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1985-11-06 第103回国会 参議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年十一月六日(水曜日)    午後一時開会     —————————————    委員の異動  十一月五日     辞任         補欠選任     大河原太一郎君     松岡満寿男君      長田 裕二君     岡野  裕君      梶原  清君     吉村 真事君      関口 恵造君     吉川 芳男君      神谷信之助君     吉川 春子君  十一月六日     辞任         補欠選任      工藤砂美君     金丸 三郎君      松岡満寿男君    大河原太一郎君      吉川 芳男君     関口 恵造君      岡野  裕君     長田 裕二君      吉村 真事君     梶原  清君      石井 道子君     岩本 政光君      村沢  牧君     菅野 久光君      大川 清幸君     原田  立君      井上  計君     三治 重信君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         安田 隆明君     理 事                 遠藤 政夫君                 志村 哲良君                 桧垣徳太郎君                 降矢 敬義君                 水谷  力君                 竹田 四郎君                 太田 淳夫君                 内藤  功君                 伊藤 郁男君     委 員                 安孫子藤吉君                 岩動 道行君                 石井 道子君                 岩本 政光君                大河原太一郎君                 岡野  裕君                 長田 裕二君                 海江田鶴造君                 梶木 又三君                 梶原  清君                 金丸 三郎君                 古賀雷四郎君                 杉山 令肇君                 関口 恵造君                 竹山  裕君                 田中 正巳君                 土屋 義彦君                 秦野  章君                 鳩山威一郎君                 林 健太郎君                 松岡満寿男君                 宮澤  弘君                 宮島  滉君                 吉川 芳男君                 吉村 真事君                 菅野 久光君                 瀬谷 英行君                 野田  哲君                 福間 知之君                 本岡 昭次君                 矢田部 理君                 和田 静夫君                 桑名 義治君                 中野  明君                 原田  立君                 和田 教美君                 吉川 春子君                 三治 重信君                 秦   豊君                 田  英夫君    国務大臣        内閣総理大臣   中曽根康弘君        法 務 大 臣  嶋崎  均君        外 務 大 臣  安倍晋太郎君        大 蔵 大 臣  竹下  登君        文 部 大 臣  松永  光君        厚 生 大 臣  増岡 博之君        農林水産大臣   佐藤 守良君        通商産業大臣   村田敬次郎君        運 輸 大 臣  山下 徳夫君        郵 政 大 臣  左藤  恵君        労 働 大 臣  山口 敏夫君        建 設 大 臣  木部 佳昭君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    古屋  亨君        国 務 大 臣       (内閣官房長官)  藤波 孝生君        国 務 大 臣        (総務庁長官)  後藤田正晴君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (国土庁長官)  河本嘉久蔵君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  加藤 紘一君        国 務 大 臣        (経済企画庁長         官)      金子 一平君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       竹内 黎一君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  石本  茂君        国 務 大 臣        (沖縄開発庁長        官)       藤本 孝雄君     —————————————    政府委員        内閣官房内閣審        議室長        兼内閣総理大臣        官房審議室長   的場 順三君        内閣審議官    海野 恒男君        内閣審議官    平井  清君        内閣法制局長官  茂串  俊君        内閣法制局第四        部長       工藤 敦夫君        臨時行政改革推        進審議会事務局        次長       山本 貞雄君        警察庁刑事局保        安部長      新田  勇君        宮内庁次長    山本  悟君        皇室経済主管   勝山  亮君        総務庁長官官房        審議官        兼内閣審議官   本多 秀司君        総務庁長官官房        審議官      百崎  英君        総務庁長官官房        審議官      米倉  輝君        総務庁人事局長  手塚 康夫君        総務庁行政管理        局長       古橋源六郎君        総務庁行政監察        局長       竹村  晟君        総務庁統計局長  北山 直樹君        防衛庁参事官   古川  清君        防衛庁参事官   筒井 良三君        防衛庁長官官房        長        宍倉 宗夫君        防衛庁防衛局長  西廣 整輝君        防衛庁教育訓練        局長       大高 時男君        防衛庁経理局長  池田 久克君        防衛庁装備局長  山田 勝久君        防衛施設庁総務        部長       平   晃君        防衛施設庁施設        部長       宇都 信義君        防衛施設庁建設        部長       大原 舜世君        経済企画庁調整        局長       赤羽 隆夫君        国土庁長官官房        長        吉居 時哉君        法務省民事局長  枇杷田泰助君        法務省人権擁護        局長       野崎 幸雄君        法務省入国管理        局長       小林 俊二君        外務省アジア局        長        後藤 利雄君        外務省北米局長  栗山 尚一君        外務省欧亜局長  西山 健彦君        外務省中近東ア        フリカ局長    三宅 和助君        外務省経済局長  国広 道彦君        外務省経済協力        局長       藤田 公郎君        外務省条約局長  小和田 恒君        外務省国際連合        局長       山田 中正君        外務省情報調査        局長       渡辺 幸治君        大蔵大臣官房総        務審議官     北村 恭二君        大蔵大臣官房審        議官        兼内閣審議官   門田  實君        大蔵省主計局長  吉野 良彦君        大蔵省主税局長  水野  勝君        大蔵省理財局た        ばこ塩事業審議        官        松原 幹夫君        大蔵省国際金融        局長       行天 豊雄君        国税庁直税部長  冨尾 一郎君        文部省初等中等        教育局長     高石 邦男君        文部省高等教育        局長       大崎  仁君        文部省高等教育        局私学部長    國分 正明君        文化庁次長    加戸 守行君        厚生大臣官房総        務審議官     北郷 勲夫君        厚生大臣官房審        議官        兼内閣審議官   山内 豊徳君        厚生省保健医療        局長       仲村 英一君        厚生省保健医療        局老人保健部長  黒木 武弘君        厚生省生活衛生        局長       北川 定謙君        厚生省児童家庭        局長       坂本 龍彦君        厚生省保険局長  幸田 正孝君        厚生省援護局長  水田  努君        車検保険庁医療        保険部長     花輪 隆昭君        農林水産大臣官        房長       田中 宏尚君        林野庁長官    田中 恒寿君        通商産業省通商        政策局長     黒田  真君        通商産業省生活        産業局長     浜岡 平一君        中小企業庁長官  木下 博生君        運輸大臣官房国        有鉄道再建総括        審議官      棚橋  泰君        運輸省国際運輸        ・観光局長    仲田豊一郎君        労働省職業安定        局長       白井晋太郎君        建設大臣官房長  高橋  進君        建設省河川局長  井上 章平君        自治省行政局長  大林 勝臣君        自治省行政局選        挙部長      小笠原臣也君        自治省財政局長  花岡 圭三君        自治省税務局長  矢野浩一郎君    事務局側        常任委員会専門        員        桐澤  猛君    説明員        日本国有鉄道総        裁        杉浦 喬也君    参考人        日本銀行総裁   澄田  智君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○予算執行状況に関する調査     —————————————
  2. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 予算委員会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  予算執行状況に関する調査のため、本日、日本銀行総裁澄田智君の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 次に、予算執行状況に関する調査を議題といたします。  これより質疑を行います。三治重信君。
  5. 三治重信

    三治重信君 私は、民社党を代表して、二、三の問題を質問したいと思います。  まず第一に、解散問題について御質問をいたします。  五十八年の十二月に総選挙が行われてまだ二カ年も過ぎない、ことしの十二月になって初めて二カ年。それにもかかわらず来年の初めの選挙だとかダブル選挙だといううわさが毎日、新聞に出る。こういうようなことが国会審議に関連して常に論ぜられるというのはいかがかと思うわけですが、総理はこういうことについてどうお考えになりますか。
  6. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国策を遂行する、あるいは法案審議し成立させる、あるいは、いわゆる行政改革以下の我々の政策を、改革実現する、それに今一貫して努力しておる考えでありまして、解散は全く考えておりません。
  7. 三治重信

    三治重信君 そこで私は、ひとつ過去の審議状況をちょっと御披露して御参考にしたいと思うんですが、四十五年の二月の十七日、佐藤総理の演説に対する自民党水田先生代表質問に、政府の一方的な意思による議会解散は否定するのが通例である、こういうような趣旨がありまして、その議事録を読みますと、   国権最高機関である国会解散政府の盗意によって随時行なわれ得た従来の慣行が、国会正常化に寄与していない。近代民主主義憲法は、政府の一方的意思による議会解散を否定するのが通例である。立法府を構成する国会議員任期が行政府の一方的意思によって左右せらるるがごときは、民主主義憲法の指向するところではない。国会議員任期が保障されない限り、議員は常に選挙運動に追われ落ちつかず、国会の公正な審議と採決が常に選挙舟のゼスチャーによって妨げられる実情も、決してゆえなしとしないと思われる。国会運営正常化には、まずもって憲法の定むる議員任期政府によって保障されることから出発させなければならない。  こういうふうに言っておるんですが、私はこの考え方というものをもっと徹底しないというと、国会国権最高機関として信任されるゆえんでないと思うんですが、総理のお考えはいかがですか。
  8. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 水田君の議論は私、前から、生存中から聞いておったところでございます。あの議論にまつわる諸問題、課題というものは、憲法施行以来、約四十年近くいろいろ論ぜられてきておる問題でございまして、いわゆる苫米地裁判という裁判もございました。しかし、この解散という問題は、憲法内閣に付与しておる最も重要な機能でございまして、これは国民意思を聞く必要があるという場合に、これは内閣が専権で行うことができることであると私は考えておりますが、しかし民意を問うということは、あくまでそういう環境下にあってしかるべきときに行うべきもので、めたらやたら行うべきものではない、慎重に行うべきものである。いわんや国会議員任期任期満了に至らずして失わしめるという行為でもありますから、それは慎重を期して行うべきことは当然であります。
  9. 三治重信

    三治重信君 総理は戦後の総決算ということを唱えまして、行政改革財政改革、それから教育改革、さらには最近は税制改革と、次から次へスケジュールをたくさん組んで国政をおやりになっておりますが、こういうような国民の重大な改革実現解散とをどう関連づけておるのか、任期いっぱいはこういうような改革実現総理としては努力されるのが本筋じゃないかと思うんですが、いかがですか。
  10. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 願わくはそうありたいと思っております。
  11. 三治重信

    三治重信君 まあダブル選挙という声もあります。五十五年のダブル選挙というのは大平内閣不信任案が与党の反乱によって通過した、こういうハプニングでやったことなんで、今から計画して来年のダブル選挙がいいとか悪いとかというようなことは、これは今度の審議を非常に妨害する、私はこう思うんです。二年前の選挙衆参ダブル選挙総理が避けられた、それで十二月に解散を持ってこられたというのは私は非常に賢明だったと思うんですが、そういうふうなダブル選挙は絶対避ける、こういうお考えありませんか。
  12. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 解散考えていないというのでありますから、ダブル選挙のことも言明することは差し控えたいと思っています。
  13. 三治重信

    三治重信君 それでは味もそっけもないんで、そういうのは絶対避ける、こういうふうに理解をさしてもらいます。そういうことで、本当に解散というような問題をしっかりもう少し総理が腹に入れて、総理権限権限ばっかりを振り回さないで、もう少し国会審議正常化ということにも力を入れてほしいものだと思うんです。  それからもう一つは、最近、議員のパーティーが毎日毎夜三、四カ所も五カ所も行われている政界で、財界も悲鳴を上げているというようなのが新聞に載っているんです。これも衆議院議員の方が選挙が近いために金集め選挙回り、こういうようなことで一生懸命やっているからではないかと思うんですが、こういうようなことは非常にいいことだと思うんですかどうか、ひとつ御意見をお伺いしたいと思うんです。
  14. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国会議員は本務に精励することが正しいと思います。そういう意味におきまして、できるだけそういう環境をつくり得るように我々政治家同士で努力していきたいと思います。
  15. 三治重信

    三治重信君 次に、六・六増減案なんですが、我々は、その自民党の六・六増減案には二人区制が取り入れられた、これは土俵を変えることなんだ、こういうことで野党案でまた別に対抗案をつくっているんですけれども。どうしてもこの六・六増減案を通そうと思ったらば、ひとつ土俵を変えない野党案に賛成することはできませんか。
  16. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 六・六増減案自民党案を党でつくりましたゆえんは、定数をふやさない、これ以上増員しないということと、それから選挙区の境界を変更しない、そういう考えに基づいてやむを得ず二人区というものは出現したのでございます。国勢調査も行われたことでもございますから、それが正式に確定して発表されあまでの間、緊急避難としてとりあえずこれを成立させて最高裁判所判決に対して我々の対応を示す、我々の責任を果たす、こういうことでいきたいと思っているわけなのであります。
  17. 三治重信

    三治重信君 総理はそうおっしゃいますが、最高裁判決というのは、違憲状態についての判決考え方なんですけれども、最高裁違憲状態判決というのは、早急に正せということでなくて、選挙をする機会には是正をせい、完全に違憲状態を除けという判決だ、こういうふうに理解ができるわけであります。  ところが、本年の十月には国勢調査が行われた。その国勢調査速報値が十二月の二十日前後には発表になる。それで九九・九%は大体人口が確定する。そうなると六・六案を通しても、違憲状態にとってはまた同じように、十二月二十日過ぎに選挙をやれば違憲状態のままの選挙になることはもう当然、てんから明らかだと思うんです。そうすると六・六案を通してみても、これは違憲状態がまだ続いた選挙に結局なる。こういうことについてはどういうふうにお考えになりますか。
  18. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今でも違憲状態にあるわけであります。そういう意味においては一日も早くこれを解消して、裁判所判決に対応する必要がある、そう思っておるわけであります。  今回の国勢調査が正式に確定した場合には、これはもうそれに対応する新しい措置をしなければならぬかもしれません。それらはそれが出てきたときに行うべきであり、ある程度概数でそれが示されるという場合に、各党間で話し合いをしてそれに対応する準備行為をしていくということもあるいは必要であるかもしれませんし、各党がそういうふうに合意されるならば、我々はそれに順応していくものなのであります。
  19. 三治重信

    三治重信君 今の総理の答弁ちょっとよくわからないんですが、もう少しはっきりお尋ねをいたしますと、総理は常々、最高裁判決は厳粛に受けとめなければならぬ、こう言っておられるわけなんです。そうすると、厳粛に受けとめることをやるのには次の二つのうちのどちらを選ばれるか、こういうことになろうかと思うんです。五年前の数値を基準として是正を行う。結果的に、十月以降の違憲状態であることを知りながら、十一月以降は法的にも違憲状態のもとに選挙を行うことになる。しかし本年の十二月の数値をもとに是正についての本格的な準備を行って、来年十一月確定役速やかに法案は成立を図る、こういうぐあいにすれば、違憲状態がなくて法案の作成ができる。こういうことなんですか、どちらの考え方に立たれるわけですか。
  20. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 五十八年選挙につきまして最高裁判決が出ておるわけでありますから、この状態を一日も速やかに解消する、そういう考えで今法案を提出しておるわけでありまして、いわば緊急避難であるとも申しておるわけであります。まず、これを成立させ、そして選挙法にものっとってありますように、国勢調査の確定を経たそれを基礎にして次の行為がその国勢調査の結果をまって行われる、そういう順序でいくべきであろうと考えております。
  21. 三治重信

    三治重信君 どうも議論平行線になっているようですが、今後六・六案の審議にもかかわることですから、以上にしておきます。  次に貿易摩擦問題なんですが、セオドア・ホワイト氏、この人の、「諸君」に翻訳が載っているわけなんですが、「日本からの危険」というような文章で、非常にショック的なことが載っております。こういうことについて総理大蔵大臣は、どういうねらいでこういうようなことが書かれているか、これに対してどういうふうに対処しようか、ごく概説的なところを、感じをちょっとお尋ねしたいと思う。
  22. 竹下登

    国務大臣竹下登君) セオドア・ホワイトさんの「日本からの危険」でございますか、言ってみれば、例えば輸出価格を低く抑えるために円の価値を常に実際より低くしておくような政策をとっているというようなことが書かれてございます。  この種の論議は確かにアメリカで、あるいは私どもの話し合いの中でも、誤解に基づくそういう主張をする人がときにはございます。がしかし、この問題はだんだんだんだん、日本関税そのものも低いし、そして市場開放というものも現実問題としてはやってきているじゃないかという理解が深まりつつあるんではないかという感じを私は持っておりますが、事、通貨ということになりますと、先般のG5の合意によりまして非常に秩序あるドル高是正基調が定着するような方向に来ておりますので、実際問題として人為的にできるものじゃございませんし、常に円安状態に置いておくというようなことは人為的に実際できるものでもございませんので、私は、特にG5以来、その種の日本に対する疑念というものはなくなっておるんじゃないかな、こういうふうに感じております。しかし絶えず八方耳をそばだてて、いろいろな批判に対しては、我が方で言えばたばこなんかの問題がございますが、やっぱり冷静に対応していかなければならぬという問題意識は持っております。
  23. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 世界じゅうのあらゆる議論に対して我々は耳を傾けてまいりたいと思いますが、あの論文調査不十分、そして我々から見れば偏見に満ちた要素がかなりありまして、アメリカは自分の悪い点についてはほとんど触れてないという感じがしております。最近あの論文アメリカ国内におきましてもそう評価されてないという状況であると聞いております。
  24. 三治重信

    三治重信君 だんだんこういうような意見からアメリカの世論も変わりつつある、それは円高の政策のおかげだというのも非常にわかるわけなんです。  そこで、ドル高という問題はアメリカにとっても非常に重荷になっている。貿易は年間二兆ドル、しかしながら一方ドルの売買というものは二十兆ドル、貿易の金額の約十倍、こういうふうに取引が行われている。そうすると貿易よりか資本取引の方が重要なわけなんです。日本においてドル高規制のために為替市場への介入を実行して効果を上げているわけなんですが、私はこの対策を非常に高く評価するわけなんですが、このドル高を利用してやっているのもいいんだけれども、日本アメリカとの資本の輸出入、最近資本の輸出が非常に多くなっているけれども、現在までのところ、日本アメリカから入れている資本それから収益と、日本アメリカへ投資して収益を上げている、その具体的な数字の動きはどうなっているんですか。
  25. 行天豊雄

    政府委員行天豊雄君) 日米間の投資収益の動きにつきまして数字を申し上げます。  例えば昨年、昭和五十九暦年でございますが、アメリカからの投資収益の受け取りでございますが、これが五十億二千三百万ドルでございました。それに対しまして、日本から米国に支払いました投資収益は三十六億四千四百万ドルということでございました。
  26. 三治重信

    三治重信君 そうすると貿易ばかりでなくて資本も非常に日本が多くなっている、こういうことなんですが、そうすると円高を維持していくのは、これは貿易と資本と両方で、何というんですか、日本の方が非常な黒字を出している、これらのことを前提にして日銀の介入だけで円高というものが維持できるんですか、大蔵大臣
  27. 竹下登

    国務大臣竹下登君) よく批判されました中に、特にアメリカ国会議員の方々の議論の中には、貿易で稼いでそれをまた資本投資して、それでまたダブルで稼いでいるんじゃないか、こんな議論がありました。我々としての言い分は、あの資本がなかったらアメリカの金利はもっと上がっているんじゃないか、こんな議論もいたしたわけでございます。すなわち資本提供国としての、結果としてでございますけれども、役割も果たしているんじゃないか、こんな議論も確かにいたしました。  いずれにせよ、いわゆる協調介入——介入はやはり単独でやるよりも主要国が協調してやった方が効き目があるのは当然のことでございますが、基本的には為替相場というのは市場原理に基づいて決まるものでございます。いろいろな議論を重ねても、そこへ帰結して今日変動相場制が維持されておるわけであります。したがって基本的には主要国のいわゆる政策の調和、コンパーセンスとかい至言葉で言っておりますが、それを図らなきゃならぬ。その調和のとれていないところは今何かと言えば、アメリカで言えば財政赤字、それに基づくところのいわゆる金利高であり、また我が方で見ればいわば市場開放とそして内需の振興である。こういう問題点をお互いが監視しながら、可能な限り整合性のある政策をやっていかなきゃいかぬというのが基本的に私は存在しておる問題であると思っております。しかし協調介入というものも非常に効果があるということは、これはもちろん当然のことであると思っております。
  28. 三治重信

    三治重信君 昨年の貿易赤字が三百七十億、今年の見通しはどういうふうになりますか。少なくとも四百五十億ドルとか、そうすると百億ドル近い貿易黒字がさらに増加する、こういうようなことになってくると、少々のことでアメリカ世論が、労働界が承知しないじゃないか、こういうことが見通されるわけなんですが、日銀とすればこの円高によって貿易収支を昨年よりどれぐらい縮小させようという目的か、そのためには円高をどれくらいにしようかというようなのは考えてやっておられるんですか。
  29. 澄田智

    参考人澄田智君) 私どもといたしましては、為替相場が本来貿易あるいは資本取引面も含めていろいろな不均衡、こういうものを調整する、そういうものであるべきである、こういうふうな考えを持っておりますし、現にG5のときにおいてもそういう前提のもとに為替相場が各国経済の基礎的な条件、物価でありますとか、国際収支でありますとか、そういういわゆるファンダメンタルズをよくあらわすような相場であるべきである。それによって貿易摩擦の是正に資するべきである、こういう前提で行われたわけであります。私どもといたしましては、そういう意味においてドル高の是正、円高安定ということによって経済摩擦の是正に資するということを考えるわけでありますが、ただ、為替相場の変動によるその効果が出まするまでには相当期間がかかるわけでございますし、幾ら黒字を減らすためにどういうふうな相場にする、そういう考え方でもって直ちにこれを短絡的に結びつけてやっているわけではございません。
  30. 三治重信

    三治重信君 大蔵大臣、だから日銀の今の答弁でもわかるように、そういうぐあいになってくると、去年でも史上最高の三百七十億ドルの黒字だというけど、ことしは四百億ドルを突破する、あるいは五百億ドルというぐあいになってくる。そういうぐあいになってくると、一生懸命日本がやる対策というものは何の効果も出さぬというようにとられやせぬですか。こういうことについて、円高も非常に抑えるのは何だけど、絶対額は前年よりかまたさらに史上最高に伸びていくということについてどういうふうな対策が必要だと思われますか。
  31. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは円高になりましても、よく言われますJカーブというカーブの状態をもたらしますので、それで本当に貿易のインバランス是正の効果が出るのは短いところで半年、普通一年半ぐらいかかると、こんなことが言われておるわけであります。したがって、非常に早い機会にその効果があらわれるということを期待すべきものではなかろうというふうに思っております。したがって、私どもとしては、私でいえば金融でございますが、これの国際化、自由化という問題は、これはどこから見られても、国際的に見ても計画的に順調に進んでおる、すなわちアンフェアというものはないと、こういうことを印象づけることがまず一番大事なことではなかろうかというふうに考えております。  それから政策問題につきましては、G5等で我が方も附属文書で発表しております市場開放と内需振興策等々について具体的に実行に移すということが、もとより我々に与えられた政策選択のあり方であると思っております。
  32. 三治重信

    三治重信君 日銀総裁にいま一つお伺いしたいんですが、日銀の介入によって円高をやるというのも非常に効果を上げていいんですが、しかしどうも通貨としてのドルの価値を金から切り離した、これがドルの勝手な行動を許すことになっておるんじゃないか。またさらにドル安を決めていく決め手というのは、何か金に対する絶対なものを前よりか低く決めるとか、また国際会議によって一つの新しい線を出すとかというようなことを考えておられないですか。そういう世界の通貨の基軸になるドルというものが何か絶対的なものか、計算上のものにしても、もう少し何か安定的な評価というものが得られないものか。ただドルと円との比較の比率だけということでは何か非常に不安にならぬですか。
  33. 澄田智

    参考人澄田智君) 国際通貨制度の問題につきましては、単に円とドルとの関係だけでなくて、世界の通貨全体の関係として国際会議の場においても従来からたびたび議論が繰り返されてまいりました。殊に、先般ソウルで開かれました国際通貨基金の総会におきましては、来年春に予定されておりますIMFの暫定委員会で通貨問題について本格的に討議をする、こういうふうなことで合意がされている次第でございます。そういうふうに国際間に常に検討の対象にされ、真剣な検討が行われてきたわけでございますが、ただこれまで論議されてきたところによりますと、現在の変動相場制に本当に代替し得るようなそういうスキームを見出すのはなかなか難しい、こういうことが今までの議論の大筋のところであるわけであります。各国が政策面において整合性を保つようにする、そうしてまた各国の政策面の対応等についてサーベーランスをよく行っていく、こういうようなことを中心とするのが今後の国際通貨問題をできるだけ安定的に、望ましい形に持っていくための大筋ではないかと、こういうようなことになっているのが大筋のところでございます。  御質問の金との関係でございますが、七一年にアメリカ政府が金とドルとの交換を停止し、七六年にIMFの協定上においても金の役割を縮小させるということになって現在に至っているわけでございます。そして、変動相場制ということは御承知のとおりでございます。こういう変動相場制の現状に対して、これをできるだけ安定的なものにするように今後各国が努力していく、これは国際会議等の場を通じて不断にそういう努力を重ねていくべきものである、かように考えております。
  34. 三治重信

    三治重信君 どうも総裁ありがとうございました。結構です。次に、貿易摩擦の日本のアンフェアの問題。  もろもろの規則、法律、規制、輸入割り当てと、こういうようないろいろの日本のやり方がアンフェアだ、全部が全部向こうが言うほどアンフェアとは思いませんけれども、こういう問題がアンフェアだと言われるのを完全に除去するようなことが今度はアクションプログラムに本当に盛られているのかどうか、その点をひとつお伺いをいたします。  どうも日本アメリカへ八四年には日本の輸出の三五%も輸出している。そういうぐあいになってくると、アメリカの製造業も打撃を受けるし失業も出てくる。こういうようなのはどうしても結果としてアンフェアと言わざるを得ないというような議論に対して、今度のアクションプログラムを中心としてどういうふうなアンフェアを解消する、こういうふうに具体的に政府は決めているのか、ごく概略を説明していただきたい。
  35. 金子一平

    国務大臣(金子一平君) 各国から特に日本の輸入がアンフェアだと言われておりましたことに対しまして、先般のアクションプログラムでとりました措置の一つは、関税の引き下げでございます。昨年の十一月に、御承知のとおり、東京ラウンドの前倒しによる関税の引き下げを行っておるのでございますけれども、今回はさらにそれに加えて千五百数十品目について、原則として二割くらいになりまするけれども、引き下げなり撤廃をやることにいたしましたから、しかもこれは臨時国会に関税定率法の改正案をかけることにいたしまして、一月から実施するというような考え方をとっておりますので、関税率の点におきましてはもう世界で一番水準が低いとお考えいただいていいと思うのであります。  それからもう一つは、大きな問題になっておりましたのは基準・認証の手続、非関税障壁と言われるものが大体これに該当するわけでございますが、これがなかなか厄介で、日本市場に容易にアクセスできないという非難が非常に高こうございました。我々も十分この点は検討を加えまして、例えばアメリカの市場において日本の品物が扱われると同じような扱いを日本の輸入市場においてもやりましょうということで、外国でオーソライズをされておる基準のものについては認めてそのまま輸入させるとか、あるいは新しく自己認証の制度を大々的に拡張いたしましてメーカーに責任持たして輸入をさせるとか、それから基準・認証の手続につきまして、今までやったことはないのでございますが、例えば薬事法にいたしましても、食品衛生法につきましても、改正に当たって、外国人の希望者があれば立ち会いをして意見を述べてもらえるようにする。そこまでいろんな手配をいたしておりますので、こういった点の不満に対しては十分こたえ得るものができたと私どもは確信をいたしておる次第でございます。  それからさらに政府調達の問題でございますが、これがなかなか外国市場に開放してくれないという批判が強うございましたけれども、今度は全部とことんまで競争入札をやりましょう、一回だけじゃなくて最後までやって、だめなものはいたし方ございませんけれども、広く入札を開放いたしてやりましょうというような手を講じましたので、先ほど来御指摘のございましたような、黒字はなるほど一遍に減らないかもしれませんが、しかし輸入の問題について日本の市場が外国並みに開放されて、そして輸入業者の努力いかんによっては、日本の市場は魅力あるものだと感じてもらえることは自信を持って言えると思うのであります。  黒字減らしにつきましては、さらに輸入業者の努力も必要でございましょうし、そういう点はそれなりの私どもの立場を主張しておるような次第でございます。
  36. 三治重信

    三治重信君 次に、円高による日本の中小企業に対する対策についてお伺いしますが、貿易摩擦を避けるために円高、これは政策としては非常にいいんだけれども、しかし急激な円高によって中小企業への影響というものは非常に強い。そのために通産省は、緊急経営安定資金の融資とか中小企業活路開拓法というようなものを来年にやろうと言っているんですが、少し遅過ぎやせぬか。こういうような問題の構想をひとつ御説明願いたい。
  37. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) お答えを申し上げます。  円相場が急激に上昇いたしましたことについて、今三治委員御指摘のように一部中小企業者で経営環境がさらに厳しくなるということも予想されますので、現行の施策を前提としながら適切かつ機動的に対処するということで、政府系の中小企業金融三機関及び全国信用保証協会連合会あてに先日中小企業庁長官及び大蔵省銀行局長の連名でおのおの通達をしたところでございます。  さらに、御指摘のように、中小企業を取り巻く国際経済上の厳しい環境変化等に対処いたしまして、我が国全体の円滑な輸入促進を図るために六十一年度の中小企業対策といたしまして、国際経済上の環境変化等に対応する関連中小企業者を支援するための政府系中小企業金融三機関に国際経済調整対策等特別貸付制度を創設する、さらに現行中小企業事業転換法を拡充延長いたしまして新中小企業事業転換法を制定いたしまして、税制でございますとか、金融でございますとか、そういった面の助成措置を拡充するなどの施策を講ずべく要求中でございまして、実現に向けて鋭意努力する所存でございます。  なお、情勢の推移によりましては、いろいろ実態調査等もいたしておりまして、六十一年度を待たずに所要の措置を講ずることも検討していく所存でございます。
  38. 三治重信

    三治重信君 その具体的な例として合板の問題、これは非常に新聞で騒がれたんですが、これを中心として日本の林業の見直しというようなものにまで発展をしております。これはまた後で質問しますが、一番重要なのは何といっても繊維産業、これは中小企業対策。もう一つは発展途上国の追い上げ、こういうことで、円高によってますます厳しい状況になるわけです。殊にアメリカのジェンキンズ法案が通るということになってくると、これはアメリカでの輸入が規制されるということになると、あと日本しか輸出対象がなくなって非常に日本への輸出圧力が強くなる、こういうふうに思われるわけなんですが、それに対する対策はどうなのか。そのために国際繊維協定というような問題が前もって行われて、やってもいいようにちゃんと国際繊維協定があるわけなんですから、それを日本がいつまでも権利を放棄している、秩序ある輸入について努力していないというふうに見られる。これに対しては非常に遺憾だと思うのですが、どうなんですか。
  39. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 御指摘のジェンキンズ法案は繊維関係について非常に厳しい影響があるであろうということでございます。繊維産業におきましては、将来への展望とも関連して輸入急増に対する不安感が、三治委員も御承知のとおり、極めて強いわけでございます。このため通産省といたしましては、相手国の信頼関係を保ちながら政府間での話し合いなどあらゆる手段を通じて秩序ある輸入の確保に努めることが重要である、このように考えておるわけでございます。  なお、MFAにつきましては、我が国の置かれました国際的な立場、さらにはMFA発動の際の各種の配慮要因等を考慮いたしますと、その安易な発動については慎重であるべきである、このように考えておりまして、当省としては、従来から関係国との話し合いを機会あるごとに積み上げまして積極的に行っていく、それから業者間の話し合いに対しても支援をしてきたところでございます。今後とも輸入の動向を注意深く見守りながら秩序ある輸入の確保に努めていきたい、このように考えておるわけでございます。  なお、ジェンキンズ法案、いわゆる繊維保護貿易のアメリカの現在の法案についてでございますが、この法案はガット及びMFAに反するなど極めて保護主義的なものでございまして、仮に成立した場合には、我が国の繊維産業への影響を初めといたしまして、国際繊維貿易のあり方、さらにはガットのもとでの自由貿易体制全体に極めて重大な影響を及ぼすということが予測されますので、我が国としては、従来から米国政府に対して本法案の成立阻止のために極力努力をしていただくように機会あるごとに求めておるところでございます。また関係繊維輸出諸国も米国政府に対しこの法案についての懸念を表明しているものと承知しております。通産省としては、今後とも繊維関係のいろいろな事態の推移を十分見守りながら適切に対応してまいりたい、このように考えております。
  40. 三治重信

    三治重信君 次に、国鉄再建問題なんですが、国鉄再建監理委員会が国鉄改革に関する意見を出しました。それで政府は十月十一日に閣議決定で基本方針を決めました。こういうようなんだけれども、来年の通常国会の冒頭に大体一斉にこれは提出する予定ですか。
  41. 山下徳夫

    国務大臣(山下徳夫君) 通常国会におきます予算関連法案に引き続きという目標で作業をやっておる次第でございます。
  42. 三治重信

    三治重信君 国鉄の分割・民営化に当たって多数の余剰人員が出るということは、国鉄当局においても監理委員会においてもそれが発表されているわけです。余剰人員対策として再就職とか失業対策というものが、そういうような法案よりもっと先行されなきゃいかぬと思うんですが、それに対する認識はどうなんですか。できれば私は、来年の通常国会に国鉄の民営化法案を出すなら、今臨時国会にこの余剰人員対策というものが出ていろんな対策が始められるべきだと思うんですが、それに対する見解はいかがですか。
  43. 山下徳夫

    国務大臣(山下徳夫君) 何と申しましても、この余剰人員対策が国鉄再建のかぎとも言うべき最も重要な問題でございます。したがいまして、私どもはこれを一日もゆるがせにせずできるものから逐次やっていくということでございまして、したがいまして、この新経営形態移行前にやれるもの、あるいは移行後立法化等によってやるものと二つを区分いたしまして、いわゆる経営形態移行前にやれるものといたしましては、十月十一日の閣議決定において希望退職募集の実効を上げるために退職時の給付の臨時の特例についてという立法措置をいたしておりまして、これに基づいてできるものは早急にやっていくということでございます。  さらにまた、国鉄余剰人員雇用対策本部を設置いたし、各省にお願いをいたしていろいろやっておりまして、各省の御協力を得ながらこれも移行前にできるものはやっていくということでございますし、私どもは立法措置以前に実現可能なものを真っ先にやっていく。——おわかりにくい答弁だったでしょうか。おわかりになったでしょうか。そういうことでやっていきたい。
  44. 三治重信

    三治重信君 やっておられることはわかるんですが、私の質問したいのは、来年に国鉄分割・再建の法案を一斉に出すときに、余剰人員対策といいますか、失業対策の法案も一緒では、余剰人員対策が先行しなくちゃいかぬのに、それは少し遅いんじゃないか、それに対して今国会でもやるぐらいの意気込みでやらぬといかぬのじゃないか、それに対する回答はどうかということです。
  45. 山下徳夫

    国務大臣(山下徳夫君) 今申し上げたことの繰り返しになると思いますが、趣旨としてはおっしゃるとおりでございます。一日も早くやるということで、十月十一日の閣議決定に基づいて、早くおやめになる方の特別立法措置、優遇措置等を講じながらやる。もう一つは、雇用対策本部によって各省庁にいろいろお願いするわけでございますから、各省庁に特に私の方からもお願いし、また労働省でも非常に御努力いただいておりまして、各方面に常に気を配りながら、そしてまた立法措置を待たずにやれるものは私の方としても率先してやるということで、順次そういうことを展開してまいるということでございます。
  46. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 伊藤君から関連質疑の申し出がございますので、これを許します。伊藤郁男君。
  47. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 その余剰人員対策でございますけれども、今の運輸大臣の御答弁ではまだ明確さを欠いておると思うんです。そこで具体的にお伺いをしたいと思うんですが、各省庁にお願いしてと、こういうことでございますけれども、政府関係機関、あるいは地方公共団体及び一般企業に対して一体どの程度の人員を目標にしてこれを受け入れてもらうように要請しているのか、またさらにその具体化について今後のスケジュール、こういうものを明らかにしていただきたいと思います。
  48. 平井清

    政府委員(平井清君) 政府の国鉄余剰人員雇用対策本部の事務局長でございますが、国鉄改革のための基本方針というものを十月十一日付で閣議決定いたしましたわけでございますが、その中におきまして、国を初めといたします諸分野におきましての雇用の場の確保につきまして強力な支援体制を講じることにしたところでございます。そして、これを受けまして現在各省庁挙げまして六十一年度からの具体的な受け入れ内容、また民間への働きかけの手順、そういったものも目下検討中でございまして、早急に内容を固めたいと存じております。
  49. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 検討中では遅いんですね。きのうも亀井監理委員長は香川におきまして政府関係機関は三万人、民間で一万人受け入れてもらいたいんだ、こういうことを発言されておるわけでございますね。そのことについて一体それではどう考えておるのかお伺いをいたします。
  50. 後藤田正晴

    国務大臣(後藤田正晴君) 国鉄監理委員会の御意見は、政府としまして最大限これを尊重する、こういうことを閣議決定しまして、それを受けて雇用対策本部で余剰人員をどう取り扱うかということを関係閣僚の間で協議をいたしまして、何といっても国鉄御自身の最大限の努力、これを前提としまして国あるいは国の機関はこれに協力を申し上げる、そして同時に地方団体にも御要請を申し上げたい。民間企業の関係は労働省の方でお願いをする、こういうことにいたしておるわけでございます。  ただいま伊藤さんの御質疑の数でございますけれども、監理委員会はかねがね四万一千名についての余剰人員を何とか考えてもらいたい、こういう御意見、その御意見の中で四万一千人のうち一万人程度を民間にと言っておる、残りの三万一千名を国と地方団体に何とかひとつ協力願いたい、こういう御要請があるわけでございますが、その基本は国、地方関係機関合わせまして新規採用が大体二十万前後、二十万ちょっと切れると思いますけれども。それを頭に置いていらっしゃる。しかしながら、いろんな職種の関係がございますから、だからそれ全部を母数にするわけにはまいらない、およその母数を十万名程度とはじいておられるようでございます。十万名程度を母数としながら何とか協力を願いたい、こういうお考えのようでございます。一割程度をやれば毎年一万人で三年間で三万人。その程度の数を何とか協力願いたい、こういうことでございますから、私の方としましては、国鉄当局並びに運輸省からのお話もあり、国家公務員につきましてはどの程度を母数が勘定できるのかというようなことも頭に置きながら何とかこれは御協力を申し上げなきゃいけません。各省とも今行政改革のさなか、これは地方団体も同じでございますから非常に厳しいと思いますけれども、おっしゃるように毎年新規採用はいたしておりますから、それらの中でどの程度消化できるか、最大限の協力を申し上げたい。  そして、でき得べくんばこれは六十一年度からかかりませんととても消化できない。この期間が長くなりますと比較的楽になりますけれども、これを一年間でやれ、二年間でやれなんということになると大変なことですから、そこらを考えまして六十一年度から何とかひとつ各省に御協力を願いたいということで、せっかく今作業中でございます。しかし、これはなかなか抵抗が強いです。しかしこれは同じ働く場における者の立場に立って私は各省、それからまた地方団体にもお願いしたいと思うんですけれども、親切な気持ちで何とかひとつみんなで手助けをしようではないか、こういう考え方で何とか余剰人員の処理については働いておる人にそう大きな心配をかけないというようなことで処理をいたしたい、せっかく作業中でございますので御理解願いたい、かように思います。
  51. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 長官、この問題は単にお願いだけではだめです。今も長官がおっしゃったように、新規採用二十万人のうちの十万の中の一割程度、こういうことで一定の割合を決めて要請をしなければ進んでいかないと思うんです。今検討中だということでございますので、その点も配慮して十分にひとつ対策を立てていただきたい、こういうことを要望しておきます。  次に、既にこれは十年になんなんとしておるわけでありますが、いわゆる五十年のスト権ストの際の損害賠償問題、いわゆる二百二億円損害賠償問題、一体これはその後どうなっておるのか、この点をまずお伺いいたします。
  52. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) お答えいたします。  本件につきましては、昭和五十一年の二月に訴訟提起されまして以来九年以上たっておるわけでございますが、現在までに合計三十六回の弁論が開催されております。五十八年の五月十八日の第二十八回の弁論期日から証人調べに入っておるところでございまして、現在では原告の国鉄の方のこうむった損害の額を立証するために国鉄から申請をいたしました証人の尋問が行われているという段階でございます。いずれにいたしましても、かなり長い訴訟でございまして、私どもとしましては、今後とも審理促進をお願いしたいというふうに思っておるところでございます。
  53. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 この問題はもう大変重要な問題だと思います。年に三回くらいの裁判が行われて遅々として進まない、こういう状況なんですが、この問題は民営・分割になった場合にその取り扱いは一体どうなるのか、この点についてお伺いをいたします。
  54. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) この問題を含めまして訴訟等の全般の問題につきまして胃下検討中でございますので、まだ明確なお答えはできませんが、国鉄といたしましては、本件につきまして民営・分割後引き続き清算のための組織ができますので、そうした組織で実行するということが適当であるというふうに思っております。
  55. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 そこで労働大臣にお伺いしますが、この余剰人員の受け入れについて民間企業に対して要請する場合に当たりましても何らかの奨励措置、そういうものがなければ進まないと思うんです。例えば賃金の補助など、こういうものを考えるべきではないかと思うんですが、検討されておりますか。
  56. 山口敏夫

    国務大臣(山口敏夫君) まだ具体的にそうした立法措置までは考慮しておりませんが、いずれにしましても、先ほど後藤田総務長官から御答弁ございましたように、労働省といたしましては、過去のいろいろな離職者対策その他の経緯を十分踏まえまして、そして経営者団体、それから労働四団体、全民労協等々にも御相談、お話などもいたしながら、いわゆる民間における一万人規模の再就職の問題につきまして鋭意今御相談、御協議をいろいろお願いしておる、こういう段階でございます。
  57. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 その点もまだこれからこれからということですが、先ほども三治先生がお話ししましたように、この問題はもう国鉄再建の根幹にかかわる問題ですから遅いと思うんです。とにかく早めていただきたい。  そこで、最後に国鉄共済年金、これは両三年を経ずに財政破綻が生ずる、こういうようにも見通されておるわけでありますが、当局の見通しはどうでしょうか。
  58. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 御案内のとおり、国鉄共済、当時で言えば電電、たばこ、それに国家公務員でこれを救済しよう、しかし三十二万人体制を前提に置いておることも御承知のとおりであります。  その後の経過からして、これは先の問題としては大変な重要な問題になるという問題意識を持ちまして、昨日も官房長官が私ども関係者を集められまして、とりあえずこの国会でお願いしております共済の問題は、これは給付の一元化、したがって負担の一元化とでも申しますか、そういうことをどうせ進めなければならない、これは宿命的な問題だということで、きのうも我々を招集されたわけであります。したがいまして、この問題につきましては、この共済年金を成立さしていただいて給付の一元化ができますや否や、この負担の問題についてどこが中心になるか、あるいは年金担当相にお出かけいただくのか、そういうことも含めて急に検討をしなければならぬ課題だというふうに思っております。  私どもは、従来からの審議の経過からすれば、あの国家公務員、専売、電電が抱えていただきましたときはまさに労働者連帯と、こんな感じでございましたが、結局は国民連帯というような中で解決する方向を模索していかなければならぬのではなかろうかと、こういうふうに考えておるところでございます。
  59. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 その問題について新たに新しい審議会を設けてこの問題を真剣に一年以内に検討すると、こういうような考えはございませんか。
  60. 竹下登

    国務大臣竹下登君) その御提言も一つの御提言だろうと思っております。そういうことをかれこれ含めて、昨日官房長官が招集されたではないかというふうに私も理解しております。
  61. 三治重信

    三治重信君 続いて御質問しますが、世界最大の三光汽船が倒産した。これには大変な従業員が雇用と生活の安定に重大な影響を与えられるんじゃないかと、こういうふうに見ておるんですが、三光汽船の会社更生法の適用の申請は確実なのか、特にその関連企業等の救済策はどういうふうになっているか。
  62. 山下徳夫

    国務大臣(山下徳夫君) 三光汽船の問題につきましては、八月の十三日に法に基づきまして更生手続開始の申し立てが行われ、現在東京地方裁判所で更生手続開始決定の可否について御審理をいただいておるところでございます。何と申せ、世界最大の会社でございますし、例えば韓国の船員が二千人、フィリピンが二千人、国内が二千人ということで、ひとり国内だけではなく国際的にも非常に重要な、特にこれらの両国が重大な関心を持っておられることでもございますし、日本の今日まで果たしてきた海運の役割からしても、私はこれが適切なる裁判所の決定がなされるようにこいねがっておるわけでございます。今、保全管理人のもとで具体的に再建方策について非常な御努力、御検討をちょうだいいたしておるわけでございまして、関係者の協力、支援によって適切な再建方策が樹立されるものと、今申し上げましたようにこいねがい、またそのように私は期待をいたしておるのでございます。  さて、今御指摘のございました船員対策でございますけれども、これは船員職業安定所、ここで広域的に就職のあっせんあるいは指導をやっておりますし、さらに財団法人の日本船員福利雇用促進センターというのがございまして、ここで外国船への配乗あるいはまた再就職のための職業の訓練というようなことを積極的に推進いたしております。また関係省庁とも協力をいたしまして格段の努力を払ってまいりたいと思っております。
  63. 三治重信

    三治重信君 次に、社会保障の関連で御質問をしたいと思います。  退職者医療保険制度創設に当たって厚生省は、国民健康保険には新たな負担はかけない、こういうふうに言明して実行したにかかわらず、昨年で六百七十億円、今年六十年度で千四百十億円見込みの新たな負担がかかってくるというふうに言っておるのでございますが、負担をかけないと言ったのにこういう負担が現実にかかっている。こういうようなものの後始末と、さらに六十一年度はこういうようなものを完全に解消する手だてをとっているのかどうか。
  64. 増岡博之

    国務大臣(増岡博之君) 当初の加入者の見込みと相当数字が狂った理由でございますけれども、一つには被用者保険の任意継続制度がございまして、それが予想以上に活用されたことと、次にはかなりの本人の配偶者の方々が、その子供の加入しております被用者保険の被扶養者となったということから、その他の事情もございますけれども、退職者医療への加入が減少したものと思われるわけでございます。  この対策でございますけれども、制度移行に伴っての財政影響につきまして、厚生省としては実態調査を行ったわけでございますので、その数字と各市町村の財政状況等を見きわめながら国保事業の安定的な運営に支障を来さないようにしなければならぬということでございまして、所要の財政措置について財政当局と交渉中でございます。来年度につきましては幅広い制度の改革考えながら対策を講じてまいりたいというふうに思います。
  65. 三治重信

    三治重信君 厚生大臣、そういう答弁ではちょっとみんな、満足というんですか、納得しないと思うんですよ。負担はかけないと言ったものについての後始末の責任をどう考えているか、そこをしっかり言ってもらいたい。
  66. 増岡博之

    国務大臣(増岡博之君) そのような姿勢で今後財政当局と交渉してまいりたいと思います。
  67. 三治重信

    三治重信君 のれんに腕押しで困るんですが、その次に、さらに老人保健法の改正を来年度やられるように新聞に出ているわけなんですが、これはほかの同僚委員からも質問があったんですけれども、この改正は少しラジカル過ぎるんじゃないか。例えば一部負担でも引き上げが非常に過大じゃないか。それから加入者の案分率も四四・七%をすぐ八〇%に繰り上げをして、組合健保では千三百五十億円、政管健保で千四百六十億円も新たに大変な負担になる。こういうような改正案というものが余り安易に行われていいものかどうか。
  68. 増岡博之

    国務大臣(増岡博之君) 老人の医療費が年率一〇%程度の伸びを続けておるわけでございまして、来年度には四兆円にも達しようかと思います。この増大傾向は今後の高齢化社会に伴いまして避けられないことでありますから、これを国民がいかに公平に負担していくかということが重要課題であるわけでございまして、その過程で、特に国保の中にはサラリーマンが退職すれば大勢加入なさるわけでありまして、その加入率が年々高まって、現在組合健保の四倍を超えるという数字になっておるわけでございます。そのため総合的な見直しをする必要がございます。  その一環として加入者案分率をできれば一〇〇%としたいわけでありますけれども、段階的にということで六十一年度は八〇%、六十二年度は一〇〇%でございまして、したがってこの制度の採用によりましての負担の増は、初年度は五割、六十二年度で満額となることでございまして、最終的にはどこの保険者も同じ割合で老人を抱えるものとして負担することとなるわけでございますので、これによりまして医療費の負担の公平が図られると考えておりますので、何とぞ御理解をいただきたいと思います。
  69. 三治重信

    三治重信君 その理屈はとにかくわかるとして、このやり方を見ていると、結果として国民健康保険の国庫負担が非常に軽減される。したがって、ほかの組合では非常に保険料が高くなって、また国民健康保険の保険料も安くなるけれども、さらにその上に国民健康保険への国の補助金が大量に減る。それをそこまで全部穴埋めしなくちゃならぬ、そこに非常に大きな問題があるような気がするんですが、いかがですか。
  70. 増岡博之

    国務大臣(増岡博之君) 私どもは老人の医療費の負担を公平化しようという考え方でやっておるわけでございまして、その結果として国庫の負担が多少減る分もございますけれども、現状、国保がほかの保険者よりも四倍以上老人を抱え、しかもその医療費が先ほど申し上げたような増加傾向にあります現実を考えますと、やはりこのような改正を行わなければならないものと考えております。
  71. 三治重信

    三治重信君 そういうふうにおやりになる場合にでも、健保の組合の中にはいいところと悪いところと実にさまざまにあって、八〇%案分率なんかやるというと、保険の負担率の最高を突破するというような組合も多数出てくるわけです。こういうアンバランスを直すというんだけれども、アンバランスを直す中で、健保の中で非常にいい悪いがたくさんあるその悪い方が、政管や国保よりかさらにたくさんの保険料を負担しなくちゃならぬ組合が多数出てくる。こういうようなものの対策はどう考えているんですか。
  72. 幸田正孝

    政府委員(幸田正孝君) 健康保険組合は全体として安定的な財政運営でございますから、加入者案分率を八〇%あるいは一〇〇%に引き上げましても、大部分の組合は保険料率を現在以上に引き上げる必要はないものと私どもは考えております。  ただ、先生御指摘のように、全体で千七百二十の健保組合がございますから、ごく少数の組合では保険料率の引き上げが必要になってくる組合もあるかと思いますが、その数は私どもの試算によりますと極めて若干でございまして、数%程度の組合にとどまるものと考えております。こういった組合におきましても、健康保険組合連合会、健保連で、財政が窮迫している組合につきましては共同事業、相扶共済のための事業を実施しておりますから、この現在の相扶共済のための共同事業を利用することによりまして、これらの健保組合についても事業運営に支障のない形でこの案分率の引き上げをのみ込めるものと私どもは考えている次第でございます。
  73. 三治重信

    三治重信君 非常に立派な答弁なんだけれども、健保組合はそうは感じていない。そこを老人保健法を改正する場合に、もっとしっかり健保組合やほかのところの意見をひとつ、これは来年度の問題ですからそこでまたやりますけれども、よく聞いてほしいと思います。  その次に、税制改革の問題を伺いますが、国民の生活に関する世論調査というのでは税の問題がトップでございます。だから税制の抜本的な改革を求めている。そして政府は、税収増を目的としないで税制のゆがみやひずみ、税に関する重圧感、こういうものを除去して安定的な歳入の構造を確保する、こういう税制改正をやりたい、こういうことなんですが、総理、その趣旨はいいんだけれども、その手段として、きのうも答弁があったんですけれども、所得税、法人税の非常に過重負担感というものを先に軽減して調査をお願いすると、こういうことがあったものだから、我々は六十一年度の、来年度の予算編成でそういう所得税、法人税の減税が実現できると思って、殊に我我労働四団体の意見の二兆円からの減税というものを非常に期待していることから見ると、総理のそういう発言を非常に頼りにして、ぜひひとつやってもらいたいと、こういうふうに思ってきたんですが、きのうの発言だと君子豹変したんじゃないですか、どうですか。
  74. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は一貫して春の通常国会から申しておりますことは、まず減税をやりたい。それは、今のシャウプ税制以来の税のゆがみとかひずみとかあるいは重税感とか、そういうものが相当たまってきておるから、そういう意味で公平、公正云々という原則に基づいてこれを正した新しい税体系をつくりたい。その場合には所得税、法人税あるいは相続税というようなものも対象にして思い切った改革と減税を考えてみたいと、そういうことを申し上げまして、そして九月に政府税調に諮問したわけです。しかし諮問した際には、これはまず減税というものを考えてください、そしてその体系を国民の前に出してください、そうして次にそれを賄う財源について包括的一体として御答申を願いたい、また来年の秋までにお出し願いたい、そういうことを言ってきておるのでございまして、若干誤解があるとしますれば遺憾でございます。
  75. 三治重信

    三治重信君 その後から一括という言葉が出てきたんじゃないかと思うんですけれども、とにかくそうすると、そういう税制改正が来年の秋の答申となるというと、来年度は税制改正については何ら行われないと、こういうふうに理解していいんですか、いや、予定だということで。
  76. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 税制調査会へ今抜本的な諮問を総理からされた。しかしながら、年度年度の税制というものに対しても毎年答申をちょうだいしておるわけでございますから、いわゆる六十一年度税制のあり方というものについても何らかの答申はいただけるものであろうというふうに思っております。  ただ、今熱心に抜本策を御討議いただいておりますから、六十一年度税制というと十二月までには結論を出さなければいけませんので、いつごろそっちの方へ方向が移っていくかということは、自主的な運営の方へゆだねておりますが、いずれにせよ六十一年度税制についての御答申もいただけるものであろうというふうに思っております。ただ、それは抜本的なものではなかろう。平素いろいろ御議論いただいておりますものに対しての国会等での正確な報告をいたしておりますから、それらに基づいた方向というようなものはちょうだいできるんじゃないかというふうに思っております。
  77. 三治重信

    三治重信君 また、非課税貯蓄に対する低率分離課税、これは村山調査会でやったらどうかというような答申が出たわけなんですが、せっかく政府は六十一年の一月から非課税貯蓄の管理を厳格にする、こういうことで一応決着が出たと思うんですが、それをさらに六十一年度の予算編成で非課税貯蓄の低率課税をやるというのは、これもまた税制調査会の答申を待ってやる、こういうことですか、それともそういうふうな政府自民党の方針ですか。
  78. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 御案内のように、非課税貯蓄の問題については、税制調査会は一度六十年度税制のあり方について答申をちょうだいいたしました。しかしそれを政府としては、党の答申等もいろいろございましたが、もろもろの意見を総合し、限度管理を厳しくしようということで一応この答えを出して、これが来年の一月から行われると、こういうことになっておるわけでありますが、しかしその非課税貯蓄の問題に対する議論としては、引き続き継続して税制調査会等では当然行われる課題であろうと思っております。厳密に言えば、限度管理というものとそれとは別個のものではございませんので、論理的に並行することのできないものだとは思いませんけれども、この問題等につきましては各方面からいろんな御意見をちょうだいしておりますが、六十一年税制のあり方あるいは抜本、どちらかにおいて税制調査会からの答申が期待されるものであろうというふうに考えております。
  79. 三治重信

    三治重信君 これは確認でありますが、単身赴任減税について与野党の合意ができたということですが、本年度の実施時期、帰路旅費のすべてか、いわゆる足切りがないか、それからどういう手段でそれを実行するか、こういうことについて確認をしたいと思うんですが、いかがですか。
  80. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いろんな議論がございましたが、結局、国税庁長官通達というものを近々出そう、そして適用は来年の一月一日ということでお願いしようという考え方であります。  具体的なことでございましたならば、主税局長も参っておりますから御要望に応じて答弁さして結構だと思っております。
  81. 三治重信

    三治重信君 実額。
  82. 冨尾一郎

    政府委員(冨尾一郎君) 単身赴任減税の問題につきましては、今大臣からお答え申し上げましたように、国税庁長官の通達という形で近々発遣をいたしたいと思いますが、基本的には、旅費という形で支給をされます仕事の上の出張に関連をいたしまして、単身赴任者が自宅に帰宅する場合に本来の趣旨から著しく逸脱しない限り弾力的な運用をするということでございます。そういう形で通達をつくりまして、来年の一月一日から施行するという形で今検討しているところでございます。
  83. 三治重信

    三治重信君 旅費の額。
  84. 冨尾一郎

    政府委員(冨尾一郎君) これは、本来旅費というものは業務のための旅行について通常必要とされるものを支給される場合に非課税ということでございまして、あくまでも定性的な問題でございます。したがいまして、金額的に幾らであればどうこうというような問題ではございません。必要なものがあればそれは支給される、またそれについては非課税というのが原則でございます。
  85. 三治重信

    三治重信君 それからまたもう一つ小さい問題なんですが、私、現地を回ってみますと、さらにことし上がったんですけれども、妻のパート収入が九十万円を超すと課税になる。これは税の問題でなくて雇用の問題が非常にひっかかっている。年末になってくると、みんなパートの人がもう九十万円超すからやめたと、こういうぐあいになっちゃって仕事にならぬ、何とかしてくれぬかということなんですよね。そうすると、結局、家族の配偶者扶養控除手当とパート収入との関係を直す、これぐらいはできぬものか、これは雇用の問題にも非常に影響するんですが、どうですか。
  86. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 委員御承知のように、現在の制度は、多少の所得があってもその金額が小さい場合には控除対象配偶者として認めるという少額不追及の観点から設けられて、結果としてこういう課税形態になっているわけでございます。この問題についてはいろいろ御指摘のような各種の御意見があることは十分承知いたしておるわけでございますが、先ほどからお話のございますように、現在税制調査会におきまして抜本的な見直しの作業が行われておるわけでございます。この中におきまして例えば二分二乗、単位課税の問題も取り上げられております。この問題の解決の方法としてはいろいろな方式が考えられるところでございます。この所得要件の問題につきましては、これらの関連にも配慮をしながら検討が進められると思いますので、今後税制調査会の御審議を待って適切に対処してまいりたいと思っております。
  87. 三治重信

    三治重信君 税制調査会、税制調査会で逃げられちゃうわけなんだが、その調査会にもう少し大蔵省の方は、国民の要望なんかの項目をはっきり挙げてしっかり結論を出してもらうように要請をしてもらいたい。今度、殊に所得税の減税で二分二乗方式とかをやればそういう問題は解消する。これは単に税金の問題じゃなくて労働問題や会社の経営の問題に非常に響く。そういう何というんですか、税金のわずかなことで働いちゃ損だなんという感じを持たすのは悪税だと、こう思うんです。  それから国税庁の調査発表では派手に、脱税が法人税で幾ら、源泉所得税で幾ら、公益法人で幾ら、海外取引で幾らというようなことがいつもトップ記事で出るわけなんですよね。国税庁そのもので、しかもそれが出ているのが税務調査率でわずか最高が一〇%、それから以下のは五%というようなことで出ている。
  88. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 三治君、時間が参っております。
  89. 三治重信

    三治重信君 はい。  こういうようなことで、これに対して地方の税務職員とも共同で税務調査をやるような工夫をして税務調査をもっと上げていくような、脱税を防止するような工夫はありませんか。
  90. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 国税職員四万数千、地方が六万幾らでございますか。したがって、これらについてもろもろの意見がございます。税務行政だけは一元化した方がいいじゃないか、こういう議論もございますが、それはまた地方自治の本質にもかかわるということで次官通達等を出していただきまして、今日お互いが資料、情報の提供というようなことでその実を上げておるという現状にございます。いつも本委員会等でも御指摘がありますように、税務職員をもっとふやしたらいいじゃないか、こういう御指摘もございますが、そうなると、いつもまず隗より始めよ、こういうことになると、大蔵省というのはまたこれに非常に渋い対応もしなきゃならぬということで、私は心の中で絶えず問答をしながら御趣旨に沿うような方向を模索していかなきゃなら灯と思っております。
  91. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 以上をもちまして三治重信君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  92. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 野田哲君。
  93. 野田哲

    ○野田哲君 最初に総理の一身上の問題について伺っておきたいと思うのです。私も個人的な問題をあげつらうことは本意ではないんですが、問題が一国を代表する総理の名誉にかかわることでもあるし、政治倫理にかかわることでもありますから、ただしておきたいと思いますし、総理もせっかく弁明の機会でもあるわけですから、明確に答えていただきたいと思います。  総理は、一九七七年四月十三日、昭和五十二年衆議院のロッキード問題の調査特別委員会で証人として出席をされました。そのときに、いわゆる殖産住宅事件、東郷民安氏が公判で明らかにした、東郷氏から中曽根総理の秘書の上和田さんの口座に五億円の金が振り込まれた、この問題について、総理国会での証言で、「東郷君が自分の株を、自分の会社を防衛するためにいろいろ人の名前を、名義を借りて口座をつくって株式の売買をやったようです。私の同級生もずいぶん名前を使われてやられたようです。それで私の上和田秘書も東郷君に呼ばれて、こういうわけでみんな同級生も名前を貸しておるのだから、おまえのおやじというわけにはいかぬからおまえ貸してくれ」、こういうことで名義貸しにすぎない、こういう意味の証言をされているわけです。  ところが、最近東郷氏が朝日ジャーナルのインタビューの記事の中で、この五億円の受け渡しの問題について、中曽根君が将来自民党の総裁に打って出る、そのための資金が必要だ、こういうことで秘書の上和田の名義で預金をしておいてくれ、こういうことで政治資金として頼まれて渡した、こういう謹言といいますか、インタビューで語っているわけであります。事は政治倫理の問題でもありますし、もしこの東郷氏の話っていることが本当であるとすれば、総理国会での証言で大変な偽証をやっているということにもなりますので、この点を明確にお答えいただきたいと思います。
  94. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まず、東郷君の御境涯につきましては御同情にたえないと思っております。  その問題につきましては、私がロッキード委員会で証言したとおりでございます。確かに旧制静高の同級生でありまして、同級生の中曽根を応援すると東郷君は言っておったこともあり、ある機会、これは木部君が政務次官になってその祝賀会があったときに、私はたしか、将来総裁選がある場合には一発応援してくれよ、そういうようなことを頼んだことはございます。しかし、それとこの問題は、また私らの考えでは別個で、株式を上場するに対して同級生そのほかから名義を借りて、そして東郷君が売買を行った。うちの上和田もその一人に入れられておった。したがいまして、あのときの証言でも申しましたけれども、上和田は、そのことは上和田自体はたしか聞いていたということではありますが、その貯金通帳も見なければ印鑑ももちろん見ない、そういうことであったと上和田からも当時聞いておったところでございます。そのとおりでございます。
  95. 野田哲

    ○野田哲君 総理は、さきの国連創設四十周年記念総会で、国連加盟以来我が国外交はその基本方針の一つに国連中心主義、人権を最大に尊重しつつ平和と文明の創造に努める、こういうふうに述べておられるわけです。しかしこのままの状態ですと、来年の二月の国連の人権委員会で、我が国の精神衛生行政のあり方をめぐって日本に対する批判が出る可能性があるのではないかと思うのです。国連外交と人権の問題、平和についてどういうふうに考えておられるのか、まずその基本的な考え方を伺います。
  96. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国連には人権規約がたしかありまして、加入している国と加入していない国とあると思いますが、その人権規約においては生命あるいは自由そのほかの人権が守らるべきであると規定されていると思います。人類共通の場である国連というところは人類的立場に立って、個人の場合といえども捨ておかないで人権を守るということが行われておる。その精神が今問題になっているサハロフ博士の問題なんかにもきているんだろうと私は思います。個人といえどもないがしろにすべきではないという精神、そういう意味からも、我が国にそれに類するような暴力事件とか、人権がじゅうりんされるようなことがあってはならないと思っておりますが、精神衛生法上の問題でいろいろな扱いについて問題がありましたことは事実であります。これらにつきましては厚生大臣から御答弁申し上げさせる次第でございます。
  97. 増岡博之

    国務大臣(増岡博之君) 精神障害者につきましていろいろなことがございました。大部分の病院はまじめにやってくれておるわけでありますけれども、一部の病院に限りましてそのような事件が起きましたことはまことに遺憾なことであります。  私どもといたしましても、そういうことを踏まえ、また国連でもいろいろ言われておりますので、そのような方向で今後の対策を講じてまいりたいというふうに考えております。
  98. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 本岡君から関連質疑の申し出がありますので、これを許します。本岡昭次君。
  99. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 関連で、中曽根総理以下大臣に伺います。  今、厚生大臣が精神病院問題、一部の病院とおっしゃいましたが、そうではないのでありまして、またそれは別の機会に明らかにいたします。  最近、国連人権小委員会を舞台に我が国の精神衛生行政が世界の人権宣言、国際人権B規約に反する、日本は経済先進国ではあるが人権後進国ではないかという指摘が相次いております。総理はこの国連における批判をどう受けとめ、どう改善されるか、基本的なお考えを聞かしていただきたいと思います。
  100. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今御指摘がございましたB規約、選択議定書につきましては、個人の通報に基づく国際的な検討制度が国際的にも普遍性を有する実効的な制度として有効に機能するか否か必ずしも疑問なしとしないという点がありますが、現在までの本制度の運用状況はおおむね問題はないと考えております。  国会でも附帯決議がございます。承知しておりますが、こうした附帯決議も踏まえまして、今後締結に向けまして積極的に検討してまいりたいと考えております。
  101. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 私の質問したことに正確に答えていないんですが、時間がありませんから、一番肝心な問題を質問いたします。  私はことしの八月にジュネーブの国連人権小委員会に社会党の人権調査団の一員として参加いたしました。この人権委員会において、日本政府は精神衛生法の改正の発言を行いました。しかし、国際人権連盟等は厚生省のこれまでの消極的なやり方から見て、政府がこの努力に成功するかどうかは極めて疑問に思うと人権小委員会で声明まで出しているのであります。この際、この精神衛生法改正の内容、手続、改正案提出の時期を明示していただきたいと思います。
  102. 増岡博之

    国務大臣(増岡博之君) 御指摘のようなことでございますので、提出のめどといたしましては、六十二年春の通常国会に提出いたしたいと思いますけれども、来年早々そのための懇談会を設けまして、我が国の精神保健制度について関係者の意見を広くお伺いするとともに、関係審議会にもお諮りした上で六十二年春の通常国会に改正案を提出することを目途に最大限の努力をしてまいりたいというふうに思います。
  103. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 どうもはっきりわからないんですが、確認いたします。六十二年の通常国会に提出するというふうに考えていいんですか。
  104. 増岡博之

    国務大臣(増岡博之君) そのように努力をしてまいります。
  105. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 内容等について何も触れられなかったんですが、どういう立場で、どういう内容でもって改正をしようとされているのか明らかにしてください。
  106. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 六十二年春に、ただいま大臣から御答弁いただきましたように、改正案の提出を目途としておりますが、内容的には、これから懇談会を設けまして幅広く国際的な意見も参酌しながら改正案をつくってまいりたいと考えております。  例えば、今まで指摘されておりますようなことは幾つかございますが、医学的な面からいいましても、精神障害者の定義の問題でございますとか、同意入院制度の取り扱いの問題でございますとか、あるいは社会復帰対策をさらに促進させる方策でございますとか、あるいは先生もかつて御指摘なさいましたけれども、地域精神保健対策をもっと進展させるとか、そういうふうないろいろな立場を考慮いたしまして、審議会、懇談会の御意見をいただき、さらに公衆衛生審議会あるいは社会保障制度審議会、そういうところへ御諮問申し上げて成案を得たい、こういうことでございます。
  107. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 次に、三重県の私立日生学園における人権侵害について伺います。  今、同学園では被害者の会が結成されて、学校でのリンチ、退学者や自殺に追い込まれた生徒の親たちが学校の暴力的体質を告発し、津地方法務局人権擁護課に提訴しております。一体何がここに起こっているのか、法務省、文部省、警察庁、調査の結果と今後の対応について伺います。
  108. 新田勇

    政府委員(新田勇君) お答え申し上げます。  現在までのところ、警察としまして日生学園関係の事案として四つの事案を認知し、処理いたしておるわけでございます。  一つは上級生による下級生に対する暴行事案でございまして、昭和六十年七月四日に被害者から被害届が出たわけでございます。その後、関係者からいろいろ事情聴取等の捜査を行い、現在までに同校の三年生五名による一年生一名に対する暴行事案五件ということで立件いたし、九月二十日に送致いたしております。  二つ目は、七月十八日に発生いたしました学園食堂内におきます生徒の圧死事件でございます。検死の結果からは事故死というふうに認定しております。  三つ目は、八月二十六日に起きました時計台からの飛びおり自殺事案でございます。数日前からの本人の言動等から判断いたしまして、自殺というふうに考えております。  四つ目は九月二日に発生いたしました同校教師による体罰事件でございまして、教師一名による同校三年生一名に対する傷害事件ということで立件いたし、十月三日に送致いたしたところでございます。  比較的短い期間にいろいろ事件が発生いたしましたし、またいろいろなうわさもあるということから、警察といたしましては強い関心を持っているところでございまして、今後とも刑罰法令に触れるようなことがありますれば厳正に対処してまいりたいと、かように存じております。
  109. 野崎幸雄

    政府委員(野崎幸雄君) 今御指摘の日生学園の件につきましては、もと同校に在校しました生徒より被害の申告がなされており、またマスコミなどにおきましても大きく報道されておるところでございます。  津地方法務局におきましては、これらの事件につきまして現在学校当局から事情を聴取するなど鋭意調査を継続中でございます。今後調査の結果を得まして、その結果、人権侵犯の事実が明確になりましたときは厳正、適正に対応したい、かように考えておるところでございます。
  110. 高石邦男

    政府委員(高石邦男君) ただいま報告がありましたような事件の内容について、三重県の担当課を通じまして調査をしているところでございます。概括的に申し上げますと、上級生等による下級生へのいじめ、それから教師を含む指導上の体罰を含めたあり方、そういう問題についていろんな事件の内容が報道されておりますので、その事実関係を正確に把握し、そして的確な指導をするように県教委を通じまして、また県の当局者を通じまして指導を加えているところでございます。
  111. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 総理に伺いますが、総理は今直属の臨時教育審議会を設置し、教育改革を積極的に進めようとしておられます。さらに、今国会の施政方針演説でも学校のいじめの問題に言及されました。日生学園のような学校の暴力的体質の一掃、生徒の人権保障という問題は極めて重要な教育改革の課題であると私は考えておりますが、総理考えと対応を聞かせていただきたいと思います。
  112. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いじめやあるいは体罰の問題は黙視できないほど広がりを見せておりまして、政府といたしましても、府県当局あるいは教育委員会等と連絡をとりまして、そういう不祥事件を発生させないように、根絶せしむべく全面的に力を入れて今努力をいたし、今後も努力を継続するつもりでおります。
  113. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 最後に、総理に簡単に御意見を伺って終わりますが、総理も御存じのとおり、先進諸国では人権はデモクラシーの基礎、土台である、したがって、人権のないところにはデモクラシーはないという認識で人権問題に取り組んでおります。日本はもちろんデモクラシー、民主主義の国であります。今言いましたような生徒あるいはまた障害者、在日朝鮮人、部落差別などに関する人権侵害の問題が日本にはたくさんあるわけですが、こうした問題に対して総理が人権の問題としてどのようにこれからかかわっていこうとされるのか、考えを一言伺って終わります。
  114. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 人権の確立と擁護は民主主義の根底を培う大事なところでございまして、政府といたしましても細心の注意を配りまして、いささかも人権が侵害されることがないように今後とも万全の措置を講じてまいる所存でございます。
  115. 野田哲

    ○野田哲君 靖国問題について伺いたいと思います。  靖国問題懇談会の報告、この中に「我が国における戦没者の追悼」という項があるわけですが、その中でこう述べています。「国民や遺族の多くは、戦後四十年に当たる今日まで、靖国神社を、その沿革や規模から見て、依然として我が国における戦没者追悼の中心的施設であるとしており」、こういうところがありますが、この点について、靖国懇のメンバーでもあり、ずっと前の法制局の長官でもある林修三さんがジュリストという最近出された法律関係の本の中でこういうふうに述べておられます。   昭和三一年以降は、厚生省引揚援護局及び地方公共団体の当局が協力して、太平洋戦争の戦没者の合祀事業に協力し、靖国神社には二百四十数万柱の戦没者が合祀されることになった。そして、これは、世間的に何らの問題とされることなく実施された。こういう状況の下では、遺族及び国民の多くが、靖国神社を依然として戦没者追悼の中心的施設として認識する心情ないし感情をもつことは自然のことであって、そこに、靖国神社をめぐるいろいろの問題の発生原因がある  こういうふうに書いておられます。  そこで、発生原因と指摘されている厚生省がどういう仕事をやってきたのか、これを明らかにしていただきたいと思うわけであります。  まず、厚生省の方に伺いますが、昭和三十一年四月十九日、援発第三〇二五号、昭和三十六年七月五日、援発第三〇二四号、昭和三十九年十二月二十二日、復員第八三一号、昭和四十年六月八日、調査第一五三号、昭和四十五年八月四日、調査第四五四号、昭和四十六年二月二日、援発第一一九号、これらの厚生省の通達について、その内容を説明していただきたいと思うんです。
  116. 水田努

    政府委員水田努君) 厚生省の遺族援護の業務は、御案内のとおり大別して二つございます。一つは遺族の生活の援護の事業であり、他の一つは遺族の心情に配慮した事業を行う、この二つの事業を行っております。前者は、恩給による公務扶助料あるいは援護法に基づく遺族年金の支給等の業務をやっております。後者の、遺族の心情に配慮した事業といたしましては、遺骨収集、海外の慰霊巡拝あるいは海外の慰霊碑の建立等の事業をいたしているところでございます。  ところで、お尋ねの通知でございますが、まず最初の昭和三十一年の通知でございますが、当時靖国神社の合祀事務が非常におくれておりまして、これを促進するために同神社からの調査依頼に積極的に対応してほしいということが多数の遺族の方から強く要望されたところでございまして、厚生省としましては、遺族援護の見地からこの調査事務について協力するのが適当ということで、この調査事務について一般的な軍人軍属に関する身上調査の一環という立場からこの事業に協力するように通知を発したものでございます。  次に、昭和三十六年、三十九年、四十年、四十五年の通知は大別して二つでございまして、一つは調査対象の範囲の拡大と、それから調査事務の促進、この二つに大別できるわけでございますが、調査対象の範囲の拡大に関するものが昭和三十六年の通知でございます。その他の通知はいずれも調査事務の促進を図るために出した通知でございます。  最後の昭和四十六年の通知は、これまでの三十一年から一連の通知というものがあたかも何か靖国神社を特別の扱いにしているような誤解を与えるおそれがございましたので、本来あらゆる団体、あらゆる個人から、厚生省並びに都道府県が保管しております軍人軍属に関する身上の記録について調査依頼がある場合には、原則としてこれにこたえていたわけでございますので、そういう内容のものに誤解を受けないように改めて、三十一年以降のそれまでの通知は一切廃棄をしたと、こういう経過になっております。
  117. 野田哲

    ○野田哲君 肝心のところが触れられていないので私から指摘いたしますが、まず最初の三十一年の通達でありますが、なし得る限り好意的な配慮をもって、靖国神社の合祀事務に協力する、こういうふうになっていますね。それから事務要領の大綱としては合祀者名簿、これを所定のカードに記入して、これを取りまとめて神社に回付する。それから合祀が決定した合祀通知状は都道府県に送付して、そこから遺族に交付を依頼する。そして最後に、本件事務処理の経費は国費負担とする。これは間違いないですね。
  118. 水田努

    政府委員水田努君) 記載内容は御指摘のとおりでございます。
  119. 野田哲

    ○野田哲君 それから今読み上げた一連の通達の中で何回か出てくる問題ですが、この事務処理のために合祀予定者の選考基準というのを厚生省でつくって、これを各都道府県に指示しておりますね。
  120. 水田努

    政府委員水田努君) この調査というのは遺族の大多数の方から要望があり、これにこたえることが遺族援護の業務上適当であるということから基本的に対処してまいったわけでございますが、作業の手順内容というものは調査依頼者の依頼の範囲で誤解のないように記述し通知をしたと、こういうことでございます。
  121. 野田哲

    ○野田哲君 これは古いことですから、そんなに弁解がましく言ってもらわなくてもいいんです。事実をありのまま答えてもらえばいいんで、靖国神社からの依頼ではなくて、厚生省の持っている戦没者の名簿、これを厚生省が合祀予定者の選考基準という一定の基準をつくって、そして第一類から第十五類までの基準をつくって、この基準に照らして合祀予定者をリストアップし、祭神名簿をつくって靖国神社に提出する。そういうふうになっているでしょう、事務手続は。
  122. 水田努

    政府委員水田努君) これは先ほどもお答え申し上げましたように、さきの大戦で公務死した方の調査依頼でございまして、それを具体的に依頼された内容を展開したものが今御指摘の一類から十五類までの分類になる。これはいわゆる公務死をした方の範囲ということで、特段私どもは厚生省が合祀基準を設定したというふうには考えておりません。
  123. 野田哲

    ○野田哲君 選考基準、これはあるでしょう。明確にしてくださいよ。靖国神社合祀予定者選考基準として第一類から第十五類まで、戦死あるいは病死の種類をずっと十五種類に分けて、これによって名簿をつくれという指示をしているでしょう。どうですか。間違いないでしょう。
  124. 水田努

    政府委員水田努君) 今日的に見ますと誤解を受けるような記述があったと思いますが、真意は、今申し上げましたように、靖国から依頼された戦没者の範囲というものを……
  125. 野田哲

    ○野田哲君 当時の真意をあなたがわかるわけないんで、事務的な事実だけ私は確認している。
  126. 水田努

    政府委員水田努君) 事務的な事実としては、一類から十五類までの都道府県が作業をする範囲を示してやったということでございます。
  127. 野田哲

    ○野田哲君 それから事務手続を示した幾つかの通達、その中で、昭和四十五年に各都道府県に対してある県がやっている合祀事務の調査のモデルケースとして資料を流したものがあるわけです。それを見ると、このモデルケースを参考調査、名簿の作成をやれ、図式を示してあるわけですがね。これを見ると、靖国神社に合祀する名簿を送付するに当たって、名簿作成の過程で遺族の意思を確認する手順というのはまるっきりないわけですね。これも事実ですね。
  128. 水田努

    政府委員水田努君) 照会の内容にそのままお答えをいたしております。
  129. 野田哲

    ○野田哲君 今の説明、そして私が見た資料によって問題として感じるのは、まず一つは、合祀予定者選考基準というものを厚生省がつくって各都道府県に指示した。これによって合祀名簿がつくられて靖国神社に送付されている。これは実質的には靖国神社の合祀事務を厚生省、つまり国がやっている。これはもうはっきりしているんですよ。それからもう一つは、合祀名簿をつくるに当たって遺族に確認する手順というものを全くやられていない。それから、これだけの事務処理をする経費、これを全部国が見るという。明らかにもうこれは憲法二十条八十九条に違反する行為ではないかと思うんですが、厚生大臣、それから地方公共団体で実務をやったわけですから自治大臣、それから官房長官、それぞれお答えいただきたいと思うんです。
  130. 水田努

    政府委員水田努君) 細かい法律関係だけ先にちょっとお答えをさしていただきたいと思います。  まず事務の点でございますが、地方自治法附則十条で、制定法以来、「都道府県は、軍人軍属であった者の身上の取扱に関する事務及び未引揚邦人の調査に関する事務を処理しなければならない。」という規定がございまして、同条の四項で「第一項の事務を処理するために要する経費は、国庫の負担とする。」ということになっておりまして、先ほども申し上げましたように、靖国の調査依頼にこたえるのはここの「軍人軍属であった者の身上の取扱に関する事務」の一環としてやったものでございまして、それに対する費用は、この同条四項に基づいて復員委託費ということで、もろもろの未帰還者の調査その他と一緒にあわせて予算上計上し地方自治体に交付していたものでございます。  それからもう一つの本人の同意を得てという話でございますが、これは私どもは、個人的な情報の基礎をなしております戸籍簿なりあるいは住民基本台帳というものは何人も請求し、それに関係行政機関はこたえるということになっておりまして、一々本人の了承を得なくてもいいということになっておるわけでございまして、私どもも調査の依頼内容自体が特段問題がないものについてはそのままお答えしていいものと判断いたしているところでございます。
  131. 野田哲

    ○野田哲君 今の局長の答弁は大変問題があるんですよ。これは明確に「靖国神社合祀事務に対する協力について」という通達で、一番末尾に「本事務処理の経費は、国費負担とする」、こうなっているわけでありまして、戦没者などのいわゆる一般的な援護事務のことじゃないんです、私が指摘しているのは。そういう立場でそれぞれの関係大臣答えてもらいたいと思います。
  132. 増岡博之

    国務大臣(増岡博之君) 厚生省といたしましては、遺族援護業務を担当いたしておるわけでございますので、戦没者の方々の身上を調査し保存し、必要に応じて照会に応じるということは通常の任務だろうと思います。したがいましてその費用は当然国が国費として支弁するわけでございまして、今回のことにつきましてはその調査依頼に応じて靖国神社側になした仕事でございます。したがって、そのことは一般的な調査、保存等に関するものと同じ扱いであるということから国費ということが記載されたものであろうというふうに思うわけであります。また、合祀されることを遺族に照会するかどうかは、これは本来靖国神社側の任務であろうというふうに考えております。
  133. 大林勝臣

    政府委員(大林勝臣君) 御指摘の事務につきましては、先ほど来の御質問にもございますような経緯で都道府県において厚生省の通達に基づいて処理をしてきたものでございますが、団体等の照会につきましては、遺族援護行政の観点から妥当なものについて協力するという趣旨のものと私ども聞いております。各都道府県におきましてもそういう趣旨を踏まえて対処してきたものと存じております。
  134. 藤波孝生

    国務大臣(藤波孝生君) 戦争に敗れましてから、戦病死者の方々の問題を中心にいたしまして、厚生省では主として御遺族の援護ということを中心にいたしましていろいろな業務を進めてきたところでございます。それらの中で、今も御答弁がありましたように、いろいろ未帰還者の調査の問題でありますとか、いろいろな調査活動なども進められてきたわけでありまして、それらの一環として恐らく靖国神社からの照会にこたえたもの、このように考えておる次第でございます。政府委員からお答えをしたとおりでございます。
  135. 野田哲

    ○野田哲君 私は、明確に通達に出ている靖国神社に対する合祀事務、このことについて聞いているんであって、援護事務で聞いているんじゃないんです。  これは委員長、今の答弁は私の聞いていることと全然違いますよ、質問と。
  136. 水田努

    政府委員水田努君) 先ほど申し上げましたように、靖国神社の調査依頼にこたえるのは一般的な軍人軍属に関する身分的なことに関する調査事務の一環としてやっているわけでございまして、支出の根拠は、先ほど申し上げましたように、地方自治法附則十条の第四項に基づくものでございまして、ここに書いてある最後のくだりはそれを入念的に書いたにすぎないということで、ここで通達で創設したものではございません。
  137. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 政府質問に的確にひとつ答弁してください。
  138. 野田哲

    ○野田哲君 私は援護事務を言っているんじゃない、合祀事務をやっていることが一体どうなのかと、こう言っている。
  139. 水田努

    政府委員水田努君) 先ほども申し上げましたように、多くの遺族の方が合祀をされることを望んでおられる。これにこたえることはやはり私ども遺族援護を所管している厚生省としては適当な業務と考え、従来の一般的な業務の一環としてこの業務をするよう都道府県に通達したところのものでございます。
  140. 安田隆明

    委員長安田隆明君) それでいいでしょう。
  141. 野田哲

    ○野田哲君 違いますよ。
  142. 増岡博之

    国務大臣(増岡博之君) 先ほど申し上げましたように、その前から一般的に照会には応じる事務をやっておったわけでございますから、三十一年には、その全般的な調査に応じる事務の一つの例として靖国神社を掲げ、それに対しても協力するようにという通達を出したものと思います。
  143. 野田哲

    ○野田哲君 それではもう一回私から指摘いたしますが、昭和三十年十二月八日の衆議院海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会議録第二号というのがあるわけですが、堀内さんという委員の方が、靖国神社の合祀事務に協力するために予算を要求して二千八百万円だけ予算に計上したのが憲法違反になる、合祀促進のための費用を二千八百万円予算に計上したのが憲法違反になるということで、これが予備費の中へ回されてしまった、こういうことで質問されているところがあるわけです。そうして、これは一体復活させて何とかならないのか、こういうことに対して、山下政府委員、これは山下春江さんだと思うんですが、こういうふうに答えておられるんです。「憲法の建前上、ただいまの場合では、どうしても政府が直接合祀に参与することは適当でないと思います。」、こう答えて、二千八百万円合祀事務の事務費を計上したことが、これは憲法違反だということで予備費に回されたことに対して見解を述べているんです。明らかにこの時点で、合祀事務費として予算に計上し、これをやることは憲法の建前からどうにもならないのだ、こういうふうに答えておられるんです。  今の答えと全然違うじゃないですか。どうですか、これは官房長官、法制局長官も答えてください。(資料を示す)
  144. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) ただいま私も初めてこの当時の昭和三十年十二月八日付の衆議院の会議録を拝見いたしたわけでございまして、したがって私も自信を持ってお答えするわけにもまいりませんけれども、今急いで読んでみますと、この堀内先生の質問である「先般の議会の際に、靖国神社へ合祀促進のために、特別な意味において、二千八百万円だけ一時予算の中に計上したのが憲法違反になるというようなことで」ということで、何かこれは靖国神社への合祀促進、まさに合祀促進そのものを目的として、いわばそのインセンティブを与えるという意味予算に組もうとしたのではなかろうかと思うのです。山下政府委員のお答えの方でも、それは憲法上問題があるけれども、一般的な経費といたしましては、いわゆる復員業務の一環としてのいろいろな予算の方で計上してあるのでそれで賄う。それによって結果的には、今お話しのあるような合祀の促進にも役立つことになるのではないかというようなお答えをしているようでございまして、そういうことで、堀内先生の御質問にあるような、二千八百万円という予算は何か積極的に靖国神社への合祀促進費といったような、そういった筋合いの予算として組もうとしたのではなかろうかと、かように考えております。
  145. 野田哲

    ○野田哲君 やはり合祀事務という形では問題があるということで、これは一遍取り消されているわけですよ。それをこの援護事務という形に一般化してもらって、すりかえてもらっては困るんですよ。これは合祀事務としてはやはり問題がある、憲法の建前からしてできないと、こういうことを当時の議論としても明確にしているわけです。だから今のこの大臣の、厚生大臣あるいは官房長官の見解とは違うじゃないですか、当時の見解は。どうですか。
  146. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 速記をとめて。    〔午後三時十八分速記中止〕    〔午後三時三十四分速記開始〕
  147. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 速記を起こして。
  148. 増岡博之

    国務大臣(増岡博之君) 遺族援護の事務を三十一年の通知で合祀事務と言ったのは不適切であったと認めざるを得ません。憲法に照らしても違憲の疑いがあるようなことはあってはならないので、昭和四十六年にすべての通知を廃止いたしました。
  149. 野田哲

    ○野田哲君 結局、私がこの問題を指摘したのは、靖国問題の懇談会において、国民の間に靖国神社が戦没者追悼の中心施設であるというふうな認識を持たれているということについて、その認識を持たれた原因は、今指摘をされたような国の事務によってそういう遠因があるという、この林修三さんもそう指摘されている、これを私は指摘したいためにこの問題を取り上げたわけです。  そこで、次の問題に入りたいと思うんですが、総理は本院の本会議で我が党の久保亘議員質問に答えて、靖国神社問題について、そのやり方について、憲法に違反しないような方法はどういうものがあるかということも検討をし、また、靖国懇の報告なども徴しまして政府の統一見解を変更するに至ったと、こういうふうに述べておられるわけですが、もともと官房長官の私的諮問機関として設置された靖国懇、これは特定のまとまった見解を政府に報告する、そういう性格のものではなくて、思い思いに意見を述べてもらう、それだけの性格であったというふうに商いているわけですけれども、一体、靖国懇の報告のどの部分をとらえて公式参拝への見解の変更ということになったわけですか。
  150. 藤波孝生

    国務大臣(藤波孝生君) いわゆる私的諮問機関でございますから、先生が御指摘になりましたように、委員一人一人の意見を述べてもらう、そして行政の誤りなきを期する、こういう目的で懇談会を出発させたものでございます。そのことはよく心得ております。そして、座長さん、座長代理の方にそれぞれ進行、おまとめ役をお願いしてきておるところでありまして、そして一年にわたりまして懇談会が会合を重ねていろいろな意見が出たわけです。それらを一応報告書という形にまとめよう、そんなふうにおっしゃっていただきましてまとめる作業が進んだわけですが、その中には、かくかくしかじかのところについては大体こう意見が一致した、あるいはこういうところについては随分意見が分かれた、そんなふうに報告書でも述べられておるように、私どもも一つの結論が導き出されて、それに従って決定をしたというふうには心得ていないわけでございます。あくまでも、懇談会は今御指摘のような性格のものでございますから、その懇談会から出されました報告書を参考にいたしまして、従来いろいろな論議を重ねてきたし、政府部内でもいろいろ検討もしてきた。特に、憲法との問題がありまして、それらについても法制局も含めてよく検討した。その結果、こういう宗教色を排除して、そして国民の多くの方々、御遺族の多数の方々が戦没者追悼の中心的施設と考えている靖国神社に出向いて、そこで一礼をするという形をとりまして、戦没者を追悼し、心の底から平和を祈願するという公式参拝を行った次第でございまして、あくまでも懇談会の報告は参考にいたしまして政府の責任において決定をしたものである、このように考えておる次第でございます。
  151. 野田哲

    ○野田哲君 参拝の形式を変えれば従来は違憲の疑いがあったものが合憲になる、そんな私は憲法解釈は簡単なものではないと思うんです。靖国懇のこの報告の基本になっているのは、津市の体育館の地鎮祭の最高裁判決、これが一つの基準になっていると思うんです。ところが、政府は、前の昭和五十五年の統一見解を出すに当たっても、昭和五十七年の三月三十一日の参議院の内閣委員会、昭和五十九年の四月十八日の衆議院の法務委員会、それぞれの場で、政府の統一見解を出すに当たっては津市の最高裁判決についても十分検討の上出したと、こういうふうに法制局長官は答えているわけなんです。それを、同じ津市の最高裁判決をもとにして、なぜ従来の見解と異なった見解が出し得るのか、これはどうしても理解できない。この点はどう理解すればいいんですか。
  152. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) お答え申し上げます。  ただいま御指摘のとおり、昭和五十五年十一月十七日付の宮澤官房長官がお読み上げになりましたいわゆる政府統一見解でございますが、これは津の地鎮祭判決が昭和五十二年の七月でございますから、したがいましてその後に出された政府統一見解でございます。したがいまして、今御指摘のように、この政府統一見解を出すときにおきましても、我々といたしましては津の地鎮祭判決の内容も十分に承知しておりましたし、またいわゆる目的効果論という、憲法二十条三項の宗教的活動に該当するかどうかということについての一般的な判定基準と申しますか、それがるるこの最高裁判決の中で述べられておるわけでございますが、それにつきましても検討はいたしたわけでございます。  ただ、これも委員御承知のとおり、この目的効果論というものは、非常に、何と申しますか、国民意識に深くかかわると申しますか、そういった点がございまして、ただ机上で、頭の中で考えてもなかなか結論の出ない、出にくい筋合いの問題でございます。したがいまして、靖国神社公式参拝の問題につきましても、この目的効果論を当てはめてすぐに法論理から結論が出るという筋合いのものではございません。  そういった意味で、我々といたしましては、いろいろと検討はいたしましたが、どうもなかなかそういった国民意識というようなものがつかめないという点もございまして、これはもう少し長い時間をかけて検討をしなくちゃいかぬのだなという感じを率直に言って持っておったわけでございます。  それからもう一点は、当時私どもの頭に主としてございましたのは、これは従来閣僚がいわゆる私的参拝をやっておられましたが、この方式というのは靖国神社が定める正式な参拝、正式参拝の方式でやっておられました。この正式参拝を中心にして、我々はこの目的効果論の検討とかいうこともやっておりました。そして、それを中心にしていわば政府統一見解を出したわけでございます。  それからもう一つ申し上げておきたいことは、政府統一見解の一番の結論と申しますか、これは靖国神社公式参拝に関する政府の基本的な態度といたしまして当面差し控えるという、いわばそういった政府全体の意思決定を表明しておるわけでございます。そこが一番のポイントであろうかと思いますが、もちろんその前提として、ただいまるる申し上げましたような法律解釈についての検討あるいはまたそれについてのそこにおける意見の表明、これもしておることはもう当然でございます。
  153. 野田哲

    ○野田哲君 津市の判決に言うところのこの目的効果論、津市の市長が実施する体育館の地鎮祭を神主さんを呼んでおはらいを受けたということと、これだけ国政上長い間国会議論をされ、国民の世論を二分をし、国際的にも問題のある、一国を代表する総理大臣の公式参拝と津市の市長の地鎮祭、これを同列に扱うということは、これは私はこじつけに過ぎるんじゃないかと、こういうふうに思うのですが、これは官房長官、いかがですか。
  154. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) お答え申し上げます。  ただいまお話しのように、事柄によりまして国の行為というものについての、あるいは国または地方公共団体の行動、行為についてのいろいろな軽重の差と申しますか評価の差というのはあろうかと思います。  ただ、今申し上げましたように津の地鎮祭判決が展開しております目的効果論というのは憲法二十条三項の国の宗教的活動に当たるかどうかということの一般的な判定基準という意味におきまして、その事柄の軽重にかかわらずこれが最も権威のあると申しますか、尊重すべき判定基準であると我々は考えておるわけでございまして、決して地鎮祭専用のものではない。地鎮祭関係以外のものであってもこの一般的な判定基準にのっとって判断すべきであるというふうに我々は考えておるわけでございます。
  155. 野田哲

    ○野田哲君 その判決の目的効果論というのは、いわゆる世俗的な、通例やられている工事の起工式のときのものを対象に出しているのであって、それがイコール総理の靖国神社参拝、これには私はどうしても結びつかない、こういうふうに判断をしているわけであります。  それからもう一つは、法制局長官は八月二十七日の私の質問に対しても、今もそうなんですが、国民意識の把握が十分でなかったと、従前の政府の統一見解は。一体、わずか十五人の学識経験者の議論を受ければ国民意識が把握できたんですか、あの報告書によって。
  156. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) お答え申し上げます。  今お話しのありますいわゆる私的諮問機関でございますが、これは十五人と申しましても各界各層の代表的な有識者に御参集を願いまして、そうして一年余りにわたり二十数回にわたっての熱心な御協議と申しますか意見の交換をしていただきまして、そして各メンバーの御意見を取りまとめたものでございます。したがいまして、そういった意味の報告書というのはそれなりの重みがあるというふうに我々は考えておるわけでございます。  ただ、先ほど官房長官も申されましたように、我々もこの報告書だけをいわば尊重してやっているということじゃないんで、これはあくまでも参考といたしまして、そうして我々は我々なりにまたいろいろとその後の検討を重ねました成果と申しますか、そういったものと結び合わせて、そうして結論を出したというのが今までの経緯でございます。
  157. 野田哲

    ○野田哲君 今の法制局長官の議論は、私は聞き捨てならないと思うんですよ。  靖国神社のこの問題につきましては、国民から選ばれた国会議員がこの国会で何回も議論をしてきているわけです。靖国懇は、二十一回議論したというけれども、我々はこの問題では何回となくずっと議論しているわけなんです。その国会議論の経過よりも十五人のメンバーが二十一回議論して出した報告書の方を重く見られるわけですか。これは私は納得できない。  官房長官、いかがですか。
  158. 藤波孝生

    国務大臣(藤波孝生君) 先ほど法理論上の問題は法制局長官からお答えをいたしましたが、先生の御指摘は多分に政治的な問題も含んでおりますので、私からお答えをいたしますが、靖国神社のいわゆる公式参拝問題を中心にいたしまして靖国神社に関するいろいろな論議が国会の中で従来繰り返されてまいりましたことは私どもよく心得ているところでございます。ただ、それは、いわゆる慎重論というだけではなくって、国会の第一党であります自由民主党は早くから合憲を唱えて、早く公式参拝をするように、そういった強い指摘もございまして、その立場からの御意見もあったわけでございます。また、全国の都道府県や市町村の議会などからも、総理大臣あるいは国務大臣の公式参拝を求める決議が行われて私どもの手元に寄せられてきておったという事実もございます。国民のたくさんの方々が、戦後四十年という非常に竹の節にも当たる年に、ぜひ公式参拝を行うようにという強い意見が各方面から寄せられてきたという事実もございます。それらをいろいろと各方面から検討をいたしまして、従来慎重に行うようにと御指摘をいただいてまいりました御論議などもよく参考にさせていただきまして、そしてどのようにしたらこの憲法に抵触しないで公式参拝を実現することができるか、いろいろと時間をかけて検討いたしました結果、政府の責任におきまして宗教色を排除して公式参拝するということにいたしたところでございまして、ぜひひとつ御理解をいただきますようにお願いを申し上げたいと思う次第でございます。
  159. 野田哲

    ○野田哲君 靖国懇の報告の中でも、A級戦犯が祭られておることについてやはり問題を提起しているわけです。  私は、今の国際的な反響、中国、韓国あるいはシンガポール、非常に非難が起こっているわけですが、これは教科書問題の反省が足りないという見方を中国はやっていますね、人民日報などで。確かにそう言われてもしようがないと思うんで、本質的にはやはりあの教科書問題、今回の問題同じだと思うんですが、一体諸外国に対しては外務大臣どういう説明をしたんですか。
  160. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) アジア、特に中心のアジアの諸外国に対しましては、政府の靖国神社への公式参拝が決定をするという段階におきまして、官房長官談話にその政府の見解が示されております。この官房長官談話を中心にいたしまして、詳細に日本政府の、そしてこれまでの経緯を説明をいたしまして、日本政府の今後の外交方針は何ら変更はないということ、同時にまた、平和国家としての日本の立場をさらに明確に申して、これが理解を求めたわけでございます。  特に中国につきましては、ちょうど私が日中の定期外相会談で参りました。その際、呉学謙外相とお目にかかりましたときにこの靖国の公式参拝の問題に触れまして、官房長官談話を中心にいたしましてこれまでの経緯を説明いたしまして、日本政府の中国に対するいわゆる共同宣言、さらにまた平和条約、それに基づくところの日本の立場は不動である。さらにまた中国側でいろいろと新聞等で出ておりますような、例えば軍国主義への道を開く、そういうふうなことは全く日本の場合はあり得ないということを強調いたしまして中国側にも理解を求めたわけでございます。呉学謙外相はこれに対してよく承ったということでございますが、同時にまた日本政府としても中国側の国民の感情に留意をしてほしいというような中国側からの説明もあったわけでございます。  引き続きまして、我々としましては、韓国あるいはその他の国々に対しましても今申し上げましたような趣旨につきまして外交ルートを通じまして理解を求めるように努力を重ねておるわけであります。
  161. 野田哲

    ○野田哲君 本質的な問題ではないんですが、A級戦犯の問題について新聞に報道されているところによると、政府・与党の首脳会議でA級戦犯を取り下げてもらうことは、これは政教分離の建前から政府としては言えないので、与党——自民党の方から靖国神社に要請をしてもらうことになったとかいう報道があるんですが、これは事実ですか。
  162. 藤波孝生

    国務大臣(藤波孝生君) 政府・与党首脳会議の会議の中身は一般的に外に出さないことになっておりますが、その会議の席上この問題が話題になったことは事実でございます。  与党の方からその点が非常に問題として指摘されてきておるのではないかというような御意見が出ました。そこで私からは、これは問題意識としてはあるとしても、宗教法人靖国神社が決めておる事柄であって、このことに政府がとやかく論評することは宗教法人靖国神社に対して干渉することになるので憲法上問題がある、したがって政府としては物を言う立場にない、こういうことを申し上げたところでございます。党の方ではいろいろ御論議があるように聞いております。
  163. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 野田君、時間参りました。
  164. 野田哲

    ○野田哲君 もう最後。  問題はまだ尽くされておりませんので、引き続いて私は政府の今回の措置については厳しく対処してまいりたいと思うわけですが、今官房長官も説明をされた政教分離の建前から靖国神社には干渉するわけにいかない、これは政党だって同じだと思うんですよ。政党にしたってこれは、靖国神社にだれを祭っていることはいいか悪いか、これは言えないと思うんです。一遍神様にしたものを生臭い人間が取り下げられるはずはないんですよ、これは、神様というものについて。そうでしょう。そんな簡単な神様ならこんな大騒動にはならないんですよ、だから総理も私はこの問題についてはやはりもっとよく判断をされて、今後とも間違いのない対処をされることを強く望んで、時間が参りましたので終わります。(拍手)
  165. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 以上をもちまして野田哲君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  166. 安田隆明

  167. 和田教美

    和田教美君 十九日、二十日にジュネーブで米ソ首脳会談が開かれますけれども、それを控えてモスクワで行われておりましたシュルツ国務長官とゴルバチョフ書記長、シェワルナゼ外相との会談は非常に長時間にわたったわけでございます。そして中身が非常に濃かったというふうな報道になっておるわけでございますが、どうも米ソ首脳会談で特に核軍縮の問題について何か成果が出るのではないかという期待を持たせるような経過じゃないかというふうに思うんですが、そこで総理にお聞きしたいんですが、この問題についてどういう感じを持っておられるか、それから外務大臣には、このモスクワ会談の内容ですね、どういう情報を得ておられるか、首脳会談の見通しなども含めてお答え願いたいと思います。
  168. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) シュルツ国務長官とシェワルナゼ外相、さらにゴルバチョフ書記長との間では十四時間以上にわたりまして非常に詳細な、また密度の濃い会談を行ったと、こういうことでございますが、その内容につきましてはシュルツ国務長官が記者会見をいたしました。その点が入手できておりますが、その他についてはまだ具体的に内容はまだ知る立場にはございませんが、いずれにしても十四時間もやったということでございますし、シュルツ長官の記者会見等を拝見をいたしましても、米ソ間のあらゆる問題につきまして、特に軍縮、軍備管理等の問題等につきまして突っ込んだ話し合いがあって、それはそれなりに前向きの可能性が出てきたというふうな印象を全体的には受けております。これは十九日、二十日のレーガン・ゴルバチョフ首脳会談へ向けての、私はある程度さい先のよい会談になり得たんではないか、簡単かもしれませんけれども、そういう印象を今受けておるわけであります。
  169. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今までの様子を見ておりますと、両者とも非常に慎重で、しかも非常に周到な根回しをやりつつ、それでお互いが模索し合うという姿勢を示しております。しかも、両方はお互いの立場をおもんぱかりつつ慎重にやっているという様子が見えます。そういう意味から、全世界の期待にこたえて何らかの成果を生み出すように両方で必死の努力をしているのではないかと想像しております。また、そのような成果が出ることを期待している次第であります。
  170. 和田教美

    和田教美君 次に、中期防衛力整備計画についてお尋ねをしたいと思います。  新計画が発表されましたとき、新聞には一斉に海空重視が鮮やかだということが出ておりました。しかも、この海空重視というのには総理が指示されたというふうなことの記事が出ておりましたが、本当でございますか。
  171. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは、五九中業策定の過程におきまして、私は、栗原防衛庁長官あるいは加藤防衛庁長官あるいは内局のしかるべき人たちに対しまして、大綱の枠内において海空に力を入れよ、そういう方向で思い切って改革をやれ、そういうことを指示して、自分の考えていることを二、三例として挙げておきました。
  172. 和田教美

    和田教美君 自民党の中にも最近海空重視論というのが強まっておるということでございますけれども、じゃ総理考えておられる海空重視というのは具体的にはどういうことでございますか。
  173. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本列島に住んでおる我が国の防衛体系というものを考えてみますと、同じ経費を使うにしても、相手が着上陸してしまった後からのいろいろな処置というようなものよりも、岩上陸させない、未然にそれを防止する、あるいはさせないように抑止する、そちらの方に重点を入れるべきであるという考え方に基づくもので、また新しい最近の近代科学技術の進歩も考えて進めていきたい、そう考えたわけです。
  174. 和田教美

    和田教美君 防衛庁長官にお尋ねしますけれども、この海空重視ということは、海上自衛隊、航空自衛隊を重視して、陸上自衛隊は軽視するということでございますか。    〔委員長退席、理事桧垣徳太郎君着席〕
  175. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) 必ずしもそういうことではないと思っております。例えば海空重視で、岩上陸阻止、水際において侵入を阻止するといったことは、先ほど総理が申されたように私たちの基本的な発想でございますが、それを陸海空各幕の中のどこで担当するか、これはまた別個の話でありまして、例えば陸の場合には、対艦ミサイルによる着上陸の阻止という任務も今度の中期計画の中に明記いたしているわけでございます。
  176. 和田教美

    和田教美君 また、新しい計画には水際撃破、洋上撃破という言葉が出てまいります。水際撃破というのはある程度我々にも概念わかりますけれども、洋上撃破というのは、非常に広い公海も対象にしているんでしょうから、どういう具体的な概念なのか、お答え願いたいと思います。
  177. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 我が国は島国でございますから、当然のことながら、我が国に侵攻しようとする敵は必ず海を渡ってくるということでございますので、先ほど総理が御答弁されましたように、これをできるだけ国土内に入れないで阻止するということになりますと、水際はもちろんでございますが、洋上においてもそれを阻止するということが望ましい。しからば、その洋上がどこまでかということでございますが、これは態様によっていろいろ変わってまいりますが、私どもは、必ずしもそれが領海にとどまるものばかりでなくて、公海上でもそういうことが行われるというふうに考えております。
  178. 和田教美

    和田教美君 かつては、政府は、自衛隊の行動の地理的範囲について、今、西廣局長からお話のあったように、必ずしも領土、領海、領空だけでなくって、「周辺の公海」においてもというふうな表現をとられておったわけです。「周辺の公海」ということが言われておったんですが、今の答弁ですと、「公海」と言うんで、周辺が抜けちゃっているわけですが、その辺はどういうことですか。
  179. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) 自衛権の行使の範囲がどこまで及ぶかという、その地理的な範囲の問題でございますが、先ほど防衛局長が答弁したものは、従来の、私たち、法制局と十分討議した上での答弁のラインでありまして、変わっているものではありません。当然のことながら、領海に限られるものではなく、公海に及ぶものでありますけれども、その範囲にはそれなりの、おのずからの限界がある。しかし、それはそのときどきの状況で、態様によってそのときどき判断せられるべきものだと思っております。
  180. 和田教美

    和田教美君 そうすると、観念としては、洋上撃破というのは領土、領海、領空に限らないんだから公海に及ぶというと、向こうの領海の手前まで、その範囲が全部入るということでございますか。
  181. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) 領海と申しますのは現在十二海里でございます。十二海里といいますと、まさに指呼の間でございます。したがって、それで我が国の防衛を全うできる、できないという場合もいろいろあろうかと思います。したがって、じゃそこからどこまでということなのかということにつきましては、そのときどきの態様によって異なるわけでございますけれども、我が国の自衛というものはあくまでも我が国を守るためのものでございますので、おのずから限界はあるものだと思っております。
  182. 和田教美

    和田教美君 先ほど私申しましたように、かっては「周辺の公海」という表現が政府の答弁書なんかにも、四十四年の答弁書ですけれども出ておったんですけれども、今の答弁ですと「周辺」という言葉が抜けておるわけですが、それが抜けただけ公海の範囲が広くなったということですか。
  183. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) 防衛についての地理的な範囲の問題につきましては幾つかに分けて考えなければいけないのではないかなと思います。自衛権行使についての地理的範囲ということでは今申したことでございますし、また我が国が防衛力を整備するその対象の地理的な範囲といいますと、従来から私たちシーレーン防衛について申しておりますように、数百海里、そしてまた航路帯を設ける場合には千海里、そういうような概念でとらえております。
  184. 和田教美

    和田教美君 次に、新しい計画は、私の見るところ国土防衛とシーレーン防衛、二本柱だというふうに思っております。しかし、昭和五十一年に閣議決定いたしました防衛計画の大綱の考え方は、基本的に外国から万一侵攻があった場合に国土を防衛するという、あくまで国土防衛中心だったんじゃないかというふうに思うんです。ですから、千海里シーレーン防衛などというものは大綱には私はなかったというふうに思っております。このことは、四月の十日に参議院の外交・安保調査特別委員会で竹田五郎さんが発言をしておりますけれども、航空自衛隊が五十一年、つまり大綱を決めたときには日本周辺の四百キロぐらいまでは守るべきだと考えておったけれども、千マイル、千マイルなどということは、そういう構想はなかったというふうに証言しておりますが、そのことからも私は明らかだと思います。こういうことで大綱の内容が実質的に変質してきていると、こういうことが言えるのであって、それが今GNP一%問題がやかましい、いわば起点であるというふうに考えるんですが、防衛庁はどうお考えですか。
  185. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 海上交通保護につきましては、海上自衛隊発足以来、海上自衛隊の任務というものが国土の防衛とあわせまして海上交通の保護、これにつきましては一次防、二次防の当時から、例えばグアム島かサイパンあたりまで、距離にしますとほぼ一千マイルぐらいになると思いますが、そのくらいの防衛も考えるということで海上自衛隊発足以来任務として持っておりますし、当然のことながら大綱でもそれを踏襲しておりますので、大綱の中に海上部隊の任務として周辺海域の哨戒とか、あるいは護衛といったような各種機能について記述されておりますので、決して大綱に海上交通保護という観念がないということではございません。  また、竹田さんのお話ですが、航空自衛隊につきましては、御承知のように、本土防空というものが主たる任務として与えられておりまして、従来洋上における防空まで航空自衛隊がそういう任務は持っていなかったということはそのとおりでございます。
  186. 和田教美

    和田教美君 次に、専守防衛ということがしばしば言われるわけですけれども、四十七年の十月の三十一日、衆議院の本会議で当時の田中総理が、「専守防衛ないし専守防御というのは、防衛上の必要からも相手の基地を攻撃することなく、もっぱらわが国土及びその周辺において防衛を行なうということでございまして、これはわが国防衛の基本的な方針であり、この考え方を変えるということは全くありません。」というふうに明言されておるわけですが、防衛庁は今でもそういう考え方ですか。
  187. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) 専守防衛という概念は、御承知のように、我が国の憲法に従い、その精神に従った概念でございまして、まず攻撃を我が国が受けてから防衛出動すると、そしてその対応も泊衛の範囲に限られる、できるだけ限界があるものと、そしてまた、防衛力の整備につきましても、おのずとその精神に従ってなされるものといったような概念の中でとらえているものだと思います。これは我々がずうっと守ってきたものでありまして、今後の防衛力整備についてもその精神はきっちり守っていきたいと思っております。  具体的に我が国の自衛力の範囲の問題がどういう地理的な概念になるかということにつきましては、先ほどお答え申し上げたとおりであります。
  188. 和田教美

    和田教美君 そうすると、田中総理の答弁とは違ってきているということですね。国土及びその周辺ということではなくなってきているということですね。
  189. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) もちろん我が国の防衛につきましては我が国土、それからそれを守るためにその周辺になるわけでありますが、その範囲につきましては必ずしも領海に限られるものではなく、そして公海に及び得るものであるけれども、それの範囲につきましては自衛の範囲から、そのときどきの態様によりますけれども、おのずと限界があるものと理解いたしております。
  190. 和田教美

    和田教美君 周辺海空域という言葉があるんです。そして、政府の今までの統一見解によると、周辺空域というのは大体日本列島距岸二百海里前後ということになっておる。それから、周辺海域というのは、さっき話がございましたように、大体距岸数百海里ということになっているわけです。今の答弁ですとその辺のところが非常にぼけちゃって、それよりも広い範囲になるのかどうかということを聞いているわけです、専守防衛は。
  191. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 一、二整理してお答えさしていただきますが、まず専守防衛というのは、地理的範囲ということもあるいはそういう中に含まれてくる部分もあろうかと思いますが、基本的には日本の戦略姿勢が守勢的なものであるというように御理解いただきたいと思います。したがって、いろいろな意味で専守防衛というのは、単に地理的のみならず、持つべき装備品の範囲なり、あるいは機能なり、そういったものまで含めての問題だというふうに御理解いただきたいと思います。  それからなお、例えば周辺海域と言った場合の周辺数百海里といったような表現で従来言われております地理的範囲は、防衛力整備の対象とする範囲、防衛力整備は、例えば海上交通保護について言えば日本の本土周辺数百海里、航路帯をも置いた場合は一千マイルくらいまでの防衛ができるような防衛力を整備するといったような形で整備対象として考える範域というふうにお考えいただきたいと思います。  なお、しからばそういった防衛力で実際に日本に何らかの侵略があった場合にどういう自衛行動を行うかということにつきましては、先ほど来防衛庁長官お答え申し上げているように、そのときどきの状況によって自衛のため必要最小限度の範囲で行い得るものであって、それは今申し上げた周辺数百海里なり一千マイルの、より以下の場合もございますし、それを超える場合もあるということを御理解いただきたいと思います。
  192. 和田教美

    和田教美君 今度の国会の論議を聞いておりますと、総理以下いかなるシナリオがあろうとも、とにかく我々としては限定的かつ小規模な侵略について独力対処する能力を持つんだと、こういうことを言っておられるわけで、この限定的かつ小規模な侵略については原則として独力で排除するというのは大綱にも書いてあるわけでございます。ところが、それじゃ具体的に限定的小規模の侵略事態というのはどういうことかと言うと、政府の方は一向に具体的にお答えにならないわけでございますが、その点は大体、具体的にと言ってもごく大ざっぱに、例えば部隊が上陸してくるというような場合には何個師団ぐらいを想定しているのかとか、そのぐらいのことはひとつぜひお答えを願いたいと思うんですが、どうですか。
  193. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) 限定的小規模の侵略に対処するというのが我々の防衛力整備の今目標でございますけれども、それはどういうことを想定しておるかといいますと、累次御答弁申し上げているとおり、相手方が特に我が方に察知できるような準備作業をせず、そしてその段階から我が方の日米安保条約とか、我が方のすきに乗じて短時間の間に既成事実をつくるような、そういった形を目標として侵攻してきた場合ということを想定いたしておるわけでございます。  それで、では具体的にそれはどの程度の師団であり、どの程度の航空兵力の場合を想定するのかということにつきましては、そのときどきの状況にもよりますし、それぞれの国の防衛力整備、そのときの国内事情等いろいろありますので、一概に申し上げることはできないと思っております。
  194. 和田教美

    和田教美君 政府は、とにかく総理の言葉ですが、防衛は中身が大切だと、とにかく戦略その他が大切だということをおっしゃる。それで、一%論議ばかりじゃおかしいじゃないかというようなことも自民党の方はおっしゃる。我々もそれならひとつ中身の議論もしようじゃないかと言うと、途端に、何といいますか、守りの体勢を固めて、衆議院でも議論になりましたけれども、いろんな機密資料、これは出さない。私の聞いていることは機密資料でも何でもないと思うので、これぐらいのことを答えてもらわなければ、一体どのくらいのものが侵略事態として想定できるかということの前提がなければ、それじゃこっちはどういうふうな備えをするのかという想定が出てきませんね。そうすると、議論は全然進展しないということになります。今の答えじゃ全く納得ができないから、もう一度お答えを願いたい。  それから、なぜそういうことを言うかというと、最近、制服のOBの方、あるいは軍事評論家などの方で、そういう例えば北海道上陸説なんという問題をめぐって、やれ侵攻能力は二個師団ぐらいだろうとか、あるいは数個師団だとか、あるいは多いものは十数個師団だとかといういろんな言説をなして人を惑わせているというか、国民は非常に盛っておるわけです。それだけに、政府は大体どれぐらいのものだということを国民に示す必要があると思うので聞いておるわけです。
  195. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) それぞれいかなる侵略が想定されるかということにつきまして、それなりにいろんなケースを可能性の問題として検討するのは私たち当然であろうと思いますし、それに対して我が方がどの程度の防衛能力があるかということをシミュレーションしておきますことは防衛当局としては当然のことでございますけれども、しかし、我が方がどのような認識を持ち、相手方につきどの程度の能力、また準備をせずに我が方に侵攻する可能性があるかということを判断しているかということ自体、私は一つのファクターになりまして、その後の国際情勢を動かしたりいたすわけでございます。したがって、防衛論議とシビリアンコントロール、そして私たちが考えておりますことをいかにあらわすかということにつきましては、大変どこの民主主義国でも議論の多いところだと思うのでございますけれども、私たちとしては、いわゆる私たちの手のうちを明かすということが本当に我が国の防衛のために正しいことなのだろうか、そういった限界がありますことをぜひ御理解いただきたいと思います。
  196. 和田教美

    和田教美君 到底納得できませんけれども、質問を続けますが、新しい防衛力整備計画、これの特徴として、私はまずアメリカが要求している部分、今の海空重視ということで、具体的にはシーレーン防衛能力、洋上防空能力というふうなことでいろんな新しい装備を、壮大な買い物計画ができているわけですが、そういうことで、そういうアメリカの要求の強い部分だけが非常に肥大化していって、全体のバランスが非常に欠けたものになってくるんではないか。大綱の考えておった基盤的防衛力という考え方は、コンパクトだけれども一応均斉のとれた防衛力と、こういう考え方ではなかったかと思うんですが、それからますます離れていくんではないかと思いますが、いかがですか。
  197. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) アメリカからこの整備計画につきまして特段の要求があったというような事実はございませんし、アメリカ自身同盟国でございますから、日本がどのような防衛努力をするかということについて関心を持っておることは確かでありますが、具体的にいかなる防衛力整備をするかということは、我々が自主的に判断をいたしております。  また、今、先生お尋ねの、大綱がコンパクトで各種機能を取りそろえながらそれなりにまとまったものをねらっておったというようなお話でございますが、まさにそのとおりでございまして、今回の中期防衛力整備計画も、まさにその大綱でねらっておった限定的小規模事態に対応できる、そしてまた、各種機能にすき間のない整ったものをつくりたいということで、量的にも、あるいは質的にも、また機能的にも不足している部分、そういったものをいかにしてこの五年間で整備し、大綱水準を達成するかということが今回の計画のねらいになっておるわけでございます。
  198. 和田教美

    和田教美君 次に、海空自衛隊、海空装備の戦力評価ということを聞きたいんですが、この計画ができればP3C百機態勢、それから六十二隻の護衛艦、これの対潜水艦能力というものを合わせると、海上自衛隊の対潜作戦能力は、米国に次いで自由世界第二位だというふうな評価がある。また、主要水上艦艇では、日本は英国を抜いて第三位のところにいくんじゃないかというふうな見方もある。それほど世界からは相当注目されておるようなことですが、大体防衛庁としてどういう戦力になるというふうにお考えなんですか。
  199. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) ただいま船舶の数あるいは航空機の数等でいろいろ御指摘がございましたが、私どもの海空の防衛力の量というものは、米ソはもちろんでございますが、主要なNATO諸国に比べても決して多いものではないと思っております。ただ、それぞれのお国柄がございまして、例えば日本の場合、非常に海上交通に依存している度合いが多いということで、確かに例えば固定翼対潜機というようなことになりますとかなりの勢力になると私は思っております。その点、NATO諸国は狭い大西洋を幾つかの国で分担をしているということで比較的少ない兵力で賄っておるということはございます。  そこで、今回の五カ年計画においてどういう状況になるかということでございますが、なかなか防衛力というものは数的に示すのは難しゅうございますけれども、先ほど来申し上げておりますように、限定的な小規模事態、そういった事態において我が国周辺の数百海里なりあるいは千マイルぐらいを、一個ないしは二個船団を護衛するといったような形で海上交通の安全を図っていくという場合に、今回の計画が仮に達成されますと、それなりにかなりの力を発揮して、見る見るうちに海上交通保護能力というものが落ちて我が国に対する輸入が途絶してしまうといったようなことがなくて、引き続き国民の生存を確保し得る最低限の力というものはそれなりにつくのではないか。  また、本土防空につきましては、いわゆる考えられます相手の可能行動というもので小規模な空からの侵攻があったという場合に、これは我が方の部隊の展開をいたさねばいけませんが、そういった展開がうまくいったという前提に立ちますと、そういう小規模事態に対しては互角の防空戦ができるようになるのではないかというように考えております。
  200. 和田教美

    和田教美君 陸上自衛隊は、今度着上陸侵攻対処能力の強化というその目玉で、地対艦誘導弾、SSM五十四基を導入するわけですが、これを北海道三カ所に配備するというんです。我々もこういう地対艦ミサイルなどというものの配備の必要性は認めるわけですけれども、しかし、このSSMについては非常に問題もあると思います。それは、とにかく射程が百五十キロだということです。つまり、北海道の稚内周辺からソ連領との間は四十キロぐらいですか、至近距離にあるわけで、ソ連の領土に十分届く距離でございますが、この点については運用はよほど注意しなければいけないと思うんですが、その点はどうお考えですか。    〔理事桧垣徳太郎君退席、委員長着席〕
  201. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 御質問のように、SSMは確かに百数十キロの射程を持っておる。この射程の長さというものは、こういった、ミサイルは海岸線に置いておったのでは事前の航空攻撃等でやられてしまうということもありますので、山間部等に設置をして、それである方位に対して有効に働くためにはかなりの射程が要るということになろうかと思いますが、これが百数十キロの射程を持っていることで、よその国の国土の攻撃ができるのではないかという御指摘でございますが、このSSMは、水上における艦艇を攻撃するような誘導装置を持っておりまして、陸上ではそういった誘導が不可能であるということが第一点でございます。  さらにつけ加えれば、これはあくまで艦艇攻撃用でございますので、炸薬量その他からいっても艦艇を沈め得るということで、陸上に対してこの種のミサイルを撃ち込んでも、労多くして効少なしと申しますか、非常に金ばかりかかって大した破壊力も発揮できないということで、陸上攻撃用には全く向かないというように御理解いただきたいと思います。
  202. 和田教美

    和田教美君 洋上防空についてお尋ねしたいんですが、この計画によりますと、各種装備の組み合わせによる効率的な洋上防空体制のあり方について速やかに検討するということになっております。大体どういう順序で、例えばOTHだとかあるいはエイジス艦だとか、AWACS、空中警戒管制、これは今導入しないということですが、あるいは給油機だとかその他、大体どういう順序で、どのくらいのときに導入するつもりかお答え願いたい。
  203. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) 洋上防空といいますと、従来シーレーンで領海外までも防衛するようになったけれども、今度はまた再びその三次元、立体化して非常に大きな区域までやるようになるんではないかというようなことをときどき言われますが、そういうものではございません。従来のシーレーン防衛、交通安全の確保、それを実施するために、やはりそれぞれの私たちの護衛艦を守り、それがまた船団を守るというために、従来余りなかった低空脅威というのが非常に大きくなっているものですから“それについての配慮をしなければならないといった従来の発想の延長線上で、ただ低空脅威が技術的な進歩で大きくなったものですから、それに対処していこうというものでございます。  そこにつきましては、例えばOTHレーダーとか、それから空中給油、それから要撃機等々、また艦艇のミサイルシステム等いろいろあるわけでございますけれども、それは総合的にこれから洋上防空のシステムを考えていこうというわけでございますので、どれがどれで優先度がついているという筋合いのものではございません。ただ、一つ一つにつきまして、OTHにつきましては現在アメリカからいろいろ情報をとっている段階でありますし、空中給油については、それぞれ従来の研究を積み重ねているけれども、まだ十分な結論が出るまでの研究になっていないというふうにおとりいただきたいと思います。
  204. 和田教美

    和田教美君 OTHは大綱別表の航空警戒管制部隊二十八個警戒群の枠を完全にはみ出していると思います。それから、空中給油機も大綱別表にはないと思います。それから、エイジス艦も、これは対空用ですから対潜水上艦艇という枠には入らないだろうと思うんですが、そういうことですと、別表の枠をはみ出すということで、それから大綱の見直しという作業の方に漸次誘導していこうという防衛庁の考え方ではないかどうか、その辺はどうでございますか。
  205. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 和田君、時間が参りました。
  206. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 今挙げられました幾つかの装備について大綱別表にないんではないかという御指摘でございますが、大綱別表は、御存じのように大綱の本文のねらいに基づいた主要な部隊について幾つかの例示が書かれておる、あるいは航空機としては総数が書かれているといったようなものでございますので、個別にすべての部隊なり装備が書かれているということではございませんから、その点は御理解いただきたいと思います。例えばOTHレーダーは、先生御指摘のいわゆる航空管制をする部隊ではないというふうに御理解いただきたいと思いますし、さらに給油機でございますと、これは、例えば航空自衛隊等の作戦機、これの中には輸送機とかいろいろございますが、それぞれの機種別の機数が書いてございませんので、全体の作戦機の中でそれを持つならば持つことは可能であろうというふうに考えております。さらにエイジス艦でございますが、従来から、御存じのように、例えばターターといったような対空能力も持った対潜艦艇を持っておりますが、それと同様なものの進歩した形というように御理解いただければありがたいと思います。
  207. 和田教美

    和田教美君 もう一問。
  208. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 時間終わりました。
  209. 和田教美

    和田教美君 もう一問。  円・ドル問題できのう質問を保留しておりますので、その点だけ一言簡単に。
  210. 安田隆明

    委員長安田隆明君) じゃ、簡潔にやってください。
  211. 和田教美

    和田教美君 きのうの委員会で、大蔵大臣に円・ドル問題が新しい防衛計画の調達計画に影響を与えるんではないかということを聞きましたが、十八兆四千億円の防衛計画の総額、これを変える必要はないというお話でございました。しかし、仮に物価その他が変化をしないという前提で六十年度価格で考えた場合、きのう現在の段階で大体一ドル三十円ぐらいの差が出ているわけですね。そうすると、それがずっと安定して、これから続くと仮定をいたしますと、最終年度においては結局トータルとして千五百億浮いてくるという計算になるんじゃないですか。そうなると、千五百億程度だったら計画をわざわざ修正することはないという意見もあると思いますけれども、その場合に……
  212. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 和田君、簡潔に。
  213. 和田教美

    和田教美君 千五百億円ぐらいだから、大目に見て、そして、要するにほかのものに回すというふうな考え方がないかどうか、その辺はどうですか。
  214. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 端的に申し上げまして、それを大目に見ようとかという考えは全くありませんが、和田さんの御質問の前提となるのは、まず物価が上がらぬということ、そういう前提でございますので、あの計画そのものは六十年度の価格ということでそれが前提に置いてあるわけでございますから、結果として本当に物価が上がらなくて、そして円高が、きょうは二百五円九十五銭で引けておりますから、それがずっと続けば、その和田さんの論理は出ますけれども、それは計画そのものを修正するということでなく、やっぱりそのことを念頭に置いて、大目に見るとかいうような考え方でなく対応するということになろうかと思います。
  215. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 以上をもちまして和田教美君の質疑は終了いたしました。(拍手)
  216. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 秦豊君。     —————————————
  217. 秦豊

    ○秦豊君 総理、「したたかと言われて久し栗をむく」、これはたしかあなたの近作じゃなかったですか。どんな心境を読まれたものですか。
  218. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは大分旧作であります。日の出村で読んだ句であります。
  219. 秦豊

    ○秦豊君 どんな御心境でしょうか、私もかつてあなたに歴代まれなるしたたか宰相と申し上げたこともあるが。
  220. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いろいろ新聞を読んで、そして政治家というものは随分いろいろばりざんぼうを浴びるものですが、これでもどっこい生きているというところがあるわいと、そう思ったわけです。
  221. 秦豊

    ○秦豊君 総理、これは一応とお聞きください、一応あなたの政権はあと一年。そうしますと、平常心のあなたの胸中にも深く期するものがあると私は思います。あと一年の中曽根政治をどういうふうにデッサンしていらっしゃいますか、ぎりぎり重点思考して。
  222. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 公約をできるだけ実現していきたいと思います。
  223. 秦豊

    ○秦豊君 今国会では、定数是正六・六、通常国会、東京サミット、言うまでもなく大きなターゲットですね。
  224. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 御指摘のとおりです。
  225. 秦豊

    ○秦豊君 今国会では定数是正総理における第一義、第一優先でしょうか。
  226. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 最高裁判所判決に対して国会全体として対応する責任があるわけですから、自民党のみならず各党とも共同責任の問題であると思いますが、私はやはり非常に重大な問題であると考えております。
  227. 秦豊

    ○秦豊君 総理、そうおっしゃいますけれども、我々野党よりむしろこちらの方の調整が問題だと私は思うが、成算おありですか。
  228. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ともかく全力を尽くして、誠意を尽くして野党の御理解をいただきたいと思っております。
  229. 秦豊

    ○秦豊君 山下運輸大臣、あなたのお立場、河本派の、この六・六定数是正、どういうお考えでしょう。
  230. 山下徳夫

    国務大臣(山下徳夫君) 最近運輸省の仕事がとみに忙しくて、派閥でもって六・六をどうするというようなことはたしか決めていないと思うんです。
  231. 秦豊

    ○秦豊君 胸を張って堂々たる答弁と言いたいが、あなたの派閥は徹底抗戦、頭から反対じゃないんですか。国鉄でお忙しいとは思うけれども、こういう機会に明らかにしてください。
  232. 山下徳夫

    国務大臣(山下徳夫君) 徹底抗戦なんてそんな穏やかでないようなあれは聞いていません。けさ派閥において例会がありまして、それに私もちょっと出てまいりました。論議はやはりそれが中心でございましたが、それはことしの国勢調査に基づいてやることについての是非がいろいろ論議されましたが、途中で私は出てまいりました。
  233. 秦豊

    ○秦豊君 そういう逃げ方も一つの手でしょう。  山口さん、新自由クラブ、あなたの六・六案についての御見解はどうでしょうか。
  234. 山口敏夫

    国務大臣(山口敏夫君) 新自由クラブとしては、本来定数減を含めた改正案というのがまとめてあるわけでございますけれども、やはり現状、増員を認めない定数是正、こういうことでございますから、段階的な一つの考えとしては六・六案を支持しておると、こういうことでございます。
  235. 秦豊

    ○秦豊君 安倍大臣のところはどういうお考えでしょうか。
  236. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私のところはというのはよくわかりませんが。
  237. 秦豊

    ○秦豊君 あなたのお考えで。
  238. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは、最高裁判決が出ましたし、これは国会の責任においてやはり解決すべき問題だと思っております。
  239. 秦豊

    ○秦豊君 大蔵大臣の御答弁も似たようなものですかな。
  240. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 国会全体の責任で対応すべきものであり、したがって、現行において六・六案を野党を含め御協力をいただけるよう最善の努力をすべきであると、このように考えます。
  241. 秦豊

    ○秦豊君 優等生が続きますけれども、総理、せいぜい継続審議が精いっぱいじゃないかというふうな意地悪な観測がある中で、総理はやはり第一優先、六・六は今国会是が非でもと、こういう御存念ですね。
  242. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 最善を尽くして成立さしたいと念願して索ります。
  243. 秦豊

    ○秦豊君 ところで、五月の東京サミットですが、この成功の一つのかぎはあなたの盟友レーガン氏の健在とフランスのミッテラン氏の出席、これは大きな与件ですね。
  244. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いやそのほかにドイツの首相も英国の首相もカナダの首相も皆さんいらして、みんなで成果を盛り上げるということであります。
  245. 秦豊

    ○秦豊君 総理、盟友のことだから、レーガン大統領の健康状態ですね、どう御承知ですか。
  246. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この間ニューヨークで会いましたときは非常に元気で前とちっとも変わらないという印象を受けました。
  247. 秦豊

    ○秦豊君 今度のこの東京サミットですね、凡百問題がありますけれども、国際通貨問題というのは大きな流れ、項目になりはしませんでしょうか、総理
  248. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 議論される一つの事項にはなるだろうと思います。
  249. 秦豊

    ○秦豊君 大蔵大臣ね、このG5というのは一回きりじゃないと思うんですよね。情勢の推移によってはもう一回開くこともあり得る、機動的に、じゃないでしょうか。
  250. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 元来G5というのは本来はないわけでございます。G10があるわけでございます。これは公式に認められておるとでも申しましょうか。しかし、その中でいわゆる五カ国の者が随時、時に応じて集まったということは今日まで存在しております、現実問題として。したがって、これは今予測することでは必ずしもないと。ただ、通貨問題そのものにつきましては、簡単に経過を申し上げますと、ウィリアムズバーグ・サミットで大蔵大臣勉強しろと、これが首脳の申し合わせになっておるわけです。それを結局G10で取り上げまして、今私が議長であったわけでございますが、それをこの間のIMF総会へ報告しました。そこで、IMFの暫定委員会の中でさらに詰めていこうと、したがって、その報告は少なくとも首脳に私どもはしなきゃならぬ責任があるということは言えると思います。
  251. 秦豊

    ○秦豊君 だから大臣ね、情勢によっては開いてもいいわけですね。
  252. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 開いてもいい。開かぬでもいい。これは非常にG5という組織が確定しているわけではございませんので、強いて言えばサーベイランスを行うときには五カ国でやってもいいというような申し合わせのようなものがございますが、五カ国が会うということは、それはいろんな会議がございますので、その間、間々あり得ることだというふうに考えます。
  253. 秦豊

    ○秦豊君 総理ね、東京サミットの前にカナダの日程おおりですね。そのときにアメリカに図られて再度日米首脳会談というふうなことは、今はお考えになっていらっしゃいませんか。
  254. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) カナダに行くこともまだ決まっておりません。いわんや、アメリカへ行くことも決まっておりません。
  255. 秦豊

    ○秦豊君 カナダもアメリカもやがて決まるでしょう。  山口労働大臣ね、あなたはかねてユニークなニューリーダー批判を堂々と展開していらっしゃるんだが、そのあなたの立場でいわゆる中曽根総裁の三選問題というのは、客観的にごらんになるとどういうふうにお考えです。
  256. 山口敏夫

    国務大臣(山口敏夫君) 事は自民党の総裁選挙でございますけれども、たまたま連立て政権に参加しておる。さらに、行革とか財政再建ですね、まあそういう大きな国民政策連合の輪を広げたい、こういう立場で必要最小限度政権の問題に発言をしておるということでもございまして、まあ中曽根内閣も防衛問題では自由陣営での責任、役割等の中で多少肩に力が入り過ぎかなという印象もございますけれども、内政問題ではかなり革新的に取り組んでおられるのではないかという評価を私自身持っておりますし、まあ事は政権構想でございますから、スポーツ競技とは違いますけれども、チャンピオンにとってかわるという場合には、やはり挑戦者はチャンピオンを二倍、三倍上回る遠心力、行動力、政策能力、そういうものが必要なんではないかということで、私も世代交代論者の一人としてニューリーダーを大いに叱咤激励する立場でいろいろ論評を加えさしていただいておる、こういうところでございます。
  257. 秦豊

    ○秦豊君 せっかくですから、次を目指している安倍大臣、何かおっしゃりたいことおありじゃないですかな。
  258. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いや、別に何もありません。
  259. 秦豊

    ○秦豊君 まあ竹下さんも同様な右へ倣えですか。
  260. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 総裁に立候補した経験もございませんので。
  261. 秦豊

    ○秦豊君 私ね、なるべく国民の前に開かれたテレビのようなこういう機会に、次を目指すならばなぜと、めり張りをつけてお訴えになる体さばきが必要だと思いますよ。  中曽根総理ね、最近あなたときどきですけれども、美しい野心とおっしゃってますね。どういうことですか。
  262. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 美しい野心という言葉は私最近使った覚えはちょっとないんですが、何のときですか。
  263. 秦豊

    ○秦豊君 フランス。
  264. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) フランス訪問……そのときにどういう機会に言ったんですか。
  265. 秦豊

    ○秦豊君 美しい野心、使ってませんか。
  266. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 余り記憶にありません。
  267. 秦豊

    ○秦豊君 法制局長官、今六法全書をお読みのようだが、憲法五十四条で内閣が参議院、我々の方に緊急集会を求めるとありますね。どんなケースです。
  268. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) お答え申し上げます。  憲法五十四条第二項のただし書きで、衆議院が解散されたときには参議院は当然に閉会になるという前提がございますが、そのただし書きで、ただし国に緊急の必要があるときは内閣は緊急集会を求めることができるという規定がございます。この例としては二つございまして、やはり特別国会が近い将来開かれることになるわけでございますが、その間に非常に国に緊急な必要があると、特別会が開かれるまで待っておられないというような緊急の事態が生じた場合に、この緊急集会を参議院に対して内閣が求めることができるということになっておるわけでございます。
  269. 秦豊

    ○秦豊君 それはあれですか、何を期待した規定だとお考えですか。
  270. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) 参議院の緊急集会の制度の趣旨でございますが、国権最高機関たる国会が衆議院の解散により一時その機能を停止することになるわけでございますから、この間の国政の運用に支障を来さないように定められた制度であるというふうに心得ております。
  271. 秦豊

    ○秦豊君 本来、総理、この規定を厳格に解釈するならば、衆参同時選挙というのは本質的に許されないと考えるのが至当じゃないですか。いかがでしょう。
  272. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 解散というような場合は、やはり政治の場面においては非常に重大な場面でありまして、何しろ議員任期来らざるうちに剥奪するような行為ですから、それに値するようなことがあるという場合にはやむを得ざる行為であると思います。
  273. 秦豊

    ○秦豊君 今の総理のお考えは、山口さん聞いていらしてどうですか。否定されなかった。
  274. 山口敏夫

    国務大臣(山口敏夫君) 法制局長官などの見解もございますけれども、衆参同時選挙は先例もありますし、きのうかおとといの読売新聞の世論調査などでも、有権者の方も七割近くが同時選挙意味といいますか、に一つの判断、評価をしているということもございますし、それは政権を担当されている方でございますとか、そういう方の御判断だろうと思います。
  275. 秦豊

    ○秦豊君 安倍さん、こだわるようですけれど、同時選挙にはあなたも肯定的ですか、好意的ですか。
  276. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いや、肯定とか否定とかは別にしまして、これは余り、解散問題ですから、予見を持って発言すべき問題じゃないと、こういうふうに思っております。解散権は総理大臣が持っておるわけですし、ですから、これからの状況によってそういうこともあり得るし、あるいはあり得ないということもあり得ると思います。
  277. 秦豊

    ○秦豊君 まあいいでしょう。  総理、あなたは最近講演等で、国際国家日本への急速前進と同時に日本としてのアイデンティティーの確立というふうなことをおっしゃっていますね。これは覚えていらっしゃいますか。これは、そういう場合にどんな国家像を総理は踏まえていらっしゃるのか、ここで伺っておきたい。
  278. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) やはり民主主義というものの背景には健全なナショナリズム、まあナショナリズムを何と訳しますか、民族主義と訳しましょうか、あるいは国民主義と訳しましょうか、ともかく民主主義が成功するためには、そのバックボーンの一つとして健全なナショナリズムが必要であるということは世界的に認められておることです。そういう意味において、日本の民主主義というものを立派に成果あらしむるためにやはり健全なナショナリズムを必要としている。健全なナショナリズムという背景には日本自体を我我が知る必要がある。その日本自体を我々が知るという勉強をさらによく行うべきであると考えているということであります。
  279. 秦豊

    ○秦豊君 その国際国家との調和はどうなりますか。
  280. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 我々が国際国家として前進しようとすればするほど自分自体を知る必要があるわけでありまして、自分自体を知らないで、そして国際国家ということにうつつを抜かせは放浪するという形になると思います。そういう意味におきまして、昔の人は和魂洋才と言いました。その和魂ということが非常に大事であると、そういうことであります。
  281. 秦豊

    ○秦豊君 久々に懐かしい言葉を聞きました。  一度あなたに伺ってみたかったんですけど、結局中曽根康弘という総理・宰相は根本的にいかなる哲学を有していらっしゃるのか。あなたが中曽根政治としての理念として根本的なとらえ方は何なのか、何を目指していらっしゃるのか、こういう機会ですから、ぜひまとめて伺っておきたい。
  282. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 自分ではかなり深遠なものがあると思いますから、一言ではとても言い尽くせないものだと思います。
  283. 秦豊

    ○秦豊君 分解しますと、宮澤喜一さんは戦後政治を継承する、あなたは総決算すると、こういう見地なんだが、加藤防衛庁長官、あなたの世代ではどうでしょう。
  284. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) 私たちの世代というのは、戦後物心ついたとき、昭和二十年、二十一年でありまして、その後新しい憲法の中でこの戦後というものを評価しながら教育を受け、そして生活してまいりました。そういう意味で現在の日本には幾つかの直さなければならないところがありますけれども、しかし私たち、戦後は四十年平和を守り続けましたし、このように経済の発展もなし遂げましたし、そして諸外国との協調もある一部を除き非常にうまくいっていると思いますので、積極的に評価していきたいと思っている世代でございます。
  285. 秦豊

    ○秦豊君 安倍大臣、これは答えてもらいたい、決算か継承が。
  286. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いや、これは二者択一で判断をすべきことじゃないと思います。やはり戦後、日本の民主主義がこうして定着してきた。いいものはこれは積極的に残していかなきゃならぬと思いますし、戦後四十年たっていろいろと政府としての改革を行っておりますが、やっぱり振り返って改革、改善をしなきゃならない問題もあるわけですから、そういう点についてはもう積極的に対応していくという姿勢が大事じゃないか。ただ、守るとか守らないとか、決算とかあるいは継承だとか、そういう言葉だけでは言い尽くせないと私は思っております。
  287. 秦豊

    ○秦豊君 次を目指すお一人、大蔵大臣は戦後の民主主義への評価はいかがですか。
  288. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 平和主義、議会主義、民主主義、これはやっぱり普遍の価値として保ち、守るべきものである、これはまた保守主義の哲学でもある。しかし、その中に出てきたいろんなひずみ、それらはいわば直すべき対象であると。それが行政改革であり、私の担当する財政改革であり、あるいは教育改革であり^そしてもう少し範囲を狭めれば税制改革であるというふうに考えております。
  289. 秦豊

    ○秦豊君 労働大臣はどういう見解ですか。
  290. 山口敏夫

    国務大臣(山口敏夫君) やはり戦後の憲法を中心として国民が自由主義、民主主義の中でそれぞれの立場において参加をして今日の社会を築いた、そういう赫々たる実績を十分踏まえた今後の政治の責任というものが大切であると考えております。
  291. 秦豊

    ○秦豊君 総理、重ねて伺いますが、中曽根総理が目指していらっしゃるのは結局どういう日本ですか。
  292. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今、戦後政治の総決算とかあるいは戦後政治の評価とか、そういうお言葉がありましたが、こういう言葉は言葉だけで片づけると非常に誤解を生むと思うんです。戦後政治というものに対する評価においては、私はこの議会でも毎回述べますように非常に高い評価を持っておる。恐らく日本歴史二千年の中でも戦後の四十年というものはあるいは最高の時代の一つに入るんではないだろうかと、私はそう評価しておるんです。明治維新以後のあの四十年というのも非常に高い評価はありますが、明治維新以後の四十年、四十五年よりも戦後のこの四十年の方が日本歴史的に見たら高い評価を得られるのではないかと、私は自分でそう考えております。それぐらい高い評価と今我々がやっていることについて誇りを持っておるんです。それは、やはりあの大戦というものの挫折を経て、その反省の上に立って新しい日本を築いてきた我々の先輩あるいは今やっておる同僚たちの、あるいは国民の皆さんの努力の結果こういう時代が生まれた。だから私は偉大なピラミッドをつくったと、そういう表現でも私の本で書いてあるのであります。それは、民主主義、平和主義、あるいは自由主義、あるいは基本的人権の尊重、あるいは国際協調主義、そういうものの成果が定着しつつある、そしてこれが生まれてきたということなんです。これはもう文句のない前提なんです。これを続けていくということは万人が承知しておることだと私は思うんです、共産党は別として。しかしそれに甘んじていてはだめになる、我々は我々の祖先や先輩のやってくれたものに甘んじて、そして怠けてはいけない、毎日毎日改革していく、政治家の大きな仕事は現状維持ではない、むしろ改革である、あしたに向かっての前進である、そういう意味において政治家は改革者であると今度の施政方針演説でも最後に言っているでしょう。秦さん十分御存じでしょう。そういう意味において改革者であらねばならない、祖先の遺産に安住してはならない、それは我々保守党の魂でもあると思っておるのです。ですから、一言だけで片づけるということはちょっとお粗末だと私は思います。
  293. 秦豊

    ○秦豊君 国家論になるとなぜか雄弁ですね、雄弁がさらに多弁になる。  これは私の記憶違いでなければですが、総理、拓大総長されましたときに、靖国を民族の霊場たらしめようという意味のことを、一言一句は正確じゃないかもしれません。こういうことをおっしゃったと思いますけれども、こういう基本的な認識は今もおありですか。
  294. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) あれは私立大学の総長という立場で学生と懇談をしたときの私の話の中身であると思います。  つまり、戦争で倒れた戦没者に対してみんなが哀悼の意を表するということは自然の感情であって、そういう倒れた人々をほったらかしたり冷たい日で見るということをやっていたら国というものは成り立たなくなるであろう、また、日本人の死生観からしても亡くなった方を悼む、あるいはお線香をささげるということは、これは日本人の自然な死生観なのであって、それは民族の伝承であり、とうといことである、そういうところまで捨てたり笑ったりしてはいけない、そういう意味の趣旨のことを言っているわけです。
  295. 秦豊

    ○秦豊君 靖国神社の例大祭への参拝見送りは中国の圧力に屈したるものであるというふうな論調が与党内にもあるとうかがうが、総理はそうは思っていらっしゃいませんか。
  296. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) あのときは国会審議とか、あるいはアメリカへ行くというようなことがありまして、時間的にも非常に無理な点がありましたが、また一面においては国際情勢というものも若干考えないということではなかったのであります。
  297. 秦豊

    ○秦豊君 外務大臣、中国等からする批判ですね、これから鎮静化するとお考えですか。
  298. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは、やはりこれから中国との間でもさらに十分対話を進めていって、日本の立場、あるいは政府の立場を理解していただく、こういう努力を続けていかなきゃならないと思います。  単に、簡単に解決した、そういう問題では私はない、こういうふうに考えております。  日中関係は、やはり基本的に非常にいい状況にありますし、中国もまた日中関係を大切にしたい、こういうことを言っておるわけですから、両国でお互いに努力をして相互理解を進めていって、こうした問題の解決を図っていきたい、こういうふうに思います。
  299. 秦豊

    ○秦豊君 総理、さっきもちょっと出ましたが、与党内にA級戦犯の合祀については靖国神社側に善処をしてもらって、そのかわり公式参拝自体は続けてはどうかという動きがありますが、総理の認識の中じゃそれはどうですか。
  300. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これだけいろいろ論議の対象になったことでございますから、自由民主党の中でもいろいろな考えの方がおられて、そしてあるいは行動をし、あるいは考えるということは当然あり得ることであります。それらの考え方について注意深く私は一つ一つ自分でも検討を加えてまいりたいと思っております。
  301. 秦豊

    ○秦豊君 一転しますけれども、いよいよ米ソ首脳会談開かれますけれども、今回は劇的な成果はそう期待できない、しかし、手がたい幾つかの合意は形成されるのではないかと私は思いますが、総理自身の見通しと期待ですね、伺っておきたい。
  302. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、去年の今ごろ大統領選挙の終わった前後でしたが、ともかくこれから来年一月二十日のレーガンさんの就任式までは非常に大事である、というのは政策形成をやるから大事だ、そして就任式が終わっていくと米ソ関係というものは変わってくるであろう、つまり、どっちかといえばソフトになってくるであろう、そういうときに備えていろんな場面を研究しておく必要がある、そういうことも申しました。  それから、一月元日のテレビで国民の皆さんにNHKでごあいさつしたときも、ことしは平和の年です、そういうことも申し上げた。そういう考えも持っていましたから、一月二日、元旦早々日本を立ちましてレーガンさんにロサンゼルスで会いまして、そして米ソ会談をおやりなさいと私は特に進言もしたわけです。  そういうようないろいろな経過を経まして、そしてようやく米ソ会談が十九日に実現することになりましたことは非常にうれしいことであると思っています。三月にソ連に参りましたときも、ゴルバチョフさんに会いましてレーガンさんと会いなさいと直接言ってきましたし、またサミットでも同じようにレーガンさんに今度また言ってきた。これは自分の執念みたいなものがありまして、米ソ会談やるべしと。ですからあらゆる機会を通じてレーガンさんにも、ゴルバチョフさんにも直接私は言ってきておるわけであります。  その後、動きを見ますと両者ともかなり注意深くお互いの立場を考え合って配慮し合いつつ動いております。その様子を見ますというと、この機会を失してはいけないなという気持ちが両方に生まれつつあると思うし、現にゴルバチョフ氏がある提案を出しました。これも今までの提案から見ると数字が出てきておって、魅力的な面もなきにしもあらず。これに対するレーガンさんの案も出てきました。これもそれに呼応するような形で出てきておる。両者の間というものはだんだん狭まってきつつあります。半分にしようとか、三千六百発にしようとか、そういういろいろな面で。ですから今度で完全にものがまとまるとは思いませんし、まとまらぬこともあるでしょう。しかし、私はある流れが今できつつあると思っておる。したがって、今度だめならその次の回でやれ、それがだめならその次の回でやりなさい、しかし、話は常に残して継いでおかなければならぬ。  私はこの間ニューヨークでレーガンさんにお会いしたときも、ともかく継続審議にしなさい、そうしてゴルバチョフさんが、二月に党大会があるから、そのときに持って帰って検討を加えるような材料を与えなさい、そういうこともレーガンさんに私は申し上げた。ということはアメリカが回答を出しなさいという意味でもあるんです。それが出たわけですから、そういうような流れを大事にして、そうしてともかく多少時間はかかってもいいから、この絶好のチャンスを無にしないように両方が誠意を持って対話を続けていく、そうしてその間に解決を見出していく、そういう努力をしてもらいたい、そう思っております。
  303. 秦豊

    ○秦豊君 外務大臣、南北朝鮮の要人が相次いでクロス訪問しているんです、秘密裏に。例えばホ・ダム前外相、張世東国家安全企画部長、NSP部長、これは全部南北首脳会談の地ならしたと言われているわけですが、外務省の長い耳からすると感触をお持ちですか。
  304. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 南北の要人の相互訪問につきましては、韓国もこれを否定をいたしております。
  305. 秦豊

    ○秦豊君 公式には。
  306. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 北朝鮮もこれを否定しているということですから、今私の口からそれ以上のことを申し上げる立場にはないわけでありますが、しかし、南北会談は国会会談、あるいはスポーツ会談、あるいは人道的な会談といろいろな面で幅広く進んでおりまして、こうした会談がさらに進む中で最終的にはあるいは両首脳の会談ということも最後の段階としてはそれはあり得るんじゃないか、こういうふうに思っております。いずれにしても我が国としては、南北会談というものが順調に、建設的に、発展的に進むことを期待をいたしておるわけです。
  307. 秦豊

    ○秦豊君 それからもう一つ、アメリカの対朝鮮政策にかなり顕著な変化の兆し感得されますか。
  308. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私の承知する限りにおきましては、アメリカがいわゆる朝鮮半島政策につきまして政策の変化をしたという状況にはありませんし、日米韓はこの朝鮮半島の情勢につきましても、あるいは問題につきましても非常に親密に、緊密に連絡をとっておるわけでございますし、日米韓で話し合いなくして、あるいは日本に対して通報なくしてアメリカ側が政策を変えるということはあり得ないと確信しております。
  309. 秦豊

    ○秦豊君 例えばウォルフォウィッツ国務次官補はインドネシア大使、それから総理と親しいと言われているシクール大統領特別補佐官が対日関係の最高責任者、マンスフィールド大使が明年五月には更迭というふうな観測が渦巻く中での北朝鮮政策の変化という兆しはございませんか。
  310. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) アメリカ側としましても南北対話が推進、進むことを期待しておることは、これは事実でございますが、今のお話のような一連の外交人事がどういうふうなことになるか、私もよく承知しておりませんが、これといわゆるアメリカの朝鮮政策とは直接の関係はない、私はこういうふうに思います。
  311. 秦豊

    ○秦豊君 総理に伺いたいのですけれども、戦後外交の二つの懸案というのは日ソと日朝問題。日ソにかける執念、熱情はよくわかりますが、北朝鮮問題は余り総理に伺ったことはない。北朝鮮打開にかける総理の今後のお考え、いかがですか。
  312. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、朝鮮半島の平和と安定に非常に大きな関心を持っておるのです。それから、一九八八年ソウルで行われるオリンピックについてはぜひ成功するように念願もし、また協力も申し上げたい、そう思っておるのです。そういう意味からしますれば、南北間に融和が行われ、交流が行われるということは望ましいことであります。したがって、全斗煥大統領の北に対する呼びかけについては全面的に支持しておる。しかし、朝鮮半島のことは、結局、韓国と朝鮮民主主義人民共和国との話し合いで進行していくので、ほかの周りの者がわあわあ言ったって実際は効き目はないのです。それは民族同士で決めるべき問題で、ほかの者が言っても、民族同士がイエスと言わなければ進みっこないわけですから、我々は容喙がましいことを外からやろうとは思いませんし、韓国が嫌がることをここでやろうとは思いません。しかし、北と南がこのチャンスに話し合って、そうして民族和解、そして緊張の緩和に向かってたくましく前進し、誠意を持ってお互いがその問題に努力し合うように希望してやまないのです。そういう環境づくりのためには日本も、もし御要望があれば力をおかしするのにやぶさかでない、そういうことです。
  313. 秦豊

    ○秦豊君 宮内庁、韓国の李新駐日大使が先日ソウルで、皇太子の韓国訪問を希望すると述べているのだが、まだ正式な接触はなかったのでしょう。
  314. 山本悟

    政府委員山本悟君) 皇太子殿下の外国の公式御訪問というのはすべて外交チャンネルを通じまして行われるのが原則でございまして、外務省からも、何らそういうことにつきまして宮内庁に御相談はまだない状況でございます。
  315. 秦豊

    ○秦豊君 外務省、正式に申し出があった場合は、どういうふうに受けとめて、どういうふうに進められますか。
  316. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) まだ新しい駐日韓国大使の信任状の奉呈も行われておりません。そういう中でのいろいろと報道が流れておりますが、日本としましては、まだ韓国側からこれまで、皇太子の訪韓についての呼びかけといいますか正式な招待、要請というものも受けておりませんし、これからどうなりますか、韓国のそうした公式な御要請があればその時点において十分検討さしていただきたい、検討すべき問題だろう、こういうふうに思います。
  317. 秦豊

    ○秦豊君 総理、今度の新大使は大統領の側近中の側近と言われているのですね。単なる放言だとはとても思えない。韓国の人々の見解は、皇太子の訪韓を一種の日韓関係の仕上げ、戦後のけじめというふうな受けとめ方をしているようですね。その考え方自体は総理理解されますか。
  318. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) あなたから聞いたのではだめなんで、その新しい大使がおいでになってどういうことをおっしゃるか、それを聞いた上で判断をしたいと思っています。
  319. 秦豊

    ○秦豊君 宮内庁、浩宮様が帰られて、どうも、方々と比べてみると日本の皇室の警備は過剰で、国民との間の垣根が高くなるという控え目にいい表現をしていますね。ちょっとこの際再検討してみられたらいかがですか。
  320. 山本悟

    政府委員山本悟君) 浩宮殿下が御修学から御帰国になりまして、昨日記者会見があったわけでありますが、そのときの質問にお答えになりまして、けさの新聞で報ぜられましたようなことをお答えになった。これはやはり英国での二年の御修学、あるいはその間にはヨーロッパ各国もいらっしゃいましたし、御帰国の際には米国も回ってこられた、こういうような各種の御経験をもとにいたしまして、外国と国内とでは国民感情や環境などが違う、このことをはっきりとおっしゃっているわけでありまして、そういうことをよくお考えになりつつも、国民とともにある皇室という見地から諸外国と日本とを対比して御印象をお述べになった、こういうぐあいに私ども受け取っているわけでございます。  ところで、皇室に対する警備のあり方、この点につきましては、宮内庁といたしましても常々からスマートなということを警備当局にもよくお願いをいたしているところでございまして、この点は、実を言いますと警備当局におかれましても十分心得て、そのときどきにおける情勢に対応して警備をしていただいている、私どもはさように存じているわけでございます。実際のところ、いろいろの機会でそういうお話もいたしますと、警備当局といたしましては、万全でかつ国民との親和を妨げないような警備をしたい、こういうような気持ちをよく表明されるわけでありまして、その点はまことにごもっともというように私ども思っているわけでございます。しかしながら、宮内庁といたしましては、なお今後とも、やはり可能な限りスマートな、目立たない、ただいまおっしゃいましたような各種の御批判のないような警備を要望してまいりたいと、かように存じております。
  321. 秦豊

    ○秦豊君 日ソ問題で、総理、今でもソビエト訪問の熱意は薄れてはいらっしゃいませんか。
  322. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私がアメリカ新聞記者団の質問に答えて申し上げましたのは、ともかく、今回のレーガン・ゴルバチョフ会談の成り行き、成果、それから、一月にシェワルナゼ外相が日本へ来られますが、安倍外相との定期協議の成果、結果、そういうものをよく検分した上で、まず、安倍外務大臣が定期協議としてこれを継続してやるという意味から安倍外務大臣に行ってもらうか、あるいは私が行くというケースもあるかもしれない、それはすべてレーガン・ゴルバチョフ会談、あるいは安倍・シェワルナゼ会談等の成果を見た上でそういうことを考えてもいい、その可能性は否定しない、そういうことを申し上げておるのです。
  323. 秦豊

    ○秦豊君 安倍大臣、一月にシェワルナゼ氏を迎えたときの最重点、どういうふうに交渉されますか。
  324. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) ソ連のシェワルナゼ外相とは国連で会いまして、その際一時間ぐらい会談をしたわけですが、そのとき、シェワルナゼ外相から日本を訪問することが決定したというお話がありましたし、そしてまた、日本を訪問したときに、日ソ間全般について、さらにまた国際情勢等につきまして十分ひとつ話をしましょうということでありました。私も同感でありますし、十年ぶりに開かれる日ソの定期外相会談でございますから、時間を十分とって日ソ間の基本の問題、平和条約を締結をしたいという日本も強い熱意を持っておりますし、こうした平和条約をめぐる議論、あるいはまた、日ソ間のこれまでの経済、これからの経済の協力のあり方とか、あるいは文化交流のあり方とか、その他万般の日ソ二国間の問題について話し合いたいと思いますし、あるいはまた極東の情勢、さらに、米ソの首脳会談が行われた後でございますし、米ソ間の関係も大きく変わる可能性もあるわけですし、世界骨勢にも変化が出てくる可能性もあるわけですから、そういうものを踏まえまして世界の軍縮と平和の問題、あるいはまた地域問題、朝鮮半島の問題であるとか、あるいはまたカンボジアの問題であるとか、そうした地域問題等にも及んで積極的にひとつ話し合いをしてみたい、こういうふうに思っております。
  325. 秦豊

    ○秦豊君 それから外務大臣、シェワルナゼ氏に対して朝鮮半島の南北対話促進とか、八八年オリンピックへの協力、これを要請されるお考えはおありですか。
  326. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは、先ほど総理も述べられましたように、朝鮮半島の問題は南北間で積極的に対話が進むことを、そして何らかの民族和解の大きな結論が出ることを期待しておるわけで、周辺の我々は、こうした環境づくりにお互いに努力しなきゃならぬ、これはもう日本の場合もソ連の場合も同じであろうと思います。したがって、朝鮮半島の情勢についての話はいたしますが、同時に、日本もそうしてソ連も、南北対話というものを推進するためにお互いに協力しようという姿勢で私は臨んでいきたいと思っております。  あるいはまた、オリンピックの問題につきましては、国連の総会でも私も触れておきましたけれども、これはぜひともソウルで行われるオリンピックを成功させたい。これはもう韓国だけの願いでありません、日本もそれに対して非常に強い期待、念願を持っておりますし、前回不幸にして流れたわけでございますから、今度こそはソウルのオリンピックを成功させたい。そのために日ソ間でもいろいろと話し合いはしてみたい、こういうふうに思っております。
  327. 秦豊

    ○秦豊君 中東外交、相当あなたは努力されている、世辞でなくて。今後の中東和平の展望をこの際伺っておきたい、やや混沌としていますが。
  328. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 中東は、なかなか歴史的にもあるいは地政学的にも民族的にも、また宗教的にも非常に底の深い、複雑な要素を持っておりますし、私も先般ヨルダンあるいはまたシリア、サウジアラビアに参りまして、また、イスラエルの外相も日本を訪問しまして、中東問題を話をするたびに問題がいかに複雑であって、そしてなかなか難解であるということは私自身も非常に感じておるわけです。それだけに解決が非常に困難になっておると思いますが、そういう中における日本の役割というものはますます強くなってきておる、また、日本に対する期待は非常に強まっておるということを私は肌でもって感じております。それは、日本がこれまで中東諸国に対して手が汚れてない、あるいはまた、今日全くの政治的な野心がない、そういう中で中東諸国に対する積極的な協力、特に経済を通じての協力もやっておるわけでございますし、そういう中での政治のパイプも拡大をした。また、日本が世界の中で非常に重い存在になってきた、発言力も強くなってきた、こういうことで中東諸国も日本に対して期待するところが非常に大きいと思っております。  私は、やはり日本がここまで外交の幅が広がり、また、国際的な責任というのが重くなった以上は、この中東和平の問題に対しても今後できるだけの努力を重ねていかなきゃならぬ、それはそれなりに私は成果が生まれてくる可能性はあるんだろう、こういうふうに思って努力を重ねてまいりたいと考えております。
  329. 秦豊

    ○秦豊君 具体的な当面の努力をちょっと触れてください。
  330. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 具体的には、やはりせっかくこれまで我々が築き上げた中東諸国との政治対話のパイプというものをこれを広げていくということではないかと思います。だんだんと日本に対する信頼感が高まってまいっておりますし、私はPLOのアラファト議長ともお目にかかりました、アラファト議長も日本に対する非常に強い期待を表明しておりました。また、イスラエルの外相もわざわざ日本を訪問したということもありますし、そういう面で非常に率直に物が言える、そして彼らからも日本に率直に注文が出される、こういう状況になってきましたから、この対話の路線といいますか、対話のパイプをこれを大事にして、さらにこれを拡大をしていくということが大事ではないかと思っておりますし、また、国連等の場においても中東和平に対する日本の役割というものはこれから拡大していくであろう、こういうふうに思っております。
  331. 秦豊

    ○秦豊君 今カーグ島の百万バレルのタンクが炎上中なんですが、イラクの攻撃で。今後、六年を超えたイラン・イラク紛争の見通し、非常に難しいと思うけれども、日本への影響などを含めて、いかがですか。
  332. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) イラン・イラク紛争も六年続きまして、依然として泥沼状況といいますか戦闘が続くという不幸な事態が今日にあるわけでございます。何とかこれだけの長い戦争が終結して平和的にイラン・イラク紛争が解決することを、これは日本だけではなくて世界じゅうが望んでおるんじゃないかと思うわけでありますが、イランにはイランの立場があるし、あるいはイラクにはイラクの立場もある、長い歴史的な関係もあってなかなか容易でない、出口が見つからないというのが今日の状況ではないかと思います。  しかし、そういう中でいろいろの方面からの和平への努力が行われておることも事実でありまして、日本としましてもこのイラン・イラク紛争についても直接仲介するという立場にありませんが、イラン・イラク両国とも大きいパイプを持っているのはいわば自由国家群の中では日本であろうと自負しておりますし、そうしたパイプの中で何とか両国の平和環境ができるような努力を重ねてまいりまして、イラン・イラク両国とも日本に対して率直に物を言うという立場になってきておりますから、そうしたいろいろの世界の努力の中で日本がまたなし得る役割というものも存在をしているというふうに思っております。  今、国連の事務総長を通じて、あるいはまた、その他日本と志を同じくする国々との間に強力な協力関係を持ちながら、イラン・イラク紛争の平和解決に向かっての努力を今重ねておるわけでございます。なかなか容易でないわけでございますが、私はやはり国連の常任委員会、この国連総会の際にもイランの外務大臣ベラヤチ外務大臣にも私は述べたわけですが、イランもやはり国連常任委員会の場に出て、堂々とイランの立場を主張するということが大事ではないか。イラクは出ると言っているわけですから、イランも出て立場を表明する。そういう中にだんだんと状況がよくなる可能性も出てくるんじゃないだろうか、こういうふうに思っていろいろの角度から努力を重ねておるわけです。
  333. 秦豊

    ○秦豊君 まだ三分もありますから防衛問題に触れておきたいと思います。  十月三十一日の衆議院予算委員会西廣防衛局長が大綱水準に関連して、場合によっては陸、海、空の境を一度外して効率化を考えるというような答弁をしていらっしゃるんだが、加藤防衛庁長官、今のことを踏まえて、一体防衛庁長官としては、特にあなたなんだから、具体的にどんなことを考え始めていらっしゃいますか。
  334. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) 今回の中期防衛計画は、御承知のように防衛計画の大綱の枠の中でつくりましたし、今後私たちもこの防衛計画の大綱というものは現在変えるつもりはございません。しっかり国民の防衛についてのコンセンサスをつくる意味で大きな役割を果たしておりますので守っていきたいと、こう思っております。  しかし一方、自衛隊の方も海、空重視ではないけれども、最近の新しい状況の中で効率化をいろいろ考えるべきではないかという議論もあります。また、新しい技術の発達もあります。そういう意味では今度の中期計画の中では、例えば陸上自衛隊の師団を、従来十二師団あるのを甲、乙の二つだけのパターンにしていたわけですけれども、これを例えば五つのパターンに分解しましてそしてよりいろいろ弾力性ができるようにもいたしました。しかしそれは、御承知のように大綱の別表の中の陸、海、空の一つの中の仕切りをそのまま守りながらやってきたわけであります。  先日、西廣防衛局長が申したのは、一度それを取り払ってみて、そしてその中でより効率的なことをやることを前向きにやってみることが、白紙で考えてみることが一つは可能なのではないかという答弁をいたしたわけでございますけれども、私たちもそのように、防衛庁としては思っております。  そしてその中で、例えば別表の中は、あそこにはあの当時取得可能な装備体系に基づいていろいろやっていたわけですけれども、具体的に言えば、例えば今航空自衛隊が持っております高空防空、ミサイル、今ではナイキでございますがこれがパトリオットになります。一方、陸上自衛隊が持っておりますのがホークでありましてこれが低空域を見ているわけですが、今度改装いたしますパトリオットは高空域と同時に低空域も対処できるわけなんで、例えばこの防空ミサイルを陸と空とで一体となってシステムとして考えて、そしてそれはどこが担当するかは別問題ですが、そういった効率化の問題も考えてみたらどうか、そういった種類のことをこれから前向きに柔軟に考えてみる必要があるのではないか、そんなふうに思っておるわけでございます。
  335. 秦豊

    ○秦豊君 カナダのような統合軍はなかなか適合性がないかもしれないが、私もそう思っている。今言われたような線を具体的に大胆に推し進められたらいいと思う、機能ごとの統合、補給等を含めて。そうではありませんか。
  336. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) 現在、統合の仕組みというものは制度的には非常によくできております。したがって、これをいかに機能させるかは、その運営をする人間の問題であろうと思います。しかし、統合というものをより進めるべきであるという御意見、各方面からいただいておりますので、その点も含めて今後検討してみたいと思っております。
  337. 秦豊

    ○秦豊君 総理、私、今防衛問題で必要な視点は、やはり見直しという視点、アクセルよりブレーキという視点、これが余りにも欠落していると私は思うんです。あなたの私的諮問機関である平和問題研究会、高坂委員会、自衛隊は三十年の惰性で流されている、今こそ大胆に見直せと、こういう提唱を基本に踏まえているんですね。その点については総理はどうなんですか。どういう受けとめ方ですか。
  338. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その見方は、我々も考えていかなきゃならぬ見方だと思います。もう三十年もたつというと、どうしても惰性に流れます。また、むだも中には必ずしもないとは言えないと思います。そういう意味において、常に見直していくということは必要である。特に新しい科学技術の進歩に応じて、機能的にみんなが統合力を発揮できるような形で進めるということは大事だと思うんです。それをとる、とらぬかは別として、例えばソ連の部隊を見るというと、陸、海、空に対立してロケットというのがありますわね。大体どの国でも陸、海、空の三つしかないけれども、ソ連はロケットというのがあって、四部隊でできている。これはもう実に発想が自由だという意味です。私らはその発想の自由さという点において、防衛という問題を考える上について、おっしゃるように考えていかなきゃならぬ。いつも見直し、見直していくということが大事であると思っております。
  339. 秦豊

    ○秦豊君 総理、あの高坂リポートは中期、長期、ずっとまたがって、非常に陸、海、空にまたがる具体的な指摘をしているんですが、ああいうものはどういうふうに行政に、今言ったことは大項目ですが、具体的に反映され吸収されていきますか。
  340. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) とりあえずは防衛計画の大綱をこれを完成すると、これが今度の五カ年計画の目的です。これをまず充実させ完成させる。その次のことは、これをやっている過程におきましていろいろ研究をして次の時代のことを考えていくと、そういう形になると思います。
  341. 秦豊

    ○秦豊君 じゃ、安全保障問題で新たな公的な諮問機関ということはお考えの外ですか。
  342. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 目下は考えておりません。
  343. 秦豊

    ○秦豊君 防衛庁、この前の答弁を聞いていると、空中給油機はあきらめたんですか、導入を。
  344. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 最近の航空関係の軍事技術の状況から言いますと、給油機の必要性というものは逐次増しつつあるというように認識いたしておりますけれども、現在、我が自衛隊の兵器体系の中で空中給油機をこの五カ年間のうちに取り入れるというにはまだまだ研究不足であるし、今後さらに研究を続けていきたいということでございます。
  345. 秦豊

    ○秦豊君 それがはっきりするのはローリングの三年後ですか。
  346. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) まだこれから研究するわけでございますので、例えば今回の計画の中で研究すると言っております洋上防空、そういったものについても空中給油機の必要性というものがあるいは出てくるかもしれない。そういったものを踏まえて、給油機というのはあくまである意味では補給といいますか、補助的な手段でございますので、そういった正面的な装備がどうなるかということがある程度固まった段階で、空中給油機をどうするかということに研究が進んでいくんだろうと思っております。
  347. 秦豊

    ○秦豊君 じゃ、あなた方の別途研究の優先順位はOTHレーダー、エイジス艦、こういう順位ですか。
  348. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 秦君、時間が過ぎました。
  349. 秦豊

    ○秦豊君 わかりました。
  350. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) OTHレーダーあるいはエイジス艦、いずれも具体的な装備について優先順位が高いということではございませんで、遠く離れた洋上における防空をどうするかという、システムをどうするか、さらには相手方の航空優勢下における海上部隊あるいはそういったものの防空システムをどうするか、システムの研究がまず先であろうというふうに考えておるわけではございます。
  351. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 以上をもちまして秦豊君の質疑は終了いたしました。  速記をとめてください。    〔速記中止〕
  352. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 速記を起こして。     —————————————
  353. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 田英夫君。
  354. 田英夫

    ○田英夫君 いわゆる非核三原則、これは我々日本国民のいわば英知の結晶とでも言えることだと思いますけれども、残念ながら、つくらず持たずという二点については日本人の決心の問題ですから問題ありませんけれども、持ち込ませずという三番目の問題については、ここ二、三十年来、しばしば国会で疑惑という意味で取り上げられてきた。何とかこの国民的決心を守り抜くという意味で非核三原則、特に第三項目を守る方法はないものかと思いますが、総理、御感想を伺いたいと思います。
  355. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 非核三原則を守るというのは我が国の不動のこれは決意であることは今さら申し上げるまでもありません。そういう中で、今お話しの持ち込ませずという点については日米安保条約における、あるいはその関連規定におけるいわゆる事前協議という条項がございまして、いわゆる核が持ち込まれる場合においては事前協議にかけなきゃならぬ、アメリカはその責任があり義務があるわけですから。しかし、同時に、またアメリカがそうした核兵器を持ち込むという事前協議を起こした場合は、日本はこれに対してノーと言うことはこれまでの国会において政府の立場を明確にしてきたわけでございます。こうした日米安保条約というものに基づく事前協議制度、そういうものによって非核三原則、特に持ち込ませずという第三項目についても完全にこれは担保されておる、こういうふうに私たちは思っております。
  356. 田英夫

    ○田英夫君 日本政府は従来からそういう方針でこられた、これはいわば核持ち込み問題についての日本方式といってもいいやり方でありますけれども、一方、中南米非核武装地帯条約、いわゆるトラテロルコ条約では、持ち込ませずということと、その地域に核保有国が核攻撃しないといういわば四原則にしまして、この持ち込ませずと核攻撃をさせないという二点について核保有国との間に条約の附属議定書という形で約束を取りつけている、いわば条約を結んでいる、こういうやり方をとっております。  また、ことしの夏、ニュージーランドへ私行ってまいりましたが、ロンギ政権は御存じのとおり、アメリカの核積載艦船の寄港を拒否している、原子力推進の艦船も含めて寄港を拒否している、こういうトラテロルコ方式あるいはニュージーランド方式というやり方も現に存在するわけでありますが、こうしたことを日本に当てはめるというようなことは全く考えられませんか。
  357. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) ニュージーランドはニュージーランドの方式があると思います、我々はこれに対してとやかく言う筋合いはないと思いますが、先ほどから申し上げましたように日本日本のやり方があるわけで、これは申し上げるまでもなく安保条約そして事前協議制度、そういうものによって日本は非核三原則というものを守り貫いていける、こういう立場にあります。したがって、各国がそれぞれのやり方があると思いますが、日本日本のやり方で十分に非核三原則は貫ける、こういうふうに確信をいたしております。
  358. 田英夫

    ○田英夫君 しかし、現実にはもうここ二、三十年来、皆さんよく御存じのとおり、常に国民の間に疑惑があり、それが国会議論になってきた。先日もこの委員会で政府は大変苦しい答弁をしなければならないということの繰り返してあります。いわば非常に東洋的な、腹の中におさめて、事前協議がないからアメリカは持ち込んでないんだという論理でありますけれども、国民の多数はこれを信じてないということも事実であります。これは非常に残念なことでありますから、昨年私はトラテロルコ条約をも参考にして、つくらず、持たず、持ち込ませず、同時に核攻撃を許さない、特にこの後の二点について核保有国との間に条約を結んではどうかということを提起、提案をしたのでありますけれども、この考え方に対する外務大臣の御所見を伺っておきたいと思います。
  359. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 日本は非核三原則を遵守しておりますし、またこれからも遵守しなきゃならぬという基本的な立場にあるわけでございます。したがって、核を持っている国が日本に対する核攻撃を行うということは、これは国連憲章その他からいってそういうことはあり得ないことであって、むしろ日本と同じように各国が核を廃絶していくということに向かって努力をしてもらいたい、世界のいわゆる軍縮、平和、そのためにはやはり核の廃絶あるいは核実験の全面禁止、そういうものに向かって世界が進んでいかなきゃならない、そういうふうに思っております。
  360. 田英夫

    ○田英夫君 この問題は短い時間で議論できる問題ではありま世んけれども、国会などの場で繰り返し皆さんと議論をしてみたいと思います。  ただ、日本国民の一つの英知として、憲法は守る、憲法第九条は守る、これが大体どんな調査でも八〇%はある。同時に、自衛隊の存在は認める、今の程度なら認める、これも大体八〇%ぐらいあります。そして同時に、日米安保条約も認める、これも八〇%程度あります。しかし一方で、非核三原則は守り抜かなければならないという意見がやっぱり八〇%程度あります。私はこれを八〇%コンセンサスと呼んでいるんですけれども、しかしよく考えてみると、これは矛盾している点があるわけですね。厳密に言うと、平和憲法と自衛隊の存在、また日米安保条約と非核三原則の持ち込ませず条項、これは解釈によっては矛盾があることは事実であります。にもかかわらず、国民の皆さんの八〇%がこれを支持している。やはり行政府は、この国民の多数の意思というものを尊重しながら、その矛盾の中でバランスのとれた政策をとっていくということが非常に重要だと思います。  その意味からいうと、この非核三原則について言えば、日米安保条約と非核三原則というこの対比の中で言うと、日本政府のやり方は日米安保条約の側に重みがかかり過ぎているんじゃないだろうか、こういう気がしてなりません。このことは私の見解でありますけれども、この点については総理大臣から御意見を伺っておきたいと思います。
  361. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日米安保条約というものがまずありまして、これが昭和二十七年でございましたか発効して、そして安保条約の改定問題が起こりまして、藤山外相のときに今のような新しい取り組みの事前協議条項というものが入りまして、それから佐藤内閣になりましてから非核三原則と、こういう歴史的な経緯がございます。私はやはり日米安保条約というものが一つの基本である、その運用の一つのやり方というものに非核三原則というものがあるんだと、そういうふうに考えております。
  362. 田英夫

    ○田英夫君 今の総理のお考えは、非常に大きな立場からすると、私は逆だと思わざるを得ない。唯一の被爆国である、広島、長崎の体験を持つ日本国民が総意として決めた非核三原則というものをもっと重視すべきだと思います。  そこで防衛問題、もうこの委員会で多くの方から提起され議論がありましたので重複は避けますけれども、防衛計画の大綱というものは今見直すつもりはないとさっき防衛庁長官は言われましたけれども、この基本的な精神というものをもう一回簡単にお答えいただきたいと思います。
  363. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) 防衛計画の大綱ができたのが昭和五十一年でございますが、それまでの二次防、三次防、四次防それぞれと違うところは、四次防までの段階では我々は通常戦争による局地戦に対処し得る力を持とうという考えできたわけですけれども、しかしそれだけで考えていきますとなかなか、相手の力も変動いたしますし、また現実に我が国がそれにすべて脅威に対抗できるだけのものをつくる条件があるのだろうか。例えば財政、それから人員等いろいろ問題があるので、私たちとしては、軍事的には若干リスクはあるけれども、基盤的な防衛力をつくることによって平時は備えよう、そしてこれが有事になりそうなときにはスムーズに移行できるものに平時からしていこう、こういった考え方であって、ある意味では軍事的には若干リスクが多いんですけれども、その部分は政治の場面で、外交等で十分カバーしていく努力をしよう、こういったところがそれ以前のものと大綱の考え方の大きな違いではなかろうかと思っております。
  364. 田英夫

    ○田英夫君 お答えのとおり、それまでのいわゆる脅威対処論というものに対して基盤的防衛力構想、こういう形にいわば防衛哲学があそこで転換をして、それが以後確定をして今日に至ったと思いますが、今回の新しい防衛力整備計画を見ますと、哲学の転換が逆に逆戻りの転換が起ころうとしているんじゃないだろうか、脅威対処論に戻ろうとしているんじゃないだろうか、こういう気がしてなりませんが、防衛庁長官はいかがですか。
  365. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) それはございません。計画を政府レベルのものに格上げしたときに官房長官が特に記者会見でも申しておりますように、これは大綱の枠の中でつくられているものだということは明確に言っておりますし、またいろいろ御精査いただいてもその精神に基づいてつくってあることは御理解いただけるものと自信を持っております。
  366. 田英夫

    ○田英夫君 中曽根総理防衛庁長官で四次防を手がけられましたからよく御存じだと思いますけれども、その以前から、昭和三十年代からこの防衛問題についての国会議論をずっと振り返ってみますと、常に憲法というものを踏まえながら、一定の枠で余り増大しないようにということを常に提起をされている。GNP一%という問題についても中曽根総理自身が答えておられますね。昭和四十五年の九月、一%程度がいいのではないかという意味の答弁をしておられる。そういうことを踏まえてずっとやってきた結果、昭和四十八年ですか、当時の増原防衛庁長官が「平和時における防衛力」という文書を出されて、日本の防衛力は、憲法政策上の制約があるほか、特に経費がGNP一%の範囲内で適切に規制され、無理なく整備されるものでなくてはならないと、これが今日のいわゆる基盤的防衛力構想の基本になっている文書だと思いますけれども、これについての評価というかお考えはいかがでしょうか。
  367. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) その文書はその後いろんな経緯があって、国会等でいろいろ御議論があって、政府の方で取り下げたり、いろんな経緯があったようにお聞きいたしております。しかし、いずれにいたしましても、一%の問題に御言及になられましたけれども、一%の問題につきましては昭和四十年代の後半からいろいろ議論がございまして、そしてあるときには一%の枠の中でいいという発想は経済成長すなわち軍事大国だからそういうのはいかぬのじゃないかということを野党の現存している有力な議員の方からも鋭く指摘されていたような経緯があります。そしてやはりこのGNP一%というものはそれなりにいろんな経緯があってなかなか一概に言えないところがあるのではないでしょうか。ただ、私たちは過去特に五年ぐらいGNP一%というものが国民の防衛についての安心感を与える作用をしていたということは事実だと思いますので、その点については私たちも丁寧に慎重にこの問題は扱わなきゃならぬ。だからこそこれだけの議論になったんではなかろうかなと、こう思っております。  ただ、一言申しますと、三木内閣のときにGNP一%が決定されましたけれども、あのときに「当面」という言葉がついておりますですね。そして一%を超えたら必ず軍事大国になるというのだったら、比較的ハト派と言われた三木内閣で「当面」という言葉はつけないと思います。三木内閣は、じゃあ当面軍事大国にならなければいいと思っていたのかといったら違うと思います。したがって、一%につきましてはそのときどきの経済状況等を踏まえて総合的に御議論いただくことがいいのではないだろうかなと、こう思っております。
  368. 田英夫

    ○田英夫君 加藤防衛庁長官はまだ国会に出ておられなかったかもしれませんけれども、もう少し一%というものが決まっていく経緯を過去にさかのぼって御勉強いただきたいという気がいたします、今の御答弁を伺って。同時に、大綱というものが決まるのと一%という枠が決まったのは閣議は一週間の違いですけれども、この論議は昭和三十年代から並行してずっと一つの歯どめという考え方あるいは憲法を基礎とした考え方の中で出てきたわけですね。  ですから、一%という数字の問題ではなくて、防衛哲学の問題としてそこに一%という裏打ちが後からされたと、こういうことで五十二年の五月に、当時の伊藤防衛局長が、年次防をやめて大綱にした理由という質問に対して、脅威対処論では脅威の算定が難しくかつ変動があると、また、防衛力がどこまで増大するか国民に不安が起きる、こういうことで大綱の基本精神を決めたんだという答弁をしている。私もそのとおりだと思いますよ。  こういうことを今改めて国民の前に問うて防衛哲学というものを守り抜くんだということを、つまり大綱の哲学ですね。この際改めて総理大臣からお答えをいただきたいと思います。
  369. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今回の五カ年計画、新防衛中期計画は、その大綱の哲学にのっとってやっておるものでございます。
  370. 田英夫

    ○田英夫君 大変時間がなくて残念ですが、ひとつここで二、三最近起こりました問題について伺っておきたいと思います。  一つは、在日韓国人の経済人が、十月にヨーロッパからアメリカを訪問をしてアメリカに入ろうとしたところ、ニューヨーク空港で移民局に勾留をされた。足かせまではめられて留置されたということがありました。外務省はどのようにこれを捕捉しておられますか。御説明をいただきたいと思います。
  371. 後藤利雄

    政府委員(後藤利雄君) お答えいたします。  ただいま先生の御指摘の在日韓国人李佐永氏でございましょうか、がコペンハーゲンから米国に入りましたときに米国移民局に勾留されて、いわゆるあらかじめ取っておられました米国の査証が取り消されて、したがって入国ができなかったという点は存じております。この点につきましては、私どもは米国の査証手続とか移民局の勾留等、今足かせというのは初めて伺ったんでございますけれども、その点は米国の国内事項ではございますけれども、せっかくの在日韓国人の方でもございますので、私ども早速事実関係を米国に照会したわけでございます。その結果いわゆる先方の説明は米国の入国査証が発給後取り消しになっていたために、ニューヨークの移民局は同人の身柄を拘束して事情聴取を行った結果、いわゆる国外追放ということを求めまして日本に帰ってこられたということでございまして、査証の発給あるいは取り消しの事情につきましては、御案内のようにそれぞれの国の管轄の事項でございますので、御理解いただきたいと思います。私どもは、結果的には御両人が無事に日本に帰られて大変よかったなと、そう存じておる次第でございます。
  372. 田英夫

    ○田英夫君 この問題は、外務省大変敏速に対応をしてくださって無事帰れたことは私も感謝をいたしておりますが、この人はもう数十年日本に住んで平和なうちに経済活動をやっている夫婦でありました。ところが、御本人帰られてから私会いましたら、向こうでは移民局の一種の収容所ですけれども、そこでちょうど心臓が悪いものですからその発作が起きたところが、病院に連れていくのに手錠をかけて足かせをはめて連れていったということで憤激をしております。時間がありませんから、今アジア局長お答えいただきましたので、ぜひそうした取り扱いをした事情について、外交ルートを通じてアメリカ政府にただしていただきたいということを要求したいと思います。
  373. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今その手錠とか足かせは初めて聞きましたけれども、日本におられる在日韓国人でございますし、人道上の問題もありますし、今お話しのような点につきましては、アメリカに対して事情を調査したいと思います。
  374. 田英夫

    ○田英夫君 そのことはよろしくお願いをしておきます。  もう一つ、先日ニューヨークで行われをした中曽根。レーガン会談、この会談の中で日米経済摩擦の問題はどのような形で出てきたのか、伺っておきたいと思います。
  375. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いわゆるMOSS協議というのを正月からやっておりましたが、我々の方はアクションプログラムをつくって、そしてこれに対処して経済摩擦を解消するに全力を注いでおると、アメリカ側もそれをできるだけ励行して完成さしてくださいと、そういう話がありました。それで、私から、これは将来の課題として日本の今の産業、経済の体質というものをやっぱり検討する必要があると自分は感じておると、国際経済に調和する社会、経済体質あるいは産業構造というものを検討する必要があると、あるいはまた通貨の安定問題について国際的にいろいろ協調をこういう新しい事態に沿って促進していくということも必要であると、そういうようにも考えて、それらを研究するために自分は研究会を発足さしておると、いずれその報告を得たらその線に沿って検討した上で実行していきたいと、そういう話をしました。大体そんなところで終わったと思います。
  376. 田英夫

    ○田英夫君 例の木材、医療器具あるいはエレクトロニクス、通信機器というこの四つの問題について話し合ってきた。これにもっと枠を広げて品目をふやしてほしいということをレーガン大統領は言ったんじゃないんですか。
  377. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういう細かい話は我々の間ではやりません。
  378. 田英夫

    ○田英夫君 ところが、ウォルフォウィッツ国務次官補のブリーフィングでは、レーガン大統領がそういうことを言ったというふうに発表し、アメリカのマスコミはそれを伝えているんですね。ところが、日本側の発表は今総理がおっしゃったとおりのことで、それが入ってない。日米の発表に食い違いがあるということで、一部でも問題になっておりますけれども、もしふえるというようなことになれば関係業界では非常に大きな問題ですが、この点はいかがなんでしょうか。
  379. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、MOSS協議の話もしまして、それからアクションプログラムの話もしまして、こういうような問題、具体的な問題については今まで安倍・シュルツ会談で扱ってきたので、今後もこれらの問題については安倍・シュルツ間で取り扱わせようと、そういうことで向こうも合意をしたと、そういうことでございます。
  380. 田英夫

    ○田英夫君 日米間の発表に食い違いがあるということだけ指摘をしておきたいと思います。  次に、靖国神社の問題も当委員会でしばしば取り上げられてきた問題でありますけれども、最後にこのことに一言触れておきたいと思います。  私も総理と同じ海軍に身を投じた一人でありまして、震洋特別攻撃隊の生き残りの一人であります。航海学校で訓練を受けたときには、階段ベッドの上に寝ていた男は「大和」で死んだわけです。隣の階段ベッドの二人は私と同じ震洋隊で沖縄で死んだのであります。特に特攻隊を志願するかどうかということで募集をされたときには、夜も寝られないでみんな考え抜いたことを覚えておりますが、結局そのときに志願したおよそ四十人は全員死んでいるのであります。したがって、私も総理と同じにあるいは総理以上に、戦死者の霊を慰めたいという気持ちが強いと思います。むしろ総理以上に強いと思います。  また、十四年前になりますか、七一年に中国を訪問しましたときに、ちょうど南京と上海の間に無錫というところがありますが、その傍らの太湖という大きな湖の中の馬山という農村を訪ねました。私のそのときの旅は一カ月半ほどですが、かつての日本軍のつめ跡を見たいと、こう言ったところが中国側がそこへ連れていった。時間がありませんから簡単に言いますが、村の広場の真ん中に木が一本立って、そこに黒い板に白い字で「怨恨の場」と書いてある。何年何月日本軍が攻めてきて全員が殺された。また、村外れの洞窟には「血涙のふち」と同じように書いてある。
  381. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 田君、時間が超過いたしました。
  382. 田英夫

    ○田英夫君 はい。  そこに逃げ込んだ婦女子を日本軍が上から機銃掃射をした、そうしたことを生き残った人は語ってくれたわけであります。  そういう経緯の中での中国の人たちの気持ちということを総理はぜひお考えをいただきたい。同時に我々戦争体験者のことも、この気持ちもお考えをいただきたい。このことを最後に申し上げて、お気持ちはよくわかりますから、御答弁は要りません。終わります。
  383. 安田隆明

    委員長安田隆明君) この際、竹下大蔵大臣から発言を求められておりますので、これを許します。竹下大蔵大臣
  384. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 先ほどの三治委員に対する答弁につきまして、この際補足して御答弁を申し上げます。  単身赴任減税の実施については、昭和六十一年一月一日からにお願いしたいと考えておりましたが、可及的速やかに実施したいと思います。
  385. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 以上をもちまして質疑通告者の発言は全部終了いたしました。  これにて散会いたします。    午後六時四分散会