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1986-05-19 第104回国会 衆議院 安全保障特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年五月十九日(月曜日)     午前十時一分開議 出席委員   委員長 栗原 祐幸君    理事 有馬 元治君 理事 椎名 素夫君    理事 玉沢徳一郎君 理事 上田  哲君    理事 渡部 一郎君 理事 吉田 之久君       衛藤征士郎君    中川 昭一君       増岡 博之君    奥野 一雄君       小林  進君    渡部 行雄君       渡辺 三郎君    山田 英介君       永末 英一君    東中 光雄君  出席国務大臣         外 務 大 臣 安倍晋太郎君  出席政府委員         外務大臣官房外         務報道官    波多野敬雄君         外務大臣官房審         議官      福田  博君         外務大限官房領         事移住部長   妹尾 正毅君         外務省アジア局         長       後藤 利雄君         外務省北米局長 藤井 宏昭君         外務省欧亜局長 西山 健彦君         外務省中近東ア         フリカ局長   三宅 和助君         外務省経済協力         局長      藤田 公郎君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省国際連合         局長      中平  立君         外務省情報調査         局長      渡辺 幸治君  委員外出席者         警察庁警備局警         備課長     井上 幸彦君         防衛庁教育訓練         局訓練課長   藤島 正之君         外務大臣官房審         議官      林  貞行君         会計検査院長  大久保 孟君         会計検査院事務         総局次長    磯田  晋君         特別委員会第三         調査室長    鎌田  昇君     ————————————— 委員の異動 五月十日  辞任         補欠選任   前川  旦君     渡辺 三郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  閉会中審査に関する件  国の安全保障に関する件      ————◇—————
  2. 栗原祐幸

    栗原委員長 これより会議を開きます。  議事に先立ち、謹んで御報告申し上げます。  長らく本委員会理事として御活躍になりました委員前川旦君が、去る十一日、逝去されました。まことに哀悼、痛惜の念にたえません。  ここに、委員各位とともに前川旦君の御冥福をお祈りし、黙祷をささげたいと存じます。  御起立を願います。——黙祷。     〔総員起立黙祷
  3. 栗原祐幸

    栗原委員長 黙祷を終わります。御着席ください。
  4. 上田哲

    上田(哲)委員 故前川旦君の逝去に際しましては、ただいま皆様方黙祷をちょうだいいたしましたのを初め、委員長以下大変御懇篤な御厚情を賜りました。我が党を代表しまして、心からお礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。      ————◇—————
  5. 栗原祐幸

    栗原委員長 国の安全保障に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上田哲君。
  6. 上田哲

    上田(哲)委員 国務大臣にお伺いをいたしたいと思いますが、中曽根総理がまことに狂気のごとく解散発言をされておるようであります。今、国会最終四日間を控えて、私どもは鋭意定数是正等々各党間の合意に基づいて円満な終息を願っているところでありますが、国務大臣として、こうしたあり得べからざる総理解散発言について甚だ私どもは不見識だと考えておるのでありますが、御所見を賜りたいと思います。
  7. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 別に総理から直接そういう話を私は聞いたことはありませんし、総理大臣として何か公式にも発言をしたというわけでもなくて、ただいろいろとそういう情報とかいいますか、風説といいますか、動きといいますか、そういうものがあることは我が党内におきましてもいろいろとささやかれてもおりますし、動きをめぐっていろいろと議論があることは事実ですが、表立って公式な党の機関とかあるいは政府内部だとかそういうもので話し合っているわけではないわけです。ただ、私としましてはやはりまず、今国会議長裁定定数是正法案が出ておるわけですから、これを議長裁定に従って処理をしていくといいますか、成立をさせるというのがまず国会責任ではないか、さらに国会が、残っておりますいろいろの法律条約等をやはりできるだけ会期末に成立をさせるということが我々の責任であるということで努力をいたしておるわけです。
  8. 上田哲

    上田(哲)委員 国会での議論は、総理からないと言われるのでありますが、国会でそうした議論がないにもかかわらず、この一両日、政府与党首脳が各地でさまざまな発言を意図的になされているわけであります。政治的にはまことに憂慮すべき事態であると思います。  そうした意味で、私どもは、そうした背景を踏まえながら公の場でお伺いをする意味合いを持つのでありますが、しからば国務大臣として安倍大臣はそのような解散は否定さるべきであると思います。積極派反対派あいまい派がある、安倍大臣あいまい派であると言われておるのでありまして、そのような態度はとるべきではないと私は思います。この際ひとつ公の場で、このような恣意に基づく解散などという発言誤りである、抑えるべきである、議長裁定に従って粛々と今、国会を終息し、延長及び臨時国会などというためにする発言はあるべきではないと明確にさるべきだと思いますが、いかがですか。
  9. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 別に私はあいまいじゃないわけです。やはり解散権というのは内閣であります総理大臣にあると私は思っております、これは憲法問題ですが。そういう中で、しかし解散は行われるにしても、我々も長い間解散を受けて政治家として選挙を戦ってきた経緯がございます。そうした解散のこれまでの歴史的ないろいろなそのときの実情というのは我々よく承知をしておりますが、解散に当たっては、それは総理大臣にもちろん権限があることは事実でしょうが、しかし同時にまた、解散が行われる場合においては一つの大義名分といいますか、憲政史上の、憲政の上に立ったやはり一つの名分といいますか大義といいますか、そういうものがなければならないということを私はずっと言い続けてきておりますし、その点については今日に至るまで変わっておりません。
  10. 上田哲

    上田(哲)委員 円高問題が理由とされておりますけれども円高問題については外交責任者である外務大臣にも重要なかかわりがおありになるわけでありまして、私は、円高問題についての当然な措置はあるべきだとは思いますけれども、そのような理由によって国会延長ないしは臨時召集をされ、それが解散の舞台になるということは甚だしく当を得ていないと思うのでありますが、いかがでございますか。
  11. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 円高問題が非常に深刻であることは事実です。我々もずっと地方等を遊説いたしまして、地方中小企業者の皆さんの悲鳴ともいうべき声を身近に聞いておりまして、大変円高問題が深刻な影響を日本経済に与えつつある。一面においてはメリットがあることは事実ですが、しかしデメリットの面も相当深刻になっておる、これは非常に行き過ぎたといいますか、急激に円高が行われたということにもちろん直接の原因があるわけでありまして、特に輸出関係の業界、さらにそれに連なっておるところの中小企業は一層深刻でございまして、このままにしておくことはできない、これは恐らく政治にタッチしておる我々を初めとして与野党を通じての議論じゃないだろうか、こういうふうに思いますし、政府もそういう中で今、円高対策国内対策をどうするかということでいろいろと法案準備とか対策準備等もいたしておるわけでございますし、これは与党においてもその責任があるわけでございます。野党からも強い要請があるわけで、この円高対策を行えということは一つコンセンサスだと思うわけですが、これはやはり早く行わなければいけないと私も思っております。どういう形で行うかということはやはり我々からすれば政府機関あるいはまた政府与党機関で正式に論じて、そういう中で結論を出すべきであろうと思うわけでございますし、そういう我々の立場からいえば政府与党コンセンサスが必要だ、いつどうだこうだというそういう設定をするという今の段階ではなくて、早くやるということを目指してどういう形がいいかということは我々責任を持ってやらなければならぬ、こういうふうに思っております。
  12. 上田哲

    上田(哲)委員 それは参議院選挙後に行われては遅いとお考えですか。
  13. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 そういう時期の問題を含めてやはりこれは国会で今いろいろの法案処理が進んでおりますから、その残された会期の中で、また会期が終わった段階においてもこの問題は非常に喫緊の要事でございますからやはり結論を出さなければならぬ、参議院選挙が終わったらいいとかその前だとか、そういうことはそれこそまさに我々は我々の責任において一つの方向といいますか結論を出すべきだ、こういうふうに思っています。
  14. 上田哲

    上田(哲)委員 非常に微妙な発言でありますので確認をしておきたいのですが、私は、安倍大臣臨時国会召集というようなことについては反対であるというふうに理解をしておるのでありますが、それでよろしゅうございますか。
  15. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 反対であるとか賛成であるとか、これはやはり内閣でただ総理大臣の一存でできるわけではありませんし、今の政党内閣政党政治内閣では与党意見も大事でありますし、政府意見も大事であろうと思います。そういう中でこういう問題は、出てくるとすれば、やはり堂々と議論して結論を出すべきだ、コンセンサスが必要じゃないか、こういうふうに思います。
  16. 上田哲

    上田(哲)委員 それにもかかわらず、現職閣僚の中では臨時国会を開くべきであるという発言があるわけでありますが、そうしますと、そのような発言誤りですね。
  17. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 どなたがおっしゃっているのかよくわかりませんが、いずれそれぞれ政治家立場で言っていると思いますが、臨時国会を開くかどうかというのは、例えば閣議を開いて決めるわけですし、同時にまた党との相談をして決めるわけですし、我が党は我が党の、そこで議論が出されて意見が集約されるわけでございますから、やはりそういう民主的な一つ議論を経てこういう問題についても処理をされる。ですから、今ここで反対とか賛成とかそういうことを言うべき状況といいますか、そういう筋はないのではないか。  また、そういう臨時国会というのは、例えば私たち閣僚ですけれども閣僚としての一つ責任を持った発言ということになれば、そういうことが発議された段階において、我々の責任において議論するといいますか意見を述べるということであろう、こういうふうに思います。
  18. 上田哲

    上田(哲)委員 もう一つ伺いたいのは、先ほど来総理専権事項という言葉がございましたけれども、私は、解散権というのは憲法の規定としては六十九条においてのみ総理にゆだねられるべき専権事項である、七条の国事行為をもってすることは甚だ違憲疑いが濃いと思うのでありますが、いかがでしょうか。
  19. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 憲法解釈の問題ですから、私が明確に法理論的な、憲法解釈的な立場でいわゆる法律的に物をはっきり言うということではありませんが、これまでの解散の歴史、そういうところから見まして、これはもう憲法七条において解散ということも今の日本憲法ではあり得る、こういうふうに思っております。
  20. 上田哲

    上田(哲)委員 甚だそれは私は間違っていると思うのでありますが、総理専権事項とされる解散権というのはあくまでも六十九条に基づいて行われるべきであり、国事行為拡大解釈憲法を誤るものであるということを強く申し上げておきたいと思います。  もう一つ有力閣僚発言の中に、今日の公選法違憲疑いが強いのであって、我々選ばれている衆議院議員はいわば執行猶予中の身分である、したがって、公選法が新しい公選法に変えられたならば直ちに解散をすべきである、こういう発言があるのであります。これはまことに私は言語道断、誤りであると思います。事情判決とはいいながら、現国会議員衆議院議員はこれを合憲なものとして判決も認めているのでありまして、一刻も早く違憲状況を解決せよということはあるにしても、今日、私たち立場執行猶予というような立場であるべきではありません。もっと重要な立場に基づいて国会議員としての職責を果たすべきでありまして、有力閣僚がこのような発言をされることはまことに不見識でありまして、この点は安倍大臣からの御見解を承り、御訂正を願いたいと思います。
  21. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは私が言っているわけじゃありませんから。  ただ、私の見解を言わしていただけば、今違憲状態にあるという最高裁の判決が出ていることは事実でありまして、それを踏まえて国会議論をして与野党努力をして、そして議長さんにお願いをして裁定ということになって、この定数是正法律案にこぎつけたわけであります。これはそれなりに国会議員最大努力をして今日に至っておる、こういうふうに思っております。そして、これもやはり法律成立をすればできるだけ早くといいますか次の解散で、あるいは総選挙で解消するということが当然であろうと思いますし、その辺はなかなか気持ち気分の問題で、私は法律是正されれば、是正法律として通れば、そこで国会の意思というものははっきりしたわけですから、今すぐそれでは直ちにとかなんとかいうことじゃなくて、やはり国会議員のそれぞれの気持ちの問題として、いや、それは早くやった方がいいとか、その次の任期いっぱいやってやった方がいいとかそれはあると思います。別にそれが法律的な意味を持つものではなくて、一つ気持ちの問題としてのこれは心構えの問題じゃないだろうか、こういうふうに思います。
  22. 上田哲

    上田(哲)委員 心構えの問題などで、これはかわされては困るのでありまして、国会議員の一人一人の任務はまことに厳粛なものでありまして、しかも、判決事情判決とはいいながら合憲なのでありまして、私たちには違憲立場はございません。しかも、それを気分の問題で、こうした問題を早く解消すべきである、選挙を早くすべきであるなどと言うことは、まことに不見識でありますから、その点はお認めになったと思いますので、国務大臣としてそのような発言閣内発言されないように、十分にひとつ御協力を賜りたいと思いますが、いかがですか。
  23. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 まだ全然、閣内議論として何も出ておりませんから、ですから、こうした問題はやはり閣内議論する、されるということになれば、お互いに国会議員として、また閣僚としてやはり憲法は守る、あるいは議会政治を守るという立場から堂々の議論はこれはしていかなければならぬ、こういうふうに思います。
  24. 上田哲

    上田(哲)委員 いずれにしても、狂気ではないかとさえ言われている総理解散発言、まことに不見識でありまして、断固として、議会制民主主義あるいは憲法立場に立って反対をすることを表明をし、そのような立場で御努力をいただくことをニューリーダーと言われる安倍外務大臣に特に切望しておきます。御発言はあいまいではない線が出たというふうに了解しておきます。  東京サミットでありますが、東京サミットについて、大変長い間の行事で警備体制がしかれました。  外務省関係及び警察庁関係等々にお願いをしておきました。どのような経費が使われたのかということを御説明いただきたいと思います。
  25. 林貞行

    林説明員 東京サミットにかかわります外務省予算といたしましては、昭和六十年度の予備費といたしまして、防弾車購入費等を中心として三億二千万円、それから六十一年度予算といたしまして、代表団受け入れ等経費が三億一千六百万円、プレスセンター設営等プレス関係経費といたしまして四億八千二百万円、計七億九千八百万円が計上されております。
  26. 井上幸彦

    井上説明員 今回の東京サミットに要します経費のうち、特に調達等に長い期間を要しますものにつきましては、昭和六十年度の予備費といたしまして七十億余の予備費の使用をお認めいただき、整備を図り、今回の警備につきましては、これを有効に活用させていただいたところであります。  なお、実際の警備活動に要する経費につきましては、これはいつも申し上げているところでありますけれども警察活動といいますのは、単に警備なら警備で特定の色づけが明確にできるものではございませんで、各種の交通部門あるいは捜査保安部門等々の活動と一体となって……(上田(哲)委員「内容を言ってください、説明を聞いているのじゃない」と呼ぶ)行うというようなたぐいのものでありまして、なかなかその警備にかかった……(上田(哲)委員数字を言ってもらいたい、委員長、求めていない答弁に時間をとっては困る」と呼ぶ)費用というものが特定できない面がございます。  それで、警察庁予算のうち、活動経費というのは、年間では昭和六十一年度予算の中では百五十四億ほどお認めいただいておりますので、この経費の運用をもって賄ってまいる、こういうことでございます。
  27. 上田哲

    上田(哲)委員 余計なことを聞いていないのです。あなたの方に何日も前から数字を出すように言っているんだから、数字報告をなさい。
  28. 井上幸彦

    井上説明員 ただいま申し上げましたとおり個々の数字というものはなかなか特定しがたいものがございます。  今回の経費につきましては、大体、部隊体制がどうかということが基準になると思いますけれども、警視庁では既に御承知おきいただいておりますとおり一日最大動員三万人体制というものをもって賄ってきたところでございます。この三万人と申しましても、具体的には必ずしも旅費補助旅費が支給される部分の人が、全部が該当するわけではございません。そのようなことから、まさしく三万人体制でありますけれども、数的に何千、何万、何億であるとかいうことがなかなか特定しがたいというふうなことがありますので、御了解いただきたいというふうに思います。
  29. 上田哲

    上田(哲)委員 一体何を言っているんだ。あなたの方は先回りして言いわけばかり先に出すんだ。ずっと前から、数字を出しなさいと言って数字報告を求めているのです。外務省はちゃんと今総額十一億一千九百万円の金を出したじゃないですか。あなたの方も出してきているじゃない。それを説明しなさいと言っているのに、中にちゃんと言い切れないところがあるものだから言いわけを先に出しちゃう。後ろめたい答弁をしないでちゃんとお答えなさい。私の方が言わなければいけない。警察庁では、警察装備費十二億六百四十二万九千円、車両購入費九億七千五百九十八万四千円、警察通信機器整備費四十六億四千百九十五万八千円、通信施設整備費六百六十三万円、航空機購入費一億八千百五十一万円、皇宮警察本部で千八百十一万円、合わせて七十億三千六十三万九千円、こういう数字でいいんでしょう。数字をちゃんと答えなさい、先回りして言いわけばかり言わないで。
  30. 井上幸彦

    井上説明員 先ほども答弁申し上げましたとおり、予備費につきましては七十億余ということで、ただいま先生御指摘のとおりの数字で、内訳的にもおっしゃるとおりでございます。  なお、車両購入費九億七千五百万余ということでございまして、トータルで七十億三千六十三万九千円ということでございます。
  31. 上田哲

    上田(哲)委員 そうしますと、これを合わせますと八十一億四千九百万ということになるのです。ところが先回りして言いわけがべらべら先に出ちゃうのですが、例えば三万人と言われるあの厳戒体制弁当代だとか旅費だとか云々ということが世上いろいろ問題になっているのです。警備が過剰だったかどうかという議論をしようとしているのじゃない。それを言われちゃ困ると思って先回りして一生懸命になって答弁しているけれども、それを言おうとしているのじゃない。幾らかかったかということを客観的にきちっとした数字で出しなさい。弁当代がいつまでも、一週間も十日もはじき出せないような警察で何ができますか。なぜそういうことを明らかにしないのですか。国民としてはその数字を知りたいから、概数でいいから報告をしてもらいたいということを再三にわたって言っているのに出てきたのは、先回りして言いわけばかり言っているじゃない。こんなことが国民警察ですか、外交イベントを遂行するための体制ですか。ふまじめじゃないですか。概数を言いなさいということを今言っているのじゃない、ずっと今日まできょうの質疑に合わせてそう要求しているじゃありませんか。出てきたのは、数字も言わないで先回りして言いわけばかりなんだ。こんな態度国民のための警察ですか。私は、言いたくないことまで言わせないようにしようと何遍も言ったじゃないですか。概数はどうなのか、それをおっしゃい。八十一億四千九百万の数字が出てきた。しかしそれはそうした問題が全部抑えられておる。概数としては幾らになるかという数字国民は聞く権利がある。お答えなさい。
  32. 井上幸彦

    井上説明員 今回の警備につきましていわゆる糧食費というものは経費の中に予算上は入っておりませんで、これにつきましては旅費をもって現在賄っておる、こういうところでございます。そこで応援部隊旅費につきましては、一日日当千四百円、それから宿泊を伴う場合に三千三百円、こういうことが基準になって、これをもって賄っている、こういう状況でございます。
  33. 上田哲

    上田(哲)委員 だから、それを合わせたら幾らになりますか。
  34. 井上幸彦

    井上説明員 先ほど来申し上げておりますとおり、この応援部隊の数の点につきましては一日四千ということがベースになっております。そのようなことで今申し上げました数字ではじいてみますと、大体三億余になるのではなかろうかというふうに考えております。
  35. 上田哲

    上田(哲)委員 だから、およそ今の八十一億の上に三億円が足される、こういうふうに理解していいわけですね。——いや時間がないのだ、そういうふうに引き延ばされては。いいのですね。(井上説明員「結構です」と呼ぶ)結構ですということですから、じゃ今の数字の上に三億が足されたものがほぼ総経費であったというふうに理解します。早くそういうことを出してもらいたい。そしてこの概要ではなくて細目についてはひとつ後ほど提出をしてもらうことをお約束をいただきたいと思います。委員長、よろしゅうございましょうか。
  36. 栗原祐幸

    栗原委員長 はい。
  37. 上田哲

    上田(哲)委員 では、そのお約束をいただいたことをもって私の質疑を終わります。
  38. 栗原祐幸

  39. 渡部行雄

    渡部(行)委員 最初に、海外援助あり方についてお伺いいたします。  まず、この海外援助というものは今度のマルコス疑惑国民の注目を浴びているわけですが、この目的をはっきりさせていただいて、そしてそのあり方全体についてどのような反省をされているか、この点について大臣及び会計検査院長からお伺いいたします。
  40. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 海外援助あり方につきましては、我が国は南北問題の根底にあるところの相互依存の認識と人道的考慮基本理念としまして、開発途上国経済社会開発、民生の安定、福祉の向上を目的として援助実施しておりまして、かかる我が国援助はおおむね所期目的を達成しているものと考えております。  援助の適正かつ効果的、効率的実施を一層促進する上で援助評価は重要な役割を果たすものと認識しております。援助プロジェクト評価するに際しましては、当該プロジェクト所期目的どおり効果を上げているかどうかという点に加えまして、周辺への経済的、社会的波及効果及び我が国との関係に及ぼしている効果についても調査することにいたしております。評価実施に当たりましては、外務省及び援助実施機関のみならず有識者等の第三者による評価を行うなど、公正、客観的な評価実施に努めておるところでございます。この点は特に今後とも強化したいと考えております。
  41. 大久保孟

    ○大久保会計検査院長 お答えいたします。  最初に会計検査院の海外経済援助に対する検査の状況について申しますと、会計検査院では毎年、外務省、海外経済協力基金等海外援助実施している機関に参りまして、借款、協定など援助に関する関係書類を検討し、援助は計画どおり執行されているかどうかを検査しております。それとともに、年に一回ないし二回、海外の調査に出かけておりまして、援助の現場におきまして現地所在の我が国関係機関説明を求め、時には相手国当局者の自発的な説明を受けながら、援助効果が発揮されているかどうかという観点から、援助にかかわる施設等が計画どおり完成しているか、また有効に使用されているかといったことを調査しております。  以上が現在私ども海外援助に対して行っている検査の状況でありますが、もともと私どもの検査は直接には外務省や海外経済協力基金などを対象としておりますので、援助に基づき相手国政府が行った契約の内容、金額の適否についてまで検査が直接及んでいないのが現状であります。我々としましては、現に与えられた条件のもとにおいて誠心誠意検査の充実を期してまいる所存でございます。
  42. 渡部行雄

    渡部(行)委員 今外務大臣所期目的を達しておると言われましたが、その確認方法についてどうもすっきりしないわけです。会計検査院長の方ではその職務範囲において誠心誠意やっているということはわかりますが、それでは海外を回って歩く費用はどのくらい会計検査院として使えるのか、その辺を明らかにしていただきたいと思います。
  43. 磯田晋

    ○磯田会計検査院説明員 最近の予算執行状況を申し上げますと、検査旅費の支出額でございますが、五十八年度が三百万余、五十九年度が五百三十万余、六十年度が三百二十万余円となっております。
  44. 渡部行雄

    渡部(行)委員 三百万から多くて五百万程度で、これはたくさんある海外を回って何日かみっちりやれるでしょうか。私はこんな旅費ではとても観光旅行にもならないんじゃないかと思うのですが、非常に形式的な検査に終わっている感がするのでございます。大臣は、一体所期目的どおり行われているというのはどういう機関で、どういうところで、どういう検査をしたんですか。
  45. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 どういう検査ということではありませんが、日本援助は非常に膨大な援助、アメリカに次いで世界第二位という膨大な援助をいたしております。これは各国政府との約束事、いわゆる交換公文、それを中心にして具体的な実施を行っておりますし、また無償援助あるいは技術援助等広範な援助をいたしておりますが、これは後でいろいろと評価もいたしておりますし、それから各国政府との関係で、相手の政府からの非常な評価をいただいております。これは私も各国をずっと回ってみましたり、あるいは各国の要人が日本を訪問する際に必ず援助問題が出てくるわけでございますが、その際援助を受けておる国々が挙げて日本援助というものに高い評価を与えておることでありまして、そういう意味で、全体的に見て日本援助というのは非常にそうした各国の経済の発展あるいは民生の安定に大きく資しておる、大きな効果を得ておる、博しておる、こういうふうに私は確信をいたしております。
  46. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これは私は実際に今度のマルコス疑惑問題で日比友好道路を直接見てきたわけですが、決してこれは所期目的を達成したとは言われないと思います。非常にお粗末な道路で、これは専門家が見ればすぐわかるように、予算どおり使われてもいないだろうし、そこには何か非常に不愉快なものを感じるわけでございます。しかも実際にやっている工事請負者は地元の人がやっており、そして元請はほとんど全部日本の企業がやっておる、こういう状態でございますから、そこには相当何かにおうものがあるのではないかという感を深くしてきたわけです。それを所期目的どおりまあやられているなどという御認識では、私はやっぱりこのマルコス疑惑の解明はできないのではないか。そういう意味で、先ほど会計検査院長が言われましたように今のところ、ある一定の枠からはみ出すことができない。つまり相手の国に金が渡るまでの間は検査できてもその先が全然検査の手を入れることができない。これではどうにもならないわけで、この金は国民の血税であるという認識を持つならば、やっぱりその金の行く先というものも確認する必要があると思うわけでございます。しかもそれは今のままではできません。両国の合意がなければできないわけですから、その辺は、外務大臣は交換公文を取り交わすときなりあるいはその他の契約の方法等を考えて、両国が共同で検査できるようなそういう一つの方法を考えるべきだと思います。これはフィリピン側の会計検査院長もそうしてもらえばありがたい、こういうことを言っているのでございますから、今後そういう方向で御努力される御意思があるかどうか、その辺を大臣に承りたいと思います。
  47. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 援助資金の使用は基本的には被援助国の責任において行われるものでありまして、我が国が一方的に会計検査の受忍義務を被援助国に対して課する場合には、仮に現実にかかる義務を認めさしたといたしましても、援助の円滑、効果的な実施が阻害されるばかりでなく、そもそも経済協力開発途上国の自助努力に対する支援との考え方に立てはその目的に沿わないこととなるものと考えております。私は、援助日本の国がいたした事業にいたしましても、相手の国、フィリピンならフィリピンの国のまた資金も一部出ておるという面も、プロジェクトも多いわけでございますから、そういう中でフィリピンの会計検査院がフィリピンの事業として検査をされることはこれはフィリピンの国として当然のことであろう、こういうふうに思いますし、それは今後、今のアキノ政権のもとでそうした体制というものは、監査体制といいますか検査体制というのはより厳しくなっていくだろう。これは非常に我々としても歓迎すべきところでございます。  ただ、日本の会計検査院、まあ検査院長もお見えになっていますが、これが今、フィリピンのそうした第一義的に行うフィリピンの事業に対して会計検査院がタッチするということにつきましては、もちろんこれは相手国との間の協定も必要でございましょうし、あるいはまた日本法律改正等も必要になってくるんじゃないだろうか、こういうふうに思いますが、問題はやはりフィリピンの国内の検査体制とかあるいは評価体制というものが非常に大事なことになるんじゃないだろうかと私は思っておりますが、いずれにしても、いろいろと今後日比間においては援助効果的、効率的に行われるためにはどういうふうに協力体制をつくるべきか、両国間の協力体制については今後とも積極的に話し合いをしてまいりたい、こういうふうに思っております。
  48. 渡部行雄

    渡部(行)委員 安倍外務大臣は一番次期総理に近いと言われておりますが、もしあなたが総理大臣になった場合は、国内法なりあるいは海外援助のための、すっきりしたガラス張りのものにするために法改正等に取り組む御意思がありますか。
  49. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはフィリピンとの関係におきまして、私たちは日比間で援助あり方援助効果的、効率的に行われるにはどうしたらいいかということについて十分話し合いはしたい、こういうふうに思っておるわけでございますが、そういう中で援助というものの目的からして、相手の自助努力の補完をするという立場にあるわけでございますし、やはり主体はフィリピン政府そのものでございますから、フィリピン政府実施に当たっての検査体制、監査体制の強化というものが非常に大事なことになってくるんじゃないだろうか、こういうふうに思っております。  なお金計検査については、これはJICAとかあるいはOECF等に対しては会計検査を行っておるわけでありますが、援助について、フィリピンが第一義的に行っておる事業については会計検査院はタッチしてない。アメリカはそうでないようでございますけれども、しかし日本がそこまで行うということについては私は問題があるんじゃないだろうか、こういうふうに考えています。
  50. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これはもっと徹底的に議論したいところですが、時間がありませんのでまたいつかの機会にしたいと思います。しかし外務大臣、あなたが総理になった場合の話で今私は質問したわけで、あなたは本当に国民に対してわかりやすく、しかも正しく国民の税金は使われているんだ、そういうふうに理解させる責任があるわけですから、今その責任を果たしていないからこういう疑惑の問題が起きているわけですよ。だから、そういう意味で院法の改正なり積極的に取り組んでいただきたいと思うのです。その姿勢がなければ、口先で努力しますの何のと言ったってだれも本気にしませんよ。ひとつよろしくお願いしたいと思います。  会計検査院長はまことに御苦労さまでございました。これから別な方に移りますから、どうぞお帰りください。  さてそこで、今米ソ会談の問題について、去る十四日の夜ゴルバチョフソ連書記長がチュルノブイル原子力発電所事故等、その後の対応について見解を表明されたわけでございますが、その際、米ソ首脳会談を欧州がまたは広島で行いたいという提案がなされました。大臣はこのことについてどのようにお考えですか。
  51. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ゴルバチョフ書記長からの提案については承知をいたしておるわけでございますが、広島で開催しようという呼びかけがあったということについても承っておりますが、しかし日本側に対しては何も連絡なしに日本の広島を使おうという話でありまして、私たちはそういう呼びかけがあるとするならばまず日本側に相談があってしかるべきじゃないかと思うわけでございます。しかし、呼びかけは呼びかけとして、我々としては軍縮が推進されることは大変結構だと思いますけれども、今の状況のもとでアメリカがこれを受けるということにはならないのじゃないかと思っております。事実、私の想像したように、アメリカはこれを拒否しておるということのようで、アメリカとしては米ソの第二回目の首脳会談はぜひとも開きたいという積極的な意欲を持っておるわけですが、これと離れた形でただ軍縮問題だけに限って米ソ首脳会談を開くということについてはアメリカ側としては反対をしているということで、これはアメリカの姿勢は変わらぬようでございますから、ゴルバチョフ書記長の発言発言、提案は提案としてこれは実りはない、こういうふうに思っております。
  52. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これは何か第三者的な立場で今お話しされているような気がするのですが、私はその手続がどうのこうのというようなことでは本当に世界の政治を担っていけるだろうか、非常に疑問を感ずるのでございます。というのは、しかも軍縮問題、特に核実験禁止問題について話し合うというその場所に広島を選んだということはむしろ、先に連絡がなくとも、これは日本として名誉であり、かつまた最も適した場所として世界から認識されるのではないかと私は思います。ところが、新聞などを見ると、みんなが事前に話し合いがなかった、恐らくこの会談はだめだろう——全然日本の意欲が出されていない、非常に消極的に、むしろ反対しておるような印象さえ受ける新聞記事もありました。こういうことでは本当に日本が世界の政治の中に加わって、しかも首脳国としてその政治力量を発揮できるだろうか、私はそう思わざるを得ないわけです。官房長官なんかはわざわざ不快感などを表明したり、あるいは内閣総理大臣も非常に消極的な見通しを話したり、こんなことで、米ソ会談を実現させるための一つ日本の果たす役割を考えたときにどれだけ重要性を持っているのか、日本なんかあってもなくても同じような立場になってしまうと思います。そういう点でもっと腹の大きいところを世界に見せて、そしてこの会談が実現すればこれは世界史的な意義を持つと私は思うのです。そして、日本の広島というのはもはや世界の広島になると思うのですよ。何か軍縮交渉というとジュネーブという名前が出てくる、それと今度肩を並べて広島が出てきたらこんなありがたいことはないじゃないですか。そういう点について、一体、大臣はどういうふうな見解を持っておられますか。
  53. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 我が国としましては、核実験全面禁止というのは我が国の年来の主張でありますし、しばしば国連にも決議の形で我が国の考え方を述べておりますし、軍縮会議委員会等におきましても強く主張しております。最近具体的な提案もしておるわけで、全面禁止ということを、ここでまず米ソがそういう方向で一致するということは大変結構なことだ、心から期待をし歓迎をするわけでございますが、ただ、我々が幾ら期待をしても、米ソが合意しなければこうしたことはできないわけで、今の状況からいくと、米ソの第二回首脳会談は行われるというこれは約束事になっておりますし、我々としてもそれを強く推進しておるわけでございますが、しかし肝心のアメリカが、こうした軍縮だとか地域問題だとか、これを一つ一つセパレートした形で会談をするということは反対だ、まとめてひとつやろうじゃないかということで第二回会談を行おうということを主張しておるわけですから、今幾らゴルバチョフさんが軍縮に関する首脳会談だけやろうと言われても、アメリカが受けるということは非常に困難だということを私たちは言っておるわけでございます。事実、アメリカはこれを拒否しているということですから、一番大事なことは、そうした問題に具体的に入っていく前に、まず第二回の米ソ首脳会談というものを早く行うべきであるというのが私たちの考え方でございます。それを推進するためには、サミットでも西側の参加国が一致して声明にもその考え方を反映させておりますし、日本としてもこれがための努力を重ねておる次第であります。
  54. 渡部行雄

    渡部(行)委員 アメリカが受けないから私たちもそういう実現は全然考えていないというようなことでは、私は政治じゃないと思いますよ。アメリカが受けようと受けまいと、受けるような国際的雰囲気、そういうものをどうつくっていくかというのが日本の平和外交でなくてはならぬじゃないでしょうか。  しかも、核実験というものは、ソ連は自主的にやめて一年になるのです。アメリカはやめないのですよ。地下実験の査察をさせないからやめないなどというのは、この科学の進んだ世の中で通用する話じゃないのです。今は地下実験だって全部キャッチできると科学者は言っているのですよ。そういう言いわけばかりを言って——アメリカの軍拡の姿を見てください。どっちが正しいか。核をなくそうとする方が正しいのか、核をどんどん実験して、新しいまたそれ以上の威力のある核兵器をつくろうとしておる者が正しいのか、そこを明確にしながら、どうしても世界が今望んでおる、核兵器をこの地球上からなくそうという方向で、そういう雰囲気をつくる政治力を発揮していただきたいということでございますが、その点はどうでしょうか。
  55. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、ソ連が核を廃絶していくという方向で努力している、アメリカが核を拡大している、そういう方向で進んでおる、そういう考え方はちょっと疑問がありますですね。私は、ソ連とアメリカは基本的には核問題に対してそう変わっていないのじゃないか、こういうふうに思います。  そういう中で、とにかく核実験を全面的に禁止する、核を廃絶していくということは、これは日本の理想でもありますし、世界がまさに求めておるところでもあるわけで、日本も、国連総会とかあるいは軍縮委員会等では、具体的な提案も含めてこれを主張しておるわけです。世界に対して強く主張しております。日本の考え方は、そういう面では世界の中で明らかになっておるわけでございますし、また、それがために第二回目の米ソ首脳会談を行うべきだというのが終始一貫した日本の主張ですから。  ただ、残念ながら今の核問題を中心とした、セパレートした形で核だけで話し合うということについては、これはアメリカが受け入れないと何回も言っているわけですから、ソ連が主張されてもそれはもう無理じゃないかということを言っているわけで、核を廃絶するとか核実験を停止するとか禁止するとかそういうことについては、日本はかねてから主張むし、絶えず世界に対して呼びかけておる。これはもう日本の基本的な考え方は変わっていないわけですから、この点はひとつ誤解をされないようにお願いしたいと思います。
  56. 渡部行雄

    渡部(行)委員 なるべくお答えは単純明快にお願いします。  今、アメリカはいわゆる軍拡の方向というその受け取り方は間違いじゃないかというような御指摘がありましたが、それなら、なぜ核実験を続け、そして、SDIという世界じゅうの学者が反対しているものを西側陣営に押しつけようとしているのか。やっていることと言っていることがまるきりちぐはぐなんですよ。  しかも、このSDIをやるには大変な莫大な金がかかると言われているわけです。その前に核をなくせば、SDIなんかに金をかける必要はないじゃないですか。まずその前提をなくすことが今一番大事だと私は思うのですよ。しかも、SDIが仮に完成したとしても、宇宙基地がち二分間でこの地球上を攻撃できるとソ連では言っているわけです。そうした際にこれを完全に防げるかというと、世界じゅうの学者の大半は防げないと言っているのですよ。そういう科学と両面から考えると、今日本が果たさなければならない役割は何かということがおのずからはっきりしてくると思うのです。  そこで、あなたは今度、二十九日から四日間、ソ連を訪れて外相会議に臨むようでございますが、この定期協議はことしの一月に開かれたばかりでございます。それからわずか半年もたたないのに、この時期を選んで訪ソされるということはどういうことでしょうか。この時期を選んでその訪ソの日程をつくられた御意思について明らかにしていただきたいと思います。
  57. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この一月に八年ぶりに日ソ定期外相会談が行われまして、これは私は、これから日ソ間の対話を進めていくという意味におきましても、日ソ関係を改善するという意味におきましても、ある意味の成果というのはあったのではないか、こういうふうに思っておるわけであります。  世界情勢はいろいろと変化をしておりますが、しかし大事なことは、こうした日ソ間の定期外相会談というものをこれから継続して定着させていくということが今まさに必要なときであろう、こういうふうに私は考えております。こうした一つの定期外相会談を定着させていくというモメンタムというのが大事だ、その時期としてやはり今が一番いいんじゃないかという考え方のもとに、これは日本だけが決めたといって決められるものじゃありませんから、日ソ間で相談いたしましたとき、両国とも今が一番いいということで合意に達して私の訪ソというものが決まったわけであります。
  58. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これは我々が考えると、大臣がこの時期を選ばれたということには、非常にいろいろな意味で深い何かが裏にあるというふうに考えているわけです。中曽根さんの任期がそろそろなくなってきますと、このポスト中曽根ということで今論議を引き起こしていることは御承知のとおりでありますが、ここで一発成果を上げれば、一番近いと言われるあなたの地位が固まるということが予想されますし、また失敗すれば大変なことになりかねない。  そういうことで、具体的にお聞きしますが、まず、今まで北方領土に墓参がビザが出ないためにできないで八年間経過したわけですが、この問題に一応のめどがついたのかどうか。それから次には、日ソ文化協定について、これも早期に実現するというような運びであったわけですが、署名までの見通しが立ったのかどうか。それから三番目は、この八月に核搭載艦と言われる米戦艦ニュージャージー、四万五千トンが佐世保か横須賀に寄港するだろう、そしてそのほかに日本海において日米合同演習を展開すると言われておりますが、こういう問題をやはりこの話題として議論されるのかどうか、その辺もお聞かせ願いたいと思います。  あるいは、この時期を選んだのは一説に解散財じたと言われる方もおりますけれども、先ほど上田委員からもお話がありましたように、私はこの問題も非常に重要な問題だと思っております。それは、中曽根総理が総裁任期中に解散して仮に自民党が過半数をとったと仮定した場合、次期内閣は無条件に中曽根内閣となるのかどうか。また、自民党規約をもって総理の任期を縛ることはできませんから、特別な事件でもない限りさらに四年の任期をやると中曽根さんがしりをまくった場合はどうなるのか。その辺についてお伺いいたします。
  59. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 まず、私の訪ソにつきましては、私自身が政局というものにとらわれないでこれは決めたわけです。やはり日ソ関係、特に将来の日ソ関係というものを考える場合に何としても大事なことは、今の定期協議を定着させる必要がある、そして一月に日本議論したことを今度はモスクワでもう一回議論をしてはっきりさせなければならぬ、そしてこれを今後継続的に行っていくということが今一番大事じゃないかということでございますし、将来の日ソ関係にとっても非常に大事だ、こういうふうに思いまして決断をいたしたわけでございます。  もちろん、そういう中で成果があれば大変いいわけでございます。例えば文化協定についてもここで調印できるということになれば大変結構だと思います。この点についてはいろいろと今交渉が最後の大詰めになっております。場合によっては間に合うかもしれない。私はせっかく文化協定、私が行けば締結したいものだな、こういうふうに思いますが、しかしやはり日ソ両国の国益がかかっておりますし、なかなか微妙な点で今交渉が行われておるわけでございますから、ただ調印だけを急ぐという姿勢じゃなくて、お互いが納得する、特に日本が納得するということが大事だ、こういうふうに思っておるわけです。  それから、北方領土に対する墓参問題については、これはシェワルナゼさんが一月に来られたときに、人道的な問題だから十分考えましょう、あなたがモスクワに来られたときに話をさらにいたしましょうという、私からしますとソ連としては今までの態度と大変違った非常に好意的なシェワルナゼさんの回答でございました。何とかこれも私が行くまでの間に結論が出れば大変結構ですが、これはなかなかそういうわけにもまいらぬようでございます。果たして私が行ってここで決着がつくかどうかということも今のところはっきりしておりませんが、せっかく行くことでございますから、何とかこれがまた、北方領土から帰ってこられて十年余りも墓参もできないで本当に一日千秋の思いで墓参を待っておられる方々に対しても何とかその道を開いてあげたいというのが痛切な私の気持ちでございますが、それはソ連とのこれからの外相同士の話にまつ以外にない。こういう成果が上がるかどうかは、これは行って交渉する以外に道は開けてこないわけでございますが、そういう成果が上がるか上がらぬかは別にして、私が一番大事に考えておりますのは、せっかく八年ぶりに開かれた日ソ定期外相会談、今度は第二回目、そしてこれが今後ともずっと定期的に定着して開かれる、そういう道をぜひとも開くことが日ソ関係にとって非常に大事だと思っております。  なお、交渉の内容としては、あるいは論議の内容としては、これは二国間の問題もありますし、あるいは国際情勢、米ソ関係あるいはまた東西関係、アジアの問題、あるいはまた今非常に大きな問題になっておるチュルノブイルの原子力発電所の事故の問題について、やはりこれはお互いに世界的な協力のもとに、こうした事故の再発といいますか発生を防いでいかなければならぬ、国際的協力体制が必要である、そういう点等もお互いに率直に話し合ったらどうだろうか、こういうふうに思っておるわけであります。
  60. 渡部行雄

    渡部(行)委員 一番大事な総理大臣の延命策についての考え方については答弁がなかったから、後でお願いします。  そこで防衛庁に聞きますが、この八月に日本海で日米合同演習が行われるというのは事実かどうか。
  61. 藤島正之

    ○藤島説明員 御質問の点は、先日新聞報道されましたニュージャージーとの件かと存じますけれども、これまで米側とそういうふうな調整をしてきた事実はございません。(渡部(行)委員「何、後の方ちょっと聞こえない」と呼ぶ)御質問の点は、先日新聞報道されました米戦艦ニュージャージーとの共同訓練に関する件かと思いますけれども、そのことでございましたら、米側からそのような打診が行われた事実はございません。
  62. 渡部行雄

    渡部(行)委員 あと大臣、先ほどの答弁漏れをひとつ答弁していただいて、それから、東京サミット政府が期待したものと全く異質な結果に終わったのではないか。つまり、重要課題がことごとく裏目に出たような気がしてならないのです。私は内政、外交においても今重大な苦境に立たされていると考えておりますが、大臣はどのように考えておられるか、お伺いいたします。
  63. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 まず、中曽根総理が、お話によりますと何かしりをまくってどうだというような御質問でございますが、そういうようなこともないだろうと思います。やはり我々の尊敬する総理大臣ですし、長い間の政治家としての経験をお持ちですし、その辺はやはり十分判断をされて、決断をすべきことは決断をされる、私はそういうふうに思っておりますし、何もそう——いろいろと時局が動いておりますけれども、それは政治家の見識を持ってそれぞれおやりになるわけでしょうし、お考えもあると思います。しかし、これは全体的に政府とか党とかあるわけでございますから、十分話し合いの中で、私としては、政党政治ですから少なくとも我々のサイドの、政府与党コンセンサスがあってすべて問題が行われるべきじゃないか、こういう感じでございますし、そのための議論は積極的に行うべきだ、こういうふうに思います。  それから、サミットにつきましてはいろいろと批判がございますが、全体的に見て私は、サミットは成功しなかった、失敗だったという議論がございますが、これは間違いである。我々の立場から、私もサミットに参加した一人でございますから、私が言うことについては我田引水的だと言われるかもしれません。しかし今回のサミットは、今まで私も何回か参加いたした経緯がございますが、非常に成功した、効果的であった、特に政策問題について政策協調という点が非常に強化された、政策協調という点が非常に各国で強く合意されたということ等は大変な成果じゃなかったか、私はこういうふうに思っております。先進国の経済も全体的には非常にいい方向へ進んでおるのじゃないか、そういう中でこれからもお互いに政策協調等も進めながら、同時に自由貿易体制というものを堅持していけば、そして同時に南北関係というものに対して積極的な姿勢を示していけば、世界経済全体に対してサミットでやったことのメリットが出てくるであろう、私はこういうふうに考えております。
  64. 渡部行雄

    渡部(行)委員 私の言っているのはこういうことですよ。大臣よく聞いていなかったようですが、今中曽根総理は総裁だから内閣総理大臣になっているわけですよ。ところが総裁のまま解散をすれば、次の国会召集になると、自民党は規約で総裁が総理になることになっておる、そうすると当然中曽根さんが次期内閣総理大臣になることになるのじゃないでしょうか。そうして内閣総理大臣に三カ月でも二カ月でもなったとすれば、後、今度、規約によってあなたは総裁でないから総理大臣やめなさいと言われた場合に、中曽根さんが冗談言うな、自民党の規約で内閣総理大臣の任期まで拘束できるのかというふうに開き直られたら、これはそれかう四年間はどうにも手のつけようがないじゃないかという話なのです。  だからそういう全く意味のないところで解散を考えるようなことを、しかも権限のない閣僚があちらこちらで話しているということは、私は政治家の良心として疑わしいと思う。こんな不謹慎な話はないですよ。どこに今解散しなければならない政治課題がありますか。しかも問われるのは参議院がすぐ選挙国民に問われるのですよ。そこで答えは出てくるのです。それなのになぜ衆議院を解散しなければならぬのか、その点についてひとつお答えを願います。
  65. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 自民党の総裁問題、党則問題については、これは自民党のことですから我々にひとつお任せをいただきたいと思いますが、いずれにしても自民党の場合は、政党政治に誇りを持って我々は政党の運営をしているわけですから、自民党の総裁が総理大臣候補である、これはかたい原則というのがこれまであるわけでございまして、この路線を外すことはあり得ないわけですから、そんなことは到底我々としては考えておりません。夢にも考えておらないことでございます。自民党の総裁になって初めて総理大臣候補、そして議会の過半数を得れば総理大臣になっていくというのが政党政治の鉄則であろうと私は思っておりますから、それに対して何にも疑問を持っておりません。  解散問題については我々が今ここで幾ら議論をいたしましても、解散けしからぬと言われますけれども、まだ何も解散は決まったわけじゃないだろうと思いますし、これから十分論議もするし議論もしていくことになるだろう、こういうふうに思いますが、いずれにしてもそんな問題が今表向き機関で論議されている、閣議で論議されているという状況にはないわけです。そのときはそのときなりに政治家あるいは閣僚としての議論を尽くすことは当然のことだと思っております。
  66. 渡部行雄

    渡部(行)委員 時間もそろそろ参りましたが、東京サミットについて、先ほど、総体的に成功したというふうに思われておるようでございますが、政策課題だって大失敗だと私は思いますよ。例えば円高の問題についてだって、これはますます苦しい立場日本が追い込まれたのじゃないですか。いい答えは一つも出ていない。  それからリビアをテロの国として特定して非難したことについてはその反応が既にもうあらわれておる。ジャカルタに起こったテロを見ましても、今までは日本はターゲットになっていなかったのが、今度はターゲットになってきておる。これは大変なことだと思いますよ。こういうふうに考えていきますと、決してこれは成功と言えない、むしろ大失敗である、私はそう思います。  そういうことで、このリビア非難の御礼だとまではっきり言ってあのテロが行われたとなりますと、今後これはどういうふうに対策をするおつもりですか、その辺をよくお答え願いたいと思います。そのお答えの仕方によってはもう一回質問します。
  67. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 リビアの問題につきましては、これは確かに声明でリビアをメンションしたことは事実であります。この点については日本もリビアがテロ事件に関与したという認識を深めた。これはアメリカ、ヨーロッパから詳細な具体的な説明を聞きまして、それはそのとおりでございます。そういう意味日本賛成したわけです。しかし、テロ声明はアラブ国家とかあるいはまた中東諸国とかそういうものを対象にして発しているわけではありません。世界全体のどこの地区で起こるかわからないテロに対して、参加国としてのこれに対して断固たる決意を述べた、そうして防止措置についての合意をここで行ったということでございまして、決してこれがリビア以外の中東諸国、そういうものを対象にしているものではないということは、これまでしばしば説明をしてきておるところでございます。ですから、したがって日本におきましても、この声明に参加したからといって日本のこれまでとってきた中東政策あるいはアラブ対策というものを変えたわけではありませんで、この中東政策、アラブ対策等については、これは日本として中東諸国、アラブ諸国に対して日本の考え方は十分説明をしたいと思いますし、またアラブ諸国も日本立場というものについて十分理解をしておるもの、こういうふうに私は考えております。  なお、円高問題等につきまして、サミットで円高を抑える、ブレーキをかけるということに失敗したじゃないか、これがサミットの失敗の大きな一つの要素だ、こう言われますけれども、大体サミットそのものが円高是正を行う会議というふうな一つの期待が出たことは事実ですが、しかしサミットにそういうものを求めることは本来間違いである、こういうふうに私は思っております。  円高がこういうふうに急激に上昇したということは日本経済にとっては大変な厳しい事態でございますが、なおかつサミットにおきましては、これ以上為替の変化によって世界経済がおかしくなれば協調介入しようという枠組みはここではっきり残っておりますし、さらに新しくG7という形で合意しておるわけでございますから、そういう意味ではむしろ一つの枠ができたということでは非常に成果があったのじゃないか、こういうふうに私は思いますし、円高そのものについては、これ以上急激に進むということに対してはいろいろのサイドからの今度はいろいろと発言もありますし、動きも出ております。私は何とかこれが安定した形に進むことを期待しておりますし、またそういう方向になっていくのじゃないかと思います。国内対策国内対策としてこれは推進していく必要があるということは今さら申し上げるまでもないわけであります。全体的に見てそういうことですから、サミットが今おっしゃるように失敗であるという考え方、立場を私はとっておりませんで、むしろ自由主義国家、特に先進工業国の連帯と協調が非常に強化されたという意味において非常に成功ではなかったかと考えております。
  68. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これは成功であるか失敗であるかは、何というか、その当事者が言うべきものでなくて第三者が見て判断するものだろうと思うのです。そういう点で、マレーシアのマハティール首相は朝日新聞社の方と会見して次のようなことを言っているのですよ。このサミットについては南側開発途上国意見が全く反映されていないと批判した後で、これは米国を筆頭とする西側先進国の利害調整とその総合的な利益擁護の場だというふうに言っているのです。これはASEAN諸国からした場合、恐らく共通の認識ではないかと私は思うわけですが、やはりいわゆる先進国と言われるだけにこういう発展途上国というところに対する配慮というものが非常に薄かったのではないか。  それから、あなたの書いた「創造的外交をめざして」という中で、アラブの方々は日本人に対して同族意識を持っているのだ、だからほかの白人諸国とは日本は違った存在になっているのだ。したがって、外交も従来どおり対アラブ外交には変わりはないのだということを今言われましたが、そういうものではないと私は思うのです。というのは、もう既にテロという一つの行動によって日本が攻撃されてきておる、批判されてきておる、そしてあらゆるそういう反米団体からも指摘をされ、しかもこのマハティール首相もリビア名指しについては反対であると明確に言っているわけですよ。そして、今あなたが、今までのいきさつと変わりはないのだということをアラブ諸国に理解を求めていくのだと言われましたが、そんなことできますか。東京サミットで調印をして、しかもこのリビア名指しのものにちゃんと調印をして、そして、いや、実はあれはおれの気持ちじゃなかったんだ、あなたたちのためには今までと変わりないんで、あれはアメリカのレーガンがどうしても書いてくれと言うから仕方なしにそこに調印したんだ、これは世の中通る話じゃないのですよ。こんなことやったら笑われますよ。こんなことをあなた、アラブに行って言ったら、あなたは一体何を考えているんだ。肌の色が似ているから今度は似たような話をして、そしてアメリカに行ったら今度また別な話をして、いや、テロは絶対許せないとかなんとか言った。こういう外交を何外交と言うのでしょうか寸これはコウモリ外交ですよ。コウモリ外交で世界に通ると思っていたら大間違いで、この辺はあなたは外務委員会で、我が党の土井委員に対してもそのような趣旨の答えがなされておるが、これははっきりとここで訂正するなりきちっとした日本の外交姿勢を示していただきたいと思うのです。
  69. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今コウモリ外交と言われましたが、まさにそういう外交はとれないわけですし、とるべきではないと思っております。サミットの中で仮に今おっしゃるような議論があったとしても、これはサミットの中の問題でありますし、議論でありますし、これは表に出す立場にはありませんし、そういうことをすることは日本自体の信頼を損なうことになることはおっしゃるまでもなく明白ですから、日本が一々そういう言いわけをして歩こうということを私は言っているわけでは決してありません。日本議長国としまして、またサミットの中の一国として声明に参加したわけですから、その限りにおいて日本責任があることはこれはもう事実でありますし、その結果について日本は明らかに責任をとらなければならぬ。それを私たちは避けようということでは毛頭ありません。我々はそういうサミットの声明は出した。その声明というものはあくまでも一般のテロ、世界のテロというものに対するサミット参加国の非常な怒りと、そしてこれに対する防止の協力措置というものを打ち出したものであって、何もあの声明そのものが、議論の結果から見ましても中身から見ましても、いわゆる中東諸国とかアラブを対象としているわけではないわけです。それは声明に照らしてみれば明らかであります。また、この声明に参加したからといって日本の中東外交とかアラブ対策というものが変化するものではない、この日本の外交の基本は今日も続いておる、サミット前もサミット後も変わりない、日本の中東外交やアラブ外交というものがサミットがあったからといってそういうふうに変わるような外交であってはならない、私はそういうふうに思っておりますし、そういう点から堂々と日本立場を諸外国にも説明をして、そして今後の日本と中東関係をさらに発展させて、日本はまたそれなりの中東和平に対する役割あるいはイラン・イラク戦争に対する一つの貢献というものをやっていかなければならぬ、こういう積極的な姿勢を十分説明しなければならぬと思います。既にそういうことも説明しておりますし、いろいろなアラブ各国の反響も来ております。彼らは日本の中東政策やアラブ対策が変わったという認識は大半は持っていないというふうに私は考えております。  また、ASEAN諸国に対しまして、梁井審議官を今訪問させましてサミットの成果につきまして説明をいたしております。大体今のところでは、ASEAN諸国の反応は概して、ASEANのサミット前に出した要望等を十分踏まえて日本もやってくれた、そしてそれなりの成果もあったことをASEAN諸国としても評価するというのが、ASEAN諸国の一般的な評価といいますか、サミットに対するお考えのようでございます。まだ全部回っておりませんけれども、全体的にはASEAN諸国はサミットを評価しておる、こういうふうに考えておるわけです。
  70. 栗原祐幸

    栗原委員長 時間ですよ。
  71. 渡部行雄

    渡部(行)委員 だから、今やめるお礼を言おうかと思っていたのですよ。  時間が参りましたので、これでやめます。討論したいところはたくさん残っておりますけれども、そういう意味で今まで質問をさせていただきましたことに感謝しながら、これで終わります。
  72. 栗原祐幸

    栗原委員長 渡部一郎君。
  73. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私は、今月二十九日から安倍外務大臣が訪ソをすることが決定したことにつきまして、まずお尋ねをしたいと思います。  というのは、対ソ関係を良好な路線に乗せることは我が国安全保障問題の重要な一環であると同時に、日本国の存立にかかわることであり、世界の平和に貢献することであると信ずるからでありまして、創造的外交と言われる安倍外交の一つのピーク、頂点としてこの問題に対する扱いを成功していただきたいと希望するからであります。今までの同僚議員に対する答弁にもいろいろな形でお答えになっておりますが、この訪ソに対する取り組みの決意、意図をまず聞かせていただきたいと思います。
  74. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日ソ関係は、戦後日本外交の中で最も難しい関係にあるわけですし、また一番冷たい関係にあると言ってもいいんじゃないか、私自身も外務大臣を三年数カ月やりましてそのことを痛感しておるわけです。しかしそういう中で、今おっしゃいますように、何といっても隣国でございますし、この関係を安定させていくことはアジアの安定にとっても極めて大事なことである。これは日本だけの問題でなくてアジアにとっても非常に必要なことであろうと思うわけでございます。  そういう中で、日ソ関係を妨げる最大の問題というのは領土問題でございまして、これはこれまでも実はいろいろな経緯がございましたが、ソ連が領土問題は解決済みだ、領土問題は日ソ間にはないんだという姿勢でテーブルに着くことすら拒否してまいったことは極めて日ソの関係を阻害する最大の要因として我々は残念に思っておりまして、何とか領土問題を俎上にのせて、そして日ソ平和条約を結ぶ、そういうことが日本の対ソ外交の基本であったわけでございます。そうした基本に従って私も日ソ関係の対話を進めてまいりました。そして御案内のようにことしの一月にはシェワルナゼ外相の訪日となりまして、領土問題につきましても少なくともこれをテーブルに着いて議論をする、そういう中で平和条約交渉を進めていくという合意ができたことはそれなりに日ソ間の前進であったと私は思っております。その他いろいろと日ソ関係については懸案解決が求められておるわけでございますが、とにかくそうした日ソの八年ぶりの対話、そして日ソ外相会談が再スタートしたということは非常にいいことだし、これはやはりさらに定着させることが必要である、それには第二回会談、協議を早く開くことが大事なことであると考えまして、今回日ソ間で種々交渉した結果、五月の末に私の訪ソが決定をした次第でございます。わずかな期間でございますけれども、何といいましてもここでひとつ十分会談の時間をとりまして、二国間の問題そしてまた国際情勢等、第一回会談よりさらに突っ込んで話をして成果を上げてまいりたいと思っております。
  75. 渡部一郎

    渡部(一)委員 今回の場合、領土問題にお触れになりましたが、一月の日ソ外相会議の際にシェワルナゼ外相は、領土問題について日ソ両国の見解は異なっているが、日本側がこの問題を提起することを禁止する権利はソ連側にないと述べており、これは従来のソビエトの、領土問題はない、それで共同声明に書き込むことも妨害したという一時の一番激しいところから少し後ろに下がっておる。また、田中総理の訪ソの際の解決すべき懸案の中に領土問題があるとされた打ち合わせと比べると、まだ相当抵抗線が強いというふうに見えるわけであります。この際に、交渉でありますならば、領土問題に対する従来の見解はこれだけだと、まあある程度譲って決着をつけるというふうにするわけでございましょうけれども我が国国民の意思からいっても、論理的な節あるいは歴史的な筋からいっても、その後の最近の日本政府の方針からいっても、領土問題についてはびた一文譲れない、北方四島の返還を求めるという態度で一貫していると我々は理解しているわけでございますが、政府はこの領土問題について譲る気があるのかないのか、これは絶対そのままでいかれるのかどうか。もし譲らないとされるのであるならば他の問題と総合してソビエト側と交渉しなければならないと私は思っているわけですが、その譲るべきアイテムを何にしようとされているのか。答えにくい点もおありかと存じますが、交渉の基本にかかわりますので、お尋ねいたします。
  76. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 まず、日ソ間で一月に合意したことは、これは簡単でございますからちょっと読ませていただきますが、共同声明の中で「両大臣は、一九七三年十月十日付けの日ソ共同声明において確定した合意に基づいて、日ソ平和条約の内容となり得べき諸問題を含め、同条約締結に関する交渉を行った。双方は、モスクワにおいて行われる次回協議の際にこれを継続する旨合意した。」こういうことになっておりまして、これは両国間の明快な合意でありますし、声明でございます。したがって、この声明に基づきまして私もモスクワで継続して行うわけでございます。その日本側の基本姿勢としては、これはこれまで明らかにしておりましたように、北方四島は日本の固有の領土である、この返還を一括して求める、そして平和条約を締結する、こういう日本の基本的な方針には変わりはございません。私は、第一回目も主張いたしましたし、またさらにこうした基本的な立場に立って第二回目も主張をしたいと考えております。もちろんこれに対しまして、ソ連側としては領土問題に対するソ連の考え方は変わらないということを第一回でも述べております。ソ連がそう変化があるとは思えませんが、とにかく交渉のテーブルで、我々の外相会談で領土問題を継続して論議をするということは非常に大事なことであろうと思います。
  77. 渡部一郎

    渡部(一)委員 ソビエトの外交の場合に、政治と経済を分離する原則というのをソビエト側の外交官がしばしば述べ、シベリア開発に先に手をつけてくれれば、北方四島とか領土問題とかこだわらないでやってくれれば日ソ関係は進むではないかという議論が一方に存在した。また、ソビエトの有名な外交の方式で、自分の都合の悪いアイテムは交渉せず、自分の都合のいいアイテムだけを交渉する、問題はすべて区分して交渉し、いいものだけ合意をする、悪いものについては長期に後ろへ繰り下げる、まるで十九世紀の外交のような原則がしばしば語られているわけであります。もう一つ、ソビエトの外交の中で相互主義と申しますか、日本側の何かの要求に対しては必ずそれに対する見返りをひどく強く要求する。そしてまた、裏側には同情すべき点もあるのですが、オーバー・セキュリティー・マインデッドとでも言うべきような、非常に警戒心の富んだ、猜疑心の富んだ外交姿勢というものが存在する。  したがって、交渉がやりにくい相手であるということはもう御承知のとおりだろうと私は思っているわけであります。外交の専門家に対してこれだけ私が申し述べますのは、ここのところで交渉に焦って、領土問題についてある種の大幅な妥協をしたり、領土問題外で極端な妥協をしたりいたしますと、日本外交として取り返しのつかない怨念を対ソ関係に抱かなければならない。ちょうど日露戦争の起こる前に、日清戦争の終戦後の交渉ぶりに怒った日本の朝野の中に反露的感情が沸き上がり、またそれを考慮しないロシア政府側の乱暴な外交姿勢というものが相まって日露戦争を惹起したことを考えますならば、我々はその点もまた考えなければならないのではないかと思います。したがって、領土問題についてだけ交渉なさるのではなく、ほかの問題についても交渉する、ほかの問題も交渉するけれども、まとまるところだけまとめるのではなく、先方から見て、つまり先方の相互主義から見て日本が交渉相手として尊敬されるだけの、言うべきを言い、交渉すべきを交渉し、両者過不足ない形で交渉をまとめてきていただくということが大事なのではないかと思うわけであります。  なぜ私がこんなことをくどくど申すかと申しますと、一部新聞の記事を拝見しておりまして、「文化協定の締結強まる 在ソ日本大使館筋見通し」などという記事が堂々と出てくる。交渉の前に何事だと言いたい。こんなことがリークするようだったら、交渉をやめた方がいい。こういうことが出てくると、安倍大臣が行かれて文化協定がまとまらないと、何という間抜けたという印象を受けてしまう。総理になる道をまっしぐらに進んでいる安倍大臣だが、対ソ交渉で重大な失敗と書かれてしまうという気分それ自体が、対ソ交渉を暗礁に乗り上げるゆえんになるのではないか、何という記事を書くのか、もしリークした者があるとすれば、何というリークの仕方かと私は怒っているわけであります。  したがって、交渉の前提として、簡単に言いますと余り成功を求めず慎重な態度で、日ソ関係が安定するのは日本だけにいいのではなくて両国にいいことなんだから、両方の重大な不満が取り除かれるような明快にして堅実な外交姿勢がこの際打ち出される、ソビエト外交を政権のポイントなどにしない、もちろんしないなんというのは常識ではありますけれども、毅然たる外交姿勢が今回行かれるとき必要なのではないかというふうに心配して申し上げているわけでございますが、いかがでございますか。
  78. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 おっしゃるように、私も渡部さんの非常な御見識に対しまして心から敬意を表しておりますし、そういう基本的な姿勢で訪ソしたいと思っております。いずれにしても、腰を据えてやらなければならない、功を焦ってはならないということが非常に大事なことであろうと思っております。今の文化協定にいたしましても、少なくとも相互主義という点から見ましてこの条約、協定は結ばれなければならぬと思いますが、ただ、これを締結するためにいたずらに、また私が行くために締結を急ぐ、そのために譲歩するということは、これは避けなければならぬということは、事務当局にも、交渉当局にもよく言っておるわけでございまして、あくまでも堂々と交渉してまいる、功を焦るということで成果のみを求めるという今度の訪ソではない、こういうふうに思います。  ただ、いわゆる外相会談を定着させるというところに、私は今回の訪ソの大きな意義を持たせたい、こういうふうに考えております。
  79. 渡部一郎

    渡部(一)委員 突然古い話に戻るのですけれども、高田屋嘉兵衛という人が江戸時代におりました。兵庫県の淡路島の生まれでございまして、当時の一枚張りの帆を張った船を駆使いたしまして、瀬戸内海を出、山口県をぐるりと回り日本海へ出て、そして北海道と青森の間を通り、北方四島のエリアに進出し、ニシンを買い、それを関西圏に売りまして成功した豪商であります。この人は、当時、日本の北方地域に対して侵入してまいりましたロシアの軍人たちと交渉をいたしまして、交渉のあげく、あるときは逮捕され、あるときはついにロシア領内遠くに拘禁され、その拘禁の中でまで交渉し、闘い続けました。そして、当時のことではございますけれども日本の北方領土あるいは北海道等のエリアが彼らの手に落ちるのを防いだ画期的な外交を民間人でありながらなし遂げました。  現在、それを顕彰しようという動きがそこらじゅうでございますが、淡路島の五色町においてはその公園をつくろうなどということも言われておりますし、記念館の小さいのが建っております。先日、私はそこへ行ってみてびっくりしたのでありますけれども、この人を、当時の明治政府は、幕府が終わってからの明治政府は処罰したのであります。処罰したのはどうしてかというと、外国政府と勝手に交渉したというのが結局は問題になっているわけでございまして、幕府は処罰しないのに明治政府が処罰したのでありまして、住居その他、土地は取り上げられ、なくなっております。そして、明治のはるかに後半になってから、当人に対して思い出したように従四位の位が贈られておりますけれども、没収した財産、名誉に対しての回復はございません。  これは、対ソ外交というものを本当に考えていなかったここ百年の姿勢があらわれているんではないかなと私は感じております。歴代の外務大臣でこの人を評価した人はおりません。そしてこの人に対してさらなる叙勲あるいは名誉回復の措置をとられたケースもありません。銅像も除幕されておりません。最近地元がかすかにつくっただけなんです。碑もまたつくられていない。こういうみっともない姿を背景としたまま対ソ外交を確立しようとしても無理なのではないか。日本にとって非常に難しい外交相手でありますがゆえに、こうしたこともお考えいただきまして、安倍外務大臣御在職中に何かの措置をおとりになることを私はお勧めしたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  80. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私も司馬遼太郎の小説なんかで高田屋嘉兵衛の事績等を読みまして大変感銘を受けた思いがございます。明治政府も、維新政府とはいえ随分時代錯誤的なことを政策としてやっている面もあるように、私も当時のことを考えて、いろいろ歴史等も読んでみると感じるわけでございますが、そういう中での高田屋嘉兵衛に対する処罰は間違いだったと私も思います。後で回復しているようでございますが、これは後のことでございます。  今、外務省なんかでも、日ソ関係に非常に熱心な人たちを中心にして高田屋嘉兵衛の研究も進めておるようでございますし、今聞くところによれば、お孫さんが高田屋嘉兵衛の歴史といいますか一生についての調査もいろいろとされておるようで、これを本として著そうという動きもあるようで、外務省としましても、これに対して協力しようということでいろいろと協力関係を進めておるというふうに承っております。
  81. 渡部一郎

    渡部(一)委員 地元で公園などをつくるようなことがあったらお手伝いをしてあげていただきたいし、銅像とか顕彰碑をつくるのでしたら、大臣個人としても適当なことを何かしてあげてはいかがかなと私は思っておるわけであります。その他を含めましていろいろやっていただきたい、考えていただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  82. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私でできることは御協力申し上げたいと思います。
  83. 渡部一郎

    渡部(一)委員 先日来、ソビエトの外交官その他が日本国内を訪問しておりまして、いろいろなところで質問を浴びせております。明らかに外相訪ソを前提として資料収集もされているのではなかろうかと思いますが、その中で先方がひどく気にして説明しておりましたのは、チュルノブイル原子力発電所の事故の問題でございました。私は、これに対して日本側としてはっきり言うべきだと思います。  もう一つは、原油の下落のためにソビエトの外貨獲得の約六割を占める油、石油ガスの代金が大幅に下落しているわけでありますから、金融的に非常にタイトになっていることは目に見えているわけであります。私どもとしては、この交渉の際にはこの二項目について留意していただきたいと存じます。そして、その際に、アメリカの目をかすめて日本側だけ飛び抜けて甘い顔をして特別お金を上げるとか特別原子力技術の提供をするとかいうのではなく、少なくとも西側の結束を固めた上でこの問題についての合意を披瀝し、援助を披瀝するのは結構なことではないかと私は思います。それを日本国だけが、大して国際的に能力があるわけではないのに、単独で、俗語で言ういい顔をするような外交では甚だ危険である。この点は十分お含みをいただかなければならないと思います。  私が特に申し上げたいのは、チュルノブイルの原子力発電所の事故のために日本国民がどれだけ大きな迷惑をこうむったか、社会生活に大打撃を受けたか、この大きな反感についてこの際ソビエト側に周知徹底させていただきたいと思うのです。  それと絡んで申すわけでございますが、文化協定を結ぶにしても、日本側の資料というのは向こうで配ることはほとんど不能なのに、先方のものは何でも配られてくる。「今日のソ連邦」というソビエト側の大きなグラフ雑誌はそこらじゅうの図書館に配られてくる、日本のそこらじゅうに配付されてくる。それだけでない。ソビエト側の農民の雑誌、青年の雑誌、婦人団体の雑誌が配られてくるのに、日本側はソ連に配付することもできない。配付したところは処罰される。また、日本側に対してのソビエトの日本語放送は堂々と到着するのに、これは日本側の遠慮もあるのですが、わざわざ出力を下げた日本の外国語放送、日本語放送はソビエトに全然届かない。日本側が届ける気もない。これは、ソビエト側もけしからぬけれども日本側もけしからぬ。文化協定の前にこうした文化の大きな壁というものをお互いに取り除いて、両方のラジオ放送は両方に入るようにしなければいけない。こういうことのない文化協定というのはナンセンスではないかと私は怒っているのであります。そして、そのようなお互いの考え方、文化的背景に対する大きな壁は相互不信の重大な原因になり得る。  そこで、大臣にぜひお願いしたいのは、先方での交渉において、言うだけを言っていただき、そしてこの壁を突破していただくと同時に、日本側のラジオ放送、テレビ電波等が向こうに入らない状況を直していただきたい。これは国務大臣としてぜひとも手をつけていただきたい。特にけしからぬのは、日本の上空でテレビ電波は楕円形に曲げられている、丸くなっていない、細長く曲げられている。そして、これがソビエト側あるいは中国側に入らないようにわざわざ変形して曲げられておるテレビ電波網を持っておる。こんなばかなことをやっておるケースというのはヨーロッパにおいては珍しい。私は異常ではないかとさえ思う。これは気兼ね外交、主張しない外交、びくびく外交、軟弱外交そして日ソ間の相互不信増強外交であるとまで私は思うわけです。もちろんこの問題には、韓国政府日本政府のテレビ電波あるいはラジオ放送等について非常に警戒的な態度をとっておられることで、理由があるのかもしれませんけれども、そのようなことばかりで、交渉をしないで放置したまま現状を容認するということは危険だと私は思っておるわけであります。したがって、日本海のど真ん中で何が起こってもわからないぐらいお互いのことがわからない。日本国の漁船が日本海の真ん中で大きな網を引いていると、それをぶった切って走るソビエトの船がある。抗議するすべもなければ、何が起こっているかを向こうに伝える方法もない、お互いにただにらみ合っておる、こういう状況は、マスコミがその機能を発揮しないからであると私は思うのです。そういう状況はぜひ直していただきたいと思うのですけれども、いかがですか。
  84. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 チュルノブイルの問題につきましても、ソ連でも非常に深刻にこれをとらえて、きょうのタス通信なんかも、通報がおくれたというようなことをみずから言っているようでございますし、我々その他の国々としても最大の関心を持ってサミットでもわざわざ声明を発したということであります。これはただソ連のみの問題でなくて、世界の問題であるし、全人類の問題であるわけで、こうした原子力の平和利用については、お互いに通報体制協力体制、相互支援体制を強化することが今ほど大事なことはないと思っております。IAEAにソ連も入っておりますし、秋の総会等も開かれるわけですが、ここでのそれに向かっての協力体制を進める。そういう意味では、私が行きまして日ソ間で話をするということは、いわゆる西側の立場で外相同士が話をするということは恐らく初めてになるかもしれません。何とかこうした原子力の事故についての世界の協力体制というものを進めるために、積極的、建設的な議論をしたい、こういうふうに思っておりますし、また日ソ関係についても、医療については、日本の原子力の平和利用におけるこうした災害の医療対策は世界の中でも相当進んでおるようで、早速ソ連に対して、いつでも協力しますということを申し入れたわけでございますが、返事がないわけでございます。こういう点等も、せっかくのことでございますから、具体的に政府間で話をしたい、こういうふうに考えております。  それから、文化協定については今せっかく最終段階議論いたしておるわけでございまして、この議論を我々見ておるわけでございますし、両方が満足すべき形で合意しなければならぬ、こういうことでございます。体制が違うということでなかなか難しい点もあるようでございますが、今おっしゃるような相互主義というものを踏まえた形でこれは決着しなければならない、こういうふうに思っております。既にアメリカがソ連との間の文化協定を結んでおるわけでございますし、そういう点等も十分参考にしながら、しかし日本日本独自の立場で、相互主義ということを踏まえて、お話しの点も十分留意しながらさらに努力を重ねてまいりたいと考えております。
  85. 渡部一郎

    渡部(一)委員 日ソの文化交流に多くの障害例があると思われていますが、この点外務省はどういうふうに認識しておられるのか。これは外務省だけの問題ではないと思うのです。それはなぜかというと、文化交流に障害をつくっておけばおくほど、軍備というものは相当の高いレベルにならざるを得ない。軍備を両方で引き下げるためには、文化交流をし、意思交流をし、人事交流をし、信頼できる相手だとわからないといけない。そのために費用を使わないで、安全保障の問題になると装備ばかりを拡大しようとする。私は、そこのところが極めて不満ですね。ソビエトとの文化交流の問題になると、防衛庁は知らぬ顔をしておる。それは文部省の所管で、外務省の所管であるというような態度が見え見えである。これは、平和を戦略的に創造するためにはどうしなければならないかという観点から、防衛庁も考えなければいけないテーマではなかろうかと私は思うのですね。その点が、総合安全保障を考慮すべき委員会等において考慮されておる気配がない。ある者は潜水艦の数を勘定し、ロケットの数を勘定し、軍人さんの数を勘定する思考ばかりである。そういうやり方では、日本憲法を想起しても、身分不相応の軍備を拡大するのみで適切ではないのではないかと思うのですね。この点は御答弁は要りませんが、今後考えていただきたい。  外務大臣、ここで、文化交流の障害例としてこんな話があるんだそうで、日本側の留学希望が多い割に、交流人員の枠が欧米諸国より極めて小さい。十カ月以上の長期留学の期間が、日本側、ソビエト側両方から勝手に短縮される。次に、大学院生などの若い人の留学が全くできない。ほとんどが、年をとった教授たちが優先される。若いうちに留学しなければロシア語の習得さえ不可能であるという状況である。また、ソビエト側の古文書、古記録を保管しているアルヒーフ(文書館)というものは、日本側の留学生は利用できない。また、ソビエト内に日本文化センターが設置されていない。こうしたような問題点が幾つかあるようでありますが、今回の文化協定の交渉では、そうした点は取り除かれるべく努力されておられるのかどうかお尋ねしたい。
  86. 波多野敬雄

    ○波多野政府委員 交渉中の案件でございますので詳細に立ち入ることは避けたいと思いますけれども、資料の配付の件を含めまして、今お話のありました幾つかの案件については目下鋭意交渉中でございます。  ただし、先ほども言及がございました国際放送の件につきましては、これは文化交流と言うよりも別途の問題だと思いますので、NHKの国際放送網の強化という観点から対処いたしたいと思います。
  87. 渡部一郎

    渡部(一)委員 対ソ交渉という難物に対して、私は厳しくいろいろ申し上げました。これは、我が国国民もまた対ソ交渉の難しさを知らなければならないのに、その難しさというものがわからないまま、期待だけ多い中で大臣を訪ソさせることの危険性を私は十分認識せざるを得ない立場にあるために申し上げているものでありまして、その点、御理解いただきたいと思います。  ただ、防衛庁の方に代表して答えてもらいたいけれども、対ソ交渉——きょう来られておるのは装備局の方かな。それじゃちょっと無理だな。じゃ、やめておこう。これは後にして、伝えておいてもらいたい。対ソ戦略を立てるならば、どうして相手の国との間を平和に維持するかという問題について戦略を立てなければいけない。これは防衛庁の所管の問題でないなどと澄ましておると、こうした問題についてのテーマがどんどんおっこちてしまって取り返しのつかない事態が生ずる。そこのところを十分考えてもらいたいとお伝えいただきたい。よろしいですね。  最後に外務大臣、サミットについての御評価を今いろいろ述べておられた。同僚議員に対する答弁の仕方を見ていて、同僚議員が非常に庶民的にお述べになったので、あなたはちょっと街頭演説をやるような調子でお答えになったので、私はちょっとたしなめておきたいと思うのです。  それは、今回のサミットは成功した、経済の方向もいい方向に打っちゃった、もう何にも言いわけしない外交で頑張るぞなどと、非常に単純に言うと、そういう調子でお話しになった。これは街頭演説ではいいかもしれないが、国会の正式の委員会で言うには少し乱暴ではなかろうかと私は思う。それは非常に危険なポイントが何ポイントかあった。例えば円高不況の問題について、日本国としては非常に問題があったのだけれども、その問題について一定のくさびを課することは、議題に上げることも失敗してしまって、結局、今後の総括的な打ち合わせの中でそういう問題が処理されるというようなやわらかい協議がなされた。ある意味では大枠であり、ある意味では即効性のない打ち合わせが円高問題についてはでき上がったというのが正確なところでしょう。  またリビア問題については、世界じゅうのテロはいかぬというのは明快に打ち出した、リビアという字を入れないように日本外交は必死になって努力をした、しかし最後はとうとう押し切られて入ってしまった。そしてアメリカの国務長官はそれを高く高く評価し、レーガンさんも高く評価し、サッチャーさんも多く、高く評価し、凱歌を上げながら帰っていった。日本外交に許されたのは、それに対する適当なコメントを日本風に述べることが許されたにすぎないではないですか。  また、サミットにおけるASEANとの問題でありますけれども、ASEANの問題について、確かに中曽根さんの議長総括の中には、ASEANの諸問題について、「サミットがアジア・太平洋の地で開かれたという意義を十分に認識し、この地域の当面する諸問題について話し合いました。」と書かれている。私はここを注目して、公明党の、サミットに対する評価の党声明の中で、アジアの問題を取り上げた政府態度を高く評価すると述べたのです。その立場から言うのですけれども、しかし十分ではなかった。十分でなかったからこそ、その後東南アジア諸国連合がどういう反応を示したかと言えば、新聞記事その他を通して知るところでありますけれども、インドネシアのバリ島でレーガン大統領にASEAN側の要望を列挙して伝えたけれども、一次産品問題を初めとして、適切なものは文章の中には織り込まれていなかったというのが彼らの正確なコメントでしょう。  そうすると、このサミットの問題について、私は今攻撃しているのではなくて、評価として、大臣が述べられる言葉としては、サミットについては、いろいろ今後努力し、片づけなければならないテーマがたくさんあることを認識しておる、大体の方向としてはいいとしても、今後処理すべき問題が、難問が多数今後も残っており、それは安倍大臣として、今後も努力したいと思う、特に安倍総理となるならば、積極的に努力するであろうとかなんとかと言われるのなら私は納得できる。だけれども、さっきみたいな言い方はうなずけない。あんないいかげんなことを言われるというのは見識が問われる、総理への道を遠くするものであると私は思う。一言小言を述べます。どうぞ御感想をいただきまして、私の質問といたします。
  88. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 最後におっしゃったようなところが私の本当の考え方なんですね。ただ、割り切って、成功か失敗かと言われると成功だ、こういうことを言わざるを得ないわけでございますが、しかしやはり内容的にはこれからフォローアップして実行していかなければならない課題が山積しておる、こういうことは十分認識をいたしておりますし、大いに努力をしてまいりたいと思います。
  89. 渡部一郎

    渡部(一)委員 結構です、どうも。
  90. 栗原祐幸

    栗原委員長 永米英一君。
  91. 永末英一

    ○永末委員 外務大臣が今回の訪ソの日程を総理大臣に伝えて、総理大臣もじゃ行って御苦労願いますと申したのは十六日の朝ですか。
  92. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 十六日の閣議終了直後、朝でございます。
  93. 永末英一

    ○永末委員 十六日には中曽根総理大臣は、今会期の終了後臨時国会を開いてそこで解散したいということの底意で、既に現在の内閣に所属しておる大臣にいろいろなことを連絡しておると伝えられております。あなたも伝えられましたか。
  94. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は何もお話は聞いておりません。
  95. 永末英一

    ○永末委員 あなたの訪ソ日程は、五月二十九日出発、六月一日にお帰りになると伝えられておりますが、外交日程でございますから相手方もそれを承認していることだと思います。  あなたの日程をおつくりになった前提には、この会期は五月二十二日に終了する、だから会期が終わったんだから行ってこよう、こういうことも日程をつくられた前提だと思いますが、間違いございませんか。
  96. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 まさに、大前提としてはそういうところでありました。
  97. 永末英一

    ○永末委員 さて、あなたがこの日程を伝えたときに、伝えられた中曽根総理の方は頭の中で、臨時国会を開いて解散でもというようなことを考えておったようでありますが、あなたの方は会期が終わって、であるから国会会期とは無関係に出発したいという意向は相手方に伝わったと思います。  だといたしますと、この臨時国会召集というのは、過去四十数回ございますが、その八割は七日前ないし二十三日前に公布されているわけですね。これは閣議決定が行われて公布されております。例外は少しございます。したがって、あなたが二十九日に出発されるまでに、閣議で臨時国会召集などということが相談になった場合、あなたは賛成されますか。
  98. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 まだそういう事態になるのかならないのか、今会期も終わらないわけですから、終わらない前に我々が臨時国会の話をするということはちょっと不見識じゃないだろうか、こういうふうに思っております。
  99. 永末英一

    ○永末委員 私も不見識だと思う。我々はこの会期内で重要案件を処理することをそれぞれの国会内における各政党間の機関で交渉してやってきた。その一番の大きな案件が公職選挙法における定数改正の問題であった、これはもう天下周知の事実である。したがって、この定数改正の問題を今会期、すなわち五月二十二日中に片づけようということで一連の交渉が行われてきたわけで、大体その日程が決まって、二十二日中には定数改正が行われるということが、まさに与野党間の合意に達したその直後に、あなたのところの総理大臣は別のことを考えているというのだな。これが我々野党のみならず、あなたの与党内においても極めて大きな不信感を抱いておるのが、まさに現在の政局の混迷の原因なんだ。あなたは中曽根内閣の有力な閣僚の一員であり、あなたの派閥のまさにトップの一人なのだから、私はこの政治的混迷の中で訪ソせられるということはいかがかと思うわけです。  したがって、正式に今、開会中に臨時国会などということを議論するのはまさに不見識である、私もそう思います。ところがそれをやっておる人がおるものだから、あなたにこれだけは聞いておかなければならぬと思います。  その意味合いで、仮定の問題だというけれども、二十二日に会期が終わるかどうか、これからの問題でありますけれども、まさか国を代表してソ連に重要な案件について、やっと八年ぶりに再開された日ソ外相会議の第二回目を日本側から訪ソして外務大臣がやっていこうというときに臨時国会、それは解散する国会を私は承認してまいりました、じゃ話にならぬと思うのですが、いかがですか、
  100. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今おっしゃるようなことは、これは政局ですし、また政治そのものですから、どういうふうになっていくのか、まだお話のように通常国会が無事に終わるかどうか、我々は終えたいと思っておりますけれども、いろいろとまた議論もあるように思っておりますし、また、定数是正を通すというのは我々国会議員としての責任でもあろうと思って、何とかこれが通ることを、我々は局外に立っておりますけれども祈っておるわけでございます。  同時にまた、私の訪ソについては政局の動きはいろいろとあるだろう、しかし政局の動きとは別に、やはり日ソ関係の今後というものを考えるときにそういうものにとらわれないできちっと、外交関係ですから別の立場で、いわゆる違った次元で確立しておかぬといかぬということで日程等を政局問題とは離れてどんどん進めて合意に達したわけでございますし、私は、これは両国の大体合意したことでございますから、何としても実行はしなければならないと思っております。
  101. 永末英一

    ○永末委員 一国の外務大臣としては、政局いかんにかかわらず、日ソ間の国交の現状から見て第二回の定期外相会議が行われるべしということで日程をお考えになった。しかし、あなたは日本の政界における有力なる政治家であり、政局を左右し得る力を持っている政治家である、そういう政治家であると相手方も判断しておればこそ、あなたの訪問を待ち受けて何かを考えているに違いない。その人が政局の動向とおれは無関係なんだ、それは外務省外交ですわな。政治家のやる外交じゃない。  あなたの訪ソということは、この人は次の総理大臣になるのかもしれぬ、こういう気構えで臨まれるのと、解散があって負けたら外務大臣を首になるかもしれぬ、こう相手方が思って対応するのとでは全然違うわけだ。したがって、全責任を負って訪ソせられるあなたの方でも、やはり政局の見通しをちゃんとつけながらやっておられると思う。無関係です、それは聞こえませんよ。政局の見通しをつけながら、もしこの訪ソに対して政局の動きが影が差すようであるならば、その影は払いのけてでも対ソ交渉を成功させたい、これがあなたの決意と違いますか、伺いたい。
  102. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私の訪ソというのは、おっしゃるように事前に相当時間をかけて準備をして、ソ連側とも話し合いをずっと進めてきた案件ですから、その中にあって実は余り政局問題を考えますと、とにかくこれはなかなか進めるわけにもいかない。しかし確かにおっしゃるように、日本外務大臣としてやらなければならぬということで、私がむしろ決断をしてこれを進めてきたいきさつがあるわけでございます。  大体見当としては、二十二日に国会が終わるし、二十九日からぐらいは国会は恐らくないだろう。ですから、その間ならまあ行けるだろう、大丈夫行ける。私も参議院選挙に入る寸前としても、それだけの時間は十分とらなければならぬ、こういう大まかな見当で実はソ連と話をしてきました。  その後、いろいろ問題が今起こってきておるわけでございますけれども、そうした大まかな見当でやってきておって、それをまた最近、事前にいろいろのことが起こったからといってそれで政局の動きで日ソのこうした訪ソなんというのが揺れるようなことがあっては、これはもう二国間の外相同士の約束事でございますから、日ソ間に大変悪い影響を与えますから、何としても、どういうことになるとしてもこれは実現をしなければならぬ、こういうふうに思っておりますが、今私は、全体が予測したとおりの静かな雰囲気の中で、堂々と訪ソできることを期待しております。
  103. 永末英一

    ○永末委員 今あなたがおっしゃったように二十九日の設定は、二十二日の会期が終了し、国会事項で煩わされない期間だということがあなたの構想の根拠になったと伺って、それは当然だと思うのです。しかも外務大臣としては、どういうことになるにしても堂々と日ソ交渉はやっていきたいと。そのどういうことになるにしてもじゃなくて、堂々と交渉するためには、あなたにとって一番いい環境をつくることはやはり政治家としてのあなたの努力すべきことです。何か政局は安倍という政治家を別にして動いておるが、おれは関係なし、そうじゃないですよ。日ソ交渉は中曽根内閣だけに関係ある問題ではなくて、長年の内閣が一生懸命やってきたことであるし、これから先の内閣もやらねばならぬ。そのある新しい段階になった、その焦点に今あなたはおられるわけだから、これは堂々としてやっていきたい、そのために、内閣総理大臣にある時期におる人が妙なことを考えて、あなたのこの舞台を汚すような、あるいは影を投げかけるようなことがあったら、あなたは排除して、そんなことはだめだよ、堂々とおれは交渉してき、ソ連が見ておっても、なるほど日本の政局は一人の総理大臣が妙なことを考えたかもしれぬが、ぴしゃっと軌道に乗って、それを背景に外務大臣が来ておるんだ、こう思わせるのが日ソ交渉成功の第一じゃございませんか、この条件を設定することが。あなたのお考えをお聞かせ願いたい。
  104. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 しかし、まだ状況を私は何も相談を受けておりませんし、表立った話があるわけでもないし、円高問題をどうするかとか、これはやはり国会が終わった段階で、政府与党立場としてのいろいろと責任ある対応策というものが論議されなければならぬ、それに関連していろいろ政治の日程等も論議されなければならぬし、それはそれなりに議論に我々も政治家として、政府与党の重要閣僚の一人として参加するであろうと思うわけでございますし、それはそのときになっていろいろ事態を考えて議論を尽くせばいいのじゃないか、こういうふうに思っておるわけでありまして、今総理大臣がどういう腹なのか、私も実は聞いてみたいところなのですが、まだわからないものですから、今妙なことを考えているとかいろいろ言われますけれども、そういうところは私、まだはっきりつかんでいないところです。
  105. 永末英一

    ○永末委員 いや、あなたの率直なお考えは、まことに我々と同じでございましてね。あなたが総理大臣に会ってこの日程を伝えられ、総理大臣が、御苦労ですが、どうぞお願いしますと言うた、その直後に開かれた外務委員会総理大臣が出てきて、そして、円高をどうするかということは重大な問題だから参議院選挙なんか待っておられませんと、その本院の外務委員会で言っておるわけだ。しかもその参議院選挙なるものは、日程が決まっておらぬ段階でそんなことを言っておる。私は、外務大臣に会って——何を言うたのだろうと本当に疑問に感じたんですね。わからぬ期間を前提にしておって、それを円高は待っておられない。しかも円高の問題などは、外務大臣は重要閣僚の一人として、どういう対策が行われるか、これは外国も注意しておるわけですから、あなたが参加しないような円高対策はできやしませんよ。にもかかわらず、総理大臣の頭の中には六月一日から五日までの解散などというものがちらついていると伝えられる。おかしいじゃないか。日ソ交渉がそれまでにあるのに、そんなことを言っておる。もしやろうとするなら、我々は、先週の話でございますから、会期中に法律改正によらざる円高対策ができるから、早速やれと言って、共産党を除く四野党の党首が会合いたしまして、与党の党首である中曽根総理に党首会談を申し入れておりますが、ちっとも会おうとせぬわけです。こんなの、おかしいですね。できることなら、野党が協力するから今会期中にやろうじゃないか、それを受け取って、よっしゃ、ひとつ相談しようと言いもしないで、よそ向きには、何か臨時国会を開かねば円高対策はできないかのような放送をしておる。外務大臣を抜いてそんなことをやっちゃいけませんよ。あなたが訪ソせられますと代理大臣ができますな。まさかその代理大臣があなたのかわりに、臨時国会召集なんかに賛成しませんでしょうな。
  106. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 そういうことはあり得ないことだと思います。
  107. 永末英一

    ○永末委員 結構です。それはそうですよね。あなたが国を代表して重要な対ソ交渉に行っておられるときに、その代理が、国の政局としては重要な解散に署名するなど、そんなことはありません。あなたの御決心、まことに結構でございます。  さて、先ほどあなたの御発言にちょっと間違いがあったので御意向をただしておきたいのですが、議長が定数問題で見解を野党の書記長、幹事長に示しましたときは調停でございました。あれは裁定ではないのです。これは重要な問題でございまして、議長裁定ならば、議長裁定をゆだねた国会を構成している各会派は、これは裁定は守らざるを得ませんよね。しかし、調停であるならば賛否は別でございまして、だから、あなたは裁定と言われたが、調停であることを私はお告げをしまして、もう一遍あなたのお考えをお聞かせ願願いたい。
  108. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私の発言が間違ったとするならば取り消させていただきます。議長調停ということでこれに従ったというふうに、党としての態度を、私も党員としてその立場を述べたわけでございます。
  109. 永末英一

    ○永末委員 そこで、先ほどから言われるとおりで、あなたのお考えはほぼわかりました。つまり日ソ交渉を成功させるために、あなたは外務大臣として、また政治家として全力を尽くしていただく。それに影を差しかけるような妙なことは、あなたは政治家として断じてさせない、その御決意で今おられる、そう承知してよろしいな。
  110. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはいずれにしましても、とにかく我々の、政府でありまた与党としての出処進退でございますから、やはり堂々と議論を尽くして、そういう中で生まれる結論であろう、こういうふうに思います。そうでなければならない。今いろいろ出ておることは全く側面的な話でありまして、正面から私たちはこれを聞いておるわけじゃありませんし、その時点になって、総理大臣総理大臣としての御見識があるでしょうし、我々は我々としてそれぞれ政治家としての考え方を持って対応をしなければならぬ、こういうふうに考えております。
  111. 永末英一

    ○永末委員 先ほど、この訪ソに影を差すような企ては妙なことだとおっしゃった。私も妙なことだと思う。妙なことにならぬようにひとつ努力をしていただくよう、これを強くあなたに申し上げておきます。  さて、いよいよモスクワヘ行かれますと、いろいろな交渉がございますが、一つの問題、こんなことがございました。十三日にソ連共産党の日本関係責任者でありますコワレンコさんがやってきまして、我が党と会う、お会いをいたしましたときに、人道的に北方領土四島の墓参に対してはビザを発給します、こう言うものですから、何を言うか、我々は、あそこは我々の領土だと思っている、あなた方が今不法占領しているだけであって、したがって、あなた方の国のビザをもらって行く筋合いはない、既に十年以上前に墓参したときもビザなどはもらっていない、日本の国の中の沖縄がアメリカの占領を受け継いできた時代も、アメリカ国のビザなどはもらっていない、人道的と言うなら国家など出さずに素直にやったらどうかと強く言っておきました。この件に対する外務大臣の御意見を承りたい。
  112. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 それは大変ありがとうございました。我々としましても、十年前までいわゆる身分証明書で墓参ができたわけでございますが、それからずっと十年間はその道が閉ざされたわけでありますし、何としてもそうした十年前の姿に持っていきたいというのが私の考えでございます。これはあくまでも人道的な立場ということで、ソ連側に強く求めてまいりたいと思います。
  113. 永末英一

    ○永末委員 それからそのときに、先ほどあなたから言われたことですが、我が国は広島、長崎で原爆を受けたものだから放射線治療については非常な経験を持つ医師群がたくさんおるんだ、あなたのところ、お困りだろうから、もし望むならば我々の方から医師団を送ることができると思うが検討したらどうかと言ったら、黙っておりましたが、頑張ってください。  さてソ連は、ことしの二月十五日に核廃絶の今世紀中三段階方式なるものをゴルバチョフ書記長が提案いたしました。しかしそのときの前提は、アメリカが宇宙兵器開発をやめることである、こういうことが前提でございました。これに対して、ソ連共産党大会が行われる二、三日前にレーガン大統領が返書を送りました。その中には、核廃絶の基本方向は賛成のような文脈でございますが、宇宙兵器開発、いわゆるSDIの研究開発は続けるんだ、前提だ、こういうことで真っ向から核廃絶問題がにらみ合ったままの形になっておる。  さて、あなたの対ソ交渉の一つの課題は、核軍縮に対して一体どうやっていくかが一つの課題でなければならぬと私は思います。過般の外務委員会中曽根総理にそのことを聞きましたところ、彼いわく、国連憲章の精神に合わせて日本は核廃絶を主張するんだ。私が申し上げましたのは、我々は核をつくらない非核三原則の国である、その非核三原則の国が核を持っている超大国に対して核廃絶の話をしに行くためにはどういうバーゲニングパワーを持って行くのか、持っておるならばここで明らかにせよということを中曽根総理に申しましたが、彼が答えたのは、国連憲章の精神に照らして、昔の教育勅語じゃあるまいし、国連憲章の精神をみんなが持っておったらもっとうまいことできますよ。国際情勢というのはそうじゃないわけであります。したがって、SDIに対する態度も、研究中でございます、検討中でございます、ただ一本なんです。しかし、あなたがもしこの問題を出されましたら、SDIに対する安倍さんの意見は何なんだということを聞かれますね。いや、研究中でございます、研究中というのは参加することもこれあり、参加しないこともこれあり、フィフティー・フィフティーでしょうね。しかし、核廃絶の話を舞台に上げて、そして核軍縮の話をされるとすると、我が方のSDIに対する態度だけははっきりとソ連に伝えなければ、交渉は進展しない。この点に関するあなたのお考えを伺いたい。
  114. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 まず核につきましては、核はなくならなければならないと唱えるだけでなくなるわけではございませんし、やはり実効的になくするという方法を考えることが必要であることは申すまでもありません。お互いに信用できるような枠組みの中で削減し、また廃絶に向かうことが基本である。そのためには現地査察であるとか検証ということが重要でございまして、ゴルバチョフ提案に対してレーガン提案がそういうことも訴えております。  いずれにしても、まず米ソのジュネーブの会談が今後とも継続して、これが具体的な成果を上げることを期待しておりますし、第二回の米ソ首脳会談が、核問題も含めて議論が行われることも我々としては非常に強く期待しておるわけです。そういう中で日本が国連あるいは軍縮委員会等におきまして核廃絶あるいはまた全面核実験禁止等を強く提唱もいたしておりますし、また具体的な検証措置を伴ったステップ・バイ・ステップ方式等も提案をいたしております。これは相当各国の理解を得ておると私は思っております。  なお、SDIにつきましては、アメリカも研究しておりますが、ソ連も研究しておることははっきりしておるわけでございます。そういう中でアメリカから日本へ呼びかけられまして、SDI研究について参加してほしいという要請があるわけでございますが、日本としましても、ヨーロッパ諸国もそれぞれの国の独自の対応で協力関係を進めておりますが、日本日本の持っておる特別な立場というものもありますし、そういうものも踏まえながら、検討するところはやはり十分検討していかなければならぬ。一回や二回でなかなか検討は済むものではございませんで、調査団を派遣しまして三回詳しい調査もやりました。そして二回閣僚会議も行いましたけれども、私から言わせると、まだまだ序の口だというふうな考えでございますし、もっと研究を進めて、納得する形で結論は出さなければならぬと考えておるわけであります。
  115. 永末英一

    ○永末委員 時間が来たようでございますが、答弁が長いので時間が超過したので、もう一問だけ、簡単ですので。  ソ連は中距離核弾頭、この中にSS20が含まれるわけですが、これは宇宙兵器や戦略核兵器の問題と切り離して考えるということをゴルバチョフ氏も大会における演説で明らかにいたしました。そしてそれはそのときに、欧州地域におけると限定はありましたが、我々もまたSS20の射程距離にある国でございます。したがって、今度行かれましたら、そういうことを言い切ったんだから、ほかの核の問題と切り離して、我々は非核国なんですから、アメリカとは安保条約関係にございますが、どうやれば一体アジアにおけるSS20の脅威が少なくなるような方途があるか、これはぜひ談判してきていただきたい。お考えを願いたい。
  116. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 全くおっしゃるとおりでございまして、SS20の射程距離にあるのは、アメリカ本土でなくて、日本であるし中国であるわけでありまして、我々としましては、INFに対してのゴルバチョフ提案もそれなりに承知しておりますが、しかしヨーロッパに主力が置いてありまして、やはりアジアというのが抜けておる。そこで、レーガン大統領にも我々提案したわけですが、SS20を含んだINFの削減、撤廃問題についてはグローバルな形でぜひやってほしいということでございます。この点につきましては第一回目もシェワルナゼ外相と議論いたしましたが、二回目に当たりましてもぜひともさらに突っ込んだ話し合いをしてまいりたいと思っております。
  117. 永末英一

    ○永末委員 ちょっと時間を超過して、相済みません。
  118. 栗原祐幸

    栗原委員長 東中光雄君。
  119. 東中光雄

    ○東中委員 さきのサミットに関連をして、国際テロに関する声明が出されたわけです。この声明の中には、国際テロに対しては仮借なくかつ妥協なく闘うという、これは当然だといえば当然でありますが、闘わなければならないということにして、リビアを名指しにした。リビアが国際テロに関与しておる、共謀しておる、支援しておるという前提でリビア名指しての声明が国際的にされておるわけですが、この中にはリビアに対する軍事的行動を、仮借のない闘いとしてそういう行動も含まれておるという趣旨になるのか、それは別だということになるのか、この声明の立場をお伺いしたいわけであります。
  120. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 テロリズムに対する声明については、一般的な形としては断固としてこれに対処しなければならぬ、こういうことを考えておりますが、具体的に今おっしゃるような軍事措置とかそういうものは声明の中にはもちろん含まれておりません。
  121. 東中光雄

    ○東中委員 レーガン大統領がその後の記者会見でいろいろ述べておられますが、テロ支援国、すなわちリビアですが、必要な手段は行使するという趣旨のことを言って、軍事行動は特に必要だとしている、時には必要だとしているということで、サミットで具体的行動についていろいろ検討したという趣旨のことを言っております。全部を載せたわけではなくて、適切なものだけを対処措置として載せたんだ、そのほかに軍事行動も含む、あるいは具体的な行動についての秘密的な合意が、あるいは話し合いがあったかのように受け取れる、そういう記者会見をやっておりますけれども、その点はいかがなんでしょう。
  122. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 合意ができたのはこの声明の内容だけであります。もちろんアメリカは、大統領にしても国務長官にしてもリビアに対する攻撃についてはアメリカの立場から説明があったことはそのとおりでございます。ただ、合意したという点は、声明に盛られた内容だけを合意したわけでございます。
  123. 東中光雄

    ○東中委員 声明書には「仮借なくかつ妥協することなく闘わねばならない。」第一項の締めくくりはそうなっておりますね。あとの対処措置を六項目並べておりますけれども、それは合意した分だけれども、それ以外に、それは発表することが適切だと思うものについて合意文書として発表しておるんだ、そのほかにないということではないんだ、だからどうも軍事的な行動、アメリカがその立場で管轄内において国際法に従っているというあの条件つきで行使をする軍事行動をもこの声明は容認をするというか、あるいは支持するといいますか、そういう内容を含んでいるんじゃないかというふうに思うのですが、それはどうなんでしょう。
  124. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 それは全くそうではありません。リビアに対するアメリカの爆撃そのものに対しても各国で見解が分かれておるわけでございまして、それがサミットにおいて一致したということはあり得ないことであります。全くそういう事実はありません。
  125. 東中光雄

    ○東中委員 五月六日のスピークス報道官の話でも、リビアに対する措置の中には軍事制裁が含まれるとの見解が明らかにされておりますし、「軍事行動が妥当な場合には、軍事行動がとられる」ということをも仮借ない処置の中に入るんだ、それはそれぞれの立場においてということになると思うのですが、そういう趣旨のスピークス報道官の記者会見があったと思うのですが、この点どうなんでしょう。
  126. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 声明にはそういうことは盛られておるわけではありませんし、サミットでまたこれ以外に合意したということは全くありませんし、今のスピークス報道官の説明がどういうことか私もよく具体的には承知しておりませんが、これはアメリカの立場というものを説明したのじゃないだろうか。これは決してサミット合意を背景にしたものではない、そういうふうに思います。
  127. 東中光雄

    ○東中委員 それじゃ四月十四日のアメリカのリビア爆撃についてでありますけれども、これについての考え方というのはレーガン大統領が同日の夜演説をしておりますし、スピークス報道官もこれについて言っておるわけでありますが、いずれも西ベルリンでテロリストがナイトクラブを爆破した、それがカダフィ大佐のテロ体制下での行動だ、要するに、リビア政府の指示なり命令なり支援なりのもとでやられておるものだということを前提にして、しかもそれが組織的に、計画的にやられたものであるから、しかもそのほかにもやりそうだからという趣旨のことを言って、そういう計画が明らかであるからということで自衛行動だという主張を、レーガンもスピークス報道官もそういう立場を明らかにしておるわけです。それについて、それなりの理由はサミット前後に十分聞いて、日本政府としても理解を深めたという趣旨の発表をされておるわけですが、その理由、根拠を聞くことによって、これはアメリカの自衛行動、あるいは自衛権の発動というふうに日本政府は了解をしておるということなのか。それは自衛権の発動ではないというように考えておるのか。そこいらの点はどうなんでしょう。
  128. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 リビアに対するアメリカの攻撃、爆撃につきましては、キャンプ・デービッドでアメリカ側から事前通報ということではありませんが、米としては、西ベルリンにおけるディスコ爆破事件にリビアが関与していた証拠を有していること、また将来同様の事件が再発する可能性もあることにつき説明がありまして、米国は近いうちに必要な措置をとる可能性、対リビア攻撃を行う可能性につき一般的な形で話がありました。そのとき、私はアメリカは何らかの措置をとるという感じを持ったわけですが、その後アメリカ側から詳細に、リビアが関与しておるという具体的な証拠を挙げての説明が実は日本に対してありました。これはアメリカだけではなくて、ヨーロッパの国からもあったわけでございます。そういう説明を我々も十分承りまして、日本としましても、リビアが関与しているという認識を深めたわけでございます。これは報道官の発表ということで、日本政府立場を公表いたした次第でございます。  そうしたことを踏まえてサミットにも参加をし、したがってテロ声明にも参加をしたわけでございます。ただ、アメリカのリビア攻撃そのものにつきましては、従来日本政府が申し上げておりますように、米国が今回の攻撃をリビアのテロに対する自衛のための措置であると説明をしていることについては、米国としての理由はあるであろうが、詳細については承知をしてないので事態の推移を重大な関心を持って見守るということが我が国の公式的な見解でございます。これ以上のものではないわけでございます。
  129. 東中光雄

    ○東中委員 事態を十分承知していないので推移を見守る、拡大しないように、こういう当時の外務大臣見解といいますか、態度を表明された、これは私もよく承知しておるのであります。その後事態の推移を見て、事情を聞いて、リビアが関係しているということを深く認識をした、その当時はわからない、だからその後認識を深めた。その深めた結果一体どうなんでしょう。これは自衛権の行使だというふうに日本政府は思っているのですか。あるいは、深めてみたけれども、これは自衛権の行使とは日本政府としては言うわけにはまいらない、ただそれを見ているだけだということなんでしょうか、そこらの点を聞きたい。
  130. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは後、具体的には条約局長から説明させたいと思いますが、アメリカが自衛権の発動だと言っております、これはいわゆる国連憲章に言う自衛権の発動だということだろうと思うわけでございますが、それにはそれに伴ういろいろの要素といいますか、要件というのがなければならぬわけでございます。  我々はリビアが関与したという認識を深めたということは、そこまでは日本ははっきりしておるわけでございますが、果たしてアメリカのそうした、アメリカはそういったことを言っているが、しかし、国連憲章に言う自衛権の発動というその内容について具体的に我々がそこまで承知しているわけではありませんから、現在に至っても、先ほど申し上げましたような日本の基本的な考え方を変えるということにはなっておりません。今までどおりの立場日本としてはとっておるということでございます。
  131. 東中光雄

    ○東中委員 これは、私非常に重要だと思うのですよ。アメリカが現実に爆撃をやったわけですから。自衛権の行使だ、国連憲章五十一条に該当、適合しておるのだ、大統領がそう言って、現実に爆撃をした。これは自衛権発動、戦争行動としてやったということを意味しているわけですね。世界じゅうをちょっと震駭させた、ある意味では。そういう攻撃がやられたのに対して日本政府は、リビア政府が関与しておることはよくわかった。しかし、それは自衛権の行使なのか。自衛権の行使でなかったら、逸脱しておれば、それは侵略行為となりますね。自衛権の行使として言っているけれども、自衛権の行使でなくての武力行使だったら、これは明らかに侵略行為です。それがどちらかわからぬ、今になってもわからぬというのでは、これは認識を深めただけで、わからないのだ、まだ見ておるのだ、これでは通らないと私は思うのですね。  このことに関連しまして、日本政府態度がはしなくも、この百四国会で自衛権の行使に関連をして、領域内に対する武力行使があった場合に自衛権を発動する場合のほかに、いわゆるシーレーン有事という名前で提起された問題がありますね。それについて条約局長が有権的立場ということで、防衛庁長官がそう言っている中で説明をされた。領域への攻撃、いわゆる日本有事、それから領域外での攻撃についてのシーレーン有事、これは簡便な言葉であって正確ではないというふうに言われた上で条約局長が答えたことの中に、「我が国の領域に対する攻撃だけではなくて、我が国の船舶、航空機等に対して先ほど来申し上げておりますような多発的、計画的な、組織的な攻撃が行われる場合」、そういう場合は個別的自衛権の行使の対象になる、こういう答弁をされました。ここで、シーレーン地域においてという矢野質問の前提は不正確であるということで、シーレーン地域においてなんという前提はつけないで答弁されているわけです。しかも、「船舶、航空機等」と書いてあるのです。この「等」は、船舶、航空機に入らない、例えばディスコで日本人がいるときに、それに対する武力攻撃があった、それが一回きりじゃなくて多発的である、しかも、それは国が関与しておって、計画的、組織的であったということになれば、その場所のいかんにかかわらず自衛権発動の対象になる、こういう見解を今度は発表されたわけですね。そして、自衛権の発動のそういう定義を言われた。  今度のリビアヘのアメリカの攻撃といいますのは、それにきちっと合うように言っているのですね。カダフィあるいはリビア国の命令によってリビアが関与している、しかも、組織的命令によって計画的、そしてほかにも三十何件の計画がある、だから多発的である、だから自衛権の行使になる、こういうふうに言っているのですよ。今国会でいわゆるシーレーン有事ということで言われたその見解からいけば、アメリカの今の声明で出しているリビア攻撃の姿勢、それは自衛権の行使という立場に立っていることになるわけです。シーレーン有事という名前で出された、日本の領土、領空、領域外の地域における日本人の乗っておる航空機あるいは船舶などに対する計画的、組織的、意図的、多発的攻撃があれば、それで自衛権の発動ができるということになりますと、こういう日本政府見解ということになれば、非常に広げていく、アメリカの今度の行動さえも自衛権の発動だとして認めていく理論的根拠を示しているように思うのですが、そうでないのだということがあれば、ひとつ明らかにしていただきたい。
  132. 小和田恒

    ○小和田政府委員 時間の関係がございますので手短に申し上げたいと思います。  本年の衆議院予算委員会における私の答弁に関連してでございますけれども、施政権有事とかシーレーン有事とかいうような表現で事態を分けて考えるということは、理論的に申しますと必ずしも厳密に言う言い方ではないということで御答弁申し上げたわけですが、問題は、一般国際法上、我が国が個別的自衛権を行使し得るような我が国に対する実力行使があったかどうかということであって、そういう実力行使があった場合には我が国は個別的自衛権を行使し得る、こういうことを申し上げたわけでございます。その場合に、我が国に対する実力行使というのは、何も我が国の領土、領域に対する攻撃がある場合だけではなくて、艦船、航空機等に対して計画的、組織的、多発的、意図的な攻撃が行われているというような場合には、これは我が国に対する実力行使、武力攻撃であって、その場合に我が国として個別的自衛権を行使し得るのだということは従来から政府が申し上げているところでございまして、昭和五十八年の法制局長官の答弁その他いろいろと折に触れてそういうことは申し上げておる、そのことを矢野委員からの御質問に対して整理をして申し上げたということでございます。  そこで、今度のリビアに対するアメリカの砲撃が自衛権の行使であるかどうかということについては、我が国としては最終的な法的判断を加える立場にないということを先ほど外務大臣から申し上げたわけでありますが、御承知のように、一般国際法上は自衛権というものについてはいろいろな要件がございます。そういう要件を今度のアメリカが行った措置に関連して満足しているかどうかということにつきまして、例えば急迫、差し迫った、不正な権利侵害があるのかどうか、あるいはそれにかわる手段がほかにないかどうか、あるいはこれに対してとるべき手段として絶対に必要な措置としてその措置がとられたか、均衡しておったかというような、いわゆる自衛権の三要件と呼ばれるものがございます。一般国際法上の理論として申し上げれば、そういう緊迫した、急迫した不正な侵害があるかどうかということの中には、事態が継続して同じようなことがどんどん次から次へと起こっておる、そういう状態がまだやんでおらない、そういう中においてその措置をとめるためにどうしてもやらなければならないということで自衛権を行使することが正当化されるということは、一般論としてはあり得るということは国際法上確立していることであるというふうに言ってよろしいと思います。  ただ、今度の場合につきまして、政府が前々から言っておりますように、果たしてそういう状況にあったのかどうか。なるほどリビアがベルリンのディスコティックの事件に関与しておったということについてはいろいろと説明を受けて我が国なりの認識を深めたということがございますけれども、さらに進んで、そういう一連の状況が続発している中において急迫した危険がアメリカに迫っておって、それを妨げるために直ちに措置をとらなければならないという状況があったのかどうかというような判断になってまいりますと、我が国はこの事件の直接の当事者ではございませんから、そういう状況の一々の詳細について承知しているわけではない。したがって、我が国としては確定的な判断をすることは差し控える、こういうことを申し上げているわけでございます。  国連憲章のもとにおきましては、御承知のとおり五十一条のもとで自衛権を行使するとこれは安保理に報告をすることになっておりまして、米国はそれに従って安保理に報告をしたわけです。その結果、安保理事会で議論が行われました結果、決議が採択されないということで終わったわけでございますから、国連による判定はその点についてなされておらない、こういう状況になっておるわけでございます。
  133. 東中光雄

    ○東中委員 終わります。      ————◇—————
  134. 栗原祐幸

    栗原委員長 この際、閉会中審査に関する件についてお諮りいたします。  国の安全保障に関する件につきまして、議長に対し、閉会中審査の申し出をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  135. 栗原祐幸

    栗原委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次に、閉会中審査案件が付託になり、閉会中、委員派遣を行う必要が生じました場合には、委員長において、議長に対し、委員派遣の承認申請を行うこととし、その派遣の日時、派遣地及び派遣委員の人選等所要の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  136. 栗原祐幸

    栗原委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  本日は、これにて散会いたします。     午後一時一分散会