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1985-11-14 第103回国会 参議院 大蔵委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年十一月十四日(木曜日)    午前十一時十一分開会     ―――――――――――――    委員異動  十一月十三日     辞任         補欠選任      栗林 卓司君     井上  計君   出席者は左のとおり。     委員長         山本 富雄君     理 事                 伊江 朝雄君                 大坪健一郎君                 矢野俊比古君                 赤桐  操君                 桑名 義治君     委 員                 岩動 道行君                 梶木 又三君                 倉田 寛之君                 中村 太郎君                 福岡目出麿君                 藤井 孝男君                 藤井 裕久君                 藤野 賢二君                 宮島  滉君                 吉川  博君                 大木 正吾君                 竹田 四郎君                 多田 省吾君                 近藤 忠孝君                 井上  計君                 青木  茂君                 野末 陳平君    国務大臣        大 蔵 大 臣  竹下  登君    政府委員        経済企画庁調整        局長       赤羽 隆夫君        大蔵政務次官   江島  淳君        大蔵大臣官房総        務審議官     北村 恭二君        大蔵省主計局次        長        小粥 正巳君        大蔵省主税局長  水野  勝君        大蔵省理財局長  窪田  弘君        大蔵省銀行局長  吉田 正輝君        大蔵省国際金融        局長事務代理   橋本 貞夫君        国税庁次長    塚越 則男君        国税庁税部長  冨尾 一郎君    事務局側        常任委員会専門        員        河内  裕君    説明員        厚生省保健医療        局老人保健部計        画課長      羽毛田信吾君        厚生省保健局国        民健康保健課長  近藤純五郎君        中小企業庁計画        部金融課長    土居 征夫君    参考人        税制調査会会長  小倉 武一君        日本銀行総裁   澄田  智君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○単身赴任者旅費に関する大蔵大臣発言租税及び金融等に関する調査  (税制改革の基本問題に関する件)  (五か国蔵相会議の合意による為替介入問題に  関する件)  (今後の経済見通しに関する件)  (累積債務国への援助構想に関する件)  (非課税貯蓄への低率課税化問題に関する件)  (円高に伴う輸出関連中小企業経営悪化への  対応策に関する件)  (老人保健制度の見直しに関する件)     ―――――――――――――
  2. 山本富雄

    委員長山本富雄君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨十三日、粟林卓司君が委員を辞任され、その補欠として井上計君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 山本富雄

    委員長山本富雄君) この際、竹下大蔵大臣から発言を求められておりますので、これを許します。竹下大蔵大臣
  4. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 単身赴任者に対する税務上の措置については、単身赴任者業務出張に付随して留守宅に帰宅する場合に支給される旅費について、本来の旅費趣旨から著しく逸脱しない限り非課税とする方向で検討してきたところであるが、これについては、十一月八日付で国税庁長官通達を発遣し、明日十五日から施行することとした。  以上を報告申し上げます。     ―――――――――――――
  5. 山本富雄

    委員長山本富雄君) 次に、租税及び金融等に関する調査議題といたします。  本日は、参考人として、小倉武一税制調査会会長に御出席をいただいております。  小倉参考人には、御多忙中のところ、本委員会に御出席いただきましてありがとうございます。  これから質疑に入りますが、委員質疑にお答えいただくという形式で御意見を伺いたいと存じます。何とぞよろしくお願いを申し上げます。  それでは、これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 赤桐操

    赤桐操君 それでは、早速でございますが、小倉参考人に、以下、税制関係の問題について若干お尋ねを申し上げたいと思います。  いろいろと私ども政府等動きを見てまいったわけでありますが、中曽根総理は国会におきましては減税を最優先として扱われてきたと思うのであります。今日まで一貫したそういう姿勢で来られたと思います。それからまた、都会議員選挙各種選挙戦等におきましても、総理が先頭に立ちまして、増税はやらない、私は減税をするのだ、こういうことで宣伝をされてきたことも事実でございます。  しかし、こういう状況と並行いたしまして一方、与党の中には、あるいは政府関係の中には、いろいろな動きもまた出てきているように思います。宮澤さんの御意見では、減税財源がないにもかかわらず減税を主張するということはおかしいではないか、こういうような御発言が出たり、あるいはまた藤尾政調会長等からは、増減税は同時に実施すべきだと考えている、こういうような御意見も出ていることを聞いております。  いろいろな動きが出ておりますが、そこで、税制調査会としても、これに対しては一定のお考えをまとめられることとなろうと思いますが、どういうようなお考えをお持ちになっているか。また、税調としていろいろ御報告書等も作成されることになると思いますが、その場合におけるスタイルはどんなふうになるのであろうか。一方で減税すれば他方では増税というやり方を根本にお考えになっていらっしゃるのか。この辺のところをひとつお伺いいたしたいと思います。
  7. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 税制調査会は、先般、九月二十日ごろでございますが、総理から改めて税制についての御諮問がございました。その諮問中身は、言葉はそのままではございませんけれども、現在の税制につきまして国民の間に重圧感あ るいは不満感があるというようなことを踏まえまして、税の軽減あるいは合理化というようなことを初めに審議をし、それから税源の問題に及ぶような審議の仕方をしてくれたらどうか、平たく言えばこういうような御趣旨でございました。  私どもも、それを受けまして、ただいま重要な税制項目につきまして審議を始めたところでございまして、まだこれからどういう段取りでどうなるかということは皆目見当がつきませんが、目標としましては、春ごろまでに税負担軽減合理化等についてある程度の取りまとめを行いたい、それから来年の秋ごろには税制全体についての委員考え方を集約して政府答申を申し上げるというふうなことにできればよろしいのではないか、こういうような考え方をいたしております。
  8. 赤桐操

    赤桐操君 最近における会長新聞におけるインタビュー等でも御見解が出されておるようでございまして、どうも政府関係考え方よりも別な方向をおとりになっているのではないだろうかなという印象に私どもはうかがっております。抜本改正は必要ないのではないか、こういうお考えのように拝察しているのでありますが、会長自身としてはどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  9. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 私個人といいますか自身としては、そう税の権威でもございませんし、研究したこともありませんので、個人見解は余り持っておりません。税制調査会会長として議事を整理するといいますか進行するという建前から、皆さんのおっしゃることをしかるべく取りまとめて政府に御参考に申し上げるということで、私個人としては、特に今の税制をどうしなければならぬとか、どうすべきであるというようなおこがましい考え方は持っておりますです。
  10. 赤桐操

    赤桐操君 そうしますと、いろいろ政府部内でも考えがあるようでありますが、税制調査会としていろいろ来年の段階までにはまとめる、こういう御意向ですが、いずれにいたしましても今国民が一番大きな関心事としておりますことは、減税優先でいくのか、それとも事実上は増税ということでいくのか、この辺のところが最大の関心事だと私は思うのです。  あるいは、増減同時だ、こういう御意見もあるようでありますが、この状態は余りいつまでも置くということはいいことでないと私ども考えておるのでありますが、税調の立場で、いろいろ具体的に本格的にまとめ上げる時期はともかくといたしまして、ある程度の見解を表明されるということはお考えになっておられるかどうか。その場合に、減税優先方式等に基づくお考えを示される用意があるかどうか。抜本改正は必要がないとされるならば、そういった形でもってお考えになるかどうか、この辺のところを伺いたいと思います。
  11. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 総理の御諮問によりますと、抜本改正というふうに近いようなことを考えてもらいたいというような御諮問趣旨だったと思うんです。別に、だからといって、抜本改正中身がどうだということをすぐそこで申し上げるような段階にはまだ達しておりません。  それから、お言葉の中に、減税優先というふうなことでやるのかというお尋ねがございましたが、別に減税優先するというふうには考えておらないと思うのです。人によってはあるいは税制調査会委員の中にも減税優先というふうに考える方もおるかもしれませんが、この財政状況等考えてみますと、減税優先するというふうなことには恐らくならぬのじゃなかろうか。ただ、順序として減税を先に審議するとか、そういうふうなことは当然あり得るし、総理諮問の内容も、税の軽減あるいはひずみ等を直すということをひとつ早目考え方を出したらどうか、こういう趣旨でありまして、これは必ずしも減税優先ということではなかろうかと思います。
  12. 赤桐操

    赤桐操君 そういたしますと、重ねてお伺いして大変恐縮でございますが、増税なしの減税ということは今の財政状況税負担状況から見て果たして可能性があるかどうか、こうした点についてはいかがなお考えをお持ちになっておりますか。
  13. 小倉武一

    参考人小倉武一君) これは、お尋ねになるまでもなく、私からお答えするようなことはかえって失礼のようなことじゃないかと思いますが、今日の財政状況でもって考えます場合には、なかなかこれ、つじつまが合うようなふうに大改正をするというようなことは非常に難しいことだと思いますが、しかし一方において国民の税についての不満感といいますか、重税感といいますか、重圧感といいますか、あるいは不公平感といいますか、そういうことが強いということもこれ考えなくちゃなりませんので、税の軽減なり負担合理化なりという方向は当然でございますが、そういう考え方をいたします場合にその財源はどうするかということになるわけでありまして、どうやら人によりましては、歳出を削減してそこから回せばよろしいじゃないかというようなことをおっしゃる向きもございます。あるいはまた、中には、財源のことは考えずに減税をやったらいいじゃないかと言う方もおられるかもしれません。それに似たようなことをおっしゃることを聞いたこともございますが、税制調査会としては、今日の財政状況のもとで、薄々聞いておりますところによりますと、大幅な減税ということでありますれば、それに相応する財源税制の中に求めるということにどうもならざるを得ないのではないか。これは私の所見と申しますよりも、どうも諸情勢がそういう要請をしているというふうに感じられるわけであります。
  14. 赤桐操

    赤桐操君 それでは、次にマル優制度について御所見を伺いたいと思います。  昨年、税制調査会からは、低率分離課税答申されたのでありますが、その後自民党税調におけるところの反対が強く表明されまして、結局六十一年一月から限度管理強化ということに落ちつきました。最近自民党の中では、低率分離課税導入の主張がまた強く出てきております。こういう状況でございますが、この動きについては会長はどのように御判断をなさっていらっしゃるか、この点伺いたいと思います。
  15. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 最近、お話しのように、政府じゃなくむしろ政党、与党の方だと思うんですが、首脳の方々の発言ぶり等新聞等でも承知しておりますが、どういうふうな言葉でどのようにおっしゃったのかよくそのニュアンスはわかりませんけれどもマル優それから郵貯につきましての低率分離課税のことについて、世の中に論議が行われているということもこれ事実であります。  税制調査会としましては、その問題は、ただいま開いております会合ではまだ一度もそのことに触れておりません。したがいまして、税制調査会でどういうふうなことを考えておるかということは申し上げるわけにもまいりませんが、昨年の答申というのは、そのまま政府によって受け入れられなかったのではありますけれども答申自体はそれで死んだわけじゃありませんので、まだ恐らく生きているという格好になっておるのだろうと思うんです。だから、現在の税制調査会はどうだということであれば、改めて審議をし直さぬ限りは今までの答申のとおりであるということにお答えする以外にはないのじゃないかという気がいたします。
  16. 赤桐操

    赤桐操君 そういたしますと、六十一年度においては再度改めた答申をお出しになるということにはならぬということでございますか。現行の、先般出したもので十分だ、こういうお考えでございますか。
  17. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 六十一年度の税制改正は、まだ全く着手しておりません。抜本的改正のために、ずっと毎週二回ばかり特別部会が開かれておるような状況でございまして、間もなく来年度の税制改正議題にはなるかと思いますが、そのときにどういう議論ができますか、政府等から今の低率分離課税について改めて、文書でなくても、審議し直してほしいというようなことがあり ますか、あるいは全然そういうことがございませんか、これはまだわかりませんが、税制調査会自体として改めて六十一年度に低率分離課税をやるべきだというふうな積極的な意思表明をする必要があるということになりますれば、何か文書でその点を明らかにするでしょうけれども、その点が結論を得ないとかあるいは様子を見ようとかいうようなことになれば沈黙したままでいくかもしれません。これは全く予断をするわけにはまいらぬと思います。
  18. 赤桐操

    赤桐操君 それでは次に移りたいと思います。  長期税制改正検討の中で総理はしばしばおっしゃっておられるのでありますが、公平、公正、簡素、選択、これは大蔵大臣も時々言われているように思いますが、こういう項目を挙げておいでになります。税制を簡素にしたならば公平な税制になると会長は御判断になられますかどうですか。私どもは、実は経済活動等が非常に今日複雑多岐にわたっておる、しかもいわゆる所得の上下の幅が相当開いている、こういう現状の中では、公平な税制を志向するとするならば、少なくとも多段階課税方式の方がむしろ公平、公正ではないのではないだろうか、こういうふうに実は考えるわけでございますが、公平、公正と税の関係、これについて会長はどのようにお考えになっていらっしゃるか承りたいと思います。
  19. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 税制の基本的な理念みたいなことに関連するお尋ねでございまして、その中で、特に公正、公平ということと簡素ということとの関係についてのお尋ねだったかと思いますが、いろんな理念を挙げますれば、その理念同士の間に矛盾撞着するということは当然あり得るわけでございまして、お話しのように、簡素だけでもってやればかえって公正を害するとかあるいは公平を害するというふうなことも起こり得ますので、それはどちらにウエートを置くか、個々の説あるいは税制自体に即して判断してみなければなりません。お話しのように、余り簡素一点張りでやれば具体的な公正に欠けるというふうなことも起こり得るかと思いますので、そこはよく注意しなければならないものだろう、こう思います。
  20. 赤桐操

    赤桐操君 また、長期税制改正選択という言葉をしばしば使われているようでありますけれども、これは納税者税負担を選ぶことができるという税制を検討してほしい、こういう意味だろうと思うのでありますが、結局これは、そういう自由を納税者に求めるということは大型間接税導入につながるのではないか、創設ということになるのではないか、こういうふうに私は考えるのでありますが、会長はどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  21. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 選択という言葉税制理念としては余りなじまないのじゃないかと私は思いますが、しかし、総理は何かそういうことをおっしゃっておるようでございます。  その際の選択というのは、文字どおりに言いますれば、A、Bという両方の税制があって、AをとるかBをとるかどちらかはその納税者選択に任すという税制もこれはあり得るかと思うんです、ちょっと難しいですけれども。難しいけれども税制を二通りにしておいてどちらか一つ選択して税金を納めるということだってあり得ると思います。  そういうことも選択ですけれども、もっと私ども選択ということで考えますとすれば、税制改正なら税制改正について幾つかの選択の余地のあるような案を提示しまして世の中に諮って、その中で国民意見も聞いて、いわば選択の上でどういう案に集約していくかというようなこともやっぱり一つの選択であって、どちらかといえば、後で申し上げましたようなことが選択というようなこと、言葉からいえばより適切なような気もいたします。
  22. 赤桐操

    赤桐操君 それでは最後に、六十一年度予算編成に関連して、水資源税というようなものが農林水産関係から新しく構想が打ち出されているようであります。それから、民活に便乗して多くの省庁が企業に対するところの優遇税制創設考えている、こういうこともちらほら聞いているわけでありますが、こうした動向は私はいろいろこれから将来に大きな問題を残すと思うのであります。  例えば、農林水産関係の方で水資源税をという発想根本は、本来ならこれはもう一般会計で賄わるべきものである、それが大変厳しい引き締めの中で治山治水の仕事ができない、こういう状況の中でそこから発想が出てきて水資源税というようなものをつくろうという動きになってきているように思うんです。民活関係にいたしましても同様であります。大型プロジェクトをつくり上げて、そこにいろいろ顔を出す企業に対しては税の優遇をしようということですから。  しかし、いずれにいたしましても、これは国民の懐から出ることには間違いがない、こういう状況なんでありますが、最近そういう格好でそれぞれの分野でいろいろな形のものが出ていくということについて、会長としてはどのようにお考えになられるか伺っておきたいと思います。
  23. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 実は、来年度の税制改正に関連しまして各方面からいろいろの特別措置あるいは目的税的なものの要請があるようなことは、これは全く新聞紙上等で承知しているだけでございまして、税制調査会でそういうものを審議したということはまだございませんので、私自身個人といたしましても個々のことはよく存じません。したがってお答えがしにくいのですが、一般論といたしましては、従来とも特別措置は原則的になかなか認めにくい、もし認める場合はこれまであったものをやめる、そしてスクラップ・アンド・ビルドといいますか、そういったようなことでやるというのが従来からの建前でございまして、恐らくそういうような基本的な考え方は今後とも変わらぬのじゃなかろうかと思います。  いろいろ、特別措置あるいは目的税的なものについての御要望には、なかなかよく考えられた時宜に沿ったような趣旨のものもあるようでございますが、方針としましては先ほど申しましたような方針で、今後税調で取り上げられれば審議するということになろうかと思います。
  24. 多田省吾

    多田省吾君 小倉税調会長に御質問いたします。  六十一年度の税制改正審議は十一月中旬から政府税調で始められると聞いておりますけれども、一カ月の間に何回程度の討議がなされるのか、またその手順と方法を明らかにしていただきたいと思います。
  25. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 六十一年度の税制改正お尋ねでございますが、先ほども申しましたように、普通の年であればもうそろそろ取りかかるような時期でございまするけれども、たまたま今回は臨時の政府からの御諮問もございまして、それをできるだけ早くやっていくというようなことで週二回も毎週やって討議をしているというようなことでございますので、来年度の税制改正につきましては、早ければ今月末になるかもしれませんが、大体十二月。したがって、精力的に取り組むということで、週に何回か会合をしなければならぬというようなことも起こってくるかと思います。予算編成に間に合うように結論を出すことは当然の責務というふうに考えております。
  26. 多田省吾

    多田省吾君 中曽根総理は、先日の参議院予算委員会で我が党の桑名委員質問に答えまして、まず減税案を出してもらい、国民議論をしてもらってしかる後に財源措置をどうするかを考えて、税制改正包括的一体として行われる、すなわち実際の措置増減税一緒にやるんだ、こういう答弁をしております。税調自身もそのような諮問を受けたと理解しておりますけれども、いかがですか、またどういうお考えでこれをなさいますか。
  27. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 税調として余りかかわりのないようなことも御質問の中にはあるかと思いますが、と申しますのは、実行をどうするかということは政府のことでありまして、税調でそこまでどうこうというわけにはまいりませんので。ただ、審議段取り等について、できるだけ政府の 御要望といいますか、意思のあるところも尊重してまいりたいということでございますので、今日の税制の中で、長年の間抜本的な改正というほどのことは必ずしも行われなかったというようなこともありまして、いろいろのひずみがある、ゆがみがあるというふうに言われておりますので、そういうところを先に審議して、できれば素案でもつくりたい、つきましてそれに対して必要な財源的な手当てはどうしたらよろしいかというようなことを考えていく。そうしてまとまった答申にしてもらったらどうかというのが政府の方のお考えのようでございまするので、できるだけそのような段取りで進めたいと思っております。  来年の今ごろまでには、できれば御答申できますように手配をしたい、こういうようなつもりでおります。
  28. 多田省吾

    多田省吾君 先ほどの小倉参考人お話では、来年の春ごろまでに税の軽減合理化についてある程度のまとめをする、それから秋ごろ税全体についての集約をして報告する、それから税調では、諸情勢から、大幅な減税ならば相応する財源を求めるということで財源一緒に報告せざるを得ない、こういう意味お話があったと思います。ですから、来年の春ごろまでにまとめるものには、大幅な減税ならば必ず相応する財源措置一緒に示して出すということだと思いますが、それに間違いございませんか。
  29. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 大幅な税制改正をやってその上で税収の不足が生ずることになるという予想ができるような考え方といいますか案ができますれば、その財源をどうするんだということは当然ある程度は審議するといいますか考えていただくといいますか、ということは当然だと思います。ただ、それを一緒に相当具体的に制度に仕組めるような考え方としてまとめるのは来年の秋ごろだろう、こういうことであります。
  30. 多田省吾

    多田省吾君 相当具体的に財源を示せないまでもある程度の大綱は示すんだ、こういうことですね。
  31. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 外部にそういうことをお示しするまでに議論が詰まるかどうかこれはちょっとまだ全く、現在の税制のぐあいの悪いところ、ひずみのところというようなものを今審議し始めた段階でありまして、まだその結果どういう税制、どういう税についてどうするかというようなところまではとてもとても参りませんので、今の段階で予測できない税収の減について税制上どうしたらいいかという論議は全く行われておりません。したがいまして、来年の春仮に中間的な取りまとめをするといたしましても、財源の部分がそこでどう取り扱われるかということは全く何とも今から申し上げるわけにはいきにくいような次第であります。
  32. 多田省吾

    多田省吾君 そうしますと、先ほどの御答弁で税調会長は、大幅な減税なら税調も諸情勢として相応する財源を示さざるを得ないという方針を示されたわけでございますから、春ごろまでのいわゆる税の軽減合理化の論議というものはそんな大幅なものじゃない、不公平税制の是正ぐらいしかできないんじゃないか、こういうことですか。
  33. 小倉武一

    参考人小倉武一君) そういうふうに解釈されても困るわけで、税制改正の程度なり幅なり大きさをどの程度にするかということ自体がまだこれからの審議、皆様方の、先生方の御意見を無論いろいろな機会にお聞きすること、承知することもできるかと思いますが、全部これからの話でございまするので、そこをある程度予断を持ってこの程度だからこうだというようなわけにはまだまいりませんのです。
  34. 多田省吾

    多田省吾君 先ほどの御答弁にもありましたように、大幅な減税案を春ごろ示されるのであれば、当然それに対する財政措置もあわせて大綱ぐらいは示す、このように私は約束していただきたい。そのようにしないと国民の不信が非常に強まるのじゃないか、こう思いますが、いかがですか。
  35. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 無論、お話しのような御意見税調の中でも恐らく出てくるだろうと思うんです。全くそういうことについて議論なくあるいはそういう意見も出ないでということはないと思いますので、それは各種の意見を取りまとめて、それでこういう方向ならこういう方向にするということになりますが、当然そうだろうということは申し上げにくいんです。と申しますのは、ちょっと先ほども申し上げましたように税調の中にも一中にもと言っては失礼ですが、中に、財源のことなんか考えずに減税案だけ考えればいいんだという意見もあるわけです。ちょっと不思議に思われるかもしれませんけれども、現にあるんですね、それは。財源のことを考えると減税は大したことができないという考え方でいけば、そういう考え方になるのもこれわからぬこともないわけです。
  36. 多田省吾

    多田省吾君 再度申しますが、やはり大幅な減税案を春示されるようであれば、私どもとしては、どうしてもそれは財源もあわせて大綱ぐらいは示していただかなければ国民の不信は強まる、このことを再度申し上げておきたいと思います。  さらに、政府税調は昨年、少額貯蓄課税制度に対しまして低率分離課税答申を行ったわけでありますけれども、先ほどの御答弁では、これはまだ死んだわけではない、このように御答弁がございました。今回もこの問題で審議が行われるかどうかわかりませんが、もし審議が行われて昨年度と同じような結論になった場合は、改めて答申を行うおつもりか。また、昨年もう答申しているんだから、生きているんだからということで答申しないのか。その辺のお考えはいかがでございますか。
  37. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 六十一年度の税制改正答申の形あるいは文言のことにも及びますので軽々にここでどうこうというわけにもまいりませんが、仮定の話として申し上げますれば、仮に低率分離課税審議を始めそれに結論が出るということでありますれば、従来の方針と同じであるかあるいは違うかそれはわかりませんが、何らか明示的に表示をするということになるだろうと思います。
  38. 多田省吾

    多田省吾君 総理諮問によりますと、どうも六十一年度の税制改正は本格減税はないものと解されておりますが、税調としても、六十一年度の減税案答申するものとすれば、住宅減税とか投資減税とかこういった小規模のものにとどまると考えられますけれども、いかがでございますか。  それから、所得減税は我々強く要望しているわけでございますが、もし六十一年度にはなくて六十二年度になるというのならば、やはりその方向国民にはっきり示すべきだと思いますが、この問題はいかが考えておられますか。
  39. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 六十一年度の税制改正中身の問題でございますけれども、これは先ほどもお答えしましたとおり全く審議を始めていないわけでございますので、また、政府からもそのことについてどういうようなことが議題となるだろうかというようなことについてのお話のようなこともまだございませんので、何ともお答えのしようがないわけです。ただ、お話しのように、抜本改正というようなことで一方において審議を進めておるのでありますから、抜本的改正に支障があるような、それを大きく左右するようなものはなかなかこれ、時日も余りありませんわけですからできにくいかと思います。しかし、人によりましては、抜本改正の中に当然入るんだから、それを先取りすればいいじゃないかという御意見もあるかもしれません。その辺は、何がどう出てくるのか全くわかりませんので、ちょっとお答えしにくいかと思います。
  40. 多田省吾

    多田省吾君 我々は御存じのように、昭和六十一年度においても大幅な所得税減税を行うべきだ、二兆円ないし三兆円ぐらいの所得税減税を行ってこそ内需拡大やあるいは円高デフレの解決もつくのだ、本格減税をすべきである、このように要望しているわけでございます。  そこで、これから行われる所得税減税についてお尋ねしたいのですが、その財源措置の問題でありますけれども考えられるのは三つあると思い ます。一つは歳出の大幅削減。二つには既存税制内での増税といいますか、不公平税制の是正等も入ると思います。それから三番目には新規の税制創設。こういった三つの考え方があると思いますが、これから税調審議が始まるわけでありますけれども、今までの審議の姿から見て、税調としてはどれに一番力点を置いて対処していかれるのか、その辺の感触をお尋ねしたいと思います。
  41. 小倉武一

    参考人小倉武一君) なかなかこれ申し上げにくいわけです、まだ余り審議もしておりませんので。しかし形式論的に言えば、お話しのようにそういう三つの方法といいますか、方途がございましょう。ただ、歳出を削減してというのは税制調査会審議とはちょっとなじみません。こういうものを削ってそれを減税財源にするんだというふうには税調の中では論議がちょっとしにくいことでありますので、どちらかといえばお示しの中の二つの方、既存税制の中で選択的に増税を図っていく、あるいは新税を起こしてどうこう、新税にもまたいろいろあるかもしれませんが、いずれかあるいは両方かということになるのかと思います。
  42. 多田省吾

    多田省吾君 それから税調会長に、税の執行面の強化についてお考えをお聞きしておきたいと思います。  今、税の不公平な姿としてクロヨンとかトーゴーサンとか、非常に国民の間に不信が高まっております。また、当局でもいろいろ五十八年度の調査等を行っておりますけれども、実際の調査率は法人で一〇%、個人で四%程度でございまして、それでも相当な脱税が摘発されておるわけでございますが、アメリカ等では、行政部門の職員はふやさないけれども税務職員だけは例外として二千二百人増員したとか、あるいは三年間毎年二千五百人ずつ増員をこれからやるのだとか、このような態度をとっているわけでございますが、我々としても、当委員会等におきましては、行革の最中ではありますけれども税務職員だけはやはりふやしていただきたい、こういう要望も附帯決議等でいつもなしているわけでございます。このことについて税調会長は、今までの審議の姿あるいは感触から見てどのようにお考えでございますか。
  43. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 税務行政と申しますか、徴税上の問題といたしまして考えなきゃならぬことは、幾つか重要な問題が確かにあろうかと思います。  一つは、お話にはありませんでしたけれども、係国税の徴収と地方税の徴収とをもっと共同してやっている部面はないのかどうか。若干の共同は行われているようですけれども、もっと全面的に共同するという体制ができないのかどうかというようなことが検討に値するのじゃないかと思います。  それからもう一つは、人をふやして云々ということも重要ですけれども、やはり何と申しましても、国民がみずから積極的に納税をするという心構えをどういうふうにして養成していけるか、こういうようなことも国税庁の仕事の中に入っているようでありますが、納税思想の普及というのでありましょうか、納税意識の高揚というのですか、そういうようなことについて、国税庁は一生懸命やっておられるんでしょうが、どうも関係省なりあるいは政府としてもう一つ力が入っていないんじゃないかという気がいたします。  最後に、今の増員でありますが、国税関係の方々の実調率も大変少ない、何%にすぎないというようなお話でありますので、率を上げていただくと同時に、必要な人員の増加については、むしろ私どもが先生方に特段の御配慮をお願いしたいというふうに思います。
  44. 多田省吾

    多田省吾君 それから所得税減税についてお尋ねしたいんですが、我々は課税最低限の引き上げ、あるいは給与所得者の必要経費の拡充に配慮した給与所得控除等の引き上げというものを要望しているわけでございますが、もう一つ大きな問題として、家事に従事する御婦人の立場を重視いたしました、いわゆる二分二乗課税方式の採用というものが問題になっているわけでございます。これはヨーロッパ諸国でも一部の国では行われておりまして、また税調でもこのような審議が行われたと思いますが、これはどのようにお考えでございますか。
  45. 小倉武一

    参考人小倉武一君) お話しのように税調でもその問題が討議されまして、まだ継続しているわけですが、どうもなかなか難しい問題があるようです。  二分二乗によって減収がどれくらいになるかならぬかとかいうようなことも無論重要でありますが、夫婦の間の関係というのが、職業上の関係でございますが、あるいは所得上の関係でありますが、いろいろになっておりまして、一律に二分二乗ということでかえって不公平になるというようなことが起こりはしないか。あるいはまた、それじゃ選択制にしたらどうかというお話もあるようでありますが、先ほどの税制選択というような問題と多少関係するかもしれませんが、これをやりますとまたこれは、先ほどのお話の中にありました、徴税を簡素化するといいますか、税務行政を簡素化するという趣旨にはどうも非常に遠ざかるというようなことにもなります。  というようなことで、課税単位についてどうするかということについては、少し学究的に勉強してもらって、その上でひとつまた税制調査会審議をするというようなことで、今専門委員会討議にゆだねておるというような状態であります。
  46. 多田省吾

    多田省吾君 きのうの衆議院の商工委員会で金子経企庁長官は、昭和六十一年度住宅投資減税は新年度に相当規模のものを実現したいと答弁しているわけです。今度の六十一年度の税調審議に際しまして、こういった住宅投資減税を大幅に行うというような内容が審議されるかどうか、その辺を考えておられますか。
  47. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 特別措置の一つだと思いますけれども、恐らく関係省からのお話等は大蔵、自治両省である程度スクリーンされて、必要あれば税制調査会にお諮りになるということかと思います。一々特別措置について、今どういうものが出てくるかわかりません段階ですし、住宅減税というのは聞くところによると相当の減税といいますか、財源を要するというようなことになるのではなかろうかというふうにも憶測されますので、今ここでどうというふうにお答えをするわけにもまいりません。もちろん政府の方から、あるいは政府の方からでなくても、税調委員の中から、住宅減税について討議すべしという議が起こりますれば、無論審議されるということかと思います。
  48. 多田省吾

    多田省吾君 最後に大蔵大臣に。  先ほど単身赴任者減税について御説明がございました。また、寝たきり老人減税についても、不満ではありますが行われるようになっております。最後の教育費減税は来年度必ずやるとお約束でございますが、特に高校進学率も九四%に達して準義務化しておりますが、こういった高校教育費控除を中心とした教育費減税を来年必ずおやりになる、こういうことですね。
  49. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 二つの問題につきましては、きょう読んだものと、それからいずれ、議員提案になりますのか政府提案になりますのかは別として、寝たきり老人問題は今国会で法律を出して通していただかなければならない。俗称教育費減税というのは、言ってみれば継続審議になっておるわけであります。これをどのような形で議論していくかというのはこれからの問題でありますので、俗称教育減税をやりますというような考え方の上には立っておりません。教育費の重圧を受けていらっしゃるところにどういうふうな税制上の位置づけができるかというようなことから、恐らく各党の専門家の皆さん方も御議論がいただける問題じゃないかなというふうに考えております。
  50. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 私以下は小倉会長に対してはわずか八分の持ち時間ですので、端的にお答えをいただきたいと思います。  まず、税調に対する総理諮問で、現行税制にさまざまなひずみやゆがみが出ているからこれを 抜本的に見直す必要があるということであります。先ほど小倉会長からも、国民の中に不公平感重圧感があるということでしたが、何をもってゆがみ、何をもってひずみととらえておるのか、ひとつ会長の御見解をお聞きしたいと思います。
  51. 小倉武一

    参考人小倉武一君) これは、一口に申し上げることは非常に難しいと思うんです。  というのは、おっしゃる言葉はゆがみとか不公平とかあるいは重圧感であるとか同じであっても、その中身はみんなそれぞれ違うわけでありまして、衆目の一致するところはこうだというわけにはこれはまいらぬと思うんです。しかし、形式論的に言いますと、租税特別措置、あるいは租税特別措置という特別の法律という形はとっていない、本法に入っているけれども特別措置に類似しているというようなものもないことはないわけであります。そういうものが積もり積もって相当たくさんになる。年々整理していくといいますか、期限が来ると整理するというふうなことに努めておりますけれども、なかなか整理しにくいわけです。これはしかし、見ようによりましては、税制上は租税特別措置等がゆがみといいますか、不公平なものであるんだということがあるいは言えるのだろうと思いますけれども、もっと基本的には、例えば勤労所得と資産所得、そういうものの間に不公平がないのかどうかというふうになると非常に基本的な問題になりまして、恐らくそういったたぐいのものが全部合わさって今日の不公平感とかあるいは重圧感というふうなことになっていくのだろうというふうに思います。
  52. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 次に、アメリカの税制改革に対するこれも会長の見方でありますが、大型間接税を拒否したその理由についてどうお考えか。文書を見ますと、逆進性あるいは徴税コスト、こういったことが指摘されておりますが、この辺についてはどうお考えですか。
  53. 小倉武一

    参考人小倉武一君) アメリカはずっと直接税中心主義でございまして、州には取引税がありますけれども、そういう間接税のウエートは非常に少ない。日本と並んで最も少ない国だと思うんです。したがいまして、どうも従来のそういう税制上の基本的な考え方にまずなじまないのだろうと思うんです。それから今のお話のようないろんな問題もあるし、それからもう一つは、州の取引税というんですが、これがありますから、これは連邦と調整を要するようなことになりましてこれまた難しい問題になるというようなことも、理由として考えられるのではないかというふうに思います。
  54. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 それから、国民負担率の上限について税調の中で議論があったと伝えられております。それによりますと、国民負担率五〇%未満。このまた議論を聞いてみますと、これは臨調答申の五〇%をかなり下回る水準よりはラインが上の方にと受け取られるような議論があったようであります。年金制度のほか一連の、我々に言わせれば改悪ですが、それによって社会保障負担率が急速にアップしていくことは必至ですね。となりますと、これは結果的に、臨調で言うラインを今、税調で出てきた議論というのはかなり上回る。要するに、臨調答申の五〇%をかなり下回る水準というのは修正を迫られるんじゃないか、このように議論からは受け取れるんですが、その点はどうですか。
  55. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 租税負担率と社会保障関係負担を合わせましてどの程度が限度かというふうなことは、税制調査会でも全く議論がなかったわけではありませんけれども税制調査会では臨調のような、国民負担率全体をつかまえて何%が適当かどうかというふうなことは深く審議をいたしませんのです。税金だけですが、税負担率をどの程度考えるかということは従前も討議されましたし、今後もあるいは討議されますのでしょう。その際は、何%と、例えば二〇%というふうなことよりは、むしろ歳出のうち税金で賄うべきものはどの程度であるべきか、あるいはあった方がいいんだというふうなことを目安にしたことは従前の保税制調査会答申にもありました。  今度、抜本的改正をするということでありますれば、恐らく財政の健全化にも寄与するようなこともあわせて考えなければならぬでしょうから、歳入に対して税制がどの程度寄与できるのかというようなことはある程度踏まえた議論をし、あるいは場合によっては何%が適当であるかというふうなことが示し得るかもしれませんが、これは全然まだ議論をしておりません。
  56. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 それから、先ほど来答申の時期についていろいろ議論があったのですが、こういう聞き方をしたいと思うんです。  来春、中間答申があるのか、それとも報告という形なのか。これは、もっと端的に言ってしまいますと、来春の減税についての何らかの報告あるいは答申があったとします。ところが選挙前なんですね。秋に今度は大増税ということになりますと、税調自身が中曽根さんの政治的思惑に利用されるのか手をかすのかそれはわかりませんけれども、そういうことになりかねないんですね。そういう意味で先ほどいろんな質問があったと思うんです。そこで、端的にお聞きしますが、そういう面から見ますと、春に減税、秋に増税というのはぐあいが悪いんじゃないか。そこで、やっぱり長期展望を明確にして国民に問うというのが私は本筋だと思うんですが、この点会長とういうふうにお考えですか。
  57. 小倉武一

    参考人小倉武一君) お話しのように、長期展望をやって、大枠といいますかあるいは大方針といいますか、そういうものをある程度討議して、それを前提にして、そのうち減税はどうだ、増税はどうだというふうなことができれば、あるいは公正な仕組みになるかと思いますが、まだその辺の仕組みをどうするか、ただぼんやりと来年の春ごろ中間的な報告でもするというふうなことが求められておるようでありますので、その中身については主として減税のことが触れられると思いますけれども、その財源をどうするかということについては、まだまだそのころになりませんと、今からこういうような考え方で大枠を示すんだとかいうふうなことはちょっと申し上げにくいと思います。
  58. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 時間が来たのでこれだけにしますけれども、少なくとも言えることは、私が指摘したような政治的な思惑に利用されることがあってはならない。そういう面は、私はある意味では、税調自身が政治的にそういう立場の政治姿勢を持つべきだと思うんです。  その点だけ確認して、御答弁をいただいて、終わりたいと思います。
  59. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 仮に相当程度の減税というような考え方のものがまとまりかけるということになれば、それは財源はどうなるのだということについては、表にどういうように出すか、具体的にどうするかということは別としまして、当然討議はなされるべきものであるというふうに考えます。
  60. 井上計

    井上計君 いささか失礼なお尋ねかもしれませんけれども参考人に率直にお伺いいたしたいと思います。  私どもは、新聞報道によってのみしかわかりませんけれども税調の機能が果たして十二分に発揮されているのかどうか、時にこんなふうな疑念を感じることがあります。例えて言うと、先ほど来会長の御答弁の中にも、水源税等については全く税調審議したことはないというようなお話がありました。あるいは、従来税調審議をされ答申に盛り込まれたものでも全く日の目を見ていないというようなものも幾つかあるわけでありますが、それらのことが重なって先般、失礼なお尋ねでありますけれども会長が辞意を表明されたのではなかろうか、私はそのように実は推察をいたしておりますが、どのようにお考えでありましょうか、税調の機能が会長のお考えのように十二分に発揮されているのかどうか、それらについてひとつお伺いをいたしたいと思います。
  61. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 国会の衆参両大蔵委員会等におきまして、お話しのような、税調ちょっと だらしがないんじゃないかというようなおしかりを受けることが時たまございます。国会のみならずマスコミからもそういう批判を受けておりまして、ちょっと恥ずかしい思いをするんですけれども、どうもこれが、こういう今日の日本の政治的状況、行政の取り運び方等から申しまして、特にそれをどうこうというふうなことはなかなかできにくい。まあ、余り角を立てたことはしない方がよろしいと、平たく言えばそういうふうに思っております。
  62. 井上計

    井上計君 率直にお答えいただきまして大変参考になりました。  そこで、もう一つお伺いいたしたいと思いますけれども、先ほど来税務行政の効率化というようなことについての質疑が行われております。確かに、私どもが感じておりますのも、かなり複雑であるというふうなこと、複雑であるから余計に国民重圧感を感じておるというふうなことも多々あるのではなかろうか、こう思います。  そこで、簡素化のために、一つの方法でありますが、国税と地方税とが分離されておる、徴税業務も分離されておりますし、またいろいろ、課税最低限についても違うわけでありますけれども、これを一元化するというふうなことをお考えになったことがあるのかどうか。現在の個人住民税あるいは法人住民税あるいは事業税等を、国税の付加税として一元化していくというふうなことについての御検討が、従来税調としてあったかどうか。御検討があったとすれば、その御検討の中身、あるいはなかったとすると、今後それらのことについてどういうふうなお考えであろうかということをお伺いしたいと思います。  それは、先ほど来質疑の中にありましたけれども、国税職員が確かにいろんな調査等々十分できないという現状。やはり職員の不足といいますか、もっと職員はふやすべきであるというふうに私ども考えますけれども、現状、行革の中でなかなかそうはまいらぬ。ところが、地方税の職員は非常に多いんですね。だから、そのような一元化によって、簡素化あるいは行政改革等についても効果があるのではなかろうか。同時にまた、やはり徴税、税の通知というのは一回もらうより二回もらう方が重圧感が加わるのは当たり前なわけでありますから、そういう面についてお考えがあるのかどうか。これはまた大蔵大臣にもひとつあわせてお伺いをいたしたいと思います。
  63. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 地方税と国税の関係につきまして、お尋ねの中にございましたように、地方税の一部を国税の付加税にしたらどうかというような意見というようなたぐいのものは、税調の中でも全くなかったわけではありません。しかしながら、国税と地方税の税制全体についてあるいは徴税について、一元化するとかあるいは統合するというふうなところまで入ったような御意見は、私は、長い間ですけれども聞いたことがございません。付加税とか一元化というようなことが非常に難しいのは、一つは地方自治という建前がございますので、私から申し上げるまでもないことでございますが、付加税にすれば、戦前のような中央に従属する地方自治というような姿にそのままなってくるというようなことで、とても話にならないといいますか、話し合いの場にはのせられないものになるわけです。  ところがしかし、これは私の全く個人的な考えで、しかもこれは特に税制についてだけではございませんが、町村同士とか、町村と府県というのは共同の仕事が制度上やれるわけですね。ところが、なぜ国と府県あるいは市町村では共同の事業がやれないのだろうか。そういうシステムはないんですね。事実上、補助金を出して共同でやるというようなこと、名前だけ共同というようなことはあるかもしれませんけれども、制度の上で対等の立場でというような、しかも共通面の非常に多いものを国と府県あるいは市町村で共同で処理するという仕組みが我が国にないわけです、世界にはあるかどうか知りませんが。それは考えられるのじゃないか。税制など、特に徴税なんかはそういうことにふさわしい一つの仕事じゃないかというふうに思うのでありますけれども、しかしそういうことについては審議したこともありませんし、私にはそういうことをまだ提案したこともありません。
  64. 井上計

    井上計君 大蔵大臣、今の問題ですが、もちろん今会長お答えのように、地方自治との問題等から非常に難しい問題ではありますけれども、将来の方向としてやはり一元化ということについては検討すべき課題であろう、こう考えますが、大臣はどのようにお考えでありましょうか、御所見を承れればと思います。
  65. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 国税職員五万二千八百五十二、地方税職員八万五千七百三十六。いつも五万二千だ、八万五千だと言っておりますが、今会長がわざわざ私見としてとこう申されたような意見を、臨調におきましても行革審におきましても、何度か私も耳にしております。問題は、地方自治の根幹に触れるという議論がいつも別の次元で存在しておりますが、私もあえて私の私見として申し上げさせていただきますならば、十分検討に値する課題だという気持ちは私も持っております。
  66. 井上計

    井上計君 終わります。
  67. 青木茂

    ○青木茂君 参考人にお伺いを申し上げます。  ただいままでの議論で、再三にわたりまして、六十一年度の税制改正と申しますか、手直しと申しますか、そういうものはまだ税調議題に上がっていないというお答えがございましたけれども、果たしてそうなんでしょうか。それでよろしゅうございますね。
  68. 小倉武一

    参考人小倉武一君) いつもなら、そろそろといいますか、来年度の税制改正というようなことが始まる、あるいは始まっておってもいいわけですが、ことしは、先ほどのお話にもありましたように、特別の税制の改革をやるというような前提でもってこの秋から審議を重ねておりますので、それをある程度緒につけるという必要がありまして、今月いっぱいはそちらに手がとられる。したがいまして、来年度の税制改正は十二月、早くても今月の末、本当のぎりぎり末ごろに始まるというのじゃなかろうかと思います。
  69. 青木茂

    ○青木茂君 しかし、予算自体は年内編成を急ぐというふうな報道がなされていて、税制改正はまだ緒についていない。果たしてこれは間に合うのかどうかという感じが強いわけですね。きょう今までの議論の中で、まだいろいろ着手はないから会長としてもそう予見を持って言うことはできないという御答弁で終始されたわけですけれども、例えばきょうの東京新聞でございますか、これを拝見いたしますと、会長自身が六十一年の税制改正について一つのお考えを記者に対して述べられておる。しかもその同じ裏には、非常に御丁寧に一問一答まであるわけですね。  そうすると、国会が伺いますと、大蔵委員会が伺いますと、まだ全然政府から話がないから着手してない、新聞社が聞くと非常に懇切丁寧にお答えいただく。これは一体どっちがオーソライズドされているのか私ども全然わからない。東京新聞のきょうの朝です、これは。というのは、どういう状況の中で、あるいは国会以上の権威者の新聞記者がいて聞いたからお答えになったのか、ここのところはいかがなものでしょうか。
  70. 小倉武一

    参考人小倉武一君) それは雑談みたいなものでございまして、うまい人は、雑談の中から何かしらんニュースになるようなことをまとめるのも商売でしょうから。別に私どもは、来年の税制だからというようなことで全く無口でおるわけにもまいりませんのでいろいろやりとりをしているわけでありますが、まとまった考え方は全くしておりませんし、こういうふうにするとかこうだというふうな話はしたわけはありませんのです。
  71. 青木茂

    ○青木茂君 そういうことになりますと、非常に税制調査会自体がいわゆる密室審議が多くて、我々としては何が何だかわからない点がある。とにかく、国会の大蔵委員会で伺いましても何も出ない。新聞に、非常にこの記者がすっぱ抜きが上手だったのかどうか知りませんけれども、一問一答まで出ているわけなんですから、私どもとしては そこに一つの違和感を持たざるを得ないということが実は偽らざる心境なんですよ。  そこで大臣にお伺いいたしますけれども大蔵委員会でいろいろ大臣に御質問を申し上げますと、とにかく政府税調というものがあるのだから予見を持ってのお答えはできないということを、これは竹下語録に永遠に残るのじゃないかというふうに、再三再四私どもは伺っておるわけです。ところが今度、税調会長さんに来ていただきますと、まだまだ政府の方からどうだこうだと。これは堂々めぐりの悪循環であって、そうすると、この大蔵委員会とは果たして何ぞやという疑念を持たざるを得ないわけなんですよ、ひがんで考えるだけでなしに。本当に心の底からの問題として。だから、やっぱり国民の代表として構成される委員会なんだから、そこら辺の一間一答というものにもう少しですね。一方は税調、他方は政府ということで寄りかかり合ったらどうしようもない。ここら辺のところをもう一回、大臣のそれじゃひとつ御見解を伺いましょう。
  72. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 国会は国権の最高機関であり、そして税制についての議論をする場は衆参両院の大蔵委員会である、こういう位置づけであろうと思います。  私は、時にみずからの範囲を踏み外さないようにみずからに言い聞かせながらいつもお答えしておりますのは、私も国会議員の一人である、したがって、時に青木博士の議論に釣られて、入り込んで、何か私的ディスカッションをしたくなる心境になることもございますが、そこをひとつうんと踏ん張りまして、今は政府の一員であるとみずから自重自戒を求めながら、そういう議論を正確に政府税調にお伝えして、御議論をしていただく糧にしていただくというのがやっぱり正しい姿勢だろうと思っております。
  73. 青木茂

    ○青木茂君 八分では、こういう議論をしておったらもう時間がなくなっちゃいました。  あんまり突っ張らずに、とにかく私ども大蔵大臣大蔵大臣でどうも終わってしまいそうもない人だと思っているから、竹下財政のビジョンというものをやっぱり再三再四にわたって伺いたいわけなんです。そうでなきゃ、いろんなことの判断がつかないものですから、まあ博士であるか何か知らぬけれども、あんまり逃げずにですね、舌禍問題を起こして閣内不統一になったっていいじゃないですか、これから上になる人なんだから。とにかく、大蔵委員会の一間一答というものを実りある、アクティブな、前向きなものに我々としてはしていただきたいということをくどくも辛くもお願い申し上げます。  もう八分ですから、時間を守るのも義務ですから、しようがないやめますけれども、大変むなしい感じがしているということだけは強く申し上げておきます。
  74. 野末陳平

    ○野末陳平君 会長にお伺いしますが、総理が国会答弁の中で、所得税と法人税と相続税、この三つを減税したいということを何かかなり言っておられるようで、税調としてはこの三つを減税するという方向に賛成という空気なのか、それともあるいは批判があるのか、その辺の事情をちょっとお伺いしたいと思うのです。新聞などの活字で、どうもこの三つの減税が先走りしているような感じがしますので、あえて税調の空気をお聞きしたい。
  75. 小倉武一

    参考人小倉武一君) まだ序の口でございますもので、今の段階で申し上げると少し誤解を生ずるおそれがございますのでどうかという気がいたします。とにかく減税前提の議論というふうになっておりますのでしたがって減税の話が大いに――まあ間違いないわけですが、それを翻って見れば、一体そういう減税をしてどれぐらいの金になるのだという話になってくると、それはちょっと待ったという話に今度は当然なるおそれがありますので、今のところは減税減税ですから気楽にやっているというわけでもありませんけれども、どうしてもちょっと気楽になりがちですよ、恐らく。だから、審議としては非常にスムーズにいっていると言っていいと思うんです。しかしまだ、どの税目をどの程度減税するのかとかいうようなことについては全く審議は進んでおりません。  例えば所得税につきましては、累進十五段階でしたか、をもっと少数な段階にして簡素化するというようなことが考えられるけれども、簡素化すればするで一段階上がるときのその飛び幅、上がり方は非常に多くなる、むしろそういうときには重税感がかえって増すんじゃなかろうか、そんなこともありまするし、それから給与所得につきまして、給与所得控除というものが上にいくに従って、一千万円以上たしか五%になるんですか、給与所得控除がかかりますが、それを天井をつけて、高額所得については給与所得控除をなしにしたらどうかというような意見もあると同時に、他方、余り上にいくに従って給与所得の控除率を減らすことになると今度は累進税がそれにかかってきて非常に重圧感が多いんじゃないかというような議論もありまして、そういう問題についてはひとつもう少し地道に検討をしてから結論を出そうじゃないかというようなことになっている、こういったようなたぐいのことです。
  76. 野末陳平

    ○野末陳平君 今の話は事実来年度じゃなくて再来年度に向けての税法改正ですから今のお答えしか無理だと思いますが、来年度は、先ほどの質問にもありましたのですが、会長自身としては住宅関連減税というのにそれほど積極的でないような感じでさっきのお答えを受け取ったのですけれども、これはどうでしょう。
  77. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 私見を申し上げるのはどうかと思うのでございます。全く住宅減税については議論を禁止しているわけではありません。まだ議論がないわけです。だから、税調でどんな雲行きかということは申し上げるわけにはいかないのです。  ただ、従前からの税調審議状況、従前からと申しますのも今回新しく委員になられた方が十人もおりますから従前のことがそのまま参考になるかどうかわかりませんが、そういう特別措置については大体税制調査会は消極的なんです。よほど理由があり、よほどの特別な事情がない限りは非常に消極的である。しかも相当の財源が要るということになれば、その財源を今度は考えるのはやっぱり税制調査会になりますから、それはどこかで考えればいいので税調はそれは知らぬのだというわけにまいりませんので、これはだからなかなか、そういう状態でございますので消極的であろう。であろうという推察を申し上げて恐縮でありますが、そういうことであります。
  78. 野末陳平

    ○野末陳平君 マル優の方の低率分離課税については前回の答申も出ておったわけですから、あれについてはことしはどうしても、つまり来年度はどうしても実現してほしい、あるいはしなければいけない、そういうようなムードは税調の方にあるのですか。これは今までの議論の続きですから特に新しいものではないわけですから、その辺はどうでしょうか。
  79. 小倉武一

    参考人小倉武一君) これはただいまの住宅減税なんかもそうかもしれませんが、税制上どうしてもある程度の選択的に部分的に増税をしなきゃならぬというような際に、いわゆる低率分離課税も、これは部分的なものじゃありませんけれども、新型の大きな新税だと言うべきかもしれませんが、それは議題になる可能性はあると思います。ただ、去年だめだったけれども問題なくことしもまた低率分離課税政府に制定方を意見具申し上げるというようなことになるかどうか、これは全然まだ見当がつきませんです。
  80. 野末陳平

    ○野末陳平君 最後に。  ここのところずっと、課税ベースの広い課税といういわゆる大型間接税のようなものですね、これが議論になっておりまして、税調答申にも常にそれが書き込まれておりますが、これについてですが、一時はいよいよこれしかないという感じもしていたんですが、最近は大蔵省はどういうふうに感じているかよくわかりませんが、全体的にはやれやれ、もう仕方がないというような声が一部にあるものの、実現はどうも無理じゃないか、相当これは遠のいているんじゃないか、そんな感 じにも受け取ったり、その辺のことはもう何とも言えないのですが、税調として、あるいは会長自身としては、この大型間接税というものについては今のところどういうようなお考えをお持ちか、これは個人見解になっていいのですけれども、お願いできたらばよろしく。
  81. 小倉武一

    参考人小倉武一君) ここしばらく、大型間接税と言われるもの、課税ベースの広い間接税、消費税というようなものは税調討議したことがありません。議題にならないわけです。  ただ、やがてはいつの日かそういうことが必要になってくることがあるだろうという予測というようなものといいますか、推察というものは多くの方々が持っておられましょうが、他方しかしやはり、絶対反対であるというような意見の持ち左もあるわけでございまして、そこのところは今日の段階でどうだということはちょっと申し上げにくいのです。そうして、将来の問題になりますればまたいろんな事情が加わるわけでありまするので、将来どういうことになるかということを予測することも難しい。ただ、有力な新しい税制であって、そしてそれについてやはり常時検討しておく、これは検討しておくといっても役所のベースの話でございますけれども、そういう必要はあるだろうというふうには感じております。
  82. 山本富雄

    委員長山本富雄君) 以上で小倉参考人に対する質疑は終了しました。  小倉参考人には、本日、御多忙中委員会に御出席いただき、貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。  午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時三十六分休憩      ―――――・―――――    午後一時三十二分開会
  83. 山本富雄

    委員長山本富雄君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、租税及び金融等に関する調査議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  84. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 最近の外国為替関連のことについて若干お聞きをしたいと思います。  大蔵大臣それから日銀総裁には、G5の会議で御健闘をいただきましてありがとうございました。  私はどうもこの会議から、外国為替に対する対応というものが大変変わってきたのじゃないだろうか、一つの大きな画期的な仕事の始まりではないかという気がいたしますけれども、G5の意義、それからその合意の内容、細かいところはたくさんあるだろうと思いますけれども、合意の内容の主要な点だけで結構でございますから、あとは恐らく「ファイナンス」にあるようなことが実際の合意ではないだろうかと思いますけれども、主要なところを御説明いただきたいと思います。
  85. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まず会合の目的につきましては、本会合の目的は、主要通貨国の通貨当局者による多角的サーべーランスの一環として会合を持つこと、及び十月初めソウルで開催される世銀・IMF総会の準備として主要五カ国の協調関係を強化すること、窮屈に言えばこんなことではないか。と申しますのは、オーソライズされたのでG10というのが存在しますが、G5というのは本当は存在していないじゃないか。強いて言いますと、サミットで、SDR参加国でお互い政策協調のサーべーランスをやりなさい、相互監視をやりなさい、その名目なら集まれると思うのでありますが、だから、したがってやっぱり、サーべーランスの一環として集まったということになるわけであります。集まればそこで世銀・IMF総会の準備の話もそれは出てくる、こういうことになろうかと思います。  次は会合のポイントでございますが、現状認識としては、本会合においては通貨を初めとする現下の世界経済をめぐる諸情勢について意見の交換が行われましたが、第一に、各国の経済パフォーマンスと政策の協調が順調であること、及び他方、それが現下の為替レートに正しく反映されていないということについて認識の一致を見ました。言うなれば、インフレ率なんかが徐々に下がっておるというのはだんだん協調が順調である、まだ差はございますけれども、そういうことは言えると思いますが、一方、現下の為替レートは正しく反映されていない、こういう共通の認識を見ました。  それから第二番目には、やっぱり現在保護主義の圧力が高まっておるということについては全員が一致の認識を持ったわけでございます。  そこで、その対策を、これも三つに分けて申しますと、こういう現状を踏まえた上で、本会合において次の三点について意見の一致を見た。  それは、一つは、経済政策の協調を一層進めるべきである。それから第二番目が、為替レートの適正化のため、より密接に協力すべきである。すなわち協調介入すべきであるとは書いてありませんが、より密接に協力すべきである。それから第三番目には、保護主義に対しては強く抵抗することである。この三つが対策でございます。  その上に、五カ国のいずれにおきましても、その政策パッケージの中に、財政支出を抑制するということが表明をされております。したがって、五カ国蔵相会議以降の相場動向を見ますと、かなりのドル高是正が進んでおって、各国の基礎的経済条件が為替相場によりよく反映されてきておるというのが現状の評価ということでございます。
  86. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 日銀総裁は、国際通貨の日本の担当者としてどんなふうにお考えでございますか。
  87. 澄田智

    参考人(澄田智君) G5の意義、合意の内容等については今大蔵大臣が述べられたとおりでございますが、ファンダメンタルズ、経済的な基礎的条件でありますが、それをよりよく反映するというふうに為替相場があるべきであるという点についての合意というものは、その後市場において正当に評価をされて、かなり速いピッチでドル高の修正、円の相場の上昇ということが見られた。これは、そういう意味でG5の合意がそういうふうに市場で受けとめられた。市場に元来ドル高が非常に行き過ぎであるし、これがこのままで長く続くものでないというような一種のそういう潜在的な感じもそろそろ出かかっていたというような時期でもあったこともありまして、一層よくそういう合意が市場に徹底をした、こういうふうに考えております。
  88. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 今までは介入というのは何か悪いような感じを実は与えたわけですけれども、このG5が過ぎてから、むしろ介入というのは大がかりにやるべきだ、アナウンスメントも実にでかくやるべきだということで、御両者のアナウンスメントも随分新聞に書かれまして、それが相場に影響したことも事実でありますけれども、この協調介入は具体的にどういうふうにおやりになっているのか。  恐らく毎日のように、為替課ですか、日銀の為替課あたりが中心になってお話し合いになっているのだろうと思うんですが、一応協調介入をやるにはある程度、きょうは君の方がこのくらい介入してくれよとか、おれの方は少し強過ぎるからどうしてくれよというような話が実は毎日されているのだろうと思うんですが、その辺の介入の仕方というのは今まで非常に我々にはわからない。介入したかと言っても、今まではほとんど答えなかったわけです。しかし今度は、積極的に介入したと言っておられますし、総裁の記者会見等の中では具体的な介入の仕方まで十分このG5で話し合っているというようなお話もあるのですけれども、具体的にはどんなふうにしてやっているのですか、お話しいただきたいと思うんです。
  89. 澄田智

    参考人(澄田智君) 介入の内容についてあからさまに申すことは、ある意味では市場に手のうちを見せるということになる面がございまして、従来は介入をやったかやらないかということも全然明らかにしなかったというようなことであったわけでありますが、今回協調介入ということで臨む以上は、介入の意味というようなことについては 市場にも理解してもらうということも兼ねまして、介入について前よりは若干、介入があったというようなこともこれを認めるというようなことをいたしてきております。  そして、具体的な点について今お尋ねでございますが、各国の通貨当局の間、中央銀行の間におきましては連日のように十分な連絡をとって、そうして協調をして介入いたしております。しかし、各市場の状況はそれぞれ各国の市場のことでございますから、それぞれの当局が市場の状況を見て適宜やる、大まかなところは毎日事後なり事前なりに連絡をとってそうしてその日の市場に臨む、こういうようなやり方をいたしている次第でございます。
  90. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 こういうことは今までどこまでが限界であったのかよくわかりませんから、私は場合によれば聞く質問が限界を飛び出ることがあり得ると思うのですが、その辺はひとつお許しをいただきたいと思うんです。  この協調介入というのはG5の間だけでやっているのですか、あるいはその他、今度はG5にイタリーの通貨当局は入っていなかったように思うのですけれども、そういうG5以外の間でも、先ほどのお話では例えばG10、そのくらいの範囲までは協調介入をやっていらっしゃるんですか。
  91. 澄田智

    参考人(澄田智君) 協調介入自体は、これはやはりあくまでG5の間のことであろう、こう思います。  ただ、ニューヨークの合意はヨーロッパの参加国を通じましてヨーロッパのEMS、通貨組織でございますね、あのEMSの各国などには内容も連絡をされまして、そうして十分その合意の存在を念頭に置いてそれぞれG5以外の通貨当局も行動をとりまして、その結果G5国の協調介入にプラスしてそれ以外の国の介入もそれぞれの市場において行われたというのが現実の姿でございます。
  92. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 ある新聞によりますと、これは十月末ごろまでの数字だろうと思いますが、全体で八十億ドルぐらいの介入が行われたという説があるわけでありますけれども、これは全体でですよ、日本だけがその中へ入るのかどうか知りませんけれども、今は全体でどのくらいの協調介入が金額としては行われておりますか。
  93. 澄田智

    参考人(澄田智君) 介入の金額、これは各国とも金額そのものを申し上げるということは慎む、こういうことになっております。  そのトータルというようなことになるわけでありますが、これにつきましても、各国のそういう約束もございますし、市場に対することでもございますので、これは御容赦いただきたいと思います。
  94. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 それじゃ、十一月の初めまでは大体私の数字というのはそんなに離れていない数字というふうに考えてよろしゅうございますか。
  95. 澄田智

    参考人(澄田智君) その点も特にコメントは差し控えさせていただきたいと思います。
  96. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 協調介入で大分アナウンスメント効果が大きくなったから、その辺もかなり公開されるかと思っていたんですが。――そのうちにまた公開されるんだろうというふうに期待をしております。  それで、金額はいいんですけれども、日本が、例えばニューヨーク連銀、あるいはドイツのブンデスバンクの場合もあるでしょうし、あるいはイングランド銀行の場合もあるかとも思いますが、他国の通貨当局にお願いをして介入してもらったというのはどのくらいあるんですか。
  97. 澄田智

    参考人(澄田智君) 他の通貨当局に頼んでそこの通貨当局の市場で介入してもらう、いわゆる委託介入でございますが、これはG5以前からも介入の手段としては我々は持っておりました。G5以降でございますが、以降につきましては、アメリカが東京市場あるいはヨーロッパの市場等で介入をした事例はあるわけでございます。しかし、我々は東京市場を中心にやってまいりました。
  98. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 今度の場合も、新聞によるとニューヨーク連銀にお願いをしたというような記事があるわけですが、したことはないわけですか。それはあるかないかだけで結構でございます。
  99. 澄田智

    参考人(澄田智君) その辺になりますと、やはりここで御答弁申し上げるのは控えさせていただきたいと思います。
  100. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 それでは、今度のこの介入については非常に大きな金額の準備が要る、こういうことが言われておりまして、数百億ドルから一千億ドル、そのくらいのものは必要になるかもしれない、こういうふうに言われておりますし、先ほどの私の述べた数字でももうそのときだけで百億ドル近い介入があるわけでありますから、そうなってまいりますと、アメリカは別としましても、他の国というのはやっぱり外貨が必要になってくると思うんですね。日本なんかでも恐らく、今準備されているのは二百五、六十億はあるだろうと思いますけれども、それでも足りない。  そういう形、あるいは相互のそうした委託介入というようなことがこれあり、昔、いつだったですかね、石油ショックの前後じゃなかったかと思いますが、主要国の間でスワップ協定をやった例があると思いますけれども、そのスワップ協定というのは今日でも生きているわけですか。
  101. 澄田智

    参考人(澄田智君) 前に結びましたスワップ協定自体は生きております。
  102. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そのスワップ協定の、日本とアメリカの連銀の関係ですか、あるいはスイス、あるいはドイツだったでしょうか、その辺とのスワップの金額というのはどのくらいになっていますか。協定した、このくらいの金額はスワップの対象にするという相互の金額というのは決まっているだろうと思うんですが、それはどのくらいになっておりますか。
  103. 澄田智

    参考人(澄田智君) スワップ協定、現在その効力が存続しているスワップ協定というのは前のものでございまして、その当時の金額はちょっと今手元に持っておりませんが、現在は介入金額あるいは介入資金の調達方法等について申し上げるということは市場に不測の影響を及ぼすというようなこともございますのでコメントを差し控えさせていただいておるわけでございますが、そういうことで、昔のスワップ協定と今回の協調介入、一応無関係にお考えいただきたいと存じます。
  104. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 私の記憶では多分日本とアメリカとの間では五十億ドルくらいだったのではないだろうか、こういうふうに思いますけれども、今その金額では、先ほどの金額からいいますと非常に少ないということになるわけですね。  ブンデスバンクとは二十五億ドイツ・マルク、それからスイスの中央銀行とは二千億円ぐらい、このくらいの金額だというふうに私は承知をしているわけでありますけれども、これからこの協調介入がもうこれで終わるということであればこの辺ていいだろうと思いますけれども、これについてはどうなんでしょうか。  大臣と総裁にお聞きしたいと思うんですが、この介入というのは、言うなればそのときの注射みたいなものだと思うんです。注射で一時熱を下げるということと同じようなものであって、実際にドル高の根源というものはまだなくなっていないと私は思うんですね。例えばドル高の根源でよく挙げられているのはアメリカの連邦政府財政赤字というものでありますけれども、この財政赤字もどうも減るという数字よりも多くなるという数字が出てきているわけですから、そういう意味では病気の根源がなくなったわけでもないと思います。日本側でも、内需の拡大だとかあるいは経済行動の状況というのは、これまた完全に解決されたというわけのものではなくて、アクションプログラムをやったところで、恐らく四百億ドルに上るところの輸出というのはそう急激にゼロになってしまうということはないと思うわけです。  そういう意味では、もうこれがすっかり定着して今後協調介入は必要ではないというようなそういう段階にはまだ入ってないんだろう、いつまた熱を出してくるかわからぬという病原を抱えていると私は思うんですけれども、この辺については、大臣、総裁、どんなふうにお考えでございま すか。
  105. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今、私どもとしては、円高基調が今後とも定着していくことを期待しておるという表現にとどめておるわけであります。  恐らく竹田さんお感じの問題は、協調介入あるいは我々のアナウンスメント、それはなるほど効果があっただろう、しかし本来はもっと基礎的な本当の協調、それは確かにインフレ率はどこの国も下がっておりますけれどもまだその間には非常な開きもあるじゃないか、そういうことからいろいろ考えると、アメリカの財政赤字、それに伴う高金利の是正、そういうことも今すぐできたとは言えないじゃないか。  ただ、アメリカの議会も、あるいはベーカー財務長官そのものも、大変強い財政赤字削減に対する意欲というようなものを私どもも見受けておるところであります。それから我が国におきましても、いわゆる財政支出を伴わない形の内需拡大施策というのは、この間三兆一千億でございますか、一応発表したところでありますが、これとて、今までやりましたのが五十七年でございましたか、二兆七百億で大変なことをやったなと思いましたが、それに比べればさらに一兆上乗せした計算のできる内需拡大というものも先般発表した。  こういうことでございますから、そういうお互いの国が認識しておりますお互いが果たさなきゃならぬ役割についても、具体的に行動に移されつつある。しかし、先ほどおっしゃいましたように、円高にいたしましても、例のJカーブというのが働きまして、それはすぐそれこそ収支バランスの上に出てくるとは私どもも思いません。ただ、そういうお互いが附属文書で発表したことに対する取り組みの姿勢というものは評価されつつあるのではないかというふうに考えます。
  106. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 これは私なんかよりも大臣や総裁の方がはるかに御承知のことだと思うんですが、最近、十月の初めごろですか、細見メモというのが総理大臣に提出をされているわけですね。それがある新聞に載っているわけであります。  この新聞の内容は細見メモそのものとは若干違うようでありますけれども、その一番最初を読んでみましても、「現状認識」のところに、「介入は一時的ショック療法であり、円安を招いていた諸条件はまだ除去されていない」ということを細見さんは明確におっしゃっているわけですね。その後の方をずっと読んでいきますと、「日本の対応はかなりドラマチックな印象を与えるものでないと市場の見方を一変させにくい。投機資金は膨大なので」、この辺がちょっとわからないんですが、「力の過信は危険である」、こういうふうに書いてあるわけであります。投機資金だけでいくと、うんとこれは金も要るんだぞ、ほかのことも考えろよ、例えば金利なんかのことも考えろよということを言っているのじゃないかと思うんですが、ここら辺は私ちょっと理解が十分できないんです。  こういう点を見ましても、さっき言ったスワップ協定、これは五十億ドルぐらいというのでは少し小さ過ぎるだろうと思うんですね。もうこれで定着しちゃったということならいいですよ、これで後はそんなに動かないよということならいいですけれども、私は必ずしもそう思いませんし、今の大臣のお話でも、これは下手なことを言うとまた大変だからとかなり慎重なお言葉お話しになっているけれども、内心はそういうことがあるかもしれないということは否定できないだろう。そう思いますと、相当程度介入資金というものを準備しなければいけないと思うんです。  この細見メモでも、その点は「大型介入基金の創設」ということをおっしゃっておりますし、またおととい、きのうの通貨サミットにおきましても、そういう趣旨の御発言をなさっているわけですね。そうすると、介入基金を設定するにしても、これはそうすぐというわけでもなかろうと思うんですが、それをすぐやるかあるいはスワップ協定を改めるかどっちかしておかなければ、チューリッヒの鬼がまた暴れ回るということになると思うんですが、その辺はどっちかの考えをとるべきであるし、どっちの考えにした方がいいか、これは一つの私ども選択でもあると思うんですけれども、どうなんでしょうか。
  107. 澄田智

    参考人(澄田智君) 先ほどスワップの金額について、私、手元に数字を持っておりませんでしたために申し上げられなくて失礼いたしましたが、申し上げますと、連邦準備制度、アメリカとの間に五十億ドルのスワップ協定を結んでおります。それから、対ドイツのブンデスバンクとの間におきまして二十五億ドイツ・マルクの協定を結んでおります。そして、対スイスの中央銀行との間におきまして二千億円の協定を結んでいる。いずれも協定は現在も有効な協定でございます。ただ、今回の協調介入におきましては、これらのスワップ協定とは関係なく現在まで協調介入を各国実施してきております。  いずれにしても私どもとしては、G5の合意の線に沿いまして、必要な局面におきましては機動的な介入をこれからも行っていく、そういうつもりでありまして、そういう方針には変わりはございません。このうちスイスは今回のG5の当事者ではございませんが、それぞれの相手の国においても同様な考えで対処している、かように思っております。  将来の御質問でございますが、現在の体制において、現状においては各国の協調介入体制というのは十分にワークをしている、こういうふうに見ておりますし、現時点において将来のことはまだ考えておりません。
  108. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 お二人にお願いをしたいんですが、私はことしのG5の会議、それに続いておととい、きのうの通貨サミット、こういうものを見てみますと、やっぱり今までより新しい方向に一回転し始めたという感じが実際するんです、国際通貨体制は。そして、先ほどの新聞によりますと、総理は既に通貨貿易体制について関係各省にその枠組みづくりを指示したということまで新聞は伝えているわけです。そうすると、総理はその頭なっている、こういうふうに見ていいと思うんです。大蔵省にそういう意味での通貨貿易体制の枠組みづくりというのが具体的に総理からお話が来ているのかどうなのかこれは私はわかりませんけれども、恐らく新聞がこれだけ書いているんですから、そういう枠組みづくりについてはもうお話が来ているんだろうと思うんです。  そうすると、それに対する対応、今すぐ具体的にどうだという結論はまだ恐らく出ないにしても、そうした今後の国際通貨体制はどうあるべきだというような議論というのは、国会の場でもあるいはそれぞれの国民関係の場でももう少し議論をした方が私はいいのじゃないか。かつてターゲットゾーンという議論が国会でされたことも覚えておりますし、国際的な会合、サミットあたりでもこういう問題というのは話されているわけですから、この辺はもっと通貨当局にしても大蔵省にしても、いろんな議論を紹介しながらもっと考えてみるということが、これからの世界国家になった日本として考えるべきことじゃないかと思うんですが、この辺はどうなんでしょうか。  介入というのは、何だか知らないけれどもまた再びベールの中へ入れられるということじゃなくて、もう少しこれを機にいろんな通貨体制、いろんな通貨問題というのを議論していくべきであるし、また、こういう問題になってまいりますと、やっぱり円の国際化の問題というものも私はかなり急がれてくるだろうと思います、今までのままであってはならないと思うんです。金融関係の国際化の問題というのは、今までは日本の金融関係というのはまるで徳川時代の鎖国みたいなものであったと私は思うんです。こういうものが開国へ向けて進んでいくということになりまして、国民もそれに対する対応をしなくちゃならぬということになると、もう少し論議を進めるという姿勢を御両者にお願いできないか、こう思うんですが。
  109. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 通貨問題が国際経済の中の重要な問題の一つ、一つというか、大変重要な問題である。したがって、各方面の有識者の方が いろんな角度からこの問題についての御意見を述べたりされることは私も大変いいことだと思っております。だから、国会の場でまた議論が出てくることも大変いいことだと思っております。  ただ、現状だけを正確に一遍申し上げてみますと、総理ともお話ししたことでございますけれども、一応通貨問題につきましては、ウィリアムズバーグ・サミットのときに、フランスのいわばターゲットゾーンとまではいきませんが、ターゲットゾーン的とでも申しましょうか、そういう主張があって、じゃおまえさんら七人で、大蔵大臣で勉強しろ、こういうことが首脳からおりてきたわけです。そこで、七人というわけにいかぬ、やっぱりG10やったらどうだというような議論が出まして、それでG10の中で、これは私がこの間までは議長でありましたが、長い時間をかけてやっぱり今度はプロにやってもらおうというので、G10D、デピュティーでやってもらいまして、その報告を受けて我々が議論しましたが、やっぱり大多数の意見が、結局は今の変動相場制というものに取ってかわるべきものはなかなか難しい、だがなお議論を尽くさなきゃいかぬというので、それでIMFの暫定委員会に持ち込んだわけです。したがって、その作業は一応続きつつあるわけでございますよね。それのまとめで大体今度、私が出るか出ないかは別にいたしまして、日本国大蔵大臣が来年の東京サミットのときに今度は首脳に報告をしなきゃならぬ、こういうのが今の筋になっておるわけです。  一方、今アメリカで行われております通貨サミットというのは、これはいわゆる政府間のものではございませんが、向こうのケンプさんなりが考えられて、通貨のプロのような人にそれぞれ案内状を出されて、今それらの方が集まって議論しておられる。その中でも、もう一遍ブレトンウッズ体制というような議論が私は出るだろうと思うのでございます。しかし、今の進みぐあいの中で見ますと、ウィリアムズバーグでおりてきて、そしてそれをまた専門家におろして、それを吸い上げてIMFの暫定委員会へやっと持ち込んだということでございますから、もう一つ別の通貨会議をやると何か屋上屋のような感じもしまして、当面はしょっちゅうもうプロは話し合いをやっておりますが、来年の東京サミットまでに一応暫定委員会、恐らく来年の四月ごろになると思いますけれども、それである程度クリアしたものを報告して、それでまた議論が行われるようになるのじゃないかなというような、これは若干私見も含めての感想を申し述べたわけであります。
  110. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 今度のG5が非常にうまくいったということは、やっぱりアメリカの人的構成がかなり変わったということもあると思うんですよ。これがリーガンさんが同じようにやっておられたら、こんなに早くこの時期へ来たかどうか私はちょっとわからぬと思うんです、もう少し時間がかかったかもしれないと思うんです。  そういう意味で、例えばベーカーさんの通貨サミットでの演説なんかを新聞で拝見いたしましても、もうとにかく新しい通貨体制というものを考えてみようじゃないかというところへはいっているわけです。やっぱりこういうのが今までみたいな秘密のベールから少し出されたという感じを受けるわけですから、私はそういう点ではもう少し、今までの変動相場制が一体どうであったのか、固定相場制には返らぬとは思いますけれども、それが一体どういう形になるのか、あるいはターゲットというような、一つのターゲットの中で動いていくのか。細見メモによればEC型のスネークというようなことまで考えていらっしゃるし、そういう意味ではもう少し議論の場があっていいし、これは言っちゃいけない言っちゃいけないというべールは余りかけられない方がいいのではないか。  こういうふうに思いますから、その辺はひとつお考えいただいて、来年のサミットまでの間がない動く問題があろう、こう思いますので、ひとつ論議を進めるようにしていただきたい、こういうふうに思います。  時間がありませんから次の問題へ行きますけれども、協調介入というのは非常によくわかったのです、あちこちで介入してそのたびに円が高くなってドルが低くなりましたから。私もおかげで大分損しましたけれども、よくわかりました。それでその後に、先ほどもおっしゃっておられましたけれども、政策の協調的行動というのは具体的にこれはどういうことなんでしょうか。例えば今、日銀さんがおやりになっている短期金利の高目水準を維持するためのなどというのはまさに政策の協調的行動の一つに入るのかどうなのか、そのほかにどんなことがあるのか、この辺を具体的にお話しをいただきたいと思います。
  111. 北村恭二

    政府委員(北村恭二君) G5の会議意見の一致を見ました中に、経済政策の協調を一層進めるべきであるという点があったことは先ほど大臣から御答弁申し上げましたとおりでございますが、G5におきましてこれまでの各国の経済動向あるいは政策のレビューということを行いまして、各国の経済は着実にインフレなき成長軌道に乗りつつあるという認識を持ったわけでございます。この点につきまして、発表では、さらに最近の経済発展あるいは政策変化が附属声明に記述された特定の政策意図と結合する場合に、継続的かつよりバランスのとれた低インフレ成長の基礎となることに合意したということもあるわけでございます。  このG5の声明では、附属声明という形で五カ国がそれぞれ今後とるべき政策というものを書いてあるわけでございまして、例えばアメリカ政府等におきましては財政赤字の縮小といった点等を触れているわけでございます。我が国ではこの中で六点について触れておりまして、いわゆるアクションプログラムの着実な実施、あるいは規制緩和措置の実施による民間活力の活用、あるいは円レートに適切な注意を払いつつ金融政策を弾力的に運営する、あるいは金属資本市場の自由化及び円の国際化の強力な実施を行う。財政政策については、財政赤字の削減あるいは民間活力の発揮といった点に焦点を合わせていく。それから内需刺激努力という点については、消費者金融及び住宅金融市場拡大措置により民間消費及び投資の増大に焦点を合わせるといったような点を政策意図ということで表明しているわけでございまして、G5以後各国がそれぞれそういった点について努力をするという中で、ただいま申し上げたようなG5の意図がよりよく反映されるようにするということでございます。
  112. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 日本の今おっしゃられた協調行動の中に、非常に国内ではいろいろ言われておるし、きょうも午前中議論になった減税問題というのは日本のところだけないんですね。  しかし、前川さんなどは、前の新聞では、何といっても減税が必要なんだということを、通貨に関しておっしゃっておられるわけですが、中曽根総理減税をやると言っているんだけれども、どうしてこの国際協定の中には、そういうのは協調行動に入らぬのですか。内需の拡大問題に非常にこれは私は敏感に影響してくるのだろうと思うんですが、そういうことは入ってないのですね。ほかの国では大体入っているんです。どうなんですか、ここは。どういうわけで日本はそれをわざと抜いたのですか。
  113. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは、特にヨーロッパは国民負担率が二〇%ぐらい日本より高いといたしますと、やっぱり減税ということが出てまいります。ただ、その減税ということになりましたときに、これは具体的にそう言ったという意味じゃございませんが、雰囲気として申し上げると、ヨーロッパの場合は減税とは即歳出削減、公的支出の削減になるものだということに割合に国民全体が、余り負担率が高いからでございましょう、そういうものだという認識の上にあるという印象を非常に強くいたします。したがって、日本が財政赤字が大変だという話をしますと、ヨーロッパの諸君から見れば、それは国民負担率が低いから当たり前じゃないかというような議論にとかくなりがちでございます。したがって、日本に端的に 言って財政赤字を出して何かやれという議論だけは、それは財政法の違いもありますけれども、全くない議論であります。  ただ、言う人に言わせれば、それは当たり前じゃないか、大蔵大臣同士が集まったところでだれかが赤字を出してでもやりますと言う者がおったらそれは落第になるから、それはおまえが国会へ向けて言う話じゃないかというような話をよくされる人もございますが、やっぱり日本に、内需拡大を日本がしたらいいに決まっておりますしそれは我々も自覚しておりますが、その内需拡大の一方法として減税というものをトタで求めていくという環境は我々の会議の中ではない。  それから我が方で見れば、せっかく抜本策を諮問したばかりでございますから、ことしの課題としてこれを出すというのはそれは非常に難しい問題である。だから減税というものは附属文書で私どもももちろんそういう意見も吐きませんでしたし、他国からも減税しろというような議論は出ていない。抜本策を諮問しているということもみんなわかっているかとも思うのでございますけれども。だからやっぱり、この六項目をやりましたようにアクションプログラムをきちんとやって、この国会でまた関税率の引き下げを、間もなく法律ができると思いますが、この国会で通してもらえば四月一日のやつが一月一日になる。それから法律改正していただいたりいろいろしながら住宅問題をやっていく。さらには、地方単独というものは御要請があればこれに応じましょう。地方単独をあの六項目に挙げるときに私も若干悩みました。自治省に相談しないでやらなきゃいかぬような、時間的にですね。しかし、それらを一応帰ってからいわゆる経済対策で認めてもらいましたから、すっとしております。  だから、やっぱり減税をあの場で書くということは、国内的にも抜本を諮問したということ、それからほかの国から見た場合は日本の財政赤字ということを知っておりますから、そしてヨーロッパの国に比べれば国民負担率が異常に低いことを知っておりますから、そこへ減税しろという議論は出る環境になかったじゃないかな。多少大蔵大臣同士が集まったからということもございましょう、ほかの人が集まればもう少しほかの議論があるかもしれませんけれども、そんな感じでございました。  素直な感じを申し述べました。
  114. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 余り素直じゃないような感じがいたします。減税の声を小さくさせようということだろうと思いますが、時間がないから、またその問題は将来へ残していきたいと思います。  日銀総裁、最近、これは恐らく円高を定着させていく手段だと私は判断をしているわけですけれども、短期金利の高目誘導というのはここずっと続けているんですね。長短金利はひっくり返っちゃっているわけですよね。しかも国債を十一月分として発行するのも大変おくれたし、今後国債の価格というのが一体どうなっていくのか。最近は何か六・八国債は額面を割ったというほどの事態になってきているわけですけれども、この短期金利の高目誘導というのはいつごろまでおやりになるんですか。  これからはいよいよ資金繁忙期へ入っていくわけです。国債も、短期国債をそろそろ発行して、これも硝化をしなくちゃならぬという時代に入ってきているわけですね。それからまた、内需拡大もやらなくちゃならぬというときです。けさの新聞を見ると、都銀が短期の金利を上げようとしたら大蔵省がストップをかけた、こういう記事が出ているわけですけれども、国債の消化の問題にも関連してきますし、内需拡大の問題にも関連してくるんですが、こういう事態であれば、円高ということよりも、金利が高くてなかなか金が借りられないという問題も小さな企業の中には出てきているんじゃないだろうかと私は思うんです。  円高を定着させるためにある程度はしようがないとも思いますけれども、やっぱりこれは早期に何らかほかの形で定着へ向けていく努力をするということで、余り長期にわたって短期金利の高日誘導をおやりになるということは経済にも影響が出てくるんじゃないだろうか、こういうふうに思うんですが、その辺はどんなふうなお考えで進めておられますか。
  115. 澄田智

    参考人(澄田智君) 十月下旬から短期金融市場において資金の需給の地合いが引き締まり状況にある、この中には、介入によって円資金が吸い上げられるということによって引き締まる、こういうこともあるわけでありますが、そういう状況にありましたのを私どもは為替重視の政策という見地から、そういった市場資金の需給の引き締まり状況をそのままレートに反映させる、自律的に締まっている状態をそのまま自然体で反映させていく、こういうことは必要である、こういう判断に立って、そういう方向で我々の金融調節の姿勢をとってきたわけでございます。その結果、長短金利ともに上昇いたしました。そしてそれが日米の金利差を縮めるということにもなって円高定着の方向に効果を上げつつある、こういうふうに判断をいたしております。したがいまして、目下のところにおきましては、こういった姿勢はやはりこれを続けていくべきである、こういうふうに考えております。  他方、金融の基調といたしましては、これは名目の経済成長率を上回るマネーサプライが続いているというような状況から見て、金融機関の貸し出しを通ずる金融地合いといたしましてはなお緩和が十分されている状態であって、内需の拡大あるいはこれから年末にかけての中小企業等を含む金融の需要というようなものに対しては、十分にこれに対応できる金融の緩和状態、これは続いている、こういうふうに判断をいたしております。  今後金融の繁閑、あるいは金融の締まるぐあいの状況というようなものについては常に十分注意を払っていくつもりでおりますが、目下のところは円高基調の定着という観点から現在の高目になっている状態を自然体にしておくという状態はそのまま続けていくべきである、こういうふうに現在時点においては判断をいたしている次第でございます。
  116. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 大蔵大臣がよくここの席でおっしゃっているのに、日米の金利差が三%以内になれば何とかいくのじゃないか、こういうお話を二、三回私実は伺っているわけですが、今恐らく日米の金利差はまだ三%以内というわけではないだろうと思いますけれども、しかし最近アメリカの金利というものは下がりぎみに推移してきているわけですけれども、総裁、アメリカの長期金利の状況というのはどんなふうにこれからにらんでいったらいいですか。下がっていく方向じゃないでしょうか。
  117. 澄田智

    参考人(澄田智君) おっしゃられましたように、アメリカの長期金利はこのところ極めて徐々ながら下がってきております。一〇%台の下の方、一〇%すれすれというような金利も出たわけでございます。こういう状況は、アメリカの金融調節、金融当局の政策スタンスというようなものが緩和ぎみであるというようなことが市場に反映いたしまして、そうして下がってきている。一つには、アメリカの国の債務の限度の引き上げという法律がまだアメリカの議会を通っておりません。そういうことでこのところ財政資金の市場で調達というようなことも後ずれがしてきておる、こういうようなこともあって、当面の地合いとしては緩和ぎみであるというようなことも反映されて金利は極めて徐々ながら下がる方向にある、こういうふうに思われるわけであります。  これから先でございますが、実はこれから先は、今ちょっと触れましたアメリカの国庫の債務の限度、これの引き上げということが上下両院で通過をすれば、そこで長期の国債の発行、相当額の発行というようなことも控えているわけでありまして、今後はちょっとなかなか予測が難しい状態である。なるべくなだらかな姿ていくように、金融当局はそういう配慮で今調節を行っているのではないか、私はそういうふうに見ておりますが、現在のような調子で続いていくかどうかはなかなか判断が難しいところである、かように思っ ております。
  118. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そうすると、先ほど日米の金利差三%という数字を出したのですけれども、やはり三%以内になればそれほど金利の差を縮める必要はない、これは大蔵大臣がよくおっしゃっていたことなのですけれども、総裁、大体そんなふうにこの短期金利の誘導問題を考えてよろしゅうございますか。
  119. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは私からちょっと最初お答えしておかなければいかぬのは、私が竹田さんとの議論のときにそういうことを申し上げたことは事実でございます。  従来、資本流出の度合いと金利の差とを見ますと、三%ぐらいのときには為替リスクもありますから余り強烈に出ない、五%ぐらいのときは強烈に出るという従来の数字を見ながら申し上げた数字でございますので、私自身が頭の中でターゲットとして持っておる数字ではなく、過去の実績からいうとこんな感じがしますということを、これこそ素直に申し上げた数字でございますので、必ずしもターゲットとして認識しておる数字ではございません。  総裁の答弁の前にそれだけ申し上げておきます。
  120. 澄田智

    参考人(澄田智君) 現在の時点では三%台でございますが、まだ三%になったという状態ではないわけでございます。高目誘導と申しますか、高目を放置してあるというような今の状態、こういう状態と三%ということはこれはストレートには結びつきません。あくまでやはり円高基調での安定、定着ということが目標でございまして、そういう見地から、今はまだ何としても不安定と言わざるを得ませんが、為替市場が高目基調で安定をしたというような形になったかどうか。現在のスタンス、高目に放置しているというそういうスタンスというものは、そういう高目に定着していくかどうかということとの見合いにおいて続けている、こういうふうにお考えいただければよろしいと思います。
  121. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 最近新聞で拝見している限りでは、アクセルに足をかけているけれどもきちっと踏んではいないとか、ブレーキの方にはまだ行かないとか、こういう記事がよく出るんです。私、車に乗りませんからアクセルの上に足を置くというのはどういうのかよくわかりませんけれども、感じでは、大体この辺がいいところかな、これがずっと定着してくれればいいんだがなという、その辺の状況なんですかね。  それとも、ある人が言っているように、インバランスをなくしていく、バランスをとっていく、そのためには百八十円くらいにならなくちゃいけないということを言う人があるんです。それは一種の机上の空論かもしれませんけれども、そういうことをおっしゃる人があるんですが、どうなんですか、余り今のような長短金利が逆転をするということは、必ずしも私、金融状態として普通の金融状態ではないと思うんです。若干異常だというふうに思うんですけれども、その辺の総裁のお考え方を伺っておかないと、こうした長短逆転というような状態が長続きするのかなという感じがするわけですね。  今のアメリカのお話を聞いても、余り、これからぐうっと下がっていくかどうかわからないというようなお話ですから、今のような、金利が高目でとまっている、高とまりをしているというようなことがやっぱり長続きするのかな、長くこんなままで放置されるのかなと。そうなった場合に、一体国内の内需拡大、あるいは協調行動でも言っていらっしゃる「消費者金融及び住宅金融市場拡大措置」などという協調的な政策、そうしたものが発展をしていくんだろうか、あるいは財政運営の、国債費の問題なども一体どうなるのかな。その辺までの心配というのが私のこの小さな頭の中にも次々に渦巻いてくるわけですけれども、その辺を少し整理していただきたいな、こう思うんですが、総裁いかがですか。
  122. 澄田智

    参考人(澄田智君) 私のお答えする範囲外のものもあるような気もいたします。  私の立場から申し上げますが、為替相場をどういう水準でという点については、これはもう常々申し上げているとおりでございますが、経済的な基礎的な条件を十分に反映するような水準、そうしてそれが経済摩擦の是正に資するような水準、そういうような水準が実現しそしてそれが安定するということを目途にいたしておりまして、特に特定のターゲットの水準というものがあるわけではないのでございます。また、安定と言うからには、そういう水準が続いていく、こういうことも当然にその中に含まれなければならない、こういうふうに思うわけでございます。そういう点から、いましばらくは私は現在の政策スタンスを当然に堅持していかなければならない、そうして為替重視の金融政策という基本を維持していかなければならない、かように考えている次第でございます。
  123. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 大蔵大臣はどうですか。
  124. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは、まさに金利問題につきましては日銀総裁のお答えに尽きるというふうに考えております。  私の方は、さてそうなると、国債発行の交渉の際、市場の実勢を見ながら、しかも最もタイミングのいいときに出さなきゃいかぬというもう一つの使命が、御指摘のようにあるわけであります。これに対しての対応というものにつきましては、先般も新聞なんかでは休債するんじゃないかとか書かれておりましたが、必要最小限のものをあのような条件で決着をつけたわけでありますが、これからも国債発行条件の問題につきましては、市場実勢を尊重しながら、最もタイミングのいいときにやっていかなきゃならぬという考え方でございます。  それから、内需振興、なかんずく住宅ローンの問題等についてのこともこの間の経済対策の中に盛り込んでおりましたが、私の念頭にありましたのは、財投、預託金利が七・一から六・八、あの〇・三%というものの効き目というようなものは大変効果のあるものとして私どもの念頭には存在しておったということであります。
  125. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 まだいろいろ伺いたいことがありますし、細見メモあたりではむしろ国債発行をもっとしろ、そのためには財政法を変えるというような点まで触れているわけですから、やっぱりただ金利の問題だけ、あるいは為替の価格安定というだけの問題ですべての問題をそこへ収れんしていいのかどうかということになると、もう少し何か違った形での政策というものを適用していかなくちゃならないだろう、こういうふうに思います。  もう時間がありませんから、またそういう問題は次の機会にひとつ譲らせていただきたいと思いますが、せっかくこういう際ですから、もう一つぺールを薄くして国会の討議に役立てていただきたいということをお願いして、終わりたいと思います。
  126. 赤桐操

    赤桐操君 それでは、経済見通しの問題について若干お伺いをしてまいりたいと思います。  まず、私どもの方でいろいろ現在周辺で動いておる状況を集約して、私が感ずるところを最初に申し上げてみたいと思うんですが、輸出の状況なんかは、金額はともかく、量的に見ればこれはずっと鈍化の傾向が出てきている。輸出依存の日本の経済事情の中で、大変これは一つ気がかりな問題なんです。  それからまた、二つ目の問題としては、経済企画庁の調査や中小企業金融公庫の調査などでも明らかになってきていますけれども、設備投資の方が大分おくれを始めてきている、鈍化の傾向が強まってきている。こういうことが、最近の新聞でもあるいはその他のいろいろの資料でも出ておるのであります。それから、国民生活白書なんかには次のような記述がされております。個人消費では、一時的な現象はともかくとして全体としては停滞の状態が出てきていると。これは私なんかも、いろいろ各それぞれの消費組合やそういうところの状況を資料としてまとめてみても、同じ傾向が出てきております。こういうような状況であります。  それから、こういう経済のいろんな停滞状況が始まってきているところへ、九月の末からは急激な円高問題が発生して、今竹田委員からも御質問申し上げたような形で大変な状況を示しておるわけであります。これは円高というのは国際収支の黒字の調整には役立つかもしれぬけれども、その反面、国内経済に対してはやはりデフレ的な圧迫要因にもなってくるわけでありまして、これはなかなか難しい問題だろうと私は考えるのです。  こういうような状況の中で、政府は内需拡大政策といって盛んに宣伝を始めております。しかし、率直に申し上げて、世間では、一体本当にこれが大きな効果をもたらすように期待できるんだろうか、余り大して期待もできないのじゃないかと。先般の本会議での野党の質問に対する総理初め皆さん各閣僚の御答弁にも、本格的な内需拡大の腹を据えた答弁というものは私どもには感ぜられなかった。これが、大体私がこのところ要約する内容になってきているのであります。  そこでひとつお伺いしたいと思うのでありますが、六十年度の政府経済見通しては実質四・六%の成長を目標といたしておるわけでありますけれども、これについては、本当にそういう実質成長四・六を達成することができるのだろうか。今申し上げてきたような経過から見ると、果たしてそこまで到達できるのだろうか、こういうように実は私は大変疑義を持つものです。これについてひとつ大蔵大臣、経企庁から御答弁をいただきたいと思います。
  127. 赤羽隆夫

    政府委員(赤羽隆夫君) 六十年度経済見通しの達成可能性につきまして御質問でございました。この点お答え申し上げたいと思います。  第二次石油ショック、これを契機といたします三年に及びます長期不況というのが終わりましたのが五十八年の二月でございます。それ以来既に三年近くたってきている、こういうことでございますので景気が成熟段階に近づいている。そういうことで、赤桐先生御指摘のように、全体として指標の伸びが若干低くなってきた、こういったような指標があらわれてきているのは当然だと考えております。  そこで、六十年度の経済見通しでありますけれども、数字的な問題としては、間違いなく達成できるだろうと思います。と申しますのは、まだ統計が四-六月期しか出ておりませんけれども、四-六月期の季節調整済みの年率成長率というのは七・九%でございます。したがいまして、七-九月期以降向こう三四半期の必要成長率、四・六%を達成するための必要成長率というのは、四半期ベースで見まして〇・八%、年率計算にいたしますと三%強、こういうことでありますので、この四・六%という数字の数字的な達成可能性については心配する必要はないものと、こう考えております。  実態的な面でございますけれども、設備投資あるいは消費あるいは住宅建設、特に国内民間需要の動きでございますけれども、一部には先ほどから申し上げておりますように、成熟段階入りということでペースが落ちているものがあることは事実でありますけれども、全体として見ますと、設備投資は依然として着実に増加をしておりますし、また個人消費につきましてもこのところ着実な動きが見られる。住宅建設につきましては若干スピードが落ちている、こういうことがございますけれども、全体として景気はなお拡大過程にある、こういうことは言って差し支えない、こう認識をしております。  円高の問題でございますけれども円高というのがデフレ効果を持つ、これは当然のことでございます。しかし物事にはすべて光と影がございます。デフレ効果というのは円高の影の部分、その反面におきまして円高というのはいわゆる交易条件の好転をもたらす、その結果として実質所得が増加をする、こういう効果がございます。実質所得が増加をする経路というのは、物価が一層安定をしてそれによって実質所得がふえる、こういうことでありますけれども、そうした効果が期待されますので、必ずしもデフレ効果のみ心配する必要はない、こう考えます。  さらに、専門家の用語ではJカーブ効果と言っておりますけれども、最初半年あるいは一年ぐらいの間はむしろ輸出輸入面で黒字がふえる、こういう効果がございます。黒字というのはこれは外国との通商関係において稼ぎ出した国民所得、こういうことでございますから、国民所得がふえて需要がふえるという効果もそこに期待できるということでございます。  そういうことで、六十年度の経済見通しの達成の可能性については私どもは自信を持っている、こういうふうに申し上げてよろしいかと思っております。
  128. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 政府を統一した今の赤羽さんの見通しで私ども一緒でございます。強いて言えば、税収の方を若干私の方は心配しておる、こういうことであります。
  129. 赤桐操

    赤桐操君 経企庁の方から大変自信のある御答弁でありますから、四・六の達成はそういうことでぜひひとついくだろうと思いますが、当初国会で国民の側に対して約束された政府のこの四・六の中の内容でありますが、それは内需で四・一、外需で〇・五、こういう内容になっておるのですね。この内容についてはどんなふうに見通しを持っておりますか。
  130. 赤羽隆夫

    政府委員(赤羽隆夫君) この内需と外需の組み合わせでございますけれども、当初見通しにおきましては、ただいま御指摘のとおり内需が四・一%、外需が〇・五%、合わせて四・六%の実質経済成長率、こういうことで見通しをつくったことはそのとおりでございます。最近までの動きを見ますと、内需の動きが若干この線よりは弱い、これもまた事実でございます。それに対しまして外需の動きは当初の想定以上に伸びている、こういうことでございまして、六十年度経済、これは内需中心の成長と、こういうふうに見ておりましたけれども、そういったような点からいえば、外需依存度がこれまでのところ若干高いということは、御指摘のとおりそれが事実であろう、こういうふうに思っております。  そうした状況認識のもとに、私どもとしては、政府といたしましては十月の十五日経済対策閣僚会議において決定をしていただきましたけれども、この内需拡大のための方策を決めてこれを実行に移す、こういうことを内外に対して明らかにした、こういうことだと私ども考えております。
  131. 赤桐操

    赤桐操君 今御答弁のように、結局やはり私はこの状態でずっと下半期へ入っていくことになると思うんですね。そうすると、全体の動きとしてはやはり外需の方が伸びて内需がなかなか伸びない。要するに現在までいろいろ私どもが指摘したような形の状態になってしまうのではないだろうか。この辺でぼつぼつ一つの転換点としてこれをとらえて新しい方向づけをしていかなければこれは大変な問題になるのじゃないだろうかなと、私はそう思うのですが、この点はいかがですか。
  132. 赤羽隆夫

    政府委員(赤羽隆夫君) ただいまも申し上げましたように、そういったような認識をした上で内需拡大策、こういうものを打ち出した、こういうことでございます。
  133. 赤桐操

    赤桐操君 私が言わんとすることは、内需の拡大策をおとりになるという方針は出していますけれども、例えば住宅建設の内容を見ましても、このままでいけば、これは残念ながら達成できませんよ。これは去年も私は指摘した。昨年も指摘しておる。  一番端的にあらわれる住宅政策なんかにしても、このままでいけば達成できませんよ、こういうことを申し上げておるんです。需要があるのだけれども達成できないですよ。それで、需要に適応するような達成の方法については、私は一昨年の予算委員会でも指摘しておるわけだ。中曽根総理にも、このことについては明確に政策的な提起をしておる。それに基づいて三年前から住宅政策の転換が始まっていたわけなんですが、まだいまだにそれは効果をあらわすところまでいってないんですよ。  ですから、私はしつこく聞くのですけれども、結局また外需依存の状態が現出するんじゃないか、どんなに方向転換しようとしても、今のままではいけないんじゃないか、本当に突っ込んだ内需振興策に腹を据えた形がとれないではこれは動かないだろう、こういう意味で実は申し上げているんです。しかし実際問題としてこれ、数字や何か全部見てもわかりますけれども、当初政府考えた見通しの状態から見ればずっと大きくずれ込んでいるでしょう、ずれが出ていることは事実でしょう。そういう点から見れば、私はこの状態のままではとてもじゃないが今のままでまた推移してしまうんじゃないだろうか、こういうように思うので、これを方向転換を何らかの形でしていかなければ、一つ一つ内需振興策を立てても具体化していかないだろう。一つの例はその中の大きな柱の住宅建設の問題でももう明確じゃないのか、こういうことなんですがね。
  134. 赤羽隆夫

    政府委員(赤羽隆夫君) ただいまの御指摘の点につきましては、私ども、過去の見通しと実績、そうした場合に考えましたいろいろな政策手段、これの有効性等、そういったようなものにつきまして今後検討いたしまして、どこに問題があったのか、そういうことをはっきりさせた上で今後の参考、今後つくります経済見通しあるいは内需拡大策も含めまして、経済政策の上でそうした経験の反省を生かしていきたい、こう考えている次第でございます。  それとともに、今回の対策につきましての住宅対策、これはいろいろな対策がございますけれども、住宅金融公庫の特別割り増し融資制度の創設さらには融資枠の拡大、こういったようなものの五千億円の事業規模、期待される事業規模といたしましてそういう計算をしておりますけれども、これは、民間資金でそもそも考えられていたものの一部が金融公庫の方ヘシフトしてくるだろう、こういったようなシフト率まで織り込みまして私どもとしては、実現可能な数字である、こういうふうに考えてこの事業規模を打ち出しているわけでございます。  しかしながら、これから先一年間たちまして、どうも見通しどおりではなかったと、もし万が一そういうことがありましたら、さらにそういったような点につきまして、その時点において大いに研究をし分析をし、今後の住宅施策のあり方について参考といいますが、教訓を得たい、それを生かしていきたい、こう考える次第でございます。  ただいま先生の方からいろいろ御指摘がございました点につきまして、私が感じました点を申し上げました。
  135. 赤桐操

    赤桐操君 今度の内需拡大ということで経企庁も大分張り切ってやっているという御答弁なんだけれども、こういうことは国会の中ではもう大分前から論争がなされて、盛んに言われてきておるわけです。急にそういう形であなた方の方で方針をいろいろ打ち出してみたところで実際には、結局は外国から指摘されての話でしょう、これは。国内から、こうあるべきだ、あああるべきだということで国民の多くの層から出ている内需拡大の政策についての踏み切りがなかなかできない。具体的に腰の据わった政策が打ち出されない。だから今日まで来てしまったのだと思うんです。外国から言われて、このままでいくというとまたいろいろあつれきが激しくなっていく、摩擦が激しくなるだろう、そういう一つの姿勢をつくるための政策程度にしか私どもには見られないんです、率直に言って。  これで本当に内需の拡大になるだろうか、みんなそう言っている、受けとめていますよ、私どもだけじゃないと思うんです。そういう意味で、いわゆる腰の据わった内需拡大というものがない。こういう意味で冒頭に私も、国会の本会議における野党各党の質問に対しても政府の答弁は腰の据わった答弁ではない、こういうことを指摘したんですけれども、実際に今御質問申し上げても本当の腹の据わった答弁にならないでしょう。一つ一つの項目について具体的に本当に大きく、なるほどと、宣伝されておるほどの具体的なものは進んでないじゃないですか、現実に。  それでしかも、御答弁の中にあるように、内需の方が事実上おくれております、外需の方はおくれておりませんが内需はどんどんおくれておりますと、ずれ込んできているんじゃないですか。こういう状態では、下半期過ぎるころにおいては当然これはまたもとのもくあみ、外需依存型の状態で終わるのではないだろうか。この辺でもう、一つの転換点、屈折点に来ているのじゃないかということを私は主張しておるんですがね。  それでは、以上を申し上げて、六十一年度、来年度の経済動向について伺っておきたいと思います。  経済企画庁の方の検討では、六十一年度は四%の成長がせいぜいだ、こう言っておるようであります。新聞はそういうように報道いたしておりますが、経済の動きあるいはまた円高傾向等から見て、この成長は六十年度よりも相当ダウンしてくる、そういうことを私たちも懸念するんですが、この点はいかがですか。
  136. 赤羽隆夫

    政府委員(赤羽隆夫君) 経済企画庁で来年度の経済成長率四%程度あるいは四%台といったようなことを考えている、という新聞報道がございましたことは事実でありますけれども、私どもはまだその段階まで作業を進めておりません。新年度の経済見通しというのは予算編成方針とともに例年ですと十二月の下旬に発表する、こういうことで、作業は十二月に入ってから行うということでございまして、私どもの現在の作業状況もそういう段階にございます。したがいまして、新聞で四%の実質成長と報じられましたのは観測記事、こういうふうに御理解いただきたいと思います。  で、来年度予算編成にどのような編成方針で臨むのか、こういったような点につきましての検討、さらには、内外経済情勢の変化をさらによく見きわめる、特にこの円高の推移、その影響、こういったようなことをよく試算をし検討をいたしませんと、六十一年度の経済見通しについて私どもとしてお答えできる段階にはならない、こういうことでございます。したがって、現段階で確たることを申し上げられないのは大変残念でございますが、御理解願いたいと思います。
  137. 赤桐操

    赤桐操君 今局長から御答弁がありましたが、先ほどの御答弁にも出ておりましたけれども、景気が上昇の傾向に入って大体二年半、三年近くになると思いますね。底をついて大体上昇の段階に入ってきて今日に至っておるわけでありますが、しかし、それぞれの各界からいろいろな声も出ておりますが、過去のいろいろな経過等から見て、景気の状況はぼつぼつこの辺で、先ほど成熟期に来ていると言っておりますが、いわばこれまた別な見方で屈折点に入っているんじゃないか、こういうようにも見られるわけでありまして、六十一年度の日本経済の成長というものがそういういわゆる屈折点に来ているとするならば、言われるような将来性の明るいものではないのではないだろうか、こういうように思うんですが、この点はいかがですか。
  138. 赤羽隆夫

    政府委員(赤羽隆夫君) 今委員が仰せられましたような見方も民間にはございます。反面、民間の調査研究機関でありますけれども、来年度につきましてもまた五%台の成長が可能になる、こういうふうに言っておられる強気と申しますか、楽観的な見方もある、こういうことでございまして、確かに全体として景気が成熟段階に近づいているといたしましても、そのことが直ちに景気の転換点、屈折点というのが間近いということを意味しないものと考えております。  いずれにいたしましても、来年度につきましてまだこれから検討作業を開始する、こういう段階でございますので確たることを申し上げられない、こういうことです。
  139. 赤桐操

    赤桐操君 いろいろ民間機関の強気の例も出されておりますが、それぞれ民間機関から出ている資料なんかも回を重ねて出るのを見ているんですけれども、どうも情勢としては、強気というよりも、むしろ全体としては不透明感が強く出てきているとか、回を追うごとにむしろ悲観的な色彩の 方が強くなってきている。  これは中小企業金融公庫とか、あるいはまた民間機関、こういったようなもののそれぞれの報じているものを見てそういうことを私たちは感ずるのでありますけれども、いずれにしても、先行きが明るくなるという、そういう見方を強気で出しているものはほんの一部でしょう。大多数は大体暗い方向に傾いてきているように思うんですが、局長考えはこの点どうですか。
  140. 赤羽隆夫

    政府委員(赤羽隆夫君) 経済成長率をとりますと、それは景気が成熟段階に移行するということで成長率自体は若干低くなる、こういうことは当然予想されるところでございますけれども、しかしそれが仮に三%の半ば、あるいは四%といったような成長率、この内容を考えてみますと、六十一年度に予想されますことは、この円高傾向もございまして、物価の安定、それを通じて国内民間需要を中心とした成長に移行する、こういう内容でございますとその可能性があると考えておりますけれども、そういう内容でございますと、成長率が数字の上で下がっていくからそれで暗い見方だ、こういうふうには一概に言えないのではないかと考えております。  いずれにいたしましても、今後の検討の過程に当たりまして、赤桐先生の方から提起されました問題点をよく検討の上でお答えを出したい、こう考える次第でございます。
  141. 赤桐操

    赤桐操君 率直に申し上げまして、これはもう長い間そういうことで我々も主張してまいりましたし、今回諸外国からも指摘されて政府が慌てていろいろ政策の打ち上げをやっているようでありますが、この辺で節約一本やりの経済政策というのは大きくひとつ転換すべきではないかと私は思うんですよ。この状態でいけば私は必ず一つの限界に達するだろうと思うんです。今その限界がもう来ている、こういうふうに思うんですが、大蔵大臣はいかがでございますか。
  142. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今も赤羽さんからお話があっておりましたように、インフレのない持続的成長ということが今の特徴ではないかというふうに思うのであります。そういたしますと、八〇年代後半における「経済社会の展望と指針」の中にもあります実質成長率「四%程度」、もちろん五・七のこともあれば三・幾らということも「程度」の中へは入るわけでございましょうが、それは私は持続し得る状態ではなかろうか。これは見方によって違いますが、一ついつも感じますのは、かつての高度経済成長の体質に我々がなれてしまって、したがって成長とはすなわちもっと高目のものであるという体質になり過ぎておるんじゃないか。やっぱりヨーロッパに追いつけ、追い越せ、みんな追いついてしまったという表現は少し粗っぽいわけでございますけれども、そういう今日我々が描くものはやっぱりインフレのない持続的な成長ということになると、その点は私は今日の財政運営の中で達し得るものではないかというふうに考えます。  これを一たび仮に転換をいたしたといたしますと、現在の税制等の仕組み等から考えますならば、やっぱり結局安易な公債依存体質にもう一遍逆戻りして、最終的には今日のサービスを受けるための負担を後の世の納税者負担をかけるという、生きとし生ける物としてやっちゃいけぬことになりはせぬかというところが政策選択のポイントじゃないかな、こんなふうに考えております。
  143. 赤桐操

    赤桐操君 裏づけの問題等についてもそれは問題はあると思いますけれども、しかし今、指摘をされ、我が国でも一つの転換点を求めなきゃならないということは認めているから、政府自体でも内需拡大の問題に入っていると思うんですよ。だからアドバルーンを上げているのだろうと思うんですね。しかし、本当に腰の据わった内需拡大がというと、そうじゃないだろうと僕は指摘しているわけなんですよ。実際そうだと思います。このままでいったらそれで終わると思います。いつでしたか出された八大政策だって、画餅に等しい結果で終わっているはずだ。そういう状況から見ていって私も指摘しているんですが、だからこの辺で少なくとも思い切った政策転換を始めていかなければ、相当腰の据わった政策転換をしていかなければ無理だろう。  その場合に公債政策をとるかとらないかということは、これからのいわゆる税のあり方やそういうものについての問題だってたくさんあるわけですから、それは検討の結果選択させるべきものだと思いますけれども、いずれにしても、今のように、公共事業全体から見ていったって五十五年から五十八年までこれは横ばいですよ、それから五十九年から六十年の間これまた前年度マイナスですよ、そういう異常な圧縮状態がずっと続いてきている。  それで、先ほど税調会長がおいでになったときに私も触れましたけれども、そうした一般会計関係で本来はその領域で賄われるべきものまでが全部はみ出していって別な新税を設定しようという形まで出てくる、こういうところまで来ているということは私は大変な異常な状態だと思うんですね。言うなれば、大変日本経済全体が圧縮されてきてこの状態で進んでいくということになっては、これはやはりもう限界を超えるんじゃないだろうかな。また一方、社会資本の状態なんかを見ましても、これは諸外国からこの間も指摘されていますが、まさに生活関連の各種公共施設というものは非常に大きく批判されている。ダウンしている、こういうことが言われるわけでありまして、私は、この辺で少なくとも名目成長率に見合う程度の公共投資も思い切って行うべき時期に来ているんじゃないだろうかな、こういうふうに思うんです。大臣、これについてはいかがですか。
  144. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 問題は、私どもは、日本の民間の実力、その民間活力を誘導するためにいかなる知恵を絞るか、こういうことで精いっぱいの努力をしていかなきゃならぬ。赤桐さんの御意見もいきなり財政出動とおっしゃっているわけじゃ必ずしもございませんけれども、したがって今日までも公共事業費、国費ベースで圧縮しながらも事業費の確保ということについては、ツケ回しという批判を受けながらもまずはこれを保ってきた。  そして、公共投資そのものを見てみましても、確かにおくれておる部分はございます、それはいろんな理由もあろうかと思います、国土面積全体、人口密度の全体というような基本的な問題もあろうと思いますけれども、おくれておるから当たり前だという議論は別といたしまして、他の先進国に比べたいわゆる対GNP比の支出規模というものは日本が一等高いわけです。したがって、後世代にツケを回す、仮に建設国債でもっていわゆる名目成長率ぐらい伸ばしていけという議論になったといたしますならば、ストックが残るものとはいいながら、それだけの負担増も後世代に残していくということに対してはやっぱりちゅうちょせざるを得ない。  ですから、要するに、先進国の中では実質成長率もトップだし、物価上昇率の低いのもトップであるし、失業率の低いのもこれは段違いトップであるし、だからかつての高度経済成長というものはもう期待できなくて、インフレなき持続的成長、これが世界に冠たる日本経済の歩みであるという位置づけの中で財政というものを考えていかなきゃならぬのではなかろうか。そういう考え方で、渋ちんと言われながら長い間やっておるということでございます。
  145. 山本富雄

    委員長山本富雄君) 午後四時三十五分再開することとし、休憩いたします。    午後三時十一分休憩      ―――――・―――――    午後四時三十五分開会
  146. 山本富雄

    委員長山本富雄君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、租税及び金融等に関する調査議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  147. 多田省吾

    多田省吾君 初めに、円相場につきまして大蔵大臣並びに日銀総裁にお伺いいたします。  去る九月二十二日のニューヨークにおける先進五カ国蔵相・中央銀行総裁会議、G5は、財務 長官ベーカー氏のイニシアチブで開かれましたけれども、これは従来の、相場は市場に聞けという形を変更した姿だと思います。特にアメリカ政府考え方が変わったのかどうか、その背景となっているものはどういうものか、まず御説明いただきたいと思います。
  148. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 世間一般では、新聞論調等では米国の政策転換、こんなようなことが書かれてあることも御案内のとおりであります。だが、ベーカー財務長官自身の表現をかりますならば、いわば政策転換ではなく、ウィリアムズバーグ・サミット以来、有用な場合には介入をしようと言っておったその有用な場合と今を認識した、こういうふうに理解してもらいたいということを、これは特に私に対して申されておりました。その背景は、恐らく最初、レーガン政権ができてからは強いアメリカ、強いドル、あるいはリーガン財務長官も、傾向としては今先生が御指摘なさったように相場は市場に聞け、こういう考え方、あるいはシュルツ国務長官が財務長官でありましたときにいわゆる変動相場制になったわけですから、私にもその傾向は若干ございますけれども、あの変動相場制の議論に、私は内閣官房長官でありましたから直接じゃございませんけれども、いろんな議論の経過を経てこれだなというふうな結論に到達したところへ参画しておった人は、やっぱり市場主義にとかく物の考え方が行きがちでございます。  したがって、それらの先輩の皆さん方を含めて、今や有用な時期と考えた、判断されたということは、表現は適切でないかもしれませんが、幾ばくか東洋的な気配りみたいなものがあったのじゃないか、こんな感じが私にはいたしておるわけであります。しかし、大義名分としては、まさに今市場がファンダメンタルズを適正に反映しないということが合意になったわけですから、介入が有用な時期であるというふうに結びつけることができた。  いささか踏み込み過ぎたお答えでございますが、率直にそんな感じを受けております。
  149. 多田省吾

    多田省吾君 次に、ニューヨーク連銀が初めて東京市場でドル売りに介入したわけですが、過去に例を見ないほど各国の協調介入がかたかったように思います。  G5の席上、参加各国がそれぞれ介入金額あるいは実施期限、さらに目標とする水準など細目にわたって論議されたのかどうか、御説明いただきたいと思います。
  150. 澄田智

    参考人(澄田智君) 私の方からお答え申し上げます。  G5におきましては、ドル高是正の必要性と、それを実現するための手段としての主要国の協調介入、それにつきまして幅の広い観点から議論がなされて合意に至ったわけでございます。その結果、各国とも現在その合意の趣旨に沿って積極的に介入を行っているわけでありますが、そうしてまたそういう介入状況につきましては、連日のように事前にあるいは事後に相互に密切な連絡をとって行っておりますが、細目にわたって具体的にあらかじめG5のときにいろいろ金額、時期、その他諸般の点について詳細に定めた、そういうようなことはございません。
  151. 多田省吾

    多田省吾君 今回のG5の合意による効果を大蔵大臣また日銀総裁、どのように見ておられますか。
  152. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 為替相場が各国のファンダメンタルズを十分に反映していないという認識のもとで、秩序のあるドル高是正に向けて協調介入を行うとともに、声明に盛られた経済政策の協調を一層進めることとしたというわけでございますから、このような政策協調は為替相場の是正に極めて有効なものであると基本的には考えております。  それから、G5以来かなりのドル高是正が進んでおりまして、各国のファンダメンタルズが為替相場によりよく反映されておるというふうにこれを評価しております。
  153. 多田省吾

    多田省吾君 円高誘導から円高定着へということでやっておられると思いますけれども、現在の水準が、きょう見ますと二百四円十銭とかお伺いしましたけれども、現在の水準が定着に相当するものと見ておられるのかどうか。  本来、市場の相場感によって支えられるべきが定着という考えだと思います。関係諸国の介入をやめてもそのまま定着するところが本当の定着だと思います。ところが総裁は、円高へのアクセルは踏み続ける、ブレーキの方はまだかけてないんだ、こういうお考えで、まだ円高誘導のお考え円高定着を図っておられるやに思えるわけでございます。  この辺、本当にもう介入がなくても定着している状況だと、このように考えておられるのかどうか。それが本当の円高定着ではないのか。いかがでございますか。
  154. 澄田智

    参考人(澄田智君) 最近の為替市場の動きを見ますと、相場感あるいは市場の空気と申しますか、それはひところに比して幾分変わってきた、そういう感じはいたしております。しかしながら、基本的には、一方においては介入警戒感というものが働いて、円安の方向にその日の相場が動くような場合には介入警戒感が働く。それから円高の方に動くときには、値ごろでもってここらで買いだというので、買いがある程度まとまって入るというようなことがございまして、それで引っ張り合いをしているというようなところで、なかなか定着とまで言いがたいように思うわけでございます。言われましたように、相場感が円高基調で自然に定着して、それが現実の相場を支えるという形になることが最も望ましいわけでございます。  私が新聞記者諸君の質問に答えまして、アクセルから足を離しているわけではない、アクセルを現実に踏み込まなくてもアクセルに足をかけているような、そういうことでいるんだというようなことを申しましたのも今のようなことで、まだ不安定な感じがあるので、それが定着するまでは介入というアクセルを離すわけにはいかない、こういうような感じを申した次第でございます。
  155. 多田省吾

    多田省吾君 そうしますと、望ましい安定した定着があるまでは協調介入というものが続く可能性があるというふうに受け取ってよろしいのか。G5での合意というものは無期限の協調介入ということを決められたのか、その辺はいかがですか。
  156. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これはやっぱり私なりに整理しておりますと、介入については従来から乱高下防止を基本としておりますが、ウィリアムズバーグ・サミットの合意にございますように、「為替市場に対する協調介入が有益であろうと合意された場合にはすすんでそのような介入を行なう用意がある」、これがずっと続いておる、ウィリアムズバーグ・サミットの際の共同宣言に存在しておるわけですから。  したがって、有益と合意したわけでございますので、有益と合意する場合にはいつの場合でもそれはあり得るということが継続しておるというふうに、私なりに整理をいたしてみておるところであります。
  157. 多田省吾

    多田省吾君 これも気がかりの中の一つでございますけれども、協調介入をやめたとき円が再び安値に移行しまして、結局残ったのは日本の外貨準備が減っただけだ、こういう結果にならないかどうか、こういう危惧もあるわけでございますが、これはいかがですか。
  158. 澄田智

    参考人(澄田智君) 今ほども申しましたが、最近の円相場の動きを見ますると、ひところに比べ円安方向への大きな揺り戻しの懸念は薄らいできているのではないかというふうな感じもぼつぼつ出てきておりまして、相場感ないし市場の空気は幾分変わってきたそういう感じがいたしております。定着した、こういうふうにはっきり申し上げることはまだできない、そういう段階でございますが。  したがいまして、私どもとしては今後とも必要に応じて機動的に市場介入を実施する方針でございますが、そうして相場感が自然に円高方向で定着して現実の相場が支えられる、そういう状態に なることを期待している。大きく円安の方にまた振れて、そうして結局外貨準備を失っただけではないかというようなことになっては大変である、こういうふうに思っておりますが、現実にはそういうことにはだんだんならない方に向かっているのではないか、こういうふうに考える次第であります。
  159. 多田省吾

    多田省吾君 この前までのドル高の一番大きな原因というものはアメリカの財政赤字であり高金利であったわけでございます。先ほどもお話がございましたが、このドル高の基本的な原因について具体的な解消措置がとられない限りは介入によるドル高是正にも限界があると思いますけれども、いかがですか。
  160. 竹下登

    国務大臣竹下登君) おっしゃいますとおり、本当は基本的に申しますと、主要通貨国の政策が同じような政策がなされて、そうしてファンダメンタルズの大きな要因である失業率とか成長率とかインフレ率とか、そういうものが大体同じであったら、これは一番いわば相場感として安定する、こういうことになるわけですが、そうはいかないわけです。  今、強いて言えることは、大体インフレなき持続的成長というようなものはおおむねできた。しかし、かなり差があります、失業率なんかヨーロッパと日本と比べれば大差がございますから。それでまた今度は金利になると、アメリカと日本とかなりの差があります。  したがって、それらが最終的に協調する努力はこれは絶えずやっていかなきゃならぬことでございますので、多田さんがおっしゃいましたように、本来あるべき姿というのは、米国の財政赤字、それから来る高金利、そういう是正、我が国の内需拡大問題、ヨーロッパの失業解消問題というようなものをみんなが相互監視しながらやっていかなきゃいかぬ、それが一番オーソドックスであるというふうには私も考えます。  ただ、為替相場は女性だ1ああ女性の方はいらっしゃいませんが、フィーリングでよく動く、こういうようなことをよく言います、実際問題として。したがって、今も総裁と御議論いただいておりましたが、仮に、これでもう底だと仮に私なら私が申したといたしますならば、すぐ今度は買いが入るとかいうようなまたスペキュレーション、投機というものが存在することも念頭には置いておかなきゃいかぬというようなことでございますし、基本的には各国のファンダメンタルズが一致するような政策の調和をとることではありますが、有益と認めた場合には介入をするという姿勢はやはり持ち続けていなきゃいかぬ、こんなことかなと思っております。
  161. 多田省吾

    多田省吾君 今回の協調介入を見ておりますと、当局がかなり心理的効果あるいはマスコミ効果をねらったのではないか、このように思われておりますが、これが本当に長続きするとは思えない、こういうことがあります。口先介入と言われるように、大蔵省あるいは日銀首脳の発言がくるくる変わるたびに、その都度市場が揺れ動いた、こういう姿がございます。もちろんその中には、短期金利の高目誘導策等もございました。これは一応成功だと見る向きもありますけれども、こういうオオカミ少年的な介入は今後とるべきではないという考えもあるわけでございます。  総裁、大臣は、どのように考えておられますか。
  162. 澄田智

    参考人(澄田智君) 為替市場はどうしても市場心理というものが非常に働きます。そうして、いろいろと振れるものでございます。  したがいまして、機動的な介入というような場合におきましても、やはり為替市場の動向を見ながら、そうしていろいろ市場の心理というようなものも考えながら発言をするというようなことがどうしてもあるわけでございまして、今言われるような、マスコミにそれが報ぜられて、そうしてそれがいろいろと変わるというようなお話でございますが、市場の状況に応じて、やはり市場心理を考えながら発言せざるを得ないということになるわけでありまして、その辺のところは私どもも、これが長続きをするものではないと今仰せられましたが、市場というものがそういうふうなもので続いている限り、やはり市場の心理を見ながらこれに対応していくという姿勢は今後とも必要であろう、かように思います。
  163. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私も一遍大変な経験をしたことがございますのは、五十五年でございました、当時大蔵大臣をしておりましたときに、為替問題の新聞記者会見の質問がありまして、静かに見守っております、こう言いましたら、何にもしないと翻訳されて出まして、それで大変な忠告を受けたことがございましたので、言葉の使い方につきましても、市場の心理等を勘案しながらそれに合わすようにつたない日本語を使わせていただいておるというのが心境であります。
  164. 多田省吾

    多田省吾君 日米金利格差の縮小は円高の定着には絶対に欠かせない問題だと思います。先ほども質疑がありましたが、アメリカの金利の動向と今後の見通しについてお伺いしたいと思います。
  165. 澄田智

    参考人(澄田智君) 円高基調の定着を図るためには、日米金利差、特に長期金利の金利差がこの場合は意味が大きいわけでありますが、これが縮小することが欠かせないことであるということは御指摘のとおりでございます。  アメリカの金利の動向の御質問でございますが、ごく最近の状態におきましては、金融緩和期待の広がりというようなものを背景に幾分低下をしているというような状況でございます。しかし、先行きのことになりますと非常に不透明なことが多いわけでございますが、アメリカの長期金利が先行き目立って低下をしていくというためには、やはり財政赤字の削減について何らか明白なる前進というようなものが講ぜられるというようなことが必要ではないか、かように思っております。
  166. 多田省吾

    多田省吾君 このたびは漸進的なものではなくて、急激なドルの急落でございました。そのためにいろいろ問題が起こっているわけです。アメリカ以外の国ではかなりのデフレ効果が起こりますし、またアメリカ側で言いますと、財政赤字が十分減らないうちに、逆に言えばアメリカの貯蓄率が上がらないうちに外国からの資本流入が減ってしまうという結果になりまして、これはアメリカにとっても避けたい事態だと思います。  こういったドルの急落についての諸問題について、当局はどのように見ておられますか。
  167. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私は今の状態を、よりよくファンダメンタルズを反映する方向に動いておるということを申しておりますので、いわゆるドルの急落という事態は私は予測をしておりません。ただ、多田さん、特に日本だけでなく外国等から、経済研究所等からいろんな意見が出ておりますが、私は、ドル高是正基調が定着していくような協調介入を行いますとともに、各国が合意に盛った経済政策の協調を進めていくということが、いわゆるドルの急落というような事態も結果としては回避することになるではないかというふうに考えております。
  168. 多田省吾

    多田省吾君 じゃ初めに、私は国内に及ぼす影響からお聞きいたしますが、国内の輸出産業といいましても非常に幅広く、規模の大小もございますし、業種の違いもありますから、円の水準がどの程度で企業経営が成り立つかどうかということは定かではないと思います。当局は、国内産業の力が十分あるようなお答えをしているようでありますけれども、果たしてそうなのか。  企業円高対応策といたしまして、下請への転嫁によるコストダウンとか、また海外現地法人への転嫁とか、あるいはドル建て契約価格の引き上げとか、いろいろ対策が考えられるわけです。いずれにしても国内経済へのデフレ圧力が強くなる、このように考えられます。この企業収益等への影響をどのように分析しておられますか。鉄なんかも五社のうち三社が相当収益が減っているというような発表もきょうございましたし、特に下請への転嫁を初めとする中小零細企業への対策を中心にひとつお伺いしたいと思います。
  169. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まず、見方からの問題でございますが、円高すなわち輸出の減少、輸入の 増加ということが原則的に言えるわけでありますが、これはある程度のタイムラグを要すると考えられます。したがって、当面、全体として見た日本経済に対して大きな影響を直ちに与えるということは考えられないと思っております。  そこで、今おっしゃいましたように我が国の国内産業への影響ということになりますと、個々の産業の状況、すなわち国際的に見ました技術水準あるいはこれまでの収益状況、今後における技術開発の可能性、そのときどきにおける国際環境等によって異なりますので、一概に申し上げることはこれはなかなか難しい問題でございます。ただ、私がいつも申し上げておりますのは、我が国産業は何といっても、これまでにおいても大幅な円高局面がございました。それから、何としても二度にわたる石油危機等の激動の時代を乗り越えてきたという、世界のどこの国よりもその点における実績というものは私は持っておると思います。  したがって、今後においても、これまで示してきました柔軟な対応力というものが十分に発揮される、日本人にはそれだけの英知が存在する、こういうふうなことを絶えず申し上げておるわけでございます。  ただ、注意しなきゃならぬのは、今多田さんの御指摘にもありましたように、中小企業の動向については絶えず引き続き注意を払っていかなきゃならぬ、したがって、健全な中小企業が不測の事態に陥ることのないように民間金融機関においては十分な資金枠を確保する。特に年末でございますから年末金融対策を講じますし、また政府関係で見れば国民公庫から中小公庫から商工中金、それからあるいは全国信用保証協会連合会、そういうところに、おのおの業務運営に当たっては適切かつ機動的に対処をすべきだという指導を行っておるところでございます。
  170. 多田省吾

    多田省吾君 その点は十分お願いすることといたしまして、次に、十月二十四日以降、日本銀行では短期金利の高目誘導策をとったわけでございますが、これは日米金利格差の是正を目指したドル高修正策であったわけでございますが、これも限界があると言わざるを得ないと思うんです。二十五日以降に債券相場の暴落となってあらわれたわけです。ちなみに二十五日のそれは四円十四銭安となりまして、史上最大の下落幅をとっております。債券の先物市場も、国債暴落で連日取引が成立しない状況となっております。この債券市場の悪化によって国債の発行条件の改定も不可避となりまして、十一月国債は、表面利率について〇・五%の大幅引き上げで年六・五%、また応募者利回りのそれは六・七〇八%と改められたと伺っているわけでございます。  これは、全般的な長期金利の上昇をもたらしまして、円高によるデフレ効果に拍車をかけることになるわけでございます。そういうことから、この短期金利の高目誘導というものにも限界があると言わざるを得ませんけれども、総裁のお考えをお聞きしたいと思います。
  171. 澄田智

    参考人(澄田智君) 十月下旬行いました高目に市場レートをする、高目に市場レートがなっているのを自然体と申しますか、そういう形でレートを反映させるというスタンスをとってまいったわけでありますが、これは今言われましたように、日米の金利差を縮めるという上においては効果がございました。また、それ以来円高定着の方向にさらに一段と進んだ、こういう効果はございました。  それから、債券の市況の下落でございますが、これはその前に債券の市場が非常に過熱的でございまして、債券が極度に短い期間で回転をするというようなことで、非常に債券の値が過熱ぎみに上がっておった、こういう状況は長続きしない、そういうような状況がその直前にあったことの反動という面も非常に大きかった、こういうふうに思っております。  そして、御質問の、今後こういう政策は長続きが、高目に維持するという政策はこれはデフレ効果を持つものであり、そして限界がある、こういうふうな点についての御質問でございますが、現時点においての当面の金融状況といたしましては、マネーサプライの伸びは名目成長率をかなり上回る、こういう状況でありまして、金融基調といたしましては景気を支えるに十分な緩和基調というのが維持されている、こういうふうに考えております。  金融政策の運営スタンスといたしましては、そのときどきの経済情勢に応じて総合的に判断して行うべきものでありますし、また今後の景気の展開については私どもも十分注視をしていくつもりでありますが、当面の状態といたしましては、円高定着を目指しまして現行の市場調整スタンスを維持していくのが適当である、かように考えておる次第でございます。
  172. 多田省吾

    多田省吾君 次に、景気に対する作用というものは大変なわけでございます。三菱銀行のリポートによりますと、十月二十五日以降の日銀の短期金利高目誘導策で公定歩合をこれは一%引き上げた程度の効果を生じた、来年度の我が国の経済成長率を実質〇・四%ほど押し下げる効果があった、このように分析しているわけです。また、一ドル二百円程度の相場が続くと成長率の低下が一・八%程度にもなる、このような計算をしております。両方合わせますとやはり二二一%の低下之なり、政策不況を招くおそれがあるという警告をしておりますが、ドル高是正も必要でありますけれども、デフレ効果が景気失速につながるという事態も考えなければなりません。  それだけに、我々は内需拡大というものを強く要求しているわけでございますけれども、このいわゆる矛盾ですね、それをどう解決するか。内需拡大をさらに推し進めていかなければなりませんけれども長期金利の上昇というものは内需拡大策を押し下げるという姿もございますし、これは非常に難しい問題でありますけれども、相当腰を据えてやはり内需拡大策をやっていかなければ来年度の景気というものは大変心配になる、このように思いますが、大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  173. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは内需に、今のお言葉をかりれば腰を据えて対応しなきゃいかぬ、それは私も同感でございます。ただ、引例なさいました三菱銀行の試算等、実際問題、その前提を詳しく承知しておるわけじゃございませんけれども、普通の場合金融引き締めによる効果で、――実質GNPが〇・四%低下するということをおっしゃったわけでありますが、一方経済企画庁では、世界経済モデルというものによると、公定歩合の一%の変更は実質GNPO・一%の変動をもたらすと。これはやはり前提によっていろいろ計算のしようもあるかと思うわけであります、  がしかしながら、おっしゃいましたように、内需というものに対して腰を落ちつけて対応していかなきゃいかぬというその気持ちのあらわれが、先般決定いたしましたおよそ三兆一千億というものの対策もその一環であるというふうに御理解をいただきたいと思います。ただ、あの対策はこれから一年。こういうことを見ながらいろんな評価をしておるものでございますので、これもなかなかトタで出ていくというような性格のものではあるいはないかもしらぬということも含めて、腰を落ちつけて注視して絶えず気を配っていかなきゃならぬ課題だというふうな問題意識を持っております。
  174. 多田省吾

    多田省吾君 次にお伺いしたいのは、総理がこのたび国際協調のための経済構造調整研究会という私的諮問機関を設置されたと聞いております。  私的諮問機関の乱用は慎むべきであると思いますけれども、ここではそれはおきまして、通貨対策問題が重要テーマとなるとされておりますが、大蔵省や日銀ではこの機関をどのように見て、これから出される意見はどのように対処されるおつもりなのですか。
  175. 竹下登

    国務大臣竹下登君) この研究会におきましては、そういう考え方総理がニューヨークヘ出発される前私にもお話がございました、確かに国際経済の環境変化に対応して中期的な視野から構造 問題等を含め検討をしていこうという考え方は時宜を得たものであるというふうに私はこれに対して評価をいたしておるわけであります。  そうなりますと、やっぱり産業構造の問題が一番重要なポイントになるのじゃないかなというふうに思っておりますけれども、まだ何分検討が始まったばかりでありまして、どのような方向議論が進むかは今のところ明らかでございません。  通貨ということになりますと、これもそのとき議論をいたしたわけでございますけれども、ウィリアムズバーグ・サミットで日本の総理、今の中曽根総理を含む七人の首脳が、いわば通貨の安定に関して十カ国蔵相会議に私どもの方へおろされた、それを私どもがまたプロの集まりである代理会議におろして、それで二年間徹底した検討が行われて、そして一応ことしの六月、私が議長をしておりましたので、その案をまとめて、それを今度は、途上国の集まりであります二十四カ国蔵相会議でもいろんな議論が出ておりますから、したがってそれらを含めて本年十月のIMF暫定委員会で予備的な意見交換が行われて、それで来年の四月の次回暫定委員会で本格的な検討が行われるということになっておりますよ、そしてそれを五月の東京サミットヘ持ち込むという、首脳のあなた方がお立てになった一つの経過が進んでおるところですという説明をいたしました。  したがって、通貨改革というのが大きなテーマになるよりは産業構造の問題がテーマになるんじゃないかな、こんな感じで私は受けとめておるわけでございます。したがって、来年の四月に行いますIMFの暫定委員会での議論を十分踏まえて、そして東京サミットで私から首脳に御報告するというような経過に通貨問題についてはなっておるということでございます。
  176. 澄田智

    参考人(澄田智君) 日本銀行にもお尋ねでございましたが、事柄の性格上コメントすることは差し控えなければならない事柄であると思っております。  あえて一般論として申し上げますと、各界の有識者が広く参加されている会合で、我が国の置かれた状況、あるいはその対応等に関し、幅広い見地から通貨問題を含めて検討され、適切な提言が行われるということであれば、それは結構なことである、かように思う次第でございます。
  177. 多田省吾

    多田省吾君 十一月十二日からワシントンで国際通貨会議が開催されているわけです。ここでも新しい通貨制度が模索されたと思いますけれども、我が国がこの会議に臨むに当たっての姿勢、またこの会議から何か報告されるべきものがないかどうか。  それから、今回の各国による協調介入というものは、現在の変動相場制の根幹を揺るがすものではないかという議論もございます。今後もこの制度を続けることが好ましいのかどうか。あるいは、先ほども話に出ましたが、フランスの言うターゲットゾーンについてどういうお考えをお持ちか、これをあわせてお答えいただきたいと思います。
  178. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今ワシントンで開催されております国際通貨会議というのはいわゆる米議会通貨サミットということでありまして、日、米、ヨーロッパ、途上国の各界からの参加者を得ていろんな討議が行われておる、こういうことでございます。したがって、政府代表が参加しておる、こういうものではございません。実際、それぞれ個人の資格でございましょうが、私にも招聘状が参りましたけれども、国会の都合もございますので参加はもちろんいたしませんからここにおるわけでございますが、そういうことが議論されるというのは私は本当はいいことだと思っております。  したがって、これが検討状況を今つまびらかにしておるわけじゃございませんけれども、この会議の結果を踏まえて通貨改革のための委員会が設けられ、来年の東京サミットに向けての報告が作成されるというような予定だというようなことは承っておりますが、この種の会議が開かれることそのものにつきましては大体、きょうのような議論がまあ毎日行われてもいけませんにしましても、この国会でもあるいはそういう議会サミットみたいなところでも、行われていくというのは非常に好ましいことじゃないかなと思っております。  そこで、フランスのミッテランさんの申されましたウィリアムズバーグのときのいわゆるターゲットゾーンの問題につきましては、今日までの十カ国蔵相会議、同代理会議等での結論から申しますと、やっぱりターゲットゾーンを設ける今度はその決め方の問題でございますとか、その辺にいろんな問題があって、にわかにこれを新しい通貨政策として取り入れるという段階に直ちにはないというのが大方の結論ということになっておるわけでございます。しかし、このターゲットゾーン等の問題についても、まだ暫定委員会等での議論はこれからもあるであろうというふうには思っております。
  179. 多田省吾

    多田省吾君 以上で円相場の御質問を終わりまして、次に累積債務問題について若干お伺いいたします。  いわゆるベーカー構想でございますが、先ごろベーカー・アメリカ財務長官が巨大債務国に対する特別援助を打ち出しまして、それにもかなり積極的に取り組む姿勢を示しているようでございます。その提案によりますと、欧米日の各国の民間銀行から一九八六年からの三年間に二百億ドルの資金供与を受けることとしております。当局はこれをどのように見ておられるのか、どのように対応されようとしておられるのか、お聞きしたいと思います。
  180. 竹下登

    国務大臣竹下登君) ベーカー構想、いわゆるベーカー財務長官が先般のソウルのIMF・世銀総会の際にぶち上げたと申しますか、発表された巨大債務国に対する特別援助構想というようなことでございましょう。累積債務問題解決のために債務国、国際機関、それから民間銀行が一体となった対応をすべきだというベーカー提案、これは私は評価しております。  この構想に民間銀行が参加するか否かについては、これは基本的にはおまえ参加せい、こう言われるものじゃございませんので、民間銀行みずからが決定する問題でございます。民間銀行としておよそ考えられることは、まず一つには、IMF等の国際金融機関の政策助言に基づいた債務国の一層の調整努力、いわばIMF等はそういう援助をします場合にこのようなコンディショナリティーと申しますか、こういう政策をしなさいというような助言というものが前提に置かれるわけです。その助言等に対する債務国個々のいわば一層の調整努力というのがまず必要でございます。  それから次は、各国の民間銀行間の負担の公平だと思います。例えば一定の国だけが余計それを背負い込む、こういうようなことでなく、先進各国の負担の公平ということが大事でありましょう。それから国際機関の応分の負担、やっぱり協調融資のときでもどこかの国際機関とか政府機関とかが先に出ますと協調融資が成り立つと同じような理屈で、そういう応分の負担というものが当然あらなきゃならぬというような前提で今後民間銀行間で協議が行われていくであろうというふうに承っておるわけであります。  我が国としては、民間銀行の協議の状況に留意をしながら今度は各国政府や国際機関とともにそれに対する構想を検討していくというような手順になるんじゃなかろうかなというふうに思っておるわけであります。
  181. 多田省吾

    多田省吾君 このベーカー構想には米銀の救済というねらいがあると、欧州ではそういう見方をしておりますけれども、どう考えますか。
  182. 竹下登

    国務大臣竹下登君) この問題は、前からある議論でございますのは、例えて申しますと、日本の銀行でそういう債務国に金を貸している銀行といえば普通二十五とか三十とか言われるわけでありますが、アメリカは大体八百ぐらい――そもそも銀行が一万四千五百もあるわけですから、その八百行ぐらいがそれぞれ融資しておる。そうしますと、その中で、時々国会等の議論を聞いており ますと、小選挙区でございますから、まあ具体的な事例になるかどうかは別として、小選挙区でございますと、自分に反対の金融機関もそれはあるでございましょう。したがって、あそこが貸し込んでいるやつを国際機関等へ援助すればあの銀行を結果として助けることになるんじゃないか、こんな議論が行われておったことを私も承知しております。  しかし、今回は本気だなと思いましたのは、そういうことではアメリカとしての一例えば国際機関の増資とか出資の場合も、いつでも日本が考えておる数字よりも結果として低目のところへ決まっていく。それはやっぱり、長男であります。アメリカの方が低く決まるからしたがって低くなる。そういうことであっては国際的にアメリカとして果たす役割が果たせないと。だから、民間銀行をも含めてやっぱり積極姿勢に転じようというようなあらわれではないかというふうに、私はその限りにおいては歓迎をしておるということでございます。
  183. 多田省吾

    多田省吾君 聞くところによりますと、世界の民間銀行の新規融資二百億ドルのうち日本への要求は五十億ドルと聞いておりますが、邦銀としてはこのような危険な融資にしり込みせざるを得ないのではないか、このように考えられます。  そこで、輸銀とか政府で債務保証あるいは海外への特定の引当金の無税枠拡大、こういったことについて何か方策を考えているのかどうか、その辺のことをお伺いしたいと思います。
  184. 竹下登

    国務大臣竹下登君) この構想そのものは、債務国、国際機関、民間銀行が一体となって債務問題の解決を図っていこうと。それは歓迎だ、こう言っているわけです。  民間銀行にとっては債務問題の解決は重要であると考えられますが、まだ実際問題私として釈然どここで御答弁できないのは、邦銀が参加するか否かについては基本的には銀行みずからが決めるべき問題でございますので、私が参加することを前提にしてお答えするのは差し控えなきゃいかぬではなかろうかなと思うわけであります。  その後のベーカーさんの議会証言によりますと、基本的には政府の債務保証は行わないとの前提で考えられているというようなことも聞こえてきております。したがって、御案内のように輸銀保証等の問題で法律改正していただいたりした経緯がございますけれども、輸銀保証の可能性ということにつきましてもこれは、その構想の詳細がわかりませんので、輸銀が保証する対象になるものかどうかというようなこともこれからの問題であるであろうな。そうすると、今おっしゃいましたように、やっぱりそれは我々も参加しよう、それには特別措置でいろんなことを考えてもらいたいというような要望があるじゃなかろうかと想像できる話でございますが、この問題は、税制特別措置というものは今できるだけ簡素化しようというときにさらに特別措置という問題が出てくることにつきましては、そういうことも考えなきゃならぬ問題でしょうというような環境に今はない。  ですから、多田さんの御意見というのは将来のことを予測しての御意見でございまして、私にもそのことの意味はよくわかりますが、今の段階で、まだその詳細がわからないときに仮定のことを前提としてお答えするのはちょっとまだ早過ぎるかな、こんな感じを抱いたわけでございます。
  185. 多田省吾

    多田省吾君 いや、私は何も勧めようとしているのではなくて、当局のお考えを聞きたいということで質問したわけでございますが、十一月の一日と十一日に大蔵省は銀行側にこのベーカー構想を説明したと聞いておりますが、銀行側の受けとめ方はどうであったのかお伺いしたいと思います。
  186. 橋本貞夫

    政府委員(橋本貞夫君) ただいま大臣から御説明がありましたベーカー構想の基本的な考え方につきまして、機会をとらえて銀行側と非公式に会合して、関係国の銀行間でどういう会合が持たれたのか、またその模様はどうであったか報告を受けておることはございますけれども、現段階では具体的な内容も明らかでございませんで、銀行側の反応をここで申し上げるような状況にはないというふうに考えております。  今後、民間銀行の間あるいは国際機関の間で協議が次第に重ねられるに従ってその反応も明らかになっていくのではないか、かように存じております。
  187. 多田省吾

    多田省吾君 次に、今年度の税収動向、さらには今後の税制改革について若干大蔵大臣お尋ねしたいと思います。  先ほどの質疑の中にも、六十年度の経済成長率は四・六%は達成可能であるというお答えでございました。しかし大蔵大臣から、税収の方はちょっと心配だという御答弁もあったわけでございます。  個々に六十年度の税収動向についてお伺いしたいと思いますが、当初予算では前年度比一〇・四%を見込んでいたところが、九月末までの税収累計は七・四%の増加にとどまって、三%低いわけですね。このままいきますと税収欠陥の心配が出てくるのではないかと思いますが、主要な税目ごとの税収動向について御説山をしていただきたいと思います。
  188. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 全般的に申し上げますと、ただいま委員御指摘のように一〇・四%に対して七・四%でございます。この中には、一番大きな問題といたしましては、今年度から新しく専売納付金がたばこ消費税として計上されることになっておりますが、これが初年度でございますので、まだ特例措置の期間でございまして、年に二回だけの納付になっておるということから、これがまだ全く入っていないというような特殊な事情もございますので、三ポイント低いということで、そのまま年間に及ぼして申し上げられる状況にはないわけでございますが、全体としては、先ほど大臣から申し述べましたように、やや心配な面があるということでございます。  この中の主な税目について申し上げますと、源泉所得税といたしましては、九月末累計で八・九%の伸びでございますが、これは予算では一一・九でございますので、低調ではないかと心配しているところでございます。  法人税は、これは全体一〇・六の見込みでございますが、九月末でございますと一二・二で、現在のところはまずまずでございますが、先ほど来から御議論のございます円高等に伴います今後の企業の収益状況が大きく左右するところでございまして、非常にウエートの大きい三月期決算法人の動向いかんでございますが、心配のあるところでございます。  その他の税目といたしましては、有価証券取引税は、現在までのところは非常に市況の活況等を反映して好調でございます。石油税、関税、こういったものは、現在のところ石油税は去年の増税の影響で好調でございますが、今後後半は余り期待はできないのではないか、また、今後の円高によりまして税収の伸びは低下するのではないかと懸念されておるところでございます。
  189. 多田省吾

    多田省吾君 今もお答えがございましたが、九月下旬以降の円高による企業収益の影響を受けまして、今後の税収の動向をどのように見ておられるのか、お伺いしたいと思います。
  190. 水野勝

    政府委員(水野勝君) ただいま申し上げました主な税目に即して申し上げますと、源泉所得税は、これはおおむね六十年度のベースアップも終わっているところでございますので、余り大きく変化することはないのではないか。そうしますと、ここの源泉所得税につきましては、余り今後好調に転化するという期待はできないのではないかという感じがいたします。  法人税につきましては、今申し上げましたとおり、全く今後の三月期決算法人の決算状況次第でございます。  それから、為替レートに関連いたします石油税、関税等につきましては、今後は低下が見込まれる。こういったところから、全体といたしまして、実質成長率は先はで御説明がありましたように四・六%は確実であるというふうにお聞きして おりますが、税収は名目の数値でございますので、名目のいかんによってはいろんな事態を予想しなければならないというふうに考えておるわけでございます。
  191. 多田省吾

    多田省吾君 来年の一月一日から実施予定の、いわゆる限度管理強化の事前の準備状況についてどのように把握されているのか、大蔵省にお伺いしたいと思います。
  192. 冨尾一郎

    政府委員(冨尾一郎君) マル優制度の厳正な履行を確保する観点から、先生御指摘のように、来年の一月一日から、非課税貯蓄申告書を提出する際に公的書類を提示していただくなどによりまして本人確認の厳正化措置が実施されることになっておりますが、私どもといたしましては、このような趣旨を貯蓄音及び金融機関に対しまして十分に理解していただくということが肝要でございますので、ただいまポスターやチラシの作製、配布、それから年末にかけまして、テレビ、ラジオ等各種の広報媒体を活用して積極的にPRすることを検討し、準備を進めているところでございます。  なお、今回の改正によりまして、本人確認を公的書類でやっていただくということになりますので、これを金融機関で適切に、適正に履行していただくかどうかということにつきまして、今後金融機関に対しまして臨場しての調査や、税務署に提出されました非課税貯蓄申告書と住民票とを照合するなどいたしましてチェックをするという体制をとるよう準備をしております。また、今後は、このような形で本人確認が行われますと、ポイントは個々の貯蓄者が利用しております三百万円の非課税枠が守られるかどうかという、いわゆる名寄せの重要性が増してまいりますので、私どもとしてはコンピューターを使うなどを前提といたしまして、限度管理システムにつきましてただいま鋭意検討中のところでございます。
  193. 多田省吾

    多田省吾君 マル優の限度管理について今お尋ねしたわけでございますが、このマル優状況にこの一年間、特に最近いろんな変化があったと考えられますけれども、どのように大蔵省は考えていますか。
  194. 水野勝

    政府委員(水野勝君) マル優の問題につきましては、先ほど委員からお話のございましたように、六十年度改正によりまして限度管理の適正化という方向措置が講じられたところでございます。その後税制全般につきましてのいろんな基本的な御論議が通常国会を通じてもなされたところでございまして、この九月二十日には内閣総理大臣から抜本的な見直しにつきまして新しい諮問が出され、現在税制調査会におきまして検討作業が進められているところでございます。  非課税貯蓄を含めました利子配当課税のあり方につきましても、所得税制の中の抜本見直しの一環という視点から議論が行われ、検討が行われることになるのではないかと予想されているところでございます。今後の利子配当課税のあり方につきましては、こうした今後の税制調査会議論、それから従来の議論の経緯、こういったものを踏まえながら適切に対処してまいる必要があるのではないかと考えておるところでございます。
  195. 多田省吾

    多田省吾君 大臣にお尋ねしたいんですが、自民党首脳の間でも六十一年度から低率分離課税導入すべきだ、こういう意見がかなり強く出されておりますし、また別の首脳からは六十一年度は無理だ、しかし低率分離課税は早く導入すべきだ、こういういろいろな意見が出ているようでございますが、大蔵大臣はこの考え方に同意なさいますか。
  196. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これはきょうも税制調査会長との一問一答の中でも議論がなされておりましたが、税制調査会においても非課税貯蓄残高が個人貯蓄残高の約六割を占めるに至っておること、それから郵便貯金を含む非課税貯蓄の限度管理の問題はもはや放置し得ない状況にあること等々の問題が指摘されて検討され、六十年度税制改正においては最終的には、まず非課税貯蓄制度の適正化を図るというところから、本人確認制度の厳正化ということで一月一日からやる。  そこで、問題が一つございますのは、それを決めておいて今度仮に低率分離課税というものを実施するとすれば、朝令暮改じゃないか、こういう議論が一つございますが、私もいろいろそれを検討してみますと、仮に低率分離課税というのがあり得たとしても、限度管理というもの、本人確認等は大事なことでございますから、論理的にこの二つが全く朝令暮改とか異質なものではないというふうには考えます。  しかし、これをどうするか、こういうことになりますと、それこそ今朝来の御議論税制調査会等でどのような推移になりますか、これから見守っていかなきゃならぬことでございますが、各方面で、自民党首脳であれあるいは、非首脳という言葉はありませんが、いろんな場所でそういう議論が出てくるというのは私は、今、国会の大蔵委員会議論税制議論が三分の二だと言われておるぐらいになっておりますので、それは国民全体に税に対する関心が高まるという意味においても、いろんな御提言がなされるということは好ましいことじゃないかなというふうに思っておるところでございます。
  197. 多田省吾

    多田省吾君 我々はマル優の廃止には反対でございますけれども自民党の村山調査会の中間報告ですら、このマル優について、低率分離課税を検討すべきだ、このように百家争鳴なわけでございます。  また、午前中も税調会長が、昨年出した低率分離課税答申というものはまだ死んでいない、政府は実施しなかったわけですが、死んでいないと言っておりますが、大臣は今日でもこの政府税調低率分離課税答申というものは生きているとお考えでございますか。もし六十一年度から実施する場合には、改めて政府税調答申が必要だと考えておりますか。いかがですか。
  198. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これはやっぱり、きょう税調会長さんが、生きておる、こうおっしゃればまさに生きておる。すなわち、考えてみますと、今までの一番最後にいただいた答申が六十年度税制のあり方というのですから、その中の意見としては今日少なくとも答申の中に、文章そのものとしても実体的にも生きておるということは言えるのじゃないかなと思います。  ただ、さあこれを六十一年度税制でどうするか、こういうことになりますと、税調の自主的なこれからの展開によりまして、今朝来議論がございましたが、平素ですとぎりぎり、仮に年内編成というもので昨年のスケジュールなんか考えてみますと、十一月の三十日ぐらいからやっていただかなきゃいかぬのかなとか、あるいは一日、二日ぐらいからやっていただかなきゃならぬのかなという感じがしないわけでもございませんけれども、そういう六十一年度税制の中でそれが取り上げられるかどうかということも今日の段階では予測しがたいというふうな感じでございます。
  199. 多田省吾

    多田省吾君 先ほども質疑があったのでございますが、来年度の新税構想が次々と報道されているわけです。建設省の流水占用料ですか、林野庁の水源税、それから通産省の低公害自動車のメタノール車の普及を当てにしたところのメタノール燃料税、それから大蔵省が多国籍企業などのグループ内取引における価格操作による課税逃れを防止するために移転価格税制、こういった導入考えている、このように報道されておりますが、こういった税制について大臣はどのようにお考えになりますか。
  200. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 水源税の問題につきましては、関係省庁からそういう改正要望が提出されたばかりでございまして、まだ種々検討すべき点があると考えられます。今後各方面の御意見を踏まえながら税制調査会にお諮りし、対処してまいることになろうかと思うわけでございます。  メタノールにつきましては、まだどちらかといえば研究段階の話ではないかと思いますが、通産省からは改正要望の中で取り上げられてきております。これも各方面の御意見を踏まえながら対処してまいりたいと思うわけでございます。  移転価格問題につきましては、前通常国会にお きましてもいろいろ御議論をいただき、また御答弁も申し上げておるところでございます。主要先進国におきましてはこういった税制が整備されている。それに対しまして我が国としてもできる限り対応をする必要があるというふうに御答弁がなされているところでございまして、こうした方向に沿いまして現在、かなり技術的な問題でもございますのでいろいろ事務的に検討をしておるところでございまして、今後これも税制調査会にもお諮りした上で対処すべき問題でございますので、現時点で確たることはまだ申し上げられる段階にはないわけでございます。
  201. 多田省吾

    多田省吾君 大臣にお尋ねしたいのですが、午前中も税調会長に御質問したんですけれども、通産大臣なんかはきのうの衆議院の商工委員会の答弁で、住宅減税あるいは投資減税は来年度は大幅にやるんだ、こういうような答弁をなさっているわけです。税調会長は住宅減税といっても財源がなければ大幅な住宅減税はできないだろうと消極的な御意見を述べられているわけです。  我々は、不公平税制の是正等によってやっぱり大幅な住宅投資減税はやるべきだ、このように考えているわけでございますが、いつも政府は、かけ声は住宅投資減税を大いにやると言っておきながら、六十年度も非常に小幅な姿に終わっております。だから来年度もまさにそのような姿になるのではないかと懸念するわけでございますけれども大蔵大臣としてはこの問題はどう考えておられますか。
  202. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは、いわゆる住宅減税につきましては、税調会長お話にもございましたが、確かに税理論の中では難しい議論がございます。したがって、既存の仕組みの中の延長線上で考えなきゃならぬかな、こういうような議論をされる人もございますが、いわばそれぞれの要求官庁からいろんなことが出ておりますので、これは予算編成と並行して、要求が出ております税の問題については議論をしていくわけでありますので、それこそ先ほど来申し上げておりますように、いわば予算編成と並行してなされる税制調査会審議でどのような形で取り上げていただくか、こういうことが今問題点でございます。  したがって、いわば税制調査会というものを背負っております私としては、その推移を見詰めていなければ、どうも予見めいたことを申し上げるのは適当ではないのではないかな、こういうふうな考え方でございます。
  203. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 最初に、円高問題について日銀総裁に質問したいと思います。  先ほど来いろんな角度からこの問題は議論されてまいりましたが、G5の合意以来、これは七一年のニクソン・ショックのときの内容を、円高を上回る急激な状況になっていますね。しかし、こういう円高にもかかわらずアメリカの貿易収支は改善の方向を見出していないのではないかというふうに思います。  これは、アメリカの対日赤字の中身を見てみますと、アメリカ企業への物品供給あるいはOEM委託など、アメリカ企業のこれは国際戦略に組み込まれた形の日本からの輸出がかなりを占めているんではないか。例えばIBMのパソコンの製造コストのうちの七二・七%は海外でつくられたもの、とりわけ日本は四三・六%を占めている、こういうふうに言われています。日本の対米輸出の約四分の一が、このようなアメリカ企業の戦略に組み込まれた形で長く続いてきている。こういう長く続いたドル高のもとで、アメリカ経済が構造的に輸入体質を持っているんじゃないか。これを為替調整で均衡化させようとしても簡単にできるはずがないのじゃないかというぐあいに思うのですね。  アメリカの経済学者レスター・サロー氏、これは最近の日経の記事にも出ていますが、アメリカの輸出入を均衡させるためにはドルが四〇%下がらなきゃならない、ですから一ドル百四十三円以下にならなきゃならない、こういう試算さえ示されておるわけです。  そこで、日銀総裁としましてこういう点についてのアメリカの意図をどう見ているのか、また日銀としてどういうお考えか、まずこのことをお伺いしたいと思います。
  204. 澄田智

    参考人(澄田智君) 日本とアメリカの間の貿易関係、これだけ大きな貿易関係でございますので、いろんな形の輸出入が当然そこにはあるわけでございます。したがいまして、今言われましたアメリカの生産の中に組み込まれたもの、そういうもので日本から輸出するものは既にアメリカにとってはこれは不可欠なものになっておりますからそういう日本からの輸出が減るわけがない、こういうような点につきましては、そういう面ももちろんあるかと思いますが、しかし一定の期間を置きますれば、その期間は相当な期間がかかると思いますが、一定の期間を置けば為替相場の変動というものは必ずや輸出入の関係においては非常に大きな影響を及ぼす、これは否定することはできないところだろうと思います。  ドクター・サローの論文のお話もございまして、また、その他アメリカにいろんな意見があることはよく承知をいたしております。ただ、現在私どもとしては、為替相場に対して特定の水準を固定いたしましてその水準を目標としてやる、いわゆるターゲットとしてそこへ持っていくという意味の介入をとってきている、あるいはその他の政策スタンスをとっているわけではございません。  これは、G5の合意の中にもそういう特定の水準というものを合意しているわけではありません。為替相場をやはり各国の経済の基本的な条件、こういう条件をよりよく反映したものにする、そういうことであり、それが一定の期間を置けば必ず貿易不均衡の是正に資する、そういう見地に立ってやっているものでありまして、したがって、いろんな試算はございますけれども、私どもとしては、現在の円高定着の方向というものが将来の不均衡の是正につながっていくものであるということを確信しながらやっている次第でございます。
  205. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 この一ドル百四十三円なんというものに実際なるのかならないのか、それはもちろんわかりませんし、これは大体大変な数字ですね。しかしアメリカ側から見ますとそんなところに、その数字に近づくかどうかは別ですが、今とは大変かけ離れた状況までいかないとこの保護貿易の圧力がなくならないんじゃないかという側面はありはしないか、こういう点について総裁のお考えはいかがですか。
  206. 澄田智

    参考人(澄田智君) 日米間の貿易のアンバランスというものにつきましては、これはこれだけ大きなものでございますので、これが一定の期間に簡単に収縮してなくなってしまうというようなものではないと思います。相当残る、相当な期間をかけてしかもこれは取り組まなければなりませんし、それでもなお残っていくという面があるのではないか、こういうふうに思います。  ただ、為替相場が円高でしかもそれがファンダメンタルズを相当反映している、そういう状態であるということになりますれば、これは先ほど来お話をいたしましたような構造的な、例えばアメリカはどうしてもその輸入を不可欠とするようなそうした構造的な日本からの輸入である。こういうふうなことになりますれば、たとえその収支じりは差額が残りましても、それは日本に対する保護主義をとるとか摩擦が非常に激化するとか、そういう上においては非常に違ってくる、非常に緩和されてくる。現実に収支のバランスの差が残らないというようなことになるということが難しい以上は、やはりそういう摩擦というものの程度を薄めるという方向が目指すべき方向である、かように思うわけでございます。
  207. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 次に、この円高の国内の中小企業に対する影響についてであります。  中小企業庁の方で、十月初旬時点での影響について、これは資料をもらいました。また、それに対する対策の内容についてこれも資料をもらいました。ただ、十月時点ですから大分これは状況は 現在とは違っているんじゃないかと思います。それできのう聞いてみたらば、その後の調査はまだできていない。  そこで我が党は、政府よりも先に進みまして、一昨日新潟県燕へ調査団を派遣いたしまして、実情を実際見てまいりました。市長やそれから業界の代表あるいは特に下請ですね。ここでは大体従来も、後進国の激しい追い上げで仕事不足、収益性悪化が実際あったわけです。そこへ今回の円高の影響がもろに出まして、それでもう現にアメリカと日本の商社からの買い付け、新規契約がほぼストップしている。また、生産した分も出荷ストップ。そういう意味では、中小企業庁が十月時点でそういう影響がないと言ったのとは大分違って進んでおって、しかもそのしわ寄せが下へ下へと、このようにいっている状況であります。実際、今下請パーカ1も週休三日などの状況で、それからメーカーは下請に対して円高協力金の形で十月から工賃を一、二割さらに下げている。そして、今下請では首切りが実際出始めている、こういう状況であります。  そこで、皆さん言っておったことはこういうことなんです、大臣。政府主導の円高政策、これがしかも長期に続くことが予想される。したがって、政府の政策の結果なんだから、今まさに国策で殺されかかっている者に対してはやはり国の責任で救済策を考えるべきではないかということで、大変具体的な要望があったわけです。この具体的要望は、これはもう時間の関係で答弁も要りません、わかっていますから。十一月段階で中小企業庁が考えたこの対策ではとても追っつかないんです。  どういう要望があるかと申しますと、緊急対策として第一に、低利無担保の緊急特別融資をぜひともお願いしたい。既に借金がもう多額で担保能力もない、こういう点ではぜひともこれが必要であるということになります。  それから第二に、既往貸付金、これは国民金融公庫などたくさんありますが、その返済期間の延長、そして猶予。  そして三番目に、原材料のステンレス鋼材の独占価格の引き下げ、これは輸出用と国内用価格差の是正をしてほしい。  こういう要望があります。まさにこれは国策としてひとつ救済をすべきじゃないか、こう思いますが、御答弁いただきたいと思います。
  208. 吉田正輝

    政府委員(吉田正輝君) 先ほども大臣が御答弁されたところでございますけれども、最近の円高傾向は当面直ちに全体として見た日本経済に対して大きな影響を及ぼさないというふうに考えられますが、しかしながら、一部の中小企業については円相場の上昇によりまして経営環境は厳しくなっているというような実情もあろうかと思います。  そこで私どもといたしましては、国民公庫等政府中小金融機関に対しまして、中小企業の経営の実情を踏まえて適切かつ機動的に対処するよう指導しているわけでございます。この適切かつ機動的に対処するということは、先生が先ほど申されましたように、個々の中小企業者の経営の実情に即しまして必要に応じて既往債務の返済条件を変更するとか、あるいはその返済期間の延長とか、あるいは融資に当たって審査、実行を迅速に行うというようなことも含まれているわけでございます。この三機関への指導につきましては全国各支店に通知が行っておるわけでございまして、そのような措置を講ずることで対処いたしたい、かように考えております。  したがいまして、ただいまのところ、直ちに当面、中小企業に対して低利無担保等の緊急特別融資を実施する考えはございません。しかしながら、今後とも為替相場や中小企業の動向を十分注視して適切に対応してまいりたい、かように考えているわけでございます。
  209. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 通産は来ていませんか。
  210. 土居征夫

    説明員(土居征夫君) ただいま大蔵省の局長さんからお答えがありましたように、最近の円高に対しましては、当面の措置として、中小企業者に対して、個別の経営の実情等を踏まえながら、現行制度を前提として適切かつ機動的に対処するように、政府系三機関に通知を出したところでございます。  今先生御指摘がありましたように、その後の状況につきましては、現在円高の影響につきまして取りまとめを行っているところでございまして、この結果等も踏まえまして今後の情勢の推移を十分見ていきたいというふうに考えております。
  211. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 その後の推移を見てといっても、もう大分たっておるんですが実際はまだ十分調査ができていない。しかし、これはやっぱり緊急にやるべきだと思うんですね。しかも、一番求めているところに手を差し伸べるべきである。銀行局長の今の答弁では、一部私の要望も認めてもらったけれども、しかし低利無担保の緊急特別融資、これに対しては余り積極的でないようですね。-  この辺はどうですか、通産の方としてはこういう対策も実際進めていく意思はありますか。  そして大臣に。これはもう大臣、国策ですからね、しかも一番中心であったわけで、こういう状況を放置してはよろしくない、これはもう間違いないと思うんですね。そういうことに対しての大臣の決意もひとつあわせて聞きたいと思うんです。
  212. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私の方から決意ということがございますが、先ほどもお答えいたしましたように、私は現実問題として、日本人の英知とか、あるいは実際三百六十円が三百八円のスミソニアンレートになったときの経験とかからいたしまして、その柔構造というのは、対応できるであろうということを信じております。しかし、おっしゃいますような中小企業問題につきましては、これは本当に注意して見ておいてあげなきゃいかぬぞよという気持ちは十分にございます。それがための対応策というものも絶えず、もちろん金融の面でありますならば我が方で言えば銀行局になりますが、中小企業庁と絶えず連絡をとりながら詳細な注意を払っていかなきゃいかぬ問題だという考え方は私も持っております。
  213. 土居征夫

    説明員(土居征夫君) 先ほど申しましたとおり現在円高の影響について取りまとめを行っている最中でございますので、その結果等を見て今後の情勢に対応いたしまして適切な対応を検討しなきゃいかぬというふうに考えております。
  214. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 日銀総裁、もう結構です。  次に税制問題でありますが、午前中も税調会長の方から納税思想の普及という発言がありました。私がこれから指摘したい点は、それ以前の問題、国民にそういうことを要求する前の問題として、むしろ税務署自身の中にそれに逆行するようなことがあるのではないかということで二、三の例をひとつ指摘したいと思うんです。  一つは、福岡の筑紫税務署で修正申告書偽造事件というのがあった。これは偽造したのは税務署員です。この納税者は五十七年から五十九年三年分で十三万二千円の督促状を受けまして、びっくりした。調査では要するに是認されて別に間違いもない、正直だということだったんですが、督促がありました。それでびっくりして飛んでいったらば、その担当署員は、結構です、それは破り捨ててくれと言った。けれども、さらにわかったことは、破り捨てたはずのその十三万二千円をその署員が払ったんですよ。  そんなばかげたことがあるかと言うけれども、実際あったんです。ですからこれは問題になりまして、総務課長はそれについては事実を認めたんです。この行為はやっぱり文書偽造罪ですし、またこれは税務行政の信頼を失わせることなんです。問題は、今の税務署側の態度を見ていますと、事実は認めているけれども、これはその署員の個人の問題だと個人の問題に帰しちゃっているんです。そんなものじゃないですよね。もしその納税者に同情したのなら、何もそんな修正申告書を偽造しないで、もっと低く是認すればいいんです。低い税額にしておけばいいんです。なぜやったのか。これは言うまでもなく、――恐らく正直なまじめな人だと思うんだ、この署員は。上から ノルマがあったんじゃないか。そしてそれを達成するために、調べたけれども出てこないので、しようがないんで自分で自腹を切った。  大臣、この事実は認めると思うんですよ。まず、事実かどうか。大臣にどういう報告が行っているか。そして問題は、こういう事実をなくするにはどうしたらいいのか。また、どうしようとしているのか。これについてお答えをいただきたいと思うんです。
  215. 冨尾一郎

    政府委員(冨尾一郎君) ただいま御指摘の事件につきましては、事実を調査いたしましたところ、次のような事実を確認いたしております。  筑紫税務署の一職員が、ある納税者の所得税の調査がうまくいかなかったのでその納税者の修正申告書を無断で作成、提出をし、これに伴って納付することとなった税金を自分で負担して払ったということでございます。  本件につきましては、国税の問題を取り繕っても後日地方税との関連で必ず発覚することが明らかであるなど、通常では到底考えられない極めて特殊異例な事件と私ども考えております。  なお、税務署では調査着手から処理が終わるまで事案の管理に万全を尽くしておりますけれども、再発防止の観点からさらにその徹底を図ってまいりたいというふうに考えております。
  216. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 事実をお認めになったので、ですからそういう問題がやっぱりどうやったらなくなるかということなんです。税務署自身納税者の信頼を失わせることはやっぱりあちこちであるんです。ただ、そいつを指摘しましても、どうも部下をかばう体質が税務署にはあるようですね。  きょうの毎日の「余録」という欄の一番後に、前の福田国税庁長官の発言を引用しまして、「国税庁は、後から手と口を出す癖がある」、こう言っていますが、私に言わせますと部下の不当な行為をかばう癖があるというぐあいに思うんですね。  一つは、私自身が高岡税務署へ行って指摘した点ですが、これは納税者を尾行したんですよ、いわば犯罪人扱いした。それがこういうテープで具体的に明らかなんだけれども、対応した副署長、総務課長はそれを認めないんですね。  それからもう一つ、これもテープで確認されている事例ですが、これは帯広の税務署なんです。ここでは、ある納税者調査官がやってきまして、三年分の調査をしたい、調査に当たっては民商に入っているといろいろ不利益になると。不安になって、逆にこの人は民商に相談したんです。そして今度調査に来たときに、民商に入っていると不利益になるというけれどもどういうことなのかと。話しているうちにだんだんエスカレートしまして、民商に入っていること自体問題だと思いませんかと。これは要するに、共産党に入っていること自身問題じゃありませんかというのと同じことなんですよね。これもやっぱりテープに入っていますが、最初総務課長は事実を認めた。ところが後で、そんな事実はないとこう言うんですよ、事実は注意されているけれども、やっぱり部下をかばうためにそういうことがある。私は事実は事実とはっきり認めて、さっきの直税部長のように、そういうことはもうないように、再発防止のためにやりますと言う方がよっぽど納税者が納得する。現に私自身が行ったってそうなんだから。  そういう点では、どうですか、五万職員本当に一生懸命やっています、恐らく余りの一生懸命さが余っちゃって納税者の上にいろんなことをやってくると思うんですが、これでは逆に信頼を失うのじゃないかという点で、ひとつこれについての大臣の御見解を承りたいと思うんですが。
  217. 冨尾一郎

    政府委員(冨尾一郎君) その前に私の方から御説明をさせていただきます。  帯広税務署で御指摘のような職員の発言調査の際にあったかどうかということにつきまして民主商工会との間でトラブルがあるということは、私も承知をしております。
  218. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 具体的な事実は私は知っておりませんのでその事実に基づいてお答えをする立場にはございませんが、税務職員は常日ごろ信頼を受けるような行動をしなきゃならぬ、一般論としてそのように考えております。
  219. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 冨尾さん、トラブルがあると言うけれども、これも現にテープにあって、総務課長はそのデーブを聞いてその場であっと認めて一たん謝ったんだけれども後でやっぱりひっくり返すという、そういうことが多々あるんです。  私は、こう言ってはなんですが恐らく全国会議員の中では一番現場の税務署を調査というか、税務署が納税者調査するから私はその税務署を調査するというそういう関係になっていまして、よく回っていまして、それで随分あるんですよ。ですからひとつ改善の方向をお願いしたい。  もう時間がないのであと一問だけ。本当はたくさんあったんだけれども時間がないのてしょうがないです。  それで、六十一年度予算の要調整額をどうするのか。中期展望では三兆七千三百億円、概算要求では二兆二千百億円ですね。大臣のこれについての見解というかお考えを聞いて、私の質問を終わりたいと思います。
  220. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに大変厳しい状態にございます。財政改革を引き続き推進していくために、これからの予算編成過程におきましてそれこそ聖域を設けることなく各種経費の節減合理化と、全く援軍来らずという状態でございますから、厳しく対応していかなきゃならぬというふうに考えております。
  221. 井上計

    井上計君 質問を幾つか通告いたしておりましたが、最初にお断りいたしますけれども、ちょっと私の個人的な都合で質問時間を短くいたしまして、直ちに退出をいたしますので、大臣、また委員の皆さん方にはお許しをいただきとうございます。相続税の問題あるいは法人税の問題等幾つかお尋ねするつもりでありましたが、したがって二つだけに絞ってお尋ねをいたします。  最初は、既にもう同僚委員から多く出ておりますけれども円高に対する緊急対策の問題であります。  今、近藤委員からはいろいろと御質問が、また実情等についてのお話がありました。私どもと共産党さんとは余り意見が一致しないのでありますが、この問題については全く意見が一致であります。ただ問題は、昨日、私ども党として大臣に申し入れをいたしました。十分御承知をいただいておりますが、現状については余り問題がないという状況があります。しかし、問題はこれからどうなるかという問題でありますから、これについては先ほど銀行局長の御答弁もありました。私も、現状についてはということであるならこれは銀行局長の答弁でもよろしいかと思いますが、要はこれから、現在成約の終わったもの、これからの新契約にはもう重大な影響があることは事実でありますから、特に御配慮をいただきたい。  また、同僚委員からお話がありましたが、今度の円高政府主導というよりも、もっと率直に言うと政府がつくり出したものであるわけでありますから、したがって、これによって生ずる被害を受ける業者等に対しては当然政府が責任を持つべきである、こういう考え方が非常に各方面で強くなっております。したがって財源のいかんという前に、財源問題を論ずる前に、この問題をどうするかということを特にひとつ要望しておきます。時間がありませんからこの問題についての御答弁は結構であります。  さてそこで、次に、減税、そのためには財源措置として増税をせざるを得ない、こういうふうな論議が続けられております。これも当然そういうふうな論議はわかるわけでありますけれども、そこで私は提言をいたしたいと思うんです。増税をしなくて財源をという提言であります。それはマル優の問題であるわけであります。  マル優制度が存続をする、そのためには来年の一月から限度管理を厳重にするということでありますけれども、果たしてそれで不公平税制が是正できるかどうかということになりますと、私は疑問を持っておるわけであります。現在、不公平税 制の最たるものとしてマル優制度ということが言われておりますが、限度管理を厳重にしたとしても、ことしのうち既に二年あるいは三年あるいは五年の定期預金をしておる人は、その期限が来なければ実は限度管理に厳密には入らぬわけでありますから、依然として残っていくということになります。それからさらに、低率分離課税をやった場合にはマル優制度が事実上廃止になってまいりますから、当然そこに多くの反対や批判が起きることはこれは当たり前であるわけであります。  私が申し上げたいのは、もう既に皆さん方御承知でありますけれども、現在非課税貯蓄が郵便貯金とそれから銀行その他の金融機関の預金を合わせますと二百四十兆円あります。二百六十八兆円という非課税貯蓄残高のうち、証券等がありますから、二百四十兆円あります。だから大ざっぱに言いますと、二百四十兆円が厳密に正式な正しいマル優じゃないということはこれはもう皆さん方おわかりだと思う。当然大蔵省もお考えになっておると思いますが、実は私の大ざっぱな試算でありますけれども、二百四十兆円に対する利息、これはいろいろあります、郵便貯金の普通、あるいは定額、あるいは定積み、あるいは銀行預金の普通、通知預金、定期も三月、半年、一年、三年といろいろありますけれども、大ざっぱに言って平均の利率を四・五%とすると、二百四十兆円の現在の非課税の郵便貯金並びに銀行預金等々の合計は、利息は十兆八千億円支払いをされておる、こういう計算になります。十兆八千億円の利息に対して、現在分離課税三五%でありますから、仮にこの十兆八千億円の全部に一応三五%の分離課税で金融機関で徴収するとすると、三兆七千八百億円というものが出てくる計算になります。  そこで、現在のマル優、正しいマル優というものが一世帯当たり幾らあるかという計算でありますが、いろんな資料等からの概算でありますが、大体私は四千万世帯で計算をして、一世帯当たり二百万程度であろう、こういう計算を実はいたしました。とすると八十兆円にしかならぬわけでありますから、先ほど申し上げた二百四十兆円のうち本当に正しいマル優該当預金というのは八十兆円程度しかない。したがって、百六十兆円というのは何らかの形でのマル優のはみ出し、あるいは匿名、仮名等々によるところのいわば不正預金と考えてもいいのではなかろうか、こう考えます。  そこで、一応三五%の分離課税で取りましたものをいわば正しいマル優の該当者に対しては還付するというやり方。還付するといたしますと、八十兆円を四・五%で計算すると三兆六千億円の金利、その三五%でありますから一兆二千六百億円、マル優該当者からも金利を三五%分離課税で取っておるという計算になりますから、それを差っ引くと、二兆五千億円というここに財源が出てくる、こういう計算になるわけであります。大ざっぱな計算でありますから、これが正確だということは言いませんが、少なくともかなりの者がいわばマル優に名をかりて隠れて非課税の貯蓄をしておるという事実から見て、私はこういうふうな、当たらずといえども遠からずという数字が出てくるのではないか、こう考えるわけであります。  したがって、私がここで最後に申し上げたいのは、まず一〇%の仮に低率分離課税がなされたとしても、やはりそこに不公正が残ります。隠れておる人は、片方では分離課税三五%、片方では一〇%でありますから、そこにやはり差があるわけでありますから、不公正が残ります。  それから、限度管理をさらに厳重に進めていけば、それなりのまた弊害が起きます。これはグリーンカード制が実施されるというふうなことで、いわばそのようなアングラマネーといいますか、そのようなものが随分と各方面に逃避をして、ゼロクーポンが非常に売れたりあるいは金が大変高くなったりというふうな当時の弊害がまた再び起きるおそれもある等を考えると、私は、そのような弊害をなくして、こういう方法でいくことの方がむしろベターではないか。もちろん事務的にはいろいろな問題があろうかと思いますが、現在でも生命保険の控除であるとか医療控除等々によっての還付があるわけでありますし、したがって年末調整による還付あるいは確定申告による還付、さらにそのようなものができない人は証明書を持って、銀行、金融機関の三五%の徴収の証明書、そして本人がマル優確認の法的な書類、文書を持って税務署へ行けば還付されるということになれば、余り大きな問題は起きないのではなかろうか、このようなことを考えて、時間がありません、これだけ提案をしますけれども、ひとつ大臣あるいは政府委員からお答えをいただけたらいかがかと、こう思います。既にこういうふうな問題を検討されておったかどうか、あるいは検討された結果とすれば、なぜこのようなことが表面に出ていないのか、それらのことについてもお伺いをいたしたいと思います。
  222. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 後ほど主税局長からお答えさせますが、税調でも出た議論でございます。私どももそういう議論のあることは承知しております。これは私個人がそのとき考えたことで、世田谷がちょうど七十九万、我が島根県と一緒でございます。鳥取県が大田区と一緒というふうなものでございますが、さあそこで還付の手続が現実問題としてどれだけやれるだろうか。田舎ですと本当は役場が手伝いしたりもするだろうと思うんですが、そんな疑問を持ったことがございます。  私の答えはそれだけにしておいて、主税局長からお答えいたさせます。
  223. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 利子配当課税につきましては、昭和五十年代に入りましてほとんど毎年取り上げられておるところでございます。特に昭和五十五年度改正におきましてはかなり基本的な検討が行われ、その中におきましても、委員御指摘と申しますか御提案の、高率で源泉徴収をいたしまして還付を申し上げる、そういうのも一つの案として取り上げられ検討されたところでございます。  ただ、ただいま大臣から申し述べましたように、どうしましても三五%となりますとかなりな還付者になるのではないか。そういたしますと、現在の執行体制の中で、現在でも約五、六百万件の還付件数が確定申告時期に税務署に参っておりまして、その応対にかなりな手間、コストをかけております現在、還付事務の効率化と申しますか、そこの対処の方向につきまして何らかの具体策がございませんと執行上なかなか大変かなといったような議論もございまして、当時の時点としては一つの現実的な方向としては採択されなかったわけでございますが、ある程度の率の源泉徴収を行い非常に効率的な還付手続を案出して対処するというのは、従来からある議論であり、現時点でも一つの有益な御提案だとして私どもは受けとめておるわけでございます。
  224. 井上計

    井上計君 還付のやり方、手続等が大変だということはよくわかります。しかし私は、現在進めておられる限度管理のいわば厳正といいますか、それを進め、さらに一〇%の低率分離課税をやることも大変なやはり作業だというふうに思います。コンピューターを十分駆使することによってかなり事務量的には処理できる問題もあると思いますし、それからまた、三五%の分離課税の徴収義務者、二〇%の確定申告、総合申告の人もそうでありますけれども、金融機関がやっておるわけでありますから、あるいは還付についても金融機関に代行さすという方法もとれるわけですね。これについてはもちろんすぐ結論をというわけじゃありませんけれども、ひとつぜひ具体的にお考えいただく必要があるのではなかろうか。  実は、三年前にこの問題を私ある学者と話し合ったときに、経済学者で大学の教授でありますが、大変賛成をしました。その後、大阪の大学の教授も、ちょっと名前を忘れましたけれども新聞にこの案を一遍発表したことがありますけれども、大蔵省当局で表面立ってこれを検討されておるということは聞いたことがないものでありますから、ひとつ具体的にこの問題を検討した。  そうすると、今申し上げたように、私のこの計算でいくとざっと二兆五千億円という財源が出てくるわけですから、これは減税にも内需の拡大に も随分といわば財源として有効に役立つのではないか、こう考えますので、大臣、御答弁は要りませんけれども、それだけつけ加えてひとつ御要望申し上げておきます。  最初にお断りしたように、申しわけありませんが、お許しください。
  225. 青木茂

    ○青木茂君 私が最後ですから、できるだけ手短に、いわゆる老人保健制度の見直しと税制とのかかわりを中心として御質問を申し上げます。  先ほどから国策という言葉が出たのですけれども、どうも日本の政治の国策というのはサラリーマン犠牲というのが国策じゃないかというのが、あながち私の勘ぐりだけでもないような気がして仕方がないんですね。この老人保健制度の見直しというのも、まさにそのサラリーマン儀牲の最たるもの、最も露骨なものだというふうに考えざるを得ないわけなんですけれども、まず老人保健問題の見直し、例の案分率一〇〇%の問題、これについて厚生省はこれからこれをどう受けとめられるおつもりなのか、そこからまず御質問申し上げたいと思います。
  226. 羽毛田信吾

    説明員羽毛田信吾君) お答えを申し上げます。  今先生のお尋ねのございました老人保健制度の見直し、なかんずくその中での加入者案分率の見直しの関係についてのお尋ねでございますが、先生今、サラリーマンのいわば犠牲を強いるものではないかというお尋ねでございましたけれども、実は今回老人保健制度の見直しを、六十一年度の概算要求に当たりまして、その考え方を盛り込みまして財政当局の方に今出しておるところでございます。私どもは、この老人保健制度の見直しの基本の考え方と申しますのは、やはり負担の公平という観念に立ちまして、これから本格化をいたします高齢化社会に向けて、いかに老人保健制度長期的に安定した制度に持っていくか、こういうために改正をいたすという視点に立つものでございます。  その中の一環といたしまして、御指摘のございました加入者案分率の問題も取り上げておるわけでございまして、現行の制度のもとにおきましては、やはりサラリーマンであられた方、現役時代は被用者保険に入っておられますけれども退職をされると国保の方に入られるというようなこともございまして、どうしても国保の老人の加入率というものがうんと高くなります。  現状を申し上げれば、健保組合と国保との間に約四倍の開きがございまして、またそこにもってきまして、老人の方々というのはどうしても医療費が高くつくということで、医療費が他の世代に比べると約五倍かかります。五倍かかる老人を四倍抱えたものにいたしてこの老人保健制度なりあるいは医療保険制度なりを運営していくことになりますと、大変そこの基盤が揺らいでくるということでございまして、そこらの格差というものが大変拡大をしてくる。こういう状況下におきまして、やはり制度の安定を図り、長期的に高齢化社会に対応するためには、そこらの著しい負担の不均衡というものの公平化を図る必要があるだろうということで、今先生御指摘のございましたとおり、今回老人保健制度をいろいろそのほかにも総合的な見直しをするという視点でやっておるわけでございます。  その一環といたしまして、加入者案分率につきましても段階的に引き上げるという考え方で、六十一年度は八〇%ということでございますけれども、最終的にはどの保険制度、医療保険制度も同じ割合で老人を抱えているという形にして負担することとして、老人医療費の公平な負担を図っていこう、こういうような趣旨からやっていこうという趣旨でございますので、その点を御理解いただきたいというふうに思うわけでございます。
  227. 青木茂

    ○青木茂君 大変優等生的な御答弁ですけれども、国保の方には国庫補助がございますから、同じ割合、例えば六十七人としたって、国庫補助があれば国保は三十人ぐらいしか負担しないのに健保は丸々六十七人負担しなきゃならぬ、同じ割合といってもいろいろある。  しかし、この問題のねらいはそこにあるんじゃないんですね。つまり、いわゆる退職者医療制度というのができた。退職者医療制度は、国保の中におる被用者OBを抜き出して退職者医療制度をつくった。で、その費用は主として被用者保険が負担をすると。それだけ国保の負担が軽くなるから国庫負担が減るだろうと。ところが、退職者医療制度に大体四百六万人ぐらいが来るであろうと思ったやつが、実は二百六十七万人しか来なかった。国庫の方は四百六万人ではっさり国保に対する援助を切った。国保に対する援助を切ったものだから、国保がびっくりしちゃって厚生省にねじ込んだ、二百六十七万人しか出ていかなかったのに四百六万人分の国庫補助を切られてどうなるんだと。それで厚生省も弱りに弱った。そうしたら、いわゆるサラリーマン保険で分捕ればいいじゃないかということになったのがこれが実情でございまして、この加入者案分率を一〇〇%にすれば、とにかくサラリーマン健保は、これはすべて政管、組合健保を含めまして四千億近い持ち出しになるわけです。これに対して、保険料は千七百七十三億減って、国庫負担は二千百九十九億減るわけです。つまり、サラリーマンの保険制度から分捕ることによって国保も文句を言わなくなる、国庫負担も減る、これが実情じゃないんですか。そこのところはどうなんですかね。
  228. 羽毛田信吾

    説明員羽毛田信吾君) 先生今、今回の老人保健制度の見直しが退職者医療の見込み違いにより国保に穴をあげたという、そのことへの穴埋め策ないしは国家財政全体の財政対策という視点から出たものではないかという御指摘をいただいたわけでございますが、先ほど御説明申し上げましたとおり、私どもは今回の老人保健制度の見直しといいますのは、あくまでもいかに今後高齢化をしていく老人問題、国民みんなで考えていかなきゃならない老人問題に対処いたしまして、公平にその老人の医療費の負担考えていくか、そういう視点で今回の改正を意図したつもりでございます。  ただ、もちろん結果におきまして、今御指摘の数字的にはやや異同がございましたので、必ずしも数字は明確ではございませんでした。少し違っておると思いますけれども、数字はいずれにいたしましても、確かに財政的な面の効果等もありましたし、結果において国保制度にもそれなりの影響を与えるということは事実でございますけれども、私どもは、あくまでも今回の老人保健制度の見直しそのものは負担の公平という視点に立ちましての制度改正であるという点を御理解いただきたいと思います。  なお、退職者医療制度にかかわります部分につきましては、国保課長よりお答え申し上げます。
  229. 青木茂

    ○青木茂君 そうすると、私の今もうし上げた、退職者医療制度に関する穴埋めをサラリーマンからさせよう、これは明確に御否定なさるわけですね。
  230. 羽毛田信吾

    説明員羽毛田信吾君) その点は繰り返しになりますけれども、私どもの今回のいわば老人保健制度見直し、加入者案分率見直しの眼目は、いかに老人の加入率というものの格差を是正して負担の不均衡の是正を図っていくかという点にあるわけでございますけれども、結果におきましてそういう財政的な効果がある面は否定はできませんし、そういう側面から実際負担増になる部分が現行と比べてどこだとおっしゃれば、先生御指摘のとおり、それはいわゆる被用者保険サイドでございますし、その点によって負担軽減が図られるのはどちらかといえば市町村国保のサイドであることは、これは否めないところであろうと思います用意図を申し上げました。
  231. 青木茂

    ○青木茂君 否定なさったのか半ば肯定なさったのかよくわからないけれども、これは後から社労でゆっくり議論のあるところだと思いますから、ここは大蔵ですから次に進みます。  私は、国保が言われるほど赤字なのかなあということについては、少し疑問があるのですよ。国保の保険料、保険税ですね、保険税の徴収というのは、やはりあの中に所得割というのが四〇ない し五〇%ある。所得割である以上、これは住民税が基礎になっている。その住民税はやっぱり所得税に連動するんですね。言われるようにクロヨンという割合があるかどうかは別問題といたしまして、もしそこに納税の漏れというものが仮にあったとするならば、私は国保財政というものがその分だけ詰まってくるということは避けられないことだと思うわけなんですよ。だから、そういう意味において、これはクロヨン税制というものはいろんなところにいろんな副作用を出してくる。  これにつきまして、もう連日の新聞においても脱税記事の出ない週はない。出ない月はないと言いたいところなんだけど、出ない週はないくらいいろんなところで脱税記事が出るわけですね。これはやっぱり実調率が低いということなんですけれども、税務当局にお伺いをしたいんですけれども、実調率を上げるということは、人間が少ないからとてもじゃないがこれ以上できないという御答弁でしょうかね、依然として。ここをちょっと。
  232. 冨尾一郎

    政府委員(冨尾一郎君) 私どもとしては、適正公平な課税を実現するためには、申告納税制度のもとでまず納税者に正しい申告をしていただくということが一番肝心だと思っております。こういうルールを守って申告をしていただくようにいろんな形で御相談や御指導申し上げるとともに、これを守らない悪質な納税者に対しましては調査をしていかなきゃいかぬという、まさに先生御指摘のとおりでございます。  現在、申告所得税、営庶業につきましては四%程度の実調率、それから法人税につきましては一〇%程度の実調率でございますが、納税者数がこの十年間で申告所得税につきましては約一・五倍ぐらいの増加でございます。このような中で何とか実調率を維持するということで、私どもとしてはできるだけ内部にかかります仕事を効率化し合理化して、外に出て調査をする事務量を確保するという方向で鋭意検討し、努力してまいった結果でございます。これからも私どもとしては、基本的にそういう方向で引き続き努力を続けてまいりたいというふうに思っております。
  233. 青木茂

    ○青木茂君 実調率、これ以上人員の関係で上げることはできない。そこに工夫がないかどうかということは私自身も一つの意見を持っておりますが、時間の関係で省きますけれども、ただ一つここで申し上げておきたいことは、実調率が法人一〇%、個人四%、もうこれ以上どうしようもないという状況の中において、仮に大型間接税なるものを導入した場合にどうなるのかといえば、これはアメリカのいわゆるレーガン税制の報告書にもありますように、二万人税務官吏を動員しなきゃ間接税の導入はできないということがあります。アメリカが八万人ですよ、アバウト八万人。八万人プラス二万人ふやさなければ間接税の導入はできないんですというようなレポートがございますね。  だから、いいですか、実調率を上げれないほどの窮屈な人員の中で間接税が果たして導入できるかどうかということについては、僕はこれは疑問だけ提出して、次へ移ります。  国保の財政が赤字だということです。しかし、国保に対してはあるんですね、国庫補助が。その国庫補助はやっぱり税金からです。その税金のメーンペイヤーはやっぱりサラリーマンなんですね。だから、一方において国保の財政が赤字だからサラリーマン健保から取ればいいんだと。他方においては国庫補助がある。その国庫補助のメーンペイヤーがサラリーマンである。二重にサラリーマンは犠牲ということになってきておるわけなんです。しかも国民健康保険は非常に滞納率がふえていますよね。つまり、国保が赤字だ赤字だと言う前に、滞納率がどんどんふえるということを何とかしてもらわなければいけないし、それから、赤字だと言いながら、僕は計算の方法によって実は黒字じゃないか。例えば五十八年度、全体の市町村の九六%ぐらいに当たる三千一百四十八の市町村が黒字、全体でも千八百億円ぐらい黒字になっている。それが今年度、五十九年度に半分ぐらいの黒字に落ちるというのが退職者医療制度での見込み違いなんですよ。  だから、そういうことを全部いろいろ勘案して、国保の経営努力というのか、国保で直すべきものは直して、それからサラリーマン健保がどれだけの援助をするのかということを考えてくださるならば、それは確かに老人というのはみんなの共通の問題だから、老人医療はそれは納得できぬことはない。できぬことはないけれども、国保のあれをそのままにしておいて国保がどうだから健保どうしろということだから、私はサラリーマン犠牲ということを思わざるを得ないということなんです。その点につきまして、厚生省の御決意をまず伺ってみます。
  234. 近藤純五郎

    説明員近藤純五郎君) クロヨン問題と国保の関係でございますけれども、先生御承知のように国保の被保険者と申しますのは必ずしも自営業者とか農民だけではございませんで、今では半数近くが被用者そのもの、被用者とそれから年金受給者でございまして、いわゆる給与所得者でございます。したがいまして、こういう人たちは、被用者保険のサラリーマンと同様の所得の把握がされているわけでございます。  それから、保険料の取り方につきましても、所得割だけではございませんで、人頭割とか資産割がございますので、かなりの部分が所得の把握とは関係ない賦課方式ということでございます。  それで、国保の収納率の問題でございますが、年々確かに下がっておりましたが、五十九年度では若干上がるという見込みでございます。国保が収納率が低いという原因の主なものでございますけれども、この制度の特徴といたしまして源泉徴収ができないわけでございます。したがいまして、こちらから取りに行かないとだめだというふうなことがございますし、国保は医療保険制度の全体の下敷きになってございまして、被用者保険から漏れた人たちを全部受け入れるということでございまして、この中にはやはり納税意識と申しますか、規範意識が乏しい方もいらっしゃるわけでございまして、こういう人たちの収納というのが非常に難しいという問題があるわけでございます。こういう問題がございますので、この関係は収納率の関係でございますから、収納ができなかった分は他の被保険者に移るということで、その保険者の中での負担の不公平ということもございますので、この辺は私どもとしましても十分考えて、保険料の収納率の向上三カ年計画ということで今叱咤激励いたしまして、この辺の経営努力といいますものを十分やりたいというふうなことで現在市町村を督励しているわけでございます。
  235. 青木茂

    ○青木茂君 そういう御答弁があるだろうと思いましたよ。なぜかといいますと、国保のナショナルセンターが出しているパンフレットにそのまま書いてあります、それは。そうすると、どうも国保と厚生省さん少し仲がよ過ぎるというふうに考えざるを得ない。それは言葉のあやで、いいですけれども。  とにかく、ここで、一方が赤字だから黒字から埋めろ、国鉄の赤字を私鉄の黒字から埋めろ、あるいはアメリカの生産性向上努力の不足でアメリカ製品が売れないやつを日本の円高でカバーしろ、こういうことでやったら、ばかばかしくて一生懸命黒字を出せないじゃないかという気がしないでもないと私は思います。どちらにしたって、この老人保健制度の見直しは、サラリーマン健保の犠牲というのか、負担増によって成り立っていることは事実なんです。  そこで、最後に大臣にお伺いしますけれども、今の論議をどういうふうにお聞きいただいたかということが一つ。  それから、サラリーマン世帯は、黒字だから分捕れ分捕れというほど楽じゃないんですよ。例えば、総務庁の六十年度の家計調査を見ましても、非消費支出、いわゆる税金プラス社会保障の負担分、これの合計は、いわゆる平均家庭、四人家族ですね、四人家族の総食費に相当するんですよ、これは外食は除きますけれども。つまり、非消費支国会計六万五千六百七十一円、それから総食費 額六万四千一百七十円、これだけの負担なんです。それから、社会保障費だけとって考えましょう。社会保障費二万七千五百五十四円、これはサラリーマン家庭の主食ブラス肉類プラス魚類、合計二万七千五百四十四円、それとタイなんですよ。それぐらいの負担過重なんですよ。その負担過重が、制度が変な方に変わることによってまたどんどんふえていったら、これはサラリーマンとしてはたまったものじゃない。つまり、私が非常に皮肉っぽく、何か日本の国策はサラリーマン犠牲じゃないかというふうに申し上げたのは、必ずしも私のひがみだけじゃない、サラリーマン全体の不平不満だということですね。そういう事実を踏まえまして大臣の御見解を承って、私の質問を終わります。
  236. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いわゆる老人保健制度、これは厚生省から丁寧にお答えをいただきまして、私もそばにおって勉強させていただいた、こういう感じでございますが、かねてから私も考えておりますのは、それは非常に古くて新しい、あるいは新しくて古いとでも申しますか議論でございますけれども、いわゆる健康保険制度の歴史的発展過程からくれば、それは最初は大企業の健保組合ができれば身体検査をして入りますし、病気をするころになればおやめになりますし、したがって、いい内容になるな。その次が政府管掌で、それは真ん中ぐらいだな。その次が国民保険で、給与そのものも低い。一応法律では掛金率だけ決まっておるとすれば、それは病気は余計するわ、保険料は少ないわということになれば赤字になる。だから、やっぱりいつの日か日本統一保険をやらなきゃならぬ、こんな議論が前からあった議論でございます。  そこでいろいろ、厚生省はやっぱり立派だなと思って今聞いておりましたのは、結局老人問題というのは国民連帯の中で考えるべきだ、こういうような考えが基礎にあるから今御説明になったような案ができたものだなと思って、乏しい知識しかない私でございますが、大変参考にさせていただいたという感じでございます。  一方、青木さんのおっしゃいます問題というのは、私もそれは、タックスペイヤーの大部分を占めるのがいわば給与所得者であるという限りにおいて、青木さんサイドの意見議論というのも成り立つ議論ではある。だからひがみだとは決して思っておりません。そうすると、それらをひがみとは思っておりませんが、そのような意見をはかれないような税体系というものはやはり考えていかなきゃならぬ。俗称クロヨンとかトーゴーサンピンとかいろいろある。そういうことを総合的に今度は税調の中で議論していただければ、だんだんいわゆるサラリーマンのお方が特に抱いておられる税に対する重圧感というものがなくなるような方向で進めていかなきゃならぬなというような、素直な感じで承っておりました。
  237. 山本富雄

    委員長山本富雄君) 本日の調査はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時四十九分散会