○和田一仁君 私は、民社党・
国民連合を代表して、ただいま
議題となっておりますいわゆる
規制緩和一括法案について
質問をいたします。
総理並びに
関係大臣の明確な御
答弁をお願い申し上げます。
まず初めに、
規制緩和のための定期的見直し
制度の
必要性についてであります。
政府は、本
法案の
提出理由として、
民間の事業活動に対する
公的規制を
緩和し、
民間活力の発揮を図るとうたっております。
〔
議長退席、副
議長着席〕
その
趣旨には賛意を表するものでありますが、しかし、その内容を見るときに、極めてささいな
事項の羅列にすぎない、例えば、諸
外国の厳しい
批判の的となっている
我が国の複雑な貿易手続もほとんど手が触れられていない、余りにも不十分なものと言わなければなりません。これでは諸
外国からの
批判の
解消も、
民間活力の発揮も、到底不可能であります。この程度の
規制緩和をもって民活が図れるなどと唱えるのは、私は誇大広告に類するものと言わざるを得ないのであります。
私は、本
法案がこのような不十分に終わった原因は、そのやり方にあると思うのでございますが、
総理は先ほどの
答弁で、総点検をしたと言われました。
政府は、許認可の
一つ一つを拾い上げて、
整理合理化の
必要性の有無を判定するという手法に終始しておるのでございまして、これでは各省庁からの抵抗を許すことになってしまって、結局、妥協の産物として
本案のようなものしか出てこないことになるのでありまして、私はまさに発想の転換がなければならない、このように思います。
今、約一万件の許認可
事項あるいは約二千件に及ぶ補助金などの
政府の
制度、
施策がございますけれども、これがその目的に沿って機能しているかどうかを、例えば五年たったらそれぞれ見直しをやるとか、また、新たな
施策については、その存続期限を定めまして、期限到来とともに、一定の
基準に基づく業績評価によってその継続の有無を決定するという、いわゆるサンセット方式の
制度化を図ることが不可欠であると思うのでございます。この方法によってこそ、
行政の簡素効率化と
民間活力の発揮が可能になると確信をいたしておりますが、この点について
総理並びに
総務庁長官の御見解をお伺いいたします。(
拍手)
次に、
民間活力と
政府の果たすべき役割との
関係についてであります。
本
法案のごとき内容では
規制緩和といっても不十分でありまして、これだけによって
民間経済の
活性化が有効に図れるというものではございません。そこで、
政府が本来果たすべき
基本政策のあることを忘れてはならないと思うのでございます。特に、
社会資本整備の立ちおくれた
我が国においては、国が本来なすべき公共投資の
推進をまず行うべきであります。例えば、下水道、道路、公園などの都市基盤が未整備のまま都市計画に係る線引きの見直しなどがもし安易に行われるならば、逆に乱開発を
促進して、そのツケは
地方自治体や住民が負わなければならないのであります。この際、
政府は、その本来の役割を果たすために、今年度事業ベースにおいて、少なくとも一兆円規模の公共投資の追加を行うなど積極的
経済政策をとり、
内需拡大とあわせ、
民間活力の開発を講ずべきであると
考えますけれども、この点についての
総理の明快な見解を求めるものであります。(
拍手)
質問の第三は、
輸出入検査の
簡素化についてであります。
政府は、貿易摩擦
緩和の
一環として、
さきの行動計画に
基準・認証の
改善措置を盛り込みました。しかし、この
措置は、先ほど来言われておりますように、原則自由、
例外制限の
基本方針とはかけ離れた極めて不十分なものでありまして、煩雑極まる貿易手続はほとんどそのままでありまして、
我が国市場の閉鎖性を
象徴するものとして今日、諸
外国から厳しく
批判をされているところであります。特に緊急を要する
課題は、
輸出入検査であります。
我が国の過度に複雑な
輸入検査
制度は、
経済の国際化の流れに逆行し、
輸入障壁と非難されてもやむを得ないものがあります。
総理は、このたびの
基準・認証の
改善によって「
我が国市場が
国際水準を上回る
開放度を達成したと
考えておられるのかどうか、また、今後さらに
基準・
認証制度を
整理合理化し、行動計画に追加するお
考えはあるのかないのか、あわせてお伺いを申し上げます。
さらに、
輸出検査についての
方針もお尋ねいたします。
例えば、
輸出検査法でございますけれども、メーカーが自主的に行った検査の後に、同じ設備、同じ試験機器を使う同じ方法で
政府の
輸出検査を受けなければ
輸出を受け付けないといったことが今、依然として行われているのであります。現在の
輸出検査
制度は、工業技術水準が著しく向上した今日、その歴史的役割を終えたと言うべきであります。加えて、これはさらに、
民間企業にも多大の負担を強いているのであります。例えば、その例をとりますならば、技術水準を誇るテープレコーダーについて申し上げますと、その検査は、五十万台を一単位として行われております。五十万台の中から三十二台を抜き取りにいたしまして検査をいたしております。検査料は、一台について二十三円でありますけれども、これを三十二台について取るのではなく、何と五十万台全部にこの料金をかけて取っているのであります。こういうことからも私は、
政府は、
輸出検査の廃止に向けてのスケジュールを早急かつ明確に示すべきだと
考えておりますが、
総理の御所見をお伺いいたします。(
拍手)
次の
質問は、金融の自由化についてであります。
対外経済摩擦を
解消する上で、金融並びに為替政策は大きなウエートを持っております。国際的にも重要な位置を占める
我が国が金融面において
市場開放をより一層
推進していくこと、すなわち金融の自由化、国際化に十二分に対応していくことが、内外から強く求められていることは御承知のとおりでございます。しかるに、本
法案に示されました
改正は、極めて限定的なものでありまして、十分なものとは到底言えないのであります。
そこで、
総理並びに
大蔵大臣に若干お伺いをいたします。
まず、去る十月一日に大口預金金利が自由化をされたのに続きまして、
大蔵省として今後、金利の自由化、弾力化に向けての環境づくりをどのような手順で進めていかれるのか、明確に示していただきたいのでございます。そして第二に、金融の自由化によりまして、中小金融
機関の経営の悪化が懸念をされてまいりました。預金者を保護し、信用秩序を維持するために、金融の自由化に当たっては、中小金融
機関に対する十分な配慮が必要だと
考えられますが、どうでございますか。以上の諸点についての所見を求めるものでございます。
次に、労働時間の短縮について御
質問いたします。
対外経済摩擦の
解消を
考える中で忘れてならないものは、労働時間の短縮でございます。週休二日制の普及など労働時間の短縮対策の
推進は、先般
経済対策閣僚
会議で決定した
内需拡大に関する対策でも触れているところでありますが、
経済の国際化が進み、国際労働
基準の内容も向上している中で、自由世界第二の
経済力と強い
国際競争力を持った
我が国の現行労働時間水準の立ちおくれは、ますます明瞭になってまいりまして、貿易摩擦の要因として国際的な
批判を受けていることは御承知のとおりでございます。そこで
総理、一九三五年のILO四十七号条約及び一九六二年の百十六号勧告で到達すべき
社会的水準として、国際的に確立している週四十時間労働をいつ
実現しようとされているのか、そのための労働
基準法の
改正案をいつ
国会に
提出されるのか、明確な御
答弁を求めるものでございます。
最後の
質問は、運輸
行政のあり方についてでございます。
この
法案においては、運輸省
関係が十三
事項と一番多いのでありますが、今ここにその一例を挙げてみます。
その中の
一つに、タクシーの運転者がその登録をするときに、従来必要とされていましたものは、住所、氏名、生年月日、そして本籍でございました。それをこの
規制緩和の中では、今後その本籍だけは不必要にしよう、これが一
項目ございますが、この程度の瑣末なものが並んでいるのにすぎないのでございます。果たしてこのようなことで運輸
行政は、
民間活力の導入を図り得ると
考えているのでありましょうか。現在、許認可総数約一万件と言われるうち、運輸省
関係は約二千二百件、その五分の一を占めんとする実態にあるのでございます。国際化の進行、モータリゼーションの進展など、交通をめぐる情勢は日々急激に
変化をしているのであり、今こそ運輸
行政に抜本的なメスが入らなければならないと思うのでございます。
私は、本
法案にとどまることなく、もっと大きな抜本的
改正が望まれるのでありますが、その
一つに、航空
行政の見直しというものがございます。
我が国の主要航空三社の事業
分野は、いわゆる航空憲法によって、ここ十数年がっちりと規定されているのでございます。しかるに、今春締結されました
日米航空暫定協定によって、太平洋路線に新規
企業の相互乗り入れが認められるなど、新たな局面を迎えていることは御承知のとおりでございます。このような情勢
変化の中で、航空憲法の見直しをどのように進めようとしているのか、御所見があればお伺いしたいのでございます。加えて、この際、日航の羽田沖墜落事故、また今回の航路逸脱事件等は、一体何がこうせしめるのか、何が原因とお
考えかをお聞きいたします。日航は、
政府依存の体質から今こそ脱却すべきだと
考えますが、その
民営化を含め、
総理並びに運輸
大臣の見解を伺うものでございます。
最後に
総理、これからの
我が国の歩みは容易ではございません。国際環境は一段と厳しく、
国内的にもかつてない高齢化
社会を迎えんといたしております。加えて、科学技術の急速な進展は、産業
分野はもちろんのこと、日常の
国民生活そのものをも大きく変えようといたしております。二十一
世紀の
日本が
総理の言われる輝かしい
日本となるかどうかは、今日ただいまの
我が国の諸対策、対応の可否いかんにかかっていると言っても過言ではございません。次世代への遺産として立派な国づくりを果たしていくためにも、なすべきことは断固たる
決意を持ってなさねばならないと思うのでございます。
行革は、その
一つにすぎませんが、
総理の
決意のほどを再度お伺いいたしまして、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣中曽根康弘君
登壇〕