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1986-04-25 第104回国会 衆議院 商工委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年四月二十五日(金曜日)     午前九時二分開議 出席委員   委員長 野田  毅君    理事 奥田 幹生君 理事 佐藤 信二君    理事 野上  徹君 理事 与謝野 馨君    理事 城地 豊司君 理事 和田 貞夫君    理事 長田 武士君 理事 宮田 早苗君       甘利  明君    尾身 幸次君       加藤 卓二君    粕谷  茂君       岸田 文武君    高村 正彦君       辻  英雄君    原田昇左右君       渡辺 秀央君    後藤  茂君       上坂  昇君    中村 重光君       浜西 鉄雄君    水田  稔君       渡辺 嘉藏君    小沢 貞孝君       工藤  晃君    野間 友一君  出席政府委員         通商産業大臣官         房総務審議官  鎌田 吉郎君         通商産業大臣官         房審議官    松尾 邦彦君         通商産業省産業         政策局長    福川 伸次君  委員外出席者         参  考  人         (日本弁護士連         合会会員)   久保井一匡君         参  考  人         (主婦連合会事         務局長)    清水 鳩子君         参  考  人         (一橋大学商学         部教授)    田内 幸一君         商工委員会調査         室長      倉田 雅広君     ————————————— 委員の異動 四月二十四日  辞任         補欠選任   横手 文雄君     小沢 貞孝君 同月二十五日  辞任         補欠選任   奥野 一雄君     上坂  昇君 同日  辞任         補欠選任   上坂  昇君     奥野 一雄君     ————————————— 本日の会議に付した案件  特定商品等預託等取引契約に関する法律案  (内閣提出第八五号)  訪問販売等に関する法律の一部を改正する法律  案(上坂昇君外三名提出衆法第一一号)      ————◇—————
  2. 野田毅

    野田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出特定商品等預託等取引契約に関する法律案及び上坂昇君外三名提出訪問販売等に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  本日は、参考人として日本弁護士連合会会員久保井一匡君、主婦連合会事務局長清水鳩子君、一橋大学商学部教授田内幸一君、以上三名の方々の御出席を願っております。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  参考人各位には、御多用中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。  ただいま本委員会におきまして、特定商品等預託等取引契約に関する法律案及び訪問販売等に関する法律の一部を改正する法律案の両案について審査を行っておりますが、参考人各位におかれましては、両案について、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、今後の審査参考にいたしたいと存じます。  なお、議事の順序でございますが、最初に、参考人方々から御意見をそれぞれ十分程度お述べいただき、次に、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。  それでは、まず久保井参考人にお願いいたします。
  3. 久保井一匡

    久保井参考人 御紹介いただきました日本弁護士連合会会員久保井でございます。  私は、弁護士という法律実務に取り組む立場から、法案に対して意見を述べさせていただきたいと思います。  まず、政府提出に係る法案に関しまして、基本的な問題点として次の三点があると考えております。  まず第一点は、この法案によりますと、特定商品等を預かる預託取引をだれでも自由に行うことができるということになっております。この自由に行い得るという自由営業制には次のような問題があると思います。  まず第一には、本来、不特定多数の大衆からお金を集め、預かるということは、銀行法あるいはこれに類する法律に基づきまして、正規の金融機関でなければ行うことができないことになっております。また、金銭以外の財産、これを譲り受けて運用するという取引は、信託業法に基づいて主務大臣免許を受けた者だけが行い得ることになっております。これらの建前は、一般大衆被害をこうむらないようにするために国家が厳しく規制していることによるものであります。  ところが、このたびの政府提案特定商品預託取引は、銀行とか信託会社と同じように一般大衆から資産を預かって運用するという取引を行うに当たって、全く自由に行い得るということ、だれでも自由に行い得るということが、法体系としてのバランスに反するのではないかと思うわけであります。また、例えば卑近な例を出しますと、宅地建物取引業というものがありますが、不動産の売買の仲介とかあっせんをするだけでも免許制をしいておりまして、だれでも自由に行い得ることになっていないのであります。そういうことと比較いたしましても、このたびの法案自由営業を認めるということが果たして妥当かどうか、重要な問題があると思います。  それから自由営業に関連して第二の問題点は、このたびの法律案は、取引相手方である一般消費者に対して契約内容をできるだけ明らかにする、ディスクローズして危険を承知をして取引に入らせる、つまり、知らないで危険な取引に引き込まれることを防止するということで、ディスクローズ中心規制となっております。しかし、御承知のとおり、豊田商事事件等被害者となっております大半の層は高齢者、いわゆる老人とか主婦等、どちらかというと十分な判断能力を持たない社会的な弱者が食い物になっている、被害を受けているというのが実態であります。そういうことを前提といたしますと、契約内容ディスクローズして消費者判断にゆだねるという形で防止を図るということには一定の限界がある、不十分な点があることを指摘せざるを得ないのであります。  昨年の十一月に、大蔵大臣諮問機関であります証券取引審議会投資顧問業に関する答申を出しました。そして、この答申に基づいて投資顧問業法というものが立案されることになっておりますけれども、これはいわゆる投資ジャーナル事件等一連不祥事件に対処するための法案でありますが、この答申によりますと、単に投資に関する助言を行う助言業ですら登録制が採用されております。そして、取引を一任する、いわゆる一任取引におきましては許可制が採用になっております。  これらはいずれも一般大衆の自由な判断にゆだねると思わぬ被害が発生する、だからディスクローズだけでは足りないということから許可制をとったわけでありますが、それらと比較いたしますと、このたびの法案はいささか甘い、社会的な弱者対象とした規制法としてはいささか甘いのではないかということは否定できないわけであります。  ところで、このような問題点に加えて、私が基本的な問題点の第二に指摘したいのは、特定商品等預託だけが規制対象になっておりますが、実は預託に先立ってその対象商品業者が販売する、つまり、売買契約預託契約とが同時になされている。つまり、豊田商事の例で言いますと、金をお客さんに売りまして、売った金をそのまま預かるということにいたします。だから、結局物を渡さないでお金だけを預かるという形になっているわけです。つまり、言いかえますと、不特定多数の消費者から、国民から金銭をかき集めるという行為が行われておるわけであります。  それを今度の法案は、売買はもちろん自由に認めるわけですから、何も制限を受けないで自由に一般大衆から物の代金を集め、そして物を渡さないで預かるということですから、結果的には多数の消費者からお金を集める、不特定多数の人からお金を集める、そういうことが是認される。つまり、今度の法案が結果的には出資法に違反する商売を是認することに結びつくのではないか、これが私の基本的な問題点として指摘したい第二の点であります。  もとより、出資法の言う預かり金の概念には、最高裁判所の判例によりますと、預かった金銭の元本を返還することを約することを預かり行為と言うということになっておりますので、厳密な法解釈としては出資法違反にならない疑いがある。つまり、豊田商事の場合で言いますと、預かった物と同種同量の金(きん)を返すということになっておりまして、受け取った金銭を返すという契約になっておりません。つまり、純金ファミリー証券契約条項によりますと、物を返還するということになっております。したがって、現行の出資法にそのままずばり違反すると言い切れるかどうかという疑問はありますけれども、しかし、その点を度外視いたしますと、結果的には一般大衆から自由に金を集めるということが是認されてしまうという点は、非常に重要な問題点であろうと思うわけであります。  その基本的な問題点、今申し上げました二つ問題点は到底無視できないものでありますけれども、しかし、その点はいましばらくおきまして、法案中身について若干具体的な意見を申し上げてみたいと思います。  その第一は、先ほどのことにも関連いたしますが、この法案は預かることを前提にその業者が物を売ることを認めているわけでありますけれども、預かることを前提に物を売るということは禁止しなければならぬと私は思います。つまり、一般消費者手元にある特定商品特定財産を預かってそれを運用するという、それだけが認められるような、そういう法律体系に見えるわけですけれども、実際にはその預かる品物はお客さんの手元になくて業者がみずから持ち込んだものを預かるという形になりますので、そこに問題点が生ずる。つまり、手元対象物件がなくともお金が受け取れるというところに問題の本質があるわけでありますので、この法律は預かることから出発しているわけですけれども、その預かる対象商品をみずから持ち込んではならない、みずからまたは提携する第三者を通じて持ち込んではならない、そういう規定を設けることが必要ではないかと思うのであります。  それから第二点は、法案ディスクローズ条項をもう少し強化していただきたいと思うのであります。  まず第一は、よく指摘されておりますとおり指定商品制の問題であります。これは、結局後追い的になっていく。事件が発生してから対象商品を指定していくということになりますから、救済が後追い後追いになっていくということであります。  それから第二は、契約書契約締結前の書面に記載すべき事項が不十分だという点であります。取引契約内容業者財産状況等ディスクローズされることになっておりますが、肝心かなめのその預かった商品保管方法及び運用方法ディスクローズさせる必要があります。  そしてさらに、提供することを約束された利益の算出の根拠というものを明らかにさせる必要があります。それによってインチキな商売が自動的にできなくなる、非常に難しくなるということが達成されるのではないかと思います。  さらに、一たん預けた後に、自分の預けた商品が現在どのように保管運用されているかということについて業者に説明を義務づける、つまり契約締結後のディスクローズも明確化すべきだと私は思います。これは民法の委任に関する規定からいっても当然だと思います。  さらに第三点は、クーリングオフ中途解約に関する点をもう少し改善していただきたい。  その一つは、売買には及ばない。つまり、クーリングオフとか中途解約をせっかくいたしましても、預託契約だけの解約ではお金は返ってこない。預託と同時になされる売買は当然にクーリングオフ対象として効力を失わしめるべきであります。あるいは中途解約についてもしかりであります。それからさらに、違約金一五%というのは極めて高過ぎると思うのであります。  その点、また補足の機会がありましたら後で申し上げますが、最後に、禁止行為の拡大をお願いしたいと思うのであります。つまり、威迫的な言動をしてはならないという条文になっておりますが、豊田商事の場合に威迫行為というよりもむしろ長時間の居座りとかあるいは親切行為、肩をもんだり草むしりをしたり洗濯を手伝ったり、そういう親切に絡んで取引に引き込んでいくということでありますから、そういう許されない行為禁止行為をもっと拡大していただきたいということであります。  さらに、最後に、そのような禁止行為に違反した契約効力については、民法上も当然瑕疵ある法律行為ということになるとは思いますけれども、それを取り消すことができるとかあるいは無効になるということを明文化して、解釈上の疑義をなくしていただきたいと思うのであります。  以上のような点について、法案をもし改正していただけるならば、やはりこの法律はこの種の被害防止に一歩前進と言えると思うのであります。  以上で終わります。
  4. 野田毅

    野田委員長 ありがとうございました。  次に、清水参考人にお願いいたします。
  5. 清水鳩子

    清水参考人 主婦連合会清水でございます。  私は、この種の悪徳商法というのは特別な人がひっかかるというふうに思い込んでおりましたけれども、豊田商事事件に象徴されるように、私の母親とか父親とか隣のおじいさんとかおばあさんという人がいとも簡単にこの種の商法にひっかかっております。今度の法律の趣旨は、そういう消費者被害未然防止するために、いろいろな手当て条文の中に書かれているわけですけれども、基本的に、例えば契約内容開示事項のところを読みましても、これは苦情が三分の二はとは六十歳以上であったり、しかもその大半が女性であるというふうなことを考えますと、文章に書けばそれで被害がなくなるのかどうかということが大変気になるところでございます。  それは法律にお詳しい方とか常日ごろそういうものになじんでいる者は、こんなものにひっかかるのはひっかかる方が悪いのだというふうに簡単にお片づけになりますけれども、割賦販売法ですとか訪問販売法ですとか互助会約款ですとかああいうもの、もしくは銀行取引約款などを見ましても、あれだけの条文を十分に理解して、そして自分がひっかからないでいるということは本当に難しい、至難のわざだと私は思うのです。  そういう視点に立って法律がつくられなければ、法律だけでは今の悪徳商法、特に現物まがい商法被害未然防止することはできない。法律をつくるということはあくまでも被害未然防止だと私は思います。起こったものをどういうふうに手当てするかということではなくて、未然防止というところに視点を置かなければまた被害者が出てくることは目に見えていると思います。  法律中身につきましては、今久保井弁護士がおっしゃいましたことと私も大体似た意見でございますけれども、私は、そういう自分たちの仲間がほとんど被害者であるという観点から、法律以外にも補完的な手当てが必要なのじゃないか、法律だけでは救済し切れない部分があるのじゃないかということで幾つか申し上げてみたいと思います。  去る二月十九日に発表されております国民生活審議会消費者政策部会約款適正化委員会のまとめにも明記してございますけれども、「全国的、組織的な消費者苦情収集システムの整備や消費者への情報提供などを積極的に行うとともに、詐欺的行為などを行うものについては、」特にこの辺が大事だと私は思いますけれども、「関係機関が密接な連携をとりつつ法の厳格な適用を行う必要がある。」これを具体的にどうしていくかということです。私もセンター苦情を担当している方とか消費者団体苦情を扱っている者たち意見を聞きましたら、こういう法律はかえってお墨つきを与えるからない方がいいというふうな御意見をおっしゃる方でも、やはり運用次第によっては未然防止ができるのじゃないかというふうに最終的におっしゃった方が多かったのでございます。  これを具体的にどうするかということですけれども、私がちょっと考えておりますようなことを一、二申し上げますと、まず第一に、これはとても通産省だけで処理できるような生易しい相手方ではございませんので、経済企画庁、大蔵省、農林水産省、場合によっては警察など関係各省庁あるいは消費者センターなどの苦情相談業務を担当している者、それから消費者団体消費者意見を代表する者たちによる恒常的な情報交流機関のふうなものをつくって、そして問題が表にはっと出てくる前に、常に問題が発生するのではないかというふうな前提に立ってそれをきめ細かく見詰めていく、そういう制度がよろしいのか、連絡機関と言ってよろしいのかわかりませんけれども、何かなければ通産省にだけ任せておいても、現在の通産省の陣容とか仕事の内容などを見ていてもこれは不可能に近いと思います。  それから二番目には、今各地の消費者センター国民生活センターを結ぶオンラインによる苦情ネットワークシステムが非常に進んでおりますので、こういう情報の活用をどういうふうにしていくかということが求められるのではないかと思います。要するに、機動力のある監視と機動的な行動、チェック、そういうものがなければ、幾ら法律だけにゆだねても、相手相手で特殊な人たちです。今悪徳商法苦情国民生活センターのデータでも多少減っているようには出ておりますけれども、まだまだ残党というのは法律の行方を見守りながら何かあったらというふうに虎視たんたんとしてもうけの道を探っているのが実態だと思いますので、もう少し機動的な未然防止システムをどういうふうにつくったらいいかということを御検討いただきたいというふうに思います。  それから、通産省の動きが鈍いか敏感であるかということによって被害防止が大分影響すると思います。この法案業務停止命令というところを見ましても、私が大変気になりますのは、「違反する行為をし、かつ、当該行為を引き続きするおそれがあると認めるとき、」というふうに幾つ幾つもの、私から言わせれば事業者を保護すると申しますか、そういうふうな条文があります。これは営業の自由という日本の憲法で認められている前提があるのだというふうに言われますけれども、それを前提に置いたとしても、営業停止命令の発動には随分幾つものハードルがあって、これを越えるのは大変だなというふうな感じがいたしますので、ここでもやはり担当省の機動的な対応がどういうふうに行われるかということによって、この法律は生きもし死にもしというふうに私は思っております。  前に新聞で、悪徳商法被害者対策委員会堺委員長がこういうふうに言っておられたのを覚えております。もっと早く手を打ては被害は半分でとまったというふうなこの言葉です。これは本当に大事な言葉で、被害者を抱えておられる堺委員長にしてこういう言葉でございますから、私は、この法律ができた場合には、一人でも被害者が出てはいけないという前提に立たなければいけないのではないかなというふうに思います。  それから、もう一つ大事なことは、消費者啓発とか消費者に対する情報提供ということでございます。情報提供というのは割に一般的に言われますけれども、今度の被害者がいわゆる情報の孤島と言われる高齢者情報の一番届きにくい、届いていてもその情報を正しく理解できない人たち被害が集中しているわけですから、そこら辺についてももう少しきめ細かい配慮がこの法案の中に欲しいなというふうに思っております。  それから、消費者啓発でございますけれども、これは委員会の中でも再三議論になったことでございますが、やはり資産形成に対する知識が日本人は乏しい、子供のときから学校において消費者教育の中にこういう契約概念金銭教育というものをもっと入れていかなければいけないというふうなことはどなたもおっしゃるわけですけれども、その具体的な方策というものについてはなかなか徹底しておりません。今のようにメディア情報が発達しているときでございますから、そういうメディアを十二分に使って、そして消費者啓発、それも一般的に言うのではなくて、具体的に事実、事例を挙げながら情報提供していく、その事例の挙げ方も、やはり老人向け、子供向けというふうにきちっと整理した中でやっていかなければいけないと思います。  これら幾つか申し上げましたけれども、法律とそれから法律周辺の、私が今申し上げましたようなことが軍の両輪になって初めて消費者被害防止できるのであって、周辺のことだけでも解決しないし、法律だけでもこれが解決できないのだというふうに私は思っております。  最後に、措置請求権のところでございます。これは私たちが以前にジュース裁判と申しまして公正競争規約行政措置に対して消費者にも訴えの資格を認めてくれということで裁判を起こして、最終的には最高裁まで参りましたけれども、消費者にはそういう資格がないということで門前払いを食っておりますが、安全法とか品質表示法などではやはり消費者意見を申し出る道が開かれているわけです。この内容について私は必ずしも満足するものではありませんけれども、この措置請求が何らかの形でできるということがうたわれれば、一般消費者も、法律自分たちのためにも道が開かれているのじゃないかと思うのではないかと思います。  時間が超過いたしておりますので、以上申し上げまして、私は、この法律条文いじりで終わることなく、一人でも被害者を出してはいけないのだという前提に立って十分な御審議をいただければ大変うれしいと思っております。
  6. 野田毅

    野田委員長 ありがとうございました。  次に、田内参考人にお願いいたします。
  7. 田内幸一

    田内参考人 参考人としてお招きをいただきました田内でございます。  私は、現在、一橋大学マーケティング講座を担当いたしておりますが、こういった特殊取引規制に関する私の基本的考え方二つでございます。まず、その二つを申し上げて、その後少しばかりそれにコメントさせていただきます。  まず第一は、どういう厳しい法律をつくっても、それをくぐり抜ける方法を見つけ出す者が必ずいるということでございます。  例え話で恐縮でございますが、私は昭和六年の生まれでありますが、そのころ小学校の友だちのお母さんに非常に衛生精神に目覚めた方がおりまして、アルコールを湿した脱脂綿を金属の入れ物に入れていつも持って歩いていた。子供が何かにさわるとすぐ手の先、指の先をふいてやるのですが、そんなことをしてもばい菌は結局防げない、かえって抵抗力がなくてその子は猩紅熱で死んでしまったということがありました。私みたいにぞうきんバケツの水を飲んで育ちますと現在まで病気一つしない。したがって、個人個人抵抗力免疫性をつけるということが、まず私の基本的考え方でございます。  日本の場合と比べまして西洋の場合こういう被害が非常に少ない。というのは、昔からキリスト教教会では、高利を取ることはいけない、高利貸しはいけない、高利の金を借りてはいけないということを繰り返し教えておりますので、赤ちゃんのときから親に教会に連れられていって、高利はいけないのだということが骨の髄までしみ込んでいる、それがずっと何千年にわたって続いてきているわけです。ですから、抵抗力免疫性をつけるためにはこういうことをやらなければいけないということでございます。  二番目の基本的な考え方といたしましては、今申し上げましたように幾ら法律を厳しくしても防げない、しかも厳しくすると経済活性化を非常に妨げるということであります。これは経済の成長にとってマイナスであると同時に、外国から非関税障壁だと非難される可能性も出てきますので、そういう意味でも法規制を厳しくすることは問題があろうかと考えるわけでございます。  それでは、第一の私の基本方針であります個人個人抵抗力ということでございますが、先ほど申しましたように、西洋の場合には、特にキリスト教教会で、昔から高利はいけないのだということを骨身にしみるほど、ちょうど何か物が飛んできたら瞬きをするように、高利と聞くと拒否動作が出る、反射動作化するほど教え込まれておりまして、やはり一番の基本はここにあるだろう。したがって、日本の場合には、教会に行くことはキリスト教の方はあるでしょうが、その割合は少ないし、神道と仏教徒は大体教会に行きませんし、お坊さんや神主さんがそういうお話をするとも思えませんので、幼稚園、小学校の段階で徹底的に教えるしかないと思います。  ですから、先ほど清水参考人もおっしゃいましたように、具体的な事例、生々しい事例を挙げて、怖いものだ、こういう非常に危ないわながあるのだということを徹底的に教えていくことが必要でありまして、そのためには、こういう問題はこの商工委員会だけではなしに、教育関係委員会でも大いに御議論いただきたい、そういう問題ではないかと考えます。  二番目の、私の基本的な考えでございます、法規制を余りに厳しくすると経済活性化を妨げるのではないかということでございますが、この問題に限らず、この世の中はほとんどのものは二律背反でありまして、片方を立てると片方が立たないというような二律背反の中で、どこでバランスをとっていくかという問題だろうと思うのです。  この特殊取引の問題もまさにそのとおりだと私は考えるわけでありまして、法規制を厳しくしても全部の悪者を防ぐことはできない。経済の勢いというのはそれによって失われてしまうということになる。経済の発展とか経済の勢いというものは、常に創意工夫の余地を大いに広くしておく、今までなかったもの、いろいろと新しいものが出てくる可能性を大いに広くとっておくということが必要であると考えます。もちろん、広くあけておきますと、いい創意工夫だけではありませんで、悪い創意工夫も出てくる可能性は多くなるわけでありまして、やたらに広くするということは問題がありますけれども、そのバランスをとる。  法規制で自由、創意工夫の余地をある程度は狭めることになるけれども、国民全体の福祉を妨げるほどには創意工夫の余地を少なくしない、しかも悪い創意工夫の出てくる余地を非常に狭める、そういう両方の間の非常に微妙なバランスをとって法規制というのは行っていかなくてはいけないということであります。  この場合によく考えねばいけないのは、悪い創意工夫によって何か被害が出たというとき、それは具体的にそこに存在するわけです。被害自体が存在しますし、被害を受けられた方も現実にそこに存在するわけです。具体的な存在であります。したがって、それは非常に大きな存在として意識されるわけです。ところが、これから起こるであろう創意工夫というのはまだそこに現実にないわけでありますから、インパクトとしてはどうしても弱くなる。しかし、国として考えるべきなのは、国民全体のウエルフェア、福祉厚生ということであります。そうなると、創意工夫の余地を大いに広くとるという側にも大いに配慮しなければいけない、それが国としての役目ではないかと考えるわけです。  例えば、皆様御承知でしょうが、公正取引委員会の管轄のもとに景品と懸賞に関する法律というのがありますけれども、それで景品あるいは懸賞金額を限っております。これは不公正競争を防ぐのだということにはなっているわけですが、今みたいに国際化が進みまして外国からいろいろな企業が出てくるということになりますと、そういう新しく出てきた企業は過去の広告の蓄積がないわけです。ずっと日本で企業活動を行っているところは広告の蓄積が非常に大きくある。  そうすると、そういう広告の蓄積がない企業が日本でフェアに競争するためには、人の目を引くような派手な懸賞や景品を出さざるを得ない。そういうときに法律がある。これは非関税障壁だ。これは現実にそういう声が外国企業から出ているわけでありまして、創意工夫あるいはいろいろな企業活動に厳しい手かせ足かせをはめるということは、貿易摩擦の面でも問題があるだろう。  あるいは、リッカーミシンが倒産いたしましたときに、あらかじめ金を取って商品を後で渡すビジネスというのはいけないからやめちまえという意見もあったように記憶いたしますけれども、その当時は、前にお金を取って後で商品を渡すという取引で余り目ぼしいものはなかったわけであります。ですが、その後で、例えば日本交通公社が「たびたび」という商品を開発いたしまして、これはあらかじめお金を払っておきまして、そして例えば一年後に六%の利子を乗せた旅行券を渡す。これは、私も審査委員の一人であります日経新聞の優秀製品にも選ばれた商品でありますし、大ヒット商品、百万以上の人がこういう商品が出たことで非常に喜んでいるわけであります。ですから、もしリッカーの問題が出たときに、前受け金を取って後で商品を渡す商法を一切禁止するという法律をつくっていれば、こういう非常に多くの人に喜びを与えている「たびたび」という新商品は出なかったと私は考えておるわけでありまして、なるべく可能性は広くとる、ですが、悪い創意工夫が出てきて被害者が出ることはなるべく防ぐ、この微妙なバランスの上に法規制はあるべきである。  最後に、今回通産省の御提出になりました特殊取引規制についての法律案は、今私が申し上げた微妙なバランスを非常によくとっておられるというふうに考えております。
  8. 野田毅

    野田委員長 ありがとうございました。  以上で参考人意見の開陳は終わりました。     —————————————
  9. 野田毅

    野田委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑者にあらかじめ申し上げますが、質疑の際は、まず質疑する参考人のお名前をお示し願います。  なお、念のため参考人に申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、参考人委員に対し質疑をすることはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願います。また、時間の制約がございますので、お答えはなるべく簡潔にお願いいたします。  それでは、質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐藤信二君。
  10. 佐藤信二

    ○佐藤(信)委員 自民党の佐藤信二でございます。きょうは参考人の先生方、早朝から大変御苦労さまでございます。  まず久保井先生にお聞きしたいのでございますが、きょう久保井先生は日弁連を代表しておいでになったというふうに承りますので、そうした観点からお尋ねしたいと思います。  実はこの法律に関して、日弁連を初めとしていろいろな反対というか御注文があったわけでございますが、その中の一つの理由として、この法律案が成立すると今係争中の裁判に非常に支障があるんだということで、この話は何とかやはりというようなことがあったわけでございます。実はこの点について二十三日の本委員会で私はそうした質問を法務省当局にいたしまして、その点は係争中の案件には影響はないというはっきりした政府の答弁があったわけでございますが、先生のお考え方をお聞かせ願いたいわけでございます。
  11. 久保井一匡

    久保井参考人 お答えいたします。  私は、このたびの法律案がもし成立しますと、現在発生しております豊田商事事件等が現行の法規制で取り締まりにくくなるということは否定できないと思います。御承知のとおり、豊田商事事件被害者は、加害者に対して刑法上の詐欺罪とか出資法違反で告訴しております。その捜査の結論がまだ出ていないわけでありますけれども、もしこの法律案が通過いたしますと、現行法で取り締まることが困難だということを前提法律になっておりまして、したがいまして、やはりその捜査に対してかなり大きな影響を与えるのではないか。だから、できますれば、法務省なり警察庁の刑事事件に対する最終的な結論が出るまではこの法律案を急がない方が好ましいというふうに考えております。
  12. 佐藤信二

    ○佐藤(信)委員 久保井参考人に重ねてお聞きしたいのですが、今のお話をずっと進めていくと、極端な言い方をしますと、係争中のものは最高裁の判決が出るまでは手がつかないというふうな話なのではないだろうか。しかし、実際的には、こうした被害というのは新しい事業者のやり方でどんどんふえるおそれがある。そうすると、早く立法化して悪いものは抑えていく、取り締まっていく、注意をするということがまた必要だろうと思うのですが、その点を重ねてお聞きしたいと思うのです。いかがですか。
  13. 久保井一匡

    久保井参考人 お答えいたします。  御指摘のとおりだと思います。ただ、いわゆる現物まがい商法、ペーパー商法と言われます純粋のものは豊田商事事件以降それほど多発はしていない。現在発生しております新しい事件は、この法律の直接の規制対象にしている取引とは言えないものであります。したがいまして、若干この法律案の成立がおくれたとしても、それによって被害防止がおくれるということはないだろうと思います。  ただし、御指摘のとおり、刑事事件に関する検察庁の最終判断が出ただけでなくて、それに対する一、二審、さらには最高裁の最終判断が出るまで新しい法律をつくるなということは余りにも長過ぎる。だから、私が希望したいのは、少なくとも捜査機関である検察庁の結論が出るぐらいまでは待った方がいい。最高裁の判決まで待てという趣旨ではございません。
  14. 佐藤信二

    ○佐藤(信)委員 久保井先生に最後に一問お聞きしたいのですが、大変言いにくい話ですが、ざっくばらんに申し上げますと、実は今度のこうした法案提出というのも、まさに昨年起きた豊田商事事件に端を発したというのは御存じのとおりでございます。しかし、あのときに会社の法律面の顧問として吉井さんを初めとする弁護士の先生方が大変多く関与なさった。そしてまた、多額の報酬を受けられている。これは国会の審議でも明らかになっていますが、弁護士さんの役割として、法令の適用についていろいろな助言をするということは当然だろうと思うのですけれども、それを越して、こうした規制法やいろいろな法令について抜け穴を探すようなことが実は行われたわけでございますが、こういうことに関して弁護士会として、また日弁連としてどういうふうにお考えになって対応されているかという点をお聞きしたいと思います。
  15. 久保井一匡

    久保井参考人 御指摘の点は私も弁護士の一員として社会に対してあるいは先生方に対しても大変恥ずかしい思いをしております。  確かに、弁護士法律の遵守あるいは社会正義の実現のために国民に奉仕するという職業でありまして、いわんや犯罪的な行為あるいは詐欺的な商法に力をかすということが許されないことは言うまでもありません。御指摘の豊田商事の顧問弁護士に関しましては、現在各単位弁護士会の綱紀委員会及び懲戒委員会で手続を行っているところでございまして、弁護士会としては国民的な批判を十分に真摯に受けとめて懲戒手続をする予定にしております。
  16. 佐藤信二

    ○佐藤(信)委員 田内先生にお聞きしたいと思うのでございますが、先ほど先生がおっしゃったお話、私は非常に感銘を深くしたわけでございます。実は私たち政治家だとああしたはっきりしたことは言いにくいわけでございますが、今のような自由経済を標榜している以上、営業の自由という問題、それからいま一つは消費者の保護という問題、これは非常に難しい話でございますが、営業の自由を重視しながら消費者行政を進めるという場合、具体的に我々政治家また行政府としてはどういう点に配慮すればいいのかという点をもう一回お聞かせいただきたいと思います。
  17. 田内幸一

    田内参考人 ただいまの佐藤先生の御質問でございますが、私が一番申し上げたいと思いますのは、先ほども少し申し上げましたけれども、被害の方は具体的な事実としてそこにあるわけであります。ですから、これに対しては適切な処置をとらなければならないことはもちろんでございますけれども、それが余りに目に大きく映るがために、昔から角を矯めて牛を殺すという言葉がございますが、営業の自由、可能性というものも厳しく狭めてしまって、日本経済の力あるいは可能性、潜在成長力というのを損なうようになってはいけない。  そこで非常に難しいことは可能性でございます、あくまでも。ですから、どういうビジネスがこれから出てくるか、特に今みたいな変化の時代におきましては、本当に予想がつかないわけです。ですから、あらかじめどういう方向に出てくるということなら、そこをあけておくだけでいいわけでございますけれども、どういう方向に出てくるかわからないということなので、やはりできる限り広く、あらゆる可能性を狭めないように、しかしながら被害者が出ないように最小限のところは閉めておくというような、バランスの問題と申しましょうか、そういう努力が必要だ、こういうふうに考えるわけでございます。
  18. 佐藤信二

    ○佐藤(信)委員 大変ありがとうございました。  それでは、最後清水参考人にお聞きしたいと思うのですが、今参考人がおっしゃったように、実はこの事件にひっかかる方はおじいちゃんとかおばあちゃんが非常に多いということで、大変これは社会問題になっているわけでございますが、今、やはりおじいちゃん、おばあちゃんもありますが、一般的な婦人の考え方というのが今までと違って、実はいろいろな方面に活躍されている方も多い。そうなると、当然やはり片一方では被害にかかる御婦人もいらっしゃいますが、またそうした商売を通じてアルバイトをして自分自身の収入をふやされる御婦人、これもいらっしゃるわけですね。それとの兼ね合いは一体どういうふうにお考えになるかということをお聞きしたいと思います。
  19. 清水鳩子

    清水参考人 この種の御意見というのは、もうあらゆる消費者問題に必ずつきまとうのでございますけれども、私はいつもこういうふうに考えております。  いわゆるしっかりした情報を持って契約概念がおありになる方に対しての特別な手当てというものは必要ないんだ。特にこの種の被害というのはそうじゃないところに起こったわけですから、やはりその一部の人がちゃんとビジネスとしてうまくやっているということによって、大多数の被害者を切り捨てるということでなくて、むしろ被害を受けている層がどこにあるかというふうな前提に立って、そして対策を講じないと、常に切り捨てられる部分は切り捨てられていくということで、それは法の精神というものとはかなり違うんじゃないか。  営業の自由というのは、これはあらゆる部門にあるわけですけれども、その営業の自由を認めた中で、やはりこれだけの大多数の被害者が発生して社会的な問題になったということなのですから、そこのところにやはり重点を置いて物を考えないと、うまくやる人だっているじゃないかということであると大多数は切り捨てられていくということで、そういう社会というのは私は決して好ましくはないというふうにいつも思って消費者運動の中で仕事をしております。
  20. 佐藤信二

    ○佐藤(信)委員 今、実は私の言い方が悪かったので、ちょっとおわかりにならなかったと思うのですが、私が言いたかったのは、結局おじいちゃん、おばあちゃんを初めとして御婦人の被害もある、しかしそうした者に対して勧誘する業務に御婦人も入っているケースがあるんじゃないだろうか。だから、やはりまず清水先生たちの方の運動の中、啓発という中において、またそうしたいかがわしい商売には余り深入りしないようにというふうな啓発運動も必要じゃないだろうかというような意味のことを申し上げたかったわけでございます。  それじゃ、質問を終わります。
  21. 野田毅

    野田委員長 和田貞夫君。
  22. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 参考人の皆さん、きょうは御苦労さんでございます。私、社会党の和田貞夫でございますが、お三人の方々に逐次質問していきたいと思うのです。  いろいろとお三人の方々からそれぞれのこの法案に対する御意見をお聞かせいただきました。お三人の方々にお尋ねしたいのですが、それぞれ産構審のメンバーの面々の皆さんでございます。この産構審の流通部会・消費経済部会の答申がなされておって、その答申に基づいて政府がこの法案を出してきたというわけです。政府の方の言い分を聞きますと、この法案を出すことによって悪質な現物まがい取引というのは実効的、実質的に禁止する効果を持つものだ、こういうように政府は言っているわけです。  それぞれ御意見が違いましたけれども、産構審の中でいろいろと御議論をなさったということもお聞きいたしております。その中で得た答申の範疇にすべてが網羅されておらないと私は思っているわけなんです。御審議をいただいた方々立場として、産構審の答申に基づく今回のこの政府提案法律というものは、果たして政府の言っているように悪質な現物まがい取引を、実質約にこれを禁止する実効性というものは上がるというようにお考えになっておられるかどうか、ひとつお三人の先生方、それぞれ順次お答え願いたいと思います。
  23. 久保井一匡

    久保井参考人 お答えします。  先ほども申しましたとおり、この法案ではもう少し中身を改善していただかないと、悪質商法現物まがい商法の実質禁止という目的を達することは困難ではなかろうか。  根本的には、私の申し上げましたとおり、銀行法とか信託業法に整合性を持たなくなる、バランスがとれないということ、あるいは出資法違反商売を事実上追認するといいますか認めるような結果になる、そういう批判が日弁連から出ておりますし、そのとおりだと思いますけれども、その点はひとまずおくといたしましても、つまり、契約内容をできるだけお客さんに明らかにさせてインチキがしにくくなるというディスクローズ中心規制法で、形式的には営業を認めても実質的には商売が困難になっていくような目的を達する、それも一つの手法だろうと思います。  しかし、先ほど申し上げましたとおり、ディスクローズの範囲が非常に狭いということ、特に資産運用とか保管方法あるいはお客に支払うことを約束する利益の算出の根拠等が明らかにされていない現在のディスクローズ程度では、やはり事件の再発は防ぎ得ない。だからもう少し中身を改善していただかないと目的を達しないと思っています。  あとは先ほど申し上げました意見と重複いたしますので、この程度にさせていただきたいと思います。
  24. 清水鳩子

    清水参考人 私が冒頭意見を述べました中にも何回か繰り返し発言しておりますけれども、やはり法律というものは運用によっては随分変わってくるというふうに思います。特に私が今の段階では、政令で定めるとかあるいは省令で定めるという部分について必ずしも十分存じ上げておりません。そこで、その政令で定める、省令で定める、その定め方によってもこの法律効力というものは随分変わってくると思うのです。  それで、政令とか省令というのは主務官庁の判断において定めればよろしいわけですけれども、これだけ大きな社会問題になっているわけですから、そこら辺についても一応、審議会は終わりましたけれども、重ねて各界の意見を聞いて、そして実効のあるようにしていくということが必要なんじゃないかと思うのです。  例えが安全性の問題とかかわるので、ちょっとほかにいい例がないかなと思ってさっきから考えていたんですけれども、草がたくさん生えたときに、一応そこへ除草剤をまいてみる、除草剤をまいてもやはり生えてくる草というのはあるわけですから、再び生えてくる草をどうするかというふうな考え方も、今の日本のいろいろな法制度の中では成り立つのではないかなというふうに思っております。
  25. 田内幸一

    田内参考人 私の考え方は、先ほど申し上げましたように、二律背反の中でどうバランスをとるかということでございます。ですから、もっと完全な取引の自由、何でもやらせるという考え方もあり得まずし、それから、もっともっと厳しく、あらゆる悪が出てこないようにがんじがらめに縛り上げるというやり方もあると思いますが、どちらも私はとらない。  そうすると、この両方のバランスで被害を最小限に食いとめ、ビジネスの創意工夫の余地を広くとるという非常にうまいバランスのところにでき上がっているのがこの法案だ。ですから、絶対に出てこないということはないと思いますけれども、ほとんど出てこないようになるだろうというふうに私は理解しております。
  26. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 引き続いて田内先生にお尋ねしたいんですが、先生の御意見は御意見としてお聞かせいただいているわけでございますけれども、要は、多数のいわゆるまがい商法と言われるインチキ取引の中でこの法案が出てきているわけなんですね。この法案が出た以上は、この法律が仮に先生の言われるように成立したとするならば、この法律が実効性を伴うものであって、二度と再びそのような被害者が出ないというような法律でなければならないといかぬじゃないかと私は思うのですね。  確かに、余り法の規制を厳しくすることによって経済の側面が弱くなる、そのことも私は一面理解できます。しかし、申し上げましたように、この被害者が出てきた原因というのは、すべてまがいなんですね。今度のこの法律も現物まがいを対象にしておる。マルチまがいもある、ネズミまがいもある、何やらまがいもあるということですので、果たして正常な商業活動、正常な経済活動の中にそのようなまがいと言われるインチキ取引というもの、それまでも経済の活性のために規制をしないでおいた方がいいというような、そういうお考えは果たしていかがなものだろうという気がしてならないわけなんです。その点についての、法案が出てきた経緯ということを見て、被害防止する、二度と再び被害者を出さない、こういう前提に立って、そのことをひとついかがなものとお考えですか。お答え願いたいと思います。
  27. 田内幸一

    田内参考人 私の考えを申し述べさせていただきますが、今先生のおっしゃいましたマルチの方についてはこの法案は何も触れてないわけで、まだまだ議論が必要だ、今後どういう形でか、これは通産省がお考えになることだと思いますが、検討して、それに対する法律をつくっていかれる、あるいは法規制を考えるということでございますので、これは入っていないということは明らかでございます。  それで、豊田商事のごとき取引についてでございますが、この法案というのはよく見てみますと、実際にこれをやろうとする場合には非常に厳しい手かせ足かせになるものがいろいろとあるわけでございまして、私は事実上ほとんど、これまでのような形の被害者は、この法律が実際に施行されることによって出てこなくなるというふうに考えております。
  28. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 現物まがいは、先ほど久保井先生がおっしゃったように、今現在、豊田商事に類似の商法によるところの被害というのはほとんど壊滅しているわけですね。むしろ今消費者被害におののいておるのは、それ以外の、マルチだとかその他のまがいによる被害がやはり依然として後を絶たないわけだ。したがって、産構審の御審議の中でも、これは現物まがいであってもまず訪問販売というところから出発してきているんだ、だから、この訪問販売という、そのところからの規制見直しというものをやっていかないとどうかな、そういう御意見があったように私はお聞きしているわけなんです。     〔委員長退席、奥田(幹)委員長代理着席〕  ところが、政府は現物まがいということだけ一点に絞って法律を出してきているんですが、御案内のとおり、今私たちのこの商工委員会は、政府の出してまいりましたこの法案と、私たち社会党の方から訪問販売法の一部改正案を出しているんです。これと並行的に今審議をしているわけです。社会党の訪問販売法の改正案、御熟読いただいたかどうかわかりませんが、まあどちらがいいかという御意見をお聞きすることは私は考えておりません。しかし、この現物まがい法が出てまいりましても、この法律ができたために現物まがいの被害者というのはなくなったんだ、そうじゃないわけなんです。もう既に後追いでやって、昨年のあの豊田商事事件以来おさまっているわけですね。  法律ができたからこれがもう出てこないんだ、この法律の効果が上がったんだというように私は受け取ることはできないのです。むしろ先取りをして、田内先生も今言われたように、マルチまがいの商法あるいはネズミまがいの商法、訪問販売全体にかかわって被害が毎日のように出ているわけですから、今そこに手をつけるということが、消費者国民立場に立って、これは行政府としても今の時点で考える一番大事なことであるし、我々立法府としても、そのことを審議して、そして被害者が出ないように対処していくというのが任務でもあろうというふうに私は思っているわけなんです。  そういうところから、この際、訪問販売法の改正案、私たちの出している法律案についてとうこうということを、先ほど申し上げましたようにお聞きする必要はありませんが、産構審の中でも御意見があったように、今の時点としてはそこに手をつけていく必要性があるのでなかろうかと私は思うわけなんですが、この考え方について御三人の先生方からそれぞれ簡単に御意見をお聞かせ願いたいと思います。
  29. 久保井一匡

    久保井参考人 お答えいたします。  今御指摘の豊田商事事件を再発させないためには訪問販売に対する規制を強化することによって達成すべきでないかということ、これは私は全面的に賛成、同意見でございます。  もう既に御承知のとおり、豊田商事事件というのは個人個人の家庭に上がり込んで長時間にわたって勧誘を続ける。先日、大阪地方裁判所で、セールスマンに対する教育を行ったビデオテープの検証が法廷でなされたという報道を新聞で見ました。五時間トーク、五時間頑張れば大概の人は承諾するというふうに言われておりますが、そのような長時間の居座り、あるいは執拗な深夜にわたる勧誘、あるいは無差別の電話、先ほども申し上げましたけれども、脅迫的な行為よりもむしろ過剰な親和行為親切行為、そういうものが積み重なって莫大な被害が発生しているわけであります。根本的にはこの訪問販売を適正なものに規制するということ、ここに手をつけないと同種の被害の発生は防げない、現物まがいという狭い意味での商法はこれから余り出てこないかもしれないけれども、悪徳商法による消費者被害というものは防げないと私は思っております。
  30. 清水鳩子

    清水参考人 訪問販売法そのものにいろいろな問題があるということは、かねがね消費者側からも申し上げていることでございます。例えば指定商品制をとっているということやら、役務が入ら狂いとかというようないろいろな問題がございますけれども、私も、社会党がお出しになっていらっしゃる法律案中身を十分存じておりませんが、ただ、今被害未然防止のために何かをしなければいけないというふうな前提に立つと、あの訪問販売法の改正ということを優先させなければいけないというふうになった場合に、またこの法律審議というのは相当時間がかかってくるので、私は、改正しなければいけない現行法の改正は改正として、両面立てで考えてもいいのじゃないかと個人的には思っております。産構審の中でもその点を強調された方もございますし、私は訪問販売法というふうにはくくらないで、一般的に勧誘の仕方の規制などについては意見も申し上げましたけれども、私の今の考えはそういうふうなところでございます。
  31. 田内幸一

    田内参考人 社会党が御提出になりました法案、熟読というわけにはいきませんでしたけれども、さらっと読ませていただきました。  街頭でのキャッチセールスを訪問販売として規制をしろ、これは現実に解釈の問題としてそうなっていると思うのです。したがって、御提出になりました訪問販売法の改正についての法案の中では、役務を入れるという御提案、私は大変結構だと思います。ただ、私は法律の専門家でありませんので、いろいろ法律的な問題は役所とか委員会とかで御検討いただく必要があると思います。ただし、現在の段階においては、先ほど清水参考人もおっしゃいましたように、豊田商事といったような取引においての被害者のふえること、あるいは新たな発生を早く防がなければいけないという時間的な制約もあって、訪問販売に関する法律まではいかなかったと私は理解しております。
  32. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 三人の方にひとつお尋ねしたいのですが、これも皆さん方の産構審の答申の中に、「今後の類似商法の展開は予測し難い面もあり、今次の措置の施行状況を踏まえ、随時検討を加えることが不可欠と考えており、政府において、消費者被害防止のため適切かつ機動的に対応していくことを期待する。」こういうふうにあるわけなんですね。そのことがこの法案の中のどの部分で生かされておるようにお考えになっておられるのか、ひとつお答えいただきたいと思います。
  33. 久保井一匡

    久保井参考人 お答えします。  審議会の過程におきまして、一度この法律でやってみて、二年なり三年たったらその段階で考え直してはどうか、その意味では時限立法にしてはどうかという意見があったのも事実であります。しかしながら、そういう規定は現実には設けられませんでした。したがいまして、特にこの法律規定の中に、そういう将来における見直しを義務づける、あるいはそれを試みるような条項は入っておりません。しかしながら、事態の変化によっていっても新しく法律をつくるなり改正することは可能でありますので、特にそういう規定はなくとも可能だと考えております。
  34. 清水鳩子

    清水参考人 先ほども申し上げましたように、責任を持つべき立場の者がどういうふうに機動的に動くかということが随分大きく影響すると思います。豊田商事のようにこれだけ社会的な問題になって、被害者が出てきて、そしてやっと法律、立法ということについては、国民の多くが非常に歯がゆく思っておりますし、この程度の内容だったらもっと早くできたじゃないかというふうにおっしゃる方も、私たちの周りには事実たくさんおられます。ですけれども、それは、今までのこういう社会的な問題の大きな教訓として、私は一度これをきちっと整理してみて、そして今後どういうふうに機動的に対応できるか、しなければいけないかというルールをもう少し整理してみたらどうかということで、先ほど幾つか申し上げたわけです。  これは通産省を信じないというふうにとられればそれまででございますけれども、やはりお役所とか事業者だけに任せてはおけないような、人生のあやみたいな、社会の構造のあやみたいな、理屈で割り切れない部分を持っているそもそもの商法ですから、そういう意味では周辺的にいろいろ検討するべきことはあるのじゃないかと思います。それで、その周辺のいろいろな手当てにつきましては、今までも行われておりますけれども、必ずしもシステム的に成り立っているのではなくて、あくまでもその場限りと言うと大変語弊がありますが、まあやったという形で、それが制度として定着していないところにまた次の被害が発生してくるのじゃないかというふうに思います。
  35. 田内幸一

    田内参考人 契約のときに重要な事項を記載した書面を交付しなければならない、そして、もしその書面にうそを記載した場合には罰金がついているとか、十四日まではクーリングオフで自由に解約できる、それから、それ以降も契約解約することは自由である、ただ一五%までの解約金は払う必要がありますが、できるということになっております。これはインチキな業者にとっては大変厳しい規定でありまして、取り締まりの実はこういう規定が大いに上げるというふうに私は考えております。
  36. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 先ほど清水先生の方からお話がございましたように、この法律は確かに私たちは早くから言っているわけです。去年の国会でも言っている。せめて去年の今の時期にこの法律が出ておったら、先ほども言われましたように、被害者が半減しておったかもわからない。確かにそのとおりだ。今度の場合でも、そんなに手数はかかっていないのです。通産省が皆さんの方に諮問をして答申をするまでの間というのは二カ月間なんです。それでこの法律が出てきているのですから、去年の国会に、ちょうど一年前にこの法律が出ておったとするならば、非常に大きな効果があったと私は思う。  そのようなことはなぜなのかというと、これも清水先生が先ほどおっしゃったように、消費者行政の窓口がまとまってないのです。関係六省庁が寄っていろいろ協議をしているのですけれども、その協議の仕方というのは、日本の官僚行政、縦割り行政の大きな弊害でありますが、積極的に競合するのだったらいいけれども、消極的にそれぞれ関係省庁が競合して足引っ張りをやったり、おれのところと違う、おまえのところやというようなことで押しつけ合いをしている間に、後手後手の消費者行政になっているわけです。そのためにその被害が大きくなったわけなんですが、先ほど清水先生の方から、一つの消費者行政の一元化の問題として、消費者団体やあるいは国民生活センター、そういうものも入れて恒常的な対応の場というものをつくり、機動的に対応していくことが必要だというようにおっしゃったわけなんですが、私もそのことは必要だと思うのです。法律とは別にそのことが必要だと思うのです。  そんなようなことで、消費者行政の窓口が一元化しておらないというために後遭い的な消費者行政になっておるということですが、ひとつ田内先生、そのような考え方で、どんな方がいいだろうというようにお考えになっておられるか、お聞かせ願いたいと思いますし、続いて、ひとつ久保井先生の方からも御意見をお聞かせ願いたいと思います。
  37. 田内幸一

    田内参考人 今先生から投げかけられた問題というのは非常に大きいわけです。なぜかといいますと、消費者というのは非常に多面的な存在でありまして、日本人全部が消費者でございますし、消費行動といっても実に多様でございます。ですから、これを一元化するといいましても、現実の問題とすると、役所の窓口を一元化するといったようなことは非常に難しい問題だろうと思うのです。ですから、どういうふうにやるかというのは、私はちょっと急に御質問を受けて見当がつきません。その方向へ向かっての努力というのは必要だと思いますけれども、容易にできることではないだろう、これは大変なことだろうというふうには予想できるわけでございます。  ちょっと正直のところ、私には全然その絵が見えてこないという状態でございます。
  38. 久保井一匡

    久保井参考人 おっしゃいました消費者保護行政を一本化する、縦割り行政のもたらすマイナス面を克服するように工夫すべきであるという点は御指摘のとおりでありまして、私も全く同意見でございます。そのためにどうしたらいいのかということにつきましては、私まだ研究しておりませんので、具体的なことは申し上げませんけれども、やはり公害問題を克服するために環境庁ができ、精力的に取り組んできた。それと同じように、消費者保護についてももっとしっかりした体制を政府の機関として設けるべきである、そういうふうな考え方は持っております。  ただ、先ほど先生が言われました、今度の法案はもっと早くつくらなければいけなかった、それをもっと早くつくっておれば、その後の被害防止ができたはずだというその事実認識の点は、私は少し違いまして、この法案がなくとも、現行の法律、例えば詐欺罪とか出資法とか、そのほかの法律で十分に取り締まり得る。現に、大阪で先般発生いたしました大和信用債券、これは豊田商事の元社員がやった会社でありますけれども、警察当局は出資法違反で摘発しております。だから、その辺について積極的な姿勢があれば、今回の法案がなくとも十分に取り締まりは可能であったと思いますし、今後も可能であると考えております。
  39. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 久保井先生、私はこの法律を万能だと言っておるのじゃないので、もちろん、先生の言われたように、我々もそのように言っておるのです。出資法あるいは詐欺罪で摘発せい。それが今までできない、できないと言ってきたのだから、せめてこの法律を出すのであれば、昨年の今の時点に出しておればこの効果があったじゃないかということを私は言っておるので、誤解のないようにしてもらいたいと思います。  そこで、先生に引き続いてお尋ねしますが、先ほどの先生のお話の中で、途中解除について一五%は高過ぎる、こういうように言われたのですが、大体どのくらいが妥当だと思われますか。
  40. 久保井一匡

    久保井参考人 私は、最大限譲歩しても五%、それ以上は絶対許されないと考えております。余り根拠はないのですけれども、そもそも、例えば銀行なんかが定期預金を六%で預かりまして、八%で貸し出しをいたしますと、その銀行の利益は二%しかないわけです。普通の商売でも、一五%のもうけのある商売というのはほとんどない。ところが、この法律が一五%を違約金として取ることを認めますと、十分に商売として成り立つ。(和田(貞)委員「いい商売ですね」と呼ぶ)はい。そういう意味で、このような高い違約金はちょっと常識外である。まあ民事の法定利率が五%になっておりますので、最大限譲歩しても五%。銀行等は、定期預金を中途解約しても、利息はちゃんと通常レートの利息を払っておるわけですし、この特定商品預託だけを受けた場合は、私は違約金はある程度正当かと思いますが、その預託前提とする販売行為があって、その代金を入手しているわけで、何もなしに一五%の違約金が取れる、他の金融機関とのバランスから考えても非常に不当だと思っております。
  41. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 先ほど清水先生の方から消費者の措置要求の権利の問題を言われたのですけれども、私まさにそのとおりだと思うのです。この法案の中に主務大臣への措置要求が入れられるようにすべきだ、こういうように私も思うのですが、久保井先生、田内先生、どんなものでしょう。
  42. 久保井一匡

    久保井参考人 御指摘の御意見には私も全く賛成であります。特にアメリカの消費者保護行政等では、そういう制度がもうずっと以前から設けられておりますし、我が国の例を見ましても、公正取引委員会に関する法律等ではそういう制度が設けられておりますし、また、各地の消費者保護条例の中にもそういう規定が設けられております。したがいまして、今回の法律案につきましても、あるいは訪問販売を規制する法律案をつくる場合におきましても、御指摘のような条項を設けることが不可欠と思います。
  43. 田内幸一

    田内参考人 私、再々申し上げておりますように法律の専門家でありませんので、ちょっとこの点については何とも申し上げる材料がないということでございます。
  44. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 お三人の先生にお尋ねしたいのですが、せめてこの法律を成立させようとするならば、この預託等の取引契約を締結させる業者として、消費者に対してその取引の元本保証を伴うことが契約面でできるような、そういう預託業以外は取引をさせない、禁止をさすというような考え方については、お三人の先生方、どんなお考えでしょう。     〔奥田(幹)委員長代理退席、委員長着席〕
  45. 久保井一匡

    久保井参考人 社会党案の中に、預かったものの返還を担保するために、銀行と保険会社、あるいは銀行もしくは保険会社ですか、その保証を前提として現物まがい取引を認めるということが提案されております。私は、せめて元本の返還を確保するという意味で、そういう提案がなされていることについては大変好ましいと思っています。  ただ、より完全にするならば、法案条文では預かった物の「返還を担保するため」という条文になっていますが、預かった物の返還ということになりますと、消費者から受け取った代金の返還ではありませんので、その金(きん)なら金(きん)あるいは会員権なら会員権、そういうものの返還ということになりますと、非常に価値が低く、客観的な価値がない場合が多うございますので、できれば、預託と同時になされた売買契約消費者が支払った元金、その元金の返還ができる体制を備えさせるために、一定の保証制度を導入すべきだという御提案には私も——今後どういう手当てが必要か、より詳細な検討は必要だとは思いますけれども、消費者の保護のためには有益な規定だろうと思います。
  46. 田内幸一

    田内参考人 元本保証についての私の考え方は、商取引の中で元本保証されているものというのは事実上ほとんどないわけでありまして、元本が保証されている方がむしろ例外でございます。例えば、証券会社の取引というのはほとんどみんな元本保証されていない。貸付信託でも、払ったお金よりも時価が下がることはしょっちゅうあるわけでございます。ですから、ここだけというか、こういった法規制で元本を保証させるということは非常に無理があるというふうに私は考えます。
  47. 清水鳩子

    清水参考人 大変申しわけないのですけれども、私も内容がよくわかりませんので、気持ちの上ではよくわかるのですけれども、法律の中に織り込むということについては、ちょっと私、今の段階ではお答えできません。
  48. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 私たちは、悪徳商法商売を壊滅させていく、消費者保護の立場に立って被害を出さないようにしていく、そういう対策というのはやらなくてはならぬ、こう思うのです。そのためにということで今回出してきたこの法律は、現物まがいということに限っておって、他の被害の状況に目を向けておらない。私は、先ほど申し上げましたように、全体をつるんだそういう根本的な悪徳商法退治という、消費者にとって好ましいそういういい法律をつくっていかなければいかぬと思うのですよ。  今回のこの法案は、今の時点でお三人の先生方それぞれ意見が異なっている面もございますけれども、そう緊急性を持ったものじゃないというように私は思うのです。急がないで、もっと全体的な悪徳商法の禁止、消費者保護という観点に立ったそういう法案を時間をかけてつくっていくべきだと私は思うのですが、その点についてのお考え方を、ひとつお三人の先生方からお聞かせ願いたいと思います。
  49. 久保井一匡

    久保井参考人 御指摘のとおりだと思います。先ほどからもう出ていますとおり、一連の不祥事件消費者被害事件は訪問販売取引に端を発しておりますし、その意味では訪問販売法の改正を含む、より根本的な法改正を提案すべきであって、現在提案されている法案は極めて不十分である。したがいまして、これをこのままつくるのではなくて、内容的に十分に改善を加えていただいた上で、再度提案していただく方がベターだと考えております。
  50. 清水鳩子

    清水参考人 実は私たち、食品衛生法とかJAS法とか、問題はちょっと違いますけれども食品の安全と規格に関するいろいろな法律が、先生の御指摘のようにみんな縦割りでございまして、それぞれの法律の谷間に入っていろいろな問題が発生しておりまして、随分前から、食品安全法とか、食品による被害救済制度をつくれというふうなことを言ってきております。そういうふうにさまざまな商法が出てまいりますときに、それぞれ一つずつ個別に手当てするということについては、やはりそれぞれの法律の限界と、それから、こういうことをやる人というのは法律の網の目をくぐることが非常に上手でございますから、そういう意味からいうと、包括的な法規制というものが当然将来的に必要だというふうには思います。  私が前に申し上げたように、現時点での対応と、それから少し中長期的に見た対応というものを、私自身は、今二つに分けて考えております。食品安全法につきましても、食品安全法の制定を求めながら、片一方では現行の食品衛生法の改正を求める具体的な運動もあわせてやってきておりまして、それぞれの場面といいますか、一つの方向はそういう方向に置きながら、やはり現実的な対応というものもこれは無視できないのではないかというふうに思いまして、ちょっと食品と事例が違いますけれども、よく似ている要素を持っていると思いまして御発言させていただきました。
  51. 田内幸一

    田内参考人 ただいまの和田先生の御意見、全く賛成でございまして、悪徳商法に対する法規制がこれで終わりだとは決して考えておりません。
  52. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 最後に、この法案は、審議会の中で許可制にすべきだという意見もあったというように聞いておるわけなんですが、しかし、内容はそうではないわけです。自由開業なんです。だから、先ほど先生方の言われたように、全く悪徳商法が、この法律の範囲内では、体を張ってというか、正々堂々と商売ができる、その中でまた新しい悪徳を編み出してくる、こういうことが懸念されてならないわけなんです。  提案者の政府は、許可制にすると社会的に許容してしまう形になるのだからということを言っているわけですね。したがって、そういういわゆるお墨つきを与えるようなことになるので許可制にしなかったんだ、このように言っているわけですね。この法律のような行為規制法でも同じことだと私は思うのですが、どうも政府の言っていることが私はわからないわけなんです。こういう法律内容でも結果的には同じことだと思うのですが、その点の限りにおいて、三人の先生方のお考え方をひとつこの機会にお聞かせ願いたいと思います。
  53. 久保井一匡

    久保井参考人 ちょっと御質問の趣旨が十分にのみ込めていないかもわかりませんけれども……。  実は、審議会の中に許可制にすべきだという意見があったというような御指摘がありました。私がまさにそういう主張をしておりました委員の一人でございますけれども、そういうことをすると政府がお墨つきを与えたことになって、かえって大衆を迷わせるという御指摘、そういう面があることも否定できません。ただ、原則としては好ましい商売として育成するほどのものでないということも政府自身おっしゃっておられるわけですから、許可制にして、そして大衆被害を与えるおそれが皆無であると確信できるものだけを例外的に許可するというような形で運用すれば、決して悪徳業者にお墨つきを与えるようなことにならない。つまり、許可を容易に出せば別ですけれども、そうでなければ、そういう懸念はないと私は考えております。  割賦販売法で、前払い式の割賦については現に許可制がとられております。それとのバランスからいっても、国民から資産を預かって運用することが一般的に許されるものについて、自由に営業ができるということは非常に好ましくない。社会的な弱者である老人とか、あるいは十分な判断能力を持たない家庭の主婦等に対して、ディスクローズだけでは足りないと私は思っております。  さらにつけ加えますならば、いろいろな金融商品を開発する主体としては、そういう悪徳業者にさせるよりも、むしろ社会的に大きな実績のあります銀行とか証券会社とか保険会社等、そういう金融会社に新しい金融商品の開発の道をもっと広げて、大衆のそういうものに対する欲望を満たすといいますか社会の需要にこたえるといいますか、そういう形でこたえていったらいいのであって、一般のそういう弱小なインチキ業者にそのような金融商品の開発といいますか、金融商品の売り出しを認めるようなものは要らないのじゃないかと私は思っておりますけれども、いずれにしましても自由に営業を行い得るということは非常に危険だと思っております。
  54. 清水鳩子

    清水参考人 私たち消費者が物を買いましたりサービスの提供を受けるときによく錯覚を起こすのは、例えば知事登録番号幾つとか、厚生省許可何番とかというのがあるのですね。そうしますと、私たちはお役所の肩書に非常に弱い消費者が多いものですから、何かそういうふうに書いてあると、そこのお役所が一〇〇%責任を持っていると思い込んで信用する人があるのですけれども、いや、そうじゃなくて、ただの届け出番号であったり、本当に形式的なものであったりするのですね。往々にしてそういうものは太い字で目立つように書くわけです。すると、それでもうひっかかってしまう。これはよく化粧品とか健康器具なんかでも、何か名誉のある肩書の先生の名前なんかを載せると、内容をよく見ないで消費者がころっとひっかかるというふうなところがございまして、私も、許可制というふうに厳しくして、そして一々消費者がしっかり勉強して、中身を確認して、そして怪しいところのものは排除していくということができればよろしいと思いますけれども、そうでなければ、許可制に近いほどのきちっとした営業を認めていかないと、消費者がそれを未然に見抜くことはなかなか難しいと思うのです。  ただ、許可という場合に、例えば豊田商事も株式会社でございますけれども、いろいろお話を伺っていましたら、お役所というのはそれから先どこまでチェックできるのか。届け出のところではきちっとチェックできるけれども、日常的な行為について、今の役所が一〇〇%それをフォローし切れるかどうかというふうなことがありますので、許可制というのは本当に望ましいと思うのですけれども、その許可制というものが、実体が伴わないで、一遍許可したら、それがまた今申し上げたように消費者に非常に安易な安心感を与えるようなことになると、これも逆効果じゃないかなというふうに思っております。
  55. 田内幸一

    田内参考人 許可制ということにしますと、和田先生もおっしゃいましたように、確かに政府のお墨つきという印象を与えます。そのお墨つきという印象に背かない程度のチェックをすることは、今の役所の機構では事実上不可能だと私は思いますので、許可制には反対ということでございます。  それから、私、再々外国との関係を申し上げておりますけれども、日本の場合、何でもすぐ役人が出てくる、役所が出てくるといういら立ちは、外国から来ている企業あるいはその後ろにある政府が物すごく思っていることでございまして、またここで許可制が一つできる、何か新しいビジネスが日本に来ようとしたときまた役所が出てきたという、そういう貿易摩擦の高まりにも、悪い意味でのプラスになるのではないかというおそれもあります。そういう意味でも、私は許可制には賛成いたしかねるということでございます。
  56. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 御苦労さまでした。終わります。
  57. 野田毅

    野田委員長 長田武士君。
  58. 長田武士

    ○長田委員 参考人のお三方におかれましては、大変お忙しい中を貴重な御意見を賜りましてありがとうございました。私は、公明党を代表いたしまして、何点か法案に対する御意見を伺いたい、このように考えております。  早速審議に入らせていただくのでありますけれども、お三方は、先ほども出ておりましたが、産業構造審議会の流通部会特殊取引問題小委員会委員でもいらっしゃいまして、既に現物まがい商法につきましては審議を重ねてこられたわけでありますから、そこらあたりからちょっとお尋ねをしたいと思っております。  まず、久保井参考人にお尋ねしたいのでありますけれども、特殊取引問題小委員会審議がこれまで都合五回行われたようであります。特に、具体的にどういう商法対象として調査、審議をしてこられたのか、また出資法信託業法との関係で十分な審議をなされていらっしゃったのかどうか、この点についてはいかがでしょうか。
  59. 久保井一匡

    久保井参考人 お答えいたします。  審議会の審議事項をどの程度申し上げていいのかわかりませんけれども、一応その審議対象となりましたのは豊田商事事件に代表される現物まがい商法ということで、そのような類似ケースがどの程度我が国で発生しているかということ、これにつきましては通産省の方でお調べいただいた結果が審議会の方で報告されておりました。  それから出資法信託業法等の問題点につきましても、一応現在、出資法については警察、検察当局等で捜査中であるけれども、現行法の解釈論として、出資法については、預かり金という法律的な概念に当てはめる場合には、元金の返還を約束するという要件がひっかかるのではないかという点が検討されました。信託業法についても、権利の移転を譲り受けてこれを運用するという要件、その点が非常に類似しているわけですけれども、どうなのか。実質的には信託業法に違反するということはありますが、豊田商事の場合は信託業法違反には該当しないのではないかということですが、法律解釈を討議する場ではございませんですので、現在ちまたで言われております解釈論についての政府側からの説明というものはありまして、我々としても一応そういうような政府側の説明に基づいて審議を続けたわけであります。
  60. 長田武士

    ○長田委員 出資法あるいは信託業法との関係についてお話をいただきましたけれども、特に豊田商事のように刑事事件として係争中である、そういう問題についてはどのような評価をされたのでしょうか。
  61. 久保井一匡

    久保井参考人 刑事事件について審議会で評価をするということ、厳密な法解釈的な検討をするということは、どうも審議会の本来の仕事ではございませんで、その点については特に検討なり評価を加えたことはありません。ただ、どのような法的な解釈になるにせよ、豊田商事事件のような事件が再び起こってはならない、これに対して十分な制裁なり規制をすべきである、根本的には刑法上の詐欺罪の適用等によってしかるべき社会的な制裁、法律的な制裁を加えるべきであるというその認識は、それほど審議会の委員の中に食い違いはなかったように思います。
  62. 長田武士

    ○長田委員 先ほどお三方の参考人の皆さんには、許可制の問題あるいは登録制にすべきであるとかそういう問題について御意見を拝聴いたしました。久保井参考人にもう一点お尋ねするのでありますけれども、日本弁護士連合会に所属しておられるわけでありますけれども、日本弁護士連合会といたしまして、いわゆる現物まがい商法に対します規制をどのように考えていらっしゃるのか、端的にひとつお答えいただけますか。
  63. 久保井一匡

    久保井参考人 日本弁護士連合会は既に通産大臣なり産構審の会長あてに書面で意見提出しておりまして、恐らく先生方の手元にもその意見書が行っていると思いますけれども、現物まがい商法は、第一義的といいますか基本的には現在の出資法の適用要件を、解釈上疑義があるならそれを正す程度の改正をする、基本的には出資法で取り締まるべきである、そういう考え方であります。そしてまた、銀行法とか信託業法と同程度の大衆保護を行うべきであるということであります。  ただ、もしあくまでそれを貫徹することができないとした場合、現在提案されておる法案の目指しております規制方法ディスクローズを中心とした被害防止、つまり取引中身消費者に十分知らしめることによって無知な消費者被害にひっかからないようにする、ディスクローズによって被害防止するという考え方も、これは一つの手法であろうと思います。その辺は日弁連の意見書の中には必ずしも出ておりませんけれども、私といたしましてはそういうような情報公開に徹することによって被害を防ぐという手法、これも日本弁護士連合会意見の第一義的な出資法による取り締まりができないとした場合、せめてその程度はしていただきたいということ、それは意見書の中にもそういう考え方があらわれているように思っています。ただ、私自身は日本弁護士連合会会員ではありますけれども、その問題の委員会委員を務めておりません。また、直接の担当の弁護士でもございませんし、その担当の消費者保護委員会委員長等の立場でございませんので、正確なことは御容赦いただきたいと思います。
  64. 長田武士

    ○長田委員 私も出資法の問題について、あれは保全経済会のときに出資法というのができまして、十分あれで対応できるのじゃないかというふうに、私も金融機関出身でありますから、そういうふうに考えておりました。それがどうもできないということになりますと、出資法の一部改正によって対応するしかないのじゃないかという考えも、私個人としては持っておりました。そんなことも含めて私も今後勉強していきたい、このように考えております。  次に、清水参考人にお尋ねをいたします。  先ほどお話がございましたとおり、三分の二以上の方は六十歳以上のお年寄りの方、しかもお一人で住んでいらっしゃる方が非常に被害を受けていらっしゃる、こういうお話でございました。情報が非常に入りにくいお年寄りでございますから、こういうまがい商法が非常にはやっておるとか、そういう情報に疎い。そういう点で甘い言葉に乗ってしまうとか、肩をもんであげるとかいろいろなサービスをやるのだそうですね、そういうことでうっかり親切商法の口車に乗ってしまうということが多いようであります。そこで、そういう苦情というのは消費者センターに一番集まってまいります。そういうまがい商法にひっかからないためのPR方法、そういう周知徹底の方法というのはどういう方法がいいのか、経験上お考えがございますればお話をいただければと思います。
  65. 清水鳩子

    清水参考人 先ほども御発言の中にございましたけれども、具体的じゃないとわからないという問題があるのです。では、どの程度具体的だったら被害が発生しないかということは、これは本当に個々ばらばらの対応を迫られるわけですから、なかなか難しいと思いますけれども、例えば訪問販売につきましては、地方自治体の予算の中で、あるいは消費者団体自分たちお金を出し合ったりグループでお金を出し合ったりして、悪質な訪問販売はお断りというステッカーを張る運動をしているところが大分ふえてまいりました。それから、いわゆる悪質事業者の公表制度についても通産省で定めておりますけれども、あれについてもまだ機動的じゃないし、情報が地域のお年寄りに早く届かないということで、地方自治体独自で公表制度のあり方についての要綱のようなものを定めているところもございます。  ですから、民間であったり地方自治体であったり国であったり、それから、今本当に落ちていると思いますけれども、学校教育の現場であるとか、それから私たち会員の中でも、今積極的に老人のお集まりになります老人ホームとかそういうところに出向いていって、呼ばれなくても自分で出かけていって、そうして自分たちが長年やってきた消費者問題をお年寄りのところで言ってきているという方がたくさん出てまいりました。そういうボランティア的な老人福祉の事業の中でもこういうのはやっていけると思いますので、先ほど自民党の先生からも御発言があったように、また訪問販売を業とする主婦たちもいいかげんなことで金もうけで仕事してはいけないというふうな教育も一方では必要だと思うし、そういう悪徳業者の片棒を担ぐようなことはしないようにしていくための私たち消費者啓発はどういうことがあるかということも、きょうはいい御意見を伺ったので、私も帰りましてから考えて、みんなで相談してみたいというふうに思っております。
  66. 長田武士

    ○長田委員 次に、田内参考人にお尋ねいたします。  この新法では、中途解約について一律一五%の違約金が取れるということでございますと、この一五%についての妥当性、私は実際問題一五%は高いというふうに考えております。その点と、この一五%違約金を認めますと、逆に違約金が合理化される、そういう側面を持っておるように私は感じます。その点についての御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  67. 田内幸一

    田内参考人 一五%の違約金が高いか妥当かということでございまして、先ほど社会党の和田先生から久保井参考人への御質問では、久保井参考人は、高過ぎるのじゃないか、銀行の預金金利と貸出金利の差がもっとずっと少ないということを言われました。しかしながら、一五%という具体的な数字が絶対正確だとか絶対妥当だとか申し上げる根拠はないのですが、銀行のそういう取引で得られる利益と比べてこっちの方が高いから妥当ではないという考え方は私はとらないわけでありまして、銀行取引というのは、契約解約でもなしに普通の商取引であります。ところが、これはあくまでも違約金でありまして、本来契約というのは継続することを目的として結ばれるものですから、契約の当事者というのは、その契約契約の期限ずっと継続されることを期待するというのが契約の本質である。それを解約するわけですから、そこで契約の当事者というか、一般の人からいうと契約相手方に対する違約金といいますか慰謝料といいますか、そういうようなものも入るのは別に妥当でないことはないというふうに考えます。  それから、一定の契約をいたします、そしてその結果合計の金額が幾らになるというと、当然それに基づいた資金計画などを立てているわけでありまして、それが解約をされるということになりますと、そういう面の狂いというのも非常にいろいろ出てくるわけです。そうすると、それのコストというのも、これは幾らになるかわかりませんけれども、相当見込まなければならないというと、一五%が高過ぎるということは一概に言えないというふうに私は考えます。
  68. 長田武士

    ○長田委員 私は、違約金稼ぎに悪用される部分というのが出てくるのではないかというふうに感ずるのですね。例えばこういう商法を巧みにやっていきますと、今回豊田商事事件消費者啓発には物すごく役立ったと思いますけれども、まだまだそういう場面に遭遇しますとお金を出してみたりということはあるのですね、現実問題。そうなりますと、二十億なら二十億金を稼いでおいて、一五%というと三億ですね、そういう違約金稼ぎのためにこういう商法がまた出てくるのではないかなという感じがするのですが、どうでしょうか。
  69. 田内幸一

    田内参考人 それは大変に非合法な商法でありまして、けしからぬことだと思うわけでございます。ですが、私、法律はよくわからないのですが、そういう違約金を得ることを目的としたビジネスというのは何かの法律で取り締まれるのではないか。ちょっと専門でないとわかりませんが、当然それくらいの法律はあるのではないかと私は思うのでございます。そういうことでございます。
  70. 長田武士

    ○長田委員 続いて田内参考人に。  御存じのとおりでございますけれども、新法には罰則規定が定められておりますが、第五条に対する罰則の規定が実はないのですね。例えば第四条の違反者には「二年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。」とあるのでありますけれども、第五条については罰則がかかっておりません。第五条の第一号には、「威迫する言動を交えて、預託等取引契約の締結若しくは更新についての勧誘をし、又は預託等取引契約の解除を妨げること。」とありますが、この第五条の違反者に罰則規定が設けられていないわけであります。このあたりについてはちょっとどうかなと私は疑問を持っておりますが、どうでしょうか。
  71. 田内幸一

    田内参考人 これは私の解釈でございますけれども、威迫といったようなものを現実に認定をするということがなかなか難しいわけでございます。だからやはりこれも、私、法律の方はよくわかりませんけれども、罰則を加えるということは、相当明確にその事実が定義できないといけないのではないか。そうすると、この威迫というのも、小委員会でも議論がありましたけれども、実際には定義がなかなか難しいわけでございます。そういう意味で罰則がついていないのではないかというのが私の解釈でございます。
  72. 長田武士

    ○長田委員 それでは、時間が参りましたので、最後の一問を田内参考人にお尋ねいたします。  かつてマルチ商法やネズミ講などが盛んだったころから言われておるわけでありますけれども、我が国の証券取引法における証券の範囲をもっと広げるべきである、こういう意見がたくさん出ました。アメリカの連邦証券法第二条第一項の証券の定義というものは非常に範囲が広いのですね。もう既に御存じだと思いますけれども、「手形、株式、自己株式、担保つき社債、無担保社債、債務証書、利益分配契約における権利、もしくは、それへの参加を示す証書、投資契約一般に証券として知られている権利、もしくは証書、又はこれらのいずれかを引き受け、もしくは買うすべての権利」となっておりまして、証券の範囲というのは非常に広くとらえているわけであります。  この意見は東大の竹内昭夫教授が論文において述べていらっしゃるのでありますけれども、今回、通産省も加わった七省庁の資産形成取引に係る米国実情調査報告書においてもこのような意見が述べられております。国債や社債等、いわば素性のはっきりした投資対象については、一方においては厳しく規制できる。現実にそうでありますけれども、しかし、いかがわしい仕組みについては、一五%の違約金を認めることによってその商法を是認しようなどということ、私はどうもこの点が納得できないのです。こういういかがわしい商法については違約金が一五%認められている、是認するということについては、私たちとしては非常に納得ができない部分です。老人のような余り情報が得られない、そういう投資家に対して救いようがないようなやり方は、国の政策としてはうまくないのじゃないかというふうに考えております。  本来、消費者被害は全額救済されることが原則だろうというふうに私は考えます。今回このような法律通産省によって立案されたわけでありますけれども、このような法律になったその結果、まがい商法が一つのけじめがついたような、逆にかえってつかないみたいな結果に陥るという疑念を私は強く持っております。そういう意味では、大蔵省も公取もその他の省庁も加わりまして、整合性のある法律案というものをがっちりつくるべきだという声もたしか出ておるわけでありますから、こういう点、今回の法律は拙速じゃないかなという意見も実は出ております。こういう点については、田内参考人、どういうふうにお考えでしょうか。
  73. 田内幸一

    田内参考人 今長田委員の御意見の中で、今回の法律は拙速ではないかというような御趣旨の御意見がありましたけれども、私は、やはりここの時点でこういう法律が必要だった、やはり早くつくらなければいけなかったのではないかというふうに思っております。  それから、ちょっとほかの御意見の中で言われたことと関連がありますので、私の今まで申し上げていない考えを申し上げさせていただきますと、これまで私は、通産省法案に全部賛成、非常にうまい、経済活性化国民の保護というところのバランスをとっているというふうに申し上げましたけれども、実は一つ不満があるわけであります。これは、少しずついろいろな方の御意見が出ておりましたけれども、実はこの取引豊田商事のような取引の一番の問題点というものは、おどかしたり粘ったりして契約をとるというよりは、むしろ肩をもんだり草取りしてあげたり、一緒に泊って話し相手になってあげたりという、優しくして契約をとる方が、実はお年寄りに対しては一番問題があるというふうに私は考えております。ですから、何とかこれを取り締まるようなことはできないのかということはいろいろ考えたわけでありますけれども、それを法律にしますと、やはり草取るなとか肩もむなとか腰もむなということしかないわけですね。そのバランスをとると、純風美俗を禁止する法律はどうしてもつくれない。そうすると、そういうことはやっちゃいけないということはどうしても言えない。そこは私の心残りの点ということで申し上げさせていただきます。
  74. 長田武士

    ○長田委員 終わります。
  75. 野田毅

    野田委員長 宮田早苗君。
  76. 宮田早苗

    ○宮田委員 特に清水参考人田内参考人が強調なさいましたのは、法律をつくっても、運用あるいはまた教育啓蒙が徹底しなければ意味がないのだ、これは全くそのとおりと思いますが、私はまず、これはお伺いじゃありませんで感じを申し上げますと、この法律の名称が特定商品等預託等取引契約に関する法律、こういうことになるわけであります。特にこの種の法律というものは、当局より消費者に、より徹底させなければならない法律でありながら、法律名一つ見ましても、消費者にわかるかどうかということに大変な疑問を感ずるわけでございます。また、法律内容そのものも、本来なら消費者に周知徹底を図らなければならぬはずでありますけれども、これでは周知徹底の図りようがないじゃないか、こういう印象を持つわけでございます。しかし、事が事だけに、何らかの措置をしなければならぬということについては、私ども考えてはおるわけでございます。  そういう面でまず御質問申し上げますのは、消費者の教育啓蒙。そのやり方はいろいろあると思いますが、なかなか難しいわけでございます。一体どういう教育啓蒙を——まず学校を利用するとか団体を利用するとか、あるいはまず行政機関が中心にならなければいかぬとかいうことですが、清水参考人田内参考人、そういう面についての感想でも具体的なことでもよろしゅうございますから、お聞かせ願いたいと思います。
  77. 田内幸一

    田内参考人 では、私から先に意見を申し述べさせていただきますが、先ほど私の最初の十分間の陳述の中で申し上げましたように、教育というものはもう幼稚園、小学校でしなくちゃいかぬ。何か怪しげなビジネスというのはもう肌でわかる、それに対して自動的に拒否反応が出てくるという、反射動作になるほどに徹底的に教え込まなければいけないというふうに考えます。  それから、その啓蒙についての話でございますが、今先生の御意見の中で行政機関がどうすべきかということでありますが、しなくちゃいけないのでしょう。しかしながら、私は、実は内心は行政機関による啓蒙はほとんど絶望的だというふうに思っている、ほとんど効果ないと思っているわけです。といいますのは、私のゼミの学生なんかがよく言うわけでありますけれども、割合最近、飲み物の自動販売機の口に青酸入りとか農薬入りのものを一本入れておく。そうすると、お金を入れてコトンと落ちると、手を突っ込んでみると二本入っている。一つは本当に落ちてきたものですけれども、一つはあらかじめ農薬を入れておいたもの。それをとって飲んで中毒して、病院に入院するとか、亡くなった方もかなりおられるわけであります。  それで、学生たちの言うには、私も同感なんでありますけれども、最初の一人二人は、それはもうわかるというわけですね。だけれども、あれだけ新聞に多く報道され、次々といろいろなケースが出ているのに、一カ月たっても二カ月たってもまだ飲む人がいるというのは、これはどうしてもわからないというわけです。何か世の中にはよっぽど僕たちでは理解できない人たちがいるのではないか、それがかなりの数いるのではないかという感じが非常にするわけです。ですから、もう大人になっちゃってから何か啓蒙、周知徹底というのは無理だと考えて、施策というのは考えるべきではないかというのが私の考え方でございます。
  78. 清水鳩子

    清水参考人 今の参考人の方とちょっと意見が違うのですけれども、やはりいつのときにもやらなければいけないんですね。むだであると思いがちですけれども、私たちがいろいろなケースを見ておりますと、やはりやればやるだけの効果があるのです。それは、消費者というのは次々に新しい消費者が生まれてきて、今まではこういうふうな商法に何の関心も持たなかった人が、あるときひょっと人の言葉によってこういうものに関心が極端に向くこともあるわけですから、やはりそういう時期をとらえなければいけないという前提に立ては、繰り返し繰り返しやるしかしようがないと思うのです。  先日も、消費生活コンサルタントの方の学習会がありまして、私もその講演の部分だけちょっと聞かせていただいたのですけれども、そこでマスコミなんかによくお出になっていらっしゃるある経済評論家の方が、いろいろな金融商品をずっと列挙なさいまして、どれが一番有利だ。これはこういう金利がつくし、これはこういう金利でこういう条件だけれども、これとこれとどちらが有利かということをコンサルタントの人にお聞きになったわけです。それで、私もそうでしたけれども、本当にわからないんですね。そのときにその先生がおっしゃったのは、日本人というのは、お金のことについては最大に関心がありながら、何か触れちゃいけないみたいな、そういう長い間の慣習がある、それで、そんな常識がない人間が窓口でコンサルタントできないじゃないかとすごく手痛くやられまして、私も幾つかの質問の中で、自分自身で本当にわからないことの方がむしろ多かったのです。  消費者問題というのは、こういう契約とかお金に関することというのは今まで全くと言っていいくらいされていなかったし、そういうことをしない方が、話題に上せない方が何かノーマルな消費者というふうな社会慣習があったと思うのです。ですけれども、今のような低金利で、生活も大変苦しい中で、消費者は預金しておいたって目減りするし、生活が成り立たなくなるから、少しでもそういう有利なものはないかというふうに思うのはもう当然だと思うのですね。ですから、繰り返し繰り返しやらなければしようがないと思うのですけれども、そのための行政費は節約してはいけないと思います。
  79. 宮田早苗

    ○宮田委員 もう一つお伺いいたしますのは、周知徹底を図らなければならぬということ。また、お年寄りだけじゃありませんけれども、対象者はお年寄りが比較的多いわけでございますが、文字ですね。今行政官庁とかあるいはまたいろいろの団体がお出しになる啓蒙、啓発の徹底のためのものにいろいろな文字が使われておるわけでございますが、ちょっと小さ過ぎるといいますか、読みづらいといいますか、そういう面についてはどういうふうにお考えですか。大きな方がいいか、それとも写真でも入れてわかりやすくするとかいう宣伝の工夫について、向か示唆していただけることがありましたら、どちらでも結構でございますから、清水先生か田内先生、どちらかおっしゃってくれませんか。
  80. 清水鳩子

    清水参考人 割賦販売法の改正のときにも、私たちもいろいろ意見を申し上げたりしたのですけれども、やはり同じ色の活字よりは、注意するべきところは赤くするとか枠で囲むとか、そういうふうな工夫が必要だと思うのです。そういう工夫はやはりひっかかる立場の人間に意見を聞いてもらわないと、法律に非常にお詳しい方がいろいろ考えても、ひっかかる方の立場に立って手当てがされないので、善意でなさったことでも結果的には実効が上がらないということがあると思うのです。ですけれども、赤くしても大きくしても囲んでも、ひっかかる人はまたひっかかってしまうのですね。これはもう本当にどうしていいかわかりませんけれども、やはり小さいよりは大きい方が目立つし、枠で囲めばとは思います。  それからもう一つは、こういうことは事業者の方の納得も得られないと実行できない部分がございますけれども、デメリット表示などは、業者側ですとどうしても小さく書きたがるのですね。悪いことはなるべく書きたくない、小さく隅っこに追いやりたいという潜在的なものがあります。それで行政の方も、消費者側の意見事業者側の意見をバランス的に調整をとっていかなければいけないわけですけれども、どちらを大事にするかというと、やはりひっかかる立場の方の意見を十分取り入れて方法を考えていただかないといけないんじゃないか。これは今までのいろいろな経験の中から感じることで、お答えになったかどうかわかりませんけれども。
  81. 宮田早苗

    ○宮田委員 最後でございますが、久保井参考人にお伺いいたしますのは、この法律は悪い商売人というのが前提というような印象を非常に強く受けるのです。しかし、一般的にはこの種の商売でも、良心的な商売人は非常にたくさん——たくさんというよりは大半でないといけないと思うわけでございますが、双方を考えますときに、クーリングオフは七日でよろしいとか十四日でないといけないとか、こういう問題もございますね。違約金は、先生は五%程度でよろしいではないか。しかし、良心的な面で考えますと一〇%、この法律は一五%以内ということになっておりますが、この両方を考えた場合に、果たしてどの程度がよろしいかということについての御意見。     〔委員長退席、与謝野委員長代理着席〕  さらにもう少し言いますと、許可制という問題を非常に強調されておるようですが、さらに自由にさせるということ、この法律許可制じゃないわけでございますが、どちらがよろしいか。悪い方ばかり考えますと許可制にしなければならぬ、あるいは違約金は五%、さらにはクーリングオフは長い方がよろしい云々、こういうことになると思いますが、両方お考えになって、果たしてどの程度がよろしいとお感じになっておいでになるか。ちょっとこの質問そのものが抽象的で御迷惑と思いますが、何かお感じになることがありましたらお聞かせ願いたいと思います。
  82. 久保井一匡

    久保井参考人 私は、この現物まがい商法というのは基本的には奨励すべき商売ではない、できならない方がいい、全面的に禁止した方がいいと思っております。ただ、いろいろな事情からどうしても全面的な禁止に踏み切れないとしたら、極めて例外的に、大衆被害をこうむらないといういろいろな措置を講じた上で例外的に認めていく、そういう評価をしております。  したがいまして、違約金についても、そういうそもそものこの商法に対する否定的な評価が私にありますので、一五%の違約金を認めるというようなことは、私に言わせればとんでもない、五%という数字でも多過ぎるのではないかと思っておるぐらいでありまして、その点は、他の奨励すべき商売商売そのものとしては好ましい商売前提とした場合の業者お客との間の利益を調整する、そういう配慮と違った、消費者に傾斜した法律であってもいいのじゃないか、つまりこの商法については他の商法と違いまして、消費者にかなり傾斜した形で規制を加えるべきじゃないかと思っております。
  83. 宮田早苗

    ○宮田委員 どうもありがとうございました。
  84. 与謝野馨

    ○与謝野委員長代理 野間友一君。
  85. 野間友一

    ○野間委員 お三方、大変御苦労さまです。共産党の野間でございます。  最初に久保井参考人にお聞きしたいのは、いわゆる現物まがい商法、豊田商法、こういうものは閣法、政府が今出しております法律で許容されておるというふうに私は読めてしようがないのですけれども、いかがですか。
  86. 久保井一匡

    久保井参考人 結果的にはそうなっておると思います。
  87. 野間友一

    ○野間委員 そこで、清水参考人にお聞きしたいと思いますが、意見陳述の中で久保井参考人も言われたのですが、要するに不特定多数から金銭を巻き上げるという手段として、形式的にある特定商品、例えば金の売り渡しというような形をとっている、現実には物の受け渡しがなくて、そして実際には金(かね)を預かるという商法ですね。これを法律が是認するということなんですが、そういう社会的な妥当性と申しますか、許容しなければならない理由というのはあるのでしょうか。
  88. 清水鳩子

    清水参考人 これは審議会でも随分議論になったことでございまして、私も、その営業を禁止するということが一体どういうふうに担保できるのかというのは、法律には詳しくないものですからよくわからないのですね。気持ちの上からいえば、やはりそういう商売というものはあってはならない、いろいろなことを手当てしてみても、ああいう商売をやりたい人は結果的には法律の網の目をくぐるわけですから、本来的にはそういうものは経済社会の中で存在すべきものではないというふうに思いますけれども、今の法律消費者保護法の中でも、そういう建前に立ったものというのは非常に少ないのですね。そういう考え方で、非常に現実的な判断で大変申しわけないのですけれども、今のところは現実的な判断に立って、しかし、そういう商法というものを別にその法律によって認めていくのじゃない、行為規制をきちっとするとか、罰則をきちっとかけるとかということによって、答申にも書いてあるように、結果的に実質禁止になるというふうな考え方を最終的には私はとったわけです。
  89. 野間友一

    ○野間委員 それでは田内参考人にお聞きしますけれども、今御質問を申し上げたとおり、実態から見ましたら、金を不特定多数からかき集める手段、そういうものが、法では、行為規制は若干あったとしても、前提としては許されるということになっていますね。  そこでお聞きしたいのは、豊田商法とか鹿島商法、ああいうものはけしからぬということについてはだれしも異論がないわけですけれども、そうしますと、あえてそういうものを許容しなければならない理由はどこにあるのか。今清水参考人にお聞きしたのですけれども、現にこれで許容しなければならぬ取引実態契約実態がもしあればどういうものがあるのか、お教えいただきたいと思います。
  90. 田内幸一

    田内参考人 私の存じている限りでは、現在のところではそういう形、豊田商法的な商法で大いに国民の利益のために推進したいというものはないというふうに理解をしておりますが、可能性としてないとは言えない。今、御承知のとおり、平均世帯は年収の二倍の貯蓄を持っているわけでありまして、何とかしてそのお金を有利に運用したいという意向は物すごく強い。そうすると、いろいろな運用可能性としてあることは望ましいことでありますから、将来、豊田商事に似たような形で、しかも健全なビジネスというのも絶対に出ないとは言えないのじゃないか。そうすると、その可能性を今完全に摘んでしまうのは問題だというのが私の立場でございます。
  91. 野間友一

    ○野間委員 今の御意見でもわかったわけですけれども、実際これを是認し許容しなければならぬ、そういう取引なり契約は今のところはないわけですね。にもかかわらず、なぜこれを許容するのか。  特に私が問題にするのは、物の受け渡しはなくて、単にペーパーでありまして、金をかき集めるだけの話になるわけですね。そうしますと、形の上で預ける方は非常に大きなリスクをこうむる。この種のことについては、久保井参考人も言われましたけれども、例えば銀行法とか出資法とかあるいは信託業法、こういうもので、預ける方を非常に保護しておるわけですね。例えば免許制がまさにそうなんですね。特に信託業法、それとの整合性という点で、本法はむしろ、行為規制は別ですが、これを野放しに許容する、そういう点で、整合性については田内参考人はいかがお考えでしょうか。
  92. 田内幸一

    田内参考人 今野間先生の御意見を伺っていると、かき集めるとか野放しとか、既に非常にお立場がはっきり出ていると思うのですが、まあお金を集める、それから営業可能性を認めるというふうに客観的に言えばなると思うのですが、そうなりますと、それはまともである可能性もあるわけです。最初から何回か申し上げましたように、可能性というのは非常に弱いのですね、現実にまだないですから。現実に被害とか悪いビジネスはもう既に存在しているというと、そっちの存在感が物すごく大きい。だから可能性も全部摘んでしまえという意見も出やすいわけですけれども、やはり国として総合的な立場で見ると、国民に対して選択の余地は残す、それから新しい創意工夫の余地というのをなるべく広く残したいというのが私の考えでございますので、インチキ商法はできるだけ摘む、できるだけ出ないようにする、だけれども可能性はなるべく広く残しておきたい、そのバランスが現在の法案になったというのが私の考えでございます。
  93. 野間友一

    ○野間委員 久保井参考人にお聞きしたいのは、一体信託業法に言う信託契約、それと本法で言います預託契約、これと具体的にどこにどう違いがあるのか。私は、むしろ預託契約の方はリスクが大きいし、消費者を保護する必要性がさらに高いというように思いますが、いかがですか。
  94. 久保井一匡

    久保井参考人 私も同意見です。信託の場合は権利の移転を受けて運用するということになりまして、その点が預託と違うとは思います。預託というものが民法上の消費寄託になるのか、その辺のことはもう少し考えてみたいと思いますけれども、少なくとも経済的な効果においては信託とほぼ同様の効果がある。そうしますと、その間のバランスを図る必要があるということは、私も同意見です。
  95. 野間友一

    ○野間委員 清水参考人、いかがですか。信託業法の場合には、消費者保護の立場から、きちっと免許制からいろいろあるわけですね。ところが、それよりむしろ、むしろというか、逆にリスクの多いものについて、しかも事務所なり店舗がどうなっておるのか、セールスが来るわけですからね。そういうものについては、さらに消費者保護という立場から、例えば免許にしても登録にしても、先ほどから論議がありましたけれども、少なくとも信託業法等との整合性から考えて、これはやはり消費者保護の立場から、もとるんじゃないかというふうに私は思うのですけれども、どうお考えでございますか。
  96. 清水鳩子

    清水参考人 この点につきましては、信託業法そのものが、私は法律の専門家ではないのでよくわかりませんけれども、審議会その他で聞いてきました範囲では、やはり信託業法とまた別のところでの手当てが必要だというふうに論議が進んでいったと思います。     〔与謝野委員長代理退席、委員長着席〕
  97. 野間友一

    ○野間委員 時間が余りありませんので申しわけないのですけれども、中身について一、二。  久保井参考人が先ほど言われた私法上、民法上の制裁なり救済の効果ですが、これは違法行為を無効なり取り消しの理由にしろという御指摘だったと思いますし、当然それを置かなければならぬ。確かに行政上の一定の措置はあります。業務の停止とか、あるいは刑事罰、両罰規定等もあるようですけれども、ただ問題は、豊田商事商法でも一番問題になったのは、今もそうですが、不特定多数がいろいろ理屈の上でやったところで、結局資金の回収は全く不可能である。ですから、私法上の救済をどのようにいち早く効果的にやるのかということが、刑事罰とか行政上の措置よりもそこに重点を置くことが大事じゃないかというふうに私は思えてしようがないわけです。そういう点で、政府民法上の原則にのっとって公序良俗とか詐欺、強迫とか錯誤とか、あれでやれとかなんとか言っておるようですけれども、少なくともそういう行為規制をするならそこまで踏み込んでやって、被害者の救済というものは当然とってしかるべきだと思いますが、いかがですか。
  98. 久保井一匡

    久保井参考人 不当な行為を禁止する規定を設けて、威迫する言動あるいは先ほどから出ておりますようにそれに類する不当行為を禁止した場合に、それに違反して結ばれた契約は、特別の規定がない場合でもやはり自由意思を踏みにじった結果結ばれた契約として瑕疵ある契約。それが民法の九十条に違反すると見るか、あるいはその他の条文に違反すると見るか、その解釈論はいろいろありましょうが、その契約の無効もしくは取り消しということが解釈論として当然出てくるはずです。しかし、そこを後日の解釈にゆだねてしまいますと、また紛争が絶えないといいますか、明確な法の適用ができない。だから、そういう解釈上の疑義をなくする意味でも、そういう不当な行為の禁止規定に違反した場合には、それによって結ばれた法律行為が無効である、あるいは取り消しができるということを明文の上で設けておいた方が、裁判所としても非常にやりやすいと思います。
  99. 野間友一

    ○野間委員 あと一点だけ田内参考人にお聞きしたいのは、産構審の小委員として報告書をおまとめになったわけですが、これは弁護士会からも、いろいろ意見としては、弁護団や被害者からの意見聴取がなされていない、もっと広い範囲で実態を調べてほしいという意見が出ております。私もそうだと思うのですが、例えば観音竹商法、これは最大の問題でありまして、和歌山を中心に泉南もそうですが大体三百億か四百億、これまたそれこそ金を巻き上げて大変な問題になっておりますが、これも救済の仕方がない。こういうものについては、一体そういう被害実態等やあるいは手口、そういうものが問題になったのかどうか。それと同時に、これはこの法案で救済できるのかどうか。その点、いかがでしょうか。
  100. 田内幸一

    田内参考人 私、全部の小委員会出席したわけではありませんが、私の出席した限りで申し上げますと、観音竹については全然話題にはなりませんでした。それで、私も新聞でちょろっと見ることはありますけれども、具体的にはよくわかりませんが、私の感じではあれはマルチ商法ではないか。そうすると、今回の審議ではマルチについては全然やってないわけで、今後やらなくてはいけないという課題として残しておりますので、そういう意味でも観音竹は全然話題というか審議されなかった、こういうことでございます。
  101. 野間友一

    ○野間委員 こういう取引の形態というのは種々さまざま、大小を問わずあるわけです。ですから、失礼ですけれども、早かろう悪かろうでなくて、もっと実態を調べていただいて、もっと効果的なものをと政府に対して申し上げておるのですけれども、そのたびに専門家の皆さんにさらにお力をおかしいただくことが非常に肝要だということを申し添えまして、質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  102. 野田毅

    野田委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、お忙しい中を長時間にわたり御出席を賜り、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。(拍手)  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午前十一時三十五分散会