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渡部(一)
委員 先日来、ソビエトの外交官その他が
日本国内を訪問しておりまして、いろいろなところで質問を浴びせております。明らかに外相訪ソを前提として資料収集もされているのではなかろうかと思いますが、その中で先方がひどく気にして
説明しておりましたのは、チュルノブイル原子力発電所の事故の問題でございました。私は、これに対して
日本側としてはっきり言うべきだと思います。
もう
一つは、原油の下落のためにソビエトの外貨獲得の約六割を占める油、石油ガスの代金が大幅に下落しているわけでありますから、金融的に非常にタイトになっていることは目に見えているわけであります。私
どもとしては、この交渉の際にはこの二項目について留意していただきたいと存じます。そして、その際に、アメリカの目をかすめて
日本側だけ飛び抜けて甘い顔をして特別お金を上げるとか特別原子力技術の提供をするとかいうのではなく、少なくとも西側の結束を固めた上でこの問題についての合意を披瀝し、
援助を披瀝するのは結構なことではないかと私は思います。それを
日本国だけが、大して国際的に能力があるわけではないのに、単独で、俗語で言ういい顔をするような外交では甚だ危険である。この点は十分お含みをいただかなければならないと思います。
私が特に申し上げたいのは、チュルノブイルの原子力発電所の事故のために
日本国民がどれだけ大きな迷惑をこうむったか、社会生活に大打撃を受けたか、この大きな反感についてこの際ソビエト側に周知徹底させていただきたいと思うのです。
それと絡んで申すわけでございますが、文化協定を結ぶにしても、
日本側の資料というのは向こうで配ることはほとんど不能なのに、先方のものは何でも配られてくる。「今日のソ連邦」というソビエト側の大きなグラフ雑誌はそこらじゅうの図書館に配られてくる、
日本のそこらじゅうに配付されてくる。それだけでない。ソビエト側の農民の雑誌、青年の雑誌、婦人団体の雑誌が配られてくるのに、
日本側はソ連に配付することもできない。配付したところは処罰される。また、
日本側に対してのソビエトの
日本語放送は堂々と到着するのに、これは
日本側の遠慮もあるのですが、わざわざ出力を下げた
日本の外国語放送、
日本語放送はソビエトに全然届かない。
日本側が届ける気もない。これは、ソビエト側もけしからぬけれ
ども、
日本側もけしからぬ。文化協定の前にこうした文化の大きな壁というものをお互いに取り除いて、両方のラジオ放送は両方に入るようにしなければいけない。こういうことのない文化協定というのはナンセンスではないかと私は怒っているのであります。そして、そのようなお互いの考え方、文化的背景に対する大きな壁は相互不信の重大な原因になり得る。
そこで、
大臣にぜひ
お願いしたいのは、先方での交渉において、言うだけを言っていただき、そしてこの壁を突破していただくと同時に、
日本側のラジオ放送、テレビ電波等が向こうに入らない
状況を直していただきたい。これは
国務大臣としてぜひとも手をつけていただきたい。特にけしからぬのは、
日本の上空でテレビ電波は楕円形に曲げられている、丸くなっていない、細長く曲げられている。そして、これがソビエト側あるいは中国側に入らないようにわざわざ変形して曲げられておるテレビ電波網を持っておる。こんなばかなことをやっておるケースというのはヨーロッパにおいては珍しい。私は異常ではないかとさえ思う。これは気兼ね外交、主張しない外交、びくびく外交、軟弱外交そして日ソ間の相互不信増強外交であるとまで私は思うわけです。もちろんこの問題には、韓国
政府が
日本政府のテレビ電波あるいはラジオ放送等について非常に警戒的な
態度をとっておられることで、
理由があるのかもしれませんけれ
ども、そのようなことばかりで、交渉をしないで放置したまま現状を容認するということは危険だと私は思っておるわけであります。したがって、
日本海のど真ん中で何が起こってもわからないぐらいお互いのことがわからない。
日本国の漁船が
日本海の真ん中で大きな網を引いていると、それをぶった切って走るソビエトの船がある。抗議するすべもなければ、何が起こっているかを向こうに伝える方法もない、お互いにただにらみ合っておる、こういう
状況は、マスコミがその機能を発揮しないからであると私は思うのです。そういう
状況はぜひ直していただきたいと思うのですけれ
ども、いかがですか。