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1985-12-11 第103回国会 衆議院 法務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年十二月十一日(水曜日)     午前十時十分開議 出席委員   委員長 片岡 清一君    理事 太田 誠一君 理事 亀井 静香君    理事 高村 正彦君 理事 天野  等君    理事 横山 利秋君 理事 岡本 富夫君    理事 三浦  隆君       上村千一郎君    衛藤征士郎君       宮崎 茂一君    稲葉 誠一君       小澤 克介君    関  晴正君       日野 市朗君    山花 貞夫君       草川 昭三君    中村  巖君       柴田 睦夫君    林  百郎君  出席国務大臣         法 務 大 臣 嶋崎  均君  出席政府委員         内閣法制局第一         部長      工藤 敦夫君         法務大臣官房長 岡村 泰孝君         法務省民事局長 枇杷田泰助君         法務省刑事局長 筧  榮一君         法務省矯正局長 石山  陽君         法務省保護局長 俵谷 利幸君         法務省人権擁護         局長      野崎 幸雄君         法務省入国管理         局長      小林 俊二君  委員外出席者         警察庁刑事局保         安部防犯課長  石瀬  博君         警察庁刑事局保         安部少年課長  根本 芳雄君         警察庁警備局公         安第三課長   鏡山 昭典君         警察庁警備局警         備課長     井上 幸彦君         外務省アジア局         北東アジア課長 渋谷 治彦君         外務省条約局法         規課長     谷内正太郎君         文部省初等中等         教育局中学校課         長       林田 英樹君         厚生省健康政策         局総務課長   多田  宏君         厚生省援護局庶         務課長     大西 孝夫君         農林水産省畜産         局競馬監督課長 嶌田 道夫君         通商産業省機械         情報産業局車両         課長      谷   仁君         運輸省海上技術         安全局総務課長 秦野  裕君         海上保安庁警備         救難部警備第一         課長      垂水 正大君         自治省行政局選         挙部選挙課長  吉田 弘正君         最高裁判所事務         総局民事局長  上谷  清君         日本国有鉄道職         員局能力開発課         長       下村 徹嗣君         日本国有鉄道公         安本部次長   土田  洋君         法務委員会調査         室長      末永 秀夫君     ――――――――――――― 委員の異動 十二月十一日  辞任          補欠選任   高沢 寅男君      関  晴正君   橋本 文彦君      草川 昭三君 同日  辞任          補欠選任   関  晴正君      高沢 寅男君   草川 昭三君      橋本 文彦君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  裁判所司法行政法務行政検察行政及び人  権擁護に関する件      ――――◇―――――
  2. 片岡清一

    片岡委員長 これより会議を開きます。  この際、お諮りいたします。  本日、最高裁判所上谷民事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 片岡清一

    片岡委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ――――◇―――――
  4. 片岡清一

    片岡委員長 裁判所司法行政法務行政検察行政及び人権擁護に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲葉誠一君。
  5. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 私は、今問題となっておりまする最高裁定数訴訟に関します違憲判決について、若干法律的なことをお尋ねいたしたいというふうに思います。  まず第一に、これは事情判決と称されるものですけれども事情判決ということを抜きにして、単なる――単なるというと語弊がありますが違憲判決であった場合に、違憲議員によってできた法律及びその法律に基づく行政作用、こういうふうなものがどういう法律的な効力を持つのか、あるいは行政上も、そういうことをまずお尋ねしたいというふうに考えております、遡及効の問題でもあるわけですが。
  6. 工藤敦夫

    工藤政府委員 お答えいたします。  ただいま先生お尋ねの問題でございますが、仮定の問題でございますし、しかも主として立法府の行います立法行為効力に関する問題であるかと思います。本来私ども行政府に属します者が意見を申し述べることは差し控えたいと思いますが、ただ、今回の最高裁昭和六十年七月十七日の判決が踏襲しておりますいわゆる昭和五十一年四月の最高裁判決、これによりますと、違憲とされた定数配分規定に基づきます選挙を当初にさかのぼって当然に無効である、こういうふうに解した場合には明らかに憲法の所期しない結果を生ずることになる、したがってそのような解釈をとるべきでないという趣旨の判示がされておりまして、これに従います以上、今先生お尋ねのような法律効力が問題になるようなことはないのではなかろうか、かようにも考えられますし、またそれに基づきます行政効力も、法律効力が今問題とならないならば問題にならないであろう、かように考えております。
  7. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、違憲判決だけでそれが確定してしまった、そうするとその後の場合はこれはどういうふうになるわけですか、これは聞かなくてもわかっているわけですけれども
  8. 工藤敦夫

    工藤政府委員 お答えいたします。  ただいまの先生の御質問でございますが、違憲ということが確定してしまいますと、それによりまして当然、以後種々の問題、無効という問題が出てきますし、いわゆるそれに基づきます行政も全部ひっくり返るといいますか、そういうことにはなろうかと思います。
  9. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると事情判決というのが俗に言われておるわけですが、今の最高裁判例のように遡及効がない、こういうふうなことが判例であるというならば、特に事情判決というものをする必要はないのではないか、こういう素朴な疑問が出てくるわけなんですが、この点はどういうふうに理解したらよろしいでしようか。
  10. 工藤敦夫

    工藤政府委員 ただいま先生お尋ねの件、仮に例えば一部の選挙区の選挙だけが無効になるというふうなことでございますと、この前の五十一年の判決では、一部の無効というのはもともと同じ瑕疵を有する選挙について、そのあるものは無効とされ、他のものはそのまま有効として残り、しかも、その後の衆議院の活動が、選挙を無効とされた選挙区からの選出議員を得ることができないままの異常な状態のもとで行われざるを得ないこととなるのであって、このような結果は憲法上決して望ましい姿ではなく、またその所期するところでもないというべきである、こういうふうな判示で、先生もおっしゃるとおりでございます。
  11. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 私の危惧いたしておりますのは、今度の六十年七月の判決前提としておりますその前の判決のように、遡及して法律行政行為が無効になることはないというならば、わざわざ事情判決と称するものをする必要はないのではないか。まあそれはあった方がわかりいいですからね、と思いますけれども、じゃないかというふうに私は考えております。これは法律家として考えているのじゃなくて、例えば極めて素人として考えているわけなんです。  そこでもう一つの問題は、事情判決というのは行政事件訴訟法三十一条で言っているのだと思うわけですが、そうすると、それは公職選挙法の二百十九条の場合には該当しない、除外をしておるわけです。そうすると、この場合の事情判決というのはどういうふうな根拠でできたことなんですか。公選法の二百四条を拡大解釈か何かするような形でやっておるのですか。問題はいろいろあるわけですね。まず三十一条の問題、それと公選法の二百十九条、二百四条、いろいろ関連が出てきていると思うのですが、どういうことになるのでしょうか、ちょっとよくわからないのですが。
  12. 工藤敦夫

    工藤政府委員 たびたび五十一年の判決を引きまして申しわけございませんが、五十一年の判決におきましては、確かに行政事件訴訟法の三十一条を引きながらも、ちょっとそこの部分だけ申し上げますと、「もっとも、行政事件訴訟法右規定は、」右規定というのは今先生の御指摘の条文でございますが、「公選法選挙効力に関する訴訟についてはその準用を排除されているが、」ということで、公選法の二百十九条を指示しているわけでございます。「これは、同法の規定に違反する選挙はこれを無効とすることが常に公共の利益に適合するとの立法府の判断に基づくものであるから、選挙が」云々と書いておりまして、「諸般の事情を考慮して選挙を無効としない旨の判決をする余地はない。しかしながら、本件のように、選挙憲法に違反する公選法に基づいて行われたという一般性をもつ瑕疵を帯び、その是正が」云々ということで、事情判決のところにつなげてきていると思うわけでございます。
  13. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 判決批判なり解釈なりをここでしてもしょうがありませんが、ちょっとよくわからないのですよ。だって、三十一条で公選法二百十九条を排除していますからね。そして、はっきり明文があるのにそれがまたどういうことで出てくるのか、どうも私にはよく理解できないのですけれども、今ここで論議してもしようがないことだ、こういうふうに思います。  そこで、いわゆる同時選挙ということがこの前行われたわけですけれども憲法五十四条第二項ですが、これは一体同時選挙というようなことは、憲法ができるときにこういう議論があったのですか、こういう場合が考えられるとかいうようなことについて。そこはどういうふうになっておりますか。
  14. 工藤敦夫

    工藤政府委員 ただいまの五十四条の件でございますが、憲法議論されましたときにそこの議論というのは、必ずしも私つまびらかにしておりません。憲法におきましてはいわゆる衆参の同日選挙を当然に予定した規定はございませんし、またこれを禁ずる規定もないということで、必ずしもそこの議論の経過はつまびらかでございません。
  15. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、緊急集会というのに具体的には一体どんなものがかかるのだろうかということについての議論はあったのですか。あったとすれば、あるいはなかったとしてもいいのですけれども、どんなことがかかるというふうにお考えですか。
  16. 工藤敦夫

    工藤政府委員 私の承知しております限りでは、必ずしも憲法議会で五十四条の二項、緊急集会部分がそのような形で議論されてはなかったのではないか、はっきりいたしませんが、そういうふうに理解しております。ただ、五十四条二項を運用した例というのは過去に二回、いわゆる緊急集会は過去二十七年と二十八年にございまして、そのときに、例えば二十七年で申し上げれば、中央選挙管理委員会委員の指名の問題というのが一つかかっております。それから、二十八年で申し上げれば、二十八年の緊急集会は三月でございました。二十八年度分の暫定予算、四月、五月の二カ月間の暫定予算、こういうものがかかったと理解しております。
  17. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それから、自治省の方おいででございますが、衆参同時選挙のときに、参議院議員半数改選になるわけですけれども改選の日にちですね、半数の人全部が全体の期間議員身分を持ったままでやられるという場合と、ある段階までは身分を持っているけれどもある段階になってくると身分がなくなってしまう、こういうようないろいろな形があると思うのですが、どういうようなことが改選議員身分として考えられるわけですか。
  18. 吉田弘正

    吉田説明員 参議院議員通常選挙の期日につきましては、公職選挙法の三十二条に規定してございますが、同条第一項では「参議院議員通常選挙は、議員任期が終る日の前三十日以内に行う。」とされておりまして、任期満了の日の前に選挙を行うことを原則としているわけでございます。しかし同条第二項におきまして、その例外措置としまして、「前項の規定により通常選挙を行うべき期間参議院開会中又は参議院閉会の日から三十日以内にかかる場合においては、通常選挙は、参議院閉会の日から三十一日以後三十五日以内に行う。」ものというふうに規定されておりまして、したがいまして、参議院議員任期満了の日の近くまで参議院開会されているというような場合には、任期満了の日以後に選挙が行われるということになるわけでございます。
  19. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、衆議院解散をされて参議院緊急集会が仮に開かれるとしますと、議員身分を持っている人で改選議員は、国会緊急集会ですから出席をしなければならない。ところが身分を持ってない人もいるわけですね。新人の場合もあるし元議員の方もおられると思うのですが、そういう人は自由に選挙運動ができる。片方は現議員ですから国会へ出てくるということが義務づけられてくる。ということになってくると、そこで選挙運動期間中の運動についての差が出てくる。これは好ましいことではありませんけれども、結局そういうことも出てくることが考えられる、そういうことになるのではありませんか。
  20. 吉田弘正

    吉田説明員 お答え申し上げます。  公職選挙法では、先ほど申し上げましたように、衆議院議員選挙あるいは参議院議員任期満了による選挙につきまして、原則として、国会が国権の最高機関であることにかんがみまして、議会の欠陥を防ぎまして国政の運営に支障を来さないということで、任期満了の前に選挙を行うということを規定しているわけでございます。しかし、この原則を貫いてまいりますと国会開会中に選挙運動期間中が重なるという場合も生ずるわけでございます。そういたしますと、現に在職中の議員の方々はその議員としての職責を果たすためには選挙運動ができない、選挙運動に専念すればその議員としての職責が果たしがたいというような問題も出てくることになりますので、公選法では、その任期満了の前三十日以内に選挙を行うという規定例外措置といたしまして、これらの期間国会または参議院緊急集会開会中または閉会の日から三十日以内にかかる場合にあっては、その閉会の日から三十一日以後三十五日以内に選挙を行うというふうにしてその調整を図っているわけでございます。しかし、任期満了による通常選挙の公示がされた後に国に緊急の必要があるために緊急集会が開かれたという場合、極めて例外的なケースでございますが、そういう場合についてまでは明文規定を置いてないということでございます。
  21. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 だから一般的にも、もちろん任期中やる場合は出てこなければならない義務があるわけですから、新人との間に差があるというのは事実ですね。事実上違いがあるわけですけれども、しかしそれは現実には何とかカバーしているのですが、緊急集会となるとなかなかそうはいかないので、緊急集会ということになれば、そこでやはり現議員新人との間で違いが出てくるということは、これは否めない事実だろう、こういうふうに思うわけです。  そこで、ちょっと話題を変えると言うと語弊がありますけれども、まずこれは刑事局長にお聞きするのですが、緊急避難という言葉がこのごろ出てくるのですね。このごろ出てくると言うと語弊がある、前から出てくるのですけれども、殊によく中曽根さんおっしゃるのですけれども、まず刑法上の緊急避難というのはどういうふうな意味のことを言っておられるのですか、わかりやすく例を引いて説明をしていただけませんか、刑法三十七条ですかな。
  22. 筧榮一

    筧政府委員 刑法上の緊急避難意味でございますが、刑法三十七条によりますと、自己または他人の生命、身体、自由もしくは財産に対する危難が現に切迫している場合に、このような危難を避けるためにやむを得ずなされた行為についてはこれを罰しないというふうな規定になっており、これを講学緊急避難と呼ばれております。その場合の要件として重要なのは、避難行為によって生ずる害が避けようとする害の程度を超えない、いわゆる法益権衡ということでございます。それから、そのとった方法がほかにもう方法がないと認められることが必要で、補充原則といわれております。これを刑法上の緊急避難と呼ばれております。判例上いろいろな例があると思いますが、今思いつきます例は、豪雨等で自分の田畑の稲が全滅しそうになった場合、ほかに方法がないので他人の塀なり家なり――家はちょっとオーバーですが、塀なり構築物なりを無断で壊してしまった。それで稲を助けたというような場合に、その他人の塀なりなんなりを壊す行為は、これは器物損壊建造物損壊等では処罰しないということが定められていると理解しております。
  23. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると大臣、六・六の増減案について中曽根さんは盛んに緊急避難だ、緊急避難だ、こう言っているわけですが、どうもこれは意味がよくわからないのですよ、どういう意味で言っているのか。緊急避難ならば、今言われたように法益権衡とか補充原則とかいろいろ原則があるわけなんですけれども、そういう意味で正確に使っているのか、ただ何となく使っているのかよくわかりませんけれども、その点については大臣としてはどういうふうに中曽根さんの言う六・六案についての緊急避難という意味理解されていらっしゃるのですか。
  24. 嶋崎均

    嶋崎国務大臣 ただいまの問題につきましては、総理がどのようなお考えで言っておられるのか我々もよく理解しにくいところもあるわけでございますが、言葉の上では緊急避難的措置というような言葉を使っておられたように思うのでございます。社会一般において取り急ぎ解決を要すべき事態が発生した場合に、これを一日も早く解消すべくとりあえずの措置を講ずることを通常緊急避難的措置というように表現されていることから考えまして、そのような意味で六・六増減案を形容されたのではないかというふうに思うのです。せんじ詰めて言うならば、何か取り急ぎ事柄を処理しなければならぬというような一般的な意味で言われておるわけで、刑法上の緊急避難というような言葉とフィットした意味でおっしゃっておられるのではないのじゃないかというふうに思う次第でございます。
  25. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 私も、緊急避難という言葉を使っているのか、緊急避難的というので「的」という言葉を使っておるのか注意しておったんですけれども、やはり「的」という言葉は入ってはいるんですよ。ただ、どうも正確な意味で使っているわけではないと思うのです。  そうすると、今の大臣のお話を聞いていたことから受ける感じは、結局取り急ぎのあれなんだから内容としては必ずしも完全なものではない、こういうことを意味しておるというか、それを内包しておる、こういうふうにも――「に」じゃないですよ、「も」をつけないとまずいかもわからぬから、にも大臣としては理解をされておられる、こういうふうに承ってよろしいんでしょうか。
  26. 嶋崎均

    嶋崎国務大臣 非常に難しいことだと思うのですが、今六・六問題、私、法務大臣としては、判決の経緯もあるわけでございますから、ぜひとも定数改善措置はやっていただきたいというふうに思っておるわけでございます。しかし、この問題をめぐる与野党の議論はなかなか厳しいものがあるようでございまして、その問題を何としても解決をいたしたいというような気持ちが一方にあるわけですし、片方違憲判決があるというようなことで何とかこれを早く解決していかなければならないな、そういう気持ちだけで言っておられるのであろうというふうに思っておるわけでございます。
  27. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いや、早く解決するのはいいんですが、取り急ぎやるということは、それは内容としては完全ではないけれどもということが前提になるわけですよ。内容としては完全ではないけれども取り急ぎやる、こういうことでないと日本語としてならないわけなんですよね。これはちょっと理詰め過ぎるというか、無理な質問かもわかりませんけれども。だから、内容が不完全だということを結局中から物語っておるのではないかというふうに私は理解をしておるわけですが、それについて今それ以上お聞きしても、これは十六委員室で今やっているところですから、ここでやるあれじゃないかとも思うわけです。  そこで、私、本会議質問したのに対して、これは総理からも答弁が余りなかったのですけれども、こういうのがあるのです。それは五十七年の三月十五日に公明党の大川さんが参議院質問していることに対する鈴木総理大臣答弁、これは同時選挙についての答弁なんですが、鈴木さんはこういうように答えているわけです。「五十五年の衆参同時選挙についてのお尋ねがございましたが、これは全く当時大平内閣としても意図してああいうことをやったわけではございませんで、たまたま不信任案通過をした、わずか二週間足らずの間に二度も投票日国民皆さんに足を運ばさせる、煩わすというようなこともどうかというようなことでああいう結果になったわけでございます。いろいろそれにつきまして一長一短、御批判があるわけでございます。私どもは今後そういう御意見を十分踏まえまして慎重に扱っていかなければならないものと、こう考えております。」こういう鈴木総理答弁がございます。これは中曽根さんに聞いたら、中曽根さんは解散なんて考えてないということで、これについてはまともに答えられなかったわけです。まともに答えないのも一つの答えだと私は思っているわけですけれども、この中に鈴木さんが言っておられるのですけれども、法を預かる法務大臣として、あるいは国務大臣としてでも結構ですが、結局これはたまたまそういうような状況があったからやったのであって、これを読んでまいりますと、何と申しますか、本来やるべきものではないのではなかろうかというような意味のことがこの中に含まれておるようにも私、考えられるのです。たまたま不信任案通過をした、そして二週間足らずの間に二度も投票日国民皆さんに足を運ばせるという特別な事情があったからこそこういうふうなことになったので、本来は衆議院参議院の性質なりなんなりが違うということからいいましても十分慎重に考えなければならないことではないか、こういうふうに鈴木さんは言っておられるわけですね。鈴木さんがあなたの、大臣のところのキャップだとかなんとかということを抜きにいたしましても、それはそれとして、こういう点についてはどういうふうにお考えになられますか。
  28. 嶋崎均

    嶋崎国務大臣 御承知のように、参議院の場合には一人の人が六年、三年ごとに交代で行われるという選挙先ほど説明がありましたように、ほとんどその任期内に選挙が行われるというのが通例ということになっておるわけでございます。衆議院の場合は、御承知のように選挙をやれば四年間という一応の期間が予定をされておるわけでございます。したがいましてそれが同時、合致して行われるというようなことは、なかなか異例なことではなかろうかと私たちは思うのでございます。したがって一般論としてそれがもう当然のことであり、またそういうことがあっていいんだということにはならない事柄であろうというふうに思います。  今御指摘昭和五十七年三月十五日の鈴木総理答弁というのは、実はまことによくできたお答えではないかというふうな感じも逆にするわけでございます。私たちもあの当時のことを思い起こしまして、到底不信任案が可決されるというふうにも思っておりませんでしたところ可決されたわけでございまして、そういう意味では全くそういうことを意図しておったわけではないということは明白なことであろうと私は思うのでございます。しかし、「たまたま不信任案通過をした、わずか二週間足らずの間に二度も投票日国民皆さんに足を運ばさせる、煩わすというようなこともどうかというようなことでああいう結果になったわけでございます。」ということで、しかもまだ一長一短、論議があるというようなお答えをされておるわけでございます。したがいまして私は、そういうことは全く異例のことでありまして余り想定をすべき性格のものではないし、また中曽根総理大臣がこの十月の十六日に、先ほどお話がありましたように、「衆参同時選挙のことでございますが、御関心の衆議院解散問題は考えておりませんので、衆参同日選挙についても考えておりません。」というお答えよりは、よほど突っ込んだお答えになっているんじゃないかと思うのでございます。  私たちとしましては本当にそういうことは予定して行動すべきことではないと思うのですが、何しろ政治の世界というのは私たちよくわかりませんが、ハードが余りなくてソフトばかりの世界のようにも見受けられますので、なかなかその処理というのは難しかろうと思うのでございますが、一般論としてはそういうことはないというぐあいに理解しておいていいのではないかと思います。
  29. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 この問題についての質問はこれで終わりますが、最後に今ここで答えをという意味ではございませんが、解散の問題に関連いたしまして憲法六十九条の不信任案が通ったときの場合、それと七条の内閣の解散権、この場合の両者の関係が一体どういう関係になるのか、こういうことが今後大きな問題になってくるというふうに私は思うわけです。ただ七条解散というのがずっと行われておりますから、今さら七条解散憲法違反だとかなんとかかんとか言ったってしようがない話なんですが、この六十九条が原則で七条はむしろそれを受けてのというか、趣旨を受けてのあれではないかというような見方もあるわけですね。御案内だと思いますが、今月の雑誌にその論文がよく出ておる。そういうようなことを含めまして、法制局の方でもよく研究をしていていただきたいというふうに思います。きょうということではございません。  もう一つの問題なんですが、これも私にはわからない問題が非常に多いのですが、まずどういうふうに聞いたらいいでしようか、刑事局長あるいは民事局長にお聞きしたい。どちらでも結構なんですが、人間の死ということについてちゃんと定義を下しておる外国の立法例というふうなものは果たしてあるんでしょうか。あるとすれば、アルゼンチンのは何かいろいろあってよくわかりますけれども、その他アメリカにしろフランスにしろイギリスにしろ、アメリカは州によって違いますけれども、そこはどういうふうになっておるのですか。
  30. 筧榮一

    筧政府委員 何分外国のことでございますので詳細は私ども承知しておりませんが、承知しておる限りでお答えしたいと思います。特に刑事法に関して私から申し上げたいと思います。  アメリカは各州によって違うわけでございますが、ごく少数でございますが一部の州では刑事法に死の定義規定を置くものがございます。そのほかには臓器の提供法でありますとか移植解剖法などのいわゆる臓器移植の関連法令において死の定義を規定しているという例が多いようでございます。国としてはいろいろございますが、移植関連法令ではアルゼンチンとかギリシャ、ノルウェー、スペイン、それからアメリカの幾つかの州というものがございます。刑事法ではアメリカの二つの州で定義規定が設けられておるようでございます。
  31. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 民事局長、どうでしょうか。
  32. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 私ども外国の例は余り存じておりませんが、大体刑事局長答弁のような知識程度しか持っておりません。
  33. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると日本の場合は心臓の死で、三つの要素を充足したときにといいますか、それを死とするということになっているわけで、ずっとこう来ているわけですね。それは刑事局長、将来医学の進歩あるいは国民のコンセンサスの変化の中で例えば脳死をもって死と考えるというふうなことも、それはもう時代の変化というか、殊に国民の死に対する考え方、倫理観といいますか、法律観、あらゆるものがずっと変わってくるということも前提になるわけですけれども、そういうふうなことも考えられるかもしれないということですか。
  34. 筧榮一

    筧政府委員 御承知のように、我が国では死の定義を定めた法律規定はございません。それで従来の扱いとしては、今稲葉先生指摘のようにいわゆる三徴候説、心臓死をもって死とするという例になっておるわけでございます。それでいわゆる脳死を法律規定するかどうかというような問題が最近提起されておるわけでございますが、やはり死というのは個体である人間の崩壊過程といいますか、いわばその一つの過程でございますから、その過程の中でどの時点、一点をとらえて死と認めるかということでございます。基本的には医学の問題であり、さらにその問題はいろいろな法律分野にも影響いたしますとともに、国民の生命観、倫理観あるいは宗教観等に深く連なるもので、やはりその背景には国民の合意というものがなければならないと思うわけでございます。  したがいまして、今後の発展で医学の技術が進みあるいは今の国民的なコンセンサスが得られました場合に、医学の実務におきましてももちろん基準等もはっきりして、脳死というものが死であるというふうな国民的コンセンサスが得られました場合に、今の三徴候説にかわって脳死というものが法律上も死と扱われるということは考えられないことはないと思います。  ただその場合にも、それを法律規定するかどうかというのはまた別の問題でございまして、イギリスでしたかどこでしたか、それは実務上はもう脳死をもって死と認めるという扱いにすると同時に、それを法律規定することは固定するものであって医学の進歩にも障害になるというような意見もあるようでございます。  そういう点で、今後の医学の進歩あるいは医学界のコンセンサスの形成あるいはその背景としての国民の合意というものがどういうことになるのか、それを見きわめた上で法律に置くかどうかという点も検討しなければならないと思いますが、私どもとしては、やはりこの問題は法律で画一的に規定すべき問題ではないのではないかというふうに現在考えておる次第でございます。
  35. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 今お話があったのは、米澤参事官の講演があれになっていますからそれを読みますと、イギリスの例がよく引いてあって、今おっしゃったような形で結論を出しておるわけですね。私もそれが一番いいことではないかというふうに考えるわけですが、それはそれといたしまして、今度は厚生省の脳死に関する研究班が研究報告をまとめて公表されましたね。これは経過は大体わかってはいるのですけれども、どういう意図でこういうふうなことを発表されたわけですか。何かを特に企図しておられるということなんでしょうか。経過を含めてお話を願えればと思います。
  36. 多田宏

    ○多田説明員 脳死の判定基準につきましては、昭和四十九年に日本脳波学会の方で脳死と脳波に関する委員会というのが基準を作成しておりました。それ以来既に十余年たっておりまして、この間に脳死の病態解明あるいは症例の蓄積あるいは新しい検査法の開発など医学、医術に関して顕著な進歩がございました。また国際的に見ましても、一九八〇年代になって各国におきまして公的な基準というものが次々と発表になっているといったような状況がございます。こういった新たな状況が見られましたために、私ども厚生省といたしましても、昭和五十八年に脳死に関する研究班というものに対しまして判定基準等に関する検討をお願いをするということにいたしまして、今般その報告をいただいたというような状況でございます。
  37. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 これは研究班のレポートであって法的拘束力は持たない、これはそのとおりでございますが、こういう研究班のあれがいわば一つの、法的拘束力は持たないけれどもオーソライズされたような格好で出てきておるわけですが、刑事局長、今告発されていますね。あれは水戸一に行っているのですか、あるいは土浦支部に行っているのですか、二つ出ておるようですね。こういうふうなものの経過と、それを結論出すときに、今度のこの判定基準といいますか、こういうふうなものは一つの参考になるということですか。それは今告発されている事件ですから、それについてこうだこうだということをあからさまにあなたの方でもおっしゃるわけにいかぬでしょうし、その点は私もよくわかりますけれども、差し支えない範囲で御説明を願えればと思います。
  38. 筧榮一

    筧政府委員 御指摘の事件は現在水戸地検本庁において捜査中でございます。最初に告発されました事件のほかに、最近今度は移植を受けました方の人が亡くなられたことに対する殺人等で第二次の告発が出ております。被告発人は一名違うようでございます。今鋭意捜査中でございますが、ただいまの研究班の報告書につきましても、一つの参考として当然検討の対象に入るというふうに考えております。
  39. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 私もこの問題の患者の方やお医者さんに会っていろいろお話を聞いたり報告などさせていただいたりしておるわけなんですが、そこで現在、重度の心筋症や肝硬変などで移植によるほかに助かる道のない患者が全国で年間約一万三千六百人もおられるという話が報ぜられているわけですね。そうすると、こういう患者の人たちに対しまして一定の基準を設けて、今は腎臓と角膜だけに移植の法律があるわけでしよう、これをほかのものにも広げるとか、そういう腎移植の法体系というものをさらに拡充をするとか、こういう意向は厚生省側にあるのですかないのですか、どうなんですか。
  40. 多田宏

    ○多田説明員 現在、先生指摘のように角膜及び腎臓の移植に関する法律というのがございまして、これは当時の医学水準、移植の状況を踏まえてその対象を角膜、腎臓に限定するというところでございまして、他の臓器に関しては今のところ法制的な整備はされておりません。  ただ、これ以外の臓器につきましてこうした立法措置を行うべきかどうかという点につきましては、これまでの角膜、臓器に関する法律議員立法で行われておるというような経緯、また国民の倫理観とか宗教心みたいなものに割に密接に関係する部分が多くなってくるというような問題がございますので、行政庁としてこれを積極的に判断を下して行動するということにはやや慎重であるべきだというような気持ちで現在おるわけでございます。
  41. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それはどうして行政庁としては慎重であるべきだ、こういうことですか。そうすると、いかにも議員立法だから荒っぽくて、と言うと言葉が悪いかもわからないけれども、そこら辺のところはどうなんですか。
  42. 多田宏

    ○多田説明員 今申し上げましたのは、議員立法だから荒っぽいという意味で申し上げたのではございませんで、むしろ法律を執行することを基本的な任務としている行政の立場から、積極的に国民の倫理観みたいなものに非常にかかわりの深い問題を、こういうふうにすべきだというような提起をして進んでいくということにやや慎重であるべきで、そういう問題意識から、恐らくこれまでのそれにかかわるような例えば死体解剖保存法ですとか献体法ですとか、そういったものも皆議員立法で行われているというようなことでございますので、やはり行政国会の若干の立場の配慮といいますか、そういったものがあったのではないかというふうに思っておるということでございます。
  43. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 厚生省の「厚生科学研究費 特別研究事業 脳死に関する研究班 昭和六〇年度研究報告書」というのをいただきました。難しくてとても私ども素人にはわからないのですが、きのうも説明をいただき、新聞などの社説や何かいろいろなものを読ましていただきまして、私どもも関心を持っておるわけです。議員立法でずっと来ているということならば、それをどういうふうにして、ここはまた難しいと思いますけれども、いずれにいたしましても、議員の我々ももっと関心を持って進んでいかなければいけない、こういうふうに考えておるわけです。  そこで、ちょっと時間があれしましたので、民事局長せっかくおいででございますから、来年度以降におきまする民事局関係の立法作業、例えば商法もあるし借地・借家法もあるとか、その他のものもあるかと思うのですけれども、どういうふうに現在進んで、将来どういうふうな方向に行く、あるいは特別養子の制度もありますね、ああいう点についてちょっとお話しいただけませんか。
  44. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 民事局関係の立法作業は各方面にわたって進めておりますが、法制審議会の部会の編成に従って申し上げますと、まず民法部会の中の財産法小委員会の関係では借地・借家法の改正問題を取り上げております。これはまだ本格的な審議に入っておるというわけではございませんで、各方面から提起されている問題点を整理いたしまして、それに対する各界の御意見を伺おうということにしている段階でございます。その御意見を来年の四月にはいただくということでお願いをいたしておりますので、それが寄せられましてから本格的な審議に入るということで、どういうふうな方向でいくかということもまだ決まっておりませんので、成案を得るにいたしましてもかなり先のことだろうと思います。  その次に、民法部会の中の身分法小委員会では五十七年から養子制度の見直しの審議を行っておりまして、その内容は特別養子というものを創設しようということを中心とするものでございますが、これにつきましては中間的な案がまとまりましたので、過般その中間試案を公表いたしまして、これまた各方面の御意見を伺うということにいたしております。これも来年の四月には御意見を寄せていただくようにお願いをいたしておりますので、その御意見を伺った上で詰めて成案を得たいという努力をするつもりでおります。この身分法の関係につきましては、早ければ六十二年の三月ごろに法案が提出できることになるかもしれない、あるいは各方面の御意見がいろいろ出てまとまるのに時間がかかれば、もう一年先になるかもしれないというような状況でございます。  その次は商法関係でございますが、これは過般来から当委員会でも御議論いただいておりますが、大小会社の区分の問題を中心とする会社法の改正でございまして、これは現在、中間試案をまとめるべく鋭意審議を進めておりまして、来年の半ばごろには一応の中間試案がまとまるのではないかというふうに思っております。そして中間試案がまとまりました場合には、これまた公表いたしまして各方面の御意見を伺うという手順にいたしたいと思います。それもかなり議論のある問題が多うございますので、成案を得るのにはまだ二年、三年はかかるのではないかというふうに考えております。  その次に、民事訴訟法部会の関係でございますが、これは保全処分の見直しをやっております。保全処分というのがなるべく機能的に動くようにするにはどういう方策があるかというふうなことで検討をいたしておりまして、これも二年ぐらい先に成案が得られるように努力中でございます。  それからもう一つは国際私法部会でございますが、法例の見直しをしております。この法例の見直しの中で身分法関係について、最近でも国際結婚その他のことが多うございますので、その部分を中心として検討をいたしております。それからまた法例のほかに、御承知だと思いますが、ハーグに国際私法会議がございまして、そこでいろいろ準拠法についての条約ができております。その中で扶養に関する条約について、日本国は署名いたしておりますが、まだ批准が済んでいないというものがございますので、これをその法例の検討と並行いたしまして特別に検討いたしておりまして、この扶養関係につきましては、次の通常国会で条約の批准とそれから国内法の制定というふうなことで御審議をお願いすることになるのではなかろうかと思っておる次第でございます。  以上が民事関係の基本法に対する立法作業の現況でございます。
  45. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 刑事局長、私この前質問しようと思っておって通告しておいたのですが、なかなかすぐいかぬことですから、これはゆっくり研究をしていただきたい、こう思うのです。どういうことかといいますと、この前もお話ししてありますけれども、例えばアメリカ、イギリス、西ドイツ、こういうところにおきまする検察官制度の特徴と、それからそれらの国において現在問題となっておる刑法や刑事訴訟法の改正の問題です。その改正と同時に、法律はこう書いてあるけれども実際の運用はどうも違うという場合が非常に多いわけですね。私、西ドイツヘ行っていろいろ聞いたときにも、どうも法律と実際の運用とは違うというようなことも言っておられますので、そういうことをめぐる諸問題についてじっくりいろいろな角度から、これはみんな法務省のアタッシェがおるところですからね、ゆっくり研究をしていただきたい、こういうふうに思うわけです。  それで、刑事局長には非常に長い間御苦労さまでございました。私、例えばヨーロッパのある大使と会って話したら、こういう話をしているわけです。その人が一番うれしかったのは、政府委員のバッジをもらったときが一番うれしかったというのですが、もっとうれしかったのは、そのバッジを返したときが一番うれしかったというのです。もう国会で意地の悪い質問を受けなくて済むと思ったら、そのバッジを返したときが一番うれしかったという話をある大使がしておられたのです。刑事局長、本当に長い間御苦労さまでございました。  これをもって質問を終わります。
  46. 片岡清一

    片岡委員長 三浦隆君。
  47. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 初めに、帝銀事件の死刑確定囚平沢貞通の救済問題についてお尋ねをしたいと思います。  この問題については前にも質問さしていただいたことがあるのですが、このところ平沢武彦さんという方から、平沢貞通さんの御関係の方だと思うのですが、お手紙をいただきましたので、その趣旨を生かしながらお尋ねをさしていただきたいと思います。  来年四月に天皇御在位六十年の祝賀式典が挙行されるわけでございまして、この祝賀行事に寄せて死刑囚平沢貞通に対する恩赦による救済ができないものだろうか、少なくとも検討してもよい問題じゃないのだろうかなと考えますので、その点について初めにお尋ねいたします。
  48. 俵谷利幸

    ○俵谷政府委員 お答えいたします。  御質問の趣旨は、天皇御在位六十年に当たりましてということでございますので、あるいは政令による恩赦ではなかろうかというふうに思うわけでございますが、この問題、いわゆる政令恩赦にっきましては内閣の所掌されるところでございますので、私どもでは直接関係するわけではございません。事務当局といたしまして若干の関与をするということになるわけでございまして、内閣でどのようにお考えになっているかは私の方から申し上げる筋合いでございませんが、法務当局といたしましてはそのような際に政令恩赦をするというようなことは考えておりません。  以上でございます。
  49. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 答えられない方に出ていただいてもしょうがないので、内閣であれば、質問要旨を担当者の方に渡しているわけですから、恩赦を行う行わないの決定はともかくとして、責任を持って答えられる方に出ていただかなければ質問が成り立たないのじゃないか、前提がきょう少し狂っているなという感じです。きょう急に質問しているわけじゃございませんで、あらかじめ、こういう質問をするので委員部において答えられる人をとお願いしていたわけですから、その点ひとつよろしくお願いしたいと思います。そうすると以下の問題についても同じことになるのじゃないでしようか。しかし、今度の方が少しは法務省関係かと思います。  死刑囚の平沢貞通という人は九十四歳の高齢に達しているということですので、この際九十四歳の高齢者という理由でもって絞首の執行あるいは拘置の停止を検討してもらうわけにはいかないのだろうかという問題、いかがでしょうか。
  50. 筧榮一

    筧政府委員 刑の執行停止に関しましては、現在の刑事訴訟法では幾つかの規定があるわけでございます。その一つが刑事訴訟法四百七十九条一項にありまして、この場合には「死刑の言渡を受けた者が心神喪失の状態に在るときは、法務大臣の命令によって執行を停止する。」必要的な執行停止となっておるわけでございます。この規定を準用して、九十四歳ということを考えて執行を停止すべきではないかという先生の御意見であろうかと思います。この点につきましては、心神喪失という状態と九十四歳の高齢ということはイコールではない、つまり九十四歳でありましても精神状態は通常であるという場合に、高齢であるという理由だけで心神喪失の状態の規定を準用することは法律上無理ではないかというふうに考えております。心神喪失者に対して執行を停止するという趣旨は、裁判に基づいて生命を絶たれるということに対する認識がないというのが心神喪失者であるわけでございまして、そういうことでこの規定の趣旨があるわけで、高齢者ということで直ちにこの規定を準用することは法律上は無理ではないかというふうに考えております。  それからもう一つ、執行停止という規定考えてみますと、刑訴の四百四十二条のただし書きで、再審の請求をした場合、再審の「管轄裁判所に対応する検察庁の検察官は、再審の請求についての裁判があるまで刑の執行を停止することができる。」という規定がございます。これは任意的な執行停止の規定でございます。これを平沢の場合に当てはめることができないかという御意見もあろうかと思います。この点につきましては、ただいま申し上げました四百四十二条ただし書きの趣旨は、本来「再審の請求は、刑の執行を停止する効力を有しない。」とされておりますけれども、まれな場合、例えば真犯人の発見その他の理由によりまして再審の結果無罪になるという蓋然性が極めて高くなるというようなことも考えられるわけで、そういう場合には、その時点で諸般の事情考えて刑の執行を見合わせるのが妥当ということもあり得るわけでございますので、そういう場合に検察官がその裁量で執行停止をするということであろうかと思います。  ところが平沢の場合には、これまで十六回再審請求を出しておりましていずれも退けられておるという状況から考えましても、真犯人の発見その他の特段の状況があったとは認められないというところから、検察当局におきましてもこの停止は相当でないと判断していると承知しているわけでございます。
  51. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 死刑執行停止の四百七十九条は、今のお答えの「心神喪失の状態」云々という言葉のほかにも、女子の懐胎理由とか例示があるわけです。そしてまた、心神喪失の状態が回復した後であろうと出産の後であろうと、法務大臣の命令がなければ執行することができないとも書いてあるのでして、ここには健康への配慮とかも深くかかわっていることだろうと思います。一方には、日本ではこれから高齢者社会を迎えますけれども、お年寄りを尊重しよう、いたわろうというのが法律よりも何よりもまず根底にあることなんじゃないだろうかと思うのです。刑法なり刑事訴訟法は日本がまだ高齢化社会を迎える前のものだと考えていけば、戦後この方急速度に高齢化社会を迎えているわけですから、新しい時代に即応した、場合によっては刑訴法改正も踏まえて、そうしたいたわりがあってもいいと思うのです。今の答弁ですと、これまで何回も繰り返したのと同じことであって、そこから一歩も抜け出ることができないと思います。法は何のためにあるものなんだろうかという根底の問題に振り返ってみて、まさに高齢化社会の新しい時代の到来の必然性をうたっているわけですから、それにふさわしいように何らかの対応をぜひ考えてほしいと思います。でないと、年とった、心神喪失も健康だからだめだというと、逆に健康であったことがマイナスだったのか、まともな精神状況であったのがかえっていけなかったのかと言いかねない状態も出てくると思いますし、このままでは法務大臣による死刑の執行もないままにいたずらに獄死するのを待つばかりというような、そんなまことに非情な感じを受けないでもありません。  そこで、特例法制定の問題なんですが、特別に高齢者を対象とした例えば死刑執行停止特例法というようなものを検討されることはできないだろうか。年齢については最初九十五歳でいってもよし、九十歳でいってもよし、行く行くはもっと下げても結構でありますが、ともかく九十歳を超えた人を改めて死刑の執行を行うのは穏やかなことではないだろうと思います。特に、多年にわたって入っていたわけですから、そういう点では十分に罪の償いはし尽くしているようにも思うのです。言うならば、高齢者になって犯罪を犯して急に入ったという事例ではないのでありまして、まさに人間のほとんど一生をかけて刑務所に入りっぱなしでいたのだということも勘案した、そうした趣旨を踏まえた死刑執行停止特例法といったものでも制定されるような検討をしてみるお考えはないでしようか。
  52. 筧榮一

    筧政府委員 三浦委員の御意見一つの御見解と考えております。しかし、一般に申し上げまして、法律上高齢のゆえをもって死刑の執行を停止するという措置を定めますことは、遺憾ながら高齢に達してから犯罪を犯す人もあるわけでございまして、高齢に達してから死刑の言い渡しを受けた者との均衡などいろいろの問題が生じようかと思います。ひいては高齢者に死刑空言い渡すことの適否自体が問題ともなりますし、さらに年齢が高齢になりました場合に、一定年齢まで審理あるいは執行の引き延ばしを図るというような弊害も観念的には考えられるわけでございます。  いずれにいたしましても、高齢であるという理由だけから判断すべきではなくて、個々の事案についてそれぞれ諸般の事情を考慮して、真に死刑の執行を相当としないというような事情があります場合には、例えば恩赦等によって対応するのが妥当であろうというふうに考えております。
  53. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 既に現行法の中でも高齢者を特に対象とする法律の幾つかの規定があるわけです。そういうことを考えて、これまでなかったからというのではなくて、これからということで検討してほしいという意味でございます。  きのうの質問でしょうか、主観、客観は別にして裁判官が正しいのだというふうな判断をしたことと、一般の民衆が果たしてそれで妥当なんであろうかといった、いわゆる裁判官の考えている生き方と民衆の考えている生き方、常識が食い違うことは余り好ましいことではないのだと思います。日本ではお年寄りを散った方がいいのだ、お年寄りはかわいそうなんだというふうな思いが強いし、またそれは正しいことだろうと思います。私は、特に平沢と限ったことでなくて、一般の問題として例えば九十歳を超えた方の救済のための何らかの法ができないだろうかということを今お願いしたわけですが、仮に平沢の場合に限って言えば、まさに何人もの方がこれまで追及したように、本当に真犯人であるかどうかすら何となく疑わしいようなムードがある。少なくとも死刑の執行をためらうような要素がある。何回も再審が出てくるのですが、それを断るとまた出てくる。本人も認めたくないというか、認められない何かがあったかもしれないわけでして、そんなことも考えていただいて、これまではこれまで、ひとつこれからということで十分に御検討をいただきたいと思います。  それから、突然法務大臣を指名して恐縮なんですが、今恩赦についてお答えがなかったものですから、閣議その他の場においてでも結構でございますので、きょう法務委員会で改めて平沢の問題が話題になった、いわゆる高齢者である平沢に対する恩赦を何か考える余地がないだろうか、特に来年は天皇六十年という極めて節目のある大変すばらしい祝賀のときだと思うのですね。そうした意味でも天皇の名における恩赦というものを考えてほしいと思うのですが、そういう意味での御発言していただけないでしょうか。
  54. 嶋崎均

    嶋崎国務大臣 ただいまの御質問の第一点でございますが、平沢の問題につきましては、御承知のようにこの三十年問題というようなこともありまして、私自身もいろんな意味で真剣に検討をさせていただいた経過があるわけでございます。今御指摘のような御議論もありますけれども、いろんな過去の書類等を検討をしてみますと、どうもこの事案についてはそう簡単な話ではない。どうも一般には、相当過去のことでございますから検察官になっておる人もあの事件の内容を知っておらないというようなことすらあるので、やはり部内の話でもそういうことについてはきちっと一遍整理をしておかなければいけないんではないかというような扱いで、中でもいろんなそういう整理を進めてきた経緯もあるわけでございます。したがって、これを理由にそういうお話を申し上げるというようなつもりは余りありません。  それから二番目は、天皇御在位六十年の問題につきましては本年の二月の二十五日の日に官房長官が発言をされた経緯があるわけでございまして、その中では「今恩赦の問題につきまして御指摘がございましたけれども、したがいまして御指摘の御在位六十年記念恩赦につきましても、現在考えていないというふうにお答えを申し上げなければならぬかと思います。」というのがありまして、なお書きがありまして、「なお、さらにお話のございました憲法の五十年、将来のことにわたりますので、どういう機会に恩赦をするかということにつきましてきちっと決まった何か法定したものがあるわけでもございませんので、やはりその時期が参りましたときの判断ということになろうかと思いますので、今から予測をして意見を申し上げることは控えさせていただきたい、このように考える次第でございます。」という非常に丁寧な答弁があったように思うのでございます。  今、これらの問題につきましてはまさしく内閣の責任の判断の問題であろうと思いますので、この問題を閣議の度等で取り上げるのが適当であるとは私は思っておりませんけれども、非常に重要な時期を迎えておりますので、これらの問題については十分検討されることであろうかというふうに推測をしておる次第でございます。
  55. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 ほかに例えば時効というふうな制度があった場合ですね。仮に事実であったとしても、何年か過ぎ去るともう振り出しに戻ってよく調べることも難しいしということで、むしろ被告人に有利な側に立ってそういう制度がつくられておる。ところが平沢の場合には逆に何回再審しても、大分昔のことだからもう調べても事情がつまびらかでなくなってしまうという意味ではマイナスに働いてしまうということですね。やはり年と時の経過というのは大きな意味を持っているなというふうに思います。そういう意味では時効という制度その他もあることですから、平沢問題についてはまだ別の角度からひとつ御検討いただければ幸いだというふうに思っております。  次に、教誨師の問題についてお尋ねをしたいと思います。  教誨師制度は明治十四年、一八八一年の監獄法改正のときに始まったというふうに言われておりますが、教誨師の人数はおおむねどのような過去から現在にわたる推移をたどっているんでしょうか。また、行刑施設及び少年院において教講師の宗教上の色分けはどうなっているのでしようか。また、それらは時代によって特別な違い、特色とでも言うものが見られるものかどうか、ひとつ矯正局長お尋ねしたいと思います。
  56. 石山陽

    ○石山(陽)政府委員 我が国で教講師あるいは教誨師という言葉法律上の用語として定着いたしましたのは、まさに三浦委員指摘のとおり明治十四年の監獄則の改正のときからでございます。遺憾ながら当時の統計資料が不十分でございまして、明治時代から大正時代にかけましての監獄に常駐しておりました当時公務員でありました教誨師の数がどうであったかという点につきまして必ずしもつまびらかにいたしておりませんが、最近の資料によりますると、例えば十年ほど前、昭和五十年当時の監獄教誨師は千七百十五人おりました。現在千七百十六人、ほとんどこの十年間に異動はございません。  それから中身でございまするが、やはり仏教関係の教誨師さん、神道関係の方それからキリスト教関係の方と、こういうふうに分かれております。大体パーセンテージで申しますると仏教関係の方が一番多うございますが、神道関係の方もそれに次ぎ、次がキリスト教関係の方ということになります。数字を後で必要でございましたら改めて申し上げまするが、大体キリスト教関係の方が一〇%台、それから仏教それから神道関係の方がたしか二、三〇%台というふうに記憶いたしております。
  57. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 宗教的な信条として仏教を信ずる人もキリスト教を信ずる人も神道を信ずる人も、まあそれぞれだと思うのですが、そうした場合に、この教誨師さんというのはどういう資格であるいはどういう手続で教誨師という資格を得ることができるのかあるいはなることができるのかということをお尋ねしたいと思います。  それからなお、仏教とキリスト教、神道との色分け、私の方の調べですと行刑施設ではお答えのとおりなんですが、少年院では神道とキリスト教とは逆の立場じゃないかなというふうに思います。しかしそれは細かいことなんでして、むしろ教講師さんにはどういう人がなれるのか、その点についてお尋ねしたいと思います。
  58. 石山陽

    ○石山(陽)政府委員 先ほどの御答弁で、まず数字的なものをちょっと正確に申し上げたいと思いますので、お許しをいただきます。  昭和五十九年現在で仏教関係の教誨師の方--失礼しました、六三%おられます。内訳で言いますと千百一人でございます。それからキリスト教関係の方が二百七十人、率で申しますと一六%でございます。それから神道関係は三百三十八人、二〇%、その他の関係の方が一%、合計千七百十五人というのが正確でございます。パーセントで先ほどちょっと憶測で申し上げました点はおわびして訂正させていただきます。  まず教誨師になるためにどういう資格要件が要るかということでございますが、これは宗教に従事されておる一般の僧侶の方、キリスト教の牧師あるいは神父の方あるいは神道関係の神官の方、こういう方々であれば、特別の宗教経歴その他についての資格要件はございません。  大体選考の手続といたしましては、各施設ごとにそれぞれ被収容者の宗教的な要望を聞きまして、それらに見合う方々を、通例でございますると全国教誨師連盟の地方の支部であります県教誨師連盟というのがございます。そこへお願いいたしまして、適当な宗教家の方を御推薦いただいております。それらによりまして御推薦いただいた方に施設長から委嘱申し上げるというのが普通のやり方でございます。
  59. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 いわゆる行刑施設では神道の方がキリスト教よりも多く、少年院の場合には神道よりも逆にキリスト教の方の方が多いんですけれども、これは少年院に限ってキリスト教の方が多くなるという理由は何かあるんでしょうか。
  60. 石山陽

    ○石山(陽)政府委員 確かに委員仰せのように、少年院施設でございますると現在キリスト教関係者が七十人おいでになり、神道の五十四人の教誨師さんより多い。それから行刑施設関係でございますると、キリスト教の教誨師さんが二百人で神道関係者が二百八十四人とこれは逆転現象いたしております。これは特な理由というのは私どもつまびらかにいたしておりませんが、大体少年院の施設等で昔キリスト教関係者が非常に熱心な活動をしていただいた、それが伝統となっている施設というのは各地にかなりございます。そういった影響がありまして、比較的少年院施設におきましてはキリスト教関係者の教誨師さんが多いのじゃないかというふうに私推測いたしております。
  61. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 教誨師さんに対する待遇はどうなっているのでしょう。
  62. 石山陽

    ○石山(陽)政府委員 教誨師さんは、先ほども申し上げましたように全く民間の篤志家のボランティア活動と申し上げてもよろしいかと思います。現在、国がいわゆる宗教行事に直接金を出すことはできないという形で、いわば宗教と行政の分離が新憲法によって確立されましてから、それまで国家公務員でありました宗教教誨師が民間の篤志家の宗教家のグループによって教誨活動をしていただくという格好になっております。したがいまして、まず国から給料あるいは補助金といったものは一切出ておりません。そこで私どもといたしましては、宗教教誨をしていただく方たちに対しまして一種の謝金といたしまして、民間のボランティア活動と同じような形での、おいでいただきました際に実費的な交通費程度をお礼として差し上げておる、あとはすべて奉仕活動にお願いしておるというのが実情でございます。
  63. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 教誨師さんが宗教教誨活動を通じまして刑務所の中でいろいろな囚人の方と知り合うわけですが、問題は、その知り合った囚人の方が出所後教誨師さんの自宅に訪ねてこられて、宿泊費をよこせ、交通費をよこせ、食費をよこせというふうな名目で金品の寄附を強要するというケースがあるようでして、私のところへ訪ねてこられた方は、よくあるんです、中へ入っている場合と外へ出て家を訪ねた場合は違うものだから、自分自身並びに家族のことを考えながら二度までは黙って出します、三度目のときはもうこれっきりですよと断ります、四度になったときは三度目に断ったじゃありませんかというふうに比較的強く言うことにしておりますと言っておるのですが、必ずしもそうだけとは限らないようであります。ずるずるといって切るに切れない状態というのもあるかもしれません。また、人によっては最初から断るという人もあるかもしれませんが、とにかく、出所して食っていかれないんだとせっぱ詰まって訪ねられた場合には大変怖いというふうな感想を述べている方がいるわけですが、そういう場合の国の対応というのはどういうふうになるものなんでしょう。
  64. 石山陽

    ○石山(陽)政府委員 宗教の教誨活動と申しますると、やはり被収容者物心情の安定あるいは宗教的独立心、信仰の自由、こういうような観点から、被収容者のそれぞれの信仰に応じましてできるだけ施設側は教誨師さんの活動について、彼らの更生に便宜ならしめるためにこのような措置をしているわけでありますが、出所後の被釈放者が教誨師さんのお宅等を訪ねて、今委員指摘のような宗教教誨師さんにとっては大変御迷惑な行動に出るということは必ずしも絶無ではないと私ども聞いております。  そこで、私どもにできます対策といたしましては、まず教誨師さんにおなりいただきますると、それぞれ、全国教誨師連盟の傘下で自主的な研修その他の機会がございます。そういう際には私どもの係官も出席いたしまして、宗教教誨活動に伴いそういったトラブルも予測されるので、こういう場合にはこのようにきちんと対応してほしい、今委員仰せのように一度、二度黙ってつき合うという方もおられるかもしれませんが、できるだけ最初からそういう変なつき合いをしないように、できれば保護観察所その他しかるべき機関に連絡をするようにというようなことを研修の都度申し上げさせていただくようにまず努めております。  それからなお、外へ出ましてから前の縁を頼りまして、余りにも教誨師さんに御迷惑をかけるという事態がありましたときには、事案の内容に従いまして、例えば関係機関に、詐欺的な行為がある、あるいは恐喝的な行為があるというときは、まことにやむを得ませんが通報申し上げまして、しかるべき善処をお願いするようにすべきだというふうにお願いをいたしておるところでございます。
  65. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 筋肉にはそのとおりだろうと思うのですが、出所してこられて、身なりも貧しく、そして人相も厳しい顔をして言われた場合、断ったとします、そのときに、傷つけられたり何かすればそれはもちろん警察に通報すると言うのですが、通報してもけがしたのは治らないし、ひどいわけでして、そこで最初から断ればいいということはわかっていても、事実上断り切れない。それがよほど多額であれば何とか断るかもしれませんが、まあそれほどでもないというふうな場合には、少しの金額で済むものならばと、やはりどうしても断り切れないケースというのが私は出てくるのじゃないかなと思うのですね。そういうふうなことに対する実費補償なんかもある程度考えていかないと、こういうケースは広がらない方がいいのですけれども、もし広がっていくと教誨師さんになる人も考え込んでしまうのじゃないか。大変に奇特な志を持ったすばらしい方たちですけれども、やはりそういう人たちのことも気遣った、教えるだけではなくて、何かもっと、そう迫ってこられた教誨師さん側の立場に立った対策もひとつお考えいただければというふうに思います。  なお、犯罪白書によりますと、宗教教誨というふうなものを通じて「信仰心を培い、徳性を養うとともに、心情の安定を図り、進んで更生の契機を得ることに役立たせようとするものである。無期その他長期刑の受刑者はもとより、短期刑の受刑者や少年院在院者に対しても、再犯防止のために優れた成果を上げている。」という大変すばらしいことなんですが、よりその成果を上げるとしますと、行刑施設あるいは少年院の中における宗教教誨の施設というものの整備がどうなっているか。余りまずいところでは効果も上げづらいでしょうというふうな場合に、各宗教ごとに恐らく教誨の施設は整備されていると思いますが、全国的な状況の中ではどうなっておるのでしょうか、お尋ねしたいと思います。
  66. 石山陽

    ○石山(陽)政府委員 施設内におきます宗教教誨の場、集会場でございますが、これの整備の問題につきましては委員仰せのとおりでございまして、できるだけ宗教的雰囲気にあふれたような設備施設が欲しいものだと私ども常々念願しております。現在、施設の老朽度に応じまして各般でございまして、もう少しきれいな部屋、明るい雰囲気のところにしたいと思いながら、老朽化しているためになかなか意に任せないということもございますので、私どもといたしましてはこれは根本的に、教誨師さんがお通いをいただき被収容者が集まる部屋を含めた施設全体の新営改築問題として今後とも努力して、均一のレベルにしなければならないというふうに考えておるところでございます。
  67. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 全国の行刑施設はすべて、仏教、キリスト教、神道それぞれ別の施設というか部屋、そういうふうになっておりますか。
  68. 石山陽

    ○石山(陽)政府委員 施設によりましては、仏教関係者を集める集会室とキリスト教その他の関係者を集めます集会室等が別に設備されている例もございます。最近はどちらかといいますると、一カ所の集会室でそれぞれ多種の宗教行事が行えるように工夫された集会室を設けている例が多いと聞いております。
  69. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 宗教はそれぞれによって儀式もいろいろと違っておりますけれども、特色を持っていると思うのですね。やはりその宗教上の特色を生かし切れるような施設であった方がいいのじゃないかと思います。  例えば私の地元の横浜刑務所のような場合、これはまことに貧弱そのものですね。本当にうらぶれたというか、みすぼらしいというのでしょうか、この中で宗教教誨活動なんてできるのだろうか。自分の入っている監房よりも教誨の場の方がよければ、自分の入っているところよりはよさそうだとまだ行く気持ちになりますが、まごまごすると今自分の入っているところよりもむしろ教誨施設の方が悪いのじゃないかと思うばかりに実に貧弱な施設なんですね。そうした場合に、篤志家としての教誨師さんがみずからの資金で、あるいは所属している宗教集団の力によって、例えば横浜刑務所の中の、自分は仏教だ、仏教の施設に関してはもう少し金をかけていいものをつくりたいというふうなことはできるのですか。
  70. 石山陽

    ○石山(陽)政府委員 古く明治時代に初めて宗教教誨が制度となりました際には、宗教教誨の黎明期でございましたので、各宗派で非常に熱心な教誨グループ、宗派の本山等が寄附金を募りまして、北海道等の行刑施設に教講堂という名前の建物を建てて寄附していただいたというような例もあったように聞いております。しかし最近は、御存じのとおり宗教と政治あるいは行政の分離という問題もございますので、施設の建物自身はやはり国家財政の上で国有財産として管理すべきものでございますので、こういうものは国の予算をもってできるだけ建てさせていただく。ただ、中に、宗教用の備品と申します祭壇、仏壇、こういったものにつきましては、それぞれ各宗派の御厚志によりまして寄附採納という形で行うことはあり得るかと思います。     〔委員長退席、高村委員長代理着席〕
  71. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 宗教と政治との分離はそのとおりだと思うのですが、今の場合、教誨施設がみすぼらしい、そしてその中で教誨師さんが一生懸命やられているわけでして、その人の立場から、より宗教教誨の成果を上げたいというまことの善意なんですね。ですから、当然寄附的にそうしてあげたい。別にきれいにつくったから金をよこせというわけじゃないのでして、きれいにしたいのだということでしたら、ある程度までその善意は受けてもいいような気がするのです。もちろん、善意を受けないで国の予算で直すというなら、それは最高にいいことでしようけれども、直し切れないでいつまでもいるよりは目先で直した方がいいのじゃないか。もちろん横浜の刑務所のように、全面的に改築した方が、つくりかえた方がいいのじゃないかと思いますけれども、それはまだ先のことでどうなるかわからないことを考えますと、当面もう少し宗教教誨の施設を整備充実するという方向で何かお考えいただいた方がいいなと思います。  次に、宗教教誨の方法についてですが、同施設内において余人を交えませんでいわゆるマン・ツー・マンで行うものか、あるいはそのときに刑務職員の人が同席するものかどうか、これをまずお尋ねしたい。それから、宗教教誨を行っているときに湯茶などの接待というものもあり得るものかどうか、お尋ねしたい。
  72. 石山陽

    ○石山(陽)政府委員 宗教教誨は、被収容者が集会室に集まりまして宗教家の方と一緒の席で隔てなくいろいろな宗教上のお話をいただくという建前でございます。大体教誨の方法には個別の宗教教誨と集団宗教教誨の二つありまして、そのいずれの場合も、教誨師さんの心身の保護という観点もございますので、目立たないように隅に職員が立ち会うというのが原則でございます。しかしながら、場合によりますれば個別教誨等の場合に、特にこの被収容者につきましては一対一で教誨師さんとじっくりお話しさせた方がいいという場合には、運用上は立ち会いをつけないこともできるような定めになっております。  それから次に、湯茶の接待の関係でございますが、集団、個別教誨におきましては、教誨時間中には、いわゆるお茶を飲みながらという行事は普通はやっておりません。     〔高村委員長代理退席、太田委員長代理者席〕 ただし、教誨活動の一環といたしまして、施設の誕生会というような名目で被収容者の誕生日ごとのグループを集めまして、教誨師さんにその席でいろいろなお話をいただくようなときがございます。そういうときには、施設側の配慮によりまして湯茶あるいは簡単なお菓子等を提供してやる場をつくる、こういう活動もございますので、そういう場合には湯茶の接待をすることもございます。
  73. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 次に、教誨師さんの平均在任期間は、昨年度ですと十三・七年といいますか、十四年弱のようでございます。そういう意味では必ずしも在任期間が長いとは言えないのですが、そうした教誨師さんを対象とした表彰関係というのはどうなっているのでしょうか。
  74. 石山陽

    ○石山(陽)政府委員 教誨師さんの表彰につきましては、大きく分けて二通りになるかと思います。つまり、まず官側といたしますれば、永年にわたり教誨活動に従事しました教誨師さんに対します感謝の意を込めまして、例えば施設長の感謝状贈呈あるいは管区長の表彰、それからさらには、それらを受けられました方から厳選いたしまして大臣の表彰、こういった方法がございます。  それから、教誨師連盟側の表彰の方法といたしましては、やはり県単位の教誨師会の表彰、管区単位にございます連盟の支部である地方教誨師連盟としての表彰、それから全国教誨師連盟総裁の名前による表彰、それからさらには全日本宗教連盟総裁の名前による表彰というものがございまして、それぞれ、永年にわたり御苦労いただきました教誨師の方々に感謝の意を表する方法について考究いたしておるところでございます。
  75. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 実はこの後、公営競技に関係して通産省の方、運輸省の方、警察庁の方、農水の方にお見えいただきましてお尋ねする予定だったのですが、質問の時間がなくなりましたので、次の一般質問のときにさせていただくということで、きょうお見えいただきました方におわびしながら、これで質問を終わらせていただきます。
  76. 太田誠一

    ○太田委員長代理 関晴正君。
  77. 関晴正

    ○関委員 私は、青森県内に起こっておる不祥事件の二、三を取り上げて御答弁をいただきたい、こう思います。  まず第一に、青森県信用組合というのがありまして、この信用組合の業務運営が大変な不手際を起こし、全員の入れかえによる再建方策に取りかかったわけであります。  これまでの事業の状態を見ますと、大変な乱脈経理ということで、内部からも告訴されて検察当局に訴えが出ているわけでありますが、権力者である知事の命を受けたかどうかは知りませんけれども、この問題については取り調べに当たらないことを決めた、こういううわさが流れているわけであります。  これは、調べるべき行政の側の検査怠慢をいいことにして生じた事件なんですが、そういう側から頼まれて、訴えのあることをも捜査に取りかからない、投げておるというようなことであってはいけないんじゃないか。これは青森地検に出されている一つの事件であります。このことについては今後とも手をつけないつもりでおられるのか、どういう指導をされておるのか、お答えをいただきたいと思います。  二つ目は、五十九年の一月三日に六ケ所村の高梨酉藏という方が滝口初太郎という方から大変な暴力行為を受け、入院二週間に及ぶような大けがをしたのですが、これも青森の地検は暴力行為をした者を処分することもなく不起訴のままに至っていると聞くわけです。こういう明々白々な暴力行為があっても構わないというのは一体どういうことなのか、これが二つ目の質問であります。  三つ目の質問は、きょうの本題なんですが、ことしの七月十四日に青森県の六ケ所村の泊の漁業協同組合が総会を開きました。この総会は何のために開かれたかといいますと、核燃料サイクル基地を六ケ所村に置く、そのための調査をしたいのだが、海域の調査について何とか漁業協同組合の了解を取りつけたい。漁業協同組合としては、特定の買収されている幹部たち調査を了承されても困るので、定時総会ではこういうよしあし、受け入れるかどうかについては総会において決めるようにという決議をいたしたわけであります。その決議を尊重してことしの七月十四日に総会が開かれた。  開かれたのはいいけれども、この総会を開くに当たって大部分書面議決書というものを買い集めて買収して、組合の過半数に至るほどの数をとって総会に臨んだわけであります。これを知った反対の組合員たちは、金で議決権が行使されるというのはもってのほかだ、その金はどこから出して、だれが集めたんだ、集める方々は相当な金をもらって買収の作業に入ったというのだが、そういうことをしていいのか、こういうことで総会は騒然となりました。悪いことをしているものですから、それらの諸君たちも何も答えない。答えることができないままに逃げてしまった。そして逃げる途中に階段から足を踏み外して一人がけがをした。一人は、机、腰かけ等を持ち上げたりする者もあったものだから、それで転んで胃部をけがした。いずれのけがもささいなけがであって、診断書を取りつけられたのをそれぞれ見ると二週間とあるが、どれだけ病院に行っているかというと二日しか行っておりません。診断書が診療の一番大きい経費であったのではないか、こう考えられます。  警察に被害届けを出した。この二人の被害届けを中心にして、警察並びに検察陣は暴力行為の有無ということに力点を置きながら、この組合の総会運営について相当な干渉をしておる。そして、密議、謀議があってそういう暴力行為があったんだろうということを中心にして責め立てているわけであります。善良な組合員はそういう暴力行為を働くような密議や謀議は少しもしておりませんけれども、したことにしない限りは留置場からなかなか出してくれない。イカが盛んに泳いできておる。ここはイカの町であります。イカをとって暮らしを立てている地域であります。特にことしはイカの不漁のために、せっかく待っていたイカが、ちょうど捕えられたころにやってきておる。みすみすイカを見逃すわけにもいかないから、それぞれの調べは何とかほどほどにしておいて、とにかく漁業に行かなければならない、こういうことで、泊められること十六日間であります。第一次勾留でも足りなくて、さらに第二次勾留までして、とにかく今はやりのいじめ、司法のいじめではないかと私は思うわけであります。それよりは被害を受けた者から、どの程度の被害であって、だれが加害者であるか。だれが加害者であるかもわからない、直接たたいた人は一人もいない。それをやたらに暴力事件と打って、そして言うなれば核燃サイクル基地の調査海域を了承させようという権力側の要求、これに検察陣が加担しているんじゃないでしようか。私は暴力行為を認めるものでは断じてありません。しかし、それをいいことにして、ささたるけがであるのにもかかわらず、言うなれば核燃サイクル基地に反対する善良な漁民をいかにして痛めつけ征伐するか、こういう考えのもとに検察陣や警察陣が働いているなんといことを見ますと、納得できない。青森県の六ケ所村と言えば青森県の中でも一番の僻地であります。人も猿も区別ないところだろうと検察陣は容赦なく逮捕し、いじめておる姿を見るときに、私はふんまんにたえないのであります。  一体、検察陣の行為の行き過ぎをしかるところはどこか。県議会では何の力もない。国会のこの法務委員会で検察陣をしかる以外にしかる手だてはない。それほど遠くなっております。民主警察だとか民主検察だとかと言うけれども、少しも民主じゃない、権力べったりではないか、こういうことを私はつくづく感ずるわけであります。今、幾ばくもなくして法務大臣はおやめになるわけでありますが、さきに私は暴力行為の問題で、浜幸さんが住法務大臣をたたいたのはどうかと尋ねた際に、よくない、しかし、これは不起訴になっているというお話をここでお答えとしていただいたわけですが、暴力行為があったなら容赦なく厳しく当たる。権力側の者がいいかげんなことをしておるのでは、何のあれもない。そして、善良な諸君は何の手も加えないのだ、勝手に転んでいる自損行為みたいなものに、しかも組合の運営上の重大な問題です、内部干渉もいいところではないだろうか、こう思うのです。そういう意味において、私は、検察庁だとか警察だとかが、この書面議決書を買収して平気で議決権をかち取ろうとした者についてはどのような捜査なり対策をとられたのか、あわせてお聞きしたいと思います。  時間がわずかしかありませんので、まとめて簡単に、その三点だけ先に聞いておきます。
  78. 筧榮一

    筧政府委員 まず第一点の青森県信用組合の件でございますが、これにつきましては本年の八月十五日青森地検において告発を受理いたしております。告発事実の内容は、先生承知のとおり約五億円くらいの不正融資ということの背任横領でございます。この告発を受けまして以来、青森地検においては現在まで検査を続けております。告発人の側からいろいろ事情を聞き、あるいは資料の提供を受けるなどいたしております。捜査の内容にっきましては、現在進行中でございますので差し控えたいと思いますが、この件について県側あるいは組合側といいますか、そちらの方に頼まれたとか、あるいはもう捜査を投げたというような事実は全くございません。現在捜査を続行中で、白浜代表理事でございますか、この被告発人の行為について刑事責任を問うべきものであれば当然問うということであります。  それから第二点は、核燃料問題の被疑者の一人である高梨という人が被害者となった事件でございます。これは昭和五十九年一月三日の事件でございます。五十九年の九月七日に警察から送致を受けて三月二十七日に不起訴処分にいたしております。不起訴処分でございますので、その理由の詳細はお答えいたしかねますが、一般的にそうでございますけれども、犯行の動機とか被害の程度、犯行の計画性の有無あるいは前科前歴の有無、諸般の事情を考慮して、公訴を提起する必要はないという判断をしたものと承知しております。  それから第三点の泊漁協の関係でございますが、本件につきましては本年九月十一日から十月七日までの間に十一名の被疑者について威力業務妨害、傷害の事実で送致を受けまして、そのうち五名については九月二十六日起訴、罰金五万円及び八万円の略式命令が裁判所から発せられまして確定いたしております。残る六名につきましては現在捜査中でございます。  この事件につきましても、今先生からいろいろお話がございましたように、いろいろな背景があり、あるいは関係者も多数に上るということで、勾留の上捜査を続けたわけでございまして、その事案の内容に応じて適正な処理を図ったわけでございます。したがいまして、その間に組合の業務に対する内部干渉をするとか、まして権力側の核燃料問題についての要求を実現するために検察が加担するというようなことは毛頭ございません。
  79. 井上幸彦

    ○井上説明員 三つ目の本年七月十四日に発生いたしました泊漁業協同組合の臨時総会における事案について申し上げたいと思います。  御指摘のとおり、これにつきましては、原子燃料サイクル施設の立地にかかわる調査受け入れを決めるための臨時総会が七月十四日開催されたわけでございます。これに対しまして反対する組合員多数が開会宣言直後に役員席に大挙押しかけまして、先生指摘の場合とやや趣を異にして、机をひっくり返す、体をこづくというような乱暴ろうぜきを働いて、組合員二人に対して二週間の傷害を与えたというものであります。これにつきましては当日地元のテレビ放送でニュースが流されたようでありますが、その乱暴ろうぜきぶりは県民に大きな反響を呼んだというふうに聞いております。  警察といたしましては、本件を認知してから慎重な捜査を進めまして、ただいま法務省の方から御答弁ありましたとおり、九月十日、十八日にわたりまして五名の被疑者を強制逮捕し送致いたしております。その後、この事件につきましては、これもお話がございましたとおり、九月二十六日に青森の簡易裁判所から傷害及び威力業務妨害罪をもって罰金八万円及び五万円の略式命令が下され、これは確定を見ておる、こういうことでございます。  それから、書面の議決書の買収云々という点につきましては、このような風評を聞知した時点におきまして我が方も法令違反になるのかどうかということをつぶさに検討いたしました。しかしながら、現行法令には触れるところはないということで捜査には着手いたしておりません。  以上でございます。
  80. 関晴正

    ○関委員 書面議決が買収されてもそれが法令に触れない。幾ら買収してもよろしいということになっているのですか。
  81. 井上幸彦

    ○井上説明員 十分に地検とも協議いたしました。しかしながら、現行法令上ではいかんともしがたいというふうになっておるところであります。
  82. 関晴正

    ○関委員 あなた方は、金で買収して、金の結果の議決権をも有効だと考えますか。そういう常識ですか。
  83. 井上幸彦

    ○井上説明員 その書面の議決権を買収したかどうかという話は、私どもはその事件着手の時点の問題としてはとらえておりません。あくまでも臨時総会が適法に成立したということをもって捜査に着手し、傷害及び威力業務妨害、暴力行為等処罰ニ関スル法律違反ということでこれに対応したところであります。
  84. 関晴正

    ○関委員 大体警察は、書面議決が買収されていることが問題としてこういう事件になっていることを承知しているでしょう。そっちの方は法令に触れないからといって捜査の対象にはしなかった。しかし、問題の内容はそういう金の買収によるところから発したことでしょう。それを不正だと思っておる善良な漁民たちが、何だこのやろうと言ったのでしょう。このやろうと言われた理事の諸君たちは金をたくさん持って書面議決書をもらい集めたでしょう、買い集めたでしょう。それには耳をふさぎ、目をふさぎ、構わないというのですか。
  85. 井上幸彦

    ○井上説明員 ただいま申し上げましたとおり、私どもは、適法に成立した臨時総会について暴力行為をもって臨んだこと、この事態をとらえて対応したものでございます。
  86. 関晴正

    ○関委員 それだったら、暴力行為を受けたという諸君、そしてけがをしたという諸君、どんなけがです。しかもあなたは今、テレビで放映されて明々白々のことだと言ったでしょう。そのとおりですよ、私もテレビを見ていましたよ。そういうものに当たっての捜査が、任意出頭の今もなく、その前には捜査に協力されたいという協力書の発送ですよね。協力文書の要請があったけれども、イカ釣りが忙しくてとても行っていられない。そこで、その次にあなた方は被疑者としての出頭命令でも出しましたか。被疑者としての出頭命令も出すことなく、そしてやにわに九月十日の朝に逮捕したでしょう。  あなた方の出しているのはこういう文書ですよ。協力要請の文書、はがき。協力してくれという文書は出しているけれども、もうそうなったら被疑者扱い。被疑者の出頭命令書をなぜ出さないのですか。そのはがきを出すのは嫌で、そしてしゃにむに逮捕しているというのはどういうことです。二カ月後ですよ、乱暴じゃありませんか。あなた方は、暴力行為を主体として捜査をしたいと思ってやっておりますか、それとも、この組合の運営に対する干渉をしなければならないということでやっていませんか、そのきらいがありませんか。これはひとつ刑事局長の方からもお答えいただきたいと私は思うのです。暴力行為を憎んで、暴力行為をしたという者があるならばそれを処罰する。何の異議もありません。しかし、あの場における問題というのは、書面議決を金で買い集めて善良な組合員の意思というものを踏みにじる、そのことについての一種の生活防衛闘争でしょう。あなた方はそれに加担することはできないでしょう。加担しなくてもいいから、責め立てるということは行き過ぎになりませんか。漁業協同組合というのは組合員のものですよ。一時的に騒乱が起きてもあるいは騒動が起きても、やがて民主的に事がおさまって進められていくようにすれば、それでいいのじゃありませんか。  そして、加害者でもない被害者でもないところの滝口作兵衛組合長をむやみやたらにいじめつけて、彼が病床に伏している間に、四名の金をもらった理事たちが解任の決議をして解任してしまったでしょう、七人の理事のうち四対三で。病床にある者を勝手に解任までしてしまう。こういうような状態というものは相当に内部における問題なんです。いじめている者といじめられている者、抗議している者と進めようという者、この一つのいさかいでしょう。この場合に警察は、前の日にやたらにおまえたち協議したであろう、組合長の家に集まって悪いことを計画したのじゃないか、こればかりいじめているのでしよう。だれもたたく話なんかしていませんよ、前の晩。だけれども、書面議決はどうしてそういうふうになったかということだけはきちんと聞こう、こういうことになって取り組んだんでしょう。それが悪いことですか。それを一方的に取り締まるということ、そうして検察陣がこういう組合の民主的な運営に介入することは、私は行き過ぎだと思いますよ。  この点についてはひとつ大臣にお答えをいただきたいのですが、こういう地方の、しかも核燃のサイクル基地ということで、お母さん方が子々孫々に至る大問題だと言って、たすきがけで子供を守らなければならないと言って心配しているんだ。そういう問題について組合の意思決定をするときにどうしたらいいか。こういう不法な金で、大方電事連から金が流れていると言われている。電事連は幾らでも出して六ケ所を征伐しようと思っているんだ。この不法なたくらみに対する善良な、いたいけな力のない漁民の正義の闘いだと私はこれを見るのです。そういう場合に、警察権力、検察権力が誤解を与えたりどちらかに加担するようなことはよして、しかもこの被害者二人というのは何にも大したけがじゃない。足首を折ったわけじゃない、肩の骨を折ったわけじゃない。逃げる途中、階段のところで足を滑らして落ちてちょっとけがした、こう言っているんだ。それを警察当局に聞かれると、そういうことはない、たたかれてやったと言ったんでしょう。だれがたたいたかといえば、だれがたたいたかわからない。たたいた人が一人もないのですもの。これは、この問題が針小棒大に伝わり過ぎだし、宣伝され過ぎたと思いますよ。いずれにしても、もう時間がありませんが、こういうようなことについては、地方の一つの問題として、漁協という一つの組合の運営について検察権力が介入したり加担したりするようなことは私は断じて許しがたい、こう思いますので、この点についての大臣の御答弁をいただければと思います。
  87. 嶋崎均

    嶋崎国務大臣 事件の詳細は必ずしも十分存じておりませんけれども、検察権の行使は不偏不党、厳正中立でなければならない、またそういう立場で運用しなければならぬというふうに信じておるわけでございます。警察当局は従来からそういう気持ちで、そういう基本的な精神にのっとって事件処理に努めてきたと私は承知をしておるわけでございますけれども、御指摘のような時の政治問題に加担する事件処理をしているようなことはやってはいけないし、またやっていないというふうに思っておるわけでございます。ただ、我々の地域でもそういうことは非常に多いわけでございますけれども、こういう問題が組合員の本当の理解の中で整理をされていくことが非常に望ましいことであるし、そういうさたに及ばないということを非常に望んでおるというふうに思っております。
  88. 太田誠一

    ○太田委員長代理 天野等寺君。
  89. 天野等

    ○天野(等)委員 実は、日韓事務レベル会議の話が新聞等でも報じられておりますが、その問題についてちょっとお尋ねをしておきたいと思ったのですが、局長お見えになりましたか。  新聞で日韓事務レベル会議のことが出ておりました。それにも法務省側でも参加をするというようなことが伝えられておりますが、短い時間でございますから簡潔で結構でございますが、今の時点で、当然外国人登録法の問題がかなり重要な議題として取り上げられてくるんじゃないかというふうに考えておりますが、法務省としてはどういうふうな態度でこれに臨まれるおつもりなのか、その辺をお伺いさせていただきたいと思います。
  90. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 お答え申し上げます。  日韓法的地位協定二条に協議について規定されておるわけでございます。しかしながら、この協議は昭和六十六年までに行うということが規定されておるわけでございまして、したがって、まだかなり余裕があるわけでございます。しかしながら、韓国側がこの協議を早期に行いたいということをかねてから主張をいたしておりまして、先般の日韓閣僚会議におきまして改めてそういう希望の表明がございましたので、年内にとりあえず韓国側の考えを聞く、あるいは韓国側の情報の説明を聴取するという意味で、本年中に両国政府間の接触、政府レベルの接触を行うということを合意したものでございます。そういうこともございますので、今回の協議の主たる内容は韓国側からの希望あるいは考え方を伺うということでございまして、この点については韓国側も十分承知しております。また、指紋問題につきましては今回の協議においては対象としないということも先方は了承いたしておりますので、これが特に改めて話し合われるということはないものと考えております。話の主たる対象は、在日韓国人の三世以下の処遇の問題、これに関する韓国側の考え方あるいは情報の提供ということでございます。
  91. 天野等

    ○天野(等)委員 私も新聞等の報道で三世問題ということが大きな問題になってきているというふうに理解はしておるのですが、そうしますと、まだ法務省側としてはその点について考え方を決めているわけではないというふうに理解をしてよろしいわけでございましょうか。
  92. 嶋崎均

    嶋崎国務大臣 今入管局長から説明のあったとおり、三世問題について、時間的には大分前の段階なので、私もそういう話を受けたときに、大分先の話ではないか、もう少しいろいろな意味で慎重に処理をするように、またこちらでもいろいろなデータを集めて研究するようなことを考えていかなければならないのじゃないかというようなことを申したわけでございますけれども、韓国側からぜひこの問題を取り上げたいというような話があって、せっかくそういうお話ですから、いろいろな意味で事前の情報をいろいろ交換をする意味で開いてもいいではないかということで開かれるような事態になったというのが現実でございます。
  93. 天野等

    ○天野(等)委員 これは私としては要望ということでお聞きをいただきたいのでございますけれども、日本の国籍法の関係でいきまして血統主義をとっている。一方でさまざまな事情があって永住許可を与えているといいますか、事実上生活圏としては日本を生活の根拠地として生活をしている在日韓国人あるいは朝鮮人の方たちが大勢いらっしゃるという状況の中で、外国人登録法の問題も含めまして二世、三世というのをどう考えていかなければならないのかという問題はやはり非常に重要な問題なのじゃないか。いたずらに血統主義ということから日本人と外国人を差別するといいますか、全く別な扱いをしていくということは、三世というような状況になってくればやはりこれはできにくいことなのじゃないか。そういう点も考えて、ぜひとも制度面も含めてひとつ法務省としても御検討をいただきたいというふうにお願いをしておきたいと思いますが、その点いかがでございましようか。
  94. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 協定永住許可者の孫以下の直系卑属の法的地位につきましては、日本政府としても従来から、その歴史的経緯等も踏まえまして、重大な問題ととらえております。その地位の安定化ということについてはそれなりの配慮を払ってきて今日に至っておるわけでございます。  具体的に申し上げますと、協定永住は既に一定の範囲の者に与えられておりますし、また一定の範囲の者については今後も与えられるわけであります。しかしながら、その対象とならなかった人々の中にも、終戦前から日本に在住しておって引き続き居住しておる人々がおるわけでございまして、そういう人々について滞在資格を安定化するために、昭和五十六年の出入国管理令の改正の際に、いわゆる特例永住あるいは簡易永住という制度を設けまして永住許可が覊束的にあるいは簡易に与えられるように措置したという経緯もございます。  こういう措置によって示されますように、私ども政府といたしましても、この協定永住許可者の直系卑属の法的な地位の安定ということには、それなりの配慮を払って今日に至っておるということでございます。また、今後韓国側の意見等も聴取いたしまして、改めて措置すべきことについては検討をしていきたい、そのためには種々の情報の収集も必要であると考えております。
  95. 天野等

    ○天野(等)委員 この場合に、朝鮮籍、韓国籍という問題が日本側としてはあるわけだと思いますけれども、これも差別にわたらないような配慮をぜひともお願いしたい。直接韓国との交渉の内容ではないかと思いますけれども、法務省としてはその点もぜひとも御配慮をいただきたいと思いますが、この点いかがでございましょうか。
  96. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 協定永住という法的な地位、資格に伴います一般永住者との最大の相違は、退去強制事由の問題でございます。退去強制事由が協定永住につきましては非常に制限されておるということでございます。したがいまして、韓国籍を持っていない朝鮮半島出身者につきましては協定永住の対象となっておりませんので、法的には協定永住に伴うそうした特別な扱いの対象とはならないわけでございますけれども、現在までの取り扱いにおきまして、実際上協定永住者よりも不利にならない取り扱いをいたしております。したがいまして、先生のおっしゃるような気持ちは私どもにもあるということでございます。
  97. 天野等

    ○天野(等)委員 ぜひともその点で進めていただきたいと思います。時間がございませんので、この問題はこのくらいで。  全く違う問題でございますが、検察庁の捜査担当事務官という制度があると思うのですけれども、これは検察庁法の三十六条でしょうか、区検の検察事務官にはその庁の検察官の事務を取り扱わせることができる。ただし、「当分の間、検察官が足りないため必要と認めるときは、」というような限定がついておるわけでございます。これの「当分の間」が相変わらずずっと今も続いているのではないかと見ておるのですが、これはどのくらいの数おるのでございましょうか。
  98. 筧榮一

    筧政府委員 現在約千三百名ぐらいでございます。
  99. 天野等

    ○天野(等)委員 ここにも「検察官が足りないため必要と認めるときは、」ということになっているわけですから、もうこういう特別な取り扱いがなされてから随分たつわけだと思うのですが、その間法務省としては、検事なり副検事なりの増員ということをもっと真剣に考えてきてよかったのではないかと思うわけです。  それと同時に副検事の任用の問題ですけれども、これは司法修習を受けていない副検事の任用の場合ですけれども、検察庁法の十八条二項二号ですと「三年以上政令で定める二級官吏その他の公務員の職に在った者」というのがあるわけですが、検察庁の事務官でもこれに該当するのですか。
  100. 筧榮一

    筧政府委員 一定の等級以上の場合には、三年間在籍すれば検察事務官も当然資格が出るわけでございます。
  101. 天野等

    ○天野(等)委員 副検事に対応するというとちょっとおかしいかもしれませんが、裁判所法では、簡易裁判所判事の選考任命の場合には、「多年司法事務にたずさわり、その他簡易裁判所判事の職務に必要な学識経験のある者は、」というふうな形になっているわけですけれども、この辺でどうして違うのかなという気がするのです。副検事を任用できる幅といいますかあるいは副検事の数、そういうものを何かもう少しふやしていける方法というのはないものなんでしょうか。
  102. 筧榮一

    筧政府委員 検事、副検事の増員の点についてまず申し上げたいと思います。  検事につきましては、天野委員十分御承知のとおり、給源が不足と申しますか少ないものですから、幾ら増員をしても集まらないと言うと語弊がございますが、なかなか充足できないという事情がございます。その足らぬところをもっと副検事を活用すべきではないかという意見も従来からございます。ただ、基本的には副検事も検察官でございます。人の権利に重大な影響のある捜査あるいは公判等の処理を行うわけでございますので、その資格といいますか資質については十分考えなければならない、むやみにふやすことについては慎重にならざるを得ない点だろうかと思います。  副検事につきましても、私どもはできるだけ優秀な者を多く任用したいと考えておるわけでございますけれども、先ほどの年齢あるいは従来の経験等にかんがみて検察官として十分仕事ができる人ということになりますと、先ほどの三年あるいは五年というのもありますが、それが限度ではなかろうかと考えております。先生指摘の条文の中では、検察事務官のほかにいろいろな役所の関係がございます。警察官もございますし、海上保安庁とか自衛隊とかいろいろなところから現に相当数来てもらっているわけでございますけれども、そういう方面でできるだけ多く採用したいという気持ちと、それから本当に資質、能力のある人を選ぶべきだという気持ちと両方の気持ちで、その範囲内でできるだけ多くということで現在努力をしているところでございます。
  103. 天野等

    ○天野(等)委員 私が申し上げたいのは、今お話がありました警察あるいは自衛隊関係というような形から入ってくる方が、二級以上の官吏という規定があるためにかえって入りやすいのではないかと思うのですが、捜査担当の事務官の人たちの枠をむしろ減らして副検事に任用していくというふうなことが考えられないものなのかどうか。相変わらず検察官の事務取扱をしている捜査担当事務官がございますけれども、この人たちがなかなか副検事に昇格できないということがあるのではないかと思うのですが、この辺いかがですか。
  104. 筧榮一

    筧政府委員 現在、事務取扱をしている検察事務官は相当数あるわけでございまして、その中の優秀な者に、私どもはかねがね各地の地検におきまして、副検事の試験がございますから受験するように勧めてもらうようにいろいろ努力しておるわけでございます。しかし、副検事になれば昇格するといいましても、任地の事情とかあるいは家庭の事情とかその他いろいろなことがございまして、必ずしもみんなが副検事になりたいというわけでもない事情もあるわけでございます。私どもとしては、できる限り優秀な者には受験をするようにということで勧めておるところでございまして、最近では毎年大体目途とする副検事が任官をしているという状況でございます。
  105. 天野等

    ○天野(等)委員 検察官が足りないから事務官に検察官の事務取扱をさせる。「当分の間」ということで来ているわけでしよう。それで実際に事務官の身分で検察官の事務をやっている方が千名以上いらっしゃるという状況は、やはり何か不自然な気がするのです。きちっと検察官に任用をしていく、やはり本来の検察官で検察陣を構成していくのが本来の姿じゃないだろうか。実際に区検の事務等をあれしますと、事務官の方が検察官と変わらない仕事をなさっていらっしゃる。これは検察官の事務を取り扱っているわけですから当然だと言えば当然ですけれども、起訴もされるし立ち会いもされるということなんですから、その辺をもう少し基本的に考え直してみる必要があるのではないか、きょうは時間が短いのですが、お考えいただけないだろうかということで、大臣いかがでございましょうか。
  106. 嶋崎均

    嶋崎国務大臣 実はこれは非常に難しい問題なんだろうと思うのです。一つはやはり検察官としての仕事をやっていただくためのいろいろな経験なり知識あるいはいろいろな要件というものがあるだろうと思うのです。御承知のように相当試験に合格する人がおありになるのですけれども、最近裁判官あるいは検察官として働きたいという人が非常に窮屈な状態になってきている。特にこれからの一、二年というのは大変な状況になっているという話を我々も聞いて心配をしておるような状況でございますが、そういう面に一つの制約がある。数だけふやしても定員がなかなか充足できないというようなことでも非常に問題がある。それを補うために副検事の制度がありまして、私も昔税金の仕事をやっていた時分の経験もありまして、そういう人がどんどん努力をしてやっていけたという経験もあるわけですから、ぜひそういうふうに採用できる人がいたらふやしたらどうかというような考え方も持っておるのです。  先ほど刑事局長から御説明がありましたように、家庭の事情、転勤その他いろいろ厄介な問題もあるのだろうと思うのですが、なかなかどうも充足をし切れないというような状況であります。総体は、御承知のように検察の仕事というのは、事件の水準は相当高い水準で横ばいになっておりますし、仕事自身はあるという中で、こういう苦心惨たんの姿が続いているのだと私は思っておるわけでございます。今後ともそういう意味で、検察の中の陣容を整備するというような考え方から、天野先生の御指摘気持ちは十分わかりますが、何かそういう道がうまく開ける工夫がないかどうかということについてはさらに研究を進めてまいりたいと思っております。
  107. 天野等

    ○天野(等)委員 第一線で検察官の事務を取り扱っていらっしゃる方たちが大変一生懸命やっていらっしゃる姿というのは私存じ上げているわけですけれども、そういう方たちにもひとつ士気を奮い立たせるといいますか、そういう意味でも、検察庁の方でも副検事への道というようなものもお考えいただきたいということをお願いいたしまして、私の質問をこれで終わります。
  108. 太田誠一

    ○太田委員長代理 午後一時三十分再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時三十六分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十五分開議
  109. 片岡清一

    片岡委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。草川昭三君。
  110. 草川昭三

    草川委員 公明党・国民会議草川昭三でございます。  まず最初に、きょうは最高裁の方からもおいで願っておりますので、日本と韓国の両国間における判決の執行という問題を中心に問題提起、あるいはまた意見を聞かせていただきたい、こう思います。  具体的な事例を頭に申し上げます。それはどういう事例かといいますと、昭和五十二年三月六日のことでございますけれども、大変朝早く、夜だと思いますが、対馬と壱岐の間の海上において、韓国の近海商船株式会社所有の貨物船TAMRA号と日本の島本栄氏所有の漁船第五清勝丸が衝突をしたわけであります。この日本の第五清勝丸は沈没をし、乗っておみえになりました船長の島本清さんが死亡するという事故があったわけであります。問題は、この事故について、死亡した船長島本清氏の遺族はいまだに相手方から一銭の賠償金も得ることができない、こういう問題を少し議論してみたいと思うわけでございます。  そこで、まず事実経過について海上保安庁にお尋ねをいたしますけれども、どのような事実であったのか、あるいは犠牲者はどうであったのかお伺いをしたい、こう思います。
  111. 垂水正大

    ○垂水説明員 韓国の貨物船TAMRA号と日本漁船第五清勝丸の衝突事故の事実関係について御説明させていただきます。  まず、事故発生日時でございますけれども昭和五十三年三月六日午前二時二十九分ごろでございます。  事故発生場所でございますが、壱岐勝本町若宮灯台から真方位三百三十四度、方向としましては北北西と考えていただいていいと思います。それから約八・五マイルの公海上でございます。  それから事故発生状況でございますけれども、壱岐勝本町北西漁場でのイカ釣り漁を終えまして勝本港へ向けて帰港中の漁船第五清勝丸、これは十九トン、五名乗り組みの漁船でございますが、これと千葉県の君津港から韓国仁川港に向け航行中の韓国貨物船TAMRA号、これは九百九十九トン、十九名乗り組みの貨物船でございますが、これが先ほど申しました日時、場所において衝突しております。衝突箇所は、第五清勝丸が左舷の中央部付近、TAMRA号が船首付近でございまして、第五清勝丸は水没し、乗組員四名は救助されたわけでございますけれども、先ほど先生がお話しになりましたように、船長が遺体で発見、揚収されております。  以上でございます。
  112. 草川昭三

    草川委員 そこで、この第五清勝丸という船が沈没をしたこと、あるいは船長が亡くなったということから、当然のことながら遺族は相手側に対する賠償金の要求をしておみえになるわけであります。昭和五十五年六月二十日、東京地方裁判所は、韓国船TAMRA号の所有者であるところの近海商船株式会社に対して総額一億五千三百四十八万七千九百七十八円の賠償を命ずる判決を言い渡したわけであります。この判決は、控訴のないままに五十五年の七月十一日に確定をいたしました。  そのときの東京地方裁判所判決は、かなりいろいろと多岐にわたった判決をなすっておみえになるわけでございますし、当然のことながら、相手が外国のことでございますので、裁判の管轄権問題等についてもいろいろと議論があったようでございます。判決の「理由」の中では、東京地方裁判所はこういう言い方をしておみえになるわけでございます。たまたま韓国の近海商船株式会社の営業所が東京都内にあったということに触れながら、「原告ら主張の本件事故は日本国の領海内で発生したものであることは後記認定のとおりであるから、本訴につき日本国に裁判権があると解すべきは条理上当然である。したがって、被告の右抗弁は理由がない。」ということで、結局、今申し上げたように一億を超す判決が確定したわけであります。  問題は、その判決の確定ができるかあるいはそのときに船舶の差し押さえをするとかといういろいろなことをやれば問題はなかったと思うのでございますが、この場合は一応そういう方法ではなくて、その遺族の方々は韓国へ行って東京地方裁判所判決の執行を求めたわけです。ところが、韓国の裁判所はどういう判決をおろしたかといいますと、この場合も事務所がどうだとか公海上の問題だとかいろいろなことを言っておるわけでございますけれども、適法な送達がなされていないという理由で訴えを却下するわけであります。却下をした日付は昭和五十七年一月四日。適法な送達がないということで却下するわけであります。  そこで島本清氏の遺族らは、この判決に対して当然不服でありますから、五十七年の三月二十二日、今度は韓国のソウル高等法院に対して控訴の申し立てをいたします。この高裁の中でもいろいろと議論があって、判決文もあるわけでございますが、高等裁判所の方は、送達の問題については触れずに、今度は日韓両国間に判決の執行についての相互の保証がないという理由で請求を却下するわけであります。もちろん遺族の方々も不満でございますから、今度は大法院の方に五十八年の三月二十六日に上告をするわけでございますけれども、韓国の大法院も昭和五十九年九月十一日に同様の趣旨で棄却をするわけです。こうして、結局韓国の大法院は日本で下された判決について日本と韓国との間に相互の保証がないという判断をした、こういうことになります。日本と韓国というのは隣国でございますし、非常に関係の深いところでございます。今後も国際的にはいろいろなトラブルも当然のことながら出ると思うのでございますが、非常にこの件については重大だと思うのです。  そこで、最高裁にお伺いをしたいと思うのでございますけれども、これは一般論としてという断りを申し上げてお話を聞かせていただきたいと思うのでございますが、日本の裁判所が韓国にいる当事者に訴状等の送達をしようとするときには、従来は日韓両国間に条約あるいは協定等がないわけでありますから、いわゆる司法共助もなされていない、こういうために公示送達による方法しかなかったと思うのです。ところが、最近になってややそのような情勢が変わったやに聞いておるのですけれども、その辺についての御説明をお願い申し上げたい、こういうように思います。
  113. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 日本と韓国との間の送達に関する司法共助につきましては、ただいま委員指摘のとおり、従前はお互いの司法共助は行われておりませんでしたので、日本から送達をする場合には公示送達の方法による以外はなかったわけでございますが、たまたま本年の五月に韓国から我が国に対して訴訟書類の送達の嘱託がございました。これを契機といたしまして関係の機関で検討がなされました結果、結論といたしましては、一件ごとに送達共助の可否を判断いたしまして、個別的に送達についての司法共助を我が国として行うというふうになりました。それで、今度は我が国から韓国に対しても送達についての司法共助の嘱託を申し入れてよいかどうかということで、私どもの方から外務省に御意見をお伺いいたしました上で、外務省を通じて日本の裁判所から韓国の裁判所に対する送達の嘱託についても外交経路を通じて嘱託していただけるということになりまして、その旨を昭和六十年、本年の十月十四日付で最高裁判所の民事局長行政局長、家庭局長から各下級裁判所にお知らせしてございます。したがいまして、現在では、韓国から送達の嘱託がございますれば、一つ一つの事件ごとに共助の可否を判断するということにはなりますが、私どもの方を通じて地方裁判所で送達の事務をとり行っております。現にその後韓国からかなり多くの事件の送達の嘱託がございまして、裁判所を通じて送達を実施しておる状況でございますし、また、先ほど申しました私どもからの連絡によりまして二件ばかり韓国内での送達の嘱託の要請がございまして、私どもの方から外務省に送達の嘱託をお願いしてございます。まだその結果は返ってきておりませんので、現実に日本の裁判所からの送達の嘱託に基づく送達が実施されたかどうかはまだ確認できない段階でございますが、少なくとも私どもといたしましては送達共助の道が開けたということで、外務省を通じて韓国の裁判所に送達の実施方を嘱託する、しているという段階に至っておる次第でございます。
  114. 草川昭三

    草川委員 今、送達の新しい道が開けた、こういう御答弁でございますし、これはつい最近のお話だということがわかりました。たまたま今私が問題提起をいたしました韓国のソウルにおける裁判所、これは五十七年でございますから、その当時は適法な送達がなされていないということで却下をしたわけですが、今回からはこういうことがない、こういうことになると思います。  ところが、今度はこれをもう一歩進めて、例えば高裁なり大法院が下しております、日本と韓国との間に相互の保証がないいわゆる執行の問題でございますけれども判決の承認、執行ということについて、一体国際的にどのような現状になっているのか。あるいは国際法というのですか国際条約、私は専門家でないのでわかりませんけれども、ハーグ条約というのがあるのでございますが、このハーグ条約の中で判決の承認、執行というのはどういう議論になっているのか、これは外務省の条約局にお伺いしたいと思います。
  115. 谷内正太郎

    ○谷内説明員 お答え申し上げます。  民事及び商事に関する外国判決の承認及び執行に関する条約というものがございまして、これはハーグの国際私法会議におきまして一九七一年、昭和四十六年の二月一日に作成されたものでございます。この条約は三十二カ条から成っておる条約でございます。
  116. 草川昭三

    草川委員 もう一つお伺いをしますが、日本はこの条約に加入をしておるのですか。
  117. 谷内正太郎

    ○谷内説明員 まだ入っておりません。
  118. 草川昭三

    草川委員 入っていない理由をお伺いしたいと思います。
  119. 谷内正太郎

    ○谷内説明員 ただいまの条約の締約国は、現在サイプラス、ポルトガル、オランダの三カ国にとどまっておりまして、また関係省庁におきましても、現在のところこの条約の締結に関して機運あるいは要望、そういったものはないというふうに承知しております。したがって、現在のところは締結していない、かような事情にございます。
  120. 草川昭三

    草川委員 実は、日本と韓国との間の衝突海難事故の件数ですが、これは海上保安庁の資料によりますと、過去五年間、衝突事故というのはふえてきておりまして、五十八年が八件、五十九年は十五件。対馬海峡ということに限定をいたしますと、それでも毎年四件とか二件とか、五十九年はたまたまゼロになっておりますが、こういう数字が挙がっております。  それから、これは農林水産省の資料でございますけれども、漁船による被害ということに特定をいたしますと、これは漁船間だけでございまして漁船と貨物船という今私が申し上げたのは例外になりますけれども、漁船間だけの被害によりますと、それでも五十五年が十八件、五十六年が二十二件、五十七年が十七件、五十八年になりまして九十六件、それから五十九年には八十件、こういうように毎年漁船による被害というのはふえてきております。これは相手側が韓国ということに限っておるわけですが、日本が韓国側に迷惑をかけるというのもありますから、その双方を合わせますと、海上におけるこのような事故というのはふえていくわけであります。海事裁判というのは非常に難しい裁判になりますし、争うということについても大変難しいことでございますけれども、少なくともどこかで国と国との間の話し合いとか相互の保証というようなことを、信頼性の立場から行うことが必要ではないだろうか、こう思うのです。  それで、これまた最高裁の方にお伺いをしたいと思うのでございますけれども、これも一般論としてお伺いしたいわけですが、日本の裁判所判決を例えば韓国において強制執行をしようとする、それで韓国の裁判所にその承認を求めた場合に、今お話がございましたように今までは適法な送達がないというようなことで断られたのですが、この十四日からでございますか、それはなくなったというお話でございますが、判決の執行については相互の保証はないということで申し立ては却下されている。この事件なんかはまさしくそうでございますけれども、こういうことになって、これをどうしたらいいかということになるのですが、これはいわゆる韓国の国家主権の作用であるところの裁判権の問題でありますから、我が国の方の立場から、特に最高裁の立場から云々はできないとは思うのです。  そこで、そういう前提を踏まえまして最高裁お尋ねをしたいのは、逆に今度は相手側から外国の裁判所判決に基づいて日本で強制執行を求めてくるという場合、先ほどは送達では二件あるというような御答弁があったわけでありますけれども、我が国の裁判例はその承認の要件についてどのような態度で臨んでいるのか、これに関する判例をひとつ紹介していただいて、また議論をしたい、こう思います。
  121. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 我が国の裁判所で外国の裁判所判決を承認する条件といたしましては、民事訴訟法二百条に規定がございます。強制執行をいたします際には、民事執行法の二十四条によっていわゆる執行判決を受けなければいけないわけでございますが、その執行判決を受ける要件の中に今申しました民事訴訟法二百条のそれぞれの条件を満たしている必要があるということになりますので、結論的には民事訴訟法二百条第一号から四号に掲げる条件が満たされているかどうかということが問題になるわけでございます。  ところで、民事訴訟法二百条の各号の規定でございますが、第一号あるいは第二号は、ここに書いてありますとおり中身が割と形式的なことでございますので、それほど争いになるわけではございませんし、適切な裁判例も今のところ見当たらないようでございます。一番問題になりますのは、二百条の第三号、つまり「外国裁判所判決カ日本ニ於ケル公ノ秩序文ハ善良ノ風俗ニ反セサルコト」この条件と、それから第四号で「相互ノ保証アルコト」、この二つが一番問題になり、裁判例で争われるところでございますので、こちらを重点に申し上げたいと存じます。  お尋ねの点につきましては、実は比較的最近でございますが、昭和五十八年六月七日に最高裁判所の第三小法廷の判決がございます。大変重要な判決でございますので、この判決の要点を紹介させていただきたいと存じます。  この判決によりますと、まず民事訴訟法二百条三号に言います「外国裁判所判決カ日本ニ於ケル公ノ秩序文ハ善良ノ風俗ニ反セサルコト」、つまり公序良俗に反しないということについては、外国の判決内容だけではなくて、その判決の成立過程も我が国の「公ノ秩序文ハ善良ノ風俗」に反しないことを要するというふうに判示いたしております。  それから、その次の第四号の要件でございますが、「相互ノ保証アルコト」、この点に関しまして、今申しました最高裁判所判決によりますと、「当該判決をした外国裁判所の属する国において、我が国の裁判所がしたこれと同種類の判決が同条各号所定の条件と重要な点で異ならない条件のもとに効力を有するものとされていることをいうものと解するのが相当である。」このように言っております。少し長くなりますので御理解いただきにくいかと思いますが、我が国の二百条一号ないし四号に定めております文字どおりの全く同一の条件というわけではなくて、ここに定めております四つの条件と重要な点で異ならない条件であればいい、そういうふうに判断しているわけでございます。具体的な問題になりました事例は何かアメリカの裁判のようでございますが、その際にも、極めて厳格に言いますと若干の違いはあったようでございます。ただ、全体として見るとアメリカの裁判所が日本の裁判の効力を承認する条件と重要な点では異なっていない、そういうふうに判断して今のような判決をされたわけでございます。  この点は、実は従前の大審院の昭和八年の裁判によりますと、日本の裁判所の側がやや厳しい解釈をいたしておりました。つまり、外国の裁判所が日本の条件と全く同じであるかややそれよりも寛大な条件で日本の判決を承認してくれる場合に初めて日本の裁判所が外国の判決を承認するんだ、こういうふうに言っておったわけでございます。ところが今度は、そういたしますと、日本よりも外国の方が寛大であるというのは外国から見れば日本の方が厳しいということになりますので、そういうことでは相互の保証ということでお互いに堂々めぐりになってしまうので、もう少しそこは条理に則して解釈すべきであるということを判示いたしておりまして、今挙げました昭和八年の大審院の判例をこの昭和五十八年の最高裁判所判例によって変更するということを判決文の中で明らかにいたしております。したがいまして、今も御説明申し上げました昭和五十八年の最高裁判所判決の示すところが現在の日本の裁判所判例である、こういうふうに御理解いただいていいかと存じます。
  122. 草川昭三

    草川委員 今度は法務省にお伺いいたしますが、今の最高裁の御答弁なりあるいは昭和八年の大審院の判例等いろいろとお話を聞いておりますと、相互の保証というのは必ずしも条約によってなされる必要はないというようにうかがわれるわけでございますが、法務省もそのようにお考えになり、ただいま外務省からの御説明のようにとりあえず法務省として条約に加入するという意思はございませんか。お伺いします。
  123. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 私どもも、民事訴訟法第二百条の「相互ノ保証」のあるときという解釈は、最高裁判例のとおりの考え方を持っておる次第でございます。したがいまして、外国の判決につきましてはそういう線で処理をすればそれで足りるであろうというふうに考えております。  条約の関係につきましては、先ほど外務省からも御説明がありましたけれども、まだ実際は加盟国が少ない、殊に日本と余り関係が深いとは言えない国であるというふうなことから考えますと、現在のところでは条約に入っても余り実効性がないのじゃないかということでございますが、将来の条約の加盟国の推移などを見ながら、条約に加盟することが適当かどうかということについての私ども考え方を決めてまいりたいというふうに考えております。
  124. 草川昭三

    草川委員 余りこの問題について時間をとっておってもあれでございますから、もう少しこの問題について具体的に立ち至ったところで申し上げますと、実は東京地方裁判所でいろいろと韓国側と争っておった場合に、韓国の船主は日本の裁判所において、実は予備的だけれどもということで韓国法によるところの責任制限の主張をしておるわけであります。韓国の責任制限は、韓国の法律によりますと描法の中に入っておるわけであります。日本の場合はもちろんきちっとした船舶責任制限法という法律があるわけでありますけれども、この韓国側の責任制限の内容と日本の責任制限の額を比較をいたしますと、非常にひどい額の違いになっております。私が簡単に申し上げますから、金額は別といたしまして、これは法務省の方で間違いがあるかないかということだけ確認してもらいたいのです。  船のトン数からいきます。百トンの場合、物損でいきますと日本は三千七百万円です。細かい数字は全部削ります。韓国の場合、一円を韓国の四・四三ウォンと仮定して計算をいたしますと三十三万八千六百円。ですから、これは比較をいたしますとわずか〇・九%ですね、韓国側の方が。大損でいきますと、日本の方は一億一千百万円出ます。ところが韓国法だと六十七万七千二百円、〇・六%にすぎないわけです。これを三百トンに引き上げますと、三百トンの場合は、大損だけでいきますと、日本の責任制限法でいきますと一億一千百万円になります。韓国法は二百三万円、端数全部切り捨てで申し上げますが、これはわずか一・八%ということになります。千トンの場合へいきますと、日本の大損は一億八千五百万円、韓国の場合はようやく六百七十七万円になりまして、これも三・六五%という割り算というのですか、率になるわけです。  このように差がひど過ぎますと、例えば私が今申し上げましたように、実行されたとしても、これは少しひどいじゃないかということになるわけですね。だから、ここら辺になってまいりますと、私は、今の御答弁だと、それはそれでいいじゃないかとか、あるいは双方で公平な大体の常識的な線で行われるならばそれはそれでいいじゃないかという話になったとしても、この責任制限というそれぞれの基盤とするところの法律の制度がこんなに違いがありますと、円満に紛争を解決するというわけにはいかないのではないか、こう思うのでございますが、まず責任制限の額はこういう数字で間違いがないかどうか、お聞かせ願いたいと思います。
  125. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 換算率等の問題がございますので細かな数字は別といたしまして、韓国と日本とでは責任の限度額については御指摘のような大幅な違いがあるということは、私どもも認識いたしております。
  126. 草川昭三

    草川委員 そういうように大幅に責任の額が違うわけでございますから非常に難しいわけですね。ところが、難しいとはいいますものの日本と韓国という隣国の立場からいいますと、こういうような海上のトラブルというのは随分出てくるわけでございまして、日本側も韓国に被害を与える場合もあると思うのです。その場合に、向こうは当然日本の責任制限の額について要求してくるであろうと思うのでございますが、そういう問題になってまいりますと切りがないほどこれは重要な問題ではないかと私は思うのです。こういう点について外務省として、これは日韓両国の非常に難しい問題になってまいりますが、どのように御判断をなされるか、お伺いをしたいと思います。
  127. 渋谷治彦

    ○渋谷説明員 本件につきましては今後いろいろ調べてみまして、必要とあれば関係省庁と相談して、どういう措置がとれるか検討してみたいと思います。
  128. 草川昭三

    草川委員 これは何回か申し上げますけれども、両国の間の友好関係ということを基調にしながら、海上トラブルについての円満な解決あるいは紛争の解決が図られるよう、これはそれぞれの役所、立場の問題がございますし裁判の問題あるいは主権の問題に絡んでくることでございますから非常に難しい問題があったとしても、ぜひ解決のために努力をしていただきたいということを強く要望して、まず第一番の問題を終わりたい、こう思います。  第二番目の問題で、これは法務省の人権擁護局の方とそれから警察庁あるいは文部省の方々にお伺いをしたいと思うのでございますが、法務省が十年間の事例調査で体罰の横行という問題を過日発表されました。体罰を加えることが非常に多いのは二十代後半の中学の体育の教師で、体罰を受けた児童生徒の約七〇%が何らかの傷害を負っている。子供のいじめ問題が今話題になっておるわけでございまして、これも関係委員会で非常に熱心な御議論がなされているわけでございますが、学校現場における児童生徒の心身に著しい悪影響を与えている。こういう現実というものは何も法務省の人権週間だけの問題ではないわけでございまして、ひとつ我々としても関心を払っていきたいことでございます。  そこで、まず法務省に簡単にこの事例調査の問題点あるいは今後の対応という点についてお伺いをしたい、こう思います。
  129. 野崎幸雄

    ○野崎政府委員 委員も御承知のとおり、体罰につきましては学校教育法が厳に禁じておるところでございますが、残念ながら体罰というものは学校現場で継続的に行われてきたこともまた事実でございます。私どもは、体罰というものは法律に違反するものであり、人権侵犯以外の何物でもないという観点に立ってこれまでも厳正に対処してまいりましたが、今後も同様の観点に立って厳正に対処し、また体罰の根絶のための啓発活動を継続してまいりたいと考えております。  体罰が行われますのは、児童生徒に何らかの問題行動があった場合、教師の指導に対して児童生徒が口答えをするなどの反抗的な態度に出たことから、教師が感情的になってこれを行う場合が少なくございません。先ほど委員も御指摘になりました調査によりますと、体罰の方法としては殴ったりけったりするという方法が一番多うございますが、押し倒したり、投げ飛ばしたり、耳を引っ張る、あるいは正座をさせる、過酷な作業、運動をさせるといったようなものもございますし、非常に例外的には、かなり陰湿で徹底的なものも見られるところでございます。  私どもといたしましては、このたび「体罰をなくそう」というタイトルの小冊子を出しまして、過去におきまして私どもが担当しました事件の内容を明らかにいたしますとともに、その内容から見て、果たして体罰というものが教育的効果があるのか、むしろ人権侵犯以外の何物でもないではないかということを訴えることにいたしましたが、これも私どもが体罰をなくするための啓発活動としてやっておることでございますので、今後ともこういった活動を展開していきたいと考えております。
  130. 草川昭三

    草川委員 今のお話にもありましたし、それからそのパンフレット等も拝見をいたしておりますと、法務省は、子供同士のいじめにも体罰が大きな影響を及ぼしているのは明らかではないか、真の教育目的でも児童生徒は単なる暴力や屈辱としてこれを受けとめていることが多い、というようなこと空言っておみえになります。私もそれは同感だと思うのです。  今度は文部省にちょっとお伺いしますが、文部省では教職員の体罰等による懲戒処分の事例というものをどのように把握をしておみえでありますか、お伺いします。
  131. 林田英樹

    ○林田説明員 お答えいたします。  ただいまの教職員の体罰等による懲戒処分等の状況でございます。この場合、懲戒処分と申しましても、いわゆる法令に基づきます懲戒処分と訓告等の事実上の処置ということも含めまして調査をいたしておるわけでございますけれども、私ども調査によりますと、昭和五十九年度でいわゆる法令による懲戒処分として処分されましたのが十七名、訓告等の事実上の処置ということで行われましたのが九十八名でございまして、合計百十五名の懲戒処分等を受けました者がございます。これは都道府県、指定都市が任命権を持つ公立学校教員ということでございますけれども、以上のようなデータになっております。
  132. 草川昭三

    草川委員 同じく文部省にお伺いをいたしますが、文部省は今いじめの問題でいろいろな対応を立てておみえになります。全国の指導者会議もやられておるようでありますし、また自殺者が相次いで出ておるわけでございまして、社会的にも非常に大きな関心を呼んでおります。このいじめの問題と体罰との関係というのは、法務省が言っておりますように影響があると私は思うのですね。文部省としては体罰というものについてどういう対応を立てておみえになるのか。今の処分だけの問題ではなくて、いわゆるいじめとの関連でどのようにお考えになっておられるのか、お伺いをします。
  133. 林田英樹

    ○林田説明員 お答えいたします。  体罰につきましては、先ほど法務省の方からお答えがございましたように、学校教育法第十一条におきまして体罰を加えることができないということは法令上明確になっておるわけでございますし、文部省としても一貫して体罰は許されるものではないという二とで、これの根絶に向けまして指導通知も発しますとともに、指導もしてまいったわけでございます。  体罰がいじめとの関係でいかなる関係にあるかということでございます。いろいろな事例によりまして場面も多様であろうかと思うわけでございますけれども、私どものいじめ問題に関します検討会議におきましてもこの点は議論をされまして、その緊急提言の中におきましても、体罰等の教師の一方的な措置がいじめを誘発する場合もあるということで、この点につきましては適切な措置をとるように文部省も要請されたわけでございます。これを受けまして、先般六月二十九日に「児童生徒のいじめの問題に関する指導の充実について」ということで改めて初中局長通知を発したわけでございますけれども、この中でも改めて体罰の禁止ということにつきましての指導をお願いしたところでございます。
  134. 草川昭三

    草川委員 警察庁にもおいで願っておりますから、警察庁に、最近のいじめの被害というのですか、かなり社会的に大きな問題提起をしております自殺だとかあるいは暴行による傷害とかいろいろな例があるのでございますが、これもどのように把握をなすってみえますか、お伺いをします。
  135. 根本芳雄

    ○根本説明員 ただいまお尋ねのいわゆるいじめによります被害についてでございますが、警察庁としては本年の一月から六月までの数字を把握しております。そういたしますと、いじめによる事件の数は二百五十一件、被害者の数は五百三十二人でございます。  この事件を罪種別に見ますと、暴行による被害者が百六十二人、恐喝の被害者が百四十二人、それから傷害の被害者が百四人、それから暴力行為の被害者が五十人など、こういうことになっております。  それから、いじめられた結果これに対して仕返しをする、こういう事案も二十二件発生しておりますが、これによる被害者は三十五人。被害者の内訳は、傷害が二十五人、放火三人、暴行二人、それから殺人や暴力行為がそれぞれ一名など、こんな数字になっております。  また、いじめそれ自身が主たる原因となって自殺というような悲惨な結末を選んだ少年の数でございますけれども、本年の一月から現在までに九人、こういうように把握しております。  以上でございます。
  136. 草川昭三

    草川委員 これは法務大臣にもぜひ聞いていただきたいのですが、今、法務省は人権の立場から体罰の問題を発表なされておられますし、文部省は文部省なりにいじめ問題についての緊急提言だとか、いろいろなことをなすってみえるわけです。ここに警察庁のパンフレットがありますけれども、警察庁としては珍しいと言うと怒られますが、非常にすぐれたパンフレットだと私は思うのです。非常に細かく、親が見てもいじめの状況を子供の姿から判断をすることができるとか、非常に細かい配慮のパンフレットを出されておみえになります。こういうのは本来は文部省あたりがもっと出していただいて関係先に配っていただくことが必要だと思うのでございますが、非常に容易ならぬ事態でございまして、つい最近の事例では、子供が学校の先生よりも先に警察に相談に行く、警察からの相談があったけれども、結局連絡があったのだけれども、学校の方での対応がだめで、みずから命をなくしてしまうという非常に悲惨な例があります。こういう問題等について、人権擁護の立場から法務大臣としてはどのようにお考えになっておられるのか、お伺いします。
  137. 嶋崎均

    嶋崎国務大臣 いじめの問題につきましては、実は法務省としまして五十九年に全国の中学生の作文コンテストというのをやっておるわけでございますが、その中で、三十二万通があった中の四分の一の二五%がいじめの問題を取り上げておるということが明白になったわけでございます。そこで、このいじめの問題というのを法務省で取り上げるのはどうだろうかなというような感覚も実はあったわけでございますけれども、そういう背景があったものですから、ぜひひとつ研究してみたらどうかということで、御承知のように本年の三月十二日にいじめの問題について通達を出しました。あわせて、法務省で人権擁護の仕事をやっている人間というのは、限られた、たしか二百二十人くらいしかいないわけでございますから、それではなかなか対処ができないということで、人権擁護委員の連合会の方にも御協力を願いまして、全国に一万一千五百人いる人権擁護委員皆さん方にも同趣旨の考え方を連絡をいたしまして、この問題を取り上げたわけでございます。幸いにしてその効果というのは相当ありまして、警察の関係でもあるいは文部省の関係でもこの問題を取り上げていただくような契機をつくったような感じを持っておるわけでございます。  ところで、そういう経緯で取り上げたわけでございますが、その中身をいろいろ検討してみますと、なかなか昔もこういうものはあったじゃないかというような考え方がありますが、中を調べてみますと、非常に集団の中で行われる、しかもその集団の中で特異な、どちらかというと少しはみ出した形になる人に対して、あるいは弱い人に対してそれが行われる、しかも多数が共同して行う、そして心理的、物理的に非常に大きな影響をいじめられる人に与えるというような事態が明らかになってきました。かつまた、その中身を調べましても、非常に陰湿でじめじめしておるというようなものが多く、かつ長期的、継続的になされて、どうも歯どめがついていないというような感じが受けとられたわけでございます。そういう問題をとらえまして、いじめの問題というのは主として学校教育上の問題であろうと私は思うのでございますけれども、だんだんそれがいらいらした気分というかフラストレーションが出てきまして、ひところはそれが校内暴力とかなんとかというものに動いたのが、最近はいじめというような形になって出てきておるのではないかというふうに思われるわけでございます。  そういうことを通じまして、どうも他人に対する思いやりとかあるいはいたわりの気持ちを抑圧するというような意味で、人権擁護の面から見ましても非常に問題が出てきておるのみならず、ごく最近では御承知のようにそれを契機にして自殺者が出る、登校拒否が非常に多くなる、非常に孤独感を味わうというような学生というのもたくさん出てくる。そういう事態になりますとやはり人権的な問題としても考えなければいけないということで、先ほどいろいろな資料等も発表いたしましたけれども、またそういう資料も準備をしましたけれども、このいじめの問題を何か一過性のものにして処理をするというような気持ちで、家庭の中でもあるいは学校でもあるいは地域の問題としましても、これを的確に対処していくということがぜひとも必要であろうというふうに現在思っておるわけでございます。  そういう意味で、法務省はこの人権擁護の問題については啓発機関ではありますけれども、この問題を集中的に取り上げていくということは今非常に大切なことであろうというふうに思っております。幸いにして関係各省ともこの問題に非常に熱心に取り組んでいただいておられる状況が出てまいりまして喜んでおるわけでございますが、今後もこういう努力を怠ってはならないというふうなつもりでいるような次第でございます。
  138. 草川昭三

    草川委員 今大臣がおっしゃいましたように、ぜひ法務省としても、啓発機関だとは思いますが関係各省へ働きかけて対応を立てていただきたい、こう思います。時間がございませんので、二番目のいじめの問題はこれで終わります。  三番目に、在日韓国人の法的地位の問題についてお伺いをします。  何か話によりますと、日本と韓国の間の日韓事務レベルの協議が十三、十四日の両日外務省で行われる、こういうように聞いております。そこで私はきょうは、たくさん問題がございますけれども絞ってお伺いをするのは、いわゆる三世問題です。  在日韓国人の三世問題について外務省はどういうような対応を立てられるのか、これは法務省にも関係があるわけでございますが、一九六六年一月の在日韓国人の法的地位協定発効後五年後、七一年一月以降に生まれた直系子孫、この問題、いわゆる一世、二世についての永住権は認められているわけですが、三世以下の法的地位というものがまだ正確な形になって認定されておりません。そこら辺の問題はどのように対応を立てられるのかお伺いしたい、こう思います。
  139. 渋谷治彦

    ○渋谷説明員 十三、十四日の両日東京において開催されます会議は、在日韓国人子孫の日本での居住に関する日韓会議ということでございます。この会議では、いわゆる三世以下の在日韓国人子孫の日本における居住という問題と関連し、これらの者を取り巻く生活上の実態につき主として韓国側より説明を受けることにしております。この会議では、交渉とかあるいは協議ということではなくて、むしろ形式にこだわらず、ファクトファインディングのための話し合いの場を持つというぐあいに考えております。
  140. 草川昭三

    草川委員 こちら側よりは向こうから問題提起という形であるのではないか、こういう答弁であるわけですね。ただ、今まで日本側としてはこの問題を特に取り上げてきたとは思えないわけでございますが、それは今のままでもいいという立場で、問題はないという立場をとっておみえになったからですか。
  141. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 ただいま先生指摘会議は法的地位協定第二条に関連するわけでございます。この二条によりますと、昭和六十六年までに協定永住者の直系卑属、三世以下の地位の問題について、あるいは居住の問題について協議を行うということを定めてあるわけでございます。まだその期限が非常に先の話でございますので、私どもとしても必ずしもこの時期にこの会議をしなくてはならないというふうには考えておりませんでしたけれども、韓国側がこの問題について一刻も早く両国政府間の接触を行いたいという強い希望の表明がございましたので、その希望を入れまして、その前提といいますか前段階という感じで、先方の言い分なり情報の提供を受けようということになったわけでございます。  しかしながら、我が方政府といたしましては、この協定永住者の子孫の問題について、決して今日まで放置しておいたわけではございません。昭和五十六年の出入国管理令の改正の際に特例永住あるいは簡易永住という制度を導入いたしまして、この協定永住を本来受け得た人々でその申請の期間を徒過してしまった人々、あるいは実質的に同様の立場にある人々、すなわち多くは北出身の人々でありますけれども、そういう人々のためにこういう特例を設けた、新しい制度を導入したということであります。したがって、終戦前から我が国に居住しておりました朝鮮半島出身の人々あるいはその子孫の法的な立場につきましては、その安定化ということについて我が国なりに措置をしてきたということがございます。
  142. 草川昭三

    草川委員 そうだといたしますと、今回のこの十二、十四日の会議一つの契機として、三世問題の協議だけではなくて、いわゆる在日韓国人の待遇問題、特に指紋押捺等の問題も何か触れられるのかどうか、その見通しについてお伺いいたします。     〔委員長退席、亀井委員長代理着席〕
  143. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 今回の会議におきましては、先ほど申しましたように法的地位協定第二条の関連で行われる会合でございますので、そういうこともございまして、あらかじめ指紋問題についてはこれを検討の議題とはしないということを双方で申し合わせております。指紋問題を含む法的地位一般につきましては、別途事務レベルの協議の場がございますので、そちらの方で取り上げるべき問題でございまして、今回の議題を特定しての会議において特にこれが取り上げられるということはないものと了承いたしております。
  144. 草川昭三

    草川委員 しかし、一方ではそういうような問題はあるにしても、この問題についての話し合いが進めば、当然指紋押捺問題等についての相手側の考え方についても影響があるのではないかと思うのですが、全く無関係、関係なしと言い切れるのかどうか、お伺いします。
  145. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 既にこの会合の議題が双方で打ち合わせされておりまして、その議題の中には掲上されておりません関係上、先ほどのようなお答えを申し上げたわけでございます。なお、先方から何かごの問題に触れるということが仮にあるとすれば、当方としてはそれを聞き置くということにとどめるほかはないかと存じます。
  146. 草川昭三

    草川委員 これも、全国的には一部指紋押捺拒否者の逮捕者も出ておるわけでありまして、今は少し下火のようでございますけれども、本質的な問題についての解決はなされておりません。私どももこの問題については何回か、機会あるごとに政府の方にも要望をしてきておるわけでございまして、もしそういう一つのきっかけがあるとするならば、話し合いはぜひ進めていただきたいということを強く要望しておきたいと思います。この問題についてはこれで終わります。  実は厚生省にも来ていただいております。今さらの問題ではございますけれども、戦後の海外邦人の引き揚げを行う法的な根拠について少し意見を聞いておきたい、こういうわけで厚生省にも来ていただきました。外務省の渋谷さんもお見えになりますし、法務省も全く関係がないというわけではございませんが、私の本当のねらいは、もとの樺太、サハリンに残留をいたしております日本が戦前に強制連行した旧朝鮮人の方々、多くの方々は韓国の大都、ソウルから連行された方が多いわけでございますが、その方々が今放置されておるわけであります。これはきょうの主題ではございません。しかし一方、中国の残留孤児の方々には今それなりに大きな手当てがなされておりますし、それから横井さんだとか小野田さんの例を持ち出すまでもなく、元軍人の引き揚げ問題についても厚生省はかなり力を入れておみえになりました。いわゆる法的な根拠は一体何だろうかとお聞きしたところ、実は昭和二十七年三月十八日の閣議決定に基づいて戦後の海外邦人の引き揚げを行っている、こういうように言われておるわけでございますが、その閣議決定は現在も有効なのかどうか、厚生省にお伺いします。
  147. 大西孝夫

    ○大西説明員 お答えをいたします。  ただいま御指摘の閣議決定は現在も効力を有しております。
  148. 草川昭三

    草川委員 地域別に聞けばいいのでございますけれども、時間がございませんので、今まで引き揚げをされた軍人軍属、一般邦人、これを分けて、総数で一体どれだけ引き揚げられたのか、その数を示していただきたいと思います。
  149. 大西孝夫

    ○大西説明員 五十九年十二月未現在までに引き揚げてこられた方は、総数で六百二十九万二千四十五人、うち軍人軍属が三百十万七千四百十一人、一般邦人の方が三百十八万四千六百三十四人ということでございます。
  150. 草川昭三

    草川委員 私どもがお願いしたいのは、千島、樺太から二十九万三千四百九十一人の方々が引き揚げてみえるわけでございますが、約四万から五万と言われる元朝鮮人の方々はそのまま残っておみえになり、ソ連籍になり、あるいはまた無国籍のまま生活をしておみえになる、こういう問題があるわけであります。私はそれを頭に置きながら、軍人軍属以外の朝鮮人、台湾人の方々というのは、昭和二十年の国民勤労動員令に基づいて徴用をされた人々であるわけです。こういう方々も同等に引き揚げを行うべきではないだろうかということを言っておるわけでございますが、残念ながらそれは実行されておりません。  そこで、きょうはだんだん時間がなくなってまいりましたので、これは強く要望をしておきたいと思うのでございますが、戦後処理の問題に関して、旧日本人を含む在外邦人の引き揚げについては今申し上げましたような閣議決定があるわけでございますが、その閣議決定の法的な性質というのは一体何か、また、今の閣議決定は特にサハリン残留邦人の引き揚げについても及ぶべきものと解していいのか、この点について政府の責任ある答弁が欲しいわけです。きょうは本来ならば法制局にも来ていただいてこの問題についての議論をしようと思っておったのでございますが、時間の関係上やりません。これは議事録にとどめておきますので、後に関係省庁の方に御連絡を願って、この根拠というもの、そして私が申し上げている趣旨に少しでも近づくように関係省庁も予算を立てていただいて、中国残留日本人孤児の訪日調査には予算措置もついておるわけでありますし、中村元上等兵の問題についてもそれなりの、これは台湾出身の方でございますが対応を立てておみえになるわけですので、そういう趣旨に従って対応が出るようにぜひ行っていただきたいということを強く要望しておきたいと思います。  以上で本件は終わります。関係の方は御退席願って結構でございます。  そこで、今度は一つ具体的な事例について申し上げますが、実は日本人でありながら日本人ということをどのように認定するかという大変難しい問題を法務省にお伺いいたします。  私がなぜそういうことを言ったのかといいますと、実は北海道出身の佐々木てる子さんという方がおみえになるわけです。この方は、北海道の炭鉱に昭和十九年から二十年まで働いておみえになりまして、そこで当時韓国から強制連行されて北海道の炭鉱で働いておみえになりました韓国人の方と昭和二十年に一緒になるわけですね。一緒になりまして、終戦の混乱のときですからもちろん婚姻届も何もやっておりません。そのまま、日本の横浜港だと思いますけれども、米軍のLSTに乗って韓国へ渡るわけです。それで韓国で子供をつくられるわけです。昭和二十年の大混乱の時期ですから、本人はフリーパスで行くわけです。出国証明も何もないわけです。それで、話によりますと、主人もいずれ日本に帰ってくるからということで行って、結局ずるずると韓国で子供を生み、生活をします。子供が大きくなりますと学校へ入学します。そこで本人は籍がないわけです。日本人だということは地域社会ではわかるのですけれども、韓国にもう十何年いるわけですから、韓国で籍をつくらなければいかぬというので、どういう形かわかりませんが、とにかく韓国名の金照子という籍をつくるわけです。子供も大きくなり、御主人と別れるということで、今度は日本に来るわけです。日本に来るときの旅券は、これまたおかしいのですけれども、旅券のいろいろなところには、金照子という名前で来るのでございますけれども、日本人妻として位置づけをされているわけです。それで日本にお見えになりまして、実は私は日本人だからこの際日本の籍に戻りたいとおっしゃるわけです。  私はその相談に乗りまして、法務省の地方の管理官とも何回かお話をいたしまして、ざっくばらんに法務省も随分親切に相談に乗ってくれたのです。それは草川さん、あなたのおっしゃるように現在金照子という名前だが、多分それはお話を聞くと佐々木てる子に違いないと思うが、一体それは何で特定するのですか、それこそ指紋押捺の反対運動のさなかのときに、だから先生、指紋押捺は必要なんですよ、という若干笑い話的な話があったのでございますが、よく考えてみると、私は日本人だという証明はできないわけです。  そこで私は一計を案じまして、北海道新聞の方にお話をして、北海道新聞の方で少しこういう話を書いてくれよと言ったら協力をしていただいて、佐々木てる子を証明する人がおらぬかという意味の新聞記事を書いてくれましたら、わあっと、てるちゃんかてるちゃんかということでたくさんの証言が集まって、その証言集を、とにかく写真であろうと何であろうと持っていって戸籍課の方へお渡しをしたということなんです。  これは一つの事例なんですが、こういう事例について最近法務省の方も結論を出していただいたと思うのですが、この席上で、法務省としてどういう対応をなされたのか、お伺いをしたいと思います。
  151. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 ただいまお話しのように、佐々木てる子さんとおっしゃる方からことしの八月ごろ、自分は日本人であって、北海道の赤平市を本籍地とする、その戸籍に載っている佐々木てる子であるということを認定してほしいというお話がございました。その際に、先ほどお話がございましたように、それを何か証明する方法はないだろうかというふうなことで、北海道の方で小学校の同級生等の方がこの方は佐々木てる子に間違いないというふうな陳述書をたくさんお寄せいただいて、そこで大体それに間違いないじゃないかということも法務局として認定できるようになったわけであります。ところが、日本人として認定いたします場合に、日本の戸籍に載っている佐々木てる子さんとその方が同一人であるというだけではまだ足りませんので、実は、ただいまのお話にもございましたように御本人は韓国で戸籍があるわけでございます。その戸籍を見ますと、韓国人夫婦の間に生まれた子供であるとして届けられておりまして、そして韓国政府発行の旅券を持って入国しておられる。そして外国人登録も日本でしておられる方なのであります。そうしますと、韓国政府としては一応韓国籍がある者として掌握している人になります。そうしますと、韓国籍を本当に取得した人なんだろうか、しかも、日本の国籍法の規定によりますと、自己の志望によって外国籍を取得した場合には日本の国籍を喪失するということになりますから、たとえ戸籍上の佐々木てる子さんと同一人物である、したがって生まれたときは日本人であるということはわかっても、現時点で日本人であるかどうかについてはもう一つ問題がある。そこで、韓国の戸籍がどのような経緯でつくられたものであるかということをよく調べませんとわからないわけでございまして、それをいろいろと調査をいたしましたところ、先ほど御指摘ありましたようないきさつで韓国へ渡って、そしていろいろな事情から、親戚の人などから勧められて、ともかく韓国で戸籍をつくってしまわないと後で困ることがあるということでつくられたというふうなことで、別に本人が韓国の国籍を取得したいというつもりがあって自分の志望で法律上国籍取得の行為をしたものではないという事情が判明いたしました。  その結果、法務局といたしましては、本省にも相談したわけでありますけれども、この人は先ほど申しました北海道赤平市を本籍地とする佐々木てる子さんに間違いないということの認定をいたしまして、本人にもその旨を通知し、関係の市町村の方にもその旨を連絡して、その後の戸籍の手続の上で、きちんと子供さんの分についてもするというふうな運びになった次第でございます。
  152. 草川昭三

    草川委員 正式にそういう御答弁でございますので、私どももお世話をした立場から非常に喜んでおるわけで、感謝を申し上げたいと思うのです。  ついでながらお伺いをしますが、今局長も御答弁になったように、韓国のパスポートを持ち、外国人登録をしておるわけですが、それは事務的に言うならばどこで消すわけですか。これは事務的な問題になりますが、そのことを少しお答え願いたいと思います。
  153. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 旅券の関係は、韓国政府との関係でございますので、返してきちんとしたいとすれば領事館などに行って何かの手続があるのかもしれませんが、その点は私どもはよく承知しておりません。外国人登録の関係は、私どもの方から本人に通知すると同時に所管の入国管理局の方にも通知をいたしておりますので、本人が登録を消すというふうな申請をいたしますと、それによって消すという手続になるのではないかと思っております。
  154. 草川昭三

    草川委員 もう時間がございませんが、こういう非常に特異な例でございますけれども、戦後の混乱の時期にはそういう方々もたくさんおみえになると思うのです。それで、これは韓国ですが、韓国と特定しなくても、台湾であるかもわかりませんし、フィリピンであるかもわかりませんけれども、本来ならばそこの国の領事業務としても対応をしていただくことができるなら、それはそれなりの方法であったかもわかりません。しかし今度は、そういうことになりますと、そこの出国の際にどこでその認定をするか、あるいは今おっしゃられましたようにどういう理由で籍をつくったのかという、その行為そのものが責められるということになるかもわかりません。でございますから、これは簡単には解決できない問題だと思いますけれども、こういう事例等もございますので、たまたま私どもがお話をお伺いをしましたからいろいろな対応が、少しでもお役に立つことができたと思うのでございますが、個人ではなかなかできる問題ではないと思うのです。そういう点も十分承知をしていただきまして、個人でこういう訴えがあったときにも親切な対応ができることを特に強く要望しておきたいというように思います。  時間が来たようでございますが、一つだけ追加で質問をしておきたいと思います。これからも帰化の申請ということが非常にふえてくると思うのでございますが、帰化後の姓名の取り扱い、あるいは帰化の申請があったときに家族ぐるみで申請を受け付けようと指導をなすっておみえになるのか。一部の議論でございますけれども、帰化後も外国姓を名のらしてもらいたい、いわゆる民族性の立場からそういう要望もあるようでございますし、それから先ほども少し触れておるわけですが、家族全体を一括して申請をされるように指導することが果たして適当かどうか。将来の民族性の自負心というのでしょうか、そういう立場から帰化を否定をするような子供さんがいた場合にそれはどうなのか、こういう問題もあるわけでございまして、その子供にどのような影響を与えることができるか非常に問題があると思いますので、その点についてひとつ法務省の意見を聞いて私の質問を終わりたい、こう思います。
  155. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 帰化後の氏名でございますが、帰化いたしまして日本国籍を取得いたしますと初めて日本民法による氏というものができるわけでございますので、その際どういう氏にしますかということはお聞きした上で処理をいたすわけでありますが、その際に日本式の名前にするということを強制することはいたしておりません。ただ、氏名を創設をいたしますと後になって変更するということはなかなか難しい問題がございますので、慎重に考えるようにということは申し上げておりますが、日本式の名前をつけることは強制しておりません。その点も、二年ぐらい前になりますか、さらに念のために法務局の方にも通知をしておる次第でございまして、最近でも片仮名の名前を名のりたいという方で帰化された方もありますし、それから場とか任とかというような氏の方も帰化になっておるわけでございますので、日本式の名前でなければいけないというふうなことではございません。  それから、家族ぐるみということでございますけれども一つの生活の単位になっております家族が国籍がばらばらになることは必ずしも好ましくないということは一般的に言えようかと思いますが、私どもの方でも、事案事案によりまして必ずしも家族が全部一緒に帰化しなければいけないという扱いにはいたしておりません。ただ、小さな子供さんについて、両親が帰化をするというのに子供さんだけをもとの外国の国籍のままにしておくというのは少し問題だ、養護する者が別の外国の国籍に残るというのは問題であろうというふうな扱いにはしております。それから夫婦の場合もなるべく一体であってほしいというようなことでございますけれども、これもいろいろなケースがございますので必ずしも全部が夫婦一緒でなければいけないという扱いにはしておりません。先ほど申し上げましたように、なるべく生活をともにする家族関係の者は同一の国籍であった方がいいというのは、従来から世界に共通する一つの国籍の考え方であります。それが中心をなすものではありませんけれども、そういう考え方でございますので、そういう面を踏まえながらケース・バイ・ケースで考えておるというのが実情でございます。
  156. 草川昭三

    草川委員 これで終わりますが、実は最後に一問、法務局の業務について、特に現場で登記業務が増加をしておるにもかかわらず人員が非常に少ない、そのために現場では非常に混乱をするわけですし、国民というかいわゆる利用者にとっても非常に不便だという問題の質問を行う予定でございました。時間がございませんので以上で終わりますが、ひとつこの定員増の問題については、こういう臨調の時代でございますし、非常に厳しい問題があると思いますが、定員確保で現場に混乱の起きないようにぜひ対応を立てていただきたいということを要望して、私の質問を終わります。以上です。
  157. 亀井静香

    ○亀井委員長代理 小澤克介君。
  158. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 ここのところいろいろと問題の起こっております外国人登録法の運用の状況についてお尋ねをいたしたいと思いますが、それに先立ちましてまず大臣に、最も基本のところでございます、この外国人登録法というよりはむしろ外国人登録制度の制度目的、趣旨、それは一体どこにあるのか、それから、とりわけ外登法違反について罰則を設けてあるのはなぜなのか、すなわち罰則によって一体何を担保しようとしているのか、基本のところをまずお尋ねしたいと思います。
  159. 嶋崎均

    嶋崎国務大臣 御覧間の外国人の登録問題については、本邦に在留する外国人の登録を実施することによって外国人の居住関係及び身分関係を明確にし、もって在留外国人の公正な管理に資することを目的としておるわけでございます。外国人登録法は、外国人に対し御質問のように一定の義務を課し、また義務違反に対しては罰則を定めておるわけでございますが、これは、間接的に義務の履行を確保することによって正確な外国人登録を確保、維持しようという考え方でできているものであろうと思います。
  160. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 一九八二年にこの外登法の改正がございまして、その際にいろいろな議論がなされているわけでございます。当委員会あるいは参議院の法務委員会等で議論がなされておるわけでございまして、それをいろいろこの機会に拝見したわけですが、四月十二日、これは第九十六国会におきまして当時の大鷹入管局長ですかから今大臣がおっしゃられたとほぼ同趣旨のお話がありまして、外国人を管理するとは一体何なのかという当委員会の当時の稲葉委員質問に対しまして、外国人の管理については、出入国あるいは在留管理というものには二つの側面がある。一つは不法入国や不法残留あるいは資格外活動といったものを取り締まる、そういった側面である。いま一つは、これと裏をなすのでしょうけれども、在留許可書の発給であるとかそういった行政サービス、これが外国人の出入国あるいは在留管理の内容である。その上で、外国人登録制度については今言ったような外国人の出入国あるいは在留管理に資するために外国人の身分関係、居住関係を明らかにするんだ、あるいは同趣旨でございますが、身分関係、居住関係についての資料、情報を提供する、それが外国人登録の制度目的である、こういう説明がなされているわけですが、これは現在もこのとおりというふうに伺ってよろしいでしょうか。
  161. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 そのとおりに御了解いただいて結構だと存じます。
  162. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 さらに同じ大鷹入管局長ですが、外登証を常時携帯することになっている、この常時携帯義務についても、その目的は「不法入国者あるいは不法残留者の取り締まり対策を容易ならしめる」これが目的である、このようにお答えになっておられますが、これも今もこのとおりでしようか。
  163. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 外国人に対して身分を明らかにする文書の携行を義務づける制度は世界各国において行われておりますが、我が国においてもそれと同様の制度を持つわけでございまして、その目的は先生がただいま御指摘のとおりでございます。
  164. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 そうしますと、この外国人登録制度あるいは外国人登録法の目的とするところは、一つには外国人の出入国あるいは在留管理に資する、すなわち、この制度あるいは法それ自体が外国人の出入国あるいは在留管理のための行政目的を担保するための一種の手段としての制度である、これが本質ということになろうかと思いますが、そのような理解でいいんでしょうか。
  165. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 そのように了解していただいてよろしいかと存じます。
  166. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 そうしますと、この外国人登録制度において違反者に対して刑罰が科せられるのもそういった行政目的を担保するためのものであって、いわば形式犯といいますか、何が形式犯で何が実質犯かは必ずしもはっきり区別はしにくい面があろうかと思いますけれども、財産犯であるとか、身体、生命を保護法益とするような自然犯ですか、そういったものと比較いたしますと、行政目的担保のための形式犯だ、こういうふうに理解されると思うのですが、それは間違いないでしょうか。
  167. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 通常特別の目的を達成することを目的としております行政法規に定める罰則、いわゆる行政罰則は、一般刑法犯とは違いまして、特定の行政目的を達成するための手段と申しますか、罰則を科することが目的ではなくて、その行政法規に定める特別の目的を達成するための手段として設けられているものであるというふうに了解いたしておりますけれども、そういう意味におきまして先生の御指摘は正しいと存じます。ただ形式犯という言葉が正しいかどうか、その点について私は専門家ではございませんので何とも申しかねます。
  168. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 大変よくわかりました。  最近、これは兵庫県の姫路の方でございますが、いわゆる切りかえですね、十一条二項でございましょうか、これに違反したということで十六人の方が、比較的短期間だと思いますが、告発をされていたということがありまして、そのうちの何人かは罰金というような結果になっているということで、いろいろ問題が起こっているようでございます。  そこでお尋ねするのですが、外登法違反について告発をすべきかすべきでないか、あるいはどのようにすべきかというようなことについては、法務省としてはどのようにお考えなんでしょうか。
  169. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 外国人登録法違反につきましては、告発及び通知という制度がございます。すなわち、罰金以上の刑に該当する違反につきましては当該外国人の居住する居住地区を所管する警察署長に告発する、あるいは過料に該当する法違反につきましては同様に居住地区を所管する簡易裁判所に通知をするということになっております。これは法に定められてあることでございます。  そこで、法違反につきましては原則としてすべて告発ないし通知を行うということを指導いたしておるわけでございますが、しかしながら、事例によりましてさまざまの状況がございまして、明らかに本人の責に帰すべからず事例というようなものもあるわけでございます。例えば病気で出頭ができなかった、しかし病気が治ったところで遅滞なく申請を行ったというような場合、あるいはまた本人の過失に帰する事例ではあるけれども、違反の程度が極めて軽微であって、これをあえて問題とすることはむしろその行政目的に照らして適当ではない、以上のような事例におきましては告発を保留することを認めておりまして、現在までの外国人登録法の運用におきまして当局からそのような指導を行っております。
  170. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 すべて告発をするというのが原則である、いろいろ例外はあるということでしたが、そういう指導をされているということですが、これは根拠はどういうことになりますか。今、法に定めがあるとおっしゃいましたが、どの法になりますか。
  171. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 告発そのものは、先生もよく御存じの刑事訴訟法の規定に基づいて原則として行うべきものというふうに取り扱っておるわけでございますけれども、先ほどもちょっと申し上げましたように、行政罰則というものは特定の目的、すなわち、その行政法規の達成しようとしている特定の目的の達成を確保するという手段でございますので、その性質にかんがみて、あらゆる場合に告発を行うということが必ずしもその目的達成という観点から適当ではないと思われる事例があるわけでございます。そのような事例として先ほど二、三御説明申し上げましたが、そういう観点から、その告発につきましても、そういう事例につきましては弾力的に配慮をする余地があるというふうに考えておるわけでございます。
  172. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 そうしますと、告発それ自体は刑訴法に規定があるからそれが根拠である、法的根拠はそういうことになろうかと思いますが、わからないのは、告発それ自体は外国人登録事務のいわゆる機関委任事務には含まれない、これが法務省の御見解のようでございます。そうしますと、入管局として、あるいは局長としてと言った方がいいのでしょうか、この機関委任事務を行っている都道府県あるいは市町村に対して告発について指導をするというのがどういう根拠といいますか、機関委任事務でございませんし、それから法務省入管局が刑訴法の運用それ自体について云々、言及する立場にはなかろうと思うのですが、その辺はどのようにお考えなんでしょうか。
  173. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 御指摘のように告発は機関委任事務に含まれる事務とは解されておりません。しかしながら、都道府県知事または主務大臣が地方自治法第百五十条の規定に基づいて機関委任事務が適正に執行されるようにこれを監督する権限を認められております。したがいまして、問題となっております機関委任事務の執行が適正に行われるようにという観点から告発義務を履行すべき旨を指導することは何ら問題のないところと私どもは了解しております。
  174. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 問題があるかないかというよりも、根拠がやや薄弱ではないかと思うのです。その点はたしかことしの五月十七日でしたか当委員会で私議論しておりますので、きょうはそれに深入りしませんけれども、今のような趣旨から告発を指導するのであるとすれば、刑訴法に規定があるからあるいは公務員はそういう義務があるから告発をしなさいというような観念論といいますか形式論ではなくて、あくまで外国人登録事務を運用するためにその限度において告発について言及するんだ、指導するんだ、こういうことでなければならないと思うのですけれども、これはこのとおりでよろしいですね。
  175. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 外国人登録法の事務の執行が適正に行われるということを目的として行われている指導であるというふうにお考えいただいてよろしいと存じます。
  176. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 告発というのはそもそも何なんですか。この定義づけといいますか本質はどういったことになりますか。
  177. 筧榮一

    筧政府委員 告訴あるいは告発、これは主体が違いますけれども、趣旨とするところは、二足の犯罪事実があると思料する場合に、その事実を官に申告して処罰を求める意思表示というふうに理解をしております。
  178. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 すなわち、犯罪事実を申告するということにとどまらず処罰を求める意思表示である、これが告発の本質だろうと思います。告訴の場合は被害者が行う、告発は被害者と限らないという主体の違いがありますけれども。したがって、これはある人の処罰を求めるという大変強い、重い意味を持った行為なんですね。その辺がやや認識が薄いのではないかというふうに思うわけです。  最初に確認いたしましたとおり、外国人登録法それ自体が外国人の出入及び在留管理に資するための手段的な制度である、さらに、これに罰則を設けたのはこの行政目的を担保するために罰則を設けられているにすぎない。そうすると、この処罰を求めるというのも、処罰を求めなければもはやこの行政目的を達することができない、他の手段によっては外国人登録事務をなかなか円滑に運用することができないといういわばやむを得ない場合に最後の手段としてなされるべきではないか、これが常識的な考え方ではないかと思うのですが、そうじゃないのでしょうか。先ほどのお話では、すべて告発を原則とする、個別にそれに適しないものは例外的に保留する、これは原則と保留が逆じゃないかと私は思うのですが、いかがでしょう。
  179. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 法に定める行政目的の達成を確保するためには、法違反を排除する必要がございます。したがいまして、法違反を排除する間接的な手段として設けられている罰則は、法違反が存在する場合にはこれを適用するのが原則ということになることかと存じます。
  180. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 法違反を排除するには何も刑罰だけが手段じゃないのです。刑罰というのはむしろ最後の最終的な手段じゃないのでしょうか。法違反にもいろいろな態様があります。本当に過失でうっかり違反をした、これは注意さえすればその次から恐らくしなくなるでしょうし、また単なる過失であっても非常に重大な法益侵害が伴うような場合には、日ごろから注意を喚起させておくために処罰するというようなこともありましょうし、あるいは一般予防的な観点から処罰するということもあろうかと思うのですけれども、法違反排除のために原則として処罰しなければならぬ、こんな論理はどこにもないのじゃないかと思うのですが、いかがでしょう。
  181. 筧榮一

    筧政府委員 一般的に告発は何人でもできるわけでございます。これは御承知のとおりだと思います。公務員については刑事訴訟法で告発義務を定めております。これは行政機関相互の協力といいますか、それぞれが行政事務を行っている間で違法な事実が発生しました場合に、これを官といいますかそれを所管するところへ申告して処罰を求めるというのは、公務員という特殊性、行政機関相互の協力あるいは行政事務の円滑化という観点から、特に公務員について認められた規定でございます。したがいまして、一般には違法状態がありましても処罰を求めるかどうかは各個人の判断の問題でございますから、私人が害を受けました場合に、告訴するあるいは告発するかどうかということは本人の意思に任せられて、刑罰まで求めなくても解決すればそれにこしたことはないわけでございます。そういう場合と異なって、公務員の場合には特別の義務規定、御存じのようにこの義務に違反したからどうこうということではございませんが、訓示規定ではない義務規定が設けられておると理解いたしております。
  182. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 最初のお話と矛盾すると思いませんか、今お答えになっていて。そうでしょう。刑訴法にそういう規定があるから、義務があるから告発するんだというような形式論、観念論ではない、まさにこの外国人登録制度を円滑に運用するために告発に言及するんだ、これが入管局長のお答えだったじゃないですか。今の刑事局長のお答えと全然違うじゃないですか。どうですか、統一してくれませんか。
  183. 筧榮一

    筧政府委員 入管の事務に限りませんで、一般に、公務員の告発の場合には、その当該所管する行政事務を円滑に遂行するために行われるということでございます。
  184. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 そうでしょう。だから言っているのですよ。外国人登録事務を円滑に行うために必要がある場合に、その限度で告発を行えば足りるわけであって、公務員の義務だから当然やるんだということとは全然違うでしょう。どっちなんですか。
  185. 筧榮一

    筧政府委員 刑事訴訟法の規定は公務員一般についての義務と定められておるわけでございます。その趣旨とするところは、今先生もおっしゃいました行政事務の円滑を図る。したがいまして、現実の運用において、先ほど入管局長からお答えがありましたように、それをしなくても明らかに行政事務の円滑が損なわれないといいますか、しない方が行政事務が円滑に行われるという特殊な場合には告発を留保するというようなことも、この告発義務の弾力的な運用として可能であろうと考えております。
  186. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 道なんですよ。しなくても円滑な運用がなされる場合のみ告発をしないというのじゃなくて、告発をしなければどうしても円滑な運用が阻害されるという場合に限って告発するというのが先ほどからの結論じゃないでしようか。どうして原則と例外を逆にするのか、どうしても理解できないのですが、もう一遍説明してくれませんか。     〔亀井委員長代理退席、委員長着席〕
  187. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 先ほどから申し上げておりますように、行政法規に設けられておる刑罰規定は、その行政法規の目的とするところを達成することを確保するために設けられておるわけでございます。したがいまして、その行政法規に違反する事態が生じた場合には、この行政法規に設けられました罰則の適用はその行政法規の目的を達成するための手段ということになるわけでございます。したがって、それが原則なんでありまして、もっとも実際に告発し起訴されても有罪となるとは必ずしも限りませんけれども、しかしながら、その罰則の適用を考慮することは法違反を排除するための原則的な立場であろうかと存じます。
  188. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 私は、そういう考え方は全く間違っていると思いますよ。刑罰は最後の手段なんですよ。そのほかにもいろいろなものがあります。社会的な制裁もあれが、何も制裁をしなくてもそういう違反を繰り返さないというようなことは幾らでもあることですから。しかし、これは平行線だろうと思いますので、今入管局長のおっしゃったような考え方は全く間違いであるということを指摘して、次に進みたいと思います。  それで、どっちが原則でどっちが例外かということはともかくといたしまして、現実には一定の場合には保留をするんだというような指導をしているということでございますが、その中身について若干お尋ねします。  法務省の方で各市町村に対して「外国人登録事務取扱要領」、こういう文書を配付して指導しているという事実がございますか。
  189. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 そのとおりでございます。
  190. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 それで、この「取扱要領」それ自体なのか、あるいはこれに単につけ加えたのか、ちょっとよくわからないのですが、「外国人登録法違反告発、通知留保実績について」という表題で、おおむねこうこうこういうようなやり方をやっていますというような文書を市町村に配付したことはありますか。
  191. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 厳密に申しますとそういうことはございません。ただ、想像いたしますに、御説明申し上げますと、その通達ではカバーできない非常に多彩にわたる、多岐にわたるいろいろな事例が外国人登録法施行以来今日まで起こっております。そうした疑問が生じました際に、都道府県を通じまして市区町村から本省の方に照会が参っておりました。この照会は極めて多数に上ったのでございますけれども、この法の運用を通じまして、そういう照会に対する指導が年々積み重ねられて今日に至っておるわけでございます。昭和五十五年あたりまでそうした照会が極めて多数に上ったのでありますけれども、そのころからだんだんと前例に基づいて方針が定着してまいりまして、いわば処理要領といったものが事実上判決の先例と申しますか、それに例えることができると思いますけれども、前例集といったようなものができてまいりまして、その前例集の中から一種の方針のようなものが浮き上がってきて定着していったという経緯がございます。したがって、そういうものを集めてメモにしたといったようなことはあったのかも存じません。しかしながら、当局として正式の文書でそういうものを作成して配付したということはございません。
  192. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 ちょっとよくわからなかったのですが、照会に応じて何らか回答した、そういったものが市町村の方に残っている、そういったことはあり得るだろう、こんなことでしょうね。そこで、そういった性質のものだという御説明ですので、それを前提に伺います。  これはその種の文書ですけれども、切りかえについておおむね三十日以内の遅延は保留しているんだ、それから高校在学中の年齢、普通は十八歳以下だろうと思いますが、その者、それから七十歳以上の高齢者についても保留をしている、これが運用実績だというような記載のあるものを目にしたのですが、実際の運用もそんな形で行われているのでしょうか、告発についてでございますが。
  193. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 当局におきます指導の実績はほぼそのとおりでございます。ただ、申請のおくれ、遅延につきましては、本人の申請については二十日、代理申請については三十日といった指導をしてまいった事実がございます。また、年齢につきましては先生指摘のとおりでございます。
  194. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 徒過した期間、それから年齢というのが一つのメルクマールになっているようですが、切りかえのような場合は、期間を徒過するには態様が千差万別、いろいろあるだろうと思うのです。こういったことも当然処罰を求めるほどの必要があるかないかという判断については判断の要素に含めるべきではないか。それから、各市町村などで、これは法が要求しているわけではありませんけれども、切りかえの迫っている者に対して勧奨はがきというようなものを送付しているという実態がございまして、これは大変結構なことだろうと思いますが、これが何らかの事故で、あるいは住所等が多少ずれていたというようなこともあろうかと思いますけれども、はがきが届かなかったというような場合にうっかり徒過してしまうなどということはありがちなことだろうと思うのです。そういった徒過した態様、要因についても告発するかしないかの判断の要素に含めるべきではないかと思うのですが、そういった指導はしていないのでしょうか。
  195. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 告発を留保する事例は、先ほども少し申しましたように本人の責に帰すべからざる状況にあったということ、あるいは本人の責に帰する事情、例えば過失があったとしても、その違反の程度が極めて軽微であって問題とすることはむしろ適当ではないと考えられる、その二つの事例に属する場合でございます。したがいまして、過失ということは本人の責に帰する場合においても前提でございまして、もし何らかの法違反が故意に行われた場合には、これは態様のいかんを問わず告発をするということを原則として指導いたしております。  また先生のおっしゃいますのは、過失であれば原則として告発をする必要がないのではないかということかと存じますけれども、過失によって行われた法違反がかなり重いものである場合、例えば、先ほど私は二十日ということを指導していると申しましたが、これが半年だとか一年だとかということになりますと、たとえそれが過失であっても一応告発をするということを原則として指導いたしております。その後の情状につきましては、検察官がこれを起訴するか否か、あるいは起訴された場合に実際に法廷において処罰の対象とする罰則の適用を行うかどうかという裁判官の判断にゆだねる。すなわち検察官ないし裁判官の判断にゆだねるのが適当であるというのが私どもの立場でございます。
  196. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 本人の責めに帰すべき事情があってもその程度が軽微である場合には告発しないこともあり得るという趣旨の答弁だったろうと思いますので、その面では多少の前進かとも思います。しかし、先ほどから申しているとおり、告発というのは処罰を求めるという大変重い行為でございますので、その行政目的を達成するために真にやむを得ない場合にのみ告発に踏み切るという態度が正当ではないかと考えるわけです。重ねてそうすべきであるという私の主張をお話ししまして、時間がございませんので次の問題に移りたいと思います。  告発がなされて捜査が行われて、そして検察庁に送られて、そこでその次の段階としてこれをどう処分するか、起訴するか不起訴にするかという判断をするに至るわけですが、外登法違反についての起訴、不起訴については、一般的にどのような方針で臨んでおられるのでしょうか。
  197. 筧榮一

    筧政府委員 外国人登録法違反につきましても、特に指紋押捺の問題でございますけれども、いずれにいたしましてもほかの一般の刑事事件と同様の方針を持っておるわけでございまして、個々の事案の内容あるいは諸般の事情を考慮して適切に対処するということに尽きようかと思います。
  198. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 今のようなお答えしかなかなかできないだろうと思うのですけれども、特に十一条二項違反の切りかえを徒過したような場合には、徒過の期間がどのくらいであったかとか、あるいは徒過した事情等についての態様を一つの判断の材料とするのじゃないかと思います。  先ほども触れましたが、市町村が勧奨はがきを出しているのですけれども、これが届かなかったなどということは起訴、不起訴の判断の要素に含めるべきなんでしょうか、どうでしょうか。
  199. 筧榮一

    筧政府委員 具体的場合によっていろいろ異なろうと思いまして、一概には言えないかと思います。ただ、おくれた理由に、本人の責めに帰すべき事情か、あるいは本人の責めに帰すべからざる行政事務そのほかの要因があれば、それはそのほかの要因として評価はされるものであろうと思います。
  200. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 先ほど指摘しました姫路の件で、これは私自身も多少調査したのですが、ある三十歳の学校の先生です。いわゆる勧奨はがきが来なくて、そのためにほんのうっかりして期限を徒過したというケースで、略式ですけれども起訴されているわけですが、これなどは非常に気の毒な感じがいたしまして、これで何で起訴しなければいかぬのだろうかという印象を率直に言って持つわけです。個別の事件でございますのでお答えしにくい点があろうかと思いますけれども、もう少し弾力的な運用ができないだろうか。故意にあるいは意図的に違反をした場合と、うっかりミスをした、しかも通常来るところの勧奨はがきが来なかったというようなケース、こういうことは起訴、不起訴に当たってはやはり判断の要素に含めるべきだと思いますが、一般論としていかがでしょう。
  201. 筧榮一

    筧政府委員 具体的な問題は別といたしまして、一般論としては、あらゆる事情といいますか事実を確定した上で、それに相応した適切な処理がなされているわけでございます。したがいまして、今先生指摘の故意か過失かという問題、あるいはうっかり徒過と言えるかどうか、その理由、原因、その点はすべて慎重に事実を確定した上で判断されているというふうに考えております。
  202. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 そこで、結局この件は略式で起訴になりまして、五万円でしたか罰金という結果になっているわけです。それで、裁判の結果五万円となったわけですから、裁判について、しかも個別のケースについてここで議論することは避けたいと思いますが、率直に言って略式の場合は求刑意見がほぼそのまま認められるのが実態でございますので、この求刑意見についてお尋ねをしたいと思うのです。  率直なところ、罰金五万円というのはいかにも重い感じを受けるわけです。求刑意見についてどのような基準で行うべきかということについては、どのような指導をされているのでしようか。
  203. 筧榮一

    筧政府委員 この点も先ほどお答えしたのと同じようなことになろうかと思いますが、やはり事案の内容、性質、軽重に応じまして、法定刑の中で適切と思われる罰金刑を選択して検察官が求刑するということになろうかと思います。五万円のケースが仮にあったとしまして、二十万円以下の罰金の場合には、一番下から二十万円までの間に違反態様があるわけでございますので、その当該事案を考えて五万円相当と申しますか、そういう判断がなされたと思います。
  204. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 外登法違反について、これまでの刑罰の結果を若干お調べいただいたのですけれども昭和五十年から五十九年、昨年まで一万円未満というのが非常に多い。それから一万円以上三万円未満というのがその次で、この二つのランクでほとんどがおさまっているという実態があるのですけれども、この五万円というのはどうしてこんな数字が突然出てきたのか大変理解に苦しむのですが、その辺いかがなんでしょう。
  205. 筧榮一

    筧政府委員 御承知のように昭和五十七年に外登法の改正がございまして、罰金刑の上限が三万円から二十万円に引き上げられております。したがいまして、今御指摘の大多数が一万円以下あるいは一万円から三万円というのは旧法、五十七年以前の事件が主でございますので当然そういう結果になろうかと思います。その五十七年改正後の行為につきましては二十万円以下の罰金でございますので、五万円という事案が生じてもおかしくはないというふうに考えております。
  206. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 ところが、法改正があったのが五十七年でございまして、たしか施行が十月一日からだろうと思うのですけれども、その後も五十八年、五十九年とも先ほど言ったような傾向はほぼ定着しているわけです。一万円未満が非常に多い。五十九年で言いますと一万円未満が九百八十五件、一万円以上三万円未満が五百二件、三万を超えるものが百九十六件、五万以上が六十九件。数字としては三万円以上の件数については五十五年からほとんど変わらない。三万円以上などというのについてはむしろ減っているぐらいであります。したがいまして、法改正後も一万円未満あるいは三万円未満が大部分であったという実態からしますと、今の御説明では納得できないわけなんですが、いかがでしょう。
  207. 筧榮一

    筧政府委員 先生指摘の数字、五十八年、五十九年に略式命令のありました事案につきまして、その対象となった事案が五十七年の改正前の事案であるかその後の事案であるか、統計上ちょっとはっきり詳細を把握いたしかねております。したがいまして、その中には改正以前のものも相当数含まれておる、その結果今御指摘のような数字になったのであろうと考えております。
  208. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 そうですかね。例えば五十九年について、五十七年九月末日以前の処分が出るなどということは略式の場合そんなに多くはないでしよう。
  209. 筧榮一

    筧政府委員 そう少なくはないというふうに考えております。
  210. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 そうがな、略式で二年もかかるなんてことありますか。
  211. 筧榮一

    筧政府委員 略式で二年かかるといいますより、五十七年以前の行為に対して起訴をし、略式が下ったのが五十九年であるということで、そういうずれは往々にしてあることかと思います。
  212. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 切りかえの期限とかなんというのは非常に明白なことですから別に細かい捜査が必要なわけでもありませんし、そんな二年もかかるということはないんじゃないですか。ちょっとおかしいですよ、それは。
  213. 筧榮一

    筧政府委員 事案を検察当局で把握いたしましても、その前にも告発があったりなかったり、いろいろな事情がございます。したがいまして五十七年以前の事件についても、例えば最近でも指紋の不押捺で略式といいますか処理した例は数件もあるわけでございます。
  214. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 今のは全く納得できません。それはレアケースはいろいろあるでしょうけれども、九百八十五件とか五百二件とかいうのが二年も三年も前から尾を引いているなんということは考えられぬですよ。それはおかしいですよ。  きょうはいっぱいお尋ねすることがあったのですが、時間になってしまったのでやむを得ないので、一つだけ最後に伺っておきます。  五十七年に法が改正されて罰金が三万円以下だったのが二十万以下に引き上げられたのですけれども、このときの事情なんですが、これは何らか罰則を強化しなければならないという刑事政策的な要請があったのか、あるいはこの法違反に対する、違法性についての社会的評価の変動があったというような、つまり罰則強化という意味合いがあったのでしようか。それとも単に物価、賃金等の上昇に合わせたというだけなんでしようか。
  215. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 一言で申し上げれば、先生最後に御指摘になった理由でございまして、賃金、家計、物価等が上昇したということでございますが、それに加えまして、その前年の昭和五十六年に出入国管理令の改正が行われて、同じ理由から罰金の最高限が三万円から二十万円に引き上げられたということも念頭に置いて、これに同調させたという事情もございます。
  216. 小澤克介

    ○小澤(克)委員 もう時間が来て恐縮ですが、五十七年の議事録を調べましたら、四月二十日に當別當さん、この方は審議官だと思いますが、三つくらい挙げておりますね。一つは賃金、物価が上がったからだ。もう一つは今局長がおっしゃった、出入国管理法の改正に合わせた。それからもう一つ、こういうことをおっしゃっていますね。調査したところ、外登証の不携帯のみで併合罪なしで懲役になったのが過去十年間に六件ばかりある、よほど悪質なものについてはこういうものもあるんだ。そうしますと今後は、この不携帯について懲役がなくなりましたので、すべてを罰金刑で対処しなければならぬ、したがって上限を二十万にしたんだというお話がありました。これは不携帯についてですけれども、その他についてもこれに合わせたという側面もあろうかと思います。  そうしますと、この五十七年の法改正というのは罰則強化という側面は全くなかった。むしろ全体としては懲役刑を、特定の類型については外したり軽減したのが実態であろうかと思います。そうしますと、三万から二十万になったのだから、二十万の最高限から考えて五万が相当だというのはどうしてもおかしい。特に私、物価上昇率を調べてみたのですが、全国の消費者物価指数を調べましたら、昭和五十五年を一〇〇といたしまして五十七年が一〇七・七、昨年五十九年で一一二・一、ことしは出ておりませんけれども、そんなに違ってはいないだろう。五十五年を一〇〇としましても、五十七年と五十五年ではせいぜい五%程度の違いである。そうしますと、一挙に五万円の罰金というのはどうしても納得できないわけです。私は、こういうものが先例として定着するということになりますと、大変むごいことになるのではないかと思いますので、きょうはほかにもいっぱいお尋ねしたいことがあったのですが、時間が来ましたので、指摘をいたしまして、この程度で終わらせていただきます。
  217. 片岡清一

    片岡委員長 林吾郎君。
  218. 林百郎

    ○林(百)委員 十一月二十九日、首都並びに関西方面を入れまして通勤者の足、六百万が混乱した、交通事情の上からいってかつてない大きな混乱、事件が起きたわけですが、それについて私は質問をしたいと思います。  警察に対しても厳しい批判があるので警察はもっと謙虚にこの問題に対処しなければならないと思いますが、まず最初に、中核派が八四年、昨年からことしにかけて起こした事件の表を持っていますので、委員長、これを警察に見せたいと思いますが、いいでしょうか。
  219. 片岡清一

    片岡委員長 はい、どうぞ。
  220. 林百郎

    ○林(百)委員 これを見ますと、昨年の一月からことしの十一月までに約三十三、四件あるのですが、ここで特徴的なのは毎月、中核派の事件があるということですね。殊に昨年の暮れからことしにかけては、ことしの一月には月に三件、九月にも三件、しかもこれは予告でやられているわけですね。それでほとんど検挙されていない。この中で検挙三件と言いますが、三件といっても、例えば自民党の本部の放火事件みたいに数人がやっているのに一人しか挙がっていないということで、検挙一件というのは本当に形式だけで実質的な一件にはなりません。これは予告をされて毎月一件ずつあって、甚だしいのは一カ月に三件もあるのに検挙が少しもできないというのは、警察ではどこに原因があると考えますか。
  221. 鏡山昭典

    ○鏡山説明員 お答えいたします。  今、表を見せていただきまして御指摘のとおりでございますけれども、極左暴力集団、確かに今度の一一・二九につきましても、動労千葉のストライキを支持するために国鉄を全面的に阻止するというようなことは言うわけでございまして、私どももそれに基づきましていろいろ想定をやっておりますが、ゲリラ事件といいますと、予告、例えば今から成田闘争をやる、国鉄闘争を支援するためにゲリラをやる、こういうことはいろいろその都度言うわけでございますけれども、ゲリラがどこをやるか、例えばここにいろいろございますけれども、今回は新東京国際空港公団のビルにやるぞとか幹部の家をやるというようなことはもちろん全く申しません。それから、こういうようなゲリラ情報というのは彼らにとっては一番基本的な根幹をなす情報でございまして、その意味では私ども情報収集に全力を挙げているわけでございますけれども、なかなか核心に迫る情報をとれないというのが実情でございます。  しかも、極左暴力集団が事件を起こします際には、警察の動きを事前に綿密に調査いたしまして、警察の影があるとなるとそこは避けて次の日に回すとか別のところをやるというような、いわゆる現場で逮捕されないような状態のもとでやるというのがゲリラの基本的な形になっております。そのほか、極左事件というものは、非公然軍事組織と言っておりますけれども、例えば中核派の場合は革命軍などと言っておりますが、特別の実行部隊がございまして、こういうものが組織的、機動的に計画して実行している。しかも、実行するに際しては後に証拠が残らないようにやっていくとかいうようなことで、非常に私どもも検挙が難しい状態になっているわけでございます。  しかし、三件じゃないか、そのうちゲリラらしいゲリラは自民党放火事件が去年あったのをことし一人だけだという御指摘で、そのとおりでございますけれども、この事件検挙は、ゲリラの要員を検挙するということは私ども非常に苦労しておりますけれども、かなり時間がかかっております。例えば加藤三郎というのがおりましたけれども、これを逮捕するにも五年六カ月かかっておりますし、あるいは鹿島建設を爆破しました宇賀神という連続企業爆破事件の犯人を逮捕するには七年六カ月、一番長いのは陸上自衛隊朝霞駐屯地で自衛官を殺害いたしました竹本信弘という被疑者がおりましたけれども、これを逮捕するのに十年十一カ月という長い期間をかけておるわけでございます。私ども、確かに今の状況のもとで御指摘のように検挙が進んでおらないことは事実でございますけれども、全面的解決に向けて日夜努力しておるような状況でございまして、今後ともこの解決に向けて全力を挙げて努力いたしたい、こう思っております。
  222. 林百郎

    ○林(百)委員 極左、極左と言うけれども、どういう意味で言っているか知りませんが、いかにも左翼と関係のあるようなことを言うけれども、これは暴力集団ですからね、別に左でも何でもないのです。  それで、今あなたの言われた警察の影を避けてやっているというのは、要するに警察の行動が彼らに察知されているのですか。今あなたはそう言っていた、だからこういう事件がこういうように起こるのだと。そうすると、警察の方は彼らに対して察知するルートは持っていないのですか。
  223. 鏡山昭典

    ○鏡山説明員 私どもがゲリラを押さえるためには、やはり警察官を配置しなければなりません。その場合一人とか二人でおりますと、例えば今度の一一・二九に際しましても、パトロールで一人で行ったために相手にはさみで襲われたということで、緊急に救援の連絡をするというようなことで結局逮捕できなかったわけでございますけれども、そういうふうに検挙するためにはかなりの警察官を現場周辺に配置しなければなりません。そういう意味で、それが向こうに知られるという場合が出てくることがございます。もちろん、相手に知られずに私どもとしましても彼らの要員を検挙したりあるいはアジトの摘発も既にやってきております。向こうの情報がとれないのかということでございますけれども、一般的な情報というのはとれますけれども、なかなか核心に迫った情報というのはとりにくいというのが実情でございます。
  224. 林百郎

    ○林(百)委員 要するに、中核派と称する暴力集団は既に十一月十八日に彼らの機関紙の「前進」というので、「電車の運行を実力で阻止する」「国鉄線の、千葉県・首都圏的、全国的なストップ」「天井しらずの、激烈な物情騒然たる情勢をつくりだす」こういうふうに、電車の運行を実力で阻止する、国鉄線の千葉県・首都圏、全国的なストップをやると機関紙に書いてあるのですよ。  それから、彼らの今までやっていた行動を見ますと、ケーブルの切断、通信ケーブルをねらった犯行を重ねているのですね。それで社会の混乱を招いている。  「五十三年五月の成田空港開港時には埼玉県内で東京航空交通管制部に通じる同軸ケーブルを切断して航空機の発着をできなくさせ、五十七年三月には千葉や茨城で国鉄の信号ケーブルを切って二十八万人の足を奪った。今回も同種ゲリラの発生は必至とみられていた。このため、警備当局は都内で厳戒態勢を敷いていたが、裏をかかれた。」これは十一時ごろ警備を緩めちゃっているのですから、もうやったときには緩めているんだから、当たり前のことです。これは何も赤旗が書いているんじゃないですよ。マスコミの社説が書いている。念のために言っておきますがね。マスコミの社説すらこう言っているんですよ。もう事前に十八日に国鉄は麻痺する、大混乱を起こすと言っている。彼らの国鉄を麻痺させる手段としては、ケーブルを切断するということを過去にもやっている。それなのに、その裏をかかれている。こういうことに対して警察はどう思われるのか。あなた方は何か共産党を意識して、共産党が泳がしているというように思うかもしれませんが、これを警察の反省の資料に……。(資料を示す)  マスコミがみんなそう言っているんですよ。これを見ますと、七五年四月三日の毎日には、「相次ぐ内ゲバ事件がいっこうに解決しない現状から警察の”泳がせ論”もある」こういう意見。赤旗で言っているんじゃないですからね、よく聞いてください。それから七八年一月二十八日の読売には「(内ゲバ事件の反復の)もう一つの疑問は、内ゲバ事件の犯人は、なせ捕まらないのか、ということである。一昨年以来、殺人内ゲバ事件はほとんど未解決である。一般に、わが国の殺人事件の検挙率は高く、過去十年間九五%を下回ったことがない。「警察は、過激派を泳がせている」という声すら出ている」、こういういわゆる過激派と称する暴力団の殺人の検挙率というのは何%か、参考に聞かしてもらいたいと思う。読売の社説もこう言っている。著しく下回っている。この中から、警察は過激派を泳がせているという声すらも出ている。  それから、これは各新聞はみんな書いていますから、朝日新聞も言わないと公正を欠きますから、朝日新聞の八〇年の十一月一日付には、「凶悪な殺人事件が繰り返され、それぞれの組織が、公然と犯行声明を出したりしている。それなのに、殺人犯人はなかなか検挙されない。一般市民が納得できない感情を抱いていることは否定できない。警察当局は内ゲバ事件の防止、検挙に全力をあげてもらいたい」、こういう記事が出ているわけですね。六七年十一月の朝日には、「政府、自民党内部には、三派全学連は規制するよりはむしろ適当に泳がせておいた方がよい、との意見もある」、これは朝日が書いている。もう各紙がみんなこう言っているのですよ。だから世間で不思議に思うのは当たり前ですよ。毎月毎月予告つきの事件が起きていて、一月に三回も起きていて、しかも殺人事件があったり放火があったり、勝手なことをやっていてちっとも検挙しないのですから、それは警察が特別な関係を持っていると市民の方が思うのは当たり前の感情ですよ。  それで、個々の事件でなくて組織的に聞きますが。警察の方はいわゆる中核派に対して捜査のルートか何かあるのですか。向こうの方は警察の動きを全部知っている、あなたの方は何も持っていない、それじゃあなたの方は泳がしていると同じじゃないですか。それはどうなんですか。これは私も前にちゃんと警察の答弁も得ていますよ。
  225. 鏡山昭典

    ○鏡山説明員 ただいま新聞などで御指摘いただいたわけでございます。確かにマスコミ等でそういうように書いてございますけれども、マスコミも、警察が泳がしているということではなくて、そういう声があるとか意見があるというようなことでございます。政府関係者からかつてそういう発言があったということでございますけれども、警察といたしましては治安の維持という立場から、泳がしておるというようなことは決してございません。これは私どももいつも申し上げているわけでございますけれども、一線の警察官はもう命を張って極左対策をやっておるわけでございまして、昭和四十二年から現在まで十一人の殉職者も出しておりますし、二万人近い負傷者も出しておりまして、こういう一線の苦労を考える場合に、泳がしておるということは決してないというふうに私どもは言えると思います。  ただ、問題はやはり捕まえていないじゃないか、こう言われますと、確かに今のところ発生件数に比べまして逮捕というのが非常に少のうございます。その意味では、先ほど先生がお読み上げになりました朝日新聞の中で「一般市民が納得できない感情を抱いていることは否定できない。」というような主張につきましては、私ども謙虚にこれを受けとめまして、今後とも最大の努力で進んでいきたいと思います。  しかし、同時に、十一月一日付の朝日新聞の最後の部分に、「内ゲバ事件の根を切るためには、社会が暴力に対する怒りを結集する必要がある。過激派は大学や労組などの内に、活動の根拠地を求めている。そうした場にかかわる人々が暴力集団の凶行を許さないという決意を明確に示すべきだろう。これは社会と反社会集団の戦いである。」というふうにこの社説でも書いてございますけれども、私どもはもちろん最大の努力をいたしますと同時に、国民の皆様方の御支援と御理解を得まして、今後とも極左対策に全力を挙げていきたい、こういうふうに考えております。
  226. 林百郎

    ○林(百)委員 私の聞いているのは、鏡山課長さん、まあ言いにくいことがあるかもしれないが、彼らと接触のルートというか、探知の方法はあるのかどうかというのですよ。それを聞いているのですよ。この前、私の質問で、警察はちゃんと持っていると言っているのですよ。まさか持っていないとあなたの方も言わないだろう。持っていながら、こういうことを次から次に起こさせる。そういう中から、「適当に泳がせておいた方がよい、との意見もある」、これは社会の意見をマスコミが代表して言っているので、もちろんマスコミはこうであるなんていう結論を言いっこないので、そうな非常識なことをマスコミは言わない。マスコミが世論でこういう声があるんだということを言っているということは、世間ではこう見ていますよ、あるいは見ている声が多いんですよということです。それはだれだってそう見ますよ。三十四件もケーブルが切られているのに一件も挙がっていないじゃないですか。警察の任務というのは公共や交通の安全を期するということは、警察法の二条にもちゃんとあるわけでしょう。それが一つも捕まらない。しかも十一月十八日にはやるぞと言われている。そういえば世間の人は警察はおかしいじゃないか、こう思うのは当たり前でしょう。  だから、私があなたに聞いているのは、一体接触するルートを、それは警察のいろいろの公にできない部分もあるだろうし、いろいろあるだろうけれども、接触はあるのですかないのですかということを聞いている。かつて警察は私にあると言っているのですよ。持っているかどうかというんだ。そんなものは持っていなくて、そして裏ばかりかかれていたのじゃ、それはどうにもしようがないじゃないですか。
  227. 鏡山昭典

    ○鏡山説明員 結論的に申し上げますと、もちろん中核派の情報も我々は入手しております。しかし、ゲリラ情報というようなものは、もしそれが入手できますなら、これは事前に押さえ込んでしまうわけでございます。発生のしようがございません。しかし、普通一般的にはゲリラ情報というのはなかなかとりにくいというのが実情でございます。だから中核派並びに極左暴力集団に対する情報は、一応のところはとれるとしても核心に迫るところはなかなかとりにくい。今先生から御指摘ありました、かつて警察の幹部が情報をとっているじゃないかとおっしゃいましたけれども、これは浅間山荘事件に関連しまして四十七年の三月二日、衆議院の地方行政委員会で先生の御質問に答えて富田警備局長がお答えしたことだと思いますけれども、この点については先日から共産党の機関紙の赤旗にも出ておりましたが、あの際の富田警備局長が最終的に情報をとっているんだなということに対して「御理解いただいてけっこうです。」というように答えましたのは、先生の御質問が「戦術的な情報はなかったが、他に何かの情報の提供があったかと先生がお聞きになったから、それは差し控えますと言ったというのは、情報網はあるけれども、その情報網は、戦術的に、この本件に役立つようなものではなかったのだ、そう聞いていいのですか。」というふうにまたおっしゃっておって、それに対して富田局長が「そのように御理解いただいてけっこうです。」こう申し上げたわけです。  要するに私ども、確かに情報はとっておりますが、個々具体的なゲリラ情報というのはなかなかとりにくいし、もしとれたときには、それはもう発生する前に押え込んでしまう、こういう状況でございます。
  228. 林百郎

    ○林(百)委員 だから私先ほど言ったでしょう。十一月十八日の中核派の機関紙の「前進」で「電車の運行を実力で阻止する」「国鉄線の、千葉県・首都圏的、全国的なストップ」「天井しらずの、激烈な物情騒然たる情勢をつくりだす」、こう新聞に書いてあるのですよ。それじゃ、これは予告でわかるじゃないですか。これに対してどうでも捜査の方法、本部だってあるし何だってあるんだから、中核派には。警察の力をもってすれば幾らでも捜査できるのじゃないですか。しかもなお問題になるのは、さらに今後もやるとまで言っているのですよ。これは中核派の「軍報」という名前の機関紙ですが、「軍報」の中で中核派は、「今回のゲリラは国の民営、分割化に対する制裁で、今後、国鉄のあらゆる機能を戦場化する」こういう新聞も出ているのですよ。あなた方は警察でこういう情報をとってないのですか。これはあなた、マスコミでちゃんととっている。マスコミがちゃんと載せていますよ、毎日新聞。これをとっていますか。とっているとするならあなたは今後どうするつもりですか、こういう情報が出ているなら。
  229. 鏡山昭典

    ○鏡山説明員  「革命軍報」については私どもも入手しております。「革命軍報」は自分たちの犯行を自認したり今後の行動を予告をすることがあるわけでございまして、犯行自認声明をした場合には私どもそれをもとに捜索、差し押さえ等のことをやっておるわけでございます。ただ今度の場合、今度やるぞという場合にすぐそれによって次のいろいろな手を打つか、それは法律的な問題がございますので、私どもとしては法手続に基づいて必要な捜索等もやっていく決意でございますけれども、それとともに、こういうことをやるということを言っておりますので、私どもとしましては彼らの非公然部隊の発見等に努力しますと同時に、関係方面とも十分連絡いたしましてそういうような事件が起こりそうな場所の警戒等に全力を挙げたい、こういうふうに考えております。  先ほどから、こういう電車をとめると言っているからすぐ押さえられるじゃないかという御指摘もございましょうけれども、電車をとめる方法というのは、もちろんケーブルを切ることもございますし、あるいは線路に置き石をするというようなこともございましょうし、車庫の前に座り込むというようないろいろな想定が考えられるわけでございます。先ほど先生からいろいろ御指摘ございましたけれども、かっていろいろなゲリラが起こっているじゃないか、そのとおりでございまして、起こっているだけに私どもの対応というのは非常に広くなってくるわけでございまして、それを限られた警察官で全力を挙げて警戒をやっておるわけでございます。その意味で今回ゲリラの切断現場は検挙できなかったわけでございますけれども、そういう有事即応体制をとっておったということから浅草橋事件に関連しまして四十六人を検挙いたしましたし、さらに職務質問によりまして二名の非公然活動家を検挙できた、こういうように考えております。これはまだ不十分とは考えておりますけれども、こういう形で今後ともさらに努力していきたい、こういうように考えております。
  230. 林百郎

    ○林(百)委員 いかにも突然起きたようなことを言っていますけれども、私たち議員団の調査によりますと、あなた方、国鉄と十一月二十五日、それから十一月二十八日に協議しているのですよ、どういうことが起きるだろうかといって。これは名前も言いますけれども、国鉄の西局の総務部長は、どうもケーブルが切られるおそれがありますよ、予想されますということを警察に警告しているのですよ、警察が知ってないはずないと言うのですよ。私の方からちゃんと言ってあると言うんだ、この会合のときに。とにかく、それではあなた、国鉄と会合はしたのですか、国鉄当局はしたと言っていますが。
  231. 井上幸彦

    ○井上説明員 十一月二十八日に予定されておりました動労千葉の違法ストに対しましては、それに伴います混乱その他ゲリラ事件、これらが予想されたものでありますから、事前の段階でそれぞれの警察が国鉄等の関係向きと協議をいたしております。ただ、先ほど来申しておりますとおり、今回のような事案を想定したいわゆる具体的なゲリラ情報というものは残念ながら入手していなかったという状況であります。  先ほど来御指摘のように、一般的に「前進」の十一月十八日号に載っておるではないかということでありますが、そのような事態も想定しつつ、特に十一月二十八日スト突入後の体制につきましては、かつての上尾騒動に見られるような暴動めいた事案の防止であるとか一般的なゲリラ事案を防止するという立場から警視庁、千葉県警合わせて相当の所要の警備体制をとったものであります。特に夜間に国鉄の運行がなくなりましてから、いわゆる有事即応体制ということで誘導、警戒あるいは検問等を行いつつ所要の体制をとったわけでありますが、その結果、未明のゲリラ事件、それから浅草橋駅事件の発生によりまして合計二十八名の極左集団を現場検挙することができたものでございます。
  232. 林百郎

    ○林(百)委員 二十八名二十八名と言うが、それは浅草橋駅の火事のときのあれでしょう、つかまったわけでしよう。これは連中、逃げることができなくてつかまっているわけなんです。  この会合は、あなたもそれぞれの警察がそれぞれの駅と会合したと言っていますが、警察側との会合のときに国鉄の西局の総務部長は、私の方も名前を言ってくださっても結構です、私の方は警察に言いました、ケーブル襲撃を予想したということはちゃんと警察に言ってあります、国会で私の名前を言ってくださいとまで言っているのですよ。これまで国鉄から言われているのに、それで三十四カ所もやられているのに、全然どこもつかまってない。つかまったのは浅草橋駅かどこかの火事で囲んだところだけのことでしょう、二十何人って。三十四カ所のケーブルを切られたのは一つも挙がってないですからね。しかもそのことを国鉄の方は言っているのですから。そのことはどうですか。
  233. 土田洋

    ○土田説明員 お答えいたします。  東京西局の総務部長が御説明に伺ったときそのような話をされているという御指摘でございますけれども、私どもは全体として、今回の千葉動労のストとか中核派の集団に対しまして、警備の対処方につきまして各段階、各地域におきまして、ですから東京西局あるいは東京南局、千葉局等でございますが、警備要請を含めまして事前に警察側と十分協議を行いまして、その後の連絡体制もとってまいりました。  その際でございますが、過激派がストに合わせまして鉄道妨害を行うこともあり得るということは一般的な認識に立ちまして警戒を行ってきたわけでございまして、私どもの総務部長がそのような話をされたということでございますが、そういうケーブル切断あるいは先ほど警察庁の課長からお答えしたような、例えば放火だとかそういうような例として多分申し上げたと私は思っております。そういうことであったわけでございまして、そのような具体的な、どこでやるのか、どのような方法でやるのかというのは、私どもも最後までつかむというほどでは全くなかったわけでございます。
  234. 林百郎

    ○林(百)委員 土田さんはこの会合に立ち会ったわけではないんでしょう。立ち会った西局の総務部長がそう言っているのです。あなた、立ち会ってもいないのに総務部長が言ったかどうか知りませんなんて、知らないことを言ったってだめじゃないですか。国会で名前を言ってくれてもいいと言われたから名前はここで言えますけれども、私は何も名前まで言うことはないから西局の総務部長と言っていますがね。  それでは、これは大臣にもお見せしておりますけれども、歴代の自民党がこう言っているのです。例えば一九六七年の十月八日の羽田事件の直後に、当時の官房長官の木村俊夫君が、「羽田事件の対策には強硬な処置をとらないことにした。日共対策上そうした方がいいからだ」それから一九六七年十一月十二日、保利茂君が、「三派全学連は泳がせておいた方がよい。そうしないと全学連は日共系一本にまとまる。その方が危険だ」それから一九六九年の五月三日、これは朝日新聞に出ているのですが、中曽根君が、「佐藤内閣をささえているのは反日共系学生だという見方もある。彼らの暴走が、反射的に市民層を反対にまわし、自民党の支持につながる作用を果たしている」それから昨年の九月十九日、自民党本部の放火事件があったときに、浜田幸一君が、「この責任はだれにあるかというと、泳がしていたわれわれにあると思いますよ。「中核派」を泳がしていた。やっぱり法律違反で破壊するものを泳がせた。そういうひとつの政策の誤りがあるんじゃないですか」  歴代の自民党の政党幹部あるいは行政の幹部が背こう言っているのですが、あなたこういうことを知りませんか。
  235. 嶋崎均

    嶋崎国務大臣 今のお話のようなことは全く存じておりません。しかし、いずれにしましても、こういう問題につきましては、この民主主義の社会というものをきちっと維持するというような意味でも断固たる処置をとらなければいけないと私は思っております。
  236. 林百郎

    ○林(百)委員 木村君だとか、保利君だとか、中曽根君だとか、浜田君の言ったようなことが仮にあったとすれば、今後こういうことは絶対しないと言えますか。こういうことは自民党としてあり得るはずがない、そういうことは言えますか。
  237. 嶋崎均

    嶋崎国務大臣 あり得ようはずがないと思っております。  御指摘のように、今度の多発ゲリラというのは過激派により惹起されたと考えられるわけでございますけれども、法秩序の上からも本当に遺憾な事件であるというふうに我々は考えておるわけでございます。およそ自己の主張を貫徹するために暴力的な手段に訴える行為というのは、まさしく民主主義国家にとって絶対に容認できない問題であるというふうに思っておるわけでございまして、我々としましても、今後とも警察関係とよく連絡をとりまして、こういう事件が起きないように十分の警戒を続けるとともに、この事件に関連した者については本当に断固たる処置をとる必要があるというふうに考えております。
  238. 林百郎

    ○林(百)委員 もう二問だけ簡単に聞きます。  国鉄の学園の教育のことについて伺います。この写真を委員長と下村さん見て下さい。それは知っているでしょう。敬礼の訓練だとか行進の訓練だとか、これを学園でやっているわけです。運転士の職制に準ずるような人ですが。これに対して感想文を書かせた。これではまるで昔の軍隊の教練を思い出すような気がしましたという作文を書いたところが、南局で取り消しなさい、そんな軍隊の訓練なんというものではないのだ。いや取り消すわけにはいきませんと言ったら、その運転士の格下げをしている。本人の報告です。これではもう国鉄の職場の中には物を言う自由もない。しかも、こういう訓練は何のためにするのか知りませんけれども、国鉄には国鉄側の事情があるかもしれませんが、少なくとも運転士の資格を持っている者が敬礼を四十五度にしろ、頭の下げ方がどうだとか、あるいは行進の準備をさせて足をもう少し上げろと言われれば、何か昔の軍隊の訓練を受けているような気がしましたと言うのは当たり前でしょう。ところが、そういう作文を書いたからといって降格するということはどういうわけなのですか。それを聞かせてください。
  239. 下村徹嗣

    ○下村説明員 お答えいたします。  国鉄では現在民営化に向けまして学園、職場内教育を問わず、経営の現状についての認識を深め、親方日の丸意識を払拭するとともに、コスト意識を持って仕事に当たり、サービス業に従事する職業人としての役割と自覚を高めることを主な目的として各種教育を行っておるところでありまして、先生指摘の事例につきましては、管理者並びに職長クラスの監督者に対しまして、礼式行動訓練と称します団体行動訓練を学園教育のカリキュラムの一つとして行っているものでございます。専ら集団生活の中から人と人との接し方を学び、団体行動という作業を通してリーダーとしての指導力と協調性、それから規律正しい行動力を涵養しようとするものでございまして、決して御指摘のような軍事教練だとか称する訓練をしているというものではございません。それから先生指摘の、感想文を書いていたからということで指導運転士を降格したじゃないかというお話でございますが、別にそういった感想文を書いたからということじゃございませんで、ワッペンを着用している、氏名札を着用していない、ネクタイを着用していない、あるいは管理者の指示に従わない、指導運転士と申しますと運転士を指導する立場にある人でございますので、そういう人がそういうことでは不適格だということで構内運転士にいたしたのでございまして、決して感想文を書いたからという理由で指導運転士から構内運転士にしたものではございません。
  240. 林百郎

    ○林(百)委員 それにしても、この棒を持っているのは一体何ですか。これは何棒というのですか。これはだれが見たって軍隊訓練ですよ。棒を持った人がそばにいて、頭の下げ方の角度が悪いとか、行進で足の上げ方が悪いとかやられた方の身になれば、汽車の運転をしている人なんですから、これは軍事訓練を受けているような気がしますと言うのは当たり前なんです。ワッペンをつけたからいけないといったって、ワッペンだって今までは労働協約で問題があったところなんですよ。それが急に、民間に移行するようになったからワッペンなんかつけていたら格下げするぞなんて、表現の自由を平気で抑えていくようなことを、幾ら民営だ出向だという、我々は絶対にそんなことは許すべきではないと思っておりますけれども、そういう理由づけをしてこんな訓練までさせるということは、今までの労働協約に全く反していることだと思うのです。  それからもう一つは、ベアリングが切れてしまって中の軸が万一の場合には外れてしまうような非常に危険な状態になっているのに、こういうものを検査しなければならない車両検査係に、おまえたちはそういうことをしなくていいからと言って、木に登らせて枝を切らせているわけです。実際軸が取れてしまってそのまま走ったらえらいことになってしまうのですよ。余剰人員だとかなんとか称して、こういうところへは派遣しなくて、おまえはきょうは木に登って木の枝を切れ、こういうことをやらしているのです。これで一体鉄道の安全が確保できますか。おかしいじゃないですか。我々は民営だの出向だなんて絶対反対なんですけれども、それを理由にして今までの労使の関係を無視してどんなことをしてもいいなんて思っていたらとんでもないことだと思うのです。どうしてこういうことをさせるのですか。車両検査係に植木屋と同じようなことをさせるのはどういうわけですか。
  241. 下村徹嗣

    ○下村説明員 お答えいたします。  御承知のように余剰人員が全国的に随分出ておりまして、運転関係の車両検査係につきましても、全部が全部そうというわけではございませんが余剰人員が出ております。もちろん車両検査に必要な要員は配置しているわけでございますが、余剰の車両検査係の方々には部内での活用策ということで、草を取ったり剪定をしたりというような環境整備の仕事もさせておるということでございまして、私どもとしても余剰人員の活用策あるいは調整策ということで頭の痛い問題として対策に腐心しているところでございまして、そういうふうな仕事も活用策の一環としてやっておるということでございまして、決して作業に支障を来すとかといったことはございません。
  242. 林百郎

    ○林(百)委員 下村さん、あなた余剰人員、余剰人員と言われるけれども、言われる者の身になってください。採用のときにはちゃんと国鉄で採用したのでしよう。今になって、おまえは余剰人員だ、草むしれ、木の枝切れなんて言われる者の身になってくださいよ。しかも、余剰人員と言うけれども、最近は、駅のプラットホームなんかでどの汽車に乗ったらいいか聞きたくても、駅の人はだれもいませんよ。余剰人員でも何でもない。必要なところへちゃんと駅の人を配置してもらいたいけれども、余剰人員と称して草むしりをさせたり木の枝を切らせたりしている。国鉄が一たん職員として採用して労働協約も結び、現場の協約も結んでいる者に対して、民営・分割になったからおまえたちは余剰人員だ、草でもむしってろなんて、そういう労働者の人格を全く無視したようなことを絶対やらないようにしてもらいたいと思うのです。これは憲法で保障されている基本的人権の重大な侵犯ですよ。国鉄は十分気をつけてもらいたいと思う。いいですか、ちょっと答弁してください。
  243. 下村徹嗣

    ○下村説明員 先生おっしゃいますように、私どもも別に特定の人を余剰人員としておるわけでもございませんし、余剰人員だということで差別するとかそんなことも全然考えておりません。この問題は本当に真剣に取り組んでいかなければならぬ課題だということで認識しておるわけでございまして、今余剰人員対策について政府等でもお考えいただいておりますが、私どもとしても精いっぱい努力をしてまいる所存でございます。
  244. 林百郎

    ○林(百)委員 これで終わります。
  245. 片岡清一

    片岡委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時三十七分散会