運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1985-10-31 第103回国会 衆議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年十月三十一日(木曜日)     午前九時一分開議 出席委員   委員長 天野 光晴君    理事 大西 正男君 理事 小泉純一郎君    理事 橋本龍太郎君 理事 原田昇左右君    理事 三原 朝雄君 理事 稲葉 誠一君    理事 岡田 利春君 理事 二見 伸明君    理事 吉田 之久君       相沢 英之君    伊藤宗一郎君       宇野 宗佑君    上村千一郎君      小此木彦三郎君    小渕 恵三君       奥野 誠亮君    海部 俊樹君       倉成  正君    小杉  隆君       鈴木 宗男君    砂田 重民君       住  栄作君    田中 龍夫君       原田  憲君    武藤 嘉文君       山下 元利君    井上 一成君       井上 普方君    上田  哲君       大出  俊君    川俣健二郎君       佐藤 観樹君    関  晴正君       竹村 泰子君    松浦 利尚君       矢山 有作君    池田 克也君       市川 雄一君    近江巳記夫君       神崎 武法君    大内 啓伍君       木下敬之助君    小平  忠君       瀬崎 博義君    正森 成二君       松本 善明君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         法 務 大 臣 嶋崎  均君         外 務 大 臣 安倍晋太郎君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 松永  光君         厚 生 大 臣 増岡 博之君         農林水産大臣  佐藤 守良君         通商産業大臣  村田敬次郎君         運 輸 大 臣 山下 徳夫君         郵 政 大 臣 左藤  恵君         労 働 大 臣 山口 敏夫君         建 設 大 臣 木部 佳昭君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     古屋  亨君         国 務 大 臣         (内閣官房長官)藤波 孝生君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 後藤田正晴君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)     河本嘉久蔵君         (国土庁長官)         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 加藤 紘一君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      金子 一平君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      竹内 黎一君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 石本  茂君         国 務 大 臣         (沖縄開発庁長         官)      藤本 孝雄君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議室長     的場 順三君         兼内閣総理大臣         官房審議室長         内閣法制局長官 茂串  俊君         内閣法制局第四         部長      工藤 敦夫君         国防会議事務局         長       塩田  章君         総務庁長官官房         審議官     本多 秀司君         兼内閣審議官         総務長官官房  米倉  輝君         総務庁人事局長 手塚 康夫君         総務庁行政管理 古橋源六郎君         防衛庁参事官  古川  清君         防衛庁参事官  古川 武温君         防衛庁参事官  千秋  健君         防衛庁参事官  筒井 良三君         防衛庁長官官房 宍倉 宗夫君         防衛庁防衛局長 西廣 整輝君         防衛庁教育訓練 大高 時男君         防衛庁人事局長 友藤 一隆君         防衛庁経理局長 池田 久克君         防衛庁装備局長 山田 勝久君         防衛施設庁長官 佐々 淳行君         防衛施設庁総務         部長      平   晃君         防衛施設庁施設         部長      宇都 信義君         経済企画庁調整         局長      赤羽 隆夫君         経済企画庁総合         計画局長    及川 昭伍君         国土庁長官官房         長       吉居 時哉君         外務大臣官房長 北村  汎君         外務省アジア局         長       後藤 利雄君         外務省北米局長 栗山 尚一君         外務省欧亜局長 西山 健彦君         外務省中近東ア         フリカ局長   三宅 和助君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省国債連合         局長      山田 中正君         外務省情報調査         局長      渡辺 幸治君         大蔵大臣官房審         議官      門田  實君         兼内閣審議官         大蔵省主計局長 吉野 良彦君         大蔵省理財局長 窪田  弘君         文部大臣官房総         務審議官    五十嵐耕一君         文部省教育助成         局長      阿部 充夫君         厚生省年金局長 吉原 健二君         社会保険庁年金         保険部長    長尾 立子君         兼内閣審議官         農林水産大臣官         房長      田中 宏尚君         農林水産省経済         局長      後藤 康夫君         建設大臣官房長 高橋  進君         自治省行政局公         務員部長    中島 忠能君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      大内  宏君     ————————————— 委員の異動 十月三十一日  辞任         補欠選任   大村 襄治君     鈴木 宗男君   河野 洋平君     小杉  隆君   上田  哲君     関  晴正君   堀  昌雄君     竹村 泰子君   市川 雄一君     正木 良明君   正森 成二君     不破 哲三君 同日  辞任         補欠選任   小杉  隆君     河野 洋平君   鈴木 宗男君     大村 襄治君   関  晴正君     上田  哲君   竹村 泰子君     堀  昌雄君 本日の会議に付した案件  予算実施状況に関する件      ————◇—————
  2. 天野光晴

    天野委員長 これより会議を開きます。  予算実施状況に関する件について調査を進めます。  上田君から、大田君及び岡田君の質疑に関連して質疑の申し出がありますので、両君の持ち時間の範囲内でこれを許します。上田哲君。
  3. 上田哲

    上田(哲)委員 初めにはっきり表明しておきたいことが二点ございます。  一点は、昨日総理表明によりまして六十一年度の一%枠は守るのだ、しかし同時に、正式な政府決定として明らかに五年間で一%枠を超える十八兆四千億円の五カ年計画が厳然として存在するわけでありまして、私たちは昨日の総理表明によって審議再開には応じましたけれども、一%問題は今後とも重大な課題であります。このことをしっかり表明しておきます。  もう一つは、十年前も今日も一%は巨額でありまして、私たちは一%なら賛成だと言っているのではないのであります。政府の新中期防衛計画によって日本の軍備が途方もないところに合いこうとしている、これをとめなければならないという国民世論の中で、これまで戦後四十年の民主主義がつくってきた幾つかの歯どめ、例えば専守防衛、非核三原則武器輸出禁止原則、あるいは宇宙空間軍事目的に使わないという決議等々が全部骨抜きになった中で最後に残った一%枠、これは政府がみずからお決めになったことですから、これくらいは守っていけ、こういうことを私たちは言っているわけでありますから、この二点についてはまずはっきり表明をしておきたいと思います。  その上でこの新中期防衛計画、これはこれまでの一次防から四次防に至る防衛力整備計画、それから「防衛計画大綱」の決定に並ぶいわば第三段階に突入する新段階であると私どもは理解をしておりまして、この時点において、総理も言われる防衛中身についてしっかり議論をしなければならない。今日までの議論をこの際整理をして、ぜひ確認をしておきたいと思います。  その第一点は、今回の新計画が五九中業長官指示段階からいよいよ大綱の達成を果たすものである。この十月八日の衆議院安全保障特別委員会では、西廣防衛局長が、その大綱の完成によって日本に対する侵略を抑止することを果たすのである、大綱を果たすのであり、大綱ができれば日本侵略を抑止することができるところへいくんだ、これが今回の新計画の重大な意義であると思います。政府の御答弁でありますが、大変大事なことでありますから総理からも一言御確認を得ておきたいと思います。
  4. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今度の新五カ年防衛計画は、かねて三木内閣決定しました「防衛計画大綱」の水準を達成する、この目的を持って内容づくられておるものでございまして、これができればある程度前から前提となっておりました限定・小規模の侵略に独力をもって対抗し得る、そういうような条件は概成できるであろう、そう思う次第であります。
  5. 上田哲

    上田(哲)委員 これが第一の重大な意義であると思います。  そこで総理に伺いたいのは、国民に一番印象づけられまた一番危惧しているのは、総理の不沈空母論、八三年一月十九日にアメリカで言われたのであります。言葉の問題はともかくとして、この内容バックファイア日本列島を障壁にしてとめる、それから三海峡封鎖ソ連艦艇潜水艦を出さない、こういう二点であると言われます。この考え方と今の日本防衛が果たし得るということとの関係はどうなるか。つまり、同時に不沈空母論はここで果たされたということになるのでありますか。これは総理発言ですからお答えいただきたい。
  6. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は不沈空母という言葉は使っていないと前から申し上げているとおりであります。
  7. 上田哲

    上田(哲)委員 不沈空母という言葉は問いません。不沈空母中身はその後の議論の中でも、バックファイア日本列島で防ぐ、それから三海峡を封鎖してこちらへ出さない、こういうことであるということが確定されておりますから、その考え方は今回の中期計画が完了すれば同時に果たされるということと理解するのですか。
  8. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いかなる国の兵力であれ航空機であれ、日本侵略して侵入してくるものは撃破する、入れないようにする、それがやはり防衛目的だろうと思います。
  9. 上田哲

    上田(哲)委員 ですから、あなたの言われるその二点の問題は、この新計画が完了すれば果たされるのか、まだ足りないのか、どちらですか。
  10. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 「防衛計画大綱」が前提している諸条件が満たされるという場合においては、日本防衛目的は先ほど申し上げたような限定小規模云々という範囲に関する限りは可能であろう、そういうことを申し上げておるところであります。
  11. 上田哲

    上田(哲)委員 いや、これは非常にはっきりしないのです。二つの問題、総理具体的に、そんなにはっきりしなければ——これはちょっとこういうものをつくってきました。これは日本列島です。日本列島、見えますね。あなたの言われるのは二つの問題だとはっきりしているのです、今までの論議で。向こうから来るバックファイアをここでとめて、こっちへ出さない、三海峡を封鎖してソ連艦艇潜水艦をこっちへ出さない、こういうふうになっているわけですから、その考え方は新計画によって果たされるのか、また果たされないのか、はっきり答えてください。
  12. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本仮想敵国を設けないということは前から言っているとおりでありまして、ソ連云々とかという言葉仮想敵国としては設定しておらぬわけであります。
  13. 上田哲

    上田(哲)委員 だから水かけ論にならないためにこれを持ってきたのです。これは今までの議論でそうなっているのですから、はっきりイエスかノーか答えていただければいいのです。  それではもう一遍お尋ねしますが、あなたは、不沈空母論という言葉のことは聞いておりません、その言われた内容というのがバックファイアをここでとめる、そして艦艇をここから出さないという考え方でやったのは間違いないのですから、ではその考え方をもうとらないのですか、それともやはりやるのですか。このことだけははっきりしてください。
  14. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 あなたの設問のような話に対して私が意思を表明していることはないのです。日本の防空、言いかえれば日本列島侵略しようとしている、そして領空、領海あるいは領土、こういうものを侵略するという場合にはそれを許さない、そういうことが陸においても海においても空においても行われる、これが防衛目的である、そういうふうに申し上げておるのです。
  15. 上田哲

    上田(哲)委員 全然はぐらかされては困るので、ひとつ言葉をかえましょう。  不沈空母論という言葉には、だからこだわりませんが、不沈空母論——では言葉に一遍こだわっておきましょう。不沈空母論という言葉はもうやめるのですね。
  16. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 やめるもやめないもない、言ってないのですから。
  17. 上田哲

    上田(哲)委員 あれだけ十分に世の中に伝わっていることですが、それを言ってないと否定されたということは、国会発言ですから、不沈空母論というのはないのだということにせざるを得ません。  そういう言葉にこだわらずにもう一遍お尋ねいたしますが、バックファイアというのをここでとめる、それからこっちへ艦艇を出さないという防衛構想というのはとるのですか、とらないのですか。
  18. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 バックファイアという名前はある国の飛行機の名前でありまして、そういうことは必然的に仮想敵国につながる、誤解を受ける話になる。仮想敵国は設けないということで我々はやっているのですから、我々は先ほど申し上げたような答弁以外には答弁できない。
  19. 上田哲

    上田(哲)委員 しからば、答弁していただけるような言葉にかえましょう。  何らかの侵攻勢力がこちらから来ればこれをこちら側に出さない、何らかの侵攻勢力があれば封鎖してこちらへ出さないという考え方は、総理防衛論として存在するのですかしないのですか。
  20. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 あちらもこちらもないのです。日本侵略しようとするものはどの方から来ても許さないということであります。
  21. 上田哲

    上田(哲)委員 それではさらに質問を変えながら言いましょう。  問題は、今回の新計画の中でいろいろ策定されている構想ポイント一つは、ここからこちら側の海ですね。海で言えば数百海里、そしてシーレーンなら一千海里の、これぐらいになっちゃうんですかね、こんなたくさんの海空域というものを守る、このためにシーレーンも要る、P3Cも百機要る、こういう形が日本抑止力のために必要であるということは間違いないわけですね。
  22. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 周辺数百海里云々と、航路帯を設ける場合はおおむね千海里、周辺という場合は東西南北が入るわけです。
  23. 上田哲

    上田(哲)委員 東西南北については結構です。東西というと、数百海里こっちにいきませんからね。こっちについては少なくともこの数百海里、シーレーン一千海里は日本防衛のために重大な抑止力の対象であるということはもう間違いないわけですね。この点を否定されると、これはもう全然、またもう一遍アメリカへ行ってもらわなければならない。この点はいいわけでしょう。
  24. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本列島中心にして三百六十度、それが我々の守る方向であります。
  25. 上田哲

    上田(哲)委員 三百六十度の中にこれがあるという意味で恐らく答えられたのでしょうから、そのように理解いたしますが、これが非常に重大な点です。日本抑止力のためには、ここをしっかり守らなければならない、これが今回の新計画の第二点、重要な点であります。  第三点というのは、実はこの範囲というのは何だといえば、実は八二年の二月に出されているレーガンの最初国防計画、例の史上最高の二千五百億ドルの軍事費を投入したあの最初国防報告、これは八三年度国防報告でありますが、その中に明確に出ておりますように、ソビエトに対して、これはアメリカがですよ、アメリカ多発戦略とか柔軟戦略とか呼ばれている、あるいはホリゾンタルエスカレーション戦略と呼ばれているわけですが、ソビエトと戦争をするときにはソビエトに対して一番弱いところを核としてそこから攻めていくという戦略をとらなければならないと方針が変わった。その弱いわき腹ソビエトに対する弱いわき腹と言っているところが実はこの一千海里であります。日本にとってこれが大事であると言っている。この大事であると言っているところとアメリカにとってこれが大事であると言っているところがぴたり重なっている。これはもう具体的に国防報告の明示しているところであり、こういう立場からすると、日本にとって重要なところと言っているのは実はアメリカにとって対ソ戦略で一番重要なところだと言っているそれとぴったり合うわけです。つまり、言いたいことは、日本抑止力とおっしゃる今度の新計画によって目指すものはアメリカ対ソ戦略の一番重要な防衛区域というものとぴったり一致する。もっと言うなら、日本アメリカ戦略の一環となることによってこの計画を達成する、こういうことになるんだと私たちは理解しますが、総理いかがですか。——これは総理ですよ。防衛庁長官は困っていますよ。総理、言ってください。
  26. 加藤紘一

    加藤国務大臣 これは改めて申すまでもございませんけれども、私たちの国の防衛はあくまでも私たち防衛という観点から行っているものでありまして、例えばシーレーン防衛にしても、その一定の海空域を全部という話ではなくて、私たちはその地域におきます海上交通の安全の確保という観点から行っているものであることを御理解いただきたいと思います。
  27. 上田哲

    上田(哲)委員 わからない人に答えさせないで、ひとつ総理が答えていただきたいので、もうそれまでの経過は全部申し上げるが、例えば今月八日の衆議院安全保障特別委員会西廣防衛局長の御答弁は「日本にみだりに手を出せばアメリカと正面対決することになるぞという状況に常に置いておくことによって」日本に対する侵略を未然に防止するという戦略なんだ、こう言っているわけであります。日本に手を出せばアメリカが出てくるぞ、これはここで出てくるんだぞ、ここをしっかり一緒に守ることによって、日本うっかり手を出せばアメリカが出てくるんだぞということが日本抑止力だということを防衛局長答弁をされている。総理、そのことが間違いですか、間違いでないのですか。——総理、答えないのですが。
  28. 西廣整輝

    西廣政府委員 私の御答弁に関連したことなのでお答えさせていただきますが、日米安保条約というのはまさに日本侵略があった場合にアメリカ日本を支援するというものでございますので、そのように御理解いただきたいと思います。
  29. 上田哲

    上田(哲)委員 総理、いかがですか。もし日本に手を出せばアメリカが出てくるぞ、それはここなんだぞということが日本抑止力ポイントであるという見解が違うのですか、違わないのですか、総理。答えてください、総理——だめだ、それは。防衛庁長官防衛局長も既に答えているのだから、これを総理、答えてくださいよ。(中曽根内閣総理大臣「そのとおり」と呼ぶ)そのとおりですか。じゃ、そのとおりと言ってください、そこで言っていないで。
  30. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 防衛庁長官が答えたとおりです。
  31. 上田哲

    上田(哲)委員 防衛局長が答えたとおりでもありますね。総理、これは逃げないで言ってください。
  32. 西廣整輝

    西廣政府委員 日米安保条約日本の領域に対する攻撃によって発動されるというふうに理解されておりますので、おっしゃるとおりだと思います。
  33. 上田哲

    上田(哲)委員 結構です。総理確認されますね。立たなくてもいいですが、いいですね。  したがって、今まで申し上げたことをもう一遍言いますと、この新計画の重要なポイントは、これによって大綱が達成される、それで日本防衛は果たされるのだというところに大きなポイントがある。それはこの一千海里までいく大きな海域というものを抑止力中心にするのだということである。これは日本に手を出したらアメリカが出てくるぞということによって成り立つものである。これがこれまで三つ申し上げた重大な今度の新計画ポイントであります。  さて、四番目に確認しておきたいのは、これだけの大きな海域に、例えばP3C百機、F15百八十七機なんという大変な買い物をする。これだけのものが入り用になったということは、五十一年の十月二十九日、十一月五日決定のあの大綱中身が変わってきたのです。技術革新とかいろいろなことをおっしゃるけれども、明らかに変わってきた。だから、その大綱がこれだけ変わってきたということについては、単なる小規模・限定というようなことではなくて、こういうふうに広がってきたことについての理由があるだろう。それは何に対して何を守るのか、どうやって守るのかという計算があるだろう。その計算の違いを明らかにしようというのが大出さんが言った二つ資料を出せ、統中、統長を出せと言ったことなんであります。ここのところをはっきりしなければ、この議論大変数字だけの、一%を守るか守らぬかだけの話になってしまう。これは一つ重要なポイントであります。  防衛庁長官に伺うのだが、これを出してしまうと手のうちが明らかになってしまって困る、不都合であるとおっしゃる。こういうところで、テレビで日本じゅうに広がっているところでそういう問題を出したらどういう不都合が起きるのかということをちょっと説明してください。
  34. 加藤紘一

    加藤国務大臣 防衛庁の中には当然のことながら幾つかの機密があります。それは程度によっていろいろ段階が分けられておりますけれども、いわゆる統中、統長、若干専門的な言葉でございますが、この二つの種類のものはもう本当に五指にも入るような機密の扱いをいたしておるものでございます。そして、その中の重要な部分は、我が方の能力見積もりを御承知のように含んでいるからでございまして、これは我が方はどの程度能力を持っておるか、どの点につきましては比較的私たちは備えがしっかりしている機能を持つけれどもどの点についてはそれに比べて比較的劣るとか、そういう弱点までも能力的には書いてあるものでございます。これをいわゆる国会の場で一般的に公表をしますことは、当然のことながら全世界に伝わってまいりますので、それは当然お許しいただかなければいけない、手のうちを明らかにすることだと思っております。いかなる民主主義国でも、いかなるシビリアンコントロールのしっかりしている国でも、こういった資料を出す国は世界じゅうにないのではないかと思います。したがって、ではシビリアンコントロール防衛庁だけでやっていていいのかという問題点が当然のことのように残りますから、私たちは今回の中期計画決定するときに、国防会議でわざわざ一日をとりまして、その中でいわゆるシビリアンたる各大臣も集まっております国防会議の場でその内容を御説明申し上げ、シビリアンコントロールに欠陥がないように配慮をしてプロセスを進めたつもりでございます。
  35. 上田哲

    上田(哲)委員 これは、何遍も申し上げるように、何に対して何を守るか、どれぐらい攻めてきてどう戦うかということがなければ、何でP3Cが百機も要って、F15が百八十七機も要るかということが説明がつかない。何で十八兆四千億になるかということが説明がつかない。これは、この統長、統中の中に防衛戦力能力見積もりと、かたい言葉ですけれども、シミュレーションですね、これが計算されているわけです。これが出たら、今おっしゃるように世界じゅうに知れ渡って日本の国益を害する、それはそうだろうと思うのです。そうだろうと思うので考えなければならないのです。私も国益の側に立ちますよ。しかし、その中にある見積もり計算を私は持っているのです。だから、ここでもって慎重に物を言わなければならないから、テレビの中で日本じゅうに、世界じゅうに単純にそのことをひけらかすようなことはしませんけれども、少なくともそういうものは政府だけでやっていいことですか。国会中心ではないかというのだから私は聞きたいのです。  例えば今度の新計画をつくるについては、航空だけに絞りましょうか、航空だけに絞ればACOMという見積もりがありますね。どれだけの飛行機が要って、どうすればいいかということは、ACOMという防空の戦力能力見積もりがある。あるかないかについて、しっかり答えてください。
  36. 西廣整輝

    西廣政府委員 私どもは、大きな防衛力整備計画をつくる、あるいはある主要な装備品の性能なり機種を決めるといったような場合に各種のシミュレーションをやりますが、今お話のありましたACOM、これはエア・コンバット・モデルと申しまして、航空自衛隊の防空能力を検証するといいますか、そのためのシミュレーションのモデルでございます。
  37. 上田哲

    上田(哲)委員 ちゃんとあるのです。ACOMがあるのです。エア・コンバット・モデル、これでもって今回の新計画、十八兆四千億円をはじき出しておるのです。これは飛行機だけですけれどもね。何で百機要るか、何で百八十七機も要るか、アメリカのようなものを持つのはどういう意味なのかということが、さっきの議論したここの問題のためにちゃんと数字が出ているのです。これは五九中業のために、新計画のためにつくった見積もりですよ。  もともとはいろいろあるのです、今まで。三九L、これはF104のときです。その次に四二M、そして五十年に入ってからはADAMというのをやっていたのです。これで数字を全部出しているのです。それが、今度の新計画についてわざわざコンピューターを取りかえてしっかりはじき出した数字、そのもとが今のACOMです。こういうものがしっかりあるのです。これは私がさっきも言うように、世界じゅうに全部数字を出してしまっておかしくなるということは、国益を守るためにしてはいけないと思いますよ。しかし、それはあるじゃないですか。そのあるということを、三九Lから四二MからADAMから、そして今度切りかえてACOMになっているというはっきりしたものがあるのですよ。これは出していいのですか。出していけないということがよくわかるから伺うのだけれども、ひとつさわりでいいから防衛局長、それがどういうふうにして計算しているかという、計算の仕方ぐらいはちょっと言ってみてください。さわりでいいです。
  38. 西廣整輝

    西廣政府委員 最初にお断り申し上げておきたいと思いますが、私どもは、総理も申されたとおり、仮想敵国というものを考えておるわけではございません。しかしながら、我が国に対する脅威というのは、相手の国の意思というのがわからない、あるいはいつ変わるかわからないというような点もございまして、我々としてはやはり周辺諸国の能力といいますか、そういうものを前提に考えておかないと、防衛力整備というのは非常に時間がかかりますので、そういったものに着目をしていろいろな防衛力を、どういう防衛力を持つかという検討をするわけでございます。そこで、先ほどお話の出ました統長、統中ということで、周辺諸国の軍備の動向とか、あるいはどういうものをどのくらい持っておるというようなことを常々できるだけ注意をして見ておりまして、そしてそういったことで、よその国は日本に対してやろうと思えばどういうことができるかというような、可能行動と我々申しておりますが、そういったことを検討するということになります。  そこで、お尋ねのシミュレーションでございますが、そういった前提に立ちますと、我が国に対して起こり得べき状況というものを想定をしなくちゃいけない。これは例えば、今は防空の話でございますので、どういう機種が何機ぐらい、どういうパターンで日本に対して攻撃し得るかという、まず機数、機種あるいは使うミサイルとかそういった兵器の性能、それから日本に対する攻撃の仕方もいろいろあると思います。そういった各種のパターンについてインプットをする。我が方につきましては、それに対して現在の防衛力としては、それぞれのパターンに応じて我々もいろいろな防衛力の集中、展開をするわけでございますが、その際に要撃機はどのくらい配分できるか、あるいはその地域にどれだけの対空誘導弾があるか、あるいはレーダーサイトはどういう状況にあるか、そのほか飛行場なりあるいは航空機がどういうシェルターに入っているか入ってないか、そういったことも含めまして我が方の能力というものがインプットされます。  そうして、お話のようなシミュレーション、いわゆる模擬戦闘をコンピューターの中で行うわけでございまして、その結果それぞれが被害が出るわけでございますが、その際どちらがどれだけの被害を受けるということで、総合的な被害率といいますか、我が方について言えば航空機だけではなくて、航空基地とかあるいはレーダーサイトも含めた被害率、相手の方は攻めてくるわけですから航空機だけの被害になるわけですが、そういった総合的な我が方の被害率を分母に置き、相手方の被害率を分子に置くという形に最終的に直しますと、それが仮に一であるということになりますと、彼我互角に戦ったということになろうかと思います。それが一以下でありますときは、我が方の被害が大きくて、そして相手方の被害が小さかったということは、引き続き戦闘が続けば我が方はどんどん力が下がってしまってやられてしまうということになるのだろうと思います。そういったものでございます。
  39. 上田哲

    上田(哲)委員 出てきたじゃないですか。今言った一、その一が下がっていますね。撃墜率三〇%でなければいかぬのですよ。撃墜率三〇%なければいけないんだが、今分子と分母と言われたが、その分子と分母では一を今切っていますね。つまり、簡単に言うと飛行機がちょっと弱くなっている、こういうことになっているでしょう。いかがですか。簡単に、さわりだけでいいよ。
  40. 天野光晴

    天野委員長 簡単に答弁しなさいよ。
  41. 西廣整輝

    西廣政府委員 ただいま申し上げたような形で、いろいろな被害が出るわけですが、そのときの被害に一番答えるのが、我が方の航空機が非常に弱体だったから問題なのか、あるいはレーダーサイトが非常に問題なのかとか、いろいろなところで出てくるわけでございます。
  42. 上田哲

    上田(哲)委員 ちょっとそこにいてください。  例えば向こうから攻めてくるというのは、大まかに言いましょう、六百機ないし七百機の間だ、これでいいでしょう。言えませんか。言えなければ言えないでいい。
  43. 西廣整輝

    西廣政府委員 数量等については、御答弁を控えさせていただきます。
  44. 上田哲

    上田(哲)委員 私も抑えますよ。全部オープンにしていいとは思いません。しかし例えば、そういう数字は全部あるのですよ。私が申し上げたいのは、国防会議で一日かけてやった、政府だけが決めていいことではないだろう。総理が何遍も言われているように、十八兆四千億円というような大変な税金を払う国民の側からすれば、全部オープンにしてくれとは言わないが、タックスペイヤーとしては、これだけの防衛計画を進める金を使うについては国民も知るべきである、わかって出すべきであるというのは当然な民主主義だ、そのために国会がある。ならば、テレビが入っている、日本じゅうに聞こえているところで、全部これを明らかにしろ、数字を全部言いなさい、〇・九九幾つになっているという数字だとか、あるいは六百六十機等々という数字を、今生々しく言うということがいいかどうかということは、私は十分配慮を持ちますよ。しかし少なくとも、そういうことを政府の部内だけで、あとは言えないのだ、秘密だということではなくて、国会シビリアンコントロール中心であるならば、我々の中では何らかの形と場を持って、このことが納得できるということが当然な議会民主主義ではありませんか。  そういう立場で委員長にお願いしたい。ぜひこのことを、私もここではあっと広げてしまうことはしないのですから、どうかひとつ国会において、政府の代表も入れて、理事会等々で、いかなる形といかなる場においてこうした問題を議論することができるかということについて御検討いただきたい、これが私は、我々の申し上げるぎりぎりのお願いだと思うのですが、いかがでしょうか。
  45. 天野光晴

    天野委員長 それは取り計らいいたすようにいたします。それは理事会で相談することにいたします。
  46. 上田哲

    上田(哲)委員 わかりました。それでは理事会で相談していただく。ぜひそのようなことを検討していただきたい。政府としても、それについては十分な態度をとるということを御確認いただかなければなりません。いかがですか。
  47. 西廣整輝

    西廣政府委員 先ほど防衛庁長官が申し上げましたが、現在我々がそういう能力見積もりをやる、そういう際にどのような攻撃様相を考えておるのか、あるいは我が方はどう対応しようとしておるのか、あるいは数量的にどういうことを考えておるかというような点については、先ほど防衛庁長官が申し上げましたとおり、それは我が方の手の内を示すものであるということで御理解をいただきたいと思います。
  48. 上田哲

    上田(哲)委員 総理委員長もああいう形で理事会で相談をして国会が機能できるようにしたいと言っているのですから、それについては総理も十分な理解を示す、これは国会に対して一言政府の立場を表明してください。
  49. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 公表して差し支えない範囲内のものについては、協力して結構であります。
  50. 上田哲

    上田(哲)委員 ぜひひとつ国会が形骸化しないために、これは委員長、くれぐれもよろしくお願いをいたします。各党理事の皆さんにもお願いをいたしておきます。  最後の五番目の問題は、こういうふうな大計画になってきた、この大計画のこれからの問題であります。これからの問題は、もうはっきりしていますように、さっきも申し上げた柔軟戦略、同時多発戦略ホリゾンタルエスカレーション戦略ということで、この大きな海空域アメリカ戦略が大きく広がってきた。そして、レーガンが初めて大統領になって出しました八三年度国防計画にそのことがはっきり出ている。そしてその次の、具体的には八二年十二月のアメリカ上院では、八〇年代中に、つまり九〇年度までにシーレーンを達成しなさいということがはっきり決議をされています。八〇年代中にということは、この新計画が六十一年から六十五年までとぴったり合うわけであります。まさにぴったり合うわけであります。それ以来ずっとワインバーガー長官等々が、ぜひこのシーレーン計画、この海空域防衛というものを日本がしっかりやりなさいということを言い続けてくることに合わせて、こうして新計画十八兆四千億円ができ上がったということは、どういっても揺るがしがたい現実であります。姿であります。ぴったり平仄を合わせているわけであります。そして、近時点で申し上げれば、ことしの六月十一日、防衛庁長官アメリカへ行っているときに、アメリカ上院は、八十八対七という圧倒的多数で大綱改定をしなさい等々の決議をしている。七月十一日にも、やはり下院は同じことをやっているわけであります。  私はまさに、アメリカの決議、アメリカの方針によって日本の新計画というものがつくられていく傾向の中に揺るがしがたくあり、となれば、大綱を変えなさいということがはっきり打ち出されている。私は、総理アメリカの言うことは聞かないとおっしゃるに違いないと思う。ぜひそうあっていただきたいと思う。したがって、それは確認として私は伺いたいのだが、これほどはっきりアメリカ側が圧倒的多数で上下両院の決議をし、国防長官がいろいろと大綱改定をしなさいということを言っているけれども、日本としては大綱改定はしないのである、この新計画の将来においても大綱改定はしないのであるということを、総理が責任者としてしっかり確認をしていただきたいのであります。
  51. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 同盟国のアメリカの議会の意向というものは参考にはしますが、日本のことは日本人がやります。
  52. 上田哲

    上田(哲)委員 だから、私が聞いているのはそうだから、大綱改定などはしないのだという当然なことをはっきり御確認をいただきたい。これを御確認をいただけないのであれば、大綱改定をするんだということになってしまいます。いかがですか。
  53. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 新防衛五カ年計画においては大綱達成を目的にしているので、その範囲内において行う、それを充実させ、完成させるということを目標にしておる、そういうことであります。
  54. 上田哲

    上田(哲)委員 私が聞いているのは、これから先、大綱改定をもくろんでいるのか、大綱改定の意図があるのか。私はないと思う。八〇年代はいいと言っているのですよ。昭和六十五年以降に大綱改定をしろと向こうが言っているのです。九〇年代から向こうに大綱改定をするのだと言われたのでは、アメリカの言うとおりになってしまう。これから先を私は聞いている。これから先は大綱改定をしない。今までの新計画では大綱を達成する、達成した後は大綱を改定する、向こうがそう言っているのに対して、これから先も大綱改定をしないというのがこれまでの御答弁でなければならぬと思います。それははっきり言えるのですか。
  55. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今回決めておるのは、この防衛に関する五カ年計画でありまして、それ以上のことは、次の内閣が恐らくいろいろ検討するのじゃないか、そう思います。
  56. 上田哲

    上田(哲)委員 そういう言い方は、無責任きわまるのであります。総理が今この計画を作成された最高責任者であれば、今日本じゅうが見ていますよ、最高責任者は今あなた。これが策定をした。しかも新計画は、その次の計画にいくのです。ローリングシステムをとるのです。そこから先は知らないということは言えない。現にアメリカは、それから先を変えると言っている。しかし総理は、変えない、アメリカの言うとおりにはならぬと今までおっしゃるんだったも、その先も変えないということをはっきり、アメリカの言うとおりにはならぬと言うのが当然な日本総理大臣ではありませんか。ただいま総理大臣の立場を捨てられるのですか。
  57. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 アメリカがどうこう言ったからという問題ではない。日本を守るということは、日本人に関する大事な問題なのであって、それは今後の国際情勢がどう動いていくか、兵器の進歩がどういうふうに変化するか、あるいは国民感情がどういうふうに動いていくか、そういうことによって変わっていくのであって、それ以上、未来のことまで私がここで拘束するわけにはいかない。国の防衛ということは、我が国家の平和と独立と主権を守るという重大なことなのであって、そういう問題について、安易に将来のことまでコミットするわけにはいきません。五カ年については、私が申し上げたとおりであります。
  58. 上田哲

    上田(哲)委員 私が言っていることは、総理アメリカの言うとおりになっているだろうというようなことを日本国会の権威をかけて言おうなどとは思っていないのです。あなたは再三、アメリカの言うとおりにはならぬと言っておられるから、ぜひそうしてくれと言っている。これは国民全体の願いです。あなたがアメリカの言うとおりにならないでやってほしい、私もそう思うのです。したがって、アメリカが何と言おうとこれは切ろう、あなたの判断として聞いている。あなたの判断として、じゃ、この五カ年計画が終わった後は大綱を変えるということになるのか。ならないというのがこれまでの御答弁のはずだ。そこをひとつはっきりしていただきたい。これをはっきりしていただくのが国民に対する当然なお約束ではありませんか。
  59. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その御質問が無理な御質問なのです。私はそんな独裁者じゃないですよ。今申し上げたように、私の内閣はこの新しい防衛五カ年計画を決めたのであって、それ以上の先まで決める権限は私の内閣にはないです。
  60. 上田哲

    上田(哲)委員 そう言われますと、日本防衛というのは限定・小規模なんだと言っておられた話が、そこで変わってしまうのです。あくまでも限定・小規模、専守防衛でいくんだとおっしゃっている話は、この専守防衛限定・小規模を決めた大綱をずっと守っていくんだということでなければおかしいことになってしまうのです。だから総理は、そのことを将来にわたってもいくんだとおっしゃるのが、これまでの説明の当然な論理でなければならないのです。今総理が、そこから先のことは言えないんだ、わからないんだと言われれば、大綱改定は、この新計画、五年が終わった後には当然出てくるな。そうすると、ちょうど言葉は合う、アメリカの言う九〇年からは大綱を変えなさいということにぴったり合ってしまうではないかということになるだろうということを私は申し上げざるを得ないのです。  水かけ論にならないために言います。ぜひ総理、一%の問題は一応の決着ということになっているが、防衛中身がはっきりしないのでは、これは意味がない。私は大綱の精神を一精神ということにしましょう、大綱の精神を、今あなたがお守りになる、その中身二つあります。一つは、趣旨として言い古されている言葉だが、専守防衛、小規模・限定に対して、平時の体制で守るという形でいくんだということを御確認いただくことが一つ。それから、大綱別表にある現在定員、例えば陸上自衛隊十八万、艦艇六十隻、あるいは作戦用航空機四百三十機、こうした数量は守っていくのだ、このことはひとつはっきりお約束をしていただくのが今国会の当然な任務であると思うのですが、いかがでしょう。
  61. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今おっしゃったのは、大体大綱の形骸、枠でありますが、中曽根内閣はそれを実現していくために努力してまいりたいと前から申し上げているとおりです。
  62. 上田哲

    上田(哲)委員 前から申し上げているとおりだとおっしゃるんだが、今のお話では、普通に聞いていれば、国民のすべては、これは結局五年たったら大きく変わってしまうんだな、限定・小規模でなくてついにここまで全部行くんだな、こういう危惧を持ったに違いない。私はその危惧が広がることを非常に恐れるわけであります。したがって、前から言っておるとおりだとおっしゃるところを私は大事にして、総理防衛計画大綱考え方と数量をそのまま守っていくんだという点を確認することにして、その立場におけるシビリアンコントロール国会の機能を十分に果たしていくという議論を今後とも続けていくことについて総理と一致した見解に立った、シビリアンコントロール、議会の機能をその限りにおいて進めていくんだということを総理との立場で我々は確認してこれからあるべき姿を進めていく、こういう議論の出発点にしたいと思いますが、総理いかがでしょうか。これは最後の私の言葉です。
  63. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 どうもあなたの御議論を聞いていると、アメリカの影に日本が合わせようとしている、どうもアメリカの言いなりに日本はなっているんじゃないかという印象を国民が受ける危険性がある。しかし、私は日本防衛日本独自でやると前から申し上げているのであって、日本の平和、安全、独立、主権を守っていくという崇高な大きな仕事については我々が責任を持っていくということなのであります。  それで、今大綱の問題について言われましたけれども、今度正式に決定しましたものは、この五カ年で三木内閣が決めた大綱達成を目的に努力していく、そういう計画であります。そういうことで、それ以上のことを私が言うということは、これはもう越権のさたであります。しかし、どういうふうにしていくかということは、やはり専守防衛云々日本防衛についてこの五カ年計画を決めるに際して我々は定性的な性格を明らかにいたしました。あれはやはり守っていくべきである、そう考えております。しかし、それ以上の数量のことや何かの問題は、これは大綱にも書いてありますように、科学技術の進歩、兵器の進歩、客観情勢がどういうふうに動いてくるか、そういうような諸般の情勢によってそのときの国民が決める、言いかえればそのときの政府が責任を持って決め国会にそれを問う、そういう形になるのが民主主義である、そう私は思っております。
  64. 天野光晴

    天野委員長 この際、委員長より申し上げます。  ただいままでの大出君の持も時間の範囲内は終わりました。  続いて、岡田君の持ち時間の範囲内の関連質問に入ります。上田哲君。
  65. 上田哲

    上田(哲)委員 最小限の民主主義というものをとらえて、ぜひひとつ日本シビリアンコントロールの真髄を日本国会の中の審議の中で実現していくという点については最低限総理との共通の場を持ちたいということを表明して、ただいまの御発言を前向きに受け取ることとして、私はもう少し各論に入っていきたいと思います。  今度の新計画によってP3Cが百機になりました。この百機の問題を具体的に詰めていきたいと思うのであります。  この百機体制でシーレーン一千海里のところまで分担するP3Cは二十機である、こういうふうに理解してよろしいですか。
  66. 西廣整輝

    西廣政府委員 いわゆる外航護衛と申しますか、一千海里を私ども念頭に置いて二個船団分のP3Cということで二十機、二個隊を計画いたしております。
  67. 上田哲

    上田(哲)委員 二十機でいいんですね。二十機だ。二十機とにかく一千海里まで行くわけです。  私はここではっきりしておきたいのですが、八一年、五十六年までは海は四百海里ないし五百海里でありました。飛行機は百海里ないし二百海里でありました。今度は一千海里まで行くんです。ここはひとつこれまでの議論ではっきりしていませんから、しっかり御確認をいただきたい。今までは飛行機は石ないし二百海里、海は、つまり船は四百海里ないし五百海里でありました。これが空は一千海里まで行くことになった。非常に端的なことですから、これが新計画でそうなったという点をしっかり確認してください。
  68. 西廣整輝

    西廣政府委員 護衛のための一千海里というのは、今度の新計画で初めて決まったということではございませんで、二次防以来、当時の船団護衛についての防衛力整備の対象とする距離というのはほぼ一千海里。例えばサイパンまでとかグアムまでとかいろいろなことはありましたけれども、おおむね一千海里ということをずっと踏襲しておりまして、今回初めて一千海里になったということではございません。
  69. 上田哲

    上田(哲)委員 一千海里も飛行機は飛ばないんですよ。飛ばないんですよ、飛行機は。飛ばない飛行機を一千海里までやるということはできない。だから、そういういいかげんな話じゃないのです。飛ばないんですよ。飛ばないものを飛ぶようにするということになるんだから、そこをどうするのかということをはっきりしてくれと言っているのです。これは検討課題と書いてあるけれども、空中給油機を入れるということなんです。これは検討じゃなくて決定なんです。だから私は、大変なまた拡大が出てきたと思っているのですが、これについては四十八年の四月十日に田中角榮総理大臣からはっきりした答弁が出ていて、空中給油機は持たない、空中給油装置は持たない、空中給油訓練はしないと言っていた。政府は勝手にどこかで見解を発表して、その見解ではもうそれはやめたと言っている。この見解によると、あのときやめたのは、田中総理決定によってこのことをやめたのは、当時のファントムが我が国の主力戦闘機である間はそれは要らないと思ったからだ。ところが、F15が主力戦闘機になるであろう時期、ちゃんと括弧して(一九八〇年代中期)と書いてある。今です。今から以降は有事の際に空中警戒待機の態勢をとるために必要だ。つまりここで空中給油機を買うんです。空中給油機を買うということは、まさに空中警戒待機の態勢に入るということである。政府の見解をそのまま裏返せばそういうことになりますね。そういう態勢をとるわけですか。
  70. 西廣整輝

    西廣政府委員 過去、空中給油機についていろいろ御議論があったことは十分承知いたしておりますし、当時の御答弁で、逐次航空機等の技術も性能も上がってきて、低空高速侵入等もあり得るので、そういう事態になると空中待機ということも必要となってくるのではないかという御答弁をしておると思います。  なお、今回の計画では、空中給油機につきましては我々としましてはまだまだ検討すべき点が非常に多いということで、引き続き五カ年間を通じて勉強はしてみるけれども、これをこの五カ年間で整備をするといったような計画はございません。
  71. 上田哲

    上田(哲)委員 全然矛盾しておるんですね。もうちょっと前の質疑だったらこれはとめるんですよ、ここで。飛べないんだ、飛行機は。飛べないのにそこまで行くんだ、二十機を配置する、それも百機の中に入っているんですよ。飛べない。それを百機買うんですよ。飛ばすというためには空中給油機を買うのです。空中給油機を買うということは、空中警戒態勢、CAP態勢に入るということなんだ。ところがこれが検討中というのだったら、それでは全然議論にならない、はっきりしてください。統一見解を出せという一間で審議はとまるんですよ、本当は。こういうことじゃ困るのです。まあしかし、審議を先へ進める立場で、ひとつ前向きにしっかり答えてもらいたい。  空中給油機を買うべきではないという判断を私たちは持っているが、買うんだと言うならはっきり言うべきでしょう。そして、しかしこの中で政府見解が言っているのは、空中給油装置が必要となると言っているのであって、空中給油機が必要だということは出ていないのです。政府見解それ自体まで飛び越えちゃうのですか、これは。大変問題が二重、三重に三段跳びなんだ、これは。こんなことがあっていいのかということを私は問題にしたいのです。  わざわざとめようとは思いませんよ、委員長。とめないが、これでは困るでしょう。ちょっとここのところを調整するということだけはしっかり確認してからでないと、この質疑は、長くとめようとは思いませんから、しっかりしてください。
  72. 西廣整輝

    西廣政府委員 少し分けて説明させていただきますが、一つは、一千海里の海上交通の保護という場合の航空機の活動いかんということでございますが、この点につきましては、先ほど来申し上げているようにP3C、かつてはP2J、現在もP2Jを使っておりますが、その種の航空機がその機能を果たすわけでございまして、これらの航空機は一千マイルは十分船舶に随伴し交代しながらついていくことが可能な航続距離を持っておる航空機でございますので、この点は御理解いただきたい。  もう一つの問題として空中給油機、従来戦闘機との関連でいろいろ話題になったと思います。戦闘機を仮に洋上で、遠くで使うということになりますと、おっしゃるとおり空中給油機の問題が出てまいります。この点は今般、洋上防空について検討し、必要なものについて着手をするというお話をしておりまして、そういった関連で、別途空中給油機の問題がクローズアップする場合もあり得るかと思います。その点については、私ども、まだ研究段階でありますからどういう答えが出るかわかりませんが、いずれにしましても、この五カ年間で空中給油機を整備をするという状況にはとてもなりませんので、今回はすべて検討のままでとどまるということを御答弁申し上げているわけでございますので、御理解いただきたいと思います。
  73. 上田哲

    上田(哲)委員 これは時間がないから飛ばすのですけれども、P3C、F15、この飛ばないのをどうするのか。それがなければできない。それは空中待機態勢をとるのか、CAP態勢をとるのかどうか、その辺がはっきりしないで、五年間の計画の中ではやらないんだよ、まだ検討中なんだよということでは、ぽっと気がついたらまた変わっているということじゃ困る。だから、これは長い時間とめようなんて言いませんから、これは今でなくていいから、しっかりした統一見解を出すということをひとつお取り計らいをいただきたい。
  74. 天野光晴

    天野委員長 理事会でよく相談しまして、御期待に沿うようにいたします。
  75. 上田哲

    上田(哲)委員 良識を持ってそのようにお取り計らいをお願いします。空中給油機を買うということになれば、どういう歯どめが要るのかとかということになってこれは大変なことになるのだということを申し上げて、最後に一つの問題に入ります。  総理、ことしの二月二十一日のこの予算委員会で、総理発言の中に、ほかに手段がなければ核使用の米艦と自衛隊が共同対処して離脱することもできない、この場合には核戦争に入っていくのだという趣旨の御答弁がありました。私はこういう事態というものがあってはならないと思うのです。私は何とかそういう事態があってはならないという答弁に戻してもらいたいと思って提案するのですから、どうかひとつ余り警戒して言葉を選ばないようにしていただきたい。積極的に前向きに私は申し上げる。日本国民が、総理大臣に核戦争になっても仕方がないだろう、いざとなったらこれは逃げるわけにいかないぞというようなことを言われっ放しになっていてはいけないだろうと思いますから、その点をしっかり整理しておきたいのです。  総理がその前にも言われているのは、これは安保条約の解釈の論理であり、それが抑止力なんだ。この論理もあってはならない論理だと私は思うのですけれども、つまりそういう論理で、日米安保条約の論理がそうなっているのだから、その論理でずっといけば、日米安保条約下にある限りは核戦争もやむを得ないのだ、こういう論理の中に日本が置かれては困ると思うのです。だから、その論理自体もあってはならない論理だということは申し上げるが、私が質問したときには、実際にそういう事態が起きたときにどうするのかと言ったら、それもやむを得ない、これは一歩踏み込んでしまっているわけです。そういう仮定なり想定の質問があって、想定の議論の答えがそうなったのだということであったとすれば、それは想定の問題だから実際にはないのだというやっぱりもう一つ抑えがないと、非常に危険なことになってひとり歩きをしてしまうということを心配するから、私はそういう論理をぜひとどめたいと思って申し上げるのであります。これは、私の意図するところは御理解いただけるのじゃないかと思うのだが、ぜひそういう事態があるべきではない、つまり核戦争に入ってしまうなどというそういう事態があってはならない、非核三原則を堅持されると言われておるのですから、そういう立場ではそういう事態に入ってしまうことがあってはならないのだ、そういう論理というものを通さないようにするのだ、これがやっぱり当然なお考えであるべきだと思うのですが、これは一致するでしょうか。
  76. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本アメリカと日米安全保障条約を結びまして、そして日本侵略される、そういう場合にはアメリカはあらゆる手段をもって日本防衛する、そういう約束をしておる。そういうあらゆる手段というものの中には私は核抑止力も入っているだろう、そう思います。だといって、それを安易に使用すべきでないことはもちろんのことであります。  だが、しかし、アメリカがあらゆる手段をもって日本防衛するということを否定するということはこの抑止力がなくなってしまう、そういう危険性がなきにしもあらずであって、安保条約の有効な機能運営というものが阻害される、抑止力がなくなってしまうということを我々は恐れる。しかし、核戦争はあってはならぬ戦争であると私は思っておる。したがって、そういうことが起こらないように熱望もするし、我々は運営についてもできるだけそういう配慮をしていくようにしていく、こう思ってはおります。
  77. 上田哲

    上田(哲)委員 半分わかるのですが、日米安保条約の論理からすると抑止の論理は核戦争というものも避けられないのだ、それをなくしてしまうと抑止論はなくなる。これは私たちの意見とは全く違うところですけれども、しかしだからといって、そういう形になってはならないのだというところは一致するわけですから、そうだとすると、私は具体的にもう一歩踏み込みますと、考え方が違うのは仕方がないです。安保基軸論で立たれる、その抑止論に立たれる総理側と、それと同じ立場に立たない私たちの意見が違うのはこれは当然でありまして、幾つかの意見があっていいでしょう。その意見は違うが、問題の接点は、これはそういうふうな事態にならないようにしょうということが一致しなければならない。ということは、具体的に言いますと、そういうシナリオをつくってはいけない。日米合同演習にしても、自衛隊の演習にしても、訓練にしても、プランにしても、そういうシナリオをつくってはならない、こういうことになるだろうと私は思うのです。これはおわかりいただけるだろう。  それで、私が一つ抜き出して申し上げたいのはフリーテックス82ですね。このフリーテックス82というのは、先ほど来申し上げているように、日本防衛計画というのはまさに八一年五月八日の鈴木・レーガン会談の日米共同声明からぐっと変わってきた、あれからずっと突出しているわけでして、そういう意味でフリーテックス82からアメリカは初めて柔軟作戦計画を開始した。つまり複数の空母作戦というのをとったのがこのときの作戦計画、訓練計画です。今自衛隊では、このフリーテックスと共同訓練をしたい、共同行動をしたいという希望があるわけです。それで私は、さっき申し上げたように、論理はそうかもしれない、しかしそういう事態に入ってはいけないのだ、核戦争を起こさないようにするのだということが一致するのであれば、そういうシナリオをつくらないようにするというのが配慮だという点は一致すると思いますから、そうであればこのフリーテックス82以降のフリーテックス計画というようなものに日本の自衛隊が一緒に参加しないということが、このシナリオの中には入らないようにしていくということがやはり核戦争やむを得ないということにいってしまわなければならなくなることを防ぐことになるのではないか、具体的に私はそう思うのです。これは立場が違うけれども、核戦争も仕方がないよなんというようなことを国会で言いっ放しにさせないための具体的な提案だと私は思うのですが、いかがでしょうか。
  78. 大高時男

    ○大高政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生御指摘のフリーテックスでございますけれども、防衛庁といたしましては、現在、米海軍の方が今後フリーテックスをどういう形で行っていくかということについては承知をいたしておりません。  しかしながら、一般的に、自衛隊が米国との間において訓練を行います場合におきましては、まずその訓練が集団的自衛権の行使あるいはICBMといったような我が国が持てないような兵器、これの使用を前提とする訓練であるのかどうかというような点、すなわち所掌事務の遂行に必要なものであるかどうかという点を総合的に検討いたしまして、それは訓練の内容目的、そういうことでございますけれども、これによって法的に可能であるといたしましても、政策的に果たしてそれが妥当であるかどうか、あるいは教育訓練上の効果がどうであるか、そういった点を慎重に検討いたしまして判断いたしておるわけでございます。フリーテックス、将来につきましてもそういう見地から判断をしてまいりたいというふうに考えております。
  79. 上田哲

    上田(哲)委員  総理、ここのところは私は大変踏み込んでいるつもりなんですから、考え方が基本で違うのはいいけれども、その基本的な論理の中から言えば、核戦争もやむを得ないよと日本総理国会で言われては困ると思うのです。総理もそう思ってはおられぬだろう。それをそうさせないようにしたいというだけの精神論では困るから、そういうシナリオをつくらぬようにする、ということは、今のフリーテックスなんかに一部自衛隊の幹部では参加しようという動きもあるから、そういうものはそういうシナリオには参加しないようにさせていくというのがわきまえじゃないだろうか。これが本年二月二十一日に総理が、核戦争も仕方がないぞ、自衛隊は離脱しないぞと言われたことを具体的に実際実現させないということになると思うので、その辺はいかがでしょうか。
  80. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 核戦争は起こってはならぬし、日本も起こさないようにあらゆる国際環境を整えていくべきであると思います。  具体的な問題は、防衛庁長官あるいは政府委員から答弁させます。
  81. 上田哲

    上田(哲)委員 具体的な問題がおわかりにならないということであれば仕方がないから、抽象的な原理の問題に戻します。  論理がどうあっても、抑止力論の論理というのは、日米安保論の論理というのは核戦争、アメリカが核を持っていて共同対処すれば核戦争に日本も入っていくのだという論理、それが抑止力だというのは政府のお考えで、私たちはそれはいけないのだという意見は対立しているが、少なくとも、だからといってその論理が実際に起きてしまって核戦争も仕方がないよと総理国会で言ってもらわないためには、そういうシナリオはつくらない、そういうシナリオは訓練の段階からもつくらないようにしていくのだということについては、総理は同意をされますか。
  82. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本の独立と平和と安全を守っていくためにアメリカ日本に対して、日本の要求に対してあらゆる手段をもって日本を守ると約束しているのでありますから、やはりこれを有効に機能させる方法を講じておくことは、日本を安全に保って侵略を起こさせない大きなファクターになると思うのです。したがって、そういう目的日米安保条約あるいは憲法の許す範囲内におけることは、やはり日本としては抑止力を有効にするために必要なことはやる必要はある、そう思います。
  83. 上田哲

    上田(哲)委員 これはもう残念であります。私は二月二十一日の総理答弁が、この広大な海域において日米共同対処をするのが日本抑止力、その場合に向こうは核を持っている、その場合は日本も核戦争を一緒にやることがあるのだ、それもやむを得ないという発言がでたのではこれは大変なことだと思うから、それは実際にはそういう形をさせないためにはこういうふうにしていくのだということを、きょうぜひその御答弁を改定していただきたい。何も間違ったことを言ったからどうしろというのではなくて、そういう不安を国民に残しておかないようにしたいということを提起したのだが、どうしてもこれはお認めにならない。つまり、それはもう一遍念を押した形で、この日米安保条約抑止力論に立つ限りは、論理だけではなくて、日本が核戦争に入っていくことは仕方がないのだということを確認されてしまったことになる、これは大変残念であります。  最後にもう一点だけ、防衛局長に伺っておきたい。  私は、日本防衛当局、これは必ずしも好戦論者だとは思っていません。少なくとも大綱を守っていこうということがこれからの日本防衛一つのけじめである、本当の良識の姿であるというふうに考えられるだろうし、そういう形で進んでいくという一種の伝統からすれば、私は、五年間たったら向こうで大綱を突破するかもしれないぞなんということを言うことではないのだろうと思います。幾つかの努力が検討されているだろうと信じたいからあえて踏み込んで申し上げるが、大綱を守っていくためには、あの別表を守っていくためにはさらにいろいろな工夫があると思う。幾つかの工夫があるならばそのことをひとつ説明していただきたいと思います。
  84. 西廣整輝

    西廣政府委員 大綱水準というのは、何度も申し上げておりますように限定的・小規模侵攻に有効に対応し得る防衛力を持つ、そういう能力を水準といっているんだと思います。したがいまして、そういう小規模・限定的な事態というもの、これは時代がたつにつれまして各国の軍事技術が上がっていく、あるいは量的にふえることもありますので、水準そのものは若干浮動するものだと思っております。それに我々としてはできる限り、現在大綱で規模的に定められております別表の枠内でいかに対応していくかというのが苦心の要するところだと思います。  そういうことで、いろいろ装備の性能向上等を図って、質的な改善によってそれに対応していくということを考えておりますが、さらに今後どうなるかというお話だと思いますが、今回の五カ年計画では、大綱全体の枠組み、さらには陸海空の枠組みというものも残したままでできる限りの効率化を図っていったということになりました。さらに今後どうするかということになれば、場合によっては、今度は陸海空の境を一回外してみてもう一回効率化を考えるとか、そういったようなさらに努力を重ねて、この枠組みをできるだけ守りながら大綱水準を維持していきたい、こういうように考えております。
  85. 上田哲

    上田(哲)委員 最後に。時間がありませんからこれで終わりますが、私は今の発言を大事にしたいと思っているのです。私が漏れ聞いているところでは、やはり何でも軍備をふやせばいいと言うばかりの人ではないと思いたい。事実そうだと思います。そういう意味では何とかして、大綱というのは日本のぎりぎりの線だ、私たちはそれを、ならばいいと言っているんではありませんが、それを守っていく、今国論の最大がそこにあるわけですから。私たちは一%が賛成だと言っているのでもないし、大綱が賛成だと言っているのではない。しかし、国論の多数がそこならば、一つのナショナルコンセンサスを持つのであれば、それを最大限に広げていくということがやはり当然なことだと思うのです。そういう中で、今シビリアンが考えている中には、陸海空の三軍の再編成を考えても何とかしてやっていきたいという発言がある、これは大変なことだと私は思っています。非常に大変なことだと思っています。  こういう問題を、ひとつ今後も十分に策定の努力をしていただいて、総理は、ああいう発言もありましたけれども、どうかひとつ、シビリアンコントロールの実を上げていただくことを、この大きな転換期の新計画の発足に当たって国会の中にしっかりした議論としてとどめておくことをもって、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  86. 天野光晴

    天野委員長 これにて上田君の質疑は終了いたしました。  次に、正森成二君。
  87. 正森成二

    ○正森委員 今国会には共済年金法案がかかっておりまして、今国会での重要法案ということになっておりますが、共済年金は加入者が六百万、受給者が二百万、家族を入れますと一千万を超える国民が関係して、重大な関心を持っております。  そこで伺いたいわけですが、まず最初に技術的な問題から伺いますが、国民が納めた年金関係の保険料というのは、昔ならお金がたまりますと、庭に穴を掘りましてかめの中に入れまして、泥棒が入らないように気をつけるということでありましたが、このごろはそういうようなことはいたしません。大蔵省の資金運用部でこれを利益を生むように運用するわけでありますが、現在、年金の積立金は、厚生年金あるいは共済年金幾らあるのか、まずお答えを願いたいと思います。
  88. 窪田弘

    ○窪田政府委員 五十九年度末の決算が出ている最新の数字で申しますと、厚生年金が四十三兆三千億、国民年金が二兆四千八百億、共済組合につきましては、国家公務員共済組合が約一兆円、地方公務員共済が七千億、こういう数字になっております。
  89. 正森成二

    ○正森委員 それらを合計いたしますとざっと四十八兆円ぐらいになるはずであります。したがって、それがどういうように運用され、その運用利回りが幾らになるかというのは関係者にとって重大な関心事であります。  そこで、その運用利回りを考える場合には、名目的な金利を考えまして、そこから消費者の物価上昇率を引くといいますか、割りまして実質金利を出すわけでありますが、あらかじめお願い申しておきましたが、成長率が大体一%になり物価がほぼ安定いたしました昭和五十三年以降で、実質金利が運用利回りから見て幾らになるか、あるいはそれが難しければ、最近の五十七、五十八、五十九年ではどうなるかをお答え願いたいと思います。
  90. 窪田弘

    ○窪田政府委員 運用部の預託金利と消費者物価の上昇率の関係でございますが、最近三年間で申しますと、預託金利から消費者物価上昇率を差し引くという簡単な方法で計算さしていただきますと、五十七年度が四・九%、五十八年度が五・四、五十九年度が四・九%おっしゃいました過去五十三年度から五十九年度までの平均で申しますと、三・四%ということに相なっております。
  91. 正森成二

    ○正森委員 お聞きのように、経済成長が一%台に安定いたしました五十三年以降では大体三・四、最近の三年間で見ますと五%に近い、四・五を上回る金利であるということになっております。  そこで、今度の改正案について申しますと、改正案は現在から保険料は逓増するということになっておりますが、制度が完成した場合には、例えば基礎年金では五十九年度価格で一万三千円で推移いたします。これを四十年間納付をいたしまして、さらに五年間据え置いて六十五歳から五十九年度価格で六十万円ずつ支給されるということになるわけであります。  そこで、ある世代が、二十歳の世代が全部で幾ら保険料を納めるのか。それについて、実質金利が大体最近の七、八年では三・四、最近の三年では五%近いわけですが、安全を見まして三%であるということで運用するものとして計算しましたのが、お手元に差し上げました資料1であります。この資料1の二枚目、三枚目を見ていただきますと、パソコンで計算いたしました数字が載っております。保険料収入が総計幾らになるか、それを三%で運用すると幾らになるか、そして六十五歳から六十万円ずつもらいますので、それを引いていきますと幾らになるかという数字が出ております。  そうしますと、政府の説明では国庫負担が三分の一あるということなんですが、国民はそんな国庫負担三分の一を何ら当てにすることがなく、自分の納めたお金とその運用金利だけももらわないうちに死んでいくということになるわけであります。線を引っ張っておきましたが、八十歳まで生きましても九百四十二万五千円国に寄附をして死んでいくことになる。八十五歳まで生きたとしても七百六十四万五千円寄附をして死んでいくということになるわけであります。  これは共済年金全体についても同じことでありまして、資料2を見ていただきますとその関係が書いてあります。これは、高等学校を卒業して行政職(一)で公務員になった方が、八等級三号俸から始まる、最終は四等級の十九号俸にまでなるということで計算いたしまして、しかも妻のない場合は非常に不利でありますが、妻がある、そしてその妻も大抵日本では三歳から五歳年下でありますが、そうすると妻が基礎年金をもらうのがおくれます。私の妻などは九歳も下で大いに損するわけでありますが、仮にこれを同年齢であるというように計算をいたしましてどうなるかというのを見ますと、資料2に全部書いてありますが、七十五歳まで生きても国に対して三千三百七十二万円寄附をして死ぬことになる、八十歳まで生きましても二千五百十八万円寄附をして死ぬことになる、こういう計算が出てくるわけであります。  ちなみに、そこには資料に提出しておきませんでしたが、一体こういう点から見ると何歳まで生きれば元を取れるんだろうかというように考えてみますと、共済年金についてはおおむね九十二歳まで生きなければ元は取れない。基礎年金全体について見ますとさらに伸びまして、百歳を超えなければ元が取れないという計算になるわけであります。百一歳であります。そういうような状況になるわけですね。これは、大蔵大臣あるいは総理どちらでもよろしいが、余りにも国民に対する収奪ではないでしょうか。こういうことで国民が年金というのはありがたいものだというように果たして考えるでありましょうか。御答弁を願いたいと思います。
  92. 吉原健二

    ○吉原政府委員 今、先生から一定の前提に基づいた試算による御説明があったわけでございますけれども、公的年金制度におきましてはそういった考え方、仕組みではでき上がっておりませんで、今おっしゃいましたのは、私的年金の場合あるいは個人年金の場合には個人が長い間積み立てて、一定の利回りを得て、その範囲内で年金を受け取るという仕組みになっておりますけれども、公的年金の場合にはそういう個人の積立貯蓄というような形ではございませんで、世代全体が社会的扶養の形で老齢世代を扶養するというような仕組みで運営をされている、そういう考え方で成り立っているわけでございます。ですから、その考え方の前提が、公的年金の場合には先生のおっしゃることが全く当てはまらないということがございますし、それから先生が今お示しいただきました試算というのは、物価がゼロで実質利回りが三%という前提での計算でございますけれども、物価がゼロで実質利回りが三%という計算が果たして現実的かどうかということを考えますと、これから長い、六十年なり八十年なり先を見通した年金制度におきましては、物価がゼロという前提での試算ということは実際問題として私どもあり得ないのじゃないかというふうに思っておるわけでございます。
  93. 正森成二

    ○正森委員 厚生省の年金局長ともあろう者がそういう答弁をされたら困るのですね。私が言っておりますのはわざわざ実質金利と言っておるので、物価が仮に上がりましても結果としては計算上は同じことになるのですね。物価が上昇いたしますと年金給付額も物価上昇に見合って改定されることになっておるのですから、それは結局影響はゼロになるわけで、問題は実質金利が幾らかということだけがきいてくるわけであります。だから、大蔵省に聞いたら大蔵省は正直に、成長率が一%になった五十三年以降では三・四%だ、特に最近の三年間では四・五%を超え五%に近いということでありますから、私は政府の「八〇年代経済社会の展望と指針」というのに基づいて大体そういう成長をなさるであろうという前提で計算をしておるわけであります。したがって、物価の問題についての年金局長答弁は全く理由にならない。  第二番目の、社会保障あるいは公的年金というのは世代間のことを考えてやるもので、私的な年金とは違うという意見はそのとおりであります。けれども、その前提を認めるとしても、余りにも一つの世代にとって不利な制度である。私は、この政府の提案している制度が成熟した段階にどうなるかということを問題にしたわけでありますが、そうしますと、今の二十歳の方、あるいは少し見ましても三十歳代の方は、多かれ少なかれ私が計算したこういうようなことになる。もっと重大なことは、それから以後の世代は全部私のこの計算がぴったりと当てはまるということになるわけであります。そうしますと、国民の間に、こんなひどい公的年金ならば私的年金の方が得ではなかろうか、民間の方が得ではなかろうかということになるわけであります。  私は、時間の関係で申しませんが、ここに民間のいろいろなプランを持ってまいりました。これは、なるほど物価スライドはございませんが、物価上昇分、政府の平均の三%ということで計算しまして、それを減価してどれぐらいになるだろうかというように計算したら、こちらの方がずっと有利で、大体七十二、三歳まで生きれば元は取れるという格好になっているのですね。ですから、総理は民間活力なんて言いますが、この種の会社はどう言っているかというと、なるほど紙には書いておりませんが、勧誘するときには、政府のものよりもずっとこちらの方が有利でございます、だからこれに御加入ください、こういうぐあいに言っているのですね。一体政府が厚生年金では二〇%、そして共済年金では一五・八五というように援助をして公的年金であるというものが、私的なものよりもずっと不利であるというようなことで、どうして公的年金に対する国民の信頼ということをつなぎとめることができますか。今、年金局長がいろいろ言いましたけれども、その言い分は、せんじ詰めれば年金というのは結局税金なんだ、だから、自分の納めたものは損をするということがわかり切っておって納めなければならないのだということを政府答弁していることにほかなりません。そんなものでどうして公的年金に対する国民の信頼をかち取ることができるでありましょうか。だから国民が今度の年金の改悪に反対をしておるわけであります。  私は、それを政府が三十年先、五十年先、二〇五〇年までいろいろ計算しているのですね、だからそれならどうなるだろうかということでパソコンで計算したら、同年齢の妻のある場合で八十五歳まで生きても、なおかつ二千数百万円損をする。政府の国庫負担なんか全然もらわないでも一生が終わってしまう。あるいは遺族年金と言われるかもしれませんが、八十、八十五歳まで生きれば自分の息子だってとっくに十八歳超えるのですね。そうなれば、まるまるです。これは実にひどい収奪であるというように言わなければならないというように思うわけであります。  そこで伺いたいと思いますが、軍事費の関係であります。今まで多くの委員が質問をされました。今度の中期防衛力見積もりでは五・四%の率だということになっております。——外務大臣、瞑想にふけっておられるようでありますが、あなたも、ニューヨーク入りをした九月二十三日に日本協会で講演されまして、防衛力整備五カ年計画を完全に実施していくため、五・四%という実質伸び率で我が国の防衛費を伸ばしていく、これはNATO諸国の三%目標を上回るというように言っておられますね。間違いありませんか。瞑想から覚めるために答弁してください。
  94. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 そういう趣旨のことを述べました。
  95. 正森成二

    ○正森委員 そして、経企庁長官もお認めになりましたように、GNPのデフレーターは二・五%でありますから、七・九%ふえていくということになります。  そこで、資料の3を見ていただきたいと思います。  資料の3を見ていただきますと、七・九%ずつ伸びるということで計算をいたしますとどういうぐあいになるかという数字が書いてあります。それを見ますと、五九中業の範囲を見ましても、昭和六十五年には防衛費は四兆五千八百八十七億円になります。昭和七十年には六兆七千百二十一億円になります。昭和八十年には何と十四兆三千六百十二億円になる。こういう姿になるわけであります。これをあなた方は、ある一定の前提を置いて二十年間伸ばしたものにすぎないと言われるかもしれませんが、昭和六十五年までは少なくとも中期防衛力整備計画ができているからこういうことになるのは間違いがない。しかも、この傾向は将来まで続くと言わなければなりません。  資料の4と5を見てください。これは最近の防衛力の姿を見たものでありますが——総理、次には総理に質問いたしますよ。新規後年度負担額を見ますと、昭和四十年ぐらいにはわずか五百億ぐらいだった。それが昭和六十一年度には実に一兆六千八百十四億円、これは概算要求でありますが、天をつくような勢いで伸びております。  ところが、新規後年度負担の当年度歳出化比率、つまり後年度負担をどれだけ当年度に予算として表に出すかという点では、昭和四十年ごろはそのうちの一五・七%を歳出化しておりましたが、だんだんだんだん減って、昭和五十六年には五%に減り、それが現在は一・七五%であります。つまり、ツケによる買い物はどんどんふえるけれども、そのツケを実際に当年度に落とすというのは驚くべき勢いで低下しておる。つまり、ツケ買いもここにきわまれりという軍事費の姿になっているということを示しているわけであります。  資料の5を見てください。その結果防衛関係費に占める後年度負担の割合は、十年前の三七%台に比べまして八三・五%に上がっております。また、物件費に占める後年度負担の歳出化率は、四三%から六二%に上がっております。防衛関係費全体に占める後年度負担の歳出化率は、一九%余りから三五・三%余りにふえております。これはどういうことかといえば、防衛費が後年度負担でツケ買いをしておるために、そのツケを現在の収入の中で落とさなければならぬ、その負担がウナギ登りにふえておる。そして新しい年度の新規後年度負担額は、かつては一五%も当年度に出しておったのに、現在では一・七五%で、ますますツケを先送りするという姿勢をこの数字は明瞭に示しているのです。  ということはどういうことかと言えば、資料3に戻りますが、軍事費の増大のこの傾向は、単に中期防衛力整備計画で確定している昭和六十五年まででなしに、これは昭和七十年まであるいはそれ以降まで、政府の政策の変わらざる限りは続くものであるということを示しているわけであります。そうではないですか、防衛庁長官
  96. 池田久克

    池田(久)政府委員 各般にわたる御質問でございますので、ちょっと説明させていただきたいと思います。  まず資料3の問題でありますけれども、これは最近の防衛費の成長ぐあいが無限大に続いていくという前提で計算されております。多分社会福祉も文教費も同じことだと思いますが、理論的にはいずれも無限大に行くという発想のことであると思います。しかし我々は、御承知のように、防衛費と申しますのは国の全般の財政状況、それからその他の施策とのバランスで決めていくという方針を守っています。  では、最近なぜ防衛費がふえているか、こう考えますと、御承知のように、昭和三十年当時は、防衛費は全体の一三・六%ございました。それが当時は社会福祉や文教費よりも実額が多かったわけてあります。そのために防衛上にいろいろな欠陥があるということを最近是正しているのが原因であります。  次に、資料の4と5について若干御説明させていただきたいと思います。  後年度負担と申しますのは、御承知のように向こう四年間で歳出化されるものでありますから、当該年度で全部歳出されるというものではございません。  最近、なぜ後年度負担がふえているかと申しますと、一つには、自衛隊全体の能力を向上させるために、人件費とか維持費の比率を下げまして装備化率を高くしてきています。そのために、後年度負担がふえてまいります。しかも、後年度負担は、先生篤と御承知と思いますけれども、装備品が四年とか五年とか、そういう期間がどうしてもかかる。これは一年の歳出ではできないということであります。それから前金の率が下がってきておりますのは、御承知のように生産基盤が確立してまいりましたし、生産量も多くなりましたし、資金繰りが多い、そういうことから前金の率がそう要らないということが原因でございます。
  97. 正森成二

    ○正森委員 今の説明はもう全く説明になっておらないですね。無限大に伸ばすと言いますが、昭和六十五年までは、経企庁長官答弁を見ても、外務大臣が外国で言っておられることを見ても、こういう数字になり、その総計が十九兆八千億円を超えるということは、今までの多くの委員の質問の中でも疑いのない事実になっているじゃないですか。そしてその傾向が伸びざるを得ない硬直化の要因があるということを私が申し上げたら、それに対しては十分に否定する答弁を今の答弁者は全くなさらない。現に、歳出化の当年度の比率がずっと減っていっている、そして硬直化率が増大しているということは否定することのできない事実であるというように中さなければならないのですね。  そこで、時間の関係で最後にまとめて総理に答えていただきますが、厚生年金については改悪——改正ですか、行われましたが、それについて厚生大臣は、ことしの四月九日に参議院の社会労働委員会で、この改正の結果国庫負担が減少するということについて資料をもって答弁をされました。それが資料6に出ております。  その資料6を見ますと、国庫負担は減少いたしまして、一番減少するときでは西暦二〇二五年ですが、二兆七千億円国庫負担が減少するということになっております。  共済年金についても、これは今度の改正によって国庫負担が減るはずでありますが、私が六月に本会議で質問しましたが、大蔵大臣はお答えになりませんでした。六月に大蔵委員会で質問しましたけれども、鋭意計数の整理中で、できるだけお答えするようにしたいと言われましたが、六月段階ではお答えになりませんでした。その結果、厚生省のこの答弁との対比で、二十一世紀を含めてどういう姿になるのか、大蔵省、答弁してください。
  98. 門田實

    ○門田政府委員 お尋ねの国庫負担でございますが、今回の改正は年金制度の一元化ということで、共済組合員にも基礎年金制度を導入いたしますとともに、給付と負担の均衡を図る、こういうことで制度の仕組みが変わっておるわけでございます。  改正では、基礎年金の給付費用に国庫負担は集中する、こういうことになっておりますので、従来の国庫負担との直接的な比較というのはちょっとどうかと思いますが、全体として現行制度との比較をいたしますと、当初は経過措置が設けられておりますので、ほとんど負担額は変わりありませんが、将来に向かいましては給付水準を落としていくということもありまして、公経済負担額が低下していくということになるわけでございます。  具体的な数値で申し上げますと、これは国共済連合会の一般組合員についてのごく粗い試算でございますが、五十九年度価格で見まして現行法を前提といたしますと、六十一年度が約六百億円、六十五年度が約八百億円、七十年度が千百億円、西暦二〇〇〇年の昭和七十五年度が千四百億円、こういうふうに見込まれます。改正案では、改正当初の六十一年度は約六百億円で現行とほとんど変わりありませんが、六十五年度は約七百億円、七十年度は約八百億円、七十五年度は約九百億円、こういう予想でございます。(正森委員「二〇〇〇年は」と呼ぶ)二〇〇〇年、七十五年度は九百億円でございます。
  99. 正森成二

    ○正森委員 厚生省は二〇五〇年まで出していますね。その先を言ってください。先ほど大きくなるでしょう。
  100. 門田實

    ○門田政府委員 共済の場合はまた共済独自の作業ということでございまして、余り先まで実は自信を持ってお答えする計数が出ていないのでございますが、昭和八十年度、現行でいきますと千七百億円、九十年度二千億円、これが改正案では一千億円、一千二百億円と、ここまで試算しております。
  101. 正森成二

    ○正森委員 今、国庫負担の推移を一番少ない国公共済についてお話しになったのですが、それでも今、お話を聞きますと、大体二千億の負担だったのが約半分の千億に減るということになっております。つまりこういうぐあいに、厚生年金の場合には二兆七千億、八千億円も違うのですが、国庫負担を減らすことによって国民の保険料を上げ、そして年金給付額を下げる、その大きな原因はやはり軍事費が硬直化し、それがどんどん増大するという構造になっておると思うのですね。これでは国民の間に年金の将来や年金の給付と保険料とのバランスについて十分な信頼性を得ることはできないというように思いますが、総理にこの点について御答弁をお願いいたしまして、時間になりましたので質問を終わらしていただきます。
  102. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 御意見としてよく承っておきます。
  103. 天野光晴

    天野委員長 これにて正森君の質疑は終了いたしました。  次に、矢山有作君。
  104. 矢山有作

    ○矢山委員 この予算委員会での靖国神社の公式参拝をめぐる議論を聞いておりまして、二、三指摘したい問題がありますので、まずそれに触れさせていただきたいと思います。  藤波官房長官、あなた、自分でつくられた懇談会ですから、懇談会から出された報告書というのは熟読玩味しておられるはずだと思うのです。あなたの公式参拝をやったときの談話によると、参拝形式を宗教色を抜くように変えたとか、あるいは玉ぐし料を公費で支出しなかった、だから公式参拝、いわゆる憲法違反のおそれはないんだということを言っておられますね。ところが懇談会の報告書を見ると、玉ぐし料を公費で支出するとか、参拝形式はどういう参拝形式をとられるかは問題になってないんですね。要するに公的資格で参拝すれば公式参拝だ、こう言っているわけですよ。この点は一つ私は問題があるんじゃないかと思います。将来この懇談会報告書を踏まえて玉ぐし料を公費で支出する、こういうことになるかもしれない、このおそれもあります。  それからもう一つの問題は、これは総理の御答弁なんですが、戦没者の追悼に行ったんだ、だからこれは憲法違反にはならぬ、簡単に言うとこういう論法だと思うのです。ところが戦没者の追悼、追悼というのは確かに非宗教的な観念、概念だと言われておる。ところが、そういう戦没者に対する追悼だと言って行かれても、その施設が純然たる宗教施設だ、こうなると、一般的に社会通念で客観的に考えた場合には、これは、ああ宗教的な意味を濃厚に持っておると考えるのが当たり前だ、私はそう思う。  それからもう一つは、戦没者への追悼だということで、A級戦犯が合祀されておる問題についてはどうも積極的なお答えがない。私は、戦没者の追悼だ追悼だと言われても、A級戦犯が合祀されておるところに追悼においでになったんだから、これも客観的に社会通念から見れば、A級戦犯者にも追悼の念をささげた、こういうふうになるのが当たり前、こういうふうに思うのです。  それからもう一点、これは中国などが東条英機元首相らA級戦犯の同神社の合祀に強く反発している、こういうことから、自民党は東条元首相らの合祀について同神社に善処を求めることで公式参拝を維持していくことの検討を始めた、まあこういうふうに報道されております。  ところで問題は、善処を求めるというのは恐らく靖国神社にA級戦犯の合祀を何とかやめてくれぬかという、あからさまに言うとこういうことでも頼もうと思っているんじゃないかと思いますが、これは私はやはり重大な憲法上の問題にかかわってくると思いますよ。自民党というのは政権政党、議会制のもとにおいて政権政党ですから、こういうことになってくると、信教の自由に対する侵害が陰湿になっていく。これは大変な問題です。もしおっしゃりたいことがあれば承りたいと思います。
  105. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 御質問にお答えをいたしたいと思います。  まず、靖国懇の報告書の問題でございますが、私は何回も申し上げてきておりますように、一年にわたって靖国懇でいろいろ各方面から議論をしていただきまして、報告書そのものには、こういう意見もあった、こういう意見もあったというような書き方も当然あります。そういう中で、十分靖国懇の報告書を参考にして、そして、いろいろな角度から政府が検討をいたしました結果、今回の八月十五日の公式参拝の方式を決定をした、そういう形で公式参拝をした、こういうことになっておるという経緯をぜひ御理解をいただきたいと思います。報告書がありましたので、それを受けて全部そのとおりやった、こういう意味ではありません。それを参考にして検討した、あくまでも政府の責任において検討したつもりでございます。  それから、二番目に、やはり靖国神社が宗教法人の施設であり、そこは、行くこと自体が宗教とのかかわりが起こるのではないかというお話につきましては、国民の多く及び御遺族の大部分の方々が、靖国神社を戦没者追悼の中心的な施設とお考えになっておられる、そういう靖国神社に出向いてぜひ戦没者を追悼してもらいたい、こういう強い要望を受けて、靖国神社に赴いて、宗教色を排除して、そして一礼をするという形をとって、戦没者を追悼し、平和を祈願する、二度と戦いを起こさない、そういう誓いを新たにする、そういう目的で行ったものであるということをぜひ御理解をいただきたいと思うのでございます。  三つ目に、A級戦犯にかかわる問題でございますが、そういう国民の要望に基づいて、靖国神社に出向きまして、靖国神社で一礼をするということによりまして、戦没者を追悼し、平和を祈願するということを行ったわけでございますが、それは一人一人だれを追悼するということでなしに、戦没者一般ということを頭に置いて追悼するという形をとっておりまして、靖国神社にだれがお祭りされているかということを一つ一つ吟味して検討してという上のものではない。したがいまして、だれを追悼するかということは、戦没者一般を対象にして追悼したものである、こういうふうに私どもは理解をいたしておるところでございます。  それから、最後にお話のございました、宗教法人靖国神社が決定をいたしております合祀された方々について、具体的には今A級戦犯の方々を対象にお話しになりましたが、そのことについていろいろ政治、行政の側から触れることは憲法との関係でいかがかというお話につきましては、宗教法人の活動について、政治の側から物を言うということはよほど気をつけていかなければならぬことだというふうに考えております。これは、どういう方を合祀するかということは、宗教法人靖国神社が決定するということでございますから、そういう意味では、まさにそのことをどうするかというのは宗教法人靖国神社自体がどういうふうに考えるかということの問題であろうかと思うのでございます。ただ、靖国神社を崇敬しておられる方々とか、あるいは自由民主党の議員の方々とかというのは、いろいろな機会にいろいろなお話し合いの機会は従来もあったわけでございますから、そういう意味では、いろいろなところでそういう話題があるのかなというふうに思っておりますが、政府の側から、宗教法人靖国神社に対しまして、合祀されておる中身についてとやかく言うという気持ちは持っておりません。そのことは、憲法との関係で非常に気をつけなければならぬ、先生御指摘のとおりだ、こういうふうに考えておるところでございます。
  106. 矢山有作

    ○矢山委員 この議論はぜひもっと詰めたいのですが、これでやっておると時間を食われますから、もう一言だけ言っておきます。  懇談会報告書というのが、政府が今回の公式参拝を合憲とする判断をした重要なよりどころになっておるわけであります。その懇談会報告書には、公式参拝といえば公的資格で参拝することだけ、あとの問題は関係ない、どういう参拝方式をとろうと、玉ぐし料を公費で支出しようと関係ないんだと言っておりますから、私は、将来、今度の公式参拝が突破口になって玉ぐし料も公費で出す、そういうことになる、そういうおそれを多分に感ずるからあらかじめ指摘したわけです。  それから、私が申し上げたことの方が、いわゆる戦没者の追悼の問題にしても、戦犯合祀に対する追悼の問題にしても、社会通念に基づいて客観的に判断した結論だろうと私は思う。あなたの考え方の方がどうかしておる、これだけ申し上げておきます。  それから、私は、今度の戦犯合祀をどうするかという問題で、新聞に報ぜられておるような動きがあるということは、これは下手をすると、繰り返しになりますが、陰湿な形の信教の自由の妨害が進みますよということをさらに重ねて申し上げておきます。  そこで、私は大蔵大臣にお伺いしたいのですが、大蔵大臣は八月十五日の午前と午後と二回にわたって靖国神社に御参拝になりました。私はあなたの、忙しいのにもかかわらず二度もお参りになるという、宗教心というのか、それにほとほと感服をしたわけでありますが、午前と午後の参拝はおのおのどういう形でどういう資格で参拝をされたのでしょうか。
  107. 竹下登

    ○竹下国務大臣 朝は、靖国神社へみんなで参る会というのの私は会長をいたしておりまして、今は奥野先生が会長でございますが、会長をしております当時から、非常に抵抗なく素直にお参りするのにはみんなの会というのがあった方がいいじゃないかとかねて考えておりまして、それを実行いたしておりまして、それをそのまま延長線上で実行したと……(矢山委員「私人ですか」と呼ぶ)私人ということになるのでございましょう。午後の場合は、当日の閣議で官房長官からお話を聞きまして、そのとおりに武道館の帰りに参りましたということでございます。
  108. 矢山有作

    ○矢山委員 そこで、私はこれは重大な問題があるなと思ったのです。官房長官はわざわざ談話で、憲法二十条の信教の自由とも関係があるので、各閣僚に対して参拝を義務づけるものじゃありません、こう言っているわけですね。参拝は制度化しないんだ、こう言っておるのです。ところが、大蔵大臣の行動に見られるように、一たん公式参拝に踏み切ってしまうと、これは幾ら義務づけないとか制度化しない、強制しないと言っても、実質的には強制されておる形になるのですよ。見ておってごらんなさい、大蔵大臣ですら午前中この忙しいのに私人として参拝しているのでしょう、また午後、公人として公的な資格で参拝をやるんだ。これから国家公務員も地方公務員も、公式参拝を総理がやったんだと、我も我も公式参拝、公式参拝、こうなっちゃうんですよ、これは。いわゆる実質的に強制になるんですよ。どうなんですか。
  109. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 かねてから宮澤官房長官国会でお話を申し上げてきておる統一見解がございます。それを踏まえてずっといろいろ検討してまいりまして、そして今度の形で公式参拝をするということは違憲にならないという見解をとるに至ったということを御説明申し上げて、しかし、これはあくまでも閣僚一人一人のお考え、判断の問題であるということを何回も詳しく御説明を申し上げて、それに基づいて閣僚がそういう行動をとられたということだけは念のために申し上げておきたいと思います。
  110. 矢山有作

    ○矢山委員 今官房長官がおっしゃるように、もう御丁寧に御丁寧に、強制じゃない、義務じゃないとおっしゃった。それでも大蔵大臣はやはり、皆さんがお参りになる、総理も公式参拝をされるのだからおれもちょっと行かぬとぐあい悪いだろうなと行ったわけだ。ニューリーダーと言われておる竹下大蔵大臣ですらそうなんです。まして一般の国家公務員、地方公務員、我も我もと公式参拝をするようになる、つまり強制になる、そのことを申し上げておるのであります。私は、厳にこの問題については反省を求めたいと思います。  そこで、これから私が申し上げるのは極めて憲法的な議論になるのです。したがって、一つ一つ。問題を出して議論をしないといけないのですが、残念ながら私の時間は一時間しかない。そこで、私は今までの公式参拝をめぐる会議録をずっと一応目を通させていただきました。その上に立って申し上げますので、よくお聞きをいただきながら、御答弁を簡略に、しかも的確にお願いしたいと思うのです。そのことをまず申し上げておきます。  六十年の八月十四日の「内閣総理大臣その他の国務大臣の靖国神社公式参拝について」の藤波官房長官談話によりますと、今回公式参拝を合憲として実行したのは閣僚の靖国神社参拝問題に関する懇談会の報告書を参考にしたと言っておられるわけであります。すなわち、公式参拝に関する従来の、先ほど話に出ました政府統一見解を変更したのは靖国懇の報告書によるというのであります。ところが、政府統一見解を靖国懇の報告書に基づいて変更するということは、私は議会制民主主義の否定につながるということで絶対に容認できません。  そこで、まずこのことからただしてまいりたいと思います。  懇談会の法的位置づけ、これについて「懇談会等行政運営上の会合の開催について」というのが、行管理第一九号、三十六年四月十二日、行管庁行管局長発という文書が出ております。これによりますと、「懇談会等は個々の個人の意見を聞くのみで行政機関としての意思の決定を行わないものであるというのが国会における政府答弁の要旨である。」こうあります。また、「審議会と懇談会との差異について」、これは行管庁行管局の三十八年三月十八日の文書であります。これには「いわゆる懇談会にあっては、会議機関としての意思が表明されることなく、出席者の意見が表明されるにとどまるところにあります。 したがいまして、懇談会は、出席者の意見の表明又は意見の交換の場であるにすぎないのであります。」と言っております。  国会におきましても、このことは論議の中でたびたび政府の言明で明らかになっておるわけであります。申し上げますと、五十九年の四月十日、参議院の予算委員会におきまして後藤田総務長官発言で、国家行政組織法第八条の法律で定めるところにより置かれる審議会と懇談会等私的諮問機関の相違については、政府は、審議会については審議会を構成する個々の意見とは別の合議機関そのものの意思が答申等として公の権威を持って表明されるが、懇談会等行政運営上の会合にあっては、会議機関としての意思が公の権威を持って表明されるものではなく、単なる行政運営上の意見交換、懇談会等の場にとどめるべきものであり、したがって、懇談会等の運用に当たっては、各省庁はこの点を今後とも十分留意する必要があり、特に聴取しました意見を会議機関の意思決定と紛らわしい形で取りまとめること等のないよう留意すべきものであるとおっしゃっておりますね。明確に懇談会の位置づけをしておられる。このことはその委員会におられた藤波官房長官も中曽根総理も首肯しておられます。  また、五十九年三月十五日の参議院の予算委員会において、これは門田政府委員ですか、この方は、「私的諮問機関、懇談会のたぐいというのは、個々人の有識者の御意見を行政運営上の参考に供するために便宜上一堂に会していただいて会議という形で御意見を伺うという性格のもの」であると述べております。  また、藤波官房長官も五十九年五月八日、参議院内閣委員会で、懇談会は、「懇談会の中に何人かの方に来ていただいて一人一人の御意見を述べてもらうこそういうような勉強の場である。ここが大切なんですよ。「そこで方向づけをしていく、あるいは方向づけをするのに利用をするというような意味ではない」とおっしゃっておるわけであります。  ところが、靖国懇はそう言われておるその自分の職分を越えて、僣越な話でありますが、靖国神社への公式参拝を合憲とする意見の一致を見られなかったのにもかかわらず、強い違憲論が展開されておったのにもかかわらず、それらを無視して、「公式参拝を実施する方途を検討すべきである」、あるいは「公式参拝について適切な措置を取られたい。」というように、結論をあたかも機関の意思のようにして報告をしておるわけであります。明らかに懇談会の域を越えております。これは私は違法な報告書だと思う。だから、これをもとにして従来の政府統一見解を変更するということはまさに違法と言わなければなりません。絶対に承服できない。もし御意見があれば承りたいと思います。
  111. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 八条機関といわゆる私的諮問機関、懇談会との差につきましては、今御指摘がありましたとおりでございまして、政府といたしましては、そのような考え方に立ちまして、両者の区別をよく心得て従来も運営をいたしてまいりましたし、これからもそういう考え方で進んでまいりたいと思っておるところでございます。  問題は、約一年にわたりまして懇談会が会合を重ねられてまいりましたその都度、できる限り私どもも出席をいたしまして、そして個々の委員の方々の御意見をよく聞いて勉強する、こういう努力をいたしてまいりました。しかも、その上に立ちまして、報告書には幾つかのところで併記されておる部分がございます、それらも全部よく検討させていただきまして、八月十四日に発表いたしました官房長官談話に書いてありますように、「このたび、「閣僚の靖国神社参拝問題に関する懇談会」の報告書を参考として、慎重に検討した結果こういうふうに書いておりますように、あくまでも懇談会の一年間の勉強を参考にいたしまして、その報告書を参考にした上で政府として慎重に検討して態度を決めた、こういう形になっておる次第でございまして、どうか御理解をいただきますようにお願いをいたします。
  112. 矢山有作

    ○矢山委員 懇談会の報告書を参考にして政府の判断で決めたというのがこれまで何遍も繰り返されてきたことなんです。ところが、政府統一見解というものは内閣法制局で検討に検討を重ねて出てきたものだ。それを私的諮問機関、しかも私的諮問機関が再々にわたって言われておるその職分を越えて出してきた報告書、それを参考にして何で政府の統一見解を変えなければならぬのですか。それが問題だと私は言うのです。まさに議会制民主主義の否定なんです。  そこで、この問題についてそれぞれ政府の方で釈明をされております。一問一答をやりたいのですが、どういう釈明をされておるかということを申し上げながら私は反論したい。  委員の意思によって書かれたものだ、こういうふうな御答弁があります。これはたしか総理だったと思う。ところが、出席者の意見の表明、意見の交換の場にすぎない、だから委員の意思によって報告書が書かれたとしても、懇談会というのは個々の意見を述べるだけでその意見をまとめるものじゃありません、そういうことをしていただくのは僭越ですとなぜおっしゃらぬのです。これが一つです。  それから、もう一つ後藤田総務長官は、個々の意見の集約である、機関意思の決定ではない、だからあの問題について違った意見もあるわけだから違った意見もちゃんと出ておる、こう言う。ところが、こういう意見もあったと記述をされておっても、その上に立って「靖国神社公式参拝について適切な措置を取られたい。」こうやっておる。明らかに個人個人が述べた意見と違うものを機関の報告書に盛り込んでおる。つまり機関の意思決定という形で盛り込んでおる。そんな言い抜けは、これは悪い言葉ですが、三百代言的宣言い抜けと言う。これは通用しない。これを申し上げておきます。  それからもう一つ、これはたしか総理発言がな。まとまった意見があればまとまった意見としていただく、少数意見がある場合には、もちろん少数意見を添付していただく、そういう形で、会議体で初めからこういう合意をつくろうという目的でやっていったのではない、こうおっしゃる。懇談会で何がまとまったんですか、意見が。懇談会でまとまったというのはこれだけだと聞いておりますよ。「戦没者に対し追悼の念を表すことは、国民多数の感情にも合致し、遺族の心情にも沿うもの」である。国民としては当然の所為だ。これだけは、私の聞くところ、委員の皆さんの意見の一致しているところですね。  ところが、政府統一見解を変えて靖国神社公式参拝を合憲とするかどうかというのは、この点については意見が完全に対立しておる。それを、吉見の対立、一番肝心なところの意見の対立をこっちの方へ置いておいて、参拝をすることを検討されたいとか、そんな結論めいたことを導き出すかどとんでもない話です。これは、最後に申し上げたのは総理の御答弁なんだから、総理から御見解を聞きたい。
  113. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私的研究会あるいは懇談会というものの性格は、私が申し上げましたように、個々の委員の皆さんが自由に御議論なすって、まとまったものがあればまとまったもの、まとまらないものがあればまとまらないもの、そういう個々的に意見を我々が徴してそれを参考にさしていただく、そういう型のものでそのとおりやっております。  靖国懇につきましても、同じようにいろいろなさまざまな意見があったように聞いておりますが、最終的にいろいろ懇談をし合いまして、まあこの辺でいこうかという点で合意のできた部分もある、あるいはできない部分もあったかもしれません。しかし、それらはそういうように表明されているのではないかと私は思うのでございます。
  114. 矢山有作

    ○矢山委員 これは中曽根総理が何ぼ強弁されても、みんなが冷静に聞いて判断をしておられれば、これは懇談会の乱用だ、懇談会が機関意思のごときものを報告書に載せるというのは間違いだ、懇談会の間違いだ、それは法的な懇談会の位置を外れておるんだとだれだって解釈するのですよ。それを権力によってねじ曲げた解釈をして、自分の都合のいいような結論を導き出そうなんというのはとんでもない話なんだ。  それで私は総理にもう一つ聞きたい。  公式参拝について、政府統一見解に疑問を持ったのでしょう、あなたは。疑問を持ったから、懇談会をつくってこの問題について議論してくれと言ったのでしょう。政府統一見解、これは内閣法制局で慎重に慎重に検討して出したんだ。その統一見解になおあなたが疑問を持つというなら、なぜあなたは内閣法制局にもう一遍再検討しろと言わないんですか。当たり前の話でしょう。どうしてなんですか。  例えばこうありますよ。内閣法制局の所掌事務は「法律問題に関し内閣並びに内閣総理大臣及び各省大臣に対し意見を述べること。」とある。あなたが主任の大臣ですよ。あなたが内閣法制局を所管する主任の大臣なんだ。なぜあなたは内閣法制局に再検討を命じないのですか。なぜ懇談会のようなものに移すのですか。ということは、どうせ内閣法制局に持っていったところで、自分が考えておるような公式参拝を合憲とするような判断、これは出っこない、これはとてもだめだと。そこで自分の気に入った連中を集めて、そして懇談会をつくって、そこで一定の方向を出させて、その懇談会を圧力にして法制局を抑え込む、そして法制局の見解をねじ曲げさせる、こういうことじゃありませんか。
  115. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そういう事実はありません。  まず遺族の皆様や大勢の皆様方から公式参拝をしてほしい、そういう強い要望が絶えず、私就任以来受けておりました。官房長官が御説明申し上げましたが、地方議会において決議したところがございます。それから自由民主党におきまして、これも総務会を経まして、やはり公式参拝は合憲であるということが決定されて、官房長官のところまでその申し入れがあったわけであります。  与党がそういうふうに申し入れをしてきましたから、それで我々の方も、果たして疑義ありやどうか、もう一回よく検討しよう、そういうことで、そのころの段階から法制局に私が言いまして、もう一回よく検討してみてくれ、今までのやり方あるいは新しいやり方で、新しいやり方があり得るかどうか、そういう点も検討する必要がある、そういうことで検討は依頼しておったんです。そして今度は懇談会をつくる、そういう順序になっておることを明らかにいたしたいと思います。
  116. 矢山有作

    ○矢山委員 法制局に検討を依頼してやらせておるのに、何で懇談会を別につくるのですか。まさに矛盾じゃありませんか。法制局の検討の結果の出ることを待つべきですよ。何で懇談会つくるのですか。そこがあなたの、言っているけれども、自分で矛盾を感じませんか、そんな御答弁なさって。
  117. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 社会通念が那辺にありや、そういうようなことは、いろいろ論議を見まして、判定する一つ資料にはなると思うのであります。
  118. 矢山有作

    ○矢山委員 社会通念社会通念とおっしゃるなら、あなたがおっしゃったように、地方議会の議決だ何だかんだ、今挙げられた、そういうもの一切の資料をそろえて内閣法制局に持っていって、あくまでも内閣法制局で、こういう状況になっておる、検討してみてくれ、こう言えばいい。何も懇談会をつくらなければならぬ理由は一つもない。ここが間違っていると言うのです。  法制局長官、あなた何をやっているのだ全く、本当に。あなた、法制局長官というのは総理大臣の言うままに動くんじゃないんでしょう。それじゃ法制局長官、要らないのだよ。どうなんだ、これ。——余りわけのわからぬ答弁、要らぬよ。
  119. 茂串俊

    ○茂串政府委員 大分手厳しい御批判をいただいたわけでございますが、前々からたびたび御答弁を申し上げておりますように、この靖国神社公式参拝をめぐる問題というのは非常に国民意識にかかわる問題であり、また法理の一点からだけで結論が出るような問題ではないわけでございます。  そこで、この点につきましては、既に五十五年の十一月十七日の宮澤政府統一見解を出しますときにも御説明を申し上げ、またその後の国会の御論議におきましてもたびたび申し上げておったところでございますが、このいわゆる宗教にかかわる問題、したがって国民意識にかかわる問題というものを法律的な、法論理からだけで結論を出すということは非常に至難のわざでございまして、したがいまして、そういう意味で広く国民意識を探るという見地に立った場合に、これは法制局だけの、まあ領分と申しますか、だけで結論を出すということはいかがかというような考え方がございまして、そうしていろいろの経緯があった末に、昨年いわゆる靖国懇ができまして、そうして各界の有識者、各界の非常な専門的な有識者、また権威を持った有識者に集まっていただいて、そうして今私が申し上げたようないろいろを問題について御検討をいただいたというのがその経緯でございます。
  120. 矢山有作

    ○矢山委員 これまで会議録を読むと、何遍も一つ覚えの何とやらのように繰り返しておる答弁なんです、これは。だから、もうそんなことを聞いているのじゃない。  固めてもう一つだけ最後にこの懇談会の問題について言っておきます。  懇談会というのは、これは私的懇談会でしょう。だから人選も、設置するもせぬもあなた方の勝手なんだ。だれを持ってきて入れてもいいんだ。例えば十五人の委員の中で二人ほどだめだというのを入れて、十三人賛成するのを入れておけば、その結論はどうかというと、今度の懇談会の報告書が一番よく端的に示しているのだ。これで意見が大体まとまりましたと、こうなっちゃうんだ。こういう手法を使うというのは、これは議会制民主主義の否定ですよ。これは与野党を問わず、総理にこういうやり方を許しているというのは、国会が小ばかにされていることなんだ。これは断じて許せませんよ。こういう手法がまかり通るならば全くあなた、独裁者的な方向に突っ走ってしまう。これは断じて許されないことです。国会の存在価値はないのです。  そこで、法制局長官がいろいろなことを言っているから僕の方で反論しておきます。あなたの答弁は要らぬから。五十七年三月三十一日、参議院の内閣委員会で味村政府委員は、最高裁判決についても私どもとしては十分に検討した。十分に検討したと言うのですよ。十分に検討したわけですが、この最高裁判決に照らしても違憲とも合憲とも断定することがなかなか難しいと私どもは考えているわけで、その靖国神社に対する公式参拝が違憲じゃないかという疑いは否定できないところですと言っておる。引き続いて、五十九年四月十八日、衆議院の法務委員会で前田正道法制局第一部長、これも同じ見解を述べておる。  そこで問題は、五十四年六月十四日に英霊にこたえる議員協議会小委員会に出席した衆議院の大井法制局長がその見解を述べております。「「公式参拝」は違憲である!!」、と。どういうことを言っているかというと、  津市地鎮祭訴訟最高裁大法廷判決をふまえて考えてみましても、天皇をはじめ内閣総理大臣その他の国の機関が宗教団体にほかならない靖国神社に公式に参拝するということは、客観的には靖国神社という宗教団体とかかわり合いを持つことになり、そのかかわり合いの程度や効果からみて「地鎮祭」の場合とは同一に論ずることはできないと考えられます。すなわち、かかわり合いの程度からいえば、国の機関の靖国神社公式参拝は、戦没者を祭神としてその祭祀を行っている宗教団体たる靖国神社に国の機関が明白に深い結びつきを持つものであることは否めないのであり、また、かかわり合いの効果からみれば、 かかわり合いの効果から見ればですよ。いわゆる目的効果論から見れば、  他の宗教団体との対比において、結果として、まさに特定の宗教団体に精神的援助を与えることとなり、そこに大きな影響をもたらすことは不可避であり、これは、まさに政教分離の原則の根幹に触れる問題であるといわなければならないと考えられるのであります。 こう述べておるのですよ。どうですか。  それから五十八年十月十九日、自民党の靖国神社問題小委員会で前田正道さんもこう言っているのですよ。「同判決」というのは津の地鎮祭違憲訴訟の最高裁判決ですよ。同判決、これは十四人の裁判官のうち、十人の裁判官の多数意見でございますが、これによりますと憲法第二十条第三項で禁ぜられております宗教的活動と申しますのは、国及びその機関の活動で宗教とのかかわり合いを有する全ての行為をいうものではございませんで、宗教とのかかわり合いを有する行為の目的、及び効果にかんがみまして、 目的効果論を持ってきているのです、ここに。  そのかかわり合いがわが国の社会的文化的諸条件に照らしまして、相当とされます限度を超えるものであるとしておりますが、さらにこれを敷衍いたしまして、当該行為の目的が宗教的意義を有し、その効果が宗教に対する援助、助長、促進または圧迫、干渉等になるような行為をいうとしているからでございます。   公式参拝をこの基準に当てはめまして考えてみた場合、靖国神社はさきに申しましたように、国事に殉じた方々を奉斎し、神道の祭祀を行っている宗教法人でございますし、国務大臣が靖国神社に赴かれてい同神社に祭られています祭神に対して拝礼をされるというわけでございますから、公式参拝につきまして、およそ宗教的意義がないとか、公式参拝によりまして、およそ靖国神社に対する援助的効果が生じないというには、疑念を禁じ得ないのであります。   したがいまして、公式参拝が違憲でないと断定しますわけには、なかなかまいりません、ということでございます。 これだけ法制局の中で専門家が寄って、最高裁の判決を踏まえて検討に検討を重ねたのです。そのときに、最高裁の判決の中で重視をされておる目的効果論から見て、その行為が違憲であるか違憲でないか、その点を社会通念に従って客観的に判断するとまで言っておるのだから、この点を抜きにして法制局が議論することはないでしょう。その点を十分踏まえて議論しているはずなんだ。それを今になって公式参拝をやった。その正当づけのために、法制局長官が自分の立場を、どこでどう間違ったのか知らぬが、投げ捨ててしまって、今答弁したようなわけのわからぬ答弁をしている。そんなことは通りませんよ。
  121. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 法理論上の問題は、後からまた必要があれば法制局長官からお答えをいたしますが、今先生からお話しのありましたものの経緯の中で一点だけ申し上げておきたいと思います。  それは、宮澤官房長官国会で統一見解としてお述べになりましたのは昭和五十五年でございます。その後もずっと国民の多くの方々から、特に御遺族の方々から、ぜひ公式参拝をという強い御要望がございまして、それらをずっと通じまして法制局といたしましては検討をしてきたという経緯がございます。いろいろと法理論上検討してきております。しかし、この宮澤官房長官が述べられましたように、違憲の疑いなしとしないという域をなかなか越えがたい、法制局としてはそういう考え方をとってまいりましたので、その後も累次にわたりましてそういった発言があったことは事実であるというふうに思います。  そこで靖国懇なども十分開いて御意見など伺って、それを参考にして慎重に政府が検討をいたします中で、一つ従来の考え方と違うところは、やはり公式参拝の形式ということをよく考え、そして宗教色を排除するということをとにかく考えていくならば……(矢山委員「関係ないのだ」と呼ぶ)いや、関係あるのです。そうすれば憲法の問題がクリアできる、こういう判断を持つに至ったというところが経緯としてあるわけでございます。  したがいまして、そこがありましたので、さらに法制局といたしましても慎重に検討した結果、これならば憲法に抵触しないという判断に立つに至ったということでございますから、従来法制局はいろいろ発言をして慎重にいろいろ検討してまいりまして、そしてまあ言葉はよくありませんけれども、ずっと経緯の中の大詰めでいろいろ検討したところで、法制局も一緒になって検討して、これならば憲法問題に抵触しないという判断を持つに至ったというところがございますから、ぜひそういう経緯は御理解をいただきたい、このように思うわけでございます。  法理論上の問題は、法制局長官から必要があればお答えをいたします。
  122. 矢山有作

    ○矢山委員 だれが聞いてもこういう答弁はまさに牽強付会の典型的なものだね。牽強付会の典型的なものだ。これは話にならぬ。靖国神社に総理が参拝してくれというのは五十五年に事新しく始まった問題じゃないのだ。もう大分前からそういう激しい動きはあったわけでしょう。そういう動きを踏まえて法制局は統一見解を出さなければならぬものだから、五十二年に最高裁の判決が出た。五十五年まで三カ年間かけて最高裁判決を裏から表から縦から横から一生懸命検討したわけだ。その結果やっぱりだめだというので政府統一見解が出た。それをおかしいというなら、前々から言っておるように、もう一遍内閣法制局にいろいろな世論の資料を集めて再検討してみろというならまだ筋が立つ。ところがそうではなくて、法制局ではどうも今までの経過から見てもとても合憲だと言わぬだろう、これを言わせるためには懇談会をつくって、そこで都合のいい報告書を出させて、これが世論だ世論だということで持っていっちゃった。(「邪道だ」と呼ぶ者あり)邪道、まさに。不規則発言が出ましたが、邪道だ。これをやっておると民主主義は息の根をとめられる。議会制民主主義は息の根をとめられる。私はこのやり方というのは断じて承服できない。だから公式参拝は断じて承服できない。  そこで、もう時間がなくなってきたので目的効果論、一つ言っておきます。  最高裁が目的、効果に徴してそれが合憲であるかどうかということを判断する場合に、ある行為が憲法の禁止する宗教的活動に該当するかどうかを検討するに当たっては、「当該行為の主宰者が宗教家であるかどうか、その順序作法が」これは参拝形式も入るでしょう、「宗教の定める方式に則ったものであるかどうかなど、当該行為の外形的側面のみにとらわれることなく、」ここからが大事なんだ。「当該行為の行われる場所、当該行為に対する一般人の宗教的評価、当該行為者が当該行為を行うについての意図、目的及び宗教的意識の有無、程度、当該行為の一般人に与える効果、影響等、諸般の事情を考慮し、社会通念に従って、客観的に判断しなければならない。」主観的に判断しちゃいかぬというのだ、そう言っている。  そこで、一番重要なのは場所の問題なんです。最高裁判決は津の地鎮祭ですよ。津市が市立体育館を建設するのにやった地鎮祭なんだ。ところが、地鎮祭をやったその場所はどこにでもある建築現場だ。建築現場で、そこで一定の神道方式にのっとって地鎮祭をやったというんだ。今度のは靖国神社という宗教施設ですよ。戦前から戦後一貫して——戦前と戦後と性格が変わったとかなんとか言っているかもしれぬが、本質的には変わらないその靖国神社という宗教施設でやるのですよ、これは。その宗教施設には鳥居がある、神殿がある、神門がある、拝殿がある、本殿がある。本殿の奥にはちゃんと祭神が祭られておる。そこでやるのですよ。こういう宗教施設性の濃いところでやるこの参拝は、形式、方法がどうあろうとこれは宗教的な意義が極めて高い、こう見るのが社会通念に従った客観的な判断です。  それから、政府が統一見解を変更して公式参拝に踏み切ったというのは、今後も公式参拝を継続してやるのでしょう、どうもこの予算委員会でのやりとりを聞いていると。するとどういうことになるか。一般人に靖国神社を特別な宗教施設だと思わせることになる。その行為の一般人に与える効果、影響からして、これは靖国神社を大いに精神的に援助することになりませんか。そう解釈するのがこれまた社会通念に従った客観的な判断というものです。主観的じゃだめなんだ。  また、宗教施設でない建築現場での一度きりの宗教的行為である地鎮祭と靖国神社の公式参拝というのは、これは全く異なった宗教的な評価をするというのも社会通念に従った客観的判断、私はそう思う。  いずれにしても、靖国神社への公式参拝は、最高裁判決の目的効果論によっても、地鎮祭の建築現場に比較してはるかに大きな宗教的意義を持っており、靖国神社に多大の援助を与えることになるということは明白であります。国と靖国神社との過度のかかわり合いともなりますので、これは政教分離の原則の根幹に触れるものである。したがって明らかに違憲の行為であります。これは絶対にやめていただかなければならぬということを申し上げたいと思います。  そこで、答弁が承りたいところでありますが、時間に追っかけられておりますので答弁はいただかないことにして——答弁もらいましょうか、では答弁してもらってください。——いや、もうあなたはいい、あなたはだめ。総理
  123. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先般やりました公式参拝は、やはりその追悼の中心施設に対しまして追悼ということで拝礼をした、そして平和を祈願した、そういうことであります。そういう意味におきまして、これは憲法に違反しない、そういうふうに考えております。
  124. 矢山有作

    ○矢山委員 そこで、時間がなくなってまいりましたので、残念でありますが、問題を次に移させていただきます。(写真を示す)見てもらってください。  総理は八月十五日に公式参拝をなさって、さっそうたるお姿が各紙に報道されておったわけであります。お参りになったときの靖国神社周辺状況、そしてそれを踏まえての所感、まずそれをお伺いいたします。
  125. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 あの参道と申しますか、あの周りに遺族の方がいっぱいおりまして、ほとんど足の踏み場もないくらい充満しておりまして、そして私がそこへ参りましたら、手を振って非常に喜んでくれました。それから、いわゆる神道儀式によらない方法で行って拝礼をしたわけでありますが、帰ってまいりましたときには遺族の皆さんは、よくやってくれたという激励の声が非常に多かったように思います。一部遠いところで反対という声も聞こえましたが、これは本当に少数の声でございました。
  126. 矢山有作

    ○矢山委員 現場のやりとりをやっていると話が横にいきますから、総理、遠くの方で反対という声が聞こえておったというのは、あれはお巡りさんに取り囲まれて、そっちへ押しやられた。私見ている。排除された。だから、あなたがあのとき、行かれたときの情景だけ見て判断してはいけませんよ。  それからそこへ、写真ごらんになりましたね。これが当日の参拝をした人の姿です。こういう姿をしておったのが約二十名。鉄砲担いで軍刀つって、そして憲兵の腕章つけて、神前で抜刀式の拝礼をやっておる。これをどう思われますか、総理。こういうことがあなたの公式参拝をきっかけにして起こった、これをどう思われます。(「そういうことは前からあったよ」と呼ぶ者あり)
  127. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そういうことは前からもあったのじゃないかと私は思いますよ。私が行ったから特に起こったというわけではないんじゃな、いでしょうか。
  128. 矢山有作

    ○矢山委員 はい、わかりました。それじゃいいんだ。前からあったとおっしゃった。  警察庁はこれにどう対応しておりましたか。軍刀持っておりますよ、鉄砲担いでおりますよ。これはどういうことになるのですか。国家公安委員長、どういうことになります。
  129. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 やはりこういう問題の取り締まりというのは世間の常識、そういうことを考えていかなければならぬと思います。では法的にどうかと言えば、軽犯罪法違反だとかそういうことがあるかと思いますけれども、私といたしましては常識的に検討すべき問題と考えております。
  130. 矢山有作

    ○矢山委員 総理が不規則発言に対して、こういうことは今までもやっておったとおっしゃるとするなら、こういうことが行われておるのを見て、警察庁は一体どう対応したのですか。軍刀つっているじゃありませんか、鉄砲持っているじゃありませんか。銃砲刀剣類所持等取締法というのは一体どうなっておるのか。(「表現の自由がある」と呼ぶ者あり)表現の自由でこんなことが許されるのなら、我々が軍刀持って歩いてもいいのかな、冗談じゃないよ。ピストル持って歩いてもいいのかね。どういうことなんだ。国家公安委員長、どういうことなんだ。
  131. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 私も今のような、武器を持っておるというような事実につきましては関知しておりませんので、ひとつ警察の方を十分監督いたしまして調査をさせていただきたいと思います。
  132. 矢山有作

    ○矢山委員 私は、この事態が今度初めて起こった、知らなかった、だから調査をさせましょうというならまだ容認できるのです。しかし総理は、前々からやっておった、こう言う。(発言する者あり)前々からやっておったというのは、不規則発言ではない、総理発言なんです。  一体、鉄砲を担いだり軍刀を持って靖国神社周辺を徘回しておるのに対して警察は何も手を出さなかったのか。この法律はどうなっているのか。(「本物の鉄砲がどうか調べたらどうか」と呼ぶ者あり)本当かうそか、それを調べたのか。今また不規則発言が出た。本当の鉄砲なのか本当の軍刀なのか調べたのか。これはちゃんとしなければいかぬよ。
  133. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 本当の物ならこれは法律に違反するものでございます。そういう問題は、今のお話のように、事実を調べまして適切な処置をとりたいと思っております。
  134. 矢山有作

    ○矢山委員 これは銃刀法をごらんいただけば、どういうものが取り締まり対象になっておるかというのがこういうふうに詳しく書いてありますから、これに照らしたら、この写真で判断する限りこれは明らかにこの法律に違反しますよ。あなた、早急に警察庁に命令してちゃんとこの関係者を調べなさい。もう一遍はっきり約束してください。厳しい対応をしてくだ一さい。
  135. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 法律に違反する行為であれば、警察としては法規に従って適切な処置をとるのが当然でございます。したがいまして、今のようなお話につきましては私も今初めて知りましたので、それが本当に銃砲刀剣の法律に反するかどうかということについてひとつ調べますので写真をいただきたい。
  136. 矢山有作

    ○矢山委員 今、国家公安委員長は、調べますから写真をお貸しくださいということでありますから、大事な大事な写真でありますがお貸しいたします。そのかわり徹底した調査をやってもらいたい。そして、法に照らして厳しく処断してもらいたい。いいですね。そして結果を報告してもらいたい。いいですな。
  137. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 適切に処理いたします。
  138. 矢山有作

    ○矢山委員 総理からも確認願います。
  139. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、先ほど申し上げましたように、そういうことがあったんではないのでしょうかと申し上げて疑問を呈しておったわけです。しかし、今国家公安委員長から御答弁申し上げたとおりでございます。
  140. 矢山有作

    ○矢山委員 総理、あなたはいけませんよ、あったんではないでしょうかと疑問を呈した、あったと思っているからそう言ったんでしょう。そういう一たん言ったことをあちらこちら変えるよりも、こういう事態が現実に起こっておるということの事態を重視していただいて、それに対応するというのが総理たるべき者の姿勢なんです。ああでもない、こうでもないと言って言い抜けをするのは総理にふさわしくない。ニューリーダーに越されますよ、そんなことでは。  そこで、もう一つだけ。総理がお参りになったんだ。公式参拝。天皇陛下が、わしもひとつ公式の資格で参りたい、今までは参拝は私的にしておったが、今度は公式参拝でやりたいと思うがどうかと聞かれた場合にどうなさいますか。
  141. 茂串俊

    ○茂串政府委員 天皇陛下の参拝につきましては、これは具体的にまだ全くお話が出ておりませんし、憲法上どうかという点につきましては、お答えを差し控えたいと思います。
  142. 矢山有作

    ○矢山委員 総理、私はあなたに聞きたいのですよ。あなたは、この懇談会報告書を参考にして公式参拝に踏み切ったんだから、度胸を発揮したんだ。その度胸のいい総理が天皇陛下から、私も公的な資格で参拝したいと相談を受けられないという保証はありませんよ。それが出てきたときにあなたはどうなさるのですか。そのときにうろうろしたのでは話にならぬですよ。どうなさるのですか。
  143. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 憲法上国家の象徴たる地位にあられるお方の問題については、仮定の質問には答えない方がいいと思います。
  144. 矢山有作

    ○矢山委員 これで終わりますが、この問題は、最初申し上げましたように、本当を言ったら憲法解釈の問題になりますので、一つ一つ問題を指摘をして最高裁判決をめぐっての論議をやらなきゃならぬのです。残念ながら限られた時間で、それができません。しかしながら、この問題は極めて重要でありますから、私は機会あるごとに、純粋な法律理論としても今後ぜひただしてまいりたいと思いますし、またそういう決意をいたしておりますので、慎重に御検討いただいて、対処をしていただきたい。公式参拝、やめるということですね。  以上で終わります。
  145. 天野光晴

    天野委員長 この際、井上一成君より関連質疑の申し出があります。矢山君の持ち時間の範囲内でこれを許します。井上一成君。
  146. 井上一成

    井上(一)委員 まず私は、先ほどからの靖国問題について、関連して一点、総理に聞かしていただきたいと思うのです。  総理は、国連演説でも、我々日本人の過去における侵略というものを反省し、さらに平和を求めて大いなる努力をいたしたいと強い決意を申し述べられました。私は、そこでぜひ総理に伺っておきたいのは、今回の総理の公式参拝が国際的にも大変な問題を投げかけた、こういうことについて、総理大臣として今、その行為あるいはそれが波及したその国際的な諸要因、諸状況を踏まえて、近隣諸国のことも範疇に入れた中で、公式参拝はまずかったと反省をなさっていらっしゃるのか、それともそんなことはこれっぽっちも反省をしないんだ、そういうふうにお考えなのか、この点を率直に中曽根総理に聞いておきたいと思うのです。
  147. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 公式参拝につきましては官房長官の談話は存在していると前から申し上げたとおりでございますが、これによって起きた近隣諸国あるいは海外の反響というものについては、やはり政治を行う者としてよく配慮をする必要もある、そのように思います。
  148. 井上一成

    井上(一)委員 昨日は自民党の副総裁が遺憾の意を表明されたと報道されているのです。それで、配慮すべきであるという含みの中に、言葉には出せないけれども、中曽根総理もまずは被害を与えたその相手国の立場を十分思いやる、思いを抱くべきであるという反省に立っていると私自身は今の答弁で受けとめたのでございますが、それでよろしいでしょうか、あるいは近いでしょうか。
  149. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 海外の反響あるいは日本が被害を与えた国々の反響については、よく耳を傾けて、我々としてはよく考える必要もある、そのように考えております。
  150. 井上一成

    井上(一)委員 今の気持ちを来年の八月十五日の参拝ということにつないでいくというお考えをお持ちでしょうか。
  151. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本国民の感情というものもまた大事ですし、また外国の国民の感情というものも大事であります。しかし、日本国の総理大臣としては、日本国民の感情というものを無視するわけにはまいりませんし、政府・与党のお考えというものも無視するわけにはまいりません。やはり戦没者を追悼し、そしてこれがために拝礼を行い、そして再び戦争を起こさないように平和を祈念する、そういうことは私はあっていいことである、そう思っております。
  152. 井上一成

    井上(一)委員 もう一点、私は靖国懇の問題についてぜひ伺っておきたいのですが、靖国懇の座長の休日赤社長のお人柄について私は十分承知をしていないのです。できればどのようなお人柄であるか、まあ経歴をここでお聞かせいただければ非常にありがたい、こう思います。
  153. 的場順三

    ○的場政府委員 ちょっとただいま手元に資料がございませんので、すぐ調べて御報告いたします。
  154. 井上一成

    井上(一)委員 待たせていただきますが、私は、元軍人だ、いわゆる幕僚長なり統幕議長を歴任された方だと聞き及んでいるのです。それで、憲法の最も微妙な判断をゆだねる、そういう機関でもあるわけで、そういう機関の座長をお願いするというのは非常に残酷ではないだろうか、シビリアンコントロールの上で再考する必要があったのではないだろうか、あるいはもっと、もちろん林座長も御立派な方だとは思いますけれども、問題が問題だから、このようなことについては他に適材を求めるべきではなかっただろうか、こういうふうに私は思うのです。この点についてはいかがなものでしょうか。
  155. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 手元に資料がなくて大変申しわけないと思います。一人の人の経歴でございますので、間違ったことを申し上げてもと思って、今取り寄せておるところでございます。  懇談会の場合に座長をどなたにお願いするかということは、その懇談会のメンバーで大体御相談いただいて決めていただくというのを、まあ私的諮問機関の場合でもそんな形をとっておりまして、皆様方から林さんにというようなお話もあったところがございます。まあいろいろ意見が出てくる、そういうのを踏まえて司会、進行していただくわけでございますが、今御指摘のような過去の経歴云々というお話も頭にないわけではありませんでしたけれども、やはり日本赤十字社の社長という、現在お務めになっておられます仕事の、非常に公正な広い視野から物事をお考えいただくというふうなお取りまとめ役として適切ではないかというふうに考えまして、では林さんひとつお願いしますというようなことになった経緯がございます。(井上(一)委員「前歴を調べて後でもう一度」と呼ぶ)経歴を御報告いたします。
  156. 井上一成

    井上(一)委員 それでは、私は次に、中曽根総理にお尋ねをしたいと思うのです。  総理の国連創設四十周年記念総会の演説を、私は直接聞くことはできませんでしたけれども、読ましていただきました。これは本当にお世辞抜きで、近来にない演説だと私は共感のできることがたくさんあります。  それで、とりわけ私がぜひ総理に聞いておきたいのは、この文章の中で「平和と自由、民主主義と人道主義を至高の価値とする国是を定め、」憲法を制定した。確かに我が国の平和憲法、それから「平和国家をめざして専守防衛に徹し、」九条を意味すると思います。「二度と再び軍事大国にはならないことを内外に宣明したのであります。」と、強く「二度と再び」という憲法九条の精神を、「軍事大国にはならない」、こういうことを強く強調されているわけであります。  それで私は、軍事大国にならないと言われるそのことは一体どうなのか、どういう状態なのか、何を指すのか。軍事大国という言葉は幾たびか聞き、また幾たびか論じられますけれども、一体どういう状態を軍事大国というのか。あるいは軍事大国というのは、客観的にというのでしょうか、総理の認識として国際的に定義づけるとするならば、どういう状況を軍事大国だと御認識していらっしゃるのか、その点について聞いておきたいと思います。
  157. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 軍事政策というものを国策の中の最も重要な課題、最優先の課題としてまずとらえて、そしてそのために膨大な軍事予算というものを、ほかの予算の犠牲においてこれを盛り上げていく、しかもその政策が軍事優先というもとに国民を抑圧する、あるいは外国に対してもその膨大な軍事力というものをもってこれを恫喝したり、あるいは国策の具に軍事力を使って政策を行う、こういうような性格の国を軍事大国というのではないかと思います。
  158. 井上一成

    井上(一)委員 アメリカソ連は私は超軍事大国だと認識するのですが、総理はいかがなものでしょう。あるいはこの両国以外に軍事大国は存在するのでしょうか。
  159. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 アメリカという国がそういう意味の軍事大国に当たるかどうか。つまり、軍事力を誇示して、そしてその国民のほかの人権とか福祉とかというものを抑圧するとか言論の自由やその他を抑圧しているとか、そういう面でアメリカは違うのじゃないか、そう思います。  それから、国防上あるいは平和維持という観点から軍事費というものはかなり膨大になっておりますけれども、しかしその政策それ自体を見ますというと、いわゆる昔の帝国主義国家、軍事的帝国主義というような性格からは非常に遠のいてきているのではないか、そういうふうに私は思います。
  160. 井上一成

    井上(一)委員 アメリカはそうでなく、それじゃ私はソ連はと言ったのですが、ソ連は軍事大国の範疇に入る。アメリカだけがどうしてなのか。  むしろ私は、それは総理、あなたが国連で演説をされた、そして軍事大国にならないというのは、じゃアメリカは軍事大国でないとするなら、アメリカのような状況であれば我が国も軍事大国でない、そういうような意思をお持ちでいらっしゃるのか。
  161. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、日本は軍事大国ではない、もちろんそのように思います。  ただしかし、いわゆるスーパーパワーと通俗的に世界のジャーナリズムで言われていますが、これはICBMをああいうふうに大量に持って、そして相対峙している米ソ、これをスーパーパワー、そういう名前では通俗的には呼んでおるようであります。
  162. 井上一成

    井上(一)委員 スーパーパワー、じゃミリタリーパワー、あなたはたしかプレスに配付した英語ではミリタリーパワーを使っていらっしゃるわけです。我が国はミリタリーパワーにはならない、誓う、そういうふうに書いてある。ミリタリーパワーとスーパーパワー。ミリタリーパワーであれば軍事大国ではないんでしょうか。
  163. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本に関してはそういう大きなミリタリーパワーにはならない、ビッグミリタリーパワーといいますか、そういうものにはならない、それははっきり言っているところでございます。
  164. 井上一成

    井上(一)委員 総理、それはおかしいのですよ。あなたは、ミリタリーパワーにならない。スーパーパワーじゃないんだ。「ネバー アゲインツー ビカム ア ミリタリーパワー」というのをプレスに配付しているのです。だから、私は、ミリタリーパワーにならないということを内外に約束された、非常に立派だ。だから、軍事大国というのは、客観的な定義を、やはりここで一つの尺度として、その政策も含め定量的なものも含めて何か歯どめが必要になるんだ。それは何なんでしょうか。尺度というそういうものを、総理の持っていらっしゃる尺度は何なんですかと聞いているのです。  おっしゃっていらっしゃることには共鳴しています。国連でおっしゃられたことには私は共鳴をします。よいことをおっしゃられた。しかし、そのよいことをおっしゃられたんだけれども、皆さんに言われたことの尺度というのはどうなんでしょうかと今尋ねているので、そして米ソというのは私は軍事大国だと認識しているものですから、お聞きをすればアメリカはそうじゃないというようなお答えにも受けとめたものですから、ちょっとおかしいと思ったので、で、スーパーパワーという英語を持ち出されたから、私はミリタリーパワーと、あなたのおっしゃったことを、こういうことを申し上げておるのです。
  165. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ミリタリーパワーにならぬということは私は日本として言っていいし、当然そうであると思います。ミリタリーパワーと言う場合は、エコノミックパワーとかあるいはカルチュラルパワーとか、そういうものに対して、ミリタリーを重点にしてそこに専心力を入れている、そういう意味における国をミリタリーパワーと言うんだ、そういう考え方に立って申し上げておるわけであります。  しかし、アメリカの場合は、そのミリタリーばかりをやっているかというと、案外各州が非常に独立性を持っておりまして、そして議会はまた非常に自由な言論やら何かがあってなかなか言うことを聞かない、ある意味におけるシビリアンシュープレマシーやコントロールが非常にきいておる。そういうようないろいろな面から見て、アメリカをある意味における軍事大国と一遍で言い切ってしまうのにはまだいろいろ条件もあるのではないか。なるほど軍事力は大きいと思います。それは大きいですけれども、いわゆる軍事大国というような言葉で言い切ってしまっていいかどうか。それはちょっと違うような点があると思います。
  166. 井上一成

    井上(一)委員 もう一点私は、総理、特にこれは明らかにしておきたいのですが、さっきも申し上げたように、総理は「二度と再び軍事大国にはならない」、こう述べられているのです。それは当初に、国是とする平和憲法を持っているからだということは前段でおっしゃられているわけですけれども、軍事大国になりたいと考えても、今の平和憲法、前段であなたが強調されたその憲法がある限り、私は、何ぼなりたいと思っても憲法九条がある限り軍事大国になれないのですよ。ならないのではなく、なれない。アイ ウイル ノットじゃなく、アイキャントだ。キャノットだ。なれないんだ。ならないとなれないとは違うのですよ。ここはやはり認識としてはっきりしておきたい。もう、ほかのことは別としても、なりたくてもなれない、平和憲法、今の憲法では。なれない、キャノットだ。いかがですか。
  167. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 キャノット以上に、私はやらぬという方がもっと強い、そう思うのです。
  168. 井上一成

    井上(一)委員 私は意思の確認をしているのじゃない。平和憲法があるから——それはウイルは強い意思を表明するから、それの方が強いかもわからぬ。だから、何と君たちが言おうと私は行くんだ、アイウイルゴー、ノー マター ホワットユーセイでしょう。あなたが何と言おうとおれは行くんだと。——いやいや、外国の人にこれはあなたはスピーチしているんだから。そうでしょう。だからそういうことを考えたら、私はやはりキャノットだ、日本はできないんだ、このことを海外に向けて強調されるということが平和憲法の国是を強く訴えることである、私はそう思うのです。  で、その枠、それをどのようにあかしを立てていくかというのは、きのうまであるいはきょうも含めて議論のあった一%の問題がその後にあるわけでありまして、そのあかしというのは。だからキャノット、できないんだ。やらないという強い意思はわかりました。しかし、平和憲法ではやれない、こういうことを聞いているわけです。
  169. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 平和憲法を持っている間、もちろん軍事大国にはなれません。
  170. 井上一成

    井上(一)委員 それを強く——だから私の言っていることでしょう、やれないということは。それで、そのあかしとして一%という問題が国会の中で大きな議論になっているわけです。  安倍外務大臣軍事費をGNPの一%以内に抑えることが軍事大国にならない一つのあかしだということを国会でいつかお答えになっていらっしゃるのです。きのう、六十一年度はGNP対比一%の枠におさめる、範囲内にとどめるということで、それで国会が回ったわけですけれども、中曽根総理に、やはり政府としては——今私は諸外国に対しての、国連外交に対しての質問をしているのですが、諸外国に対して安倍外務大臣の言ったその見解と同じである、中曽根総理もそうだと私は理解していいでしょうか。
  171. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今までの歴史的過程においてはそういうことであったと思います。また、六十一年度予算編成に際しては一%以内におさめるようにする、これも言明したところでございます。
  172. 井上一成

    井上(一)委員 安倍外務大臣がおっしゃっていらっしゃる軍事大国にならない一つのあかしというか、踏み絵というか、そういうものは考えは同一でありますね。六十一年度の予算はこうでありますとか、今までの歴史的経過がありますということは、それはもう何回も答弁されているわけです。同じなのかどうか。
  173. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 一%を少しでも踏み出したからといって軍事大国になる、そういう性格のものではないと私は思います。
  174. 井上一成

    井上(一)委員 それじゃあなたの考えていらっしゃる軍事大国にならないというのは、たしか私は記録で読んだわけでありますが、総理防衛庁長官当時に、非核中級国家、そういうことが軍事大国にならない一つのあかしなんだ。だから我が国は非核中級国家を目指すというふうに考えてよろしいでしょうか。
  175. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 昭和四十五年当時はそういう表現をいたしました。我々は核兵器は持たない、そして防衛力においても世界的に見て中クラスで、大クラスには至らぬ、そういうのがあのころ私が考えていた発想でございます。
  176. 井上一成

    井上(一)委員 今はいかがなんでしょうか。
  177. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 要するに軍事大国にはならないというのですから、中級という、そういう水準に置きたいということではないかと思うのです。ただしかし、前から申し上げましたように、日本侵略に際しては有効に、一定の前提を持った限定・小規模の侵略については有効にこれを排除し得る必要最小限の能力は持たなきゃならぬ、そういうことはこれは前から申し上げているとおりであります。
  178. 井上一成

    井上(一)委員 非核中級国家というのも、当時の佐藤総理はそれを否定されたのですね。それで私は、この一%をまあきょう厳守しなくてもそれは軍事大国にはならないではないでしょうかという疑問で問いかけられて、僕はそうじゃないと思う。やはり一つの歯どめが必要であり、安倍外務大臣国会で答えていらっしゃるその最低ぎりぎりは、歴史的な流れから踏まえてもそうあるべきであるし、今後に向けてもそうでなければいけないし、そのことが国連中心の平和外交を我が国が進める上において一番必要な不可欠なものであるということを強く申し上げておきたい。認識が違うとすれば大変残念ですけれども、強く申し上げておきたい。  中曽根さんに、できればその意に沿った総理の政治運営を期待したいと思うのですが、いかがですか。
  179. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私はここで随時申し上げておりますように、日本防衛力というものは節度のある、そして憲法に従った専守防衛の精神に乗って軍事大国にならない、そしてシビリアンコントロールのもとにある節度ある防衛力を築く、しかしそれは有効でなければならない、そういう考えに立ってやっておるのです。  しかし、一%問題という数字の問題が出てまいりますと、じゃ、一%を超しておるスイスは軍事大国か、あるいはスウェーデンは軍事大国かというと、スイスを軍事大国と言う人はいないと思いますし、スウェーデンを軍事大国と言う人もいないと思うのです。ですから、そういう一%という水準で大国かあるいは中国か小国かという判定はしにくいではないか、そう思うのです。
  180. 井上一成

    井上(一)委員 さっき私が米ソの超軍事大国、さらにほかに軍事大国が存在するのかどうか、それのお答えもないし、今、都合のいいときにはスイスを例に出されたのですよ。私は、時間がないからこれはもうよしますが、非核中級国家の総理議論も私は読ましてもいただきました。  今何が問われているかというと、やはり国際的に我が国の信頼あるいは我が国への信頼をいかに回復していくか、そういうことだと思うのです。そういうことを強く私は求めていきたいし、そのことを念頭に置いて政治をやってもらわないと、それこそ経済大国、先進国だと言っても我が国は孤立をしますよと。経済大国の場合はGNP第何位ということで、我が国は自由主義社会での世界第二位だから経済大国である、少なくともベストファイブだとかあるいはベストテンだとか、それは大国だというように何か尺度を——だから尺度は何かと聞いたってお答えがないわけなんですよ。都合のいいお話に置いてしまうので、さらに私は、時間がないから先に進みます。  そして、私は国際的な観点からやはり我が国の政治をひとつ見直してほしい、それが戦後四十年の総決算の中に入るべきだ、私はそう思っているわけです。さらに総理は、「私は、南アフリカ共和国における人種差別の撤廃を強く求めるものであります。」このことも非常に力説をされたわけです。このことは私は実は春の予算委員会で外務省に強い警鐘を鳴らしたわけです。我が国の外交官が、その我が国の外交姿勢に反するような行為が一任意的であるという答弁があって、逃げられたというよりも、さらに指導してそういう反アパルトヘイトに反対するような、少しでも誤解を与えないようにという、そういうことがあって、もうそういうものは周知徹底されている。ところが、大変な、もう一部既に報道がなされているわけでありますけれども、その反アパルトヘイトというのはオストラシズムだ、あるいはこれはまさに逆効果であり非常に危険であるとか、もう全くもって許しがたい認識を事もあろうに私が指摘をしたスプリングポックの月刊新聞に堂々と載せられているわけです。白人優位の社会を覆して黒人支配の国家を建設することでは決してあるまいとか、あるいは黒人の政治的権利の付与も重要であるが、白人の巨大な経済権益の保護もそれに劣らず重要であるとか公正な社会だとかなんとか、いろいろ南アへの協力が平和と安定のためにも非常に不可欠だと、逆に、全くもって総理が海外に向けておっしゃられている強い政治姿勢と相反する、そんな記事が連続して載っているわけなんです。これは大変許されるべきことではないし、ただ一私人、一個人の外交官の問題として私はとらえたくない。これは外務省、ひいては日本国家、日本政府の姿勢が世界に問われるべきである。  そこで、外務省はこの件についてどういう認識を持ち、どのように対応されようとしているのか、お聞きをしておきたいと思います。
  181. 三宅和助

    ○三宅政府委員 ただいま井上委員の御指摘の投稿記事でございますが、今御指摘のような点、特に制裁の強化というものは逆効果であるとか、それ以外にむしろ南ア政府に建設的に協力すべきであるというようないろいろな点につきまして、実はこれは明らかに日本政府の認識なりあるいは現在とっております政策に基本的に背馳するものであるということでございます。したがいまして、こういう記事は政府としては容認できない、こういう観点から、確かに本人は一私人としての見解ということでございますが、置かれた本人の地位から見て到底弁解の余地がない、そういう意味で我々は本人に厳重注意したわけでございます。  なお、このような、当該館員はもちろん反省しておりますが、基本的な認識の問題といたしまして、井上委員御指摘の点も踏まえまして、我が国の対南ア政策、これに対する制裁措置、これに背馳しないような行動をとるようにということで速やかに全省員及び在外公館に周知徹底を図っていきたいと思っております。  また、在京の大使に対しましては、私は九月、十月二回にわたりまして大臣の国連訪問を受けまして対南ア政策を説明しておりますが、さらに御指摘の点もございますので、誤解のないようにさらに在京大使に対しても周知徹底を図ってまいりたい、こう考えております。
  182. 井上一成

    井上(一)委員 局長は本庁にいらっしゃっていろいろと御苦労をしていらっしゃると思うのです。私の知っている限りでも、在京の大使との懇談あるいは懇親でアフリカに対する我が国の姿勢を非常に明確にしながら協力姿勢を打ち立てているということについては、私も承知をしているし、それは高く評価をしたい。さらに外務大臣も、たしか国連に行かれて昼食会で類のない、今までにかつてないアフリカの大使、たしか四十数カ国の大使とともに食事をされた、そしていろいろと我が国の基本的な姿勢を述べられたということは聞き及んでいます。しかし、そのこともすべて水泡に帰す、この一語に尽きるのではないだろうか。ちょっとしたことが非常に大きく世界に誤解を与える。  改めて私は外務大臣に、胸を張って我が国が人種差別政策に強い取り組みをしているということをアピールしなければいけない、その実態をもっともっと明らかにして、一つ一つそのような問題を明らかにしていくには今後倍以上の努力が必要だと思うのです。今、局長から答弁がありましたけれども、外務大臣からこのことについて、もうすべて御承知だと思いますが、ひとつ御決意のほどを聞かしていただきたい。そして、どのように対応なさるのか、そのことも聞いておきたいと思います。
  183. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 私も、御指摘がございましたこのスプリングホック日本人会月刊新聞に日本の外交官が、一日本人という断り書きはありますけれども、我が国の外交の基本、特に南ア政策に対する基本と背馳するような形で投稿いたしておりまして、大変遺憾に思っておりますし、今、局長が言いましたように、これはもう弁解の余地がないと私は思っております。  せっかく我が国がアパルトヘイト政策に対して反対をし、それに対する措置を強力に講じておるこういう中で、日本の外交政策を推進しなければならない立場にある外交官がそれに反するような行為をしたということは、今お話しのようにこれでもって日本の外交政策そのものに対して疑問を持たれるおそれもあるわけでございまして、この外交官に対しては厳重注意をするように事務当局にも直ちに指示をいたしたわけでございますし、関係のアフリカの諸国に対しましても日本の立場をさらに明確に述べて、理解を求める努力を今重ねております。  今後とも我が国としましてはアパルトヘイト政策には断固として反対をするという立場から、諸外国とも協力をしながらその政策を推進をしてまいりたいと考えております。
  184. 井上一成

    井上(一)委員 大臣局長からは在京のアフリカ大使それぞれには、この件については弁解の余地がないんだけれども、日本の姿勢を改めて訴える。私は大臣に強く世界すべての国に向けてやはり基本的な認識を、まあこの件が出たからというわけじゃないのですけれども、ただ内部的に注意を喚起するということ、こんなのは当然でありまして、さらにこの機会にやはり外部に向けてアピールをする、そういうことは具体的にお考えをいただけないでしょうか。
  185. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 南アに対するいわゆるアパルトヘイト政策反対についての日本考え方は、私の国連の演説でも必ずこれを述べておりますし、また今回の総理の国連演説でも触れておるわけでございます。そういう点については、世界は既に日本の立場を明確に知っておると思いますし、またアフリカの諸国もこれを理解しておると思いますが、こうした問題で誤解を生じないように、機会を見て全体的に日本の立場をさらに明確にするように述べなければならない、こういうふうに考えております。
  186. 井上一成

    井上(一)委員 機会を見てということですけれども、私はやはり素早い対応というのが効果があると思うのです。総理がよく言われる効果の問題なんですね。だから、私はもう本当に国会で取り上げられたこの問題をきょうにでも諸外国に向けて、海外に向けて強い姿勢を打ち出す、そういう対応が効果ある対応だと思うのです。それが信頼、友好を深めることになると思うのです。物質的な面で経済援助をするという、そのことだけでは私は友好は成り立たない、こう思うのです。いかがなものでございましょう。
  187. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 もう既に在外のアフリカの大使等につきましては局長からこの点について日本の立場は変わることはない、日本の明確な南ア政策についての説明もいたしておりますし、また在外公館を通じましてこの点につきましても説明を各国にさせておるわけでございますが、今お話しのように非常に重要な日本の基本政策の一つでございますから、早速在日の外国特派員等も集めまして報道官から周知徹底をさせたい、こういうふうに思っております。
  188. 井上一成

    井上(一)委員 ぜひそのことを強くお願いをしておきたい。  さらに、私は、すべての世界から核と差別をなくし、平和と人権を守るということは私の政治理念であると毎回申し上げているわけなんです。前の予算委員会でも、そういう意味からは国内的な差別事象、このこともまた後を絶たない、ぜひ抜本的な差別を解消するその政策というものが今日必要ではないだろうか、そういうことも強く申し上げてきたわけであります。  特に、国内的な差別の事象としては部落差別がある。そして、前回もこの部落差別を廃絶していくための前進を、まあ努力を後藤田国務大臣は私に約束をしていただいたわけです。誤った認識を正していかなければいけないし、そのことがやはり人を変えていく教育の大きな柱になっていかなければいけない。そういう意味では、全体的なベースとして、同和問題、部落差別についての一つのベース、何らかの好ましくない事象が、そういう差別事件があるからやらざるを得ない、こういうことで、本当は私は、差別がなければそういう法律も制度も必要ではないんだということを申し上げているんですが、ある以上はなくするための一つの手段、方法として、すべてにまたがった基本的なそのような制度が必要になるんではないだろうか。そういうことにもぜひ取り組む決意を私は持ってほしい。  後藤田国務大臣は強い認識を持っていらっしゃるので、これはひとつできれば総理に決意を伺っておきたい。具体的に今どうのこうのということの問題ではない、やはり広くそういう差別をなくしていく。今、国際的な問題を申し上げたのですが、国内的に起こっているすべての差別をなくしていくためにもやはり法の整備なりいろいろな政策が必要である。このことについて総理の御認識を伺っておきたいと思います。
  189. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 全く同感でございまして、日本国憲法の明示する基本的人権ということから考えますれば、差別などあってはならないことでございます。そういう点につきましてまだ足らざるところがあれば、いろいろ御指摘をいただきまして、我々としても誠意を持って全力を尽くしてまいる所存でございます。
  190. 井上一成

    井上(一)委員 私の与えられた時間があとわずかになりましたので、本当は教育の問題について少し触れたいわけなんです。  私は、中曽根総理アメリカで言ったことにも評価をしたとさっき申し上げたのですが、実はソルボンヌ大学で総理が話されたことについても、これは私はじかに聞いておりまして、非常にこれまたあなたの哲学というか、私のフランスの友人は強くこれを褒めていました。できることならユーレカ計画に対しても日本の参加、協力、そういうものが欲しいんだという、まあそれ以外の部分でもいろいろな議論をしてきたわけでありますが、なかんずく平和あるいは民主主義、その原点は自由を原点にしたいということで、すべての分野について自由の原点に戻りたい、こういうことを話されたわけです。  まさにローマ時代から先人たちが自由を求めて闘ってきた、あるいはその中に民主主義というものが生まれてきた。しかし、私は、今日考えなければいけない問題は、自由こそ私たちの求めるものであり、責任のある自由あるいはロマンのある闘いというものはすばらしい、しかしながら、一部の人の自由のために大多数の人々が不自由になってはいけない、このことをやはり私たちはしっかりと認識していかなければいけない。一部の人の自由のために大多数が不自由になる、そういう状態をつくらないためにも、自由という言葉は非常に感性的には美しいし、ハーモニーとしても非常に受け入れやすい、しかし、その自由の持つ深い意義と幅の広さというものに総理、ひとつぜひ認識を、まあ口幅ったい、大変申しわけないかもわかりませんが、中曽根総理は文化ということについても非常に関心をお持ちでありますし、私は中曽根総理は文化人だということを申し上げてもきましたよ。しかし、日本の国内においてはいろいろな事柄についてあなたと意見を異にする部分がある。意見を異にしようとも、お互いの自由がやはり保障されていき、相手の自由を認め、そしてみずからの自由も認め合う。そういうことで、ここで私は演説をする気はありませんけれども、教育というものは、まさに自由を原点にした中ですべての子供に自由が保障されるように考えていくべきである、私はこういうふうに思います。  最後に質問として、現在、戦後の総決算の中で、本会議の質問の答弁でもいじめの問題を話されました。国際化の問題も言われたわけです。まさに教育という中でいじめの問題があるわけです。校内暴力やいじめなど学校をめぐってのいろいろな問題が指摘されている今日、学校教育は教職員が一体となって取り組んでこそ、初めてその実が上がると考えているわけです。そのような観点から、学校には先生のほかに事務職員あるいは栄養職員さんがそれぞれ一生懸命に頑張って働いていらっしゃるわけなのです、子供たちのために。そういう観点から、事務職員、学校栄養職員の位置づけ、役割についてどのように認識しているのか。これは文部大臣から、ひとつまず文部大臣の御認識を伺っておきたい。
  191. 松永光

    ○松永国務大臣 お答えいたします。  先生御指摘のように、今問題になっておる校内暴力とかあるいはいじめ、こういった問題について的確に対応するためにも、その他学校というものが効果的にかつ能率的に教育活動を展開していくためにも、大事なことは、全教職員が一致協力してそれぞれの職責を果たしていくことが大切であると思っております。  今御指摘の事務職員、学校栄養職員は、いずれも学校運営上、大変重要な職責を担っておると認識をいたしております。
  192. 井上一成

    井上(一)委員 総理、今文部大臣がお答えになったわけですけれども、総理も同じような御認識を持っていらっしゃると思うのですが、念のために。
  193. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 やはり学校は総合的な有機体でありますから、各部各部を受け持つ皆さんがそれぞれ機能を発揮し得るように、そして総合的な大きな力を発揮するように努力していかなければいかぬ、そう思います。
  194. 井上一成

    井上(一)委員 認識は同じですね。
  195. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 文部大臣と同じであります。
  196. 井上一成

    井上(一)委員 ありがとうございました。
  197. 天野光晴

    天野委員長 内閣官房長官から先ほどの残りを発言させます。
  198. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 お尋ねのございました林敬三さんの経歴を申し上げます。  日本赤十字社社長、地方自治協会、明るい選挙推進協会、警察協会、日本善行会各会長。明治四十年石川県に生まれ、東大法学部卒、鳥取県知事、内務省内事局長官、宮内庁次長、警察予備隊総隊総監、保安庁第一幕僚長を経て、防衛庁統合幕僚会議議長、日本住宅公団総裁、自治医大理事長、日赤社長に就任。  以上が経歴でございます。
  199. 井上一成

    井上(一)委員 さっき私が指摘したように、統幕議長を経験された方、そういう方に最高の判断をゆだねるというのは残酷ですよ、これは残酷ですよと、私はごく常識的なことを申し上げているのです。中曽根総理流に言えば、ごく常識的判断から。これはもう時間がありませんから、強く私から意見を申し上げ、再考を促して私の質問を終わります。
  200. 天野光晴

    天野委員長 これにて矢山君、井上君の質疑は終了いたしました。  本日は、これにて散会いたします。     午後零時二十四分散会