運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1985-11-02 第103回国会 参議院 予算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年十一月二日(土曜日)    午後二時五十分開会     —————————————    委員の異動  十一月一日     辞任         補欠選任     大河原太一郎君     杉元 恒雄君      宮澤  弘君     石井 道子君      大川 清幸君     原田  立君      中野 鉄造君     中野  明君      佐藤 昭夫君     神谷信之助君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         安田 隆明君     理 事                 遠藤 政夫君                 志村 哲良君                 桧垣徳太郎君                 降矢 敬義君                 水谷  力君                 竹田 四郎君                 太田 淳夫君                 内藤  功君                 伊藤 郁男君     委 員                 安孫子藤吉君                 岩本 政光君                 長田 裕二君                 海江田鶴造君                 梶木 又三君                 梶原  清君                 金丸 三郎君                 古賀雷四郎君                 杉元 恒雄君                 杉山 令肇君                 関口 恵造君                 竹山  裕君                 田中 正巳君                 中西 一郎君                 秦野  章君                 鳩山威一郎君                 林 健太郎君                 宮島  滉君                 上野 雄文君                 久保田真苗君                 野田  哲君                 福間 知之君                 矢田部 理君                 安恒 良一君                 和田 静夫君                 桑名 義治君                 中野  明君                 原田  立君                 和田 教美君                 神谷信之助君                 秦   豊君                 田  英夫君    国務大臣        内閣総理大臣   中曽根康弘君        法 務 大 臣  嶋崎  均君        外 務 大 臣  安倍晋太郎君        大 蔵 大 臣  竹下  登君        文 部 大 臣  松永  光君        厚 生 大 臣  増岡 博之君        農林水産大臣   佐藤 守良君        通商産業大臣   村田敬次郎君        運 輸 大 臣  山下 徳夫君        郵 政 大 臣  左藤  恵君        労 働 大 臣  山口 敏夫君        建 設 大 臣  木部 佳昭君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    古屋  亨君        国 務 大 臣       (内閣官房長官)  藤波 孝生君        国 務 大 臣        (総務庁長官)  後藤田正晴君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (国土庁長官)  河本嘉久蔵君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  加藤 紘一君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       金子 一平君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       竹内 黎一君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  石本  茂君        国 務 大 臣        (沖縄開発庁長        官)       藤本 孝雄君    政府委員        内閣法制局長官  茂串  俊君        内閣法制局第四        部長       工藤 敦夫君        人事院事務総局        給与局長     鹿兒島重治君        総務庁長官官房        審議官        兼内閣審議官   本多 秀司君        総務庁長官官房        審議官      百崎  英君        総務庁長官官房        審議官      米倉  輝君        総務庁人事局長  手塚 康夫君        防衛庁参事官   古川  清君        防衛庁参事官   千秋  健君        防衛庁長官官房        長        宍倉 宗夫君        防衛庁防衛局長  西廣 整輝君        防衛庁教育訓練        局長       大高 時男君        防衛庁人事局長  友藤 一隆君        防衛庁経理局長  池田 久克君        防衛庁装備局長  山田 勝久君        防衛施設庁長官  佐々 淳行君        防衛施設庁施設        部長       平   晃君        防衛施設庁総務        部長       宇都 信義君        経済企画庁調整        局長       赤羽 隆夫君        経済企画庁総合        計画局長     及川 昭伍君        国土庁長官官房        長        吉居 時哉君        国土庁土地局長  末吉 興一君        国土庁防災局長  杉岡  浩君        法務省刑事局長  筧  榮一君        外務大臣官房外        務報道官     波多野敬雄君        外務省アジア局        長        後藤 利雄君        外務省北米局長  栗山 尚一君        外務省中南米局        長        堂ノ脇光朗君        外務省中近東ア        フリカ局長    三宅 和助君        外務省経済局長  国広 道彦君        外務省経済協力        局長       藤田 公郎君        外務省条約局長  小和田 恒君        外務省国際連合        局長       山田 中正君        外務省情報調査        局長       渡辺 幸治君        大蔵省主計局長  吉野 良彦君        大蔵省理財局長  窪田  弘君        大蔵省理財局次        長        中田 一男君        文部大臣官房長  西崎 清久君        農林水産大臣官        房長       田中 宏尚君        農林水産省経済        局長       後藤 康夫君        水産庁長官    佐野 宏哉君        運輸大臣官房国        有鉄道再建総括        審議官      棚橋  泰君        運輸省港湾局長  藤野 愼吾君        気象庁長官    内田 英治君        建設大臣官房長  高橋  進君        建設省河川局長  井上 章平君        建設省道路局長  萩原  浩君    最高裁判所長官代理者        最高裁判書事務        総局刑事局長   吉丸  眞君    事務局側        常任委員会専門        員        桐澤  猛君    説明員        日本国有鉄道総        裁        杉浦 喬也君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○予算執行状況に関する調査派遣委員の報告     —————————————
  2. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 予算委員会を開会いたします。  予算執行状況に関する調査を議題といたします。     —————————————
  3. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 中曽根内閣総理大臣から発言を求められておりますので、これを許します。中曽根内閣総理大臣
  4. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まず、社会党立党四十周年まことにおめでとうございました。  衆議院における合意文書の解釈について私の発言に適切を欠く点がございました。  六十一年度予算編戒を前にして将来の問題として予見できない補正予算の問題を論議することは適当でないと考え、予算編成は十二月云々と申したわけであり、補正予算の問題に言及したものではありません。  私の真意はあくまでも昭和六十一年度の予算に係る編成においても一%枠を守るということであります。     —————————————
  5. 安田隆明

    委員長安田隆明君) それでは、昨日に引き続き、矢田部君の質疑を行います。矢田部君。
  6. 矢田部理

    矢田部理君 我が党の四十周年記念パーティーに昨夜は出席をいただきましてありがとうございました。改めてお礼を申し上げておきたいと思います。  総理から今お話しがありました。私どもとしましては、六十一年度中一%を守ればそれでよいという趣旨ではございません。引き続き一%以内におさめてほしいという強い希望を持っておりますし、また一%以内であればそれでよいというわけでもありません。できるだけ軍事費は削減すべきである、軍縮への道を徹底的に追求すべきであるという立場に立っていることもつけ加えておきたいと思います。  そこで、財政の問題が絡むわけでありますから大蔵大臣に伺いたいと思いますが、大蔵大臣は、この中期防衛力整備計画の策定に当たりまして、所要経費十八兆四千億は言うならば上限目標値であって、これを総額支出しますと裏書きをしたわけではない、予算でありますから年度ごとに切っていくというふうに申されているわけでありますが、年度ごと予算編成に当たっては、大蔵大臣として一%以内を厳しく守っていくという約束はできますか。
  7. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは今御指摘ございましたように上限、GNPの推移は、それは今からこれを予測するわけにはまいりませんが、三木内閣のときの閣議決定に対してはその趣旨は守る、十分尊重して守るということで対応すべきだというふうに考えております。
  8. 矢田部理

    矢田部理君 大蔵大臣ですから、できるだけ財政は支出しない方がいいという立場で物を言われるのと、もう一つ大蔵大臣には立場がございまして、これは安倍外務大臣にも伺いたいと思うのでありますが、今後ニューリーダーとして次期政権をねらうに当たっては、自分の時代は少なくとも一%を守っていくということをここで誓うことはできませんでしょうか。御両者に伺いたいと思います。
  9. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 先のことは、全く私自身の問題はわかりませんが、中曽根内閣閣僚として、閣議で決まりました三木内閣決定のときの趣旨を尊重するということについては、私も閣僚としてこれを守っていかなきゃならぬと考えております。
  10. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 安倍外務大臣答弁と全く一緒でございます。
  11. 矢田部理

    矢田部理君 閣僚としての立場ではなくて、いずれ次期をねらう政治家立場で一言つけ加えることはないんでしょうか。
  12. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今日は閣僚という立場でございますし、閣僚という立場でお答えをしているわけでございますから、中曽根内閣閣僚として、今の総理が申されました、また閣議で決まりました方針を忠実に守っていくというのが私の責任であろうと思います。
  13. 矢田部理

    矢田部理君 もう一点、山口労働大臣に伺っておきますが、これは新自由クラブの幹部としての見解でありますが、たしか私の記憶に間違いかなければ、一%厳守連合の条件にしていたのではないかと思いますが、この点はどんなふうになってしまったんでしょうか。
  14. 山口敏夫

    国務大臣山口敏夫君) 一%論議の中におきましても、自民党の金丸幹事長でございますとか、政府与党首脳会議連絡会議等におきまして一%枠厳守、こういう問題に新自由クラブとしては今後ともこだわっていきたい。したがって、日本安全保障政策日本だけではなくて、日米安保条約を初め自由陣営立場における安全と平和の問題ということでございますけれども、我が国の立場としては政治判断として一%を守るべく今後とも努力をする、こういう必要がある、こういう趣旨で行動しておるつもりでございます。
  15. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 和田君から関連質疑の申し出がありますので、これを許します。和田静夫君。
  16. 和田静夫

    和田静夫君 今の、大蔵大臣財政問題との兼ね合いで若干関連質問をいたしますが、中期防衛力整備計画を「展望指針」が想定する物価上昇率に引き直してみますと、毎年七・九%、約八%で防衛費がふえていくということになります。過去五年間の防衛費を超える伸び率でこうふえていくわけです。ところが、今後五年間の歳出はどう考えても八%なんという伸び率は考えられない。大蔵省の見通しの上限は五%。三%の一般歳出伸び率を想定してもかなり収入不足が見込まれることは間違いないでしょう。一般歳出はせいぜい三%程度を目安として切り詰めた財政運営が今後も強いられると私は思います。  そういう財政事情のもとで七・九%の防衛費を実現するためには、これは防衛費以外の社会保障教育の取り分を削って防衛費に回さなければならぬということになるわけでありますが、この点の認識は。
  17. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに十八兆四千億円というものを上限とすを計画というものを策定し、国会にも御報告いたすわけでありますが、それが今の一つ前提を置いての数値ではこぎいますが、和田さんから今おっしゃいました数値というものが、一つのもちろん前提を置いてではございますが、存在をしたということを前提といたしますと、非常に厳しい財政状態の中においてこれが相当な比重を占めるということは、今の数字を見た限りにおいては私は御指摘のこともうなずけるわけてありますが、毎年毎年の予算の中でぎりぎりの調和を図っていくという基本方針で毎年毎年の予算に対応していかなければならぬというふうに考えております。  さて、それが文教、福祉にどれだけ切り込むか、こういうことになりますと、昭和三十年を基準とする統計とり方もございましょう、過去五年を対象とする統計とり方もございましょう、あるいは三年を基準とする統計とり方もございましょう、それらを総合的に勘案してぎりぎりの他の施策との調和点を求めていく努力というものがこれからの大蔵大臣に課せられた大きな仕事の一つだという問題意識を持っております。
  18. 和田静夫

    和田静夫君 ちょっと繰り返すんですが、仮に三%で一般歳出伸びていく、防衛費が八%で伸びる、そうすると社会保障教育公共事業などなどの諸経費のシェアを食っていくことは、これは間違いないですよ。自治大臣厚生大臣建設大臣、どうですか。
  19. 古屋亨

    国務大臣古屋亨君) 今、和田先生の突然の御質疑がございました。ただ、地方の自治といいますか、そういう点から考えますと、福祉とか教育という問題、特に福祉の問題は地域生活の中心でございますので、私はそういうような調整につきましても、ひとつ十分今後努力をいたしまして、その時代時代における福祉重要性を十分認識しながら、内政の重要性を頭に置きながら自治の問題に当たってまいりたいと思っております。
  20. 増岡博之

    国務大臣増岡博之君) これまで大変厳しい財政事情の中でも実際の福祉水準は落とすことなくやってこられたと思っておるわけでございます。したがいまして、今後もそういう姿勢で何とか工夫をしてやらなきゃならぬというふうに考えております。
  21. 木部佳昭

    国務大臣木部佳昭君) 社会資本の充実は非常に大事でございまして、今日までいろいろ厳しい制約の中にありまして、いろいろ効率的、効果的に配慮しながらやってまいったわけでございますが、今後もそういう点をしっかり受けとめて努力をさしていただきたいと、こう考えております。
  22. 和田静夫

    和田静夫君 大蔵大臣、この大幅な防衛費伸びを見込んで、一体財政再建が可能なんだろうか、一九九〇年までに赤字国債をゼロにすることはできるのか。
  23. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 一般論として申し上げますならば、それはおっしゃいますように昭和六十五年度に赤字公債体質からの脱却を図る、この旗はもちろん我々として今日おろすわけにはまいりません。その中で、今おっしゃいましたようなたとえ前提が置かれたとはいえ、この新計画というものをどういうふうな調和をとりながらそこにはめ込んでいくかというのは、これは確かに私どもに課せられた大きな問題であるという自覚は十分持っております。私どもは、このいわゆる防衛計画基本を達成するという物の考え方と、そしてそのときどきの財政事情の中でどう調和を図っていくかということで、それによって昭和六十五年度赤字公債体質からの脱却がパアになるというようなことがあってはならぬという心構えで対応していきたいと思っております。
  24. 和田静夫

    和田静夫君 そう言われても、今後五年間の一般歳出伸びが五%上限、いいところで三%。八%の防衛費の増額は社会保障などの財源を食っていく、そういうこと。そういう国民生活関連する予算を犠牲にするこの新しい防衛計画、私はこれは新軍拡計画だと思うんですが、そういうような重大な問題をはらむ計画が何のためにやられるのか、政府は納得のいく説明の回避を衆議院以来していると思うんです。防衛庁は当初、五九中業として見積もった十九兆三千億円を要求したと言われています。そうすると、十九兆三千億円で防衛計画大綱が達成されるというわけでしょう。ところが、実際には約一兆円を削られて十八兆四千億円と、こういうふうになった。そうすると、一兆円を削られても大綱水準が達成されるということになる。そうなりますと、政府目標とする大綱水準というのは一体何なのか、さっぱりわからぬのですね。  そこで、この削られた一兆円には何が含まれていましたか。言いかえれば、防衛庁が当初要求していた軍備計画政府計画とは、どこがどう具体的に違うのか、具体的な全貌を示してください。
  25. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 防衛庁が最初策定いたしました五九中業原案と、それから具体的に作成されました政府計画との間の差異の問題でございますが、これは政府部内の調整過程でございますので、いろいろつまびらかにするのはお許しいただきたいと思います。  ただ、その中で私たちとしてを、財政当局が他の諸施策との調和の観点から考えるところも十分お聞きいたしましたし、財政の厳しい中で調達の時期をどのようにか工夫して、できるだけ少ない額でできないか、そういった問題を財政当局とかなり詰めて最終的な結果になったということを御理解いただきたいと思います。
  26. 和田静夫

    和田静夫君 これは理解できないんですよ。  防衛庁長官は、十時間にわたるところの竹下さんの猛抵抗に遭いながら、一時休憩になって出てきたときに、こんなに幅がある、したがって話は煮詰まらなかった、こう言っているわけです。その幅を教えてください。
  27. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 当初私たちが提出いたしました五九中業原案総額とか、そういうことにつきましては、政府部内の調整過程の話でございますので、金額等はお許しいただきたいと思います。  ただ、一つだけ申し上げられるのは、先ほど言いました正面装備におきましては調達の時期などをできるだけ調整できないかということとか、それから特に後方ですね、例えば隊員の宿舎であるとか、それから正直言いますと、パイロットの練度の向上のためにより多くの時間を私たちはいただきたい、こう思っておりまして、こういうことはかなりの経費になるのでございますが、そういうところが大分制限されておるということは事実でございます。
  28. 和田静夫

    和田静夫君 納得できない返答であります。どうしてもここのところは明らかにしなきゃなりませんが、私は関連質問でありますから若干進みますが、新計画の是非を問う前に、この計画政府の論理の土壌に乗っても、私は意味不明ないし欠陥を持っている、そういう指摘をまずして、三年ごとのこのフォローアップということは、十八兆四千億円という数字は何の意味もない。  総理、三年後には新しい計画が立てられる、その時点で十八兆四千億円は消えてしまう。一九八九、九〇年度の防衛費というのはこの計画の拘束を受けないということになる危険性さえあるんです。上限意味が全くなくなることはありませんか。
  29. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 三年後にこれをローリングいたすかどうか、まだ決定したわけではございませんけれども、ローリングをするかしないか、その三年後に検討してみるということを申し上げているわけでございます。そして、仮にローリングいたすことになったといたしましても、その後の二年間につきまして、つまり一九九〇年までの二年間につきましては、現在の政府計画十八兆四千億円の枠の経費を十分踏まえて決定しなければならないと思います。  もちろん、特段に、格別に予見できないような大きな状況の変化ということがあれば別でございますけれども、そういうことがない限り、その経緯は十分踏まえてやらなければならない、そういう意味で限度としての歯どめは十分効いているものだと思っております。
  30. 和田静夫

    和田静夫君 総理
  31. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 加藤長官がお答えしたとおりであります。
  32. 和田静夫

    和田静夫君 十八兆四千億円は上限だとされる。ところが、これは今年度価格実質値ですね、向こう五年間に支出される名目値ではないわけです。そうすると、実質支出されるこの金額はもっと大きくなるわけでしょう。上限だと言いながら、歯どめだと言うのなら、その実際に支出される金額を示していただきたいわけです。
  33. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 実質に支出されます金額という言葉の定義がなかなか私、理解不足でございますが、六十年度の価格で、その後の実質価格で論議して、十八兆四千億円ということでございます。そして、例えばその後これが名目でどうなるのかというような御議論でございますと、幾つかの前提を置かなければなりませんが、数字にわたることでございますので、政府委員よりお答えさせますが、そういう意味でございますでしょうか。
  34. 和田静夫

    和田静夫君 はい。
  35. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) それでは政府委員より前提を置いて答弁させます。
  36. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) お答えいたします。  名目的にどのくらいになるかということにつきましては、今後の物価上昇というものが現状では見通せないということで、正直申し上げてどういう数字になるか申し上げられないというのが正直なところでございます。
  37. 和田静夫

    和田静夫君 いや、だめです、それは。答弁になりません。計画終了時点名目総額を出さなけりゃ、もう話にならぬですよ。それでは大臣答弁と変わらぬ。
  38. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 繰り返すようでございますが、今後の物価がどのように推移するかということは予測しがたいわけでございますから、ある仮定を置かない限り数字は出てこない。  そこで、和田先生の御質問の中に七・九といったような数字が出てまいりました、八%近い数字と言われました。恐らくそれは現在の経済計画、「展望指針」というのがございますが、これは実質で四%ずつ伸びていくと、それに対して名目値は六ないし七%であるということになりますと、その中間値をとりますと六・五ということになろうかと思いますが、それをデフレーターに引き直しますと二・四になると、こういうお話につながるのではなかろうかと思いますが、しからばその二・四になればどうなるかということでございます。  私、手元に今数字を——すぐ取って返って後ほどまたお答え申し上げますが、「展望指針」のデフレーターをそのまま使うということについては、これは五十七年にできておりまして、初年度が五十八年度でございますが、これがようやく先般実績値が出ましたけれども、そのデフレーターは〇・六であったということで、先ほど来申し上げているように、二・四ではなかった、非常に違っておるということで、かくも名目値物価の上昇というものは予測しがたいものであるということをまずお答え申し上げておきたいと思います。  そこで、仮に二・四というデフレーターをそのまま用いて六十年度予算から伸ばしてまいりますと、六十一年度以降の五カ年間の数値は十九兆八千二百億弱という数字になろうかと思います。
  39. 和田静夫

    和田静夫君 ちょっとP3Cを例にとってみますが、P3Cの今年度の価格というのは百十五億円ですね。ところが、過去五年間の値上がり率は一九・五%である。そうすると約二割上がっているんです。これで最終年度の取得価格というのをずっと過去の趨勢を追って計算していきますね、そうすると出るんです。今の数字をはるかに超える。私はそう計算をしますが、ともあれ名目値で抑えなかったならば歯どめにはならない。財政支出の金額としての歯どめにはならぬ。このことをはっきりしておきたいんです。計画終了時点名目総額、そのことを示さなければ上限にはならぬ、このことはもうはっきりしますね。
  40. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) たびたび申し上げるようでございますが、計画を立てる際に物価騰貴等も含めた計画をつくるということは、物価の推移というものがなかなか見通し困難でございますので、従来から実質といいますか、計画を立てた年度の前年度の単価というものを前提にして三次防等をつくっておりますが、いずれもデフレーター等で引き直して、実質どの程度のことが実績になったかということをやってみますと、それが当初計画の枠内に入っておるか、何%ぐらいの進捗率になるかということがわかりますので、その点実質でなければ歯どめにならないというようなことではなかろうかというように考えております。
  41. 和田静夫

    和田静夫君 時間がありませんからあれですが、そこのところはちょっと今までのあれと違うんですね。ここを確認しておきたいのは、いわゆる防衛庁はこれまでも物価上昇率をGNPデフレーターでとってきているでしょう。これはどうですか。
  42. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 今の御質問意味、ちょっと明確に理解できなかったんですが……。
  43. 和田静夫

    和田静夫君 これまでの物価上昇率をGNPデフレーターで防衛庁はずっととってきたわけですよ。そのことは否定されないでしょう。
  44. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 防衛庁がとってまいりましたということはどういうこと……。
  45. 和田静夫

    和田静夫君 使ってきたの、採用してきたの。
  46. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) それぞれ、そのときどきの実現された冬日の伸びとか、そういう政府データはもちろん私たちも使っております。で、将来見通しについてでございますか。
  47. 和田静夫

    和田静夫君 将来見通しについて。
  48. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 将来見通しにつきましては、現在私たち、あり得る政府のものとしましては、「展望指針」の中にあります六から七%、その中間値をとって六・五、これを経済学的にいろいろ、これは私たちわかりませんが、複雑な計算いたしますと経済学的にはそれが二・四のデフレーターになる、これが将来見通しにつきまして政府全体が持っております唯一のものであろうと思います。ただ、過去三年ぐらいの実際のデフレーターが幾らになっておるかといいますと、二・回ほど高くなくて、現在考えられる過去三年の実績値は〇・九と聞き及んでおりますので、今局長が申しましたデフレーター二・四をとって十九兆八千何がしになるというような大きな数字になるか、これはかなり疑問であろうと思っております。
  49. 和田静夫

    和田静夫君 いや、大臣、きょう確認しておきたいのは、次の通常国会に向かっても大変重要ですから、計画終了時点名目総額を示してこそ初めて上限という言葉は生きていく、このことは当然でしょう。
  50. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 計画終了時点におきます名目値が幾らになるかということは、それは今後わからないわけでございます。そして「展望指針」で申しておりますデフレーターは二・四でございますが、現実に実現されておりますデフレーターというものは〇・九になっておるわけでございまして、そういう意味で、これほど大きな差のあることはなかなか政府計画として責任持って、自信を持って言えないところがある。したがって、やはり実質値で議論をすることが正しいのではないか。特に防衛計画のように五年も装備の調達にかかったりするようなものにつきましては、実質値で御議論いただくというのが一番ベースとしては正確な場を提供するのではないか、こう考えております。
  51. 和田静夫

    和田静夫君 あなたは前提を幾つか置きながらそれに基づいて数字をはじき出すと、こう言った。前提というのは幾つかできるわけです。そうして名目総額が出てくるわけです。そういうやり方をしてくれなければわからないではないですか。歯どめにはならぬじゃないですか。
  52. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 幾つかの前提を置きましてというのは、将来のことはわからないけれども、「展望指針」にあります幾つかのそういうデータというもので論ずると二・四になるけれども、それはもう現実に「展望指針」ができました昭和五十八年から現在までの最初の三年間でもデフレーターはそれほど違っているということでございます。したがって、私たちとしては実質値で御議論いただく方が、何といいますか、より安定したものでなかろうかと思っております。
  53. 和田静夫

    和田静夫君 これで時間とるわけにいきませんから論議を後へ延ばします。  ちょっと質問の角度を変えますが、新計画が私は欠陥である第二のゆえんというのはどこにあるかといったら、新規に導入されるところのエイジス艦あるいは次期支援戦闘機、SSM、新戦車、OTHレーダーなどの価格があいまいでしょう。これが非常にあいまい。SSM、新戦車以外はつかみ金でしょう、これ。
  54. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 確かに大ざっぱな金額になっている、より細かな積み上げたものではないというものがその中に幾つかあることは事実でございます。しかし、それはなぜかといいますと、そのシステムを導入するかどうか現在検討中でございまして、それが導入するときになってお互いに積算してそして正確な数字が出るわけです。したがって、なぜそれを現在細かく書かないか、なぜそんなものを入れておくかという御議論だろうと思うんですが、私たちは今後五カ年の整備の方針として可能性があるものを入れておきませんと、やはりいざそれを導入することになったときにいろいろ手続上問題ではなかろうか。したがって、ある程度この五年間の中で装備を考えなければならないものは入れておく。そして、そういう意味で十八兆四千億というのは上限の限度額だと私たちも思っております。
  55. 和田静夫

    和田静夫君 そう言われると、例えばエイジス艦一隻千数百億円する、しかるに期間中の支出というのは三百億円しか見込んでいない。そうすると残りは一九九〇年度以降の後年度負担に送られると、こうなっていますね。そうすると、防衛庁説明資料中にあるところの二兆五千五百億、この中にそれは含んでいるわけですか、いわゆる後年度負担中のエイジス艦、OTH。
  56. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) お答えいたしますが、エイジス艦、先ほど来防衛庁長官お答え申し上げているように、決めておるわけではございませんが、エイジスシステムを仮に採用するにしましても、今回の五カ年計画に計上しております護衛艦九隻、これ以上にそれをつくるということではございませんので、まず土台の九隻の中の何隻かがそういうものにかわるかということであろうかと思いますから、根っこの金は入っているというふうにまず御理解いただきたいと思います。  そこで、仮にその間にエイジスシステムというようなものを付加するということになりますと、当然そのためのお金が別に要ります。それの一部が歳出の十八兆四千億の中にある程度、つかみと申してはあれですが、見込んである。同時に後年度負担も、上限というふうに政府決定はいたしておりませんけれども財政当局の間で後年度負担はこの程度と一応の見積もりを立てておりますから、その中で考えていくということになります。
  57. 和田静夫

    和田静夫君 二兆五千五百億の中に含んでいるわけですか。
  58. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) はい、その中で考えておくということでございます。
  59. 和田静夫

    和田静夫君 そうすると、後方経費の後年度負担は幾らになりますか。
  60. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 後方経費につきましては、御存じのように非常にもう千差万別、たくさんの数のものでございますので、後年度ということで特別に積み上げておりません。
  61. 和田静夫

    和田静夫君 積み上げてもらわなければ論議にならぬ。期間中のこの後方経費の見積もりが非常にいいかげんなわけですから、はっきりさせてもらいたいんです。
  62. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 先ほど申し上げましたように、後方経費というのは非常に幅が広うございますが、大きなものから申し上げますと、一つは施設庁関連経費、これがこの中に入っております。それから研究開発の経費が入っております。さらに金額的に大きなものは修理費が後方経費の枠組みの中に入っております。それから燃料等の油、そういったものが後方経費の中に含まれています。そのほか機材として、教育訓練のためのもろもろの機材、通信等の機材。そうして個別に計算したものとしましては、先ほどちょっとお話が出ましたが、例えばOTHのようなものを採用するとすればということで、これが後方経費の中で個別計上ということで、いわゆる修理費とか油のように飛行時間等に合わせて計算していくというものの以外に個別に積み上げたものとして入っております。
  63. 和田静夫

    和田静夫君 それらの数字は出ないんですか。
  64. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 現段階で決定したものといたしましては、政府間で財政当局政府決定として決めた、ある意味では年度年度の予算にかなり拘束力を持つとして決めたというものは計画に明示された数量だけでございまして、後方関係のもろもろの事業並びに経費につきましては年度でさらに精査をしていくということで、この時点で個々に申し上げることは御遠慮さしていただきたいと思います。
  65. 和田静夫

    和田静夫君 これぐらいのものは資料要求したときにちゃんと資料として出してもいいと私は思うんですが、防衛庁長官、どうですか。
  66. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 重立ったものは御提出していると思いますけれども、特に今御議論ございました後方経費と申しますと、油代であるとか、それから隊員の宿舎をどの程度各年度で直していただけるか、大蔵省から予算をいただけるか。それからその約四分の一程度が修理費でございますけれども、そういうものは各年度年度で違いますし、それから油の値段なんか特に大きく動きますので、ここの段階で将来を見通した細々としたデータはちょっと出し得ないんではないかなと、こう思っております。  重立った項目については資料の中で御提出申し上げていると思います。
  67. 和田静夫

    和田静夫君 後年度負担額がはっきりしないというのは、私は頭金あるいは第二年度の歳出化がはっきりしないということでしょうと考えるんです。要するに正確に見積もられたものではないということだという感じがします。資料要求してもなかなか持ってこない原因はそこにあるんだと私は思うんです。例えば私の場合は二十一日に資料要求して、そして予算委員会の三十日になっても持ってこなかったんだ。本来なら三十日から予算委員会始まるわけだ。一日延びたから間に合ったと、こういう状態になっているんです。したがって、我々に勉強するいとまを与えないような資料の出し方しかしない。しかも全部持ってこない。  こういう状態になっているので、これは防衛庁長官に注意しておきますが、きょうは時間がありませんからやめておきますけれども、要するにこの計画というのは、私はそういう意味じゃ欠陥計画だと思う。例えば一例で言えば、人件・糧食費にしても今後の人事院勧告見込んでいませんね。
  68. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 今後の人事院勧告、ベアがどうなるかということは現在でも私たち見通せておりません。これはだれも見通せないのではないかなと思います。したがいまして、六十年度におきます人事院勧告の出されたそういう状況のもとの計算はいたしておりますけれども、六十一年度以降の問題につきましてはそこは含めようにもできない、そういう状況だったと思います。
  69. 和田静夫

    和田静夫君 要するにこの不明確なものは全部つかみ金になっている。その部分は今後変動で幾らでもふえる可能性がある。したがって、名目値での上限というものを、あなた方の論理を尊重して考えてみても、大切にしなきゃならぬ、確定しておく必要があるんだ、私はそういうふうに考えるんですが、大蔵大臣どう考えますか。
  70. 竹下登

    国務大臣竹下登君) この五カ年計画の中で名目値を確定さすとすれば、今ある数値として申し上げますならば、六ないし七の中間値の六・五と、こういうこと以外にその根拠になる数字はないではないかということになりますと、たびたび防衛庁長官からお答えがあっておりますように、実質上限としておく方がより明確であるというふうに私は思います。
  71. 矢田部理

    矢田部理君 一%枠問題が議論をされておるわけでありますが、一%突破の最大の問題点は、何といっても中期防衛力整備計画の中で膨大な装備、航空機や艦船等々を調達することにあると思うわけでありますが、その前提として防衛構想あるいは防衛力整備の基本構想などが当然あってしかるべきだと思いますが、これはどうなっているんですか。
  72. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) まず最初にちょっとお断り申し上げたいと思うんですが、十八兆四千億という金額でございますが、確かに大きな金額でございます。しかし、その中で膨大な正面装備という委員の御指摘でございますが、正面装備はその中で約四分の一、二五・何%かでございます、今回の計画で。したがいまして、防衛関係費といいましても、正面装備のほとんどおどろおどろしいというような感じで世の中の方はごらんになりますけれども、そういった部分はまず四分の一であるということを御理解いただければありがたいのではないかなと、こう思っております。  御質問の防衛構想は、防衛計画大綱というのが昭和五十一年にできました。これは私たち非常に節度のある防衛力を考えておるわけですけれども、そして平時にはこの程度を持ちたいという、そういったものの枠組みの中でできておりまして、言うまでもなく小規模限定的な侵略に対しそれを抑止し、それに対処できるというのが基本的な構想でございます。
  73. 矢田部理

    矢田部理君 そんなことは大綱に書いてあるんで、いまさら説明をいただかなくてもいいわけでありますが、この膨大な買い物計画を立てるに当たっては生活設計があるわけでしょう。生活設計や自分の家の将来展望を持たずして、あるいはそれを出さずして、電気製品が欲しいとか、車が買いたいとか、こういう家具が必要だとかということだけを言っていることに実は問題があるわけですね。その前提となる生活設計、防衛構想を明確にしてしかるべきだと思いますが、内容を言えませんか。
  74. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 防衛庁長官がお答えしました点を少し補足して御説明申し上げます。  大綱のことから申し上げなきゃいけませんが、若干長くなって恐縮でございますが、大綱というのは、兵力量につきましては御承知のように平時の警戒監視をする、あるいは教育訓練を滞りなく行う、そういったようなことを中心に兵力量といいますか、防衛力の量を積み上げて大まかな枠組みというものを御承知のように別表で定めております。一方、大綱では、現在の世界情勢から見て、現状では日本は限定的な小規模侵略対処の能力を持つことが一番ふさわしいということを決めておりますので、先ほど申し上げたその防衛力の量的な枠組みの中で、現在我々の周辺諸国で日本を侵略するとすればできるであろう小規模限定という侵略事態というものを想定いたしまして、それに有効に対応し得る防衛力というものを整備するという考え方で今回の五カ年計画はつくられております。
  75. 矢田部理

    矢田部理君 私の質問趣旨を理解していないと思うんですが、大綱があり、その大綱水準を達成するために量的水準といいますか、質的な問題も含めて達成するために今度のあれをつくったと言われるわけですが、これは言うならば買い物計画なんですね。その前提として、私から指摘しますが、統合中期防衛見積もりというものをやることになっている。これはいつだれがつくって、どういうふうになっているのかということを聞いているわけです。
  76. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 統合中期防衛見積もりは、統合幕僚会議原案を作成いたしまして、審議を経て防衛庁長官の御承認を得て決める、こういうものでございまして、これはその作成年度の三年先から五カ年間を対象とした見積もりでございまして、内容は、事柄の性質上、詳しく申し上げることは御遠慮さしていただきたいと思いますが、言うなれば、その時点で我が国周辺の諸国の科学技術の動向はどうであるか、軍備の動向はどうであるかというようなことを踏まえまして、その時点で仮に我が国に限定小規模といいますか、そういったような事態が起きるとすれば、どういう質の、どういったぐいの、どの程度のことが起こり得るか、そういったことを想定する、模索するための作業でございます。
  77. 矢田部理

    矢田部理君 総理、この統合中期防衛見積もり、統中と一般に言われておりますが、これは総理のところには正式に報告はされているんでしょうか。
  78. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私も報告を受けて中身は。ある程度知っております。
  79. 矢田部理

    矢田部理君 大蔵大臣、いかがですか。
  80. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私は詳細には知っておりません。
  81. 矢田部理

    矢田部理君 そこがやっぱり問題なんですね。もともと統合長期防衛見積もり、統長と言っています。それから今の統中があり、そしてそれに基づいて、言うならば買い物計画、防衛力整備のための中期計画が今度できたということになっているわけでありますが、これらはいずれも防衛庁の内部計画長官レベルのものだったのですね。そのうち防衛庁の内部的な予算要求のための資料と言われておった中期業務見積もりだけをつまみ上げて、言うならば政府計画にした。基本になるところの統中、これは大蔵大臣もわからぬと。総理はある程度聞いておりますが、制度上は総理のところまでもいかない。統幕でつくって長官の承認事項になっている。これでは防衛政策の整合性が全くないんじゃありませんか。この辺はどうお考えですか。
  82. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) この点は衆議院でもごく最近、大分御議論いただいた点でございます。統長、統中、こういうものにつきましては、防衛庁の資料でございますが、総理大臣は自衛隊の最高指揮官でございますので、当然のことながら御報告いたしております。  矢田部委員質問の点は、どういった前提に基づいて我が国がどの程度の防衛力整備をすればいいかという、いわゆる能力見積もりの部分についてお尋ねなのではないかと思うのでございますが、そういった点につきましては、国防会議で正確に御報告いたして御審議をいただいているところでございます。
  83. 矢田部理

    矢田部理君 能力見積もりというのは中業一つの分野でありまして、中業の中に事業見積もりと能力見積もりがあって、事業見積もりだけを今度は取り出して政府決定にした。能力見積もりの前提として統合中期防衛見積もり、統中というのがあるでしょう。それが買い物計画に資するためにつくるとなっている。これをやっぱり出してくださいよ。
  84. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 先ほどの私の御説明が悪くて御理解いただけなかったかもしれませんが、統中と申しますのは先ほど申し上げたように、ある時点の世界的な科学技術なり軍事技術あるいは周辺諸国の軍備の動向といったものを中心に見積もる、模索するという作業でございまして、能力見積もりはそれを踏まえて、そういったものを前提とした限定的小規模事態が起きた場合に我が防衛力はどういう点が力的に不足であるか、機能的に足りないものであるか、あるいは量的に足りないものであるか、そういったことを検討しまして、そしてその部分について中期業務見積もり、事業の方、今回で言えば政府計画の事業という形でこれをお願いして、それにその必要性を御説明する段階で、周辺諸国のものについては統中の資料というものを前提とした数値、そしてそれに対応する我が方の能力見積もり、そういったものをあわせ御説明をして、今回の事業の必要性というものについて御審議を願ったわけでございます。
  85. 矢田部理

    矢田部理君 私は出してほしいと言っているんですよ。
  86. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 統中、統長とも私たちの防衛についての考え方、そして私たちがいろんな状況をどう認識しているかという問題を含んでおるわけで、そういう意味で防衛の非常に重要な機密事項になっております。防衛庁の中には幾つか機密の資料があって、それが多過ぎるのではないかというようないろいろな御議論もいただいておりますけれども、しかしその中で最も重要な五指の中に入る資料でございますので、それを提出することはお許しいただきたいと思います。
  87. 矢田部理

    矢田部理君 これは衆議院でもある程度議論をされておるわけでありますが、例えば先ほど申し上げましたように、一家で言えば生活設計みたいなものですね。その生活設計を明らかにしないで、いろんな買い物だけ、こんな物が欲しいということだけ政府計画で出してくる。前提を欠いているわけですね。そして何が必要か、その是非等については財政的観点からも議論をしなきゃならぬ。肝心の生活設計が大蔵大臣のところにも届いていないわけです。言うならば、制度上は統幕でつくって、防衛庁長官の承認事項に基本がなっているわけですね。それに基づいて、今度は買い物計画が出てくる。本当に必要なのかどうか、その是非はいかがか、財政はどうするかということがわからないまま国防会議閣議が行われている。これは少しおかしいんじゃありませんか。国会に出さないだけではなくて、閣僚の前にも出されていないというのが今明らかになりました。これでいいんでしょうか。——いやいや、それは事務方の問題じゃないんだ。閣僚としていいのかどうか。閣僚に聞いているんだよ。
  88. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 統中としての説明を私が受けていないと、そのとおりであります。それらをもとにしたいわゆる能力測定等につきましては、大蔵省はもちろん、国防会議においても十分な説明を受け議論をいたしておる、こういうことでございます。
  89. 矢田部理

    矢田部理君 能力見積もりというのは、その前提として防衛構想とか、その構想に基づいて防衛にいかなる重点を置いて整備していくかという基本が先ほど言った統中なんです。これが皆さんの前に明らかにされていない。もちろん我々には極秘、機密だと言って知らせない。これでは政府自身もコントロールできない、国会はもとよりでありますが。これでいいのかと聞いているわけです。
  90. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 統中そのものですね、その説明を私が詳しく聴取していない。しかし、それをもとにした能力の問題、総合的な防衛のあり方、この議論というものは、これは大蔵当局としてはもとよりでありますが、国防会議において時間をかけ議論をしてきたものである、それが計画そのものになっておる、こういう御理解をいただきたいと思います。
  91. 矢田部理

    矢田部理君 一応というか、事実上の問題としては、防衛構想とか整備の重点などはある程度話題にはなるかもしれません。議論にはなるかもしれませんが、少なくとも制度上は長官どまりということになっているわけですね、この重要な課題、見積もりが。そして、それを前提としてしまって今度は買い物計画だけが出る、その買い物をめぐる能力見積もりだけが出る、あるいは、あなた方の方で知らせられるということでは、大きな情勢把握や基本的な認識が不十分なのではないか。それでは価値判断ができにくいのではないか。その点では政府レベルにすら上がっていない。まして国会に出さないということになったのでは、もともとシビリアンコントロールの前提を欠くんじゃありませんか。その点はいかがですか。
  92. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 統中、統長とも私、防衛庁長官のもとでつくられるものでございまして、私は当然のことながら目を通しておりますし、詳しく説明も受けております。  そこで一方、今回の中期計画をつくる際、ある一日を国防会議全部に使いまして能力見積もり、事業見積もり、両方説明申し上げましたけれども、特に能力見積もりにつきましては丁寧に正確にお伝えいたしました。そしてその背景になる情勢分析等いろいろ今後の中期的、長期的な見通しも説明申しましたけれども、それは統中、統長の中に書かれてあるものでございます。したがいまして、その両方を私は責任を持って、シビリアンコントロールの立場から、こちらにおられます総理はもちろんでございますが、大蔵大臣、外務大臣、通産大臣、科技庁長官それぞれいらっしゃる中で説明申し上げたことをはっきり申し上げておぎます。そこは間違いございません。
  93. 矢田部理

    矢田部理君 閣議の内容や国防会議の内容、これだって全部わかっているわけじゃありませんから、そこはひとつ置いておくとしましても、制度の問題として全体が防衛庁内部でいろいろ議論されてきた、あるいは長官レベルでとまってきたことをごく一部だけ、とりわけ買い物計画だけを引き出して閣議決定政府決定事項にした。そのことのために制度の矛盾ができちゃっていて、事実上説明しているかどうかは別として、説明する義務も正式議題にもなり得ないものになっている。これは非常に整合性を欠きはしないか。少なくとも国防会議なり政府レベルでこれをチェックする機能が果たせないのではないかと、その制度の問題をひとつまず申し上げておきたい。
  94. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 国防会議実質的に全部御報告申し上げておりますし、その点は内容的にはそごはないと思っております。それを手続上どういたしますか、その問題につきましてはまた考えてみたいと思います。
  95. 矢田部理

    矢田部理君 私は、制度というのは整合性がなきゃならぬ。基本的な問題が任意の報告事項になったり、単なる防衛庁長官が、そのときどきの思いつきかどうかは知りませんが、事実上報告したりということであってはならないのであって、この辺の整合性はきちっとしてもらわなきゃ困る。まずそれは第一義的に言えば防衛庁長官でありますし、それから皆さん方閣僚がコントロールの機能を果たすわけでありますが、また最終的には今度は国会が果たすことになる。その国会に対してこれらが全部秘密だということで一切資料を出さないと。衆議院で出したのを見ましたが項目だけです。あんなものでは国会も議論ができませんので、ここで私は統長、統中、それから今度は政府計画、一部は政府計画になりましたが、依然として防衛庁内部の資料としてつくられた能力見積もり、この三点について当委員会にも提出を求めたいと思います。
  96. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) この点は衆議院の段階でも申したのですけれども、これら種類のものは我が方が周辺諸国の能力をどう評価しているかということが基本に大きくあります。それに対して我が方の防衛力整備がどうなっていて、能力がどの程度になっていて、その総体で考えると我が方は、いろんなケースを分けてありますけれども、このケースの場合には能力がこの程度であるとか、それからこちらのケースの場合には比較的しっかりしているとか、ここはかなりまだ立ちおくれていて抑止力として十分かとか、そういったものまで数字を入れて書いてあるものでございます。言うなれば我が国の防衛の手の内を全部明らかに書いてあるものでございまして、その点を資料として出すことはお許しいただきたいと思います。もちろんシビリアンコントロール、そして国会、そしてそういう中において我々がどの程度の防衛についてのデータと情報と考え方を出すかということは、いかなる国でも重要な問題だと思いますけれども、いかなる民主主義国でも先ほど言いましたようなすべてのデータを出している国というのはないものと私たち確信いたしておりますので、その点は委員の皆様にはぜひ御理解いただきたいと思います。
  97. 矢田部理

    矢田部理君 私は防衛庁であれ余り秘密を持っちゃならぬと思うのでありますが、一切出さない、基本的な考え方も秘密にしてしまう、ちょっとした資料でも今出さないというふうに防衛庁はなっているわけでありまして、この点は単に手の内とかなんとかじゃなくて、情勢認識とか、それから防衛の基本構想とか重点的な整備構想とかということぐらいは、これは出すべきだと思うんです。出さなければ論議の前提を欠く、シビリアンコントロールの基本を欠くというふうに思うわけですが、もう一度答弁を求めます。
  98. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 世界の諸国の中で一国の防衛問題につきまして、これほど精緻に御議論いただいているという意味では、私は日本は比較的オープンの国ではないかなと、こう思っております。それで、そういう中で私たちも我が国の防衛についての国民の意識のこともありますのでできる限りお出ししておりますけれども、先ほど言いました資料は、その性格上つまびらかにすることは国の防衛上またいろんな意味での抑止力の面からかえって逆効果になるんじゃないかなと思っております。ただ御議論でございますので、総理衆議院の段階でも申しましたけれども、私たち、できる限りの、輪郭みたいなものはできる限りお出しするということでおりますので、その限度で御理解いただきたいと思います。
  99. 矢田部理

    矢田部理君 もうちょっと具体的に言ってください。できるだけ出すというのはどの程度、どういうことを考えておられるのか。
  100. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 衆議院段階で輪郭につきまして提出いたしておりますけれども、それが私たちのできる限度でございます。
  101. 矢田部理

    矢田部理君 あんなものは見出しを書いて出しただけの話であって何の役にも立たない。ほとんど資料としての意味をなさない。それでは私もちょっと納得しかねますので再度求めておきます。
  102. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 防衛につきましていろいろ御議論をいただく場として衆参それぞれに安保持がございます。そういう安保特別委員会の中でこういった防衛についての議論を進める際、それと私たち政府の提出いたします資料との関係を御議論いただければありがたいと、こんなふうに思っております。
  103. 矢田部理

    矢田部理君 ちょっと納得しかねます。
  104. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  105. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 速記を起こして。  矢田部君要求の資料につきましては、その取り扱いを後刻理事会でこれを協議する、こういうことにいたしますので御了承願います。  引き続き質疑を行います。
  106. 矢田部理

    矢田部理君 防衛庁はどうも手の内とかなんとか言って実際はその膨大な秘密資料を抱え込んでしまっている、我々にも知らさないのが実態であります。そこで防衛庁関係の秘密というのはどのぐらいあるか説明をいただきたい。
  107. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 防衛庁関係の秘密は大きく分けまして二つございまして、一つは防衛秘密といいましてアメリカの方からいろいろ提供されておる秘密の関係、それからもう一方は我が方独自の秘密ということになりますが、件数にいたしまして防衛秘密の場合約五千五百件弱でございます。それから防衛庁秘につきましては約十二万二千件ということになっております。
  108. 矢田部理

    矢田部理君 点数にすると何点ぐらいになりますか。
  109. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 点数と申しますのは部数になると思いますが、図画等であれば部数でございますが、防衛秘密が十一万六千、庁秘が百三十五万点ぐらいになります。
  110. 矢田部理

    矢田部理君 また長官から伺いましょうか。百五十万近い秘密を抱えておるんですよ、点数にすれば。件数にして十八万ぐらいでしょうか。これでいいんでしょうか。
  111. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 百五十万というようなことになりますと大変多いようにお聞き及びだろうと思うんですが、それは一つ一つの書類にコピーをとったりしますと番号をつけてそれも全部点数に入っていると思います。したがいまして、その内容につきましてはこれからいろいろ検討はしてみますけれども、それからまた役所のことですから比較的多いということもあるんだろうと思いますけれども、しかし私たちとしては防衛につきましては例えば装備品の部品の構造、パーツのあり方そのもの一つが、諸外国がそれを大変欲しがる機密ということは最近の事例でもよくあることでございますので、防衛について機密が多いということはある程度性格上仕方のないことなのではないかなと、こう思っております。
  112. 矢田部理

    矢田部理君 百五十万点という物すごい膨大な秘密に囲われている防衛庁。そして我々が資料要求してもほとんど応じない。そして今度は手の内だとか大事だとか言って持ってもこない。これでは論議ができないじゃありませんか。国家機密法が問題にされておりますが、こんな膨大な秘密を守るための法律として出てくるとしたらこれは大変なことになります。  外交秘がもう一つ問題になるわけでありますが、外交秘というのはどのぐらいの件数、どのくらいの点数あるでしょうか。
  113. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 外交関係の機密とか秘密とかいろいろあるわけでございますが、今詳細を直ちに御説明申し上げさせていただきます。
  114. 渡辺幸治

    政府委員(渡辺幸治君) お答えを申し上げます。  外務省の場合、文書で極秘ないし秘というのがございます。その中で在外公館から参ります電信、あるいは本省から在外公館に送ります電信で大体年間二十七万ございまして、その中で極秘が五千、それから秘が大体八万でございます。
  115. 矢田部理

    矢田部理君 今、年間の数量を言われたが、今抱えている外交上の秘密というのは累計ではどのぐらいあるんでしょうか。
  116. 渡辺幸治

    政府委員(渡辺幸治君) 御指摘のとおり、私が今御紹介いたしましたのは年間の数字でございまして、累計といたしますと過去数十年にわたる外交文書で公開されていないものということで、概数を持ち合わせておりません。
  117. 矢田部理

    矢田部理君 正確にはともかくとしても、概数でどのぐらいありますか。
  118. 渡辺幸治

    政府委員(渡辺幸治君) 委員御理解いただけると思いますけれども、外交文書については二十五年ないし三十年ということで外交文書の公開の作業を行っているわけでございますけれども、二十年、三十年に至るまでの外交文書の秘あるいは極秘の指定解除という作業は行っておりませんので、その概数については把握していないというのが実情でございます。
  119. 矢田部理

    矢田部理君 外務省ですら数も把握していない、まして内容も余りわからない可能性が強いわけでありますけれども防衛庁が百五十万点も持っている、外務省は年間相当量の外交秘ができる、これを国家秘密法で囲うということになるとこれは大変な秘密国家になるんじゃありませんか。外交秘のごときは、これは自民党の専門の有馬さんの話でありますが、外交秘というのは法的限定が難しいから、スパイ防止法、括弧つきでありますが、国家秘密法の中に入れるのはやめたと、ついせんだってまで言っておられた。これをまとめて今度は国会に出された、衆議院の方に提出された。これは大変なことなんじゃありませんか。総理、どう思われますか。
  120. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 前から申し上げておりますように、日本はスパイ天国と言われるぐらいにいろいろスパイが暗躍して、もろもろの事件が起きて、防衛庁の内部にまでも関係者が出たということは我々が経験したところでございます。そういう意味で、民主主義国家で国家秘密あるいは防衛秘密、外交秘密というものに対するある程度の防護措置のない国という国はないと思うのであります。しかし、日本は過去の経緯にかんがみまして、基本的人権やら、あるいは報道の自由、取材の自由というような面も考えまして、この問題はよほど慎重にやる必要があると、そう考えて、自由民主党におきまして長い間いろいろそれも検討してきたところで、一案がまとまりましたので国会に提出しているところでございます。しかし、これはいろいろの御批判もありますし野党のお考えもございますから、こういう点につきましてはよく各党間で話し合いましてそして調整して、できたらできるだけ早く立派なものをつくって国家の秘密を守りたいと、そう考えておるところでございます。
  121. 矢田部理

    矢田部理君 私どもは断固反対なんですね。かつて刑法改正草案でもこの種の外交上、防衛上の秘密探知罪が問題になったんですが、構成要件の特定が難しいということで削除をしました。それが再びよみがえった形で、しかもそれは膨大な秘密を囲う。先ほど外交上の秘密の問題でこれはちょっと原典を失礼しましたが、出典は自民党の出したスパイ防止法一問一答で、内容が特定しにくいからやめたと言っている。それを今度は死刑を含む重罪で処罰をする態勢で秘密を守る、これはとんでもない話なんですね。有馬さんの話を先ほど引用しましたが、それは死刑の方で、死刑ではとても国民が納得しないだろうということすら前から言っておられるわけですね。その点ではこれは撤回すべきだと思います。  いずれにいたしましても、防衛庁を含めて外務省も大変な秘密を抱えている、秘密の中身すら、点数すら掌握できないほど秘密を抱えている。こんな秘密国家ありませんよ。それを今度の秘密保護法で囲う、国家秘密法で守るということは断じて許すべきではないと思いますが、その点強く要望しておきたいと思います。  そこで、次の質問に入りますが、シーレーン防衛というのが今度の中期防衛力整備計画では一つの大きなポイントになっておるわけでありますが、このシーレーン防衛というのはシーレーンの制海権の確立を目指したものでしょうか。
  122. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 私必ずしも制海権という意味を把握しておりませんが、制海権というのは従来ともすれば、ある海域というものをかなり常続的にそこを支配するといいますか、そこにおいて一方的な力を発揮するというようなことであろうかと思いますが、シーレーンの防衛と申しますのは累次申し上げておりますように、我が国の国民の生存を有事に確保するため、あるいは日本が有事の際に継戦能力を維持するために船舶の安全を図る、そのためには海峡なり港湾の防備、あるいは周辺海域の哨戒、あるいはまた護衛等、そういった各種の作戦によって、そういう累積効果によってその種船舶の安全を図る、そういった意味全般を含んでいる考え方というように考えております。
  123. 矢田部理

    矢田部理君 あなたが言われるような制海権を目指したものではないということですか。
  124. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) かつて言われておったような制海権というものを目指したものではございません。
  125. 矢田部理

    矢田部理君 防衛庁長官、いかがでしょうか。
  126. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 防衛局長答弁したとおりでございます。
  127. 矢田部理

    矢田部理君 ところが、防衛庁長官はシーレーン防衛は制海権の確保を目指したものだという発言をしたことはありませんか。
  128. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) そう思っていませんからそうしゃべったことはないと思いますけれども
  129. 矢田部理

    矢田部理君 ここに「国防」という雑誌があります。七月号でありますが、ここで阿曽沼さんとあなたが座談会をやっているんですが、アメリカはシーレーン防衛といっても制海権の確立を目指しているのではないか、日本のシーレーン防衛はどちらかというと資源輸送とか海上輸送路の確保とか保護とかということを目指しておるが、その点でアメリカとの考え方の相違があるのではないかという質問に対して、いや、日本側も対潜能力、防空能力を含めて制海権の確保という発想でやってきたのですからアメリカ側との断絶はないとあなたちゃんと答えておられる。どうですか。
  130. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) それはいつごろのインタビューであったかちょっとわかりませんし、その内容を後で見せていただいて、どういうコンテキストで言っているのかちょっと調べさせていただきたいと思います。
  131. 矢田部理

    矢田部理君 どうぞ見てください。(資料を示す)
  132. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 後でこれまたよく調べさせていただきますけれども、私たち立場は先ほど防衛局長が申したとおりでございます。インタビューした後、この原稿はかなり後で来まして、それで十分推敲していなかったと思いますけれども、言葉遣いの中に一部不適切なところがあったらそれは訂正させていただきます。  いずれにいたしましても、私たちのシーレーンの概念につきましては累次国会答弁で申しておりますように、海上交通の安全確保ということでございまして、完全に我が国の周辺で制海権をすべて一〇〇%持つなどということはなかなかできないものであろうと思います。したがって、制海権という概念そのもの自体を私たちもなかなか正確に把握いたしておりませんので、不適切な言葉遣いがあったらそこは訂正いたします。
  133. 矢田部理

    矢田部理君 たまたま間違って言ったのじゃないんですね。アメリカとの違いを厳密に指摘をされて、言葉が走ったとか不正確にとられたというのではなくて、日本も制海権構想でやっているんだからアメリカとの間には断絶、違いはないと明確に言い切っている。これはもう間違いですよ。
  134. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) インタビューで私その言葉を使ったかというのは、私本当にちょっと今意外なんであります。そういう言葉遣い、比較的丁寧に私はしゃべる方のつもりでございますので、そういう言葉は使ったのかなという感じでございますので、後でそのインタビューの経緯は調べさせていただきます。
  135. 矢田部理

    矢田部理君 訂正はするんですか、しないんですか。
  136. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 言葉遣いの点につきまして、インタビューでどういう経緯の中でそれが出たのか。途中で私がしゃべったことがまとめられたかもしれませんし、それからかなり専門家の方でございますので私の意図をそんたくして書かれている場合もあろうと思います。その辺は、制海権とかシーレーンの概念につきましては、累次ことしの最初から申しておりますように、私たちが今言ったような概念でございまして、制海権がどういうふうな定義をされるのか、その辺も防衛局長が言いましたようにつまびらかでございませんので、その点につきましては後で不適切な言葉があったらそこは整理して直していきたいと思っております。
  137. 矢田部理

    矢田部理君 余りここをそう繰り返し言いたくないんですがね。質問とあなたの答えを聞けば、単に間違ったとか、言葉が走ったとかということじゃないんです。質問と問題提起がそうなっておって、それに答えているわけですから、だからこれはやっぱり取り消すべきだと思いますが、どうですか。
  138. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) インタビューの中で私、制海権という言葉を使ったように思いません。制海権という概念というのは非常に広くてあいまいでございますので、それがもし使われておりましたら、その部分は訂正いたします。
  139. 矢田部理

    矢田部理君 訂正は訂正でいいんでありますが、しかしどうもやっぱり心の底には制海権構想みたいなものを持っているんじゃないか。その上で洋上防空ということになりますと、これは制空権までにらんだ考え方でシーレーン防衛あるいは太平洋防衛ということに乗り出してきているのではないかと思えてならないのであります。  本来はいろんな武器の問題等もやっていきたいわけでありますが、そこで次の問題は、OTHレーダーについて伺っていきたいと思いますが、これは防衛計画大綱が今の防衛のさまざまな計画基本になるわけでありますが、どこに基礎がありますか。
  140. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) OTHレーダーの機能につきましては、我が国の周辺海空域の監視及び哨戒、あるいは情報収集を常続的に実施し得ることということが「防衛の態勢」に書かれておりまして、その種の機能であるというように理解をいたしております。
  141. 矢田部理

    矢田部理君 別表にいろんな購入の数値などが出ておりますが、これはどこに入りますか。
  142. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 先生御案内のように、別表というのは陸海空自衛隊のそれぞれの基幹となる部隊、あるいは主力の装備品の数を書かれておるというものでございまして、御案内のように、例えば情報機能では通信所とか、そういったいろいろなものがございますが、その種のものは書かれてございませんので、それと同様に、仮にOTHレーダーを持つということになりましても、それが別表に書かれるべきものであるというようには私ども考えておりません。
  143. 矢田部理

    矢田部理君 この部隊はどこに配備をされることを検討中なのでしょうか。
  144. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) ただいまの御質問は、仮に今後の検討でOTHレーダーを整備をするということが決まった際にどこに置くかという御質問というふうに理解いたしましたけれども、そうでありますれば、たびたび申し上げておりますように、OTHレーダーというのはこの五カ年の計画期間中に有用なものであるかどうかということを十分検討いたして、その成果によって判断をしようということで、今どこに配備をするということを決めておりませんけれども、御案内と思いますが、OTHレーダーというのは電離層の反射を使うということでございますので、大体五百キロから三千キロぐらいの間が見えるということになりますですね。そうしますと、我が国の周辺の防空あるいは海上防空をするということになりますれば、そのあたりが見えなくちゃいけないということになりますので、かなり日本の本土よりも離れたところ、例えば小笠原諸島であるとか、南西諸島であるとか、そういう島嶼部に置かないと我々が知りたいと思う情報は得られないのではないかなというように考えております。
  145. 矢田部理

    矢田部理君 OTHレーダーについては、地平線や水平線のはるかかなたが見える、三千キロ先まで及ぶと。これは周辺空域の防衛ということ、大綱の思想、物の考え方からいえば、はるかに先が見えると。大綱を逸脱しているのではありませんか。
  146. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) まず最初にちょっと御訂正申し上げたいんですが、私五百キロと申しましたのは、五百マイルでしたので、約千キロから三千キロというふうに御理解いただきたいと思いますが、その際申し上げたように、仮に本土に三千キロ先が見えるものを置くということになりますと、我が国周辺で言えば、例えばシベリアの方が見えるとかそういうことになりますと、ソ連の領土をソ連の航空機が飛んでおるのは当然のことでございまして、その種のことが私どもの防空に役立つと思えませんので、やはり我が国周辺の海域だとか日本領土に近いところが見えなくちゃいけないということになれば、かなり下がったところ、島嶼部に置かなくちゃいけないということを申し上げたところでありまして、決して遠くが見えるから私ども専守防衛の範囲から外れるようには思っておりませんけれども、遠くが見えてもこれは仕方がないといいますか、それが我々の求める情報でありませんので、この種情報は我が国の領土に侵攻しようとする航空機なり、あるいは我が国の船舶が航行している海域に侵出しようとしている航空機を発見するためのものでございますので、それなりの場所に置くのがしかるべきではなかろうかというようにお答え申し上げた次第であります。
  147. 矢田部理

    矢田部理君 防衛計画大綱は、それぞれの部隊なり装備の任務、役割を規定しているわけですね。特に空とか海とかについては周辺空域の警戒監視のために航空警戒管制隊、それから周辺海域の監視哨戒のために固定翼対潜機部隊、まあP3Cなどが予定をされるわけでありますが、それが持てるということになっているのでありまして、その周辺を超えて遠くの先まで見えるようなレーダーを持つことは許されていない。それは越権だというふうに思いますが、いかがですか。
  148. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 大綱に書かれております警戒管制部隊と申しますのは、先生も重々御案内のことだと思いますが、これは航空機の位置を正確に把握をいたしまして、そして我が方の航空機を誘導して要撃作戦を指令をしてやらせる、そういった機能を持つ部隊でございまして、これは全国に二十数カ所あり、かつ一万人近い部隊、そういう航空自衛隊としては非常に基幹になる大きな部隊であるので記述されておりますが、OTHの機能と申しますのは、そういった航空機の厳密な位置を把握し、そして航空機を誘導し管制をするといったような機能とは別の機能だという、もっと大まかな情報をとる機能であるというふうに私どもは理解をいたしておりますので、航空警戒管制部隊とは別のものであるというように御理解いただきたいと思います。    〔委員長退席、理事桧垣徳太郎君着席〕
  149. 矢田部理

    矢田部理君 大綱の示した別表にも記入をされていない、部隊配置も決まっていない、しかも周辺海空域の監視哨戒という限定が全体的にあるのに、それをはるかに超えるレーダーを持つ。これはやっぱり私は大綱上許されないということを第一に指摘をしておきたいのと、どうもこのOTHレーダーというのは制服組の要求よりも政治的な観点から、軍事摩擦、アメリカとの貿易摩擦を緩和するために買う。しかも、このシーレーン防衛、洋上防空の一つの目玉として位置づけるということでも非常に問題があるわけでありまして、これは検討課題にはなっておりますが、この検討はやっぱり取りやめるべきだということを強く要請しておきたいと思います。  それから二番目に、空中給油機でありますが、これはどんなふうに考えておられますか。
  150. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 空中給油機の効用につきましては、随時航空機の性能向上等に伴いまして空中給油機が必要になるという必要性というものが高まっておるということは申し上げておるところでありますけれども、今回の五カ年計画におきましてもまだ空中給油機について十分な私ども研究もいたしておりませんし、引き続きこの五年間を通じてこの問題については研究をいたしたいということで、本件につきましては特に計画そのものに計上ということはいたしておりません。
  151. 矢田部理

    矢田部理君 これにつきましても従来から飛行機の役割を、航空機の役割を飛躍的に伸ばすということで戦略的な意味を持つという意味もあって大変否定的にとられてきたわけでありますが、とりわけこの対地支援戦闘機にF16の採用が一つ候補として上がっているわけですね。このF16と空中給油機が結びつくということになりますと、これは戦略的価値があって大変な脅威を与える危険性も高いわけでありまして、日本の防衛力としてはあなた方の基準でも持つべき限界を超えておるというふうに思いますが、いかがですか。
  152. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 空中給油機につきましては累次御説明申し上げておりますように、これは何も遠くまで行くためにこれを使うという場合もございますし、あるいは滞空時間を長くする、相手方の航空機の性能向上によって低空高速の侵入があるというような場合には事前に空中待機をしてなくちゃいけないというような事態も考えられますので、そういう意味では航空機の性能向上に伴って空中給油機の必要性というものは高まりつつあるということは事実でございます。  もう一つ、FS、対地支援戦闘機との問題についてお話がございましたが、対地支援戦闘機につきましては、今回の五カ年計画では今後いろいろな機種について検討を重ねたいと思いますが、今、先生の申されました問題等も含めて我々検討さしていただきますが、最初にお断り申し上げておきますけれども、仮に対地支援戦闘機の数機と空中給油機があれば、それをもって直ちに専守防衛を超えるというような形には私ども考えておりませんので、その辺は御理解いただきたいと存じます。
  153. 矢田部理

    矢田部理君 理解するわけにはまいりませんが、もともと大綱の思想は本土防衛ということに発しておって、シーレーン防衛という根拠については極めて薄い、いろいろこじつけはしておりますが。そのシーレーン防衛の上に今度は洋上防空をつける。OTHレーダー、F16、P3C、そして空中給油機、エイジス艦と膨大な装備をここに振り向けている、本土防衛から逸脱をした軍事体制をつくる、そしてそれがアメリカと一体となってその一翼を担う、この危険な構想、たくらみこそがまさに一%突破の意味、内容だと私は思うんです。その点で、総理ひとつ、ここは日本のやっぱり専守防衛を超える、大綱をも超える重大な問題でありますので、私はやっぱり取りやめてほしい、どうしても認めるわけにはいかぬということでありますので、最後に締めくくりとして総理からの答弁をいただきたいと思います。
  154. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 我が国の防衛は、何回も申しますように、憲法のもとに個別的自衛権の範囲内で、しかも我が国の防衛自体を目的にして節度のある防衛力を整備しようと、こういう考えで一貫してやっておるつもりでございます。それで、もし外国から侵略があった場合に、限定的小規模のものについては独力でこれを排除すると、それ以上のものについては米軍の支援を得てこれを排除する、そういう考えの基礎に立って整備しておるところでございますが、侵略があるという場合の条件、想定には、やはり日本の輸送船が撃沈されるとか、あるいは必要な継戦能力がそのために阻害されるとか、国民の生活、生存やあるいは産業の運行が重大な危殆に瀕するとか、そういうことまで守るというのがやはり侵略に対抗する力になるわけでございます。そういう面から見ますと、輸送船あるいは輸送船を守る我が国の自衛艦、これらを守るということもやはり本土防衛、国民生活や産業の維持という面に必要になってくるのでございまして、それを無視して我が国の防衛は成り立たないのでございます。そういう意味からも、今のような考えに立って、これは前からそういう発想でやっております。二次防、三次防、四次防、私は四次防を手がけておりましたが、そのころからもずっと続いてきている考えで、輸送船を守るとか、あるいはその輸送船を守る自衛艦を守ると、そういう措置も考えてやってきておるのでございまして、御理解をいただきたいと思うのでございます。
  155. 矢田部理

    矢田部理君 中曽根さんが防衛庁長官時代に四次防原案というのをつくられた。そのころ確かに一千海里防衛論などというのが出て、制海制空を目指すなどという勇ましい発言ども伝えられているわけでありますが、当時の佐藤総理にたしなめられているんですね。専守防衛という観点から見ても、財政負担から見ても、それは少し行き過ぎですよといって、総理長官時代にたしなめられている記事などを随分散見するわけでありまして、そこをやっぱり総理考え直してほしいと思うのです。大綱が持っている思想は小規模限定戦争なんです。広大な太平洋を防衛するとか戦場にするなどという考え方は、そこの思想の中にはないというふうに私は考えております。  時間がありませんから問題を移しますが、今度の中期防衛力整備計画とあわせてODAの政府開発援助について中期目標を立てられましたが、その内容を御説明いただきたいと思います。
  156. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今回のODAの中期目標につきましては、この六十年度でこれまでの五年間の中期目標倍増計画が一応達成をいたしましたので、今後のやはり我が国の国際的な責任、開発途上国に対する援助を増大をしなければならない、こういう見地から七年倍増という基本方針のもとにこの目標を立てたわけでありまして、七年間で今のODAの総額を、総額として四百億ドル以上にするということでございます。同時に、今現在アメリカの大体半分、一九八四年、昨年で四十三億ドルODAをいたしておるわけでございますが、これも七年間で額としても倍増に持っていきたい、こういうことでございます。同時にまた量だけの問題でなくて、やはり質的な改善も図っていかなければならない。量につきましてはアメリカに次ぎまして二番目のODAを行う国になったわけでございますが、質の面ではまだまだDACの諸国の中ではまだ十分でないと、こういうことで、質的な面の改善もこれとともに図っていこうと、そして日本の国際的な責任を果たして、開発途上国に対する援助を積極的にこれから行う、こういう決意を中期目標として国際的にも発表いたした次第であります。
  157. 矢田部理

    矢田部理君 量的拡大をすることに私どもも賛成でありますが、どうもやっぱり第二次目標を五カ年で倍増というものの実績値から見ると、かなり達成率は低い。今度の点も努力の跡は見受けられますが、言うならば国際比率から見ると、これももう一つのGNP一%論があるわけですね。はるかに低いわけです。最低基準GNPの〇・七%水準にすらまだほど遠いわけであります。どうも聞くところによりますと、〇・四二%くらいにしか当たらないんじゃないかということですが、この点はどう考えられますか。
  158. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 大体おっしゃるとおりであろうと思います。国連等で〇・七%という達成を目標にしておりまして、一部の国がこれを達成をいたしておるわけでございますが、日本の場合はまだまだ〇・三二とか、あるいはまた〇・四%をちょっと超えるとか、そういう段階でございますが、しかし、これは全体的に見れば日本のODAの総額はフランスを抜いてアメリカに次いで二番目ということになっておるわけでございます。したがって、まだまだ努力はしなければなりませんが、この七年計画というものを達成すればそれなりに私は世界における日本の役割、国際責任を果たすという役割はそれなりに評価をされるべきものであろうと思います。現に私が国連でもこの計画を発表いたしましたときに、世界の各国から日本に対する積極的なこのODAの熱意の評価はあったわけでございます。もちろん、質についてはこれからいろいろと検討をして充実をしてまいらなきゃならぬ問題が多々ある、こういうふうに認識をしております。
  159. 矢田部理

    矢田部理君 これから政府開発援助の援助の観点の問題があるわけでありますが、どうも最近外務省は戦略援助の方向に傾いているんではないかと。中米問題やフィリピン問題などもその一つでありますが、この点はどう考えておられますか。    〔理事桧垣徳太郎君退席、委員長着席〕
  160. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) ODAの基本的な性格として、日本としましてはあくまでもやはり世界の平和に役立つものでなきゃならぬし、あるいは開発途上国の安定に役立つものでなければならないし、そういう趣旨からやはりその精神は人道的な立場、同時にまた相互依存、そういう二つの基本的な柱をもってODAを実施しておるわけでございます。これは今後とも変わらない日本基本的な立場でございます。
  161. 矢田部理

    矢田部理君 前に取り上げましたが、フィリピンの援助問題について問題にしたいと思いますが、フィリピンの現状についてどう認識されていますか。
  162. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) まあフィリピンはASEANの一国でもありますし、日本とは非常に重要な外交関係にもあるわけでございますし、日本と安定した関係にあるわけでございますが、フィリピン自体の今日の政情、あるいはまた経済状況、そういうものにつきましては、今私の口から他国のことをとやかく言うことには問題があるかもしれませんが、しかし、既にいろいろの国からも指摘をされておりますし、国内的にも議論をされておるわけでございますし、必ずしも安定をした状況じゃないと。経済の方は、多少インフレ等もおさまってきているように見えますけれども、しかし、ASEAN諸国の中ではやはり不安を蔵しておる国であると、こういうふうに考えております。
  163. 矢田部理

    矢田部理君 アメリカはもうかなり危機的な、情勢について極めて深刻に認識をしておりますね。  きょうの昼のニュースによりますと、アメリカ上院は、マルコス体制は崩壊の危険に立ち至っていると、経済危機は極めて深化する、基地周辺も極めて不安定な状況だと、こう認識しておりますが、このアメリカの認識はどの程度受けとめておられますか。
  164. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) アメリカは我々よりはそれなりの情報を持っておると思いますが、しかし、アメリカはアメリカの判断であろうと思います。我が国としましてもやはりいろいろな国の情報等も分析もし、さらに我が国自身の情報のキャッチ等も行っておるわけでございますが、日本としましては、今私が申し上げましたように、マルコス大統領自身は健康がそう悪いように我々も思っておりません。しかし、アキノ暗殺以来というものはやはりフィリピンの政界におきましてもいろいろと問題が起こっておりますし、あるいはまたいろいろな騒動等も起こっておることは事実でありますし、そうした背景というものが現在も続いておるのではないかと、こういうふうに思います。同時にまた、一部ゲリラの活動等もあることもこれは事実であろうと思います。  経済につきましても確かに安定しているなどと言える状況では率直に言ってないと思います。IMFでいろいろと努力が続けられておるわけでございます。部分的なインフレは多少おさまっておる、こういうことでもございますが、しかし、安定ということを言える状況でもない。日本としましては、やはりこのフィリピンがアジアの一国として、ASEANの一国として政局が安定をし、政治が安定をし、さらにまた経済が安定をすることを心から願っておるわけであります。
  165. 矢田部理

    矢田部理君 私ども先般調査に出向いてきたのですが、アメリカは既にこのマルコス体制に対して軍事、経済的なてこ入れを一方でしながら、他方では距離を置いてマルコス以後を探っているという情勢認識だと思うんですね。その点で、とりわけアメリカは軍事援助、日本は経済援助ということで日本に対する経済援助の要求が非常に強まるのではないかと思われますが、この点いかがか。  それから、イメルダ夫人が来日して、外務大臣ともお会いになるということでありますが、そんな要請も出始めてきているんではないかと思いますが、その辺いかがですか。
  166. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) アメリカとフィリピン情勢について話し合うことはございますけれども、アメリカから特に日本に対する対フィリピンの経済援助を強化してほしいと、こういうふうな要請は承っておりません。  日本としましては、やはりかつての戦争のときに迷惑をかけた国でありますし、ずっとその後賠償、あるいはまた援助を続けておるわけでありますし、ASEANの一国であり、日本にとっても大事なフィリピンの民生が安定し経済が安定することは、これはやはり東南アジアにとっても必要であるし日本にとっても大事なことであろうと、こういうふうに考えて経済協力等は続けておるわけでございます。  また、実はイメルダ大統領夫人がきょう見えまして、私も一時間ほど会談をいたしました。その席で私から、フィリピンの今日の政治情勢あるいはまた経済情勢について我が国の国民の中で非常に重大な関心を持っておる。政府としても重要な関心を持っておる。同時に、アメリカの公聴会等でもいろいろと言われておるけれども、その実態はどうだということについて説明も求めたわけでございます。  それに対しまして、マルコス夫人からもフィリピンの政治情勢あるいはまた経済情勢が、いろいろと言われているほど悪化しているわけではない、こういうふうな説明等も承った次第でございます。  なお、経済援助につきましては、これまでの日本の協力はこれは進めていく考えであるけれども、しかし、この援助がフィリピンの民生の安定、あるいはまた経済の安定に資するように、特にフィリピン側の政府の配慮を求めた次第であります。
  167. 矢田部理

    矢田部理君 私どもが出向いて行って、野党の各指導者や知識人、各界各層の人々と会ったのですが、今の日本の経済援助、経済協力は全部マルコス体制の中に吸い上げられてしまって民衆に届かない、マルコス政権へのてこ入れ以外の何物でもないということで、ぜひやめてほしいというのが異口同音に言われているんですね。その点でやっぱり民衆の側から見ますれば、いろいろなプロジェクトが来ますと、追い立てられる、失業がふえる、ずっと生活環境が悪化をする、何一つプラス効果がないと。その点でも問題にされておるわけでありまして、この時期フィリピンに対する援助については全面的な再検討を必要とするのではないかと思われますが、いかがでしょうか。
  168. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私は、矢田部さんが、フィリピンに我が国が行っている経済援助の実態の調査をされたことも承知しておりますし、そのレポートも拝見をしております。大変私は貴重な資料だと思っておるわけでございます。  確かに、お話のように一部やはりフィリピンの民衆の中にはそういう声があることも私はそのとおりだろうと思っております。しかし、全体的に見ますと日本のこれまでフィリピンに対して行ってきた援助というものは、これは特定政権を擁護するとか支持するとかそういうことではなくて、やはりフィリピンの経済の安定、民生の安定というものをねらって、そして政府間で十分慎重の上にも慎重に精査をいたしまして、優良案件について援助をいたしておるわけで、これは私は、一部においてそういう声があることも承知しておりますが、全体的に見ればフィリピン経済に裨益しているのではないか、こういうふうな総合的な判断を持っているわけでございますが、しかし、今後とも援助につきましてはやはり注意をし、慎重な立場で十分現在の状況というものを踏まえて、日本も確実に、効果的にこの援助がフィリピンの国民の経済に資するように持っていかなければならない、こういう点は十分注意して行いたい、こういうふうに思います。
  169. 矢田部理

    矢田部理君 アメリカを含めて各国がマルコス体制とは一定の距離を置いてきている。そして、この援助のあり方等についても少しく差し控える方向、あわせて民間レベルといいますか、NGOなどの団体を活用する方向ということをやっぱり追求をしておるのでありまして、少なくとも援助のあり方、ありようについて大きな転換を求めておきたいと思いますし、とりわけ私どもが考えておりますのは、住民がもう少しこの計画や援助に参画ができるような方向づけ、それからその後の援助の結果についても公正な監査や評価のシステムができるような体制、これをぜひつくっていただきたいということを、時間がありませんから提案だけしておきたいと思います。
  170. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今外務省としましても、こうした援助をした後フォローアップしなきゃならぬということでいろいろと評価体制を強化をいたしておりますが、確かにおっしゃるように、これから援助が増大をしていきますし、大事な日本の血税を使うわけでございますから、今の御趣旨は十分踏まえてこれからのODAを進めてまいりたい、こういうふうに考えます。
  171. 矢田部理

    矢田部理君 武器輸出問題について伺いますが、武器輸出については総理が国連でも大変演説をされております。アメリカだけを例外にしておきながら演説もいかがかと思いますが、従来、三木内閣以来とってきた方針には今の政府も変更はございませんね。
  172. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いわゆる武器輸出三原則というものを守ってまいりたいと思っております。
  173. 矢田部理

    矢田部理君 国際紛争当事国などを含む三つについて武器輸出をしないだけではなくて、その他の地域についても慎む、行わないという方針もそのとおりですね。
  174. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) お答え申し上げます。  武器輸出三原則につきましてはそのとおりでございます。紛争地域等には出さないという従来の方針どおりでございます。
  175. 矢田部理

    矢田部理君 それ以外の地域も慎む。
  176. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 慎むということでございます。
  177. 矢田部理

    矢田部理君 そこで、武器の輸出については輸出貿易管理令で通産大臣がチェックすることになっております。その対象に軍用車両及びその部分品が入っていることは間違いございませんね。
  178. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 間違いございません。
  179. 矢田部理

    矢田部理君 ところで、フィリピンの軍に対して納入されている軍用車両ないしその部品を日本から輸出して現地で組み立てているような事実はありませんか。
  180. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 今、矢田部委員の御指摘になった問題については聞いておりません。
  181. 矢田部理

    矢田部理君 そのような事実があれば、武器輸出を慎むという先ほどの政府方針に反することになることはそのとおりですね。
  182. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) そのとおりでございますが、この事実について私知っておりませんので、調査をいたしましてお返事申し上げたいと存じます。
  183. 矢田部理

    矢田部理君 そこで、ここにある写真をごらんいただきたいのでございます。(写真を手渡す)よろしゅうございますか、同じ写真がミスター・アンド・ミズという雑誌にも大きく載っているのでありますが、この写真はフィリピン軍が戦闘用に使用しているジープであります。しばしばゲリラ戦や集会、デモの鎮圧などに軍が出動する際は、必ずといっていいほど出動して、発砲、殺傷、威圧を行っているわけでありますが、このジープは、フィリピンではミニクルーザーと呼ばれています。この部品の主要なものが、実はトヨタから輸出をされているのでありますが、その事実は知りませんか。
  184. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) お答え申し上げます。  私は、ASEANとの経済閣僚会議にも出席をしておりますし、また先ほど来の外務大臣矢田部委員との質疑応答も承っておりまして、来週・早々にイメルダ大統領夫人ともお目にかかることになっておりますが、今御指摘になったミニクルーザーの話につきましては、私実は承知をいたしておりません。したがいまして、早速調査をさせていただきたいと思います。
  185. 矢田部理

    矢田部理君 現地にデルタモーターズ・カンパニーというマルコス系の会社がありまして、ここがトヨタと販売契約、技術契約を結んで、エンジンその他重要な部品を日本のトヨタから入れて、そして組み立ては向こうでやっている。技術はトヨタが提供している。これが軍に納入をされている。民間には市販されておりません。全部やっぱり軍用に使われておる、一部警察が使っておるのもありますけれども。そういうことになると、先ほどの例からいって、当然のことながら、やっぱり慎むべき武器輸出になるのではないかと思いますが、いかがですか。
  186. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 今御指摘のミニクルーザーのことにつきましては、よく調査をいたしましてからお答え申し上げたいと思います。
  187. 矢田部理

    矢田部理君 いつまでに。
  188. 村田敬次郎

    国務大臣村田敬次郎君) 実は、矢田部委員からこの問題についての御通告を私の方で承知をしておりませんでしたので、今事務当局と連絡をとりつつございます。わかり次第お答えをしたいと思います。
  189. 矢田部理

    矢田部理君 時間がなくなりましたので簡単にしたいと思います。  厚生大臣に伺いたいと思います。南アフリカから日本は、血漿といいますか、これを依然として輸入しているわけでありますが、これは前の国会で厚生大臣はやめさせると言われたようでありますが、これはいかがですか。
  190. 増岡博之

    国務大臣増岡博之君) 取引をしております商社に対して取引をやめるように申しておりまして、新しい契約はしないという約束でございました。現在の状況は承知いたしておりません。
  191. 矢田部理

    矢田部理君 飢えたアフリカ黒人の血を日本が買い取って、それを栄養剤にして日本人が太っているという、まことに、何といいますか、厳しい話がずうっと続いているわけですね。通関統計をとってみますと、やめさせるといった以後ずうっと今日まで入っております。これはどういうことなんでしょうか。
  192. 増岡博之

    国務大臣増岡博之君) 事実関係よく承知しておりませんけれども、新しい契約をしたとすれば約束違反でございますので、また厳重に注意をいた促します。
  193. 矢田部理

    矢田部理君 これは黒人が、大変な血を二カ月に一遍、五百ccずつ献血をする。それを製品化して日本に売る。日本は何に使っているかというと、栄養剤に使っているというんです。その事実は御存じですか。
  194. 増岡博之

    国務大臣増岡博之君) その事実は、そのとおりでございます。
  195. 矢田部理

    矢田部理君 今、アフリカ援助の大キャンペーンが国民的にも起こっている中で、人道上も許せないんじゃありませんか。
  196. 増岡博之

    国務大臣増岡博之君) 南アとの関係は、貿易関係は別問題であるということでございますけれども、今、先生御指摘のようなことがございますので、この血漿については今後新規契約はしないように、そういう約束をさしたわけでございます。
  197. 矢田部理

    矢田部理君 まさにそういう緩い態度は、南アに対する厳しい態度を欠くことになりはしませんか。だから、南アの領事のような発言が、外務大臣、飛び出すんじゃありませんか。ひどい発言ですよ、あれは。あれどう考えますか、外務大臣
  198. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 領事の日本人会の新聞に出したレポート、これは一日本人と断っては書いてありますが、日本の進めておるところの外交政策と全く相反しておることでございまして、これは弁解の余地はございません。早速厳重に注意をいたしたわけでございまして、日本のせっかくの南アに対する厳しい姿勢が諸外国に誤解されないように、いろいろの今措置をとっておるわけであります。
  199. 矢田部理

    矢田部理君 国鉄の監理委員会というのは、どういう役割、権限を持っている委員会でしょうか、運輸大臣
  200. 山下徳夫

    国務大臣(山下徳夫君) これは、法に基づきまして国鉄再建の案をゆだねられた委員会でございます。
  201. 矢田部理

    矢田部理君 再建案を出して総理に意見を述べる、それだけの権限の団体ですね。
  202. 山下徳夫

    国務大臣(山下徳夫君) 同法の第五条でおっしゃるとおりでございます。
  203. 矢田部理

    矢田部理君 したがって、みずから再建案を決定したり実行する団体ではございませんね。
  204. 山下徳夫

    国務大臣(山下徳夫君) そのとおりでございます。
  205. 矢田部理

    矢田部理君 ところが、その再建監理委員会が最近「国鉄改革Q&A」という小冊子を発行いたしまして、「分割・民営化の実施は昭和六十二年四月一日です。」と大変大きな字で書いて、全国に配っている。これはどういうことでしょうか。
  206. 山下徳夫

    国務大臣(山下徳夫君) いわば委員会が出しました意見を解説したものと私どもは理解をいたしております。現実に私ども地方に参りまして、いろいろ出されました意見についての内容を聞かれたり、質問を受けたり、あるいはまた私どもが講演をする場合には、ある程度それをかみ砕いて説明をするわけでございますが、私は委員会がそういうものをお出しになるのは全く同じ目的であって、これは仕事の範囲から逸脱したものとは私どもは理解いたしておりません。
  207. 矢田部理

    矢田部理君 決定機関でも実施機関でもない。しかも、政府が決める前の段階ですよ。これから法案をつくって、国会でも審議しなきゃならぬ。その前の段階であたかも決まったかのごとき文章で、大量に全国的にこういうパンフをつくって配付するのは、これは国会無視も甚しいと思いますよ。断じて許すわけにまいりません。だめです、今の答弁
  208. 山下徳夫

    国務大臣(山下徳夫君) ただいま申し上げましたように、出されました意見についてわかりやすく解説をするという趣旨でございますから、私は委員会にとって一つの事務の範囲内であると理解いたしております。
  209. 矢田部理

    矢田部理君 ちょっと見てください。これ決定したと同じ表現でしょう。そんな、解説でも何でもありません。
  210. 山下徳夫

    国務大臣(山下徳夫君) これはですね、答申に四月一日に実施すると書いてございますんですよ。それをそのまま記載したということではございませんでしょうか。
  211. 矢田部理

    矢田部理君 そんなことは書いてないでしょう。答申になど書いてないでしょう。
  212. 山下徳夫

    国務大臣(山下徳夫君) ですから、これ解説ですよ。
  213. 矢田部理

    矢田部理君 そんなことないですよ。実施は四月一日ですと、どこで決まったんですか。ちょっとこれは、だめですよ。
  214. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  215. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 速記を起こして。
  216. 山下徳夫

    国務大臣(山下徳夫君) 国鉄監理委員会から七月の二十六日付で「国鉄改革に関する意見」というものが出されたことは御承知のとおりでありますが、その百三十七ページに「移行時期」として、「国鉄事業の分割・民営化は昭和六十二年四月一日に実施する。」と、監理委員会の意見で書いてございます。それをそのままそこに書いてあるわけで、それは意見ではないと私は思います。
  217. 矢田部理

    矢田部理君 答申はそうですが、政府がまだ決めたわけでもない。まして国会は論議したわけでもない。それを決まったかのごとく書くのは越権です。
  218. 山下徳夫

    国務大臣(山下徳夫君) ですから、委員会が出した意見について解説をしたということです。(「そんなことは書いてない」と呼ぶ者あり)ですから、それは四月一日に実施するということを決めたんだよ、一応意見の中ではそういうふうになっているということをそれは書いてあるんでございまして(「そんなこと許しちゃだめですよ、国会無視だ」と呼ぶ者あり)いやいや、ですから、今申し上げましたように、ここに、「意見」の中に「四月一日に実施する」ということが書いてあるのでございます。ですから、それをそのまま解説として書いたということを申し上げているんです。
  219. 安田隆明

    委員長安田隆明君) ちょっと、発言は通告を求めてください。
  220. 矢田部理

    矢田部理君 ちょっと今の答弁では納得できません。
  221. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  222. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 速記を起こして。
  223. 山下徳夫

    国務大臣(山下徳夫君) 先ほどから繰り返し申し上げておりますように、これはこういう意見を出したよ、この意見の内容はこういうことだよということですから、私どもは、それは箇条書きに書いたのではなかなかわかりにくい面がありますから、それを一般にわかるように解説する、これは事務の一部だと理解をいたしております。したがって、その意見に基づいてこれを立法化し、法律案をつくり、そして御審議いただき、そして決定する、この手順はそのとおりでございます。  ただ、それならば、そのようにここに監理委員会と書いてございますから、この解説書というものはこういう趣旨のものであるよという、そこらあたりの説明が不十分であった点はおっしゃるとおりかもしれませんが、この趣旨としてはそういうことでございまして、何も国会を無視したとか、あるいはまた私どもがつくるべき法律案を先行していろいろやったとか、そういうものじゃございませんが、このしおり自体についての配慮が足りなかった点は、おっしゃる点があるかもしれないと思います。
  224. 矢田部理

    矢田部理君 例えば住田委員という方がいますが、熊本の一日行革審に出向いていって、九州は特別配慮した、時価百六十七億円と見積もられる用地を無償で提供する、もうかる会社だ、優良企業だと、これまた決まったような話をしているんですね。こんご言動が次から次と出てきたんでは監理委員会は少し思い上がっているんじゃありませんか。
  225. 棚橋泰

    政府委員(棚橋泰君) 先生今御指摘のございました熊本での住田委員発言につきましては、御指摘が他からもございましたので、早急に調査をいたしたわけでございますが、住田委員発言が引用いたしました金額等は、おおよそ国会等にも資料要求等で御提出をしております、監理委員会が公表しております数字を基礎といたしまして若干の解説を加えたというようなものでございまして、その点についてはそれほど大きく新しいことを申し上げたということではなかったというふうに考えております。
  226. 矢田部理

    矢田部理君 国会に出すべき資料を出さずして、方々へ行ってこの数字などを挙げて言い歩くのはやり過ぎですよ。  国鉄総裁が見えられておりますが、亀井委員長関連会社である住友電工の国鉄内における資材調達のシェアが急速に伸びているというんですが、中身を御説明ください。
  227. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) 国鉄の資材の中に電線あるいは最近の光ファイバー上いう中身のものがございます。特に光ファイバーにつきましては、これを開発している会社が非常に少ないというような事情もございまして、それらの発注を住友電工にやっておるという事実はございます。
  228. 矢田部理

    矢田部理君 シェアが伸びている点。
  229. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) 最近のシェアにつきましては伸びているというふうには私、認識しておりません。
  230. 矢田部理

    矢田部理君 五十六年には一一%だったのが、五十九年、三年後には一九%、二〇%になったというんですが、いかがですか。
  231. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) 先ほど申し上げましたように光ファイバーという需要、これが非常に最近多くなってまいりまして、これを開発している会社も非常に少ないというような事情からそうした数字伸びがあったと思います。
  232. 矢田部理

    矢田部理君 そのほか国鉄の土地にかかわる関連企業等の話題もいろいろ出ておるわけでありまして、公正であるべき監理委員長、監理委員などが極めて感情的に物を言ったり、国会にも言わないうちに事が運んだり、それから公正さを疑われるような動きがあったりすることは全くよろしくないと思いますが、総理、いかがでしょうか。
  233. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 監理委員会は法律に基づきまして国鉄再建に関する案を政府に具申したところでございますが、その内容について国民にいろいろ知っていただく、これもやはり監理委員会の仕事でございまして、その知っていただくという努力をやっている過程において、仮にも誤解を受けるようなことがあってはいけませんから、それはよく注意いたしたいと思います。  また、監理委員長の会社に関する問題が今ありましたけれども、私は、亀井さんという人は非常に公正な方で、そういう点は心配ないと思っております。  今、杉浦総裁が御答弁申し上げましたように、最近は光ファイバーの需要が非常にふえてきておって、光ファイバーを開発している日本の会社は非常に少ない、その中で非常に有力なのは住友電工である、そういうような点からシェアはあるいは上がっているのかもしれないと、そう考えた次第でございます。
  234. 矢田部理

    矢田部理君 国鉄問題というのはこれから最大のポイントであって、私どもは分割・民営化に反対して一本でやるべきだというふうに強く申し上げているわけであります。特にこの監理委員会というのは、国鉄の巨額に上る長期債務をいかがするかということなどについてはもう少し突っ込んだ見解があってしかるべきなのですが、新国鉄、旧国鉄、それから国民に振り分けただけであって、ほとんど作業らしい作業をしてこなかった。国鉄の最大のお荷物と言われる貨物の問題も、ただ政府にボールを投げ返してこれも答申をしない。そして国民の意見をもっと聞きなさい、地域の意向を聞きなさいというときにはそれを聞かずして余計なことばっかりやっている。国会の審議権も無視して、あたかも決まったかのごとくこれを宣伝相努める。実施機関は政府なんですね。それに意見を出す機関にすぎない。これが余り高ぶって、思い上がって物を言うのは私はよろしくないと思います。政府にとってもでありますが、特に国会にとっては許しがたいことでありますので、厳重にこれから注意していただきたいし、運輸大臣がもう少し所管の責任者としてきちっとした態度で臨んでもらわないと困ると思いますが、最後に運輸大臣の見解を求めて私の質問を終わりたいと思います。
  235. 山下徳夫

    国務大臣(山下徳夫君) 先ほど来申し上げましたように、みずから出した意見書、その中身は、やや専門語的な用語も多うございますし、私どもが見てもわからない点が多々ございます。それを一般国民にわかりやすく説明するのは、やはりこれは私は監理委員会の一つの義務かとも考えておりますし、そういう意味においては一つの事務の範囲内である、こういう理解をいたしております。ただ、その解説書が、これはこういう趣旨で出したんだよというそこのところのくだりが十分説明がなされておらないという点について誤解があったかもしれません。今後はそういう誤解がないように十分私どもは監理委員会にもいろいろとまた申し上げてみたいと思っております。
  236. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 以上をもちまして矢田部理君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  237. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 秦野草君。
  238. 秦野章

    ○秦野章君 自民党を代表して、私の意見を申し上げるなり御意見を拝聴したいと思います。  対米経済摩擦という大変な問題で、総理以下各閣僚の方が大変努力をされて、それなりに国民はそれをまた大変評価していると思うんです。しかしこの問題はなかなか大変だと思いますが、今まで御活躍になった経緯にかんがみて、総理から対米経済摩擦の展望といいますか、それをちょっと最初に伺いたいと思います。
  239. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 対米経済摩擦につきましては、国民の皆さんに大変御心配をおかけもし、またいろいろ御迷惑をおかけいたしまして大変恐縮に存じておるところでございます。  御存じのように、これが原因はどこにあるかと考えてみますと、一つは景気回復のずれが非常にありまして、アメリカが急速に景気回復、上昇をやりました。日本はおくれて景気回復に入った。そういう点からいたしまして、比較生産費と申しますか、日本が非常に有利になって、それで日本の輸出が急激に伸びたという点が一つあります。それからもう一つは、日本の製品が品質、価格ともに非常に優秀である、そしてアメリカ人の嗜好に合うという面も、特にアフターケアが非常によくいっているという点でアメリカの製品と比較されたという点があります。また、一方においてはアメリカの高い金利あるいは強いドル、こういう為替相場の関係から日本の品物がうんと出た、こういうようないろんな事情。さらに、アメリカ側から指摘しますのは、日本の市場アクセスが必ずしも完全でない、そういう意味で閉鎖されている部分からアメリカの輸出がうまく行われない、こういうアメリカ側からのクレームもありました。そういう諸般の問題を解決するためにここ一年来大いに努力してきたところでございます。  それで、いわゆるアクションプログラムをつくりまして、七月中にこれを実行に移しました。そして、きょうも実はそのトレースをチェックしてみたのでありますが、この中で関税に関する部分は今度国会で御審議願おうと思っております。それから基準・認証に関する部分は各省にその監察の責任者を命じまして、これがよく地方まで走って、あるいはよく説明等をもしてやっておるようです。そのほか、今回は基準・認証改正の法律を提出いたしまして御審議願いたいと思っているわけであります。そのほか内需の振興であるとか、あるいはアメリカからの輸入の増大、このために日本の産業各社に特別の輸入をお願いして、それは大体七十二億ドルぐらい輸入増を全世界的に行うというようなことも実行しつつあります。そのほか十月−十一月を輸入月間としまして、大体ジェトロが中心になって日本で千カ所で輸入品のバザールを今やっておりまして、たしか約四割方今既にバザール開催に入っていると思います。そういうように懸命の努力をいたしましてやっておるところでございます。  一番最近効いてきましたのは、いわゆる五カ国蔵相会議をやりまして、それでドルと円との関係を経済の実態に近い価格に大きく今変化させたところでございます。大体一二%ぐらい円が強くなってまいりまして、しばらくはいわゆるJカーブというようなもので、苦しくなればなるだけ輸出努力するという形で、まだしばらくは輸出が続くかもしれませんが、この為替の傾向が定着しますればこのバランスの問題は次第に回復してくる、こう考えまして、目下その努力をしておる最中でございます。  しかし、長い展望で見ますと、やはり日本の産業体質、社会経済体質とアメリカやヨーロッパのものと違う点があります。そういう点で、世界経済に調和するような日本の社会経済体質というものも長期的には、あるいは中期的には考えなければならぬ。また来年五月に東京サミットがありますが、特にそういうときの照準点も考えて、そういう世界経済的、全般的に見て、各国の持っている社会経済体質というものをどういうふうに調整していったらいいか、日本はまずどういうふうに考えるか、そういうような研究の委員会をつくりまして発足させたところでございまして、今中期的にそのような検討も開始したというところでございます。
  240. 秦野章

    ○秦野章君 今度の臨時国会で、私は最後のような質問を同僚の御理解を得てやることになったんですが、毎日昼間は休まされ、待っておって、土曜日の夜やっとやるんだけれども、まず、予算編成という問題について、大蔵省、そもそも日本国憲法はどう書いているか、これをまず説明してほしい。
  241. 吉野良彦

    政府委員(吉野良彦君) 憲法上重要な条項が二つございますが、まず第七十三条におきまして、「内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。」ということで七つ列記してございますが、その中に、第五号でございますが、「予算を作成して国会に提出すること。」という規定がございます。それから第八十六条でございますが、「内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。」という規定がございます。
  242. 秦野章

    ○秦野章君 予算編成権が政府に属するというのは、これはもう憲法上そしてまた解釈上も一致した意見なんです、予算編成権は政府に属する。今度の国会では予算の提出はないわけですね。それにもかかわらず来年の補正予算にまで及んでいろいろ議論があってそれで国会が引き延ばされてきたということについて、私は政府予算編成権というものがいわば専属されていると言ってもいいんだけれども、この議論は憲法の趣旨からいって、まだ予算も提案していないのに何でこうもめるんだろうと、私は甚だ疑いを持っているんですよ。大蔵大臣いかがでしょうか。
  243. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 予算編成権という言葉は、仮にこれは俗称といたしましても、予算作成権、こういうものは明瞭に内閣に所属しておると思います。それを国会に提出して議決を得なければならぬという段階から、いわゆる三権の国会の機能というものがどう働いてくるかと、こういうことでございますので、国権の最高機関たる国会におかれてもろもろの事情で俗称空転とがあることに対して政府側からコメントするのはいささか非礼かなと、こんな感じを持っております。
  244. 秦野章

    ○秦野章君 そんなことをおっしゃるけれども、この憲法、今読み上げた七十三条、八十六条は予算を作成して国会に提出するのが政府の権限で、提出のないうちから予算の中身一%がどうの、補正予算にまで及んで議論して国会が空転するということは、私は憲法違反なんてすぐ言う議論は余りしたくないけれども、これは憲法を見れば憲法違反的ですよ。大蔵大臣、どうですかな。
  245. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 違憲であるか合憲であるかという裁定は、これはまた裁判所に属することでございます。したがって、三権の建前からは、私も秦野さんのお座りになっておるところから党を代表しての質疑として感想を交えたものがあり得るとしても、やっぱり今の内閣の立場でそれに対して私が評価するということは権限の外にあることではなかろうかと、こういうふうに考えます。
  246. 秦野章

    ○秦野章君 憲法違反という問題は最終的にもちろん最高裁が判断するんだけれども、だから私は憲法違反と断定はしない。しかし、疑いはあるということは間違いないな、これを見たら。それは大蔵大臣、疑いありますよ。こんなことをやっておったら、それで国会を引き延ばして、この国会に予算案も何もないですから、これはおかしいよ。どう考えても私はおかしいと思う。
  247. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 国会に所属する者として、国政調査権と、その国政調査権の一部としてそのような議論があり得るという御判断はおよそ定着しておるではなかろうかというふうに思っております。ただ、空転して非能率であるというようなことについては国民それぞれの受けとめ方はあろうかと私も思います。
  248. 秦野章

    ○秦野章君 私の疑問に対して、政府も、なるほどそうかもしれぬ、これはおかしいなと、こう態度をとらぬと切りがないでしょう。総理いかがですかな。
  249. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは政府がおかしいなというよりも、国民がどう考えているかという問題が終局的な問題だろうと思うんです。
  250. 秦野章

    ○秦野章君 もちろん国民が終局的な問題なんだけれども、国民に判断させる前に、国会でそういうことがおかしいなという議論が出なくちゃいけない。そして私が聞いたら、政府もそれに対して答えなきゃいかぬ。国会は言論の戦場である。与党といえども私は疑問だと思うときは疑問だと言わなきゃ。それがやっぱり政府を鞭撻するゆえんだと私は思っているんだよ。どうですかね、総理、その点はそうじゃないですか。
  251. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは政府を鞭撻していただいておりまして、大いに感謝する次第であります。
  252. 秦野章

    ○秦野章君 まあね、これはおわかりになっていると思うんですけれども政府側も、ちゃんと明文にあるようなことなんだから、政治には裏も表もある、裏があれば表があるに決まっているんだけれども、表の問題を大切にしなきゃいけない。私はそういう点においてはちょっと納得いかぬのですよ、今の答えでは。しかし、まあ幾らやっても答えは出ないかもしらぬけれども。  次に、GNP一%問題というのが非常に不動の原則か何かのようになっているんだけれども、そもそもGNPとは何ぞや。経企庁、ちょっと説明してくれぬか。
  253. 金子一平

    国務大臣(金子一平君) GNPというのは一定の期間、年度なり年間の国民の生産活動による付加価値を総計したものがGNPと、こうお考えいただいたらいいかと思うのでございます。
  254. 秦野章

    ○秦野章君 それじゃ物足らぬのですが、そもそもGNPというのは日本人は大変好きな国民だと言われているんだけれども、本当にわかっているのかな、GNPというもの。例えば私が病気になって医者にかかった。医者の方はGNPに入るけれども、私が寝てたらマイナスなんだけれども、それは出ないでしょう、GNPに。
  255. 金子一平

    国務大臣(金子一平君) 医者にかかって寝ていて収入がないというような場合は、その年の総生産には入ってこないわけですが、お医者様の方は当然入ってくると、こういうことになろうかと思います。
  256. 秦野章

    ○秦野章君 GNPというのはマイナスの面が潜在しているということはあるんですよね。これは政府委員でいいんだけれども、国富という富、ストック、国富とGNPは違うでしょう。
  257. 赤羽隆夫

    政府委員(赤羽隆夫君) 国富とそれからGNP、これは今大臣からお答えを申しましたように、付加価値の総計でございますけれども、これは年々生まれるものでございます。これに対して国富というのはこれが蓄積されたものということで、ストックとフローと言っておりますけれども、概念が違います。
  258. 秦野章

    ○秦野章君 防衛費についてGNP一%が大変問題になって、ずっとこれが何かだんだん不動の原則みたいになってきちゃったんだけれども、私は政府の、中曽根政府というよりも歴代の政府にも若干責任があるが、防衛費の問題で、本来は一%程度なんで、そこがどうして今日のようにやっさもっさ一%を神棚へ上げて拝むようになった一のか、いささか疑問なんですよね。  それで、そもそもGNPというものは動くものか動かないものかということを考えたときに、一番参考になるのは私はソ連だと思うんですよ。我々はソ連を何でも敵とする必要はない。教科書になる部分もある。ソ連では御承知のとおり国家計画委員会議長バイバコフという人、この間やめましたけれども、二十五年ここに勤めているんだ。これは経企庁に頼んでおいたんだけれども、国家計画委員会、ゴスプランね、ここで経済の見通ししているわけだ、国民所得とか鉱工業生産とか。これをちょっと説明してください。
  259. 及川昭伍

    政府委員(及川昭伍君) 社会主義国の経済計画、特にソビエトのゴスプランの場合には、我が国の経済計画や「展望指針」と違いまして、個別の産業ごとの生産達成目標を積み上げたりいたしまして、個別に目標分野を定めてそれへ達成するように計画がつくられているわけであります。例えば農業生産額が幾ら、工業生産額のうちのそれぞれの品目ごとが幾らというような計画がつくられているわけでありますが、この社会主義の経済計画におきましても、計画目標が達成できないということが間々あるわけでございます。
  260. 秦野章

    ○秦野章君 ソ連は言うならば権力を手段にして経済運営をやる。日本は自由主義経済ですね。権力を手段にして経済運営をやっていると大体当たるかと思ったら、余り当たってないんですよね。例えば今は十一次五カ年計画、ことし終わるんだけれども、ちょっと申し上げますと、労働生産、鉱工業生産、国民所得というふうに分けておりますけれども、例えば国民所得について言えば、一九八一年は三・四が三・二、八二年は三・〇が二・六、八三年三・三、その実績は三・一、八四年は三・一が二・六だと、こういうふうに当たらないんですよ、なかなか。私は自由主義社会においてはまずます当たらぬだろうと思うんですよ。当たらないのが原則で、当たるのがまぐれだと、こう思わなきゃいけない。自由主義体制と社会主義体制を比較することが大事だ。計画経済のソ連でさえ狂う。自由経済体制の日本がいかに狂うかという狂いぐあいを、経企庁、今までのGNPの見通し、経過でちょっと説明してください。
  261. 及川昭伍

    政府委員(及川昭伍君) 日本経済計画は、昭和三十年の経済自立五カ年計画以来、現在まで十回つくっておりますが、オイルショック前の高度成長期、例えば国民所得倍増計画によりますと、計画目標の成長率七・二%に対して実績は一〇・八%と高目にいきました。それからオイルショック後、最近の昭和五〇年代前期経済計画では六%強という目標に対して五・一%と、一%ばかり下目にいきまして、オイルショック後はおおむね下目、オイルショック前はおおむね高目というふうに、実績と計画とでは若干のそごが出ております。現在の一九八〇年代経済社会の展望指針、五十八年度以降の計画でございますが、これでは四%程度というふうに小数点以下を切り捨てまして、非常に幅のある数字といたしておりますが、二カ年間実績が出ておりますが、それは四・八%という実績になっておりまして、自由主義国である我が国の経済計画あるいは「展望指針」の数値は相当の幅を持って解釈すべきものであることを計画の中自体にも明示しているわけでございます。
  262. 秦野章

    ○秦野章君 今説明があったように、GNPというのは狂うのが原則。というふうに言った方がいい。私はこれがぴたぴた当たったら薄気味が悪いですよ。そういうものだということを考えてパーセントを言うのはいい。経企庁なんていろんな一流のエコノミストを入れたりして一生懸命やって、それで当たらないのは当たり前なんだ。しかし当たらなくても、こういうものをつくって政策目標なり政策の手段にすることは、これは当然ですね。当然だけど、基本的な問題を考えて、余りこれが一%、不動の原則みたいなふうなムードをつくったのは、これはだれが悪いのかという問題なんだよね。これは一遍反省する必要がある。私は政府にも若干責任があると思うんだ。基本的な経済の原則の違いというものをよくにらんで、例えばソ連と比べりゃ一番よくわかる。こういう点が非常に大事だと思うんだけれども、この一%問題で大変国会ももめたし、総理、一%というのはやっぱり程度なんですよ、どう考えたって。私は防衛力をうんとふやせなんて言っているんじゃないんですよ。一・二だろうが〇・八だろうが、そんなことは今申し上げたように数字の原理というか、本質というものを見たときには程度にしかすぎないんだ、どう考えたって。こんなのは一%以上じゃいけない、どうのこうのと言うのは全く経済学を知らない人のこと。どうでしょうな、これはだれに聞いたらいいのかな。金子長官ですか。
  263. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 大分一%の問題につきましてここ二、三年議論をいただいているわけでございますけれども、いろんな意味でこの一%というのは論議があろうかと思います。GNPがかなり変動しやすいものということも一つの議論でありますし、それから私たちがこの一%について予算を策定するときに考慮いたしますのは、その年度の予算を決めるのは前の年の十二月でございますが、その十二月のときに出てきますGNPの政府見通し等を論拠にいたします。しかし、それが実際、今秦野委員指摘のとおり、実態はかなり大きく狂ってしまう。時には見通しで二%ぐらい狂いますので、これは今のGNPからいきますと六百億ほど狂うわけでございますね。これは現在のシーリングぎりぎりのところではかなり大きな数字になってしまうということは事実でございます。しかし一%というものが国民の防衛に対する安心感を強めるという意味で果たしてきた意味というのは、私たちはそれなりに評価しなければならないと思っています。  しかし、もう一回戻りますと、GNP一%につきましては、かなりの長い期間で考えてみますといろいろ議論がございまして、例えば昭和四十八年ごろは、野党の有力な先生方から、GNPと防衛費を比率で論じちゃいかぬじゃないかという鋭い指摘を受けまして、当時の田中角榮総理大臣が、決してそんなことはいたしませんと必死になって答弁しているのが議事録に載っております。そういうのを見ますと、ああ隔世の感があるなどいう感じがいたします。  それからもう一つ、GNP一%を超えたら軍事大国になるんじゃないかという御議論をいただきますし、それが国の基本政策じゃないかという御議論もいただきますが、もしそれほどの基本原則であるならば、昭和五十一年のとき「当面」という言葉はつけなかったと思います。本当に軍事大国になる、基本政策の重要な部分であるというのであれば当面という言葉はつけない、当面軍事大国にならなければいいなんという政策をとるわけではありませんから。  したがって、いろいろ経緯があって、そして過去は一%をかなり超えていましたから、そういった意味で総合的に御議論いただくのも確かに理のある御議論でなかろうかな、私はこう思っております。
  264. 秦野章

    ○秦野章君 加藤さんはやっぱり頭ええがな、ちゃんとわかっておるわ。本当に余り数字遊びをやらぬ方がいいんですよ、意味がないんだかう、基本的には。だけども、今おっしゃったように、合理主義というものは必ずしも信仰しません。政治というものは必ずしも合理主義だけじゃないから、合理主義とは限らぬから。だから、数字が合理的じゃないからといって全然むだだとは言わぬけれども、しかし時には基本の経済の原理を反省し考えていかないと、知らない間にひとり歩きするということが現実なんですよ。私は、そういう点で総理にもぜひそこのところは考えてもらわぬとおかしくなっちゃうんだ。  最後に、この問題に関連して、ソ連ばかり出しちゃ申しわけないけれども、六一年かな、ソ連の党綱領が工業総生産について書いた。一九八一年には六倍にして米国を追い越すと、こう明記してある。党綱領に書いてあるぐらいだから、いわゆるゴスプラン(国家計画委員会)は真剣に検討したであろう。しかし、六倍にするといったって二・七倍にしかならなかったという、こういう実績もあるんですよね。だから、自由経済においてはこういう数字は余りもてあそばないで、問題は中身、予算編成の総体の中で各項目をどういうふうに評価するかという問題でしかないわけよ、基本はそこなんですよ。そういう点が私は大変不満なんだ。一%ばかりぎゃあぎゃあ言って何のことかわからぬですよ、基本的には。これは私幾ら議論したって負けないよ、こんなばかな話は。  それから、そういう意味では、政府もいろいろあるでしょうけれども、これは総理、ちょっと原則に返って考えないと、こういう問題で追い込められていっちゃしようがないですよ、正直言って。こんなばかばかしいことない、国会をこんな問題でとめちまうんだから。国会をとめた理由は何だと言ったらこのパーセントだ。全くこれはナンセンスと言うほかはないと私は思うんです。だから、このナンセンスという、この国会をとめる意味を国民にもよく理解きして、結局最後は国民の判断、こういうことになると思うんですね。余りこれを言っててもしようがないけれども、私は不満なんだよ、この政府の態度も。しれは歴代政府がもうだめなんだ。これは本当にばかばかしいナンセンスのことをやっていると心ある国民は大方わかっていると思うんだよ。わかっていると思うが、政府がぜひそこのところはしっかりせなきゃだめだ。私は大変不満なんですよ。  それから防衛の問題で世論調査、これは「防衛アンテナ」によく出るんだけれども、防衛の問題の世論調査日本に侵略があったらどうするかというのがありましたね。あれをちょっと説明してくれませんか、参考に。
  265. 宍倉宗夫

    政府委員(宍倉宗夫君) お尋ねの「防衛アンテナ」に掲載されております世論調査でございますが、幾つかございますが、そのうち申し上げますと、朝日新聞社が昭和五十九年五月にやりました調査で、これは全国の有権者の中から三千人を層化無作為二段抽出法ということで標本をつくったそうでございますが、「もし、外国の軍隊が日本に攻め込んできたら、あなたはどうしますか。」という設問につきまして、「安全な所へ避難する」というのが五七%、「降参する」というのが一三%、「ゲリラ活動で抵抗する」というのが一〇%、「自衛隊に志願して戦う」というのが九%、「その他・答えない」のが一一%だそうでございます。  もう一つ御紹介いたしますと、東京新聞と西日本新聞社が昭和五十九年六月にやりました調査でございますが、これは全国の二十歳以上の男女三千人でございます。その調査結果は、「もし、日本が戦場になったら、あなたはどうしますか。」ということにつきまして、「自衛隊とともに戦う」というのが一八・三%、「武力によらずに抵抗する」というのが二一・三%、「いっさい抵抗しない」というのが一四・一%、「安全なところへ逃げる」というのが三七・三%、「わからない・無回答」が九・〇%、こういうふうな結果というふうに承知しております。
  266. 秦野章

    ○秦野章君 読売新聞とギャラップが五十五年に共同で国防意識の日米比較の調査をやったことがあるんですね。それを見ると、我が国が侵略されたらどうするかといったら、「武器を持って抵抗する」というのがアメリカは七二・八%、日本は二〇・六%。それから国民として最も大切なものは何かといったら、米国は「自由」、これが圧倒的ですね、それから「国家の尊厳」。日本はどうかといったら「基本的人権」と「経済的繁栄」、こうくるわけですよ。これも確かに大事なんだけれども、私どもこれを見て、非常に差がある。これはある意味で当たり前といえば当たり前だ。今説明があったように抵抗しないとか逃げるとか、どこへ逃げるのか知らぬけれども、裏の山へでも逃げるのか知らぬが、そういう人たちがおるということもまたこれ現実だし仕方がないですよ。ただ問題は、専守防衛というもとに防衛ということに命をかけるような人が何%かはどうしたっていなきゃならぬし、そのすそ野を広げるという努力は我々の大変大切なことだと思うんですね。  それで、経済大国というのは大方軍事大国になるんだ、間違いなく。そうでしょう。日本だけはならぬ、これは私はいいことだと思いますね。これはもう国民の大方のコンセンサスだと思いますけれども、しかし専守防衛ということは大変困難な道だ。日本独得の防衛だ。戦争に勝つんじゃなくて、負けないというか、引き分けとか、何かその程度の話だから、防衛の戦略としては日本の防衛が一番難しいんだ。国防というのは難しいことは難しいけれども日本のこれが一番難しいんだよね。この一番難しいということについて、防衛庁長官、ちょっと感想を述べてくれぬかね。難しいよ、専守防衛は。
  267. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 専守防衛という言葉を言いますと、これはかたい言葉ですからなかなか御理解いただけないところがありますけれども、言うなれば、徹底的に守りに徹する、決して攻めていかないということでございます。これにつきまして、それは単なる考え方であって、いざというときになったら、我が国は攻めていけるミサイルやなんか持っているんでしょう、そのときになったら違うでしょうと国民のある方々から言われますけれども、現在の自衛隊の装備というのは、その装備自身からもう守りに徹するということになっておるわけでございます。  したがって、今度の一%論議がありますと、よくその背景に、テレビの画面にミサイルなんか自衛隊が持っているものの写真が載ったりしますと、まあ日本も大したことをやるようになったね、いずれまた攻めていくんじゃないかというような印象を国民の皆さん持たれていることもあると思うんですけれども、我が国は専守防衛でございますから、これは何千キロ飛んで他国に攻めていくようなほかの国のミサイルと違うわけですね。ただ発射の瞬間を見ますと、どうもそんなおどろおどろしい感じがするわけなんで、その辺はだんだんこれから、いかに装備の面でも私たちの国が専守防衛に徹しているかということを御理解いただかなければいかぬと思うんです。  ただ、その専守防衛というのは、スポーツのサッカーに例えますならばゴールキーパーみたいなものでございまして、決して攻めていかないかわりに、守りに徹する。サッカーチーム十一人の中でも、ゴールキーパーというのは一番運動神経のすぐれたキャプテンクラスの人がなるんじゃないでしょうか。一番難しい仕事だと思います。  したがってそれは、ある意味では逆に装備的にはお金がかかることなんですけれども、それをなおかつ、諸外国から比べたら徹底的に低い防衛費でやっていくというところに私たちの苦労があることをぜひ御理解いただきたいと思います。
  268. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 中西君から関連質疑の申し出がありますので、これを許します。中西一郎君。
  269. 中西一郎

    ○中西一郎君 今の加藤長官のお話を聞きながら考えたんですけれども、少ない予算で専守防衛、防衛だけだと大変お金がかかる、攻めていけばもっと安く済むかもわからないというような含みもあるんじゃないかと思うんですけれども、専守防衛でいかなきゃいけないと。  そこでお伺いしたいのは、リーサットという言葉を聞かれたことございますか、長官
  270. 山田勝久

    政府委員山田勝久君) 中西先生御指摘のリーサットは、現在アメリカ海軍がヒューズ社に委託をいたしまして打ち上げている通信衛星でございます。
  271. 中西一郎

    ○中西一郎君 実は今のお話のとおりなんですけれども、防衛の関係で国防省が持っておるわけじゃないんですね。ヒューズという会社が持っておって、防衛の関係を担当している国防省はそれをリースして借りている。そういうことを考えますと、艦艇にしましても、正面装備いろいろございますが、施設庁の施設もあるし、そういったいろんな点についてリース制度というのをもう少し防衛庁で考えてもらえないだろうか。これは私個人の意見というよりはむしろ民間にそういう声が上がっておるということで、問題提起をするわけでございます。  一部コンピューターなんかはリースしておられるはずでございます。そうなるとどこまでそういうことを広げられるか。単年度でつくったものについてお金を払わざるを得ない、そのお金は大変大きい、一%の中の制約というのもあるということならば、リース代ならばうんと少なくて済んじゃうということもあるし、また防衛計画大綱を完成するのにあと五年かかって、中期防衛計画が進んで、完成してくるのがあと五年先、六年先、数年先になっちゃう。どかっとつくって、そしてそれをリースで貸すんだということにすればそれだけ早期完成ができる、早く整備ができるというようなこともあるんじゃないか。  余り時間がないからもう結論だけ申し上げますが、それに対して保険にかかりにくい、あるいは防衛産業自身が毎年仕事をしていくんだけれども、前へ繰り上げて一遍にやってしまうとあとの仕事がなくなっちゃうというようなことも聞かされる。そういうような問題が確かにあるとは思いますが、いろんな点でこれをこれから政府としても検討してもらえぬだろうかということを問題提起いたしておきたいのであります。  防衛庁長官、所見があれば伺いたいと思います。
  272. 山田勝久

    政府委員山田勝久君) リーサットにつきまして、先生御指摘のとおり、アメリカの海軍は実は所有をいたしておりませんで、ヒューズが所有し、連行して、これをアメリカ海軍が契約によって借りておると、こういうことでございます。  さて、その例を主要装備に当てはめますと、例えば戦車でございますとか、あるいはF15でございますとか、そういうものをリースをすればいいではないかという一つのアイデアがございます。しかしリースあるいはレンタルというものは、一回契約を数年間結びまして、あとそれを要らなくなったときにほかの需要家に回すということで商売が成り立っているわけでございますが、主要装備になりますと、防衛庁だけがお客様ということでだれも引き取ってくれないという点がございます。また有事の際にはこれが消耗する。そういうことでなかなかリスクがあるわけでございます。しかしコンピューターその他、リースというものになじむものも私ども使用しておりますので、民活と申しますか、効率化と申しますか、そういった面ではこのリースという考え方を十分踏まえていかなければならないと思います。しかし主要装備につきましてはいろいろ問題点があります。十年間で調達するものを一括して発注すれば安いではないかという議論も先生御指摘ございましたが、年々つくっていくという防衛産業の基盤、これが一年間仕事があったけれども翌年は仕事がないということになりますと、それは防衛基盤としての産業は成り立ちません。  いろいろ問題点ございます。しかし今の先生御指摘のアイデアというものは十分踏まえて効率的な装備を購入してまいりたいと思っております。
  273. 秦野章

    ○秦野章君 専守防衛の原点の発想は、一つは私は国土戦ということを頭に置かなきゃならない。日本は国土戦の体験が実はなかった。沖縄と満州開拓民が例えようもないところの悲惨な体験をした。戦場で死に、また上から落っこってきて死んだ人も随分あるんだけれども、満州開拓と沖縄の人たち、沖縄は十万人の民間人が死んでいるんだけれども、この国土戦になったら実にこれは惨たんたるものだということに専守防衛体制の一つの原点の発想があるような気がするんですよ。  というのは、先般の第二次大戦でも三百万の犠牲を日本は出した。確かに気の毒であります。しかしドイツは一千万、ソ連は二千万、中国は三百五十万で、第二次大戦じゃ日本が少ない方なんだ、少なくても死んだ人は気の毒だけれども。いずれにしましても、この沖縄と満州開拓民の悲劇というものは、テレビでも見ましたけれども、国破れて山河があったけれども、あの病気の女房を捨ててくる、子供を捨ててくるなんという、そしてまた集団自殺というのが沖縄とか満州ではあった。国土戦の悲惨さというものは戦争から学ぶべき大変な体験だと、こう思うんですけれども、何か日本の防衛に関して、自民党の偉い人でもこう言うんだよね時々、侵略があって一週間たったらアメリカが来るというんです。  外務大臣、どうですか、アメリカはそんなに簡単に来るかね。どうでしょう。
  274. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) まあ一週間とか二週間とか想定は別にしまして、日米安保条約というのがありますから、日本が侵略を受けたときはアメリカ側はこれに対して日本を守るというアメリカには安保条約上の責任があるわけです。義務があります。
  275. 秦野章

    ○秦野章君 侵略は多分ないだろうし、あっては困る。ないことを祈りつつ、なおしかし備えるという問題があった。これが自衛隊であり、安保条約なんです。やっぱり戦争は人類永遠のテーマですから、楽観主義というのはよくないと思うんだけれども、一週間たったらアメリカが来る、アメリカが全力で応援してくれる。しかし国家というものにはそのときの都合があるんですよ、向こうの都合が。そのときいろいろなことがあれば来ないかもしれないんだ。そんな楽領主義でやったらアメリカにも失礼かもしらぬね。すぐ日本人は一週間たったら来るとかなんとかと言うんだけれども、条約があったら来るというのは間違い。条約があれば、それは確かにないよりはいいし、尊重せにゃなりませんよ。尊重せにゃならぬけれども、条約というのは、紙に書いて調印して、条約は破られるためにあると、こういうことを言った人もあるくらいだから、条約があればいいとか、条約があるから全力を振るうか。第一、日本が例えば侵略を受けたらアメリカが原爆撃ちますか、どうでしょうな。安全保障の担当大臣、いかがですか。あらゆる方法で守ると言うのだが。
  276. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは日米安保条約にしても、日本の自衛力にしても、戦争を抑止するということにもちろん基本があるわけでありますし、そのために今日の平和も存在しておるわけです。しかしその根底においては、条約は守られるべきものだと、ほとんどの国において大半条約というものは守られておりますし、条約は国会の批准も得て決定をされる。国会は国民を代表するわけですから、この条約において明記されたことはお互いにこれを守っていく、信義がなければやはり二国間の信頼関係というものは生まれないと、こういうふうに思っております。したがって、安保条約がある限りにおいては、日本が仮に万一侵略を受けるという場合においては、アメリカが日本を守るということは、これは条約上明定されておりますし、二国間の深い信頼に基づくものであると、こういうふうに我々は信じております。
  277. 秦野章

    ○秦野章君 外務大臣はそう言わなきゃ商売にならないんだよね。だけれどもね、この条約の信仰、こういうことは国際関係で余り言えないけれども、余り信仰でアメリカがいるから大丈夫だというのは、これは下手すればうそなんですよね。特に原爆なんか使えないです、どっちも使えない。日本侵略があって原爆撃ったら、それが届かないうちにソ連が撃つがな。そうすれば、そんなこと考えたら、とてもじゃないけれどもワシントンやニューヨークを灰にしてまでやることはない。自分の国が一番大事だというのが、国際社会における国家の国益というものですよ。この国益というものがないはずはないんだ。  私がなぜこんなことを言うかというと、日本の楽観主義ね、日本の一番いけないのは楽観主義があり過ぎる。一週間たったら向こうが来るとか軽々に言うべきじゃないし、それから運輸大臣にちょっと伺いますが、自衛隊の護衛艦か、海上自衛艦か、あれが日本の港へ入れないところがあるんだよ、日本の港へ。それからアメリカの第七艦隊の軍艦も港へ入れないというところがある。そういう自治体が大分あるんだけれども、一々は言わぬけれども、米艦の場合条約上の義務ですよね、港へ入るのは。条約上の義務をへっちゃらで背反するんだから。そういう身勝手、これはしようがないと言えばしようがないかもしらぬが、特に私は日本の自衛隊の海上自衛隊を港に入れないなんというのは、港というものは一体だれのものかというのをちょっと運輸大臣に聞きたいんだよね。港はだれのものか。
  278. 山下徳夫

    国務大臣(山下徳夫君) 港湾の管理は、その港が存在しますところを管轄しておる地方自治体の管理になっております。
  279. 秦野章

    ○秦野章君 港、港湾事業には随分国家も金を出しておるんだね。だから、安保条約を結んだら守るようにする、守るのが当たり前だと思うんだけれども、まあしかし注意の喚起だな、これ。とにかく船を入れないというんだからね。高速道路で、自民党政府がつくったけれども、これは金払っても共産党は入れないとか、そんなことしませんよ。(笑声)そんなことしませんよ。そこらは、港は自治体が管理するといっても、港はだれのものかということを若干考えにゃいかぬ。こういう点で政府努力というかな、運輸省は港湾事業に補助金をうんとやるんだけど、あれ何%ですか、補助金は。金で言うわけじゃないけどさ。
  280. 藤野愼吾

    政府委員(藤野愼吾君) 港湾の整備に要します費用は、地域やら港の格によって若干の相違はありますが、おおよそ申し上げますと、五〇%を政府、それから地方が、公兵団体が五〇%持つ、そういう割合で整備をいたしております。
  281. 秦野章

    ○秦野章君 相当国も援助をするわけだ。まあ余り言ってもしょうがないがね。いずれにしても、防衛に関して防衛庁防衛庁長官は関係するし、非常に大きな責任。専守防衛というのは非常に難しいんだ。列国の国防大臣よりは難しいんですよ。専守防衛は人類始まって以来の概念ですよ。観念ですよ。その防衛庁長官日本では平均任期が十カ月。外国はどうかね。これをちょっと調べておけと言ったんだけれども、だれか答えてくれよ。
  282. 古川清

    政府委員(古川清君) お答え申し上げます。  外国の国防大臣の場合においては、当然のことでございますけれども、政変によって職を失うとか、あるいは死亡によって亡くなるというケースもあるわけでございますけれども、平均をいたしますと、ソ連が一番長うございまして、最近一、三十年の算術平均でございますが、ソ連がお拒むね六年四カ月、それから二番目に西ドイツが二年十一カ月、三番目に中国が二年七カ月、四番目にアメリカが二年五カ月、それからフランスとイギリスが五番目でございまして約二年三カ月、六年から二年の幅で大体並んでいるという感じでございます。
  283. 秦野章

    ○秦野章君 総理にちょっとお尋ねしますが、さっき言ったように日本は平均十カ月なんだ。ワインバーガーは今四年半やっているんだよ。それで、日本防衛費が多いの少ないの言うんだけれど、これはまあ言っていいんですよ、こっちもそれを受けとめて、こっちの言い分も聞いてもらう、安保条約を結んでいるんだから。だけど、十カ月でくるくるかえて太刀打ちできないと思うな。我々はアメリカの属国じゃないから言うべきことを言わにゃいかぬ。言わにゃいかぬし、それからまた聞くべきものも聞かにゃいかぬが、いずれにしても経験ということは大事だ。ワインバーガーも私一遍会ったことあるけれども、したたかな相当な政治家だ。だから十カ月とか、そういうんじゃなくて、防衛庁長官なんか私はもう三年でも五年でも同じ人にやらせなきゃだめだと思うんですよ。これは総理大臣一つの考え方でなきゃならないかと思うんだが、昔は何かしっぽ切りみたいな話があったけれども、とにかく防衛庁長官というのは私は意外と大事だと思うんですね。総理もおやりになったんだけれども、やっぱり三年、五年やらないとこれは一番難しい仕事だと、こう思うんですが、総理いかがですか。
  284. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私も経験してみまして、全く同感でございます。
  285. 秦野章

    ○秦野章君 同感なら、ぜひ総理はそういう方向で努力していただきたいと思いますよ。これはみんなそう思っているんじゃないかと思うんですよね。大蔵大臣や外務大臣は同じポストをずっとやる。いいんですよ。とにかく日本はいまちょっと内閣、閣僚、まあ全部が全部とは言わぬけれども、そこらを考えないとだめだよ。こんないいかげんなことをやっていたんじゃ、やっている者も気の毒だ。私はそこのところは同感という程度じゃ物足りぬな、総理、本当に。
  286. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 待っている人も相当いますものですから。
  287. 秦野章

    ○秦野章君 総理は観閲式とか防衛大学とかに行けば精強な自衛隊だと常におっしゃっているのだから、精強な自衛隊となるのは、自衛隊というものは武器ということも大事だが、結局、人間だと思うのですよ。その人間ということについて一番大事だと思う。だから私はあえて言うのだけれども、この人間ということを考えたときに、防衛庁予算というものが、例えば隊舎とか宿舎とか、こういうものは大蔵大臣、ひどいんだよ。私はちちょくちょく通る、三宿に宿舎がある、渋谷の向こうに。あれは九・五坪とか五十平米以下で、三分の二が尉官とか佐官ですよ。一番下の者じゃないんですよ。家賃が安いから入っているのかもしらぬが、いずれにしても自衛隊員の待遇というか、これはやっぱり人間がしっかりしてもらわなければいかぬためにも。  この間、日航のジャンボが落ちた。落っこちて亡くなった人は気の毒だ。後始末に警察と自衛隊が一生懸命やった。一生懸命やったのだけれども、自衛隊の手当は六百六十円、警察は五千円くれておるわな、五千円以上。これはまずいのだよな。これは予算の問題。こういうのは、今でもまだけがして病院に入っているのもいるのだから、ああいう実情、下も見なきゃだめだよ。管理者というものは地べたを見なきゃだめなんだ。あの地べたの自衛隊がたった六百六十円で、警察だってまだ少ないかもしれない、寝ずにやっていてあれだけ。いかにも差別ではないか。私は憤激にたえぬな、こういうことをやっていたのでは。これはしょうがないでしょうか、答弁求めても。
  288. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 防衛庁は本当に夜昼なく働くということになっておりますし、自衛隊というものもそういう覚悟でやっております。この間のJAL事故のときも大変な事故でございまして、遺体の処理などに当たった隊員は平均年齢二十八歳ぐらいだろうと思いますが、ある意味ではまだ若いものですから親の死に目にもまだ会ってない、経験したことのない隊員たちが、死というものの冷厳な事実の前に、ほとんど最初は手が出なかったということを報告を受けております。しかし、それをやらなきゃならぬのだ、君らはやらなきゃならぬのだという小隊長、部隊長たちの指揮によって必死にやり始めました。そして、私が報告を受けて一番うれしかったのは、そういった経験をして帰ってきて、しばらく休んでまた出て行きますけれども、そういった隊員の中に行きたくない、再び行きたくないと言った隊員は一人もいなかったということであります。そして、各駐屯地の中であすこに派遣されることを志願した人間の方がずっと多くて、それを選別するのに駐屯地司令が必死になって、おまえはちょっと今回は駐屯地で頑張っていてくれということの苦労の方が多かったということでございます。  したがいまして、私たち駐屯地司令たちと話したのですけれども、最近の若い者、若い者と言うけれども、少なくとも自分たちの隊員の若い者は、自分らが考えていた以上にしっかりしていたということを知って自分らも心強かったと言っておりました。  したがって、私たちとしてはその士気を今後とも高めていくためには、手当のことも重要でございますけれども、まず先生今御指摘いただきましたような二段ベッドとか、それからその隊員が家族を持った場合に九・五坪の宿舎に入れておくというようなことは、私たちちょっと耐えられない。何とかそういった宿舎、隊舎などの改善から精いっぱいやってやりたい、こんなふうに思っております。
  289. 秦野章

    ○秦野章君 これはちょっときのう手に入れたんだけれども西廣君が雑誌で言っているんだけれども、ここ五、六年、単年度の予算で一番いじめられているのは施設整備だというんだよ。四、五年で総額が半分近く減っている。こういうことはまずいんだよね。宿舎を例えば建てかえるということで金が要るのは、これは軍拡かな。軍拡予算になるのかね。ちょっとこれ聞きたいんだ、何でも軍拡になってしまうのか。
  290. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 私たち、すべての自衛隊関係費、防衛関係費を軍拡予算だとは思っておりません。なかんずく、宿舎のことを一生懸命やってやるのがどうして批判されるのかという感じがいたします。自衛隊員が普通の人よりも大変いいところに住んでいたら批判もいただきます。また、在日米軍並みの宿舎にしてほしいと私たち言っちゃいけないと、こう思っております。アメリカにはアメリカの基準がありますし、日本日本の社会の基準があります。しかし、やはり日本の一般社会の中から見てもおくれているものは直させていただきたい。特に、九・五坪住宅がずらっとありまして、そこの町内会から町内の美観を損なうから自衛隊の宿舎は出ていってほしいと言われるような状況は直さなければいかぬと、こう思っております。
  291. 秦野章

    ○秦野章君 さっき三宿の話をしましたけれども総理、あそこの三宿の自衛隊というのは九・五から、あるいは五十平米以下、四分の三は将校、尉官、佐官、将なんですよね。子供ができたらやっぱり六畳と四畳半じゃまずいし、そこに並んで一般公務員の公務員宿舎があるんですよ。これは九・五坪を二つを合わせて一つにしたんだ。一つに合わせて一般公務員は三DKぐらいでしょう。その目の前の自衛隊宿舎のこと、これは差別ですよ。大蔵省もひとつこういうところは下の方をよく見てください。正直言って、これ以上言いません、今防衛庁長官も言われたから言いませんけれども。  なお、航空自衛隊が世界で一番訓練度が低いと言われている、油がないから。油がないから訓練度が低いというんだ。いい飛行機を買ったって乗る人間がそれじゃしようがないと思うんだね。  そのほか言えば切りがないんだけれども、そこでこの間新聞に出ていたんだけれども防衛庁が引っ越すという案があったが、防衛庁から説明してくれぬかな。
  292. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 現在、防衛庁は東京の六本木の繁華街の中にございます。したがいまして、これを移転いたしまして市ケ谷のところに持っていきまして、そして新しい防衛庁を建てることにしたらどうかというようなアイデアは従来からございます。私たちもいわゆる民活につきまして、官邸を中心に大分御努力いただいておることは承知いたしておりますので、そのアイデアも貴重な意見の一つとお聞きしておりますけれども、しかしこれを実行するためには幾つかの前提がございまして、それはなかなかその前提を整理していくのはかなり困難なことなのではないかなと、こんなふうに思っておりますが、アイデアとしては従来からもありますし、貴重な意見としてお聞きしているわけでございます。
  293. 秦野章

    ○秦野章君 国有地を払い下げるというのは大変問題がありそうなんですよね。だから、国有地を払い下げるには新しい条件というか、それは例えば防衛庁なら防衛庁の払い下げの場合はやっぱり土地を売るという問題があるから、その売るというときには、その売るという土地に対して都市再開発にインパクトを与えるようなプランというものとセットしなければ国有地は一切売らない、そういうふうなことをしないと世間に対してもまずいんだよね。  これは国鉄も私は今度は民間になったからただ売っていいというわけにいかないと思うんだよ、国の土地だから。国有地を売るときには大都会では都市再開発、いい街をつくる、災害対策も考え、公園も考える、いろんなことを考え都市再開発に、重ねて言うけれども、そういうインパクトを与えるようなプランニングをして、それとセットにして競争入札で専門家が見ていいか悪いかをやる。これをぜひやる。これは正直言って、私は防衛庁大蔵省等、半月前から実は資料をとってやっていたら新聞にぽんと出たんだ。ところがあの新聞の出方はまずいんだよね、あれ、前提がないから。払い下げというものは重大な問題だから。そこのところを一つも書いてないんだ。  要するに、土地の払い下げというのは前提が大事なんだ。その前提については政府はまだ案ができていませんよ。これをつくったらそれこそやっぱり何兆円の民活ができるんだよ。防衛庁なんか、十条の方なんかにも何十万坪か、相当あるでしょう。北海道の十一師団なんか三、四十万あって雪祭りやっているからね。そんなのはちょっと売ってそして再開発。その金を大蔵省が全部持っていかないように余らかして、必ず余るんだ防衛庁なんか、あの市ケ谷なんかも。その金で、できれば特別会計的にして自衛隊をよくしてやる、施設をよくしてやる、これは軍拡でも何でもない。だから特別会計、特待会計というか、財政の方で、大蔵省で余ったら取っちまうということをしないで。  この点で文部省の学校の特別会計があるでしょう、大学なんかのね、あれちょっと話してくださいよ。
  294. 松永光

    国務大臣(松永光君) 文部省の関係では国立学校特会というやつがあるわけでございまして、これは昭和三十九年に国立学校特別会計法で設置された特別会計であります。  これは先生御承知のとおり国立学校の内容の充実を図る、国立学校の拡充整備を促進する、こういう目的でできた特別会計であるわけでありますが、この制度の特色は、第一に、附属病院収入などを返済の財源として財投資金など長期借入金制度を導入できる、そしてその資金で附属病院施設などの整備が可能になっている。これが第一の特色。二番目は、民間資金の導入を容易ならしめるために、国立学校で奨学を目的とする寄附金を受けた場合には、当該寄附金を歳入として計上し、同額を歳出として国立学校における教育、研究に対して弾力的な使用を図ることができる奨学寄附金制度、これがあるということ。三番目が、先ほど先生御指摘のように国立学校で不用となった土地などを処分してそして新たに整理統合するという場合に、従来の土地等の処分を予定としてその処分見合いで新しい土地等の取得が可能である、また処分をした場合にはその金は国立学校の特会の収入として、そしてその収入で新たな学校等の施設の整備の経費に充当できる、こういうことでございます。この制度のおかげで新設医科大学の整備とか、あるいは国立学校の整理統合とか、そういったことが図られてきたわけでありますが、現在も広島大学などの整理統合はそういう制度、仕組みを使ってやっているわけでございます。
  295. 秦野章

    ○秦野章君 文部省のあの特会制度というのは大変うまく運営されていると思うんですよね。大蔵大臣、どうでしょうね。防衛庁の今の施設の立ちおくれというものがあるし、財産も持っているんですよ、旧軍閥のものを引き継いで。かなり整理はしたけれどもまだあるから、特会制度でひとつ。そういうことをしないと、みんなどこの役所も財産を持っていたって放さない、大蔵省が持っていってしまうというと。だから特会制度をひとつ決断して、そしてそれをやって、さっき言ったような条件整備をしたら、それは民活なんかわけがないんだ。何兆円の民活ができる、公正な民活ができると私は思うんだけれども、民活本部長をやっておられる総理大臣の所見を伺いたい。
  296. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今のお考えは私も前からちょっと考えておりまして、これは対象対象によって性格が違うと思いますが、極力そういう方向で改革していきたいし促進していきたいと考えております。
  297. 秦野章

    ○秦野章君 大蔵大臣ね、今の会計、財政の制度のあり方、行き方の問題で、どうでしょう、私の意見は。一元化財政論で打っちゃうとなかなかできないと思うんだよ。十分協議もするし、十分大蔵省ももちろん立場で検討せにゃいかぬが、新しい税金で何かやるといったって無理だ、もう。そうだったら少し各省庁自給自足的な財源獲得手法をするような、それも弊害がなくて、そういうことをひとつ考えることが今当面の課題だと思うのですが、いかがですか。
  298. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 秦野さんもおっしゃったように、現行予算制度は基本的には予算単一の原則と。したがって、特別会計というのは財政法十三条第二項でございますか、それで、きちんと「特定の資金を保有してその運用を行う場合その他特定の歳入を以て特定の歳出に充て一般の歳入歳出と区分して経理する必要がある場合に限り、法律を以て、特別会計を設置する」と、こういうところに基づいて、言ってみれば財政法の趣旨からいえばみだりに特別会計はつくるなよと、これが前提にあると思うのであります。しこうして、これは特別会計全般の問題でございますが、あるいは臨時行政調査会とかそういうところの指摘も、特別会計の新設については財政の膨張抑制等の見地から極力これを抑制すべきであると、トーンとしてはそういう流れにあるのですね。だから、今、秦野さんおっしゃいましたのは一つのアイデアとして、いわばこの単一の原則の中でそういうものがどう生かされていくか、こういうことでございますから、それは一概に新たな特別会計をつくること結構でございましょうという立場にはなかなか私も立ち切れないと。が、一つのいわゆる考え方として私ども勉強さしてもらうことにはいささかもちゅうちょを感じません。
  299. 秦野章

    ○秦野章君 特待会計というのがありますな。あの運用でも可能ではないかという感じもするんだが、どうでしょうな、これ。政府委員、どうだ。これやっぱり一元化一本やりではできないと私は思う、現実的に。大蔵省は強いんだから、大蔵国家だから、日本は。やっぱりそこらはこういう際には、行革もありますよ、私も知っているんだ、行革も。あるけれども、やっぱり多目的にこの問題を解決する。都市政策もいい、防衛もいい、いろんなものがいいんだから、民活もいいということになれば、その多目的を実現するために何がいいかということを真剣に考えなきゃだめだ。財政一元化理論だけを貫くとそれができないと私は思うんだよね。そういうことでどうだい。
  300. 吉野良彦

    政府委員(吉野良彦君) 今お話がございました特定国有財産整備特別会計という制度上の仕組みが現にございます。案件によりましてはこの既存の制度、仕組みの中で解決が図られる余地があろうかと存じます。具体的な案件につきまして防衛庁の方から御相談がございますれば私どもも御相談にあずかってまいりたい、かように存ずるわけでございます。
  301. 秦野章

    ○秦野章君 制度。
  302. 吉野良彦

    政府委員(吉野良彦君) 制度としては、御指摘がございましたように、そういう特別会計が既にございますので、その活用を図っていくということが可能かと存じます。
  303. 秦野章

    ○秦野章君 特待会計の運用でできるといえば、それも一つの方法かもしらぬと思うんだけれども、精神は、精神というか、役所の方、各それぞれの官庁というものの立場を、そこを充足してやるという考え方を持ってひとつ考えてもらいたいと思う。これは要望しておきますよ、大蔵大臣。そうするといろんなことができるのよ。何兆円の仕事できますよ、これで。民活だ、これやらなきゃ対米摩擦はうまいこといかないくらい。  それから、次に今度は内閣総理大臣の職務権限というのを私ちょっと論じたいんだが、法制局長官、内閣総理大臣の職務権限。
  304. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) お答え申し上げます。  憲法上内閣総理大臣の地位並びに職務権限が明定されておるわけでございまして、第七十二条に、「内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する。」という規定がございます。それが一番大もとの規定でございまして、それに基づきまして内閣法その他の法令におきましてそれぞれ所要の規定が置かれておるわけでございます。
  305. 秦野章

    ○秦野章君 総理官邸で党首会談というのをやるな、あれは内閣総理大臣がやるのか。
  306. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) 総理は内閣の首長、平たく言いますと行政権の長であることは御指摘のとおりですが、同時に衆議院議員でありますし、また与党の党首という立場にもあられるわけでございます。すなわち、私人という立場を別にいたしましてもいろいろのお立場を有しておられるわけでございまして、総理の日常の御行動というものが、このいずれの立場に立っておるものであるかということは必ずしも区別しがたい場合もございますが、御質問の党首会談、これは総理にお伺いするのが一番正確なお答えができると思うんでございますけれども、私、まだ確認しておりません。ただ、党首会談というその名称から判断いたしますと、主としては与党の党首という立場で行われているものではないかというふうに考えられるわけでございます。  もっとも総理が、仮にその席上で内閣の首長たる内閣総理大臣としての立場発言されることもあるとすれば、その限りにおきましては党首会談も行政とかかわり合いがあるということになろうかと思います。
  307. 秦野章

    ○秦野章君 ハイジャックがあったときに、超法規の判断をしたのは総理大臣だけれども、あの職務権限はどこにあるのだ、根拠は。
  308. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) ハイジャックの関係でございますが、これはもう申すまでもなく昭和五十二年の二回にわたりまして日本赤軍のハイジャック事件がございまして、この際に我が国政府としましては、いわゆる超実定法的な措置をとったわけでございます。何と申しましても人質の方々の生命の安全を図るために他に手段もないということでやむを得ずとった措置でございます。これらの措置の根拠を実定法に求めることはもとよりできないわけでございますが、当時から説明申し上げておりますように、実定法を支える法秩序全体を流れる法の理念に照らして許容されるものとして行ったものでございます。  ところで、ハイジャックの犯人の要求にこたえまして受刑者を釈放いたしましたり、また多額の公金の支出をしたということは、これはいずれも行政にかかわる措置であり、また事柄が高度の政治的判断を要するものでございますから、ということにかんがみまして主任の大臣限りの判断で処理することなく、閣議においてその実行を決定したところであると承知しております。  大体以上でございます。
  309. 秦野章

    ○秦野章君 これは行政が。三権分立の行政かね。
  310. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) 受刑者を釈放するとかあるいは公金を支出するというような、いわゆる国家機関の行為でございますが、これは法定の要件、手続で行われる限りにおきましては、これはもとより行政の分野に属すると考えられるわけでございますから、実定法の予想していない緊急、異例な事態における同様の措置も行政府が処理せざるを得ないということに相なろうかと思うのでございます。
  311. 秦野章

    ○秦野章君 いやいや行政かというのだ。三権分立の中の行政かというのだ。行政がい。
  312. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) したがいまして、今申し上げましたような事情で行政府が処理せざるを得ないということでございますから、やはり行政にかかわる措置であると言わざるを得ないと思います。
  313. 秦野章

    ○秦野章君 それじゃ、総理大臣も官邸でやっぱりいろんな陳情を受けられるのは当たり前だね。陳情を受けてそして役所へ流すとかいうこともあるだろうが、この陳情を受けられたときの総理大臣というものはどういう職務権限だい、これ。
  314. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) 総理は、先ほど申し上げましたように内閣の首長として、あるいはまたその他総理府の長としてもいろいろ行政に携わられるわけでございますが、一方、先ほども申し上げましたように、衆議院議員として立法府の構成員でもございますし、さらには与党たる政党の最高責任者でもあられるわけでございます。このように多くの重要な地位をあわせ持っておられるわけでございますから、いろいろな立場でさまざまな人にお会いになり陳情を受ける、あるいは意見を徴するということもあろうかと思うのでございますが、このようにいろいろな立場を持っておられる総理としてのそういった行動を、一概に行政であるとかあるいは行政でないとかいうふうに決めつけるわけにはいかない、いろいろな場合が、ケースがあろうかと思います。
  315. 秦野章

    ○秦野章君 行政でないと言った場合はどういう性格だね。
  316. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) 行政でないと、今御指摘のありましたような官邸で陳情を受けるというような行為で考えました場合には、先ほどもお話ししましたように、例えば与党の最高責任者という立場で陳情を受けられることもありましょうし、またこれは私よくわかりませんけれども衆議院議員という立場であるいは受けられることもあろうかと思います。いわゆるそういった意味の政治的な立場でいろいろと陳情を受けられる、あるいはそれについて処理をされるということは、これはもう往々にして、往々でなくてもう非常に多いケースであろうかと思うのでございます。そういうものはこれは行政ではなくてまさに政治的な御行動であると、こういうことであろうかと存じます。
  317. 秦野章

    ○秦野章君 いろんな立場があるということだね、いろんな立場が。
  318. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) さようでございます。
  319. 秦野章

    ○秦野章君 総理大臣の演説で、「長期的展望のもとで対応していくべき課題を整理し、順序正しく効率的に政治運営を図っていく」というのが今度の国会の総理大臣の演説。行政運営と言わずに「政治運営」と書いてあるんだ。違うのかね。どうですか。
  320. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) 政治と行政という概念の違いという点でございますけれども、行政と申しますと、これはもう申し上げるまでもなく、例の三権分立の制度をとっている我が憲法のもとにおきましては、単なる講学的な概念にとどまらず、いわゆる憲法に基礎を置く実定法上の概念でございます。  ところが政治という言葉は、これに対しまして極めて多義的、また明確を欠く点もございます。ただ、国の活動に関して用いられる場合には、通常、国家意思を形成する作用のうち基本的かつ重要なものといったようなことを意味することが多いのではないかと考えられます。  したがいまして、例えば政治的な判断を要するというような言葉を使う場合には、高次元の国家的利益の比較考量などを要し、また非常に裁量の幅が広いというものを意味することが多いのではないかと思うのでございます。  このように、これは感覚の問題あるいはまた常識の問題があろうかと思いますけれども、行政と政治という言葉はおのずから差があるというふうに心得ております。
  321. 秦野章

    ○秦野章君 じゃ、内閣総理大臣も政治をやるわけだな、政治を。
  322. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) 総理が関与される行政の多くは、極めて高い立場からの政治的判断を要するものでございまして、一般の公務員の所掌する行政とはその性格や重要性からいって著しく異なる面があることはもう当然でございます。  したがいまして、総理の行政の遂行に関して重要なことは政治判断の問題でございまして、そういった意味において、総理は政治をやられておるということが言えようかと思います。
  323. 秦野章

    ○秦野章君 サミットに、このごろ政治がグローバルな世界の中に生きるという、そういう政治に国際政治がなってきた。外交は内政をにらみ、内政は外交をにらむという抜群の政治力と行動が必要になってきたということは、恐らく人類史上初めてかもしれぬですよ。戦争のときは別ですよ。戦争のときは、チャーチルがアメリカへ渡って二カ月もルーズベルトを口説いて強力な参戦を口説いた。これがヨーロッパ大戦の、第二次大戦のチャーチルの政治力ですね。しかし、これが行政かといったら、私はこんなものは行政と言わないと思うんですよ。  それから、総理もこのごろ国際的な活躍をしてなかなか評判いいわけだよ。これは古典約三権分立からいくと行政。やっぱりこれは政治。また解散権は何だね、これ。解散権、憲法にある。
  324. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) 第一のサミットに御出席になられました総理のお立場、あるいはそのときの御行動でございますが、これはやはり外交関係を処理するという内閣の職務にのっとっての御行動であろうかと思います。そういう意味で、憲法第七十三条第二号に規定されておりますような事務として、内閣の首長である総理が外国に赴いたり、あるいは外国の要人を我が国にお招きして外交を行うということは、これは確かにもう非常に高度の政治的判断を要するものであると思います。  そういった意味で、政治という名にもちろん値すると思いますけれども、我が憲法のもとにおきましては、やはりこれは行政という部類に、分野に属するというふうな解釈をとらざるを得ないと思うのでございます。
  325. 秦野章

    ○秦野章君 議会制民主主義は、例えばアメリカと日本はまたちょっと違いますわな、大統領制で。日本はちょっとイギリスと似ているだろうと思うんだけれども総理大臣元首論というのもあるんだよね、学説として。元首ということは言わぬでもいいんですよ。いいけれども、国を代表して動くという、サミット見たってわかるんだけれども、行政というよりも、まさに政治であり統治行為であり、政治は行政を統御するという、そういう性格のものだから、議論を古典約三権分立や法律主義で解釈することにいささかの困難がある。これは法治国家あるいは三権分立論の延長線上にこれだけ政治の現場が大変変動をしてきた、昔と違って。そういう意味における総理大臣の責務とか機能とか職能とかというものはすごく大きくなったと思う。これは認めざるを得ないんだよね。間違ったら国会が議会制民主主義でちゃんと責任を担保しているんだから、そういう事態に即応して、比較政治学なんかでも今そこのところは問題になっているんだと思う。古典的にはすべて行政で、これも役人だということなんだけれども、行政と言えば行政官になっちゃうんだけれども、しかし、例えばチャーチルがアメリカへ行って活動したのは行政だなんというのはおかしいんだよね。だけれども、公務員と言えば公務員だろう。だけれども、全然質が違うんだね、質が。チェンバレンがナチのチェコ侵入問題のときに行って、決着をつけたが、あれはナチの侵略を許しちゃったと言って歴史家は評価する。だけれども、あれもそうなんだ、あれも行政というよりも抜群に統治行為的政治的なものだと思う。  日本は、今戦争の話しちゃおかしいけれども、例として。だから、そういうふうに今日の総理大臣というものは私はもう違ってきたと思うんですよ、その機能が。そうしなきゃ日本は生きられないし、世界の平和に貢献するということだってできにくいですよ。その機能というもの、総理、これは認めざるを得ないと思うんだ。そういう総理大臣が、例えばロッキード事件で刑法百九十七条だったかな、「公務員」だ、明治四十年にできた刑法で公務員というのがあって、総理大臣も町役場の一吏員も同じように扱っちゃうんだけれどもね。私は、そこにいささかの矛盾を感ぜざるを得ないと思うんです。余りにも形式的に、それは公務員には違いない、給与を政府からもらっているんだから。だけれども、給与で判断しても、要するに総理大臣の機能というものが抜群にやっぱり大きくなったということは認めざるを得ないんですよね。その点総理どうお考えになりますか、自分でおやりになって。
  326. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今週号の「タイム」をごらんいただくとわかりますが、この間国連へ出席した各国の元首あるいは総理大臣を「タイム」が写真を撮りまして、一人一人の写真が載ったわけです。それで、その一人一人はみんなその国の国旗を持っているわけです。持って立たせられた。私は日の丸を持って、サッチャーさんはイギリスのユニオンジャックを持って。それで、みんなそういう国旗を持って立った写真が「タイム」に載っております。  あれを見ても、国連総会へ出ていった各国の総理大臣なり大統領というものは、その国を代表する、そういうイメージみたいに、あるいは代表するそのもの自体な形で出てきておる、そういうふうに総理大臣とか大統領というもののイメージが変わってきている、そういうふうに思いましたですね。
  327. 秦野章

    ○秦野章君 私の意見にもっともだというわけですな。どうですか。
  328. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いや、「タイム」がそういうふうに扱った。それで私もそういうふうに変わってきた、世の中の見方が。そういうふうに自分も感じている。
  329. 秦野章

    ○秦野章君 いや、私は質問しているんだよ。私の意見に反対ですか、賛成ですか。
  330. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、そういうふうに世の中が変わってきたと考えていると見方が、そういうふうに申し上げている。あなたに大分近いと思うんです。
  331. 秦野章

    ○秦野章君 何でそんなに逃げるんだね。総理はあなた大統領みたいな発言をしたことがあるんだし、いいじゃないですか。総理の見解を聞いているんだよ。似たものだというんですか、私の意見と。
  332. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は行政の首長としての意識でいろいろ仕事をしており、外交関係も行政の一分野である、そう考えてやっており、行政一般及び外交関係を国会に報告して、そして行政各部を監督する、そういう仕事で憲法のもとにやっておりますが、実際動いておる姿自体というものは、今の「タイム」の話にもありますように、そういう一片の行政というものだけではおさまらないような形に世界的になってきておる。それを申し上げておるし、私もそういう扱いも受けておると、外国へ行ってそう思いました。  それで、実際やっている仕事自体を見ると、非常に高度の政治的決断というものを必要とする。行政といっても、今法制局長官が申し上げましたように、非常に高度の国際関係をにらみ、あるいは国内関係をにらんだ政治的決断というものに迫られておるので、単なる行政という役人さんのトップにあって仕事をやるという意識よりも、むしろ国の運命をどうするかという判断で動いている、こう申し上げていいと思うんです。
  333. 秦野章

    ○秦野章君 建設大臣、最初に伺うことは、昔ですけれども、河野一郎建設大臣大臣だったときに多摩川の堤防に道路と住宅をつくれと言ったんだよ。ところが、いろいろ審議した結果それがだめになったんだ。ところが、今考えてみるとかなり先駆的な発想なんですよね。家を建てるのは無理だけれども、道路をつくるということは川を多目的に使うというメリット。これは今でも田舎へ行くと県道とか何かが堤防を走っているんだよ。  ところが、日本の政治というか東洋の政治は、やっぱり水を治める者は天下を治めるというので河川というものがこれ非常に大事。これは確かに大事なんだ。確かにこれは、ときどき水の関係で死人が出るとか、随分それは進歩したというものの河川はあくまでも大事だと思うんだ。大事だけれども、河野さんのときと違って技術が物すごく進歩したですよ、技術が。これはもう青函トンネルは御承知のとおり海底下百メートルにトンネルを通した、五十キロも。四国に橋を幾つもつくるというような技術が進歩した時代だから、私は都市の河川なんというものは、場所によっては環境問題いろいろありまっせ、あるけれども、河川というものは水を治める者は天下を治めるということでさわらせないというような発想はもう革新しなきゃいかぬ、革命的に変革をしていかなきゃならぬと思うんですよね。  それは、河川に道路というようなものは可能なんだと思うんですよ。これは技術的には可能だと思う、あなたの部下が言っているから。問題は、そういう政治の何というか、思想と問題がな。なかなか河川というのは昔から威張っているんですよ。威張るのは当たり前なんだ、これは人間が水で死ぬから。  私が内務省へ入ったときは、河川課長というのはすぐ知事に出たんだよ。ほかの課長は出られないんだよ。それほど河川というものは重要だったということはわかるんですよ。水を治める者は天下を治めるというのが日本の政治だったんだ。まだ今でもかなりそうですよ。しかし、今道路というものは、戦後やっぱり高度成長になったのは道路のせいということがあるんだよな、これ。道路がひとつどのくらい整備されて、どのくらいのメリットがあるか、何か説明できませんかね。まず、道路を先に聞こう。
  334. 木部佳昭

    国務大臣木部佳昭君) 今ちょうど戦後第九次の道路整備五カ年計画を御承知のとおり実行いたしておるわけであります。この九次にまたがる道路整備五カ年計画で大体半分ぐらいしか実は道路計画というものが実行されていないわけであります。特に、高速道路なんかを見てまいりますと、日本の経済というものを、また物流、そういうものも考えてまいりますと二万キロが必要であるということに実はなっておるわけでございますが、現在のところは三千七百キロメートルぐらいしかまだ道路が建設されておらないというようなことを考えてまいりますと、やはりこの道路の与える経済効果、それから地域に与える発展の基本というものはまさに道路にあるわけでございます。  そういう意味で、先ほど秦野先生から民活の理念の問題につきましていろいろ格調の高い、見識のある御意見があったわけでございますが、私どもも道路建設に当たりましてもそうした実態を踏まえまして、民活を十二分に活用しながら今申し上げますような効果を十分発揮できるような、また日本列島の国土の均衡ある発展の原動力も道路建設にある、そういう認識の上に立ってこれからも努力をさせていただきたい、かように考えております。
  335. 秦野章

    ○秦野章君 道路の整備がないと、人と物を運ぶということがないとやっぱりこれ成長率に影響するということは当然だと思うんだけれども、その影響度というのかな、それありますか。
  336. 萩原浩

    政府委員(萩原浩君) お答えをいたします。  今、先生御指摘のとおり、あるいは大臣説明のとおり、昭和二十九年から九次にわたる五カ年計画を積み重ねてまいりました。その結果、例えば昭和三十年度には道路輸送の分担率はトン数で申し上げますと六八%であったものが昭和五十八年度には九〇%を超えでございます。また、トンキロでは同じく一二%のものが四六%にまで増大しているということでございまして、道路輸送の輸送面におけるシェアの増大が非常に大きくなっております。  また、ちなみに、私どもが試算をいたしました結果によりますと、道路整備が国民総生産に与える影響を定量的に見ますと、第九次道路整備五カ年計画の投資額は三十八兆二千億を考えでございます。この投資が完全に実施された場合の交通条件の改善などによります国民総生産の増加額は、昭和五十八年度から昭和六十七年度の十年間の累計で投資額の約三倍の約百十六兆円に上るものと計算をいたしております。また、その結果、同期間におきます税収増加額も相当程度になるものというふうに予想をさせていただいております。
  337. 秦野章

    ○秦野章君 建設大臣、河川の多目的利用、例えば多摩川、今この過密の都市の中に例えば幅員四十メーターの道路をつくれ言うたら、土地は高いし、住んでいる人はのかないし、金を幾らつぎ込んだって、例えば東京湾横断道路をつくる、そのかわりに川崎に縦貫道路をつくるという約束みたいなことをやったけれども、容易じゃないですよ、これ、町の真ん中へ。そういうこともあるので、税金を余り使ってもいかぬし、要するに多摩川なんか私一つの例だと思うんだが、河川敷は無理かもしらぬが、堤防というのは技術が進歩したからできるんだと思うんですよね。これはこういう革命的行政だな、一種の河川行政だけれども、これをひとつ決断してくださいよ、どうですか。
  338. 木部佳昭

    国務大臣木部佳昭君) 先ほど秦野先生から御指摘がありましたように、治水事業というものは大変、私は建設行政の源というものはまさに治水対策にあると思うんです。  例えば吉野川なんかは、この間吉野川改修百年祭やるとか、それでもまだ吉野川の改修というものが十分できておらない。こういうことを考えてまいりますと、非常に日本の建設行政のまさに源泉は治水対策にあり、河川の行政にあると言っても決して私は言い過ぎでない、そういうふうに考えておる一人でございます。  そこで、例えば今多摩川の具体的な例がございましたが、多摩川も昭和四十九年に御承知のとおり大きな堤防決壊による災害がございました。しかし、今お話しのございましたように、御意見のありましたように、例えば河川の上流にダムを幾つかつくるとかというようなことで、水量が非常に減っておるという関係もあるでしょうし、またあるところでは、私ども建設省といたしまして河川の、何といいますか河川敷に対してレクリエーションの場であるとか、また国民の憩いの場所であるとか、そういうようなことを多摩川なんかでは積極的に実は進めておるわけでございます。  また、河川の管理上、今申し上げましたように支障のないところにつきましては環境を破壊しないような私どもは協力をし、また青少年が伸び伸びとした気持ちで河川を利用する。ある意味では、ボーイスカウトやなんかが、今災害が、水害やなんかが発生するおそれがありますから、野営とかそういう活動は認めてないわけです。ことしから管理のセンターをつくりましたので、そういう情報交換を的確にするようなことでもっと高度的な利用方法というものを考えていかなきゃならない。また、東京におきましては、スーパー堤防を今東京都と私どもはこれからつくって、そして今までと違いまして防災に対してどういうふうにいくか。それから同時にまた、民活その他と一緒に憩いの場所であるとか、公園的な使命を果たすとかというような、そういう新しい時代の要請に今申し上げますように当然こたえていかなきゃなりませんし、今御指摘にありましたような技術的な水準というものも大きく変わってきておりますので、そういう点等私どもは考えてまいりまして、この都市の中心部を通過するという、高速道路を通過するという場合には非常な用地買収や住民の参加を得るために大きな問題があるわけです。  そういう点を考えてまいりますと、今までタブーでございましたけれども、河川敷、河川の堤防地域を利用して高速道路を建設することが可能であるか。これにつきましては、やはり地方自治体、行政とのもちろん合意というものがなければこれはできないわけでございますが、今申し上げますように私どもは今大きく技術的にも、また社会的なそうした高速道路その他を建設する場合に大きく変化しておる、また非常な困難もある。そういうことに対して立ち向かっていくためにも河川、堤防の高度利用ということは非常に大事だと。でありますから、私はそうした意見を外しまして、私といたしましては全国の河川を点検をして、そういうことが活用できるということについては積極的にこれを取り上げる、そういう努力をしてみたいと考えております。
  339. 秦野章

    ○秦野章君 積極的に努力をされるということは、じゃやろうかと、こういうわけですな。  それじゃ最高裁ね、私は、今ロッキード事件というのは裁判になっておるから余り言いたくないんだけれども、私の主張というものは田中擁護でも何でもないんだよ、これ。新聞はみんな私をぎゃあぎゃあ言うけれども、そんなことはないんだ。私は司法制度というものを論じている。そういう意味において裁判という問題をちょっと議論したい、今議論は無理かな、私は意見を述べたい。  私ももう来年やめるつもりだからこれはやっぱり国会に言い残しておかなけりゃいかぬので、それは冗談じゃないですよ、これは。確かに総理大臣も公務員だよ。しかし、普通の役場の吏員とか市役所の吏員とかと総理大臣を同じ条文で判断するときはよっぽど気をつけなきゃいけない。疑いがあれば検事も商売だからやっていいんですよ、商売だから。だけれども、やっぱりそのやり方というものは、例えば任意捜査もあるんだし、別件でいきなり逮捕するなんというのは乱暴な話ですよ。過剰な法律主義だと私は思う。過剰な法律主義は法律がない社会よりも怖いという、私はアメリカ映画にそういう言葉があったのを今でも覚えておるんだが。  それから、「大事件は悪法をつくる」というのは有名なホームズ判事の言葉だよ。これは法務省もちょっと聞くだけはよく聞いてくれよな。人権というものは余りおろそかにしちゃいけない。私がちょっと本を書いて、その中に触れておいたんだけれども、あれを見てやっぱり共産党系の石島さんという有名な弁護士が大変評価した、社会新報ではジャーナリストの高野さんが大分評価した。これは党派に関係ない、イデオロギーに関係ない、司法制度そのものなんだ。これを言ったら、あいつは隠れ田中だのなんだの言うけれども、言いたい者は幾ら言ったっていい。本当に国会がつくった憲法や法律が十分に守られているかということを監視することは国会議員の義務ですよ、これは。私はそういう意味において発言をするんだが、宣明書というやつをちょっと読んでくれんかな、最高裁。
  340. 吉丸眞

    最高裁判所長官代理者(吉丸眞君) 最高裁判所の宣明書を朗読いたします。   本年五月二十二日付け書面により日本国東京地方裁判所裁判官が中部カリフォルニア合衆国連邦地方裁判所に対してした証人アーチポルド・カール・コーチャン、同ジョン・ウイリアム・クラッター及び同アルバート・バイラム・エリオットの尋問嘱託に関し、すでに、日本国最高検察庁検事総長及び東京地方検察庁険事正は、それぞれ、日本国において解明中のロッキード事件に関する右各証人らの証言内容又はこれに基づき入手する資料中に仮に日本国の法規に抵触するものがあるとしても証言した事項については右各証人を起訴しないと宣明し、東京地方裁判所裁判官は、この事実を確認の上、嘱託書二の5項の記載をしたものであるが、本年七月二十一日改めて検事総長から最高裁判所に対し、別添写しのとおり、前記三名の証人に対しその証言及びその証言の結果として入手されるあらゆる情報を理由として日本国領土内で公訴を提起しないことを確約する旨の宣明書が提出された。   最高裁判所は、前記の諸事情にかんがみ、検事総長の右確約が将来にわたりわが国のいかなる検察官によっても遵守され、本件各証人らがその証言及びその結果として入手されるあらゆる情報を理由として公訴を提起されることはないことを宣明する。   この宣明は、裁判所法第十二条の規定に基づき、最高裁判所全裁判官が一致してしたものである。  以上でございます。
  341. 秦野章

    ○秦野章君 今の宣明書で、司法のうちの、まあ司法というよりも行政の検事総長の指揮でもって不起訴、アメリカの方は起訴しない、永遠にしないと、こうやったわけだ。ところが、刑事訴訟法の起訴するかしないかというのは確かに検事の専権事項だけれども、言うまでもなく、これは立法の精神というものは、その被疑者の利益を顧慮して不起訴にするとかしないとかを決める一種の刑事政策であるということは、学説全部一致しているんだよ。ある人を処罰するためにある人を不起訴にするということはあり得ないんだ。だけど、検事は何とかして田中をやらにゃいかぬということでやった。そういうことも商売熱心の余りということはあるんだけれども、ちょっとおかしいんだよな、立法の精神からいけば。  しかし、一方、それはさておいて、裁判所がアメリカから、最高裁が何か保証とかルールを何とかすれば、向こうの調書をよこすということでしょう。日本とアメリカの裁判の違いというのを大きく見ると、要するに陪審が向こうはある、免責制度がある、司法取引がある。日本にはこれ全部ないんだよ。多少司法取引的なにおいがする部分は訴訟手続の中で実際上ある部分はないとは言えないけれども、とにかく免責というのはないというのは、学者も実務家も一致した見解なんだ。免責というのは、おまえしゃべったら罪にしないよとしゃべって、しゃべらせるわけよ。おまえ罪にしないと言ってしゃべらせるわけよ。その調書を証拠にするというようなことは、これはおかしいんだよ、日本にそういう免責制度ないから。あるなら教えてもらいたいけれども、これは現に裁判中だから私は答弁は求めない。求めないけれども、これはどうしたっておかしいんだよ。  それで、宣明書の発行を司法行政でやったと言うんでしょう、裁判所は。司法行政というものは実体の裁判に影響することはないはずなんだ。特定、具体的な事件について司法行政というのはあり得ないと解釈すべきであり、司法行政なら下の裁判官は拘束されるわけだよ。司法行政は、一種の命令みたいなものだ、最高裁の。ところが、問題はそこなんだ。司法行政は命令で拘束。しかし事件の実体裁判はまだ最高裁に上がってこないんだから、拘束しちゃいけないんだよ。事件は一審、二審、三審、順々に上がってくるんだよ。私は、飛鳥田さんとテレビで対談したときに、こんな宣明書を採用して、私はこれは憲法違反だと言ったら、飛鳥田さんが言うには、まあ憲法違反と言わぬまでもこんなことをやっちゃいけないと、こうはっきりテレビで私に言ったよ。これはイデオロギーを問いませんぜ。何で最高裁がこんなあほなことをやったかと私は思うよ。これは、政治が腐敗しているというあらしのような一つの空気の中で、最高裁も裁判官もその圏外に立つことは非常に困難だというその事例なんだ。圏外に立たなかったんだよ。これは、マスコミというよりも裁判官というものは、司法の独立の立場なんだから、そんなことをやっちゃいけないんだ。後で最高裁におった裁判官のうち三人、一人は岡原という長官をやった人だ。この宣明書をお墨つきと言っているんだ。これは講演したものが文書になっているよ。お墨つきと言っているんだよ。それから藤林という人は裏書きと言っているんだよ。最高裁が検事の要請に裏書きしたら行政と司法は一体じゃないか。それから團藤さんはちょっとうまいわな、さすがに名手だから。しかし團藤さんだ、本当を言うとこれは問題だと、こう言っている。これは学士会館での演説の中にあるわけだ。あのあらしの中で、あの空気の中ではやっちゃったけれども、検事総長に最高裁が裏書きしちゃおかしいよな。これは、裁判所な、私が言っているのを、答弁求めないけれども、やっぱり聞いてもらいたいと思うんだ。こういうことをしちゃいけない。政治が腐敗したら政治が片づける。腐敗しているから司法権が乗り出したら、司法消極主義の放棄ですよ。司法というものは政治に乗り出さないという、これは教訓ですよ、司法消極主義というのは。司法積極主義になって政治を直そうといったら、これはえらいことになるよ。今は自民党が天下だからいいと言っているけれども、野党だって考えなきゃだめだよ。自分がとる可能性もあるだろうがな。そのときに司法が政治化していいのかい。私は、こういう問題は党派を超えて、司法制度の基本的問題として考えなきゃいかぬと思う。司法と行政は別だ。むしろ、司法は行政つまり検察の方を批判する。批判が足らなければ、下手すると冤罪が起きるという。問題があるわけよ。再審までいって死刑になったという者の中に、私は本当に神様から見て無罪だったという人があると思うんだよな。幸い裁判で再審で無罪になった。疑わしきは罰せずの原則もさることながら、私は神様が見てあの中に無罪という者がいただろう。一人の冤罪を出さないためには、百人の有罪も見逃せというのが、これは確言にあるんだけれども、これは人権というか、冤罪でやられたということになったらこんなつらいことない。過剰な法律主義は法律がない社会よりも怖いということはしみじみ感じなきゃだめだ、裁判官は。そういう意味でこの宣明書というものは、非常に私は間違っていると思うんだ。田中政治がいけないんなら、田中政治を超える政治を誰かがやりゃいいんだ。やらなくちゃいけないんだ。やったらいいじゃないか。そう文句言う者は。それを司法が片づけるという格好になったということはどう考えてもおかしいし、法務省も考えるべきは、まだ裁判が終わる前に検事総長なんかテレビで有罪を確信するなんて言うのは、裁判官に予断を抱かせるんだ。先進国でこれは禁物になっている。何でそういうふうにあおりそそのかしてこういうふうに持っていったかというのは私は大変問題で、これはどうしても納得いかぬ。  それから免責制度というのは日本にないんだということは、これは当たり前なんでね、これを導入したということはアメリカのつまり要求に対してそのまま従ったということは、アメリカ追随というか、やっぱり独立国としてはまずいんだよ。最高裁も国籍があるんだから。日本の最高裁だ、やっぱり司法の独立というものは日本の司法の独立だということはきちっとせにゃいかぬ。これは先例になったらえらいことだ。私はそういう点でよく聞いておいてもらいたいと思う。  それから最後にちょっとまた戻った話になるけれども、防大の学生が卒業して会社へ行っちまうのがいるんだよな、結構。防大というところは月謝を納めるんじゃなくて、政府が金をやるわけだ、金をやる。月に七万やって、ボーナスもやるわけだ。卒業式の後けろっとして向こうへ行っちまうんだ。向こうというか、鹿島建設とか、そういうところへ行くわけだよ。それで、それは自由だからそれはいいかもしらぬよ、自由だから。自由だと言えばいいかもしらぬが、大体教育というものは義務教育を除けば、国立でも私立でも自分で月謝払って教育を受付るんだよ。お上から月謝もらうというのは、あれは防衛の幹部になるという防衛庁設置法から来ているんだから、これに平気だという感覚。これは加藤さんのせいじゃない、前からだから。私はそれに対して今ここでどうのこうのと言うわけじゃないけれども納得いかぬ。詐欺だよ、これ。実態はあそこは主が工学部、つまり東京工大の孫みたいなことをやっているんだよ。中に防衛研修会といって防衛というものは特別のようにやっているんだよな。これ加藤さん点検してくれよ。あそこをのぞいてみると、やっぱり工学部ですよ。工学部もいいんだよ、いいんだけれども、学生の防衛研修会というのは何だね、これまさに防衛大学そのものじゃないか。ああいうのを長年にわたって来ているんだけれども、しかも総理は防衛大学の卒業式へ行けば、精強な自衛隊。なあに、ころっとどっかの会社へ行っちまうんだよ。それを平気だというのは困るんだよな。だからこれは何か対応策があるだろう。縄つけて引っ張るわけにいきませんぜ。いかぬけれども、例えば出るときによく話をして、第二予備隊か何かしらぬが、予備自衛隊なんてありますな、そういう第二予備隊でも何でもいいんだよ、もし防衛意識というものをあの訓練によって持てたということなら、やっぱりそういうふうなことにはめていかないと、防衛ということはやっぱり防衛意識を持つすそ野を広げるということが大事なんだから、私は陸上自衛隊でもそうだと思うんだ。あれ減らせとかなんとか言うけれども、やっぱり防衛の陸上自衛隊なんというものは、ある意味で一種の教育機関と見た方がいいんですよ、それは逃げるという者もいっぱいいる世の中。そうでない者をやっぱり大事にせにゃいかぬ。そういう意味においては、まあ時間が来たけれども、こんなばかばかしいことはよくない。教育とは何ぞや。大人だったら自分で月謝納める。特別に頭がよくなくて月謝ただというものもいい。しかし銭を国からもらって、はい、さよならというのはどう考えても私は理解できぬ。  そういうことでひとつ、これは答弁要りませんから、加藤さん頼みますよ。  じゃ終わります。(拍手)
  342. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 以上をもちまして秦野草君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  343. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 次に、派遣委員の報告を聴取いたします。桧垣徳太郎君。
  344. 桧垣徳太郎

    桧垣徳太郎君 本年度の予算委員会委員派遣につきまして御報告を申し上げます。  今回の委員派遣は、安田委員長、竹田、太田、内藤の各理事と私桧垣の五名で、七月二十九日から三十一日までの三日間、北海道の地域経済の動向及び地方財政の現状、補助金一括法に関連して問題となった積雪寒冷地域の公共事業執行状況、市場開放を求められている木材産業の実情及び自衛隊の現状等を調査してまいりました。  調査日程を申し上げますと、七月二十九日、航空自衛隊第二航空団の視察及び道内の経済、産業の動向、総合開発、財政状況等の調査、七月三十日、木材産業の現状調査及び道立林産試験場等の視察、七月三十一日、しろがねダム、道営畑地帯総合土地改良事業の現地視察等を行ってまいりました。  まず、北海道の産業経済動向については、第一次産業のウエートが高い上に、第二次産業も最近好調の電気機械産業が少ない等の産業構造も影響して、景気の回復、上昇が全国水準に比べでおくれており、いわゆる地域間格差が顕著に出ておりました。また、第一次産業については、稲作の減反、国際的競争を強いられる畜産、さらに年々規制が強まる北洋漁業等々、その環境は大変厳しいものとなっております。  次に、北海道総合開発計画の進捗状況については、六十二年度の計画最終年次に目標を達成することは大変難しい状況にあります。我が国を取り巻く産業経済の環境が計画作成当時と大きく変わってしまったことが目標と実績の乖離を生じた原因であります。しかし、現地では、産業基盤整備と社会資本の充実はあすの北海道の発展に不可欠なのでぜひ国の強力な援助をお願いしたいとのことでありました。  次に、北海道の財政状況については、まず地方交付税及び国庫支出金に大きく依存せざるを得ず、自主財源に乏しい財政体質という特徴があります。その上、景気回復のおくれに加えて国の財政が緊縮型で運用されている結果、総体的に歳入難に陥り、この不足を補うため地方債の増発と積立金の取り崩しに頼らざるを得ない状況となっております。  他方、歳出面では、人件費等の義務的経費が四〇%を超えるほどで、財政の硬直化が著しい上に、今後公債費の負担が年々上乗せされるという状況にあります。  道の財政収支は、五十五年度までは百億円を超える黒字となっておりましたが、五十六年度以降は積立金の取り崩しなどのやりくり算段をしているものの、五十七、五十八の両年度は実質単年度収支が赤字決算を余儀なくされております。  次に、六十年度に実施された国の補助金等の整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律の成立がおくれたことに伴う公共事業執行状況については、本院の補助金等に関する特別委員会での与野党挙げての、地方に迷惑をかけないよう万全の措置をとるべしとの要請に、行政府はおおむね適切に対処しておりました。  ちなみに、公共事業契約率はここ数年、上半期に八六ないし八七%となっておりますが、六十年度の場合は第一・四半期の契約率は例年より三ないし四%低いものの、上半期でおくれを取り戻し、例年どおりの公共事業の執行が確実に実行されるとの説明でした。これは、法案審議中に設計協議等の事務を進め、法案成立直後に予算執行を行う促進策をとったことが大きく寄与したものと現地では大変評価し、かつ喜んでおりました。しかし、農用地の補助事業の一部が作付前にできず、収穫後に回されるという事例が出たことの報告がありました。  次に、北海道の林業については、道面積の七二%が森林であり、森林蓄積は全国の五分の一を占めております。しかし、北海道の林業は天然林が多く、また人工造林は三十年代後半から大規模に行われたということで、林業の生産性は低い状況にあります。  さらに、育成途上にある人工造林は間伐等の保育が必要なのに、木材価格の低迷や人件費の増高、山林労働者の確保難など、その経営に問題が山積している状況であります。  現地では、木材需要が停滞傾向にあるとき、海外の木材市場開放要求に安易に乗るならば、国内の林業経営及び林産業は大変な危機に直面するので、慎重に対処してほしいとの要望が強く出されておりました。  以上で口頭報告を終わります。  なお、委員長の手元に詳細な調査報告書を提出いたしますので、本日の会議録に載せていただくよう、委員長においてお取り計らいをお願い申し上げます。(拍手)
  345. 安田隆明

    委員長安田隆明君) ただいま桧垣君から要請のありました報告書につきましては、本日の会議録の末尾に掲載することといたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  346. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 御異議ないと認めます。さよう取り計らいをいたします。  次回は五日午後一時から開会することとし、本日は散会いたします。    午後七時十七分散会      —————・—————