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1986-04-15 第104回国会 衆議院 科学技術委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年四月十五日(火曜日)     午前十時二十四分開議 出席委員   委員長 大久保直彦君    理事小宮山重四郎君 理事 塚原 俊平君    理事 平沼 赳夫君 理事 与謝野 馨君    理事 小澤 克介君 理事 関  晴正君    理事 矢追 秀彦君 理事 小渕 正義君       有馬 元治君    櫻内 義雄君       若林 正俊君    大原  亨君       八木  昇君    安井 吉典君       遠藤 和良君    山原健二郎君   出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      河野 洋平君   出席政府委員         防衛庁参事官  筒井 良三君         防衛庁装備局長 山田 勝久君         科学技術庁長官         官房長     矢橋 有彦君         科学技術庁計画         局長      長柄喜一郎君         科学技術庁研究         調整局長    内田 勇夫君         科学技術庁振興         局長      藤咲 浩二君         科学技術庁原子         力局長     中村 守孝君         外務大臣官房審         議官      渡辺  允君         外務大臣官房審         議官      松田 慶文君  委員外出席者         防衛庁長官官房         防衛審議官   小池 清彦君         防衛庁防衛局防         衛課長     宝珠山 昇君         科学技術庁長官         官房審議官   吉村 晴光君         科学技術庁長官         官房審議官   須田 忠義君         外務省北米局安         全保障課長   岡本 行夫君         文部省学術国際         局学術課長   佐藤 次郎君         文部省学術国際         局研究協力室長 西澤 良之君         農林水産技術会         議事務局振興課         長       兵藤 宗郎君         通商産業省貿易         局輸出課長   白川  進君         工業技術院総務         部総務課基盤技         術研究開発推進         室長      高津 義典君         工業技術院総務         部技術調査課長 荻布真十郎君         工業技術院総務         部総括研究開発         官       山家 陽一君         資源エネルギー         庁長官官房企画         調査課長    林  康夫君         資源エネルギー         広公益事業部開         発課長     関野 弘幹君         科学技術委員会         調査室長    工藤 成一君     ————————————— 委員の異動 四月十一日  辞任         補欠選任   遠藤 和良君     有島 重武君 同日  辞任         補欠選任   有島 重武君     遠藤 和良君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  研究交流促進法案内閣提出第七四号)      ————◇—————
  2. 大久保直彦

    ○大久保委員長 これより会議を開きます。  内閣提出研究交流促進法案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。八木昇君。
  3. 八木昇

    八木委員 私は、科学技術庁長官に基本的な点二、三点をまず最初にただしたいと思うのでございます。  もともと科学研究の問題あるいは研究公務員問題等が問題となってきた契機は、十年ほど前でございますか、ユネスコの科学研究者社会的地位に関する勧告というものがあり、日本政府も批准したと思うのでございますが、その後日本学術会議が、科学研究基本法制定について、あるいは国公立試験研究機関の運営の改善について、あるいは研究公務員特例法制定について等、逐次勧告をしてきた。ところが今度の交流促進法は、これらの方向に合致していないと私は思うのでございます。またその後、臨時行政調査会とかあるいは臨時行政改革推進審議会等答申もなされたわけでございますが、その答申とも今度の法案は内容が随分すりかわっておるというふうに思います。なぜそうなったのか。  臨時行政調査会の第三次答申は、冒頭に「基本的な考え方」として次のように述べておるわけです。我が国科学技術研究は、自主的、創造的研究が十分でない。また、研究開発推進している各省庁、各機関のセクショナリズムがある。総合的、効率的に研究開発推進するという点で必ずしも十分でない。この点、一層効率的、重点的な研究開発推進すべきだ、こうなっておるわけですね。また、臨時行政改革推進審議会答申の中で研究交流促進法制定をすべきだというところの項には、研究交流の位置づけ、研究交流促進方策及び国の役割等を規定せよ、こういうふうに書いてございます。そうなっていない。今度提出をされました法案は、国と国以外の者との間の交流促進ということに限定されておるし、あるいは民間や外国に対する特許権問題等がこれに若干加わっておるものとなっておるのですが、なぜそういうふうになったのか、なぜこういう法案にならざるを得なかったのか、ほかにもたくさん聞きたいと思いますから、できるだけ簡潔にまずお答えいただきたい。
  4. 河野洋平

    河野国務大臣 研究交流促進法案を御審議をいただきますにつきまして基本的なことをお尋ねいただきましたので、若干基本的な問題についてお答えを申し上げたいと思います。  まずその目的は、先生承知のとおり、我が国の状況は自然的な資源に決して恵まれているとは言えません。そういう我が国の置かれている条件の中で知的な資源というものを育てていかなければいけない、そして創造性豊かな研究開発推進していくことが重要だ、こういうことはどなたも御異論のないところだろうと思うわけでございます。しかし一方で、その創造性豊かな、あるいはレベルの高い研究ということを目指しますと、非常に複雑な、あるいはレベルの高い多分野にまたがる研究をしなければならないということになるわけでございまして、その結果、研究組織の枠を超えた交流が必要になってくる。その交流を積極的に推進するために、資金でございますとか人材でございますとか、そういったいわゆる研究資源の効率的、効果的な活用が求められるというふうに思うわけでございます。  こうした要請にこたえるためにこの法律案を御審議をいただいているわけでございまして、この法律には、国の行う研究交流に関し、かねてより指摘されていた公務員制度でございますとか、あるいは財産管理上の隘路といったようなものを是正するための特例措置を定めることを目的としているわけでございまして、先生が今御指摘になりましたいろいろな問題については、さらに私どもとしては閣議におきまして運用等については定めていかなければならない問題もある。ただ、この法律は、それぞれの場面におきます隘路を取り除くということをまずこの法律でやらせていただきたい、こういうことでございます。
  5. 八木昇

    八木委員 ただいまの答弁では私としては納得いきかねるのでありますけれども、国の研究機関同士の活発な交流とか、あるいは共同研究とかという点が非常に重要だと思います。その点、ただそういうふうに今後は努めます、あるいは政令とかその他で規定しますとかと言いましても、なかなかそうはいかないのでありまして、やはり法においてそれらが明記されなければならぬというふうに考えるわけであります。  それはともかくといたしまして、今度の法案には大学関係は外されておるわけであります。各種答申を見ますと、産学官共同産学官、こうなっておるのですが、その学というのは外されておるわけなんです。その点については一応おくといたしましても、これにかわってといいますか、かわってというわけでもないでしょうが、防衛庁関係が挿入をされておる。これは一体どういうわけかという点を若干ただしたいと思うのであります。  まず経過についてお伺いいたしますが、私が把握をしておるところでは、今度の法案を策定するに当たって、九月の末ごろに第一次の一つの案といいますか、そういうものが、各省庁協議をされたと思うのですが、一応まとめられた。それが今度は、十月の末に第二次の案というものがまとめられた。十二月の中旬ごろに第三次の案がまとめられ、ことしに入って二月の六日ごろに第四次の案がまとめられた。一連のそういう各省庁との協議の中でまとめられてずっと逐次米たわけですけれども防衛庁関係というのはすべて入っていないのですよね。  それが二月の二十五日ですか、条文化されたものの案というようなのが初めて出たようでありますけれども、その際に突如として防衛庁職員防衛庁のいわゆる研究機関というものをこの法に言う研究機関にする、防衛庁職員あるいは自衛官等研究公務員ということにする、この法の中で入ってきた、こういうふうに私どもは事実経過を一応把握しておるわけですが、なぜ突如としてこういうことになったのか。その際、どういう協議がどういうメンバーによってなされ、そしてまた防衛庁がこの法の中に入ってくるについて、どこからそういう動きというか要請というか、そういうものがなされたか。これは私は高いレベルのところからだ、こういうふうに思いますがね。  しかも、二十五日の案の場合から三月十日の案になると、防衛庁扱い部分が少し違ってきておる。最初はずっと一連のものであったのが、いわゆる研究公務員というところの項、それを二つに分けて防衛庁関係のは第二号というふうにした、こういうふうになってきておるわけでありますが、一番最後のところで、十条というのがまた一番土壇場の最後閣議決定の際に加わっておる。この十条の件は、私の質問の一番最後のところで時間があればただしたいと思っておりますが、事実経過は以上のとおりでしょうか。どうしてこういうことになったのか。そうして、こういうことになったについてはどういうところから働きかけあるいは要請、あるいは私ども圧力と思いますが、圧力がかかったのか、その点大臣、さらに具体的な点についてはあるいは局長でも結構です。
  6. 河野洋平

    河野国務大臣 先生指摘でございますが、この法律は、御案内のとおり各省がそれぞれ研究に従事する部門を持ち、人間を持っているわけでございまして、それぞれの役所がそれぞれ研究に従事している人たち研究交流を促進するための隘路というものがどんなところにあるか、通産省には通産省の、あるいは文部省には文部省の、あるいは防衛庁には防衛庁のそれぞれ研究に従事している人たちが、交流を促進するためにこういうところを直せばもっと交流が進む、あるいはこれが隘路になってうまく進まないというようなことを、それぞれの役所がそれぞれの立場で考えておられたわけでございまして、その中から一番問題になっている人間交流あるいは財産管理という部分を取り出して一つ法律にまとめたということでございます。防衛庁を取り出して、防衛庁だけ特別にこれが入っているのがいいかどうかという御議論は、私はどうもいかがかと思っておるわけでございまして、他の役所もそれぞれいろいろ議論があったわけでございます。前回の委員会でも申し上げましたけれども文部省については、この部分はもう既に文部省として教育公務員特例法でございますか、特別の法律でカバーしておるというふうにおっしゃる役所もございましたし、我が方はこれをもう少しやらなければいかぬとおっしゃる役所もあったわけでございまして、防衛庁だけを取り出してこの問題がいかがかというふうに私どもは考えなかったわけです。  ただし、防衛庁の場合には、先生も御承知のとおり、一般職ではない特別職ということもございましたから、それをどういうふうに法律の中に当てはめていくかということで、立法上の問題としてはいろいろ議論があったわけでございますが、考え方といたしましては、どこを入れる、どこを入れないということではなくて、研究に従事する公務員研究をスムーズに、より効果的にやるためにはどうするかということでこの法律をつくろうと努力をしてきたわけでございます。経過は多少あるかと思いますから、その点は局長から御答弁をさしていただきたいと思います。
  7. 長柄喜一郎

    長柄政府委員 この法案行革審答申科学技術庁中心になって関係省庁と相談しながらまとめていけという指示を受けましてから、科学技術庁中心に検討してきたわけでございますが、当初から、研究を行っていらっしゃいます国の研究者の方、これを幅広く対象にするという考え方でずっと来たわけでございます。ただ、検討に際しましていろいろな案があり得るわけですが、防衛庁研究者の方は特別職である、その他の省庁研究者一般職であるというふうなことでございますけれども、同様の一つ法律で規定した方がいいのか、別の法律でやった方がいいのかというふうなことを立法技術として検討したのは事実でございます。これは、防衛庁職員について他の省庁研究者と同様の扱いをするというのは当然のことでございますけれども、あくまで立法技術ということでいろいろな双方の案について検討して、その結果、今提案さしていただいておりますように、一つ法律で取り扱うということになったものでございます。
  8. 八木昇

    八木委員 そのように答えるしかないのでしょうけれども、しかし本来、ただ科学技術といいましても、軍事技術といいますか、武器技術と言いかえてもいいのかもしれませんけれども、これとは本質的に違いますからね。一般科学技術というのは、人類社会の幸福、そういうもののためにやるものでございますから。  そこで、防衛庁関係も込みになって全く同じ扱いということになりますと、非常に性格が違ってくると思います。現に防衛庁幹部がどういうふうなことを言っておるかといいますと、国会でもたびたびいろいろな場で答弁をしておると思うのですが、私は一、二の議事録を調べてみたのです。防衛庁幹部は、技術は本来、民需用民間技術軍需用武器技術に分けられる、それはそうであるけれども双方に共通する汎用技術というのがあるのだ、今ではこの部分がどんどん広がってきており、武器技術民間技術の境界というものはなくなってきておる、こういうことを言っておるわけです。そうなりますと、我が国における軍事技術研究開発というものは、平和憲法のもとにおいてアメリカや何かとは違うのですから、待遇とかなんとかというようなことについては、それは同じでなくちゃならぬということは言えるかもわかりませんけれども、ただいまの答弁では理解できないわけでございます。  先ほどもお話がありましたように、一つ一つ聞きたいのですけれども、時間の関係がありますから一括して聞きますが、防衛庁関係一般行政機関とは違うわけですよね、これは行政機関じゃありませんから。したがって扱いも違うわけで、一般職に対して防衛庁関係特別職ということになっておる。一般公務員の方は国家公務員法のもとにあるけれども防衛庁職員自衛官自衛隊法のもとにある。背広組制服組を問わず、すべて防衛庁関係者自衛隊員ですから。加藤長官自衛隊員ですから。したがって給与も違う。防衛庁関係防衛庁職員給与法ということになっておるわけですから、これはやはり別の扱いとして、何らかの交流促進を規定する必要があるとするならば、そのような法をつくってもあるいはいいかもしれませんが、全く同列に入れるべきものではない、こういうふうに考えますが、重ねて質問をいたしたいと思います。  そして、先ほど来言いましたところの臨時行政調査会あるいは臨時行政改革推進審議会のいずれの答申を見ても、軍事技術武器技術というようなものには一言も触れておりませんよ。いかがでしょうか。
  9. 長柄喜一郎

    長柄政府委員 防衛庁職員の方と一般職の他の省庁職員の方を区別すべきではないかという御指摘かと思いますけれども、この法案は、冒頭河野長官から申し上げましたように、国と国以外の者との研究交流を促進する上の隘路となっていますいろいろな点、公務員制度とか財産管理法の上での隘路の点を除くことを目的としたものでございます。それで、一般職特別職を問わず研究業務に従事している方について必要な措置を講ずるということを考えておりまして、一般職特別職を別の法律で扱うことも一つの方法ではございますが、いずれも研究業務に従事するという点で特に区別する必要はない。別途、国家公務員等の旅費に関する法律等一般職特別職と同等に扱っている法律もございます。こういうことで、立法技術上同一の法律で取り扱っても特別困ることはないということで、このように一つ法律で扱うことにしたものでございます。  それから、行革審答申等で、研究交流の位置づけその他について交流法で明確に規定しろというふうな指摘がございます。これにつきましてもいろいろ検討いたしましたが、今回の法律は、冒頭申しましたように、現在の国家公務員制度財産管理制度上の隘路となっているところを取り除くということをまず第一に考えたわけでございます。もう一つ考え方として、研究交流のための基本法的な法律体系もあり得るわけでございますけれども、これを検討するにはまだまだ時間がかかる、とりあえず差し迫っている問題を解決するということで、特例法的な色彩の法案にさしていただいたわけでございます。
  10. 八木昇

    八木委員 全然今の答弁じゃ理解ができません。無論、行革審答申等防衛庁のところの項目の中に、軍事技術にかかわる部分は、それはそれとしてあるとは思いますよ、それは私は読んでおりませんけれども。あると思いますけれども、それは軍事技術に関してであって、やはり科学技術の全体としての研究交流推進という点からは、軍事技術研究開発というものとは別に考えでこのような各種答申がなされているというのは当然である、私はこういうふうに思います。  先ほど防衛庁幹部がこういうことを言っているということを私は言いましたけれども科学技術庁としてはどういうふうに思いますか。軍事技術といいましても武器技術といいましても、考え方は二種類があるかもわかりません。敵を殺傷する機器そのものというものを武器と見て、その技術武器技術というふうに見るのか。それと関連して一体の機器武器というものは成り立っておるから、それらをもひっくるめて武器と考え、それに対する技術武器技術というふうに考えるのかということもあろうかと思います。そういうことを考えていきますと、やはりだんだんとこれはごっちゃになってくる。無論各省庁研究機関は、それぞれの省庁設置法によって任務みたいなものは抽象的には規定されておるでしょうけれども、現在までのところは、防衛庁技術研究本部と各省庁研究機関とが合同研究をするとかなんとかというようなことは余り聞きませんけれども、だんだんとその辺がごっちゃになっていくというふうに考えませんか。そんなことは絶対にやらないということが答弁できますか。将来ともそれはずっと追尾していきますから、私どもは。
  11. 矢橋有彦

    矢橋政府委員 科学技術庁任務防衛技術との関連について申し上げたいと思います。  御承知いただいておりますとおり、科学技術庁設置法の第三条、これは任務の規定でございますが、その中で「科学技術振興を図り、国民経済の発展に寄与するため、科学技術に関する行政を総合的に推進することを主たる任務とする。」と書いてございます。いわゆる防衛技術研究開発推進に当たっているものでもございませんし、また、今後ともそのようにしたいと考えているわけでございます。  それで、技術を非常に大ざっぱに今のお話との関連で分けますと、防衛技術民生用技術汎用技術、この三つに分かれるのではないかと思うわけでございますが、防衛技術につきましては、防衛庁設置法によりまして、防衛庁技術研究本部がこれを担当するということになっておるわけでございます。そして、科学技術庁民生用技術汎用技術を担当するということになっているのではないかと思うわけでございます。この点の関係は、今後とも堅持をしてまいりたいと考えておるわけでございます。ただ、汎用技術の場合には、これはまさに文字どおり汎用でございますので、可能性としてはいろいろな場合に使い得るという基礎的なものでございます。そういった関係にあろうかと思います。
  12. 八木昇

    八木委員 一応今の答弁をしかと承っておきますが、しかし、言葉の上でどう言われましょうとも、全体の我が国の政治の趨勢というようなものを私は肌で感じ取っておりますから、それを必ずしも信用いたしません。  そこで軍事技術、あるいは武器技術と言ってもよいと思いますけれども研究の実情について、この法案と深くかかわりがございますから、この際数点確かめておきたいと思います。  ここで私は、大上段に構えて憲法上の我が国の持てる戦力問題等々をやるつもりはありません。そういう時間的余裕もありません。また、ここは科学技術委員会ですから。ただ、こういうふうにこれまで防衛庁答弁をしてきております。あるいは総理が答弁をしたり、あるいは法制局長官答弁したりしておりますが、大体軌を一にしております。どう答弁しておるかといいますと、日本防衛力として、憲法上持てるかどうかは別として、核戦力あるいは核兵器等は一切保持しない、それからもう一点は、日本の持つ戦力というのは専ら自衛のための必要最小限度戦力しか保持しない、他国に侵略的な脅威を与えるような戦力武器は保持をしない、一貫してそういう態度をとってきております。このことは、例えばそのような他国脅威を与えるような武器あるいは戦力、そういうものについては技術研究も行わない、当然そういうことだと思うのですけれども、その点、改めて御答弁をいただきたいと思います。
  13. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 ただいま八木先生お話にございましたように、我が国平和憲法のもとで専守防衛に徹しております。近隣諸国軍事的脅威を与えることなく、また、非核原則を堅持するということにいたしておるわけでございます。必要最小限自衛力を持つと同時に、また、日米安保体制を維持するということによりまして我が国の基本的な防衛政策ができているわけでございます。そういうことでございますから、私ども防衛庁におきます技術研究開発も、このような基本的な防衛政策というものにのっとって行われておるわけでございまして、これに背馳するようなことは行っておりません。その点、十分御理解をいただきたいと思います。
  14. 八木昇

    八木委員 私が聞きました点は、そのような戦力あるいは武器は保持しない、侵略的脅威を与えるようなそういうものは保持しないということであるが、当然そのことから、そのような戦力あるいは武器についての技術研究も行わないということだと理解しておるがどうか、わかり切ったことだと思いますけれども、その点を聞いておるわけです。
  15. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 ただいま私御答弁申し上げました点も、そのような我が国の基本的な防衛政策平和憲法のもと、専守防衛あるいは非核原則、そういったものに基づいて防衛政策をやっているわけでございますので、そのもとでの技術研究も当然この基本政策のもとで行っているわけでございます。
  16. 八木昇

    八木委員 それはわかりました。それじゃ、他国のこのような軍事技術と共同して研究をする、そして他国のやるものについて協力するということはあり得る、あるいは研究交流することもあり得る、そんなことはないでしょうな。他国と言いましても、主として私の聞いておる気持ちはアメリカを指しておりますが。
  17. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 私ども、昭和四十二年以来武器輸出三原則というものを持っております。また、これは昭和五十一年に政府の統一見解として、我が国の方針となっておるわけでございます。その武器輸出三原則というものは、武器そのものだけではなくて、武器を製造する設備、あるいは今先生指摘武器技術というものも含まれておるわけでございます。しかし一方、我が国技術水準が高まってまいりました。また、アメリカから一方的に我が国防衛力の整備上必要とする武器技術というものが流れてまいってきたのが過去でございます。一方、私ども必要最小限自衛力を持つとともに、日米安保体制というものが我が国の平和を保つ二つの柱になっております。  そこで、この日米安保体制の効果的な運用という点を考えますと、アメリカに対して我が国の持っている武器技術というものを供与することは、我が国の平和を保つ意味で必要ではないかという議論が先般来起こってまいりまして、昭和五十八年一月に政府の統一見解を出し、五十八年十一月に日米間の交換公文が成立いたしまして、アメリカに対してのみは武器技術の供与というものを例外的に認める、日米安保体制というもとでこれを行うということが決定され、今日に至っているわけでございます。現在、その第一号案件というものがアメリカから要請されまして日米間で話し合いが行われておりますが、現在の段階では、先生指摘共同研究というものにつきましては具体的な案件がございません。将来例えばそれが出てまいりました場合に、その共同研究あるいは共同開発の結果といたしまして日本から武器技術アメリカに供与されるということになりますれば、この武器技術供与の枠組みの中で行われていくということに相なるわけでございます。
  18. 八木昇

    八木委員 後の質問とも当然関係をいたしてくるわけですが、その辺は非常に重要な点だと私は思うのです。国会の武器禁輸三原則というのは武器技術をも含む、これはもう御承知のとおりです。その三原則があるけれどもアメリカだけは例外だ、日米安保体制の効果的運用等々で例外扱いなんということは、私どもは認められません。認められませんけれども、政府は現にそれを強行しておる。日本が開発した技術アメリカに供与するということについて例外措置として今やっているわけですけれども日本の開発したところの武器技術アメリカ要請するものについて供与することあるべしということと、アメリカ武器技術にかかわって共同研究をするとか共同開発をするとかいうこととは別物でしょう。供与ということと共同研究、共同開発は同じですか、イコールですか。違うでしょう。言葉も違う。先ほど来言っておるように、日本は、敵と言ってはあれでしょう、仮想敵国を設けているかどうか知りませんが、他国脅威を与えるような武器は持たないと言っておみ以上、そういう武器研究開発をみずからもやらないし、他国と共同開発研究もしない、当然だと理解しておりますが、どうですか。もっと明確に答えてください。
  19. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 ただいまのところ、日米間でも共同研究あるいは共同開発というものは実施されておりません。また、その計画もございません。しかし、先ほど私申し上げましたように、たまたま共同研究というものがありまして、その結果として対米武器技術供与というものが行われますならば、対米武器技術供与の枠組みの中でこれが実施されるということでございます。  また、先ほど申し上げましたような対米武器技術供与についての政府の統一見解あるいは交換公文というものでございますけれども、これはあくまで我が国の平和を守るための一つの柱としての日米安保体制の効果的運用ということからこれを行うわけでございまして、我が国としても防衛分野における米国との技術の相互交流を図ることが、まさに日米安保体制の効果的運用のために重要と考えたわけでございます。従来ずっとアメリカから武器技術あるいは武器そのものの輸入等々行われてきておりますが、その相互交流という趣旨から現在の枠組みができ上がっているわけでございます。
  20. 八木昇

    八木委員 これは本来ならば、もっととことん詰めていきたいところですけれども、私どもはそういうことは望んでいないのです。それはすべきでないというふうに考えておりますから、ただいまのところそういうようなことは具体的にはない、また、そういう要望とかいうものもないというところで理解をしておきたいと思います。しかし、答弁はその点は非常にあいまいですね。武器技術に関してはアメリカには例外として供与することあるべしということと共同研究、共同開発ということは、私は違うと思います。この問題は後でもまた若干時間があれば触れますから、先へ進んでまいりますけれども、今の事柄は必然的にSDIの問題とも絡んでまいりますから、後にすることとします。  今防衛庁が基礎研究段階だけにとどめておるか、あるいは開発というものに向かっても考えておるかは別として、ともかく次のような事柄について研究をしておるかということを聞きたいと思いますが、化学兵器についての研究ということはやっていないでしょうな。
  21. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 私ども、先ほど来の非核原則ということですから、核兵器というものあるいはただいまのような化学兵器と、いろいろあると思いますけれども、核と同じような危険なものは研究いたしておりません。
  22. 八木昇

    八木委員 次の点はどうですか。今防衛庁は軍艦とは言わないのでしょう、護衛艦と言うのですか、それもまたインチキなんですけれども、そういう護衛艦に原子力を推進力として用いるという問題についてであります。政府は、これは総理大臣答弁だったかと思うのですが、今それを手元に持参してきておりませんが、非常に平たい言い方をすれば、原子力潜水艦というのがもう一般化してくる段階になれば日本も原子力潜水艦を持つ、そういうふうに考えておる、こういう政府の態度ですか。
  23. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 ただいま私も国会議事録を持参しておりませんけれども、中曽根総理がかつて科学技術庁長官でございましたか、防衛庁長官でございましたか、閣僚として御答弁された中だと思います。原子力を護衛艦あるいは潜水艦の推進力として活用できるかどうかという件に関しまして、ただいま先生がおっしゃいましたように、原子力というものが一般商船の推進力として普通になってきた、使われてきたという状況になりましたならば、防衛庁も潜水艦の推進力として原子力を使ってもいいのではないか、そういう見解を申し上げた経緯はございます。
  24. 八木昇

    八木委員 潜水艦は紛れもなく有力な武器でございますから、これは非常に重大な問題でございます。今原子力船「むつ」が、長年かかって舶用炉の問題でとんざしておる。これはいわゆる軍事用に使うものじゃないのだからということで研究開発を進めておるわけですが、一般的になってきたからあしたから日本も原潜を持つといったって、それはできないでしょう。自主開発による原潜でなくても、とりあえずはアメリカの原子力潜水艦を購入するかということにするとしても、やはり相当研究をしておかなければならぬ、客観的にはそう思われますね。そうすれば、防衛庁は原潜について基礎的な研究もやっておるということですか。潜水艦に限りません、ほかの一般の軍艦でも。
  25. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 端的に答えますと、原子力潜水艦、あるいは護衛艦を原子力で推進するという研究を行っているわけではございません。
  26. 八木昇

    八木委員 ちょっと聞き漏らしましたが、今はやってないということですか。
  27. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 やっておりません。
  28. 八木昇

    八木委員 近い将来は。
  29. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 将来のことは今ちょっとお答えできないわけでございますが、それは先ほど私御答弁をし、また先生もご指摘のように、原子力による推進一般的になってきたという状況においては、私ども自衛隊がこれを推進力として使ってもいいのではないか、こういう政府の統一見解の方針によると思います。
  30. 八木昇

    八木委員 質問点を他に移します。  今防衛庁技術研究本部が力を入れて研究しておる事項、事柄について若干伺いたいのですが、技術研究本部というのは相当な研究機関だと思います。第一研究所から第五研究所まであって、それぞれの分野別に研究をしておるようであります。そしてまた近年、自主開発した主要な装備もどんどんふえておるように見えますし、それらはほとんど民間の三菱重工とか三菱電機とか川崎重工とかいうものに委託してやっておられるようであります。五十七年から六十年の間までの主要な研究開発事項というのを私ちょっと把握いたしましたが、本年度、昭和六十一年度から始める主要な研究開発計画の具体的な内容を簡潔に明らかにしてくれませんか。
  31. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 防衛庁技術研究本部の総予算をちょっと申し上げますと、六十一年度予算におきましては六百五十三億円でございまして、防衛庁予算全体に対する比率は一・九五%でございます。アメリカ、NATO諸国は大体それが一〇%を若干超えている状況でございます。  さて、五十七年度から六十年度いろいろ新しい研究をやらせていただいておりますが、六十一年度におきましても、先般お認めいただきました予算によりまして新しく始めるものが幾つかございます。  三つばかり挙げさせていただきますと、一つは、陸上自衛隊でございますが、師団が持ちますところの対空情報処理システムというものを六十一年度から六十四年度の四年間で行いたいということでございます。二番目が艦、先ほどの護衛艦でございますが、護衛艦から艦船の脅威に対しまして使いますミサイル、この研究を六十一年度から六十五年度までの五カ年間について行いたいと思っております。三番目が、格闘戦用ミサイルといいますか、戦闘機が持ちます空対空ミサイルでございますけれども、一九九〇年代の脅威となる航空機に有効に対処するために新しく格闘戦用のミサイルを開発したい。これは六十一年度から六十四年度の期間開発をいたしたい。この三つが新しく御提案をし、やりたいと思っているものでございます。
  32. 八木昇

    八木委員 五、六年前からさらに以前の分はざっとしか見ておりませんけれども専守防衛と言いながら、全体として非常に内容が拡大されてきておるというふうに私どもは見ておるのですが、客観的に見ればそうなんです。具体的には、この後二つばかりについて聞きます。  今の点とちょっとずれますけれども、先ほど科学技術庁の方からは答弁がありましたが、防衛庁技術研究本部は、各行政省庁研究機関あるいは大学の研究機関等との交流等は現在まで行われておるのか行われていないのか、将来どう考えておるのか、ちょっとそれを先に答えてくれませんか。
  33. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 ただいま技術研究本部が話題になっておりますので、技術研究本部民間あるいは他省庁、大学あるいは外国との研究交流の実態について申し上げたいと思います。  技術研究本部は、諸外国の技術の動向というものに対応することができるように、装備の質的な充実向上を図っていく目的あるいは役割がございますが、そのために研究者の能力向上あるいは新しい技術の習得という観点から、研究員を国内外の大学等において研修をさせている次第でございます。過去五カ年間のデータを申し上げますと、外国の留学研修が十一名、国内の大学研修が十三名、民間の企業にお願いをして研修してもらうのが十七名ということでございます。なお、他省庁への出向例はございません。
  34. 八木昇

    八木委員 今後はどういう考えか。
  35. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 今後は今後のことでございまして、これがどのくらいのスケジュールで拡大するとか、あるいは横ばいでいくとかいうことをまだ特段決めているわけではございません。
  36. 八木昇

    八木委員 拡大させたいという気持ちを持っておるのでしょう。どうですか。
  37. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 世界あるいは日本におきましても科学技術の進歩というものは非常にスピーディーなものになっておりますので、私どもいろいろな機会に技術研究本部研究員の質的な向上を図るという意味では、必要があればまた増強したいし、しかし予算との関係、ほかにどのくらいの技術水準があるか、私どもの習得したい技術はどういうものであるかということに依存しておりますので、ただいま予断することはできません。
  38. 八木昇

    八木委員 そこで先ほど来の質問に戻りますが、今防衛庁研究開発をしているものに地対艦誘導弾というのがありますね。あるいは新しい対潜ヘリコプター艦載型システムの研究開発というのがありますね。それぞれ別のものですから、それぞれについて聞くべきですけれども、時間の関係で一括して聞きます。  地対艦誘導弾ということになりますと、艦からのミサイル攻撃、それはどこの国を仮想敵国として想定をしておられるのか知りませんけれども、何も日本海側の軍艦からミサイルが飛んでくるとは限らないのであって、太平洋側もある。太平洋は物すごく広大ですし、相手方は長距離を飛ばすミサイルを持っておるわけですから、そういうふうに考えますと無限に広がって、いわゆる射程距離というものは無限に長距離化していくのではありませんか。ある段階まで長距離化すれば沿海州にも達するわけで、そういうものをもう具体的に研究でなくて開発にかかっておるということですが、この点についての考えをお伺いいたしたいと思います。  それから対潜ヘリコプター艦載型というならば、それは軍艦に載せるわけですから、普通の軍艦ではない。いわゆる空母というのはヘリコプターを載せるのじゃなくて飛行機を載せるものだ、こういうふうに言われるかもわかりませんが、しかしやっぱりある種の小型空母である。空母なんというようなものは持たないというのがこれまでの防衛庁の態度でしょう。そうすると、そうは言いながらもこれは逐次拡大していく、軍事技術というものは大体そういう本質を持っておる、そのように私は思いますけれども、それらについて、きょうのところは一応問題点を指摘しておるわけですから、端的にお答えいただきたい。
  39. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 先生指摘の前段の地対艦誘導弾について申し上げたいと思います。  端的に申し上げますと、地対艦誘導弾は五十七年度から技術研究本部で開発を行っておるものでございまして、これは我が国に対する海上からの武力攻撃に際しまして、できるだけ水際、海岸線以遠におきましてこれを阻止排除いたしまして、国土に戦闘が及ぶのを最小限に食いとめる、こういう目的を持ちまして開発を進めているものでございます。そして、これはいわば海岸線から撃つのではなくて、内陸部から発射可能なミサイルとして開発をしているわけでございます。つまり、自分も身を守る必要がある、それを海岸線でございますと発見されやすい、したがいまして、山の陰とか、かなり内陸部におきまして発射をする、そういうものでございます。したがいまして、普通洋上で使用する、あるいは水際、つまり海岸線から使用するものよりは少し長目の射程距離が必要だというわけでございます。私ども、明確な射程距離をここで申し上げるわけにいきませんけれども、運用構想ということから見ますと、射程は大体百数十キロメートルとするということでございます。  それから、さらにこれを拡大するのではないかという御指摘がございましたけれども、現在のところ、この射程を延ばすための研究あるいは計画というものはございません。いずれにいたしましても、他国に侵略的、攻撃的脅威を与えるようなものの装備を保有するということは全く考えておりませんで、常に私ども専守防衛ということを願っておるわけでございます。  後段の対潜ヘリコプターにつきましては、防衛課長からお答え申し上げます。
  40. 宝珠山昇

    ○宝珠山説明員 御説明いたします。  海上自衛隊は、約二百機の対潜ヘリコプターを持つことを目標にいたしておりますが、現在DASH2という、昭和三十年代に開発されたもので四十年代に若干の改修をしたものを使っております。  その対潜ヘリコプターの能力について見ますと、原子力潜水艦の増大など近代化された潜水艦に対して十分な対潜能力を持ち得ない状況が予想されております。そういうことで米国で使っておりますヘリコプターを導入いたしまして、それを日本の運用構想に適した対潜ヘリコプターとして研究しているものでございます。これは比較的小型の護衛艦に一機ないしせいぜい三機搭載いたしまして、対潜作戦、対潜捜索あるいは情報処理などを行うことを目的としているものでございまして、御指摘がございましたような他国に攻撃的な脅威を与える、そういう空母というものとはおよそ概念を異にするものでございます。  また、そういうものを持つ考えがあるかということでございますと、現在そのような考え方を持っておりませんし、かねてから攻撃的、侵略的脅威を与える武器を持たないという範疇でいきますと、そういうものを我が国防衛政策として持てないという考え方に立っているものであります。
  41. 八木昇

    八木委員 そこでこの際、科学技術庁長官、長官が答えられなければ局長でも結構ですけれども、今度の促進法の制定によって今の軍事技術との関係について我々が非常に懸念をしておるというのは、先ほど来再三言っているところなんですが、軍事技術研究開発は、戦後四十年、平和憲法下にもかかわらず我が国でも相当進んでおるわけですね。そして、自主開発してどんどん兵器が製造されておるだけではなくて、アメリカからの非常な高性能の戦闘用の航空機についても、それはアメリカのライセンスによるのですけれども、もうほとんど全部と言っていいほど国内製造もしておる、現実に実用化しておるわけですね。ごく一部の心臓部分の、向こうが軍事機密として出せないというような部分は向こうで製造したものが来ているということはありましょうけれども、そういうふうに今進んできておる。それへもってきて、本法が制定され、防衛庁関係研究関係もこの中にミックスされる、こういうことになると、非常な懸念を覚えるわけでございます。  それで、直接各省庁研究機関防衛庁研究機関共同研究するとか共同開発をするとかというようなのはこれまでもなかったし、それから今後もそのような考えはないという答弁はありましたけれども、しかし、私ども素人の頭で考えてみたのです。例えば防衛庁はどんどん民間研究開発を委託しておるわけです。そうすると、各省庁研究機関民間にはどんどん行けるということになるわけですね。いろいろな退職金規定やその他も改善して、どんどん行きやすくなるようにするわけです。それに今度は、これまでは民間機関に出向をするという場合、各省庁研究機関研究員が個別の企業に出向するということはなかったのだと思います。研究組合というものをつくり、そしてそれが公益的に必要性があるというものに限っていたと思うのですけれども、この法ができると個別企業にも出向できるわけでしょう。そうすると、一方防衛庁が個別企業に一つの軍事研究開発の委託をしておる、それに関してほかの省庁研究公務員がそこへ行くということはあり得ますね。そんなことは絶対にありませんか。
  42. 河野洋平

    河野国務大臣 専ら防衛の技術を開発する作業は、先ほどから御答弁申し上げているとおり、防衛庁の所管にかかわるものでございます。この法律の御審議に当たりまして、この法律ができ上がった場合に専ら防衛にかかわる技術の開発にドライブがかかるのじゃないか、こういう御指摘だろうと思いますが、私は、防衛技術の開発がどのくらいのスピードでどの範囲で行くかということは、これは防衛政策上の問題であって、この法律ができるから範囲が広がるとか勢いが増すとかということではない、これはすぐれて防衛政策がそれらの枠をつくり、問題を整理していくということであって、この法律がそうしたものに直接影響を与えるというものではないと思います。  繰り返して申し上げて恐縮でございますが、この法律は特定のプロジェクトを考えてつくられているものではございませんで、極めて一般的に法制上の隘路をまず取り除くということにこの法律目的があるということを私から御答弁をさせていただいて、具体的な詳細は局長から申し上げたいと思います。
  43. 長柄喜一郎

    長柄政府委員 御指摘のとおり防衛庁共同研究ないし委託研究をやっている民間企業があったとしまして、そこに民間企業に対してほかの省庁研究者が行くかどうかという御質問かと思いますけれども、各省庁それぞれ所管の研究所の設置目的というものを持っております。それから、交流することによって自分の方のメリットがあるかどうかというようなことは当然考えて交流するわけでございます。したがって、一般省庁防衛庁共同研究、相手方の民間企業と交流することについても、おのずから限界があるというように考えております。
  44. 八木昇

    八木委員 おのずから限界があるというのでは、非常に意識的にぼかした答弁をしておられるように私は勘ぐるのですけれども、本来は、私はそういう科学技術者ではありませんからわかりませんが、ただ私どもが見ているところでは、科学のみならずかもしれません、研究者というものは、最も先端的な技術についてはやはり研究したいというふうに思いますよ。それは研究者だけでなくて、エンジニア一般もそうなんです。例えば私は元来電力会社の出身ですけれども、原発がつくられた当初、電力会社の電気技術者の中に、自分は原発には反対なんだ、しかし先端的なものであるからこれは行きたい、家内は猛反対をしておるのだけれども仕方ない、私のはるか後輩の人々ですけれども、そういう話を私なんかにもよく述懐したりしたものです。そうすると、本人から希望をするという場合もありましょうね、こういう企業に出向したいとか。いろいろなことが考えられできます。各省庁研究所の方から事実上強制的におまえあそこへ行けということでなくても、そういうことは考えられませんか。
  45. 矢橋有彦

    矢橋政府委員 若干繰り返しで恐縮でございますけれども科学技術庁から民間へ出向させる場合には、先ほども申し上げました科学技術庁設置法任務の範囲内の場合に限ってこれを認めるという方針でございます。したがいまして、先ほど来先生御懸念の点はないかと存じます。ただ、これは詳しくは防衛庁の方から御説明をいただくべきことでございますが、防衛庁の方でもいわゆる汎用的な技術研究をやっておられる向きもございますので、そういうケースについては理論的にあり得るかなと思っておりますけれども、いずれにせよ科学技術庁科学技術庁設置法任務の範囲内での休職出向を認めるという方針で臨みたいと考えております。
  46. 八木昇

    八木委員 では、これは議事録に歴史的に残りますから、そのような答弁で、きょうのところはそれ以上の質問はいたしません。  そこで、これまでの一連質問の推移と多少は趣を異にしますが、この際聞いておきたいと思うのです。  いわゆる攻撃的な戦力、防衛的な戦力という戦力一般ではなくて、これをもっと狭めまして、攻撃的兵器というものと防衛的あるいは防御的兵器という問題について、防衛庁の見解をこの際ただしておきたいと思うのですが、これは分けられないですね。その兵器が専ら防衛の用に供するものか、侵略、攻撃の用以外に用いないものかというように明確に区別はつけられない。攻撃的兵器、防衛的兵器というふうに明確に区別はつけられない。結局、使用する者の意思によって制約を加える以外にないというのがこれまでの見解のようですね。  それからまた、防衛局長等も次のように答弁しておるようです。攻撃的兵器と防御的兵器の区別をすることは困難である、こういうことは外国の専門家も言っておるし、我々もそう思う、こういうふうに防衛庁の防衛局長が国会で答弁してもおるわけです。この点、私が言ったとおりに今日もお考えになっておるかどうか。なぜ私がそういうことをここでわざわざ聞いておるだろうかということは、御想像がつくだろうと思います。この残り時間若干でSDIの問題も聞きますものですから、これまでの答弁、そのとおりでしょうな。今日もそうでしはうな。
  47. 宝珠山昇

    ○宝珠山説明員 他国に侵略的、攻撃的脅威を与えるかどうかというような点については、そのときどきの軍事技術科学技術の水準というものが関係するということで考えております。しかしながら、先ほども答弁ございましたように、他国に壊滅的な脅威を与えるようなもの、例えばICBMとか長距離爆撃機あるいは大型の空母といったようなものについては明らかに攻撃的な兵器だ、こういうふうに考えられているのであります。そういうことで、技術的にここまでが攻撃的なもので、ここからこちらは防御的なものだということを明確に分けることは困難であるという考え方は一貫して変わっておりません。
  48. 八木昇

    八木委員 私は、それは当たり前のことを聞いておるにすぎないので、答弁としても常識的な答弁だと思います。原則的なことを聞いておるわけで、攻撃的兵器、防御的兵器ということを区別することは困難だ、外国でも一般的にそう考えられておるし、我々もそう考えておる、一貫してそれは変わらない、こういうふうに私も理解をいたします。  そこで、最後にSDIを聞きたいと思うのです。これは三十分程度聞きたいと思うのですが、その前にちょっとだけ、アメリカへの武器技術供与について、その現状について知っておきたいと思うのです。  これはどこがお答えになるか、通産省かとも思うのですけれども、現在既に対米武器技術供与については交換公文が締結されておって、武器技術共同委員会、これはJMTCというそうですが、もう何回か開催をされておる。我が方の共同委員会のメンバーは通産省、外務省あるいは防衛庁等がこれに参加しておるというふうに聞いておりますが、既に具体的にアメリカ側から軍事技術を供与してほしいという要請がされておるそうでございますが、それは何かということが一つ。  それから、そういう要請が今後どんどんなされてくるわけですけれども、これに一体どういう方針を持って対処されるのであるか。無限にこういう技術も欲しい、ああいう技術も欲しいとアメリカ側から言ってくれば、いやこれは断ります、これは供与しますなどというようなことは事実上できないのじゃないかと私には思われますので、まず今の二つの点についてお答えをいただきたい。     〔委員長退席、矢追委員長代理着席〕
  49. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 先生承知のように、対米武器技術供与に関する交換公文が昭和五十八年の十一月八日にでき上がっております。その後、昨年の十二月二十七日にその交換公文に基づきまして実施細目取り決めというものが調印をされました。これによりまして、枠組みがひとまずでき上がったわけでございます。それから、この交換公文にうたわれております、ただいま先生指摘のJMTC、これは日本語で言いますと武器技術共同委員会ということでございまして、外務省北米局長通産省貿易局長、そして防衛庁から私、装備局長が出席をいたしております。アメリカ側からは在日米大使館の首席公使とMDAOの所長の合計五人で成り立っておるわけでございますが、この武器技術共同委員会、JMTCの第一回会合が五十九年十一月六日に開かれておるわけでございます。  さて、そうした枠組みができ上がっておりますが、アメリカ側からこの枠組みに基づきまして、いわゆる第一号案件というものの要請が昨年ございました。ただし、アメリカ側からその第一号案件につきましての具体的な名前、内容につきましては公表を差し控えてほしいということを外交上言っておりますので、私ここで申し上げることはできませんけれども、その第一号案件についての話し合いがアメリカ側、日本側の当事者同士で現在行われているところでございます。そのほか第二号、第三号がもう出てきているのではないかなという御指摘でございますが、私ども当事者といたしましては、まだ二号、三号に関する話は出てまいっておりません。また、将来どのようなことで出てくるかわかりません。  なお、アメリカ側が現在行っておりますことを一つ御紹介いたしておきますと、日本技術水準というものは一体どのくらいであろうか、アメリカの国防総省が関心を持っている分野で日本がどのくらいの技術を持っているだろうかということを、何回かに分かれまして調査団を派遣してまいっております。具体的に申し上げますと、ミリ波、マイクロ波、それから光電子工学に関しまして、二回ばかり国防総省のマッカラム博士を団長とする調査団が参っております。いわば、アメリカといたしましては現在具体的な案件をどんどん出してくるという状況ではございませんで、一般的に日本技術水準とアメリカの関心項目の突き合わせ、調査を行っているのが現状ではないかと思います。
  50. 八木昇

    八木委員 武器技術供与と一口に言いますけれども、これは非常に問題だと思うのです。今の段階は今の段階としましても、将来にわたって考えていきますと、大体武器技術というものは軍事機密であるというようなことを言うわけですね。そうすると、軍事機密ということとの関連において、どういうものをアメリカ日本に供与を要請したかということは一切明らかにするなど言うのですか。そうするとあなた、今後幾つ、それからどういう軍事技術の供与の要請がなされたか、そして、軍事技術と言ったって汎用技術の時代であるなどという答弁がしきりと行われておる今日、一体それは軍事技術と言えるのかどうかというようなものまで向こうから要請があるかもしれないし、それは明らかにしないのですか。そうすれば国会は、一体どういう軍事技術が供与され、どのようになっているかなんということは一切つんぼ桟敷ですか。
  51. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 ただいま第一号案件の名前、内容については、アメリカから公表を差し控えてほしいということを言ってきております。これは未来永劫ということではないと思います。あるいは案件によっては、これは公表してもよろしいというふうに言ってくるかもわかりません。今のところの段階では公表を差し控えてほしいということを外交上言っているわけであります。  それから、武器関連技術という言葉がございますが、アメリカが国防上あるいは日米安保体制の効果的運用のために必要とする武器関連技術、これを二つに分けますと、武器技術あるいは武器専用技術先生指摘汎用技術に分かれるわけでございます。恐らくこの間に、これは武器技術だろうかあるいは汎用技術だろうかという疑念が生ずる案件も将来出てくるかもわかりません。その場合には、私どもこのJMTC、武器技術共同委員会におきまして、特に日本側の三省庁から成り立ちます日本委員会というのでしょうか、そこで十分検討をする所存でございます。また汎用技術につきましては、従来ともこれは自由ということになっておるわけでございます。
  52. 八木昇

    八木委員 私は、本質的にアメリカというのを信用していないのですよ。機密と称せられるものがぼろぼろ出るでしょう、アメリカというところは。汎用技術と称して直接武器技術でないものについてどんどん向こうから要請されてきますと、日本は提供はしたわ、それが向こうの民間のどこに行くやらわからない、それは言葉の上でどんな約束をしていようとも、そういうものじゃありませんか。現に漏れているでしょう、アメリカがそんなことを言ったって。  今アメリカ要請しておるところの武器技術日本へ欲しいと要請しておる第一号は、携行SAM、地対空ミサイルの追尾関係技術、そうでしょう。そうじゃないのですか。     〔矢追委員長代理退席、委員長着席〕
  53. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 ただいま先生指摘の私ども技術研究本部研究をいたしておりました携行SAM、携帯用め地対空誘導弾でございますけれども、これがさてそのアメリカ側の言うところの第一号案件であるかどうかについては申し上げることを差し控えたいと思いますけれどもアメリカ側はこの携行SAMの技術というものに関心を持っているということは言えようかと思います。
  54. 八木昇

    八木委員 いや、そんなことじゃもう話になりませんな。今後ともそういう態度で貫くのですか。どうですか、あなた。国会はチェックしようがないですよ、何を供与しておるのか、どういうことがやられておるのか、そしてそれが日米安保体制とのかかわりにおいてどう我々として判断できるかというようなことについて。
  55. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 これらの案件につきましては、将来ともケース・バイ・ケースで処理されることになろうかと思います。現在、この案件につきましては日米間で話し合いを行っておるところでございまして、まだ結論が出ているものではございません。その段階で、外交上アメリカ側が公式にその内容について明らかにすることを差し控えていただきたいということを要請してきているわけでございます。まだ交渉中といいますか、話し合い中の案件でございまして、結論を出している案件ではございません。
  56. 八木昇

    八木委員 これ以上言いませんけれども、ストレートに武器そのものの技術というよりも、それに関連する技術と称しての一般的な技術要請というものが相当あり得るとも思うものですから、それで聞いておるのですよ。  これは通産省にお聞きしますが、我が国武器の輸出を一貫して禁止してきたわけであります。武器の輸出を禁止するということは武器技術の輸出も禁止するということですから、武器技術の輸出というのは法的にはできないのじゃないですか。アメリカ武器技術を輸出する話し合いがついたことによって法律が改正されたということを、私が勉強不足で知らないのでしょうか、それができるように法改正になったのですか。大体、法的にはできないのでしょう。
  57. 白川進

    ○白川説明員 武器技術の輸出規制にかかわる法的な点を御説明いたしたいと思います。  武器技術の供与につきましては、外国為替及び外国貿易管理法第二十五条を踏まえた外国為替管理令十八条、さらにそれに基づきます通商産業省令九条によって、武器技術を外国に供与する場合には通商産業大臣の許可が必要という法制に相なっております。  アメリカに向けて武器技術供与の道を開いたことに関連して法律改正が行われたかという御指摘ですが、法律改正は行われておりません。昭和五十一年二月に出された武器輸出に関する政府の統一見解、武器輸出三原則については、武器のみならず武器技術についてもこれを踏まえて私どもは対応いたしておるわけでございますが、これ自身は今申し上げました外為法に基づきます輸出貿易管理令、外国為替管理令の運用方針でございまして、共産圏、国連決議、国際紛争当事国等々に対しては武器の輸出を認めない、それ以外の国に対しては武器の輸出を慎むという趣旨でございます。したがいまして、武器輸出三原則及び政府の統一見解と申しますものは、こういった法律の運用にかかわる政府の重要な政策でございますので、アメリカに向けて武器技術供与の道を開くことに関連いたしまして法律改正といったような手だては必要ではございません。
  58. 八木昇

    八木委員 もう少し細かく聞きたかったのですが、時間がなくなってきました。  どうも防衛庁の方は、日米安保体制の効果的な運用という面に照らしてこれは認める、これは認めないという判断をするようなことを言っているのですが、全く抽象的で何のことやら私にはわかりません。今御答弁を聞きましたけれども、かつて実際武器が輸出されていたというのが再三問題になって、改めて国会でそのことについての決議がなされたことは御存じのとおりなんですが、通産省としてはどういう基準、どういう考えでこれは認める、これは認めないとチェックをするのですか。これは通産大臣が決めるそうですから、防衛庁長官じゃないのですから、その点答弁してください。
  59. 白川進

    ○白川説明員 今の御質問は、アメリカから武器技術の供与の要請が行われた場合に、どういった考え方で認めたり認めなかったりするかということでございますが、私どもといたしましても、対米武器技術供与の道を開きました昭和五十八年一月の政府統一見解あるいは同年十一月の交換公文の趣旨、すなわち日米安保体制の効果的運用を確保するということが基本的な判断事項であろうかと思います。したがいまして、アメリカから外交ルートを通じて要請が参りました場合に、我が国自身が総合的な国益の観点から自主的に判断いたしまして、日米安保体制の効果的運用を確保するという観点から判断してまいるということでございます。  なお、その具体的なやり方につきましては、先ほど来御説明がございますけれども武器技術共同委員会、JMTCの日本委員部というのがございまして、これは私ども通産省も入っておりますし、外務省、防衛庁、この三省庁で構成されておりますが、この場で今申し上げたような観点に照らして検討いたしていく、こういうことに相なります。
  60. 八木昇

    八木委員 この点については、次の点を申し上げるだけにとどめますけれども日米安保体制の効果的運用と言うなら、アメリカはその観点に立って要請しているわけですから、全部認めなければいけませんね、向こうが要請してくるものは。そうじゃありませんか。常識的に考えてそうでしょう。通産省としては、貿易管理とかそういう観点からのチェックがあってしかるべきだと思うのですけれども、この点についての質問は一応終わります。  あと、SDIについて最後まで質問いたしたいと思います。こんなことを改めて聞くということはある意味ではこっけい千万だし、子供じみた話なんですけれども最初河野長官にお伺いします。  スターウオーズ計画と言われておりますね。アメリカは近ごろは余り使いたくないらしく、SDI。戦略防衛構想などというのは、何のことやらわけがわからぬですよ。戦略防衛というなら幾らでもあるわけです。これを端的に示しておるスターウオーズ計画、このスターウオーズというのを日本語に訳したらどうなりますか。こんなことは、あなた、子供の初歩的な英語の話で、スターといえば星以外にないのだろうと思うのですよ。ウォーズというのは、ファイトとも違いまして全面戦争を意味しているのですよ。日本語で言えば星戦争、言いかえれば宇宙戦争ということでしょう。どうですか。
  61. 河野洋平

    河野国務大臣 スターウオーズというのは、映画の題名その他に使われて、ほとんど日本語そのものになっているのではないかと思います。したがって、先生も御承知で御質問だと思いますけれども、スターウオーズをわざわざ日本語に訳す必要もないし、それはそのとおりそういう言葉だ、こう受けとめる以外にはないのじゃないかと思います。
  62. 八木昇

    八木委員 なぜ私が冒頭にそんなことを聞いたかという意味はおわかりだと思います。SDIというのは宇宙戦争体制、そういうシステムなのだということを言っているわけなんです。  そこで、昭和四十四年に宇宙開発事業団法が成立したときに、法の第一条「宇宙開発事業団はこの次に「平和の目的に限り、」を加えてこの法は成立したわけでございますけれども、その際我が党の石川委員が、この平和という文字はいろいろと広範に使われる、平和を維持するために核兵器を持つのだとかいろいろなことを言われるので、この意味を確かめておきたい、非侵略という意味である、この点を確認願いたい、非軍事という意味だと考えておるがどうか、こういう質問大臣にしたところ、当時の木内四郎長官は、「いまの非軍事という御解釈、大体私はそのとおりだと思っております。」これは議事録の言葉どおりです。そう答えております。これもわかり切ったことですけれども、そのように現在もお考えでしょう。
  63. 河野洋平

    河野国務大臣 国会で御議論があったことを、議事録等を拝見して承知をいたしております。
  64. 八木昇

    八木委員 また、宇宙の開発あるいは利用は平和目的に限るという件に関しては、そこへ座っておられる小宮山さんがその本会議決議の提案者なんですね。その決議の全文をここで読み上げても、そんな長いものじゃありませんからいいですが、「わが国における宇宙の開発及び利用の基本に関する決議」の中身ですけれども我が国の宇宙開発及び利用は平和目的に限るという決議なんですよ。その決議というのは、これは事業団法に言うものよりももっと幅が広いわけですね。事業団法の第一条の場合は、狭義に解釈しますと、宇宙開発事業団の宇宙開発は平和目的に限る、事業団のやる宇宙開発について規定しておるというふうに、狭義にこじつけて解釈できないこともないかもしれませんけれども、国会決議はそうじゃないのです。「わが国に」ということは、事業団のみならず我が国の政府もそれから民間企業も、平和目的以外に宇宙開発に関してはすべて研究も開発も実用化もやってはならぬということでしょう。当然そうだと思います。まずその点。
  65. 内田勇夫

    ○内田(勇)政府委員 お答え申し上げます。  宇宙開発事業団法の第一条に規定しておりますのは、当然のことながら宇宙開発事業団の事業に対する規定でございます。それから国会決議につきましては、国会決議の本文にございますように、「わが国における地球上の大気圏の主要部分を超える宇宙に打ち上げられる物体及びその打上げ用ロケットの開発及び利用はこということでございまして、そのように解しております。
  66. 八木昇

    八木委員 さらに伺いますが、これもわかり切った話ですけれども、最近の政府の動向から見て、以上私が聞いておるようなことをわざわざ確かめなければならぬということ自体、遺憾千万なことなんですが、この決議が意味しておるところは、これも当然ですけれども、みずからそういう軍事的な宇宙の開発や利用はやらないことはもとより、他国のそういう軍事的な宇宙開発や利用への協力ももちろんしないということですね。
  67. 内田勇夫

    ○内田(勇)政府委員 この国会決議の有権解釈は国会でなされるものと理解しておりますけれども、政府側としてもただいまの点につきましては十分慎重に協議いたしたい、かように思います。
  68. 八木昇

    八木委員 どういうわけか知りませんけれども、わざわざ低い声で言われたのです。これははっきりしているので、何かどこかへ遠慮しておずおずと言われたのかもしれませんけれども、私そのように確認をいたします。  そこで、SDIの第三次調査団が帰国をされたのですが、渡辺団長は御出席でございましょうか。——新聞によると、渡辺団長はアメリカで、SDIは大陸間弾道ミサイル、ICBMや中距離ミサイル、INFを防ぐ体系をつくることが可能かどうかを研究するプログラムだ、わざわざそういうようなことを言っておられるのです。一番肝心の防御用、攻撃用ということを分けられるかという問題は後で聞きますけれども、防御用であれ何であれ、宇宙兵器体制、宇宙の軍事体制といいますか、宇宙で戦争をするというのと戦闘をするというのでは少し意味が違うかもしれませんが、要するに飛んでくる敵のミサイルを宇宙で攻撃するわけですよ。宇宙で戦闘が行われるわけです。人間が乗っておるとか乗っておらぬとかはもう全然問題外で、大砲の砲弾だって、飛んでいくときは人間は乗っておらぬのですから、小銃弾も。要するに宇宙で戦闘が行われるシステム、それが防御用であれ何であれそういうものだということは、そのようにお考えになっておるのでしょうな、わざわざそのことは口を緘して語られないような印象を受けますけれども
  69. 岡本行夫

    ○岡本説明員 官民合同調査団は先般帰国いたしました。そして、我が国のSDI参加問題への対応ぶりを策定するに当たりまして参考となるべき諸情報を集めてまいったわけでございます。調査団の主たる目的は、さらに我が方の検討作業に資します諸点を主として技術的側面から調べてまいることにあったわけでございます。  お尋ねのSDIの性格でございますが、私どもといたしましては、これはアメリカ側のこれまでの諸発表から考えます限り、現在の米ソのいわゆる核戦略というものが、お互いに先制攻撃を行えば耐えがたい損害をこうむることを相手に明確に認識させる、いわゆる恐怖の均衡というものに基づいて成り立っておりますところを、これから防御システムによる安全な抑止に移行する、そして究極的には核兵器を使用する意味をなくする、このような計画と我々は理解しておるわけでございます。
  70. 八木昇

    八木委員 どうして私の問いに答えないのですか。私はそんなことを聞いていないじゃないですか。防御システムか攻撃システムかなんということは一言も聞いておりませんよ。質問しておりませんよ。軍事システムじゃないのかということを聞いているのです。
  71. 岡本行夫

    ○岡本説明員 私どもは、まだSDIのシステムの詳細について調査をしておるところでございまして、その正確なところについては、まさに今検討作業を行っておるわけでございます。今度の調査団の結果、今大至急作業を進めておりまして、それが明らかになり次第また御説明することになろうかと思います。
  72. 八木昇

    八木委員 大体何の調査に行ったのですか。そこが一番肝心なところでしょう。国会決議がある、事業団法による制約もある、非核原則もある、いろいろあるわけですよ。よもややれないと思っているのですが、これに参加するなんということはできないと思っておるのですけれどもね。答えてくださいよ。だれが考えたって軍事システムでしょう。
  73. 岡本行夫

    ○岡本説明員 先ほども答弁申し上げましたとおり、私どもはレーガン大統領から、これは非核の手段により核戦争を防止するという説明を得まして、ただいまのところそのような理解をしているわけでございます。  私どもの参加問題につきましては、これはまだ検討中ということで、そこは何らの結論も出されてないわけでございます。御理解いただきたいと思います。
  74. 八木昇

    八木委員 あなたの報告では、これは軍事システムであるかないかについては報告はしていないのですね。じゃ報告書にならないですよ。
  75. 岡本行夫

    ○岡本説明員 全体としてこの計画が核兵器に対する防御システムであることは、私どもも再三のアメリカ側の説明により了知しているわけでございます。今回の調査団は、そのSDIのシステムを構成いたします諸種の技術をそれぞれ要素ごとに見てまいりまして、それがどのような意味を持ちますものか、私どもへの波及効果がどういうものであるか、また、SDIの戦略的な側面につきましてもどこまで検討が進んでいるのか、そのようなことを一般的に調べてきたわけでございます。
  76. 八木昇

    八木委員 前の方で質問時間をとり過ぎまして、時間がなくなってきて非常に残念ですけれども、防御システムである。防御システムであればそれが兵器であっても軍事的なシステムではないなんというばかな話は、どこに行ったって通らないですよ。高射砲陣地、それは防御用である、いちずに敵の空襲に対する防御用の高射砲陣地である、これは軍事的システムじゃない、そんなばかな論理がどこにありますか。ですから、言えないのであなたは黙っているというふうに理解をしておきます。高エネルギーレーザーまたは粒子ビームをもって敵のミサイルの電子回路を無能化するものである。電子回路を無能化しようがどういう方法であろうが、敵のミサイルをやっつけるものであるということには変わりはない。そんなことをわざわざあなたは言っているようですな。ちゃんちゃらおかしいですよ。こっけい千万ですよ、常識のある人が聞けば。SDIだけを切り離して考える者はどこにもおりませんよ、ばかじゃない限り。私はこういう汚い表現を言いますけれども、防御と攻撃は一体のものです。当たり前でしょう。私も二年戦争に行ってきたんだから、下っ端な兵隊だけれども。ある戦線で防衛をしていれば、ある戦線では攻撃ですよ。防衛一方はいつかはやられる。当たり前の話なんです。  そこで、このように実際言っておりますね。公然といろんなところでそれは言われておるのですけれども、例えば私ここへ持ってきておりますが、ちょっとこれを出しましょう。これは調べれば幾らでもそういう資料はあると思うのですけれども、「宇宙防衛の新時代へ」という見出し、アメリカのニューヨーク・タイムズ・マガジン誌に書いてある。これはどこが出しておるかというと、「国際情勢資料」、内閣調査室ですよ。それにどう書いてあるか。「ミサイル防衛と報復攻撃力の保持を組み合わせれば、抑止力は高まるであろう。」私は、それによって抑止力が高まるなどとは思いません。逆だと思います。それの論理を展開しているいとまがありません。そうでしょう。連動して使うためのものでしょう。
  77. 岡本行夫

    ○岡本説明員 私ども、SDIの性格については、今までのところ米側の公表資料あるいは米側の説明に基づいて理解しておるわけでございますが、その限りにおきましては、SDIと申しますのは、従来の核兵器が他国の国民や領土を直接の攻撃目標とするものでありましたのに対しまして、目的といたしましてはそのようなものではなくて、敵国から飛来しつつあるミサイル、それを放置すれば回復のしようのない損害をこうむるミサイルを個別的に捕捉して、これを無能化するシステムというふうに理解しているわけでございます。  SDIはそもそも長期の研究計画でございまして、実際にこれを配備するかどうかはまだ全くわからない。それは同盟国との協議、さらにはソ連との交渉を経て、長期的な課題として決定されることと了解しております。
  78. 八木昇

    八木委員 子供だましみたいな答弁は本当に聞きたくないですね。あなた自身も答弁しながら、こっけいな答弁をおれはしているなと思うでしょう。  防御そして攻撃というシステムを持つことによって抑止される、こう言っているでしょう。それじゃアメリカはどうなんですか。SDIが具体的に開発されて立派なものができたということになれば、今一方において核ミサイルは質的にもどんどん強化拡大をしているでしょう、これは全部廃棄するのですか、アメリカは。防御、攻撃一体のシステムによって抑止力としての効果があると言っておるわけでしょう。当たり前の話なんだ。しかし、それは抑止力にならない。抑止力にならないと考えておりますよ、私は。だけれどもアメリカはそう言っているのです。そういうことになれば、先方もSDIをどんどん研究開発するし、SDIそのものを撃ち落とすという技術が開発されるでしょう。それはもう既に相当部分米ソともにできているでしょう、衛星そのものを撃ち落とすというのは。何のためにABM禁止条約というのが結ばれておるのですか。防御兵器の開発が行われるということは、一方においてどんどん核兵器そのものを拡大させるからというのでそうなっているのでしょう。
  79. 岡本行夫

    ○岡本説明員 二つの点を申し上げたいと思います。  一つは、アメリカの基本方針といたしましても、SDIの研究計画の推進というものは片方において軍備縮小努力と手を相携えて行わなければならないということで、この研究と並行して軍縮の努力は続くわけでございます。  第二点は、攻撃兵器と防御兵器のミックスがどのようなあんばいになって、つまり攻撃兵器の体系から防御兵器の体系への移行に際しまして不安定期が起こるではないかという御指摘がいろいろなところでなされるわけでございますが、その移行期間のソ連側との調整ないしはこれを国際的な場におきまして調整して、平和的に、かつ円滑に全体を防御システムによる、より安全度の高い戦略に移行する、このようなことと私どもは了解しております。
  80. 八木昇

    八木委員 どうもお話にならないのですが、防御だけにしか効力を発揮できない、攻撃は全くできない兵器なんというものは世の中に一つもありませんよ。破壊兵器ですから、そんなものは一つもないですよ。そうでしょう。大体あなた、このレーザー衛星は飛んでくるミサイルを攻撃することもできるけれども、ソ連ならソ連の地上の攻撃もできるでしょう。できないですか。できるでしょう。だからそんなことは、このSDIシステムにおいて地上攻撃はやらないという保証がどこにありますか。アメリカの大統領が口でそんなことを百言ったって、それは保証にはならない。可能なことなんですから。  それから、そういうレーザー衛星のレーザーには物すごい強度のエネルギーが要るのだろうと思いますよ、私素人だけれども。それはやはり原子力によってしかできないのじゃないですか。その二点、どうです。
  81. 岡本行夫

    ○岡本説明員 先般来御答弁申し上げておりますとおり、私どもまだSDIの技術的な詳細についてつまびらかに承知しているわけではございません。ただその目的というものが、あくまでも数千キロメートル先にございますミサイルの弾頭部分に局限的なレーザー照射を与えるなりあるいは物体を当てることによりまして、それを無能化するという理解の仕方をしているわけでございまして、これが地上を攻撃できるのかどうか、そのようなことはまだSDIの研究自体が進んでおりませんので、今後の進展にかかっておるところも大きいかと思いますが、基本的にはこれは防御のためにしか使わないという説明を我々としては了解しているわけでございます。  それから、お尋ねのエックス線レーザーのお話でございますが、これも私どもといたしましては、SDIの全体のシステムの中でこの技術がどのような位置を占めるものか、あるいはそれが核兵器であるかどうかといったようなことについて、まだ確たる心証を有しているわけではございません。
  82. 八木昇

    八木委員 それで印象はわかりました。それならばあなたの報告というのは、その報告を十分に検討して中曽根総理大臣関係大臣とも協議し、SDIに協力するかどうかの態度を決めるということを言っておるのですけれども、それでは全然それの判断ができる報告書にはなりませんね。私はそう理解します。あなたのおっしゃるとおりの報告書なら、そうとしかお聞きになっている皆さんお思いにならないと思います。  時間があと二分になってしまいましたので、最後に長官に聞きますが、大変なことを中曽根さんはアメリカで、外交の最高のボスの会談でこのような話をするということは、日本の新聞、マスコミが一斉に言っておるように、一歩踏み込んだものと理解するのが常識でしょうね。アメリカはそう思ったと思いますよ。結局、ついこの間まで国会では繰り返し我々も執拗に質問、追及をしたのですけれども、SDIについては慎重に対処をいたします、慎重に対処をいたしますと言ってきておりながら、アメリカへ行ったら途端に、調査団の報告をよく研究した上でと言うのですよ。研究する材料にならぬじゃないですか、今のような答弁なら。これは、研究した上で日本の対応について政府内で十分に相談していくというふうにレーガンに言っておるわけですね。ということは、もう近くSDI研究理解するという態度から参加の方向へ向けて前向きになりつつあるということを示したものであり、アメリカ側は当然日本のSDI参加が近いという判断をしたというか、上品な言い方をすれば期待を高めたということは間違いがないのでありますけれども科学技術庁長官はどうお思いになりますか。  それで、これがそういうものの共同研究やその他に参加するということなら、この法案は通せませんよ。その態度を明らかにしないままこの法案審議は終わりませんよ。きょう私は質問を二十五分も待たされたのですが、やいやい理事会で言っておられたけれども日本の運命を左右するような重大な問題について態度を明らかにしないでこの法案を通すというのですか、自民党の諸君に言うけれども。そんなことはできない。どうですか。
  83. 河野洋平

    河野国務大臣 中曽根総理がアメリカでどのような発言をされたか、また、その発言をレーガン大統領がどういう印象で受けとめられたかは、実はまだ定かではございません。はっきりした事実関係を今この時点では承知いたしておりませんので、はっきりしたことはお答えできないところでございますが、SDIにつきましては、先ほど来先生からもいろいろ御質問がございましたけれども、このSDIの第三次調査団にも科学技術庁から一名参加をさせまして、調査をして戻ってきております。SDIにつきましては、今御質問がありましたように、いろいろな性格を持ち、いろいろな角度から慎重に検討をすべきものであろう。恐らく外務省は外交政策上の問題、日米関係を初めとする国際情勢、その他あらゆる外交政策上の観点から検討されるだろうと思いますし、防衛庁はまた防衛政策上の観点からも御検討になるのではないか。これは私にはよくわかりませんが、それぞれ責任を持つ分野についてそれぞれの判断があるのだろうと思います。  私ども科学技術庁といたしましては、このSDI研究というものが科学技術の進歩発展と申しますか、あるいは研究というものに一体どういう影響を持つのかというようなことに無関心ではいられない。ヨーロッパ各国の動きなどを見ておりますと、いずれもこのSDI研究というものに対して、科学技術を担当する分野の人たちが一様に関心を寄せていた時期があったことは事実でございます。その後その関心が強まったところもあれば、薄まったところもございますけれども、一様にSDI研究ということには関心を持っていたことは事実でございまして、私どもといたしましても、科学技術行政を担当するという立場からも、このSDI研究というものが一体いかなるものであり、いかなるかかわり合いといいますか、影響を持つかということについては、十分慎重に研究しなければならぬ、こう考えておるわけでございまして、まだまだ今の段階ではそれについての賛否を決定するという段階ではございません。
  84. 八木昇

    八木委員 一応その点を慎重に研究するということで承っておきます。といいますのは、これで終わりますけれども、なぜ私が執拗に言うかというと、第十条というのが最後閣議のところではっと加わっているのですよね。その第十条の中に、共産党の委員の方が質問されましたね、日米安保条約は入るのですかという質問に対し、入るとおっしゃる。何かSDI参加や今後の軍事技術アメリカとの共同研究開発とか、いろいろなことの伏線があるように思います。この辺の事情に関心を持っている人たちはそう見ておりますよ。その点については後で同僚議員がいろいち質問すると思いますけれども、それもあるものですから私はお伺いしたのです。科学技術庁長官としてはSDIの問題は慎重に研究するという御答弁をいただいて、私の質問は一応これで終わります。
  85. 大久保直彦

    ○大久保委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時三十分休憩      ————◇—————     午後二時三十四分開議
  86. 大久保直彦

    ○大久保委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。安井吉典君。
  87. 安井吉典

    ○安井委員 この法律案の前段に臨調なり行革審があったということについて、私はいささか割り切れない思いをしているものですから、その点から少しお尋ねをしていきたいと思います。  三月二十八日に政府は科学技術政策大綱を閣議決定しているようです。その大綱なるものは、臨調行革だとかあるいは行革審の答申の中に科学技術政策大綱をつくれ、こう書いてありますね、それを受けて六十年九月二十四日、行革具体化という閣議決定の中で決められているわけです。私は、行政改革、改革するのは何でもいいと思うのですけれども、時の政府の政策の基本あるいはそのつくり方に至るまで、これも行革これも行革という形で踏み込んだ答申のあり方というのが基本的にどうも問題があるような気がしてならないわけであります。つまり、科学技術をどう振興するか、その基本の問題などは行革審の方で言われなくたって政府がきちんと立てるべきですよ。それを向こうから言われて初めて閣議決定したという、その経過がどうも気になってならない次第であります。その点、大臣どうお考えでしょうか。
  88. 河野洋平

    河野国務大臣 科学技術行政に係る基本的な姿勢については、私どもは、科学技術庁としてみずからこれの改革すべきところは改革に当たらなければならぬというのは当然のことであろうと思います。ただ、科学技術政策につきましては、それぞれの分野に専門家の方々も数多くおられるわけでございまして、こうした方々から科学技術行政についてこうあった方がよりよいのではないかという御提言、これはまたこれで、その提言がいいとか悪いとかというべきものではない、的を射た提言であれば、これは素直にちょうだいをするのは当然のことだと思います。  いずれにいたしましても、科学技術行政がこれから進んでいく方向につきましては、科学技術委員会を初めとする立法府の審議を経て決定されるものであって、一審議会あるいは単に役所の決定だけでこうした重大な問題が固まっていくということではないと思います。ただ、科学技術政策大綱というものを閣議で決めさせていただきましたのは、これによりまして各省庁が一丸となって体系的に科学技術政策を進めていく必要がある、こういうことから閣議決定をさせていただいたわけでございます。
  89. 安井吉典

    ○安井委員 今の科学技術政策のありようについていろいろ問題がある、そういう指摘はだれがしてもいいし、行革審あるいは臨調の仕事としても当然だと思います。ただ、科学技術政策大綱をつくれ、そういう中で、これを入れろとかあれをしろとか、そういうお指図までしていただかなくたって、日本の国会も政府もちゃんとしているような気が私はするわけです。その点の問題を私は私なりに感じていたものですから、率直に申し上げたわけであります。  調べてみますと、昭和五十一年の六月に学術会議は、科学研究基本法をつくれという試案を示して政府に勧告をしているようでありますが、政策大綱などという言い方から問題を進めていくということにすれば、今度のような交流促進法などと問題を短小化したそういうことじゃなしに、もう少し日本科学研究なり科学技術政策の基本はいかにあるべきかという、大上段に振りかぶった取り組みというのがまず必要ではないか、そう思うわけてあります。この点についてはどうですか。
  90. 河野洋平

    河野国務大臣 この時期におきまして我々が考えなければなりませんことは、行革審の答申などにも指摘がありますように、国の研究機関の活性化でございますとか、産学官研究機関研究交流の促進、あるいは研究開発の基盤、条件の整備といったことが重要だということでございます。そして、先ほどから申し上げておりますが、研究すべきレベルが非常に高くなってきた、また複雑化してきたということを考えますと、従来の枠組みを超えた交流というものが極めて重要じゃないか、こういう認識でございます。研究交流促進法一本で問題がすべて片づくとも思っておりませんが、従来それぞれの研究に携わる方々あるいは機関が不自由に感じていた法制上の隘路を取り除いて、一歩前進させるという意味でこの法律がぜひ必要だと考えている次第でございます。
  91. 安井吉典

    ○安井委員 けさの新聞に、終戦のときに天皇が、戦争に負けたのは日本の我が軍人が精神に重きを置き過ぎて科学を忘れたからだという指摘をされて、これは皇太子にあてた手紙だというので大きく出ていますが、ちょうど大臣が今重要な法案だとおっしゃる、その法案審議の際の新聞にはっと出たというのはおもしろいと私は思うのです。  それはそれとして、臨調や行革審から指摘されるようなそういう状態において、科学技術というのは科学技術庁の専管事項ではありません、どこの省だってこれはやるわけですけれども、そういう中において、科学技術庁としては総合調整とかいろいろな役割があるわけですが、今までのあり方についてどのような反省をし、これからどのように取り組んでいかれるおつもりか、それをひとつお伺いします。
  92. 矢橋有彦

    矢橋政府委員 ただいま先生指摘の行革審の答申の中でも、国の研究機関の活性化の問題、あるいは研究交流の問題、さらには基盤、条件の整備の問題等と並びまして、科学技術庁に対しまして科学技術政策の確立とその総合的推進体制の整備の重要性を特に指摘をしておるわけでございます。内容的には年来私どもとしてもやりたいと思っておりましたことが多々ございまして、全体として非常に適切な答申であるとまず考えておるわけでございます。と同時に、これは先生のただいまのお言葉の中にもございましたように、意味としては私どもに対する一つの叱責でもあると理解をしているわけでございます。  そこで、行革審が総合調整の関係で言っておりますことは四点ございます。一つは先ほど来お話の出ております科学技術政策大綱の閣議決定の問題、二番目は科学技術会議の機能の強化の問題、三番目は科学技術庁の内部組織の再編成の問題、四番目は創造的な基礎的研究への予算の重点配分の問題、これらを具体的に指摘しているわけでございます。  そこで、私どもといたしましてこれらを可能な限り早急に実現するよう努力を払っている最中でございます。まず大綱につきましては、三月二十八日の閣議で決定をいたしまして、これによりまして科学技術振興に関する国としての当面の基本方針が定まった次第でございます。科学技術会議の機能強化につきましては、政策委員会の機能の拡充等を中心に充実を図ってまいりたいと思っております。それから科学技術庁の内部組織の再編成につきましては、七月一日にこれを実施すべく準備中でございます。従来の計画局、研究調整局及び振興局を再編成いたしまして、新しく科学技術政策局、科学技術振興局及び研究開発局に改めようとするものでございますが、そのねらいの最重要なものは、科学技術庁の総合的な企画調整機能及び科学技術会議の事務局たる機能をより十分なものにするための一つの努力でございます。  それから予算の関係では、先般予算の御報告の中で申し上げましたように、科学技術庁の総予算は昭和六十一年度、対前年度比一・六%の増加でございますけれども、創造的、基礎的な研究への予算の配分につきましては、約五〇%アップということで大幅な増加を組んでおります。内容的には、科学技術振興調整費の大幅な拡充、フロンティア研究推進制度とかあるいはハイテクコンソーシアム制度等の創設といったもので、特にこの面で十分な努力を払っているつもりでございます。今後科学技術庁といたしまして総合的調整機能の拡充のために努力すべき点は多々あろうと存じますが、なお一層努力してまいりたいと考えている次第でございます。
  93. 安井吉典

    ○安井委員 今いろいろお挙げになりましたが、私は、そのほかに一つ大事な問題があるのではないかと思います。それは、原子力船「むつ」がとにかく大変なむだだ、大きなむだの標本だということで、今日までいろいろ論議されてきているわけでありますが、その存廃を議論する論議の中で、科学技術評価制度というようなものが必要ではないかという議論があったように思っております。アメリカの議会には附属機関として技術評価局、OTAがあるわけです。何でも一九七四年の設立で、専門職員が約百四十人もいて、ちょうどこの科学技術委員会のようなものが、さまざまな科学技術のあり方に対するお日付役という役割を果たしている、そういう例があります。ただ、アメリカの議会制度と日本の議会制度とは違う点があることは間違いありませんけれども科学技術を評価して常に反省をしていく仕組みは大変大事なことではないかと私は思うのですが、その点どうですか。
  94. 長柄喜一郎

    長柄政府委員 お答え申し上げます。  研究評価制度が非常に重要だということは国内のみならず海外でも認識されておりまして、特に最近のように研究費に限度があるということで、限られた研究資金を有効に使わなければいかぬという意味から、この問題が強く言われているわけでございます。現在科学技術会議の中の政策委員会におきまして、研究評価指針策定小委員会というものを設けております。昨年の春から設けておりまして、日本学術会議の会長の近藤次郎先生がその委員長で、いろいろ御議論願っているわけでございます。  研究評価と申しましても、非常に基礎的な課題から「むつ」のような大型プロジェクト、さらに核融合のようなものもある、それから非常に応用的なものもある、いろいろな種類のものがございます。一つの方法で評価できるわけではございませんで、いろいろな手法を使わなければいかぬということでございます。現在研究評価についての基本的な方針というようなことを詰めておりまして、これは近くまとまり、公表する予定にしております。引き続き実際に研究評価を適用するガイドラインを策定し、これも公表するということで、我々としては研究評価の定着に向けて努力を払っているところでございます。
  95. 安井吉典

    ○安井委員 それと国会との関係はどうお考えですか。
  96. 長柄喜一郎

    長柄政府委員 今私たちがやっておりますのは、行政府部内における研究評価をどうするかということで、いろいろな考え方、手法、そういうものについて検討しているところでございます。
  97. 安井吉典

    ○安井委員 さっき私もちょっと申し上げましたふうに、科学技術というのは、その研究は各省庁にまたがっているわけです。政府部内全体の問題であります。特にバイオテクノロジーなどは、各省庁で競争してやっておるようにも思います。そういうふうな競争でいいものをつくろうというのはいいことですけれども、その反面、エアポケットみたいなものができたり大事なことがドロップしたり、そんなことだってあり得るわけであります。国費は少ないわけですから、それこそ行革をしなければいけないように少ないわけですから、効率的な運用ということが望まれるわけですね。したがって、各省全体にまたがって目を光らせて対策を要求していく、そういう立場は私は国会の機能として非常に大事な問題ではなかろうかと思うわけであります。例えば会計検査院が国会に報告して、それを基礎にしていろいろ議論をすると同じように、科学技術を本当に合理的な発展をさせるという意味合いからすれば、国会をその機能発揮の中に位置づけていく、そういう検討が必要ではないかと思います。むしろ国会が乗り出してやっていくぐらいのつもりでなければこれはいかぬわけでありますが、その点どうですか。
  98. 長柄喜一郎

    長柄政府委員 研究評価といいますか、それぞれの研究プロジェクトごとにやるケースと、集団また国レベルというような検討があろうかと思います。現在日本全体の研究全体についてどういう状態にあり、また何が問題か、どうすべきかというふうな点につきましては、科学技術会議が国全体の現状を評価し、そして新しい政策を立てていくということで、役割は行政部内についてはあると思うのでございますが、立法府におけるアメリカの例えばOTAのような機能を持つことについてどうかという御指摘かと思うのでございますけれども、それにつきましては、我々行政部内の者としてはちょっと意見を言うのを控えさせていただきたいと思います。
  99. 安井吉典

    ○安井委員 それは大臣から後でお答えいただきたいと思います。今科学技術会議でおやりになるそうでありますけれども、そのための専属のスタッフはどれぐらいふえたのか、それからそのための予算はどれくらい計上されているのか、伺います。
  100. 長柄喜一郎

    長柄政府委員 現在のところ、私の方の計画局が中心になりまして科学技術会議の事務局をやっております。大学の関係もございますので文部省も共同事務局ということで入っておりまして、直接携わっている者の数は三十人とか四十人という範囲だと思います。そのほか、関係省庁から専門調査官というのに来ていただいておりまして、これは科学技術庁の定員でございませんけれども、仕事の内容によってはその各省の専門調査官の方にいろいろ仕事をやっていただいておる、こういうことでございます。  ただ、もう一つ科学技術庁はこの七月に内部組織の改編をすることになっておりまして、そのねらいの一つ科学技術会議の事務局強化ということがございます。これがございますと、科学技術会議の事務局担当の職員の数も現在よりもかなりふえるものというふうに考えております。
  101. 安井吉典

    ○安井委員 あなたが今説明をされたのは現在の科学技術会議のスタッフであって、だから、科学技術評価制度に力を入れるというわけですから、そのためにどれだけスタッフを新しくふやしたのか、そのための予算をどれだけふやしたのかということを私は聞いているわけです。実際は余りないのでしょう。これは名前だけでしょう。
  102. 長柄喜一郎

    長柄政府委員 現在科学技術会議の評価制度の検討委員会で、外部の大学の先生、企業の方、国立大学の方、国立研究所の方それから役所の方、こういう方に集まっていただいて議論しているわけでございます。そのための予算というのは特にございません。ただ、このガイドラインができたりいたしますと、このガイドラインを個々のプロジェクトに適用して評価をするというのは、かなりのマンパワーと資金は必要なものと考えております。
  103. 安井吉典

    ○安井委員 それはいつからスタートするのですか。
  104. 長柄喜一郎

    長柄政府委員 今ガイドラインをつくっておりますのは、それぞれの省庁においてまずやっていただくためのガイドラインをつくっておりまして、私たちはガイドラインができ次第それを公表し、各省庁にもそれをお見せして、このガイドラインに従ってできるだけ研究評価をやってくださいというふうにお願いするつもりでございまして、ガイドラインができ次第各省庁にお願いするというふうに考えております。
  105. 安井吉典

    ○安井委員 大臣、どうでしょう。これはもう少し力を入れなければまた「むつ」みたいなことを何度も繰り返すようなことになるのじゃないかしら。
  106. 河野洋平

    河野国務大臣 研究の評価というのはなかなか難しいと思います。相当にレベルの高い、新しい、あるいは未知の分野で行われる研究を評価するというのは、簡単に普遍的な制度で評価し切れるかどうかというものもあると思います。しかし一方で、確かに先生おっしゃるように研究費というものが非常に貴重な大切な財源から出されていることを考えますれば、こうしたものの評価をすることもまた必要であろうと思うわけでございます。  制度的な問題として、例えば研究をプロジェクトごとに三年とか五年ということに区切ってその成果をチェックをしていくという制度的なやり方も考えているわけでございまして、そうした制度的な問題、あるいは今やりとりがございました評価委員会という、その分野その分野の専門家の方々によるチェックの仕方、さまざまな仕方、やり方がある。さらにまた先生が御指摘になりましたように、全体のバランスを考えてどこか欠落しているところはないかという意味のチェックというものもあろうかと思いますが、そうしたことをずっと目配りをしながら、制度上確立すべきもの、そうしたものもやっていかなければいけないと思っております。
  107. 安井吉典

    ○安井委員 まだ今の段階、固まっていないようですから、さらに進んだ段階でもう少し詰めたいと思いますし、御報告もいただきたいと思います。きょうはその程度にしておきます。  今、お話が原子力船「むつ」のことにいったわけであります。何しろ二十年間で六百億円近くのお金が費やされ、これから後さらに五百億円とか千億円とか言われるような金が積まれるということで、これは与党自民党の中にも特別な研究チームができて総務会が乗り出すというようなところまでいっているわけでありますが、話がちょうどそこへいきましたので、ことし並びに今後においてどう処理をされるおつもりかということをひとつ伺います。
  108. 中村守孝

    ○中村(守)政府委員 お答えいたします。  原子力船「むつ」については、五十九年におきまして当委員会においてもいろいろ御審議をいただいたわけでございまして、関係方面のいろいろな御意見を外しまして原子力船「むつ」の今後の進め方について私どもの方で検討いたしまして、昭和六十年三月にその基本計画を策定し、現在その線に沿って仕事を進めておるわけでございます。  現在当面の仕事は、関根浜の新定係港の建設が最大のものでございまして、六十二年度末までに港湾施設を完成させ、現在大湊に停泊しております原子力船「むつ」を関根浜の新定係港に六十二年度中に回航するということで、地元の方々とのお話もできておるところでございます。附帯陸上施設につきましては、引き続き工事を進めまして六十三年度末までに完成させることにいたしております。したがいまして、実際の「むつ」を使いました実験は六十四年度から始まるわけでございまして、おおむね一年をめどとする実験航海を行いまして、陸上の研究施設では得られない、海上でのいろいろな環境の中で将来の舶用炉の開発の上で必要となるデータの収集に努めていくことといたしております。
  109. 安井吉典

    ○安井委員 もう少し聞きたいところですが、むだの標本の質問に時間をむだにするのももったいないですから、先に進みます。  今一つ思い出しましたけれども、あれは何年でしたか、約十年前、私が科学技術特別委員長のときに事件が起きて、当時の森山長官、小宮山自民党の理事キャップがけんかをするというような一幕もあって、大変だったのですよね。ところが、十年以上もたっていまだに何も進んでなくて、この国会でも論議に出るというようなことで、本当に困る問題だと思います。一定の方向は出ているということは聞いておりますけれども、私は、もうすっぱり切っちゃったらいい、少なくとも一日も早く問題を決着をつける、こんなのはやめてしまうという方向でお伺いをいたしたいと思います。  次に、この法律案を読んでいて、「政令で定めるところにより」というのが実にたくさんあるわけですね。たった十カ条の条文の中に、私の計算では十六項目ぐらいありますね。あるいはもっと多いのかもしれません、計算違いがあるかもしれませんが。そういう中身を明確にしてくれなければ、どうも我々よくわからぬわけであります。特にこの法律案の第二条の「定義」の項でありますが、この研究交流促進の主体になるのはいわゆる試験研究機関等であります。これが政令の定めるところによる、こうなっているのですね。  私は、いろいろ今までの法律を見たって、余りひどいんじゃないかというような気がするのですね。普通は、たくさんあることはわかりますから、それは別表の定めるところに、昔の法律はみんなそうだったのですよ。ところがもう最近になって、行革か何か知りませんけれども。簡略化して、何もかも面倒くさいから、国会がうるさいから、政令に定めるところにと、ぱあっといっているわけです。ですから、どの機関が主人公かということは、国民はこの法律を読んだだけじゃわからぬわけですよ。国会議員がわからぬわけですよ。私はそのつくり方そのものに問題があるように思うわけでありますが、政令の定めるところによってこれこれが主人公の扱いだということになるわけですけれども、どういう方向でその政令が決められるのか。たくさん試験研究機関等があるわけでしょう。それをどういうふうにセレクトしていくかという方針が、この法律を読んだ限りでは全然ないわけですよね。一体どうなっているのか、この点ひとつ御説明ください。
  110. 長柄喜一郎

    長柄政府委員 この法律におきます試験研究機関等とは、人文科学のようなものは除いておりますけれども科学技術に関する試験研究を行っている機関、いわゆる国立試験研究所等でございまして、それを決める際は、科学技術に関する試験研究を行うことをその所掌事務としているものを指定する考えでございます。  なお、一号では一般の国立研究機関というようにお考えいただいていいと思います。第二号というのは「特別の機関」となっておりますが、これは、通産省工業技術院の傘下にある国立の研究所及び防衛庁技術研究本部の傘下にある研究所が第二号でございます。第三号は、地方支分部局に置かれる試験所、研究所等でございまして、これに該当するものとしては、北海道開発庁の北海道開発局にございます土木試験所が該当するものでございまして、個々の国立研究所等の名前につきましては政令で定めますが、この一、二、三いずれかに該当するものということでございます。
  111. 安井吉典

    ○安井委員 そんなことを言われたって、法律を全部繰ってみなければわからないじゃないですか。資料も全然配られてないんだよ。みんなわかったような顔をしておるけれども、わからないのですよ。具体的なここの試験所がどうなのか、ここの研究所がどうなのか、これは外れるのか外れないのか、これを明確にしていただかなければいかぬと思います。ひとつ資料としてその全体を各号別に——今のところは予定でしょう。これはしようがないから、政府の決める政令事項ですから、国会として関与するつもりはないが、しかし、どういうものを予定するのかということぐらい、はっきり出してもらわなければいかぬと思いますが、どうですか。
  112. 長柄喜一郎

    長柄政府委員 試験研究機関等として想定されるものでございますけれども、今私たちが想定しておるものは百九ございます。一号関係で八十、二号関係で二十八、三号関係で一機関でございますが、それにつきましてはいずれも、先ほど申しましたように所掌事務で試験とか研究をやるという任務を持っている研究所、試験所等を考えております。
  113. 安井吉典

    ○安井委員 私はその数を聞いておるのじゃないのです。資料として出してくださいと言っておるのです。
  114. 長柄喜一郎

    長柄政府委員 詳細は政令で定めることになりますが、今予定しております百九の試験所、研究所等については提出します。
  115. 安井吉典

    ○安井委員 それはもうぜひ出していただきたいと思います。  ただ、何か政府はどうしても自分の方であずかりたいものだから政令というふうを言い方をしているんじゃないかなと思うのですけれども、今ある百九というのは該当する全機関ですか、それともその中から外れたものがあって、それで百九になっておるのか。それからもう一つは、今後加えていくとすれば選択の基準は何ですか。
  116. 長柄喜一郎

    長柄政府委員 今百九と申しましたのは、法律ないし政令において所掌事務が研究とか試験とか、そういう字句のある研究所でございます。それで、これを追加するというのは、研究所が新たに生まれたりいたしますと追加する、合併したりして廃止されると減っていく、こういう構造になろうかと思います。
  117. 安井吉典

    ○安井委員 では、一応選択の基準はそういう機械的なものだというふうに御説明があったと聞いておきます。  それから、「人文科学のみに係るものを除く。」という第一条の規定がありますが、私は、交流する場合に、近ごろのようにライフサイエンスだとかあるいはまた技術開発と経済性の問題だとか、いろいろ複雑な要素が出てくることからいえば、人文関係の試験研究機関との交流というようなことも一緒に入れてもいいような気がするのですが、この辺はどうなっておるのですか。
  118. 長柄喜一郎

    長柄政府委員 行革審答申におきましては人文科学は対象にされてないというふうに理解しております。といいますのは、我々が今回の法律で検討しましたのは自然科学を中心に考えたわけでございますが、自然科学の場合には集団でいろいろ仕事をする、本来そういう性格のものでございます。人文科学の場合は個人で仕事をするというようなケースが多かろうと思いますけれども、そういう意味で今回の法案では人文科学のみのものは除いておる次第でございます。  ただ、今後の科学技術政策をいろいろ展開するに当たりまして、科学技術人間とか社会というふうなことが非常にかかわりを持ってまいります。そういう意味で、今回の法律では人文科学のみのものを除きまして、人文科学と自然科学が一緒になっているものを対象にしている、こういうことで御理解を願いたい、こう思う次第でございます。  なお、人文科学の研究の大部分は大学で行われているというふうに理解しているわけでございますが、大学につきましては教育公務員特例法で別途身分法的なことについては措置されております。そういうことで、この法律の適用がなくても大学においてはかなり自由に、弾力的にいろいろな仕事ができるという仕組みになっております。
  119. 安井吉典

    ○安井委員 一応その資料を見せていただいて、さらに審議をさせていただきたいと思います。  動燃事業団の貯蔵工学センターが問題化しているわけですが、こういうのはどういう扱いになるわけですか、この法律では。
  120. 長柄喜一郎

    長柄政府委員 動燃事業団は特殊法人でございますので、この法律で言います「国以外の者」に当たります。
  121. 安井吉典

    ○安井委員 では、そういう立場で研究交流を進めることにはなるわけですね。
  122. 長柄喜一郎

    長柄政府委員 そのとおりでございます。  ただ、特殊法人は身分法上は純粋民間でございませんで、いろいろと国家公務員と行き来する場合に、退職金その他の隘路というような問題はございません。身分上は国家公務員とほぼ同等な地位を占めるというふうな特殊な性格を持っております。が、この法律で言います「国と国以外の者」と分けました場合は「国以外の者」に該当いたします。
  123. 安井吉典

    ○安井委員 それに似たようなもので農業機械化研究所というのを私先日見てまいりまして、これに関連する法律案が今出て、これは農林水産委員会審議しているわけですが、ちょっとおかしいなと思ったものですから、そのことを、きょうは農林水産省からもおいでいただいておりますね、ちょっと御説明いただきたいと思うわけであります。  今度、大変長い妙な名前の法律案が農林省から国会に出されています。生物系特定産業技術研究推進機構法案、こう言うわけです。ちょっと一回読んでもこれは何だがその性格がわからぬような名前でありますが、これは現在農業機械化促進法というのがあって、農業機械化研究所が大変役立ちの多い研究を進めているわけですが、今度はその生物系特定産業技術というのですかね、そういうものに対して融資をする。その融資の機関を農業機械化研究所にくっつけたわけですね。だから、アカデミックな研究機関と融資機関とが一緒になって妙な名前になったわけですね。必然性がないような気がしてならぬわけです。  これも、さっき私は臨調行革に対する批判を申し上げましたけれども、とにかく名目的にこれらの機構を減らしさえすればいい、そういう原則と、もう一つは今度の機構の中には、金貸しなものですから大蔵省も入ってくるわけですね。大蔵、農林との間の権限争い、官僚的な割拠主義とでもいいますか、そういうものとの奇妙な妥協の産物だと私は見てきたわけであります。しかも、今までの農業機械化研究所は特殊法人なんですね。今度、これを特別認可法人にするわけですね。特殊法人が一つ減ったということも、行革の手柄になるのかもしれません。その生物系特定産業の研究といいますか、いわゆるバイオテクノロジーといったようなものではないかと思うのですけれども、そういうものへの融資業務、私はこれを否定するわけじゃない。これはどんどんやってしかるべきことであろうと思うのですが、何か二つ一緒にしちゃったことがどうも不合理を生じていくのではないかということを、この間現場を見てきて心配をしてまいりました。  そのあり方について、例えば農業機械化研究所というのは、インスティチュート・オブ・アグリカルチュラル・マシーテリーという名前で、略称IAMというので国際的にも通っているわけですよ。それが今度妙な名前になって、一体これはどうすればいいんですかという話を研究員の人たちからも聞いてまいりました。科学技術研究という大事な仕事を何か行革ムードの中で変なものにゆがめてしまっているということを、私は大変に遺憾に思ったわけでありますが、ひとつ御説明ください。
  124. 兵藤宗郎

    ○兵藤説明員 お答えいたします。  今までは、どちらかというと農林漁業に関する技術研究というのは国、県が中心といいますか、かなりウエートを置いてやってまいりました。しかし、近年に至りまして、一つはハイテク、新素材、あるいはメカトロニクスみたいな、新しい、先端的な技術の進展に目覚ましいものがあるわけです。それからもう一つは、一村一品運動みたいな感じで、何とか自分の地域の特産的な農産物あるいは特産的な食品加工をしたいという面、そういう両面にわたりまして、民間技術研究の意欲がかなり高まってきております。国全体としての技術開発力を高めるというのは、国全体としての生産性の飛躍的向上という点から極めて重要なことだと考えているわけでございます。したがいまして、民間のそういった試験研究に係るリスクマネーの供給あるいは産学官の連携を一層推進することによりまして、ハイテク等の先端的な技術のみならず、農業の地域性を生かした特産的な食品の開発というようなところまで、極めて幅広い分野の民間における技術研究を支援するということが、我が国の農林漁業の体質強化を図るために極めて重要であると考えたわけでございます。  そこで、御指摘の機械化研究所との関連でございますが、このような民間技術研究の支援と機械化研究所で実施している機械化促進法に基づきます研究の間には、技術研究を通じての農業の体質強化を図るという点では、目的、趣旨は当然のことながら一致しておりますけれども、機械化の研究に際しましても、例えば新しい農業資材あるいは新しい特性を持った品種の開発、そういった農業機械以外の分野の研究と密接な関連があるわけでございます。これらを六機構で一体的に行うということが今後の両事業の推進上有効であるというふうにまず考えたわけでございます。現在審議をお願いしております生物系特定産業技術研究推進機構法案におきましては、このような判断に立ちまして、一方行政簡素化の要請にも配慮いたしまして、農業機械化研究所を発展的に改組し、これらの両業務をあわせ行う機構を設立するということにしたわけでございます。
  125. 安井吉典

    ○安井委員 これはきょうの本題ではありませんから、指摘だけにとどめておきたいと思いますが、今の御説明のように、ハイテクが大事だということを私は否定しているわけでは決してないわけです。そのとき、農業機械化研究所を見た帰りにキッコーマンの生物科学研究所も見てまいりましたら、大変基礎的な研究で、いわゆる細胞融合、草と草の細胞融合はポテトとトマトの融合がポマトというあれで成功した例をさらに乗り越えて、樹木と樹木の細胞融合、ここではカラタチとオレンジの融合に成功して、これくらいの高さのひょろひょろっとした植物を見せられました。オレンジとカラタチの融合ですからオレタチというのだそうです。  いずれにいたしましても、ハイテクの研究をどんどんやってほしい。それはもうわかるのですけれども、この機構はその研究機関じゃないのですよ。ハイテクをやるときのお金を貸すという、それだけなんですよ。その機械化研究所というのは、きちっとした、まさに農業の近代化のために大事な研究を、トラクターなどについてもいろいろやっています。だから、農業機械化研究所が金貸しもやります、そういうスタイルですから、私はどうも、これが今の政府の科学技術政策の一つのあらわれかな、そういう印象を受けましたので、ひとつ問題点として指摘だけしておきます。  そこで、研究公務員の問題でございますが、第二条の第二項ですね。これはちょっと読み方がわからぬところがあるわけでありますが、研究職とか教育職とかを指すものだと思いますが、これも「政令で定める者」ということにしているわけです。これも選択の基準はどうなのかということについて伺いたいと思います。
  126. 長柄喜一郎

    長柄政府委員 第二条第二項の研究公務員の定義でございますが、一号の一般職について申し上げますと、「別表第七研究職俸給表の適用を受ける職員」、これはいわゆる研究職でございますが、ただし一級を除いております。これは一般には、大学を卒業して国家公務員試験を受けて入った研究者でございまして、これについてはすべてでございます。「政令で定める者」と言っておりますのは、別表第六教育職俸給表(一)それから別表第八医療職俸給表(一)を受けている方で研究をやっていらっしゃる方であります。  研究職というのは、間違いなく研究をやっている職でございます。  医療職といいますのは、一般には病院のお医者さんでございますが、医療職の中には、病院におきまして例えば臨床研究部というような研究部門を持っています、そういうところで働いていらっしゃるお医者さん、実際に研究をやっていらっしゃいますお医者さんは、何々病院の何々研究部で研究に従事していらっしゃる医療職の方というふうなことを政令で定めることにしております。  教育職につきましても同様でございまして、これは括弧内で「教育公務員特例法の規定の適用又は準用を受ける職員を除く。」ということで、いわゆる国立大学の先生方は適用除外になっておりますが、その他の教育職といいますと大学校でございます。大学校の教授、助教授、講師などをされていて、自然科学の研究をなさっている方、こういう方につきましては別途政令でその範囲を定めるというふうにしております。  第二号につきましても、同様の趣旨でございます。
  127. 安井吉典

    ○安井委員 これもひとつ政令予定事項として、もう少しわかりやすい資料を出していただきたいと思います。  それから、自衛隊、防衛庁等の規定がこの中に入ってきているわけでありますが、私の調べたところでは、二月の初め段階の検討事項のときには防衛関係は入っていなかったように思うのですが、その後に入れたのですか。検討中の経過についてちょっと伺います。
  128. 長柄喜一郎

    長柄政府委員 昨年行革審答申を受けて、すぐに科学技術庁中心に各省が集まりまして、相談しながらこの法案の内容について検討したわけでございますが、法案の検討の当初から、国の研究機関研究なさっている研究者の方を全部含めるという考えで進んでまいりました。ただ、けさ八木先生答弁にも申し上げましたが、防衛庁研究者の方は特別職である、その他の省庁の方は一般職である、一般職特別職研究者の方を一つ法律で扱うのがいいかどうかという立法技術上の問題で、別にするかどうかという検討をした事実はございます。結論といたしましては、同じく研究に従事しておられるということで、他の法律でもこういう例はございます。そういうことで、防衛庁研究者の方、その他の省庁研究者の方を同一の法律で扱うことにしたものでございます。
  129. 安井吉典

    ○安井委員 当初の検討が進んでいる中で、官房の方から防衛も入れろよというので急速入れることになった、そういうふうな話を聞いておりますが、どうですか。
  130. 長柄喜一郎

    長柄政府委員 そういうことは私ども伺っておりません。
  131. 安井吉典

    ○安井委員 それは、別なところに移した議論にしたいと思います。  この第十条に「配慮事項」というのがあって、「国際的な平和及び安全の維持について特別の配慮」というような言葉が国際交流に際して規定されているわけでありますが、この研究職の中へ自衛隊あるいは防衛庁関係公務員を入れるに際して、この「配慮事項」がそのままここにかかってくるということでないにしても、この趣旨はこの法律案全体に貫かれるべきではないか、そういう意味合いからも、防衛庁職員関係が入ってくるということはどうもおかしいのではないか、私はそう思うのですが、どうですか。
  132. 長柄喜一郎

    長柄政府委員 第十条の「配慮事項」でございますが、この法律を適用して「国際的な交流を促進するに当たっては、条約その他の国際約束を誠実に履行すべき義務並びに国際的な平和及び安全の維持について特別の配慮を払うものとする。」こういう特別な配慮事項がございますが、本件は、防衛庁職員が身分法的にこの法律の対象になるかならないかということには一切無関係でございまして、国が約束しておりますいろいろな約束事、こういうことについて国際協力を進める場合に十分特別の配慮を払う必要があるということを明文化したものでございまして、防衛庁問題は、防衛庁を入れるかどうかという話とは一切関係ございません。
  133. 安井吉典

    ○安井委員 この規定の中で、休職の場合の扱いがございますね。休職をして民間の企業に出て、そこでの共同作業で例えば兵器生産をやるというようなケースも出てくるのではないか。その際、休職中であっても国家公務員としての性格が残っているわけですから、その場合は企業に奉仕するというのか国民全体に奉仕するというのか、その公務員の立場というのが問われるように思うわけですね。つまり、国家公務員法との関係においてどう理解すればよろしいのですか。
  134. 吉村晴光

    ○吉村説明員 ただいまのお尋ねの点は、研究公務員が休職をいたしまして民間企業に行きまして、民間企業から給与をいただいてそこで働くというケースでございます。当然公務員としての身分は残っておるわけでございますが、通常の公務員に課されております職務専念義務というものはその限りにおいて免除をされるという形になりますので、その点は御指摘のようなことはないというふうに思っております。
  135. 安井吉典

    ○安井委員 たとえ休職であっても国家公務員としての職責というか、法律上の立場というのはそのまま残っているというのですか、それとも休職になってしまえばもう関係なくなるのですか、もう一度。
  136. 吉村晴光

    ○吉村説明員 休職でございましても国家公務員としての身分は保持されるわけでございますので、そういった意味で制約がございますけれども、同時に、職務専念義務というものが免除をされますので、その特定の相手方の職務に従事するということ自体が問題にされるということはないというふうに理解をしております。
  137. 安井吉典

    ○安井委員 これは後でもう少し触れますけれども、いろいろ問題が起きる可能性のある規定ではないかと思います。それから、これは後で共同研究の場合に触れてまいりますが、外国人との場合もあります。これも後で一緒に触れます。民間機関との交流の場合だとか外国との交流の場合とか、いろいろあるわけでありますが、そこらでどうも問題が生じそうなのがいろいろあるわけであります。  その前に、外務省の渡辺審議官においでいただきましたので、この件は後回しにして、SDIの問題をちょっと伺っていきたいと思います。  第三次官民合同訪米調査団の調査が終わられて、今お見えの渡辺外務省北米局の審議官、団長として行かれたそうで、本当に御苦労さまでした。リビアとの関係で今お忙しいときだそうですから、ほんのわずかの間にあなたに対するものだけを終えて、あとは安保課長がいてくれると思いますから、それとの議論に移りたいと思います。  今度の調査で、SDIの研究の状態について見できた感想からまず伺います。
  138. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 お答え申し上げます。  私ども調査団は、先月末から、大体全員が帰ってまいりましたのが先週末でございますけれども、その間、米国内の十四カ所ほどのSDI関連の施設を訪問してまいりました。  この施設の中には政府関連の施設、研究施設等もございますし、それからまたSDI研究に現在参画しております米国の民間企業、それから大学の研究所等もあったわけでございます。それぞれの場所でそれぞれの研究内容について説明を受け、また、若干の施設等の視察もいたしてまいりました。  調査の結果の詳細につきましては、現在資料を整理し、報告を取りまとめておりますところでございますので、御質問にお答えいたしまして若干の全般的な印象のようなものを申し上げさせていただきますけれども、まず第一に、アメリカ側は政府それから民間企業ともに協力的でございまして、調査団といたしましては、SDI研究計画の現状の説明、視察等は相当十分にできたという印象を持っております。その結果、SDI研究計画と言われるものの全体の姿というものを、それなりに正確に把握できたのではないかと思っております。また、米国内で政府、政府機関、企業等が協力し合いまして、非常に幅の広いSDI研究計画という技術研究推進のために取り組んでいるという意味でも、その姿が把握できたかと思っております。  それから技術面につきましては、先ほど申し上げましたように、まだ報告書あるいは報告の取りまとめ中でございますので、詳細まだ私から申し上げる段階に至っておりませんけれども各種技術の現状、それからSDI研究計画を通して目指すところというようなものを、かなりの程度にこれも把握できたというふうに考えております。
  139. 安井吉典

    ○安井委員 報告書はいつごろまでに御提出になりますか。
  140. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 調査団といたしましては、できる限り早急に集めました調査結果を整理いたしまして、報告に取りまとめたいと考えておりますけれども、何せ先ほど申し上げましたように非常に数多くの関連施設を訪問いたしまして、非常に多くの情報を得ておることでもございますので、全体の取りまとめにはなお若干の時間を要するかと思いますけれども、できるだけ早急にと考えておるわけでございます。
  141. 安井吉典

    ○安井委員 これは後でもう少し議論をしたいのですけれども、先ほどの八木委員とのやりとりの中でも、防御性のものか攻撃性のものかというようなことも非常に大きな関心であるわけです。アメリカの方はもちろん防御性という性格を非常に強調しておりますが、あなたの目ではその点は心配がないように思ったのか、あるいはコスト等も、これはもう大変なものになるように思うのですが、日本企業がそれに関与することについて、コストの問題についても非常に関心が大きいと思うのでありますが、その点についてもどのような評価をなすったか、伺います。
  142. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 ただいま先生指摘のコストの問題とおっしゃいますのは、恐らくSDIという戦略防衛体制をつくります場合にコストがどのくらいになるかという問題かと思いますけれども、私ども承知しておりますところでは、まさにその技術的な意味での実現可能性の問題と、それからコストの面で一体そういうことが可能であるかというのを研究いたしますのが、いわば現在のSDI研究計画の二つの大きな基準のようなものになっているというふうに承知しております。  それから攻撃性、防御性の話でございますけれども、まさに先生指摘のとおり、このSDIというものが仮にできます場合に、それの目的とするところは防御的なものであるというふうに承知いたしておりますし、私も技術の専門家ではございませんけれども、私の持ちました印象に関します限り、それに特に矛盾するようなことが行われているとは感じなかったわけでございます。
  143. 安井吉典

    ○安井委員 もう一点。SDIに日本が参加するのに際して、秘密保護法の制定を向こうが要求するのではないか、いやそんなことはないだろう、いややはり何かあるのではないかとか、そういう議論がいろいろあるわけであります。その点はどういうふうに受けとめてこられましたか。
  144. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 秘密保護の問題に関しましては、まず一般的に申し上げますと、米政府の何人かの人たちがそれぞれいろいろな形で秘密保護について発言を行っているようでございますけれども、私ども実はまだその参加の問題につきましてはいろいろな角度からの検討をしているという段階にございますので、参加の場合にどういうことになるというようなところまで突っ込んだ検討をしているわけではございませんし、また、今回の調査団は技術面での現状を特に民間の方の参加をいただいて視察するということが目的でございましたので、調査団としても、特にその辺については調査をしてまいらなかったわけでございます。
  145. 安井吉典

    ○安井委員 忙しい留守番役を引っ張り出してきたわけですから、一応お帰りになって結構です。安保課長はおられますね。それでは、あとお話し合いに入っていただきたいと思います。  結論を出す時期はいつかというようなことは、これは中曽根首相にでも聞かなければなかなかわからないので、河野長官に伺ってもお返事が得られないように思うわけでありますが、ただ秘密保護法の問題については、来日中のパール国防次官補が、アメリカの国防総省内の考え方としてではないかと考えられるものでありますが、やはり秘密保護法が要るのではないかというような考え方を示しているという報道もあるわけであります。これは外務省として、あるいは防衛庁関係があるのかわかりませんが、どうとらえていますか。
  146. 岡本行夫

    ○岡本説明員 昨年の十二月十日、パール次官補がアメリカの議会におきまして秘密保護に言及した重言を行っております。私どもといたしましては、一般に一国がほかの国に対して国防上機微な情報提供をいたします際に、しかるべき秘密保護措置をとられることを前提とすることはいわば当然のことと考えておりまして、アメリカ自身、従来より、国防に関する秘密情報を他国に渡すときは何らかの秘密保護措置を要求していることが通例でございます。  ただ、SDI問題に関しましては、その後いろいろな発言が米政府の関係者によって行われておりますし、米国として日本側に何を要求してくるのか、そこのところはまだ定かではございません。SDI参加問題につきましては、私ども今全く白紙の状態で検討中のところでございまして、そのあたりについてまだコメントをする段階にはないわけでございます。
  147. 安井吉典

    ○安井委員 防衛庁から筒井参事官、小池審議官においでをいただいているようでありますが、国会での本院安保特別委員会で加藤防衛庁長官は、防衛庁も独自の立場で検討している、その中身としては、SDIは防御兵器だとアメリカが言うのに対して、ソ連の方は核攻撃の誘惑に駆り立てられる危険な兵器という言い方もしているわけです。そういうこともいろいろあるからだろうと思うのでありますが、防衛庁独自の立場での検討というのはどういうふうに進んでいるのか、この際伺います。
  148. 筒井良三

    ○筒井政府委員 技術的には、在来の調査団あるいは今回の調査団等の調査結果をもとにしまして、それなりの部内の勉強は続けております。  それから、ただいま先生の御指摘になられました事項につきましては、防衛庁といたしましては、米ソの核戦略あるいは軍備管理交渉等の問題につきまして、我が国の防衛に与える影響といったことは当然ございますので、従来からそういった研究を行っておりますけれども、それの一環として研究を行っているということであり、いつまでに報告を出すといったような作業ではございません。
  149. 安井吉典

    ○安井委員 これは、私も安保委員会にいたわけではないのですが、新聞の記事によりますと、加藤長官は、SDIがアメリカの対ソ戦略を大きく変えるものかどうか、それが技術的に可能かどうか、SDIをつくることによって逆に攻撃兵器を増大をする、こういう方向に行くのかどうか、これらに注目をしながら調査をしている、こういうふうに述べたと伝えられています。これらの点については、今最終的な結論が出たごとではないと思いますが、どういうふうにお考えか。これは外務省の方の見解もあわせて伺いたいと思います。
  150. 筒井良三

    ○筒井政府委員 SDIの戦略構想ということに対します諸般の影響ということについては、ただいま御案内のような御意見とか、いろいろな意見が世の中で言われております。そういったことをも踏まえまして、私どもといたしましては防衛研究所というようなところでも研究を行っておりますし、部内においても検討を行っておりますが、まだ結論というような格好には至っておりません。
  151. 岡本行夫

    ○岡本説明員 SDI研究計画がソ連との間の戦略の関係をどのように変えていくかという御質問だと思いますが、SDI研究計画は、第一に、一九九〇年代を目指しまして、その段階でアメリカとして今までの攻撃手段にかわる防御手段による新しい戦略をつくることができるか、そのための抑止の程度を増強することができるかどうかという長期の研究計画でございまして、今この研究の過程でソ連との戦略が直ちにどのように変わっていくかということは、なかなかお答えしにくいかと存じます。ただ、米国は再々このSDI研究計画が同時に軍備縮小努力と並行して行われなければならないということを強調しておりまして、また、その過程におきましてもソ連と協議しながらこれを行っていく、したがってソ連との間でできるだけ協調的な姿で相互に利益をもたらし合う格好の防御システムをつくり上げる、このような戦略と我々は理解しております。
  152. 安井吉典

    ○安井委員 科学技術庁としての検討を慎重にされる、こういうさっきからのお話でございますが、どういう方向で検討されていますか。
  153. 河野洋平

    河野国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、第三次の調査団が帰ってきて報告書が出てきて、その報告書をまず十分精査するというところから始めなければならないと思いますが、今外務省、防衛庁それぞれ御答弁がございましたけれども科学技術庁には科学技術行政の重要な役割があるわけでございますから、参加するとすればこのSDI研究というものが日本科学技術政策にどういうかかわりが出てくるか、あるいは参加しないとすればどういうかかわりが出てくるかということをよく考えなければいけないという点は、今申し上げていいと思います。     〔委員長退席、塚原委員長代理着席〕
  154. 安井吉典

    ○安井委員 今そういうお答えが各省庁からございましたが、これは外務省ですか、もし参加するとすれば政府間協定を結ぶのか、それとも民間の任意参加に任せるのか、どちらの道をとろうとお考えになっているのか。また、向こうの方はどういうふうな意図を持っているか。これらの問題について現在の段階のお考えをひとつ伺います。
  155. 岡本行夫

    ○岡本説明員 これまで政府といたしましては、三次にわたる調査団派遣等を通じまして、SDI研究計画の実態、その研究の進捗状況、技術的な側面等を調査してきたわけでございます。私どもといたしましては、まだ日本の参加を前提といたしました話し合いは米国との間では行っておりません。したがいまして、日本が仮に参加するとした場合にどのような形になるのか、民間の企業をどのような取り扱いにするのかといったようなことは全く白紙の状況でございまして、まだお答えする段階にはないわけでございます。
  156. 安井吉典

    ○安井委員 中曽根首相が日米首脳会談を終えて今帰途についているのではないかと思います。ここでこの問題について何か言明があるのかどうかということを私ども心配していたのですが、幸いというのか、幸か不幸かそういう報道はないようであります。ロン・ヤス会談でそう簡単に安受け合いをされてはもう困ると思っておったわけでありますが、一部の報道では、東京サミット前には政府としての参加言明をするのではないかという報道もあります。そうかと思うと、いや参議院議員選挙の後まできちっとした答えは延ばすのじゃないかというふうを言い方もされているようであります。その点はどう判断すればよろしいですか。これは大臣ですね。
  157. 河野洋平

    河野国務大臣 今回本安保課長からも御答弁がありましたけれども、私も関係閣僚の一人と考えておりまして、第三次の調査団の報告書が先ほど来申し上げておりますように出ましたならば、恐らく関係する閣僚がそうした点について相談をするというような場面があるのではないか。それが検討のスタートであって、ゴールといいますか、いつ意思決定をするかということについては今の段階では全く決まっておりませんし、総理、外務大臣がそれぞれ予算委員会等でお答え申し上げておりますように、いつまでに決めなければならないというものではない、これはすぐれて日本が自主的に判断をするということだろうと思っております。
  158. 安井吉典

    ○安井委員 きょうの段階ではそれ以上お聞きしようたって無理かと思いますが、先ほどの八木委員とのこの委員会でのやりとりの中で、宇宙開発との関係がいろいろ議論されておりました。私どもも全くそのとおりで、平和目的に限るという国会の決議が生きている以上、そうやすやすとSDIに乗りますというようなことにはならぬと思います。  先ほどの議論の中でも、何か防御というのは攻撃とは違って軍事的なものではないというふうな言い方で、そこでかなりのやりとりが行われたような気がするのでありますが、リビアでアメリカがきょう行動を起こして、もう外務省みんな空っぽなものですから、審議官もそれで長くここにいられないということでお帰りになったのですけれどもアメリカは防御のためにリビアに行動を起こしたのだ、こういうふうに説明していますね。だから、爆弾を落とすことも防御手段の一つなんだそうですから、防御ということと攻撃というものは裏腹であって、軍事的ということにおいては同じものだと私どもは思わざるを得ないのであります。さっきの論議の蒸し返しのようですが、ひとつ安保課長、お答えください。
  159. 岡本行夫

    ○岡本説明員 先生指摘のように、兵器の体系におきまして、防御的なものと攻撃的なものの厳密な定義分けというものは困難な面があると存じます。私ども理解しておりますのは、さきの御答弁でも申し上げました次第ですが、SDIというのはこれまでの核兵器、大量破壊兵器とは目的、その態様が異なっていて、他国の国民や国土に大きな殺傷、破壊をもたらすことを目的とするものではない、これはあくまでも、放置すれば自国に大量破壊の被害をもたらします相手方のミサイルが飛んでくる、そのミサイルに対してのみ今考えられております技術力を駆使して対応し、そのミサイルを個々に無能化していく、このような技術の体系であると了解しておりまして、その差を先ほど来御説明してきたものでございます。
  160. 安井吉典

    ○安井委員 それもまさにそのとおりの役割だというふうにアメリカは説明をしているわけです。ただ、さっきの議論の中でも高射砲の話が出たように思ったのですが、高射砲は防御で撃つんだ、こう言うのですけれども、この前の戦争のときも、ノモンハンなどはもうすっかり防御手段がなくなってしまって、高射砲を水平にして戦車を撃っているのですね。だから、もうそんな全くの防御オンリーだといったって、これはソ連でなくてもなかなか納得させがたい論理ではないかと私は思うわけであります。とにかく空に飛んでいるわけですから、向こうのソ連側のICBMを撃ち落とすというのが役割だと言われたって、何かの機会に核攻撃の誘惑に駆り立てられるということがありはしないかということから、これは危険な兵器だと言っているようです。私はソ連の肩を持つわけではありませんけれども、今のような議論だけではよっぽどこれは人がよくなければ、中曽根さんが人がいいのかどうか知りませんけれども、なかなかそう簡単にアメリカの言うとおりですと乗れる話ではないように思うわけであります。  ところで、米ソの協定が必要なんでしょう。いわゆるABM条約で、ミサイルに対する開発もできないということになっているわけですね。ですから、まず何よりも米ソの間で意見の一致がなければ、SDIを製造し、空に打ち上げて仕事をさせるというわけにいかぬわけでしょう。これは先ほどの論議の中でも言われていたことですが、どうですか。一
  161. 岡本行夫

    ○岡本説明員 ABMとの関係でございますけれども、もちろん日本政府はABM条約の当事国ではございませんので、これを有権的に解釈する立場にはございませんが、一般的にはABM条約は研究までを禁じているものではない、このような理解のもとにアメリカは今SDI研究計画を進めているわけでございます。そして、レーガン大統領以下政府首脳部は、たびたびにわたりまして、アメリカとしてはSDIの研究につきABM条約を含むいかなる条約上の義務にも背馳することはないと言明しておりまして、私どももそのように受け取っているわけでございます。
  162. 安井吉典

    ○安井委員 というふうにアメリカは言っているわけです。しかし、ソ連の方はそう言っていないわけですね。ですから、私は両方の合意がなければいかぬのではないかと思います。研究ならいいじゃないか、これは現にアメリカもそう言っておるわけでありますけれども研究段階で日本がいわゆる技術交流ということでどんどん人を出して手伝う、どんどん話が進んでいくところが一方、米ソの話し合いがなかなかまとまらない。それで決裂してアメリカはもうSDIを断念すればいいのですけれども、そのSDIの計画をそのまま強力に推し進めようとする。そういう場合になって、日本はそれではやめましたと言って戻るわけにはいかぬじゃないですか。研究でずっと行っていて、あるいはその研究の中に日本のいろいろな頭脳がもう全部つぎ込まれていって、そして最終段階にいざ実行に移すという場合に米ソが大変な事態になってしまった。そういう中には日本は入ったくありませんと言ってみたって、もう手おくれになってしまうわけです。ですから、もし日本政府がSDIに協力をするというふうなことを決めるなら、米ソの話し合いが決まってからでいいじゃないですか。それまではたとえ研究であってもその中に関与するということはすべきではないと思うのですが、どうですか。
  163. 岡本行夫

    ○岡本説明員 SDI研究計画につきまして、アメリカ側の認識は、研究段階と配備の段階は全く別物であるというものでございます。すなわち、研究計画はABMのもとでも完全に許容されているもの。それからその先の配備につきましても、アメリカとしては厳しい解釈、狭い解釈いろいろございますけれども、現在の時点では、そこから先に至る場合にはまず第一に同盟国との協議を行っていく、そしてソ連との交渉を経た上で結論を出す。今の研究計画というのは、後代の、自分より後の大統領、それから議会が実際にSDIのシステムを配備するかどうかを決定するための検討材料を提供するものだ、これが米側の認識でございます。中曽根総理もレーガン大統領に対しまして昨年の一月にこの点は確認されておりまして、SDIシステムの開発、配備については同盟国との協議、ソ連との交渉が先行すべきであるというのをいわゆる五つの原則一つとして確認しているところでございます。     〔塚原委員長代理退席、委員長着席〕
  164. 安井吉典

    ○安井委員 ソ連とアメリカとの間では、いまだに意見の一致がないわけですね。攻撃兵器なのか防御兵器なのか、そういう見方についても非常に不安定な論争、結論が不安定であるわけです。そういうような中で、それがまかり間違えばアメリカが強行していくし、ソ連は絶対反対というようなことで、両超大国の核の対決に発展しないとも限らないという大きな問題であります。だから、それに日本が巻き込まれるということでは困るわけなので、ABM条約の問題がはっきりしない段階で日本がどんどん深入りしていく、そういうことで結局その段階で思いとどめようとしたって、先端技術はもうどんどんアメリカの方へ流出してしまう、事によったらアメリカの産業体制にも利用されるかもしらぬという不安を持っている企業者もいるようであります。ですから、今いろいろ慎重な態度で検討するのは結構でありますけれども、やはりはっきりした米ソの見通しが立たなければSDIは機能しないわけですから、そのはっきりした見通しが立つまでは慌てる必要はないのではないか、そう思うわけであります。安保課長を中曽根首相に見立てて今質問しているわけなんですが、どうでしょう、政府の一員として河野長官。
  165. 河野洋平

    河野国務大臣 安井先生の御指摘は、安井先生のお考えとして理解をすることができます。この問題は、アメリカのレーガン大統領がレーガンさんの政治哲学といいますか、人生観といいますか、世界観といいますか、あるいは理想と申しますか、そういうものの中から生まれた一つの計画であって、これからこれがどういう形で実現していくのかというためには、まだまだ相当いろいろな問題を乗り越えなければならぬことがあるだろうと思います。少なくとも日本がそれにどう対応していくか。私は、先ほどから申し上げておりますように十分に慎重な検討が必要だ。先ほど来のお話の中でいろいろ出てまいりますけれどもアメリカにおきましてもSDIについてはいろいろな方がいろいろな発言をしておられる。どの発言がオーソリティーがあるのか、どの発言が少なくともSDI研究というものを正しく表現しているのかということについても、私はもっともっと慎重に精査する必要があるのじゃないか、今この時点ではそんな感想を持っているわけでございまして、日本の外交上、日米関係、あるいは国際的な立場、あるいは防衛上の問題、あるいは先端技術を初めとする通商政策上の問題、あるいは科学技術政策の問題、いろいろな角度から十分に検討しなければならぬ、こういうふうに思っておるわけでございます。
  166. 安井吉典

    ○安井委員 四月十日にアメリカはネバダの実験場で地下核実験を実施したと伝えられています。SDIの構想でそんなものは要らなくなってくるはずなんでありますけれども、そういうような実験はソ連を非常に刺激して、ソ連の方はアメリカがやらない限りはやらぬ、こう言っていたわけですから、ソ連の方もやはり実験をやるということになるのではないかと思います。また再び核実験競争が激化するというおそれもあるわけです。ですから、一方でSDIと言いながら核実験を強行するというふうな態度では、まともな態度ではないように私は思うわけであります。このネバダの核実験について、政府としてはどういう見解をお持ちなんですか。
  167. 岡本行夫

    ○岡本説明員 先生承知のとおり、核実験の一々について米国は対外的に明らかにしない政策をとっておりまして、私どももその詳細は存じない次第でございます。  SDIと核の関係につきましては、確かにアメリカにおきまして、研究開発計画の一部といたしましていわゆるエックス線レーザーというものの可能性も今追求されているとの報道があるわけでございますけれどもアメリカは全体的な姿勢といたしまして、これはあくまでも非核の防御手段である、仮にソ連が核エネルギーを利用した同様の兵器を開発した場合に米側としてはそれに有効的に対応しなければならないという観点から研究しているだけであって、あくまでもSDIそのものはアメリカが今考えているところは全体として非核である、これが私どもの認識でございます。
  168. 安井吉典

    ○安井委員 いずれにしても、私が先ほど来論じてまいりましたように、米ソの間の話し合いが明確になるまで日本の参加を慌てる必要がない、そういうことを繰り返したいし、さらにまた、先ほどの八木委員とのやりとりの中で宇宙開発事業団法の際のやりとりが大事になってまいりますので、次の機会には事業団の方からも責任者に出席をしていただくような運びを委員長にお願いしておきたいと思います。さらにまた、SDIに絡む問題に政府が明確な態度を示し得ない状況の中で、その根拠法ともなりかねないこの研究促進法の通過を急ぐべきではないという八木委員の先ほどの発言を私も支持しているということを、ここで申し上げておきたいと思います。  次に、さっき途中になりました共同研究のメリット、デメリットについて伺います。外務省、結構です。それから通産省も、お待ちを願いましたが、時間が足りないようですからお引き取りをいただいても結構です。  試験場、研究所等の職員民間に行って共同研究をするというようなことで、なるほどこの法律でも考えられているようなメリットは私も認めざるを得ないと思います。ばらばらになっているのをもう少し共同体制をつくるというのは、一方においてメリットがあるということは認めます。しかし、他方においてデメリットも大きいのではないかと思うわけです。これはいろいろな側面から言えるわけでありますけれども、特定企業との癒着が起きたりする危険性が出てくるということになりはしないか。特定企業といったって小さな零細企業との関係などというものはできるわけがありませんで、大企業に限られてくるのも当然であります。企業の側は、科学技術の大事な点を獲得したいと熱心にすることは間違いないと思います。しかしその反面、それが一たん企業のものになってしまったら、これは企業秘密ということに転化していきます。国の機関の試験研究というのは常に公開をし、特定ではなしに多くの国民にそれのノーハウを利用してもらうというふうなことが本務であるけれども、特定の企業犯行くことによってそういうことになり、企業秘密という形でそこでストップしてしまう、こういう心配もあるわけであります。  もともとこの研究交流を促進せよというのが行革から出てきたというのは、行革の中の主要なメンバーは財界の人であり、民間活力という側面から問題が提起されているわけなので、だからというわけではありませんけれども、私が今申し上げたような心配があるのをどうするかということがあります。特に国家公務員法では国民全体の奉仕者という立場を公務員に要求しています。さらに私企業からの隔離についても、いろいろと規定を設けているわけであります。そのことについて垣根を取っ払っていくわけですから、メリットもある反面、デメリットも大きい。そういう欠陥にどう対処していくのか、そのことをまず伺います。
  169. 長柄喜一郎

    長柄政府委員 この法律にもございますように、国の機関民間企業等が共同研究するとか委託研究するというような場合に、民間企業側に国の研究者が休職して出向する場合にこの第五条を適用するということで、これはいわば国の仕事をしに行くということでございまして、その点ではその成果は一般には公表されるということになろうかと思います。  それから大企業、特定企業と申しますか、大企業との癒着のような問題が起きるのじゃないかという御指摘かと思いますが、こういう癒着などが起きることのないよう、それぞれの研究者ないし研究所はそれぞれの使命、役割を踏まえ、節度を持ってこの交流に当たり、いやしくも官民癒着の批判を受けることのないようにいろいろな面できめ細かい配慮をしていきたい、こう考えております。
  170. 安井吉典

    ○安井委員 これはなかなか面倒な問題で、メリットとデメリットが裏腹にあらわれてくるわけです。その成果を公開するといったって、その企業が了承しなければできないでしょう。その企業の成果というものを企業は企業秘密という形で保護してもらいたいという気持ちになるのじゃないですか。どうでしょう。
  171. 吉村晴光

    ○吉村説明員 五条によりまして研究公務員民間企業に休職で行きます場合と申しますのは、国の委託研究を行う場合または国と共同研究を行う場合でございまして、国の委託研究によりますものは、当然のことながらその成果はすべて国に属するということになるわけでございます。工業所有権の確立のため一時的には公表できない時期的な問題もあるかと思いますが、究極的には国の研究の成果でございますので、それは公表が建前ということになろうかと思います。  それから共同研究でございますが、共同研究につきましては国の分担分及び民間の分担分があるわけでございまして、国の分担分につきましては、これも国費によってやっておるものでございますから、工業所有権の確立のために一時的に外に出せないといったケースはあるかと思いますが、原則的には公表されるものであるというふうに理解をいたしております。
  172. 安井吉典

    ○安井委員 その辺をよっぽどうまくやらなければデメリットの方が強く出てしまう、そういう心配があることを指摘しておかなければならないと思います。  大学との交流についても、大学の自治がどうなるかとか、いろいろな問題もありますけれども、これはきょうの課題ではないと思いますが、同時に考えていただかなければならぬ問題だと思いますね。  特に、外国とのいわゆる国際交流の場合であります。法案の第十条に「配慮事項」という規定があるわけでありますが、「国は、国の研究に関し国際的な交流を促進するに当たっては、条約その他の国際約束を誠実に履行すべき義務」という規定があります。「条約」というのはわかりますけれども、「その他の国際約束」というのは何を指すのか、これを伺います。
  173. 長柄喜一郎

    長柄政府委員 「その他の国際約束」と申しますのは政府間協定でございます。政府間レベルで結びました協定でございます。
  174. 安井吉典

    ○安井委員 例えばどういうものになるか。その内容はいかなるものを考えておられるのか。
  175. 長柄喜一郎

    長柄政府委員 この十条の政府間協定ないし条約によって特に考慮しなければいかぬようなもの、例といたしまして細菌兵器に関する条約でございます。この条約によって、微生物その他の生物剤について、それが兵器として使われるものは、いかなる国あるいは国際機関に対し何ら援助、奨励をしてはならない、そういうことでございまして、例えば微生物に係る研究を国際共同てやろうという場合、この細菌兵器に関する条約に触れないというのは当然のことでございますが、一層条約の約束を損なうことのないために、こういう条項が、条約並びに国際約束という言葉が入っているのでございます。  これに似たようなケースとしましては、核不拡散条約、いわゆるNPT、また二国間原子力協定などで核拡散につながるような研究開発というものはしてはならないという趣旨でございます。
  176. 吉村晴光

    ○吉村説明員 ただいま局長から、条約に着目をいたしまして第十条の趣旨の御説明をさせていただきましたが、先生お尋ねの政府間協定というのは例えばどんなものがあるかということにつきましては、例と申しますれば、私ども科学技術協力協定というのをいろいろな国と結んでおりますけれども、こういったものが政府間協定に当たるというふうに理解をいたしております。  ただ、現実にはこの政府間協定の中で、特に技術の移転の制限といったようなことを書いておるものがございませんので、第十条の適用に当たっては、現時点において具体的に政府間協定で念頭に置くべきものはないという理解でございます。
  177. 安井吉典

    ○安井委員 「その他の国際約束」というのは、これは政府間協定ということなんですか。では、どうして政府間協定と書かなかったのですか。その他の約束という言い方、国際約束という表現は、ほかにもあるのかもしれませんが、余り耳なれないのですが、どうなんですか。
  178. 吉村晴光

    ○吉村説明員 協定という名前を使うこともございますし、協力、取り決めといったような言葉も使う、いろいろございまして、こういったものをひっくるめて通常「その他の国際約束」といった表現で対処をしておるというものでございます。
  179. 安井吉典

    ○安井委員 将来これはどんなものが入ってくるか、その辺が私どもちょっと疑問なものですから、心配があるものですから、そのことを特に伺いたかったわけです。そうしますと、協定と取り決めと、そのほかありますか。
  180. 吉村晴光

    ○吉村説明員 国会の承認を得るまでもない、政府に任されておる問題につきまして、政府の名のもとにおきましてやっておる約束ということでございまして、その場合でも名前につきましては、先ほど御答弁申し上げましたとおり、協力協定といった名称にしておるものとか協力取り決め、それから協定に基づきます実施取り決めといった、そんな名前の形で整理がされておるというものでございます。
  181. 安井吉典

    ○安井委員 もう時間が少なくなりましたから、同じことをやりとりいたしませんけれども、どうも疑心暗鬼かもしれませんが、何かほかのいろいろなことを考えておられるのじゃないかという感じを受けるわけであります。  それから、最後に「特別の配慮を払う」という言葉がありますね。これはどういう意味ですか。
  182. 長柄喜一郎

    長柄政府委員 この法案は国際交流を図るための特例措置を設けるものでございますが、本法案によって国の国際的な共同研究等の交流が促進されることが期待されております。この条約、その他国際約束等遵守すべきことは当然のことでございますが、この法案を契機に国際交流が盛んになるということでございまして、その国際交流をする際に、当然の義務でございますが、それに特別な配慮をするべきである、こういうことを特記、明記したわけでございます。
  183. 安井吉典

    ○安井委員 私最初に申し上げましたように、防衛庁関係がこの法律の条文になかった検討段階では、この第十条もなかったのです。九カ条しかなかったのですよ、私どもが一番最初手に入れた要綱では。それが防衛庁が入ってきてこの第十条も一緒に抱き合わせで入ってきたというふうな、なかなかその裏の話までは肯定されないかもしれませんけれども、私どもはそういうふうに理解しています。  大体防衛庁交流の対象に入れること自体がおかしいということを私は言ったわけですが、防衛庁とか自衛官の本来の仕事は戦争なんですよね。国を守るというか、戦争ということがあれなんで、したがってミリタリズムというのが後ろにくっついているわけですから、「国際的な平和及び安全の維持について特別の配慮」、こういう取ってつけたような言い方をしてもなかなか納得しがたいものがあるわけであります。特にアメリカでは、言われている産軍癒着というような前例がもうたくさんあるわけであります。そういうような方向に進んでいくということが一つ。  それからもう一つは、この「国際的な平和及び安全の維持について特別の配慮」というような言葉をここに入れなければならぬような事態、つまりいろいろなことを予測しているからここに入れるのでしょう。こんなことが心配がないのなら、こんな規定はなくてもいいわけでしょう。ですから、この辺が問題なわけであり、しかも日米安保条約、それから地位協定があるわけで、秘密保護についてはそこらの規定もあるわけですね。したがって、国の試験機関で問題の結論を出す、成果を上げたその段階はオープンにしなければいけないわけですよ。ところが、安保条約とのかかわりによって、例えばSDIでも結構ですけれども、そういう中に入ってきたら、これは軍事機密になっちゃうわけです。ですから、そういう中で自然に成果を上げ各科学技術がその成果の芽を摘まれてしまう、そういう心配があるということをこの機会に明確にしておきたいと思うのでありますが、その点についてはどうお考えですか。
  184. 河野洋平

    河野国務大臣 かねてから御答弁を申し上げておりますけれども、この法律自体は、科学技術庁は数年前から研究交流を促進したいと考えて準備をしてきたわけでございます。しかしながら、これまで政府部内の調整がなかなかつきませんで、何年がおくれて本年御提案を申し上げたということでございまして、先ほどからSDIに絡んで急速いろいろなものがここにくっついて出てきたのではないかととれるような御心配の御発言がございましたけれども、この法律自体は全くそうしたことから提案をさせていただいているわけではないということをぜひ御了解をいただきたいと思います。  また、第十条の問題につきましては、明らかに国際的な日本の現在の立場あるいは現在の日本の力、そういったものを考えまして、国際的な問題を配慮して第十条の規定がついたということでございまして、これまた特別のプロジェクトを頭に置いて、特別のケースを頭に置いてこの第十条が付加されたということではないということを申し上げたいと思います。
  185. 安井吉典

    ○安井委員 時間ですからこれで終わりにしたいと思いますけれども、私たちはこの法律に盛られている軍事的な要素というのを非常に心配するわけです。時あたかもSDIと軌を一にしてあらわれてきたということも問題があるわけでありますけれども、そのことから、いろいろ御説明を聞いても、なかなか直ちにああそうですかとは言えない、そういう心境であります。ですから、先ほど来八木委員質問の中でも保留といいますか、そういう趣旨の発言もございましたし、それらのことを考慮した扱いをこれからの審議の中でぜひ御考慮を願いたいじ、SDIについても極めて慎重な配慮が必要だということを長官もしばしば言われましたので、この法律審議についてもぜひ慎重の上にも慎重な配慮で臨んでいただきたい、そう思います。  創造性豊かな科学技術振興研究者が伸び伸びと研究を進めることができるような、そういう仕組みを我々はつくっていかなければいけないので、それが戦争への道につながるということでは断じて許されないと思います。そのことを強く主張して、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  186. 大久保直彦

    ○大久保委員長 山原健二郎君。
  187. 山原健二郎

    ○山原委員 委員長最初にお願いしたいのですが、私の質問中に、二枚政府から出していただきました資料を用意しておりますので、御配付を御許可いただきたいと思います。
  188. 大久保直彦

    ○大久保委員長 はい、承りました。
  189. 山原健二郎

    ○山原委員 最初に、我が国の科学技術研究開発の現状につきまして、お知らせしてありますので資料を説明していただきたいのです。  その一つは、研究開発資金についてでありますが、基礎、応用、開発別に類とその比率について、また日本アメリカ、フランスの比較をあわせまして御報告をいただきたいのです。
  190. 長柄喜一郎

    長柄政府委員 日本の場合でございますが、統計が五十九年度までしかございません。昭和五十九年度の数値で申し上げますと、基礎研究九千六百億円、全体の比率一二・六%、応用研究一兆七千八百億円、比率二五・一%、開発研究四兆三千四百億円、比率六一・三%でございます、  米国の数字でございますが、基礎研究二兆八千八百億円、応用研究五兆三百億円、開発研究十四兆八千七百億円、比率はそれぞれ一二・六%、二二・一%、六五・三%でございます。  フランスの場合でございますけれども、ちょっと統計が古うございまして昭和五十四年度のものでございますが、基礎研究四千七百億円、応用研究七千五百億円、開発研究一兆五百億円、比率はそれぞれ二〇・九%、三三・一%、四六・一%でございます。
  191. 山原健二郎

    ○山原委員 続きまして、研究開発資金のうち政府負担の割合及び民間企業負担の割合について、できましたら日本アメリカ、フランスの比較をいただきたいのです。
  192. 長柄喜一郎

    長柄政府委員 政府負担の金額並びに割合でございますが、日本の場合、政府負担一兆五千億円、比率二一%、民間五兆七千億円、比率七九%、トータル七兆二千億円ということでございます。  米国の場合、政府負担が四百四十七億ドル、比率四七%、民間負担五百十三億ドル、五三%でございます。  それからフランスの場合、政府負担五百五十一億フラン、比率五八%、民間負担四百七億フラン、四三%でございます。  以上でございます。
  193. 山原健二郎

    ○山原委員 資料ばかり申し上げて恐縮ですが、もう一つ日本の政府負担割合の推移についてお伺いしたいのです。
  194. 長柄喜一郎

    長柄政府委員 昭和四十五年、五十年、五十五年、六十年、この四回、五年ごとの四カ年間についてお答えしたいと思います。  昭和四十五年度約一兆二千億円のうち政府負担は約三千億円でございまして、全体の二五%でございました。これが昭和五十年度では全体で二兆六千億円、うち政府負担七千億円で全体の二七%。昭和五十五年度は全体で四兆七千億円、このうち政府負担約一兆二千億円で全体の二六%。昭和六十年度の調査はまだ終了しておりませんので、五十九年度で述べさせていただきますと、全体で七兆二千億円、うち政府負担一兆五千億円で、その比率は二一%となっております。
  195. 山原健二郎

    ○山原委員 今数字をおっしゃいまして、これはちょっとまだ詳しく見る余裕がありませんが、資金の内訳を見ましても、我が国は基礎研究分野が弱いと言われているわけでございますけれども、その要因は主として基礎、応用研究を担う大学や国立研究所などの政府負担の割合が少ないことと関係をしていると思います。しかも、政府負担の割合は減少傾向にあるというふうに思うわけですが、この見方は正しいかどうか。  また、創造的、基礎的科学技術振興ということをおっしゃるならば、その主な担い手である大学や国立研究所の人的、資金的整備充実が緊急の課題だと思いますが、この点はどのようにお考えでしょうか。率直にお答えいただきたいのです。     〔委員長退席、矢追委員長代理着席〕
  196. 長柄喜一郎

    長柄政府委員 先ほど冒頭申し上げましたように、過去十五年間ほどの間で、政府負担割合がかつては二七くらいはありましたのが二一まで下がってきておるということでございまして、政府負担の比率が下がってきておるということは非常に残念でございます。これは、民間企業の研究開発投資意欲が非常に盛んであるということで、政府もかなりふやしてきたわけでございますけれども民間の伸びが非常に高いということで、結果として政府負担割合が下がったものでございます。  昨今、科学技術政策大綱を初めいろいろなところで日本が創造的な基礎研究を重視しなければいかぬということを言われて、これも国民のコンセンサスになっているかと理解しているわけでございますけれども、これについても、我々は財政上非常に困難な状態でございますが、大学及び国立研究所等政府部門の中心となっております研究費をふやそうということで、六十一年度予算におきましても、一般的にはゼロシーリングというふうな中で科学技術に関する経費は四・八%伸ばしていただいたというようなことで、この努力は御理解願いたい、こう思う次第であります。
  197. 山原健二郎

    ○山原委員 努力の点については私どももわからぬわけではありませんけれども、やはり日本科学技術における基礎、応用の部門の弱点というのは、今までもこの委員会で言われてきたところですね。この点について、河野長官の御見解をぜひ伺っておきたいと思うのです。これは当然充実すべき緊急の課題であろうと思いますが、その点の御認識をお伺いしたいのです。
  198. 河野洋平

    河野国務大臣 基礎研究を重視するということは、我々もそう考えております。ただ、山原議員から御質問がありまして局長から御答弁を申し上げましたが、基礎、応用、開発、それぞれへの投資の比率を見ていただきますと、日本アメリカは非常に似ているわけでございます。  繰り返すことになって恐縮ですが、日本アメリカはいずれも基礎研究に対します投資は一二%もしくは一二%ということで、日本アメリカはどちらかというと応用とか開発に対する投資が多い。それに比べまして、フランスを初めとするヨーロッパ型といいましょうか、ヨーロッパの国々はどちらかというと基礎研究に対する研究投資が非常に多くなっております。これはそれぞれの国の一つの特徴といいましょうか、そういう考え方が定着をしているということもあろうかと思いますし、あるいはまた、いずれも民間の投資が非常に活発だ。これは私どもは、民間が非常にやるから政府が少なくていいとか、政府が少ないことのエクスキューズをするつもりはございませんけれども、そういう社会的な構造は一つあるというふうには見ていいのではないか。  しかし、いずれにいたしましても、先生から御指摘のとおり基礎研究、私どもは創造的あるいは基礎的研究重視、こう言っておるわけでございまして、これはただただお題目を唱えるということではなくて、実質的に実効を上げなければ意味がない、こう考えておりますから、そうした基礎研究重視型にだんだんと重心を移していく、そういうことでやりたいと考えております。ただ、それがただ単に金額の問題だけで表現できるか、あるいは制度とかそういったものでそういう点を重視するということも考えていいのではないかというふうに思っておることをつけ加えたいと思います。
  199. 山原健二郎

    ○山原委員 民間の活力あるいは民間の活動というものがしばしば強調され、特に最近は民活論が出てきておるわけでございます。その民間活力というものを数字の面で見ますと、民間企業の研究開発投資額の基礎、応用、開発の分野別を見てみますと、私の資料はちょっと古いものですが、これは昭和五十六年の産業技術開発長期計画策定研究会、ここでは基礎四・六%、応用一九・四%、開発七六%という数字が出ておりますが、現在はこれは多少の変化はあるのでしょうか。
  200. 長柄喜一郎

    長柄政府委員 現在の比率で言いますと、これは民間企業投資の基礎、応用、開発への比率でございますが、基礎研究に対しまして五・六%、応用に対しまして二二・〇%、開発研究に対しまして七二・四%となっておりまして、他の国と比較いたしますと、我が国は基礎研究の比率では西ドイツと並んでおりまして、西ドイツが五・六%でございます。米国は三・一%、それからフランスは、これはちょっとデータが古いのでございますけれども、三・二%というようなことで、民間企業の基礎研究に対する投資意欲というのは他の諸国に比べて非常に強いということが言えようかと思います。
  201. 山原健二郎

    ○山原委員 これは今おっしゃった数字で、基礎五・六%、応用二二%、開発七二%、こういうことで、結局企業が科学技術研究の成果の企業化に力を入れるのは当然のことでございまして、研究開発投資に占める応用、開発、特に開発の比重が圧倒的に重くなるのは当然ですし、同時に、基礎研究の比重が軽くなるという結果が出てくるわけですね。結局、採算性の重視というのは民間企業の命題でもあるし、宿命でもあるわけでございます。しかも、国際的にも競争が激化する中でますます強調されこそすれ、これを度外視した研究開発などはあり得ないわけです。     〔矢追委員長代理退席、委員長着席〕  そのことが前提となりますと、民間活力を生かしての基礎的、創造的研究振興といっても採算性を射程内に置いた狭い基礎的研究、すなわち目的基礎研究という言葉も使われ始めておりますが、そういうものに限定されてしまうのではないか。従来の企業化を目的とした開発段階重視の対症療法的な研究開発体制からの本当の意味の脱皮にはならないのではないかと思いますが、この点はどうお考えでしょうか。
  202. 長柄喜一郎

    長柄政府委員 山原委員指摘のとおり、企業におきます基礎研究というのは五年先とか十年先の企業の採算といいますか、そういうことを意識した基礎研究でございまして、大学あるいは国立研究所など政府機関におきます基礎研究とはおのずから性格の異なるものというふうに考えております。  基礎研究一四%と申しましたが、我々の認識としては、企業の基礎研究活動は非常に旺盛であるけれども、政府機関、大学における基礎研究はまだまだ弱いということで、国立研究所、大学等の基礎研究を今後強化していくというふうに考えている次第でございます。
  203. 山原健二郎

    ○山原委員 この問題につきましては、いわゆる科学技術会議、中曽根首相が議長をやっておりますけれども、一昨年の十一月に出ました十一号答申でも、また行革審の答申、これは昨年の七月ですね、この中でも、基礎研究と言わずに基礎的研究と「的」を入れているところにも、いわゆる目的性、採算性に対する気配りが見られるように思います。OECDの場合は、基礎研究とは無目的であるという指摘がなされているわけですね。真理を探求して、その結果として新しい可能性を引き出すというのが基礎研究というものだろうと思いますが、それが科学技術会議あるいは行革審では基礎的という言葉が入るところにも一定の問題があると思います。  同時にもう一つ民間活力で基礎的研究推進するという場合、採算性を重視する企業にとってはリスクの大きい分野を担わされることになりますから、採算性を度外視して国の基礎研究強化のために貢献するなどということはちょっと考えられません。それに対する手当てとか、あるいは見返りを国の方で用意することに結局なるのではないか。リスキーマネーあるいは人材の供給とか研究成果の譲与など、結局一部の民間企業を国が優遇するという結果になるのではないか。今度の法案を一読する限り、そういう制度化がさまざまな形であらわれているのではないかという受け取られ方もあるわけでございますが、それに対してはどうお考えでしょうか。
  204. 長柄喜一郎

    長柄政府委員 基礎研究とか基礎的研究というものも近年非常に大型化し、大規模になっております。非常にリスクの大きいもの、時間が大変長期間必要なもの、民間企業はやはり営利ということを考えていますから、こういう研究には手を出さないということで、こういう非常にリスキーで長期間を要するような研究については政府機関研究を進めていかなければいかぬ、こう考えている次第でございます。
  205. 山原健二郎

    ○山原委員 この委託、受託、共同研究民間企業の参加件数について資料を提出していただきました。これを資本金一億円未満、一億円から十億円、十億円から百億円、百億円以上というふうに委託研究、受託研究共同研究に参加している民間企業の資本金別内訳というのをお配りしたわけでございますが、それを見ますと、科学技術庁関係では合計しまして一億円未満が七の三%ですね。それから百億円以上の資本金を有する民間企業が百六十二、六一%、十億円から百億円のところをごらんいただきますと五十二の二〇%。十億円以上の資本金を持っているところ、百億円以上はさらに多いわけですが、合わせまして八一%という数字が出てきているわけですね。  それから通産省の方を見ますと、通産省の場合は合計しますと一億円未満が四十八の一五%、百億円以上の企業が百四十八の四五%、こういう数字が出てまいりました。通産省の場合は中小企業庁を含んでおりますから、一応一五%という数字が出てくることはわからぬわけではありませんが、いずれにしましても研究交流促進法、本法案に盛られましたいわゆる民間優遇策が、具体的にはほとんど大企業がその対象となるのではないかという危惧の念を持つわけでありますが、この点はいかがでしょうか。
  206. 長柄喜一郎

    長柄政府委員 国の委託研究あるいは共同研究等の相手方を選定する際、その企業の持っております技術的能力、また経理的基礎、こういうものが非常にしっかりしているかどうかというふうなことを勘案して決定するわけでございます。それで、科学技術庁でやっております先端科学技術分野、特に振興調整費でやっておりますような最先端の研究開発に関しましては、いろいろ選定をした結果、結果的には大企業、資本金百億円以上の企業にかなりの部分が行っているというのが実情でございます。  ただ、最近中堅企業、中企業、小企業あるいはベンチャービジネスといわれるようなところで、非常に特異な技術を持って育ってきている企業がございます。こういう企業についても我々は広く民間の活力を利用するということで今後とも努力していきたい、こう考えております。
  207. 山原健二郎

    ○山原委員 いわゆる産学官の組織を超えた研究協力ということがもう随所に強調され始めております。これは臨調答申でもそうですし、科学技術会議の十一号、十二号答申あるいは行革審の答申科学技術政策大綱あるいは産構審の報告などの中にもあらわれておりますし、また、私ども関係している教育問題の臨教審の中にもこのことが強調される情勢になっております。しかし、それぞれ性格や任務を異にする組織間の協力でありますから、そこにはおのずと踏まえられるべき原則あるいは越えてはならない規範といいましょうか、規律といいましょうか、のりといいましょうか、そういうものがあるのではないかと思うのでございますけれども、これは河野長官にお伺いしたいのですが、産学官連携はすべて是なりというお考えでしょうか。当然そこには一定の越えてはならぬのりというものがあるのではないかと思うのですが、この点どうお考えでしょうか。
  208. 河野洋平

    河野国務大臣 近年、研究の高度化に伴いまして多分野にわたる研究も大変多くなっております。研究資源の効率的活用の見地から、先生指摘産学官共同研究について積極的に推進する必要があるというのが私どもの判断でございますが、当庁の研究所による共同研究につきましては、研究所の使命、目的に従って、研究所の創意を生かしつつ創造的な研究成果を生み出すことが肝要との観点から、今後ともその推進に努めてまいる所存でございますが、御指摘のとおり、そのためにはそれぞれ倫理観とか使命感とか、そういったものがしっかりとなくてはならない、こう考えております。先ほど安井議員からのお尋ねにもございましたように、官民の間の癒着が生じるとか、かりそめにもそういったようなことがあってはならないというふうに考えておるわけでございます。
  209. 山原健二郎

    ○山原委員 研究交流の中でそれぞれの研究者研究の自由あるいは自主性を尊重すること、これは当然のことだと私は思います。また、研究成果の公開を原則とすること、これも研究交流における重要な原則ではなかろうか。また、研究交流とその成果の利用は平和目的に限るということ、研究交流科学研究各分野の調和ある発展を期して図られるべきものであることなどという、不可欠の原則というものがあるのではないかと思います。ところが、こうした大切な原則がこの法案には欠落している。書かれておりません。何らかの理由があると思いますけれども研究交流を促進するための具体的措置の羅列はあっても、原則とか基準というものがこの法律案にはないのではないかと思います。  第一条で「試験研究の効率的推進を図ることを目的とする。」となっておりますけれども、効率的推進を図ることによって何を実現するのかという突っ込んだ目的規定がありません。これでは、研究交流がまかり間違えばとんでもない方向に利用されるという結果になりかねないものを含んでおると思います。どうして私がさきに述べましたような基本原則をこの法案の中に盛り込まなかったのであろうか、これは私は大変不思議で仕方がないのでありますが、この点はいかがでしょうか。
  210. 長柄喜一郎

    長柄政府委員 この法案は、御案内のとおり、研究交流を国が進める場合に隘路となっておる点を除去するために必要な法制上の特例措置を盛り込んだものでございまして、先生おっしゃいましたような研究を進めるに当たっての原則、すなわち自由、自主、公開、また平和に限るというふうな原則ないし基準を盛り込むことはなじまないので、そのようなことを規定してないわけでございます。これが仮に研究交流促進基本法という基本法的な立法措置法律的にはあり得ないわけではございませんが、我々としてはさしあたって今やらなければいかぬ隆路となっている点を除去するということでございまして、それを法的に手当てをしたというわけでございます。
  211. 山原健二郎

    ○山原委員 なじまないという点ですが、今日の情勢、そしてこの研究交流法案を出してきた背景というものを見ますと、今まさにこの原則が重要な意味と重みを持ってきておると私は思うのです。だからこそ先日からのこの委員会における質疑の中でも、その点についての心配の念を表明されておる議員の方はたくさんいらっしゃるわけですね。そのことは本当に大事にしなければならぬと思いますし、我が国の学術研究を代表する学者の国会と言われる日本学術会議の今までの勧告を見てみますと、例えば昭和三十七年に科学研究基本法制定についての勧告、五十一年に再び科学研究基本法制定についての勧告、また五十二年の研究公務員特例法等特別委員会の報告等が出されているわけでございまして、これらの勧告で諸原則を踏まえることが常に強調されているわけでございます。私は、この点は、今この法案が成立するかどうかという審議の行われているさなかに、この研究交流にとって重要な自主あるいは公開、平和に限るという原則は当然うたっていいのではないか。今局長はそういうことはなじまないということをおっしゃいましたが、その点については後で反論をいたしたいと思います。この点はこれでおきます。  次に、さらに原則問題について、法案第一条の「目的」の項について伺いたいと思います。  一つは、先ほど御質問がありまして少しダブりますけれども、「人文科学のみに係るものを除く。」という点が出ておりまして、それなりにこれらに対する御答弁がありました。それによって自然科学のみ偏重されることにならないかという疑問が出てくるわけでございます。日本学術会議は例えば昭和三十七年に科学研究基本法制定勧告し、また、昭和五十一年にも再び科学研究基本法制定について勧告をしたということを今申し上げましたが、ここで科学研究の重要な基本原則として人文、社会、自然科学の調和のとれた発展を図るべきことを強調しております。この点から考えますと、真に学問の民主的発展を図る上で研究交流が必要なのは、何も自然科学に限ったものではない。研究交流法をつくる上ではすべての科学を対象とする姿勢は必要だったのではないかと思うのでございますが、この点についての人文科学の排除というのはどういう意味を持っているか、伺っておきたいのです。
  212. 河野洋平

    河野国務大臣 先生おっしゃるとおり、バランスのとれた研究の促進ということが重要だと私も思います。しかし、これは山原議員はよく御存じのとおり、人文科学系は主として大学等にその研究の拠点が多いわけでございまして、こうした部分につきましては教育公務員特例法その他文部省関係法律によりまして、既にカバーされている部分がかなりあるということをぜひ御理解をいただきたいと思います。
  213. 山原健二郎

    ○山原委員 この法第四条で、研究集会への参加の問題が出ております。これ自体私はもちろん不十分だと思っておりますけれども、例えば人文系の研究公務員が人文系の学会に参加する、その際は準公務の扱いはされないと思いますが、これはどうなっているのでしょうか。
  214. 長柄喜一郎

    長柄政府委員 ここでは、第一条で人文系のみに係る研究をやっていらっしゃるところは除いているわけでございますが、その方たちが職務で研究集会に参加される場合は、出張という扱いにつきましてこの第四条の適用ではございませんで、通常の出張という扱いになるのでございます。
  215. 山原健二郎

    ○山原委員 準公務の扱いを受けないということですから、もう一回言いますけれども、人文系の研究公務員が人文系の学会に参加する、その際は準公務の扱いはされないと思いますが、これはちょっと私不安ですが、確かめておきたい。いかがですか。
  216. 長柄喜一郎

    長柄政府委員 私、先生の御質問の趣旨を取り間違えているかは存じませんが、人文科学系の研究者というのは大部分文部省研究所ないし大学に属していらっしゃる、こういうふうに理解しているのでございますけれども文部省所管の国立大学及び文部省所管の研究所の研究者、これは人文科学系、自然科学系問わずでございますが、すべて教育公務員特例法第二十二条の規定によりまして同法の二十条が準用されている。ちょっとこれを言いますと、文部省研究所の人文系の研究者も大学の先生と同じ扱いをされているということでございます。大学の先生につきましては、教育公務員特例法によりまして既に研修の機会というのが第二十条にございまして、研究集会に参加する場合は、いわゆる職務専念義務免除ということで休暇扱いにしないという、第四条と同じ扱いがもう既にできております。そういう意味で、人文科学系の研究者といえども部分文部省所管でございますので、その方々はこの第四条と同じ効果を持つ法律が別途あるということでございます。
  217. 山原健二郎

    ○山原委員 疑って申しわけないですが、文部省いらっしゃっておると思いますが、この点はどうですか。準公務としての扱いを受けない。受けますか。
  218. 佐藤次郎

    ○佐藤説明員 お答え申し上げます。  ただいま科学技術庁の方から御答弁申し上げたとおりでございまして、国立大学の教官につきましては、本法案措置されます研究集会への参加、外国人任用につきましては、教育公務員特例法等におきまして同様の措置が人文科学も含めまして講じられているところでございます。また、文部省の人文科学系の研究所の研究者につきましても、教育公務員特例法二十二条に基づきまして同法の二十条が準用されておりまして、研究集会に参加することができる、こういうことになっている次第でございます。
  219. 山原健二郎

    ○山原委員 では次に、国立研究機関研究公務員の自主性を尊重する規定がないということを私は申し上げましたが、研究交流の場合、相互の自主性の尊重は不可欠のものである。例えば大企業など資金力が多くて、それに物を言わせて国の研究機関の自主性を侵す可能性が、大学を含めて、ないとは言えないと思います。その点で、大学の自治を踏まえた交流になるのかどうかの懸念が残るのでございます。やはりこれはどうしても自主性尊重の規定を法案の中に盛り込むべきではないか。今お答えはありましたけれども、あえてもう一回お伺いしたいと思いますが、その点はどうでしょうか。
  220. 長柄喜一郎

    長柄政府委員 大学の自主性の問題につきましては、文部省の方から御答弁いただくのが適当かと思いますが、私の方の今回の法律では、先ほど申しましたように、研究交流を促進する上での隘路を取り除いて研究交流をしやすくするということだけでございまして、この研究交流をしやすくした制度によってどういう交流を行うか、どこと共同研究をやるかというふうなことはそれぞれの大学なりそれぞれの省庁でお考えになることでございまして、この法案ができることと自主性のこととの間は何ら関係ない、大学それぞれが自分の判断で交流を進められるべきものというふうに考えております。文部省の方はどうお考えか、私の方はこう考えております。
  221. 山原健二郎

    ○山原委員 大学の自治との関係で、今の同じ問題、文部省はそういう危惧は全く必要のない懸念だというふうにお考えでしょうか。
  222. 佐藤次郎

    ○佐藤説明員 大学におきます学術研究は、真理探求を目指し自由濶達に展開されるべきものと考えておりまして、そういう意味で研究者の自主性を尊重して行われてきております。本法案の運用に当たりましても、法律には規定はないわけでございますが、私どもとしては、このことにつきましては当然研究者の自主性を尊重して行われるべきものと考えております。
  223. 山原健二郎

    ○山原委員 私もそのお答えを信じておきたいのです。ただ、今なじまないからとかいうようなことで、自主性尊重というような言葉を入れなくてもいいんだというお言葉が先ほどあったわけですけれども、昨年成立しました、これは通産関係になりますが、基盤技術研究円滑化法が出まして、去年この問題で論議が行われたわけです。その第三十三条ではどう規定しているかということです。  これは通産省の方へお伺いしたいのですが、この三十二条にいわゆる「センターの自主性の尊重等」という項目があります。このセンターというのは、私の記憶が間違っていなければ、たしか稲山さんが会長をしておられると思いますが、その中身は「政府は、センターの事業に関しその自主性を尊重するとともに、その事業の円滑な運営が図られるよう必要な配慮を加えるものとする。」ということがございまして、こういう機関について、これを設置する場合にやはり自主性の尊重ということが明確に書かれているわけです。去年のことでございますが、今度はこれだけ重要な情勢の中にある。であるにかかわらず、今回の研究交流法にはなじまないということでこの自主性という言葉も欠落をするわけでございますが、これはどう説明をされるのでしょうか。これは通産省、おいでになりましたらお答えいただきたいと思います。
  224. 高津義典

    ○高津説明員 お答えを申し上げます。  議員御指摘のとおり、基盤技術円滑化法の三十三条におきまして「政府は、センターの事業に関しその自主性を尊重するとともに、その事業の円滑な運営が図られるよう必要な配慮を加えるものとする。」という規定がございます。このセンターは、そもそも民間の創意を活用いたしまして、民間の力を活用いたしまして基礎あるいは応用段階における研究推進しよう、こういう趣旨に成るものでございまして、民間の発意によりまして設立されました基盤技術研究促進センターが民間の創意を反映した運営ができるようにという配慮に基づきまして、この自主性の尊重の規定を設けたものでございます。
  225. 山原健二郎

    ○山原委員 今の通産省のお答えは、私にはよくわかります。民間の創意の結集ということでその自主性を尊重する、これは当然のことでございまして、それがこのセンターについては明記されているわけですね。ところが、大学の自治と学問の自由というものが、戦前の教育の苦い経験から、戦後における大学自治の理念であるわけですね。しかも、それが今日の情勢の中で、さらに自治とかあるいは研究の自主性とかいうものが重要な内容、重みを持ってきておりますときに、これは当たり前のことだからといってそれを法案の中から欠落さすのではなくて、私は法案の中にその尊重の意味を明記することが正しいのではないかとどうしても思わざるを得ません。当然のことだから書かなくていいんだとおっしゃるならば、なぜ第十条が入ったのか。国際的な条約を我が国が結んで、その条約を守るのは当然のことだから、この法案にはそういうことを書かなくていいと一貫しておっしゃるならばわかりますけれども、第十条に条約を尊重するということがあえて最後の段階で入ったことと考え合わせますと、いささかこの問題については指摘をせざるを得ません。これはやはり自主性の尊重ということを当然入れるべきではないか。  また、文部省としても一番関係が深いという面もあるわけでございますし、特に大学の自治、学問の自由というようなことを考えますと、当然この中には自主性の尊重ということを入れるべきではなかったのかという疑問を持つわけでございますが、何の疑問も持たずに、これが欠落したままでこの法案に対してオーケーを与えたのでしょうか、伺っておきたいのです。
  226. 長柄喜一郎

    長柄政府委員 この法案特例措置を集めたものでございまして、特定の分野の研究目的とするとか、その研究開発原則を書くというふうなものはなじまないと申し上げたのでございます。  なお、第十条でございますけれども、これは国際研究交流の促進によって条約等を履行する義務を損なわないようにするための規定でございまして、別にこれは国際交流のための原則を書いたものではございませんで、国際交流をする際、条約その他国際約束について背馳しないようにという趣旨のものでございます。そういうことで、第十条は原則というふうには考えておりません。
  227. 山原健二郎

    ○山原委員 原則でなくても、国際間の条約を守るということは当然のことでございますから、言うなれば当たり前のことですよ。あえてここでさらに追い打ちをかけるがごとくこの中に入れてくるということが、今疑問視されている一つの問題でしょう。そのことは時間の関係指摘をしておいて、次へ行きたいと思います。  次に、少しこだわるようですけれども、学術会議勧告では、国際的研究交流については、一つは各国の科学の伝統と自主性を尊重し、かつ対等の立場に立って行われなければならない、二つ目は公開の原則に基づかなければならないなどの勧告をしております。つまり、自主、対等、公開がこの指導的原則にならなければならない。これを国際研究交流に際して触れていないというのがこの法案ではなかろうかと思います。これもお藤今おっしゃったようなことと似た結果になると思いますが、一応御返事を承りたいのです。
  228. 長柄喜一郎

    長柄政府委員 日本学術会議から国際研究交流に関する自主、対等、公開の原則指摘されているわけでございますが、こういう勧告が出ていることは十分承知しております。これについては、現在関係省庁でいろいろ検討されているところということでございます。  なお、当然のことでございますけれども科学技術会議等で日本全体の科学技術政策を検討する際、この学術会議勧告のみならず、いろいろなところでいろいろな意見が出ております。そういうものを十分考慮して日本全体の科学技術政策が樹立されているということを申し述べておきます。
  229. 山原健二郎

    ○山原委員 私は、日本の科学を国際的に代表する機関であり、学者の国会と言われる日本学術会議勧告というものは、それなりに大きな重みを持っていると思います。ただ、この日本学術会議に対して改組が行われたり、さまざまなことが数年前からありましたから、何となく日本学術会議のさまざまな勧告に対して、これを軽視する風潮があるような気がしてなりません。その意味では、例えば今申し上げました自主、対等、公開というような国際交流に当たっての一番の原則というものが法案の中から欠落したことは非常に残念でなりません。第十条では「配慮事項」として特記をしているわけですからね。十条の特記も非常に重大だと思いますけれども、それに比べますとこういう原則についての軽視があるのではないかということを心配するわけです。  外務省おいでくださっておると思いますが、例えば公開の原則について、アメリカの発明秘密一九五一年法の中で、国家安全保障に有害な発明の発表は中止させ得るという規定があると聞きますが、これは事実でしょうか。
  230. 岡本行夫

    ○岡本説明員 私どもといたしましては、米国の国内法の詳細につきまして断定的かつ有権的なことを申し述べる立場にはございません。また、米国内の法律の一々につき、その修正の状況についても正確に承知しているわけではございませんので、その点あらかじめ御了承おき願いたいと思います。  とりあえず私どもの方で現在手持ちにしております資料を見ました限りは、先生指摘の一九五一年の発明秘密法という法律は見当たりませんで、恐らくは何か別の法律に改正されたかあるいは廃止されたか、必ずしも明らかではございません。ただ一般的に申し上げて、米国においては国家安全保障上その公表が有害と認められる特許の出願については、この出願に係る発明は秘密に保持されることとなっておると承知しております。
  231. 山原健二郎

    ○山原委員 かつてレーザーウラン濃縮技術の発表がアメリカによって抑えられたことがございますね。我が国はそういう経験を持っておるわけですが、共同研究をして成果が出た場合、例えばSDI推進に貴重だということで、この成果が公にされると国家安全の関係からまずいというケースも出てくる可能性を持っております、今までの経過から見まして。今私が申し上げました一九五一年法の存在についてはおわかりにならないということでございますから、それはそれとしておきますけれども我が国の受けた経験からするならばそういうことがございます。そうなりますと、公開の原則は明確にしておかないとさまざまな形で研究の自由が侵されるのではないかと思いますが、そのような心配はないのでしょうか。
  232. 岡本行夫

    ○岡本説明員 SDI研究計画との関連に限って」申し上げますが、私どもといたしましては、現在SDI研究計画というものはそもそもどういうものなのかということを勉強している最中でございまして、我が国が仮に参加するとした場合に、米側からどのような秘密保護の要求が出てくるか、あるいは米国内の法制に従ってどのような措置を我が方がとらなければならなくなるのかといったようなことは、まだつまびらかにしておりません。ただ、私どもは現在SDIにつきましてはあらゆる角度から検討中ということしか申し上げられない段階にあるわけでございます。
  233. 山原健二郎

    ○山原委員 昨日、これは四月十四日付の毎日新聞でありますが、米国防次官補のパール氏がこういうふうに発言をしていることが報道されております。SDIに関連して、ソ連へ技術が流れないように日本の法的規制を見直す必要があると述べまして、秘密保護法制定を促しているという状態があるわけですね。これは結局、先ほど言いました一九五一年法の存在は別にしまして、秘密を漏らすな、守れという趣旨には変わりはないと私は思います。そうなってまいりますと、これが研究の自由及び研究成果の発表の自由を侵す危険が強くなってくるわけでございますから、だから公開の原則というのは、こういう法律をつくる場合には不可欠のものだと思うのでございます。大変執拗なようでございますけれども、私は公開の原則というのは研究交流の場合にはぜひ必要なものだと思うのですが、これはいかがでしょうか。
  234. 岡本行夫

    ○岡本説明員 先生指摘の新聞に報道されておりますのは、我が国におきまして民間団体の主催のセミナーであると承知いたしましたけれども、そこでパール国防次官補が発言をして、「日本は法的規制を見直してソ連へ技術が流れないようにする必要がある」と述べたという報道は私ども承知しております。今そのテキストを私どもが取り寄せておりますところで、現段階でパール国防次官補がどのような意図でその発言をしたのか、正確にお答えすることはできません。  米側は種々の機会に、パール国防次官補も含めましてワインバーガー国防長官等は、秘密保護の措置日本として必要である、あるいは必要でないといったような発言をしている。これは報道で我々承知しておるわけでございますけれども、具体的に我が国日本の参加を前提とした話し合いをまだ米国と始めているわけではございません。したがいまして、繰り返しの御答弁で恐縮でございますけれども、私どもとしてはSDIに関する限りは、先生指摘の面で我が国としてどのような対応をとらなければならないのか、そこについてはまだお答え申し上げる段階にはないわけでございます。
  235. 山原健二郎

    ○山原委員 今まで、これはワインバーガーの発言もあるわけでございますが、ワインバーガーの場合は、ソ連に秘密が漏れることがなければ新しい法体系は必要なしというようなことも言っているようですね。けれども、とにかく秘密を漏らすなということは始終言っているわけでございます。ところがまた、最近はソ連に漏れるというような言い方ではなくて、アメリカ自身の国益を守る上でも、先端的な技術情報の流出を抑制しようとする動きが顕著になっているというのが今日の情勢ではないかと思います。これは内田盛也さんの「工業所有権による国際技術戦略」という本にこの言葉が出ているわけでございますが、米政府としては情報を極力抑えようとしているというのが今日の姿ではないかと思います。これに対しては、アメリカの科学アカデミーが一定の反論といいましょうか、そういう論文も発表しているわけでございますが、ともかく公開の原則というのは、こういう情勢の中から見ましても大変重要な中身を持っておると思います。  特にここで申し上げたいのは、公開の原則研究者に発表の自由や相互の自主的な交流を保証し、科学技術の効果的発展を可能にする、また、国民の前に公にすることによって成果の乱用を防止するという機能もあわせ持っているというふうに考えるわけでございまして、この公開問題というのは、平和利用の原則などとともに科学技術の健全な発展にとって不可欠のものであると私は考えております。この点は、関係する省庁、特に科学技術庁としては明確な態度をとり続けていただきたいことを御要請を申し上げたいと思います。  次に、平和利用の原則についてお伺いをしたいと思います。  本法案研究交流とその成果の利用は平和の目的に限るとの規定が入らないことについて、しばしばお答えがありました。それは、特定の分野の研究交流を促進することを意図したものではないというのが一つの理由であったと思いますが、これは間違いないでしょうか。
  236. 長柄喜一郎

    長柄政府委員 そのとおりでございます。
  237. 山原健二郎

    ○山原委員 特定の分野の研究交流推進するものではないとおっしゃるわけですが、そのことは特定の分野の、例えば軍事部門にわたる研究交流を排除するものでもないということにならないのでしょうか。
  238. 長柄喜一郎

    長柄政府委員 本法案は国の各省庁がやっております研究開発交流によって効率化しようということをねらっておるものでございまして、各省庁のおやりになっております研究開発ないし研究者を対象にしているものでございます。
  239. 山原健二郎

    ○山原委員 もう一つの理由は、本法案は国と国以外の者との間の交流を促進するためのもので、国の機関相互間、例えば防衛庁と他の一般研究機関との交流を規定してはいない、そういう手当てはしていないというのが一つの理由であったように思いますが、確認をしたいのです。それも一つの理由でしょうか。
  240. 長柄喜一郎

    長柄政府委員 国と国以外の者との間の交流の促進をねらっておるということにいたしましたのは、国の機関同士につきましては法制上特に隘路があるというわけではございませんで、法律上は現在でも研究交流するのに特に支障になるようなことはないということで、国の機関の間の交流については特に規定してないわけでございます。
  241. 山原健二郎

    ○山原委員 もう一つの理由は、今もちょっとおっしゃいましたが、おのおのの国の研究機関は各省庁設置法によりその研究目的が規定されているので、その枠を超えた研究が、これは長官は、やみくもになされることはない。やみくもという言葉はなかなかいい言葉ですね。やみくもになされることはないとおっしゃったわけです。  そこでお伺いしたいわけですが、「国以外の者」という場合、我が国民間企業などだけでなく、外国の政府機関民間国体も含まれるはずでございます。そうであるならば、例えばアメリカの国防総省と我が国の国立研究所や国立大学との研究交流も本法案の対象内に入ってくると思われるのでございますが、この点はどうでしょうか。
  242. 長柄喜一郎

    長柄政府委員 本法案の「国以外の者」といいますのには、外国政府、外国の団体等が含まれております。ただ、この法律の規定によりまして国際的な交流を進められますのは、それぞれの省庁でございます。国防総省と研究をされるかどうかということはそれぞれの省庁の判断されるところでございますが、いずれにしても国際交流をやります場合は、日本側にとって非常にメリットがあり、かつ、それぞれの省庁なり研究所の設置目的に沿っているかどうかということを考えた上で判断されるものと考えておりまして、私どもとしては、外国のどの機関はいいとかどの機関は悪いということは今考えておりません。どの機関でもこの法律の上では理論上はできますが、実際上はそれぞれの省庁が判断されることでございます。
  243. 山原健二郎

    ○山原委員 各研究所は、各省庁設置法任務規定で研究目的などが定められているので、その枠を超えた研究がやられることはないというお答えでございます。長官もこの前の私の質問に対してそういうふうにお答えになったわけですね。  そこでお聞きしたいのですが、科学技術庁設置法の第三条「任務」で、「科学技術庁は、科学技術振興を図り、国民経済の発展に寄与するため、科学技術に関する行政を総合的に推進することをその主たる任務とする。」という規定があるのでございます。それが歯どめになっている、それが枠だ、だからやみくもにやることはないのだとおっしゃるわけですが、第三条はこれだけの規定なんですね。この規定からしますと、軍事にわたる研究はできないのかできるのか、また、米国防総省との研究交流はできないと理解していいのか、この点は明確なお答えをいただきたいのであります。
  244. 矢橋有彦

    矢橋政府委員 科学技術庁設置法の第三条にただいま先生が申されましたような規定があることは、そのとおりでございます。そして、その条項の解釈でございますけれども、私どもといたしましては、いわゆる防衛技術なり軍事技術といったものの研究開発推進に当庁は当たるものではないという意味であると解釈をいたしております。
  245. 山原健二郎

    ○山原委員 この点、官房長がお答えになられましたね。私はそのお答えはわかりますが、これはあえて長官にお伺いしたいのでございます。第三条の科学技術庁任務、この規定からすると軍事にわたる研究はしない、または米国防総省との研究交流はできないと理解をすべきだと私は思うのでございますが、長官、この点についてはぜひはっきりしたお答えをいただきたいのであります。
  246. 矢橋有彦

    矢橋政府委員 ただいま申し上げましたことを若干補足いたしますと、ただいま私が申し上げましたのは、いわゆる防衛技術そのものの研究開発はできないということでございます。裏を返して申しますと、民生用の技術ないしは汎用技術について当庁は研究開発推進するということでございます。したがいまして、例えば他との共同研究の場合でも、汎用研究あるいは民生用研究については共同研究が行える場合があり得るということでございます。防衛技術研究そのものについてのことを私から申し上げた次第でございます。
  247. 山原健二郎

    ○山原委員 その汎用技術というところで、少しもやもやが出てくるわけですね。そのことについては後で触れますが、私はここのところで長官にぜひ明確な立場を貫いていただきたいと思いますので、お答えをいただきたいのです。
  248. 河野洋平

    河野国務大臣 設置法に書かれてありますとおり、「科学技術庁は、科学技術振興を図り、国民経済の発展に寄与するため、科学技術に関する行政を総合的に推進することをその主たる任務」といたしておりますから、いわゆる防衛技術研究開発推進に当たるものではないし、また、それは設置法上行い得ないものということを申し上げます。
  249. 山原健二郎

    ○山原委員 通産省にお伺いします。  通産省設置法第三条は、いわば通産省の業務内容を羅列している感じでございますが、この任務規定からいって軍事にわたる研究はできないと理解していいのでしょうか。また、具体的には米国防総省との研究交流は排除されると考えてよろしいでしょうか。
  250. 荻布真十郎

    ○荻布説明員 御説明いたします。  通産省は工業技術院の傘下に十六の試験研究所を有しておりまして、工業技術設置法に基づきまして、鉱工業に関する試験研究、地質の調査、計量の標準の設定等を行うことになっているところでございます。御指摘通産省設置法第三条の中になるのかは忘れましたが、工業技術設置法に基づく業務が入っておるところがございます。
  251. 山原健二郎

    ○山原委員 文部省について確かめたいのですが、学校教育法第五十二条に定められている大学の目的規定からいって、大学の場合はどうでしょうか。五十二条は大学は学術研究中心であるということが書かれてありますが、この規定から申し上げまして、今のような質問にどうお答えになるでしょうか。
  252. 西澤良之

    ○西澤説明員 先生指摘のとおり、大学の教授等の職務内容は学校教育法に規定されているところでございまして、「学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とする。」大学におきまして学生を教授し、その研究を指導し、または研究に従事することを職務としているわけでございますけれども、このような学術の中心としての大学においては、人文科学、社会科学、自然科学の全分野にわたります研究研究者の主体性のもとに創造的に展開いたしますとともに、これとすぐれた人材の養成とを一体不可分のものとして推進することにその使命、特色があるものでございます。また、その研究の成果は広く社会に公開し、その発展に貢献すべきものでありますので、このような大学におきます学術研究目的、使命、特色等にかんがみますと、大学におきます研究者が軍事研究を行うことについては到底考えられないわけでございます。  なお、国立大学において防衛庁との間で共同研究が行われた例は、これまでないというふうに承知しているところでございます。
  253. 山原健二郎

    ○山原委員 なぜ各省をお呼びしてこういうことをお聞きしたかといいますと、米国防総省がSDIなど新たな軍事戦略システムを開発する上で日本の高度な汎用技術に注目し、軍事転用をねらっていると思われる節がございます。米国防総省カリー委員会の報告では、日本が開発している技術で軍事に転用できる技術分野として、十六分野の技術項目が具体的に示されております。この技術分野は、日本民間企業だけでなく、国の研究機関や大学でも重点的に研究開発推進されております、いわゆる汎用技術分野でございます。  それで先日、通産省科学技術庁文部省、郵政省、防衛庁、農林水産省、六省庁から、この十六分野の技術項目について研究開発を行っている研究機関のリストを提出していただきました。これを一覧表にすると、委員長の許可を得て今お配りしましたこの資料でございます。ここにきょうは科学技術庁のほかには通産省文部省しかお呼びしておりません。外務省いらっしゃっておりますが、これに関係ありません。三省庁の所管について間違いないかどうか。この資料をごらんになりまして、科学技術庁通産省文部省、この資料で間違いないでしょうか、先に確認しておきたいと思います。
  254. 須田忠義

    ○須田説明員 私どもの資料と同じでございます。
  255. 荻布真十郎

    ○荻布説明員 通産省の分につきましては間違いございません。
  256. 山原健二郎

    ○山原委員 文部省関係が多いですからちょっと時間がかかるようですが、恐らく間違いないと思います。というのは、皆さんの方からいただいたものを整理しただけでございますので。  このアメリカが関心を寄せている汎用技術に対する軍事転用の十六項目のうち、これを見ましても、一つだけ、平板型表示装置の項に日本側の研究機関は出ておりません。これを除く十五分野の研究開発が進められているわけです。それはもちろん軍事研究ではありません。それぞれの性格を持った研究機関として研究をされておるわけで、それがこういうふうにいわば軍事転用の汎用技術として、率直に言ってねらわれているわけです。  しかも、この課題の多くについて、政府はこれを最重点課題として推進しようといたしております。三月二十八日に閣議決定されました科学技術政策大綱では研究開発の重点化が打ち出されましたが、この十六項目のほとんどは、これは科学技術庁に確認したいのですけれども、物質・材料系科学技術、情報・電子系科学技術、宇宙科学技術にまとめられるものだと思いますが、科学技術政策大綱では「新しい発展が期待される基礎的・先導的科学技術推進」として最重点で振興を図る分野となっておると思います。この点は間違いないでしょうか。
  257. 須田忠義

    ○須田説明員 科学技術会議の第十一号答申に言われているのと言葉、テーマの名前等は若干違っておりますけれども、この趣旨は大体そういう趣旨と考えてよろしいと思います。
  258. 山原健二郎

    ○山原委員 こういう体制になっている中で我が国がSDI研究協力に参加するなどということになりますと、米国の強い要請によって、こうした国の研究機関研究開発されている高度汎用技術がSDI研究開発のために転用されることになりはしないかという懸念が出てくることは当然でございます。しかも、あえて第十条によってこれが特記されているわけでございます。条約上の配慮事項が書かれておりますから、そうなりますと、こういうアメリカ側が指名した十六項目、そのうちの大半が国立研究所あるいは大学で研究され、しかも、それが国の重要課題として指定をされている。それとのつながりが、もしSDI研究に参加するということになれば密着をしてくる可能性があるわけでございます。私は、この点を非常に危惧をいたしております。  先ほどどなたかおっしゃったように、軍事研究はしないんだ、しかし汎用技術に対しての問題については別の問題として、汎用技術というのは御承知のように軍事と民生と両面を持っているから汎用技術というわけですから、その点から考えますと、何となくお答えにはなる、軍事技術の面は研究しないとおっしゃるのだけれども汎用技術の面からここが侵食をされていって、いわゆる軍事的研究に巻き込まれていく可能性が十分にあるというふうに認識をせざるを得ないのでございますが、これにはどのようなお考えを持っておりますか。
  259. 長柄喜一郎

    長柄政府委員 SDI問題につきましては、先ほどから何回も答弁がございましたように、現在政府部内においてその対応ぶりを慎重に検討しているということでございますので、これについてのコメントは差し控えたいと思います。  ただ、十条との関係でございますけれども、十条は、国の対外的に約束しています条約その他国際約束の義務についての特別な配慮でございます。ただ、先生のおっしゃっている意味は対米武器技術供与取り決めについてのことではないかと思うのでございますけれども、対米武器技術供与の取り決めは、我が国から米国に対して武器技術を移転する場合の枠組みを定めているだけでございまして、対米供与を義務づけているものではないというふうに聞いております。そういう意味で、今回のこの法律ができまして第十条が入ったといたしましても、この対米武器技術供与に何ら変更を及ぼすものでない、全く無関係のものであるというふうに考えております。
  260. 山原健二郎

    ○山原委員 今SDI研究への理解、さらにはもう少し突っ込んだ立場を中曽根首相がとっておられることは、今度の訪米によっても次第に明らかになりつつあります。そしていよいよ第三次の調査団、官民合同の調査団ですが、これを派遣をしまして、この報告書ができる。サミットがある。この段階でSDIに対する研究参加の問題が出ないという保証は全くありません。そうなってきますと、今私どもが、ここでやりとりをしている各議員の皆さんが、平和目的に限るという問題で心配をされていることが急速に崩壊をするか、動き始める可能性を持っているわけです。この点について、第三次SDI調査の報告書が近くまとめられると言われておりますが、調査結果の概要はどういうものか。四月十一日の毎日新聞の記事によりますと、SDI研究を評価することを基調とした外務省見解を明らかにしたと報道されておりますが、外務省、そういうことがございますでしょうか。
  261. 岡本行夫

    ○岡本説明員 御指摘の新聞記事の内容につきましては、これはSDIの調査団の調査結果とは全く関係がございません。その記事の根拠につきましては私ども存じておりませんけれども、いずれにいたしましても、この記事の内容は、SDIについては非核の防御手段により弾道ミサイルを無力化し、究極的に核兵器を廃絶することを目指したものであるとのラインのものでございまして、これは私どもとして従来から繰り返し国会の御審議の場で明らかにしてきているところでございます。したがいまして、この記事内容につきまして何ら目新しいものはないと考えておる次第でございます。
  262. 山原健二郎

    ○山原委員 外務省、かなり重要なことを御発言になっているのですね。この記事は「SDI研究を評価」という、今までと違ったかなり踏み込んだ表題になっておりますからね。今までと変わりないというものではございません。  去る三月二十五日のこの委員会で、私はこの点について質問をさせていただきました。その中で、宇宙の平和利用に関する国会決議にある平和とは一体何か、それは非軍事などの解釈だということは河野長官も御確認になったわけでございます。だから、先ほどから外務省の方で岡本さん御答弁になって、何か防衛とか防御とかなんとかいうようなことをおっしゃるのですが、問題は、SDIが防衛のものかどうか、あるいは核兵器を無力化するものかどうかなどとは関係なく、それが軍事のものである以上参加はできないというのが国会の決議なんです。これは前の竹内長官にもこの委員会は確認をしたところでありますし、先日も河野長官もその点については非軍事であるということをおっしゃったわけでございますから、それが防衛のものであるかあるいは核兵器を無力化するものであるかは別として、これが軍事のものであるということは明確なところでございまして、軍事のものであるという以上は参加はできないということだと私は考えておるわけでございます。  今、第三次調査団を派遣して実態把握に努めているところだということで、明確な御答弁をなかなかいただけないわけでございますけれども科学技術庁も参加した第三次調査が終わった段階で科学技術庁にお伺いしたいのですが、このSDI参加は非軍事を旨とする宇宙の平和利用に関する国会決議に反すると思いますが、この点はいかがでしょうか。
  263. 河野洋平

    河野国務大臣 宇宙の平和利用に関する国会決議の解釈について非軍事である云々という議論は、国会決議の有権的解釈を私どもが申し上げるというのは少し僭越なことであるかもしれません。正確に申し上げるならば、宇宙の平和利用についてというときの平和とは非軍事だという議論が国会であったということを承知している、こういうふうに申し上げた方がより正確であろうかと思います。しかし、いずれにいたしましても、SDIを論じますときに我々は、当然のことでございますけれども、国会決議というものを極めて重要なことだと考えてSDIについては議論をしなければならない、こう考えております。
  264. 山原健二郎

    ○山原委員 皆さんもお聞きくださいましたように、けさからの審議の中でも出ておったわけでございますが、この法案と、そして今まさにその結論あるいは第三次調査の報告のまとめが出ようとじ、そのまとめに基づいて政府そのものがSDIについての参加をするかどうかという決定をされようとする、まさに直前に我々はおるわけですね。率直に言うと、この法案を採決する前にその辺のことが明らかになっていないと、最初に申し上げましたように、この法案がどちらへ向かって進んでいくかわからない側面があるわけです。私がここで幾ら質問を申し上げましても、今結論の出ていない段階あるいは調査団の報告のまとめができていない段階で、これ以上のお答えは皆さんはできないわけですね。できないが、数日後には、あるいは一カ月とたたないうちには、SDIに対して、中曽根さんの今の動きから見ますと恐らく参加の方向に向くのではなかろうか。そういうふうなことを考えますと、今まで国会の決議その他あります、何しろ唯一の被爆民族を代表する国会でございますから。そういう意味で、この法案の重要性がそれとの絡みで出ておるということは否めない事実だと思います。  そうするならば、この法案を成立させた、ところがその直後の情勢の変化によって軍事研究に向かって進んでいくかもしれないというふうな心配がある場合に、この法案の取り扱いをどうすべきかということを考えてみますと、我々は今大変重大な責任を持った立場に立たされているのじゃないかということを感じるわけでございまして、その意味で、この法案に対する審議というのはぜひ慎重を期した審議にしていただきたい。今までもそのような委員会運営をなさってこられたわけでございまして、そのことには感謝申し上げますが、なおこの段階でこれらの問題を勘案しながら、この法案審議については、拙速とは言いませんけれども、ぜひ慎重な態度をとるべきではないかということを、私は痛切に今感じておるところでございます。  以上、この問題についての質問はおきまして、次に、この法案の各条項について質問をしていきたいと思います。  一つは、外国人の研究公務員への任用の問題が出ております第三条についてでありますが、既に大学教官の場合は自民党の議員立法によって成立をいたしております。これは、各党賛成をいたしまして成立をしたわけでございます。学術研究のため国際交流が必要で、門戸を閉ざすべきではないという考えは、基本的に各党とも一致しておると思います。ただし、大学の場合、繰り返しますけれども、大学の自治があり、任用の場合は教授会など自主的に自治に基づいて決められていることは御承知のとおりであります。  この点で、今回は任命権者が任命する点で異なってまいりまして、例えばアメリカの国防総省の軍事研究に携わる研究者が任用されることも排除されないことになるわけでございます。これは余りにも心配のし過ぎだとおっしゃるかもしれませんが、法案審議の上では明らかにしておく必要があると思います。この点、この法案によってそういうことは排除されないと考えてよろしいでしょうか。
  265. 長柄喜一郎

    長柄政府委員 この法案の第三条によって外国人を任用する場合、任用する外国人の方の所属機関、専門分野等は特に限定しておりません。この外国人の任用に当たりましては、任用しようとする省庁の方で、その研究者研究実績、また研究の遂行能力、こういうものを評価して任用するわけでございまして、具体的には各省庁の長が判断して決めるものでございます。
  266. 山原健二郎

    ○山原委員 防衛庁研究所に任用することは、外国人研究者の場合は第三条によって排除されておりますね。その理由は何でしたか。
  267. 長柄喜一郎

    長柄政府委員 外国人の公務員への任用につきましては明文で禁止されているわけではございませんが、この点につきましては当然の法理というのが従来からあるという見解でございます。これは、公権力の行使または国家意思の形成に参画する官職に外国人は任用できないという考え方でございます。この原則の特例といたしましてございますのが国立大学、公立大学の教授、助教授等でございまして、これは教授、助教授等は公権力の行使等の度合いが低いということで外国人任用の道が開かれたわけでございます。国立研究所の研究部長、研究室長等につきましても、公権力の行使、国家意思の形成に参画する度合いは国立大学の教授等と同様ないし以下であるということで、今回の法律にそれを明記したわけでございます。  ただ、防衛庁職員につきましては、自衛隊員という特殊な身分をお持ちになっておりますので、本条の対象から除いたものでございます。
  268. 山原健二郎

    ○山原委員 今お答えになりましたように、防衛庁一般研究機関と同列には論じられない存在であることは明らかですね。だからその点から申し上げますと、第二条で防衛庁を入れた定義、これは国立研究機関研究公務員との関係は全く矛盾はないとお考えでしょうか。
  269. 長柄喜一郎

    長柄政府委員 第二条の定義で防衛庁研究所で働いていらっしゃいます研究者の方を対象にしているわけでございますが、第三条ではそれを適用除外にしています。ただ、第四条の研究集会への参加、第五条、これにつきましては防衛庁研究者の方にも適用されるわけでございます。
  270. 山原健二郎

    ○山原委員 第四条の研究集会への参加の問題で問題になりますのは、いわゆる研究機関と国立大学の旅費予算が大変抑制されているという問題があると思うわけでございます。この旅費予算の推移はどういうふうになっているでしょうか。これは文部省へ伺います。
  271. 佐藤次郎

    ○佐藤説明員 お答え申し上げます。  国立大学における教官研究旅費の予算額の推移でございますが、五十八年度で申し上げますと、総額といたしまして五十八億六千七百万円、五十九年度五十九億四千三百万円、六十年度五十九億七千二百万円、六十一年度六十億二千二百万円でございます。国立大学におきます教官研究旅費につきましては、現在国の大変厳しい財政のもとでございまして、所要の経費の確保につきまして大変苦慮をいたしておるところでございますが、昭和六十一年度におき良しては、物件費全体の削減を余儀なくされている中で、前年度と同一の単価を確保したところでございます。今後とも国立学校におきます教官研究旅費の確保につきましては、厳しい財政事情のもとではございますが、格段の努力を払ってまいりたい、かように考えております。
  272. 山原健二郎

    ○山原委員 御苦労なさっていることは私どももわかりますけれども、この旅費が少ないために公務出張にならないというのが一番のネックになっていると思います。私は、せっかく科学技術振興をおっしゃるならば、この問題は当然解決してしかるべきだと考えるわけでございまして、この点は文部省もそうですが、科学技術庁におかれましてもぜひ頑張っていただきたいと思うのです。この旅費の問題について、予算枠が厳しくてふやせない。しかし、研究者研究集会に出て知的刺激を受けるということは、創造的な科学の発展にとってこれまた不可欠の問題であります。科学技術会議も行革審も創造科学の振興を強調するならば、今お話のありましたように、これをマイナスシーリングから外すべきだと思うのでございます。  その意味で、科学技術庁科学技術振興調整費の中で手当てをしておると思いますが、しかしそれは押しなべて手当てされるのではなくて、重点的に幹部が必要と認めたものに手当てをする。それはそれなりに必要なことかもしれませんけれども、各研究者が自主的に押しなべて研究意欲が燃え立つようなことを考えるのが大切だと思うわけでございます。これは多くの科学研究者の皆さんの切望であると思うわけでございますが、この点はどうお考えでしょうか。
  273. 内田勇夫

    ○内田(勇)政府委員 国立研究機関の旅費の問題につきましてお答え申し上げます。  国立試験研究機関に計上されております学会出席のための国内出席旅費は、ここ数年は一億一千方程度とほぼ同額で推移をしておるわけでございます。私ども、国立試験研究機関研究者が学会に出席することは、研究交流の促進、研究基盤の強化を図る上で非常に重要なことだというふうに認識しております。そこで、先ほど先生お話ございましたように、我が国の基礎的研究推進していく上で国立試験研究機関が果たすべき役割が大きいということにかんがみまして、昭和六十年度から科学技術振興調整費により国立試験研究機関の基礎的研究推進を図るということといたしまして、その一環として学会出席等のための旅費といたしましては約一億円の配分をするということといたしまして、旅費の大幅な拡充を図ったというところでございます。なお、六十一年度におきましては、国際的な研究集会への出張旅費につきましても配分を行いたいと考えております。  それで、その研究所の中でアンバランスになるのではないかというお話でございますが、これらの経費は各機関におきまして所長の指揮のもとに運用がなされるものでございまして、学会出席等の旅費の運用に際しましては、その機関研究活動の調和ある推進を図るという観点から合理的な配分をするように、不合理な格差が生じるというようなことがないように配慮して運用されるものと考えております。
  274. 山原健二郎

    ○山原委員 この法案では、休暇にはしないが旅費はつかない、準公務扱いだという状態ですね。私はこれでは不十分だと思いますし、旅費増額の手当てをすることが抜本的に解決する道だというふうに考えるわけでございます。  次に、第五条で研究公務員民間出向の場合休職の形をとる、こういうことが行われておるわけですが、これも手当の問題ですね。いわゆる民間に出向しやすいようにするということでございますが、これは昨年の、先ほどちょっと私が触れました通産関係の基盤技術研究円滑化法に基づいてつくられた促進センターの業務を見ますと、民間等の委託を受けて試験研究を行うというのがございます。その場合、そこに研究公務員が出向する場合には、ここで言うこの規定が当てはまると考えてよろしいでしょうか。
  275. 高津義典

    ○高津説明員 お答えをいたします。  御指摘のございましたように、基盤技術研究促進センターの業務の一つに受託研究業務というのがございます。これは政府以外の者、すなわち主として民間企業になろうと思いますが、民間企業等からセンターが研究を受託いたしまして実施する、その実施します研究に国家公務員が休職出向する場合を想定しておりまして、これにつきましては退職手当の計算や共済組合に関しまして不利な取り扱いを受けないように、別途、国家公務員等退職手当法施行令第九条の二及び国家公務員共済組合法施行令第四十三条第五号の指定に基盤技術研究促進センターを追加する等の措置を既に講じたところでございます。  このように、基盤技術研究促進センターの行います受託研究と申しますのは、基盤技術研究円滑化法の第三十一条第一項の三号に書いてあるのでございますが、政府以外の者、主として民間企業の委託を受けてセンターが研究を実施するものを考えているものでございまして、今回の研究交流促進法案第五条の規定は、国以外の者が国の委託を受けて行う研究あるいは国と共同して行う研究について、その推進のための措置を講じているものと理解しておりまして、その切り口あるいは考え方が異なっておるものと理解をしております。
  276. 山原健二郎

    ○山原委員 ちょっと理解しにくかったのですが、それておきましょう。  これで事実上民間要請を受けて出向するということになりますと、ちょっと先ほども出ましたけれども公務員の全体の奉仕者たる性格が損なわれるようなことはないというふうに判断をしてよろしいでしょうか。
  277. 吉村晴光

    ○吉村説明員 公務員国家公務員法に基づきまして休職をいたしました場合、その「休職者は、職員としての身分を保有するが、職務に従事しない。」ということが公務員法に規定されておるわけでございます。職務に従事をいたします公務員につきましては国家公務員法に基づきます服務の規律がいろいろかかるわけでございますが、職務に従事しないということから、職務専念義務は当然免除をされる。その関連で、私企業からの隔離、上司の命令に従う義務といったものは当然適用されないというふうに理解をいたしておりまして、それ以外の公務員法上の規律は受けるというふうに考えております。一部分については当然公務員としての身分を持ちますので適用されますが、一部分につきましては職務専念義務は免除されるという観点から、適用されないものが出てくるということでございます。
  278. 山原健二郎

    ○山原委員 第六条についてお伺いします。  国の受託研究の成果に係る特許権の譲与についてでありますが、譲与は無償ということですね。
  279. 長柄喜一郎

    長柄政府委員 無償譲渡の意味でございます。
  280. 山原健二郎

    ○山原委員 国有財産でありますから、これは適正な対価でないと渡せないという財政法の規定があるわけでございますが、この財政法の基本原則に対してこの問題は抵触することは全くありませんか。
  281. 長柄喜一郎

    長柄政府委員 財政法第九条をちょっと読み上げますが、「国の財産は、法律に基く場合を除く外、これを交換しその他支払手段として使用し、又は適正な対価なくしてこれを譲渡し若しくは貸し付けてはならない。」こういう規定がございます。この条項のとおり、国の財産管理、処分は原則として適正な対価を得ることが必要となっております。  ただこの法律の条項の冒頭ございましたように、「法律に基く場合を除く外、」となっておりまして、法律で別段の定めのある場合は別扱い、こういうことになっております。したがいまして、この法案の第六条の措置も、この財政法で言う別段の措置に該当するものでございまして、財政法に違反するものではございません。
  282. 山原健二郎

    ○山原委員 臨調答申では、いわゆる委託研究にかかわる特許権等の取り扱いについては改善を図れというふうなことを書いておるわけでございます。受託については特に言っていないと思いますが、行革審ではこれは言っているかどうかちょっとわかりませんけれども、臨調の場合は答申には出ておりません。受託について特に言っていないのですが、これはどうなっていますか。
  283. 長柄喜一郎

    長柄政府委員 行革審答申では、「共同の研究開発の成果である特許権等については、相手方の負担割合」云々と言っております。それでこの「共同の研究開発」という意味は、行革審答申のその少し前にございますけれども、「共同研究、委託研究、受託研究等の契約に基づき、国が研究組合、民間企業等と共同して進める研究一以下、「共同の研究開発」という。)」こう言っておりまして、委託研究共同研究、受託研究を含むものでございます。
  284. 山原健二郎

    ○山原委員 ここで、とにかく委託の場合でも受託の場合でも国の財産が特定の企業に渡るということでございまして、国有特許の運用の基本原則、非差別、非独占の実施許諾だというふうに思います。その点で考えますと、委託の場合も受託の場合も、権限を渡すことはこの権限を崩すことになりはしないかと思いますが、特許庁おいでになっておられましたら、この点について解明をしていただきたいのです。
  285. 長柄喜一郎

    長柄政府委員 今回の法案では、委託研究の場合の権利の帰属については何ら述べておりません。ということは従来どおりでございまして、国がお金を負担し、その成果である特許権は国に帰属するということについては何ら変更ございません。ただ、委託研究の場合につきましてはその研究開発の資金は民間企業が負担されているということから、成果の一部を民間企業に譲渡をするものでございまして、これも全部譲渡するわけでございませんで、公益性の観点から国が残りの部分を留保し、そしてそれを国民に広く一般に使っていただくというふうなことを考えているわけでございます。  また、国有特許の運用の従来からの基本原則でございます非差別、非独占というこの原則につきましては、これは国有特許のライセンスの、実施許諾の原則でございまして、本法案で受託研究の場合の権利につきましての所属を変更しているわけでございますけれども、これと実施許諾の原則とは全く関係ないことでございます。現在まで政府の持っております国有特許等につきましては、非独占、非差別という原則が貫かれてきております。
  286. 山原健二郎

    ○山原委員 第七条、第八条の国際共同研究の規定、特に第八条についてお聞きしたいのですが、いわゆる損害賠償の問題でございます。過失で破壊されたり、また人が災害を受けた場合など、請求権をお互いに放棄しようというものでございます。そして、第八条第二号で防衛庁職員の災害補償も含めているわけでございます。このことは国際共同研究防衛庁が参加することを前提とした規定だと思いますが、そのように理解をしてよろしいでしょうか。
  287. 長柄喜一郎

    長柄政府委員 この法案は、いずれの省庁であろうと国が行います研究開発すべてを対象としているわけでございます。それで、研究者の方々の公務上の災害に関しましては、一般職につきましては国家公務員災害補償法でやられているわけでございますが、防衛庁研究者につきましては、これが防衛庁職員給与法で準用されているということで「防衛庁職員給与法」という表現が出ているわけでございます。
  288. 山原健二郎

    ○山原委員 第一号で、国際共同研究の「活動により生じた国有の施設、設備、機械器具及び資材の滅失又は損傷に関する外国等に対する国の損害賠償の請求権」を放棄ということでございますが、これは軍事的な共同研究の場合に一番起こり得るケースではないかと思います。予想されることでございまして、明確にはお答えになれないかもしれませんが、一番適用されるのがいわゆる軍事的な共同研究ではないかと思いますが、これはどのようにお考えでしょうか。
  289. 吉村晴光

    ○吉村説明員 こういった損害賠償の請求権の放棄につきましては、欧米で共同研究をやりますときに通常行われるものでございまして、私どもとして特定の分野を念頭に置いてこういった規定を設けるということではございませんで、そういった共同研究がありますときに日本の国の研究機関が参加できるようにしたいという趣旨でこういう規定を設けているものでございます。
  290. 山原健二郎

    ○山原委員 それでは、この法案行革審答申立法化の提起を受けて、そこに盛られた内容で法律上の手当てが必要なものを盛り込んでいる、こういう形式になっているわけですね。ところが、損害賠償放棄というのは行革審の指摘にもなかったものでございますが、どうしてここへ入ってきたのでしょうか、御説明をいただきたい。
  291. 長柄喜一郎

    長柄政府委員 本件につきましては、行革審答申には何ら触れられておりません。ただ、科学技術庁がいろいろ外国政府と国際共同研究をしようとする場合に、この条項がないためにその協力に参加できないというふうな事態が過去にございました。そういうことで、今後国際共同研究推進するに当たりましてこの条項を入れたものでございます。
  292. 山原健二郎

    ○山原委員 アメリカのNASA有人宇宙計画、日本は今予備計画で本格的な参加はしておりませんが、日本が参加する場合にNASAは損害賠償の相互放棄を要求していると聞きますが、そういうことを想定してこの条項が、行革審にはないにもかかわらず入ってきたのではないでしょうか。
  293. 長柄喜一郎

    長柄政府委員 NASAのただいま先生のおっしゃいましたプロジェクトについても、損害賠償請求権を相互に放棄するという条項が入っておりまして、この条項につきましては、カナダ、ヨーロッパ諸国もそのようなルールでいいということを言っております。それで、日本には財政法がございまして、損害賠償請求権を放棄するということは現在の法律ではできません。そういうことで、日本が参加する場合にはこの条項が必要でございます。
  294. 山原健二郎

    ○山原委員 次に、第九条の国有施設を安く民間に使用させることができるという問題でございますが、これの条項からいきますと、場合によっては国の研究機関の計画、運営に支障を来すようなことは起こり得ないとお考えでしょうか。
  295. 長柄喜一郎

    長柄政府委員 国有の研究施設はそれぞれの使用目的があってつくられたものでございまして、まずそれが優先するわけでございます。そして、それが優先しまして、時間があいたときに外部の方に御利用願うというふうに考えております。
  296. 山原健二郎

    ○山原委員 それならば、国有施設は優先的に使われているわけですから、そういう規定を挿入してはどうなのか。支障のない限りにおいてそういうことが許されるというふうな条項があってもおかしくはありませんし、むしろそれは明確にしておいた方がよいと思いますが、そのようにはお考えになりませんでしたか。
  297. 長柄喜一郎

    長柄政府委員 国有財産法の第十八条第三項に、「行政財産は、その用途又は目的を妨げない限度において、その使用又は収益を許可することができる。」こういうふうな規定がございまして、国有の研究施設につきましても、その使用の目的を妨げない限度において他への使用を許諾できるというのが原則になっておりますので、その旨の規定はこの法律には書かなかったわけでございます。
  298. 山原健二郎

    ○山原委員 例えば研究集会への参加の場合、これは公務員の場合ですが、「研究業務の運営に支障がない限り、」と法律上の規定を挿入しておりますね。そういう意味では、なじまないものではなくて、やはり国の研究機関の運営あるいは計画を保障するために、これは入れてもいいのではないかと思うのですけれども、もう一度伺いたいのです。どうでしょうか。
  299. 吉村晴光

    ○吉村説明員 第九条は、国有施設を使用させます場合に、時価よりもその対価を低く定めることができるという特例を定めているものでございまして、国有施設を使用させる根拠は国有財産法にございます。したがいまして、支障のない場合に限るといった趣旨は、その国有財産法に書くのが適当であるという理解で入れてないわけでございます。
  300. 山原健二郎

    ○山原委員 例えば文部省の高エネを使う場合など、どの程度に安くなるのか、そのような計算は既に行われているのでしょうか。
  301. 佐藤次郎

    ○佐藤説明員 お答えいたします。  またどの程度に安く価格を定めるかということについては、なお今後検討させていただきたいというふうに考えております。
  302. 山原健二郎

    ○山原委員 ちょうど時間になりましたので、私は、一番重要な第十条の問題についてはこれから時間をかけてお伺いしようと思っておりましたけれども、本日時間にもなりましたし、遅くもなっておりますので、これでおきたいと思いますが、委員長、率直に言いまして、私は、この法案につきまして各党とも法案の見方は違うと思いますけれども、例えば連合審査とか参考人とかいうことを要求してまいりました。ただ事態の動きについて、それと全く無関係に考えているわけではありませんが、またそのような要請がありましたならば、そういうことも御配慮いただきたいということと同時に、なお一部質問が残っておりますので、この点についての御配慮を御要請申し上げまして、私の質問を終わります。     —————————————
  303. 大久保直彦

    ○大久保委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  内閣提出研究交流促進法案審査のため、四月十七日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  304. 大久保直彦

    ○大久保委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は、来る十七日木曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十五分散会