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1985-11-20 第103回国会 参議院 外交・総合安全保障に関する調査特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年十一月二十日(水曜日)    午後一時開会     —————————————    委員異動 十一月十九日     辞任         補欠選任      上田耕一郎君     橋本  敦君      立木  洋君     佐藤 昭夫君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         植木 光教君     理 事                 杉元 恒雄君                 堀江 正夫君                 大木 正吾君                 黒柳  明君                 関  嘉彦君     委 員                 安孫子藤吉君                 岩動 道行君                 石井 一二君                 大木  浩君                 大鷹 淑子君                 大坪健一郎君                 倉田 寛之君                 源田  実君                 曽根田郁夫君                 高平 公友君                 鳩山威一郎君                 宮澤  弘君                 久保田真苗君                 佐藤 三吾君                 野田  哲君                 松前 達郎君                 中西 珠子君                 和田 教美君                 橋本  敦君                 柳澤 錬造君                 田  英夫君    国務大臣        外 務 大 臣  安倍晋太郎君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  加藤 紘一君    政府委員        防衛庁参事官   古川  清君        防衛庁長官官房        長        宍倉 宗夫君        防衛庁防衛局長  西廣 整輝君        防衛庁人事局長  友藤 一隆君        防衛庁装備局長  山田 勝久君        防衛施設庁長官  佐々 淳行君        防衛施設庁総務        部長       平   晃君        防衛施設庁建設        部長       大原 舜世君        外務大臣官房外        務報道官     波多野敬雄君        外務省アジア局        長        後藤 利雄君        外務省北米局長  藤井 宏昭君        外務省欧亜局長  西山 健彦君        外務省条約局長  小和田 恒君        外務省国際連合        局長       中平  立君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 義彰君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○外交総合安全保障に関する調査  (日米外交に関する件)  (米ソ首脳会談に関する件)  (中期防衛力整備計画に関する件)  (派遣委員の報告)     —————————————
  2. 植木光教

    委員長植木光教君) ただいまから外交総合安全保障に関する調査特別委員会を開催いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨日、上田耕一郎君及び立木洋君が委員を辞任され、その補欠として橋本敦君及び佐藤昭夫君が選任されました。
  3. 植木光教

    委員長植木光教君) 外交総合安全保障に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 大木浩

    大木浩君 ちょうどただいまジュネーブにおきまして米ソ首脳会談が行われておりまして、世界の耳目を集めておるわけでございますけれども我が国につきましても明年の一月十五日でございますか、久しぶりソ連外務大臣が訪日して日ソ外相定期協議が行われると承知しておるわけでございますが、考えてみますとソ連外務大臣が訪日するのは実に十年ぶり、それから外相定期協議が行われるというのも、これはたしか八年ぶりというふうに記憶しております。定期協議とはいうものの、なかなか定期にならないわけでございまして、今回やっととにかく向こう外務大臣に来てもらって定期協議が行われるということは、安倍外交を大変に御努力の成果として評価するわけであります。  しかしながら、日ソ間の実際の外交内容ということを考えてみますと、御存じのとおりに、最大の政治問題でございます領土問題につきましては、一九七三年に田中・ブレジネフ会談で、とにかく領土問題については未解決の問題の一つであるということは、例え口頭であれ確認ができたという一つの実績があるわけでありますけれども、その後のやりとりを見ていますと、その線からも後退してしまって、領土問題というのは存在しないというような感じ発言が繰り返されておる。つまり、外相会議というものは行われますけれども、なかなか現実にこれからの内容ということを考えますと大変に厳しい状況じゃないかというふうに考えますが、外相会談に臨みます大臣の御所見を承りたいと思います。
  5. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 大木さんは専門家でございますから、その辺のいきさつについてはよく御承知のとおりですが、来年の一月十五日にシェワルナゼ・ソ連外相がやってまいりまして、久方ぶり定期外相会談を行うわけでございますが、この会談が実現するに当たりましては、日ソ双方がそれぞれの努力をしてきた結果によるわけですし、同時にまた、米ソ首脳会談等国際情勢変化もあると思います。さらにまた、ソ連ゴルバチョフ体制、新しい体制ができたという背景もあると思います。  我々としましては、十年ぶりソ連外相の訪日ですし、この外相定期会議を何とか実りのあるものにしたい、日ソ間の関係改善をこれを契機にして図っていく一つスタート台に持っていきたい、こういうふうに思っております。  ただ問題は、御承知のように、日ソ間には領土問題という基本問題が横たわっております。日本としましては、この領土問題を解決して平和条約を締結する、この基本方針を貫いてきておりますし、今後ともこれは日本外交対ソ外交基本でございます。しかし、この点についてはソ連側はこれまで御承知のように非常に厳しい姿勢といいますか、領土問題は決着済みであるという姿勢を貫いてきておるわけで、この点について、やはり定期外相会談でございますから、まず日ソ間で 十分話し合いをしたい、こういうふうに思いますし、時間も十分あるわけですし、まずそうした基本に係る問題をじっくり話し合う。同時にまた、日ソ間にはその他もろもろの懸案あるいはまた改善しなければならないいろいろの局面がございますから、そうした問題もあわせて話し合うし、さらに世界情勢あるいはまた極東情勢等につきましても十分意見交換をいたしたいというふうに思っております、  我々としましては、なかなかこれは容易な、楽観できるような状況ではないと思いますけれども、しかし、ソ連外相もわざわざ日本に来るわけでございますし、やはりソ連としても何とか日ソ間の関係改善したいという気持ちを持っておることは間違いないと思いますし、とにかくじっくり話し合って何とかひとつ改善の糸口を見出していきたい、こういうふうに思います。
  6. 大木浩

    大木浩君 領土問題についてはぜひともひとつ強力なる交渉を展開していただきたいと思いますが、そのほかにも今お話もございましたように、具体的にいろいろと交渉事があると思います。せっかく外務大臣が来るんだから、なるべく実のある何かをまとめることができないかというような考え方もあるようでございまして、先般来新聞などによりますと、例えば文化協定といったようなものなんかいいのじゃないかというような話もあるわけですけれども、いかなる協定であってもこれを締結するということになれば、日本側として当然メリット、デメリットというものを十分に考えて、やはりそれが日本にとってもプラスであるということでなきゃいかぬと思うわけでございます。いろいろ私も仄聞しておるところによりますと、なかなか素地が十分に整っていないのじゃないかという感じを持つわけでございます。  私のところに毎月来るんですが、極東地域研究会というところからパンフレットを送ってまいります。ここに「どれだけご存知ですか?私たちの国」というのが書いてありまして、これはどうもソ連雑誌の宣伝のようでございます。それで、「ソビエトグラフ」、「ソビエト婦人」をどうぞ読んでくださいということで振替用紙も入っていますから、これは金を払わなきゃもらえないのです。実際はこれは極東地域研究会というところが配布の責任を持っておられますけれども、よくよく見ますとメジドゥナロードナヤ・クニーが、要するにこれはソ連図書輸出入公団でございますね、これが発行しておるいろいろなこういう文書を日本で大いに日本国民にお売りになる、配布されるということで、どれだけ私は配布されておるかは知りませんけれども、自由にこういうことが日本ではできる。一体日本側の方は、ソ連において日本のいろいろな社会なり文化なりのPR雑誌なりそういうものを配布できるのかできないのか、また、そういうことについてこれから文化協定というのが例えばできますとどういうことになり得るのか、その辺のところを御説明いただきたいと思います。
  7. 波多野敬雄

    政府委員波多野敬雄君) お答え申します。  昭和四十八年十月十日にモスコーで署名されました広報資料配布に関する日本国政府ソビエト社会主義共和国連邦政府との間の交換公文によりまして、日本側広報用冊子「今日の日本」を毎年三万部までソビエト国内において配布することが認められております。加えまして広報用季刊誌フォト日本」、これを各号につき三千部まで配布することが認められております。
  8. 大木浩

    大木浩君 どうもいろいろお話を伺いますと、向こうは非常に自由にやれるけれども、こちらのはかなり制限的だというような感じがするわけでございます。今の極東地域研究会から来ております紙の中にも、「ご存知のように、日本ソ連は、残念なことですが、お互いを充分に知っているとは言えません。」と書いてある。「歴史的ないきさつ国民感情もあるとは思いますが、隣国同士という地理的条件は変えることができません。」、それから後に、「「ソビエトグラフ」と「ソビエト婦人」は日ソ国民相互理解の一助になるものと確信いたします。」のでどうぞ買ってくれと、こういうことを書いてあるわけです。理解というのは相互的でなければいけないわけでございまして、特にあえて申せばソ連というのは私ども感じから言うと非常にまだまだ閉鎖的な面があるんじゃないかということでございます。今後の相互理解についてはやはり双方努力をするということでぜひとも交渉もお願いしたいということで、その辺もお願いいたしまして、時間もございませんので私の質問は終らせていただきます。
  9. 堀江正夫

    堀江正夫君 極めて限られた時間でありますので、私は防衛問題に限定をして質問をいたします。  前国会からこの臨時国会を通じて総理加藤防衛庁長官も一貫して計画大綱水準達成基本であり、これが優先するということを言明しておられます心その中でこの国会における現在までの防衛論議に対してマスコミの多くは、もう少し具体的な深みのある論議を進める必要性を主張しておるわけであります。これらのことを踏まえながら、きょうは時間の関係上総括的な面の、しかもその一部にとどまらざるを得ないと思いますが、主として中期防衛力整備計画に関連をして若干の問題について質問をいたします。  まず第一は、計画大網水準達成についてであります。  今回決定されました中期防衛力整備計画大綱に定める防衛力水準達成を図ることを目的とされておるわけでありますが、その水準達成とは具体的に何を言っておられるのか、まずその点を承ります。
  10. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 大綱水準と申しますのは、大綱で期待をしておる防衛能力というふうに簡単に言えば言えるかと思います。したがいまして、大綱では我が防衛力限定的な小規模事態に対して独力で有効に対応できるような防衛力を持つべきであるというように定められておりますので、その種の能力を持つということが大綱水準だと理解をいたしております。したがいまして、能力でございますから防衛力の量及び質、質と申しますと装備品性能もございますが、同時に隊員の練度であるとかそういったことも含めた質的な面を含めて、先ほど申し上げた限定的、小規模事態に対応できる能力整備するというのが大綱水準目標とするという意味だと理解しております。
  11. 堀江正夫

    堀江正夫君 そうなりますと、今回の計画でこの計画大綱目標としておった能力が量、質、今おっしゃいました練度を含んでできるようになったというふうに理解をして差し支えございませんか。
  12. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) ただいま申し上げたように、防衛能力というのは質、量の相乗積みたいなものでございますので、はっきり数量的に必ずしも出ない面もございますが、今回の計画はあくまで大綱水準達成ということで立案されておりますので、私どもといたしましては今回の計画計画どおり実行されれば大綱で期待しておる能力水準というものにほぼ近いものができるというように考えております。
  13. 堀江正夫

    堀江正夫君 実は、総理は本年の二月十四日でございますが、衆議院の予算委員会で、海空重視に関連した質問に対して、それはシーレーンばかりを考えてやっているのじゃないのだ、日本に寄せつけない、日本列島については少なくとも上着陸は許さない、途中でやってしまうのが一番よい、あるいはそういうことを起こさせないのがなおいい、このように言っておられます。  一方、最近の「防衛アンテナ」の中期防衛力整備計画臨時増刊号、これでございますが、この中で計画実施による能力というものについて述べられております。これを見ますと、今述べました総理の答弁とはもちろん大分違うように私は思うわけでございます。ここでそれをとやかく言おうとは思わないわけでありますが、この計画大綱で言っておりますところの、少なくとも有事には限定的、小規模までの侵略に対しては原則として独力で対処し得ると。もちろん原則ということが書いてあるわけですが、独力で対処するというのは 一体どのような作戦目的達成できるということを言っておられるのか、その辺を承りたいと思います。
  14. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 御質問作戦目的という意味、私、必ずしも十分理解しているとは思えませんが、大綱で定めております小規模、限定的な事態に対応できる能力というのは、一定オペレーション作戦目的というよりも我が国防衛政策目標、あるいは防衛力整備目標というようにお考えいただきたいと思うのです。これはたびたび申し上げているように、小規模、限定事態というものは余りこちらから察知できる状況でなく、いつ起きるかわからないという状況でございますので、そういうものに対しては少なくとも独力で対応できないと日米安保条約があったとしても十分なアメリカの支援も受けがたいというような状況でありますので、少なくともそこまでは自力でできるようにいたしたい。そうであれば、日米安保体制全般としてはすき間のない体制が一応でき上がるんではないかという政策目標を掲げておるというふうに私ども理解をいたしております。  したがいまして、今御質問の小規模、限定侵略対処できるということがそれのみでとらえますれば、そういった長時間の、半年、一年といったような準備相手方がしないで、現状に配備された兵力のままこちらに状況を察知できないような状況日本侵略してくるという事態に対して、少なくとも一定期間自力で対応できるという能力を持つということを防衛力整備目標にしているということでありまして、我々がオペレーションあるいは日本に対する侵略事態としてそういうものを特定して考えておるんではないということを御理解いただきたいと思うのです。
  15. 堀江正夫

    堀江正夫君 今、現体制からすると侵攻に対して一定期間自力で対応するんだというお話でございます。私が聞いているのは、自力で対応する、どこまでやろうとしておるのか。  具体的に一つだけ申し上げますと、例えば航空攻撃に対して自力で対応するという意味は、とんとんで、圧倒的な航空優勢を確保させないような作戦を何カ月、どの期間までやれるのかといったような問題について、この自力対処というのが具体的にどのようなことを考えて言っておられるのか、そういうことを聞いているわけです。
  16. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 今特定の例をお挙げになりましたので、それについて申し上げますが、例えば我が国周辺諸国のある国がある数の航空機なら航空機を持っておる、しかしながら、それらの航空機は必ずしもすべてが短時日準備日本侵略し得るということじゃなくて、それなりにその国そのもの防空のための航空機もありますし、あるいは日本以外の第三国に対する防御ということで控置しなくちゃいけない飛行機もあろうかと思います。したがって、仮に日本をそういった短時日のうちに攻撃をしようと思えば使える数量、航空機というものはある一定限界があろうと思います。そういった限界のある航空機なりそういう航空攻撃に対して、我が方の防空能力をもって少なくとも相手の第一撃、第二撃という段階でこちらの能力というものがどんどん低下をして、そうして航空優勢を相手にすぐとられてしまうということでなくて、ほぼ互角の体制といいますか、お互いに痛み分けみたいな形で一定期間戦闘が続けられるというものを目標としているということでございます。
  17. 堀江正夫

    堀江正夫君 大体お考えはわかったわけでありますが、あえて私は相手の国の名前を申し述べさせていただきますが、極東ソ連軍の核及び陸海空の戦力増強については毎年の防衛白書で具体的にこれを防衛庁で指摘をされておるところでございます。  まず第一に、今お話ありました航空戦力について言いますと、主として質の向上によって行動可能範囲が拡大をした。多分計画大綱をつくった当時であったと記憶しておりますが、当時久保局長限定小規模事態における航空攻撃力というのは六百六十機という数字を出されたような気もしております、これは国会の審議の中で。現在ではソ連航空機というのは行動範囲も拡大しましたし、したがって現体制からするところの攻撃可能の機数相当増加をしておるんだというふうに言われております。  きのうの新聞でございますが、ある新聞に五十ないし六十カ所に上るところの沿海州、サハリン及び北方領土までの航空基地、これは現在まではこのほとんどが滑走路が一本だけだった。ところがこれらの地区において、二十五カ所以上の空軍基地では滑走路を複数化しておるというような記事が載っておりました。そうなりますと、今まで考えておったよりもはるかに多数の航空機を一時に離着陸させることができるということになる。また、基地全部の抗堪性も増加するということは明瞭だと思うわけであります。加えましてソ連航空機の場合に、対空、対地ミサイル攻撃力も大変に増強したという事実がございます。また着上陸の侵攻能力について言いましても、ヘリ空母の配置、海上艦艇ミサイル攻撃力強化強襲揚陸艦整備北方領土配備を含む地上兵力増強海兵旅団空中機動旅団配備等、当時とは比較にならないほど限定小規模侵攻可能兵力が増大したようにも考えるわけでございます。  また、シーレーン攻撃能力につきましても、原子力潜水艦増強ミサイル装備の強力な海上艦艇増強バックファイア出現等、その増強は急速に行われておる、このように理解をしております。そして、こういった傾向は我が方が数年あるいは八、九年かかるでしょう、現在の計画を完成するまでにはさらに増大をする可能性というものも十分考えておく必要があろうと思います。このようなソ連攻撃力、私はここで言っておりますのは、もちろん現体制からするところのいわゆる小規模、限定的な侵攻能力を言っているわけであります。これに対して、計画大綱で所期した原則として独力対処というのは果たして可能なのかという疑問を抱かざるを得ないわけでありますが、それらについての御見解を承りたいと思います。
  18. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 先ほども申し上げましたとおり、小規模限定侵略というのは相手方がさほど準備をしないでということで行われる侵攻でございます。そこでどういう状況であるかということになりますと、今先生はソ連のことをお話しになりましたが、私ども特定仮想敵国を持っているわけじゃございませんが、一般論として申し上げますと、周辺諸国それぞれの国につきましてどういう能力があるかということをできるだけつぶさに我々として分析をしてみる、そしてその段階でどの程度の量の、どういった性能を持った、どういった装備を持った相手方侵攻する可能性があるかということを当然のことながら分析、研究するわけであります。  その際、まず、現在の防衛力で現在のそういった周辺諸国能力というものと比べてみてどういう能力があるか、そして五カ年計画をつくるに際しましては、それなり限界はございますけれども、五年先あるいは八年先に周辺諸国はどういうような状況になるか、それは量的にも質的にもどういう状況になるか、それに対応するためにはいかなるものが我が防衛力としてそれらのものにたえられる水準として必要であるかという分析をいたしまして、しかる後にそれを事業化していくというのが今回の中期計画をつくる作業過程でございまして、そういう意味で決して現在の状況に対して五年先、十年先に対応するという後追いの格好ではないというように御理解をいただきたいと思います。
  19. 堀江正夫

    堀江正夫君 今まで本当に総括的なさわりの部分を御質問したわけでありますが、これらの問題につきましてはさらに時間をかけて具体的にお聞きしたいと思います。  そこで、きょうはこの問題はこの程度でとどめまして、次に、計画見直しについて若干お聞きしたいと思います。  その第一は、五年間で計画大綱目標達成と言っておられるわけでありますが、一方におきまし て別表の枠の取り外しについてさきの参議院の予算委員会で、長官みずから具体的に例示をされながら検討したいという旨を言明されておられます。また、このたび決められました計画の中で、随時必要に応じ見直しを行い、三年後新たに作成し直すことについて検討すると明示をされております。  ここでお聞きいたしたいのは、計画で明示している見直し、新たな作成のための検討というのは別表の枠の取り外しまで含んでいるのかどうかということが第一であります。  そして第二は、この計画を解説した「防衛アンテナ」によりますと、「もともと防衛力整備長期的見通しに立って行うべきものであるので、国際情勢等の変動的な要因を絶えずその視野に入れて、計画的に実施していくべきであるとの観点から、計画見直し等について検討する」と解説をしております。当然のことでありますけれども国際情勢の厳しさや相手の技術の水準等に応じて強化見直しというものを強く考えておられる、このようにも受け取られます反面、経済財政事情でさらに引き延ばしの場合も考えておられるようにもとられるわけであります。両者とも考えておる、こういうことになろうかと思いますが、基本的にはどのように考えておられるのか、その点をお聞きしたいと思います。
  20. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 今回の中期計画を策定するに当たりまして、私たちはもちろん現在考えられ得るいろいろな見通しに立って行ったわけであります。しかし国際情勢等変化もいろいろありましょうし、財政事情、他の政策とのバランスの関係もありましょうから、三年の後にもしかしたら見直すこともあり得るべし、そういういわゆるローリングの可能性を今度の計画の中に入れてあることは御指摘のとおりであります。しかし、それを必ずローリングするかどうかというのは三年後の段階でまた考えてみたい、こう思っております。  その際に、いわゆる別表の枠の問題を取り外して考えるのかという御指摘でございますが、先ほどの予算委員会、それから衆議院における予算委員会等で私なり西廣防衛局長から申し上げた点は、私たちとしては今後効率化ということは防衛力整備の面でも非常に大切になってまいると思います、現在のところ私たち別表をしっかり守って、そして別表の中にあります陸海空の内枠も変えないで、その限度の中での最大の効率化をねらいましたけれども、今後ますます防衛の面も行革の聖域ではありませんので、そういった中で別表の内枠も少し流動的に考えて対処してみるという発想も出てくるのではないかということを申し上げたのであります。それは装備体系がいろいろ変わってまいりますれば、そういうことが可能なように、前提として大綱がつくられておりますので、そのところまで考えての効率化を考えないといかぬ場合が出てくるのではないか、そういうことを申したのでありまして、防衛計画大綱の総論、それから全体の別表の大きな外枠組みを変えるつもりはございません。
  21. 堀江正夫

    堀江正夫君 実は質問は始まったばかりなんですが、もう時間が参って、私の質問はこれ以上続けることができません。残念でございますが、きょうはこの程度で中途半端でございますが終わりまして、次の機会にまた質問を続けさしていただきたいと思います。ありがとうございました。
  22. 野田哲

    ○野田哲君 まず、外務大臣にお伺いいたしますが、昨日からジュネーブで開かれている米ソの首脳会談について、ある程度途中経過の中身の報道があれば具体的にそれに基づいてお伺いをしたいというふうに考えていたわけであります。まだ中身の具体的な発表はないようでありますが、この米ソの首脳会談について日本政府としてはどのような期待を持っておられるのか、まずそこから伺います。
  23. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 米ソ首脳会談が十九日、二十日と世界が注目する中で始まっておるわけでございます。第一日目が終わったわけでございますが、中身については今お話しのように何ら発表されておりません。しかし、雰囲気から申しますと、予想された以上の熱気のこもった会談になっておる、相当具体的に両国首脳が真剣に会談をしているという印象であります。例えば両首脳だけの会談が実に二回にわたりまして、一時間、一時間と二時間にわたって行われております。外務省としましてもジュネーブに情報を収集するための外交官を派遣しておりますが、そうした彼らからの報告によりますと、両国代表部とも大変な熱気を持っておる、特にアメリカの代表団なんかは朝の三時ぐらいまで会議をしておって、非常に何か熱意がみなぎってきておる、こういうことでございます。  我々としましても、いわゆる米ソ首脳会談が成功するかどうかというのは、これからの両国の軍縮の道が開けてくるか、あるいは東西関係に明るさが出てくるか、あるいはまた世界のいろいろと混乱した状況一つの解決の道が生まれてくるかどうかという、大変大きな意味を持つものであろうと思っておりますし、二日目の会談、その結果が恐らく終わってから発表になると思いますし、また日本に対しましても、アメリカ政府からウォルフォウィッツ国務次官補が二十二日にやってまいりまして直接内容を伝えることになっております。ソ連からも恐らく連絡があると思っておるわけでございます。結果を見なければわかりませんけれども、何とかこの熱意が実りのあるものに結びつくことを期待しておりますし、いずれにしてもこの会談がこれで終わりということにならないでさらに継続した会談が持たれるようなそういう状況が生まれることを期待しておりますし、あるいはまた軍備管理、軍縮交渉が引き続いて両国間で進められるということも日本政府としては心から念願しておるわけであります。
  24. 野田哲

    ○野田哲君 フィリピン問題について若干外務大臣に伺いたいと思うのですが、最近しきりにフィリピンの政情不安が伝えられています。安倍外務大臣は最近フィリピンの大統領夫人ともお会いになっているようでありますし、今のフィリピン問題についてもかなりその席で意見交換が行われているのではないかと思うのです。情報によると、今のフィリピン情勢というのは六〇年代前半の南ベトナムに非常によく似ているのではないか、こういう見方もありますし、あるいはまた第二のイランになるのではないか、こういう見方がアメリカでも強まっている、こういうふうないろいろな報道があるわけでありますが、今のフィリピンの情勢について外務大臣としてはどのような見方を持っておられるのか、まずそこを伺いたいと思うのです。
  25. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 我が国としましても、フィリピンが何といいましても非常に近い関係にありますし、ASEANの一国でもありますし、したがってフィリピン情勢がどういう状況にあるのか、これからどうなるかということに対しては非常に重大な関心を持っております。  そうした中で、いろいろと日本自身としても情報を集めておりますし、またアメリカの情報等も聞いておるわけでございます。正確にここで申し上げることはなかなか難しいと思いますけれども、マルコス大統領の健康は回復しつつあるというふうに見ておるわけでございます。しかし、政治情勢は必ずしも私は好転しているとは思いません。特にフィリピンの新人民軍といいますか、共産軍の動きが相当活発になって、これは相当範囲が拡大をしているというふうに考えております。経済の方も、インフレについては多少おさまりつつあるというふうにも見ております。しかし、フィリピン経済全体がそれでは立ち直るということが言える状況かといいますと、そこまで言い切れるような私は状況ではないように思います。そういう中で、アメリカは特にフィリピンの状況については心配しておりまして、これはアメリカの議会でアメリカ政府が証言しておりますが、それによれば、今私が申し上げました以上に実はフィリピン情勢は深刻だというふうな受けとめ方をしておるようでございます。  私は、実はマルコス夫人との会談の際にも、フ ィリピンのこうした状況、特にアメリカ政府がそうしたフィリピン情勢について非常に深刻な情勢分析をしているということで、日本としてもフィリピンの状況について関心を持たざるを得ないということも申し上げて、日本の関心を特にマルコス夫人にも申したわけでございますが、マルコス夫人によれば、心配は要らないということでございました。しかし、全体的に見るとやはりそう、それでは安心できるかと。来年の大統領選挙が予定されるわけでございますが、非常に自由な雰囲気の中で大統領選挙が見事に行われるかどうかということ等につきましても、我々も関心を払わざるを得ないわけでございます。
  26. 野田哲

    ○野田哲君 ことしの五月にアメリカのCIAのケーシー長官がフィリピンを訪問して一週間ぐらい滞在をして、マルコス大統領、それから政界、軍の高官、政党の指導者、各方面に会って包括的な情報を収集をした、そしてその帰りに日本に寄って安倍外務大臣と会って、ケーシー長官が得た情報をもとにしてかなり二人で突っ込んだ協議が行われた、こういう情報があるわけですが、そういうことなんですか。
  27. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 確かにことしの五月にケーシーCIA長官日本に見えまして、私もお目にかかりました。極東情勢全体についてのアメリカの情勢分析等を一般的に私は承ったわけでございますし、そういう中でのフィリピンの情勢についてのケーシー長官の判断もお聞きしたわけでございます。  具体的に詳細を申し上げる立場じゃありませんが、全体的にはやはり当時からアメリカとしましてはフィリピンの情勢について憂慮しておる、心配しておるという印象を率直に持ったわけであります。
  28. 野田哲

    ○野田哲君 軍事的な面で非常に関心が持たれているのは、先ほど外務大臣も言われましたアメリカの連邦議会、下院の外交委員会で報告書が提出をされております。昨年の十月四日に下院の外交委員会のアジア問題小委員会でアメリカの国防総省のアーミテージ次官補が証言をしている。それによりますと、アメリカの国防総省はフィリピンの政情不安によってアメリカがフィリピンに設置をしている空軍基地のクラーク、それからスービック海軍基地の維持に非常に深刻な影響を受ける、そこでアジアにおける代替基地の検討を行っている、こういう証言がされております。  この問題について、特に沖縄、私も先日沖縄を訪問したときに、沖縄が非常に不安を持っているわけであります。つまりそれは、フィリピンの空軍基地と海軍の基地を移転するという話が具体的にアメリカの議会でも国防総省などからの証言によって明らかになって、そこで代替機能としてまた沖縄がその役割を持たされるのではないか、沖縄の基地強化されるのではないか、こういう不安が非常に沖縄の人たちに今高まっておるわけであります。特に今お話がありました、フィリピンを訪問したCIAのケーシー長官がフィリピンからの帰りに日本に寄って安倍外務大臣と協議をしたということの中に、そのこともあるいは話題になっているのではないかという懸念もあるわけでありますけれども、このような問題が今、日米間の話題になっているのかどうか、この点を伺いたいと思うのです。
  29. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) アメリカがフィリピンとの間の歴史的な関係、さらに軍事的には二つの基地を持っておるという関係で、非常にフィリピン情勢について重大な関心を持っていることは、これは間違いないわけでございます。いろいろと国会での証言があるようでございますし、確かに基地の問題についても議論をされたということについては承っております。しかし、基地を移転するとか特に沖縄に移転するとか、そういう点については、日本政府としましてアメリカ政府から何らの情報も得ておりませんし、我々の聞いたところでは、アメリカ政府自体も基地を移動するとか移転するとかいうことは考えていないというふうに我々は承知いたしておるわけですが、この点については局長から具体的に答弁をさせたいと思います。
  30. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) 先ほど委員御指摘の報告書は昨年の十月でございますが、本年十月三十日に、上院の外交委員会におきましてアーミテージ国防次官補が証言しております。  そのポイントは、米政府はフィリピンから基地を移動することは検討していない、国防当局としては、現在のフィリピン情勢とは全く別個に、緊急時の対策として代替地の可能性を検討してきている、かかる目的のために北マリアナに土地をリースするため、七〇年代後半から交渉を開始し、八三年に議会から資金的裏づけの承認を得ている、このようなリースの時期から見ても、本件が現在のフィリピンの情勢とは無関係に行われているということについては理解を得られようという趣旨の発言をしておるわけでございます。
  31. 野田哲

    ○野田哲君 防衛庁の方に伺いたいと思うのです。  先ほどの堀江委員質問の中でも、極東におけるソ連の軍備拡張という問題が取り上げられておりますが、我が国周辺の軍事情勢について防衛白書では、ソ連我が国周辺における強大な戦力の配備が我が国に対する潜在的脅威を増大させている、こういうふうに述べているわけです。そして、この認識が中期防衛力整備計画の前提になっていると思うのですが、私はこの白書に記述されている内容を見ると、殊さらにソ連戦力を過大に記述をして、装備強化の口実にしている向きが感じられるわけであります。防衛庁の発表する防衛白書などの表現としては少し適切を欠いている部分があるのではないかというふうに思うわけです。  そこで、まず具体的に伺いたいと思うわけですが、防衛白書の十一ページにこういう表が出ています。これを見ると、「米ソ戦略核戦力の推移」、こういう図表が出ているわけですね。一般的にこれを見た人は、大変な戦略核戦力について格差があるという認識を当然持つと思うのです。ところが、よくよくこれ見ると、ここにある図で示されている数字というのは、これは核弾頭の数ではなくて運搬手段、ランチャー、戦略爆撃機の機数を図表であらわして、いかにもこれが一般的な受けとめ方としては大変な格差があるんじゃないかという印象を持たせるようになっているわけであります。  核弾頭数について見ると、ICBMについてはソ連の方が確かに多い。しかし、他の戦略核についてはSLBM、戦略爆撃機搭載の核弾頭、これはもう明らかにアメリカが圧倒的に多いわけです。総体の数についてはソ連が若干多い。しかし、ICBMあるいはSLBMの射程距離とかあるいは命中精度、こういう点を資料として出されている「ミリタリー・バランス」によって見ると、これはもう圧倒的にアメリカの方が命中精度も高い、あるいはまた航続距離も長いという点が明らかになっているわけであります。そういう点からして「ミリタリー・バランス」によったということでこういう図表を掲げておられるわけですが、こういう表示の仕方というのは、これは私は国民を惑わす記述の仕方じゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  32. 古川清

    政府委員(古川清君) 戦略核戦力の評価をいたします場合に、やはりどうしても大事なことはランチャーの数が幾つあるかということからまず始めなければいけないわけでございまして、防衛庁としましてはまずその記述をここに載せておるわけでございます。しかしながら、総合的に判断する場合にはもちろん弾頭の数、それから命中精度ということも考慮に入れなければならないわけでございますけれども、弾頭の数というものは、これははっきりいたしません。  例えば、ソ連のSS18という世界最大のICBMがございますけれども、これは例えばモード1というものはメガトン級の単弾頭でございますが、モード4という形になりますと五百キロトンクラスの弾頭を十個弾頭の中に入れてMIRV化されておるというのもあるわけでございまして、なかなか弾頭の数というものを判断するのは非常 に難しい。そういうことでございますけれども防衛庁としましては総合的にランチャーの数、それから弾頭の数、それなりに私ども評価をしてございます。それからさらには命中精度等々を総合して客観的に防衛白書の形で記述しておるつもりでございます。
  33. 野田哲

    ○野田哲君 確かに弾頭の数ということになるとはっきりしない面があると思うのですが、しかし、これを運搬手段だということは明確にしないでこういう表示をするというのはいかがなものか。こういう表示をする以上は、これは運搬手段だ、さらに弾頭についてはこういう比較ができるんだと、私はここまで示しておかなければいけないと思うのです。  一昨日ですか、朝日新聞、毎日新聞は、この「ミリタリー・バランス」によってこういうふうに運搬手段の比較と弾頭の比較をきちっとやっているわけです。これぐらいのことは「ミリタリー・バランス」を調べればこれだけの図表ができるわけでありますから、こういう比較の仕方というのは私は片手落ちだということをまず指摘をしておきたいと思うのです。  それから次は、地上兵力についてもいささか記述に問題があるのじゃないか。地上軍について中ソ国境付近に五十三師団、四十七万人の配備がある、そのうち極東地域に四十一師団、三十七万人が配備されている、こういうふうに述べているわけです。この資料は「ミリタリー・バランス」によったという。確かに「ミリタリー・バランス」では師団数はそういうふうになっているわけですが、この三十七万人という人員はどこから調査されたものですか。
  34. 古川清

    政府委員(古川清君) これはいろいろな実は情報のソースがございまして、それを総合的に判断をいたしまして取捨選択をしてこのような結論に到達しているわけでございます。
  35. 野田哲

    ○野田哲君 「ミリタリー・バランス」はソ連極東軍についてこういうふうに説明しているわけです。各師団は戦闘即応態勢の面から三段階に分けられている、カテゴリー一、これは完全装備、そして定員の七五ないし一〇〇%の充足率、カテゴリー二、戦闘用車両は完全装備、定員は五〇%ないし七五%の充足、カテゴリー三、これは戦闘用車両は旧式であるということ、そして旧式なものを可能な限り完全装備をしている、定員については五〇%以下、そうして極東の師団のうちの約三五%——三五%というわけですから十四師団ぐらいになると思うのですが、約三五%はカテゴリー一あるいはカテゴリー二の師団である、そうしてその他、つまり六五%、二十七個師団はこれはカテゴリー三だと、こういうふうに「ミリタリー・バランス」ははっきりと記述をしているわけなんです。  今ソースはいろいろあると言われたけれども、アメリカの議会が報告書を出しております。ジョン・コリンズという上級専門官の報告書が出ているわけです。この報告書の中に「ソ連軍の配備の現状」という項があるわけですが、その中でもこういうふうに書いているわけです。「極東にいるソ連の師団で、米国の基準でみて、完全な戦闘準備がととのっているものは少ない。約半分はカテゴリー三に属する。これらのうちの最もよいものでも、約三分の一の戦力である。最も貧弱なものは、ほとんど幹部しかいない。」、アメリカでさえも極東におけるソ連の地上軍をこういうふうに見ているわけですから、そのうち中ソ国境付近に配備されているのが五十三師団、四十七万人で、うち極東地域に四十一師団、三十七万人、これは少し膨らませ過ぎた数字じゃないか。「ミリタリー・バランス」のカテゴリー一、二、三の分類からいくとせいぜい十五万人くらいにしか私はならないのじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  36. 古川清

    政府委員(古川清君) ソ連の陸上兵力の中に、私は必ずしも三つのカテゴリーというふうにも考えておりませんけれども、充足率の非常に高い師団とそうでない師団があることは私ども承知しております。  これは、言ってみればソ連が直面しておる最大の問題の一つ、労働力不足というものと軍隊の必要性というものとの妥協の産物として私はそういうことになっているのではないかと思います。私どもも今回、昨年と比べまして確かに師団としては一つふえながら全体の人数、兵力としてはふえていないということはございますが、これは恐らく低充足の師団が増員されたものではないかということを考えておるわけでございます。しかしながら、この同じ「ミリタリー・バランス」にも書いてございますとおり、ソ連の予備兵力というものは大変な数でございまして、現在恐らく二千五百万以上あるというふうに「ミリタリー・バランス」も書いておりますけれども、一たん緩急ある際は、この基幹の師団というものが短時間の間に完璧な兵力を持ち得る。そういう能力を持っているという点では私どもはやはり注視せざるを得ないわけでございます。
  37. 野田哲

    ○野田哲君 私は予備兵力がどうだこうだということを言っているんじゃなくて、防衛白書で記述をしている極東に配備されている現役の師団の把握の仕方について少し違いがあるのではないか、膨らませ過ぎているのではないか。「ミリタリー・バランス」によって記述をするのであれば「ミリタリー・バランス」のとおりにやってもらう方が正しいわけであって、都合のいいところだけは「ミリタリー・バランス」の数字をとって、都合の悪いところは全然触れていない。こういう扱いはいささか脅威の虚構をしつらえているのではないか、こういうふうな指摘をしているわけであります。  それからさらに、海軍の問題についてもそういう点を指摘して見解を伺いたいと思うのですが、「ミリタリー・バランス」によると、隻数については、ソ連の太平洋艦隊は五百四十三隻というふうになっているわけです。ところが白書によると、主要水上艦艇が約九十隻、潜水艦が約百四十隻、これを含む八百三十五隻約百七十八万トン、こういうふうになっているわけです。そうすると、具体的に書かれている水上艦艇九十隻と潜水艦百四十隻以外の約六百隻というのは一体どういう艦艇であるのか。「ミリタリー・バランス」と白書で記述している隻数に三百隻近い開きがある。これは一体どういうことであるのか。防衛庁が直接発行したものではないが、「防衛ハンドブック」を見ると、「防衛ハンドブック」では潜水艦が百三十五隻、水上艦艇四百三十隻で、その内訳は空母二、巡洋艦十五、駆逐艦三十、護衛艦四十五、その他三百四十、ここまでは大体「ミリタリー・バランス」と合っているわけです。問題は、「防衛ハンドブック」によっても補助艦艇二百六十隻、こういうのがこの中で一括して最後につけ加えられているわけでありますが、この二百数十隻、「ミリタリー・バランス」と防衛庁の記述、それから「防衛ハンドブック」では大きな違いが出ている。これはどういうわけですか。
  38. 古川清

    政府委員(古川清君) 私どもといたしましては、「ミリタリー・バランス」の記述も一つの参考としておるわけでございまして、防衛白書の中でも「ミリタリーバランス等による」ということでございまして、私どものそれ以外の種々のソースから得られました情報も総合的にしんしゃくをして防衛白書を作成しておるわけでございます。  ただいま御質問の隻数でございますけれども、私どもといたしましては、潜水艦は百四十隻、空母が二隻、巡洋艦十五隻等々で、水上のいわゆる戦闘艦と称するものの総合的な数が大体四百三十隻であろうというふうに踏んでおるわけでございます。その残りの八百三十五から百四十と四百三十を引きました二百六十五隻につきましては、例えば洋上補給艦であるとか、工作艦であるとか、潜水艦母艦であるとか、サルベージ艦であるとか、海洋観測船であるとか等々の、これも子細に実はそれなりのチェックをしておるわけでございまして、それで総合的に八百三十五隻百七十八万トンと、私どもの身近な国でございますので、私どもとしてはきめ細かくそれなり調査をしてかような記述をしておるつもりでございます。
  39. 野田哲

    ○野田哲君 海軍の水上艦艇ということになる と、隻数とトン数が数字的な比較として使われることはやむを得ないとしても、今も説明がありましたが、隻数、トン数だけによって戦力として比較をすることは非常に私は間違った印象を与える面があると思うのです。アメリカの第七艦隊、隻数だけで言えばこれはもう比較にはならないわけです。しかし、その一隻ずつの持っている機能、能力というものを見たときに、今の言うサルベージ艦とか、もう既に廃艦に近いような状態の船まで全部ひっくるめて隻数に入れて、こういう形でこれが脅威なんだという印象を与えるような記述の仕方というのは私はいかがなものか、こういうふうに思うわけです。  先ほどもちょっと引用いたしましたが、アメリカの連邦議会の報告書の中の「米ソの軍事力バランス」によると、極東におけるソ連軍の配備の状況について、いろいろ地上軍、空軍力、海軍力について分析した上で、要するに、現在極東では米ソの軍事力はほぼ均衡状態にある、ソ連の空母が来たぐらいでこのバランスは変わらないというふうに述べているくだりがあるわけでありまして、私は、やはりそういう点で、数字の比較の上でも、あるいはまた発表の仕方の技術上の問題としても誤解を受けないように慎重を期してもらいたい、こういう希望を持っているわけであります。  そこで、もう一つ慎重を期してもらいたいということで要望したい点は、この前、十一月一日に防衛庁新聞各紙へ一斉に広告を出されました、自衛隊記念日ということで。この広告の中に各国の国防費の対GNP比の比較を図表で示しているわけです。これは一九八二年度分を示しているわけです。アメリカ六・五、西ドイツ四・一、スウェーデン三・六、スイス二・一、日本は〇・九。これで見ると〇・九、いかにも諸外国に比べて非常に少ない、こういう印象を持たれるようにうまくつくってあるわけです。この数字の比較においても私はやはり問題を感じるんです。  それはなぜかというと、これらの国々には防衛費の計算の仕方についてはNATO方式という形で、いわゆる軍人恩給とか、日本でいえば運輸省の予算に入っている海上保安庁の経費、これらも全部国防費の中に含まれているわけであります。スイスにはネービーはないわけですけれどもね。だから外務省でも外国へ行ったときは、日本の軍事費はGNPの一%以内ではない、NATO流に比較をすれば実際は一・五%とか一・六%なんだと、そういう説明をしているようであります。だから私は、こういう図でNATO諸国との比較をするんであれば、計算方式をNATO方式によって比較をする、それでなければ私は国民を迷わす比較の仕方になるんじゃないか、こういう点を指摘をして、時間が参りましたので終わります。
  40. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 防衛費の比較につきましては、いろいろ国会の場で御議論をいただいておりますし、例えばNATO方式であれば我が方は幾つになるのかというのは大変御議論のあるところですが、しかしNATOの方では、防衛関係費の基準にどういうものを入れておるのかということはNATO秘として明確にいたしておりません。それによりますと、一・三と言う人もおりますし、一・五という計算をする人もありますけれども、私たちとしては、そんなに我々の防衛費がNATO方式によっても極端に大きく差異があるものだとは思っておりません。そして、そういう計算をいたしましても、我が国の防衛費というのは対GNP比で見ますと世界の中で最も少ない国になっているということは事実なんで、私たちは、その表は意図的なものではなく、客観的な事実を出したものだと思っております。
  41. 黒柳明

    ○黒柳明君 外務大臣、まず、当面の外交事項で二、三お聞きしたいのです。  米ソ首脳会談ですが、十二日ですが、レーガン大統領がテレビを通じて全国民に余り期待するな、こんなテレビの談話をあれしました。それを踏まえるまでもなく、さっき外務大臣がおっしゃいましたように非常にいいムードで行われているみたいですが、成功裏にとか、また何か期待感を持ってこの会談を見詰めて果たしていいのかなと。六年半ぶりに米ソ首脳が会うだけでも成功であり、また、もし報道されているように継続的に話しが行われる、これが決まればこれは大成功であり、また、包括的な核軍縮に対して何か一つでも二つでも首脳会談で取り決めでもあればこれは大々成功ではなかろうか、こんなような見方を私はしているわけであります。  期待感を持つなというのはちょっと酷かと思いますが、期待感を持たざるを得ないのです。それに反して、どうも事前の折衝等を見ますと、食い違いが多過ぎてそんなに期待を持てない結果が出るんではなかろうかというような感じもいたしますが、そこらあたりもう一回外務大臣の御評価をいただきたいと思います。  それから、何か新聞の報道ですが、北方領土についてもレーガン大統領が触れるんではなかろうか、こんなことも一部に報道されておりましたですが、ここらあたり特別に日米間で話し合いをしたわけでもないかと思います。そうなると、レーガン大統領が今までの日米間の話し合いの中で自発的にそういう問題を取り上げるのかな、こんなこともあります。これは終わってみなきゃ、内容が出てみなきゃわかりませんが、そのあたりもどのように受けとめているかお願いいたしたいと思います。
  42. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 第一回、第一日目の会談は、期待といいますか、想像しておるよりは雰囲気はよかったように思いますし、とにかくテータテートといいますか、二人だけの会談が二回にわたって行われたということは、何か前進の可能性があるんじゃないかという非常な期待を抱かせるわけであります。これはしかし、きょうの会談を見なければわかりませんし、最終的には両国で二日目が終わらないと発表しないということになっておりますから、我々としては予測のすべはありません。初めはペーパーにもならないという状況でしたが、何かそういう方向でもできればいいのじゃないか、こういうふうに期待はするわけです。  ただ、軍縮問題については、両国の提案が既に出ておりまして、これは非常な大きな隔たりがありますから、この隔たりがどこかで一致するということはなかなかそう簡単にはいかないのではないか、客観的には外から見るとそういうふうな思いがいたします。しかし、首脳に残されたフリーハンドといいますか、首脳の決断の範囲というのは相当に広いようですから、その辺に望みを持って見詰めてまいりたいと思います。  それから、北方領土の問題については、これは既に米ソの外相会談ではこれまで取り上げられております。しかし、今回首脳会談で果たして取り上げられるかどうか。日本としては、これは世界に対して日本の主張を述べておるところでございますし、そういう意味日本の主張が米ソ首脳会談の中に反映されることは期待するわけですが、これもどういう状況になるか、結果を見なければわからないというところであります。
  43. 黒柳明

    ○黒柳明君 新任の韓国大使が、何か十一月の初句に赴任する前に、皇太子の訪韓について触れて、その後各社が単独会見して、同じような趣旨のことが活字になって報道されております。大統領の側近中の側近でもありましたし、全斗煥大統領のスタッフの有力なメンバーですし、しかも、つい最近の新聞の単独インタビューの中でも相当具体的に、日本に着任してこの問題を推進したいとか、あるいは皇太子が訪韓することは政治的にも非常に有意義である、あるいはその名目とか時期とか方途とかいうものを両国間の関係者が相談すべきである、私はそれを韓国大使として推進したいと、非常に具体的な発言も活字を通して報道されているわけであります。  まだ当然これは正式な外交ルートで要請があったわけじゃありません。また、宮内庁が当事者でございますが、ただ問題は、今申しましたように、非常に具体的に韓国の有力大使が発言していることについては外務省も当惑だなんという記事も出ておりましたですが、ただ当惑だけではこれは済まされない問題だと思います。外交的に正式にそ れがあった場合、あるいはそういう有力大使の発言の中において具体的に提示されたそれについて、外交上皇太子の訪韓に対して何か今問題があるのか、あるいはネックでもありますでしょうか、あるいは素直にこれを受けとめる時期でもないとか。初めて記事が出たのは十一月の四日ですから、もう半月ぐらいたっています。正式に新任大使も着任のあいさつにぐるぐる回っておりますし、何かこれについて外務大臣なりのお考えをお持ちでしょうか。
  44. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 韓国の李大使が着任をいたしまして私ども会談をしたわけでありますが、その際には今の皇太子の訪韓問題については一切話は出ませんでした。これは、これまで韓国側から日本の報道機関等を通じましていろいろと報道されてきておるわけでありますし、日本政府としましては韓国政府から正式な提案でもあればこの点については検討もしなきゃなりませんし、あるいはまた宮内庁とも相談をしなきゃならぬ、こういうふうに考えておりますが、今のところは全くそうした正式なルートを通じての要請とか提案はありません。
  45. 黒柳明

    ○黒柳明君 正式ではないですね。間違いありませんね。ただ、非常に具体的に、外務大臣も御存じのように、各紙の単独会見ではこう出ていて、私も推進したいと。ですから、大使としても向こうの政府の意を受けて言っているんじゃないけれども、また逆に言うと、それを自由に発言できるような裁量も力量もある大使なのかな、こんな感じもしているわけであります、私もいろいろ接触しているんですけれども。正式ルートになりますとまた当然相談ということになります。外交上、今、外務大臣が、皇室のことですから、ちょっとうかつにこれは発言というわけにいかないと思いますけれども、これだけやっぱり新任大使が一つの政治的に意義ある——これは必ずしも大使の個人的な発想でもなかろうかという感じを、ちょっと私、あっちこっち感触を確かめたんですが、するんですが、何か日本側としまして外交上問題でもあるのか。向こうはある意味においてぜひというような姿勢があるみたいですけれども、今の時点において外務大臣としてはその辺の判断、特別に問題はない、けれども正式外交ルートに乗っかっていないから検討の時期じゃない、こういう意味での御発言でしょうか。済みませんがもう一回。
  46. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) こういう問題は非常に重大でありますし、やはり正式な外交ルートを通じて話し合うという筋合いのものじゃないか、こういうふうに思っております。背景はいろいろあると思いますが、もしそうした正式ルートを通じまして話があった場合にはその時点において慎重に日本としても検討しなきゃならぬ、こういうふうに思います。
  47. 黒柳明

    ○黒柳明君 日ソ外相会談ですけれども、こちらから行くのは八年ぶり、来るのは十年ぶり。それで、昨年十一月のあのガンジー・インド首相の葬儀のときに当時のチーホノフさんと中曽根総理が話しまして、今まで領土問題というのは入り口論にしないと、出口論にしてはだめだ、こういう外務省の姿勢だったんですが、あのとき総理は、これは新聞にも当然報道されましたけれども、当然領土問題はこれは避けて通れないが、ほかの問題につきましても話し合うことが必要であるという発言の中でのニュアンスが、どうも従来の外務省の出口論、入り口論、これは古い問題で新しいテーマなんです。また一月十五日に早速その問題がメーンになるかと思いますけれども総理大臣のあのときの発言は、ソ連との話の中では、従来の外務省の入り口にしなきゃならない、領土問題とほかの問題と一緒になってひっくるめて話し合いになるとソ連ペースになってしまうというような姿勢とちょっと違ったのかな、こういうニュアンスを受けつつ今日に来て、あと来年に十年ぶり外相会談が始まる。  中曽根さんは戦後の総決算で一生懸命ですけれども、戦後の外交の総決算はやっぱり日ソ関係であって、この問題が解決しませんと、あるいはもっと一歩、二歩前進しないと戦後の決算というわけにはいかないわけであります。外務大臣が意欲的に従来から日ソ関係の問題には取り組んできたわけでありますが、これは非常に絶好のチャンスなんです。来年からソ連が第十二次の五カ年計画もありますし、国内経済の立て直してはシベリアの日本の資金の投入なんというのは、これは前からソ連側としては待っていた問題であります。領土問題は避けて通れない、これは日本国民ほとんどの人が一致した意見でありますが、と同時に日ソ間の友好関係というものをさらに前進させるためには、果たして昨年の中曽根さんの意思、これはどこにあるかわかりませんけれども、領土問題は領土問題としてほかの問題も当然話し合っていくんだ、こういう基本姿勢日ソ外相会談に臨むのか、この辺どうでしょうか。
  48. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私も中曽根総理とチーホノフ首相との会談、あるいはまた中曽根首相とゴルバチョフ書記長との会談に立ち会っておりますが、いずれも我が国基本的な考え方を明らかにいたしまして、同時にまた、日ソ関係改善したいという日本の意欲も伝えたわけであります。これに対しましてソ連側も、日ソ関係は非常に重要である、この関係をぜひともひとつ改善したいということでありました。  その後、私も新しいシェワルナゼ外相ともニューヨークで会いまして、彼が今度一月に来るということを私に申し述べましたので、その際はお互いにじっくり日ソ間の基本問題も含めて日ソ間の関係改善について話し合いをしたいということで会談を進めたわけでございますが、ソ連としましても、共産党綱領等におきましても日本を一極として非常に重要視しておる。ソ連の最近の対日アプローチも何とか日ソ間の関係を進めたいという意欲が出ておるわけですから、領土問題はありますが、隣国は隣国でありますし、私としましても機が熟したときといいますか、機が合ったときは基本的な問題はもちろんでございますが、全体的にやはり話し合う必要があるんじゃないか、そうして両国の関係改善できるということで両国が一致すればそういう方向に向かって前進をすべきじゃないだろうか、そういうふうに思っております。そういう意味では、一月の両国の外相会談というものは非常に日ソ間にとって重要な意味を持った会談になり得る可能性はある、こういうふうに思っております。
  49. 黒柳明

    ○黒柳明君 一週間くらい前ですか、ある一紙に、内閣改造が行われるであろう、その前触れとして安倍、竹下留任なんて出ていましたね。当然、今申しました戦後の外交関係の最たる日ソ関係改善するために一月十五日、もう安倍外務大臣としてはそれこそ待ちに待ったときだと思うのですけれども、そうすると意欲満々で、三期外務大臣留任大いに結構、こんなようなことでそれを踏まえてまたその次の高い段階に上っていく、こんな気持ちで意欲満々でしょうか。
  50. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いや、私が言っているのは、日ソ外相会談ということで、時の外務大臣がこれは日本を代表するわけですから、全力を挙げて一番重要な日ソ関係外相会談に取り組まねばならないという外務大臣としての決意を述べたわけです。
  51. 黒柳明

    ○黒柳明君 AIDSのことですけれども、これ藤井さんのあれですかね。在日米軍軍人が四万五千八百人ですか、公式にはいるということで、これは二十世紀のペストということで、国防総省が七月一日から任意に血液検査を米軍に呼びかけて、八月二十八日ですが、これは強制的に検査しろ、こんなことがあってもう十一月の半ばですね。外交ルートでそのAIDSについて何かアメリカから教えてもらったというか、あるいは情報を提供しろと要請したことなんかあるでしょうか。
  52. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) AIDSにつきましてはアメリカでも大きな社会問題となっておりまして、御指摘のとおり国防総省はアメリカ軍人すべてに対しましてAIDSの検査を行うことを計画しておるということを承知しております。日本に つきましては、種々新聞等で憶測が出ておりまして、特にそれが在日米軍の施設区域に関連しまして憶測が出ておるわけでございます。この施設区域に近接いたします住民の御心配等にも配慮いたしまして、しかるべき機会に米側とAIDS対策についても万全を期しますように話し合っていきたいというふうに考えております。
  53. 黒柳明

    ○黒柳明君 当然最大関心事であり、守備範囲は局長さんのところだと思います。もうこれは御案内のことかと思いますけれども、十月二十八日、米国防総省が二百十万の米軍のサンプルとして六万二千百七十四の血液検査をした結果を発表しております。第一次の疑惑者が五百、その中で第二次、第三次テストして百九十二、そのうち四十四例がAIDS患者である、こういう発表が十月二十八日に出ております。これはテストの〇・〇七%ですね。二百十万という膨大な数のうちの六万二千ですから、それでもしこの二百十万を検査すると、〇・〇七ですから千四百七十の患者が出るだろう。これは掛けただけです。  さらに西ドイツは、これは非常に売春婦のAIDSがはやっていて、来年を越すと百以上の患者が出る可能性があるとも言われている。  さらに沖縄、これはもう御存じだと思います。沖縄の場合には今言われましたように非常にうわさが立っておりまして、「スターズ・アンド・ストライプス」、これは米軍の機関紙ですね、そこにも、レッサー基地にAIDS患者が発生したという電話がかかったとか、あるいは海軍病院の緊急患者室でドクターがAIDS患者が出たということでディスカスをしているのを立ち聞きしたとか、あるいは地域住民がAIDSにかかって被害をこうむったという、これはうわさと言えばうわさかもわかりませんね。これは新聞情報を含めてであります。  ただ、この四万五千、これも単純に掛けますと三十二名のAIDS患者がいる。今サンプルは六万二千ですからね、その中で〇・〇七%。それを今度は日本の四万五千に当てはめてみると三十二名のAIDS患者がいるということになるんですよ。これは何も私がつくったんじゃなくて、御存じのように国防総省が発表して、それで掛ける。ただ、この六万二千百七十四サンプルがどこのサンプルかわかりません。ただ、これは強制的に二百十万を検査していますから、一部だけのサンプルであるのか、あるいは沖縄も含まっているのか、ここまでは具体的データが出ておりませんものでわかりません。ですけれども、今申しましたように二百十万に掛けると千四百の患者が出るであろう、こういう発表もしているくらいなわけであります。  そうなると、これを今度は沖縄に、我が在日米軍に転化しますと、果たしてこういううわさがうわさのうちはいいかと思うのですが、これが一人見つかった、いや一人ところじゃない、日本人の中にもという可能性が非常にあるんですね。これは御存じのように「パシフィックスターズアンドストライプス」は連日です、AIDSに対して。きょうはサウスコリア——韓国、きょうはフィリピン、連日です、AIDSの問題。これは米軍、注意しろ、注意しろ、発生率が多いぞと。だからこういう勧告もするのは当たり前だと思うのです。  私たちは、基地の中で起こっている問題ならいいけれど、これはそういうわけにいきませんですね、基地の問題だけじゃない。当然日本人との接点、なかんずく沖縄が大きな接点がありますので、今局長がくしくもAIDS問題で協議するという発言があったことについて、これは全幅の信頼を置かなきゃならないし、また置きたいと思うのですけれども、四月一日から任意、八月二十八日からは強制、二百十万のうちの六万のサンプルで〇・〇七%、四十四例、しかも百九十二はまだダウトフルなんです。その中の事実がわかったのは四十四例です。  フィリピンだったら一万五千ですか、米軍が。台湾は顧問団しかおりません。タイ国は全然おりません。多いのは韓国と日本、なかんずく日本です。そういう多くの米軍を抱えた日本がこの問題に早く手を打ちませんと、日本人の一昨昨日は六人目の患者が亡くなったという記事が出ておりました。これは四万五千の米軍の中でもう既に三十二のAIDS患者がいるという、掛け算した中での国防総省の発表の具体的数字が出ておりますと、早く今局長がおっしゃった米軍との打ち合わせ、対策、当然厚生省がこれは絡まなきゃならないかとは思うのですけれども、これは一応安保・外交委員会なものですから、ひとつ要望とともに、いろいろなこれは調べたデータがあります。当然こんなものはもうお持ちだと思いますけれども、そこのところちょっとそういう面においては関心程度が私は、私たちと、一般の人と同じような関心しかないのかなという、失礼ですけれども感じを持つんです。これはそういう問題ではない。  防衛庁長官、これは防衛庁長官だって、米軍の問題ですけれども、直接には関係ないのですけれども、こういうことなんです。今、米軍の中で、国防総省の発表。こういう資料をお持ちでお気づきになったですか。知っていましたですか、この資料。長官、ひとつ——いや、まず長官に聞いて、局長は真剣ですから局長は大丈夫なんです、もう真剣にやっていますから。長官どうですか、必ずしも五次防衛計画だけじゃないです、ほかの問題にもあるんですよ。長官、こういうデータを御存じですか、十月二十八日国防総省発表。黒柳がつくったんじゃない。御存じだったかどうか。
  54. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) アメリカ軍で調査したという話は聞いていますけれども、そのデータが発表になったというのは私個人は存じませんです。
  55. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうでございますね。御苦労さまです。そういうことなんです。  ですから、非常に一%問題も重要ですけれども、このAIDSの問題なんというのはもう最重要問題。先ほどから言うように、時間がないものでできませんもので、この問題だけに絞るわけにいきませんですが、防衛庁長官、非常に精力的ですし行動的ですよ。ひとつ沖縄基地に行って病院視察でもやられたらどうでしょうか。それで、おかしなのがいたら一つ一つ尋問でもするぐらいの、そうしたら長官防衛庁長官として非常にプレステージは上がりますよ。ひとつそのぐらい真剣になって取り組んでいただきたい。  局長、どうですか、この問題は。
  56. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) ただいま委員御指摘のようにいろいろな新聞報道等が行われておることは承知しておりまして、アメリカ側と非公式に話しましたところでは、在日米軍及び第七艦隊等で日本に寄港します兵士の中に現在までのところ症状が発見されたことはないというふうに承知しております。
  57. 黒柳明

    ○黒柳明君 そういうのは厚生省も言っていました。ですけれども、逆にいきますと、今言ったように国防総省、大もとがこういう数字を発表していますから。これは単純に掛けるわけにいかない、私そんなこと知っております。ですから私は、うわさとか新聞情報のうちは今ぐらいなボルテージでやっているわけでありますが、この次はやっぱり、事実関係がわかるとこういうおとなしくいきませんよ。もうちょっとボルテージが上がりますので、ひとつ真剣に取り組んでいただきたい。要望です。時間がありません。  防衛庁長官、衆議院、参議院の予算委員会では盛んにOTHの問題をあれしましたが、どうなんでしょうか。長官の頭の中、胸の中には、五年の防衛計画の間にはOTHレーダーを導入したい、設置したいとほとんど決めているんでしょうか。
  58. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) まだ決定はいたしておりません。
  59. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうしますと技術的にいろいろこれから調査をする、資料を集めるというような国会での発言もありましたですけれども、先ほども三年でこれはローリングする、見直すと。そうすると時期的にはどうでしょうか、余り時間をかけるわけにいきませんね。ある程度、もう予算も三百 五十億ですか、ついておりますんですが、この三年ぐらいの間、見直す前ぐらいまでには何とか決定したい、こういうことでしょうか。
  60. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) ただいまのところまだ技術的にわからない点も大変多うございまして、正直申し上げていつまでにできるというふうに申し上げられないのですが、先生おっしゃるとおり、三年後の見直しをやるかやらないかもこれも決まっておりませんけれども、その段階までにある程度の考えがまとまればそれにこしたことはないというように考えております。
  61. 黒柳明

    ○黒柳明君 技術的、技術的とおっしゃいますけれども、もう相当洋上防空に対しての構想は固まっているみたいですし、あるいは米軍でもこれは既に既設のものが米国内にあるわけですね。それもまた試験段階ということも含めてだと思うのですけれども、このOTHレーダーの性能、例えば爆撃機、巡航ミサイルについてどういう性能があるか、これはどうでしょうか。あるいは移動型OTHレーダー、固定型OTHレーダー、これについてのプラス、マイナスはどこにあるか。あるいは、これはアメリカの問題ですけれども、オーロラについて、電波が電離層を通りますからそれについての妨害がある。それについて今度は日本、まあ日本とアメリカは言っていませんよ、そういう妨害の問題をどう処理するか。あるいはこれから、日本でも二年前に問題になりました見えない飛行機、ATBと言われていますけれども、そういう電波をはねつけるような塗料、こういう飛行機ができた場合にこのOTHレーダーはどういう性能か、こういうことについては御存じですか。当然知っているんでしょうね、局長
  62. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 今申されたようなことも含めてこれから勉強したいと思っておりますが、基本的にはドップラー効果を利用したものであるということでございますので、レーダーの設置場所から向かってその前後に近い形で、要するにレーダーの発射地点からまさに平行の等距離の中で動いているものはわからない、遠ざかりつつあるあるいは近づきつつある、そういったものであればドップラー効果でありますからわかるであろうという程度の話であります。それからそれぞれのレーダーの有効範囲といいますか、見えない範囲、見える範囲とか、そういった点についてはわかっておりますけれども、細部について、それがどの程度の鮮明度でわかるとか、そういった点についてもまだわかっておりません。
  63. 黒柳明

    ○黒柳明君 わかっていないというので、私これだけ資料がありますけれども、わかる部分はいっぱいあるでしょう。こういう既成のものを皆さん方が目を通していないということはないと思います。  それじゃ、今冒頭に言った、ひとつ長官、これだけもう国会論議されたんですから、技術的にわからないもの、それはあります、私も認めます。アメリカだってまだ完璧なものじゃないみたいですから。今言った大きいもの、爆撃機、巡航ミサイル、これについてアメリカではOTHに対してどういう論議がされておりますか、局長でもいいです。これはもう七一年から論議されているんです。どういうふうになっていますか。OTHはどういうふうなとらえ方をするか。
  64. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) OTHレーダーは基本的に今回のいわゆる後方散乱方式といいますか、その方式のOTHレーダーについては爆撃機とか巡航ミサイルといったものに対して有効である。したがって、ICBMのようなものには有効でないというふうに理解をいたしております。
  65. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうじゃなくて、七一年の研究段階から初めは大きい爆撃機に対して開発してきた。ですけれども、今現在高度の巡航ミサイルについては疑問が多いと盛んに言われています。これから開発される見えない飛行機については全くこれからの問題である、こう言われています。これは公聴会、秘密会のいろいろなところの議事録を見ただけだって、そんなに早急にわからない、何でもわからないということはないはずですよ。細かいものについては非常にとらえにくいと書いてあります。ましてこれから巡航ミサイルが高度に発展した場合には、標準型と高度、こう書いてありまして、標準型の巡航ミサイルはいいけれども、高度の巡航ミサイルについては疑問点がいっぱいあると。これは、例えば上院議員、いろいろな人が言っています。空軍長官あるいはラス空軍副参謀長、いろいろな答弁の中、秘密会の公表できる点、もう削除がいっぱいありますね。ディリートというところがいっぱいあります。何を言っているのかわかりません。だけれども、わかる部分だけでも技術的にまだまだ問題点はいっぱいですよ、長官。だから検討するんだ、ここはいいです。だけれども、だから資料を集めるんだということは私はおかしいと思います。  もう一つ聞きましょう。移動型OTHレーダーと固定型OTHレーダーがあるということを知っていますか。その違いはどこにありますか。
  66. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 私は担当でございませんので詳しいことは承知をしておりませんが、移動型と申しますのは現在海軍の方で開発しているものでございまして、固定型に比べますと私どもが……
  67. 黒柳明

    ○黒柳明君 プラス、マイナス、プラスはどこにあって、マイナスはどこにあるのか、移動と固定。
  68. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) まず、固定型の方が移動型に比べましていわゆる覆域が広いという点が一つございます。それ以外については私も余り詳しいことはわかりません。
  69. 黒柳明

    ○黒柳明君 だから長官、私は一野党の議員、それが一生懸命どういうものかと言って意欲的に集めちゃって、いろいろな問題がある。まだありますよ、電磁波の障害がどうだとかこうだとか。こんな簡単なものをなぜ調べないのですか、論議しないのですか。それでOTHレーダーの予算をつける、導入するんですなんて、だからうまくない、おかしい。AIDSの方は藤井さんの方は頑張っています、一生懸命ですよ。外務省の方、結構です。  防衛庁の方はどうですか。長官、もっと真剣に、私たちが知らないところもある、ああいいですよ、あったって、公表できないところが幾らあったって構いませんよ。もっともっとこれについて皆さん方が知る分野を知っていただいて教えていただく、これについて私たちが調べたものも含めてディスカッションする。それを私ごとき野党の一議員に天下の防衛局長が、いや移動型、固定型知らないです、何にも。知らないですよ、今言ったのは。これは答弁をしないとうまくないから、まあちょこちょこっと言っておこうと、こんなことですよ。そんなものは何も知らないのです。それをしかも秘密会で論議されている、向こうで。向こうっだってOTHの技術問題についてはこれからです。角度、六十度の角度がある。もう向こうで言っているのは、一つ二つ置いたってだめだと言うのです。散開して、これはアメリカは必要度が多いですからね、広いですから、日本と違います。だけれども一つを硫黄島に置いて、それで四千キロ届くからいいなんて、そんなものじゃないですよ、OTHレーダーというのは。それは局長は知っているかと思いますけれども。それでOTHレーダーは三年ローリングのときにやります。三年あるんだからいいですよ。  今現在それに予算をつけたのか、それについて導入の意思がある、だから六月に長官が行ったときにOTHが日米貿易摩擦のあれで交わされたんじゃないかと、こういう疑惑が出てしまうのです。何もわかっていやしないじゃないですか。何も技術的なものがわかる範囲だったって知ろうとしないのか、わかっていないのか、どうですか、長官
  70. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 大分御研究いただいたのに答弁が……。
  71. 黒柳明

    ○黒柳明君 大分じゃなくて、ちょっと研究しただけ。
  72. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) ちょっとじゃなくて大分御研究いただいたのに、こちらの答弁が十分でないかもしれませんが、本日装備局長を連れてまいっておりませんので、その点は御了承いただき たいし、各幕でもそれなりの研究を今いたしております。  ただ、先ほど委員がおっしゃいました予算をつけたということではなくて、十八兆四千億の中に一応入れておかないと、仮に将来つける場合にいろいろもちょっと手続上問題になるんでということでございます。いずれにいたしましても、大した金額といいますか、三百五十億程度、まず一・五億米ドルぐらいのものでございますけれども、これが貿易摩擦という観点ではなくて、やはり情報収集のためいいか悪いかということでございます。  それで、今御指示いただきました資料等も私たち精いっぱい調べておりますけれども、その点も含めましてこの次また御質疑いただきましたら、そのプロとコンというところにつきまして十分御議論できるようにしてまいりたいと思っております。
  73. 黒柳明

    ○黒柳明君 済みません、時間がオーバーしちゃって。  それじゃこの次に。装備局長はきょう来なくてよかった。来たら大変なことになった。何も知りゃしません。もっけの幸い、これだけが不幸中の幸い、それだけ長官覚えておきなさいよ、不幸中の幸い。装備局長が、わざと来ないのじゃないのですから、偶然来なかった。来たって何もわかっていませんから。  済みません、延長して申しわけありません。
  74. 橋本敦

    橋本敦君 中期防衛力整備計画に関連をして私も伺いたいのでありますが、この問題でやっぱり一番大きな問題は一千海里洋上防空問題だと思うのです。この一千海里洋上防空問題の構想は、今も議論になりましたOTHレーダーの導入、それからF15戦闘機、それから早期警戒機あるいは空中警戒管制機、空中給油機、さらにはエイジス艦ということで非常に奥行きの深い立体的な大きな防衛構想であるわけです。  そこで、今後どうやっていくかということに関連をしてまず伺いたいのは、この中期計画では、当面E2Cを五機購入をして哨戒ポイントを二から三にふやすということになっているようでありますが、果たして今言ったような広大な洋上防空構想をやっていく上でこの五機購入で間に合うのかどうか。それともやっぱり将来別途早期警戒機あるいは空中警戒管制機なりの導入を検討する必要があるということにはっきりなっているのではないか。この点は端的に言ってどうなんですか。
  75. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 御承知のように、最近航空機の航続距離が増してきた、あるいは高速化してきたということで低空侵入等のおそれが非常に増大をしてきておる。そういうことに対して早期警戒機というものが非常に有効であるということで、かねがね自衛隊でもE2Cの整備を進めているわけでございますが、現在二ポイントまで整備が終わりまして、さらに本土防空上そのような低空侵入を受けやすい地域としてもう一ポイントというものが残っておるというように我々は考えております。したがいまして、この五カ年計画でその一ポイントの警戒をするための四機及び予備機としての一機、計五機のE2Cを購入するという計画を計上いたしております。  そこで、お尋ねのAWACS等でございますが、これらにつきましては今後の問題として、あるいは将来今のような傾向が増してくるかもしれませんし、一方、洋上防空みたいなものでそういったハイスピードの警戒機というものの必要性もあるいは出てくるかもしれませんが、いずれにいたしましても、これらは現在のところこの中期整備計画の具体的な整備対象にはしておらない、したがってまだ検討もいたしておらないということでございます。
  76. 橋本敦

    橋本敦君 現在は検討対象にしていないということですが、今言った三年後の見直しも含めて将来ということになるんですか、将来ともこれは全く対象になり得ないという判断ですか、そうは言えないということですか。
  77. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) ただいまのところお答えできるだけの十分な検討もいたしておりませんし、私どもとして責任を持ってお答えする状況にないということでございます。
  78. 橋本敦

    橋本敦君 逆に、はっきり言えば、責任を持って導入は検討しないとははっきり言えないということだと思うのですね。  端的に伺いますが、新聞報道に出ておりますけれども、在日米軍はこの八月にAWACSのデモフライトを日本国内で行った、これは日本側の要請によるものであるという報道もあるわけですが、この事実はあるのですか。
  79. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 本年の八月二十七日に、在日米軍からの招待によりまして内局及び航空幕僚監部の希望者十数名がAWACSに体験搭乗いたしております。
  80. 橋本敦

    橋本敦君 そのデモフライトで体験搭乗したということは、将来これも検討対象になり得ることがあり得るということは当然含んでの話ではないかと思うのですが、重ねて聞きますが、どうですか、何もないのに体験搭乗というのはおかしいでしょう。
  81. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 御承知のように、自衛隊と米軍とはいろいろな機会に相互理解を深めるために相互訪問し、あるいは招待をするわけでございますが、今回の場合もその種の招待として伺ったわけであります。その際米軍が珍しい施設なりあるいは装備品を見せるということは相互に往々にあることでございまして、例えば航空母艦に乗ってみないかとか、そういうことがございますけれども、我々航空母艦が持ちたいから見にくいくというようなことではございませんで、相手方の招待の目玉として見せていただくものについてありがたく見せていただいておる、こういうことでございます。
  82. 橋本敦

    橋本敦君 このデモフライトは日本側の要請で行われたという事実はどうですか。
  83. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 米側から招待状が来ておりますので米側の招待で行ったということでございます。
  84. 橋本敦

    橋本敦君 ところで、E2Cの機能は今ちょっと触れられましたけれども、超低空で侵入してくるということに対する警戒が主でありますけれども、洋上防空を奥深くOTHレーダー等も含めてやっていくということになりますと、E2Cでは当然警戒管制機能には限界がある。アメリカはそのことをはっきり言い、かつ八四年の国防報告を見ましても、この洋上防空構想ではAWACSの使用はまさに不可欠だ、E2Cでは作戦能力そのものに限界がある、こういう立場で日米政府間協議でもアメリカはこのことをはっきり日本に伝え、日本側もこれには異論を唱えないという状況であったということも米高官の報道として言われておるのですが、アメリカははっきりと将来の洋上防空についてAWACSというのは機能的に不可欠の要素である、E2Cでは機能に限界がある、こう言っているんではありませんか。
  85. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 少なくとも防衛庁といたしましては国防総省からAWACSについて話を聞いたことは一度もございません。
  86. 橋本敦

    橋本敦君 そうすると、長官にも関連して伺いますが、OTHについては調査費検討ということも明らかになったんですが、このAWACSの将来の検討について、五カ年計画あるいは十八兆四千億ということの中には全く含まれていないのですか。それからさらに将来の見直しについても、これの導入については全く検討することは一切やらないということは言明できるんですか、その点はどうですか。
  87. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 今度の中期計画の中でAWACSは想定いたしておりません。それから、将来この後どうするか、三年後、五年後また十年後のことにつきまして、私たちはそれを検討いたしておりませんので現在お答えできるような立場ではありません。
  88. 橋本敦

    橋本敦君 私が指摘しておるのは、アメリカの国防報告に基づいて洋上防空構想も具体的にわかってきておる、アメリカ側からの今お話ししたようなE2Cの作戦能力限界という指摘もある、さらには貿易摩擦解消ということで新たな日米間 の解消策の一つとしてもこういった問題が検討課題になってきておる、いろいろ報道されておるわけですね。そういうことで、将来洋上防空一千海里をやっていくとすれば当然E2Cの問題だけではなくてこれは出てくるのではないか、それにあわせて空中給油機の問題も検討されていく広がりがあるのではないかという意味で聞いておるのですが、空中給油機についてはどういう飛行機に給油するということをこの五カ年計画では考えておりますか。
  89. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 今回の中期防衛力整備計画におきましては、空中給油機については引き続き研究をするということでございまして、したがって空中給油機を取得する計画もございませんし、空中給油機が何に給油するかということを、この五カ年計画ということであれば何も決めていないということであります。したがって今後とも研究を続けていくわけでありますが、一般論として空中給油機が何に給油するかということになれは、先ほど申し上げたように、例えば地上から飛び立ったのでは間に合わないような低空侵入を受けたような場合、そういったことを想定いたして、例えば空中待機をするということになれば、当然のことながら要撃戦闘機に給油するといったようなことが考えられるわけであります。
  90. 橋本敦

    橋本敦君 それは具体的にはF15ということになるのだろうと思います。  E2Cは空中給油は可能ですか、可能でありませんか。
  91. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 後ほど調べてまたお答え申し上げますが、違う場合もあるかもしれませんが、可能であるというふうに私は考えております。
  92. 橋本敦

    橋本敦君 調べていただきたいのですが、私が調べた限りは可能でないというように私は理解しております。  ということで、これもアメリカの具体的な報道ですが、空中給油機の日本への装備の問題についてもアメリカ側は、AWACS用の空中給油機を十二機、それからさらにはF15に関連をして、これのための給油機も十二ないし十五機程度、こういうことが本当に日米共同作戦、洋上防空を一千海里やっていく上では必要だというようにアメリカ側は言っておるように報道でははっきり言っております。したがってこういう洋上防空ということでは、今五カ年計画では具体的な検討対象にないというお話ですが、見直しを重ねて果てしないそういった軍拡計画になっていくのではないかということを私は心配しておるわけであります。  そういうことで、将来の問題であるということでありますけれども、今私が言ったようなAWACSの導入による全体構想、それから空中給油機も含めて研究をする、AWACS用も研究をするということは一切やらないと断言できるのか、そういったことは将来の研究対象としてやっぱりフォローしていくということになるのか、重ねて長官の考えを聞きたいのです。
  93. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 洋上防空に関連した問題だと思いますが、洋上防空につきましては従来と違って新しい問題点として浮かび上がったものとして、従来余りそのような脅威がないと考えられておった洋上遠く離れておる地域における艦艇等の防空をどうするかという問題が最近の長距離航続機の出現によって出てきたということが一つございます。もう一つは、航空機からの長射程の対艦ミサイル、あるいは艦艇、潜水艦等からの対艦ミサイル、そういった長射程のミサイルがかなり進歩し、かつ数がふえてきた、そういったものにどう対応するかという二つの問題を抱えておるわけでございます。  今御指摘のOTHなり空中給油機あるいはAWACS、そういったものはどちらかといえば洋上遠く離れた海域の防空をどうするかということであろうかと思いますが、御案内のように、一つは海洋というのは非常に広うございます。それと、そこに出現する航空機というものはそれなりの航続距離の長い爆撃機というようなことになりますから相手方の数もそう多くはない。したがって個々の艦艇を個々の防空能力で守るということはある意味では非常にむだも出てくるということになろうかと思います。したがって、そういった広い海域において相手方の動静というものをできるだけ早く察知をして、そういったものからの攻撃を回避するというのが一番望ましい姿である。  さらに言えば、それで十分でないとすれば、相手方が出てくる、そういったものに対してそれが自由気ままに行動しないような、ある程度の抑止効果のある態勢をとれば、相手もそれほど数の多いものでもないしあるいは護衛戦闘機等がついているものでもございませんので、それなりに行動そのものが抑制をされて、比較的船舶が安全に航行できるというようなことであろうかと思いますので、そういった何らかのシステムが採用可能であれば、それほどの資源配分をしなくても、そういった洋上防空というものは可能ではなかろうかなというのが我々の、希望的観測かもしれませんが、思いつきといいますか、着眼点であるわけです。その中に、先ほど来申し上げているOTHなり、あるいはそれと組み合わせる要撃機、あるいはそのための管制機、場合によっては空中給油機といったようなものも含めて、全般的な兵器体系というもので何らかの有効な手段というものがあり得るかどうかということをこれから研究いたしたいというように考えておるわけでございます。
  94. 橋本敦

    橋本敦君 抽象的におっしゃいましたけれども、今のような研究をやっていく防衛構想のセットの問題として、奥の深いOTHレーダーの導入の検討ということが始まれば、当然E2Cでカバーできない作戦能力の向上ということも含めて、AWACSあるいはそれに見合う空中給油機の導入ということも当然セットとして研究対象になってこざるを得ないのではないかということを、アメリカの国防報告等からも当然演繹される関係でありますから私はお尋ねをしておるわけです。そして、依然としてこの問題では、将来こういうような検討がなされないという保証はないので、なされる可能性があるというふうに私は見ざるを得ないと思います。  時間がありませんので話題を変えますが、次の質問は、防衛庁は六十三年度から別表の潜水艦十六隻という部隊配備とは別に、特務潜水艦を新設されるという方針のように承知をしておるんですが、これは間違いありませんか。
  95. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) ただいまの御質問にお答えする前に一つお答えしておきたいのですが、先ほどのE2Cですが、今調べたところ空中給油できないということでございますので、訂正させていただきます。  それから、特務潜水艦の件でございますが、御案内のように、現在自衛隊で運航しております潜水艦は耐用命数が十六年ということで運航いたしております。しかしながら、逐次新しい潜水艦になるにつれて鋼材その他進んできておるということで、傷み方といいますか、潜航深度等もある程度のものであれば維持できる状況になりつつあります。そういうことで、耐用命数に達した後の潜水艦であっても数年間は、浅い海域で例えば初歩的な潜水訓練をするといったようなことには利用できるんではなかろうかということで、いわゆる戦闘艦としてではございませんが練習艦として利用する方法はなかろうかということで検討を進めております。
  96. 橋本敦

    橋本敦君 別表の潜水艦十六隻という数は、本来なら現役就航、訓練用も含めて十六隻という数だと当然理解をしなくちゃならぬはずですが、六十三年度以降、その十六隻とは別に、耐用年数が来た、本来ならば艦齢に達して廃艦になるべきものを、最近耐用年数が延びておるので訓練用に使うということになりますと、事実上これは別表が十六ではなくて十七にも十八にもなる。別表の事実上の枠の拡大だということにならざるを得ないと思うのですが、長官はどうお考えですか。
  97. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 別表は、御存じのように、例えば航空機であれば。「作戦航空機」と書いてございますし、艦艇等につきましても、細かく船舶とは書いてございませんが、護衛艦であれ ば作戦用の護衛艦の数が書いてあるということで、練習艦は含めておりません。と同様に潜水艦も、練習艦として使えるものであり作戦用に使えないものは別表の数の外であろうというように考えております。
  98. 橋本敦

    橋本敦君 そうおっしゃいますけれども、それは実際は憲法を解釈で改憲していくような話と同じようなことになるので、本来ならば十六隻というのは現に現役として就航している艦艇の数でなきゃ、別表の数というのは規制的意味を持たぬじゃないですか。  だから、教育訓練に回すんだと、こう言っても、教育訓練に特務潜水艦を回せるということになれば、十六隻は訓練用じゃなくて全く現役、実戦配備用ということで振り向けられるというわけですから、潜水艦が本来の任務に完全に十六隻がつけるということにだんだんなっていくので、それはやっぱり何といってもこの別表の枠のなし崩し拡大だと言われてもしようがないのじゃないかと私は思います。  だから、そういう意味では、別表を厳格に守るという立場を貫くならば、軽々に特務潜水艦をつくるというようなことはなすべきではない。私は、それは実際はシーレーン強化の一環として防衛庁が考えていること以外の何物でもないと思うのですが、この点は長官のお考えを聞きたい。
  99. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 本来ならば廃艦になるものをそういった、資材も非常に最近のものはいいですから、したがってある一定の深さしか潜らないような形の任務の中で訓練用に使ったりすることが別表の精神に反するものだとは私は思いません。
  100. 橋本敦

    橋本敦君 問題ですよ、そういう考え方は。幾らでもふえますよ。  では最後に、六十三年度からどのくらいの数を特務潜水艦として新設するつもりなのか。局長、いかがですか。
  101. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 先ほど申し上げましたように、潜水艦の耐用命数が来たものについて、どういう形で何隻、いつからやるかということについては、すべてこれから検討させていただくことでありまして、六十三年から始めるということも含めましてまだ何も決まっておりません。
  102. 橋本敦

    橋本敦君 それじゃ終わりますが、いずれにしても中期防衛計画は歯どめのない、なし崩し的な計画の軍事化への危険、あるいは国民生活に一層の防衛費増大をもたらさざるを得ない危険なものであるということで、私どもはこれの撤回を求めておりますので、その立場を明らかにして質問を終わります。ありがとうございました。
  103. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 最初に防衛庁長官にお聞きをしておくんですが、去る十月二十七日、朝霞で自衛隊の観閲式があったわけです。私も出席しましたけれど、歴代の防衛庁長官でおいでになっていたのはたった一人しかおらなかった。昨年はたしか二人おったと思うのですが、こういう事実を防衛庁長官としてどうお考えになっているか。
  104. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 歴代の長官を、当然のことながらお招きいたしておりますが、毎年、それぞれの長官の前歴のある方々、お忙しいこともありまして、あるときはお一人、あるときはお二人、あるときはゼロという状況でございます。私たちとしてはできるだけ歴代の長官に限らず閣僚の方、国会議員の方、幅広く御招待申し上げておりますが、それぞれ重要な職務におられる方でございますので、なかなか御招待に応じていただけない部分がありますが、今後ともできる限りのお招きを一生懸命やりたい、こう思っております。
  105. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 閣僚の方たちは確かになかなかお忙しいからそうだと思うのです。しかしながら、国の防衛がいかに重要かといって、防衛庁長官なり総理なり、折に触れて言っているわけなんです。過日の中曽根総理のあそこでの演説というものはなかなか立派な演説だと思うのです、私ども聞いておって。しかしながら、閣僚はさておいても政務次官ぐらい出席しても私はいいと思うのです。各省庁におられる政務次官が、それも一人も来ておらなかったんです。そういう状態でもって中曽根総理がどんなに立派な演説をしようと、あるいは防衛庁長官それなりのことを言おうと、自衛隊のあの人たちがどうやってお聞きになりましょうか。私はやっぱり内閣の自衛隊に対する一つの、軽視という言葉が適当かどうかはわからないけれども、内閣の姿勢だと思うのです。きょうはここに総理がおらぬから、なんですけれども、内閣がそういうふうな態度でもって自衛隊に対応しておって、それであの自衛隊の人たちが本気になって国の守りをやらにゃいかぬという気持ちになるかどうか、その点、本当に長官どうでしょうか。
  106. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 私たちは、確かにお招きしておりましてなかなか来ていただけない要職の方もありますが、来ていただかなくても防衛問題についての関心は皆さん非常に高くお持ちであろうと思います。また、前長官で、やはり自分が職を去った後、遠慮して来られないというケースもあろうかと思いますので、その辺は一概には言えないと思いますけれども、今後とも、例えば各省の大臣がだめならば政務次官の方々により強く御招待申し上げるとか、その辺は来年を目指してまた検討課題であろうと思っております。
  107. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 長官、これは来年のことを言えばまだ一年もあることだけれども、今長官おっしゃったように、少なくても閣議の場で、これだけの案内を出したんですから、それは閣僚の皆さん方はお忙しいだろうけれども、政務次官でもぜひ出席さしてくださいぐらい言われたらいいと思うのです。私は何で内閣の姿勢だと言うかということは、私のところへ、これは防大のある卒業生ですけれども、私は一面識もないし、どういう方かも知らぬけれども、よこした手紙の中で、私は防大の卒業生です、しかし、国のために命をささげるなんということはばかばかしくてできませんと。それでいろいろなことを書いてあるんです。私は、防大で勉強した人ですらもそういう考え方になってしまうというところに、現在のやっぱり政府の取り組む姿勢のあらわれがあると思うのです。  次にお聞きしたいのは、陸上自衛隊の定員の問題なんです。はるか昔に定員十八万名と決めているわけです。昭和五十二年で充足率が八六%、二万五千百九十五名の欠員、ことしの場合でも依然として充足率は八六・四%、二万四千五百二十名が欠員になっていますということです。私が言わなくてもこれは十分おわかりだと思うのです。そうすると、年間平均して八十四名ずつしかふえていかない。この調子でいけば定員までいくには二百九十年もかかるという計算になってしまうのです。いつも二万五千人前後の人間が欠員のまま十年も二十年もやってきているということは、それはそれだけもう要らないことじゃないでしょうか。だったら定員を削られたらいかがですか。もしも十八万の定員が必要なんだというならば、これだけの大量欠員のまま放置をしておくということは防衛庁長官の怠慢ということにならないですか、どちらでしょうか。
  108. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 御指摘のように陸上自衛隊についてはかなりの欠員と申しますか、私はこれは計画欠員だというふうに考えております。それは埋まらないというよりも埋めていないというようにお考えいただきたいと思います。  この点につきましては、我が方、自衛隊の立場から言いますれば、常に一〇〇%の充足であるということが望ましいことは間違いないわけでありますが、と同時に平時陸上部隊、陸軍部隊を維持するについてかなりの部分について有事緊急に補充できる職域等についてはある程度のあきをつくっておくということは、これは各国に見られることでございまして、その点は御理解をいただきたいと思います。ただ、それぞれの国のお国柄がございまして、徴兵制のあるところ、あるいはないところ、自衛隊のように完全志願制であるというところでいろいろ違いはございますが、そういう意味では自衛隊の充足率というものは各国陸軍の中では極めて高い充足の方であることは間違いないと思います。  したがって、今後どの程度の充足にするかということは、これは財政的な問題との兼ね合いでございますが、私どもとしてはできるだけ高いことが望ましいことは確かでございますけれども、全般の財政事情その他等にらみ合わせて、あるいはまた防衛費の中の優先配分のねらい等を考え合わせて決めていきたいというように考えております。
  109. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 局長、ほかの省庁の場合の定員に対してどうなっているかとかということとは自衛隊の場合は私は違うと思うのです。一般の民間のそういうところが大変好景気でそちらへみんな行ってしまって、募集してもなかなか志願してくれる人がいないからというときはあると思うのです。しかし、この長い間ずっと不況でもって失業している人もたくさんおる。それでも応募してくれないのだというならば、二年や三年なら話は別だけれども、これだけの十年、二十年という長い期間、それほどの大量欠員のままで置いておけるということがおかしなことなんだ。必ず自衛隊としてどこかに欠陥があるわけなんだ。それぞれの部隊が配置をされているのがみんな機能されない状態であるわけでしょう。そのことを細かくここでは言いませんけれども、今のような御答弁なんかなさらないで、それでなぜこういう状態がといったって、そんなことは私だってわかることなんですけれども、しかしそこは真剣にお考えになって、定員を埋めるなら埋める、それから、それだけのものは必要ないから定員を減らすなら減らすということはきちんとしていただきたいと思います。  それから次には、八月十二日、あの日航機のジャンボ事故、大変自衛隊の皆さん方が御活躍したということは、私は本当に敬意を表しますし、心から感謝を申し上げたいと思うのです。大変な御苦労をなさっていただいたんですが、私は後で聞いてびっくりしたんですが、あれだけのことをやった自衛隊の人たちの手当が一日七百円しか出ないのだということです。それは長官、本当なんですか。民間の、民間のといってもこれはお役所でも同じだけれども、普通のサラリーマンが一時間残業したって今千四、五百円になるんです。それを自衛隊のあの人たちが、あれだけの激しい、普通の人たちにやれと言ったってやりはせぬです、あんなことは。自衛隊でもって、言うならばそうやって命令でもっていくからやるはずだと思うのですけれども、あれだけ黙々と一生懸命になってあの山のあそこへ行ってやっていただいた。そして救援活動をしていただいた。その人たちに、あなたたち一日七百円だよと言って、それで済ましていいのですか。七百円という根拠はどこから出てきたんですか。
  110. 友藤一隆

    政府委員友藤一隆君) お答えいたします。  先般の日航機墜落事故の救難捜索に当たりました隊員の手当でございますが、これは災害派遣手当と申しまして、防衛庁職員給与法でもって特殊勤務手当として支給をいたしているわけでございますが、実はこれは昭和五十九年度に新設をいたしました。その趣旨といたしましては、一般職の公共土木施設災害応急作業手当というものが一般職の方にございまして、これが自衛隊の災害派遣と同じように地方建設局の職員等が国の管理をいたします河川の堤防でございますとか、そういった防災施設が豪雨等で異常な自然現象により重大な災害が発生し、あるいは発生するおそれがある、こういった場合の応急作業等に従事をいたしましたときに支給をされるというような作業手当がございまして、これが日額五百三十円から七百九十五円というような形になっておりまして、これを参考といたしまして私どもとしましては手当の額を決めておるわけでございます。  今回それではなぜこんなに低いのかという御疑問の点でございますが、こういった作業手当といたしましては私どもとしては一般職の職員と均衡がとれているということでございますけれども、先ほどお話がございましたように、超過勤務手当というものに対する制度上の差が実は公安職の方とはございます。相当格差が出ておるではないかということでございますが、先般、警察の方でお出になりました救難捜索活動に当たりました方々は地方公務員というような方がほとんどでございまして、地方公務員と国家公務員との間の制度上の差というものもございますが、基本的には超過勤務手当に対する形が私どもと違っておる。私どもとしましては常時勤務体制というものをとっております関係上、いわゆる超過勤務命令が出なければどこにも行かないというようなことにならないように、これを本俸の中で調整をいたしまして、一々超勤の命令を出さなくても常に常時勤務体制に置けるという形をとっておりまして、平均的な形で実は本俸の中へこういった超過勤務分を含めておるわけでございます。したがいまして、現在の額でございますが、水準といたしましては大体二十一・五時間分本俸の中に含まれておるということでございます。  ただ、個々の事例では、先ほど御指摘ございましたように、いろいろでこぼこが月によってあるわけでございますし、相当過重な事例も一般職の方では出て、そのときはたくさん超勤をいただくというような事例もあるわけでございますけれども、私どもとしましてはこれらを平均化して俸給の中で処理をいたしておる。そのほかに、先ほど申し上げました災害派遣手当というものも新設をしていただきまして、今回支給しておるという現状でございますので、御理解を賜りたいと思います。
  111. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 そんな答弁をしていて御理解を賜りたいと言ったって御理解できるわけはないのであって、それでこの間やった人たちに、それは局長が行って聞くというわけにいかぬだろうけれども、あるいは無記名でアンケートをとるとかなんとかもうちょっとしてみなさいよ。そんなことをやっておったら、そのうちにもう行けと言ったって、今度は災害、事故が起きてもわしら行かぬと言って、一人、二人ではやらぬけれども、集団でもってそういう行動を起こしたときどうしますか。あなた方自身が自分の良心になにして、あれだけの仕事をやらして、一日おまえら七百円ずつだぞというそんなことで済むと思っているのかどうか。そういう人間の扱い方がありますか。今さら法律では自衛隊の人たちは労働組合をつくれないからあれだけれども、しかし、労働組合という名前でつくらなくたって、そんなことをやっておったらそういうことをやりますよ。そのときに慌てふためいて何だということになったって手おくれなことなんだ。ああいうときにはいろいろ御苦労していただかなきゃいかぬわけでしょう。それだったらそれに報いるだけのことはやっぱり考えることをしてやってください。  それから、外務大臣にお聞きしたいのは、あの北方領土日本の固有の領土だということは、これはもう政府もしょっちゅう言っていることなんですから、あえて言うわけはないのですが、世界の各国のそれぞれの国の世界地図があるわけです。あの世界の国々の世界地図の中であの北方領土日本と同じ色分けでもって、日本の領土としてのそういう色分けをしている国というのが幾つぐらいありますんですか。それでそれはどことどこの国ですか。
  112. 西山健彦

    政府委員(西山健彦君) ただいまの御質問でございますが、外務省といたしましては、従来から世界各国の地図において北方領土に関する記載ぶりが正確なものになるように、随時各国の地図出版社に対して訂正申し入れを行うなど努力をしてきたわけでございますが、昭和五十四年の暮れに約八十カ国に及ぶ国につきまして総点検を行ってみたわけでございます。その結果、はっきりとこれを日本領土と書いておりますのは、韓国、中国、西独の地図でございました。しかし、現実に北方領土を支配しているのがソ連であるということがありまして、他の大半の国の地図では北方領土ソ連領としていたというのがその結果でございます。  そこで、外務省は昭和五十五年の七月に、この総点検の結果も踏まえまして、誤った地図を刊行しております各国の出版社に対し訂正申し入れを 行うように指示いたしまして、その後も随時在外公館を通じて点検している次第でございます。ただ、現実の問題といたしまして、この地図の改訂といいますのは数年間に一度という頻度で行われること、それから出版社の中には、地図というものはその現実の支配状況を反映すべきであるという考え方を持っているところもございまして、我が方から申し入れて直ちにこれを訂正するというわけにはなかなかいかないのでございますけれども、少なくともその後トルコが我が方の訂正要請に応じてソ連領から日本領に訂正したということを確認済みでございます。  さらに付言いたしますと、昨年になりましてアメリカ国務省の地理部が、アメリカの政府機関の作製する地図につきまして、ガイドラインというのをつくることにいたしました。この中で、千島列島を表示するときは、これはソ連の管轄下にある、しかしながら北方領土については一九四五年以来ソ連が占領して日本が領有権を主張している、北方領土の色もソ連の色と日本の色が帯になって交互に交わるという塗り方をするという方針を採択いたしました。その後、連邦政府の作製いたします地図辞典というのもそのラインに従って行われるということになりましたので、アメリカそれからやがてそれを参照にする各国の出版社に影響が及んでいくのではないかと期待している次第でございます。
  113. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 時間がございません。外務大臣、今お話しのことも、これは外務省がみずからおやりになったことではないわけなんです。昭和五十四年といったって、もう戦後三十何年もたっているわけです。ですから、そういう点でもって問題になって初めて外務省が気がついて、調べてみたらわずかにたった三つしかなかった。それで、その後一、二の国がこうやって訂正されたというふうなことになっているんです。  それで、外務大臣、お願いしたいことは、やっぱり北方領土日本の固有の領土なんだと言って、それでそのために二月七日のああいう祝祭日の指定もしているんですから、地図の出版社がどうだこうではなくて、外交ルートを通じてそれぞれの国に対して、おまえさんの国で発行している地図というものは日本の固有の領土をこういうぐあいでそうでないような地図にしていることは大変な間違いじゃないか、それはやっぱり政府がきちんとそういうことをしてくれということを外務省としておやりをいただきたいと思うのです。そうでないと、日本の国内だけでもってこれは固有の領土だ、固有の領土だと言ったって、世界のどこへ行ったってほとんどの国が日本の固有の領土として認めた地図をつくっておらないのですから、その点をぜひおやりをいただきたいし、そのおやりいただけるかどうかの御返事だけ聞きたいのです。
  114. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私も、実はこの地図の問題につきましては間違っておれば是正を求めたいということで、各国の外相との会談の際にはできるだけ北方領土の問題も話をしておるわけでございます。なかなか、今局長が述べるように、アメリカとか中国とか韓国とか、はっきりこれを切りかえてくれているところももちろんあるわけですが、全体的にはまだまだ十分でないと私も思います。したがって、これはやはり日本にとって極めて重大な問題ですから、これからも外交ルートを通じまして積極的に諸外国に対しまして地図の点で北方領土の点を明らかにするように求めてまいりたい、こういうふうに思います。
  115. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 終わります。
  116. 田英夫

    ○田英夫君 わずか十分という時間でありますから簡潔にお答えをいただきたいと思います。  まず、言うまでもなく今ジュネーブで行われている米ソ首脳会談世界じゅうがいわば息をのんで見詰めているという感じであります。したがって、鈴木前総理、三木元総理もメンバーである二十二人委員会と言っておりますが、正確には核軍縮を求める二十二人委員会、私もメンバーですが、レーガン、ゴルバチョフ両首脳に対して電報を打ちまして、成功を求めたわけであります。日本自身にとってもそうですが、最大の焦点は核軍縮がどうなるかということだと思います。そして直接的に日本関係のある問題としては、極東に配備されたソ連のSS20が果たして削減の対象になるのかどうかというあたりが一つの焦点だろうと思います。ちょうど一年ほど前に安倍外務大臣は、極東配備のSS20は百三十五基という答弁をされたように記憶しておりますが、現時点でどの程度の数になっているというふうに政府はつかんでおられますか。
  117. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) その後、ソ連としてはSS20については増強して、現在のところでは大体百七十前後というふうに聞いております。
  118. 田英夫

    ○田英夫君 これがどうなるか、両国ともに核軍縮について具体的提案を事前にしているわけですけれどもソ連もまた新しい提案をするということも言われておりまして、これは内容がわかりませんと質問できませんので、きょうは残念ながら保留をいたします。  次に、いわゆるシーレーン防衛という問題なんですが、この言葉が出てきて久しいのですが、実は国民一般の皆さんの間では、一体どういうことなのかというのが、さっぱりわからないという声があります。範囲自体についても事前に地図で示してくださいということをお願いいたしましたら、きょうそれをちょうだいしましたが、相手の出方次第でそれは変わるのだから地図の上に線を引くようなわけにいかないということで、せっかくいただきましたが、千海里という範囲だけが示してあるだけで、具体的な範囲がさっぱりわかりません。従来からよくグアム以西フィリピン以北というようなことが言われておりまして、何となく一般的に西太平洋ではないか、シーレーンというイメージは航海路を意味するように受け取っておりましたが、最近の政府の御答弁などではどうも海域という感じがあります。あるいは最近の政府のお答えではオホーツク海の方、北の方も入ってくることになってきているようでありますが、口頭でひとつ、地図では示せないということですから、どういう範囲が日本が守るべきシーレーンなのかということをお答えいただきたいと思います。
  119. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) シーレーン防衛の地理的な範囲ということでございますが、これはいろいろな定義の仕方がございまして、一つは自衛権行使をする場合の地理的範囲といったような考え方があろうかと思います。その場合に私どもが考えておりますのは、従来から申し上げておりますように、それは決して我が国の領海内にとどまるものではなくて、公海にも及び得るものである、しかしながら、それらはそのときの状況によって一概には言えませんというふうに申し上げておるわけであります。  一方、防衛力整備をする際にどういうものを一応念頭に置いてやるかということで、それが決まっておりませんと無制限になりますので、防衛力整備をする際の考え方としてどの範囲のものができるということを目標にして整備をしておるかということを申し上げますと、これも従来から申し上げておりますように、周辺海域数百海里で哨戒あるいは警戒監視ができるように、さらに航路帯等を設ける、あるいは防衛等をやる場合には千マイル程度のことができるということを目標にして防衛力整備をいたしておるということになります。  さらに、そういった防衛力が現にあるといたしまして、それで有事の際どういうシーレーン防衛のための行動をするかということになろうと思います。これも先ほどの憲法解釈と同じように、そのときそのときの事態様相に応じるわけでございますけれども防衛力整備の方が、例えば周辺数百海里の哨戒監視を行う、あるいは一千マイルの航路帯防衛なり、あるいは護衛を行うと書いてあるから常に一千マイルやるとか、あるいは常に数百海里までの海域について哨戒監視を行うということでもありませんし、一方、絶対一千マイルを超えてはいけないとか、数百海里を超えてはいけないというものではないというように考えており ます。  いずれにしましても、そのときの様相に応じて防衛のために必要最小限度の範囲内でとどめるということになろうということになります。
  120. 田英夫

    ○田英夫君 オホーツク海。
  121. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) オホーツク海につきましては、周辺数百海里という、いわゆる我が国が常々監視をし哨戒をする海域というときの場合に、例えば稚内から知床半島に至る地域はオホーツク海に面しておりますので、そこから数百海里につきましては、いわゆる監視なり警戒の対象海域に入っておるということでございます。
  122. 田英夫

    ○田英夫君 具体的には、いわゆるどういうやり方で防衛をやるのか、今度の新防衛計画で大増強をするP3Cは、その中でどういう役割を果たすのか。これはいかがですか。
  123. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) シーレーン防衛と申しますのは、海上交通保護のために行うもろもろの作戦、機能、全部ひっくるめての話でございますが、個々に申しますと、例えば重要な港湾なりあるいは海峡の防備ということから始まりまして、周辺海域を哨戒活動をしてそこで敵を撃滅する、あるいは船舶を護衛するといったような各種作戦の積み上げ、累積効果でもって船舶の安全を図ろうというものでございます。  そして、今御質問のP3Cでございますが、これは大きく分けると二つに分けて使われると思います。一つは、周辺海域という面としてこれを哨戒して、敵の潜水艦を発見してこれを撃沈するといったようなオペレーション、いわゆる自分が海面を広く哨戒をして積極的に見つけ出して相手方攻撃するという考え方と、もう一つは護衛、船舶、船団等が海洋に出てまいりますが、そのときの航路の先を哨戒しながらその船舶の護衛のために行動する場合という二つの態様がございます。したがい良して、大綱で決められております百機の陸上用の固定翼対潜機というものは、そのうち八十機が周辺海域、いわゆる面として哨戒をするためのものであり、二十機が護衛のためのP3Cというように仕分けをして計画されております。
  124. 田英夫

    ○田英夫君 もう早くも時間がなくなってきているわけで、私の方から一方的に疑問を呈して、最後にイエスかノーかだけをお答えいただくしかできないのですけれども、今おっしゃったことをずっと総合的に見てみますと、まず範囲からすると西太平洋、そして北はオホーツク海の方もあり得る。オホーツク海は余り日本に物資を持ち込んでくる海上輸送路とは思えませんので、海上輸送路を守るという従来の御答弁からするといささか奇異の感を持つわけです。  そういうことから考えを発展させますと、まさに西太平洋、フィリピン周辺海域ですね、グアムからフィリピン、この辺の海域というのはアメリカのトライデント型原子力潜水艦、SLBMを積んだ原子力潜水艦のまさに活動範囲であるというふうに言えるわけです。ポラリス時代は射程が四千六百キロというふうに言われておりましたから、地中海からせいぜいインド洋まで。そこからソ連本土を攻撃する。これがトライデントになりまして八千キロを超す射程距離になって西太平洋が海の深さなども含めて絶好の活動海域というふうに言われるようになってきている。そこがまさに従来からブアム以西フィリピン以北と言われているシーレーンの海域とオーバーラップをするわけであります。  最近明らかになりましたオホーツク海、これはソ連にとっていわゆるソ連原子力潜水艦のアメリカ本土に向けての絶好の海域というふうに言われていて、これがソ連原子力潜水艦の活動海域。たまたま米ソの原子力潜水艦の活動海域と今言われたシーレーン海域というものが完全にオーバーラップするというところに一つの疑問がいわゆる識者の間で起こっている。私も疑問を持っている一人でありますけれども、全く時間がありませんので疑問を呈してお答えをいただくしかできません。こういう疑問があることは事実でありますし、そこの海域を今言われた百機の中の八十機のP3Cで哨戒をして、アメリカの原潜を攻撃するためにあらわれるであろうソ連攻撃型原子力潜水崎を西太平洋では発見をする、オホーツク海ではアメリカを攻撃するために活動をしているソ連のSLBM原子力潜水艦を発見をし、これを攻撃する、日本自身が攻撃するかどうかは別にしてこれを発見する任務を大増強されるP3Cは持つのではないか。シーレーン防衛というのは防衛ではなくてそういう意味があるのではないかという疑問が今広がりつつあることは事実であります。お答えだけいただきます。
  125. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 哨戒監視海域につきましては平事と有事と違いがあろうと思いますが、いずれにしましても我が国周辺の数百海里、これは場所によって、日本海であれば百海里の場合もありますし太平洋側であれば三百海里の場合もございますが、これらはいわば我が国沿岸海域ともいうべきものでありまして、我々としては内航防衛その他を含めまして我が国船舶が常に航行しなくちゃならない地域、非常に沿岸海域というふうにとらえておりまして、先生の御指摘は必ずしも当たらないというふうに考えておりますので、またいずれゆっくり御説明をいたしたいと思っております。
  126. 田英夫

    ○田英夫君 終わります。
  127. 植木光教

    委員長植木光教君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、次に、先般当委員会が行いました外交総合安全保障に関する実情調査のための委員派遣につきまして、便宜私から御報告申し上げます。  去る十一月五日から七日までの三日間、私、佐藤理事、杉元理事、堀江理事、上田理事、関理事、久保田委員の七名は、北海道及び青森県において、外交総合安全保障に関する実情を調査してまいりました。  第一日の午前中は、北海道旭川市の陸上自衛隊第二師団を訪れました。  本師団は、北海道方面の防衛を担当する北部方面隊の隷下にあり、編成は師団司令部、四個の普通科連隊、一個の特科連隊のほか、戦車、施設、通信の各大隊などから成り、定員は約九千人であります。  日本の最北部の防衛上最重要地域を警備地区としているところから、定員充足率は約八五%と他師団よりは比較的高く、装備も七四式戦車、七五式自走百五十五ミリりゅう弾砲等逐次新式のものに更改が進んでおり、夏期に練度を最高度に保持すべく訓練に励んでいるとのことであります。しかし、宮内居住の環境は悪く依然として陸曹を含み二段ベッドでありました。なお、山林火災等への災害派遣、部外土木工事等の民生協力も実施しております。  午後は、北海道立上川農業試験場を訪れました。  本試験場は、北海道における稲作研究の中核的な存在として、冷害に強い、多収穫の水稲を追求して米づくりの北限に挑み、品種改良と栽培技術改善に努めてきた結果、面積当たりの収量は全国平均を上回るに至りました。また、北海道の稲作は、経営面積が大きいためコストは低いのですが、味がよくないということでありましたので、近年は菊栽培技術による食味向上に努力しております。  続いて、東神楽温室園芸組合を視察いたしました。  本組合は、パイロットファーム的な役割を担い、昭和四十九年に町当局、農協のバックアップのもとにスタートしたもので、温室を利用して野菜や花卉を年間を通じて栽培し、安定的に出荷することを目指しております。野菜のかなりの部分は水耕栽培であり、温室の天窓開閉、室温・水温調節、かん水寺は自動制御されております。  なお、施設建設に多額の資金を要するため、新規参入者が出現しにくいとのことであります。  第二日は、午前中、水産庁さけ・ますふ化場千歳支場を視察いたしました。  ふ化事業は、その中心を占めるサケの場合、九月から十二月にかけて産卵のため遡上する親サケを捕獲し、採卵、受精させて仔魚をふ化させ、これを体長四、五センチ、約一グラムの稚魚に育て、 三月から五月にかけて各地の河川に放流するものであります。これが三ないし五年後に約四キログラムに成長し、生まれた川に帰ってまいります。ふ化技術の向上により、回帰率は二、三%、場所によってはさらに高率となっており、全国で年間約三千万尾が回帰し、うち二千尾以上が北海道となっております。  次に青森県に飛び、日本鉄道建設公団竜飛鉄道建設所を訪れ、青函トンネルを視察いたしました。  本トンネルの地質調査が開始されたのは昭和二十一年でありますが、二十九年の洞爺丸事故により、天候に左右されない安全な鉄道輸送の必要性が痛感され、三十九年には斜坑掘削に、四十六年に本工事に着手しております。そして五十八年に先進導坑が、本年三月に本坑が貫通し、六十二年度に世紀の国家的プロジェクトが完成の予定となっております。  トンネルは、新幹線の運行もできるように設計されております。工事を成功させるために、水平ボーリング技術、地盤注入技術が開発されました。  総工費は約七千億円を要し、四十年償還の場合毎年約八百億円と言われる建設費償還問題が今後の大きな課題であります。また、利用方法につきましては、在来線のみの運行案やカートレーン運行案などが検討されておりますが、結論を得るに至っておりません。  第三日の午前中は、むつ小川原国家石油備蓄基地を視察いたしました。  石油備蓄法に基づく民間備蓄目標九十日分は既に達成されておりますが、国家備蓄は目標三千万キロリットルの六割程度しか達成しておりません。本備蓄基地はこうした国家備蓄を目的とする第三セクターであり、出資比率の七〇%を石油公団が占めております。  貯蔵施設は原油タンク五十一基から成り、建設に着手した国家備蓄七プロジェクト中、去る九月最初に完成いたしました。  次に、六ケ所村の原子燃料サイクル三施設用地及びPR館を視察いたしました。  三施設、つまり再処理施設、ウラン濃縮施設、低レベル放射性廃棄物貯蔵施設は、九電力会社と日本原子力発電を主要株主とする二つの会社が建設、運営に当たりますが、総建設費は約一兆円と言われ、六ないし十年後に操業開始の予定であります。なお、用地取得は近く完了する見込みでありますが、立地調査が遅滞しているため、施設本体の建設には着手しておらず、PR館のみがこの十月にオープンしております。  午後は、航空自衛隊三沢基地を訪れました。  本基地には、北部航空方面隊司令部、同方面隊隷下のF1支援戦闘機部隊である第三航空団、E2C早期警戒機部隊の臨時警戒航空隊のほか、北部航空警戒管制団、第六高射群など合わせて十一個部隊、約三千人が配置されております。  飛行場は三千五十メートルの滑走路を備え、米軍の管理下にあるものを自衛隊が共同使用しておりますが、管制業務は自衛隊が実施しております。  最後に、三沢基地の米軍を視察いたしました。  本基地の米空軍については、去る四月からF16戦闘機の配備が始まり、これに伴い七月に第四三二戦術戦闘航空団第一三戦術戦闘飛行隊が編成されております。現在はF16A型ないしB型が二十七機配備されており、昭和六十二年には改良型のC型ないしD型一個飛行隊二十七機が追加配備され、総数五十四機となります。また、F16配備により、軍人及びその家族三千人以上がふえるとのことであります。  海軍は、第七艦隊款下の第一哨戒航空団が、P3C対潜哨戒機部隊である日本航空哨戒群を置いております。  以上、先般の委員派遣における実情調査の概要につき簡単に御報告申し上げましたが、なお別途詳細な報告書を提出いたしておりますので、これを本日の会議録の末尾に掲載することといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十分散会      —————・—————