○高橋(元)
政府委員 昭和六十年における
公正取引委員会の業務につきまして、その概略を御説明申し上げます。
昨年の
我が国経済は、
世界景気の緩やかな
拡大、物価の安定等を背景として、全体としては、
昭和五十九年に引き続いて
拡大を見ることができました。また、
技術革新を背景に
情報化が
進展し、
経済のソフト化、サービス化も進行するなど、
経済社会の構造
変化には著しいものがあります。
このような中で、
民間活力が十分に発揮されるような
経済環境の
整備を行うことがますます重要になっており、
公正取引委員会といたしましては、公正かつ自由な競争の維持、
促進により
我が国経済の
活性化、効率化を図るべく、独占
禁止政策の適正な
運営に努めてまいったところであります。
特に昨年は、独占
禁止法違反事件の迅速な
審査に努めるとともに、広報
活動等により予防行政を
推進いたしました。また、
経済社会の構造
変化の過程にあって生じる独占
禁止政策上の諸問題に積極的に取り組んだほか、下請取引を初めとする
中小企業関係の取引の公正化に努めたところであります。
まず、独占
禁止法の運用状況について申し上げます。
昭和六十年中に
審査いたしました独占
禁止法違反被疑事件は二百七十七件であり、同年中に
審査を終了した事件は百八十一件であります。このうち、
法律の規定に基づき違反行為の排除等を勧告いたしましたものは九件、法的
措置をとるには至りませんでしたが警告を行いましたものは八十九件であります。また、六件四十二事業者に対し、七億六千三十五万円の課徴金の納付を命じました。
次に、届け出受理等に関する業務でありますが、合併及び営業譲り受け等につきましては、
昭和六十年中に千九百二十九件の届け出があり、所要の
審査を行いました。
事業者団体につきましては、
昭和六十年中に成立居等千二百二十四件の届け出がありました。また、事業者団体の
活動に関する事前の相談に対しましては適切に回答を行うよう努めるとともに、相談事例を取りまとめて公表することにより違反行為の未然
防止を図りました。
国際契約等につきましては、
昭和六十年中に四千五百九十三件の届け出があり、不公正な取引方法に該当するおそれのある改良
技術に関する制限、競争品の取り扱いの制限等を含むものについてはこれを是正するよう
指導いたしました。
独占的状態に対する
措置に関する業務といたしましては、ガイドラインの別表掲載の十五業種について実態の把握及び関係
企業の動向の監視に努めました。
価格の同調的引き上げに関する報告徴収の業務につきましては、
昭和六十年中に価格引き上げ理由の報告を求めたものは、インスタントコーヒー及びマヨネーズ・ドレッシング類の計二品目でありました。
次に、
経済実態の
調査といたしましては、生産・出荷集中度
調査、電気通信産業
分野に関する
調査、メーカーによる
輸入総代理店に関する
調査等を行いました。また、流通
分野においては、訪問販売化粧品、無店舗販売、灯油等についての実態
調査に基づき、独占
禁止法及び景品表示法上問題のある行為につきまして、所要の
改善指導を行いました。
政府規制制度及び独占
禁止法適用除外制度につきましては、
我が国経済における民間の
活力を生かし、
経済の効率性を高める見地から、引き続きその見直しのための
検討を行いました。
独占
禁止法上の不況カルテルは、
昭和六十年に実施されたものはありませんでした。なお、独占
禁止法の適用除外を受けている共同行為の数は、
昭和六十年末現在で四百二十七件となっておりますが、その大半は、
中小企業関係のものであります。
国際関係の業務といたしましては、OECD等の国際
機関における
会議に積極的に参加するとともに、アメリカ、
EC等の独占
禁止当局との間で意見交換を行うなど、国際的な連携の
強化に努めました。
次に、下請法の運用状況について申し上げます。
下請事業者の保護を図るため、違反の事実が認められた二千八十二件について、下請代金の支払い
改善等の
措置を
指導いたしました。特に下請代金の減額につきましては、減額分を下請事業者に返還するよう
指導するなど、重点的に取り組みました。また、親事業者及び親事業者団体に対して下請取引の適正化の要請を行うなど法の周知徹底を図り、違反行為の未然
防止に努めました。
最後に、景品表示法の運用状況について申し上げます。
まず、同法第三条の規定に基づき、アイスクリーム類及び氷菓業における景品類の提供を制限する告示を制定いたしました。
また、事業者が自主的に規制するための公正競争規約につきましては、愛媛県及び群馬県における食肉の表示に関する規約二件を認定し、
昭和六十年末現在における公正競争規約の総数は百二十四件となっております。
昭和六十年中に景品表示法違反の疑いで
調査した事件は三千百二十六件であり、このうち、排除命令を行いましたものは十三件、警告により是正させましたものは七百九十九件であります。都道府県の行いました違反事件の処理件数は、
昭和六十年一月から九月末までで四千二百十二件となっており、今後とも、都道府県との
協力を一層
推進してまいる所存であります。
以上簡単でございますが、業務の概略につきまして御説明申し上げました。
今後ともよろしく御
指導のほどお願いいたします。(拍手)。