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1985-11-05 第103回国会 参議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年十一月五日(火曜日)    午後一時三分開会     —————————————    委員の異動  十一月二日     辞任         補欠選任      岩本 政光君     宮澤  弘君      杉元 恒雄君    大河原太一郎君      中西 一郎君     土屋 義彦君      上野 雄文君     村沢  牧君      原田  立君     大川 清幸君  十一月五日     辞任         補欠選任      金丸 三郎君     工藤砂美君      久保田真苗君     瀬谷 英行君      安恒 良一君     本岡 昭次君      関  嘉彦君     井上  計君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         安田 隆明君     理 事                 遠藤 政夫君                 志村 哲良君                 桧垣徳太郎君                 降矢 敬義君                 水谷  力君                 竹田 四郎君                 太田 淳夫君                 内藤  功君                 伊藤 郁男君     委 員                 安孫子藤吉君                 岩動 道行君                 石井 道子君                大河原太一郎君                 長田 裕二君                 海江田鶴造君                 梶木 又三君                 梶原  清君                 工藤砂美君                 古賀雷四郎君                 杉山 令肇君                 関口 恵造君                 竹山  裕君                 田中 正巳君                 土屋 義彦君                 秦野  章君                 鳩山威一郎君                 林 健太郎君                 宮澤  弘君                 宮島  滉君                 瀬谷 英行君                 野田  哲君                 福間 知之君                 村沢  牧君                 本岡 昭次君                 矢田部 理君                 和田 静夫君                 大川 清幸君                 桑名 義治君                 中野  明君                 和田 教美君                 神谷信之助君                 井上  計君                 秦   豊君                 田  英夫君    国務大臣        内閣総理大臣   中曽根康弘君        法 務 大 臣  嶋崎  均君        外 務 大 臣  安倍晋太郎君        大 蔵 大 臣  竹下  登君        文 部 大 臣  松永  光君        厚 生 大 臣  増岡 博之君        農林水産大臣   佐藤 守良君        通商産業大臣   村田敬次郎君        運 輸 大 臣  山下 徳夫君        郵 政 大 臣  左藤  恵君        労 働 大 臣  山口 敏夫君        建 設 大 臣  木部 佳昭君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    古屋  亨君        国 務 大 臣       (内閣官房長官)  藤波 孝生君        国 務 大 臣        (総務庁長官)  後藤田正晴君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (国土庁長官)  河本嘉久蔵君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  加藤 紘一君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       金子 一平君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       竹内 黎一君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  石本  茂君        国 務 大 臣        (沖縄開発庁長        官)       藤本 孝雄君    政府委員        内閣官房内閣審        議室長        兼内閣総理大臣        官房審議室長   的場 順三君        内閣法制局長官  茂串  俊君        内閣法制局第四        部長       工藤 敦夫君        日本国有鉄道再        建監理委員会事        務局次長     林  淳司君        総務庁長官官房        審議官        兼内閣審議官   本多 秀司君        総務庁長官官房        審議官      百崎  英君        総務庁長官官房        審議官      米倉  輝君        総務庁人事局長  手塚 康夫君        総務庁行政管理        局長       古橋源六郎君        防衛庁参事官   古川  清君        防衛庁参事官   千秋  健君        防衛庁参事官   筒井 良三君        防衛庁長官官房        長        宍倉 宗夫君        防衛庁防衛局長  西廣 整輝君        防衛庁教育訓練         局長       大高 時男君        防衛庁経理局長  池田 久克君        防衛庁装備局長  山田 勝久君        防衛施設庁施設        部長       宇都 信義君        防衛施設庁建設        部長       大原 舜世君        防衛施設庁労務        部長       大内 雄二君        経済企画庁調整        局長       赤羽 隆夫君        経済企画庁総合        計画局長     及川 昭伍君        経済企画庁調査        局長       丸茂 明則君        国土庁長官官房        長        吉居 時哉君        外務省北米局長  栗山 尚一君        財務省経済局次        長        池田 廸彦君        外務省条約局長  小和田 恒君        外務省国際連合        局長       山田 中正君        外務省情報調査        局長       渡辺 幸治君        大蔵大臣官房総        務審議官     北村 恭二君        大蔵大臣官房審        議官        兼内閣審議官   門田  實君        大蔵省主計局長  吉野 良彦君        大蔵省主税局長  水野  勝君        大蔵省関税局長  佐藤 光夫君        大蔵省理財局長  窪田  弘君        大蔵省理財局次        長        中田 一男君        大蔵省銀行局長  吉田 正輝君        大蔵省国際金融        局長       行天 豊雄君        厚生大臣官房総        務審議官     北郷 勲夫君        厚生省保健医療        局老人保健部長  黒木 武弘君        厚生省保険局長  幸田 正孝君        厚生省年金局長  吉原 健二君        農林水産大臣官        房長       田中 宏尚君        通商産業省通商        政策局長     黒田  真君        通商産業省貿易        局長       村岡 茂生君        通商産業省産業        政策局長     福川 伸次君        資源エネルギー        庁長官      野々内 隆君        中小企業庁長官  木下 博生君        運輸大臣官房国        有鉄道再建総括        審議官      棚橋  泰君        郵政省貯金局長  塩谷  稔君        労働省労働基準        局長       小粥 義朗君        労働省職業安定        局長       白井晋太郎君        建設大臣官房長  高橋  進君        建設省河川局長  井上 章平君        自治省行政局長  大林 勝臣君        自治省行政局選        挙部長      小笠原臣也君    事務局側        常任委員会専門        員        桐澤  猛君    説明員        日本国有鉄道総        裁        杉浦 喬也君        日本国有鉄道常        事理事      岡田  宏君    参考人        日本銀行総裁   澄田  智君        日本貿易振興会        理事長      赤澤 璋一君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○予算執行状況に関する調査     —————————————
  2. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 予算委員会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についてお諮りをいたします。  予算執行状況に関する調査のため、本日、日本銀行総裁澄田智君、日本貿易振興会理事長赤澤璋一君の両名を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 次に、予算執行状況に関する調査を議題といたします。  これより質疑を行います。桑名義治君。
  5. 桑名義治

    桑名義治君 最近はアメリカの対日貿易赤字が五百億ドルに達しようとしているわけでございます。日米貿易摩擦原因として多くのことが言われているわけでございますけれども総理はこれらの原因の中で最も大きい、しかもかつ本質的な原因は何というふうに認識をなさっておられますか。
  6. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 一義的に、一つだけが原因というふうに決めにくいと思いますが、やはり一つアメリカドルが今まで非常に強過ぎたということ。また逆に、日本の円が安くて、しかも品物が優秀で品質も非常によかった、値が安かった、そういう面が非常に多かったのではないかと思います。
  7. 桑名義治

    桑名義治君 今、総理の御答弁の中にもございましたように、この貿易摩擦の最大の原因は、何と言ってもドルが高かった、それからアメリカの金利が非常に高かった、こういった事柄が大きな原因だという認識につきましては私も同一でございます。  そこで、本年の九月の下旬になりましてようやくG5によるドル高是正協調介入が行われたわけでございます。日本国政府がもっともっと早い時期にアメリカを説得して今回のようなドル高是正策を引き出しておるならば、貿易摩擦はこれほどまでに深刻にならなかったのではなかろうか、こういう考え方があるわけでございますが、今回のドル高是正の措置は余りにも遅きに失したのではないか、経済界等においてもこういう意見があるわけでございますが、この点の認識はどういうふうにお考えでございますか。
  8. 竹下登

    国務大臣竹下登君) この米国財政赤字の縮減などを通じるところのドル高、それから高金利の是正、これは会うたびごとに私どもは主張してまいりました。  結局、この問題に関しますアメリカ側の評価でございますが、これがなかなか統一できなかったということではなかろうか。ウィリアムズバーグ・サミットのときから有用と認めた場合には介入しようということは決まっております。しかし、それが非常に現実味を帯びてきたのがことしの一月ではなかったか。このときは特にヨーロッパ側からも強い主張がございましたが、結果としてアメリカの、強いアメリカ、強いドル、こういう考え方の壁を崩せなかった。結局、六月の東京での十カ国蔵相会議、私とベーカーさんとの長いやりとりというようなことが一つのきっかけになって、それから二カ月かけてヨーロッパ諸国の説得も行って、やっとこの九月の二十二日ということになったわけです。  私は、個人としては、二週間後にはIMF世銀総会がソウルであるわけですから、そのときでもいいかなと心の中では思ったこともありましたが、やっとヨーロッパ合意した。しかも三人そろってニューヨークへ来ることができるということになれば、やはり一日でも早い方がいいというので二週間——私の心づもりから言えば二週間早まった。だからやっぱり相手のあることでございますから、アメリカ考え方がそこに及ぶには時間がかかったというふうに言わざるを得ないのではなかろうかと思います。
  9. 桑名義治

    桑名義治君 その経過につきましてはきょうの新聞紙上にも詳しく載っているわけでございまして、恐らく今のアメリカドル高是正、再びまた多少後戻りするんではないか、これを歯どめするために大蔵省としてはこういう内輪、内幕の話を今表に出しているんではないかと、こういうような論調で新聞には書かれているわけでありますけれども、この真意はどういうことでございますか。
  10. 行天豊雄

    政府委員行天豊雄君) 五大国が協調いたしまして市場介入しようということになりました経緯につきましては、ただいま大蔵大臣から御答弁申し上げたとおりでございます。  実際問題といたしまして、市場の心理というのは、委員御承知のとおり率直に申しましてなかなか簡単に予測もできませんし、日々変わるものでございますから、通貨当局といたしますと、我々通貨当局考え方というものは絶えずいろいろな場を通じまして市場参加者に正確に伝えておく必要があるだろうというふうには考えておるわけでございます。そのために御指摘のように、私どももいろいろな機会を通じまして金融機関であるとか、あるいはその他現実に毎日の為替市場に登場しております方々に対しまして私どもの意のあるところをお伝えしておる、こういうことでございます。
  11. 桑名義治

    桑名義治君 いずれにしましても、このG5の前に、ドル高の問題についてはアメリカに強力な申し入れをし、改善をしていく必要があったのではないかというその声は私はいまだに消えないのではないかと思います。  そこで、G5の協調介入合意を見た後に為替相場円高に急速に動き始めたわけでございますが、きょうの昼間のニュースでは、大体一ドル二百七円四十銭というところまで推移してきたわけでございます。貿易摩擦という立場から見た場合はこれは非常に好ましい形であろう、こういうふうに思います。  そこで、一体円が幾らになったときに我が国貿易黒字解消するというふうに当局はお考えになっているのか。ある都市銀行調査では、一ドル百五十円ぐらいでないと黒字解消しない、こういうふうに言っているわけでございますが、当局はどの程度貿易黒字解消の見地から見た場合の数字であるというふうにお考えになっていらっしゃるのか、その点をちょっとお聞きしておきたいと思います。
  12. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今、午前の終わり値が二百七円七十五銭、こういうことでございます。  具体的に何円になったとき対米貿易黒字がゼロになるか、これは大変難しいお話でございます。貿易収支動向につきましては、内外の経済動向、それから原油等の一次産品価格動向、値段の問題もございますので、為替レート動向がどのような影響を与えるかということを予測することは全く難しい問題であるというふうに考えております。したがって、アメリカ景気の問題もございましょうし、それから一次産品価格動向の問題もございましょうから、為替レートだけでこれを論ずることはやっぱり不可能に近いじゃなかろうか。だから、お答えいたす限界はより円高になることを期待しておるということがお答え限界ではないかなと、この問題についてはそのように考えます。
  13. 桑名義治

    桑名義治君 為替レートがいろいろ動く、それと同時にアメリカ経済動向なりもこれもまた予測しがたい問題である。したがって、ドル幾らになれば大体貿易黒字がゼロになるかという問題については非常に難しい問題ではございますが、やっぱり一定積算をしておく必要があるのではないか、こういうふうにも思うわけでございます。  今度は話をちょっと変えてみますが、都市銀行調査では、貿易黒字額解消のためには一ドルが百五十円であることが必要であるし、また他の調査機関では一ドルが二百円を切ったときに我が国輸出産業というものの大半は赤字になるであろう、こういうふうにも言われているわけでございます。  ところで、総理は一方で貿易黒字解消する責任を負っております。しかし他方では、国内産業防衛といいますか、保護といいますか、その責任も負っているわけでございまして、この両者の兼ね合いの中でいわゆる円高策を誘導していかなければならない立場にあるわけでございますけれども総理としては一ドル何円ぐらいをこの両者調和点というふうにお考えになっておられるのか、この点もちょっとお聞かせを願いたいと思います。
  14. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 大蔵大臣から御答弁申し上げましたように、数字的に明示することは非常に難しいと思います。
  15. 桑名義治

    桑名義治君 と申しますのは、なぜ私がこういうことを申し上げているかと申しますと、先ほど申し上げたのは東海銀行の積算です。それから後から申し上げたのは三和銀行の積算でございます。民間企業はいわゆる企業防衛のためにそれぞれ積算をしているわけですね。そうならば、今回のこのいわゆる為替レート動きというものは仕組まれたわけですよ。言うならば、先ほどのお話じゃないけれども竹下大蔵大臣が仕組んでこういうふうに誘導してきたということになれば、ある一定限度積算の基礎というものを持っておかないと各産業は大変困るのじゃないですか。そういう立場からこの程度というのじゃなく、多少の幅は結構でございますが、一応の目安というものがあればお知らせ願いたいと思います。
  16. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 元来、先進五カ国が非常に調和のとれた政策を行っておれば、それこそ為替相場というのは安定すると思うのでありますが、調和のとれた政策を行うという努力をしながらも、しかしそれぞれの国に差異がございます。したがって、この差異というものは結局それが現在のファンダメンタルズを正確に反映しておるかどうかという判断にかかってまいります。正確に反映していないという合意に達しましたので協調介入を行った。今度一方、後ろを向いて我が国産業というものを考えますと、企業によりましてはなかなか企業秘密をおっしゃっていただく方はいないにいたしましても、いろいろ懇談しておれば、まあ二百円でもおれの方は大丈夫だという方もございますし、あるいは二百十円というお方もございます。大体それよりも十円ぐらいまたサバを読んで聞いておった方がいいのかななんと思ってみたりすることもございますけれども、それはなかなか難しい話ではございます。しかし私どもは特に中小企業等に対しては絶えず注意を払っておりますが、かつての百八十円というようなときにも民間企業はこれに耐えてきた、その柔軟性というのは日本企業にはあるし、国民の英知もそれに十分裏打ちするだけの能力はあるというふうに私は総体的には見ておるわけであります。  したがって、基本的には変動相場制というものは、とにかく市場が決めるものでございますから、そこにターゲットを求めるというのは、これは通貨当局者としてお答えする限界の外にある問題ではないかというふうに考えておるわけでございます。
  17. 桑名義治

    桑名義治君 恐らくそういう答弁をなさるのだろうというふうに私も一応予測をしてきました。予測をしてきましたけれども、今大蔵大臣お話の中で、大体百八十円の時代にも耐えてきた、それだけの柔軟性日本企業は持っているという御発言があれば、大体百八十円から二百円が一つのめどではなかろうかというふうな見方も一応できるわけですね。  日銀総裁は、この問題につきましては非常に慎重でございまして、先日のこの予算委員会におきましては、ターゲットというものはなかなか設けられないというお話がございました。ところが、いろいろな新聞紙上であなたが御発言なさっている御発言の中には二百円には持っていきたい意向のお話があるわけですが、どうでしょうか。
  18. 澄田智

    参考人澄田智君) ニューヨークにおきますG5の折にも特定の水準ということを各国合意したということではございません。各国経済的な、基礎的な条件、いわゆるファンダメンタルズでございますね、国際収支とか物価とか、そういうものを反映する、より反映する、そういうものであるべきである、そしてそれが貿易摩擦解消に資するものである、そういうような考え方から協調して介入をしてきている。こういうことでございまして、私どもといたしましても、もちろん日本経済ファンダメンタルズを反映する相場ということを常に目指して今日までまいりました。いろんな機会に、記者会見その他で聞かれたりしました場合も、常にそう申し上げているわけでございますが、特にこのくらいを予想しているのではないか、こういうことが新聞紙上等で書かれることもございます。変動相場における為替市場でございますので、この辺までというようなことがあらわれますと、そこがドルの安値であるということになってどっとドルを買う、そういう動きも出る。これは市場として当然の反応でございます。そういうことも考えまして、どういう水準ということは決して申さないようにしてきておる次第でございます。
  19. 桑名義治

    桑名義治君 先ほど申し上げましたように、貿易摩擦ということに余り目を向け過ぎちゃって、日本産業が壊滅的な打撃を受けるということも、現段階におきまして既に考えをいたさなければならないような状況にもう来ているのではなかろうか。もういよいよだめになっちゃってから、今から政策を立てるんだということになれば、これは問題ですよね。したがって、ターゲットゾーンを設けるということは金融政策の上からは好ましいことではないかもしれませんが、しかし、一定一つターゲットというもの、多少幅があってもターゲットゾーンというものはなければならないんじゃなかろうかというような気がしてならないわけですが、通産大臣はこの点とういうふうにお考えになりますか。
  20. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 桑名委員お答えを申し上げます。  この御質問については先ほど大蔵大臣が御答弁になられたことにおいて尽きておると思います。と申しますのは、何と申しましても貿易黒字あるいは黒字がどれだけ減少するかということについては、円高ドル安の問題以外に物価でありますとか、景気動向でありますとか、いろいろな変数がございますので、この方程式について確かな答えをすることは日銀総裁といえどもなかなかおできにならないと思います。  私どもも、現在の日米貿易摩擦というものを考え、そしてまたそれによって影響を受ける中小企業その他をいろいろ考えてまいりますと、さらに、円高が長く続いていった場合にどうなるかということが重要だと思いますが、まだ九月二十三日以降四十数日しかたっておりません。したがって、タイムラグが余りに短いので、この期間において今おっしゃった問題に答えを出すということは不可能であると思いますし、また危険でもあると思います。したがって、それをよく見守っていきながら、今後さらに円高によって非常に打撃を受ける企業等があればそれに対して適切な措置を考えていく、こういうことであろうかと考えておりまして、現在慎重に動向を見守っておるところでございます。これは各企業にわたってそういったウォッチを続けております。
  21. 桑名義治

    桑名義治君 通産大臣はもう少し動向を見きわめながらというふうにおっしゃっておられますけれども、しかしG5の合意という立場、あるいは現在大蔵省あるいは日銀のとっている立場、これから見れば、いわゆる円高傾向へ定着さしていかなきゃならないというのが至上命令でしょう。あなたのおっしゃっているようなことだったら、この至上命令は壊れるかもしれないという前提がある、私はそういうふうにしか解釈できないわけですよ。定着するならばどこら辺を一つのめどにして例えば中小企業の不況対策に資するか、この検討というのは当然なしておかなきゃならぬ問題ですよ。このままの状態で円高がどんどんどんどん推進してきますと、今はいいかもしれませんが、まだドルで契約中でございますから、しかし今から契約をするもの、そして来年度に起こり得るもの、これを予測しなきゃならないと思うんです。  きょうの新聞紙上でも、小さな記事ではございましたけれども、このままの状態で推移するならば来年のGNPは一・八%ぐらいじゃないか、こういうような予想さえ出ているわけでしょう。そうなってくれば、今から手を打っておかなければいけないと私は思うんですよ。その点はどうなんですか。
  22. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 桑名委員の御指摘、非常にごもっともでございまして、実はことしの貿易黒字予測でありますとか、それから円高がどのくらい続いたらどういうふうになるかといういろいろな数値、あるいは国内の産業動向につきまして既に九月下旬以来そういったことも並行して続けております。  委員御指摘のように、私どもはこの円高というものは、全体として見れば、今日本の抱えておる貿易摩擦問題にとって非常に大切なことであって、G5の決定というものを極めて高く評価しておるわけでございますが、そういった円高がさらに進んだ場合にどうなるかということについては、もちろん御指摘の点は十分検討しつつあります。しかし、こういったタイムラグが実際に出てくるのには少なくともまだ半年、一年が必要でございまして、これは過去の統計で見てまいりましてもそうでございます。したがって、そういった要因も勘案をしながら現在研究中と、こういうことでございます。
  23. 桑名義治

    桑名義治君 先ほどからいろいろと御答弁があっておりますが、このままの状態で円高が推移するかどうかということは、いろいろな要因があって今後とも予測は余りできないというような事柄でございます。仮にこれが円安の方向へまた逆戻りしたということになれば、再び円安の方向へと手を打っていかなきゃならぬわけでございますが、日銀総裁としてはどういうふうな方策を考えておられますか。
  24. 澄田智

    参考人澄田智君) 私どもといたしましては、現在の水準がなおまだもう少し円高の方向になるということ、そして定着するということが望ましいということでございます。  しかし為替相場のことでございますし、市場によってはこれはドルがまた買われて円安方向に振れるということもないということはもちろん言われないわけでございますが、私どもはまず介入につきましては、今までもやってまいりましたように機動的かつ大胆に介入していきたい、こういうふうに考えております。  さらに、現在、金融政策においても為替相場を従来にも増して重視した金融政策を行っていく、これが基本でございます。したがいまして、こちら側から金利差を拡大するような措置は絶対金融政策の面においてとるべきでない。したがって、現在の公定歩合等は当然維持していかなければならない、こういうふうに思っております。  さらに、短期金利の市場等が締まってまいりまして、例えば介入によってそれだけドルを売るわけでありますから円が引き上げられる。それは円の引き上げ要因、吸収要因になるわけでございます。財政の作用等もございますので市場が締まりぎみ、昨今の市場というのはかなり締まっておりますが、そういう締まった市場をそのままレートに反映することが望ましい、こういうふうに考えて、そういうふうな姿勢で臨んでおります。その結果として短期金利、ひいては長期金利、これがきつ目になりまして、高目になってまいりまして、それだけ内外金利差は縮まった形になっております。まだもちろん内外金利差はかなりございますが、そういうふうなことで金利差は縮まってきている。こういう状況は為替の高目安定のために望ましい状況である、こういう姿勢を続けていく、そういう所存でございます。
  25. 桑名義治

    桑名義治君 また、先ほどちょっと申し上げましたように、このままの状態で円高がずっと推移していきますと、当然中小企業が打撃を受けるのは当然のことだと思います、多少のタイムラグはありますけれども。その方策について通産大臣は今一応計画をつくりつつあるんだというようなお考えを示されたわけでございますが、いつごろまでに大体その方策を決定するおつもりでございますか。
  26. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) お答えいたします。  実は、貿易収支の問題恒おきまして現在その見通しを考えてみますと、円高基調による影響というものが数字の上ではまだ出てこないのでございます。したがって、このままでいけば昭和六十年度の貿易黒字というものはもっとふえる、五十九年度よりもっとふえる、こういう状況でございまして、私どもはその点で、そういう今統計の上に出てくる動向と、今後さらに何カ月かたって貿易の模様がどうなるかということもいろいろ検討しておりますが、そういった先行きについては、例えば国際経済調整対策といったような特別貸付制度でございますとか、それから新中小企業の事業転換法でございますとか、そういった円高によって差損を生じる中小企業への影響というものをあらかじめ数字の上でも予想をしたりいたしまして、ひとつ大蔵大臣にもよくお話を申し上げなければならないということで内部ではいろいろ検討をいたしておりますが、外部に向かってそれではこうであるという数字的なものを発表するには段階としてまだ早過ぎる、こう考えておるというところでございます。したがいまして、委員の御指摘の点は九月以降たびたび省内では検討会をいたしております。
  27. 桑名義治

    桑名義治君 この問題は非常に大切な問題でございますので、総理の御意見も伺っておきたいと思います。
  28. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 非ドル通貨が強化されてきている傾向は歓迎すべきことであります。ただ、これがまた行き過ぎるというと中小企業やそのほかにきしみが出てくるということも考えなければなりません。そういうことが起こらないように通産省でも万全の策でいろいろ政策の検討も加えておるところでありますが、しかし現在の状態が、そういうきしみの状態が出てきているかどうかといえば、私はそこまでまだ行っていないと思うので、我々の円はさらに強くなるという期待が持てる、そう思っておる次第です。
  29. 桑名義治

    桑名義治君 そこで、このままの状態でどんどん円高が進んでまいりますと、しょせんはひずみが出てくることは火を見るよりも明らかでございます。そういった立場から、日銀総裁にちょっともう一点お聞きしておきたい事柄は、そうなってくると、不況対策、デフレ対策として考えられることは、また金利の問題にひっかかってくるわけでございますが、その点の調和点はどういうふうにお考えになっておられますか。
  30. 澄田智

    参考人澄田智君) 先ほども答弁申し上げましたように、ただいまは為替相場重視の金融政策をとっております。したがいまして、日本の金利を下げて、そして内外の金利差がさらに拡大するというような方向は厳に避けるべきである、こういうふうに考えて現在はおるわけでございます。しかし、御指摘のように、今後中小企業等に対する影響はもとよりでございますが、景気全体の情勢というものは慎重に見守っていかなければならない、そう思っておりますし、そうして今後円高になった場合においても相当効果が出るまでに時間もかかります。いろいろ影響はその間にあるわけでありますので、その辺をよく見まして、そうしてそのときそのときの状況に応じて総合的に判断して金融政策を運営してまいりたい、かように思っておる次第でございます。
  31. 桑名義治

    桑名義治君 この問題については今予測をしながらの課題でございますので、御答弁は非常に難しいと思うんですが、しかしここでもう一度考えておかなければならない問題は内需拡大策でございます。この内需拡大策はアメリカあるいはヨーロッパ諸国からも非常に強く要求をされているわけでございますが、このたび政府も三兆一千二百億ぐらいの内需拡大策を打ち出しているわけですが、現段階で余りにも為替に頼り過ぎますと、いわゆる木を見て森を見ざるというようなたぐいになるおそれだって十二分にあるわけでございます。ところが、今回打ち出された内需拡大策というのは余り評判がよくないわけです。外国からも余り評判がよくないわけでございます。  この点についてちょっとお尋ねをしておきたいと思うのは、所得あるいは住宅投資減税が落ちている。こういった事柄もG5後のドル高是正への期待が余りにも大きかったからではなかろうか、こういうような気もしているわけでございます。為替レートに対する危険な過信は極度に戒めておかなければならぬと思うわけでございますが、この点はどういうふうにお考えになっておられますか。
  32. 金子一平

    国務大臣(金子一平君) 今のお尋ねの点でございますが、私ども経済摩擦、黒字解消が為替問題だけで片づくとは決して考えておりません。できるだけ内需の拡大が必要であるということで御承知のような対策を打ち出したわけでございますが、これは正直なところ年末を控えて予算編成、税制改正をこれから議論する段階でございまして、これは外しておるものですからその力強さを欠くとかいろいろ御批判をいただいておることは事実でございますけれども、こういう問題は別にいたしまして、今政府として取り上げ得るあらゆる施策を一つずつ取り上げておることは御承知のとおりでございまして、内需拡大策によって経済の波及効果四兆一千億、これは戦後恐らく最大の拡大策になったかと思うのでございます。中身につきましては、今後予算の編成の際に裏打ちをしていかなきゃいかぬ問題がたくさんございますが、それはその際にまた私どもといたしましても努力をしたいと考えておる次第でございます。
  33. 桑名義治

    桑名義治君 そうすると、長官の今のお答えの中では年末の予算編成でまた追加をする、こういう御意向ですね。
  34. 金子一平

    国務大臣(金子一平君) 例えば住宅減税の問題も今度はあえて外しまして、税制改正の一環として取り上げることにいたしておりますし、それから公共投資のかさ上げを一体どうするかというような問題も、特に規制緩和による民間活力の導入に関連してこういった問題をどう扱うかというような問題はこれからの検討事項になろうかと考えておるのでございます。
  35. 桑名義治

    桑名義治君 今回の内需拡大におきまして、具体的にはこの対策で輸入増加はどのくらいに見込まれておられますか。
  36. 金子一平

    国務大臣(金子一平君) 内需広大策の第一弾と第二弾と分けておりまするけれども、当面実施する第一弾の方策で輸入効果は一応二十億ドル程度考えております。
  37. 桑名義治

    桑名義治君 民間調査では恐らく七億ドルから八億ドルぐらいじゃなかろうか、こういうふうな予想がされているわけでございますが、あくまでも二十億ドルは確保できますか。
  38. 金子一平

    国務大臣(金子一平君) 御承知のとおり相当タイムラグを要するものもございます。例えば規制緩和でございますとか、例えば住宅投資一つ取り上げてみましても、今すぐそれじゃ金を借りて家をつくるというわけじゃございませんで、ある程度タイムラグがございますから、それはそれなりのことは考えながらも二十億程度の輸入増加の効果はあると私ども考えておる次第でございます。
  39. 桑名義治

    桑名義治君 非常に難しい問題でございますけれども、ではGNPは一%押し上げるというふうに言われておりますが、大体民間の分析では〇・五%ぐらいだ、こういうような意見が圧倒的に多いわけでございますが、この点はどうでしょうか。
  40. 赤羽隆夫

    政府委員(赤羽隆夫君) このたびの内需拡大策のGNPに対する拡大効果でございますけれども、これにつきましては次のような計算をしております。  まず事業効果、事業規模の効果でございますけれども、これは発表してございますように三兆一千億円強、こういうことになります。事業規模と申しましても、その中には例えば用地費のようなものを含んでおります。したがいまして、こういうものを除きまして国民経済計算ベースでの投資規模ということになりますと二兆八千億円ぐらいになります。これに、従来から国会におきましても御答弁を申し上げておりますこの設備投資、公共投資等の乗数効果、これを乗じますと四兆一千億円程度になります。こういう形で計算をしております。  そこで問題は、この乗数効果いかんということでございますけれども、これは私どもが持っております世界経済モデルで計算している、こういうことでございます。モデルの姿というのはいわば平均的な姿になりますから、そのときどきの経済状況によりましてこれは多目に出るときもあれば少な目に出るときもあるだろう、そういう意味での推計値であると、こういうふうに御承知おき願いたいと思います。
  41. 桑名義治

    桑名義治君 災害復旧事業費の追加五千億円は当初予算の予備費分を除くと二千五百億円になりますね。それから住宅金融公庫の融資拡大分は五千億でございますけれども、民間金融機関からの振替分などを考えると、純増分は六割の三千億円と、そのほかにCDの稼動延長、週休二日制はつけ足したようなものだというふうにも思われるわけでございますが、どうでしょうか、この点については。
  42. 赤羽隆夫

    政府委員(赤羽隆夫君) 今いろいろな各種項目につきまして疑問の提起がなされたわけであります。例えば五千億円の災害復旧といいますけれども、これは現在の時点で見積もりをいたしますと、災害がなければそれだけの効果がなかった、それだけの事業をする必要がなかったという意味で、プラスアルファの効果だと思います。  それから住宅金融公庫につきましては、これは民間からの振替、シフトというものをどの程度見込むかということでございますけれども、私どもにおきましても、この民間からのシフトを考慮して五千億円と、こういう事業規模を出しております。  それからCDあるいは週休二日制について、特にCDの稼働延長がつけ足りみたいな話ではないか、こうおっしゃいました。確かにそういったような点はなきにしもあらずと思いますけれども、いわば今回の対策というのは全体を一つのパッケージとして考えている。その中には重要な項目もあれば余り大きな力を持たないのもある、こういうことだと思います。例えば自動車が走る、この走るためにはエンジンが必要でございます。そういう意味で、エンジンというのは大変重要な部品でありますけれども、例えばドアをロックする、こういう装置というのは必ずしも自動車を走らせる上においては重要ではない。しかしながら自動車が事故なく走るためにはこうした部品もまたパッケージとして必要である、こういう種類のものである。その意味におきましてやはり効果があり、かつ必要な対策である、こう理解をしております。
  43. 桑名義治

    桑名義治君 余り期待が持てないような気が私はしてならないわけでございます。恐らくきょうお聞きになっていらっしゃる議員諸氏もそういうふうな思いでいっぱいではないかと思いますが、いずれにしましても、管理されたドル高、そのためには並行して内需拡大というものを完全に実施していかなきゃならぬ。だからといって現在のような貿易摩擦の問題が解消するわけではございませんで、そうなってくると、次に手を打たれる手といえば、これは輸出規制ということになるわけでございますが、この点についてはどういうふうにお考えになっておられますか。
  44. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) お答え申し上げます。  輸出規制ということは原則として考えてないんでございます。というのは、これはニューラウンドの精神もそうでございますし、また総理や七カ国首脳会議でいつも言われておりますのは貿易を拡大して、そして世界の経済を発展させていくという路線でありまして、したがって輸出を抑えてしまったらこれは貿易の拡大にならない。したがって、あくまでも輸入を拡大して、それによって経済の範囲を広くしていく、そういうことを基本的に考えておるからでございます。
  45. 桑名義治

    桑名義治君 もう一点、特に内需拡大の問題について重要な問題は、これは円高差益のある大きな会社、この円高差益をどういうふうにするか、内需拡大に持っていくか、これは一つのまた大きな問題だろうと思うのです。  円高差益につきまして、電気やガスやあるいは石油、こういったところは大変な円高差益が出るわけでございますが、電気の問題は先ほどからの当委員会においていろいろ議論をされたわけでございますが、まだレートが定着してないという問題と、それから平均的な価格を維持するためにこの円高差益を投入した方がいいんじゃないかというような御意見もあったわけでございますが、そうしますとこの状態が続いたいつの時点をもってこういった公共的な料金の円高差益についての対策、と言えば、これは一時金を渡すということもありましょうし、料金を値下げするということもございましょうけれども、それをいつの時期というふうに大体踏んでおられますか。
  46. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) これは非常に難しい問題でございます。現在の段階においてお答えをするとすれば、桑名委員自身がおっしゃいましたように、まだ非常にタイムラグが狭いからこの時点では判断することは困難であろうという御前提があるように思います。  電力について申し上げますと、今後の需要だとか、あるいは水力発電についての出水率だとか、あるいは資本費その他のコストの動向であるとか、予測の難しい要因が非常に多いわけでございますね。したがって、現時点でお答えするとすれば、その影響を見通すことは極めて困難である、こういうお答えになるだろうと思うんです。  御参考までに過去の例を申し上げますと、昭和五十三年に円高があるということで料金の割引措置を一度とったことがございます。このときの平均為替レートの差というのは、五十一年が二百九十三円でございました。五十三年は二百二円になっておるわけでございますね。その間九十何円の差があるわけでございます。ところが、そうやって五十三年に料金割引をいたしましたら、翌年には石油価格が上昇して電力会社の経理が悪化して、そして五十五年には今度は料金改定をして相当の電力料金を値上げしたという前例があるわけでございます。こういった前例から見ましても電力料金その他について現在はまだ考える段階ではない、このように申し上げるのが非常に適切であろうかと思っております。
  47. 桑名義治

    桑名義治君 通産大臣通産大臣の今の御答弁は僕は不満足なんだ。何となれば、石油料金というものは現在上がりつつあるわけですか、下降線をたどっているのか、どっちなんですか。
  48. 野々内隆

    政府委員(野々内隆君) 石油の料金につきましてはドル建てでは低下傾向にございます。下がっている傾向にございます。
  49. 桑名義治

    桑名義治君 そうでしょう。前回の場合と前提が違うんですよ。それと同時に、今回の為替レートの問題も前回と条件が違うんです。政府が責任を持っていわゆる円高の方向へ今向けているんでしょう、各国協調しながら。随分違いますよ。そうだったら、ある程度の期限を切って、この時点でこの場合はある程度は料金の値下げをすべきだ。そうしないと日本企業はつぶれちゃいますよ、最終的には。今の段階では日本は世界の中でも機関車的な役割を果たさなきゃならないという、そういう論調がまた多少出始めているときなんですよ。日本経済が破滅するということは、世界の経済に大きな影響を与えるということも同時に考えておかなきゃならぬ問題だと思うんですよ。そこら辺の配慮が私は少し足りないんじゃないかと思うんですよ。総理、どうですか、この点は。
  50. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 物にはほどほどというものがありまして、余りぎすぎすやるということも考えもので、同然的に今物事は移行しておる、この自然的な移行というものが市場経済原理によって動いているということで我々は歓迎しているところでございます。ただ、急激に円高が来て、そして例えば電力会社とかガス会社が不当に大きな利潤を上げるというようなものが目についてくるという場合には社会的な批判も受けるでしょう。しかし既に今度の内需振興の政策の中に、電力やガスにつきましては協力をしていただいて、相当量の公共的事業をやってもらうことにもなっております。そういう辺もよく勘案しながら、この円・ドルの関係等もよく見据えて検討していくべきであると考えております。
  51. 桑名義治

    桑名義治君 通産大臣、そういうふうな総理の御答弁でございますが、そのいわゆるタイムラグは大体どの程度というふうにお考えでございますか。
  52. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 円高傾向が定着し、そして一定の判断を下すまでには少なくとも相当の期間を要すると思います。そして、総理が御答弁をしてくださいましたように、実は電力会社、ガス会社については設備投資を最初一兆円というふうに試算しておりましたのをさらに一兆一千億までふやそうということを、これはもう本当に心よく国の方針に対応して協力を申し出ていただいたわけでございます。確かに桑名委員の御指摘になりましたように、電力の問題、そしてこの問題は日本の国民生活にも直接非常に大きく関係をいたしますし、また世界の経済動向にも関係する問題だと思っておりまして、そういった全般的な問題を考えながら私どもとしては慎重に対応してまいる決心でございます。
  53. 桑名義治

    桑名義治君 いつという期限はなかなか出そうにございませんが、いずれにしましても、最後にちょっとお尋ねをしておきたい問題は、新ラウンドについてでございます。  この問題については途上国が非常に消極的な意向を示しておるわけでございますが、米国には賛成国だけでスタートさせるべきだという見切り発車論、あるいは二国間論、こういった意見が非常に台頭してきているわけでございます。  そこで、現にカナダとの交渉も日程に上っているようでございますが、こういった考え方は、米国を中心にした一つの特定ブロックを形成するということは、これは日本にとりましては長い目で見た場合には非常に最悪の状態ではなかろうかというふうにも私は考えるわけでございますが、米国がこのような危険な道を歩まないようにするには、総理としてはどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか。このお話をお聞きしましてこの問題を終わりたいと思います。
  54. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 自由貿易の推進というのは全世界的な貿易の拡大を目指してやって、そのために自由化しようという方向で進めておるものでございまして、ブロック経済の方向に進むということは我々の目標とは違うことであります。したがいまして、ニューラウンドの推進に当たりましても偏することなく普遍性を持つようなニューラウンドの推進に全力を尽くしてまいる考えであります。
  55. 桑名義治

    桑名義治君 次に、財政、税制の問題についてお尋ねしておきたいと思います。  中曽根さんが総理に就任されて以来の財政政策、あるいはその結果というものを数点確認をしておきたいと思います。  その第一点は、特例公債の発行額削減計画は予定よりも大幅に縮小しました。その結果、国債残高は鈴木内閣のときの五十七年度六十九兆円から六十年度末は百三十三兆円と大幅な累増を示しておるわけでございます。これが一点。  それから第二点は、特例公債依存財政からの脱却の目標年次を五十九年から六十五年へと延ばしたわけでございますが、歴代内閣が特例公債の歯どめとして法律で定めてきました借りかえ禁止を破棄して、特例公債という名の借金を半永久的、昭和百二十四年度までに残したというこういう結果。  それから第三点は、国債整理基金の償還財源が枯渇したこともあるわけでございますが、その原因は国債費の定率繰り入れを五十七年度以降停止し続けてきた、来年度もまた引き続き停止しようとしていること。  それから第四点は、増税なき財政再建ということでございましたけれども、国民のいわゆる税負担率はますます拡大しているということ。  この現実を総理はお認めになられますか。
  56. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 一番の基本の考え方は、臨調路線にのっとって財政経済政策を運営するというのが一貫した基本路線でございます。そういうような考えに立ちまして、六十五年赤字公債依存脱却、あるいは増税なき財政再建路線とか、そういうようなことも考え、その中にあって経済に急激な変動を余り与えないようにある意味におけるソフトランディングもやっていかなければならない。そういう意味におきまして、借換債の問題も国会にお願いをいたしました。これらもある意味においてはいわゆるソフトランディングという考え方にも合致するものなのでございます。  御指摘されました諸点につきましては、やむを得ず行った点も多うございますけれども、基本線はあくまで臨調路線を貫いていく、そういうことであると御理解願いたいと思うのであります。
  57. 桑名義治

    桑名義治君 そこで、今までの手法を見てまいりますと、防衛費はこれはどんどんと伸びておるわけです。それから対外経済援助、これも大きく伸びつつあることは事実であります。その反面、一般歳出は一律にマイナスシーリング、こういったことで抑えられているわけでございますが、財政規模の拡大を抑制したということは、これは一応私は評価していいと思うんです。しかし、そこには国民が求めているものは何か、いわゆる社会経済上の将来の展望、それから具体的な施策、ビジョン、哲学、こういうものが全く示されていない、私はこういうふうに言わなければならないと思うんです。六十一年度も引き続いて今までの施策を踏襲するおつもりなのかどうか、この点も伺っておきたいと思います。
  58. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 臨調路線を追求していくという基本姿勢は、六十一年度におきましても貫かなければならないと考えて、そういう意味の概算要求基準の設定も七月に行ったところでございます。
  59. 桑名義治

    桑名義治君 特例公債の脱却目標が六十五年度、これはもう動かしがたい事柄でございますが、特例公債の借りかえによってその残高が今から六十四年先まで残るという結果を前提としての脱却でございます。今ソフトランディングというお言葉をお使いになったわけでございますが、それさえも少し難しいのではないか、こういうふうに思うわけでございますが、新規財源債としての特例公債六十五年度脱却は可能というふうに総理は栄考えになっておられますか。
  60. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) でありまするから、電電公社の株式の処分あるいは旧専売公社の株式の処分等につきましても、公債償還の財源を確保しよう、そういう考えに立ちまして法律を成立させていただいた経緯もこれあり、あるいは国有財産の売却であるとか、そのほか全力を尽くしまして六十五年赤字公債依存体質脱却の目的を達するために今後も引き続いて努力していきたいと考えておる次第であります。
  61. 桑名義治

    桑名義治君 これを脱却するためには、大蔵省の試算では、名目成長率を六・五%にしなければなりません。それと同時に一般の歳出の伸びをゼロでようやくこれが達成できるという試算でございます。もう既に三年抑えておるわけです。そうするとあと五年間抑え切れるかという問題が残るわけです。そうすると、その分は大体どこで埋め合わせをなさるのですかと、こう聞かざるを得なくなるわけでございます。ゼロシーリング、マイナスシーリングというものをあと五年間持続できるというふうに総理はお考えになっておられますか。そしてまた、それでも難しいということになれば、これはしょせんはどこかで資金を導入しなきゃならぬわけでございますが、これは増税で賄おうというふうにお考えになっておられますか、その点どうでしょうか。
  62. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 試算でお示ししておりますのは六ないし七の中間値の六・五をとって、そしてゼロで抑えたら、こうなりますということを申し上げておるわけでありますが、三年抑えてまいりました。今の概算要求基準等から見れば、さらに六十一年度も厳しい対応をしなきゃならぬ、そういう姿勢は私はこれは貫いていかなきゃならぬ課題だと思っております。  ただ、恐らく桑名さん御案内のとおり、高齢化社会、そういうことからする社会保障の当然増とか、そういう問題が当然予測される。それを既存の制度、施策の中でどう埋め込んでいくかというのは、これは大変な課題だなという問題意識を持っております。しかし、それとて全く別次元に置くわけにもまいりませんので、厳しい対応をしていかなきゃならぬというふうに考えます。  先ほど総理からもお答えがございましたいわゆる電電株、日本たばこ株式会社の株、そうした援軍とでも申しましょうか、これも言ってみれば若干の期待は持てるものであろうということはございますけれども、この問題になりますと、まだ決算も済まぬものをあらかじめ値決めするわけにもまいりませんし、今後のまた国会の議論等を通じながら判断していかなきゃならぬ課題でありますが、いずれにせよ引き続き厳しい対応で対処していく。いろんな当然増経費も可能な限りその中に埋め込んでいく制度、施策の根本にまでさかのぼった洗い直しという姿勢はこれからも貫かなきゃならぬことだというふうに我と我が身にも絶えず言い聞かしておるところでございます。
  63. 桑名義治

    桑名義治君 あと五年間、ゼロシーリング、マイナスシーリングで耐えられますか、この点どうでしょうか。
  64. 竹下登

    国務大臣竹下登君) その耐える、耐えぬという問題、両面ございまして、いわば新たなる歳入源を求めなければ耐えられないではないかという問題と、これでは国民が耐えられるか、こういう問題とあろうと思っております。しかし本来、民間の活力というものが生き生きと出てくるならば、いわゆる政府の歳出は可能な限り少ないことが好ましいという考え方も基本にございますので、私は、これによって世界一の安定した物価とか失業率の低さとか、そういうことが大きく変化をして国民自身が耐え切れないという状態になるものであるとは思っておりません。
  65. 桑名義治

    桑名義治君 最近は国債の増発も必要ではないかという議論が学者の間の中でも出てきたんですね。内需拡大という問題も踏まえながら、あるいはまた貿易摩擦解消という問題も踏まえながら、あるいは減税財源ということも踏まえながら、いろんな視点からそういうような声が専門家筋からも出てくるようになりました。この点についてはどういうふうにお考えになっておられますか。
  66. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 我が国の財政法、あるいは西ドイツが大体それに近い考え方でございます。すなわち歳入歳出は税源でもって確保すべきものであるが、大変な不景気とか、あるいは災害とかいう場合には、公共事業に充当するための建設国債ならよろしいと。西ドイツがややそれに近い考えてあります。ほかの国は、何であれ、残高になった場合にはすべてがこれは借金には違いありませんので、そういう建設国債と赤字国債の区別はしておらないというのが現状でございます。  したがって、よく議論に出てまいりますのは、建設国債の増発をして内需振興したらどうだ、主として出てまいりますのはこういう議論でございます。これについて、確かに一時的に一兆円であるとすれば四千億程度三年間で税収のはね返りがある、こういう計算もございます。しかし結論として、それが残っていくのはやはり三兆七千億、三・七倍というものを七%の金利で六十年間、すなわち子、孫、ひ孫にまで負担を回すことになる。いかに資産が残ったとしても、その負担というものは可能な限り生きとし生ける我々がストックとして残していくべきものではない、これは竹下流の哲学であるかもしれませんが、私はそういう姿勢が好ましいと。しかし、全く建設国債を否定するというわけではございません。その辺の調和点がどこにあるかということを見定めていかなきゃならぬではなかろうか。  ただもう一つ、今度は惰性の中で我々が感じますのは、一遍仮に増発いたしますと、じゃ景気が少しよくなったからそれを縮めようということがなかなか国会のみならずいわゆる歳出抑制圧力というふうにはならない。一遍出しますと、それが既得権のごとくなっていく一つの嫌いがあるということ、それも十分心しておかなければならない課題だというふうに思っております。  それから赤字国債の場合は、これも日本と西ドイツ流の分けた考え方でございますけれども、きょうのサービスを享受するために子供、孫、ひ孫にツケを回すことは、これは生きとし生けるもの避けるべきことである、こういうふうに考えております。
  67. 桑名義治

    桑名義治君 結局どうするかということがさっぱりわからぬわけですが、結論としてどういうふうになるんでしょうか。
  68. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 言語明瞭意味不明、こういうことに相なったわけでありますが、結論から申しますと、桑名さんといつも議論しておりますように、昭和六十五年までに少なくとも赤字公債依存体質からは脱却していこうと。そして、その後おっしゃいますとおり六十四年間にわたって、ちょうど昭和百二十四年まででございますか、残るわけでございますが、その残高を減らしながら、それをどの基準で比較するかというと、やっぱり対GNP比というようなことになるでございましょう。そういうものと比較しながら、その残高を可能な限り縮めていく努力というものが今二つの目標としてはっきりしておるところであります。  だが、その手法はどうするか、こういうことになりますと、今までは国会で問答を重ねながらその手法を明らかにしましょう、こう申しておりました。その透かしのようなものが下に見えてきたというのは、やっぱり電電株等の問題は透かしが少し浮き彫りになりつつあるのかなと。そして、今度は税制改正の問題、これも検討したばっかりでありますが、それが安定的歳入の確保というようなことでどのように浮かび上がってくるのか、あるいは国民の方で、やっぱり受益者も国民であれば、また負担するのも国民でありますから、したがって、その受益と負担というのを、この辺がほどほどだという理解をどのように示していただけるかというようなことを、毎年毎年でございますけれども、こういう今桑名さんと私が問答しておりますような積み重ねで次第にその手法がずっと浮き上がってくる、こういうことになるではなかろうかと思っております。
  69. 桑名義治

    桑名義治君 どうもなおさらわからなくなったんですが、要するに六十五年度までは発行しないということでしょう。そうはっきり言ってもらった方がすっきりするんですけれどもね。  次進みますけれども、次は税制改革の問題について少しお尋ねをしておきたいと思うんです。この論議を始めますと、もうすぐに政府税調にいわゆる諮問をしておりますので、予見を与えるといけませんからとみんな逃げ込んじゃうわけですね。税制改革という問題については、国民のいろいろな世論はとにかくこの国会の場において徹底した議論を詰めろ、これが世論なんですね。ところが、それをやろうと思ったら、税調に諮問しておりますから、諮問しておりますからと、なかなかこれ構わない。だから、きょうはひとつ率直に御意見を述べていただきたいと思います。これをまず要望して、そこから入っていきたいと思います。よろしゅうございましょうか。
  70. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは税の問題ということになりますと、いわゆる本格的な諮問を総理大臣がこの間なすって、精力的な今審議が行われておるという段階で予見めいたことを申し上げる立場にはありませんので、今の桑名さんの率直なということに対しては非常に率直でないようなことになりはしないか、こんな気持ちがいささか私にもいたしております。
  71. 桑名義治

    桑名義治君 その率直でない中の率直さをひとつ求めて質問をしてみたいと思いますが、まず最初に租税負担率と社会保障の負担率、この問題についてお尋ねをしておきたいと思います。  それで、とにかく臨調の答申では租税と社会保障の負担を合わせた、いわゆる国民の負担率は長期的には、ヨーロッパの諸国の水準よりはかなり低位というふうに述べられておるわけです。具体的に何%が妥当なのか、さらには租税負担と社会保障負担をそれぞれどの程度にするか、これは臨調の答申の中でも定かではないわけでございますけれども、問題は、六十年度の予算では租税負担率は二五・二%、社会保障の負担率は一〇・八%、全体では既に三六%になっておるわけです。それで、仮に臨調答申の数値を四五%というところに押さえてみましても、残りは九%ポイント程度しか残ってないわけですね。そういうふうに見てみましてこれからの見通しというものを考えてみましても、この社会保障負担率の上昇というのは、いや応なしに伸びていくことはこれは避けられないと思います。  そこで、総理考える国民の負担率の限界というものはどの程度とお考えになっておるのか。いわゆる税調特別部会で五〇%を割る水準という議論が出ているようでございます。それから、臨調答申に言う五〇%をかなり低位にとどめるという、この相違点ですね。その相違点があるわけでございますが、政府としては大体どの程度ということにお考えになっておられますか。
  72. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今桑名さんおっしゃいましたのは、政府税調の部会で五〇%未満という議論がなされたということ、私も詳細には聞いておりませんが、そういう議論があったということは承知いたしております。  それから一方、ヨーロッパよりはかなり低いと、こういう臨調の問題がございますが、あの臨調答申が出たときと今日を見ますと、ヨーロッパはかなり上がっておりますですよね、実際問題として。したがって、臨調でもおっしゃっておりませんが、かなり上がっておるということも、あの時点では上がってない、今のよりも低い時点で示された考え方でございますので、私もいかに取り計らうべきかなということを常日ごろ自問自答をいたしておりますが、しかし結局は、いわゆる資源の配分を民間部門と政府部門にどう分けていくかということになるわけですし、そしてその政府部門の社会保障負担というようなものも、結局、国民がこの程度まではあるべき姿であるというその判断を最終的にどこに置くかによって結局はその結論が出る問題でございますので、まだ私は正確にこの程度までと、今桑名さんおっしゃった四五%というのは、確かに常識的によく使われる数値であろうと思いますけれども、その辺が妥当かという御質問であるとすれば、そこまでまだ自信を持ってお答えする段階にないというのが偽らざる現状でございます。
  73. 桑名義治

    桑名義治君 税調に諮問をしているということはよくわかるわけでございますけれども、やはり政府としては、各国動向等をにらみながら、あるいはまた現在の日本の国民の負担率、負担の能力という、そういういろいろな立場から考えて、どの程度が大体限度がなという大枠ぐらいは、私は政府としてはある程度固めておく必要があるんじゃないかと思いますが、どうでしょうかね。
  74. 竹下登

    国務大臣竹下登君) ヨーロッパの皆さんとよく議論しますと、仮に五五という国があって、我が国がまあ三五と仮にいたしますと、そうすると、おまえさんのところが財政赤字が出るのは当たり前じゃないか、租税負担率が低いからじゃないかと、こんな議論にもなってまいりますが、逆にヨーロッパの諸君は、やっぱり五五%というふうな国民負担率になりますと、気がついてみたらそんなになっておったと。そうなると、早く元取らなきゃ損だと、こういう心境になるのがヨーロッパ病のやっぱり一番の理由ではないかと。まあ元取らなきゃ損だという表現は非常にこれは下世話な表現で申しわけありませんが、そんな心境になりがちであるというようなことをよく議論をいたします。したがって、やっぱりヨーロッパほどになってはいかぬなということは、私もそういう会合に出るたびに思います。  そして、日本国民の負担能力はどこにあるかといえば、それは実際は、ヨーロッパの諸君から見ればまだまだかなり負担能力はあるということでございましょうけれども、そんな負担能力を過大に信じてその負担だけをこいねがうべきものでもございませんので、やっぱり総じて臨調さんはいいこと言っておられるなと、ヨーロッパよりはかなり下回ると、これがいいところではないかなという感じでございます。
  75. 桑名義治

    桑名義治君 一つ、二つぐらいきちっと答弁したらどうでしょうかね。  かなりというのは大分離れた表現ですからね、四〇に近いわけですよね。先ほどの御答弁の中に、ヨーロッパでは租税負担率があの当時よりも上がっていると。これは関係ないと思うんですよ。あのときの議論は、五〇%ということが一つの議論になっているわけですから、これまでいっちゃいけないと、これよりもかなり低いところに抑えるという、それが理想だというふうないわゆる議論になっているわけですから、今ヨーロッパが負担率が上がっていると、こういう議論は今ここでは通用しない議論だろうと、こういうふうに私は思いますよ。どうでしょうかね。
  76. 竹下登

    国務大臣竹下登君) あの臨調答申の思想は、桑名さんおっしゃるとおりであると思います。だから、その後上がったことに対して私がよくそれを指摘しますときに、ヨーロッパの諸君がそういうことをよくおっしゃっておるというつもりで申し上げましたが、臨調答申の精神は桑名さんのおっしゃるとおりだというふうに私も考えます。
  77. 桑名義治

    桑名義治君 それを大々的に、十二分に尊重するのが政府の意向だと、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  78. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 尊重すべきものであるという考え方であります。
  79. 桑名義治

    桑名義治君 総理もこの考え方にお変わりありませんね。
  80. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私が臨調路線を一貫して追求すると申し上げたのも同じ意味からであります。
  81. 桑名義治

    桑名義治君 そこで、総理の主張されているいわゆる税制改革と国民が要望している減税——最近は総理は減税の問題も大きく声を出されているようでございますけれども、その一方で、財源ということで政府の思惑が見え隠れするのが、大型間接税の導入とマル優等の低率課税が考えられているようでございます。このような増税と減税の方向が錯綜して報道されているものですから、国民はこの先の負担がどうなるだろうかという不安をむしろ私は持っているんではなかろうかと、こう思います。所得減税を先行すると、こういうふうに総理は声を大にして発言をされているわけでございますが、その場合は財源としてのマル優の低率課税を並行させるということはありませんね。
  82. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 九月二十日に政府税調に諮問をいたしましたが、その趣旨は、まず減税案を考えなさいと。なぜかと申しますと、それは三十五年前に今のアメリカから来たシャウプ氏のシャウプ税制が施行されてから三十五年もたって、随分ひずみやゆがみや、あるいは重税感や矛盾も出てきておる。したがって、これを公正な税制、公平な税制、簡素な税制、そして住民が選択する、民間の活力に資する、こういう目的のすらっとした税制に直してもらいたいと。これが目的で、そして諮問しまして、そういう意味からまず減税ということで、まず所得税、重税感があります。法人税、重税感もあります。あるいは状況によっては相続税等の問題もあります。商店街の問題なんか考えますと、農村と比べてもう一代で終わってしまうという、そういう議論もございます。そういうような意味において、まず減税案を考えなさいと、そしてしかる後に今度は包括的一体として、その財源問題も考慮して一括して答申してほしい、時期は来年の秋であると、そういうふうにお願いしておるわけであります。
  83. 桑名義治

    桑名義治君 十一月一日におたくの村山調査会長ですが、増減税の実施時期を合わせるべきだという提言がなされているわけでございますが、この村山調査会のいわゆる提言に対しては束縛されませんね。
  84. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 政府税調に対する諮問が、まず減税、それからそれに伴う財政措置、要するにそういう資源をどうするかという問題、あわせて答申してもらいたい、そういうふうに言っておりますのは、やはり出と入りのバランスを考えないといけないと、そういう考えから申し上げておるのであります。
  85. 桑名義治

    桑名義治君 だから、総理は減税というものを先行さしていらっしゃるわけですね。村山調査会は、これは出と入りというものをあわせなきゃいけないと、こういうふうに言われているわけですが、総理が減税の方を先行させるというふうにあちこちで御発言なさっているわけでございますので、だからその点を強調しているわけでございます。
  86. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 案を先行させる、減税案をまず出しなさいと、そして国民の皆さんで大いに議論して、これがいい、これが悪い、こっちが間違っている、こっちをこういうふうに直せと、そういうふうに国民の皆さんにいろいろ議論していただく。しかる後に、じゃその財源措置をどうするか、これもまたいろいろ案が出てくるでしょう。これはいけない、これはいい、これはこうしようと、そういうところでおさまったところでこれは包括的一体としてそういう税制の改正というものが行われると、そういうふうに考えております。
  87. 桑名義治

    桑名義治君 世間一般あるいは新聞紙上でも全部減税が先だ、その後に財源をどうするかというのは考えればいいと、こういう発言が全部載っかっているわけです。  そうすると、今までの総理発言ときょうの発言は全くギャップがあるわけですが、どうでしょうか。
  88. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は一貫して今のように申し上げているので、それで九月二十日の政府税調に対する諮問もそういう構成でできておるわけです。まず減税案を出しなさい、国民の皆さんがこれを見ていいか悪いかまず判断をする、それが先行だと、そういう意味では案を先に出すということで言っているわけです。
  89. 桑名義治

    桑名義治君 じゃ、もう一遍私自身が確認をするわけでございますけれども、減税がまず先にあってその次に入りの方を考えるということではなくて、案だけを先に出しなさいと、そして入りの案をその次に出しなさいと、こういうことですね。
  90. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 大体そういう考えです。
  91. 桑名義治

    桑名義治君 これは大変に後退したような印象を国民の皆様方は私は受けると思います。新聞の論調も全部そうですよ。六十一年度には所得税の減税はあるものだと、こういう認識に恐らく皆さん立っていらっしゃるんじゃないかと思います。ところがそうではなかったわけでございまして、そのことだけでも私ははっきりしたことは、きょうは意味があったのじゃなかろうかと、こういうふうに思うわけでございます。  次に、いわゆる利子配当課税についてお尋ねをしておきたいと思います。  グリーンカード制については、六十年度の税制改正によりましてこれが廃止になりました。それから、六十一年の一月から新たに本人のいわゆる確認制度による非課税貯蓄の限度額管理の適正化措置を導入することになりました。それがまた実施に移されていない前に非課税貯蓄制度の停止が言われるということは、第二のグリーンカード問題になりかねないというようなおそれがあるわけでございますが、このいわゆる本人確認制度については、政府税調のいわゆる低率分離課税論を制して、そして与党自民党が決定したものであったわけでございますが、総理としてはこの自民党幹事長なりの発言に対してどのような見解を持っておられるのか、ここでお聞きをしておきたいと思います。
  92. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは先ほど申し上げましたように、税調に対して今諮問しておりまして、その税調の答申というものを見守っておると、こういう段階でございます。
  93. 桑名義治

    桑名義治君 さきに私が申し上げたとおりになってしまったわけでございますが、何でも税調でございまして、だからこれを私が申し上げているのは、幹事長発言がこういうふうな形で出ているものですから、この問題についての総理自身としてのお考えはどうなんですかということをお聞きしているわけです。
  94. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 幹事長がそういう言明をされたかどうか。また、仮にそういうことを言われたとしても、どういう前後の脈絡で言われたか、そういう点私またよく調査しておりませんが、政府といたしましては、大蔵大臣とも相談をいたしまして今のようなコースで諮問をし、答申をいただいて実行していきたい、そう考えておる次第であります。
  95. 桑名義治

    桑名義治君 大蔵大臣、どうでしょうか。
  96. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 国会でここのところ三年、物価の論議から税制の論議へと、これは私は大変いいことだと思っております。したがって、各党また各人それぞれいろんな御意見をお吐きになる、それらを集約しながら税制調査会等の思料の糧とするという意味で、私は自由な発言があって結構だというふうに思っております。ただ、今御指摘なさいましたとおり、政府・与党が選択したものは限度管理、これが一月から実施される、それは言ってみれば朝令暮改ではないか、こんな御趣旨もあっての御質問だと思いますが、私もこれ分析しますと、限度管理そのものは仮に低率分離課税というようなものがあり得たとしても相矛盾する制度とは必ずしも言えないではなかろうかな、こういうふうに考えますが、いずれにせよ、そんないろんな議論を集約して結論を税調で出していただく、こういう今過程にある。だから、いろんな議論はあっていいというふうにお願いをしておるところでございます。
  97. 桑名義治

    桑名義治君 時間が余りございませんので次に進みたいと思いますが、所得税の段階は十五段階まで現在あるわけでございますが、アメリカは今回の原案の中では三段階ということで発表がなされているわけでございます。この所得税の段階でございますけれども、自民党のある派閥の中では、いわゆる五五%の頭で六段階、あるいは学者グループの中では六〇%の頭で刻みはやっぱり六段階、その他幾らかの団体でこの刻みについては話が出ているわけでございますが、政府としては大体何段階ぐらいが一番適当なのか、今までそういうふうにいろいろな提言をしているところを見ますと、六から十が大体そろっているような気がするわけでございます。それから、頭の限度額でございますが、これは五〇から六〇、ここら辺で大体統一されているのではなかろうか、こういうふうに思うわけでございますが、政府としてはどういうふうにお考えですか。
  98. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 現行の所得税制は最低税率一〇・五%から最高税率七〇%、そして十五段階、こういうことでございます。これに対しまして、言ってみれば刻みが多過ぎるじゃないか、そしてまた、今五〇とか六〇とかおっしゃいました限界負担能力というような問題等がかなりかまびすしく議論されておるということは事実でございます。だから、議論の方向というものが刻みを可能な殴り少なくしろという方向に進んでおるということは私もそれなりに認めますが、さあ何段階がいいか、こうなりますと、アメリカは割合に、国会へ出して修正される、日本はそれ以前に根回し——根回しじゃございません、いろいろ相談したりしながら修正を可能な限り事前の話し合いによって避けるという慎重な対応の仕方でこれから参らなければなりません。したがって、何段階が、こう聞かれた場合に、それにどんぴしゃりお答えするまでのまだ心の準備もできていないと言わざるを得ません。
  99. 桑名義治

    桑名義治君 だからいろいろ申し上げた。かまびすしくいろいろ論議されているけれども、大体もう落ちついているのが六から十ぐらいの間だ。頭は、最高限度額は大体五〇から六〇ぐらいだ。政府は大体どのくらいの幅でお考えですか。この幅ぐらいいいでしょう。
  100. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 桑名さんのおっしゃっておるような感じがいい感じかなという感想を述べるのが限界がなという感じでございます。何分、本当にシャウプ以来の大改革、審議をお願いしておるものでございますから、桑名さんのおっしゃっているような議論が非常にあちこちでよくあるなということは私も感じておりますが、なかなかやっぱり、これと為替レートも一緒でございますけれども、幅を申し上げるという状況にはちょっと日が早いという感じがします。
  101. 桑名義治

    桑名義治君 そうすると、私の申し上げた大体六から十が適当かなとはお思いになるんですね。
  102. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 桑名さんがそう思っていらっしゃるということは私にも理解できるな、こういう程度でございます。
  103. 桑名義治

    桑名義治君 聞けば聞くほどまたこれもわからなくなるばかりでございます。しかし、いずれにいたしましても人任せじゃいけないと思うんです。政府としては政府としての考え方、これはやっぱりきちっとしておかなきゃいけないと思うのです。ただもう税調に諮問しているからそのとおりやるのだなんといったら、政府の意見というのは全然ない。だから、冒頭に申し上げましたように、この問題どんなに議論せい、せいと言われてもできないわけです。皆様方、何にもおっしゃらない。総理大蔵大臣は二人とも何にもおっしゃらない。これじゃ議論のしようがない。これはやっぱりもう少し態度を変えてもらわなきゃいけないと思うのです。  次に、法人税の問題については、これは大体諸外国と比較して高いと思いますか、安いと思いますか、あるいは適当だと思いますか。
  104. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 御承知のように、日本の法人税率は国税で申しますと四三・三、そのほか法人住民税等ございまして、それをいろいろ差し繰りして計算いたしますと五二・九二という数字がございます。これは私ども実効税率と申してございまして、この数字をとります限り私どもとしては安い方ではない、しかし相応の水準ではないかという気がいたしておるわけでございます。しかし、この点につきましては、実効税率という計算の方式、そのほか実質税負担率というとり方もございますといういろいろな議論があるわけでございます。こうした議論を踏まえまして、現在それこそ税制調査会で御議論を願っているところでございます。
  105. 桑名義治

    桑名義治君 実効税率はイギリスが四〇、アメリカが五一・一八、西ドイツが五六・五二、フランスが五〇、日本が五二・九二です。総理は先ほどから、法人税の問題については日本は高いと、こういうふうに仰せになられましたけれども大蔵省考え方は安くもない、高くもない、ちょうどいいぐらいじゃなかろうかというような意味の御発言でございますが、総理どうでございましょうか。
  106. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私はレーガン税制が頭にありまして、レーガン税制が今度はたしか三五%に引き下げる、ただしいろいろな控除やなんかを撤去いたしますから、実質的にはどの程度になるか、大体法人税の方が重くなって所得税が軽くなる、それが今度のレーガン税制のバランスのようでありますが、しかし今のように三五%という方向に持っていくという面から見ると、日本が五二・九ですか、それはやや高いような感じがいたします。概して言えば、やっぱり高い方に入るんじゃないでしょうか、世界的に見まして。
  107. 桑名義治

    桑名義治君 そうすると、総理はこの法人税も大きく軽減をする御意向だと、何%ということは聞きません、御意向だと、これだけ確認しておきたいと思います。
  108. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 所得税も法人税も、また状況によっては相続税も安く減税してもらいたい、そういうふうに希望を持っているということは申し上げたとおりであります。
  109. 桑名義治

    桑名義治君 次は、財投問題について少しお聞きをしておきたいと思います。  日本経済全体の国際化あるいは自由化というものが急速に進む中で、いわゆる政府系金融機関、この存在意義、さらには財政投融資制度自体の抜本的見直しが私は今必要な時期に来ているんではないか、こういうふうに思っているわけでございますが、そこで五十九年度における財政投融資全体及び政府系金融機関の不用額の計上状況というものをお知らせ願いたいと思います。
  110. 窪田弘

    政府委員(窪田弘君) 財投の不用と申しますか、いわゆる計画に対する未達額は五十九年度約一兆三千億円でございました。その大半は日本輸出入銀行約四千七百億円と中小公庫約三千百億円でございまして、主な理由はプラント輸出の不振でございますとか債務累積問題によるプロジェクトのおくれあるいは一般的な金融緩和を背景にした借入需要の停滞等でございますが、    〔委員長退席、理事桧垣徳太郎君着席〕 これは既に六十年度の財投を編成しますときに約一兆円減らしまして、六十年度の財投の財源にいたしております。また、六十年度はこういう実態を見込みまして、銀行、公庫等の金融機関は五・八%マイナスにしております。輸出入銀行の計画は三角二四%というふうに減らしておりますので、六十年度はこのような不用は出ないものと考えております。
  111. 桑名義治

    桑名義治君 僕は実態を示してもらいたいということで、そのほかのことをお聞きしてないのですが、いずれにしましても約一兆三千億円に急増をしているわけです、不用額が。その中で五十八年度に比べますと約一兆円増加している。これは非常に私は大きな問題だと、こういうふうに思います。財政投融資全体の不用額の一兆三千四百六十四億円の八〇%、こういう状況になっている。その根本的な原因はどういうふうなところにあるというふうに大蔵大臣はお考えになっておられますか。
  112. 竹下登

    国務大臣竹下登君) やっぱりこの輸出入銀行と中小公庫と、こういうことになるわけでございますが、輸出入銀行の場合はやはりプラント輸出等の不振とでも申しましょうか、そうしたものが基本ではなかったのか。それから中小公庫は、全体に金融が緩んでおりますのでいわば民間金融等で事足りたという表現は適切でないかもしれませんが、そのようなもので支えられたからではなかろうかというふうに考えます。  しかし、いずれにせよ、やっぱり弾力条項がございますので、時にプラスすることも今日までもありますが、余りこの不用額が余計出ますと、これはみっともいいことじゃございませんので、予算編成に際しましては、財投計画についてもやはり前年度の実績等を勘案しながら十分精査してかからなければならぬ課題だと思っております。
  113. 桑名義治

    桑名義治君 プラント輸出が不振だったから一兆円のいわゆる不用額が生まれたなんて、そんなのは僕は理由にならないと思うんです。もう少し根本的なところに私は問題があると思います。その根本的な問題の一つには、いわゆる財投計画の編成について根本的な欠陥があったのではないかと、こういうふうに見ざるを得ないわけでございます。  財投資金というのは国民の重要なこれは財産でございます。とするならば、政府はこれを最も有効に運用する必要が私は当然あると思うんです。ところが、こういうような状況になっておるということになれば、我々はどうしてもこれは納得いかない。郵便貯金やあるいは年金等、それは国民の財産です。だから、これを本当に有効的に運用をしていかなければならない、こう思うわけでございますが、財投計画の編成に関して国民の意向が反映されるような制度に私は改革する必要もあるのではなかろうかと思うんですが、この点どういうふうにお考えですか。
  114. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 御指摘は、私はもっともだというふうに考えます。そのときどきのニーズの変化に応じて財投計画というものはまさにおっしゃったように、郵便貯金なり年金なりのお金でございますだけに、国民のニーズに適応するような方向でその計画というものは立てていかなければならぬ。その際、いろいろ御指摘があっておりますこれだけの不用額が出たということは、やっぱり私どもとしてまず第一に念頭に置かなければならぬ課題だという問題意識は持っております。
  115. 桑名義治

    桑名義治君 不用額の左増ということをいろいろ考えてみますと、個々吾いろいろな問題があるかもしれません。しかし、金融の自由化あるいは国際化、それから資金の余剰、こういった時代になってきたわけです。そうなってくれば、今までのようないわゆる公的金融制度の古い体質から大きく脱却をしていかなければならぬ、そういうふうにも思うわけでございますが、この点はどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  116. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは当然のこととして、私どもも今後国際化、自由化してまいりますと、言ってみればいわゆる郵便局の果たす役割はどういうものかとかあるいは銀行、証券等々の垣根問題とか、いろんな問題が総合的に起きてまいりますので、その中でそれぞれ位置づけを本気にもう一遍考え直さなければいかぬ時期に来ているなどいう問題意識を十分に持って対応すべきであると考えております。
  117. 桑名義治

    桑名義治君 そうしますと、今までの古い形式の中では当然現在のような金融事情を乗り切ることはできない、こういう認識をされておるわけですね。
  118. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今の政府関係金融機関が将来の国際化、自由化の中でも、今持っておる役割を持ち続けなければいかぬ点も、それはあろうかと思っております。しかし、総合的に考えてみますと、やはり今度国際化、自由化というのでさま変わりになるわけでございますから、十分検討して、それぞれのあるべき姿というものは確立していかなければならぬという問題意識は持っております。
  119. 桑名義治

    桑名義治君 財政面から見ましても、この政府金融機関の逆さやによるいわゆる赤字穴埋めのために一般会計の方から補給金繰入額が五十九年度は四千八百八十億円、六十年度は五千五百三十億円、こういうふうに拡大してきておるわけです。今後ともこういう金融情勢から考え合わせますと、ますます拡大をしていくのではなかろうか、こういうような懸念があるわけでございますが、これはまさに財政再建と逆行している、こう言っても私は言い過ぎではないと思うんですが、一般会計の支出配分もゆがめしめるものであろう、こういう認識を持っておるわけですが、大蔵大臣、どうでしょうか。
  120. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは、利子補給というものはいっときは確かにささやかな金額でございますが、これが長期にわたって大きな硬直要因になっておることも事実でありますので、これらは厳正にやっぱり対応していかなければならぬ。おっしゃいますように、あくまでも民間金融機関の補完的な立場である、こういうことに立脚しなければならぬ。いま一つ他の民間金融機関等を誘導していくという効果もそれはないわけじゃございませんが、その辺の峻別はきちんとしていかなければならぬというふうに考えておりますから、基本認識は、この問題については桑名さんと私と余り違わないなと、こんな印象でございます。
  121. 桑名義治

    桑名義治君 私の認識とそう変わりはないというふうならば、いわゆる民間の金融機関の補完機能、これが一番重要な部面でございますけれども、その領域が大きな変化をしておるわけですね、要するに。そうしますと、その融資対象を厳しく限定する、あるいはまた規模をできるだけ整理縮小する、こういうふうに根本的に見直す必要があると思いますけれども、その点どうでしょうか。
  122. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 原則的に私も同じ考え方で対応したいと思っております。
  123. 桑名義治

    桑名義治君 そこで、現在の金融情勢のもとではその貸出金利を一層引き下げる必要がまた生まれてくる、こう思います。その際に、当然政府資金のみに依存した資金調達の現今であれば、引き下げるにはおのずから限界があるのじゃなかろうか、こう思うんです。国民にとりましては、現段階では政策金融はまだまだ現実に必要だろうと思います。しかし、そうなれば一般財源による出資金や利子の補給を出すことがまたまた当然求められてくる、こう思うんです。そういった立場から考えますと、政策金融機関の整理統合を行うとともに、真に必要な政策金融には財政支出による援助を行う選択も同時にやっていかなきゃいけない、こういうふうに思うわけでございますが、この点どうでしょうか。
  124. 竹下登

    国務大臣竹下登君) したがいまして、私どもとしても真に必要な、一番いい例は住宅金融公庫でございましょう、そうしたものに対する利子補給というものはやっぱり政策金融というものの実をきちんと上げるためにも必要であろう。しかし、それが大きな硬直要因になるということに対しては非常な選別を峻厳にやっていかなければならぬというふうには考えております。
  125. 桑名義治

    桑名義治君 十月十一日から財投の預託金利が下げられました。七・一%から六・八%になったわけでございますが、この問題は従来は預金金利の変更と連動して預託金利が決められていたわけですが、今回これが切り離されちゃった。預託金利の今後の設定ルール、これはどういうふうになるんですか。
  126. 窪田弘

    政府委員(窪田弘君) 御指摘のように、今までは預金金利が下がったときに長期金利の全体等を総合勘案しましてやっておりましたが、今回は預金金利が下がりませんけれども、長期プライムレートが前に決めました八・二から七・二まで約一ポイント下がりましたので、政府金融機関の収支その他総合勘案いたしまして、従来の例にはございませんが、関係省と相談をして、とりあえず〇・三下げるという新例を開いていただいたわけでございますが、これがルールになったというわけではございませんで、ルールについてはこれから関係省とよく相談をしてまいりたい、こういうことでございます。
  127. 桑名義治

    桑名義治君 では、今から先のルールというものはまだ確定していないということですね。
  128. 窪田弘

    政府委員(窪田弘君) 金融情勢、金利情勢が非常に変動している段階でございますので、今後各省と相談をしてやってまいりたい、こういうことでございます。
  129. 桑名義治

    桑名義治君 この問題は早急にやっていかなきゃならない問題だと思うんです。ただ単に関係省庁と相談をしたからということじゃ間に合わないような状況に追い込まれることは私は必至だろうと思います。今の金融の自由化というのは非常なスピードで走っていることは皆さんもよく御存じのはずじゃないですか。私よりも知っているはずなんです。もう今は長期金利から今度は小口、短期の方へどんどん自由化が進んでいくわけでございますから、そうなってくれば、これは早急にこのルールを決めておかなきゃならぬ、こう思うわけでございますが、大蔵大臣どうでしょうか。
  130. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 大口から小口と、そうなりますと、まさに避けて通れない問題が、郵貯という問題が出てくるわけであります。したがって、先般私は、別に新しいルールでやったわけじゃございませんけれども、〇・三%話し合いで下げたというのも、これは今後にわたる一つの預託金利のあり方を関係省が勉強する大きな機会になったなというふうにとらえております。したがってこの問題、関係省と詰めると同時に、私なりに今いろいろな構想を描いておりますが、銀行対郵便局とか、そんなような感じにならない形で、どこかであるべき金利政策のあり方という議論もしてもらわなければいかぬなというようなことも折折考えておる最中でございます。
  131. 桑名義治

    桑名義治君 当然、それと同時に原資のあり方も考えていかなきゃならぬわけでございます。調達面におきましては、これは当然改革を進める必要があろうと思いますけれども、郵貯それから年金、そういったそれぞれの制度の異なった資金を統一的に運用をするというところに大蔵省としては意義があるんだということでございますけれども、郵政省あるいは厚生省それから大蔵省と、この三省の考え方を述べていただきたいと思います。
  132. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 従来まで主張しておりますのは、いわゆる国の制度、信用によって集められた資金は公共性を持っておるので運用の一元化が必要だ、こういうことを申し上げております。
  133. 左藤恵

    国務大臣左藤恵君) 金利の自由化のもとにおきましては、預金者に対しまして市場実勢を反映して本来受け得べかりし利子を提供していくということが必要であることは申すまでもございません。そういうことで、郵便貯金におきましても利用者の立場というものを基本に据えまして、そして市場実勢を反映した金利を提供していくことが必要である、このように考えております。金利自由化に向けて郵便貯金が市場実勢を十分反映した金利を預金者に提供していくことに当たりましては、運用面で市場実勢が反映される必要があるわけでありますが、現在、郵便貯金の資金の運用は資金運用部に全額預託という非常に硬直的な制度になっておりまして、先生御指摘のような金利自由化ということに対してそれで十分かということにつきましては、私は大変問題があるんじゃないかと、このように考えております。こうしたことから、この市場金利による資金運用制度を創設して、そして郵便貯金の資金を公共債に運用できるようなことを六十一年度予算にも要求いたしましてということで、今大蔵省と話し合っておる段階と、こういうことでございます。
  134. 増岡博之

    国務大臣(増岡博之君) 年金の積立金は、将来の高齢化社会に備えて、その負担が過重にならないように有利に運用することが原則だろうというふうに思っております。そのためにはいろんなことがございますけれども、少なくとも現在の制度では、各種の共済年金は原則自主運用になっておりますけれども、厚生年金の場合にはなっておらないということもございます。それから、先ほど申し上げましたような高利運用を図っていかなければ将来保険料を幾分か上げなければならぬという場合があると思いますけれども、その際の説明がなかなかつきにくいという問題もあろうかと思います。  したがいまして、六十一年度の概算要求におきましては、新規分の積立金及び満期になりました償還金の二分の一を自主運用させていただきたい、高利運用の道を開いてもらいたいという要求を提出いたしておあところでございます。
  135. 桑名義治

    桑名義治君 いろいろ年金の問題については、今後高齢化がどんどん進んでいく中で、これは当然一部自主運用をさしてもらいたいという厚生省の御意見、あるいは郵便貯金の金利の自由化という、とれに対応するためにはどうしても一部やはり自主運用が必要であると、こう大臣がお答えになっていらっしゃるわけですが、大蔵大臣だけは統一的運用と、こういうお言葉でございますが、どうでしょうか。    〔理事桧垣徳太郎君退席、委員長着席〕
  136. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 国の制度、信用によって集められたものは一元運用が好ましいと、これは臨調答申にもそうございまして、従来ともそのことを主張し続けてきた。ただし、今両大臣からお答えがありましたように、六十一年度予算の概算要求の際、この問題が要求として出ておるわけでありますから、年末にかけて詰めなければならぬ問題だなという問題意識は十分持っております。  ただ、私なりに感じますことは、それ以上のいわば国際化、自由化の中で問題として浮かび上がってきておるから、ただその局面だけで議論するのが妥当かどうかと、こういうことも折々頭の中でいろんな絵を描いてみておるというのが現状でございます。
  137. 桑名義治

    桑名義治君 大蔵大臣、今金融情勢というものが大きく変化している変わり目に来ていることは事実です。これは後戻りはしません。そうであるとするならば、こういう硬直した統一的運用というものは必ず私は破綻が来ると思います。これは遅かれ早かれ必ずそういう時期が来るわけですから、ここらで本気になってこの問題は取り組んでおかなければ重大問題になると、こういうふうに思います。総理、どうでございましょうか。
  138. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 金利の自由化という趨勢は、これは進めていく必要があると思います。  それから、財投が一部硬直化しているということも否定できないところで、これは弾力化する必要があると思います。しかし、また一面、国家の信用というものを背景にして集められたお金というものを国がある程度優先して利用さしていただくという点も理のあるところであります。そういういろいろな点も考えてみまして、六十一年度予算編成の過程において各省庁でよく協議して、そうして適当な妥協点を見出してもらうように情勢によっては党とも相談をする、そういうことで解決していきたいと思っております。
  139. 桑名義治

    桑名義治君 郵貯、年金が統一的に運用されている、そういったことで六十年度だけでも五兆円の国債を購入することになっているわけです。ことしの七月には資金運用部は二兆一千八百二億円の十年物国債を引き受けている、この利率はどういうふうになっていますか。
  140. 窪田弘

    政府委員(窪田弘君) 七月に引き受けました額面二兆一千八百二億円の応募者利回りは六・六二四%でございます。
  141. 桑名義治

    桑名義治君 そうすると、これは完全に逆ざやが出ているわけです。それと同時に、大蔵省が発行している国債を大蔵省が運用をしているいわゆる財投資金で充当する、これも私はちょっとおかしなものだと、こういうふうにも思うわけでございますが、いずれにしましても逆ざやが出ているということは結局損をしているということですから、国民に損をさしているということでございます。このためにも適正な運用をしていかなければならぬわけですが、大蔵大臣、この問題についてはどういうようにお考えになられますか。
  142. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 財投はいってみれば大蔵省が運用しておるもので大蔵省が発行しておるものを買う。私がいつもこの点感じますのは、いわゆる民間金融を国債の増発が圧迫してはならぬ、その辺の限界というものを絶えず考えて、そこでことしの場合は先ほどお話ししたような引き受け類とでも申しましょうか、それを決めたわけでございます。したがって、やっぱりその都度都度の民間の能力、そういうものを見定めながらそれを非常に調整し得る立場というものが財投で引き受ける場合のあり方ではないかなというふうに思っております。
  143. 桑名義治

    桑名義治君 運用についてもう一遍お尋ねしますけれども、生命保険やらあるいは信託銀行に委託をして運用をした方が七年間で利益差が二兆円以上に達するという結果が出ているそうでございます。これは厚生省の試算でございますが、そういうことで厚生大臣、大蔵大臣の御答弁を願いたいと思います。
  144. 増岡博之

    国務大臣(増岡博之君) 先ほど申し上げました六十一年度におきまして要求しております別建て運用案を実施した場合には、例えばその利回りは、現在厚生年金基金が行っております金利との利率の差は一・五%。なお、運用額が先ほど申しました要求どおり四兆円ずつ増加すると仮定いたしますと、一年間で六百億円、七年間の累積額では約二兆三千億円と試算いたしております。
  145. 窪田弘

    政府委員(窪田弘君) 数字は御指摘のとおりでございますが、国が集めました年金資金は、給付は国が責任を持っているわけでございますから、集まりました積立金もやはり国が運用をする。そのかわり、例えば信託や生保のように外債に出したり株を買ったりということはできないわけでございまして、利回りは当然低くなりますが、そのかわり為替で損をするとか株式が下落するとか、そういうことがないように手がたくやった結果がこういうことで、これは公的制度である以上、ある程度やむを得ないものだと考えております。
  146. 桑名義治

    桑名義治君 大蔵大臣、御意見どうですか。
  147. 竹下登

    国務大臣竹下登君) よく最近、年金の議論がありますと、基礎年金はいいとして、二階、三階は全部民間の年金、信託等でやった方がいいじゃないかと、自由化すればするほどそういう議論がたくさん出てまいりますが、最低限のものについての国の責任という立場から言えば、やっぱりリスキーな投資はできない。そうなるとおのずから限界が生ずるということもやむを得ないではないかなというふうに考えております。
  148. 桑名義治

    桑名義治君 民間の金融機関だって、これを生命保険や信託銀行に預けることは余りそうリスキーだとは思えませんね。株を買うとかなんとかいうような、先物取引に手を出すとかいうならこれはリスキーですけれども、そこら辺の弾力性というものがないと、今から先の財投の運用についてはこれは重大な問題が必ず生まれできますよ。だから、いずれにしましても、日本経済が急速に大変化を今来しているわけです。そういった中で国民の貴重な財産、いわゆる郵貯、年金をこの財政投融資という制度で不合理に運営していくことは、これは許されないことだと思います。今こそこういった意味におきまして、抜本的にあらゆる面についてこの財政投融資制度の根本的な見直しをしていかなきゃならない、こう思うわけでございますが、それが今だと、こういうふうに思います。総理は口を開けば日本の戦後の政治の大決算をやるんだと、そうゆうふうにおっしゃっているわけでございますが、これを一本の柱に私は入れるべきだと思いますが、どうでしょうか。
  149. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は大決算と言わないで総決算と言っております。  桑名さんの御議論を拝聴いたしまして、一つの有力な立場を御表明になっている、なかなか傾聴すべき面がかなりあるように私も思っております。ただしかし、これは国家財政に関する大変革を実は意味することでありまして、大蔵大臣が御答弁申し上げましたように国の信用で得られたお金で、そういう面につきましては安全確実と言われているのが保証として残っていなきゃならぬ、そういうような面も一面において考えなければならぬと思うのでございます。しかし財投というものがややもすれば硬直化して弾力性、機動性を失ってきて、時代の大きなスピードに取り残されつつあるという危険性もなきにしもあらずであります。きょうの御議論をよく承りましたが、いずれ六十一年度予算編成に際しまして、各省大臣同士でよく相談もし党とも相談をして適切な解決を見。出したいと思っております。
  150. 桑名義治

    桑名義治君 次に、防衛問題を少しお尋ねしておきたいと思います。  総理は先日の衆議院の予算委員会で、我が党の議員の質問に対し、GNPの一%枠について歴代の内閣がとってきた状況が現在とは違うがごとき発言をなされ、状況が変わってきた、こういうふうに言われているわけでございますが、鈴木内閣当時、二年前と現在とは国際情勢、または我が国の周辺にどのような状況変化があったというふうに認識をされているのか、お伺いをしたいと思います。
  151. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 基本的枠組みは変わってないと思いますが、しかし部分的にはかなりの変化も出つつある、そういうように思います。
  152. 桑名義治

    桑名義治君 この我が国の周辺で具体的にはどういう変化があるというふうにお考えになっていらっしゃるんですか。
  153. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 一例を申し上げれば、北方領土に対するミグ23の増強であるとか、あるいはそのほか幾多の面、朝鮮半島における情勢についても若干の軍事的配置の変化もあったようでもありますし、そういう面で各地を見ますと、変化はやっぱり起きておると思うのであります。
  154. 桑名義治

    桑名義治君 今の総理の御答弁では大きな変化はない、こういうような御答弁に聞こえたわけでございますが、そういうふうに認識してよろしゅうございますか。
  155. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私が申し上げましたのは、基本的枠組みにおいては大きな変化はありませんと。
  156. 桑名義治

    桑名義治君 御答弁の中では、基本的な枠組みと同時に、具体的な変化も少ないような今御答弁でございましたよ。
  157. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今、例えば一例を申し上げましたような範囲内で変化は起きている、そういうことを申し上げておるのでございます。
  158. 桑名義治

    桑名義治君 そう大した変化じゃございませんね。そもそも自衛隊の存立の原点は、日本国家としての正当防衛権の行使のみに厳しく限定をしているわけでございます。これは専守防衛ということですね。  そこで、他国の日本への一方的侵略の意図を抑止し、万一侵攻があればこれを排除すること、それから日本にとっての日米安保条約を補完する、こう思うわけでございますが、この専守防衛策は、非核三原則とともに我が国が心ならずも極東におけるいわゆる米ソ戦に巻き込まれることがないためのいわゆる戦略であったはずでございますが、総理はこの点をどういうように認識されますか。
  159. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 我が国防衛は、憲法第九条を基本にいたしまして我が国防衛を目的に行うものであり、しかも現在の自衛隊の防衛力の整備というものは限定的小規模の侵略に対応し得る、独自に対応し得る能力をつくろう、そういう考え方を基本にして行われているものでございます。
  160. 桑名義治

    桑名義治君 防衛庁長官にお尋ねをします。  文春の三月号で、   まず相手国が長期にわたり準備をして侵略してくる場合。これに対抗できる軍事力をもとうとしても、それはとても無理である。財政的にも限界があるし、志願制の下では、隊員募集にも限りがある。   したがって我々のとりうる防衛構想は、相手国が現態勢で突然攻めてきたとき、つまり限定かつ小規模な侵略があったとき、それに充分対応できるだけの力をもたねばならないということだ。  こう述べられておられますが、これが我が国のいわゆる有事のシナリオについてと、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  161. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) 現在私たちが進めております防衛力整備は、平時の際におきましても最小限こういうものを持ちたいということが防衛計画大綱で定められておるわけでございます。そして私たちは我が国への侵攻があった場合には限定小規模のものに十分対処できるようにしていきたい、こういうことでございまして、その記述は自分が書いたものでございます。
  162. 桑名義治

    桑名義治君 そこで総理にお伺いをしたいわけでございますが、我が国の有事についてことしの二月の国会で、ここにも議事録がございますが、突然侵略される可能性は少ない、世界の重要な場所で重大な紛争が起き我が国に波及してくる、ある国が突如侵略してくると考えるのは重大な間違いだ、こう発言なさっておられます。  総理の有事に対する認識と加藤長官の有事に対する認識が違っているというふうに私は思うわけでございますが、このことはまことに重大なことであろうと思います。そもそも我が国防衛構想は有事に対するものであって、その有事に対する認識総理防衛庁長官と違うということは重大な問題であるというように思うわけですが、この点はどうでしょうか。
  163. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私が申し上げました答弁、今お読みになったのは少し舌足らずの点がございまして、情勢認識として、私個人は、ある日突然大兵力で突如上陸するというようなことは起こり得ないであろうと想像しておる。いろんな面で、方々じゅうで多発的にいろんな問題が、紛争が起きるとか、そういう前提条件がある程度あって、そして突然入ってくる。突然という意味はそういう意味で、ある前提条件が起こってそして突然入る、そういうような情勢を私は私個人として頭に描いておるわけでございます。
  164. 桑名義治

    桑名義治君 防衛庁長官の書かれた論文ですね、先ほど読み上げましたけれども、「まず相手国が長期にわたり準備をして侵略してくる場合。これに対抗できる」——「準備」云々と書いてあるわけですね。そうすると、総理の言われている事柄とは中身のニュアンスが随分違ってくるわけですな。これはどうでしょうか。
  165. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) その今御指摘の部分は、二つに分けてお考えいただきたいと思います。  一つ私たちが考えておりますのは防衛力整備の方針でございまして、私たちは限定かつ小規模のものに対処できるもの、そして平時においても警戒監視ができて、そしてそれが抑止力になるものを考えておるわけでございます。  一方、有事というものはどういうことがあるのかということは、理論的に言えば、米ソが戦う場合、それからそれぞれの地域で大がかりな紛争が発生して我が国に波及してくる場合、そして我が国単独がそれなりに攻撃をされる場合、理論的には幾つかあろうと思います。  そこで、その有事がどういう紛争が今起こり得るかという現状認識の問題につきましてはいろんな見方があって、現在では、どの可能性が多いかということについての御議論であろうかと思います。  それにつきまして、現在私たちは米ソが相戦うような状況にはないと思います。それぞれ対立してしるけれども大規模な紛争にはならないだろうと思っております。現在また我が国がある日突然緊急に侵略される可能性は理論的に私たちはあると囲っておりますけれども、しかし現在私たちの自衛隊は、有事のそういう限定的な小規模に対しても抑止力として働くだけしっかりいたしておると思っておりますので、私たちはそういうことをも抑止する効果を持つことによって、小規模限定的なものでもない、現在は余りそう突然、非常に蓋然性のあるものと考えておりませんが、それは我が国の自衛隊が小規模限定のものに対処し、なお抑止力として働く機能を備えようとし、そして国民の血税をいただいてその整備をし、そしてその機能を果たしているから、そういうことは現在ないで済んでいるというふうに御認識いただければ整理がつくのでないかなと、こう思っております。
  166. 桑名義治

    桑名義治君 そこで、米ソ紛争が極東に波及するとのいわゆる有事構想ですね。これは防衛計画の大綱の中でもそうですが、東西間の全面的軍事衝突またはこれを引き起こすおそれのある大規模な武力紛争が惹起する可能性は少ない、ほとんどないと、こういうふうに私自身は判断するわけでございますが、万一米ソ紛争が極東に波及するとしても、我が国は専守防衛という立場を国是とするならば、日本に侵攻のない限りは軍事的中立を維持すべきではないか、こういうふうにも思うわけでございます。  それで、専守防衛というのは、これは言葉をかえて言うならば軍事的中立てあろうと、こういうふうにも僕は解釈をしているわけですが、この点はどうでしょうか。
  167. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) 専守防衛についての今の御解釈は、理解といいますか、十分私はできていないところがあろうかと思いますが、ちょっとまた御議論をいただかなきゃいけない部分であろうと思います。  ただ、米ソが相戦って、そして我が国にそれが波及してきて、そして我が国防衛のために、自衛のために必要であったならば私たちはそれなりの対処をしなければなりませんが、米ソが戦っても我が国防衛という意味において侵略というものがなければ、私たちは自国の防衛という限界の中で考えていくわけであります。
  168. 桑名義治

    桑名義治君 なぜ私がこういうことを申し上げたかといいますと、米ソ紛争が極東に波及するとのシナリオでも、ソ連に日本侵攻の口実を与えるために、いわゆる三海峡を公海として他国艦艇の自由航行を認め、さらに在日米軍のソ連攻撃のための直接発進を許さないという事前協議制を設けているからでございます。この点についてはどういうふうに考えておられますか。
  169. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) ただいまの御質問の真意が十分に理解できたかどうかわかりませんが、今の御質問は、米ソに何らかの紛争、戦争状況が起きておって、我が国自身は攻撃されておらないけれども、その際に例えば三海峡封鎖をするというような事態に及べば、それがきっかけになって日本が侵略されるようなこともあるだろうと、こういうような御質問と受け取りましたが、再々申し上げておりますように、私どもは海峡の封鎖というような国際的な非常に重大な問題を起こす状況、そういったことを我が方が進んで措置するということは、我が国の生存のためにやむを得ないとき以外はそういうことは行われないことでございますので、今仰せられたような設定そのものは起こり得ないというように私ども考えております。
  170. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 和田君から関連質疑の申し出がありますので、これを許します。和田教美君。
  171. 和田教美

    和田教美君 二つばかり防衛問題についてお伺いしたいと思います。  総理は、先月の国連演説で核軍縮を訴えられて、米ソ両国指導者の責任は重いというふうに言われました。また我が国の武器輸出禁止政策を引き合いに出されまして、通常兵器の軍縮もまた重要であるというふうにおっしゃったわけです。まことに私もそのとおりだろうと思います。  ところが、現実に国内政策では、防衛費GNP一%枠突破の新防衛計画、これを決定されて、また武器輸出三原則の問題につきましても、五十八年十一月の対米武器技術供与の取り決めによりまして、事実上三原則に風穴をあけたというふうに我々は考えております。  そこで、国際舞台では大いに通常兵器を含めた軍縮を訴えられて、国内の政策では一転して防衛力増強、我々は軍拡と考えておりますけれども、この政策を進める。この食い違いを総理は矛盾とお考えにならないのか、それとも両立するとお考えになるのか、その点をまずお聞きしたいと思います。
  172. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 両立すると考えております。  国際法におきましても自衛権は認められ、また国連憲章におきましても自衛権は認められ、国の平和と独立を維持するという方途は国家の固有の権利として各国がみんなやっておるところでございます。日本も、自国の平和と独立を守るために必要最小限の防衛力を整備して国を守るという、世界の大多数の国がやっていることを我々も固有の権利としてやっておる。しかしそのやり方については、憲法の条章に従いまして個別的自衛権の範囲内で、今防衛庁長官が申されましたような政策に基づいて非常に節度のある防衛力を整備している、そういうやり方でやっておるので、これは国際法の原則及び国連憲章の原則にのっとった行為であります。  そういうような整備を行っていくについては、いろいろ客観情勢に応じて、必要最小限とか、ぎりぎりの節度がある防衛力というのは変化してくるものであります。そういう意味で防衛計画の大綱を充足するという目的を持ち、その防衛計画の大綱の中にも書かれておりまする科学技術の発達等の度合い等も考慮しつつ質的充足をしていくというその部面を考えまして、F4がF15にかわるとか、あるいはP2JがP3Cにかわるとか、そういうようにして質的充実を科学技術の変化等に応じてやっているわけであります。  そういう範囲内のことをやっておるのでございますから、私が国連演説で訴えていることは、我が国の基本防衛政策の線上に立ってその前提の上で申し上げているので、矛盾していることではないのであります。
  173. 和田教美

    和田教美君 しかし軍縮政策という問題との関連性は余り今おっしゃらなかったんですが、軍縮という以上は、まず日本が率先してレベルダウンをするという考え方が必要ではないですか。
  174. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 一応の先進国の世界の防衛力の整備の状況から見ると、日本は著しくまた劣位にあるわけです。御存じのように、GNP一%云々ということをずっと守ってまいりまして、そして日本をめぐる周囲の客観情勢というものは非常にかなり変化してきておるわけです。三木内閣の昭和五十一年から比べますれば、さっきは鈴木内閣のときの話だった、三木内閣のときから比べればSS20の展開であるとか、北方領土に対する軍事力の増強であるとか、カムラン湾の状況であるとか、朝鮮半島の推移であるとか、非常にさまざまな変化が起こっているし、あるいはノボロシスクとか、そのほかヘリ空母が日本に増派されてくる、アジアに増派されてくる。そういうような変化は実際は周囲には起きているわけであります。我々は、何も仮想敵国を持つものではありませんけれども、しかしそういう状況変化に目をつぶるということではないのであります。
  175. 和田教美

    和田教美君 この問題は改めてまた論じたいと思うんですが、もう一つの問題は外国為替相場円高ドル安の問題ですが、それが新しい中期防衛力整備計画に及ぼす影響という問題をお尋ねしたいと思うんです。  中期防衛力整備計画には高価な装備品の買い物計画がずらりと並んでおりますけれども、その多くはアメリカ製兵器のライセンス生産あるいは輸入でございます。ライセンス生産というのは、形は国産ということになっておりますけれども、その中心装備がアメリカからの輸入というケースも非常に多いと思います。また航空機用の燃料なども輸入でございます。  そこで、まずお尋ねしたいのは、これらの輸入品について中期計画作成時の円・ドルレートは一体一ドル何円で計算しているのか、それをまずお尋ねしたいと思います。
  176. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) お答えいたします。  中期計画におきます円・ドルのレートは六十年度の支出官レート、二百三十七円で計算をいたしております。
  177. 和田教美

    和田教美君 そうすると、大体今のレートと約三十円円高になっているという計算になりますが、そこでお尋ねしたいのは、現在の円高による名目上の円高差益というか、差金といいますか、これが全体として中期防衛力整備計画の中でどのくらいになっているのか。もちろん、私の言うのはドル建ての直接輸入だけではなくて、ライセンス生産だとか弾薬、燃料その他も全部含めて、あるいは商社からの輸入、そういうものも全部含めてですが、それは全部でどのくらいになっておりますか、お答え願いたいと思います。
  178. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 中期計画五カ年間でいわゆるドル払いになるものというものは、これは年度年度の予算でどの程度を国産し、どの程度を輸入するかということが決まってまいりますので、現状においてどの程度ドル払いになるかということは明確には申し上げられませんが、最近四、五年間の傾向というものを見ますと、全体としてドル払いといいますか、国産化率が上がってまいりますので、ドル払いは率からいえば減る傾向にございますが、この数年間、おおむね年間九億ドルから十億ドルドル払いということになりますので、ほぼその五倍というものが中期計画の五カ年間のドル払いの総額になろうかというふうに考えております。
  179. 和田教美

    和田教美君 円に直すとどのくらいですか。
  180. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) これもレートとの関係でございますが、五十億ドルということになりますと、ほぼ一兆円強ということになろうかと思います。
  181. 和田教美

    和田教美君 それぐらいが要するに円高によって浮いているということですか。
  182. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 今申し上げましたのは、一ドル二百円強の場合に五十億ドルというのが一兆円強ということでございますから、二百三十円が仮に二百二十円になれば十円、あるいは二百十円になれば二十円下がるということでございますので、多分現状では二百三十七円に対して三十円ほど下がっておりますから、そのまま計算するということになれば五十億ドルについて三十円ということでございますので千五百億ということになろうかと思います。
  183. 和田教美

    和田教美君 千五百億円、明瞭でなかったんですが、千五百億円要するにもうけておる、浮いておる、こういうことですか。
  184. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) あくまで仮定の計算でございますが、仮に五カ年間二百円そこそこのレートであれば、現在の計画に対して千五百億円程度のものが、仮に過去の五年間と同じぐらいのドル払いの金額で推移するとすれば、浮いてくるという格好になります。
  185. 和田教美

    和田教美君 大蔵大臣にお尋ねしたいんですが、千五百億円も浮いてくるということになれば、中期防衛力整備計画そのものの調達計画をやり直すという必要が出てくるんじゃないかと思うんですけれども、その辺はどうでしょう。特に財政再建とか、一銭一厘も節約しなきゃいかぬということですが、とにかく浮いているわけですから、その点はそのままほうっておくわけにいかないんじゃないかと思うんですが。
  186. 竹下登

    国務大臣竹下登君) この為替レートの問題は、為替レートの変化が輸入装備品の価格に影響を及ぼす、これは事実でございますが、それは年度年度の予算の名目ベースで影響があるわけでございます。  これに対して、計画の経費総額の限度十八兆四千億円は六十年度価格で実質表示したということでございますので、為替レートの変化が生じた場合でも計画の経費総額の限度変更を行う必要が生じておるというふうには言えない。いわばこの価格で決めるわけでございますが、それを今度は年度年度にやりまして、今度は名目一ですから名目ではなく、実質の六十年度価格で決めたという前提があるわけでございますから、それによって総枠を上げ下げする必要はないという問題でございます。
  187. 和田教美

    和田教美君 時間がありませんので、あしたまた引き続きやらしていただきます。
  188. 桑名義治

    桑名義治君 防衛問題につきましては、もう時間も大分経過しましたので、あしたの和田先生に譲っていきたいと思いますが、内需拡大策というものが打ち出され、それに伴って民活という問題がまた非常に大きくクローズアップされてきたわけでございます。  そういった立場から民活の問題を眺めてみましても、しょせんはこの民活というものは大都市圏に偏重をしてくる。地方都市にはこれが余り大きな期待が持てないということが考えられるわけでございますが、この点については自民党の内部でも大変な御議論があったようでございます。ある程度予算のいわゆる傾斜配分ということも今後考えなくてはならないのではないか、こういうふうにいわれているわけでございますが、この点についてはどういうふうにお考えになっておられますか。
  189. 金子一平

    国務大臣(金子一平君) 今御指摘の、中央に厚く地方に薄くなるんじゃないかという御心配の点につきましては、お話のございましたように、公共事業費の配分等については傾斜配分を、特にその地方の産業が発達していないとか、公共事業費に依存する程度が高いとかいう地域には傾斜配分をやって活力を発揮させようと、こういう計画を今進めておる状況でございます。
  190. 桑名義治

    桑名義治君 そこで具体的にちょっと、私は福岡県でございますので、福岡県の問題を少し具体的な例として挙げてみたいと思うんですが、例えば北九州市に米軍がもと管理しておりました山田弾薬庫の跡地というものがございます。この山田弾薬庫の跡地については三分割方式で一応話が決まっているわけでございますけれども、北九州市としては、この問題については計画がもう大蔵省にも提出をされているわけでございます。しかしながら、防衛庁と大蔵省の問題がまだまだ明確でない、利用計画が明確でないわけでございます。この利用計画が明確になれば、これは地元の問題としては大きく経済に寄与するのではなかろうか、こういうように思うわけでございますが、この問題はどういうふうになっておりますか。
  191. 千秋健

    政府委員(千秋健君) お答え申し上げます。  本年の八月に福岡防衛施設局の方から福岡財務支局の方に、利用計画を付しまして利用要望書を提出済みでございます。目下福岡財務支局の方で内容を御審議の上、所要のところと御調整していただいているものと承知しております。
  192. 桑名義治

    桑名義治君 大蔵省はどうですか。
  193. 中田一男

    政府委員(中田一男君) お答え申し上げます。  山田弾薬庫の跡地の利用につきましては、本年八月に北九州市から利用計画の案が出てまいりましたが、それと時を同じくして福岡防衛施設局からも福岡財務支局に対しまして利用要望書が提出されております。そこで、これを受けまして、現在福岡財務支局におきましてはいわゆる三分割答申に即した跡地全体の利用計画案策定のために検討を行ってきておりますが、そのためには、例えば跡地周辺の進入路の問題ですとか、あるいは跡地の中を流れております小熊野川の治水対策の問題ですとか、そういったものも解決してまいらなければいけませんので、いつまでにという時期を今ここで申し上げるところまで煮詰まっておりません。しかしながら、跡地の早期利用ということではすべての関係者の意見は一致しておりますので、その方々の御協力を得まして、できる限り早期に処理してまいりたいと考えております。
  194. 桑名義治

    桑名義治君 この問題は、できる限り早期にという言葉でございますけれども、これは大体いつまでにということを、一つの期限を区切りながら前進させていかないとなかなかこれは進まないものでございますので、その点をひとつ御配慮願いたい、こういうふうにも思います。  それから福岡県の大川市に花宗川というのがございますが、これは去る八月三十一日の十三号台風のときに満潮時と重なりまして大変な被害を受けているわけです。この川の改修事業につきまして、あるいは堤防の事業につきましては、もう長い年月をかけてこれが問題になっているわけでございます。そういった意味で、この花宗川の改修事業につきましては、少なくとも六十一年度の予算編成に当たっては、制度の改正を含め、第六次治水事業の五カ年計画に基づく事業を推進する必要がある、こういうふうに思っているわけでございますが、この点についてはどうでしょうか。
  195. 井上章平

    政府委員井上章平君) 花宗川の改修事業につきましては、先生御指摘のように、昭和四十三年から改修をいたしておりますが、現在までのところ進捗率は一六%強にとどまっておるわけでございます。八月の十三号台風で大きな被害を受けましたので、地元の方々の御要望も大変強うございますから、これらが来年度の予算の配分に当たりまして十分反映するように私どもできるだけ努力してまいりたいと思っております。
  196. 桑名義治

    桑名義治君 終わります。
  197. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 以上をもちまして桑名義治君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  198. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 福間知之君。
  199. 福間知之

    ○福間知之君 年初来、アメリカ日本との貿易摩擦問題に関しまして、通信機器にとかエレクトロニクス、あるいは医薬品、医療品、あるいは木材等の市場開放を中心にして、アメリカ側のややいら立ちとも思えるかさにかかった対日要求が繰り返し繰り返し行われてまいりました。その都度政府は一定の努力をやってまいったわけで、それについては多とするものがあるわけでございます。そして今、ことしももう十一月に入ったわけです。  この間、アメリカ議会におけるいろんな保護主義法案をめぐる動き、あるいは先般の総理の訪米によるトップ会談などなど、極めて重要な推移が見られるわけでありまして、ようやくG5によって八三年以来のドル高一つの区切りをつけるような歴史的な決断がなされて、今円高に推移をしているわけでございますけれども、問題は、先般来当委員会でも議論されているように、その程度貿易摩擦というものが基本的に解決に向かうのかどうかということにかなり疑問がありますので、総理に、そういう点を含めてこの一連の経過の判断と、そしてこれからの対処策について所見をまずお聞きをしたいと思います。
  200. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国民の皆様にいろいろ御協力をいただきましたが、アメリカ、EC側における日本に対する厳しい姿勢というものは変わっていない、そう考えております。  ただ、アメリカにおきましては、議会におけるいろいろな法案の審議の関係からこれが少し延ばされていると考えていいと思うのであります。我我といたしましては、この正月レーガン大統領と会いましていわゆるMOSS協議というものを始めて、いろいろな案件について両国の折衝をいたして相当数の解決を見たわけです。  一方、我々の方といたしましては、アクションプログラム以下の我が方としてやるべきことを懸命に今実行中でございます。アメリカ側におきましても、また非常に大きな保護主義が出てまいりまして、ホワイトハウスは懸命の力をもってこれを防圧し、これが台頭することを防いで努力してまいりました。我が国もこれに即応するようにアメリカのホワイトハウスに協力もし、保護主義と闘うという決意でさまざまな努力をしてきて、そして最近いわゆる五カ国蔵相会議によりまして非ドル通貨の価値を一斉に上げることに成功いたしまして、ここで今一息ついたという状況が出てまいりました。  しかし、物の世界におきましてはまだそれほど大きな変化が起こってきているわけではないのでありまして、依然としていわゆるJカーブというものが作用しまして、我々非ドル通貨が強くなればなるだけ当座の間は輸出がさらに伸びるという現象が起こりつつあります。そういう意味におきましても、今後とも我々は全力を尽くしましてこのバランスを回復するように努力していかなければならないと考えております。
  201. 福間知之

    ○福間知之君 今までアメリカの議会がかなり独善的というか一方的というか、貿易摩擦の主たる原因日本側にあるんだと、こういう主張なり雰囲気が非常に強いのでありますが、私はこれには納得できません。むしろ、諸要因を調べてみると、基本的には今日の日米間の貿易のあつれきの原因アメリカ側にこそあるというふうに私は思うんです。既にドル高・円安がその原因であるとか、あるいはその背景における膨大なアメリカの軍事費を含む財政赤字というものに原因が求められると言われてきて、これは一応共通した認識になっております。それ以外にも、アメリカの今日的な産業経済の実態面を見ればそういうことは言えると思うんですけれども、まず、ドル高と財政赤字というものについて総理はレーガンさんにどういうふうな主張を展開されたかをお聞きしたいと思うんです。
  202. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 一月二日のロサンゼルス会談以来、我々はアメリカドル高是正を強く要請してまいりました。またその背景には高い金利という問題がありますから、その高い金利の是正ということも要請してきたのでございます。アメリカ側も割合に行政当局は事情がよくわかってきておったようでありますが、議会側がかなり感情的な要素もありまして、特に選挙を控えた議員の皆さん方がかなりそういう感情的な姿勢を示してきましたが、最近はようやく冷静になってきたと思います。これには蔵相会議の結果も大きくあずかって力があると思いますが、おっしゃるように、アメリカ赤字の大きな原因に強いドルがあった、高いドルがあったということは我々も強く指摘して、福間さんと全く同感の次第であったわけであります。
  203. 福間知之

    ○福間知之君 最近の報道によると、アメリカの有力な学者が議会を中心にした保護主義のあらしに批判的な見解を表明しました。これは毎日新聞に掲載されたところで、御案内のとおりだと思うわけであります。私はアメリカの理性というものに大変敬意を表するわけでございますけれども、ちなみに、その議会周囲が言っている貿易赤字の主原因日本に求めていることが過ちであるというその証拠を私は簡単に棒グラフでこれだけ一応書いてみたんです。これは貿易収支赤字に占める各国のシェアです。(図表掲示)日本がこのピンク色でございますけれども、八一年から八四年まで、このゼロのラインから下がアメリカ赤字の全体なんですが、日本は八一年に占める赤字のウエートが四五・六%、約半分ぐらいだったですね、アメリカ赤字の。それが漸次逓減しまして、八四年、昨年度で二九・八%に減っているのです。全体額ではアメリカ赤字はふえているわけですから、我が方の、赤字も絶対額はふえてますが、これはやむを得ないことでございます、赤字に占めるシェアはこのように減ってきている。だから日本赤字の主たる原因ではないんだ、相手国ではないんだ。むしろ、ここらでは非OPEC開発途上国等の赤字が非常に大きなウエートを占めているわけですね。こういうことを私は主張すべきじゃないのかと思うんです。また昨年来、日本の輸入品は工業製品についても決して減っているわけじゃない、ふえてきているという事実が統計上出ているわけでありまして、そういう点を見ると、私はアメリカ側にこういう点、もっとはっきりと言うべきことを言ってもらいたい。今のは米国の商務省の統計でございますので、日本のお役所の統計ではありません。向こうの統計を利用したわけであります。  それから、それ以外に私は、今日アメリカ産業に構造的な変革が生じつつあって、それがアメリカ産業活動に一つの空洞化現象というものを拡大しているのじゃないかということを指摘したいのであります。識者によれば、これはアメリカ産業のテインダストリアリゼーションと、こういうように言っておりますけれども、もともとアメリカはいわゆるワールドエンタープライズ、世界的な規模におけるマルチナショナルカンパニーというのがつとに先進的に発展した国でございます。数十年前に私もイギリスに行った。イギリスフォードの自動車会社は、イギリス人にとってみてはこれはイギリスの会社だと思っているんですが、実はアメリカのデトロイトに本拠を置いている会社なんです。そういうふうに歴史が古いんですが、昨今の、特に情報化時代と言われる、あるいはハイテク時代と言われる技術の開発、産業水準、そういう今日の事情の中で、非常に危惧すべき現象というのがアメリカに出ている。こういう点について、いわば多国籍企業の我々経済社会に与える影響というものについて、非常に多角的に私たちは考えなければならない。我が日本においても、ミニマルチナショナルカンパニーが陸続と発生しつつあって、いまだ雇用に影響はないから安閑としているけれども、必ずこれが将来、社会的、経済的な摩擦に発展すれば、これは自由主義経済体制の中における企業活動に及ぼす、企業活動にかかわる政府の一つの政治姿勢というものが問われると思うんですね。経企庁長官、そこらあたりはどのようにお考えでございますか。
  204. 金子一平

    国務大臣(金子一平君) 今福間さんから御指摘のございましたように、最近はホワイトハウス筋も、例えば大統領の報告書で、アメリカ赤字原因は高金利、ドル高にあるということをはっきりと認めておりますし、また良識ある学者グループがだんだんとそういう説を強く唱え出しておることは御指摘のとおりだと私も思っております。  最後のお取り上げになりました、国際化と申しますか、細かい統計は、まだ日本アメリカとの間の統計は出ておりませんけれどもアメリカ産業の空洞化をもたらしておる一つ原因としては、国際化によって、むしろ外国でつくってどんどん同じ系列の会社が輸入した方が便利だというようなことでやっておる。そういう点を十分見きわめながら今後の対策を講じていかなければいかぬというふうに私どもも感じておる次第でございます。  日米間の問題につきましても、例えばハイテク産業の部品等におきましては、完全に日本の部品産業界におんぶしておるようなものが非常にふえておることも御承知のとおりでございます。
  205. 福間知之

    ○福間知之君 通産省にお聞きしますが、日本に進出しているアメリカ企業の数はほぼ三千社余りある、こういう報告があるんです。これは著名なアメリカのコンサルタント会社のマッキンゼー・アンド・カンパニーの調査によるところでございますが、通産省の方の御調査ではどういうことになっておりますか。
  206. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 我が国に進出しております外資系企業の会社数等につきましては、外資系企業の統一的な定義もございませんので、必ずしも正確な情報は有しておらないところでございますが、通産省で実施しております外資系企業動向調査、この調査によりますと、調査対象となった昭和五十八年三月時点で、外資比率五〇%以上の外資系企業は約二千二百社ございまして、そのうち回答のあった一千四十三社について見ますと、米国系の企業は四百八十六社。これを業種別に見てみますと、製造業が二百三十三社、商業が百八十社、サービス業五十八社、その他十五社となっております。
  207. 福間知之

    ○福間知之君 資本金五〇%以上二千二百社と、こういうことでございますが、これらの生産なり販売、サービスの金額等をお調べになりましたか。
  208. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) ただいま申し上げました、通産省で実施した昭和五十八年三月末時点での外資系企業動向調査によりますと、回答のあった米国系企業四百八十六社について見てみますると、その売上高は八兆四千六百十六億円、輸出額は四千八百三十七億円で、うち対米輸出額は千九百五十九億円、このようになっております。
  209. 福間知之

    ○福間知之君 マッキンゼーの調査は、昨年アメリカ系の企業三百社で生産販売額が約四百四十億ドル、二百四十円レートで十一兆円余りになっている。私はこれを見てびっくりしたのでございますが、日本はそれほどアメリカから言われるような閉鎖的な市場じゃない、むしろかなりオープンである。  きょうの日経新聞にも載っていましたけれども日本に対してジョージア州は企業誘致の広告を日本新聞に出す、あるいはまた日本も各地方からアメリカ企業誘致に行く、こういうことで自由な活動が広範囲に許容されている。結果として、既に三百社余りの統計で十一兆円の生産販売を昨年やっているということ、こういう事実を私たちはもっとアメリカの方々にも知ってもらわなきゃならぬ。だれでも知っているIBMという先端のコンピューター企業日本に存在しています。あとはコカ・コーラだとか、あるいはまたマクドナルドとかケンタッキーとか、著名なアメリカ日本で成功している企業あるいはその活動というものは、みんなが無意識のうちに十分に知っているわけです。むしろ成功してないアメリカ企業経営者が国内で必要以上に日本企業の閉鎖性を声高に叫んでいる気配が強い。こういうことを私は日本の政府ももっと認識してアメリカに言ってもらいたい。  日本アメリカから約五兆円程度の輸入を昨年やっています。そしてアメリカ企業は国内で十一兆の生産販売をやっている。都合ちょうど十六兆円水準です。日本は昨年アメリカに十三兆円の輸出を物でいたしました。現地で、自動車会社、電機会社の生産はいまだにまだ三兆円水準。ちょうどこれで十六兆円。金額の面ではアメリカ日本は大体昨年も同じような水準、一昨年も同じような水準なんです。  私はここで申し上げたいのは、そういうふうに今や国際間の産業経済活動というものは、国境を乗り越えて入り組んだ姿になっている。これはますます今後拡大するであろう。だから、貿易の統計のとり方一つにしても、今村田大臣がおっしゃったように、日本でつくっているアメリカ企業の生産、そして販売が日本の通関統計として輸出になって計上される、こういう矛盾があるわけです。それは全部日本の輸出になっているわけです。  昔の一次産品であれば、その土地ででき上がったものは、所有者もちゃんと決まっておって、アメリカから日本に、日本からどこにと、こういうことで原籍地がはっきりしているわけですけれども、今や第二次産業はそうではない。これに対応する一つ貿易上の調査統計というものは一遍考え直さなきゃいかぬのじゃないか。  私は、大蔵省に尋ねましたら、国際条約で統計のとり方が決まっておる、そこまでは調査して明らかにするということにはなってないと、こういうことですけれども、それはそれとして、だが、これほど日米間の大事なパートナーシップの関係が壊れそうな貿易のあつれきというものが今後も拡大するとすれば、彼我の企業がどのように実態的に行動しているのかということはやっぱり把握しなきゃいかぬ。私は、日本アメリカはそういう活動によって相互にそれぞれの国民がメリットを得ていると思う、それぞれの企業が利益を得ていると思うんです。だから、そういうことを頭ごなしに否定するのじゃないけれども、そういう実態が全く無視されてはこれはもうたまらない、そういうふうに思うんですけれども、これは通産大臣いかがですか。
  210. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) マッキンゼー・アンド・カンパニーの調査は私も新聞紙上で拝見をいたしております。これは福間委員御指摘になりましたような数字になっておりまして、日本市場の開放度を考えていきます際に、日本の輸入だけではなくて、外国資本の会社の日本での生産販売額をも考慮する必要があるというものでございまして、そういった観点から、日本アメリカからの輸入額に米国資本の日本での生産販売額を加えたものは、これは九月以前の統計でありますから円高になる以前でございますが、ドル換算いたしますと約十七兆円。また米国の日本からの輸入額に日本資本の米国での生産販売額を加えましたものはやはり約十七兆円ということの試算でございまして、この数字から見れば日米両国の相手国に対する市場開放度はほぼ同じである、これは福間委員の御指摘になられるとおりだと思います。  このような試算につきまして、政府としてその当否を判断する立場ではございませんが、近時、米系企業我が国における活動も製造業を中心に一層活発化してきております。このことは事実でございまして、今後とも貿易面のみでなく、よく言われますように、投資面にも着目して日米経済関係を正しく理解されることを期待しておるわけでございます。したがって、今回のアクションプログラムの実施によって、関税面でも非関税面でも我が国市場は国際的水準を上回る開放度を達成しておる。これについて従来から米国に対しても主張してきたところでございます。  ところで、福間委員がおっしゃいました貿易統計における数字でございますが、これは輸出者から税関に対して提出された輸出申告書等に基づいて大蔵省で通関統計を作成しておられます。それで、経済統計に関する国際条約では、貿易統計における輸出額については国外に出るすべての商品を含むという規定でございまして、これに従って継続的に作成をされておりますので、その概念の変更は困難である、このように承知をしておりますが、米系企業等外資系の企業からの輸出額につきましては、先ほども申し上げました、当省において別途実施しておる外資系企業動向調査などによって把握に努めておるところでございまして、福間委員の御指摘になりました点は、そういった輸出、輸入の金額だけでなく、外国からの投資、日本の外国に対する投資、そういったものも勘案して判断すべきであるという総合的な視点は全く同感でございまして、これは先ほど総理も御指摘になりましたが、私どもも例えばヤイター通商代表であるとか、ボルドリッジ商務長官等に対してもそのことははっきりと申し上げておるところでございます。
  211. 福間知之

    ○福間知之君 大蔵省、事前にちょっと申し上げてますが、統計のとり方について知恵を出せということを要請しておいたんですけれども、どのように知恵を出されますか。
  212. 佐藤光夫

    政府委員佐藤光夫君) お答え申し上げます。  ただいま通産大臣からお答えがございましたように、私どもの統計の作成は経済統計に関する国際条約の規定に従ってやっておりまして、輸出入の対象となる物品がだれによってつくられたかという基準ではなしに、どういう性質、形状を持っているかという基準で分類いたしておるものですから、しかもそれが時系列的に継続性を持っており、あるいは横で各国との比較というものがなされておりますものですから、貿易統計そのものの基本的な構造を変えるということはまことに難しい話ではないかな、こういうふうに思っておるわけでございます。  それから、あるいは輸出シェアを一々チェックをいたしまして、これは米系企業日本で生産したものを例えばアメリカに輸出するんだというチェックを行う方法が、そういう分類を事実上行う方法がないかというふうに考えてもみたわけでございますけれども日本で米系企業がっくりました品物がそのまま輸出申告者として税関にあらわれてくるかどうかがわからない。その間に例えば商社が介在するとかいうような問題もございまして、まことに委員御指摘の点につきましては、残念ながらなかなかいい方法がないなど、かように考えておる次第でございまして、むしろ、今お話がございましたように、企業そのものを所管されております通産省その他の官庁でひとつ御検討を願うよりしようがないんではないかなというふうに、私ども貿易統計作成者といたしましてはお答えせざるを得ないなという感じでございます。
  213. 福間知之

    ○福間知之君 通産省ね、二千数百社日本に存在している、まあそれ以上も存在していると思うんですけれども、各出先の機関を通じてこの種のことは通産が実態を日常的には把握すべきことだろうと思うんです。一応株式上場しているところはいろんな資料が公表されるが、そうでないところもあります。そういう点についてどのようにお考えになっているか。  それからついでに、OEMというものが盛んに行われているわけですね。アメリカのニューズウイーク誌によっても、先端技術のIBMのコンピューターの七割の構成部品は日本その他シンガポール、韓国等から輸入している。こういうような統計があるんですが、OEMの実態についてお知らせ願いたい。
  214. 福川伸次

    政府委員(福川伸次君) ただいま御指摘の点に関しましては、私ども日本にございます外資系企業、これの定義をどのようにするかはいろいろ問題があろうかと思いますが、私どもとしてもその実態の把握という点は非常に重要であると思っております。  最近私どもの方で、海外投資に関する研究会というのがございまして、その御答申もちょうだいをいたしましたが、この統計の整備という点がその点で重要なポイントとして指摘されております。私どもとしても、政府の統計のほかにそういった実態を明らかにするような補完的な調査を行いまして、今後とも実態の把握に努めたいと思っております。  OEMの点につきましては、担当局長からお答えさしていただきます。
  215. 黒田真

    政府委員(黒田真君) OEMと呼ばれておりますように、日本企業アメリカ企業と提携をいたしまして、先方の、すなわちアメリカの場合にはアメリカ企業のブランド名で販売する、そういったものを輸出するものをOEMと呼んでおるわけでございますけれども、これはVTRでございますとかコンピューター関連機器、複写機というような部分で相当拡大しているというふうに承知しております。  これらのOEM輸出は、アメリカ企業にとりましては商品の品ぞろえというようなことが可能にもなります。そして消費者ニーズへの対応も可能になる、あるいは設備投資を自分のところでしないで済むというような形にもなるわけでございます。他方、我が国企業にとりましても、アメリカ企業のノーハウでありますとか販売網が活用できるという、双方にとってメリットがあるという形で進展してきていると思います。しからばその実態はどうかという御質問でございますが、率直に申し上げまして、正確なところはわかりません。新聞記事等で個別のケースが報道されておりますが、なかなかはっきりした形での統計をとることが難しいわけでございますけれども、いろいろ聞き込み等による感触も含めまして、現在対米輸出の約六百億ドルのうち一割弱、およそ五十億ドルぐらいがOEMというふうなカテゴリーに属するのではないかなというのが私どもの一応の推定でございます。
  216. 福間知之

    ○福間知之君 総理、先ほど私、アメリカ産業の今日の危険な傾向について少し申し上げましたけれども、例えば今「ドント・シュート・アワー・オウン・フィート」(自分の足を自分で撃つな)と、こういう言葉がアメリカではやっているそうです。かつて鉄鋼業が再生のチャンスを逸しまして、日本の輸出の割り当て制の壁の中に埋没しちゃって再生の機を逸したという歴史が一つあるわけですけれども、最近のハイテク事業についてもそういう傾向が出てくる。例えばNTTと対比されるATT、ATTが七月の五日に電話器の生産の拠点をシンガポールに移す。これはグラハム・ベルという有名なベル研究所から発展した巨大電信電話会社、この主製品たる電話器の生産を東南アジアに移す。きょう、きのうの新聞では、レイオフを二千二百名ですか、アメリカで行うという発表もしていますけれども、そういうふうなこと。またIBMもメキシコにその工場を建てる。非常に外資に厳しいメキシコに一〇〇%で建てる。既にフォードはメキシコに建てている。こういうふうな事態が出ておるわけです。  もともとLSIにしても、あるいはまた今の輸出商品のVTRにしても、これはアメリカがもともと開発を手がけたんですけれども、品質の面、あるいはまたコストの面で結局は日本が生き残ったと、こういういきさつがあって、今、LSIでも皆さん方御案内のとおり、こういう数ミリ角のチップの中に数万から数十万、百万個、一メガビットの超LSIが今生まれようとしている。これでもアメリカ日本に太刀打ちできないだろうと言われているんです。なぜならば、とにかくこれはもう人間よりもごみを一番嫌うものですから、人間が動くよりもロボットでやる方が品質のいいのができるんです。大体一時間当たりで千万分の一しか日本の故障率はない。言いかえれば、千年に一回しか日本のLSIは故障しないということです。これはもうアメリカの軍事用の部品としても非常に珍しい厳格な基準なんですね。こういうことを考えても、そういうことはもういやだと言って東南アジアへ飛行機で運んでいって、組み立てて、完成品を持って帰ってくる。これじゃアメリカの国内では、かつてのテレビがそうであったように、また今自動車がそうであるように、あるいはまた半導体がそうであるように、アメリカの国内で日本企業が生産をして、アメリカの関係企業は労賃の安い国へ行ってつくって、持って帰ってくると、これでは競争にも何にもならないと思うんです。だから、アメリカ企業家、経営者のいわゆる産業哲学というものにも私は大きな問題ありと。これが拡大していけば日本はどうだって非難されてしまうし、よいと思ってやっていることですらそうでなくなってしまう。  また翻って、今は雇用率は高いけれども、失業率は低いけれども、はね返ってくる。一方、国内でME革命がどんどん進んで、合理化が進捗しているわけですから、そういうことが自由主義経済である限り手がつけられないんだと、こういうことなのかどうか。これは総理の見解を聞いておきたいと思うんです。
  217. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 物の自由化、それからお金の自由化、これは資本主義、市場経済発展のために望ましい方向でありますから、原則として我々は自由貿易を推進していくし、今後もそれは大事であり、ガットのニューラウンドにつきましてもその方向で懸命の努力をしてまいりたいと思っております。  ただ、外国の産業政策につきまして私たちはコメントする立場にはございませんけれども、しかし日本の輸出超過という関連の部面につきましては、我々は一種の憂慮を持たざるを得ない面もあります。それはおっしゃるような点でございまして、大体アメリカ日本との関係において、今のOEMやら、そのほかのもので日本産業アメリカの輸出の方面に貢献しているというのは百九十八億ドルぐらいに及ぶという試算も私、通産省から前にもらったことがあります。全部合わせるとそれぐらいになると言われているぐらいであります。そういうようないろんな面を考えてみますと、一国の産業政策として、これはお互いの国の政策として考え合うという場もあるいは将来出てくるかもしれませんし、その必要が出てくるかもしれません。いずれにせよ、しかし自由貿易を推進するという基本線を我々は追求してまいりたいと、そう思っております。
  218. 福間知之

    ○福間知之君 今のことに関連して、先般レーガンさんとの会談で、個別品目をMOSSあるいは通商法三百一条に関連して摩擦対策をとるということも大事だがマクロ経済政策について不均衡の是正が必要、こういう基本的合意がなされたと、こう報道されているわけですけれども、その上で、国内でこれについての諮問機関ですか、委員会をつくるということですけれども、どういう御計画ですか。
  219. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは中期的な観点から日本経済を国際経済の実勢に調和あらしめるようにする必要がある。そういう面から物の輸出入の面あるいはお金の出入りの面、あるいは通貨の価値の問題、そういうような三つのポイントについて日本経済というものが国際経済調和し得るようにどういう改革をしたらいいか、そういうことを勉強してもらう研究会を発足させまして、今勉強に入った。来年の三月までに研究の結果を報告してほしいと、そうお願いしてある次第でございます。
  220. 福間知之

    ○福間知之君 我が国産業構造、戦後四十年この方、言うならば総花主義で来ましたね。原材料を輸入して、何でも国内で生産して調達する。水平分業的なこともほとんど考えずに来ました。これは貿易摩擦一つの大きな原因に通じていると思うんですね。ということは、産業構造の思い切った改革と、こういうことにまで手を染めようという御決意ですか。
  221. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本産業構造というものは輸出志向型にビルトインされてできていると、よくそういうふうに言われております。したがって、当分の間、日本貿易の大幅黒字が継続するであろうと、そういうことも言われております。この批判は一部当たらないこともないと思うんです。それは日本池田内閣の前ごろまでは外貨に非常に困っておりまして輸出国家、貿易国家として懸命な努力をした、そういう反映が今日までまだなきにしもあらずの面もあります。しかし、それが行き過ぎた面があったりすると国際経済調和の妨げになります。そういういろんな面も点検してもらいまして、そして国際経済調和のとれた産業構造、社会経済構造というものを研究していこう、そういうわけでございます。
  222. 福間知之

    ○福間知之君 ジェトロの赤澤理事長においでいただいていますのでお聞きしたいと思うんですけれども、ジェトロは今や輸出に力を入れるということよりも輸入に力を入れて貿易摩擦解消の一助に資そう、こういうお立場かと思うんですけれども、昨今の状況についてどのような御苦労をされていますか、お聞きしたいと思うんです。
  223. 赤澤璋一

    参考人赤澤璋一君) 先ほどから御指摘のように、日本経済あるいは貿易というものはこれから先ますます拡大均衡の方向へ向かって進めていかなきゃならぬことはお示しのとおりであろうと思います。そういたしますと、今この際は、何が何でもという言い方はどうかと思いますが、いずれにしても、輸入の拡大ということがまことに最重要な施策の一つになってまいってきておると考えております。そういう意味で、私どもジェトロ(日本貿易振興会)といたしましては全組織を挙げまして、あらゆる知恵を絞って今輸入の拡大に努めております。  私どもの標語は今、英語で恐縮でございますけれども、ディスカバー・ワールド・プロダクツ、そういう言葉を、これは国鉄のキャッチフレーズを一部借用いたしまして、大いに広めております。と申しますのは、よくて安いものであればだれしも輸入をいたします、輸入品を使います。日本人はもともと舶来品が好きですから、いたしますが、高くて悪いものを買えというわけにはまいりません。ただ、今の情勢からいえば、あらゆる機会を通じて世界じゅうにいいものを見つけていこう、発見していこう、そして我々の生活の中に、あるいは具体的な製造の中に取り入れていこうということが、そういう積極的な行動が今一番要請されておるのではないかと考えております。  そういう意味で、本年度といたしましては、大規模なインポートバザールを既に東京、横浜でいたしまして、今月は北九州で行います。また来年の三月にはメード・イン・ヨーロッパ・フェアという、これは主として電子及び機械を中心にしました大規模なヨーロッパ製品のフェアを神戸で開きたいと思っております。  なお、そのほかに、輸入を促進いたしますために、各国別あるいはいろんな別のカテゴリーで、例えば働く婦人の選んだ商品展覧会でありますとか、そういうようなものを含めて既にこの十月までに六十一回の外国商品の展覧会を全国で展開いたしております。  なお、そのほかに、買い付けミッションあるいはコンサルティングミッション等々も派遣をいたしておりますし、各国から既に十七件の、外国からいえば輸出促進のミッション、こういったものの受け入れ、商談の引き合いのあっせん等々の事業もいたしておりまして、今ジェトロといたしましては、全組織を挙げて輸入の促進に努力をいたしておるところでございます。
  224. 福間知之

    ○福間知之君 理事長、そういう努力の上で成果と思われるものが上がっているのじゃないでしょうか。  さらにまたもう一つは、大変重要な仕事をされていると思うので、その人員だとか予算だとかの面では国に対する要望はあるんでしょうか、ないんでしょうか。
  225. 赤澤璋一

    参考人赤澤璋一君) 私どもの今申し上げましたような各般の事業で直接成果がどうかということになりますと、必ずしも全部を正確に把握しておるわけではございません。  ただ、先般行いましたインポートバザールの数字をとってみますと、東京の場合には来場者約四十万人、あるいは横浜でも三十二万五千人、大変な大勢の消費者の方々にわずか五、六日の間にお集まりをいただいておるわけでございます。売上高も東京で約六億円、あるいは横浜でも五億三千万円というような非常に大きな売上高、これはむしろ大部分が中小の輸入業者が出店をしておりますので、そういった機会を通じて一般消費者の間に、何と申しますか、本当にいいものを発見していこうという機運が生まれてくることを期待いたしておるわけでございます。  なお、例えば大規模のインポートフェア、メード・イン・USA・フェアというのをことしの三月に名古屋で行いましたが、この場合におきましても、例えば四日間のビジネスフェアでございましたが、成約高としては十四億円というようなことで、個々の数字は必ずしも大きくございませんけれども、それを通じて日本が開かれた市場であり、また一方で日本の消費者には海外のいい商品を暮らしの中に取り入れてもらう、こういうことであろうかと思います。  第二の御質問でございますが、これは言い方がちょっとどうかと思いますけれども、工場の場合で言えばいい商品を開発して製造する、あとはいかにうまくこれをPRし、いかにうまくこれを売っていくかということが恐らく半分半分ぐらいのウエートで考えられておるのじゃないかと思います。今後、日本の場合、いかにいい政策を積み上げてまいりましても、いかにいいこれからの市場開放のための努力をしましても、それをうまくPRし、それをうまく販売していくというと語弊がありますけれども各国の本当にルーツのところまで認識してもらうというのには大変な努力が要るわけでございまして、私は、今限られた財政資源の中ではございますけれども、やはり製造する努力と同じぐらいの努力をPRと販売、政府の場合で言えばぜひそういった施策のPR、拡充あるいは各国あるいは草の根までの周知徹底といったことに努力ができるようなウエートを置いた考え方をしていただけば大変ありがたいと考えております。
  226. 福間知之

    ○福間知之君 理事長、ありがとうございました。  次に、内需の拡大の問題で、さきの御質問者も幾つか触れられましたので重複することは避けたいと思います。  結局、結論として申し上げたいのは、日経のNEEDSの調査にしろ民間の幾つかの調査にしても、政府の見込みのように成果は期待できないのじゃないか、こういうふうな見方が多いんです。名目成長率で六十年度〇・二、六十一年度〇・五、経常収支は六十年度一億五千二百万ドル、六十一年度九億二千八百万ドル黒字幅の縮小程度に終わるのじゃないのか、こういうふうな見方なんですけれども、先ほど経企庁長官竹下大蔵大臣も六十一年度予算まで状況を見てその節にもう一度考えてもいいというふうな御意向のように伺いましたけれども、今申し上げたような見通したとすればまさに必定だと言わねばならぬと思うんですが、いかがですか。
  227. 金子一平

    国務大臣(金子一平君) 今度の内需拡大策の策定に当たりましては、財政制度におんぶできない実情にあったことは御承知のとおりでございますので、税制の問題とか予算の問題、これが外れておりまするけれども、それ以外の点につきましては、例えば下水道の拡充のために地方債の活用を図って大々的に推進しようとか新しい手を幾つか用いておることは御承知のとおりでございまして、いろいろの専門のエコノミストの間に数字的な批判が出ておることは十分承知いたしておりまするけれども、今度の規模からいいましても事業規模で三兆一千億、名目的なGNPの波及効果から言えば四兆一千億程度と私どもは見ておるわけでございまして、特に住宅減税につきましては、ぜひひとつ今度の予算編成の際にこの問題を取り上げたい。  また、先ほどもちょっと触れましたように、どういう形にするかは別にいたしまして、公共事業の上積みにつきましても、どういう措置を講ずるかはこれからの予算の編成の段階において議論をしてまいりたいと考えておる次第でございます。  特に民間活力の十分な活用を図るためのもろもろの施策につきまして、今それぞれの所管の省庁において検討されておりますので、この効果は必ずや私どもが予想したとおりの結果が出るものと確信いたしております。
  228. 福間知之

    ○福間知之君 時間の関係で幾つかの主張を申し述べる時間がありませんけれども、五十九年度当初見通しで実質成長に占める外需の寄与度が〇・五%で、見通しとしてはそうであったんですが、実績は一・九%、約四倍になっております。内需拡大と言う限り——既に昨年度も一昨年度も外需から内需への転換ということが言われながらついぞ果たし得なかった。この間、何回か対策を講じられてきたんですけれども、その成果は極めて薄い。今回もまたその轍を踏むのじゃないかという危惧を私申し上げておきたいと思います。  ぜひひとつ今からの推移によって財政の発動ということを私は大蔵大臣にお願いしたいんです。先ほど議論があったので私多く申しませんけれども、六十五年赤字国債からの脱却ということ、それが少し幅を持つということができないということに少し疑問があるんです。行革路線の一つの方針というものを貫徹するにしても、財政というものは経済や国民生活に寄与する手段でございますので、子々孫々に大きな負担を残さない方がいいんだというのはだれしもわかっていることでございますので、ここで三兆、四兆の金を、建設国債を出したからといって、それがどんなに壊れてしまうものかということに疑問を持っているということだけ申し上げたいと思う。  そこで、総理の言う行革路線の一環として国鉄の問題がございます。これは今やことしから来年にかけての政治の大きな課題でもあります。ちまたに多くの議論もあります。ぜひひとつこの点について私どもの見解なりを申し上げてみたいと思うので関連質問をお願いしたいと思うんです。
  229. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 瀬谷君から関連質疑の申し出がありますので、これを許します。瀬谷英行君。
  230. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 ことしの七月に国鉄の再建監理委員会から答申が出ましたけれども、この答申には不十分な点が多々あります。例えば貨物会社の問題でありますが、旅客を六つの地域に分け、新幹線をまた分け、貨物鉄道は全国一社で走らせるということなんですが、一体どういうふうにしてその貨物会社というものが運営されるのかさっぱりわからない。十一月までに国鉄と運輸省で詰めるという話になっておりますが、その点は果たしてうまく結論が出ているのか、もし出たとすればどういうことになっているのか御説明願いたいと思います。
  231. 山下徳夫

    国務大臣(山下徳夫君) 「意見」にございましたように、貨物会社については十一月までに詰めるということになっておりまして、鋭意目下その作業を進めているところでございます。その内容につきましてもし御質問ございますれば事務当局からお答えしたいと思います。
  232. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 お願いします。
  233. 棚橋泰

    政府委員(棚橋泰君) 先生御指摘のございましたように、監理委員会の「意見」におきましては、貨物の特性から見まして貨物は旅客と別会社にし、全国一元的な運営を行い、その具体的内容は政府において検討しろ、こういうことでございます。  そこで私どもは、国鉄と運輸省におきまして現在行っております作業は、一つは国鉄貨物の要員体制その他、どの程度のコストで最低限運営ができるかという観点。それから国鉄貨物輸送の輸送販売体系、従来のような国鉄の貨物の販売方法ではなかなか採算をとるのは難しいという点から、これを通運会社等との関係からどのような販売体制をとるかという観点。それからもう一つは、旅客会社の線路を借りまして経営を行いますので、その旅客会社との間のダイヤとか運転とかそういう面の調整等をどのようにするかというような観点。大ざっぱに申し上げましてそのような観点から現在、具体的作業について検討を進めておるところでございます。十一月末までという期限でございますのでまだ結論が出ておりませんが、今申し上げましたような点を明らかにして、貨物会社として成り立っていくような会社にするにはどうしたらいいか早急に結論を得たい、かように思っております。
  234. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 具体的には国鉄の赤字の中で大きな比重を占めていたのは貨物なんですが、それが切り離された、しかも旅客会社の間を渡り歩かなきゃならぬ、通行料を払って渡り歩かなきゃならぬ、それでなお黒字を出さなきゃいかぬ。そういうことになりますと、従来の通運会社の範囲に割り込んでいかなければ利益は上げられないと思うんでありますが、そういうことになるんですか。
  235. 棚橋泰

    政府委員(棚橋泰君) 先生の御指摘は多分、通運会社のような業務をみずから兼ね備えるようなそういうような運送会社と申しますか、そういうものにならなければ無理ではないか、こういう御指摘かと思いますが、この点につきましては、そういうふうな考え方も将来的にはあろうかと存じますけれども、当面は現行体制の中で、例えば販売形態をむしろ列車単位の販売というような形でこれを通運会社に対して販売するというような形をとり、極度の合理化を図るというような点で最低限現体制の中で自立が可能であるというような形というものを現在模索しておるという段階でございます。
  236. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 模索をしていると言ったって、七月に答申を出してまだ結論が出ていない。もう十一月過ぎているんですよね。要するに総理に申し上げたいのは、監理委員会の答申というのは欠陥だらけなんですよ。破れ傘みたいなものですね。たたんでいるときにはわからないけれども広げると穴だらけなんです、役に立たないんですよ。こういう穴だらけの傘をたたんでおいて、しかもどんなことをやっているかというと、パンフレットの方は、この答申のとおりにやるとすべてうまくいくんだと、こういう宣伝ばかり先にやっているんですよ、地域地域でもって。こういうことをやっていて世間をごまかそうというのはよくないと思うんですな。  そこで、国鉄の改革について監理委員会は、国会及び政府は最重要課題ととらえて強い実行力をもって推進することが必要だと言う。これはまだ今の貨物の問題だって答えが出ていない、法案も出ていない、どうするかもはっきりしていない。国会の方はひとつ答えを出せ、ちゃんとうのみにしろ。小骨だらけの魚を丸のみにしろというのと同じですよね。そんなことは許されないと思うんですが、総理どうですか。
  237. 山下徳夫

    国務大臣(山下徳夫君) 先日の当委員会でもお答えしたんでございますけれども、これは地方におきまして、熊本でございましたか、行革審に要請があって監理委員会の委員が参りまして説明したというようなことだと存ずるわけでございます。また事実パンフレットも出ております。これらにつきましては、私も前回御答弁申し上げましたように、私自身が読んでいてなかなか理解しにくい点もあり、そのつど私読んでいろいろと聞くわけでございますが、したがって一般国民から見ればこの意見というものは非常にわかりにくい点がある。それを自分たちはこういう趣旨で、この意見の内容はこうなんだということを国民に知らしめる。そういう趣旨からすると、これもまた事務の一つかなということでございまして、前回申し上げたようにパンフレットの最初の前書きと申しますか、その部分にやや説明の足りなかった点はあると思いますけれども、そのこと自体は私はとがめ立てすべき問題ではないのではないかと、このように理解しておる次第でございます。
  238. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 分割については、各新聞の社説でもみんな疑問を明らかにしております。毎日、朝日あるいは共同通信、日本経済、いずれもこの分割について疑問を呈しております。したがって、これだけ疑問のあるものを結論だけ出して、国会でもってこれを丸のみ込みしろと言われれば迷惑なんです。その点我々国会の方で十分に審議して、この答申についてできないような点、おかしな点があったら修正をするということが行われなきゃならぬというふうに思うのですが、その点総理の見解を伺いたいと思います。
  239. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 監理委員会の答申は、私は立派なものを出していただいたと思っております。瀬谷先生は破れ傘と言いますが、私は立派なレーンコートだと、そう考えております。  今これが立法化につきまして懸命な努力をいたしておりますが、来年の通常国会にはぜひ提案さしていただきたいと思います。その際は十分御審議を願いまして、いろいろ貴重な御意見を伺わしていただけばありがたいと思う次第でございますし、国民の皆さんもいろいろな御批判がございますれば喜んでお聞きいただくでありましょうし、そういう与党、野党の議論のうちにおのずと量とまるところへいけばそれも一つ考え方である。いずれ、ともかく法案として整備いたしまして提出して御審議をお願いいたしたいと思っておる次第でございます。
  240. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 立派なレーンコートだと言いましたが、防水の効かないレーンコートで、雨が降ったらみんなだめになっちゃうんですよね。だから我々心配しているんです。  特に、この監理委員会のメンバーの中に国鉄を非常に私物視しているような人がいる。自分が、今度この監理委員会の答申のとおり会社を分割したら、その分割会社の社長になるんだというふうなことを公言している人がいる。これは文勢春秋の九月号でもはっきりしておりますが、こういうふうに監理委員会のメンバーがお手盛りでもって分割会社の社長になるというふうなことになりますと、これは世間のひんしゅくを買うと思うのでありますが、そのようなことは許しちゃならぬと思うのですが、総理の見解を承りたいと思います。
  241. 山下徳夫

    国務大臣(山下徳夫君) 実はその記事は私も拝見したのでございますけれども、このことにつきましては、九月十一日の参議院の運輸委員会におきまして、監理委員長から事実と相反する面が非常に多いということの御答弁がございました。後日、出版社である文藝春秋に対して記事の訂正方の申し入れを行っておるということを聞いております。したがいまして、訂正の申し入れが行われているという現実からいたしますと、私は行き過ぎた言動はなかったものと理解いたしております。
  242. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 時間ですからやめておきます。
  243. 福間知之

    ○福間知之君 日銀総裁おいででございますが、先ほども総裁には円高の推移をめぐっての見解を求める質疑もございました。明確な答えはなかなか難しいにしましても、内需の拡大策が不十分だという点から、例えばアメリカに昨年度三百億ドル流出をした長期資本、今年度は恐らく五百億ドルになるだろう、円高につられてですね。アメリカ予算の大体六、七%日本の流出資金がそのウエートを占めている。これを全部引き揚げるということは、これは実態的にも無理でございますが、これがしたがってアメリカの円安に歯どめをかける上で重要なポイントになるんじゃないかと思うんです。国内景気がよくて国内に投資機会があれば、その五百億ドルのうちの何分の一かは還流されるべきであるし、はずであります。だとすれば、その為替レート水準もかなりそういう点で影響を受けて、上げどまりというふうな危険が多分にあると思うんですが、そういうことは考えられませんか。
  244. 澄田智

    参考人澄田智君) 従来、ことしの初め以来の推移等を見ておりますと、日米間の金利差によりまして日本からアメリカに向けての資本の流出、これが大きかったことはおっしゃるとおりでございます。それがまたドル高・円安をもたらしていたということも否定できない紛れのない事実だと思います。しかしそれは六月、七月ぐらいが一番ピークの状態でございました。殊に九月の二十二日のG5以降、ドル安の修正、円高方向へと相場が変わりましてからさらに日本からの流出というのには歯どめがかかる、為替リスクがございますから流出に慎重になる、対外投資に慎重になる、こういう傾向が出てまいっております。  単に表面の数字のみならず、従来は先物でリスクをカバーしないで裸のまま債券投資をするという、そういうことがありましたが、円高になってきたことが現実になるにつれまして、そういったリスクに対して何らカバーをしないそういう対外投資、アメリカに対する投資というものが非常に減ってまいりまして、先物によって将来に耐えてドルを売る。為替の面からいたしますと、現物を買って先物を売るということになりますと、それは影響が中和されるわけでございます。そういうことで為替面に対する対米投資の影響というものも大いに変わってきている、そういうふうな感じがいたします。  そういう点から見まして、G5以降のドル高の方向に対しては、それまで以前のように対外投資が円安をもたらす、そういう悪影響というものは少なくなってきている、こういうふうに考えている次第でございます。
  245. 福間知之

    ○福間知之君 総裁、そういうふうにおっしゃいますけれども、しからば今のそういう流出額というのはかなり大きいものがありますから、貿易黒字額にやや近いほどのものがありますので、これは好ましい姿だと考えていいんでしょうか。
  246. 澄田智

    参考人澄田智君) あえて好ましいということは申し上げることはできませんが、しかし自由化を進め、円の国際化を進めてきているという立場に立って考えますと、資本の自由、資本の移動の自由というのは、これはやはり基本的にその建前を貫かなければならない、こういうふうに思います。しかし、そこには為替のリスクがございますから、リスクに対して十分に考慮を払い、今も申しましたように将来のリスクをカバーする手段をあわせて講ずるというようなことで資本の対外投資が行われる、これが望ましいことと、かように思っております。
  247. 福間知之

    ○福間知之君 総裁、結構でございます。  大蔵大臣、先ほどちょっと私触れかけたんですが、中期的財政需要の仮定計算によりますと、数年間三兆円前後の税収増が見込まれておりますけれども、国債の利払い増や地方交付税の増加などの当然増経費がある中で、税収の三分の一を主として赤字国債減額に振り向ける、そして六十五年赤字国債脱却というふうな展望に立つことは、いかにも政策的に過重な目標を掲げていることにならないでしょうか。
  248. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 提出いたしました試算によりますと、おっしゃるような計算になるわけであります。  自然増収というのは、御案内のように六・五%の名目成長率に弾性値一・一を掛けてはじいたものと、こういうことになるわけでありますが、それのおよそ三分の一強がいわば五年間で均等に返済をしたとしますと、それに結果として充てられる結果になると、こういう計算であろうというふうに思うわけであります。  では、だからといってそれじゃこれを延ばすかと、こういうことになりますと、延ばす間それだけまた公債発行額をふやすわけでございますので、結果としてそれの三・七倍分が後世代へのツケ回しになっていくと、こういうことになりますので、非常にお答えの難しい問題でございますが、いかに困難なものであると信じつつも努力目標というものを立てて、それに向かって一生懸命努力をいたしておるわけでありますが、例えとしていいか悪いかは別問題としまして、千五百カロリーあなたは食べなさったらいい、糖尿を防止するために。というなら、それじゃまあ千六百カロリーでも余り変わったことないじゃないかといって、やっぱりそれで続けておりますと結局糖尿病になっちゃう、こういうことでございますので、非常に例えば悪うございますけれども、やっぱり一つの努力目標に対して精いっぱいの努力をしていくと。それは非常に厳しいものであるということは十分承知いたしておるわけでありますが、一たび緩めますと歳出圧力というものになかなか抗し切れなくなるという現実も御理解をいただきたいと思います。
  249. 福間知之

    ○福間知之君 総理、先ほど来申してますように、まあ財政にしても少しかたくななまでに、今大臣の最後の言葉じゃないですけれども、一たびせきを切ればもうとめどもないと、こうおっしゃるわけですけど、気持ちとしてはしたがってそうあってはならぬのだという気持ちはお互い変わりません。だから、それは歯どめとして内閣あるいは国会の意思だと思うんです。  今の目標を仮に五年延ばして赤字の削減を若干おくらすということが理論的な根拠としては全く不当じゃないでしょう。
  250. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういう御議論も耳にするのでございますが、やはり政府当局といたしましては臨調路線を守って一貫して進む気概を持って実行する必要があると思っております。
  251. 福間知之

    ○福間知之君 もう一問。総理、最後に聞きたかったんですけれども、先ほど申しました資本が、日本の貯蓄が多いために流出をしたりしておるわけですが、国内のいわゆる社会資本の形成というのは非常に立ちおくれている、こういうことは否めない事実です。そういうことも考えて、ぜひひとつ私はこの今の内需拡大に第二の手を加えていくということに非常に柔軟な姿勢で対応してほしい。そして、六十一年予算とは言いませんが、これからの推移を見て本格的にひとつ内需拡大に財政の発動ということもフレキシブルに考えてほしいということを強く主張して私の質問を終わりたいと思います。
  252. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 以上をもちまして福間知之君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  253. 安田隆明

  254. 神谷信之助

    神谷信之助君 今日、世界と人類は核戦争による破滅、危機に直面をしていると思います。また、我が党が強く主張しておりますように、核兵器の全面禁止、核兵器の廃絶こそが人類の最も重要な緊急な課題であると考えています。この地球上で核戦争がもし起これば、もはや日本民族も人類もあり得ない、死滅以外にないと、そういう状況であります。  そこで外務省に聞きますけれども、全面核戦争の場合、国際世界保健機構、WHOや世界の科学者は直接被害を受けるのは一体どれぐらいというように推定をしておりますか。
  255. 山田中正

    政府委員(山田中正君) お答えを申し上げます。  先生今御指摘ございましたWHO、世界保健機構が、一九八三年の五月に、核戦争が健康と医療に及ぼす影響と題する報告書を発表いたしております。  その報告書におきましては、全面核戦争が起こった場合、この場合一万メガトンの核爆発を想定いたしておりますが、その場合は十一億五千万人が死亡し、十一億人が負傷するであろうとの推測を行っております。
  256. 神谷信之助

    神谷信之助君 ところが、こういう直接の惨禍だけではありません。一九八三年の核戦争後の地球に関する国際会議以来、世界の科学者の研究によって、その核爆発の直後から地球は「核の冬」に襲われる。すなわち、核爆発によって起こったすすが上空に舞い上がって、そしてこれは黒い雲となって太陽光線を遮って地球上は零下三十度から四十度という、そういう状況が長期にわたって続いてしまう。ですから、人類も生物の生存条件も破壊をされるということが明らかになっています。  そこで外務省、続いてお聞きをいたしますが、ことしの九月の十二日に、米ソを含む世界三十カ国、三百名の科学者によって二年間にわたって研究をしてまいりましたその結果が発表されました。国際学術連合がワシントンで発表し、これはNHKでも放映をされたわけでありますが、この発表された資料の中で、グラフでは食糧の欠乏で世界の人口は一体どうなるというように推定をしていますか。
  257. 山田中正

    政府委員(山田中正君) 今先生御指摘ございました国際学術連合の環境問題科学委員会が、先生御指摘のような発表を行っております。ただ本件につきましては、全文はまだ公式に公表されておりません。したがいまして、内容について変更もあるということでございますのと、たくさんの前提条件があるわけでございますが、私ども承知いたしております点でお答え申し上げますと、核戦争が起こりました場合のこの研究の第二部におきまして、食糧に及ぼす影響、それから人口に及ぼす影響に触れておるわけでございますが、まず、核戦争の結果、食糧の輸入というものが全く停止し、かつ国内の食糧生産が全く行われないような事態になったときには、戦争直後に残された食糧のみで人口を維持しなければならないわけでございますが、その場合には食糧の供給が百日間までしか受けられない人の数が二十五億人強、これは一日のカロリー摂取量を千五百カロリーと計算いたしております。また核戦争後でも、食糧の貿易及び国内の食糧生産が部分的に行われる場合には、この百日間しか受けられない人の人数は二億人以下に減るわけでございますが、二百日から三百日間しか供給を受けられない人の数が約十八億人弱に達するであろう、このように予測いたしております。
  258. 神谷信之助

    神谷信之助君 今国連局長から御説明されましたが、お配りをしている資料の一枚目、これは「食糧生産の壊滅が世界人口に及ぼす被害」をあらわしたグラフであります。今もお話がありましたように、食糧備蓄が非常に少なくて、そして六千メガトンの核爆発がある、これは空中もしくは地上で起こった場合、しかもそれは北半球でありますが、その場合にそれぞれの緯度における一年後に生き残っておる人間は一体幾らかというのが斜線であります。これらの合計が約十七億であります。だから、一年後には食糧も欠乏してきて十七億しか生きることができないというように言っています。その資料であります。  そこで、さらに外務省に聞きますが、この研究で国際学術連合は数カ国をモデルにしていろいろ検討しています。その中で日本をモデルにして検討しておりますけれども、どのように指摘をしておりますか。
  259. 山田中正

    政府委員(山田中正君) この研究では十五カ国を対象にいたしておりますが、日本につきましては、日本が核攻撃の対象になった場合、日本に対する影響は非常に深刻なものである。気温が三度から五度低下しても米の生産量が大幅に減少するであろう。気温がさらに低下すれば米の生産は不可能となる。また、日本の場合、輸入エネルギーに高度に依存しておるので相当大きな影響があるであろうという一般論がございまして、数値の予測といたしましては、これはいろんな前提があると思いますが、核攻撃を受けた後に生き残る人数を五千八百万人と想定いたしまして、核戦争によって輸入が停止し、かつ国内の食糧生産が全く行われなくなった場合には、生存者全員を維持し得る日数は百五十三日である、かかる食糧供給状態では一年間維持し得る人口は二千四百万人であるという予測をいたしております。
  260. 神谷信之助

    神谷信之助君 この研究では、日本が核戦場になった場合、直接被害で半分以上の人間は死ぬであろう。そして今あったように、食糧輸入の停止が起こって残っている人も餓死せざるを得なくなって、一年後には二千四百万ぐらいしか生き残れない。まさに日本民族の破滅の状況が発表されています。こういう「核の冬」の可能性について、アメリカの国防総省も学者に委託をいたしまして研究をした結果、これを認めています。  そこで、総理にお尋ねしますが、総理はこの「核の冬」の問題についてどういう認識をお持ちなのかという点が一つ。それからもう一つは、衆議院で岡崎議員が質問いたしましたときに、山田国連局長は、我が国にとっては非常に関心がある問題なので、世界じゅうの研究を検討しながら研究をしてみたいというように答弁をしておりますが、この際、日本政府としても科学者による責任ある研究を始める御意思はないかどうか、この二点についてお伺いしたいと思います。
  261. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 「核の冬」に関しましては、種々の前提を置いた一つの試算表である、そういうふうに考えております。しかし、いずれにせよ核戦争は絶対起こしてはならない、そういうふうに感じておる次第でございます。  なお、我が国におきまする問題については、ひとつよく検討してみたいと思います。
  262. 神谷信之助

    神谷信之助君 総理もお認めになりましたように、要するに核戦争の惨たんたる結果を考えますと、核戦争には勝者もなければ敗者もないということが言えると思うのです。だとするならば、この核兵器の使用というものはあってはならない。また、人類の死滅を覚悟しなければ核戦争はできない、できるものじゃない。しかし、それを承知で核の使用を認めるということになれば、これは大問題だと思うのです。この意味からも核兵器の使用は絶対許されてはならないと思いますが、総理、御見解いかがですか。
  263. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 核戦争はあってはならぬし、核兵器の使用もあってはならぬ、そういう意味において抑止力をもって現存する核兵器を使わせないようにするということが大事であると思います。
  264. 神谷信之助

    神谷信之助君 ところが総理は、ことしの二月十九日の我が党の岡崎議員の質問に対して、日本有事の場合、やむを得ないときは米軍が核兵器を使用することは排除しない、こうおっしゃっている。核兵器の使用を認めない、許さない、核戦争を認めない、こういう立場であればこの答弁は取り消す必要があると思いますが、いかがですか。
  265. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは質問がありましたから法的可能性について答弁をしたのでありまして、日本が侵攻される、侵略される、そういう絶体絶命というような場合において米軍が公海上において抑止力として核を使う、やむを得ずそういう場合もあり得るという可能性、それまで否定しておいたら抑止力というものは成立しなくなる。我々は、安保条約によりましてある意味においてアメリカの核抑止力も含めて抑止力に依存しておるわけでありますから、抑止力を否定するということを私は恐れて今のような発言をしたわけであります。
  266. 神谷信之助

    神谷信之助君 それはおかしいと思うのですね。我が国を核戦争に絶対に巻き込ませない、そういう決意があるならば、我が国有事の際の米軍との共同作戦の中でも、公海公空上にあるところの米軍といえども我が国に核攻撃、報復の攻撃を許すようなそういう米軍の核使用というものは一切拒否をするのが当然ではないか。抑止力というのはそれであればまさに核兵器の使用を容認する論理と言わなきゃならぬと思いますが、いかがですか。
  267. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 相手が核を使うとか、あるいはそれ以外によりましても侵略をする、そういうことを起こさせないための抑止力の可能性を否定しては抑止力は成立しなくなるからそういうふうに申しておるのであります。
  268. 神谷信之助

    神谷信之助君 まさに綱渡りのような危険な論理ですよ。総理も核兵器は業の兵器だと言われましたけれども、それが極めて危険な道を歩まざるを得ない。現にロストウ米軍備管理軍縮局長は、一九八二年の六月二十日のNBCテレビで公然と、アメリカは欧州と並んで日本についても対ソ先制核使用政策、すなわちソ連が通常兵器で日本を攻撃してきた場合でも、アメリカは核兵器で対処することを辞さない、抑止の有効性の確保をとっていると述べています。総理は、核攻撃でない通常兵器の攻撃に対しても、米軍が核兵器を先に使うということをお認めになるのですか。
  269. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは緊急事態がいかなる事態であるか、日本防衛のためにどの程度必要であるか、そういう諸般の情勢を判断しないと、抽象的には答えられないものであると思います。
  270. 神谷信之助

    神谷信之助君 日本有事の場合でも、日本の領空領内で、非核三原則に基づいて核兵器の使用を事前協議をしてきても、それは拒否をするというのが今日までの政府の答弁。非核三原則を国是とするところの被爆国の総理として、核先制使用まで認めるということは、これは重大な発言で、私は絶対に許すことはできません。核戦争に日本を巻き込まさせないためにはどうしても、そのためには、核戦争をなくそうと思えば核兵器がないことがいい。だから、核兵器の全面禁止の国際協定の締結こそ今必要だというように考える。  ところで、さらに今重要なことは、いよいよ自衛隊が日本を戦場にする危険な方向を強めているということであります。その一端を示すものとして、次に米軍施設の地下化を進めている問題についてお尋ねをしたいと思うのです。  政府が今回閣議決定をいたしました新五カ年計画の要綱に初めて重要施設の地下化、この推進が明記をされました。防衛庁、その目的、理由、それは何でしょうか。これまで地下化された施設の名前と予算額を明らかにしてもらいたいと思います。
  271. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 御承知のように、防衛力を十分に発揮するためには、航空機とか戦車とか、そういった戦闘機能も重要でございますが、例えばレーダーサイトであるとか、あるいは航空基地が使えるように生き残っていることというようなことが非常に重要なわけであります。そういった意味で、我々としては従来から指揮中枢といったような非常に重要な部分については地下化を進めておりますが、この五カ年計画についても引き続きそういったことを続けたいというふうに考えております。  なお、お尋ねの従来地下化されたものはどういうものがあるかということでございますが、例えば防衛庁に六本木にございます中央指揮所、あるいはまたバッジのための指揮所、そういったものを含めまして現在まで十一棟が地下化をされております。
  272. 神谷信之助

    神谷信之助君 防衛庁、あなたのところからもらった資料、これですが、このとおりで間違いありませんか。
  273. 千秋健

    政府委員(千秋健君) 御提出した資料のとおりでございます。
  274. 神谷信之助

    神谷信之助君 今配付をいたしました二枚目の資料がその内容であります。  ちょっとお尋ねしますが、今後これ以上にどんな施設が地下化されますか。舞鶴などの地方総監部も考えておられませんか。
  275. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 今後どういうものを具体的に地下化するかということについては答弁を差し控えさせていただきたいと思いますが、いずれにしましても、従来同様指揮中枢あるいは通信中枢といったものから地下化を進めていきたいと考えております。
  276. 神谷信之助

    神谷信之助君 この施設は、どの程度の攻撃に耐えられる強度、あるいは構造になっているんですか。核攻撃にも耐えられるわけでしょうか。
  277. 千秋健

    政府委員(千秋健君) これら地下部分の構造につきましては、各施設ともほぼ同様鉄骨鉄筋コンクリートづくりの施設でございます。  なお、これがどの程度の攻撃とか、強度を持つかという点につきましては、公表を差し控えさせていただきたいと思っております。
  278. 神谷信之助

    神谷信之助君 在日米軍の上瀬谷、横須賀、横田、沖縄などで、核爆発にも耐えられるような地下司令部の施設や通信施設をつくっていますね。さらに防衛庁は思いやり予算で沖縄に核攻撃に耐えられるF15戦闘機用のシェルターをつくりました。これも沓脱質問で明らかになっています。日米共同作戦の計画を進めるときに、自衛隊施設の地下化に当たって核を考慮していないというようなことは信用できないと思うんです。我が党の調査では、地下の鉄筋コンクリートの厚さは平均約一メートル、さらにその内側に十センチの鉄板が入る。そういう強固なもので、工事関係者の人たちは、核攻撃に備えるものだ、こう言っています。ここに今写真がありますが、見にくいのですが、これは三沢の基地ですね。今ずっと奥深く、地下深く掘っているところです。できたのはこういうやつですね、だから地上には鉄骨だけぐらいしか出ていない。地下深く今言ったような強度のシェルターがつくられています。  だから、これは先ほどもおっしゃったけれども、重要施設、指揮部、つまり通信系統、これが生き残れるようにするんだとおっしゃる。自衛隊員や国民はもちろんその命は保証しない。大変なものだというように思いますが、正直に、この地下化の意図というものをはっきりさしてもらいたいと思うんです。
  279. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) ただいまの御質問は、防衛庁でやっております地下化が核に耐えられるものではないか。あるいは在日米軍のものがそうではないかという御質問でございますが、御案内のように、例えばアメリカの宇宙航空軍のNORAD、これはシャイアンという山をくりぬいてその中にビルが建っておる。しかも、そのビルは大きなばねの上に乗っておるわけでございますが、それでも核攻撃には耐えられないということで、空中に浮かぶ航空機で指揮をするというようなことまで考えておるわけでございまして、ただいま御指摘のあったような一メートルぐらいのコンクリート、あるいは鉄板が入っておるかもしれませんが、そういったもので核攻撃に耐えられるというようには私ども考えておりません。
  280. 神谷信之助

    神谷信之助君 いずれにしろ、日本が戦場になることを想定をして、そして重要施設、司令部や通信施設を保全をしよう、生き残らせよう。しかし、日本がもし戦場になるようなそういう状態に巻き込まれるということは、核戦争に引きずり込まれることはもう明らかです。そういう危険にさらされているということはもう明らかだと思うんです。ですから私は、中期防衛力整備計画の危険な一端を提起をしたわけですが、改めて十八兆四千億円に及ぶこの計画を撤回をすることを要求し、その根源になっている日米安保条約の廃棄を求めるものであります。  次の問題に移りますが、委員長、国鉄の監理委員会の亀井委員長は見えているんですか。
  281. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 亀井委員長は、本日は公務のために、どうしても出席不可能でございます。
  282. 神谷信之助

    神谷信之助君 それじゃ、答弁者がいなければ質問できないですね。
  283. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  284. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 速記を起こして。  本日、神谷君の質疑を終了することにつきましては、先ほどの理事会におきまして各党の意見を聞いて判断したものであります。  亀井参考人出席につきましては、本日公務のため出席できないことは理事会において了承されたところであります。  また、テレビ放送の問題につきましては、既に自由民主党においても去る二日の秦野君の質疑はその大部分を録画放送にゆだねたわけであります。  神谷君質疑を続行してください。続けてください。
  285. 神谷信之助

    神谷信之助君 答弁者がいないじゃないか。
  286. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 続けてください。  速記をとめて。    〔速記中止〕
  287. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 速記を起こして。  神谷君、質問を続行してください。
  288. 神谷信之助

    神谷信之助君 きょうは亀井さんがお見えになってないんですから、あすまだ予算委員会あるので、あしたはぜひ必ず出席をしてもらって、国鉄問題についての質問はあすに延ばしてもらう。質問をするのに答弁者がいないというようなばかな話はない。お伺いしたいと思いますね。
  289. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  290. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 速記を起こして。  重ねて神谷君に申し上げます。質問を続けてください。
  291. 神谷信之助

    神谷信之助君 それじゃまず亀井委員長に聞きます。  答申の内容、まず述べてください。——だからあしたにやればいいじゃないですか、亀井さんにあした来てもらって。
  292. 棚橋泰

    政府委員(棚橋泰君) 亀井委員長にという御質問でございますが、亀井委員長、現在不在でございますので、もし必要でございましたら、私、答申の内容につきましては御説明申し上げます。
  293. 神谷信之助

    神谷信之助君 答弁にならぬ。あれで答弁になりますか。あんなの答弁になりますか。
  294. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 神谷君に申し上げます。  本日の理事会において、亀井委員長はきょうは公務のために欠席、したがってきょうは出席することは不可能でございます。このことは理事会で合意を得、承知していることでございますから、亀井委員長に対する質疑は、きょうはこれはできないことになっておることを御了解願います。
  295. 神谷信之助

    神谷信之助君 だから、それならば亀井委員長に対する質問は明日御出席をいただいてやらしていただきたい。
  296. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  297. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 速記を起こして。  時間が経過いたしましたから、神谷君、質問を続行してください。
  298. 神谷信之助

    神谷信之助君 百十三年間の国鉄の歴史を大きく転換をするというような重要な答申を出した責任者に私は何もきょう出てこいと言っていない、あしたでもよろしいと言っているんだから。それが出てこないということがわかりながら、答弁者はいないままで質問をやれ、やらなきゃ質問権の放棄と言うぞ、脅迫をしてまでやる。私は絶対に許すわけにはいかない。しかし、国民の前に今度の国鉄の分割・民営がいかにでたらめなものであるかということをはっきりさせなきゃならぬ。だから、私は大きな怒りをもってこれから質問をします。  国鉄監理委員会は、分割・民営になったらサービスはようなるとか運賃は交うなるとかまさに夢のような期待を国民に振りまくっています。しかし、国鉄が六つに分割をされて二社以上にまたがるような列車、これの運賃は今より高くなることははっきりしておると思いますが、いかがですか。
  299. 山下徳夫

    国務大臣(山下徳夫君) 遠距離運賃の逓減、いわゆる通算制を採用してまいりますので、分割したからといって決して高くなることはございません。
  300. 神谷信之助

    神谷信之助君 国鉄総裁、仁杉総裁らが首を切られる直前に、監理委員会に対して分割問題についての国鉄としての意見書を出したでしょう。今指摘したこの運賃問題についてはどういうように言っていますか。
  301. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) 監理委員会に対しましては、実務者としての国鉄の立場からいろいろと御意見を申し上げております。今御指摘の運賃問題につきましても問題の提起をいたしたところでございます。
  302. 神谷信之助

    神谷信之助君 中身はどうです。
  303. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) 分割会社の相互に運行する場合におきます運賃の問題につきましては、これがダブるというような形の併算制というようなものがとられますと、遠距離逓減制、遠距離に行きますと安くなるというようなそういうメリットが失われるのではないかというような問題を提起したところであります。
  304. 神谷信之助

    神谷信之助君 併算制に向かうことは必至であり、分割前に比べて旅客が負担する運賃が割高になることは避けられない、これが答弁の趣旨でしょう。意見書の趣旨です。
  305. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) その後、私ども慎重に検討し、また監理委員会も検討しました結論といたしましては、移行当時の運賃は現在のまま移行する、それから将来にわたりましても通算制の工夫をすることによりまして従来と同様な運賃制度が維持されるというふうに考えておるところでございます。
  306. 神谷信之助

    神谷信之助君 意見書を出したのが六月の二十日です。翌日首を切られたんです。首を切られたとたんに今度は意見が変わる。こんなこと国民が信用できますか。  そこで、監理委員会、あなた方の答申の百四十三ページには分割時は通算制、その後は協議したら対処は可能だ、こういう答申でしょう。
  307. 棚橋泰

    政府委員(棚橋泰君) 監理委員会の意見書では、分割をしたから併算制になって高くなるということはない、通算制は技術的に可能であるというふうな解説が加えられております。  将来の運賃体系につきましては、先生御指摘のように、それぞれ民営会社になりますので、独自の判断というのはございましょうけれども、政府といたしましては監理委員会のこのような御意見の線に沿って処理をしていきたいと思っております。
  308. 神谷信之助

    神谷信之助君 今のは政府の答弁だよ。監理委員会の答弁。まあ政府の答弁としてはいい。監理委員会の答弁を言っているんだ。監理委員会を代表できるのか、あんた。
  309. 棚橋泰

    政府委員(棚橋泰君) 監理委員会の意見書にはかように書いてございますということを申し上げました。
  310. 神谷信之助

    神谷信之助君 だから、監理委員会そのものは答弁をしていないんだ。できないでしょうが、監理委員会の答弁はできないでしょう。
  311. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 運輸大臣やりますか。
  312. 神谷信之助

    神谷信之助君 いや、運輸大臣でも監理委員会と違うんだ。  こうなるんですよ。分割をしたときはとりあえず通算制でいきます、今までどおりです。それから後は各社勝手です。併算制になるかもわかりません。商うなるでしょう。それはそうだ、亀井さんは私鉄並みにやってもらうと言うんだから、私鉄は高いんだから、みんな上がるんだ。総理、そうでしょう。
  313. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今は私鉄の方が安いんじゃないですか。
  314. 神谷信之助

    神谷信之助君 安いのは一部だけですよ、何にも知らぬ。よそは全部高いんだから。いいかげんなこと言うな。ほんの一部ですよ。山手線でも、京阪神でも、ほんの一部ですよ。
  315. 棚橋泰

    政府委員(棚橋泰君) 私鉄と国鉄の運賃は、会社の態様によって、国鉄が高いところもあり、私鉄が安いところもございます。
  316. 神谷信之助

    神谷信之助君 地域で圧倒的に高いのは私鉄。いいかげんなことを言うな。  それじゃ聞くが、区間で言うたら、全線営業キロで言うたらどれだけや、言ってみい。高いとか安いとか言ってみい。
  317. 棚橋泰

    政府委員(棚橋泰君) 先ほどの答弁で若干言い間違えまして、私鉄が高いところもございますし、安いところもございますということでございます。  それから、私鉄の全体の営業キロの中で国鉄より高いのが何キロで、安いのが何キロか、ただいま資料の持ち合わせがございません。
  318. 神谷信之助

    神谷信之助君 圧倒的に営業キロでは少ないんだ。首都圏とか京阪神とか、しかも一部ですよ。区間によって違うんだ。  そこでさらに、監理委員会は運賃アップについてどの程度見込んでいますか。監理委員会おられますか。
  319. 棚橋泰

    政府委員(棚橋泰君) 監理委員会の意見そのものの中には、運賃を何%上げるとか、そういうような数字はございませんが、それに必要な参考資料というものを公表いたしております。その中には若干のパーセントの値上げが見込んでございますが、通常で見込まれる程度の値上げを見込んでおるというふうに聞いております。
  320. 神谷信之助

    神谷信之助君 具体的に言いなさいよ。
  321. 棚橋泰

    政府委員(棚橋泰君) 監理委員会の数字では、収入にいたしまして、五十九年度実績を見込みとして六十年度予算で三・二%、六十年度から六十二年度に二・八%という増収を見込んでおります。
  322. 神谷信之助

    神谷信之助君 正直に答えないんだ。北海道、四国、これは平均五%、九州は四%、本州の三社が三%、毎年値上げするんですよ。そういう計画じゃないか。  それじゃ、どの程度の運賃水準にしようということで、その根拠は一体どこに求めていますか。
  323. 棚橋泰

    政府委員(棚橋泰君) ただいま監理委員会の事務局が参りましたので、事務局の方から答弁をいたさせます。
  324. 林淳司

    政府委員(林淳司君) ただいま運賃水準についての御質問でございますけれども、六十年度の現在の運賃水準に対しまして、私どもの計算といたしましては、六十二年度の分割・民営化の時点で実収二・八%の増収を見込んでおるということでございます。それからその後、六十二年度から六十六年度まで、この五カ年間の収支の見通しを立てておりますが、その計算におきましては大体年率三ないし五%程度の運賃水準というもののアップを見込んでおります。
  325. 神谷信之助

    神谷信之助君 その根拠は一体何や。
  326. 林淳司

    政府委員(林淳司君) 運賃水準の今後のアップの見通しというものについての根拠でございますけれども、私どもといたしましては、今後分割された会社が具体的には昭和六十五年度を一応のめどにいたしておりますが、将来的には私鉄並みの運賃水準に近づくということを前提に考えておりまして、私鉄並みの運賃水準というものを、具体的に輸送密度から回帰をして、そしてその計算をしたわけでございます。
  327. 神谷信之助

    神谷信之助君 それでは運輸省に聞きますが、輸送密度八千人以下の全国九十本の国鉄ローカル線、この中には京都の宮津線、小浜線、舞鶴線も入っているのですが、これらの国鉄運賃と同じ密度の全国私鉄の平均運賃はどれくらいか、十五キロでいいですから、普通運賃と通勤定期と高校生の通学定期、これで示してください。
  328. 棚橋泰

    政府委員(棚橋泰君) 先生、十五キロということでございますので、国鉄の地方交通線運賃は二百円でございます。それからそれに相当いたします乗車密度千五百人以上八千人以下の私鉄の三十一社の単純平均をいたしますと、民鉄が四百五十円でございます。以下、定期につきましては、国鉄が六千円、民鉄が一万七千四百円、通学につきましては国鉄が五千七百三十円、民鉄が一万一千四百円でございます。
  329. 神谷信之助

    神谷信之助君 ちょっと資料を。    〔資料配付〕
  330. 神谷信之助

    神谷信之助君 今十キロ、十五キロ、二十キロ、お配りをいたしました。そのうち十五キロについての答弁を求めたわけでありますが、大体二倍から三倍高いわけです。そういう状況です。十五キロですと約三倍というところも出てきます。しかも私鉄の場合は、これから六十五年に向けて監理委員会の方も二、三回の値上げを予想しています。だから六十五年の間に二、三回値上げを私鉄はするので、それに到達をするというわけですから、結局二・五倍から四倍の値上げになるということになりますが、いかがですか。
  331. 林淳司

    政府委員(林淳司君) 先ほど申し上げましたように、年率にいたしますと三ないし五%程度の値上げ率でおさまるという計算でございますが、先ほど私鉄並みの運賃水準というものを計算のベースにしておるというふうに申し上げてございます。ただその場合、個々の具体的な線区ごとに、輸送密度の高いところあるいは低いところそれぞれごとにそれと同じ水準にするということでは決してございませんで、それを計算のベースにはいたしますが、それを全体として平均いたしまして会社全体としての値上げ率をその計算によって出したということでございます。したがって、会社全体の平均値上げ率でございますので二倍とか三倍とかいう数字には決してならない。年率で申し上げて三ないし五%程度の値上げでおさまる、こういう計算でございます。
  332. 神谷信之助

    神谷信之助君 首都圏とか大都市圏の私鉄とローカルの私鉄と一本にはなっていないのだから私鉄並みというのはその地域地域に競合するわけでしょう、自由競争。そうはならないし、少なくとも割引率というのは今まで国鉄の方が大きいわけだ。これは私鉄並みになったら上がることははっきりしている。だから、通勤労働者や学校へ通う子供たちの運賃はべらぼうに高くなるということになるわけだ。そうして、民営化すれば企業の採算性を要求いたしますから、結局運賃を値上げしても採算がとれなけりゃ線路をめくるというだけの話でしょう。まさに国民に犠牲を強いるものと言わなきゃなりません。  そこで、総理にお伺いするのですけれども総理は第二次の佐藤内閣時代に運輸大臣をなさっていましたが、その昭和四十三年の十一月一日に国鉄財政再建推進会議意見書を出しています。どういう背景のもとで、またその内容の中心点は一体何でしょうか。
  333. 山下徳夫

    国務大臣(山下徳夫君) 国鉄の財政再建推進会議は、当時国鉄の財政が非常に悪化いたしまして、そのままでいくともうやがて償却前に赤字を生じるというような情勢にかんがみまして、そういう措置をとられたわけでございますが、この部分につきまして四十三年の四月の閣議の了解に基づいてこの会議が設置されましたわけでございます。  なお、同会議は四十三年の十一月に運輸大臣に対し意見書を提出されておりますが、その意見書では、将来にわたり鉄道が果たすべき役割を展望しながら十カ年を再建期間とし、その後半において逐次償却後黒字に転ずることを目標に、緊急策と抜本策の両面を実施することを内容として提言が行われたのでございます。
  334. 神谷信之助

    神谷信之助君 具体的に設備投資額はどれくらいに抑えると言いましたか、あるいは新幹線はどうするということですか。
  335. 棚橋泰

    政府委員(棚橋泰君) この計画は当時十カ年計画でございますが、十カ年計画におきますこの推進会議意見書によります設備投資額が三兆七千億、新幹線につきましては特に区分はしてございませんが、都市間旅客輸送(山陽新幹線の建設を含む)といたしまして一兆二千六百億ということになっております。
  336. 神谷信之助

    神谷信之助君 結局、国鉄の財政が破局寸前だからということで、今の意見書を翌年の九月の閣議決定で確認をいたしました。ところが三年後田中内閣時代、総理通産大臣のときですね、突如としてこの設備投資額を三倍に膨らまして十兆五千億、こう変えました。それはなぜでしょうか。当時大臣だった総理いかがですか。
  337. 山下徳夫

    国務大臣(山下徳夫君) 四十四年の九月に閣議で決定いたしました日本国有鉄道の財政の再建に関する基本方針、これに基づく再建対策により各種の施策が行われたわけでございますけれども、その後のモータリゼーションあるいは予想以上の過疎が進んでまいったというようなこと、さらに石炭等の一次産品が非常に減少したという社会の構造その他のいろんな変化が起きまして、これに国鉄が対応し切れなかったと、そういうことで収支が一段と悪化いたしました。  このような事態に対処するために、四十八年二月に「日本国有鉄道の財政再建対策について」というものを閣議了解いたしまして、これに基づいてさらに新たな対策を講ずることにしたのでございます。この新たな再建対策におきましては、再建期間を改定するとともに、助成対象の拡大、そういうことをやって国鉄の再建を図ろうということにしたものでございます。
  338. 神谷信之助

    神谷信之助君 だから、投資額は三倍にふやしたんでしょう。
  339. 棚橋泰

    政府委員(棚橋泰君) 当時の閣議決定の中に「国の助成」という欄がございまして、その中で「再建期間中の日本国有鉄道の工事費は十兆五千億円とし、その工事に要する」云々について助成を行うということになっております。
  340. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 内藤君から関連質疑の申し出がありましたので、これを許します。内藤功君。
  341. 内藤功

    ○内藤功君 結局「日本列島改造論」が原因なんじゃないですか。  国鉄に伺いますが、田中角榮元総理の「日本列島改造論」という本がありますが、この中で、昭和四十五年から昭和六十年までの十五年間に国鉄の見通しをどのように書いておったか、これを伺いたい。
  342. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) この「日本列島改造論」におきましては、昭和四十四年度に比べまして、貨物の総輸送量では昭和六十年度に約四倍程度になるという見込みを立てております。そのうちの国鉄のシェアにつきましても、それと同等以上の伸びを示すというふうに見込んでおるところでございます。
  343. 内藤功

    ○内藤功君 昭和四十八年二月の閣議決定十兆五千億円というのは、結局この「列島改造論」の見通しによったものじゃないんですか。
  344. 棚橋泰

    政府委員(棚橋泰君) 「列島改造論」というものが当時あったということは事実でございますけれども、「列島改造論」に基づいて工事費云々をしたというようなことはなかったというふうに考えております。
  345. 内藤功

    ○内藤功君 当時の自民党の幹事長、その後総理になる人ですよ、これが最大の影響であります。  ところが、世界的な不景気で見通しが狂っちゃった。貨物は三分の一に減ったんです。四倍どころの騒ぎじゃないんです。田中角榮氏と歴代内閣の見通しの誤り、政策の失敗、これが国鉄赤字原因じゃないですか。これは、総理、いかがですか。
  346. 山下徳夫

    国務大臣(山下徳夫君) 昭和四十七年の六月に示されました「日本列島改造論」、これは、それまでの順調な経済成長が持続することを前提に鉄道輸送量を予測して、新幹線鉄道の建設を初め、所要の施設整備を図ることについて記述がしてあるわけでございます。しかしながら、その後、四十八年末の第一次石油危機を契機として、我が国経済の高度成長から安定成長への移行等によりその予測と現実に乖離が生じたものと考えられます。  なお、新幹線が、長期的に見て、国土の均衡ある発展や地域格差の是正に資するものであるという点については、今日においても評価すべきものがあると、かように理解をいたしております。
  347. 内藤功

    ○内藤功君 その新幹線ですが、新幹線を初めとする過大な設備投資を膨大な借入金でやらせた、このことが今日の赤字の最大の原因じゃないですか。総理、これはいかがですか。
  348. 山下徳夫

    国務大臣(山下徳夫君) 新幹線が一つ原因であることは間違いございません。しかしながら、その他いろいろな原因が重なり合って長期債務が生じたということでございまして、これ、一つ一つ申し上げてよかったらまた政府委員から申し上げますけれども、いかがいたしましょうか。
  349. 内藤功

    ○内藤功君 一つ原因だということは認めた。  それでは、先ほどから総理に伺っているんですが、中曽根総理田中内閣の通産大臣でいらしたわけです。どのようにこの責任を感じておられますか、これを伺いたいんですけれども
  350. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、多分当時は、石油危機の対処で油を得るのに懸命の努力をしておったので、とても国鉄の方まで目を回す暇はなかったのではないかと思います。しかし、同じ内閣の閣僚といたしましては、やはりある程度責任は感ぜざるを得ません。しかし、ああいう中近東に紛争が起きて石油危機が起こるというようなことは、ちょっと神様でないとわからないんじゃないかと思います。
  351. 内藤功

    ○内藤功君 政策の見通しの誤りは今の答弁でも明らかであります。私は、国鉄の赤字田中内閣以来歴代内閣の責任ではないか、現内閣としてはどのように責任を果たす考えか、これが今の国鉄問題のポイントだと思うんですね。この点について再度総理の御答弁を求めたいと思うんです。
  352. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 責任を果たすために、監理委員会をつくっていただいて今大改革を行わんとしておるのであります。
  353. 内藤功

    ○内藤功君 そうすると、監理委員会をつくって、その答申を受けてやると、政府の責任のとり方はそれだけとお考えなんですか。
  354. 山下徳夫

    国務大臣(山下徳夫君) 国鉄再建に対する我が内閣の態度は、臨調以来一貫してきております。したがいまして、この「意見」に対しましても、直ちに閣議において、その「意見」の内容を最大限に尊重するという決定をいたしておりますので、この「意見」を最大限に尊重しながら万般の措置をとってまいりたいと思っております。
  355. 内藤功

    ○内藤功君 ほかに責任のとり方はないのかと聞いているんです。
  356. 山下徳夫

    国務大臣(山下徳夫君) 再建監理委員会の「意見」を最大限に尊重するということでございますから、まず私どもは、この線に沿って再建計画をこれから立法化していくということでございます。
  357. 内藤功

    ○内藤功君 膨大な長期累積債務発生の責任を政府としてどうとるのかと聞いているんです。
  358. 山下徳夫

    国務大臣(山下徳夫君) ただいま御答弁申し上げましたように、万般の措置を講じるということの中に長期債務の問題も入っておるわけでございますから、そういう意味において、責任をとって、「意見」に沿った一つの改革をやっていくということでございます。
  359. 内藤功

    ○内藤功君 答申書の中には、幾ら見てもこの政府の責任に直接触れてない。触れてないから政府としてはとらなくてもいいと、こうおっしゃるんですか。
  360. 山下徳夫

    国務大臣(山下徳夫君) 別に、責任という言葉があるないにかかわらず、一貫して私どもやっております真摯なこの再建の態度をごらんになれば、政府がいかにこの問題に対してやっているかということを御理解いただけると思うんでございますけれども
  361. 内藤功

    ○内藤功君 それでは聞きましょう。監理委員会の答申の翌日、七月二十七日の新聞の社説を読みましたか。
  362. 山下徳夫

    国務大臣(山下徳夫君) いろいろ読みました。
  363. 内藤功

    ○内藤功君 例えば朝日です。赤字の大きな責任は政府にあると、財政的な補償をすべきだったと。毎年度の赤字を補てんせず、借入金でやりくりしてきたと。政府は責任を明確にし、財源計画を示すべきだと。これは私は正論だと思うんですね。これは朝日ですよ。東京新聞にも同じような、その他いっぱいあります。正論だと思いますね、これは。総理、運輸大臣、この点いかがですか。
  364. 山下徳夫

    国務大臣(山下徳夫君) 論説をお書きになる方の主観もございましょうし、その方の思想も主義もございましょう。だから、先ほどいろいろ読んだと申し上げました。いろいろの意見がありまして、今あなたはその中の朝日だけを御指摘なさったんだ。
  365. 内藤功

    ○内藤功君 東京もありますよ。今のは正論だと思うけどどうかと聞いているんです。
  366. 山下徳夫

    国務大臣(山下徳夫君) かなり時間が経過しておりまして、朝日の主張がどうだったか、ちょっと私覚えておりません。
  367. 内藤功

    ○内藤功君 じゃ、総理どうですか。正論だと思うかどうかという質問です。もう私は読みました。
  368. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 内藤君立って質問してくてください。
  369. 内藤功

    ○内藤功君 さっき読んだとおりです。巨額の債務の責任は政府にある、財政的な補償をすべきだったと。西欧諸国と違って毎年度の赤字をきちんと補てんせず、借入金でやりくりしてきたことが債務を膨らませ、国鉄の責任をあいまいにして経営破たんを招いたと。監理委員会の意見は触れていないけど、政府は責任を明確にした上で具体的な財源計画を示し、国民の理解を求めるべきだと言っているんですよ。これは正しいと思うがどうだという質問です、どうだ。
  370. 山下徳夫

    国務大臣(山下徳夫君) 今お読みになったつまり巨額な赤字責任、その中にも、さっきから申し上げておりますように、いろんなファクターが入っておるわけでございますね。それを私はさっきから申し上げているんです。ですから、ただ巨額な額だけでもって全部責任とかなんとかじゃなくて、その中にいろんなものが入っている。それに対して私どもは再建計画の中でこれをいろいろと十分考慮しながら最善の策を講じていくということでございます。
  371. 内藤功

    ○内藤功君 総理、この点についてはいかがお考えになりますか。政府の責任はさっき言っただけですか。
  372. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 運輸大臣が答弁したとおりです。
  373. 内藤功

    ○内藤功君 私は関連の時間がなくなりましたので、最後に。  国鉄赤字は政府の責任なんです。これははっきりしているんです。ところが、これを認めようとしないんですね。そうして私は最後に国鉄、運輸省に聞きますが、昭和四十五年五月十二日、十三日、時の参議院運輸委員会で磯崎総裁と橋本運輸大臣が、新幹線建設の財政は国鉄財政と別枠にすべきだと述べている。このことは確認されますね。
  374. 棚橋泰

    政府委員(棚橋泰君) 先生御指摘はたしか全国新幹線整備法の議員提案の答弁の中だと思います。その中ではいろいろな御答弁ございますけれども、運輸大臣に関しましては、当時新幹線全部つくりますと十兆何がし、九千キロというようなものをとてもとても、もうかる線もあろうし、もうからない線もあろうというような中で、国鉄がそういうのをしょうということは無理ではないかというような御質問がございまして、それに対しまして橋本大臣が、そういう点については、それをすべて国鉄にしょわせるということではなくて、何か考えなければならないのではないか、かような答弁をしているというふうに記憶しております。
  375. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) 先生の御指摘の委員会におきまして当時の磯崎総裁は、その前々年の国鉄再建推進会議というのがございまして、その推進会議の条文を引用されまして、山陽新幹線以外の新幹線の建設につきましては、国鉄再建計画と別なものとしてもらいたい、こういうことを答弁しております。
  376. 神谷信之助

    神谷信之助君 いずれにしても、赤字がふえることはもう当時からわかっていたんです。ですから、国会の答弁では、これは今破局寸前の国鉄の財政とは別枠や、こういう国会答弁をしたんだ。ところが、実際は違うんだ。まさに国会と国民をだまして、国鉄の財政におっかぶせて、雪だるま式に赤字をふやしてきたわけであります。  そこで監理委員長に聞きたいんだけれども、おりませんから質問はできない。監理委員長は会社更生法方式でやると言っているんだ。なるほど会社更生法方式は労働者の整理と債権の整理ですよ。労働者の整理の方はぴちっと決めている。債権の整理はほったらかしやないですか。銀行なんかの大口債権者に対して、監理委員会は債権の一部の放棄とか返済の延期とか、利子の切り下げ、こういうものを要求をなさったのかどうか、どうですか。
  377. 林淳司

    政府委員(林淳司君) 私どもの亀井委員長が、国鉄の再建に当たりましては会社更生法のような方式というものも念頭に置きながら進めていきたい、ということを前に申し上げたことがございますけれども、その意味はどういうことかと申しますと、当時、国鉄再建につきましては長期債務が問題であって、この長期債務さえ処理すればあとはうまくいくんじゃないか、こういう御議論が随分ございました。これに対しまして、私ども亀井委員長といたしましては、会社の更生を行う場合には、通常、まずその会社が将来企業として健全にやっていけるかどうか、企業を継続していけるかどうかという見通しを立てる。それがうまくやっていけるという見通しが立った場合には、それに必要な合理化あるいは事業範囲の縮小というふうなことをやる。そういうめどをまずきちっとつけた上で、その上で債務についてどう処理するかということについて、これに手をつける、これが通常の会社更生の手法でありますと。国鉄事業の再建に当たりましても、やはり考え方は同様でございまして、将来国鉄が、国鉄の事業というものが健全に国民に本当に役に立つような、そういう鉄道として継続していけるかどうか、そこら辺の見きわめを立てる。そのために必要な施策はどういうことか、どういう経営形態でやっていけば活力ある効率的な経営が将来継続していけるか、そういう経営形態についてのきちっとした考え方をまとめて、それと不可分の問題として長期債務の問題に手をつける、長期債務をどう処理するか、いわゆる将来の会社の健全性を損なうようなそういう超過債務というものについては別途処理をする必要がある。その辺の計画について十分に検討をする、こういう手法で、考え方でやらないと国鉄事業の再建はうまくいかない、そういう意味で会社更生法を引用して御説明をしたということでございます。
  378. 神谷信之助

    神谷信之助君 だから言っているんですよ。債務の中身を調べて、当然我々に責任ない債務はないのか、特別背任による債務が含まれていないかどうかとか、ちゃんと調べてみないと、政府がつくった赤字をしょわせているんだから、それもごぼっと入れている。それから、銀行なんかの大口債権者には今度はまけてくれ、あるいは延期をしてくれというようなことをやる、それを一遍もやっていないんだ。だから銀行なんかの債権者あるいは資材を納めている人、これは一文も損せぬわけだ。全部あとは労働者の首切りと国民に持てというわけでしょう。これが正体やないですか。  そこで聞きますが、国鉄の全部の用地、これの帳簿価額と評価はどうなっていますか。
  379. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) 国鉄用地の総計は六万六千六百ヘクタール、簿価にいたしまして、これは昭和六十年、ことしの三月末の簿価でございますが、八千九百六十八億円でございます。
  380. 神谷信之助

    神谷信之助君 時価は。
  381. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) この大部分は現に使っております鉄道線路敷あるいは駅舎敷あるいは鉄道林の用地でございまして、現実に使っております関係上これを時価に換算することが非常に難しゅうございます。したがって、それを把握しておりません。
  382. 神谷信之助

    神谷信之助君 五十九年の十月五日の参議院の運輸委員会で岩瀬常務は、中間段階大ざっぱなことですが、約二十兆円、こう言っているんでしょう。
  383. 岡田宏

    説明員(岡田宏君) 先生お話しのあれは五十九年十月五日の参議院運輸委員会における桑名義治委員の御質問だと思いますが、この時点で価額については申し上げておりません。
  384. 神谷信之助

    神谷信之助君 あんたごまかししなさんなよ。大体あの時は、簿価が六千七百億円で中間報告で二十兆だろう、そういう報道があるよと、全然否定はしていない。しかしね、今使っている土地であろうと何であろうと、こういう段階で時価は幾らかという評価は全然なさっていないんですか。
  385. 岡田宏

    説明員(岡田宏君) 重ねて御答弁申し上げますが、桑名義治委員からは、時価約二十兆円に相当していると一部報道されているという御質問がございましたが、それに対するお答えの中で、私がお答えを申し上げておりますが、面積を申し上げておりまして、時価については御返答申し上げておりません。  また、時価については先ほど総裁から御答弁申し上げたように、現在把握をいたしていないという状況でございます。
  386. 神谷信之助

    神谷信之助君 あなた岩瀬さんですか。
  387. 岡田宏

    説明員(岡田宏君) 岡田でございます。  当日の運輸委員会の議事録をお読みいただければ、私が御答弁申し上げたということはおわかりいただけると思います。
  388. 神谷信之助

    神谷信之助君 ところが、ここに昭和五十七年の自民党の国鉄基本問題調査会・国鉄再建に関する小委員会の会議録があります。その四百八十九ページ、そこには、岩瀬常務がこう言っています。帳簿価額が約六千七百億円、時価にして約百倍、七十兆円ぐらいになるでしょう、こう言っているんです。だから、今、六十年価額なら恐らく時価百兆円ということじゃないですか、どうですか。
  389. 岡田宏

    説明員(岡田宏君) 自民党の再建小委員会におきます岩瀬常務理事の御答弁は、今簿価しかはじいていないということを申し上げておりまして、それに対しておおよそ何倍ぐらいになるかという御質問がございまして、その十倍あるいは百倍、千倍というオーダーで申し上げると百倍ぐらいになるのではないかという趣旨で申し上げたというふうに解釈をいたしておりまして、六十兆円とか、そういう額を具体的に申し上げたわけではございません。
  390. 神谷信之助

    神谷信之助君 おっしゃるように、百倍ぐらいになるでしょうと言ってますよ、アバウトで。そうしたら約七十兆でしょう、百倍したら。だから、土地だけでも現在価額ですれば約百兆円からある。ほかに駅舎もあれば車両もある。莫大な資産があるわけだ。長期債務が二十二兆円、その五倍以上の資産はあるわけですよ。  ところで、この百兆円の国鉄の用地、これは国民の共有財産とも言うべきものでしょう、それは一体どうなるのかという問題。ほとんどは分割された民営会社に、時価の百分の一、こう言っている帳簿価額で行くわけでしょう、新会社に。すなわち、ただ同然で新会社にやる。その一方で国民には十七兆円の負担を持てと荷物しょわせる。これは全く話にならぬ、私はそう思うんです。総理一体どういうように思いますか。財界はもうこんなうまい話ないでしょう。総理どうですか。
  391. 山下徳夫

    国務大臣(山下徳夫君) いろいろ数字を並べて御意見を承りましたけれども、私どもは、これからの新しい国鉄をいかにして健全にやるかということからすべて試算をしておるわけでございまして、その結果、今、簿価にすればいろいろ見方が、簿価というよりも、時価にすればいろいろ評価もありましょうが、それ実際鉄道として使うんですからね、売るんじゃないんですから。ですから、それに対してまた適当な借金もしょわしてやるわけでございまして、あなた借金をしょわすことをおっしゃらなかったんですけれども、それは借金もしょわしてやるわけで、そういう一つのこれからの健全なる経営を見ながら、どの程度に評価し、あるいはどの程度の運賃収入があり、それに対してどの程度の借金をしょわすかということを十分計算した上でああいう新しい案をつくっているわけでございます。
  392. 神谷信之助

    神谷信之助君 それじゃここで亀井委員長に聞かにゃいかぬのだけれども、おりませんから国鉄に。聞きましょう。  あの答申では二千六百ヘクタール、五兆八千億円で売るという土地、これ言ってますが、監理委員会から国鉄は具体的にどの場所、それはどの価格、聞いてますか。
  393. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) これから私ども詰めるわけでございますが、事前に監理委員会との打ち合わせにおきましては、基本的な考え方につきまして合意を見たわけでございます。まだ具体的にどの箇所で幾らというふうには聞いておりません。これから詰めさしていただきたいと思います。
  394. 神谷信之助

    神谷信之助君 監理委員会の方は具体的に場所は特定しているんでしょう。
  395. 林淳司

    政府委員(林淳司君) 私ども意見の中で、二千六百ヘクタール、五兆八千億円程度というものについては国民負担軽減のために売却対象にすべきであるということを述べておるわけでございますが、その二千六百ヘクタールという個々の土地については私ども独自の調査を中心といたしまして個別に具体的に把握をいたしております。
  396. 神谷信之助

    神谷信之助君 いいですか、国民にも知らせないし、国鉄にも知らせない、知っているのは監理委員会、亀井委員長が知っているんだよ、どの土地を何ぼで売ろうかということを。ところが亀井さんはどういう身分かというと住友の代表であるし、日経連の副会長でもある。まさにどのように言おうとこの国鉄の土地を財界がうまい汁を吸うためにねらっていることがもう明らかだ。現にこの間からも明らかになっているように住友には発注がずっとふえてきているんでしょう、もうそれは明らかだ。亀井さんが来てからは車両の中心の車軸、これはもうほとんど住友電工じゃないですか。そのほか亀井さんが委員長になってからどんどん注文がふえているじゃありませんか。だから、私はこのように国鉄を分割して民営化して、国民には運賃の値上げでしょう、足らなければ線路をめくる。そして片一方、土地はええとこ取りして、そして新会社もうまいこといかぬかったら採算合わぬところはどんどん土地を売ってしまう、こんなばかな話はない。労働者には首切りだ。断じてこういう国鉄の再建は認めるわけにはいかぬ。我々は国民の暮らしと労働者の権利を守る再建計画を既に明らかにしています。このことを明らかにして私の質問を終わります。(拍手)
  397. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 以上をもちまして神谷信之助君の質疑は終了いたしました。  明日は午後一時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時十八分散会