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1985-10-18 第103回国会 参議院 本会議 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年十月十八日(金曜日)    午前十時一分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第三号   昭和六十年十月十八日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第三日)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  一、国家公務員等任命に関する件  以下 議事日程のとおり      ——————————
  2. 木村睦男

    議長木村睦男君) これより会議を開きます。  この際、国家公務員等任命に関する件についてお諮りいたします。  内閣から、社会保険審査会委員佐分利輝彦君を、  中央社会保険医療協議会委員三藤邦彦君を任命したことについて、それぞれ本院の承認を求めてまいりました。  まず、社会保険審査会委員任命について採決をいたします。  内閣申し出のとおり、これを承認することに賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  3. 木村睦男

    議長木村睦男君) 過半数と認めます。  よって、これを承認することに決しました。  次に、中央社会保険医療協議会委員任命について採決をいたします。  内閣申し出のとおり、これを承認することに賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  4. 木村睦男

    議長木村睦男君) 総員起立と認めます。  よって、全会一致をもってこれを承認することに決しました。      ——————————
  5. 木村睦男

    議長木村睦男君) 日程第一 国務大臣演説に関する件(第三日)  昨日に引き続き、これより順次質疑を許します。藤原房雄君。    〔藤原房雄登壇拍手
  6. 藤原房雄

    藤原房雄君 私は、公明党・国民会議を代表して、さきの所信表明演説に対し総理並びに関係各大臣に質問いたします。  初めに、航空史上、空前の大惨事となったさきの日航機墜落事故の五百二十名のとうとい犠牲者の皆様には心より哀悼の意を表しますとともに、御遺族の皆様には衷心よりお見舞いを申し上げます。政府に万全なる安全対策を強く要請いたします。  また、長野県の地すべり事故台風禍などの被災者の皆様には心よりお見舞いを申し上げます。このような災害についても、速やかな復旧と生活安定対策及び根本的な安全対策の見直しをあわせて強く要求いたします。総理の決意を承りたい。  さて、総理は、戦後政治の総決算を主張され、それは二十一世紀に向かっての渡り廊下をつくろうとの意味であると述べられています。しかし、多くの国民は、その渡り廊下に大きな危惧を抱いております。すなわち、総決算の目標とされた防衛力増強姿勢靖国神社への公式参拝の強行、さらにスパイ防止法の制定を図るなど、いずれも中曽根内閣右傾化戦前回帰を表徴し、新憲法の諸原則を踏みにじる暴挙と断ぜざるを得ず、平和を願う国民への重大な挑戦であると言っても決して過言ではありません。  そこで、まず総理政治姿勢について伺いたい。  去る八月十五日の終戦記念日総理初め閣僚が強行した靖国神社への公式参拝について、軍国主義国家神道の復活につながるとか、過去の歴史への免罪を図る行為など、内外の批判が高まっています。また、「違憲ではないかとの疑いをなお否定できない」という政府統一見解をも踏みにじるものであります。靖国神社かしわ手を打たないなどの粉飾、すりかえを凝らし、また供花料と称して公費支出に踏み切ったことは、どんなに言葉を弄しても、宗教法人に対し首相、閣僚が公人の資格で参拝することは、憲法第二十条、第八十九条の信教の自由、政教分離の原則に抵触するもので、憲法違反であります。  総理靖国神社への公式参拝に固執する意図は何ですか。戦争指導者の復権、靖国神社国家護持の復活を目指してのことと思えますが、どうですか。お答えください。むしろ、戦争で亡くなられた方々を追悼することは残された者の当然の務めであり、現に政府が主催する全国戦没者追悼式がそうであるように、憲法の精神を踏まえたあり方を考えるべきと思うが、総理の御所見を伺いたい。  次に、防衛問題についてであります。  財政再建の中で、五十八年度以来、防衛予算聖域化を推し進めてまいりました。政府はついに今年防衛庁限りの五九中業を政府計画に格上げして、しかも総額十八兆四千億円という中期防衛力整備計画閣議決定しました。これは一%枠を決めた五十一年の閣議決定に明らかに反し、既成の事実を先行させ、事実上一%枠の突破を強行する暴挙に出たと言うことができるのであります。国力や経済力を最も端的にあらわしているGNPを指標に防衛力整備を図ることは、すぐれて合理的、客観的で、既に国民の間に定着し、国民の信頼と安心感の土台となってきました。今や防衛政策の域を超え、日本が軍事大国にならない決意の象徴であり、国是であります。  しかるに、総理右傾化する政治姿勢に対し、東南アジア、特に中国国民に、靖国で過去の戦争を免罪し、一%枠撤廃で次の戦争を準備しているとの脅威感を与えたことはまことに残念なことであります。これら諸国に対し、総理はどのように説明なさるのか、明らかにしていただきたい。GNP一%枠を突破する新計画は新たな歯どめにはなりません。防衛費GNP比一%枠堅持国民に約束するとともに、その撤廃を意図した新計画の撤回を強く求めるものであります。あわせて総理の答弁を伺います。  次に、定数是正問題であります。  最高裁大法廷の司法判断にあるごとく、衆議院議員現行定数は明らかに憲法違反であり、憲法の平等の原則にのっとってこれを是正することは緊急の政治課題であります。しかし、総理の昨日の答弁では納得できません。今回の改正がいかに緊急避難のためとはいえ、中選挙区制の原則を堅持すべきであり、小選挙区制につながる二人区は絶対につくるべきではないと思うが、どうか。また、六十年国勢調査結果に基づく格差二倍以内の抜本改正に速やかに着手すべきであるが、総理はどのような抜本改正を考えているのか、明らかにされたい。また、参議院選挙区も同様の定数格差が存在しており、並行して是正を図るべきと思うが、重ねて伺います。  次に、内政、外交の重要課題について伺います。  第一は、外交問題についてです。  私は、我が国外交政策の基本は、憲法の恒久平和主義の理念を基盤とし、国際社会の発展に進んで貢献することと考えます。しかるに総理は、憲法を守り、経済大国になっても軍事大国にはならないという歴代内閣が公約してきた戦後政治の屋台骨まで取り外そうとするばかりか、軍事優先で、強いアメリカを標榜するレーガン戦略にまで加担しております。総理国連中心平和外交と言うが、それは口先だけのことではないのか、総理の外交の基本理念は那辺にあるのか、まずお伺いをします。  次に、当面する外交問題について具体的に伺います。  まず、十月十九日から訪米する総理は、レーガン大統領との首脳会談を初め、国連総会の演説と主要先進国首脳緊急会議を控えています。これら一連の会談において、「国際社会の平和と繁栄に積極的な貢献を行う」との総理の決意とは、具体的には、核兵器全面撤廃のための核保有国首脳会議早期開催や、懸案の第三回国連軍縮特別総会開催促進を訴え、また、場合によっては、これら二つの会議を我が国で開くよう提案することであると考えますが、総理の御所見を伺いたい。  次に、米ソ首脳会談についてであります。  この十一月、ジュネーブで開かれる米ソ首脳会談によって新たな緊張緩和の時代を迎えるか、今や世界の期待と注目を集めています。米ソを中心とする国際関係緊張緩和に向かえば、日ソ関係も改善が期待され、さらにはアジアの平和も大いに進むものと思われます。総理が所信において述べられた、この米ソ間の対話を実りあるものにするための支援とは具体的にどういう支援を言うのか、お伺いをしたい。  また、今や全人類共有の宇宙にまで及ぶ米ソ両大国の軍拡競争は断じて許しがたく、ただ我が国こそがこの軍拡競争を阻止する使命があると思うのであります。したがって、SDI、いわゆるスターウオーズ計画に対する研究不参加を明確に表明するよう総理に強く要求をするものであります。  次に、日ソ関係についてであります。  日ソ両国の積極的な努力の結果、懸案のソ連外相の来日が決定し、九年ぶりに日ソ外相定期協議が再開されることになったことはまことに歓迎すべきことであります。この日ソ外相会談では、懸案の北方領土の返還と平和条約の締結という国民的な要求の早期実現を強く求めるべきと思いますが、外務大臣の決意を伺いたい。  さらに、隣国ソ連との経済、文化、学術など広範な友好関係を深める方途についてはどのように考えておられるのか、総理並びに外務大臣の御所見を伺います。  第二は、経済問題についてであります。  さきに来日したシュミット西ドイツ前首相は、我が国に対して、「日本は世界のスケープゴート・ナンバーワンになっている。孤立化を防ぐため財政主導内需拡大を急ぐべきだ」、また「保護貿易主義の台頭を防ぐため、これまでの経済政策を抜本的に転換すべきである」と警告しています。総理はこの警告をどう受けとめておられるのか、お聞きしたい。  総理、世界が我が国に対して期待していることは、自由世界第二位の経済力世界経済活性化のために生かしてほしいということではないでしょうか。しかし、対外経済対策として政府がさきに発表した行動計画が、アメリカ議会はもちろんのこと、EC、東南アジア諸国などから厳しい評価を受けております。総理行動計画に対するこの評価をどう受けとめているのか。また、この行動計画を今後どのように運用し、この厳しい対外経済摩擦解消に立ち向かわれるのか、御答弁をいただきたい。  特にこの際、最も重大な対米摩擦の解消について伺います。  日米摩擦の背景には、アメリカの貿易並びに財政の二つの赤字と高金利政策が存在していたことを指摘しなければなりません。総理、あなたは十月二十三日に予定されているレーガン大統領との会談で日米経済摩擦問題を議題にすると思いますが、その際、我が国の新しい何らかの対策を示すことを考えておりますか。また、高金利是正ドル高是正市場介入対策で米国にどのような努力を要求されますか、明らかにしていただきたい。  次に、内需拡大についてであります。  内需の拡大については、従来より公共事業大幅増加所得税減税住民税減税投資減税等が言われてきました。このたびの内需拡大対策では、総理があれほど強調された減税は全く欠落しているばかりか、地方任せの公共事業など、今までの施策の羅列にしかすぎません。果たしてこの対策でどの程度の内需拡大を図ることができるものと考えておられるのか、お伺いをいたします。  特に、経済大国とはいえ、ウサギ小屋との批判があるように、我が国は他の先進諸国と比較して社会資本の見劣りは著しいものと言わなければなりません。総理内需拡大に効果がある社会資本の充実をどう進めようとされるのか。社会資本整備促進内需振興による持続的な景気の拡大と経済摩擦の解消となり、まさに一石二鳥の政策と思いますが、どうですか、お伺いしたい。  また、政府は六十一年度予算要求公共事業拡大策をうたっていますが、国の財政が極めて厳しい折、具体的にいかなる施策による公共事業拡大なのか、明示していただきたいのであります。  次に、減税問題についてであります。  減税政策が内需の喚起に最も効果があることは今までも我が党は強く主張してまいりました。まず、さきの書記長幹事長会談で、寝たきり老人教育費単身赴任などの政策減税で与野党の合意がなされましたが、この政策減税についての総理の御所見をお伺いしたい。また、人事院勧告完全実施をすべきと考えますが、どうなのか、あわせてお答えをいただきたい。さらに総理内需拡大の上からも六十一年度において所得税住民税大幅減税を実施すべきと考えますが、御所見を明らかにしていただきたい。  次は、国際通貨問題についてであります。  九月二十二日に行われた先進五カ国蔵相・中央銀行総裁会議で、ドル高是正へ五カ国が協調して介入することになり、現在のところその方向に進んでいるように見受けられます。しかし、専門家の中には、協調介入による効果は一時的なものに終わるという意見と、他方、各国が政策的裏づけをもって行うのであれば成功するという声もあります。そこで、アメリカ赤字削減高金利是正政策転換の見通しについてどのようにお考えになっていらっしゃるのか。また、我が国がこの会議で表明した六項目の政策の進め方とテンポについて、あわせて総理並びに大蔵大臣の御所見を承りたい。  輸入拡大策内需拡大策を打ち出したものの、これから先にさほど目立った効果が得られず、貿易収支の黒字も減少しないことになれば、それこそ我が国世界的孤立化という大変苦しい立場に立たされることは明らかであります。そのためには、今こそ大型補正予算を組み、内需を拡大し、輸入増加具体策を打ち出すべきだという声もありますが、総理並びに大蔵大臣の御見解を承りたい。  第三は、福祉対策についてであります。  まず、高齢者対策について伺います。  財政の悪化に便乗して、高齢者社会に対処する政府方針も不明確のまま福祉予算を切り詰め、自助努力を強調する政府福祉政策の転換に、弱者軽視ではないのかと国民は憂慮いたしております。二十一世紀に向け国民が安心して暮らせる社会保障制度の見取り図について、総理並びに厚生大臣にお伺いいたします。  差し迫った問題として、厚生省は、来年度予算で患者負担の一部引き上げと被用者保険拠出金の強化という老人保健制度の改正を打ち出しています。これは国の負担責任国民に転嫁させるものであり、老人の受診の機会を奪い、必要な医療から遠ざけ、病気の治癒を妨げるものであり、断じて許せるものではありません。政府の反省を促すとともに、厚生大臣の御見解を承りたい。  また、七十五歳以上の後期高齢人口の増加が言われております。寝たきり老人痴呆老人等介護の必要な老人がますますふえる状況にあります。既に介護疫れによる自殺や家庭崩壊が社会問題となりつつあります。そこで、在宅ケアの充実や特養ホームの増設などの施策が緊急の政治課題となっております。政府の対策について厚生大臣よりお答えをいただきたい。  第四に、農林漁業についてであります。  我が国では、農林漁業産業的地位は後退に次ぐ後退を続けております。全国の農山漁村では生産の担い手の高齢化が進み、後継者が極端に欠けている地域が広がりつつあり、この傾向は今後ますます顕著になると思われます。後継者対策も含め、我が国農林漁業活性化のために講ずべき手だてをここで明示していただきたい。  また、その場合、二十一世紀に向けて我が国農業をどう展望し、そのためになすべき施策は何であり、その中で今から手がけておくべき重要な施策は何であるとお考えか、あわせてお答えをいただきたい。  私は、今から着実に講じておくべき施策の重要なものの中に生産基盤の整備と技術対策があると思います。どうですか。特に、第三次土地改良長期計画完全実施すべきであると考えますが、どう対処されますか。総理の御所見を伺いたい。  去る九日に開かれた全国農協大会で、総理農産物についての市場開放を要請しております。我が国が今後とも自由貿易を基本とするにしても、国内の産業構造が急速に変化し、バランスを欠いたものになることは極力避けるべきであります。特に、農業については一定の自給率を維持し、食糧の安全保障を確保しておくべきことは国際的な常識であるといっても遺言ではありません。したがって、安易な農産物市場開放には慎重でなければなりません。また、農業を生命産業と標榜し、そのかけ声だけに終始するのではなく、具体的に食糧安保の視点から総理の明快な答弁を求めるものであります。  次に、建設省は、六十一年度から河川管理の財源に充てるため、流水占用料徴収の対象に農業用水をも加える意向のようであります。もとより、農業用水農業生産の基礎として元来農業者がその開発維持のために歴史的にかかわりを持っており、現在も多大な経費や労力を投入しているところであります。しかも、農業用水そのもの地下水を涵養したり、下流河川の水源ともなっている等の実情に照らしてみても、農業用水流水占用料を適用させることは不当な措置であり、その方針は即刻撤回すべきものと考えますが、建設大臣の御見解を承りたい。  第五に、食品の安全性の確保についてであります。  政府は、最近の貿易摩擦により、市場アクセス改善のため諸施策を進めようとしております。特に食品、農産物等について基準・認証、輸入手続の緩和によって国際基準整合性を持たせるために、これまで国民の健康や安全の保護を目的としていた制度が骨抜きになることを危惧する声が高まっています。過日のワイン有害物質混入事件で多くの教訓を得たように、特に食品についての品質検査体制政府認証から自己認証への移行など、健康と安全を確保する上から政府はこれらの問題にどのように対処されるか、お伺いします。  また、市場開放で多くの食品が出回るようになれば、食品添加物等安全に関する食品行政表示行政充実強化を図り、国民に選択の道を開かなければなりません。あわせて総理並びに厚生大臣にお尋ねをいたします。  第六に、緑化問題についてであります。  既に、アメリカ政府国連環境計画等報告書、その他多くの専門家が警告をしているように、二十一世紀を目前にした我々の地球は、森林資源の破壊と砂漠化によって大きな環境的危機を迎えております。我が国としても世界の環境問題に対し積極的に協力し、貢献すべきであります。  その一つは、政府開発援助予算GNP一%に引き上げ、植林など環境問題に対する援助協力費を増額すること。また、林業技術者農業技術者を大量に派遣することなどが急務であります。さらに、長期的観点に立って、世界森林保全条約の締結を我が国が提唱するなど大いに努力すべきと思いますが、外務大臣の御見解を承りたい。  国土の七割を占める我が国の森林も、国土保全水資源の涵養など大きな役割を担っております。人工林一千万ヘクタールに達したと言われている反面、手入れが行き届かず大規模な林地の荒廃が進み、緑の構造的危機が叫ばれております。この対策として、森林の持つ公益的機能を発揮させるため、荒廃林地等の復旧、森林整備複層林の造成、間伐等を進めるとともに、貴重な原生林広葉樹林による生態系の保全、景観の維持にも配慮する必要があります。また、林業家のため、健全な林業経営についての技術指導を徹底するとともに、間伐、林道整備の促進、山林相続税における減免措置の拡大など、里山で生活できる対策が急務であります。これらに対する政府の施策の拡充と予算の重点配分をすべきと思いますが、総理の御見解を承りたい。  また、都市の緑について、住民や地方自治体の協力とともに、政府都市緑化を促進する方途を明確にすべきであります。特に、緑空間の確保のため、国有地を安易に民間に払い下げるのではなく、一部は緑地、公園として公的に利用すべきと思いますが、御見解を承りたい。  最後に、地域問題について伺います。  三大都市圏と異なり、北海道、東北、四国では人口や産業などが集中しておりません。そのため、民間活力の導入は難しく、自然条件の厳しい北海道などにおいては極めて困難な状況にあります。したがって、これらの地域には、政府が力説する民活方式ではなく、従前からの公共事業方式を一層強化して地域の活性化を図り、もって国土の均衡ある発展を期すべきであると思いますが、総理の御所見を伺いたい。  さらに、九州は既に、四国は近い将来本州と陸続きとなり、経済圏域が次第に拡大されつつあります。北海道、東北のような積雪寒冷地域の発展には、特定地方交通線に十分配慮しつつ、情報の近代化と空港、高速道路など高速交通体系整備促進を図ることが急務であります。そのためにも、特に東北新幹線の盛岡以北の着工と青函トンネル有効利用方式を早急に決定すべきと思いますが、あわせて総理の御見解を承りたい。  以上、平和と福祉社会の建設、国土の均衡ある発展の上から内政、外交の重要課題について指摘してまいりましたが、総理並びに関係大臣の真摯なる答弁を求め、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
  7. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 藤原議員お答えを申し上げます。  まず、日航機事故に対する対策でございますが、御遭難の皆様方には心から哀悼の意を表し、また負傷者方々にお見舞いを申し上げる次第でございます。  安全運航ということが航空行政の最大の課題でございまして、これらにつきまして、今回の事故はまことに遺憾でございます。政府といたしましては、事故後直ちに、ボーイング式747型の一斉点検とか、あるいは日本航空の整備業務改善とか、あらゆる手段を使いまして今後の安全確保努力をしております。なお、今後とも努めてまいるつもりでおります。  災害対策でございますが、先般の長野地すべりあるいは最近頻発している土砂災害等につきましては、関係省を動員いたしまして、その予防対策を推進しておるところでございます。今後とも、国民皆さんが安心できるように災害対策についてはさらに充実してまいるつもりでおります。  靖国神社に対する御質問がございましたが、政府は、先般の公式参拝国民や御遺族方々の多くが靖国神社において総理閣僚による公式参拝が家施されることを強く望んでいるという事情を踏まえたものでございまして、その目的は、戦没者追悼を行い、あわせて我が国世界平和への決意を新たにする、いわば不再戦の誓いということでもあるのであります。  新たなる施設の問題につきましては、これは将来の課題考えております。  また、靖国神社参拝に関しまして、中国側から、かかる参拝中国人民のみならずアジア諸国民の感情を害するのではないかという趣旨の懸念が表明されましたが、この問題につきましては、御理解をいただくように今懸命に努力もし、安倍外務大臣との間に意思疎通を図ってきておるところでございます。我が国としては、再びこのような戦争の惨害を繰り返さないという反省決意の上に立ちまして平和国家の道を歩んできておりまして、今後ともこの方針を堅持し、アジア諸国に対しても御理解を得るように努力してまいるつもりでおります。  GNP一%の問題でございますが、今回の中期防衛力整備計画は、GNP一%の閣議決定撤廃目的としたものではなく、より適切な文民統制のもとに大綱達成を図ることを目標にしたものでありまして、必要最小限経費を計上したものであり、撤回する気持ちはございません。しかし、政府は、この計画期間中におきましても、GNP一%に関する閣議決定趣旨を尊重すると申し上げてきておる次第なのであります。  衆議院定数是正につきましては、最高裁の判決を踏まえまして、当面、緊急避難的措置として六・六案を提出しておりますが、野党の皆さんと協調いたしまして、今国会においてぜひとも成立させたいと念願をしております。  また、六十年国勢調査の結果につきましては、公式な結果が出たときに各党間において十分深い御論議をしていただきまして、新たな合意を形成することを念願しておる次第でございます。  参議院定数是正も重要な課題でございますが、総定数を何人にするかを初め、半数改選制や各選挙区の有する地域代表的な性格をどう考えるかなど、選挙制度基本にかかわる問題でもありますので、まず各党周で十分御論議を尽くしていただくことが適当であると考えます。  国連中心平和外交の推進はまことに同感でございます。世界の平和と繁栄のため積極的に貢献する国際国家日本を目指しておるのが私の外交政策でございまして、そのために、特に軍備管理軍縮、特に核の廃絶、地域紛争平和的解決のための環境づくり世界に開かれた日本をつくる、そして特に開発途上国の安定と発展へ向けて寄与する、これらの事々を実施してまいりたいと思っております。  国連四十年の創立記念に当たりまして、さらに世界の平和と繁栄維持のためのモメンタムになうように積極的に努力してまいりたいと思っております。また私は、所信表明におきましても、経済大国にはなっても軍事大国にはならないということは重ねて表明している次第なのでございます。  核兵器の問題と首脳会議の問題でございますが、核兵器の廃絶は人類共通の悲願であると考えており、可能でかつ実効ある具体的措置を進めるように我々は核保有国に訴えると同時に、核拡散防止条約の参加国をできるだけふやすように努力してまいりたいと思っております。  第三回の国連軍縮特別総会は遅くとも一九八八年までには開催する見込みでございまして、適当な開催のタイミングについて本年の国連総会合意が得られることを期待しております。これらの特別総会が、現実的、実りある軍縮の成果を上げるように我々としても努力しているつもりでございます。  米ソ首脳会談につきましては、このような情勢に展開してきたことを非常に歓迎して、実りある会談が行われるように念願する次第でございます。東西関係の安定と核兵器の大幅削減を目指してぜひとも実りある話をしていただきたいと思い、今般ニューヨークにおける主要国首脳会議にも出席して率直な意見交換を行うつもりでおります。  SDIにつきましては、これにつきましては理解するという態度をここでも表明申し上げましたが、変化はございません。今後とも参加につきましては慎重に対処する次第でございます。  日ソ関係につきましては、先般ゴルバチョフ書記長から久方ぶりに親書をいただきましたが、私も返事を申し上げた次第でございます。日ソ関係発展をさらに大きく開いていくためには、やはり北方領土問題を解決して平和条約締結するということが不可欠であるという藤原議員の御指摘は全く同感でございます。今後もあらゆる機会をとらえてこのために努力をしてまいります。  西独のシュミット前首相の発言につきましては、私もお会いをいたしましたが、やはり彼が一番心配しておりますのは、アメリカ財政赤字あるいは高金利あるいはドルの異常高、こういう問題を非常に心配しておりまして、これを解決することがやはりスタートである、そういうことを彼も言っておりました。自由貿易体制を堅持して、そうして貿易拡大均衡を図っていくために、日本もアクションプログラム、これを誠実に実行して、さらに開放への努力を願いたいということも言っておりました。私はシュミットさんの発言にはかなり共鳴するところもありまして、そのいいところはこれを取り上げて実践していくつもりでもあります。このために、先般内需拡大に対する対策等も積極的に急がせて取り上げさせた次第なのでございます。  対外経済摩擦につきましては、さらにいろいろな方面につきまして実施の状況を監視し、あるいはこれを推進してまいりたいと思います。今国会におきましても諸般の法律等を提出しておりますが、御協賛願いたいと思う次第でございます。  同米首脳会談におきましては、財政赤字の縮小、高金利の是正、輸出機会の活用等米国側の努力も要請しますが、我が方の努力も、これをまた誠実に実行しなければならぬと思っております。  内需拡大効果については、民間住宅投資とか民間設備投資の促進とか公的固定資本形成等、生産拡大あるいは所得の増大等を通じまして、対策効果が波及して拡大するように努力してまいりたいと思います。今回の対策効果を定量的に測定することは困難でございますが、当面早急に実施する対策について一定の前提のもとに一応の試算を行いますと、事業規模において約三兆一千億円、この波及効果まで含めて名目GNPに引き直しますと、今後一年間で約四兆一千億円ぐらいが見込まれるものでございます。  社会資本整備につきましては、内需拡大に対する対策と同時にこれを決定しているところでございますが、住宅建設都市開発の促進、下水道事業の追加、国庫債務負担行為の活用等によりまして実質的にこれを拡大していくつもっております。  昭和六十一年度の公共事業予算の規模等についてはまだ未定でございます。なお、公共事業につきましては、財政窮乏の折から、民間活力の活用、できるだけの事業費、事業量を確保する、こういう努力を積極的にしていきたいと思います。  政策減税につきましては、十月十四日の幹事長・書記長会談の結果については、党からも話を伺っており、誠意を持って対応いたしたいと思います。  六十年度の人事院勧告につきましては、勧告制度尊重の基本姿勢に立って、給与関係閣僚会議等におきまして今誠意を持って検討しておるところでございます。  減税につきましては、所得税住民税、ともに税制調査会において今鋭意検討をしていただいて、答申を待っておる状態でございます。  アメリカ側の財政赤字削減、高金利の是正に対する努力は、かなり真剣に取り組まれておりまして、八六年度予算についても、米国議会において五百五十五億ドルの財政赤字削減を決議しておるところであります。さらに、九月の五カ国蔵相会議でも米国は赤字削減を表明し、先進各国とも引き続き、我が国も引き続き赤字削減努力をしてまいりたいと思っておる次第でございます。  大型補正予算につきましては、厳しい財政状況のもとで、追加財政需要等については慎重に対処していく必要があり、公債の追加発行によって一般的な公共事業の追加を行うことは困難でございます。しかし、内需拡大に対する対策を決定いたしまして、できるだけ事業量を多くしていくように努力しておるところでございます。  社会保障につきましては、我が国は外国に例を見ないスピードで高齢化が進んでおります。本年七月、長寿社会対策関係閣僚会議を設置し、社会保障の推進について努力してまいります。  食糧問題でございますが、農は国の基、農業生命産業と私は申し上げておるのでありまして、食糧国民生活にとって最も重要な基礎物資であり、食糧の安定供給と安全保障確保は国政の重要課題の一つであると考えております。農政の展開に当たりましては、国会の食糧自給力強化に関する決議の趣旨を踏まえ、生産性の向上を図りつつ、国内での生産可能なものは極力国内生産で賄うことを基本として、総合的な食糧自給化対策を推進したいと思います。構造政策生産基盤整備、技術の開発、これらも大事でありますし、対外経済問題への対応に当たっても、関係国との友好に留意しつつ、国内農産物の需給動向等を踏まえまして、我が国農業の健全な発展と調和のとれた形で行われることを念願しております。  さらに、後継者や中核的な担い手の育成、あるいは経営規模の拡大生産基盤計画整備、技術の開発、バイオテクノロジーの将来の活用、活力ある村づくり、特に第三次土地改良長期計画については、財政事情は極めて厳しい状況にありますが、その計画達成に向けて努力してまいります。  食品安全対策につきましては、食品等につきまして、輸入手続の簡素化、迅速化、政府介入の縮小等の措置を講ずることとしておりますが、いやしくも国民の健康と安全に支障が生ずることがないように十分配慮をしてまいります。  林業につきましては、国土保全水資源の涵養等の公益的機能があり、山と緑を守り、森林林業の活性化を図ることは重大なる政策であります。特に間伐の推進を図りまして、林相をよくするということが非常に大事であると思います。目下五カ年計画の策定を急いでおり、国費で約五百億円、融資で約千億円の計画の策定をしておるところであります。  緑化対策につきましては藤原議員と全く同感でございまして、特に都市緑化の推進、これにつきましては大いに努力したいと思います。今後、二十一世紀を展望して、緑の三倍増構想による都市緑化を推進してまいります。特に公園の整備、公共空間の緑化、民有地の緑化等も急いで促進してまいるようにいたします。  国有地国民共有の財産であり、公共目的に使用することが適切であります。とりわけ都市内の国有地都市の再開発等を進めていく上で貴重な空間資源でありまして、地元の公共団体から公園等の利用要望があれば十分勘案してまいりたいと思います。  また、我が国財政が巨額の公債残高を抱えて大幅な赤字財政を持っているというところから、建設公債の増発による公共事業拡大は困難であります。我が国は市場経済基本として、民間部門の活力が経済社会発展の原動力であり、親御緩和を初め民間活力を活用するための環境整備を推進してまいりたいと思います。  青函トンネルの問題につきましては、東北新幹線の盛岡以北の着工について、昨年十二月、六十年度予算編成に当たって政府・与党間においてその取り扱いについて確認がされ、それを踏まえ、八月二十二日に政府・与党間で一定の方針について合意がなされました。政府はそれに基づきまして適切に対処する所存であります。  青函トンネルは、六十二年度を目途に目下建設中でありますが、完成後は在来線として利用する予定でありますが、国民全体の財産とも言うべきものでありますので、さらに一層の有効利用について現在運輸省が中心になって検討中でございます。  残余の答弁関係大臣からいたします。(拍手)    〔国務大臣安倍晋太郎君登壇拍手
  8. 安倍晋太郎

    国務大臣(安倍晋太郎君) 藤原議員の御質問お答えをいたします。  懸案の北方領土の返還と平和条約締結及びソ連との友好関係を深める方途についてでございますが、戦後未解決の北方領土問題を解決して日ソ間に平和条約締結することによりまして、重要な隣国であるソ連との間に真の相互理解に基づく安定的な関係を確立することは、従来より一貫した我が国の対ソ外交基本方針であります。  昨年来、政府が進めてきましたソ連との対話強化努力の結果、近くシェワルナゼ外相の訪日を得まして日ソ外相間定期協議が開かれる運びとなったわけでございますが、政府としましては、この外相間定期協議を初めとして、今後ともあらゆる対話の機会を通じて日ソ間の諸懸案の解決を粘り強く働きかけていきたいと存じております。  日ソ間の経済、文化、学術を含む各分野で対話、交流を進めることは政府方針でありまして、先般来、租税条約あるいは貿易支払い協定につきまして合意を見ました。現在、日ソ文化協定交渉を積極的に進めてきておるわけでございます。  いずれにしても、これらの分野におきまして日ソ関係発展の可能性を大きく広げていくためには、戦後未解決の北方領土問題を解決して平和条約締結することが不可欠であるというのが政府考えでございます。  また、第二点の世界の環境問題に対する協力に関する御質問でございますが、開発途上国の経済社会開発におきまして、環境保全に十分配慮しつつこれを進めることが重要であるとの認識が近年国際的に浸透をしてきております。また、本年は国際森林年に当たり、森林保全の重要性に対する理解は従来になく深まってきておるわけでございます。  我が国はこうした認識を踏まえ、従来より、緑化、砂漠化防止、森林保全等の分野、さらには我が国のこれまでの経験を生かすことのできる公害防止分野等におきまして資金の供与あるいは専門家の派遣、研修生の受け入れ等によります経済技術協力を積極的に実施してきておるところでございます。政府としましては、今後とも政府開発援助の着実な拡充を図るために、今般第三次中期目標を設定いたしたところでありますが、今後とも環境保全の分野におきましても国際協力の動きに対し可能な限りの支援を行っていく考えでございます。  なお、世界森林保全条約締結につきましては、一つの貴重な御意見として、この分野における今後の我が国協力を行う上で重要な参考とさせていただきたいと考えておる次第でございます。(拍手)    〔国務大臣竹下登君登壇拍手
  9. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 私に対する御質問の第二は、貿易赤字削減高金利是正の米国の政策の見通し、こういうことであります。  アメリカにおける大幅な財政赤字が、高金利、ドル高を通じまして貿易赤字の大幅な拡大をもたらすなど今後の米国経済の行方にとって大きな懸念材料となっておる、御指摘のとおりであります。総理からもお答えがございましたように、財政赤字の削減につきましては、米国議会で八月に、第一次予算決議において、今後三年間で二千七百六十二億ドル、六十兆円にも及ぶ財政赤字削減の決議、これが行われておる、こういう状態であります。  それから、御指摘になりましたように、五カ国蔵相会議におきましても、米国がとるべき施策として、附属声明の中にも、財政赤字を縮小し、資源を民間部門の活用に供するため、GNPに対する政府支出の役割を減らす努力を今後とも続ける、そして一九八六会計年度の予算赤字GNPの一%以上削減するのみならず、その後の年度における赤字の一層大きな削減のための基盤としなければならぬ、こういう声明があるわけでありますので、これが着実に努力されて実行に移されていくということを私どもは期待いたしておるところであります。  それから次には、五カ国蔵相会議で表明した我が国の六項目の政策の進め方とテンポ、こういう御質問であります。  まさにその合意に従いまして秩序のあるドル高是正基調が定着していくように、これは介入ももとより必要でございます。しかし、今御意見にもありましたように、経済政策の協調を着実に進めなければいかぬ、こういう考え方であります。  そこで、我が国の申しておりますことにつきましては、パッケージとしておよそ六項目を附属声明で発表しておるわけでありますが、まず市場開放。これは今、政府として現実に作業をいたしておりますのは、少なくとも関税改正を早めなければいかぬ、こういうことで、この法律をこの国会で御審議いただくように目下鋭意作業を続けておるところでございます。それから法律を伴わないアクションプログラムの実施スケジュールを早めるという問題も具体的に進めておるところであります。  それから二番目の規制緩和、とれによる民間活力の活用の問題でございますが、これも許可・認可等民間活動に係る規制の整理及び合理化に関する法律案、これは仮称でございますが、これをこの臨時国会に提出して具体的にしたい。それから政省令の改正によるものにつきましては、逐次これを実施いたしております。  それから三番目が金融政策の問題ですが、まさに経済動向、金融情勢、為替相場の動向等に留意をしながら適切かつ機動的に進めていこう、こういう考え方であります。  それから四番目がいわゆる金融資本市場の自由化、国際化の推進でございます。この点は今日まで日米円・ドル委員会報告書に基づいて着々と進めておりますが、今後ともその評価にこたえるように引き続き前向きに取り組んでまいりたいという考え方であります。  それから五番目の財政赤字の削減と民間活力という、この二つ目標に焦点を合わせながら追加投資を行っていくという問題についてでございます。これも先般の経済対策閣僚会議内需拡大に関する対策で、例えば地方単独事業の下水道事業の追加措置を含めた円滑な施行を期待するとともに、政府保証外債を発行しまして、これは大都市の下水道単独事業でございますけれども、このニーズにこたえていきたいというふうに考えております。  それから六番目の消費者金融と住宅金融市場の拡大の問題でありますが、これは住宅金融公庫の特別割増貸付制度と貸付枠の追加ということで対応していくという考え方であります。個人消費のいわゆる消費者金融等の問題につきましても、まさに消費者ニーズに合った商品を金融機関の健全性に配慮しながら提供すること、あるいはまた現金自動支払い機の毎土曜休業日の稼働を行う、そしてこれは金融機関の週休二日制の拡大と関連いたしますからそれに配慮しなければなりませんが。さらに割賦販売標準条件の緩和を図るというようなことで、具体的に今の御指摘にこたえていこうという考え方であります。  それから最後が追加財政需要の問題でございます。  総理からもお答えがございましたが、今日の財政状況から考えてみましたとき、公債の追加発行による一般的な公共事業の追加、こういうことになりますと、いつも申し上げるようでございますが、例えば一兆円の投資をいたしましたとするならば、それは七%の金利を付し、六十年間にわたって後世の納税者に三兆七千億、すなわち三・七倍のツケを回すという結果になるということを思いますと、現在、今担当しておる我々といたしましても、この点については十分な上にも十分な慎重な配慮をしなければならぬ課題である。したがいまして、やはり内需拡大に関する対策の決定にもございましたように、民間活力中心とした拡大を図りますとともに、そこで公共事業につきましては、ぎりぎりの選択としていわゆる国庫債務負担行為の活用、俗称ゼロ国の活用、こういうことで対応するというのが今日の対応の仕方のおよその限界ではなかろうかというふうに考えております。(拍手)    〔国務大臣増岡博之君登壇拍手
  10. 増岡博之

    国務大臣(増岡博之君) 二十一世紀に向けての社会保障制度についてのお尋ねにお答え申し上げます。  本格的な高齢化社会におきましても、社会保障制度は長期的に安定し、かつ有効に機能する揺るぎないものでなければならないわけでございます。このような観点から、これまで健康保険制度や年金制度の改革を行ってきております。今後とも施策の合理化、効率化を図りつつ、国民の健康づくりや高齢者の介護対策等について重点的に配慮し、人生八十年時代に即した体系的な制度を築き上げてまいりたいと考えております。  次に、老人保健制度についてのお尋ねでございます。  まず、加入者案分率の引き上げにつきましては、各医療保険制度間におきましての老人加入率の格差による負担の不均衡を是正し、老人医療費の公平な負担を図るという観点から行うものであります。また、一部負担の引き上げにつきましては、世代間の公平、健康に対する自覚と適正な受診の観点から、老人にとって無理のない範囲で行うものでございまして、必要な受診の抑制にはつながらないものと考えております。  次に、寝たきり老人、痴呆性老人等介護を要する老人に対する施策についてのお尋ねでございますが、この問題は緊要の課題であります。そのため、家庭奉仕員の増員、ショートステー事業の充実等在宅福祉サービスを推進するとともに、訪問指導等の保健事業の拡充を図ってきたところであります。また、特別養護老人ホーム等の施設の整備を進めるとともに、いわゆる中間施設についても早期実現を目指した制度化の検討を進めておるところでございます。  次に、食品衛生の安全性確保についてのお尋ねにお答えいたします。  今般の市場アクセス改善のためのアクションプログラムにおける輸入手続の見直しは、あくまでも安全性に問題のない範囲のものを対象といたしております。食品添加物の問題につきましては、安全性確保基本としつつ、各国衛生当局と十分協議を進めながら、安全性及び有用性について科学的かつ慎重に検討し、対処してまいりたいと存じます。食品等の表示の問題など食品行政充実の問題につきましても、今後一層その充実改善努力をしてまいりたいと思います。(拍手)    〔国務大臣木部佳昭君登壇拍手
  11. 木部佳昭

    国務大臣(木部佳昭君) 藤原議員お答えいたします。  流水占用料等の制度改正につきましては、治水財源の充実を図るために来年度の概算要求に計上さしていただきました。今後、予算編成に向けて引き続き関係省庁と調整してまいりたいと考えております。(拍手)     —————————————
  12. 木村睦男

    議長木村睦男君) 安武洋子君。    〔安武洋子君登壇拍手
  13. 安武洋子

    ○安武洋子君 私は、日本共産党を代表して、中曽根総理質問いたします。  質問に先立ち、日航機事故で犠牲になられた方々に対し御冥福をお祈りし、御遺族に心からの哀悼の意を表します。同時に、政府に対し、事故原因の徹底究明と十分な補償、厳重な再発防止策を求めるものです。  この重大事故について、日航、ボーイング社とともに中曽根内閣も重大な責任を免れることはできません。人命を預かる国策会社に何よりも安全を最優先するよう厳しく指導監督することは、ほかならぬ政府自身の重大な責務ではありませんか。ところが政府は、昨年十二月の行革大綱で、日航に対し、人件費及び事務費の抑制や増収に努め、効率的な運営を図ることを求めながら、安全な運航を目指せとはただの一言も言っていないではありませんか。何事でしょうか。厳しく反省すべきです。総理の明確な答弁を求めます。  さて、この七月にケニアの首都ナイロビで国連婦人の十年・世界婦人会議が開かれ、私も参加してまいりました。その会議で強い印象を受けたのは世界の婦人の熱い平和への願いでした。それは、婦人の発展と向上にとって平和が欠かせない問題であるとともに、いつの場合も戦争で一番に犠牲になるのが婦人と子供たちだからなのです。総理、私は、この世界の婦人たちの平和に寄せる切なる願いを込めて、核兵器廃絶の問題について伺います。  人類の存亡にとって今、最も緊急で中心的な課題は核戦争阻止と核兵器の廃絶です。総理、今こそ唯一の被爆国日本の役割を発揮すべきときではありませんか。総理は昨日、我が党の村議員への答弁で述べられたような、現実的とか検証とかいう口実で核兵器廃絶を究極のかなたに棚上げしてしまう既に破綻済みの議論をきっぱり捨てて、国連総会において全世界に向けて核兵器全面禁止協定の締結を呼びかけるべきです。  さらに我が党は、総理に、ことし一月の米ソ両国外相会談の核兵器の完全廃絶という合意を不動の目標に据えて、来る十一月の米ソ首脳会談が国際協定締結に向けて決定的に前進するよう働きかけることを要求します。明確にお答えください。  さらに、この呼びかけが国際的な説得力を持つためにも、まず我が国自身が核兵器や核戦争計画と手を切ることが何よりも大切です。ところが、去る九月の国際学術連合の報告によっても、一たび核戦争が起これば核の冬が到来し、二十五億人が餓死すると予想され、とりわけ日本は壊滅的な影響を受けると指摘されているまさにこのときに、総理、あなたは核戦争やむなしとの態度をとっているではありませんか。  すなわち、総理は、ことし二月十九日の衆議院予算委員会で、我が党の岡崎万寿秀議員の質問に答えて、「他に手段がなければ」としながらも、「米軍が核を使うことを日本は排除する立場にない」と明言しました。米軍が核を使うとは、すなわち核戦争が始まることではありませんか。あなたは、あの広島、長崎の悲劇が全日本、全地球的規模で再現されてもよいとお考えなのですか。そうでないと言うなら予算委員会での答弁を取り消すべきです。いかがですか。  総理国連総会演説我が国外交基本方針の第一として軍縮と平和を訴えるとのことです。しかし、九月に政府が決定した中期防衛力整備計画軍縮に逆行する大軍拡計画です。憲法違反の軍事費はGNP一%以内でも大幅に減らすのが当然なのに、この計画は十八兆四千億円、一%枠さえ突破するものです。しかも物価上昇分、後年度負担分などを入れると総額二十三兆円を超す莫大なものになります。しかもこれを三年ごとに見直すというのですから、雪だるま式の軍備大増強計画と言わなければなりません。  政府はこの計画で防衛大綱の達成を目指すと言っておりますが、ワインバーガー米国防長官は、大綱は既に時代おくれだと言い、自民党の安全保障調査会も大綱の見直しを打ち出しております。政府は、大綱を達成した後、大綱の別表に掲げている飛行機や護衛艦の数などの装備水準はそのまま維持するのですか、それとも見直すのですか、答弁を求めます。  このような歯どめのない大軍拡で新たな日米軍事体制の危険な段階に踏み込む中期防衛計画は直ちに撤回すべきです。  八三年に、米国防総省報告は、同盟国はどこからか軍拡に回す金を持ってこなければならない、そして社会保障の分野こそまさにその源であるとしています。中曽根内閣は、これをそのまま取り入れているではありませんか。例えば、来年度社会保障関係予算は、年金、医療費などの当然増を含め一兆五千億程度の伸びが必要なのに、概算要求で認められたのはわずか三千九百億、だから残りの一兆一千億は新たな国民負担になるわけです。今、治療費の負担増のため、サラ金に手を出したり、通院治療を中止する患者がふえております。手おくれで死亡する悲惨な例まで出ているのです。ある新聞の社説も、「なぜ長寿社会より防衛を重視しなければならないのか」と厳しく指摘しているように、軍事費を減らして暮らしと福祉に回せというのは国民の声です。この声にこたえて健康保険の十割給付や老人医療費の無料制度復活すべきです。答弁を求めます。  次に、総理は、靖国神社への公式参拝を強行し、さもなくばだれが国に命をささげるかとまで言われています。また総理は、昨日、我が党村議員からの戦犯の軍神扱いはやめよという立場から、合祀している戦犯に何を感謝するのかと問われたのに対して、まともに答えず、冷たい言葉をかける人は正常な人間の心を持っているか甚だ疑問に思うと言われました。これは、日本国民はもちろん、日本軍国主義の軍靴に踏みにじられた中国を初めアジア諸国民が侵略戦争の正当化としてまじめに懸念していることに対する重大な侮辱的発言ではありませんか。これを取り消すとともに、靖国神社公式参拝をやめるべきです。お伺いいたします。  さらに、総理は、去る七月の自民党軽井沢セミナーで、マルキシズムの戦争史観が日本人をさいなむなどと述べております。我が党は、あの十五年戦争を天皇制軍国主義政府が行った侵略戦争であると批判し、一貫して反対してきました。総理は、あの十五年戦争を侵略戦争だったとする立場がなぜ日本人をさいなんでいるとお考えなのですか。総理はあの戦争を正義の戦争だったとでもおっしゃりたいのでしょうか。お答え願います。  さらに、国家機密法であります。  これによってスパイを防ぐだけなどという自民党の言い分は、とんでもないごまかしです。この法案の内容は、すべての国民に対し、軍事や外交に関する機密の範囲を政府が勝手に決めて、国民の知る権利や言論、報道の自由を奪い、死刑や無期懲役まで科そうという過酷なファッショ法であります。このような明らかな憲法違反の法案を総理が成立させてほしいなどと答弁したのは許せません。我が党は、国民の目、耳、口をふさいで戦争への体制をつくるこのような悪法は直ちに撤回するよう強く要求いたします。  なお、昨日、憲法問題について総理が我が党の村議員に対して行った発言は、きょうの赤旗が詳細に論評しているように、事実も論旨もともに全く当たらない、不当なものであることを私はここで強く指摘しておきます。  次に、日米経済摩擦問題に関して伺います。  総理は、テレビの会見で、レーガン大統領を助けるため円を強くすると述べましたが、あなたの円高政策で国内の大資本も新たな巨額の利益を得ております。例えば一ドル二百十円台になると、原油の輸入差益は電力業界だけでも年間三千数百億円にも上る見込みです。政府内需拡大策だと称して電力、ガス業界に一兆円規模の設備投資を行うよう要請していますが、ぬれ手でアワのこの円高差益は、電気、ガス、灯油などの料金値下げで国民に直接還元すべきではありませんか。答弁を求めます。  以上、述べてきたように、日本の主権と安全、民主主義と国民の暮らしが脅かされている根底には日米安保体制があります。去る八月、アメリカの議会は大統領に対し、日本の軍拡の状況を監督し報告せよという、史上例のない他国の主権侵害の法律を可決しました。こうした属国扱いに対して断固抗議すべきです。我が党は、この安保条約を廃棄し、真の独立、非核、中立の日本へ進むべきであると強く主張いたします。  国鉄再建問題について伺います。  政府が決定した国鉄改革に関する基本方針は、国民の共有財産である国鉄を財界の意のままに分割し、民営化するというものです。この最大の口実は膨大な赤字です。しかし、日本列島改造論など政府・自民党の無謀な政策によって国鉄が抱えることになった赤字は約二十二兆円にも上るのに、これに加えて、国鉄監理委員会の答申は、本来国鉄の債務とは言えない鉄建公団、本四架橋などの債務まで押し込んで三十七兆円に膨らませております。しかも答申は、この負債のうち約十六兆七千億については国民に負担を求めざるを得ないとし、そのための各年度の財源補てん額は一兆四千億程度だとしています。これは現在の国鉄への国の助成額のおよそ二倍です。これだけの助成が可能だというのならば、何も国鉄を分割民営化する必要はないではありませんか。したがって、閣議決定は撤回し、国が責任を持つ公営企業として国民本位の国鉄再建策をとるべきです。答弁を求めます。  最後に私は、教育、とりわけ重大な社会問題になっている体罰、いじめについて質問します。  校内暴力を初め、体罰、いじめという事態は、子供の人権を否定し、人間らしい豊かな成長発達を妨げるだけではなく、日本の民主主義の崩壊につながる極めて憂慮すべきものです。ところが臨教審は、いじめ、体罰問題はすべて現場教師の責任であるかのように言い、子供たちの生活指導を教師の手から行政機関に移し、さらにこれを機会に教職員と子供たちへの管理体制を強めようとしています。これは、問題の解決どころか、教育の民主体制をゆがめ、一層の教育荒廃をもたらすものです。  これに対し我が党は、既に、教育基本法の精神に基づき、教師と子供の人権を尊重し、教職員の自覚と関係者の一致した努力によってこそこの克服がなされるものと提言しています。総理はいじめの問題を戦後政治の欠陥の一つに数えましたが、教育の改革というのは、総理、あくまで憲法と教育基本法を守る立場を貫いて進めるべきです。これこそ正しい道筋ではありませんか。総理所見伺います。  我が党は、戦後政治の総決算路線を歩む中曽根内閣に対し、平和とともに国民の今、暮らしを守るため、その政治転換を目指して一層奮闘することを申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘登壇拍手
  14. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 安武議員にお答えいたします。  まず、核兵器の問題でございますが、核兵器の廃絶は、今や男も女もない、全人類共通の課題である、私はあなた以上に核兵器の廃絶を望んでいる、こういうことを申し上げるものでございます。ただ、この廃絶をやる方向について、現に今のような状況で対峙しているというもとにおいては、力の均衡と抑止で平和が保たれておるということでありますから、できるだけこの水準をレベルダウンしてそして廃絶まで持っていこうと、両方が信頼できるようなそういう方法を発見することが現実的政治である、そのためにこそ努力しておるということを申し上げたいのであります。単に演説しただけで核兵器は廃絶されるのではない、前から申し上げておるとおりであります。  次に、協定の締結の問題でございますが、米ソ首脳会談が実質的な核軍縮促進の契機になることを強く期待しております。今回の米ソ首脳会談において、このような核兵器廃絶あるいはレベルダウンヘの糸口をつかめるようにぜひしたい、そのためには両国が粘り強く交渉し合うように、席を立たないように、これをけらさないようにするということが大事であると私は思っておるのであります。これだけの問題でございますからそう一朝一夕に解決すべき問題ではないでしょう。各国とも国内問題も抱えております。そういう点から見ましても、しかし糸口をつかんで、そうして全人類に安心を与える方向へ進んでいくという方向を示させることが大事である、そう考えております。  御質問がありました米軍の核使用の問題は、日本は、平和を維持し、また核戦争を防止するために抑止力としてアメリカの核の傘のもとにある。そういう場合に、その使用の可能性まで否定してしまったら抑止力は効かなくなってしまうわけであります。そういう意味で申し上げておるのであります。  次に、我々の防衛政策目的は、今回五カ年計画を決めましたが、これは大綱達成目標としていると申し上げましたが、これはそのとおりで、今後も努力してまいります。大綱を今見直すという考えは、目下はございません。  次に、この計画を撤回せよという考えでございますが、撤回する考えはございません。  次に、社会福祉の問題でございますが、我々は、一方において我が国家の平和と独立を守るための、特に国民の生命財産を守るための重要な国策を展開すると同時に、老人や御婦人や働く皆様の福祉の問題についても実に苦労して努力しておるところなのでございます。特に老人や心身障害者や難病の皆様方については、予算のたびごとに努力しておるところでございます、六十年度の予算を見ましても、社会保障関係費が九兆五千億円、公共事業関係費が六兆六千億円、文教及び科学振興費が四兆八千億円、防衛費は三兆一千億円です。この状況を外国との比率で見ますと、防衛費はがくんと日本は安いのであります。そういうような努力を我々はしているということをここでまた申し上げる次第なのであります。  次に、健康保険の問題につきましては、やはり健康保険の定率一割負担は、医療費の効率化のためにも、また将来できるだけ早い時期に全制度の給付を八割程度で統一する第一段階として導入したものでございます。老人医療の一部負担は、老人保健制度の見直しの一環として、やはり世代間の公平とか、この制度の長期安定持続とか、そういう無理のない範囲内において措置しようというものなのでございます。  また、私が昨日衆議院答弁したことについて御質問をいただきましたが、靖国神社の今回の参拝につきましては、これは一般的に、国の命令で戦場に赴いて倒れました戦没者に対して哀悼の意を表する、そういう意味で私は申し上げておるのであります。これはまた国民の心情でもあると思うのでありまして、取り消す考えはございません。  それから外国のいろいろの御意見があることは承知しております。中国における御意見も承知しております。中国の立場に立ってみたら中国のお考え理解もできる筋もございます。しかし、日本にはやはり日本の国情と日本人の考え方というものがございます。その町の関係をよく疎通するように、今後とも理解をしていただくように努力してまいるつもりなのであります。今後の参拝につきましては、参拝の機会ごとに検討してまいりたいと思っております。  さきに大戦についての認識については、あれはやるべからざる戦争をやった、誤った戦争であったと私は考えております。そして、日本人に対しても外国の皆様に対しても大変な惨害を与えたことを深く反省して、再びやってはならない不再戦の誓いを私は中国としておりますが、これは厳粛に守っていかなければならぬと思っております。  秘密保護法の問題でございますが、くどく申し上げていますように、日本ぐらいスパイ天国はないと外国から言われておるところで、やはり国益を守らなければならないのであります。しかし、この法律につきましては、やはり人権に関すること、あるいは知る自由とかあるいはその取り扱いにつきましては慎重に行う必要がありまして、国民各党の御意見も承ってこれを取り扱っていきたい、そう考えておるわけであります。何も自民党の考えのみに固執するという考えはございません。皆さんでよく相談して、必要不可欠で最小限の措置はやらしていただきたい、そう考えておるのであります。  次に、電気、ガスの問題でございますが、市場商品である灯油につきましては、価格は市場メカニズムによって決定されるものであります。電力、ガスについてはやはり資本費その他コストの上昇あるいは賃金の上昇等のことも将来考えなければなりません。したがって、公共料金である電気、ガス料金の長期安定ということを実は国民は欲しておると思うのであります。今後、事態の推移を見守りながら慎重に対処してまいりたいと思います。  アメリカ議会における日本の防衛問題への関心でございますが、これはやはり同盟国でありまして、そしてもし日本が侵略された場合はアメリカがこれを守る義務がある、そういう意味からアメリカの納税者に対してアメリカの議会が日本の問題に関心を持つのは理解できるところであります。しかし、日本の防衛は日本人が決めるのでありまして、民族自決は当然のことであり、それを守っていくということを申し上げるのであります。  国鉄の問題は、前から申し上げているように、公社の改革の一環といたしまして、民間的、効率的な経営手法を入れるということ、それから労働関係改善するということ、この二つがやはり公社の改善に必要である、こう申し上げて、その方向で改革を行っておるものでございます。特にまた、国鉄の年金関係は今パンクしそうでございまして、OBの皆さんに年金が支払えないという危険すら出てきておるわけでございます。そういう意味におきまして、抜本改正を図って、国民の御協力を得ようという考えに立ってやったものでありまして、法案を準備して次期通常国会に提出するように今努力しておるところでございます。  いじめの問題につきましては、まことに残念なことでありまして、しかし何といってもこれは学校で起きていることでございますから、学校の先生がまずしっかりやらなければだめだ、教室をしっかりやってもらわなければだめだ、まずそう思うのであります。しかし、家庭や社会も一体となって協力しなければ、またこれはできないと思います。そういう意味において、先般文部省で通達を出しまして、各教育委員会ごとに学校や地域皆さんを集めて具体的にどういうふうにこれを是正するか検討するように指示したところであります。(拍手
  15. 木村睦男

    議長木村睦男君) 答弁の補足があります。中曽根内閣総理大臣。    〔国務大臣中曽根康弘登壇拍手
  16. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 答弁漏れがございまして失礼をいたしました。  日航機事故と経営の効率化の問題でございますが、安全運航確保は航空輸送の根本であり、いかなる場合にもゆるがせにできないことでございます。御質問にかかわる行革大綱は、これは日本航空についても効率的な経営の確立を図ることが要請されておりまして、そして行ったものでございます。日本航空としては安全の確保に万全を期しつつ経営の効率を図るべきであり、政府としてもこのような観点から今後とも日本航空に対する指導監督を行う、これは特殊法人に対する政府としての仕事でもございますので、努力してまいりたいと思っておるところでございます。(拍手
  17. 木村睦男

    議長木村睦男君) これにて午後一時まで休憩いたします。    午前十一時三十四分休憩      ——————————    午後一時二分開議
  18. 木村睦男

    議長木村睦男君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。  国務大臣演説に対する質疑を続けます。田渕哲也君。    〔田渕哲也君登壇拍手
  19. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私は、民社党・国民連合を代表し、総理所信表明並びに最近の政治課題に対し質問を行いたいと思います。  まず初めに、過日の日航機事故地すべり、風水害等で亡くなられた方に対し心からお悔やみ申し上げ、また負傷者被災者にお見舞いを申し上げます。あわせて、捜査、救援活動に献身された地元の方々、警察官、自衛隊に対し深く感謝の意を表します。同時に、政府の今後一層の安全対策強化を要請するものであります。  質問のまず第一は、日米貿易摩擦についてであります。  ことしの一月の通常国会において、民社党佐々木委員長は、貿易摩擦問題がことし最大の政治課題になると指摘し、より一層の市場開放への対応策と積極的経済政策への転換による内需拡大などの措置政府に強く求めたのであります。しかるに、政府のその後の対応は極めて不十分と言わざるを得ません。我が国市場開放の切り札として打ち出したはずの行動計画に対する諸外国の評価は予想外に低く、対日批判の鎮静にはほとんど役立っていないのであります。最近になって、政府は慌てて行動計画の来年一月からの繰り上げ実施の方針を固めましたが、外圧がなければ動かず、しかも答えを小出しにするといった悪癖をまたも露呈したものと言わざるを得ません。  内需拡大策も、思い切った策となると財政金融、税制面の支援が必要となりますが、ないそでは振れぬと消極的姿勢に終始し、アメリカ側の求める目に見える対日赤字の縮小策とはほど遠い状態です。そして、このような政府のこそくな対応が今日の危機的状況を招いているのであり、その責任はまことに重大と言わねばなりません。この点に関し総理はどう考えておられるのか、まずお伺いします。  次に、これからの対策として、私は次のことを主張したいと思います。  まず第一は、少なくとも日本がアンフェアだと非難される要因を速やかに取り除くことであります。  この点に関して特に考えるべきことは、我が国の場合、関税率その他表面にあらわれている制度としては外国に比べて遜色はありません。しかし、不必要な手続や規制はまだまだ多く、また、法律上の根拠がない事項についても、役所にお伺いを立て、行政指導を受けるといった慣行が少なからず残っております。そしてこれが特定の産業と官庁との癒着を生み、煩瑣な規制がその業界の既得権を保護する役割を果たしている例が多いのであります。このような官の規制を外し、消費者サイドの民の利益につなげるという発想が我が国の行政には欠けており、せっかくの行動計画も横並びに他の出方を見ながら小出しにするという結果になっておるのであります。市場開放は、とりもなおさず行政改革にほかならないのであり、総理の強力な指導力が必要と思いますが、この点について総理見解をお伺いします。  第二の点は、内需主導経済への転換を図ることであります。  総理は、来る国連総会における演説の主要項目の一つとして、自由貿易の堅持を訴えられると聞いております。これはまことに結構だと思います。しかし、今日恒常化している我が国の巨額の貿易黒字そのものが、自由貿易の障害の一つになりつつあることを認識しなければなりません。自由貿易の堅持を訴えるだけでなく、我が国がそのために何をなすかということが重要ではありませんか。  我が国には一方に十分な貯蓄があり、他方に環境整備や住宅建設などの潜在的投資需要があります。これをうまく結びつけることができず、結果として、多額の貯蓄過剰と経常収支の黒字を生み出しております。これはマクロ的経済政策の失敗と言うべきでありましょう。もちろんアメリカ側にも、財政赤字の削減が進まず高金利、ドル高を招いているという政策的ミスがあります。双方が協調して政策転換を行うことなくして日米間の構造的貿易不均衡を打開する道はないと思いますが、総理見解をお伺いします。  さらに、内需拡大具体策としては、第一の柱は個人消費の拡大であり、そのため思い切った減税が必要と思います。昨年度、一兆円規模の減税が行われたにかかわらず、サラリーマンの所得税負担率や納税者割合は余り変わらず、その重税感や税の不公平もほとんど是正されておりません。来年度において、二分二乗方式の導入なと思い切った措置をとり、二兆円規模の所得減税を行うことを提唱したいと思います。その財源としては、行革による経費の節減、税の不公平の是正によることとし、特に徴税の執行の公正化を挙げたいと思います。  国税庁の最近の白書によると、法人の場合、調査対象の八三%、申告所得税の場合九五%、譲渡所得の場合七一%に申告漏れ、脱税が発見されております。これらはごく一部の調査にすぎませんが、これから類推しましても巨額の徴税漏れがあることは事実であります。税務の執行体制の充実強化を早急に図ることが肝要と思いますが、政府見解を求めたいと思います。  さらにこのことは、単に財源の確保といった見地のみでなく、税の公平を確立するため不可欠であり、いかなる税制の改革もこの基本を正すことなくしては砂上の楼閣にすぎないと思いますが、いかがですか。  また、総理は、政府税調に対し、まず重税感を取り除く案をつくり、その上で来秋までに財源措置を含め一体としての包括方針を出すとの手順を示されましたが、これは減税を先行させることを意図したものか、あるいは単に論議の順序を示したものか、その真意をお伺いしたいのであります。  また、自民党の村山調査会から増減税抱き合わせの中間報告が出ましたが、総理としても増減税は同時に行う方針がどうか、お伺いします。  内需拡大の第二の柱は、公共投資、住宅建設などの増強であります。  政府建設国債の活用に余りにも慎重でありますが、昭和五十九年度の公的固定資本形成の対GNP比は七・七%と、昭和三十六年以来最低にまで落ち込んでおります。また、建設国債の発行額の対GNP比は石油ショック以前の水準にまで低下してきております。そしてこれが社会資本整備のおくれを来し、同時に内需拡大へのブレーキとなり、弊害とひずみを生じているのであります。民間資金がだぶつき、金利が低下している現在こそ建設国債増発に踏み切るべきだと思いますが、政府見解をお尋ねいたします。  また、住宅建設については、高地価に加え、住宅投資に対する優遇措置が極めて貧弱であります。我が国の住宅関連の減免税額は、総額においてアメリカの百分の一、西ドイツの十分の一にすぎません。これでは幾ら潜在需要があってもそれが顕在化しないのは当然であります。ウサギ小屋の汚名返上のため、宅地供給の増加、地価の抑制、住宅ローン減税や減価償却減税などの施策強化し、住宅建設促進すべきだと思いますが、政府の方策をお伺いします。  質問の第二は、防衛費についてであります。  よく防衛費一%をめぐる攻防などという言葉が使われますが、我々が守るべきものは国の安全と平和であって、数字ではありません。したがって、数字のみにとらわれた論議をするつもりはありませんが、三木内閣時代に閣議決定したGNP比一%枠は、その設定以来、防衛費の増大に一定の歯どめ的役割を果たしてきたこと、また、近隣諸国我が国に対する警戒心を和らげるのに役立ってきたことは否定できません。総理はこの一%枠が果たしてきた役割並びに現在における意義についてどう評価されているのか、まず承りたいと思います。  私は、総理の言動をつぶさに見るとき、一%枠撤廃に使命感と意欲を持ち、総理就任以来、虎視たんたんとそのチャンスをうかがってこられたとお見受けしますが、いかがですか。我が国防衛政策の検討と論議の中から、専守防衛のため必要不可欠のものとしてやむを得ず一%枠撤廃が主張されるのでなく、初めに一%枠撤廃ありきという感じが強いのであります。それが、我が国の防衛論議政策や装備についての突っ込んだ論議というよりも、まさに一%の攻防のような形をとる原因ではないでしょうか。総理の言われる戦後政治の総決算とこの問題がどのように結びついているのか、この点についても御答弁をお願いいたします。  また、九月十八日に決定された、期間中の想定GNPの一%を超える中期防衛力整備計画と、それと同時に発表された一%枠は尊重するという政府方針関係についてでありますが、大蔵大臣は、中期防衛計画の数値は上限であり、毎年度の予算編成では一%枠を尊重するとの趣旨を述べられ、防衛庁長官は、単年度予算で一%を超えることもあり得ると、中期防衛計画の達成を優先する発言をされております。中期防衛計画で達成すべき防衛計画の大綱の水準は決して不動不変のものではなく、幾つかの選択肢と幅を持ったものであるはずです。したがって、できるだけ一%枠を守ろうとする姿勢の有無によって違いが出ると思います。どちらの道をとるのか、政府の統一見解をお伺いいたします。  次に、中期防衛力整備計画を従来の防衛庁内部の業務見積もりでなく、政府計画として決定したことは、シビリアンコントロールを強化する見地から評価すべきものと思います。しかし、今回の場合、防衛庁の買い物リストにすぎない五九中業が、その内容について国防会議の実質的検討が省かれ、閣議でも総額についての論争に終始し、装備の内容や必要性についての突っ込んだ論議のほとんどないまま、安易に政府計画に格上げされたことは問題であります。これではシビリアンコントロールが形骸化するおそれがありますが、この点について総理見解を求めます。  我が党は、シビリアンコントロールを徹底するため、国会における防衛審議の充実、国防会議の改組と拡充とともに、防衛費の無原則な膨張を抑え、その合理化、効率化を図るため防衛行革の推進を提唱しておりますが、これらについての政府見解をお伺いします。  質問の第三は、靖国神社公式参拝についてであります。  私は、祖国や同胞のためにとうとい一命をささけられた戦没者追悼を行うことに異議を差し挟むものではありません。しかし、それは憲法上疑義を生じない方法で、また国民理解とコンセンサスに立って行うべきであります。歴代内閣も従来から靖国神社公式参拝は違憲の疑いを否定できないとして差し控えてきたのであります。今回、中曽根内閣は従来の統一見解を変更し公式参拝に踏み切りましたが、この変更はどのような理由によるものか、総理に明確にお答えいただきたいのであります。  あわせて、靖国神社公式参拝総理の言われる戦後政治の総決算との同にどういう関係がおるのか、お伺いしたい。  新聞の世論調査を見ても、公式参拝に対する賛成が数の上では反対より多いとはいえ、各政党支持者別あるいは信仰する宗教別に見ると、大きなばらつきがあり、極めて強い拒否反応を示す人たちも多いのであります。宗教法人である靖国神社でなく、特定の宗教にかかわりのない形で記念願のような施設にする場合には、前のようなばらつきは少なくなり、より幅広い国民のコンセンサスが得られるのであり、また憲法上の問題もなくなり、戦没者追悼するには最もふさわしい方式と思いますが、総理見解をお伺いします。  以上の諸点につき、政府の明確な答弁をお願いし、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘登壇拍手
  20. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 田渕議員にお答えをいたします。  まず、アメリカ等との経済摩擦の問題でございます。  この経済摩擦解消のために今全力を奮っておるところであり、特に外国からアンフェアである、不公正であると言われる言葉をぜひとも消したいと念願をし、そのために市場開放を急ぎ、透明性の確保を急ぎ、諸般の政策も踏まえ法案の提出もし、御審議をお願いしているところでございます。  特に我が国は、戦後における自由貿易の成果を最大限に享受して経済発展を遂げた国であり、現在もガットのニューラウンドを責任を持って推進している国の一つでございます。そういう意味におきましても、みずから率先して開放経済に向かうということは我々の責任でもございます。  アクションプログラムの推進、あるいは基準認証制度の徹底化、これにつきましては、今回法律をもって御審議をお願いしているところでございます。そのほか、実際上の慣行や手続における不透明度の解消、あるいはさらにアンバランスを解消するための通貨、特にドルとの関係の調整等について先般来力を尽くしてきたところであり、一方におきまして、アメリカ側に対しましても高金利の是正、強いドルの調整、あるいはニューラウンドの同一歩調による努力、そういうような点につきまして強く申し入れもし、協調もしておるという状態で、今後ともその努力を継続してまいるつもりでございます。  その一環として、内需の問題も大事な問題でございまして、金子企画庁長官を中心とする作業グループをつくりまして、先般、党とも打ち合わせして発表した次第でございます。最近の情勢から見まして、円高傾向が定着しつつあることは甚だ歓迎すべきことであり、我々はさらに一層この努力を強めてまいりたいと思っておるところでございます。  なおまた、構造的な問題も、中期的問題としては御指摘のように考えなければならないと思っております。この点については、私は先般、包抱的協議をする時期に来つつあると申し上げましたが、これは日本アメリカ等も考え、あるいはヨーロッパ等も考えまして、それらの国々の相互関係経済構造、それのあるいは貿易構造の調整、中期的調整、あるいはそれらの国との通貨の長期的、持続的適正な安定、そういう問題も含め、あるいはさらに発展途上国に対する協力、一緒になって協力する、そういう問題等も含めまして包括的協議を次第にしていきたい。これは相手のあることでございますから一方的にはできませんが、そういう環境づくりから実行してまいりたい、そう思っておるわけでございます。今回、アメリカに参りますときも、アメリカ側とそういうような問題について話し合いもしてみたいと思っておるのであります。  先般、このような考えを前から持っておりましたから、国際経済との調和を図るために社会経済構造あるいは貿易構造、あるいは貿易バランス、適正な我々は外貨量を持たなければなりません。そういう意味における貿易バランスあるいは通貨の総合的安定、こういう問題のための研究会を発足させましたのもそのためなので、今後とも努力してまいるつもりであります。  所得税住民税減税に関する御質問がございましたが、もとより同感でございまして、税調に諮問しているところでございます。やはり、もう抜本的な大幅な改正をやる時期に来つつあると思いまして、真剣に幅広く、かつ慎重に検討していただきたい、そう思っておるところでございます。  御指摘の徴税の公正化という問題は、非常に大きな、大事な問題であると思います。執行面において適正かつ公平な課税を実現するということ、あるいはさらに、いわゆる脱税に対する追尾を厳重にいたしまして、そして徴税漏れを防ぐということは、税の公正という面からも大事なことでございます。いろいろ新聞にも報ぜられますとおり、かなりの脱税が最近は出てきているようでありまして、この面については厳重に目を光らせるようにいたしたいと思っております。今後とも税務調査の充実、納税環境の整備、事務の効率化等について万般の施策を講じてまいります。  税調への諮問の意味でございますが、これはシャウプ以来の税制のよじれとか、あるいは重税感とか、不公正感とか、そういうものを解消するという目的で、別に税の増収を目的とするという意味ではなしに、公正な税制を確保するという目的を持って税負担の軽減合理化の方策、言いかえれば減税という問題を所得税、法人税あるいは相続税等について検討してもらいたい。次いで、その財源確保のための方策等を含めた税制改革の全体的方向を明らかにしてもらいたい。言いかえれば、終末的におきましてはこれはバランスシートが合わなければならぬわけでございますから、今のような手順で税制全般の改革構想を出していただきたい、そう考えておるわけであります。  それから次に、建設国債の問題でございますが、我が国財政が巨額の公債残高を抱えつつ大幅な財政赤字を続けているという厳しい状況にあることを考えますと、建設国債の増発による公共投資の拡大は困難であり、先般来、そういう意味において民活等を中心にした内需拡大政策を提出したところなのでございます。  なお、限られた財源の中で、社会資本ストックの充実には今後ともできるだけ努力してまいるつもりでありますが、フローベースでは我が国の資本形成の水準、特に政府資本形成の水準は諸外国に比べても相当高いものになっておる。きのう申し上げたとおりでございまして、GNPに対する比率は、外国が一・六とか二・五ぐらいですが、日本は五・五ぐらいまでいっておるわけでございます。これは我が国のストックのおくれという面を回復するという意味ももちろんございます。  次に、宅地供給の円滑化及び地価の抑制の問題でございます。  今般決定した内需拡大に関する対策におきましても、宅地の円滑な供給を図るための宅地開発指導要綱の行き過ぎの是正、線引きの適切な見直しの早期完了等について地方公共団体を指導する措置を盛り込んでございます。また、地価の安定のため、国土利用計画法の的確な運用を図っていきたいと思っております。  住宅ローンや減価償却等の問題につきましては、先般の経済対策閣僚会議における内需拡大対策の中で、住宅建設、設備投資等に関する施策について、今後の予算編成、税制改正作業の過程で所要の手続を経て検討を進めると申しておるところでございます。  GNP一%の防衛費に関する意義は、これはこの閣議決定はある意味において歯どめとしての役目を明らかに果たしてきている、そのように私は思います。  今回の中期防衛力整備計画の策定についても、GNP一%の閣議決定撤廃目的としたものではなく、より適切な文民統制のもとで大綱水準達成を図ることを目的とした必要最小限経費を計上したものでございます。  なお、この計画期間中においても、GNP一%に関する閣議決定趣旨を尊重すると申し上げておる次第なのでございます。  中期防衛力整備計画につきましては、八月以来八回にわたる国防会議を開催して、装備の内容や必要性はもとより、経済財政外交等の広い視野から実質的な検討を行い、私も出席いたしましたが、日本がとっておる戦術戦略等についてもいろいろ問いただしをしたところでもございます。これらを踏まえて閣議で決定をいたしまして、シビリアンコントロールをさらに十分に確保するつもりでおる次第でございます。  シビリアンコントロールの中心は、何といっても国権の最高機関である国会でありまして、国の存立の基本である防衛に関して充実した審議が行われることは極めて意義の高いものであると考えます。  国防会議の改組につきましては、行革審の答申を受けまして法的準備をしておるわけでございます。行政改革には聖域はなく、防衛力整備に当たっては今後とも一層の効率化に努める所存でございます。  靖国の問題でございますが、昭和五十五年の政府統一見解では、閣僚靖国神社公式参拝については憲法上疑義が存すると、この趣旨のことが述べられており、これを差し控えることとしておりましたが、今般、いわゆる靖国懇の報告書等を参考としまして、慎重に検討いたしまして、宗教的な色彩を除きまして今回のような参拝をいたしました。これは国民大多数の御要望に沿って行ったものなのであります。  これが戦後政治の総決算関係あるかということでございますが、別に総決算を意図してやったものではないのです。しかし、他人がどういうふうに解釈するかということは他人の自由であると思います。  また、追悼のための新しい施設の設置の問題は、これは今まで靖国懇でも出た問題ではないのでございまして、報告書に触れた問題ではないのでありまして、これは将来の課題として考うべき問題である、そのように考えます。(拍手
  21. 木村睦男

    議長木村睦男君) 寺田熊雄君。    〔寺田熊雄君登壇拍手
  22. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 私は、日本社会党を代表いたしまして、中曽根総理質問をいたします。  総理所信を問う第一段階として、私は、首相の在職が三年になんなんとする今日、まず中曽根内閣世界平和と民主主義の発展に対する貢献度を考えてみたいのであります。  総理は、一九八二年十二月、就任に際して「私の政治目標の第一は、内外における平和の維持と民主主義の健全な発展を図ることにあります。」と述べられるとともに、「平和の維持にとって大切なのは、これを可能ならしめる国際環境をつくり出すことであります。この現代の至高かつ緊急な課題を実現すべく努力することにより、恒久的な世界の平和の確保のために貢献したいと念じております。」と、国会においてこのように公約されたのでありました。あなたはこれはお認めになると思いますが、いかがでしょう。しかし、中曽根内閣の今日までの足跡を見てみますと、外は東西の軍事的対立を深め、国際緊張を激化せしめる一方、内は次第に民主主義的原則後退せしめつつあるのであります。  総理、あなたは昨日もこの本会議において、そして一昨日は衆議院において、世界平和は抑止と均衡、すなわち米ソ軍事力の均衡とアメリカの核抑止力によって守られる旨を力説され、就任時第一の公約たる平和維持に必要な国際環境の醸成についてはついに一言も語られるところがなかったのであります。  総理が一九八三年一月、アメリカ訪問に際して、ワシントン・ポストを通じて内外に、バックファイアの浸透に対して日本を不沈空母とする、ソビエトの艦艇を通過させないよう完全に三海峡をコントロールする、いわゆる一千海里シーレーンを確保するという軍事的抱負をぶち上げたのも、まさに我が国会における就任時の公約とは正反対のものでありました。  右に述べたあなたの軍事的抱負は、アメリカが対ソ戦を想定して我が国に期待する任務分担そのものであります。あなたの発言に対しては、中国その他から懸念の表明があったほか、ソ連からは手厳しい反応がありました。あなたの発言は、平和的国際環境の醸成どころか、逆に国際緊張の激化を招いたのでありますが、あなたはそれを否定されますか。  次いであなたは、アメリカの要請にこたえ、歴代内閣が慎重に扱ってまいりました武器技術の供与に踏み切られました。さらにあなたは、防衛費に関するGNP一%枠の撤廃に非常な熱意を示し、いろいろと陳弁せられております。しかし、大切なことは、この枠の持つ機能であります。それは国民にとっても極めてわかりやすい原則である上に、軍事費の膨張に対して実に効果的な働きを示してきたものでありました。あなたのとられたこれら一連の措置は、アメリカの強い期待にこたえたもので、日本に対するアメリカ政治支配が着々と進行しつつあることを象徴しております。  総理、あなたは、去る百二国会で、日本が戦場になる場合の考察として、ある一国から突然に攻撃される蓋然性は極めて少なく、欧州その他の地域に発生した戦争が波及して日本がそれに巻き込まれる場合であることを認められました。これはアメリカ軍部高官の一致して指摘するところでもあり、正しい認識とは思います。ただ、その波及が徐々に及ぶか、急速に及ぶかは議論の分かれるところであります。しかし、その経路はともかくとして、日本がそうした第三次大戦に巻き込まれた場合にいかに大きな被害を受けるか、あなたはお考えになったことがおありでしょうか。そうした戦争が核戦争発展しないという保証はないのでありますし、その場合には、国民の一切の幸せや子供たちの将来は完全に失われると言っても過言ではありません。  この数年間に公表されたアメリカ外交機密文書は、第二次大戦後、アメリカが幾たびか核兵器を使用すべきか否かの選択を迫られたことを証明しております。また、本年四月、読売新聞社とギャラップ社との共同調査によれば、二十一世紀までに世界大戦の起きる可能性について、アメリカ人の過半数がほぼこれを肯定しているようでありますし、日本でも三五%の肯定説があると伝えられております。一方、内閣広報室は、昭和五十九年版の全国世論調査報告により毎日新聞社の行った調査結果を紹介しておりますが、それによりますと、国民の七二%が日本戦争や国際紛争に巻き込まれるのではないかという不安を持っておることを明らかにしております。  総理、あなたは、今回の施政方針演説において、国民生活の安心と安全の確保政治の原点であると言われました。それは私も同感でありますが、この国民戦争への懸念についてはどう思われるのでしょうか。あなたはそういう懸念や心配が払拭されるよう最善の努力を払うべきであります。あなた自身もお認めになりますように、一国が突然日本に侵略するというありもしない想定をもとに国民の対ソ敵がい心をあおるのではなくして、断固として第三次大戦を防止する決意を内外に披瀝し、国際緊張の緩和、平和的国際環境の醸成というあなたの第一の公約の実現に最大のエネルギーを注ぐべきであると思いますが、いかがでしょうか。  総理、勉強家であるあなたは御存じと思いますが、今世紀最大の哲学者の一人でありましたハートランド・ラッセル卿は、水爆の開発せられた現在、人類最大の課題世界戦争、第三次大戦の阻止であるという結論に達し、有名なラッセル、アインシュタイン声明によってこれを全世界に訴えました。日本の運命を決する地位にある政治家として、あなたはこの哲学者に学ぶべきだと思いますが、いかがでしょうか。すなわち、あなたは、レーガン大統領との最初の会談で、日本アメリカとは運命共同体であるという信念を語ったと言われますが、あなたはむしろ、今や全人類が運命共同体であると語るべきであったと思いますが、いかがでしょうか。  次に、靖国神社問題に入りますが、靖国神社は二百四十万を超える戦没者を祭神としてその神徳を広め、祭神の遺族その他崇敬者を教化することを目的とする一宗教法人であります。その祭神の中には、東条元首相のように、あなた御自身も認められた、起こしてはならぬ戦争を引き起こし、全世界の人々から断罪された戦争犯罪人が含まれております。それらの人々は、その思想及び行動からして、軍国主義者であったということは間違いありません。また、靖国懇ですら、靖国神社が戦前軍国主義に利用せられていたことは否定できないと言っておるのでありますから、かかる軍国主義者の祭神に拝礼して哀悼の意を表することは、宗教の立場でこそ許されるとしても、政治の立場からは絶対に許されるものではありません。  言うまでもなく、軍国主義は民主主義とも対立し、我が憲法の平和主義とも相入れないものであります。あなたは、昨日の本会議で久保議員の質問に答え、戦犯を祭ったのは靖国神社のしたことで自分にはかかわりはないというような趣旨答弁をしておりますが、無責任も甚だしいと言わなければなりません。それでもなおかつ、あなたは、御自分のなさったことを善なりと主張なさるのか、お伺いをいたしたい。  次に、近年アメリカの極秘外交文書が公開せられ、過去幾たびか我が国の命運を決するような事態が生じ、そのたびごとに我が政府当局者が苦悩を重ねたことを知って驚くのであります。日本有事の際、米軍が、自衛隊の前身である保安隊との統合指揮権を持つよう求めたとか、アメリカが対ソ戦の場合に、同盟国内の基地を核報復攻撃基地として、場合によっては同盟国の同意が得られないまま核使用に踏み切ることを考えたりしたことがあるという驚くべき事実が報ぜられているのであります。  恐らく、国際情勢が緊迫すれば、今後もこのような事態が起こらないという保証はございません。そうした場合に、それらの事項が政府や官僚によって秘密にされるであろうことは確かであると考えます。何となれば、現在でも米軍と自衛隊との有事共同作戦のシナリオや作戦計画づくりのような国家の大事が我々国会議員にすら全く秘密にされていることからも、それは容易に推察され得るのであります。  それにもかかわらず、政府は、ただいま総理、あなた御自身が国会における防衛問題の審議こそシビリアンコントロールの最たるものであると言われるのでありますが、国会議員に事実を知らさずして、どうして実のある論議が行われ得るでありましょうか。今日、野党の国会活動は、かかる政府及び官僚の秘密主義との闘いであるといっても決して過言ではありません。  しかも、今回、自民党議員から提出されました国家秘密にかかるスパイ行為等防止法案は、このような国家の命運を決しかねない外交、防衛に関する重大事項を探知し、把握せんとする政治家やジャーナリストの行為を、スパイにも化すべき重大なる犯罪として処罰しかねない危険性を持つ法律であります。それは、国家の大事に関する情報を政府高官が独占し、国民には一切知らしめまいとするファッショ的な立法であり、民主主義の後退これより甚だしきものはないのであります。  そもそも、戦争放棄を宣言した平和国家には敵国などがあり得べくもないし、軍隊を持たぬことを誓った平和憲法のもとで、国民を極刑にしてまで守ろうとする軍事秘密などがあり得る道理がないのであります。この道理は、戦後、政府が刑法第八十五条の間諜罪の規定の削除を提案いたしました際に、政府自身が説明したところなのであります。ひっきょうするに、この法案は、現行刑事特別法やMSA秘密保護法と同じく、アメリカ要求によるものであり、非民主的軍事立法なのでありますが、総理はあくまでもこの強行的な成立を欲しておられるかどうか、お伺いをいたしたい。  次に、日ソ平和条約の問題についてお尋ねをいたします。  御承知のように、一九五一年九月のサンフランシスコ平和会議の際、平和条約の立案者であったアメリカのダレス全権は、日本がすべての権利、権限及び請求権を放棄した千島列島の範囲について、歯舞諸島はこれに含まれないと説明し、国後、択捉の両島については何ら触れるところがありませんでした。また、我が国の吉田全権は、日本開国の当時、国後、択捉両島が日本領であることについて帝政ロシアは何の異議も差し挟まなかったということは申しておりますが、放棄しないとか、あるいは権利を留保するとかいうような意思表示は一切なさっておられなかったのであります。  したがって、帰国後、この条約を審議する国会で、当時の吉田首相も、外務省の草葉政務次官も、西村条約局長も、国民感情の上からは残念千万だが、放棄した千島列島の中には国後、択捉は含まれるという趣旨答弁をしておるのであります。こういう経過からすれば、政治的主張としては是認され得ても、法律的主張としては我が国がこれをソ連に要求するのは無理があると考えますが、いかがでしょう。総理のお考え伺いたい。  次に、ソ連が領土問題について強硬な態度をとるのは、私も一九八一年訪ソの際、ソ連共産党中央委員会国際部副部長でありましたコワレンコ氏と二時間ほど激しい議論をしてわかったのでありますが、ソ連は第二次大戦によって決定された国境線を守ることを基本的な政策とし、その一角を崩せば全体に波及することを恐れているのであります。それゆえ、我が国が国後、択捉の返還を日ソ平和条約締結の条件とする限り、恐らく半永久的に平和条約は成立しないと思われますが、総理はあえてこの道を選ぶもやむなしとお考えなのか、お伺いいたしたい。  私は、日本の安全と世界平和のためには隣国ソ連との友好は極めて大切であるから、まずもって歯舞、色丹の返還を急ぎ、国後、択捉及び進んで全千島の返還については平和条約後の交渉事項とする方向をとるのをよしとする考え方を持つ者でありますが、総理はいかにお考えになるか、あわせてこの点の御意見をお伺いしたい。  第三の質問は、時間がありませんので、これを割愛することとし、最後に一つだけ総理に要望しておきたいと思います。ハートランド・ラッセル卿は、古今東西の権力者は、よほどのことがない限り、権力を持たない人間の幸、不幸にはむとんちゃくであると言っておりますが、国民の七〇%以上が戦争に巻き込まれることを恐れているという事実を、総理、決して忘れないでいただきたい。また、プラトンは、所有欲を離れ、公共心に燃えた哲人のみが初めてよく国政を処理し得ると言っておりますが、あなたの余りにも強い権力志向をできるだけ抑制し、もっともっと誠実さを身につけてほしいのであります。これを要望して、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘登壇拍手
  23. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 寺田議員にお答えをいたします。  私は、政権担当以来、平和主義を訴え、戦争を防止し、日本を戦場にしないようにするということを国民にお誓いいたしまして、懸命な努力をしてきたつもりでございます。しかし、現実の国際情勢は厳しいものでございまして、現にアメリカ、ソ連あるいは中国、フランスその他の国が核兵器を保有し、特にいわゆるスーパーパワーと言われるアメリカとソ連は、ICBM等の巨大な核兵器を持って相対峙して、その谷間に日本がおるわけであります。そして戦争、第三次大戦のような大戦が勃発しないのは、この核兵器の恐怖の均衡と言われていますが、この均衡とそれに基づく抑止力によって自制されて戦争が起きない。現実は、悲しいかな、そういう現実であるわけであります。  その中にあって、いかに平和を持続させ、核兵器を使わせないようにしていくかということが谷間にある我が国の運命であり、そのためには、やはりお互いが使ったら大変なことになるという意味において、抑止と均衡を維持しつつこれを程度を下げていく、そしてそれを廃止に持っていく、こういう現実的方法以外にはないのです。現実的に政治家として考えてみた場合にはないでしょう。そういう努力を我々は懸命にしてきたつもりなのでございます。そういうような努力の結果もあると思います。  私は、現に一月にレーガン大統領にロサンゼルスで会いましたときも、ソ連の首脳部とお会いしなさいと申し上げ、また三月にチェルネンコさんのお葬式で参ったとき、ゴルバチョフさんに会いましたときも、アメリカ大統領にお会いしなさいと、会えば必ず人間としての相通ずるものが生まれると。また、この間のボン・サミットにおきましても、我々の首脳の会議の中でそのこともあえてまた申し上げたのです。  そういう世界じゅうの努力が効を奏したと思うのでありますが、ともかく米ソ会談が十一月に行われるようになりました。これはやはりそういう積み上げの一つ一つの努力の結果米ソが会うという形になって、そして、ではICBMをどの程度に減らすかという相談が始まる気配です。現に、ソ連はこれをMIRVまで含めて六千発に減らすとか、あるいは爆撃機を含めるとか含めないとか、そういう具体的な数字まで出してきたということは、そういう現実的なレベルダウンの話としてこれが展開してきておるのでありまして、我々が考えておる軍縮、核兵器廃絶への道の一歩へ近づいてきたと思うのであります。  これが私は誠実な着実な道であると、こう申し上げまして、その努力をさらに続けていきたいし、日本がまたそういう努力もし、また、みずから国を守る気概を持って必要な最小限度の自衛力も整備しつつ、国民皆様日本列島は日本人で守ろうという決意をお持ちであり、安保条約の効き目もあり、そういう力をある程度持って、抑止力と均衡というものを持っておりますから、ソ連も最近におきましてはソ連の外務大臣日本に来ると、そういう形になったのです。私は、日本というものが無視されておって眼中になかったら、来るということはなかったと思いますよ。なぜソ連の外務大臣が来るようになったかと言えば、やはり日本国民努力外交努力、平和意思、善隣友好の意思、こういうあらゆるものが総合されて今日の成果が生まれたのでありまして、それが本当の政治であると皆さんに申し上げたいのであります。  私は第三次大戦を防止するという決意においては寺田さんに劣るものではございません。今回、国連に参りますけれども、国連の演説の一番大事な中心部分は、広島、長崎の惨禍を受けた日本国民の核兵器廃絶への悲痛な訴えを国民にかわって申し上げたい、そう思っておるのであります。  さらに、日本アメリカとの関係でございますが、今申し上げたような状況のもとに、我々は日米安全保障条約をもって共同対処をして、抑止力と均衡を日本列島に関しては維持しておるわけであります。同盟関係というものは信頼関係が基礎であります。しかし、それと同時にまたけじめもなければならないのです。したがいまして、日米の安全保障条約、それに基づくもろもろの協定、取り決め等におきましては、毅然として日本の民族自決権というものは確保されておるのでありまして、有時のときの共同対処に対しても、ガイドライン等におきまして指揮系統は毅然として分かれておる、そういう形になっておるということを御認識願いたいと思うのであります。靖国神社の問題でございますが、先般の公式参拝は、個々の戦没者に対して個別的に追悼を行ったというものではなく、国のために犠牲になったあの大勢の戦没者全体に対して心から追悼を行い、戦争をなくし平和を守ろうという決意を私は申し上げた、こういうことで御理解願いたいと思うのであります。  さらに、戦争を起こさないように、あるいは自衛隊を節度あるものにしようという一番大事な点は国会であります。シビリアンコントロールの中心は国会でありますから、私はできるだけ国会が充実した防衛や安全保障に対する議論を行い、あるいは自衛隊、あるいは政府に対する監督をしていただきたいと念願しております。そういう意味におきまして、民社党の皆さんが申し上げておる安全保障の特別委員会、これを常任委員会に格上げするとかそのほかの諸般の政策は、私は国会としてシビリアンコントロールを強化する方法であると思いまして、賛意を表しておる次第なのでございます。次に、秘密保護法との関係でございますが、私は前から申し上げておるように、日本はスパイ天国であると外国から言われておるのであります。そして、日本の国益を守るということは独立主権国家として当然政府の責任でもございます。問題はやり方であります。日本憲法に明示されておる基本的人権を侵すとか、あるいは自由、なかんずく取材の自由とか報道の自由とかそういうものや、思想、信仰まで侵されるようなことがあってはならないのです。しかし、最小限の国益は守らなければならない。そういう意味におきまして、私は国家の秘密を守る法律は必要である、恐らく外国において国家の秘密を守る法律がない国は余りないのではないかと思うのであります。大国はみんな持っております。そういう意味におきましても、合理的な適当な、国民が納得する、そういう法律をつくりたいと思っておりまして、野党の皆さんと十分話し合いをいたしたい、そう考えておる次第なのであります。  次に、北方領土の問題でございますが、サンフランシスコ平和会議におきまして、吉田さんは北方領土に言及していることは事実なのであります。これは、歴史的沿革からいたしましても、あるいは日本とロシア、旧ロシアとの既存の条約等を見ましても、これは日本に所属するということは明らかになっておることであります。それを頭に置いて吉田さんはサンフランシスコ平和会議に出ましたけれども、当時、日本は敗戦国であり、かつ占領されている途中であり、しかもあのサンフランシスコ平和会議というものは、これはいわば署名のだめに呼ばれたのであります。そして、そこにおきまして、吉田さんはその国際環境等も考えまして、これに対する注意喚起の演説をしておる。これは精いっぱいのあの当時の日本の立場からそういう表現をしたのである。あのとき、吉田さんの態度というのは交渉者の立場ではないのです。署名のために呼ばれたものであるという立場であることを御理解願いたい。そして政府は、自来、北方四島に対する立場を明らかにいたしまして、アメリカや中国もこれを強力に支持してくれていることは御存じのとおりでございます。  我々は、この歴史的にも法的にも我が国に所属する北方四島については、粘り強く、これを、我が国に復帰し、我が国の当然の領土として回復するために努力をしていきたい、そう思っておるものなのでございます。  最後に、戦争を恐れるという点においては、私は寺田さんに負けるものではありません。しかも、日本の独立と安全を守り、国民の生命財産を守るということも政府の大責任でありまして、そのような基本的見地に立って大戦防止に徹底して努力してまいるということを申し上げる次第であります。(拍手
  24. 木村睦男

    議長木村睦男君) これにて質疑は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時五十八分散会