○小川(泰)
委員 そういう対応の姿勢、今御説明のとおり私も承知しておるのですが、どうも最近見ていますと、速度が一番
心配になるのです。いろいろ対応を、予算をつけられたり体制をつくったりしていくのでずが、十分これで間に合うのかどうかということは、これから試行錯誤でいってみませんとなかなかこの種のものは難しかろうと思いますので、とりわけそういう心組みで重点的に当たっていただきたい、こういう気持ちがあったから御
質問申し上げましたので、よろしくお願いを申し上げたいというふうに思います。
そのときに、私、過去を振り返りまして、この前も申し上げたのですが、先ほど来、
原子力に関してこの
委員会ではたびあるごとの法律案をめぐって、現場の御苦労やら実態やらいろいろ論議をされて、ずっと私も参加をして聞いております。非常にこれも重要なこと、結構なことだと思っておりますが、どうも
日本人の奥深くには、あの広島、長崎の原爆というものが理屈を超えて相当な尾を引っ張っておる、これは紛れもない事実だ、こういう
経験を我々は持っています。また、世界じゅうで唯一の被爆
国民としてもかけがえのない体験を我々はしておる。これをじっと見詰めてみますと、一体原爆というものはどんな環境の中で、どういう
条件と要請の中でつくられ、使われたかという忌まわしい戦争の経過な
ども歴史的に足取りをたどってみますと、相当これは無理をしてあの
段階でつくり、また使ったな、こういうことを過去の事実として私
ども深く反省をしなければならぬ。私は、こういうものも
一つ判断の材料に挙げたいのです。
もう
一つは公害。高度経済成長という中で、ばあんと打っちゃった。前へ行け、前へ行け。公害列島などという悪名も帯びるくらい、
日本は戦後の中で来てしまった。これも、そうなりはしないか、気をつけましょう、気をつけましょうと言いながらも、そういう体験を二度目にした。さて今は何だというと、そういう物的な
影響も大変困ったものだし、大事ではありますけれ
ども、どうやら
人間の心の中へ、ひょっとするとすき間風が吹き始まったのではないか、こういうことすらも私
感じている一人なんです。
先ほど
長官が言われた科学万博のときの世論
調査、私も承知しております。そして、かわいい我が子を育てる一番のもとの御婦人方、
人間が命を受けて生まれ育ったときに一番接触をし、スタートを切るのはお母さん、そういう
人間の避けて通れない道程の中の御婦人方が、片一方では宇宙の話もする、バイオの話もするというふうに進んでいっているのですが、
人間のために必要とする科学というものにもう一回思いをいたしますと、私は、ああいうお気持ちが出てぐることに対して大事に大事に耳を傾け、もっと深刻に受けとめて
科学技術行政というものは政治の分野からあってしかるべきだということを教えられたような気がするのです。そこら辺が私の頭の中を去来するものですから、設置法第三条まで引き合いに出しまして、
長官の今回のこの方針のポイントまでこれにつなげてみて、一体これでいいんだろうか、これはどこで取り上げるべきか。したがって、いわゆる「人文科学のみに係る」、「及び大学における」などというので当初つくったのだけれ
ども、これは
科学技術庁で扱うべきものなのかどうかわかりませんが、そういうもの全体を包含しまして、今言ったような問題は国を挙げてしっかりした
調査や対応に入っていく、それを今非常に必要としているのじゃないのかなというふうに思います。
したがって、具体的にはこういう体制を組みなさい、こういう
委員会でもっと深刻に勉強しましょうや、各省庁あるいはそれこそ国を挙げて全体の知恵を集め合って、二十一世紀に向かってどうするのだというようなこともやってほしいくらいの、私は、過去四十年の経過の中で我々がたどってきた正さなければならないものを深刻に受けとめて今を見詰めておる、こういう
意味で申し上げたので、そこの辺は、やがて出てくる、既にその骨子は出されている
科学技術政策大綱などというものをさっと散見されましても触れては奉りますが、重点はどうしても従来の延長線上に置かれて、合理性、発展性を追求する方向へ進んでいっているのです。その速度と同じ以上に、今言ったようなもう一面、これは同時並行的に進められていかなければ、さっき申し上げたような速さに対応し切れないというふうな気が私はどうもしてならないのです。
抽象論で大変恐縮なのですが、大体気持ちはおわかりいただけるのだろうと思いますが、そういうものこそ、
一つ一つの法案を通じて論議するのも結構だけれ
ども、我々この
科学技術委員会の政治の
立場からあるべき姿を追求するという場を、ひとつぜひ先々みんなで工夫して僕は持っていいんじゃないか。この種のものはどこかで問題提起いたしませんと全体のものの芽吹きにならないというふうに思いますので、ぜひ
長官、その辺は忌憚なく御相談、
研究願って、問題の提起をしていただきたいなというふうに思うのです。その辺の気持ちのほどで結構です。別に私はこだわりませんから。