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1985-11-08 第103回国会 参議院 国民生活・経済に関する調査特別委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年十一月八日(金曜日)    午後一時四分開会     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         山田  譲君     理 事                 海江田鶴造君                 梶木 又三君                 水谷  力君                 糸久八重子君                 刈田 貞子君                 橋本  敦君     委 員                 岩上 二郎君                 岡部 三郎君                 亀長 友義君                 坂野 重信君                 沢田 一精君                 杉山 令肇君                 松岡満寿男君                 最上  進君                 山内 一郎君                 高杉 廸忠君                 竹田 四郎君                 安永 英雄君                 高木健太郎君                 矢原 秀男君                 吉川 春子君                 抜山 映子君                 青木  茂君    国務大臣        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       金子 一平君    政府委員        内閣審議官    海野 恒男君        経済企画庁調整        局長       赤羽 隆夫君        経済企画庁物価        局長       斎藤 成雄君        経済企画庁総合        計画局長     及川 昭伍君        経済企画庁調査        局長       丸茂 明則君    事務局側        常任委員会専門        員        桐澤  猛君    説明員        国土庁土地局土        地政策課長    河原崎守彦君        外務省経済局国        際経済第一課長  小川郷太郎君        大蔵大臣官房参        事官       塩田 薫範君        大蔵省主計局主        計企画官     田谷 廣明君        大蔵省主税局税        制第一課長    小川  是君        大蔵省国際金融        局短期資金課長  金子 義昭君        通商産業省産業        政策局産業構造        課長       大塚 和彦君        通商産業省機械        情報産業局航空        機武器課長    伊佐山建志君        資源エネルギー        庁石油部計画課        長        田辺 俊彦君        資源エネルギー        庁公益事業部計        画課長      林  昭彦君        資源エネルギー        庁公益事業部開        発課長      関野 弘幹君        中小企業庁長官        官房調査課長   上田 全宏君        中小企業庁計画        部計画課長    長田 英機君        労働省労働基準        局賃金福祉部企        画課長      松原 東樹君        建設省道路局有        料道路課長    藤井 治芳君    参考人        日本銀行総裁   澄田  智君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○国民生活経済に関する調査  (派遣委員報告)  (内需拡大等に関する件)     ―――――――――――――
  2. 山田譲

    委員長山田譲君) ただいまから国民生活経済に関する調査特別委員会を開会いたします。  国民生活経済に関する調査を議題といたします。  先般、当委員会が二班に分かれて行いました委員派遣につきまして、各班の派遣委員から報告を聴取いたします。  まず、第一班の御報告を願います。糸久君。
  3. 糸久八重子

    糸久八重子君 去る十月七日から九日までの三日間、山田委員長海江田水谷刈田各理事と私、糸久の計五名は、鹿児島県及び宮崎県に赴き、地域経済動向等について実情聴取並びに現地調査を行ってまいりました。  すなわち、十月七日は、鹿児島県庁において、県の地域経済県民生活長期的動向等について概要説明を聞き、また途中国分市のソニー国分セミコンダクタKK半導体等生産現場を見学、また喜入町を訪れ、日本石油基地KK石油備蓄設備現状説明を受けました。  翌八日は、国分市の城山公園に行き、眼下に広がる国分隼人テクノポリス建設未来図についての構想を聞きました。  次いで宮崎県に入り、都城市において地域総合保健医療センタ及び地域産業振興センター視察県庁においては、最近の人口異動高齢化実情等説明を受けました。  最終日の九日は、県南の日南市を訪れ、同市の飫肥城下町づくり視察、また宮崎総合運動場及び宮崎学園都市建設状況等視察いたしました。  これからの調査事項については、参加委員から現地の人々に活発な質疑等が行われましたが、それらにより明らかにされた点を含めて、以下報告いたします。  まず、鹿児島県の地域経済についてでありますが、その産業構造を見ますと、第一次産業のウエートが全国平均の三倍程度ある反面、第二次が二五%と全国平均の六割程度であり、その結果、一人当たり県民所得全国平均の七六%にすぎず、その順位は下から三番目という状況にあります。  県当局は、こうした事態へ対処するため、二十一世紀に向けての長期的な展望に立った新総合計画策定しようとしています。その計画では、発展可能性を、①交通通信網整備による遠隔性の緩和、②日本の南の地理的条件を生かしたアジア・太平洋諸国との緊密化③ぬくもりに満ちた地域社会郷中教育等を生かした独自の教育風土等に求めております。そして、この計画の成否を握るキーポイントと思われるのが国分隼人テクノポリスであります。  既に整備された鹿児島空港臨空国際産業都市としての実現を目指すもので、視察したソニーの電子機器工場や、京セラのニューセラミックス工場研究所などを核に、高度技術開発企業立地を求める一方、現在、県工業技術総合センター建設に着手しており、また人材育成センターの開設も予定していて、既に設立済み県産業技術振興協会と相まって着々と準備は進捗している状況にあります。  次に、喜入石油基地について申し上げます。貯油能力約六百万キロリットルの施設を誇り、年間三千万キロリッターの輸入の中継を行うなど、輸入コストの引き下げ及び備蓄の役割を十分果たしております。恵まれた自然環境との調和並びに地域雇用対策への協力努力が続けられている現状を見ることができました。  宮崎県では、地域社会高齢化への対応について努力の跡がうかがえました。  同県の六十五歳以上の高齢者人口比は一一・七%と全国平均より二%弱上回っており、在宅の寝たきり老人の数も二千百五十三人に達し、その比率は一・六%であります。県当局は、市町村の老人保健事業定着を図っており、健康相談事業延べ受講人員は十一万五千人に達するなど目覚ましいものがあります。  その実例として都城地域総合医療センター視察したのでありますが、同センター計画では、都城市のほか、周辺の町村を含めたモデル定住圏域包括医療機能にパラメディカルの養成及び地域保健福祉機能をも持たせようとしています。  すなわち、健康サービスセンター健康教育部門管理部門とを設けて検診、予防及び情報サービスを充実し、住民のみずから健康を守る姿勢を促しているわけですが、それと同じ場所にオープンシステム医師会病院及び救急医療センターを併設し、予防と治療を包括した体制整備しております。この整備に当たっては、同地域医師会と行政が一体となって協力しており、派遣団への説明においても「健康の里」をつくるという意欲が両者からうかがえ、心強く感じた次第であります。  なお、将来、リハビリセンター等を増設し老人医療機能をさらに充実していきたい、そのための用地等は既に確保しているとの説明がありました。  次に、飫肥城下町づくりについて申し上げます。昭和四十年代後半から日南市にある飫肥城復元市民運動が起こり、飫肥城の石垣、大手門、藩校の復元に総工費五億円余りを投じています。また同時に、メーンストリート周辺城下町の商人町として外観、雰囲気とも江戸時代風復元しております。この建設には二〇%割高の費用を要したそうですが、すべて個人負担で賄われたということで、市民町づくりへの意欲が感じられる次第であります。  最後に、宮崎学園都市建設について触れたいと存じます。  宮崎市の中心部から十キロ南の丘陵地宮崎市内に分散している宮崎大学統合移転を核に産・学・住の調和のとれた緑豊かな学園都市建設が進められています。既に移転済み農学部等を見学しましたが、三百ヘクタールという広大な地域開発だけに今後の資金面その他の問題も多いのではないかという印象を受けました。  なお、鹿児島県から、公共事業費傾斜配分本場大島つむぎ振興対策推進国分隼人テクノポリス建設促進痴呆性老人福祉対策充実強化等の、また宮崎県からは、宮崎大学工学部電子工学科の設置、新工業配置計画策定宮崎空港整備東九州高規格幹線道路整備等についての要請を受けましたが、その内容について要旨を作成いたしましたので会議録末尾掲載方委員長にお願いいたしまして、報告を終わります。
  4. 山田譲

    委員長山田譲君) ありがとうございました。  次に、第二班の御報告を願います。梶木君。
  5. 梶木又三

    梶木又三君 第二班は、安永委員矢原委員吉川委員及び私、梶木の四名で、去る十月七日から九日までの三日間、日本経済国民生活長期的動向、とりわけ技術革新に伴う産業雇用に関する諸問題についての実情調査のため、岡山県及び香川県に行ってまいりました。  以下に調査概要について報告申し上げます。  初めに、岡山県での日程ですが、まず県当局から県経済概況について説明を聴取いたしました。  岡山県は、昭和六十三年春の本州四国連絡橋児島-坂出ルート及び新岡山空港同時供用開始により、中国-四国交通結節点として、新たな経済発展期を迎えることが期待されます。  昭和五十八年度の岡山県の経済規模は、県内生産で四兆四千二百億円、一人当たり県民所得で百八十二万円になります。また、その産業構造は、第二次産業構成比が四二%と全国平均を上回っているところに特徴があります。なお、造船不況下の玉野市及び児島郡が特定不況地域に指定されておりますが、県内雇用は全体として改善しつつあります。  このような中で、県の産業政策重点の一つは、吉備高原地域テクノポリス推進企業立地促進による産業基盤づくりであります。その第二は異業種交流促進などによる中小企業技術力向上であり、第三は情報化への対応であります。  同県では、次いで、吉備高原都市NC能力開発センター視察いたしました。  吉備高原都市は、岡山県のほぼ中央に建設中の計画人口三万人、面積千八百ヘクタールの新都市であり、保健福祉区、研究学園区、産業区など七つのゾーンから成っております。  吉備NC能力開発センターは、この吉備高原都市に県、二町、地元関係者及び株式会社ジャパックスによって設立され、身体障害者能力開発生産活動とを行っております。  そこでは、NC放電加工など最先端技術能力開発を行っていますが、他方、経営の独立採算を目指し、公的助成金経常経費の一五%程度を占めているにすぎません。本年三月、二年課程を修了した第一期生十名は、高い技術を買われて全員就職し、それぞれの職場で活躍中と聞いております。  同県での日程最後に、林原生物化学研究所藤崎研究所視察いたしました。  当研究所は、ヒト細胞の分泌する生理活性物質の中から有益な物質を探し出し、医薬として活用するための研究を行っております。  ハムスターによってヒト細胞大量増殖を行う独自の技術と、細胞融合技術とを組み合わせることによって、既にインターフェロン、ガン破壊因子CBF及び腫瘍壊死因子THF大量生産技術開発いたしております。  次に、香川県での日程ですが、第一に、県庁において、四国通産局より四国経済概況、また県当局より香川県経済概況を聴取いたしました。  四国経済はおおよそ全国の三%の経済規模であり、その産業構造全国平均に比して第一次産業のシェアが高く、製造業内部においては素材型や生産関連型の従来型産業が大きな比重を占めております。  このような四国経済にとっての今後の課題は、第一に産業基盤整備によって離島性解消を図ること、第二に先端技術産業の誘致によって産業構造転換を図ること、第三に中小企業活性化、第四に技術開発情報化対策に力を入れること、とされております。  この四国玄関口に当たる香川県においては、現在、本州四国連絡橋児島-坂出ルート、新高松空港及び四国横断自動車道の三大プロジェクトが進められており、これら高速交通体系整備効果最大限に生かして、新たな発展へ向かおうとしております。  昭和五十七年度の香川県の県内生産は二兆一千億円、一人当たり県民所得は百六十五万円になります。その産業はほぼ全国並み構成となっております。しかし、製造業において素材型産業から加工組み立て型産業への転換のおくれが問題とされております。  県の地場産業は、冷凍食品、手袋、家具などであります。また、県内雇用は緩やかに改善しており、最近の有効求人倍率は一・〇〇と全国第八位の高さにあります。  県の産業政策重点としては、第一に臨橋型の加工組み立て型工業と高付加価値農業への移行を目指す香川田園テクノポリス計画促進、第二に情報機能業務機能強化、第三に先端技術開発、利用の推進が挙げられております。  同県においては、次に地場産業漆塗り家具のメーカーである株式会社森繁視察いたしました。香川県の漆器は高級家具として歴史を持っていますが、知名度の向上若年従業員の確保が問題となっております。  香川県においては、さらに各種プラントシステム開発計測制御機器製造保守等を行っている四国計測工業株式会社視察いたしたほか、本州四国連絡橋児島-坂出ルート架橋現場坂出側から視察してまいりました。  以上で報告を終わります。
  6. 山田譲

    委員長山田譲君) ありがとうございました。  これをもって委員派遣報告は終了いたしました。  なお、ただいま第一班の糸久君の報告の中にありました要望事項等につきましては、これを本日の会議録末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 山田譲

    委員長山田譲君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     ―――――――――――――
  8. 山田譲

    委員長山田譲君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  国民生活経済に関する調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁澄田智君の出席を求めることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 山田譲

    委員長山田譲君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  10. 山田譲

    委員長山田譲君) 次に、内需拡大等に関する件について政府から説明を聴取いたします。金子経済企画庁長官
  11. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 本日は、去る十月十五日の経済対策閣僚会議におきまして決定された「内需拡大に関する対策」について御説明を申し上げます。  経済拡大均衡を通じて経済摩擦解消を目指すためには、三本柱の対策を講ずることが必要であります。  まず第一は、市場開放推進でありますが、これにつきましては、政府は既に「市場アクセス改善のためのアクションプログラム」を策定することとともに、その実施スケジュールを早め、確実に実行に移しつつあるところであります。今後、外国企業がこうして開かれた新たな機会を十分に活用することを期待しておる次第であります。  第二は円高定着であります。去る九月、先進五カ国蔵相会議が開催されまして、為替レート適正化のための密接な協力を図ることなどが合意されました。その結果、ドル高は大きく是正方向に向かっております。  そして、第三が内需拡大であります。政府は、去る八月以来、私を委員長とする内需拡大に関する作業委員会を設け、内需拡大を図るための具体策策定を行ってきたわけでございますが、先般成案を得まして経済対策閣僚会議で決定を見た次第であります。  今回の対策は、今申し上げましたように、経済拡大均衡を通じて経済摩擦解消を図るため決定されたこと、民間活力最大限活用することを基本としておること、予算税制措置を伴う施策につきましては、今後の予算編成税制改正の過程で検討するものとしておりますること、さらに円レート動向とその国内経済に及ぼす影響に適切な注意を払いながら弾力的な政策運営を行うこととしておりますこと、この四つの特色を有するものであります。  対策具体的内容につきましては引き続いて当庁調整局長から御説明をさせますが、今後これを着実に実施していく所存でございますので、どうかよろしくお願いを申し上げます。  以上で私の説明を終わります。
  12. 山田譲

    委員長山田譲君) 次に、補足説明を聴取いたします。赤羽調整局長
  13. 赤羽隆夫

    政府委員赤羽隆夫君) お手元に資料をお配りしてございます「内需拡大に関する対策」という黄色い紙でございますけれども、これにつきまして簡単に補足説明を申し上げたいと思います。  まず、この対策は、前文とそれから対策内容を示しております本文、それに関連をいたしましていろいろな別紙の資料と、こういうことで成り立っております。  まず前文でございますけれども、前文で書いてございますのは、まず最初に我が国経済を取り巻く国際情勢ということで、最近保護貿易主義の圧力が高まりを見せている。他方我が国経済におきましては、設備投資は着実に増加をしている。個人消費も緩やかながら増加をしている。しかし、住宅建設につきましてはこのところ動きが緩やかである。一方、輸出は高水準で横ばいとなっている反面、輸入足踏み状態にあり、経常収支は引き続き大幅な黒字が続いている。  こういう状況認識を示した後で、ここ数カ月間にとられました措置について述べております。アクションプログラム策定したということ、その実施スケジュールを早め確実に実行しているところであること、あるいは政府開発援助の第三次中期目標を設定したということ、さらには先月二十二日のいわゆるG5の合意に従いまして為替レート適正化のための密接な国際協調が進んでいるということ、その結果ドル高是正方向に向かっている。  ここ数カ月間にとられました措置とその成果を述べた後で、本対策特徴点を述べております。この特徴点につきましては、先ほど大臣から御説明を申し上げました四点でございますので省略をいたします。  そこで、対策内容でございますけれども、まず当面早急に実施する対策、それから今後引き続き推進する対策、さらには今後のフォローアップという三本の柱から成り立っております。  まず第一の「当面早急に実施する対策」ということでございますけれども、この意味は六十年度中に着手ができる、こういったような対策であると、こういう趣旨ということで御理解をいただきたいと思います。並んでおりますのが四つに分かれておりまして、まず第一が「民間住宅投資都市開発促進」、二番目が「民間設備投資促進」、三番目が「個人消費喚起」、四番目が「公共事業拡大」ということになってございます。それぞれにつきまして個別の対策が並んでおりますけれども、主要なものだけを申し上げます。  まず第一番目の柱でございます「民間住宅投資都市開発促進」でございますけれども、これにつきましては、住宅金融公庫の特別割り増し貸付制度の創設、さらには貸付枠追加といったような点が主たる目玉かと思います。追加事業規模で申しまして五千億円程度と推計をされます。それ以外に宅地開発円滑化都市開発促進、あるいは国公有地等有効活用等でございまして、主として住宅都市開発促進に関する個別の対策を並べております。さらに五番目の増改築等リフォーム促進ということでありますけれども、これは新しく住宅を建てるということに加えまして、既存の住宅のさらに効率を高めること、居住水準向上させること、そういったようなことで増改築等リフォーム関係サービス供給体制整備等を考えておるわけでございます。  この第一番目の柱におきまして、いろいろな各種個別対策がございますけれども、これを相互に有機的に連携をとりまして、それぞれの個別対策効果相乗効果として発揮させる、そのために関係省庁におきます連絡推進体制整備する、こういうことになっております。  二番目の「民間設備投資促進」でございますけれども、これは電気事業及びガス事業公益事業でございます電気ガス設備投資追加ということでございまして、今後三年間に電気事業におきまして一兆円程度、それから都市ガス事業におきまして一千億円程度をめどに設備投資追加、これにつきまして指導を行うということでございます。それ以外にも開発銀行の融資の活用基盤技術開発促進といったような項目が掲げられております。  民間設備投資関連いたしましては、今回の対策内需拡大策とは申しますものの、対外対策の一環としてとらえている、こういうことでございますので、主として輸出能力を高めるような部面での設備投資推進する、こういったような考え方はございません。主として基礎的な研究開発、あるいは公益事業などの設備投資、こういうことに着眼をいたして対策を考えました。  それから、三番目の「個人消費喚起」という点でございますけれども、先ほどの五カ国蔵相会議、G5の共同発表におきまして、日本政府といたしましては消費者金融市場拡大措置を通じて消費増大に焦点を合わせた内需刺激努力を行う、こういう旨を約束しているわけでございまして、そうした観点から、主として消費者金融改善あるいはその有効活用といったような観点から三つの項目を掲げております。  それから、四番目の「公共事業拡大」でございますけれども、これにつきましては、①から④までということでありますが、一般公共事業につきましての国庫債務負担行為活用、財投の追加、あるいは災害復旧工事の速やかな実施、さらには地方単独事業につきまして、主として下水道事業等追加措置を含めその円滑な施行を期待する、こういうことでございます。  なお、従来は埋立事業のみに認められておりました政府保証外債の発行を大都市下水道単独事業につきましても環境条件が整うという前提のもとに新しく認める、そういう制度を創設しようと、こういうことでございます。  それから、四ページに移りまして、「今後推進する対策」でございますけれども、この今後推進する対策につきましては、従来からもこうした対策が行われておりましたが、今後さらにこれを推進しよう、そうした場合の基本的な考え方民間活力を十分に発揮させると、こういう観点から次のような対策実施をするということでございます。  この項目前文のところに「また」以下の文章がございますけれども、これは六十一年度の予算編成税制改正の過程におきまして所要の手続を経つつ追加的な内需拡大策についての検討を進めるといったようなことが書かれております。  まず、この項目には(1)の「公共的事業分野への民間活力の導入」、それから(2)の「規制緩和」、(3)の「週休二日制の拡大」、(4)の「国公有地等有効活用」ということでございますが、いずれもどちらかといえばやや中期的な効果を持つものという性格の対策がと思われます。  三番目の柱といたしまして、フォローアップ体制ということでありますけれども、こうした内需拡大に関する対策実施を確実なものにするということで、経済企画庁の大臣を長といたします内需拡大に関する作業委員会が今後継続的にフォローアップを行い、その結果を随時経済対策閣僚会議報告をする、こういうことに決められております。現在のところまだいつの時点でフォローアップを行うものということは決めてはおりませんけれども、私ども事務当局として考えておりますのは、六十一年度予算編成が終わった時点で一回フォローアップをする必要があると考えておりますし、さらに年度が終わったところで二回目のフォローアップを行うべきではないかと考えておるわけでございます。  以上が今回の内需拡大策の大まかな構成、その内容ということになります。
  14. 山田譲

    委員長山田譲君) 以上で政府からの説明聴取を終わります。  これより本件に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  15. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 ただいま内需拡大に関する対策について長官並びに赤羽調整局長より御説明がありました。この際、私は内需拡大問題、貿易摩擦問題、さらにECとの関係、こういう問題について以下ただしたいと存じます。  私は、去る九月二十四日より二十六日、ブラッセルにおいて開催されました第七回日本・EC議員会議に本院より代表の一員として出席をいたしました。EC議員の代表と率直に意見の交換を行いまして、我が国とECとの貿易摩擦問題についても我が国の立場から主張も行い討議をしてまいりました。したがって、この際、この会議出席をいたしまして私が肌で感じたことや印象などを申し上げまして、以下お伺いをいたしたいと存じます。  まず長官に伺いますが、日本の対EC貿易、これについては公正なルールに即していない、アンフェア、こういう批判が極めて強いことを感じました。会議を通じましてその印象を強く受けました。そこで、これに対する長官の所見、まず伺います。
  16. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 従来、日本への市場アクセスの難しいことにつきましては、各方面からそれぞれ批判を受けておりますので、私どもも今度のアクションプログラム策定につきましては、全力を挙げてそういった非難が解消できますように努力をいたしたつもりでございます。最近もEC各国から何人かの責任者がやってきておりますので、いろいろなアクションプログラムの中身を説明いたしますと、なるほどそこまで考えてくれておるのかということを理解して、初めてよくわかったと言ってくれる人が多いのでございまするけれども、まだどうもアクションプログラムの中身の理解が行き届いてない、説明が徹底してない点が非常に多い。そのために高杉さんの今お話しのような問題が出てくるんだろうと思います。  今月の十八日からECと日本との経済閣僚会議が開催されます。その機会を通じて、私どもも先方の理解を得るために全力を挙げて努力したいと考えております。
  17. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 さらに伺いますけれども、日本は特定分野で集中的に輸出をしてECの関連産業を壊滅させよう、こうねらっているんではないか、こうまで言われるんです。また一面に、日本は高水準の失業に悩むECに対してさらに失業輸出までも行っている、こう厳しく追及されました。これは一面正しい指摘を含んでいると思います。  そこで伺いますが、どのようにお考えになっていますか。
  18. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 今お話しのような集中豪雨的な輸出につきましては、我々といたしましても十分これから配慮していかなければいかぬと思っておりますし、特にヨーロッパは高水準の失業を抱えておりますだけにその点に対する配慮はすべきだと思っておるんでありまするが、各国からいろいろ言ってきておりますのは、むしろ直接投資をやってくれと、向こうで設備投資をやって向こうの失業者の解消協力をしてくれないかという話をほとんどの国が持ってきておりますので、そういう点につきましても、私どもは及ばずながらできるだけ努力しましょうという話をしておる最中でございます。
  19. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 労働省に労働時間の短縮問題について伺います。  ECに比べて日本の労働時間が著しく長いことは、いろいろな資料でも、政府資料でも明らかです。これが貿易上不公正な競争の大きな要因となっている、こう指摘をされる、これもまた正しいと思うんです。  そこで伺いますが、我が国では、第一点としてなぜ労働時間を短縮できないのか、第二点としてその障害となっているものは具体的に何か。この際、その理由を明確にひとつお答えいただきたいと思うんです。
  20. 松原東樹

    説明員(松原東樹君) 我が国の労働時間は、御指摘のように欧米に比べますとやや長目になっております。ただ、長期的には昭和三十五年をピークにだんだん労働時間を短縮してきておりまして、昭和五十九年の年間総実労働時間は二千百時間をやや超えるというような状況になっております。  先生お尋ねの点、やや二点とも関連するようなことで、あるいは一括したお答えになるかもわかりませんが、このように労働時間の短縮が近年やや緩慢になっております理由といたしましては、最近の経済成長率が低下していることによりまして週休二日制等の労働時間の制度面での改善が緩慢になっていること、それから年次有給休暇の取得率が平均で六〇%程度ということでここ数年推移してきておるということ、それに加えまして、我が国の雇用慣行との関係から生産調整を雇用よりも所定外労働で行う、こういう傾向がございまして、この点が最近の景気との関係で所定外労働時間が逆に増加しているといったようなことが影響しているというふうに理解しております。
  21. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 もう少しその障害となっている具体的な理由をぜひ明らかにしてもらいたいと思うんです。特に、さっき長官から、内需拡大に向けて具体的な今後の対策として、週休二日制の拡大だとか前向きな姿勢でやろうという御説明を受けたわけです。私もECに参加をして感じたことは、確かに我が国は経済先進国です、しかし労働時間では残念ながら後進国です。  そこで、今労働省からの説明、別にまた機会を得て詳しく審議をしなきゃならないと思うんですが、そういう現状なんですから、積極的に労働時間の短縮へ向けて今後ひとつ長官も具体的に御指導いただきたいと思うんです。いかがですか。
  22. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 御指摘の点は十二分に心得ております。それで、とりあえず私どもといたしましては、五年間がかりで休日を年十日ぐらいふやすということを目途に今検討を進めておるような最中でございます。お話の方向へ漸次持っていくことが必要であろうと私どもは考えておりますが、なかなか一遍に先進国並みに労働時間短縮というところまでいけないのが今日の現状でございます。
  23. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 次に、日本は日米間の貿易インバランス問題に比べまして日本とECとの間のそれを軽視している、こういう批判を強く受けたんです。  そこで長官、今後アメリカと同様にECにおいても議会決議や報復の立法等の態度に出てくる可能性もあるのではないかと危惧をするんです。このことについて政府はどのように考えているか、企画庁と同時に外務省からもひとつお答えをいただきたいと思います。
  24. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 日米問題を重視するの余りにECとの関係を軽んずるようなことは決していたしておりません。今度のアクションプログラム策定に当たりましても、EC並びにASEANにつきまして同様に十分の配慮をいたしたつもりでございますが、今後もこの気持ちについては全然変わりません。
  25. 小川郷太郎

    説明員小川郷太郎君) 最近、先生のおっしゃいますように、欧州において対日認識というのが非常に厳しくなっているということは私どももひしひしと感じておりまして、これを憂慮している状況でございます。  現時点では、ECそれぞれ各国の議会においては対日報復措置というようなことはまだ出ておりませんけれども、欧州議会、欧州全体をまとめた議会の中では対日決議案というのが今できて審議を開始したところでございまして、その中には対日報復措置というようなものを決議案の中に含めて審議している状況でございます。欧州議会と申しますのは現時点では立法権限というのはございませんけれども、こうした決議案を審議する過程でそれが各国、加盟国に与える影響あるいは採択された場合の影響ということは無視できないものでして、我々としても非常に憂慮しております。  ただ、伝えられておりますこの決議案の内容を見ますと、やはりまだ日本がとっている政策あるいは実情につきまして、誤解とか認識のまだ違いというのが幾つかあるようでございまして、こういうことから、私どもとしましてもそうした事実の誤認のようなものはぜひ誤解を解いていただくように申し入れておりますし、それから保護主義、対日報復措置というような保護主義的な措置では決して問題は解決しないという我々の考えも欧州議会の関係者に申し入れたところでございます。  それから、対米関係だけを配慮してヨーロッパを配慮しないという欧州方の不満というのは先生御指摘のとおりでございまして、それから金子長官もお答えになられましたように、我々としましては、そうした批判を前から受けておりますが、ヨーロッパの要求というものを非常によく検討して対応してきているつもりでございます。この間アクションプログラムを作成いたしましたけれども、それの過程でも、EC側と我々日本との間でことしから始めました貿易拡大委員会のところで出されたEC側の要求、これはかなりたくさんございますが、そういうものを子細に検討しまして、相当部分をアクションプログラム対応したというふうに思っておりまして、これも先方に詳しく説明をしている状況でございます。このアクションプログラム活用して欧州側の企業あるいは輸出者が対日進出に努力してくれれば、我々としましてはやはりそれだけの効果はあるはずであるというふうに確信しておる次第でございます。  今月の十八日、ECとの閣僚会議というのが開かれますが、そうした場を利用しましても我々の考えをよく説明してわかっていただくようにしたいと思っております。
  26. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 長官、ECとの友好関係を維持するためにも、こういうことが起こらないように積極的にひとつ政府でも対応いただきたい、要請をしておきます。  その次に、この機会でありますから特に伺いますけれども、エアバスについて、ECは日本とEC間の貿易のインバランスを是正するために日本がエアバスのA300を購入することを強く望んでいるようなことを感じたんです。これはいろいろな会議、懇談になりますとその辺が出てくるわけなんですね。聞いてみますと、エアバスは、別に私、航空機会社の売り込みの話じゃございません、中距離あるいは離着陸性能というものが非常に高いんだそうであります。私は専門家でありませんからわかりませんけれども、日本の地理的条件にも非常に適している、こういうふうに聞きました。  そこで伺いますが、こうしたECの具体的関心事項について政府はどのようにお考えであり対応するのか、この際特に伺いたいと思うんです。
  27. 金子一平

    国務大臣金子一平君) エアバスに関する要望につきましては私どもも前々から聞いておるところでございまして、これは何といっても民間企業に買ってもらうことになるわけでございます。で、政府でああせいこうせいと言ってやることではございませんので、担当の役所を通じていろいろセットしてもらっておるという段階でございます。決してこれを黙視しているとかそういうわけではございません。そういうことを申し上げておきます。
  28. 伊佐山建志

    説明員伊佐山建志君) 今、金子長官から御説明がございましたように、民間航空機の問題につきましては、実はガットにおきまして規定がございます。民間航空機貿易に関する協定というのがございまして、民間航空機の貿易に政府は介入しないという規定がございます。したがいまして、今御答弁もございましたように、本質的には民間関係者同士の話ということで、私どもとしては、多分購入する側が市場の見通してありますとか航空機の性能、経済性といったようなことを全体として判断して決めることになるだろうというふうに見ておりまして、特段こちらから政府が積極的に働きかけるということは控えております。
  29. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 次に、円高ドル安に関することについて伺いたいと思うんですが、大変お忙しい中、日銀総裁においでいただいて恐縮であります。  まず、長官に伺いたいんですが、外国為替市場への介入について、九月下旬から約一カ月間の実績で見て、ねらいとする貿易の不均衡の是正効果があらわれているとお考えですかどうですか。それからまた、今後半年間の見通しについてどのようにお考えになっているのか、あわせお伺いをいたします。
  30. 金子一平

    国務大臣金子一平君) まだ介入が始まってから一カ月のことでございますし、国際収支統計、通関統計等も九月の実績までしか出ておりませんので、今どういう状況にあるかということは簡単に見込みを申し上げるわけにはいかないんでございますが、やっぱり円高による実際の国際収支等に関する結果が出てきますのは、半年あるいは場合によるとJカーブの関係で一年ぐらいかかるんじゃなかろうか。しかし、この円高によって、私どもが最も今までやかましくアメリカ側に主張しておりました、ドルが下がることによっての国際収支のバランスがだんだんと着実に進行できる手がかりをつかめたという意味で非常に喜んでおる際でございます。  なお、今後の推移につきましては十分見守ってまいりたいと考えております。
  31. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 せっかくでありますから、日銀総裁にお伺いをいたしたいと思うんです。  このところ大量のドル売り介入を行っていまして、従来に比べ管理フロートの色彩を強めているんじゃないか、こういうふうに思うんです。日銀としては何らかのターゲットゾーン、こういうものを念頭に置いているのかどうか。また、その方向というのは好ましいのかどうか、あわせてこの際お伺いをいたしたいと思います。
  32. 澄田智

    参考人澄田智君) 私どもといたしましては、為替相場につきまして、いかなる意味におきましても、特定の水準というものを固定をいたしまして、そうしてそこを目標として介入をする、そういうことをいたしてはおりません。十分に我が国の経済の基礎的な条件、物価でありますとか国際収支でありますとか、そういう条件、いわゆるファンダメンタルズというものでありますが、これをあらわすような為替相場水準であるべきである、そういうふうに考えているわけでございます。  先般のニューヨークのG5の会議の折にも、特定の相場水準をもってこれをターゲットにする旨の合意ということはなされたわけではございません。また、その点についてははっきりそういうことではないということで、これもそれまで長く続きましたドル高を修正する、そうしてドル以外の通貨、非ドル通貨につきましてはそれを従来より高めに持っていくように、そういう目的で介入を行う、こういうふうな合意がなされた次第でございます。  それから、後の御質問のいいことかどうかという点でございますが、こういう趣旨から申しまして、現在までのところ、市場がG5の合意を評価して、いわば正当に評価して、その結果がその後の円高の結果となってあらわれている、こういうふうに思っております。
  33. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 今回の介入というのは、国内金融市場においてタイトマネーポリシーをとっていることになると、こう考えるんですけれども、これは内需拡大政策に反することになるんではないか、こう思うんです。  そこで伺うのですが、今後の国内金融政策を具体的にはどういうように進めるつもりなのか、伺いたいと思うんです。
  34. 澄田智

    参考人澄田智君) 金融市場におきましては、日本銀行がドル売りの介入を行えばその見合いで市場から円資金を吸収する、こういうことになりまして、その限りにおきましては市場の需給がそれだけおっしゃるようにタイトになる、そういう要因になるわけでございます。このところ、短期金融市場におきましては、財政の揚げ超の傾向、これが増加をしておるという傾向に加えまして、こうした円資金の引き揚げあるいは都銀などのポジションの悪化等もあって需給が締まりぎみに推移しておりますが、私どもとしては、現在の情勢にかんがみまして、そういう市場の地合いをそのまま金利にも反映させるということが適当と判断して行ってきているわけでございます。この結果、短期金融市場のみならず長期金利も上昇している、こういう状態でございます。  しかしながら、現在の国内の景気情勢につきましては、輸出は鈍化をしている、そこに円高の影響も加わる、こういうことではありますが、他方におきまして内需は底がたい動きを示しておりますし、企業の収益水準もかなり高いというような状態で、特に懸念を要する状況ではございませんし、また内需の今後の拡大に十分資するように、それをサポートできるように金融も引き緩んでいる。当面の資金は締まりぎみでございますが、銀行の貸し出しというような点から言えば金融は十分緩和をされている。この点はマネーサプライの名目成長率以上の増加等にもよくあらわれている、こういうふうに見ているわけでございます。
  35. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 大蔵大臣が来ていただければいいんですが、けさの日経新聞、ごらんになっていると思うんですが、これは「円高水準、ほぼ満足」、大蔵省幹部が、こう新聞では出ているんです。その中で、大蔵省が二百二円台の今回の円高面で一応満足するという発言をしたのは初めてだそうです、新聞によれば。ところが、総裁は、この後に書いてありますのを見ますと、現在の(「二百二円台でも)まだ円高定着とはいえない。引き続き円高推進策をとる」、こういうふうに述べておられるんです。これは新聞も指摘しておりますが、大蔵省の首脳の発言とちょっと微妙に食い違いをしている、こういうふうに新聞が指摘しているんです。  そこで、政府としてまず長官からこういう円高のほぼ満足ということに対しての所見、それから総裁の微妙に食い違っているというのはどういうことなのか、ちょっと説明をいただきたいと思うんです。
  36. 金子一平

    国務大臣金子一平君) これは大蔵大臣から答弁するのが本筋の問題でございますけれども、通貨当局、大蔵省、日銀がいろいろ努力して今日の円レートまで、円の水準まで持ってこられた努力を多としているんですが、問題はそれが定着したと見るかどうか。やはり動きが激しくなりますと、せっかくの今日までの努力が無になりますから、定着するまではひとつ何とか頑張ってほしいなという気持ちを持っておるわけでございます。
  37. 澄田智

    参考人澄田智君) 私からも申し上げますが、私どもは先ほども申しましたように特定の為替の相場水準ということを決めてそして介入をするということをいたしておりません。あくまで円高基調に持っていくということでやっているわけでございます。また、特定の水準を通貨当局として数字であらわすというようなことは厳に慎むべきことである、こういうふうに思っております。  そこで、本日の為替相場でありますが、若干円安の方になっておりまして、実は気がかりになっているところでございます。しかし、いずれにしても特定の相場ということではなくて、円高基調に定着をするということが肝要である、こういうふうに考えるものであります。  現在の相場の地合いでございますが、少し円安方向に参りますと介入ということが行われるということの警戒感、これが市場に相当強い。これはやはりそういうことで円安方面に振れるのを防ぐ意味において意味があることでございますが、逆に円高の方にある程度まいりますとかなりドルの買い物が出る。これは値ごろによるドル買いを待っている、そういう需要というものが実需を含めまして非常に大きいわけでございます。  そういうようなことで、これは両方が拮抗していていろいろ振れるというようなことで、なかなかまだ安定とは申しかねる状態でございます。私どもといたしましては、円高の傾向が市場関係者において、自然に円高基調というそういう相場感、これが定着いたしまして、そうしてそういう定着した相場感が円高傾向、為替相場、円高の相場を支える、そういうような形になっていくことが最も望ましいわけで、そういう意味で定着を望んでいるのでございます。
  38. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 さらにお伺いしますけれども、日銀は短期金利の引き上げ誘導を行っている、こういうふうに聞くんです。私は内需拡大観点からは長期金利を思い切って下げるべきではないかと、こう考えるんです。総裁、どういうふうにお考えになりますか。
  39. 澄田智

    参考人澄田智君) 先ほどちょっと申し上げましたように、現在の時点におきましては円高の基調、こういう基調の定着を図るという意味から、やはり内外金利差というものが依然として、まあある程度縮まりましたが、まだ相当の金利差が残っているという状況のもとにおきましては、日本側から金利差を拡大するようなそういう措置、すなわち金利を引き下げる、こういうような措置は、これは絶対に今の時点においては避けていかなければならないという、そういうスタンスを堅持しておるものでございます。そして、先ほども申しましたように、資金の需給の引き締まり、タイトの状態というものをそのままレートに反映させる、それが適当であるというようなことでそういう姿勢をとってまいりました。その結果、市場資金は短期及び長期が上がったと、こういう状態になっているわけでございます。  しかし、金融機関を通ずる貸し出しの面におきましては、貸出金利は今までずっと低下を続けておりますし、約定貸出金利、これは低下を続けておりますし、そしてマネーサプライが名目成長率を上回る、ずっとかなりこれ上回っております。こういう状況というのは、これは金融が十分緩和されている、内需が伸びる、それが金融面から十分に支えられる、そういう金融緩和状態である、こういうふうに思っておりますので、現在の円高定着ということを目指して何よりも為替を重視する、為替の面に重点を置いての金融政策をとっている立場におきましては、市場金利の上昇という今の状態というのは維持されるべき状態である。そういうふうなことで金融調節を行っている次第でございます。
  40. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 次に、長官にさらに伺いますけれども、ドル高の一因である海外金融投資をスローダウンさせるためには、大量のひとつ建設国債を発行して市場の資金を吸収して、これを公共事業など実物投資に向ける緊急対策が必要ではないか、こういうふうに考えるんですが、いかがでしょう。
  41. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 今、高杉さんからお話しのような意見も十分伺っております。ただ御承知のとおり、建設国債といえども赤字国債でございまして、現在でも、例えば本年度は十一兆の国債発行をして十兆は元利払いに充てざるを得ないというような状況なもんですから、後のことを考えますと多少二の足を踏まざるを得ないというようなことで今推移しておるわけでございますが、まあ年末の予算編成の段階において、特に先ほど赤羽局長から御説明申し上げましたような都市開発関係でございますとか、国庫債務負担行為活用でございますとか、あるいは地方債の活用でございますとか、そういったことと関連して極力財政投融資の活用を図ることを考えて、少しでも公共事業に上積みをするようなことをこの際思い切ってことしと同様にやったらどうかというような気持ちを持っておる次第でございます。
  42. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 総裁、大変忙しいようですから、今お帰りになったようですから、結構です。  引き続き長官並びに大蔵省にも伺いたいと思うんですが、貿易不均衡などの問題というのは、基本的にはアメリカの財政赤字に起因しているんではないか、その解決にはアメリカの責任ある行動が不可欠である、こういうふうに思うんです。それなしには、先ほどお話がありましたG5の協調行動を優先するのは私はおかしいのじゃないかと思うんです。  そこで伺いますが、協調介入に伴う外国為替の会計の赤字、各種負担、これは各国の間でどのように分担をすることになっているのか、夫蔵省から来ていると思いますけれども、伺いたいと思うんです。
  43. 金子義昭

    説明員金子義昭君) お答えいたします。  G5におきましては、先生御承知のとおり対外不均衡是正ということで、為替相場が各国のファンダメンタルズをよりよく反映するようにということで密接に協力するということが合意されております。その合意に基づきまして各国は、その合意声明の附属声明にあります政策協調、これをそれぞれの国が着実に実施するということとともに、あわせて協調介入を行ってまいるということでございます。  今も先生のお話にありましたように、アメリカの財政赤字というのは確かに大きな問題でございまして、G5の附属声明の中にも、アメリカは積極的にこの赤字を減らしていくよう努力するということが書かれておりまして、各国ともその附属声明の内容に従いましてそれぞれ政策協調を行っていくということでございます。  それから、今、外為特会の赤字の問題というのがございましたけれども、外為特会と申しますのは、外貨の売買を通じまして為替相場政策というものを遂行するべく設けられておりまして、現在は今申しましたようなG5の合意に基づきまして、何とか為替相場が各国のファンダメンタルズをよりよく反映するようにということで、各国協力して介入を実施しているところでございます。したがいまして、確かに為替相場の状況によりましては売買損なり売買益が出るということでございますが、それはそういう目的に照らしますればある程度やむを得ないのではないかというふうに考えている次第でございます。
  44. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 さらに長官に伺いますけれども、ここ数年間に発生した対外不均衡に対処するためには従来の政策手段では少し力不足だと思うんです。我が国は世界第二の経済大国であって、巨大な資本の輸出国になってしまったと思うんです。この際、有効適正な新しい政策手段、これを開発をしてタイミングを失わないようにする、この実施をしていくべきだと、こういうふうに思うんです。長官、どういうふうにお考えになりましょう。
  45. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 黒字を一遍に解消してくれという要求がヨーロッパからもアメリカからも出ておることは事実でございますけれども、これそうなかなか簡単に減るものとは我々考えないのでございまして、やっぱり基本的には日本の市場を例えばアメリカならアメリカの輸入市場並みに開放して、開かれた日本の市場だと、取り扱いもフェアだと、市場アクセスも簡単にできるんだという印象をまず与えることと、それによって、後は日本の市場への輸出業者の努力いかんによって日本市場が魅力あるものだというふうに認識してもらうことが大事なことでございまして、私どもは外交の責任者と会うときはその点を特に強調しておるのでございまして、大体それはみんな政府筋はわかってきてく札だと思うのでございますが、業界や議員さんの中ではなかなかそれでは納得しない方も多いわけでございますけれども、一遍に黒字を抜本的になくして摩擦を解消する手はそう簡単にはないんで、今決めましたアクションプログラム市場開放政策をもう着実に的確にやることが私は一番大事なことであろうかと思うのでありまして、最近会う連中は、それはよくわかってくれておるように感じます。
  46. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 次に、円高差益の消費者への還元についてお伺いをします。  流通段階が複雑な消費財については円高差益が消費者に及ばないで吸収されてしまうのではないか、こう考えるんです。この対策について具体的にどうするのかお伺いをしたいし、また電力、ガスの差益、これは料金の引き下げで還元すべきだと思うんです。その還元の方法として、国民が実感の伴うような還元ですね、例えば一時金で一括払いなど、こういうものを工夫してこの際還元すべきではないか、こういうふうに思うんです。長官いかがでしょう。
  47. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 今、高杉さん御指摘の問題は大変大事なことだと思っております。私どもは、円高差益がはっきりと出た段階におきまして、例えば家畜飼料なら家畜飼料について、あるいは灯油なら灯油についても、前にもいろいろ政府として指導というか啓蒙運動をやったこともございますけれども、今回も機を逸せず必要な手は打ってまいりたいと考えておる次第でございます。  電力等につきましては、これは先ほど赤羽局長からも御説明申し上げましたように、今後三年間にわたって一兆一千億設備投資を拡充することになっておりますので、その絡みもございまするけれども、とにかく今の円高の安定によって差益がとにかく確実に出てまいりますという段階に至るまでにはやはりある程度の時間がかかるのはやむを得ないと思っておりますので、その点を十分見きわめながら必要な措置をとってまいりたいと考えております。  なお、電力、ガス等については、担当の通産省からも話があろうかと思います。
  48. 林昭彦

    説明員(林昭彦君) 今、金子長官の方からもお答えがございましたように、私どもとしても今の円高傾向というのがどういう形で進んでいくのかということを十分見きわめていきたいというふうに考えております。  長官のお話もございましたように、この円高効果というのが現実の電力会社なりガス会社なりの収支面に影響が出てまいりますのは二カ月ないし三カ月、二・五カ月ぐらいかかるわけでございまして、現時点ではまだそういう影響が出ていないということでございますので、もう少し事態を見守ってまいりたいというふうに考えております。
  49. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 長官、国民が実感の伴う還元、こういう工夫をぜひしていただきたいと思うんです。  次に、内需拡大策について伺いますが、まず昭和六十年度経済見通しの改定、これについてですが、昭和六十年度経済見通しは円高による外需の効果内需拡大策による内需の変動、どの程度の影響を受けるのか、この際示していただきたいと思うんです。  また、大事な点でありますが、改定のGNP見通しの一%を超える防衛費、仮にそうなった場合のカットをするのかどうかですね。これは大変予算委員会でもこの点を中心に論議をされたことは御承知のとおりであります。別にここでその点に集中して論議をすることは考えません。その超える場合に政府、長官も政府の一員でありますから、カットをされるのかどうか、この際明らかにしていただきたい、こう思うんです。
  50. 赤羽隆夫

    政府委員赤羽隆夫君) ただいま円高効果あるいは内需拡大策効果、これを踏まえて六十年度の経済見通しはどうなるのか、こういう御質問がございました。それに加えましての御質問もございましたけれども、それにつきましては後ほど大臣から御見解を示していただくということで、私はこの円高効果内需拡大策効果、これが六十年度経済見通しとの関係という点につきましてお答えを申し上げたいと思います。  確かに、最近におきます円高状況というのは、当初の経済見通しにおいては織り込まれておりません。したがいまして、これによって経済の動きが変わってくるということは当然でございますし、また内需拡大策につきましても確かにそういったようなことを予想してつくっていたものではないということは当然でございます。しかしながら、現在時点でこの見通しの改定といったようなことは必ずしもその必要はないんではないかと、こう考えているわけでございます、  と申しますのは、この円高効果というものが経済成長率に影響するに当たりましては、しばしば指摘されますように、専門家の言葉を使いますとJカーブ効果というのがございます。これが具体的にあらわれてくるのはむしろ半年からあるいは一年、あるいは長い方によりますと一年半ぐらいかかるという見解でございまして、九月の末から始まりましたこの円高の傾向といったようなものが六十年度経済に及ぼす影響というのはそれほど大きくないだろう、こういうふうに考えます。  また、この内需拡大策でございますけれども、今回の内需拡大策というのは、従来の多くの内需拡大策がそうでありましたように、国内の不況対策、景気対策としての内需拡大策ではないわけでございまして、むしろこの当初の見通し以上に膨らんでおります黒字、これを輸入拡大を通じて削減しよう、こういう意図でとられている、こういうことでございますけれども、それを実施するに当たりまして、なお、例えば住宅金融公庫法の改正でございますとか、あるいはそれ以外の制度的な点につきましての措置が必要である、こういう状況でございます。  そうしたようなところを織り込んで六十年度経済状況をどういうふうに見るのか。これは十二月の下旬におきまして六十一年度の経済見通しの策定作業をするに当たりまして、土台になります六十年度の経済の実績見込みを出す、こういうことになっております。その時点までよくこの効果というものを見きわめまして、それを織り込んだ上で六十年度経済見通しの実績見込みという形での改定を行いたい。現在そのように作業を進めるということで考えております。
  51. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 今、高杉さんお話しのGNP一%の問題、これは防衛費との関係でございますか。
  52. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 そうです。
  53. 金子一平

    国務大臣金子一平君) これは、今赤羽局長が御説明申し上げましたとおり、六十年度の見直しは六十一年度の見通しを立て谷ときに数字を出すものですから、その時期まで得たざるを得ない、こういうふうに私ども考えておる次第でございます。
  54. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 これは別の機会に問題が出てくればまた論議になろうと思います。それに譲るとして、長官、さっき内需拡大に関する対策の御説明をいただきました、その対策効果、これはどういうふうに見ておられるのか、試算があれば私は出していただいてもいいと思うんです。貴重な時間でありますから、長々御説明いただくと私の持ち時間も少なくなりましたので、資料として試算があればぜひ当委員会に出していただきたい。委員長資料として出していただく方がいいと思うんです。  長官、この際ちょっと伺うんですが、円高効果内需拡大効果が相殺されるのでは困るんです。私はその心配をするんです。そういうことはよもやお考えになっていないと思うんですが、いかがですか。
  55. 赤羽隆夫

    政府委員赤羽隆夫君) 円高のデフレ効果内需拡大効果が相殺すると困る、こういう御質問でございますけれども、円高効果といたしましては、デフレ効果のほかに実質国民所得をふやすという効果がございます。物事には影の面があるとその反面で光の面がある、こういうことでございまして、円高につきましてのデフレ効果というのはこれは影の面でございます。その反面に光の面として交易条件が改善することによる国民所得をふやす効果がある、こういうことでございまして、一概に円高と言えばすぐにデフレ効果というふうに言う必要はない、こう考えます。  ただし、このデフレ効果とそれから実質所得増加効果、どちらの方が大きいのか、これは景気の局面等によっても違いますけれども、どちらかといえば差し引き若干デフレ効果の方が大きいのかな、こういうふうに言えると思います。しかしながら、そういう光の面があるわけでございまして、円高のデフレ効果というのはそう大きく考える必要がない。そこで内需拡大効果に対する相殺効果というのもそれほど大きいものとは考えていないわけでございます。  それとともに、今回の内需拡大策、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、これは国内の不況対策ということではなくて、むしろ内需拡大することを通じて輸入拡大しようと、対外対策として考えられているという面がございます。そうであるならば円高が進むことによって黒字を減らす効果が大きい、こういうことであれば、この内需拡大効果円高デフレ効果の相殺問題というのもまたそれほど心配する必要はないのではないか、こう考えている次第です。
  56. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 次に、所得減税について伺うんですが、先ほど内需拡大に対する対策での御説明でもありました、予算、税制を伴う施策については昭和六十一年度予算編成過程で検討する、こういうふうになっているわけです。この中には当然所得減税も含まれることになると思うんです。しからば、所得減税を実施するに当たって、政府が考えているような抜本的税制改正の前に、対外不均衡是正という目的で緊急的な措置として所得減税を実施すべきである、こういうふうに私は思うんです。長官、所見とその決意、これを伺います。
  57. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 住宅減税につきましては大体明年度実施することに合意を見たのでございますが、所得減税の先食いと申しますか、そこまで思い切ってやれるかどうかにつきましては、なかなか政府部内で激しいやりとりがございましてまだ最終的な結論に達してない。むしろ、抜本的な改正を六十二年度にやるべきであると。というのは、財政事情を非常に大蔵省としては厳しく見ておりまして、とてもつまみ食いできる状況ではないぞという感じを持っておりますので、私どもも高杉さんと同じように、それはできればもうとにかくこの際思い切ってやったらどうだいという話をしておるんでございますが、なかなかこれが難しい段階である。率直に申し上げておきます。
  58. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 まあ私の主張している点は御理解いただけると思うんです。緊急的な措置としてやっぱり対外不均衡是正という目的があるんです。だから実施していただきたい。これも強く要請をし、長官の推進をひとつお願いをしておくところであります。この所得減税を実施する場合は、これまでのような小幅な減税だと国民は減税されたという実感がないんですね。それが消費に向かないで、結局意図しない貯蓄みたいなささやかなものになってしまう。これが現状だと私は思うんです。そこで、我が党が主張しているような思い切った大幅な減税措置、しかも教育減税、住宅減税、これをパッケージにした大幅な減税を行って、我が国経済輸出主導から消費主導に大きく政策の転換をしていく、このことがこの際必要だ、こういうふうに思います。長官、いかがでしょう。
  59. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 現在の所得税の累進税率では、一昨年実施いたしました一兆数千億程度の減税措置では消費の喚起には力が案外弱過ぎると、これはもうはっきり出ておりますので、私どもといたしましても、やるならば思い切った累進税率の緩和をやって、特に教育費や住宅ローンで追い回されておる中堅階層の負担の軽減を図ってやることが大事だと考えておるんであります。国税庁の所得統計等の発表を見ましても、せっかく月給は上がったけれども税金と保険料に持っていかれちまうんだと、蓄積がないんだということでは消費の拡大になりませんので、そういう点も大いにひとつ私どもとしては胸に置いて今後の減税に取り組みたいと考えておることを申し上げておきます。
  60. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 次に、賃金の高目の誘導策、特に政府としての姿勢について伺うんですが、先ほども申し上げましたように、去るECのときに西ドイツへも行きました。西ドイツは我が国と同様に貿易の収支、経常収支が大幅な黒字となっているんです。ことし史上最高になるだろう、こう言われているんです。そのために西ドイツでは、特に政府内需拡大を目指して所得減税、それから公定歩合の引き下げ、これを行うとともに、賃金を高目に誘導するという思い切った政策をとっている、こういうふうに聞いたんです。このような措置をとったことによって、西ドイツは世界から我が国とは違った目で見られているんではないか、こう思うんです。  そこで伺いますが、政府はどのようにこれをお考えになり、賃金の高目の誘導、こういうことについてどうお考えになるのか、長官、伺います。
  61. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 賃金は、これは労使で話し合いをしてもらうのが筋でございまして、政府で高目に誘導する措置を講ずること自体ひとつ問題があろうかと思うのでございますが、特に今お話しのような、西ドイツでそういうことをやっておるという新聞記事も私は拝読いたしましたけれども、これは今後実情を調査してみますけれども、あるいは西ドイツでは特に失業率が高こうございますので、それでまあこういうことによってある程度失業を解消する目途でやっているんじゃないかというような感じもいたすのでございます。いずれにいたしましても、私どもとしましては十分西ドイツの実情を調査しながら、我々として施策の参考にしたいと考えております。
  62. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 長官からのお答えもありましたように、賃金の決定は労使間で決定すべきで政府が介入すべきでないと、こういう考え方もある。しかし、六十年度の我が国の経常収支がもう既に五百億ドル、大変な額に及んでいるんですね。日本の内需拡大市場開放効果いかんによっては、まあいろいろお話にも出ていますように自由貿易体制の崩壊、保護主義の台頭、こういうことにもつながりかねない現状、こういう現状では政府が緊急的、例外的措置として賃金を高目に誘導を行う、そして伸び悩んでいる個人消費転換していく、こういうようなことで内需拡大、こういうことの必要があるんじゃないか、こういうふうに思うんです。ぜひその点も含めて、長官、そういうような積極的な姿勢をひとつお願いしたいと思うんですが、いかがでしょう。
  63. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 先ほど来繰り返しになりまするけれども、本来的には労使の間で話し合いで決めるべきものでございます。西独でどの程度のことを実施しているのか、またその効果がどうであったかというような点につきましては、十分調査いたしまして参考に供したいと思います。
  64. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 次に、住宅投資について伺います。  建設省の住宅需要実態調査によりますと、住宅の広さ、部屋の数、これについて非常に不満ないし多少不満と回答した者は、持ち家でも三五%程度ですけれども、借家の方では実に六割前後に達しているんですね。また、最低居住の水準未満の住宅に住む世帯、これはまあ三百九十九万世帯にも達しているんですが、このように住宅の潜在需要、これは非常に大きい、したがって、国の住宅対策の必要性も大きい、こういうふうに考えるんです。  そこで伺いますが、この今回の内需拡大に関する対策、この民間住宅投資、これはどの程度になっているのでしょうか。
  65. 赤羽隆夫

    政府委員赤羽隆夫君) 今回の内需拡大策、先ほども御説明申し上げましたけれども、特別割り増し貸付制度の創設と貸付枠拡大ということで、事業規模で五千億円程度住宅投資の追加が今後一年間の間に起こるだろう、こういうふうに推定をしております。
  66. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 次に、大蔵省に伺いますが、住宅建設推進するためには新築の住宅建設費または取得費、住宅ローン支出、こういうことについての税控除、住宅の減価償却、これを認めること等の施策、これを推進しなければならない、こういうふうに思うんですが、大蔵省いかがですか。
  67. 塩田薫範

    説明員(塩田薫範君) ただいま御指摘いただきました住宅減税関係といいますか、そういう問題につきましては、さきの経済対策閣僚会議におきまして決定されました「内需拡大に関する対策」の中で、「住宅建設設備投資等に関する施策について、今後の予算編成税制改正作業の過程の中で所要の手続を経つつ検討を進める。」ということになっております。したがいまして、今御指摘の問題につきましては、今後の税制調査会における税制改正作業の過程の中で検討されるべき問題であるというふうに考えます。そういうことで、現段階では具体的なことにつきましては何とも申し上げられないと。ただ、現下の厳しい財政事情ということも考えながら検討していかなければいけない、こういうことではないかと思います。
  68. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 先ほど私が幾つか申し上げましたことは具体的にひとつ推進していただきたい、これを要請しておきます。  それで、時間がありませんから、国土庁について若干伺いますが、住宅の取得に当たって地価が高いことが一番のネックになっていることは御承知のとおりであります。この問題の難しさというのは十分私も承知しています。しかし、この対策にもあります、この推進について具体的にどのような対策を講じるのか、今後どう講じるのか、伺いたいのです。
  69. 河原崎守彦

    説明員河原崎守彦君) 地価は実はある程度の高い水準にあるわけでございますが、これを下げるということはなかなか難しい問題でございまして、私ども地価対策の目標といたしましては、現在安定化の傾向にあります地価をより安定化させてまいりたいということでございます。このような観点から見ますと、六十年の地価公示によりますと、全国の全用途の平均で対前年の上昇率が二・四%でございます。また、住宅地について見ますと二・二%と比較的落ち着いておりますので、このような安定化の傾向をさらに定着化させてまいりたいと思っております。  このためには、国土利用計画法の的確な運用でありますとか、あるいは土地税制の活用というようなことによりまして地価を抑えてまいりたいということでございますが、同時に内需拡大推進するためには宅地の供給というものが大事でございまして、そのために都市計画法上の線引きの見直しでございますとか、あるいは宅地開発指導要綱の行き過ぎの是正というようなことにつきまして地方公共団体の指導等、そういうことが大事ではないか、そういうことを推進する必要があるのではないかというふうに考えておるところでございます。
  70. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 次に、個人消費の伸び悩みについて伺いますが、国民所得の六割近くを占めている個人消費が伸び悩んでいる、こういうふうに思うんです。例えば国民所得統計で見ますと、最近の民間最終消費支出の実質伸び率、これは五十八年度では三・一%、五十九年度は二・六%、非常に低い水準で推移しているんです。これは家計にゆとりがなくなったためだと、こういうふうに思うんです。そしてそれは、第一に実質賃金の低い伸び、第二に税金などの非消費支出が大きくなったこと、第三に政府の福祉政策の後退により将来に対する不安が増大したこと、第四に生命保険料等の義務的貯蓄が増大したことなどによるものだと思うんです。このことは国民生活白書でも分析しているのであります。  そこで伺いますけれども、内需拡大を行う場合、個人消費推進、これは極めて重要であると思うんです。長官、個人消費促進について具体的にどのような施策をお考えなのか、この際お伺いをいたします。
  71. 赤羽隆夫

    政府委員赤羽隆夫君) 最近の個人消費の実情でございますけれども、確かに高度成長期などに比べますと伸びは緩やかになっておりますが、しかしながら着実な増加を示している、こういうふうに理解をしております。確かに個人消費をめぐりまして、先生御指摘のようないろいろな問題点あるいはそういう見方がございます。しかし、伸びが低いということがゆとりのなさということとは必ずしも言えない、こういうふうに思います。将来に備えでいろいろな契約的な貯蓄をするということは、むしろ契約的、義務的な貯蓄ができるような見通しがあるからするということでございまして、必ずしもそれがゆとりのなさということではないと思います。  現在の消費の全体の水準、かなり成熟段階に来ているという説もございまして、そういう点から考えますと、個人消費の現在の状況そのものを必ずしもそう暗く評価する、低過ぎる水準であるというふうに評価する必要はないものと、こういうふうに考えております。  しかしながら、個人消費、確かに御指摘のように国民総需要の六割近くを占めるものでございますので、この個人消費喚起を含めまして、内需拡大対策というものを進めていきたい、こう考えているわけであります。と申しますのは、この消費の基本になるのは所得でございます。所得を伸ばすのは、やはり経済が成長し、生産活動が活発になり、国民所得が増加をする、これが基本でありますから、そういうことで、個人消費自体の喚起ということも重要でありますけれども、それを含めて内需拡大、それを通ずる所得の増加ということで経済政策を運営してまいりたい、こういうふうに考えております。
  72. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 もう時間がまいりましたから、最後に長官の決意を伺い、さらにデノミについて伺いたいと思うんです。  今までの私の質問を通じ、貿易摩擦、内需拡大、特にECとの関係、幾つかの指摘をし、提言をいたしました。ぜひその推進にひとつ御尽力をいただきたい、その決意をまず伺います。  それから、最後でありますから、デノミについてあわせ伺いたいと思うんですが、最近一万円札で買い物をする機会というものは非常に多くなってきております。日常生活に使用するお金が四けたということになると、ある面では不合理だと思うんです。しかも、その経済環境を見ても、円高であるとか物価の安定、経済の安定成長、こういう環境、条件、こういうものは整っているんじゃないかというような意見を持つ人がいるんです。そこで伺うんですが、デノミについてはどういうふうにお考えなのか。また、デノミを実施する場合、当然国会の決議等の手続はとるべきだと、こう思うんです。  最後でありますが、長官にそのデノミについてのお答えと、今まで私が御要請をしました幾つかのことについての推進の決意、これを伺って私の質問を終わります。
  73. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 積極的な御提言をいろいろいただきまして、十分胸に含んで、これからの施策に当たってまいりたいと考えております。  それからデノミにつきましては、これは私の個人的な意見でございますけれども、環境的には大変物価も安定しておるし、時期的にはいいあれじゃないか。ただ、今ちょうど貿易摩擦でいろいろごたごたしている最中でございますので、そういう内外の情勢をあわせてやる時期を判定しなけりゃいけないんじゃなかろうか。物価の点から言えば非常に今いい時期だなという感じは率直にいたしております。
  74. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 終わります。
  75. 松岡滿壽男

    松岡満寿男君 今回の円高関連いたしまして若干の質疑を行いたいと思います。  前回のこの国民生活経済に関する委員会ではアクションプログラムにつきましての質疑が行われたわけですけれども、その当時は貿易摩擦問題、特に対米貿易摩擦の問題につきまして相当な危機感も漂っておったわけであります。かなり過熱した状況であったわけでありますけれども、その後いろいろな事態の集積というものが行われ、総理あるいは安倍外務大臣、通産大臣を初め多くの閣僚が訪米もされましたし、同時に議員同士の交流もかなり頻繁に行われたわけであります。最後は二階堂副総裁も二階堂ミッションをつくって行かれたわけでありますけれども。また、レーガン大統領の新通商政策の声明、さらにはG5、こういうものの集積によりまして急速に九月末から円高局面を迎えておる。  しかし、それにつれまして米国の中におきましても、議会の空気もかなり鎮静化してきておる。これはやはり我が国がとった誠実な諸施策というものに対する評価と今回の円高、一種のこれは貿易摩擦にとっては神風になるのかどうかわかりません、あるいは国民経済にとっては円高ショックということになるかもわかりませんけれども、そういうものが一つ背景にあったんじゃないかと思うんです。過去、いわゆる変動相場制に移行いたしましてから、四回の円高局面というのを我が国経済は経験をいたしておりまして、今回で五回目ということになるわけです。  先ほど来、日銀総裁の方からもお話しございましたが、一定のそういう地合いに基づいた市場原理というものを背景にしながら、やはり五カ国蔵相会議並びに中央銀行総裁会議、そういう趣旨を理解しながら、お互いの努力の集積というものがあらわれておるというような御説明もあったわけでありますけれども、今回の円高局面、これは過去の円高と比べでどのような特色があるのか。また、貿易摩擦関連、一連のさまざまな問題についての米国側の現時点での受けとめ方、こういうものにつきまして長官の方から御見解を賜りたい、かように存ずる次第であります。
  76. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 今回の円高は、今御指摘のとおりG5の協調介入によって実現いたしたものでございますが、今日まで何回か関係中央銀行の間で協調介入の実績は上げてきたのでございまするけれども、今回ほど緊密な連絡をとり、しかも大がかりな介入をやったのは恐らく今度が初めてだろうと思うんです。それだけやはり為替相場の適正な安定ということを各国が身にしみて感じている時期は今回が初めてだろう。  特に、アメリカ自体がリーガンからベーカーに財務長官がかわりまして、一時リーガンが言っておったように、アメリカ側には貿易赤字の責任はないんだというような考え方を従来とっておりましたのが、ベーカーになりましてから、やはり責任はアメリカ側にもあるんだ、ひとつこの際思い切ってやらぬとドル自体の将来が心配だということで積極的にアメリカ側で出てきてくれた、それが大いに今回のG5を成功させる一つの大きな原因だったというふうに私どもは考えておるわけでございまして、先ほど来日銀総裁も言っておられますように、私どもとしては、この機会にぜひ長年私どもといたしまして、長年というのは言い過ぎでございますが、事あるごとに赤字財政の圧縮、高金利の是正を主張してきました立場におる者といたしましては、この際、円・ドルレートの適正化につきまして、はっきりとした将来の展望を描く段階に持っていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  77. 松岡滿壽男

    松岡満寿男君 アクションプログラムができました時点で、もう少し我が国のとる態度というものについてアメリカ側にPRをすべきではないかということを申し上げたんですけれども、九月に私もアメリカに行かせていただいたんですが、現地の大使館、領事館の皆さん方が非常な努力をしておられる。テレビとかいろんな会合、あるいは雑誌、新聞等に対するそういう努力の集積というものが随分行われているなということを肌身で実は感じたわけです。今回もやはり議員同士の交流、こういうものも非常によかったんじゃないかと思うんですけれども、そういう努力があったから今回のこういう結果につながっておるんじゃないかというふうに思うわけですけれども、その辺は長官、どのようにお考えでございましょうか。
  78. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 非常な御努力を松岡さんにもやっていただきまして、アメリカではそれこそ総力を挙げてPRに努力していただいた。大使館を中心に議員団の派遣もありまして、やったことが大きなプラスになつだろうと思うのであります。  ただ、二階堂ミッションがお帰りになりましての報告ですと、やっぱりアメリカは広うございますから、例えば背高コンテナの問題は、もう解決してから一年近くにもなるのにもかかわらず、まだ解決しないんだなんということを堂々と書いて報告書が出ておるんですね。やはり幾ら努力しても努力し足りないんだなという感じがしておるのでございまして、私どもは今後もそれこれ機会あるごとに我々のとってきた立場は鮮明にいたしたいと思いますので、どうかまた松岡先生の方でもできるだけ御協力いただきますようにお願いをする次第でございます。
  79. 松岡滿壽男

    松岡満寿男君 サッチャー首相の日本は円安誘導をしておるんじゃないかということに二階堂副総裁が反論された時期に比べますと、やはりどうにか一息ついたなという感じだと思うんですけれども、またそれぞれの国益をめぐりましてこれから長いこういう問題が続いていくわけですから、お互いのやはりそういう努力というものが必要だというふうに思うんですけれども、今回の円高でありますね、そういう点では協調介入、そして円高誘導というものが一つ背景にこれはあるわけですね。政策的に一つある。これについて現在、きのうの時点で二百二円でございますか、ということでありますけれども、昨日の読売新聞を見てみますると、アメリカ政府が適正水準は百九十五円から二百五円を求めておる。これは輸入課徴金を二五%取るということと同じ輸出抑制効果を持つんだというような商務省の考えだということなんですけれども、これはちょっと言い過ぎじゃないかなという感じが私どもはいたすわけです。  この円高につきまして、国内に与える影響というのは非常に大きいわけでありますから、考えてみますると、貿易摩擦解消の中でこういうことをするということ自体がやはり我が国の経済の体質を変えていかなきゃいけない。したがって、これを徐々に変えていくのならいいですけれども、急速にやりまするとショック症状を起こすという問題もあるわけでありまして、今回の円高については一体どの程度の深さになっていくのだろうか、その辺がやはり国民の一番関心の、特に企業経営者を中心として強いところだというふうに思うわけでありますけれども、この辺についての見通しを長官はどのようにお考えでございましょうか。
  80. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 先ほども日銀総裁がこの問題について発言しておられまずように、大体ここら辺ですよということは通貨当局としてはなかなか言い得ないところだと思います。一番大事なことは、今、松岡さん御指摘ございましたように、急激な値上がりだとやはり企業に及ぼす影響が相当大きいですから、そこら辺は、ある程度は企業もそれをこなす力が今ついてきておりまするけれども、やはり大きな打撃を与えない程度のところを考えていかないといかぬなという感じがいたしておる次第でございます。
  81. 松岡滿壽男

    松岡満寿男君 円高誘導、協調介入の問題は、蔵相会議で一定の目標を持って相互がやはり自主的に努力をするということでありますから、今回のこういう種類の発言というものは、どうも私どもから見ると奇異な感じがしないでもないんですけれども、この点はいかがお考えでございましょうか。
  82. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 従来から、通貨当局である大蔵大臣なり日銀総裁が、もっと上がってもいいんだとか、まだ安いんだとかいうような発言は公の場ではいまだかってやったことはなかったと思うんです。今回に限っては率直な立場を表明しておられますが、それだけやはり日本経済の将来、世界経済全体のこれからの動きについて危機感を持って努力をしておられた。その結果、今日までのいろんな発言となってあらわれたと思うんでございまして、それは日本だけじゃなくて、アメリカ側もそういう気持ちを持ってきて協調してくれたわけで、今日のような相場が実現したんだろうと考えております。
  83. 松岡滿壽男

    松岡満寿男君 今回の円高によります貿易収支への影響の問題でありますけれども、二百四十円で推移した場合に大体四百五十億ドル、四百八十億ドルの黒字の見込みであったわけですけれども、こういう円高になってまいりますると黒字幅は拡大していくんじゃないかというような感じが当面するわけですね。いわゆる輸出企業が円高による円貨の手取りの減少を回避するために輸出商品のドル建て価格を引き上げていくという結果によって、一時的に輸出金額というものが膨らんでいく。これはJカーブということのようでございますけれども、このJカーブ効果によって、当初円高になれば輸出がブレーキがかかって、貿易収支が若干黒字が減るんじゃないかと、そういう期待があったわけですが、当面はどうもふえていくようでありますね。この辺の見通しはどのように考えておられるわけでしょうか。
  84. 赤羽隆夫

    政府委員赤羽隆夫君) ただいま先生が御指摘のようなJカーブ効果というのがございます。  まず、輸出の面で申しますと、従来と同じ輸出ドル建て価格、こういうことになりますと円貨収入が非常に減ります。そこで、企業としては収益が悪化して困るわけですから、何とかしてドル建ての価格を上げよう、こういうことが起こります。それとともに、大体こういう輸出等の取引ななどは単発で起こるというよりは継続的な契約ができている。しばらくの間は、輸出数量は決まっておるというところへ値上げが行われるということになりますと、それだけ輸出外貨収入というのはふえる。  他方輸入面について申しますと、円高が進行するとしばらく待っていれば安く買えると、こういうことでありますから、輸入につきましてはいわば先送り効果輸入する物は当用買いだけ、こういったような効果がありまして、円高が進行中しばらくの間はむしろ黒字がふえるという効果がございます。  それが半年あるいは一年ぐらいたってくると、円高の本来の輸出抑制効果輸入拡大効果というのが出てきて、それ以後においては貿易黒字というのは漸次縮小していくだろうと、こういう見通しになります。果たしてそれがどれぐらいの金額かというのは、現在の状態のもとで、この円高は始まったばかりでありますので、数量的には的確につかまえることはできない、こう考えます。  ただ、円高の推移ということと別にいたしまして、六十年度の下半期の輸出入ということを考えてみますと、まず年度の前半におきまして大変にふえておりました対中国輸出、これは減退をしていくだろう、こういうふうに考えられます。円高がない前におきましても、対米輸出等、対中国以外のところにおきまして、昨年度と比較いたしまして輸出の伸びというのは極端に鈍化をしている、まだプラスの伸びではありますけれども、鈍化をしている、こういう状況でございました。  そういうことで考えますと、Jカーブ効果というのはあるわけでありますけれども、それほど大きな黒字の拡大といったようなことは考えないでいいだろう。半年あるいは一年足らずの間たちますと、それから本格的な円高の黒字是正効果、不均衡是正効果というのがあらわれてくるだろう、こう期待しておるわけでございます。
  85. 松岡滿壽男

    松岡満寿男君 ただ、これを試算してみますると、六十年度の貿易収支が大体当初の見込みより五十億ドルから百億ドルふえる、六十一年度については六百億ドルぐらいに拡大するだろう、六十二年以降については縮小していくだろうというような見通しもあるようですけれども、その辺の感じはどうでしょう。
  86. 赤羽隆夫

    政府委員赤羽隆夫君) 今のような試算と申しますのは、Jカーブ効果の継続期間というのをどの程度に見るのか。半年ぐらいで本来の効果があらわれるというのから、一年半あるいは二年、三年とJカーブ効果が続く、こういったような見方もございます。ですから、その期間をどれぐらいに見込むのかによって違うと思います。
  87. 松岡滿壽男

    松岡満寿男君 ですから、円高によって貿易収支は逆にちょっと一時的には黒字がふえていくということは、やはり摩擦というものは減らないということ。片方で国内においては、円高によって、マクロ経済とかあるいは企業の収益でありますとか、さまざまな面に大きな影響が出てくる。その間どうやってしのいでいくのかということは非常に大きな問題じゃないかと思うんです。  特に、円高によりましてマクロ経済に与える影響をまずちょっとお伺いしてみたいと思うんですけれども、過去四回の円高については、景気自体の足をそう引っ張った実績というのはなかったようでございますけれども、今回一体これどうなっていくんだろうか。先ほど来意見が出ておりましたけれども、個人消費もどうもぱっとしない。輸出はこれでちょっと頭打ちになってくる。さらに企業業績については後退の陰りが出てくるし、内需拡大についてもいろいろと御努力をいただいておるし、我々も努力を重ねておりますけれども、財政再建という枠組みの中でいま一つ、来年の税制改正もまだ先の話になりますので、財源的な面で非常に厳しい。  そうすると、日本経済というものが減速していく、あるいは不透明感が増していくということを非常に恐れているわけでありますけれども、GNPに換算しますと、一ドル二百二十五円、二百四十円に対して二百二十五円になったときに〇・九%から一%実質成長率はダウンするんだ、あるいは二百十円に定着するとマイナス二%あるいはマイナス二・二%ぐらいになるというモデル試算も出ておるようでありますけれども、これがアメリカが言っておるような百九十五円とかあるいは二百円を割るというような状態で定着していきますと、さらにGNP全体に対して成長鈍化という大きな影響が出てくる。  あるいは企業収益につきましても、ある銀行の試算によりますと、十六業種でやってみて、二百四十四円だったら全部黒字。これは輸出収益でとらえまして、輸出採算でとらえてプラスだけれども、二百十五円になると十業種に減って、あるいは二百円になると二業種しか黒字にならない、自動車とコンピューター。結局、円高メリットを受けるのは電力、ガスだけじゃないかというような見方もあるようでありますけれども、このマクロ経済あるいはそういう企業収益、そういうものは余り急速に円高というものが進んでいくと大きなショックを与えるという可能性があるんじゃないかということを危惧するわけですけれども、その辺につきましてはいかがでございましょうか。
  88. 赤羽隆夫

    政府委員赤羽隆夫君) 円高がマクロ経済あるいは企業の特に収益に与える影響いかんと、こういうことでありますけれども、まず第一のマクロ経済に与える影響、これは今お示しになりました二百二十五円になれば〇・九%、二百十円になりますと二%以上の実質成長率低下効果、この試算はやや大き過ぎるのではないか、こういう感じがいたします。  と申しますのは、先ほどから先生御提起になっておりますJカーブ効果、Jカーブ効果によって黒字がふえるということは、むしろこれは外国から日本が国民所得を余分に稼いでいる、こういうことを意味いたします。輸出というのは日本が品物を外国に売って稼いだ所得、輸入は外国に対して日本が払った所得、その差額が黒字でありますから、黒字が膨らむということはそれだけ国民所得がふえるということであります。したがいまして、このJカーブ効果が起こっている間におきましては、これはむしろマクロ経済に対する影響というのはそう大きくない、あるいはむしろプラスかもしれない、こういうことになります。  他方、企業収益に対する影響ということになりますと、これまで一ドルの収入から二百四十円稼いでおったのが、一ドルの収入から二百二十五円あるいは二百十円あるいは百九十五円しか入ってこないわけでありますから、これはかなり大きな影響が出てくる。これは輸出企業にとってはそのように言えると思います。それから、輸入企業にとりましては、これまで一ドルの品物を輸入するのに二百四十円払っていたのを二百十五円なりあるいは百九十五円で済むわけですから、これは大変収益好転効果がある、こういうことではないかと思います。  むしろ、この円高が進行することによりますところの影響というのが直ちにあらわれてまいりますのは、収益面さらには心理的な側面だと思います。今仰せのように、将来に対する不透明感、不確実感、こういったようなものが強くなる、このあたりのところが一番当面の大きな問題かなと、こう考えます。
  89. 松岡滿壽男

    松岡満寿男君 今回の円高がいろんな面で企業収益あるいはマクロ経済に影響を与えるということは事実だろうと思うんですけれども、地域経済ですね、いつも企画庁から地域経済動向を拝見いたしておりますけれども、大都市圏と比べまして地方圏がどうも景気動向につきましては上昇テンポがいつもおくれるわけですね。ずっとこのところも私のおります中国地区はいつも遅い方に属しておるわけです。もちろん、それぞれの地域産業構造、そういう様態によりまして異なるわけですけれども、そういう円高地域経済に及ぼす影響、特に今までもずっと跛行性が続いてきておるわけです、都市圏といわゆる地方との間に。こういうものについてはどのような見通しを持っておられますか。
  90. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 地域経済に対する影響につきましては、私ども常時十分連絡をとりながら地方の動きを見ておりますので、とりあえずは必要な場合には公共事業費の前倒しを、適切なあれをとろうかと、こういうことで今計画をしているような状況でございます。
  91. 松岡滿壽男

    松岡満寿男君 地元に帰りますと、やはりこのところ円高の影響についての話が随分出てまいっております。中小企業庁に伺いますと、まだそれほど深刻な事態じゃないというようなお話でありますけれども、これからやはり年末にかけましていろいろな問題が具体化してくる可能性がありますので、どうか今長官がおっしゃいましたような趣旨にのっとられて、適切な対応をお願いいたしたいと思うわけです。  さて、中小企業への影響なんですけれども、円高が急進展をしておるわけですけれども、中小企業にどのような影響が出ておるのか。これについての把握を当然しておられると思うんですけれども、この点につきましてひとつその結果について御報告をいただきたいと思うんです。
  92. 上田全宏

    説明員(上田全宏君) 通産省といたしましては、円高の進展による中小企業の影響につきまして現在その動向を注視しているところでございます。  既に十月初旬時点におきまして、輸出関連中小企業に対しまして調査実施いたしました。これによりますと、キャンセルとか契約条件の変更は少ないと、それから為替リスクヘッジ対策も相当とられているといった面もございますが、今後の問題といたしまして、為替レートが二百十円で推移した場合には調査対象の約半分の企業が赤字になるということを申しております。また、二百円以下で推移した場合には大半の企業が採算がとれないというふうに申しております。  それとは別に、別途現在、輸出比率の高い産地につきまして鋭意調査実施しておるところでございまして、近々とりまとめを行う予定にいたしております。
  93. 松岡滿壽男

    松岡満寿男君 今の調査の御報告にありましたように、二百円以下で推移した場合は大半の企業が採算がとれなくなるという厳しい事態が予測されるわけですから、この辺につきましてもひとつ的確な対処をしていかなければいけないというふうに思うわけですけれども、この円高に対処するための中小企業対策としてどのような措置をとられるお考えでしょうか。
  94. 長田英機

    説明員(長田英機君) 先生御指摘のとおり、この急速な円高中小企業にどういう影響を与えるかといいますのは私どもとして非常に重大な問題と考えておるわけでございまして、その推移を見ながら適時適切に対策を講じていきたいと、こう考えているわけでございます。  具体的には、先般政府系の中小企業の三機関及び全国信用保証協会連合会あてに通達を出しまして、現行の施策を前提といたしまして適切かつ機動的にそれぞれの機関が対処するように要請をしたわけでございます。  さらに、来年度の対策といたしましては、政府系の中小企業金融機関に国際経済調整対策等特別貸付制度と申しますちょっと難しい名前でございますが、こういう国際情勢の変化に対応いたしまして、事業転換あるいは経営安定という場合に低利の融資が中小企業に行われるようにする制度を創設したいということで要求しております。  さらに、現在の中小企業事業転換法が来年の十二月に期限が切れるわけでございますものですから、それを拡充強化したいというふうに考えている状況にございます。  以上でございます。
  95. 松岡滿壽男

    松岡満寿男君 我が国の経済輸出主導型から内需中心型に切りかえていくという、体質を変えていくという大きな目標があるわけですから、そうなってきますと、輸出産業あるいはそれに依拠しておる中小企業、下請関係は業種を転換しなければいけないという問題も出てくるわけでありますけれども、中小企業対策としてそういう事業転換対策ですね、こういうことを現在の時点で言うのはちょっと早過ぎるかもわかりませんけれども、そういうことが非常に重要になってくる可能性もあるわけです。こういうものについて私は対策を充実すべきだと考えているんですけれども、これについてのお考えを伺いたいと思います。
  96. 長田英機

    説明員(長田英機君) 現在の中小企業事業転換法は、先ほど御説明いたしましたが、来年の十二月で期限切れを迎えるわけでございます。しかしながら、最近の中小企業を取り巻く非常に厳しい環境ということを考えました場合に、中小企業者の方々もそう考えているところでありますが、中小企業が事業転換ということを通じまして何とかその活路を開拓していくということを私どもとしては強力に支援したい、こういうふうに考えているわけでございます。こういう点から、現在の中小企業事業転換法につきまして各種措置強化を行いまして新事業転換法を制定したいというふうに考え、次の通常国会にお願いしなければならない、こういうふうに考えている次第でございます。  なお、強化を行う措置強化内容といたしましては、例えば組合員が事業転換を行います場合に組合としてその組合員の事業転換を支援していくような措置を加えたい。それで、こういう組合が転換円滑化します場合にいろいろな税制上の優遇措置を加えることとしていきたい。さらに、先ほど申し上げましたが、政府系の中小三金融機関から国際経済調整対策等特別貸付制度ということで低利の融資を行うというような構想を私ども持っておりまして、現在政府内部でいろいろ調整をしているところでございます。
  97. 山田譲

    委員長山田譲君) 松岡君、時間ですから。
  98. 松岡滿壽男

    松岡満寿男君 はい。  先ほど電力、ガス円高差益の話が出たんですが、これは内需拡大策の四本柱の一つであります「民間設備投資促進」、これによりまして電気事業ガス事業設備投資追加約四千億というのが一つの目玉になっておるわけですけれども、今回の円高によりましてかなり収益が伸びるだろう。それを先ほどは国民に還元すべきだという意見もございましたけれども、前回そういうことをやって何にも効果が上がっていないという問題もあるわけです。こういうものは慎重にひとつ、しかも現在の状況に合った、国策に沿って使っていかなきゃいけない、かように考えるわけでありますけれども、その辺についてのお考えをちょっと伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  99. 林昭彦

    説明員(林昭彦君) 最近の円高傾向はまだ一月ちょっとしかたっておりませんので、これがどういう形で定着していくのかということを見通すことはちょっと現時点では難しい。また、今の円高が電力会社なりあるいはガス会社の収支に好影響を及ぼすというまでには、まだ一月余りたちませんとそういうものは出てまいらないというタイムラグがございます。したがいまして、私どもとしては、今後の為替レート動向、あるいはその他の需要でございますとか出水率とか、あるいは資本費の動向、こういうものを十分推移を見守っていきたいというふうに当面考えております。
  100. 松岡滿壽男

    松岡満寿男君 どうもありがとうございました。
  101. 刈田貞子

    刈田貞子君 質問させていただきます。  私は、昨日通告した質問では、このたびの円高による経済効果とか、あるいは内需拡大策による経済効果を細かく計算して、そしてその数字をお示しいただきたいということを申し上げてあるはずでございますけれども、先ほど来、同僚委員からこうした内需拡大策経済効果の細かい数字については当委員会に御提出があるということでございましたので、私はその一々細かい数字を伺っている時間を割愛していって前段の部分はカットしたいと思います。よろしゅうございましょうか。
  102. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 結構でございます。
  103. 刈田貞子

    刈田貞子君 ただ、私が申し上げたいのは、先ほどから円高によるデフレ効果はそんなにないのではないかということが局長の方からも出ておるわけでございますが、それだけに私はそのお示しいただく数字を大変期待しているところでございます。内需拡大策を進めていく中で、円高によるデフレ効果というのが先ほどもお話がありましたように相殺されるおそれがあるというのは一貫した見方でありますので、政府ではそういうところをどういう形で強調なさるのか。GNPあるいは貿易収支、税収その他に及ぼす経済効果をぜひ当委員会に数字でお示しいただきたいというふうに思います。  視点を変えましてお尋ね申し上げますが、十月十五日の閣議終了後、金子経済企画庁長官は、今回の対策は百点満点から見れば六十五点、年末の予算編成作業を終えて新たに追加される措置とあわせて一本だと、こういうことを記者会見でおっしゃっておられるわけでございますね。この意味についてお伺いしたいと思います。
  104. 赤羽隆夫

    政府委員赤羽隆夫君) ただいまいろいろな経済効果について試算を出すようにという御要望がございました。先ほどから私どもの方でお出しを申し上げると申しておりましたのは、十月十五日の内需拡大策効果、これは陣容、規模、さらにはGNPに対する効果輸入増加効果、この試算についてもう概にその際発表しております。  それにつきましての計算方法等についての資料はお出しできる、こういうことでございますけれども、これが税収にどのような影響があるのか、あるいはJカーブ効果をどのように見たのか、こういったような点につきましては、十二月の終わりの六十一年度経済見通し、この際にまで、それと予算編成方針、これまで待っていただきたい。直接内需拡大効果の税収効果ということではございませんけれども、六十一年度予算編成にかかる租税の見通し等はその際に出ると、こういう形でございまして、その時点まで待っていただかないと、私どもとして御要望のすべてについて提出をする、そういう計算ができているということではありませんので提出ができない、こういうふうにお答え申し上げたいと思います。
  105. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 今の数字の点はよろしゅうございますか。
  106. 刈田貞子

    刈田貞子君 はい、結構です。
  107. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 先般の私の発言は、今度の内需拡大策におきましては財政政策、金融政策について言及いたしておりません。大変残念なんでございまするけれども、財政が御承知のような状況だものですから、思い切った減税措置もとるわけにまいりませんでしたし、また公共事業費の積み増しにつきましても、予算編成時期まで細かい議論は持ち越しにしようやというようなことになりましたものですから、住宅減税につきましてはある程度のめどがついておるのでございますけれども、それ以外のものについては今度の対策からは完全に落ちました。  また、金融政策につきましても、御承知のような日米関係の金利差が大きいものですから、公定歩合をどうこうするというようなことになりませんので、そういう意味において百点満点で計算すれば六十五点ぐらいだなという話をしたわけでございますので、御了承いただきます。
  108. 刈田貞子

    刈田貞子君 今、長官がおっしゃられましたようにまさにそのとおりでありまして、このたびの内需拡大策というのは、今言われたいわゆる財政及び金融の両政策、これが欠けているわけですね。私はあんまりこういう難しい問題を得意とはしないのでありますけれども、つらつら勉強すると、西ドイツの今回のマルク誘導策については、実はこの二つを上手に誘導していこうという大変熱を込めた政策を進めているやに私は読んでいるわけでありますけれども、個人消費喚起のための減税策ですか、それからまた民間設備投資促進のための金利の再引き下げというふうなことを積極的にやろうとしているわけでありますね。私はこの西ドイツのこうしたマルク高誘導政策、これに見習う必要があろうかと思うのですけれども、長官の御意見をお伺いしたいと思います。
  109. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 置かれた国のそれぞれの環境が違いますから一概に言うわけにはまいりませんけれども、例えば西ドイツで今考えております減税は、これから論議することになっておりまするけれども、ある程度思い切ったことをやろうというようなことでやっておりますし、私どもも一日も早くそういった環境に日本が置かれることを望んでおるわけでございますが、ただ財政金融政策は外しましたけれども、それ以外の点、例えば規制緩和の問題等につきましては、あるいは非関税障壁を外すような問題につきましては、今まで手をつけなかった問題を今度新しく取り上げておりますから、それは日本としては画期的なことが実現できる措置が今度の一連の措置でとられることになった。私は決して落第点だとは思っていないんです。そういう意味におきましては、明治維新以来のとにかくなかなかやろうと思ってもできなかったことが今度できるようになったなという感じを持っておることを申し上げておきます。
  110. 刈田貞子

    刈田貞子君 大変思い切った策を講じておられるというところは私も何かわかるような気がするんですけれども、その効果の方ですね。効果をやはり追っていかなければならないだろうということであります。  次に、私は今回の円高誘導によって出てくる差益の問題に少し質問を移らせていただきますけれども、これが国民生活に返ってくる問題、このことを伺います。  先ほどから電気代、ガス代の話も出ておるわけでありますけれども、輸入食品がいつ安くなるのだろうかとか、ことしの灯油は安く買えるのであろうかとかいうふうな大変身近な期待を持っている国民がたくさんあるわけです。そのことについて身近な話としてお答えいただきたいということと、それからもう一つは、きょう閣議で長官が輸入品の値下げを指導していくように検討するということをおっしゃられたんですか。
  111. 金子一平

    国務大臣金子一平君) ちょっともう一度。
  112. 刈田貞子

    刈田貞子君 輸入品の値下げを指導していくように検討するということをおっしゃったんだそうですね。私どもが非常に期待をしていることであります。その具体的な方策あるいは御指導というようなものはどんなふうなことを考えておられるのか。  私どもが聞いておるところでは、いわゆる卸段階では既に現象が出てきているわけです、安くなっているという。ところが、小売の段階ではなかなかそれがまだ結果として出ていないというようなことも聞いておるわけでありますけれども、こういうことも含めて、国民生活に現在出てきている影響、あるいは今後どうなっていくであろうか、身近なところでお答えをいただきたいと思います。
  113. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 日本の流通機構が非常に複雑なために、末端に円高効果があらわれるのが非常におくれるという非難がありますので、これは私どもといたしましては、できるだけ早い機会に、関係各省庁と連絡をしながら、的確に国民の消費生活にプラスになるような啓蒙、指導をやってまいりたいということを閣議後の記者会見で申したわけでございまして、例えば従来の例で申しますと、灯油の季節になりますと灯油をどうするんだとか、あるいは家畜飼料をどうするんだとか、輸入食料品をどうするんだとか、いろいろやってまいりましたが、そういうことを今すぐどうこうというわけにはまいりますまいと思います。しかし、ある程度の実績が出だしたところで機を逸せずその点は指導をしてまいりたいと考えておることを申し上げておきます。
  114. 刈田貞子

    刈田貞子君 次に、私は先ほどからお話が出ております電力・ガス料金について少ししつこいんですが細かく伺っていきたいと思います。  先ほど長官は、非常に大事なテーマである、大切に考えていかなければならないことだろうと思うというふうにおっしゃられました。私もそのように思います。で、電事連――電気事業連合会の会長である小林さんは、さきの十月十六日に、円高差益は現行の電力料金の長期安定に用いると、したがって、電気料金の値下げはしないということを大変能弁に記者会見なさっておるわけでありますね。その後二十一日に、通産省の幹部の方は、電力料金が原価主義をとっている以上円高定着すれば料金引き下げを検討しなければならないであろうというふうに言っておるわけであります。  通産省としては、先ほどから円高状況がまだ見通しがつかないので、定まらないのでという答弁をしていらっしゃるわけですけれども、そのところをもう一度確認したいと思います。
  115. 林昭彦

    説明員(林昭彦君) 先ほど来たびたび御答弁申し上げておりますように、今の円高傾向、始まったばかりでございますので、このタイムラグのまだ途中期間でございます。もう少し様子をじっくり見てまいりたい、慎重に見てまいりたいということが私どもの現在のポジションでございます。  それから、今先生の引用されました電事連会長の発言ということでございますけれども、私どもその真意を聞いたところでは、現時点において事態の推移を見守りたいということであるということでございまして、私どもの幹部が申したといっておりますのも、基本的には現段階では具体的な今の円高の傾向というものについては事態の推移を見守るべきだということで、原価主義等一般論を述べておりますけれども、現時点の具体的な円高という現象についてのスタンスといたしましては、事態の推移を見守りたいということに尽きているというふうに申しております。
  116. 刈田貞子

    刈田貞子君 そこで、少し業界のことについてお伺いをしたいんですけれども、この電力業界が持っている余剰金あるいは別途積立金というような問題については、昨年の四月、五十八年度業界決算を終わった時点で私は決算委員会で質問をいたしておりまして、そのときには例の原油値下がりによる余剰をどうするのかという分についての質問を私はいたしておるわけでございますけれども、そういった分も含めまして、やはり国民の前にこの業界のあり方あるいは現状について明らかにしておく必要があるのではないかというふうに思いますので、いささかの質問をさせていただきます。  この業界では、脱石油を目指して膨大な原子力発電投資をしていると、これは皆さん知っているところでありますが、そのためにもう資本費の負担が非常に多くなってきているということが言われているわけでありますが、電力業界と話し合いをいたしますと、この円高差益がすぐ料金引き下げにつながらない理由は、この資本費負担が非常に重いからであるという回答をなさるところもあるわけでありますけれども、こういうような点について通産省ではどのような見解を持っていらっしゃいますか。
  117. 林昭彦

    説明員(林昭彦君) 電力会社の資本費につきましては、御指摘のとおりまあ年によって増加のテンポは違いますけれども年々増大しているという事実がございます。ただ、これにつきましては、例えば原子力発電というのは一キロワットアワー当たりの料金は低いわけでございますが、その中でのどうしても資本費というものが大きいということでございまして、ほかのLNG等につきましても、こういう石油の代替電源というものの開発というのはどうしても資本集約的であるということが言えるのかと思います。また、新しい電源というのはどうしても遠隔地にございますので、その送電、配電というものの設備の整備というようなことで投資規模が大きくなりまして、これの減価償却あるいは支払い利子というのが増加している、こういうことかと思います。  この電力会社の収支につきましては、その年々の気温ですとか景気ですとか、そういうことによります需要の動向あるいは出水率、そういったいろんな不確定要因による影響が非常に大きゅうございますし、また先ほど申し上げました資本費あるいは人件費、こういったものも年々増加しておりまして、こういうものを総合的に勘案する必要があるんじゃないかというふうに思います。  いずれにいたしましても、こういう資本費の増加ということはございますが、収支全体を見まして、燃料費の動向等も総合的に勘案しながら、私どもとしては収支というのは十分に把握をして対応をしてまいりたいというふうに思っております。
  118. 刈田貞子

    刈田貞子君 五十三年にやっぱり円高現象によって五十四年度に別途積立金をつくりましたね。これができて、それから五十八年の原油価格の値下がりによってこれは原価変動調整積立金ができましたね。これらのいわゆる余剰金を電力会社が大変大きく抱えているわけでありますけれども、こうしたものの使途について政府としてはどんな御指導をなさるんですか。ただ株主総会等にお任せしっ放しなのかどうなのか。その辺のところをお伺いしたいと思います。
  119. 林昭彦

    説明員(林昭彦君) 御指摘の別途積立金あるいは原価変動調整積立金、この使途につきましては、これは将来のいろいろな、例えば燃料費が上がったというような場合には、当然その期間の収支が悪化いたしますものですから、これを取り崩しまして現行料金を少しでも長く維持していくということのために使ってもらえるものと私ども理解をしているわけでございます。  この積立金の取り崩しの順序と申しますか、どういう段取りでやっていくかということについては、これは商法の規定によりまして株主総会の議決事項になっております。したがいまして、私どもとしては、こういう積立金というのは料金の長期安定に活用するため明確な形で区分経理をしたものでありまして、電力業界としてもそういう趣旨を踏まえて対応してくれるものというふうに考えておるわけでございます。
  120. 刈田貞子

    刈田貞子君 料金の長期安定ということでおっしゃられるわけですけれども、本当はそういう論法というのは、電気料金は値上げをするのが当たり前なんだけれども上げないで済んでいるんだということになりますよね、値上げをただ延ばしているというだけの言い方だから。いつもそういう理由を、五十三年からこの運動をやっていますものですから、私はいつもいつも言われるんですよね、引き延ばしをすると。どうもその意味がよくのみ込めないんですけれども、これが必ず出ております。  五十三年のときに、たしか一世帯当たり二百七十円四十銭をペイしたというような形をとりましたけれども、私は今の段階でそういうことを要求するつもりはございません。ですけれども、今回の円高差益というのは、これは五十八年の分のいわゆる原油価格の値下がりによって出てくるバレル当たり五ドルでしたか、あのときの差益とは性格が違うんですね。つまり、誘導して構造的につくってきたものですから、それだけに国民の関心というのは五十八年度の分よりももっと高くなるはずなんです。だから、私はこれだけ電力料金に対してこの差益をどうするんだという声、世論があるんだと思うんですよ。その辺のところは長期安定に資しますなんと言っていられない部分があるというふうに思うので、それは慎重に扱っていただきたいと思うわけであります。  それで、これは大変素朴な言い方ですけれども、電気料金の引き下げというのは、この前私四月の質問のときにも申し上げました。公共料金という名のもとに小回りのできないものだ、だからまことに引き下げという技術的なものの難しさがあろうかということを申し上げております。だから、それはこの前の二百七十円というようなラーメン代にも値しないようなものを返すよりは、もっといろいろな方法があるというふうに思いますよ。今言ったいわゆる料金長期安定、現行で安定ですよね。だけれど、それも今言ったように、じゃ本来なら何年何月から値上げをするはずのものが差益によってここここまで値上げをしないで済んでおりますというような言い方は成立しますか。そういう試算はできますか。  それともう一つ、今回の問題については、私は試算をするときには九月二十日のレートていつも物事を計算してきています。それで、対ドル当たり三十円高になったときの経済効果を出してくださいというふうに実は企画庁の方に私申し上げておいたんですけれども、例えば対三十円高ぐらいになったときに電力業界はどのぐらいのものを抱えることになるのかというような試算をなさったことがありますか、お伺いします。
  121. 林昭彦

    説明員(林昭彦君) 現在、既に積んでおります価格変動準備金の取り崩しによってどのぐらいの期間、電力料金が本来上がるべき局面が来たときに継続できるかということについては、それは先生も御指摘のとおりそのときどきの需要とかあるいは出水率とか、いろいろ不確定な要因がございます。それから、一方で年々資本費、人件費というのは増加しておりますので、どれだけの期間その積立金によって長期安定と申しますか、現行料金が本来上がるべき局面でも上がらずに済むかというふうなことを明確に申し上げることは困難でございます。  それから、第二点といたしまして、今円高が起こっておりますけれども、どれだけの円高が起こればどれだけの収支への影響があるかということの試算があるのかという御指摘でございますが、これも厳密に言いますといろいろ難しい問題がございますけれども、一応一定の前提を置きまして私ども機械的に計算したものがございまして、円が十円円高になりますと電力で千二百億円、これが一年間続いたという仮定でございますが、一年間仮に十円円高が続きますと千二百億円、それからガス業界につきましては、同じような前提で百四十億円という試算をしております。
  122. 刈田貞子

    刈田貞子君 次いで、内需拡大策の方を伺います。  この内需拡大策の中で「民間設備投資促進」をうたってありますが、その中の電気ガス事業設備投資追加について積み増しがありますね。この分ですけれども、電力、ガス会社の設備投資を六十三年度までに合計一兆一千億積み増しをするというふうに指導なさいますが、この三年というふうに決めた理由は何なのか。それから、あとはその年度別の内訳。
  123. 林昭彦

    説明員(林昭彦君) 三年と決めた理由でございますが、これは私ども投資の対象といたしましては、電力の場合には電力の送配電の信頼性の向上というようなこと、それからガスについては消費者保安対策というような従来から社会的要請の高いものを重点的にやってもらうということにしたわけでございますが、まず内需拡大策というのは、当面、特に現時点に近いところでたくさん行われれば行われるほどその効果が高い、そういう私ども業界に要請する側の者としてできるだけ手近にやってもらいたいということがあるわけでございますが、一方投資を行います業界の方といたしましては、そうあす投資しろといってもいろいろな条件整備を行う必要もございますので甚だ難しい、しかも追加的にやるということで、そこで今ございます計画に積み増すという形で具体的な数字がある程度描ける期間ということで六十三年度までを目標としたということでございます。  それから、年次別の配分でございますが、電力事業につきましては、六十年度に約七百億円、それから六十一年度から六十三年度までについては毎年約三千億円、若干その後ろに少しプラスアルファがつくと思いますけれども、三千億円程度ということでございます。それからガスにつきましては、六十年度から三年間で毎年三百億円程度を積み増したい、こういうことでございます。
  124. 刈田貞子

    刈田貞子君 それで、いわゆるこの積み増しのために、資金調達をするために今度例の特例法を改正するわけですね。そうして、四倍から六倍までに拡大していくというところの話なのですが、これ今の積み増しとひっかかるのですけれども、つまり先ほどからの答弁では、円高差益で出てきたのは料金の長期安定に資する、あるいは設備投資に云々というふうなことがあるとすれば、今の七百億円という額、この額は資金調達で七百億でしょう。そうしたら、それにさらに円高差益で上がってきた分を乗せるとしたならば、事業量というのはそれより多くならなきゃいけないのじゃないですか。
  125. 林昭彦

    説明員(林昭彦君) 若干誤解があるのじゃないかと思いますが、円高は九月の末から起こったわけでございまして、今のこの追加投資につきましては、それ以前から業界に要請して、決定いたしましたのは十月十五日でございますが、やってきた、こういうことでございますので、直接には円高差益問題どこの追加投資とは関係ございません。円高の差益の問題については、先ほど申し上げましたように、今後の事態の推移というものを慎重に見て考えていきたいということでございます。
  126. 刈田貞子

    刈田貞子君 ついでだけれども、十一月末が上期の決算でしょう、電力業界の、違いますか。この末で円高の影響は決算に出てきますでしょうか、きませんでしょうか。
  127. 林昭彦

    説明員(林昭彦君) 中間決算は九月でございます。十一月に発表ということでございまして、まだ九月の段階では、上期の段階では円高の差益問題というのは収支には影響を及ぼさないというふうに、理解をしております。
  128. 刈田貞子

    刈田貞子君 それで、先ほどの特例法の改正のことに移りますけれども、そこで四倍を六倍にしていくということがありますね。六倍に今度変えるわけでしょう。それから、その期間を、これまで特例法は有効期間が五十一年から六十一年までの十年間であったわけですね。ガスの場合は、これはもうそのまま廃止してしまう。それで、電気だけは当分の間枠を拡大してこれを続けるわけですね。そうですね。  そこでお伺いをいたします。その「当分の間」という期間の持つ意味はどういうものなのか。それからあと、いわゆる債権者保護というような形ではどうなんでしょうか、その六倍というようなものは。お伺いいたします。
  129. 関野弘幹

    説明員(関野弘幹君) 一般電気事業会社につきましては、電力需要の増加対応しまして、電源の多様化を図るために発電施設の建設あるいは信頼供給度の向上のための設備の整備等を中心に、今後とも設備投資が着実に増加するというふうに見込まれておるわけでございます。この資金調達のための社債発行額が増加いたしまして、現行の発行限度すなわち商法の発行限度額の四倍でございますが、これが昭和七十年度くらいには一般電気事業会社に必要な社債発行倍率が平均で五・五倍程度になるというふうに見込まれておりますので、今回現行の発行倍率の限度を六倍までに拡大する必要があるというふうに私ども考えているところでございます。  次に、「当分の間」という点でございますが、これにつきましては、現行特例法は十年前にできたわけでございますが、十年間で電力発電施設の建設あるいは公害防止投資などによる建設資金の急増が一巡するというふうに見込まれておりましたために、十年間の限時法ということで成立したわけでございます。しかしながら、社債発行限度の問題につきましては、現在商法二百九十七条の規定そのものの見直しが予定されております。この見直しを前提といたしまして社債発行限度暫定措置法、これは昭和五十二年に成立した法律でございますが、この法律も当分の間の措置として現在二倍ということが決められているわけでございます。したがいまして、商法本則の見直しの帰趨いかんによりまして、一般電気事業会社の社債発行制度につきましても再度検討する必要が生ずるということから、改正特例法の期限を現在の社債発行限度暫定措置法と同様「当分の間」とさせていただいて国会に提出させていただいたわけでございます。  三点目に、この四倍から六倍ということに拡大することによりまして社債権者の保護の観点から問題がないかという御指摘でございます。社債権者の保護につきましては、商法あるいは証券取引法等社債関係法の規定によりまして一般的な保護は図られているわけでございますが、一般電気事業会社につきましては、それに加えて次の三点が指摘できると思います。  一つは、公益事業といたしまして電気事業法に基づいて国による種々の規制あるいは監督措置が講ぜられておりまして、その適正な運営が図られているということでございます。二点目は、電気事業法第四十条によりまして、一般担保が適用されておりまして、一般電気事業会社の社債権者は会社の財産について先取特権が認められているわけでございます。それから三点目は、現行社債特例法、さらに今度改正案を提出しておりますが、この改正案によりましても、実際に社債を発行する際には当該社債が一般電気事業会社の財産状況あるいは償還能力等に照らして過大なものではないということを通産大臣が確認することとしております。その際、その担保余力についても十分確認することとしております。  以上からいたしまして、私どもは当分の間六倍というふうにいたしましても社債権者の保護は十分確保されているというふうに考えている次第でございます。
  130. 刈田貞子

    刈田貞子君 それから、余談になるかもしれないんですけれども、今の社債発行に関する手数料の件で、これは通産省にお伺いする筋ではないのかというふうに思うんですけれども、気になるのが、つまり銀行あるいは証券会社等が電力会社の社債を扱う場合の手数料、これを電力業界が金融機関に引き下げるというふうに通告をしておるわけでありますけれども、その理由がさっき言われたように電力料金の長期安定に年間五億で浮いてくる、これを充てる、こういうふうに言うわけです。これは御指導なされますか。
  131. 関野弘幹

    説明員(関野弘幹君) 電力会社から社債の引き受け会社あるいは受託銀行に対しまして社債の手数料の引き下げの要望があったということは承知しております。これは起債関係者の間の民間ベースの話し合い、交渉マターでございますので、政府としてコメントすることは差し控えたいと存じます。ただ、いずれにしましても、これは電力会社にとって財務費用の一環になるわけでございますから、できるだけコストを低減するという観点から、電力会社が関係会社あるいは銀行とそういうネゴシエーションをしているというものだというふうに理解しております。
  132. 刈田貞子

    刈田貞子君 電力会社に対して大変関心が高まっているときなので、適切なやはり御指導をしていっていただきたいというふうに思います。先ほど申し上げましたように、円高の推移もありますし、そうすぐに効果も出てこないという今のお話でもありますので、今すぐに電力料金を下げよというようなことは私は今回の場合言うつもりは実はないんです、だけれども、それだけに筋の通った御指導をしていただきたいということは、これは前よりも声を大きくして言いたいというところであります。  それで、ひとつ御提案というかお伺いというか申し上げたいのが、この内需拡大策の中の設備投資の中で、例の送電線の地中化事業がありますね、この問題についてちょっと私お伺いをしたいのですが、これはあれでしょうか、企画庁の方ではこれをやることによって出てくる内需拡大効果みたいなものは計算できますか。
  133. 赤羽隆夫

    政府委員赤羽隆夫君) 工事の種類別に出すということはできませんけれども、全体の投資額という点から大ざっぱな効果計算というのはしております。
  134. 刈田貞子

    刈田貞子君 どのくらい。
  135. 赤羽隆夫

    政府委員赤羽隆夫君) これは四千億円の事業規模、こういうことで、これから将来一年間というベースで電気ガスにつきまして四千億円の事業規模になるわけでありますけれども、この中には、用地のために使うお金でありますとか、あるいは繰り越し傘とか修繕費の傘とか、こういう調整をいたしますと、GNP計算になります投資の規模ということになりますと三千億円程度になるかなと思います。そういう工事が行われることによりまして経済生産活動が盛んになる、これは乗数効果と呼んでおりますけれども、乗数効果を含めた経済全体に対する効果としては四千億円を若干上回る程度、こういう計算はしておりますけれども、さらに事業の中身につきましてそれぞれどれくらい効果の違いがあるかといったようなことは計算をしておりません。というよりは計算が私どもにはできません。
  136. 刈田貞子

    刈田貞子君 そこで、私は申し上げたいんですけれども、この地中化工事の費用負担の問題で考えていってみたらどうだろうかというこれ一つの提案といいますか、そういう問題なんですが、費用負担のあり方というのは、例えば事業主体が単独でやったときの工事費を限界として負担するというような負担の仕方があるんだというふうに思うんですね。  例えば、これは何かモデルケースだから計算のモデルにはならないというふうにおっしゃられましたけれども、馬喰町の国道六号線の例でいきますと、総工費が三億円のうち国が二億五千万出しておって、それで東京電力が四千三百万しか負担していない、地元が一千万だと、こういう費用負担になっているわけでありますけれども、こうした公共に関する事業にこそ電力会社のいわゆる民活をもっとウエートを高く活用させてもらったらどうなんだろうか。その辺の費用負担のあり方についてもっと御指導はいただけないものかどうかということを私は申し上げて、そして、そういう形で電力会社が抱えてしまっている余剰金を国民に還元するという方法はどうなんだろうかということを一つ提案したいんです。  それと、時間がないのでもう一つ言ってしまいますけれども、これはもっとアウトサイドの話になるというふうに思うんですけれども、電力会社はたくさんの税を払ったり取ったりしているわけですね。その中で、私たちが払っている電気税がありますね。あの電気税の問題なんですけれども、電気税というのは三千六百円を超える料金から五%ずつ乗っていきますね。ガスが一万二千円を超えたものから二%というふうになっていますね。この税金を引き下げるとか、あるいは限度額を上げるとかいうふうな形で国民に何らかの形の還元の仕方ができないものだろうかできるものだろうかという大変素朴な提案を持っているわけです。ところが、これは泣きどころで、あれは電力会社が調達して市町村におろすのですよね、電力会社の懐に入るものじゃないんですね。  それで、大変そこは泣きどころなんだけれども、国民の側からいくと、料金の上に税金が乗っかっているわけですから、それで料金軽減にはなっていくわけですよ。この種のものを自治省との話し合いで何とかなるものかならないものなのかということをひとつ私は伺って、質問を終わります。
  137. 林昭彦

    説明員(林昭彦君) 地中化につきまして御指摘ございましたが、地中化というのは確かに都市景観が向上するというふうなことで、そういう社会的ニーズが非常に高まっております。しかし一方、この地中化というのは大変費用がかかりまして、通常の配電線に比べて三十倍とか五十倍とか、そういったオーダーで費用がかかるわけでございます。また、一回地中に埋めますと、そこの地域の電力需要がふえまして配電線をふやすとか太くするとかいうことについては大変面倒になる、即応性に欠けるという形にもなります。また、事故が起こったときの復旧に時間がかかるというような問題もございまして、合理的な範囲で着実にやっていきたい。若干、私どもとしては、この間の内需拡大のときには、従来考えております電力会社の計画、これを少し加速してやってもらうということで相当の追加投資をお願いしたわけでございます。  その経費負担の問題でございますけれども、これは実は、地中化というのは共同でやるということでは必ずしもなくて、そういう共同溝でやったり、あるいは今建設省の方で御提案がございますもう少し簡便な形で共同して地中化するというやり方、いろいろございますけれども、単独でやるというのがむしろ一般的でございまして、したがって共同にしたことによって単独でやるよりも非常に費用がかかるということでございますと、これはやはり最終的にはそういう負担というのは消費者に行くわけでございますので、一定の単独でやったときの費用負担を限度とするというのがやはり私どもとしては適当ではないかということで、またこれは建設省との話し合いの中でも御理解をいただいてきた方式でございます。  したがいまして、むしろ今後、いろいろな地中化の方式ございますけれども、その中で従来考えておりますような一定の範囲というのがございます。これは余り遠隔のところに、また集積密度がそう高くないところを地中化するというのもこれは非常に大変でございますので、一定の密度のある電気需要、こういうものの地域を選びまして地中化をする、このテンポをさらに速めていくということは今後の課題として検討をしてまいりたいというふうに思っております。  それから、電気ガス税のことでございますが、これにつきましては、私どもとしては、一般消費者については日常の生活に不可欠なものでございますし、また産業活動にも不可欠なものでございますので、できるだけ早期に廃止する方向に持っていきたいというふうに考えておるわけでございます。私どもとしては六十一年度の税制改正でそういう要求をしております。その廃止が難しい場合でも、先生御指摘のような免税点の大幅な引き上げあるいは税率の引き下げというようなことについてお願いをしたいというふうに考えております。自治省にはそういうことで要求は出しておるということでございます。
  138. 刈田貞子

    刈田貞子君 終わります。
  139. 橋本敦

    ○橋本敦君 きょうの委員会では、当面の円高問題、内需拡大策効果、あるいは円高差益還元の問題、当面の重要な課題がそれぞれ議論をされておりまして、私もその問題について重ねて質問をさせていただくことになるので、恐縮ではありますけれども、重要な問題なので質問をさせていただきたいと思うわけであります。  まず最初に、長官にお伺いしたいと思うのでありますが、先ほども話が出ましたように、長官はこの政府内需拡大策を発表された閣議の後の記者会見で、この問題は残念ながら百点満点とはおっしゃれなかった、六十五点、こういうように自分で採点をなさったわけでありますが、その減点の一番大きな理由は、目玉が抜けてしまっただけ減点せざるを得ないというようにおっしゃったわけですが、その目玉というのは率直に言いまして何を指して長官はおっしゃったのでしょうか。
  140. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 先ほどもお話が出ましてお答えいたしましたとおり、やはり内需振興と言えば常識的には財政政策、金融政策を重点にするのが普通でございます。それが来年度の予算編成との絡みでこれが後回しになってしまった、本当に目玉なしであの案をまとめざるを得なかったという意味において先ほど来申し上げたようなことを言ったわけでございます。
  141. 橋本敦

    ○橋本敦君 今、長官がおっしゃったその目玉で一番肝心なのは、長官も会見でおっしゃっておりますが、金融財政政策のうちのやっぱり減税問題ではないだろうかというように思いますが、それはそう理解してよろしゅうございますか。
  142. 金子一平

    国務大臣金子一平君) そのとおりでございます。
  143. 橋本敦

    ○橋本敦君 それで、この内需拡大策でもう一つ大事な問題として提起をされております「個人消費喚起」の問題でございますけれども、この内容を拝見いたしましても、個人消費喚起ということの中に国民の所得の向上に連なる問題、その問題が欠けているのも私は目玉がないことの一つになるのではないかと、こういうように思うんですが、その点はいかがお考えでしょうか。
  144. 金子一平

    国務大臣金子一平君) やはり個人消費喚起といえば一番大事なことは可処分所得を増加させることでございますから、それが的確な対策が講じられなかった、これは率直に申しまして大変残念なことに思っております。
  145. 橋本敦

    ○橋本敦君 そこで、課題が後送りになったわけで、この対策の中でも具体的に、今長官がおっしゃった目玉を後で何とかしなくちゃならぬということで、「内需拡大策のうち、予算税制措置を伴う施策については、今後の予算編成税制改正の・過程で検討するものとする。」ということで、引き続きフォローアップをされるという予定になっておりますが、いよいよ十二月、予算編成も近づいてまいっておるわけで、具体的に六十一年度予算編成時に間に合うような何らかのものがこの方針に基づいてできるのかどうか、この点の見通しはいかがでございましょうか。
  146. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 税制の問題につきましては、御承知のとおり政府税制調査会に今、中曽根総理から答申を求められておりまして、減税についてはなるべく早い機会に、増税については秋までにというようなことで言っておりますので、基本的な根本的な見直しの問題が先送りになっていることは事実でございますけれども、しかし基本的な問題に関しないものをある程度取り込めるかどうか、これは財政事情がどういうことになるかのこれからの見通しの問題ですが、率直に言ってなかなか厳しい財政事情で、やっときょう公務員の人勧のあれを決めたような状況でございまして、これから十一月末から十二月初めにかけての財政の見通しをどう立てるかによって決まってこようかと考えておる次第でございます。
  147. 橋本敦

    ○橋本敦君 その点でなかなか苦慮されていらっしゃる財政事情にあることは私どももそれなりに承知はしておりますけれども、この内需拡大策が国民的レベルの広がりの中で速効性を持つということのためには、やっぱり困難ではあっても減税措置を含む思い切った財政の出番ということを予算の中でも考えなくちゃならぬのじゃないかということで、その点はどういう具体的な問題ができるか検討中ということですけれども、ぜひともやっていただきたいということを要望しておく次第であります。  そこで、具体的になかなか思い切ったものが出せないということではあるんですが、話を当面の円高問題に移してまいりたいと思うんです。二百円大台突破は時間の問題かというようにも言われ、きょうは二百六円か四円ということも報ぜられておりますが、どっちにしても政府の政策的誘導もあって円高基調が今後続くということはもう大体否定できない状況だと思うんですね。  そこで、当面の円高問題がこの内需拡大策に具体的なメリットとしてどのような波及効果を持ってくることを長官としては期待していらっしゃるか、まずその点についてお考えを伺いたいのであります。
  148. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 円高が一方においてデフレ効果を及ぼすことは事実でございますけれども、同時に円高によって実質所得が増加する、そのメリットを私は相当大きく評価していいと思うんです。まだ具体的に出ておりませんけれども、これはやはり一つの大きな内需を伸ばす柱になろうかと考えておる次第でございます。
  149. 橋本敦

    ○橋本敦君 そこで、長官がおっしゃった実質所得の伸びがどの範囲の広がりで出てくるかということが一つありますが、今度は逆に、マクロの立場から見てもミクロの立場から見ても、輸出中小企業へのマイナス的影響ということが一方で出てくるわけですね。だから、そこのところも視野に置きながら検討していきませんとなかなかバランスがとれないことになるので、まずその点について経企庁あるいは中小企業庁にお伺いしますが、当面の円高基調が二百円を突破するというようなことになった場合どういう影響になるか、あるいは二百十円台がずっと続くということでの影響はどうかということに的を当てた調査の結果がわかっておりましたらお答えいただきたいと思うのであります。
  150. 上田全宏

    説明員(上田全宏君) お答え申し上げます。  現在、円高の進展によります中小企業に対する影響につきましてはその動向を注視しておるところでございますが、お尋ねの調査でございますが、通産省といたしましては、既に十月の初旬時点におきまして輸出関連中小企業に対しまして調査実施いたしております。中身を申し上げますと、キャンセルとか契約条件の変更とか、そういったものは少なく、為替リスクヘッジ対策も相当とられているという反面、今後の問題といたしまして、為替レートが二百十円で推移した場合、調査対象の約半分の企業が赤字を懸念しております。また、二百円以下で推移した場合には、大半の企業が採算がとれないといたしております。
  151. 橋本敦

    ○橋本敦君 他方全国中小企業団体中央会の調査もありますので、その点で調べてみますと、その中央会の調査では、一ドル二百十円、これを想定した場合極めて深刻な事態だというのが五六・九%ということで大半を超えております。それで、一方企業経営それ自体の困難さ、苦しさという点から言えば、二百三十円台でも実は苦しいんだというのが六五%という状況調査が出ているわけですね。したがって、今おっしゃった二百十円ということが続けば大半が大変苦しくなるというようなことは、まさにそのとおりあるいはそれ以上ではないかという気もするわけです。  そこで、十月上旬の調査から見ますと、円高の進みぐあいが非常に急激に進んでおりますから、それに対する対応策も急いでとらなくちゃならぬということになるはずです。そこで、一つ心配なのは、中小企業地場産業地域産業という傾向が強いわけですから一定の地域性を持っている。そこで、都道府県の対応がこれに見合って今立てられているかどうかということも一つは心配なんですが、政府対応と別に、都道府県のこれに対する対応が今どのような進みぐあいかどうかお調べになっていらっしゃいますか。
  152. 長田英機

    説明員(長田英機君) 今、調査課長から御答弁しましたように、私どもはこの円高によります中小企業の影響を逐次ウォッチしているわけでございますけれども、私どもとしまして県の方ともいろいろと適宜連絡をとりながら、県の方としましても、先生御指摘のとおり地場産業、産地産業がいろいろ影響を受けるということが懸念されるわけでございますので、非常に重大な関心を持っておりますものですから、密接な連絡をとり合いながらやっておるところでございます。
  153. 橋本敦

    ○橋本敦君 御答弁はそういうことでおっしゃるわけですが、今私が指摘した全国中小企業団体中央会の調査では、私がいただいた資料では、都道府県段階でその対応について既に打ち出しているのがわずか三・四%、現在検討中あるいはまだ対策がない、この二つ合わせますと実に九六・六%がまだ対策を立てていない、検討していないという状況なんですね。だから、そういう意味では、全都道府県というわけではありませんが、輸出中小企業地場産業として持っている都道府県には、今おっしゃった密接な連絡というのは、急激な円高が進む状況に見合うだけの強力な指導、援助を政府としてもぜひお願いしたいというように思いますが、いかがですか。テンポを速めてもらわなくちゃ。
  154. 長田英機

    説明員(長田英機君) 私どもとしましては、この中小企業に対する影響、先生御指摘のとおり非常に重大な問題と考えておりまして、実態把握の方は今申しましたように逐次やっているわけでございます。しかしながら、非常にその影響も懸念されるわけでございますので、中小企業三機関に対して通達を出しまして、適切かつ機動的に対処するように私どももその指導をしているわけでございます。そのほかに、六十一年度対策として要求しておりますところの国際調整に伴いますところの低利融資あるいは事業転換法の拡充というようなことをやっていきたいと考えておりまして、繰り返しになりますが、この状況の把握、非常に慎重かつじっくりと状況を把握いたしまして適時適切に手を打ってまいりたい、こういうことでございます。
  155. 橋本敦

    ○橋本敦君 今おっしゃった政府系三金融機関に対する通達というのは何月何日にお出しになったものですか。
  156. 長田英機

    説明員(長田英機君) 十月の二十一日付で政府中小企業金融三機関及び全国信用保証協会連合会あてに出したわけでございます。
  157. 橋本敦

    ○橋本敦君 それは中小企業庁長官とそれから銀行局長との連名でしたか。
  158. 長田英機

    説明員(長田英機君) さようでございます。
  159. 橋本敦

    ○橋本敦君 それは当面の緊急融資対策としておとりになっていただいたことで、それ自体は結構だと思いますが、来年度から創設を考えていらっしゃる長期低利融資、これはどのくらいの利率なものとして創設を考えていらっしゃいますか。
  160. 長田英機

    説明員(長田英機君) 六十一年度にぜひ創設したいと考えておりますものは、国際経済調整対策等特別貸付制度と、こう呼んでおりますが、事業転換あるいは経営安定等につきましては何とか五%の金利を実現できたらと中小企業庁としては考えております。
  161. 橋本敦

    ○橋本敦君 それは大蔵との折衝で大体実現の展望はお持ちになっていらっしゃるわけですね。
  162. 長田英機

    説明員(長田英機君) 現在折衝中でございますが、私どもとしては何とか実現を図りたいと、こういうふうに考えて鋭意努力しているわけでございます。
  163. 橋本敦

    ○橋本敦君 長期低利融資も結構、緊急の融資も結構、それ自体も大事ですが、借りた金はいずれ返さなくちゃならぬということもありますので、先ほどからおっしゃる構造転換も含めた中小企業対策というのはいよいよこれから大事になってくると思うんですね。そうした場合に、政府全体の中小企業対策予算が毎年ずっと減ってきている傾向というのは、私はこれはそれ自体逆行するものだという面でも心配しておるんですが、中小企業対策予算を六十一年度やっぱり思い切って取るということも考えなくちゃならぬのじゃないですか。
  164. 長田英機

    説明員(長田英機君) 先生御指摘のとおり、中小企業予算は最低減少ぎみと申しますか、そういう傾向がございまして、しかしながら、現在のようなこういう非常に中小企業にとって厳しい情勢でございますものですから、関係の方々の御協力を得まして何とか予算の拡充に努めてまいりたい、こう考えておるわけでございます。
  165. 橋本敦

    ○橋本敦君 この点は、通産大臣きょういらっしゃらないわけですが、経企庁も中小企業についてはいろいろ配慮をなさっていらっしゃるわけで、長官に対しても中小企業対策予算の拡充をぜひやっていただきたいと私もお願いしたいんですが、いかがでしょうか。
  166. 金子一平

    国務大臣金子一平君) こういう際でございますので、全力を挙げて中小企業の振興のために努力したいと考えております。
  167. 橋本敦

    ○橋本敦君 次に、先ほどから問題になっております円高差益の問題、この問題に私も触れさせていただきたいと思います。  実は、当面二百十円とすれば、これが一年間続くといたしますと、石油、電力、ガス、この三業界でどれくらいの円高差益が出るかという私なりの推定の計算ですが、この計算を検討しておいていただきたいということをあらかじめお願いしておきましたが、私の計算によれば、石油で六十年度石油供給計画量一億九千七百万キロリットル、これを二百十円ということでいたしますと、下期で六千百二十八億円の差益が出る。これを一年の六十年度全体の供給計画量一億九千七百万キロリットルに直せば、一兆二千四百九十億円である。電力は原油、LNG、C重油ございますが、これを年間受け入れ量、原油の場合は千四百六十六万キロリットル、LNGは二千百三十三万三千トンというように計算をして二百十円で引き直してみますと、それぞれ差益を合計いたしますと、電力業界全部で三千八百四十億円。第三番目に、ガス業界はLNGですが、これが五百二十二万トン、東京瓦斯、大阪瓦斯、東邦瓦斯含めましてありますので、これの差益が四百三十一億円。こういう二百十円が一年間続くと仮定した単純計算ですが、円高差益は合計いたしますと三業界で一兆六千七百六十一億円という推定が私の計算で出てくるわけですが、この計算は大体合っておりますでしょうか、いかがでしょうか。
  168. 田辺俊彦

    説明員(田辺俊彦君) 先生の御試算につきましては、一つの仮定に基づきます単純な計算、単純式であると理解しているわけでございます。  実際問題といたしまして、石油の場合には、原油コストの円高メリット分だけがここに入っているわけでございますが、実際問題としましては円安時の高値在庫分が相当ございます。したがいまして、円高になってからそれを取り崩しながら実際の経営が行われておりますという点が一つでございます。  それから、石油の製品でございますが、ナフサその他重油大口需要家に参ります石油製品につきましては、これは契約上自動的に販売価格が円高分だけ下がるというデメリットがございます。この二点が主として実態問題としての修正要因だと思います。  それから、さらにもう一点つけ加えますと、石油の場合には価格はコストによって決まっていないと、市場構造によって決まっているという点でございます。現在の市場構造について簡単に申し上げますと、末端ガソリンスタンド等での異常な競争あるいは元売精製業界での過当競争によりまして採算割れで販売しているということでございます。昨年の秋以降十円ぐらいガソリンはリッター当たりで下がっておりまして、大変な赤字でございまして、私どもの試算では、まだ実は決算が出ていないのでございますが、上期石油産業全体で約千四百億円の赤字になるかと思われております。これは為替の差益を入れてそういうことでございます。したがいまして、今後の市況いかんが大変重要でございまして、円高の傾向の中でさらに市況を悪化させる動きが出ておりますので、そういう状況はぜひごしんしゃくいただきたいと思っているわけでございます。
  169. 橋本敦

    ○橋本敦君 マイナス要因はあるけれども、単純計算としては大体出てくると。
  170. 田辺俊彦

    説明員(田辺俊彦君) はい。相当マイナス要因があると思いますので、ごしんしゃくいただきたと思います。
  171. 林昭彦

    説明員(林昭彦君) 電力、ガスについては……
  172. 山田譲

    委員長山田譲君) 林君、なるべく簡単にお願いします。
  173. 林昭彦

    説明員(林昭彦君) はい。在庫等については石油と同じような実態がございますが、一つの仮定に基づきます計算といたしましては、これは試算にちょっと石油価格の変動も入れた計算になっておりますが、これを除けば、基本的にはこういうことではなかろうかというふうに思います。
  174. 橋本敦

    ○橋本敦君 今後の動く要因、コストをどうとるかということはありますが、とにかく当面の円高でやっぱりかなりな差益が出てくるということは確かで、私の計算をさらにこれを二百円ということで引き直してみますと、三業界の差益合計は推計で二兆一千百九十四億円という計算になるわけです。  そこで、もう時間がありませんから最後に、きょうも議論がいろいろ出ておりましたけれども、こういう政府の政策的誘導で、内需拡大策ということで出されておるこの円高差益の問題について言うなら、最後に長官に御答弁をお願いしたいと思うんですが、一つは先ほど議論になりました減税がなかなか目玉であるにもかかわらずやれなかったということで画竜点睛を欠いている、これをどう埋めるか、こういう問題。それからさらには、個人消費喚起という問題で内需拡大をその面から高めていかなくちゃならぬという課題。それから、国民生活の擁護という点から考えても、今後一年間これで推移するかどうか見きわめなきゃなりませんけれども、今すぐは難しいかもしれませんけれども、この円高が今後長期にわたって続くとすれば、その差益は電力あるいはガス、そういった料金の値下げを含む国民への還元という処置を政府としても検討する必要が出てくるのではないか、ぜひそうしてほしいということを強く考えておりますが、その点について御答弁をいただきたいということであります。いかがでしょうか。
  175. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 先ほど来通産当局からいろいろ御説明がございましたように、まだ円高定着いたしたわけでもございませんし、今後ある程度期間の経過を見ないと的確な判断は出せないかもしれません。また、いろんな内部事情もあるようでございますが、考え方として橋本さんのおっしゃることは私どもも全く同感でございまして、でき得る限り消費者に円高差益の利益を還元する方向で私どもも今後政策としては進めてまいりたいという気持ちを持っておることだけ申し上げておきます。
  176. 橋本敦

    ○橋本敦君 時間が参りましたのでこれで終わります。どうもありがとうございました。
  177. 抜山映子

    ○抜山映子君 先ほど来高杉先生の方からもちょっと御指摘ございましたが、今回の貿易摩擦の解消は対米向けを主として考えているんじゃないかと、これは私も全く同感でございまして、対ECの問題は高杉先生がおっしゃいましたので、私はむしろ開発途上国との貿易摩擦の問題ももっと重視していかなければならないのではないか、こういうように思うわけです。そうでないと、日本を太平洋経済地域の中で孤立化させるということになっていくんではないかと思うわけでございます。  それで、開発途上国と競合するような産業体質を改善しなければいけないと思うんですが、これまでにその産業体質の改善に日本としてどういうような努力を払ってきたか、そしてまた今後どういうようにその体質改善をさらに図っていくか、この点についてお伺いしたいと思います。
  178. 大塚和彦

    説明員(大塚和彦君) 御説明申し上げます。  先生今御指摘のとおり、低開発国を視野に入れて考える、この点全く私ども同感でございます。その場合に、やはり御指摘のとおりに競合する産業、これについての対策、これは非常に重要なことでございます。もちろん、国際関係だけではなくて、技術進歩などによって産業構造が変わっていく場合に、やはり同様に、そのように産業構造が変わる中で円滑に業種が移り変わっていく、これに対しての対策、それは積極的調整政策というような呼び方をしておりまして、日本では非常にこれは完備したものだと諸外国からも評価されておるわけでございます。  お尋ねの点でございますが、例えば一つ例を申しますと、特定産業構造改善臨時措置法というのを立法していただいておるわけでございます。これは昭和五十八年にできた法律でございますけれども、特定産業という業種指定、今二十六業種ございますけれども、その構造改善のための基本計画策定いたしまして、そして例えば過剰設備の廃棄でございますとか、あるいは企業の集約化とか、そういうことをずっと進めておるわけでございます。  将来でございますけれども、この法律はあと三年ぐらい続くわけでございます。今まさしくこれ施行している途中でございまして、ぜひこれを適切に施行していくように努力を尽くしてまいりたい、かように思っております。それから、かつ今後どのように大きなマクロ的な見地からどうするかというのを今産業構造審議会でいろいろ二十一世紀への産業社会のあり方というのは御検討いただいておりまして、そういう中でも私ども十分勉強していきたい。大体こんなことを考えておるわけでございます。
  179. 抜山映子

    ○抜山映子君 その二十一世紀に向けての産業構造転換、どういうような内容を指向していらっしゃるか、ちょっと具体的におっしゃっていただけませんか。
  180. 大塚和彦

    説明員(大塚和彦君) 実は、今検討は始まったばかりでございまして、三つほどの観点から考えるようにしておるわけでございます。一つは国際化の観点、まさしく今起こっておりますような貿易関係のいろいろの摩擦の問題、こういうのを視野に入れる。それから、その中でこれから日本の産業がやはりダイナミックに発展していくべきである、そういうときに技術革新などをどのように織り込んでいくか。そして、かつその中で国民生活面でも豊かになっていかなくちゃいけない。こういう国際性、それから創造性、それから文化性といった、こういう三つの観点から取り上げておるわけでございますが、今おっしゃった点は国際性、それから二番目の創造性との関連において構造改善を要するような業種をどのように考えていくか、こうなるわけでございます。まだ実はその御審議にまで進んでおりませんで、ちょっと今お答え申し上げるのには時期尚早かと存じます。
  181. 抜山映子

    ○抜山映子君 私が思いますのに、助成金の使い方をもうちょっと考えてはいかがかと、こういうように思うわけです。つぶれかかってもう見込みのない企業に単に助成金を与えるというようなやり方をやめて、産業構造転換の方に助成金を向けるということにすれば、もっと有効に産業構造は変わっていくだろう、こういうように思うんですが、その点はいかがでございましょうか。
  182. 大塚和彦

    説明員(大塚和彦君) ただいまの点につきましては、先ほど申し上げました特定産業構造改善臨時措置法、これに基づきます構造改善のための基本計画、そういう中には実は事業転換のことも取り込んでおります。そして、事実今までの二十六業種の中にそういうのが入っておりまして、助成措置としては開銀の構造改善枠というのを取っております。例えば六十一年度につきましては今百十億円ぐらいを予定しておりますが、その中では事業転換の分が四十六億円と一番大きいシェアを持っておる。それからあとは、中小企業に関しましても、中小企業事業転換対策臨時措置法という昭和五十一年からの法律がございまして、こちらでもやはり政策的な助成を行っているということでございます。
  183. 抜山映子

    ○抜山映子君 さらにその傾向を強めていただきたいとこの際切望しておきます。
  184. 山田譲

    委員長山田譲君) 速記をとめてください。    〔速記中止〕
  185. 山田譲

    委員長山田譲君) 速記をお願いします。
  186. 抜山映子

    ○抜山映子君 このたび内需拡大のために、災害復旧工事を繰り上げ実施のため五千億円を考えておられるようですけれども、これは当然国債増発ということにならざるを得ないのではないか、こういうように想像されるんですが、建設国債など考えておられるんでしょうか。
  187. 田谷廣明

    説明員(田谷廣明君) お答えいたします。  六十年度公共土木施設及び農林水産業施設の災害発生状況につきましては、九月末現在の被害報告額によると約七千五百億円となっております。この額は昨年の被害額を相当程度上回っておりまして、この災害復旧事業につきましては、速やかな復旧により民生の安定を図るとともに、あわせて内需拡大に資するということで約五千億円を追加することとしたものでございます。  なお、御指摘ございましたこのための財源につきましては、今後他の追加財政需要及びその見合い財源を検討する際にあわせて検討することといたしておりますので、現段階で確たることを申し上げられる段階にないということを御理解願いたいと存じます。
  188. 抜山映子

    ○抜山映子君 財政再建の目標年次を現在より数年繰り延べて、適度に建設公債なんか発行して財源を確保するお考えはございませんか。
  189. 田谷廣明

    説明員(田谷廣明君) ただいま御指摘ございましたいわゆる昭和六十五年度に特例公債の依存体質から脱却するという努力目標につきましては、私どもとしましてもその達成が容易ならざるものであるということはよく承知いたしておりますが、しかしながら、こういった現在の状態をそのまま放置しておきますと、我が国経済の活力自体が弱まってしまう。そういたしますと、物価や雇用などといった経済の各方面に悪影響を与えるとともに、今後予想されます国際情勢の変化あるいは高齢化の伸展などに適切に対応していくといったようなこともできなくなるのではなかろうかというふうに思っております。したがって、財政改革を推進して財政の対応力の回復を図っていくということは現下の最重要課題でございまして、六十五年度脱却という財政改革の努力目標の達成に今後全力を尽くしていきたいと思っております。  御指摘ございました、六十五年度という目標年次を仮に先に延ばすということをいたしますと、確かに財政改革の進展というものは緩やかになりまして、その分楽になるわけではございますが、一層の特例公債の累増を招くことになりまして、長期的にはかえって負担が大きくなるといった問題も考慮しなければならないというふうに考えております。私ども予算編成に当たる立場から申し上げますと、六十五年度脱却といった旗をおろしますと、実際問題として歳出増大の圧力が強まってまいりまして、今まで進めてまいりました歳出の合理化の努力といったようなものが水泡に帰してしまうというおそれもあるのではないかというふうに考えております。  また、積極的財政政策によりまして財政再建を図っていくべきではないかという御指摘につきましては、公債の増発によりまして公共投資の拡大等を行いますと、確かに一時的にGNPが拡大いたしまして、それに伴うある程度の税収増というものも見込めるわけでございますが、一方で多額かつ長期にわたります公債の元利支払い負担といったものが出てまいりますので、長期的に見ますれば財政体質が一層悪化するといったようなことを考えなければならないというふうに考えております。  なお、先ほどございましたボン・サミットにおきまして採択されました宣言や五カ国の蔵相会議の発表等に見られますように、財政赤字の削減あるいは節度ある財政金融政策の維持強化といったようなことが各国共通の認識となっているということもあわせて申し添えさせていただきます。  よろしくお願いいたします。
  190. 抜山映子

    ○抜山映子君 内需拡大政府財政支出を建設公債その他の公債などで拡大することなくやるべきだというお説はよくわかりました。  そうなりますと、どうしても民活、すなわち国内市場を魅力的なものにする、こういうことが必要になってくると思うんですけれども、それについてはちょっとまだ対策が不十分ではないか、こういうように考えるわけなんです。まあ住宅ローン控除なんかもお考えになっておるようですけれども、中古住宅の建て直しローンなんかはお考えになることができませんか。
  191. 小川是

    説明員小川是君) 現在、住宅借入金につきましては、御案内のとおり住宅の取得控除という制度がございます。この制度は来年末まで期限があるものでございますが、さきの経済対策閣僚会議におきまして、内需拡大関連しまして、住宅建設等に関する施策について、「今後の予算編成税制改正作業の過程の中で所要の手続を経つつ検討を進める。」ということになっているわけでございます。したがいまして、住宅関連の税制の問題は、今後の作業の中で検討をされるべき課題であるとは存じます。存じますが、税制を現下の状況のもとにおいて検討いたしてまいりますときには、なかなか難しい問題もあるという点を御理解いただきたいと思います。
  192. 抜山映子

    ○抜山映子君 最近の住宅建設の不振は地価の高騰が大きく影響しているということが言えると思うんです。で、何らかの意味で、そういう土地に対する税制ですね、それの改革をお考えになるつもりはありませんか。
  193. 小川是

    説明員小川是君) 土地税制についてのお尋ねでございますが、これまた長年にわたりまして税制調査会等で議論が重ねられてまいっております。非常に難しい問題があろうかと存じます。現在の制度のもとにおきましては、優良な住宅の供給に資するような目的で、土地の譲渡上長期の譲渡が行われました場合には、通常の原則に対しまして二〇%、二五%という比例税率で軽課するような制度がございます。  土地の供給をふやすために税を軽減してはどうかという御指摘でございますが、土地の問題は税制というよりはむしろ基本的な土地政策においてどのような対応をするかということがまず基本であって、これまでの経験からしましても、税を軽減してそれに対応するということは、いずれにしましても副次的な問題の取り上げ方になろうかと存じます。
  194. 抜山映子

    ○抜山映子君 一つの非常に普通の市民が困っている問題は、自分の住んでおる家を買いかえるというような場合には税制上恩典があるわけですね。ところが、いずれ家を建てようと思って土地を買っておいたところ、転勤などがあってその土地はもう建てる考えはなくなってしまった。その土地を売って転勤した先で例えば家を買った場合、その恩典はないわけですね。こういう場合、やはり市民の立場からひとつ恩典を創設してほしい、こういうように思うんですが、その点いかがでしょうか。
  195. 小川是

    説明員小川是君) 現在、今御指摘ありましたように、居住用の財産につきましては買いかえの特例がございます。あるいは特別控除の特例がございます。それは各個人がいわば自分の住みか、最後の城とも言うべき住宅について、これを何らかの事情で置きかえるときにはそれについて特例を講ずるというものでございます。  今おっしゃられましたように、土地を手当てしてあって、それを何らかの事情で買いかえる、土地だけの段階でまだ住んでいないというような事情になりますと、さまざまな状況が想定されるわけです。したがいまして、個別にそのような事情をしんしゃくするにはやはりおのずから限度があり、現在のような現に居住の用に供しており自分がそれを置きかえるというところに限るのが限度ではないかなというような考えております。
  196. 抜山映子

    ○抜山映子君 さまざまな場合が考えられるでしょうけれども、それは転勤の資料を出させるとか、いろんなそういうことによって絞ることはできると思いますので、ひとつこの市民の切実な願いというものを検討していただきたいと心から切望する次第でございます。  さて、日本の過剰な貯蓄ということが外国から指摘されておりますが、これらの貯蓄は教育、住宅に対する将来の手当てということとともに老後の不安ということが大きく影響していると考えられます。本当は社会保障を充実してもらえればおのずからこういう貯蓄はなくなって消費に向かうわけですけれども、非常に財政事情が厳しくて社会保障の充実というものは望めない、こういうことになりますと、例えば自助年金ですね、任意年金ですね、任意年金の税額控除などを、現在は五千円ぐらいだと思いますが、これをもっと大幅に認めれば、貯蓄というものもそういう方向に使われれば老後の不安はなくなって消費に向かう、こういうように思いますけれども、ひとつその自助年金の税額控除についてお考えいただけないか、ちょっと御回答ください。
  197. 小川是

    説明員小川是君) 現在、個人が任意で加入いたします年金につきましては、まず生命保険料控除ということで最高五万円までの所得控除がございます。それに加えまして年金につきましては五千円の所得控除があわせて認められております。この年金にかかる所得控除につきましては、ただいま申し上げましたように最大で生命保険料控除とあわせて使っていただきますと五万五千円ということになるわけでございますが、これからの社会を考えました場合には、公的年金あるいは私的年金を含めまして税というのがどんな立場であるべきかということにつきましては、一昨年の税制調査会でもいろいろ御議論のあったところでございます。ただ、いずれにいたしましても、現在既に控除の額は相当大きな金額にマクロ的にはなっておりますものですから、これを拡大するということには非常に無理があるのではなかろうかという気がいたしております。
  198. 抜山映子

    ○抜山映子君 私が特に指摘したいのは、もう生命保険というのはみんなほとんど入っているんです。ですから、その五万円は使い切っている人が多いと思うんです。ですから、本当のところを言うと自助年金の控除というのは五千円なんです。そういうところを考慮していただきまして、ひとつ大幅にこの五千円を上げていただくということをお考えいただきたいと思うんですが、いかがでしょう。
  199. 小川是

    説明員小川是君) 年金あるいは生命保険も他の金融資産と同じような貯蓄でございます。貯蓄につきましては、現在マル優の非課税制度で残高で二百五十兆になんなんとする非課税の貯蓄があるわけでございます。さらに、今お尋ねのように、生命保険料あるいは年金掛金という形で貯蓄については、いわば実質貯蓄について非課税の限度がありながら非課税の措置があるわけでございます。このような非課税の貯蓄というものを現在の税制の中で広げていくということについては、非常に大きな問題があるのではなかろうかというふうに思っております。
  200. 抜山映子

    ○抜山映子君 よく政府が自助、自立ということをおっしゃいますので、ひとつ税制上でも弾力的にお考えいただきたいと再度お願いしておきます。  さて、最近政府民間活力の導入ということをしきりとおっしゃるんですけれども、その民間資本を導入して社会資本を建設したという場合に、ペイしなくなったらどうするんだと、もちろん免税措置なんかを講ずるということもあるかもしれませんけれども、そういう点が大変心配なわけです。東京湾の横断道路と明石海峡大橋を建設するという予定のようでございますけれども、過密地帯の東京湾横断道路の方はペイするにしても、明石海峡大橋についてはどういうようにお考えになっていらっしゃるか。そのあたりちょっと建設省のお考えを伺いたいと思います。
  201. 藤井治芳

    説明員(藤井治芳君) 御承知のように、本州四国連絡橋事業につきましては、その所要資金の約七割を民間資金で調達して現在事業を実施している状況でございます。明石海峡大橋につきましては、昭和六十一年度の予算要求におきまして調査費十二億、着工準備費三十八億という形で要求をしておりますけれども、この明石海峡大橋のところは交通量も相当量見込まれるものでございまして、採算については問題ないというふうに考えております。しかし、今後とも採算性の確保につきましては十分慎重に対処してまいりたいと考えております。
  202. 抜山映子

    ○抜山映子君 終わります。
  203. 青木茂

    ○青木茂君 内需拡大が非常に問題になっているわけなんですけれども、例えば昭和五十五年から六十年まで、今回の内需拡大策を入れまして、内需拡大政府方策というものは何回ぐらい今まで出ているんでしょうか。
  204. 赤羽隆夫

    政府委員赤羽隆夫君) この内需拡大策あるいは景気対策と言われるものにつきましては、主として五十八年の四月あるいは十月の対策がこれに当たると思います。その前の五十七年の十月についてもまた内需拡大、こういう意味を持った対策である、そういう性格のものであると承知をしております。五十五年から五十六年ぐらいのものは、むしろ第二次石油ショックに伴いますところのインフレの再燃を抑える、こういうことで、物価の安定とともに景気につきましてもある程度配慮をする、いわば物価と景気の両にらみとは言いながら、主として物価の安定の方に重点があった、こう理解しております。
  205. 青木茂

    ○青木茂君 いただきました資料によれば、とにかく内需と申しますか内政経済対策と申しますか、昭和五十五年以来今回のを入れて大体七回出ている。その間ぐらいに対米貿易黒字と申しますか、それは一体どれぐらいに増加しているんでしょうか。
  206. 赤羽隆夫

    政府委員赤羽隆夫君) 五十七年から最近までの数字がございますけれども、五十七年、これはカレンダーイヤーでとりまして対米貿易の黒字は百二十二億ドル、五十八年が百八十二億ドル、五十九年が三百三十一億ドル、ことしに入りまして一月から九月までで二百七十三億ドルでございますから、年間を通じて昨年とほぼ同様の数字になろうかと思います。あるいはちょっと上回るかと思います。
  207. 青木茂

    ○青木茂君 そういたしますと、この三、四年の間に内需拡大策というものはいろいろ政府はお考えで発表なさっていますけれども、貿易黒字と申しますか、向こうから見れば貿易赤字、それは二倍前後ふえている。そうすると、今までいろいろ御発表になった内需拡大効果というもの、これはゼロに近いと言っていいわけですね。そうすると、どうも今までの内需拡大策が少しお粗末だったんじゃないか。今回御発表になりました、冒頭に御説明になりました今回の内需拡大に対する対策も、長官は六十五点とおつけになりましたけれども、どうも六十五点までいくかいなという感じがしないでもない。  特に、内需の六割を占めるという個人消費対策ですね、これがその内容を見ましても何が何だかわからない。幾ら財政金融対策先送りすると言ったって、個人消費喚起対策としては物すごくお粗末だと大変失礼な言い方だけれども言わざるを得ない。これはちょっと長官にお伺いいたしますけれども、個人消費対策に限って見て何点だと御評価なさいますか。
  208. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 大変残念ながら所得税の減税を見送りましたから、これはもう本当に残念なことだったと思っております。ただ、先ほどもちょっと触れましたように、円高による実質所得の増加が出てきますから、これは全然効果がなかった、手を打ってないぞというわけじゃございません。私はその分は大いに評価してしかるべきだと思っております。
  209. 青木茂

    ○青木茂君 この委員会で長官とお目にかかりますと、どうも住宅問題だけが出てしまって、三たび住宅になるわけですけれども、これは私が出すというより長官が先ほどお触れになったんですよ。いろいろあれだけれども、住宅減税だけはちょっと芽生えが出てきたとおっしゃいましたね。その後、芽生えが出てきた具体的内容というのはどういうことでございましょうか。
  210. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 大変残念ですが、政府の税制調査会で議論するまで中身待ってくれという大蔵大臣の話でございますので、具体的な詰めをやる段階まではまだ行ってないんです。しかし、私の主張はよくわかります、ぜひ協力しましょう、こういうことになっていることだけ申し上げておきます。
  211. 青木茂

    ○青木茂君 大蔵省が言うと、どうも政府の税制調査会の方が国会より権威があるように聞こえてしようがないんですよね。そうすると、もう国会のこの委員会も大蔵委員会も、税調さんが決めてくれれば開いたって意味がないじゃないかという気がして仕方がないんだけれども、まあ長官にそういうことを申し上げたってどうもしようがないんだけれども、何か全部この税調というのが隠れみのになってしまって、この前のグリーンカードもそうなんだけれども、あのみなし法人だってそうなんだけれども、じゃ政府の税調が決めたことがそのままで政策になってくるかというとそうでもない、むしろ政府の税調が反対したことが変なことで政策になってくるということで、私どもとしてはいらいらを禁じ得ないというのが実情でございます。これは実感でございます。これは全部の議員さんの実感じゃないかと、まあ非常に尊大なことを言いますとそういう感じがする。つまり、質問の接ぎ穂がないわけですね、政府の税調へ持っていかれると。  まあ、それはそうとして先へ進めますけれども、住宅減税についてはめどが立ったと、政府の税調のこともあるから内容はまだちょっと言えないけれども、長官の御意向は通りつつあるというふうに理解してよろしゅうございますか。
  212. 金子一平

    国務大臣金子一平君) まあそういうふうに御理解いただいて結構だと思っております。少なくとも現行制度よりは一歩前進させたいという気持ちで話をしておる段階であるというふうに御理解いただいて結構でございます。
  213. 青木茂

    ○青木茂君 話を少し変えますけれども、どうも五十八年度と五十九年度を比べまして、内需拡大して消費を突き上げなければならないときに、平均消費性向が落ちているんですよね、これは非常に実は危険な兆候。例えば五十八年度七九・二だったやつが五十九年度七八・六と平均消費性向は逆に落ち込んでいる。逆に個人消費がちょっと冷え込みの傾向が出ている。これは一体どこに原因があるだろうかというふうにお考えでございましょうか。
  214. 金子一平

    国務大臣金子一平君) やはり累進度が非常にきつうございまして、特に一昨年大幅の――大幅じゃございません、一兆二千億の減税をやりましたけれども、その効果が出ておりません。それはやっぱり最近の状況からいって、老後の備えをしなければいかぬとか、あるいは教育費に追い回されておるとか、住宅ローンに追い回されておるという階層がふえたということが一番大きな原因だろうと思います。
  215. 青木茂

    ○青木茂君 消費性向が落ちるということは逆に貯蓄性向が高くなるということなんですけれども、どうも貯蓄の内容を分析してみますと。契約貯蓄と申しますか、もうせざるを得ない、もうそういうふうにしちゃったというふうなものが非常にふえているわけですね。具体的に言いますと、住宅ローンであるとか、あるいは生命保険であるとか、そういうものに縛られちゃって貯蓄性向が上がっている。それを今さらやめろと言ったって、これは契約貯蓄である以上しようがないんだから、そうするとこの住宅ローン返済分であるとか、あるいは生命保険の保険料であるとか、そういうものにもう少し緩やかなというんですか、優遇措置と申しますか、そういうものを講じていきますと少し状況が変わってくるんじゃないか、内需振興になるんじゃないかと思うわけなんです。  それで、もう時間ございませんから、一問一答でなしに申し上げてしまいますけれども、私は長官の御意向の中に入っているかどうか知りません、知りませんけれども、これは住宅金融公庫利子も含めて、もう住宅ローンの利子ぐらいの所得控除は思い切ってやるべきじゃないか。  それから、抜山先生の方からもう出たから詳しくはしませんけれども、生命保険というのは老後の不安があるからやるんですよね、万一の不慮の事故があるからやるんですね。それを優遇するといったって、月一方、二万と掛けているところが多いのに年間五万円が所得控除である、個人年金保険は五千円であると。これはスズメの涙だというよりジェット機の上から目薬を落とすようなもので、何の効果もないです。だから、そういう意味においてここらあたりを抜本的に見直してみる。効果のないものを幾ら格好だけつけたってしようがないんですよ。もう少し実質化できるようにお考えいただけないか。  住宅ローンの利子所得控除につきましては長官にお願いしたい。それから生命保険は再度ひとつ大蔵省の方にお願いをしたいと思います。  それから最後に、これは大蔵省にお願いをしたいんだけれども、税金を還付するときにはもうキャッシュでやってください。変なややこしい手続――キャッシュでやるから国民心理としては物を買いに行きたくなるんですよ。一片の書類だけでこれだけ減らしましたということでなしに、キャッシュで税金返して、その税金が各家庭へ戻ったときにスーパーあたりが税金還付記念大バーゲンセールでもやれば、これは個人消費喚起になるんですからね。手練手管とか少しアイデアを凝らしていただきたい。  まず、ここら辺をひとつ長官から、住宅ローンの利子所得控除につきましてお願いをしたいんです。
  216. 小川是

    説明員小川是君) 年金の控除につきまして五千円というのが小さいというのは、確かに生命保険料控除の五万円と比べましても、あるいはおっしゃるとおり月一、二万円生命保険料を掛けておられれば相対的に小さい、数字の限りではそうであろうかと思います。問題は、どの程度財政資金を使って、つまり税金を使ってそのような助成を行うかというバランスの問題であろうかと思います。その意味において、今後貯蓄について優遇税制を広げていくのか、それともむしろそれは縮めていかなければならないのかという問題、非常に大きな問題が背後にあろうかと存じます。  住宅の問題についても同様の問題で、私どもは貯蓄の問題、金融資産としての貯蓄、あるいは実物としての貯蓄、そういうものに対する税制のあり方が今後どうあるべきかということが背後にあろうかと思っております。  それから、第二点目のお尋ねの現金の問題は、たしか昔戻し税のときにそういう御議論があったように記憶をいたしております。ただし、一般的に還付制度は、非常に現金に直すというのは困難であると思っております。
  217. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 青木先生からいろいろ貴重な御提言をいただきまして、毎回私どもこれ政策遂行には大いに考えなきゃいかぬなという感じがしておるんでございますが、今お話しの住宅ローン利子の取り扱いの問題につきましても十分ひとつ検討させていただきます。まだ最終結論こうだという段階まではとてもまいりませんけれども、今度の住宅税制について取り上げるべき一つの問題として検討させていただきたいと思います。
  218. 青木茂

    ○青木茂君 最後に、長官のただいま置かれたお立場から見れば十分な御回答をいただいたというふうに勝手に理解しまして、質問を終わります。
  219. 山田譲

    委員長山田譲君) 本件に対する質疑は、本日はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時十五分散会      ―――――・―――――