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1986-02-26 第104回国会 衆議院 外務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年二月二十六日(水曜日)     午後二時三十七分開議 出席委員   委員長 北川 石松君    理事 奥田 敬和君 理事 田中 秀征君    理事 西山敬次郎君 理事 村田敬次郎君    理事 河上 民雄君 理事 土井たか子君    理事 玉城 栄一君 理事 渡辺  朗君       愛野興一郎君    石川 要三君       鍵田忠三郎君    竹内 黎一君       中山 正暉君    仲村 正治君       山下 元利君    岡田 春夫君       小林  進君    藤田 高敏君       渡部 一郎君    永末 英一君       岡崎万寿秀出席国務大臣         外 務 大 臣 安倍晋太郎出席政府委員         外務政務次官  浦野 烋興君         外務大臣官房領         事移住部長   妹尾 正毅君         外務省アジア局         長       後藤 利雄君         外務省北米局長 藤井 宏昭君         外務省経済協力         局長      藤田 公郎君         外務省条約局長 小和田 恒君 委員外出席者         参  考  人         (国際協力事業         団総裁)    有田 圭輔君         外務委員会調査         室長      高橋 文雄君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 北川石松

    北川委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りをいたします。  国際情勢に関する件を調査のため、本日、参考人として国際協力事業団総裁有田圭輔君出席を求め、意見を聴取することといたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 北川石松

    北川委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  4. 北川石松

    北川委員長 まず、フィリピンに対する技術協力実情について参考人から意見を聴取いたします。有田参考人
  5. 有田圭輔

    有田参考人 御報告申し上げます。  国際協力事業団は、政府ベース技術協力実施いたしますとともに、無償資金協力の大宗を占める一般無償水産無償並びに食糧増産援助等実施を担当しております。これらはいずれも、開発途上国国づくりの基礎である人づくりに結びついております。近年、開発途上国においても、人づくり重要性に対する認識がますます高まっており、その意味事業団実施している各種協力事業開発途上国から評価されるとともに、今後の協力事業に対する期待が高まっております。したがいまして、私ども事業実施に際しましては、一層効果的、効率的なものとすべく、せっかく努力する所存でございます。  事業団実施しております各種事業実績金額ベースで見た場合、アジア地域は約五割、五〇%を占めております。これを国別に見ますと、事業団援助対象としております百二十六の開発途上国中、フィリピンは、インドネシア、タイに次ぎ第三位の地位を占めております。これを人数実績で見ますと、五十九年度の場合、研修員受け入れが、新しく受け入れた者が四百九名、この中には中曽根総理のいわゆるASEAN青年招聘の百五十名も含まれております。専門家派遣が百十二名、調査団として派遣した人数が四百十五名、また、青年海外協力隊員派遣数は五十五名となっております。  青年海外協力隊員につきましては、現在世界派遣中の隊員合計千四百三十二名の中で、フィリピンに対しては百三名派遣しております。特に、協力隊事業につきましては、昭和四十年に同事業が開始された際、最初に派遣された国の一つフィリピンであります。それ以来、本年二月一日まで累計六百七十二名の隊員派遣されており、派遣国三十一カ国中最大の人数であります。協力隊員は、自動車整備とか溶接とか野菜栽培とか家畜飼育、さらには難民センターにおける看護婦等各種草の根レベルにおける協力活動に従事しており、町や村の人々から評価されております。  研修員受け入れにつきましては、全体の累計五万七千四百五十三名の中で、フィリピンからは三千九百八十一名、約七%弱を我が国受け入れております。事業団受け入れた後、帰国した研修員は二十三カ国において同窓会を結成しておりますが、フィリピン同窓会が最も古く結成され、かつ活発に活動しております。  プロジェクト方式技術協力につきましては、六十年度に実施中のもの及び同年度終了したものは、フィリピンに関しては九件であります。例えば熱帯医学研究所フィリピン工科大学における総合技術訓練センター、あるいはパンダバンガン林業開発ボホール農業開発等々多岐にわたっております。中でも、例えばパンダバンガン林業開発プロジェクトは、昭和五十一年以来続いているもので、造林及び技術者養成に着実な成果をおさめております。また、五十九年度に協力を終了いたしましたフィリピン道路交通訓練センターは、単にフィリピン人技術者養成訓練にとどまらず、第三国研修、すなわち近隣のASEAN諸国から参加していただいて研修実施しておるわけでございます。  以上申し述べましたように、フィリピンは、事業団の行っております援助事業の最も重要な対象国一つであります。今後とも園国の中長期的な経済、社会の開発に寄与すべく、十分な努力を続けてまいりたいと考えております。  以上でございます。
  6. 北川石松

    北川委員長 ありがとうございました。  以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。  この際、外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。外務大臣安倍晋太郎君。
  7. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ごく最近のフィリピン情勢につきまして、御報告を申し上げたいと思います。  フィリピンにおきましては、二月七日の大統領選後、混迷が続いてまいりましたが、二月二十二日に至り、エンリレ国防大臣ラモス将軍がマニラの軍事基地に立てこもったことが契機となつて、マルコス大統領支持勢力エンリレラモス支持勢力が対峙するに至りました。  エンリレラモス側は、アキノ夫人を初めとする野党側と多数の民衆支持のもとに、フィリピン国軍内の支持を拡大いたしました。  アキノ夫人は、二十五日に大統領就任式を行い、またマルコス大統領も、同日大統領就任宣誓式を行うという事態となったわけですが、同日、フィリピン国軍の大部分エンリレラモス側支持に回るに至ったこともあり、マルコス氏は同日夜、マラカニアン宮殿を離れてクラーク米空軍基地に入ったのであります。  二十六日朝、マルコス大統領一家米軍機クラーク基地を出発し、グアムに到着をいたしました。マルコス氏は、グアム島でメディカルチェックを受ける見込みだというふうに聞いております。今の情報では、その後ハワイに向かうということでございます。  日本政府としましては、昨日の事態を踏まえまして、二十五日の夜に外務大臣談話を実は発表いたしたわけでございます。その談話を読ませていただきます。   二十五日夜に、マルコス氏がマラカニアン宮殿を離れたことに関し、日本政府としては、最近の同国の緊張した対立状態が、流血の惨事に至ることなく平和的に解決されたことをフィリピン隣人として喜びとするものであり、この間において示されたフィリピン国民の勇気と自制心、そして民主化への熱意に対し心からの敬意を表する。   日本政府としては、アキノ大統領が率いるフィリピンの新政府のもとで、フィリピン国民が結束し、国づくりを進めていくことを期待する。   我が国は、伝統的な日本フィリピン両国及び両国民間の友好協力関係を一層発展させることを強く希望しており、また、フィリピン発展のため、できる限りの協力をする所存である。 こういう談話でございます。  この談話は、きょうフィリピン在住角谷大使を通じましてアキノ大統領に、日本政府立場として手交をいたしたわけでございますが、御承知のように、これはいわばフィリピン政府を実際的に承認するということでございます。アメリカに引き続きまして、日本が実際上の承認を行ったということでございます。同時に、中曽根総理からアキノ大統領、さらにラウレル首相に対して祝電を発出いたしました。また、私からラウレル首相に対して祝電を発した次第であります。  なお、角谷大使は、本日の十一時四十五分からアキノ大統領と会談をいたしました。その際、アキノ大統領から、昨夜アキノ氏側に口頭で伝えておきました中曽根総理メッセージ安倍外務大臣談話を手交した、これに対しましていろいろと御発言があったわけでございますが、アキノ大統領は、自分としては最近日本政府が我々の側を支持してくれておるという感じがしていたが、今回のメッセージ談話をいただき、ありがたい旨述べられたということでございます。  いずれにいたしましても、我々が強く要請しておりましたフィリピンにおける武力衝突が回避をされました。そして、広範な国民支持のもとにアキノ政権が生まれたということは、まことに隣人である日本としても安心できることでございまして、心から祝意をあらわしたいと思いますし、今後とも新しい政権との間で密接な協力体制を進めまして、これからのフィリピン経済発展あるいはまた民生の安定のために、日本としてもできるだけの御協力を申し上げたい、こういうふうに考えておるわけでございます。  簡単でございますが、以上概略について御説明を申し上げた次第であります。     —————————————
  8. 北川石松

    北川委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。土井たか子君。
  9. 土井たか子

    土井委員 ただいまのお二方からの御報告を受けました上で、質問を二、三させていただきたいと思います。  外務大臣は既に正式の談話を、フィリピンにある日本大使館を通じてアキノ大統領の方に届けられたということであります。日本国民は、昨日の夕方から夜半そしてきょうの明け方にかけてテレビの前にくぎづけになりまして、ニュースの刻々移り変わるさまを歴史の流れ、新しい国際政治の一ページという意味で、感慨深く見守ってきたきょうであります。  私も、マルコス独裁政権がいよいよ崩壊をして、アキノ大統領誕生ということを、町じゅうコリーコリーと叫ぶ民衆の大変なあの熱狂、これをテレビニュースを目の当たりにしながら非常に感激したわけでありますが、外務大臣とされては従来から、平和裏政権が移譲される、合法的に政府が樹立される、そういうときにはわざわざ新たな認証の行為は不必要だというふうなこと至言われてきたわけでありますが、かの談話をもって正式にアキノ大統領並びにアキノ政権というものについて、日本政府としてはこれをフィリピン政権と認め、大統領と認め、以後フィリピンとの外交的なつき合いは、この政権を通じて日本外務省としては、また政府としては行うということを正式に意思表示された、国際的に意思表示された、このように受けとめていいのでありますか。
  10. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 アキノ政権フィリピン国民を代表する唯一の政権である、こういう考え方のもとに実際上の承認ということで、これから日本政府そしてアキノ政権との間で緊密な関係を樹立してまいりたい、こういうふうに思っております。
  11. 土井たか子

    土井委員 きょうの御報告を承りますと、その正式の意見伝達ということは、既にフィリピンにある日本大使館を通じて談話という形で大臣伝達をされているわけでありますが、新たに特使派遣するという手だてはお講じにならないのですか。かつて、今から四日くらい前には、梁井審議官特使として派遣をするという御趣旨も、報道を通じて私たちは知っていたわけでありますが、改めて特使アキノ政権に対して派遣するということはございますのですか、ございませんのですか。
  12. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今、梁井審議官を既にフィリピンに送っております。角谷大使と強力な連携を保ちながら新しい政権との接触をこれから進めてまいりたい、こういうふうに思っております。新政権が今後、どういうふうな形でこれからの新しい政権樹立を進めていかれるか、そういう状況を見守りながら、日本としてはそれに対して適切な対応をしていかなければならぬ、こういうふうに考えております。
  13. 土井たか子

    土井委員 先ほどの御報告では、マルコス氏はクラーク基地からグアムへ既に出国だということは、もう世上ニュースを通じても皆知っているわけでありますが、これは外務大臣、亡命というふうに考えていいのですね。
  14. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 厳密に私、国際法上の解釈はよく承知しておりませんが、とにかく国外へ脱出したということでありますし、我々はそういうふうに受けとめております。政権の座から離れた、こういうことであると思います。
  15. 土井たか子

    土井委員 今の状況の中でフィリピンに対して、フィリピンの政情安定というのを願うという立場からすると、全面的にアキノ大統領についてバックアップをし、できる限りの支援を日本政府としてはしていくということが、当面問われる大事な大事な問題だろうと思うのです。  さあそこで、きょう参考人として御出席国際協力事業団総裁にもあわせてお尋ねをするわけでありますが、当委員会におきましてフィリピン問題といえば、もう継続して私ども質問をいたしてまいりましたのは経済援助の問題であります。技術協力の問題でもあります。今までのマルコス政権下における援助あり方というのは、どうもこの二十年来、マルコス一族の企業が太ってきたというふうな問題であるとか、隠し財産があるという問題であるとか、まことに不透明きわまりない問題であるとかいうふうなことが言われ続けてまいりました。  今回のアキノ政権誕生に向けて、かの二月七日の選挙以前あるいは以後見ておりますと、アキノ氏暗殺後のフィリピン民衆気持ち、そして日本に対する気持ち、それはやはりこの経済援助あり方をめぐって、不透明な経済援助、特に向こう民生安定とか民衆生活をおもんぱかってというのは名目であって、事実はそうなってきてないといういろいろな民衆の直の声、そういうものを受けた形で、私たち経済援助に対して、フィリピンのただいまの状況を見れば経済援助というのは思いとどまるべきだ、二月七日の選挙までの間思いとどまるべきだということを言い続けてきたわけであります。今回のアキノ政権誕生に向けての民衆の力というのは、やはりこの問題に対して、正常な、民衆期待にかなう援助であってほしいということも、大きなエネルギーになっていると私は思うわけであります。  そこで、外務大臣総裁お尋ねをするわけでありますが、アキノ政権に対して全面的にバックアップするという前提でもって経済援助あり方というのを、本当に向こう民衆が願う、そしてアキノ政権がやはり相談の対象としてこれから経済援助中身について考えていかれるということについて、洗い直しをする必要があるのじゃないか。従来と同じようなやり方じゃない、従来決めた額はこうであるから、それからびた一円もオーバーすることはまかりならぬとか、そんな姿勢じゃ困るわけでありまして、やはり経済援助あり方については、全面的にアキノ政権をバックアップするという立場で洗い直しが必要じゃないかというふうに思われるのですが、外務大臣、いかがですか。
  16. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は今回、日本期待し続けてまいりましたように、武力衝突に訴えることなしに、大きな騒擾なくして政権平和裏に移行したということを高く評価をしたいと思うわけでございますし、しかし同時に、アキノ政権は非常に困難に直面をいたしておると思います。と申しますのは、フィリピン経済、最近非常に悪いわけでございます。特に政治不安という中で、ますます厳しい状況にあるというふうに認識をいたしております。それだけに我々は、友邦国としてのフィリピンがこれから経済的に立ち直っていくように、これから日本としての協力を進めていかなければならない。私自身は、フィリピンに対する援助はこれまでずっと続けてまいったわけでございますが、それはそれなりフィリピン経済の安定あるいは国民生活の向上のためには大きな役割を果たしてきた、こういうふうに思っております。そうした基本的な考え方でこれからも援助を続けていく。  そして今お話しのように、アキノ政権との間ではひとつ十分話し合いをいたしまして、アキノ政権経済援助についての御要請等も十分踏まえて、そして本当にフィリピン国民の役に立つ経済援助をしなければならない、こういうふうに考えております。そうした立場でこれから新政権との間の話し合いもしてまいりたい、こういうふうに思うわけであります。
  17. 土井たか子

    土井委員 既にマルコス政権当時に約束をしているプロジェクト並びに商品借款についての額がございますが、その額にこだわらずに、さらに増額も含めてアキノ政権の方の諸般の事情に対する要望にもおこたえになるという姿勢、そういうことに対する取り組み、心得というのがおありになるかどうか。いかがですか。
  18. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、これからアキノ政権日本で協議をしていかなければならない問題だと思っております。しかし現実には、フィリピン経済は相当悪くなっておるのじゃないか。この経済を安定させるためには、日本の積極的な経済協力が必要だと思っておりまして、場合によっては今以上の協力をするということも、我々は十分心に置いて対応してまいらなければならぬ、こういうふうに思うわけです。
  19. 土井たか子

    土井委員 事業団総裁、せっかくの御出席をいただいておるのですが、やはり今回の選挙を通じてマルコス政権に対する批判、ついにマルコス政権の失脚、この中には、日本からの経済援助というのは本当に民衆のためのものでなかった。マルコス政権に対する民衆批判というのも、実は経済援助中身について、あるいは技術協力中身についての批判がなしとしないのです。非常にこれはあったのですが、どういうふうにそういう問題を受けとめていらっしゃいますか。
  20. 有田圭輔

    有田参考人 ただいま大臣からもお話がありましたように、我が国が従来から経済援助を続けてきておる、それはそれなりフィリピン民生に非常に役立っていたと思います。  それから、私どもの担当しております技術協力の側面は、御承知のように研修員受け入れあるいは専門家派遣、あるいはまた青年海外協力隊派遣ということで、人づくり中心でございます。そういう面では草の根レベルと申しますか、そういうところに密着した援助でございまして、従来からフィリピン国民には相当に評価されていたんじゃないか。  ただ、今お話しのように、政権の交代があった、それに対してはフィリピン国民がいろいろ前政権については批判的であったというのは確かでございましょう。したがって、これから政府の方でいろいろとフィリピン政府話し合いをし、協力関係についてもいろいろお話し合いになると私は思います。そういう御方針を外しまして、事業団としても一層従来の一般的な活動というものを通じまして、より効率的な、より一層民生の安定に資するような協力を展開してまいる所存でございます。
  21. 土井たか子

    土井委員 さて、最後に一問外務大臣に申し上げたいと思います。  先ほど外務大臣おっしゃったとおりで、マルコス政権下でもう経済は行き詰まり、先の立て直しの見通しもつかないままにただいまマルコス政権は崩壊して、マルコス氏は国外に逃亡というふうな格好になってしまった。後アキノ大統領は、この財政の立て画しは大変なことだと思うのですよ。日本からの経済援助国対国、バイという立場では非常に大事であります。アキノ政権をどのように支援していくかというのは非常に大事です。国際的に広い視野で考えた場合に、例えばアメリカ日本から働きかけてIMF等々について、この累積赤字部分についてどのように対応していくかということも考えなければならぬと思うのですね。  選挙直前に輸銀の借金繰り延べをパリ・クラブで決めた条件があるというふうなことも私たちは聞き知っているわけでありますが、その繰り延べばかりじゃなくて、何とか配慮をいろいろな点でしていかなければならぬということもありますから、IMFについて日本として呼びかけて、ひとつあそこの経済立て直しについてできることを考えようじゃないかというふうなことの努力をなさ香お気持ちがおありになるか、御用意がおありになるか、この点はどうでございますか。
  22. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 IMFは、既に入ってフィリピン経済立て直しのために調査も進め、いろいろな面でIMFとしての要請等フィリピン政府にいたしております。こうした国際的な枠組みでのフィリピン経済立て直し、これはフィリピンの今の状況を見るとき、今後ともさらに進めていかなければならぬ。そういう中で、日本IMFの有力なメンバーでございますから、実態、実情に応じてフィリピン経済が立ち直るように、日本政府としてのできるだけの協力はしていかなければならぬ、こういうふうに考えております。新政権ができたばかりでございますし、これからの問題でございます。  いずれにいたしましても、日本政府としても、多くの国民の祝福の中で新しい政権が生まれたわけでございますし、何としても友好国でありますし隣人でございますから、このフィリピン経済が新政権のもとに立て直しを行って、そして安定していくようにいろいろな面で協力するのは、日本隣人としての、またアジアの一国としての国際的な責任である、こういうふうに考えております。
  23. 土井たか子

    土井委員 残余の問題は、小林進議員の方からいたしたいと思います。
  24. 北川石松

    北川委員長 次に、小林進君。
  25. 小林進

    小林(進)委員 外務大臣、きょうは二月の二十六日であります。二月二十六日といえば、言わずもかな思い出していただくことがあると思うのでございますが、今から五十年前の昭和十一年二月二十六日に二・二六事件というのが勃発をいたしまして、総理大臣官邸以下、日本の重臣その他銃殺に遭って、日米、この日を契機にいたしまして日本はまっしぐらに軍国主義、第二次世界大戦に突入して、暗い月日を費やしながらついに敗戦という未曾有の困難に遭遇した、暗い日本スタートの日でございました。しかし一方、その日と前後をいたしまして、フィリピンでは二十年にわたる独裁と汚職と腐敗のマルコス政権が倒れて、そこはかとなく明るい平和な展望が見出されたということは、彼我比較をいたしましてまことに喜びにたえない次第でございます。  私は、その日本の暗い日に突入いたしました五十年の過去を思い出しながら、実はここ一週間ばかり全くテレビとラジオにくぎづけになって、このフィリピン状況を眺めていたのであります。祈るような気持ちで、マルコス倒れろ倒れろと思っていたのでございますが、私の願いもかなって倒れたわけでございまして、ようやく新生フィリピンが生まれようといたしておるのでございますが、私はこの新しいフィリピンの国のスタートとともに、日本政府自体もこれを節目にしてひとつ大いに反省をしてもらわなければいけない。これは今土井委員お話しになりました。  今までの日本経済援助等その他を含めて、フィリピンアジア第一の友好を続けていらっしゃった。またその援助力などは、かつての植民地支配をしたアメリカよりも日本の方がむしろもっと援助力が強いという、なぜ一体フィリピンだけにこんな力を入れなければならぬのか、これは日本国民にはわからないのであります。私が祈っていたように、あのとき日本国民知る者と知らざる者とにかかわらず、マルコスに対する非常な反感と嫌らしさを感じて、アキノ夫人が勝ってくれればいい、そういう声が日本国内に充満したんですよ。それくらい、フィリピンに対する日本の特別のてこ入れがわからないのであります。  時間がありませんから私はこの際申し上げたいが、七二年からマルコスさんはフィリピンで戒厳令をしいた。一切の民主主義を否定して、戒厳令下、軍政下で十数年もフィリピン独裁政権を続けてきた、その国に対して、一体日本がなぜ特別の経済援助をしなければならなかったのか、これをまず一つお伺いいたしておきたい。  しかもまだ七三年には、かのアキノ氏、あのときはもう世界の世論、世界の声は、マルコスというあの独裁者はアキノ氏と大統領選挙を争えば、恐らくアキノがかわって大統領になるだろうというのが大方の見方であった。ところが、そのアキノ氏を捕らえて刑務所へぶち込んで、しかも死刑の判決を下して、以来ずっと刑務所に入れてしまった。そのうちに首を切るのかと思ったら、いろいろの世論も恐れたのでありましょうが、保釈ということで監獄から出してアメリカへ送り込んだ。以来アキノさんは、十年もアメリカ生活をしておったんだが、今度はそのアキノ氏が八三年に自分の祖国へ帰ってきたら、そうしたらもう飛行機をおりるかおりないかで銃殺されてついに生涯を終わったという、こんな異常な国が一体世界のどこにあるか。  私はこういう問題について、日本政府国民の税金を使っているのだ、どんどん、世界じゅうでどこの国よりもフィリピン国民の税金をぶち込んでいるのでありますから、こういう現実に対し、やはり正しい批評や判断や情報をおとりになっていなければならない、これは当然であります。なぜ一体、七二年に戒厳令をしいたのか、なぜ七三年にアキノ氏を刑務所にぶち込んで自分のライバルに死刑の宣告までしたのか、あるいは八三年にまだ飛行場へ着いたばかりのアキノ氏を殺した、一体その犯人はだれなのか。世界じゅうの人はみんな、今逃げたのがやらしたと思っているのでありますけれども、ベールですか、参謀総長がやらしたんだと思ってるのだけれども、この問題に対する日本政府の考えは、判断はまだ一つも出ていない。日本国民に対する政府の正確な判断も何も示していない。  そういうことで、アジアの一員だから、隣の国だから何としても特別に援助協力しなくちゃならないといって金ばかりぶち込んでいられるのは、国民の側から見れば泥田に小判を投げ捨てているようなものじゃないかという感じがあるから、非常に国民はこの点を理解しづらく思っているわけであります。今の政権がかわったときに、こういうことを節目にして政府からも反省してもらわなくちゃならぬから、以上、私の質問にまずひとつお答えを願いたいと思うのであります。
  26. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本援助は相互依存、人道主義に基づくものであります。これを基本的な原則にいたして、開発途上国を中心に援助をいたしております。その国の体制のいかんを問わず、日本としては、その国が非常に苦しい経済状況にあるときは積極的な援助をいたしております。特にアジアにつきましては、日本アジアの一国といたしまして援助の大半をこれに充てておりますし、またASEAN諸国にはかつての第二次世界大戦中の日本がいろんな多くの犠牲を与えた、そういう反省にも立って、フィリピンその他のASEAN諸国に対しては集中的に実は援助をいたしております。それは実は、その政権を維持するとかあるいは政権援助するということではなくて、アジアの、特に東南アジアの国々の国民生活の安定と福祉の向上、そういうものを目的にして援助を行ってきておるわけでございます。  したがって、フィリピンにつきましても、何も我々はマルコス政権を強力にするために援助しているわけではありませんで、フィリピン国民生活の安定、福祉の向上というものを中心にいたしまして援助を進めてきております。それは私は、それなりフィリピン経済には大きな貢献を与えてきた、こういうふうに確信をいたしておるわけでございます。マルコス政権も最終段階になって、ああした国民批判の前に崩壊をして、新しいアキノ政権が生まれたわけでありますから、我々としてもこのアキノ政権と十分話し合って、本当にフィリピン国民のこれからの経済の安定に役立つように援助は進めていかなければならぬ、場合によってはこれも増大もしていかなきゃならぬぐらいの決意を、考えを持って取り組んでまいりたい、こういうように私は思っております。
  27. 小林進

    小林(進)委員 外務大臣のお考え、私はそれを否定するわけではありませんけれども国民の側から見れば、かつては日本援助について、インドネシア援助がどうだとか、あるいはまた朴政権時代の韓国の援助がどうだとか、どうも日本援助金が途中で消えて、一つの特権階級や政治家の私腹を肥やすために全部消えているということで随分国内で批判はあったけれども、その声はアジアの地域でもだんだん消えていきました。これは、まあ国際協力事業団有田さんのお力もあるかもしれないが、だんだんそれは消えていって、日本援助も大体軌道に乗っていったというが、その中でただ一つ国民の納得しないのが、先ほども土井さんが言ったいわゆるフィリピン援助だ。これだけは、やはり何としても日本援助金が正しく深く静かにフィリピン人の間に浸透していかないで、どうもマルコス一派やその周辺の財閥の懐へみんな消えていってしまうという、これが国民の大方の声だから、だからフィリピン援助はやめてくれ、何であんなむだな金を使うのかということは、この国会、衆参両院を通じてあなたにも随分繰り返しやかましく国会議員が質問をしたのは、それが根底なんです。  今もしかし、マルコスさんは逃げたけれども、あれをどこへ持っていくか知らないけれども、まだアメリカあたりでもあれは無限に近い財産を持っているだろう。アメリカにも私財をあっちこっちみんな隠匿しているし、ニューヨークにも物すごい別宅を持ったりビルディングを買ったりしているなどということは、アメリカの方向からも、このマルコスの私財に対する非難の声が出ていることはあなたも御承知のとおりだ。やはりあなたは外交のキャップにいるならば、日本国民がそういうことを心から憂え、心配しているということをちゃんと吸い上げて、国民が納得するような形で援助なり協力をしてもらわなければならないと思うのです。  この問題に関連していまひとつ繰り返して申し上げまするけれどもアメリカは今までフィリピンのあのマルコス政権を支えてきた。今度は、アキノさんの選挙以後は少しアメリカの考えも変わって、むしろマルコスを引退せしめてどうもアキノにくらがえをしたのではないかというのでありまするが、アメリカフィリピン援助をしている根本は、これは私じゃありませんよ、一般の人だと言うんだが、フィリピン国民を愛するとかフィリピンの国土を愛するということは第二義であって、アメリカはあそこで二つの軍事基地を持っている。空軍基地、海軍基地。このフィリピンにおけるアメリカの基地は、これはアジア、西太平洋から中近東に至るアメリカ世界戦略の最も重要な軍事基地だ。これは日本の沖縄なんてものじゃありません。その軍事基地を確保していくために、フィリピンという国の国民の安定、経済の安定は、やはりアメリカはこの面において必要だ。  これはあなたも御承知のとおり、アメリカは一年間にあのフィリピン軍事基地の基地貸与料だけでも一億八千万ドルを払っている。それから、その基地のある原住民には三億五千万ドルの膨大な金をアメリカは払っているのです。それであの基地を維持しているのでありまするが、マルコスさんはそれでもまだ足りないというので、毎年毎年この基地賃貸料を値上げをしたということで、ここら辺もどうもアメリカさんのお気に召さないところがあった、そんなことがアキノ政権樹立の間接的な影響になっているんじゃないかという憲見もありますが、しそれは別として、日本政府が、このアジアの国々の中でもインドネシアだ、マレーシアだ、シンガポールだ、あるいは中国は別にいたしましても南北朝鮮等に比較して、このフィリピンに特別強大な、広大な経済援助をしているのは、これはアメリカのいわゆる示唆、アメリカ日本におやりなさい、アメリカ軍事基地を擁護するためにはフィリピン経済の安定が必要だからおやりなさいというアメリカの要請に基づいて、日本は特別フィリピン援助をしているのではないか、これが大方の見方です。  私は、この見方は間違いじゃない。だから人によっては、この日本フィリピン援助日米安保の裏板だと。本来、日米安保のためにアメリカの軍隊の日本の駐留費を日本は全部出しておりますよ。随分国民から税金を出しているが、やはりアメリカフィリピンにおける軍事基地を守るために、日本はこのフィリピンヘの経済援助のために莫大な、これほどの金を出しているのじゃないか、こういう見方が国民の中に随分ある。これはいかがでございますか。この見方は間違っておりますか。
  28. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 アメリカは、日本とは違ったフィリピンに対する立場だろうと思います。アメリカフィリピンを解放した国でもあるし、あるいはまた二つの基地を持っていることも事実だし、米比安保条約も結んでおりますし、非常に日本とは違った意味におきまする米比間の紐帯、実態というものは強いわけでございます。アメリカなりの考えで軍事援助もしているし、あるいはまた経済協力もしておるわけですが、日本日本として、先ほどから申し上げましたように日本アジアの一国である、かつてフィリピンに対しては損害を与えた、そういうことで、ASEANの重要な一国であることも考えて、日本は当然行わなければならない援助ということで援助を続けておるわけです。  日本はそういう中で、フィリピンだけに最重点を置いて援助をしているわけではありませんで、アジアの中の援助の中ではインドネシア、中国、タイ、バングラデシュに次いでフィリピン援助しているということで、最大の援助国ということではございません。もちろん、重点を置いておるわけでございますが、それは先ほど申し上げましたような観点から、フィリピン経済の安定、そして国民生活の福祉向上といった面で日本協力しなければならぬという、国際的な責任から行っておるということであります。
  29. 小林進

    小林(進)委員 大体、タイやマレーシアや南北朝鮮、中国と比較して、アジアの一員として日本がやはりフィリピン重要性、隣国の立場で独立にフィリピン協力援助をしているのだという、その外務大臣のおっしゃることはわかります。けれども国民の側はまだわからない。今後はひとつそういう点も明らかに、日本国民がやはりこのフィリピン援助も決してアメリカのひもつきじゃないのだ、日本の独自の立場でやっているのだということを、私どもでさえわからないのだから、日本国民がわかるわけがない。そういう点をひとつPRを兼ねて、徹底的に浸透するようにしてもらいたい。これだけ言っているわけにはいきませんから、これはお願いしておきましょう。  それから、これは思いつきのようなことになりますが、思いつきじゃない。マルコスさんは、何だかアメリカに逃げるのが嫌だというので、自分の生まれたふるさとへどうしても行きたい、そこで永住したいというような希望を出して、アキノさんにもアメリカを通じて大変頼んだらしいけれどもアキノ大統領は、フィリピンにおる限りはあなたの安全を守ることができないということだから、だからフィリピンにとどまることはやめてくれと言われて、やむを得ず家族三十名、ベール参謀総長も連れてグアムに行かれて、それから何かハワイに行くとかというのだけれども、しかし、アメリカも決してマルコスさんに住みよい世界じゃない。これは彼自身も頭がいいから、利口ですから。そこで、グアムでひとつ肝臓病か何かの治療を四、五日やりながら、落ちつく先はどこか、南か北が、迷っているのだが、その中で、どうもフィリピンには一番親切を尽くした日本を彼も一つ亡命地の候補地に挙げているのだという、こういう非公式の情報を我々得ているわけだ、これは外務大臣のところにいったかいかないか、わかりませんけれども。  そこで、マルコスさんが日本に住むことを求めてきた場合、これは仮説じゃありませんよ、あり得る場合ですから。そのときに日本政府外務大臣としては、これをどういうふうにお受けとめになりますか、ちょっと参考までに聞いておきたい。
  30. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 マルコス大統領国外に脱出する際にいわゆるアキノ側と、アキノさんともそうかもしれませんが、いろいろそういうふうな話し合いが行われたということは私も聞いておりますが、日本なんというようなことは全然考えておらなかったようでございますし、恐らく今後も考えられないのじゃないか、こういうふうに思っております。
  31. 小林進

    小林(進)委員 今後も考えられないとあなたは割り切っていらっしゃるが、私は彼が失脚するなと思ったときから、私の頭の中であるいは日本はということを確かに私は考えてみたが、これはひとつネックにしておきまして、なければいいが、あった場合にどうするか。まだ今日ここで答えられないというならば、これ以上攻めるのはやめますけれども、ひとつ問題だけは提起をしておきたいと思います。  それでいま一つ、今後のフィリピン政策を進めていく場合において、これは参考までに、今すぐあなたはおわかりにならぬだろうけれども、大体敗戦国日本に対して賠償金を余計受け取ったのもフィリピンだ、無償賠償、有償賠償。これを一体幾ら取られたか。それからその後今日まで、ちょっと長いけれども、毎年毎年重ねてフィリピンに有償、無償の援助をした金額を年次別に出して、資料にして提出していただきたいと思う。特にマルコス政権になってから。しかも軍事政権だ。民主政治を否定して戒厳令をしいても、我が日本援助は二倍にも三倍にも、ずっとマルコス政権の続く限り増加をしていった。こういうことも、我々国民の側から見るといかにも納得できないが、それをひとつ数字にしてここへ出してもらいたい。概算わかれば、ちょっと答弁をしてもらいたい。
  32. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 賠償は御承知のとおり五億五千万ドル、フィリピンに対しては供与されております。  それから、その後の経済協力でございますが、町借款、有償資金協力でございますが、これは約束額だけの数字でございますけれども、約束額ベースで申しますと、円借款が六十年度、本年度までで、合計で四千六百六十七億程度でございます。それから、無償資金協力が五百四十六億円でございます。それからそのほかに、先ほど国際協力事業団有田総裁から御説明のございました技術協力でございます。これを金額に換算いたしますと、これは六十年がまだ計数整理ができておりませんが、五十九年度までの累計で三百八十一億が支出されております。  年度別の数字は、追って資料にしてお届けいたします。
  33. 小林進

    小林(進)委員 ちょっと私は今聞き漏らしましたが、有償で六十年からですか、六十年までですか、有償の四千六百六十七億円というのは。
  34. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 六十年までの累計でございます。昭和六十年度でございます。
  35. 小林進

    小林(進)委員 その期限の来た有償の金は、期限と、おり返済されましたか。
  36. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 先ほどちょっと御質問がございまして、フィリピンの場合には債務の繰り延べ交渉というのが国際的な協調のもとに行われておりまして、繰り延べは本年の一月に繰り延べに関します二国間の合意ができましたけれども、そういう状況を含みましてきちんと返済をされております。
  37. 小林進

    小林(進)委員 繰り延べ協力ということは、やはり期日まで払えなかった。しかし、これは国際的な情勢ですから、フィリピンだけ期限どおり返せと言うことも無理かと思いまするから、この問題は別に深い追及はすることはやめにいたしますが、今後の問題といたしまして日本はよっぽど考えてもらわなければならない。  その一つとして、これは外務大臣にお伺いしたいのだが、このたびの選挙を通じてマルコス氏が終始一貫アキノ候補を、大統領ですか、追及した言葉に、アキノは共産主義者で、アキノがもし勝てはフィリピンはもう共産主義に全部やられてしまうんだという、終始一貫共産主義者呼ばわりをしておったのですが、これは単なる選挙だけのスローガンとか住民を籠絡するだけの戦術とも考えられない。もっとも日本においても、自民党という政党はよく社会党に対して、あれは共産党だ、共産党より悪いなんて言って、選挙のときに社会党に大変名誉ある反撃をお食らわしになるときもあります。それは部分的な戦術としてはあるだろうけれどもフィリピンのこの二十年も王座に着いた大統領の格式のある人が相手候補を、あれはもう赤だ、共産主義だと徹底的に攻撃をされるについては、やはり何か根拠があると私は見なくちゃならない。今後の日本との友好交流の関係からも、ここら辺はやはり権力を握っている外務省とされては、ちゃんと交通整理をしておかれる必要があるんじゃないかと思いますので、これもお伺いいたしておきます。いかがなものでございましょう。
  38. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 フィリピン選挙でどういうことが両陣営から言われたのか、私も多少は知っておりますが、これは選挙中になりますとお互い興奮するわけでございます。しかし、アキノ夫人は自由主義者であるし民主主義者であるし、そして非常に能力のある政治家である、こういうふうに私は考えております。
  39. 小林進

    小林(進)委員 私も彼女が共産主義者だとは思わないが、御承知のとおり、こういう点もやはり日本国民がちゃんと納得するように、外務省では交通整理をしながら今後のフィリピン政策を進めていただかなければならぬ、そういう意味で申し上げたわけでございまして、これは外務大臣のおっしゃるとおり、私もそう思います。  次は、フィリピンの新人民軍、NPA、これは大体共産主義を主体にしたゲリラ戦術の集団です。マルコスさんは、この新人民軍に対する対策で大変昔しんだり金を使われたりするんだが、新政府とともにこれがどういう動きを示すか、また、アキノ大統領との関係が一体どういうふうになるのか、この点ひとつ外務省にお伺いをいたしておきたいと思うのであります。
  40. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 ただいま御指摘の新人民軍、NPAでございますが、御案内のように、いわゆる共産主義化の軍隊だということを言われておりまして、この人数はなかなか把握できないのですが、フィリピン政府の去年の半ばころのあれでは、軍隊が一万人から一万二千くらいいるんじゃないだろうかという話がありました。他方、アメリカの方は、いやもっと多くて一万六千から、一番多い評価をしますと三万とかいうようなあれがございます。これは、今までのところはむしろ農村地帯に非常に多くありまして、このNPAの勢力がいわゆる貧困を利用してもっとふえてくるおそれがあるのではないだろうかというようなことを、米国その他では言われておりました。  今の御指摘の点でございますけれどもアキノ大統領はこの選挙中に、いろいろな対内政策、私が大統領になったらこういう政策をやりますということの中に、この新人民軍対策いわゆる共産勢力対策について次のように言っております。新人民軍に六カ月間休戦を求めて、その間に十分話をしておこうというようなことを言っておりました。ただ、実際に政権をとりました時点におきまして、今後NPAに対する対策というのは、アキノ政権における重要な国内政策の一つであろうと私ども考えております。
  41. 小林進

    小林(進)委員 そこまで情報をとっておいていただければそれで結構だと思いますが、やはりこういう点もちゃんと交通整理をしておいていただきませんと将来問題を残すことになりますから、あえて質問をいたしたわけでございます。  ここで、ちょっと余分なことかもしれませんけれども、大体、日本政府日本外務省も実に情報をとるのが遅いし、これは問題になりませんね。だから、これは外務省の機構の改革に関する問題でもありますから、きょうは時間がありませんから、私は今度は場所を改めてまたひとつ長々とやりますけれども日本外務省ほど情報をとるに音痴といいますか盲目といいますか、これは日本の伝統でしょう。  一つだは言えば、ヤルタ協定を結んだり、これは戦争中ですけれども、ソ連がルーズベルトや英国のチャーチルと一緒に、ヒトラーが参ったらその二、三カ月後にはちゃんと日本に参戦します、そのためには北方領土をちゃんとおまえにくれてやるなんて、そういうようなことは令部一年も前にでき上がっているものを何にも知らないで、八月十五日に手を上げる二、三カ月前に一生懸命に近衛文麿を仲介で大使にしてソ連へ送って、モスクワへ送って、ソ連から何か日本と連合軍との調停を頼んでもらおうなんて、これ一つだけだって全くナンセンスですよ。ばかもほどほどにしてくれと言いたいくらい情報音痴なんです。  しかし、その情報音痴は、私は試みに戦時中のことだけ言うのですけれども、戦後だってそれに近い外務省の情報不足、音痴が山ほどある。今のフィリピン問題だっておっしゃるとおりですよ。ようやく中曽根総理大臣、少し階の流れが変わったようだなんて言うくらいがやっとこさの情報なんだね。そのころにはもうアメリカがハビブを飛ばしたり、レーガンさんがちゃんと次のアキノ政府のための準備を進めたり、向こうはもう一週間も日本より先に進んでいる。そのハビブさんがマニラに飛んできて一体何の話をしているか、それは後からわかったでしょう。マルコスをもうやめさせてアキノ大統領にするためのハビブ工作が全部進められているんだ。それも何にも知らない。  こういうことは、もう速記録もつけて質問もできないくらい私は恥ずかしいんだが、これはまた改めてやりますから、こういうことも十分注意をしてやってもらわなければならぬということをひとつ警告をしておきまして、時間もありませんから次に行きます。  今後、フィリピンとの経済の交流については今までどおりおやりになりますか。まだ契約をマルコスさんと結んだ約束のものがあるわけですから、今若干停止しておられるけれども、それもそのままおやりになりますか。大臣、民間の方にも、これは丸紅等五つの民間会社がまだ一千七百億円くらいの債権も持っているが、こういうこともやはり政府は若干てこ入れをしてやらなくちゃいけないと思いますが、そういう問題についても一体どうお考えになっているのか、その政策をこの際ひとつ聞いておきたいと思います。
  42. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今、外務省が情報音痴だというお話ですけれども、最近の日本外務省の情報収集能力というのは非常に世界に高く評価をされております。我々も諸外国へ参りましても、日本の情報収集というのは非常にすばらしいということをよく聞くわけでありますし、今度のフィリピン情報につきましても、実は政府としてはほとんどキャッチしておったと言ってもいいわけでございます。しかし、外交になりますと、日本の国は日本の国の立場で物を言わなければなりませんし、そういう点は十分配慮して、情報は十分踏まえながら日本立場発言は続けてきた、日比関係というのを考え、慎重に発言してきたこともこれは事実でございます。  それから経済協力につきましては、我々としましては、今後とも今までの協力の基本線を踏まえながら、これから新政権のいろいろな御要望にこたえて着実に進めてまいりたい、こういう基本方針でこれから御相談も申し上げるわけでありますし、これまでの約束につきましてはアキノ政権も、選挙中でもそうでありますが、国際約束は今後とも継続していくという基本的な姿勢でございますから、新しく政権がかわったからといってこの継続性がなくなるということではない、国際的な面についてはその継続性を守ってやろうというお考えじゃないか、こういうふうに思っております。
  43. 小林進

    小林(進)委員 情報収集については外務大臣もいささかおかんむりのようでございますけれども、私は何も根拠のないことを言うわけではないのです。  若干古いかもしれませんけれども、一九七二年、昭和四十七年、ニクソンの時代に、アメリカのニクソンが二月にさっと上海に飛んでいって周恩来と手を結んで米中の国交回復をしたときに、音痴だったじゃないですか。日米は兄弟分だの親友だの友人だと言いながら一つも聞かされないで、ぱっとニクソンさんが上海まで飛んでいって米中で手を結んだ。あのときの日本の慌て方なんというものはうろたえてしまって、それでようやく半年過ぎでその年の九月に、田中さんが北京に飛んでいって初めて日中の国交回復をした。あの日中国交回復も、アメリカに先を越されて恥をかいた上塗りでようやく完成した、そういう歴史は戦後にも幾つもあるのですよ。  私は、時間がありませんから古い話を言うのはやめますけれども一つ聞きましょう。  これからだって、アメリカフィリピンにどう出るか。あるいはソ連だって、ああやってマルコスと特別の関係を結んだ。イメルダという御夫人までもモスクワまで飛んでいって友好の情を結んだ、そういう関係もある。中国も、公平とは言いながらいささかマルコス政権に好意を持っている。こういう国々が来るべきアキノ政権に対して一体どう出るか、これも日本にとっては重大問題です。対ソ連、対中国、対アメリカ外務省はこういう方の情報も、どこにも負けないようにさっととって適時適切な手を打っていただきたいから、私はあえて情報問題をお聞きしたわけでありますが、この点をひとつ十分に御注意いただいて、また頭越しにぽんぽんやられるような、そういう恥ずかしい思いをされないことをお願いしておきたいと思うのであります。  それで、時間も来ましたから終わりますけれども、今フィリピンで一番国民の怨嗟の的になっているものは、これはマルコスさんを取り巻く特別の財閥です。これは、十四あるとか十五あるとかという特別の財閥がマルコス政権二十年の間にすくすくと伸びてしまって、そしてフィリピン国民の財産の大方を独占している。この問題をアキノ政権が一体どう処置せられるかは、隣国日本としても十分注意していかなければならぬ。いわゆる富の公平な分配の問題であります。アキノさんも、なかなか財閥の御出身で偉い家系の生まれだそうでありますけれども、こういう点に対して日本外務省に所見があれば、この問題についても承っておきたい。
  44. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 ただいま御指摘の点でございますけれどもアキノ政権がこれから当面する対外、対内いろいろな政策があると思いますが、特に今先生の御指摘のように、これから国内の経済政策をどういうように遂行していくか、非常に大きなポイントだと思います。アキノ大統領選挙戦あるいはこの一、二年のいろいろな発言等を記録で調べて私ども整理してみますと、私が大統領になったらこういう経済政策をやっていきたいということが幾つかあります。その中に、今先生の御指摘のようにいわゆる独占の解体でございますが、御案内のように特にココナツ、砂糖産業は、いわゆるマルコス氏の取り巻きあるいは親戚の者がほとんど独占しておった。アキノ政権としては、この独占の解体というものをぜひ経済政策の主要なものにしたいということを言っておられます。  したがって、これは非常に難しい問題だと思いますけれども、今経済成長がマイナスであるようなフィリピン経済事情というものをこれからさらにプラスにしていくためには、こういう問題についてアキノ政権がいかに対応していくかということが重要なかぎになると思います。その点に関連して、日本政府は一体どういうことが可能かという点は、今後またさらに具体的なアキノ政権の政策を見ながら研究し、協力できるものは協力すべきであろう、かように考えております。
  45. 小林進

    小林(進)委員 もう時間も来ましたから残念ながらこれでやめますけれども、今のお話のとおりですよ。日本が従来どおりの経済援助をずっとおやりになるということであるならば、今お話しのとおりです。せっかく援助したものが、一部の財閥や政治権力者のそういう関係者のところへ流れていくなどということには神経質になるほど注意していただいて、その金が一般国民の、庶民の利益になる方向べずっと公平に流れていくように努力をしていただ。きたいと思う。  あわせて、せっかく国際協力事業団総裁をお呼びしましたから、総裁に最後の御答弁をいただいてこれはやめにいたしますけれども総裁の御答弁は、先ほども土井委員の御質問でお伺いして私も大体了解しておりますし、また事業団のおやりになっているお仕事は、そう時の権力者を太らせるようなばかな援助をおやりになっているとは私は考えておりません。大変努力をしてやっていただいているとは思いますが、特にフィリピンへ総合して三百五十名も派遣されているのでありまするから、政府の動向も見ながら、これはODAの開発研究何とかというのと、経済協力もやっているようだけれども、それらと呼吸を合わせて——あのメンバーを見ると、あなたは入っていられないのだな。農水省の次官なんかが親方になってODAの実施効率化研究会、メンバーを見ると小倉武一を会長にしていろいろな人が入っているが、これはやはり政府関係機関ということだろうけれども有田さんは入っていない。あるいは政府側で、参考人として意見等徴されているのかどうかわかりませんけれども、こういうものを活用していただいて、国民の税金ですからなるべくむだのないように、効率のあるように私はやっていただきたいと思う。  そのかわり我々も、これは外務大臣がおやりになっておりますけれども、こういうODAの援助資金、開発資金は日本政府の中でも最重点を置いて、軍事費ぐらい減らしてもこっちの方へうんと金額を増加して、平和な世界を建設するようにしむけなければならぬと思います。それだけこの事業は重要であります。ひとつ総裁の御所見を承っておきたいと思います。局長にも意見を承っておきたいと思います。
  46. 有田圭輔

    有田参考人 先生の御所見も十分体しまして、今後とも効率化と、いささかもむだがないように、また相手国の国民に喜ばれるような事業を展開するように努力いたしたいと思います。
  47. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 ただいま委員が御指摘のとおり、ODA効率化研究会では、各界の有識者十六名の方が小倉座長のもとで御研究いただきました。その第二回目の会合に有田国際協力事業団総裁も御参加をいただきまして、国際協力事業団としての問題点等の御見解の御披瀝をいただいております。
  48. 小林進

    小林(進)委員 これで私の質問を終わります。
  49. 北川石松

    北川委員長 次に、渡部一郎君。
  50. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 本日は予算委員会が交渉中、不正常な状況になったにもかかわらず、当委員会理事の皆様方のたび重なる御折衝によってこの重要問題が審議されることにつき、敬意を表します。  まず私は、今回のフィリピンの政変について、形やいろいろないきさつはまだ不明瞭な時点ではございますけれども、同国民が無傷の中で平和的な政権移譲が行われ、正義が貫徹されたという国民的な合意が生じつつあるように思われるのであり、その点、目下のところ控え目に歓迎の言葉を述べたいと思います。  現在の状況がその後どうなっているか、午前中から当委員会の周りで私ども足とめになっていたと同様なものでもございますし、まずニュースとしてどういう状況報告されているのか、ここのところの状況を承りたいと思います。
  51. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 お答えいたします。  現状でございますが、先ほどもちょっと大臣が触れられたと思いますが、マルコス氏一行はグアム島に着きまして今基地に休憩中であり、現地時間の夜、多分全員だと思いますが、あるいは数日メディカルチェックをするというあれはありますけれども、私どもの今入った報告では、全員が当地を立ってハワイに向かう予定であるというような報告が私どものアガナの総領事の方から来ております。  それから今度はマニラに戻りまして、マニラでは果たしてアキノ大統領が、宣誓式は済みましたので、改めて就任式をするかどうかの点につきましては目下検討中であるというふうに聞いております。ただ、やる場合でも、それほど派手なことはしないだろうという情報を私どもは聞いております。  それから御案内のように、首相それから参謀総長が任命されておりますが、その他の閣僚の任命がまだされておりません。それを現在検討中であるということでございますが、果たしていつごろ残りの閣僚が任命されるかという点については、まだ確たる情報は入っておりません。というところが現状でございます。
  52. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 現地の治安状況は、もう平静に回復し始めたのでしょうか。
  53. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 この二、三日、店が閉まったというような報道がありますけれども、すべての店が開きまして、銀行も多分きょう、あしたから正常な業務に戻るというように聞いております。したがって、今の御質問については治安は正常に戻った、あるいは戻りつつあるというように御理解いただいていいと思います。
  54. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 同種のような政変が今後国際的にしょっちゅう起こると思われますので、在留邦人に対して外務省は今回どのような指示をされたか、また、その指示について今後反省すべき点があるかないか、承りたいと思います。
  55. 妹尾正毅

    ○妹尾政府委員 お答えいたします。  今回の政変に際しましてはかなり早い段階から、そういうことが起こるということでも必ずしもございませんが、いろいろな事態を想定して対策の検討を現地で進め、それから私どもの方と連絡を取り合って、こちらから気がついたことをまた現地に知らせるということで事前の準備はやってまいりました。  そこで、一番大事なことはやはり連絡をよくするということでございますが、先般の南イエメンの場合と違ってフィリピンの場合は、直接連絡はずっと維持できる状態になっております。本省と大使館の間の連絡というものは問題ないわけですが、現地の在留邦人と大使館との連絡をよくするということが最初の課題でございまして、それを徹底した緊急連絡網をつくるということをやりました。これは電話連絡というものが中心になっておりますが、電話が切れた場合の対策も含めて連絡網をつくりました。  それから、短期滞在者が相当多数行っておりまして、短期滞在者を完全に把握することはできないわけでございますが、日本人が大体よく泊まるホテルを中心として、これは実は五十四のホテルのリストをつくってそのホテルと連絡をとって、緊急事態にどうしたらいいかという連絡体制をつくりました。  それから、地方との連絡体制もつくったわけでございます。  それと同時にNHKのラジオジャパン、国際放送を活用するということで、NHKとも連絡をとりまして体制づくりを進めました。  それから、当然のことながらほかの国の大使館などとも連絡を取り合いまして、いろいろな事態の対応策についての意思疎通もよくしておくということもいたしました。  それから、食糧等の備蓄も進めるということで、ある程度そういう手配もしたわけでございます。  それで実際にいたしましたことは、流血の惨事まで至りませんでしたので、最初の土曜日の時点から早速緊急連絡網を使って、在留邦人にその都度情報を流していくということを大使館経由でいたしましたし、それからラジオジャパンを通じて同じことを国際放送で流すということをやってまいりましたけれども、もっと緊急な事態になればもっと先の手当てもできるように、内々の準備は進めていたわけでございます。  反省としてあるといたしますれば、私どもは非常に準備をして、これまでのところはすべてうまくいったと思っておりますが、もし問題があるとすれば、これは全く私の個人的な私見にとどまりますが、例えばウォーキートーキーがフィリピンは使用を許可されておりますので、ある程度の数を持っておりまして、大使館にもあり、それから民間でもお持ちの方があるわけですけれども、こういうものがもっとたくさんあれば連絡がもっと容易だろうということもあります。  それから、食糧備蓄もある程度やりましたけれども、緊急事態が非常に長期化するとすれば、食糧も相当手当てしなければならなかったと思いますが、そこまでのことはやっておりませんで、結果においてはよかったと思いますが、そうなると非常にたくさんの予算がかかるというような問題があるいは出てくるのではないか。  それから、地方との連絡も一応体制ができておりましたけれども、これも本当に大変なことになりますと、徹底してできるかということはあると思います。特に、短期滞在者というのは一〇〇%把握できませんので、一人の人も全部連絡を取り合っていくということはなかなか難しいと思いますが、今回のケースも終わりましたところで、また大使館の意見も聞きまして改善すべき点があったら改善したい、かように考えております。
  56. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 今度の場合は、大変スムーズにいろいろおやりになったようで大変結構だと思います。  私は、追加して大臣にこの際申し上げておきたいのですが、日本のNHKの国際放送でありますが、発信ワット数が非常に低いわけであります。これは確かにフィリピンまではきれいに届きますけれども、地球の少し向こう側になりますと全く届かない。こういうような細かい芸当ができないわけであります。ところが、我が国においては極端に遠慮されてここのところをやっておる事情があるし、テレビのチャンネルも、わざわざ韓国あたりまで映らぬように斜めに曲げていることもありますからあれでありますが、この際ラジオについては日本人の存在も考えて、ワット数の変更あるいは別の中継的な国際的な放送の拠点も将来考えていくようなこともお考えになったらどうかと思いますが、いかがでしょうか。
  57. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 全く御指摘のような考え方を私も持っております。NHKのような国際放送は、変事、事件が起こったときの在留邦人の保護、救出には大きな役割を果たしてきております。これは、南イエメン等においても果たした役割は非常に大きかったように思いますし、今回もフィリピン、広大な領土でありますけれども、国際放送が正確に日本政府あるいは大使館の意向等も踏まえて日本考え方を放送されて、それが在留邦人の保護については非常に大きな役割を果たした。在留邦人もこれを聞くことによって、安心して行動がとれたのではないかと思っておりますが、残念ながら今お話しのように、例えば南米等についてはまだ十分音波が行かないという点もありまして、私はやはり外務省も、郵政省、NHK、いろいろと関係があるわけでございますが、相協力をいたしまして、世界全土に国際放送が行き渡るように何とかひとつこれからやっていかなければならぬと考えております。
  58. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 次は、先ほどから議論されている問題でもございますが、日本は膨大な経済協力あるいは技術協力あるいは賠償等、お金をたくさん出している。しかし相手の国が、今度の場合を見ているとマルコス独裁と批評されるように、非常に好ましからざる非民主的な行政を続けておったことは認めざるを得ないだろうと思います。そういう場合に日本政府は、非民主的でだめな変な国であったとしても——フィリピンを相手にするのではなくて、一般論としてこれから議論せざるを得ないので申し上げるわけですが、変な国でも援助するのかしないのか、そしてそういう国に対して助言するのか、忠告するのか、干渉するのか、その行政を妨害するのか、政権交代まで手を出すのか、今日本が悩みながら問われているのはそこだろうと思うのです。非情に面倒な問題になる。つまり、まだ私はアメリカの行動について議論はいたしておりませんが、日本としてどうしたらいいんだ。  今回の場合は明らかにアキノ上院議員が殺された、それについて外務大臣はどう思っておられるか、まだ私は承ったことはありません。また、国民議会において野党がすごくふえて、反体制派の意見が昨年から非常にふえたことも事実であります。また、一部の大地主に利権が集中していて、我々の経済協力のフルーツがそこに及んでいないことも事実であります。経済成長率が八四年、マイナス五・五%などというとんでもないことになったことも事実であります。物価が五〇・三%も上昇したことも事実であります。そして、貿易収支も経常収支も大幅な赤字を計上していることも事実であります。国民の中に怨嗟の声が起こっておるということも事実であります。今日現在、一般労働者としては、日本円に画して収入が一日千円程度であります。なおかつ失業者が、全体の四分の一を占めていると報道されております。これは私の感じでは、もう少し失業者の数が多いと思いますけれども、こういう弱ったフィリピンに対して、日本は遠くの方から目をつぶってお金だけを差し上げればいいのか、積極的にこれはこうやるべきでないかというふうに行政のあり方まで忠告し、助言するのがいいのか悪いのか、日本の外交は今問われていると思います。  私が拝見するところ、日本政府のおやりになったことは、たかだか経済協力を一時的に停止されて後ろへ延べられただけである。しかし、これは何にもしなかったのではなくて、何かをなさったわけであります。しかし、これは何かをするにしては小さ過ぎだし、そして内政干渉しないという原則は外れているし、私どもはその意味では今や非常に難問に直面している、こう思っておるわけであります。政府はこの問題についてどうお考えになっておられるか、明らかにこうした発展途上にある、ある意味で政治的後進国の援助に対して日本のとり得る立場は何か、まずお尋ねしたいと思います。
  59. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 なかなか難しい判断といいますか、問題であろうと思います。今お話しのように日本政府としては、相手の国に対して内政干渉はしてはならないという基本的な姿勢であります。同時にまた、紛争を助長するような援助をしてはならない、これは国会の決議等もありまして、日本援助一つの原則になっておるわけでございます。しかし、援助をする以上は、この援助が有効に、本当に国民のために使われなければならぬわけでございますし、またその国の経済あり方等についても日本なりの考え方を持っておるわけでございますから、この辺は、内政干渉にわならないという限度内において日本考え方というものは、あるいは日本の要望というものは相手方にもお伝えをすることが、これは日本としても援助をする以上あるいは相手の国と協力関係を進める以上は、私は日本それなりの責任があるのじゃないか。  私も実はそういう立場で、それぞれの国と会談する際において、日本考え方日本期待というものは率直に述べてきておるわけでございます。しかし、内政干渉にわたるということはこれは避けなければならない、こういうふうに思っております。
  60. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私も、内政干渉という用語について調べてみたんですけれども、外交論文の古いのはございますけれども、近代のようなふくそうした国際関係の中における内政干渉の用語は、用語としても適当でないし、その内容についても極めてバラエティーに富んでいるということを私は認めざるを得ません。したがって、私は、この問題について御討議をいただきたいと存じます。そして、一つ考え方政府としてまとめて提出していただくよう希望したいと思います。もちろん、その間私が遊んでいるという意味ではなくて、私なりの意見も申し上げたいと思います。そして、これは日本としていかなる態度をとるのが適正か、これはよほど考えておかないと、今後の日本の外交にとって大きなマイナスになる可能性があると私は思うのですけれども、今後の御研究をいただいてぜひともまとまったものを御提出いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  61. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは研究さしていただきたいと思います。確かに内政干渉と一口に言いましても、これはなかなか難しい問題だろうと思います。日本が内政干渉でない生言った場合でも、向こうが内政干渉ととることもあるだろうと思いますし、具体的な案件ごとにいろいろとその辺は難しい面も出てくると思います。しかし、これから国際社会で日本が貢献をしていく上においては、やはり日本なりのこと至言わなければならぬ立場もあるわけでございますから、そういう日本の役割、日本の責任と内政干渉、そういうものとの関係をどういうふうに規定をしていくか、どういうふうにとらえていくかということについては、これからいろいろとひとつ検討さしていただきまして、そういう面で検討の結果が出れば御報告をさしていただきたいと思います。
  62. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私は、フィリピンの行政のやり方で胸が痛むのは、国民大衆の生活水準がどんどんと切り下がっていき、貧富の格差が拡大する一方であり、不満が増大したことです。そしてそのあげくの果てには、重大器による双方の応酬というのが恒箱化していたという点にあると思います。その原因は何かについて私はいろいろな言い方ができると思いますが、こういう状況日本側が黙って見ていて、知恵もかさぬ、言葉も言わぬというのはまずいと思います。大臣が面接会見の際に一言おっしゃるだけではなく、日本のすぐれた行政官たち技術協力援助の一環の中で派遣するというのはいかがなものかと、私はしばしば思ったわけであります。  例えば、経済協力局長フィリピンに三カ用貸し出すとか、あるいは経済局長を某国に対して十カ月貸すとか、副総理格として某課長を、出すとか、かなり思い切ってやるべきなのではないか。日本は植民省を持っていなかった伝統もあるわけでありますから、今新たな意味で、当国の政治に悪い関与をすることなく、生活水準の向上、予算案の編成の仕方、政治的なルールの確立の仕方等について、フランクに助言できる立場にある。もちろん、受け入れ国においてそれを拒否するならともかくとして、私は、そういうことは積極的に考えるべきときが来たのではないか。  この前、大臣に国際災害救助隊のお話をしました際、災害救助というと看護婦さんが行く、お医者さんが行くだけではなくて、その相手国政府が求めている行政ノーハウもまた提供でき得るようにお願いしたわけでございますが、その後の経過を拝見しますとそういう方向になっているようでございまして、コロンビア等においては大変に喜ばれたという御報告もこの間聞かしていただきました。私は、あの先に続くものが日本外交の一つの非常にすばらしい展望ではないかとも思うわけでございまして、この点もぜひお含みいただきたいと思うのでございますが、いかがでございましょうか。
  63. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 まず、さきの委員会で、渡部委員の国際救助隊の構想についての御質問がありました。これが契機となって政府としても検討を進めまして、その体制をつくることになり、予算の計上もできたことを、この際、御支援に対して感謝を申し上げます。  それから今の、いろいろと日本の持っている技術あるいはノーハウ等を積極的に相手国に対して供給をしていくということでありますが、これはもっともなことでありますし、日本も既にやっていると思います。エキスパートは日本には、本省だけでなくてJICAにも随分おるわけでございますから、時に応じて要望等があれば、我々としてはこうしたエキスパートを積極的に派遣をいたしまして、相手の国の国づくりには協力をしてまいりたい、こういうふうに思っています。
  64. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私は、ここでちょっと最後に嫌なことを、いよいよ難問を聞かなければなりません。それは、今回のフィリピン情勢に対するアメリカ政府の態度をどうごらんになっているかということであります。一確かに、アメリカ政府の今回のリーダーシップというものは強烈なものであります。乏しい情報を通しても、当国政府に対して助言を超えでいろいろなアクションをとられた様子であります。これはいいのか悪いのか、そして内政干渉と思っているのか思っていないのか、また、こうしたやり方が継続するならば、アメリカはある意味でベトナムと同じようなやり方をしたではないかという非難をかぶるおそれが十分にあろうと思います。最大の友人の立場にあるところの日本政府として、それをどう考えるのか。  また、もっと面倒なことになるわけでございますが、東南アジアの国々で、フィリピンと同じように政体が不安定な国は、現にそこらじゅうにあると私は見ているわけであります。十分でない民主主義、未熟な民主体制の発達、経済的に不如意な経済体制、国内におけるさまざまな紛争要因、こうしたものを抱えている国にとっては、今回のフィリピンの事件はただごとでなかろうと私は思っておるわけであります。  そうすると、日本は、東南アジアの国々を代表して何らかの意見を確立しておく必要があるわけであります。何かが起こった、そして終わった、日本は言わなかったで済むだろうか、私はそう思います。何かを言わなければならないし、少なくとも声の出せない小さな国々にかわって、日本はある種の安定感のある存在になりませんとならないのではないか。日本経済大国になり、今は経済協力大国になった。フィリピンに対しては明らかに世界一の経済協力大国である。そして、経済協力大国になったということは、そのまま今や政治的なリーダーシップ大国になろうとしつつある。そして、その直前、日本国は今戸惑っておられるのではないかと私は思っておるわけであります。この問題についてどう御答弁なさるかわかりませんけれども一つの問題提起としてお受け取りいただければよろしいのではないか、そしてその問題をどうなさるか、今のところでき得る限りの御返事をいただければ幸いであります。
  65. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今回のアメリカ政府がとったいろいろなアクションについて、日本政府としましてとやかく言う立場にはないわけですが、しかし私自身考えまするに、これはやはりアメリカフィリピンの歴史的な特別な関係に由来するものであろう、こういうふうに思っております。そして同時に、今日の米比間の関係、二つの軍事基地を持っておる、そして歴史的な特別看関係、そういうものが背景にあって、アメリカとしてもフィリピンに対して最も重大な関心を持ち、アメリカなりにフィリピンの政治の安定を願っていろいろの発言やアクションがとられた似じゃないか。最終的にはアメリカ努力というものも実を結んで、そして平和的な政権の移譲が行われてアキノ政権が誕生したということは、私はそれなりに評価できるのじゃないかと思うわけでございます。  日本はそういう中で、これまたアメリカフィリピンとは違った日本フィリピンとの歴史的な関係等も踏まえまして、どちらかといえば控え目な姿勢で情報は収集しながら発言し、行動してきたわけでございますが、これはまた日本立場に立ったあり方としては、振り返ってみて間違った道を歩いてはいなかったのではないか。幸いにいたしまして、アキノ政権日本との関係を高く、そして重く考えておるということであるし、同時にまた、きょうの角谷大使アキノ大統領との会談等も見ますと、日本政府に対する信頼感も持っておられるということでありますし、こうした点を踏まえて、これからもしっかりした協力関係を進めることができる、こういうふうに考えております。
  66. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 愛国主義という、各国に存在するよい意味のナショナリズム、それをここで愛国主義と名づけておきましょうか。そのよい意味のナショナリズムというものが存在するときに、これを育成し助長し手を組むとき、安定した国家関係は発達するだろうと私は思います。ところが、こちら側の愛国主義ないしはナショナリズムを中心として強圧するときには、国家関係は非常に危険な存在に変わるだろうと私は思いますし、まさにこれから、今回のは一つの試行錯誤でございましたが、私は、残念ながら満点とは言いがたい、これは今後においてまだ十分検討すべき種になり得るものだと思っております。それは、いろいろ討論してみたり研究してみたりする必要があるのではないかというのが私の考えでございまして、本日はそこら辺までにしておきたいと思います。そして、ぜひともこの問題についての整足した御答弁、統一見解と申すものやら外務省見解というものやら大臣のペーパーというものやら、それは存じませんけれども、何らかの形でまとめて提出されるように希望します。  最後に、法律的なことを一つ伺います。  今回は、事実上の承認であるという用語を使って、アキノ政権に対する支持を表明されたと承っております。ところが、あの兵士たちの首領たちは、革命は成功したと途中で叫んでおりましたし、意見としては、革命だったという意識もあったんだろうと思います。それから、国民議会における当選のための当選判定議会は明らかに、事の良否は別にしてマルコス氏を当選者と認めたわけでございますから、国民議会がその決定を覆すまでの間は、政権の移譲の仕方は明らかに正常な政権の移譲の仕方ではないわけであります。大統領と認定するにはふさわしぐないわけであります。  そうすると、日本立場は何となく奇妙であります。あるところは革命を容認し、あるところは革命を容認してない。この部分に私が時間をがっちり使って縛り上げれば、政府は大変図られたと思いますが、私は本日、友情の発露から余り詳しく申しませんが、まことに奇妙な判断をなさった、意見が二つに分化しておられる、これは余り適当でないなという感じがするわけであります。  これはアキノ政権が、今後議会を開会し直して大統領当選をもう一回やり直して、そしてそれに基づいて出てくるというふうな完全な承継型のやり方をとられていくならば、前政権と引き続き日本関係は何も問題ないというふうに言えるものでございましょう。しかし、今のように銃火が多少ではあれ飛び交って、一方がアメリカ軍の飛行機で飛んでいってしまった後、いきなり温かい言葉を述べられるというのは何か妙な、これは承認でも何でもないわけであります。  恐らく外務省の優秀な官僚の諸君は、その辺を深く思いをされてあの複雑怪奇な、ナマズののたくったような文章をお書きになったのであろう、こう思うわけでございまして、その苦心のところをひとつお述べをいただきたい。ただ、余り変なことを言うと、これは後で条約論争としてぴしっとやらざるを得ない。ですから、後ほどのためにもいいようにひとつ御説明をいただきたい。各新聞社には大変不評判であって、事実上の承認なのか何なのかわからないとニュース解説でがんがん言っていたのは御承知のとおりでありますから、きちんとうまく述べていただきたい。お願いします。
  67. 小和田恒

    ○小和田政府委員 渡部委員御指摘になりましたように、今回の事態は法律的に申しますと非常に複雑な事態であるということが言えるかと思います。外務大臣の御説明は、実際上承認をしたものと考えていただいて差し支えないということを申し上げたわけでございます。昨日発表いたしました外務大臣談話におきましては、御指摘のように承認という言葉は全然使っておりません。ただ、その中で「日本政府としては、アキノ大統領が率いるフィリピンの新政府のもとで、フィリピン国民が結束し、国づくりを進めていくことを期待する。」それから「我が国は、伝統的な日本フィリピン両国及び両国民間の友好協力関係を一層発展させることを強く希望しておりこういうことを表明しているわけでございます。  御承知のように、国際法上、法的な意味での政府承認という行為が行われますのは、通常、革命でありますとかクーデターでありますとか、そういう国の基本的な政体を憲法の枠外において変更するという形で政府の交代が行われる場合に問題になるわけでございますが、今回の政権交代は、フィリピンの憲法の体制上どういう手続を経て行われたのかということについては、現段階におきましてはまだ不明な点があるということは事実でございます。  ただ、実態的に見ました場合に、アキノ大統領に対するフィリピン国民の広範な支持を背景として、マルコス大統領から平和的な形で権限の移譲が行われたという基本的認識政府としては持っているわけでございまして、そういう認識を背景にいたしまして我が国としては、今度のアキノ政権フィリピンを代表する新政府であるというふうに認識をして、これと正常な外交関係を維持していくという意思表示をした、これが外務大臣談話の趣旨でございます。そういう意味におきましては、その実態は政府承認ということを行った場合と同じことになる、こういうことでございます。  それでは、政府承認という法的な行為をやるのとやらないのとどういう違いがあるのかということになりますと、先ほども申し上げましたように、憲法上の枠組みの中で基本的な政体の変更なしに政権の授受が行われるということでありますれば、これはそもそも政府承認ということは必要がない事態でございますし、他方、憲法上の基本的な枠組みを超えた形で政権の移譲が行われたということになりますと、法的な行為としての政府承認ということが必要になるわけですが、今回の場合におきましては先ほど申し上げましたように、まだ憲法上の手続がどういう形で行われたのかということを私どもとして説明も受けておりませんし、現段階では不明であるけれども、その結果として出てきております事態に着目いたしますならば、フィリピン国民を代表する正統な新政府が成立した、こういうふうに認めることができる。そこで、今申し上げたような外務大臣談話になり、その実質をとらえれば、これは承認に相当するものと理解していただいて差し支えない、こういうふうに御説明しておるわけでございます。
  68. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それ、非常に見事に例によって御説明になりましたが、アメリカ政府の言い方はそれと全然逆でございましたね。アメリカ政府アメリカ政府考え方で、例によって荒っぽくて間違っておるのだと言われるなら、私は、それはそれでいいんだろうと思いますし、また今お話の中で、平和的に権限の移譲が行われたと言われましたけれどもマルコスさんは事実上追ん出され、平和的にというのは、戦争がない形で権限を捨てていった人があり、おっこっていた権限を拾った人がいるという意味で、移譲が行われたとは認めがたい。権限は拾得したものであって、おっこった遺失物を拾ったのとお渡ししたのとは大分違うなという、素人っぽい感想があるのであります。  この辺は余りにも専門的になりますので、この次十分時間をとってまたお尋ねしたいと思いますが、本日のところでは今の御説明でよろしいかと思います。これで終わらせていただきたいと思います。
  69. 北川石松

    北川委員長 次に、渡辺朗君。
  70. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 きょうは、JICAの総裁有田さんに来ていただきましてお話を賜りました。また、外務大臣からも所見をいただきました。政争は水際までという言葉もございますけれども我が国にとって重要な国際的な事態、これが今国の前にあるわけであります。きょうの時点で外務委員会が超党派の形で開かれていることは、大変私は結構なことだと思います。と同時に、これは日本国民を代表する国会が、我が国の対フィリピン政権に対してどのような姿勢をとっていくかということが論じられていることでありまして、大変意義のあることでもあろうと私は思います。時間も限られておりますので、外務大臣に先にお伺いをし、また有田総裁に一、二だけ御質問をさせていただきたいと思います。  一つは、フィリピンにおいて、どうでしょうか、全土的な情勢というものは外務省において把握されているのでありましょうか。私どもが今まで聞いていることだとかあるいは新聞、テレビで見たというのは、マニラを中心とした首都圏の動きである。しかし、実際に心配なのは、あの多島国であってあちこちに、例えばミンダナオではモロ族を中心とした反政府運動もありましょう、NFAの動きもありましょう、そういうようなものが掌握された上で、今回の外務大直談話が出されているのかどうなのかという点が一つ知りたいわけであります。  と同時に、もう一つ私はお伺いしておきたいのでありますけれども、それは、この新政権というものの性格についてであります。これは、どんな政権というふうに大臣は今見ておられるのでしょうか。ラバン、ユニド、あるいは中間の勢力もありましょう、カトリックの勢力もありましょう、軍部も決定的な役割を果たしております。一体、これは文民政権なのか軍事政権なのか、それが全部ミックスされたものなのか、どういう認識の上に我が国の態度が表明されているのか、この二つの点を一遍にお聞かせいただきたいと思います。
  71. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私どもフィリピン情勢をすべて知悉しているわけではございませんが、今回の動きというのはマニラを中心としたものであったと思います。そういう中で、マルコス氏がついに脱出するということになって、アキノ女史の率いるグループがフィリピン国民を代表する唯一の政権である、こういう判断のもとに、実際上承認という形で談話を発出したわけでございます。アキノ大統領の背後には、広範な国民支持があるというふうに私は考えておりますし、また選挙の過程を見ますと、この支持選挙によって間違いなしに表明されたと考えております。  もちろん、反マルコスのいろいろな勢力が合流してアキノ大統領を決めたわけでございますから、中身はいろいろと複雑な面もあると思います。しかし私は、今度生まれた政権は、アキノ大統領のもとに新生フィリピンを目指した自由な、そして民主的な政権をこれからつくっていこうという意欲に満ちた政権であると考えております。もちろん、経済状況もなかなか厳しいわけでありますし、また、共産主義の動きもなかなか問題が出ておるわけでございますが、そういう困難なフィリピンの政局をあるいは経済を乗り切って、このアキノ政権国づくりを進めていかれることを日本としては期待をして、そして連携を深めてまいりたいと考えております。
  72. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 今大臣も指摘されましたけれども、大変経済情勢が厳しいわけであります。四人に一人あるいは三人に一人というような失業者がいるという国柄でありますので、新政権の前途は大変なことであろうということはわかります。そうであるならば、今日までアメリカよりも大きな援助額を出していた影響力のある我が国であります。これからどのような態度でもって臨んでいくのか、前途を考えたときに、日本の役割というのは大変重要だと思いますけれども、その点はいかがでございますか、具体的にどう進められますか。
  73. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 アキノ政権は、日本のこれまでとった姿勢を好感を持って評価をしておられるようでありますし、我々日本としても、アキノ政権とともに相協力し連携を深めて、フィリピンの困難の克服のためにできる限りの御協力は申し上げたい、こういう姿勢であります。  お話のように、フィリピンに対する経済援助につきましては、アメリカとともに最大の援助国でありまして、これまでフィリピン経済の安定のためには大きな貢献をしてきたと思いますし、今後もまたフィリピン経済の困難を克服するには、日本援助というものは欠くことのできないものであろうと考えております。そういう中で、これからいよいよアキノ政権の具体的な人事も発足するわけでございますから、そうした体制が整った段階でさらに接触も進むと思いますし、話し合いも進むと思います。そうした話し合いを踏まえて、何を協力できるか、どういう形で協力できるかということをこれから具体的に煮詰めてまいる、こういうふうに思います。
  74. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 実は、日本の役割は非常に重要だと思いますが、その際にいつでも私たち矛盾を感じていることは、一つは、途上国の多くが、民衆が非常な貧困にある、あるいはまた少数の富裕階級があるという社会的な共通の特徴を持っていることと、もう一つは、ほとんどの国が独裁政権であるとか強権政治が行われている国柄だということであります。また実際に援助の問題は、そういう政権話し合いをし協定をしていかなければ進まない。ところが、大臣はおっしゃいましたけれども、人道的な立場からの援助というようなことを言われた場合に、私ども国民期待しているものは、これが民生の向上に寄与するような援助であってほしい。ところが、その政権の状態と実際に援助が行われている姿は、残念ながら期待に相反するようなものがございます。  この矛盾したものを一体どう解決していったらいいのであろうか。この点は、私は後ほど有田さんにも御意見を聞かせていただきたいと思います。特に、援助の評価委員会などの意見をどう生かしていったらいいのか、果たして民生に寄与するようなことができるであろうかということがございますので、まず大臣からそこら辺御意見を聞かせていただきたいと思います。
  75. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これまでもそうでございましたが、これからも日本政府として援助をする場合は、相手の国の時の政権と話し合うことは事実であります。話し合って援助を決めていくわけですが、その際に日本としては、積み上げ方式という日本独特の援助方式をとっております。本当にその援助国民生活の向上あるいは民生の安定のためにどれだけ役立つかということは、日本政府なりに十分精査もし判断もして、その結果として協定を結び、援助実施するという形になっておるわけでございます。したがって、政権との間の話し合いではございますが、政権援助するということではなくて、その国の国民経済あるいは生活援助するという基本的な思想は具体的に援助の中で貫いておる、私はこういうふうに考えております。
  76. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 確かに私たちは、ベーシック・ヒューマン・ニーズみたいなものにこたえるような援助を持っていきたい。しかし実際には、マルコス政権の際でもそうでありましたけれども、どれだけの部分がそのベーシック・ヒューマン・ニーズを満たしているのだろうかということになりますと、大変大きな疑問を持ちます。有田総裁、こういう点についてはどういうふうに対処していったらよろしいものでしょう、解決策はどういうふうにしたらいいでしょうか。
  77. 有田圭輔

    有田参考人 国際協力事業団の仕事は技術協力が中心でございますが、最近開発途上国の中で定着化している考え方に、国づくりの原点は人づくりである、幾ら工業化を進めようといっても、中堅の技術者その他技術者が育たなければ本当の国づくりができない、そういう点にかなり重点が置かれております。これはまさしく国民レベルと申しますか、そういうレベルの協力であることが多いわけです。  それからもう一つは、これは政府の方でおやりになっていることですが、主な被援助国との間には毎年定期にいろいろ協議をしております。ですから、よく要請ベースということが言われますが、それぞれの国からの要請をそのまま受け取っているのではなくて、その中に何十回という対話があって十分話し合いをしていく、その中で、人道主義とかあるいは本当に援助の効果が草の根レベルに浸透するようなものを拾っていくというような努力は、従来もしてきましたし、今後も進められるべきだと思います。私どもの方はそういう点を受けまして、調査団を出していろいろと協議をしております。  それで、いろいろのプロジェクトの効果を後で評価したり、いろいろしていますときに感じますことは、最初の段階ですね、その事業を取り上げるときに十分に協議をし、十分に調査をしておくことが大切であるという反省もございます。  また、国民レベルの協力ということにつきましては、御承知青年海外協力隊でございます。おかげさまでことしの送り出し規模は八行名、二年に一期でございますから、千六竹から二千名に近い青年男女を三十一カ国に派遣しておりますが、これは全くの村レベルあるいは町レベル、そこの国民と同じ物を食べ、同じ悩みを共通にして、そういうレベルからひとつ国づくりをやっていこうという努力協力して大変評判がよろしいという、そういった努力を通じまして、今後とも本当にその国の国民に喜ばれる、歓迎される協力というものを、事業団といたしましては政府の御指示によって努力してまいりたい、このように考えております。
  78. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 有田総裁、どうもありがとうございました。  外務大臣、私はフィリピンの田舎の方へ行きまして、今のお話の青年海外協力隊活動をずっと見て回ったことがございます。こういう悩みを私はぶつけられました。これは、私たち日本が対外援助している場合の矛盾点だと思うのです。それはすべての国ではありません。多くの国々において、日本援助が感謝をされている場合もあります。特に、青年海外協力隊の場合はそうであります。しかし、フィリピンのその青年はこういうことを言っていました。日本の青年ですよ。ここで一生懸命新しい米づくりを教えました、品種も改良をしていい物を持っていきました、農耕の方法も近代化させました、生産量は上がりました、しかし、農民はちっとも豊かになっていないのです、これは大地主制が存在する以上、我々は何ともいたし方ありません。つまり、その制度そのものを、大地主制度そのものを我々は今壊すわけにはならぬ、批判をするわけにはならない、そういう制約の中において援助に行っているわけですから、その農民は依然として小作なんですね。したがって富は、生産力の高くなった農作は、そのいいところは全部大地主の方に行ってしまう、こういう矛盾にぶつかっている。   もう一つの矛盾、これは途上国に対して援助した場合に、素朴に日本国内においてある疑問でもあります。ブーメラン効果みたいなものが起こって、結果的には途上国がNICSになってどんどん進んでいくかもわからぬ、しかしそれは我々日本の首を締めるかもわからぬ、こういう矛盾といいますか、悩みもある。これをどう一体乗り切ります。こういう問題が、これからの新しいフィリピンに対する援助をお考えになるならば対応していかなければならない点であろうと私は思います。御意見がありましたら聞かせていただきたい。
  79. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今お話し青年海外協力隊、一生懸命その国の国民に奉仕するという形で努力をしておられる思います。まさに涙ぐましい努力でございますが、確かにおっしゃるように、時にはその国の政治のあり方とも比較をして、自分たち努力というものについて非常に矛盾を感じられることもあろうと思いますし、あるいはまた悩みを持たれることもあろうと思います。私も、そうした悩みも聞いておるわけでございますが、しかし日本の場合、先ほどから申し上げましたように、内政干渉に当たることは避けなければならぬわけでございます。同時にまた日本としては、それなりにやはり国際的な役割、責任というものは果たしていかなければならぬ、私はそうした矛盾、悩み等はあると思いますが、そうした青年協力隊の努力というものは、やはりその国において草の根レベルにおいてそれなりに私は評価をいただいておるんではないだろうか、いつかのときにそれは芽を吹き、そして実を実らせていくということになるだろう、こういうふうに思っております。  そういう中で、いろんな問題は抱えておりますけれども我が国としては、とにかく開発途上国国民の技術の水準を高め、あるいは国民生活に貢献するために、今後ともそうした悩みは持ちながらも、これからもやはり拡大をしていかなければならぬ、こういうふうに考えておるわけでございます。いろいろと御注意の点は、我々としても行政として十分把握をしなければなりません。その点についても、十分これからも気をつけてまいりたいと考えております。
  80. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 最後に、大臣一つお伺いします。  それは大臣談話の中でも、これからの両国民友好親善ということを言っておられます。であるならば、これからまた、そのようにアメリカよりも大きな援助国であった日本アキノ政権との関係をどう調整していくのか。単に経済関係だけではございません、政治関係もあるでありましょう。その点で大臣フィリピンに近々に御訪問されて、直接にお話し合いをされる用意はお持ちでございましょうか、御意向を聞かせていただきたいと思います。
  81. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 目下、梁井外務審議富を派遣をいたしまして、新政権との間の接触を進めておるわけでございます。まだ、大統領、副大統領、総理大臣、国防大臣等が決まったばかりでありまして、まだ外務大臣も決まってない、その他閣僚もまだ決まってないという状況でございます。いずれそうした形が整備されれば、日本としてもこれからも新政権との間で、各部門ごとにいろいろな面で話し合いをしていかなければならぬ課題が随分あるわけでございます。フィリピンの今度できたアキノ政権がこれから成功してフィリピン経済立て直しが行われるように、またフィリピンのこれからの外交がさらに日本との関係を強化していく、ASEANの中においてフィリピンが大きな役割を今後果たしていく、そういうためにも我々としても密接な関係を持ちたい、新しい外務大臣が誕生すればできるだけ早くお目にかかりたい、こういうふうに思っておりますし、また首脳の皆様方にもお目にかかる機会を早く得たい、こういうふうに思います。
  82. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 最後につけ加えて、アメリカとも話し合う用意はお持ちでございますか、対フィリピン政策について。
  83. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはもちろん日米関係は、今までもアジアの問題についてもいろいろと話し合ってまいりました。経済協力等についても話し合ってまいりましたし、特にこうした新しい政権ができたわけでございますから、近々アメリカとの間で話し合いもしなければならぬと考えております。
  84. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 ありがとうございました。
  85. 北川石松

    北川委員長 次に、岡崎万寿秀君。
  86. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 決起したフィリピン民衆の反独占、民主化の闘いを、私も感動をもって注目した一人でございます。  けさの報道によりますと、マルコス王朝の崩壊とか独裁者去るとか、大見出しで書いてありました。ところで政府は、これまでのマルコス政権についてどう評価されたのか、腐敗した独裁政権であったというふうに正しく認識されているのかどうか、ちょっとお聞きしたいと思います。
  87. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 二十年間続きましたマルコス政権につきましては、やはり歴史がこれを判断するであろうと思います。二十年の間にマルコス政権のもとに、それはやはりフィリピンの安全と平和、そして繁栄のためにそれなり努力も行われたと私は思っております。しかし、最終段階になりましてあれほどの多くの国民批判を得たということは、それはマルコス政権が崩壊をしてそういう事態になったことは、我々としても厳粛に見ていかなければならぬ、こういうふうに思います。
  88. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 昭和五十三年の十二月に出されました在フィリピン日本大使館の「フィリピン事情」にも、マルコス政権というのは基本的には独裁政権であるというふうに書いてあるのですね。二十年間はともかくとしまして、安倍さんが外相になられてからの後でも結構でございますけれども、やはり腐敗した独裁政権であったという認識、今はもうお持ちなんでしょう。
  89. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはやはりフィリピン国民が判断をして、そして今日の新しいアキノ政権が生まれた、こういうふうに考えております。
  90. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 フィリピン国民は判断したからやったのですよ。日本政府は判断なさらないのですか。どうでしょう。
  91. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本政府としましては、これはやはりフィリピンの内政の問題でございますから、とやかく批判すべき立場にないと思います。しかし、フィリピン国民の意思というものは日本政府としても十分踏まえて、そして今後ともフィリピン上の間に友好関係を進めていかなければいかぬ、この基本路線は変わってないわけです。
  92. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 どうもおかしいですね。内政干渉はうまくないですよ。しかし、とにかくもう亡命したわけなんです。亡命したマルコス政権が腐敗した独裁政権であったということが言えないのは残念だと思うのですが、これはやはりはっきりさしてもらいたいと思うのです。どうでしょうか。
  93. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 問題があったから、フィリピン国民がこれを倒壊をせしめて新しい政権ができたのだと思います。
  94. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 繰り返して失礼ですけれども、問題があったというのは独裁だったということでしょう。それをお認めにならないのでしょうか。
  95. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはとにかくフィリピンの内部の問題ですし、それはフィリピン国民からすれば独裁だとか腐敗だとかいろいろと問題があったからこそ、そこにやはりマルコス政権が倒れて新しい政権ができたのだろうと思います。
  96. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 何回聞いても、日本政府として認めるという発言がないようですが、そういう姿勢がというふうに思います。  ところで、問題があったことをお認めになったし、フィリピン国民からするならば独裁政権であったということはお認めになったわけですけれども、そうだとするならばそれなりの対応があったというふうに思うのです。先ほどもODAの援助が五千五百九十五億に上っているという話でしたけれども、これがマルコス独裁体制の基盤を支える経済援助にならぬようにどういう特別の措置をおとりになったのか、その点をお聞きしたいのです。
  97. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 私も、マルコス大統領が初めて大統領として当選されまして、アジアのケネディとして世界の喝采を浴びたころにフィリピンの担当をしておりました。非常にその後の経済開発発展面での努力というものは、フィリピンの識字率が一番同地域では高いというところに示されますように、大変なものだったと思います。  ただいまの御質問援助資金がどのように適正に使用されることを確保する措置をとっているかという御質問かと存じますけれども、これはフィリピンに限りませんけれども我が国の場合には、援助資金の供与が開発目的に専ら使用されるようにということを無償資金協力におきましても、それから有償円借款の供与の交換公文におきましてもそのような規定を挿入いたしまして、かつ、その他取り決めの中におきましてその適正使用の確保を担保するような規定を置いて、これによって適正な使用を確保している次第でございます。
  98. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 適正な使用とおっしゃいますが、具体的にどういう措置をおとりになったかということを聞いているわけなんです。
  99. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 これはプロジェクト借款、それから商品借款無償資金協力、それぞれにつきまして使用の態様が異なるものでございますから、もし御質問を特定していただければ、その援助協定においてどういう規定ぶり、どういう措置をとっているかということが申せるかと思いますけれども……。
  100. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 先ほどからも御質問があったように、この援助が適正にフィリピン国民生活や福祉の向上に役立ったとは言えない点があるわけなんです。これは非常に腐敗している政権だからなんです。独裁政権だからなんです。それにふさわしい措置が必要であったと思うのです。そういう例はいっぱいありまして、私はことしの「世界」三月号に載っている「フィリピン’85近代化と開発の現実」というもののコピーを持ってまいりましたが、早稲田大学の教授の方の現地での視察のルポなんですけれども、「結局肥ったのはお偉方や多国籍企業ではなかったか、と思います。」こういう結論、どこでもあるわけです。だからこそ政府経済援助につきましては、より他国と違った具体的な措置が必要であったというふうに思うのです。  そういう具体的な措置についてはどうもはっきりお述べにならないようで、時間が非常に迫っていますから私は先に進んで、またその先でお聞きしたいのですけれども、先ほど安倍外相は、政権援助するためにやったのではなくて、国民のためにやったのだというふうにおっしゃいました。しかし、政府の方針を見ますと、これは外務省が出している「わが外交の近況」というものですが、こういうのを毎年見ても、フィリピンを含むASEAN地域への経済援助というのは、この地域の平和と安定のため——言葉はいいですよ。しかし、政治的安定実現のためという形で、これは実際はフィリピンに具体的に見ますと、マルコス政権の政治的安定のために、そういう目的のために財政援助が行われているということになると思うのですね。  アキノ氏が暗殺されてフィリピンの政情が非常に混沌として、一刻も早く変革が求められているその時期に、これは中曽根内閣のもとですが、一九八二年のときは三百九十七億であったのが、一九八三年には四百十二億になり、一九八四年には四百五十億に、毎年毎年ODAが膨れ上がっているし、これが結局マルコス政権の政治的安定のために役立つように結果としてはなっているというふうに思うのです、全体としまして。ここがやはり問題だと思うのですが、これでは結局のところ、財政援助というのが独裁政権を支えたと言われてもいたし方がないのじゃないかと思うのですが、この点についていかがでしょうか。
  101. 藤田公郎

    藤田(公)政府委員 第一点の、毎年援助額が増加しているという御指摘でございますが、これは我が国の、毎年援助を供与しておりますASEAN諸国でございますとか中国、韓国等、主要相手国との間の援助額は、大体五、六%から一〇%くらい毎年増加を示しております。  それから第二の、フィリピンの本当に民生に役立っている援助をやっているかという御質問に対しましては、先ほど来大臣からも御答弁申し上げておりますように、我が国の有償援助、無償援助技術協力、すべて相手国政府の最も優先度を付してきますプロジェクトを主体にいたしまして、その経済開発ないし社会開発に占める地位というものを十分我が国としても評価をいたしまして、それによって対処を決定して供与しているという状況でございます。  ちなみに、一言つけ加えますと、フィリピンとの二国間で協議をし、話し合いをする以外に、世界銀行が主宰します援助会議というのが大きな被援助国との間に大体毎年開かれておりまして、その際に、世界銀行という国際機関の主宰のもとに相手国の経済財政政策に対する注文、希望する是正措置の要望等を提示することにいたしております。
  102. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 今の御説明を聞いても、こういう腐敗した政権独裁政権の政治的基盤を支えるような役割を果たしたということについて、否定なさるようなお話になっていないわけですね。私は、こういう戦略援助にこそ問題があろうというふうに思うのです。  ここは、御承知のようにクラーク空軍基地やスビック海軍基地があって、アメリカも戦略的な要衝として莫大な財政援助マルコス政権自体にやってきたわけなんですね。日本もそれに補完する形じゃなかったですか。とうとうマルコス民衆から見放されると、今度はアキノにくらがえしたというのが実態じゃないかというふうに思うのです。  私は、発展途上国に対する経済援助、これは私たちは大いに努力しなければいけないと思いますけれども、その国の政権、特に腐敗した独裁政権援助するような戦略援助はやるべきじゃないというふうに思うのです。この経験からいっても、フィリピンだけじゃなくて、タイその他いろいろありますね、そういうところに対する戦略援助経済援助あり方を根本的に見直してみる必要があるのじゃないかというふうに思うのです。安倍外相も、内容については検討する必要があるというふうにおっしゃっていましたけれども、どういう点を検討なさるのか、お聞きしたいと思います。
  103. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本援助世界じゅうの開発途上国に対して行っておるわけです。その政体はいろいろとさまざまでございますが、その政体、政権に対して援助しているわけじゃなくて、非常に苦しんでおられる国民民生の安定、そういうものを中心にして、人道主義、相互依存という立場から援助いたしておるわけでございます。これはフィリピンあるいはインドシナ、インドネシア、タイ等でも同様でございます。フィリピンを特別に扱っておるというわけでもありませんし、また、マルコス政権を強化するために援助しているわけでは全くないわけであります。あくまでもフィリピン経済の安定、国民生活の向上のためにやっておる。それは私は、それなりに成果を上げてきている、こういうふうに思っております。  しかし、同時にまた、我々は常に、開発途上国の要望、ニーズというのもいろいろと変わってきております、時代も変わってきております、そういう要望というものをやはり弾力的に踏まえて、それに応じた援助姿勢等も打ち出していかなければならぬ。硬直的に今までのやり方だけで進むというわけにはいかないわけですから、そういう点は我々として、今までの援助あり方等も踏まえて検討するところは検討して、本当に国民のためになるような援助をこれからも進めていくということであります。
  104. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 独裁政権に対する経済援助というのは、やはり本当に見直してみる必要があるように思うのです。独裁政権そのものを援助する結果になるからなんです。  そこで、最後にお尋ねしますけれどもフィリピンにおける変化によって、周辺の東南アジア地域、特にアジア、インドネシア等については、決して民主的でない政権がありますけれども、そういう政権を含めてどういう影響をもたらしたものか、外相の御判断をお聞きしたいと思います。
  105. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、ASEANの国々は非常に重大な関心を持ってこのフィリピン情勢というものを見詰めておられたと思います。しかし、同時にまた、平和的に政権が移行したということについてはほっとした気持ちであろう、こういうふうに思いますし、アキノ政権が生まれまして、このアキノ政権と今後とも相協力しながらアジアの平和と安定のために進んでいきたい、こういうことでいろいろとこれからも協力関係が話し合われ、進んでいくものである、こういうふうに思っております。
  106. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 最後に一言、先ほどの質問のときに、今のアキノ氏に平和的に政権が移譲したというふうに御答弁があったのですけれども、これは中身によってはいろいろと問題があると思うのです。これは不正選挙の結果成立したマルコス政権から平和的に政権が移譲したというふうに認識されるのか、それとも、それ以前の、つまり選挙以前のマルコス政権から平和的に移譲したというふうに御判断なすっての答弁なのか、その辺ははっきりお答え願いたいと思うのです。
  107. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 言葉じりをとらえて言われると、(岡崎委員「言葉じりじゃないです」と呼ぶ)いろいろと法律的に問題があるかもしれませんが、とにかく私の言わんとするところは、武力衝突が行われないでアキノ政権が誕生したということであります。
  108. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 それでは、マルコス政権選挙後成立したというふうにはごらんにならないわけですね。選挙の結果マルコス政権が一たんできたという認識ではないというふうに見て、よろしゅうございますね。
  109. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いずれにしても、アキノ政権ができた、日本はこれを実際上承認した、こういうことです。
  110. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 よくわからぬけど、いいです。
  111. 北川石松

    北川委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時六分散会