁におきましても、北海道は相対的に電力が高い、いろいろな特殊事情がございますので、それを踏まえて御研究になっているということを伺いました。私どももよく連絡をとりまして、その辺勉強をさせていただきたい、このように考えております。
  37. 岡田利春

    岡田(利)委員 そこで、次にもう一つ資源エネルギー庁の見解を承っておきたいと思うのですが、日本とECの比較というのはよく出るわけであります。また前回の委員会でも私は日本と英、仏、独、このエネルギー関係の比較、特に石炭関係政策の違い、こういう点についてお伺いをしておるわけであります。  特に、しばしば石炭鉱業審議会でも言われている内容に、我が国石炭の占める相対的地位は全エネルギーの三・三%である、非常に低い、こう言われるのであります。そしてヨーロッパは大体三〇%から三五%、こう簡単に言われるのであります。しかし、フランスの場合は七・二%くらい、大体七%強であります。この比較をしますと、七・二%と三・三という数字は確かに違いますけれども、しかしフランスのGNP、あるいはまたフランスの国民一人当たりのGNP、あるいはまたエネルギーの消費量、あらゆる面をフランスと日本というものを比較してみるわけです。そして我が国はフランスのエネルギー供給構造とどちらかといえば似ているわけですね。もちろんフランスの場合には五〇%近く原子力のウエートがある。日本の場合も今日二〇%ぐらいになってきた。こういう点も非常に似ておるわけです。  ですから、七%と三%の違いがあり、フランスが石油石油系のガス、こういうものに頼らないで石炭というものについて非常に重要視している、こういう点が長年の政策歴史の中でわかるわけです。人口も半分以下でありますけれども、フランスが五千五百万トン生産したときは日本も五千五百万トンですよ。フランスが三千万トンのときは日本も三千万トン、二千五百万トンのときは二千五百万トン、二千万トンのときは二千万トン、こうふうな傾向が続いておるわけです。そして、八四年の実績を見ますと、フランスと日本というのはほぼ同じでしょう。一千六百五十四万トンと一千六百四十何万トン、ほぼ似ているわけです。  ところが、私ここで言いたいのは、フランスの場合には国有、公社運営なんですね。日本は民営であります。ですから、フランスの場合にはよく石炭を撤収するとか縮小する、こう言うのです。私はかつて十何年前に多賀谷さんと一緒に行ったときにも、フランスは一千五百万トンにする、こう言っておった。ところがそうならないのです。そういう点から考えて、フランスの場合にはそういう国有、公社運営でありますから相当思い切ったことが言えるわけです。それでもその中で政策がぴしっととれるわけですよ。ところ日本の場合にはこれは民有、民営でしょう。下手に撤収するなんということになりましたらがたがたいく可能性があるわけです。かつてもそういう傾向があったわけです。企業ぐるみ閉山という雪崩現象をここでやったわけですから。  だから、過去の石炭合理化というのはスクラップ・アンド・ビルド政策なんですね。今度はそうではなくなってくるわけです。スクラップ・アンド・スクラップの方向に行く可能性が非常に強いわけです。フランスと日本と比較した場合のエネルギー的な比較、それから政策的な面、この点について重要にひとつ考えてみなければならぬのではないのかというのが私の持論であります。言うなればフランスよりも非常に慎重な政策手法をとらないと日本石炭産業は崩壊してしまう、その可能性が条件として非常に強いということを言っておきたいのであります。  例えば国民一人当たりの石炭消費で見ましても、七五年には日本は三千五百四十一キログラム、フランスは三千七百四十九キログラム、一九八〇年では日本が三千五百六十一キログラム、フランスは四千三百七十六キログラム、八二年で見ますと、日本は三千五百三キログラム、フランスは三千九百九十五キログラム、国民一人当たりにしてもフランスの方が高目を維持いたしておるわけであります。だから、我々はIEAに加盟している国なりOECDの一員として、しかもエネルギーの共同部な連帯的な確保、こういう面から見ても、日本石炭産業というものをどう持っていくかは、我が国エネルギーに関する一つ基本的な姿勢をも私は判断されるのではないかという点で非常に重要視いたしておるわけであります。  私は、少なくとも最低条件フランスより先に撤退することがあってはならない、こう思うのでありますけれども、一連の私の日仏の比較の関係からいって、今私の最後に述べた点についての、随分たくさん言いましたけれども、感想を率直にお聞かせ願いたいと思います。
  38. 高橋達直

    高橋(達)政府委員 ただいまの先生の日仏の比較につきましては、私どももほぼ同様の認識を持っておるわけでございまして、つけ加えますれば自然条件なども、採炭深度あるいは炭層条件ともに非常に難しい条件を持っているというところまで似ているということでございます。フランスにおきましてもそういった状況の中で、先生御指摘のように、公社体制のもとで政府が赤字補てんするという仕組みで相当の保護をしてきていることも事実でございます。  ただ、最近の動きといたしましては、御案内のとおりと思うわけでございますけれども、一九八四年の第九次五カ年計画は、政府の計画におきまして、八八年までに助成金なしで政府公社の収支をバランスさせようという計画を立てたと聞いておりまして、ただいまの先生のお話の中でなかなかその実現ができないのだぞというお話もございましたが、石炭公社の方も生産性の向上あるいはその他の合理化策を逐次実行しているようでございます。  いずれにいたしましても、その国の石炭政策につきましては、その国の経済的あるいは社会的要素を背景にいたしましてそれぞれ独自に決めていくものと考えております。ただ日本の場合に、御指摘のように私企業体制の中でこれが行われているということにも十分留意いたしまして、私どもといたしまして、今後石炭鉱業審議会検討について十分これを補佐してまいりたいと考えております。
  39. 岡田利春

    岡田(利)委員 先般も言いましたように、日本の場合は労働者一人当たり一年間七百三十一トンの石炭を掘っておる。フランスの場合には五百十二トンである。イギリスの場合には五百三十一トンである。西ドイツの場合には五百五十八トンである。年間の出炭量を比較しましても、日本炭鉱労働者は非常によく働いておるわけですよ。  私もかつてフランスのパドカレー炭田のリエバン炭鉱に入ったことがあります。あそこは北仏でありますから、ドーバーを経てイギリスにまで続いている、ドーバー海峡の下は炭層になっておるわけであります。その炭鉱に入ったことがありますけれども、今部長が言ったように坑内状況なんて決してよくないわけであります。そうゆう面から見ても、GNPが我が国の半分以下のフランスでさえも、国内生産では我が国と同じ石炭の量を歴史的に維持してきた。だから、GNPが二倍の我が国がフランスよりも先にがたがたっと撤収するなんというのは、エネルギー政策姿勢としていかがなものかという点を特に強調するためにただいまの質問をした。フランスがそうだから、先に行かなければならぬということであってはならないということを申し上げておるわけであります。  これは、本当は渡辺通産大臣に聞きたかったのですが、今、日本に十一主力炭鉱があります。これを、相当炭量が残っているが途中でやめたという場合に、またそのうちに、十年か十五年か何年か知りませんけれども、この資源が再開発される可能性があると思われますか、どうですか。あるならば、どこの炭鉱ならあると思われるか。炭鉱の名前が難しかったら、抽象的で結構ですけれども、この点専門的に見てどのように判断されているのか、この機会に承っておきたいと思うのです。
  40. 高橋達直

    高橋(達)政府委員 一般的に申し上げまして、鉱山が一度閉山をいたしますと、その再開発は経済的に考えて極めて困難であるという認識をしております。
  41. 岡田利春

    岡田(利)委員 もうちょっと親切な答弁が欲しかったな。非常に簡単過ぎたような感じがします。  今の日本炭鉱は深部化しつつある、奥部化であると通産省は規定しているわけですね。その深部化、奥部化に残された資源というものを再開発するということは、コスト上、経済性、また保安上からいっても無理でしょうし、その時点になったら、現在のような重装備をして地下に潜って、その技術を駆使して働くという労働力が大体ないですよ。ですから永久に放棄をする、この認識が私は妥当だと思います。  もう一つ伺っておきたいと思うのですが、現在の国際石炭市場の問題であります。現在の国際石炭市場の動向の中で、一体石炭の貿易量というものはどういう実態にあるのか、もしおわかりであれば承っておきたいと思います。
  42. 高橋達直

    高橋(達)政府委員 詳細な数字は手元にございませんけれども石油の場合と違って、石炭の貿易量は世界的に見ると総体的にはかなり小さいものである、その中で、日本の一億トンの消費量のうちほぼ八割を輸入しておるというのはかなりのボリュームになるものと認識しております。
  43. 岡田利春

    岡田(利)委員 そうですね。  一九八四年で見ますと、二億一千八百万トンの貿易量があって、そのうち一億三千七百万トンが一般の自由市場に流通している、その他域内の関係が八千百万トン。日本は八千六百万トンでありますから七七%になるわけです。しかも、日本に輸入されている石炭内容を分析しますと、これは八三年のデータでありますけれども、いわば投融資したところ炭鉱から輸入しているというのが二千百二十六万トン、二八%であります。そして単純買炭、いわゆる単純に買ってくるという石炭の量が五千四百九十八万トン、七二%。合計七千六百二十五万トンになるのであります。  ですから、石炭石油価格動向とも関係があるわけですけれども、外国の石炭というのは全部オープンカットで日本はアンダーグラウンドだから仕方がないよ、コストは全然問題外なんて簡単に決めつけている専門家と称する人もおるようですが、私はそうではないと思うのです。ソ連であっても、アンダーグラウンドとオープンカットはフィフティー・フィフティーでバランスをとっている。でなければ、これは一挙にコストが上がるのですから。オーストラリアだって連邦政府方針はそうでしょう。オープンカットとアンダーグラウンドはフィフティー・フィフティーの原則でいくというのは、連邦政府の施策の骨格をなしているということも間違いのない事実だと思うのです。  エネルギーというのは、高いもの、安いもの、それから新しい分野のものはより高くなるでしょう、新エネルギーというのは初めは高いわけでありますから。そういうものを相補う、トータルをしてできるだけ供給の安定と価格の安定を図るというものでなければならぬのであって、そういう視点の中に常に国内石炭というものを含めておかなければならないという点を私は申し上げておきたいのであります。  そこでもう一つ。今日の現有炭鉱十一山と私は先ほど言いました。この十一山というものを分類すると簡単なわけですね。また、いろいろな分類ができる。九州三山、北海道八山、これで十一山、切りよくそういう分類もできるでしょう。それから、平層と中傾斜は六山で急傾斜は五山、大体半分半分だ、こういう分類の仕方もできるでしょう。あるいは海底炭鉱が四山で内陸炭鉱が七山だ、こういう分類もできるでしょう。そして、夕張市は二山ございますけれども、それ以外は一自治体一山で、一山一社会一自治体という傾向であることも現有炭鉱十一山の実情であります。それだけにこの帰趨は地方経済に大きな影響を与えるのであります。したがって、最近の報道を見ますと、第八次政策をめぐって生産規模を大幅に縮小していくのだという記事ばかり出ておるようですが、その点が山に大きな動揺を与え、自治体に大きな動揺を与えているというのが今日の実情であります。  そこで、先般、経構研、経済構造調整研究会の報告が出ました。私は予算委員会で、総理に対してこの点について厳しく質問をいたしておるわけですが、あの報告書を読みますと、石炭を大幅に撤収して、基幹になるもの以外の農産物の自由化でもやれば大きな産業構造の転換になるような印象を受けるのでありますけれども、私は極めて政治的な作文であると感ぜざるを得ないのであります。第八次の検討をしている石炭鉱業審議会があり、もちろんこれを参考にしてやってくれという姿勢らしいですけれども、それでも大幅な縮小をする。  そして総理は、あす行ってレーガンさんに会って説明をする。大体総理は前にそういうことを約束してきておるのでありますからそのとおりやらなければならぬわけですが、初めは総理の考え方は違っておった、通貨調整という問題が一つの大きな目玉商品であったはずでありますけれども情勢が変わって、とにかく今回のああいう内容に一応まとめ上げたということだと思うのです。したがって私は、経済構造調整研究会の報告をどのように受けとめるのかということは非常に重要な問題だと思うわけであります。そういう意味で、通産省としてはこの問題についてどう受けとめておるのか伺っておきたい、かように思います。
  44. 野々内隆

    野々内政府委員 通産省といたしましては、公式の通産大臣の諮問機関でございます石炭鉱業審議会におきまして現在第八次石炭政策審議中でございますので、この結論を待って石炭政策を立案したいと考えております。当然経構研の結論というものも参考にされるというふうには考えておりますが、公式なものとしては石炭鉱業審議会というふうに理解いたしております。
  45. 岡田利春

    岡田(利)委員 この内容は参考にされる、こう言うのでありますけれども、どこまで専門家がスタッフに入ってやっておるのか。まあ、経済学者がさあっとなめられて、意見を言うことは自由であるけれども、いかがなものかという節々を、我々は漏れてくる報道関係やいろいろなルートからのお話で感ずるのであります。特に中曽根総理大臣は、石炭の大幅、それから農産物の関係の大幅という字を入れるのに随分けっ張ったという話も専ら有名になっているわけであります。中曽根総理の認識もいかがなものか、こう私は疑わざるを得ないのであります。  問題は、これを書くことによって、外圧を逆用して日本国内石炭産業の撤退を早めるという感じすらも与えていると残念ながら申し上げなければならない、こう私は思うのであります。そしてその結果、産業転換だけではなくて、結局炭鉱のスクラップ、地域のスクラップ、同時にスクラップしてしまう。そこには後には何物も残らなかったという状況をつくり出すことになるのではないのか、こう思うのであります。総理が貿易摩擦の関係で内需拡大、貿易摩擦の関係石炭をこのようにスケープゴートに取り上げたという真意がわからないですね。  これは一つお聞きしてみますけれどもアメリカ我が国石炭貿易は今日までどういう足取りをたどってきたのでしょうか、承っておきたいと思うのです。
  46. 高橋達直

    高橋(達)政府委員 アメリカから我が国への石炭の輸入の状況でございますが、昭和五十六年度あたりがピークでございまして、二千四百万トンばかりの原料炭の輸入、それから一般炭につきまして二百三十万トンばかりの輸入があったわけでございます。我が国の総石炭輸入に占めるシェアも大体原料炭で三六%、それから一般炭で二〇%程度あったわけでございますが、最近におきましては、年度で見ますと、五十九年度が最近の時点でございますが、五十六年度以降漸減をしておりまして、五十九年度には原料炭が千四百万トンばかり、それから一般炭については五十万トンばかりでございまして、シェアも原料炭において二〇%程度に縮小をしておる状況でございます。
  47. 岡田利春

    岡田(利)委員 最近発表になりました貿易黒字は五百二十六億ドル、このうち対米黒字が四百三十三億ドルで、そのほかは九十三億ドルになるのであります。こういうのが昭和六十年度の貿易黒字の結果でありますが、今部長がちょっと答弁されましたように、石炭石炭と言うけれども石炭の対米貿易、これは四十五年の年は二千五百四十三万トンですよね。アメリカから入ってきたのは二千五百四十三万七千トンなんです。五十八年で見れば千六百十八万トンですよ。半減のような状態になっているんですね。一千万トンぐらい減っているわけであります。それから豪州を見ますと、豪州なんというのは、四十五年は千五百七十六万八千トンですよ。それが五十八年には三千七百三万四千トンですよ。豪州の場合は倍以上になっているでしょう。カナダを見ましょう。四十五年は四百六十八万六千トンです。五十八年で見れば千百九十一万五千トン、これも倍以上になっているのです。南ア、アパルトヘイト、人種差別で問題になっているところでありますけれども、四十五年は二十八万四千トン、五十八年は六百九十一万五千トン、もう一千万トンに下手をしたらいくという勢いで伸びているわけです。中国は、現在三百八十九万二千トンくらい、いわば豪州、カナダ、南ア、ここが急速に伸びているわけです。  もし対米貿易の摩擦解消で、石炭を大幅撤収してアメリカから輸入するという考え方が経構研の考え方であるとするならば、いかがなものかという感じがするのです。この私の意見についてどうお思いになりますか、通産省。
  48. 野々内隆

    野々内政府委員 先般ウエスト・バージニアの上院議員、下院議員がお見えになりまして、何とか石炭日本で買ってほしいというお話がございました。私どもとしましても、日米友好関係考えますと何とか御希望に沿いたいのではございますが、残念ながら氷炭は日本の輸入いたします石炭に比べましてトン当たり十ドルくらい高いというのが現実でございます。したがいまして、これはすべてコマーシャルな判断から行われておることであり、何とか氷炭のコストを安くしていただきたいということを申し上げたわけでございまして、先方もできるだけ輸送コスト等を安くすることを考えたいということをおっしゃっておりましたが、国内炭がもし将来減っていった場合にその穴をどこが埋めるかということになりますと、これはすべてコマーシャルベースで埋めることになると思いますので、氷炭になるかあるいは豪州、カナダになるか、どこになるかは、需要家の選択次第かと思っております。ただ、そういうような国際的な動きというものが、やはり日本国内炭政策に対して影を落とすということは当然あり得ることであろうかという考えはございます。
  49. 岡田利春

    岡田(利)委員 貿易摩擦というものを構造的に受けとめていくとすれば、もう少し高度な政策がなければならぬのであって、何か国内炭が高いから、農産物と同じように、そこをつぶしたり自由化をして入れればアメリカはどんどん入ってくる、木材だって何だってそうですね。しかしそうならない仕組みになっておるわけです。むしろそういう点が貿易摩擦の問題について考えるべき問題ではないのか、こう我々は非常に不満に思っておるわけです。あるいはまた、産業転換産業転換と言いますけれども産業転換がそう簡単にできるのですか。九州の直方、田川、飯塚地区は山が閉山されてもう何年になりますか。ここの実情は今どういう状態にありますか。これは前に多賀谷議員が質問しておりますけれども、今、田川、直方、飯塚、この地域で失対で五千五百九十人、特開で二千三百六十人、緊就で千二百八十人、開就で二千六百人。一万一千八百三十人、余り減ってないですよ。ずっと同じ水準ですよ。一万一千八百三十人の人が、炭鉱が閉山されてもう十数年にもなっているのにまだこういう状況ですよ。ですから、石炭にかわる産業転換ということはほぼ難しいわけですよ。  北海道もそれぞれ沢地に炭鉱があります。平地じゃないですから、常磐や山口県のようなああいう条件なら別ですけれども、あるいは臨海部なら別ですけれども産業転換ということが非常に難しいわけです。その証拠として私は今この数字を読み上げたわけです。いやあ岡田さん、そう言うけれども、見てください、今まで五千万トン山をつぶしてきたけれども、そこはこうなっておるじゃないですか、だから撤収してもその後の産業転換はできるんだ、そういうことにはならないわけでしょう。  しかも今、予算の大部分を占めているのは鉱害です。北海道は鉱害法の適用除外地域ですから、炭鉱が閉山されても鉱害の問題と全然関係のない地域になっているわけでしょう。別に、国はこれに鉱害のお金を出すなんというものじゃないわけでしょう。あるいはまた九州三山だって、三池の場合には有明の内海でありますけれども、ほぼ鉱害のないところでしょう、高島だって池島だって。いわばそういう意味で鉱害のない地域に限定されて主力十一山があるということも十分お考え願いたいと思うわけであります。言うなれば、今までの約二十四、五年間に及ぶ産炭地振興、産業転換というものを総括しても、これが高度経済成長の中で閉山したのにかかわらず産業転換ができなかったという事実、そういう面から見て、石炭のこの問題というのは慎重に扱わなければならないということを過去の実績が教えている、こう思うのです。この点についていかがですか。
  50. 高橋達直

    高橋(達)政府委員 御指摘のとおり、石炭鉱業の過去の閉山の跡地の地域につきまして必ずしも十分な地域振興が図られてないということは事実でございます。また御指摘のございましたように、失対事業あるいは生活保護率といったものが高い、そういう状況にあることも承知しております。  一方におきまして、産炭地振興対策ということで、工業の導入のための受け皿の工業団地をつくるとかその他の努力も鋭意しておりまして、その面では徐々にではございますけれども、地域の雇用に役立っていると思うわけでございます。しかし、いずれにしましても基本的に石炭鉱業の跡地の開発、地域振興というものはかなり総合的な努力を要するということでございまして、その辺私どもも慎重に考えなければいけないと思っております。
  51. 岡田利春

    岡田(利)委員 臨海部外の内陸や島における産炭地の振興というものは決して言葉で言うような簡単なものではないし、そういう実績は上がってないということを素直に認めるべきだ、その上に立って石炭政策というものを慎重に扱うべきだということを申し上げておきたいと思います。  時間がありませんからもう一つ申し上げておきたいと思うのですが、石炭政策の場合、原料炭はいわゆる原料として鉄鋼向けということになるわけです。一般炭の場合は、これから大宗をなすものは電力用であります。石炭政策の中で電力用炭の需要の確保という点を考えてみなければなりません。第一次から第七次までの政策をずっと並べてみますと、全部電力用炭という問題が出てくるわけです。特に油との関係石炭が高かったという面もあります。また第四次までは、原料炭は鉄鋼用として増産してくれという要請に基づいて原料炭優先の政策をとってきたというのが過去の石炭政策の歴史でありますから、そういう中でこの石炭政策火力発電所というものをつくっておるわけです。私は、これは国内炭消化のための政策火力発電所、こう申しているのですが、もし私の認識とその認識が同じであれば、どこの火力を政策火力発電所と認定できるのでしょうか。
  52. 高橋達直

    高橋(達)政府委員 これまでに石炭対策特別勘定あるいは電源開発特別勘定によりまして、石炭火力発電に対する助成を行ってきておりますが、それらの対象となっております発電所が政策の対象となっている発電所という意味で、今先生おっしゃった発電所と同一のものになろうかと思うわけでございますが、そういう点でまいりますと、一つは北海道電力の苫小牧厚真一号機に対しまして、石特勘定から産炭地石炭火力発電所建設費補助金が過去において出されております。また、電特の関係でも五件ばかりの補助金の対象がございます。それから財投の関係でまた一部ございますけれども、そういったものが政策助成の対象になっている発電所でございます。
  53. 岡田利春

    岡田(利)委員 国内石炭需給の安定のために電発を通じて石炭火力の安定化を図る、あるいは北海道電力については苫一号のように配慮をする、こういう形で需要の安定に努めてきたわけであります。そうしますと、第八次政策についてもこういう手法というものが当然考えられなければならぬのではないかと私は思うのであります。そのためには、石炭火力発電所を臨海部につくる。私は、臨海部につくるという意味はなぜかというと、内外炭で長期にわたって安定供給ができる、こういう条件を考えるからであります。  第二の問題は、新設される石炭火力に対してどうするのか。例えば今やっておりますのは九州の松浦。九電が一号、二号、電発が一号、二号、百万、百万で二百万の、七十万、七十万ですかで三百四十万になるのでしょうか、相当大きいものができるわけであります。例えばこういうところに割合を義務づけるとか、今二割という割合ですけれども、ある一定の割合というものを義務づける。IQ品目とすれば、そういう手法がとれるわけであります。とにかくそういう手法で全体的なバランス考えていくと、需要を確保することはそう難しい問題ではないし、そのことが国民に大いなる負担をかけるということにはならぬと思うのです。そして、日本石炭だって資源は有限でありますから、いずれなくなるわけですね。そういう点を考えますと、政治はそのくらいの手法をとるべきだ、私はこう思うのであります。  私は、第八次政策政策ポイント、三種の神器は需給の安定確保、そのためにはIQ制度というものを当然堅持しなければならぬでしょう。第二には基準炭価制度というものを受け継いでいかなければならない。第三には特別会計による財源の確保、これを称して石炭政策ポイントの三種の神器だ、こう私は従来から述べておるのであります。したがって、この需要の問題は非常に重要でありまして、私が指摘をした石炭火力政策、このものは極めて重要なウエートを持って第八次政策の中で検討されるものと思いますけれども、いかがでしょうか。
  54. 高橋達直

    高橋(達)政府委員 現在におきましても、電力業界を初めとして需要業界の相当な協力を得て石炭政策を実施をしておるわけでございます。しかしながら、最近におきます内外炭価格差の拡大等を背景にいたしまして、審議会におきますヒアリングにおきましても、電力業界からは将来における国内炭引き取りを相当程度削減してほしいという要望もあることは事実でございます。  いずれにいたしましても、八次政策におきましても、国内炭需要をどうつけていくかというのが重要な問題でございまして、その場合、需要家理解と協力が前提になるわけでございまして、審議のプロセスにおきまして、私どもとしても需要家に対し最大限の協力と理解を求めていく努力をしたいと思っております。  また、石炭政策の根幹といたしまして、今先生御指摘ございました需要確保の点、あるいは炭価制度、あるいは財源の問題、これについては私どもも同様の認識をしておりまして、八次政策におきましても、基本的にはそういった政策手段をとっていくことになろうかと思いますけれども、具体的内容については、最近の情勢などを踏まえまして今後さらに検討していく、こういうことになろうかと思います。
  55. 岡田利春

    岡田(利)委員 時間が残り少なくなってまいりましたので、保安の問題についてひとつ伺っておきたいと思うわけであります。  何か日本炭鉱は災害がめちゃくちゃ多いという印象も非常にあるわけです。残念ながら重大災害がヨーロッパに比べて多過ぎる、重大災害の撲滅が当面の最大の課題で、その原因は、ともすれば非常に安易な原因に堕しているということを残念に思っておるわけです。しかし他の関係については、日本の保安の状況、災害率というものは悪いものなのか、どういう水準なのか、この機会に数字をもって説明していただきたいということが第一点であります。  第二点は、保安法によると保安監督員がおって、いろいろ保安上の勧告をするわけであります。最近は経構研の発表などがあって、自治体や炭鉱労働者の動揺が極めて著しいのであります。そういう動揺の中で何か事故でも起きたらどうするのだろうか、私はそのことを大変心配しているわけであります。そういう面から考え石炭問題というのは慎重な扱いが必要だ、こう思います。下手をするとその結果、保安上炭鉱をやめなければならぬ、政府自身も保安上勧告をしなければならぬというような事態もあり得るのではないのか、こんな心配もするわけであります。保安法上の権限もあるのですけれども、もし安全に安全をとるという意味で、保安上いわば閉山を勧告する、すなわちドクターストップでありますから死ぬという意味ではないでしょうけれども、そういう宣言をするとするならばどういう条件が考えられるだろうか、こんなことも私はいろいろ考えてみておるわけであります。この点について保安の方から説明を願いたいと思います。
  56. 黒田明雄

    ○黒田(明)政府委員 まず第一点の災害状況に関する国際的な比較の点でございますが、最近の数字はちょっと欠いておるのでございますが、欧米、特に西欧の主要産炭国との間で比較いたしましてみますと、死亡事故についての稼動延べ百万時間当たり災害率というのを指標にして比較しました場合、重大災害のない年は、ヨーロッパのこれら産炭国の水準とほぼ同じ程度の災害率を示していると思います。問題は重大災害のあった年でございまして、これらの年についてはやはり高い数字になっているということでございます。したがいまして、私どもとしては、もちろん頻発災害をもっと少なくする努力をしなければならないというふうに考えておりますが、現時点における最大の問題は重大災害の撲滅にある、かように認識いたしております。  次に、重大災害の防止といったような観点から操業中止という勧告があるか、その条件いかんということでございますが、御承知のように重大災害が急迫しております場合には、鉱山保安法二十四条によりまして通商産業大臣が鉱業の停止を命ずるという制度がございます。その命令を出す事前の段階といたしまして勧告というようなことがあり得るかという点でございますけれども、私ども従来の運用の実際で申し上げますと、個々にその現場あるいは採掘計画等から見まして、技術的な観点から災害の危険があるというような場合にはこれら採掘計画の見直しを鉱業権者に求めておりまして、もちろん部分的に採掘計画の修正で済む場合にはそれで終了するわけでございますけれども、その採掘計画見直しの過程におきまして、鉱業権者側において全体的な操業の中止に至るというような事例がございます。これは非常に個々具体的なケースに応じまして技術的な観点からそういうことになるわけでございまして、一般的にどういう状況になればそうなるかということはちょっと申し上げにくい。個々のケースに応じて具体的に判断していくしかない、かように考えております。
  57. 岡田利春

    岡田(利)委員 我が国の産炭構造というのは、日本列島ができるに従って褶曲作用が進んでもめているわけですから、非常に深く石炭が存在しているのですね。かつて閉山した三井美唄山というところは、石油が出るかどうか石油ボーリングをやったわけですよ。そうしたら、千六百メートルくらいに石炭があったわけですよ、反転して。これは日本列島ができる造山作用によって相当反転している地域がありますから、相当深部に石炭があるのですね。だから、続いているわけだから振れないということでもないわけですね。しかしこれはいろいろな悪条件が出てくる。これは深部化の場合にあるわけであります。  そういう意味で、あえてきょうちょっと鉱山の質問をしたということでありまして、この保安優先という面から考えると、こういう点について、第八次の場合も深部化という問題について一体どう対応していくのか、こういう検討がなされなければならないのではないか、こういう意味を込めて質問したということを申し上げておきたいと思います。  そこで、労働大臣がせっかくおいででありますのでお聞きしておきたいと思うのです。  最近の雇用情勢は非常に悪化をいたしておるということが説明されておるわけであります。私は、その中でも最近の産炭地域の雇用情勢、北海道とか福岡は特に悪いのではないか、こう思っておるわけであります。この雇用情勢について第一点、御説明を願いたいということであります。  そして夕張の場合、就職あっせんの状況というものは最終的にどうなっているのか。私は前の質問の数字は持っておりますけれども、この数字の結果は一体どうなったのか。現在はどうなっているのかという点について御説明を願いたいということであります。  いわば産炭地の雇用情勢というものは、今日の状況では悪化していってもよくなるという可能性はないのではないか、こう言わざるを得ないですね。産炭地の企業誘致、いろいろな状況を見ても、今日の経済情勢では全然歯車が合わない、こういう状況じゃないのか、こう思うのですけれども、これらについてきょう御説明を承っておきたいと思います。
  58. 清水傳雄

    ○清水(傳)政府委員 お答え申し上げます。  産炭地域における雇用失業情勢は、北海道を初めといたしまして全般的にいずれも厳しい状況にございまして、例えば北海道の空知地区の三つの安定所がございますけれども、その管内における最近の求人倍率について見てみますと、全国平均が大体〇・六から〇・六六倍という形で推移いたしておるのに比べまして、夕張の職安管内では〇二一から〇・三倍台、滝川職安管内では〇・四倍台、岩見沢管内では〇・四から〇・五、こうした形で推移をいたしておりますし、また福岡県の筑豊地区三安定所管内の状況について見ますと、いずれの管内におきましても〇・一倍台という状況で、非常に厳しい状況になっております。  また、北炭夕張関係離職者の職業紹介の状況でございますが、閉山時以後におきます求職者数は二千四百五人でございまして、そのうち夕張職安のあっせんによる就職者数は、六十一年二月末現在で千二百八十五人となっておりまして、残りの方々につきましては、管内から他地域へ移転をされたり、あるいは求職の取り消しをされた、こういう方々が千百二名でございまして、現時点におきます夕張地区における未就職者は十八名、こういうような状況でございます。
  59. 林ゆう

    ○林国務大臣 ただいま数字のことで部長から御答弁申し上げましたけれども産炭地域におきまする離職者の対策ということにつきましては、企業の導入、そしてまた地場産業の育成、こういったものを通じまして地域の雇用機会の拡大を図るということが最も望ましいものである、こういった観点から施策を進めてきたところでございます。しかしながら、先生御指摘のように、産炭地域におきます雇用情勢は、それぞれの地域事情を反映いたしまして厳しいこともこれまた事実でございます。  このような状況の中で、労働省といたしましては、最近の北炭夕張の例に見られますように、炭鉱離職者臨時措置法に基づきましての手帳制度を活用いたしまして、広域の職業紹介を含め再就職の援助に努めてまいったようなところでございます。今後私どもといたしましては、石炭を取り巻く諸情勢を十分見きわめながら、関係機関とも連絡をとりながら、地域における雇用の機会の拡大を含めた雇用対策といったものの樹立に努めてまいりたいと考えております。
  60. 岡田利春

    岡田(利)委員 時間がありませんから、最後に通産大臣にお伺いしたいと思うのですが、今年度石炭関係予算、一千二百四十五億円が既に成立をいたしておるわけです。その中で特に前向きの予算、安定対策費は三百七十四億五千六百万、三〇・三一%、前年は三〇・七六%ですからちょっと減って横ばい、こういう予算案の内容になっておるわけです。そういう点を十分御理解になって、この第八次政策をどうするのかという点について、大臣もしばしば発言もされておるようでありますが、政策の整合性というものをどういう角度から求めていくのか。これは、石炭の場合は非常に多面的、多角的でなければいけないのじゃないかと思うわけです、経済性といえば答えは簡単に出るわけでありますから。  ただ、その基本になるものは、本院にも石炭対策特別委員会が設置をされてもう二十年にもなるわけですね。石炭政策を始めて、昭和三十年に法律をつくってもう三十一年ぐらいになるわけであります。第一次政策が始まって以来もう二十五年になんなんといたしているわけであります。それは日本の唯一のエネルギー資源であった石炭産業というものを、その歴史的な使命を間違いなく全うさせるということですよ。そのために今日まで長い時間、みんなが努力してきたと思うのです。私は、その基本は第八次政策についても変わりがないと思うのです。日本石炭産業の使命というものを間違いなく全うさせる、やはりそういう中で考えてもらわなければならぬと思うわけであります。  そういう意味で、全体の中で一体どう経済的に調整したらいいかという問題もあるでしょう。地域経済、先ほど言った産業転換もそう簡単にいく問題じゃありません。雇用の問題も伴ってまいります。そういう総合的な面で政策の整合性を求めるべきであって、経済性という面だけで整合性を云々されることについてはいかがなものか、私はこういう考えを持っているのであります。そういう意味で、第八次政策中間報告も出てまいるわけでありますけれども、改めて通産大臣基本的なお考え方を承っておきたいと思います。
  61. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 経構研の報告というものは、我々もそれに拘泥するものではありませんが、参考にしてまいりたいと考えております。経済というものは、その時代、時代によって、人の思考が変われば変わるようにやはり動いていく。この流れを一時的にとめることはできますが、永久にとめることはできない。  議論を聞いておりまして、夏目漱石の「草枕」ではないが、「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。」というのがありますけれども、本当に経済合理性だけでやるといってもなかなかそう簡単にはいかない面がございます。だからといって、ただ同情論だけでいつまでやれるかということになりましても、これも気持ちとしては非常によくわかりますけれども、今までどおり全部いけるかどうか非常に問題がある。石炭会社というものは民間会社でありまして、しょせん一私企業でございます。国営企業でもありません。国鉄が国営であっても民営になるというような時代でございまして、石炭全体とすれば、日本エネルギーの中ではもう既に三%しかその地位を占めていないようになってしまった。それまでには非常に多くの貢献をしてきたことは事実、北海道の鉄道と同じで、大変な貢献をして北海道を開いたことは事実だと私は思います。その功績には感謝をしなければならない。  しかしながら、鉄道が自動車に食われ、飛行機に食われて、大改革をしなければならないような事態になってきておる。石炭の場合も似たようなことが言えるのであって、エネルギー全体の割合からすれば非常に小さい話でございます。しかし、何と申しましても今までの歴史的な背景、もう一つは地域の産業問題というものがありますから、一番優先的に考えなければならぬことは、やはりそこに働いている従業員の生活の安定をどういうように図っていくか、これを最重点に考えることが一番大切ではないのか、そのためにはどうすればいいのかということを考えてやりたい。最後の最後まで頑張ってしまって、会社がつぶれて何も出なくなっちゃったというようなことも実際困るわけでございますしね。ですから、従業員の一番生活の安定になるためにはどうあるべきかということをやはり重点に考える。それから日本石炭採掘の技術というようなものをどうして残しておくか。それから国内でも採算ベースに合うものは、当然合理化をさらに一層図って進めなければならぬ。  その一方、保安対策というのは重要な問題でありまして、余り採算ベースばかり考えて大変な事故になってもこれまたかえがたい人命に影響を与える、絶対に大事故というものは再発をさせないようにしなければならぬ、こう繰り返し繰り返し言ってきながら、今まで何回も何回も現実の問題として事故が起きている。今後は一切、絶対起きないのか。それだって絶対なんということはあり得ないかもわからぬ。したがって、そういうような面も考えて、皆さんの御議論も踏まえて、今すぐ結論を出すことはできないが、そういう諸事情を踏まえて、専門家の方が第八次石炭鉱業審議会においていろいろ今まで勉強してきておりますし、その結論が概算要求前には出るというように聞いておりますので、それを踏まえまして慎重に対処をしていきたい。もちろん皆さん方のそういう御意見も十分に、採用できるところは最大限に採用していくという考えで対処してまいりたいと思っております。
  62. 林ゆう

    ○林国務大臣 先般、経構研で石炭問題につきまして報告がなされておりますが、今後の石炭政策のあり方につきましては、現在石炭鉱業審議会におきまして、石炭産業を取り巻く諸般の情勢を考慮しながら、総合的観点から検討が進められておるところでございますが、私からこの経構研報告の具体的な内容につきましてとかくの見解を述べることは差し控えさせていただきたいと存じますが、その報告の中で、地域経済に与える深刻な影響に配慮すべきこと、こういったことが述べられていることは、雇用の安定に携わる者といたしましては全く同感であるというふうに思っております。
  63. 岡田利春

    岡田(利)委員 終わります。
  64. 矢山有作

    矢山委員長 次に、斎藤実君。
  65. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 渡辺大臣にお尋ねをいたしますが、所信表明の中で大臣が、石炭については、石油代替エネルギーの重要な担い手として大きな期待を寄せている、政府としては、総合エネルギー政策の重要な柱の一つとして、石炭の安定的な供給の確保とその利用の拡大を推進するために、引き続き所要の施策を推進していくというふうに述べられておりますので、ぜひこの姿勢で取り組んでいただきたい。  その中で大臣が、「中長期的には経済性を度外視することは不可能であります。」と述べられているわけでございますが、このことは私どももわからないわけではありません。しかし、現在の国内炭の現状を考えた場合に、経済性を論議していたのでは話にならないのではないかと思うわけでございます。経済性の論議が歴史的な石炭政策においてどういう影響を与えてきたのか、こうしたことを考えるときに、むしろ資源論としてとらえて位置づけるべきではないかと私は考えるわけでございますが、大臣の御所見を伺いたいと思います。
  66. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 石炭が今まで国内のエネルギーとしての重要な役割を果たしてきた、これは事実なのです。しかし、競争相手がいっぱいできたということも事実なのです。先ほども言ったように、国鉄が北海道の開拓のためにはなくてはならない大きな使命を果たしてきた、これも事実だけれども、しかし道路ができ、舗装がされ、飛行機が飛びということになると、やはり国鉄の利用が少なくなってくる、これも事実である。したがって、国鉄もそこへ全部置け、置けば便利だ、それは便利でしょう。しかしながら、そこで全く大赤字になってしまったら、それではだれがその赤字を負担していくのですか、だれが負担するかという話になってくる。  似たようなことが言えるのじゃないか。今後も石炭というものは非常に重要な国内資源でありますから、掘れるものはやはりできるだけ掘ってそれを守っていくという基本姿勢は崩してはいけない。しかしながら、それにも限界というものがどこかにあるはずでありまして、炭価は幾ら高くてもいいというわけにはなかなかいかない。どの程度までならばみんなが受け入れられるか、お互いに痛み分けができるかということになるのじゃないか、そう私は思っておるわけであります。  したがって、やはり余り無理な掘り方をすれば落盤だとか事故だとかいうようなこと、これは必ず起きますから、そのことの方が人命尊重という点から非常に怖いというふうに私は考えています。したがって、そういうものが起きないようにするのだけれども、どの程度ところ危険性があるか、それは専門家でなければわかりませんけれども、やはり安全第一ということも考えなければならない。そのためにコストがまたべらぼうに高くなってしまうということでも、これは産業として、商品としてはとても需要者がつかない。ですから、そういう問題をいろいろ総合的に考えた中で、掘れるところはある程度の援助、保護によって残していく。  それから、どうしても振れない、これ以上はいろいろ無理だろうというようなところは、労働者、そこに働いている人の生活というものを中心にどういうふうにしたらいいか、それは先ほどの岡田さんの例にあったように、十年たったってまだ転換できないじゃないか、どうだと言われる地域も実際はあると思いますよ。だけれども転換できるところ転換をできるようなことを、できるだけみんなで面倒を見ていくという姿勢が大切ではないか。ただ、現状のまま、そのまま全部一〇〇%いじらずにやるということが果たしてできるのかどうなのか、それらにつきましては、やはり専門家の意見を聞くという意味で、第八次審議会の皆さん方の答申を踏まえて、政府は具体的な対処方針をこの夏までには出してまいりたい、そう思っておるわけです。
  67. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 問題は、内外炭の格差が非常に大きくなってきた。六十一年一月現在で、一般炭でございますが、これは基準炭価、関東渡しの値段でございますが、国内炭がトン当たり二万五百七十五円、海外炭が九千八十五円、国内炭が倍以上なんですね。原料炭については、国内炭はトン当たり二万五千八百二十円、海外炭が一万一千九百三円、こういう状況になってきているわけであります。しかし、こういった内外炭の価格差ですね、倍以上ですから、許容範囲ということを通産省ではどういうふうに考えていらっしゃるのか伺いたいと思います。
  68. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これは常識論なんですね。具体的に幾ら幾らが許容範囲だとはなかなか言えない。食糧だって同じで、小麦とか大豆とか、実際は今は随分保護しているのがありますよ。大豆は自由化していますがね。これは保護しているのはあります。転作すれば補助金を上げますよとか、小麦だっていろいろなことをやっておりますが、これもやはり結局最終的には納税者の選択の問題なんですね。結局政府がそういう面倒を見るというようなことになりますと、その金はだれが出すんだというと、これは納税者が出すわけですから、納税者が、まあ仕方がないわという程度の限界というものはあるのであって、それは私は、十年前の納税者の心理状況と、二十年先の納税者の心理状況と今とは許容限度というのは皆違うと思うのです。だから許容限度というのは常に動いているのですよ。流れとしては動いている。  例えば、そうかといって食糧不足で外国からは物もなかなか入らぬというときには、値段に構わず三倍でも五倍でもということもあるでしょう。しかし、外国から安全に入るというようなときには、人情論としてこれくらいのものはしてやらなければならぬ。しかし、二倍も三倍にもかということになると、何でそんな必要があるんだという反発が出てくる。やはりこれはみんな選挙で出てきていますから、結局選挙のことも考えなければならぬのですよ。民主主義というのはそういうものです。それで成り立っているのです。ごく一部の部分だけに目を当ててやったら、ほかからでかい反発を受けたら政権の座からおりなければならぬし、やはり全体のことを見て、その中で局地についてもできるだけのことを考えていくということはどの政党も大体同じようなことじゃないでしょうか。  ですから、どこに許容限度があると言われてもそれはわからぬのですよ、時代によって動くのだから。やはり常識というのはそういうものだろう、そう思います。
  69. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 解散風が吹いて、いみじくも大臣から選挙の話が出ました、後でひとつじっくり伺わせていただきたいと思うのですけれども。  我々は第八次の審議会の結果というものについては重大な関心を持っておるわけです。国民全体あるいは炭鉱に携わる人たちも関心を持っておるわけでございます。  そこで大臣、所信の中で我が国石炭鉱業の見直しを進めると言われておるのですが、この見直しについてどういう方向で見直しを考えておられるのか。審議会への影響もございますし、また核心に触れる答弁は難しいかと思いますが、仰せいまだかつてない実力通産大臣の渡辺大臣でございますので、この際石炭鉱業の見直しを進めるということについて大臣のお考えを伺いたい。
  70. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これも結論から先に言いますと、私何遍も言っているのですが、第八次答申、専門家が、いろいろ皆さんの議論や何かを全部伝わるようにしてあるのですよ。ですから、そういうふうな皆さんの世論の動向も見、現実的な状況も見、経済的なことも考え、総合的に考えてちゃんと方向を出すと思うのです。そういう専門家がいろいろ研究してやってもらっておるのに、私がここで具体的に見直す方向を出してしまうということは僭越千万の話でございますから、それはやはり謙虚に皆さんの意見も全部聞いて、受けとめて、整合性のとれた方向を出すということ以外は、はっきりとじゃあどういうふうにするんだと言われても、答申が出ないうちに私がどうするということはなかなか申し上げられない。私の個人的な考え方としては、先ほど長々と申し上げたようなことは一つのベースじゃないのかなという気がしております。
  71. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 現段階ではなかなか難しいということでございますので次へ移させていただきますが、新政策検討する場合には、これまでの政策に対する評価というかあるいは内容を洗い直すというか、こうした作業も大事だろうと私は思うのです。それで大臣、第七次政策についてどういう認識を持っているのか、まずお伺いしたいと思うのです。  私は、失敗とまでは言いませんが、基本的な政策方向石炭企業の自立が達成できたとは言いがたい状況だと考えている一人でございますが、大臣の御認識はいかがでしょうか。
  72. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 第七次の具体的な総括につきましては、政府委員から具体的に説明させます。
  73. 高橋達直

    高橋(達)政府委員 先生から御指摘ございましたように、第七次の基本理念は、石炭鉱業の自立を目指しまして石炭鉱業労使の自主努力政府の助成、需要家の協力、この三本柱のもとに石炭政策推進していくということであったわけでございます。本年度最終年度でございまして、まだ終了しておりませんので最終的な評価はできないわけでございますけれども基本的な背景といたしまして、国内炭の海外炭に対する競争条件が、策定時よりは不利にならないとする同政策の前提は、現実とは大幅に食い違っているということは事実としてあるわけでございます。  一方、石炭鉱業の現状を評価してみますと、生産は五十七年度の千七百四十一万トンから六十年度実績見込みで千六百四十三万トンということで、年々緩やかな減少になっておるところでございます。  保安面では、全体として改善傾向にあるわけでございますが、幾つかの重大災害が発生しているという事実があるわけでございます。  採掘条件につきましても悪化はしておりますが、一方、生産能率の面で見ますと、五十七年度の月当たり一人当たり八十五トン程度の能率が、六十年度実績見込みでは九十三トンまで向上しているということでございます。  さらに経営の状況を見ますと、依然として赤字基調でございまして経営基盤は脆弱であるということでございまして、まだ終わっておりませんので最終評価はできませんけれども、御指摘のように、石炭鉱業の自立を目指した状況というのが必ずしも全体としては実現の軌道に乗ってないという状況にあろうかと思うわけでございます。
  74. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 次に、鉱害問題のお尋ねをいたしたいと思うのですが、鉱害問題は難しい案件が後送りをされてこれからが大事な局面であろうと思いますが、先年には鉱害行政をめぐる不正事件の発生もありましたし、また復旧を期待しているまじめな地域住民のためには一日も早い処理が必要でございます。現在の残存鉱害の実態と地域住民の心配は、本当に期限内に処理できるのかどうかということで心配をしておるわけでございますが、この点についてお伺いしたいと思うわけであります。
  75. 高橋達直

    高橋(達)政府委員 昭和五十七年の十一月に、通産省といたしまして鉱害復旧長期計画を策定したわけでございますが、そのときの残存鉱害量は、御承知のとおり五十七年度価格で約五千九百億円ということになっておるわけでございます。その後の鉱害処理の状況でございますが、私どもとしておおむね順調に進捗しておるものと考えておりまして、今後とも期限内に鉱害復旧が完了いたしますように最大限努力を払ってまいりたいと考えております。  予算の面で見ましても、六十一年度におきまして石炭勘定の財源が今非常に制約されている中で、鉱害復旧事業資金につきましては前年度並みの水準を確保いたしまして、復旧事業規模といたしましても七百億円を確保したところでございまして、今後とも鉱害の復旧に努力をしてまいる考えでございます。
  76. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 産炭地振興対策でございますが、既に来年春にはいわき地域の指定が解除される予定でございますし、施策の成果が上がりつつあると思うわけでございますが、このいわきに続く産炭地政策から卒業する地域はどういう状況になっているのか、また北海道のように過疎だとか企業誘致の立地条件が厳しいようなところでは、なかなか産炭地振興対策が困難な問題を抱えて難渋している地域もあるわけでございますが、全体的な状況、地域別の現状と見通しについて伺いたい。
  77. 高橋達直

    高橋(達)政府委員 産炭地域から卒業していく地域がいわきに続いてあるかというまず第一のお尋ねでございますけれども、現在の産炭地域政策を決定いたしました際に、一定の効果が上がった地域については産炭地域対策の対象から外していくということを、いわゆる卒業条項というのを同時につけたわけでございますけれども、この考え方は、全国の財政力指数の平均に比べまして当該地域の主なところがそれを上回るという状況になったときに、その解除をしていこうという考え方でございます。いわき地域はそれに該当したために卒業ということになったわけでございますが、その他の地域につきましては、現在のところでは必ずしもこの要件に該当するところがすぐに出てくるという状況ではないと考えられまして、当面どこの地域が卒業ということは現在申し上げられない状況でございます。  なお、産炭地域振興の各地別の状況でございますが、九州、北海道ともいわゆるハード面での基盤整備ということで、地域振興整備公団を通じての工業団地づくり、あるいはこれに対する企業誘致の促進策、あるいは産炭地域臨時交付金という形で地方公共団体に対する支援、諸種のものをやってきておりますが、今後はさらにハード面だけでなくてソフトの面、つまり地域の活性化のために何をしたらいいかどいう観点から、各地域にビジョンづくりあるいは人づくりを支援していこうということで六十一年度予算をお認めいただきまして、この新規事業もやっていくということでございますので、ハード、ソフトの面あわせまして、北海道、九州ともそれぞれ地域の特性に合わせて振興を支援していく考えでございます。
  78. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 大臣にお尋ねをいたしたいのですが、大臣御承知のように、最近の石炭政策のあり方をめぐる環境は非常に厳しいものがあるというふうに私も思うし、大臣も答弁でそのようにお答えをしていただいておるわけでございます。私も非常に関心を持っておりますのは、中曽根総理の私的諮問機関であります経構研の報告書の中で、国内石炭鉱業は縮小し海外炭へ移行すべしとの提言があるわけでございますが、さらにもう一つのものとしては、私はこれを一番重視しているわけでございますが、六十年度の炭価交渉に際しまして、電力業界が国内炭引き取り削減を要請しております。これが炭価引き上げの一つの条件になっているというふうに聞いておるわけでございますが、こうした考え方はいずれも、先ほど申し上げましたように経済性の論議だとか、先年連続した重大災害の続発などに起因するのではないかと思うわけでございます。  したがいまして、なかなか単純な割り切り方はできないわけでございまして、こうした論議は石炭鉱業審議会での論議にどういう影響を及ぼすのか、我々は非常に心配しておるわけです。むしろ第八次政策は従来の施策をさらに拡充し、国内石炭鉱業に長期展望をもたらすものでなければならないと思うわけでございますが、これは産炭地の地元でもこの点を切望しておるわけでございますので、石炭鉱業審議会に対する影響について大臣、どのようにお考えになっているのか伺いたいと思います。
  79. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これは先ほど言ったように総理大臣の私的な諮問機関でありますから、臨調答申とは違いまして、それを政府は要するに尊重しなければならないというように法律で決まっているわけではありません。ありませんが、学者グループあるいは実務家も入っておりますが、そういう中でクールに見てそういう答申を出されたものと思います。  これは人によってみんな見方が違いまして、やはり石炭産業に長く携わっていた人とか働いてきた人とかそういう方は、ほれて通えば千里も一里ぐらいな情熱を持っていますよ、実際は。しかしながら、離れた距離から見れば必ずしもそうじゃないしするから、やはり合理性というものが先立っているということは私は実際は否めないと思うのです。内外の炭価の格差というようなものも実際だんだん広がってきているし、それから採掘の仕方、深さとか採掘の難しさというものもだんだん強化されている。  そういう中にあって、恐らくここにいる人も、日本石炭をもっと増産しろと言う人は大体石炭にほれた人ばかりじゃないですか。手なべ下げてもいとやせぬというぐらい石炭に対して非常に情熱を持った、ほれた人がこの特別委員会には集まっております。しかしそうでない、まだ外野席で見ている人もあるわけですから、そういう外野席の人が言ったわけですから、当然石炭にほれている人とそうでない人の格差はあるのですよ。だから、我々はそういうふうな両方の面を見ながら、結局国民的な支持が得られるということをしなければならぬ。  その中で、私が言っているようにやはり働いている人を何とかしなければならぬ。これは恐らく反対する人はいないのではないかと思うのです。しかしながら今までどおりに全部やらせろと言っても、それはちょっと無理じゃないのかねと思う人も私はかなりいると思うのです。だけれども、どうすれば働いている人が将来よりよく、もう悪くならないで、より悪くならないでと言った方があるいは正確なのかもしらぬけれども、何とか生活が維持できる、それはみんなで考えてやりましょうという前向きの話で、そういう点ならば私はかなり協賛が得られるのではなかろうか、そう思っておりますので、経構研のものが出たからといって実際は余りむきになる必要も私はないと思うのです。しかし、外野席の人の意見もそれは十分に参考にしていきたい。案外広い視野でこの人たちは見ておりますから、そういう点は参考にしていきたいと思っております。
  80. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 次に、最近の円高関係についてでございますが、御承知のように昨年秋以降の円高の急激な進行でございまして、国民生活にいろいろな影響を与えておるわけでございます。国内石炭鉱業にとっても、内外の価格差の拡大という形で極めて重大な影響を受けているわけでございます。これが炭価交渉だとか、先ほどの需要業界の引き取りの削減要請にも出ていると思うのであります。  こういう状況の中で、何度も繰り返して恐縮でございますが、国内炭生産することの意義につきましては、さらに広範なレベルで意見を出し合い、将来の展望を探るべきではないかと思うわけでございまして、これは我々の責任だろうと思うわけです。何といっても石炭鉱業に責任を持つ通産省としては、さらに積極的な対応が必要ではないかと考えるわけでございますが、この点について通産省のお考えを伺いたいと思いますし、また、価格差の実態と国内炭引き取り状況、これに対する通産省の指導方針について御答弁をいただきたいと思います。
  81. 野々内隆

    野々内政府委員 輸入炭は、今平均トン当たり五十ドルというところでございますので、円が十円高くなりますと五百円安くなるわけでございますので、三十円でございますと千五百円輸入炭が安くなるということになろうかと思います。したがいまして、この円高によりまして内外炭格差がさらに開きつつある、こういう状態でございます。  外国からの輸入炭引き取りの要請に対しまして、私どもは、どの国から石炭を引き取るかということについてはこれはすべてコマーシャルベースである、したがって、アメリカから買うか、豪州から買うかというのは私どもとしては決め得ないということは申し上げるわけですが、国内の需要家に対しましては、高くても何とか国内炭を引き取っていただけませんかというお願いをしなければならぬ。そこに非常にジレンマがあるわけでございますが、やはりこういう政策というのは、広く国民的な理解の得られる形でやる必要があると考えております。  大臣が内野、外野と申し上げましたが、昔は日本国民全員が内野であったように思うのです。最近は国内炭生産の地域が非常に縮小しており、また、国内炭エネルギーに占める比率が減ってきたということで内野が非常に少なくなってまいりまして、外野の数が非常にふえてきた、ここに私どもとしても非常につらいところがあるわけでございます。ぜひ産炭地域の方々、石炭に対しても温かい目でごらんいただきたいと思っておりますし、私どもも内外野を通じて理解の得られる政策というものを打ち立てていかなきゃならぬというふうに理解いたしております。
  82. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 今後の国内炭需要の確保についてでございますが、需要業界の協力を得ることが私は必要だろうと思うのです。このために何らかの価格調整措置を講ずる必要があると考えるわけでございますが、この点いかがでしょうか。  また、原料炭一般炭によって違いはありますが、単純に言えば、現在の輸入割り当て制度の適正な運用によりまして内外炭の調整を適正に行うことは可能ではないかと思うのですが、この点についてどうでしょうか。
  83. 高橋達直

    高橋(達)政府委員 先ほど来御議論がございますように、内外炭に相当の値差があるわけでございますので、何らかの補正措置を講じなければ国内炭需要の確保はできないわけでございます。そういう意味価格の調整は必要であるわけでございまして、現在は石炭鉱業合理化臨時措置法に基づきます通産大臣の基準炭価制度と、それから輸入割り当て制度によりましてその価格差を補正しているわけでございます。  海外炭と国内炭をプールして、これで価格の調整をしろというような御指摘かと思うわけでございますけれども、これにつきましては、海外からの貿易障害の増大になるのではないかというような強い批判があり得ること、また、国内におきましても、海外の分についてさらに付加的に値段を、コストを上げるということについての強い批判が予想されるわけでございまして、御構想については承っておきますけれども、かなり問題点があるように考えておるわけでございます。  いずれにしましても、競争力がない以上何らかの形で補正をしていかなければ、国内炭価格及び需要は守れないという観点に立って今後ともその対策を検討してまいる考えでございます。
  84. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 大臣、最後にちょっとお尋ねをいたしたいのですが、これは、きょうは新聞記者も来ておりませんから何を言っても結構でございます。  先ほど大臣が選挙の話をされまして、同時選挙は憲法違反の疑いがあるということで我々は反対しておるわけですが、たびたび大臣は、私はそんなことはないと思うのですけれども、同時選挙論者ということで随分発言をされているというふうに漏れ承っておるわけでございます。解散権は総理の専権事項、これはもう十分承知しておりますが、中曽根内閣の重要な実力大臣である渡辺大臣にその辺のお考え、個人的な考えでも結構ですが、同時選挙についての御所見を伺っておきたい。
  85. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 石炭特別委員会で同時選挙の質問が出るとは思っておらなかったのですが、私は別に同時選挙推進論者ではありません。要するに選挙、特に衆議院の解散というものは、国民から選ばれた五百人の人の、簡単に言えば罷免みたいなものであります、議席を奪っちゃうわけですから。ですから、それは大義名分がなければできるものではない。したがいまして、国会において、今重要法案がたくさん出ております。国鉄法案も大変重要、それから国会議員がみんなで決議までして、定数是正も今国会の半ばまでには解決してしまいましょうという申し合わせをして天下に公表した、こういうものがどんどんみんな会期内に成立してしまったら同時選挙をやるなんということは全く不可能、できない、できるわけがないと私は思うのです。しかし、その反対の問題が起きますと、これはわからないですね、実際は。  でありますから、私は、大義名分のない選挙はあり得ないということだけが結論でございます。決して扇動教唆、そういうことはいたしておりません。
  86. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 以上で終わります。
  87. 矢山有作

    矢山委員長 小渕正義君。
  88. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 先ほどから経構研の答申に対して大臣の方では、単なる参考的な意見だ、外野席からの一つの見方だ、こういうような話をされておるわけでありますが、この経構研の結論というものは、政府の取り扱いとしては、そういう一つ考え方もあるという程度の中で受けとめて政府としてはやるんですか。  どうも新聞報道等から察しますならば、政府としてはこれを了承して、そうしてアメリカに中曽根さんが飛んでいってこういう国際的な約束をする、そういうふうなところまで重みがあるような取り扱いになるのじゃないかという感じがしているのですが、そういうことじゃなしに、一つの私的諮問機関であったということから、これはもう単なる一つの参考意見としてとどめる、政府としてはそういう取り扱いにしかしない、本当にこういうことに受けとめていいんですか。どうもそこらあたりが、必ずしも大臣が今言われておるような取り扱いにはならぬのじゃないか、もっともっと重いものになっていくのじゃないかという気がするのですが、その点いかがでしょうか。
  89. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私は法律論を申したのでありまして、臨調のように法律でつくられた制度であって、しかもその中に、政府は臨調の答申を尊重せねばならないと法律で決まっているわけです。経構研は法律論としては、別に国会で決めて、それで政府に義務づけを立法化して国会が決議をしたというものではありません。そういうふうな意味で、法律上の拘束力という点について、それは臨調答申とはおのずから違いますということを申し上げたのです。だからといって、それはもう全然知らぬことで我々と無関係であるということは一つも申し上げておらないのでありまして、それは参考にいたします、どこまでも参考に恐らくするでしょうということを−第八次答申も踏まえて、それを忠実に実行すると私は言っているわけですが、第八次答申をつくる人は私じゃないのですから、また別な人ですから、その人たちも恐らく参考にするでしょうということを申し上げておるわけでありまして、我々も参考にしたいと思っております。  しかし、確かにあなたのおっしゃったように、政治的に前川答申というのがひとり歩きをしてしまって、我々一番心配したのは、前川答申というものに世界の期待が余りにも大き過ぎて、それがひとり歩きをしてしまったのでは困ることがあるかもしらぬということで、むしろ私は実際は心配した方です。ところが中身は、仮にひとり歩きをしても全く心配のない、全く常識的なものでありまして、我々も安心をしたというのが実際であります。これは中長期的に向かってなかなかいいことを言ってくれた部分が多いというように私は評価をしております。
  90. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 法律論議はこれははっきりしておるわけですね。だからあえて申しませんが、ただ、今私が申し上げましたように、この経構研で出された考え方を大綱的には政府は了承して、そして中曽根内閣の国際的な公約としてこれが今後生きていくという取り扱いになっていくのではないか、そういうふうにまた盛んに報道されておるわけでありますから、そういう意味では必ずしも今大臣のおっしゃられたようなそんな軽いものじゃない、このように我々としては受けとめざるを得ないわけです。そういう意味で、これはあくまでも中曽根首相がこれをひっ提げてレーガンさんのところへ行って約束して帰ってきて、しかも国際サミットでこれをまた持ち出す、こうなればこれはまさに中曽根内閣の国際的な一つの公約になるわけでありますから、そういう点では法律論は抜きにして、そういうふうに非常に重みを持ってくるのじゃないか、かように考えざるを得ないわけでありまして、その点についてもう少し見解を承りたいと思います。
  91. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 経構研については総理大臣談話が出ておるのですよ。それはお読みになったと思いますが、「有識者の方々が五カ月間にわたり、自由な立場から精力的な御議論を積み重ねてこられた成果であり、誠に時宜を得た、適切かつ貴重な報告として高く評価するものであります。政府は、この報告を参考として、与党とも十分な連携を図りつつ、関係審議会等における調査審議も含め、早急に必要な検討を行ってまいります。また、我が国の経済構造調整を政府・与党を挙げて積極的に推進するため、所要の体制整備を図ってまいります。」という総理大臣談話を出したわけですから、政府としてもこれは参考としてまいりますということを言っておるわけであります。
  92. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 今、石鉱害で第八次石炭政策についての議論がされておるわけです。そういう中で、たとえこのような総理大臣の私的諮問機関であろうとも、このように非常に重大な内容を含んだものが内閣総理大臣に提出された。今大臣のこれを出されたときの談話の中にも、関係審議会の中にそれぞれこれを反映させるというようなことが触れられておるわけであります。そういう意味では、石鉱害としては非常に大事な時期に、このように外部からのインパクトを非常に与えるようなこういうものをやったということは、私は極めて問題じゃないかという気がしてならないわけであります。そういう点で石鉱害に対しまして、今回の経構研のこういった少なくとも石炭政策に関する件については、私は極めて大きな内閣としての圧力を加えていくのじゃないかという気がしてならないわけでありますが、その点はいかがですか。
  93. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これは先ほど言ったように、臨調のように法律で決まって政府に義務づけをしておるものではありません。それから見れば、それは正式な——もちろん人の見方によって違いますから、権威はあると思いますが、法律上の義務づけは別にありません。しかしながら、いろいろ立派な御意見を開陳をされておりますから、政府はそれを今後とも政策上のいろいろな点について参考としてまいりますということを言っているのですから、当然それは参考にすべきものである、私はそう思います。しかし、それでなくては絶対ならぬというわけのものでもない。それはいいところはとるし、できないところはとらないこともあるかもしれない。しかしながら政治的な重みがあると言われれば、それは政治的な話ですから判断の仕方でありまして、それは政治的な重みがあるといえばもちろん重みがあるといっても差し支えない、そう思っております。
  94. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 石鉱害の中にこれがどれだけ大きな影響を与えていくかということについては、これはまた石鉱害の人の立場の問題がありますから、ここでいろいろ議論するということもできませんけれども、私どもとして現在第八次石炭政策の石鉱害における慎重な検討をお願いしている段階の中で、たとえ法律的には拘束力はないにいたしましても、内閣総理大臣の私的諮問機関といいながらも、このような重大な問題が、しかもまだそういったことを考えない中で出されてくるということは、こういうあり方というものは、内閣の一つのあり方といいますか、そういう手法といいますか、私は極めて遺憾だと思います。  そういう意味では、そういうことは万々ないとは思いますが、この経構研の石炭政策に関する関係については少なくとも石鉱害とは切り離して、一切関係ないという立場の中で石鉱害がそれを審議されていくように、特にこれは関係省庁としてもひとつそういう方向の中でぜひ見守り、指導していただきたいと思いますが、その点いかがですか。
  95. 高橋達直

    高橋(達)政府委員 大臣から答弁申し上げたとおりでございまして、石炭鉱業審議会といたしましては基本的に独自の立場から検討を進めていく考えでございまして、その検討をするに当たりまして、先般の経構研の報告一つの参考とするという考えでございまして、あくまでも答申の内容石炭鉱業審議会が独自に検討していくという考えでございます。
  96. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 中身が水かけ論になりますのであえて申しませんが、ぜひこの点は関係省庁として慎重な中で見守り、指導していただきたいということを特に申し上げておきたいと思います。  次に移りますが、我が国石炭鉱業と非常に類似している先進諸国といえば西ドイツ、イギリス、フランス、こういうところがやはり国内における石炭を採掘しているという状況であります。しかもそれぞれの国の生い立ちがいろいろありましょうから、そういう長い歴史もございますが、ドイツ、フランス、イギリスにありましては、海外炭との格差は我が国と同じような状況にありながらも、国内産業保護、資源エネルギーを保護するという立場からか、それぞれの国においては助成策をとりながら石炭鉱業を維持しているというふうに思われるわけでありますが、そういった状況について、イギリス、フランス、西ドイツは国の施策として、どの程度の分野まで国としての関与をしながらそういう方向政策を維持しているか、その点についての具体的なものをお示しいただきたいと思います。
  97. 高橋達直

    高橋(達)政府委員 ヨーロッパ、特に石炭を多く使用しております西ドイツ、イギリス、フランスにつきましては、今先生御指摘がございましたように、各国とも基本的には国内炭を保護していく考えで施策を実施しているわけでございます。具体的には、イギリス及びフランスにつきましては国営の公社が石炭を担当しておりまして、基本的には内外炭格差を一般会計から赤字補てんをするという形で、ユーザーに渡ります価格については輸入価格基本的に同じレベルで決定をしているわけでございまして、国内炭のコストにつきましては一般会計で補てんをするという形をとっております。また西ドイツにおきましても、そういった施策もございますが、一方におきまして、電力用炭の一般炭につきましては電力料金に平均で三・五%程度の上乗せをいたしまして、それを基金といたしまして高い国内炭に対してペイバックするというようなやり方、いわゆるコールペニヒ制度をとっている部分もございます。  しかしながら、一方におきまして、最近やはり内外炭格差の拡大に伴いまして、政府の財政支援あるいはユーザー負担の増大というものが非常にクローズアップされてまいりまして、各国とも従来より経済性を重視した考え方政策をとりつつあるということでございます。例えばイギリスにおきましては、昨年の十月に、八八年までには政府からの赤字補てんがなしで収支バランスするように石炭公社に求めている政策を打ち出したところでございます。また西ドイツにつきましても、政府石炭会社及び労働組合、三者の合意によりまして、八八年までにかなりの合理化を進めていくという考えを打ち出しております。フランスにおきましても、八四年に第九次五カ年計画ということで、八八年までには石炭公社の収支をバランスさせるということを決定しており、公社におきましてもかなりの生産数量の減少を計画しているというふうに聞いております。
  98. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 あと一つ、それぞれの各国の生産性我が国と比較してどうなのか、その点はいかがですか。
  99. 高橋達直

    高橋(達)政府委員 炭鉱の態様がいろいろでございますので、一般的に比較はなかなか簡単ではないわけでございますが、坑内掘りの生産ということで比較をしてみますと、生産性の高い方からまいりますとドイツが一番高うございまして、それから日本、イギリス、フランスという順番になるわけでございます。日本を一〇〇にいたしますとドイツは一〇八ぐらいの能率でございまして、イギリスは八〇ぐらい、フランスは七三ということで、日本に比べましてドイツは一割ぐらい能率が高い。イギリスは二割ぐらい低い。フランスは三割方低いというのが実態かと思っております。一九八三年のデータで申し上げたわけでございます。
  100. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 石炭がそれぞれの国のエネルギーの中に占めるウエートといいますか影響といいますか、そういうものの議論もまた含めてやらないといろいろ問題はあり得るでしょうけれども、この点なかなか難しい面がありますが、今のそれぞれ出されました三つの国の中でのエネルギーの中に占める割合というものがどの程度か、もし今おわかりであればその点ちょっと教えていただきたいと思います。
  101. 高橋達直

    高橋(達)政府委員 おおむね一九八三年または一九八四年のデータからでございますが、一次エネルギーの消費に占めます石炭の割合でございますが、イギリスにおきましては三三・四%でございまして、国内炭は三一・九%、ほとんどが国内炭ということでございます。西ドイツの場合には、全体で石炭が三三・三%を占めておりまして、国内炭で全体の三〇・九%、フランスでは、石炭全体では一四・七%に対しまして国内炭では七・一%ということでございます。  日本の場合には、御案内のとおり、これも一九八四年度昭和五十九年度のデータでございますが、全体で一七・七%でございますが、国内炭では三・三%という数字になっているわけでございます。
  102. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 大臣にお尋ねしますが、先ほどから大臣のお話を承っておりまして、大臣は独特な話術といいますかお話がうまいということで、テレビでもなかなかそういう意味での人気にもなっているようでございます。そういうことで、先ほどから石炭政策についてのお話もいろいろと例え話をしながらなさったわけでありましたが、経済性のみを追求していってもいけないということではおわかりだと思います。特に今、端的に言って我が国の場合、食糧と資源としての石炭、大体この二つを、やり方は別といたしましても、国として政策的にいろいろなものを重点的に考えてやっているのが現状だと思います。  そういう意味で、経構研の中にも若干触れられておったようでありましたが、現在の段階では、我が国の貴重なエネルギー資源である石炭のみにそういう経済性のみを追求するような議論が出まして、あと一つ非常に大事な我が国の農業の面においては余りそういった問題が、これは意図的かどうかわかりませんが、議論がされない傾向があります。しかし、私たちから見ますならば、特に貴重な我が国資源としてはやはりエネルギーと食糧でございます。そういう意味では、両方、置かれている状況の中でそれぞれ国としての政策を十分行うべきでありますが、そういう点でいきますと、ただひとり石炭のみが経済性のみを強く追求されて何か問題にされるような傾向については、非常に遺憾に思うわけであります。  そういう点で、大臣としては農林水産大臣をやられた経験もお持ちですので、我が国のこういう農業政策との絡みの中で、そういう面から見て、もっともっと石炭というものについてもそこらあたりの政策の整合性を考えながら、農業の政策との整合性を考えながらやるべきじゃないかというそれなりの考えも私はあるわけでありますが、この点についての大臣の所見をお伺いいたします。
  103. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 農業の大宗をなすものは米ですね。米はもうほとんど一〇〇%近い自給でございますから、それは食糧の中で占める割合は非常に大きいわけです。石炭の場合は、今もお話があったように、かつてはかなりのウエートを占めておったけれども、時代の変遷とともにだんだん少なくなってきて、現在は三%程度のシェアしか占めていない。  例えば農業の中でも大豆が似たようなものでありまして、これは非常にシェアが狭い。二・三%程度でしょう、大豆の中に占める割合というものは。食糧全体から見たらもっと、国内の大豆の食糧としてのシェアは、国内品は一%以下、そういうようなことになるでしょう。大豆の方は、御承知のとおりもう自由化をしているわけでございます。  ですから農業の方もかなり変わってまいりまして、お米のようなものであっても、過剰気味な中でこれ以上なかなか値段を上げることはできないということで、数年間据え置き。賃金が上がり、物価が上がっても据え置きかと言って随分おしかりを受けてはおるのですが、それでも据え置きまたはほとんどそれに近いような状態で推移しておる。それと同じく石炭を例えるということは、実際問題としてなかなか困難でございます。まして、お米、小麦というのは政府が買い入れるわけでございますが、石炭政府が買い入れるわけではございません。お客様があっての話であります。しかしながら、今までのいきさつもあるから、高いものであっても、北海道電力を初め需要者に理解を求めて引き取らせておるということであって、需要者の方からすれば、倍もするものをいつまでも高い値段で引き取らせられちゃかなわぬという抵抗があることも御承知のとおりでございます。  今回も、電力料金の値下げ、円高メリットの還元ということになりましても、北海道は国内炭をたくさん使っておるという点から円高メリットの影響が非常に少ない。すると、これから新しい事業を始めたり、工場誘致をするにあたってそんなに電力格差があるのでは、北海道に新規工場が来ないじゃないかという議論が北海道全体として一方にあることも事実なわけです。そういう事情がいっぱいありますから、経済というのはある程度保護することはできるのですが、恒久的と言ってもなかなか難しい、臨時的なものである。臨時的、暫定的、激変緩和的な保護のあり方というのは必要でありましょうが、それはそれだけのことであって、永久にやるならば実力で、自分の力でやっていくというのが民間経済の原則になっておるわけでありますから、そこらのところをどう調整していくか。  その中で、企業それ自体はもちろんそうだが、問題は労働者、従業員で、これを中心に、一般論として限界のある産業から発展する産業に徐々に職種の転換が行われて、失業者がふえないで日本全体としての経済が繁栄していくことが望ましいわけであります。そういう原理原則に合ったやり方で石炭の従業員を何とか吸収していくということを考えなければならぬのじゃないか。それを優先的に考える方がむしろ国民全体の共鳴が得やすいのではないかという感じを持っておるものですから、先ほどあのようなことを答弁させていただいた次第であります。
  104. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 確かに、自給率その他から見ればいろいろな議論もあるでしょう。しかし、国際価格と国内価格の差という面から見ると、農業の問題についてはかなり保護されて、国際価格よりも高い中で我々消費者は消費しておるわけであります。  これはちょっと古いもので昭和五十九年ごろの資料でありますが、生産額に対する国の助成額の割合が農業は二九%、石炭は一%。農業関係については小麦、大豆それぞれの問題があるわけですから、国際価格はかなり安くても、国内のそういった人たちを保護するためにこのような保護政策がずっと貫かれてきている。ひとり石炭のみをそういうことだけで考えるのではなしに、農業も我が国の大事な資源でありますし、石炭も唯一の我が国資源でありますから、そういう意味での整合性を持つような政策を国としてはとらなければならない。  確かに今石炭は国際価格の面からいって非常に大きな問題点になっておりますし、供給者側にとってもいろいろありましょうけれども、農業だけでも我々消費者から見ると問題はあるわけであります。国の一つ政策として、それぞれの調和をとるためにこういった保護政策その他いろいろなものがとられているわけでありますから、ひとり石炭政策のみをそういう国際価格の面だけで取り上げて問題にするのは片手落ちじゃないかということを私は特に申し上げたいわけであります。大臣におかれても、そういう意味における国の政策の整合性という点を重点的にぜひこれからも考えていただきたいということを申し上げる次第であります。  大臣としては、直接働いている人たちの生活をどうするか、そういう意味での心配がないような状態をどうつくるかということをまず基本にして物を考えなければいかぬということを言われておりますが、その点は十分理解するわけであります。ただ、そういうこととあわせて、現在の我が国石炭産業はそれぞれの地域経済の中に大きな影響を与えている、そういう地域性が非常に強いところばかりであります。  私の身近にある高島炭鉱を例に挙げましても、一つの島で高島町という町が成り立っておりまして、石炭企業にすべて依存した町でありまして、もし石炭が廃業するようなことになるとするならば高島町自身が存在しない。そこは農業はほとんどされていないところでありますし、漁業者が三十世帯か四十世帯おられるだけで、あとはすべて石炭企業によって町が独立して成り立っているというところであります。したがいまして、確かに労働者の生活をまず第一に重点的に考えるということは大臣として極めて大事なことでありますが、それとあわせて、そういう地域社会政策的な面も十分配慮しながら石炭政策考えていかなければならないというのが我が国の現状だという点について、大臣の御所見を承りたいと思います。  あわせて、最近原油価格が非常に安くなりました。そういう点で我が国エネルギーに対するいろいろな意見もまた出てきますが、確かに石炭我が国での需要度からいきますと割合は少のうございますけれども、国際的なエネルギーの事情がどのように変化するか極めて予測が難しいわけでありますので、単年的に目先だけの状況によって一喜一憂することなしに、もう少し長い目で我が国エネルギー政策考えなくてはいかぬのじゃないか、そういう気がしてならないわけであります。第一次石油ショック、第二次石油ショック、またその後のいろいろな動きを見ますならば、その都度その都度そういった国際的なエネルギー事情の変化にうろうろするのじゃなしに、長い目で見て誤りのない、そういう角度から問題を考えるべきだと思いますが、その点についても大臣の御所見を承って、私の質問を終わりたいと思います。  以上です。
  105. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 地域と密接に結びついているというところに非常に難しい問題があります。私はかねがねそれは言っておるわけでございます。しかし、しょせんは民間企業の問題でありますから、どういうようにするかは最終的には企業者の判断ということになるのでありましょうが、そういうような社会政策的なものも考えると、何らかの応援を政府としてもやっていかなければならぬ、そう思って、それは従業員のことを中心に考えていくのが筋ではないか、我々は十分地域性の問題は配慮していきたい、そう思っております。  長期的なエネルギーの問題につきましては、やはり創意工夫をして、みんながある程度応援をすればやっていけるというものについては、極力それは確保していくという姿勢が大切だと思っております。
  106. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 終わります。
  107. 矢山有作

    矢山委員長 小沢和秋君。
  108. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 七日に提出されましたいわゆる経構研、首相の私的諮問機関である国際協調のための経済構造調整研究会の報告書は、我が国の大幅な収支不均衡の継続は危機的状況であると指摘し、今後収支不均衡を国際的に調和のとれるよう着実に縮小させるためにということで石炭、農業、さらに国際競争力を失った幾つかの工業分野でもスクラップ化を進め、これを輸入に転換する方向を打ち出してまいりました。これは輸出で大もうけした企業はそのままにして、国際競争力のない、いわば弱者であるこれらの産業をつぶし、その分で輸入をふやして国際収支のつじつまを合わせようという政策ではないでしょうか。私は、こんな強きを助け弱きをくじく式の政策転換は断じて承服することはできません。しかし、きょうはそのことについて議論をしようとは思いませんので、一応そのことを見解だけまず申し上げておきたいと思います。  ところで、私は特にきょうお尋ねしたいのは、既に渡辺通産大臣は、まるでこの経構研の報告に呼応するかのごとく、閉山の決断を促したと見られるような発言を先日行ったと報じられております。  これは西日本新聞の四月三日付なんですが「渡辺通産相は二日、参院商工委員会国内炭鉱問題について「全部を残せるかどうか。経済性も無視はできない。限度がある」と二部炭鉱の閉山があり得るとの見通しを示した。」このことについて「既に閉山問題が表面化している三菱石炭鉱業高島砿業所をはじめ業績の悪い炭鉱に対し進退の決断を促したものとして注目される。」というふうに新聞は解説を加えているわけであります。  今も議論になりましたように、経構研のこの報告書だけでも私は、政治的には八次審の検討をしている委員の方々にとっては大変な圧力だと思うのです。そこへもってきて担当大臣がこういうようなことまで言い出すということになったのでは、実際にはもう自由な審議などというのは全くできないという状況になってしまうのではないかと思うのですが、大臣の真意を伺いたいと思います。
  109. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 どうぞ御自由に御審議を、何ら我々の言ったことをそう気遣うことなく、あるべき姿について第八次審議会がどんどんいい意見を出していただきたい、そう思っております。
  110. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 では、こういうような発言をあなたがこの時期にされるということ自身、私は大変軽率というか不適当だと思うのですけれども、しかし少なくとも八次審に対しては全く自由に議論をしてくれ、それを自分は保証する、こういうふうにここで責任を持って言明されたわけですね。
  111. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 かねて私には私の哲学がもちろんありますよ、それは大臣といえども哲学を述べて悪いということはないわけですから。ですから、私には私の哲学がありますが、私は第八次審議会のその答申を尊重して立案をしたいという結論を最初からずっと言い続けておるわけですから、皆さんの御発言も耳に入るでしょうし、それは経構研のお話も新聞を読んでいるからわかるでしょうし、いろんなことはみんな見て、あなた方の言うこともちゃんと向こうは見ておるでしょうし、いろんなことを総合的に判断して専門家の方が答申を出してくれることを私は期待をしておるのです。
  112. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 それでは、そのことはぜひそうであってほしいと思います。  それから次に、一つ一つ炭鉱は、それぞれの地域経済にとって非常に重要な役割を果たしているということをぜひ大臣お考えいただきたいわけであります。私自身、筑豊を選挙区に抱えておるわけでありますけれども、閉山してから二十年以上たちますけれども、地域経済が根こそぎ破壊された後の再建というのは全く容易でありません。今日なお、多くの住民が失対や生活保護に頼らなければならない状況であります。しかもこの閉山は、昭和三十五、六年ごろ集中して行われた。一番日本が高度成長期で、そういう意味では対応力のあった時期に閉山されてなおかつこういう状況なんですね。大臣は、旧産炭地の状況というのを御存じかどうか。そして最初に申し上げたように、一つ炭鉱の閉山といえども、その地域の経済にとっては、何十年にわたってこういう深刻な傷跡を残すものだということをぜひお考えになって今後の対応をしていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  113. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 それは長い歴史を持つものが別な産業に変わっていくということは大変なことだ。例えば国鉄一つとっても、国鉄に勤めておった人が途中で職を変えて建設省に入ったり農林省に入ったり、普通の企業に入ったり、通産省にも三人ですか今度新しく入ってきますが、それは大変なことなんですよ。しかしながらやはり時勢、時の流れといいますか、それにどこまでも逆行しておっても何とも仕方がないことでありますから、我々はそれについては温かくみんなで考えて迎えてやらなければならぬ、そういうふうに思ってやってきておるのです。ですけれども、全体としてなかなか転換し切れないで現在残っておるのもたくさんあるという現実も、私はよく承知をいたしております。
  114. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 ところで、これも先ほど触れられた点でありますけれども国内炭よりも海外炭の方がはるかに安いという問題を抱えている先進国が幾つもあります。イギリス、フランスあるいは西ドイツ。これらの国々と我が国石炭政策というのを比較してみますと、私は日本ほど石炭を粗末にしてきた国はないんじゃなかろうかというふうに思えてならないのですが、その点いかがですか。
  115. 高橋達直

    高橋(達)政府委員 御指摘のように、ヨーロッパの各国におきましても石炭を多く使用しておりまして、それに対して保護をしているわけでございます。日本におきましても第一次政策以来、これまで第七次の政策において十分にその石炭の持つ意義を踏まえまして、これらに対する対策を私どもとしては十分に実施をしてきているつもりでおりまして、決して粗末にしているとは思っておりません。
  116. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 ここに「欧州石炭調査報告」というものを持ってまいりました。これは私が先日、日本石炭協会にお願いしてちょうだいをしたものであります。  これをざっと勉強してみたわけでありますが、英、仏は国有になっておりまして、先ほどもお話があったように、赤字は政府で補てんをしているわけですね。それだけでなく、特にイギリスなどでは、この十年間にも新鉱開発に実に二兆円という金を投入したというふうに書かれております。それから西ドイツは民営で日本と大変似ているわけでありますけれども、鉄鋼、電力とも十五年から二十年の長期契約で、石炭産業は非常に安定をしている。海外炭との大きな格差については、鉄鋼向けの原料炭については、販売補助金を国と州が約十七億マルク、それから電力用の一般炭についてはいわゆるコールペニヒが二十億マルク、合わせて、日本円にすると約三千億円を投入していることになると思います。こういうような助成策を講じておると私は理解したのですが、そのとおりでしょうか。
  117. 高橋達直

    高橋(達)政府委員 大体先生のおっしゃるとおりでございまして、イギリス、フランスについては一般会計から国内炭の高い分を赤字補てんという格好で公社に出しております。また西ドイツにつきましても、一般会計からの助成のほかに、電力料金に上乗せをした基金によりまして、一般炭の電力用炭につきまして、引き取り者に対しまして、これを補てんしているという措置をとっておるわけでございます。
  118. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 私が強調したいのは、そういうようなお金を投入したりして支えているということだけじゃないのです。問題は、どういう考え方に基づいてそういう政策をとっておるかという考え方だと思うのです。この報告の中に会談の記録があるのですが、西ドイツ経済省を一行が訪ねて、責任ある人たちから西ドイツの石炭政策について話を聞いているのです。この中で、「西ドイツの石炭産業は単にエネルギー供給源としてのみならず、社会政策上からも重要である。」として、一つエネルギー供給におけるリスク問題、もう一つ、社会的な失業問題等々の観点から自分たちは検討しているんだと言っているのですが、特に私が関心を持ちましたのは、このリスク問題についてこう言っていることなんです。「エネルギー供給におけるリスクとは、一次エネルギーの六〇%が輸入に依存しており、この依存度を減少させてゆくことである。一〇〇%なくすことはできないので、どの分野に石炭利用の拡大を図ってゆくかということである。」ただ現状を維持しようというだけじゃないのですね。エネルギーの面での経済的な自主性、自立をできるだけ確保し拡大していこうという考え方があってこういう政策をとっておるということなんです。  今度の経構研では、こういう競争力を失ったような石炭をつぶして、海外から輸入でもしたらアメリカの御気嫌がよくなるだろう、全く発想が道なんですね。この哲学に学ぶ必要があるのじゃないかと私は言っているのですが、この点は大臣いかがですか。
  119. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 それは日本でもいい炭層が見つかって、日本も最高の技術は持っておるのですから、それによって、先ほどもエネルギー庁が言っているとおり、日本生産性はかなり高い。だからいい炭層があるということがわかれば我々だってやらないことはない。ところが残念ながら、日本の置かれている地理的条件からそういい炭層がたくさん見つかっていないというところもございます。それからもう一つは、現在の段階ではエネルギーの中に三%程度のシェアしかないというところで、三〇%以上のシェアを持って、国家の安全上どうしてもこれは必要だというところとは差があってもやむを得ないと私は思います。
  120. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 いい炭層がないからというお話だったのですけれども、私が前提にしているのは、これらの国々も海外炭と非常に大きな炭価の格差があって悩んでいるけれどもこういう政策をとっていると言っているのです。あなたが言われるようにいい炭層があって、競争力があったら掘るというような話を私はしているのではないのです。それから、三%ぐらいしか比重がないと言われたけれども、三%にしたのはだれかといったら、政府がそういう政策をとって三%にしてきたわけでしょう。私は、今のあなたのお話はそういう意味で反論にならないと思います。  次の問題に移りたいと思うのですけれども我が国の場合、鉄鋼、電力などの業界がどういう態度をとるかということが石炭産業の将来に大きく響くと思うのです。国内炭は高過ぎるといってこれらの業界が引き取りを渋っているという話をよく聞くのですが、私は、これは全く身勝手な話じゃないかと思うのです。電力が円高差益のもうけ頭であるという点はここでいろいろ言う必要もないと思うのですけれども、問題は特に鉄鋼ですね。鉄鋼が中進国からの輸入の増大とか、輸出の停滞などで着しんでいることは事実だと思います。しかしその一方で、石炭や鉄鉱石などの原料輸入では巨大なメリットを得ていることも事実だと思うのです。  そこでお尋ねしたいのですが、昭和五十七年ごろと比べて、現在為替レート、原料価格、船賃、これらがそれぞれどう変化したか、お示し願いたいと思います。
  121. 高橋達直

    高橋(達)政府委員 五十七年と六十年で原料炭一般炭の輸入のときの炭価と円レートでございますけれども原料炭につきましては、トン当り、CIFベースで五十七年が七十四・七ドル、それが六十年には五十九・二ドルになっております。円レートは、五十七年では平均二百四十九円で、六十年では二百四十円ということで、まだ最近の円高状況は余り入っていない状況でございます。  一般炭の場合には、五十七年で六十五二ドル、それが六十年には四十五ドルになっております。円レートは先ほどと同じでございます。
  122. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 私どもが調べても、大体そういうことになります。それで問題は円高議論ですから、特に最近円高がほぼ百八十円ぐらいになって推移しているということで考えてみますと、原料炭はほぼ七千万トンぐらいの輸入だということで、ざっと概算してみると、五千億円近い金額ということに我々の計算ではなるのですが、大体そういう計算になりましょうか。
  123. 高橋達直

    高橋(達)政府委員 五十七年当時の輸入価格に五十七年当時の為替レートを掛けまして、それに六十年度当時の輸入数量を掛けまして、それから六十年度における輸入価格の炭価、それから円レート百八十円を掛けまして、六十年度の数量を掛けたものを引きますと、大体先生のおっしゃる数字になるわけでございます。
  124. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 ですから、この私どもの試算には根拠があるということを認めていただいたと思うのですが、そうすると、国内でわずか四百万トン程度原料炭を引き取る、そのために三百億も自分たちは私企業でありながら負担しているとか言って憤慨しているなんという話も聞くのです。しかし、一方ではこういう大きな円高による利益も得ておる。だから私は、円高でそういうような大きな利益を得ているという面と、それからこういう国内炭との差が開いたことによって負担が生まれていることと、これは裏腹の関係だと思うのですね。  だから総合的にこれを観察してみれば、全体としてみれば、そういうような引き取りを決らなければならないなどという根拠にはならないと思うのですね。だから、もっと通産当局としても、鉄鋼、電力などに対して国内炭引き取りについては力強く引き取れということをおっしゃっていただいていいのじゃないかと思うのですが、どうでしょうか。
  125. 野々内隆

    野々内政府委員 鉄鋼業界は、直接間接輸出が大体五〇%にも達するわけでございますので、今回の円高によりまして相当手取りが減ってきておりまして、既に役員の給与カットあるいは職員の昇給の停止というようなことが取りざたされておりまして、瞬間風速では多分赤字になっているのではないかと思われます。そういうときに、もし国内炭を完全に輸入炭に振りかえれば当然かなりのコストダウンになるわけですので、何とかして国内炭引き取りを減らしたいと先方は言っております。私どもも、何とか今度は国内炭のコストを考えますと値上げを認めてほしいということで要望いたしたわけですが、結局値上げはできないけれども国内炭引き取りは続けましょうということで、六十年度決着はついたわけでございます。  それから、電力につきましても、実は今円高差益の議論で、御承知のように非常に国民的に電力会社のコストに対して関心が高まっております。一千万トンの引き取りについて、もしこれをトン当たり一万円としましたら一千億になるわけですが、何とか電力料金を安くしたいということから、国民的に非常に関心が高まっておりまして、小さいコストといえどもないがしろにできない状態となっております。私どももできるだけ国内炭引き取りを要請いたしておりますが、電気料金をできるだけ安くという国民的要請、これも無視できない。そこに非常なジレンマがあるわけでございます。こういういろんな観点考えながら、今後の石炭政策というものを立案してまいりたいというふうに考えております。
  126. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 残念ながら五分前という紙が回ってきましたから、この話はこのくらいにして、最後にあと二点ごく簡単に申し上げますからひとつ答えていただきたいのです。  一つは鉱害ですね。この復旧工事が、ああいう不祥事などが起こってから非常におくれがちだということで我々も努力を要請してきたわけでありますが、今現在どうなっているか。  それから、六十一年度も予算はほぼ横ばいなんですけれども、今の予算で推移したとして、臨鉱法の期限内に復旧は完了するかというのはいつも地元で不安を持っている点なんですが、その点の今現在の見通しはどうか。  それから、これが最後の質問ですけれども、来年度から、昭和六十年度の国勢調査の結果も出たので、いわゆる人口減少の市町村に対する交付税の算定方式が変更されるのではないかというふうに言われております。そうすると、産炭地は大きな打撃を受けて、いわゆる人口急減の補正でもらう額が半分以下になるのではないかというふうに言われております。ところが、一方では依然として深刻な疲弊の状態が続いておる。ですから、どうしてもいわゆる補正の算定の仕方というのを、従来の線を維持していただきたいというのが地元の強い要望ですね。この点については、自治省に来ていただいていると思うので、最後に一言お答えください。
  127. 高橋達直

    高橋(達)政府委員 鉱害対策の問題でございますが、第一の御指摘の工事の実態でございますが、六十年度の復旧工事につきましては、特に年度の後半に至りまして工事のおくれを取り戻し、相当程度回復しております。なお、発注ベースで参りますと、五十九年度もそうでございましたが、六十年度につきましても計画どおり発注を行っておりまして、かつ実際の工事につきましても相当程度回復しております。今後ともこの正常化対策を徹底いたしまして、事業の円滑な推進を図ってまいりたいと考えております。  また、予算の規模から見て、法期限内に鉱害の復旧が完了するかというお尋ねでございますけれども、五十七年度の長期計画に対しまして、現在のペースでおおむね順調に推移しておるものと思っておりまして、今後とも予算を確保し、鉱害復旧が完了するよう最大限の努力を払ってまいりたいと考えております。
  128. 遠藤安彦

    ○遠藤説明員 お答えを申し上げます。  御指摘のように昭和六十一年度の交付税の算定に当たりましては、昭和六十年の国勢調査結果が、要計表という形でございますけれども出ましたので、測定単位の数値としての人口を、昭和六十年の国勢調査人口に置きかえて算定をいたす予定でございます。このように六十年の国勢調査人口に置きかえて算定をいたしますと、いわゆる人口急減団体につきましては交付税が減ってくるということになります。私ども、交付税が激減するということは市町村の財政運営にとって好ましいことではないということでございますので、従来からこういう団体につきましては人口急減補正というものを適用いたしておるわけであります。  現在の人口急減補正の考え方と申しますのは、昭和三十五年の人口、これは市町村の過疎化が始まる直前の人口でありますけれども、それを基準としまして、それと直近の——直近のといいますのは、交付税で算定に使います、六十一年度の算定で申し上げますと、六十年の国勢調査数字との差の四割を復元するという形で人口急減補正を適用いたしております。ただ、昭和三十五年というのは、六十年に比べますと二十五年前ということになります。二十五年前の人口というものが二十五年たった後の行政に影響を与えるのかどうか。基準になる年次としては余りにも期間が長過ぎはせぬかという考え方一つにはあります。  さはさりながら、しかし一方では、それではその基準年次を四十年に置きかえたならば、人口減少団体の交付税の配分が減って困るではないかというような両方の考え方があるところでありまして、これから交付税の算定の作業に入っていくわけでありますが、そういった点につきまして十分検討の上、できるだけ市町村の財政運営が困らないような算定方法あるいは基準年次の採用というものを考慮していきたいということであります。ただいまのところ、三十五年にするか四十年にするかということはまだ決定をしていない、これからいろいろな事情を検討して決定をしていきたい、このように考えております。
  129. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 終わります。
  130. 矢山有作

    矢山委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時四十九分散会