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1986-03-28 第104回国会 衆議院 運輸委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年三月二十八日(金曜日)     午後一時七分開議 出席委員   委員長 山下 徳夫君    理事 小里 貞利君 理事 鹿野 道彦君    理事 久間 章生君 理事 津島 雄二君    理事 清水  勇君 理事 吉原 米治君    理事 西中  清君 理事 河村  勝君       大島 理森君    加藤 六月君       柿澤 弘治君    関谷 勝嗣君       田中 直紀君    近岡理一郎君       額賀福志郎君    堀内 光雄君       増岡 博之君   三ッ林弥太郎君       山村新治郎君    若林 正俊君       小林 恒人君    左近 正男君       関山 信之君    富塚 三夫君       横山 利秋君    池田 克也君       石田幸四郎君    中村 正雄君       梅田  勝君    辻  第一君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 三塚  博君  出席政府委員         運輸大臣官房長 永光 洋一君         運輸大臣官房国         有鉄道再建総括         審議官     棚橋  泰君         運輸大臣官房国         有鉄道部長   丹羽  晟君         運輸省地域交通         局長      服部 経治君         運輸省港湾局長 藤野 愼吾君  委員外出席者         運輸委員会調査         室長      荻生 敬一君     ————————————— 委員の異動 三月二十八日  辞任         補欠選任   関谷 勝嗣君     大島 理森君   箕輪  登君     額賀福志郎君   浅井 美幸君     池田 克也君 同日  辞任         補欠選任   大島 理森君     関谷 勝嗣君   額賀福志郎君     箕輪  登君   池田 克也君     浅井 美幸君     ————————————— 三月二十七日  日本国有鉄道経営再建促進特別措置法の一部を  改正する法律案小柳勇君外三名提出参法第  一号)(予) 同月二十六日  国鉄分割民営化反対等に関する請願(経塚  幸夫君紹介)(第一八五四号)  公共交通充実等に関する請願小林進紹介  )(第一八五五号)  同(佐藤祐弘紹介)(第一八五六号)  同(嶋崎譲紹介)(第一八五七号)  同(多賀谷眞稔紹介)(第一八五八号)  同(中川利三郎紹介)(第一八五九号)  同(不破哲三紹介)(第一八六〇号)  同(藤田スミ紹介)(第一八六一号)  同(村山喜一紹介)(第一八六二号)  同(山原健二郎紹介)(第一八六三号)  同(渡部行雄紹介)(第一八六四号)  同(田中美智子紹介)(第二〇一一号)  同(田並胤明君紹介)(第二〇一二号)  同(武藤山治紹介)(第二〇一三号)  同(元信堯君紹介)(第二〇一四号)  国鉄分割及び民営化反対等に関する請願(中  林桂子紹介)(第二〇一〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  特定都市鉄道整備促進特別措置法案内閣提出  第三九号)  港湾整備緊急措置法の一部を改正する法律案  (内閣提出第四八号)      ————◇—————
  2. 山下徳夫

    山下委員長 これより会議を開きます。  内閣提出特定都市鉄道整備促進特別措置法案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河村勝君。
  3. 河村勝

    河村委員 大都市地域鉄道複線化あるいは複々線化の仕事は、土地が非常に高いために費用が高騰して、その割合収益効果がないということは事実でありますから、これをどうしてもやらせようという場合には、長期、低利の資金を供給するのが一番望ましいわけであって、常識的に言うと三%ぐらいのところの利子が一番妥当だと私は思っておりますが、それはともかくといたしまして、今回の運賃値上げ前倒しして負担を平準化しようという案はなかなか知恵を働かせたおもしろい案だと思っております。ですから、願わくはこれを立派な制度にして活用をすべきだと思っております。  そこで、第一に伺いたいのでありますが、この法律の第一条「目的」において、「都市鉄道輸送力計画的な増強促進するため、」云々と書いて「鉄道利用者負担長期にわたり平準化する」と相なっておりますから、前倒しした運賃負担する人間が輸送力増強ができた後の改善されたサービスを受けられるという前提に当然立っているものと考えざるを得ない。そういう意味で、この運賃上乗せというのは、受益者負担原則に基づいて行われるものであると考えますが、そう理解してよろしゅうございますか。
  4. 服部経治

    服部政府委員 先生指摘のとおりでございまして、この制度の根幹をなしている利用者負担と申しますか、受益者負担の物の考え方も、従来広く言われております受益者負担なり利用者負担なりの考え方と基本的に違背するものではないというふうに私ども考えておるものでざいます。
  5. 河村勝

    河村委員 そこで、前々から議論になっている点でございますが、一体この前倒し運賃を支払う者が本当に輸送力増強計画ができ上がった後の利益を享受できるかどうかという点について、問題点二つあるわけであります。一つは時間的な問題であって、現在支払っている利用者工事完了後に一体その利益を享受できる保証があるのかないのかという問題と、もう一つ地域的にそれが妥当であるかどうかという二つの問題があるわけであります。  その最初の時間的な問題についてお尋ねをいたします。  前回、議論している最中に地域交通局長は、多少の利用者変動があっても、マクロ的に見れば別段支障はないというような割と大ざっぱな答弁をしておられたように記憶していますが、大体マクロ的には矛盾はないんだということで一体よろしいのですか。そう思っておりますか。
  6. 服部経治

    服部政府委員 基本的にはただいま先生指摘のとおりでございまして、確かにこういった複々線化等の大規模鉄道工事というのは、その完成までに大変長い期間がかかるものでございますために、この制度によりまして、工事により施設が稼働する前に運賃上乗せ負担をしたその人が、その施設供用後、その施設の稼働による大きな便益を享受する、そしてまた、前に前倒しの形で負担したものについては運賃を通じて還元を受ける、そういった利益も享受するというのが本来のあるべき姿でありますが、それが間々できないことがあり得ることは否定し得ないところでございます。  しかし、私どもは、この制度は極めて多くの鉄道利用者の利便を大幅に増進するために、そういった複々線化等のなかなか事業化の容易でない大規模工事促進を図るということが、現下の強い社会的な要請になっているというふうに認識いたしまして、そういった現実を踏まえまして、こうした大規模工事促進を図るために特別の措置を講じようとしているものでございます。  そういったこの制度趣旨目的にかんがみれば、本制度がとっております、よってもって立っております基本的な考え方、すなわち、積立期間中の利用者工事完成後の利用者についての対応関係を必ずしも厳密な形でとらえるというのでなくて、その間にマクロ的に見れば確かな同一性、確かな対応性があるというふうに考えることにつきましては、十分社会的に御容認がいただけるところだというふうに考えておるものでございます。
  7. 河村勝

    河村委員 マクロ的に整合性があるということの限界はあるだろうと思うのですが、大体この複々線化を必要とする地域というのは、非常に社会増あるいは社会的な変動の多いところですよ。だから、例えば今度の計画に載っている小田急を例にとれば、小田急厚木とか相模原とか、あの辺の地域一体何年間にどのくらい地域住民変動があるかというのを調べたことがありますか。
  8. 服部経治

    服部政府委員 具体的な各地域につきまして、社会的な人口変動率を調べているというわけでは決してございませんけれども、国の行います国勢調査等数字を見ますと、大都市圏における人口移動率というのは、年間一%ないし多い場合で一・五%であるというふうな数字が出ていることを承知いたしております。
  9. 河村勝

    河村委員 今あなたの言った数字は、ただ人口増減だけの数字なんです。その中の変動の要素というのは何にも入ってない。我々は選挙をやっていますから非常に敏感なんですけれども厚木とか相模原とか、あの辺の地域選挙のたびに二割ないし三割有権者が変わるんだ。だから、こういう法案をお出しになるからには、社会的な変動一体どのくらいあるのかというくらい調べておいて出すというのが本当じゃないかと思うが、いかがです。
  10. 服部経治

    服部政府委員 先生指摘の御趣旨は理解するものでございますけれども、私ども、先ほど御答弁申し上げましたように、国勢調査等数字によりまして、大都市圏における人口圏外移動率が一ないし一・五%程度であるというふうに聞かされておるところでございます。  それから、先生のように、小田急沿線人口増減変動が多い地域という見方も確かに一面あろうかと思いますが、私どもはまた一面におきまして、こうした小田急沿線等私鉄沿線におきましては住宅地の開発が進んでおりまして、沿線への定着する人口の増加も大変多いというふうな事実認識に立っておるものでございまして、こういった私鉄沿線居住者が将来さらにその私鉄利用する可能性、機会というのは非常に高い、そういう見方も常識的ではないかというふうに考えておるわけでございます。
  11. 河村勝

    河村委員 しかし、本当に我々は切実な問題だから、その辺の変化には注意しているのですけれども、仮に三年に一度選挙のたびに二割変わるとする。もちろん変動したからといって全然よその地域に行くのかどうか、それはわからない。あるいは同じ私鉄利用する地域に引っ越しているかもしれない。だけれども、十年たつと半分くらい変わることになる。だからそういうのは、やはり法律をつくるからにはもう少し綿密に調べておかないといけないんだろうと思うが、一体そういう角度からの調査というのは全然やってないのですか。
  12. 服部経治

    服部政府委員 各私鉄沿線区域についてのそういった調査というものは、遺憾ながら行っておりません。
  13. 河村勝

    河村委員 時間的なずれについての議論は、私も決め手を持っていないから、一応そういう問題点があるということを指摘をするにとどめておきます。  もう一つは、地域の問題ですね。小田急のような場合には、仮に線区が分かれておっても、本線と江ノ島線とは基幹部分が一緒ですから、複々線になる部分が大体共通に使われると考えてよろしいからまあよろしいのでありますけれども東急のような場合、今度の場合でも目蒲線、東横線、こっちの方で工事が行われる。だからあの辺の地帯は一体として共通利用者があると見てよろしいけれども田園都市線なんかになりますと、まるっきり路線が違ってしまって、共通利用する可能性は、ゼロではないかもしれないけれどもごくわずか。ところが、この間からの御説明によると、運賃上乗せ当該私鉄全域を対象にして値上げをやるんだ、こういう説明でしたね。そうなると、田園都市線の人は何のために上乗せ運賃を取られるのか、これは私が納得ができないだろうと思いますが、いかがですか。
  14. 服部経治

    服部政府委員 先生はこういった面につきましての大変なオーソリティーでございまして、よく事情は御承知であると思いますけれども、現行の運賃制度におきましては、鉄道投資に係るコストについては、その鉄道利用者全体を一つ利用共同体としてとらえまして、全利用者にそういった投資コストを平等に御負担いただくという考え方を伝統的にとってきておるところでございます。このことは何も投資コストに限定された考え方ではなくて、例えば利用者の多寡によって生ずる線別運賃コストのアンバランスについても、これを捨象いたしまして、一社一運賃という制度が長くかつ全国にわたってとられてきておるところであるわけでございます。  投資コストについてのこうした考え方をとってきておる理由一つでありますが、それは特定工事によって受益する利用者範囲なりあるいは利用者によって異なることのあるべき受益程度なりを計量的に把握して確定するということは、言うべくして技術的にはまことに困難でございます。かつ、それに加えまして、仮にそういった受益範囲なり受益程度が計量的に明確に把握できたといたしましても、特定工事にかかわる費用負担と、その工事により直接受益することとなる利用者を、その都度厳密に結びつけまして運賃増減を行うというようなことは、運賃制度上、運賃技術上、これまた大変に困難な問題があるわけでございます。  一方、工事にかかわる費用負担を全路線利用者で広く薄めて負担するという、私どもが今申し上げてきたような考え方をとりますときは、工事の都度、その工事から直接受益することとなる一部の利用者にのみ大幅な運賃負担増を強いるといったような極端な事態も回避できるわけでございまして、長期的に見ますれば、時期こそ違うと思いますけれども、一社の各線、全路線にわたりましてまんべんに輸送改善のための工事が円滑に行えるという利点もあるというふうに私ども考えておるところでございます。  こういったこれまでの物の考え方、一社一運賃という基本的な考え方は、今回のこの制度のもとでもそのまま踏襲する考えでございまして、個々の利用者利用実態いかんということは、一たん捨象することにいたしておるわけでございますけれども、一方また、先生承知のように、これまでも一部区間工事による受益というものと、それを全体の利用者負担するという場合に起こる関係が著しく均衡を欠くというようなことが想定されます場合には、当該工事区間に着目をいたしました特別運賃制度といったようなものもとってきておるところでございまして、そういった特別運賃制度というような手法は、これまた今後に踏襲してまいりたいと思っておるところでございます。
  15. 河村勝

    河村委員 前倒し運賃を設定する際に、運賃値上げ公示一体どういう形でやられるのですか。ただ通常運賃値上げと同じようにやるのですか。
  16. 服部経治

    服部政府委員 まことにごもっともな御指摘でございますけれども、私ども、このような制度が適用された場合の運賃改定につきましては、二つのことを考えておりまして、一つは、本来この制度がなかりせばの通常運賃改定率はかくかくしかじかであり、それにこの制度による運賃改定分がこれくらい上乗せされておりますということを、事前にマスコミ等を通じまして十分PRする、またPRさせる考えでございますし、同時に、運賃公示に際しまして、そのことを明記し、利用者の方々の広い御理解を得るように努める考えでございます。
  17. 河村勝

    河村委員 明示をするということになりますと、しなければならないはずでありますが、仮に東急を例にとって、田園都市線利用者たちが、東横線の方で複々線工事をやって便利になるために、我々が運賃を余分に払わなければならぬ理由はない、我々の利益を侵害しているという訴訟を出されたら、それに対抗できますか、一律運賃で。
  18. 服部経治

    服部政府委員 先ほど来申し述べましたような考え方でございまして、私どもとしては、それにも十分対応してまいれると考えております。
  19. 河村勝

    河村委員 まあ、負けますと言うわけにはいかないのでしょうけれども通常運賃値上げ、これが個別線区原価によるのではなくて総原価でやられることは常識であり、一社一運賃で結構なんですけれども、こういう新しい制度をつくって、特定工事のために費用がかさむ、だからその工事によって受益する者に対して、余分の運賃といいますか、平準化された運賃、どっちでもよろしいけれども前倒し運賃をとにかく払ってもらうんだということであります。ですから、これは一般の運賃値上げの場合の原則とは違うべきじゃないのですか。  大臣、応答をお聞きになっていてどういう感じをお持ちになります。
  20. 三塚博

    三塚国務大臣 今お聞きいたしておりまして、河村先生の疑念、疑問点も現状の中での御提起としてそれなりの理屈のあるものだと思いますが、同時に、地支局長の言われる運賃決定の今日までの経過、それをマクロに見た場合のとらえ方という原理原則に立って、裁判に相なりましても、提訴されましても、十二分に対応でき得るものだ、こういう答弁であります。全体的なとらえ方ということで考えますれば、受益者負担という、今利用しておることによる負担ということだけに限定をしていくということでありますとそうであるかもしれませんが、しかし、今日の状況の中で、やはり複々線化地域交通のために重要であるし、また快適な通勤通学手段をそのことによって得られるということでありますならば、高速道負担ではございませんが、やはり新線に対してこの際その部分負担していただくというのも一つ考え方であり、許される考え方なのだろうか。  ただ、河村先生言われますとおり、まだ明定はされておらぬが、選挙のたびに二割程度が移動するのではないか、それが五年たてば十割になるのじゃありませんか、あるいは十年たてばそうなるのじゃありませんかという議論も、一つ議論として、私も仙台という大都市なものでございますから、絶えずはがきが返ってくるので、また返ってきた、こういうことで関心があるわけでございます。それでも定着度ということに相なりますと、やはりそれなりのものかな、それとこういうふうな複々線化という手段が講ぜられることによって沿線快適度を増すということになりますと、逆に定着度がプラスになるのかな、こんなことでもありますし、その点から河村先生の理論に最終的に服部局長の言われることが符合していく、こういうことでありまして、御心配をいただいておる訴えが起こされて、政府側が敗訴するようなことではいかぬわけでありますが、お聞きしておりまして、十二分にこの訴えにも対応できてきちっと前に進めることができ得るものだな、こんなふうに聞かさせていただきました。
  21. 河村勝

    河村委員 仙台大都市のうちに入るのかどうか甚だ疑問だと思いますが、私は時間的な社会的な変動の方は引っ込めたんですよ。これは一応引っ込めましたが、どうも線区によって分かれるのはかなり問題があると思いますよ。特に今度の場合には、任務が終わったら運賃をまた下げるわけでしょう。ですから、本当に問題を特定して考えておるのですよ。全体の運賃値上げとは原則が違うのですね。だからどうも私は地域交通局長のは強弁だと思う。私も、厄介だから、こういう制度をつくって適用する場合に、個別運賃をつくるといったら非常にやりにくいから、なるべくなら一社一運賃でやった方が都合がいいだろうとは思いますよ、便宜的に考えれば。だけれども、問題があることは事実なんで、近ごろは割合訴訟日本も起こりやすい土壌にある。私は田園都市線に住んでないから訴えを起こしませんけれども東急だって田園都市線から訴訟が起こったらどうなるかわかりませんよ。国は負けるかもしらぬ。私はこの制度そのものはぜひ推進したいと思っていますから、これ以上言うのはやめておきますが、これはもうちょっと慎重に考えてください。  さっき特別運賃という言葉をちょっと地支局長は使ったけれども、今特別運賃という言葉を使った意味はどういう意味ですか。
  22. 服部経治

    服部政府委員 例えば東急玉川線につきまして、先年大規模改良工事を行いまして、これを地下化したわけでございます。これの投資コストのはね返りが非常に大きいわけでございますが、この東急玉川線地下化工事につきましての経費につきましては、その約二分の一を全線の利用者に御負担をいただき、残りの二分の一につきましては、当該地下化された区間を通過して御利用になるお客さんに対しまして二十円ないしは三十円の付加運賃をいただいておる、これを特別運賃というふうに先ほど私申し上げました。そういう制度でございます。  それで、先ほど申しましたように、私どもこういった特別運賃考え方は今後にもそのまま踏襲してまいりたい、本制度のもとでも踏襲してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  23. 河村勝

    河村委員 そうすると、今度の場合、まさしくその特別運賃に該当するようなケースになるんじゃないですか。
  24. 服部経治

    服部政府委員 そういうケースがむしろ多いことになろうかとは思っております。
  25. 河村勝

    河村委員 そういう特別運賃制度もあわせ考えるということであるならば、それで結論としておきましょう。  ですから、本当に軽微なものならそれも一本化しでもよろしい、だけれども、著しく矛盾があるようなものについては特別運賃制度によって差別運賃をつくる、そう理解してよろしいですね。
  26. 服部経治

    服部政府委員 ただいまおっしゃられましたとおりでございます。
  27. 河村勝

    河村委員 じゃ、それはそれで結構です。  具体的な問題をちょっとお聞きをいたしますが、やはり自分の一番身近なところで伺いますが、小田急複々線工事、非常に大規模なものですね。あれは東北沢から和泉多摩川までと思っておったら百合ヶ丘までということですが、それで計画はできているわけですね。もしそうであれば、それは総額幾らになりますか。
  28. 服部経治

    服部政府委員 小田急小田原線複々線化計画でございますが、これは東北沢と新百合ヶ丘の間十七・三キロメートルにつきましての計画でございまして、これに要する総工事費はざっと三千七百億円でございます。
  29. 河村勝

    河村委員 これからこの種の工事をやる場合に、この運賃調整だけに頼っているわけにもちろんいかないだろうと思うのですが、この運賃前倒しの場合に、後で準備金の取り崩しをやって、その取り崩しの場合には益金扱いにするわけですから、借金ならば税金はかからないけれども、この場合には税金はかかるわけですね、法人税。そうすると、実質的には結局無利子自己資金というわけにはまいらないわけですから、これはもし借金に引き直すと、一体何ぼくらいの金利考えていいんですか。
  30. 服部経治

    服部政府委員 ちょっと先生の御質問の意味をつかみかねておるかもしれませんが、例えば収入規模五百億円の会社があったといたしまして、その会社が七百億円の複々線化工事をするという場合に、この制度を適用いたしましたといたしますと、その場合に生ずる金利軽減効果は百二十億円でございます。
  31. 河村勝

    河村委員 僕もこの辺のところ、ちょっと会社法に弱いものだからよくわからないのだけれども、百二十億というのは、要するに四分の一だから百二十億というだけのことでしょう。そうじゃないんですか。
  32. 服部経治

    服部政府委員 四分の一という限度額がありますことに加えまして、この制度では、計画しております工事費の額とその会社収入規模の見合いにおきまして所要の積立金積立率というものを定めることにしておりまして、今私が申しました五百億円の収入規模会社が七百億円の工事を行うというケースにおきましては、積立金積立率は三%でございますから、十年間で五百億円の三%ずつを毎年度積み立てますから、一年間十五億、十年間で百五十億円ということに計算はなるわけでございますが、一方で四分の一の限度額がございますので、百七十五億円というところで抑えられる。その百七十五億円に相当する部分が借入金から無利子自己資金にかわりますために、建設期間中の十年間及びその積立金を取り崩してしまう供用開始後の十年間、計二十年間を通じまして発生いたします利子逓減効果が百二十億円であるという意味でございます。
  33. 河村勝

    河村委員 そうすると、四分の一——そうか、わかりました。  この小田急の場合は、恐らく高架複々線化が行われる部分が非常に大きいと思うのですが、この総額の予算、三千七百億と言いましたっけ、三千七百億円のうちのどのくらいの部分高架化工事になるのですか。
  34. 服部経治

    服部政府委員 総工事費三千七百億円と申し上げましたが、そのうち高架化にかかわります都市側負担額がざっと八百億円であるというふうに承知しております。
  35. 河村勝

    河村委員 そうしますと、高架化の場合には、従来の都市の高架化の場合の費用負担原則ができていますね。国あるいは地方団体と会社、これはそのままこれが適用になる、だからその部分を除いたものに対する四分の一ということになるのですか。
  36. 服部経治

    服部政府委員 ただいま先生指摘のとおりのことになります。
  37. 河村勝

    河村委員 そうすると、その残りの四分の一として、二千八百億か九百億になるのでしょうかね。そのまた残りの四分の三、これについては従来鉄建公団を利用する制度、それから開銀の融資その他、利子逓減のいろいろな方法がありますね。こういうものは全部組み合わせてできるようになるのですか。
  38. 服部経治

    服部政府委員 私ども目的とするところは、そういった都市鉄道輸送力増強工事の推進でございまして、そういった意味で従来のP線方式と本制度はこれを併用して用いるつもりでございます。
  39. 河村勝

    河村委員 いろいろなこういう有利な制度を全部併用して、それでそれを全部ひっくるめて低金利の融資に換算をしたら大体何%ぐらいになるという目標でやっているのです、これは。
  40. 服部経治

    服部政府委員 ざっと所要工事費の四分の一弱、四分の一まで達しませんが、四分の一弱くらいの数字になるものと思います。  申しわけございませんが、確かな計算を、今ちょっと暗算でございますので違っておるかもしれませんが、多分総工事費の四分の一弱くらいのものに相当する金利削減効果があるという感じでございます。
  41. 河村勝

    河村委員 時間も余りありませんから、私はちょっと開発利益の還元制度のことを伺っておきたいと思います。  これも前回議論になりましたが、運輸政策審議会の答申の中で開発利益の還元について幾つかの項目が挙げられております。常磐新線を対象にして関係公共団体と議論を煮詰めつつあるというお話でありましたが、私どもの地元に近いところでみなとみらい21線というのがあって、これが魅力のある計画の一番骨になるものでありますから、それとの関連で、特にこの開発利益の還元に一体どういう手法がとられるのかということに関心を持っているのでありますが、この第一番の特定の地方税の税収の一定割合等を特定財源にするというのは、これはどういう内容を考え、かつ具体的に詰めが行われておりますか。
  42. 服部経治

    服部政府委員 運政審答申の中の、ただいま先生が引用されました表現につきましての私どもの理解は、新線の建設整備が行われますと、それが郊外部であればあるほど沿線に大きな開発利益を生むわけでございまして、この開発利益をどういう方法でもって吸収するかという方策の一つが今の表現でございますが、例えば固定資産税とか都市計画税等の超過課税を行いまして、その超過課税分を自治体に設けます、例えば鉄道基金といったようなものにプールして、その鉄道の建設なりあるいは開業後の運営費の助成なりに充当しようというような考え方が示唆されたものというふうに受けとめております。
  43. 河村勝

    河村委員 具体的に固定資産税や都市計画税の一部を鉄道整備促進のために特定財源にするということについて、常磐関係の地方公共団体というのはどういう意思を持っているのですか。また、みなとみらい21の場合については、一体こういう具体的な問題を相談をしているのかどうか。
  44. 服部経治

    服部政府委員 ただいまの運政審答申で示唆されましたような開発利益の還元の手法につきましては、私どもこれを一般論として議論するというアプローチの方法もあろうかとは思いますが、それは長年やられてきて実りなかった方法でございますので、ただいま先生指摘のように、現在、常磐新線の建設の早期の具体化を図るために連絡検討会の場を設けまして、関係の自治体といろいろお話を詰めてまいってきておりますが、現在の段階では、関係の各自治体はこの常磐新線の早期実現のために全面的に協力を惜しまないというお考えをはっきり打ち出されておりまして、そういった雰囲気、状況の中でこの問題についての具体的な詰めが今まさに行われようとしている、そのアイ・エヌ・ジーの段階でございます。
  45. 河村勝

    河村委員 そうすると、この特定財源については、これは地方公共団体がオーケーと言えばそれでいいわけでありますが、そのほかに書いてあります、鉄道整備により特別の利益を享受する場合の開発事業者の負担金、それから駅前立地企業、地元経済団体等からの協力金、そういうものから徴収して鉄道建設基金を設置するんだ、こういう考え方になっておりますね。まだ常磐新線というのは建設自体決まってないわけでありますが、一体今、こういうものについての相談というのは、だれを相手にやっているのですか。
  46. 服部経治

    服部政府委員 私ども関係の四都県の相応のレベルの事務当局の方と具体的な意見交換、議論の詰めをやっている段階でございます。
  47. 河村勝

    河村委員 常磐新線よりもみなとみらい21線の方がむしろコンパクトなところで、相談するならそっちの方が早くまとまって、具体的なブランが早くでき上がりそうな感じがしますが、そういうつもりはないですか。
  48. 服部経治

    服部政府委員 何もMM21線関係の方を後回しにするという考えは毛頭ございません。これにつきましても、現在横浜市との間で連絡協議の場を設けまして勉強を開始したところでございます。
  49. 河村勝

    河村委員 もう一つ伺っておきたいのですが、ニュータウンをつくる場合の開発者負担制度というのがありますね。これは法律でつくったのかと思ったら、どうも行政指導でおやりのようでありますが、この制度というものを常磐新線あるいはみなとみらい等について適用する余地はないのかどうか、その点は検討されたことがありますか。
  50. 服部経治

    服部政府委員 ただいま先生指摘のニュータウン開発者負担制度と申しますのは、ニュータウンの造成に伴いまして、そのニュータウンへ向けての鉄道のアプローチを整備する場合に、ニュータウンにとっての最寄りの駅、ニュータウン内の駅と最も近い駅、そういった区間の所要の鉄道用地につきまして、素地価格との差を御負担いただくとか、その区間についての施工基面以下の部分にかかわる工事費の二分の一をニュータウン造成者側に御負担いただくといったような物の考え方でございまして、MM21線の場合に、これをそのまま適用できることになるかどうか、今後横浜市当局の方とも折々御相談を重ねてまいりたいと考えております。
  51. 河村勝

    河村委員 時間が来たようですからやめます。くれぐれも前倒し運賃の設定については、さっき特別運賃をあわせ考慮するということでございますので、一応了解をいたしますが、十分注意を払って、訴訟などを起されて困らないように慎重におやり願いたい、それだけ申し上げて質問を終わります。
  52. 山下徳夫

    山下委員長 辻第一君。
  53. 辻第一

    ○辻(第)委員 大手私鉄輸送力増強問題について、特定都市鉄道整備促進特別措置法案の持つ問題について質問をいたします。  今日、都市交通における私鉄の役割は本当に大きいものがあります。首都圏における旅客輸送では民鉄が三九・六%、国鉄が三九・一%、地下鉄が二一・三%、京阪神でも民鉄が五四・四%、国鉄が二三%、地下鉄が二二・六%、このようになっております。まさに私鉄は都市住民の足であり、大動脈として、文字どおり公共交通機関であり、その事業は公益事業であります。私は、今日私鉄輸送力増強問題を考える上で重要な視点は、公共交通機関として、その公共的使命をいかに全うするかというような問題であると考えるわけであります。     〔委員長退席、小里委員長代理着席〕  運輸大臣は、三月十一日の自由新報紙上で民鉄協会の会長さんと対談をされました。その冒頭に「民鉄協会の言い分を聞かせてください。そのとおり、やれっていうから(笑い)。」こういうふうに載っているわけであります。私は、私鉄公共交通機関としての役割や公益事業としての立場から申して、いわゆる民鉄協会、事業者側の言い分だけではなしに、当然のことでありますが、利用者、国民の言い分も十分聞いて運輸行政をやっていただきたい、まず最初に一言申し上げて質問に入りたいと思います。  そこで、運輸大臣にお尋ねをいたしますが、これまで私鉄運賃値上げのたびに、殊にそのときを中心に、公共的使命の確保と企業の利潤の追求ですね、経済性、これが社会問題となってまいりました。そして昭和五十六年四月二十八日の大手私鉄十四社の値上げ認可のときに、私鉄十四社の値上げ認可のときに、私鉄各社あてに出された運輸省の通達の中に、一番目に大手私鉄が「大量、高速の公共輸送機関として果たしている重要な役割を十分認識し、今後における都市鉄道網の整備に積極的に取り組む等、その公共的使命の達成に努められたい。」こうあります。また、その二番のうちの四番のところに「不動産事業、関連会社への投融資等兼業部門の経営に当たっては、これらの部門の経営のためにいやしくも鉄軌道事業の適切な運営がおろそかになることのないよう十分配慮すること。」こういうふうにあるわけであります。  私は、この公共的使命の達成の問題、そして不動産事業や関連会社への投資等兼業部門の経営、これは利潤の追求ということになりますし、経済性ということになろうかと思いますが、この辺の関連で、この五十六年四月二十八日の認識は、現在も変わっていないと思うのですが、運輸大臣、いかがですか。
  54. 服部経治

    服部政府委員 変わっておりません。
  55. 辻第一

    ○辻(第)委員 大臣にお願いします。
  56. 三塚博

    三塚国務大臣 基本的原則ですから変わっておりません。  それで、先ほど政策月報か自由新報をお読みいただいたわけでありますが、これは私鉄、民鉄が大変合理化、人件費ということで御苦労いただき、関連事業の開発の中で、公共部門たる鉄道部門が非常な苦労の中で進んでおることにかんがみ、そういうことで快適な私鉄経営、またその利用者還元という意味で御希望があれば、この際聞かしておいてくれということでありまして、同時に運輸大臣とすれば、利用者受益者負担、今も議論がございましたが、こういう観点の中で公共交通としての私鉄がどうあるべきか、これは国会の場を通じ、またいろいろな場を通じて端的にお聞かせをいただきながら、政策に、行政に反映をせしめるという基本方針は当然のことであるわけでございまして、堅持をして今後も進む、こういうことであります。
  57. 辻第一

    ○辻(第)委員 そこで、公共的使命を本当に達成をする、確保していただくという観点からお尋ねをするわけでありますが、近鉄の北大和線、それから大和中央線、これは大阪から奈良県の平群、平端、天理を通って三重県の名張へ行く予定だそうでありますが、このような新線構想と、生駒線、田原本線、吉野線など近鉄の複線化構想が、奈良県における総合的な交通網の整備構想として昭和五十七年三月の奈良県二十一世紀委員会ということで打ち出されているわけであります。運輸省としてこれらの計画の実現の見通しについてどのように見ておられるのか、お尋ねをいたします。
  58. 服部経治

    服部政府委員 大阪圏におきます高速鉄道の整備の計画につきましては、昭和四十六年十二月に当時の都市交通審議会の答申第十二号というのがございまして、現在まで基本的にはこの十三号答申に従って大阪圏の鉄道整備が進められてきているところでございます。  ところで、お尋ねの北大和線及び大和中央線についてでございますが、これは今申し上げました十二号答申よりずっとおくれまして、最近に至りまして、その整備構想が地元である奈良県において検討されているものであると承知しておりますけれども、その具体的詳細につきましては、現在のところ私ども承知していない状態でございます。  この二つの線につきましては、そうした奈良県で御検討になっております整備構想が現実の状況をよく踏まえた緊急性なり客観、具体性のあるものであるということならば、当然これは関係の地方運輸局に対しまして県当局から具体的なアプローチもあることでございましょうし、私どもとしては、そうした状況も踏まえながら、必要があれば近畿運輸局にございます地方交通審議会の場で、あるいは大阪圏につきましての鉄道長期整備構想を検討するために近く開催することを予定して準備を進めております運政審などの場におきまして、今後に向けての検討がなされていくものであろうと考えております。
  59. 辻第一

    ○辻(第)委員 そういう計画があります。これは大変大事な計画だと思うのですが、運輸省としても適切に御対応いただきたいと思います。  ここに「近鉄」というパンフレットがあるのですが、御承知のとおり近畿日本鉄道株式会社は我が国最大の私鉄であります。奈良県民にとって文字どおり地域社会の動脈というような大きな役割を担っております。このパンフレットによりますと、近鉄グループは何と百五十九社、年間取り扱い収入は一兆八千億円という巨大企業集団を形成し、多面的な事業活動を展開しております。  そこで、運輸省にお尋ねをいたしますが、近鉄の昭和五十九年度決算で、一番目、鉄道事業における収益は幾らなのか。二番目、この決算に示された貸借対照表における関係会社への出資などの投資は幾らと計上されているのか。三番目、さらに資産のうち販売土地建物は幾らとなっているのか。四番目、同じく近鉄の連結決算における内部留保の総額は幾らなのか。これをお尋ねいたします。
  60. 服部経治

    服部政府委員 ただいまお尋ねの諸点でございますが、近鉄の昭和五十九年度の決算によりますと、その鉄道事業にかかわります収入額は一千三百七十八億円となっております。それから関係会社への出資などの投融資額でありますが、六百二十八億円となっております。資産のうち販売土地建物は八百六十九億円となっております。最後に五十九年度におきます近鉄の連結決算における内部留保の額についてでございますが、お尋ねの内部留保というものを賞与引当金、退職給与引当金、資本準備金及び利益準備金の四つというふうにとらえて算定いたしますと、七百七十三億円になります。
  61. 辻第一

    ○辻(第)委員 六十年の三月期における近鉄の有価証券報告書によりますと、資本金が七百二億円、関係会社への出資など投資は六百二十八億円、販売土地建物は八百六十九億円が計上され、鉄道事業では百九十六億円の黒字となっておる、鉄道事業で大きな収益を上げているということだと思うわけであります。  ところで、同社の輸送力増強投資計画の第六次五カ年計画、昭和五十七年度から六十一年度によりますと、年平均七十億ということであります。踏切だとか運転保安、サービス改善部分というのが年平均二百十億ということになっております。近鉄というのは、このように経営面で見ますと非常に優良な会社であります。  ところが、サービスの面、輸送力増強という面ではどうなのかということでありますが、私も近鉄は地元でありますし、日々利用させていただいているわけでありますが、ラッシュのときは大変です。私は主に京都線に乗るのですが、たまに大阪線に乗ります。殊に雨の日、それから梅雨の日なんていうのはラッシュに乗りますと、それこそ大変な状況であります。いろいろ御努力もいただいているわけでありますが、二年に一度くらい運賃が上がりますが、利用者の側からいえばラッシュのときの改善がこれでやられているかというのが実感ですね。  近鉄の社内誌の「ひかり」八五年ナンバー三というのがあるのです。これは同社みずからが言っておられるわけでありますが、昭和五十九年度には混雑度が平均一七九%と三年前の平均一七九%と同じで、「数字上は一見すると輸送力増強努力を怠っているやにみえるが」、云々とこういうように述べておられるわけであります。私どもも大体一年に二回ぐらいは近鉄へ利用者、県民のいろいろな要望を持って伺うわけであります。そういう中で努力もしていただいております。車両の増両でありますとかホームの改良でありますとか増発、長編成化というんですか、こういう努力もしていただいております。もちろん、これはちょっと違うんですが、冷房化の問題、踏切の問題あるいは障害者の施設、こういうようなものも一定の前進をしているということは私どももよく認めるわけであります。しかし、先ほど申しましたようなラッシュ時の混雑度というのは大変なんですね。いろいろやっておられるけれども、結果的にはこの三年間は一七九%が一七九%にとどまっている、そこのところでは、いろいろなことがやられたけれども、実態としては改善をされてない、こういうことであります。  大臣も先ほどの自由新報の中でおっしゃっておるわけでありますが、「理想からいえば、将来一五〇%から一六〇%」ということですね、「当面は一七五%程度を目標にお願いしたい。」こういうふうにおっしゃっておるんですね。  こういう状況でありますので、先ほど来申しましたように、近鉄は日本一の私鉄であり、経営的に見ますとまことに優良企業であります。相当の利益も出ているわけでありますから、ぜひ公共的使命を全うするために輸送力増強などにさらに努力をしていただいて、大臣も言っておられる一七五%に早く到達をしていただきたい、こういうように思うわけであります。こういうふうに考えますと、まだまだ近鉄の努力は足りないと思うのですが、いかがですか。
  62. 服部経治

    服部政府委員 ただいまの先生の御指摘は、基本的にまことにごもっともでございまして、私どもは、私鉄の各社がその置かれましたそれぞれの状況の中できめ細かくかつ積極的に輸送力増強のためあるいはサービス改善のための投資を行っていくことは社会的な要請にも沿うものでありますし、極めて望ましいことだと理解するものでございます。  ところで、近鉄の最近におきます輸送力増強工事の額が問題にされておるわけでございますが、確かに輸送力増強工事という項目に限って見ますと、近鉄のここ両三年におきます投資額は収入の五%程度でございまして、大手私鉄の平均の一二%というものに比べますと低い数値になっております。ただ、この輸送力増強工事に運転保安工事でありますとかサービス改善工事等を入れた額ではかってみますと、近鉄のここ両三年におきます投資規模というのは、収入の二八%にまではね上がるわけでございまして、この二八%という数字は、大手私鉄十四社平均の二七%というものとおっつかっつでございまして、一応のレベルには達しておるということも言えますし、またこれを別の面から考えますと、近鉄の減価償却費の額と投資規模を比較してみますと、約二倍の額の投資を行っているということでありまして、それなりに一生懸命な取り組みをやっているということは、そうした数字からもうかがわれるわけでございます。  なお、輸送力増強工事そのものに着目してどうこうという話になりますと、先生の御指摘、当たっている面もあろうかと思います。そういうことも含めまして、私ども今回のこの法律によります制度を御提案も申し上げているようなこともございますので、ひとつ御理解を賜りたいと思います。
  63. 辻第一

    ○辻(第)委員 時間がありませんので、さらにいろいろと申し上げたいのですが、言うことができません。私は、やはり近鉄、もっともっと努力をすべきだ、あの混雑度というのは大変なことでありますから、一刻も早く改善できるように、いろいろ問題があると思いますけれども、ぜひ運輸省としても対応していただきたいということであります。  それから、近鉄の東大阪・生駒新線のことですね。これは六十一年度完成見込みですね。総工費が八百九十二億五千万円、これは六十一年三月価格だそうでありますが、そして近鉄の負担が七百六十億五千万円、これは鉄建公団のP線方式でやられているというふうに聞いているわけであります。この生駒までが来年できるのですね。この計画は生駒からさらに奈良市の北部を通って京都府の木津とかなんとかいう話があるようですね。そういう方へ延伸をするという計画もそのときにあったということであります。先ほど北大和線と言いましたね、そういうことであります。  それで、昭和五十五年ごろ生駒と奈良市で近鉄グループで大規模住宅開発計画を立てておったわけでありますが、時間がありませんので、こちらから申し上げます。奈良県の調べによりますと、昭和五十五年五月時点で近鉄グループは生駒市と奈良市で五百五十七万平米、約一万五千戸分の大規模住宅開発計画を立てていたわけであります。近鉄だけでも新線と関連があると思われる地域にこのような大きな開発計画がありました。それ以外の大手の開発計画もあるわけであります。ここのところで新線ができますと、当然そこには開発利益というんですか、こういうものが出てくるわけであります。当然、このような新線による大手開発業者の開発の利益というものは還元されるべきであるということであります。そういう点での大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  64. 服部経治

    服部政府委員 御指摘のような状況がございまして、仮に京阪奈新線構想が実現するといったような段階では、そうした地域における大規模住宅開発事業等はかなり大きな鉄道新線の整備による開発利益を受けるわけでございますから、私どもといたしましては、そういった事業についての開発利益をいろいろな方法でもって吸収しまして、鉄道の建設なり運営なりの資金にこれを用いたい、そうあるべきであるという願いを強く持っておるところでございます。
  65. 辻第一

    ○辻(第)委員 今、開発利益の還元というものについて御答弁をいただいたわけでありますけれども、ぜひ大手の業者、ここのところでの開発利益の還元というものはきっちりとした対応をしていただきたい、このように思うわけであります。  最後に、政治献金の問題でお尋ねをいたします。  昭和五十九年度の政治献金について、私鉄大手九社だけでも合計二億二千九百万円が特定政党に提供をされている。そして日経新聞によりますと、「私鉄の大口献金がほぼ定着した。二千万円以上献金した企業は五十七年は五社だったのが、五十八年は一挙に十一社と倍増。今回は九社とやや減ったものの、東西の大手電鉄会社がずらりと顔を並べ、政治献金の有力業界にのし上がった形だ。」これは去年の九月三日の日経ですね。こういうふうに報道をいたしております。御存じのとおり同じ公益事業者であります電力業界、これは数年前、あの料金値上げが大問題になったときだと思うのですが、国民の大きな、強い批判を受け入れて、既に政治献金をやめているということであります。私は、私鉄も電力業界に見習うべきだ、このように考えるわけであります。運輸大臣も、政府の立場としては、私鉄の政治献金は好ましくないと言ってしかるべきだと思うのですが、いかがですか。
  66. 三塚博

    三塚国務大臣 これは私鉄それぞれの経営者の御判断であろうと思います。ただいま直ちに運輸省がそれをどうだと言うところまではまいらないのではないだろうか。     〔小里委員長代理退席、久間委員長代理者     席〕公正な政治献金は、また政党政治を前進をせしめるという一面もあるようでございますし、そういう意味で結論的には経営者の判断にまつ以外にはないだろう、こう思っております。
  67. 辻第一

    ○辻(第)委員 大手私鉄新線建設、これは大体鉄建公団のP線方式というのでやられているのが多いように思うのですね。これは鉄建公団が鉄道施設を建設をし、完成後二十五年元利均等償還の条件で事業所に譲渡するもので、譲渡後二十五年間は年五%を上回る分の利子補給を国と地方自治体が折半をして行っておるということであります。昭和五十九年度の国と地方公共団体による利子補給は十線、二十億千七百万円ということであります。これらの公的資金は、各私鉄企業への助成、実質的には補助金といってもいいような内容ではないかというふうに思うわけであります。もちろん鉄道事業というのは公益事業でありますから、そういうことも必要であるということになろうかと思いますが、これは私どもいろいろ問題があると思うのですが、問題は、補助金を受け取る、助成を受け取る鉄道事業者が特定政党のために政治献金を提供しているというのは、どう考えてみても、そこに矛盾があるというふうに考えるものであります。法律的にはクリアしているかもわかりませんけれども、一般論としてこれは道理に合わないというふうに私は考えるものであります。そういう点で先ほどの大臣の御答弁には納得しかねるものがあります。  それから、利用者の立場から申しますと、先ほど申しましたように、ラッシュのときの大変な混雑度、こういう問題、それからいろいろ努力はしていただいているのですが、利用者の要望からいえば、まだいろいろとほかのサービス面でも問題点がある、そういう点でもっともっといろいろと充実をしてほしい、改良をしてほしいというのが願いなんですね。ところが近鉄からいえば、国鉄ほどじゃありませんけれども、先立つものがというような格好で言われるのですね。そういう点からいいますと、こんなにひどい状態なのにどうして政治献金を出すのか、そんな費用があればサービス改善に回せ、これは当然の感情というのですか、金額的に言えば、それは二億数千万ですから、そんなに大したことはできないのですけれども、しかし、あの状態の中で、そんな金があれば我々のサービス改善に回すべきだあるいは運賃値上げをちょっとでもやめるべきだ、こういうことになるのですね。私は、こういう点からも、この問題は非常に重大な問題で、電力業界のように潔く——深くと言うと表現がどうですか、やめられるべきだ。そのような点で、運輸大臣としてひとつ一層の対応をとっていただくべきではないか、このように思うのですが、いかがですか。
  68. 服部経治

    服部政府委員 さきに御指摘のございました、P線方式の適用を受けている私鉄が政治献金をすることはおかしいではないかという点につきましては、これはP線方式というものが私鉄に大きく裨益していることは事実でありますが、このP線方式に伴います利子補給の対象は、私鉄各企業ではございませんで鉄道建設公団でございまして、そのあたりの判断につきましては、自治省が適切に御判断なさっているというふうに考えます。  それから後者の、利用者との関係云々の御指摘でございますけれども、私どもは、私鉄の政治献金につきましては、これを運賃原価から厳正に除外いたして運賃の水準を設定いたしておるところでございますので、その面で御迷惑をかけることになっているとは思っており、ません。
  69. 辻第一

    ○辻(第)委員 それはそういうふうに除外をされても、それはやはり利益から出ていますので、その辺のところはそういうことでは我々は納得はできない。  それからP線の問題は、私はちょっと丁寧に申し上げなかったので舌足らずであったわけでありますが、それもよく存じておるわけであります。  私は地元でありますし、日本の最大の私鉄ということで近鉄を例にとってお話を申し上げたわけでありますが、私は、本当に大手の私鉄鉄道事業を基本として、そして関連の事業も含めて今大きな利益を上げているという状況だと思うのですね。そういうことでありますので、その公共的使命を十分認識をして、十分な対応を大手私鉄自身が独自でやるべきだということであります。このことを強く指摘をして、質問を終わります。
  70. 久間章生

    ○久間委員長代理 富塚三夫君。
  71. 富塚三夫

    ○富塚委員 私は二つの観点から御質問をいたしまして、できるだけ審議に協力いたしまして、早く終わるなら一時間にこだわるつもりはありません。ポイントだけ明確にしていただければ幸いだと思います。  一つ運賃コスト、こういう関係からですが、御案内のように、緩和法案のときの問題をいろいろ思い出しますが、運賃法定主義を解除されたときのような状況ということは、こういった運賃コストの面から将来大きな問題が生じはしないかということが一つと、さきに運輸大臣の所信表明がありました地域交通政策の推進、長期的な展望を踏まえて計画を策定したい、あるいはそれぞれの観点に立って実は問題を提起をされているわけです。したがいまして、そういう観点に立って御質問を申し上げたいと思います。  今、激動する社会構造の中で、新しい市民の生活構造、とりわけ生活の質を高めようとするニーズの中から交通手段や交通機能に対する新しいニーズが生まれてきていることも事実であります。このようなニーズにこたえるためには、交通政策において総合的なシステム機能を持つことであり、あるいはそれを可能ならしめる創造的な技術開発、こういうことも大事であろうと、いろいろ指摘をされています。この両者が相まって二十一世紀型の交通政策の展開が期待されているということの中でこの法案の持つ意味合いというものを考えてみますと、私はやはり慎重に取り扱うべきじゃないかというふうに考える反面、この法案が通過された後、さらに焼き直しされて、適当に乱発されるみたいなことになりはしないかという懸念というものを私は持つわけであります。そういう点で、もう何人かの先生方がいろいろな角度から御質問されておりますから、私は、マクロ的に見て、この法案が交通政策へどのような影響を持つことになるのか、あるいは国鉄改革、これはまだ法案が審議されていませんが、そういった兼ね合い、あるいは地域交通網の新たな整備、とりわけ都市近郊交通網の整備という観点から御質問を申し上げてみたいと思います。     〔久間委員長代理退席、委員長着席〕  まず、政府の進めようとしているこの法案は、大都市圏の通学通勤の緩和に向けて鉄道複々線工事など大規模輸送力増強工事をするために利用者負担による工事費の積み立てあるいは免税措置積立金工事への支出というパターンということなんでありますが、具体的にこの問題を考えてみるときに、内需拡大策の一環という点も、あるいは臨調答申の筋ということもわからないではないのですけれども、新たな交通手段によって利益を受ける国民の側に受益負担の公正、公平化の問題がやはり問題になってくるのではないかというふうに思うのです。  そこで、まず第一に大臣に聞いておきたいことは、分割・民営化という国鉄改革の問題はわきに置きましても、整備新幹線網の建設、これは新しい技術集団と会社で行いたいという政府の考え方が出されているようですけれども、この整備新幹線網の建設が、さらに将来は青森から札幌あるいは釧路とか稚内とか日本海側とか太平洋側とか、そういう整備新幹線以外に新たな幹線網の拡大ということを考えていくという交通政策の一つの展望を持っておられるのかどうか、つまり骨組みとして新幹線網の拡大ということが将来の問題として考えられておるのかどうか、第一にお尋ねしたいと思います。
  72. 三塚博

    三塚国務大臣 お答えを申し上げます。  整備新幹線の問題は、既に富塚委員も御案内のように、大変な議論の中で今日まで参り、改革法が六十二年四月という時点で再建法ということになるわけでありますが、その中で政府と自由民主党が昨年の八月、整備新幹線の扱いということで基本的にトップ同士で合意をいたし、党議に相なりました中に、財源等検討委員会を設けてそのあり方を決める。その一つは、財源は別途これをつくる。言うなれば新幹線建設に国鉄方式をとらない、従前のようなことはやらない、こういうことでありますし、それと建設主体、運行主体を明確にする等の内容を詰めた上で合意をしたならば、閣議——五十七年の、新幹線は「当面見合わせる。」という閣議の見直し閣議をいたしましてスタートをする、こういうことになっておりまして、あくまでも五整備新幹線をどう進めるかというのがこれからの対応であります。  ところが本件につきましては、内閣に置かれました財源等検討委員会におきましては、いまだ結論を得ておりませんものでございますから、党側におきまして建設主体について先般御提言をいただいたところでございますが、党の提言を、私どもは今それを見守っておるということであります。  そういうさなかにおきまして、今富塚委員言われますのは、基本計画にあります十二線、それをどう考えるのかというふうにお聞きいたしました。そうだといたしますければ、整備新幹線五線をどうするかというのが正直に言って精いっぱいであり、これは二十一世紀に向けての計画であり、とても今十二の線区について思いをいたすということの余裕はないということを申し上げても間違いがないだろうと思います。
  73. 富塚三夫

    ○富塚委員 所管運輸省として、やはり将来の総合交通体系のあるべき姿——今、大臣のおっしゃるように、当面整備新幹線問題で、国鉄改革とのかかわり合いもありますし、財源的な問題もあるし、いろんな問題があっていることは私も十分理解します。しかし将来は、仮に青森までとか札幌までとかというのでなくて、やはり日本国内の骨組みになるところは新幹線網などを考えていく、そしてそれによって地域の交通網の見直しをどう考えるかという、そういったことの展望を示す必要があるんじゃないかというふうに思うのですが、そういう点でひとつ三塚大臣考え方というものをお聞きいたしたい。その前段の答弁の筋はよく現状としては理解しますけれども、将来展望としてどうお考えになっておられるでしょうかということです。
  74. 三塚博

    三塚国務大臣 これはまさにそういう御質問に相なりますれば、鉄道として二十一世紀はおろか二十二世紀に向けて、他の交通手段との競争の中で国民の要望にこたえ、同時に国土の均衡ある発展に寄与していく、経済、社会的にこれが寄与できる交通手段といえば新幹線をおいてないだろう、このように思います。そういう点で財政問題が許され、その問題がクリアされて、またこういう計画が国民のコンセンサスの根底にあると見ていいんだろうと思うのです。そういたしますれば、近い将来あるいは今後の計画の中で整備新幹線を見詰める中で、さらにその次の我が国交通体系はどうあるべきかという基本論の御指摘の中で物を考えていくということになりますれば、これらの十二の基本計画というものも、当然日本鉄道計画として頭の中に入れながらこのことを考えていくということは、交通政策を預かる運輸省また運輸大臣といたしますれば進めていくべき性格のものである、このように思っております。
  75. 富塚三夫

    ○富塚委員 何人かの先生からも御指摘があったようですけれども国鉄の技術開発の一環といたしまして、新幹線とともにリニアモーターカーの技術開発、これは国民も非常に熱い視線を向けておるわけですけれども、二十一世紀に向けてロマンに富んだこういったリニアモーターカーは、飛行機、航空機に対抗し得る交通手段というふうに見ておられるのかどうか、その点についてはいかがでしょうか。つまり飛行機に対抗し得る交通手段になり得るのか、そういうふうに見ているのかどうか、鉄道という範疇で考えられているのかどうか、ちょっとお尋ねします。
  76. 棚橋泰

    ○棚橋(泰)政府委員 リニアモーターカーにもいろいろなものがあると思います。  一つは、都市鉄道ないしは空港との連絡、そういうのに特性を発揮するものもあると思います。国鉄がただいま開発をいたしておりますのは、先生承知のように、三百キロとか五百キロというような高速のスピードを想定をして開発をしておるわけでございますから、したがいまして、これはやはりそういう意味では都市間交通というものが主眼であろうと思います。それが実用になりました段階では、その限りにおいては航空機とそれなりの競争をする。ただ、現在の新幹線なり鉄道というものが航空機と競争していないかというと、そうではないと思います。  例えば、東京から名古屋というようなところは、かつて飛行機の領域でございましたけれども、新幹線鉄道というのができまして、それなり鉄道の領域になったということもございますから、そういう意味鉄道の使い方によって航空機との対抗というのは、在来の鉄道でもございますし、新幹線でもございます。また新しいリニアモーターカーというのは、さらにそういう意味で広い範囲で航空機との競争関係にあるのではないかというふうに思っております。
  77. 富塚三夫

    ○富塚委員 イメージとしてですけれども、全国的に現在の新幹線ネットワークの拡大あるいはまたリニアモーターカー等、全体の交通システムのフレーム形成をやっぱり考えていくという想定に立っての地域交通網の一つの見直しという問題に実はなってくると思うのですね。そういう点で、大臣が所信表明で述べられている中で、「地域交通政策の推進」という項で「地域における交通のあり方について長期的な展望を踏まえた計画を策定」をいたしたい。そして「この計画に基づき地方公共団体と連携しながら効率的で質の高い交通体系の形成」、極めて抽象的になっているんですが、「長期的な展望を踏まえた計画」の策定というのはどんなぐあいに、どんな目途に考えられているのか、ちょっとお尋ねをいたします。
  78. 服部経治

    服部政府委員 ただいま先生指摘のように、国内の各圏域を結び、国土の一体化を図り、そして人的交流の可能性を全国土に拡大するといったようなための国土基盤整備を図るといった観点から、将来において高遠幹線鉄道による全国にわたるネットワークというようなものが完成されたというような場合におきましては、そういった幹線交通体系のより一層の活性化を図りますためにも、あるいはそれぞれの地域のさらに今後に向けての活性化、効率化を図っていきますためにも、改めて効率的な地域交通体系のあり方についての見直しというものが行われてしかるべきであろうというふうに基本的に考えております。
  79. 富塚三夫

    ○富塚委員 地域のネットワークが地域性を帯びるほど民間交通産業との競争が出てくるという可能性はあると思うのですね。基幹の交通網と地域交通網を区分いたしまして、どのようにこの競争関係に対応させていくのかということがこれからの大きな課題になるだろうというふうに私は思うのです。  そういう点で、幹線網による枠組み、フレームの形成というのは、大臣もできるなら新幹線網をつくりたい、我々もそう考える。財政的な問題、国鉄再建の動向、いろいろありますね。そしてリニアモーターカーも、今おっしゃったような一つの展望、あとは地域交通網の見直しという関係において、具体的な地域交通政策の展望についていろいろ検討したい、こうおっしゃっておるのですけれども、もっと運輸省が積極的にこの問題を前に出して検討していく必要がある。私の言いたいのは、いろいろな識者の意見などを十分に聞いていくようなことを考えることはできないのかどうかという点についてはいかがでしょう。
  80. 服部経治

    服部政府委員 私どもは今先生指摘のような趣旨を踏まえまして、既に全国の各府県にわたりまして、それぞれの府県ごとの地域交通計画というものの策定を図ってきておるところでございまして、ざっと全国の六割の地域をカバーする程度地域交通計画というものを策定してまいってきております。もちろん策定しっ放しということではなくて、それの現実への適用、実現ということにつきましても、それぞれの地域におきまして、そういった地域交通計画を指針といたしまして、その問題に取り組んできているところでございますし、また中央にございます運輸政策審議会の場におきましても、御承知のようなことで、昨年の七月には首都圏における長期にわたる都市鉄道の整備のための長期構想というものも取りまとめられてきておりますし、今後大阪圏その他につきましても、そういった作業が続けられていくことになるというふうに考えております。
  81. 三塚博

    三塚国務大臣 本件につきましては、御案内のとおり、五十六年に答申をされました総合交通体系というのがあります。やはりこれを見直すということが必要だというのがこの哲学の中にあります。これは各省庁全部含まれておるわけでございますが、二十一世紀から二十二世紀に対応した交通体系のあり方、それは基幹交通と地域交通とのかみ合わせであることは御指摘のとおりであります。それと、技術革新の世の中でありますから、リニアモーターカーをどうそれに配置するのか、こういう問題などもあると思います。  運輸大臣の所信表明の中に申し述べさせていただきましたのは、そういう背景、また富塚委員の御指摘ども頭の中に入れながら、これから五十六年の見直しを含め、運輸省として基本的に基幹交通、地域交通というものを、今服部局長言われましたとおり、地域的に府県と一緒になって進めておりますものがありますが、お説のように、全国ネットワークとしてこれを取りまとめ、これにどう対応するか、こういうことで果敢に取り組む時期に来ておるであろう、このように私も認識をいたしておりますし、省を挙げて本問題に今後積極的に取り組んでまいりたい、このように考えております。
  82. 富塚三夫

    ○富塚委員 ぜひお願いしたいのは、これだけ大胆に大臣は所信表明されているわけですから、長期的な展望に立つ総合交通政策あるいは地域の交通政策、こういうものをひとつ早急に策定をするという点でぜひ考えていただきたいと思います。  次に、この法案は首都圏を中心にする大手私鉄ということなんですが、関西圏とか中京圏、そういうところの問題は将来一体どういうふうに適用を考えられていくのか。いろいろな問題が出てくると思うのですね。私は基本的には二十一世紀に向けて国民の税の公平負担の問題が最大の課題になるだろうと見ている一人ですが、国民生活向上の中で、交通手段によって受ける利益負担という問題からすると、改めて利用者負担による輸送力増強ということを打ち出すということで、首都圏なら首都圏で今回出すが、将来は関西圏とかしかるべきところは、一つの中長期の分析を持って、展望を持ってやっていただかないと、これはちょっと困るんじゃないか。いろんな問題がそういった受益負担の公平の問題からも出てくるということになるのですが、そういう点で中期的、長期的な一つの展望といいますか、そういうものを示していただきたいし、どんなふうにお考えになっているか、ちょっとお尋ねしたいと思います。
  83. 服部経治

    服部政府委員 東京圏につきましては、昨年の七月に運政審の答申が出まして、その中で昭和七十五年、二十一世紀の入り口に向けましての都市高速鉄道長期的な整備構想というものが明瞭に示されているところでございまして、私どもそれを真剣に受けとめて、その実現のためにあらゆる努力を積み重ねていく考えでございます。  それから、大阪圏につきましては、いずれ近い時期に改めて大阪圏におきます同様の鉄道に関する長期整備構想を検討していただく予定にいたしております。  ところで、ただいま御審議をいただいております本法案の適用対象地域の問題でございますが、私どもは都市の鉄道の混雑、渋滞の状況というものを踏まえまして、まず東京圏及び大阪圏については本法を適用する予定でございますし、さらに中京圏につきましても、もう少し具体的な状況を把握した上で、これを適用対象地域とすべきかどうか判断をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  84. 富塚三夫

    ○富塚委員 もう一つの観点、つまり運賃コストの問題の観点からぜひお尋ねをしたいと思うのです。  従来、輸送力増強などに向けては、国の公共負担の分野とか、あるいは自治体が負担をする、あるいは企業が負担をする、いろんなケースがありました。今回は利用者負担という問題が出てきたわけでありますけれども、大手の私鉄さんの、新聞に出ていましたけれども、企業の経営の中で運賃収入と運賃外収入がある。運賃外収入というのは、資産とか多角経営による収入ですが、そうなると、利用者の側から見ますと、例えば土地を売ってもうけているとかデパートでもうけているとか、そういうことの中からもお金を出して輸送力増強投資をしてもいいんじゃないか、出資をしてもいいんじゃないかというふうに考える点もあると思うのですね。そういう点で、私鉄の経営のあり方の問題と運賃コストの問題についていろいろな関心が寄せられてくるのであろうと私は思うのです。そういったことで安易にこの法案を認めてしまうと、かつての運賃法定主義緩和と同じようなことになって、どんどんと運賃にだけ上乗せしていくみたいな、この法案とは別に、企業の新たな面の輸送力の問題を考えるとか、保安設備という問題になると、運賃の方にすべて傾斜していってしまうのではないかというふうな懸念も私はするのです。  問題は、そういった大手私鉄などの場合に、一定の基準、ルールを示さないと、新聞によりますと、ある大手はいわゆる多角経営で何%収益を上げている、ある企業はこうだといろいろ出ていますけれども、これから基準を策定していくということにしないとうまくないのではないかと思うのですが、どうですか。
  85. 服部経治

    服部政府委員 大手の私鉄企業が鉄道事業部門を中核とはしながらも、その他各般の面にわたりまして多角的な経営を行っている実態があることは先生指摘のとおりでございます。  ただ、鉄道事業というものは、極めて多数の利用者のために、長期にわたって安定して快適かつ安全な良質の輸送サービスを提供しなければならないという責務を負っている極めて公共性の高い事業であるという基本的な認識を私どもといたしましては持っておるところでございます。したがって、こういった鉄道事業部門の経営が、私鉄の他の兼業部門の収支に左右されることがあってはならないと思っておるところでございまして、兼業の状態がいかようでありましょうとも、鉄道事業部門それ自体の独立採算ということを確保いたしまして、鉄道事業の健全経営を確保することが何よりも肝要であると考えております。  したがいまして、私鉄運賃の決定に際しましても、鉄道事業と兼業部門はこれを峻別いたしまして、収支を明確に区分いたしまして、運賃の決定をやってきているということでございまして、兼業部門と鉄道事業部門との間には明確な一線が引かれているところでございます。
  86. 富塚三夫

    ○富塚委員 規制緩和の問題と相まって、こういった利用者負担原則の方向が認められることになると、企業の経営がどうしてもそこに傾斜していってしまって、国民の側から見て非常に問題が出てきはせぬかという点の歯どめをある程度きちっとかけていかないといけないのではないかと私は思うのです。  と申しますのは、この法案は、この法案の枠組みはあります。これはこれといたしまして、この法案が通って、そういう問題に具体的に入っていきますと、今私鉄の規制緩和の問題も出ていますし、全体的に規制緩和の問題が出てきている流れの中で、運賃上乗せするという形のものが一つの流れとして具体的に出てくることの懸念という点で、ある程度の歯どめといいますが、そういうことを行政の分野できちっと監視できる、そういうものをもっと真剣に考えるべきだと思うのです。そういうことはないようにしたいと運輸省は当然おっしゃるのでしょうけれども、この法案が通ることは、冒頭に言っているように、かつての国鉄運賃などの法定主義を外してしまうという流れから出てくる一つの流れになっていってしまうようなことになる懸念が私は非常にするものですから、その点はどうでしょうか。
  87. 服部経治

    服部政府委員 ただいまの先生の御指摘は、二点の問題を含んでいるように理解いたしました。  まず、この制度が御承認いただいて現実に動き出すようなことに相なりましても、この制度にはいろいろな意味で厳重な歯どめがかかっておりますので、それの自由奔放な運用ということはとてもあり得ない話でございまして、このような物の考え方が今後の私鉄あるいは他の鉄道の経営の基本的なあり方に何らか大きな変化、影響を与えるというふうには私ども考えておらないところでございます。  次に、ただいまの先生の御指摘は、私はこういうふうに理解したのでございますが、この制度は、これまでの鉄道の経営のあり方についての公的助成と利用者負担との関係を変更する要素を持っているのではないかというような意味にとったのでございますが、もしそういう御趣旨であるといたしますと、そういった利用者負担考え方と公的な助成とのあり方についての考え方にも何ら影響を与えるものでない、それを変えるものではないというふうに考えておるわけでございます。
  88. 富塚三夫

    ○富塚委員 この前の運輸委員会でお尋ねいたしたときに、国鉄が仮に民営化されても、こういった法案は将来の問題で考えられるということが当然あり得ると局長さんは答弁されました。結局、この国鉄も、仮に民営化されて私鉄と同じような土俵に入ってしまうということになったときに、こういった法案の焼き直しみたいなものが次々に出てくるのじゃないかと非常に懸念をする私は一人なんです。こういう法案が一回認められてしまった後は、そういった焼き直しが出てくるということになると、いたずらに利用者負担のところに問題が傾斜して、企業が努力を怠ってと言っては語弊がありますけれども、企業の努力が十分されないままにそういうところに傾斜していくのではないかという懸念です。そういう点で、国鉄が仮に民営化された後で、輸送力増強という分野をいろいろな観点から考えるという問題になってくると、ちょっと取り返しのつかないような流れに走ってしまうのではないかという感じもするのですけれども、この点は歯どめのかけ方の問題といいますか、そういうものをきちっとしておかないと大変になるのじゃないか。非常に重要な法案じゃないか。思い過ごしじゃないと思うのですが、非常に重要な法案じゃないかと私は思うのです。  そこで一方、住民の側から考えてみると、輸送力増強という大義名分があって、あなたたちの通勤通学を便利にするのです、運賃上乗せするのです、認めてください、きちっとしたルールをつくりますよと言うけれども、そんなことはしてもらわぬでもいい、多少厳しい電車に乗ってもいいし、不便であってもいいという意思があるいはあるかもしれません。そういう点から考えると、この法案全体を審議するには、そういった当該地域の住民の代表や利用者の意見なども本当はもっと聞いてみるべきだと思っていた私は一人なんですが、そうはならなくて、いろいろやろうということなんですけれども、住民といいますか当該地域利用者の意思をどういうふうにくみ上げるかという点で考えていただきたいと思うのです。恐らくきょうこれから法案のけりがつくのだろうと思うのですが、運輸省当局として、私鉄の大手企業の経営者だけでなくて、そういう当該地域の住民の意思をどういうふうに酌み取るかという問題も非常に大事な問題じゃないか、こう私は思うのですが、その点はどうでしょうか。何らかの形でそういう問題が生かされるようにしていただけないでしょうかというふうに思うのですが。
  89. 服部経治

    服部政府委員 私どもこういった鉄道の問題を含みます地域交通行政を担当する部局に籍を置いているものでございますけれども、日常の私どもの業務の中で、こういった大都市圏域におきます鉄道の整備、それはある場合には新線の建設であり、ある場合には既存の鉄道複々線化であるわけでございますが、そういった鉄道輸送力増強の問題に対する各地域の住民の方々の非常に強い御要望というものを肌身で感じてまいってきております。そういう状況の中で毎日の仕事をさしていただいておるような現実がございます。政治がそうでございますように、行政もまたできるだけ多くの人の幸福ということがいろいろな分野で実現されることを念頭に置いて取り組んでいくべき問題だというふうに基本的に理解しておるところでございます。  私どもは、大都市におけるそういった鉄道輸送力の抜本的な増強を図ることが現下の強い社会的な要請であるという認識を持ちまして、こういった制度の創設という問題に今日まで取り組んでまいったところでございます。
  90. 富塚三夫

    ○富塚委員 やはり利用者にしてみますと、自分の運賃による上乗せ負担じゃなくて、政府がやるべきだ、自治体がやるべきだ、企業がやるべきだということにどうしたってなりますね。それは局長言われるように、それぞれ輸送力増強をしてもらいたい、通勤緩和をやってもらいたい、それはニーズとして当然あろうと思いますよ。しかし、利用者負担がぽっと出ると、二体そういうことが果たして納得するのかどうかということの問題は、私は手順というものは十分尽くすべきである。やはりそういうことが、大臣も申されましたような将来の新しい交通体系の展望をつくる上でも、地域交通政策をつくる上でも非常に大事にしていく必要があろうと思うのですが、その点の受けとめ方はどうですか。
  91. 服部経治

    服部政府委員 この制度では、本来は将来に生ずべき利用者負担前倒しの形で現在に持ってくるというような新しい仕組みは取り入れておりますけれども利用者のトータルとしての運賃負担額はいささかもふえるものではございませんで、例えば収入規模五百億の企業が七百億円の工事をこの制度により行うといった場合における二十年間にわたっての金利の削減効果は百二十億円に及ぶものでございまして、その分だけは二十年間に全利用者負担額は軽減されるというものでもございます。私は、こういった輸送力増強の緊急性と今の負担との関係におきまして、こういった仕組みは十分多くの人に社会的に容認されるものだというふうに考えておるわけでございます。
  92. 富塚三夫

    ○富塚委員 もう一つの観点から、今回はこういった輸送力増強という一つの展望に立って運賃前倒しのことをいろいろ考えるということですけれども、新たな地域交通網の見直しという局面になったときにも、これからはこういった一つの方向について住民の、利用者の意思を受けとめていく必要があるだろう、こういうふうに思うのです。国の金で、自治体の金でといっても、そうは簡単に新しい交通網の建設の問題でも、あるいは輸送力増強の問題でもできる状況になっていないという点で、住民のニーズを生かしていくには、それなり負担考えてもらうということを問うということは、それぞれの交通手段に対する地域利用者のニーズと、やはり結果としてどういうふうにこの運賃上乗せするか、あるいはそういった積立金を必要とするかということの問題を、やはりコンセンサスを求めていくという作風が非常に大事になってくるのではないかという点で、今回のこの問題にばかり—これだけであとはということではなくて、少し問題を考えていく性格のものではないかというふうに私は思うのですよ。だから、そういう点で一面では非常に興味のある法案で、一面ではこれは大変重要な法案だ、私は個人的にはそういう認識に実は立っているのですけれども、そういう点で地域交通網の新しい見直しという中で新たな利用者負担という問題などは考えているのかどうか、そういう点はどうですか。
  93. 服部経治

    服部政府委員 今後に向けまして、例えば首都圏なら首都圏における鉄道のあり方というものを考えてみます場合に、恐らくまだまだ鉄道の高い利便というものを享受し得ていない地域、人々というものが多数あるわけでございますから、いろいろな地域でいろいろな形の鉄道網の整備ということが二十一世紀に向けて進められていくことになろうかと思います。その場合に、既存の鉄道会社による鉄道の延伸なり新設なりというようなことであれば格別余り問題もないわけでありますけれども、新しい事業主体によって新しい鉄道事業に取り組むといったようなケースでは、今申しました鉄道の整備運営に当たる事業主体をどういうものとして考えていくかというところから、まず問題が始まるわけでございます。  そういった際におきましては、当然のことながら、その鉄道の整備によって地域が享受することになるもろもろの利益と、その鉄道経営のために地域の人々が負担しなければならないコストというものの兼ね合いが一番大事になるわけでございます。言いかえますと、その鉄道長期にわたる収支採算といったようなことが具体的に問題になろうかと思います。そういう意味におきまして、そういったケースでは、余りにも当然のことでございますが、その地域の住民の方々のあるいは地域そのものの鉄道整備に対するニーズというものを十分把握いたしまして、そういった多くの方々の理解と協力のもとに鉄道整備事業を進めるしかほかに方法はないだろうというふうに考えております。
  94. 富塚三夫

    ○富塚委員 地域住民の交通手段に対するニーズと裏腹に、やはりどういう負担考えてくれるのかという問題は、地域交通網の見直しということの中で我々もそういう議論は十分にしていくべき時期に来ていることは、私も十分理解をしているのです。過日、私の地元で新交通システムの問題で地域交通局にいろいろ御指導いただいてシンポジウムなどもやってみましたけれども、やはり道路も限界だ、そうすると、地下鉄を掘るなんて簡単にいかない、モノレールなら比較的うまくいくのではないかとか、ただモノレールもかなりたくさんの金がかかる、じゃ自治体に、県に、国になんて、そんな簡単にできっこない、一体住民はどう考えるのかという地域の新たな交通網の整備についての一つのそういった意見を出してもらう、そういうコンセンサスを求めていかなければならないということの問題になるのですけれども、私は前から言ってもおりますように、この法案を焼き直して何か安易にぼんぼんぼんぼんやられていくようなことに、次に焼き直して、またいろいろな地域にそういうふうになっていくようなことをされていっても困るし、やはり新しい時代に向けて、新しい時代の交通手段のニーズに向けて、具体的にこういった観点に対する問題を、こういった新しい交通網の整備に対して住民がどうあるべきなのか、負担をすべきなのかということの問題などを、やはり具体的に問題の基準をつくって議論をしていくということが大切なんじゃないかというふうに思うわけですね。  そういう点で、民活、民活という大合唱は、これはそれなりにわかりますけれども、今度東京湾横断道路ができる。川崎と木更津間十五キロができて、当然我が神奈川県なども、横断道路ができると、当該地域の関連道路の再整備を余儀なくされるということの問題になってくるわけですね。そして二百億の自治体の負担や新たな二百億の融資を考えろといったような枠もはめられて、実は法案が通されようとしている。そうすると、民活だ、そして東京湾横断道路だ、それは一つの現在の政策として出てくる。またこの法案によって輸送力増強という大義名分、通勤緩和、そして民活を生かす、内需拡大政策に寄与するという点でこの問題が出てくる。しかし、トータルとしては、総合的な日本のマクロの交通政策はどう展望としてあるのかということに踏み込まないままでこの法案が通っていくということに、私はやはり非常に疑問を持っている一人なのですよ。  ですから、具体的にこの幹線網の問題とかあるいは地域交通網の見直しの問題という観点から、私はこの問題を質問さしていただいたのですけれども大臣、もっと積極的に、ケース・バイ・ケース一つの対応じゃなく、そう言うと怒られるかもしれませんが、もっと二十一世紀に向けての新たな交通体系の整備、つまり幹線網と地域交通網の整備のかかわり合いとか、あるいは利用者負担の展望とか、あるいは国の負担の展望とか、そういうものを議論をしていくような時期に来ているのじゃないか。そうしないと、国鉄の再建、改革問題なども、結局は減量経営にして、これはまた大臣と意見違いますけれども分割・民営をしてやってしまえば、あとはそれでおしまいみたいなことになったのではまずいのではないかというふうに考えるのですね。そういう点で、この法案の持つ意味合いというのは、私はそういう観点から十分に議論をしてみて、今後の問題としての問題点をきちっと整理をしていただきたいというふうに思うのです。  その点について最後に大臣の所信をいただいて、私の質問を終わることにいたします。
  95. 三塚博

    三塚国務大臣 大変多彩な、またそれぞれを分析された御提言であります。基本的には総合交通体系はどうあるべきかということを早急に確立をされていくべきだろうと思うのです。これは党におりました当時から私も相当議論をしてきたわけでありますが、いずれも大変な財源を要しますものでございますから、なかなか国家政策としてこのことが浮上しなかったということ、正直に言ってそうであろうと思うのです。しかしながら、二十一世紀に向けてやる時期にこれは来ているわけですね。そういう点で、先ほども答弁申し上げましたとおり、総合交通体系のあり方として、主管省である運輸省が真剣にこれを検討し確立をしていく、この作業に積極的に取り組む、こういうことになるわけでございます。  さような意味で、都市交通、特に大都市交通のあり方という点で、服部局長が言われますとおり、大手私鉄さんにインセンティブを与えることによって、これにひとつみずからの努力と創意工夫と頑張りの中で複々線化ということを達成することにより地域鉄道としての使命を果たしてほしい、ここに一つの願いがありますし、これにこたえてこの法律が成立をいたしますれば、それぞれの私鉄が事業計画を出してくる、それを運輸大臣が認可をする、その中できちっと受益負担という問題についてもしっかりとした判断の中で指導していくということになると思うのであります。そういう意味で、この方式が他にまた拡大、膨張していくということはない、またしてはならない、私はこう思うのです。それは総合交通体系の中で基本的な哲学がこれから明確になっていく、言うなれば、国民の足の確保という意味の、先ほど申し上げました新幹線網による、それから交通体系の整備という、これは国家プロジェクトとしてやるべきであろうというのがそこにありますし、それと都市交通として本来、御指摘のように、地方自治体が国の援助を受けながらやり得るもの、都市がある程度負担をしながら地域の足を確保するという問題、しかし他の公共サービスとの関係でその辺をどう見るかは地方自治体の判断でありましょうし、それを助成しますことは、国家的な観点で国策としてどう進めるかという政府の決定であろうと思うのです。またそこに国会の論議が重要なパートとして存在するというふうにも思います。  そういう点の中で、これから先ほど委員指摘のとおり、受益負担という政治上の最大の課題に、我々運輸省、この運輸委員会も真剣な討議と議論の中で、そのあるべき姿が浮き彫りになるということであれば、総合交通体系、運輸省がつくる上において一つの指針をお与えをいただくという意味で力強いものだというふうに思いますし、さような点で、今後運輸委員会委員長初め先生方の格段の御指導と御鞭撻をお願いを申し上げて、また今の問題に果敢に挑戦をしながら取り組んでまいる、こういうことにしてまいりたいと思っております。
  96. 富塚三夫

    ○富塚委員 じゃ最後に、やはり大臣の所信表明の中で、「第五に、地域交通政策の推進」としてありまして、先ほども言ったのですが、世の中の常識から考えますと、「六十一年度から特定都市鉄道整備積立金制度の創設」というものがあって、前段に「長期的な展望を踏まえた計画」の策定、しかも「質の高い交通体系の形成」、極めて立派な文章に実はなっておるわけですね。ところが何か後段だけ、この法案だけとって、前段の方は絵にかいたもち。まあ国会に出てみてつくづく私はそういうことを感じるのですけれども、この法案を通すために、前の文章があったのではうまくないので、そういうことはないだろうと、局長も一生懸命努力したいと言っておりますから、どうかひとつこの策定については積極的にやっていただきたい。そして多くの識者の意見あるいは住民の意見、利用者の意見などを聞いてひとつ努力をしていただきたいということを申し上げまして、私の質問を終わることにします。大変早い時間で終わることにいたしますので、よろしく。
  97. 山下徳夫

    山下委員長 左近正男君。
  98. 左近正男

    ○左近委員 本法案の審議に入る前に、過日西武鉄道の新宿線で百九十人からなる重軽傷者を出した追突事故があったわけですが、これの事故の概要と原因は何であったのかということを御説明願いたい。
  99. 服部経治

    服部政府委員 お答え申し上げます。  三月二十三日の午後零時十一分ごろ、西武鉄道株式会社の新宿線田無駅構内におきまして、停車中の準急電車に急行電車が追突いたしまして、大変多数の負傷者を出すという重大事故が発生いたしましたことはまことに遺憾でございます。  事故の発生に伴いまして、運輸省といたしましては、直ちに事故現場に担当官を派遣いたしまして、事故の状況の把握、原因の調査等に当たらしめるなどの措置をとりますとともに、引き続き現在まで事故の全容の解明のための調査を急いでいるところでございますし、また警察当局におきましても、並行的に捜査を進められているところでございます。  もとより同種事故の再発の防止を図ることが今後に向けて何よりも肝要なわけでございまして、そのためには原因の究明を急ぎまして、その結果を踏まえた適切な対策を講ずる必要があるというふうに考えておるところでございまして、私どもといたしましては、このような考え方のもとに、引き続き原因の解明を急ぎまして、これに沿って関係事業者の厳重な指導に当たってまいる所存でございます。  原因につきましては、今の段階では明確に申し上げることはできませんけれども、ただいまはなぜあのときブレーキが正常に作動しなかったかといった点を中心にいたしまして、運転取り扱いというソフト面、及び車両、施設というハード面の両面にわたりまして、当時の大雪という特異な気象条件との関連も含めまして、総合的な調査検討を急いでいるところでございます。
  100. 左近正男

    ○左近委員 言うまでもなく鉄道の使命は安全であります。近年の状況を見てみますと、確かに運転事故件数は急激に減っておるわけですが、重大事故が年に一回くらいの平均で出てきておる。これは私は大変なことではないかと思うのですね。百人を超える死傷者の出るような事故が年に一回はあるということでは、私はこれは何か大きな問題点があるのじゃないかと思います。その点で大臣として今後こういうことの起こらないような、どういう具体的な行政指導をされていかれるのか、ひとつ決意を聞かせていただきたいと思う。
  101. 三塚博

    三塚国務大臣 所信表明の中でも申し上げましたとおり、交通政策の基本は安全性の確保であります。さような意味におきまして、ただいま御指摘のような年に一遍でっかい事故が起きる、死傷者が出る、こういうことが相次ぐのでは責任を果たしておるとはなかなか言いがたい。御批判をいただいても、返す言葉がございません。よって、今後さらに安全追求という意味で全力を尽くすことは当然でありますし、本日八時四十五分から中央交通安全対策会議、第四次の交通安全対策についての基本を決定をいたしたところであります。この方向はまさに安全第一主義ということでありますものですから、この趣旨を交通関係業者に、航空はもとより私鉄、バス、トラック等々徹底をせしめることにより、未然に事故を防いでいくということにしなければなりませんし、発生原因者であるこの鉄道業者に対しましても、今服部局長言われましたとおりのことを進めつつ、なお事故原因の徹底究明をいたしつつ、今後さようなことのありませんように厳しく指導をしてまいるつもりでありますし、このことが他の業者にも他山の石として安全対策に万全を期すことのでき得ますように取り組んでまいるつもりであります。
  102. 左近正男

    ○左近委員 鉄道はともかく安全でありますので、大臣ひとつ一生懸命やっていただきたいと思います。  それでは、本法の若干具体的な事項について御質問をしたいと思いますが、前回、私が質問させていただいたときにも、この特別措置法案の原点というか本質は受益者負担である。だからこの受益者負担の線引きを厳格にしてもらわなければならぬということで、例えば新線利用者にとってのみの特別料金措置なりあるいは通学定期等の問題については一定の配慮をする、こういう御答弁局長からもいただいておるわけであります。  しかし、私は考えてみますと、十年間も長期期間、料金の上乗せ前倒しをやって、その還元は十年後である、これは非常に気の長い話ですわね。経済変動も当然あります。今日の十円の値打ちというのは、十年後には恐らく一円くらいの値打ちになってくるのじゃないかと私は思うのです。だから、こういうことは受益者負担原則の範疇に入るのかどうか。二十年というような期間の中でそういうような発想が社会通念的に受け入れられるかどうかということが私は非常に気になることなんですよね。  そこで、この法案の中では、「負担長期にわたる平準化」という言葉を使われておるわけですが、具体的にこの「平準化」というのはどういう内容を指しておられるのか、お答え願いたいと思います。
  103. 服部経治

    服部政府委員 まず、工事の実施に伴います鉄道事業者の負担でございますが、これは工事のために投下した資金にかかわる資本費の負担でございます。具体的には、この制度がない場合について考えてみますと、その工事を行って施設ができ上がるまでの期間につきましての借入金の支払い利息ということでございます。これは仮にその工事の達成に十年間かかるといたしますと、その十年間年を追って少しずつ増大してまいります。それから使用開始後の、施設ができ上がりまして、それを供用して以降の資本費負担というのは何かというと、これはでき上がった施設の減価償却費及び投下した資金にかかわる借入利息の合計額ということでございます。     〔委員長退席、津島委員長代理着席〕  一方、この制度の適用があった場合について考えてみますと、今申しました供用開始までの間は、制度がない場合には、借入金の支払い利息額が資本費負担でありましたものが、この場合には、その支払い利息にプラスいたしまして運賃上乗せという格好で積み立てます積立金の額、これがこれにプラスされるわけでございます。したがって、供用開始に至るまでの期間につきましては、支払い利息の金利負担そのものは四分の一程度の軽減を見ますものの、これに積立金が加わりますので、資本費負担は上がるということでございます。  それから、供用開始後について考えてみますと、本制度のない場合は、先ほど申しましたように、でき上がった施設の減価償却費に金利負担を足したものでございますが、本制度におきます供用開始後の資本費負担というのは、それから積立金の取り崩しが始まるわけでございますが、この合計額から取り崩し額を差し引いたものが事業者の資本費負担になるわけでございまして、その意味で、制度のない場合に比べまして、供用開始後の事業者の資本費負担は取り崩し額分見合い額だけ軽減されることになります。  これをわかりやすく数字で申し上げますと、本制度のない場合の供用開始までの十年間の資本費負担を一といたしますと、供用開始後十年間の資本費負担はそれの二・二倍になっておりまして、一対二・二という関係になるわけでございますが、本制度を適用いたしました場合には、先ほどの供用開始前には積立金分がプラスされる、供用開始後には取り崩し額見合い分が差っ引かれるということに相なりますので、資本費の供用前、供用後の関係は一対一・二程度に変わるわけでございまして、事業者の資本費負担は、この二十年間、供用開始の前と役とにおきまして大きく平準化される。その効果は何かというと、供用開始後の大幅な運賃改定が回避できるということに尽きるわけでございます。
  104. 左近正男

    ○左近委員 確かに事業者にとってかなりメリットがある制度であるということは今よくわかるわけですよ。ところが私も単純に利用者の立場で申し上げますと、今この工事のために上積み料金が十円にされる。それなら十年後、その十円という金額が還元されても、社会通念上——今でも年率二%程度物価は上がっていますよね。だから十円という今の負担が、将来返してもらうときには一円の値打ちしかないのと違うかと私は言っているのですよ。そういうようなインフレ的な要素を考えても、利用者にとってはプラスだということが局長は言えますか、どうですか。金の価値論から。
  105. 服部経治

    服部政府委員 ただいまの先生のお尋ねの点でございますが、仮に今後十年間ないしは二十年間にわたりまして我が国の経済が大変なインフレ過程に入りまして、そのインフレ化の率が現在の金利のパーセンテージを超えるような格好でのインフレ化が進むといたしますと、先生のおっしゃるようなことに相なろうかと思いますが、そのインフレ化の率、物価上昇の率が金利を下回る限度におきましては、この制度におきます利用者金利負担効果を反映しての負担の軽減が図られることに相なるわけでございます。
  106. 左近正男

    ○左近委員 僕は大きな面では今言われることよくわかるわけです。しかし、個々のお客さんの立場からとったら、今十円負担しているものが十年後料金を十円安くしますよ、今の十円と十年後の十円と値打ちが違うと言っているのですよ。私は一円ぐらいに違うと言っているのですよ。だから先取りをちゃんとして工事をやる、お客さんの方の還元というのは、名目的には同じ料金を返すということですが、実際問題、これは経済的な変動によってお客さんの受ける利益というのは名目的なものであって、全く実効性のないものでないかということを僕は言っているわけです。
  107. 服部経治

    服部政府委員 よくわかりました。  こういうことでございます。例えば、具体的なケースについて申し上げた方がおわかり……(左近委員「端的に答えてください」と呼ぶ)要するに、今の十円は先の十円でないということはよくわかります。よくわかりますが、一方で、この制度を適用いたしました場合には、工事費の四分の一を限度とする額が無利子自己資金に置きかわる形に相なりますので、それによります金利の低減効果はかなり大きゅうございます。例えば五百億円の収入規模の企業が七百億円の工事をするといったケースについて試算いたしますと、この制度を適用いたしました場合には、二十年間にわたりまして百二十億円の金利の低減効果がございます。そのことが今先生が御指摘になった、今の十円は二十年先の仮に一円なら一円としますと、一円に低減するという貨幣価値の変動効果を完全に相殺するものになるわけでございます。
  108. 左近正男

    ○左近委員 どうもあなたの方程式、僕ようわからぬのですけれども、もう時間もあれですから言いませんが、受益者負担受益者負担と言うけれども、十年後の先までのことをどういうようにして保証するのか、この辺がこの法案の少し泣きどころじゃないかなという感じがするわけですが。具体的な点でもう少し聞きたいので、先に移ります。  この法案の第三条等で、工事費の合計額というのは、旅客運送収入に相当する額が、これを超えるもの、これは一般的な概念としてはわかるわけですが、工事費が百億円以上というような考え方が、これは当然政令で定めるわけですが、政令では大体百億円以上ということで定めたいということでございます。この百億円というものは、どういうような基準で百億以上の工事量がなければならないとお決めになったのか。これは九十億ではだめなのか、八十億ではだめなのか、この線引きの理論的な裏づけというか根拠はあるのですか。
  109. 服部経治

    服部政府委員 私どもは、一体としてとらえました工事工事費の額につきましては、大体百億円程度のこととすることを考えておりますが、なぜ百億円ということを考えておるかという理由でございますが、まず一つには、大手私鉄十四社の一社平均の減価償却費の額を参考といたしております。  それから一つには、これらの大手私鉄が現在計画し、あるいは構想しております大規模輸送力増強工事の内容をヒアリングいたしておりますが、それによりましても、百億円というようなあたりに線を引けば、大体彼らが考えております大規模輸送力増強工事というのはすべてこれを拾い上げることができるというあたりのところで百億円前後のことといたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  110. 左近正男

    ○左近委員 今この地方鉄道法による民営の事業者百三十二ございますが、百億円以上の旅客収入のある事業者は何社あるのですか。
  111. 服部経治

    服部政府委員 本法を適用することを考えておりますいわゆる三大都市圏について数字を申し上げますと、二十一事業者ございます。
  112. 左近正男

    ○左近委員 二十以上ありますか。
  113. 服部経治

    服部政府委員 大変失礼いたしました。  二十一事業者の範囲は、今申しましたより少し広うございまして、今申し上げました三大都市圏では十九業者に相なります。
  114. 左近正男

    ○左近委員 今も大体百億前後という言葉をお使いになりました。だから、これは今後十九業者が申請を出される場合、これがたまたま九十億であったというようなことも可能なんでしょう。どうですか。百億ということで、以下では絶対だめなんですか。
  115. 服部経治

    服部政府委員 仮に百億と書きますと、九十億はだめになるわけでございますけれども、最前御答弁申し上げましたように、私どもはこれまで詳細なヒアリングをやってきております。その結果を踏まえて考えますと、現在輸送力増強考えておる事業者の輸送力増強規模というのは、一体としてとらえた一工事あたり百億円ということですべてが拾い上げられるというふうに考えております。
  116. 左近正男

    ○左近委員 それはわかる。だけれども、私が言っているのは、百億というのは、いろいろヒアリングされたけれども、大体の、一般的な基準ですね。何も理論的な基準ではないわけでしょう。だから、これは余りかたく考える必要はないんじゃないですかということを僕は言っているわけです。
  117. 服部経治

    服部政府委員 その政令の書きぶりにつきましては、もう少し勉強もさせていただきますけれども一つだけ余計なことかもしれませんが申し上げさせていただきますと、百億円を下回る程度輸送力増強工事というのは、従来の仕組みの中でも、これまで各事業者の前向きの取り組みによりまして何とか一定の水準にまで到達する形で実施がされてきておりますので、今回のこういった特別の措置は、大規模工事のみを対象とするということで社会的な御理解も得られるのではないかという考えが根底にあるわけでございます。
  118. 左近正男

    ○左近委員 よくわかりますけれども、政令の段階では、その込もう少し柔軟に対応するようにひとつ要望しておきます。  そこで、旅客収入に対し工事費の合計額の割合で百分の三から百分の六まで運賃上乗せをする。この百分の三から百分の六というのは何を基準にしてやられておるのですか。
  119. 服部経治

    服部政府委員 冒頭に先生は平準化ということの意味をお尋ねになったわけでありますが、事業者なり利用者なりの負担を平準化する場合に、この工事期間における積立金積立率を多くいたしますと、手前が上がってきて、その分取り崩し額も大きくなりますから、供用開始後の資本費負担が低減することになります。積立金の率を小さくいたしますと、こちらの供用開始後における資本費負担というのが、現在高いものを抑えようとしているわけでございますが、余り抑えられないということになりまして、どの程度にこの積立金の率を持ってくるかというのは非常に大事でございます。  私どもどういうことで今考えておりますこの三%ないし六%という数字をはじき出してきているかということでございますが、それは、一体どのような積立金率を設定すれば負担の平準化が一番図られるか、しかもその積立金の率はできるだけ低位なものとするという前提の中で、工事規模との見合いでどの程度積立金率を設定すれば最も平準化が図られるかというようなことを数十通りにわたりましてシミュレーションしまして、工事規模が収入の一倍から二倍程度までならば三%、二倍を超えて三倍ぐらいまでなら四%といったような格好の積立金率を定めた場合が一番この負担の平準化がなだらかな形になるというところからそういう数値を考えておるわけでございます。
  120. 左近正男

    ○左近委員 専門家がやられたことですからよくわかります。  そこで、工事内容についても政令で定めるということですが、輸送力増強になぜ限定をするのか。今、私鉄関係投資をしている金額を見ますと、保安工事なりサービス工事なりの方が高いわけです。これかはだんだんそうなってくるのじゃないかと思うのです。工事内容について輸送力増強関係だけに限定されたのは何か理由があるのですか。
  121. 服部経治

    服部政府委員 いささか理屈っぽくなるわけでございますけれども、例えば保安工事、これは極めて大事な工事であり投資であるわけでございます。しかし、これは鉄道事業者にとりまして事業を行っていく上で真っ先に取り組まなければならない大事な工事でございまして、俗な言葉で言えばほっておってもやらなければならない、また行われる性質の工事でございまして、事実これまでも、現在の仕組みの中で各私鉄事業者は、この保安工事の充実を第一番に取り上げまして積極的な対応を図ってきておりまして、その結果、現在の私鉄の安全投資レベルも高く、かつ、先ほど事故のお話がございましたので申し上げにくいのでございますが、安全面に関する設備は相当高いレベルに整備されている現状がございます。  それに対しまして、今回の制度の中で取り上げようとしている輸送力増強工事の方は、急迫した状況に対応するための比較的小規模輸送力増強工事は、これまでも私鉄各事業者によってそれなりに行われてきておるわけでございますが、何といいましても、自分の収入規模を上回るような本当の大工事につきましては、私鉄事業者の取り組みがどうしてもおくれがちである、そういう状況があるわけでございまして、こういう特別の措置でも講じなければ私鉄事業者が取り組まないというようなことを除去するために、私どもこの仕組みを考えたというのがその理由でございます。
  122. 左近正男

    ○左近委員 そこで、この大規模改良工事に付随する問題として、騒音とか公害とか、そういうものの対策費はこの工事内容の中に含みますか。
  123. 服部経治

    服部政府委員 大規模改良工事を行う際に必要となる環境対策費については、当然にこの工事費の中に含まれることになります。
  124. 左近正男

    ○左近委員 今、大都市圏における大規模改良工事を行う場合、用地の取得の問題と沿線住民への対策、工事がおくれる場合、ほとんどこういうものが原因なんです。だから、私はこの制度があるから工事期間内にぴっしりいくんだという安易な考えを持っていないのですけれども、いかがですか。
  125. 服部経治

    服部政府委員 御指摘のとおりでございます。
  126. 左近正男

    ○左近委員 第三条では、事業計画の認定基準で、「期間内に事業の用に供し得るものであること。」とか「確実に実施し得るものであること。」、こういうことを書いておられるわけですけれども、何をもって判断されるのか。それと、認定の申請の添付資料も法定化されていないわけですね。文章はこうなっておるけれども、現実問題このような形にはなりがたいのではないかと思うのですが、いかがですか。
  127. 服部経治

    服部政府委員 整備事業計画の認定に際しまして一番大事なことは、その計画の中に盛り込まれておる各種の工事が本当に確実に実施されるかどうかということを判断することにあることは御指摘のとおりでございます。私どもといたしましては、その計画の内容自体について具体的に詳細な審査をすることはもとよりでございますけれども資金計画提出も求めますし、その他工事の実施の確実性を裏づけるような書類につきましては、添付書類としてすべて提出を求めることといたしております。そのほか、用地買収の進行の見込みなり、あるいは現実に進行している状況なり、あるいは環境対策問題への取り組みの考え方なりを当該事業者から詳細にヒアリングもいたします。また必要によっては、事業者以外の関係者からもその状況についてヒアリングをすることも考えております。  いずれにいたしましても、工事の技術的可能性、用地買収の見込み、環境対策の問題、あるいは計上されている投資額がその事業者にとって本当に実行可能な範囲のものであるかどうかといったような点のすべてにわたりまして慎重な審査を行ってまいる考えでございます。
  128. 左近正男

    ○左近委員 と言っておりますが、認定事業者の運賃について、従来料金改定の場合は告示をされるわけですが、こういう工事費を上積みをした会社については、料金改定の告示の際、私は明確にその内容を告示の中に含めるべきではないかと思いますが、いかがですか。
  129. 服部経治

    服部政府委員 御趣旨まことにごもっともでございまして、そのとおりのことを考えております。
  130. 左近正男

    ○左近委員 次に、五条の二項関係の問題についてお聞きしますが、特定都市鉄道整備準備金の取り崩しの開始後の期間に係る運賃は、負担を緩和することになっておるわけですが、取り崩し開始から実際に運賃の引き下げが行われる期間はどれぐらいになるのか。私は取り崩しを開始したら即運賃の引き下げを行うべきであると思うのですが、これが明確に法定化されておらぬわけですね。だから、取り崩し開始から運賃の値下げまで一年以上二年かかってもこの法ではいけるわけでして、やはりこれは取り崩し開始から半年だったら半年で料金値下げをしなさいということを法定化すべきじゃないですか。この点いかがですか。
  131. 服部経治

    服部政府委員 ただいまの御指摘はまことにごもっともな点があるわけでございますが、しかしながら、私どもこの取り崩しに伴います利用者還元のための運賃改定の時期の問題につきましては、これは本法の物の考え方、精神からいいましてできるだけ早く行われるべきことは当然である、これはもう自明のことであるという意味法律に書かなかったものでございまして、運賃引き下げのための運賃改定までの間が極力短いものになるように法の運用を図ってまいりたいというふうに考えております。
  132. 左近正男

    ○左近委員 それでは、大体どれくらいの期間考えられておりますか。
  133. 服部経治

    服部政府委員 私はもう最長一年というふうに考えております。
  134. 左近正男

    ○左近委員 結局、取り崩し開始以後、実際に料金を引き下げられるのは一年後ということですか。
  135. 服部経治

    服部政府委員 最長一年と申しましたので、できるだけその間で手前に持ってくるように努力するつもりでございます。
  136. 左近正男

    ○左近委員 私は、先ほど申し上げましたように、やはり取り崩し開始後できるだけ速やかに料金の引き下げ措置を行うべきである、このことを強く申し上げておきたいと思います。  そこで、この五条の二の中の「取崩しにより鉄道利用者負担が緩和されることとなるよう配慮するものとする。」という「配慮する」というのは、必ず運賃を下げるということなのか、そのことを頭に入れておくということなのか。この取り崩し後には料金を必ず一〇〇%下げますという方の解釈でよろしいですか。
  137. 服部経治

    服部政府委員 そのとおりでございます。
  138. 左近正男

    ○左近委員 そういうことを配慮するというのですね。
  139. 服部経治

    服部政府委員 そういうことでございます。
  140. 左近正男

    ○左近委員 少し賢くなりました。  そこで、第十二条の「運賃の変更」問題について御質問したいと思いますが、「整備事業計画の認定の取消しがあった場合その他の場合において、」の「その他の場合」とはどんな場合ですか。
  141. 服部経治

    服部政府委員 これは運賃の変更の命令を出す場合のことでございますが、事業計画の認定の取り消しがあった場合以外では、まず工事が事業計画期間内にその事業計画に予定していたすべての工事が完了した場合というのがございます。それから期間が終了したというケースがございます。それから期間内でありましても、四分の一という限度額積立金の累計額が達してしまった、この三つのときを考えております。
  142. 左近正男

    ○左近委員 そこで、この整備事業計画の認定の取り消しまたは中止になった場合、これは積立金はどうなるのか。あるいはこの利用者に対しては途中まで料金負担をさせているわけですね。利用者に対する還元というのはどうなるのですか。
  143. 服部経治

    服部政府委員 まず工事の中止の場合でございますけれども、これにつきましては、整備事業計画期間がその時点で終了したとみなされるということが法第四条に明定されておりますが、そういうことでございますので、この場合には積立金については当然取り戻してしまう。それから準備金につきましては、工事の終了とか計画期間の終了の場合に準じまして、中止のときから十年間にわたって均等に取り崩して運賃を通じて利用者に還元するということになります。  ところが、取り消しの場合は大きく違うわけでございまして、中止の場合は正当な事由による中止でございますが、取り消しは違法な行為等があった場合の取り消してございますので、この場合には積立金は、取り消しのありました時点を含む当該年度で直ちに全額を取り崩しまして、これを全部益金に計上する。したがって、当該年度でその合計の益金に対して税金が一挙にかかってくるということになります。それからその取り崩しに見合った運賃改定でございますが、これもできるだけ短時間のうちに運賃を通じて全額利用者への還元措置を講ずるということに相なるわけでございます。
  144. 左近正男

    ○左近委員 だから、例えば工事十年の中で工事が八年とか七年で完了した場合は余り問題ないわけですね。ところが工事がいろいろなネックがあってどうしてもできない。その場合取り消しということになった場合、かなりいろいろな問題が利用者の立場にとっても起こると私は思うのですね。この辺については、十分今後行政指導の中で配慮していただかなければならないのじゃないかと私は思うのです。  もう一つ、その場合の料金引き下げの場合、何で五条の大臣の配慮、運賃配慮の中へこれは入れなかったのですか。当然その項もこの五条の中へ入れておくべきだと思うのですが、いかがですか。
  145. 服部経治

    服部政府委員 この法第五条でございますが、これは本法によります積立制度の中核をなします仕組みでございます積立金の積み立て及びその取り崩しに関する運賃面での取り扱いに関する基本的な考え方を規定するものでございまして、つまり本法の予定する仕組みがすべて正常に動いていく場合についての物の考え方を規定しようとしたものでございまして、取り消しがあったというような場合は、すなわち異常の事態でございます。せっかく事業の認定を受けて、運賃上乗せをして積立金の積み立てをやるというようなことまでやりながら、途中で正当な理由なく工事を行わなくなったとかいった場合に、取り消しが行われるものでございますので、そういう場合は、多くの場合、運輸大臣運賃変更命令の方に手続が移行することになるというふうに考えております。
  146. 左近正男

    ○左近委員 この「運賃の変更を速やかに行うことが公益上必要であると認める」というこの「公益上」ということはどういうことですか。
  147. 服部経治

    服部政府委員 この制度におきましては、利用者はその輸送力の抜本的な改善が図られる工事というものの完成を期待いたしまして、前倒し運賃負担を行うわけでございますので、そういう利用者の期待が裏切られるようなことになり、かつしかも前倒し運賃が返ってこないということはあってはならないことでございますので、そういう事態を「公益上」というような表現でとらえたものでございます。
  148. 左近正男

    ○左近委員 それなら、その関係と、例えば料金の通常改定の場合、その事業者が申請をされて大臣が認可をされるわけですね。今度取り崩しの期間に入ったときに、その会社が経営上いろいろ非常に苦しい、だから料金の値下げができないというような事態になった場合、これは大臣は料金値下げをしなさいということの命令を必ずやるのですか。
  149. 服部経治

    服部政府委員 これは必ずやります。
  150. 左近正男

    ○左近委員 それは法的にはそういう根拠があるのですか。会社はどうしてもいろいろ合理化もやらなければいかぬ、大変なときだ、どうしてもこれは辛抱してもらいたいということがあり得ると思うのですが、その場合どうですか。
  151. 服部経治

    服部政府委員 今、先生が申されましたのは、当該会社の経営が別途の事情によって苦しくなっている状況を前提とされておりますが、そういう場合につきましては、それらの事由に基づく経営改善のための運賃改定申請というのは別途に扱われるべきものでございまして、この上乗せした運賃分に見合った積立金の取り崩しに伴います運賃水準の引き下げのための運賃水準の変更ということは、この制度の根幹でございまして、これは会社の経営状況のいかんにかかわらずやってもらいます。
  152. 左近正男

    ○左近委員 よくわかりました。  そこで、十三条の勧告条項についてお聞きをいたしますが、「鉄道工事の適切かつ確実な実施を図るために必要な措置」というのは、具体的にどういう措置なのか。例えば考えられるのは、工事がなかなかうまくいかない、土地の買収の問題、公害問題等いろいろ出て、住民との関係でうまくいかない。それで工事がなかなかうまく進まないというような場合、大臣が勧告するということですが、この「勧告」というのは何ですか。土地収用法を適用しなさいというような勧告をされるのか。何か大臣といえば偉い人ですが、この大臣の勧告権というのは、法律的に裏づけがなければあなたの言われていることもそう大したことはないわけですよね。だから、この辺、運輸大臣が勧告するというけれども、法的に裏づけがある勧告ですか。その点どうですか。
  153. 服部経治

    服部政府委員 本法のこの規定が入りますと、勧告権の発動自体がその限りで法的な裏づけは持ちますが、要するに、法的な拘束力、効果というものはいかがか、こういうお尋ねだと思います。  それは、直接には勧告というものには法的効果はございません。ございませんけれども、本法の仕組みの中では、こういった運輸大臣の勧告に理由なく従わなかったようなケースにつきましては、当然、事業認定の取り消しの方向に手続が進んでまいる、こういうことに相なっております。
  154. 左近正男

    ○左近委員 いや、それは強権発動じゃないですか。僕は法律を論議しているわけですよ。この法律の中では勧告条項というのはあるけれども、実際、法的な裏づけがないんじゃないですか。道義的なというか行政指導という理解ではないですか。その点、いかがですか。
  155. 服部経治

    服部政府委員 その限りでは、そのとおりでございます。
  156. 左近正男

    ○左近委員 そこで、指定法人の問題の十四条関係についてお聞きをいたしますが、ここには「民法第三十四条の規定により設立された法人その他営利を目的としない法人」この二つを挙げておられるのですが、これはどういうことですか。
  157. 服部経治

    服部政府委員 「民法第三十四条の規定により設立された法人」というのは、御承知のとおり公益法人でございます。営利を目的としません。そのほかにも営利を目的としない法人というのはあるわけでございまして、それを言っております。営利を目的とするような法人は、この指定法人の対象としては考えないという意味でございます。
  158. 左近正男

    ○左近委員 それでは、民法によるいろいろな罰則規定がたくさんございますね。今度つくる指定法人が民法三十四条に基づく公益法人であれば、民法が適用されるけれども、「その他営利を目的としない法人」という形で設立された法人については、民法が適用されるのかされないのか、その点はどうですか。
  159. 服部経治

    服部政府委員 先生指摘のとおりでございまして、民法の公益法人以外のものについては、民法のそういったもろもろの規定は働かないことに相なります。
  160. 左近正男

    ○左近委員 それでは、これはどういう形の指定法人にやられるかどうかということですが、自主的に設立された法人に指定をした場合、法的な裏づけが、いろいろ問題が出てこないですか。
  161. 服部経治

    服部政府委員 指定法人の指定に際しましては、この条項の精神あるいは法律全体の物の考え方をよく踏まえまして、適正が法人を指定する考えでございます。
  162. 左近正男

    ○左近委員 僕が言っているのは、民法三十四条に規定された法人であれば、いろいろトラブルがあった場合でもきっちり法的な裏づけがある。ところが、営利を目的としない法人という自主的にやられた法人であれば、そういうようなしっかりした担保がとれないのじゃないですかということを申し上げておるわけでして、法律二つの法人を挙げられたのはなぜですか。
  163. 服部経治

    服部政府委員 民法の規定に基づきまして設立されます公益法人のほかにも営利を目的としない法人というのはありますが、それはすべて特殊法人でございまして、別途しっかりした設立の根拠規定を持った、あるいはしっかりした手続を踏んで設立されるものでございますので、そういうものもあり得ることを想定して、そういう規定に相なっております。
  164. 左近正男

    ○左近委員 端的に言ってどんな法人を指定なさろうとしておるのですか。
  165. 服部経治

    服部政府委員 現在どういう法人を指定法人とするかということにつきましても、検討を急いでおるところでございますけれども、例えば民営鉄道協会、運輸経済研究センター、運輸振興協会、こういったようなところがどうであろうかというふうなことで検討を急いでおります。
  166. 左近正男

    ○左近委員 既存の法人に指定をするということですが、今おっしゃったこの三つの法人は、私が言っている民法上の法人なのか、そうでない法人なのか、いかがですか。
  167. 服部経治

    服部政府委員 いずれも民法の規定に基づきまして設立されました公益法人でございます。
  168. 左近正男

    ○左近委員 よくわかりました。  そこで、積立金の確実な保全のために、指定法人制を今言われたように考えられておるわけですが、積立金の運用方法、こういうものについてはこの法律には全く触れられておらないのですが、これはそういうことでいいのでしょうか。
  169. 服部経治

    服部政府委員 積立金の運用でございますか、管理……(左近委員「管理でもいいです」と呼ぶ)管理の方法を別途定めることにしております。指定法人による積立金の管理の方法につきまして、運輸省令で詳細な規定を置く予定でございまして、今考えておりますのは、指定法人はキャッシュ、現金には一切触れませんで、そういった現金の管理は、信用のできる市中銀行にこれを預託するという方法をとらせることを考えております。
  170. 左近正男

    ○左近委員 今、局長が言われた三つの法人であれば、十分社会的信用力のある法人だと思いますので、こういうことは起こらないだろうと思いますが、もし不祥事が起こった場合、この法律の中では全く罰則というものが規定されておらないわけですが、この点は担保としてどうお考えなのか。
  171. 服部経治

    服部政府委員 民法上の公益法人につきましては、民法第六十七条に基づきまして、この法人に対する業務監督命令をかけることができる仕組みになっておりまして、六十七条の監督命令は、同じ民法の第八十四条の規定によりまして罰則によって担保されております。
  172. 左近正男

    ○左近委員 だから私は、冒頭、この指定法人について民法上の法人かそうでない法人かということをくどくお聞きをしたわけですね。今、民法上の法人だから民法で十分担保されているというお答えなんですが、そうであれば、この法案の中で「その他営利を目的としない法人」というような項は蛇足ではないですか、余分なことではないですか。こういうことを書かなければならない理由があるのでしょうか。
  173. 服部経治

    服部政府委員 現在の段階で具体的に考えてはおりませんが、例えば鉄道建設公団といったような特殊法人をこの指定法人の対象として考える場合には、そういった民法上の公益法人以外の「営利を目的としない法人」という格好の規定を置いておく必要があるわけでございます。
  174. 左近正男

    ○左近委員 そういうことを想定されるのであれば、本法の中に指定法人の罰則というか、そういう項も一項目入れておかなければならないのじゃないですか。民法で網をかぶせるのであればそれは結構ですよ。その辺はどうなのですか。どうもちょっと相関関係がわからない。
  175. 服部経治

    服部政府委員 例えば鉄道建設公団といったような特殊法人につきましては、別途のその設立根拠法の中で厳しい監督と罰則規定が設けられておるわけでございます。
  176. 左近正男

    ○左近委員 私は何も鉄建公団のことを言っておるわけではないわけでして、もし営利を目的としない自主的な法人を新しくつくる場合どうなるか。既存の法人であれば、今おっしゃったようないろいろな法的な規定が設けられておるかもわかりませんが、法律というのは一般性がなければならぬと思うのですが、その辺が少し僕は理解がしにくいんですよ。
  177. 服部経治

    服部政府委員 新しく営利を目的としない法人格を設定するというような場合は、原則的に民法上の公益法人として設立されることになると私は考えております。
  178. 左近正男

    ○左近委員 いずれにしても、私はこの指定法人が厳格に運営できるように、運輸省としても十分行政指導をしていただいたらいいわけでありますが、僕は突発的なことを考えるわけです。この指定された法人が積立金なんかを速やかに返さなかった場合、これはどうなるのですか。この法律にありますか。その場合、どういう処置を講じられるのですか。
  179. 服部経治

    服部政府委員 そのようなことはまず考えられませんが、仮にあったといたしますと、ただいまの条項によります運輸大臣の指定を取り消すことになるわけでございまして、取り消しますと、積立金は別の指定法人、新しく指定される指定法人に「速やかに引き渡さなければならない。」ということが定められております。
  180. 左近正男

    ○左近委員 実際問題、そういうことが社会通念上起こらないだろうと思いますが、新しい制度をつくる場合に、やはりその辺のところをきっちりと押さえておいていただきたい、このことを要望しておきたいと思います。  かなり逐条的な問題について聞かしていただきましたので、大体理解ができました。ただ私は、くどいようですけれども、この受益者負担の線引きについては、局長は、これは会社ごとでやるのは問題ないとおっしゃいますが、私は問題があると思うんですよ。やはりその辺を十分考慮された運営をしていただくことを切に要望しておきたいと思います。  この項はこれで終わりますが、もう時間がちょっとしかありませんので、大臣に少しお聞きをしたいと思います、  私、国鉄関係で、この三大都市圏で既に国鉄工事認可を受けて実施をしておらない路線というのはどれだけあるかということを調べていただいたわけですよ。ところが、幾つかありますが、その中で三大都市圏にかかわるところは、大阪の片福連絡線と大阪外環状線、この二つのみなんですよ。その他のところもありますよ。あるけれども、今この問題は三大都市圏問題で論議をしておりますので、この二つだけ。  そこで大臣、この十年、国鉄が東京圏に投資をされた金額というのは六千六百四十三億円、大阪圏に投資をされた金額というのは千八百二十二億円なのです。約四分の一強なのです。国鉄としての投資は東が高くて西が低い。これは首都だからしようがないと言われたらそれまでかもわかりませんが。それで現に五十六年の四月に片福も大阪外環状線も工事認可を国鉄に対して与えておるわけですよ。それが今日までほったらかしてある。そしてせんだって大臣は、これからの国鉄問題でそういう工事をやらすことはちょっと難しいんじゃないかという意向も言われましたが、今後とも国鉄にこの二つ路線についてやらしていくのか、あるいはこの問題について新しい構想で考えていくのか、このことについて、私は大臣からひとつ明確な考え方を聞かしていただきたいと思います。
  181. 丹羽晟

    ○丹羽(晟)政府委員 先に私の方から具体的な答弁をさせていただきます。  先生よく御存じのとおり、国鉄の収支状況は大変厳しいわけでございますので、設備投資については、極めて緊急度の高い安全投資などを除いて抑制せざるを得ないという状況になっております。先生ただいま御指摘の大阪の片福連絡線とか大阪環状線の問題につきましても、部外者との協議、例えば地方公共団体との協議、そういったようなことの結果、実施しなければならないものに限って現在工事をしているところでございます。  今後の取り扱いの問題につきましては、今国会に提出いたしました国鉄改革法案の成立を待ちましてその法律の中にございますいろいろな、今の設備の関係とかあるいは権利義務の関係につきましては、新しい承継法人に承継するという計画をつくることになっておりますので、その計画をつくる際に判断していく、こういう形になるかと考えております。
  182. 三塚博

    三塚国務大臣 国鉄部長が基本的な考え、現状を言いましたが、御案内のように、今度の改革法を成立をさせてほしいというのが、実は政府の切なる願いになっておるわけでございまして、その際に新事業体の承継計画というのが作成されるわけでありますが、その中にこの両線をどう位置づけるか、こういうことになろうと思います。当然、大都市交通の中における工事認可を受けておる重要路線でありますから、これからやらなければならぬという線とは、おのずからその優劣はあるわけでございます。そういう点で新事業体、ここは西日本旅客鉄道株式会社のエリアでありますけれども、この経営陣が本件について判断をするということになりますが、これだけの大都市でありますから、これの輸送需要、投資採算等々判断をして工事認可もしておるという延長線上にあるとすれば、それなりのものであろう、こう思うのです。  いずれにしても、法律制定後には、今度は私がこれをやれと命令できる立場になるわけでありますので、新経営者の皆さんかどう判断をするか。特に大阪環状線は泉州沖大阪国際空港との関連もこれあり、いろいろ論議をされておるところでもありますから、そういう総合判断の中で行われるものと、本日はひとつこんな程度でお許しをいただきたい、こう思います。
  183. 左近正男

    ○左近委員 私この委員会でも、この二つ路線問題は大臣がかわるたびに強く要望しているわけです。これは大阪府知事も大阪市長もかなり積極的に要請されておると思うのですよ。だから、継承された——国鉄問題はこれからの論議ですから、大臣が言うようにうまくいくかどうかわかりませんけれども、しかし、継承された段階で検討するなんということは、僕はおかしいんじゃないかと思うのです。今現在、これは大都市の通勤圏として非常に困っているわけですよ。だから工事認可を五十六年に与えているのです。あのまま工事をやれば今ごろ開通しているのです。それをほったらかしておって、今さら大臣がそういう答弁をされるというのは、私は少し怒りを感じますね。国鉄が今こういう経営状況だから、何とかもう少し新しい知恵を出して、こういうような方法もあるやないかとかいろいろなことを考えていただきたいと思うのですよ。これは国鉄法案問題とは関係ないですよ。そこら大臣としてもう一度答弁してください。
  184. 三塚博

    三塚国務大臣 おしかりを受けて恐縮であります。法律の建前がこんなふうになっておりますから、やはり正確に答えますとそういうことになりますけれども、かねがね大阪市及び大阪府議会等々強く本件について要望されている経過は百も承知であります。まず、前運輸大臣委員長さんでありますし、行政は一貫性がなければなるぬ、こういうことでありますので、事柄の重要性は万々承知しておる、こういうことでひとつ御理解をいただきたいと思います。
  185. 左近正男

    ○左近委員 終わります。
  186. 津島雄二

    ○津島委員長代理 梅田勝君。
  187. 梅田勝

    ○梅田委員 特定都市鉄道整備促進特別措置法案につきまして、私が与えられた時間は三十二分しかございませんが、誠意ある御答弁をお願い申し上げたいと思います。  大臣の提案理由説明を伺いまして、この中で、「現在、大都市鉄道は、通勤・通学時において、著しい混雑状況を呈しており、今後この混雑はさらに悪化することが見込まれております。」そういうことで、「今後都市鉄道の混雑緩和を抜本的に解決するために」今回かような措置をとりたい、こういう御趣旨でございます。  確かに、混雑緩和という点につきましては、私どもも、これは早期に何らかの方法によって解決をしていかねばならない、かように思うわけであります。同時に、なぜ大都市における混雑が起こっておるかという問題を深くとらえまして、私どもは以前から、大都市圏の無秩序な膨張、大企業などの中枢管理機構の集中などは抑制すべきだという都市政策も打ち出してきたわけであります。  それで、先月衆議院の予算委員会の公聴会がございまして、私も委員として出席をしておりまして、そこで驚いたことがあるわけです。三菱地所の中田会長がお見えになりまして、自分の会社で「この二年間に大体新規ビルの申し込みが五万坪」「丸の内としてはせい、ぜいそのうちのざっと一割ぐらいを何とか間に合わせた」、しかしあとは足らぬということを公述されたのであります。私はそれを聞いておりまして、依然として東京、首都へ首都へと大企業、大手の本社の管理機構を持ってこよう、そのために土地を物色しておるということをリアルに伺ったわけでありますが、このような企業の集中というものをどう規制していくかということは、私は非常に大事な問題じゃなかろうかと思うのです。  それから、農村できょうびお米をつくっても、減反だ、こういったことで農業破壊が行われておる、輸入農産物の問題等もあって農業の危機ということが叫ばれておる、それらが食えなくなって都会へ流れ込んでくるという現象。私どもは従来から、都市と農村地域、僻地、工業と農業、つり合いのとれた発展というものがどうしても必要だということを主張してきたわけであります。(発言する者あり)  まず、中曽根内閣の国務大臣として、大都市におけるこのような混雑現象の解決策について根本的にどのようなお考えをお持ちなのか、ここに提案されていることだけなのか、そこのところをちょっと確かめておきたい。
  188. 三塚博

    三塚国務大臣 今、列島改造という声も上がりましたが、結局この改革は過疎過密の解消、一言にして言うならそういうことでありますし、地方定住圏構想というのも打ち出されております。これを着実に進めるということでありましょう。それから文部省は大学の地方分散化を考えておりますし、国土庁はこれらのすべてを含めた企業等々の分散化を二十一世紀から二十二世紀に向けてやらなければならない。一点集中型から地方分散型へ、大都市も、一点集中型から東京都知事のやられておる副都心構想への転回、こういうことでこれに取り組んでまいりませんければ、一朝にして事が成る事柄ではないように思います。  この間、運輸省として、都市交通政策の展開、地域交通政策の展開の中で都市交通政策の推進を図ってきたわけでございまして、高速鉄道が配置されることによりまして、集中化が防ぎ切れることも御案内のとおりであります。そういうことの中で、まず運輸省としてやれるものは何か、こういう点の中で都市交通線、民鉄線の整備というのは着実に進めてきましたし、今回御提案をいたしました複々線化についてのインセンティブを与える本準備金制度の中における諸制度も、大胆に、本問題に対する解決策を与えたい、こういうことで取り進めさせておるということであります。
  189. 梅田勝

    ○梅田委員 三菱地所の中田会長が言外に国鉄の用地の早期売却を欲しがっていることをほのめかしておりました。それから都市におきますさまざまな規制緩和を、これは露骨に要求しておる。国鉄分割・民営はいずれ議論になるわけでありますが、ああいうところにまたがあっと高層ビルを建てるということを恐らく彼らは考えておるのじゃなかろうかと思うのでありますが、そうすれば、ますます集中が強化されるわけでありまして、大臣国鉄分割・民営、それから非事業用地、簡単にやってはいけませんよ。これは絶対にやるべきでないということをこの際申し上げておきたい。そうしませんと、人の流れがどうしてもそこへ集中していくんだから。そこで混雑緩和という問題が必然的に生まれてくる。だからここの関係を根本で絶つということをこの際きちっとやっていただきたいということを要求をしておきます。  そこで、これが予定しております工事はどういうところがあるのか。新聞にも報道されておりますし、いろいろ資料もいただいておりまして、およそこういうところだろうと思うわけでありますが、「当面の路線は大路線で、工事規模は総延長七十一キロ、総工費一兆一千九百億円にのぼる見込み。」こういう報道はそのとおりでございますか。
  190. 服部経治

    服部政府委員 首都圏におきまして複々線化等の大規模改良工事が予定されております線区といたしましては、昨年の七月の運輸政策審議会の答申でも取り上げられております東武鉄道伊勢崎線を初めとする先生指摘の五社七線七十一キロ人ートルでございます。
  191. 梅田勝

    ○梅田委員 そうしますと、かつて大手民鉄の十四社が設備投資計画というものを年次計画で持ちましてずっと計画されているわけでありまして、現在、第六次計画、昭和五十七年から六十一年にわたるものがあるわけでございますが、これは全体の投資規模は九千四百四十九億円、そのうち新線建設を含めた輸送力増強工事というのは三千八百八十八億であったと思いますが、そのとおりですか。
  192. 服部経治

    服部政府委員 そのとおりでございます。
  193. 梅田勝

    ○梅田委員 そうしますと、先ほど計画に上がっております東急それから東武それから西武、小田急、京王帝都、この五社六路線ですね。これの総工事費は現在進めておる六次計画と比べますと相当大きい。少なくとも三倍以上になっておる。工事計画がどれくらいの期間になるのか知りませんが、しかし計画自体としては非常に大きいという点につきましてのバランスはどうなんですか。
  194. 服部経治

    服部政府委員 運政審答申に盛られました五社七線七十一キロメートルにわたります複々線化工事等を進めていくためには、一兆二千億円の巨費がかかるわけでございますが、これは今後十五年間程度でそういった程度投資を行っていきたいという考え方が示されておるものでございます。それにいたしましても、過去のといいますか、現在進行中の第六次輸送力増強計画の中で計画されております三千八百億という数字に比べますと非常に膨大なものでありますが、そういう膨大な巨費、膨大な工事資金を要する工事を円滑に推進していきますために、こういった本法に盛られているような仕組みを御提案申し上げているところでございます。
  195. 梅田勝

    ○梅田委員 現実に民鉄協会も発表しておりますが、最近の輸送人員の伸び率というのは伸び悩みの傾向がある、このように言っておるわけでしょう。確かに混雑緩和がかなりありますから、それの緩和は必要としても、余り急激に投資をやると、これは償却の問題が出てきて厳しくなるのじゃないか。かつて国鉄もいろいろあれが必要だこれが必要だということで、どんどんと借金で設備投資をしてきた。これによって非常に今日困っておるわけでございますから、東京湾横断道路の問題も今一兆円規模でやられようとしておりますが、これも需要見込みが過大じゃないか、こういう議論もあるわけでございまして、あんまり急激な過大投資をやるとツケが将来に相当厳しくなるという点ではいかがですか。
  196. 服部経治

    服部政府委員 過大投資はいかなる意味におきましても問題が大きいという点の御指摘はそのとおりであろうと思っておりますが、私どもは、首都圏の現状に照らして考えましても、過大投資どころか本当の多くの利用者の方々が切実に要求しております輸送改善さえままならない現状を踏まえまして、少しでも前向きの輸送力増強工事が円滑に促進されていくようにいろいろと考えをめぐらしておるところでございます。
  197. 梅田勝

    ○梅田委員 いや、それはあくまでも乗客の皆さんの混雑緩和、何とかしてほしいという要求をいわば逆手にとって、本当のねらいは、いわゆる今日不況が言われている中で内需拡大策、いろいろ税制改正なんかをやって、そして免税措置などをとって設備投資を容易にさす、こういうねらいから来ているのじゃないかというように私どもは思うわけでございます。  その点で、昨年の十二月十七日に自民党と政府両方の税制調査会が総会を開いて、そして六十一年度の税制改正大綱を正式に決めたという報道記事がなされたわけでございますが、その中で都市鉄道整備促進準備金の創設と国鉄の問題も税制上の措置が決められたわけでございます。それらはいわゆる内需拡大と輸入促進等を図ることを基本的に考えて出されておるということで、いわゆる運輸事業における投資促進させる、それによって産業全体の活況をねらうということを考えたものではなかろうかというように私はこの政府・自民党の考え方を見て思わざるを得ないのですが、いかがですか。
  198. 服部経治

    服部政府委員 先ほど来申し上げておりますように、首都圏を初めとする大都市圏におきます鉄道輸送の混雑の状況を少しでも早く解消することが私どもに与えられた責務であるという認識に立ちまして、こういった特別の準備金制度を御提案申し上げているわけでございまして、内需拡大云々は、この問題の副次的な効果であるというふうに考えております。
  199. 梅田勝

    ○梅田委員 しかし、もともと運輸省は、私鉄運賃申請が来ましたときに、それらの設備投資原価計算をして認可を与えているわけでしょう。一定の利潤も確保しているわけです。私鉄輸送力増強資金は本来はそういう企業努力の中で生み出してやるべきだし、そして第六次の投資計画輸送力増強計画というものは、そういう長い線の中で策定されているわけですから、今急に今まで策定してきた投資計画をぐうっと大きくしていくというのには何らかの合理性がなかったらあかんでしょう。いかがですか。
  200. 服部経治

    服部政府委員 もちろんそのとおりでございます。
  201. 梅田勝

    ○梅田委員 そうすれば、運輸省の今日までの運賃改定申請の場合における査定の基準の基本的な考え方に触れてくるのじゃないかというように私は思いますよ。つまり認可基準としては、「運賃は、能率的な経営の下における適正な原価を償い、かつ、適正な利潤を含むものであること。」それから第二に、「運賃は、特定利用者に対し、不当な差別的取扱いをするものではないこと。」第三に、「運賃は、利用者負担能力にかんがみ、鉄道利用を困難にするおそれがないものであること。」この三つの原則に基づいてやってきたわけですね。     〔津島委員長代理退席、委員長着席〕そうすると、この運賃前倒しで先に取るというのは、明らかに今まで適正な利潤を保証しているのに、先にくださいというのは余りにも虫のいい話とは思いませんか。
  202. 服部経治

    服部政府委員 私ども私鉄運賃査定の際に、事業報酬に関しましてとっておりますレートベース方式の考え方というのは、その企業の経営を維持するために必要な配当所要額と、それから輸送力増強工事あるいはサービス改善等に対する投資にかかわる金利負担分でございまして、これを原資にして工事を行うということは、これは言うべくしてなかなか困難なことであると考えております。
  203. 梅田勝

    ○梅田委員 運輸省の認可の査定の基準、それの詳細な中に事業報酬というのがあるね、今まで説明したやつ。この報酬率が前回の値上げのときには幾らでしたか。前回というか一九七八年の十二月にやったとき。
  204. 服部経治

    服部政府委員 八%でございます。
  205. 梅田勝

    ○梅田委員 一九七八年ですよ。昭和五十四年の一月のときが八%ですね。一斉十二社がやったその前のときは幾らでした。七・二五じゃなかったですか。
  206. 服部経治

    服部政府委員 七・二五%でございます。
  207. 梅田勝

    ○梅田委員 そうすれば、いわゆる適正利潤というのはどの辺にあるのかということはもうひとつ定かでないわけでありますけれども、要するに、以前だったら七・二五、現在なら八%は適正利潤としてちゃんと保証したわけでしょう。現在は金利の動向から見たら安くなってきているわけですから、ますます彼らとしては蓄積する力が大きくなっているわけじゃないですか。
  208. 服部経治

    服部政府委員 私ども私鉄運賃改定に際しましては、これを兼業部門とは完全に切り離しまして、鉄道事業部門それ自体の独立採算が確保されるべきであるという考え方のもとに諸般の査定を行うわけでございます。したがいまして、それが本来ならば、常に私鉄鉄道事業部門の収支じりは収支とんとんというようなことでなければならないわけでありますが、残念ながら過去五カ年間の大手私鉄十四社の収支じりは、五年間でトータルで四百四十億円ばかりの赤字になっておりますし、さらにそれを五年さかのぼって、過去十年について見ますと一千百億円の赤字になっておりますし、さらに十年をさかのぼって、過去二十年間について見ますと三千二百億円の累積の赤字を生じておるという現状でございまして、私ども運賃査定時の物の考え方いかんにかかわらず、大変残念でありますが、現実には、結果的には私鉄鉄道事業部門というのは、その兼業部門から収支じりについて補てんを受けているという現実があるわけでございます。
  209. 梅田勝

    ○梅田委員 現実に過去にそういうことがあったのは私も知っています。しかし、五十九年度の私鉄十四社の総合的な経常利益というものを見ました場合に、相当の利益を上げておる。総合利益におきましては五百三十億、それから税引きの鉄道事業関係利益というのを見ましても二百七十八億。そして大体各会社は一割配当をしているわけですね。四季報の六十一年春季号によれば、中には経営成績が非常によくて、京浜急行電鉄のように、鉄道値上げ周期だが余裕を残すというように書いているところもあるわけですね。それから西武鉄道の場合なんかは、鉄道の乗客増は予算以上だ、そして不動産分譲益も相当あるということで、ホテル部門におきましては、品川新館、マウイ島は夏、京都宝ヶ池は秋に開業予定というように、膨大な土地を買ってどんどん兼業部門において設備投資をやっておる。いわば鉄道がかってどんどん開発していって、周辺にいろいろなものをつくって、そして利益を上げてきた、こういうことがあるわけで成りまして、我々は総合的に見ていかなければならぬわけであります。  ですから、確かに利息のかからない運賃を先に取って積み立てていけば、一つの合理性があるかのように見えますけれども、民鉄協会がパンフレットをいろいろ出して、運賃水準はそれほど上がりませんとか、あるいは利用者負担も軽減されますとか、財政に負担を求めるものではありませんとか言って、これが非常にいいかのごとく宣伝をなされておりますけれども、しかし、初乗り八十日に対して五円の値上げといいましても、これは六・二五%に相当するし、決して低くはない。それから先取りされるわけでありますから、負担は軽減をされますと言いましても、先取りしていくわけですから、先ほども出ておったように、物価上昇率の問題もございますし、それからもともと利息が本来はつくわけですから、そういうものもないというように考えたら、結局は企業の方は余り努力しないで、そしてもっぱら利用者、乗客が運賃を払って、いわば人頭的な課税と言ってもいいようなやり方でやるというのは、やはり問題があるんじゃないか。中には運賃値上げをしなくてもいいというぐあいに考えている企業さえあるわけですよ。そういう点を考えるなら、今回のようなやり方はやるべきではないんじゃないか。いかがですか。
  210. 服部経治

    服部政府委員 もう本当に繰り返しの御答弁になって恐縮でございますけれども、私ども、首都圏を初めといたします大都市圏鉄道の輸送の現状を踏まえまして、その抜本的な改善を、しかも早急、緊急に行う必要があるという基本認識に立っておりまして、そのためには、このままほっておいたのではなかなか事業が容易でないといった工事促進を図りますために、今回の制度を御提案申し上げておるところでございまして、私どもは、こういった制度は、その趣旨目的からいたしまして、十分に社会的な理解が得られるものだというふうに考えておるところでございます。
  211. 梅田勝

    ○梅田委員 それでは、地下鉄に対する補助制度を変えましたね。これは補助金の交付開始時期を建設年度から開業年度の翌年というように変えたでしょう。これによって政府の方は六十一年度におきましては約百十二億円の経費が節減されるというように言われておるわけでありますが、運営費補助だから影響はないんだとそっちは答弁されるつもりかしらぬけれども、しかし地方自治体にしてみれば、今まで来た金が来なくなるのですから、それだけ被害を受けるのは当然ですよ。今度民鉄にやられようとする制度とは全然違うね、逆方向だ。何でこっちだけはこういうことをするのですか。
  212. 服部経治

    服部政府委員 今回、御提案申し上げております制度は、大都市圏におきます地方鉄道法の適用を受ける鉄道につきまして、利用者負担前倒しの形の制度を取り入れて、それにより輸送力増強を図ろうというものでございます。一方、地下鉄に対します運営費補助であります現在の地下鉄建設費補助金は、地下鉄の建設費が非常に膨大な高いものについておりますことから、そのままではそれが開業後の経営費の大変大きな重圧になり、独立採算を維持しようと思いますと運賃面に大きなはね返りが生ずるというような事態を回避するためにとられている補助でございまして、こちらは公的補助、一方の今回御提案申し上げております制度の方は、利用者運賃負担に関する一つの新しい考え方に基づく輸送力増強工事促進のための仕組みでありまして、これを同列に論ずるわけにはまいらないのではないかというふうに考えております。
  213. 梅田勝

    ○梅田委員 地下鉄だって全部通勤の混雑を緩和しようということで計画されているのですよ。地下鉄は人口がなければなかなか採算性が立たぬ人いうことで、私は京都市ですけれども、京都市の交通局のやっている計画だって、東西線をもっと早くつくってほしいという地域の要求があるよ。それは山科から京都市内へ出ていくのに道路が狭い、通勤はもう大変なラッシュになる、何とか地下鉄を掘ってほしい、しかしこれは採算性の問題でなかなかうまくいかぬね。  本当に国民が必要としている路線ならば、国鉄に対する国の出資と同じように、我々の考え方とすれば、一貫して公共的な輸送のものについては、どうしてもこれは必要だというものについては出資をして、国鉄もやりなさい、地下鉄だって公共的な補助を強めでやりなさい、こう言ってきたわけだ。私鉄だって場合によればそういうことをやってもいいんだ。しかし野放図に何でもやったらいけぬか客から節度を持ち、地域につり合いのとれた発展策もとりながら総合的な交通政策というものでやっていかないとうまくいかない。急速に設備投資をやった場合には必ず労働者とかあるいは利用者負担がかぶさってくる。今回の場合はまさに従来とっておった運賃改定原則である実費主義というものを変えていくわけですから、私はこれは重大な問題だと思いますので、大臣、根本的に考え方を転換していただきたいということを要求して、質問を終わります。いかがですか。
  214. 三塚博

    三塚国務大臣 梅田委員考え方考え方でありまして、政府が出しましたこれは、国民、市民の皆さんの交通の足の確保という意味でお喜びをいただけるものである。先ほど来の御質問もありまして、きっと万般を踏まえて進めますので、よろしくお願いをします。
  215. 梅田勝

    ○梅田委員 終わります。
  216. 山下徳夫

    山下委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  217. 山下徳夫

    山下委員長 これにより討論に入るのでありますが、理事会の協議により行わないことになりましたので、さよう御了承願い、直ちに採決に入ります。  内閣提出特定都市鉄道整備促進特別措置法案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  218. 山下徳夫

    山下委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  219. 山下徳夫

    山下委員長 この際、本案に対し、鹿野道彦君外三名から、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・国民連合の四派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨説明を求めます。吉原米治君。
  220. 吉原米治

    ○吉原委員 ただいま議題となりました特定都市鉄道整備促進特別措置法案に対し附帯決議を付すべしとの動議につきまして、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・国民連合を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     特定都市鉄道整備促進特別措置法案に対する附帯決議(案)   政府は、本法施行に当たり、次の事項につき、適切な措置を講ずべきである。  一 特定都市鉄道工事工事費の支出に充てる資金の一部の運賃への上乗せ率等については、鉄道利用者負担等に十分配慮し、適正かつ合理的なものとなるように定めること。  二 特定都市鉄道整備事業計画の認定に当たっては、特定都市鉄道工事工事費について適正な額となるよう厳正に審査を行うこと。  三 特定都市鉄道整備事業計画の実施に当たっては、鉄道騒音対策等の沿線環境整備について万全を期すよう鉄道事業者を指導すること。  四 特定都市鉄道整備積立金の管理等の業務を行わせる指定法人に対しては、当該業務が適正に行われるよう十分な指導、監督を行うこと。   右決議する。 以上であります。  本附帯決議は、当委員会における法案審査の過程におきまして、委員各位からの御意見及び御指摘のありました問題点を取りまとめたものでありまして、本案の実施に当たり政府において特に留意をして措置すべきところを明らかにし、大都市圏における都市鉄道複々線化工事等による輸送力増強に遺憾なきを期そうとするものであります。  以上をもって本動議の趣旨説明を終わります。
  221. 山下徳夫

    山下委員長 以上で趣旨説明は終わりました。  採決いたします。  鹿野道彦君外三名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  222. 山下徳夫

    山下委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、運輸大臣から発言を求められておりますので、これを許します。三塚運輸大臣
  223. 三塚博

    三塚国務大臣 ただいま法案につきまして慎重御審議の結果、御可決をいただきましたこと、まことにありがとうございました。また、附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重し、政府として十分の努力をしてまいる所存であります。     —————————————
  224. 山下徳夫

    山下委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  225. 山下徳夫

    山下委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  226. 山下徳夫

    山下委員長 次に、内閣提出港湾整備緊急措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  趣旨説明を聴取いたします。三塚運輸大臣。     —————————————  港湾整備緊急措置法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  227. 三塚博

    三塚国務大臣 ただいま議題となりました港湾整備緊急措置法の一部を改正する法律案の提案理由につきまして御説明申し上げます。  港湾は、交通、産業、住民生活等の諸活動を支える重要な基盤であり、その整備の推進が国民経済の健全な発展にとって、必要不可欠であることは申すまでもないところであります。  このような見地から、政府は昭和三十六年度以来六次にわたり、港湾整備五カ年計画を策定し、港湾の整備の計画的な実施を鋭意推進してまいりましたが、昭和六十年代におきましても、貨物輸送の合理化、海外に依存する各種資源の安定的確保、港湾の利用の高度化への対応、地域振興のための基盤施設の整備、船舶航行等の安全性の向上、港湾及び海洋の環境の整備等の必要性が増大しており、港湾の整備に対する要請は量的に増大するとともに、ますます多様化し、かつ、差し迫ったものとなっております。  このような情勢にかんがみ、港湾の整備を引き続き強力かつ計画的に実施するため、このたび、港湾整備緊急措置法の一部を改正し、昭和六十一年度を初年度とする新しい港湾整備五カ年計画を策定することとした次第であります。  以上が、この法律案を提案する理由であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  228. 山下徳夫

    山下委員長 以上で趣旨説明は終わりました。  次回は、来る四月二日水曜日午前十時三十分理事会、午前十一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時一分散会      ————◇—————