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1986-05-09 第104回国会 衆議院 運輸委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年五月九日(金曜日)     午前九時五十分開議 出席委員   委員長 山下 徳夫君    理事 小里 貞利君 理事 鹿野 道彦君    理事 久間 章生君 理事 津島 雄二君    理事 清水  勇君 理事 吉原 米治君    理事 西中  清君 理事 河村  勝君       尾身 幸次君    加藤 六月君       柿澤 弘治君    関谷 勝嗣君       近岡理一郎君    中村正三郎君       二階 俊博君    堀内 光雄君       増岡 博之君   三ッ林弥太郎君       山村新治郎君    若林 正俊君       小林 恒人君    左近 正男君       関山 信之君    富塚 三夫君       横山 利秋君    石田幸四郎君       梅田  勝君    辻  第一君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 三塚  博君  出席政府委員         運輸政務次官  亀井 静香君         運輸大臣官房長 永光 洋一君         運輸省運輸政策         局長      栗林 貞一君         運輸省国際運輸         観光局長    仲田豊一郎君         運輸省海上技術         安全局長    間野  忠君  委員外出席者         運輸委員会調査         室長      荻生 敬一君     ————————————— 委員の異動 五月九日  辞任         補欠選任   加藤 六月君     中村正三郎君   田中 直紀君     二階 俊博君   若林 正俊君     尾身 幸次君 同日  辞任         補欠選任   尾身 幸次君     若林 正俊君   中村正三郎君     加藤 六月君   二階 俊博君     田中 直紀君     ————————————— 五月九日  日本鉄道株式会社法案嶋崎譲君外八名提出、  衆法第一五号)  日本国有鉄道の解散及び特定長期債務の処理に  関する法律案嶋崎譲君外八名提出衆法第一  六号)  日本鉄道株式会社希望退職者等雇用対策特別措  置法案嶋崎譲君外八名提出衆法第一七号)  日本国有鉄道改革法案内閣提出第五三号)  旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に  関する法律案内閣提出第五四号)  新幹線鉄道保有機構法案内閣提出第五五号)  日本国有鉄道清算事業団法案内閣提出第五六  号)  日本国有鉄道退職希望職員及び日本国有鉄道清  算事業団職員の再就職の促進に関する特別措置  法案内閣提出第五七号)  鉄道事業法案内閣提出第六九号)  日本国有鉄道改革法等施行法案内閣提出第七  〇号) 同月二日  国鉄再建に関する請願天野光晴紹介)(第  三七一〇号)  国鉄全国ネットワーク保持等に関する請願  (網岡雄紹介)(第三七四五号)  同(渋沢利久紹介)(第三七四六号)  福岡県田川地区の浮揚・再生のための公共交通  政策確立等に関する請願多賀谷眞稔紹介)  (第三八一〇号)  国鉄分割民営化反対等に関する請願経塚  幸夫紹介)(第三八一一号)  同(東中光雄紹介)(第三八一二号)  同(藤田スミ紹介)(第三八一三号)  同(正森成二君紹介)(第三八一四号)  国鉄分割民営化ローカル線廃止反対等に  関する請願経塚幸夫紹介)(第三八一五号  )  同(東中光雄紹介)(第三八一六号)  同(藤田スミ紹介)(第三八一七号)  同(正森成二君紹介)(第三八一八号)  国鉄分割民営化関連法案反対に関する請願  (梅田勝紹介)(第三八一九号) 同月六日  ハイヤータクシー事業における行政改善に関  する請願梅田勝紹介)(第三八三八号)  同(工藤晃紹介)(第三八三九号)  同(佐藤祐弘紹介)(第三八四〇号)  同(辻第一君紹介)(第三八四一号)  同(不破哲三紹介)(第三八四二号)  同(松本善明紹介)(第三八四三号)  国鉄分割民営化法案反対等に関する請願(経  塚幸夫紹介)(第三八四四号)  同(藤田スミ紹介)(第三八四五号)  国鉄分割民営化反対及び民主的再建等に関す  る請願東中光雄紹介)(第三八四六号)  国鉄分割民営化反対及び民主的再建等に関  する請願東中光雄紹介)(第三八四七号)  国鉄全国ネットワーク保持等に関する請願  (沢田広紹介)(第三九〇一号)  ハイヤータクシー観光バス事業公共交通  としての確立に関する請願岡田春夫紹介)  (第三九二五号)  同(吉原米治紹介)(第三九二六号)  国鉄分割民営化関連法案反対に関する請願  (広瀬秀吉紹介)(第三九二七号) 同月八日  公共交通充実等に関する請願浦井洋紹介  )(第三九九四号)  ハイヤータクシー事業における行政改善に関  する請願梅田勝紹介)(第三九九五号)  同(浦井洋紹介)(第三九九六号)  同(小沢和秋紹介)(第三九九七号)  同(岡崎万寿秀紹介)(第三九九八号)  同(経塚幸夫紹介)(第三九九九号)  同(佐藤祐弘紹介)(第四〇〇〇号)  同(柴田睦夫紹介)(第四〇〇一号)  同(瀬崎博義紹介)(第四〇〇二号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第四〇〇三号)  同(田中美智子紹介)(第四〇〇四号)  同(津川武一紹介)(第四〇〇五号)  同(辻第一君紹介)(第四〇〇六号)  同(中川利三郎紹介)(第四〇〇七号)  同(中島武敏紹介)(第四〇〇八号)  同(中林佳子紹介)(第四〇〇九号)  同(野間友一紹介)(第四〇一〇号)  同(林百郎君紹介)(第四〇一一号)  同(東中光雄紹介)(第四〇一二号)  同(藤木洋子紹介)(第四〇一三号)  同(藤田スミ紹介)(第四〇一四号)  同(正森成二君紹介)(第四〇一五号)  同(三浦久紹介)(第四〇一六号)  同(簑輪幸代紹介)(第四〇一七号)  同(山原健二郎紹介)(第四〇一八号)  脊髄損傷者に対する運輸行政改善に関する請願  (熊川次男紹介)(第四一〇一号)  同(小坂徳三郎紹介)(第四一〇二号)  同(佐藤誼紹介)(第四一〇三号)  同(武部文紹介)(第四一〇四号)  同(福田一紹介)(第四一〇五号)  同(渡部恒三紹介)(第四一〇六号) 同月九日  国鉄全国ネットワーク保持等に関する請願  (石橋政嗣君紹介)(第四一八八号)  北陸新幹線早期開通等に関する請願串原義  直君紹介)(第四一九四号)  国鉄分割民営化関連法案反対に関する請願  (富塚三夫紹介)(第四三一八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  特定外航船舶解撤促進臨時措置法案内閣提出  第八六号)  海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の一  部を改正する法律の一部を改正する法律案(内  閣提出第七九号)(参議院送付)      ————◇—————
  2. 山下徳夫

    山下委員長 これより会議を開きます。  内閣提出特定外航船舶解撤促進臨時措置法案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。関山信之君。
  3. 関山信之

    関山委員 世を挙げて円高不況で大変な事態になっておるわけでありますけれども、今回の船舶解撤促進法案もさまざまな海運業界をめぐる深刻な状況の中で、おくればせながらという感じですが、新たな一つの手当てが提起をされておるわけです。  冒頭、大臣にお伺いしたいのでありますけれども、円は昨日も新高値を更新しておるわけでありますが、外航海運造船業に及ぼしている今回の円高影響というのはどれほどのものか。三月二十四日の海事新聞に、運輸省の調べで、この円高影響数字が、六十年度の円高差損が約百八十億、六十一年度は四百八十一億から五百五十六億ぐらいになるだろう、造船は六十一年度二百三十二億を予想しているといったような報道があるわけでありますけれども、その時点から見ますと、さらに事態は深刻になっておるわけでありまして、この時点での見通しをお尋ねしておきたいと存じます。
  4. 三塚博

    三塚国務大臣 ただいまの円高影響度でございますけれども、深刻な様相であると私も受けとめておるわけでございまして、大手六社ということで見ますと、六十年度では対ドルレートが一円上がるたびに経常損益ベースで八億円弱の差損が生ずる、こう言われておるわけでございます。ですから、二百四十円でありましたものが、今百六十四、五円、三円、こういうことでありますので、七十円程度上がっておるということであれば、五百六十億ということに大手六社で見ますと計算が出てくるわけでございます。  こういう中にありまして、これはさらに海運不況ということで深刻な影響を及ぼすわけでございますが、片や原油の輸入価格が御案内のとおり大幅にこれまた二十ドルを割るというような見通しに立ってきておることなどを見てみますと、それによるプラス・マイナスがどうなってまいるか。ただ、海運の場合は、ドル計算で契約が行われておることに影響度が高いわけでございますから、その辺のところが燃費との関係でどの程度計算ができるのか、今それをさらに精査しておるわけでございます。  問題は、この円高がどういう状況で推移するのかという見通しが今後の施策を立てる上で極めて重要なのかな、こういうふうに思っておるわけでございまして、内需喚起中心としたことで国内政策を発動せざるを得ない状況にあります以上、これも先行きどういう推移をするか。また理想的な円レートと言われる百八十円の方向を打ち出すための諸施策政府一体として取り組む、こういうことの中で、その成果がどうなるかというのが今後の一つの目安かなとは思います。  いずれにしても、現時点における円高影響は深刻であるという受けとめ方の中において、運輸省として講ぜられる諸施策はきちっと行っていかなければならない、こんなふうに考えておるところであります。
  5. 関山信之

    関山委員 仲田さん、いかがでしょうか。もう少し具体的に、三月の時点からまだ円は動いているわけですし、細かな計算ができていないならできていないでも仕方がありませんけれども、現実に企業損益状況にどういう影響を及ぼすのか、あるいはとりわけ倒産雇用の問題について、この事態の中でどういう状況見通しておられるのか、予想されておるのか。その辺について事務レベルでもう少し具体的な御検討がないのでしょうか。
  6. 仲田豊一郎

    仲田政府委員 御指摘のように、外航海運に限りましても、六十年度の実績見込みで百八十億円も円高によるマイナスが見込まれ、六十一年度の見込みといたしましても、五百五十六億から四百八十一億円のマイナスが見込まれるという一応の計算がございますが、これは実は収入面におけるドル建て比率、それと支出面でのドル建て比率、こういうもののバランスの中から出てまいりますから、数字としてはなかなか確定しにくいわけでございます。  ただ、現状において数字の割とはっきりつかまえられます定航六社のデータをもとにして計算いたしますと、円高一円当たり大体七・五億円の差損が発生するのではないか。この数字はかなり確実なものでございますから、これをベースにして遠洋関係外航海運計算し、かつ近海海運業というのは、また特殊な形態になっておりますが、九〇%はドル建てである、こういう前提を用いて計算して、これを合算すると、ただいま申し上げたような数字が一応出てくるということでございます。またこの数字は、これからどういうふうに動いてまいりますか、これだけであるとも申し上げられませんし、これより少ない可能性がある場合も決してないわけではございませんが、一応の数字ということでお受け取りいただきたいというふうに考えております。
  7. 関山信之

    関山委員 その後、新しい数字がないようですから、そういう御答弁かもしれませんが、いずれにしても、この法案審議資料の中にある外航船舶保有企業企業種別損益なんかを見ましても、新しい数字はありませんけれども、五十八年で六百九十三億という全体的な経常損益の赤字が出ているわけですから、ここで五百億、六百億という数字は相当な数字じゃないか、こう思うものですから、この海運業界、既に幾つかの企業倒産やあるいは雇用問題が発生をしておるわけですけれども、企業の分析がもう少し具体的にあっていいのじゃないか、そんな感じがいたしますが、いかがですか。
  8. 仲田豊一郎

    仲田政府委員 御指摘のとおり、この円高影響が出ます前におきましても、これは世界的な海上荷動き量の低迷、それから船腹の過剰、またコンテナ部門競争激化、こういうような円高とは関係のない要因外航海運は非常に深刻な状況に置かれております。海運企業大手十社をとりましても、五十九年に二百八十億の損失を計上しております。もう少し幅を広げまして、アンケート調査も含めた二百八十五社で、五十八年度において七百億でございます。これに先ほど申し上げたような円高損失が形としては加わるということ。またほかに石油の問題などいろいろ収支に大きな影響があるコストの変化がございますが、こういう状況海運企業にとって今までにない非常に深刻な状況かと思いますので、こういう事態を踏まえて、これからの海運政策というものを真剣に考えていかなければならないと考えております。
  9. 関山信之

    関山委員 今日ここまで事態が進んでおるわけでありますから、しかも今あなたがおっしゃいましたように、かなり深刻な事態前提としてあるということであればなおさらのことですけれども、少しミクロのところに目を移していただいて、十分な調査なり実態の把握をしていただく必要があるのじゃないかと思いますので、注文をつけておきます。  それから、三月三日に近海船などを対象にして、円高対策業種転換対象企業なんかを決めたりしておりますけれども、その後新しい不況に対する具体的な手だてというのは何かあるのでしょうか。
  10. 仲田豊一郎

    仲田政府委員 御指摘のように、近海海運企業が非常に深刻な状況にあるものでございますから、また同時に、政府として決めました中小企業に対する円高対策対象として、行政ベースでは通産省にお願いいたしまして、業種転換対策と同時に特別の融資を講ずるという対策、その両面についての適用をお願いしたわけでございます。五・五%の金利で融資を受けるということは、現在の近海海運企業にとっては非常に魅力のある条件でございますので、私どももこれをぜひ実現したいと思って通産省と折衝をしている次第でございます。  現在の状況を率直に申し上げますと、この条件で援助を受けたい会社はたくさんございますが、実際に融資を受ける承諾をなかなか受けられないで困っているという現状でございまして、行政ベースでも非常に苦慮しておりますが、せっかくできた制度でございますので、これが実効あるような形で近海海運業にも適用される、適用はされておりますが、実行されるということを通産省にもこれからお願いをしていきたいと考えております。  その先の話でございますが、現在、近海海運業というのは、非常に実態のつかみにくい、先ほど先生指摘のような調査検討という意味ではなかなか今まで手の回りにくかった業態でございますので、まず早急に現状調査いたしまして、その上で対策を考えていきたいと思っております。
  11. 関山信之

    関山委員 これも重ねてのことになりますが、先ほどの仲田さんの御答弁にもあるのですけれども、従来ある時期の投機的なあるいは言葉をかえて言えば思惑違いというのでしょうか、そういうものによる不況海運が抱えている構造的なもの、さらには追い打ちをかけて円高によるものというふうに幾つかの要因が重なってきているわけです。  そこで、いろいろ区分けして議論してみてもしょうがないのですが、いずれにしても、——これはあなたが二月二十四日の段階で、「海運界として大変な時期となっている。ただ積極経営が裏目に出たなと経営者判断によるところが大きく、すべての海運企業に当てはまる理由ではなく、これにより一般的な新しい不況対策を考えることとは別問題だ。」こうおっしゃっているのです。明らかにあなたの頭の中には、いわば一時的な投機的な思惑的なものがある種の海運不況要因としてある。だから、それへの対策とこれとはまた別だというお立場に立っていらっしゃるようなんですが、もはやこの事態はそういうものだけでは済まされない。もちろんそういう要因というのはきちっと見ていかなければならないわけでしょうけれども、この時点でその辺の御認識はどうなんでしょうか。
  12. 仲田豊一郎

    仲田政府委員 確かに、あの時点では個別的ないろいろな海運に関する問題がございまして、それに対する我々の認識といたしましては、海運業界一般の問題というよりは、どちらかというと個別的な色彩が強いというような御答弁を申し上げたと思います。  現在の時点で考えますと、それはそういう判断で正しかったのではないかと思いますが、さらにこれから一年後、それからまた先ということを考えますと、これは海運業界一般の問題として、深刻な海運不況の問題を取り上げるべき時期に来ているのではないか。その対策は何かということはまた別といたしましても、一般的な海運業界全体の一つの雰囲気、また客観的な不況の深刻度という面から考えますと、個別的というよりは一般的な面で海運政策をひとつ何か新しいものを考えていかなくてはならないという時期に来たのではないかと考えております。
  13. 関山信之

    関山委員 私がなぜくどくどこの種の議論を繰り返しているかといいますと、海運業界を取り巻く状況なり、こういう事態をもたらした要因なりに対する皆さん方の御判断というものが、今後の政策的な展開に結びついていかざるを得ない。そういうものがなければ、それだけの思いつきの対応になってしまうのではないかということがあるものですから申し上げているわけでありまして、その辺のところは十分御理解をいただきたいと思うのです。  きょう実は亀井政務次官にわざわざおいでをいただいたのは、これもまた新聞からのコピーで大変恐縮なんですけれども、まさに我が意を得たりという御発言が、あなたの御就任の直後でもないですが、この春の御発言の中にあったものですから、改めて御発言のほどを確認しておきたい。  そう申し上げますのも、この間の議論の中で、私は何遍か仲田さんとやりとりをしてきているのですが、今日の船腹の過剰を生じさせたのは、海運行政あるいは造船行政というもののいわば整合性を欠いたあるいは政策的な対応が不十分だったという認識がありまして、まずそれが根底にあって、今日のさまざまな不況要因が重なり合ってきているということがあるものですから、きょうおいでをいただいて御発言確認をしたいと思うのです。  「海事プレス」、海事新聞の中で、「これほどまでの船腹過剰を生じさせたのは運輸省にも責任があるとして、関係部局に猛反省を促している。十年先といえばちょっと難しいが、少なくとも五年先位見通し船腹需給コントロールを思い切ってやるべきだ」、それから「行政サイドとしては、少しばかり景気がいいといって船をどんどんつくり、行政がそれを無条件に認めては行政意味がない。徹底した行政指導をやるつもりだ。」それから「小さな船まで大手が手がけている現状から、中小零細造船業者の救済をきちんとやらなくてはならない。」というような一連の発言がございまして、まさにこの間臨時船舶建造調整法の有効な発動というものがなかったじゃないか、そこに一つ要因があったのではないか、そこまでまだ次官はおっしゃっておりませんけれども、この御認識は私もまさに同感でありますので、改めて次官の御発言として確認をしておきたいと思うのです。
  14. 亀井静香

    亀井(静)政府委員 お答えいたします。  委員指摘のような、現在の未曾有と言ってもいいようなこうした海運造船業界不況については、運輸省として今まで全知全能を傾けて努力したということは、まさに間違いないわけであります。しかし、こういう事態になった原因の中には、行政当局として全力を挙げてやったんだけれども、さらに将来見通しを含めて努力をしなければいかぬ点があったということは、やはり率直に反省すべき点は反省して、今後の対策にそれを役立てていかなければならない、こういうふうに基本的には考えておるわけです。決して運輸省が怠けておったわけでもありませんし、全知全能を挙げてやったということは間違いないわけでありますけれども、やはり反省すべき点は率直に私は反省しなければならない、このように考えておるわけであります。
  15. 関山信之

    関山委員 「行政がそれを無条件に認めては行政意味がない。徹底した行政指導をやるつもりだ。」という部分はいかがですか。そのとおりだとおっしゃっていただけばそれでいいです。
  16. 亀井静香

    亀井(静)政府委員 今御指摘の、今後どうするかという問題でありますが、臨時船舶建造調整法という法律もあるわけでありまして、そういうようなことと、やはり行政指導もあわせて、今後の秩序ある業界の発展のための施策を講じていかなければならぬ、このように考えております。
  17. 関山信之

    関山委員 大臣、今の次官の御答弁、御責任をお持ちいただけますな。
  18. 三塚博

    三塚国務大臣 ベアを組んでよく御補佐をいただいております亀井政務次官発言でありますから、しっかりと支えて進めたいと思います。
  19. 関山信之

    関山委員 それでは、改めて仲田さんにもう一遍確認をしておきます。  不況原因はいろいろあるわけですね。今まで何遍か議論していますから繰り返しませんが、貨物の変遷でありますとかあるいは米国の規制緩和の流れだとか後進国の追い上げ、あるいは今回の円高だとか。しかし、その根底日本便宜置籍船中心とした投機的な建造、とりわけ一九八三年を中心にした船腹過剰があったとの認識は、この際やはり明らかにお認めになるべきだ。  もう一遍数字を申し上げてもいいのですが、この前その数字やりとりであなたとうとう認めなかったのですが、一九八三年の千九百五十九万総トンという世界じゅうの船舶建造量のうち、日本の受注は五六・八%、しかもその日本建造許可を与えた千二百四十三万トンのうち、国内が二百五十九万トン、輸出が九百八十四万トンですけれども、そのうちの五百三十三万トン、五四%が便宜置籍船なんですね。したがって、七百九十二万トン、八百万トン、世界の建造船腹量の半分まではいきませんけれども、約半分近いものが、この時期、やはりこの船腹過剰の引き金にもなり、大きな影響を与えたというふうに、これは私だけじゃなくて海事関係者の論文を読んでもはっきりしているわけです。今申し上げたような次官の御発言とも絡めて、私はそれがすべてだと言っているのじゃないのですよ。ただ、そういうものが根底にあるから、今日より深刻な事態を迎えているという意味では、この事態を改めて認識確認をしておきたい。
  20. 仲田豊一郎

    仲田政府委員 現在の海運不況を招来しております大きな原因船腹過剰にあるということは、全く先生のおっしゃるとおりでございます。  ただ、船腹過剰がどうして起きたかということは、これはいろいろな原因がございまして、必ずしも一九八三年の大量建造のみであるというふうには言い切れないと思いますし、このときには、我が行政当局判断といたしましては、確かに日本造船所が大量に建造を受注いたしまして、それに基づいて日本船、さらに外国船というものがかなりの規模で建造をされていったわけでございます。その当時における判断といたしましては、やはり最も将来性があり、かつ競争力があり、それからマーケットに対して悪い影響を与えない、特に非常に老朽船の多いクラスの船を中心としてこの建造をねらってきたわけでございますが、それが不幸にしてというか、見通しを誤ったと申しますか、その老朽船が思ったようにスクラップされないで、それが現在に至るまで残っているわけでございます。そうして結果的に世界全体の船腹が過剰になっているという状態でございまして、その結果と出発点とをつなぎ合わせまして、見通しを誤ったとおっしゃられれば確かにそのとおりであったかもしれませんが、その建造を行うときの企業者の判断として、また行政当局判断としては、それは一つの妥当な考え方であったのではないかと思っております。
  21. 関山信之

    関山委員 私は何度も繰り返して言うようですけれども、過去の判断が間違っていたか間違っていないかで今責任を追及しようとは思わないのですよ。しかし、結果として政務次官がおっしゃっているような、行政の面でのセーフがきがなかった、次官自身がそうやってお認めになっているわけですから、きかなかったという事実をまず認識前提としなければ、これからの対策が立たないじゃないか、こう言っているのですよ。そのくらいのことをお認めにならないと、過去の発言や何かを別にとやかく申し上げているわけじゃありませんから、もう一遍答えてください。
  22. 仲田豊一郎

    仲田政府委員 結果的にそういう船腹過剰の状態になったということは、先生のおっしゃるとおりでございます。
  23. 関山信之

    関山委員 今回の解撤法の前提になるわけでありますが、世界のタンカー、バルクキャリアの過剰船腹量はどの程度のものなんでありましょうか、簡単にひとつお答えください。
  24. 仲田豊一郎

    仲田政府委員 タンカーとバルクキャリアに大まかに分けて申し上げますが、タンカーの方は、これは御承知のように二度にわたる石油危機がございまして、たしか昭和五十二年がトンマイルベースでは世界的にピークの年でございまして、この年を過ぎてから年々荷動きが減ってまいっております。  この原因はいろいろございますが、一つは、省エネ等の普及によりまして、石油の世界的な消費量が減った、絶対量が減ったということが一つでございます。  それからもう一つは、これは特に輸送の面からの観点から申しますと、石油の運ぶ距離が世界的に短くなったということでございます。特にアメリカ及びヨーロッパは、北のヨーロッパが中東に依存していた部分が、北海油田の開発とかラテンアメリカ周辺の油田の開発ということによりまして、それぞれ供給先をアメリカ、北欧関係が変えてまいりました。この関係が非常に世界の石油マーケットに及ぼす影響が大きいという結果になりました。日本とペルシャ湾の間は、これは依然として、量としては減っておりますが、石油危機以前に比べましてもそう激減したということではございません。ほかの地域におきまして、そういう重要な変動が起きたために、五十九年の荷動き量というものは、先ほど申し上げましたトンマイルベースで五十二年のピーク時の約半分、半分を切るという線まで、つまりタンカーのマーケットというのは半分以下に縮小してしまったということでございます。  それで、どういうふうにしているかと申しますと、通常の需給関係でしたら供給がすぐ削減できますが、船の場合には必ずしもそうはいかないで、ある部分を係船し、またスクラップを早めるということをやり、かつまた動いている船もスピードをわざと落として航行する、こういう形で対応をしておりますけれども、それでもまだ現在のタンカーの船腹量のトータルから見ますと、こういう部分、すなわち係船とか減速航行、また荷を全部積まないで部分的なスペースしか使わないで運んでいる船、なかなか計算は難しいのでございますが、こういうものを見込みますと、世界的な規模で申しますと、全油送船の船腹量のおよそ四割程度がまだ余っているんではないかと言われております。  それから、不定期船の部門、ドライカーゴと言っておりますが、ドライカーゴの部門で見ますと、タンカーほどではございませんが、この辺もかなりの余剰船腹量をもたらしております。五十九年と十年前の四十九年とをトンマイルベースで比較をいたしますと、大体一・三倍、ほぼ横ばいというような荷動き量でございます。もちろん中の出入りはございます。石炭が若干ふえて穀物が減るとか、いろいろな動きがございますが、トータルで見ておよそ一・三倍。ところがばら積み貨物船というのは、ばら積み貨物船といっても大きさ、また船の種類という点でいろいろございますが、これがトータルとしては五十年代を通じて一貫して増加をしております。そしてこの間約二倍に達した。その中には、先ほど申し上げたような、もう古くなったからつぶすだろうということで、新造船によってふえてしまったという部分もかなりあるわけでございますが、こういうような需給関係のアンバランスから、現在でも係船とか減速航行というのがかなり行われておりまして、世界的な規模で申しますと、……(関山委員「簡単に数字だけ聞かしてください」と呼ぶ)およそ二割ぐらい、二割強と申しますか、余っているんではないかと言われております。
  25. 関山信之

    関山委員 少し答弁を簡単にお願いしたいと思います。  法の第二条に「船腹量が過剰」という文句がございますけれども、これはどういう状態のことを言うのか。それから今国際的な船腹の過剰の状態についてお話があったわけですけれども、端的に日本の過剰船腹量とは何なのか。船種別にどのくらいなのか。事務レベルではきのうちょっと数字らしきものを伺っていますが、まことに不確かな数字でもございますので、この委員会の席で、改めて法文にある「船腹量が過剰」とはどういう状態が、日本船の過剰船腹量とは何か、船種別にどのくらいか、数字だけ言ってください。結論だけ言ってください。
  26. 仲田豊一郎

    仲田政府委員 実は過剰という概念を確定するのは非常に難しゅうございまして、数字だけ申し上げますと非常に誤解がございますので、ちょっと説明をさせていただきます。  過剰、特に日本船の過剰と言われた場合、世界の船舶の過剰と申し上げますと、先ほどのような説明ができるわけでございますが、日本船の過剰と言われますと、日本自体が国際的に非常に流動的なマーケットでございますから、どこまでが余っているのかという問題、余っていれば向こうにいくだろうし、足りなければ来るだろう。日本船としてどうか、そういう定義をすることは非常に難しい。それからもう一つ難しいのは、船種ごと、船でも、自動車専用船ということでも、例えば穀物にも使える、そういう船種間のいろいろな出入りがございますので、その過剰という定義が非常に難しいと思うのです。トータルではとらえられますが、個別的にいけばいくほど過剰の状態を定義するのが非常に難しいということではございますが、今回の法律では、三年後を目途として、そこの日本船の必要船腹量というのは、これは一つ数字としてやはり出さなくちゃいけないということになっておりますので、そういう関係で申し上げますと、五十九年、先の年次ではございません、五十九年の船腹量をベースにしてどの程度過剰かという一つの目安みたいなもので申し上げますと、日本船は、タンカーでは大体三割程度ではなかろうか、貨物船全体では大体一割程度ではなかろうか、そういうふうに考えております。
  27. 関山信之

    関山委員 それで、これはお話ありましたように、その年々で積み取り比率が変わったり、あるいは外国用船、一定の枠組みもありますけれども、そこが動けば数字が変わってくるわけですが、五十九年なら五十九年をとらえて、多少一%、二%上回ったからといったって過剰とは言わないだろう。今度はどこかでやはり線を引かざるを得ないわけでしょう。あなたは大変難しいという議論をこれまでおやりになっていらっしゃいますが、今度いや応なしに解撤促進基本指針をつくるわけですし、個別企業に対しては、解撤計画を出させて認定をするわけでしょう。そうしますと、そこまでやはり数字をはじき出していかなきゃならなくなるわけですね。その点では、過剰というのは何%、つまり必要量に見合って何%余計だったらといったようなことは、その数字はいかがでしょうか。  それから、今例えばタンカーの数字四百万というのがありましたね。これはこの時点では、まだ例の長崎県でぷかぷか浮いているタンカーがいるわけですな。これだけでも五百万トンぐらいあるんじゃないですか。
  28. 仲田豊一郎

    仲田政府委員 確かに必要船腹量というのははじき出さなくちゃいけないのですが、必要船腹量と過剰船腹量というのは必ずしも一致しなくていいと思いますし、その辺が、マーケットに対しての影響という点から、その幅がどの程度あるかということは考えなくちゃいけないと思いますが、必要船腹量をはじき出すのも難しいのです。そこからのアローアンスというのは、案外低いところ、それの倍とかそういう数字ではなくて、一〇%とか、その程度の数字で既に過剰になってしまう。海運企業の流動性というのですかね。そういう面から考えると、割と低いところではないかというふうに考えております。  それから、日本船の係船量でございますが、日本船の係船、御承知のような形で長崎の沖などにございますが、係船量というのは大体百十万トンございます。これは明らかに過剰であるというふうに考えていいと思うのですね。  あと、これから先の話は、先ほど申し上げましたような減速航行とか、事実上大して積んでないとか、そんなものをどういうふうに見るかということで、百十万トンプラスアルファということ。  あともう一つは、先ほど世界の船腹過剰というお話を申し上げましたけれども、その比率でいきますと、タンカーの場合には、世界の比率をそのまま適用すると五百万トンという数字が出てきます。だから、この間にあるということは確かじゃないかなということはわかるのではないかと思います。
  29. 関山信之

    関山委員 少し先へ進みます。  それから、「船齢の高い船舶その他の効率の低い船舶」とは、具体的にいかなる船舶をいいますか。
  30. 仲田豊一郎

    仲田政府委員 これもやはりいろいろ船の個性によって違うと思います。傷みぐあいも違いますでしょうし、またできたときの技術水準と現在の造船技術水準の差とか、そういうものが単なる物理的な老朽度ということを超えて——また経済的な老朽度ということも考えなくちゃいけませんが、一般的に申し上げますと、船がだめになるのは、スクラップしようかということを企業者として考え始めるのは、船齢を十年過ぎたとき。非常に古い船を使っていることがございますが、大体十五年ぐらいまでの間にはスクラップをするというのが常識である。途中で主機換装して、また状態のいい船は寿命を延ばすというようなことも行われておりますが、大体そんなレベルで考えられておりますので、そういうことを基準にしながら行政の基準を考えていったらよろしいのかと思います。  また、不経済船という意味は、もちろん老朽化すると、修繕費が非常にかかりますので、不経済船ということと同じようになりますが、技術の問題で申しますと、昔のタービン船、これは非常に馬力はございましたが、非常に燃料を食う。ある意味では、現在こういうような船は不経済ということでつくっておりません。だからそういう意味では、こういう船は、逆に船齢ということと関係なく、また一つの不経済船というカテゴリーに入るかもしれぬ、こういうような観点もあろうかと思います。
  31. 関山信之

    関山委員 特定外航船舶はどのくらいあるのかということは、いずれ海造審に諮って決めていくということなんでしょうか。しかし、いずれにせよ、この種の法律をつくるについて、皆さん方の頭の中に前提として特定外航船舶はどのくらいあるのかということがなくては、これはまるっきり問題にもならぬと思うのだが、これはどのくらい存在するというようなお見込みで、この法律をおつくりになっていらっしゃるのですか。
  32. 仲田豊一郎

    仲田政府委員 現在、日本の外航船舶と言われておりますのが三千三百万総トンございます。この中で、この法律対象となるのは特定外航船舶でございますが、これの対象になり得ると思われるのは、典型的にはタンカーでございますが、タンカーの船腹量はおよそ千四百万トンでございます。それ以外の貨物船で対象になるだろうと思われるのは一千万トン。ですから、これはもちろん若いできたばかりの新造船もございますが、船種としての対象船腹の総計はおよそ二千四百万トンぐらいと考えております。
  33. 関山信之

    関山委員 偶然ということなのかどうかわかりませんが、さきに海造審で六十五年を目標にした「日本船必要建造量」という数字をお出しになっていらっしゃるわけですね。ここでは代替対象船が二千三百二十万トンという数字があるわけですよ。こういう数字とはどういう関係を持つことになりますか。
  34. 仲田豊一郎

    仲田政府委員 海造審は、六十年に答申をいただいたわけでございまして、これのいろいろ試算がございますが、昭和六十五年を一つの目標年次にいたしまして、そのときの必要船腹量ということではなくて、当時における日本船の積み取り比率を維持し、かつ中核となるべき日本船の近代化を進める、日本商船隊の中核として近代化船を保有する、そういう前提で考えた場合に、日本船腹は大体このぐらいになるであろう、しかもこのぐらいになることが望ましい、そういう意味で、今までの海造審で定めました、これだけの船を確保しなければならないという、そういうような強い目標値ではなかったわけでございますが、一応の数字というものが示されております。これは六十五年でございますが、今度の解撤の計画、見通しをつくりますと、これは三カ年でございますので、一応六十四年までということで一年のずれはございますが、私どもは海造審の答申をいただいておりますので、そこに書いてある数字、そこで示された方針、今後のあるべき姿というものを基礎としながら、それと整合性を保ちつつ、この解撤の話も今後進めていかなければならまい、そういうふうに考えております。
  35. 関山信之

    関山委員 何かよくわからぬのですが、それでは少し角度を変えて解撤目標の側面から伺いましょう。  そういう御答弁が行ったり来たりしているということは、まだはっきりした根拠もない、とりあえずということなんでしょうか。例えば今回予算措置をされた三年間で百九十万総トンですね。タンカーで百六十万、その他が三十万、これはいかなる根拠でお決めになっていらっしゃいますか。
  36. 仲田豊一郎

    仲田政府委員 百九十万トンという決め方でございますが、これはきちんとした計画と申しますか、完全に供給をコントロールでき、かつ需要の方も調整ができる、そういう計画でございましたならば、これだけやればこういう効果というきちんとした絵がかけるわけでございますが、実はこの解撤促進の臨時措置と申しますのは、やはり外航海運自身が国際的な流動性のあるマーケットの中の一つ企業である。つまり端的に申しますと、例えばアルミニウムの産業のように、中での設備をどれだけつくればどれだけできる、需要がどれだけある、もしもそれを脅かすような外国の輸入があれば、それはそれなりに何とかする手当てを考えるというような需給関係の調整がきかない。つまり日本船を使うということが必ずしも義務づけられていない。外国船も使うという原則の中での日本だけの一つの計画でございます。計画という言葉からいうと、悪い言葉で言えばしり抜けになるかもしれませんが、そういう中で、日本が国際的に海運国として重要な地位を占めているので、それが率先して解撤を行うということによって世界に与える影響、世界に率先してやって、世界のほかの海運国にもついてきてもらう、こういう効果をねらったものでございます。  そういう意味から、百九十万トンという数字は、これ以上ないと効果がないとか、これよりちょっと少なければ意味がないというような、そういうかたい数字ではございませんで、財政事情の方面からの考慮もございます。ただ、この程度の数字があれば、日本として国際的に意味のある行動をとることができる、そういうような数字として御理解をいただきたいと思います。
  37. 関山信之

    関山委員 これはつまりはOECD向けの宣伝のための法律だということですか。
  38. 仲田豊一郎

    仲田政府委員 もちろん宣伝もございます。私どもことしOECDの会議にうちの局から日本を代表して行ってまいりまして、パンフレットを配って、日本はこういうことをやっておりますということを大いに宣伝してまいりました。イギリス、フランス、ノルウェーというところが、これはいいことをやっている、できればうちのところでもやりたい、そういう発言が相次いだというふうに聞いております。そういう意味で非常に意味のあることだと考えております。
  39. 関山信之

    関山委員 そういう話でこういう数字が出てきたのでは、まじめに議論できなくなるね。それは確かに宣伝もいいですよ。本当に日本が国際的な海運不況の中で率先して何かやろうというなら、便宜置籍船も含めて、日本海運業界におけるリーダーシップがむしろもっと積極的な形で出ていかなければ、ただ法律をつくりましたと宣伝したって信用しないのじゃないですか。そういう意味では、ただ数字をきちっとしたからできるとかできないとかいう議論をすれば、予算の枠はあるわ、やれ何はあるわといろいろ出てくるでしょう。しかし、私が百九十万総トンという数字はどういう根拠に基づいてお出しになったのかと伺ったときに——少なくとも過剰船腹量に比べて極めて少ない数字だと思います。今タンカーで四百万トンでしょう。これは一〇%残したって三百万トンぐらいは当面過剰船腹として出てくるわけだ。三年間で百六十万トンだ。三、六、十八だから五十数万トンでしかないわけね。とてもこの数字とは合わない。あるいは計画造船の数値に比べてみたって、一方でスクラップしたって、片一方で計画造船数字でさえもはるかに上回っているわけですから、最近百万トン前後しているわけだ。こんなことではそれは宣伝にもならないのじゃないですか、私に言わせれば。  これは本来解撤すべき数値というものを、当然リンクされるわけですから、過剰船腹量も含めて、やはりどこかできちっとしなければならないのじゃないでしょうかね。臨時船舶建造調整法議論にしてもそうなんですけれども、そこのところがないものですから、こういう法律の中身になってしまうのじゃないか。今直ちにそういう数字が出ないならば、本来解撤すべき数値というのは改めて示していただかなければならぬ。それはいつ、どこで、どういう形で示されるのか、せめてそのくらいは答えていただけませんか。
  40. 仲田豊一郎

    仲田政府委員 解撤すべき数字と申しますのは、法律案によりますと、これは政令で定める審議会に諮って解撤目標、解撤量を定めるということになっておりまして、この過程、いろいろ学識経験者、関係者の御意見を伺いながら、この解撤すべき量というのを定めていく、三年間に解撤すべき量を定めていくということになると思います。  それから、先ほどの意味がないじゃないかというお話でございますが、百九十万トンと申しますのは三カ年でございます。それで現在、大体ほっぽっておいて解撤されるのが年間百万トンにきている。大体九十万トンレベルでございますね、九十万トンレベルで三カ年で二百七十万トン、大体三百万トンくらいでございます。これにもしもこの債務保証ということで、スクラップをしたいけれどもできない、担保がないために、担保がわりがないためにできないというような船があって、ここで手を挙げてくれば、この百九十万トンがさらに上乗せになるわけでございますから、これは私は、スクラップによって船腹過剰を解消するという方向では、量的に言っても大いに意味がある量ではないかと考えております。
  41. 関山信之

    関山委員 多少とも上積みされれば意味がないとは言いませんけれども、いずれにしても、議論の根拠が余りはっきりしないものですから、なかなかあれなんですが、この数値はいつごろお出しになるのですか。海運造船審議会にかけるといったって、かなりの時間をまた要するということになったんじゃ、これはどうしようもないのですが、その辺あたりはどういう目安で今お考えになっていらっしゃるのですか。
  42. 仲田豊一郎

    仲田政府委員 過剰船腹と申しますか、対象とすべき船種ですね。例えばタンカーが対象になるとか、一般のばら積み船が対象になるとか、そういうような一つ判断行政当局がいたしますが、それから先の解撤目標量とか、その解撤に当たって考えるべき基準、これは老朽船の問題とか、それから一つは不経済船、どういうものを不経済船とするか、これを海造審にかけて、皆さんの御納得を得て、事業者の努力目標として設定をするというタイミングになります。これはタイミングが大事な法律でございますので、なるべく早い時期に、この法案が通過いたしましたならば、公布されましたならば、審議会を開いて、そういう面を明らかにいたしたいと考えております。
  43. 関山信之

    関山委員 実際これは実効を上げ得るのだろうかどうかという心配がかなりあるわけですね。担保解除の信用保証だけでどれほどの船主が解撤に応ずるのか、これはやってみなければわからぬということかもしれませんが、法律作成の段階でそれなりに業界との話し合いもあるのでしょうが、今この法律をめぐってどんな反応なんですか。
  44. 仲田豊一郎

    仲田政府委員 私どもは法案の作成の過程におきましても、海運業界その他関係者の方々の御意見なり反応などを聞きながら進めてきたわけでありますが、業界としても非常に熱意、興味を持っております。ただ、ただいま申し上げたような形で、決して細目、条件というのはまだきちんといたしておりません。こういうものに対して、業界としてぜひ使いやすいような形で、これは運輸省だけが関係するわけじゃございませんで、通産省、大蔵省、皆御関係の官庁でございますが、ここと御相談を申し上げて、ぜひ保証制度を利用しやすいように、その細目を定めていただきたいという一般的な御要望を今は受けている段階でございます。
  45. 関山信之

    関山委員 持ち時間がなくなってきましたので、次の問題に移りますが、これはせっかく解撤を進めても、しり抜けを防がなければ何もならないと思うのですね。そのしり抜けという意味は、最初の議論に戻るのですけれども、一時期仕組み船の建造を奨励したような、そういう傾向の時期もあるわけですが、やはり便宜置籍船中心とした支配外国用船の建造に一定の規制を行わなければだめだ。そういう意味では、今回この過剰についてかなり数字的にはっきりさせなければならない。仲田さん、今までなかなか難しいとおっしゃっていたが、このことを明らかにさせなければならない。これは当然臨時船舶建造調整法の告示の部分にもかかわってくると思いますが、そういう数字として理解をしておいていいでしょうね。またそうしていかなければ意味がないと思うのですけれども、その辺のことについてひとつ伺っておきたいと思います。
  46. 仲田豊一郎

    仲田政府委員 確かに御指摘のように、論理的に考えますと、つぶす方だけつぶして、つくる方を野放してはということになるわけでございますが、問題は実効性と、そういうような事態実態が動いていくかということでございます。  今までの経験では、我々は決していい経験を持っているわけではございませんが、現在の船主の建造意欲というところから判断をいたしますと、やはり海運不況が異常に長期化するという見通しを持っておりまして、新しい船を建造するに当たっては、若干の例外はございますが、もうほとんど代替船、古い船をつぶした代替船が、それとも積み荷保証がきちんとしたものしかつくらないというようなのが現在の日本海運業者の行動様式である、こういうような実態がございます。  それからもう一つは、この建造量が、どうしても建造をしたいという船は、建造を抑えたとしても、またそれが日本以外でも完全に建造ということが可能であり、技術もあるというような客観的な情勢になっているという面も考えますと、決して御心配になるような形には今の段階ではならないのではないか。まず皆さんのコンセンサスがあるこのスクラップによる船腹過剰の解消ということに力を入れるということが妥当ではないかというふうに考えている次第でございます。
  47. 関山信之

    関山委員 それはだめだな。  時間がないものですから、先にもう一つの問題を取り上げますけれども、そういう支配外国用船に対する建造の規制とあわせて、いわゆる海外売船の問題ですね。これはせっかく片一方で解撤したって、日本の古くなった船をスクラップしないで外国へ売っておったのでは、これはまるきりしり抜けになっちゃうのです。ですから、今あなたにお尋ねしているのは、あえてきょう政務次官おいでいただいて御発言について確認をとっているのも、そういう行政指導というものを、徹底した行政指導とかあなたはおっしゃっているのだが、そういう側面からやはり一歩前に出て、この解撤法案を裏打ちするようなものがなければ、これはまじめにやっているとは考えられないわけです。少なくとも計画造船についてはSBを、近海以外の外航船舶についても全体としてSBのシステムをきちっとさせるとか、あるいはSB船については金利差をつけて優遇措置をとるとか、やはり行政としてやるべきことがあるのじゃないでしょうか。私はそういう意味で、行政は何をおやりになりますかと、こう仲田さんに聞いているわけですから、なかなかお答えしにくいのかもしれませんけれども、しかし、そこはやはりきちっと答えていただかなければ、ただ法律をつくりましたという宣伝だけOECDへ行ってして、いい顔をして、それで終わりというのでは、これはまるきり何のために議論しているのかわからない。ひとつ答えてください。  時間がなくなりましたので、最後にもう一つ、これはこの後小林先輩の議論につなぐ意味で伺っておきたいのですが、近く海造審の小委員会が招集されるという話を漏れ承っております。これはどういう状況の中で、何をどういう構えで御議論なさるのでしょうか。  それで、前段のは、ひとつこの際、仲田局長に答えていただいて、大臣、ひとつこれはちゃんとお答えをいただきたいのです。そこがありませんと、繰り返しがいつまでも続きますから。
  48. 仲田豊一郎

    仲田政府委員 せっかく法律をつくりまして、これが施行になるということでございますと、やはりその法律が実効が上がるような形でいろいろ細目も決められ、また業界も協力をするという体制がぜひ必要だと思います。  そういう意味で、海外売船とそれからスクラップの関係、これは商売の問題ではやむを得ない場合もございます、売船の方が高く売れるというような船種も随分ございますので。そういうのもございますが、ぜひそこのところは、同じような値段ならスクラップということで、海外ヘスクラップ売船という制度もありますから、そういうような形で、国策というか、世界の海運業界全体のために協力してもらうということで、私どもも行政指導をしていきたいと考えております。
  49. 三塚博

    三塚国務大臣 お答えを申し上げます。  ただいまの論議をお聞きいたしておりましても、仲田局長は、目標値と保証対象総トンの問題でありますとか、過剰状態を脱するための有効的な手段は何かというようなことなど大変苦労しながらやっておるわけでございまして、国際的に宣伝するだけではいかぬことは御指摘のとおりであります。いかに具体的にこの計画が実行に移され、そして我が国海運業界また造船等に好影響を与えるかという点を確実に測定をしながら、これに取り組んでいかなければならぬことは御説のとおりであろうと思います。  さような意味で、本法案を速やかに御成立をさせていただきますならば、この趣旨に沿い、また委員指摘のような御心配、またただいまの御指摘等をベースにしながら、効果的な、また効率的な実行体制が組めるようにしていかなければならぬと思います。  そういう意味で、運輸大臣としてもまた政務次官としても、そのことをしかと注視しながら、監督しながらこれを推進せしめてまいる、こういうことで万全を期してまいりたい、このように思っておりますので、今後とも御鞭撻、御指導をお願いを申し上げたいと存じます。
  50. 仲田豊一郎

    仲田政府委員 海造審の件につきまして、小委員会でございますが、十九日に開こうという予定になっておりますが、これは随時海運現状について報告をする。海運不況状態がかなり厳しくなっておりますので、そういうことを報告しながら、その中で何か新しい対策などがあれば皆さんの御意見を伺おうということで予定をいたしております。
  51. 関山信之

    関山委員 ありがとうございました。
  52. 山下徳夫

    山下委員長 小林恒人君。
  53. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 前段、関山委員のいわゆる基本部分にかかわる御質問を伺っておりまして、せっかく特定外航船舶解撤促進臨時措置法という、こういった形で法律を提起をしている側といささか議論がかみ合わないのではないだろうか、こういう気がいたします。  「目的」のところで、第一条の冒頭に、「外航海運をめぐる経済的事情の著しい変化」、こういう表現をされているわけですから、そういった意味では、時の経済状況によって船腹量というのは変化をするものだろう、こんな認識を一方ではするわけです。例えば、この法律に基づいて、外航海運の健全な振興を図る、あるいは国民経済の健全な発展を期す、国際経済の発展に寄与する、こういう議論が一方ではあるのでしょう。しかし、そこだけが表面に出るのではなくて、むしろ冒頭第一条の中で示したように、「外航海運をめぐる経済的事情の著しい変化」というものにどう対応するかということの方が重要だからこういう法律案というのは策定もされただろうし、正確な意味でのコンセンサスを求めていかなくてはいけない、こういうことなのではないだろうか、こういう認識を持っているのですが、この認識に間違いありませんか。
  54. 仲田豊一郎

    仲田政府委員 御指摘のとおりでございます。
  55. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 この法律案と直接にかかわりはないわけですけれども、昨日の朝日新聞の夕刊をお読みになっていると思いますけれども、「船が死んでいく」、こんな大きな一面記事になっているわけですね。これは北海道の稚内市、最北端で、「北洋漁業の墓場」、こういうタイトルで報道されているわけです。これは漁船でありますが、二百海里規制に基づいてどんどんどんどん減船の憂き目を見る、したがって間引きをしなくてはいけない。局長もお答えになっておりますけれども、円高という状況、加えて「鉄鋼不況の今、残がいを買い取るくず鉄業者も少ない。」これが結びになっているわけですね。どんどんどんどん船が解撤をされていくという状況というのは、地域社会で見まするというと、実は涙ぐましい努力もしているわけだし、そうせざるを得ないという実情、これが結果的に外航海運にもその影響を及ぼしていっている。  これは資料が大変古いのですが、けさほどお届けをいただいた「日本船船種別船齢構成」、昭和五十九年の統計でありますけれども、船齢八歳、九歳、十歳、こういったところが油送船のエリアで見まするというと大変多いという実情。  先ほど来の議論を伺っておりますというと、船齢十年に達すると大体解撤の対象か、こうおっしゃられておりまするけれども、現代の科学の粋を集中をして造船された船舶が、十年程度でもうそろそろスクラップかという、こんな認識をされますか。
  56. 仲田豊一郎

    仲田政府委員 いろいろ技術の御指摘のような進歩もございますので、それは物理的な耐久性という意味では非常に長くなっているという面もあるかと思いますが、通常の場合、物理的に使えても、どうしても古くなりますと、修繕、補修費用がかさむとか、そういう面がございまして、船主経済の面から見て、使えるけれどもスクラップした方が得だ、新しい性能のいい船にかえた方がいいという場合がかなりございます。  それと同時に、もう一つは、先ほども申し上げましたけれども、新しいばら積み船なんかがそうでございますが、非常に技術的にすぐれた省エネエンジンというのを搭載すれば、非常にコスト面から有利であるというような場合には、物理的な耐用年数より全然早い時期に、経済的な陳腐化と申しますか、そういうことで早い時期にこれをかえようという経営判断もございますので、いろいろな面からまだ使えるのにつぶすというような場合はかなり間々あるのではないかというふうに考えております。
  57. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 局長、別に私は言葉じりをとらえるつもりはありませんけれども、続けて使用することに対する可否、損得論争でこんな法律を出されているとしたらとんでもない話でありまして、これは例えば特定業界の損得によって、解撤のために資金が投入されるなんて、そういう性格のものでないでしょう。改めて法律をつくるという性格のものではないでしょう。ここは大事なところなんですから、正確な意味での御答弁を賜りたいと思います。
  58. 仲田豊一郎

    仲田政府委員 今私が申しましたのは、いわゆる船主の判断と申しますか、海運事業者はこういう判断をする場合があるであろう。事業者にかわっての判断を申し上げたのでございまして、この法律に基づく解撤の基準と申しますか、そういうものがそういうものだけで決めるべきであるということではございませんで、客観的にそれをつぶすことが日本海運全体のために、外航海運のためにプラスである、世界経済の発展に寄与するのだ、そういう観点から、この解撤の基準、この問題に限りませんが、すべての基準がそういうような観点から考えられなければならないと思っております。
  59. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 そういう意味で、正確なコンセンサスを得た上でこの法律案議論するということの方が私は大切でないのかな、こういう気がしてならないわけです。船腹過剰の原因なんかについて、一方では国内の経済状況、国際的な経済状況のあおり、こういったものがあるのでしょう。しかし船腹そのものを考えてみた場合、先ほど来から議論されているように、便宜置籍船の投機的な建造、こういったことが野放しにされているという実態で、またさっきも議論がありましたように、他国への海外売船、こういったようなことが行われている。実態としては、さっきいみじくもちらっと出たけれども、損得だけでもって売船をするのか、あるいはスクラップ化を促進するのか、こういう条件整備だけではなしに、それぞれ行政の側として判断をする場合には、正確な指導、正確な指針、こういうものがなくてはいけないわけです。ここが極めて不十分だ。何回議論をしてみても、総花的な表現として、外航海運の健全な振興であるとか、国民経済の健全な発展だとかというこんなところに議論が飛んでしまって、何がゆえに特定外航船舶の解撤促進のための臨時措置法を出さなくてはいけなかったのか、こういった内容が出てこないわけですよ。  総体船腹量からいえば、三年間で百九十万総トンというのは、国際経済の発展に寄与するというところまで、あるいは国民経済の健全な発展に寄与するような総トン数に値するのだろうか、こういうところが必ずしも見えてこないわけですね。これが例えば十年とか二十年とかというベースで長期的に検討していくんだぞという性格であれば、事柄はまた別でしょう。しかし、三年間を一つの区切り点として検討するとすれば、わざわざ法律案を提起して議論する、そんな重要な事柄なんだろうか。本来この法律が目的としているのは一体何なんだろうか。簡単な表現をしますと、臨調の御指摘に基づいて何かをやらなければいけないから模索をしてみた、こんな感じを受けないわけではないのです。あなたは首を横に振っているけれども、横に振るのだとすれば、正確な意味で、そこは世の中に見えるような表現でお答えをいただきたいと思うのです。
  60. 仲田豊一郎

    仲田政府委員 この法律の趣旨は、法律の「目的」のところにも書いてございますとおりでございまして、それ以上の、例えば臨調の考え方に基づくというようなものとの関係はございません。  ただ、それをもう少しかみ砕いて申しますと、日本海運が今当面しております不況というものは、いまだかつて経験したことのないような深刻なものであるということについては、恐らく皆様の御認識は一致されているのではないかと思います。  そういう認識の上に立ちまして、それでは何をしたらいいか。これは確かに正直に申し上げましてスクラップ、この法律に基づくことだけをやれば、日本海運不況が克服されるというそこまでの自信は持っておりません。いろいろな手段がありますが、そのうちで最も皆さんのコンセンサスを得やすく、またこれを直ちに実行することによって確実に効果が見込まれるというものを考えますと、やはりこれが最も適当なものではないかなという判断法律案提出させていただいたわけでございます。  もちろん、この効果を数量的にあらわすことは非常に難しいかと思います。と申しますのは、決まった分野の中での需給関係、閉鎖されたマーケットの中の需給関係を律するというわけではございませんで、開放されたマーケットの中、流動性のある国際マーケットの中の話でございますので、きちんとやれとおっしゃられれば、世界的な規模において需給の調整ということができれば、これまた最も理想的なやり方であろうかと思います。将来はそこに行くかもしれませんが、少なくともその手始めとして、世界の中でも最も重要な海運国の日本として、こういうことを率先してやっていく、この中で日本企業のもちろん経営というものも悪化することから防げますし、また同時に、こういうことをやることによって海運市況全体、海運の市況というのは非常に敏感でございます。世界的に非常に流動性がございますので、ある世界の一角で一つの事件が起きますと、運賃がぐっとはね上がるという状態を我々は何度も見ております。そういうような形での一つの呼び水、促進剤ということになれば、これもまた一つの効果であろうか。その二面。全体の海運不況に対する対策ということ、それから個別的な経営、海運経営者に対する対策、これは企業としてですから、もちろんいろいろ雇用問題もすべて含んでおります。この二面をねらったものだというふうに御理解をいただきたいと思います。
  61. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 臨調の御指摘関係ないということではなしに、わざわざ「昭和六十一年度に講ずべき措置を中心とする行政改革の実施方針について」昭和六十年十二月二十八日、閣議決定までされているわけです。このことにはわざわざ「併せて、臨時的な業務として、外航船舶の解撤促進に関する業務を付加する。」こう明記をされているわけですから、そんな意味では、そういう表現は困るのですよ。それは解撤そのものの本来の趣旨からすると、必ずしも臨調の指摘があったからという、そういったことだけではなしに、行政官庁として将来にわたってあるべき姿を模索したいという性質を持っているから、真剣な取り組みをして、しかるべく審議会などでも営々と議論をしてきたわけだし、今後も万過ちのない体制を築いていきたい、こういうことなのだと思うのです。  そこで、具体的にこのことがこの法律案に基づいて与える影響というものを正確に認識をしておかなくてはいけないのではないだろうか、こういう気がいたします。過剰船腹との関連では、裏腹な問題として雇用という問題がどうしたって出てくるわけです。船員の雇用という問題についてどういう認識をするのかということが一つはあるのですけれども、船腹量が過剰だという判断は何を基準にしてなされるのか、何を基準にしてどこが行うのか、この件について先に明示を賜りたいと思います。
  62. 仲田豊一郎

    仲田政府委員 船腹が過剰であるという判定、またどれだけ過剰であるという判定、これは技術的には極めて難しいものでございますが、どういうことが過剰状態の認定に役立つかという意味で申しますと、例えばタンカーにおいては、日本のタンカーがおよそ百十万総トン係船をされております。つまりこれはもうしばらく運ぶのに使いませんという意思表示でございますから、これは余っているという認定が可能であろうかと思います。それからまたいわゆる減速航行、二十ノット近くで走れるはずの船舶が十ノットそこらで走っている。どうしてそういう格好で走っているかというと、速く行っても積み荷がない、しようがないからゆっくり走っている、こういう状態がタンカーの場合にはかなりございます。これもまさに過剰の状態を示す一つの指標であるというふうに考えるわけです。こういうようなことを現象的にとらえまして、それを世界規模の中で、例えば三七%タンカーが余っているとか、そういうようないろいろな調査がございますが、我々もそういう調査は大体正しいのじゃないか、我々の経験、感覚的に見ても正しいのじゃないかなというふうに考えている次第でございます。  それでは、この法律に基づきまして、だれが過剰状態を判断するのかと申しますと、これは法律に従いますと、船種ごとに日本中心とする貨物量に見合っているかどうかということを、やはり判断の基準の中心にせざるを得ない。船はどこでも動きます。第三国間にも行きます。またその船というのは、例えば鉱石船が油を積むこともまた可能な船もあるというので、その辺を考えますと、船種ごとに、これは余っておる、これは足りないというような区分は極めて難しいのでございますが、そこは一定の前提を立てながら、実際に日本船として保有している船腹量と、それから荷動き量とのバランス、そういうものを考えながら行政ベースでその辺の判断をしていく。一たんそういう船種が過剰状態にあるという判断がありますと、それをさらに審議会のベースで、それではその過剰をどうしたらいいのだ、どういうものはスクラップの対象として各事業者の努力ですべきであるという具体的な基準を審議会の場において議論いただいて、その指針を示していただく、それをもって運輸大臣の指針としてできれば採用する、そういうような仕組みで考えている次第でございます。
  63. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 そういう手順で作業が進んでくるとすれば、この法案の中で、いわゆる船員の退職金の融資であるとか、国が債務保証をする、こういった事柄を通じつつ、船員の失業予防や再就職の促進をうたっているわけです。船舶のスクラップに伴って船員の希望退職を奨励する、こんなことも考えておられますか。
  64. 間野忠

    ○間野政府委員 船舶の解撤に伴いまして、希望退職を募るというようなことはないと考えております。
  65. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 希望退職を募るということは考えていない。そうすると、内部操作で十二分にまだまだ船員のあるべき姿というものを他の場で明らかにすることができる、こういう認識をしてよろしゅうございますね。  船員というものは、従来からも議論してきたように、陸上業務と船舶内における業務とは大きな違いがあります。例えば陸上部分では国家試験を通っていなければあるいは資格を持っていなければできないような仕事でも、船舶内部ではやれる、こういった事柄が大変多いわけですから、そんな意味では、船員の失業予防、再就職の促進という中身はどういう形になっていくのかということが明らかにならなければいけないだろうと思うのです。この点はいかがですか。
  66. 間野忠

    ○間野政府委員 その船員の持っておる技能、それの使い方ということではいろいろ難しい点もあるかと思いますが、やはりこういった解撤によって余剰船員が出る場合、まず第一義的には雇い主といいますか、事業主において、陸上部門への転換であるとかあるいは関連会社への出向であるとか、そういったことに努力していただかなければならないと思っております。ただ、それだけではやはり完全ではありませんで、離職者が若干は出るということも予想されるわけですけれども、そういった場合では、国の側でも職業のあっせんであるとか就職の指導であるとかあるいは職業転換の指導であるとかいったことを考えていかなければいけないというふうに考えております。
  67. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 船員雇用問題というものは非常に大事な課題ですから、具体的に伺っておきますけれども、第三条の中では解撤促進基本指針、第二項の第四号の中で海造審の海運対策部会が船員の雇用の安定に関する事項というものを審議することになっているわけです。指針を決めるという段階では、こういう場を通じて方向を定めていく、こういう認識でよろしゅうございますか。
  68. 間野忠

    ○間野政府委員 それで結構でございます。
  69. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 「失業の予防その他の雇用の安定を図るため必要な措置を講ずる」、こう書いてありますね。それでは、どういうことをここでは言いたいのか、具体的に御説明をいただきたいと思います。
  70. 間野忠

    ○間野政府委員 繰り返しになるかと思いますが、まず事業主側におきましては、例えば陸上部門への転換であるとか関連会社への出向であるとか、その他考え得る限りの離職を予防するような措置を取るべきこと、そしてそれを計画の中に書くべきであると思います。それで国の側といたしましては、先ほども申し上げましたけれども、職業安定所における職業紹介、広域的な職業紹介、就職の指導、職業転換の指導、そういったことを国として行うべきであると考えております。
  71. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 第九条の中で、「特定海運事業者は、解撤が行われる特定外航船舶に係る船員について、解撤促進基本指針に定めるところに、従って、失業の予防その他の雇用の安定を図るため必要な措置を講ずるよう努めなければならない。」こう具体的に書いてあるわけですね。それで、事業者の側は「努めなければならない。」と表現をし、二項の中で、「国は、」こう続くわけですが、「船員について、失業の予防、再就職の促進その他の雇用の安定を図るため必要な措置を講ずるよう努めるものとする。」表現が違うんですね。もちろん、事業者の果たさなければならない役割と国が果たす役割の違いがあるのでしょう。これはもちろん指針の中で定めるわけですから、その前提条件として海造審の中でも議論をされていくことになるだろうと思いますけれども、法律案を提起しているという立場に立って、基本的な認識、「努めなければならない。」という事業者の立場と「努めるものとする。」という国の認識を明らかにしていただきたいと思います。
  72. 間野忠

    ○間野政府委員 やはり船員と事業主との間に雇用関係がございますから、第一義的には雇用しておる事業主の方が責任を持つべきであるということと、それでいろいろな努力をしていただくわけですけれども、万やむを得ない場合、離職された場合には、国としてもいろいろなことを講じなければならない、そういうことでそういった表現の違いが出ておるものと考えております。
  73. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 正確な意味での海造審の中でのきめの細かい審議を要望しておきたいと思っております。  そこで、船員の雇用安定を第一義として考えていく場合、日本船スクラップの代替職域として、仕組み船を保有している船社の場合、約千社ほどあると言われておりますけれども、千隻ぐらいあると言われているのですが、この仕組み船に充てるべきだという考え方が仮にあるとすれば、政府側の認識としてそれで子とするのかどうなのか。この点についてはいかがですか。
  74. 間野忠

    ○間野政府委員 現在のところ、我々といたしましては、余剰船員と申しますか、そういった方々ができるだけ外国船にも乗り組むという方向で努力はいたしております。御指摘の仕組み船、外国船ということは非常に難しいかと思いますけれども、我々としては、日本船員の職域拡大というような意味から、外国船への配乗についてはできるだけ援助もし、指導もしてまいりたいと考えております。
  75. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 私も職域という定義が単純に整理できるものだとは必ずしも思ってはいないわけです。しかし、特殊な職業という立場からすれば、やはり船員の雇用の安定ということを非常に大切にしながら今後とも作業を進めていく必要があるのだろうな、こういう気持ちが大変強いものですから申し上げたわけです。  そこで、船と一緒に船員もスクラップにするという、こんなことにはならないのだと思いますけれども、退職金融資の信用保証をするだけというのでは、海運政策としてはいかがなものだろうか、こういう疑問を持たざるを得ません。ここら辺はどうですか。
  76. 仲田豊一郎

    仲田政府委員 海運政策といたしまして、雇用の問題ももちろん非常に大事な部分を占めていると思います。しかしながら、船というものが海運企業によって保有され、またその稼ぐ船によってそこにまつわるいろいろな人が生きているわけでございますから、そういう企業が生きていくというような環境をどうしてもつくらなければ、究極の意味での雇用の安定というものはできない、そういう認識に立ってやっております。したがいまして、どうしても表面が船になります。ただ、雇用の面についても万全の配慮をしなければならない、そういうような立て方になっているということでございます。
  77. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 第十条の中で「特に必要があると認めるときは、」云々と、こう書かれているわけです。それで「運輸大臣は、特定外航船舶の解撤を行うべき旨の勧告をすることができる。」こういう表現なんですけれども、特に基準を設けるということは、現在段階考えておられますか。
  78. 仲田豊一郎

    仲田政府委員 通常、強制力のある法律、もちろん罰則のあるなしにかかわらず法律でございますから、そういうものの中には大臣の命令権とか勧告権は規定してございます。その中で、この法律の目的を達するために必要な事態、これは予想される事態もあるし、そうじゃない特定できない事態、いろいろございますので、その辺はどちらかというと固定的な基準をきちんと設けると機動性が失われるという面もございますので、法律を実施するに必要な場合には、大臣が勧告をすることができる、または命令をすることができる、大体そういうスタイルになっておりまして、それがこういう勧告権なり命令権を活用するのに最もいいスタイルではないかと考えております。
  79. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 図に示されたように、船齢別に言いますと、例えば、これは油送船の場合ですが、八年、九年、十年、十一年、こういったところは数が大変多い。さらに貨物船の中でも大体同じような状況になっているわけです。冒頭申し上げたように、経済状況との関連、第一次、第二次のオイルショックをクリアして、国内経済を担保するという意味では、いろいろな角度から船がふえるような施策は講じられてきたのだろう。ただ、経済状況が著しく変化をしたから、あえてここら辺に集中をするという考え方だけが基本になるとすれば、これは船社則に見た場合に問題が起こりはしないか。これはもっと単純に申し上げますと、大手と中小との違いが出てくるのだろうという気がします。三年間で百九十万総トンという提起でありますから、大手の場合には、仮に大きな影響を来さなかったとしても、中小などの場合には、その憂き目にさらされて、大臣勧告をも含めて社そのものの存廃にもかかわるような大変重要な事柄になりはしないか、こういうことをちょっと危惧をするわけです。この点についてはいかがですか。
  80. 仲田豊一郎

    仲田政府委員 今の御指摘は、恐らく大臣の勧告の関連での御質問かと思いますが、私どもが勧告権を行使するに当たっての典型的な一つの例として考えておりますのは、大手の業者が、ほかの事業者は運輸大臣が示した解撤にかかわる基本指針に従って、それぞれ努力をして、場合によっては、海外に売れば売れるものを我慢してスクラップにしている、そういうような業界として一致協力しているような事態の中で、どこか大手の業者、力のあるところが抜け駆け的にそれによって得る利益をひとり占めにするとか、ひとりよがりの行動をする、それによって利益を上げることができるというような事態があると思います。そういう場合には、それはしてはいけないよ、あなたがそういうひとり勝手なことをやれば、業界全体がだめになるし、もちろん苦しい思いをして従ってきた中小の海運業の方々にも御迷惑をかける、こういうときにはそれは我慢してもらわなければいけないな、そういうことを念頭に置いて考えている次第でございます。
  81. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 船員の雇用状態総体で見ますると、長期不況のもとで企業倒産なんかが増大をしている、こういった要素があったり、一方で、船員職業安定法というものがありつつも、法律違反の疑いが大変強いマンニングブローカーなどによって、低賃金と劣悪な労働条件で仕事をさせられる、マルシップや便宜置籍船に乗り組まされる、こういう実情も散見されるわけです。  要は、安定した雇用条件、こういったものをどう組み立てていくかという、さきの方でも私が申し上げておりますように、正確な意味での見通しがまず一つは必要ではないのか。解撤という事柄だけが当面の課題であって、その後どうなっていくのかという見通しがないままに解撤という事柄だけが処理をされることというのは、長期展望に立った指針を示したということにはならぬのではないだろうか。  そこで、今後の見通しというものについて明らかにしてほしいと思うのです。一体何年後に定期船、不定期船、タンカーの需給バランスが改善されていくのか。あるいは市況の回復というのは、国際的な経済状況との関連もこれありですから、そう簡単に示すことは難しいのかと思いますけれども、一つの目標として、経済状態というものがどんな変遷をたどるという見通しのもとにこの法律案を提起をされたのか。この点について、明らかにできる部分は示していただきたいと思います。
  82. 仲田豊一郎

    仲田政府委員 一般的な景気の情勢で申しますと、現在幸いアメリカの景気は決して落ち込んでおりませんし、思っているよりも力強い足取りで成長していると言うことができまして、世界経済もまあ順調な推移であると一般的には言えると思うのですが、海運は不幸にして非常に世界的な規模で悪い状態にあります。この状態は、何度も申し上げておりますが、船腹の過剰、そういう現象がもたらしたものであるということは疑いがない。そうすると、今後の海運不況の将来を考えるに当たりまして、船腹過剰状態がいつどうなるんだという見通しをつけることが一番大事かと思います。  船腹過剰をもたらした一つ要因であります商社による船への投資とか、金融が非常に活発に船腹建造のために資金を回していたという状態がかなりあったわけでございますが、現在の状況を見ますと、そういう面からのサポートといいますか、船腹をふやすという意味での圧力というのはかなり消えつつある、手を引きつつあるということが見えているのではないかと思います。つまり船腹投資一般に対しての熱が冷えてきた。これは日本だけではございませんで、香港その他ほかの国においても事実である。こういうことは、翻ってみますと、長期的な意味海運不況が回復するかどうかということを占うに当たっては、逆にいい傾向ではないかというふうに見る見方もございまして、当面、銀行とか金融筋が手を引くということは、海運の個別的な問題といたしましては、非常に都合が悪い、また痛みを伴うという面がございますが、長期的な海運全体の方向といたしましては、決して悪くはないのではないかという見方もあるわけでございます。  そうしますと、あとは、そういうサポートがないとすると、現在の船隊、船腹、定期船、不定期船、それからタンカーがどんな船齢構成になっているか、どんな形でもって自然減耗が行われていくかということが今後を占う一つの手がかりになるかと思います。  そういう面から見ますと、先ほどから数字で示しておりますように、老朽化という点では、タンカーの場合には、世界でもかなりのレベルに達しておりまして、もしも十年以上のタンカーは、この五年以内にスクラップされると仮定すると、四割程度のものがなくなる。そんなことが起こるのだったら、かつ石油の荷動き量がこのまま動かないとしても、これはむしろ世界の海運のマーケットに対して非常なプラスであるという机上の計算は成り立つわけでございます。  一方、不定期船の方は、御承知のようないろいろな形のばら積み船の建造がございまして、これはまた非常に性能のいい船でございます。これと、あとはリプレースの関係でございます。これは将来を占うに当たっては、タンカーにおけるごときいい状態には決してないと思いますが、不定期の場合、特に小さな形のバルカー、三万トンクラスのバルカーの場合には、これは景気そのものといいますよりも、お天気によるといいますか、例えば穀物がどのくらい豊作であるかとか、そんなものによってこのマーケットが支配されることが非常に大きゅうございますので、そういうような需要面の変動ということがこれからのマーケットを占うに当たっての一つのかぎではないかと思います。  また、定期船につきましては、これは船腹の過剰ということと同時に、一つは制度的なもの、アメリカの海運法の動きというような行政ベースの話も実はございますが、これはそれなりに対応することによって、ようやく各定期船会社の間で、現在のようなダンピング競争はやめて、ちゃんともうかるような適正運賃にしようやという機運が出始めてきたような気がいたします、これは楽観的かもしれませんが。こういうような方向がこれからも促進されれば、年間何百億というようなレベルの欠損が生じながら過当競争をやっているという状況からは抜け出せるのではないかというふうに考えております。  それから、この法律自身が三カ年の期限立法である、もう少し長期的に考えたらどうかという御指摘がございましたが、これは海運のマーケットを回復するためには早く手を打つ、普通のベースに任せていたら二年後、四年後の船も、なるべく早くスクラップしてもらう、三年間に優遇措置を限るということで、それよりも後と予定していたのが前倒しになる、そういう効果を期待しながら期限を切ったわけでございまして、短期的にしか働かない対策によって長期的な不況をなるべく早く回復しようという趣旨でございます。
  83. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 一つだけお断りをいたしておきますけれども、解撤だけを長期的にやったらどうかと申し上げたのではございませんで、海運政策総体を眺めて、もちろん建造も含めて大変大きな問題点が存在をする。そのほかに要素となっている便宜置籍船の取り扱い方など、これは国内だけの問題ではありませんけれども、我が国が与えている影響ということを考えた場合に、長期的な政策といったものを持つべきだ。確かに当面する課題というのは認識のうちでありますから、これはこれなりに申し上げただけのことでありますから、ぜひお間違いのないような受けとめをしておいていただきたいと思っております。  最後に、オイルショック以降海運業界を取り巻く状況は大変厳しいということをも含めて、日本船員福利雇用促進センターというもの等も設置をされて、この分野でも業務運営がなされてきているわけです。この中の業務内容等を見ますと、船員の職域の拡大、開拓に関する事業、船員の教育訓練に関する事業、助成金などの支給に関する事業、こうなっているわけですけれども、こういう状況の中で、職域という表現が正しいのかどうかちょっとちゅうちょいたしますが、もう少し幅を広げて有効活用していくようなことを検討された経過があるのかどうなのか、今後その点について検討の余地があるのかどうなのか、この点についてお伺いをして、質問を終わりたいと思います。
  84. 間野忠

    ○間野政府委員 御指摘の船員福利雇用促進センターはできるだけ強化してまいりたいと考えておりますが、現在、船員中央労働委員会の方で船員の雇用に関する基本方針を御審議いただいております。そこの一つの議題にも上がっておりますので、そういった御審議の結果も踏まえながら考えてまいりたいというふうに考えております。
  85. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 終わります。
  86. 山下徳夫

    山下委員長 西中清君。
  87. 西中清

    ○西中委員 特定外航船舶解撤促進臨時措置法案について若干の質問をいたしたいと存じます。  この法律は大幅な船舶過剰により長期的な不況に陥っている我が国海運企業のうち外航海運の健全な振興を図るために提案され、過剰化し、老朽、不経済化した外航船舶の解撤を促進するための所要の措置を確立することだというようになっておるわけでございますが、初めに、この船腹過剰というのはどういう原因で、いつごろから起こって、現状はどうなっておるのか、伺っておきたいと思います。
  88. 仲田豊一郎

    仲田政府委員 船腹過剰の原因及び現状を申し上げますと、それぞれの船種で事情が若干異なりますが、最も典型的なのはタンカーでございます。これはオイルショックの前は、エネルギーの需要というのはこれから二十一世紀に向けてどんどん増加していく、これには大型のタンカーは最も経済的であるということで、各船会社ないし石油会社が競ってVLCCないしULCC、十万トン、二十万トンクラスの船をつくったわけでございますが、それがちょうど建造されて出てくるというときにオイルショックが起きまして、それからの石油の需要が激減をしたわけでございます。それはただ激減をしたというだけではございませんで、石油の需要が激減したと同時に石油の輸送距離が短くなった、足が短くなったということがございます。これは御承知のとおり、中東から北欧ないしアメリカに多量に運ばれていたものが、北海ないしラテンアメリカからと、そういう供給地を大幅に変えてきたということによりまして、非常に足が短くなった。その両方を掛け合わせますと、昭和五十二年と最近の五十九年との比率で、トンマイルベースで考えまして半分以下に落ちてしまった。ということは、それだけ商売の場が半分以下に減ってしまったということでございます。片や建造量は五十二年当時にピークを迎えておりまして、そこで供給量はどんどん出てくる。このギャップが非常に大きかったということでございまして、そういう事態対応してスクラップを始めたりまた係船ということを大幅にやったり、それから減速航行またはわずかな貨物で運航するというような形で対応はされておりますが、依然としてタンカーにつきましては、世界的に見まして四割近くの過剰があるのではないかというふうに言われております。  一般貨物船の場合は、それぞれ三万トンクラスとか八万トンクラスとか用途も若干違っておりまして、また建造の波も違うサイクルを描いているわけでございますが、これもやはり船腹というのはおよそ十年間で二倍ほどふえているにもかかわらず、需要の方はほぼ横ばいである、三割増ぐらいである。  こういう需給関係のギャップ、端的に申しますと、両方とも船腹過剰という現象が生じてきた。この原因の中には、つくるときには古い船はスクラップされるであろうという一つ見込みがあったわけでございますが、世界的に見て、日本もそうでございますが、これがなかなかスクラップが進行していない、こういう思わざる要素が入ってきて現在のような状態になった、そういうふうに御理解いただければよろしいかと思います。
  89. 西中清

    ○西中委員 一般的には大体そんなところだと思うのです。  これはことしの三月十二日でございますけれども、政務次官の記者会見で、「現在の海運造船不況については運輸省も猛反省すべきだと思う。限度はあるにしても三年あるいは五年先くらいを見通して、船腹過剰とならないよう、思い切ってコントロールしなければならない。一時期、海運造船・商社がいわば投機的に動いたことなども今日の船腹過剰を招いたといえる。法律的な裏付けがなくとも行政指導によりこうした動きを締め付ける必要がある。どんどん船を造らせては、にっちもさっちもいかなくなる。運輸省も反省すべきだ。」という趣旨の記事が出ておるわけでございますけれども、運輸省のお考えはこれと変わりはないのですか。大臣に伺っておきたいと思います。
  90. 三塚博

    三塚国務大臣 政務次官のただいまの部分でありますが、問題提起としては、また分析としてはそう間違ってはおらないだろう。どんどん船をつくらせたというところは、どんどんということはないのだろうと思うのです。やはり経営でありますから、それぞれの船主協会、商船隊の視点に立って行われたものであると思うのでありますけれども、そういう中において、なおかつ今日の海運国家としての構造的な不況にまで陥ることを防止でき得なかったか、行政、政治に抜かりがあったのではないかという率直な感懐は率直な感懐として国民の各層に持たれておることでもありましょうし、そういう点では、そういう指摘は大事にして改革のためにこれを生かしていかなければならないのかな、こんなふうに思っております。
  91. 西中清

    ○西中委員 私も率直、かつある重要な問題点をついておるというふうに評価をいたしておるわけでありますけれども、この投機的建造を今後どういうようにしてコントロールしていくのか。一方で便宜置籍船等の投機的な大量建造ということがかねてから指摘もされておるわけでございますし、この辺のところをどういうふうに今後運輸省はお考えになっていくのか、手を打っていかれるのか、伺っておきたいと思います。
  92. 仲田豊一郎

    仲田政府委員 確かに、現在は大幅な船腹の過剰状況にあるということは御指摘のとおりでございます。その原因見込み違いはいろいろございますが、これからの問題として考えますと、便宜置籍船が存在し、かつまた通常の日本船も、建造日本造船所で行っているという状態は依然として続いているわけでございますが、石油危機以来の大変動を受けてまいりまして、船腹建造ということに対して船主、船会社は非常に慎重になってきております。便宜置籍船日本船というものも含めまして、現在日本海運業界がつくる船は、新しく投機的に、かつまた将来の市況の値上がりを見込んで、そのためにだけつくるというようなことはほとんど皆無になったというふうに考えられると思います。したがいまして、今つくっておる船というのはほとんどがリプレース船、古い船をつぶして新しいものをつくる、また新しい積み荷保証というものをメーカーから十年間のをもらって、それに引き当てとしてつくるという極めて確実な地道なものしかつくっておりませんので、現在のそういう状況が続く限り、今までいろいろ御批判がございましたような大量建造に走るというおそれは当面はないというふうに考えております。
  93. 西中清

    ○西中委員 当面はおっしゃるとおりだと思うのですが、将来の問題として、こういったことについては一つの教訓として、今後どういうふうにしていくか、じっくりお考えをいただきたいと思います。  次に、解撤の問題についてでありますけれども、対象船腹数は向こう三年間で百九十万総トンということでございますが、この数字はどのような根拠でお出しになったのか、伺っておきたいと思います。
  94. 仲田豊一郎

    仲田政府委員 百九十万トンという数字は、いろいろな面からの要請の結果、バランスの結果出てきた数字でございます。その中には、もちろん百九十万トンというのが解撤の一つの量として、日本船隊の中の解撤をさらに促進するための増し分として適当な量であるかどうか、これで十分であるかどうかという考慮があります。またその反面、百九十万トンをさらに上乗せするような手だてとして、どの程度財政的といいますか、この場合は債務保証でございますが、そういうようなものが調達可能であるかという観点もございます。  あとの観点は、一つの外的要因でございますから、前の点について申し上げますと、百九十万トンといつ数字は、現在日本の船舶が解撤されているベースは大体年間九十万トンから百万トン、この程度でずっと推移しております。これは新しいこういう債務保証制度がなくても解撤されるもの、今後も続くものということは、現在の船舶の老朽化の程度から見て間違いないと思います。  これに加えまして、一つは政策として、運輸大臣が解撤促進の基本指針を定めることによって、各事業者に対して自主的な努力としてまず解撤を進めてほしい、罰則もございませんが、そういう一つの政策展開、政策による要請がございます。これによってまた百万トンに上乗せが可能である。だけれども、そういう自主的にどうしてもできないものというのは何かと申しますと、担保に船が入っておりまして、これを解撤すると担保がなくなるから銀行に金が返せない、それがないからじっとしているのだ、その間赤字は垂れ流すけれども、これはしようがない、こういう悪循環の形でじっと我慢しているという船主があるわけです。これに対しては担保がわりを提供することによって、今までほっぽっておいたのではとても解撤が進まなかった海運企業、経営改善のために減量化をしたいという意欲を持っていながら解撤が進まないという企業に対して、上乗せとして百九十万トンというのはかなりの呼び水として、また促進剤として効果があるのではないかというふうに判断をしている次第でございます。
  95. 西中清

    ○西中委員 今、説明がございましたように、このところ五十七年の百十六万総トンがピークで、年間九十万トン前後で推移をいたしている解撤量でありますけれども、これに年間百万トンですか、上乗せするということになりますと、かなりな量になるわけでございますけれども、この実現は十分可能性があるというようにお考えでございますか。
  96. 仲田豊一郎

    仲田政府委員 実現の可能性は、ただいま申し上げましたような形で、担保をだれかが肩がわりしてくれれば早く船を解撤して、つまり企業の減量化というものを早く実行して企業の合理化を進めたい、こういう意欲を持っている会社はたくさんあるというふうに承知しております。これはもちろん大企業に偏るわけでもないし、また中小企業もございますし、場合によっては近海の企業も出てくるのではないかという予想をしておりますが、そういうところに対しては、大きな助けになってくるのではないかと考えております。
  97. 西中清

    ○西中委員 確かに、そういう意味では今回の解撤の対象船腹数は、過剰船舶量から見ますと少ないといった意見もまたございますが、この辺はどういうようにお考えになっておるのか。とりわけ諸外国と協調していくようでございますけれども、この現状、過剰状況というものはどの程度続いていくのか、その辺の見通しはいかがお考えになっておるか、伺っておきたいと思います。
  98. 仲田豊一郎

    仲田政府委員 御指摘のように、船腹というのは日本だけに閉ざされたマーケットでもって動いているわけではございませんし、日本が足りなくなれば、また外から入ってきますし、外が足りなければ、日本が出ていくという極めて流動的なマーケットであるということは御承知のとおりだと思います。  そういうところでございますから、なかなかこの過剰状態が、日本がこういう政策を手がけて百九十万トンをスクラップするということだけで、世界全体の海運不況が、すべて不況問題が解決し、日本企業問題が解決するというところまで私ども自信を持っているわけではございません。ただ、これを呼び水として——呼び水としてという意味は二つありまして、一つは、日本の自力でその解撤が進められる企業は、その自分の判断で政策に協力してやってもらいたいということが一つございます。それからもう一つは、国際的な場、OECDの海運委員会とかまたIMIFというのがございます。海運関係の金融関係の集まりですが、そういうようなところは非常に解撤というものに興味を持っておりますので、そういう関係者に対して、また国際会議の場を通しまして、解撤の必要性と同時に、日本は率先してこういうことをやっているのだ、ヨーロッパの各国でもぜひこういうことをそれぞれの国で手がけてほしいということを私ども要望しております。現実にことしの一月の会議に我々も代表を送ってやっております。そういうところの反響を聞きますと、これはなかなか反響がよくて、総論の部分でございますが、イギリス、ドイツ、フランス、ノルウェー、こういうところの代表は非常に興味を持っておりまして、こういうような政策が可能ならば、それぞれの国でも考えてみたいという発言まであったというふうに聞いております。  したがいまして、もしもこれが一つの起爆剤になりまして、国際的に解撤機運というのが出、また場合によって、これは自主的なあれですが、それぞれ建造を自粛するというのですか、そういうむやみやたらな投機的な建造に走らないというような雰囲気が出てくれば、これは将来の海運不況の回復にとって非常にプラスになるのではないかと考えております。
  99. 西中清

    ○西中委員 やはりこういう問題は国際的に協調していかなければ、日本だけが努力してもなかなかこれは解決するものではないわけでございまして、今のお話のとおりだと私も思いますが、昨年の六月に海運造船合理化審議会の答申によりますと、世界的な船舶調整に関して、「国際的な場において、船舶解撤の促進等の諸方策の検討が進められることが期待されるところであり、我が国関係者においても、このような国際的な場における検討に積極的に参画」していく必要があると強調をいたしておるわけでございます。  そこで、お聞きをしておきたいのですけれども、この問題をこれまで国際的に話し合う場所というのは一体あったのかどうなのか。もしもあったとするならば、我が国としてはどのような主張をして、その結果はどういうふうになっておるのか、伺っておきたいと思います。
  100. 仲田豊一郎

    仲田政府委員 昨年六月の海造審の答申におきましては、御指摘のような趣旨の記述がございます。国際的な場において解撤促進を進めるべきであるという意味の答申が行われております。この答申を受けまして、実はいろいろな解撤促進のための手だてを講じております。  一つは、国際的な場におけるこの緊急性という意味で、OECDそれから国際海事産業協議会、IMIFといいます。それからこのほかにも、船主の団体であります国際独立タンカー船主協会、インタータンコと言っておりますが、こういうような場で、日本政府の代表、また日本海運業界の代表というものが、我が国は、現在法律の審議中ではございますが、こういう画期的な解撤の促進の方策を考えております、ぜひこういう国際的な場に出席の国々においても、こういうような協調的な政策をおとりになれば、これは世界的規模での解撤促進の機運づくりに貢献をしていくのだということを強く要望をいたしておりまして、非常に大きな反響を得ているわけでございます。  それから、海造審の答申には、解撤の関係では、発展途上国の一つの産業の育成という意味で、そういうところに対する国際協力という形で解撤促進をしたらどうだという一つの提言がございまして、この問題につきましても、日本の近隣諸国、中国とかまたフィリピンもございますが、そういうところに対する国際的な技術協力の可能性というのも、人を派遣をいたしましたりいたしまして積極的に進めております。  いずれにいたしましても、解撤という名前におきまして、いろいろな場でその国際的な促進という雰囲気ができつつあるというふうに考えております。
  101. 西中清

    ○西中委員 日本側のいわば積極的なこういう施策、それなりに反響はあったというお話でございますけれども、具体的には何か進んでおるのか、今見通しとしてはどういうことにあるのか、伺っておきたいと思いますが、どうでしょうか。
  102. 仲田豊一郎

    仲田政府委員 今までのところ、その反響、日本はよくこういうことをやったという反響は非常に強いというところにとどまっておりまして、ノルウェーがそれではどうするとか、イギリスはどういうことを考えているという具体的な話が出てくる段階にはまだ達しておりません。しかしながら、私ども非常に頻繁にこういう場で、海運というのは国際的な産業でございますから、外国、特にヨーロッパの国々との接触の機会というのは、政府レベルにおきましても、海運業界のレベルにおきましても非常にたくさんの接触の機会がございます。こういう機会を利用して、それぞれの国がいろんな形があり得ると思うのですね。その解撤の促進という方策でも、日本方式じゃない形というのも随分あるかと思いますが、そういうような工夫を凝らしていただいて、ぜひ世界的な規模でこういうようなことが促進されるように期待をしていきたいと思っております。
  103. 西中清

    ○西中委員 そういう問題は、やはり国際的な協調が基本的に大事な点でございますから、運輸省としてもせっかくの御努力をひとつ強く要望しておきたいと思います。  なお、次は雇用問題について伺いますけれども、この計画によりまして、債務保証枠は三年間で四百億円、そのうち退職金資金は百四十億円というように聞いておりますけれども、これは何人ぐらいを対象にお考えになっておるのかを伺っておきたいと思います。
  104. 間野忠

    ○間野政府委員 三年間で百九十万総トンを対象にするということでございますと、一隻当たり平均二十五人ぐらいの人が乗り込んでおって、またそのために四五%ぐらいの予備員がおるというふうに仮定いたしますと、全部合わせまして千百名程度の人がこれだけの船に張りついておるというふうに考えております。
  105. 西中清

    ○西中委員 退職金の資金の手当てという点では何人分ぐらいですか。今のは解撤によるいわば対象船員、こういうことだと思うのですけれどもね。
  106. 間野忠

    ○間野政府委員 ただいま申し上げました数字の半分程度を見込んでおります。
  107. 西中清

    ○西中委員 そうしますと、そのギャップというのはどういうことになるのか。百九十万総トンの解撤が行われますと千百人、手当ては半分というと、残りの半分はどういう措置で対応していかれるのか、伺っておきたいと思います。
  108. 間野忠

    ○間野政府委員 あくまで退職金の額を推定いたしまして計算したものでございますので、先ほど申し上げました二十五人ということも平均的な数字であるということでございます。  それから、先ほど来申しておりますように、やはり解撤ということとは関係なしに、余剰船員については陸上への配置転換であるとか関連会社への出向であるとかいろいろな手だては講じていただきまして、離職船員の発生はできるだけ抑えなければならないということになっておりますが、あくまで額をはじく上の仮定としては二分の一程度で金額をはじいたということでございます。
  109. 西中清

    ○西中委員 そうしますと、第九条で、特定海運事業者は雇用の安定を図っていかなければならない、こういうことが書いてありますけれども、それに期待をするということになると思います。それなりにいろいろ御苦労は願うわけだと思いますけれども、なかなか難しい、困難な面も多いと思います。いわばここのところは業者に対してある種の精神的な規定といいますか、そういうものだと思うんです。二項の方で、先ほども議論がありましたけれども、国が行う措置というのは、海運事業者だけでは手に負えないもの、こういうような御判断のようでありますけれども、実際問題としては、どの程度そういう事態が起こってくると予想しておられるか、伺っておきたいと思います。
  110. 間野忠

    ○間野政府委員 できるだけ事業者の方で努力していただいて、離職に至る船員の数はできるだけ少なく抑えるべきであると考えておりますけれども、やむを得ずどうしても離職されたという方々が出ました場合には、できるだけ広域的な就職のあっせんを行い、また就職指導、職業転換の指導、そういったことを行いますほか、先ほどから話題になっております日本船員福利雇用促進センターというのがございますが、これを通じまして外国船への配乗をあっせんするとか、そのための訓練もするとか、その他陸上への転換の技能訓練、そういったことも施して、できるだけ影響が少ないようにしてまいりたいというふうに考えております。
  111. 西中清

    ○西中委員 九条一項はいわば努力義務ということだと思うのですけれども、それを怠っても罰則もないようでありますし、やはり雇用について海運事業者が十分責任を持つように、しっかりとした指導をしていただきたい、これを要望しておきたいと思うのです。  同時に、船員の失業予防、再就職の促進については、政府は事業者の努力が及ばない部分をということでありますけれども、具体的にはどういうことを考えておられるのかということを伺っておきたいと思うのです。  現在、船員の雇用安定に関して担当しておる機関というのは船員福利雇用促進センター、こういうことであると思いますが、このセンターの今の機能では十分対応し切れないのではないかというような指摘もなされておるわけでございますけれども、こういった点について御答弁を伺いたいと思います。
  112. 間野忠

    ○間野政府委員 先生がおっしゃいましたように、我々といたしましても、この日本船員福利雇用促進センターの強化ということは常に考えていきたいと思っております。  そこで、既存の雇用対策を一層充実させるということはもちろんでございますけれども、現在、船員中央労働委員会におきまして、官公労使の方に参加を願いまして、船員雇用対策の基本方針というものの見直しを行っていただいております。その中でも、やはり御指摘のセンターの強化ということが議題になっておりますので、そういった御議論も踏まえながら努力してまいりたいというふうに考えております。
  113. 西中清

    ○西中委員 いずれにしても、雇用問題は極めて重要な問題でございますので、政府としても十分対応をされるよう希望いたしまして、私の質問を終わります。
  114. 山下徳夫

    山下委員長 この際、休憩いたします。     午後零時十五分休憩      ————◇—————     午後五時八分開議
  115. 山下徳夫

    山下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。河村勝君。
  116. 河村勝

    ○河村委員 多年の海運不況が続いているさなかにまた円高が加わったので、けさほどから論議されているように、外航海運の二部門ともに大変な状況にあるようであります。けさ伺っておりますと、一円の値上がりで八億円の差損だというような答弁大臣からありました。これはドル建ての収入と支出との関係だと思いますが、一体どんな計算になっておるのですか。
  117. 仲田豊一郎

    仲田政府委員 これはまだすべての外航海運について調査が完了しておりませんので、とりあえず数字のすぐ出ます外航海運の定航六社を対象にいたしまして、その収入のドル建て比率、それから支出面でのドル建て比率、そういうものを固定して考えて計算いたしましたところ、収入面におけるドル建てマイナスになるわけでございます。それから支出面でのドル建てというのは、これはプラスに回るわけで、こういうものを勘案した結果、六社分として七・五億円、約八億円、その程度の確度でございますが、という数字が出てきたということでございます。
  118. 河村勝

    ○河村委員 中核六社だけの計算のようですが、今回の海運不況の中で、この主力会社の方は、損益の状況などを見ますと、いわゆる財テクその他で結構稼いでおりますから、どうやら大きな欠損を出さないで済んでいるようなふうに見えますが、いわゆる中小オーナー会社、一体こういうところの最近の決算状況というのはどういうふうになっておりますか、
  119. 仲田豊一郎

    仲田政府委員 最近の決算、ようやく海運大手が出てまいりまして、集計の結果が発表できたという状態でございまして、この海運企業大手の十社に限りましても二百八十億円の経常損失を計上しているということでございます。  しかしながら、これは先生指摘のように、大手の会社以上に中小オーナーの経営状況が悪いということは周知の事実でございまして、どの会社も、事実上債務超過ぎりぎりまで追い込まれている会社もあり、あと一年後の決算、来年度、六十一年度の決算におきましては、非常に堅実と思われた会社でさえも、海運市況がこのまま推移すれば、債務超過に陥るということはほぼ確実だというような悲観的な見方もできるわけでございます。
  120. 河村勝

    ○河村委員 昨今代表的なものでも三光汽船、ジャパンライン、中村汽船、協成汽船、こういうようなところが倒産またはそれに近いような状態になってきております。聞くところによると、あと十社ぐらい危険な状態にあるというようなふうに聞いておりますが、そうなりますと、そこで働く者だけでも恐らく在籍船員数の半分ぐらいになってしまうというような感じになろうかと思いますが、一体その辺の状態はどうなんですか。
  121. 仲田豊一郎

    仲田政府委員 現在、経営困難に陥っているということで、経営の難しさが顕在化いたしました海運企業といたしましては、御指摘のように、まず三光汽船がございます。  この汽船の会社の状況を簡単に申し上げますと、昭和六十年八月十三日に会社更生法に基づきまして更生手続の開始の申し立てが行われました。しばらく東京地裁の手で審理が進められておりましたが、一月三十一日に手続の開始決定、本格的に更生手続の開始ということをいたしましょうという決定をいただきまして、現在その裁判所によって選任されております三人の管財人のもとで、事業を継続しつつ、債権者、それからその傘下の船員問題等を含めまして、更生計画の検討が行われているところでございます。  また、もう一つ大きな会社でございますが、六中核体と言われるものの一つのジャパンラインにつきましては、これはタンカー部門の構造的な過剰による市況低迷と、それから円高等の影響もございましたが、収支の悪化が非常に進んでおりまして、昨年の十二月に要員の合理化、すなわち海上八百五十名、陸上百名、計九百五十名の削減という非常に大変な案が出まして、これを従業員に対し提示するとともに、また要員を合理化した後の会社は、これはそのまま存続いたしますが、残りの従業員をすべて新会社に移籍して、そうして残った会社の収支改善合理化を図るという案を提示したわけでございます。  そうして後者につきましては、いまだにそのままで進行中でございますが、前者の定員の合理化につきましては、三月一日より希望退職の募集を開始し、三月三十一日で締め切りをいたしましたが、海上員、陸上員ともほぼ目標の人間が希望退職に応じてきたというところでございます。  今後は組合との交渉を経まして、さらに先ほど申し上げました残っている従業員の移籍問題と、それからさらに残った会社の不経済船の処分というようなことを協議中でございまして、これができれば、ジャパンラインの言い分によりますと、企業は立ち直るということを申しております。  もう一つは、三番目は中村汽船でございます。これは御承知のように、山九の系列会社というか、もとをただせば子会社であったわけでございますが、ことしの二月二十日に自己破産の申し立てを行いまして、二十五日、東京地裁はこの中し立てを認めました。すなわち破産宣告の決定をしたわけでございます。  現在、破産管財人のもとで清算中でございます。なお、この会社が用船しておりました船舶は、中小オーナーの船舶が大部分でございまして、これによってオーナーが大きな影響を受けるところでございましたが、幸い親会社の金融面の支援などを得まして、オーナーにトラブルがなく返船され、いろいろ契約上の問題も処理をされたように聞いております。したがいまして、中村汽船の輸送活動についても混乱を生じなかったということでございました。  従業員が百七十八名ございましたが、これは所要の退職金、規定の退職金が支払われて退職をしたというふうに伺っております。  四番目に御指摘の協成汽船につきましては、本年の三月二十日に会社更生法に基づきまして更生手続開始の申し立てが行われて、現在この手続を進めるかどうか、決定をするかどうかにつきまして、神戸の地方裁判所において審理中と聞いております。  この会社におきましても、在籍船員が二百十三名おりますが、なかなかこれの雇用問題は厳しいような対応が行われたというふうに聞いておりますが、できますれば、これも更生計画に乗りまして、再建への努力を期待をしていきたいと考えております。  これは代表的なものでございますが、これ以外にも先生指摘のように、既に経営状況が悪くなっているもの、またこの一年間同じような状態が続けば、また同じような、今申し上げた会社のような道をたどるようなもの、そういう可能性のある会社がかなりあることは承知しております。そういうことを踏まえて、海運の政策といたしましても、何かこれを救済するというか、立ち直る、ような手だてはないかということを考えているところでございます。
  122. 河村勝

    ○河村委員 今伺った限りにおいても相当多くの離職者が出てきているわけでありますが、今こういう状態の中で、具体的に雇用安定策といってもなかなか難しかろうと思いますが、その一つとして、陸上産業の場合には、人員調整をやる場合にも、出向とか配転とか、あるいは他の部門に転換というのが割合とやりやすいわけですが、船員の場合にはそれがほとんど不可能ですから、そのまますぐ失業になってしまうという傾向が強いわけですね。特に、いわゆる部員と称する海員免状を持たない人たちの場合、行きどころがなくなってしまう。部員の職員化ということが前々から問題になって、運輸省の方でも考えておられるはずでありますが、現在の段階で、部員の職員化というのは一体どういうふうに計画をしておられますか。
  123. 間野忠

    ○間野政府委員 おっしゃいましたように、船員雇用対策一つとして、部員の職員化、これを促進することが非常に重要であろうと考えておりまして、従来から、日本船員福利雇用促進センターというのがございますけれども、こういうところで海技資格取得のための訓練を行っております。このほかに海技大学校、そういうところでも部員が職員の資格を取る、あるいは職員がさらに上級の資格を取るというための訓練、こういうものを促進しているところでございます。
  124. 河村勝

    ○河村委員 それに対する予算措置等はどういうふうにやっているんですか。
  125. 間野忠

    ○間野政府委員 訓練中の援助ということでございますけれども、一応雇用船員に関しましては、船員の雇用主に対しまして、日本船員福利雇用促進センター、こういったところから訓練派遣助成金、一日二千三百十円でございますが、これを支給いたしております。  それから、離職船員の場合には、受講料等につきまして、一日五百九十円ぐらいのものを支給いたしますとともに、受講が済むまで、訓練が済むまでの期間は失業保険の給付を延長するというような措置をとっております。
  126. 河村勝

    ○河村委員 そうすると、離職者だけではなくて在職者についても、現在そういう講習その他によって海員免状を得るような教育をやっているわけですか。
  127. 間野忠

    ○間野政府委員 さようでございます。
  128. 河村勝

    ○河村委員 ところで、きょうは解撤法案の審議でございますが、船腹過剰状態というものが前提になっているわけでありますが、世界全体の船腹過剰状態というのは、大ざっぱに言うと、船の種別で言うと、パーセンテージで言ってどのくらいの割合のものが過剰になっておると考えてよろしいのですか。
  129. 仲田豊一郎

    仲田政府委員 世界的な面で申しますと、一般に過剰であるということが非常に明確になっているのはタンカーであると思います。タンカーが現在一億四千四百三十八万トンございます。しかしながら、これがどの程度過剰であるかということについては、いろいろな計算方法がございますが、ただ現象面で見ますと、明らかにこのうちのかなりのパーセンテージが係船という形で海上につながれているわけでございます。それからまた同時に、使われている船であっても、わざわざスピードを落として航行しているとか、いっぱい積まないで航行している、こういうタンカーが相当ございます。こういう現象を見てみますと、このタンカー部門は明らかに相当な過剰であるということが言われております。この計算方法はいろいろありますが、一つの権威ある計算方法によりますと、このうちの約四割ぐらいが過剰ではないかと言われます。したがいまして、五千万総トン強と申しますか、その程度が全世界的に見て、タンカー部門については過剰ではないかというふうに考えてもよろしいのではないかと思います。  それから二番目には、いわゆるばら積み船、ドライカーゴの分野でございます。これは対象とする貨物は穀物とか鋼材の場合もございますし、トランパーとしての、いわゆる不定期船としての石炭それから鉱石、こんなものをその場その場で需要に応じて運んでいるわけでございますが、これがやはり貨物量が伸びないという状態の中で船腹量が伸びたという中で、係船、減速航行というのを同じようにやっておりまして、こういうものを計算してみますと、全部のばら積み貨物船腹量のおよそ二割強程度ではないか、そういうふうに判断をされております。
  130. 河村勝

    ○河村委員 ばら積みで二割ぐらいの過剰になっているということでありますが、三光汽船の問題のときにも伺いましたけれども、五十八年にやたらとばら積み船をつくったわけですね、ハンディバルカーというのか。その結果が今日のこの過剰になっているわけですが、五十八年にいっぱいつくったものの中で、日本造船所でつくったものは一体何%ぐらいになるのですか。
  131. 間野忠

    ○間野政府委員 ちょっと正確な数字を持っておりませんけれども、大体四割程度は我が国の造船所建造したのではないかと思います。
  132. 河村勝

    ○河村委員 私の聞くところによると、四〇%でなくて五〇%を超しているというように聞いておりますが、仮に四〇%にしたところで大したものですわね。  解撤、大変結構でありますが、一方では解撤して片っ方でつくっているというのは本当に意味がないのであって、臨時船舶建造調整法というものがありながら、こういう世界的な船腹過剰状態を目の前にしておりながら、世界の船腹の半分ぐらいを日本でつくって過剰状態をつくっているというのは、これは本当にナンセンスだと思うのですが、一体、許可を願い出たものを、過剰状態が発生のおそれがあるからということで不許可にした例というのは過去にあるのですか、ないのですか。
  133. 間野忠

    ○間野政府委員 現在までのところ不許可にしたことはございません。ただ、海運事情が非常に悪いというようなことで、また荷主さんの方との積み荷の契約もはっきりしていないというようなことがわかったものにつきましては、まあやめてはどうかというようなことを勧告いたしまして、申請は出てきたけれども取り下げたということはたびたびございました。
  134. 河村勝

    ○河村委員 そうすると、五十八年当時膨大なハンディバルカーを建造したにもかかわらず、それは全部野放しでオーケーということに相なった、そういうことになりますか。
  135. 間野忠

    ○間野政府委員 当時の建造許可の際の検討の資料などを調べてみますと、当時バルクキャリアの世界における船腹量がどれぐらいあるか、そのうち老朽船がどれぐらいあるかというようなことは、一応調べた上で許可をいたしております。かなりの量のバルクキャリアが相当な老齢船でありまして、申請のあったものを許可しても、過剰状態にはならないであろうという判断のもとに許可したと考えられます。  ただ、ここのところ非常に条件が違ってまいりましたのは、昔は経済成長率に海上荷動きが割によくリンクしておったのですけれども、最近その関連の仕方が非常に変わってまいりまして、経済成長があるにもかかわらず荷物の量が伸びないというようなことがございまして、判断のミスがあったと言えば、経済成長率と荷動き量との連関性において、その連関性を少し大きく見ておったという点では甘かったかという気がいたします。
  136. 河村勝

    ○河村委員 運輸大臣臨時船舶建造調整法というものがありながら、実際世界の半分以上の船舶を日本でつくっていながら、本当に機能したことがないわけですね。何のために法律があるのかわからない。今はこれだけの過剰状態だから、五十八年にあれだけひどい目に遭っているわけだから、恐らく今すぐにつくろうというのはないかもしれないけれども、またいつ何どきそうなるかもわからない。法律というものがあるのだから、これはもうちょっと機能的に使うことを考えるべきじゃないでしょうか。一体どうなんですか。
  137. 仲田豊一郎

    仲田政府委員 確かに、現在はそういう前のような建造意欲がございませんが、先生のおっしゃる趣旨はよく理解しておりますので、今後の行政を進めるに当たっては、先生のおっしゃるとおり慎重に取り扱いたいと考えております。
  138. 河村勝

    ○河村委員 まあ、しようがないな。  ところで、今、中小外航船主は大変な苦境にあるにもかかわらず、ことしの二月に特定中小企業者事業転換対策等臨時措置法という長い名前の法律ができて、近海と内航はその法の適用をやったと聞いていますが、外航でも大手はともかくとして、中小などは当然この適用ぐらいしたらよさそうなものだと思うのですけれども、それをやらない理由はどこにあるのですか。
  139. 仲田豊一郎

    仲田政府委員 近海海運業の方は、おかげさまでこの特定中小企業者事業転換対策等臨時措置法の適用を受け、業種指定の告示が本年の三月四日に行われたわけでございます。この中に盛られております事業転換対策、それから緊急経営安定対策というものを活用いたしまして、現在苦境にあります近海海運業を救済するために幾らかの役に立てばということで、私どもも行政的に通産省と折衝しながら努力をしているところでございます。  遠洋につきましては、実は大企業中心ということでございますが、しかしながら中小企業でも遠洋に進出しているのがある。だけれども、その遠洋海運に進出している中小企業というのは、すべてと言っていいほど近海海運業者が遠洋に進出しておる。そういう関係になっておりますので、近海の方に手当てが行われれば、実質的には遠洋に進出している分についても手当てが行われるというような門が開かれていると理解しております。
  140. 河村勝

    ○河村委員 よくわからないのですけれども、近海部門に属する業者が外航に行っているからいいということですが、しかし現実に、外航二部門と言っている場合には、中小のオーナーで今困っておるのがいっぱいおるわけですね。これはやはりそっちの方で救えるということですか。この新しい法律適用が可能だということですか。どうなんですか。
  141. 仲田豊一郎

    仲田政府委員 どうも説明がうまくありませんでしたが、中小オーナーというのは、大体近海から出てきたオーナーが多いわけでございますので、ですから根っこは依然としてございまして、そこから遠洋と申しますか、通常の外航に発展したものが多いものでございますから、その根っこの方で適用されていれば、そちらの方で救済策が講じられる、門が開かれているという意味でございます。  近海と申しますのは、フィリピンとかインドネシアの主として木材を運ぶ業態でございますので、海運の中ではかなり閉鎖的な分野でございますが、遠洋と申しますと、世界各国を駆けめぐるような一つの業態でございます。こちらの方にも進出をしてきている力がある中小の近海業者がある、そういう実態でございます。
  142. 河村勝

    ○河村委員 ところで、三年間で百九十万トンの解撤をやろうということですが、五十三年の第一次オイルショックの後に解撤計画をつくって、あのときは最初は三年で四百万トンの計画であったかと思います。結局、それは延び延びになって去年まで来てしまったということだと思いますが、あの目標がなかなか達成できなくて延び延びになってきた理由はどこにあるのですか。     〔委員長退席、津島委員長代理着席〕
  143. 間野忠

    ○間野政府委員 おっしゃいますように、当初三年間で四百万トンの解撤を行いたいということでスタートしたわけでございますが、一つには、解撤に対する補助金の単価がスタートいたしましたころは千四百三十円というように、今年度からは三千二十円にいたしておりますが、若干単価が低かったということもあろうかと思いますし、またスタートした後に、現在ですとミニブームと言われておるのですが、新造船工事量が若干ふえたものですから、解撤の余力がなかったということもありまして、三年間で四百万トンというふうにはまいらなかったと理解しております。
  144. 河村勝

    ○河村委員 あのときは、造船不況対象にしてやったので、造船業者に対する補助金はあったけれども、今度のような船会社に対する債務保証や何かはなかったのですか。あれはどうでしたかね。
  145. 仲田豊一郎

    仲田政府委員 船会社の方にはございません。
  146. 河村勝

    ○河村委員 そうすると、今度はその点が違うわけですが、三千二十円という相場は、今度の場合がなりインセンティブなものになり得るのかどうか、その点はどう考えていますか。
  147. 間野忠

    ○間野政府委員 解撤が非常に難しいのは、解撤船の値段も、それからできた鋼材のスクラップの値段も非常に変動するというところにございまして、その点非常に難しい面があるのですけれども、一応三千二十円という単価でありますし、現在の海運造船不況下でございますので、順調に促進されるのではなかろうかというふうに考えております。
  148. 河村勝

    ○河村委員 今お話のありましたスクラップの価格ですが、今のところ大体相場はどのくらいになっていますか。
  149. 間野忠

    ○間野政府委員 最近のスクラップの値段でございますけれども、ことし三月の水準で、伸鉄材トン当たり約三万円、それから溶かします鉄くずですと、約二万円ということになっております。
  150. 河村勝

    ○河村委員 スクラップ二万円というのは、損益分岐点でいえば、一体成り立つ方に入るのか、成り立たない方に入るのか、その辺の見当はどうなんですか。
  151. 間野忠

    ○間野政府委員 大体におきましてスクラップの製品、それが溶融用のくず鉄であれ伸鉄用の鉄であれ、こういったものの相場は、解撤船の船価、解撤という産業に着目すれば材料費に当たるかと思いますけれども、これとお互いに連動して動いておりますので、ある程度くず鉄を生産して、これを市況を見ながらストックしておいて、値段が戻ったとき売るというような、ある程度の金利負担を考えてやれば成り立つ。それは必ずしも相場の高い低いにはそんなに影響されない。売り方さえうまくやれば、そしてその間の金利負担さえ面倒を見てやれば、何とか採算点を維持できるというものであると考えております。
  152. 河村勝

    ○河村委員 百九十万トンという目標を決めた、これの根拠はあるのですか、何か。
  153. 仲田豊一郎

    仲田政府委員 百九十万トンで、それに対して四百億の債務保証をする、そういう仕組みでございますが、百九十万トンと申しますのは、これからスクラップを進めていく上で、この程度の規模を政府が債務保証ということで対象船腹量に見積もることによりまして、これを進めることによりまして、民間の努力ということも実り、かつ、国際的にも日本は積極的にやっていると評価が得られる、そういうトン数でございます。  同時に、そういう外からよくやったということと同時に、百九十万トンと申しますのは、今までのスクラップ量、日本海運がスクラップしている一つの趨勢、こういうものを勘案いたしましても、百九十万トンをさらにスクラップということで上乗せするということは、かなりの需給関係に及ぼす効果がある、そういう判定のもとに百九十万トンという数字が出てきたというわけでございます。
  154. 河村勝

    ○河村委員 債務保証制度四百億のうち、担保の解除資金が二百六十億で、百四十億が退職資金分という説明でしたね。百四十億分は千百名の二分の一という説明をさっき聞きましたが、この百四十億という枠は、これは上限なんですか。基金、何基金でしたっけ、基金全体の枠というのはもっと大きいわけですね。今度の船の解撤に対する枠というのは、これが上限で、これ以上はだめだ、こういうことになるのですか。
  155. 仲田豊一郎

    仲田政府委員 一応、この四百億の割り振りといたしまして、担保解除資金、担保の肩がわりのために二百六十億、それから退職資金の支払いのための保証といたしまして百四十億というのを想定いたしておりますが、これは実は一つの目安でございます。ですから、それぞれの枠をお互いに超してはいけないということではございませんし、今までこういう債務保証の例のありました造船とかほかの産業の例を見ましても、その辺はかなり柔軟にやっておりますので、一つの目安というふうに考えていただいて結構です。
  156. 河村勝

    ○河村委員 終わります。
  157. 津島雄二

    ○津島委員長代理 梅田勝君。
  158. 梅田勝

    梅田委員 特定外航船舶解撤促進臨時措置法案につきまして質問いたします。  既に法案のいろいろ細かい点につきましては、先ほど来の議論でかなり明らかになっておるわけでございますが、まず運輸大臣にお尋ねしたいことでございますが、我が国のように周りが海でありまして、資源が乏しい、どうしても原材料を外から持ってきて、できた製品をまた外国へ出す、こういう産業経済の状態からいたしまして、将来ともに海運というものが重要だと思うのです。付加価値の高いものは、最近のようにあちこちに、空港の近くに工場をつくって、飛行機で運ぶというのもふえてきておるようでございますが、何といっても、原材料を運ぶということになりますと、海運だということになろうかと思うのです。その海運の安定的な成長というものを願わなければいかぬわけでございますが、そこが難しいところでございまして、開発途上国もどんどんと発展をしてきて、自国の船を持つようにもなる。それから日本のように、独占体の非常に巨大化したところにおきましては、いわゆる便宜置籍船という形で海外にそういう基地を置く、用船でもってコストを安くする、こういう状況も出てくる。各国の規制もあるわけでありますが、海運自由の原則ということによってなかなか規制もままならぬ、こういうことになるわけであります。  今回のように、船腹が過剰だということで減らそうじゃないか、解撤促進だ、こういうことになってくるわけでございますが、解撤をやりますと、当然そこに働いております船員の、労働者の雇用問題に影響してくる。労働法におきましても、船員法ということで、特別におかにおる労働者とは違った扱いをするということでやってきておるわけでございますが、なかなか船員の労働条件というものは厳しいものでございますからやりたくない。私は海員組合の資料をいただいてびっくりしたわけでございますが、昭和五十七年に全日本海員組合それから日本海技協会、この二団体が意識調査をやられたようでございますが、船員の子供の将来の就職として、親として息子も船員になってほしい、このように普通は自分の職業に誇りを持って思うわけでございますが、三人に二人が反対だというような意識状態があらわれておるというのを拝見いたしまして、これは大変なことになっているな、魅力が乏しくなってきたということになりますと、将来的展望は一体どうなるのかということですね。こう競争競争で何でもいきおるものでございますから、なかなかそれを規制するというのは難しいわけでありますが、さりとて、今の国鉄がやっているように、おまえは余剰人員だということでさっさと首を切っていくということでやっておりますと、将来、船員が育たないのじゃないかという気がするわけですね。これは周りが海の、そして原材料を船で運んでくる以外に生きる道のない我が国にとりまして大変なことになるのじゃないか、かように私は思うわけでございますが、まず大臣に、こういう将来展望についてどういうお考えを持っておられるのか、お示しをいただきたいと思います。
  159. 三塚博

    三塚国務大臣 海洋国家日本でございます。また貿易国家日本であり、自由社会の中で名誉ある地位を得たいという我が国の国家目標からいいましても、海員のしかるべき確保と、また魅力ある職場ということにしむけてまいりますことは、我が国政策の基本であろうと私は思っておりますし、担当する運輸省といたしましても、その辺のことにつきまして全力を尽くさなければならぬわけであります。  しかるに、段々の御論議の中にありますように、世界的な船腹過剰に伴う問題、後進国の参入に伴う過当競争の問題、あるいはアメリカの新海運法に基づく等の問題など、大変厳しい状況にさらされているわけでございまして、さような意味におきまして、従前の延長線上からは、我が国の海員また商船隊の展望というのは、なかなかもって確保するということは難しい諸状況にあるのではないだろうか。よって、我が国だけでも秩序ある状態をつくろうということで、解撤制度を外航船にまで進める、こういうことにさせていただいておるわけであります。既に内航船は、御案内のように、当委員会の御決定をいただきまして進めておるところであります。  そういう中で、先ほども宣伝だけではだめだというおしかりがありましたが、国際的にも宣伝はやはり大事でありまして、お互いが自主的判断で解撤を進めていく、そしてなだらかな調整が結果的に行われて、いい状態になるということなども意図するところであろうと思うのであります。  そういう点から、魅力ある職場にしなければならぬという御指摘は全く同感でございまして、船員の職域の確保と船員の地位の向上を目指した船員制度の近代化ということに省を挙げて取り組んでおるところでございまして、今後とも労使の協調をいただきながら一層の推進を図ってまいりたい、このように考えておるところであります。
  160. 梅田勝

    梅田委員 外航二団体の実績によりますと、昭和四十七年の在籍船員数、それと五十八年、十年たちました時点で見てみますというと、四万七千百三十九人から三万一千二百人ほどに、六六%に減っておる。当然船も減っておるわけでございますが、非常に厳しいと思うのですね。ジャパンラインが去年の十二月に希望退職を募集しておりますね。それから三光汽船、これは五千二百億円の負債を出して倒産をしたわけでございますが、国鉄じゃないけれども、むちゃくちゃに投資をして、そして首が回らなくなって、一もうけしようと思って投機的なことをやったわけでございますが、倒産してしまった。しかし、労働者はそのために一方的に、三月にはこれまた希望退職募集という格好で、極めて厳しい状況に船員は置かれているわけでございます。  それで、この法案作成過程をいろいろ伺ってきたわけでございますが、当初は、三光汽船が倒産する前にこれをつくって救済というねらいがあったように漏れ聞いておるわけでございますが、これは真意はどの辺にあったのか。それから実際に倒産してしまったわけで、会社更生法の適用を申請しているというような状況のもとでは、これは適用できないんじゃないのですか。その辺をちょっと聞かせてください。
  161. 仲田豊一郎

    仲田政府委員 この解撤を促進するという一つの政策は、これは長期化する海運不況に対処して、我が国の外航海運の健全な振興を図るという業界全体に対する対策でございます。そういう観点から老朽、不経済船、これは御承知のように、日本の船舶の船齢構成をごらんになっても、この十年間で、老朽、不経済船と称せられるものが、一〇%以下であったものが三五%を上回るような数字にもなっているわけでございまして、こういうような状況をそのまま認識した上で、これを業界海運界全体の問題として解撤を促進することが急務である、こういう認識のもとにとられた政策でございまして、特定企業の救済とかそういうものを意図したものでは全くございません。
  162. 梅田勝

    梅田委員 三光汽船が当初かなり要望していたというのは事実なんですね。
  163. 仲田豊一郎

    仲田政府委員 いいえ、三光汽船からこういうような御要望を受けたという事実は全くございません。
  164. 梅田勝

    梅田委員 それだったら三光汽船以外の業界からは要望はあったのですか。
  165. 仲田豊一郎

    仲田政府委員 これは業界の全体の声といたしまして、こういうような船舶過剰に対応するような政策がとられれば非常にありがたいという日本船主協会ベースのお話は伺っております。しかし、こういうような具体的な政策をとったらいいというのは、これはあくまでも行政ベース、私ども運輸省の中で考え、かつ通産省と相談をし、また大蔵省と相談し、そういう過程の中で出てきた一つの形でございます。
  166. 梅田勝

    梅田委員 この法案の目的とするところは、名目は需給調整だ。それで過剰船腹の解体を促進して、調整を図っていこうということでありますが、しかし結局は、特定の企業の過剰船舶処理のために国の助成が使われるということになりますし、それからその結果、先ほどの議論を聞いておりますと、百九十万総トンで船員の方は千百人ほどですかの余剰人員が措置されなければならぬというようなお話でございましたが、こういう法律をつくることによって、人減らしというか、船員の生活、その地位、こういうものが脅かされていくということは、これは単純に賛成できないものではなかろうかというように私は思うわけでございます。  もともと産業基盤信用基金というものを通じて融資を受けていくというようになっておるわけでございますが、どんな場合でも、国が直接大企業に金をくれてやるというようなことはやりませんね。そういう基金なんかをつくって、それをトンネルにして金が流れていくという格好でございますが、要するに、政府資金の大企業助成の一つの方式になっているのですね。そういう点を考えますと、単純に、これは結構だというように言えないわけでございますが、その点いかがですか。
  167. 仲田豊一郎

    仲田政府委員 まず第一番目に、この基金と申しますか、この解撤促進策が特定の企業に偏っているのじゃないかというお尋ねでございますが、私どもは特定の企業を意識しているわけでございません。業界全体といたしまして、これも船の種類によっては偏りが出てくるのは当然かと思います。それはそれぞれの船種によって過剰状態が違いますし、またそれが長期に継続するかどうかというような判断もおのずから異なってまいりますので、そういうような偏りはあるかもしれませんが、企業によってこれを偏るというようなことはないというふうに考えております。  それから、これは人減らし対策であるという御意見でございますが、結果的に船が減りますと、解撤をされますと、それに乗っておられた船員の方々が場合によっては退職せざるを得ないという事態、これは認めざるを得ないと思います。しかしながら、私どもは船員の退職をねらったということではございませんで、それぞれの企業が生き延びていくためには、それは言葉をかえれば、企業が人を雇用していくためにはどうしてもこういうような形で解撤を進めていかなければならないという大前提企業の中で一つ雇用を確保していくという大前提の中でこういう施策がとられているわけでございまして、その場合でも、やむを得ず退職される方には、それなりの退職金融資に対する保証を行おうというところまでこの制度を広げておるわけでございまして、決して雇用問題を無視した政策であるとは考えておりません。  三番目に、産業基盤の基金でございますが、これはこの金を大企業に流すというような性格ではございませんので、こういう保証がないと金が借りられないような企業、つまり担保を肩がわりしてもらわないと船の解撤が進まないというような、そういうどちらかというとぎりぎりに差し迫った企業中小企業に多いのではないかと思います。そういうところに対して手を差し伸べようということを考えておりますので、その辺はひとつ誤解のないように御理解をお願いいたしたいと思います。
  168. 梅田勝

    梅田委員 次に、この外航船舶の過剰に対抗できないのかという問題がございます。いろいろ条件が厳しいわけでございまして、一つには、経済協力開発機構、OECDの海運委員会で実効ある需給調整をする制度はないという問題。二つに、アメリカの新海運法によりまして、運賃が事実上ダンピングできるようになって非常に競争が激化しているという問題。三つ目に、日本船の場合を見ますと、先ほど来議論がありますが、船腹量と海上荷動き量の推移を見ますと、必ずしも過剰ではないのではないかという問題ですね。先ほど来言われておりますように、世界的には三五%に対して日本の場合は四%程度ではないかという問題。この程度では実際船腹調整の実効性がないのではないかという問題。それから四番目に、この法案の第十条に「特定外航船舶の解撤に関する勧告」というのがございますが、これは担保するものがないので実効性がないという批判もあるのですね。そういう点で便宜置籍船日本海運業界がコストが安いというのでいろいろな手を使ってやっている、ここの大もとのところをきちんとやらない限り、幾ら言っても実際の実効性は上がらないのじゃないかという問題について、もう一度お答え願いたいと思います。
  169. 仲田豊一郎

    仲田政府委員 まずOECDの海運委員会においてスクラップの実効性について疑問が出されているということでございますが、OECDの海運委員会が実は最近開かれた。六十一年一月にパリで開かれておりますが、そのとき我が国の代表から本制度の概要を報告いたしました。まだ法律が成立しておりませんが、こういうことを手がけておりますということで報告をいたしましたところ、イギリス、フランス、ドイツ、ノルウェー等の諸国から大きな賛意と関心が寄せられたということでございまして、また民間の国際団体でございますインタータンコ、国際独立タンカー船主協会、IMIF、国際海事産業協議会、こういうようなところにおいても、この制度の効用が非常に大きく評価をされております。そういう意味で、少なくとも現在の時点におきましては、このスクラップというものに対して、これは効果があるのではないかな、そういう国際的な機運が出てきているということは否めないのではないかと思います。  それから、米国関係で八四年の新海運法が原因ではないかという御指摘がございます。これは確かにそういう面が定期航路については強いというふうに考えております。しかしながら、これはアメリカ及び第三国の船会社がコンテナ船の増強に非常に躍起になりまして、船腹過剰状態が生じた。その結果、運賃のダンピング競争が始まったということでございますので、基本的にはほかの不定期船ないしタンカーとは異なってない、やはり船腹過剰が原因であるというふうに考えていただいてよろしいかと思います。  三番目には、荷動き量の問題でございますが、我が国を中心といたします海上荷動き量は五十四年に三兆八千五百五十億トンマイル。これが六十年に三兆六千二百十億トンマイルと六%減少いたしております。これに対して我が国の船腹量のベースで申しますと、五十四年の三千三百三十四万総トンから六十年には三千三百四十七万総トン、ほぼ横ばいと申してよろしいかと思いますが、需給関係では悪化していると申し上げて差し支えないかと思います。  これは、ちなみに日本船の係船量という点で見ましても、五十五年の年央は十万六千総トンの係船量しかなかったのですが、六十年末には百二十八万二千総トンということになっておりまして、この面からも船舶の過剰状態は悪化しているというふうに見て差し支えないかと思います。     〔津島委員長代理退席、委員長着席〕  それから、便宜置籍船の問題を再び伺ったわけでございますが、便宜置籍船の状態、これは評価ないしまた悪であるといういろいろな考え方がございますが、実態として見た場合、先日の海運造船合理化審議会におきまして、やはり日本商船隊全体の競争力を維持するための一つの方法として、すべてこれに頼るというわけではございませんが、いろいろな荷主がございますから、その御要望に応じるためには、こういうような形も必要な場合もあるということで一応の御認知をいただきましたので、これがすべての悪の根源であるというふうには私ども思っておりませんし、かえって日本商船隊の中で、それを維持するための一つの要素として、やはり考えなくちゃいけない利点も同時に御認識いただきたいと考えております。
  170. 梅田勝

    梅田委員 時間がございませんので、大臣、運輸白書を見ましても、解決が持ち越された便宜置籍船問題というように、これは国際関係、いろいろ考え方があってなかなかまとまらぬ問題が多いのですよ。しかし、船腹過剰問題という問題を本当に真剣に考えていくなら、我が国の政府、特に運輸省——新造船の許可という場合に、過去の実績を見てみますと、一九七四年−七八年の五カ年間、七九年から八三年の五カ年間を比較いたしますと、日本船では一・三九倍、輸出船では一・二一倍、総計でも一・二六倍というように、船腹過剰と言いながら、自国で船をどんどんつくってやっておるという問題もございましょう。それからスクラップ船にならぬものでも、今度は古い船は海外で売っておる。別にそれはスクラップにしておるわけじゃない。大臣、こういうやり方を野放しにしている限り、つまり結局日本造船企業関係している政治ばかりやっておるからこういうことになるのであって、そこのところをきちっと正すことなしに今この問題は解決がつかない。船員までが魅力を失って、自分の子供に船員だけにはさせたくないと思わせるような、そういう政治というものは改めていただきたい。  ひとつ大臣の所見を承って、私の質問を終わります。
  171. 三塚博

    三塚国務大臣 ただいまの御指摘がすかっといくと、これは全然苦労しないでうまくいったということになるのでありますが、今の御論議にもありましたとおり、便宜置籍船、外国用船、こういうことになっておるわけですが、これと我が国の固有の船団との調整、調和をとりながら辛うじて国際競争に勝ち、日本商船隊として名をなしておる、こういうことでもありますれば、これを直ちにやめろということに相なりますと、それなりの対応策を命ずる政府側がやらなければならぬな、こういうことが一つ頭の痛い問題としてそこにあります。  それともう一つは、やはり造船会社、これは何も大手造船会社だけでございませんで、特に中小造船というのは塗炭の苦しみにあるわけでありますね。ですから、これがつくる船舶について、まだつくってほしいということで発注する、注文をする、またその中小造船は、かの海運ならかの海運にぜひつくらせてくれ、こういうことでそれぞれの造船会社がお願いをする、それは会社を押し上げるためにお願いをする、この辺の問題もありまして、なかなかつらいところでございますが、ただいまも河村先生から、この法律があるのに一回もノーと言ったことはないじゃないか、こういうことでありましたが、これだけの事業をこれからやるわけでございますから、全体を展望しながら行政指導ということで、その辺のところを取り組まさせていただかなければなりませんし、海造審の審議の中でも、その辺を十分に御論議をいただいておると思っておりますものですから、ただいまの御指摘を御指摘と踏まえながら、望ましい形は何かということで、さらに真剣に努力を進めてまいりたい、また格段の御鞭撻をちょうだいいたしたいと思います。
  172. 梅田勝

    梅田委員 終わります。
  173. 山下徳夫

    山下委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  174. 山下徳夫

    山下委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  内閣提出特定外航船舶解撤促進臨時措置法案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  175. 山下徳夫

    山下委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  この際、運輸大臣から発言を求められておりますので、これを許します。三塚運輸大臣
  176. 三塚博

    三塚国務大臣 ただいま特定外航船舶解撤促進臨時措置法案につきまして、慎重御審議の結果、御可決をいただきまして、まことにありがとうございました。  審議の過程において御指摘のありました諸点につきましては、その趣旨を十分に尊重し、努力してまいる所存でございます。どうもありがとうございます。
  177. 山下徳夫

    山下委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  178. 山下徳夫

    山下委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  179. 山下徳夫

    山下委員長 次に、内閣提出参議院送付海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の一部を改正する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  趣旨の説明を聴取いたします。三塚運輸大臣。     —————————————  海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の一部を改正する法律の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  180. 三塚博

    三塚国務大臣 ただいま議題となりました海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の一部を改正する法律の一部を改正する法律案の提案理由につきまして御説明申し上げます。  海洋汚染の防止につきましては、各国が協調して取り組むことによって初めて十分な効果が期待できるものであるため、我が国といたしましては、従来より国際的な動向に対応しつつ、海洋汚染防止対策の充実強化を図ってきたところであります。  千九百七十三年の船舶による汚染の防止のための国際条約に関する千九百七十八年の議定書は、近年におけるタンカーの大型化等にかんがみ、従来からの油に関する規制を強化するとともに、油以外の有害物質の海上輸送の増大等に対応して海洋汚染の包括的な防止を図ることを目的として採択された条約であり、その国際的な実施は、海洋環境の保全に大きく寄与するものであります。したがいまして、我が国といたしましても、昭和五十八年五月に制定いたしました海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の一部を改正する法律によって、その実施に関し必要な国内法制の整備を行い、同年六月にこの議定書に加入したところであります。  この海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の一部を改正する法律は、議定書が規制対象物質ごとに五つの附属書から構成され、また、各附属書の実施時期が異なっていることから、それぞれの附属書に対応する改正規定が順次五段階にわたって施行される形式となっております。  これらの附属書のうち油の規制に関する附属書は、昭和五十八年十月から実施されており、同法においても当該附属書に対応する改正規定は既に施行されているところであります。  昭和五十八年当時見込まれた各附属書の実施順序においては、この油の規制に関する附属書に引き続いて、ばら積み以外の方法で貨物として輸送される有害物質、汚水及び廃物の規制に関する各附属書が実施される予定でありましたが、その後の事情によりこれらの附属書の実施時期がおくれることとなったため、ばら積みの有害液体物質の規制に関する附属書がこれらの附属書に先立って実施されることとなりました。  したがいまして、海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の一部を改正する法律についても、このような附属書の実施順序の変更に伴い、改正規定の順序を組みかえるとともに所要の規定の整備を行う必要があります。  また、これに加えて国際海事機関において昭和六十年十二月に議定書の一部の改正が採択されたことに伴い、海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の一部を改正する法律のうち、有害液体物質記録簿の保存期間を二年間から三年間に改めるとともに、ばら積み以外の方法で貨物として輸送される有害物質の排出等があった場合の通報に関する改正規定の施行期日について所要の改正を行う必要があります。  以上が、この法律案を提案する理由であります。  何とぞ慎重御審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  181. 山下徳夫

    山下委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時十九分散会      ————◇—————