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1986-04-21 第104回国会 衆議院 決算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年四月二十一日(月曜日)     午後三時六分開議 出席委員   委員長 角屋堅次郎君    理事 糸山英太郎君 理事 上草 義輝君    理事 林  大幹君 理事 新村 勝雄君    理事 渡部 行雄君 理事 貝沼 次郎君    理事 玉置 一弥君       有馬 元治君    臼井日出男君       金子 一平君    古屋  亨君       松野 頼三君    森下 元晴君       小川 国彦君    斉藤  節君       春田 重昭君    中川利三郎君       江田 五月君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 竹下  登君  出席政府委員         皇室経済主管  勝山  亮君         法務大臣官房会         計課長     清水  湛君         大蔵政務次官  熊川 次男君         大蔵大臣官房会         計課長     田中 誠二君         大蔵大臣官房総         務審議官    北村 恭二君         大蔵大臣官房審         議官      大山 綱明君         大蔵省主計局次         長       角谷 正彦君         大蔵省関税局長 佐藤 光夫君         大蔵省理財局次         長       足立 和基君         大蔵省国博金融         局長      行天 豊雄君         国税庁次長         国税庁税部長         事務取扱    塚越 則男君         国税庁調査査察         部長      日向  隆君         農林水産大臣官         房審議官    吉國  隆君         農林水産大臣官         房経理課長   松下 一弘君         運輸大臣官房会         計課長     近藤 憲輔君         郵政省貯金局長 塩谷  稔君         労働大臣官房会         計課長     石岡愼太郎君  委員外出席者         宮内庁長官官房         主計課長    山本 孝之君         総務庁行政管理         局監理官    菊地 徳彌君         経済企画庁調整         局経済協力第一         課長      小川 修司君         法務省刑事局刑         事課長     原田 明夫君         外務大臣官房審         議官      太田  博君         大蔵省主計局司         計課長     西津  裕君         厚生省保健医療         局結核難病感染         症課長     草刈  隆君         厚生省薬務局企         画課長     森  仁美君         農林水産大臣官         房技術総括審議         官       芦澤 利彰君         通商産業省生活         産業局原料紡績         課長      江崎  格君         労働省労働基準         局労災管理課長 松本 邦宏君         自治省行政局選         挙部政治資金課         長       中地  洌君         会計検査院事務         総局第一局長  三原 英孝君         会計検査院事務         総局第五局長  秋本 勝彦君         国民金融公庫総         裁       田中  敬君         日本開発銀行総         裁       吉瀬 維哉君         日本輸出入銀行         総裁      大倉 真隆君         参  考  人         (日本たばこ産         業株式会社社         長)      長岡  實君         決算委員会調査         室長      大谷  強君     ――――――――――――― 委員の異動 四月二十一日  辞任        補欠選任   小坂御三郎君    有馬 元治君   藤尾 正行君    臼井日出男君   阿部 昭吾君    江田 五月君 同日  辞任        補欠選任   有馬 元治君    小坂徳三郎君   臼井日出男君    藤尾 正行君   江田 五月君    阿部 昭吾君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和五十八年度一般会計予備費使  用総調書び各省庁所管使用調  書(その一)  昭和五十八年度特別会計予備費使 (承諾を求  用総調書び各省庁所管使用調 めるの件)  書(その1)          (第百一回  昭和五十八年度特別会計予算総則 国会内閣  第十一条に基づく経費増額調書 提出)  及び各省庁所管経費増額調書  (その1)  昭和五十八年度一般会計予備費使  用総調書び各省庁所管使用調  書(その2)  昭和五十八年度特別会計予備費使 (承諾を求  用総調書び各省庁所管使同調 めるの件)  書(その2)          (第百二回  昭和五十八年度特別会計予算総則 国会内閣  第十一条に基づく経費増額調書 提出)  及び各省庁所管経費増額調書  (その2)  昭和五十八年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十八年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十八年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十八年度政府関係機関決算書  昭和五十八年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和五十八年度国有財産無償貸付状況計算書  (大蔵省所管日本専売公社国民金融公庫、  日本開発銀行日本輸出入銀行)      ――――◇―――――
  2. 角屋堅次郎

    角屋委員長 これより会議を開きます。  昭和五十八年度一般会計予備費使用調書び各省庁所管使用調書(その一)、昭和五十八年度特別会計予備費使用調書び各省庁所管使用調審(その一)、昭和五十八年度特別会計予算総則第十一条に基づく経費増額調書び各省庁所管経費増額調書(その1)、以上三件の承諾を求めるの件、昭和五十八年度一般会計予備費使用調書び各省庁所管使用調書(その2)、昭和五十八年度特別会計予備費使用調書び各省庁所管使用調書(その2)、昭和五十八年度特別会計予算総則第十一条に基づく経費増額調書び各省庁所管経費増額調書(その2)、以上三件の承諾を求めるの件を一括して議題といたします。  この際、大蔵政務次官から各件について趣旨の説明を求めます。熊川大蔵政務次官
  3. 熊川次男

    熊川政府委員 ただいま議題となりました昭和五十八年度一般会計予備費使用調書び各省庁所管使用調書(その1)外二件及び昭和五十八年度一般会計予備費使用調書び各省庁所管使用調書(その2)外二件の事後承諾を求める件につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、昭和五十八年度一般会計予備費予算額二千百億円のうち、昭和五十八年四月二十六日から同年十二月二十三日までの間において使用を決定いたしました金額は、七百二十一億九千百二十八万円余であります。  その内訳は、災害対策費として、河川等災害復旧事業等に必要な経費等の七件。その他の経費として、衆議院議員総選挙及び最高裁判所裁判官国民審査に必要な経費等の一一十三件であります。  次に、昭和五十八年度特別会計予備費予算総額三兆九千百三十四億六百九十九万円余のうち、昭和五十八年十月七日から同年十二月二十三日までの間において使用を決定いたしました金額は、十七億一千二十四万円余であります。  その内訳は、農業共済保険特別会計農業勘定における再保険金不足を補うために必要な経費等特別会計の三件であります。  次に、昭和五十八年度特別会計予算総則第十一条の規定により、昭和五十八年七月二十九日から同年十二月二十三日までの間において経費増額を決定いたしました金額は、八十八億二千六百九十六万円余であります。  その内訳は、道路整備特別会計における道路事業及び街路事業調整に必要な経費増額等特別会計の十件であります。  次に、昭和五十八年度一般会計予備費予算額二千百億円のうち、昭和五十九年一月十日から何年三月三十日までの間において使用を決定いたしました金額は、一千百二十五億二千四十九万円余であります。  その内訳は、災害対策費として、災害救助等に必要な経費等の五件、その他の経費として、雇用保険求職者給付に対する国庫負担金不足を補うために必要な経費等の二十一件であります。  次に、昭和五十八年度特別会計予備費予算総額三兆九千百三十四億六百九十九万円余のうち、昭和五十九年二月四日から同年三月三十日までの間において使用を決定いたしました金額は、一千七百十五億五千五百四十二万円余であります。  その内訳は、食糧管理特別会計輸入食糧管理勘定における調整勘定へ繰り入れに必要な経費等特別会計の六件であります。  次に、昭和五十八年度特別会計予算総則第十一条の規定により、昭和五十九年三月十三日から同年三月三十日までの間において経費増額を決定いたしました金額は、九百六十八億三千三百二十四万円余であります。  その内訳は、郵便貯金特別会計における支払い利子に必要な経費増額及び道路整備特別会計における豪雪に伴う道路事業に必要な経費増額の二件であります。  以上が、昭和五十八年度一般会計予備費使用調書び各省庁所管使用調書(その一)外二件及び昭和五十八年度一般会計予備費使用調書び各省庁所管使用調書(その2)外二件の事後承諾を求める件の概要であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御承諾くださいますようお願い申し上げます。
  4. 角屋堅次郎

    角屋委員長 これにて説明は終わりました。     ―――――――――――――
  5. 角屋堅次郎

    角屋委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次てれを許します。小川国彦君。
  6. 小川国彦

    小川(国)委員 最初に、予備費に関しまして質問をいたしたいと思います。  最近数年間の予備費使用調書を一覧してみますと、数年間連続して、しかもほぼ同額予備費支出が目につくわけであります。予備費とは、憲法第八十七条に規定されておりますように、予見しがたい予算不足に充てる支出である。予見しがたい支出であるからこそ、内閣の責任でこれを支出できるということになっておりまして、したがって、事後国会承認を得なければならないというふうにも規定されているわけです。ところが、今申し上げましたように、毎年継続して同額程度予備費使用されているという実態については、政府としてはこれはどういう事情に基づくものでありますか。
  7. 角谷正彦

    角谷政府委員 今御指摘のように、予備費は、予見しがたい経費不足に充てるために、憲法規定に基づきまして歳出予算の中に組んでいるわけでございます。ただ、この予見しがたい経費不足といいますのは、その支出時期、内容、目的がはっきりしていないもののみならず、ある程度支出必要性がはっきりしているものでありましても、その金額等はっきりしないものも含むというふうに解釈されているわけでございます。  今小川委員指摘の件につきましては、社会保障等の各義務的費目につきまして毎年度予備費支出する例が多いことは、確かにおっしゃるとおりでございます。これは御指摘の点につきましては、予算編成時点におきまして、例えば医療費で申しますと、件数でございますとか単価でございますとか、予算編成時点における最新のデータに基づきまして予算を組んでいるわけでございますけれども、それがその後、例えば冬になりますとインフルエンザが流行するとか、あるいは老人割合が予測と違いまして若干老人医療費割合がふえる、そういうこともございまして、特定の費目につきまして毎年度ある程度予備費支出するという例もないわけではございません。  そういった点につきまして、私ども、当初予算段階でなるたけ積算明確化を期してまいりたいと思いますけれども、現在そういった点につきまして予備費支出しておりますのは、以上のような事情であるということについて御理解をいただきたいと思います。
  8. 小川国彦

    小川(国)委員 費目を見てまいりますと、例えば皇族費寛仁親王第一女子誕生による必要な経費、あるいは寛仁親王第二女子誕生による経費容子内親王殿下に対し支出する一時金、こういうようなことで、出産とかそういうことはまさにこれは予備費でなければならないということもわかるわけでありますが、例えば内閣官房に参りまして、各内閣総理大臣外遊をされる、これは五十六、五十七、五十八で鈴木内閣総理大臣外遊、あるいは中曽根総理になってからの外遊、これも例えば内閣庁費で見てまいりますと、二億九千四百六十一万五千円、あるいは五十七年度は二億四千四百九十二万六千円、五十八年度は一億四千九十五万一千円。  大体、総理外遊というものも、恐らく年度で何回程度というふうに決まっているのではないかというふうに思いますが、これは予備費として出すのが適切なのか、あるいはこういう外遊日程というものは、およそ内閣が、総理が年間のうちに国会の合間を縫って何回くらい外遊できるという予見ができるのかどうか、できないとすればその理由はどういうことなのか。
  9. 角谷正彦

    角谷政府委員 内閣総理大臣外遊の問題でございますけれども、確かに総理は毎年何回か外国に行かれ、外国の元首の方々と交歓され、いろいろ外交的な儀礼としてまた訪問されるということが多いわけでございます。ただ、どこの国にどういう形で行かれるかということにつきましては、当初予算編成段階では全くわかっておりません。しかも、実際の予備費内容になりますと、例えば外国に行かれるための飛行機のチャーター料でございますとか、あるいはそれに伴います招宴のためのいろいろな経費とかということでございますけれども、それも直前まで、どういう形で何人ほどどこに行かれるかということはわからないわけでございます。そういった意味で、こういった経費につきましては、そのときどきの実態に応じ、その情勢によりまして、具体的にそれが明らかになった時点におきまして予備費支出しているわけでございまして、これにつきましては予備費の条件に該当しているものと私どもは理解いたしております。
  10. 小川国彦

    小川(国)委員 この点は深く議論してもあれですから、次に社会保障関係予備費支出でございますが、例えば三年間毎年支出されているもので厚生省生活保護費補助金、これは五十六年で百四十八億、五十七年で六十五億、五十八年で六十九億、それから療養給付費等補助金、これは五十六年で六百三億、五十七年で二百二十二億、五十八年で二百一億、こういうふうに見てまいりますと、これらの補助金のおよその最低額というものは、それぞれ六十億とか二百億とか抑えられるのではないか。毎年継続して出されているものでありますから、この辺は予見できなかったのですか。
  11. 角谷正彦

    角谷政府委員 今、生活保護費補助金とそれから国民健康保険助成費についてのお尋ねがございました。  具体的な予算編成について申し上げますと、医療費につきましては、やはり個別のそれぞれ一人当たりの医療費単価、それからその時点におきます医療給付見込み人員との積数予算の主体をなしているわけでございますけれども、例えば国民健康保険助成費で申しますと、予算編成段階で得られる一番最近のデータというのは、前の年の七月ぐらいまでのデータが一番直近時点でございます。したがいまして、その時点におきますところのいろいろ過去の趨勢というものを考えながら実は予算を編成しているわけでございますけれども、これも先ほど申し上げましたように、その時点におきますいろいろな情勢変化、例えばインフルエンザの流行でございますとかそういったものもございますし、あるいはその他老人の数その他の見込みというものも若干狂ってくるという点もございまして、その狂いの仕方というのはわずかほんの一%かそんな少ないものでございますけれども、何せ全体の金額が大きいものでございますので、そこら辺を加えますと、今御指摘のような予備費といったことに最終的には依存せざるを得ないというのが状況でございます。  生活保護費につきましても、同様に直近におきますところの扶助人員件数単価ということから、当該年度のいろいろな保護動向を予測いたしまして予算を組んでいるわけでございますけれども、その後、雇用情勢でございますとかあるいは賃金の状況でございますといったような社会経済情勢のいろいろな変化あるいは停滞といったものから、予算不足といったものが出てくるわけでございまして、そういった点を補正予算あるいは予備費で対応しているということでございます。  こういった点の積算の正確さという問題につきましては、今後とも私ども予算編成段階を通じて極力直していかなければならぬ、あるいは実勢に合うようにしていかなければならないもの、こういうふうに理解いたしております。
  12. 小川国彦

    小川(国)委員 そういういろいろな状況経済変動なり社会状況変動はわかるのですが、最後に御答弁なさったように、今はいろいろな数値を予測していくのにはそういう研究が非常に発達している時代でありますから、そういう点は十分そういうものを駆使されて、こういうものができるだけ経常経費の中で国会承認を経てから予算支出されるという大原則に基づくように取り組んでもらいたいと思うのです。  次に、郵政省郵便貯金支払い利息なんですが、これは五十六年百二十五億、五十七年百二十五億、五十八年百二十五億と、毎年支払い利息同額三カ年継続して計上されているわけですね。これは予備費じゃなくて、こういう同額支払い利息であれば当然予見できたのではないかというふうに思うのでありますが、この点はどういう理由に基づくものですか。
  13. 角谷正彦

    角谷政府委員 郵政省につきましては、毎年支払い利息につきまして弾力条項あるいは予備費支出といったことを行っております。この予備費支出を行いましたその原因は、大きく分けて二つあろうかと思います。一つは、郵便貯金につきましては、御案内のように、毎年郵貯の増加目標額というものを定めてやっておるわけでございますけれども、このところ連年その当初増加目標額を実績が上回って郵便貯金に集まっているということに伴いまして、支払い利息がふえてくるという点が一つでございます。  それからもう一つは、郵便貯金もそのときどきの金利情勢によりまして金利が上がったり下がったりするわけでございますけれども、とかく金利が高いときに預けられた預金というものが平均よりも歩どまりがいいといいますか、そういった情勢もございまして、私ども予算積算した段階に比べまして、その二つの要因から支払い利息がふえてくるといったことから、予備費支出しているわけでございます。  他方、その予備費につきましては、連年昭和五十六年から三年間続けて百二十五億円ということを計上しているわけでございまして、私どもといたしましては、そういった予備費のほかに、弾力条項適用でございますとか移流用とかいうことで、その支払い利息不足に対応しているというのが現状でございます。
  14. 小川国彦

    小川(国)委員 予備費の問題はその程度にしまして、次に私は、今国会一つの焦点になっておりますし、毎年政策減税ということが国会で取り上げられてきているわけでありますけれども、その実行状況を毎年見てまいりますと、必ずしも国会が期待したような減税というものが国民のために行われていないという不満感というものを非常に強く感じているわけであります。  そういう中で、本年度は前年度に引き続いて教育減税あるいは住宅減税パート減税というものが政策減税として要求されているわけでありますが、こうした問題との絡みで政府税調の結論というものはいつごろどういう形で出されてくるのか、その点の見通しについて伺いたいと思います。
  15. 大山綱明

    大山政府委員 お答え申し上げます。  税制改革の問題につきましては、目下政府税調で鋭意検討が進められているところでございますが、負担の軽減、合理化に資するものについては四月にも中間的な報告を、それも含んだ全体的な諸改革事項については秋に入ってまとめて、こういうような諮問が昨年総理からございまして、その手順に従いまして目下審議が行われているところでございます。最終的にはこの秋にまとめて税制改革に関する答申が行われるものと期待いたしております。
  16. 小川国彦

    小川(国)委員 その中で先回二回、予算委員会あるいは決算委員会で、私の提起していますパート減税問題に対して、大蔵大臣からは政府税調の中に国会議論を正確に伝えるということが言われておりますが、そのことについてはどのような措置がとられておりましょうか。
  17. 大山綱明

    大山政府委員 国会での御論議につきましては、ある程度取りまとめまして税調に私ども事務当局が御報告を申し上げております。パートの問題につきましても、その一環として当然のことながら御報告を申し上げているところでございますが、具体的にパートそのものについてどうすべきだというような御議論はまださほど深まっているわけではございませんけれども、学者をもって構成されますところの専門小委員会というのがございますが、ここにおきまして学問的、理論的な問題の検討をなさいまして、そこから税調の部会に報告されました事柄の一つ課税単位につきましての報告がございます。その中に、例えば配偶者に対する特別控除を今の配偶者控除とは別に設けてはどうかといった議論がございます。そういったものも、パート問題を税調としてある程度念頭に置いた一つ議論、こんなふうに考えられるところでございます。
  18. 小川国彦

    小川(国)委員 その中で、私、先般来申し上げているわけでありますが、基礎控除が三十三万、配偶者控除が三十三万、それから扶養者控除が三十三万、こうした一連の控除があるわけでありますが、現在パート主婦は九十万円を超えて働きますと、そのために夫の配偶者控除が受けられなくなる、それから妻はみずから国民年金なり国民健康保険に加入しなければならなくなる、それからまた、夫の扶養者手当がなくなる、所得税がアップされるということで、先般来申し上げているように、パート主婦が九十万円から仮にもう十万円ふやして百万円働いた、そうしますと、これは東京都のサラリーマンの計算でありますけれども夫婦で子供二人の四人家庭で、九十万円からもう十万円余計に働いて百万円に主婦収入がなった。十万円収入がふえたところが、夫と妻の所得税あるいは配偶者控除がなくなること、扶養者手当がなくなること、妻が新たに年金保険に加入するということでかかる費用が四十三万円、そうすると、妻がたまたまパートで九十万円から十万円収入がふえたけれども、片や夫婦で四十三万円の減になる、こういう事態があるわけでありますが、こういう事態の解消について大蔵省としては何らかの見解を持っておられましょうか。
  19. 大山綱明

    大山政府委員 ある段階扶養控除適用がないあるいは配偶者控除適用がないということになりますと、どうしてもそこに一つがけみたいなものが生じてしまうのが現在の制度でございます。一つには、この金額が、配偶者控除適用を受け得る所得限度額、この金額がやや大きくなり過ぎたところで、その段階といいますかがけと申しましょうか、それが非常に大きなものになってしまって、今先生御指摘のような問題が生じてきているわけでございます。  さりとて、この少額不追求の金額を下げるというのも現実的では全くございませんし、いかがいたしたものかということにつきましては、税制調査会にもいろいろ御議論をいただいているところでございます。その一つの答えとして、これはまだ税制調査会専門小委員会報告段階でございますが、配偶者に対する特別の控除を認めて、妻の方の所得がふえていくにつれてそれを減らしていく、消失控除という言い方をしておりますが、そうした形をとることによって、がけと申しましょうか、そういったものをなだらかにしていくという考え方をとったらどうか、これが学者による専門小委員会報告一つのポイントでございます。それにつきまして税制調査会としてどのようなスタンスをとるか、これはまだこれからの議論によるところが多うございますが、一つの方向を示唆したものとしてただいま申しましたような専門小委員会報告があるということは御報告申し上げられるところでございます。
  20. 小川国彦

    小川(国)委員 何か配偶者について、専従配偶者というような表現と、私どもが言っておりますパート配偶者、これを延長線上に置くようなお考えのように今承るのですが、新聞等で報じられているところは、専従の妻というのですか、専従配偶者という表現がよくわかりにくいのですが、いわば家庭にいる主婦に対して特別控除を認めようという考え方は出ているわけです。その上で、パートで働いたりして収入を得ている主婦に対して、収入がふえるに従って控除額を減らしていく消失控除、それは一つの延長線上にあるのですか。それからもう一つは、どの辺の収入のところまでをこの消失控除の対象としてお考えになっていらっしゃるのか。
  21. 大山綱明

    大山政府委員 専門小委員会報告でございますが、専業主婦に着目した夫婦に対する特別控除というような表現をとっているわけでございますが、この特別控除を専業主婦のみならず、少額の所得を有する配偶者の場合にも適用することとし、かつ消失控除として仕組むことはどうか、正確に申しますとこういう表現をとっております。したがいまして、専門小委員会報告では、ただいま先生のおっしゃいますような、専業主婦だけではなくその延長線上にあるようなものを、こういった考え方であろうかと存じます。  もう一点、どの辺の所得あるいは収入の階層までと考えておるのかということでございますが、まだこの報告には具体的な金額、数字は入っておりませんで、何とも私の方から申し上げるお答えを持ち合わせておらないわけでございますが、今の三十三万円、収入で申しますと九十万円以下の方々には、当然のこととして何がしかの適用があるのかと思いますが、もっとも仕組み方によってどうなるか、まだ私どもも具体的にどう仕組むのか具体的な検討をいたしておりませんが、三十三万円、あるいは収入金額で九十万円を超す方々についても何らかのこういう特別控除が認められ、それが収入に応じてバニッシュする、消失していく、こんな姿がこの報告では考えられているのではないか、こういったことはある程度推測ができるところでございます。  なお、専門小委員会報告を私どもある種の解釈をいたしまして今のようなお答えを申し上げておりますので、まだ最終的な答申でないという点を念のため申し上げさせていただきます。
  22. 小川国彦

    小川(国)委員 これが先ほどお話のように四月中に中間報告が出るということでございますけれども政府としてはこれを受けてどういう対応をなさるお考えですか。
  23. 大山綱明

    大山政府委員 税制調査会の答申が出ますと、政府としては最大限その意を酌み取りまして、例年でございますと、年度改正の中に盛り込んでいくという努力をいたしておるところでございます。
  24. 小川国彦

    小川(国)委員 当然これが出てくる。それから、この国会中にパート減税に対しても一定の結論を得るということになっているわけですが、それに関連しまして、先般来私が提案いたしております所得税法の中で、控除対象配偶者三十三万円となっております。夫が妻の配偶者控除を得られる限度額が今三十三万円になっております。これが非常に混同しやすいのですが、基礎控除が三十三万あり、配偶者控除が三十三万あり、扶養者控除が三十三万あり、それから夫が妻の配偶者控除を受けられる限度額が三十三万。だから私どもは、夫が妻の配偶者控除を得られる限度額という所得税法の二条三十三号口の規定の三十三万円を六十三万円ということにしても、政府の実質的な税収には影響を与えない、しかも基礎控除配偶者控除を動かすわけではないので、今考えられているような大きな国の税収減にはならないという考え方で提案をしているわけであります。  それに対しまして、大蔵省の過去二回の委員会答弁の中では、配偶者控除扶養者控除同額にしなければならないとする少額不追求という考え方が出ているわけです。私どもは、配偶者控除の三十三万円を六十三万円にまですれば、今九十万のパートが百二十万まで働いても夫の配偶者控除は依然として残せる、そこだけを改正できるではないかということを言っているわけですが、大蔵省の方は、扶養者控除の方も三十三万から六十三万に変えなければならないという考え方を述べているのです。私は、どうも同額でなければならないという答弁については納得できないでいるわけです。  大山審議官は去る三月六日の分科会で、私の質問に対して、  あるところまでの所得については宥恕して、扶養控除あるいは配偶者控除、同じような性格のものでありますが、その対象にしてあげましょうというのが、この所得税法第二条の規定の背後にある考え方でございますので、金額としてはやはり同じ水準にあるのが適当なのだろうと考えます。確かに条文の号は別々に書いてありますから、一方を直したらいいじゃないか、それは技術的には可能でございますけれども、背後にある考え方からしてやはりそうはまいらないというのが私どもの立場でございます。また、少額不追求という考え方からできている制度でございますので、それが同額でなくなるということは、なぜ配偶者控除の場合にはたくさん所得があってもそれを追求しないでおいて、扶養親族つまり子供か親なんかの場合には少しの所得であっても追求されるのかという点でおかしいということになります。それをまた分ける合理性というものも私どもないのではないかと、率直にそう感じます。こういうふうに答えられているわけなんです。  少額不追求という考え方はわかりますが、だから配偶者控除扶養控除の額が全く同じでなければならないということには、私ども大いに納得がいかないわけであります。また、少額不追求という考え方があるにしましても、それは全く理論上のものであって、この問題は、パート主婦が苦しい立場に置かれている現状を解決しようという、いわば政策的な判断でなし得るものではないのか。過去においても住宅減税、単身赴任減税、それからパート減税、いずれも同じ立場でこうした問題を考えて、政策的な措置としてなされてきているというふうに思うわけでありまして、その点からはこれは切り離す。  特に扶養者控除というのは、子供さんの控除であるとか親の控除であります。今世の中は、大体夫婦が共働きをしている。それでそれが夫婦とも高い給与を得ていればいいわけでありますが、夫の収入が主であって、それを補助する立場で妻がパート収入を得ている、こういう場合には、やはり生活費なりあるいはローンの返済なり子供の教育費なりというものを得なければならないという勤労者家庭の生活の問題から来て働いている。そういう立場に置かれている妻の配偶者控除というものを面倒見てあげようという問題と、扶養者という子供とか親とかの問題は切り離すことが可能なのではないかというふうに私は考えるわけですが、この点、どういうふうにお考えになられるか、伺いたいと思います。
  25. 大山綱明

    大山政府委員 前回と同じような御答弁の繰り返しになることをお許しいただきたいのでありますが、少額不追求という観点からの三十三万円でございますので、やはりこの金額扶養控除あるいは配偶者控除、この間で違いが出てくるというのは、税制としておかしいのではないかと思います。  それから第二点は、パートの問題、九十万円の中身でございますが、御案内のように三十三万円の部分と、給与所得控除の最低限度額五十七万円と、この二つの部分から成っているわけでございますが、この給与所得控除の最低限度額の五十七万円が余り高いものになるというのも、給与所得控除の性格づけからいきましてやや問題がある。また、この三十三万円につきましても、これが先ほど来申しておりますような少額不追求というような観点から設けられているものでございますが、これが三十三万円であるということ自身、かなり大きな数字になっているように私ども考えるわけでございますが、これをさらに引き上げるというようなことが少額不追求という制度の趣旨になじむものかどうか、ふさわしいものか、そんな点につきましても疑問を感ぜざるを得ないわけでございます。  先生いろいろ御研究をなさっていらっしゃるということを私どもよく承っておりますし、何度がお話をさせていただいておりますので、今さら申し上げることもないのでございますが、パート税制というものがあるのではなくて、パート税制が、今申しました給与所縄控除と少額不追求の三十三万円の最低控除、こういう枠組みの中で、この金額それぞれにそれなりの理由があってでき上がっているものでございますので、パートだけどうこうということではなく、所得税法の全体の整合性の中で考えられるべき問題ではないか、かように考える次第でございます。
  26. 小川国彦

    小川(国)委員 昭和五十九年のパート減税は、政府は百億円の減税を行ったわけです。このときは、おっしゃるように所得税法の給与所得控除の最低限度、五十五万円を二万円引き上げた。これは租税特別措置法という形で引き上げているわけですね。この所得税法の給与所得控除の最低限度、これを何か一万円上げると、政府としては五十億ですかの大変な財政支出を伴うということであります。ですから私は、そこの部分を動かすと言っているわけではなくて、さっき申し上げた所得税法の中の配偶者控除を受けられる限度額という、いわば架空ではないですが、考え方としては架空の枠のようなものを三十三万から六十三万までにするということでありますから、これは政策的にとり得るのじゃないか。  それからもう一つ、少額不適追求いうこと。少額だからまあこれは細かいことは追求しないのだということで、配偶者控除扶養者控除というのがあるというのですけれどもパートについて考えてみれば、今まで教育減税もしかりですし、それから単身赴任者の減税もそうですし、住宅減税もそうですが、これはやはりある一定の階層、ある部分に向けての政策減税をやっているわけで、だから、所得税法とかなんかの全体を動かすのじゃない。所得税法の大きな問題でなくて、これは部分減税だ、それこそパート減税だと思うのですね。だからそれは、私に言わしむれば、所得税法の二条三十三号のロの項を変えるだけでできることであって、それは配偶者控除扶養者控除を何も一緒に置かなくてもいいのじゃないか。  扶養者控除の中で、何かこの前の議論の中にあったのでしょうか、子供が、例えば娘が働いている場合もある、それから親が働いている場合もあると言っておりますが、配偶者控除の対象になっている主婦以外のそういうパートというのは、もう本当にわずかしかない。パートの中で主婦がもう八割を占めているわけでありますかられ。だから、扶養者控除の中で子供とか親とかが働いている例というのは本当にごく微々たるものではないか。そういう実態から見ましても、配偶者控除を受けられる枠を六十三万にしても決して不公正にはならないのではないかというふうに私は思うのですね。  だから、現実的な政策減税のやり方というのは、今おっしゃるように、少額不追求の原則とかそういうような一つの理論だけで大蔵省は今までの政策減税をやってきているのじゃない。やはり具体的な部分部分に一つずつでも減税の光を当てていこうとやってきた。住宅なら住宅を購入して苦しんでいる人に今度は光を当てよう。子供の入学金が非常に多額になっている、教育費が多額になっている、じゃあ、その入学金のところだけにひとつ光を当ててやろうと言ってやっているのです。  パート主婦は、九十万以上働きたい、けれども、月十万円ずつ収入を得ていって、九月で九十万円になった、もうこれ以上一円たりと超したら、さっき言ったように、ちょっと十万超したら逆に四十三万のマイナスになるのだから、もうみんな九十万円のところでとまっちゃっているわけですよ。これはひとり大蔵省が少額不追求の理論だけでこの問題を律するのではなくて、大きな社会問題として考えてみれば、パート主婦がもう九十万円の限界のところへ行ってとまっちゃっているというところを、せめて月十万、年間百二十万までこの枠を広げるということは、扶養者控除の問題と配偶者控除の問題を切り離してできるのじゃないか。  それで夫も、妻が百二十万まで働いても、自分の配偶者控除がなくならないということならば、妻に月十万ぐらいずつ働いてもらうことには喜んで歓迎するわけなんですが、今は、九十万以上働かれて――この間も私、この問題を街頭で演説していました。そうしたら、ある運転手さんが来まして、私の妻がうっかりして九十七万円働いてしまった、そのために私の配偶者控除がなくなる、それから所得税が上がる、さっき言ったことのマイナスが全部あって、夫婦げんかになったというのですね。だから、うっかりして、ちょっとして九十万円を超してしまったためにえらいマイナスになったということを嘆いておられましたけれども、やはりそういう実態。  それから、中小企業で経営者が、もうみんな九十万円のところになったらパートが途端に来なくなる、その後がまをどうするかというのは、結局主人や奥さんが今度は労働過重の中でカバーするとか、中小企業が一番悩んでいるのは、パートが九十万の収入になったらもうあと来てくれない、これも一つの大きな社会問題になっているわけですね。  それからもっと、ここまで言っていいかどうかわからないのですが、もう中小企業では、パートといっても季節的なパートではない。二年も三年も続いて来てもらっているパートだ、常用労働者と同じだという考え方でいる。その労働者が来られなくなったら困るから、出勤カードを二枚つくってみたり、あるいはこういうことはあってはならないことなんだけれども、本人以外の人に払ったような形にして間に合わせなければならない、そういう現実もあるのです。  私は、そういう不公正な形でパート主婦を働かせることもおかしいと思うし、九十万円でやめなければならぬという今の現状というものも厳し過ぎると思いますし、やはりこの辺で私は、大きな政策的な見地から考えれば、少額不追求という理論だけにこだわるのではなくて、もっと大局的な政策的な見地でこの問題を考えられないだろうかと思うのですが、いかがでございますか。
  27. 大山綱明

    大山政府委員 まず、従来の税調の御議論を御紹介申し上げますと、税制の簡素化等の観点から、当面は現行制度の枠内で対応する、つまり給与所得控除の最低控除額と少額不追求の三十三万円、「現行制度の枠内で対応することが適当であると考える。」こういうふうに基本的に述べておられるわけでございます。税の世界がまずしゃしゃり出てと申しますか、まず先頭に立ってということはなかなか難しゅうございます。  そんなこともございまして、税制調査会の答申、別の部分で「基本的には、まず、主婦パート主婦の内職を雇用政策上あるいは労働法制上どう位置づけるかという視点から取り上げて議論すべき事柄であり、更に税制上の問題としても、例えば配偶者控除のあり方や課税単位といった所得税制の基本的枠組みのあり方との関連において慎重に検討を行う必要があると考える。」こんなふうに述べておられるわけでございますが、前段は、やはり労働政策としてこれをどういうふうに扱っていくのか、定義を初めとしてまだ皆目ないわけでございますが、労働政策上、まず位置づけをどうするかという一つ重要な問題があるのではないか、その上に立って、税制としても配偶者控除のあり方や課税単位の問題としてどう扱っていくかということを考えるべき問題である、これが五十九年十二月の答申でございます。  その後の税制調査会の作業の状況は、先ほども申し上げましたが、学者グループの専門小委員会におきまして、やはりこれだけ大きな問題になっておりますパートの税制をどうするかと申しますか、先生がおっしゃいますところのパートに光を当てた税制も考えられてしかるべきではないか、こういった御議論、私どもが御報告を申し上げ、そういった観点をも踏まえまして、専門小委員会報告では、先ほど申しましたような特別の控除、それを消失控除のような形でという報告が出てきているところは従来とは少し変わってきているところかと存じます。  さはさりながら、パートに特別な光を当てるべきかどうか、その基本論はちょっと別にいたしまして、今の仕組みは現行制度の枠組みの中で対応する、こういう仕組みでございますので、配偶者控除をどういう人に適用していくのが適当なのか、それからまた、扶養控除はどういう人に適用していくのが適当なのか、そのバランスはいかにあるべきと考えるのか、それから、その金額の三十三万円というのは少額不追求の観点でございますが、それは現行税制の枠組みということになりますと少額不追求ということでございますので、少額不追求ということでございますとおのずから限度がある、こんなようなとらえ方で現行の税制ができているわけでございます。  現行税制の枠内にということでございますので、全体としての整合性を私ども無視するわけにはまいらないわけでございまして、そういった点で先生の過日来の御提案、一つの御見識だと私ども拝聴いたしておりますが、現行の枠組みの中で考える限りにおいて、私ども税制を考える者にとりましていろいろ難しい問題があるということも、過日来申し上げておりますとおり事実でございます。
  28. 小川国彦

    小川(国)委員 今御答弁になった中で、先般もお話しございましたが、なかなか税制度が先頭に立ってこういうことの改革をしていくことは難しい、労働法制上、雇用法制上の問題としても考えてもらわなければならぬということなんですが、私ども、この問題を調べてまいりますと、雇用保険を見ましても、あるいは国民年金を見ましても、全部大蔵省が決めている配偶者控除の三十二万ですね。それから五十七万の所得控除、それで九十万というものに右へ倣えしているわけですね。税制上、妻が九十万円を超えれば夫の配偶者控除がなくなると同じように、労働省は雇用保険において九十万円を超えれば社会保険に入らなければならぬ、それから厚生省は、国民年金も同様に九十万を超えたら入らなければならぬ。どうもその流れを見ていると、労働省や厚生省の考え方が先行しているのじゃなくて、大蔵省のこの税制の仕組みが先行しているのですよ。  現実に、今統計では、主婦パートは約三百五十万人と言われていますが、これはもう労働法学者の推定では八百万人、日本の労働者の四割が婦人の労働者ですが、その半分近くがパートになっている、八百万人と推定されているわけですね。だから大変な社会問題で、労働問題として解決でき得ないところ、従来の労働法なり労働基準法の観点からはもうパートをとらえ切れないところに実態は来ていると思うのです。  今お話しの五十九年十二月の答申のときから見ますと、日本の社会情勢や経済情勢も欠きぐ変わってきている。ある意味では、今大企業であろうと中小企業であろうと、パート労働者がかなり重要な、企業の一つの主要な部分を占めつつあるという実態にあるし、北欧でもこういう実態はどんどん進んできているわけですね。  だからそういう点では、私は残念ながら、労働法制上の問題が先行しなければならないのに、そういうものが決めている基準は、大蔵省の方は税法は所得税法で決めているのですが、厚生省の方はたしかこれは通達なんですよね。通達であるということは、法律のよりどころは所得税法にあるから、ほかの国民年金国民健康保険の方は通達でいいということになっているんじゃないか、法制上から見ると所得税法が先行しているのですよ。  だから、そういう意味では私は、大蔵省の方々が、この辺で政府税調の動向もにらみながらも、この辺はパート実態というもの、もう九十万円のところで立ちどまっちゃっているたくさんのパート主婦群の実態というものに目を当てて、それと皆さん方が主張される現行の枠組みというものとをどこでどうかみ合わせるかということをもう一段検討いただきたいと思うのですが、いかがでございます。
  29. 大山綱明

    大山政府委員 パートとは何ぞやという定義を見ましても、労働省の定義と、例えば総理府統計局の定義なども違っておるようでございまして、それぞれの定義によりまして、ある者は百四十六万人と言い、ある者は三百九十万人と言うというふうに随分違っております。そのような現状のもとでパートだけを取り上げて、パート税制というようなものをつくれと言われましても、税制というのは先んじて何かやれるものかといいますと、社会経済の実態というものがあってでき上がってくるものでございますので、これはなかなか難しい面がございます。  ただいまも国民年金あるいは健康保険で扶養家族になっている、あるいはどういう手当があるというのが税法の基準に乗っかっているという御指摘がございましたけれども、税は税でございまして、税の定義の上に随分いろいろなものがおぶさってと申しましょうか、おんぶしてきていて、何か税の基準があるから、それでみんなほかのものも律せられてしまうものだから税の方を変えよ、こう言うのは、やや税に過重な重みがかけられ過ぎているような感がいたします。  国民健康保険をどうするか等の問題、あるいは扶養手当をどうするかというような問題というのは、税がいかにあっても別の観点から考えられてもしかるべき事柄ではないか、実はそんなふうにも思うわけでございますが、たまたま同じような基準を採用していらっしゃるということで、何か税だけが一つ悪者と申しますか、いろいろ問題視されているようなところがございますことは、いささか荷が重過まるという感を持つわけでございますが、税制調査会の答申を先ほど引用させていただきましたように、やはり現行の枠組みの中で所得をどういうふうに課税対象に入れていくかというような観点から税としては考えていかざるを得ないと思います。  そういった中で、先ほど来御紹介申し上げておりますような専門小委員会のレポート、こういった工夫をどのように取り入れ、それがパート問題の何らかの解決の一助になればという気持ちも同時に持ちつつ、今後税制調査会において検討される事項を私どもはよく勉強いたしまして、適切な対応をすべきものと考えております。
  30. 小川国彦

    小川(国)委員 私は、税を悪者だけというふうには考えているわけじゃありませんで、税法学者の中には租税国家論というのがありまして、国家というのは租税の上に成り立っているという考え方もあるし、ある意味では、そういう租税のあり方というものは国家の成り立ちの基本じゃないかというふうにも考えるわけですから、それは一概に悪者視をして考えているわけではないのです。ただ、税のあり方といいますかそういうものは、社会情勢なり経済状況なり、そういうものの日々進歩していく実態に合わせて、そういうものの組み方というのはやはりどんどん変えて考えていかなければならないのじゃないかというふうに思うわけです。  特に私は、税収という面から見ますと、今四百万というふうに大山審議官がお答えになった、三百九十万ですか、と言われるパートでございますね、大まかに四百万と見てもいいのですが、その中の八割が主婦で三百万というふうに考えますと、仮にその百万のパートの人が三十万円余計に働かせてもらえば三百億。主婦が一年間で百二十万までパートで働いても配偶者控除は大丈夫ですよとなれば、恐らく皆さん三十万円働くと思うんですね。そうすると、その中から上がってくる税収というものは非常に大きいものがある。一〇・五%ですから、三十万円余計に働いてその一〇・五%、三万円何がしかですね。その税金を納めてもらうと、百万人のパートの奥さんに三万円納めてもらえば三百億、二百万人の奥さんに納めてもらえば六百億の税収になってくると私は思うんですね。奥さんたちにも満足して働いてもらって、九十万までが百二十万まで働けると喜び勇む、中小企業の人にも喜んでもらえる、それでなおかつ国の税収もふえる。  私は、今まで議論したように、大蔵省の皆さんが民間所得実態等から出している、この百二十万までやって配偶者控除の枠を六十三万にしてやった、所得税法二条三十三号のロを変えてあげたということによるマイナスの収入よりも、どうも私どもが推定するこの収入の方が大きく上回るのじゃないか。国の税収から見ても減らないで、なおかつ働いてもらって喜んでもらえる、そういうことは、税を預かる大蔵省の方でやはり前向きに考えていただける問題じゃないのかというふうに思うのですが、その税収の見通しの点はいかがですか。
  31. 大山綱明

    大山政府委員 御提案のような措置をとりますと、税収の減が数百億円ということは、前回でございましたか申し上げたところでございますが、今の先生のお話は、逆にパートの労働者がもう少し働くようになる、それによる税収増が三百億円ぐらい期待できるのではないか、こういう御議論でございます。  私ども、本当にそういうふうになれば大変結構なことだというふうに思いますが、ただ、パートの労働者が九十万円を超えて働くようになる、そういうことはあり得ることだろうとは思いますが、世の中の生産と申しましょうか、生産活動が一定であるということを前提にいたしますと、パート主婦の方で九十万円までの収入しかなかった方が、これから百二十万円までお働きになるということになりますと、またほかのアルバイトの方がその分働かないで済んでしまうとか、あるいは正規の労働者が超過勤務をしないで済んでしまうというようなことも考えられるのじゃないかと思います。  要するに、労働の総量というのが、パート減税なる今の先生の御提案のような措置をとった場合に労働の総量がその分だけふえるという前提をとりますと、三百億円の増収が期待できるということになりますが、労働の総量というのが果たしてそういうふうにふえるものかどうか。今の経済状態などを前提にいたしますと、むしろ労働の総量がそれによってふえるということは余りなく、常勤の雇用者の労働時間がその分だけ減るということに仮にもなりますと、この三百億円というのは本当に入ってくるのか、あるいはこっちで増収になっても、別のところでそれと同額あるいはそれ以上の減収になるというようなこともあり得るのではないかといった問題意識を、ただいまの先生の御質問に対しては私、抱くものでございます。
  32. 小川国彦

    小川(国)委員 大蔵省の方もやはりパート実態をお調べになっていただきたいと思うのですが、私もパート問題に取り組んでいろいろな現場へ行って聞いてみました。どうなっているか。大多数の人は九十万円のところに、吹きだまりじゃありませんけれどもパートの人はそこまで行ってみんなとまっちゃっているんですね。九十万の壁を超えたら大変だというので、そこでみんなとまっている。だから、これが百二十万円までになったら、どっと百二十万円まで皆さん働く人はふえる。その意味では国の税収はふえる。  今までの配偶者控除を受けられたのが三十三万なのに六十三万になった、そのために、今おっしゃるように、そのパートの人が九十万でやめた分は、ほかの人が超勤でやっていたじゃないか、ほかのパートがやっていたじゃないかとおっしゃるのですが、実態を調べてみると、超勤をやる人は大概正規の職員なのです。正規の職員はパートの給料よりも倍も賃金が高いんですよ。だからこそ、その正規の人に残業をやってもらうなら、やはりパートで働いてもらった方がいいということで、そこのところでも、やはり事業者にして考えてみれば、超勤でやってもらうよりパートに働いてもらった方がいいというのが、これは大企業、中小企業を問わず同じだと思うんですね。  それからもう一つは、さっき申し上げたように、これはこういう公式の場所で認めるわけにはいかない話でありますけれども、アングラで、九十万円を超えてしまった、そのところをいろいろ不公正なやり方でもって、実際は百万を超えて働いてしまっているのだけれども、九十万円の枠の中に抑えるようなことをしなければならないというところに追い込められているいろいろなそういうアングラのケースが見受けられるのです。そういうところをもう少し大蔵省実態を調べられれば、百二十万にしたための減収よりも増収の方が上回ると私は思うのです。その点、もう少し大蔵省でも研究をしていただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  33. 大山綱明

    大山政府委員 私どもよく勉強いたしたいと存じます。やや水かけ論的になるような感じがいたしますが、今先生おっしゃいましたことの中に、給料の高い者に超過勤務をさせるよりはパートをというお話がございましたが、仮に給料の高い人の労働崎閥がそれだけ少なくなる、給料が少なくなるということになりますと、税収面でどういうふうになるのかということを先ほどちょっと申し上げたつもりでございますが、なおいろいろな実態につきまして、先生の御指摘の点を勉強いたしたいと思います。  ただ、ちょっと蛇足的で恐縮でございますが、一点だけまた税制調査会の答申を引用させていただきますが、「主婦であっても一定以上の所得があれば相応の負担を求めるのが相当であり」という表現が税調パート課税のところにございます。ある一定以上の所得、相応の収入があれば、主婦であろうが未成年者であろうが、だれであろうが所得税を納めるというのがやはり基本である、その前提を崩して議論するのはいかがかという気持ちがこの税調の答申にあるわけでございまして、今の先生の御提案でございますと、百二十万まで税金がかからないと申しますか、税金は三十万分はかかるわけでございますけれども、扶養親族になる、こういう扱いというのが百二十万という水準まで、そういった税制上のある種の優遇を受けられる水準として適当なのかどうか。所得があるところにある種の課税があるという所得税の基本に立ち返ってみましたときに、その辺の負担を求める水準の適切な金額というのは那辺にあるのか、ちょっとそんな疑問を感じないわけではないものでございますから、一言つけ加えさせていただいたような次第でございます。
  34. 小川国彦

    小川(国)委員 今の点は、私はさっきから申し上げているように、主婦も三十万収入がふえればそれに見合う所得税を納めるので、相応の負担はするという考え方は主婦の皆さんもおっしゃるのですね。その分の税金はお納めして結構なんですと言っているわけであります。これはこれ以上議論してもあれなんですが、ただ私は、一つの社会現象として、恐らく八十万から九十万のパートの人を見たら物すごい割合になると思うのですね。大蔵省に残念ながらそういう統計がこのようにないから、その実態を正確な統計上の数字でつかめてないという、大蔵省もそういう実態ですからあれなんですが、そういう矛盾した社会現象、経済現象、労働市場の現象を税法上もよく見きわめる必要があるのじゃないか、この点、もう少し検討していただきたいと思います。  次に私は、パートの労働者と並んで日陰に置かれている主婦の家内労働、内職の問題についてもう一つ申し上げたいのです。  これは税制の中でもパートよりもっと劣悪な条件に置かれていまして、課税最低限度は年間所得三十三万円の基礎控除までしかありませんから、これはもう三十三万円を超えるとそれこそ配偶者控除がなくなるという状況にありまして、もっとひどい状況に置かれているのです。内職事業者といっても、今化粧品からいろいろな家庭用品から、いろいろな訪問セールスがみな内職事業者ですよということで、実際はセールスマンに雇われているのに皆内職事業者に仕立てられてしまって、そしてこの主婦の方々がやはり働いている。ところが、この場合にはもっとひどくて、事業者なんだからいろいろな経費は見てあげるんだから、三十三万円の基礎控除までですよということで、三十三万円を超えると配偶者控除がなくなるという状況になっているのです。  社会保険診療報酬の所得計算の特例というもので、お医者さんとか歯医者さんが、社会保険診療報酬による事業所得金額についてはいわゆる概算経費率が認められていますね。例えばお医者さんは、社会保険診療報酬が二千五百万円以下のときは社会保険診療報酬の七二%、それから、二千五百万から三千万の人は七〇%プラス五十万とか、三千万から四千万の人は社会保険診療報酬掛ける六二%プラス二百九十万とか、こういうふうに概算経費率を認められているのです。  こういう考え方を内職事業者にも当てはめることができないだろうか。例えば内職の人の収入五十万円以下の人には四〇%とか、百万円までは三五%とか、百五十万円までは三〇%とか、こういうことで、平均で言えば三五%くらいの概算経費率、お医者さんや歯医者さんに適用しているこういうものを基礎控除の三十三万に加えて、例えば百万の場合三十五万とすると六十八万まで認められるということになってくるので、こういう考え方を内職事業者に適用する、こういう考え方はお持ちになれないかどうか。
  35. 大山綱明

    大山政府委員 パートの場合には、給与所得ということで必要経費控除がございません。そのかわり、給与所得控除が定額あるいは率であるわけでございますが、内職は、所得の分類といたしましては、雑所得あるいは事業所得という分類に該当するわけでございます。内職の場合には、その仕事の形態も非常に区々でございます。したがいまして、ものによりまして必要経費がたくさんかかるものもございましょうし、そういったさまざまな形態があるところから、何か一律的に課税されない部分を決めるということになじまないところから、給与所得のような取り扱いがされていないわけでございます。  今具体的にお示しのございましたように、社会保険診療報酬の場合には、確かに租税特別措置として七二%ないし五二%ということで経費率が法定されているわけでございますが、むしろそれは例外的でございまして、その決め方そのものについていろいろな批判がございますことは先生も御案内のところかと思います。そういったように、経費率の法定というものは、経費の額が極めて多岐にわたる、区々であるということから、私どもなじまないと思いますが、事業の種類に応じまして、執行面ではいろいろな工夫をさせていただいているところでございます。  また、内職の労働者の場合にも、その実態によりまして、例えば源泉徴収票が出ておりますとか、給与支払い明細書が出されているというような場合には、給与所得の取り扱いをするといったようなことも行っておりまして、その辺は弾力的に対応し得るところは弾力的に対応しているところでございます。
  36. 小川国彦

    小川(国)委員 今、内職は雑所得で、事業所得だ、ですから、仕事の経費というか、必要経費を見てやることができる、確かに制度上はこういうことになっているのですけれども、現実には、内職事業者の大半の方々を見ると、これはもうほとんど一人なんですよね。事業所じゃないんですよ。自分の家庭が事業所になっちゃってまして、そこからいろいろな物の販売に行く、あるいは家庭の中でやっておる方もおりますけれども経費の出しようがないんですね。せいぜい車の償却かガソリン代ぐらいしかなくて、現実には、本当に主婦パート実態はもう同じ。内職事業者と、たまたま事業者なんて名前をもらっているために、必要経費控除を認められるんだからというんだけれども、ガソリン代ぐらいしか経費の出しようはないというのですね。だから、内職事業者の場合には、三十三万から超えるともう配偶者控除がなくなっちゃうから、そこでストップという、これもまたかなり多数の方々がそういう実態にあるんですね。  ですから、この人たちを救済する方法というようなものは、今実態面でいろいろ工夫している、執行面で工夫しているというお話なんですが、私どもが調査して知る限りでは、実はもうそこのところでそれ以上働けないという人たちがかなり大多数に上っているという実態があるのですね。こういう而も、やはり実態に即して、例えばパート並みでいけば九十万円までですから、私は一つの提案として、概算経費率というものを、お医者さんの方は特例でやっているというんだけれども、そういう高所得の人じゃなくて、こっちの内職事業者こそまさに低所得で、そういう特例を当てはめてほしい人たちじゃないかと思うのですが、そういう実態についても御調査なさって、ひとつ対応を考えていただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  37. 大山綱明

    大山政府委員 内職についていろいろ御指摘のような点、各方面からお話を伺っておりますので、実態に即した課税を行うべきだという点は十分に認識をいたして対応いたしているつもりでございます。  所得の種類というのが給与所得の場合には、申告するということすらできないわけでございますが、内職収入の場合には、事業所得ないしは雑所得ということで、ただいま車の償却ぐらいしか経費といってもないという御指摘もございましたが、いろいろかかった必要経費をある程度差し引きして、お認めして所得計算をするという対応が可能なわけでございます。  いずれにいたしましても、所得の種類を異にいたしておりますので、そこにはおのずから違いが出てくるのはやむを得ないかと存じますが、必要経費率の法定というのは、社会保険診療報酬の例につきまして先ほど申しましたように、ああいう決め方自身が大変無理があるのであろうと思います。そういう無理をまたもう一回この内職についてやるのは適当でないと考えますが、執行面などで、従来からの御指摘の点はよく踏まえまして、先ほども申しましたが、源泉徴収票等のあるものについてはパートと同じような扱いをするとかいうことで、各方面の意見を十分踏まえた対応は今後ともいたしていくつもりでございます。
  38. 小川国彦

    小川(国)委員 まだたくさん議論したいところでありますが、時間が参りましたので、これで終わりたいと思います。
  39. 角屋堅次郎

    角屋委員長 次に、斉藤節君。
  40. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 私は、難病対策、スモンについて厚生省の方々に質問を申し上げたいと思っております。  まず、基本的なことをお聞きしますけれども、スモン病患者の申請者数、認定者数、それから棄却者数はそれぞれ何人なのか、お聞きしたいと思います。
  41. 森仁美

    ○森説明員 スモンの訴訟につきましては、裁判上の和解により解決をするということになっております。ことしの四月十九日現在、提訴患者数が六千四百五十三名、そのうちの九九・一%に当たります六千三百九十三名と和解が成立をいたしております。なお、現在まだ係争中の未和解患者数が六十名、〇・九%ということになっております。
  42. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 棄却者というのはいないんですか。
  43. 森仁美

    ○森説明員 これは棄却ということではございませんで、提訴をいたしまして、鑑定の結果これはスモンではないと判断された方が九名おられますが、この方は訴えを取り下げておられます。したがいまして、ただいまお尋ねの棄却数というのは必ずしも法律上正確ではございませんが、スモンではないと判断された方、その意味であるとすれば九名おられます。
  44. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 わかりました。  では、スモン対策費についてはどうか、お尋ねしたいのです。
  45. 草刈隆

    ○草刈説明員 スモンに関しましては、特定疾患調査研究におきましてスモン調査研究班を設けまして鋭意研究を推進しておるところでございます。その結果といたしまして、患者さんたちの訴えております異常知覚の軽減、それから運動障害の改善に役立つ治療法の開発に進展が見られておるところでございます。今後ともスモンの発生機序や治療法などについて一層の研究の充実を図ってまいりたいと考えております。これまで申し上げたスモンの調査研究については、特定疾患調査研究事業として行っております。また、スモン患者さんの医療費の助成につきましては、特定疾患治療研究の中でそれぞれ対策を講じておるところでございます。調査研究、治療研究相まって計画的にスモンの患者さんたちのために施策を講じておるところでございます。
  46. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 私はスモン対策費についてお聞きしたのですが、さらに多くを答えていただきまして、よかったわけですけれども、そのスモン対策の研究費用並びにその成果、特定疾患でもって助成されて一生懸命やっておられるということはわかりましたけれども、この見通しはどうですか、その辺をちょっと。
  47. 草刈隆

    ○草刈説明員 調査研究及び治療研究におきます各疾患別の経費内訳は、具体的なそれぞれの学問の進展に応じます研究課題、それから患者さんの数の動向、それから患者さん個々に行われる医療の内容に応じましてスモンの関係分だけを取り出すことは大変困難でございますが、昭和六十一年度の特定疾患調査研究の全体といたしましては約十四億円、医療費の助成を含む特定疾患治療研究の全体としては約五十五億円の予算を計上しているところでございます。  今お尋ねのどの程度治療方法の改善に役立ったかということでございますが、現在も約七十二人を超します研究班員の成果のおかげで、じんじんするとか、ひりひりするとか、ちくちくするとか、そういった異常感覚に対する軽減、それから先ほども申し上げましたが、歩行障害などの改善には東洋医学の進展を含めて大変成果を上げているというふうに評価されております。
  48. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 厚生省として把握している難病の数並びにそのうち難病として認定している数は幾つくらいあるのか、その辺、教えていただきたい。
  49. 草刈隆

    ○草刈説明員 厚生省といたしまして、原因が不明で治療方法が未確立てある、かつ後遺症を起こすおそれが少なくない疾病、こういう疾病を特定疾患と称しておりまして、この特定疾患を中心としていわゆる難病対策の推進を図っているところでございます。  お尋ねの特定疾患治療研究事業において医療費の助成を行っている対象疾患の数は、現在二十七疾患でございます。それで、特定疾患治療研究に関する六十一年度予算は約五十五億円とお答えしました。  以上でございます。
  50. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 その二十七疾患のうち、伝染性のものは幾つぐらいありますか。
  51. 草刈隆

    ○草刈説明員 先ほどお答えいたしましたように、特定疾患の原因が不明ということでございますので、起因菌がはっきりしているものは特定疾患から除外されておりますので、原因菌が明確なものは特定疾患の対象にはならないということになります。
  52. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 伝染性のものではっきりしているものは、真菌性のものは入れていないわけでございますね。それでは、いわゆる難病というのは一体何なのですか、ひとつ教えてください。
  53. 草刈隆

    ○草刈説明員 難病というのは医学用語ではございませんで、社会通念的な言葉として時代とともにその内容変化するものであろうと存じますが、昭和四十七年に厚生省が策定いたしました「難病対策要綱」の中で、いわゆる難病の範囲について、「原因不明、治療方法未確立てあり、かつ、後遺症を残すおそれが少なくない疾病」、さらに、「経過が慢性にわたり、単に経済的な問題のみならず介護等に著しく入手を要するために家庭の負担が重く、また精神的にも負担の大きい疾病」というふうに定義しております。また、同じような疾患でも、老人対策とか精神病対策とか精神衛生対策などほかの制度で行われているものは、重複を避けるために難病対策としては取り上げない、こういうこととされております。
  54. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 いわゆる難病というのは、原因がわからないものであると簡単に言ってもいいわけですね。そういうことでわかりましたけれども、この難病対策研究機関は国公私立それぞれどれぐらいあるのか、お教え願いたいと思います。
  55. 草刈隆

    ○草刈説明員 お答えいたします。  特定疾患の調査研究に当たります研究班は四十三班ございます。横断的かつ疾患別に分けておりますので四十三ございますが、これは非常にソフトな考え方でございます。一つの研究班に班長先生を特定疾患懇談会の御意見を通じながらお願いいたしまして一つの課題を与えておりますので、日本全国の学際的な方々を一堂にお集めして進めている研究班でございます。したがって、学者の先生方の評価によりますと、このような学際別の人々が一党に会して一つの目的に調査あるいは研究を行っている班は外国にはない、非常にソフトなものでございますので、各大学、国立病院、それから研究所などを網羅して研究班を組織しております。
  56. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 わかりました。  次はエイズ、このエイズのように国際的な難病――難病だと私は思うのですけれども、じゃ、これは厚生省の認定するいわゆる難病には入っていないわけですね。
  57. 草刈隆

    ○草刈説明員 私たちの特定疾患には入っておりません。
  58. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 これはなぜ入れないわけでございますか。
  59. 草刈隆

    ○草刈説明員 ウイルス性のものということで、感染性の疾患、いわゆる伝染病に入っておりますので、私ども、原因不明ということでは現在のところ特定疾患に入れておらないところでございます。
  60. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 確かに感染性で伝染性でありますので、そういう意味で入っていないのでありましょうけれども、そういうような分け方だけではなくて、エイズのような世界的に問題になっている病気、こういうものは難病には入れられないのかもしれないけれども、では厚生省ではどういうような格好でエイズは取り扱っているわけですか。
  61. 草刈隆

    ○草刈説明員 特定疾患研究班の中では取り上げておらないところでございますが、患者発生状況の調査のほか、患者発生時の感染防止のための留意点の通知、抗体検査体制の整備、治療法、予防法の研究など対策を講じているところでございます。この所管は、私ども保健医療局結核難病感染症課でございます。
  62. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 よくわからないけれども、エイズのような国際的な難病といわれる病気は、厚生省としてはWHOからどのようにして把握するようになっているわけですか。
  63. 草刈隆

    ○草刈説明員 先生御指摘のとおり、これは国際的な関心を呼んでいる感染症でございますので、諸外国状況につきましては、WHO等を通じて報告を得ているところでございます。今度も感染症対策室長をWHOに派遣いたしまして、また新たな情報、それから日本の対策などについて検討するための情報を得てまいるような予定でございます。
  64. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 いずれにしましても、エイズは非常に問題になっておるわけでありますから、これは難病の中には入れてないわけでありますけれども、さらに十分対策を講じていただきたい、そんなふうに思うわけでございます。  では次に、脊髄損傷は難病に含めているのですか、いないのですか。
  65. 草刈隆

    ○草刈説明員 脊髄損傷のように外傷という原因が明確なものは、先ほど申し上げましたように我々の言う特定疾患には含めておりません。
  66. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 このように脊髄損傷症は、外傷によるいわゆる労災ということで起こっているわけでありますけれども、病気が非常に苦しい状況にあるわけでありますから、やはりこれも難病に入れるぐらいなことをやっていただきたいと思うわけでございます。  そこで、別な全体的なことでお聞きしますけれども、一連の難病対策は先取りするような形で取り組んでいっていただきたいと思うのでありますが、いかがなものでしょう。
  67. 草刈隆

    ○草刈説明員 四十七年から難病対策ということで統括して対策を進めさせていただいております。私ども、治療研究あるいは調査研究におきましても、六十年度に比べて六十一年度は五十五億という予算をお願いしておるところでございますし、また調査研究につきましても、私ども、先生方の意見を聞きながら、漏れのないような調査研究を総合的に進めていくつもりでございます。
  68. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 難病対策について五十五億円という大変な研究費が費やされているわけでありますけれども、研究と治療を十分行うために、先ほども特別班を四十三班組まれてやっているということでありますが、国公私立の機関がばらばらに行うのじゃなくて、もっと協力して集中的に取り組めるような制度を確立してはどうかなと思うのですが、どうでしょうか。
  69. 草刈隆

    ○草刈説明員 御指摘のように、難病の患者さんの団体の方々にお会いいたしますと、一般臨床の先生方に難病に関しての正確な知識がまだ行き渡っていないという御指摘を受けているところでございます。私ども、日本医師会の先生方とも協力しながら、一般の開業医の先生方に難病の方々に関する最新の知識を普及啓発するように努力しておりまして、近々日本医師会とまた新たな施策を打ち出すところでございます。
  70. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 さらにやっていっていただきたいと思うのであります。  これは次官にお聞きいたしますけれども、難病対策について、予算面から見てこれでは不十分ではないかと思うのでありますけれども、いかがお考えか、御所見を承りたいと思います。
  71. 熊川次男

    熊川政府委員 先生御指摘のように、確かに難病を抱えている御家族にとっても、また御本人にとっても、これは想像を絶するものがあると思います。しかし、先ほどの先生の御質問、また厚生省課長さんのお答えから、かなり着々努力はしておられることはお酌み取り仰げたのではないかと思います。  長寿社会を迎えて、特に先進国の仲間入りをしている我が国としては、これに取り組むべき問題としては、やはり今お話のありましたとおり、第一には調査研究の充実、そしてまた第二には医療費負担の軽減、第三には医療機関の施設の充実、こういうことが重要だと思っております。  先生が大変御心配くださっております点、また同様な先生もおりますので、厳しい財政事情は御案内のとおりでございますけれども昭和六十一年度予算においても、医療費の公費負担の面から、特定疾患としてまた一疾病を追加させていただく予定になっておりますし、また国立の精神あるいは神経センターというようなものも設立しまして、難病の研究に鋭意取り組んでいるところでございますので、この難病の実態と厳しい財政事情というのを喫水線を引いたのが今回の予算と御理解を仰げたらありがたいと思います。
  72. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 そのような方向でお願いしたいと思うわけでございます。  次は、先ほども厚生省の方からお聞きしましたように、脊髄損傷者、この方々はいわゆる難病に入っていないということでございましたけれども、これはいわゆる労災ということでありますが、この脊損者の方々からの要望が出ているわけでございます。これは一応私も関心を持ったものでありますから取り上げたわけでありますけれども、「労災法改正案に対する修正要望書」、これは議員全部に来たのだと思います。それからそれ以外にも来たのだと思うのでありますけれども、この中で「修正要望事項」というのがございます。  これは労働省関係の方に御質問申し上げるわけでありますけれども、「重度労働災害被災者の労災年金受給者が死亡した場合はすべての遺族に遺族補償年金を支給して下さい。」というような要望があるのでございますけれども、これについてはどのようにお考えなのか、労働省に御説明願いたいと思います。
  73. 松本邦宏

    ○松本説明員 労災保険法の改正につきましては、別途社会労働委員会で今御審議をいただいているところでございますが、今の先生の御質問についてお答えいたしますと、労災保険法は、あくまで労働者の死亡が業務と因果関係がある場合に、その遺族に遺族補償給付をお支払いするというものでございますので、死亡と業務との因果関係が認められない場合には、やはり支給は難しいということでございます。
  74. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 では、認められないわけでありますけれども、一体どういう場合にいわゆる遺族補償というものがされるわけなんですか。
  75. 松本邦宏

    ○松本説明員 今申し上げましたように、業務と死亡との間に因果関係が認められました場合には、その死亡に対して遺族にお支払いをするわけでございます。  それで、脊髄損傷の方が今回要望で出しておられますのは、長期に脊髄損傷でずっと罹病しておった方が亡くなった場合に、大半は、その死亡原因が業務との因果関係がないという形で遺族補償の対象にならないということでございますが、長期に罹病して非常に困る状態にあるので、何とか遺族の方に遺族年金を出してくれということでございます。  ただ、御主張はすべての死亡に対して遺族年金をくれというような書き方をしてございますが、よくよく患者の方とお話をしてみますと、あらゆる死亡原因に対してくれと言っておられるわけでは必ずしもございませんで、例えば脊損の方でございますので、下半身の神経が麻痺しておる。盲腸なんかになった場合ですと、健常者ですと痛みがすぐわかるけれども、脊損になっていると痛みを感じない。それがために手おくれになって、盲腸のために死んだというような場合には、死亡との因果関係を認めてもいいじゃないかというような御主張のようでございまして、現在、例えば一定の腎臓障害のような関係につきましてはかなり脊損との関係がございますので、今でも腎臓で死んだような場合には、やはり業務上の死亡と認定をして支給している場合もございますが、それをもう少し拡大をできないだろうかということのようでございます。  その点につきましては、我々としてお医者さんにお願いをしまして、現在業務上ではないとされておる死亡原因の中でも、医学的に見て業務上として見てもいい場合があるのではないかというような観点から少し御検討いただこうか、こんな感じでおります。
  76. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 次に、こういうことを要求しているのですね。「介護料は現金給付にして下さい。」と、こういうことです。  その理由といたしましては、いろいろ述べているわけですけれども、   現行の介護料制度創設直前の昭和四十五年九月頃、介護料は長期傷病給付一級の在宅重度被災者が、介護のために看護婦などを雇った場合にその実費のうち一万円までを限度として支給する、ということを知りました。こうした支給要件では、夫が発病して他人の介護を受けると、その妻はそれを傍観していられる一だろうか。そんなことでは夫婦の情も失せて遂には意志の疎通を欠いて離婚の元凶になる、と私たちが当局に訴えました結果、昭和四十五年十一月発足と同時に介護料は現行のように本人支給になりました。  昭和六十年十一月発表の『高台被災労働者に対する福祉・援助事業についての調査研究会中間報告』によりますと、在宅介護の充実援護施策として『介護人の派遣制度』を検討していられるようですけれども、これは前述のような夫婦間の意志の疎通を欠き、離婚の元凶という点では同様なので現金給付して下さい。 こういう要望書が出ているのですけれども、これについてどのように考えていますか。
  77. 松本邦宏

    ○松本説明員 現在、介護料と申しますのは、傷病年金あるいは障害年金をもらっておられる方で、現実に家で療養しておられ、実際に介護が必要な方に、年金給付にプラスして介護料というのをお支払いをしているわけでございます。  今回の中間報告でも、実はその考え方は全く変えておりませんで、ちょっとその要望は実は誤解に基づくものだと思っておりますが、我々が考えておりますのは、従来は、年金と今のように必要な方には介護料というものを現金で現にお支払いをしておるわけでございますが、そういう現金給付しかしていなかったわけでございます。しかし、実際は脊損患者の方も高齢化しておりますし、あるいは家族の方も高齢化してまいりまして、単に現金をお渡ししているだけでいいのだろうかということを反省いたしまして、具体的な方策として、そういう方々の家には例えば介護人を派遣するとか、あるいは介護人ともども、高齢になったような方の場合には一定の収容施設に収容するというような形で面倒を見る必要があるのではないかということを検討しているわけでございまして、介護料にかえて今申し上げましたような施策を講じようとしているわけではございません。
  78. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 では、昭和六十年十一月発表の「高齢被災労働者に対する福祉・援助事業についての調査研究会中間報告」というのは、これはそういうことを言っているのではなくて、現金給付は現金給付であるわけですね。そのほかにさらに介護者のそういった派遣とかなんかをやるのだということで、ここで言っていることは誤解であるということでよろしいのですね。
  79. 松本邦宏

    ○松本説明員 まさにそうでございまして、現金給付をとめるつもりはございませんで、それにプラスして今のような施策を講じようということでございます。  ただ、そういった施策をしたときに、その必要経費といいますか、そういうのをその方から改めていただくかどうかというのはまた別の問題でございますけれども、一応今の現金給付という形で渡しておる介護料をとめるつもりではございません。
  80. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 厚生省の方はもう結構でございます。どうもありがとうございました。  では、そういうことで誤解であるということがわかったわけで、大変結構だと思うのでありますけれども、介護料というのは、現金給付で所得または年金の五〇%から四〇%が諸外国では支給されているというのですけれども、諸外国に比べて我が国は非常に低過ぎる。何ぼなんですか、一万円ですか、介護料というのは。     〔委員長退席、新村(勝)委員長代理着席〕
  81. 松本邦宏

    ○松本説明員 現在、月額にいたしまして三万六千五百円をお支払いしております。
  82. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 これはさらに上げてくれという要望だと思うのですけれども、それについてはどうですか。三万六千五百円では足りるのか足りないのか。幾ら高くても構わないのでしょうけれども、その辺はどうなんですか。
  83. 松本邦宏

    ○松本説明員 私どもの考え方といたしましては、傷病年金の場合に紋別がございまして、一級、二級、三級とあるわけでございますが、三級の方々が労働能力ゼロという判断をいたしておりまして、その方に二百四十五日分の年金をお支払いしてございます。一級、二級の方は、労働能力ゼロではなくて他人の介護を要するということでございまして、したがって、日数分ではさらにプラスをしておるわけでございます。  労働能力ゼロといいますか、マイナスの方についてはプラスしておりますから、一般的にはそういう形で介護料を見ておりますが、それに加えて、現実にそうした介護の必要な方に三万六千五百円という介護料をお支払いしているという考え方でございますので、諸外国には名目上確かに高い給付をしているように見えるところもございますけれども、諸外国と比べてもさほど遜色はないというふうに考えております。
  84. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 次の要求でありますけれども、「慰謝料及び退職金の件」というのがあるのです。これも私、よくわからないで質問するのは申しわけないのですが、これは、   六十才以上の給付基礎日額の最高限度額をわが国の賃金構造の水準に照合させて低額に抑えたことは、いかにも合理的であるかのように考えられます。しかし、私たちは身体に重度障害という非常に大きなハンディを背負っており、この面を全く無視して、ただ金額面(稼得能力)だけを対象にした六十才以上の受給者の給付基礎日額の最高限度額の低額な設定は不公平極るものです。なぜなら、六十才以上のわが国賃金構造対象労働者は五体満足で、私たち重度障害者のような身体的、精神的な苦痛は皆無であるからです。  私たちのこれらの苦痛を除去した上での、六十才以上の者が受給している労災年金額の上限を賃金構造の水準と同等にすることであれば、公平ですから異論はございません。が、こうした私たちの苦痛の除去は、実際的には不可能です。詰まるところ、私たちの苦痛に対する代償(慰謝料)が支払われてこそ、六十才以上の賃金構造対象労働者と同年令の私たち労災年金受給者との間に、平等性が成立しますから対等に取扱われても異論はございません。  私たちの苦痛に対する代償が支払われないと、六十才以上の受給者に対する低額な給付基礎日額の最高限度額の設定は、一方的強圧的な大改悪であることを断言して握りません。  それ故、現行の労災補償には慰謝料が含まれていませんから、改正時既に六十才以上の受給者、並びに改正後六十才に到達した受給者に対しては慰謝料に相当するものを支給して下さい。こういう要求なんでございますけれども、これについてはどのようにお考えになっておりますか。     〔新村(勝)委員長代理退席、委員長着席〕
  85. 松本邦宏

    ○松本説明員 労災保険の基本的考え方は、その災害によって失われました稼得能力と言っておりますが、要するに賃金を稼ぐ能力がゼロになる、あるいは減るわけでございます。その分をいわば補てんするという考え方が基本にございますので、我々の保険の中では、今おっしゃられました慰謝料というような、稼得能力に関係のない分については保険としては見ないという考え方で終始してきておりますので、これについては、別途民事損害賠償を求めるというような道もございますので、我々の保険として慰謝料を見るということは難しかろうと思います。
  86. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 いずれにしましても、こういう労災でいろいろ障害を受けた人々の将来といいましょうか、こういったものはどういうふうになっているのですか。いわゆる保険だとか補償、その他傷病年金あるいは障害年金だとかいろいろありますね、こういったようなものはどういう仕組みになって補償されているのか、ひとつその辺を教えていただきたいと思います。
  87. 松本邦宏

    ○松本説明員 労働者の方が事故に遣われますと、まず当面は、亡くなっていない場合、生きておられてけがをされている場合には休業補償というものが出まして、療養しながらその稼得できなかった分については、休業補償というものをお支払いをいたします。脊損のような重度の方でございますと、ある一定の年限が参りますと、それが傷病補償年金という形になりまして、年金でいわば死ぬまで面倒を見るという形になります。  それから、一定の病気が治りますと、治った時点では原則は補償はなくなりますが、障害が残ります。例えば手がなくなった形で残るということになりますと、それは障害補償年金という形で、そのなくなった障害の程度に応じてお支払いをする、これも生きておられる限りお支払いをするということになります。  それから、労働者が亡くなった場合には、遺族の方について、これは遺族が生きておられる限り年金をお支払いする、こういう形になっております。
  88. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 いずれにしましても、脊損者並びに労災でいろいろ障害を受けている重度障害の人々に対して、生活、そういったいろいろの面で、健康であれば、そういう障害を受けなければ、労災がなければ、将来ちゃんと退職金をもらえていい生活ができたかもしれないわけですけれども、そういう損傷を受けたがゆえに退職金もない、そしてそういう補償も十分でないということであれば、やはり大変気の毒なことだと思うわけでございます。そういう意味で、しっかりした対策を行っていただきたいと思うわけでございます。  そこで、次官にお尋ねします。  こういった難病といいますか、労災によって起こった難病患者、大変厳しい状況にあるわけでありますけれども、これから政府としてこういう労災被災者に対してどのように考えておられるのか、その辺の御所見を承って、私の質問を終わりたいと思います。
  89. 熊川次男

    熊川政府委員 ただいまの先生の御質問、また労働省からのお答え、非常に参考になりましたし、また今のようなお話の経過、内容をベースにしまして、さらに労働省などとも鋭意研究、また打ち合わせをさせていただいて、先生本日ここでお示しくださいましたような基本的なスタンスというものをよく理解して、それに合うような方向で努力をすべく研究を進めてみたいと思います。
  90. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 では、以上で終わります。  どうもありがとうございました。
  91. 角屋堅次郎

    角屋委員長 次に、玉置一弥君。
  92. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 農林省の方からお伺いをいたしていきたいと思います。  今回の予備費の中に、災害対策あるいは農業災害の補償制度というものがございまして、毎回、特に共済制度でございますが、見させていただいておりますと、特別会計の繰り入れというのが続いているようでございまして、私の近辺の農家の状況から見て、どうも災害を受ける側がある程度固定をしてしまっている、こういう状況の中でなかなか共済制度に加入をされる方がふえてこないのではないかという感触を受けるわけでございます。特に共済制度そのものの状態を見ましても、例えばそれぞれの特別会計がございますけれども、水稲からいろいろございまして八つの勘定科目に分かれておりますが、これを見てもトータルで赤字になってしまっているという状況でございます。これを考えていきますと、どうも共済制度そのものが一つ所得補償になるようなところがあるんじゃないか、こういう気もするわけですし、品目別、種目別に見ていきますと、特に災害の規模あるいは大きさによって逆に地域格差ができているような感じを受けるわけでございます。そういう点から見て、共済制度のあり方をやはりもっと深く突っ込んで考えていかなければいけないのではないかと思うわけでございまして、こういう観点から御質問をいたしていきたいと思います。  そこで、まず現在の状況でございますが、制度ができましてからの話になるとかなり長い語になるわけでございますから、まず任意加入と強制加入とございまして、その事業によってもいわゆる任意と強制と分かれている、こういうように考えていきますと、それぞれ任意、強制に分けた状態の中で、まず加入状況がどうなっているか、それから共済金の支払いの状況と積立金の状況、これが最終的に現時点でどうなってきているか、この辺についてお伺いをしたいと思います。
  93. 吉國隆

    吉國政府委員 まず、農作物共済の加入状況でございますが、当然加入制をとっておりますものと任意加入制があることは先生御指摘のとおりでございます。当然加入制になっております水稲、麦、蚕繭、この辺につきましては、麦につきましては約七割ですが、水稲、蚕繭につきましては約九割と高い加入率になっておるわけでございます。任意加入の中では、作物の種類によりまして変動がございますが、大家畜につきましては、一般に資産価値も高い、また傷病給付があるということがございまして、乳用牛で九割、肉用牛で七割といったような加入状況になっておりますが、豚につきましては、残念ながら二割程度という加入状況になってわるわけでございます。畑作物につきましては若干上昇傾向にございまして、現在で大体四割近くの加入状況になっております。果樹、園芸施設共済が三割前後にとどまっているという状況でございまして、私どもといたしましては、加入の推進に今後とも引き続き努力をしていく必要があると考えておる次第でございます。  また、損失等の状況でございますが、蚕繭共済、家畜共済、園芸施設共済につきましては、収支は比較的安定をいたしているところでございます。農作物共済と畑作物共済でございますが、これは五十年代に入りましてから御承知のとおり連続して深い冷害が起こったというようなこともございまして、現時点ではなお、御指摘ございましたように政府特別会計に相当な累積赤字がたまっているという状況でございます。  数字を申し上げますと、農業勘定、これは農作物共済と畑作物共済に関します特別会計の勘定でございますが、五十八年度末で約千九百億円の一般会計からの繰り入れ残高を生じておったわけでございます。その後、幸いに五十九年産、六十年産と水稲を中心といたしまして豊作でございまして、共済金、再保険金ともに支払いが大幅に減少いたしております。そういう状況を受けまして、五十九年度の決算で申し上げますと、農業勘定におきましては四百億円を超える剰余を生じまして、これは先ほどの一般会計からの繰り入れ残高が多額に上っておりますので繰り戻しに充てておりまして、その結果といたしまして、五十九年度末で千五百億の繰り入れ残高がなお残っている。それから六十年度決算におきましても、まだ見込みでございますけれども、恐らく前年度と同程度の剰余が発生して繰り戻しができるのではないかと期待をいたしておるところでございます。  その他、果樹が赤字という点で問題になるわけでございますが、四十八年の制度発足以来大きな災害が続いたという事情もございまして、特別会計並びに共済団体ともに連年の赤字が続いておるわけでございます。ただ、五十八年、五十九年は被害が比較的少なかったということもございまして、その両年度について見れば、収支は均衡して若干の黒字という状況になっておるわけでございますが、なお過去の赤字がたまっているというような状況になっておる次第でございます。
  94. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 今のお話を伺いますと、いわゆる農作物共済並びに畑作、そして果樹、この三つが類型的に非常に赤字が大きかったというところでございます。特に前段の部分につきましては強制加入というような形をとっておられまして、畑作と果樹につきましては任意加入、こういうような形になっているわけです。強制加入の中でこれだけに赤字が続いていくというのは料率の問題があるのかな、こういう感じがしたわけですし、逆に任意加入の中で赤字が累積をするということになりますと、加入母体が小さいのではないか、こういうふうな気持ちがあるわけでございまして、それぞれ料率と、それから任意加入の場合には特に加入者をふやしていくためのいろいろな施策があると思いますけれども、従来からどういうふうな観点でこういう方面の加入あるいは料率の政策を進められてきたのか、その辺についてお答えをいただきたいと思います。
  95. 吉國隆

    吉國政府委員 まず、赤字発生と料率との関係についてのお尋ねがあったわけでございますが、料率は、先生も御承知のとおり、過去二十年の被害状況に応じまして保険設計上妥当な額として算定をするということになっておるわけでございます。五十年代に深い冷害によりまして赤字がたまりましたのは、そこで予定されておりました平均的な災害に対しまして非常に深い災害であった、そのため特に再保険を担当しております国の特別会計になかんづく非常に重い負担が集中をした、こういう構造上赤字が累積をしているということでございます。無論全国的には、先ほど申しましたような二十年の被害状況によりまして三年ごとに料率改定をしてまいるという仕組みになっておりますので、そういった状況を反映しながら現時点での料率が設定をされているという状況になっておるわけでございます。  また、任意加入のものについて、御指摘のように加入が低いと赤字が発生するという可能性が高いじゃないかという点につきましては、そういう心配がなきにしもあらずということでございまして、加入推進の方策ということでございますが、果樹につきましては数年来特別のキャンペーン等を進めていく、集団で加入していくためのキャンペーンを進めていくというような措置を講じてきておりますし、また広く共済組織の整備を進めていく、また広域合併等含めてでございますが、そういった組織整備の強化ということにつきましても各種の予算措置を講じてまいっておりまして、そういった組織整備を図りながら農家の理解を得ていくということがございます。  またさらに、制度の内容そのものにつきまして、農業の実態変化をしていくということもございますし、特に果樹につきましては、専業的な農家とそれからそうでない兼業的な農家との間でかなり技術格差がある、そういった状況から、昨年度の制度改正におきましても、危険段階別、農家ごとあるいは地域ごとの危険の発生状況の差に応じまして共済掛金率に差を設けていくというような方式も、組合の選択によってとり得るというような制度を導入いたしております。そういった形で、すべての農家が入りやすいような制度にしていくというようなことも、農業の実情に応じまして工夫を重ねながら加入の推進を図っていく必要があるのではないか、このように考えている次第でございます。
  96. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 今御説明いただいた後段の部分は従来からいろいろ研究されていたようでございまして、いかに被害のない地域あるいは被害の少ない種類に加入していただくかということで母体を広げていこう、こういうことでございますけれども、私の地元だと大体お茶が多いわけでございますが、お茶で例えば霜害に遭うところというのは決まっておりまして、霜害に遣わないところはめったに共済に入らない、そしてそういう制度も要らない、このぐらい大変厳しい主張があるわけでございますが、我々の方から見ますと、一つは、お茶の被害に遭ったということを隠したい、災害に遭うということ自体でそこの地域の産物が非常に価格の低落を招く、こういうことがあるわけですね。  それからもう一つは、逆の場合がございまして、例えばミカンとかああいう果樹に多いわけでございますが、あるいは野菜でもそうでございますが、ある地域がかなりの被害に遭うということになりますと、そこの残りの地域の物が、需要と供給の関係でございますから、当然値上がりをする。被害に遭った地域から見ると、自分たちがこんな被害に遭ったのに向こうはもうけている、こういう裏腹の関係になるわけでございますけれども、この前から、段階的に料率を安くして、被害度の少ないところについては、例えば一年間、二年間、三年間と漸次低減をしていく料率の掛け方とかいろいろあるわけでございますが、被害に遭わない地域でもうけた場合にそこから取れないか、こういうような考え方もございまして、よその被害があったために、そこの値段が高騰して思わぬもうけになるわけですから、できるだけそういうところから何か取る方法はないか、こういうふうな論議が再三あるわけでございます。この辺についてどういうふうにお考えになりますか。
  97. 吉國隆

    吉國政府委員 農業共済の仕組みは、ある意味ではただいま先生がおっしゃったような思想にもある程度立脚していると申せるかと思うわけでございます。と申しますのは、被害が発生をしなかった方は結果的には掛金が掛け捨てになるわけでございまして、被害のあった方に集中的な支払いが行われるという仕組みでございますので、そういったまさにある程度危険分散を図りながら被害のあった方を救済しよう、こういう考え方に基本としては立脚しておるわけでございます。  ただ、先生が今具体的にお話しになりましたことは、価格が被害の結果として上昇した部分をいただいてきて、それを財源として支払いに充てたらどうか、こういうことであろうと思いますが、そういった御提案のシステムというのも全く理論的には成り立たないというふうに申し上げるつもりはございませんけれども、他の地域の被害に関連して値上がりをした部分がどれだけかということを特定させることも技術的になかなか困難じゃないかと思いますし、また、農家個々、地域ごとにいろいろな価格形成が行われている、品種も違ったり市場条件も違うということでございまして、そういった中で累たして値上がり分を召し上げられるという農家の納得が得られるような方式というものができるかということになりますと、正直申し上げて、技術的にはなかなか難しい方法ではなかろうかというふうに考えておるところでございます。  私どもとしましては、やはり共済制度の内容を農家の理解が得られ、また農業の実態に合ったものにしていく、また、それをベースにいたしましてできる限り幅広い農家の御加入をいただけるように、普及推進に努力するということが基本ではなかろうかというふうに考えておる次第でございます。
  98. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 極論を申し上げたわけでございまして、できるだけ加入の、例えば果樹のある品目という形でやった場合、畑作のある品目というふうにやった場合は、それぞれ連帯感を持ってやっていただかないと、ごく一部の地域だけということではとても負担し切れない、そして逆に、ほかの加入されてない方がもうけるという形もありますので、そういう意味で申し上げたわけで、その辺をぜひこれから考えていただいて、共済に入っていない方は丸もうけですから、その辺を何らかの形で抑えていくようなことを考えていかなければいけないと思います。  それから、いろいろな補助金というか、価格安定のための制度があります豚肉、これの加入率が非常に低いわけでございますが、国の制度を活用しながら自分たちのときには入らないということは、これまたおかしな話でございまして、どうもこの共済制度に対して農林省の取り組みの姿勢がちょっと手ぬるいような感じがするわけでございます。そういう意味で、この特別会計の収支の状況から見て悪い部分については早急に手を打っていただいて、できるだけその中で処理ができる、相互扶助ができる、そういうふうな体制をとらないといけないと思いますので、さっき価格のことで極論を申し上げましたけれども、査定しようという気になれば幾らでもできるわけですね。というのは、共済の損害額を査定するわけですから、その逆ができるわけですから、当然できなければおかしい話でございまして、それは極論でございますから言いませんけれども、実際はそういうものでこれだけあるじゃないかという説得でそれぞれの地域の共済加入を進めていただく、こういうふうにお受け取りをいただきたい、かように思います。  天災融資の問題でございますが、天災融資法あるいはその中で激甚災害等いろいろありまして、あるいは自作農維持資金とかこういうようなものが、いわゆる農業災害の補償制度以外の制度ということであるわけでございます。  昭和五十八年でございましたか、日本海中部地震というのがございまして、そのときにそれぞれの地域を視察をさせていただきまして、地元のいろいろな方々の要望から類推をいたしますと、まずその融資の認定を急いでほしいという話が一番多かったわけです。また、特に天災融資法の中の激甚災害の指定は、ある府県の規模でかなり受けなければ指定されない。要するに、被害総額が何千億という大変な数字にならないと適用されない、こういうこともございまして、大変厳しい条件にある、こういうふうに感じたわけです。  まず、その被害認定をどういうふうにされているのか、そして融資の時期的な問題がどうなっているのかという問題、それから、現在例えば天災融資法を受けておられて、再び同じ年度にあった場合、それからもう一つは、返済額が自分たちの収入割合からいくと相当の率になる、ですからこれだけ返済できないよというふうな話になった場合どういうふうにされているのか、この辺についてお聞きをいたしたいと思います。
  99. 吉國隆

    吉國政府委員 被害者に対します金融措置の認定を急ぎ、手続を迅速化するという点についてのお尋ねでございます。  天災資金につきましては、御承知のように天災融資法に基づきます政令指定、そのための被害状況あるいは資金需要の把握という手続がございますし、また、政令施行後は融資機関との間での利子補給契約なり損失補償契約を定めるといったような手続がございます。そういったもので数カ月の期間がどうしても必要ということがございます。そういったもので準備が整いました以後は、迅速に融資の実行ができるように関係機関を指導しておるところでございますし、また、自作農資金につきましても、被害状況の把握、融資枠の設定等に若干の時間を必要といたしますけれども、それらの準備が終了いたしました段階では、できる限り早期に適格認定なり貸し付けの実行が行われるというふうに措置をしてまいっておるところでございます。  融資基準につきましては、天災資金の場合には、被害程度状況によりまして融資基準が定められておりますし、自作農維持資金につきましては、農業経営の安定という面から適正な計画が定められており、またその貸し付けが本当に必要であるということが認定をされれば貸し付けが行われるという仕組みになっておるところでございます。  それから、災害を重ねて受けた場合の扱いという点につきましては、天災融資法の貸し付けの限度額につきまして一定の範囲での追加が可能なような措置が講じられております。  また、既存の負債の償還が大変になるという問題につきましては、そういった方々について償還条件の緩和なりが弾力的に措置されるように金融機関に対して指導を行ってまいっておりまして、金融機関の方としては債権保全という立場もございますので、個々の借り受け者の実情に応じまして必要な償還条件の緩和措置を講じてまいっておるというような状況になっているところでございます。
  100. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 その都度何か相談に応じるような感じがあるわけでございますが、その都度やっていると非常に時間がかかりますので、ある程度基準を明確にしていただいて、こういう場合はこうなるのだという一つのルールをつくっていただきたい。それで、なおかつそこの枠からはみ出た人をどうするか、こういうふうにぜひ対応をしていただきたい、かように思います。  それから、そのときにも話が出ましたけれども、農業だけにかかわらないのですが、一応農業に限定して言いますと、いわゆる農業気象の提供ルート、これは私の地元が特に悪いのかもわかりませんけれども、例えば霜害になるよという情報がなかなか入ってこない、そして制度として確立されていない、こういうふうに思うわけです。そういう意味では、早く手を打てはある程度被害が抑えられるということもあるわけでございますが、この点について何年か前に一度言ったことがありますけれども、その後どうなっているかも含めて、簡単にお答えをいただきたいと思います。
  101. 芦澤利彰

    芦澤説明員 農作物の生産の安定のためには、先生ただいまお話ございましたように、いかに気象情報を的確に把握し、伝達するかということが非常に重要なわけでございまして、私ども気象庁との間で十分連携をとりながら、国のレベルにおいては全国農業気象協議会というものを設置し、また、地方農政局管区レベルでは地域農業気象協議会というのを設置し、さらに、県レベルでは地方農業気象協議会というのを設置しております。     〔委員長退席、新村(勝)委員長代理着席〕 これのメンバーは、農業関係の担当者のほかに、また気象庁等の担当者が入りまして、それぞれのレベルに応じて協議会を開いて、ここで気象情報の把握、あるいは気象の変動に応じてどういうふうな指導をしていったらいいのか、またそういうことの迅速な伝達のためにどのような手を打ったらいいのかというふうなこと等々について協議をし、またその協議に応じてそれぞれの対応をしているわけでございます。  前回、先生たしか五十四年にこの問題についての御質問をなされたかと思いますけれども、その後こういうふうな、特に県レベルにおける地方農業気象協議会の設置に力を注ぎまして、今は四十七都道府県全部でこの地方協議会ができております。ただ、この地方協議会の活動につきましては、やはり冷害その他の被害を受けやすいところでは比較的活発に動いておりますし、被害が、災害が比較的少ないところの活動は、被害の多いところに比べるとやや少ないという傾向にございます。例えば先生の地元の京都では、たしか五十九年には霜害の警報を八回くらい出してそれらの指導もやっておりますし、それぞれ努力しておりますが、これからもまた一生懸命やってまいりたいと思っております。
  102. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 ありがとうございました。  災害でもよく分析をするとかなり防げる部分もあるわけでございまして、私も知らなかったのですけれども、特に日照時間の積み重ねが農作物に非常に影響するということでございまして、これだけ著かったらいいじゃないかと思ったらそうではなくて、延べの時間と温度だと、こういうことでございますから、ある程度長期予報が冷害にかなり影響するのではないか、こういうふうにも思うわけでございまして、そういう面で、やはり長期予報を含めて伝達を徹底していただくような御指導をぜひお願いしたいと思います。  農林省関係につきましては、一応これで終わらせていただきますので、ありがとうございました。  続きまして、大蔵省関係に入っていきたいと思います。  実は毎年――毎年といいますか、年に数回でございますが、本院並びに参議院におきまして、国税庁職員及び税関職員の人員増加の決議というのが行われてきております。これは政務次官も参加をされておりますのでよく御存じだと思いますけれども、ところが何年たっても人員がふえてこない、これが現在の状況でございます。そこでもう一度、この今の人員増加ができない状況のままいくとどうなるか、むしろそういう話をぜひ御認識をいただきたい、かように思うわけでございます。  現在の、例えば税関を例にとってみますと、昭和五十年から昭和六十年に至るまでの外国船の入港状況、これで見ますと、昭和五十年を一〇〇にいたしますと一一四%、これが飛行機になりますと、昭和五十年を一〇〇にいたしますと一三九%という形にふえてきております。そして、入国の旅客の数でございますが、これが昭和五十年を一〇〇にいたしますと、昭和六十年が、これは統計では全部出ておりませんので二一〇くらいというふうに見ていただければいいかと思いますけれども、このように状況変化をしてまいっております。  そして、通関のいろんな数字がございまして、例えば輸出あるいは輸入の申告が行われておりますけれども、この件数をこれまた指数であらわしますと、輸出の場合のいわゆる申告件数といいますか、これが対五十年で比較をいたしますと一九一という指数になっている。そして、輸入の場合が一八三という指数になっております。ついでに申し上げますけれども、これまた非常に社会悪事犯というのがふえてきておりまして、これは麻薬の密輸でありますとか、最近は非常にピストルが多いわけですけれども、こういうものが非常にふえてきておりまして、これが、同じく対五十年で比較をいたしますと、二三六という数字が出てまいります。それから、輸出、輸入の総額でございますが、これは二三〇くらいですね。もっと、二百四十幾つ、二五〇%くらい。総額では二・五倍という数字が出ております。  また、国内の、いわゆる国税庁なんかの方に参りますと、国税の場合には、徴税金額国民所得の伸びとともに伸びてまいりますからなかなか比較できないわけでございますが、例えば申告所得者の数、これが昭和五十年が四百六十二万人ということでございました。これは昭和五十八年までしか出ておりませんけれども、約七百万人ということで、率としてはかなり伸びてきております。国税職員が、昭和五十年当時五万二千四百四十人、昭和五十八年、五万二千八百四十一人、こういうことで職員の伸びが一〇〇・七。だから〇・七%しか伸びていない、こういう形になっております。そして一人当たりの納税者数といいますか、申告所得者の数でいきますと、昭和五十年は八十八人に一人の国税職員という割合でございましたが、今は百三十二人に一人という割合になってきている、そういうことでございます。  職員の数で同じく税関職員の数字を見てみますと、昭和五十四年、これがピークでございまして、八千七十八名という数字でございます。それ以降はどんどんと減少しておりまして、六十一年の定員は一応七千七百六十三名ということで、むしろ減少をたどってきておる、こういうことになっております。  こういう状態でございまして、これは単なる数字の比較でございますが、実際に申告の中身がどうなってきているか、あるいは取り扱う物品がどうなってきているか、こういうことを考えていきますと、この数字以上に隠されてより複雑なものがあるわけでございまして、一人当たりの業務の多様化といいますか複雑化、こういうものが実際職場の中にあるというお話を聞いております。  こういうことを考えていきますと、今の人員配置で本当にどこまでフォローできるのか、逆にこういう心配が我々に起きてくるわけでございまして、機会あるごとにいろいろなお話をさせていただいておりますけれども、一向にそれらしき動きがない。  職場の中でどんな意見があるかということで聞いてみますと、要するにもう仕事が忙しくてたまらない、一言で一言えばこういうことでございます。綿密な仕事ができないけれども、それができないままに少なくとも件数だけはこなさなければいけない、こういうことになっております。それから、ある程度わかりながら、やはり手をつけた部分だけ一応綿密に調査をする、そして手がつけられない部分についてはもう目をつむらざるを得ないという状況だ、こういうことでございます。それから、これは人間としてでございますが、忙しさに追われて、職場の雰囲気が他人とのおつき合いがなくなってきているという面もございますし、あるいは疲労が蓄積をする、こういう面から考えて、精神面あるいはいわゆる体の面から見ても健康管理上非常に問題が大きくなってきている、こういう意見が出されております。  我々が心配いたしますのは、これからまだまだ業務量がふえてくる、そういうふうに思われるわけでございまして、こういう場合に本当に、今国全体としては国家公務員の定数削減、一応一〇%をめどにやっていこうという動きの中ではございますけれども、果たしてこういう職場をほっておいていいのかというような問題意識を持つわけでございまして、まず大蔵省、そして続いて総務庁に、今全般申し上げましたけれども、これに対してどういうふうに対応されてきたか、お聞きをいたしたいと思います。
  103. 佐藤光夫

    ○佐藤(光)政府委員 まず、お話が税関から始まりましたものですから、私の方からお答えを申し上げさせていただきたいと思いますが、最近十年間における業務量の推移等につきましては、先生御指摘のとおりでございます。  やや繰り返しになりますが、旅客数は最近十年間で、五十年と六十年の間でございますが、二・二倍、輸出の許可件数が同じく一・九倍、輸入の許可件数が同じく一・八倍というようなことで、押しなべて倍ぐらいに業務量がふえているという状況かと思います。  それから、これまた御指摘のとおり、仕事の中身が非常に複雑になってきておるということも事実でございます。輸入の場合で申し上げますと、コンテナで入ってくるというような品物がふえておりまして、なかなか検査も思うに任せないというようなこともございますし、輸出の対象になる品目が非常に複雑なものになっているということもございます。あるいは銃砲、覚せい剤等の社会悪物品の水際での防御に対する社会的な関心も非常に高まっておるというようなこともございまして、単に量のみならず、質の面においても複雑化してきておる、こういうことはおっしゃるとおりでございます。  一方、定員の方も、御指摘のとおり、五十年と六十年を比較いたしますと、私ども税関全体で八千六十人から七千八百十三人ということで、二百四十七人、約三%ほど減少をいたしておるわけでございます。  こういうふうに仕事の量が多くなり質が複雑化し、反面人が減っておるという状況に対処しておまえたちはどうやってきたのか、こういう話に御質問があるわけでございますけれども、幾つかのポイントに重点を置いて対処をしてまいったということになろうかと思います。  一つは、思い切って仕事に軽重をつけまして重点化していく。昔の仕事のやり方が平板だったというわけでは必ずしもないのですけれども、こういう状況でございますから、プライオリティーをつけまして仕事の重点化を図る。例を申し上げますと、同じような貨物が継続的に輸入されるという場合には包括審査制ということで、一回チェックすればその都度チェックするのはやめようというようなことが一つの例でございますが、そういう意味での重点化でございます。     〔新村(勝)委員長代理退席、委員長着席〕  それからもう一つは、人間の手を煩わせなくても機械でやれるようなものは機械でやるということで、鋭意電算化を進めてまいっております。特に航空貨物につきましては、輸出、輸入両面にわたりまして電算化をいたしまして、できるだけ人力を省くというようなことをやっておりますし、社会悪物品の面ではエックス線の検査装置等動員をいたしまして、機械を活用していくということもやっておるわけでございます。  三番目に、事務量が増大していると申しましても、地域的にあるいは仕事の種類によってばらつきがあるわけでございますので、できるだけ、ふえておる種類の仕事あるいはその地域に、比較的そうでないところから人を持ってくると申しますか、人員の再配置ということも行ってきておるような次第でございます。今後ともそんな努力を行いながら適正な税関事務の遂行に努めてまいりたい、かように思っておる次第でございます。
  104. 塚越則男

    ○塚越政府委員 国税庁の関係でございますが、事務量については先生お話しのとおりでございます。昭和四十九年度から昭和五十九年度までの推移を見ますと、申告所得者数が一・四倍、法人数もやはり一・四倍の増加となっておるのに対しまして、国税庁の定員は、この間五万二千三百十三人から五万二千八百四十一人ということで、五百二十八人の増員、一%未満の増加でございます。  国税庁といたしましては、課税対象が増大する、それから経済取引が複雑化し、広域化し、また国際化するといったようないろいろな面での事務量の増加がございます。これに対処いたしまして、より一層適正かつ公平な税務行政の実現を図るために、従来から定員の確保に努力をいたしますと同時に、事務運営の合理化、効率化ということに努めてきたところでございます。  例えば税務調査でございますが、これを例えば高額、悪質重点というようなことで重点化していくということ。また、納税環境の整備ということでございますが、記帳の定着化でございますとか青色申告の育成、あるいは広報とか相談を通じます税知識の普及あるいは租税教育の充実といったような問題でございます。また、地方税当局あるいは関係民間団体、税理士会等との協力関係を確保いたしまして、いろいろな形で御協力をいただく。また、内部体制の整備ということで、機械化できるところは機械化をしてまいるというようなことに一層の努力を払ってまいる所存でございます。  また、定員の関係につきましては、従来から先生のお話のように国会で附帯決議をちょうだいいたしております。国税庁職員の増員については、その業務の困難性に加えて歳入官庁としての性格にかんがみ、厳しい定員事情の中にありましても相応の御配慮をいただいてきていると考えております。  今後とも適正、公平な課税の確保を図るために事務の合理化、効率化等の各般の努力をいたしますとともに、国税職員の増員につきましては、厳しい行財政事情のもとではございますけれども、累次の附帯決議の御趣旨を踏まえまして、関係各方面の御理解を得て、実態に即して必要な措置がとられますよう努力をしてまいりたいと思っております。
  105. 菊地徳彌

    ○菊地説明員 お答え申し上げます。  ただいま大蔵省の方から、税関、国税職員について、業務の増、それから合理化といいましょうか、事務の効率化、合理化の点について御説明がありましたが、私ども毎年そういう大蔵省の要求側の御意見を聞きまして、実情を十分踏みしめてそれなりの配慮をしてきたつもりでございます。  ちなみに、定員管理について少し申し上げますと、先生御指摘ありましたように、かねてから公務員の総数については抑制に努めるという片側国民の要請がございます。その中で行政の各分野を見渡しまして、合理化、効率化のできる分野については定員削減を進めていく。片側、おっしゃるように行政需要が非常にふくらんでいきます、変わって増加していく、そういう分野については増員ということで重点的に配置をしていく。言ってみますと、行政需要の消長に合わせまして定員を再配置していく、こういうのが基本的な考え方でございます。  今お話の出ました国税職員、それから税関職員につきましては、業務量の増が片側ございますのは十分聞いております。それから国会の附帯決議等るるございます。それも承知してございます。それからあわせて毎年の増員については、ただいま大蔵省の方からお話がございましたが、十分吟味しながらそれなりの措置はしてきたつもりでございます。
  106. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 今行政改革に合わせてやっているのは、いわゆる総定員法ということで総枠規制なんですよ。総枠でございますから、中での変動には十分対応していいはずでございますので、これをまず間違いないようにお願いしたいと思います。  それから、大蔵大臣は毎回、まず隗より始めよということを言われます。今まではそうだなと思ったのですけれども、今の状態から見て、もう限度に来ていると思うわけですね。と申しますのは、今国税並びに税関、両方とも年齢構成が大体四十五歳から五十七、八歳というところに集中をしている。だから、あと三、四年たちますと、非常に有能なベテランの方がどんどんやめていかれるという状態で、合ふやしておかなければその対応ができない。税関職員なり国税職員は、採用してすぐ使えるかというと、まず考えられないわけですね。だから、ある程度長期的に見た人員配置、人員計画を組んでいかないと能力として低下をする、この心配をしているわけです。納税者の側から見たら、低下してもいいではないかというのはあるのですけれども、こんなことを言っていいのか知りませんけれども、しかしやはり国としては困ると思うのですよ。そういう面から考えて、総枠規制はありますけれども、他省庁から、あるいは大蔵省の印刷局なり造幣局なり本省内部なり――そういうところからはなかなか回せないと思いますけれども、やはり適材適所で人を見きわめて引っ張ってくるなりということも考えていかなければいけないと思います。  それから、人員構成からいきますと、ちょうど私たちの年代、三十二、三歳から四十歳くらいの人が非常に少ない。三十前くらいの方が多いわけですね。そういう構成になっておりますから、絶えず平均化した能力を持っていく、そういう人員配置を考えていかなければいけない。そうでないと、能力からいって適材適所に配置できなくなる、やはり養成をしながら使っていくという仕事でありますから、総枠規制ということだけではなくて、絶えず前向きに取り組んで追いかけていかないと、四、五年たったら本当にどうなるか知りませんよ。ぼつぼついろいろな間接税の話も出ておりますし一間接税をやめて何もしないというならいいですけれども、そういうことも当然考えておられると思います。そういう状況の中でございますから、ぜひ長期的に人員の育成、そして配置というものを考えていただきたいと思います。  これをまとめてお答えいただきたいと思いますが、政務次官、いかがですか。
  107. 熊川次男

    熊川政府委員 財政再建の折、先生の御示唆に富む、また重要な点、大変感銘深く拝聴いたしました。  特に税務職員一人に対する経費といいましょうか人件費といいましょうか、そういうものと、一人ふえたために上がる税収の率、こういうものは最近の例などを見ますと非常に大きいわけですから、こういう面からいくと、先生が若干問題があるかもしれないがと言いながらも述べられた増員というのは、税収に非常に大きくかかわるというのが実態でございます。  また、国際国家として、社会的に悪影響を及ぼす麻薬あるいは銃砲等いろいろのものを水際で処理しない場合、いかに一般家庭に悲劇をもたらすかということは、最近の数多い事例でよくわかっているわけで、税関当局の人員の充足化、事務の効率化あるいは機械化、さらには御指摘のありましたような専門化ということもございますので、今御指摘いただいたような御意見を十分路んまえて、その御趣旨を裏切らないように努力していくつもりでございます。
  108. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 時間が来ましたので終わりますけれども、これはいわゆる徴税だけの問題でなくて、通関業務に関して諸外国から日本に対して今苦情が出ているわけですね。通関手続が非常に複雑だ。これは簡素化していこうという動きがございますが、通関にかかる時間が非常に長いので、これをなるべく短くしてほしい。逆に、意地悪されているという認識が諸外国にあるわけですね。そういう面から考えてみても、これから日本が取り組もうとしている需要拡大を輸入によって、これは中曽根さんがおっしゃっていますけれども、本当にできるかどうか知りませんが、手続上の問題くらいは早く解決していかなければいけないと思うわけでございます。人は同じで仕事は二・何倍にもなっているという状況の中で、通関業務を簡素化しただけではとても対応できないと思いますから、ぜひ適正なる人員、人材の配置をお願いして、質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  109. 角屋堅次郎

    角屋委員長 次に、中川利三郎君。
  110. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 通産省の汚職事件に発展しました撚糸工連事件は、新たに政界にも波及して、国民の注目するところになっております。これらの過程で動いたと言われる金は、言ってみれば国からの融資の流用でありますが、今回の事態について大蔵政務次富はどのような見解を持っていますか、簡単にお答えいただきたいと思います。
  111. 熊川次男

    熊川政府委員 先生御案内のとおり、現在司法関係当局でお調べ中でございます。  民主主義の大前提として、三権分立を始め、特に基本的人権を尊重しつつ、また客観的な真実も追求しなければならない、この二つのレールを平行に、パラレルに充実しなければならないので、今進展を慎重に見守らせていただきたいと思います。
  112. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 それでは、通産省にお伺いいたします。  私の手元には、石川県の撚糸工業組合が五十九年七月に発行している「二十年のあゆみ」というものがございます。その中の二十八ページには非常に興味あることが書かれておりまして、「磯谷前撚工連専務談」として、「今なら話せる秘話」というのを出しておるわけであります。日米繊維問題をめぐって撚糸の要求がついに通ったという経過について、彼が話している非常にリアルな生々しい記述がございます。  例えば、「小田週事長らは撚工連事務所に泊まり込み陣頭指揮」をしたこと、あるいは「主力産地代表も各々の選出国会議員に対し強力な働きかけをおこなった」こと、あるいは「四十六年十月、奥田敬和、安田隆明両先生のご紹介で、撚工連小田副理事長及び土田副理事長と事務局が同道し早朝、目白台の田中角榮通産大臣(当時)の私邸を訪問」したこと、そして、「五十八条規制設備は申すまでもなく五十八条に入っていない設備や、中小零細の未組織の弱い立場の業界の設備も対象にして欲しい」と願ったこと、それから、「田中通産大臣は熱心に耳を傾け、メモにあった板より機、Wツイスター、合ねん機に二重の赤丸が符せられた。」とか、「結果は織機、ねん糸機は言うに及ばず、板より、Wツイスター、合ねん機、レース編機、丸編、横編、トリコット、ミシン、仕上機、裁断機、染色、精練機、サイジング、組紐、細巾織機など、五十八条適用外機種の買い上げ決定は快挙であった。」そして、「業界救済に果した稲村先生の役割は大変大きかった。」  こういうようなことがざっとリアルに書かれておるわけでございますが、お聞きしたいことは、日本撚糸工連に対する設備共局廃棄事業は昭和四十九年から始まっているわけでありますね。この「三十年のあゆみ」に書かれているのを見るまでもなく、初めに一部政治家と撚糸工連側が通産省へ強力に働きかけ、つまり圧力をかけていった。そういうことがきっかけとなっていったという印象を免れ得ないと思いますが、通産省、いかがですか。
  113. 江崎格

    ○江崎説明員 我が国の繊維産業は、構造的な需要の低迷、それから先進国におきます保護貿易主義の台頭、あるいは発展途上国からの追い上げというような状況の中にございまして、非常に厳しい環境の中にございます。こうした環境の中で、撚糸業者を含めまして、繊維産業全体の方々が相当な危機意識を持って、業界の構造改善あるいは事業の転換の推進に努力しておられると理解しているわけでございますが、こうした努力の中で、業界の方から通産省の担当部局などに対しまして積極的に意見をお伺いしたいというお申し出がございまして、意見を交換するということは私ども行政を進める上でも重要なことと思っておりまして、日米繊維協定締結後の四十年代の後半におきましても関係業界と意見交換があったということは、恐らくそのとおりであろうと推察されます。  それから、政治家の方々からの通産省への圧力という御指摘がございましたが、この点につきましては、過去のことでございまして、正式な記録が残っているわけでもございませんので、そのようなことがあったかどうかということは私ども正確にはわかりませんが、ただ、一般的に申し上げまして、繊維対策に非常に深い関心を持っておられます国会議員の方々と、そのときそのときに問題になっております懸案事項につきましていろいろな機会に意見交換をするということは、一般的にはあり得るかと思います。
  114. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 積極的に意見交換したとか、一般的な意見交換や陳情やそういうのを受けたという問題ではないでしょう、これは。政治家に対してもそういう記録がありません、とんでもない話ですね。  それならお聞きしますが、そのほかこの「三十年のあゆみ」には、電気ガス税の大幅軽減問題について、当時そのような状況がなかったにかかわうず、通産省からわざわざ情報を含めて、早く陳情しなさい、こういう電話連絡を受けたり、また、一たん見込みなしとしてあきらめていたものさえ、一部政治家の努力で特例措置適用となった経緯について、それにかかわった政官の人脈を含めて、ここの三十二ページにはまさにリアルに書かれているのですね。これはどうですか。簡単でいいですよ。
  115. 江崎格

    ○江崎説明員 電気税の軽減措置につきましては、この軽減措置は三年ごとにその見直しを行うことになっておりまして、この措置の対象業種であります撚糸業におきましても、こうした見直しの時期に通産省に対しまして相応の要請を行ったということはあると思います。
  116. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 それも当たり前のことでやられたということなんですね。しかし、この秘話に書かれていることは、当時通産省のエネルギー庁におりました篠島某という課長ですね、この人物がだんだん出世して、しまいには繊維行政の政策責任者になった、生活産業局長の重職になったという経緯をずっと掲げて、「縁は異なもの」と書いてあるのだな。通産省の組織機構に対してではない、この個人に対して「縁は異なもの」といえば、その下につくのは「味なもの」ということになるな。そういう間柄で、そのためにどれだけ助かったかということが非常にリアルに書かれておるのですね。ですから、そういう答弁でごまかしているところに今の問題があるわけでありますが、時間がありませんから、次に進みます。  例えば板より機の共同廃棄事業の見直し機運について、撚工連が制度存続のため通産省へ働きかけている。このことは総会の議案資料の中にも出てくるのです。総会の議案資料は、私、ここに持っています。一般事項についての報告書ですね。その資料は、今言ったような一般事項として、小田らの国会陳情や関係機関への要請行動を、極めて丹念に、異常と思えるくらい、毎日のように、毎日ではないけれども一カ月何十回にわたってやっている。通産大臣と会ったとか、生活局長と会ったとか、中小企業庁へ行ったとか、まあまあよく執拗にといいますか、そういうものをちゃんとまとめて書いてあるわけですね。  もう一回通産省にお聞きしますが、板より機の共同廃棄事業の見直し機運に対する撚工連及び政治家から日常的に働きかけがあったのかどうか、先ほどの答えではもう答えが出ていると思いますけれども、いかがですか、明らかにしていただきたいと思います。
  117. 江崎格

    ○江崎説明員 設備の共同廃棄事業というのは、業界団体が主体になりましてみずからの構造改善を実現しようということで行う事業でございまして、そういう事業をやろうという場合に、必要に応じまして事業実施に関する積極的な要請を通産省に行うということは当然あり得ることだと思います。五十七年度の板より機の設備廃棄事業に関しましても、同様な業界の要請というのは通産省に行われたというふうに承知しております。
  118. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 通産省の役人が逮捕されているんですよ、政治家もそうですけれども。六十三回、二百六十六万円も六本木のクラブで飲み食いした。しかも先ほどの篠島何がしという者は、好みとしてフカのひれ酒が大変おいしかった、ここまで言っているんですよ。  次に進みますが、法務省にお聞きいたします。  撚糸工連の政界工作について、マスコミの報道によりますと、その背景には閣僚経験のある有力代議士の秘書が仲介の労をとったとも書かれていますね。しかも、その仲介の労に当たっては数百万円の政治献金がなされたとも報道されています。撚糸工連から依頼を受け、同僚議員に目的を達するために働きかける、しかもその裏には金が動いているとしたならば、受託収賄の幇助罪やあっせん収賄罪に該当すると思いますが、いかがでございましょうか。
  119. 原田明夫

    ○原田説明員 お答え申し上げます。  お尋ねの件につきましては、現在捜査中の事件に関するものでございまして、その内容にわたる事柄につきましてはこの段階で答弁いたしかねますので、その点、御了承いただきたいと思います。
  120. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 一般的にはどうですか。
  121. 原田明夫

    ○原田説明員 一般的という点でございますけれども、いずれにいたしましても具体的事案に関連することでございますので、現在捜査中の状況でございますので、ある一定の事実を仮定して、それについて犯罪の成否ということについてお答え申しますことは差し控えさせていただきたいと思います。
  122. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 それでは重ねてお伺いします。  国民の検察に対する期待というものは、伊藤検事総長が常々言っていますように、巨悪を眠らせない検察、それに期待しているわけですね。今回の捜査に照らして総長が言うところの巨悪とは、職務権限だとかいろいろな壁がありますが、それを狭く狭く解釈することじゃなくて、国民が納得する結論を導き出すことだと思うのですね。巨悪を眠らせないということは、そういうことを言うのじゃないのか。その辺についてはいかがでしょうか。
  123. 原田明夫

    ○原田説明員 お答え申し上げます。  現在、検察当局におきましては鋭意事案の真相究明のための努力を続けておると承知しております。所要の捜査を遂げた上、法に照らして事案に応じた適正な措置をとるものと考えております。
  124. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 巨悪を眠らせないということを、ただ単なるスローガンや看板に終わらせないことを心から期待したいと思います。  それでは、自治省にお伺いいたします。  撚糸工連の政界工作は数億円にも上ると言われております。しかも、これらの工作資金はすべて裏金だと言われます。受け取った方も裏金として処理している疑いが非常に強うございます。そこで、念のためお聞きいたしますが、昭和五十七年から五十九年の間で、撚糸工連から寄附を受けた政治家がいるのかどうか。もう一つは、撚糸工連から寄附を受けているにもかかわらず届け出をしていない場合は、政治資金規正法違反の疑いが強いと思いますが、この点はいかがですか。
  125. 中地洌

    ○中地説明員 先生も御指摘のように、政治資金規正法によりますと、国会議員の方々あるいは三千数百にも及ぶ政治団体がその収支の状況を記載した収支報告書を提出するということになってございます。自治省におきましては、その要旨を公表するとともに、その原本を供覧しているところでございます。したがいまして、その具体的な寄附の事実関係につきましては、その政治家名あるいは政治団体名を特定されない限り、調べることが大変困難でございますので、御了承いただきたいと思います。  それから次に、寄附を受けたにもかかわらず、収支報告書に記載しなかった場合ということでございますが、政治資金規正法第十二条第一項あるいは第十九条の七第一項によりますと、特定公職の候補者及び政治団体の会計責任者は、収支報告書にその収支について総額あるいは自治省令で定める項目別の金額等を記載することとされてございますが、その収支報告書に記載すべき事項を記載しなかったりあるいは虚偽の記入をした場合には、政治資金規正法の二十五条第一項に、「五年以下の禁錮又は三十万円以下の罰金に処する。」という規定がございます。
  126. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 少なくとも、たくさんあるけれども、今非常に特定されているのですね。二、三十人の政治家だとかいうことですから、それに対する政治団体がどういう団体を持っているかぐらいのことは、おたくは調べればすぐわかると思うのです。しかし、あなたは警察じゃないから、そういう任務がおありかどうか別といたしまして、そういう段取りはやはりするべきだと思うのですね。  そこで、重ねて法務省にお聞きするわけでありますが、撚糸工連の政界に対する工作は、今言いましたとおり、公表された文書だけ見ましても異常とも思える激しさでございます。これは国から融資を受けておる撚糸工連の小田らが、国の資金を政治家や官僚の買収に流用したものでございまして、先ほど言いましたように巨悪を眠らせないためにも、法務省は、職務権限の関係を含めて、政界工作の実態やその資金の流れを徹底的に解明すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  127. 原田明夫

    ○原田説明員 お答え申し上げます。  ただいまお尋ねの件でございますが、検察当局におきましては、種々国会で御論議されていることについても承知していると存じますし、与えられた条件のもとで最善の努力を尽くすというふうに考えております。
  128. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 終わります。
  129. 角屋堅次郎

    角屋委員長 これにて各件の質疑は終了いたしました。  この際、暫時休憩いたします。     午後六時十四分休憩      ――――◇―――――     午後六時三十九分開議
  130. 角屋堅次郎

    角屋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和五十八年度一般会計予備費使用調書び各省庁所管使用調書(その1)外二件の承諾を求めるの件及び昭和五十八年度一般会計予備費使用調書び各省庁所管使用調書(その2)外二件の承諾を求めるの件について、一括して討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。上草義輝君。
  131. 上草義輝

    上草委員 私は、自由民主党・新自由国民連合を代表いたしまして、ただいま議題となりました昭和五十八年度一般会計予備費使用調書び各省庁所管使用調書(その1)外五件の承諾を求めるの件について、承諾を与えることに賛成の意思を表明するものであります。  予備費は、憲法規定されているように、予見しがたい予算不足に充てるために、内閣の責任において支出するものであります。しかしながら、重要な支出増額などの場合には、国会補正予算提出し、その審議を受けることは当然のことであります。  昭和五十八年度予備費等について見ると、一般会計予備費使用調書(その1)においては、衆議院議員総選挙及び最高裁判所裁判官国民審査に必要な経費として二百六十億八千万円余、河川等災害復旧事業等に必要な経費として百八十二億一千五百万円余、児童扶養手当給付費等の不足を補うために必要な経費として百二億二千七百万円余など七百二十一億九千百万円余の使用総額となっております。  また、特別会計予備費使用調書(その1)においては、農業共済保険特別会計農業勘定における再保険金不足を補うために必要な経費として九億七千三百万円余など三特別会計の合計十七億一千万円余の使用総額となっております。  また、特別会計予算総則第十一条に基づく経費増額調書(その1)においては、国立病院特別会計療養所勘定における退職手当の不足を補うために必要な経費増額として十八億四千八百万円余など六特別会計の合計八十八億二千六百万円余の経費増額の総額となっております。  次に、一般会計予備費使用調書(その2)においては、雇用保険求職者給付に対する国庫負担金不足を補うために必要な経費として四百九十五億二千三百万円余、国民健康保険事業に対する国庫負担金不足を補うために必要な経費として二百三十億一千八百万円余など一千百二十五億一一千万円余の使用総額となっております。  また、特別会計予備費使用調書(その2)においては、食糧管理特別会計輸入食糧管理勘定における調整勘定へ繰り入れに必要な経費として八百五十六億九千五百万円余など四特別会計の合計一千七百十五億五千五百万円余の使用総額となっております。  また、特別会計予算総則第十一条に基づく経費増額調書(その2)においては、郵便貯金特別会計における支払い利子に必要な経費増額として九百二億四千八百万円余など二特別会計の合計九百六十八億三千三百万円余の経費増額の総額となっております。  これらの予備費使用は、衆議院総選挙等に必要な経費国民健康保険事業に対する国庫負担金不足を補うために必要な経費などであり、予見しがたい予算不足に充てるための予備費支出であります。  今後とも予備費支出に際しては、憲法、財政法の規定に基づき、厳正に実施すべきであります。  以上をもちまして、私の賛成討論を終わります。(拍手)
  132. 角屋堅次郎

    角屋委員長 渡部行雄君。
  133. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました昭和五十八年度一般会計予備費使用調書び各省庁所管使用調書(その1)、(その2)の各件について、不承諾の意思を表明いたします。  予備費の大半は、衆議院議員総選挙及び最高裁判所裁判官の国民審査経費を初め災害復旧、退職手当等であり、これらについては承諾できます。しかし、予備費使用の中には承諾できないものがあります。  その主な内容について申し上げますならば、レーガン大統領来日に伴う警備活動経費については、本予算の警備費で対応できたものと思えるものであります。また、中曽根総理の東南アジア諸国訪問の諸経費は、訪問日程の時期から見て当初予算に組み込めたにもかかわらず、予備費使用したことには承諾できません。  さらに、生活保護費不足を補う経費は、第二次オイルショック後の景気対策が生活困窮者をふやしたことから計上したもので、これは政府の総合経済政策の失敗を露呈したものと言わざるを得ず、我が党は承諾するわけにはまいりません。  また、引き続きスモン訴訟の和解、損害賠償に要する支出の件ですが、これまた予算編成時に予見される経費で、当然当初予算に計上すべきであります。そして、国は誠意を持って患者に対し謝罪の意思を明確にすることであります。  最後に、予備費の計上は、憲法八十七条に基づき予見しがたい予算不足に充てるのに必要な額に限るべきであり、不必要に多額の予備費を計上することは、いたずらに行政による恣意的支出を招き、予算国会による議決制度を損なう危険があることを指摘しておきます。  特に、予備費事後承認国会審議に際しては、必要資料の提供等について政府側の協力が不十分であり、以後、このようなことがないよう強く要望して、反対討論を終わります。(拍手)
  134. 角屋堅次郎

    角屋委員長 斉藤節君。
  135. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました昭和五十八年度一般会計予備費使用調書び各省庁所管使用調書等の承諾を求めるの件について、不承諾の意思を表明するものであります。  本来、予備費というものは、財政民主主義の立場からいっても、全く予見しがたい自然災害費等に限るべきであると考えます。予算内容国民の前にできるだけつまびらかにするためにも、巨額な予備費の計上は決して好ましいものではありません。  この観点に立って、以下、予備費に関して基本的な問題を指摘し、不承諾理由といたします。  第一は、予備費補正予算の財源化しているということであります。  各年度予備費予算は三千五百億円、過去五年間の補正時の減額は平均千六百億円で、残額は六百億円、使用額は千六百億円、当初予算に占める使用額の割合は四六%。このように使用率は五〇%を割っており、それに近い額が補正時に減額されているのであります。  第二には、政府が政策見通しの誤りを予備費で賄おうとする安易な姿勢であります。一  国民健康保険事業、老人福祉事業等において多額の予備費が計上されておりますが、これらはまさに政策見通しの甘さに起因するものであり、残念ながら、つじつま合わせに予備費が使われていると言わねばなりません。さらに、スモン訴訟における和解の履行に必要な経費についても同様であります。今後、検討を要求せざるを得ません。  以上、不承諾の意を表明し、反対討論といたします。(拍手)
  136. 角屋堅次郎

    角屋委員長 玉置一弥君。
  137. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 私は、民社党・国民連合を代表し、ただいま議題となりました昭和五十八年度一般会計予備費使用調書び各省庁所管使用調書(その1)外二件、昭和五十八年度一般会計予備費使用調書び各省庁所管使用調書(その2)外二件について、承諾に賛成の討論を行います。  昭和五十八年度一般会計予備費使用調書び各省庁所管使用調書(その1)の使用総額は七百二十一億九千百二十八万三千円で、その主なものは、豪雨等による突発的災害を受けた河川等の復旧経費、国籍要件が撤廃され、児童扶養手当の受給者の急増に処するための経費等であります。  また、昭和五十八年度一般会計予備費使用調書び各省庁所管使用調書(その2)の使用総額は一千百二十五億二千四十九万六千円で、低所得者を対象とした国民健康保険国庫負担金を補う経費、第二次石油危機後の長期低迷による雇用保険求職者給付の増加に対する経費等で、憲法及び財政法の「予見し難い予算不足に充てる」とする予備費便途目的を逸脱していない当然の経費と思われます。  特別会計予備費についても、保険事故増加に伴う農業共済の再保険金を補う経費郵便貯金支払い利子に充てる経費等で、国民生活に密着したものであります。  予算で事前に措置すれば予備費使用に至らなかったと思われるものもありますが、予備費使用承諾できるものであります。  なお、予備費使用に当たっては、細心の配慮での執行を要望し、賛成討論を終わります。(拍手)
  138. 角屋堅次郎

  139. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 私は、日本共産党・革新共同を代表し、ただいま議題となりました予備費承諾案件のうち、昭和五十八年度一般会計予備費使用調書(その1)及び(その2)、同特別会計経費増額調書(その1)の三件について、不承諾の意を表明いたします。  これらの予備費使用等の主なものは、退職手当、スモン等賠償金、災害経費、社会。保障関係費、選挙経費などであり、その使用目的、予備費使用理由はおおむね妥当なものであり、承諾できるものが多数あります。  しかしながら、本予備費使用等のうちには、我が党が認めることのできないものが含まれております。例えば、総理のASEAN諸国歴訪は、レーガン戦略に沿った我が国の軍備増強、軍事分担に対するASEAN諸国の了解を取りつけるためのものであり、また、ウィリアムズバーグ・サミット出席では、ヨーロッパへのパーシングⅡの配備断行を各国首脳に迫るなどレーガン大統領の代弁の役割を果たし、さらに訪中では、中国を西側陣営に引き込む事実上の日中米の提携強化を行い、アジアと世界の平和に逆行するもので、到底承諾できるものではありません。  昭和五十八年度特別会計経費増額のうち、国土総合開発事業調整費は、実際に使われている事業の中には地域住民に役立つものが少なくありませんが、他方、大企業本位の大型プロジェクト推進のためのものが含まれており、また、目未定で当初予算に計上し年度途中に配分するやり方は、国会予算審議権を狭める不当なものであります。  以上のような不当な予備費使用を含むこれら調書承諾することに我が党は反対であります。  昭和五十八年度特別会計予備費使用総調査(その一)、(その2)及び同特別会計経費増額調書(その2)の三件は、支払い利子等の義務経費等々であり、使用目的、予備費使用等の理由で特に問題がないと認められるので承諾いたします。  以上で私の討論を終わります。(拍手)
  140. 角屋堅次郎

    角屋委員長 これにて討論は終局いたしました。
  141. 角屋堅次郎

    角屋委員長 これより採決に入ります。  まず、昭和五十八年度一般会計予備費使用調書び各省庁所管使用調書(その1)及び昭和五十八年度特別会計予算総則第十一条に基づく経費増額調書び各省庁所管経費増額調書(その1)、以上両件について採決いたします。  両件はそれぞれ承諾を与えるべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  142. 角屋堅次郎

    角屋委員長 起立多数。よって、両件は承諾を与えるべきものと決しました。  次に、昭和五十八年度特別会計予備費使用調書び各省庁所管使用調書(その一)について採決いたします。  本件は承諾を与えるべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  143. 角屋堅次郎

    角屋委員長 起立多数。よって、本件は承諾を与えるべきものと決しました。  次に、昭和五十八年度一般会計予備費使用調書び各省庁所管使用調書(その2)について採決いたします。  本件は承諾を与えるべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  144. 角屋堅次郎

    角屋委員長 起立多数。よって、本件は承諾を与えるべきものと決しました。  次に、昭和五十八年度特別会計予備費使用調書び各省庁所管使用調書(その2)及び昭和五十八年度特別会計予算総則第十一条に基づく経費増額調書び各省庁所管経費増額調書(その2)、以上両件について採決いたします。  両件はそれぞれ承諾を与えるべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  145. 角屋堅次郎

    角屋委員長 起立多数。よって、両件は承諾を与えるべきものと決しました。  なお、ただいま議決いたしました各件についての委員報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  146. 角屋堅次郎

    角屋委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕      ――――◇―――――
  147. 角屋堅次郎

    角屋委員長 次に、昭和五十八年度決算外二件を一括して議題といたします。  大蔵省所管日本専売公社国民金融公庫日本開発銀行及び日本輸出入銀行について審査を行います。  この際、お諮りいたします。  本件審査のため、本日、参考人として日本たばこ業株式会社社長長岡貴君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  148. 角屋堅次郎

    角屋委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
  149. 角屋堅次郎

    角屋委員長 次に、大蔵大臣概要説明、会計検査院の検査概要説明日本専売公社国民金融公庫当局、日本開発銀行当局及び日本輸出入銀行当局の資金計画、事業計画についての概要説明を求めるのでありますが、これを省略し、本日の委員会議録に掲載することといたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  150. 角屋堅次郎

    角屋委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。    昭和五十八年度大蔵省主管一般会計歳入決算並びに大蔵省所管の一般会計歳出決算、各特別会計歳入歳出決算及び各政府関係機関決算書に関する説明  昭和五十八年度大蔵省主管一般会計歳入決算並びに大蔵省所管の一般会計歳出決算、各特別会年歳入歳出決算及び各政府関係機関決算書につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、一般会計歳入決算につきまして申し上げます。  昭和五十八年度の収納済歳入額は四十九兆六千二百九億九千九百三十五万円余でありまして、これを歳入予算額と比較いたしますと七千七百九十二億千八百九万円余の増加となっております。  以下、歳入決算のうち、主な事項につきましてその概要を申し上げます。  第一に、租税及印紙収入でありますが、その決算額は三十一兆二千七百三十三億千八百三十九万円余で、これを予算額と比較いたしますと四千六百九十三億千八百三十九万円余の増加となっております。これは、所得税及び法人税等において課。税額の伸びが見込みを上回ったこと等によるものであります。  第二に、公債金でありますが、その決算額は十三兆四千八百六十三億三千九百九十二万円余で、これを予算額と比較いたしますと三千三十六億六千七万円余の減少となっております。これは、租税収入等が見積りより増収となることが見込まれたこと等により、公債の発行額を予定より減額したことによるものであります。  以上のほか、専売納付金一兆六十六億二千八百五十三万円余、官業益金及官業収入八十億三千九百九万円余、政府資産整理収入八百二十九億三千六百八万円余、雑収入三兆七十五億二千九万円余、前年度剰余金受入七千五百六十二億千七百二十二万円余となっております。  次に、一般会計歳出決算につきまして申し上げます。  昭和五十八年度歳出予算現額は十一兆三千二百六十九億三千五百四十一万円余でありまして、支出済歳出額は十一兆二千五百七十一億三千九百六十三万円余、翌年度繰越額は三百七十九億七千七百三十五万円余でありまして、差引き、不用額は三百十八億千八百四十二万円余となっております。  以下、歳出決算のうち、主な事項につきましてその概要を申し上げます。  第一に、国債費につきましては、国債整理基金特別会計へ繰り入れるため八兆千六百七十五億五百五十一万円余を支出いたしましたが、これは、一般会計の負担に属する国債の償還及び利子等の支払並びにこれらの事務取扱費の財源に充てるためのものであります。  第二に、政府出資につきましては二千百五十五億円を支出いたしましたが、これは、海外経済協力基金等への出資であります。  第三に、経済協力費につきましては四百八十九億六千二百二十八万円余を支出いたしましたが、これは、開発途上国等に対する食糧増産等援助等のためのものであります。  この支出のほか、食糧増産等援助費につきましては、相手国の国内事情等のため三百七十億五千七百六十五万円余が翌年度へ繰越しとなっております。  第四に、決算調整資金へ繰入につきましては二兆二千五百二十四億九千二百七十一万円余を支出いたしましたが、これは、昭和五十六年度一般会計の決算上の不足を補てんしたことに伴い、決算調整資金から国債整理基金へ繰り戻すために必要な資金を、決算調整資金に繰り入れたものであります。  以上申し述べました経費のほか、科学的財務管理調査費、国家公務員共済組合連合会等助成費、国庫受入預託金利子、公務員宿舎施設費、国民金融公庫補給金、特定国有財産整備費、特定国有財産整備諸費及び国民生活安定対策等経済政策推進費として七百四十四億五千六百三十万円余並びに一般行政を処理するための経費として四千九百八十二億二千二百八十一万円余を支出いたしました。  なお、以上の支出のほか、公務員宿舎施設費につきましては九億千九百七十万円余が翌年度へ繰越しとなっております。  次に、各特別会計歳入歳出決算につきましてその概要を申し上げます。  まず、造幣局特別会計におきまして収納済歳入額は百八十六億四百八十九万円余、支出済歳出額は百八十九億八千五百三十五万円余でありまして、損益計算上の利益は二千四百四十九万円余であります。  この会計の主な事業である補助貨幣の製造につきましては、二十五億五千万枚、額面金額にして千七百六十九億五千万円を製造し、その全額を発行いたしました。  次に、印刷局特別会計におきまして収納済歳入額は七百五億九千九百三十二万円余、支出済歳出額は六百三十億五千五百五十四万円余でありまして、損益計算上の利益は八十六億千七百四十六万円余であります。  この会計の主な事業である日本銀行券の製造につきましては、三十一億五千五百万枚、額面金額にして十七兆七千七百億円を製造し、その全量を日本銀行に引き渡しました。  以上申し述べました各特別会計のほか、資金運用部、国債整理基金、外国為替資金、産業投資、地震再保険及び特定国有財産整備の各特別会計の歳入歳出の決算の内容につきましては、特別会計歳入歳出決算によって御了承願いたいと存じます。  最後に、各政府関係機関決算書につきましてその概要を申し上げます。  まず、国民金融公庫につきましては収入済額は三千八百六十五億千二百九十四万円余、支出済額は三千七百七億五千三百七十八万円余でありまして、損益計算上の損益はありません。  この公庫の貸付けにつきましては、九十五万件余、金額にして二兆六千七十九億六千百十七万円余を貸し付けました。  このほか、住宅金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、北海道東北開発公庫、公営企業金融公庫、中小企業信用保険公庫、医療金融公庫、環境衛生金融公庫、沖縄振興開発金融公庫、日本開発銀行及び日本輸出入銀行の決算の内容につきましては、それぞれの決算書によって御了承願いたいと存じます。  以上が昭和五十八年度における大蔵省関係の決算の概要であります。これらの詳細につきましては、さきに提出しております昭和五十八年度歳入決算明細審及び各省各庁歳出決算報告書等によって御了承願いたいと存じます。  なお、会計検査院の検査の結果、不当事項として税務署における租税の徴収に当たり過不足があったこと等の御指摘を受けましたことは、誠に遺憾に堪えないところであります。これらにつきましては、すべて徴収決定等適切な措置を講じましたが、今後一層事務の合理化と改善に努めたいと存じます。  何とぞよろしく御審議の種お願い申し上げます。     …………………………………    昭和五十八年度決算大蔵省及び日本専売公社についての検査の概要に関する主管局長説明  会計検査院  昭和五十八年度大蔵省の決算につきまして検査いたしました結果の概要説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項七件であります。  検査報告番号二号は、租税の徴収に当たり徴収額に過不足があったものであります。  これらの徴収過不足事態は、課税資料の収集、活用が的確でなかったため収入金等を把握していなかったり、法令適用検討が十分でなかったため税額計算等を誤っていたり、申告内容の調査が十分でなかったため経費等の額を誤って所得計算していたり、納税者が申告書等において所得金額、税額計算等を誤っているのにそのままこれを見過ごしていたりなどして徴収額に過不足を生じていたものであります。  また、検査報告番号三号から七号までの五件は、資金運用部資金の貸付額が過大になっているものであります。  これらは、貸付先の市町において、予算に定める地方債の限度額を超過して貸付けを受けていたり、実施していない事業の事業費を貸付対象事業費に含めていたり、貸付けの対象とならない事業費を貸付対象事業費に含めていたり、貸付対象事業の財源として受け入れた寄附金等を貸付対象事業費の財源に算入していなかったりなどしていたものであります。  また、検査報告番号八号は職員の不正行為による損害を生じたものであります。  国税の徴収及び収納の事務に従事した職員が、王子税務署及び京橋税務署で、納税者から滞納している国税の納付のため提供を受けた現金の一部又は全部を日本銀行に払い込まないで領得したものであります。  なお、本件損害額については、昭和五十八年十二月、全額が不正行為者から返納されております。  次に、昭和五十八年度日本専売公社の決算につきまして検査いたしました結果を説明いたします。  検査の結果、特に違法又は不当と認めた事項はございません。  以上、簡単でございますが、説明を終わります。     …………………………………    昭和五十八年度決算国民金融公庫日本開発銀行及び日本輸出入銀行についての検査の概要に関する主管局長説明  会計検査院  昭和五十八年度国民金融公庫日本開発銀行及び日本輸出入銀行の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法又は不当と認めた事項はございません。     …………………………………    昭和五十八年度日本専売公社収入支出決算審に関する説明  昭和五十八年度日本専売公社収入支出決算書につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、たばこ事業の概況につきまして申し上げます。  昭和五十八年度の製造たばこ販売数量は三千百三十三億本余、金額にして二兆七千二百六億八千六百六十万円余であり、予定に比較いたしますと、数量においては十五億本余の減少、金額においては百三十六億六千八万円余の増加となっております。  また、葉たばこの購入数量は二十一万六千トン余、金額にして三千四百五億八千百五万円余であり、予定に比較いたしますと、数量において一万千トン余、金額にして四百三十四億九千二百五十六万円余の減少となっております。  次に、塩事業の概況につきまして申し上げます。  昭和五十八年度の塩販売数量は、一般用塩百四十六万九千トン余、ソーダ用塩万百八十八万七千トン余、金額にして合計九百三十億七千十万円余であり、予定に比較いたしますと、数量において百十八万五千トン余、金額にして二百二十一億九百二十七万円余の減少となっております。  また、塩の購入数量は、国内塩九十二万トン余、輸入塩六百四十万二千トン余、金額にして合計六百四十二億八千二百三万円余であり、予定に比較いたしますと、数量において百二十四万九千トン余、金額にして二百二十六億八千四百三十一万円余の減少となっております。  次に、決算の内容につきまして御説明申し上げます。  まず、収入支出につきまして申し上げます。一昭和五十八年度における収入済額は二兆八千二百七十一億二千百七十七万円余であり、収入予算額二兆八千二百九十億九千八百四十六万円余に比較いたしますと十九億七千六百六十八万円余の減少となっております。  これに対しまして支出済額は二兆七千四百五億三千四百八十万円余、翌年度に繰り越した額は百九十二億四千九百九万円余、合計二兆七千五百九十七億八千三百八十九万円余であり、支出予算現額二兆九千二十一億六千七十八万円余に比較いたしますと、差引き、不用額は千四百二十二億七千六百八十八万円余となっております。  次に、損益計算につきまして申し上げます。  総収益二兆八千三百二十九億千七十二万円余から、総損失二兆七千三百九十七億八千四百十八万円余を控除した利益は九百三十一億二千六百五十五万円余であります。この利益につきましては「昭和五十九年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置等に関する法律」第五条の規定により三百億円を臨時国庫納付金として納付し、残額六百三十一億二千六百五十五万円余を日本専売公社法第四十三条の十三の二第一項の規定による利益積立金として整理しております。  最後に、専売納付金につきまして申し上げます。  専売納付金は、小売人等に売り渡した製造たばこにつき小売定価に数量を乗じて得た額に納付金率を乗じて得た額から、納付したたばこ消費税の額を控除した額丸千九十一億四千七百四十万円余及び日本専売公社法附則第四項の規定により納付する額九百七十四億八千百十三万円余の合計一兆六十六億二千八百五十三万円余であり、予定額九千八百二十七億六千七百十四万円余に比較いたしますと二百三十八億六千百三十九万円余の増加となっております。  以上が、昭和五十八年度日本専売公社の決算の概要であります。  何とぞよろしく御審議の種お願い申し上げます。     …………………………………    昭和五十八年度日本専売公社の決算および業務の概要  日本専売公社  昭和五十八年度日本専売公社の決算および業務の概要を御説明申し上げます。  まず、収入支出決算について申し上げますと、収入済額は二兆八千二百七十一億二千百七十七万円余、支出済額は二兆七千四百五億三千四百八十万円余でありまして、差引き収入超過は八百六十五億八千六百九十六万円余となりました。  これを損益計算面から申し上げますと、総収益は二兆八千三百二十九億一千七十三万円余、総損失は二兆七千三百九十七億八千四百十八万円余、差引き純利益は九百三十一億二千六百五十五万円余となっております。  なお、昭和五十八年度におきましては、「昭和五十九年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置等に関する法律」の第五条第一項の規定に基づき、当年度の純利益のうち臨時国庫納付金として三百億円を昭和六十年三月三十一日までに国庫に納付することといたしております。  つぎに、たばこ事業および塩事業について、それぞれの概要を区分して、御説明申し上げます。  まず、たばこ事業でございますが、昭和五十八年度の製造たばこ販売数量は三千百三十三億本余でありまして、これは予定に比べ十五億本余、また、前年度に対しては三十二億本余それぞれ減少となっております。  たばこ販売面におきましては、さきに御承認頂きました製造たばこの小売定価の改定を昭和五十八年五月一日に実施するとともに、その後の需要減退を早期に回復するべく、積極的な販売促進活動および新製品の効果的な投入に努めてまいりました。  また、たばこ製造面におきましては、たばこ工場の製造設備の改善と作業の効率化によって生産性の向上を図り、あわせて供給の円滑化に努めてまいりました。  以上の結果、損益計算におきましては、総売上高は二兆七千二百十九億二千四百四十五万円余、売上原価は六千八百八十六億九千七百六十五万円余、差引き売上総利益は二兆三百三十二億二千六百八十万円余となり、これから販売費及び一般管理費一千六百七十三億三千六百八十七万円余、専売納付金一兆六十六億二千八百五十三万円余、たばこ消費税七千七百八十一億一千三百九十九万円余を控除し、さらに営業外損益六十億五千七百九十一万円余を加えた純利益は八百七十二億五百三十一万円余となりました。  これは予定に比べ四百四十二億四百五十七万円余の増加、また、前年度に対しては二百十七億二千七百十九万円余の減少となっております。  なお、専売納付金は予定に比べ二百三十八億六千百三十九万円余、また、前年度に対しては二千四百十四億九千五百七十五万円余それぞれ増加となっております。  つぎに、塩事業について申し上げますと、昭和五十八年度の塩販売数量は一般用塩で百四十六万トン余、ソーダ用塩で五百八十八万トン余、合計七百三十五万トン余でありまして、これは予定に比べ百十八万トン余の減少、また、前年度に対しては六万トン余の増加となっております。  以上の結果、損益計算におきましては、総売上高は九百三十億七千十万円余、売上原価は七百二億六千三百四十五万円余、差引き売上総利益は二百二十八億六百六十五万円余となり、これから販売費及び一般管理費百六十九億三千百九十七万円余を控除し、さらに営業外損益四千六百五十五万円余を加えた純利益は五十九億二千百二十四万円余となりました。  これは予定に比べ三十一億百十三万円余の増加、また、前年度に対しては一億九千九百十九万円余の減少となっております。  なお、昭和五十八年度決算検査報告におきまして、会計検査院より不当事項として指摘をうけたものはございませんでしたが、今後とも予算の効率的運用等につきましてなお一層の意を用い、事業の運営をはかって参りたいと存じます。  以上簡単でございますが、昭和五十八年度の決算および業務の概要について御説明申し上げました。  なにとぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。     …………………………………    昭和五十八年度業務概況  国民金融公庫  国民金融公庫昭和五十八年度の業務の概況についてご説明申し上げます。  昭和五十八年度のわが国経済は、輸出の増加や年度後半における民間設備投資の回復により、緩やかながらも着実な回復を示しました。しかし、個人消費支出が伸び悩み、民間住宅投資も低調に推移したため、国内需要、とくに個人消費支出に依存する割合の大きい中小企業の景況は、緩やかな回復にとどまり、中小企業の経営環境は依然として厳しい状況にありました。  このような状況におかれた中小企業者に対して、当公庫は、貸付限度の引き上げ、貸付利率の引き下げ等により、中小企業金融の円滑化のために積極的に対処するとともに、板橋支店を新設しまして中小企業者のためにいっそうの便宜を図ってまいりました。  昭和五十八年度の貸付につきましては、当初計画三兆五百四十億円に対しまして、二兆六千七十九億六千百十七万円余の実行をいたしました。  貸付種類別に貸付の実績を申し上げますと、普通貸付は、六十四万七千件余二兆四千二百七十四億八千二百十九万円余、恩給担保貸付は、二十二万八千件余一千四百四十九億四千三百三十六万円余、記各国横担保貸付は、三十四件二百七十六万円余、進学資金貸付は、七万六千件余三百四十四億三千六百九十九万円余となりました。  なお、普通貸付の貸付実績のなかには、生鮮食料品等小売業近代化資金貸付、流通近代化資金貸付等の特別貸付が、一万二千件余四百四十五億九千百六十万円、小企業等経営改善資金貸付が、十八万四千件余四千百四十一億七千七百四十八万円含まれております。  一方、五十八年度において貸付金の回収が、二兆四千九百三十五億五千九百五十九万円余、滞貨償却が、二十億九千九百八十四万円余ありましたので、五十八年度末現在の総貸付残高は、二百七十万五千件余四兆七千七百四十五億五千八百三十八万円余となり、前年度末残高に比べますと、一千百二十二億百七十二万円余二・四パーセントの増加となりました。  貸付金の延滞状況につきましては、五十八年度末において延滞後六カ月以上経過したものが、一千四百十六億九百十四万円余でありまして、総貸付金残高に対する割合は、三・〇パーセントとなっております。  昭和五十八年度の貸付に要した資金は、二兆六千七十七億三千二百九十三万円余でありまして、その原資は、資金運用部からの借入金一兆八千二百六十億円、簡易生命保険及び郵便年金特別会計からの借入金一千二百十億円、一般会計からの借入金百四十七億円のほか、貸付回収金等六千四百六十億三千二百九十三万円余をもってこれに充てました。  受託業務につきましては、環境衛生金融公庫からの受託貸付は、五十八年度における貸付の実績が、七万件余一千六百四十七億八千七百八十一万円余、回収額が、一千九百二十億百八十九万円余となり、五十八年度末貸付残高は、四十三万二千件余六千三百四十八億一千八百八十三万円余となっております。また、労働福祉事業団からの受託貸付の五十八年度における貸付の実績は、九十二件一億二千七十二万円となっております。  最後に、五十八年度収入支出決算及び損益の計算について申し上げます。  まず、収入支出決算について申し上げますと、収入済額は、三千八百六十五億一千二百九十四万円余、支出済額は、三千七百七億五千三百七十八万円余となりました。  次に、損益の計算について申し上げますと、貸付金利息等の総益金は、四千三百十四億一千四百十九万円余、借入金利息、事務費、滞貨償却引当金繰入等の総損金は、四千三百十四億一千四百十九万円余となりました。この結果、利益金は生じなかったので、国庫納付はいたしませんでした。  以上をもちまして、昭和五十八年度の業務概況のご説明を終わらせていただきます。     …………………………………    日本開発銀行昭和五十八年度の業務概要  昭和五十八年度における日本開発銀行の業務の概要についてご説明申しあげます。  一、先ず、五十八年度の資金運用計画は、当初計画として一兆一千三百四十億円を予定しておりましたが、その後総合経済対策の一環として資源エネルギー、技術振興及び国民生活改善に対し、各百億円合計三百億円の追加が行われ一兆一千六百四十億円の貸付計画となりました。  これに対し、五十八年度中の運用額は、貸付実行額が一兆一千五百四十億一千五百万円となっております。  これの項目別内訳は資源エネルギー五千二百七十五億九千万円、技術振興一千二百八十一億六千万円、海運一千二億一千万円、都市開発一千三百十一億四千六百万円、地方開発一千二百一億六千万円、国民生活改善一千三十四億五千万円、その他四百三十二億九千九百万円であります。  以上の五十八年度の運用額の原資といたしましては、資金運用部資金からの借入金八千百四十億円と貸付回収金等三千四百億一千五百万円をもってこれに充てました。  二、次に五十八年度の貸付運用の特色を申しあげますと、  (1) 資源エネルギーについては、原子力発電推進のための融資、石油及びLPG備蓄タンクに対する融資、水力発電・液化ガス発電等電源多様化をはかるための融資、都市ガスの高圧、高カロリー化設備に対する融資、石油代替エネルギーの利用の促進のための融資の他、資源エネルギーの有効利用と産業の省資源・省エネルギー等を促進するための融資を積極的に打つたこと  (2) 技術振興については、わが国自主技術の開発促進および技術水準の向上をはかるため、引き続き産業技術振興融資、電子計算機振興融資等を打つたこと  (3) 海運については、貿易物資の安定的輸送確保の観点から計画造船による外航船舶の建造に対し引き続き融資を打つたこと  (4) 都市開発については、都市交通の整備改善、市街地の開発整備及び流通機構の近代化に寄与する事業等に対し引き続き融資を行ったこと  (5) 地方開発については、九州、四国、中国、北陸の四地方の開発のため引き続き融資を行うとともに、地方都市圏の機能整備、地方適地産業の育成、工業の適正配置の促進について特に留意したこと  (6) 国民生活改善については、安全対策設備に対する融資制度を拡充し、医薬品及び農薬の安全性試験施設に対し融資を行うとともに、公害防止の推進のための融資及び食品供給体制の近代化のための融資を打つたこと  (7) その他については、特定産業の構造改善のための融資を拡充するとともに、引き続き「工場分散」、「海洋開発」及び「福祉関連機器振興」等の融資を打つたこと  などがあげられます。  三、次に五十八年度における既往貸付の回収は、外貨貸付金の回収十億三千九百七十一万円余を含めまして六千六百五十九億三千百二十六万円会となっております。  この他、五十八年度は、貸付金の債権償却十億五百八万円余を打っております。  この結果、五十八年度末における貸付残高は、外貨貸付が回収完了となり、国内資金貸付のみの六兆九千三百六十六億六百四十二万円余となりました。  貸付金の延滞状況につきましては、昭和五十八年度末におきまして弁済期限を六カ月以上経過した元金延滞額は三百三十億五千九百三十一万円余で、前年度末に比して五十二億一千七百七十四万円余の減少となっております。貸付残高に対する割合は、〇・五パーセントとなっております。  四、また、五十八年度においては、新規の外貨債務の保証はなく、年度末保証残高は一千八百七十億七千八百五十九万円余となっております。  五、最後に、五十八年度決算の概要について説明いたしますと、六百十五億九百八十五万円余の純利益を計上し、このうち三百四十六億八千三百三万円余を法定準備金として積立て、残額二百六十八億二千六百八十二万円余を国庫へ納付いたしました。  以上、五十八年度における日本開発銀行の業務の内容につきましてご説明申しあげた次第でございます。     …………………………………    日本輸出入銀行昭和五十八年度業務概況  一、昭和五十八年度における日本輸出入銀行の業務状況につき概要をご説明申し上げます。  まず、昭和五十八年度年度当初の事業計画において一兆三千四百五十億円の貸付を予定いたしました。  これに対し昭和五十八年度の貸付額の実績は一兆八百九十三億八千六百三十九万円余で、年度当初の事業計画における貸付予定額を十九パーセント程下回りました。  なお、この昭和五十八年度の貸付額を昭和五十七年度の貸付額一兆三千五百十八億四千二百八十五万円余に比較いたしますと十九パーセント程度の減少となっております。  以下、昭和五十八年度の貸付額の内訳につきまして、金融種類別に前年度との比較において申し述べます。  まず、輸出資金の貸付は、五千百十一億四千二百六十万円で、昭和五十七年度の五千四百八十六億七百十五万円に対し、三百七十四億六千四百五十五万円の減少となりました。これは、プラント輸出に対する貸付は微増したものの、船舶輸出に対する貸付が低調に推移したことによるものであります。  次に、輸入に必要な資金の貸付は、六百十四億六千五十四万円余で、昭和五十七年度の二千五百八十六億九千百十一万円余に対し、一千九百七十二億三千五十六万円余の減少となりました。このように輸入に必要な資金の貸付が減少したのは一昭和五十七年一月から実施した緊急輸入外貨貸付が昭和五十八年三月に終了したこと等によるものであります。  また、海外投資資金の貸付は、二千五百七十九億九千二十九万円余となり、昭和五十七年度の二千百七十四億一千七百十四万円に対し、四百五億七千三百十五万円余の増加となりました。  このほか、外国政府等に対する直接借款に係る貸付は、二千五百八十七億九千二百九十六万円余で、昭和五十七年度の三千二百七十一億二千七百四十五万円余に対し、六百八十二億三千四百四十九万円余の減少となりました。これはバイヤーズクレジット・バンクローンについて、大型案件に係る貸付が減少したことによるものであります。  以上の結果、昭和五十八年度末の貸付残高は、六兆一千五百十五億四千五十一万円余となっております。  なお、この貸付残高のうち、弁済期限を六箇月以上経過した元金延滞額は、三十三億三千百九十万円余となっております。  昭和五十八年度の貸付資金の原資といたしましては、資金運用部資金からの借入金八千七百億円のほか、自己資金等二千百九十二億八千六百二十九万円余をもってこれにあてました。  以上申し述べました業務の運営により昭和五十八年度の一般勘定の損益計算上における利益は、五千百三十億七千四百三十五万円余、これに対し損失は、四千八百五十一億六千五百九万円余となりました。  この結果、昭和五十八年度の一般勘定利益金は二百七十九億九百二十五万円余となり、法令の定めるところに従い、これを全額法定準備金として積立てました。  なお、既応のインドネシア債務救済措置の実施に関する業務につきましては、日本輸出入銀行法による貸付金の利息の特例等に関する法律により一般の業務と区分して特別の勘定を設けて経理することといたしておりますが、昭和五十八年度の特別勘定の損益計算上、三億九千二百七万円余の利益金を生じ、法令の定めるところに従い、これを全額同勘定の積立金として積立てました。  二、以上、昭和五十八年度における日本輸出入銀行の業務の概況につき、ご説明申し上げました。     ―――――――――――――
  151. 角屋堅次郎

    角屋委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡部行雄君。
  152. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 まず、大蔵大臣にお伺いいたしますが、昭和五十八年度の決算について会計検査院から指摘事項が行われておるわけですが、これが昭和六十年度予算にどのように反映されたか。この指摘事項は昭和五十九年度を見ても大体同じような傾向で、さっぱり改められていないわけですが、その点についてひとつ御見解をお聞かせ願いたいと思います。
  153. 竹下登

    ○竹下国務大臣 検査院から予算編成に際して有効と思われるものを、今度は財政当局から念を押しまして各省庁に連絡した事項等がそれぞれございますが、具体的に事務当局からお答えをいたさせます。
  154. 角谷正彦

    角谷政府委員 五十八年度決算につきましても、会計検査院から幾つかの指摘事項を承ったわけでございますが、連年同じようなことにつきまして指摘されることはまことに遺憾なことでございますので、この点につきましては、その再発防止あるいは是正のために、各省各庁の予算決算担当者会議とか、補助金の適正化中央連絡協議会の場その他を通じましていろいろやっていることは、既に御案内のとおりでございます。そしてまた、決算の結果を予算に反映させるということも極めて重要なことでございます。  ただ、不当事項等として指摘されましたものの中には、実は執行面にわたるもの、職員の不正行為でございますとか、補助金の配付に当たりまして積算が過大であったとか、そういったものが多いわけでございますので、そういった点につきましては、そういったことについて是正を図るということはもちろんでございますが、それらを予算に反映させるための措置といたしまして、例えばそういった問題について必要があれば検査、監督の旅費をふやすとか、あるいはその積算上可能なものにつきましてはこれを織り込むといったことについて、それぞれやっているわけでございます。  五十八年度の決算につきまして、制度面で幾つかの重要な問題について御指摘をいただいております。  例えば農林省でございますが、農林水産省所管の中の各種集団育成事業の事業目的があいまいであるなど制度面に問題があると思料され、このために事業の実施、経理が適切でなく、また効果が上がっていないと指摘された事業がございます。  この点につきましては、集団育成事業につきまして、特に農業団体等にその集団育成のための計画策定でございますとか会議費でございますとか、そういったものを配付していたものにつきまして、この事例が不適切だと言われましたので、この団体に対しますところの補助金を六十年度予算で廃止いたしまして、これによりまして五十億円を上回る補助金等を削減いたしております。  そのほか、同じ農林水産省の所管でございますが、問題を提起するに当たりまして特記事項、「特に掲記を要すると認めた事項」の中に、例えば蚕糸砂糖類価格安定事業団におきます繭の価格安定事業の問題が指摘されております。  この点につきましては、御案内のように、五十九年十一月十七日に基準糸価を一万四千円から一万二千円に引き下げるという措置をとりますと同時に、六十年度におきまして制度改正を行いまして、いわゆる過去におきます安定上位価格、安定下位価格による無制限の買い入れ制度といったものを廃止いたしました上に、在庫処分につきましても、市場の状況を見ながら適時適切に行い得るような制度改正を図っている、こういったふうなこと等を通じまして、いろいろ六十年度予算に反映しているわけでございますが、今後これらにつきましても、会計検査院となるたけ密接な連絡をとりまして、適時適切な予算の反映を図るべく努力してまいりたい、このように考えております。
  155. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 もう時間がありませんから、これは今後十分注意して、例えば農林水産省の話が例として出ましたけれども大蔵省自身、租税徴収の過不足についての傾向もさっぱり直っていない、あるいは資金運用部資金の貸し付けの問題についても指摘されておるわけですから、もうこの辺で御卒業されてはと思うのですが、ひとつよろしくお願いいたします。  そこで、大臣は予算について、大体歳入と歳出のどちらに重点を置いて編成されるのか、その点についてお伺いいたします。
  156. 竹下登

    ○竹下国務大臣 大変厳しい財政状態の中にございますが、いずれにせよ、引き続き財政改革を強力に推進して、その対応力の回復を図ることが緊要であるという考え方に立ちまして、毎年、予算編成に当たっては、歳出歳入両面にわたり見直しを進めていくということに最大限の努力を払っておるわけでございます。  したがって、どちらを先かということになりますと、お答えにくい問題でございますが、私の経験からいたしまして、例えば今年度、最終的に地方財政対策の金が足りなくなりました。その場合、ぎりぎりの段階でおしかりを受けておりますたばこ消費税を値上げをした、こういう措置からいたしますと、ぎりぎりの場合、歳出に見合う歳入が後からくっついたというのがことしの例としてあり、私も反省の上に立っておりますが、元来は、本当はどちらも大変重要な問題でございますから、これらに対していずれが先かということでなく対応すべき課題であるというふうに考えております。
  157. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 私は普通、企業を見ておりますと、企業はまずどうして収入をはかるかというところに最重点が置かれておるようです。そして、その収入した金をどういうふうに使うか、それをどういうふうに生かしていくかというのがその次に考えられる順序だと思いますが、国の予算運用を見ておりますと、どうもそういう点が欠けて狩るのではないだろうか。支出の方に重点が行き過ぎて、どうも歳入の方に配慮が足りないのじゃないか。つまり、歳入に配慮が足りないということは、税制上の問題でもっと考える事項がないのかということになろうかと思うのですが、そういう点では大臣はどういうふうにお考えでしょうか。
  158. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いわば、入るをはかって出ずるを制する、これは一つの哲学であろうかとも思うわけでございます。  ただ、国の予算の中には、いわば当然増というものに係る経費が確かにございます。したがって、絶えず制度、施策の根本にまでさかのぼって歳出の削減に努力を傾けなければならないわけでございますが、当然増経費の場合、どうしても手のつかない面が存在することも事実であります。  そして、歳入ということになりますと、まずは既存税制というものを基本にして物を考えていくわけでございますが、やはり税制は、今まさに税制に関するさまざまなゆがみとかひずみとかあるいは重圧感とか、そういうものが出ておりますので、抜本改正ということを税制調査会に諮問をし、いわば安定的な歳入構造というものを確立するための御審議を今いただいておるさなかである。すなわち、歳入面における税制そのものについて、長い間、ここのところ五年ばかり議論をいただいて、その結果が、今政府税調に御諮問を申し上げ、そして鋭意作業を行っていただいておるという段階にまでこぎつけたというのが現状ではなかろうかと考えております。
  159. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで、歳入の一番大事な税制のあり方ですが、これについていろいろな考え方があると思うのです。最近一番問題になっているのは、大型間接税を導入するのかどうかという問題が一方にあり、また他方には、税制はあくまでも中立をもっと進めるべきで、したがって特定な優遇税を廃止して税の中立性を強調する考え方等も出ておるようでございますが、そういう中で、大蔵大臣は一体どういう税制を考えておるのか、基本的な考え方を明らかにしていただきたいと思います。
  160. 竹下登

    ○竹下国務大臣 まず、歳出の大宗が税収によって賄われるというのが、理想的な姿であろうかと思うのでございます。そこで、我が国の場合、今から三十五年前になりますが、シャウプ税制というのが基本に立って一応構築されておるわけであります。ところが、長い間の経緯の中で、言われるところのゆがみとかひずみとか重圧感という問題が生じてきておるわけでございますので、この際、抜本的見直しを進めていただこう。それには一つの理念がございます。すなわち、総理がたびたび申します公平、公正、簡素、選択並びに活力という言葉でもって諮問を申し上げているところでございます。  したがって、今回の諮問というのは、税収増とか税収減というものを初めから念頭に置いたものではございません。税制は、あくまでもゆがみ、ひずみ、重圧感等を除去しながらも、安定的な歳入構造を確保することが大事である。したがって、レベニューニュートラルと申しておりますが、諮問の仕方自身はいわば中立的な諮問をいたして、そして、まずはゆがみ、ひずみ、重圧感がどこにあるかというのが今週末に、中間答申じゃございませんが、定性的な報告がちょうだいできるという状態になっております。引き続き今度は総体的な見直し作業が行われて、そして、あくまでも中立的な物の考え方の中で秋に答申をいただいて、その答申、指針をちょうだいした上でいわば政策選択をどうしていくか、こういう順序になるのではなかろうかと考えておるところでございます。  また、その中には、後半の議論といたしましていわゆる優遇税制、ある意味においては政策税制とでも言った方がいいかもしれません。税というものは元来は中立であるべきでありますから、一つの税体系の中に位置づけられていなければならない。しかし、時代の要請等によりまして、政策的な意図でそれぞれの優遇措置が行われていく。しかし、この優遇措置も税の基本体系からいえばある程度それを曲げるわけでございますから、したがって、今日までいろいろできてきた優遇税制は、従来からも毎年毎年整理縮減に努めてきたところでございますが、これからもそれらの優遇措置は、政策的意図をその都度全く否定するものじゃございませんが、可能な限り縮減の方向で整理されていくべきものではなかろうか、このように考えております。
  161. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 優遇税制とか特別な一つの税の考え方を出す場合には、政策が中心になることは申すまでもないと思いますが、問題は、大型間接税に関する考え方と優遇税制等を者なくしていって税の中立化を図っていく考え方とは一致しないのではないか、そんな感じが私はするわけです。何となれば、大型間接税は一般国民に対して非常に増税を強いるようなものであり、そうすると税というものの対象が、いわゆる高額所得者と低所得者とに分けて考えた場合、その税の対象が低所得者層に傾いてくるのは避けられないと思うのです。そういう点で、この大型間接税というものの思想についてはっきりと議論をしておく必要があるのではないか。  そこで、もう一方では「増税なき財政再建」ということが一つの枠組みとして前々からされておるわけで、そういう中で、それじゃ収入面を充実させ、長期安定化させていくにはどうあるべきかと考えた場合には、どうしても税の申立化という中での操作が必要になってぐるような気がするのです。  また一方、マル優の問題を具体的に取り上げてみますと、郵政省の方ではマル優というものについて一つの確固とした考え方を持っておるわけですが、今度出された経構研の考え方は、この非課税貯蓄制度を廃止せよということで、これと全く対立する意見を出されておるわけでございます。  税制について、公平、公正、簡素、活力、選択、それに加えて国際的見地からも見直すべきだということで、非常に美辞麗句をずらっと並べてはおりますが、それじゃこの表現を具体的に一つの形にまとめた際にどういう形になるだろうか、こうした場合に、私は非常にあいまいでわからないような気がするのですけれども、その点、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  162. 竹下登

    ○竹下国務大臣 まず第一は、「増税なき財政再建」、結局この問題は、行財政改革を行っていくためのいわばかんぬきみたいなものである。すなわち、安易に増税に頼ることなく、歳出削減によってスリムな身柄にしてこれを行うということを理念として、臨時行政調査会から私どもがある意味においてかんぬきをかけられておるとでも申しましょうか、そういう縛りの中で、私どもは今日までいろいろな工夫、苦心をしてきたわけであります。  一方、税の見直しというのは、それはそれとしてシャウプ以来のゆがみ、ひずみ、重圧感、これらに対して見直しを行っていこう、こういうことになっております。そこで、その中の具体的な問題として、二つの例を今お挙げになりました。  一つは、いわゆる俗称大型間接税であります。あるいは幅広い間接税とでも表現した方がいいかもしれませんが、これにつきましては、税にはおよそ面接税と間接税とが存在して、それがどのような組み合わせになっておるか、日本の場合は総じて直接税中心主義であって、間接税がつては五分五分でございましたにいたしましても、所得が伸びていきますと、片方は必ずしもそれと一緒に伸びてまいりませんから、それで直接税のウエートがだんだん高くなるわけであります。その議論で、それじゃどれくらいが適当かということになりますと、これこそこれからの税制調査会議論等の中心となる一つの問題点であろうと思っております。  ただ、渡部さんがおっしゃっておりますように、一例を申し上げれば、間接税というものは、例えば松下幸之助さんがハイライトをお吸いになりましても、所得の低い人がハイライトをお吸いになりましても、所得によってハイライトの値段が違うわけじゃございませんので、そういう限りにおいては逆進性があるという議論がございます。しかしながらまた、いわゆるそういう所得の再配分といったような負担のあり方というのは間接税だけで議論すべきものではなく、やはり直接税、間接税ともにした一つの税体系というもので基本的に議論されるべきものである、こういう議論もあるわけでございますので、私自身も、先ほど申し上げましたが、実際ことしたばこを一年上げさしてもらって地方財政の二千四百億円を稼ぐということになりますと、やはり注意しなければならぬなと思いますのは、一度入れますと、一本一円でございますと、三千億六吸いますから、三千億本というのは一億二千万で割れば一人が二千五百本、三百六十五で割れば七本、六人に一人たばこのみがおるとして、六、七、四十二、二箱、こういう計算になるわけでございますから、安易にそれに手をつけがちになるということは、ヨーロッパの例を見ても反省をしなければならぬ問題だな、こういう感じは持つわけであります。  しかし、間接税というものが、酒とかたばことかいろいろございますが、初めから逆進性が高いというだけでそれを論ずべきものでなく、直接税、間接税を総合したところの国民負担率とかいうもので議論をすべきものではなかろうか。いずれにせよ、これも税調の御審議待ちということであります。  それから、二番目の御例示なさいましたマル優制度の問題でございますが、マル優といいましても、要するに非課税貯蓄制度を含む利子配当所得課税のあり方、こういうことになろうかと思うわけでございます。なかんずくこの問題は、金融の国際化だ、自由化だ、こういうものが進んでまいりましたから、それこそ幅広い角度からのさらに検討が今後進められていくであろうというふうに思っておるわけでございます。  今日までも国会やあるいは税制調査会でさまざまな議論が行われました。その議論の行われましたものだけを紹介させていただきますならば、利子配当課税のあり方を考えるに当たっては、個人貯蓄の六割を占めるに至っておる非課税貯蓄の現状が課税の公平の面から問題ではないか、こういう意見があります。二番目には、結論からいうと、所得水準の高階層ほどその利用割合が多いから、高額所得者により優遇された結果になっておるのではないか、こういう問題もございます。それから、限度管理をするには、これは取扱機関にしても税務当局にしても少なからざる手間がかかる、こういう議論がございます。それから四番目には、利子配当所得発生の大量性、その元本である金融商品がいっぱい、多種多様になっております、そういうことからなかなか難しいぞよ、こういう議論もございます。それからよく言われる問題は、受取利子も所得の一形態である、所得には違いない、本来すべて総合課税の対象とすべきであるが、長年定着した非課税貯蓄というものを一時に抜本的に改革することは好ましくない、このようなさまざまな角度からの議論があるわけでございます。  したがって、これらの議論とか国会で行われました議論を正確に税制調査会へ持ち込んでおります。それから、経構研の議論もいわば税制調査会報告すべき問題であろうと思っております。総理の私的諮問機関でございますから八条機関とかそういうものではございませんけれども、当然報告すべき課題であろうかと思うのでございます。その中でこれから議論をしていただく課題である。  基本的に申しますと、我が国が世界で最大の貯蓄率を誇るというのは、やはりマル優制度というものもそれに果たした役割を私は十分認めるものでございます。一方、たとえ少額利息とはいえ総合所得の一部であるとする限りにおいては、日本だけに特別な例を持つのはおかしいという議論もまたある。これらを踏まえて税制調査会でそれこそしっぽりと議論してもらおう。少し長くなりましたが、そのようなことであります。
  163. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 きょうは郵政省からも来ておりますが、このマル優制度というのは、どちらかというと、大資本家はこれによってそう大して有利な状態にあるとは考えられません。むしろ一般庶民の人がこれを利用したがっているのではないだろうか、こんなふうに考えます。また、これから高齢化社会が進むに従って、いわゆる国の保障のあり方が不十分である場合には、どうしても自分の力というものに頼らざるを得ない、そういう際にやはり一つの長期展望に立って貯蓄というものを考えるというのが、これは日本の伝統的なものだと思います。  しかも、今郵政省ではシルバープラン貯蓄というものを考え出しておるようですが、この経構研の考え方をもしとり入れていくようになると、こういうプランが全部だめになってしまうわけで、もちろんこの経構研というのは非常に問題があると思うのです。これは実務者が一人も入ってないで、中曽根総理というのは学者とかなんか部外者の諮問が非常に好きで、内部の実務者の意見を余り聞かないのじゃないか。この辺で大臣は何か言っておかないと、次の後継者にも響くのじゃないでしょうか。この辺で一言文句でも言っておくべき時期じゃないかと私は思いますが、これは余談といたしましても、その辺についてひとつ郵政省から考え方をお聞かせ願いたいと思います。
  164. 塩谷稔

    ○塩谷政府委員 少額貯蓄の利子非課税の問題でございますけれども、私どもの考えといたしましては、現在のこの制度をそのまま存続することが妥当だと考えるわけでございます。  その理由として幾つか考えられますけれども、その第一は、学界あるいは国会でもいろいろ議論された中で、やはり貯蓄率の寄与といいますか、少額貯蓄について利子非課税ということが何といっても貯蓄の増進に役立っているわけでございまして、これを廃止するということになりますと、これから貯蓄の動向、ひいては日本経済のいろいろな面で重大な影響を及ぼすのではないかと懸念する向きもあるわけでございます。  それから、第二の理由といたしまして、これは最近の論調といいますか、いろいろ議論の動向を見てみますと、何か日本だけがこういう利子非課税優遇制度をとっていて、それが殊さら国際的にぬきんでている貯蓄の大きさの原因、何か日本が悪いことをしているようなことを言う向きもあるわけではございますが、これは決して日本だけの制度ではございませんで、イギリス、アメリカにおいても利子非課税制度をとっておりますし、そういったことを考えますと、これはどうしても存続していきたい。むしろそれどころか、税金を取るということと別に、貯蓄を優遇するということが一つの政策選択として考えられるのではないか。  シルバープラン貯蓄、先生今おっしゃいましたけれども、これは私ども、一般の預入限度額とは別枠で一千万円まで預入できるというようなことを考えておりまして、特に長寿社会で高齢者が自分の生活設計を自力でやる、国の福祉政策に頼らないで自助努力でやるというところに着目いたしまして、五十五歳以上の人について、これは非課税で一千万円何とか暮らしの設計に役立たせたいという構想を考えているところでございます。これの実現に向けて努力したいと思っております。
  165. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 時間が本当にありませんので、これをもっと議論したいところですが、できませんので次に移ります。ただ大臣、私、直間比率というのは何の理由にもならないと思うのです。これは学問的に言っても何の説明力にもならないと私は思いますよ。これはひとつよく検討していただきたいと思います。  最後に、今の貿易摩擦、いわゆる貿易黒字と言った方がいいか、経常収支の問題です。これが非常に問題になっているわけですが、果たして本当に不均衡ということで問題があるだろうか、こういうふうに考えると、人口の多いところと少ないところが取引をした際に、もしその国境で線を引いて、そこでどっちの国が多いか少ないかを議論すれば、これは人口の少ない国が損をするのは当然なんです。結局、例えば二十人の集団と十人の集団で一人十円ずつ相手の品物を買うということにすれば、これは十人と二十人で線を引くとそこに倍の差が出てくるわけですよ。十人に一万円ずつやると十万円、一方は一万円ずつ買えば二十万円ということになるわけで、そうするとその差は十万円、これはどうしても出ざるを得ないわけです。  つり合いというのは、日本人がアメリカの品物をどれだけ使っておるか、アメリカ人が日本の品物をどれだけ使っているか、その辺のつり合いがつり合いであって、国境の出入りでつり合いを考えたら、これはもうとんでもない話になってしまうと私は思うのです。それが証拠に、国の中で我々が三越に行って、あなたの店はこんなにもうけているのだから、それをおれに返還しろというようなことになったらどうなりますか。それは自由経済も何も成り立たないでしょう。  そういう不公平をなくすには、社会主義しかないのですよ。ところが、今アメリカは困ってきて、やはり背に腹はかえられないから輸出規制とかいろいろ言ってきて、結局社会主義経済の正しさをみずから告白しておるようなものじゃないか、私はこんなふうに考えられて仕方ないのです。少なくとも自由主義経済というからには、そういう何ですか、自然の流れの中に国境という線を引いて、そこで高い低いを論ずるということはちょっと筋違いじゃなかろうか、こんなふうに思うのですが、どうでしょうか。
  166. 竹下登

    ○竹下国務大臣 まず最初、一つ簡単に申し上げますのは、直間比率というのは、先生おっしゃるとおり、あらかじめ決めるべきものではございません。結果として出るものであるという認識は等しくいたしております。  それから、今の経常収支の大幅黒字、いわば自由主義経済であるならば、地球上に生存する人類がおのずから安価にして良質な物をそれぞれ自由に交易ができるという状態が、本来の貿易自由化の大原則でございましょう。しかし、そこに国境があるということと、いま一つは通貨主権という問題がございますので、それぞれの国の通貨というものも全く外に置いて考えるわけにはいかぬ。しかし、今おっしゃいますように、自由貿易によって、国民の英知と努力によって安価にして良質な物をつくる日本でございます。それはもともと油だけみんな買わなければいかぬから、それだけの必要があったわけでございますが、今それが五百億ドルというようないわば経常収支の不均衡、これは対アメリカだけでなく、全世界に対してそういうものが出てまいりますと、どうしてもいわばそれぞれの国に自由貿易主義ではなく、逆にいわゆる保護貿易主義が起きてくるわけでございます、自分の国の物が売れなくて日本から入ってくるようになるといたしますならば。  したがって、保護貿易主義が起こってきた場合は、あるいは極端に言えば、日本品の不買運動とかそういうようなものが起こってきた場合、確かに貿易立国をとっております日本としては世界の孤児になってはいけない、そこにいわゆる政策の調整というものが必要になってくるものである、このように基本的に考えておるわけであります。したがって、将来、それぞれの国によって事情がございますけれども、いわば我が国の産業の体質あるいは構造というようなものを全く度外視して、ひた走りに、ただ安価にして良質な物を能力に頼って攻め込んでいくというだけでは、世界全体の調和が保てないというようなことではなかろうかと考えております。
  167. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 時間が参りましたので終わりますが、最後に、いわゆる政策的なそういうものを考えるということは、それ自体悪いことではありませんが、もっと哲学的に、国際間の均衡とは何かということを見直してみる必要があるのじゃないか、そういうことが一つ。それからもう一つは、通貨の問題ですが、これもやはり将来は、地球は一つなりという観点から通貨を一本化してしまえば何も問題ないわけですから、そういう方向でひとつ御検討をお願いして、終わります。
  168. 角屋堅次郎

    角屋委員長 次に、新村勝雄君。
  169. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 私は、大臣に最近の政治情勢、特に今盛んに言われておりますダブル選挙の問題についてお伺いしたいと思います。  大臣は、閣内の最有力大臣として、また国務大臣として日本の政治を指導される立場にあるわけでありますけれども、合しきりに言われておりますダブル選挙について、大臣はどちらかというと肯定的な立場で発言をされていらっしゃるようでありますけれども、その真意をお伺いいたしたいと思います。
  170. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは今閣内におりまして別に選挙法の担当の自治大臣でもございませんので、自由民主党の選挙制度調査会長を長らくやっておりましたことと、選挙学会の会員であるという私的な立場でお答えすることをお許しいただきたいと思います。  元来、憲法指摘されております際に、私は、一つ憲法論議の中で、ダブル選挙というのは言わば緊急集会等に対して違憲の疑いがあるじゃないか、よくそんな議論をしたことがございますが、その議論の中で、そもそもそういう状態を予期しないで憲法というものがつくられたんじゃないかという議論をしたことがございます。  それからもう一つ、これは若干横道にそれて申しわけございませんが、予算の空白というものが議論されないままに新しい憲法ができたんじゃないかという議論もあると同じような議論でございますけれども、旧憲法は、予算が通過せざりし場合は前年度予算を施行すべしというので、空白がなかった。今は暫定予算というもので、いわば財政法の中にゆだねられておる。そもそも予算の空白というものを念頭に置いてつくられただろうかと同じような議論で、緊急集会そのものができない状態というものが恐らく考えられていなかったんじゃないかという議論もあるわけでございます。  これに対して、また一方の議論というのは、いわばこの選挙がありましても、衆議院はなくなっておりますけれども、参議院は半数の方は残っていらっしゃるということそのものが、いわばそういう緊急集会がいつでもやり得るということを念頭に置いて、やはりあの憲法の草案が審議されるときからそのことは議論の念頭にあったではないか、いずれかわかりませんが、そういう議論がございます。どっちかといえば、違憲性というものはその限りにおいてはないのかな、こんな感じをかつて勉強したときに思ったことでございます。  それからもう一つは、素朴な国民側の議論の中に、例えば市区町村が三千三百二十五ございますが、選挙しますと、首長と議員でございますから六千六百五十、それを四年ごとにやって、三百六十五日でやりますと、一日に四・七カ所ぐらい選挙をやらなきゃならぬ。日曜にまとめても四、七、二十八ぐらいになる。それで、統一選挙で一時きちっとしておったものが、死んだりいろいろなことで、首長でちょうど四分の一ずつになっております。それから、町村合併があったりいろいろなことでもうばらばらになっているから、国民の選挙意識を高めるために年に一度にして、地方自治の日でもつくってやったらどうだ、これは選挙をできるだけ統一しようという考え方でございます。その限りにおいては、たまたま近くに存在しておったら衆参が一緒になるというのは便宜的にはいいじゃないか、こういう議論も確かにしたことがございます。が、私は、違憲性とか法律違反とか、そういう問題はないであろうというふうに思っております。  そうして、いわゆるハプニング解散がございました五十五年の選挙としては、結果としてあのときはいわゆる衆参同時選挙になったから、その一遍の経験は既にしておるということはやはり現実問題としてあるんだな、そういうようなことをいろいろな角度から勉強してみたことはございますが、今それが是か非かとか、余りにもホットな議論がされ過ぎておりますので、中曽根内閣の一国務大臣であります私から、私見といっても断定的な学説を申し上げるのは適当ではないではないか、こういうふうに考えております。  少し話が長くなって、申しわけございません。
  171. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 今大臣は、緊急集会の必要性とかそういう事態を予期しない憲法ということをおっしゃいましたけれども、そうじゃなくて、これはそれを予期しているのじゃないかと思うのです。というのは、参議院と衆議院は機能が違いますし、特に衆議院が解散されているときに仮に緊急事態が突発した場合に、それは参議院の緊急集会で国会の機能を代行することができるということでありますから、これはそういう場合を予想して参議院の緊急集会の規定憲法はつくったのではないかという気がするわけであります。  ですから、仮に衆議院が解散をされて、しかもダブル選挙を想定して衆議院が参議院の通常選挙の前に解散をされたということになりますと、その間に、ごく短期間でありますけれども、緊急事態が起こった場合に参議院の緊急集会ができないという事態が起こると思うのです。参議院議員は、任期はありますけれども、半数は選挙戦に入っておるわけですから、緊急集会ができない事態が数日間、まあ数日間か十日間か知りませんけれども、現実に起こるわけですね。理論的には、任期はあっても実際には緊急集会ができないという期間が短期間起こるわけであります。そういうことがあってはならない。ですから、ダブル選挙はそういう点で難点がある。そういう点で、違憲とは言えないまでも、三権分立あるいは立法府と行政府との調和した執行、運営という面からいって適当ではないという解釈が有力に成り立つんではないかと思います。  そういう点で、今盛んに行われておりますダブル選の論議というものはやはり鎮静をさしていくべきではないかと思うのですが、そういった点、大臣はいかがお考えですか。
  172. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは先生、緊急集会というのは、確かにもとより予定されておった憲法の条項でございますが、ある人が私に言いました話は、緊急葉会というものはある。しかしそのときに、今先生がおっしゃったように少なくとも半数が選挙戦に突っ込んでおる。場合によっては、公職選挙法の何条でございましたか、国会が存在した場合は三十一ないし三十五に選挙をするという規定がございますから、それで言うと、例えばぎりぎり任期のその日まで国会が存在しておったら、直ちに半数は身分も切れるわけですね。しかし、身分は切れましても、半数の人がおりますから、そして本会議の議決は三分の一の出席においてなし得るわけでございますから、したがって全く緊急集会が不可能な事態というのは予測されないということになります。したがって、そういうことを予測の上において憲法がつくられたかどうかということを議論したことがございますが、半数が残っておるという厳然たる事実というものは、あるいはやはりそういう場合も予測して議論されたんではないかという両論があるわけでございますけれども、いわゆる三分の一でもって成立するということからいいますならば、確かに緊急集会が法律的に事実上できないという期間はあり得ないという論理もまた成り立つな、こんな感じで勉強さしていただいたことがございます。  これは先生、申しわけないのは、ちょっと深入ったお話をしましたのは、私自身、本当は財政金融の専門家じゃございませんので、本当は選挙学の専門家でございましたので、ついそんなことを申し上げて、あるいは非礼に当たったかと思いますが、現実問題、緊急集会がなし得ないという状態は予測されないということが言えるのではなかろうかというふうに言われております。まあ学説だと思って聞いてやっていただければ結構でございます。
  173. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 大臣がおっしゃったことは、これはロジックとしてはそういうことかもしれませんけれども、三分の一で成立するというのは、全部の人が応召できる態勢にあった場合でも、国会議員というのはなかなか総員が集まるわけにはいかない、そういうことで三分の一ということに規定があるんだと思います。ですから、仮に総数の半分が選挙戦に突入しているという状況の中では、総数の三分の一が集まることは事実上なかなか大変だと思うのですね。そういった点で、運用の面からすれば、やはりダブル選挙に突入していた場合には緊急集会をやることは事実上難しいんではないかということでありますけれども、まあ結構です。  そこで、もう一つ選挙について。  大臣、大変遠慮なさっておりまして御意見をおっしゃらないわけでありますけれども、今このダブル選挙、総選挙をやらなければならないという事態であるのかどうか。政治は一寸先は見えないと言いますけれども、そういう事態であるのか。総選挙の名分が果たしてあるのかどうかという点ですね。こういった点に大変疑問があるわけであります。  それからもう一つ、今、国会の中で最大の課題になっております定数是正が、大分話は進んでおりますけれども、まだできていない。定数是正ができていない状況のもとに総選挙ができるかどうか。これは法理論としてではなくて、政治論として大臣はどうお考えですか。
  174. 竹下登

    ○竹下国務大臣 最初のお尋ねというのは、いわば総選挙、これはまさにいわゆる内閣に与えられた行政上の憲法に定める最大の一つの権限だというふうには思いますが、例えばとしまして、元議長の保利さんの見解なんというのを承知しておりますが、いわば国政があるいは国会がどうにも動きがつかなくなったというような問題、あるいは重要な問題でもって国民の信を問うべきであるという環境が熟した問題とかいうようなことが、恐らく俗に言われる大義名分というふうなものではなかろうかと思うわけであります。  それから、二番目の定数是正というのは、これは一政府というよりも国会全体に課せられた、言ってみればなさねばならぬ課題であろうという意味において、私はかつては選挙制度調査会の長でございましたけれども、その立場を離れて国会議員の一人として、定数是正というのはお互いの土俵でございますから、ああいう最高裁の判決もございますので、お互い、譲るべきは譲り、どうしても党利党略、派利派略あるいは個利個略というものがこれは当然つきまといますが、可及的速やかに是正さるべきものであろうというふうに私は考えております。  では、旧法で選挙ができるかどうか、こういう議論になりますと、まさに政治論からいえば、お互いそれを最高裁から宿題をちょうだいしているわけですから、なし得べきは、定数是正というのは、ある意味においてはお互い個人個人にとっては何よりも今緊急を要する課題ではないかという問題意識を持つと同時に、これもいわゆる憲法とか法律とかからいって、旧法でできないという論理はないだろうと思いますが、それは私も、新法と申しますか、改正そのものが何よりも私どもに与えられた今大きな課題だという問題意識は持っております。
  175. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 次の問題に移ります。  今、サミットの直前でありまして、近くこれが行われるわけでありますけれども、サミットは、自由主義陣営の主要諸国の首脳が集まって、主として経済問題を討議するということでありますが、日本はホスト国として各国首脳を迎えるわけでありますけれども、このサミットに対して大臣は基本的にどういうことを期待し、あるいは日本がどういうことを主張し、あるいはどういう成果をサミットにおいて望んでいらっしゃいますか。
  176. 竹下登

    ○竹下国務大臣 東京サミットの議題につきましては、今まだ個人代表で詰めておられるところでございますので、現時点議題は未定であるというふうに申さざるを得ません。ただ、そもそも始まったのは大体経済サミットでございますから、大変政治サミットの色彩が濃くなっておりますものの、経済サミットの関係からすると、私がその下働きをするわけでございますが、気をつけておかなければならぬのは、たびたびのサミットで確認しております世界経済全体がインフレなき持続的成長をするためには、先進国お互いどうしたらいいか。サミット参加国全部で六億数千万、世界の人口の七分の一あるいは七・何分の一ぐらいでございますが、GNPではおよそ六割近くを上げておるわけですから、ここの経済が世界全体に影響を及ぼすわけでございます。したがって、そういうインフレのない持続的成長をするにはどうするか。これはそのこと自身が、南北問題、開発途上国の問題にも大きな影響を与えるということで議論をされる一つの問題であると思います。  それから次の問題として、やはり国際的な通貨安定というものを考えていなければならぬと思うのであります。先ほど、国際共通通貨にすればいいじゃないかという議論がありました。我々もそんな議論をしたことがございますが、やはり通貨には主権がありまして、なかなかそうもまいりません。いずれにせよ、いわゆる国際的な通貨の安定問題。例えば為替レート一つとりましても、きょうは百七十一円台をつけまして、開閥以来の円高、まあドル安と言った方がいいかもしれませんが、欧州通貨も含めて強くなっておりますが、国際的な通貨の安定の問題が大事であろうと思います。  それから、やはり我が国がかねて主張しております新ラウンドの問題等を含む自由貿易体制をどうして維持していくかというような問題、それからもう一つは、インフレなき持続的成長の中で幾らか好影響をもたらしますものの、ああして原油価格が下がったこととか一次産品が下がったこと等から来ます途上国の累積債務問題、これらがやはり大きな問題ではなかろうかというふうに考えておるところでございます。  私の守備範囲だけの話を申し上げましたが、御指摘なさいましたとおり主宰国でございますので、何とか少しでも世界経済の繁栄と発展に明るい展望が示されるような成果を得たいものだなと心から願っておるというのが現在の心境でございます。
  177. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 インフレなき持続的な安定成長、これは世界にとって望ましいわけでありますが、この点については、主要国ではほぼインフレを克服をしたというような状況ではないかと思うのであります。日本ももちろんそうであります。  そこで、次は通貨の安定でありますが、これについては、円安ということが長く続きまして、これが、特に日米間の関係を軸として、世界経済のある意味では一つの攪乱要因であったかと思いますけれども、かなり円高が定着をし、しかも今、大臣がおっしゃったように百七十一円。百七十円をつけたことは、もう十年ぐらい前ですか、過去においてもあったと思いますが、それ以来、近来にない円高だと思います。そういたしますと、百七十円あるいは百七十円を割ってさらに円高が進むことも予想されると思いますけれども、大臣のお考えでは円高がどの程度まで進むのか。それから、百七十円を下回る円高ということになると、日本経済にかなり深刻な影響を与えると思いますけれども、それと同時に財政にとっても大変影響が大きいと思いますが、それらの円の将来、まあそんな長期的には無理でしょうけれども、中期的な円の見通し、そして、それが日本経済、特に中小企業等に及ぼす影響、それから、特に財政に及ぼす影響がかなり深刻ではないかと思うのでありますけれども、それらの点についての予測をできたらお伺いします。
  178. 竹下登

    ○竹下国務大臣 まず、先生おっしゃいますように、インフレは、日本と西ドイツほどではないにしても、アメリカもフランスもイギリスも、かつてから比べれば鎮静しております。したがって、インフレが鎮静しておるから利下げの環境が整ったということで、我が国においては、日本銀行においてきょうから、ことしになって三度目の公定歩合の引き下げが行われた。これはひいては累積債務国の金利に影響しますから、開発途上国に対してもいいことだと思っております。それから、個々の企業収益にとってもいいことだろうということは言えるわけでございます。  そこで、通貨問題でございますが、この問題は、確かにドルの独歩高という感じから世界経済に大変なインバランスが起きて、したがって、五カ国蔵相会議におきまして、正確に各国の経済の実態を反映していないじゃないかということから、昨年の九月二十二日以来、いわばドル以外の通貨が高くなってきた。まあ、円の方が言いやすうございますから、円高基調がずっと進んできた。そこで私ども、それが急激であっただけに大変に困ったという感じを持ったこともございます。最近、百八十円を挟んで一進一退ということでございましたが、この数日前から、あるいはアメリカの公定歩合下げが予測されておりましたという点もあったでございましょうか、ちょっと一層のドル安傾向に進んで、きょうも、いわば百七十五円は今まで経験しておりますから、きょうの場合は確かに変動相場制になりまして以来最高値ということになるわけでございます。  それで、一体どれぐらいが適切かということになりますと、これこそ通貨当局者だけは、よしんば自分の私見があったとしても、これは特に金融強国と言われる日本の通貨当局者だけはいわば一つの相場観を言うことだけは避けよう、こういうことになっておるわけでございます。しかし、先般私ども十カ国蔵相会議を開きましたときに、安定が望ましいということは、だれしもこれは反対する者は一人もいなかった。  それで、きょうのこの問題につきましては、先週後半からかなり急速にドルの全面安となり、それを背景に円も急騰し、本日東京市場の終わり値は史上最高の百七十一円九十銭となった。そこで、本日の円高は、西独が日米公定歩合下げに追随しないとの見方等から、ドイツ・マルクの先高観と円のドイツ・マルクに対する割安観等による市場の思惑的な動きによる面が強いのではないかと思う。これが今のところ急いでまとめました一応の共通認識ということになるわけでございます。これからも相場の行く末をよく見て、これからずっと西へ西へと移っていきまして、あしたの朝にはまたロンドンからニューヨーク市場がわかるわけでございますから、注目していなければならぬ問題だというふうに思います。  そこで、基本的な問題として先生御指摘になりましたが、端的に言いますと、税収ということになりますと、これは特に石油税なんかは従価税でございますから、これは減収になります。安いからといって石油をいっぱい食うわけじゃございませんので、これは減収になります。  企業収益ということになりますと、この間も私、岐阜の多治見へ行ってまいりましたが、これは我が国の約二〇%程度の陶磁器の産地でございますが、本当にこれは日米貿易摩擦、自分たち起こしたことがない一そのとおりでございます。陶磁器はアメリカでないわけですから。結局円高によりまして、いわゆる韓国、台湾、香港、シンガポール、そういうところに価格の点で競争力を失ったというので、中小企業対策として転廃業を含むお金をお貸ししましょうとか、急速に法律をつくって衆参両院早目に上げていただきました。それで当面対応しよう、こういうことでございます。それで、円高のデメリットというのは、そういうことで輸出産業、中小企業で非常に競争が激しいところは確かに出てまいりますので、これが一番早うございます。  円高のメリットというのは、本当は外国旅行者の方だけが何かふわふわとして、メリットを体で感じてお帰りになるわけですけれども、現実、例えて申しますと、二月末の入っております油が、これは原油価格の下落の方ですが、二十七ドルで入って、三月末の分が二十二ドルでございますから、今言われておる二十ドルだ十何ドルだというのは、またこれは入ってこないわけですが、そういうものが、いわば原材料、原燃料が全部安くなりますから、それが国民生活にいわゆる市場原理を通じて還元されてくるというのは、やはりかなり時間がかかります。したがって、六カ月と言う人もありますが、あるいは十五カ月かかるということもございますけれども、それは我が国の通貨の価値が上がったことでございますから、相対的にはこれは実質所得の増加ということも言えるかと思うのでございます。  そこで、政府としてとりあえずやろうというのは、いろいろなことがございますが、一兆円程度と言っております、まだきちんと計算ができませんが、電力料金、ガス料金、いわゆる政府が関与して決めることのできる価格について値下げをすれば、それだけの減税と等しい効果になりはしないか、こういうような対策をとっていこう。  いずれにしましても、私も怨嗟の声を時々聞きます。G5なんというものをやるからこんなことになるのだ、おれたちちゃんと二百円で計算しておったのにとか、業種別によっていろいろ違いますけれども、これは長い目で円高メリットというものをどうして我が国の企業収益の中へ組み入れていくかということは必要なことであるし、また一方、何と申しますか、我が国としてもいつの日か避けて通ることのできない一つの大きな試練の今機会ではないかなと、こう思って、毎日毎日為替相場等を見ながら一喜一憂しておるというのが現状でございます。
  179. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 大変詳しくお話を伺いましたが、そこで、これらの日本の経済力の正当な評価の結果こういうことになったわけでありますから、その点、当然といえば当然でありますし、それに対する評価をしなければいけないわけでありますけれども、同時にまた、財政に対するマイナスの影響もあるわけですね。  そして、大蔵省ではこの間財政再建の展望を示されたわけでありますけれども、それによりますと、現状のまま推移するとすればかなり厳しいというようなことも報告をされております。同時にまた、六十一年度予算における国民負担率は三六・一%、戦後最高ではあるけれどもまだ軽いというようなニュアンスも示されておるわけです。そして一方、長期債務についてはまさにGNPの五割に達する、六十五年度末では総額百六十八兆円になりまして、主要先進国の中ではトップの五〇%になる、こういう報告があるわけですね。そしてまた、税制に対するいろいろな論議も行われておる。  こういういろいろな要因がずっとあるわけですけれども、そういう中で財政当局としてこの際一つの決断をしなければいけない時期になっているのではないかと思うのですけれども、こういう状況の中で、大臣はそういう諸状況をどう評価をされ、日本の財政政策について基本的にはどういう方向でいくのだという、そういうお考えをぜひお示しをいただきたいと思います。
  180. 竹下登

    ○竹下国務大臣 確かに財政改革の第一目標であります昭和六十五年赤字公債体質からの脱却、これは容易ならざることであると私どもも思っております。しかし、今日「増税なき財政再建」という縛りのかかった中でこの旗をおろしますと、それこそ今までの努力が水泡に帰してしまうということからして、今旗をおろす状態ではない。毎年毎年の予算で、いつも申しますように、ああして中期展望だ、試算だ、出しますが、何とか今までその要調整額を工夫しながら埋めてきたわけでございますから、そうした工夫は今後も続けていかなければならぬ課題だというふうには思います。  しかし、中長期的に考えますと、今おっしゃいますように、国民負担率三六・一%。そうでございます。臨調からちょうだいいたしましたのは、それは今後いわば高齢化社会がやってくる、そうすればこの国民負担率はいずれふえてくるけれども、ヨーロッパのそれよりはかなり下の方へ位置づけしなさいよ、こう言われておるわけであります。当時言われたときは、ヨーロッパが大体五〇%でございます。ところが、今のヨーロッパは五五から六〇になっております。したがって、余り国民負担率が多いから勤労意欲が失われて、日本に何もかも、一人当たり所得にしても、どんどん追い越されていくという理由もあるいはそこにあるかもしらぬ。だから、やはり私は、そういういわばこの国民負担率が高いというところまでは持っていってはならぬ。  じゃ、どれくらいがいいか、こうおっしゃいますと、なかなか定量的に難しゅうございます。ある人は四五とかおっしゃる人もございますが、現実問題として今後の人口構造等を考えながらそれを組み立てていく、あるいはこういう国会の問答をしながら、そこで何がしかのコンセンサスを得ていくという、余り急がない形でコンセンサスを得る努力をしなければならぬではないかというふうに思っておるわけであります。  一方、御案内のように、申立性ということからではございますが、税制の抜本改正ということがいずれ結論が出てくる。それが安定的歳入として国民の皆さん方にどのような形で許容していただけるかということは、まさに今年末ぐらいの政策判断の大きな問題点ではなかろうかと思います。  それから、最後にいま一つおっしゃいました対GNP比丘〇%近くにもう公債残高がなったじゃないか。確かに私どもそれを一番恐れます。今百四十兆といたしまして、それのおよそ三・七倍くらいいたしますから、大体五百四十兆くらい、恐らく六十年間にわたって子や孫やひ孫にツケを回すことでございますので、この残高をいずれは減らしていかなければなりませんが、今のところはいわば毎年の予算に対する公債発行の依存度を下げていく、三四%から二〇%までやっと下げたわけでございますけれども、それをやりながら経済成長の伸び率の中で低く公債発高額を抑えていって、一定のところまで来たら今度は対GNP比の残高を滅していく。電電株の売却益なんというのは、その限りにおいては大変魅力のある財源だと私は思いますが、いずれにせよ、拡大均衡と言われましても、経済は拡大均衡であってしかるべきですが、財政は拡大均衡ということで当面はいいにいたしましても、孫子の代に、あるいは後世代のツケ回しということは何とか避けていく財政運営をしていきたい、微力ながらそういうことを考えております。
  181. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 途中ですけれども、時間ですから終わります。
  182. 角屋堅次郎

    角屋委員長 次に、斉藤節君。
  183. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 私からは、今いろいろ新聞で報道されておりますけれども国民の中にも大変疑問に思っている点がいろいろあるわけでございまして、そういったものも晴らさなければならぬということも考えておりますし、また国会におきましても特別委員会がつくられまして、フィリピン問題を解決していくといったことが行われているわけでありますけれども、きょう私は、こういった問題について少しでも国民の皆様に疑惑が晴れるようなことでもあれば、そんなささやかな願いからちょっと質問申し上げたいと思います。  まず一般論として、有償資金協力と無償資金協力というのがあるわけでありますけれども、この違いについて御説明願いたいと思います。
  184. 太田博

    ○太田説明員 お答えいたします。  有償資金協力と無償資金協力の差でございますけれども、有償資金協力というのは長期低利の資金を相手国に貸し付けるというものであるのに対しまして、無償資金協力は返済の義務を課さない資金を供与するというものでございます。両者の間には、以上の基本的な差異のほかに、一般的に言って次のような差異がございます。  まず、有償資金協力でございますけれども、協力の対象分野が主として経済インフラが中心でございまして、対象国といたしましては比較的開発の進んだ国、これが中心になっております。一応の所得上の目安といたしましては、一入当たりのGNPが千六百ドルから千七百ドル程度以下の国を対象にしているということでございます。  これに対しまして無償資金協力の方は、対象分野といたしましては農業、医療、保健、教育等いわゆる住民あるいは国民の基礎生活に直接裨益する分野、それと人づくりに資する分野が中心になっております。それから対象国といたしましては、比較的開発のおくれた国が中心になっておりまして、所得上の一応の目安といたしましては、一人当たりのGNPが約八百ドル程度以下の国が対象となっております。
  185. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 では、フィリピンについてお伺いするわけでありますけれども、フィリピンは両方、いわゆる有償、無償ともに資金協力として出されておりますね。
  186. 太田博

    ○太田説明員 お答えいたします。  ただいま御指摘のように、フィリピンに関しましては、有償資金協力と無償資金協力の両方を供与いたしております。
  187. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 まず、フィリピンに対して有償資金協力は、昭和年度から行われてきたのか。
  188. 太田博

    ○太田説明員 お答えいたします。  フィリピンに対しましては、有償資金協力は昭和四十三年度から供与をいたしております。
  189. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 昭和四十三年度、これは交換公文ベースで百八億円、こうなっているわけでありますけれども、これの償還期限は、いろいろあるようでありますけれども、八年間の据え置きとしますと、昭和五十一年度から返還ということになると思うのであります。この場合、二十年間で返還するものと思うわけでありますけれども、そうしますと今年はちょうど十年目に当たるわけでございます。これまでどれくらい返還されてきたのか、お知らせ願いたいと思います。
  190. 行天豊雄

    行天政府委員 御指摘昭和四十三年に交換公文が締結されました円借百八億円でございますが、これの貸付契約は昭和四十五年に結ばれておりますので、返済期限は、最後の分が昭和六十四年ないし六十五年に到達する予定のはずでございます。  私、聞いておりますところ、従来までのところ予定どおり返済をされておるということでございます。
  191. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 その後のいわゆる昭和四十六年度分が二百三十四億円、これもちゃんと返還がなされてきているのでありますね。
  192. 小川修司

    小川説明員 御指摘の海外経済協力基金からの円借款は、先生御指摘のように昭和四十六年から始まっております。予定どおり返済されております。
  193. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 利子はまた滞りなく返還されておりますか、これら両方の。
  194. 小川修司

    小川説明員 滞りなく返済されております。
  195. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 いずれもよく返還されているということですけれども、どのくらい返還されているということは明らかじゃないですね。はっきりしておりますか、何ぼ返還されておるかという収支。
  196. 小川修司

    小川説明員 これまでの昭和六十年度末までの累計で、償還額でございますけれども、二百三十五億でございます。
  197. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 二百三十五億返還されているということでありますからあれですが、いずれもこれは、我々の税金がこのようなことで有償資金として協力しているわけでありますから、十分よく監視していただきたい。また、よく返還も行われるようにやっていただきたいと思うのです。資金協力はそれでいいとしまして、あくまで有償資金協力と銘打って援助しているのでありますから、やはりそれなりにしっかりとけじめをつけていっていただきたいと思うわけでございます。  そこで、これは新聞報道でありますので、私それを確認したわけじゃありませんけれども、有償資金協力の中で昭和五十五年度、これは第八次ということになっていますけれども、この中でマニラ首都圏都市交通整備計画、ここでバス四百台の購入が行われているそうでありますけれども、これに関しましてフィリピン政府の業者選定委員会がマニラ首都圏交通公社にあてた一九八一年二月二日付の覚書で、この事業では入札の結果、車両本体は丸紅、部品は東陽通商、これら二社が契約したが、このバスはOECF、協力基金の規格に反し、車体の長さを短くするなどで当初価格よりも一〇%も安くなっていた、こういうわけでございます。  丸紅も東陽通商もともに、入札用に示されたバスはOECFの基準外で、後で問題にされるのではないかということで心配していたということでありますけれども、結局入札価格は円借款よりも五億円も低くなった。しかし、この差額について同委員会では既存のバスの修繕などに振り向けても構わない、このような結論を出しているわけでございます。そういうようなことから、これでは使途目的が変わったわけでありますので、円借款がいかにいいかげんだったのかということはこの覚書に明瞭に示している、こういうことでありますけれども、この事実を政府は確認しているのでございますか。
  198. 小川修司

    小川説明員 お答えいたします。  基本的に、円借款を供与するという借款契約を結んだ後、実際にその事業を実施するのは相手国政府でございますので、入札その他の行為は相手国政府の行為でございます。そういう関係で、個別の案件に即しまして経緯がどうであったかということについては、その相手国政府のことでございますのでお答えしにくいわけでございますが、今の新聞記事で先生御指摘のございました規格の問題でございますけれども、これは一般的に申しまして、OECFが例えばこのバスの規格を持っているとかそういうことはございませんで、この規格はあくまでもフィリピン政府が、入札に際しましてこういう規格でその入札を行う、こういう規格のバスを納入するということで入札を行うということでございまして、それはその入札書類にそういう仕様、規格が示されておるわけでございます。  それで、海外経済協力基金といたしましては、その入札書類のチェックをいたしておるわけでございますが、そこでチェック、それからさらに、その入札の結果落札した企業が決まりますと、その企業との間に契約ということがなされるわけでございますが、この契約につきましては、その入札書類に示された規格に従って落札され、それの同じ規格のものがその契約に到達するということでなければ、基金としてはその承認をいたさないということでございまして、そういう意味で、入札書類に示された規格あるいは仕様ということはあるということでございます。  それから、入札の結果資金が余って、それがいろいろ流用されたのではないかということでございますが、これにつきましては、実はこの案件、第八次の案件の中でメトロマニラ都市交通改良事業ということでございまして、その案件の借款の対象といたしましてバス四百台とそれからそれに必要なスペアパーツ、部品でございますね、そういうものがきちんとその借款対象になっておるものですから、いろいろ入札の結果安くなったから部品の方に回したというようなことではございませんで、当初からバスの本体とそれからそれに必要な維持、修理用の機材ということが借款の対象になっておりますので、それを借款の対象にしたということでございます。
  199. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 しかし、最初の入札価格の中に、そういう五億円も浮くようなことにはなっていなかったと思うのでありますけれども、それが後でなったということでもって、この差額について既存のバスの修繕などに振り向けても構わないというような、こういう覚書が出されたというのはどういうことでしょうね。
  200. 小川修司

    小川説明員 あくまでもその借款の対象としてスペアパーツというようなことになっておるものですから、それはそういうものに供与限度額の範囲で使う。もちろん、そういう事業の全く対象外のものを買うということにつきましては、これは基金としては拒否するわけでございますけれども、その借款の対象としてバス、それからスペアパーツということになっておりますと、実際この事業を実施する上で必要なスペアパーツに関する契約ということですと、基金としてはそれをチェックの上、承認するわけでございます。
  201. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 そこで、少し素朴な疑問を持つのですけれども、スペアパーツといったって、それは五億円になるのか何ぼになるのか、その入札価格の中へ入っているといっても、はっきり入っていないわけですね。わからないんじゃないかと思うのですよ。そういうことで一〇%も安くなって五億円余った、それはパーツに使えるのだ、パーツが五億円なのかどうかということははっきりわからぬわけでありますから、そこに何かずさんさがあるんじゃないかという素朴な疑問を持つわけです。  それはその御答弁でよろしいとしましても、いわゆる円借款の仕組みはどうなっているのかということですね。ちょっとそれを御説明願いたいのです。
  202. 太田博

    ○太田説明員 お答えいたします。  円借款の仕組みにつきましては、まず相手国政府、フィリピンならフィリピン政府から要請が参りまして、その要請を受理いたしまして、外務省、大蔵省、通産省、それから経済企画庁が中心となりまして、これの協議、審査を行います。その際、必要に応じまして政府レベルの調査団あるいは実施機関であります海外経済協力基金の調査団の派遣等を行いまして、この要請を種々検討いたしまして、その検討の結果、対象の案件、供与額、それから借款の供与の条件等の内容を決定いたしまして、これに基づいて我が国の閣議の決定を経まして、相手国政府との間で交換公文、取り決めを行うというのが円借款の基本的な仕組みでございます。
  203. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 そのように仕組みはなっているようでありますけれども、必要に応じ、案件審査のためにいわゆる調査団の派遣ということですけれども、これは落札をして、そしてそのプロジェクトがいよいよ着工するというような段階にいくまでの間に何回現地調査できるのですか。
  204. 太田博

    ○太田説明員 お答えいたします。  現地調査ということでございますと、ただいま御説明いたしましたように、最初に相手国政府の要請が提出されまして、それを受理した段階で必要に応じまして、先ほど申しましたように、政府レベルあるいは海外経済協力基金の調査団あるいは双方の調査団を現地に派遣して、要請の内容を詳しく調べるということでございます。  それ以降、交換公文を締結いたしまして、それに基づきまして借款契約が締結され、それに基づいて相手国政府による入札が行われますけれども、これ以降につきましては、使節団を現地に送るということではなくて、海外経済協力基金が必要な段階でのチェック、検討及び承認を行うということになっております。
  205. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 そういうことでやっているわけでありますけれども、やはりこのプロジェクトの着工あるいはそれが完成、そういった段階においても派遣して、そのとおり実行されているかどうかということを見る必要があるのじゃないかなと私は思うのでありますけれども、その辺はどうでしょうかね。
  206. 小川修司

    小川説明員 プロジェクトの建設工事中の調査につきましては、これは海外経済協力基金が案件の中間監理ということで案件の進捗状況を把握する、あるいはその事業が進むのを促進するというようなことで中間監理と我々言っておりますけれども、その中間監理のためのいろいろな業務をいたしておりまして、そういう場合に必要に応じて、必要ならば基金として現地調査団を派遣するというようなこともございます。  それからまた、工事の完了後でございますけれども、しれにつきましては、完成報告書というのを出してもらいまして、これをその書類で厳密に精密審査する、チェックするわけでございますけれども、それとあわせまして、その事後の当該案件の評価ということのために、必要に応じ現地調査団を派遣するというようなこともございます。
  207. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 そういうことをやっているのであれば、余り問題はないはずなのに、きょうの新聞などを見ますと、これはきょうの新聞でありますけれども、「今度は欠陥発電所 対比円借款」ということで、非常に大きな見出しで出ているのですけれをも、「年間二百回以上も停電 十六億かけOECF、初の修復工事」というようなことで出ているわけであります。こういう欠陥発電所みたいなものが、最初のしっかりした計画のもとに行われ、そして入札され、落札される、そういうようなことであれば、こういうトラブルが出るはずがない。何か実際の落札の価格のそのものよりも、もっとどこかで削っているといいましょうか、だから欠陥商品になってでき上がっている、そんなふうに思うわけですね。  これについても、やはりこんなことを言っているわけです。ちょっとセンセーショナル的な言葉で書いてありますけれども、このように非常に欠陥が出て、発電能力が出力も約七割しかないようなこういう欠陥商品であったということから、「ズサンな借款業務がマルコス政権への多額リベートを生む土壌になったとの見方が一層強まった。」そんなようなことですね。そういうことだとか、あるいは「イメルダ夫人らのリベートに回った分だけ劣悪な材料が使われたともいう。日本企業の責任についても追及する必要がある」、このようにウィルフレッド・シナイ主任技師、こういう人が何か言っているというようなことが出ているのです。  こういうようなことを読んでいきますと、何かしっかりした円借款のもとに、計画もしっかりされて、それで入札も落札も本当にそれだけの規格品を納めるだけのそういう入札であったのかどうか、何か疑問に思われる点がかなり出てきているわけです。それ以外にもまだいろいろ製品が十分でなかったというような欠陥商品的なものが入っていたというようなことも報道されておりますので、そういうようなことから、もう少し現地査察といいましょうか、視察をしっかりやる必要があるのじゃないかと思うのです。その辺、いかがです。
  208. 小川修司

    小川説明員 先生御指摘のとおり、相手国のいわゆる調達の段階で入札、それから入札の評価によって落札者の決定、それから契約という段階を経るわけでございますが、その各段階におきまして海外経済協力基金といたしましてはそれぞれチェックをいたしまして、公正な競争入札が行われているかどうか、それから入札評価におきまして落札者の選定が合理的なものかどうか、あるいは契約につきましては、その契約が例えば納期でございますとか規格の点でございますとか、そういう点で事業計画の達成に支障ないものかどうかということをチェックをいたしておるわけでございます。  その結果、事業が進みまして完成するということで、これの事業が実際どういうふうに完成しているかということにつきましては、第一義的な責任はあくまでもフィリピン政府が検収ということでチェックをいたしまして、その結果を完成報告書という形で海外経済協力基金に報告してくるというようなことになるわけでございます。基金といたしましても、もちろんそういう報告と、それからそれを受けて、先ほども申し上げましたように、必要に応じて現地調査団などを派遣いたしまして、事後、その対象の案件が所期の効果を上げているかどうかというような点につきまして調査をするということでございます。  先生御指摘の新聞の案件がどういう事情であったかということにつきましては、実はここでちょっとその事情をつまびらかにいたしておりませんけれども、一般的にはその事後の評価、実際円借款の効果が本当に所期の効果を上げているかどうかというようなことにつきましては、これからもさらに一層力を入れていかなければならないと思っておりまして、海外経済協力基金の中の体制なども整備いたしまして、そういう点につきましてはこれから十分力を入れてまいりたいというふうに考えております。
  209. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 せっかく大事な税金を円借款という形で対外協力しているわけでありますけれども、せっかくでき上がったものがそういう欠陥商品であれば、かえってその国の国民の方に反感を買うようなことになるじゃないかな、そういう心配をするわけです。せっかく円借款でちゃんとしてあげるならば、本当に故障もしないし、喜ばれるようなものをやるべきじゃないかな、私はそう思うわけですよ。それが年間二百回以上も停電して、何のためにこんな発電所をつくってもらったかわからないということであっては困るなと私は思うわけでございます。  そこで、ちょっとお尋ねしますけれども、プロジェクトの着工の段階でもう一度審査、承認をするようにするというようなことをやっていただきたいと同時に、不正が感知された場合その是正の申し入れが可能なのかどうかということ、その辺、どうでしょうか。非常に正確でなくて入札価格とか何かから後でそれが不正であったというようなことがわかった場合、それを是正させることはできるのかどうか。
  210. 小川修司

    小川説明員 相手国政府の調達の過程で基金のチェックは、入札書類のチェック、それからその結果、入札評価と言っておりますが、落札の選定のチェック、それからそれに基づいて落札企業との間の契約のチェック、こういうことで各段階においていろいろチェックしているわけでございますが、その段階で仮にその入札書類、入札の結果と違う契約が結ばれようとしているというようなことでございますとか、あるいはその入札の評価が合理的なものでないというようなことでございますとか、そういう問題がございました場合には、基金といたしましてはそういう契約あるいは入札評価に承認を与えないという形で不正な行為は抑えることができるということでございます。
  211. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 つまり、是正させることはできるわけですね。いずれにしましても、先ほどから何回も言っていますけれども国民の大事な税金を使っているわけでありますから、今まで何か疑惑とされて新聞報道を随分されておりますけれども、まだわかりませんけれども、ああいうようなことがもしそういうずさんな仕組みで仮に使われていたとすれば、これはやはり大問題であると私は思うわけでございます。  そういう点から、大臣、ちょっとお聞きしますけれども、まだはっきり疑惑が解明されたわけではありませんから何とも仮定の段階でありますけれども、もしずさんなそういったようなことが行われていてこのようなことがあるとした場合、大臣としてどのようなお考えか、御所見をお伺いしたいと思うのです。
  212. 竹下登

    ○竹下国務大臣 この種の問題につきましては、今政府四省庁、すなわち調整を経済企画庁でお願いをして、窓口は外務省でお願いをして、私ども大蔵省と通商産業省、四省庁がそれぞれ円借の問題に当たるわけでございます。  そこで、今日の段階で申し上げますならば、フィリピン援助が正規の手続に従って処理されておって、その実施は適正に行われておるものと信じておりますが、これに関連して疑惑を招きかねないような報道等も数々伝えられておりますので、現在その実情把握のためできる限りの努力を行っておる、これは総理、外務大臣からもお答えがあっておりますが、その結果改善すべき点があれば改善に努めてまいりたい、このように総理も外務大臣もお答え申し上げておるところでございます。私どもといたしましても、外務省で入手なさったもろもろの資料等は拝見させていただける立場にありますし、現在拝見もさせていただいておるという実情でございます。  先生御指摘なさったとおり、国民の貴重な税金を用いて援助を行っておる以上、これが量的な拡大のみならず、適正に本当に効率的に実施されておるということが何よりも必要でございます。したがって、そういう資料等外務省を通じてちょうだいしておりますが、今後の推移を見ながら円借款の適正かつ効率的、効果的な実施を確保するための努力を引き続いて行う、ここまでが大義名分でございます。  そうして、伝えられるようないろいろの問題につきましては、仮定の事実でございますので、どのような措置を講じますということはお答えするのはなかなか難しい問題でございますが、いやしくも国民が、こういう対外援助というものが、今後ともせっかくの税金が使われるのは結構だけれども、変な形で使われるのはそれは御免だという気持ちが十分あるわけでございますから、正確な資料等々をまたちょうだいをいたしまして、私どもは私どもの分野でこれらに調査にも協力していかなければならぬ、あるいは職務権限上から申しますと我が方は税の問題があるわけでございますが、これらについても十分な関心を持って対応していかなければならぬ課題だというふうに、問題意識をおよそ整理させていただいておるというのが現状でございます。
  213. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 大臣、よろしくお願いしたいと思うわけでございます。  次は、無償資金協力についてでございますけれども、これをちょっとお尋ねします。この資金による事業計画の実施状況あるいは進捗状況といいましょうか、いろいろ文化施設や何かつくっておるようでありますけれども、これはどのようにチェックされてきているのか、その辺、御答弁願いたいと思います。
  214. 太田博

    ○太田説明員 お答え申し上げます。  先ほど申しましたように、無償資金協力は、主として医療、保健、農業等の基礎生活分野、それから人づくりの分野における協力を実施いたしておりますけれども、これらが所期の目的に沿った形で効果的かつ効率的、そして適正に使用されるよう事前に十分の調査等をいたしますと同時に、プロジェクトが完成しました後、いわゆる評価という作業を通じまして、所期の目的を達成するように協力の資金が使われたかどうかということをチェックするように努めている次第でございます。
  215. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 わかりました。無償、有償に限らず、いずれも援助資金が適正かつ有効に、しかも効果的に運用されなければならない、私はそのように思うわけでありますけれども、いずれにしましてもその辺よろしくお願いしたいと思います。  以上で私の質問を終わります。どうもありがとうございました。
  216. 角屋堅次郎

    角屋委員長 次に、中川利三郎君。
  217. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 我々国民にとって、いわゆるマルコス疑惑というものは、国民の税金が円借款プロジェクトを通してマルコスの不正蓄財に手をかしてきたものであり、納税者として許せない問題でございます。先ほど大蔵大臣から御答弁もありましたのでありますが、重ねて同じようなことよりも、一言でこれに対する御見解を承れば幸いだと思います。
  218. 竹下登

    ○竹下国務大臣 厳しい財政事情のもとで国民の貴重な税金を用いて援助を行っております以上、これはただ量的な拡大ということだけでなく、適正、効率的に実施されて、本当に途上国の社会経済の発展に真に役立つ効果的な支援を行うべきものであるというのが原則でございます。  フィリピン援助は、正規の手続に従って処理されて、その実施は適正に行われておると思いますが、いろいろな報道等もございますので、現在はその実情の把握のため、可能な限りの努力を行っておるということであります。大蔵省も、各省、外務省からいろいろ資料等もちょうだいしたりいたしておりますが、今後とも引き続き調査にも協力しなければなりませんし、また効率的な円借款のあるべき姿ということについても、引き続き努力をしなければならない課題だと思っております。
  219. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 これは四月五日付の毎日新聞の記事でありますけれども、「マルコス大統領時代の比政府が借款要請の際、日本側に提出する工費見積書にあらかじめリベート相当分として二〇%近い水増しをしていたことが解明されていたが、このリベート分を含む見積もりは日本の商社とコンサルタント会社が二十年も前から海外経済協力基金などの審査の盲点をつき、作成していたことが五日、企業関係者の証言で明らかになった。」ということが書いてあるわけであります。ここでも見られますとおり、円借款プロジェクトの受注企業がリベート捻出方法として、プロジェクトの立案、見積もり段階で混入させ、潜り込ませている疑いが非常に強く出ているのであります。  そこでお聞きするのでありますが、現在の円借款の仕組み、あり方について問題がないのかどうか、問題があるとすればどこをどう改善したらいいと考えているのか、この点について、四省庁を代表して外務省からでも結構でありますから、お聞きしたいと思います。
  220. 太田博

    ○太田説明員 お答えいたします。  新聞等で種々伝えられております疑惑につきましては、先ほど大蔵大臣が答えられておりましたように、現在日本政府としてもいろいろ調査中でございます。したがいまして、御質問でございますが、仮定の問題ということでコメントは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、一般的に、政府それから経済協力基金といたしましては、円借款が適正に使用されるように種々の措置を講じております。まず、円借款の対象案件の事業費の見積もり、これは相手国、この場合はフィリピンでございますが、フィリピンの事業実施者が行っているものでございますけれども、円借款の供与に当たりましては、この見積もりを含むフィリピン政府よりの要請の計画の内容政府それから経済協力基金がいろいろ検討いたしまして、所要額、供与限度額としている次第でございます。
  221. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 また、同じ新聞を見ますと、「証言によると、リベー十分の水増しは、NEDAが日本側に要請するプロジェクトの〝予定価格〟の算定段階で行われる。その仕組みは」云々ということで、それをもとにした借款額が日本側に要請されることになっているんだ、こう書いているわけであります。円借款プロジェクトの制度を見直す上で重要なことは、これらでもわかるとおり、このプロジェクトにかかわった当該商社や受注企業から、その事情聴取を行うことが何よりも肝心なことだと私は考えているわけでございます。  そこで、今月初めの新聞報道によれば、外務、通産、大蔵、経企の四省庁が一緒になって受注企業または当該商社から事情聴取をするということが一斉に伝えられているわけでありますが、そのとおりですか。これはどこでもいいです。
  222. 太田博

    ○太田説明員 お答えいたします。  企業からの事情聴取につきましては、政府が入手いたしました種々の公表資料の調査分析を踏まえまして、その事情聴取の具体的な実施方法につきまして現在四省庁間で協議をしているところでございます。
  223. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 例えば四月六日の朝日新聞によりますと、「「マルコス企業」本格聴取へ あすにも担当会議」と、こう書いてある。あるいは同じ四月六日の毎日新聞には、「〝マルコス疑惑〟三十数社 九日から事情聴取」と書いてあるのですね。今お聞きいたしますと、実施方法をこれから検討するとか今詰めているとかという話なんだな。九日からということにしましても、あれから二週間近くたっているわけでありますから、そうすると全く事情聴取をやられていないということですか、どうですか。二百でお答えいただきたい、と思います。
  224. 太田博

    ○太田説明員 お答えいたします。  今までの段階におきましては、通産省あるいは外務省が個別限定的に、例えば自主的に企業から申し出があった場合に事情を聴取したというような事情はございますが、問題の重要性にかんがみまして、四省庁間で実施方法等について十分検討して、四省庁足並みをそろえて事情聴取すべきだということで現在準備中ということでございます。
  225. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 そうすると、あなた方は早急な真相解明が必要だと言いながら、実際には事情聴取は何もやってないということなんだ。  それならお聞きしますけれども、いつから始めていつまでをめどにしているのか、はっきりさしてくださいよ。
  226. 太田博

    ○太田説明員 事情聴取をいつ開始するかにつきましては、ただいま御説明申し上げましたように現在具体的な実施方法について四省庁間で鋭意協議中でございますので、この協議が調い次第速やかに実施したいと考えております。
  227. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 今フィリピン政府はどう言っているか、これは四月十四日の朝日新聞でありますけれども、「日本政府どこまで本気」と言っているのです。「比に広がる不信感」、こういうことで、口ではこう言っているけれどもさっぱり何もやってないということについて、政府自身が不信感を今大きく広げているという記事が出ておるわけでありまして、そんなことでは全くめどが立たないということなんですね。実施方法を一体にするためにはなんてのんきなことを言っているということは、政府のこれまで言ってきたことと全く違うじゃありませんか。  同時に、私は大蔵大臣に聞きたいと思うのでありますが、フィリピンのオンピン蔵相はもう今月中にも来ると言っていますね。さらに来月には行政規律委員会のサロンガ委員長あるいはダサ委員、メルカド公共事業・道路相も相次いで来日する話が出ていますね。とりわけ、オンピン蔵相の来日を機会に、日本政府政府の意向として第十三次円借款の契約をすると聞いております。若干のプロジェクトの延期の問題も中には入っていて、いろいろありますが、第十三次円借款の交換公文が締結されたのは昨年の十二月二十三日でありますね。つまりマルコス政権当時でございまして、この交換公文の中には、リベー十分を潜り込ませたといいますか混入させた各プロジェクトの借款の供与限度額ども含まれている可能性があると思うのです。そうなりますと、円借款の現在の仕組み、あり方に何ら改善がなされないままに対応するということにならざるを得ないですね。この点について大蔵大臣はどうお考えですか。
  228. 竹下登

    ○竹下国務大臣 先ほどもお答えいたしましたが、今日報道等で種々いろいろなことが伝えられておりますので、その問題につきましては、実情把握のためにできるだけの努力をするというのが現段階でございます。第十三次円借にかかわります問題については、まだ決定したというようなことは聞いていないという段階でございます。
  229. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 今私が聞いたのは、円借款の契約を締結するということはあなたは聞いてないと言うけれども、新聞報道なんかを見ますと、フィリピン蔵相の来日時ということを書いてありまして、しかもその来日が今月の末なんです。二十何日ですね。そういう差し迫った中で、来たら全然そういう問題に触れないというわけにいかないですし、当然そういう問題が課題となることは目に見えていることでありまして、そういう中で、前のマルコス時代の交換公文のいわば問題点やら、どこをどうしたという直した格好のものじゃなくて、昔のリベートを含ませる状況の中でそういうものをやられている可能性が非常に強いわけでありますので、この点について私は先ほどお聞きしたわけでありますが、重ねて聞きますが、そうすると、政府はオンピンさんが来てもそういう話はやらないということですか。
  230. 竹下登

    ○竹下国務大臣 オンピンさんは今大蔵大臣でございますから、私も二十九日にはアジア開発銀行の総会でマニラヘ行かなければなりませんし、お越しになるとすれば、ちょうど債務累積問題でございますとか、あるいはアジア銀行の運営の問題でございますとか、そういうお話はするようになるだろうというふうに思います。お越しになることが決まったといたしますならば。  現在のところ、問題は調査中といいますか、いろいろ四省庁で勉強いただいているところで。ざいますので、今どのような対応の仕方をするということについては、まだ私ども集まって協議したという段階には残念ながらございません。ちゃんと朝から晩まで国会へ勤めておりますものですから、なかなかその時間もございません。
  231. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 では、大蔵大臣にもう一度聞きますけれども、やはり問題なのは、見積もりや立案の段階でリベートを混入させているということは、もう早くから指摘されているだけじゃなくて、われわれ調査してもそれ以外にはああいう問題は起こり得ない、こうまで考えるわけでありまして、その意味でも、商社やそれを受注した企業なりの事情聴取というのは非常に早急を要するものだというふうに私たち考えるわけでありますが、四省庁の先ほどの代表した外務省の発言によりますと、何かどういうやり方をすればいいかなんて、今もってそういうところで低迷しておるということについてあなたはどう考えますか。政府の今までの方針から見て、おかしいじゃないですか。
  232. 竹下登

    ○竹下国務大臣 具体的な事情聴取の方法等は、恐らく四省庁の事務当局できちんと御協議になっておるさなかではなかろうかと思っております。それぞれの所管省におかれましては、これまでの間、事情聴取という言葉が適切であるかどうかは別といたしまして、いろいろな調査は行われておるというふうに私ども聞いております。
  233. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 時間もありませんので最後の質問になるわけですが、衆議院の同日選挙、解散をめぐりまして、大蔵大臣は、憲法上これはできないことはないとか法律上難しいことはないとか、そういう問題は何もないんだということで、実質的に同日選挙を肯定するというような方向に一歩大きく足を踏み出しているということがあなたの発言の中からも予想されるわけでありますが、もしもそうなった場合に、当然マルコスの疑惑隠しあるいは撚糸工連の疑惑隠し、そういうものにつながるというふうに私たちは思うわけでありますが、あなたはそういう点についてはどうお考えなんでしょうか。
  234. 竹下登

    ○竹下国務大臣 私は選挙学の専門家でございますので、そういう意味から、この違憲性とか違法性とかいうことは、新聞記者等に聞かれるままに答えたことはございますが、今の政治的配慮の問題につきましては、今別に総理は解散は考えていませんとおっしゃっておるわけでございますので、その構成の一閣僚の私は、当然総理が考えていないとおっしゃればそのとおりであろうと、つつましやかに承っておるだけでございます。
  235. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 久しぶりに大蔵大臣と話し合って、まだまだ質問したいと思いますが、私の質問時間が来ましたので、残念でありますが、これで終わりにします。
  236. 角屋堅次郎

    角屋委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後九時五分散会