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1985-10-30 第103回国会 衆議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年十月三十日(水曜日)     午後四時十分開議 出席委員   委員長 天野 光晴君    理事 大西 正男君 理事 小泉純一郎君    理事 橋本龍太郎君 理事 原田昇左右君    理事 三原 朝雄君 理事 稲葉 誠一君    理事 岡田 利春君 理事 二見 伸明君    理事 吉田 之久君       相沢 英之君    伊藤 公介君       伊藤宗一郎君    石原慎太郎君       宇野 宗佑君   小此木彦三郎君       小渕 恵三君    大村 襄治君       奥野 誠亮君    海部 俊樹君       倉成  正君    笹山 登生君       鈴木 宗男君    砂田 重民君       住  栄作君    田中 龍夫君       葉梨 信行君    原田  憲君       武藤 嘉文君    村山 達雄君       山下 元利君    井上 一成君       井上 普方君    上田  哲君       大出  俊君    川俣健二郎君       佐藤 観樹君    松浦 利尚君       矢山 有作君    池田 克也君       市川 雄一君    近江巳記夫君       神崎 武法君    大内 啓伍君       木下敬之助君    小平  忠君       瀬崎 博義君    正森 成二君       松本 善明君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         法 務 大 臣 嶋崎  均君         外 務 大 臣 安倍晋太郎君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 松永  光君         厚 生 大 臣 増岡 博之君         農林水産大臣  佐藤 守良君         通商産業大臣  村田敬次郎君         運 輸 大 臣 山下 徳夫君         郵 政 大 臣 左藤  恵君         労 働 大 臣 山口 敏夫君         建 設 大 臣 木部 佳昭君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     古屋  亨君         国 務 大 臣         (内閣官房長官)藤波 孝生君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 後藤田正晴君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (国土庁長官) 河本嘉久蔵君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 加藤 紘一君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      金子 一平君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      竹内 黎一君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 石本  茂君         国務 大 臣         (沖縄開発庁長 藤本 孝雄君         官)  出席政府委員         内閣法制局長官 茂串  俊君         内閣法制局第四         部長      工藤 敦夫君         人事院総裁   内海  倫君         人事院事務局任         用局長     仙田 明雄君         日本国有鉄道再         建監理委員会事         務局次長    林  淳司君         臨時教育審議会         事務局次長   齋藤 諦淳君         総務庁人事局長 手塚 康夫君         総務庁人事局次         長       吉田 忠明君         兼内閣審議官         総務庁統計局長 北山 直樹君         青少年対策本部         次長      倉地 克次君         北海道開発庁総         務監理官    西原  巧君         防衛庁参事官  古川  清君         防衛庁参事官  古川 武温君         防衛庁参事官  千秋  健君         防衛庁参事官  筒井 良三君         防衛庁長官官房         長       宍倉 宗夫君         防衛庁防衛局長 西廣 整輝君         防衛庁教育訓練         局長      大高 時男君         防衛庁人事局長 友藤 一隆君         防衛庁経理局長 池田 久克君         防衛庁整備局長 山田 勝久君         防衛施設庁長官 佐々 淳行君         防衛施設庁総務         部長      平   晃君         経済企画庁調整         局長      赤羽 隆夫君         経済企画庁総合         計画局長    及川 昭伍君         経済企画庁調査         局長      丸茂 明則君         環境庁大気保全         局長      林部  弘君         沖縄開発庁総務         局長      小谷 宏三君         沖縄開発庁振興         局長      小林 悦夫君         国土庁長官官房         長       吉居 時哉君         国土庁大都市圏         整備局長    山本 重三君         法務省矯正局長 石山  陽君         外務大臣官房外         務報道官    波多野敬雄君         外務省アジア局         長       後藤 利雄君         外務省北米局長 栗山 尚一君         外務省欧亜局長 西山 健彦君         外務省経済局長 国広 道彦君         財務省経済局次 池田 廸彦君         外務省経済協力         局長      藤田 公郎君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省国際連合 山田 中正君         外務省情報調査         局長      渡辺 幸治君         大蔵大臣官房総         務審議官    北村 恭二君         大蔵大臣官房審         議官      門田  實君         兼内閣審議官         大蔵省主計局長 吉野 良彦君         大蔵省主税局長 水野  勝君         大蔵省国際金融         局長      行天 豊雄君         国税庁直税部長 冨尾 一郎君         文部大臣官房総         務審議官    五十嵐耕一君         文部省初等中等         教育局長    高石 邦男君         文部省教育助成         局長      阿部 充夫君         文部省高等教育         局長      大崎  仁君         文化庁次長   加戸 守行君         厚生大臣官房審         議官      山内 豊徳君         兼内閣審議官         農林水産大臣官         房長      田中 宏尚君         農林水産省構造         改善局長    佐竹 五六君         農林水産省農蚕         園芸局長    関谷 俊作君         林野庁長官   田中 恒寿君         水産庁長官   佐野 宏哉君         通商産業省立地         公害局長    黒田 則雄君         資源エネルギー         庁長官     野々内 隆君         運輸大臣官房国         有鉄道再建総括         審議官     棚橋  泰君         運輸省航空局長 西村 康雄君         労働大臣官房長 岡部 晃三君         労働大臣官房審         議官      中村  正君         労働省職業安定         局長      白井晋太郎君         建設大臣官房長 高橋  進君         建設省建設経済         局長      清水 達雄君         建設省河川局長 井上 章平君         建設省住宅局長 渡辺  尚君         自治大臣官房審         議官      石山  努君         自治省行政局公         務員部長    中島 忠能君         自治省行政局選         挙部長     小笠原臣也君         自治省財政局長 花岡 圭三君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       杉浦 喬也君         参  考  人         (日本国有鉄道         委員長)    亀井 正夫君         参  考  人        (日本銀行総裁) 澄田  智君         予算委員会調査         室長      大内  宏君     ――――――――――――― 委員の異動 十月三十日  辞任         補欠選任  小此木彦三郎君     鈴木 宗男君   海部 俊樹君     笹山 登生君   河野 洋平君     伊藤 公介君   東中 光雄君     正森 成二君 同日  辞任         補欠選任   伊藤 公介君     河野 洋平君   笹山 登生君     海部 俊樹君   鈴木 宗男君    小此木彦三郎君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  予算実施状況に関する件      ――――◇―――――
  2. 天野光晴

    天野委員長 これより会議を開きます。  予算実施状況に関する件について調査を進めます。  この際、先般の大田君並びに市川君の質疑に関し、中曽根内閣総理大臣から発言を求められております。これを許します。中曽根内閣総理大臣
  3. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 予算編成は単年度主義であり、各年度において、三木内閣防衛費に係る閣議決定については、本国会において指摘された御意見趣旨を尊重し、対処いたします。  昭和六十一年度予算編成においても一%枠を守ります。
  4. 天野光晴

    天野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大出俊君。
  5. 大出俊

    大出委員 ただいま各党協議に基づきます政府のお考え総理に述べていただきましたが、したがって、各年度において三木内閣防衛費に係る閣議決定については、本国会において私どもが御指摘を申し上げた意見趣旨を尊重して対処していただくこと、昭和六十一年度予算編成においても一%枠を守ること、以上をお約束いただいたものと理解をいたしますが、よろしゅうございますか。
  6. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ただいま申し上げましたように合意した次第でございます。     〔委員長退席大西委員長代理着席
  7. 大出俊

    大出委員 そこで、私は、先般申し上げましたように、政府世論調査の結果に見られますように、七割を超える国民皆さん防衛費をこれ以上ふやさないこと、つまり本国会で一%枠を守っていただきたいと私ども意見を申し上げましたが、この一%枠を守っていただくように私も今後一層努力をいたしたいと存じます。  次に、もう一つございますが、統合長期防衛見積もり、統合中期防衛見積もり、日米共同作戦計画の研究について資料をお出し願いたいとお願いをいたしてまいりましたが、それは、五九中業というものが大変に巨額でございますから、何しろ国民一人当たり、赤ちゃんから始まりまして、十五万円という負担をせざるを得ないものでありますから、なぜ必要かという理由国民皆さんに示す責任が政府にも議会にもある、こう実は考えたからでございますが、これに対しまして文書で御回答を先般いただきました。大変御苦労をおかけいたしましたが、長いものでございます。長いのでございますけれども、中身は統長、統中、共同作戦計画の説明でございまして、巨額な買い物をする理由は何も書いてございません。これでは国民皆さんに御理解いただきようがないわけでありますから、したがって、今後も私もこれはやりたいと思っておりますが、上田委員がまた明日引き続きやることになっておりますが、そしてまた参議院の我が党の質問もございます。したがって、私は、防衛というものを民主化したい、つまり専門家が握っているのじゃなくて、欧州も最近そういう傾向を持っておりますけれども国民皆さんがどこでもだれでもがよくわかっていて議論のできる、そういう形にしなければいけないと実は私は思っておりますから、そういう意味でこの資料要求は今後とも続けてまいりたい、こういうふうに実は思っている次第でございます。  そこで、まだ少し時間がございますので、一つだけ承っておきたいことがございます。日本防衛それ自体をずっと調べておりまして気がつきますことは、海上兵力というのは六十年完成時に二十九万トン、百六十八隻ということでございますから、第六位の西ドイツを今やまさに追い越さんというところに来ている。航空兵力を調べてみましても、作戦用航空機というのは、海上自衛隊、航空自衛隊両方合わせますと六百十六機になります。これは、西側でアメリカに次ぐ機数を持っているのはフランスでございますけれども、そこに近づいてきている、こういうことでございます。  さて、この中で今F1、これは支援、つまり陸上の、あるいは対艦の支援をする飛行機でございますが、F1後継機問題がどうも私は最近いろんな心配をする、せざるを得ない状況が目につきます。そこで承りたいのですが、ロッキード事件以来いろいろ議論をいたしまして、大型の航空機の購入あるいはライセンス生産等々に関しまして、商社介在はさせないという御答弁をかっていただいた記憶を私持っておりますが、承りたいのでございますが、これは総理でも防衛庁長官でも結構ですけれどもF1後継機問題、つまりFSXをめぐりましていろんな情報が耳に入ります。商社介在は認めないと前回のロッキードのときに言ってきたのですけれども、いかがでございますか。そのお約束をお守りいただけるかどうか、お考えを聞いておきたいと思います。
  8. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 ただいま先生指摘のように、それ以来、私ども購入する場合には、アメリカ国防総省から直接契約をし購入するFMS、フォーリン・ミリタリー・セールスというシステムをとっております。ほとんどの装備品はこういう形をとっております。しかし、一般輸入、今先生指摘のような商社を経由するものも間々ございます。やや現在のところ小物でございますけれども、調達の時期ですとかあるいは価格の折衝を米国防総省でやっておりますときに、商社の方が安いな、あるいはタイミングが早いなというものにつきましては若干とっておりますが、今のところ大部分は米国防総省から直接買っております。ただいま先生指摘F1は私ども三菱重工業がプライブでつくっておりますので、これは国産でございます。――それから、後継機につきましては現在検討中でございます。
  9. 大出俊

    大出委員 総理が今ちょっと後ろから一言山田さんに申し上げておりましたのは私が聞きたいところなんでございますが、それでは時間がありませんから、並べて申し上げますからお答えいただきます。念のために申し上げますが、皆さん御存じのことでございましょうが、これは装備局長山田さん、聞いておいてください。  後継機は三機種考えておられるのだろうと私は思っているのです。これ、私にはいろいろな意見がございますが、一つF16、F16Cと申し上げた方がいいかもしれません。これは御存じのようにゼネラルダイナミックス製品でございます。ファイティングファルコンと言いますね。F18A、これはマクダネル・ダグラスでございます。もう一つトーネード、これは欧州機種でございますが、英国、西ドイツ、イタリアの共同開発。八百機を目標にして今四百機できて、第一線戦闘機で配置についておりますが、この三機種、こういうことなんだろうと思うのであります。既に皆さん外交手続をもって、諸元について、性能等を含めて質問書を出しておられるわけでありますが、これはいつごろお出しになって、そして回答は一月ごろの話に聞いておりますが、いつ回答が出てくるのか、ここのところ、これが一つです。  そして、私が今耳にしております限りで言えば、マクダネル・ダグラス商社日商岩井ゼネラルダイナミックス三菱さんか伊藤忠さん。トーネード欧州機種でございます、今申し上げました、どうも丸紅さんというお話がちらちら耳に入る。表街道、裏街道、いろいろあるようでありますけれども、ちょっとこれは私にとっては気になるところ。なぜならば、第三次空中戦なんということが始まったんじゃ困るわけでありまして、そこらのことがございますから、まずその点をお答えおきをいただきたいのであります。
  10. 西廣整輝

    西廣政府委員 お答えいたします。  外国に対する調査依頼につきましては、米国製航空機につきましてはアメリカ国防総省に対して、そしてトーネードにつきましてはNATOに対しまして、外務省を通じて……(大出委員パナビアじゃなくてNATO」と呼ぶ)はい。NATOに対して出しておるということでございます。
  11. 大出俊

    大出委員 そうしますと、NATOとおっしゃいましたこの機種は、三月にシンポジウムをやっていますね、東京で。前の統合幕僚長でございました、空幕長ですか、竹田五郎さんも出席していますね、シンポジウムをやっている。そうすると、パナビア、つまりトーネードしかない、こうなりますな。アメリカとおっしゃいましたが、今私二機種申し上げましたが、この二機種なんじゃないかと思うのですが、時間がありませんからつけ加えますが、どうもいつの間にか契約まで結んでいるやに聞いているところもある。私は、だから今ここでちょっと予言めいて恐縮だけれどもF18、これがモデルになっているんだと思うんです、三菱さんが中心で。だから、国産あるいは貿易摩擦の関係でライセンス輸入、方法は二つあるわけですが、どっちになるにしても、モデルF18ではないのかという気がするのです、流れてくる話は。だから、そう遠慮なさらずに、ここまで来ていて、何か皆さん対策室をつくったんでしょう。だから、それならばずばっと答えてくださいよ、心配なんだから。
  12. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 現在の支援戦闘機F1、約四千五十時間の耐用命数ございますので、約十年後に退役が始まります。そのために、その後継機を選定いたすわけでございますが、ただいま国内開発か、あるいは先生指摘輸入品を、製品にするかあるいはライセンス生産するか、またもしくは現有機の改造かという三つにつきまして検討を始めているところでございます。そのために、今先生指摘F16、18あるいはトーネードにつきましてどういう性能であろうか、私どものニーズに合うのであろうか、どのような価格で購入できるのだろうかということをちょうど調査を始めた段階でございます。決して予断を持って行っているわけでございませんで、現在そういった幾つかの選択肢について白紙の状態で検討を始めたところでございます。
  13. 大出俊

    大出委員 時間がありませんから、私の考えだけ申し上げて終わらせていただきますが、一つだけ後からつけ加えてお答えだけいただきたいのは、現在F1は何機であって、FSX、これは一体、百機と言われたりいろいろしておりますけれども、あるいは当面二十五機という話もありますが、何機になるのかという点を後から答えておいていただきたいのですが、私は、F1というものの諸元、性能F16、F18、トーネードを調べてみますと、単なる対地支援機種だなどというものじゃないのですね、もうF16やF18やトーネードは。大変に優秀な、今要撃にも十分使える、皆さん御存じのイラクの原子炉を爆破したのはF16ですから。三沢に入ってくるのもそうですから。これは三沢F16がいて、天寧東沸からサハリンの基地、どこでも爆撃できるのですから、行動半径を見ますと。また大変に、二・二マッハもあるのですから、一・六マッハF1じゃないのですから。そういう意味で、単なるF1後継なんというものではないという、百機ばかり新しいべらぼうな飛行機を購入することになる、そう考えているのですが、ひとつ何機どういうことになるのかを最後に答えてください。
  14. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 ただいまの支援戦闘機F1、九月末現在で七十機を保有しております。それから、その後継機でございますけれども、何機それを装備するかということは、まだ検討を始めたばかりでございますので、決まっておりません。
  15. 大出俊

    大出委員 ぜひひとつ、いろいろな心配がございますので気をつけてお進めいただきたい、こうお願いいたしまして、大変いろいろ総理、恐縮でございました、終わらしていただきます。
  16. 大西正男

    大西委員長代理 これにて大出君の質疑は終了いたしました。  次に、市川雄一君。
  17. 市川雄一

    市川委員 我々は、防衛費に関しましては、GNP対比で一%枠を堅持してほしい、堅持してもらいたいあるいは堅持すべきである、こういう立場で昨日は質問をいたしました。先ほど総理から御答弁がございました中の、今国会における御指摘のあった御意見、この御意見とは、我々の言う一%枠を堅持すべきである、こういう御意見というふうに私は理解をいたしました。  私たちは、現在の自衛隊、まだいろいろなむだがあるのではないのか、徹底して合理化をしていけば、一%枠内で大綱の想定した防衛力が十分に整備ができる、こういうふうに考えているものでございます。政府は、政府自身のお決めになった「国防の基本方針」、この中で、国力国情に応じて効率的な防衛力を漸進的に整備する、このように言っておるわけであります。昨日の答弁で、政府としてはGNPは動くものだ、こうおっしゃっておりますが、動くからこそ日本国力を正確に反映し、そのときどきの防衛費を適度に抑制するという役割を果たしているというふうに私は考えるわけであります。理念とか考え方であるとか、そういう定性的な歯どめ、これも非常に重要であると思います。しかし、この定性的な歯どめというのは政府がお決めになることですから、後で政府の解釈が伸縮自在になるという意味において欠陥がございます。したがって、定量的な歯どめがその裏づけとしてあってこそ初めて定性的な歯どめが生きてくる、このように私たち考えているわけであります。  以上のことを申し上げて、次の質問に移りたいと思います。  総理、きのう、私の計算した試算書をこの場に提出をいたしました。その数値について政府としてどういう御見解を持っておられるのか、まず伺っておきたいと思います。  それから第二点は、OTHレーダー導入ということがこの中期防衛力整備計画では言われております。既に予算が、予算というか計画、五カ年の中では三百五十億がその中に含まれておる。このOTHレーダー導入ということについて米軍の他のOTHレーダー、あるいは米軍通信系統、例えば横須賀の米軍艦隊司令部とか、そういう米軍通信系統日本の設置を予定しているOTHレーダー通信系統を結ぶのか結ばないのか、その辺をどのようにお考えになっておられるのか。  第三点、これは日本日本のためでない戦争に巻き込まれてはならないという立場でお伺いをするわけでありますが、日本が攻撃を受けてない、極東有事の際、OTHレーダーやP3C対潜哨戒機で得た自衛隊情報米軍に提供した場合、例えば相手方の戦闘機であるとかあるいは潜水艦の位置であるとか、発見したという情報が即極東有事の際はそれがそのまま攻撃につながる、こういう状況の中でそういう情報米軍に提供するということは、武力行使と一体のものであり、我が国憲法が禁止する集団自衛権に抵触するのではないか、こう私は考えておるわけでございますが、総理の御見解はどうか。この三点を質問したいと思います。
  18. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 まず第一問につきましては、市川委員御提出の試算においては十八兆四千百六十九億円でありますが、中期防衛力整備計画は本来十八兆四千億円であり、仮に等比で分割した場合、各年度の数字も異なっておりますが、試算そのものの数字は正確であります。ただ、GNPその他数値の変動もありますので、実際がすべてこのとおりということではございません。  それから、第二問、第三問につきましては、それぞれ解釈の問題等でもありますから、専門家から答弁させます。
  19. 西廣整輝

    西廣政府委員 お答え申し上げます。  まず第一に、この中期計画検討しようとしておりますOTHについてでございますが、これはあくまで日本防衛のために必要なシステムということで、同種のアメリカのシステム、それと連携したものということでは全く考えておりません。  第二点の、OTHで得られた情報あるいはP3Cで得られた情報の提供につきましては、かねがね申し上げておりますように、いかなる状況でどの種の情報をどういう形で提供するかということにつきましては、個々具体的な事例に即して我が国の国益に応じ自主的な判断で決めて提供するということで考えております。なお、いずれにいたしましても憲法で禁ずる集団的自衛権に及ぶようなことはしないということでございます。
  20. 市川雄一

    市川委員 もう時間がないのですが、加藤防衛庁長官は朝日新聞のインタビューの中で、OTHレーダー導入について、日米安保条約があり、アメリカとは同盟関係にあるので、かなり運用面では共有部分が出てくるということをはっきりおっしゃっているわけです。ですから、そういう意味では、OTHレーダー米軍通信系統と結ぶのか結ばないのか、非常に重要な問題です。もうちょっと明快に長官から御答弁をいただきたい。  それからもう一点、実際、情報米軍に提供するかどうかはそのときによって判断するという今の御答弁でございますが、私は、極東有事の際、そのときどきの判断でもしその情報を提供した場合、発見したという情報がそのまま即攻撃につながるというそういう状況の中で米軍情報を提供したということは、これは武力行使と一体のものであり、集団自衛権に該当するのではないか、こういう質問をしているわけでございます。法制局長官、もしできれば御答弁をいただきたいと思います。
  21. 茂串俊

    ○茂串政府委員 先ほど防衛庁の政府委員がお話しになりましたように、特に私はOTHの具体的な機能とかあるいは性格、使命というようなものを全く存じておりませんので、これについて確としたお答えをするだけの知識も自信もございません。  なお、防衛庁の方で先ほどお話がありましたようなことでございますれば、どのような状況でどのような内容の情報をどういう形で提供するかどうかということは、やはり個々具体的なケースによってあるいは違うのではないかなというふうに私も受け取ったわけでございますが、今申し上げたようなことで、何分にも私全くこの点について御相談もお話も伺っておりませんので、大変申しわけございませんが、正確な御答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
  22. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 OTHレーダーにつきましては、その有用性について現在検討中でございまして、それがいかなるシステムとして日本で使うことになるのかまだ明確ではございません。検討中であることはたびたび申し上げておるとおりであります。  それから、その運用についても当然まだ検討に至っているものでありません。かなり共有部分が多いというような私の新聞のインタビューというのはちょっと今初めてお聞きしたわけですけれども、後ほどどこの新聞なのかお聞きしたいと思います、日付等ですね。  しかし、いずれにしても私たち考えておりますのは、先ほど防衛局長が申しましたように我が国の防衛のために、その観点から有用かどうかということで判断するものでございます。
  23. 市川雄一

    市川委員 以上で終わります。
  24. 大西正男

    大西委員長代理 これにて市川君の質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  25. 大西正男

    大西委員長代理 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  予算実施状況に関する件について、本日、参考人として日本国有鉄道再建監理委員委員長亀井正夫君、日本銀行総裁澄田智君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  26. 大西正男

    大西委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――
  27. 大西正男

  28. 川俣健二郎

    ○川俣委員 質問通告は国鉄問題が後になっておりますが、亀井委員長が時間の制約がございますし、二、三日狂わせたものですから、早目に先にやらしていただきたいと存ずるのでございます。  それで、国鉄問題というのは私は余り取り上げたあれはないんですが、もちろん国鉄に世話になってはかりいて国鉄にとことこ乗って国へ帰る者として、新幹線もないし在来線に頼ってうちへ帰る者の一人として、どうしても聞いておきたいと思いましてあえて質問させてもらいたいと思います。  就任後初めて杉浦総裁にも予算委員会にお出まし願っておるわけですが、杉浦総裁はおとといですか、全国町村会、市長会、知事会、この三団体を汗をかきながら回りまして、六万一千人の余剰人員の受け入れ先として各県や市町村に協力を要請して歩いた、これを私は伺っておるのですが、一体その感触はどうだったでしょうかね。それをちょっと聞かせてもらえませんか。
  29. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 お答えいたします。  これからの改革に当たりまして余剰人員対策というのが非常に問題でございますので、今から各方面に御理解と今後の御支援をお願いしたいということで、先般来各方面に出向きましていろいろとお話を申し上げているところでございます。今先生のお話しになりました地方公共団体の関係につきましても、これから十分御理解をいただきたいという趣旨を持ちまして、一昨日は町村会、市長会それから知事会それぞれの事務総長にお会いいたしまして、現在の国鉄の実情とそれから今後の改革に当たりましての問題点、さらにまた、今政府検討しておりますものの具体化された場合におきます今後の御支援方につきましてお願いを申し上げた次第でございますが、それぞれの立場お答えをいただきました総括的な感じといたしましては、今地方におきましても、要員の削減といいますか、行革の時代の波を受けておりますので、国鉄の余剰人員の受け入れにつきましては、一般論としましては十分に理解をできるけれども具体的な話につきましてはなかなか難しい、今後よく御相談をいたしましょう、こういうようなお答えが大体共通のお話であったように思うわけでございます。
  30. 川俣健二郎

    ○川俣委員 これは総理にも聞いていただきたいのですが、新総裁がこのように足を棒にして三団体を歩き回って要請して歩いたが、向こう側のそれぞれの考え方は私は私なりに伺っております。  ただ、報道によりますと、反発を感じるという、ある団体の事務総長がコメントしておるのですね。反発を感じる、これはどういうことだろうかな。できれば私たちとしては、せっかく総裁が礼を尽くして回って歩いたのだから、容易でないかもしらぬが検討するというくらいのコメントなら私もわかるのだが、反発を感じるというコメントが出ているところを見ると、なるほどなと思っておるのです。それは、例えばここに参議院の運輸委員会で、私はいみじくも三県の知事の参考人の意見陳述を伺いに行ったのですよ。なるほど私の方は新幹線もないし、在来線が次々となくされればこれは大変だというので私も行ったのです。ところが、せっかくのネットワークである――どの知事がどのように言ったかということを述べる時間がございませんので言いませんが、持っておりますが、これはぜひ閣僚の人力も、特に運輸大臣を初めとして関係閣僚は読んでおいていただきたいと思うのです。やはり各県の知事は、運輸省なり国鉄に哀訴嘆願していろいろと予算なりあるいは陳情、嘆願をしたい気持ちはあるが、今のあなた方が進めようとするこの国鉄のネットワークをずたずたにされるということは、何となく遠いものの方ほどもう引き離されるという感じがする、こういうようにお述べになっておる。ところが、それを監理委員会というものにゆだねまして、その監理委員会というのは何人でやるのだろうかと見たら五人です。きょうは監理委員長にも時間の制約でおいて願っているのですが、一体こういう、せっかくのそういう意見陳述まで参議院の運輸委員会でもらっていながら、そういう人力の意見なり、あるいはもっと一歩下がって職員というのがいると思います、当然いると思います、その職員方の考え方も聞いたものだろうか、あるいは一歩下がって運輸政策審議会の意見も聞いたものだろうか、果たして五人だけの考え方であの「意見」というものをまとめたんだろうか、ここにやはりある団体の事務総長が反発を感じるというコメントした意味がそこたあったのではないかなと思いまして、一体、大変分厚い意見書をここで見せてもらっているのですが、亀井さんにちょっと伺いたいのですが、「鉄道の未来を拓くために」というサブタイトルもついているこれだけのものを読ましてもらいました。これはこのとおりやれば、何と六十一年度にもう早くも三百十億の黒字になる。今何ぼですか、約一兆六千五百四億というのが五十九年度の赤字決算に出ておる。これは間違いないと思います。間違ったら訂正してくださいよ。ところがそれが、この意見書どおりにやれば、中曽根さん、このとおりにやれば三百十億をもうけてみせる、もうかるようになるということになると、はあ、それはそういういいこともあるのだろうかなと思うのですが、さて国民の我々にしてみれば、一体これは強引な負債処理のために国民の負担がうんとふえてくるのか、国民の足がもがれるのじゃないだろうか、あるいは運賃がうんと高くなるのじゃないだろか、こういうようなのを心配するのは当然だろうと思いますので、一体せっかくこれまで七月二十六日付で総理に出されたこの監理委員会の「意見」というものはどの程度の意見を聞きながら、果たして五人だけで密室でやったものなのか、何回やったのか、私法監理委員長が非常に忙しいお立場であり、身分であるということを私は十分知っておるので、これは一人か二人の人が書いたものだろうか、こうも疑いたくなるので、少しその辺を聞かしていただきたいのですが。
  31. 亀井正夫

    ○亀井参考人 亀井でございます。お答えをいたします。  監理委員会は、昭和五十八年の六月に発足をいたしまして、正式の会合だけでその意見書を作成するまでに百三十数回の会合を開きました。そのほかに、いろいろな地方を、北は北海道から各地、南は鹿児島まで現地をいろいろ見さしていただきました。それぞれの地域の御事情をお伺いをし、またそこに働いておる国鉄の方々の御意見も十分拝聴いたしました。また組合の方々の立場意見を聞いております。  なお、審議は正式の会合が百三十数回でございますが、そのほかに個人的なヒアリングとか、いろいろな機会に意見を聞くということで、相当の努力をしてきたつもりでございます。
  32. 川俣健二郎

    ○川俣委員 百三十回余の委員会をやったというのはこれにも出ておりますが、それほど全国行脚しながら、意見を聞きながら、参考にしながらということであれば、いきなり今余剰人員云々という相談に来られては反発を感ずるという知事会の事務総長のコメントは、これはうそじゃないので、これは新聞記事はうそじゃないと思うのです、朝日ですか、どこですか、とにかく出ている、そういう意見は出ないと思うので、私はあえて言うたわけです。特に私は、これは報道ですから、元国鉄総裁の仁杉さんが我々の声も聞いてもらえなかったという、こういうあれも出ておっただけに、私は余りにも、何でそんなに急ぐのだろうか。もっともっと一番大事なのは、国鉄を動かしている、列車を動かしている職員の意見をもっと聞くべきじゃなかったのか。ましてや、もとの国鉄の総裁というのは、能力と経験があるからこそ皆さんが総裁にしたのでしょうから、そういう専門家皆さん方の意見は余り聞き入れなかったのだろうか。この五人の方というのはエキスパートだろうか、運輸や国鉄のエキスパートだろうか。私も経歴を見せていただいている限りは、株式会社の経営にとっては大変に才覚のある人力ですが、事国鉄、運輸という問題についてはそうエキスパート的な人力は――委員長は別ですよ、こういうような感じをしているだけに、効率的な経営形態の確立のための方策を検討すると言うが、鉄道、特に国鉄という全国ネットワーク、これをずたずたにして、一体どうなるのだろうかということなんです。  そこで、閣議がそれを「意見」のとおり、「意見」に盛られているとおりずっとうのみにして、もう早くも十月十一日に閣議決定した。ところが、五十四年度閣議決定は交通政策の欠如だ、政治、行政、経営責任が不問に付されているのだが、五十四年の閣議決定は交通政策の欠如だ、こういうふうに言っておるだけに、私は今回の閣議決定というのは少し早まったのか、これでいいのか、その辺を運輸大臣、どうです。
  33. 山下徳夫

    山下国務大臣 どうも失礼しました。  御質問趣旨、全部わからない面もございますけれども、おおよそ仁杉総裁の意見その他エキスパートの意見も聞けということがあったと思うのでございますが、このことにつきましては、私が承知しておりますことでは、むしろ監理委員会の方が国鉄としてもっとどんどん意見を言ってほしいということを慫慂された面もありまして、それに対して十分おこたえできなかったやに私も聞いております。あるいはまた、その後仁杉さんがおやめになる前に、最後までそうじゃなくて、もちろん仁杉さんの御意見も十分監理委員会はお聞きになったと思いますし、おっしゃるように、国鉄と監理委員会とは最後までそんなにぎすぎすした関係ではなかったというふうに思っておりますので、私は、そういう意味におきましては国鉄の意見は十分聞かれたものと思っております。
  34. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それではちょっと具体的に聞きますよ、あなた、この答申をうのみにしたんじゃないでしょうからね。  都市生活は割高運賃だ。これは公平を損なう、もうかっているのに高いんだから。ところが六つの会社に分割すれば都市生活者というのは低運賃となると思っていいんだろうか、それが一つ。これは運輸大臣ですよ。  それから、六つにずたずたにしたらダイヤの調整は当然必要ですね。それから直通列車の費用負担はどうなるんだろうか。今の宣伝のフルムーンですね、ああいうようなもの。あるいは、運賃の調整、収入の配分、事故の際の払い戻し、車両の点検、修繕の多様化、そして保安、こういったものが一体どうなるんだろうかということを、局長でもいいよ、具体的に。  それから、ただ一つこれには書いてある。運賃収入の清算機関は必要に応じて、必要な場合はと書いてあるんだが、必要に応じなくてもこれはすぐ、絶対に必要なんじゃないですか、国鉄というのは。まさか東日本とあれとレールを切るんじゃないのでしょう。レールはつながるのでしょう。北海道、東北のお客さんは九州に行けるのでしょう、レールがつながって。そうすると清算なんかはすぐ出るんじゃないですか。そういう場合はどうするんですか。
  35. 棚橋泰

    ○棚橋(泰)政府委員 国鉄を分割いたしました際には、先生おっしゃるように、運賃の問題、直通列車の運転の問題等々いろいろな問題が発生することは事実でございます。  これにつきましては、監理委員会の御意見にもございますけれども、そのために利用者の皆様に御迷惑をかけるということがないように、通し運賃それから直通運転、先生おっしゃるようにレールを切るわけではございませんので、運転は直通して行うことにするということになっておりますし、また運賃につきましては、おっしゃるように必要な清算ということは行わなければいけない。ただ、それが機構を設けるのか、それとも現在はコンピューター等発達している時代でございますから、運賃清算というのをどういう手段で一やるか、それはもう少し実施までの間に詰めてまいりたい、かように思っております。     〔大西委員長代理退席、委員長着席〕
  36. 川俣健二郎

    ○川俣委員 今言った諸問題は当然必要だという認識だと思うのです。これは意思が統一していると思うのだが、そうすると、これは発足までにできるのですか、どうなんです。それは作業手順があるのですか。
  37. 棚橋泰

    ○棚橋(泰)政府委員 昭和六十二年四月一日から民営・分割を実施するということで、ただいま政府におきまして、運輸省といたしましてはそのために必要な法制の整備その他を行っておりますが、同時並行いたしまして国鉄におきましても、同様なことで六十二年四月一日から先ほど申し上げましたようなことがすべて円滑に移行するように具体的準備を進めておりまして、それまでには実施をいたしたい、かように思っております。
  38. 川俣健二郎

    ○川俣委員 まあ皆さん専門だから、できると言えばできる、三百十億利益を出してみせる、こうおっしゃるので……。  そこで、それじゃ問題を三つに分けて質問してみたいと思うのです。一つは余剰人員対策、一つは共済年金、一つは長期債務、こういうように分けて伺いたいのです。  まず長期債務ですが、六十年度末に二十三兆六千億、こういうように伺いました。ところが、六十二年度の当初は二十五兆四千億になる。こんなに膨らむかな。その辺をちょっと説明願えませんか。それから、監理委員会にお渡ししたら、お渡ししたというか検討してもらったら、何と三十七兆三千億になってきたんです、三十七兆三千億に。どうしてこんなに膨れたかと当然思うわけですが、その辺はどういうことでこうなったんですかね。
  39. 棚橋泰

    ○棚橋(泰)政府委員 最初の御質問でございますけれども、現在国鉄の長期債務約二十二兆でございます。これを本年度それから来年度ということでまた借金の額が膨らんでまいりますので、それを計算いたしますと先ほど先生指摘のような二十五兆幾ら、こういうことになるわけでございます。  それから三十七兆というのどの関係でございますけれども、御承知のように、国鉄が直接負っております債務はただいま申し上げたとおりでございますけれども、そのほか国鉄が負っております実質的な債務がございます。例えて申し上げますと、年金につきましての追加費用、これを将来支払っていかなければならないというようなもの、それから将来青函トンネル、本四架橋等が完成いたしました際には、これに対して本来であれば借料を払わなければいけない。しかし、そういう債務を新しい経営形態に負わせるということは適当でないというふうに考えますと、これも一種の長期債務でございます。そういうような額を、実質的な債務を六十二年の四月というところに引き直して計算をいたしますと、先生ただいま御指摘のような三十七兆三千億ということになるというのが監理委員会の計算でございます。
  40. 川俣健二郎

    ○川俣委員 ところが何となく、どうせ赤字だから毒食らわば皿までと、何か全部、例えば鉄建公団、上越新幹線二兆円、青函トンネル一兆円、三島会社基金一兆円、約九千億ですね。三島会社というのはおもしろくないね。我々は島なんだろう。北海道、九州、四国は三島会社だ。それが九千億。余剰人員対策九千億、この九千億は後で言いますけれども。そうすると、トンネルは東日本に入るんだろうか、北海道にしわ寄せされるんだろうか。それから鉄建公団というのは、そもそも国鉄とは別個のプロジェクトでできたんじゃなかったのかね、これ。それとも、どうせこれは赤字だから、これは入れてしまえということなんだろうか。
  41. 棚橋泰

    ○棚橋(泰)政府委員 私ども、「長期債務等」という言葉を使っておりますのは、国鉄が実質的に負わなければならないという債務そのものを将来の新しい経営形態の国鉄からある程度切り離さないと、これは健全な経営ができない、こういうふうに考えております。したがいまして、例えて言えば青函トンネルは、先ほど申し上げましたようにこのまま完成いたしますと、国鉄が高い借料を払ってこれを借りなければいけない。本四の架橋についても同様でございます。そういうものを負わせては、新しい経営形態が成り立っていかないというふうに考えまして、これは実質的に国鉄が負っておる事実上の債務であるということで、これを切り離して新しい経営形態を健全にしたい、そういう意味で国鉄の債務というふうな中にまとめてあるわけでございまして、先生指摘のように、鉄道建設公団と国鉄とは別のものではございますけれども、鉄道建設公団がつくりました鉄道施設というのは、有償で国鉄が借りるということになっておるわけでございますから、そういうものも実質的な意味でも国鉄の債務になるというふうなことで、それらをすべて合計して三十七兆というものについてしかるべき措置を講ずるというふうな検討を監理委員会がお進めになった、私どももそれを引き継いでいきたい、かように考えております。
  42. 川俣健二郎

    ○川俣委員 やはり何となく当たったんですよ。何でもかんでも押しつけたという感じなんだ、これ。  それじゃ一つ、我々の立場国民から言えば国の負担は結局どういうことになるのです。何年償却なんです。どのくらいなんですか。
  43. 棚橋泰

    ○棚橋(泰)政府委員 そこで先ほどの三十七兆三千億でございますが、そのうち新しい経営形態がしょっていくべきものというのもあるだろう、それは鉄道施設を持っていくわけでございますから。ただ、そういうものについては、一応監理委員会の御答申では簿価で持っていきなさい、それに相当する債務は新しい経営形態に持っていきなさいというふうなことが原則になっております。その他のものは切り離して何らかの形において旧国鉄、これは清算機関でございますけれども、そういうところに残して、これを国民的な立場から国において何らかの処理をするように、こういう御答申でございまして、数字で申し上げましたら三十七兆のうち十一兆四千億だけが新しい鉄道の経営形態が債務としてしょっておる、残る部分は旧国鉄に残しまして、これを何らかの形で国の責任において処理をする、こういうふうなことが監理委員会の答申の線でございます。
  44. 川俣健二郎

    ○川俣委員 ところが、あなたは言っておるけれども、監理委員会、監理委員会と言うけれども、監理委員会は単なる「意見」なんだよ。これは絶対じゃないんでしょう。どうなんですか、運輸大臣、総理でもいいけれども、このとおりやるのですか、監理委員会のとおり。意見を差し挟むところはもうないんだな、我々国民意見を差し挟むところはないわけ。
  45. 山下徳夫

    山下国務大臣 閣議の決定は監理委員会の「意見」を最大限に尊重する、こういうことでございます。
  46. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると総理、あれなんですか。これは国民としては、せっかく監理委員会が出した意見書だから、最大限の尊重というのはきのうから随分せりふに出ておるけれども、そうじゃなくて、何ぼかこれから「意見」を国民が入れる余地があると見ていいものなんですか、これは。どうなんです。
  47. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 亀井さんがここでお答えしましたように、百数十回の会合を持ち、また地方公聴会を開いたり、職員の意見を聞いたり、あらゆる手を尽くして意見を聴取してできた立派な案であると私は考えております。いよいよこれを法律に直していくという段階になりまして、今国鉄、運輸省が中心になって立法作業の準備を整えてやっておりますが、それらの成果をよく見守って、そして与党とも相談をしました上で国会にお諮りいたしたい、そう考えております。
  48. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると、与党の議員だけに聞いて、国民にはもう聞く余地はないわけですか。
  49. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 まず骨子についてと申しますか、法律をつくるために必要な素材については、余すことなく亀井さんから意見も聞き、また案も出てきております。したがって、それをどう法制的に組み立てていくかということが今運輸省並びに国鉄の仕事でございまして、それらにつきましては政府与党である与党ともよく相談をしながらこれを調整していく。そして今度は国会に出して、野党の皆さんの御意見も聞き、御批判もいただき、国民にもいろいろ御批判をいただく。国会の審議というのは、やはり民主的手続では一番大事な場所ではないかと思うのであります。
  50. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると亀井さん、そうなればあなた方が出したものは絶対になってしまったので、そうすると国民はどのくらい負担するのですか、この六社になることによって。金額的に言ってくださいませんか。それなら聞かしてもらえるのでしょう、最小限度。
  51. 亀井正夫

    ○亀井参考人 国民の負担というと、どうも私自身も抵抗を感ずるようなものでございますが、金額としては十六兆七千億でございます。しかし、国鉄というのは、これは日本国民の財産でございます。これは皆確信をしておる。しかし、財産という場合に、マイナスの財産もやはりこれは国民のマイナスの財産、論理的にはそういうことでございます。そこで、この十六兆七千億というものは、年間の税収の半分に匹敵するような膨大な金額でございますから、これは一挙に処理することはできない。そこで、これを長期的にかつ全国民的な視野において、国がその処理方策について検討をしていただきたいというのが私ども意見でございまして、国という場合には、これは政府並びに国会ということを含んでおる意味でございます。
  52. 川俣健二郎

    ○川俣委員 十六兆七千億というのはどうしてこう出たかということと、もう国会に出したんだから、じゃ、どうするつもりなの、この十六兆七千億。長期、長期と言うけれども、やはりこれは何年間がで償還するんでしょう、十六兆七千億。一人十四、五万ですわな。防衛庁に聞かせてやってくれ。
  53. 棚橋泰

    ○棚橋(泰)政府委員 亀井委員長からお答えがございましたように、先ほど申し上げました二十五兆四千億の中から、できるだけ国鉄の自前財源というもので捻出するということで、用地の売却とか株式の売却等々を行いまして、最終的に残る十六兆七千億というものについては、何らかの形においてこれを処理するということになっております。との方策につきましては、現在政府部内におきまして鋭意検討中の段階でございます。
  54. 川俣健二郎

    ○川俣委員 十六兆七千億、きのうの話じゃないけれども、おぎゃあと生まれた者から、赤ん坊まで入れて一人約十四万ぐらいですね。  そうすると、今何らかの方法で返すということと、かなり二十五兆円前後から処分してというのは、土地というから、その土地というのは、地積とか公示価格とか土地の評価とか鑑定人の氏名とか、こういうのは一体どうなるのですか。ただ黙って、これは皆さんが売るのですか。こういうのは国会は教えてもらえるのですか。
  55. 棚橋泰

    ○棚橋(泰)政府委員 監理委員会の御意見では、事業用用地以外の用地で売却可能な用地というのが五兆八千億というふうに算定をされております。これは監理委員会におきまして、いろいろ綿密な御検討で御計算をされたものというふうに考えております。現在私どもの方では、この監理委員会の御計算というものと実際の土地との間の照合を進めているところでございます。基本的には、これらの土地をできるだけ有利な価額で売却し、そしてこれを債務の償還に充てる、こういうふうなことで検討を進めております。
  56. 川俣健二郎

    ○川俣委員 さっき言ったように、監理委員会から国会に出したわけだから、今度は国会の方の――あなたの方の仕事になるわけだ、政府の方の。国会にはまだ出ていませんが、政府の方の仕事。そうすると、さっき言ったような地積とか公示価格、土地の評価とか鑑定人の氏名とかというのは、一応国会に出せるものでしょうかというのだ。運輸大臣、どうです。
  57. 山下徳夫

    山下国務大臣 例えば国鉄が持っております不動産等の財産にいたしましても膨大なものであります。したがいまして、これを全部さらに、監理委員会から出されたものをさらに精算するだけでも大変な時間もかかりますけれども、その精算の過程において、場合によっては若干の計算違いがあったり、あるいはまた評価の面で若干現状にそぐわなかった面がある。そんなものは、先ほど申し上げました最大限に尊重する中においても、これはどうかなというようなものはさらに監理委員会とまた打ち合わせしながら、部分的には修正する面もあるかと思います。したがいまして、そういう面について私は最大限に尊重すると申し上げましたのは、そういう面を考慮しながら申し上げた、閣議の決定もその面を考慮しながらなされておるものと思うわけでございます。
  58. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると、監理委員会と相談すると言うけれども、また監理委員会に修正させたりするわけですか、答申が、「意見」が出ているのに。  それから、やはり時間がかかる、かかる、こう言うんですが、私もかかると思う。ところが、六十一年から発足すると言うんでしょう。そうすると、こういうような土地を売るとかなんとかという処分その他のあれは後回しにして、ずたずたに六社にしてから検討するわけですか。その辺は、局長でもいいですよ。アバウトでなく、正確にひとつ。
  59. 棚橋泰

    ○棚橋(泰)政府委員 先生ただいま六十一年度からとおっしゃいましたけれども、六十二年度の四月一日から新しい経営形態で発足したい、かように考えております。六十二年四月一日ということでございます。  それで土地につきましては、監理委員会の方からは一応大ざっぱに申し上げますと、売却可能用地二千六百ヘクタールということで五兆八千億ということになっておりますけれども、監理委員会の方でも綿密に精査され、周辺の時価等から換算して五兆八千億に売却可能であるというふうに御判断になったものと思っておりますけれども、これを現実にそのようにできるかということにつきましては、十分私どもの方と国鉄で検討しなければいけないということで現在やっております。  その場合に、五兆八千億そのものを六十二年度の四月一日までに全部売却するということではございませんで、先ほど先生からもちょっとお話がございましたように、その十六兆七千億の債務というのは、監理委員会の御意見でも、三十年の元利均等で返す場合は一兆三千五百億ずつというようなことがございますように、用地につきましても、しかるべき期間をかけてそれを売っていくということの計算において、これを債務の償還に充てておくということになっております。したがいまして、用地につきましては精査をいたしました上で、順次それを必要に応じて六十二年度以降売却して債務の償還に充てていく、こういうふうな作業を進めたい、かように思っております。
  60. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると、十六兆七千億というのは少なくとも国が負担せにゃならぬ、いわゆる税金で払わにゃならぬ、こういうことですね。十六兆七千億というものだけは国の方で負担しなければならない、ここまではわかりました。それでは、後で土地の評価とか一覧表とかというのは、それぞれの機関を通じて要求しますから。  今、さしあたって国会でどうしてもやらなければならないのは共済年金ですね。まあ私らに任せなさい、一年間三百十億もうかりますと言う。今一兆六千億損しているのが三百十億もうかるというのだから、同じレールを使ってずたずたにすればもうかるというのだから、これは大変なものだな、何かマジックみたいな手品をやっているのじゃないかと思うのですが、しかし、皆さん方もうかると言うのだから。ところが、共済年金はやはりそうはいかない。共済年金は国会にかかっているのだから、これは審議せにゃならぬ。  そこで私は伺いますが、これは大体もともと無理があると思う。共済年金がかかってから見ていると大体無理がある。なるほど社保審、社会保障制度審議会、大河内一男先生が会長で、時の運輸大臣に出している答申があります。これは、例の国家公務員共済組合法の一部改正、「収支の著しい不均衡から行き詰まりを来すおそれがあり、それを解決するためには、速やかに総合的な対策を確立することが必要である。」そういう場合から、今回はやむを得ないのだ、これは国会の審議に非常に参考になった。ところが、「しかし、」と書いてある。大河内会長さんのあれは「しかし、国鉄共済組合の危機的状況については、かなり以前から予測されていたところであり、」今になって何だ、助けてくれとは、こういう言い方なんだ。「本審議会もその解決策を講ずべきことを繰り返し指摘してきた。」国鉄共済に対して。「それにもかかわらず、今日まで国の責任にも触れた具体案が提示されていないことは遺憾でありここう言っておるのだ。私じゃないですよ、専門家の大河内先生方が皆さんをおしかりしているのだ。「さらに国としての格段の配慮が望まれる。」こうなっておる。その後これはどうなっていますか。これに対してどうです。
  61. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 まず、現状を申し上げたいと思います。  今先生が御指摘の内容でございますが、国鉄の本体と同時に国鉄共済組合の内容も財政が非常に行き詰まっているという、そのとおりでございまして、そういうことの打開のために、先般来、財政調整計画という計画に基づきまして、国家公務員グループの御支援をいただきながら、昭和六十四年度までこれは何とか国鉄共済年金が支払いができる、こういう計画を今立てられておるところでございます。  しかしながら、国鉄の対策が進みまして合理化が進めば進むほど、まことに皮肉なことでございますが、組合員の減少とそれから反面年金受給者の増加という問題が起こってまいりまして、逆に共済組合の財政は一層悪くなる、こういう矛盾した形がとられてくるわけでございまして、現在行っております改革の線に沿いますと、先般来の財政調整計画のもとにいたしました人間、要員の数が非常に減ってまいりますので、そこにいろいろな財政上の諸問題が狂ってまいりまして、今後の問題としましては、ぜひ御解決をお願いしたいというふうに今お願いをしているところでございます。
  62. 川俣健二郎

    ○川俣委員 与党とか野党じゃなくて、こんな、これだけのものを指摘されて、注意されて、そういうものをほとんどやらないで国会へお願いしますなんて言ったって、与党とか野党を問わずこれはだめだと思うよ、こんなの恐らく。やってみましょうか。  財政調整計画、あなたは合いみじくも言いました六十年から六十四年、五年間、これは三十二万人要員規模だったのだから、これは単年度不足の金額が九百三十億だった。九百三十億でよかったのだ。ところが、監理委員会に皆さんお任せしたのだから、金科玉条のようにこの委員会は絶対だというのだから、そうしたら十八万人体制でしょう。移行時だって十九万五千三百人だというのだから、これをずっとやっていってみると、六十四年の財政調整計画が完了するまでには四千億の不足でしょう。これは間違いかな、どうです。どなたか言ってごらんなさい。
  63. 棚橋泰

    ○棚橋(泰)政府委員 先生ただいま御指摘のございましたように、国鉄共済組合の財政状況が非常に悪くなると予想されましたので、御承知のような国家公務員等共済組合法というのに一元化をしていただきまして、その中におきまして財政調整をお願いするということで、五カ年間他組合の御協力を得まして財政調整を行うというのを決めたわけでございます。しかし、その後、三十二万人で計算しておりましたものが、合理化等を急速に進めました結果、その財政はまた非常に厳しい情勢になる、こういう状況になっております。  したがいまして、さきの閣議決定におきましては、これにつきましては「所要の措置につき速やかに検討を行うこととする。」ということを閣議で決定いたしておりまして、これについて政府部内の協議が現在進められておるところでございます。
  64. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それじゃ「速やかに検討」というのは、これはぼつぼつ出たんじゃないですか。「速やかに検討」というのはどういうことですか。監理委員長でもいいですよ。
  65. 亀井正夫

    ○亀井参考人 共済年金の問題につきましては意味が二つあったと思います。一つは、昭和三十四年以前の恩給とか調整年金、年金制度ですか、まだ確立していない時代の負担というのは国鉄が背負っておりました。これは追加費用と申しておりますが、これの処理につきましては、今回の私どもの答申で、これのファンドとして約四兆九千億を結局国において処理をして、今まで年金、恩給をもらっておられる方に対しては不都合を生じないようにしようという処置をとったわけでございます。  それから、これからの年金の問題につきましては、ただいま先生指摘のように、六十年から六十四年までの調整につきましては、国家共済組合、それからたばこ、電電、これで助けようという処置を既にいただいておった。しかし、そのときの前提が三十二万でなかったかというのは先生の御指摘のとおりでございます。しかし、現在の国鉄の職員は既に三十万七千人でございます。それから新発足をする場合に、予定が国鉄の計算では大体二十七万六千人という人数になるという想定をしておりますが、それまでに私どもの案では二万人の希望退職を求めるということでございますから、二十五万六千人になる。それから三年間かけて四万人を今度は転換をしていただく、こういう格好で、転換の先もこれはまだはっきりはしておりません。したがいまして、一挙に六十二年の初めに二十一万五千人になる問題ではないということでございます。  そして、そういう問題につきまして、年金の問題というのは非常に大きな問題でございます。むしろ基礎には高齢化社会に進んでいくという基盤的な問題がある。また、国鉄の問題についてはかって非常に膨大な人員を抱えていたという問題もあった。そういうことでございまして、年金の問題については、私どもは問題の指摘にとどめ、そして六十五年以降については抜本的な対策をやろうということが国家公務員等共済組合審議会においても決議をされておる。そして、これの基本的な大枠の枠組みは社会保障制度審議会、そこで審議をされる、そういうことでございますから、そういう専門のところで具体的に御検討いただきたいという意見を出したわけでございまして、政府においては、ただいま審議官お答えをしましたように、これを正面から取り上げて速急にこれに対しての対策を樹立するということを先般の要綱の中で確立された、そういうふうに私は理解しておるのでございます。
  66. 川俣健二郎

    ○川俣委員 亀井委員長にこういうことを言うのはどうかと思うが、やはり意見書を出した以上は、もっと運輸省なり国鉄なりにそれは意見を差し挾んでいかなければだめでしょう。これは大体できないでしょう。今三十万七千人になったというのも知っているけれども、三十二万と大差ないでしょう。それだって百億じゃ終わらない、一千億じゃ終わらない。ところが四千億なんです。いいですか。  今度は年金の担当大臣にも聞きますよ、厚生大臣。あるいは自治大臣にも聞きますよ。社会保障制度審議会にゆだねるといったって、こういう注意書きをされてこれを全然やらないで、そうか、また赤字を出してきたか、仕方がないなど言えるか。第一地方共済審議会が決議しているのですよ。自治大臣承知ですか。地方公務員とほかの共済グループは既に国鉄の加入に反対だと言っている。自治大臣、これは知っていますか。
  67. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 ただいまのお話の点につきましては、やはり社会保障制度審議会の答申もありますが、地方共済におきましても、お話のように、そういうことは大変難しい問題で、検討しなければならぬ、で、やはり責任の所在というものをはっきりしろということを答申をいただいております。
  68. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうでしょう。これは皆さんの前だからお言葉を非常に丁寧に言っているが……(「面倒見られない」と呼ぶ者あり)とても見られないということなんだ、はっきり言って。  それから、厚生大臣どうですか。これから共済年金を審議するのにあなたが中心になるんだろうが。これは全部片づくまではできないんだな。国鉄のやつはもう加入できないんだ、これは。今回の審議の枠の外なんだね、これは。どうです。それとも、このままで年金の共済のあれに入れますか。一元化の方向に、対象にしますか。どうです、これは。
  69. 門田實

    ○門田政府委員 国家公務員等の審議会を所掌し、共済年金を担当しております立場から申し上げたいと思いますが、先ほど先生お話のございました社会保障制度審議会の答申でございますが、その後の状況といたしまして、いわゆる国家公務員共済と国鉄等の統合法案、これの成立を見まして、この統合によりまして、先ほどお話のありましたように、国家公務員等が助けてやっていく、こういうことがスタートしたわけでございまして、六十年の四月から財政調整計画というものでやっておるわけでございます。そうして、最近の新しい状況といたしまして国鉄再建計画との絡みが出てまいっておるわけでございまして、この問題は非常に大きな問題でございますから、これはやはり各方面と意見、審議を尽くしまして方策を得る、こういうことが必要であると思います。
  70. 川俣健二郎

    ○川俣委員 とてもこれは――僕も積極的に共済年金法の審議に入っていこうと思ったけど。いいですか。分割が六十二年でしょう。財政調整の完了が六十四年でしょう。しかも三十万人でしょう。これは積立金を充当せざるを得ないといったって、現在積立金は四千三百七十七億あるのだが、しかし、住宅貸し付けが千百億あるというのでしょう。鉄道債券が千三百億ある。あとの二千億はどうするかということなんだ。とてもじゃないが、これはこの問題が解決しない限りは今回の共済年金というのは検討できないのではないだろうかなと僕は思うのです。これはどうでしょうか。厚生大臣、たまにはちょっと口あけてください。年金担当大臣でしょう。
  71. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 お尋ねのように、国鉄共済が非常な危機に陥っていることは確かであろうと思います。したがいまして、一応国家公務員等の共済組合が国鉄を助けておるわけでございますから、したがって、今現在第一義的にはやはりその財政調整計画のあり方を見直していただく必要があろうかと思います。と同時に、この問題につきましてはやはり将来にわたって公的年金制度全体の問題として考えなければならないわけでありますけれども、その際には、今先生指摘のような大きな課題もあるわけでございますから、国民的合意がどこまでできるかということの見きわめが必要じゃないかと思います。  ただ、その際言えることは、今の共済年金の法案を通していただくことがいわば年金制度全体にわたっての共通項をつくるということができるわけでございますので、願わくは御審議の促進方をお願い申し上げたいと思います。
  72. 川俣健二郎

    ○川俣委員 仏さんのような増岡大臣が最後にそんな甘いこと言っちゃいかぬよ、これは。到底できるわけがないでしょう。あなた専門なんだから。ここに専門家もいるけれども、無理だよ、これは。  そこで、私は、これは大体方向は出た、わかった。自分で大体わかったけれども、共済年金の審議をする者としてわかったが、亀井委員長に大変忙しいところを時間の制約でお願いしたものですから、もう国鉄問題は終わりますが、やっぱりもう少し国民意見というものに耳を傾けるべきじゃないかな。少なくとも私らが言うのは、皆さん与党だからなかなかできないんだけれども、知事が三人ともああいうことを言うたというのはもう少し耳を傾けてあげた方がいいんじゃないですか。  さらに、この間ちょうどサンデー毎日か、文化人とか、いわゆる作家、映画監督、俳優、歌手等の皆さん方が十人で「人間鉄道フォーラム」というのを開いて、いろいろと意見を出しているのを非常に私も関心を持って見たんです。皆さんお読みになった人もいると思うのですが、「国鉄再建監理委員会は利用者や労働者側の代表も入れずに 密室でデータも公開せず 分割・民営化を進めている」、かと思うと別の人は、「日本の財界が狙っているのは一等地である国鉄の敷地」ではないだろうか。「コメと国鉄は国民の最低手段としてぜったいに手放してはならない」、かと思うと、「地方に行くと観光グループ企業の営業マンが土地を買い占めていて 稲穂の中をアタッシェケースが走っているようだ」こういうことを言う。あるいは「ローカル線を利用する人たちの足を切らないためなら税金も惜しくない 訳のわからない戦闘機や潜水艦に払うよりずっと苦にならない」「鉄道というのは警察と同じで国民のためにあるのだから利益を追求しなくていい」こういう意見もある。だからもう少し、せっかく五人の委員会から上がってきたことであるから、それが絶対だということもあるでしょうが、決まったものを押しつけるキャラバンではなくて、やっぱり国鉄というのは国民があってこそ国鉄じゃないですか。  もう一遍話を戻しますよ。新国鉄総裁が足を棒にして市長会とか知事会とかそういうところをお願いして歩いているのに、けんもほろろ、反発を感ずるということを言われなきゃならないということは、やっぱりその辺は大変に皆さん考えなきゃならぬと思うのですが、いかがですか。運輸大臣どうです。
  73. 山下徳夫

    山下国務大臣 私は決してここで監理委員長、監理委員会をかばうわけじゃありませんけれども、さっき監理委員長から御答弁ございましたように、まさに驚異的な回数の会合も持たれ、また、北は北海道から鹿児島まで、各方面の意見を聞くために随分と努力をされた。同時にまた、私は大臣を拝命しましてからおおよそ一年たちますが、その間、衆参両院の各種委員会、予算委員会を初め運輸委員会あるいはまた交通対策委員会等においても随分と質疑が行われ、野党の皆さん方の御意見も十分お聞きになっていると思います。  また、先ほど三県の知事のお話がございましたけれども、三県の知事が御意見をおっしゃったのは、たしかことしの六月ぐらいだと思っています。したがいまして、まだ監理委員会の「意見」も出ない随分前の時点でございまして、その後監理委員会から「意見」が出ましたし、これからまた新しい――新しいと申しますか監理委員会の「意見」に基づいて、私どももまた機会があったら御意見も伺おうとは思っておりますし、そういうことで、あの時点においておっしゃったことと、また新しい今度の「意見」が出た後では、まだいろいろお伺いずれは違った御意見もあるかもしれませんし、また新しい今度の「意見」に基づいてなされるこれからの施策につきましては、地方の首長さんたちも御協力をいただきたいというふうに思っておる次第でございます。
  74. 川俣健二郎

    ○川俣委員 ちょっと反論して、亀井委員長に一言後で御意見を伺いますが、確かに知事の参考人の意見の際には六月二十日ですからまだ結論が出ない前だろう。しかし、五十八年から百三十回、かなり報道もされた。当然分割・民営といったらぴんとくる。これは地方の知事ほどぴんとくる。だから、ちゃんとうたっています。読んでごらんなさい。私が言っているのじゃないですよ。こういうように検討されているようだが、現在検討されている経営の採算面のみを重視した分割・民営化や地方交通線対策等については一抹の不安を抱いておりますと書いてある。それだけは言っておきます。  それから、監理委員長においで願いましたが、しかしこれは、意見を出した以上は絶対だと思うのでしょうが、これからいろいろと国会の審議の中で専門の運輸委員会でも当然審議になると思うが、そうなると、運輸省を通じてまた修正なりということを言っておりましたから、そういうものの相談には乗る用意があるのですかね。その辺もあわせて一言最後に。
  75. 亀井正夫

    ○亀井参考人 お答えいたします。  私どもといたしましては、七月二十六日に総理意見書という形で出しまして、これを最大限尊重するというお答えをいただきまして、やりがいがあったという感じをしておるわけでございますが、これからは政府ベースでこの法案の御審議あるいは作成に当たられまして、それについて私どもとしましては具体的に御協力を申し上げていきたい、こういうふうに思っております。
  76. 川俣健二郎

    ○川俣委員 委員長、ありがとうございました。  では、国鉄を終わって、次に、今から十五年前に、時の建設大臣から「慣行水利権にメス」、こういう見出しで各社が一斉に報道されたわけですが、この「慣行水利権にメス」ということで、私も予算質問しましたのですが、これは簡単に言うと、今地方では大変な問題になっておる流水占用料、田んぼの水の料金を取るという問題ですね。この流水占用料というのは、田んぼの水から料金を取る、これがまた報道されてにわかに騒然となってきたが、これはある新聞に建設省の河川局長の言い分が出ております。「水は”ただ”でない」、そのとおりです。農業用水たりといえども従来の覚書や国会答弁の政策を変更する時期に来ている、我々はそのように認識をしているということで、一つの投稿というかインタビューに応じて長いあれが出ておるのですが、まず御本人に伺いたいのですが、これは本気ですか。
  77. 井上章平

    井上(章)政府委員 それは恐らくは日本農業新聞の記事であろうと思いますが、それはインタビューを受けまして私がお話し申し上げたものを作文いたしたものでございますので、直ちにその内容についてはそのとおり申し上げたということではございませんが、ただ、流水占用料制度を改正いたしまして、それでもって今大変困っております河川環境対策に充当しようということで、治水財源拡充のために、一つにはただいま広く行われております減免措置を見直すということと、もう一つはこの確保した収入を治水財源として使う、この二つの制度を新しく概算要求にお願いいたしておるわけでございます。その中に、農業用水につきましても他の用水と同じように応分の負担をお願いしたいということを申し上げておるわけでございます。
  78. 川俣健二郎

    ○川俣委員 今から十五年前の建設大臣というのは根本龍太郎先生、大変に農業にも明るい、見識の深い方でございますが、この方が、結局私の質問に対して、結論的には、そういうところまでは考えていないんだ、田んぼの水までは考えていないんだ、慣行水利権というのはずっと徳川時代からあるんだというような話をされておるのが議事録に出てきたのですが、これは御存じですか。
  79. 井上章平

    井上(章)政府委員 議事録は拝見いたしました。
  80. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると、拝見していただいているのなら話が早いのですが、この慣行水利権というのはかなり前から国会で論議されている問題です。  そこで、私は今明治三十九年の議事録を持っておるのですが、旧仮名遣いなので、要約してもらったのですが、こういうことです。農業用水に対する流水占用料の徴収に関する件、これは明治三十九年三月二十四日、貴族院の国会審議です。箕作麟祥君に対する政府委員南部光臣君の答弁です。四十二条、使用料及び占用料の場合でございますが、これは御質問になりましたようなかんがい用水を引き入れるというようなものに対して使用料を取るというつもりは全くないのでございます、こういう記録がありますが、御存じですか。
  81. 井上章平

    井上(章)政府委員 その議事録は明治二十九年だと思いますが、読んでおります。
  82. 川俣健二郎

    ○川俣委員 明治二十九年なら御存じですか。
  83. 井上章平

    井上(章)政府委員 拝見いたしております。
  84. 川俣健二郎

    ○川俣委員 これは旧河川法に対する審議ですね。  余り古いから、今度は新河川法制定時における国会審議。これは衆議院の建設委員会、昭和三十九年四月十日ですね。川俣君に対する、これは私の川俣ではありませんが、国宗説明員の答弁。「農業の取水につきましては、占用料は現在においても無料でございますので、将来においても徴収いたさないことに相なると思います。」これも御存じですか。
  85. 井上章平

    井上(章)政府委員 そのとおりだと思います。
  86. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そこで、「新河川法施行令の制定に関する覚書」結局、覚書を結んだ、農林省と建設省が。昭和四十年二月三日、農林事務次官大沢融、建設事務次官前田光嘉。「かんがい等のためにする流水の占用等についての法第三十二条(流水占用料等の徴収等)の規定による流水占用料等は、旧法における場合と同様の解釈、運用による」いわゆる取らない。これも御存じですか。
  87. 井上章平

    井上(章)政府委員 存じ上げております。
  88. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると、あなたはこれをコメントというかインタビューによって、全部が本当ではないと言うが、かなりこれは偉い人だなと思って見てきたのですが、これは皆さんは、議院内閣制で与党の建設部会にもこれを相談して通ったのですか。まだですか、これからですか。
  89. 井上章平

    井上(章)政府委員 このたび建設省で概算要求いたしました流水占用料制度の概要につきましては、自民党の建設部会にお話し申し上げて御了承を得ております。
  90. 川俣健二郎

    ○川俣委員 ところが、建設部会では通っていないと言う。これは専門の委員会で論議をすることでしょうが、はっきりそうおっしゃる、現地では。ですから、これからやろうとするのはこれからの準備なのか。それとも、来年度予算に、収入に入っているのだろうかと思いましたらもうちゃんと収入に入っておるから、それじゃ建設部会もちゃんと通っているんだなと。そうすると、建設省の法律解釈等が変わったと見ていいのか。変わったということでしょう。そして河川法施行令、そして農林省との調整なども終わったわけですか。
  91. 井上章平

    井上(章)政府委員 先ほど自民党の建設部会で御了承をいただいたということを申し上げましたが、ただ条件がございまして、農業用水については今後調整するということに相なっております。  それから、この覚書でございますが、覚書につきましてはただいま先生がおっしゃったとおりでございますが、私どもは、このたび流水占用料制度を改正いたしまして、この覚書の内容とは違った運用をいたしたいということで、これは農水省とただいまお話し合いをいたしておりまして、まだ御了承を得たということではございません。
  92. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると、合意は得ないが一応予算には計上した、こういうことですか。
  93. 井上章平

    井上(章)政府委員 そのとおりでございまして、ただいま関係各省と合意を得られるべく打ち合わせをしているということでございます。
  94. 川俣健二郎

    ○川俣委員 もう一つ。これは新聞記者でも何でもない、インタビュー的にひとつあなたの感想というか……。  これだけ歴史的な慣行水利権というものは、やはり黙って田んぼに流れるんじゃないんだな。あなたはどこでお育ちになったか知りませんが、僕らは田んぼの中で育ったものだから。だから、あれは黙って水が田んぼに流れるんじゃないんだよ。ここに皆さんおられる、それぞれの役職やっていると思うが、土地改良とかせきの組合とか、みんなして管理をして、ずうっとむしろ案外、国からは補助を得てない対象のものなんだ、どっちかといったら。そして昔の戦前は、水引きけんかというのが絶えなかったわけですが、それがだんだん人間の知恵で、金をかけて田んぼに流れ、そのしりからは次の田んぼに流れるという管理をしてきている。これがいわゆる慣行水利権。あなたはかなり勉学をされた方だそうですが、平田篤胤とか佐藤信淵などは、慣行水利権という一冊の本を出しているくらいなんだ。あなたはそういうのを全部ここで変えるという決意かね。やはり建設部会が待ったというのは当然。農林水産省もなかなか予算を計上する段階になっても合意は得られないというのも当然。これでもまだやるのですか。
  95. 井上章平

    井上(章)政府委員 私の両親は百姓でございます。  それで慣行水利権でございますが、これにつきましては私ども考え方を率直に申し上げさせていただきますと、今までの流水占用料とは違いまして、これを財源として新しい事業を進めようということでございますので、私どもとしては、できるだけ広く御負担をいただきたいということでお願いいたしておりますが、いずれにいたしましても、関係省庁と調整が相済みませんと政府の案ということにはなりませんので、ただいま精力的にその調整を各省との間で行っているということでございます。
  96. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると、慣行水利権という歴史的な既得権までメスを入れようという魂胆じゃないんだな。
  97. 井上章平

    井上(章)政府委員 慣行水利権という事柄そのものを私どもは変更するというつもりは全くございません。
  98. 川俣健二郎

    ○川俣委員 大臣、これは大分論議にあなたも入ったと思うのですけれども、あなたの方の地元でも大変でしょう、これは。人ごとじゃありませんよ、あなた。どうです。田んぼがあるところはみんな騒いでいるでしょう。
  99. 木部佳昭

    ○木部国務大臣 慣行水利権の問題につきまして、特に農業用水につきましては、今先生指摘のように歴史的経緯というものを私どもはよく認識をいたしておるつもりでございます。しかし、昭和三十九年にいろいろ大きな問題を醸しました現在の新河川法の制定の際にもこの問題が大きな議論になったわけです。私も当時事情をよく知っておる一人でございますが、先生の父上が農政通でありまして、当特質問されたことについても実はよく承知をいたしておるわけであります。  そういう意味で、しかし法的に見てまいりますと、慣行水利権と許可水利権というものは法律的には効力が一緒であるという解釈になっているというふうに私は理解いたしております。  そこで、先ほど局長からも答弁申し上げましたように、私どもは治水の財源というものを見るために概算要求に計上させていただいたわけです。したがって今予算編成期を迎えまして、これから関係省庁といろいろ協議をしながら検討していただく、こういうことに実はなっておるわけでございます。
  100. 川俣健二郎

    ○川俣委員 担当大臣が慣行水利権は許可水利権と同じだ、この一言を聞いて私もこの質問は下がりますが、これは全く同じなんです。それをやるとまた大変に時間がかかるので、どうも、別に二年か三年座る局長に、こんな歴史的な物の解釈を曲げてメスを入れようなんという魂胆でなければ徴収はできないのですから。メスを入れなければ徴収できないのです。同じだったら取れないようになっているのです。そこをひとつぜひ検討で、これは農林水産で十分に検討はするだろうとは思いますが、あえて申し上げておきます。  行革というよりも行革以前の問題かもしらぬが、かつて中川一郎農林大臣が、よし日本の国の営林署を一割なくするということから閣議決定してしまったことで、てんやわんやになっておる。これは一見山は非常に多いようですが、一たび中へ入ってみるとかなり荒れております。  そこで、総理大臣もこの前何回か総括質問で答えていただいたのですが、森林は木材供給のみならず国土保全、水資源の涵養。これはまさしく山林があればこそ水が出る。水源というのは山林なんだ。それ以外ないんだから、きれいな水は。公益的機能を持って、したがって森林の重要性があるので、かなり手だてをしなければならぬのだ、こう総理大臣も答えて、これはお口だけではないだろうなと思って予算を見ておるが、幾らかは緑になりました、予算も。幾らかは色がつきました。国有林野事業の再建問題につきましては、これまでのいろいろな国有林の財政悪化、これが原因なものだから、我が国林業をめぐる構造的要因によるところが大きい。したがって、もっと財政措置を講じないと山がもたないのではないかということなんです。これは割合に認識が一致した、この前の予算委員会で。  ところで、五十九年度の決算を見ると、予算に関係あるのですが、損失は前年度を上回って八百六十八億、累積欠損金は六千億、債務残高に至っては一兆円、こういう事態になった。それじゃ、山は捨てるか。国鉄じゃないけれども、ずたずたにやってみるですかね、皆さん。さらに六十一年度の国有林野事業特別会計の予算は、要求で五千六百八十三億。五千六百八十三億みんな使えるんじゃないんだ。五千六百億のうち利子と元本が千六百億あるんだ。そうすると正味四千億。ところが、四千億のうち高い利子で二千四百億借金ときた。利子償還金の支払いが新たな借入金を呼ぶという、まさしくサラ金というか、こういう状態なんだ。  やはり大蔵大臣、思い切って抜本的な対策というのを講じないと、水であり、国土緑化、酸素の供給源等々考えるとどうしても抜本的に考えなければならぬ時期に本当に来たと思うんだが、大蔵大臣、一言御意見を聞かしてもらいたいのですが。
  101. 竹下登

    ○竹下国務大臣 今は国有林に焦点を置いてのお話でございますが、今森林の持つ意義というものからして、私はこれを緑のダム、こういう表現で呼んでおります。それを今の質問の国有林問題についてこれを申し上げますならば、いろいろな御提言がありました。しかし、基本的には自立再建という物の考え方というものを捨ててはならぬというところで、いろいろな意見を承りながら、一般会計から金を入れるということを、若干緑になったとおっしゃったのはあるいはそういうことであろうかと思うのでありますが、繰り入れ対象といたしまして、五十八年度から林道の災害復旧に要する経費、それから国有林野内治山事業を含むところのいわゆる一般会計の負担によって治山勘定でこれを行う、こういうことで進めておるわけであります。  今度の予算要求も、査定と申しますかこれからのことになりますが、基本的な自立再建というものを基礎に置きながら適切な対応をしていかなければならぬという基本認識は、私の方でも持っておるつもりでございます。
  102. 川俣健二郎

    ○川俣委員 さらに追い打ちをかけるように、市場開放というか貿易摩擦の一材料として木材輸入の関税引き下げが引き出されております。もうきょうあす始まっているとは思いますが、そうなると今予算計上したものが当然下がってきます。もっと苦しくなります、木材が入ってきますから。そうなると、このような森林の整備にはやはり一般会計の繰り入れというのがどうしても必要になってくるんじゃないでしょうかな。  というのは、切って売るという収入よりも、公益的機能という方に山林というのはどうしてもウエー小をかけていかないと国土は守れない。本当に不思議と、緑のあるところを無造作に山に道路を切ると、この間の長野じゃないけれども地すべりをする。これは全くそのとおりだ。そのことを考えると、一般会計の繰入額をふやしたり借入金の利子をもう少し民有林並みにしたり、民有林の場合は安いのですけれども、いろいろの手だてが可能だと思うのですよ。やはりそういう手だてを考えないと、まあこれは私からじゃなく、皆さん識見のある人力ばかりですから、みんなこれを何とか、国を挙げて、政府を挙げてやらなければならないという林政審の答申もこの前の予算委員会で確認しただけに、何か方策をさらに考えられないだろうかね、これ。
  103. 竹下登

    ○竹下国務大臣 元来、いわゆる国有林野事業というのは独立採算制に基づいておるわけでございますが、現実問題としては、御指摘のような問題がたくさん生じております。それに、今おっしゃったのは、米国の対日要求等々の中に木材問題が大きく出てきておる、そうなれば新たなる事態としてそれを受けとめて対応していかなければならぬじゃないか、こういう御意見を交えた御質問であろうと思っております。今、その問題につきましても鋭意我が方とそれから林野庁当局とでいろいろな議論をし、詰めを行っておるという段階でございます。  私も、今おっしゃったように木材というものが、いわばかつての採算性、薪炭とか木炭とか、あるいは建築資材とかに占めるシェアというものが今日大変な変動を来しておるという事実を十分踏まえながら、しかし、やはり緑のダムというものはどうしても守っていかなければいかぬというところで知恵を絞っておるところであるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  104. 川俣健二郎

    ○川俣委員 録のダムがかれないように、ひとつ知恵の絞り方、早目に。  農林大臣にもひとつ聞きたいのですが、この前、やはり需要も拡大するという一つの方策として、ここで文部大臣に、今の文部大臣ですが、提案して、木造校舎というので、建設省にお願いして建築基準法も直してもらって、コンクリートの学校と補助金はほとんど同じようにするような手だてをする、そして予算要求も非常に文部省がやっております。と同時に、やはり担当大臣である農林水産相も、何かこういうような問題に対する手だてを考えなければいかぬと思います。どうですか、一言。
  105. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 川俣先生お答えいたします。  先ほど大蔵大臣等も御答弁されたわけでございますが、先生質問というのは、国有林野の約六二%が保安林である、そんなことでもっと財源を特別に考えたらどうか、それには一般会計繰り入れをふやすとか、あるいは借入金の利率を低利にするとか、あるいは特別財源を考えたらどうかということだと思います。  実はこの間、今大蔵大臣が話されたようなことでございますが、市場開放に伴いましての川下、川上対策でございまして、これは総理大臣とか大蔵大臣の特別の計らいによりまして千五百億、融資額一千億、国費五百億ということで、特に特別枠をいただいたということでございまして、今先生のおっしゃる方向で頑張っておる。  また特に、この林につきましては、単なる森林林業の問題ではなくして、その公益的機能とか水資源の酒養とか含めてということで、総理大臣に特に御理解いただいて頑張っているということでございまして、そんな方向でこれは頑張りたいと思っていまして、何分の御理解と御協力をお願いする次第でございます。
  106. 川俣健二郎

    ○川俣委員 ひとつぜひ緑のダムがかれないようにやらなければならないと思います。強く要求しておきます。  最後に一つだけ。総理がよく前に言っておったのですが、日本の国の規制緩和、必要以上の規制緩和。今度のスパイ法案というのは規制強化だ、規制緩和というのを非常に言っておりました中曽根内閣の中で。  十月二十日各新聞が一斉に「精神病院入院患者 人権擁護で新基準」「信書・面会 原則自由に」こういう我が国では非常に画期的なことを厚生省が考えた。閉鎖病棟にも公衆電話をつける。これは非常に画期的であるだけに、どの新聞もほとんどトップなんです。  ところが、これを考えた場合に、法務大臣にぜひ伺いたいのですが、この「精神病院入院患者の通信・面会に関するガイドライン」これが厚生省から出されましたが、このような指示の背景となる考え方として、患者の人権を挙げておりますね、ハンディの一つとして。ところが、これは訴えが非常に強いのであえて取り上げるのですが、それは違うよということで皆さんに片づけてもらいたくないのですが、刑務所や拘置所の収容者の人権についても、国際的に人権でいろいろと論議をされているのを考えてみますと、このようなことは刑務所や拘置所に収容されている皆さんにも適用すべきではないだろうかな、適用してしかるべきではないだろうかな。それは違うよと、こうおっしゃるのか。  これはなぜこういうことを言うかというと、私も社労でずっとこういう問題をやってきましたが、厚生省のような行政指導は可能である、しかし監獄法は受刑者や被疑者の隔離、拘束を趣旨としたものだから、外部交通遮断または制限は当然である、こういうことでは片づけられない。なぜかというと、精神衛生法においてやはりこの精神病院の患者も強制入院させられたりする。措置入院という制度ですが、隔離、拘束をねらいとしておるわけです。したがって、やはり法務省もこういったものを考える時代に入ったのではないだろうかな、こういう意味で、法務関係は私は余りわかりませんよ、わかりませんが、専門の嶋崎さんに何とかこの辺を聞かしてもらいたいなと思っている。
  107. 嶋崎均

    ○嶋崎国務大臣 お答えいたします。  厚生省がまとめられましたガイドラインの問題につきましては、これは所掌が違いますので、私がここでコメントをするということは差し控えたいと思うのでございます。  しかし、今御指摘の、刑務所や拘置所に収容されている既決または未決の被収客者は、御承知のように国家の刑罰権の行使または裁判権の公正を担保する目的のために収容されているというものでございまして、精神病院において治療を受けている患者とその立場というか地位は非常に違っておるのだろうというふうに思うのでございます。したがいまして、面会とか通信等に関する措置を精神病院の入院患者と同様にこれを取り扱うということは、私は、余り適当なことではないというふうに考えておる次第でございます。
  108. 川俣健二郎

    ○川俣委員 これは反論する能力も私にはありませんが、やはり基本的人権は何人においても同じように守られるべきだ。「自由を奪われたすべての者は、人道的にかつ人間の固有の尊厳を尊重して、取り扱われる。」、これは国際人権規約における受刑者に関する規定なんです。もう一遍読みますよ。国際人権規約「自由を奪われたすべての者は、人道的にかつ人間の固有の尊厳を尊重して、取り扱われる。」のだ、こういうのがうたわれておりますのを批准しているわけだから。  刑務所や拘置所の収容者は、基本的人権を一切与えられていない面がある。そんなことはない、こうおっしゃるでしょうが、例えばここに私は府中刑務所の「所内生活の手引」というのを――わかりやすく、どなたが見ても、我々見てもわかるわけですが、昭和八年に制定された、大臣もちろん御案内の行刑累進処遇制度、頑張りようによっては上に上がるのだ、四級から一級。一級になったら初めて通信、面会は自由だ。ところが、同じ人間でも作業につけない障害者、立って作業できない六十五歳以上の老人には、初めからこの制度は適用されないようになっている。どうあっても第一級には進めないというふうになっているわけです。今府中の刑務所には、これは昭和六十年の九月三十日現在のあれをおたくの方からいただいたんですが、法務省からいただいたんですが、千九百四十四人おります。この中に一級に進級したのは三人。  それからさらにやはり考えてもらわなければならないのは、これは国会でも皆さんもみんな取り上げられた長年服務しておる平沢貞通氏の場合は、親族及びこれまで会ったことのある人だけに限られておる。主任弁護人の話では、新聞、雑誌を送っても、本人にはほとんど届かない。こういうのはやはり考えていい時期ではないだろうか、こう思います。あるいは、監獄法では親族との面会を許されるのが原則なのに、この基本が、管理者の気持ちで、いわゆる管理者の虫の居どころで、勝手に制限できる、こういうことになっておる。こういうようなことを考えますと、私はやはり考えるべきではないだろうかなと思っております。  それから、もう一つ例を申し上げますと、収容者は法務大臣に対して情願という名の不服申し立てができることになっている。しかし、この権利が実際に行使されているかどうか、客観的に明らかにされていない。というのは、請願や情願の件数はこの質問の前に提供されたが、その内容、内訳も、当局としての処理の情願についても報告不能とのことだ。  こういうことを考えますと、私は、中曽根さんに聞きたいところではあるが、あえて法務大臣で結構ですが、この規制緩和という問題を取り上げても、ちょっと精神異常者とは違うよという観念になるかもしらぬが、私はさっきから説明してみると、ぼつぼつ検討する時期に入っているのではないだろうかな、こう思います。  さらにこれを申し上げると、独房に入った場合に、二本のラインが引かれている。三畳間に二本のライン、そのラインのところへちょんと座っていなければならぬ。皆さんは三畳間をこう歩ける、横になったりできると思ったら、そうじゃない。このラインのところでしかできない。こういうような手引を考えると、ぼつぼつ検討してもいい時期ではないだろうかな。  法務大臣、これは今すぐやれということではないが、そういう国際人権規約も批准している日本になり、やがて二十一世紀にもなる日本として、ぼつぼつ検討する値があるのではないかな、こう思うだけに、あえてもう一度、教えていただきながら御意見を伺いたいのですが……。
  109. 嶋崎均

    ○嶋崎国務大臣 ただいまお答えしたことで趣旨は尽きておると思うのでございます。しかし、御承知のように、精神病院において治療を受けている患者の皆さん方と、国家の刑罰権の行使下にある――私は、そのやり方等につきましては、皆さん方も御承知のとおり、明治四十一年にできました監獄法の改正というようなことをやって、基本的に国際的な現在の矯正施設の姿というものを反映をさせる、また、収容されている人の立場というものも十分考えた処置を講ずるというような意味での検討というのは、将来ぜひ進めていきたいというふうには思っております。思っておりますけれども、今御指摘になったいろいろな問題を考えてみましても、非常に限られた人間で収容されている人々を確実に点検をして処理をしていかなきゃならぬ、そういうときに、独房に入っている人がどういう行動をとっておったらそういう整理がうまくできるのか、あるいは収容されている人がその改善更生を図っていくということが基本的に大事なことでございますから、そういう期間を通じまして収容者の更生が図られるようないろいろな手当てというものを講じていく、そういうことはぜひとも段階的に、教育刑的な考え方をとるとかとらぬとかいうことにかかわらず大切なことであるというふうに私は思っておるわけでございます。  したがいまして、そういう国家の刑罰権の行使の中にある人、あるいは先ほど言いました未決というような場合になれば、これは裁判の公正な維持を図っていくというような観点からどうしても一定の期日というものは必要になってくるわけでございますから、そういう範囲内での規制というものは当然出てくるのだろうというふうに私は思っておるわけでございます。  しかし、そういう制約の中でも、何しろ監獄法の時代の考え方と時代は相当推移をしておるわけでございますから、ぜひとも皆さん方の協賛も得まして、刑事施設法の改正をやる、そういう際には、基本的にやはりそういう点を十分検討し、また改善をしていかなければならないところがあるならば、そういう中で努力をしていかなければならないのではないかというふうに思っておる次第でございます。
  110. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それまで法務大臣が言っていただければ、これは論議が尾を引くことでしょうから。これは厚生省が出したものもそう簡単なものじゃなかったわけだし、御理解できると思います。やはり精神病院に電話を置いて、通信、面会を原則自由というのは、おやっと思った人も抵抗を感じた考え方もあるわけです。あるわけだが、やはり人権保護へ前進、こういうような考え方でやっているということをぜひ法務省の方の、明治時代の監獄法もこれありでしょうが、これは論議が、どうせ尾を引くことでしょうけれども、ぜひお願いしておきたいと思うのです。  終わります。ありがとうございました。
  111. 天野光晴

    天野委員長 これにて川俣君の質疑は終了いたしました。  次に、岡田利春君。
  112. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 本来なれば私の質問は初日に終了いたしたわけですが、大変遅い時間に質問するめぐり合わせになったものでありますが、私は、主として外交問題、また中曽根さんの政治姿勢の問題、そして当面の我が国の課題である貿易摩擦に関する問題、また税制その他若干の問題についてお尋ねをいたしたいと存ずる次第であります。  ずっと今までの議論も聞いてまいりましたけれども、今国会が召集をされて、総理の所信表明演説が行われて各党それぞれ代表質問が終了して、その後一週間程度の日程で総理アメリカを訪問して、国連四十周年の会議に出席をし、演説もされておるのであります。そして、主要国の首脳会議に出席をし、日米首脳会談を終えて帰国されておるわけですが、これらの問題について私はやはり今国会でお尋ねをしなければならぬ、こう思っておるのであります。  今、ワシントンの天候は、新聞の世界の気温のあれを見ますと、大体十七、八度が最高気温であります。最低気温が七度前後、いわば大体北海道の札幌ぐらいの気候ではなかろうかなと私は思うわけです。  このワシントンの一週間の滞在、時まさしく実りの秋であります。ワシントンの実りの秋の収穫はまずいかがでしたか、お伺いをいたしたいと思います。
  113. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今回はワシントンではなくしてニューヨークにおったわけです。  非常に有益な会談あるいは有益な式典に出席さしていただきまして、総理大臣といたしまして懸命に努力をしてきたつもりでございますが、何しろ不敏にしてそう成果も上がらなかったのではないかとじくじたるものがございます。
  114. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 非常に謙虚な御答弁をいただいたわけでありますが、この一連の会議というのは極めて重要だと思うわけであります。したがって、総理としてこのアメリカ訪問を終えられて、その謙虚な中で自己採点をされているんではないかなと、こう思うわけです。新聞報道等ではいろいろ採点が行われているようでありますけれども総理としてはどのような自己採点をされておりますか、自己評価について例えれば幸いだと思います。
  115. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 点数は先生がつけるもので、岡田さんがつけていただきたいと思います。
  116. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 中曽根さんがそのような謙虚な姿勢でこれからの政局を運営されれば、もう一遍中曽根さんにやってもらわなければならぬではないかなどという声も起きないとは限らないのではないかと私は思うのであります。「傲慢は人を滅ぼし、謙虚は人をつくり上げる」という言葉もあるのであります。  私は、総理の国連演説を十分、二度三度と読ませていただきました。非常に美文調の調子で書かれておりまして、憲法の前文を読んでいるような感じも私はいたしたのであります。いわばあの演説は、日本の秋、紅葉に彩られたいわばにしき織のような感じもあの演説の中で私はいたしたのであります。だが、私は、その演説の内容を二度三度読んでみて、感動というものが残念ながら私には浮かんでこなかったのであります。なぜ、一体感動が生まれてこないのだろうか。やはりそれは中曽根さんの言葉と政治の行動、こういうものに落差があるという私自身の感じがあるものですから、私自身の感動がわいてこなかった、こう私は残念ながら思わざるを得ないのであります。そこで、私は、この国連演説を読んで感じたことを三点程度申し上げて、総理のまたお考えを承っておきたい、かように思います。  まず第一に、私は、あれだけ練られた文章、相当練りに練って原稿を私はつくられたのだと思うのであります。その文章の中で、特に前段の問題、いわばサンフランシスコ平和条約を結んで、その後国連に復帰をして今日の日本の繁栄を築いた、そういう文脈の中から、当然私は、我が国が被爆国の一員として、唯一の国民として、軍縮の問題に総理意見を述べられた。極めて当然であります。     〔委員長退席、橋本(龍)委員長代理着席〕 だが、その中で非核三原則には残念ながら触れられていないわけであります。これは単に欠落をしたあるいは原稿から忘れたというようなことで済む問題ではないのではないかと私は思うのであります。なぜかならば、出発以前の所信表明の中には明確に我が国の国是である非核三原則について総理はきっと述べられておるからであります。私は、これは意識的に非核三原則は原稿から落としたのではないかな、こう感じました。そして、もし非核三原則を原稿の中から落とすとするならば、やはり三原則の、つくらず、持たず、持ち込ませず、そのいずれかに何か面映ゆいものを総理は感じたのかなという感じを私は持ちました。いわば持ち込ませずという一つの原則、このことについては、我が国の国民のみならず外国の中でも多少疑念を表明しているところもあるのであります。そういうようなことが、非核三原則の国是を国連の演説の中で草稿から外したのかどうか非常に重要な問題だと私は思うのであります。そういう意味で、非核三原則というのは世界にすぐれた、世界に大きく評価されている憲法的なものであります。  佐藤栄作さんがノーベル賞を受賞された、その大きな根幹をなしておるものが私はやはり非核三原則の政策を確立をしたということにあると思います。その中でも、つくらず、そして持たずというのは、これはどこの国でも、相当の国があるわけであります。三原則の中で一番重要なのは持ち込ませずという原則なんです。この原則は世界の国々にはなかったわけですから、そういう政策が高く評価をされて佐藤栄作元首相がノーベル賞を受賞された、私自身はそういう理解をいたしておるのであります。その点について、一体、総理は草稿をつくられるときにどうされたのか、この機会に国民にあなたは率直に説明する責任があると私は思います。その点についてはいかがでしょうか。
  117. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 広島、長崎の原爆の惨害を受けた史上初めての民族として、核兵器を廃絶する、そういう強い主張を全面的に出しまして、そちらの方を非常に強調しまして、我が国で非核三原則をやっているということを余り言う必要もそうはないであろう。むしろ、それよりも、地球上全面的に核兵器を追放しようじゃないかという方に重点を入れて申し上げたのであります。
  118. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私は、どうも今の総理の説明は、国民皆さんが聞いた場合にやはり大きな失望をするのではないかと思うのであります。今、全面的な核軍縮の方向を目指して総理自身も発言をされている。だから総理は言っているわけでしょう、この国会でも。そう一遍に核兵器が廃絶にいくものではない、きのうも述べているわけです。やはり段階的に核を減らして、そしてお互いに核を縮小していく検証ができ合って、そういう保障のもとに、将来は究極の目的としては廃絶に向かうものである、こう言われておるのであります。  そうしますと、非核三原則、今我が国がとっている国策、しかもこれは、我が国のみならず、ニュージーランドにおいてもそういう政策がとられる、あるいはまたミクロネシアの諸国においてもそういう憲法が制定されている国も出てきた、オーストラリアの労働党政権でさえも基本的にはそういうような考え方に立って現実に対処しておるというのが常識であることも、総理は十分御承知であります。  私は、そういう意味で、今総理がせっかく説明されましたけれども、やはりこの非核三原則の問題はあらゆる場面において、それこそいかなる機会をつかまえても我が国が積極的に我が国のそういう平和政策の立場を主張する、その一つの原則として落としてはならないことである、こう私は確信をするのであります。総理は私の確信と同じ確信を持てますか。いかがですか。
  119. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ことしはNPT条約、核拡散防止条約の見返り、見直しの年に当たっておりまして、国際的に普遍性を持っているものは実は核拡散防止条約なのであります。そういう意味において、核拡散防止条約に入らない国をみんな入れようではないか、また持っている国はあの核拡散防止条約で約束しているように核軍縮に向かってもっと誠実に実行すべきである、特に米ソ両超大国はその大きな責任が全地球上に対してある、そういうことを強調いたしまして、大体岡田さんと同じような趣旨考えを述べておるわけであります。
  120. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 今総理は、結論的に私が述べた考え方と同じ考え方だ、こう述べられました。ぜひこれからも、総理はそれぞれ国際会議に出られ、また今後も首脳会談にも出られるでしょう、その場合に我が国の非核三原則、このものをむしろ積極的に訴えていくという姿勢をぜひ貫いてほしい。念には念を入れよという言葉もあるわけでありますから、総理の場合も随分しつこく我が国の立場を訴える場合もあるわけでありますから、そういう立場に立って政治行動をとられることを希望いたしたいと思うのであります。よろしいですか。
  121. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 よく了解いたしました。
  122. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 それともう一つの点、演説の中であるわけであります。  総理は今度の演説の中で、いわば単に核兵器、核軍縮にのみ触れておるではなくして、その中には通常兵器の削減についても訴えられておるわけです。そして、今まで我が国がとってきた武器の輸出禁止の原則、こういうものをそこにつけ加えられて我が国の立場を明らかにされたのは極めて立派なことだと私は思うのであります。  だがしかし、一方においてはこの国会で今議論されておりますようにGNP一%枠を突破するかどうか。防衛費は年々我が国予算上は突出をして増加をいたしておるわけであります。そしてこれからの情勢は、米ソの首脳会談が行われて、軍縮の方向で真摯に話し合われ、緑の衛星である地球にアメリカとソ連の首脳が一体どういう責任を負うのか、このことが今問われている、こういう状況の中にあるのであります。  そういう意味では、そういう総理の演説から言えば、我が国の防衛、効率のいい防衛力を充実をしていくという面も相当慎重に配慮されていかなければならないのではないのか。またそういう日常の言動が望まれるのではないか、私はこう思ったのであります。  そしてもう一点は、総理の哲学とも言われている、いわば後段に述べられている、宇宙大自然は我々のふるさとである、日本人の心のふるさとである、こう述べられて、あなたの若いときですか、随分前の俳句でしょうか、「天の川我がふるさとに流れたり」こういう句も添えられているのですね。東洋文明、そして我が国日本の文化の宇宙自然と人間との共存といいますか、そういう原点について触れられておるわけであります。  私はこれを読んで、非常にすばらしい表現だ、こう思いました。しかし反面、私はこの文脈をずっと素直に読んでいって、中曽根さんはこういう原稿を書くときに、宇宙が今軍事化されていく状況にある、宇宙大自然は我々のふるさとである、そのふるさとが軍事化が進んでいる、これはやはり我がふるさとの軍事化を阻止しなければならない、こういう気持ちがわいたのだろうかどうだろうか、こう私は思わざるを得なかったのであります。  私はこの中曽根さんの述べた文脈から言えば、SDIなどについては、やはりこれはもう宇宙軍事化はお互いに自粛をする、軍事化については我が国は非常に慎重な態度で臨むというものが出てこなければ、このように述べられても国民の心を打たないのではないかなと思いました。私は、余りにも鮮やかな文章なるがゆえに、総理のこれからの政治行動に、我がふるさとのきれいな天の川を見ることのできる宇宙が軍事化されないように、そういう政治行動を優先させてほしい、こう思うのであります。これは私一人の願いではないでしょう。我が国の国民の願いでもあると思います。私のそういう感想についていかがでしょうか。
  123. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 羽田を立ちまして冬の海を真っ暗な中を行きましたが、非常にきれいな星空でありまして、「この聖き星空とわに冬の洋」という俳句をつくった次第であります。この清い空を汚さないようにという念願を申し述べたものであります。
  124. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 往々にして、俳句を詠まれる方にも、自分のリアルな生活実感の中から旬を詠まれる方もおるし、何か一つのユートピアを描きながら自分のいろいろ悩んでいる現実から逃避をしたいという面もあるのでしょうか、そういう句もあるのだと思うのですね。今総理が述べられたそういう気持ちが、これからの世界の軍縮平和の方向に、我が国の、平和憲法を持つ平和国家のリーダーとしての政治行動に本当にあらわれてくることを望みたい、こう思うのであります。私のこういう願いは国民の願いだ、こう総理理解できるだろうと思うのですが、いかがでしょうか。
  125. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 十分理解できます。
  126. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 総理は、主要国首脳会議、日米首脳会談を通じて――米ソ首脳会談が十一月に持たれるのでありますけれども、この米ソ会談というのは、結局は環境がずんずん整備をされていって、またシュルツさんが今度モスクワを訪問されて、そしてゴルバチョフ書記長とも会うでしょうし、シェワルナゼ外相とも会っていろいろ首脳会談の地ならしをされる、環境の整備をしていく、こういう努力も予定されておるわけであります。そうしますと、米ソ首脳会談というものは、非常にいろいろ困難な問題があるけれども、これを起点にして東西の緊張緩和、核軍縮に向けて会談はそういう方向性を見出すことができるのではないか、私はこう実は判断をいたしておるのであります。  総理は、この首脳会談を通じて、この十一月に持たれる米ソ会談についてはどのような期待と、そしてまたこの会談がどういう道筋をつけるか、そういう点についてどのように判断をされておるか、伺っておきたいと思います。
  127. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ニューヨークにおきまする先進国の首脳会議の席上において、各国の大統領あるいは総理がみんな所見を述べ合いましたが、私は、米ソ首脳会談の時期は熟してきつつある。ゴルバチョフ書記長は、自分の見通しては平和を欲しておる。こういうトップ会談が生まれたというところはどこにあるかと言えば、おのおのその必要があるから生まれてきた。この必要とは何ぞやと言えば、やっぱり両方平和を欲しておる。そういう面から見て時期は熟しておるので、先般のゴルバチョフ書記長のパリにおける提案というものは数字が入ってきておるし前とちょっとニュアンスの違う点もある、したがって、アメリカ側も今度のトップ会談においてはこれに対する材料を出しなさい。それで、ゴルバチョフ氏が来年二月の党大会において説明するとか、あるいは検討するとか、あるいはそれまでに回答するとか、ともかく米ソ会談というものは一回で終わるのではなしに、こういう問題は何回も何回も会う必要が出てくるのであろうが、これが切れないように材料を与える、言いかえれば、対案を出すといいますか、そういう態度が好ましい、レーガンさんそういうことをおやりなさい、そう言ってきたわけであります。
  128. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 そこで、日米首脳会談が行われた後、米独の首脳会談が行われているわけです。日本アメリカの場合と西ドイツアメリカ、こういう関係になりますと、特に東西の緊張の緩和、こういうことについて私は日本以上にドイツは敏感になることは当然であろうと思うのであります。  そこで、この会談後、記者会見をされておるわけでありますけれども、その記者会見ではコール首相は、特に米ソの首脳会談は単に今回首脳会談をやるというのではなくして、いわば定期協議のように、米ソ首脳会談は定期的に開催されるべきだ、このことについては完全にレーガン大統領と合意に達した、こう述べられておるわけです。そしてまた、ジュネーブの包括軍縮交渉におけるソ連側の新提案に対する対案はソ連と接触の上にとにかく最終的に出されると期待をしている、また当然出されなければならないものである。遅きに失するというような意味を込めて、コール首相はレーガン大統領に訴えられている。その席上、一緒に出席をしましたゲンシャー外務大臣はこの首脳会談に触れながら、当然アメリカ側も首脳会談の前にはアメリカ自身の核軍縮に対するソ連の提案に対する対案を明確に打ち出すであろうという判断を得た、こう述べておるのであります。  総理の記者会見には、これらについては触れられていないのでありますけれども総理はそういう点について特に積極的に述べられたのかどうか、この点どうも報道では不明確でありますので、総理から率直に伺っておきたいのであります。
  129. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今申し述べましたように、明確にそれを述べておるのであります。そしてそれが一回限りに終わるべきではない、ある程度これは解決までには時間がかかるから、何回も会うであろうし会わなければならぬであろう、そういう意味においても対案を出して、そして向こうが検討して持って帰る、そういうような形で継続していくことが望ましい、そういうことを言ってきたわけです。
  130. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 主要国首脳会議で、先ほど発言についても触れられておりますけれども、特に米ソ会談が実現できた一つの要素としてアメリカの戦略防衛構想、SDIについてその席上総理は積極的に評価をされた。このことについて、私どもは、この時点で依然としてSDIに対する積極的な評価を与えたもの、こう理解をいたしておるわけです。しかし、現時点では総理は、このSDIの研究については理解を示すという日本の態度、そのことはそのままお持ちになっておられるようであります。しかしながら、アメリカ側からはSDIに対する研究参加については既に要請されておるわけであります。また、そのことのよしあしを検討するために、日本から、日本政府の側からもアメリカを訪れていろいろその点について調査もされておるという、我々は動向を承知をいたしておるのでありますで  今回の首脳会談では研究参加については触れられておりませんけれども総理としては、当分ですね、特に米ソ会談が始まるという状況でありますから、当面はアメリカから要請されておるけれども研究には参加をしない、理解を示すという態度で慎重の上にも慎重を期する、こういう方向で対処されるおつもりかどうか、伺っておきたいと思います。
  131. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 SDIの中身がどういうものになるであろうか、そのほかSDIというものについてもっとよく調査研究する必要がありまして、今やっておる最中でありますが、それをもう少し継続する必要がある、そう考えております。
  132. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 アメリカ側からSDIについては研究参加をしてほしいということは既に要請をされておるわけでありますが、このSDIに研究参加する場合には、アメリカ側は、一般論として機密保護の必要性に触れられて日本側に説明をされている、こう伝えられておるのであります。その場合に、現行の機密保護の関係するそういう法律ではこの要請にはこたえることができないということもほぼ明らかになりつつあるように伝えられておるのであります。そういうアメリカ側の要請に基づいて、研究参加の場合には厳格な機密保護の必要性、そういうものが既に日本にも説明されておる、このように承知していいのでしょうが、いかがでしょうか。
  133. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その点はまたしかと明確ではございません。
  134. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 総理は、今回、アメリカ訪問中、アメリカの政治、経済、社会のある程度の、短い期間でありますけれども、動向についても把握されたと思うわけです。特にその中でも、私は当然総理としてSDIに対するアメリカの国内の動向は一体どうなんだろうかということについては注意を払われたのではないか、こう思います。米国内においてもこのSDIについては、これに反対する学者グループというものが、その署名人数はどんどんどんどん今むしろふえている、こういうことが数字をもって実は報道されておるわけです。物理分野のトップ十四大学では五五%、千三百人の教授が、あるいはまた講師クラスが、あるいは科学者が研究に不参加をするということに署名をしていると発表されておるのであります。そういう面から考えまして、アメリカ国内でもそれだけの専門家がSDIというものについて、これは非常にアメリカの平和と安全にとって将来禍根を残すようなことになりかねない、あるいはまた巨額な出費、そのことを国民に強いることは問題がある、こういう立場からこのような署名が行われておるのでありますけれども、こういう動向についてはもちろん総理は承知をされておると思いますし、大使館でもそういう動向は把握をされておると思うのですが、このような問題について総理は滞在中どのような印象を持たれたか伺っておきたいと思います。
  135. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 よくわかりません、外国人のことですから。ですけれども、聞いている範囲内では、SDI批判あるいは反対の署名の学者というのは理想主義的な学者で、しかし推進している学者も非常にある。推進している学者の方ははるかに革新的であって情熱が強い。批判している学者の方は、何となしにもう理想主義的な、感情的な様相が強い。そういうことで、アメリカ議会においては多分二十六、七億ドルから三十六、七億ドルぐらいの範囲内でSDI予算は成立するのではないだろうかという観測が強いわけです。
  136. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 まあ大体、古今東西を問わず、ある何かを研究するとか問題が提起をされると、金を使う側というのは非常に強い賛成、強い行動に出る。しかし、金を使うことにもいろいろな面で反対をするという側は相当情熱を向けても、いわば金を使う方が強いというのは、大体日本の国内でも見られる現象ですし、諸外国でもそういう現象があるのだと思うわけです。ですから私は、ちょっとマイナスをして冷静に見てほしいな、こういう実は判断をいたすのであります。  もう一つ伺っておきたいのは、SDIの問題で、その中でアメリカ国内の政府部内の意見というものは一体一致しているのかどうか、非常に我々として重大関心を払わなければなりません。いわば今度のソビエト側の軍縮提案に対しても、アメリカ側がその対案を早日に出すことができなかった、その理由は何か。アメリカ政府部内の意見が分かれているからというのが今日定説になっていることは総理も異論がないのではないかと私は思います。  そういたしますと、SDIについてもアメリカ政府部内では二つの意見がある。いわばごく狭義に、今までの条約、例えばABM条約に違反するかどうかという問題で非常にシビアに狭義で解釈をするという人々、グループ、一方においては、ABM条約に違反するかどうかという問題を非常に幅広く考える、解釈をする、こういう一つのグループ、こういう二つの流れがアメリカ国内にあることも、もうこれはほとんどの人々が承知をしていることだと私は思うわけであります。その一方のトップに立っているのが国防長官であり、一方のトップに立っているのがシュルツ国務長官である。いわば厳密に解釈すべきであるという立場に国務長官は立っている。大体レーガン大統領もシュルツ国務長官のそういう解釈の方向に自分の同意を与えるであろう。  そうなってまいりますと、厳密に解釈をするということになれば、研究室の中から出ないわけでありますから、外に出ない研究に限定されるわけでありますから、そうなってくると、米ソ首脳会談で核軍縮交渉をする場合においても、私は非常に局面が変わってくるんだと思います。広義に解釈をして、米ソ首脳会談で将来の核軍縮について話し合う場合には、米ソの理解あるいはまた譲歩、こういうものがそれだけでなかなか進まない、幅が狭まらないということになるのではないか、こう私は判断せざるを得ないのであります。  総理もこの件については、前段の私の質問の文脈からいっても、相当重大な関心を持たれて、いろいろアメリカ政府の態度についても分析をされただろうと思うわけです。ここで説明できる範囲で私の今の見解について御説明願いたいと思います。
  137. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ABM条約の解釈、幅の範囲については、国防長官ではなくしてマクファーレン氏とシュルツ氏の間の意見が差があったというように伺っております、ワインバーガーではなくして。それで、終局的にはこれを狭義に解釈する、今までのように厳格に解釈する、そういう線で統一したようであります。  それから、研究というものについては、室内だけに限るかどうかという問題ですが、これは必ずしも室内だけに限るものでない、厳格にドアから外へ出てはいかぬというようなものではない、それはやはり規模とか性格によるのではないだろうか、そういうことであると解釈しております。
  138. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 我が国はABM条約の当事者ではありませんけれども、先ほどの国連演説のこの文脈から、流れからいうと、こういう条約は狭義に解釈をされて、そして宇宙の軍事化というものについては望ましくないことであるという、やはり一歩下がった姿勢で、厳密に日本の国としてアメリカの政策を見詰めなければならぬのではないか、こう私は思うのであります。  そこで、この訪米の中で、後から記者会見も行われておるわけでありますが、先ほどいみじくも米ソ首脳会談について、私はこの首脳会合の中でこのように述べたという点が、今前段で総理から述べられておるわけであります。この述べられた趣旨と、総理が会談をすべて終えられて記者会見をされて、そしてその記者会見の中で対ソ問題について触れられている、またそれ以前のインタビューでも、この会談が終わってから発表するという条件つきで対ソ政策に関する発言が行われた、こう報じられておるわけであります。非常に総理は積極的に対ソ問題を考えているなという印象を私自身も受けたのであります。  そして、総理が述べられておるように米ソ首脳会談に触れて、先方からもいろいろな妥協、譲歩をつかみ出すことも大事だが、先方がモスクワの党大会に持っていく材料を与えることも必要ではないか、会談は絶やさないで持続的な対話を続け、さらに次へ、次へと前進していく方向がいいが、その際包括的に話し合うことが適当であろう、核兵器の廃絶が最も重要だが、相手の出方によっては、話し合いはギブ・アンド・テークだから、経済交流の増大の可能性をも考えておくことが有意義ではなかろうか、こういう発言がなされておるわけです。  大分前後長かったらしいですね。その前にサッチャーさんが発言されて、何で対案を出さぬかと随分サッチャーさんがレーガン大統領に言って、その後を受けて応援演説のような部分も含めて述べられた中でこの文脈が述べられる、こういうぐあいに報道されておるわけでありますけれども、いずれにしても、この対ソ関係を見ますと、非常に積極的な姿勢を示された、こう私は思いました。そして、後から記者会見でも、シェワルナゼ外相も来るし、そういうものを見きわめて、対ソ交渉について、機会があれば安倍外相か私もいず札が、とにかく私自身も訪ソしたいという気持ちを持っている、こういうことが表明されておるわけです。  そうしますと、当面総理の対ソ政策の頭にあるのは、この六カ国の首脳会合において述べられた今の内容ですね、これは総理がこれから対ソ政策を進めるに当たってこのような考え方が含まれると解されることが当然ではなかろうかと私は思うのであります。いかがでしょうか。
  139. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 外交の問題についてはさまざまな観点から考えなきゃいかぬのでありまして、今おっしゃったような点も私の考えの中に入っております。  ソ連に行く云々という問題は、新聞記者の皆さんから質問がありまして、そこで、今度の十一月のレーガン・ゴルバチョフ会談がどういうふうに展開するか、それから一月にシェワルナゼ外相が日本に来られますが、安倍・シェワルナゼ会談あるいは私との会談で先方がどういう態度に出るか等々よく見据えた上で、外務大臣がまず行くのがいいと思う、それは定期協議をやっているわけですから、定期協議を今度は継続してやっていく、絶やさないということが大事である、またその状況によって自分もそういう可能性があるかもしれない、そういうことを言っておいたのであります。
  140. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 この機会に安倍外務大臣にちょっと伺っておきたいと思うのですが、シェワルナゼ外相の訪日が一月中旬に決定をした、その前段として外務省としても外務大臣もいろいろ積み重ねていく、今日の状況をつくるために努力をされていることは私も承知をいたしておるのであります。  そこで、その状況を進める一つの手だてといいますか、そういう条件というか環境づくりのためにも、日ソ間の懸案事項である租税条約の締結とか文化協定の締結、今度レーガンさんとゴルバチョフ会談の中でも米ソの文化関係の協定が結ばれるという可能性も報道されておるのでありますけれども、我が国の場合にもそういう条約についても調印されるべく、今、文化協定の場合にモスクワで交渉されておると思うのですが、そういう点の見通しについて、この機会に伺っておきたいと思います。
  141. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 ソ連との間では、最近租税条約、さらに貿易支払い協定が大体合意いたしました。これはシェワルナゼ外相が日本に来られるときは調印ができると思いますが、文化協定につきましても、これは長い間の懸案でありました。しかし、これも交渉を進めようということでお互いに合意を見まして、今、日本側の案を提案をいたしまして、ソ連側の回答を待っておるわけで、これもさらに協議を進めて、一月の中旬ごろまでにできれば合意に達することを期待しておりますが、この点についてはなかなか難しい問題も抱えておりますから、そう簡単ではないように思っています。しかし、両国で努力は重ねていこう、こういうことになっております。
  142. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 このシェワルナゼ外相の訪日を前にして、鹿取大使をソ連外務省側は招いて、今日進めているソ連側の四大化学プロジェクトについての協力を要請された、こう承知をいたしておるのであります。日ソ関係のいわば経済委員会というのは今年末に開かれる予定でありましたけれども、延びているんですね。来年以降に延びることになるだろうということも言われております。日本側として正式にそういう申し入れがあったわけですが、今まではケース・バイ・ケースで対応してきたという態度であったのでありますけれども、今日の日ソ間の包括的な関係というものを改善して、一定の我が国の平和条約締結へのアプローチを描きたいという大もとの考え方からすれば、これまた柔軟にこの問題に対処されるのではないかと私は理解をいたしておりますけれども、私のそういう理解でよろしいでしょうか。いかがでしょうか。     〔橋本(龍)委員長代理退席、大西委員長代理着席
  143. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 ソ連が石化プロジェクト等、今諸外国に入札に応ずることを求めておりまして、これに対してなかなか商戦が活発で、ヨーロッパの諸国が盛んにアプローチをしております。日本からも民間の立場でもちろん努力を重ねておるようですが、私もシェワルナゼさんに言ったんで、すけれども、これからやはり日ソ関係を改善しようということになれば、こうした日本の経済界が注目しているプロジェクト等についてもソ連側の配慮を求めたい、こういうことを言っております。これは今後の民間の立場での協議とか競争とか、そういうことになっていくと思います。  しかし、同時に、日本とソ連との関係、経済の関際については、これはこれまでの基本的な方針であります、例えば経済の長期協定をつくるというような考え方は持っておりませんし、もちろん政府間の貿易協議とか、あるいはまた民間の経済協議とか、そういうものはこれから進んでいく可能性はあると思いますけれども、やはり基本的な考え方はケース・バイ・ケースという立場でこれに対応していくという方針であります。
  144. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 先般、私も石橋委員長とモスクワを訪れてゴルバチョフ会談に出席をいたしましたけれども、その席上、シェワルナゼ外務大臣の、早期に日本に訪れることについてひとつ時期を約束してほしい、こう強く要請いたしたのでありますけれども、ゴルバチョフ書記長はそのときに、これはシェワルナゼ外相が決めるべきであって、そういう判断は、いつにするかという判断は私は外相に任している、こう述べられたわけなんです。私は、そういう意味で、ゴルバチョフ政権の外交政策、これを受けてシェワルナゼ外相の訪日、そこには非常に脈絡がぴちっと通じていて、しかもそこにある程度弾力性があるのではないか、こういう感じがするわけです。  今度の来日の問題で話をされて、シェワルナゼ外相とのときに紅茶ですか、それからピロシキが出された、こう言われていますけれども、ピロシキの中身が何であったのかというようなことも盛んにせんさくをされているわけですが、あなたは、今度の新外相にはどういう印象を持たれましたか。
  145. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 私が今までやっておったのはグロムイコ外相ですけれども、今度のシェワルナゼ外相とは、相当やはり、基本的にはいろいろ問題はありますけれども、いわば和やかな雰囲気といいますか、そういう中で十分な議論が、話ができたように、思います。
  146. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 総理、対ソ問題、もちろんソ連という国は集団指導の体制をとっている国でもあります。しかし、国際的な情勢は首相も判断しているように、いわば米ソ会談がどういう成果を上げるか、そして外相が日本を訪れる、シェワルナゼ外相との会談も定期的に行われる、そういう一連の環境もあるわけであります。そういう中で、日本としてこれからの対ソ外交について、もちろん今国会でも所信表明で基本原則を述べられておるわけですね。それは基本原則であるけれども、領土問題というのはこれはそんなに簡単に解決するのだったら、もう解決しておったはずであります。それにやはり時間もかかるし、これからも努力しなければならぬ、そういう環境をつくり上げなければならぬ。  民社党の佐々木委員長がよく言うのでありますけれども、領土問題というのは日ソ関係の入り口じゃなくして出口である、そして日ソ関係がその後非常に友好的な、安定したものになる、こう佐々木委員長は言うのですけれども、私は佐々木委員表の意見に同感なのであります。  そうしますと、今、日ソ関係というものを一つの土俵に乗せるとすれば、これは佃中。ブレジネフ共同声明、古くは日ソ共同宣言、この基礎の上に、土俵の上に立って、そして相互の信頼感を築きながら話し合いを進める、こういう雰囲気が出てこなければならぬと思うのであります。  私のそういう考え方について、総理も私の今述べたことについてほぼ同感ではないかと思うのですが、もちろん外交上の問題がありますから、全部自分の気持ちを述べるということはできないかもしれませんけれども、ある程度私の今の考え方にコメントを願いたいと思うわけです。
  147. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先般、私はゴルバチョフ氏に親書を出しまして、これはいただいた手紙に対する返事でありますが、領土問題を解決して、平和条約を締結したい、そういう趣旨の手紙を書いたところでございます。要するに、今の話を伺っておりまして感じますのは、出口と言うけれども、入り口と出口は同時になければならぬ、そう思っています。
  148. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 そこで総理、もちろん入り口があって出口がなければいかぬわけです。でなければこれはだめなわけですから、そういう意味総理の言うことも当然ではなかろうか、私はこう思います。  時間がどんどんたってしまったのですが、そこで私は総理に聞いておかなければならぬ問題がありますから、その点、先にお聞きいたしたいと思います。  一つは、総理の政治姿勢の問題をぜひ聞いておかなければならぬと思うのです。同僚の稲葉議員が本会議質問しましたけれども、余り親切な答弁が次かったものですから、同僚のためにもこれは聞いておかなければならない、こう責任感を感じておるわけであります。  今回の所信表明演説の中には戦後政治の決算という言葉がないんですね。ことしの第百二通常国会には冒頭に明確に「戦後政治の総決算」ということを標榜してあるわけであります。ところが今回の所信表明には全然載っていない。ということは多少心境の変化が起きたのか、それとも、中曽根政治は三年間続いたわけですが、そういう自分の三年間の中曽根政治をちょっと決算してみて、総括してみて、あとの一年についてはそう大きなことを言わなくとも、ひとつ着実に今ある課題を取り組んでいく、こういう姿勢を込めて除いたのか、どうしてこのキャッチフレーズを今回の所信表明でおろされたのか、これまた先ほどの非核三原則じゃないけれども、どうしてだろう、こうみんな思っているんですね。この点について御説明願いたいと思います。
  149. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 同じことを何回も述べたら聞く方がくどいと思われはしないかと、そう思ってであります。
  150. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 総理の政治手法というのは、昔ドイツに有名なゲッベルス宣伝相というのがおりまして、私らもよく知っているのですが、うそでも百遍言えば本当になるというようなことを言ったという話を私は戦時中聞いておるわけであります。総理の手法は、大体言っているうちに、初めは反発しているけれどもそれをまた繰り返して言っているとそうなるという政治手法、これが中曽根政治家としての政治手法がなと私は思っておるものであります。  今述べられた言葉からいうと全然違うような感じがするわけですが、やはり自分の基本的なキャッチフレーズというものは堂々と述べられた方がいいですよ、何回でも。何回でも言わなければわからないのですから。言わなければ、ああ方針を変更されたかと思いますよ、極めてみんな正直なんですから。ですから、遠慮なく使われるならば使われて結構じゃないか、こう私は申し上げておきたいと思います。  そこで、稲葉質問でも、とにかくそれはくどいから触れないというだけで、おろしたとは言わないのでありますから、このキャッチフレーズはあるのでしょう。  そこで、具体的に一体戦後政治の総決算は何を総決算するのか、こう聞きましたところが、総理は、日本の閉鎖性、行政の肥大、学校でのいじめの問題と答えたわけですね。これはいわば今日の我が国の最大の政治の課題である市場の開放政策、行財政・教育改革問題をこういう表現で総理はなされたんであろう、こう私は解釈をいたしております。  したがって、ここで聞きたいのは、それだけのことを戦後政治の総決算と言われておるのか、それ以外に戦後政治の総決算をしなければならないものがあるのではないか。あるならあると言ってほしい。そして、何があるのか明示することがこの戦後政治の総決算を唱える総理としての責任である、こう私は言わざるを得ないのです。こういうことを言うとちょっと刺激を与えるからなんて、そんなけちな考えは持たないように、王道を行くのでしょうから、王道を歩む総理が堂々とぴしっと答えて国民に対して訴える。かつてこの国会で、この壇上で有名な政治家が、緋おどしのよろいを着た若武者なんという表現もあるくらい総理は歯切れがいいのでありますから、こういうところはやはり歯切れがよくないと、国民はどうにもわからないということに私はなるのではないかと思うのです。したがって、この面について端的、率直、明快にお答え願いたいわけです。
  151. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今やっておる行政改革、財政改革、教育改革、それから国際国家日本、そして「たくましい文化と福祉の国」へ前進する、これが割合にわかりやすい戦後政治の改革というものの目標でございます。
  152. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 前段三つについては改革と言って唱えているわけですから、その戦後政治の決算の中に入っておるものであると言えばそこは理解できるわけですが、後段の方はちょっと理解ができない面があるわけであります。  そこで、ちょっとまた掘り下げてお聞きいたしたいと思うのですが、総理は所信表明の中でもあるいはまた今回の国連の演説の中でも戦後政治の面に触れて、我が国の戦後政治に果たしてきた役割、いわば今日の憲法の果たしてきた役割というものについて触れておるわけです。そして、これは高く評価をしている、こう総理も言われておるのであります。  そうしますと、憲法の基本理念である平和主義、主権在民、民主主義――どうも総理は、民主主義と言うんですけれども、主権在民ということは余り触れないような表現をようお使いになるなという感じを私は持っているものですから、主権在民、民主主義、そして第三番目には、人権人権と言われるのですけれども、これもやはり憲法でちゃんと書いているんですから、基本的人権の尊重主義、これは自民党の綱領でもこれを受け継いでいく、こうはっきり書いておるわけですから、これは当然戦後政治に果たしてきた役割を高く評価をされるものであるとお思いになりますか。お思いになるとするならば、それを当然受け継ぎ、発展をさせるということになるでしょうか。それとも、ここも変革をする、改革をするという――総理は憲法改正論者でみずからこの国会答弁されておるのでありますから、そういう面からいったら、過去においてのあれは別として、やはり私は違うなら違うということをはっきり述べることが親切だと思うのですね。この点について、あなた自身の政治姿勢というのですか、政治行動を決算するという意味を込めて御答弁願いたいと思うわけです。
  153. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 このことはもう何回も述べておりますように、くどいぐらい申し述べておりますように、私は、戦前の政治と戦後の政治、あるいは日本の二千年に近い長い歴史、徳川あるいは明治以来今日までの歴史というものを調べてみた場合に、この第二次世界大戦後の日本というものは、日本歴史の上においても偉大な金字塔を築いた時代である、大きなピラミッドを築いた時代である、そう歴史的に評価さるべきである、そう言っておるのです。明治維新時代というものが偉大な時代であるとよく言われますが、確かにそうですけれども、この第二次世界大戦後の日本というものも明治維新時代に負けないくらいの偉大な時代、四十年間をつくっている、そう私は認識しておるのです。なぜ日本の学者がそういうふうに考えないかな、しかし、いずれだれか書くだろう、そう思っております。  そういう中で何が大きな力であったかと言えば、民主主義、平和主義あるいは基本的人権の尊重、政教分離、国際的協調主義、こういうようなものがやはり大きな力であり大きな主流であった、そう思って、そういう意味で今の憲法の果たした役割を非常に高く評価しておる、そう言っておるのです。  しかし、この「しかし」がけしからぬと、あなた方はいつもそう言う。しかし、やはり物事というものには、いいものばかりではない、光があれば影もある。そういう意味において常に見直すべきである、そういうことを申し上げ、また、徳川時代とか明治維新時代、非常にいい面があったけれども、やはり暗い面が逆にそれには随伴した。それと同じように、今の教育制度自体一つ見ても、明るい面もあるし暗い面もある。これは、今教育改革がなぜ叫ばれているかということを見ればわかります。そういう意味において、このマイナスの面、そういうものをここで大きく改革して二十一世紀に向かう準備をしよう、そういうふうに申し上げておるわけであります。
  154. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 そうしますと、今の総理答弁から判断しますと、現憲法を支えている主な柱、このことについては私は認めていますということになるのではないかと思うのです。という意味は、現憲法体制を私は認めていますということになると思うのです。もちろんそれから出るいろいろな面がありますよ。そういう改革をしなければならぬ面はあるでしょう。しかし、この主な柱というものが、総理として今答弁のようにぴしっと認められれば、現憲法の体制というものについては一応私はこれを認めているという立場だということになるのではないかなと思うのです。  ですから私は、そう解釈しますと、総理予算委員会でも、私は憲法改正論者かどうかと聞かれれば改正論者だと言われた意味がわからなくなるわけです。私は前に総理に青雲塾のアピールを引用して質問したことがありますけれども、そのときには、明治維新の改革、そして戦後の新しい憲法による改革、しかしこれは与えられた憲法だから、マック憲法だから第三の改革をしなければならぬ、それはどうなんだと聞いたことがありますけれども、そのときの答弁も私は覚えておるのであります。  ですから、そういう点において我々は日本の国のプレジデントである総理が一体どういう政治的な方針を、基本を持ってこれからの政治に当たられようとしているのか、非常に興味のあるところであり、また期待を持って聞かなければならぬと思うのですね。だから、私、今総理の話を聞いておると、どうも私は頭が悪いのか、私の整理がきかなくなるのですね。ちょっと私の今言ったことを整理してお話し願えないでしょうか。
  155. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は人間でありますから、私独自の考え、理念というものを持っております。しかしまた、一面において私は公人であると同時に私人でもあります。今公人として国会という公の立場に立っておりますから、ここで私人としての見解は言わぬ方が適当である、そう申し上げておるわけであります。
  156. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 いや、もうここまで来たら、初めて総理に就任したわけじゃないのですから、もう三年もたって、後は総決算するわけですから、きちっと言われた方が、中曽根政治を決算する意味において、また中曽根政治という、偉大な政治家として決算する意味においても非常にすばらしいことではないかと私はむしろ思います。しかし、言わないんでしょう。言わなければこれ以上聞いてもだめですね。  そこで、総理は非常にいろんな言葉を使うんですね。名人ですね。特に横文字などが大変、英語力というのは、私全然知りませんけれども、いろいろな支障もあるようでありますが、とにかくいろいろな英語を使われるわけですよ。そして教育を唱えられるわけですよ。やはり日本国民大多数がわかるような言葉を使ってほしいなと思いますね。ところが、総理の言葉は難解な言葉が非常にぽんぽんぽんぽん出てくるのであります。  その一つに、最近使われているアイデンティティー。わからないですね。使うときによって何か意味が違うんでしょう。ですから、まだいい日本語があるんではないかなと思うわけです。それが教育じゃないかと思うんですね。最近、新聞もそうですよ、ここにもおりますけれども、もう片仮名が非常に多いですね。よほどの学力がないと、教育水準がないと読めないですよ、新聞は。そういうのをやはり改革しなければならぬのではないかな、お互いに謙虚になって。私はそういう気持ちを常に持っておるわけであります。  だがしかし、どうも最近使われるこの言葉は、どうしても総理自身から明快に解明してほしい。こうであろう、こうであろうという解説はいろいろあるわけであります。あなたとしては真にどういう意味でこの言葉を使われておるのか、ぜひお教えください。
  157. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 アイデンティティーという言葉は、まほろばという言葉と同時に、後ろにおる石原慎太郎君から教わったので、どうぞ後でゆっくり彼に聞いてください。
  158. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 いや、それは総理が使われるからで、石原議員はまた別な意味で使うわけです。これはちょっと、使われる場合によっては同一な意味を持つと限らないわけでありますから。ですから、一国の総理が使っているアイデンティティーはどういう意味ですか。もしここで説明できなければ、以後使わないということを約束できますか。
  159. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 まあ簡単に言えば、そのものということであります。もっと簡単に言えば独自性、そういうふうに言えばいいと思います。
  160. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私も調べたら、いろいろあるのですね。結局最も訳すのに難しい言葉だ。それを訳せば、あえてぱっと訳してしまうと自己同一性だ、あるいはまた歴史的な連続性、人格的な独自性、こういうことが解説をされておる。  しかし、総理の使っている意味は、またその中にもさらに意味があるのではないかなということも、いわばまんじゅうにあんこが入っているように、あんこを包括して、そういう言葉ではないかなということもいろいろ言われておるのでありますけれども、今、答弁を信用いたしましょう。そういうことで私も今後解釈していきますから、お間違いなくお使いくださいとお願いを申し上げておきたい、かように思います。  そこで、そうなってまいりますと、日本人の、いわば日本としてのアイデンティティーをもう一度確立をしなければならぬという演説をするわけですね。そうすると、今使われた言葉を使ってちょっと言ってほしいのですが、いかがでしょう。日本としてのアイデンティティーをもう一度確立をしなければならないと言われているのですね。今総理が言われたアイデンティティー、この言葉を使ってちょっと言ってほしいと思うのですが、いかがでしょう。
  161. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本としての独自性それ自体を確立し、認識すべきである。
  162. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 非常に素直に言葉になったと思うのです。もちろん我々は日本の独自性――政党でもそうですね。やはり政党は政党の立党の綱領を持っているわけですから、そういう、ただ付和雷同するのでなく、ぴしっと自己の政策を持って、綱領、政策を持って独自性というものを示さなければならない。でなければ、いい政党政治はできないのであります。ですから、我々も常にそういう独自性を持って、外国が何かやったというと、すぐふわっとやるようなことではならない、常にそういうものについて判断でき得る国民性というものを我々は養っていかなければならない、こういう意味では同感であります。  ところが、それらと関連していろいろ出てくるのですが、ロサンゼルスに参られたときには、記者会見でこれからの日本は健全なナショナリズムを確立しなければならないとこれまた述べられているのですね。そこで、アイデンティティーとロサンゼルスであなたが新聞記者会見で述べられた健全なナショナリズムを我々はもう一度掘り起こさなければならない、確立しなければならないという意味とは、これまたちょっと難しいのですね、ナショナリズムということは。歴史的に見ていろいろ違いますから。ですから、そういう意味を込めて、ロサンゼルスの記者会見で、少なくとも外交で言われた健全なナショナリズムというのは、どういう内容で解釈したらよろしいでしょうか。
  163. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 現在、民主主義国家というものの中には、いろいろ複雑な要素が柱としてあると思うのです。その中で私は、やはり健全なナショナリズムというものが柱でないとその家はぐらぐら揺らいでしまう、そういうふうに思っております。イギリスにしても、あるいはソ連にしても、あるいは中国にしても、あるいはフランスにしても、やはりみんな健全なナショナリズムを持っておる。  日本はそういう面から見ると、戦後自分の国家というものが敵みたいに思われてきている、場合によっては。つまり、装置であるとか道具であるとかという言葉まで出てきて、そういう意味においてちょっと変ではないかと私は思うのです。その中に生きて、そして死んでいくという場所で、そこで文化というものが生まれ、その文化というものにみんなが魅力を持ち、あるいはそれをつくろうと創造意欲をみんな持って生きている。人間である以上は創造性がその生命体であります。そういう国というものは、戦後ぐらい個人から遠ざかった時代はないと思っておる。場合によってはそれが罵倒の対象にもなってきている。それは、軍国主義あるいは超国家主義あるいは弾圧ということによって、戦前あるいは戦中、大きな過失を犯したことは事実です。だから、それを我々は認めようとは思わない。それは否定すべきであり、弾劾すべきであると思っておる。だがしかし、それは果たして国家の罪であるだろうか、指導者の罪であったのか、国民の罪であったのか。ともかく国家というものはかわいそうであるような気がしてならなかったのが、私のそういう時期にありますね。  そういう意味において、健全なナショナリズムというものがあって民主主義が支えられるんだ。それは今アメリカをごらんなさい。フランスなんというものは最も強烈ですね。ミッテランさんがこの議場へ来て演説して、そして力の均衡論を言いましたね。彼は三つのことを言った。フォルス、それから連帯性、ソリダリテ、それから均衡、エキリーブル、そういう三つのことをミッテランが言っていました。あれは非常に強い健全なナショナリズムから来ている。我々は核兵器を持つんだというようなことまで言っていましたね。社会党にしてみれば驚天動地の発言じゃないか、そう思うのであります。
  164. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 やはり総理は、自分自身が戦前戦後を生き抜いてきて、何かやはり自分の思想について私どもと違ったものがあるのじゃないのかなという感じがするわけです。  私は我が祖国日本というのをこよなく愛しておるのであります。ただし、どういう日本を愛するのかという問題なのであります。この平和主義の憲法を持つ日本、そして基本的人権を尊重する憲法を持っている我が日本、そして主権在民、民主主義国家のこの祖国日本をこよなく愛すのです。そのために我々は政治をやるのです。そしてまたそういう立場日本の独自性を発揮していかなければならないし、国際協調を進めてまいらなければならないのであります。ほとんどの人がそういう気持ちを持っているんじゃないでしょうか。また、そういう気持ちに国民の気持ちが寄り添っていく、こういうことが私は大事ではないかと思うのであります。その中に真に戦後の新しい日本、国際的な日本というものが私は確立をされていく、こう思うのであります。  ですから、よく、「今の若い者とは申すまじく候」という山本さんですか、の言葉もありますけれども、戦後もそういう言葉が使われました。私は、これからの日本というのは――私ももう還暦なんですよね。総理も六十七歳ですか。戦後っ子、いわば昭和二十年後に生まれた人々が、もう四十になる人もおるわけですよ。もう十年たつと五十歳になる。十五年たつと、来世紀になると六十五歳にもなる、いわゆる指導者になるわけですよ。そういう人々にむしろ我々はあるものはゆだねなければならない、こういう気持ちを持って、それにゆだねるものを我々は次の世代に残していかなければならないと思うのですね。それを我々の世代で、戦争を経験した我々の世代ですべてを、日本の将来を律するなんて考えるのは非常に恐れ多いことであり、思い上がりであると私自身そういう気持ちを持っておるわけです。私の所属している日本社会党もそうだと思うのですよ。そのときどういう社会党になるのか、そういう気持ちを私は持っておるのであります。政治家としてそういう気持ちを持たれることが一番いいのではないかと私は常に考えております。  そういう点で、総理のいろいろな言葉ということが気になって気になってしようがないわけです。非常に演説が上手ですし、言葉も非常にきれいな言葉を使いますから、それだけにまた注目も引くのですけれども、その意味というものについて、私は常に考えさせられておるわけであります。  そこで、靖国神社の問題、この問題をやると票が減るぞというような、政治家の中でもそういう話があるのでありますけれども、そういう意味じゃなくして私はちょっと聞いておきたいと思うのであります。  これはまず官房長官に聞かなければならぬのは、昭和五十五年に統一見解が出されて、憲法違反の疑いはまだ消えないという統一見解を示されて、津の地鎮祭判決が出て、その後、稲葉議員などは質問主意書で質問して、そしてまた統一見解が示されている。何回も何回もこの国会議論されてきた内容であります。国権の最高機関は国会であるということは、これはもうお認めになるでしょう。そして、合憲か違憲かという問題について、いろいろ議論を長年の間闘わされてきた。  あなたが、別に国会の承認も受けないで勝手に、勝手にという言葉はどうかと思いますけれども、私的諮問機関をつくられて、これは別に答申ではないわけでしょう、そういう議論したことを参考にお届けした、こう言うべきものでしょう。それを受けて短期間のうちに、短期間のうちの中では最も官房長官は慎重であったという話も聞いていますけれどもね、だけれども、その短い間でとにかく公式参拝という方向を打ち出された、いわゆる藤波談話というものを出されたのであります。藤波官房長官ほど人格者であり非常に慎重な方が、なぜ一体こういう過ちを犯したのだろうか、こう私は思いますね。やはり、国会の今までの議論も踏まえ、政府答弁も踏まえて、これは、公式参拝は一回で終わるものじゃないわけでしょう、やる以上は、政府の意思としては。そうであるならば、当然検討されて出された、その出された結論については国会意見も聞くというのは、当然過ぎるほど当然じゃないでしょうか。これを聞かないで、勝手に自分たちはこうだといって談話を出して公式参拝に踏み切った。  これは、こういうことを認めておったらどうなるのでしょう。国権の最高機関なんというのは形骸化するばかりでしょう。国会議員として、我々は断じてそれは認めるわけにはまいらぬと思うのですね。まず手続の問題ですよ。ですから、撤回されて、そして、国会でも議論を積み重ねた上で最後は政府が、政府政府の判断もあるでしょう、そうされることが、今の国際的な環境の中から考えても賢明じゃないでしょうか。ここは、やらないと言ったら、審議しないぞと言って座るところですよ。しかし、もう時間が遅いからそういうわけにもいかぬでしょう。いかがでしょう。
  165. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 靖国神社の公式参拝の問題は、長い間にわたりまして各方面からいろいろな御意見が寄せられてきたところでございます。先生お話しのように、国会でもいろいろな立場からいろいろな御意見が述べられてきたわけであります。  第一党の自由民主党は、公式参拝をするべし、合憲であるということを御決定になりまして、政府に対して強くその行動を迫っておられたという事実もございます。  それから、全国の各都道府県や市町村の議会で、靖国神社に公式参拝を行うべきであるという決議をされまして、そしてそのことを政府に迫ってきておられたという事実もございます。  したがいまして、各方面からこの問題についていろいろな御意見が出たわけでございますが、慎重にやるべし、公式参拝、行うべきではないという御意見だけではなくて、行うべきであるという非常に強いたくさんの御意見も寄せられてきておったという事実があるということはぜひ御理解をいただきたいと思います。その上に立ちまして、宮澤官房長官当時に、違憲の疑いなしとしないということで国会で御説明を申し上げてきておった経緯もございます。  したがいまして、政府といたしましては慎重の上にも慎重に時間をかけていういろな角度から検討を進めてまいりまして、特に靖国神社公式参拝、これは参拝問題についての懇談会で約一年にわたりましていろいろな御意見も伺ってきたところでございます。その御意見も参考にさせていただきました。  そして政府部内でよく検討をいたしまして、特に憲法との問題が従来も非常に重要な検討課題であったわけでございますから、そのことをいろいろと検討をいたしました結果、宗教色を排除するという形で、国民の皆様方の非常に多くの方々、御遺族の方々などが戦没者追悼の中心的施設と考えておられる靖国神社に赴いて、そこで一礼をするという形で戦没者を追悼する、そして平和を心の底から祈願をする、二度と戦争のようなそういう経験を我々はすまい、そういう間違いを犯すまい、そういう気持ちを込めて平和を祈願する、そういう形をとるということであるならば、従来非常に違憲の疑いなしとしないとしてきたところもクリアすることができる、こういう見解に立つに至りましたので、八月十四日に談話を発表いたしまして靖国神社公式参拝を実行した、こういう経緯がございます。  各方面の御意見をよく聞いて慎重に検討させていただきました結果行いました公式参拝でございますので、ぜひ御理解をいただきますようにお願いを申し上げたいと思います。
  166. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 結論を出す前に言われたら非常に名官房長官という声がかかるのですけれどもね。今ここで言われても、とても、はいそうですかなんて、素直に聞けないわけですよ。何かやはりこれも結論が先にありきというような感じで、そして過程を我々なりにずっと調査しますと、そこにいろいろな影響があって、ああいう形でまとめられた。まとめられた内容だって、何もすきっとまとまっておるわけではないわけですから、なおさらやはり国会の意思を聞かなければいかぬでしょう。  この問題は矢山議員も質問しますから、時間もありませんのであれなんですが、きょうの夕刊、お読みになったですか、官房長官。自由民主党の本部に革新駐日大使が訪れられた。二階堂副総裁がこれに対応された。その席上、新中国大使は「なかでも公式参拝問題は中国にとって極めて遺憾だ」と、公式参拝に対する不快感を表明された。これに対して二階堂副総裁は「戦犯が一般戦没者と一緒にまつられていることは、私も知らなかった。しかし、中国の国民感情はよく分かる。私自身も反省している」、こう述べられておるのであります。二階堂さんがわからないことですから、随分国民の方はわからなかったんじゃないかと思うのです。十四名の戦犯の方が祭られている。  私は、私の二歳上の兄が沖縄の首里の戦闘で戦死をして、遺骨は空であったわけです。私が受け取りに参りました。残していったつめと髪の毛がありましたから、それを墓所に入れて懇ろに葬ったものであります。総理も同じ遺族だろうと思うのです。そういう気持ちを込めて、私は二階堂さんのきょうの、いわば革新中国大使に述べられた言葉、これは自由民主党の副総裁の言葉でありますから。こう考えてまいりますと、きのうの答弁でも総理は、私は戦没者を追悼し、そして平和を祈願しているんだ、こう述べられておる。しかし、現実にそこにはA級戦犯の方々が祭られている。ということになりますと、やっぱりこれはこのまま黙っておくと、結局は我が国の東京裁判史観に対していろいろある、歴史が云々と言いますけれども、いわば戦争責任に対しての免罪である、このことによって免罪が図られた、こう言われても説明がつかないと思うんですよ。  私だって嫌ですよ。もっとも二歳違うということは、子供のときから軍隊に行くまでの間、最も話し合いのできる兄弟だったわけでありますから、そういう心情からしても、この問題についてこのままにしておくというのはいかがなものか。もちろん我々は遺族ですから言えるわけですよ、それは外してもらいたいということは言えるわけでしょう。  同時にまた、遺族でなくても靖国神社の崇拝者であれば、崇敬者であれば物が言えますね、そういう目的になっているのでありますから。総理は遺族ですから、当然宗教法人である靖国神社に言えるわけですよ。これは、やはり別に外してくださいということも言えるわけでしょう。ここができるかどうか。二階堂さんはそういうお話をしたいと言っていますね、きょうの新聞の記事では。総理、いかがですか。私の今のそういう気持ちと、そして今いろいろ我々が戦争侵略で痛手を与えた国々の反響等を考える場合に、平和国家日本として進んでいく、そのリーダーとして、この問題についてぴしっと整理をされることが最も望ましいと私は思うのであります。いかがでしょうか。
  167. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 靖国神社は独立の宗教法人でありまして、独立の宗教法人に対して政府がとやかく内部干渉みたいなことを言うことは適当でないと考えております。自由民主党内部におきましていろいろ議論も起きておるようでありますから、党がいろいろなことをなさるということは、政府とは違いますから、これは考えられることであります。
  168. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 まあ今度の中にも、かつて靖国廟だったわけですから、そういうけじめをつけられてはどうか。国会討論を聞いてもそうでしょう。最後の結論というのは、やっぱりだれでもお参りができる、どんな宗教の人でも、外国の人もお参りができる、そういう靖国廟のようなものをつくったらどうか。それはいいことでないか、こうみんな言っているわけですね。それにかわるものとしては、もちろん千鳥ケ淵墓苑がございますけれども、そういう点も考えられて、やはり四十年間我々は、平和憲法のもとで日本の政治が進んでまいったわけですから、その決断をひとつつけてほしい。  まだまだあるんですけれども、時間がありませんから、ここで打ち切ってはせっかく日銀総裁来ておるのですから、もう全然話が違いますけれども、そちらの方に質問を回したいと思います。まだたくさんあるのですよ、もう一時間ぐらい総理の政治姿勢をお聞きしたいわけです。じっと総理のそういう政治行動を見詰めている、私一人のみならず、多くの国民が今言ったような視点で、そういう視点で見詰めでおるということをお忘れなく、今後の政治に御精進ください。  あと時間が二十分程度になりました。ないかな、まあ二十分ぐらいあるでしょう。  貿易摩擦の解消の問題で、我が国の最大の政治の課題として、今まで政府は努力をしてまいりました。特にその中の柱としては、第一に今話題を呼んでいるドル高是正という政策が一つございます。そしてまた、アンプニアと言われる関税の引き下げとか、その他については積極的にひとつその対応をとるという問題があり、そしてさらに三番目の柱として内需拡大、こういうことが据えられておるわけであります。そこで、特に日銀総裁が参っておりますから、先般ニューヨークで行われたG5合意についてお伺いいたしたいのであります。  私は、今の状況を判断しまして、一体これが長続きするのかどうかということが非常に心配されるわけです。どこに一体ソフトランディングができるんだろうか、いわゆる円がどの水準で定着てきるんだろうか、こういう点について注意を払っておるのであります。  いろいろ合意の表裏を読んでいきますと、一つはまずドル高・円安の是正の目標値というものがあるのではないのか。その防衛ラインは、誘導目標は二百円から二百十円である、大体これが誘導目標である、最低の防衛ラインは二百十八円から二百二十円である、このように私は理解いたすわけであります。そうしますと、結局二百二十円から二百円の間、これがいわゆる誘導目標圏、こう言ってもいいのではないか。今のドル高・円安の是正の政策は、協調介入の政策は、いわばこの誘導圏の中におさめるということを目標にして進められている。できれば誘導目標の二百円から二百十円におさめたい、こういう方向で今積極的なフロートに対する介入が行われている、こういうぐあいに私は理解せざるを得ないと思うのですが、こういう私の理解についていかがでしょうか。
  169. 澄田智

    ○澄田参考人 九月二十二日にニューヨークで行われましたG5の合意におきましては、今おっしゃられもような意味の範囲を決めて、そこへ目標を定めてドル高・円安を是正する、そういうことではなかったわけであります。大幅な貿易の不均衡、この不均衡の原因でありますドル高・円安というものを主要国が、五カ国が共同して是正をする、ヨーロッパ通貨もございますが、主たる目標はやはり円ドル相場であったわけでありますが、その是正を図る、こういうことでありまして、そのためには各国の経済の基本的な条件を為替相場に反映させるように、そしてそれが反映することによって木均衡の是正に資する、こういうところまでこれを誘導する、こういうことであったわけであります。したがいまして、おっしゃられるような意味の上限、下限を設けて、その範囲内におさめるように持っていく、そういうことではございませんでした。
  170. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 G5の合意ではそういうことは合意をしたと私は言っているのではないわけです。合意に基づいてドル高・円安是正をする、そういう協調介入をしてその政策を実現するということになりますと目標がなければいかぬでしょう。目標を持たないでやるということは大変なことだと思うのです。乱高下、極端に上がったり下がったりしたら大変ですから、やはりなだらかに上がっていって一定のところに安定する、定着するということが望ましいわけでしょう、そのために協調介入したわけですから。目標がないということはないはずです。目標を、私が言ったことについて言えないというならわかりますよ、そういうことは。目標はあるはずなんです。だから、私が今言った判断は、今進められておる政策を実現するためには、当たらずといえども遠からずのお考えですねというぐらいは言えないでしょうか。それも難しいですか。
  171. 澄田智

    ○澄田参考人 できるだけ秩序立てて為替相場の是正を図る、これはおっしゃるとおりであります。そのために、各国緊密に連絡をとり合いながら各国の貿易収支の黒字、赤字、そして各国の物価その他経済的な条件、こういうものを考えまして、その条件がよく反映されるような為替相場に持っていくように協調して介入をする、こういうことであるわけでありまして、あくまで一定の、特定の目標、特定の水準ということを目指しているものではない。現在の経済的な条件というようなものを、基本的な条件というものをよく反映するような為替相場を目指していく、こういうことでございます。
  172. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 金融政策の責任者に余りぴちっと物を言わせるというのもなんですけれども、やはりそういう手法でないと、介入当初大体十日間ですか、大体十五円前後まで円は上がったわけであります。円高になったのであります。  そこで、これも日銀としては発表できないのでしょうけれども、いろいろな報道関係を総合しますと、大体この十日間で日銀は十三億ドル、ドルの売りに出た、そして米国のドルの売りは約三億ドルである、欧州の場合は一億ドル、こういう情報も流れておるわけです。また、別な情報では、日本は約十二億ドル、アメリカは五億ドル、欧州は一億ドル、この十日間ですよ、そういう情報も流れておるわけです。これは聞いても本当のことを言わないのですよ。言えないということを言うんじゃないかと思うのですけれども、ただ、そういう情報から判断すると、現在の協調介入はG5合意であるが、実際は円安・ドル高の是正の政策は2G、いわゆる日本アメリカ、特に日本が主体的になってこの政策の実現に大変なウエートを持っているということはこの数字からも容易に理解できるわけですね。ですから、今のドル高・円安の是正の政策のもう大部分の相当のウエートを我が国の通貨当局である日銀が背負ってこの協調介入をやっているというのが実態なんですよ。そういう点については御説明できませんか。
  173. 澄田智

    ○澄田参考人 各国の介入の金額につきましては、これは発表しないということになっておりますので、せっかくのお話でございますが、金額を申し上げるわけにはまいりません。  しかし、ニューヨークの会議以後の為替相場が非常に急速に、かなりな急ピッチで是正された、こういうことからわかりますように、そして市場はそれを、十分に各国の介入の態度を評価をしたからそういう為替相場になってきた、こういうことを考え合わせますと、各国とも相当数の、相当量の介入を行う。例えばアメリカは、ニューヨーク、自国のニューヨークだけでなくて、東京市場においてもドルを売り円を買う、あるいはドルを売りマルクを買うというような介入をいたしておりまして、介入の金額も相当な金額に達しております。  こういうところから見えますように、日本のみならず、アメリカそしてヨーロッパの国々もそれぞれ非常な熱意を持って介入をして今日のところに至っている、こういうふうに御理解いただきたいと存じます。
  174. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私は、この合意は二つの協調があると思うのです。一つは政策協調という側面ですね。一つは協調介入の面ですね。どういうことに分けられるのではないかなと思うのであります。  政策協調の面では、アメリカの財政赤字というものを減らしていく。日本の場合、もちろん財政赤字もありますけれども、あとは双方内需を拡大したい、そういう政策の協調をするという点は出ているのですね、この合意の中には。  しかし、協調介入の分野になってまいりますと、恐らくアメリカは為替介入に対する態度というものは、原則があってこれを変えないという姿勢をとっているのではないかなというのが一つの判断。一つは、為替介入の義務というものを外国に、他の国にコミットするということについてはアメリカの場合はそういうものはなじまない、だからそういうものはコミットできないというかたいものがアメリカ側にあるのではないかなと思うわけです。そして、今日の協調介入の中で余りアメリカがドルを売り過ぎるとこれはもう通貨が過剰になってインフレが起きる、そうするとこれは大変なことになる、ドルの暴落が起きるというアメリカ側の経済事情がある。  だから、そういう意味アメリカ側の方は日本とは違ってドルの一定のレートにどうしてソフトランディングさせるか、言うならばナイスランディングをさせるというのが非常に慎重なんですね。そう見るのが当然ではないかという感じがするわけです。そうしますと、結局日本アメリカの協調の仕方、介入の仕方というものはおのずから差がある、こう言わざるを得ないのではないか、こういう見方はどうなのかということが一点であります。  それからもう一つの点では、ドル安が、円高が定着するかどうかということになりますと、協調介入だけではおのずから限界に来るのではなかろうか、こう私は思うのであります。  その理由は二つあります。一つはやはり赤字。財政の赤字解消といったって簡単にできないでしょう。もう八五年の場合には二千億ドルを超えるという財政赤字が出る。だから、相当時間が改善にはかかるわけです。日本の財政再建を見ても同じなわけであります。一方において、そういう実態では金利を下げるということも、なかなかやはり言うはやすく実行は困難だという側面が出てくるはずであります。  したがって、日本の方は、日銀では短期金利の引き上げで金利差をできるだけ縮めて、そして誘導するという政策もあわせてとられておるわけでありますけれども、しかし、貿易の面にあらわれるのは一年も一年半もたってからでありますから、相当ロングランで見なければならぬ。ですからこの協調介入が、今日銀の総裁が考えているようにソフトランディングでうまくいけばいいことでしょう。     〔大西委員長代理退席、委員長着席〕 だがしかし、この政策手法そのものがもう既にフロート制に対する否定につながる政策をとっているのでありますから、だから、やはり限界を考えると、その限界に至る前にお互いにまた協議をして、新しい為替制度の確立ということを意識をしてお互いに相談し合っていくという、そういう姿勢がないと、やはり問題を抱えたままずっといくことになるのではないか、このように常識的に判断せざるを得ないわけです。  通貨当局としてはこういう点についてどういう御判断をお持ちですか。
  175. 澄田智

    ○澄田参考人 今回のニューヨークの会議以後の各国の協調の行為は、特定の相場の目標を持って行っているわけではございませんが、相互に緊密に協力をしながら、そして連絡をし合いながらそれぞれの国が行っている、こういうわけであります。したがいまして、現在の協調介入というものによって、将来の国際通貨制度というものをそれによって構成する、構築していくというようなところまでに至っているものではございません。  国際通貨制度につきましては、先般のソウルにおいて行われましたIMFの総会におきましても、明年の暫定委員会において国際通貨制度についてさらに討議を重ねる、こういうことになっておりまして、そこで一応の結論に達するように各国が努力する、こういうことになっております。しかし、現在の変動相場制にかわる新しいシステムを設けるということにつきましてはいろいろの見解がございますし、また、事実問題としてもこれにかわる制度を設けるということはなかなか難しい、かように判断をいたしております。  しかし、現時点におきまして、各国協調によってできるだけ望ましい為替相場の水準に安定的に達成を図っていくということがお互いの目標である、こういう状態において各国の努力を続けている、こういう状況でございます。
  176. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 時間が参りましたから終わりますけれども、問題は、やはり相場制に介入するということはフロートに対する否定に思想としてつながっておるわけでありますから、そういう面から考えて、アメリカ自体の動き、あるいは民間の新通貨制度に対するいわゆるサミットなどということも十一月の中旬くらいに計画をされているという動き、こういう動きに敏感に注意を払いながら、我が国の通貨制度はどうあるべきかという点について注意を払っていただきたいということを希望いたしておきます。  同時に、きょうの夕刊にも出ておりますけれどもアメリカの研究所ではドルの相場を百九十円程度にまで持っていかなければならないという結論を出しておりますね。そうなれば、大体日米の赤字は幅が百七十六億ドルぐらいになるであろう。またいろいろ言われている輸出の障害、これはやっても日本側の場合は五十ないし八十億ドルぐらいの是正になるだろう。しかしアメリカ側にもあるんだ。アメリカ側の是正をすればアメリカ側は四十ないし五十億ドルだ。こういうこともアメリカの経済研究所では発表いたしておるわけであります。  したがって、きょうはもう内需の問題は何も入ることができませんけれども、私は貿易摩擦の解消という面は、どうも日本は、中曽根さんの手法というのは私は上手だと思うのですけれども、こんな内需拡大だって中身を見たらとてもじゃないけれども、一%GNPを上げると言ったって、あんなことやったって〇・五%ぐらいになるであろう、話は半分だ、こうみんなが大体思っているわけですから。しかしアピールは大きい。中身は小さい。しかし、それが一つの緩衝になればというような政治手法のような内需拡大ではいかがなものか。  円が高くなるということは、ドルが安くなっていくということは、結局は我が国の国内経済でもデフレの傾向が出るわけですから、今回の内需拡大政策なんというのは、そういう面で下手をしたら帳消しで何もないということになるのではないか。そういう意味でもう一度第二弾の内需拡大政策をとるべきだ。補正予算でやるのか、来年度予算を展望して両方でやるのか、これをやるべきだという立場に立つのですが、最後にこの面についての総理考え方を聞いて質問を終わりたいと思います。
  177. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今回決めた内需拡大は、実際はかなり大きなものになると私は思います。お考えになっているようなものよりもっと展開してくるだろう、そう私は思っております。大体三兆ないし四兆と見込まれておりまするが、住宅あるいは下水道、そのほか地方に対する単独事業、そういうような面から考えますと、その程度のものは考えられると思っております。  しかし、やはり景気の動向等はよく見ながら経済というものは弾力的に運営していく必要がある、そういうふうに考えておりまして、慎重に景気の動向を見守ってまいりたいと思います。
  178. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 終わります。
  179. 天野光晴

    天野委員長 これにて岡田君の質疑は終了いたしました。  次に、二見伸明君。
  180. 二見伸明

    ○二見委員 最初に靖国神社問題についてお尋ねしたいのですが、その前に、図らずも先ほど岡田委員総理の間で国家論が出ましたので、実は私も総理にちょっとお尋ねをしたいと思います。別にここで総理と国家論について中曽根・二見論争をやる気はありませんけれども、伺いたいと思います。  と申しますのは、これは総理が御自身でおっしゃられたのか、あるいはマスコミの方でそういう評価をされたのかわかりませんけれども、中曽根総理に対して新国家主義者という言葉が定着しつつあるように思います。それが那辺な意味を持つのか私もよくわかりませんが、総理にお尋ねしたいのは、国家主義ということについて総理がどういうようなお考えを持っているかということであります。  それでは、その前に国家主義とは何ぞやということになりますが、これはある事典の解釈でございますけれども、「それは、もっとも広義においては、国家を人類最高の組織とみとめ、国家権力が社会生活の全域におよぶことを是認しかつ主張する政治原理をいう。」また「国家を最上の存在として個人をこれに従属させるべきことを是認する意味においては、国家主義は個人主義または自由主義に対立する原理である。このような意味においては、国家主義は全体主義と同意義で超国家主義ともいわれる。」こういう定義がされております。  総理は従来から超国家主義は排するという御答弁がございますけれども、国家主義ということについてはやはり否定されるのか。ただ、新国家主義と言われていることについてはどのような御感想を持っていられるのかお伺いをしたいと思います。
  181. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 新国家主義という言葉は今初めて聞いたのですが、いろいろ名前をつけるものだと思って感心したものであります。そういう名前をつけられると迷惑だと思いますね。私は健全な国家主義者である。健全な、健全なる国家主義者である、そう言われてもこれはいいでしょう。あるいは健全なる国民主義者である。ナショナリズムというのは、むしろあれは国民主義的なにおいが強いのじゃないでしょうか。ですから、むしろ国民主義的という言葉の方が私はより適当だと思いますがね。  じゃ内容は何ぞや、こう言われますが、これは一言で言えるようなものじゃないので、また私自体がよくわかっていないところでもあります。わかっていたら、これは東大の哲学の教授ぐらいになっていたのだろうと思うのです。ただしかし、二見さんも歴史を非常に愛好されているようですが、この間の新聞に、大津皇子の木簡が出てまいりましたね、飛鳥の村であれは国民は何て感じたのでしょうか。日本書紀というのは本当にあったので、あれは本物だったなということを感じた人も大勢いたんじゃないでしょうか。大安万侶のお墓が見つかったというので、ああやっぱり飛鳥は本物なんだなという気がしたのじゃないでしょうか。それは歴史に対する郷愁であると同時に、何か言い知れぬものがやはりあるのですね。若い人が随分飛鳥に行っておりました、私も去年がおととし行ってみまして。  また一方、その同じころ飛鳥号というSTOL、短距離の飛行機が四十分間試験飛行に成功しましたね。あれは日本の科学技術の粋ですね。九十人乗りぐらいで、日本の初めて自分でつくったジェットエンジンを使って。あれは石播でやったジェットエンジンです。それで、普通ならば千五百メーターから二千メーターくらいかかる滑走路を九百メーターで上がった。音も少ない。エンジンは羽の上に載っけてそれによって浮揚力をづけたという、世界で初めての飛行機をつくった。これは科学技術の粋であって、これは非常に未来性を持っているもので、それに飛鳥という名前をなぜつけたんだろうか。非常に何か暗示的なものがありますね。それは何か喜びがあるから、あるいは希望を持って飛鳥という名前をつけたんじゃないでしょうか。つまり、過去と未来というものを結んでいる何物かがある。そういうようなものの中に生きているという共感を持っておる。そういうようなものに通ずるものが国家とか共同体とか共同社会とかというようなものじゃないか。そういうものを大事にし合うという考えだと私は思っております。
  182. 二見伸明

    ○二見委員 ここで私は国家論を議論するんではないのですが、ただ正確を期するために申し上げておきたいのは、ただいま健全な国家主義者だというふうにおっしゃられたように思い、ます。ただ、確認しますけれども、国家主義というのは個人主義または自由主義に対する原理である、要するに個人主義や自由主義とは対立する原理だということ。健全なという形容詞がついても、国家主義という言葉を使われると、個人主義、自由主義よりもむしろ国家の方が上だという概念になってしまう。それを突き詰めていくと、国民というのは国家に従属すべきものだという考え方にもなりかねないという危険性を持っております。それが一点。  それから、これは恐らく総理はそのつもりで言われたのかどうかわからないけれども、たまたま私が引いた事典の中に国民主義という言葉があった。申し上げます。「すなわち国民主義とは国民的利己主義をいい、すべての問題を自国民中心に考え、自国民の民族精神が他国民のそれに優越しているとし、積極的に自国民の「優越」せる文化的・政治的支配を他国民におしつけようとする政治原理である。」  総理は同じ言葉を使っても、まさかこれと同意義だという意味では――たまたま言葉が一緒なんであったけれども意味は違うんだとおっしゃるなら、今この場で言っておいた方がよろしいと思いますので、あえて質問をさせていただきます。
  183. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、国民主義ということに対する定義がそれで正しいとは思わないんです。それは偏した辞書ではないでしょうか。私はどうもそういう感じがしますね。左翼的など言うと悪いけれども、ちょっと色眼鏡かけた辞書じゃないかという感じがしますね。  なぜなれば、国民主義というのはネーションから来ている。ネーションにイズムをつけてナショナリズム。ネーションから来ている。つまりネーションという意味は、ある意味においては共同社会的な意味があるわけなので、私はそういう意味で申し上げておるわけです。
  184. 二見伸明

    ○二見委員 その前にちょっと国家主義についての……。
  185. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ですから私は、国家主義という言葉、新国家主義という言葉は迷惑だと申し上げておる。
  186. 二見伸明

    ○二見委員 これは果てしないことになりますので……。  それで、実は私はきょうはそのことの主たる質問ではなくて、ただ、私は一言だけ感想を言わせていただくと、どうも総理の国家論というのは、私の浅薄なる知識からいくと、ドイツ国家学というか一元的国家論に近いような感じがいたします。私が学生時代に習ったのは、ラスキとかマッキーバーとか多元的国家諭というか、そちらの方の系統を引いておりますので、国家に対する、私は自分自身日本人であることを、日本の国を愛し日本人であることに心から誇りを持っておりまして、総理の言葉をそのままかりれば、私も健全なる民族主義者だと自負いたしております。(中曽根内閣総理大臣「じゃ同じじゃないですか、同じです」と呼ぶ)  そのことを一言申し上げて、靖国神社の問題に入りたいと思いますが、実はこの問題は非常に国民の情の絡む話でございます。私はできるだけこれを、国民の感情という面からではなくて、憲法の解釈としてどうなのか、私は法律の専門家じゃありませんけれども、なけなしの知恵をはたいて何とか法律、憲法解釈論的にできないものだろうかと知恵を絞ったわけでございますので、そういうことでクールに質問もし、クールにお答えをいただきたいと思うのです。  実は、官房長官は、八月二十日の衆議院内閣委員会でこういうふうに言われています。靖国神社をめぐっての先入観とか靖国に対する考え方はあろうが、国のために一命を捨てて亡くなった方々をお祭りするのが靖国神社の立場であると宗教法人靖国神社を理解している、こういう答弁であります。  ところで、靖国神社については――戦前の靖国神社です。これを二つに分けます。戦前の靖国神社に対してはどういう性格のものであったかというと、例えば一九四四年、当時のアメリカ国務長官ヨーデル・ハルと、その当時の前駐日大使の極東局長グルーを中心とする戦後政策委員会では、靖国神社は国家神道そのものであり、靖国神社から国家神道特有の宗教的儀礼を除去したならば、もはや宗教の名に値しない純然たる国家主義の殿堂であり、その点では他の大多数の神社や伊勢神宮とさえ異なった性格の施設である、こういう理解をしていたようであります。私も、靖国神社というものは、戦前の靖国神社というのは、まさに国家神道の象徴的な施設であり、しかも戦前靖国神社は日本国民の単に信教の自由のみならず思想の自由をも拘束することを明白な目的とする国家施設として維持されてきたという認識を持っております。  帝国憲法第二十八条では、「臣民タルノ義務」というのがありますけれども、この明治憲法第二十八条の「臣民タルノ義務」の名において、国民の思想、信教の自由を制約ないし抑圧する宗教施設の一つとして存在していたのが戦前の靖国神社ではないかというふうに私は理解をいたしております。この点について総理としての御認識はどうでしょうか。
  187. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いいか悪いかは別として、戦争前の概念においては、神社は宗教にあらずという内務省の決定があって、それでそういう意味の政教分離をやっておったのですね、神社は宗教にあらず。ところが、今言ったアメリカ側の判定で、国家神道追放、神社追放という占領政策が出てきて、そして政教分離というものが出てきた。これは歴史的事実で、その内容がいい悪いは別の話であります。それで日本の神道あるいは神社というものが果たして世界的な水準においてどの程度の宗教性を持ち、あるいはキリスト教や回教と比べてどうであろうか。祭神というものは生きた人間が死んでそうなっている。ところが、教典もない、管長さんもいない。仏教なら管長さんがいるけれども、神社の場合には管長さんがいないとか、教義もないとか、清く明らけくとかいう道徳律みたいなものである。だから、外人の中でもトインビーなんかは割合にそういう性格のことを言っているんじゃないですか。そういう世界的にもまたなかなか議論の多い問題で、あるものの民族的伝承といいますか、習俗といいますか、あるいは信仰といいますか、そういうようなものの中にはいろいろな複雑なものが入っていると思うのです。  それで、宗教という純粋性を持ったものが富士山の頂上だとすると、富士山のすそ野みたいにずっと世俗の中へ入ってくると、宗教だか、あるいは習俗だかわからない混交したものが出てくる。ちょうど日本では神道と仏教が混交したような時代もありましたね。そういうようなわけで、日本人というのは非常に寛容性といいますか、簡単に物を考えるところがあって、よく言われるのですが、十二月二十四日はクリスマスでやあやあジングルベルでケーキを買って帰ってキリスト教徒になっている、三十一日の除夜の鐘を聞くとゴーンと鳴って諸行無常で仏教徒になって、翌朝五時に起きてお宮参りをやる、よくそう言われますね。こんなことは回教徒には絶対ないことですね。キリスト教徒にもない、一神教の民族には。そういう別に宗教論をやる意思はありませんが、そういうわけで非常に難しい要素があるのです。ですから、もう少し学問的に科学的によく分析してみる必要がある。我が自民党の中では、神社は宗教にあらずという考え方を持っている方や、靖国神社におけるああいう慰霊といいますか追悼といいますか、ああいう施設というものは、それは別に教義があるわけじゃなし、管長さんが説教垂れるわけじゃなし、ちょっと違うじゃないかと言う方々もおられますね。  それで、戦前においては、あれは陸海軍大臣が主宰して、そうしてたしか別格官幣中社ですか、何かそういう資格が与えられておって、陸海軍大臣が推薦した人があそこに入るのですか、戦死した人はみんなあそこに入る。そういう形でほかへ行き場がなかった、そういう形であったという。それが戦後になって急に靖国神社というものが、生きていくためでしょう、財政がなければ生きていけないから、それで宗教法人になって、おさい銭は無税になった、そういう形で生きていく形になったのかなという気持ちもしておるのです、宗教法人ができて。そこで、あれは宗教法人を脱却して一つの国家的営造物みたいな別の法人格にしてやった方がいいという議論も出てきましたですね。  ですから、そういう非常に日本人でもよくわからない、学問的に定義するのも難しいような世界の中で我々が今判定しておるということで、そこで懇談会をつくってもらって、宗教学者も入ってもらっていろいろ議論してもらい、それから日本の伝統的習俗とかあるいは最高裁判所の神社や神道に関する判決あるいは国民的通念というようなものを全部考えてみた結果、ああいうやり方がまず今のところ妥当であろうというのでやった、それならば憲法に違反しない、そういうことになると思うのであります。
  188. 二見伸明

    ○二見委員 靖国神社の歴史論争をやってもしようがないのですけれども、ただ、国家神道は宗教にあらずという議論があったことは私も承知しております。ただ私は、当時の政府が例えば靖国神社は宗教ではないのだとまでは言い切ってなかったやに記憶をいたしております。ただそれは真偽は別として……(中曽根内閣総理大臣「神社は宗教にあらずと……」と呼ぶ)公式にはそうも言い切れなかったらしい。(中曽根内閣総理大臣「昔はね」と呼ぶ)ただ、それでは食わんがために宗教法人になったんじゃないだろうかと推察するとおっしゃられたけれども、実は昭和二十年十二月四日、終戦連絡局がGHQに提出した神社問題対策をめぐる第二回の公式会談で、向こう側、アメリカ側はバンスという大尉が出て、こちらは曽祢益さんが外務省にいられて、その方との第二回会談があって、バンスの方から、要するに靖国神社を非宗教的で普遍的な戦死者の記念碑的なものとして存続をすることについてはどうかというような話があり、曽祢益さんの方から、いやむしろ宗教的施設である一個の神社として存続をさせたいのが日本政府考え方だという話があって、宗教法人として存続させることを選んだのは、むしろ当時の日本政府だったんではないかというふうに私は思います。  しかし、いずれにいたしましても宗教法人になった。これは戦前の靖国神社と戦後の靖国神社は、その時点において性格が百八十度変わったのだと思います。靖国神社、神道が宗教であるかどうかというその議論は、宗教論は別として、性格そのものが戦前と戦後では変わったんじゃないか。もっとありていに言うと、戦没者を追悼する、戦死者を追悼するというのが戦前は靖国神社のいわば専売特許であったのじゃないかと理解しておりますけれども、戦後は、もちろん靖国神社も一宗教法人として戦没者の追悼はやるけれども、規模の大小はあっても、それ以外の各教団、各宗派が自由に独自に靖国神社と対等の立場で戦没者の追悼が行えることになったのではないか。要するに、戦没者、戦死者を追悼する施設あるいは宗教団体としては靖国神社はワン・オブ・セムではないかというふうに私は現在の靖国神社の性格を、宗教法人靖国神社の立場というものを理解しておるのですけれども、その点についてはどうでしょうか。
  189. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ただ、戦死者というものが名簿が入ってきて、そして名前だけでもどこかに安置される、そういうようなのは靖国神社だけではないのでしょうか。しかし、自分の心の中で戦死した方々を弔うということはキリスト教でもやっておるし、創価学会でもおやりでしょうし、どこでもおやりだろうと思うのですね。ただ、そういう名前が正式に個別的に入って、そして拝むというのは靖国神社だけではないか。というのは、戦前のシステムがそういうシステムになっていて全部靖国神社に一括入れられる、そういう形になってほかに行き場がなかったのじゃないか、そう思うからです。
  190. 二見伸明

    ○二見委員 ですから私は、規模の大小はあってもワン・オブ・セムではないかというふうに伺っておるわけです。やはりワン・オブ・セムでしょう。
  191. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今はそういうふうに各教団や何かで礼拝するとか追悼するということはおやりになっておるでしょうから、そういう意味においては同じようにおやりでしょうけれども、しかし、普遍性を持つといいますか、戦死者が全部一応そこへおさめられるという場所は靖国神社なんですね。各教団その他は自分の宗教に関係した方々を追悼するという意味では部分的ですわね。靖国神社の場合一括して全部あそこへ一応はおさめられる。そういう点で違うのじゃないでしょうかね。
  192. 二見伸明

    ○二見委員 それでは、もう一つ別の角度からお尋ねしますけれども、公式参拝について――その前に、私はワン・オブ・セムだというふうに思っております。そのことを申し上げておいた上で次の質問に進むわけですけれども、公式参拝について官房長官は、「国民や遺族の方々の多くが、靖国神社が戦没者追悼の中心的施設であるとし、同神社において内閣総理大臣や閣僚が戦没者の追悼を行うことを望んでいる」、二つ目の理由として、「専ら戦没者の追悼という宗教とは関係のない目的で行う」、三番目、「神道儀式によることなく、かつ、追悼の行為として世俗に行われている一般の方式により追悼の意を表するのであるから、今回の参拝の目的は宗教的意義を有せず、靖国神社に対する援助、助長の効果を有しないので「宗教的活動」には当たらないこと八月二十日御答弁されております。  この答弁の下敷きには何があるかというと、いわば靖国懇の報告書があるわけであります。じゃ、この答弁の下敷きになった靖国懇では、こういう言い方をしているわけですね。津の地鎮祭事件に関する最高裁の判決を引用いたしまして、全文引用するわけではない、部分的に引用して、「憲法第二十条第三項の「宗教的活動」とは、行為の目的が宗教的意義を持ち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になるような行為を言い、ある行為がこの宗教的活動に該当するかどうかを検討するに当たっては、当該行為の外形的側面のみにとらわれることなく、諸般の事情を考慮し、社会通念に従って客観的に判断すべきである。」こういう答申があり、法制局長官も、八月二十日の内閣委員会では、この答申の趣旨を引かれて、今回の公式参拝は合憲である、こういうふうに答弁をされたわけであります。  それで私はこのことについて一つの憲法解釈として問題にしたい点があるわけであります。例えば靖国懇では「当該行為の外形的側面のみにとらわれることなく、諸般の事情を考慮しことある。いきなりこう飛んでいる。しかし、津の判決ではそこのところがどうなっているかというと、その間に文章が入っている。まず「当該行為の外形的側面のみにとらわれることなく、当該行為の行われる場所、」場所が入ってきている。「当該行為に対する一般人の宗教的評価、」云々があって「諸般の事情を考慮しこと、こうなっている。冒頭に場所ということが、諸般の事情を考慮する中で場所という概念が津の地鎮祭の判決には入っている。  それで、私がこの場所という概念が非常に大事だなと思っているのは、今回公式参拝されたのは靖国神社であります。昭和三十九年第二回全国戦没者追悼式は靖国神社の境内で行われた。日比谷でやる予定だったのが急速靖国神社にかわった。そのことについて三十九年七月三十一日の衆議院の社労委員会で当時の林法制局長官はどういうふうに言っているかというと、長官が閣議の席上言ったことは、靖国神社も宗教法人で、境内を広場として使うにしても、やはり多少紛らわしい点がないわけではない、したがって、厳に宗教的行事、活動と切り離してほしい、また、靖国神社に何らかの特権を与えたことにならぬようにとの条件を申し、閣議でも了解されている、こう答弁している。  しかも、ではそのときはどういうふうにやられたかというと、林さんは「法律夜話」の中でこう言われている。「そこで、今回の式では、あくまで、単に式を挙行する場所として、靖国神社の境内を借りるという建前がとられ、式の行事が無宗教で行われることはもちろん、神社を式の有機的部分として参加させるというようなことは厳格に避けられているし、また、式を挙行する場所も神社の境内としては最も宗教的雰囲気から遠いと考えられるところ(一の鳥居と大村益次郎の銅像の間)を選び、しかも、式場と神社の社殿などとの間は、まん幕などで仕切りをつけるというような措置がとられている」、こう述べている。相当厳重にやられたわけであります。これほど神経を使っても、やはり当時は議論があった。  ところが、今回の合憲論は、合憲論だというけれども、ここまでの配慮はしてない。場所は靖国神社のど真中そのもの。当時は靖国神社を「式の有機的部分として参加させるというようなことは厳格に避けられている」というわけだ。今度は、「厳格に避けられている」どころか、「有機的部分」どころか、大部分なんです。これはやはり憲法解釈としては当時の方ががっちりとしており、今度の憲法解釈は私は誤りだというふうに思います。この点はいかがですか。
  193. 茂串俊

    ○茂串政府委員 お答え申し上げます。  先ほど御引用になりました昭和五十二年の津地鎮祭判決の御指摘の部分でございますが、そこには御指摘のとおり、「ある行為が右にいう」――「右にいう」というのは、憲法二十条三項で禁止されている宗教的活動でございますが、「右にいう宗教的活動に該当するかどうかを検討するにあたっては、当該行為の主宰者が宗教家であるかどうか、その順序作法(式次第)が宗教の定める方式に則ったものであるかどうかなど、当該行為の外形的側面のみにとらわれることなく、当該行為の行われる場所、当該行為に対する一般人の宗教的評価、当該行為者が当該行為を行うについての意図、目的及び宗教的意識の有無、程度、当該行為の一般人に与える効果、影響等、諸般の事情を考慮し、社会通念に従って、客観的に判断しなければならない。」というふうに判示されておるわけでございます。御指摘のとおり、「当該行為の行われる場所」というのがいわゆる「諸般の事情」の中の一つの考慮要素として挙げられておるわけでございます。  それからまた、三十九年に林元長官が、先ほど御指摘のような答弁をされたこともそのとおりでございます。  ただ、今回は、先ほど御指摘になりました津の地鎮祭判決、これを私どもはいわゆる目的効果論と申しますが、この津の地鎮祭判決で判示されておりますところのいわゆる目的効果論、今申し上げたように、目的と効果において「当該行為の目的が宗教的意義をもち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進」等になるような行為をいうものとするという定義づけがございまして、この定義づけに当たるかどうかということを厳密な態度でいろいろと検討をしたわけでございます。もちろん、先ほど御指摘のありましたいわゆる靖国懇の報告書も参考にいたしました。その上で、従来いろいろ我々の方で内々検討しておったところとそれを加えまして、そうして今回のような結論を得たわけでございます。  したがいまして、今回のいわゆる公式参拝の方式でございますが、これについては、前々から申し上げておりますように、いろいろと配慮とまた検討を加えた結果でございまして、もちろん、先ほど言われたように、場所は宗教的な施設の中でございますから、その意味では宗教とかかわり合いのある行為であることは否定できないわけでございますけれども、第一に、先ほど官房長官も御指摘なさったと思いますが、国民や遺族の多くが、靖国神社が戦没者追悼の中心的施設であるとして、同神社において総理、閣僚が戦没者の追悼を行うことを望んでいるという事情を踏まえまして、そして専ら戦没者の追悼という宗教とは関係のない目的であるということをあらかじめ公にしまして、その上で、方式としては神道儀式によることなく、かつ追悼の行為としてふさわしい方式によって追悼の意を表するという形をとりますれば、先ほど申し上げました津の地鎮祭判決で言うところの目的効果論に当てはめれば、これは宗教的活動に当たらない、したがって憲法上は合憲であるという判断をしたわけでございます。  したがいまして、林長官お答えになりました点との関係でございますけれども、林長官お答えは、当時としてまたいろいろの御判断の上で判断をされ、そして発言されたことだと思いますけれども、今回はあくまでも、この津地鎮祭判決の目的効果論に当てはめた上で、合憲の判断を下した次第でございます。
  194. 二見伸明

    ○二見委員 この判決だって、「当該行為の行われる場所」というのが筆頭に挙げられておるのだ。それをそんないいかげんなことを言って、冗談ではない。それは判決の悪用としか言いようがない。三十九年はそこまで配慮した。それでもなおかつ議論があった。今度は、当該行為の場所そのものじゃないか。それを法制局長官が、靖国懇の報告書と同じことでもって合憲だと言うのでは、納得はできない。こんな遅くなければ、これで質問はストップなんです。ここでとめるわけにはいかないから、もう少し先へ行ってからこの問題は決める。それはしようがない。  それでは、あなたはいいですか。国民や遺族の多くが、靖国神社を戦没者追悼の中心的施設であるとし、参拝を望んでいる。それでは伺うけれども、これはむしろ政府にお伺いした方がいいのかと思うけれども、靖国神社が日本における要するに中心的な施設だという判断を下したのかどうか。遺族がそう思うことは、これは自由です。国民がいろいろ思うことは、それは自由です。政府がそういうふうに判断をしたのかどうか。国民が、いろいろな人が思っているというふうに思うのはいいですよ。政府として、一宗教法人靖国神社は、戦没者を追悼する日本の国の中心的な施設だという判断をしているのかどうか、この点はどうですか。
  195. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 簡潔にお答えをいたしますが、政府は、靖国神社は戦没者追悼の中心的施設だと考えたわけではありません。遺族の方々であるとか国民の多数の方々であるとか、それから、先ほども申し上げましたが、都道府県や市町村の議会で靖国神社公式参拝を決議してこられた、そういった方々は、やはり靖国神社が戦没者追悼の中心的施設であるとお考えになって、その上に立ってそういう決議をしておられるということを申し上げておるわけでございます。
  196. 二見伸明

    ○二見委員 要するに、政府としては中心的施設だという判断はしていない。  それでは、もう一点伺います。要するに「宗教に対する援助」という言葉が出てきますね。これは法制局長官の方かもしれませんけれども……(「もう聞かぬでいい」と呼ぶ者あり)これは法律解釈だから聞かざるを得ないと思うのです。これは精神的な援助も含むのかどうか、この点はどうですか。
  197. 茂串俊

    ○茂串政府委員 精神的な援助という意味がどういう意味かというのもちょっとわかりかねるのでございますけれども、もちろん靖国神社あるいは神道、あるいはまた他の宗教施設でもよろしゅうございますが、そういうものに対して一般的な援助と申しますか、単なる物的な援助に限らず、そういった神道あるいは宗教を、一般の人から見て大いにこれから信仰しようとか、あるいはこれに対して帰依しようとかいったような気持ちを起こすのも、これも援助の一つであろうかと思います。
  198. 二見伸明

    ○二見委員 物的な援助ができないということは、憲法の規定からこれは明らかであります。問題は、政府の何らかの行為が、他の宗教団体との関係で特定の宗教団体、この場合私は靖国神社を問題にしておりますから、靖国神社に特定の権威を事実上認めるような結果になると、これは憲法違反の疑いが出てくるんじゃないですか。公式参拝というのは、供花料と玉ぐし料の問題もあるから、それは別にして、それはなかったとしても、靖国神社が事実上戦没者追悼の中心的施設であるという認識を国民に与える効果が出てくるんじゃないでしょうか。これは、まさに宗教に対する物的以外の援助であるという解釈に私は当たると思うのですが、どうですか。
  199. 茂串俊

    ○茂串政府委員 これは靖国懇の報告書にもいろいろと述べられておりますが、追悼というのは、これはいわゆる非宗教的な行為でございまして、したがいまして、その追悼という非宗教的な行為に関する中心的な施設であるというような実体をも備えておるのが靖国神社でございます。そういうふうな考え方を、国民の多くが考えておるわけでございます。そういう意味で、宗教施設という面に着目するのではなくて、追悼の中心的施設という面に着目して、そうして政府がそこへ行って追悼するわけでございますから、靖国神社の宗教性に着目してないという意味では、これは宗教に対する援助あるいは靖国神社に対する援助、助長的な効果はないというふうに考えられます。
  200. 二見伸明

    ○二見委員 おかしいんじゃない、それは。中心的施設であるとあなたは認めたわけですな。追悼の中心的施設だと認めたじゃないか。  しかも、私はもう一度さっきの当該行為の場所と今の答弁とを関連させて考えてみたいのです。三十九年当時は、靖国神社の境内でやることに対しても十二分に配慮し過ぎた、今のこの立場から考えればですよ。それでも議論があった。今度は靖国神社が、有機的一部分ではなくて、靖国神社そのものが舞台になっておる。そうでしょう、鳥居の向こうの方でやったわけじゃないでしょう。あの舞台そのものでやったわけでしょう。しかもそれが私的参拝ではなくて公的参拝である。こうなれば、これは宗教に対する援助、物的な援助ではないかもしれないが、これはまさに宗教法人靖国神社のプレステージを高めるための行為だとしか私は考えられないし、結果として靖国神社が中心的な施設であると政府が認めたことになる。そうとしか言いようがない。したがって、これは憲法違反だと言わざるを得ないのです。ところが、あなたの答弁は、そういう肝心なところは一切答弁しない。これでこの問題、先に進めと言うのですか。これで質疑をさらに続行しろと言うわけですか。
  201. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 最高裁の判決というのは非常に重要でありまして、やはり最高裁の判決というものを中心に我々は物を判定すべきである。林長官の三十九年以後に今の津の判決は出ているわけです。だから、津の判決というものを中心に解釈というものは確定しておる、それをどう解釈するかという問題である、そういうふうに考えていただきたい。  それから、追悼ということは宗教行為に当たらない。だから、総理大臣が追悼のみを目的にして、そういういわゆる宗教性を払拭した形でやって、国民が、ああ総理大臣が追悼したなど考えることは、それは宗教的なことにかかわってないと私は思うのであります。そういう意味に解釈していただきたいと思います。
  202. 二見伸明

    ○二見委員 総理、津の判決は三十九年以後だとおっしゃる、そのとおりです。ただ、その津の判決で、当該行為の場所ということを筆頭に挙げているのです。それは林長官も、この判決が出る以前から、場所というものは重要なものだなという認識があるから、三十九年のそういう答弁があり、政府側としても配慮があったんだと私は思うのです。(中曽根内閣総理大臣「目的効果論も新しく出てきた」と呼ぶ)この判決の、当該行為の場所という文言は、あだおろそかにできる文言ではないと私は思うのです。これは大事な論点だと思う。三十九年と同じようなやり方でやったのなら、場所は考慮したのだなということになるけれども、そうではない。
  203. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 しかし、津の判決というものの非常に大きな骨は、目的とその効果がどうかということで、それでその効果の一つのファクターの、考える要素として場所というものもある。それは部分ですね。やはり一番の骨は目的と効果ということなので、今申し上げたとおりであると思うのです。
  204. 二見伸明

    ○二見委員 では、さらにこの問題について進めたいと思います。  いわゆる玉ぐし料。これは字引を引きましたら、供花料とも読むし供花料とも読むのだそうでありますが、官房長官は、玉ぐし料と供花料は全く性格を異にする、靖国神社の場所で戦没者を追悼し、平和を祈念する一礼をする、その場所に、その誠を明らかにするために花を供える、その花代として公費支出したので、宗教形式にのっとる玉ぐし料とは性格を異にすると答弁をしている。それならば何で、例えば花屋さんに行って花を買ってきて供えて、それでもよかったんだけれども、わざわざ神社に金を出すという形をとったのか。要するに、靖国神社としてはいろいろ難しい議論がある。むしろ、どんな名目であれ国との金銭的な結びつきがあるということが、靖国神社に事実上の特権を付与することになる、こういう判断をしたのではないかと思うのです。これが一つです。ごちゃごちゃするといけませんので、まずそれだけ聞きましょう。
  205. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 事実関係を申し上げた方がいいかと思いますが、十五日の前日に私靖国神社に出向きまして、そして、あしたこういう形式で、こういう考え方で総理は公式参拝をしたいと思う、ついては戦没者追悼をする場所にぜひ供花をささげて、そして追悼の誠をささげたいと思う、平和を祈願するという気持ちをあらわしたいと思う、ついては供花の御準備をひとつお願いいただけますか――今先生おっしゃるように、こちらがぶら下げていってもいいわけです。しかし、その場所はやはり靖国神社の場所でございますから、どういう場所にどういうふうに供花を置くかということは、こちらがその場所へ出向いていくときにぶら下げていくというのもいかがなものかというふうに考えまして、それで前もってしつらえていただくことをお願いをしたわけでございます。  余り長い時間とってまた先生にしかられるといけませんが、もちろんそのときに靖国神社の方は、何という形式でお参りするのですか、それは神社には神社の参拝の形式があります、そういうことでやってもらわなければ困ります、そういうお話でございました。しかし、いろいろ検討いたしまして、こういう形で一礼をするということで戦没者を追悼したいので、ぜひその追悼する場所に供花を置かせていただきたいと思います、こういうことを申し上げて、当日お金を持っていきまして、領収書をもらって払ってきた。これは総理の秘書官が払ってきたということになっておりまして、全くそれはお願いをして供花を置くということの段取りをお願いしてきたということが事実関係でございます。
  206. 二見伸明

    ○二見委員 私は、その形式がやはり後々になって重い意味を持ってくるのだということを申し上げておきたいと思います。  それから、目的効果論というのが後から出てきたのだという、総理から不規則発言がございました。津の判決ですね。私はもう一点この点に言及すれば、なぜ公式参拝が起こってきたのか。それはその前に、昭和四十四年か何かから国家護持法案が議員立法で出てきた、何回も内容を取りかえながら出てきた。これは結論的には四十九年に廃案になった。要するに靖国神社がずっと首尾一貫して主張し、何とか実現したいと思ってきたのは国家護持なんだ、そうですね。ところが、国家護持法案が国会で廃案になってしまったので、じゃあこれは難しい、ハードルを下げてまず一番何とか憲法問題クリアしそうな感じのする公式参拝からいこうやというところに作戦を変更した結果が公式参拝なんだ。ということになれば、あなたが目的効果論と言うけれども、まさにこの行為そのものが国家護持ということへの大きな目的効果論にも政治的な意味合いでなってくるんじゃないか、これは法律解釈じゃないから長官、関係ありませんよ、というふうに私は考えているわけであります。その点を一言だけ申し上げておきたいと思います。どうですか。
  207. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国家護持と公式参拝とはまるっきり別のもので、このことは官房長官もはっきり声明しているわけであります。
  208. 二見伸明

    ○二見委員 私はこの議論をさらに続けたい。(発言する者あり)本来であれば、先ほどの憲法解釈のところでもって今の不規則発言のとおりとめたいと思った。改めてきちんとした憲法解釈を取りまとめたいと思っていた。ところが、そんなことをすると後の同僚委員質問に差しさわりがあるからあえて涙をのんで先へ進むわけだけれども、この憲法解釈に重大な疑義があるということだけは念頭に置いていただきたいのです。認めたんじゃない。もし来年もやれば、これと同じ議論をもう一度やらなければならない。これは今の長官答弁は憲法解釈論としてはかなり苦しい。靖国懇の報告をそのまま言っているんであって、あなたの憲法解釈論ではないというふうに私は考えております。  もう一点。例大祭の出席を取りやめられた。例大祭への公式参拝ということは、例大祭というのは靖国神社という一宗教法人の宗教儀式であります、これに公式参拝するということは憲法上どういうことになるのか、この点もはっきりしていただきたい。これが変な答弁だったらば、この場合は……(「やめる」と呼ぶ者あり)最後を言わないところが味のあるところであります。
  209. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 秋の例大祭にぜひ公式参拝をという各方面の強い御意見がございました。ちょうど時期が臨時国会が始まりまして代表質問お答えをする、さらにアメリカに出かけてまいらなければいかぬといういろんな準備などがございまして、総理の日程、時間的な調整もできず、これを見送るという形になったところでございました。  八月十五日の公式参拝を前にいたしまして、八月十四日に官房長官談話で申し上げておりますが、宗教色を排除して、そして靖国神社に赴いて一礼をして戦没者に追悼し平和を祈願する、こういうことでございまして、宗教色を全く排除してその行為を行ったところでございます。その考え方でまいりますと、それが例大祭の時期に当たっておりましても、その時期に靖国神社に赴いて、そうして戦没者を追悼し平和を祈願するという一礼をするという行為をとるということは、決して憲法に抵触するものではない、こういう考え方をとっておるところでございます。
  210. 二見伸明

    ○二見委員 それはおかしいと思う。例大祭というのは宗教法人の要するに私的な式典なんです。それを中曽根さんが、おれは一個人としてどうしても行きたいんだというならば、私個人の見解としては、それは否定はしない。しかし公式参拝ということになると、これは話が変わってくる、憲法上非常に疑義がある、私は違憲だと思う。政府の今までの考え方からいけば違憲の疑いがあるという表現になるのだと思う。私は今の長官答弁はおかしいと思う。
  211. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 念のために申し上げておきますが、例大祭の時期に、宗教法人靖国神社が行います例大祭の儀式にのって、そして参拝をする、神道形式で参拝するということになりますと、この宗教法人の靖国神社のまさにその祭典に参加するという形になるわけでございますから、それはいろいろ問題があろうかと思います。そういう儀式にのっとらないで、その時期に靖国神社に赴いて、戦没者を追悼し平和を祈願する一礼をするという行為をとるということは、憲法に抵触しない、このような解釈を持っておる次第でございます。
  212. 二見伸明

    ○二見委員 わざわざ例大祭という時期を選ばなくたっていいのだ。改めてそのことについては長官答弁はおかしいと申し上げておきたいと思います。  それからもう一点、ちょっとこれは法律解釈と違うので、これは、私はやはり一つの民主主義、これがもし事実とするならば民主政治の土台を崩すものだなと思うので申し上げたいと思うのです。  実はこれは十月十日の朝日新聞の囲み物でございますけれども、「中曽根首相は最近のある夜の会合で、この夏の靖国神社への公式参拝問題をあらまし次のように説明したという。「靖国では、世論調査の支持が上がった。中国の学生デモは、反中曽根というより、実は反鄧小平なんだ。公明党や社会党の訪中団も中国の反発をあおったのじゃないか」」。私は、政党政治ですから、お互いにその政策を批判し、その路線を批判し合うことは民主主義の活性化のためにいいことだと思っている。しかし、事実無根のことをやれば、これはデマゴギーだ。デマゴギーが民主主義の土台をいかに崩すものであるかということは、総理はマキャベリを一晩夏休みにお読みになったというから、デマゴギーの恐ろしさを御存じだと思う。公明党は中国へ行って、国内では中曽根さんと対決もし批判もするけれども、中国でもって自分の国の政府を売るような罵倒するようなことは、これっぽっちも言わない。中曽根さんの言葉をかりれば、我々は健全なる民族主義者なんだ。このとき行った訪中団のキャップは竹入委員長だ。竹入委員長というのは頭のてっぺんから足のつま先まで、どこを切っても日本人の血が出てくるのだ。言いもしないことを言ったように言われたのじゃ、これはまさに公党の名誉にかかわることだ。  もちろん総理は、私はそんなことを言った覚えはないと御答弁なさると思う。きのうも市川質問に対して、金丸幹事長とのやりとりにしても、私はそんなことを言ったことはないと言われたから、否定されるだろうと思う。しかし、読んだ読者に対しては、公明党や社会党というのはそんなけちな政党なのかという印象を与えただろう。またしかも、民放でもって、テレビでもって、この発言を利用して、私は直接聞いたわけじゃないんだけれども、こういう対談が行われた。公明党は中国へ行って靖国神社の問題でさんざっぱらあおってきたらしいというようなことがあったと言われている。私は聞いてなかった。私のうちへも何本も電話が入った。宿舎にも電話が入ってきた。こんなことを公明党はやっているのか。これは黙って見過ごすことができない。これに対して私は総理の御見解を承りたいと同時に、もし何らかの背景があるならば、我が党の名誉のために何らかの処置を講じてもらいたいと思うのです。
  213. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私はそういうことを言った覚えはありません。
  214. 二見伸明

    ○二見委員 それでは新聞の記事の方が間違っているのかということになる。これは正直言って水かけ論だ。水かけ論をここでもって何時間も議論するわけにはいかない。私は改めて総理に、お互いに議会人として政党人として、デマゴギーでもって政党のイメージをダウンさせるようなことがあってはいけないということを総理が本気にお考えになるならば、総理は言わないとおっしゃるんだから、私は現場を見ているわけではない、聞いているわけではないんだから、総理の方で大変御足労なことかもしれないけれども、実はいろいろな会合があって、いろいろな議論、いろいろな話があった、しかし、そのことについては何も言ってないのだ、明らかにその新聞の記事が誤りだということを、後日でいいから明らかにしていただきたいと思います。
  215. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私はそういうことを言ったことはない、そういう覚えはないと今申し上げているので、国会で言っていることが一番正しいことです。
  216. 二見伸明

    ○二見委員 私は、くどいようですけれども、民主主義にとって、民主政治にとって、デマゴギーというのはもうとんでもない、土台を崩すものだということを実は身にしみております。と同時に、この靖国神社問題をきょうの質疑で打ち切る、この問題の締めくくりとして、あえてもう一つ総理に申し上げたいと思います。  先ほど憲法問題について疑義があると言った。憲法を権力者が勝手に自分に都合のよいようにねじ曲げていくというのは全体主義国家で見られる現象であって、これは厳に慎まなければいけない、権力の恣意的な憲法判断を許さないというのが民主主義の出発点だというふうに私は思います。ということになると、私は、今度は社会通念という言葉を使い、津の判決の、最高裁の判決のつまみ食い的引用をして、何とか公式参拝を合憲にしようとする態度はまさに、権力の恣意的な憲法判断を許さないという民主主義の出発点、この原点からはもとる行為ではないかということをあえて申し上げておきたいと思います。そのことを申し上げて、靖国神社の問題については、数々の御答弁は一から十まで不満だということだけを申し上げて、この問題についてはきょうはこの程度にしておきたいと思います。  それから次に、内需拡大について若干伺いたいと思います。  私は、この質問をこれから総理にお尋ねするわけですけれども、実はこの質問で私を手伝ってくれた男が、岡本君といいますけれども、先日急死をいたしました。彼がこの質問を手伝ってくれたことに対して、大変お世話になったので、大変個人的なことで申しわけないし、これが記録に残ることを百も承知で、彼に感謝しながらこの質問をしたいと思っております。  実は、内需拡大というのは、我が国の経済を持続的に発展させ、安定成長を実現することはもとより、対外経済摩擦の解消、「増税なき財政再建」を推進する基盤づくりの上からも極めて緊要なものであり、当面する経済財政の最要の課題であると言っても過言ではないと思います。したがって、内需拡大については基本的な点について何点か伺いたいと思います。  まず、政府は去る十月十五日に内需拡大に関する対策を決定いたしました。その経済効果は、公表されているところでは、向こう一年間で名目GNPを一・三%押し上げ、輸入拡大効果は二十億ドル、こう言われております。私は、政府が公表されているような経済効果があるとするならば、当然この内需拡大策と一緒に政府の経済見通しを改定してしかるべきだったと思います。なぜ経済見通しを改定してこの臨時国会に一緒に出さなかったのか、その点についてお尋ねをしたい。この点は経企庁長官かな。
  217. 金子一平

    ○金子国務大臣 政府の経済見通しは、明年度の見通しを立てますのがこの十二月でございます。その際に六十年度の実績のレビューをやりまして、こういう見通してございましたけれども実績は大体こういうことになりそうですという実績の報告をいたしますので、その際にあわせてやることになろうかと考えておるわけでございます。
  218. 二見伸明

    ○二見委員 すると、この間決定された内需拡大策によって経済見通しは当然改定されるというふうに理解してよろしいわけですね。本来ならばこの国会に出した方がよかったんじゃないですか。その方が外国はわかりやすかったんじゃないですか、これは。どうなんですか。
  219. 金子一平

    ○金子国務大臣 今度の内需拡大によって景気を押し上げる要素は、事業規模において三兆一千億、景気拡大効果において四兆一千億と認められておりますが、それ自体によって全体の経済見通しを改定するほどになるかどうかは私どもは正直言って、つまり輸入効果が今のところは二十億くらい今度の計画ではふえるように考えておるわけでございますが、全体としてそう大きく変わるとは考えてない。そういうことから、もう少し様子を見て、あわせて、六十一年度と同時に発表するつもりでおりますから、まだ改定する改定しないという結論を出す段階ではないと考えておる次第でございます。
  220. 二見伸明

    ○二見委員 例えば経常収支については、政府は三百四十億ドルの黒字、こう見ているわけですね。ところが大方の民間の経済研究機関は、これは八月の中旬の時点でございますけれども、当初見通しの経常収支の黒字幅を五十億ドルから百億ドル高いものと見ている。六十年度のそれは四百五十億ドルから五百億ドルになるのではないかという民間の調査がある。要するに政府の当初の経済見通しとはもうかなりかけ離れているわけであります。  したがって、内需拡大策、これは単に国内向けではなくてむしろ外に顔を向けた内需拡大策だ。これだけの内需拡大をやるから経常収支はこの程度圧縮されます、経済はこれだけさらに大きくなるから輸入もふえるでしょう、こういう意味合いを込めた内需拡大策である。そうでしょう。そうならば、現状の日本の経済というのは、まだ六十年度始まったばかりだけれども、現状はこのような歩みをしております、その第一弾でこういう対策をとるのだからこれはこうなりますと、現在のポジションとこの結果による未来像というのを両方をセットにして出さなければ外国もなかなか納得しないのじゃないか。内需拡大策といったってまた口から出任せじゃないか、絵にかいたもちじゃないか、こうなるでしょう、比較するものがなければだめなんだから。それをお出しにならないから、私は今度の内需拡大策というのは余り高い評価はしようがない、こう思っているわけです。
  221. 金子一平

    ○金子国務大臣 今度の内需拡大策は、二見先生も篤と御承知のとおり、当面とるべき措置と今後とるべき措置の二つに分けておりまして、財政政策によらざる当面とり得る対策を極力取りまとめて出したのが当面の対策で、それで三兆一千二百億という数字を出したわけでございまして、予算編成の段階において税制改正と合わせて今度の内需拡大策は一本になるものと考えます。  そういう意味において、まあ十一月、十二月になると、大体これはこういう程度になりますよということが天下に公表できると思うのでございますが、今のところは、輸入増大の効果につきましてもせいぜいこの内需拡大策におきましては二十億、これは法律改正をやりましたりいろんなことをやるためのタイムラグがかかるものですから、とりあえずこういう措置をとってこれだけの効果を上げるように努力いたします、最終的には今の予算編成の時期に結論を出すようにいたします、こういう段取りで今進んでおるわけですから、それは各国の大方の御理解はいただいておると考えております。
  222. 二見伸明

    ○二見委員 実は、今長官いみじくもおっしゃられましたように、今度は財政の出動しない内需拡大だとおっしゃる。ということは、人のふんどしで相撲をとろうというのが今度の内需拡大策なんです。民活という言葉は調子いいけれども、要するに、人のふんどしで相撲をとって何とか経済のパイを広げようというのが今度の内需拡大策だ。本気になって内需拡大策をやろうとするならば、財政が出動しなければ私は内需というのは拡大できないと思っている。  総理は、ことしの初めの施政方針演説で内需主導方向を公約された。公約の中身というのは、政府経済見通しによると六十年度の実質成長は四・六%で、そのうち四・四%、つまり全体の九五・六%相当を内需で確保するということです。ところが、四―六月の国民所得というのは政府の公約とは相当かけ離れた姿になっている。四―六月の国民所得統計を年率換算して六十年度政府経済見通しと比べるとどういうことになるかというと、個人消費は政府見通しが四・一%、ところが、四-六月期は年率に直すと二・八%。下がっている。民間住宅は政府見通しが三・八。ところが、四-六では二・三。下回っている。公的資本形成は政府見通しがマイナス〇・四。ところが、四―六月の統計では何とマイナス二四・〇%に落ち込んでいる。内需のうち堅調なのは民間設備投資だけなんです。これは政府見通しの八・五%をはるかに上回る二二・九%も伸びている。一方、輸出は五・六%という見込みが一九・九%。逆に輸入は七・六%の見込みが〇・四%なんです。ということは、当初考え日本の経済の姿と今の経済の姿は、中身において違うということなんです。  そういう違うという経済の実態を見たならば、内需拡大で何が必要かといえば、私は財政の出動以外にはないと思っているんです。ところが、今度はそういう経済の実態の中身に目をつぶって、さらに他人のふんどしで相撲をとっていこうとする。私は、民間設備投資が堅調なのは日本の経済にとって決して悪いことだと思わない。いいことだけれども、それがまた将来経常収支の黒字となってはね返ってくるんでしょう。民活というとそちらの方へいく可能性というのは非常に強いわけだ。むしろ私は、建設国債を発行してでも、公共事業、住宅、そこに内需主導の、内需拡大の焦点を置くべきだと思う。  そういう意味で、今度の内需拡大策ということについては非常に中身の薄いものにならざるを得ない。それは、財政が赤字だという事情は私もわかっている。G5で財政赤字についてはいろんな合意があったのは私はわかるけれども、しかし、むしろここは政策判断として財政が出動すべきではなかったかなと私は思う。それをあえて出動しなかった。これに対して私は、財政上の理由というそういうことだけではなくて、改めて総理大臣と大蔵大臣の見解を伺いたいと思うし、一方の責任者である長官の率直な御意見も承りたいと思います。
  223. 金子一平

    ○金子国務大臣 総理の御答弁の前に私まず申し上げますが、初めから財政に全部おんぶすればそれで済む問題ではございませんで、今日本の置かれた環境から申しまして一番大事なことは、やはり民間活力を活用することだと思います。そういう意味におきまして、できるだけ住宅産業その他の諸施策を、特に規制緩和による宅地開発なり市街地開発なり、そういう問題に重点を置いてやろうということで今度の案をつくったわけでございまして、年末になりますと当然予算編成の段階に入りますから、今お話のございました住宅税制につきましても当然これは問題として取り上げなければいかぬと考えておりますし、特にこれからの景気刺激の重点施策に置かなければいかぬのは、やはりすそ野の広い住宅産業のようなものをうんと伸ばしていくことが日本経済としては一番大事なことではなかろうか。  そういう意味におきまして住宅産業を柱に置きますと同時に、金融面におきましては、御承知のとおり財政投融資が使い物にならない金利になっておりました。それを各方面の御協力を得まして思い切って〇・三%金利を下げまして、どうやら六・八か八五で民間の金融機関と大体バランスのとれたところでいろいろな面で活用できるようにした、そういう二本立てでいろいろな施策を今進めようというのが私ども考え方でございます。
  224. 二見伸明

    ○二見委員 私は、民活がいけないなんて言ってない。一般論としてやはり民活は必要だと思っているし、規制緩和にしても、個別にいろいろ問題があるから、これはいい、これは悪いということも出てくるのだけれども、一般論としての規制緩和も当然内需拡大で必要だという認識に私は立っているのです。そうした民間活力をさらにやりやすくするためにも財政の出動が必要だったのではないか。今、特にこれからは住宅だと言われたけれども、むしろそういう財政の出動が住宅産業を中心として出て当たり前だったのではないか。それは財投の面で配慮しているということはわかるのだけれども、そういうことも承知した上で、私はあえて財政の出動を要求しているわけです。それについて大蔵大臣。
  225. 竹下登

    ○竹下国務大臣 財政の出動といえば端的に、一つは補正予算をつくる、こういうことでございましょう。それから、その際の財源の問題として、今御指摘なすった建設国債を増発するとかいう問題もございましょう。これらについて端的に申し上げますと、補正予算ということになりますといわゆる追加財政需要というのがどれぐらいあるか、こういうことになりますと、現時点ではもちろん不確定な要素が多くて確たることを申し上げる段階にはない。しかも、その追加財政需要ということに対しましても、できるだけそれを厳しく抑えなければならぬというのが現実の我が国の財政状態であるということになろうかと思います。したがって、追加財政需要に対しましても、災害は仮に別といたしましても、いわば建設国債等の発行を安易にこれに充てるべきではない、こういう基本的な考え方が一つあります。  それからもう一つ議論は、建設国債論というのは、建設国債性善説あるいは赤字国債性悪説、これは確かにあります。その区別をしておりますのは日本の財政法と西ドイツの財政法、こういうことであります。ほかの国は、いわば財政赤字に二つの色はない、こういうことでありますが、確かに建設国債というのは、これは正確な計数ではございませんが、一兆円発行すれば三年にわたって四千億ぐらいな増収のはね返りがあるだろう。しかし、その一時的効果はありますものの、結論からいって、一兆円というのは三兆七千億のツケを後世代に回すということになる。しかもそれが六十年。六十年ということになりますと、子、孫、ひ孫の時代にまでツケを回すことによって今日の需要に対して生きとし生けるものの我々として安易に考えてはならぬな、こういうことを常日ごろ我と我が身にも言い聞かせながら、かたくなに国会でも答弁をしておるということを素直に申し上げます。
  226. 二見伸明

    ○二見委員 竹下大蔵大臣の財政論は、通常国会でも耳にたこができるくらい聞かされましたので、よく存じ上げておるわけでありますけれども、そういう御答弁を承知した上で、あえて私は財政の出動を求めたわけであります。  さらに、今金子長官の方から、住宅産業がこれから内需拡大の目玉になるというお話がありました。これは、住宅問題ではきのうも議論がありましたけれども、大蔵大臣、建設省の方で住宅減税の構想がありますですね。これはシステムとして政府税調をクリアしないとやりにくいというのが大蔵省の正式な答弁ですね。どうでしょう、政府税調で住宅減税は検討され、六十一年度予算で反映されるようなことに、大蔵大臣、何とかならぬものでしょうか。
  227. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いわゆる内需拡大に関連しての住宅減税要望、これがあることは十分承知をいたしております。  そこで、先般の経済対策閣僚会議においては、「住宅建設、設備投資等に関する施策について、今後の予算編成、税制改正作業の過程の中で所要の手続を経つつ検討を進める。」こういうことになったわけでありますが、今率直に申し上げて、抜本策を税調で議論していただいておる。いつの時点でそれが自主的な判断の中で六十一年度税制のあり方というふうに方向がセパレートされていくかということは、自主的な運営にゆだねております我々として、いつの時点でそのことをお願いするという立場には必ずしもございませんが、例えばきょうのこの議論も正確に税調に伝わるわけであります。そうすると、おのずから抜本策と六十一年度税制のあり方とについて、ある時期に、部会になりますか、その方法はいずれかにしましても、この議論が整理されて進んでいくんじゃないかというようなことを、私どもはおよその予測をしております。
  228. 二見伸明

    ○二見委員 議論蒸し返しになりますけれども、もう一点、やはり私は公共事業についてこだわっておきたい。  というのは、例えば六十年度の経済白書では、戦後四十年なお残る宿題として、下水道の普及率三二%、英国の三分の一程度の水準である、道路の舗装率は五三・二%で欧州各国の約半分、東京の一人当たり公園面積は二平方メートルでニューヨークの約十分の一、社会資本の整備を六十年度経済白書でも課題にしております。  ということを考えれば、それは確かに建設国債は安易に使ってはいけないという大蔵大臣の気持ちも全くわからぬわけではないけれども、しかし、下水道の整備、道路の舗装率、公園、こうした後世代に、しかも恩恵の及ぶような公共事業というのはまだまだたくさんあるし、それに対して建設国債の発行をシビアに考えていく必要はないんじゃないかと私は思うわけですけれども、原則論としての財政赤字論はともかくとして、こういう社会資本の充実ということに目をつけた場合には、余りそうかたくなな態度をおとりになる必要はないんじゃないかと思いますけれども、改めて御答弁をお願いいたします。
  229. 竹下登

    ○竹下国務大臣 この問題は、私もいわば先進国として、実質成長率あるいは物価の安定度合いあるいはまた失業者のずば抜けた低い率等々からして、それに比べてみますときに、社会資本のストックは、今御指摘のとおり、先進国で大変ずば抜けておりますとは私も申し上げるほどの自信はございません。したがって、後世代に対しての資産を残すわけでございますから幾らかの精神的な償いはあり得るとしても、可能な限り、後世代にストックを残すならば、やはり現世代の我々の汗の結晶の中にまずはそれを残すことを考えるべきであって、やはりツケ回すということについては、財政を担当しておりますと、勢いちゅうちょせざるを得ないというのが素直な私の気持ちであります。
  230. 二見伸明

    ○二見委員 総理、いかがですか。建設国債で社会資本の整備をする、内需拡大とも絡めて。
  231. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 第一・四半期、四-六の数字が我々の考えているのと違ったことは残念でございます。ただ成長率を見ますと、七・九という非常に急成長が出てきておるので、その点はまあいいんですけれども、これが外需に非常に依存していたということは、大いにまた検討する必要があると思います。しかし全体として、失業やら企業の状況心配しておる点から見れば、成長率の点ではまあまあであったと思います。  最近、円ドル関係が非常に急変してきましたから、これによってデフレ効果が出てくるかどうか、あるいは中小企業にどういう影響が出てくるか、これは非常に注意深く見守らなければならぬ点で、そういう点であなたは公共事業をおっしゃっているのだろうと思います。その点はよくわかります。  ただ、私らは施政方針演説あるいはさきの通常国会におきまして、財政が出動する余地はない、財政改革を推進します、そういうことを申し上げて、民活で行きますと申し上げておるものですから、なかなか今の状態で財政というところに踏み切るにはちゅうちょしておるわけでございます。しかし、弾力的に運用するというのは経済の一つの要請でございますから、あなたの言ったことも頭に置きながら、今後の景気の状況を見詰めていきたいと思います。
  232. 二見伸明

    ○二見委員 もう時間が残り少なくなりましたので、つまみ食い的な質問になって申しわけないのですが、論点を別の定数是正に関連してお尋ねをしたいと思います。  実は、定数是正については既に本会議でも質疑があり、一昨日だったと思いますけれども、小泉委員からも質疑がありました。できるだけダブらないようにしたいと思って整理してまいりましたので、お答えをいただきたいと思います。  いわゆる定数是正について、私たち野党は一致して二人区の創設には反対をしております。総理はこれに対して、小選挙区制は考えていないんだということで、我々野党が二人区創設に反対しているその反対をかわそうとしていると思います。しかし、私たちは小選挙区制それ自体にも反対だけれども、と同時に、現在の定数是正において野党が一致して二人区に反対している。反対しているというこの現実を総理はどう受けとめておられるのか。野党が二人区創設に反対しているということは、これは法案は自民党提案と野党提案ですから、法案に直接政府はタッチしていないのだけれども、二人区創設に野党が一致して反対しているということをどのように受けとめておられるのか、御見解を承りたいと思います。
  233. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 我々は、最高裁の判決に対応するために、ぜひとも今国会で解決したいと思って六・六案をまとめたわけです。六。六案につきましてもいろいろ御議論があることはよく承知をしておりますが、我が党は、党内事情も考え、あるいはいろいろな諸般のことも考えましてこれが最善の案である、そういう意味で我が党の考えを申し上げているわけでありまして、ぜひとも御同調願えればありがたいと思います。まあしかし、政治のことでございますから、選挙委員会の皆さん方、理事皆さん方でいろいろ御相談、意見の開陳をし合ってまとめていただければありがたいと思うところであります。
  234. 二見伸明

    ○二見委員 実は、その答弁は私もう何回も伺っているのです。要するに、私たちが二人区に反対しているのだという、このことを総理としてはどう認識されているのかということを伺っているわけです。
  235. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 二人区に反対していらっしゃることはよく知っております。しかし一番中心になるのは、小選挙区反対というのが一番根源にあるのではないかと思います。そのこともよく知っております。
  236. 二見伸明

    ○二見委員 ではもう一点、いわゆる六・六案、野党の統一案、これは五十五年の国調を基本にしてつくり上げたもので、我々も野党統一案をつくるときにも、これは緊急避難的なものだ、本来は抜本改正だということを言ってきているわけであります。ただ、我々があの野党統一案を出したとき、あるいは自民党さんが六・六案を出したときには、まだ六十年国調が行われていませんでしたね。しかし、もう現実に十月一日に行われて、間もなく速報値が出ようとしている段階であります。ということになると、いわゆる六・六案、両方を入れて私はあえていわゆる六・六案ということにしたいと思いますけれども、いわゆる六・六案の理論的根拠というのは相当薄弱になったのじゃないか、緊急避難としてもかなり薄弱になったのじゃないかというふうに思っておりますけれども総理はどういうふうに思いますか。
  237. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 やっぱり新しい国勢調査の数が確定したときから正式に取り上げるべきであると考えます。
  238. 二見伸明

    ○二見委員 国勢調査の確定はいつ出るか私もわかりませんけれども、そんなに遠い将来ではないと思います。そうすると、六・六案は緊急避難ですね、抜本改正が行われるべきだということになると思います。  それで、次の総選挙というのはいつあるかわかりません。同時なのか、あるいは任期は再来年の十一月まであるわけですからあと二年間ありますね。ですから、いつかは選挙をやらなければならぬ。いつかやらなければならない衆議院の選挙というのはいわゆる六・六案でやるのが妥当なのか、抜本改正を行った六十年国調により忠実な、最高裁の判決により忠実な定数是正の方で行うのが妥当なのか、この点どうでしょう。
  239. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは、一つは政治情勢の問題、それからもう一つは新しい国勢調査の結果が確定してそれをどういうふうに判断するか、そういう二つの問題がかかってくるだろうと思います。
  240. 二見伸明

    ○二見委員 わかりました。  それでは、政治情勢の問題がありますので、もう一点、別の角度からお尋ねします。私は一般論としてまたお尋ねをしたいと思うのです。  五十五年に同時選挙が行われました。あれは非常に異常な中で不信任案が可決されるという、異常な事態の中で大平内閣が解散にしたわけであります。ある面では異常な政治状況といってもよろしいと思います。  ところが、一般論として、政治の空白、国会の機能、こういった面から考えて、参議院の半分きり残っていないという状況というのはこれは好ましいのだろうか。一般論として申し上げます。中曽根さんが同時選挙をやるとかやらないとかいうそういう生臭い話は別として、一般論としてそういう事態は好ましいのか、あるいはでき得ればそういう事態は好ましくない、それはいろいろな政治情勢があるから好ましくないと思ってもやらざるを得ない場合もあるだろう。その点はどうでございましょう。
  241. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そういう政治の決断の場合は、やっぱり政治情勢にかかってくる、そう思います。
  242. 二見伸明

    ○二見委員 そうすると、政治情勢がいろいろある。国会の周りを六〇年安保のときのように十重二十重にデモが渦巻いて国会の中が騒然とし、与野党対立どころか、例えば自民党の中にも対立があるというような政治情勢もある。いずれにしてもそういう政治情勢を背景にすれば、内閣不信任案というのが恐らく提出されてくるだろう。  となると、内閣不信任案が提出されたときの内閣のとり得るタイプというのは私は四つあると思うのです。一つは、不信任案が提出されたその瞬間に静々と紫のふくさが出てきて採決せずに解散。もう一つは、数の論理からいくと与党の数が多いものですから正々堂々とこれを否決して解散。もう一つは、否決して内閣は信任されたのだから解散する必要がないといって解散をしない。もう一つは、五十五年と同じように可決されたために解散。大体こんなことが考えられるのかな、あるいはほかのケースもあるのかもしれませんけれども、こんなことかなというふうに思っているわけであります。(「総辞職もある」と呼ぶ者あり)総辞職というのは、それは第五の道であります。総辞職の問題は別にいたしましょう。  その場合、政治空白を避ける、国会の機能がゼロに等しいという状態を避けたいと思うならば、まず不信任案が出された段階で解散ということは私は余り好ましくないのじゃないかな、否決したということは内閣が信任されたということですから、やはりその段階で○○内閣が信任されたにもかかわらず結果として同日選挙になるような解散の仕方は好ましくないのじゃないかな、あえて中曽根さんが政治情勢とおっしゃられればそれは可決されてしまったときかなというふうに思うのですけれども、そういう点はどういうふうに御判断になりますか。
  243. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そういうことは奥さんにも言えることではないのです。
  244. 二見伸明

    ○二見委員 公定歩合の上げ下げと解散の問題については言ってはならないし、うそを言ってもいいしということになっておりますので、奥さんにも言うわけにいかないと言われると大変困りますけれども、私は別に中曽根総理がというのじゃなくて政治の一般論として聞いているわけなんだから、一般論としてお答えになってもよろしいのではないでしょうか。
  245. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 一般論としても奥さんにも言えるものではないのです。
  246. 二見伸明

    ○二見委員 大変ガードがかとうございましてなかなかつけ入るすきもうかがえませんので、この問題はこの程度にしておきたいと思います。  ただ、もう一点改めて定数是正について伺いますけれども、抜本改正というのは、十二月の半ば以降に速報値が出ます、その速報値というのはかなり誤差の少ない速報値だと思いますので、その段階で抜本改正は作業に入れるというふうに私は思っています。ただ、形式論的には確定値でなければだめだというのはそれなりにうなずけます。  そうすると、直ちに政府・自民党としては野党と協議をして抜本改正に入る。そして次の、いつ行われるかわからないけれども、政治情勢が平穏である、それほど国論が真っ二つに割れて国会の周りを十重二十重に取り巻くようなことが行われるのでなければ、私は抜本改正による選挙が最高裁の判決に最も忠実な選挙ではないかなというふうに思っておりますけれども総理としてはこの点はいかがでしょう。と同時に、抜本改正はその確定値が出た段階で野党との協議にお入りになるというふうに承ってよろしいでしょうか。
  247. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 やはり違憲状態と言われているものは速やかに解決しておく必要があるので、緊急避難をまず成立させるということが先決だと思います。  それから、やはり新しい国勢調査の結果が正式に出た場合は、恐らくこれは各党でまた相談をして、この事態にどうするか相談するのが民主的な正しい態度であるだろうと思います。
  248. 二見伸明

    ○二見委員 私がごちょごちょ言ったもので、ちょっと答弁漏らされているのですけれども、あるべき総選挙の姿としては、緊急避難のものでやるよりも、私は抜本改正の定数是正でやった方が最高裁の判決により忠実な行動ではないかというふうに思っているわけであります。その点について重ねて御答弁をお願いしたいと思います。
  249. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 つまり、選挙については奥さんにも言えないというのですから、すべて言えないのですよ。それは御了承いただけると思うのです。  ただ、我々が議院として緊急避難を早く成立させるということは、やはり司法府、最高裁判所に対してやらなければいかぬことだろう、そう思っておるのです。
  250. 二見伸明

    ○二見委員 重ねてこの問題についてこちら側の見解を申しておきますけれども、やはり緊急避難にしろ何にしろ、我々野党としては二人区を設けるということには絶対反対である、妥協の余地がないくらい強い反対であるということを申し上げておきたいと思います。  さらに、もうあと幾らもありませんので、先ほど川俣委員の方から国鉄共済年金についての話が出ました。私は、これはやはり今国会というか来国会、むしろ来国会、本気になって私たち政治家が考えなければならない問題だと思います。もうその現状については改めて総理に申し上げる必要もないくらい、わかり過ぎるほどおわかりの問題だと思います。ただ、現在三十二万体制、受給者の方が三十五万。三十二万、実数は三十万ちょっとだと思います。それが民営・分割化ということになれば、これが六十二年ぐらいには二十一万五千あるいはもっと下がるかもしれない。分母が減っていく。これについては賛否いろいろ議論がある。しかし、その結果、国鉄共済が赤字になる。今国家公務員、たばこ、NTTから年間四百五十億、財政調整で受けている。しかし、それにもかかわらず、計算値では七百ないし八百億という赤字が出る。国鉄共済年金がパンクをして国鉄退職者が年金を受給できないということになれば、これは年金制度の根幹にかかわることだ。年金制度に対する国民の信用というものを全く失ってしまうことにもなりかねない問題だ。  ところが、これを救済しようとすることになると、厚生年金の立場から言えば、そのために保険料を引き上げられるということになり、これは相当苦痛だ。正直言って、私も組合の関係者と話したときに、あからさまには言わないけれども、本音からいけばたまったものじゃないということになると思います。じゃ、国鉄や今の国家公務員や電電やたばこだけに面倒を見させるのかということになれば、給料の三分の一ぐらい保険料に持っていかれてしまうということにもなる。負担できることではない。私学共済や地方公務員共済ということになれば、向こうもやはり反対はしてくるのです。しかし、お互いの利害が絡むことで、大変難しい問題ではあるけれども、これは冷静に考えていかなければ年金制度それ自体に対する不信になってしまうだろうと私は思います。今ここで、だから、こうしろああしろという的確な御回答政府としてはできないだろうと思う。私は、この問題に関しては、利害の絡む関係団体、民間の労働組合の幹部、労働組合等々関係の利害の絡む者を一堂に集めるというか、そうした形での何か検討機関というものを設けて本気になって取り組んでいかなければならないのではないか。分割・民営に対していろいろな意見がある、我が党にもいろいろな意見がある、そういうことは別にして共済の問題を取り上げればそういうような感じを私は持っているわけであります。  その点について、もう時間もありませんので総理から。総理は本会議でうちの浅井副委員長に対する答弁をされている。ああいう抽象的な答弁ではちょっと困るので、より具体的にわかるように、関係者が、政府がこういう方向なり何か考えようとしているのだなということがわかるような、イメージできるような踏み込んだ答弁をお願いをして、質問を終わりたいと思います。
  251. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 二見さんのその御発言の趣旨は非常にありがたいことでもあり、国鉄の皆さんも非常に感謝されるであろうと思います。我々もそういう点は心配しております。しかし、今おっしゃるような関係団体とのこともあり、政府が独断だけではできないことでもありますから、御趣旨はよく考えまして検討してみたいと思います。
  252. 天野光晴

    天野委員長 これにて二見君の質疑は終了いたしました。  次に、池田克也君。
  253. 池田克也

    池田(克)委員 公明党の池田でございます。大変遅い時間になりましてお疲れと思いますが、私は教育の問題に絞ってお伺いをしたいと思います。  臨時教育審議会が第一次の答申を通常国会が終わった明くる日でしたか、提出をいたしました。その問題をお伺いしたいのですが、その前に、総理が代表質問に答える中で、憲法といじめの問題についてちょっと触れていらっしゃるように承りました。  しかし一体、対象の中に憲法が入るのかどうかという御質問でございますが、私は、二十一世紀を目指して日本を、さらによりよき日本にしていくためには、憲法も常に見直しと勉強の対象である、そう考えておるものなのでございます。  じゃ、どういうところが欠陥なのかという御質問でございますが、やはり日本の国の閉鎖性、あるいは行政機構の肥大化、あるいはいじめの問題、こういうようなことが我々の目の前に見えている欠陥である、こういう発言をしていらっしゃる。本会議で伺っておりまして、いじめと憲法という問題について、総理がどのようなお考えのもとにこうした発言をされておられるのか、機会があればぜひお伺いしたい、こう思っていたわけでございます。
  254. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その文脈でも申し上げましたように、行革とかあるいは国際国家とかあるいは教育とか、そういう点も我々は見直す、そういう意味で申し上げておるわけであります。
  255. 池田克也

    池田(克)委員 いじめを見直すということに理解していいんでしょうか。(中曽根内閣総理大臣「教育を見直す、いじめというのは一つの象徴的なこと」と呼ぶ)ああ、なるほど。いじめを生んだ根源になっている教育を見直す、こういう意味理解していいわけですね。  さて、臨教審の答申について、総理が非常に熱心に法律をつくり、また委員の任命をなさり、いろんな角度から発言もあったわけでありますが、六月に出た第一次答申の内容をどう見ていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。
  256. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 教育制度全般を点検しまして、大事なことを網羅的にまず問題点として摘出して、その中で当面やるということについてそれを我々の方へ知らしてくだすった。そういう点においてかなりの労作であると高い評価を与えております。
  257. 池田克也

    池田(克)委員 この臨教審の答申というのは逐次答申と言われておりまして、一つ一つこれが完結したものである。まあ中間の答申で、最終的な答申が出るまで待たないで、出たものから順次具体的な教育改革に取り組む、このように理解しているわけでございますが、総理の認識もそれでいい、こう考えてよろしいでしょうか。
  258. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今度の答申はやっぱり全体をカバーする目次みたいな要素もあると思います。
  259. 池田克也

    池田(克)委員 目次というふうに言っておられますが、中には当面の具体的な課題ということで、特に六つ具体的なテーマを挙げておられるわけであります。したがって、目次という面も総論として掲げておりますが、中には具体論としてこれとこれはぜひ改革をすべきだ、しかもそれは非常に急ぐんだ、こういうような趣旨である、こう受けとめておりますが、私が伺っているのはそういう意味なんです。
  260. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 割合に総論的なところで強く出しておるのは、学歴社会の弊害の是正ですとか、あとは試験制度であるとか六年制中高校であるとか、あるいは高等専門学校の大学入試資格付与とか、そういう面が出てきておると思います。
  261. 池田克也

    池田(克)委員 総理、学歴社会の問題、総論というふうに理解してらっしゃるので、具体的な問題をお伺いする糸口に学歴社会の是正の問題と非常に密接な関係がある青田刈りと言われるあるいは青田買いと言われる問題についてお伺いをしたいと思います。  この問題は、労働大臣もあるいは文部大臣もぜひ答弁をいただきたいテーマであります。特にことしは就職戦線が非常に早くから過熱をしたと伝えられておりまして、もう七月ごろから会社と学生の接触が始まり、早いところでは七月に内々定というものが具体的にあった、そして八月には既に山を越した、こんなふうに伝えられまして、就職担当者の間では、ことしは異常な現象が起きた。各企業とも優秀な人材をそれぞれ欲しいということはよくわかるわけでありますが、教育の現場から見ておりますと、もう既に大学の四年生が始まった途端から就職問題が具体化し、そして、いわゆる社会の駆け引きと申しましょうか、そうしたものが現実に学生にぶつかってきている。一方では、そういう会社からの声のかからなかった学生は、片一方で内々定をもらった学生とつき合う中で、大変むなしい思いをしながら同じキャンパスの中で過ごしている。私はこういう問題というのは、いわゆる公正というものを教え、社会の正義を教え、学問の場で学生たちが本当によりよき青春を友情を持って過ごしていくという観点から見るならば、許されることではないんじゃないか。激しい企業間の争いの中で、人材を獲得するという面も私はわからないわけではありませんが、教育改革という観点から見るならば、この就職の問題については私は、非常な熱意を持って改善に取り組んでいかなければならないのではないか。  また後から具体的に申し上げたいと思いますが、やはり教育改革の一つの糸口は大学だと思います。そして、大学に何としても入れたいという親の気持ち、そしてそれが高校、中学、小学校まで、あるいは塾に至るまで非常に激しい受験過密、そしてその中でついていける子といけない子が大きく分かれ、非行、暴行が起き、学校が荒れる。私はある面、この問題、大学生と就職という問題が教育改革の一番のポイントであろう。総理もいみじくも今答弁の中で、総論として学歴社会の問題が出てきた、こうおっしゃっておられましたが、その学歴社会の問題の一つの現象面は、この青田刈りあるいは青田買いと言われることであって、これを是正するために政治が何らかの手を打たなければならないんじゃないか、こう私は思っているわけですが、総理の御認識を伺いたいのです。
  262. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 青田刈りの問題は、ことしは特に緊要な問題になって登場してまいりましたが、専門的に扱っております文部大臣、労働大臣から答弁させます。
  263. 松永光

    ○松永国務大臣 先ほど先生が御指摘になりましたように、最近の教育を考える場合に大変頭を痛める問題は、過熱した受験競争であります。なぜ受験競争が過熱するかというと、そのもとになるものは、有名大学を卒業すればいい会社に入れる、そうして幸せな人生が送れるという考え方が、本人よりはむしろ父母の間に定着している感じがいたします。したがって、父母としては、自分の子供を何としてでも有名学校に入れたい、そこからいわゆる有名学校卒業歴競争が始まる。受験競争の過熱というのはある意味では、有名学校卒業歴獲得競争だろうと思います。そこで、就職の場合に有名学校卒業者であるかどうかによって差をつけるような方法は、極めて好ましくないというふうに私たち考えております。  今の青田買いの問題でございますが、民間企業が自分の会社の職員たる者をどういう時期に採用試験をやるか、これは民間企業から言わせれば、我々の自由である、こういう発言をなさいます。それはそういう面もあるでしょうけれども、しかし、大学卒業予定者等あるいは高等学校卒業予定者等に関する採用試験であるわけでありますから、その時期、方法によっては学校教育そのものに非常に大きな影響を与える。いい影響を与えてくれればいいのでありますけれども、非常に悪い影響を与えるのでありますから、そうした悪い影響が与えられないように、起こらないような状態で民間企業の方でも十分配慮をして就職試験をやってもらいたいという考え方で、いわゆる就職協定なるものがあるわけでありますけれども、残念ながら余り守られていないということなんでありまして、私どもとしては、学校教育について悪い影響を及ぼすような就職試験のあり方は考えてもらいたい、そして時期、方法等についても十分考えたやり方でやってもらいたいという考え方で、今後とも労働省とも協議しながら、民間企業の代表とも十分な協議をして、そして望ましい形で就職試験がなされるような、そしてまた企業の側で守ってもらえるような、そういう就職協定をつくり上げていくように今後とも努力をしていきたいというふうに考えておるわけであります。
  264. 山口敏夫

    ○山口国務大臣 高齢化時代を迎えての雇用の非常に膨大な創出やME化問題、男女雇用均等等で、就職戦線、雇用市場の激動が予測されるわけでございますが、そういう中で、青田刈りと言われるような、大学は出たけれどということでないことは大変結構なことでございますが、しかし一方、先生の御指摘のように、過熱をした就職戦線ということが大変社会問題化されておる。特に、そういうことで大卒者の採用につきましても、就職協定に違反した採用、就職活動が多く見られておりまして、就職協定の実質が失われている、こういう指摘がございます。  今文部大臣から御発言がございましたように、臨教審等におきましても、こうした弊害を大変指摘をされておるわけでございますので、労働省としても、文部省等の御意見も十分踏まえまして、臨教審の答申もこれあり、経済団体等と話し合いをしまして、この協定を守るということの実効性が大変厳しいわけでございますけれども、新たな協定をひとつ何とか模索したいということで今努力しているところでございます。
  265. 池田克也

    池田(克)委員 今の御答弁は、私ども前々から伺っていたと同じ話なんです。要するに、学業を妨げるから何とかしなければならない。あるいは労働省の方にしてみれば、企業のいわゆる自由だと言われる活動の中で、それを制約して、採用について何らかの制約をすることは実効性が薄い、難しい、こういう御指摘は今まで何度も聞いてきたわけであります。ですから、先ほど総理に認識を伺っているのです。  総理は、担当の大臣から答弁させますというふうにお答えだったのですが、私はこれでは済まないのではないか。教育改革の根本というのはここにある。これは総理もさっき認めていらっしゃいましたけれども、非常に重要な根源的な問題である。このことのためにどれほど多くの関係者が苦しみ、父兄は費用を子供たちのためにかけ、必死になってパートで働きながら、家の中でテレビも見ない、本当に異常なような状態の中で受験を過ごし、そして子供をいい大学に入れなければ子供の生涯のいわゆる幸せというものはないと、非常に深刻な思いでみんな見詰めているわけでありまして、教育改革を提案され、それを施策の柱に据えていらっしゃる総理が、この問題について担当大臣に任せられている。  この一番最初に出てまいりました臨教審の一次答申というのは、国民としては非常に関心を持っている。どこがどう動いていくんだろうか。特色ある大学、特色ある資格、そうした問題もこの答申の中に出ておりますが、この学歴社会の弊害を是正するという問題をよく分析していくと、教育改革がここをはっきり押さえるならばかなり前進するのではないか、私はそういう気持ちで今お伺いをしているわけでありまして、再度総理から、総理のいわゆる意思として、この問題についてさまざまな、財界あるいは労働界あるいは大学その他あらゆる教育機関がこれに関係をしてくるわけでありまして、公務員の採用の問題も後からまた人事院にお伺いをしたいと思いますが、もう一度重ねてこの問題についての総理の認識をお伺いしたいのでございます。
  266. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 おっしゃるとおり、非常に緊切な問題として、ことしは特にひどくなってまいりました。そこで関係大臣に、これは官民一体になってやらないとできないことでございますので、よく相談させまして、ことしの経験にかんがみまして、できるだけ早期に手を打つように努力させたいと思います。
  267. 池田克也

    池田(克)委員 労働大臣にお伺いしたいのですが、企業がなかなか守らないというのでしょうか、これは企業だけの問題じゃなくて、学生にも責任があると思うのです。やはりOBがその出身校へ参りまして、学生に声をかけ、そして学生を場合によっては飲食を、さらには缶詰にするというふうにして、一日に何本も映画を見せたり、昼はすき焼き、夜はおすし、本当に学生生活の中で今まで余り経験したことがないという話を聞いておりますが、莫大なそうした社会的なと申しましょうか接遇を受けて、そして学生に夏休み前からそういう行為が行われている。私は、これは自由な社会であるから何をしてもいい、こう許していいものだろうか。  学校教育法五十二条には、大学の設置についてはっきりとその目的がうたわれているわけでありまして、「大学は、学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とする。」まあこれが応用的能力なのかもしれませんが、知的、道徳的、やはり大学は社会の模範たるべき人材を養成するのが本来の使命であって、やはり学生がそうした勧誘に乗っていくということも私は問題だと思う。  と同時に、そういう学生に声をかけ、それが会社の方針だと私はあえて申しませんが、しかしいろいろ聞いてみますと、かなり強力な会社の人事担当者への力が加わり、予算も許されて行われている。だんだんだんだん、これは協定があっても、逆に協定が悪用されて、地方からの学生には、協定があるんだから何とも言えませんという状態でそれをシャットアウトしながら、ねらった学生に対しては早々と手を打って、そしてそういう行為が行われている。今労働大臣から実効性が問題だという御答弁がありましたが、どんな点がその実効性の問題なのか、お伺いしたいのでございます。
  268. 山口敏夫

    ○山口国務大臣 青田刈りの就職協定の問題は、御承知のとおり中央雇用対策協議会、これは日経連の松崎専務理事が座長をしておるわけでございますが、そこを通じて産業界にいろいろ自粛を要請をして、そして今先生の御指摘のような、過熱した大卒者の就職、これを節度ある一つの採用、こういうことを心がけておるわけでございますが、先般も文部大臣と私どもとの一緒の会合におきましても、松崎座長から実質的に、就職協定をことし限りでやめにしたい、こういう厳しい実情認識の披瀝もあったわけでございます。しかし一方、各企業等に聞いてみますると、就職協定はぜひ必要だ、こういう認識を持っておるそれぞれの会社が八割近くある、こういうことで大変矛盾しておるわけでございまして、一方においては、就職協定が必要だ。特に中小企業なども、そういう点では非常に強い要望があるわけでもございます。しかし一方においては実質、人事の採用ということになりますと、大変過熱した状況になる。特に今までは、サービス業とかパートなども、どちらかといいますと安易に雇用していたといいますか、こうしたところも、常用雇用でないとサービス競争に勝てない、こういうことで人材採用に大変熱心になってきている、こういう状況でございます。  労働省としては、何らかの罰則規定等がございませんと、正直言ってなかなかそれを推進するということが難しいというのが現状でございますけれども、今先生指摘のように、そういう臨教審の答申もこれあり、やはり教育というものが産業以前の段階として大変重要でございますので、労働行政としても、何とかこの就職協定を守り得る新たな施策というものを、今経済四団体の関係者を招いて盛んに協議をしておる。今池田先生から、前回の段階と同じ発言という御指摘をいただきましたけれども、この間の会議を持ちまして、真剣にことしの状況等を踏まえて取り組んでいる、こういうことを、いま一度御報告できるように申し上げたいと思うわけでございます。
  269. 池田克也

    池田(克)委員 時間がないのですが、人事院から公務員の採用の問題について、私、文教委員会でも何度もこの問題を申し上げておりまして、通産省が、具体的に新聞報道されたこともございまして、改善する。公務員の採用も、いい人が欲しいことは私は重要な要素だろうと思いますが、率先してこうした時期の問題について是正をし、学生とその生活を守っていく、こういうお考えがないかどうか、御答弁をいただきたいと思います。
  270. 内海倫

    ○内海政府委員 お答え申し上げます。  公務員の就職につきましては、ただいまもお話しのとおりでございますし、また、過去にもいろいろ御質問いただいております。公務員のそういうふうな問題についてどう対処するか、これはかかって、先ほど労働大臣あるいは文部大臣からもお話がありましたように、結局、大学あるいは民間企業、そして官庁というふうなものが一体になって考えていかないと、なかなかこの問題は解決の方途がつきかねる問題もあるわけだと思います。  私どもとしましては、ことしの初めにおきましても、何回か各省庁の人事課長の会議を設けまして、いわゆるこの青田刈りというふうなことのないように、官庁が率先してそういう点についての弊害を防止しようじゃないかということを申し合わせておるわけでございます。先ほど労働大臣からもお話のありましたように、今度特に企業の方においては、真剣にいろいろ検討されておるようでありますから、こういうことがはっきりしますれば、また我々もその趣旨に対応しながら措置をとっていきたい。それにしましても仰せのように、公務員の場合あるいは公務所の場合、ある意味では模範でなければならないと思いますから、私どもとしてもさらにいろいろ考えまして、何とかそういうふうな問題が一歩でも二歩でも改善されるような努力をいたしたい、かように思っております。
  271. 池田克也

    池田(克)委員 労働大臣、期日の問題については、私もその努力を買うわけでありますが、指定校制の撤廃、これははっきり臨教審の答申に撤廃とうたっているわけです。これは労働省、文部省双方でございますが、特に労働省になると思いますが、指定校制の撤廃ということをはっきり明言する、これをいいかげんにしたところは企業名も発表するというくらいの強い姿勢で、ともかくみんなが希望するところを受けられる、こういう状況にならないものかと思いますが、いかがでしょうか。
  272. 松永光

    ○松永国務大臣 学歴社会の弊害の中心をなすものは、有名学校を卒業した者が入社試験等で優遇されるという点、これが学歴社会の弊害の中心だろうと思うのです。そういう意味で、指定校という制度は極めてよろしくない、そういう考え方でありまして、かねがねその問題につきましては企業等に文部省としては要請をしてきておるところでありますが、漸次改善をしてまいりまして、五十年は指定校制度をとっておったのがまだ二〇%ぐらい残っておったようでありますけれども、去年はそれが八%かそこらに落ちておるようであります。我々としては、この指定校制は全廃してもらいたいという考え方でありますので、先般労働大臣とともに経済四団体の代表と会ったときにも、この点は厳しく要望いたしておきました。企業側も、指定校制度はとらないというふうに約束をしてくれたわけであります。
  273. 池田克也

    池田(克)委員 時間がございませんので、もう一点だけ、別の問題ですが、総理はニューヨークヘおいでになったときに、英語で授業をする大学あるいは中高一貫の学校というものを国内につくる、このことを検討している、こういうふうな発言をしていらっしゃいますが、何か構想を具体的に持っていらっしゃるのか、お伺いしたいのですが。
  274. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは、帰国子女の問題で在外同胞からも陳情がございまして、かねがねその点私も考えており、臨教審の委員と懇談したときにも私からよく研究してくださいと陳情したところでございます。  やはり国立大学で一つぐらいは英語で教授をやる、そして英国の留学生も英語で卒業できる。しかしまた一面において、日本をよく知るためには日本語も知らなければ日本文化はわからないし、日本の国情もわからないわけですから、日本語を知らないでいいというわけではないけれども、しかしそのために日本に来る留学生が少なかったり、日本に来るのが難しくなったりというので、不利な条件が外国に比べてあるという状況では国際国家としてちょっとまずいな、そういう意味で、一番普遍性のある英語の学校というものが一つぐらいはあってもいいんじゃないか、そういうことで臨教審の皆さんにも陳情しておるところであります。
  275. 池田克也

    池田(克)委員 私は、この考え方は基本的には賛成なんです。せっかく外国で日本人が子供の時代に暮らして語学力が身についた、帰ってきて日本の学校制度の中で次第次第に忘れる。また、忘れるぐらいじゃないと日本の方がうまくない。大事な国際時代を迎えて、せっかくの海外での経験というものが生きないという面から見れば大事なことだと思うのです。と同時に、国立大学をつくらなくても、向こうで得た語学力を何らかの形で検定をして、そして日本の学校での単位を認定してやる、改めて日本で語学を学び直さなくても十分やっていける、こういうような形も、単位の国際的な互換というものも認めていくべきだと思っているわけでございます。このことは、時間がございませんのでまた後日お伺いしたいと思います。  最後になりますが、臨教審の答申なんですが、財政試算。中教審の答申を見ますと、非常に細かい財政試算というものが計算されているのです。先ほど逐次答申、つまりそれ一つ一つ完結しているというふうに私申し上げたのですが、なぜこの臨教審答申には財政試算がついてないのか。そうした試算がついてない答申というのは、具体的には答申じゃないのじゃないか。つまり、臨教審設置法には答申を受けたらこれを尊重しなければならないとなっておりますが、試算がついでなければ、どんな規模でどのくらいの数をいつまでにつくるかというふうなプロセスがわからない。例えば六年制中等学校というのが具体的に打ち出されております。あるいは単位制高校というのが打ち出されておりますが、都道府県なども設置しようと思っても、どういうことが一つのプランなのか、あるいはそれに国はどの程度力を入れて援助をするのか、そういう計画が全くついてない限りは、これは進まないのじゃないだろうか、あるいは進んだとしても、臨教審が考えているものと違ったものに進んでしまうのじゃないか。やはり今日、こういう状況の中でお金の要らない施策というものはほとんどありません。ほとんどすべてがお金に絡んでくるわけでありまして、この財政的な裏づけを発表しない臨教審答申というのは不十分なものだというふうに私は思うのですね。むしろ、予算編成の中で、担当の省庁が予算編成する中で、施策を選択することがこっち側に権限があるとすれば、答申をせっかく出しながらそれが虫食い状態になっていく。そういう点では、最終答申までには少なくとも何らかの試算、全体ができなくても、一つの提起していることについてはこの程度の規模で、この程度の予算というものが一つモデルとして示される、せめてそういう形のあり方というものが望ましい、こう私は思っておりますが、総理の御意見を伺いたいのでございます。
  276. 松永光

    ○松永国務大臣 お答えいたします。  池田先生指摘のとおり、中教審の四六答申には財政支出の試算が詳細についておったわけであります。それは、中教審の場合には、言うなれば文部省と一体となって審議が進められておったといういきさつもあるものですから、そこで財政支出の試算もなされておったということであります。今度の臨教審の場合には、臨教審が独自で審議を進めていくのだというふうな独自性があるものですから、財政支出の試算等については今までのところそれほどなされてなかったわけであります。  しかし、先生指摘のようなこともありますので、今後臨教審で具体的な施策等について審議がなされる際には、事柄に応じ、また必要に応じて財政支出の試算等についても検討がなされるのではなかろうかというふうに私どもは見ております。その場合に、文部省に対していろんな相談があればいつでも臨教審の御論議には積極的に全面的に協力する立場でありますので、そうした協力も十分やっていきたいというふうに考えておるわけであります。
  277. 池田克也

    池田(克)委員 もう時間がありません。総理が答申を受ける側であります。そして、文部省だけではなしに、総理の諮問機関として国を挙げて教育改革をするんだという大きな構想のもとにできたものでございまして、今文部大臣から御答弁をいただきましたが、総理も同じ考えでいらっしゃるのか。財政試算はなしにいろいろと時の財政状態のもとで選べるような一つ考え方、中には理想論みたいなものも出るかもしれません。それであっては私は具体的な改革として国民の期待にこたえられないのじゃないか、こう思っておりますので、重ねて総理からこの問題についてのお答えを最後に伺いたいと思いますで
  278. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 文部大臣がお答え申し上げたとおり、事と次第により、また時期によりそういう点も考慮さるべきであろうと思いますが、臨教審がお決めになることですから、我々の方で余りとやかく申し上げるのは控えた方がいいと思います。
  279. 池田克也

    池田(克)委員 終わります。
  280. 天野光晴

    天野委員長 これにて池田君の質疑は終了いたしました。  次に、吉田之久君。
  281. 吉田之久

    吉田委員 大分夜も更けてまいりましたけれども、私がきょうの最後の質問になりました。しっかり総理初め各大臣の御答弁をお願いいたしたいと思います。  そこで、先ほど社会党の岡田さんから日本のアイデンティティーとは何かというお尋ねがありました。また、公明党の二見さんから国家論についての問答がございました。それにつられて申し上げるわけではございませんけれども、私は総理、最近ある場所でさる人から次のような話を聞きました。  日本のアイデンティティー、他国には全くなくてまさに日本独自の、日本たるゆえんは何であるか。それは広島、長崎に原爆が投下された。人類で最初の核兵器の犠牲になった国家国民である。これはまさに日本のアイデンティティーと言えるのではないか。いま一つは、象徴としての天皇を有しておる国家、これもまさに日本のアイデンティティーの一つではないかというお話を聞きまして、確かにそうだと感銘を受けた次第でございます。  だとするならば、世界にたぐいのない平和憲法を堅持している日本、これはまさにそういう意味で大事な日本のアイデンティティーの一つではないかというふうに考えておるところでございます。  それはそれといたしまして、私が総理に特にきょうお伺いいたしたいことは、総理は私より若干年上でいらっしゃいます。あの第二次世界大戦を体験されたお一人でございます。また、閣僚各位の中には直接間接あの世界大戦の経験を有しておられる方々が大変多いと思います。そこで、この世代を戦中派と申しますけれども、いわゆるこの戦中派に共通する一つの原点は何であろうか。  我々の最も強烈な原体験、それは何と申しましても昭和二十年の八月十五日のあの終戦の瞬間であったと思います。戦争が終わるものなのか、そして今まで、きょう死ぬか一カ月以内に死ぬか、あと何年の命だろうかと、絶えずほとんど日本の若者は生と死のぎりぎりの中で対決をしておった。にもかかわらず平和な時代が来て、これからは我々は生きられるではないか。だとするならば、あの戦争で亡くなった戦友や先輩たちが哀れではないか。同時に、その遺族たちに対して心からお気の毒に思った次第であります。  同時に、我々はそのとき、敗戦のこの廃城の中に立って、大変乏しい時代ではありましたけれども、そして恐らくは戦勝国が莫大な損害賠償を要求してくるかもしれない、しかし我々はしっかりと生き抜いて、我々の世代にその賠償にこたえ続けようではないか、こんな気持ちを確かにお互いにどこかで決意したと思うのです。自来四十年の歳月が流れまして、諸外国の理解と協力、そして諸条件が我が国に幸せいたしましたこと、さらに日本人が極めて勤勉であったことなどで、今日想像もつかない経済大国になったわけであります。  しかし、我々はその四十年前の原点を忘れてはならないのではないか。我々は既に敗戦国民ではありません。いささかも卑屈になってはならない、しかし決して驕慢になってはならない。そういう政治姿勢をお互いに貫いていくならば、今日の貿易摩擦の問題も、あるいは防衛問題も、あるいは福祉や教育の問題も、あるいは靖国の問題も、おのずから一つの結論が導き出されて、それが諸外国の理解を受ける中で解決するのではないかというふうに考えておるわけでございますが、総理はどのようにお考えでございましょうか。
  282. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 吉田さんのお考えと私も同感でございます。
  283. 吉田之久

    吉田委員 同感であると言われれば、それ以上あえて聞く必要はないと思いますけれども、そういう状況の中で、我々はこの貧しかった時代を知っているだけに、特に今地球上で悩んでいる貧しい国々のためにも、最もよくそれを理解して海外援助を行い得る、そういう先頭に立つ国家でなければならないということも、お互いに深く国民とともに認識すべきではないかというふうに思います。次の世代はまた次の世代の中で新しい原点や政治姿勢を貫いていくでありましょうから、これを決して強要してはなりませんけれども、しかし、大事なこの辺の点を正しく伝えていかないと、一つ間違えば日本は鼻持ちならない国家に転落するのではないかというふうな気がするわけでございます。  そこで、いま一つお伺いいたしたいことは、今世紀の前半はいわば世界の戦争、動乱の時代でありました。後半は経済建設の時代であったと言えます。さて、やがて参ります二十一世紀、それが何か殺伐とした時代になりはしないかという懸念が非常に強いわけでございますが、総理は、二十一世紀に向かう日本、世界に対してこの日本が何を訴え、また我々自身が何を実現していかなければならないとお考えでありましょうか。
  284. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 やはり広島、長崎の悲痛な体験をした民族として、核兵器の廃絶、それから平和と軍縮ということは非常に大きな要素ではないかと思いますし、それからこの蓄積した経済力を、蓄積しつつそれで発展途上国に対する我々の友清を示していく。我々もかつては発展途上国であったわけですから、今発展途上にある国々に対してできる限りのことをしてあげなければいかぬと思っております。  それと同時に、二十一世紀に向かっての新しい人類としての文明の創造といいますか、人類としての大きな、私は地球倫理という言葉を使いましたが、そういう意味の新しい文明の創造に向かって進むべきである。そういうことについて日本はイニシアチブをとり、また汗を流さなければならぬ、そう思います。
  285. 吉田之久

    吉田委員 次に、総理は「戦後政治の総決算」という言葉を使われておるわけでございますけれども、それにしては今度の国連でなされました演説は、一点どうしても私どもにとっては腑に落ちない点があるわけなのでございます。  戦後、記念的な国連総会には必ず歴代の総理やあるいは外務大臣は、北方領土の返還について強く全世界に向かって演説を行ってきておられます。例えば一九八〇年、昭和五十五年には伊東外務大臣が、八一年には園田外務大臣が、八二年には櫻内外務大臣が、八三年、四年、五年は安倍外務大臣がその演説をなさっております。また、一九七〇年、昭和四十五年、第二十五回の記念総会においては佐藤栄作、時の総理大臣が北方領土返還についての演説をなさっております。一九八二年、昭和五十七年の軍縮特別総会におきましては、時の鈴木善幸総理大臣が演説をなさっております。この大事な、記念すべき国連総会になぜ総理は一言もこの問題についてお触れにならなかったのでございますか。
  286. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その直前に私はソ連のゴルバチョフ書記長に返簡を出しまして、北方領土問題を解決して平和条約を締結しよう、そういう提起をしております。二国間の問題でございますから、私は、今度の四十年というこの節目の年に当たりましては、できるだけ全世界的な、普遍的な問題を提起しよう、そういう考えに立ちまして演説をつくった次第でございます。
  287. 吉田之久

    吉田委員 二国間の問題であるにはいたしましても、まさにこれは国際世論に問わなければ解決しない問題であるというふうに私どもは多年の経験の中から認識をいたしております。  このことを重視いたしまして、我が党は、北方領土の部会長であります青山君が正式に官房長官に申し入れをいたしております。また、永末副委員長は、党を代表して去る本会議におきましてこのことを要求いたしております。また、小沢国対委員長は、江藤国対委員長と官房長官に申し入れをいたしております。  それに対しまして江藤国対委員長から、おおむね次のような回答がありました。申し入れをいたしましたのが十月四日でございますけれども、十月八日の日に、夜、自民党の江藤国対委員長から連絡が我が党の小沢国対委員長にございまして、中曽根総理と相談した結果、北方領土問題については当然演説の中に入れるつもりではあるが、あらかじめ原稿を提出しておくとソ連が東欧諸国を欠席させる可能性があり、事前に公表することはできかねるので了解してほしいという御返事がありました。したがって、そういうことを含みながら、当然総理は演説の中でこの問題にお触れになると思っておりましたけれども、それがございませんでしたことは、我が党に対する、公党対公党間の問題といたしましても重視しなければならない大変遺憾なことだというふうに考えておりますが、いかがでございますか。
  288. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 党の内部で話したことについては、ノーコメントにしておいた方がいいと思います。
  289. 吉田之久

    吉田委員 そういうことをおっしゃいますけれども、私は正式にこの公式な予算委員会において聞いておるわけでございまして、お答えにならないということは、私はいささか了解できない点でありますが、きょうは一応質問はこの形にとどめておきます。  その後、総理は帰国されてから、あるいはアメリカにおきましても、総理自身がみずから訪ソするということを言い出していらっしゃいます。世論はいろいろな憶測をいたすのが常でございますけれども総理は三選に訪ソを利用しているのではないかといううがった見方も最近立っておることは事実でございます。このような憶測が広がっていくとするならば、あるいはその見方が必ずしも間違っていないとするならば、こういうことこそソ連になめられる原因をつくっているのではないか。一方、それかあらぬか早速ソ連のあらゆるコメントは、昨今、ソ連に既に領土問題はないと公言していることは御承知のはずでございます。また肝心の外務省も、総理の訪ソにつきましては大変当惑ぎみである。先ほどのお話を聞きましたら、シェワルナゼ・安倍両外相会談が持たれて、その経緯を見て私はソ連に赴いてもいいというお答えでございましたけれども、こういう外交上の総理の決意、判断、極めて慎重でなければならないと思うわけでございますけれども、この点、今現在どうお考えでございますか。
  290. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その点は、ニューヨークで記者団から質問がありまして私の考えを率直に申し上げたので、今でも変わっておりません。それは世界的に緊張緩和の情勢にもなってまいりまして、ソ連も日本にシェワルナゼ外務大臣を派遣するという方向に移ってきました。こういう大きな風潮の中で、さらに世界的緊張緩和あるいは日ソ間の話し合いを強めていく、そういうことの努力は持続して行うべきであると考えております。  しかし、無条件にやるのではない。レーガン・ゴルバチョフ会談で何が飛び出すか、それに対してソ連が何を言ってくるか、どういうふうに推移していくか、今後の見通しはどうなるか、あるいは安倍・シェワルナゼ外相同士の会談の中でソ連がどういう態度を示すか、そういういろんな条件をよく勘案した上で定期協議を今度も継続していく、これはレーガン・ゴルバチョフ会談も継続するように、また安倍・シェワルナゼ会談も定期協議が継続して行われるように。そうすれば、今度は安倍外務大臣が行く番でありますが、安倍外務大臣が行く、そして私も行く、そういうことも考慮の中に入れておいていいであろう、そういうふうに申しておるのであります。
  291. 吉田之久

    吉田委員 まあ諸情勢が次第に好転していることは私どもも感じないわけではありませんけれども、しかし、事領土問題に関しては、断じてそのような甘い見方は成り立たないのではないかというふうに私たちは厳しく認識をいたしております。同時に、この領土問題、とりわけ北方領土の問題は、この領土は我々の父祖伝来の領土であるということを絶えず主張し続けなければ、このことをやめた瞬間に永遠に戻らない領土になるということを我々は恐れているからでございます。だとするならば、最も重要な国連の総会において、総理がその演説をやられなかったという問題、これはいかに総理の心境にいろいろな動きがあったとしても、我々としては看過できない極めて重要な問題だ。見方によっては、あなたは世界の中曽根を意識して、その分だけ日本の中曽根であることを欠落されたのではないかというふうな気がしてなりませんので、どうかこの辺のところは深く胸にしまっておいていただきたいと思う次第でございます。  次に、本会議におきまして、我が党の代表であります永末副委員長質問の中に、台湾人元兵隊の問題がございます。これにつきまして総理は、「いわゆる台湾人元兵隊の問題については、関係省庁間で、この問題についてどう考えるか、鋭意検討しているところでありますが、かなり難しい問題がありますので、簡単に結論をつけることは難しいと思っております。」こういう簡単な答弁をなさっておるわけでございます。これは、一方において鋭意検討するという姿勢を示しながら、しかも最後の部分で簡単に結論を出せない難しい問題だと逃げておられるように思うわけでございますけれども、あの大戦におきまして台湾の人たち、それは当時紛れもない日本国民の一員でありまして、我々とともに戦争に参加した人たちであります。勇敢に戦い、傷つき、亡くなり、また現在老後を送っている人たち、この人たちから切実な要求が、日々我が政府や我々国会議員周辺に寄せられておりますことは、総理は篤と御承知だと思うわけでございます。戦後政治の総決算をおっしゃるならば、まずこの問題もあなたの時代に解決なさるべき問題ではないかというふうに私は考えますけれども、重ねて御答弁をお願い申し上げます。
  292. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 まじめに検討してまいりたいと思います。
  293. 吉田之久

    吉田委員 では次に、定数是正の問題について申し上げます。  まず総務庁にお伺いをいたしますけれども、国勢調査は、御存じのとおり去る十月一日に行われました。その速報値は十二月二十四日に出されると我々は聞いております。そして、先ほどから問題になっております確定値は来年十一月に出るはずだと承っております。  そこでお聞きいたしたいことは、昭和五十五年の国勢調査の例を聞きたいのでございます。  一億一千七百五万七千四百八十五名の当時の日本国民調査でございますけれども、そのときに行われました調査の速報値、その誤差はわずかに二千九百十一であったと伺いますけれども、それに間違いはございませんか。
  294. 北山直樹

    ○北山政府委員 お答えいたします。  昭和五十五年国勢調査の結果ではそうなっております。
  295. 吉田之久

    吉田委員 時間がございませんので私の方から申し上げますが、当時、全国三千三百七十五市町村の中で、速報値と確定値が人口数において完全に一致いたしました市町村は二千百三十四、一名の違いがありましたのが六百八十九市町村、二名ないし四名の違いでありましたのが三百六十七、五名ないし九名の違いでありましたのが八十二、そして十人以上の違いでありましたのが百三市町村であると聞いておりますが、この数字に間違いはございませんか。
  296. 北山直樹

    ○北山政府委員 昭和五十五年国勢調査の結果ではそのとおりとなっております。
  297. 吉田之久

    吉田委員 そこで総理にお伺いしたいわけでございますが、先ほどから、確定値が出れば次なる抜本是正に着手しようというしばしばのお答えでございましたけれども、私は、確定値を見るまでもなく、速報値がこの十二月の末に出されました時点で、それはまさにほとんど寸分たがいない確定値である、こう認識して間違いはないと思うのです。
  298. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 五十五年の国勢調査の数は今お答えをしたとおりでございます。純誤差が約三千名、これはプラス・マイナスを差し引きした数でございますが、総誤差は約二万名、こういうことになっておりますが、あくまでも中間速報値は概数でございまして、やはり来年の十一月にならないと確定の数値は出ない。といたしますと、定数等の問題については、これは極めてシビアな問題で、それによって該当する選挙区のそれぞれの議員の方あるいは党、こういった方々から、微妙な差のところで違ってくるということになりまするので、やはりこういう問題は、確定数値が出ないと私はなかなか難しい問題ではなかろうか、かように考えるわけでございます。
  299. 吉田之久

    吉田委員 もう一度おっしゃってください。何が二万ですか、間違いは。今の数字をもう一度きちんとおっしゃってください。
  300. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 純誤差が約三千ですね。総誤差が約二万、こういうことでございます。  なお、純誤差、総誤差の技術的な問題の御質問があれば、統計局長から詳しく御説明を申し上げます。
  301. 吉田之久

    吉田委員 長官、純誤差というのは何ですか。総誤差というのは何ですか。要するに、私が聞いておりますのは人口の数でございます。この点でどれだけの違いがあったか。
  302. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 全体の調査の違いは、総誤差で約二万名。プラスの間違いのところとマイナスの間違いのところがありまして、その差し引きをすると、まあ三千名程度の誤差がある、こういうことでございます。
  303. 吉田之久

    吉田委員 わかりました。要するにプラス・マイナスの違いがありますから、それを集計すればキャンセルされて三千という御説明のようでありますが、今何かそこでちょっと打ち合わせしているようでは長官答弁の方がおかしいのではないかと思いますが、どうぞもう一度。
  304. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 定義は間違いありませんが、二万名というのは間違いで、約九千名と御承知願いたいと思います。
  305. 吉田之久

    吉田委員 総理、こんな答弁ではこれは重大であります。後でちょっとおしかりをしておいていただきたいと思います。  そこで総理に申し上げますが、概数一億二千万人の国民調査をいたしまして、その誤差が三千、あるいは上下総合いたしまして九千であってもいいと思います。まず一応一億二千万分の三千、この数字はどう認識すればいいのか。これは頭のいい総理でございますからすぐおわかりだと思いますが、どちらも一けたずつ上げましたら十二億分の三万ということになります。十二億分の三万ということは十二万分の三という数でございます。それは四万分の一でございます。今長官がおっしゃるようにこれを九千としてみましても、一万人に一人も違わないということだけはだれも否定できないと思うのです。一万人に一人の誤差、これは数字にあらわしまして〇・〇〇〇一でありますし、したがって、速報値の確率、確かさというものは、逆に九九・九九%の精度であるということは言えると思うわけでございます。常識上、これが衆議院の定数が一であるか二であるか、そのような狂うような要素には私は絶対にならないと思うわけでございますが、総理はどうお考えになりますか。
  306. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 たしか群馬県一区で、藤枝泉介君が一票の差で落選したか何かで選挙訴訟を起こしたことがあります。櫻内君も大体似たようなことがあったと思いますが、やはり一票の差、一票の値打ちというものは非常に大事ですから、皆さん選挙のときにはぜひ一票下さいとみんな言っているのだろう。そういう点はやはり正確を期する必要があるのではないかと思います。
  307. 吉田之久

    吉田委員 私は今の今まで、中曽根総理という人はかなり頭のいい方だと信じ切っておりましたけれども、今の答弁を聞いたら、これは日本の政治を今後任していいんだろうかと思わざるを得ません。一票を聞いているわけではありません。一万人の中で一人の誤差があった場合、それが人口二十万、二十数万で一人の定数を割り出していく場合に、その割り出された定数が一から二に狂ったり、二から三に狂ったりすることがありますかと言っているんです。
  308. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 数学計算はそうなんですけれども、選挙の現実になると、こっちへ行ったりあっちへ行ったりという人が出てくる。そういう場合にその一票がどっちへ行くんだろうか、そういうようなことが現実の選挙の場合にはあり得るのじゃないか、そういうふうに考えております。
  309. 吉田之久

    吉田委員 それは全然問題をあなたははぐらかそうとなさっています、意図的に、悪意に。私は、もっとやはり我々国民を代表する国会議員の質問に対しましてはまじめに答えてもらわなければならぬ。これは委員長、ちょっと注意をしてください。注意をしてもらわないと私は質問できない。
  310. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 定数の配分という数学計算からくればそのとおりであります、定数配分という見地から。しかし、今度は選挙の現実という面から私は申し上げた次第であります。
  311. 吉田之久

    吉田委員 私は少し総理も耳が遠くなったのかと思いますが、私は、きちっと定数の問題を聞くと初めから物を申しているわけでございまして、したがって、選挙の現実がどうだとかこうだとか、それはここで全く論じる必要もないと私は思うわけでございます。  ですから、もう一度確認いたしますが、この我々の常識、あるいは今日の我が国のコンピューターを初めとする統計技術の確度、確かさ、そういう点から申しましたら、今総理がはっきりとお答えになりましたとおり、ことしの十二月二十四日に出されるでありましょう速報値は、そのまま来年の十一月に出るでありましょう確定値と、事人口の動態においては完全に同じ確かなものが出されたと見て間違いはない、こういうことはもう言い切れると思うのです。  これに反論する大臣がいらっしゃいましたら、どうか手を挙げてください。
  312. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 お答えします。  まさに数学的にはそういう議論になるでしょうが、私が申しておるのは、そこらをとらえて、有利不利になる方々からいろいろな意見が出るおそれがあります。それはやはり政治の場で解決していただく以外にない、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  313. 吉田之久

    吉田委員 あなたも全然ピントが狂っているわけでありまして、政治の場で解決することを私は今ここで質問しているわけじゃないのです。純理論的に、国勢調査は既に行われたわけなんです。そして速報値が出るわけなんです。そしてやがて出る確定値、それがほとんど間違いのないもの、それは多少の狂いはあります。しかし、事この膨大な衆議院の定数、どの選挙区は何名にするかというこの作業に対しましては、全く完全に使える資料が出る、この点だけは御認識いただけますね。それが肝心の後藤田長官にわかっていただけないようでは、この論議は進まないのです。
  314. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 あなたのおっしゃることは私わからぬわけではないのですよ。ただ、有利不利が出てきたときに、公職選挙法は、御案内のように国勢調査の結果を見て五年ごとと、こうなっている。その結果というのはやはり確定値であるということだけは間違いのない事実でございますから、そこらが取り上げられていろいろな議論になりますよと、こういうことを私は……(「確定値なんてそんなこと書いてないよ」と呼ぶ者あり)国勢調査の結果ということは確定値ということであるはずでございます。
  315. 吉田之久

    吉田委員 大変やはり時代認識がお古いんじゃないかと思います。  それから、この定数が決まりますことの選挙の有利不利、それは全くここでは論じてはならないことでございます。最高裁が我々に示しているものは、本当に国民の納得できる一対三以内の範囲内において、国勢調査に基づいた正しい定数をつくりなさいと言っているわけでございます。その作業を我々はいつからしようかとする論議をしているときに、あなたともあろう人が、有利不利を考えて政治的にいろいろ考えなければなりませんのでともあれ確定値が出るまではそれに手をつけることはできません、これは全く外れた論議だと思います。少なくとも先進国家の政治家の言うべきことではありません。まして最高裁があの重い意味を込めた判決を下しておる現状、しかも国民がその行方を注視しておる中で既に国勢調査が行われた、しかも私の申し上げるこの論拠は全くこの問題に関しては狂いかないということになりましたら、さて我々はこれから何をすべきであるかということを考えなければならないと思うのです。  それで、今最高裁の判決は我々国会に対して何を要求しているかということでございますけれども、一応おざなりでもいいから、やや不完全でもいいから、ともかく一対三の範囲内でおさめなさいということを言っているのか、それとも、なるべく速やかに次の選挙は国民のだれからも異存の出ないそういう正しい定数を決めて選挙をやりなさい、そういうことを我々に言っているのか、この点、総理はどうお考えでございましょう。
  316. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 やはり五十八年選挙の結果に関する判決でありますから、五十八年選挙の定数配分、それと人口調査、五十五年に行われました国勢調査、それをもとに是正を要請しておられる。未来の問題についてはまだ触れていない。それは将来出てくる問題ではありましょう。
  317. 吉田之久

    吉田委員 総理のおっしゃることは一つの見識であると思います。しかし、五十八年、我々が選ばれてまいりましたこの定数の根拠は、五十年の国勢調査からちっとも訂正していないわけなんでございます。だから最高裁は、五十五年の実態を見て、これは違憲ではないか、選挙をやり直せとまでは言わないけれども、まさに違憲状態そのものだ、このままで選挙をやるならば違憲である、無効である、こういう構えをとっているわけなんでございますね。したがって、我々は、ことしの十月一日まで、九月の末日までは一番直近の国勢調査であります昭和五十五年の調査、その確定値は当然出ておりますから、これに従って余りに極端なところをとりあえずどう手直しするかという答えを出したことは、その中身は別といたしまして、六増・六減案といい、あるいはそれに対する野党の共同修正案といい、それはその時点においてはやむを得ざる一つの対応であったというふうに私は認めます。ところが、十月一日に国勢調査は既に終わった。昔の時代ならば、これは来年の十一月までじっと見ている以外にはないと思うのです。しかし、五十五年の例があり、しかも今日の科学技術の進んだ誇るべき文明国家である日本においては、この十二月に出る速報値、それは間違いなくこの作業に取りかかるための十二分の根拠になる。だとするならば、最高裁の判決に忠実に国会が従おうとするならば、十月一日から既に日付変更線は変わった、だから今我々が考えるべき問題は、この速報値を見てどう抜本改正すべきであるかで、それで新しい定数をつくれば、いつ解散があっても、また引き続き解散があっても、再来年の一月早々に解散があっても、それで立派に耐え得るはずでございます。それが本当の国民の信頼にこたえる議会政治を確立するゆえんのものではないかと私は信じて疑わない次第でございますが、いかがでございますか。
  318. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 直近の最高裁の判決に指摘されたことを可及的速やかに是正するのは立法府の仕事でございますから、先発列車をまず片づけて、それから適当なときに後発列車に取りかかる、こういうのが政治的に要請されていることではないかと思います。
  319. 吉田之久

    吉田委員 それも苦しい一つの理屈だと思います。  ところで、総理のおっしゃるとおり今不完全だけれどもとりあえずの是正をやった。暫定是正といいますか、世に駆け込み是正と言われておりますけれども、まずそれをやった。それで解散がどこかの時点であって、選挙をした。それはまあいろいろ、それでもこの今の案が、今度の国勢調査、この間各所で調べました有権者調査から見ましたら、もうこれ自身が耐えられない、持ちこたえられない案だということははっきりしているわけでございますが、それは何とかしどろもどろしながら一回はくぐれると思うのです。しかし、くぐったからとして、それから先、来年の十一月以降、十二月にも絶対解散、総選挙がないとは言い切れません。あるいは再来年の春にも、どのような政局の事態の中で選挙を問わなければならないかもしれない。そういう事態は絶えず予定されなければならないと思うのです。そのときに抜本是正に手をつけ始めた状態でまだ抜本是正というものが確立していなければ、日本は選挙ができなくなりますね。その辺のことはお考えになりませんか。
  320. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ですから、先発列車を早く片づけて、緊急避難を成立させて、そして今おっしゃるような抜本是正、もし各党が共同で御賛成なさるなら、適当なときにできるだけ早くそれに取りかかるのが適当ではないか、私はそういうふうに考えます。
  321. 吉田之久

    吉田委員 今その最後のところで総理がおっしゃいました適当なときにできるだけ早くというのは、どういう意味ですか。適当なときにできるだけ早くというのは、来年一月でも二月でもいいのですか、どういう意味ですか。
  322. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これはやはり各党が合意したときという意味であります。
  323. 吉田之久

    吉田委員 わかりました。それじゃ、各党が合意すれば来年の一月か二月にでもできるとおっしゃるならば、その根拠は速報値しかないんですよ。それでいいということですね。この辺をはっきりしておいていただかないと、各党のこれからの合意形成の根拠になります。
  324. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先発列車を片づけてと私は申し上げたのです。緊急措置をまずやっておいて、そして準備行為、そういう形になると思うのです。それはあくまで確定値が出ることを前提とした上の準備行為ではないか、そういうふうに私自体は解釈しております。ある意味において国勢調査が出た後でやはり若干の猶予期間というのは、最高裁も今まで認めておりますですね。そういうこともある程度考えでいいのではないか、考えられるのではないかと思います。
  325. 吉田之久

    吉田委員 最高裁がそんな猶予期間を認めているかどうか、これは私どもはわかりません。総理も独断でそんなことをおっしゃっていると思います。少なくとも我々が受け取るはっきりした最高裁の判決は、要するに次の選挙は正しい定数でやりなさいということに尽きると思うのです。  既に日付変更線が変わったということは御確認なさいますね、速報値がこれほど確かなものが出ているとするならば。十月一日に日付変更線が変わったか、ことしの十二月二十四日に変わるのか、その辺はだれも何とも言えませんけれども、ともかくこの時点で日付は変わった。それに、きのう用意した弁当をあなたは持って出ますか。それはあすの朝、食べるなら食べられるかもしれませんけれども、あすの夕方になるかもしれない、あさっての朝になるかもしれない。だとするならば、今一番新しいものを用意しなければならないのじゃないでしょうか。この辺の話ならおわかりになると思う。
  326. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 吉田委員の今の、速報値を定数是正の基礎数字に使えるのではないかという御意見でございます。  定数是正を行うに際しまして、国勢調査の結果としての人口について、つまり概数人口、この十二月に出ると言われておる概数人口によるべきか、あるいは来年になると言われる確定人口によるべきかは、やはり当該定数是正の時期、内容等を総合的に考慮して決定さるべき問題と考えておりますが、問題としましては、衆議院議員の定数配分は国政上極めて重要な問題でありまして、その根拠として最終的に確定していないものによることが適当であるかどうか、もう一つは、定数配分は一たん決定されればそれ以後ある程度の永続性を持つものでありまして、その決定の際、速報としての性格を持つ概数人口に依拠する緊急性があるかどうか等を考慮して、これは慎重に検討せにゃならぬ問題ではないかという一つの問題を私からお答えしておきます。
  327. 吉田之久

    吉田委員 今の自治大臣のお話を聞いておりましたら、速報値を根拠にすることが適当であるかどうかを慎重に判断しなければならないというお答えでありますから、適当でないとはおっしゃっておりません。適当であるかもしれない、あるいはまだ不適当という説が成り立つかもしれない。まあ迷っていらっしゃることはわかりますけれども、私が先ほど申し上げました数字、総務庁が御確認になりました数字が完全である限り、これは政治の判断だと思うのですね。裁判所は、起こった事象をきちんと確かめて過去形に物を申すのが裁判所でなければならないと思うのです。しかし、我々立法府というものは、予見し得る確かなものはそれを根拠にして次の対応をしていく、その機能を果たさなければなりませんし、それだけの権限は付与されておると私は思う次第でございます。したがって、こういうほとんど完全無欠な数字が出るのに、それをそのまま一年も寝かしておって横手傍観、じんせん日を送っているということは、我々は国民に対して忠実なるゆえんではないと考えざるを得ないわけでございます。したがって、総理の先ほどの御答弁の中にもありましたが、この辺の判断をどうするか、これは我々議会自身が決断しなければならない問題であります。各党が本気で考えれば答えが出るはずの問題でございまして、私はその点で、もはや緊急避難の暫定是正と、それから来年からよたよたと起き上がって着手するであろう抜本改正と、この二段構えでは遅過ぎる、そのはざまに解散があったときにどういう国民の非難を受けるであろうかということを考えましたら、既にもう先発列車は立つべき必要はありませんで、すぐに引き込み線に入れて抜本改正を始めるべきである、これは強くこの機会に主張をいたしておくところでございます。  さて、六・六増減案についてでございますけれども、この自民党のお出しになっております現在継続審議になっております法案というものは、私はある意味で重大な瑕疵があると思うのです。それはまず、二名区を認めるという考え方が潜んでおる。これは恒常的に二名区を置こうとするものではない、しかし今のこの措置だけは二名区でやりたいという考え方のようでございますが、我々は、権威ある国会、議会制民主主義において最も厳粛な決定的な行為は何であるか、それは選挙だと思うのです。その選挙の一番大事な定数を決める、それをかりそめの二名区というようなことは大変おかしいことでありまして、二名区をつくるならばそれはそれなりの理由を持つ。もしも二名区というものがだんだんその理由を持ってまいりましたら、我が国の将来の衆議院の選挙区というものは二名区と三名区に全部分解する。四名区というのは理論的に成り立たない。五名区は直ちに二名区と三名区に分かれなければならない。これは大正十四年、時の若槻礼次郎国務大臣が真剣に考えて、我が国の政治は中選挙区主義をとろうということで六十年間貫いてまいりました、いわば憲法に匹敵する大事な大事な政治の原点だと思うわけでございまして、それを一時的にしろ変えるということは許されない。  時間がありませんので固めて申しますが、それからこの一対三以内ということ、一対二もおかしいし、三までまだいいならば四でもいいじゃないかというふうな考え方がどこかにつきまとうかもしれませんけれども、これも数字の常識から申しましたら定員に半分ということはないわけでありまして、そういたしますと、一という数字がありまして、〇・五というのは一に繰り上げなければならない、一・四九は気の毒ながら一に切り下げなければならない、〇・五と一・四九の差はほぼ三倍以内になるわけであります。そういうところでこの定数を決める場合には三倍以内は許されるという概念が成り立っておるのではないか。この辺を篤と御認識いただきまして、今私が申し上げました三名区を厳守するという問題、それから三倍以内を必ず実現するという問題、この問題につきまして総理はどういう御意見をお持ちでございましょうか。
  328. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは政治のそのものでございまして、議員のいろいろな意見を聞いて、そしてこれが各党の大体の皆さんの平均的な考えで合意が形成されるという線で各党が持ってきて出してきているものであるだろう思います。しかも、小選挙区はやらない、一人区はつくらない、そういう原則をもって我が党としてはつくっておるのでございまして、そういうような考え方に立つことを御了承願いたいと思うのであります。
  329. 吉田之久

    吉田委員 時間が全くなくなってまいりましたので、水源税創設、流水占用料拡大構想について質問をいたします。  これらの税制改革の目的は治山治水事業でありますけれども、治山治水事業というものは政治の大本でありまして、いずれも国家にとって最も重要な政策課題でございます。とりわけ最近山林問題は深刻な事態にあり、河川や水資源の問題も早晩危機的な状況に立ち至る事態も予見されております。それだけにこの対策は政治が全面的に対応しなければならない問題でありますのに、今回提案されると言われております水源税創設あるいは流水占用料の異常な拡大、このことによって問題を処理しようとすることは極めて重大な政治の間違いであると思います。あくまでも一般会計の中で支出、捻出されなければならない問題である、このように考えますけれども、極めて簡単で結構でございますから、農林大臣、建設大臣、通産大臣、水道を預かっていらっしゃる厚生大臣、それぞれのお考え方をただしたいと思います。
  330. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 吉田先生お答えいたします。  我が国は、先生御存じのことでございますが、国土の七割が森林ということでございまして、その水源酒義上、非常に大きな役目を果たしておるのは御存じのとおりでございますが、この森林が現在荒廃が進んでおりまして、国土を守り、水をはぐくむ森林の整備を行うことが緊急の課題となっております。このために、森林を整備するに不可欠な治山、造林、間伐等の諸事業を緊急かつ計画的に実施する必要がありますが、現下の厳しい国家財政のもとで、財務当局から大変御理解を得ておりますけれども、これら諸事業は大幅なおくれを来しておりますことは先生御存じのとおりでございます。  そんなことで、このままで推移するならば森林が果たすべき水源酒養機能が失われ、今後の水利用にとって手おくれとなる事態が危惧されるところでございます。そんなことで、将来にわたりまして生活とそれから産業活動に不可欠な水を確保する、こういう意味におきまして森林の水源涵養機能を確保するため、緊急措置としまして、十年間を限り、その受益者にも必要最小限度の費用負担を求める水源税を創設し、これにより緊急を要する、将来にわたりまして、今申し上げたようなことでございますが生活及び産業活動に不可欠な水を確保する、そんなことで森林整備のための事業を実施してまいりたいと考えておるわけでございます。
  331. 木部佳昭

    ○木部国務大臣 流水占用料につきましては現行河川法でこれが徴収できる、こう規定を一広されておるわけであります。しかし、現在さまざまな減免措置というものが行われておるわけでございます。したがいまして、例えば大量に河川の水が利用されるとか、また水質が汚濁されるとか、また環境が非常に悪くなるとかいうような点を是正するために見直しとかそういう問題を今概算要求の段階で検討をお願いしている。したがいまして、これから各省庁間でこの調整をしてまいりたい、かように考えております。
  332. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 御指摘のように、治山治水は国の最大の課題でございますから一般財源で従来から行われておったところであります。したがって、今回これを水道の利用者に負担を求めようということは、直接な受益者でもない一般大衆に対して負担を課すことで妥当でないと思います。また、特に水道につきましては、空気の次に大事な水でありますから、値段を安くするためにわざわざ補助金を出しておるところでございまして、それにもかかわらず国民の負担を増加することは反対でございます。
  333. 村田敬次郎

    ○村田国務大臣 流水占用料構想それから水源税構想、これらの構想は、地下水くみ上げによる地盤沈下の防止を目的に展開してまいりました工業用水政策に矛盾をするというばかりでなく、我が国産業界に過重の負担を強いるものであると思います。したがって「増税なき財政再建」という政府基本方針趣旨にも反するなど多くの問題点を内包している、このように認識しております。吉田委員もお触れになりましたように、治山治水事業は国の基礎的な施策でございまして、本来一般財源によりこれを手当てすべきものでございまして、通産省としてはこの構想を容認することができません。基本的に反対であります。
  334. 吉田之久

    吉田委員 これは総理大臣、大変なことでございまして、お互いにかなり政治とかかわってきておるわけでございますけれども、四人の大臣の二人が賛成で二人が絶対反対、閣内不統一ここにきわまれりという感じがいたします。これでも総理は法案をお出しになりますか。
  335. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 概算要求のときは各省が自分たちがやりたいことをみんな持ち出すものでございまして、それを統一するのは予算編成のときの閣議であり、党にお願いしてまた党の案をおつくり願うわけでございますから、いずれまとまりますから、どうぞごらんのほどをお願いいたしたいと思います。
  336. 吉田之久

    吉田委員 この点ではかなり総理を御信頼申し上げます。  ともあれお聞きのような現状でございまして、しかも紙パルプなどは税引き後の利益の三百億のうちの百億まで取られる、あるいは電力などは毎日三十数億円ずつ国税を払っておる企業でありますが、とてももはやこれ以上はたえられないという現状であります。山を守り河川を管理することは極めて重要でありますが、それこそ総理が決断をもって一般財源の中から捻出されますようにあらゆる努力を払われることを要請いたしまして、質問を終わらせていただきます。
  337. 天野光晴

    天野委員長 これにて吉田君の質疑は終了いたしました。  次回は、明三十一日午前九時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後十一時二十二分散会