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1986-04-07 第104回国会 衆議院 決算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年四月七日(月曜日)     午後零時八分開議 出席委員   委員長 角屋堅次郎君    理事 糸山英太郎君 理事 上草 義輝君    理事 新村 勝雄君 理事 渡部 行雄君    理事 貝沼 次郎君 理事 玉置 一弥君       金子 一平君    森下 元晴君       渡部 恒三君    斉藤  節君       中川利三郎君    阿部 昭吾君  出席国務大臣         法 務 大 臣 鈴木 省吾君         国 務 大 臣         (内閣官房長官後藤田正晴君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 江﨑 真澄君  出席政府委員         内閣参事官         兼内閣総理大臣         官房会計課長  中嶋 計廣君         内閣総理大臣官         房審議官    田中 広樹君         臨時行政改革推         進審議会事務局         次長      山本 貞雄君         総務庁長官官房         会計課長    塩路 耕次君         総務庁人事局長 手塚 康夫君         総務庁行政管理         局長      古橋源六郎君         総務庁行政監察         局長      竹村  晟君         青少年対策本部         次長      倉地 克次君         北方対策本部審         議官      稲橋 一正君         法務大臣官房長 根來 泰周君         法務大臣官房会         計課長     清水  湛君         法務省民事局長 枇杷田泰助君         法務省刑事局長 岡村 泰孝君         法務省矯正局長 石山  陽君         法務省保護局長 俵谷 利幸君         外務大臣官房審 福田  博君         外務省アジア局         長       後藤 利雄君         外務省経済協力         局長      藤田 公郎君  委員外出席者         人事院事務総局         管理局会計課長 森   猛君         警察庁刑事局捜         査第二課長   国松 孝次君         警察庁警備局公         安第三課長   鏡山 昭典君         警察庁警備局警         備課長     井上 幸彦君         総務庁官長官房         審議官     米倉  輝君         防衛施設庁施設         部施設取得第二         課長      志滿 一善君         外務大臣官房審         議官      太田  博君         大蔵省主計局司         計課長     西津  裕君         国税庁調査査察         部調査課長   友浦 栄二君         通商産業省通商         政策局経済協力         部経済協力企画         官       安達 俊雄君         通商産業省生活         産業局原料紡績         課長      江崎  格君         自治省行政局行         政課長     濱田 一成君         会計検査院事務         総局第一課長  三原 英孝君         会計検査院事務         総局第二課長  天野 基巳君         会計検査院事務         総局第五局審議         官       沢井  泰君         最高裁判所事務         総長      草場 良八君         最高裁判所事務         総局総務局長  山口  繁君         最高裁判所事務         総局経理局長  川嵜 義徳君         最高裁判所事務         総局民事局長  上谷  清君         最高裁判所事務         総局刑事局長  吉丸  眞君         参  考  人         (海外経済協力         基金総裁)   細見  卓君         決算委員会調査         室長      大谷  強君     ――――――――――――― 委員の異動 四月二日  辞任        補欠選任   斉藤  節君    福岡 康夫君 同日  辞任        補欠選任   福岡 康夫君    斉藤  節君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和五十八年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十八年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十八年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十八年度政府関係機関決算書  昭和五十八年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和五十八年度国有財産無償貸付状況計算書  〔裁判所所管内閣所管総理府所管総理本  府、行政管理庁)、法務省所管〕      ――――◇―――――
  2. 角屋堅次郎

    角屋委員長 これより会議を開きます。  昭和五十八年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、裁判所所管内閣所管総理府所管総理本府等、行政管理庁及び法務省所管について審査を行います。  この際、お諮りをいたします。  裁判所所管審査に関し、国会法第七十二条第二項の規定による最高裁判所長官の指定による代理者から出席説明する旨の要求がありました場合は、これを承認することとし、その取り扱いは委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 角屋堅次郎

    角屋委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――
  4. 角屋堅次郎

    角屋委員長 この際、最高裁判所当局内閣官房長官総務庁長官及び法務大臣概要説明会計検査院検査概要説明を求めるのでありますが、これを省略し、本日の委員会議録に掲載することといたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 角屋堅次郎

    角屋委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――    昭和五十八年度裁判所所管一般会計歳入歳出決算概要                最高裁判所  昭和五十八年度裁判所所管一般会計歳入歳出決算概要を御説明申し上げます。  一 裁判所所管歳出につきましては、当初予算額は、千九百九十六億五千八十九万円余でありますが、これに大蔵省所管からの移替え額六億二千七百四十七万円余、予算補正追加額十一億四千三百二十一万円余、予算補正修正減少額三億六千三百三万円余、予備費使用額九億六千三十五万円余、差し引き二十三億六千八百万円余が増加されましたので、歳出予算現額は、二千二十億一千八百八十九万円会となっております。  これに対しまして、支出済歳出額は、二千十五億六千六百二十一万円余であり、歳出予算現額との差額は、四億五千二百六十八万円余であります。  この差額のうち翌年度へ繰り越した額は、三億四千二百九十七万円余、不用郷は、一億九百七十一万円余であります。  不用額となった経費は、人件費六千十五万円余とその他の経費四千九百五十五万円余であります。  二 裁判所主管歳入につきましては、歳入予算額は、十七億五千九百六十一万円余であります。  これに対しまして、収納済歳入額は、十六億五千七百三十八万円余であり、歳入予算額に対し、一億二百二十三万円余の減少となっております。  この減少は、相続財産相続人不存在のため国庫帰属となった収入金及び保釈保証金等没取金等減少によるものであります。  以上、昭和五十八年度裁判所所管一般会計歳入歳出決算について御説明申し上げました。     …………………………………    昭和五十八年度決算裁判所についての検査概要に関する主管局長説明                会計検査院  昭和五十八年度裁判所決算につきまして検査いたしました結果、特に違法又は不当と認めた事項はございません。     …………………………………    昭和五十八年度内閣所管一般会計歳入歳出    決算概要説明  昭和五十八年度における内閣所管一般会計歳入歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  内閣主管歳入につきまして、歳入予算額は、一千四百十七万円余でありまして、これを収納済歳入額五千五十三万円余に比較いたしますと、三千六百三十五万円余の増加となっております。  次に、内閣所管歳出につきまして、歳出予算現額は、百三億九千七百九十四万円余でありまして、これを支出済歳出額百三億七千二十二万円余に比較いたしますと、二千七百七十一万円余の差額を生じますが、これは人件費等を要することが少なかったため、不用となったものであります。  以上をもちまして、決算概要説明を終わります。  何とぞよろしく御審議のほどお願いいたします。     …………………………………    昭和五十八年度決算内閣についての検査概要に関する主管局長説明                会計検査院  昭和五十八年度内閣決算につきまして検査いたしました結果、特に違法又は不当と認めた事項はございません。     …………………………………    昭和五十八年度総理府所管一般会計歳入歳出決算概要説明  昭和五十八年度における総理府所管一般会計歳入歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  総理府主管歳入につきまして、歳入予算額は、二百三十億三千三百九万円余でありまして、これを収納済歳入額二百四十五億九千四百二十九万円余に比較いたしますと、十五億六千百十九万円余の増加となっております。  次に、総理府所管歳出につきまして、歳出予算現額は、五兆八千四百五十八億七千三百六十八万円余でありまして、支出済歳出額は、五兆七千二百九十八億四千九百十五万円余であります。  この支出済歳出額歳出予算現額に比較いたしますと、一千百六十億二千四百五十三万円余の差額を生じます。  この差額のうち翌年度繰越額は、一千七十四億六千五百十一万円余であり、不用額は、八十五億五千九百四十一万円余であります。  総理府所管歳出決算のうち、警察庁行政管理庁、北海道開発庁、防衛庁、経済企画庁、科学技術庁、環境庁、沖縄開発庁及び国土庁については、各担当大臣から御説明申し上げることになっておりますので、これを除く部局、すなわち、総理府本府、公正取引委員会公害等調整委員会及び宮内庁関係について申し上げますと、歳出予算現額は、一兆八千三百九十六億二千二十九万円余でありまして、これを支出済歳出額一兆七千六百五十八億三千八十八万円余に比較いたしますと、七百三十七億八千九百四十一万円余の差額を生じます。  この差額のうち翌年度繰越額は、七百三十六億三千三百十万円余であり、不用額は、一億五千六百三十万円余であります。  翌年度繰越額は、恩給費でありまして、これは文官等恩給及び旧軍人遺族等恩給の請求の遅延及び履歴等調査確認に不測の日数を要したため、年度内に支出を終わらなかったものであります。  また、不用額は、人件費等を要することが少なかったため、不用となったものであります。  以上をもちまして、決算概要説明を終わります。  何とぞよろしく御審議のほどお願いいたします。     …………………………………    昭和五十八年度決算総理木府等についての検査概要に関する主管局長説明                会計検査院  昭和五十八度年総理府決算のうち、歳入並びに総理本府、公正取引委員会公審等調整委員会及び宮内庁関係歳出につきまして検査いたしました結果、特に違法又は不当と認めた事項はございません。     …………………………………    昭和五十八年度行政管理庁関係歳出決算概要説明  昭和五十八年度における行政管理庁関係歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  行政管理庁歳出予算現額は、二百十三億千五百九十八万余円でありまして、支出済歳出額は、二百十二億二千四十九万余円、不用額は、九千五百四十九万余円であります。  支出済歳出額の内訳は、人件費八十三億四千六百六十七万余円、事務費等二十六億九千五百六十一万余円、統計調査事務地方公共団体委託費百一億七千八百十九万余円であります。本月額を生じた主な理由は、退職者が少なかったので、退職手当を要することが少なかったためであります。  以上をもちまして、行政管理庁関係歳出決算概要説明を終わります。     …………………………………    昭和五十八年度決算行政管理庁についての検査概要に関する主管局長説明                会計検査院  昭和五十八年度行政管理庁決算につきまして検査いたしました結果、特に違法又は不当と認めた事項はございません。     …………………………………    法務省所管昭和五十八年度歳入歳出決算説明書  昭和五十八年度法務省所管一般会計歳入歳出決算の大要を御説明申し上げます。  一 法務省主管歳入につきましては、予算額は、七百二十六億六千八百五十八万円余であります。  これに対しまして、収納済歳入額は、八百二十二億八千四万円余であり、歳入予算額に比べると、九十六億千百四十五万円余の増加となっております。  この増加しました要因は、罰金及科料六十二億千九十七万円余、刑務所作業収入二十一億六千九百五十九万円余が増加したことによるものであります。  二 次に法務省所管歳出につきましては、当初予算額は、三千五百九十四億六千三百六十一万円であります。これに、予算補正追加額十四億九千三百九万円、予算補正修正減少額八億七千六百十六万円余、前年度からの繰越額一億三百二十四万円余、予備費使用額十六億八百三十万円余、差引き二十三億二千八百四十七万円余の増加がありましたので、歳出予算現額は、三千六百十七億九千二百八万円会となっております。  これに対しまして、支出済歳出額は、三千六百八億八千四百六十九万円余であり、その差額は、九億七百三十八万円余となっております。  この差額のうち翌年度へ繰り越した額は、三億千二百五万円余であり、不用額は、五億九千五百三十三万円余で、不用額の主なものは人件費であります。  支出済歳出額のうち主なものは、人件費二千九百三十七億三千九百五十五万円余、外国人登録事務処理経費十一億四千二百十七万円余、登記事務等処理経費三十八億七千三百三十五万円余、検察事務処理経費二十八億七千六百五十二万円余、矯正施設における被収容者収容作業等に要する賢二百四十三億千二百九十三万円余、補導援護経費三十六億六千七百八十五万円余、出入国審査難民認定及び被退去強制者収容送還等に要する経費六億五千九百八万円余、暴力主義的破壊活動団体等調査に要する経費十七億四千九百四十九万円余、施設費百五億五千七百九十六万円余となっております。  以上、昭和五十八年度法務省所管一般会計歳入歳出決算について、御説明申し上げました。  よろしく御審議を賜りますようお願い申し上げます。     …………………………………    昭和五十八年度決算法務省についての検査概要に関する主管局長説明                 会計検査院  昭和五十八年度法務省決算につきまして検査いたしました結果の概要説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項一件であります。  これは、職員不正行為による損害を生じたものであります。  本件は、館林区検察庁におきまして、事務課職員罰金納付告知等事務に従事中、納付義務者罰金納付を申し出た際、現金を収納する権限がないのに直接これを受領するなどして、五百三十四万七千円を領得したことによって生じたものであります。  なお、本件損害額については、昭和五十九年八月、全額が不正行為者から返納されております。  以上、簡単でございますが説明を終わります。     …………………………………
  6. 角屋堅次郎

    角屋委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡部行雄君。
  7. 渡部行雄

    渡部(行)委員 最初に、内閣官房長官にお伺いいたしますが、予算というのは、すべて決算の総括の上に編成されるべきであるというのは申すまでもないと思います。したがって、常に表裏一体をなすものでなければならないわけで、もちろん、政府会計検査院指摘あるいは内部検査等によって予算が組まれるものと思いますが、問題は、このような状態、つまり六十一年度に入って三年前の決算審査をしておるというような現状では、予算編成時に決算についての国会意思が反映されないでしまう。  この主たる原因は、国会姿勢というよりは、むしろ決算委員会に対する政府姿勢の問題にあると思いますが、この点、どのようにお考えなのか。財政民主化が叫ばれる今日、決算こそ私は何よりも優先して重要視しなければならないと思いますが、官房長官の御意見をお伺いいたします。
  8. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 ただいま御指摘のとおり、決算審査というのは予算審査と表裏の関係にあるわけでございますから、政府としては、国会決算委員会の御審議、これには最大限の御協力を申し上げて、そして同時に、会計検査院の毎年の検査の成果が予算の執行上生かされていくというような措置を講じなければならぬことは、これはもとよりでございます。  実は先般、角屋委員長からもそういった点についての厳しい御指摘がございまして、決算委員会審査政府としては最大限努力をすべきではないか、したがって、閣僚等出席についても万障繰り合わせて出るようにしてもらいたい、こういう厳しい御要請がございました。  それを受けまして、閣議の席でも私から各閣僚に、それぞれの法律案等抱えて国会のそれぞれの委員会のお話し合いということも願わなければならぬけれども、しかし、決算委員会重要性、そして決算委員会審議が、これは財政法では、決算は翌年度開会の常会で国会に提出する、こうなって、御提出はしておるのですが、残念ながら、毎年審議がおくれておるわけでございますから、こういったことのないように各閣僚は十分ひとつ努力してもらいたいという私からの御要請もいたしておるわけでございまして、政府としては、こういった基本姿勢の上に立って決算審査に御協力を申し上げ、それと同時に、会計検査院の毎年の御指摘事項の改善、これらについては当然のことながら従来も努力をいたしておるつもりでございますけれども、より一層の努力を傾けてまいりたい、かような決意でおるわけでございまするので、御理解を賜りたいと思います。
  9. 渡部行雄

    渡部(行)委員 実際に運営を見てまいりますと、結局、決算委員会の場合に、大臣がとれないというのが主たる原因になっておるようでございます。委員会からの要請があれば、本来内閣総理大臣出席して答弁しなければならないことは、憲法上保障されておる問題であることは言うまでもありません。そういう重要な問題が軽視されておる。しかも、大臣所管外でいないという場合には、課長を出してよこす。それが当たり前のような顔をして質問者に通告してくる。こういうことでは国会軽視も甚だしいと思うのです。大臣がいなければ、どんなことがあっても局長以上の、それにかわって答弁できる、しかも自分で判断できる、そういう一つの形で答弁者を出してきてほしいと思いますが、今後どういうお考えか、その辺を明らかにしていただきたい。  とにかく財政民主化が崩れたら、これはファッショの土台をつくるだけでございますから、フィリピンのようなああいう政権をつくらないためには、どうしても財政民主化を何よりも重要視すべきだと私は思います。その点、お答えを願います。
  10. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 ただいまお答えしましたように、閣僚としては最大限努力をして当委員会出席すべきものである、こういう基本認識のもとに、万やむを得ないといったときには、副大臣としての政務次官もおりますから、政務次官あるいはまた局長、こういった方々に当委員会にできる限り出席をするように政府としては努力をいたしたい、こう考えております。
  11. 渡部行雄

    渡部(行)委員 ぜひ、今後重大な決意をもって臨んでいただきたいと思います。  次に移りますが、政府は今度のフィリピンの政変に対してどのような認識を持っておられるのか。つまり、フィリピン政権の移動というのは革命という認識で受けとめるのか、それともどういう形でマルコスからアキノ政権が移動したという受けとめ方をしておるのか。この認識が私は一番重要なかぎだと思いますが、その点、ひとつお答えを願いたいと思います。
  12. 後藤利雄

    後藤(利)政府委員 アキノ大統領が三月二十五日、暫定憲法を発表したわけでございますが、同暫定憲法におきましては、新政府フィリピン国民の権力の直接の行使によって成立したものであるというように言っておりまして、フィリピン国民のこの歴史的行為は、フィリピンの一九七三年の修正憲法規定によらないで行われたものとしております。さらに、今次暫定憲法を公布する大統領権限の源泉を国民に求めておるという点、従来の憲法改正手続に基づき作成したとの形はとっておらないわけでございます。したがって、その意味でアキノ政府は、その成立の基礎を従来のフィリピン憲法体制に求めていないということは言えると思います。  ただ、革命政権がどうかということにつきましては、専門用語があるわけではございませんので、国際法的にどういう性格の政権がということを論ずることは必ずしも適当ではないだろうというように考えておるわけでございます。いずれにしましても、アキノ政権はみずからは革命政権と言っておりません。暫定政権という形で言っておりますので、どのようにそれを呼ぶかというのはフィリピンの問題であって、我が方が云々するべき問題ではないだろう、かように考えております。  いずれにしましても、私ども日本政府といたしましては、二月二十六日に安倍外務大臣談話を発表しておりまして、我が国としては新政権フィリピンを代表する新政府として認め、同政府と正常な外交関係を維持していくとの意思表示をしたのは御記憶のとおりでございます。政府承認が問題となる事態か否かということでございますが、実際上は既に二月二十六日の外務大臣談話によって私どもアキノ政権を承認している、こういう立場にあるわけでございます。
  13. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これは、フィリピン政権自体革命政権であるということを宣言しておるのに、こちらがアキノ政権を認めておりながら、その革命の本質についてはコメントを避けるというのはどういうことでしょうか。
  14. 後藤利雄

    後藤(利)政府委員 今委員の御指摘でございますが、フィリピン政府は、革命政権というような形では言っておりません。暫定憲法のテキスト及び三月二十五日のアキノ大統領記者会見の中でも、みずからの政府のことを革命政権と称している箇所はないわけでございまして、今後の六カ月のうちに新しい憲法を起草して、国民にその新しい憲法を発布する、こういうことになっておりまして、私どもの理解する限りでは、アキノ政権革命政権という形ではなくて、いわば暫定政権と言っております。憲法のことをインテリムコンスティチューションと言っておりますけれども、そういうような認識で、先ほどの繰り返しになりますが、果たして私どもはこれを革命政権と呼ぶのかどうかはむしろそれぞれの見方であろう、かように考えております。
  15. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これは参謀総長記者会見の中で、テレビではっきり言っていますよ、私はこの耳で聞いたのだから。アキノ大統領自身はわかりませんが、参謀総長が言っておる。しかも、革命政権でないとすれば、このフィリピンのマルコス大統領時代のすべての問題は継承されるはずだと思います。アキノ政権はその問題を継承するのですか、しないのですか。
  16. 後藤利雄

    後藤(利)政府委員 繰り返しになりますが、今回いろいろな人がいろいろな政権の呼び方をしておりますが、アキノ夫人が大統領でございますから、その大統領革命政権という言い方をしておらないというところを私ども認識すべきであって、率直に申し上げまして、その政権の呼称というものは何であれ、先ほども申し上げましたように、国民の歴史的な行為によって新しい政権が生まれたんだというところを私どもは重要視して考えるべきであろうと思います。  それから、継承の問題につきましては、国際法的なものについてはこれを守っていきたいということを言っているというように私どもは理解しております。
  17. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そうすると、今までマルコス政権に与えたいわゆる海外経済協力資金、円借款等は、そのまま引き継がれるというふうに解釈していいんでしょうか。
  18. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 私ども、日本からの円借款に基づきますフィリピンの債務は、当然継承されるものと考えております。
  19. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そうすると、マルコスと日本政府が契約したとおりに、この借款の問題は返済がされる、将来完済される、そういうふうに受け取っていいでしょうか。
  20. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 そういうふうに確信しておりますし、現実にも返済を行ってきております。
  21. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで、今アメリカやフィリピン当局から、リベートを贈ったという日本の企業やその企業名などが明らかにされつつあるのですが、日本の政府からは全然このような問題を明らかにされていない、また、追及されても逃げてはかりいる。これは一体どういう理由に基づくわけですか。
  22. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 フィリピンに対します経済協力関係の資料で私どもが御提出できるもの、公表できるものはすべて御提出し、公表をいたしております。  委員が今言及されました受注企業名の点でございますけれども、受注企業名と申しますのは、我が国はフィリピン政府に対しまして援助を行います。事業を行っている主体はフィリピン政府でございまして、そのフィリピン政府の行っている事業に対して我が国は援助を行う。我が国の円借款の場合には、原則として公開競争入札を行うことを義務づけておりますけれども、入札を行いますのはフィリピン政府でございまして、そのフィリピン政府が入札を行い、適当と認められる落札者と契約を結ぶわけでございます。その入札の行為、それから契約はフィリピン政府が当該企業と行う商契約でございまして、日本政府は承認行為は行いますけれども、これは我が国がフィリピンに行っております援助、政府間で交換公文で与えております援助の趣旨に合っているかどうかということを承認はしておりますけれども、契約自体はフィリピン政府と当該民間企業との間のものでございまして、日本政府は当事者ではない。したがいまして、当事者でない日本政府としましては、その契約の一部でございます受注企業名を公表する立場にはないというのが、今まで政府として御答弁を申し上げてきた立場でございます。
  23. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それは、正常にマルコス政権が機能しておる段階なら、今のお答えを私は聞きますよ。しかし、今マルコス政権というのは、その犯罪性を国際的に追及されているのじゃないですか。そして、政権としての機能もあるいはその機能もなくなっているのじゃないでしょうか。そのために何で義理立てをしなければならないのでしょうか。私はそこが一番わからないのですよ。  アメリカあたりは、マルコスの財産まで差し押さえるなどと言って、そのマルコスの罪状を次から次と暑いているのに、日本政府は何一つしようとしていない。この前も新聞に指摘されておりましたが、外務省はほとんど何にもやっていないというんじゃないですか。それは何か日本政府の要人や政党の大物に関係があるということなんでしょうか、どういうことなんでしょうか、その辺を明らかにしていただきたいと思います。何のために義理立てしなければならないのか。
  24. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 今般のいわゆるマルコス文書と申しますか、明らかになりました文書につきましては、これは総理大臣外務大臣国会の場で御答弁ございましたように、関係省庁におきましてこれを精査し、いやしくも我が国の経済協力に何らかの疑惑を持たせるようなことがあってはならないということから、私どもこの資料を検討し、関係省庁で検討の結果を持ち寄っていろいろ協議を行っているというのが現在の状況でございまして、何もしていないというような状況では全くございません。  第二番目の、マルコス前大統領に義理立てをして云々という御指摘でございましたけれども、既に完了しました事業につきましても、先ほど申し上げましたように、それを受注いたしました企業の名前、それから契約の内容と申しますのは、先方の政府と当該企業との間の契約でございますので、これを我が国政府として公表できる立場にはございませんし、現在、前政府との間で結ばれました取り決め、契約に基づいていろいろな事業が引き続き行われております。これらの事業につきましても、当然のことながら、そのもとになっております契約の内容というのは公表いたす立場にはないというのが政府の立場でございます。
  25. 渡部行雄

    渡部(行)委員 新聞ではほとんど企業名が発表されておって、国民の税金をつかさどっている政府が、この問題について一言もどういう企業にその仕事が行っているのか発表できないというのは、私はどうしても納得できないのですよ。しかも、そのフィリピン政府と契約した企業というものに金を支払うのは、銀行を通してですけれども日本政府が直接支払うというじゃありませんか。それなのに、その相手が発表できないというのはどういうことでしょうか。そんなことで決算がうまく進むと思いますか。どんなことがあっても国民の税金は明らかにしなくちゃならない義務があると思いますよ。  アメリカの方ではなぜ企業の発表なり資産の発表なりをやれて、周本政府はなぜそれができないのですか。その理由は何ですか。外国の政府がやれることを日本政府ではやれないと言う。そこを教えてください。
  26. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 我が国が政府として何ゆえに企業名の公表ができないのかという理由は、先ほど来申し上げているとおりでございます。  ほかの国につきましては、それぞれの国の法制等々があることと思いますので、日本と同じような法制をとっている国もございますし、そうでない国もあるというのが現状がと思います。
  27. 渡部行雄

    渡部(行)委員 ダザ委員という方が、日本の国会から要請があれば、いつでも出席して資料の提供なり御協力を申し上げますと言っているのですが、政府はこのダザ委員の発言についてはどういうふうに考えているのでしょうか、官房長官
  28. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 そのような報道があることは承知しております。
  29. 渡部行雄

    渡部(行)委員 あなたはこの問題について発言権ないですよ。これは政府がどういう態度であるかという、むしろ政府を代表する内閣総理大臣が答えるべき性質のものだけれども、ここにはいないから、官房長官という名指しで私は質問したのです。官房長官、お願いします。
  30. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 フィリピンのみならず、日本の対外援助の問題は、それぞれの正規の手続に従いまして、そして厳しい手続の上で適正に実施をせられておる、私はかように確信はいたしておるわけでございますが、こういった対外援助に関連して、今回フィリピンのような問題が出たということは、私は大変残念に思っております。  政府といたしましては、国会で特別委員会もできるといったようなことでございますので、この特別委員会の御審議には政府としてできる限りの御協力は申し上げたい、かような考え方でおるわけでございますが、ただいま御質問の、要請があればフィリピン側から何か国会に人を出すなんというようなことは報道で私は聞きましたけれども、報道以外、正規にそういう話がフィリピン政府から我々の方に来ておるということは聞いておりませんので、この席でそれについてコメント申し上げるという立場にはないわけでございます。  いずれにいたしましても、フィリピン政府から正式に日本側にそういうようなお申し出があれば、これはその段階で政府としての受けとめ方を決めてまいりたい、かように思うわけでございます。
  31. 渡部行雄

    渡部(行)委員 マルコス政権に与えたこれまでの円借款を含めた援助額の総額は、どのくらいですか。
  32. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 援助額は、もちろん返済されてきているのもございますので、総額ということで申し上げますが、賠償を一応別にいたしますと、円借款が昨六十年度までの約束額の累計で四千六百六十七億三千九百万円、それから無償援助が昨六十年度までの累計で五百四十六億六千九百万円、それから技術協力が、これはまだ六十年度の集計は終わっておりませんので、五十九年度までの累計で申し上げますと三百八十一億二千二百万円ということでございまして、約五千五百億円程度になるかと思われます。
  33. 渡部行雄

    渡部(行)委員 口でこそ五千五百億円と言いますけれども、これは莫大な金でございまして、これをアキノ政権が、我々は革命政権だからこの問題については責任はない、こういうふうに言った場合に、その返済を求めることができるのかどうか、その辺についてはどうなんでしょうか。
  34. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 これは先ほど申し上げましたように、合法政権はもちろんのこと、革命政権につきましても、前政権の債務を継承することは私どもは当然のことと考えているのが今の状況でございます。
  35. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで、こういう問題が日本の政府を巻き込んだような形で問題にされておるときに、このダザ委員のような発言が、かりそめにも新聞紙上であれ何であれ出ておる限りは、むしろ積極的にこの問題の究明に乗り出すという姿勢国民の前に示してこそ、本当の信頼を獲得できるのではないか、こういう問題を我関せずで逃げるだけ逃げようというような姿勢となって国民の日に映れば、これは逆に政府に対する物すごい不信感と変わっていくと私は思うわけでございます。そういう点で、官房長官はどのように考えておられるでしょうか。
  36. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 今の渡部さんの御質問の中に、政府は逃げられるだけ逃げまくるというようなお話がございましたが、そんなつもりはございません。先ほど申し上げましたように、特別委員会もできるということでございますから、政府としましては、御協力を申し上げたいという考え方でございますので、その点はさように御理解をしておいていただきたいと思います。  ただ、この問題は、なるほど今毎日フィリピンの一部の政府関係者を含めましていろいろな方がいろいろな御発言をなさっている、しかしながら、事はフィリピン政府と企業との間の私的契約に基づくものである、したがって、事の第一義的にはフィリピン政府が解明に乗り出すべき筋合いのものであって、フィリピン政府から日本政府に対して正規にお申し入れがあれば、これは日本政府としても当然事態解明に協力をする、こういうことが基本でなかろうかと私は思います。  ただ、事は日本のフィリピン援助に関連していろいろな問題が起きているわけでございますから、日本政府としても、特別委員会等ができて事態の解明に当たるということであれば、それに御協力申し上げでそれなりの対応をすべきでございますけれども、いずれにいたしましても、先ほど来のいろいろなやりとりを聞いておりまして、フィリピン政府としてまだ何ら物を言っていないときに、日本側がこの企業はどうであるこうであるといったことをフィリピン政府より先に公表するといったようなことが、果たして外交上いかなる問題があろうかという点で政府としては慎重に考えなければならない。そして究極においては、こういった疑惑がありとするならば、これははっきりさせなければなりません。いずれにいたしましても、政府が逃げまくるという考え方はないということだけは、はっきりと申し上げておきたいと私は思います。
  37. 渡部行雄

    渡部(行)委員 次に、総務庁長官にお伺いいたします。  特に今貿易摩擦が非常な問題になっておることは申すまでもありません。ただ、貿易摩擦貿易摩擦と言って現実に八百億ドルも黒字をつくっていったのでは、今まで何をやっておったのか、私はこういうふうに考えざるを得ないわけですが、摩擦摩擦と言いながら、経常収支を含めて日本の黒字がどんどんふえていくことは一体どこに問題があるのか、はっきりさせていただきたいと思います。
  38. 江崎真澄

    江﨑国務大臣 この問題は、何といっても、従来はドル高、そして高金利といったことも大きく日本企業に輸出ドライブがかかった理由になっておる。鉄鋼においても自主規制をしておりますし、自動車などでも自主規制をしてきたことは御存じのとおりであります。それからまた、日本側がもっと物を買うということは、前からも我々はしきりに努力をしてまいりましたし、特に昨年のアクションプログラムにおいて相当思い切ったことをしたわけであります。  日本の市場というのは、ただ文化の違いと一言で言い切れないものがございます。それは、中小企業の定義は御存じのとおりですから今さら申し上げませんが、日本の中小企業が何と九九・四%になるのです。そうしますと、大企業はごく限られた〇・六%ということです。ですから、この中小企業の激甚な、しかも、カリフォルニア一州よりも狭いところに外国企業が売り込み努力をすることがいかに難事であるか。それは規格、基準・認証の緩和とかが相当、もう税率に至っては、総品目でいえば税率は世界一安うございます。東京ラウンドで決めました多国間の貿易取り決めにおいても、六十七年までに税金を引き下げていくという徐々にいくべきものを、二年前に数度にわたって前倒ししてもう完了してしまって、その上また引き下げたわけです。ですから、ネックというならば、そんなにネックはないわけです。ですから、外国にも売り込み努力をもっとしていただきたいということが率直に言えるところであります。  仰せのように、それにしても多過ぎるじゃないか。本当にそうだと思います。多過ぎます。特に経常収支がGNP比の三・五%強、三・六%、これは重大なことでございまして、私ども、貿易依存型でなくて、もっと内需振興型の経済志向に変えていかなければならないというので、大いに努力しておるところであります。  この六百億ドルを上回るという中に、簡単な例を申し上げますと……(渡部(行)委員「例はいいから、簡単にお答えください」と呼ぶ)一九八五年のアメリカとの貿易額で、在日米国企業による輸出、これは日本の勤労意欲と技術に依存して日本に進出した企業ですが、二十億ドルもあるのです。それからOEM輸出、これはアメリカの有名ブランドが日本と何らかの形で合弁して、そしてアメリカに輸出したり第三国に輸出しておりますが、アメリカに逆上陸したのが約七十億ドル。それから、完成品をつくるための部品輸出が約八十億ドルであります。それから、アメリカで全くつくられていない商品、これはVTRとか三十五ミリカメラとか音響機器といったようなものが代表的なものですが、これが何と四十億ドル。合わせて二百十億ドル、これは総輸出額の三〇%に当たるわけであります。  ウォーレス国務次官が先ごろ参りましたときに、私はこの資料を差し上げまして、アメリカとは水平分業、垂直分業、もう本当に切っても切れないような産業関係にありますよ、三分の一は本当にアメリカの産業に貢献しておるものですということも申しましたが、そのときに彼は手を広げて、そんな数字は初めて聞いた、もっとアメリカに宣伝しなさい。  ジェトロ、大公使館、領事館、総領事館などが宣伝しておるわけですが、こういったことの宣伝があの五十州にまだまだ十分に行き渡っていない。そこで、政府としても自民党与党においても、あの五十州に進出しておる企業に、これをもっと宣伝したらいい、そうしてアメリカとの深いつながり、三〇%、三分の一というのは大きいですから、こういったことを努力しておるというのが現状でございます。
  39. 渡部行雄

    渡部(行)委員 時間が参りました。もっと質問したかったのですが、大臣の答弁が長過ぎて困りました。ここでやめます。  どうもありがとうございました。
  40. 角屋堅次郎

    角屋委員長 次に、貝沼次郎君。
  41. 貝沼次郎

    貝沼委員 大変突然で恐縮でございますけれども、初め官房長官にお尋ねしたいと思います。  十二日から総理が訪米されるという話を聞いておりますが、この点について官房長官のお考えをお聞かせ願えればと思います。
  42. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 総理は、国会開会中ではございますけれども、お許しを得まして、十二日から十五日まで訪米をさしていただく予定にいたしておりますが、その目的は、やはり御案内のような日米間の厄介な経済問題がございますから、こういった日米間の全般的な問題、これらの話し合いが一つ。いま一つは、五月早々にサミットが開かれますので、日本は議長国でございますのでサミット成功に向けての日米間の事前の調整を行いたい、こういった目的で訪米をいたすことにいたしております。
  43. 貝沼次郎

    貝沼委員 そこで、経済問題、貿易摩擦の問題等につきましては、大体どういう方向でのお話がなされるのか、もし差し支えなければお聞かせ願いたいと思います。
  44. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 これは江崎国務大臣からお答えするのが適当かと思いますが、御案内のような日米間の経済問題、貿易不均衡問題から日本の市場の開放、そしてまた内需の拡大といったような要請がございます。こういったことの要請もございまするので、政府としては、予算も通さしていただきましたので、これを機会に当面の総合的な経済対策も早々に打ち出したい、こう考えております。これが一つ。  それからもう一つは、やはり日本の貿易産業構造そのものの構造政策の転換を行わなければ、なかなか我が国の輸出型の黒字がたまっていく情勢が改善になるとも思えません。そういったことで、合せっかく中長期の日本の構造政策についての検討を進めておりますが、これらもおおよそその目鼻が立っております。  こういったような諸般の事情を踏まえまして、これは大統領と総理の話でございますから私どものいろいろ申し上げる筋合いではありませんが、大局的な立場に立って、日米間のそういった話し合いの中で日本の対応について恐らくや総理はお話をなさるのではなかろうか、かように考えているわけでございます。
  45. 貝沼次郎

    貝沼委員 それからもう一点、この大統領と総理との話の中に、今国会でさんざん議論されておりますフィリピンのマルコス疑惑の問題につきまして、何か話し合われるという予定はございますか。
  46. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 総理の訪米は外交チャネルを通じて大分前から話し合いをしておることでございまして、マルコス問題はその後で起きてきた問題だと私は理解しております。したがいまして、日米の首脳間の話しでフィリピン問題が論議に出るということは、私はこれは全く承知をいたしておりません。
  47. 貝沼次郎

    貝沼委員 常識的に考えると話が出るのではないかと想像されるわけでありますけれども、もし――もしというのは大変失礼な言い方ですが、恐らく出るだろうと思うので、そういう場合は、日本の政府としてはどういう立場で、どういう姿勢で話し合いをされる予定ですか。
  48. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 フィリピンのこの問題が、今のこれだけの世界情勢の中で果たして出ましょうかな、私は出ぬのじゃないかなと思いますが、仮に出るのか出ないのかわからぬ問題としますれば、これは今私はここで、そのときに私が総理ならそれは言いますよ、だけれども、そういうわけじゃありませんから、ひとつ答弁を差し控えさせていただきたい、こう思います。
  49. 貝沼次郎

    貝沼委員 それから、新聞の連載で前にあったんですが、「援助途上国ニッポン」というところに自民党のある閣僚経験者が言っている。こういうので括弧つきであるわけです。政府開発「援助のカネは機密費みたいなもんだ。どの国へいくら、と国会で決めるわけじゃなし、どう使われているのか国民にはほとんど知らされない。おまけに、もっと増やせ、増やせだ。政治資金というタマゴを産むニワトリとしては、とびきり上等だよ」、こういう言葉が出ているわけでありまして、これが元閣僚経験者というふうについておりますので、自民党だけなら、私は自民党のことですからそんなこともあるのかいなと思いますけれども閣僚という名前が出てきますと、これは外国との関係で大変不名誉な話でございますので、こういうような前の記事でありますから恐らく御承知だろうと思いますが、政府としてはどういうふうに受けとめていらっしゃいますか。
  50. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 貝沼さんも既に御案内のように、日本の経済力がここまで強大になり、しかも国際社会の中において日本の責任というものが重みを増しておる今日、日本のこの海外援助といいますか途上国援助については、本当はもう少し予算をふやすべき時期に来ておるのではないか。七年間でまた倍でしたか三倍でしたかするということは決めておりますけれども、私はもう少しやってもいいくらいに考えております。しかし、それだけに海外援助というものはあくまでも厳正な手続を経て、そしてきちんとした成果が上がるような、相手国の民生の向上、福祉の向上、経済の発展、こういうものに役立つようなやり方でやらなければならない、こう考えておるわけでありますが、そういう過程でこういう事件が起きて、私は大変残念に思っております。     〔委員長退席、渡部(行)委員長代理着席〕  しかもただいまのお話、それは元閣僚というのは本当ですかな、そんな人は閣僚になるはずがありませんな、私はそう思う。一体何を考えてそういう愚かな発言をするのか、そういうことは私は大変不名誉なことだと思います。今までも、先ほど来申し上げておるように、正規の手続を経まして厳しい手続でやっているわけてございますから、それが何でしたかな、今のお話で何か元閣僚なる者が「タマゴを産むニワトリ」、冗談じゃありません、これは全く不見識きわまる発言だ、私はかように理解をいたしております。
  51. 貝沼次郎

    貝沼委員 ただいま長官の御答弁を聞きまして、外国に対して日本人として全く不名誉であるということは、私は同感でございます。  そこで、行管庁がかつて行政監察をしたときの記事の中に、問題点というのが指摘されております。その三番目に、「開発途上国における必要性、妥当性よりもわが国行政機関の関心の度合いや、友好面、通商面等からの配慮に主眼が置かれる場合がある。」というわけで、大体援助が決定するまでは、援助を要請する相手国、そして相手国政府から要請があった場合外務省が受けて、そして無償資金協力があるいは技術協力か直接借款かというようなパターンがあると思いますが、そこで案件発掘の調査団派遣というのがなされまして、それからいろいろやった結果、外務省が検討し相手国と交換公文の締結、これがルールだと思います。  ところが、この交換公文の締結のときに国会の承認は不必要となっておるわけでありまして、どういうふうにしてこれが決定されるかというのが、実は国民の目からは非常にわかりにくい状況になっておるわけでございます。したがって、こういうようなことから、例えばある企業などは、相手国がこれを要請しておるということよりも、こちらが向こうから要請させた方が自分の商売が成り立つというようなことから、それを押しつけてやっておる。  よく疑惑を持たれておりますのは、例えば持ち込みとしてはインドネシア・アサハン・アルミニウム株式会社ですね。これが、日本国内で電力が高騰した。アルミニウムというのは電力を固めるほど電力を使うわけでありますから、そんなことで悲鳴を上げたアルミ業界の活路として、このプロジェクトが実施されたというふうなことも言われておるわけであります。  もし日本の企業によって向こうから要請しろというような動きでもって対外援助が行われるとするならば、これは大変問題がある、そういったことのないようにというのが、恐らくこの行管庁の指摘だと私考えておりますけれども、この点について当局としてはどういうふうにお考えであり、また今後どうされようとなされるのか、御答弁を願いたいと思います。
  52. 太田博

    ○太田説明員 お答え申し上げます。  具体的に日本政府が開発途上国に対してどのようなプロジェクトについて協力をするかということの検討に際しましては、我が国の経済協力についての基本的な考え方、つまり開発途上国の民生の安定、福祉の向上、社会経済の発展に役立つような援助を行うという立場と、それから具体的に開発途上国からの要請、これを踏まえまして検討している次第でございます。  ただいま先生の御指摘のような、日本側がしかけて要請させるというようなケースが全くないとは言えないかもしれませんけれども、我が方といたしましては、ただいま申しましたように、日本側の基本的な考え方、それから要請をしてまいります被援助国側の要請の具体的内容、真の必要性というのがどこにあるかということを十分検討して、本当に協力をするのに値するかどうかという点から、厳密に事前にチェックをした上で実際の協力を決めている次第でございます。
  53. 貝沼次郎

    貝沼委員 こういうようなことも起こってくるのは、私は、交換公文の締結のときに、表にその内容が出てこないというところから起こっていると思います。例えば、外務省とあるいは相手国との間で話し合いがなされるけれども国会の承認問題になっていないというところに――国会の承認というのがいいのか、あるいは別の方法があるか、それは私はいろいろあると思います。あると思うけれども、外務省だけがわかっておるというところに私は問題があると思います。したがって、こういうような点について今後何か改良する点を考えておるのかいないのか、その点についてお答え願いたい。
  54. 太田博

    ○太田説明員 お答えいたします。  交換公文でございますが、これは相手国政府と具体的な点につきまして詰めましてから交換公文を結ぶわけでございますけれども、内容につきましては後ほど交換公文を締結されましてから公表されておりますし、交換公文の中に盛られますプロジェクト名、それから円借款の場合ですと供与いたします借款の限度額等を明確に規定しておりまして、国会におきましても、交換公文の内容につきましてははっきりわかるような形で処理されているというふうに考えております。
  55. 貝沼次郎

    貝沼委員 はっきりわかると言いますけれども、では実際今までどういう企業がどういうふうなプロジェクトでどれだけの仕事をしたのかというような一覧を、実態というものを、今度国会で全部フィリピン関係については出せとかいろいろ言っております。ところが、そういうのはなかなか出てこない。わからない。  それで、先ほども話がありましたけれども、例えば総理大臣は、このマルコス疑惑については全力を尽くして早期究明に努力している、これは私は結構だと思います。ただ、努力している具体的なものは何を努力なさっているのか、ここがまだ見えないですね。あれはこれはとこっちの方から聞いてみると、いやそれは違う、これは違うというふうなことがあって、努力しているとおっしゃっているのが、私どもとしてはよくわかりません。  そこで官房長官、総理大臣の答弁ですから官房長官になると思いますが、全力を尽くして早期究明に努力しておると言いますけれども、具体的にはどういうことを今なさっていらっしゃるのでしようか。
  56. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 総理は、アメリカ側の公表資料の分析等を行って真相究明に努めなさい、こういう指示を四省庁に出されております。関係省庁は公開の資料に係る事実関係の把握に努めまして、その把握の過程で、民間企業から必要に応じ参考として意見を求めて聞いておるというのが現在の段階である、かように承知をいたしておるわけでございます。
  57. 貝沼次郎

    貝沼委員 きょうの報道にも、四省庁が合同して、順次、文書に名前が挙がった企業を呼んで事情を聞くとか、あるいは書類の洗い直しということが報道されておりますので、恐らくこの記事が今の答弁の記事だろうと思いますが、この事情の聴取とかそういうのは、日程的には既にもう入っておるということなんでしょうか。
  58. 太田博

    ○太田説明員 お答え申し上げます。  関係の企業からのヒアリングにつきましては、既に外務省及び通産省で二、三の企業から事情を個別的に聴取いたしております。ただ、本件重要性にもかんがみまして、円借款に直接関係しております四省庁がばらばに事情聴取をするのではなくて、四省庁として事情を聴取すべきということで、そういう形の事情聴取はこれから行いたいというのが現状でございます。
  59. 貝沼次郎

    貝沼委員 これから行いたい、ひとつなるべく早くやっていただきたいと思います。  それから、外務大臣は現段階ではフィリピン国に対して資料を請求する考えは持っていないというような答弁があったようでございますが、今、出たものについては、そういうふうに検討したり、いろいろ資料を調査するということであります。  これは先ほど官房長官が、フィリピンのラウレル副大統領の言葉については正式なものではないので答弁のしようがないということでございましたが、報道されておるところでは、フィリピン側の資料は要請があれば日本側に引き渡す、これは報道の段階ですね。したがいまして、少なくとも日本の企業とのかかわりでそういう問題が起こっておるんだなということがあるならば、そういう報道がなされても、それをもとにして事実どうであったのかというような確認とか、あるいはそちらの意向はどうなのかというような確認というのは政府としてはやってはいけないことなんでしょうか、それともやったんでしょうか。
  60. 太田博

    ○太田説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生御質問の点につきましては、安倍外務大臣国会お答えしておりますように、現時点においてはフィリピン政府に対して日本の方から関連の資料を要求はしないということでございます。
  61. 貝沼次郎

    貝沼委員 今質問したことに答えてください。
  62. 太田博

    ○太田説明員 お答えいたします。  日本政府としてそういう要請ができないのかどうかということでございますが、本件につきましては、日本とフィリピンとの間の経済協力という重要な事項にかかわることでございますので、もし聞く場合には、どういう観点から何のために要請するかということをあらかじめ明確にした上でないと聞くのに適当でないであろうということで、現時点ではそういう照会をすることは考えてないということでございます。
  63. 貝沼次郎

    貝沼委員 そういう答弁をするから、やっぱり何となく及び腰だな、こういうふうに受け取られるわけですね。私は、そういうふうに日本政府が受け取られることは大変残念なことだと思います。したがって、もっと積極姿勢を示してもいいのではないかと思っておるわけでございます。  それから、通産省の方おいでですか。お伺いいたします。  五十五年に改正される前の外国為替管理法、これでは手数料が一〇%を超える場合は通産大臣の許可が必要であったはずでございます。それで、今回発表になりましたマルコスのいろいろな文書を見てみますと、コミッション一五%あるいはBBB一五%、いろいろなのがあります。こういうような書類を見て、一〇%を超えておるようでありますが、これは通産省が許可をされたものなんでしょうか、それとも今初めて見たものなんでしょうか。もし初めて見たものであるならば、それに対してどう対処されようとなさいますか。
  64. 安達俊雄

    ○安達説明員 御指摘の点でございますが、現在、事実関係について確認を行っているところでございます。
  65. 貝沼次郎

    貝沼委員 事実関係ということは、少なくとも、今回のこのマルコス疑惑に関する資料として公表されたものについての企業名がありますが、そういうものについてやっているということですか。
  66. 安達俊雄

    ○安達説明員 ソラーズ委員会公開資料の中で、指摘のある点について所要の分析を行っておるということでございます。
  67. 貝沼次郎

    貝沼委員 時間がなくなってまいりましたので、今度は警察庁の方おられると思いますが、この資料の中にあれだけ、ゼロックスが飛んでいるものですからよくわからないけれども、専門家に読んでもらったところ、アメリカ向け機密費関係で、例えばレーガン、カーター、おのおのに各五万ドル献金とか、いろいろ出ておるわけでございます。それで、アメリカの方は政治献金として既に審査済み、こうなっておるのです。こういうことがアメリカの政治家に対してなされたということなんですが、アメリカだけで、日本の政治家にはそういうことはあり得ないという判断に立てるのでしょうか。あるいはこれをもとにして、何らかの参考にして捜査か調査を始められたかどうか、その点についてお伺いしたいと思います。
  68. 国松孝次

    ○国松説明員 お答えを申し上げます。  このいわゆるマルコス資産問題につきましては、警察といたしましても大いに関心を持ちまして、必要な情報収集に努めておるところでございます。  日本の政治資金規正法によりますれば、外国人あるいは外国法人等から日本の政治家なり政治団体が寄附を受けた場合には、それを違法とするという条項はございますが、それに当たるかどうかということにつきましても、まだ具体的な事実は私どもつかんでおるわけではございません。いずれにいたしましても、一般的な情報収集をいたしておるというところでございます。
  69. 貝沼次郎

    貝沼委員 最後に一問お伺いいたします。  これは会計検査院の方でありますが、会計検査院は、今の体制ではこういう問題が起こった場合にはなかなかチェックできません。そこで、日本のチェック機能というものが大変貧弱であるということが指摘されておるわけでありますが、今後、例えば人員とか体制とかについてこういう点をこうすべきであるというお考えがあれば、御答弁願いたいと思います。
  70. 三原英孝

    ○三原会計検査院説明員 お答えいたします。  会計検査院といたしましても、今回の問題には深い関心を持っておりまして、先般も官房やほかの局からの応援体制を整備いたしまして、海外経済援助に対する検査のスタッフの充実強化を図ったところでございます。私どもといたしましては、このスタッフを十二分に活用いたしまして、今後海外経済援助の検査に取り組んでまいりたいというふうに考えているのでございますが、今回の事態にかんがみまして、今後こういった海外経済援助に対する検査のあり方はどうあるべきか、これは十分に研究する必要性というものを痛感いたしているところでございます。  現在のところ、各関係省庁におきまして事態の解明あるいは必要に応じ改善すべきところは改善していく、こういうふうなお話もございますので、そういった当局の対応を見きわめながら、今後この検査にはどう取り組んでいったらいいか、真剣に考えていきたい、かように考えております。
  71. 貝沼次郎

    貝沼委員 終わります。
  72. 渡部行雄

    渡部(行)委員長代理 新村勝雄君。
  73. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 法務大臣にお伺いいたしますが、会計検査院検査概要に関する説明の中に、法務省に関する館林区検察庁における不正行為があるわけであります。  これによりますと、事務課の職員罰金納付告知等事務に従事中こういう間違いを犯したということでありますけれども、これは単独の職員がやったのか、それともどういう事情であるのか、お伺いをいたします。これは担当の方でもいいですよ。
  74. 清水湛

    ○清水(湛)政府委員 お答え申し上げます。  これは館林区検察庁、前橋でございますけれども、区検察庁の職員罰金納付告知の事務に従事していたわけでございます。本来、罰金の徴収事務には関係がなかったわけでございますけれども、この徴収の権限があるように装いまして、昭和五十九年一月から五十九年七月まで、約五十三回にわたりまして五百三十万円余の全員を不法に領得した、こういう事案でございます。
  75. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 そうすると、これは単独の犯行ということですね。一人がやった。
  76. 清水湛

    ○清水(湛)政府委員 当該不正行為をしたものは一人でございます。
  77. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 そうしますと、一人が五百三十四万七千円、これは一人の額としては大変大きいわけでありますけれども、相当な期間にわたって犯行を反復してやったということだと思いますが、こういうことがなぜ長期にわたって知り得なかったのか、発覚しなかったのかということであります。  そういう点で、監督責任、それから庁内の自律的なそういう体制が疑われるわけでありますけれども、しかも法務省の所管においてこういうことがあったということは大変残念であります。また、たった一件でありますけれども、その性質を考えるとこれは大変管理監督がずさんであったと言わざるを得ないらけでありますが、そういう点でのその辺の事情はいかがでありますか。
  78. 清水湛

    ○清水(湛)政府委員 お答えいたします。  検察庁の窓口を通じまして、年間約六百億円余りの罰金等の徴収事務が行われているわけでございます。そういうことの中で、こういう金額は五百万円余という金額でございますけれども、そういうことが一件たりともあってはならないということで、従来より検察庁におきましては罰金の徴収事務につきましては厳正な体制をしいておったところでございます。しかしながら、非常に残念なことにこういう事件が起きてしまった。  翻って考えてみますと、小規模な区検察庁というところでございまして、日ごろよりその徴収事務の管理監督につきましては意を尽くしていたつもりでございますけれども、結果としてこの種の事案が残念ながら一件発生してしまった、こういう状況でございます。まことに申しわけないことでございますけれども、そういう事件が起きたということを契機といたしまして、さらにこのような事件が再発することがないような諸種の措置を講じておるところでございます。
  79. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 たとえ一件でもこういう事件があることは、これは絶対に許されないわけでありますが、特に法務省の中で起こったということについて、これは大変残念だと思います。しかもこの起こった場所が、職員の数も少ないし、小規模の事務部局なわけですね。そういう中で起こるということは、これはもう職員の数も多いし大きな部局の中で起こったということに比べると、はるかに発見しやすい、発覚しやすいわけであります。監督もしやすい。そういう中で起こったということは大変残念であります。  これから絶対にこういうものを起こさないという決意でやっていただくこと、これはもちろんでありますけれども大臣もひとつこの点について決意を新たにし、たとえ一件といえども、これはよく考えてみると大変理解のできない面もあるわけであります。絶対にこういうことを繰り返さないことが必要だと思います。その決意と、それからこれに対して、この問題についての後の処置はどうなっていますか。この職員に対するどういう処置がなされているか、それをまず伺って、それから大臣の御決意を伺いたい。
  80. 清水湛

    ○清水(湛)政府委員 お答えいたします。  関係者の処分につきましては、当該本人は懲戒免職で、刑事裁判で有罪の判決を受けているところでございます。それから、監督責任につきましては、まず、直接の上司である事務課長につきまして減給処分、それからさらに、区検察庁のさらに上司である検察官につきましては戒告処分、それから、館林区検察庁を管轄いたしております桐生支部の支部長につきまして訓告、それから、前橋地検の次席検事につきまして戒告、さらに、前橋地方検察庁の検事正に対しまして訓告という、それぞれの関係上司について非常に厳しい処分をいたしておるところでございます。
  81. 鈴木省吾

    ○鈴木国務大臣 法務省という立場でかような不祥事が起きたことは、まことに遺憾に存じます。今後は、そういうようなことのないように厳重に指導監督し、再びかようなことが起こらないようにしてまいりたいと思います。     〔渡部(行)委員長代理退席、委員長着席〕
  82. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 次に、治安対策でありますが、今国の内外、日本の国内だけではなくて、国際的にもテロあるいはゲリラという事態があるわけであります。こういうことに対してどういう体制をもって臨んでおられるのか。特に最近、国内における暴力行為が頻発いたしております。これについては左右両翼からややもすると暴力行為が起こる、そういう可能性といいますか温床があるわけであります。  そこで、現在の国内の状況、特にテロあるいはゲリラ、そういうものが起こる温床というか暴力団体というか、こういう団体の現状はどうなっているのか、まずその概況を伺いたいと思うのです。
  83. 鏡山昭典

    ○鏡山説明員 最近、国内で極左あるいは極右といいますか右翼のテロ、ゲリラ志向がだんだん強まっております。特に、極左暴力集団の場合、国民の支持をだんだん失うようになり孤立化してきた、あるいは警察の厳しい取り締まりで、街頭闘争などをやるとすぐ捕まるというようなことで、だんだんテロ、ゲリラ化を強めてきているわけでございます。  現在、極左暴力集団と呼ばれる組織は、総結集勢力で全国に大体三万五千ぐらいおるというふうに私ども見ております。もちろん、これが全部テロ、ゲリラをやるというものじゃございませんで、まとまった組織が大体二十二ぐらいございますが、このうち現実にテロ、ゲリラをやっているのは五つございます。この五つの組織がだんだん組織を非公然化するあるいは軍事化するという形でテロをやっているわけでございますけれども、このテロ、ゲリラの特徴と申しますのも、だんだん内容が悪質化してきて、先般三月末に都内あるいは大阪で起こりましたように、発射弾を使って攻撃するというようなそういうゲリラをやる、あるいは昨年十月二十日に成田で行われましたように、直接警察官に火炎瓶を投げたり、石を投げたり、鉄パイプで殴りかかってくるという、いわゆる街頭で集団武装闘争をやる。こういうような闘争もやってきているわけでございます。  この極左暴力集団が一番当面の目標としておりますのは、一つは、四月二十九日に行われます天皇陛下御在位六十年式典を粉砕するということと、もう一つは、五月四、五、六日と開かれます東京サミットをつぶしてしまう、これに最大の力を入れております。そのほか、成田闘争とか関西国際新空港反対闘争、こういうものに重点を置いてやるようにしております。  いずれにしましても、極左暴力集団は、国民の支持を失うという中で自分たちの組織をなるべく温存したい、そういう意味で、警察の取り締まりに現場で捕まらないようにゲリラというものにだんだん重点を入れてきているわけでございます。  右翼につきましても、新右翼というようなものの中には、極左暴力集団等とつながって過激なテロ等をやろう、こうした動きがございます。
  84. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 左翼に対する概況は今伺ったわけですけれども、やはり左翼と同時に、右翼にもそういう暴力的な要素、あるいはそういう形で自分の意思を表明するというか貫徹しようとする志向があるわけですね。右翼の概況についてもお願いしたいと思います。
  85. 鏡山昭典

    ○鏡山説明員 私、極左担当でございまして、詳しく右翼のことをお答えできませんけれども、右翼は今大体十二万ぐらいおります。ただしかし、これは理論的な右翼あるいは街頭で宣伝をするような右翼も含めてでございまして、実際テロをやっていこうというようなのは、いわゆる新右翼と呼ばれるものの中にございまして、こういうのが政府要人あるいは左翼勢力等に対して直接行動で対決していくという姿勢をだんだん強めてきておるようでございます。
  86. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 現在、事を起こしているのは左翼だと思いますけれども、これに対して当局がどういうふうな対策を持っておられるのか。そういうことがあってはいけないのですけれども、万一突発した場合の緊急対策はどうなのか。その点を伺います。
  87. 鏡山昭典

    ○鏡山説明員 現在、特にテロ、ゲリラ等をやっております極左対策でございますけれども、これには二つの面からの対策がございます。一つは攻めの立場からの対策でございますし、もう一つは守りの立場からの対策でございます。  攻めの立場といいますのは、積極的に極左暴力集団の動向を把握して、そして事前に手を打っていく、いわゆる情報収集等をやって、彼らが今後何をやるかというのを事前に手を打っていくことでございます。  もう一つは、同じ攻めでございますけれども、彼らの違法行為を見逃さずにこれを積極的に検挙していって、そこからまた彼らを押さえ込んでいくし、新しい資料を入手して対策をとっていく。今極左暴力集団、先ほど申し上げましたように非公然、軍事化を強めておりまして、関係活動家め発見とか視察検挙というのは非常に難しい面がございますけれども、全警察を挙げて最大の努力をしているわけでございます。  もう一点、守りでございますけれども、これは、彼らがねらうであろう対象、いわゆる施設あるいは人に対する警戒でございます。これにつきましては、極左暴力集団がねらうであろう対象に対しまして事前に警備警戒を強めまして、事件を未然に防圧する、あるいは相手がやってきたときに迎え撃ってこれを検挙する、こういう両方の面からの対策をとっております。
  88. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 ハイジャックについては最近はしばらくないのですけれども、最近アメリカのTWA機が空中爆発を起こしたというようなこともありまして、絶対に油断のできない一つの問題だと思いますけれども、仮にハイジャックというようなことが起こった場合の緊急の救出対策、あるいは特別に訓練をしたそういうユニット、隊があるのかどうか。そういう訓練また救出の技術、こういった点についてのどういう準備がございますか。
  89. 井上幸彦

    ○井上説明員 御指摘のような事案を想定いたしまして、警察といたしましては、機動隊員等を中心にいたしまして常に実戦的訓練を実施して、この種の事案に当たれるように対応を考えているところでございます。
  90. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 それだけじゃどうもはっきりしませんけれども、そういう緊急事態に対処する部隊、部隊といいますか隊といいますか、それと技術、そういったことについても十分備えがあるということですか。
  91. 井上幸彦

    ○井上説明員 御指摘のような事案に対処するために、機動隊員の中にそのような任務を持たして、目的意識的な訓練も行っておりますし、事案発生の際には人質の安全救出を第一義として対応できるように、訓練にもおさおさ怠りないような状況でございます。
  92. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 次の問題ですけれども、逗子池子弾薬庫の跡に米軍の住宅をつくるという計画がございまして、それに対する住民の反論というか反対といいますか、これが強く運動として今展開をされておりまして、これに伴って市長のリコールあるいは議会のリコール、市長選挙、議会選挙――議会の選挙はきのうありまして、その結果はわかったはうでありますけれども、こういう事態でありますけれども、こういう直接民主主義、住民の意向を直接そういう形で表明していくという制度が日本にはあるわけでありまして、その制度に基づいてそういう手続がとられておるわけでありますが、そこにあらわれた結果について防衛施設庁としてはどういうふうにお考えですか。
  93. 志滿一善

    志滿説明員 池子問題の御質問に対してお答えいたします。  池子米軍家族住宅の建設につきましては、地元逗子市におきましては賛否両論があり、先般の市長リコール投票で、本建設に反対の立場の市長のリコールが不成立になったことは承知しております。また、逗子市議会選挙の状況についても承知しておるわけでございます。しかしながら、当庁といたしましては、地方自治体のリコール投票や選挙についてコメントする立場ではございません。  またしかしながら、本件米軍家族住宅建設は我が国の防衛政策上の重要な事項でございますので、神奈川県条例による環境影響評価の手続を終了後速やかに着手するという従来の方針には変わりございません。今後も地元の理解と協力を求めつつ、実現のために努力してまいりたい、こう考えている次第でございます。
  94. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 この住宅を建てることの可否について今論じているわけではなくて、住民の意思を表明する制度があって、その制度に基づいて適法に表明された住民の意思があるわけですね。それにコメントする立場ではないというのはおかしいわけでありまして、これを無視をするのか、それともそれに従っていくのか、結局政府としてはその二者択一を迫られておるわけですよ。ですから、コメントする立場にはないということは、これは答弁にはならないのでありまして、そういう住民の表明された意向をどう受けとめるのかということです。
  95. 志滿一善

    志滿説明員 お答えいたします。  先ほども申し上げましたように、私ども防衛施設庁としましては、地方自治体のリコール投票あるいは選挙についてコメントする立場にはございません。  しかしながら、先ほども申し上げましたように、本件米軍家族住宅建設は我が国の防衛政策上の重要な事項でございますので、神奈川県条例による環境影響評価の手続を終了後速やかに着手するという従来の方針には変わりありません。また、今後も地元の理解と協力を求めつつ、実現のために努力をしてまいりたい、こう考えておる次第でございます。
  96. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 自治省にお伺いしますけれども、住民の意思を直接請求あるいは選挙によって表明するということは、これは民主主義の原則でありますし、そういう制度が現にあるわけです。その制度に従って公正に表明された住民の意思があるわけですね。こういう制度のもとで公正に表明された住民の意思が尊重されるべきであると我我は思うわけです。これは、重ねて言いますけれども、住宅を建てることの可否ではないのだ、直接民主主義の精神を認めていくのかあるいは無視をするのかという問題になるわけですけれども、自治省としてはどういう御見解ですか。
  97. 濱田一成

    ○濱田説明員 お答えいたします。  自治省といたしまして、直接請求制度が適正に運用されるということは大切なことだと思っておるわけでございます。  今回の問題につきましては、事柄が、関係する住民自身がどう対応するかという問題でございますので、所感を申し上げることは差し控えたいとは思いますが、国と地方の双方がお互いの立場を尊重し、問題の解決に向けてねばり強く意見調整を行い、一日も早く市政が正常化されるということを望んでおります。
  98. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 そうしますと、自治省としては、国の方針と住民の意思とは違うわけですから、それを調整するとおっしゃるわけですか。今後調整していかれるおつもりですか。
  99. 濱田一成

    ○濱田説明員 自治省として直接この問題にタッチする立場にはないわけでございまして、一日も早く意見調整が行われるよう切望をいたしているところでございます。
  100. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 タッチする立場ではないということではなくて、自治省としては、住民の公正に表明された意思を尊重する立場で行動していただきたいと思います。  時間がありませんから、次の問題ですけれども法務大臣にお伺いしますけれども、帝銀事件の平沢貞通が死刑の宣告を受けてから三十年たって、現在、ことしで九十四歳になりますか、こういう高齢になるわけでありますし、三十年以上も確定してから拘置をされているという例は、そうしてまた九十四歳にもなる死刑囚というのは世界にも例がないのではないかと思いますけれども、この点について大臣はどうお考えであるのか。  それから、この犯罪は、死刑の判決を受けた諸犯罪の旧刑訴法における判決による死刑囚としては現在最後だと思います。自白が過度に重要視されていた旧刑訴法のもとでの死刑囚としては最後である。それからまた、その裁判あるいはその証拠能力等においても多くの疑問が提起をされておるわけであります。そういう大変難しい事件ではありますけれども、判決そのものにも疑問が持たれるという点があるわけであります。そういうことで歴代の大臣はずっとこの執行をちゅうちょしてきたということでありますが、それだけに問題の多い事件であったし、また平沢死刑囚としても問題をみずから体験していくといいますか、こういう事件だと思うのですね。  そこで、まず一つは、九十四歳にもなる高齢者の死刑を執行するということ自体、既にもうできないのではないかということが一つあります。それから、繰り返し再審の請求あるいは恩赦の請求がなされておるわけであります。こういう点で、もう三十数年たっておるわけでありますし、世論の動向あるいは被害者の感情等も十分調査をされてわかっておると思いますけれども、そういう点で一つの決断を下すべき時期じゃないか。決断というのは恩赦あるいは釈放ということですね、その決断を下すべき時期じゃないかと思いますが、大臣はどうお考えですか。
  101. 俵谷利幸

    ○俵谷政府委員 平沢の問題につきましては、御指摘のようにいろいろ御意見があること、あるいは今日の事態に至りましたその経過につきましては御指摘のような事情があることは、十分承知しているわけであります。御指摘の中で、例えば旧刑事訴訟法による判決であるから特に考えたらどうか、あるいは高齢であるからこれを考えたらどうか、こういうような御指摘もありましたが、その旧刑訴下における判決ではございましたが、この事件につきましては、第一審の東京地裁、東京高等裁判所におきまして極めて慎重な審理が行われました結果真犯人と断定されまして、有罪判決がされてきておるわけでございます。それから、最高裁におきましてもこの判決が支持され、さらに十六回にわたります再審請求がされ、さらに十七回目の再審請求がされておる、こういう状況にございます。十六回の再審請求いずれも棄却されておる、こういう事情でございます。恩赦につきましても、第三回までの恩赦請求は、特赦の請求でございますが、これはいずれも恩赦の理由がないということで相当の棄却がされておる、こういう状態でございます。  しかしながら、なお第四回目と五回目の特赦の出願あるいは刑の執行免除の出願がされているわけでございまして、これにっきましては中央更生保護審査会におきまして慎重に審理が行われているわけでございます。特に、第十七回目の再審請求が現に係属中でございますので、中央更生保護審査会といたしましては、この再審請求の裁判の成り行き等を慎重に見ながら審理を進めていく、こういう状況にあるわけでございます。現在のところでは、再審理におきまして無罪の判決あるいは恩赦によりまして赦免の実施がされない限りは現状を続けざるを得ない、かような状況になっておるような次第でございます。
  102. 鈴木省吾

    ○鈴木国務大臣 先生、先ほど来からお述べいただいたような意見のあることは承知をいたしておりますけれども、ただいま政府委員から申し上げましたように、ただいま四回目、五回目の恩赦の請求が出て審議中でございます。また十七回目の再審の請求、これまた審議中でございますので、その審議の過程にある今日、私から意見を申し述べることは適当ではないと考えますので、御了承賜りたいと思います。
  103. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 終わります。
  104. 角屋堅次郎

    角屋委員長 次は、渡部行雄君。
  105. 渡部行雄

    渡部(行)委員 最初に、行政改革に伴って今法務局の出張所等が統廃合を進めておるわけでございますが、この問題は今後どのようになっていくか、その全体の見通しについて明らかにしていただきたいと思います。
  106. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 第二次臨時行政調査会の答申によりまして、今後二百七十五片程度の登記所の統廃合が必要であるというふうに言われております。それに基づきまして、毎年閣議決定で努力目標としての序数が決められておるわけでございますが、私どもといたしましては、その線に従いまして五カ年の間に二百七十五庁の整理をいたしたいということで進めております。  五十九年及び六十年度におきましては大体目標に近い統廃合が実現をいたしておりますので、今後あと残された三年間に、残された百数十庁の適正配置計画を進めてまいりたいという考えでおるわけでございます。
  107. 渡部行雄

    渡部(行)委員 この統廃合問題は、地域住民の感情等の問題もございますが、しかし地域の方々は法務局の出張所を残していただきたい。出張所のあるところはえてして非常に交通の便も悪い、あるいは広範な山村僻地である、こういうようなところが多いわけですが、この統廃合を進めるに当たって、地域住民の意思とか希望とか、そういうものはどのように取り扱っておられるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  108. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 ただいま御指摘がございましたように、登記所は地元の方々から非常に愛されておると申しましょうか、存置を強く希望されているわけでございまして、私どもといたしましては、そのような庁を廃止するにつきましては、かなり長期間にわたりまして法務局の現状を御説明申し上げるとともに、広く町民あるいは村民の方方に御理解を得るような方策をいろいろと講じております。そして、廃止になりました場合に後をどういうふうにするがということにつきましても、何回も御相談を申し上げて、できる限りの措置をとるというふうなことで進めておる次第でございまして、一方的にいつ幾日から廃止するというふうな措置を講じておらずに、何回も何回も足しげく局長等が現地に出向きまして御説明申し上げて、御理解いただくように努めておるわけでございます。
  109. 渡部行雄

    渡部(行)委員 あと三年たって二百七十五が整理された場合の職員は、どのようになっていくのでしょうか。
  110. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 適正配置が行われますと、従来の庁におりました職員は受け入れ庁の方に行く場合もございますし、それからまた繁忙の庁の方に行くというふうなこともあるわけでございますが、二百七十五全部の適正配置が終わりますと、その結果、現在一人庁と言われているものが七十五片ございますけれども、その大半は解消して、複数の職員による登記所が原則としてできるという形態になってまいろうかと思います。
  111. 渡部行雄

    渡部(行)委員 総体として職員はふえるのですか、減るのですか、その辺をはっきりさしてください。
  112. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 登記所の適正配置は、法務局の職員の絶対数に関係がある措置ではございませんで、その適正配置をして職員を減らすというようなことはもちろんございません。ふえるということもないわけでございまして、そのふえる方は、また別途登記事件の全体の繁忙度ということの解消のために毎年増員措置を強力にお願いをして、そして定員の増加の厳しい今日でございますけれども、法務局の登記事務に関しては毎年ある程度の増員が認められておるということになっております。
  113. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで、また一方、登記業務のコンピーター化というものが進められているようでございますが、これは十五年の計画によって七十四年度に大体完成するというふうに聞いておるのですが、この計画の内容とその将来の見通しについて、ひとつ御説明願いたいと思います。
  114. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 登記事務のコンピューター化につきましては、まだ明確な具体的な計画が立っておるという段階ではございませんけれども、一つの努力目標と申しましては、二十一世紀までにはコンピューター化を実現したいという一応の目標を立てております。そういう面で昭和七十四年までということになるわけでございますが、その間にどういうふうな手順で進めていくかということはこれからの課題でございますけれども、コンピューター化にいたしますと、現在の登記簿によるところの登記というものがなくなって、そしてコンピューターがいわば登記簿にかわっていくというふうになるわけでございます。  ただ、登記の仕組みの中で登記簿がコンピューター化されるということは非常に大改革でございますが、その他の手続面についてはそれほどの大変革は当然には起きないだろうというふうに考えております。ただ、現在いわゆる乙号事件と言われております謄抄本の発行並びに閲覧の関係が、コンピューター化に伴いましてかなり現在とは違う姿のものになっていくであろうというふうに考えられるわけでございまして、私どももコンピューター化のメリットの一つが謄抄本の短時間における発行、それからまた閲覧制度がどうなるかということが大きな課題になってくるんじゃないかというふうに考えております。
  115. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これはいわゆる七十四年度で全国全部ネットワークみたいに完成させるおつもりですか。
  116. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 ただいま申し上げましたように、具体的にまだ七十四年度中に完成というわけではございませんが、努力目標としては、その時点で全国の登記所に全部コンピューターを入れて、そして処理をするような形に持っていきたいという希望は持っております。  その場合のネットワークというお話でございますけれども、現在のところでは、原則として各登記所にコンピューターの本体と申しますか、ホストをそれぞれ置くようにする、例外的に小規模庁については何庁がまとめてということも出てこようかと思いますが、そういう形で来まして、そして各都道府県単位ぐらいにバックアップセンターを設けて、中央には中央のセンターを設けて、そこでお互いに結びつき合って処理をするというふうな形のものを考えております。そういう面では、謄抄本などが全国のどこの登記所からでも必要なものがとれるようにすることが可能かどうかというふうなことも、現在検討をしているところでございます。
  117. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで、今登記全体の中で非常に問題があるのは、相続登記がなかなか進んでいないで、明治時代ごろの登記がそのまま残って、権利者は既に死んで何十年もたっておる、こういう不動産がたくさんあるわけです。そういうものについて、実態と登録とが甚だ違っているのに、それがそのまま放置されているということについてはどう考えておられるのか。あるいは抵当権の問題でも、あるいはそのほかの権利上の問題でもそうですが、もう既にだれが見てもこれは時効になっているということが歴然としておるにもかかわらず相続ができていない、あるいはその他その権利者がどこに行ったかわからない、そういうことで結局これも何十年も放置されたまま抵当権がそのまま乗っかっている、これをどうすることも処理できない、こういう問題についてはどういうふうに考えておられるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  118. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 御指摘のように、実態的には相続が開始されているにもかかわらずその登記がされないままで放置されているという不動産、並びにかなり古く設定された抵当権で、債権額も千円にも満たないようなそういう抵当権が抹消されずに残っておるという状況がございます。  私どもも、いろいろな関係でそのようなことは望ましいことではございませんで、きちんと実態に合うような形で登記の上にも反映してほしいというふうに考えておるわけでございますが、御承知のとおり、権利の登記につきましては、これはまさに任意の申請に基づいてするということになっております。したがいまして、登記所側の方で職権的にそれを始末するということはもちろんできないわけでございますので、それに対しては実態に合うような形での登記申請を促すということが必要になってまいろうかと思います。  そういう点におきまして、私どもも、殊に相続登記未済のものにつきましては、いろいろな機会にそういうものを早く手続をとるようにということのPRに努めておりますし、また司法書士会もそういう面についてのキャンペーンを張っておるというふうなことでございまして、いずれにいたしましても、任意にそういう実態に合わすような登記申請をしていただくように、私どもの方ではそれをどうやって促すかということが課題であろうと思いますので、その点についてこれからもいろいろ工夫を重ねてまいりたい、司法書士会とも力を合わせてそのPRに努めてまいりたいというふうに考えております。
  119. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これは確かに申請は自由でございますから、しかも申請に基づいて登記はなされるわけですから、それはそのとおりですが、現実には登記というのは、やはり実態と登録というものが常に一致していることが必要であって、実体のないような登記というものは、むしろ財産の保全とか権利の保全ではなくて、逆に侵害になるわけでございます。そういうのは実務をやってみると一番わかるわけでございまして、そういうことを考えますと、これは申請案件だから申請がない限りどうしようもないというような消極的な態度では、今の登記事務というものを合理的に進めることは不可能じゃないか。  そこで、もっと真剣になって、例えば時効になっているのは民法上明らかになっているわけです。その要件を満たしたものについては法務局の判断でどんどんと申請を受理する、そういうようなことも必要であろうし、また、例えば相続登記は、被相続人が亡くなって一年以内とかそういう範囲で登記をした場合には登録税を少し免除するとか減額するとか、いろいろな方法、誘導の措置はあろうかと思うのです。そういう誘導措置を考えて、実態と登録とが常に一致するような方法は考えられないものかどうか、その点、ひとつお伺いいたします。
  120. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 いわゆる休眠抵当権の抹消につきましては、ただいま御指摘のように、登記簿上から見ても当然時効になっているだろうというような推測ができるものもあるわけでございますので、何かそういうものを立法措置によってすることはできないだろうかということも、私どもも一つの課題としてはかねがね研究いたしてはおりますけれども、何分にも、先ほど申し上げましたように、権利関係の登記につきましては、これは当事者の行動によってやるということが原則でございますので、どの程度できるかということが一つの研究課題としては難しい点であります。その点はなお今後も研究をさせていただきたいと思います。  それから、相続登記の関係につきましては、相続開始後短期間の間に申請がある場合には登録免許税を減免するというふうな御意見でございます。そういうような御意見もかねがね承ったこともあるわけでございますけれども、この点は税金の問題でございますので、私どもが直接お答えをしていいかどうかわかりませんけれども、これもまた減免をするというのが、税金をいわば減免をするということとの結びつきでどう考えるかというふうな問題もございますので、これもひとつ研究をさせていただきたいと思いますけれども、税金の問題でその促進を促すというのは、そう簡単なことではないのじゃないかという感じでおります。  先ほど申し上げましたように、その登記がおくれますと、むしろその所有者、相続人自身がいろいろな面で図られるわけでございますので、したがいまして、そういうふうなことの理解を促しまして、そして相続登記が早く出るようにというふうなことのPRと申しましょうか、その促進方を図るのが第一義的には本筋であろうというふうに考えておる次第でございます。
  121. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これは指導とかなんとかといったって、実際はできるものじゃないですよ。国民一般は、目の前に実体としてのメリットがあるとかあるいは逆に損するとか、そういうものが出てこないとなかなか動こうとしないというのが大体のところだと思います。  そこで、確かに税金のことは大蔵省の問題ですけれども、しかし登記事務を円滑に進めて、なおかつ国民の権利、そういうものの保全を的確にやっていくとなれば、これは法務省の方から大蔵省に働きかけて、そういう協力を願う、理解を願う、そういう一つの努力があってしかるべきじゃないか。税金の減免でなければ、一定の期間以上過ぎてやらない者にはさらに高い登録免許税をかけるとか、いろいろ方法はあるかと思います。いずれにいたしましても、もっと実態と登録というものが一致するような方向で登記事務というものを考えてもらわないと、今の状況は決して好ましい状況ではない、私はこういうふうに考えるわけですが、その点はどうでしょうか。
  122. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 私どもも、相続登記がされないままで放置されているということは、望ましい状況ではないと考えております。ただ、それを解消するために登録免許税の減免とかあるいは課徴とかいうふうな形でいくのが政策的にいいか、あるいは税金の理論からいって問題がないのかという点については、なお検討させていただかなければなりませんけれども、その問題は御指摘のとおりであろうと思います。したがいまして、いろんな角度から、どういうふうにしたらいいかということは今後とも研究、検討させていただきたいと思っております。
  123. 渡部行雄

    渡部(行)委員 次に、これは余り小さなど言うとなんですけれども、地方的な問題ですが、法務局の会津若松支局というものが今非常に手狭で困っておるわけです。簿冊の収容も困難なくらい狭いし、いろいろな事務を遂行していく中でもなかなか支障がある。そこで、この事務所の建設についてですが、これは何か法務省の方では構想があるのでしょうか。  一説には、総合事務所の建設を考えているようなお話もありますが、この地域は、御承知のとおり官庁街と言っていいか、役所がずらっとそろって、会津若松鶴ケ城に面したところで、まさに目玉のところにあるわけですが、その真ん中に刑務所があるのです。そうすると、やはり市民感情からして非常に問題がありますので、その辺をもっと整理して、この官庁事務所の建設というものを考えてはどうかと思うのですが、ひとつ構想などありましたらお聞かせ願いたいと思います。
  124. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 まず、私から法務局の会津若松支局の点について申し上げたいと思います。  御指摘のように、この支局は昭和三十二年に建築をされまして、その後若干の増築をいたしておりますけれども、建物も古く、そして狭隘も著しい、早急に新営をしなければならない庁舎であるというふうに考えております。  その新営のためにどういうことを考えておるかと申しますと、現在のところは建設省の方で、この会津若松市にあります七つか八つの行政庁をまとめて、行政合同庁舎を建てようという計画をお持ちでございますので、私どももその中に入れて、そして早期に実現を図っていただきたいということで、建設省に強くお願いをいたしておるところでございます。したがいまして、それが実現いたしますと、問題の解決が図られるということになろうかと思います。
  125. 渡部行雄

    渡部(行)委員 ひとつその点は促進させていただきたいと思います。  次に、監獄の方、来ていますか。  監獄で囚人に机をつくらせたりあるいはおわんをつくらせたり、いろいろ製品になるものをつくって売っておるわけでございますが、それが非常に安過ぎて、中小企業のそれと同じようなものをつくっている業者を圧迫しているということなんですが、そういう点ほどのようにお考えでしょうか。
  126. 石山陽

    ○石山(陽)政府委員 委員の今の御質問にお答えする前に、先ほど会津若松の刑務所とおっしゃいましたが、実はあれは拘置支所でございます。御存じのように、刑務所は既決でございますが、拘置所はまだ捜査及び裁判中の者の身柄を入れる施設でございます。したがいまして、裁判所とか検察庁のすぐそばにないと大体仕事になりません。そういう関係がありますので、現在は裁判所と検察庁のすぐ接した場所にあるわけでございまして、これも官庁街にある官庁でございますので、御了承いただきたいと思います。  次に、今の御質問の点でございますが、実は刑務作業というのは、現在私どもから国庫にお納めしているお金が年間約百六十億くらいになりますけれども、これのまず八割は大体中小企業の方の孫請あるいはひ孫請という形で作業をさせていただいているのが実は実態でございます。それで私どもといたしましては、むしろ大企業の下請をされる中小企業の方にさらにまた便宜を図られるという形で共存共栄をしたいということで、日夜中小企業の方々とのいわゆる契約面を通じましてもあるいは工事の実施面を通じましても疎漏のないように、あるいは今御指摘のような摩擦が起きないようにということは十分考えておるつもりでございます。  今の点でございまするが、私どもでつくっております品物がたまたま業者の方たちの下請であります場合には、その業者の方のブランドで出ていくわけでございますので、これは一般の方は刑務所でつくったということも御存じないことがむしろ多いかと思います。ただ、その残り二割の中で一部刑務所がつくりましたものを展示会、即売会という形で売っている場合がございます。これは御存じのように、刑務作業というのは、受刑者の改善更生を助けるために手に職をつけさせてやるという教育刑の画的がございますので、最小限度、何も今まで社会で有用作業についてなかった者に対する技術指導をやるというのは刑務所本来の仕事でございます。ただし、そういう面でできました品物が、地場で売りまして、地場の消費者には喜ばれましても、中小企業の業者の方にいろいろ御心配かけてはいかぬので、なるべく売る場所を変えるとか、あるいはトラブルがありましたときは十分話し合いに応ずるとか、そういう配慮はいたしておるつもりでございます。  もし、今後そういう実例が御当地にございますことがありましたら、どうぞ遠慮なしにおっしゃっていただいて、私ども善処してまいりたいと思いますので、よろしく刑務作業の本質を御理解いただきまして御協力のほどお願い申し上げたいと思います。
  127. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これは実際、即売会とかそんなのは構わないのですが、大きな中小企業が大量にそこから買って、今まではほかの中小企業から買っておったのが、その三倍くらい安いらしいのですが、そういうように安いのでそっちから今度はどんどん買うことになって、今までつくっておった中小企業はとてもその値段では納められない、そういうことで苦情が出ておるわけですから、後でまた具体的に申し上げたいと思います。  裁判所をやるわけだったのですが、時間がもう来てしまいましたので、きょうはやめておきます。  最後に法務大臣から、この間総理が司法のオーバーランなんということで問題があったようですが、これからの法務行政を進める上での御決意と申しますか、ひとつお話をお願いしたいと思います。
  128. 鈴木省吾

    ○鈴木国務大臣 先ほど来先生からいろいろの御意見を承って、特に登記等についての実務に非常にお詳しいお話を承って、本当にありがたく思っております。先生の御意見等を十分参酌いたしましてこれから勉強いたします。  今のお尋ねの件でございますが、私に与えられた責務は、法秩序の維持をしてまいること、さらに人権の擁護をしてまいること、ますます人権を尊重し伸長していくことであろうと思います。今御案内のように大変な事件等も起きておりまして、国内の治安の維持について心配ないわけではございません。こういう点にも私は厳正に対処して、そういうもののないようにしてまいらなければならない、かように考えます。そういう取り締まりとかそういうことだけでなくて、今申し上げましたように、ますます国民の人権というものが伸長されるように、それが日本の民主的な国家あるいは平和国家の基礎であろう、こういう問題につきまして誠心誠意最善を尽くして努力をしてまいりたい、私はかように考えておる次第でございます。いろいろと御指導、御鞭錘をお願いいたします。
  129. 渡部行雄

    渡部(行)委員 終わります。  どうもありがとうございました。
  130. 角屋堅次郎

    角屋委員長 次に、貝沼次郎君。
  131. 貝沼次郎

    貝沼委員 法務大臣、これは通告のない話ですけれども、初めにちょっとお伺いしたいと思います。  最近、この国会の周辺はあの爆弾騒ぎ以来交通が大変混雑いたしております。それで巷間では、一体ああいうのはどうなっているんだというような、先ほど治安というお話も出ましたので、そういうことで皆さん大変関心を持っておるわけでございます。法務大臣は、ただいま治安のお言葉がありましたので、こういう問題についてどのようにお考えなのか、その所見をお伺いしたいと思います。
  132. 鈴木省吾

    ○鈴木国務大臣 お尋ねの件は、第一義的には警察の任務であり、お願いをしていることでございますが、先生おっしゃったように、先般来ああいった事件が二、三起きております。しかも、天皇陛下御在位六十周年記念式典なりあるいはサミットに向けてそういうものを粉砕するんだ、ああいう事件を起こしたセクトの機関紙なんかを見てもそういうことが出ておりますので、さようなことで実は警備等も厳重にしているものと考えますが、そのために国民にも今お話しのような若干の交通問題なんかで御迷惑がかかっているかと思いますけれども、警察当局としては、そういう問題、なるべく御迷惑がかからないように、しかも事件を未然に防げるようにやっているものと考えております。
  133. 貝沼次郎

    貝沼委員 それでは、初めにフィリピンの問題、もう二、三点確認しておきたいと思います。  最近、フィリピン側から「リベート授受で比委員会 代理人介在つかむ」という記事が出ておりまして、「円借款プロジェクトに絡む日本企業の不正リベート支払い問題を調べているフィリピン政治倫理委員会筋は六日、不正に関与したとされる複数の日本企業からのリベートの一部は日本国内でフィリピン側エージェントに支払われていたことを明らかにした。」こういうふうな記事が出ておるわけでございます。したがいまして、この記事について、この報道について事実の確認はなされておるのかどうか、これが一点でございます。  それから、「日本国内」という言葉がありますので、こういう場合、フィリピンの法律に違反しておっても、これは日本政府としてはどういう関係になるのか、どういう対応になるのか、その二点を伺っておきたいと思います。
  134. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 検察当局といたしましては、このフィリピン問題に関しましていろいろ報道されておりますこと、また国会で論議されておりますことは承知いたしておるところでございまして、事態の推移に応じまして適切に対処するものと思っておるわけでございますが、具体的な事柄につきましてはお答えを差し控えさせていただきたいと思うものでございます。  それから次に、仮にフィリピンの国内法で何らかの犯罪を構成するといたした場合、我が国ではどうかということでございますが、それがフィリピンの国内法で犯罪になるからといって、直ちに我が国の国内法で犯罪になるということは言えないわけでございまして、これは結局事実関係いかんということに。なろうかと思います。ただ、フィリピンの国内法で何らかの犯罪を構成するということで、具体的な犯罪の容疑があるということで、我が国に対しまして捜査共助の要請がありました場合は、我が国といたしましては、国際捜査共助法の定める要件に従いましてこれまた適切に対処する、こういうことでございます。
  135. 貝沼次郎

    貝沼委員 そういたしますと、具体的なことはしゃべれないということなんですが、この記事、この報道にあらわれておるようなことから、既に日本としてはこの発表された範囲においては調査に入っておるというふうに考えてよろしいですか。
  136. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 調査と申しますか、捜査と申しますか、そういうことに入ったかどうかということを含めまして答弁を差し控えさせていただきたいと思うものでございます。
  137. 貝沼次郎

    貝沼委員 それでは、次の問題に入ります。  このマルコスの関係の文書、この中に、東陽通商の今は故人であります小竹常務が、マルコス大統領関係のアンヘニット投資会社あてに一九七七年十月十四日に出した手紙がございます。大変長い手紙で、専門家にいろいろ読んでもらったのですが、朝日ジャーナルの訳文が非常によく合っておるようでございます。実はこの中に、「NPC(国家電力公社)のカガヤン電化計画」というところが三番目にありまして、「この電化計画が公表されました時、関係各メーカーはただちにカルテルを結成いたしました。」こういうふうに小竹さんは書いておるわけです。これが事実であったかどうかは私わかりませんが、こういうカルテル行為というものは、こういう場合に結成してもいいものなんでしょうか、悪いものなんでしょうか、この辺はどうなっておるのでしょう。
  138. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 カルテルにつきましては独占禁止法がいろいろ規定しているところでございますが、この独占禁止法につきましては公正取引委員会がその運用に当たっておりますので、法務省の刑事局といたしまして、ただいまの御質問に対しましてはお答えいたしかねるところでございます。
  139. 貝沼次郎

    貝沼委員 いや、これがカルテルであるかないかということは当然公取がやると思いますが、本人がカルテルを結成したんだ、こういうふうに書いてあると、これは判断というよりも、むしろそのカルテルが事実あったかどうかという調査の段階に入るのではないかと思って、私は今尋ねておるわけでありますが、それは関係ありませんか。
  140. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 国内でカルテルを結べば独禁法違反になることは明らかであると思うのでございますが、フィリピンとの関係におきましてのカルテルということになりますと、それが独禁法上違反になるのかどうかにつきましては、私ちょっとお答えをいたしかねるところでございます。
  141. 貝沼次郎

    貝沼委員 通産省の方、こういう場合はどういうふうに指導されておりますか。
  142. 安達俊雄

    ○安達説明員 恐縮でございますが、通産省としてカルテル云々ということにつきまして今お答えする立場にございませんので、あしからず。
  143. 貝沼次郎

    貝沼委員 では、これは公取だけが見ておって、通産省管轄の業者がカルテルを結んでも、通産省には指導的責任はない、こういうお答えですか。
  144. 安達俊雄

    ○安達説明員 独禁法上カルテルが認められないということは当然でございまして、通産省としてこのようなカルテルといったことが行われないような一般的な注意喚起は、本件ということではなくて、ごく一般的に政府の一員として行っておると私は理解しております。
  145. 貝沼次郎

    貝沼委員 そうすると、ただ政府の一員としてやっているということですけれども、もうちょっとはっきり言って、通産省は関係ないということですか。関係あるのならば、カルテルを結んだとあるわけですから、それについて調査しなければならぬわけですが、関係ないということですか。
  146. 安達俊雄

    ○安達説明員 何せ約十年前の話でございまして、現在本件につきましては事実関係を調べておるところでございます。
  147. 貝沼次郎

    貝沼委員 わかりました。  それから、法務省にお尋ねいたしますが、いろいろな論調がありますけれども、今度はアキノ政権が誕生したわけでありますから、この種の問題でもう少し積極的に、例えば先ほど捜査のことでは国際捜査共助法があるという話もございましたけれども、それももちろん絡めてでありますが、アキノ政権と共同して、日本とフィリピンというような関係調査機関を設置して調査するというようなことが必要ではないかと言われておるわけでありますが、この点についてはどういうお考えでしょうか。
  148. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 この件につきましては、フィリピンの方から我が国に対しまして国際捜査共助の要請があれば、先ほど来申し上げましたように、国際捜査共助法に従ってこれに応ずるかどうかを検討する、こういうことになるわけでございます。また、我が国からフィリピン側に対して捜査の共助を行うということになりますれば、外交ルートを通じましてフィリピン側と折衝することになるわけでございますが、これはあくまでも一般的な手続としてそうなっておるということでございまして、具体的な問題について今の段階で申し上げることは差し控えたいと存ずるわけでございます。
  149. 貝沼次郎

    貝沼委員 それでは次に、時間の関係で、撚糸工連の問題をちょっとお尋ねしておきたいと思います。  これは昭和五十三年、五十四年と会計検査院の方から不当事項として指摘されてきた問題でございます。ところが、現在こういうような事件まで大きくなっておる。そこで検査院の方にお尋ねいたしますが、五十三年度、五十四年度指摘したにもかかわらずこういう事態になったということについて、皆さんがなさった指摘というものは生かされたとお考えか、それとも生かされていないというふうにお考えなのか、この辺のところの御見解を承りたいと思います。
  150. 沢井泰

    ○沢井会計検査院説明員 お答えいたします。  五十三年、五十四年度、ただいま御指摘のように、検査報告に中小企業事業団の貸し付けについて不当事項として掲記いたしました。その後数年たちましてこうしたような事態がまだ続いているということは、私どもとして非常に残念に思っております。したがいまして、今後の検査におきましては十分に検査をしてまいりたいと思っております。
  151. 貝沼次郎

    貝沼委員 いや、あなた方の検査はよかったのです。よかったのですが、これが生かされたか生かされないかということが問題であったのですね。あなた方は今の答弁では、残念であるということは生かされていないというふうに受け取りますが、生かされていないとすれば通産省の関係になるわけでありますが、通産省はこれをもとにして指導されたと思いますが、その指導は適切であったと今判断しておりますか。
  152. 江崎格

    ○江崎説明員 昭和五十三年および五十四年に御指摘を受けました不当事項の問題でございますが、御指摘を受けました後、直ちにこの融資案件につきまして繰り上げ償還をさせますとともに、撚糸工連あるいは産地の組合等に対しまして、実施要領あるいは違反設備取締要領などを厳重に厳格に運用するようにという注意を当時の局長などからいたしたわけでございまして、その後の設備共同廃棄事業の実施に遺漏のないようにというふうに注意したわけでございます。しかしながら今回のような事件が起こったわけでございまして、私どもの五十五年に行いました注意が今の段階で見まして十分でなかったというふうに反省しておるところでございます。
  153. 貝沼次郎

    貝沼委員 十分でなかったということは、どういうところに欠陥があったとお考えですか。また、それをどう改めようとされますか。
  154. 江崎格

    ○江崎説明員 五十五年に当時の局長が注意喚起いたしましたのは、その時点における設備廃棄の事業実施要領あるいは登録制に関する違反設備の取締要領、こういったものの実施の徹底ということを注意喚起したわけでございますが、今回起こりました不正事件、どれを見てみますと、まだ検察当局で調査を続けておられる最中でございますが、私どもが承知しておりますところでは、対象設備としまして登録されてない、つまり無登録の設備を対象にしてしまっている、それから、組合員の持っている設備でなければ対象にならないところを、非組合員のものを対象にしてしまっている、それからもう一つ、現に運転可能でなければならないというところを、そうでないものを対象にしてしまっているというような点で不正といいますか、問題があったわけでございまして、こうした点を考えますと、五十五年で注意喚起しました実施要領あるいは違反設備の取締要領だけの問題ではなくて、登録制あるいは設備廃棄の運用の仕方全体について再検討をしなければならないというふうに考えております。  特に登録制あるいは設備廃棄というものを考えますと、何千台、何万台というような非常に膨大な設備を対象にして事業をやるわけでございますが、その関係上、従来産地の組合とかあるいは工連等に対してその運用をある程度任せるということをせざるを得ないわけでございますけれども、その任せ方に問題がありまして今回のような事件が起こったということでございますので、そういった点も含めて事業の運用の改善を再検討する必要があるのではないか、またその過程で制度そのものの存廃についても検討する必要があるのではないかというふうに考えております。
  155. 貝沼次郎

    貝沼委員 そういう対策というものは、大体いつごろまでに作成されるのですか。例えばこのチェックの仕方、それから制度そのものの改良の問題、今あなたがおっしゃいましたね、それはいつごろまでにこういうふうにするということをお決めになるのですか。
  156. 江崎格

    ○江崎説明員 非常に重要な問題でございますので慎重に検討する必要があるわけでございますが、私どもとしては、できれば数カ月内に答えを出したい、そういうふうに努力をしたいというふうに思っております。
  157. 貝沼次郎

    貝沼委員 それから、東京地検特捜部がいよいよ通産省の課長までも逮捕したわけでございますが、彼らは贈収賄の時効の五年というものとのかかわり合いでいろいう言われておるわけでございますが、この人たちを逮捕したことと時効との関係について、どういう判断で逮捕がなされたのかということを御説明願いたいと思います。
  158. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 公訴時効にかかっておりますと公判請求をいたすことができないわけでございますので、やはり公訴時効にかかっていない分につきまして強制捜査に踏み切った、こういうことでございます。
  159. 貝沼次郎

    貝沼委員 それで、この事件も五年よりもかなり前の部分もあるわけでありますから、私は当時の局長クラスもかなり関連があったのではないかという話を聞くにつれて、課長だけでこれだけのことをやれるはずもないような気がいたします。その辺のところはどういうふうに考えていらっしゃるでしょうか。
  160. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 現在東京地検におきまして捜査中でございますので、捜査の中身にわたります事柄につきましては答弁を差し控えさせていただきたいと存ずるものでございます。
  161. 貝沼次郎

    貝沼委員 それでは、それはもう聞いてもあと出ませんから、もう一点だけお尋ねしておきたいと思います。  これは撚糸工連の話でありまして、実はこの中小企業振興事業団の関係では、不当事項指摘されておるのはこの撚糸工連だけではありません。いろいろとあるわけですね。そういうようなほかの業種、ほかのものについても、これから問題がなければいいと私は考えておるわけでありますけれども、この点については会計検査院の方としてはさらに注意して見る体制をとるのか、あるいはまた通産省としては、ほかの業種のものにつきましてもさらに注意深く指導されることがあるのかどうか、これを両方から聞いて終わりにしたいと思います。
  162. 沢井泰

    ○沢井会計検査院説明員 お答えいたします。  撚糸工連に準じだような形で、類似しました設備の共同廃棄事業というものはほかにもございます。こうしたようなものにつきまして、私どもは今後十分に検査をしてまいりたいと思っております。
  163. 江崎格

    ○江崎説明員 先ほど申し上げました設備登録制あるいは設備共同廃棄事業の抜本的な見直しの中に、撚糸以外の現在登録制を実施しております業種、あるいは設備廃棄をやろうとしております業種、あるいはやってきた業種すべてを対象にしまして再検討するつもりでございます。
  164. 貝沼次郎

    貝沼委員 終わります。
  165. 角屋堅次郎

    角屋委員長 次に、玉置一弥君。
  166. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 今回、フィリピンの問題が選挙以来かなり取り上げられておりまして、日本政府の対応が非常に手ぬるいような感じを私も受けておるわけでございます。そうした中で、これからのいろいろな方向をある程度明確にしていただこう、こういうことがございまして、私も対フィリピン問題について法務省としての御見解をお伺いをいたしておきたい、かように思います。  その前に、まずマルコスさんのいろいろな私財蓄積等、これはアメリカからのいろいろな文書差し押さえ等によって発覚をしたわけでございまして、先ほどからずっと話が出ておりますけれども、まだ調査中ということでございますが、この時点でひとつ問題点を整理するという意味で簡単に状況を確認をしておきたい、かように思います。  米国の下院の外交委員会におきまして、マルコス文書の調査が始められた。ここでいろいろな内容が明らかにされてきたわけでございますが、三月二十日に、約二千ページに及ぶ文書のうち千ページ分が日本の関与する部分であった、こういうことになっております。そしてその内容によりますと、我が国のいわゆる円借款の事業に絡んだリベートが余りにも大き過ぎたということ、そしてこれがフィリピン政府の高官に支払われていた、こういうことがその文書で明らかにされている。そして日本国内からの送金も行われていた、こういうことが出ております。  政治的な問題点と法律的な問題点、それから社会的な問題点、この三つに分類をされると思いますけれども、一応法務省管轄ということで、法律的な問題点ということに集約をして考えていきたいと思います。  このフィリピンの円借款だけをとらえてみますと、第一次から第十三次まで含めますと、四千六百六十七億円という大変膨大な数字になります。約一年間の海外協力の金額に相当する、あるいはそれ以上の金額になるわけですが、そこの文書に書かれておりますように、手数料が二〇%から一五%ということでありまして、一五%、低い方をとって一律の計算をいたしますと、七百億円に上る税金がむだ遣いをされている、こういうことになります。  それで、毎回リベートの問題が、例えばロッキードの事件のときあるいはその他のいろいろな事件のときにリベート問題が出てくるわけでございますけれども、このリベート処理、これが各企業とも非常に用途が違うという面もございまして、会計処理もいろいろに分かれているわけでございますが、国税庁は国税庁として税務上の調査ということが行われておりますけれども、外国企業あるいは政府に対するリベート、いわゆるリベート商法ですけれども、この問題そのものについて国内法に関して、国税の場合には五%以上がいわゆるリベートでも有税のリベート、こういう処置を設けておりますけれども法務省としてはこのリベートの見解というものをどういうふうにお考えになっているのか、まずその辺をお聞きしたいと思います。
  167. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 リベートと申しましても、その実態なり性格なりがいろいろあろうかと思うのでございまして、その辺の具体的な事実関係も明らかでございませんので、今の段階でリベートについてはこういう犯罪の疑いがあるとかないとか、そういうことを申し上げかねるのでございます。
  168. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 リべート商法そのものは別に表に出しても悪くない問題だと思いますけれども、パーセントとして余りにも大きい場合あるいは個人で着服をした場合、それぞれあもと思うのです。今回の今時点で明らかにされておりますのは、相手の政府高官を通じてマルコスさんの財産になったりあるいはほかの政府高官にも回されている、こういうことが今文書で明らかになっているわけでございますが、そういう場合、日本国内におきますと贈収賄になるわけでございます。だから、相手方の外国の政府高官に対しての形が贈収賄になった場合に国内でも適用できるかどうか、この辺についてお伺いしたいと思います。
  169. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 外国の公務員に対しまして贈収賄に当たるような行為が行われたといたしました場合、当該外国の国内法におきましてこれを処罰する規定があるかどうかということに一つはかかってくる問題でございまして、その辺は外国におきます国内法の問題でございますので、私からは何ともお答えいたしがたいところでございます。  ただ、日本の国内法でも公務員に対する贈収賄を処罰する規定が設けられているわけでございますが、日本の国内法におきます公務員とは我が国の公務員を指すものでございまして、外国の公務員は含まれていないわけでございます。したがいまして、我が国の国内法上、外国の公務員に対して贈賄したからといってそれを処罰することはできない、かようなことになっておるわけでございます。
  170. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 当然それぞれの国の法律で罰するということでございますが、明らかに意図的に外国における不正行為を働くという行為が続いているわけでございまして、この辺について法務省として、従来の、ロッキードは別にしても、ほかのいろいろな事件で、これは日本だけではないのですけれども、各企業が何とか外国の入札に入り込もうとかあるいは人のつながりをつけていこうということで、日本国内においては明らかに不正だと思われる行為を平然としてやっているわけでございまして、これに対して何らの対策も打てないということでは、非常に法治国家としても困るわけでございますし、逆に今外国におきます日本経済というか日本のいわゆる商社なり企業の進出が非常に取りざたされているときでございまして、放任はなかなかできない、こういうふうに私自身思うわけでございますが、まず大臣に、外国におきますいわゆる日本企業の経済活動、これが常道を逸している場合、これから何らかの対策を考えていかなければいけないと思いますけれども、この件に関してどういうふうにお考えになっているか、お伺いしたいと思います。
  171. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 ただいま御指摘の問題は、対外援助の問題あるいは対外経済取引の実態がどうなっているのかという、そういう上に立ちまして判断されるべき事柄であろうかと思うのでございまして、これはただ単に法務省だけの問題ではございませんので、そういう実態の上に立ってどう判断すべきか、こういうことになろうかと思うのでございます。
  172. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 確かに法務省だけの問題じゃないですけれども、余りにも常道を逸した行為というものがあるわけでございまして、それぞれが関係するわけですね。例えば外務省なりあるいは内閣もそうでございますし、総理府もそうでございますし、そういうふうにいきますと、やはりいろんな問題提起をすお部署というものがなければいけないわけでございます。そういう面で考えてみて、一番比較的公平に物事を見られる部署が法務省じゃないか、こういうふうに思うわけでございますから、これについて、全くこれからそういうものを黙認していくのか、あるいは考えていかなければいけないのか、この辺について大臣お答えをいただきたいと思います。
  173. 鈴木省吾

    ○鈴木国務大臣 そういう援助の仕事は、先生御存じのように、経済企画庁その他関係四省庁で主として扱っていただいております。また、実際のそういった商行為のようなことは通産省その他で御指導いただいておるわけでございますが、私も国務大臣として考えますことは、これほど日本が経済的にも強くなってまいりまして、世界各地に出てまいってそれぞれの分野で活躍をいたしておるわけでございますから、日本のそういった活動が本当にその地域の民衆のための援助として十分効果を上げられるような、いささかも疑念を持たれないそういう活動をお願いしなければなりませんし、まだこれからの商業活動その他についても、世界各地からさすがは日本はやはりフェアだな、こういうことにしていただきたいものだというふうに考えておる次第でございます。
  174. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 それでは、今この問題については調査中だということでございまして、お答えがいただけないようでございますが、海外のいわゆる刑事事件の調査、こういうものについて、警察の場合にはICPOという相互間の協力体制というものがあるわけでございますけれども、これも正規な捜査にはなかなか手が出せない、こういうふうに聞いております。これから経済問題等を含めていろいろ追及が始まってまいりますと、海外での捜査協力といいますか、こういうところにある程度踏み込んでいかなければいけないと思いますが、現段階で海外捜査、この状況がどうなっているのか、そして今回この問題をとらえてみて、もし捜査を拡大して相手国あるいはアメリカ等に協力を依頼するということになれば、政府としてどういう手続をやっていかなければいけないのか、この辺についてお伺いしたいと思います。
  175. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 外国との捜査の共助の関係でございますが、一つは、我が国が外国から捜査共助の要請を受けました場合にどうするかという問題でございます。これにつきましては、我が国の国内法といたしまして国際捜査共助法という法律ができておりまして、この法律に、共助の要請を受けました場合にこれに応ずる際の要件とかその手続、こういったものが規定されているのでございまして、外国から捜査共助の要請がありますればこの法律に従いまして対応する、こういうことになるわけでございます。  一方、我が国から外国に対しまして捜査共助を要請いたします場合は、それぞれの国がどういう手続で捜査共助に応じるかという個別の問題になってくるわけでございまして、この場合は外交ルートを通じまして当該外国といろいろ折衝を進める、こういうことになるわけでございます。
  176. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 現段階で国内の捜査共助法というのがあるわけでございまして、それを適用するということでございますが、フィリピンの行政規律委員会ですか、ここが日本の企業のリベート問題、こういうものでいろいろ日本に協力を依頼するようなこともある、こういうような話がもう既に出ておりますけれどもフィリピンから捜査協力の依頼があった場合に、日本政府として今の段階で、外交的な問題もございますが、受けるような形になるわけですね、今の法律を適用するということであれば。  これについては、法務省独自で受けるという決定ができるのか、あるいは外務省と相談をされてやられるのか。そして、今回のフィリピン問題についての具体的な要請があった場合にどうされるのかというような形でお答えをいただきたいと思います。
  177. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 一般論でございますが、国際捜査共助法によりますと、法務大臣がその判断をすることになっておるわけでございます。ただ、ルートといたしましては、外務大臣を通じて行うのが建前になっているのでございます。ただ、これはあくまでも具体的な犯罪容疑の捜査、すなわち刑事事件の捜査として必要な証拠の提供を求められた場合に限って、この国際捜査共助法に基づく共助を行うことになるわけでございます。  具体的にフィリピンから捜査共助の要請があった場合にどうするかということでございますが、これは先ほど来申しております国際捜査共助法の要件に従いまして、捜査共助の要請に応ずるかどうかを個別的、具体的に判断するわけでございますので、一般的に応ずるかどうかということは、今の段階では申し上げられないのであります。
  178. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 外国への要請の方でございますけれども、既に調査に入られたということでございまして、それでいきますと、外国へもう既に捜査共助の要請をされたのかというふうに受け取りますけれども、これについてはいかがですか。
  179. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 検察当局といたしましては、調査と申しますか捜査、そういったものに入ったかどうかを含めまして、お答えいたしがたいところでございます。
  180. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 これだけオープンになっている問題ですから、当然政府というか捜査当局としても手をつけるような問題だと思いますので、外交ルートを通じてということで外務省でとまっているのか、その辺について確認をしたいと思います。捜査に入る入らないは別にして、ルートとしてはあるわけでしょう。というのは、当然捜査するという意思なんですけれども、やるとすれば、国内だけじゃなくて海外もやられるわけでしょう。
  181. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 私の理解で申し上げますが、先ほど来申し上げておりますように、検察当局といたしまして調査なり捜査をやっているかどうかということは、やっているともやっていないとも申し上げかねるのでございます。  また、一般的に外国との関係はどうなっているかということでございますが、一般的には、我が国では国際捜査共助法があります。外国におきましても、こういった法律がある国あるいはない国あろうかと思いますが、要するに、個別に共助の必要が生じましたときに我が国では外国に共助を要請する、また外国もその必要が生じましたときに我が国に共助を要請してくる、そのときに個別に判断してこれに応ず局がどうかを決める、こういうことになっておるわけでございます。
  182. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 今回捜査するしないというのは、国民には明らかにされないということですか、黙ってやるということですか。
  183. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 捜査は本来密行的に行われるべきものでございまして、例えばこれまでの例から申し上げましても、強制捜査等に移りました場合は検察当局もこれを発表いたしておるわけでございますが、それ以外の場合につきましては、捜査の性格上、捜査が行われているとか行われていないということについては申し上げがたいのでございまして、法務当局といたしましてもそういう立場でお答えせざるを得ないわけでございますので、その辺ひとつ御了承いただきたいと存ずるものでございます。
  184. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 終わります。
  185. 角屋堅次郎

    角屋委員長 次に、中川利三郎君。
  186. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 わずか十四分の短い時間でございますので、恐縮ですが、お答えは簡潔にお願いしたいと思います。  国税当局が来ておるようでございますが、マルコス資産の疑惑については国税庁は税務調査に着手した、これは三月末の各紙で大きく報道されているわけでありますが、今日その進捗状態はどの程度になっているか、まずお答えいただきたいと思います。
  187. 友浦栄二

    ○友浦説明員 お答え申し上げます。  対フィリピン経済援助に関連する課税上の問題につきましては、国税当局としても関心を持っておりまして、外務省から入手いたしましたソラーズ委員会公表文書の分析を初め、各種の報道等を含め、課税上有効な資料、情報の収集に全力を挙げているところでございます。かようにして収集した資料、情報に基づきまして、必要がある場合には随時調査を行うなどして、その適正な処理に努めてまいりたいと考えております。
  188. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 マルコス文書の中には、バックナンバー〇一五五八から〇一五六一の四枚つづりのアシジェニト社のステートメント、つまり貸借表がございます。これをますと、例えば一回の船積みごとにマルコス・リベート吸い上げ会社であるアシジェニト社へ支払うべきリベート一五島の金額が一番左の項目にございます。その内訳、内容として、一〇%分はドル送金、五%分は円で受け取る、その仕分けがきちっと一覧表になっておるわけであります。しかも、その出し入れが克明に記載されているわけでありますが、その中の一部が東京でJun、いわゆるジュニアですか何か、Junと書いてあります。日本円で支払われたと書いていますね。その中に、三井物産、東陽通商、現在の東陽テクニカ、関与した会社の名前が明らかに示されているわけであります。この貸借表そのものは、一九七八年二月二十七日、それから六月十三日のわずか三月半の間にアシジェニト社が受け取ることになったリベートの類とその支払い状況であります。  この資料につきまして国税当局はどのように検討しているのか、お答えいただきたいと思います。
  189. 友浦栄二

    ○友浦説明員 御指摘の文書を含めまして、先ほど申し上げました外務省から入手いたしましたソラーズ委員会の公表文書について分析を行っているところでございます。その中にお示しの記述があるということは承知しております。  私どもとしましては、対フィリピン経済援助に関連する課税問題につきまして、国会で御議論のあった事項、ソラーズ委員会の公表文書その他新聞等で報道された事項等を参考にして、適正に処理してまいりたいと考えております。
  190. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 今御紹介いたしましたステートメント、貸借表でありますが、私ちょっと見ただけでも、三月間に八回の船積みがございまして、リベー十分は総額三億五千万、そのうち三分の一、一億一千六百万が三回に分けまして、日本円でしかも東京でJunに渡されたということになっているわけであります。これはいずれも一九七八年段階の問題でありますが、私は、この四枚つづりのほかに、問題だと思うのは、その後もずっとやられている形跡があるわけであります。  これはバックナンバー一五五六、一五五七でありますが、この資料を見ますと、七九年五月二日、七九年五月七日段階、その他次の年になっても同じような格好でこういうことが繰り返し行われているということになるわけです。  そこで、私は国税庁当局にお伺いしたいのは、フィリピンと日本との間に条約があるのです。所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とフィリピン共和国との間の条約、昭和五十五年条約第二十四号というものでありますが、この第二十六条には、「この条約の対象である租税の回避に対処することを目的とする法規を実施するために必要な情報を交換するものとする。」こう書いてあるのですね。私は、この条約に基づいて当然フィリピン政府の国税当局と情報交換することを発動すべきであると思いますが、この点についてはいかがでありましょうか。
  191. 友浦栄二

    ○友浦説明員 ただいま先生御指摘のように、日本とフィリピンとの間で締結されている租税条約におきましては、情報交換の規定が置かれております。この規定は、他の締約国における情報交換の規定と同様に、租税に関する脱税を防止するため、または租税の回避に対処することを目的とする法規を実施するため必要な情報を権限のある当局間で交換するもので、交換された情報は秘密として取り扱われております。また、求める情報につきましても、締約国との関係で種々の制約がございます。したがいまして、情報交換の必要性、有効性をよく見きわめながら、この条約の適正な運用の中で考えてまいりたいと考えております。
  192. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 それではよくわからないんだな。適正な運用の中で考えていきたい、そんなことを聞いているのじゃなしに、やはりこれは早急にやるべきなんだ、このことを私はお聞きしているわけであります。  時間がないから次に進みますが、法務大臣にお伺いします。  多額のリベートを贈与し、マルコスの不正蓄財に手をかした日本企業の役員らの背任行為、さらには、私が今指摘しましたように、円借款プロジェクトをめぐって当時のマルコス政権と受注企業の契約内容を知り得る立場にいたOECFの関係者、これらの関係者にリベートがキックバックされているとの報道もあることは御存じのとおりであります。そうなれば当然贈収賄の疑いが出てくるわけでありますが、マルコス疑惑について法務大臣として今後どのように対処しようとしているのか、お聞きしたいと思います。
  193. 鈴木省吾

    ○鈴木国務大臣 刑罰法令等に触れる事案があれば、検察当局は厳正に対処していくものと思います。
  194. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 この後でまた質問がありますから、いいでしょう。  最後に、委員長にお伺いしたいと思うのですが、この問題の真相解明のために先ほど私は四枚つづりのこの資料を提起して、その中に三井物産あるいは東陽通商、今の東陽テクニカでありますが、これが証明できるわけであります。そういう意味からいたしまして、私が今言いました当時の東陽通商、現在の東陽テクニカの社長、野村長だと思いますけれども、それから三井物産の江尻宏一郎社長、この二人の証人喚問を要求したいと存じますが、いかがでありましょうか。
  195. 角屋堅次郎

    角屋委員長 委員長に対するお尋ねでありますので、お答えをいたします。  本委員会終了後理事会を開く予定を委員長として考えておりますので、取り扱いについては理事会で相談をさせてもらいたいと思います。
  196. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 終わります。
  197. 角屋堅次郎

    角屋委員長 次に、玉置一弥君。
  198. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 官房長官には行ったり来たり、大変御迷惑かけます。本来でございますと、ずっと座っていただければすっと済んだ問題でございますけれども、今後ともぜひよろしくお願いしたいと思います。  先ほどからいわゆるマルコス疑惑という話がいろいろ出ておりましたけれども、今回の場合、特に海外援助にかかわる問題として、今外務省の中ではこれから七年間にわたりまして海外協力を二倍にしたい、こういう動きもございますし、国内の財政的には非常に苦しい中での海外協力ということで、税金面でかなり厳しいチェックをしていかなければならない、それほどまでに財政が厳しいわけでございますから、使い方が本当に効果のあるものかどうかという論議がなされていかなければいけない、今そういう時勢でございます。  特に今回のフィリピン問題をとらえてみても、一九七一年の第一次円借款プロジェクト、これから始まりまして十三回行われましたけれども、この合計が先ほども申しましたように四千六百六十七億、ざっと五千億近いのですね。新聞等に発表されておりますように手数料が、というよりもリベートですね、リベートがもし一五から二〇%ということで計算をいたしますと、一五%の一番低いところでも七百億円という大変大きな金額になってくるわけでございます。  従来から、お金だけの海外援助がいいのかどうかというような問題もありまして、私も機会あるごとに、人の派遣もやはり考えていかなければいけないんじゃないかというお話もさせていただいているわけでございますけれども、今回のような問題が出てきたということを考えていただいて、まずこれからの海外援助についてどういう姿勢政府として臨まれるのか、この辺についてお伺いをしたいと思います。
  199. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 対外経済援助の問題につきましては、政府としては、午前中お答えしましたように適正な手続を経て、それが効率的、効果的に相手国の経済の発展向上、そして民生、福祉に役立つといったようなことでやってきておるつもりでございまして、それなりに成果を上げておる、私はかように理解をしておるのですが、たまたまフィリピンの政変に関連をして対比援助の問題が今日世上でいろんな疑惑等が流布せられておることは、日本の対外経済援助をめぐってのまことに遺憾な出来事である、かように考えておるわけでございますが、国会の中に特別委員会等もおつくりになるようでございますから、その御審議には政府としては当然のことながら御協力を申し上げてまいりたい、こう考えておるわけでございます。  そこで、まず従来からのやり方でございますが、やはり効果的、効率的にやらなければならないということで、事前調査の充実であるとか、あるいは交換公文の際の援助資金の適正使用及び施設、機材の適正な使用、維持の義務づけ、こういったこともはっきりさせておりますし、評価活動の充実等の諸措置も講じておるわけでございます。こういったようなことを努めておるのですが、こういう遺憾な事態が起きた以上は、やはり将来こういった疑惑を招くことのないように、調査の結果もし是正すべき点があるということであるならば、運用方法等について是正をすることも必要であろうかと思いますが、これは今後の課題であろう、かように理解をしておるわけでございます。  なおまた、政府としては、従来のこの対外援助のあり方についても、既にことしの二月に、総理大臣の諮問機関でございます対外経済協力審議会というものがございますが、この審議会に対して、経済協力を進めるに当たって今後留意すべき基本的な事項ということを諮問をいたしております。その諮問の内容を簡単に御紹介しますと、一つは多様化、複雑化、高度化する開発途上国のニーズに見合った援助、二番目は効果的、効率的な援助の実施、三番目が援助に携わる人材の養成、確保、四番目が広範な国民的理解と支援に基づく援助、五番目が援助をめぐる先進国との問題、六番目が民間経済協力、こういったような項目についてことしの二月以来御審議を願っておるような次第でございますが、これらの審議会の意見等も踏まえながら、さらにまた今回起きておる事態の調査の結果、それらを見て運営上改善すべき点があれば、政府としては改善を図っていきたい、かように考えております。
  200. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 大筋はわかるのですけれども、今回のこのような問題が出てきたというのは、一つは国内の事業団、この辺の監督といいますか、いわゆる調査能力、この辺が問題だというふうに思います。  それからもう一つは、先ほどもお話をしていたわけでございますが、日本の企業が仕事をとるために常道を逸した形で走ってしまう、こういうことがあるわけです。一つはそのリベートの高さも問題があるわけでございますけれども、やはり外国であれば何をやってもいいという一つの考え方があるように思えるわけでございますが、日本の企業に対して政府としての、外国から見た日本企業、こういう面が今でも非常に問題になっておりますけれども、やはりこれからこの辺の姿勢を正していくような協力要請といいますか、これをやらなければいけないと思います。  それからもう一つは、民間協力もちろんでございますけれども、先ほどから言っておりますように、日本がODAをこれから主体にしていこうということでございますけれども、逆に我々が調査に行ったときに相手国からいろいろ話を聞きましたときに、日本がお金を出していても渡す人はアメリカ人であり欧州人でありという方々で、実際日本からお金が出ているというふうにわかっている方は、実際の国際機関との取引をやっている当事者だけだというような形でございまして、相手国が十分日本がお金を出しただけの評価をしていないというような問題点があるわけです。その辺を変えていかなければいけないと思います。  ですから、一つは調査、いろいろな使われ方とか、あるいは今回のような不正事がないかどうか、こういうことを日本独自である程度調査をやらなければいけないし、場合によっては会計検査院を派遣をするとかいうようなことにもなるかと思いますけれども、この辺の問題点と、それからお金だけではなく、人にウエートを置いた海外協力というものも考えていかなければいけない、こういうふうに思うわけですが、これについてどのようにお考えになっていますか。
  201. 太田博

    ○太田説明員 お答えいたします。  まず、最初に先生御指摘調査の件でございますが、これはただいまの御説明によりますと二種類の調査があるかと思われます。一つは、実際に円借款等で取り上げますプロジェクト、適正な真に相手国の社会経済開発のために役に立つプロジェクトを見出すための事前調査重要性がと思われます。それからもう一つは、事後の評価でございまして、実際に日本が行いました経済協力が真に適正に使われており、かつ効果的、効率的に使われているかということを事後的に評価する意味での調査ということかと思われまして、双方とも我が国の経済協力を一層拡大していく上で極めて重要でございまして、今後ともその一層の拡充に努めてまいりたいと思います。  それから、もう一つ先生御指摘の人の面の協力重要性でございますが、これはまさに御指摘のとおりでございまして、我が国といたしましては、相手国の要請、これを踏まえつつ、単に物、金だけの援助ではなくて、人の面を通ずる協力、これを一層拡充してまいりたいと考えております。人の面の協力は、通常技術協力と言われておりますけれども、国際的に比較いたしますと、我が国のODAに占める技術協力の割合が約一割でございまして、DAC諸国の平均二割に比べますとまだまだおくれているという点がございますので、ただいま先生御指摘のように、人の面を通ずる協力、これを今後一層充実させていきたいというふうに考えております。
  202. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 ロッキードのときもアメリカから情報が来まして、今回もアメリカから情報が来た、こういうことで、問題の発覚がすべて外国の手によって火がついてきた、こういうことでございます。前回も申し上げましたけれども、日本のいわゆる情報収集能力あるいは調査能力、こういうものが非常に不足をしているのではないかというふうに思います。  今回の問題点をとらえてみて、先ほどからのお話の中で、例えば会計検査院調査を行う場合、今まで二回ほど、五十三年、五十五年ですか、海外協力調査ということで相手国に行かれたことがございますが、これはあくまでも外形上の調査というか、その程度にしかない、こういうような感じを受けるわけです。  今回の場合、国内で押さえられる問題と、それから相手国の実情調査というある程度踏み込んだ形での調査が必要だと思いますけれども、この辺を分けて考えた場合に、外務省あるいは会計検査院、それぞれどういう形での調査ができるか、あるいは今の機構上どういう点に不備があるか、お答えいただきたいと思います。
  203. 太田博

    ○太田説明員 お答えいたします。  会計検査そのものにつきましては会計検査院の方からお答えがあると思いますけれども、経済協力の問題につきまして、もし会計検査院が海外に赴いて必要な調査を行うという場合がございましたら、外務省といたしましては適当な形でかかる調査協力をしたいというふうに考えております。
  204. 三原英孝

    ○三原会計検査院説明員 お答えいたします。  私どもの海外における海外経済協力に対する調査は、ただいま先生おっしゃいましたとおり、外見的な外面からの調査にとどまっておりまして、言うなれば、援助の効果が上がっているかどうか、そういった観点からの調査にとどまっていることは御指摘のとおりでございます。  それで、今回のような問題にかんがみまして、私ども会計検査院が外国の会計経理まで検査をするということになりますと非常に重大な問題になりまして、事は援助のあり方に関しまする国家政策上の判断の問題になろうかと思いますので、私どもの方からは答弁を差し控えさせていただきたいと思っておりますが、現在のところは、ただいま申しましたようなことで、外国の会計経理には私ども検査は及んでおりませんので、限界があるということでございます。
  205. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 今のお答えをお聞きしても、日本の行政府ではなかなか手が出しにくいという部分がございまして、そういう意味では、政府としてぜひ外交ルートを通じた調査依頼をやっていかなければいけないのではないかというふうに思います。中曽根総理も徹底究明をする、こういうふうに言っておられますけれども政府として現在の状況に対してフィリピン及びアメリカに調査員派遣の用意があるかどうか、この辺についてお伺いしたいと思います。
  206. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 事態の調査については、総理も解明に努力をしていきたい、こう申しておるわけでございますけれども、しかし、事柄は本質的にはフィリピン政府と企業との私的契約の問題でございます。その契約を通じてのいろいろな問題が発生しておる、こういうことであれば、私はこれはまずフィリピン政府が徹底究明をすべきである、そのフィリピン政府が日本側に協力要請ということであれば、日本側としてもこれに協力をすることは非常に楽なわけでございますが、事は外交問題でございますから、私は、日本側から積極的にフィリピンへ行って会計検査をやるとかいうようなことはやるべきことではないし、非常に難しいことである。  本来、こういうことを私がお答えするのは果たしてどうかなと今の時期に思いますけれども、これはやはり借款でございますから、だから適正にやっていなければ、なるほど日本も、これは日本人の貯金なり税金なりの中から貸しているのですから、それなりにきちんと効果が上がるようにしてもらわなければならぬということは当然の話でございますが、しかし低利の金として貸しておる、しかし低利であっても返ってくることは間違いないわけですね、借款ですから。そうすると結局は、仮にそれにいろいろな不正、不当のことがあるとするならば、それはフィリピン国民が最大の被害者にならざるを得ない、こういうことが私は基本的な事柄ではなかろうかと思います。  しかし、いずれにいたしましても、これは放置していいというわけのものではありませんから、フィリピン政府日本政府に対して協力要請があるということであれば、これはもう日本政府としては非常にやりやすい、こういう環境になるのじゃないか。いずれにいたしましても、総理が事態解明に政府としては十分協力をしたいと言っているのも、趣旨はそういうことではないのか。余り日本が先走って――いろいろ新聞には出ておりますよ、新聞には出ておるけれどもフィリピン政府から日本に対してそういう要請が今日まだ来ているように私は承知をしておりませんから、そこらを十分見きわめた上で、いずれにせよ、事態の解明だけはこれは明らかにして、そしてその上に立って、日本の海外援助のあり方について改善すべき点があるならば改善をしていくというような手順が一番適切なのではなかろうか、かように考えておるわけてございます。
  207. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 まさにおっしゃるように、一つはフィリピンの国内問題でございまして、対外累積債務があれほど蓄積されている中で、なおかつこういう不正が行われたということで、フィリピン国民にとっては大変な痛手になっているわけですね。そういう意味で、我々の日本の企業が逆にそういう体制に協力をした、こういうことも言えるわけでございますが、この辺についてはどういうふうにお考えになりますか。
  208. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 実態が明らかになる段階において、今玉置さんがおっしゃったようなことを日本の企業がやるならば、これはやはり日本企業でございますから、日本政府としては十分なる行政指導を加えて是正をしてもらうようにしなければならない、私はかように考えております。
  209. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 時間がございませんので、フィリピン問題はまだまだこれから特別委員会等で明らかにされていくと思いますし、日本としても、ASEAN諸国に対する、あるいは海外援助をやっている国に対して姿勢を正していくということでやっていかなければいけないと思うので、また別途違う時間でやっていきたいと思います。  総務庁長官にお聞きしたいのですが……。
  210. 角屋堅次郎

    角屋委員長 局長さんがおりますから。
  211. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 では、局長さんでお願いします。  行政改革が最近何となく下火になってきている、こういう感じを受けるわけです。中曽根内閣のまさに柱でございました行政改革、我々ひょっとして無理じゃないかと思う「増税なき財政再建」までやるとおっしゃるのですから、当然それだけのいろいろな行政改革における効果というものを把握をされてやっているというふうに思うわけです。  ところが、臨調答申等の実施状況を見ますと、昭和五十九年十月に進捗状況が大体四三%ぐらいでありましたものが、一年後に進捗状況が四五%ということで二%しか上がっていない、こういう状況でございます。片方では、財政の方でございますが、四年連続一般歳出伸び率ゼロということで緊縮財政を組み続けていて、今回の円高等の状況で日本の国内景気も非常に悪化をしてきている、こういう状況でございます。  ですから、総枠規制はとられているけれども、圧縮という形になっておりまして、圧縮されるとその負担はどこかへ転嫁をせざるを得ない、こういうような形になっているわけで、行政改革が本当にどこまでできるのか、そして、もう実際のいろいろな動きとしてはほぼ行き着いているのかどうか、その辺について総務庁としての見解といいますか評価と見解、この辺をお伺いしたいと思います。
  212. 江崎真澄

    江﨑国務大臣 御心配をいただいて大変恐縮です。  行革は絶えず行っていかなければならないことは言うまでもありませんが、今行政改革の推進状況は行革審から五合目ぐらいまで達しておるであろう、これはよく言われるように、激励の意味を含めた評価であろうというふうに言われておりますが、この五合目評価を受けた後も、公的年金制度の改革、これは四月から実施しておるところですね。それから、規制緩和の一括法、民間活力の発揮の推進、地方行革の指針となる地方行革大綱の策定、それからその他いろいろな改革の成果を上げつつ今日に至っておるわけであります。しかも、行革審においてなお一番問題とされる国鉄の改革は、来年の四月を目前に控えて今国会で法案審議をお願いしておるところであります。  したがって、内閣の総合調整機能の強化を初め、特に今申し上げました地方行革の問題は、これからが本当の正念場だというふうに考えております。したがって、私どもも引き続いて行政改革の推進には不退転の決意で取り組んでまいる、特に前長官が今内閣官房長官でありますから、これは二人分で頑張っていこう、それくらいの気持ちでおりまするので、どうぞその点は大いにこれからも御督励を願いたいと思います。
  213. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 二人おられると非常に聞きやすいのですけれども、今まで後藤田さんも行革を大分一生懸命やられておりましたし、また江崎大臣も後を引き継いでやられておるわけですけれども予算編成のときにいつも思いますのは、言葉が先行して金額的な効果が出てこないのじゃないか。  最初は、着手した当初でございますから金額的になかなかあらわれてこないということもございましたけれども、五十八年ですから、五十八、五十九、六十、ことしで三年半くらいたつわけですね。普通ですと、三年半たちますと半分くらいの効果はもう既に還元をされてくる、こういうふうに思うわけです。評価をされている割にはなかなか金額的に出てこないというふうにも思うわけでございますし、逆に、金額的に出てこなければ別に行政改革やらなくてもいいのじゃないかというふうに思うのです。少なくとも伸び率で抑えたあるいは出費を抑えた、今より減らした、どちらかで効果がなければおかしいわけでありますが、この辺についてはどういうふうに把握をされていますか。
  214. 江崎真澄

    江﨑国務大臣 これは金額的にも相当な効果はあったということは言えると私は思います。それは電信電話公社の民営化にしても、もしあのままにしておけば大変な赤字が出る寸前のところであった。真藤、今は社長ですが、かつての総裁に聞いても、しみじみ、その内容が薄氷を踏む思いであったということを聞かされますし、我々もまた納得をするわけであります。専売公社の民営化、これもよかった、時宜を得たものだと思っております。国鉄に至っては、これは御協力を得ながらどうしてもやらなければならない重大な問題、国策としてももう放置できないところまで来たこの民営・分割化でございます。そういうものを一々数えてまいりますと、大変いいことをやっておるわけであります。  それから、今後も、教育臨調の答申にこたえての、第二次答申を控えての改革とか、銭金に換算できないような大きな精神面での教育の見直しなども行うわけでありますから、今後といえどもこの問題には大いに熱意を込めて取り組んでいく決意でございます。
  215. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 きょうから大蔵委員会でも補助金一括法案の審議が始まりました。これは一年しかやらないというお話で各自治体とも約束されてきたもので、我々が去年一生懸命反対しましたら、各自治体の方から、これは一年しかやらないという約束をもらったんだからもういいかげんに通してください、こういうような話になって、逆に補助金の割り振りをするために早く日程をセットした、こういうこともあったわけです。そういうように見てみますと、制度をそのままにして一律削減ということで結果的には地方の財源負担ということになってしまったわけですから、やはり制度改革というものも考えていかなければいけない。  普通の企業でいいますと、人がいるから仕事ができるわけで、人がいなかったら仕事が簡略化していくものなんですね。私も会社で十二年間そういう仕事をしていまして、自分の仕事をなるべくしないようにしないようにして、人に全部渡していきますと自分の仕事が浮いたわけです。浮くからまた違う仕事を取り入れてくる、こういうことができたわけですけれども、臨調の答申にも書いておりますように、やはりそういうふうに行政の体質として見直していくような、こういうものを制度として考えていかなければいけないし、また逆に言えば、今定員削減一〇%という方針が出ておりますけれども、これは一〇%というよりも三割ぐらいをねらってやれば、一〇か一五くらいでぴしっといくと思うのです。最初から一〇%ということで非常に目標が甘いような気持ちもするわけで、そういう面で、先ほどおっしゃったようにまだまだこれからが正念場だというように思います。  そういう意味で、もっと具体的な効果の上がるもの、このものがまだまだたくさんあるわけでございますし、その辺からぜひ着手をして増税のないようにこれからお願いをしたいと思いますが、最後に心構えだけお聞きして、終わりたいと思います。
  216. 江崎真澄

    江﨑国務大臣 激励を交えての御質問でございますが、全く同感でございます。あれは一九七五年ですか、フリードマンが新しい経済学説を唱えてノーベル賞をもらいまして、アメリカでは非常に評価されておりますね。それは、時代に即応した簡素で能率的な経済運営というのが根本思想なんですね。これは官庁にも言えると私は思うのです。補助金をもらうために随分手間がかかり過ぎるとか、私どもいろいろ質問を受けるわけでございますが、全くそのとおりでございまして、これをもっと簡素化できぬものか、これはやはり今後に向けて大いに努力をし、合理化をし、能率化していくことが必要だというふうに思います。これがすべての根本につながる、御指摘のとおりだと思います。
  217. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 終わります。  ありがとうございました。     ―――――――――――――
  218. 角屋堅次郎

    角屋委員長 この際、お諮りいたします。  本件につきまして、本日、参考人として海外経済協力基金総裁細見草君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  219. 角屋堅次郎

    角屋委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――
  220. 角屋堅次郎

  221. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 日本からの円借款に絡むいわゆるマルコス疑惑が表面化する中で、日本の対外経済援助のあり方が根本から問われていると思います。  政府はこれまで、我が国の対外経済援助について、発展途上国の自立的な経済社会開発、人道的な配慮や見地に重点を置き、世界経済の活性化にも役立っていると経済協力白書でも自賛してまいったのでありますが、しかし今回のマルコス文書を通じて一端が明らかにされたその内容は、このような政府の言い分とは全く反対に、相手国に腐敗と借金を残すだけのものになっているという指摘もあります。ましてや、経済援助の資金は国民の税金や貯蓄でございまして、その資金がマルコスの私腹を肥やし、独裁支配を支えていたり、日本の大企業の利潤追求の対象になったりしていることは問題であると思います。  そこで、官房長官にお聞きするのでありますが、今回のマルコス文書でその一端が明らかになったフィリピン向け援助の疑惑についてどう受けとめているか、簡単にお答えいただきたいと思います。
  222. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 我が国の経済援助は、午前中からしばしばお答えをいたしておりますように、やはり適正な手続によりまして、事前の調査、事後の評価、いろいろなきちんとしたやり方で今日までやっているつもりでございます。したがって、それなりの効率的な運営も図られておる、私はかように信じておるわけでございます。  ただ、日本が置かれている立場は、御案内のように、やはり国際的な責任を果たすという意味合いにおいて、この経済援助そのものはより一層充実強化をしていかなければならない、政府はそういう基本的立場に立っておるわけでございます。しかもその経済援助というものは、相手国の経済の発展あるいは民生、福祉の向上、こういうものに役立つものであって、特定政権を援助するといったようなものではございません。そういうようなことでやっておるので、それなりの成果を上げておる、そしてまたそういう線でやらなければならぬと考えておるやさきに、フィリピンのような問題が起きたということは大変残念でございます。  したがいまして、この問題については国会でも特別委員会をおつくりになるというようなことでございますから、日本としてやはりなし得る限度の事態の解決に向けての協力ということはやっていかなければならない、かように理解をしておるわけでございます。
  223. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 今長官から、適正な手続あるいは事前評価、いろいろ適切にやられてそれなりの成果が上がっておる。しかし、そう言いながらいろんなこういう問題が起きているところに大きい問題があるわけでありまして、つまり今の向こうの要請だとか――要請主義ですね、あるいはいろんな事前審査だとか、それらは実態を覆い隠すオブラートの役割しか果たしておらなかった。いわばそういうものが全部形骸化されたところに問題の本質があるわけでありまして、ここでその点で論議する時間もございませんけれども、まさに日本の政府フィリピン政府も、当時のマルコス政府は当然でありますが、日本企業ともどもに重大な責任を負わされているものだ、私はこういうふうに考えるわけであります。  そこで、あわせて長官にお伺いしたいのでありますが、フィリピンのソリタ・モンソド経済計画相兼経済開発庁長官、いわばそっちの部門の最高の責任者でありますが、彼はこう言っているのですね。「円借款によるほとんどのフィリピンの国内プロジェクトは経費が水増されていると指摘フィリピン側の対応策としては①(リベートなどの)水増し分を除外して実際の借款分を返済して、水増し分は返済を拒絶する②借款協定に「不誠実」な点があったとして、すべての債務を帳消しにする――の二つが考えられる」と語っているわけでありますね。官房長官はこの点についてどうお考えになりますか。
  224. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 ただいまの御質疑の件は、政府からも先方に照会をしたようでございますが、先方への照会の結果は、対比援助の一部しか払わぬといったようなことはございません、対外債務は確実に支払いをするというのがフィリピン政府お答えであったようでございます。また、そうでなければおかしいんです。まず御自分のところをきちんとせられてそしてやってもらわぬことには、自分のところもきちんとしないで、それはおれの方は払わぬぞと言われたんじゃ、これはどうにもならない。これはやはりそこはけじめをつけてやらなければなりませんし、フィリピン政府としてもけじめをつけたお答えをなさっておる、かように私は理解をいたしております。
  225. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 けじめをつけたやり方としては、全部払うのが至当だ。しかし問題は、その中に水増し、それがもう不当に向こうの権力者あるいは日本の企業、そういうものがぐるになってやられたという中でああいう発言があるわけでありますが、まあ仁の問題についても私は若干長官と意見を異にするわけでありますが、次の問題にまず進ませていただかなければ時間がございません。  そこで、今ほど話がありました海外経済協力基金の総裁、お見えになっておるようでありますが、参考人としてお聞きするのでございます。  マルコス文書を拝見いたしますと、円借款に関連して法外なリベートをマルコスやその取り巻き財閥に支払っていることが、文書の中で幾つも出てきておるわけですね。しかし、相手国政府と借款協定を結んだ後に、例えば入札時、書類の審査をして承認をしていますね、基金は。それから、入札評価の時点でも審査して承認をしていますね。契約のときにも審査して承認をしている。いわば全部その段階において基金が審査して承認を与える、そういうシステムになっているんですね。それにもかかわらず今回の問題が起きた原因、これは一体何だろうか、このことについてどうお考えになっているか、お聞かせいただきたいと思います。
  226. 細見卓

    ○細見参考人 お答え申し上げます。  基金の業務というものは、御存じのとおり政府の間で協定ができました借款、それが交換公文でこのプロジェクトに幾ら幾らの金を援助するというふうになるわけです。それによりまして相手国政府は事業の日論見書というのをつくりまして、事業計画書というのをつくりまして、それをもとにしましてフィリピンの銀行に、信用状を開いてくれ、つまり、それだけの金が借りれをようにしてくれということを言うわけです。  フィリピンの銀行はそのまま払えませんから、日本の海外経済協力基金のいわば銀行で金庫の役をしております東京銀行の方へ、そういう信用状を開いてくれということを言ってくるわけです。そういたしますと東京銀行は、そういう借款は本当にございますかということで私どもの方に問い合わせが参りまして、私どもはそれに対して、いわばそのとおりです、こうこうこういう計画によって借款が与えられることになっておりますと、まあレター・オブ・コミットメントと申しますが、そういうものが事業計画に基づきましてあるわけです。  そうしますと、あとは全くの通常の貿易の取引と同じでございまして、何月何日こういう入札をして、こういうものを買いたいがいいかということで、入札が行われますとその書類が私どものところへ参りまして……(中川(利)委員「簡単、簡単」と呼ぶ)はい。そこのところが非常に大事なところで、つまり参りますと、それが計画どおりであるかどうかというのを見ればいいわけなんです。で、それが貿易の通常のルートでございます。そういうやり方をしておる。ですから、中身を見て云々ということは、契約がその計画どおりに行われているかどうかということを見ればいいということなんでございますので、そこのところだけを丁寧に申し上げたわけでございます。
  227. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 別に私はその手続をあなたにお聞きしたんじゃないんですよ。そういうシステムがちゃんとできて、あなた方の審査、承認が各段階ごとにあるにかかわらず、こういう問題が起こっているんですよ。なぜそうなのか、その原因を何と考えるかということを聞いているのです。長々と、時間がないのにそういう手続問題を聞いているんじゃないということですね。  同時に、基金はそういう意味ではすべて知り得る立場にあるということがはっきりしたわけでありますが、そういう状態の中でこういうものが起こっているということについては、例えば田中秀穂前のフィリピン大使でさえもこう言っているんですね。「フィリピン側の要請で始まるはずの円借款事業を、受注業者側が持ちかけて話を進めた場合は、事情が異なる。日本の企業側が「このような事業をしてはどうか」と、事業を「作り出す」わけで、このような時は、発注主(フィリピン側)が特定の受注主を希望したり、入札をしても、他企業は手を引く、という。」こういうことをちゃんと談話で出しているんですね。そこが問題だということを言っているのでありまして、今のような御答弁を私は期待したのではないということを重ねて申し上げたいと思います。  時間がないから、次に進みます。  そこで、総務庁にお伺いしたいわけでありますが、総務庁は過去に海外経済協力に関する行政監察をやったことがございますか。
  228. 米倉輝

    ○米倉説明員 お答え申し上げます。  昭和四十七年の九月から四十八年の五月にかけまして、海外経済協力に関する行政監察、ただしこれは技術協力を中心にした監察を実施しております。
  229. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 つまり今言う、こういう経済協力基金のいわば円借款の問題は何もやっていないということですね。一番問題があるものについて四十七年に一回やったきりで、後は何もやっていない、そういうことの表白にほかならないと思いますし、私が取り寄せた資料でも、こういう返事が返ってきているのですね。今回言われているのはマルコス円借款なので無関係、おれの方は無関係だ、こういう言い方ですよ。こんなばかなことがありますかということを聞いているわけでありますが、まさに白々しい限りだと私は思うのですね。  そうすると、これは一種の聖域扱いにされていた、軍事費は当然、軍事費以上に聖域扱いされていたということになると思うのですけれども、長官、いかがですか。こういう、一回しかやっていない、ほかの技術協力だけですね。
  230. 江崎真澄

    江﨑国務大臣 技術協力については今お聞き取りのとおりでありますが、政府開発援助の適正、そして効果的な実施確保、こういった問題についても、我々の方ではもちろん深い関心を持っておることは当然であります。  ただ、現在問題になっておりまする経済援助については、所管省庁において既に真相究明を手がけようということで、国会側にも委員会が発足いたしますし、外務、通産、そして大蔵というのも、援助を決めるときには、最終的には、こういう財政事情の厳しいときですから、相当厳しく対応しております。調整官庁としての経企庁もおるわけです。これらのそれぞれの関係省庁がどう今後対応するか、これは十分その推移を見守ってまいります。その上で、いかがわしい点、不十分な点があれば、当然行政監察に付す。やはりまず所管庁のそれぞれの責任、特に四省庁が関係しておりますから、これが責任を持って正確を期する、これは当然なことであると考えております。
  231. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 四十七年に技術協力一回だけ監察したことがあるということですね。しかし、その当時問題になっていないかというと、問題になっているのですね。それにもかかわらず、この問題、経済協力基金、円借款の問題については一度もやったことがないということは、あなたがどう言おうと、それは事実だということが今の御答弁の中でもはっきりしていると思うのですね。  例えば、一九八五年一月号の「国際開発ジャーナル」というものがありますが、「日本の援助は、本当に途上国の民衆の役に立っているか?」という題で、「三塚博自民党政務調査会長代理に聞く」という文章がございますが、これを拝見いたしましても、こう言っているのですね。「毎年約五、〇〇〇億円。ODAを含めて国費分が大体そのくらいの額になるが、問題があるといわれているのは、フィリピン、インドネシア、タイなどですね。全体の七割がアジアだが、全力をあげて援助をしているのに一向に対日感情がよくならず、かえって排日運動が強まるのは、援助が民衆のためになってないのではないか、という素朴な疑問が出てくるのです。」こうおっしゃっているのですね。また、江崎さん、あなた自身も八二年七月十五日にフィリピンを訪問して、実情を把握しているはずでありますね。  私がお聞きしたいのは、国民のそういう預貯金である財投の資金などが、政府の貸付業務を通してマルコスの不正蓄財や日本企業の利潤追求の対象になることは、それ自体大変な問題があるわけであります。私、ここで総務庁の設置法というものを持っておるわけでありますが、この第三条の「任務」というところを拝見いたしますと、「総務庁は、行政の総合的かつ効率的な実施に寄与するため、」「行政機関の業務の監察、」ほかにもありますけれども、「主たる任務とする。」こうあるわけですね。ためにするほかの意図がないならば当然のことながら、これを聖域にとどめないで、総務庁はOECFを含めた海外経済協力に関する行政監察、まず第一義的にはこれこれの省庁があるということはわかっていますけれども、これはこの段階になったら当然やるべきだと私は思いますが、あなたの御意見はいかがでございますか。
  232. 江崎真澄

    江﨑国務大臣 私も鈴木内閣時代に特使で訪問したこともございますし、特にASEAN地域には深い関心を持っておるつもりでございます。その我々のよかれかしという経済援助が、もしも今言われておるような不正な扱いを受けておるというなら本当にけしからぬことでして、残念至極だと思います。  しかし、今申し上げましたように役所の組織というものがありますから、これは四省庁も関係しているのですから、まずこの四省庁が第一義的には責任を持ってしっかりとこれをチェックする。そして不正があれば、それはそれで対応する。その状況を我々総務庁としては見ていくわけで、検察だとか警察のような立場ではありません。むしろ我々総務庁としては、その行政が適切、円滑に行われておるかどうか、どう合理化したらいいのか、どうしたら能率的になるのか、そういった面をまず第一義的に見ておるわけでありまして、当面、私さっきお答えしたように、四省庁にわたるこの問題の対処の仕方を注意深く見守っていく、それから我々の出る番があればある、こういうことだと考えます。
  233. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 だから、四省庁が今やろうとしておることは、先ほど後藤田さんの御答弁でもお話が出たわけですね。しかし、その結果を待ってそれからやるということで、国民が納得するかどうかということですね。今国民は行政監察に大変期待をかけていることも事実だということを御認識いただきたいし、その方向で検討するというぐらいのことは、答弁として当然あってしかるべきだと私は思うのですね。でなければ、今援助の中身については国会でも事前に論議できないし、外交上の配慮云々ということで、なかなか政府は物をしゃべらないですね。国民は知る手がかりも何もないということですね。どうしたらいいのか。我々の税金が使われていながらそういう状況があるわけであります。  現に、フィリピンのサロンガ委員会、これは向こうの行政監察庁ですが、彼らはいろいろ事細かく、こういうふうに動き出すのだというプログラムを発表していらっしゃることはあなたも御存じだと思うのですね。そういう点からいいましても、少しおくれていやしませんか。確かにあなたのおっしゃることもわかりますけれども、今ここで総務庁がどう動くかということについて、少なくともその方向で検討するということは、私は最低の答弁として出てくるはずだと思いますが、重ねてお伺いいたします。
  234. 江崎真澄

    江﨑国務大臣 これはもう何遍も申し上げておるように、検察だとかそういう立場とは違いますから、我々は十分四省庁の対応ぶりを注目して今後の対策を考えます。また、必要があればいつでも出る、こういうことを申し上げておるわけでありまして、決して責任を回避したような答弁をしておるわけではございません。
  235. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 最後に、官房長官にお聞きするのでありますが、企業の商行為上のモラルの確立とあわせまして、援助に絡む癒着と腐敗を防止するための対策をとる必要がぜひあると思います。アメリカでは、御承知のように、カーター政権当時、外国政府高官に対する不正資金の支払いを禁止する海外腐敗活動防止法が制定されました。その後の改正で幾らか骨抜きされたようでありますが、依然としてこの種の規制では厳しいものになっていることは御案内のとおりであります。政府としてこの種の対策の検討を行う考えがあるのかどうかをお聞きして、私の質問を終わらせていただきます。
  236. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 今のはどういう御質問でございますか、ちょっと恐縮ですけれども……。
  237. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 アメリカでは、カーター政権当時、外国政府高官に対する不正資金の支払いを禁止する海外腐敗活動防止法が制定されているわけであります。その後幾らか改正されて少し緩くなっておっても、この種の法律としては非常に厳しいものになっておるわけでありますから、当然、今回のこうしたマルコス問題を契機に、政府としてはこの種の対策を立てる必要があるのではないが、検討する必要があるのではないかということを聞いているわけであります。
  238. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 わかりました。  日本には、選挙に関連した資金であれば公選法、それから政治資金規正法で外国の法人等から政治資金を受けてはならぬという規定がもう既に整備されておるわけであります。
  239. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 不満ですが、終わります。      ――――◇―――――
  240. 角屋堅次郎

    角屋委員長 この際、本委員会が、去る三月二十四日、防衛医科大学校、中国帰国孤児定着促進センター及びジョンソン飛行場住宅地区跡地の現地視察を行いましたので、その概要につきまして、便宜本店から御報告申し上げます。  私はか委員三名は、九時三十分、衆議院正玄関をバスにて出発、車内において、河路衛生課長及び水本援護局調査資料室長から概要説明を聴取し、十一時四十分、所沢市の防衛医科大学校に到着、委員二名が合流いたしました。  まず、井上総務部長から設立目的、教育方針、教育課程、学生の身分、卒業後の教育及び病院等について説明を聴取した後、高谷病院長の案内で放射線部及び検査部を視察いたしました。  卒業生は四百十七人が医師国家試験に合格し、自衛隊における医官の充足率も五二%に上昇しておりますが、離職問題につきましては、第一期生が昭和六十四年に義務年限が切れますので、それからと思われます。  次に、同市内の中国帰国孤児定着促進センターに赴き、御所長から組織、入所状況及び日本語指導目標等について説明を聴取した後、居室、自炊室及び授業状況を視察いたしました。  生活慣習や意識の相違から運営上種々苦労がありますが、出所者の定着率は一〇〇%ということであり、大量帰国に備えて、六十一年度において建設費三億三千九百三十六万円をもって受け入れ能力を倍増することとしております。  次いで、狭山、入間両市にまたがるジョンソン飛行場住宅地区跡地に赴き、柿沼理財局財産室長の説明を聴取しながら地区内を巡回いたしました。  返還財産百六十七ヘクタールにつきましては、航空自衛隊入間基地、学校、公団住宅、市道等に処理され、未処理分も用途は決定しており、留保地としている四十三ヘクタールは、大蔵省としては、首都圏最後の大規模国有地であるので、有効に利用するために関係者の意見を参考にしながら慎重に対処していく方針であります。  最後に、処分地に建設された入間産業文化センターを視察し、十五時五十分、帰路につきました。  以上、御報告申し上げます。  この際、お諮りいたします。  ただいま御報告いたしました内容の詳細につきましては、これを視察報告書として本日の委員会議録に参照掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  241. 角屋堅次郎

    角屋委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  242. 角屋堅次郎

    角屋委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時二十四分散会      ――――◇―――――