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1985-12-10 第103回国会 参議院 大蔵委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年十二月十日(火曜日)    午前十時開会     —————————————    委員異動  十二月三日     辞任         補欠選任      田渕 哲也君     粟林 卓司君  十二月九日     辞任         補欠選任      栗林 卓司君     小西 博行君   出席者は左のとおり。     委員長         山本 富雄君     理 事                 伊江 朝雄君                 大坪健一郎君                 赤桐  操君                 桑名 義治君     委 員                 岩動 道行君                 梶木 又三君                 倉田 寛之君                 中村 太郎君                 福岡日出麿君                 藤井 孝男君                 藤井 裕久君                 藤野 賢二君                 宮島  滉君                 吉川  博君                 大木 正吾君                 鈴木 和美君                 竹田 四郎君                 鈴木 一弘君                 多田 省吾君                 近藤 忠孝君                 小西 博行君                 青木  茂君                 野末 陳平君    国務大臣        大 蔵 大 臣  竹下  登君    政府委員        大蔵政務次官   江島  淳君        大蔵大臣官房長  西垣  昭君        大蔵大臣官房総        務審議官     北村 恭二君        大蔵省主計局次        長        小粥 正巳君        大蔵省関税局長  佐藤 光夫君        大蔵省銀行局長  吉田 正輝君        大蔵省国際金融        局長       行天 豊雄君        国税庁次長    塚越 則男君        国税庁間税部長  村本 久夫君    事務局側        常任委員会専門        員        河内  裕君    説明員        公正取引委員会        事務局経済部企        業課長      上杉 秋則君        外務省アジア局        南東アジア第二        課長       小林 秀明君        外務省北米局北        米第二課長    田中  均君        農林水産省経済        局国際部貿易関        税課長      永田 秀治君        農林水産省畜産        局食肉鶏卵課長  鎭西 迪雄君        農林水産省食品        流通局砂糖類課        長        紀内 祥伯君        通商産業省通商        政策局国際経済        部通商関税課長  田島 秀雄君        通商産業省産業        政策局商政課長  山下 弘文君        通商産業省基礎        産業局非鉄金属        課長       松田 憲和君        中小企業庁計画        部計画課長    長田 英機君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○関税暫定措置法の一部を改正する法律案(内閣  提出、衆議院送付)     —————————————
  2. 山本富雄

    委員長山本富雄君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨九日、栗林卓司君が委員辞任され、その補欠として小西博行君が選任されました。     —————————————
  3. 山本富雄

    委員長山本富雄君) 次に、関税暫定措置法の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。竹下大蔵大臣
  4. 竹下登

    国務大臣竹下登君) ただいま議題となりました関税暫定措置法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  政府は、最近における内外の経済情勢の変化に対応し、我が国市場の一層の開放を図る等の見地から、関税率等について所要改正を行い、昭和六十一年一月一日から実施することとし、本法律案を提出した次第であります。  以下、この法律案内容につきまして御説明申し上げます。  第一は、個別品目関税率撤廃または引き下げであります。  諸外国関心の高い骨なし鶏肉、パーム油電子式交換機等六十九品目関税率撤廃または引き下げることといたしております。  第二は、その他の品目関税率原則二〇%引き下げであります。  カニの調製品新聞用紙医療用機器等を含む千七百九十二に上る品目関税率原則として二〇%引き下げることといたしております。  なお、本措置実施特定品日輸入が急増する等の事情により、国内産業に相当な損害を生ずる場合には、当該品目につき本措置適用を停止することができることといたしております。  第三は、コンピューター本体等関税率撤廃であります。  ハイテク製品関税撤廃交渉推進一環として、コンピューター本体部品等品目について、前述の第二の措置に加えて、我が国とアメリカ合衆国との間の合意に従い、政令で定める目から関税率撤廃することといたしております。  以上のほか、所要規定の整備を図ることといたしております。  以上が、この法律案提案理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  5. 山本富雄

    委員長山本富雄君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  これより直ちに質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 鈴木和美

    鈴木和美君 ただいま趣旨説明のありました本法律案について、若干の質疑を行います。  まず第一に、多少事務的になるかもしれませんが、今回の暫定措置法改正によって、関税面について言えば、日本世界で最も開かれた市場となると思うんです。そこで、今回の措置対象品目は何品目となるのか。また、簡単で結構ですが、その措置内容もあわせて御説明を願いたいと思うんです。と同時に、改正される品目関税がかかっているいわゆる有税品目、これの何%に当たるのか、お尋ねいたします。
  7. 佐藤光夫

    政府委員佐藤光夫君) お答えいたします。  今回お願いをいたしております関税改正対象となっている品目は、二つのグループに分かれておるわけでございます。一つは個別の関税引き下げないし撤廃で、これが六十九品目でございます。もう一つ原則二割カツトの部分でございまして、これが全体で千七百九十二品目ございます。単純に合計いたしますとこの二つの合計が千八百六十一になるわけでございますが、実は特定品目につきましては、ある部分は個別の引き下げないしは撤廃をやり、ある部分は一律二割カット対象にしているということで、重複をいたしておりますのが十二品目ほどございますので、そこを重複を排除いたしますと全体で千八百四十九品目というのが今回お願いをいたしております関税改正対象品目、こういうことでございます。  それから、税日数で何%ぐらいになるか、こういうお尋ねでございますが、現在有税品日関税がかかっている品目数というのは全体で二千三百二品目ほどございます。したがいまして、先ほど申し上げましたように、このうち千八百四十九品目、これが関税引き下げないしは撤廃対象になっておりますので、割合は約八〇%というふうになっております。  以上でございます。
  8. 鈴木和美

    鈴木和美君 今御説明をいただいたように、品目としては大変大きくなっているわけですね。私は、対象品目が大きい小さいというのはそれなりに非常に重要なことだとは思うんです。しかし、貿易額がどうなるのかということがやっぱり問題の中心だと思うんです。  輸出入の実績を見てみますと、六十年度上半期では二百四十三億ドルの輸出超過となっているわけですね。そこで、今回の一連の措置で、貿易額、特に輸入の増大についてどの程度の効果が予測されるのか、伺っておきたいと思います。
  9. 佐藤光夫

    政府委員佐藤光夫君) 今回の関税引き下げ撤廃措置による輸入増効果についてのお尋ねであろうかと思います。  私ども、もちろんこの関税引き下げないし撤廃によりまして我が国市場は一層開放されましてそれが輸入増結びつくということをねらいといたしているわけでございますが、現実にどれだけ諸外国からの輸入が増加するかというのはいろんなファクター、いろんな要素に依存するところが多うございますので、なかなか何億ドルという数字を計算することは実は難しいわけでございますけれども、極めて単純な仮定関税引き下げによって輸入品価格が下落をする、そのことによっていわば、ちょっと難しい言葉で恐縮でございますが、価格弾力性と申しますか、需要が伸びるというような単純な仮定を置いて予測をいたしますと、二億ドルないし三億ドルというような、これは一応の計算にすぎませんが、輸入増効果が期待できるのではないかなというふうに考えておるわけでございます。  一言つけ加えさせていただきますと、そうなりますと現今、先ほど御指摘のような大きな貿易の不均衡に対して余りにも小さな規模ではないかというお考えもあろうかと思いますが、私どもは、これがいわば日本側の大変誠実な努力の成果である。それを示すことによって、諸外国と協調して現在の貿易摩擦と申しますか、貿易均衡解消に向けて努力をしていく、そういう日本側のいわばシンボリックな努力を示すものと、こんなところにも大きな意義があるのではないかというふうに考えている次第でございます。
  10. 鈴木和美

    鈴木和美君 もう一つは、関税の見直しというのは従来四月一日に大体行われているわけですね。それで、七月末の「市場アクセス改善のためのアクションプログラム骨格」では、当初、六十一年の早い時期ということになっておりました。つまり私はこの早い時期というのは四月一日というように見ておったのですが、今回三カ月前倒しをして一月一日ということにしたいという法律案ですね。  そこで、一月一日と四月一日とたった三カ月です。このたった三カ月がどれほど効果があるのか。また諸外国は、たった三カ月前倒しをしたということを一体どういうふうに見ているのか。これは私流に言えばちょっと手前みそというか自分勝手なというか、そんなようにとれるのですが、諸外国から見てこの三カ月前倒しをしたということをどんなふうに評価しているのか、ここの点をお聞かせいただきたいと思います。
  11. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに、今おっしゃいますように、大体毎年四月にそれこそきちんと関税暫定措置法を出しまして、日切れでございます、日切れでございます、こう言ってお願いする、これが一応オーソドックスなやり方でございますが、このたびアクションプログラムというものを公表いたしまして、そしてそれぞれの諸外国担当者と話をする間に、いわばこの三カ月の金目の計算というのは私もそう大きなものじゃないというふうに思いますが、アクションプログラム対応する政府姿勢というものを示すということがそれぞれの担当に対しては非常に好感を与えるということは事実であろうと思っております。  それから、我が党で言えば二階堂ミッション、あるいは国会全体のこの問題についての取り組み方の、与野党の方々と向こうの議員とかいう接触の中にも、そのことは非常に評価をされたわけであります。  私も、もし何ならば公布の日からということにして、もう十日でも二十日でも一月でもというようなことも考えないわけでもございませんでしたが、やはりこの国会等を念頭に置きますと、諸準備等からいたしまして、国会で議了してもらえるならば一月一日が一番適当であろうと考えたわけであります。さらにその後いろんな交渉をしておる問題もございますので、四月一日として通常国会にまた関税暫定措置法をもちろんお願いする中に、新たなるものも入っていくであろうというふうに考えておるところでございます。
  12. 鈴木和美

    鈴木和美君 せっかく大臣も御答弁ですからもう一度お尋ねします。  今回の三カ月の前倒しに対して、諸外国の意見もさることながら、国内的な社説などを見ても余りいいことは書いてないですね。この前のつまりアクセス計画でしょうか、大して評判がよくなかった。諸外国の期待に対してこたえ方が少ないというんでしょうか、それが落胆につながっているのかもしれません。そういうために、外圧として非常に評判が悪いものだから、見せかけだけでもいいから三カ月ぐらい先にやった方がいいんじゃないかというような発想というか、そういうことで今回の三カ月繰り上げが行われたというような、これ新聞論調もあるんですが、本音のところは一体どういうことなのか。  今回の措置外国からどういう見方をされているのかということについて、もう一度お尋ねしておきたいと思います。
  13. 竹下登

    国務大臣竹下登君) そのような新聞論調があるということは私どもも承知しておりますが、今回の関税改正というのがアクションプログラム骨格を可能な限り早期に実施するということは、私はそれなり評価はいただけるではなかろうかというふうに、また一様に評価しておるというふうに申し上げてもいいと思っております。  ただ、その論説等の背景にありますのは、いわゆる米国EC、ASEAN、韓国の中で関心品日が入っておりますとそれはやっぱり評価が高こうございますが、また、要するにその中に関税引き下げ撤廃が含まれなかったという、失望品目という表現もちょっとおかしゅうございますけれども、そういうものがあることも事実だというふうに聞いております。したがってそういうことに対して、具体的に申しますと、よく言われる、米国で言えば木材とかチョコレートとか、グレープフルーツでございますか、あるいはEC関心品目ではチーズとかチョコレートとかスキー靴とかいうようなものが、あれがなぜ入っていないのかというような失望といいますか、そういう表明がよくございますので、やっぱり新聞論調の中には、本当に失望を表明されるようなものが全くないような形でやればよりトラスチックではないかという気持ちはあろうかと思いますが、我が国国内産業からいたしましてそうもまいりませんので、総じての評価は、関心品目が多く含まれておりますから私は評価はしていただけるものだというふうに考えておりますし、向こう担当者もその姿勢というものに対してはそれは評価しておるというふうに思っておるところでございます。
  14. 鈴木和美

    鈴木和美君 後ほどまた五カ国蔵相会議のときの日本経済の分析であるとか、貿易問題についての日本見解などについてはただしたいと思うんですが、今のお話の限りにおいては私は、やらないよりはやった方がいいという感じがしております。ただ、何となく印象として、小出しにしてその場を繕うというようなやり方はちょっとどうかなという感じもしないではないんです。その気持ちだけ表明しておきたいと思います。  さて、関税引き下げというものは、単に関税引き下げがねらいではないわけですね。つまり、貿易摩擦解消というところにやっぱり大きい問題があると思うんです。多くの国民はこの貿易収支問題について大変関心を持っていると思うんです。また業界もそれはそれなりに注目をしていると思うんです。ところが、これは達観した言い方かもしれませんけれども、総論ではすべて賛成の演説はぶつんですが、やっぱり個別の業界になると、自分の製品とか産業に対してはどうしても外してくれというような寸各論反対というような態度があると思うんですね。  そこで私は非常に心配することは、今回一律の二〇%なものですから、国際的な問題もさることながら、国内的な産業に与える影響というのがやっぱり大きいわけです。特に問題だなと思っている点は、国内農水産品、それからその加工品などについての取り扱いが保護として万全か、今回の措置をとることにおいて支障はないのか、この点を伺いたいと思うんです。特にこれは担当農水省に、今回の措置についてどういう見解を持っているかお尋ねしておきたいと思います。
  15. 永田秀治

    説明員永田秀治君) お答え申し上げます。  今回の農林水産物にかかわる関税引き下げ措置の決定に当たりましては、我が国が置かれております国際的立場を考慮しつつ、一方では大変厳しい農林水産業の実情も踏まえながら、我が国農林水産業に多大の悪影響を及ぼさないように十分配慮してぎりぎりの対応をしたものでございます。
  16. 鈴木和美

    鈴木和美君 もう一度農水省お尋ねしますが、今のお答えから申しますと、原則として二〇%下げたけれども国内産業それから農水産品の問題については支障はないというように農水省としては考えていると明確にお答えになって結構ですか。
  17. 永田秀治

    説明員永田秀治君) ただいまお答え申し上げましたように、我が国農林水産業に多大の影響を及ぼさないように十分その点は配慮してぎりぎりの対応をしたということでございます。
  18. 鈴木和美

    鈴木和美君 それでは、次に大蔵省にもう一つお尋ねします。  今回二〇%下げだということは、前例として、私が調べたところでは昭和四十七年でしょうか、国際収支黒字縮小、円の切り上げ回避のために、いわゆる第三次円対策ということの一環として関税一律二割カットというのが行われたと思うんですね。このときも、問題があれば本措置適用を停止するという条項を入れてやったわけです。  そこで尋ねたいんですが、支障があったときには適用を停止するというこの条項が、四十七年のときですよ、発動された前例というのはあるのかということが一つと、「国内産業に相当な損害を生ずる場合には、当該品目につき」と書いてありますね。その「相当な損害を生ずる」ということは一体どういうことなのか、この二つの点についてお尋ねしたいんです。
  19. 佐藤光夫

    政府委員佐藤光夫君) お尋ねのように、御指摘のようにと申しますか、四十七年の一律二割カットのときにもこういういわば復元規定がございまして、その復元規定に基づきまして実際に発動されたケースがございます。絹糸でございますとか絹紡糸、絹織物、いずれも国内におきましては大変センシティブなど申しますか、品目でございます。中国、韓国等からの輸入が急増をいたしまして、この措置を発動いたしまして引き下げ前の税率に戻したという例がございます。  それから第二点は、この「相当な損害」というのは一体どういう意味か、こういうお尋ねでございますが、先ほどの四十七年と同じような措置を、御指摘のとおり今回の一律二割カットの分についてもお願いいたしておるわけでございます。その中で、相当な損害が生じた場合には復元できる、引き下げ前の税率に戻すことができる、こういうことになっております。  その「相当な損害」でございますけれども、合理的な経営のもとで正常な運営、あるいは適正な利潤の確保が困難になるような企業当該産業相当数企業に生じている場合、こういうふうなことが従来からのこの「相当な損害」の解釈でございます。相当数というのは、ざっと申し上げますと、まあ半数ぐらいの当該産業企業に今申し上げましたような事情が生じているというのが相当な損害である、こういうふうに解釈をされておるわけでございますが、今申しましたのはいわば抽象的な基準でございまして、その損害あらわれ方というのは個々具体的な場合に違ってくるのだろうというふうに思うわけでございます。当該産業が非常に大規模基盤が強固な企業ばかりであるか、あるいはその逆に大変零細中小であって基盤が脆弱であるかというようなこともございまして、個々具体的な場合にその損害あらわれ方が違ってくることも考えられますので、その辺、私どもといたしましては関係省庁ともよく協議をし、かつ関税率審議会にもお諮りをいたしまして、この復元規定の発動につきまして適切にやってまいりたい、かように考えている次第でございます。
  20. 鈴木和美

    鈴木和美君 私は、国際的な問題も大変大切だと思うんですが、国内産業にがたがきちゃこれは大変なことでございますし、今回の二〇%というものは何も合意ではないわけですね。自主的な我が方の規制なんですから、それは我が方でいかようにでも国内的な対応はできるはずですね。また相手との関係でもできると思うんです。したがって、国内産業が停滞を来さないような、そういう見方対応対策というものはしっかり監視してほしいということだけ申し上げておきたいと思うんです。  そこで、今度は通産省お尋ねしますが、この条項を見てみますと、ハイテク製品について、特にコンピューターなど九製品については、日米間の合意に従って関税撤廃するとなっていますね。しかし、ガットの無差別適用原則に基づいて米国以外の国にもこれは適用されるのだと思うんですがね。されるのかどうか、この点も明らかにしてほしいし、同時に、そういう意味ではECも非常に関心が高い分野だと思うんです。その取り扱いはどういうことになるのか、これは通産省見解を伺っておきたいと思うんです。
  21. 田島秀雄

    説明員田島秀雄君) お答え申し上げます。  コンピューター関連製品関税撤廃につきましては、本年八月の日米間のエレクトロニクス会合合意に従いまして、十一月の二十二日に日米双方撤廃品目の範囲を定める書簡を交換いたしました。この措置を六十一年度できる限り早い時期から実施に移すということで、法案の御審議をいただいているところでございます。この関税撤廃実施されますと、その効果ガット最恵国待遇原則によりまして、日米間のみならず、ECを含めて全世界に均てんされるものでございます。  本件関税撤廃につきましては、既にカナダが半導体及びコンピューター部品関税撤廃することで日米動きに協調していきたいといったようなことを表明いたしておりまして、私どもとしてもハイテク製品貿易拡大に向けて前向きな動きとして歓迎をいたしているところでございますが、今後、ハイテク製品貿易拡大の観点から、ECを含めて多くの先進国関税撤廃に対し前向きに取り組んでいくことを期待いたしている次第でございます。
  22. 鈴木和美

    鈴木和美君 よくわからないんですが、普通に考えられることは、コンピューターとか電子機器の問題は日米が非常にレベルが高いですね。だから、日米間のところで大変問題になることはよくわかるんですが、ECとの関係ではちょっと技術的に落ちているものだから余り問題にならないんじゃないのかなというようなことで、日米間の合意が先行したというように私はとったのですが、これは大蔵省に尋ねた方がいいんですが、そういう感じとは違うのでございますか。今回のコンピューターの問題が日米間だけに限られているというのは一体どういうことなのかということがよくわからないんです。
  23. 田島秀雄

    説明員田島秀雄君) ハイテク製品関税引き下げにつきましては、先般のアクションプログラムにおきましても、相互撤廃を進めていってできるだけ関税撤廃を進めるということになっておりまして、日米間のコンピューター関連品目につきまして話し合いが具体的に進捗をいたしたものでございますので、こういう措置お願いいたしている次第でございます。
  24. 鈴木和美

    鈴木和美君 せっかくですからもう一つ通産省に尋ねたいんですが、貿易摩擦解消ということでいつも問題になるときに、もちろん関税そのものも問題になりますが、関税引き下げたからといってすべて解消するわけじゃないんですね。いつも指摘されるのは、日本のマーケットというものの流通について諸外国から問題にされるわけですね。  そこで、この流通問題について、この前これは通産省が主体になって調査された流通実態調査というんですか、各省庁の協力を得た。私も見させてもらいました。したがいまして、その概要は私も大体見てわかっておりますので、この調査結果についてどのように評価し、また今後この問題についでどういうような対応をしていくのか、これについて通産省からもう一度お答えいただけませんか。
  25. 山下弘文

    説明員(山下弘文君) お答え申し上げます。  先生御指摘流通機構の調査でございますが、私ども通産省の所管の物資について行ったわけでございますが、企画庁、大蔵省農水省、それぞれ担当の部門について行ったものでございます。  そこで、私ども通産省の主として扱いました分野と申しますのは、国内での小売価格外国に比べて非常に高いということがよく言われておりますいわゆるブランド商品を中心に行いまして、ある意味ではそういう特別な商品の流通機構を調べたわけでございます。お手元にごらんいただいていると思いますが、その結果といたしましては、流通段階での、いろいろ品日によっても違いますし輸入業者の形によっても違いますけれども、卸とか小売のマージン自身は、国産品の同種のものと比べてほぼ同じであるというような結果になっております。あと、問題は総代理店のマージンということになろうかと思いますけれども、総代理店の場合には、国産品の場合にはメーカーが負担する広告宣伝費というようなものもカバーしているというようなこともありますので、一概に流通ということで考えでいいのかどうか問題があるというふうに理解しております。そういうことでございますので、ブランド品の価格設定につきましては商品の特性に応じましてやや高目に、高級品だというイメージを確立する意味で高目に設定されているのではないかというような状況が見受けられました。ただ、このこと自身は日本に特別のことでもございませんで、ほかの輸入国においても見受けられるというようなことだと理解いたしております。  そこで、これからの対応でございますけれども、私どもといたしましては、今申し上げましたような販売戦略というのは基本的には各企業の問題であろうかというふうに考えておりまして、政府が具体的にマージンを幾らにすべきであるというようなことを言うべきではないのではないかというふうに思います。ただ、輸入拡大の観点から申し上げますと、こういうような限定的なマーケットだけをねらうような販売戦略というものをとるだけではなくて、むしろもっと積極的に日本の消費者のニーズの開拓とか、あるいは日本のマーケットの特徴を踏まえた商品企画をやっていただくというようなことを、海外のメーカーに期待したいというふうに思っております。  私ども通産省サイドといたしましては、日本市場ニーズの情報の提供、あるいはきめ細かいコンサルティングというようなことをやりながら、新しい輸入品拡大というものを図っていきたいということでございます。
  26. 鈴木和美

    鈴木和美君 どうも、この調査の総括というかそれを見てみますと、結局は、やってみたけれどもアメリカが指摘するほどの流通上の問題はないんだ、国産品も輸入品流通マージンは同じだということが、これ結論としてこの調査に書いてあるんでしょう。  それともう一つは、酒の点は多少違ったように書いてありますけれども、ほかの製品についてはそれほど変わりないのだということが書いてあると私は思うんですよ。  そうすると、そんなことは、政府がわざわざ仰仰しくやらなくたって、大体のことはみんなわかっているんですよ。だから、これを一体何の目的で、何に使おうとしてやられたのかということが全然よくわからないんです。そこで、これからどう対応されるのかということを通産省お尋ねしているんです。
  27. 山下弘文

    説明員(山下弘文君) 先生御指摘のように、流通機構の問題が外国から見てどういうふうに問題なのかということの一つとして、輸入品日本流通機構の中で差別的に不利な扱いになっているのではないかというような問題意識があることは事実かと思います。したがいまして、今御説明いたしましたように、国産品の流通マージンとほぼ同等であるということを言うこと自身はそれなり意味があろうかというふうには思っております。
  28. 鈴木和美

    鈴木和美君 大蔵省お尋ねします。  この調査をやってから、お酒に関して、今の流通上の問題というよりは、根本的には税制上の問題として、お酒の税の仕組みの問題や、それから税を取り立てるという目的のために編成された体系であるというところが問題なんだというような指摘をされている部分もあるんですが、その点についてはどういうふうにお考えですか。
  29. 村本久夫

    政府委員(村本久夫君) 私ども国税庁の方では、先般の輸入品流通実態調査についてお酒をやったわけでございます。先生ただいまお話しございました税金が高いというようなことにつきましては、確かに輸入業者の意見の中にはそういうようなことが言われている部分もあるわけでございます。この点につきましては、いわゆる関税の問題については関税局、あるいは税金の問題については主税局の方でお答えすべき問題であろうかと思うわけでございますけれども、私どもの調査をいたしましたところのあれによりますと、税金の部分というのは、例えばプレミアムクラス、一万円クラスの輸入品のウイスキーの場合におきまして、CIF価格でそれが七百円から九百円、関税が三百円、酒税が千六百円ないし千七百円、税金の合計で千八百円ないし千九百円、こういうようなことになっております。そのいわば残りの部分輸入業者のマージン、卸マージン、小売マージン、そういうようなものになるわけでございます。  このマージンの部分につきましてはいろんな要因があるわけでございますけれども通産省の方のお話にもございましたが、一部のものについては、いわゆるブランドの維持向上の観点から高価格政策をとっているというようなものもございます。また、マージンが高いということについて、これは全部それが流通段階の利益というよりも、海外のメーカーにかわって広告宣伝とかマーケティングを行っているというようなことで、それがそのまま利益というふうにとるわけにはいかないというような問題もあるわけでございます。  いずれにいたしましても、税制の問題につきましてどうするかということについてお答えする立場にないわけでございますけれども、……
  30. 鈴木和美

    鈴木和美君 それじゃ結構です。  私がお尋ねしているのは、日経の十一月十三日の社説にこういうことが書いてある。これは大臣にちょっと見解を尋ねたいんですが、流通段階もさることながら、「EC駐日代表部は日本の特殊な酒類分類方式や税制が酒類の輸出の障壁になっていると批判している。」と書いてあるんです。だから、流通の段階もいろいろあるのだろうけれども、むしろお酒などについては日本の税体系が障害になっているというようにECあたりでは批判しているんですが、それに対して日本側はどういう態度、どういう考え方を持っているのかということを私は尋ねているんです。どなたでも結構ですから答えてください。
  31. 村本久夫

    政府委員(村本久夫君) ECの方からそういうような指摘がございますことは、私どもも承知をいたしているところでございます。ただ、先般の流通実態調査につきましては、その輸入品流通経路が複雑かあるいは流通マージンが高いために輸入が阻害されているのではないか、こういうことを中心にしてその調査をいたしたわけでございまして、その点につきましては今後物価安定政策会議等の御意見を踏まえて対処をいたしたいというふうに考えているところでございます。
  32. 竹下登

    国務大臣竹下登君) ヨーロッパは総じて酒は皆従量税にしろと言う、それからアメリカはどちらかといえば従価税にしろ。我が方もいつでも議論のあるところでございます。何で従量税か。  これはいささかこういう席でお答えする言葉ではないかもしれませんけれども、酒を千円買ってこいと言う者はおらぬじゃないか、一升買ってこい。それから、きょう五百円飲もうと言う者はいないじゃないか、一杯飲もうと言うじゃないか。したがってやっぱり従量税だ。こういう素朴な議論、これはまじめな議論としてそういう議論があるわけでございます。  しかし本当は価格に課した方が一番公平じゃないか、こんな議論と、いつでもあるわけでございますが、ヨーロッパは従量、アメリカはどちらかといえば従価、日本の場合は原則従量税で、やっぱり哲学としてぜいたく品には高くかけるというので、従量、従価が両方一緒になっておりますが、これは税の一つの哲学みたいなものでございますので、いつでも議論がありますけれども、どちらが本来あるべき酒税のあり方だというのはなかなか合意に達するのがこれは困難であるというのが実情でございます。
  33. 鈴木和美

    鈴木和美君 本件についてぜひ検討を煩わしたいと思うんです。  今の酒の税金の問題とたばこの税金の問題というのは、相手からいえば同じものなんですよね。相手に理解をしてくれと言ってもなかなか理解できないんです、向こうの税体系とこっちが違うんですから。しかしこれは必ず、嫌がらせというか、もっと本質的なことを言えば嫌がらせ以上のことを内在していると思うんですね。これから必ず問題になってくると思うので、私はきょうは三百一条の問題は触れませんけれども、ぜひそういう意味で真剣な検討だけはしっかりしていってほしいというように要望をしておきます。  さてその次は、公取にちょっとお尋ねしますが、今の流通の問題が非関税障壁の問題として指摘されると同じような意味合いで、我が国企業集団とか企業系列が輸入を阻害していると。そして公正な競争の確保、外国企業の参入の機会を奪っているというような主張があるわけです。こういう問題提起についてどんなふうに考えているのかということと、もう一つは、貿易摩擦の現状を踏まえて競争政策を推進するという立場から公取委員会がこのほど貿易摩擦問題についての見解をまとめたようですね。これまでにも増して、輸入制限的な声があっちゃいかぬということなんでしょう。そこで、今後公取委員会の機能を十分に発揮するという意味からすると、公取委員会としてはこの貿易摩擦の現状を踏まえて、今後の競争政策についてどういう方針で臨もうとしているのか、改めて公取委員会から聞いておきたいと思います。二つの問題です。
  34. 上杉秋則

    説明員(上杉秋則君) お答えいたします。  貿易摩擦問題に関連いたしまして外国諸国から、閉鎖的な企業集団内の取引がかなり存在いたしまして輸入を阻害しているのではないかというような指摘がなされております。このため、昭和五十八年に公正取引委員会ではそういった批判に配慮いたしまして、企業集団内取引の中核をなすと思われます総合商社に関する調査を実施いたしました。その中で、総合商社、六社なんですけれどもこの取引高全体に占める社長会メンバーそれぞれの企業との取引割合というものを調べてみますと、その比率自体が仕入れ面では約一二%、売上面では約五%ということで、それほど高くはない、したがって余りそれ自体で閉鎖的な取引慣行を行っているのではないのではないかというようなことを認定いたしました。そういった配慮で、総合商社を中心といたします系列内取引、それから国産メーカーとユーザーとの間の系列関係、こういったものによって輸入が阻害されているというような状況にあるとは考えられないという結論を下したわけでございます。しかしながら、その後二年たちましても依然として、企業の集団内取引の存在というものが外国製品の参入を阻害しているのではないかという批判は根強いものがございますので、それから、企業集団の我が国経済全体に占めます地位というのも相当大きいという現状にかんがみまして、今後とも企業集団内の取引の現状というものを注視してまいりたいと考えております。  それから、先生御指摘の第二点でございますが、競争政策の観点から市場アクセスの改善に対して寄与できるのではないかということで見解を取りまとめて発表したわけでございますが、これは独占禁止法の目的としております公正かつ自由な競争の維持というものが、自由貿易体制の維持、それから国際貿易の発展というものにつながるものである、そういう確信に基づきまして、今後ともそういった輸入制限的な行為、競争制限的な行為というものは厳正に排除していかなければいけないということで、そういう観点から貿易関連問題に積極的に取り組んでいくという決意を、この文書の中で明らかにしたわけでございます。
  35. 鈴木和美

    鈴木和美君 公正取引委員会の方も、下手な難癖をつけられないように、対策だけはぜひ努めてもらいたいと思うんです。  そこで、関税の問題というものは、先ほども申し上げましたように、いわゆる貿易摩擦の障害ということの解消が目的だと思うんです。関税引き下げというのも一つの方法だと思うのですが、これからちょっと大臣に見通しなどをお尋ねしたいんですが、やはり私は貿易摩擦の問題を論ずるときに円高ドル安という問題にどうしても触れざるを得ないと思うんです。それで、介入政策によりまして今日まで二百四十円が二百円そこそこのところまで来ているわけでございます。これはこれなりの評価というか効果というか、それだけは認めることができると思うんです。しかし、アメリカの財政の赤字というような根本的な問題が解決しない限り、円高の定着というものはそう簡単には楽観視できないのじゃないかと私は思うんです。  そこで、これからの円高ドル安の傾向というものはどんな展望に立って考えればいいのか、ここをひとつ大臣から展望についてお聞かせいただきたいと思うんです。
  36. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに、今おっしゃいましたように、九月二十二日のG5以後、いわば私どもが有用と認めるときには協調した行動をとろうということをウィリアムズバーグ・サミット以来確認をしておりましたが、まさに有用な時期と認めるということに完全に合意をしたわけでございます。その結果が、きょうが寄りつきが二百三円四十七銭でございますが、いわばそういう効果を今生んだわけでございます。  一体貿易摩擦の背景は何かと言えば、これも今御指摘がありましたように、我が国貿易経常黒字の大幅な拡大米国の財政赤字とそれによる高金利が引き起こすドル高を主因とするものだという考え方に立ってきたわけでございます。したがって、円高基調が定着することによって我が国貿易経常収支がいずれ縮小して、それがひいては貿易摩擦解消に資することを期待しておるわけであります。ただ、この問題は大変タイムラグがございまして、貿易収支の面においての即効薬とは言えないと思っております。がしかし、いずれこういうことは期待できると思っております。  さてそうなるとどれぐらいの見通しか、こういうことになりますと、為替相場というのは種々の要因が複雑に作用しておりまして、見通しを述べることは困難でありますと同時に、もう一つは、通貨当局者の私が見通しを述べるということは、一つには今巨大になっただけに投機の対象になりましたり、それからこれが底だと言えば途端に本気にドル買いが出たりということがございますので、およその見通しというものを申し上げることは差し控えるべきだということもある意味において、五カ国のきちんとした合意というよりも、特にどちらかといいますと日本が余りぺらぺら発言するな、こんな感じであることも素直に申し上げて事実でございます。したがって私どもとしては、一層円高基調が市場の中で定着してそして秩序のあるドル高是正が行われていくことを期待しておるという表現にとどめておるというのが実態であります。しかし、今鈴木先生が御指摘なさいましたように、本質的には、附属文書で発表しておりますように、アメリカはなお一層財政赤字の縮小とそれに伴う高金利の是正に努めてもらい、それから我が国はいわゆる金融も含めて一層の市場開放。そして原則的には、内需が盛んになれば輸入がふえる。一体何がふえるかと言われるとこれもまた問題がございますけれども、相互がそういう附属文書でアナウンスしましたことについて着実にやっていけば、本当に市場自身が正確に各国の経済のファンダメンタルズを反映した値をつけるということになります。したがって幾らぐらいかということについては慎重たらざるを得ませんが、円高基調が定着していくということを期待しておるという表現がお答えの限界ではなかろうかというふうにお答えせざるを得ないと考えます。
  37. 鈴木和美

    鈴木和美君 円高の状態が定着するということを期待する、それはだれでもそうあってほしいと思うんですね。  それとの関係で、当分の間はそういう円高の基調というのは私は続いていくと思うんです。ところが、その結果短期的に出てくる問題点としては、俗称Jカーブ、こう言われていますね。こういうようなことで、円高によって打撃を受けるであろう輸出産業はいろんな形態があります。その中でも、それを回復するために契約そのものを変えるというような問題もありましょうし、競争力の強いところはそれなりにまた回復するために打って出ますよね。そういうような現象が続いていくということは、短期的には依然として貿易関係は、関税引き下げようが何をしようが高い数字を示すと思うんです。アメリカの貿易赤字が千五百億ドルぐらいになるのじゃないかとか、それから対日が五百億ドルになるのじゃないかというようなことが巷間伝えられているわけですが、そういう現象がやはり続くと見るべきなのでしょうか、いや、ちょっと変わるよというように見るべきなのでしょうか、ここはいかがでしょうか。
  38. 北村恭二

    政府委員(北村恭二君) ただいま大臣からお答え申し上げましたように、円高の効果というのは、輸出面で申し上げますと、輸出の数量の減少ということに結びついて貿易経常の黒字の縮小ということに結びつくわけでございますけれども、今先生御指摘のように、いわゆる産業界とすれば、一時的にはやはりドル建てであればドル建て価格を上げるといったようなことで対応しようという努力も一方ではあるわけでございますので、一般的に円高のときにそれが貿易黒字等にどういう影響があるかということをマクロで申し上げますと、一時的にはむしろ価格の増ということで貿易の黒字等の縮小には当面結びつかない、若干はむしろ一時的にはふえるかもしれない。  しかし、価格が上がるということはそれだけ競争力が弱くなるということでございますので、当然のことながらタイムラグを置いてそれは数量の減少に必ず結びつくはずであるということになるわけでございますから、先ほどから申し上げておりますように、若干のタイムラグはあるかもしれないがいずれはそれは貿易経常黒字の縮小につながるというのが、全体のマクロの見方でございます。
  39. 鈴木和美

    鈴木和美君 私がその点を大変心配しているのは、来年の秋のアメリカの中間選挙、この時期までの間にどういう動向をたどるのかということに大変関心を持っているからです。つまりそれは、やっぱり相も変わらず下がらないということだとすると、三百一条じゃございませんけれども、新しい保護主義が台頭する危険性というのを非常に内包していると思うのですね。ですから、そういう意味で、見方を誤ったら大変だなと思っておるわけですよ。  そこで、これは外務省にちょっとお尋ねしますが、最近の米国の保護主義の動向がどんな状況になっているのか、簡単で結構ですからお聞かせいただけませんか。
  40. 田中均

    説明員(田中均君) お答え申し上げます。  先生御案内のとおり、今アメリカの千二百億ドルと申します非常に膨大な貿易の赤字、あるいは特定産業の衰退といったようなことを背景といたしまして、非常に多数の保護主義貿易法案というものが議会に提出されたわけでございます。  他方、現在の段階までアメリカの議会でそういう法案が通ったのは繊維の輸入制限法案ということだけでございまして、これにつきましては、アメリカの行政府は断固として闘っていくんだという決意を明らかにしておりまして、大統領は拒否権を行使する可能性が非常に高いということでございまして、結果的に法律として成立する可能性というのは必ずしも高くないというのが現在の見通しであろうというふうに考えております。  他方、先生御指摘のとおり、やはりアメリカの議会において保護主義の圧力というものは非常に高こうございまして、今後の見通しといたしましても、アメリカの行政府が新貿易政策ということを言っておりますけれども、そういうものを通じまして各国との市場開放のためのいろいろな交渉というものがどういうふうに進んでいくかというようなこととも非常に大きな関係があるということが言い得るのであろうと私どもは考えております。
  41. 鈴木和美

    鈴木和美君 時間が余りないので、大変恐縮ですが、大臣、もう一つ聞かせていただきたいんです。  それは景気の動向なんです。今のお話じゃないですけれども、アメリカの経済の景気後退というものがずっと我が国にも影響しておると思うんです。同時に、円高の傾向というものは大変好ましい状況であるにもかかわらず、輸出産業の後退というようなことなどから見まして、十一月の月例経済報告を見させていただきまして、その表現が今までは、着実な拡大というような言葉が使われてきたと思うんです。ところが今度は、緩やかな拡大に転化したというような言葉も使われているわけですね。そういう点から見ると、景気そのものが非常に不透明な状況にあるんじゃないかと私は思うんです。  経済企画庁が十二月の、つい最近です、六日に発表した七月から九月期の国民所得統計速報、これを見ても、民間住宅の落ち込みや個人消費の停滞が輸出の落ち込みに加わり成長の減速化が明らかになってきている、こういうふうに言っているわけです。したがいまして、関税という問題も大変大切ではあるんですけれども、景気の動向というものを一体どういうふうに考えておいたらいいのか、ここを大臣からお聞かせいただきたいと思うんです。
  42. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 最近分析したことを北村総務審議官からお答えするのが適切だと思っておりますが、私ども心配しておることは事実でございます。  五十年度基準が五十五年度基準に変わりまして、それで五十九年度の実績の実質五・七も五・〇、こういうことになるわけでございます。したがって、六十年度も四・六を見込んでおったのが、どれぐらいでございましょうか、まだ定かではございませんけれども、いずれにしても下方修正、こういうことになる。それは前提が変わったということももちろんございますけれども、やっぱり円高デフレを懸念される空気は私どもにもわかります。したがって、先般いわゆる中小企業対策というのを決めたわけでございますが、これにしても、確かに当座の年末金融とかいうのは量的には確保できたと思うのでございますけれども、これは必ずしも恒久策じゃもちろんないわけでありますので、予算編成過程を通じて、第二弾と銘打つかどうかは別といたしまして、いろんな考え方をまた整理しなきゃならぬなというふうに折々考えておるところでございます。  正確なことにつきましては北村総務審議官が補足をした方がなお適切だと思いますので、お許しをいただきたいと思います。
  43. 北村恭二

    政府委員(北村恭二君) 我が国の経済の現状等は今大臣からお答えしたとおりでございまして、輸出の増勢の鈍化ということは見られるわけでございますけれども、ただ、全体の経済の動向というのをもう少し見てまいりますと、民間の設備投資というのはやはり大幅な増加傾向というのがまだ続いておりますし、個人消費も、緩やかではございますけれどもむしろ増加傾向にあるのじゃないというような見方もできまして、全体として見ますと、まだ内需中心の拡大局面が続いているのではないかというふうに見ております。  それで、先般、七−九月期の国民所得統計の速報が出ているわけでございますけれども、ここで、前期比で実質〇・六%の成長、これは年率に換算いたしますと二・六%ということでございますので、これがその前の四−六月期に比べて伸びが落ちている。四−六月期は五・八%の年率でございました。そういうことでございますけれども、しかしこれも、四半期別の前期比というところで見てまいりますと、需要項目等のいろいろな面で不規則な動きを示すことが多いわけでございまして、七−九月期の内容を見ますと、先ほど御指摘のような住宅投資がかなり落ちているとか、あるいは経常海外余剰がかなりマイナスに働いている、むしろ外需が成長の足を引っ張った形になっているといったような動きがございまして、二・六%という年率になっているわけでございます。しかし、やはりこの辺、上半期といったような面で通してみますと、まだ前年同期比といったようなところでは高い伸びになっております。七−九月期につきましても、前年同期比で実質四・七%という成長で、五%前後の高い成長というのが続いているわけでございまして、いろいろ円高等による影響ということが出てはおりますけれども、全体としてのマクロの数字としてはまだ拡大局面にあるのではないかという分析をしているわけでございます。
  44. 鈴木和美

    鈴木和美君 もう時間もありませんので、その点については見解を述べておきたいと思うんです。  私は、大蔵省がことしの一月に発表した中期展望の六・五%の成長率、それも、最近の動向を見てみると六%、名目でですが、もう危ないのじゃないかと思うんです。税収も大変な落ち込みが予想されるわけでしょう。そういう状況の中で相も変わらず、九月の二十二日の五カ国蔵相会議合意事項、これを見てみますと、日本経済というものは、「国内民間需要増加に支えられた自律的成長局面にある」という定義をずっと基調に置いて、あのような政策が展開されていると思うんです。しかし、今、内需拡大策も非常に消極的な面から見ると、現在の景気動向というのは、「自律的成長局面にある」というような表現は修正せざるを得ない状況にあるのじゃないかと実は私は見ているんです。  そこで言いたいことは、関税引き下げというのもいいんですが、やはり全体の景気浮揚というものをするためには内需の拡大というものを何としてもやっていかなきゃならぬのに、先般の自民党のお話によると、もう減税もその他内需政策もすべて六十二年度に送られるというようなことであって、大変私は不満を感じているところなのでございます。したがいまして、これからの予算編成期に当たりまして、やはり内需拡大策というものをとっていかない限り、私は小手先の関税引き下げをやってみたってこれは貿易摩擦解消にはならないというような見解を持っておりますので、ここは私の意見だけで結構ですから、参考にしていただきたいと思うんです。  一番最後ですが、例年でございますが、この関税の問題を締めくくるに当たりまして、やはり税関職員の問題というものをどうしても私は述べざるを得ないのであります。  覚せい剤とか銃砲などの社会悪物品の取り締まり、そして貿易摩擦が激化する中で、業務量が非常に増大しておりますし、広範にわたって監視をしなければならぬ。また、出入国の旅客の増加なども、職員の負担をますます私は増大させていると思うんです。本委員会でもたびたび附帯決議をつけていただいておるのでありますが、さっぱり実効が上がっておりませんので、実効の上がるように私は努めさせなきゃならぬと思っている次第でございます。  そういう意味で、最後に大蔵大臣に、税関職員の処遇改善と定員の確保について見解を承りたいと思います。
  45. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まさに本委員会におきまして関税暫定措置法を御審議いただくたびに附帯決議等で御意思を表明されておって、それは大いに我々の強い応援団になるわけでございますが、いつも申し上げますように、事定員ということになりますと、まさにまず隗より始めよ、こういうことを言われがちな性格の役所でございます。しかしながら、この問題につきましては従来は、業務はふえるし社会悪物品は出るし大変複雑化しておるということから、事務の重点化だ、機械化だ、いろんなことを工夫してやってまいりました。しかし私も、たびたびの要請に対して本腰を据えて適切な対処をしなきゃならぬという気持ちは、今の御支援の意味も含めた御発言を受けてなお強くいたしておるところでございます。  それから、いわゆる処遇改善の問題につきましては、社会悪物品の取り締まり等が重要かつ複雑、困難、こういうことでございますので、今日までも種々配意をしてきておりますが、これは今後とも引き続いて努力をする課題だという問題意識を私自身も抱いております。
  46. 鈴木和美

    鈴木和美君 最後に、山本委員長お願い申し上げます。  今大臣からの答弁もございましたので、山本委員長を初め各党の理事の皆さんにお願い申し上げたいのですが、従来にないような附帯決議をつけていただくことを心からお願い申し上げまして、私の質問を終わります。
  47. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 同僚議員から今質問がありました問題から入っていきたいと思います。  今、税関職員の問題がございました。日本の経済の拡大、国際化、これが広がれば広がるほど税関の業務というものがだんだん大きくなってくる。それと同時に、専門知識も要るでしょうから、研修にも力を入れなきゃならない。そういうことで税関職員の教育、これは本当にしっかりやらなきゃならないと思うんですね。この点で、税関業務の増大の実情、それから新しい科学技術とか新製品、そういうものについての教育をどのように充実していらっしゃるか、御説明いただきたいと思います。
  48. 佐藤光夫

    政府委員佐藤光夫君) 先生御指摘のとおり、輸出入の量も増大し、かつ質も大変複雑化いたしております。なかんずく最近は、輸出の面におきましても、ココム一物資の問題、武器輸出の問題等、非常に高度の技術的な知識が税関職員に要求されるような事態になっていることは、御指摘のと売りでございます。私ども、それにこたえまして、適切な貿易秩序の維持を図ってまいらなければならないことは当然の課題でございます。税関研修所のいろんな教育のプログラムを充実するというのが一つの方策でございますし、いわばオン・ザ・ジョブ・トレーニングと申しますか、職場研修を充実し適切に対処していくような能力を税関職員に涵養していくということに常日ごろから努力を払ってまいっておる、こういうような状況でございます。
  49. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 大分、大麻を押収したり覚せい剤の押収があったり、またピストルとかそういう銃砲類の押収がされているようですけれども、捕まっているのを見るというと、五回目か六回目ぐらいのときに末端価格何億円が見つかったみたいなことが出ていますから、実際に入っているのはその何倍であろうというふうにすぐ想像がつくわけですね。それだけに、定員をふやさなきゃならないということになると思うんです。  前回、東京税関にも我々は行ってきたんですが、その東京税関を視察した際に、千六百五十四名今東京税関にはいる。鉄砲とか麻薬の密輸入が、一年間の押収件数が三十五件、それから麻薬の方が百八十九件というふうになっておりますが、実際はこの何十倍だろうというふうに想像されておりますね。それにもかかわらず現在のままの職員の状況では、どうしてもこの密輸入というものを阻止すること、根絶することは無理だろう、こう思われています。やはり税関の使命というのが、税としての適正かつ迅速な通関と納税申告の確保ということでございますし、また関所としての社会悪物品の水際での阻止ということですから、そういう点からするとそういう社会的要請がだんだん強まってくる。年次休暇もとれない、先送りにしていかなきゃならないというふうなことでは、職員の士気にも私は大きく影響すると思うんです。  今鈴木委員から指摘がございましたように、大蔵委員会でも何度も何度も決議しているわけでありますが、この点は関税当局としてはどうお考えですか。
  50. 佐藤光夫

    政府委員佐藤光夫君) 御指摘のとおり、近年、私どもが処理しなければならない事務量というのは増大をいたしております。輸出入申告件数もそうでございますし、出入国の旅客数もふえておりますし、先ほど申し上げましたような貿易の形態の複雑化ということもあるわけでございます。私どもはこれに対しまして、およそ三つのことを対策として従来からやってまいったわけでございます。  一つは、できるだけコンピューターその他の機械を利用することによりまして人手を省くという方向でございまして、これは特に航空貨物につきまして適用をいたしておるわけでございます。今までは一々人間が税番を確認し税率適用して関税額を計算しているというようなことを、機械でやらせるということで、できるだけ人手を省いていこう、こういうことが一つでございます。  もう一つは、事務を重点化、簡素化していこうという方向でございまして、検査、審査をできるだけ重点的に、必要なところにスポットを当てましてやってまいる、こういうことでございます。  三番目は、全体としての事務量はふえているわけでございますが、それが地域別にもあるいは仕事の分野別にも等し並みにふえているわけでは必ずしもございませんので、これまた重点的に、ふえている地域、ふえている仕事の分野に人間を機動的に配置するというようなことで、この合理化努力を払ってまいったわけでございます。  今後ともそういう努力を続けてまいりたい、かように考えるわけでございますが、私、関税局長といたしましては、要員の確保につきましても関係方面に理解を得ていただけるように最大限の努力を払ってまいりたい、かように、考えております。
  51. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 昭和五十四年に予算定員が一番多くて、だんだん減ってきていますからね。そういう点から見てもやはり、業務量は拡大する、予算定員は減ってくるというのはどう考えてもおかしいわけです。その点を含めてこれから大臣に御答弁いただきたいんですが、いま一つは国税の職員のことです。  いよいよ予算編成ということになりますと、最終的に国税の職員とか関税の職員とかという大蔵関係の職員の数が決まるのは最後の最後でございますけれども、毎回毎回大きな決議というか、すごい努力をした決議が出ているんですけれども、実質的には国税の職員の方もふえていない。昨年が十一人、一昨年が十六人ということですが、これも、事務量がうんと拡大していますから実説率はどうしても下がるということになります。そうすると不公平感が国民の間に広がってくるということで、そうなりますと職員の士気も上がらなくなってきますよ。そういう点からも着実な増員を図るべきだというふうに思うんです。  これは国税職員、関税職員両方でございますから、大臣からひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  52. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 関税の場合たびたび附帯決議もちょうだいいたしておりますし、また税法審議に当たっては、いわゆる税務職員の問題というのは、質疑時間の中で計算してみましても大変鞭撻を含めた質疑をちょうだいしておるわけでございます。いつも申すようですが、今鈴木さんがおっしゃいましたように、大蔵省関係のものは最後の最後というふうな、確かに実態はそうでございます。いずれにせよこれは、予算編成と並行して、総務庁で定員管理の問題についてのいわゆる査定があり、議論をしていくわけでございますから、まず隗より始めよということになると行管関係と我が方がどうしても後、後、こんな感じになっております。  今おっしゃいましたとおり、税関の場合は、五十五年を一〇〇といたしますと今九八ぐらいでございますから、事務量は、銃砲刀剣類なんかは随分この倍率が多くなっておったり、全部が多くなって、そして特に多くなっておる分野もございます。したがって、先ほど関税局長からお答えしておりましたように、機械化とか事務の能率化とかいろんな工夫をしてこれに対応しておるわけでありますが、この問題につきましても、私も十分な問題意識を持ってこの定員管理問題についての最終的な詰めに対応をしていかなきゃならぬというふうに思っております。したがって、質的な充実なんかで実際は埋めておるんじゃないかなということは、考えようによれば一人にそれだけの過重な責任を課しておるということにもなりますので、精いっぱいこれからも努力してみたい。  これは全く外で発言したことじゃございませんけれども、例えば国鉄の過剰人員の問題等の議論の際にも、私どももすぐ念頭に来ますのが税務職員の問題と関税職員の問題でございます。がしかし、またそうなった場合、新しく訓練した方がより能率的だという議論も出てみたり、その辺の兼ね合い、いろんな問題がございますけれども、この点については、日に見えだということは非常に表現の難しいところでありますが、御支援を背中に受けながら精いっぱい私としても努力してみたいというふうに考えております。
  53. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 これは精力的にふやしていただきたいと思います。  その次に、政府は一生懸命市場開放を叫んで今回もこういうような定率法の改正が出てきたわけでありますけれども、やはり各省庁の検査規制というものが、緩和されたといっても、まだまだ障害になっているというふうなことは否めないものがあると思うんですね。このままではまたそういう問題で諸外国の反発を招くのではないかということで、私は、関税の問題もありますが、それよりさらにこれは大きな問題になるだろうということを考えますので、さらなる規制緩和ということでまたやっていかなきゃならないんじゃないかと思いますが、この点、大臣いかがお考えでしょうか。
  54. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 規制緩和あるいは基準・認証、こういう問題につきましては今、一括法の中でもいろいろ御議論をいただいておるように私も見ておるわけでありますが、いわゆる非関税障壁、何が一番非関税障壁かと私に質問がございましたときに、私の日本語が一番非関税障壁だ、こう答えたことが一遍ございますが、いずれにせよ、外国にいわば非関税障壁であるというふうな認識を与えるようなことは最もですね、緩和なり解除なりということで今後とも努力を続けなければならぬ。  と同時に、行っておりますこと一つ一つについて、もう少し我が方も含め業界も、このように改善されたということをそれぞれ周知徹底さす努力もしませんと、いろんな会合をしておりますと、五、六年前に既に改善された問題が、まだ非関税障壁として現存しておるかのごとき前提での抗議なんかも時にございますので、そういう我々の周知徹底の努力もなお一層しなきゃならぬことだなというふうに考えておるところでございます。
  55. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いらいらしているのはアメリカもそうですし、ECもそうですし、そういう問題からアメリカでもECでも日本に対して輸入目標の設定を求めている、こういう声が強いわけですね。これは特に工業製品についてですから通産に聞くべきなんでしょうけれども、これは政府として、全体の問題でもございますから、これについてどう考えていらっしゃるのか。いろいろこうやってアクションプログラムに基づくところのものが出てまいりましても、それはまた改めて目標を設定しろなんて言われると、対応を誤ると大変なことになっていくと思いますが、この点についてはどうお考えでしょうか。
  56. 佐藤光夫

    政府委員佐藤光夫君) 御指摘のとおり、アメリカ、EC、特にヨーロッパ、ECでございますが、日本に対しまして輸入の数量的な目標を設定せいというような要望が出されております。過去にもございましたし、先月の十八日の日・EC閣僚会議におきましてもEC側から強くその点の要望がございました。  これに対します日本側の回答と申しますか反応でございますが、そもそもマーケットエコノミーと申しますか、自由経済の体制のもとで一国の輸入について何らか数量的な目標を設定する、それがGNPに対する比率であれ全輸入に対する比率であれ、製品輸入の数量的な目標を設定するということが果たしてなじむものであろうかというのが、私どもの基本的な態度でございます。  若干敷衍して申し上げさせていただきますと、一国の輸入がどうなるかというのはいろんな要因に依存をするわけでございます。内外の経済の状況、あるいはワールド・マーケット・プライスと申しますか、世界市場における当該品物の価格、特に最近では為替レートがどうなるか、あるいは相手側の輸出努力がどうかというようなさまざまな要因に依存して輸入量というのは決まるわけでございます。もとより、先ほどから申し上げておりますように、私ども市場開放努力を続けているわけでございますけれども、数量的なターゲットを、その約束をするというようなことは、今申し上げましたような理由から果たしてこれはいかがなものか、こういう態度でECに対しましてもアメリカに対しましても接したわけでございます。しかしながら、ドル高というのがこれまで大きな貿易均衡の原因になってきたことも事実でございまして、その点は、先ほど大臣からもお話がございましたように、円高基調に転じ、かつそれが定着しつつあるわけでございますので、そのことが輸入の増加、貿易均衡の縮小をもたらすものであろうというふうに期待はいたしている、こういうような状況でございます。
  57. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 その程度だろうと思いますので、これは言いませんが。  今回の法案によって、この措置で具体的に向こう三年間でどのぐらい摩擦の緩和が見込まれるのかということをお答えいただきたいと思うんです。大体関税はどのくらい減収する見込みか。また、輸入の増加はどのぐらいというふうに見込まれるものなのか。非常に数量的なことで答えにくいかもしれませんが、どのように算定というか、考えを持っていらっしゃいますか。
  58. 佐藤光夫

    政府委員佐藤光夫君) まず、今回お願いをいたしております関税改正によります減収額でございますけれども、平年度にいたしまして約八百億円というふうに見積もっております。  御質問の第二点、これによってどれくらい輸入増が見込まれ、かつ貿易摩擦解消に資するかという点でございますけれども、数量的に輸入増効果を予測するというのは大変難しい問題でございまして、先ほど申し上げましたように、輸入量というのはいろんな要因によって左右されるものでございます。あえて、関税引き下げ分だけ輸入品価格がダウンをするというような単純な仮定を置きまして計算をいたしますと、二億ドルとか三億ドルというような輸入増効果が見込まれるのではないかなというふうに考えております。  むしろ、そういった量的な効果よりは、我々が国内のいろんな難しい事情を踏まえながらもぎりぎりの努力をこの自由貿易体制維持のために行っているという、こういう姿勢を諸外国にも理解してもらうことによりまして、諸外国との協調的な行動によって現下の貿易摩擦貿易均衡の問題を解決していきたい、こういう気持ちでございまして、そのことの意味外国にも理解されておりますし、それなりに今後の問題解決に意味を持つ行動であろう、かように存じております。
  59. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 次に、先ほど御質問がありましたが、一連の、ここのところドル高が是正されて今円高になってきた、こういうことですが、今のところでは二百円でもまだ少々円が安いのではないか、そういったような声もあります。二百円からさらに円高に進まないと経常収支の不均衡というのは是正されない、不可能だということが言われているんですが、この辺はどういうふうに見ておりましょうか。
  60. 行天豊雄

    政府委員行天豊雄君) 先ほどからお話しございますように、現在の経常収支の大幅な黒字の背景にはドル高ということがあったことは間違いないわけでございます。その意味で、現在のドル高の是正というものが、必ずや経常収支黒字の縮小効果をもたらしてくるということも間違いないと思います。  ただ、その経常収支縮小の規模あるいはスピードにつきましては、Jカーブ効果その他もございましてなかなか正確に見通しをするわけにはいかないのでございますけれども、その結果、委員指摘のように、経常収支の不均衡を是正するためには現在以上のドル高の是正、円安の是正が必要ではないかという議論も一部にはあるようでございます。ただ、これはなかなか計算上も難しゅうございますし、私どもといたしますと、そもそも為替相場というものは、やはり最終的には為替市場というものがいろいろな情報を総合いたしまして自律的かつ合理的に決めるという相場が正しい相場であるというふうに考えておりますので、何か特定計算上出てきた数字をもって相場の目標とするというのは、正しいことではないのじゃないかなというふうに考えておるわけでございます。
  61. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 どういうふうになった方がいいかなんということについてはお答えが出ないことは十分わかっております、いろんな影響がありますからね。それはそれでいいです。  通産省、見えていますね。——このドル安円高の影響で中小企業に大分影響がある。特に中小企業ではなくて、大きいところでも、非鉄業界とか繊維業界などは大きな影響を受けています。通算省は、非鉄とか繊維とか中小企業とか、こういうところについてどういうような対策を考えているか。特に、非鉄金属産業については、緊急融資をするとか、あるいは電力料金の割引率の拡大をするとかということをしないと大変じゃないかというふうな考えがあるんですけれども、中小企業に対する対策と非鉄金属産業等に対する対策を伺いたいと思います。
  62. 長田英機

    説明員(長田英機君) 中小企業に対する対策の点でございますが、私どもは常時中小企業がこの急速な円高でどういう影響を受けるかウォッチしているわけでございますけれども、最近だんだんと影響が深まってくるような状況でございまして、特に新規商談の中断、あるいは資金繰りが苦しくなっているというようなことでございまして、こういう状況に対処して、十二月の初めから、特別の金融制度というのを設けまして対処することにしているわけでございます。  これからもまた引き続きチェックをいたしていきまして、必要に応じて適切な対策を講じていきたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  63. 松田憲和

    説明員(松田憲和君) 非鉄金属産業につきましても、先生御指摘のとおり、価格が国際市況等で決まってくる点で非常に苦しい状況にあるということは確かでございまして、特にアルミ製錬産業につきましては数次にわたって構造改善を実施してきておりますが、今なお世界的な構造不況といいますか、需給の緩和が進まないというところで国際的な市況も落ちているということでございます。  通算省としましては、昨年の十二月、産業構造審議会の答申を踏まえまして、アルミ製錬につきまして特定産業構造改善臨時措置法のもとで構造改善基本計画を策定いたしまして、本年四月より六十三年度を目標にいたしまして構造改善を一層進めるということに着手してきたわけでございます。  この構造改善の内容といたしましては、関連会社も含めまして種々の協力を前提にして製錬能力を七十万トンから三十五万トンヘ削減する、それによりましてコストの低減を図るということを目標としております。  このような構造改善を支援するために、六十年度から三年間の措置といたしまして、関税減免制度を実施しております。御承知のとおり現在非常に苦しい状態でございますが、構造改善を着実に実施するということがアルミ業界にとっての最大の課題であるというふうに考えております。
  64. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 そのアルミの問題ですけれども、今のお話のように、確かに七十万体制から三十五万体制にと、そういう条件で三十五万トンの輸入分について税率九%のものを、八%これは下がっておるわけですね、減税して一%の税率輸入させるということで、ことしから六十二年までですか、本年度からだからちょうどそれで三年になるわけです。そのほかの地金の輸入については九%、二次加工分については一一・五%のものを九・二%の税率というふうになっております。  ところがアメリカから、米国のアルミの関税は地金で〇%だ、二次加工品で三%だ、それに対して日本は地金で九%じゃないか、高い関税でアメリカから輸入を阻止しておいてアメリカへは日本がアルミ製品を輸出しているということは不公平だということで、大分ことしの六月、七月、八月というふうにシュルツ国務長官が安倍外務大臣に意見を言ったり、アルコアの会長が下院で意見を言ったり、ヤイター通商代表が通産大臣に同様の意見を言っているということでありますから、こういうことで、どうしても私はいろいろすごい影響を受けるんじゃないか。業界としてはこれ以上いわゆる関税率を下げられたらかなわぬという声があるようでありますが、何らかのこれに対しての対策は考えているのかどうか、伺いたいんです。
  65. 松田憲和

    説明員(松田憲和君) お答えします。  先生の御指摘のとおり、アメリカ側から昨年来、日本のアルミ関税につきまして、非常に高いという指摘がございます。ただ、私どもとしましては、現在、日本のアルミ産業の構造改善を進めていく中でこの問題は解決できるということでアメリカ側に理解を求めております。この秋も私ども局長を初めといたしましてアメリカ側とも非公式な話をしておりまして、そのような相互の理解は深まっているというふうに解釈しております。
  66. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 やはりこれは、アルミニゥムというのは一番電力の塊だと言われているんですから、電気料金が高ければ絶対これはかなわないわけですわな。そういう点では、自家発電を持っているところは結構ですけれども、持っていないところ、あるいは前は持っていたけれども統合で発送電にとられてしまったところ等がありまして、そういうことを考えると買電じゃ、アルミの価格を何とか安くさせるということを本気になって考えていかなきゃいけないのじゃないかと思うんですけれども、この点はどうでしょうか。
  67. 松田憲和

    説明員(松田憲和君) お答えします。  アルミは、先生御指摘のとおり、ある意味では電力を資源にしておるという、電力といいますか、あるいはもっと直接的に言いますと水力発電の電気を資源にしているという金属でございます。したがいまして、豊富な水力のあるところへ生産を展開していかざるを得ない。そういうことで、現在海外の水力発電の安いところへ展開をしているという状態でございまして、そういうことを通して、そのような海外展開も含めまして、アルミ製錬産業というのが構造改善を図っているというわけでございます。
  68. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 わかりました。答弁にならない答弁で、まあよくわかりました。  もう一つは中小企業の円高対策ですけれども、円安のときだって、これは本当に急激な円安になると、うちはつぶれるといって文句を言ってくるの必ずいるんです。円高でも同じなんです。両方、円安でつぶれそうになるところもあるし円高でつぶれそうになるところもある。どっちにしても急激な変化が起きたときは必ずどこか苦しいところが出てくるわけでありますけれども、それを政府の方でいろいろ融資そのほかで援助をする。それはわかるんですが、円高になったということの本当のねらいは、輸出ドライブをかけて輸出の方にほとんど依存していたそういう中小企業の体質を、内需の方に振りかえるということがすごく大事じゃないかと思うんです。そういうガイドをしておかないと、やはり同じことで、日本政府が一生懸命また輸出に努力させているではないかということの非難は永久に消えなくなってしまう。私は、それですから、輸出だけじゃなくて中小企業国内にどんどんと市場拡大していくということが非常に大事じゃないかというふうに思いますし、そういう内需拡大に役立つような円高対策でないとこれは同じことの繰り返しをもう一遍やるだろうと思うんですが、その点はどう考えておりますか。
  69. 長田英機

    説明員(長田英機君) 私どもが施策を講じますときの基本的な考え方でございますが、何と申しましても貿易摩擦解消、いわゆる輸入拡大アクションプログラム、こういうことによりまして貿易摩擦解消していき、貿易均衡を図っていくということが絶対に必要であるという前提で考えているわけでございます。  私たちが中小企業に対して講じております対策として緊急対策を講じましたということを申し上げましたが、こういう対策は非常に緊急避難的な対策でございます。特に中小企業に対して、言うなれば息をつく暇を与える、これによりまして私どもとしては円高定着、輸入拡大ということがむしろ図りやすくなるのじゃないか。  さらに、先生御指摘のように、中小企業の環境が非常に厳しくなってまいっておるわけでございまして、こういう厳しい環境をよく認識して、事業転換対策を拡充するなどによって別の分野に、例えば先生御指摘の内需の方にかわっていくということも一つでございます。そういうふうにいろいろ事業転換、内需転換ということなどを図っていくことが中小企業政策としてやはりいいのじゃないかというふうに考えておりまして、そういう輸入促進をしていかなきゃならないということを大前提として施策を考えている次第でございます。
  70. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 輸入拡大する、わかりますけれども、やはり内需の方に向けていかなければ、苦しくなればどうしても輸出の方にドライブをかけたくなってしまいますからね。そういう点を私は、何かそういう国内製品愛用ということを言うとまた問題が起きるでしょうけれども、流行をさせるとか、いろんなことを考えていかなきゃいけないんじゃないかというふうに思っております。これは意見にしておきます。  その次に、砂糖の関税について伺いたいんですが、現在どの程度の関税になっておりますか。また、異性化糖についてはどうなっていますか。
  71. 紀内祥伯

    説明員(紀内祥伯君) お答えいたします。  砂糖の関税は、現在、粗糖でキログラム四十一円五十銭でございます。異性化糖につきましては、二五%ないし三五%という関税に相なっております。
  72. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 キロ四十一円五十銭。輸入価格が大体三十円、きょうの商品市況を見ると、粗糖だと二十円ぐらいになっておりますから、そういう点から見ると、——いや、三十円としても一三八%という高い関税になっておるわけですね。そのほかに、砂糖消費税が十六円となっておるわけです。砂糖を保護するためにこういうことが必要だということは私は十分わかるんですが、やはりこれは消費拡大をしなければならないだろう、また輸入拡大もしなきゃならない。これは何か対策は考えられておりますか。
  73. 紀内祥伯

    説明員(紀内祥伯君) 委員指摘のとおり、現在砂糖の国内需要は年々減少いたしておりまして、全体の国民の甘味離れと申しますか低カロリー志向という中で、こういう状況は今後とも続くのではないかというぐあいに考えております。  私どもといたしまして、今委員指摘のとおり、高い関税を課して国内の鹿児島、沖縄あるいは北海道のビートというものを保護しておるわけでございますが、やはり何としてもこれから守っていくためには、需要というものがこれ以上落ち込まない、現状の維持を図るべきであるという認識を持っておりまして、精糖工業会という団体もございまして強力に宣伝活動を続けておるわけでございまして、砂糖に対する誤解もややあることもございますし、そういう誤解を解きつつ砂糖のいい面を宣伝いたしまして、これからも需要の維持に努めたいというぐあいに思っておるわけでございます。
  74. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 私は関税を安くしろと言っているわけではありません。むしろ砂糖消費税の方を下げた方がいいだろうと思うのです。関税を安くすればもう間違いなく国内ビートはつぶれてしまうだろうと思いますから、これはできないことの相談ですから、やっぱり消費税の方を将来考えていかないといけないんじゃないかというふうに思います。  それから、この砂糖の問題ですが、特に輸入についてASEANの方から、クォータで買ってくれ、つまり国別に輸入量を決めてそうして購入してもらいたいということを言ってきておるという話です。アメリカはキロ十八セントで買ってくれている。日本には十三セントで売りたい。市場が暴騰しても十三セント、暴落しても十三セントということになるわけですが、そういう話があったということですが、これは外務省ですか、事実はいかがでしょうか。
  75. 小林秀明

    説明員(小林秀明君) お答えいたします。  ASEAN諸国からの砂糖の輸入に関する要請の内容でございますが、最近の砂糖の国際価格の低迷を背景といたしまして、タイから砂糖の関税引き下げ等につき要請がございます。また、フィリピンからは、同じく砂糖の買い付けの増大について一般的な形で要請がございます。そのほかのASEAN諸国につきましては特段の要請はございません。
  76. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 問題は、タイ、フィリピンというものが砂糖を輸出したいという相手方だと思いますが、これについてですが、タイランドヘ行けば、エビは終わった、今度は骨なしの鶏肉が一四%に下がるということですから少しはおさまってくると思いますが、また次はこれが出てくるのじゃないかというふうに、次から次へと要求が出てくるだろうと私は思います。  そういう要請があったということはわかりましたが、それに対して対応はどうするつもりでございましょうか。
  77. 小林秀明

    説明員(小林秀明君) 我が国といたしましても、タイ及びフィリピンにおける砂糖輸出の重要性というものは十分認識している次第でございまして、両国からの要請の趣旨につきましては、農水省とも相談してまいりたいというふうに考えております。
  78. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 蚕糸砂糖類価格安定事業団、この価格調整のためにプールしているお金が約一千億円だというふうに聞いておりますが、それは事実ですか。
  79. 紀内祥伯

    説明員(紀内祥伯君) 御質問の糖価安定資金でございますが、ことしの九月末で約八百七十億円の積立金と相なっております。
  80. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 そのことで、この資金を使って輸入に役立てようとかいう声があったり、あるいはそれだけ積み立ててあるんだからちょっと財投へでも持っていこうかというような話があるとか、いろんな声が僕らの耳に入ってくるんですが、これはあくまでも積立金の趣旨に沿った運用をしてほしいというような、砂糖業界とか砂糖関係の人なんかからいろんな陳情が出てきまして、この点どうお考えになっておるでしょうか。
  81. 紀内祥伯

    説明員(紀内祥伯君) 御指摘のとおり、糖価安定資金は、砂糖の価格安定等に関する法律に基づきまして、国際糖価が非常に変動いたしますが、国際糖価が高騰したときにこの安定資金を放出いたしまして国内の砂糖の価格の安定を図るという目的で積み立てられているものでありまして、今委員指摘のとおり、その趣旨に沿った運用をすべきであるというぐあいに考えております。  今の輸入拡大という形でこの資金を運用することは、法律上許されていないということを御理解いただきたいと思います。
  82. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 これは大臣に伺いたいんですが、何かこのお金に日をつけて、何とかしようじゃないかという声が自民党内部でも首脳の方にあるというような話を聞いたのですけれども、事実そういうような動きはあるんでしょうか。
  83. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 不勉強で、今のところまだ聞いておりません。
  84. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 わかりました。  終わります。
  85. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 今回のこの市場開放策は、従来のそれとは大変質的にも違った抜本的なものだというぐあいに私は見ております。  こういう点につきましては、藤波官房長官もこのアクションプログラムの性格についてこう言っています。アクションプログラムの策定は、戦後四十年の歴代内閣がとってきた諸改革の中でも特筆される一大事業であり、行政の新しい方向を打ち出したという意味で、明治維新にも比すべき行政改革と言っても過言ではないと言っているんです。  明治維新にも匹敵するようなものをわずか三時間足らずでやること、これは大臣よりも委員長の方にちょっと苦言を呈しなきゃいけませんけれども、そういう意味では大変残念なんです。しかし問題は、このような大変な抜本的なもの、あるいは質的に違うもの、大臣としてはこれをどのように認識されておりますか。
  86. 北村恭二

    政府委員(北村恭二君) アクションプログラムは、ことしの四月九日の対外経済問題諮問委員会報告の提言に基づきまして政府として取り組んだものでございまして、経済摩擦の解消のための対策一環として、我が国市場が国際水準を上回る開放度を達成するということを目標として設定したものでございます。従来から対外経済対策は何度か策定をしておりましたけれども、必ずしも十分満足されるべき結果が得られなかったといったような点も踏まえて、特に今回のアクションプログラムについては幾つかの特徴を持ったものになっていると考えております。  一つは、やはりその基本原則でございますけれども原則自由、例外制限という原則を立てまして、政府介入をできるだけ少なくして消費者の選択にゆだねるといった思想が織り込まれているということが一つの特徴がと思います。それから、自由貿易体制の維持のために我が国が積極的、自主的に策定したということも一つの特徴であると思います。それから、達成に至るまでの具体的な手順を明らかにしている。それから、対象期間を原則として三年以内ということでタイムスケジュールを明確にした、といったような点に特徴があるというふうに理解しております。
  87. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 今も答弁のとおり、体制面でも内容面でも大変大きな抜本的なものだと思うんです。  ただ、今自主的に決めたと言うんですが、このアクションプログラムの下敷きとなった日米諮問委員会の報告書の作成過程においては、ハワイにおける日米財界人会議に諮問委員委員が出席したり、あるいはアメリカ経済界から現地意見聴取をやったり、またアメリカ政府、議会関係者と会うなど、アメリカの財界、政界は密接に意見交換をしてきておる。こういう要求を大幅に受け入れて今回の報告書が作成されたのではないか、こう見ざるを得ないんですが、その点どうですか。
  88. 北村恭二

    政府委員(北村恭二君) アクションプログラムは、世界的な保護貿易主義というものが高まるというようなことのないように、いわゆる世界経済の最重要課題でございます自由貿易体制の維持強化ということのために、我が国がその経済力にふさわしい国際的役割と責任を明らかにしようということで考えまして、自主的に打ち出したものでございます。  アクションプログラムの策定に当たりまして、各国のいろいろな要望であるとか、あるいは経済界、産業界の要望といったようなものは、経済摩擦解消のために何が有効であるかということの観点から、いろいろとその要望等を参考にしてはおります。参考にしてはおりますけれども、当然のことながら、その要望をそのまま受け入れるとかそういうものではございませんで、やはり先ほど申し上げましたように、自由貿易体制の維持強化ということを目指します我が国の役割ということを考えながら自主的に策定したというふうに考えているところでございます。
  89. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 そこで大臣見解を承りたいんですが、ここ何年か市場開放措置関税などの引き下げに次ぐ引き下げということをやってきたのですが、しかし日米貿易関係にはさほどの効果は出ていない。この点が大事だと思うんですね。そういうことを繰り返すだけになっている。私は、こういうやり方ではなくて、国内政治としてもっと抜本的、基本的な対策が必要ではないか。  ということはそれは内需拡大ですが、その内需拡大の中身もやはり、多数の国民の購買力。ですから賃上げ、大型の所得減税、こういうことで消費需要を大幅に拡大する、むしろその方が根本である。こういう関税引き下げに次ぐ引き下げということよりもその方が大事じゃないかと思うんですが、その基本的なお考えを聞きたいと思うんです。
  90. 北村恭二

    政府委員(北村恭二君) 対外摩擦の原因は何かということにもかかわると思いますけれども、やはり対外不均衡ということが一つの大きな要因でございまして、これがドルの独歩高とか一次産品価格の低迷とか海外要因によるところが非常に大きいというふうに考えておりまして、やはりこういったことの是正のためにはドル高の是正といったようなことが基本的に重要なことではないかというふうに考えまして、先般も五カ国蔵相会議におきまして為替レート適正化のための協力ということが合意されたところでございまして、こういったことが進めば今後対外不均衡の是正に大いに資するのではないかというふうに考えております。  もちろん、貿易均衡是正のためにはこれ以外に、市場開放であるとか内需拡大といったようなことも必要であろうかと思いまして、政府といたしまして、市場アクセス改善のためのアクションプログラムといったもの、あるいは内需拡大に対する対策といったようなものを順次策定してまいりまして、現在着実な実施に努めているというようなことでございまして、こういった措置が講じられることによって貿易均衡、対外摩擦の解消といったようなことにかなり資するのではないかというふうに考えているところでございます。
  91. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 時間がないので、あと具体的な問題について聞いて、最後に大臣から御答弁いただきたいと思うんです。  今回のアクションプログラムの目玉としての骨なし鶏肉の関税が、現在の一八%から一四%に引き下げられるんです。これが国内の養鶏農家に大きな影響を与えるのですが、そこで農水省に質問いたします。この輸入の状況、相手国、それからここ数年の輸入の伸びなどですね。そして同時に今度は、国内の養鶏農家の状況と、輸入鶏肉急増がどのような影響をもたらしているか、この点について答弁いただきたいと思います。
  92. 鎭西迪雄

    説明員(鎭西迪雄君) まず、鶏肉の輸入の状況でございますけれども、鶏肉の輸入は五十年代に入りまして非常に急増いたしまして大体二けたの伸びを続けてまいりまして、五十六年に全体でございますが十万トンに達しました。その後おおむね十万トン強で推移いたしておりますけれども、最近国内価格が非常に低迷しているというようなこともございまして、六十年に入りまして、一月から十月まで統計がございますが、これを見ますと全体では前年同期比の九六%ということで、若干の減ということになっております。  このうち、ただいまお話のございました骨なし鶏肉でございますが、これにつきましては主としてタイ、アメリカからの輸入が行われておりまして、大体最近数年間五万トン程度、全体が十万トン強でございますので約半分が骨なし鶏肉を中心としたその他鶏肉ということでございますけれども、これの六十年度の状況を見ますと、同じく一月—十月で八七%と、全体に比べましてかなり減少しております。国別では、タイはほぼ横ばい、低下のほとんどがアメリカの低下ということになっております。  それから、国内の状況でございますけれども、五十年代の前半まで非常に鶏肉の需要が堅調に伸びまして、二けた台あるいは一けたでも非常に高い伸びというものに支えられまして非常に順調に来たわけでございますが、その間、国内生産者の非常な規模拡大といったような努力、あるいはえさが安定してきたというようなこともございまして非常に鶏肉産業が伸びてきたわけでございますけれども、五十年代の後半に至りまして基本的には生産過剰基調で参ったのが原因いたしまして、最近三年強価格が低迷しております。  これにつきましては、ブロイラーの場合はえさの割合が非常に高いものでございますので、経営に占めるえさの値段の動向というのが非常に大きいわけでございますが、最近えさが比較的落ちついている、あるいは何回かの値下げということになってまいっておりまして、例えば五十九年度のブロイラー経営の収益性を見ますと、前年よりも若干回復してきている、こういう状況になっております。
  93. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 しかし、今回の関税引き下げ措置が大変な打撃を与えることは間違いないと思うんですね。今も答弁があったとおり、コストのうち七割が飼料代、それから二割近くが素ひな代ですね。結局全部外国に依存している。コスト切り下げの余地がほとんどないという状況ではないか。現に今回のこの措置に対して農家からは、計画生産をしながらの輸入拡大措置は許せない、こういう抗議の声も上がっておると思うのですり  そこで政府としては、いろんな措置があると思うのですが、こういう養鶏農家の窮状に対してどういう措置を講じるつもりか、あるいは講じておるのか。
  94. 鎭西迪雄

    説明員(鎭西迪雄君) ただいまお話しございましたように、最近数年間国内の養鶏産業は過剰基調で参っておりまして非常に苦境に立たされている。その中で主産地を中心にした計画生産あるいは生産の抑制という基調で参ったわけでございますが、私ども、今回の関税引き下げ問題につきましては、ASEANを中心といたします諸外国の強い要請にもかかわりませず、このような厳しい状況下にございます国内の鶏肉産業事情というのを考慮いたしまして、対応できるぎりぎりの線で取りまとめたというように考えております。したがいまして、今直ちに国内鶏肉産業に重大な影響が生ずるというような事態は回避することができたと考えておりますが、国内鶏肉産業が長期にわたる過剰基調の中で非常に価格低迷に苦しんでいるという状況、あるいは関税問題が相当長期間にわたって懸案になっておりまして国内関係者に不安を与えてきたという経緯を考慮いたしまして、本年度から鶏肉産業の活力の維持発展と体質強化のための緊急対策というのを講ずることにいたしました。  それは大体三本の柱で成っておりまして、一つは、消費拡大、それから高品質鶏肉の創出、あるいは新規用途、新消費開発といったような、需要を拡大していく、拡大均衡に持っていこうというものでございます。  第二点が、系統を中心にいたしまして現在、生産者が自主的に積み立てを行いましてブロイラー価格安定基金というのをつくっておりまして、価格が低迷いたしました場合に補てんを行うという制度を持っておるわけでございますが、例えば、今後輸入の急増等による不測の事態によりまして価格が急落した場合に積立金では賄い切れない事態が年度内に生ずる可能性というものを否定できないということで、その場合には、その補てん金として無利子でつなぎ融資ができるように融資財源を増設するということをやっております。  それから三点目は、我が国は、先ほど申しましたように非常に生産段階が規模拡大をいたしまして諸外国に比べてほぼ遜色がないわけでございますが、処理場がまだ零細小規模でございまして、その零細小規模の中におきまして高い日本の労賃を使って処理をやるということにおきまして、東南アジア等とのかなり格差が生ずるわけでございますので、この処理場を大規模化するということで処理場の整備統合をいたします場合の施設整備について助成を強力にやっていく。  こういう三点から成ります緊急対策を本年度から実施するということにしたわけでございます。
  95. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 時間がもう余りないので、あと最後に日米皮革交渉について質問したいと思います。一つは通産に対して端的な答弁を求め、あと大臣に、まだ私の質問に対して一回も発言しておりませんから、大臣の答弁をお願いしたいと思います。  交渉が決裂しまして、アメリカの方からは、日本が満足のいく回答を示さない場合には、皮革製品とは全く関係のない品目も含めて四十一品目にわたる対日輸入制限措置を報復的にとると言ってきていますが、これはもう明らかに不当を言いがかりだと思うんです、大体皮革製品ではアメリカに日本は全然影響を与えていないんですから。通産はこれに対してどうするのか。  それから大蔵は、関税割り当て制度への移行ということで当面の問題は国内的には回避できると思うんですが、しかし、毎年アメリカの要求に押されて関税引き下げ措置をとっている政府姿勢から見ますと、たとえ現在二次税率を高く張っておきましても将来引き下げられるんじゃないかという、そういう不安が業界の間に強くあるわけですね。これについて答弁いただきたい。大臣としてはこういう国内業者を守るためにどういう態度で臨むのか。  以上、答弁を求めて、質問を終わりたいと思います。時間がないから簡単で結構です。
  96. 田島秀雄

    説明員田島秀雄君) 皮革・革靴の問題につきましては、米国の三〇一条に基づく対抗措置を回避するということで私どもアメリカと交渉を行ってきたところでございますけれども、この中で私どもといたしましては、皮革・革靴問題の抱える大変難しい背景、あるいは日本がとり得る策等について十分に説明をいたしたわけでございます。  両国間で合意に達したわけではございませんけれども米国としてはとりあえず対抗措置の発動を延期いたしましてさらに検討を続けるということになりました。米国とは近々ガットに基づく関税交渉を行うということにしておりまして、交渉の過程でございますので対抗措置が発動された場合の評価につきましてコメントするというようなことは御勘弁を賜りたいと思いますが、ただ、具体的措置をとった場合には、その態様に応じまして我が国としては、ガットの関連規定に照らし問題があるかどうか検討の上、ガットのルールに即して適切な対応をとっていくというふうに考えております。
  97. 佐藤光夫

    政府委員佐藤光夫君) ただいま通産省からお話がございましたように、まずもって皮革・革靴につきましては、ガット上簡単に申せばクロだという判定が出ておるわけでございまして、それを踏んまえ、かつ国内産業事情も踏んまえて、鋭意関係各国と交渉中の状況でございます。  御指摘の二次税率云々というのは、いわば率直に申させていただければその後の話でございまして、私ども関税上の措置に移行するということにつきまして鋭意交渉中である、こういう事情につきまして御理解を賜りたいと存じております。
  98. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 全般的なお答えを申し上げますと、我が国の経済力というのがここまで力がついてまいりますと、これは申すまでもなく一国の事情だけで政策判断をするわけにはまいりません心そこに国際的な中の位置づけを自覚しつつ、一自主的な判断をしていかなきゃならぬ。  その場合、いわゆる中小企業あるいは特定業種等に対して影響の出ることが間々ございます。その際の措置につきましては、内需転換を図るとが、あるいは特殊なものについては転廃業を図るとか、いろんな趣旨でこれらには対応していかなきゃならぬ。それに対しては抜かりなく対応しなきゃならぬ。それで当面行いましたのが、十二月の二日からでございましたかの、いわゆる中小企業に対する特別融資というようなのもその政策の一つであるというふうに御理解をいただければと思います。
  99. 山本富雄

    委員長山本富雄君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  100. 山本富雄

    委員長山本富雄君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  101. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となっている関税暫定措置法の一部改正案について反対の討論を行います。  第一に、本法案はアクションプログラム一環として出されてきているものでありますが、これは、従来の市場開放策を上回る本質的な対米譲歩の第一歩であるとともに、我が国独占企業が海外市場制覇をねらって、世界の自由貿易体制を維持強化するという大義名分から、原則自由、例外制限の観点で、工業製品関税率をゼロにまで引き下げるというプログラムを示したものであります。  しかし、このような政策が、国内の中小企業、農業に打撃を与えるだけで、当面の日米貿易摩擦問題の解決に何の役にも立たないことは、その後のアメリカの我が国に対する一層の不当な要求を見れば明らかであります。  第二に、本法案による関税引き下げが、最近の急激な円高に加えて、国内産業に与える影響の問題についてであります。例えば、骨なし鶏肉の関税率引き下げは、輸入の急増で深刻な影響を受けている国内養鶏業者に一層の苦労を強いるものであります。コスト切り下げといっても、生産コストの七割が飼料代で、二割が素ひな代で、いずれもアメリカを初め外国に依存している現状では、もう限界に近づいてきています。  最後に、日米貿易摩擦の真の解決は、このような国内産業を犠牲にした一方的な市場開放策によってなされるべきではなく、基本的には、アメリカにおける巨額の財政赤字の解消などの国内経済対策我が国においては、大幅賃上げ、中小企業の振興、大幅所得減税など、国民本位の経済政策、内需拡大策こそが求められていることを指摘して、私の討論を終わります。
  102. 山本富雄

    委員長山本富雄君) 他に御意見もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  103. 山本富雄

    委員長山本富雄君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  関税暫定措置法の一部を改正する法律案を問題に供します。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  104. 山本富雄

    委員長山本富雄君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  この際、赤桐操君から発言を求められておりますので、これを許します。赤桐操君。
  105. 赤桐操

    赤桐操君 私は、ただいま可決されました関税暫定措置法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・自由国民会議日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、参議院の会及び新政クラブの各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     関税暫定措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について、十分配慮すべきである。  一、関税率の引下げに当たっては、国内産業への影響を十分考慮し、特に農林水産業、中小企業の体質改善を併せ考えつつ、輸入の促進を図り、もって国民生活の安定に寄与するよう努めること。  二、世界経済における我が国の立場を踏まえ、国際的協調特に開発途上国への協力等を通じ、世界経済の発展に今後とも積極的役割を果たし得るよう努めること。  三、伸長する輸出入貿易に伴う税関業務の増大に加え、覚せい剤、銃砲等の取締りが大きな社会的問題となっていることにかんがみ、業務処理体制等の一層の見直しを行うことにより、税関業務の効率的、重点的運用に努めること。また、税関職員の特殊な職務を考慮して要員の確保と処遇の改善に努めること。   右決議する。  以上でございます。  何とぞ皆様の御賛同をお願いいたします。
  106. 山本富雄

    委員長山本富雄君) ただいま赤桐操君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  107. 山本富雄

    委員長山本富雄君) 多数と認めます。よって、赤桐操君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、竹下大蔵大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。竹下大蔵大臣
  108. 竹下登

    国務大臣竹下登君) ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨に沿って配慮してまいりたいと存じます。  ありがとうございました。
  109. 山本富雄

    委員長山本富雄君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  110. 山本富雄

    委員長山本富雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時十三分散会      —————・—————