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1985-12-10 第103回国会 衆議院 法務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年十二月十日(火曜日)     午前十時十一分開議 出席委員   委員長 片岡 清一君    理事 太田 誠一君 理事 亀井 静香君    理事 高村 正彦君 理事 森   清君    理事 天野  等君 理事 横山 利秋君    理事 三浦  隆君       井出一太郎君    上村千一郎君       衛藤征士郎君    北川 石松君       熊川 次男君    栗原 祐幸君       塩崎  潤君    玉置 和郎君       丹羽 兵助君    宮崎 茂一君       山崎武三郎君    稲葉 誠一君       小澤 克介君    上西 和郎君       関  晴正君    山下洲夫君       山花 貞夫君    中村  巖君       沼川 洋一君    橋本 文彦君       伊藤 昌弘君    藤原哲太郎君       柴田 睦夫君    林  百郎君  出席国務大臣         法 務 大 臣 嶋崎  均君  出席政府委員         法務大臣官房長 岡村 泰孝君         法務大臣官房司         法法制調査部長 井嶋 一友君         法務省民事局長 枇杷田泰助君         法務省刑事局長 筧  榮一君         法務省矯正局長 石山  陽君  委員外出席者         人事院事務総局         給与局給与第一         課長      小堀紀久生君         総務庁人事局参         事官      水谷 英明君         建設大臣官房官         庁営繕部営繕計         画課長     塚田  滋君         最高裁判所事務         総局総務局長  山口  繁君         最高裁判所事務         総局経理局長  櫻井 文夫君         最高裁判所事務         総局経理局長  川嵜 義徳君         最高裁判所事務         総局民事局長  上谷  清君         最高裁判所事務         総局刑事局長  吉丸  眞君         法務委員会調査         室長      末永 秀夫君     ――――――――――――― 委員の異動 十一月二十八日  辞任          補欠選任   上村千一郎君      佐々木義武君   稲葉 誠一君      藤田 高敏君   小澤 克介君      山口 鶴男君 同日  辞任          補欠選任   佐々木義武君      上村千一郎君   藤田 高敏君      稲葉 誠一君   山口 鶴男君      小澤 克介君 十二月四日  辞任          補欠選任   上村千一郎君      稻葉  修君   衛藤征士郎君      渡辺 栄一君   小澤 克介君      佐藤 徳雄君 同日  辞任          補欠選任   稻葉  修君      上村千一郎君   渡辺 栄一君      衛藤征士郎君   佐藤 徳雄君      小澤 克介君 同月十日  辞任          補欠選任   井出一太郎君      北川 石松君   稲葉 誠一君      関  晴正君   高沢 寅男君      上西 和郎君   日野 市朗君      山下洲夫君   岡本 富夫君      沼川 洋一君   伊藤 昌弘君      藤原哲太郎君 同日  辞任          補欠選任   北川 石松君      井出一太郎君   上西 和郎君      高沢 寅男君   関  晴正君      稲葉 誠一君   山下洲夫君      日野 市朗君   沼川 洋一君      岡本 富夫君   藤原哲太郎君      伊藤 昌弘君 同日  理事岡本富夫君同日委員辞任につき、その補欠  として岡本富夫君が理事に当選した。     ――――――――――――― 十二月六日  裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第九号)  検察官俸給等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第一〇号) 同日  死刑制度廃止死刑執行停止に関する請願(金  子みつ紹介)(第一一九四号)  同(井上一成紹介)(第一二四一号)  同(池端清一紹介)(第一二四二号)  同(上田卓三紹介)(第一二四三号)  同(竹村泰子紹介)(第一二四四号)  同(土井たか子紹介)(第一二四五号) 同月九日  外国人登録法改正等に関する請願外一件(井上  一成紹介)(第一三二八号)  同外一件(横山利秋紹介)(第一三二九号)  同(上田卓三紹介)(第一四五六号)  外国人登録法改正に関する請願竹村泰子君紹  介)(第一四五五号) 同月十日  外国人登録法改正等に関する請願外一件(中村  正男君紹介)(第一五二二号)  同(和田貞夫紹介)(第一五二三号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 十二月六日  刑事施設法案等の再提出反対に関する陳情書  (第二四号  )  外国人登録法改正に関する陳情書外九件  (第二五号  ) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第九号)  検察官俸給等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第一〇号)      ――――◇―――――
  2. 片岡清一

    片岡委員長 これより会議を開きます。  お諮りいたします。  本日、最高裁判所山口総務局長櫻井人事局長川嵜経理局長上谷民事局長吉丸刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 片岡清一

    片岡委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  4. 片岡清一

    片岡委員長 内閣提出裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。  まず、趣旨説明を聴取いたします。嶋崎法務大臣。     —————————————  裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する、   法律案  検察官俸給等に関する法律の一部を改正する   法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  5. 嶋崎均

    嶋崎国務大臣 裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を便宜一括して説明いたします。  政府は、人事院勧告趣旨等にかんがみ、一般政府職員給与を改善する等の必要を認め、今国会に一般職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案及び特別職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案を提出いたしました。そこで、裁判官及び検察官につきましても、一般政府職員の例に準じて、その給与を改善する措置を講ずるため、この両法律案を提出した次第でありまして、改正の内容は、次のとおりであります。  第一に、最高裁判所長官最高裁判所判事及び高等裁判所長官報酬並びに検事総長次長検事及び検事長俸給は、従来、特別職職員給与に関する法律適用を受ける内閣総理大臣その他の特別職職員俸給に準じて定められておりますところ、今回、内閣総理大臣その他の特別職職員について、その俸給増額することとしておりますので、おおむねこれに準じて、最高裁判所長官最高裁判所判事及び高等裁判所長官報酬並びに検事総長次長検事及び検事長俸給増額することといたしております。  第二に、判事判事補及び簡易裁判所判事報酬並びに検事及び副検事俸給につきましては、おおむねその額においてこれに対応する一般職職員給与に関する法律適用を受ける職員俸給増額に準じて、いずれもこれを増額することといたしております。  これらの給与の改定は、一般政府職員の場合と同様、昭和六十年七月一日にさかのぼって行うことといたしております。  以上が、裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案趣旨であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますよう、お願いいたします。
  6. 片岡清一

    片岡委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     —————————————
  7. 片岡清一

    片岡委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲葉誠一君。
  8. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 法案について質問をいたすわけでございますが、私が最初にお聞きをいたしたいのは、例えば今提案説明にも「人事院勧告趣旨等にかんがみ、」と、こうあるわけですが、裁判官の場合は、人事院勧告というものに拘束されると言うと言葉が悪いかもわかりませんけれども、どういう関係になるのですか。
  9. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 裁判官報酬は、人事院勧告に拘束されて、あるいはそれに基づいて、それに直結して動くものではございませんで、裁判官報酬法第十条によりまして、一般政府職員俸給増額があった場合にそれぞれ法律によってそれに対応して増額していくという建前になっております。
  10. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 検察官はどうなんですか。
  11. 井嶋一友

    井嶋政府委員 検察官は御案内のとおり一般職職員でございますけれども、その職務が準司法官的な性格があるということから、従来、検察官につきましては検察官俸給等に関する法律という特別の給与体系を持っておるわけでございます。この中身は裁判官におおむね準じるということでつくられておるわけでございます。そういった意味におきまして、検察官俸給につきましても人事院勧告の対象ではない、直結するものではないというふうに理解をいたしております。
  12. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、この提案説明に「政府は、人事院勧告趣旨等にかんがみ、」というのは、これは一般職の場合を指しているわけですね、この「等」というのは。だから必ずしもそれに準じないで、特に裁判官の場合は司法権独立なんですから、まあ裁判そのもの独立給与なんかは独立でないのかどうかよくわかりませんけれども、これは七月からの実施でなくて四月からの実施ということをちゃんと頑張ってもよかったのじゃないですか。そういう点については主張はしないわけですか。
  13. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 ただいま申し上げましたように、裁判官につきましては、この報酬法第十条によりまして「一般の官吏の例に準じて、」増額をしていくということになっているわけでございます。  そして、その場合の増額をどのようにするかということでございますが、裁判官報酬といいましても、それはやはり裁判官国家公務員でございますので国家公務員全体の給与水準から全く離れて存在しているわけではないものでございます。やはり国家公務員俸給とのバランスということも考えながら、しかも同時に、それが憲法の定める裁判官の受けるべき相当額報酬というものを確保する、そのバランスを考えて裁判官報酬額というものも定まっているわけでございます。したがって、今回、七月から一般政府職員俸給増額が行われるということで、それに対応して裁判官の場合も七月から増額をするというのがやはり国家公務員の一部分である裁判官報酬額としては相当なものであろうというふうに考えられたわけでございます。
  14. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 判事補の十二号が一番下で十七万三千三百円というわけですけれども、これは一般行政職で二年たっての者と比較しないといけないわけですが、上級職の試験を受かっている人ですね、それと比べるとどうなのかということ、それが一つですね。それから、今までの答弁は、弁護士になって大体どこかの事務所に最初行くわけですね、俗に何とかと言っていますけれども、それの給与との比較を大体考えておるというようなことを言われておったように思うのです。それらは今最低幾らぐらいかな。東京ではもう大体二十何万じゃないですか。(「三十万ぐらい」と呼ぶ者あり)三十万ぐらいだと言っている。これは三十万というのは無理かもわからぬけれども、今までの答弁の中にそういう答弁が出てきているでしょう。二年終わって弁護士になる者、これは俗に何とか弁と言いますが、それとの比較で考えたときというようなことを言っていますから、それと一般上級職の二年たった場合との比較ですね、どういうふうになっているのですか。
  15. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 裁判官報酬額判事補につきましてもそれぞれその対応する一般政府職員俸給額が全部決まっているわけでございます。そして判事補につきましては大体二五%ないし三〇%程度その同年輩の行政職員よりは上になるように定められているわけでございます。  弁護士との関係はどうかということでございますが、弁護士につきましては、司法研修所を修了いたしましたときの弁護士初任給の額をつかむのは大変難しいわけでございますが、しかし相当程度格差があることは事実でございます。十万円に近い格差があるいはあるのかもしれませんが、ただ裁判官の場合は弁護士とは違いまして、例えば官舎への居住の便宜等がございますので、その差はその額面の差額ほどではないのではないかと考えているわけでございます。
  16. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そして判事補が十二号から十一号、十一号から十号、十号から九号、ずっと上がっていきますね。それは、最初の間は三年ぐらいずつで号俸が上がっていったり、二年で上がっていったりするわけですね。それはどの段階までは全部同じ号俸に上がっていくわけですか。
  17. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 判事補号俸は一号から十二号までございます。判事補は十年間でございますから、十年間で十二号を上がっていくということになるわけでございます。ですから、短いときには半年程度の場合もございますし、長いときは一年程度在号期間で上がっていくわけでございます。
  18. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 私、勘違いしていました。判事補でなくて判事の場合ですね。判事の場合、八号から七号にとずっと上がっていく場合に大体三年ないし二年だというふうに聞いているわけですが、問題の一つは、判事補から判事になるときに、これはそこでどういうふうになるのですか。裁判官身分が一たん切れるのですか。切れて再採用という形になるのですか。それはどういうふうに理解したらよろしいですか。
  19. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 判事補が十年経過いたしますと判事への任命資格が出るわけでございます。ただ、判事補任期というものは十年でございますので、十年たったところで判事任命されるのが通常でございますけれども、仮に判事任命できない者があった場合には、それはそこで判事補任期が終了して退官になることになると考えます。
  20. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それはそのとおりなんですけれども、私の聞いておりますのは再任の場合ですね。判事になって十年で再任になるでしょう。その場合は一体身分はどうなんですか、十年たって。私がなぜそういうことを聞くかというと、十年たって再任されない場合があるでしょう。その場合に不服の申し立て方法が、皆さん方から言わせると何もないと言うのでしょう。だから、そこを私は聞いているわけなんですよ。判事になって十年たつと再任期間、そこで一たん切れちゃって、再任するかしないかということは全く最高裁判所自由裁量ということになるわけですか。
  21. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 判事任期につきましてもやはり十年と決まっております。その十年が経過いたしましたときに、それを契機にもう再任は希望しないという方ももちろんございますし、その場合は最高裁の方で何もしないでいますと、そこで十年の任期でもってその判事任期終了退官になるわけでございます。再任を希望するという場合には、改めて内閣の方で任命が行われるわけでございます。改めて判事任命するという官記が出て、そして最高裁判所の方でその人について改めてまた補職をするということになっております。ただ、通常の場合、判事任期十年が経過して判事任命を希望しないという方の場合は別ですけれども、これを希望してそれが認められなかったという例は、少なくともここのところはずっとなかったものというふうに考えております。
  22. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いや、ここのところはなかったのはそうなんですが、名前は言いませんけれども、ある裁判官の例があったのはもうどのくらい前になりますか、十年以上前になりますかな、もっと前かな。それはそれですけれども、私の疑問と思いますのは、十年たって再任を一体どこがするのですか。最高裁判所がするのですか、内閣がするのですか。ちょっと今のお話よくわかりませんけれども、再任されなかった場合にどういう理由でされなかったかということについて全く発表がないわけでしょう。それに対する不服の申し立て方法が全くないというのでしょう。これは私はちょっと理解できないわけですよ。通常の場合だれでもが再任を申し出れば再任されるというのに、極めて例外的に再任をされないというならば、当然それに対して理由なり、それに対する異議申し立てなり、そういう制度がなければおかしいのだ、こういうふうに思うわけなんですね。だから、再任されなくちゃ大変だということで、結局最高裁判所意向に従わざるを得ないという形に現在なってきておるわけではないですか。どうして不服の申し立て方法がないわけですか。
  23. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 先ほど、ここのところなかったということを申し上げましたが、十数年前の事例というふうに稲葉議員のおっしゃるのは、判事補から判事への任命ケースでございまして、判事が十年たってからの任命が認められなかったというケースではないように承知しております。御指摘のとおり、これに対して不服の判事が、十年経過してそして任命を希望しながら認められなかったという場合の不服の申し立て方法というものはないと思っております。これはやはり判事身分というものがそれだけその任期中は強い身分保障を受けておりますし、そして同時にその身分保障に対応するだけの重要な職責を担っているということから、その十年の任期というものはその任期のある間は万全のものであるけれども、十年経過したところで改めて最高裁判所でその判事再任命の適否というものを判断をし、任命をするのは内閣が行うわけでございますが、そのようなプロセスを経るということが前提されているがために、その希望が認められなかった場合の不服申し立て方法等についての定めはないものであろうと考えております。
  24. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 だから、結局十年間判事をやって、これは最高裁判所意向というか何というか、そういうふうなものに反した場合には不服の申し立て方法がないから、結局最高裁判所のいわゆる司法行政といいますか、そういうふうなものにも服従せざるを得ないという形になってくる現象が生まれてくるんじゃないかと私は思うのです。今すぐのお答えでなくてもいいのですけれども、裁判官制度というものは各国みんな違いますが、外国では一体そういうふうな場合にどういうふうになっているのですかね。これは選挙でやるところもありますから一概に言えないわけでして、また別の機会でもいいのですけれども。  そこで、私のお聞きしたいのは、判事の場合何年ごと、何年ごととずっと上がっていきますね。そしてずっとある段階まではみんな給料は一緒でしょう。三号あたりから分かれるのですか、こう分かれますね。例えば二年で上がっていく人と三年で上がっていく人あるいは四年で上がっていく人というように分かれるのは、大体三号あたりからですか。どういうふうになっているのですか。
  25. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 判事昇給につきましては、これは判事補も同様でございますけれども、最高裁判所がそれぞれの裁判官報酬の号を決めるということになっております。大体判事の四号ぐらいまでは一律に昇給しているというのが実情でございます。もちろん長期の病休等があった場合はその方についておくれるということはございますけれども、判事の四号ぐらいまでは大体一律の昇給でございます。判事の三号以上というのは非常に高い報酬でございますので、そのあたりからはそれぞれの裁判官能力適性等に応じて選抜が行われまして、そして真にその号俸にふさわしい裁判官であるというふうに認められた場合に三号以上への昇給が行われていくというシステムになっております。
  26. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこで、今人事局長の言われました、能力適性に応じて分かれていくわけでしょう。一体だれがどのような方法でこの能力適性というものを判断するのですか。そこに問題があるわけですよ。今あなたは私の質問にそういうところまで答えない方がよかったのですよ。答えちゃったからそれはしようがないので、だれがどうやって判断するのですか。そこに問題があるのですよ。これは、各管内の場合は高裁事務局長が一応判断するわけでしょう。だって、東京高裁事務局長をやった人は、大体ずっと出世のコースというか、上へ上がっていく人なんですね。そこに問題があるのですよ、これは。能力適性なんて言うからおかしくなってくるんですよ。だれがどうやって判断するのですか。言わない方がよかったのですよ、それは。
  27. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 能力適性というのは幾つかのファクターの中のその一つとして申し上げたわけですが、そういったすべてのことを見た上でその号俸が決定されるわけでございます。それを判断するのは最高裁判所でございます。
  28. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 だから、能力適性以外のファクターって一体何があるのですか。考えられるのは、その人の思想ということもありますね、思想信条。しかし思想信条であれするわけにいかないでしょう、これは憲法で規制されているから。さあ何があるかということでしょう。最高裁判断するといったって、あなた、最高裁がどうやって判断するのですか。そこのところが問題なんですよ、これは。せっかくそこまで言われちゃったから、結局どういうふうにしてやるのですかね、実際は。私の聞いている範囲では、大体一つ所長でしょう。所長がいろいろな判断の、各裁判官考課表を持っているわけでしょう。その考課表の一番大きなポイントというのは、どれだけの新受事件があってどれだけの事件をさばいたかとか、あるいは嗜好の問題も出てくるでしょう、あれは酒が好きだとか、いろいろなものが出てくるのじゃないですか、そういうようなのが。それから家庭的にどうのとかなんとかというのも出てくるらしいのだけれども、そういうようなことで所長がまず判断するわけでしょう。それが今度は高裁へ判決が控訴で上がってきたときには、記録を見ればわかるですわな。一審の裁判官ができる、できないということは大体わかるわけです、控訴審へいくとね。それで控訴審、ことに、刑事でも民事でも、分かれているから、その部の統括が集まったりなんかしたときにその判断が出てくるわけでしょう。最高裁独自でもまた判断するということでしょう。大体こういうようなことなんでしょう。だから、裁判官がもうとにかく控訴を嫌がる。民事和解をとても勧めるのは、和解なら控訴をして自分の記録を見られないから、それで和解を勧めるわけでしょう、一生懸命。そればかりじゃありませんけれども。どうやって能力適性、それ以外のファクターというのを決めるのですか。これがそれこそ司法権独立を侵すということの一つファクターになってくる危険性があるのですよ。だというわけじゃありませんけれども、危険性があると私は考えるのですが……。
  29. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 最高裁判所では、全国に裁判官配置しているわけでございます。そして、その配置の適正を期するためには、裁判官の詳細な状況を知る必要があるわけでございます。それによってその裁判官がどういう裁判所配置されるのが適しているかというようなことをやはり考えなければならないわけでございます。それを最高裁判所がどうやって知るかということでございますが、それはやはり地家裁であれば地裁の所長あるいは家裁の所長が、それぞれその所属の裁判官を詳細に把握している必要があるわけでございます。そうしなければその地方裁判所あるいは家庭裁判所における司法行政事務を運営していくことができないわけでございますから、そういうものを常時把握している必要がございます。そういった意見というものが順次最高裁に上がってまいりまして、最高裁ではそういったものに基づいてそれぞれの裁判官配置を決めるということになっております。  ただ、それではどういう事項を見るのかということになりますが、先ほど御指摘のような、例えば思想を見るのではないかというようなことは、これは全くございません。例えばどういう裁判をやっているか、その裁判の中身がどうであるかといったようなことは、そういったことを所長が評価するということはおよそ無理なことでありますし、またそれはなすべきではないわけでございます。そういう意味で裁判の独立を侵すといった問題は全くないものと思っております。あくまでも所長が常時その所属の裁判官と接して——仕事の上でいろいろと接することがございます。そこで得た所長の認識といったものが高裁を経て最高裁に上がってくるということになります。そのほかにも、これまた稲葉委員御指摘になりましたように、上訴審での下級裁の裁判を見る機会というのもございます。そういったようなものが上がってくるということになります。ただ、上訴審で下級裁の裁判を見るといいましても、それも何もどういう結論であったからその裁判官がどうという評価をするわけではございませんので、その点も御理解いただきたいと思います。
  30. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 まあ余り聞きませんけれども、私が疑問にするのは、やはり所長のところでどういうような資料を集めて所長がどういうような報告をしているかということが、裁判の独立との関係で問題がそこに伏在をしているということを私は考えておるものですから、それでお聞きをいたしておるわけなんですが、それは何回も聞いていることでして、これ以上聞きませんで別のことをお聞きをいたします。  今簡裁の統廃合の問題でいろいろ計画がございますね。それについて法曹の三者協議は一体今どこまで進んでおるのかということ、それから法制審議会への移行の時期、今後の見通し、それから、あちこちへ行って聞きますと、来年六月までに大体法制審議会で最終決着が出るんだというような話も聞くわけなんですよ。私がよくわからない一つは、法曹三者といってこれに法務省が関与する必要があるのかないのかということがよくわからないのです。それからもう一つ、何か法制審議会というものに移行するという時期が、同時並列的にやるような話も聞くのです。ここら辺のところが一体どういうふうになっているのかということをお聞かせ願いたいと思うのです。
  31. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 まず最初に、三者協議会で現在裁判所の適正配置問題を協議しているところでございますが、三者協議会が発足いたしました経緯につきましては、稲葉委員御承知のとおり、昭和四十五年の民事事物管轄改正の際に参議院の法務委員会、それから翌年衆議院の法務委員会でいろいろ附帯決議がございまして、司法制度にかかわる事柄については法曹三者でよく意見を交換してやってこい、こういう仰せでございまして、それに基づいて、司法制度にかかわる事柄についてなるべく意見の一致を見るように三者協議会が設置されてやっているわけでございます。  この問題につきましては、昨年の一月に三者協議会に問題を提起いたしまして、自来一カ月に一回ぐらいのペースで、かなりの資料を提出しまして私どもの方から種々御説明申し上げてまいりました。昨年の六月にこれが三者協議会の正式議題として取り上げられまして、主として私どもの方から昭和三十年から今日までに至る例えば人口動態であるとかあるいは人口の都市集中に伴います事件数の偏在状況であるとか、それに伴って生じます種々のデメリット、さらには、御承知のとおり交通事情が非常に発達しておりまして、簡裁相互間の時間的、経済的距離が非常に短縮している、こういうふうな社会事情の変化を前提にすると、特に独立簡易裁判所配置の見直しをする必要性があるんだというような事柄を御説明申し上げてきたわけでございます。ことしの三月に日弁連の方から私どもの意見に対する基本的な見解の表明がございました。そこでは、簡裁発足以来四十年近くを経過した今日、最高裁が提起しているように、各簡裁間の処理件数の不均衡あるいはもろもろの社会経済事情の著しい変化などが生じていることは事実であり、この際、その配置の適正化を含め今後の簡裁のあり方についての根本的な検討を行うことが必要である、こういう意見表明がございまして、簡裁の配置の見直しの必要という点におきましては基本的に法曹三者間で認識が一致していると考えているわけでございます。その後このような基本的認識のもとに本年の五月に裁判所側から、小規模独立簡裁及び大都市独立簡裁の配置の見直しにつきまして裁判所の考え方を示したところでございます。  それで、これにつきまして法務省はいずれも基本的に異論がないという御意見でございまして、日弁連サイドにおかれましては、裁判所側の意見に対しまして各単位会にそれぞれ求意見をなさいまして、現在意見形成に努められているところでございますが、半年を経過いたしました今日まだお答えをいただいていない、こういう状況でございます。  先ほど御指摘のように、私どもといたしましては、見直しの必要性と実質的な司法全体の機能の充実という観点からいたしますと、一日も早く実現にこぎつけたいわけでございまして、法曹三者間で意見の交換はいたしますものの、法曹三者間の合意で事柄が決められる性質のものではございません。国民の便益に広くかかわる事柄でございますので、私どもといたしましては、より広く国民階層のいわば代表を集めておられる法制審議会でこの配置の見直しの問題を御協議いただきまして、答申をいただいた上で各地の実情をつぶさに検討し、御意向も伺いながら具体的構想を詰めていきたいというように考えているわけでございます。  先ほど申しましたように、私どもの方の考え方を示しましてから半年くらい経過いたしておりますが、まだ日弁連の御意見をいただけない、これでじんぜん時を過ごすわけにもまいりませんので、いわば同時並行の形で、法制審議会での御議論のほかに簡裁に関しましてはまだいろいろ検討すべき点もあろうかと思いますので、法制審議会と三者協議会でいわば同時並行の形で審議することも可能である。したがいまして、できる限り早く御意見を伺って法制審への移行を速やかに実現したいということを日弁連の方にも申し上げているわけでございます。  法制審議会で御審議いただくにいたしましても、この問題はやはりかなり国民の利便にかかわる大きな問題でございますので、短時日に決着をつけるというわけにはまいりません。ある程度の回数御審議いただきまして御答申を得なければなりません。しかし、先ほど六月ごろというお話もございましたけれども、私どもとしましてはできる限り早く御答申を得たいというように考えておりますけれども、六月がデッドラインであるとかそういうふうに考えているわけでは決してございません。  大体以上でございます。
  32. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 私、いろいろいって聞きますと、例えば裁判所長さんが非常に司法行政上の手腕があるかないかということの一つのめどとして、しかも大きなめどとして、この簡裁の統廃合を実現したかどうかということによって、あの所長さんは俗に言う、何という言葉がいいかな、非常に腕がいいというか、そういう評価を最高裁ではするようですね。そうじゃないんですか。名前は言いませんよ、名前を言うと差し支えがあるから。そういう評価も私はいろいろ聞くんです。だから、所長の仕事の一番大きなのは、これが出てくると統廃合でしょう。この実施所長の仕事の一番大きなあれになってくるのであってはいけないんじゃないかと私は思うのです。  そこでまたお聞きいたしたいのは、大都市の独立簡裁の集約の問題が今起きておるということが言われておるのですね。例えば、今東京二十三区に十一庁あるんですか、名古屋の市内に三庁、大阪市内に四庁、北九州市内に二庁ある独立簡裁をそれぞれ一つに集約する計画がある。東京の墨田は交通裁判所ですから別としてね。  ちょっと聞きますけれども、台東簡易裁判所というのは今どこにあるのですか。実際にあるところを……。
  33. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 台東簡易裁判所は、稲葉委員御承知の司法研修所の裏に無縁坂というのがございますけれども、不忍池の方へおりていくわけでございます。不忍池のほとりに台東簡易裁はございます。
  34. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 不忍池のほとりって、森鴎外の「雁」の、あそこに何か大内さんが行った、あれは何ですか食堂だか料理屋があったとかなんとか言っていましたね。それはいいですけれども、日比谷公園のところに前に東京地裁がありましたね。今どういうふうになっておるのですか。あそこにどこかの簡易裁判所が入っているのですか。
  35. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 日比谷公園には東京地裁の分室がございまして、一時期簡裁が新庁舎の建築のために事務移転で入ったりした時期がございます。しかし現在、その分室は取り払われております。
  36. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこで、東京高裁があった建物がありますね。茶色のような色の建物ですね。あそこを何か利用して、そして現在の検察庁のあるところなんかを大きな独立簡裁にするという考え方があるんですか、あるいは逆かもわかりませんけれども。とにかく東京二十三区内にある十一庁ですか、これを全部日比谷のあそこのところへまとめてしまう、そういう考え方があるんですか。どうなんでしょうか。
  37. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 東京都二十二区内の簡裁は御指摘のとおり十二ございます。それにつきましても、現在の地下鉄等の交通網の発達状況が、いわば霞が関近辺を中心といたしまして放射線状に広がっておる、こういう状況を踏まえまして、二十三区内の簡裁を原則として霞が関の、現在東京高地簡の庁舎がございますが、あの近辺に集約してはどうだろうか、もちろん交通分室は残す必要があろうかと思いますが、そういう構想でお話を申し上げております。
  38. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それがなかなか問題になってくるのです。そうすると、東京だけではなくて名古屋も大阪も北九州もみんな一カ所にまとめちゃうという考え方ですか。これが一つ。  それから東京でまとめるというのは、私の聞いた範囲では、あるいは間違いかもわかりませんけれども、例の東京高裁のあった建物がありますね。あれは五階建てぐらいでしたかね。あそこに検察庁か何か、法務合同庁舎か何か移して、今の検察庁のあるところを何階かの東京簡裁にしたいというような話があるというふうに聞いておるのです。今何か詳しくはお話ありませんでしたけれども、大体何かそれに近いというと語弊がありますけれどもお話がありましたが、もう少し詳細に、どこへどういうふうな打診があって、どうなっておるのかということをお聞かせ願いたいと思うのです。
  39. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 まず最初に大阪、名古屋につきましても、それぞれ大阪市内、名古屋市内の簡裁を、大阪の場合には現在大阪簡裁のあります近辺、それから名古屋につきましても現在の名古屋の高地簡のあります近辺、北九州につきましては現在の小倉簡易裁判所の近辺、そういうところに集約をするということでお話を申し上げておるところでございます。  それから二十三区内の簡裁の集約場所につきましては、御指摘のとおり旧東京高裁庁舎それから現在の検察庁の庁舎、この辺の跡地の整備が全般的に問題になるわけでございます。その整備の計画の中で東京都内簡裁の集約の問題も考えてまいりたいということでお話を申し上げております。
  40. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それはいつごろどこへ話をして、あなた方の見込みではいつごろ実現をしたいというお考えなんでしょうか。これは大変な問題だと私は思うのですけれども、どういうふうにお考えなんでしょうか。
  41. 川嵜義徳

    川嵜最高裁判所長官代理者 今東京高等裁判所等の庁舎があるあの地域一帯をAブロックと言っておるのですが、Aブロックの整備につきましては、建設省を中心にマスタープランをいかに定めるべきかということが検討をされております。当然その中に法務省、検察庁の整備も入っておりますし、ただいま総務局長が申しました簡裁等の裁判所の施設の整備もその中に入ってくる、それから伝え聞くところによりますと弁護士会館の整備もその中に入ってくるというふうに承知しておりますが、まだ確定しておるというわけではございません。
  42. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 簡裁というのは各地にあって、そして余り大きくないところで親しみやすいという形でいろいろな方が相談に行けるというのが一つの筋であって、それは地下鉄が発達したのはわかりますけれども、それで大庁舎をつくって、そこであらゆるものをまとめて、これは一つにしちゃうわけですか。東京簡易裁判所というので一つにしちゃうのかちょっとよくわかりませんが、そうすると、廃止するところの庁の敷地や何かをめぐっていろいろな話が出てきておるわけですね。これはいろいろな、確たるあれじゃないにしても、単なる根拠のないと言えばないかもわかりませんけれども。そうすると本来のあり得べき理想としての簡易裁判所というものは、どういうものがあり得べき理想の簡易裁判所というふうに最高裁としてはお考えなんですか。そんな大きな簡易裁判所をつくっちゃって東京一つで、あなたそれではちょっと無理じゃないですか。どうなんですか。
  43. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 稲葉委員御承知のとおり、簡易裁判所比較的少額、軽微な事件を簡易迅速に処理する裁判所ということで性格づけられようかと思います。民事訴訟につきましては、御承知の督促というものがございますけれども、基本的にはやはり地裁に適用されます民事の第一審訴訟手続を基盤にするわけでございます。したがいまして、督促の活用と申しましても、例えば書証の成立を認否しなければならないとか証人尋問は適式にやらなければならないとかいろいろな制約があるわけでございますが、ただ他方、簡裁におきましては督促事件とか、特に非定型に事実関係を掌握できる調停手続、これは簡裁の大きなウエートを占めているわけでございますので、そういう点から国民に親しみやすい裁判所だという性格もあろうかと思います。この性格というものは決してゆがめてはならない。私どもが簡裁の集約を考えます場合も、そういう性格をおろそかにするというつもりではございません。大規模になると簡裁の性格は変わるのではないかという御議論もこれまで伺ってはいるわけでございますけれども、要は簡裁の運営をどうやっていくか、国民に親しみやすい簡易裁判所の性格をどう発揮していくかということに帰着するわけでございまして、現実に大阪の簡裁と申しますのは裁判官三十名ぐらいで、職員も百数十名でかなり大規模な形で行われておりますけれども、他面、集約処理をいたしておりますから専門的な処理というものもできるわけでございまして、そういう点から申しますと事件の迅速な処理につながる面もございます。  そういうように、簡裁の親しみやすい性格を損なわないで、しかも集約処理によるメリットを生み出していくということによって、国民に対する司法サービスをますます向上させていきたいというふうに考えてこの構想を進めているところでございます。
  44. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、東京の場合は東京簡易裁判所というのが、墨田の交通裁判所は別として、十一ですか全部が集まっちゃって東京簡易裁判所というのが一つできるということですか。そういうことなんですか。
  45. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 最終的にはそのような形を考えております。ただ、先ほどもちょっと御指摘のございましたように、まず入れ物、つまり建物の問題がございますので、実現できますのはかなり先のことになろうかとは思っております。
  46. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 今の点と、それから全体の簡裁の統廃合の計画がございますね。いろいろ分けまして、百二十件を基準とするとかいろいろありますけれども、そういうような全体について最高裁としては、ランクがありまして、Aランクの場合、Bランクの場合、いろいろあるでしょうけれども、全部をいつごろまでに実現をしたい、そういうふうに考えられておるわけですか。
  47. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 この問題の実現につきましては、多方面に関係する事柄でございます。先ほども申しましたように、法制審議会での御審議もいただかなければなりませんし、地元の御理解もいただかなければならない。そういう事柄からいたしますと、私どもといたしましてはできる限り速やかに実現を図りたいということを申し上げることはできますけれども、いつ幾日をめどということは現時点では明確に申し上げることはできないと思います。
  48. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 裁判所の増員要求をずっと見てまいりますと、裁判官は八五年で九名ふえたり、書記官が十名、事務官が二十七名、家裁調査官が三名、四十九名ふえておるわけですけれども、他方、定員削減などもあるわけで、実際にはことしは七名ふえておるわけですね。そこら辺のところの問題の中で、大体ふえているのは五十三年が百二十八名、次の年が百十三名、百名、九十七名、そういうふうにいっていて、三、四年前、五十七年ですか四十九名、ずっと四十九名、四十九名、四十九名でいっていますね、人員増が。これは一体どういうわけでこういうふうにぐんと減ってきたのですか。前もって大蔵省と打ち合わせをしていて、この程度しかふえないからというのでぐんと減らしちゃったのですか。どういうわけなんですか。
  49. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 御指摘のように従来、かつての裁判所の増員要求につきましては、当初相当大きな数値を掲げて要求を行いまして、折衝の過程でその要求どおりの数は実現いたしませんで、私どもといたしましては当初要求の段階ではかなりの期待を持って、事件数の動き等も考えて要求をするわけでございますが、その後折衝の過程で事件数の変化等もございまして、最終的には要求数を下回るというような数で落ちつくという経過をたどっていたわけでございます。  最終的には一番現実に即した増員数ということで落ちついてくるわけでございまして、そのような経過を踏んでおりますが、ここ数年来はそういう前の方式ではございませんで、要求自体につきましても事件数の動向を非常に慎重に見きわめた上で、しかも書記官等につきましては当然相当の資格が必要となってまいりますので、給源等の関係もございまして、充員状況をにらみながら、現実に最も確実な増員要求数というものに絞りまして要求をするというふうにやってまいったわけでございます。そこで御指摘のような変化が生じているということでございます。
  50. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 これは増員の場合、確かに事件数は刑事は余りふえていないという経過はありますね。民事はふえているものもあるし、ことに簡裁の場合は非常にふえていますね。支払い命令やその他が、略式なんかもふえておる。殊にいろいろなクレジットや何かの関係がありまして非常にふえていますね。ですからもっと人員がふえる要求を当然していいと思うのですけれども、どうしてこういうふうなことをしたのかと考えてみますと、前もって大蔵と打ち合わせして、この程度しか認められないということを先に決めちゃって、そして四十九、四十九、四十九とずっと四十九でいっているのですね。どうもこれはよくわからないですね。だから、大蔵の圧力と言う生言葉は悪いかもわかりませんけれども、それに屈しちゃって、最高裁独自のもっとこれだけはどうしても必要なんだという強い姿勢があらわれてないんじゃないですか。どうもよくわからないですね。これはもっと実情を説明すればいいのです。  そしてしかも、この四十九名といっても、実際ことしなんかは一般職員が二名減っているでしょう。裁判官が九名ふえているのは、もっとふえなければいけないと思いますけれども、一般職員が二名減って裁判官が九名ふえているから差し引き七名ふえているということなんであって、四十九名ふえたって削減で四十二名減っているわけですから、これでは全然増員ということになっていないので、今やかましいと言えばやかましいかもしれませんが、どうして一般職員を二名減らしちゃったのですか。ずっとゼロ、ゼロで来ていますね。一般職員の場合は。それが今度二名減っているというのはどういうわけですか。
  51. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 御承知のとおり、本年の三月三十一日に定年法の施行がございました。本年度の予算要求の過程におきまして、昨年、実は定年法の施行で大量退職者が出る、そこで特に定年退職者の不補充をひとつお願いしたい、こういう要求がございました。そこで、私どもの方で種々勘案いたしました結果、最高裁の印刷所で、かなりOA化を図りまして、相当省力化ができたということでございまして、定年退職者の不補充分として最高裁の印刷工三名というものを立てたわけでございます。それが今おっしゃいましたマイナス二のもとになっておりまして、下級裁全体で見ますと減ってはいないわけでございます。最高裁の方で引き受けた、こういう状況でございます。  それから、先ほど御指摘もございましたように、一方では裁判部門の増員を要求して、それは認めていただいているわけでございます。他方で司法行政部門の省力化ということで、定則は司法行政部門で受けておりますので、いわば司法行政部門を削って裁判部門へ回して事件処理に対応できる体制をとっている、こういう状況でございます。
  52. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 裁判所の予算の問題に関連して、裁判所の予算が年々減少をしておる。現在では国家予算の〇・四%程度だということを言う人もいるのですけれども、これは事実かどうかということと、六十一年度の裁判所関係の予算の要求の中で、一体経理局としては何を中心にどういうふうにしたいと考えておられるのか、こういうことの説明を少し詳しくしていただきたいと思います。
  53. 川嵜義徳

    川嵜最高裁判所長官代理者 まず、裁判所の予算が国家予算の中に占める割合でございますが、これは一般会計予算の中に占める割合ということでお聞き取りいただきますが、六十年度におきましては〇・四一六%で大体御指摘のとおりであります。十年前、昭和五十年度で見ますと〇・五八一%ですから、率においては〇・一強の落ち込みということになっております。これは原因がどこにあるか、そう簡単には申し上げられませんけれども、国債費の増加とかあるいは地方交付税交付金の増加といったようなことが原因になって傘としては落ちているというふうになっております。ただ、率が落ちているから裁判所の予算が落ち込んでいるかといいますと、そういうことにはなっていないというふうに私どもは考えておりますし、六十年度の総予算額は二千百八十三億余りですけれども、これで裁判所の裁判事務の運営に支障を来すようなことはないというふうに考えておる次第であります。  それから、六十一年度の概算要求における重点でありますが、裁判所の予算の構成は人件費が大体八八%を超えるような状況になっております。これからもわかりますとおり、裁判所は人で持っておる役所でございます。そこへ事件増がありますので、増員というのをまず第一の重点といたしております。増員は、これも判事八、一般職書記官十、事務官三十一、合計四十九の増員要求をしております。  第二には、施設関係の経費でありまして、老朽化いたしております裁判所の建てかえあるいは狭隘化している庁の増築あるいは乙号支部以下の小規模庁の冷房化の促進といったようなことを重点として施設費の要求をいたしております。  第三が、調停委員の手当あるいは国選弁護人の報酬増額であります。これはある程度人事院勧告に連動と言うとちょっと語弊がありますけれども、連動するような要素を持っておりますが、できる限り頑張りたいというふうに考えております。  大体以上が要求の重点でございます。
  54. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 時間が参りましたので、法務省関係ではいろいろお聞きしたいこともあったわけですが、別の機会にさせていただきたいと思います。終わります。
  55. 片岡清一

    片岡委員長 中村巖君。
  56. 中村巖

    中村(巖)委員 今回の裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案でございますけれども、まず最初にお伺いをいたしたいのは、この報酬あるいは俸給の改定、これが今度昭和六十年の七月一日から実施をする、こういうことになっているわけでありますけれども、何で昭和六十年の七月一日というその日からやるのかということでございます。恐らくこれは、一般職の公務員について七月一日からということで内閣でお決めになったからそれに右へ倣えをして七月一日ということになったんだ、こういうことなんだろうと思いますけれども、人事院勧告というものは一般職の公務員に対する給与の値上げの勧告でありまして、裁判所裁判官あるいは法務省の検察官はこれに関係がないというふうに思うわけなんです。しかも、なおかつ、七月一日というのは別にどういう日であるという合理的な根拠というものも全くない。四月一日ならば、これは一般俸給が上がる日でありますからわかりますけれども、にもかかわらず七月一日からとして通常のように四月一日からにしない、三カ月間値切ってしまうというか、そういうことにする理由はどういうことなのか、それをお尋ね申し上げたいと思います。
  57. 嶋崎均

    嶋崎国務大臣 この問題については、今中央政府の財政状況というのは非常に厳しい状況にあるということは御承知のとおりでございます。何とか三年ぐらいの日時を入れてこの問題を解決したいというのが基本的な考え方であったわけでございますけれども、国家公務員の現在の状態ということをいろいろ考えた末、当年度、六十年度はもちろんのことでございますし、また来年予算の編成につきましても大変な費用がかかるということはわかるけれども、何とかそういう気持ちというものを打ち出したいというようなことで人事院勧告に従って引き上げをしようという決定に至ったわけでございます。  そうした場合に、そういう厳しい財源事情があるわけでございますので、それをどういう整理をしようかというようなことでせっかくいろいろな考え方をとったわけでございましょうけれども、ともかく四月から実施することは事実上なかなか難しいというようなことが前提になりまして七月一日から実施というようなことで踏み切ったのが実情であろうかと思っておる次第でございます。
  58. 中村巖

    中村(巖)委員 今法務大臣がお答えになりましたけれども、裁判所としての考え方はいかがでございましょう。
  59. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 裁判官報酬につきましては、憲法裁判官は「相当額報酬を受ける。」ということが定められているわけでございます。その趣旨は、裁判官が良心に従って独立して職権を行うということから、その職務の重大性にかんがみてその地位にふさわしい十分な報酬を与えるというところにあるものと考えております。ただ、そこに申します「相当額報酬」というのは非常に抽象的な概念でありまして、どの程度の金額であればそれが「相当額」であるのかというのは大変難しい問題であります。  ただ言えますことは、その報酬というものが国民全体の生活水準から全く独立して存在するということができないことはもちろんのことでありますし、また裁判官国家公務員の一部分でありますから、国家公務員全体の給与水準から全くかけ離れたようなものであるということばやはり考えられないわけでございます。裁判官国家公務員の一部であり、その全体の中でしかるべき地位を占めるということから、この「相当額報酬」というものを考えていかなければならないものであろうと思っております。したがいまして、今回の改正におきましては、報酬改定の実施時期につきましては一般職国家公務員の場合と合わせて七月一日実施ということにすると同時に、その金額につきましては従前と同様相当程度の行政官との間の格差を設けるということを維持することによって憲法の要請する「相当額報酬」は満たされているものであろうというふうに考えております。
  60. 中村巖

    中村(巖)委員 まあそういう御返答だろうと思いますけれども、前回のこの報酬の引き上げに関する法律の審議の際に私も申し上げておりますけれども、裁判官の場合には、これは三権分立でもって裁判所というものは独立しているわけで、行政庁と同じであるという考え方ではいかぬのであって、一般職国家公務員がどうなろうともやはり裁判所裁判所でもって裁判官に対する必要な給与の引き上げというものは行っていかなければならないんだ、そうした場合に七月一日に実施をする、それは一般職がそうであるからということでそれに右へ倣えするような姿勢では全く主体性がないではないか、こういうふうに思うわけであります。  そのことは私の意見でありますからともかくといたしまして、次にお尋ねをしたいのは、今回の場合もいわゆる対応金額スライド方式、こういうことによっているというふうに思われますけれども、この対応金額スライド方式は今それぞれ対応があるわけで、例えば、言ってみれば判事の六号なら六号というものは一般職の中の指定職俸給表の三号だ、あるいはまた判事補なら判事補の何号が対応の一般職員の何級何号だ、こういうふうな対応があるわけでありますけれども、この対応というものはこのところずっと長い間変わってこなかったのかどうかということをお伺いしたいと思うのです。対応金額スライド方式は、私が前年お尋ねをしたところでは随分昔から裁判所としてはとってきておる方式なんだということを言っておりますけれども、その対応の仕方というものは一貫して同じであったのかどうか、そのことをちょっとお伺いしたいと思います。
  61. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 対応金額スライド方式はもうずっと昔からこの形での対応をいたしてきております。終戦直後のほんの短い期間、あるいは別の対応もあったかと思われます。ただ、それは一般職国家公務員給与制度もまた整備されていなかった時期であったはずでございまして、そのときは必ずしも十分な対応というものはなかったように思いますけれども、その後、制度が整備されるに従ってもうかなり早い時期から現在のような対応関係というのはできておりまして、そしてそれはずっと今まで維持されているものと考えております。
  62. 中村巖

    中村(巖)委員 今私が伺ったのは、対応する仕方というものが同じで変わっていないのかどうか、俸給表そのものが一般職の場合に途中で変更をしたのかどうかわかりませんけれども、今、特定の号俸裁判所号俸に対応するものは、一般職で言うならば指定職俸給表の何号とかあるいは一般俸給表の何級何号というもの、それに必ず対応してその組み合わせというものはずっと昔から変わっていないのかどうかということを伺っているわけです。
  63. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 先ほども申しましたように、終戦後の比較的短い期間、いろいろな対応の変遷はございました。これは一般職給与自体がいろいろと変遷したということもあったかと思います。また裁判官報酬の方も若干の変遷はあるいはあったかと思われますけれども、少なくとも現在のような対応関係はもう昭和三十年代以来できておりましてずっと動いてないものというふうに考えております。
  64. 中村巖

    中村(巖)委員 そこで、こういうような対応の仕方の中で裁判官検察官報酬俸給というものはでき上がっているわけでありますけれども、それについて、先ほどの私が主体性がないと申し上げたことと関連をするわけでありますけれども、裁判所自体としては、あるいは法務省としては、報酬俸給というものが一般職との対比の中でやむを得ないということを考えておるのか、これはやはり低過ぎてまだ引き上げを要するのではないかというふうに考えておるのかどうか、その辺のことをとりあえずお答えをいただきたいと思います。
  65. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 先ほども申しましたように、裁判官報酬をどのように決めるかというのは大変難しい問題ではございますが、現在の裁判官の任用制度を前提といたします限りは裁判官報酬は現在のような決め方が最も合理的であり、現実的に妥当なものであろうというふうに考えております。
  66. 中村巖

    中村(巖)委員 そういうふうに考えておられるということになりますと、裁判官の場合に、この報酬の引き上げ、つまり現在の対応そのものを捨ててしまって相対的に一般職よりももっと高くしようという努力はなさらぬ、こういうことですか。
  67. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 先ほど裁判官と行政官との報酬格差ということを申し上げましたが、大体判事補につきましては行政官との関係では一・二倍ないし一二二倍になっておりまして、判事になったころが裁判官報酬が最も高くなるわけですが、行政官との関係では一・七倍程度になります。そして、その後も行政官との関係では一・四倍ないし一・五倍の格差をずっと保っております。裁判官判事補から判事に至る報酬の額の動き、判事になったところでその責任の重大性から、比較的若くとも行政官との関係では非常に高い報酬を給して、そして判事になった後は刻みが割合少なくなりまして順次定年に至るまで昇給していくという形は現在の制度の上では最も妥当なものと考えておりますので、よりよくする努力をしないかという仰せでございますが、これより適当な形はちょっと考えられませんので、少なくとも現在の制度を前提とする限りはずっとこれを維持していきたいものと考えているわけであります。
  68. 中村巖

    中村(巖)委員 今ちょっと報酬の体系のことにもお触れになりましたけれども、判事補の場合には十二号から一号まで、判事の場合は八号から一号までという体系で、その中身がそれぞれ少しずつの刻みで上がっていっている。こういう給与の上昇カーブと申しますか、体系内での上昇カーブ、これについてどう考えておられるのか伺いたいと思うのです。判事補の場合に一部、上昇カーブが中間の部分で低過ぎるのではないか、中だるみというか、一般職の場合にもそういうことはあるのかもしれませんけれども、裁判官の場合にもそうではないかという考え方もあるようでありますけれども、その点はいかがでしょうか。
  69. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 判事補につきましては十年間で十二号を上がっていくわけであります。したがいまして、一年未満の短い期間で上がっていくわけでありますから、上昇のカーブが中だるみとかどうとかといった問題が生ずるほどの期間ではないのではないかと思っております。全体としての期間が十年で終わってしまいますので、そういったような意見は今までは聞いたことがないわけでございます。ただ、年々の報酬増額改定につきましては、年度によりましてある部分が余計上がり、ある部分が少なく上がるということはございますけれども、何年かの長い目で見た場合には大体従来の適正なカーブは維持されているものと考えております。
  70. 中村巖

    中村(巖)委員 次に、裁判官報酬はこの法律に定められているわけでありまして、判事補の場合、改正後は十二号で十七万三千三百円ということになるわけでありますけれども、判事補に限らず裁判官も含めてこれ以外に手当が給せられているようであります。手当としてはどういうものがございますでしょうか。
  71. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 裁判官報酬法の第九条で、手当につきましては判事一般職の中の指定職俸給表の適用を受ける職員の例に準じ、判事補につきましては一般の官吏の例に準じて支給するということになっております。ただ、この条文のただし書きの中で、報酬の特別調整額、超過勤務手当、休日給、夜勤手当、宿日直手当は支給しないというふうに定められております。  具体的に支給されておりますのは、判事につきましては調整手当、特地勤務手当、期末手当、寒冷地手当でございます。それから判事補につきましては、今の判事の手当のほかに初任給調整手当、扶養手当、通勤手当、住居手当、勤勉手当、寒冷地手当と、これだけのものがついております。
  72. 井嶋一友

    井嶋政府委員 検察官について御説明申し上げます。  検察官につきましても検察官俸給法の第一条にその規定があるわけでございますが、いわゆる特別職に対応いたします検察官検事総長次長検事及び検事長につきましては調整手当と期末手当が支給され、寒冷地に勤務する検事長につきましては寒冷地手当が支給されております。それから、一般職の中の指定職に対応いたしますグループにつきましては、検事及び上位の副検事でございますけれども、調整手当、特地勤務手当、期末手当及び寒冷地手当が支給されております。その他の一般職に対応いたします検事及び副検事につきましては、初任給調整手当、扶養手当、調整手当、住居手当、特地勤務手当、期末手当、勤勉手当が支給されます。なお、初任給調整手当はその中の全部ではございませんで、検事で申し上げますと十三号から二十号までの俸給を受ける検事のみつくということでございます。
  73. 中村巖

    中村(巖)委員 今お話がありました各種の手当があるわけでありますけれども、例えば寒冷地手当あるいは調整手当等々でありますが、そういう手当の決め方は、例えば寒冷地手当であるならば寒冷地に勤務する者は一律である、こういうことはないんだろうと思うのですけれども、どういうようなそれぞれの手当の決め方になっておりますでしようか。
  74. 井嶋一友

    井嶋政府委員 裁判官検察官も同様でございますが、一般の官吏の例によるということになっておるわけでございまして、手当の額、範囲、支給対象といったものはすべて一般職職員給与に関する法律及びそれを受けました人事院規則によって定められているものと同様の手当が支給されておるわけでございます。
  75. 中村巖

    中村(巖)委員 その中で調整手当というのはどういうものでしょうか。
  76. 井嶋一友

    井嶋政府委員 調整手当と申しますのは、通俗的に申しますと勤務地手当というようなことでございまして、物価、賃金事情といったものの高い地域あるいはそういった地域に準じる地区、地方にある官署などが一般職職員給与に関する法律によりまして甲地、乙地に分けられまして、それぞれ算定基礎額の一定率を掛けた額が支給されるということになっておるわけでございます。  裁判官検察官につきましても、そういった意味で物価事情あるいは生計事情その他もろもろの要素から、人事院規則等で定められております地域に勤務する者は一律に甲地、乙地、甲地につきましては百分の六と百分の十という率の違いはございますけれども、それぞれ定められましたとおりに加算されておるというのが調整手当の中身でございます。     〔委員長退席、高村委員長代理着席〕
  77. 中村巖

    中村(巖)委員 それから、今検察官について御説明がありましたけれども、裁判所も同様に初任給調整手当、こういうようなものが給せられているようですが、初任給調整手当というものはなぜつくられているのか、その内容としてはどういうような金額になっているのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  78. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 裁判官初任給調整手当は昭和四十六年四月からできた制度でございますが、当時の裁判官の志望者、判事補の志望者が必ずしも十分ではなかったということがありまして、その原因の一つとして、弁護士との間の収入の格差の問題があるのではないかと考えられたことから初任給調整手当を支給するような制度をつくったわけでございます。具体的には最高額が二万三千円でございます。これが初任の判事補に支給されまして、その後、判事補報酬昇給していくに従いまして漸次低減していく、このような制度になっております。
  79. 中村巖

    中村(巖)委員 今の点ですが、それは二万三千円から始まって結局との段階まで、号俸で言えば何号俸かのところまで支給される、こういうことになるのだろうと思いますけれども、最終的に何号俸のところまで、そしてその最終の場合の金額はどのくらいなのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  80. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 判事補初任給調整手当は、判事補の十二号から五号の報酬を受ける者に支給することになっております。五号の報酬を受ける者が初任給調整手当の中の最低額三千円を受けるわけでございます。二万三千円という最高額から漸次低減いたしまして三千円になるわけでございます。五号の報酬を受ける時期と申しますと、大体判事補の六年目ぐらいでございます。
  81. 中村巖

    中村(巖)委員 検察官の方の初任給調整手当というものも大体同じような趣旨のものでございますか。
  82. 井嶋一友

    井嶋政府委員 全く同様の趣旨で、要するに採用難ということを解消するための制度として四十六年に設けられたものでございます。なお、詳細につきましては資料の六十ページに初任給調整手当についての細かい額が書いてございますので御参考にしていただきたいと思います。検事の場合は、検事十三号が最終でございます。二十号から十二号までつきます。
  83. 中村巖

    中村(巖)委員 それから住宅の関係ですが、住居手当というものが支給されるということでありますけれども、これと官舎への入居との関係はどういうことになりますか。
  84. 井嶋一友

    井嶋政府委員 裁判官検察官に対しまして、先ほど御説明申し上げましたように判事補一号、簡易裁判所判事五号以下、あるいは検事九号以下、副検事二号以下にそれぞれ住居手当がつくわけでございますが、住居手当は一般の官吏に支給される例と同額でございます。  ただ住居手当と申しますのは、要するに高額な家賃との差額を補てんするというような趣旨があるわけでございまして、官舎に入っておる者につきましては住居手当は支給されておりません。
  85. 中村巖

    中村(巖)委員 官舎というものが設けられていて、裁判官の場合も検察官の場合も非常に転勤が多いということで、なかなか新規に住居を手当てすることは難しい、したがって、裁判所なり法務省で裁判官検察官の宿舎というかそういうものを設けなければならないのだろうと思いますけれども、現在官舎というものは十分にあるのかどうかということと、官舎に居住している人と一般の住宅に居住している人のそれぞれの率というのはどういうことになっているのか、教えていただきたい。
  86. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 裁判官の場合各地へ異動いたしますので、官舎の整備というものが大変重要な問題になっております。昔は官舎が非常に足りないというような時期もあったようでございますけれども、現在は入居を希望する者は大体全員が官舎に入れるように官舎の数の整備は行われております。裁判官の中の約四分の一が自宅を持つとか、これがほとんどでございまして、その他いろんな事情から民間の住宅に居住しているという者がありますけれども、残りの四分の三は官舎に入っているということになっております。
  87. 中村巖

    中村(巖)委員 今いろいろ手当のことを伺いましたが、例えば初任給調整手当というのは裁判所の場合に最高裁判所規則で決められているようでありますけれども、こういうような諸手当というものは、言ってみれば官舎を貸し付けるということも含めてこれが裁判官のいわば報酬になるのかどうかということですね。憲法上、下級裁判所裁判官相当額報酬を受けるということがあるわけでありますけれども、こういうものを含めたものが憲法上のいわゆる裁判官報酬、こういうことになるのかどうか、その辺はいかがでしょうか。
  88. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 裁判官に支給されるいろんな手当は、それぞれ生活上の便宜とか地域の特殊な状況に応じた配慮から設けられているものでありまして、裁判官の職務に対応する報酬憲法で言うところの「相当額報酬」というのは、この裁判官報酬法の別表に定められた報酬額であるというふうに解されております。
  89. 中村巖

    中村(巖)委員 最近新聞紙上なんかで見ますると、判事補の任官者が非常に少ないということの一つの理由として、やはり判事補の待遇がよくないんではないか、こういうことがございまして、その待遇がよくないという主たる問題としては、弁護士になって弁護士事務所に入って、弁護士事務所は相対で給料が決められるわけですので、その給料との間に差があるんじゃないか、こういうようなことが言われているわけですけれども、実際に報酬が少ない、そういう意味で待遇がよくないというふうにお考えになられておるのかどうかということが一点と、それからその差額の調整というか、そういうものを最高裁判所あるいは法務省は初任給調整手当で調整を図ろうというようなお考えがあるやに報ぜられているわけでありますけれども、なぜこの報酬を上げるということで考えないで初任給調整手当ということで考えるのか、この点をお伺いをいたしたいと思います。
  90. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 判事補の任官希望者がここ数年漸減傾向をたどってきたというのは御指摘のとおりでございます。これがどういう原因から来ているのかというのはなかなか難しい問題でございまして、一般に考えられますのは、例えば裁判官の場合はいろいろな任地へ行かなければならない、そういった点が最近の就職する若い人たちにしてみると魅力のない大きな理由であるというようなことも言われますし、それからまた裁判官の仕事の内容自体も必ずしも今の若い人たちの考え方に合わないようなところもあるというようなことも言われております。したがって、報酬額が直ちに任官希望者の減少ということに結びつくわけのものでは必ずしもないのではないかというふうにも考えられるのですが、しかし、それにしても報酬といったものも若い人たちが自分の進路を決める際の一つファクターになっていることは、これは間違いないわけでありますので、そういった意味でこの点を考えなければならないのではないかというふうに思っているわけでございます。  ただ、裁判官報酬自体ということで考えますと、これは先ほど来申しておりますように、その判事補報酬というものとそれからその他の一般政府職員との報酬の今までの格差というものをそんなに極端に変えてしまうということは問題ではなかろうかというふうに思いますので、そういう意味で報酬額としては現在の程度で適当であろう。ただ弁護士報酬との格差というものはこれは無視できないものがございますので、その点をある程度埋める力とによって任官者の確保ということを考えていくのが適当であろうというふうに考えたわけでございます。
  91. 中村巖

    中村(巖)委員 何か今裁判所の方の御回答も、私からすれば大変矛盾があるように思われる。報酬はこれで十分だけれどもやはり待遇はよくしなくてはならぬ、何か非常におかしな話であります。憲法からいっても「相当額報酬を受ける。」ということがあるわけですから、憲法上に保障をされるような報酬、それは初任給調整手当を含まないのだとすれば、そういうものを増額をさせるということが本則であって、そういうことをしないで初任給調整手当で何とか人材の確保をしようというのは、これはおかしな話だというふうに思うわけでございます。  しかし、その辺は意見にわたりますので、最後に、この初任給調整手当でも結構ですけれども、その増額に関して裁判所あるいは法務省としては何か対策を考えておられるのか、具体的に今その増額実施に向けて大蔵省等との折衝があるのかどうか、その状況はどうなのか、それを伺って終わりにしたいと思います。
  92. 井嶋一友

    井嶋政府委員 お答えいたします。  初任給調整手当につきましては、四十六年に先ほど申し上げましだように初めてつきまして、以来今日まで額の改定は行われておりません。その間、弁護士収入との格差といったものの調査なども行ってまいっておりますけれども、それなりの任官者も確保できだというような事情もあり、増額要求というものが今まで行われてこなかったわけでございますが、最近日弁連の協力を得まして調査をいたしました結果によりますと、いわゆるいそ弁と申しますか、修習生を終えまして弁護士事務所に雇用された新進弁護士の平均の月額というのが約三十万、正確に申し上げますと二十九万六千円前後だということが調査の結果わかっておるわけでございます。そういたしますと、現行の初任判事補あるいは初任検事との格差を考えますと、現行で申し上げますと約十万円になります。今回改定される案で考えますと約八万円台の格差ということになるわけでございます。そういったところで、今回裁判所と法務省は、初任給調整手当の増額を図りこの格差を解消すべきであるという観点から、大蔵当局に対しまして増額要求をいたしておるわけでございます。具体的に申し上げますと、一番初任の二万三千円の手当額につきましては七万二千四百円に改定するということを要求しておるわけでございます。現在財政当局と鋭意折衝中でございますが、いずれ予算内示の時期におきまして何らかの査定があるというふうに考えておりますけれども、この格差をできるだけ埋めるという観点から我々もさらに努力を続けていきたいというふうに思っておるわけでございます。  なお、先ほど申し上げました弁護士との収入格差と要求額との間に若干開きがあるじゃないかという御指摘もあろうかと思いますけれども、これは先ほどもお話が出ましたように、裁判官検察官につきましてはある程度官舎が充足しておるという事情がある。他方、弁護士につきましては住宅事情が必ずしもよくないというようなこともあって、実質的にはこの程度増額要求で格差が解消されるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  93. 中村巖

    中村(巖)委員 終わります。
  94. 高村正彦

    ○高村委員長代理 三浦隆君。
  95. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 大臣にお尋ねいたします。  先ほど、裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案の提案理由の御説明をいただいたのですが、もう少し詳しく御説明をいただけないものでしょうか。
  96. 嶋崎均

    嶋崎国務大臣 どの程度が詳しいのかなかなか。難しいところでございますけれども、御承知のように今、国の財政事情というのは非常に厳しい状態にあるわけでございます。そういうときに政府の部内におきましてもいろんな論議を重ね、またいろんな方面の意見等も聴取した結果、当初、現在のような財政事情でございますから三年ぐらいこの格差を埋めるための努力を積み重ねなければ解決ができないのではないかというようなことが言われておったわけでございますけれども、現在の公務員の生活の事情等々を考え、また公務に対して精励をしていただく公務員の皆さん方の気持ちというものを察して、やはりできるだけ人事院勧告どおり実現をするということが望ましいのではないかというようなことがいろいろ論議をされた結果、六十年度も、財政は非常に厳しい折ではありますけれども、何とか満額に近い形を実現をいたしたい。また、そのことに伴って六十一年度は平年度化するわけでございますが、人事院勧告の性格というものから考えまして、本年度のものを満額に入れておくということにつきましては、来年度以後その処理というようなことについても十分対応できる可能性を持っておるだろう、そういう判断の中で満額実施というような考え方をとったわけでございます。  ただ、そういう中で、本年度の財政事情から見ますと、その格差だけの議論をすると、実施の時期を遅い時期にするという議論もあったのかもしれませんけれども、せっかくこういう話の処理をするときですから、できるだけ努力の結果があらわれるようにというような考え方の中で七月一日に実施をするという判断を決めたわけでございます。そういうような考え方で一般職あるいは特別職給与改定が行われるわけでございます。それに対応しまして、裁判官あるいは検察官報酬または俸給につきましても、これに準じた考え方でスライド方式によって引き上げようという判断でこの提案をしておるというのが実情でございます。
  97. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 この法案が仮に通ったとしましても、必ずしも裁判官検察官の皆さんに十分とは思えないわけですが、さらにもっと御苦労されているのが刑務職員として働いている皆さんだろう、こういうふうに思います。  そこで、矯正局長にお尋ねしたいのですが、刑務職員の最近における勤務状況はどのようなことになっておりますか、お尋ねしたいと思います。
  98. 石山陽

    ○石山(陽)政府委員 刑務職員につきましては、最近被収容者の数が非常にふえてまいりました。それから、それと同時に被収容者のいわゆる質でございますが、それの悪化という現象が目立ってきております。すなわち暴力団あるいは覚せい剤事犯者あるいは処遇に非常に気をつけなきゃならない中高年齢層、こういった種類の収容者がふえてきておりまして、このために刑務職員といたしましては処遇上最大限の注意を払い、きめ細かな配慮をしながら実際の仕事をしているのが現状でございます。そのため、職員の勤務条件は以前に比較しましてだんだんと厳しくなってきておるというのが現状でございます。
  99. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 今のお答えを聞いておりましても、なかなか刑務職員という皆さんも大変なことだろうというふうに思いますが、果たして今の人数だけで仕事が十分に済ませられるものかどうか。今は行革の時代ではありますが、減らすべきところは減らし、ふやすべきところはふやしていかなければいかぬのじゃないかというふうに考えたときに、むしろ刑務職員の場合には早急にもっと増員すべきものじゃないかというふうに考えますが、この点大臣いかがでしょうか。
  100. 嶋崎均

    嶋崎国務大臣 御指摘のように、刑務職員の仕事というのは、ある意味で非常に世間から離れな仕事というか隔絶した仕事に従事をしておるわけでございまして、その仕事の内容について一般の人から評価をされることがなかなかできにくい職種であるというふうに私たちは思っておるわけでございます。そんなことを考えますと、その充実につきましては、法務省は法務省なりに真剣な努力を積み重ねていかなければならない性格のところであるというふうに思っておるわけでございます。したがいまして、諸事万端非常に窮屈な予算の中でございますが、そういう点に配慮をしながら今後も努力をしていかなければならぬと思うのでございます。私たちもいろいろな意味で、そういう社会でございますから、人員の増加はもちろんのこと、その待遇等につきましても、いろいろな手当等について十分検討をしていかなければならないのではないかというようなつもりを持っておるわけです。     〔高村委員長代理退席、委員長着席〕
  101. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 この刑務職員の仕事というのは日の当たらない場面の仕事で、しかもなかなか大変な役割を担っていると思います。待遇改善はもとよりのこと、ひとつ人員の増加に向けて一段と御努力をお願いしたいというふうに思います。  それから、山口総務局長の方にお尋ねしたいのですが、実はいただきましたこの法案の「参考資料」のところなんですが、そのところに「調整手当」とか「特別手当」というふうな名目のところがございます。これによりますと、最高裁長官の調整手当が現行十四万六千八百八十円から十七万二千五百円にアップ、特別手当月額が現行六十九万二千五百十二円から七十三万七千四百三十七円へと上がるというふうに書かれております。額はともかくとしまして、その他の裁判官及び検察官にも同様の名目によります支給がなされているわけですが、調整手当及び特別手当月額というのはいつごろから、どのような理由に基づいて行われるようになったのか、その点お尋ねしたいと思います。
  102. 井嶋一友

    井嶋政府委員 私の方からお答えいたします。  お手元に配付いたしております資料に調整手当及び特別手当月額につきまして詳細に書いてございますけれども、先ほど御質問ございましたが、調整手当と申しますのは俗な言葉で申し上げますと勤務地手当ということでございまして、民間における賃金とか物価とか生計費の高い地域に在勤する職員に支給されるものでございまして、これは一般職職員給与法に基づきまして支給されておりまして、この例に準じまして、裁判官検察官につきましてもそれぞれ勤務地が甲地か乙地かということによりまして一定の割合の手当が支給されておるというものでございます。  それから、特別手当額というのは、あるいはこういう書き方をいたしましたために誤解を招いたかもしれませんけれども、これは実はいわゆるボーナスのことでございまして、上位の等級の者につきましては期末手当、下位の者につきましては期末及び勤勉手当の年額を月割りにした額がここに記載されておるわけでございます。  この調整手当及びボーナスにつきまして、いつごろから始まったかというお尋ねでございますが、必ずしも詳細に正確に承知をいたしておりませんけれども、これはもう公務員の給与法が戦後施行されましてから、相当古い時期からこういった手当が支給されておるというふうに思われます。裁判官検察官につきましてはそういった一般官吏の例に準じましてその当時から支給されておるものでございます。
  103. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 次に、簡易裁判制度に関連してちょっとお尋ねをしたいと思います。  最近日弁連が行いました「暮らしと法律相談」全国世論調査を見ますと、国民の多くが専門の法律知識を必要とする問題を身近に抱えながら、弁護士を利用して解決を図らない、そして裁判も敬遠する傾向が強いというふうに示されております。ここに日本人の法意識が浮き彫りにされているというのかもしれません。  そこで、弁護士問題につきましてはまたいずれの機会がに一括してお尋ねするといたしまして、裁判のあり方そのものについて二、三お尋ねをしたい、こう考えます。  日弁連の調査によりますと、「裁判に対する国民の意識をみると、調査対象者の五〇%以上は裁判は公平で信頼できるとみているが、その一方で「社会の実情を理解してもらえない時がある」(四四・五%)「本人の言い分を聞いてもらう機会が少ない」(三一・四%)など」なかなかの高いパーセンテージの批判が出ているわけでして、しかも「実際に訴訟にかかわった人ほど裁判への不満は根強い。」というふうに言われております。  憲法三十二条では「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」というふうに規定はしてありますけれども、しかし国民と裁判所との距離が遠くなったとしますと、憲法が国民に裁判を受ける権利を保障したことの意味が乏しくなって極めて残念なことだと思うわけです。法務省としてこの調査結果をどう受けとめておりますか、お尋ねをしたいと思います。
  104. 井嶋一友

    井嶋政府委員 御指摘の日弁連の世論調査につきましては、現在のところ私どもは新聞の報道以上には承知しておらないのでございまして、いずれ詳細な報告書ができ上がると承っておりますので、全体的な感想と申しますのはその際に述べさせていただきたいと考えておるわけでございます。  しかし、一般論として申し上げますならば、社会に発生するいろいろな紛争につきましてすべて司法制度による解決が図られるべきであるということはあるいは言えないかもしれませんけれども、仮に、本来裁判所において解決されるべき事柄あるいは弁護士の活動によって適正な法的解決が図られるべき事柄等につきまして司法制度全体の対応が不十分であるというようなことがあるとすれば問題であろうと思うわけでございまして、国民に対しまして社会の実情に合った利用しやすいいわゆる適正な法律サービスを保障するというような観点から、裁判制度、訴訟制度あるいは弁護士制度といった司法制度全体のあり方につきましては、私どもも不断に研究、検討をしていく必要があると考えております。
  105. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 日本人の場合は昔から和をもってとうとしとなすというふうな考え方が伝統的にありまして、事を荒立てたくないとかいうことが諸外国とはまた違った面を示しているのだとも考えます。しかし、それにしましてもこの日弁連の調査の結果というのは、日弁連でなくても一般的に日常そうかなと我々も考えているわけです。そこで今の御答弁にもありましたように、裁判所側としても国民に親しまれる裁判制度であるように日常一生懸命御努力されているのだろうと考えるところです。  さて、同じ調査の中でも特に簡易裁判の制度について触れているところがありまして、この調査では簡易裁判制度の必要性については、「ぜひ作るべきだ」という見解が六三・二%、大変高いということです。一方で、先ほど来の「よほどのことがない限り裁判はしたくない」と思っている人が八八・三%だというわけです。裁判はできるだけしたくない、だけれどもするなら簡易裁判制度が一番身近だというふうに答えているわけです。  そこで、現在この簡易裁判所の実情というのはどうなっているか、改めてお尋ねしたいと思います。
  106. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 御指摘の日弁連の調査結果につきましては、私どもも新聞によりまして内容の一片を承知しているだけでございますので、これについての詳細な論評は差し控えたいと思います。  まず、簡裁の現状について申し上げますと、現在我が国の簡易裁判所は少額軽微な事件を迅速適正に、地裁に比較しますと比較的簡易な手続で処理するという性格を有しているわけでございます。そのため民事訴訟法上におきましても、簡易裁判所につきましては、例えば口頭の申し立てを受けるとか準備書面は不要とするとか、幾つかの特則を設けでございます。しかしながら、訴訟手続は基本的には地裁と同じ構造をとっておりますので、書証でありますとか検証でありますとか証人尋問でありますとか、いずれも厳格な手続で行わなければならないという形になっておりまして、簡易裁判所における訴訟手続も慎重かつ適正なものというふうになっているわけでございます。  ただ、簡易裁判所におきましては、金銭等の債権につきましては当事者に争いのない限り一方当事者の申し立てによりまして債務名義を与えるという督促手続制度がございますし、非公開で非定型的な形で事実関係を把握した上で当事者の双方の互譲を求めながら紛争の解決を図る調停制度というものがございます。これを簡裁がほとんど専属的に管轄するような形になっておりますので、そういう意味で国民に親しみやすい裁判所という性格を兼ね備えていると言えようかと思います。  調停事件につきましては、例えば昭和四十年代においては四万六千件くらいでありましたのが昭和五十九年になりますと十五万五千件くらいというふうにふえてまいっておりますし、督促事件につきましても、二十万件くらいであったものが約六十八万件というふうにふえてまいっておりまして、いずれも簡易迅速な裁判の実現が図られているということが言えようかと思います。  これが簡易裁判所の現状でございます。
  107. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 今、簡易裁判所は全国に何カ所あるのですか。
  108. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 簡易裁判所は、現在全国で五百七十五設置されております。
  109. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 そうした数の多さということも、それは多いだけいろいろな地方にたくさんあるということで国民に親しまれているのではないかなと思うのですが、特に簡易裁判所がほかの裁判所に比べて親しまれる理由はもう一点とこにあるのでしよう。
  110. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 先ほども御説明申し上げましたように、簡易裁判所の訴訟手続は基本的には地裁と大体同様でございまして、口頭受理等の制度が設けられておりますからそういう意味では国民に親しみやすい面がありますけれども、それよりも調停を主として担当しておるというところに国民に親しみやすい簡易裁判所の性格があろうかと思っております。
  111. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 判決というよりもその調停の方に重点が移っているという御説明ですが、一般裁判所に訴えるとなると、特別な弁護士を立てなければだめだとか訴えに行くのに敷居が高い感じがあるのだろうと思います。  そこで、簡易裁判所のような場合には本当の素人が気楽に簡易裁判所の門をたたけるように、もうだれもというか、専門的な人がいなくても簡易裁判所の窓口へ行けば訴えのやり方を教えていただけるようなわかりやすさあるいは親切さというものがあれば、よりより親しまれていくのではないかなと思います。もう一つにも、簡易裁判制度があるという事実をまだまだ知らない一般の人も多いかと思いますので、広報活動もより進めていただいたらなおいいのではないかなと考えます。そしてその次は、簡易裁判所はもっとふやして充実した方がよいのではないかと私は思うのですが、これについて法務省はどうお考えでしようか。
  112. 井嶋一友

    井嶋政府委員 あるいは裁判所の方から直接お答えいただくべきことかと思いますけれども、現在の簡易裁判所配置昭和二十二年に定められておりまして、それから今日まで約四十年経過しております。その間に人口分布とか交通事情等社会事情に著しい変化が生じておりまして、その結果、大都市の簡裁について言いますれば著しく事件が増加している、他方、小規模の簡裁においては事件が著しく減少しているところも少なくないというようなことが起こっているわけでございます。その結果、裁判官一般職員配置あるいは庁舎の維持管理といったような点に現在多くの問題が出てきているというふうに承っておるわけでございます。したがいまして、委員御指摘のような簡裁の充実を図るためには、まず今日のこの社会の実情に合わせた簡易裁判所配置のあり方を見直すべきではないかという議論が現在起こっているわけでございまして、その見直しをいたしますことによりまして、限られた人員的、物的な資源を有効に活用する、そして今後の裁判所の機能の充実強化を図るという手法でございます。  そういったことで、簡易裁判所の適正配置のあり方ということにつきまして、裁判所の御提案によりまして現在法曹三者協議会におきまして協議を継続しておるというのが現状でございます。
  113. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 予算的な制約その他があってなかなか大変なことであろうと思います。とすればなおのこと、限られた簡易裁判所でございますから、今言ったどこそこにあったらよいのだろうかといった適正配置を踏まえて十分に御検討いただきたいと思います。またそのせっかくの数が本当に有効に皆さんから活用されるように、先ほど来のPR活動もぜひともより進めていただければと思います。  次に、裁判官の法意識について二、三お尋ねをしたいと思います。  憲法第七十六条三項に、「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。」こう書いてございますが、この場合の「良心」というのは通常の良心とどこがどう違うのでしょうか、同じなのでしょうか、お尋ねしたいと思います。
  114. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 憲法の解釈に関する事柄でございますので、裁判所の方からお答えするのが適切とは思いませんけれども、せっかくのお尋ねでございますので、一般的に言われているところを御紹介申し上げますと、今御指摘の「良心」と申しますのは、裁判官個人の主観的な宗教上、倫理上あるいは政治上の意見や信念を意味するものではなくて、裁判官として法を解釈するに当たって、そういう主観的な信念ないし意見から離れて客観的な法の意味を公正に理解するように努める、そういう趣旨で「良心に従ひ」というように憲法に表現しているのだ、こういうふうに考えられているようでございます。  最高裁判所の判例によりましても、憲法七十六条三項の裁判官が良心に従うというのは、裁判官が有形無形の圧力ないし誘惑に屈しないで自己内心の良識と道徳観に従うという意味であるというふうに申しておりますが、これも同趣旨であろうかと思っております。
  115. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 「陪審裁判を考える会」というのがあるようですが、「陪審裁判を考える会」というところで、陪審制度に関するアンケートをとられたようです。その中に、陪審制度をよしとする賛成意見の第一は「裁判官が権力寄り」だから、第二に「市民の司法参加が必要」だから、第三に「市民的常識に判断を任せるべきだ」から、こうしたことがパーセンテージとして大きく掲げられているようです。  そこで初めにお尋ねしたいのは、裁判官はなぜ権力寄りと見られるのか。もし見られているとしたら、どのようにしてそういうふうな見方が誤っているというふうに言うのでしょうか、この見方を変えていこうとするのか。そうしたことをお尋ねしてよろしいでしょうか。
  116. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘のアンケートにつきましても、私どもといたしましては新聞報道の範囲でしか知り得ないわけでございます。新聞報道によりますと、このアンケートの対象者と申しますものが「陪審裁判を考える会」の会員の知人の方々を中心に配付した、こういうふうに報じられておりますので、その報道が真実であるといたしますと、そのアンケートの結果と申しますものが裁判あるいは裁判官に対する国民の全体的な評価を代表するというふうに言えるかどうか、甚だ疑問に思っているところでございます。  私どもといたしましては、裁判官の使命は常に中立公正の立場で適正迅速な裁判をするという点にあると考えておりまして、そのために一方では種々の制度的保障もあるわけでございます。また他方、研修、研さんを常に行っておりまして、裁判官が権力寄りであるとかそういうことのないように、常に適正迅速に判断をするように努力しているところでございまして、国民一般からそのように裁判官が権力寄りであるというような評価を受けているとは考えていないわけでございます。
  117. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 もとより答弁のようであってほしいと思うのですが、私は別にこれは裁判所批判だとは思っておらないのです。むしろ国民が権利救済として最後に裁判所に大変大きな期待をかけている。その大きな期待をかけている裁判所というかあるいは司法権というものが、行政権力や立法権力の前に弱いのでは困る。もっと何か裁判所は強くあってほしい。裏返しの願望なんだ、言ってみれば。別に悪い結果とも思えないわけでして、三権分立制度というのは日本の根幹をなすものですから、この対象者、特定の対象者といいますが、別に特定に限らないで一般の人に対しましても司法権としての毅然とした姿勢を持って頑張っていただきたいというふうに思うのですね。主観を離れて裁判官としての客観的な立場から裁判を行っているというふうな御答弁でございますけれども、それが結果的に国民の多くからそう見られるようになると司法の地位がだんだん沈下するのじゃないだろうか。権力の抑制と均衡という実体が失われていくというふうになると困るなという気持ちを込めてあるんだと受けとめていただいて、ひとつ司法として頑張っていただきたいと思います。  二番目に「市民の司法参加が必要」だというのですが、なぜプロの裁判官の行う裁判にアマチュアが参加した方がいいんだという意見が出てくるのでしょうか。その点についてお尋ねしたいと思います。
  118. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 非常に難しい司法制度上の問題であろうかと思いますが、現在の我が国の司法制度によりますと職業的裁判官による裁判ということでございます。職業的裁判官による裁判でありましても専門的な法知識と同様に健全な社会的常識が裁判の基本でありまして、裁判官は平素から健全な社会常識を涵養するように常に努めているわけでございます。ただ、市民の司法参加あるいは陪審制を御主張になる方々は、そういう職業的裁判官による裁判であっては十分市民の感情と申しますか、物の見方と申しますか、それが必ずしも反映されないのではないか、そういう観点から司法の市民参加あるいは陪審制の採用というものを御主張になっているのではないかというように理解しております。
  119. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 この指摘はなかなか大きな問題だろうと思います。日本ではいわゆる裁判というのはプロでなければできないという感覚ですが、陪審制をとる諸外国の中ではむしろ裁判はプロではなくてアマチュアの方がいいくらいだという意見も根底に根強いというふうに思います。だから我が国でも陪審制というのを採用したことがあるし、現在停止中といえども依然としてその法律を残しているわけであります。本当にプロがよくてアマチュアのそういう陪審制というものが必要でないものならば、法律そのものも根底的になくしてしまった方がいいだろう。なくし切れないで、あるという一点に、やはりプロだけでなくアマチュアの裁判参加というかそうしたものをどこか心の片隅に必要とする何かがあるんだろう、こう思うのです。  とすると、その一つの要因は、またいずれかの機会にお尋ねしたいのですが、司法試験制度そのものの中にまさにプロの裁判官としてプロの法律を極めて重視した試験制度をとっていますけれども、一般的な常識というか教養といいますか、そういうものはほとんど顧みられていない。むしろ資格を取ってから一生懸命勉強して一般の常識に近づこうとするということでありまして、最初にはそれが問われていないというふうなことで、市民と感覚的に離れてしまう。だからその点でむしろ市民が参加した方がいいというふうになるとするならば、これは考えていただかなければいけない問題があると思います。  そこで、もう時間でございますけれども、裁判官の常識と市民的常識というものがそこで食い違いが起こるということは余り好ましくないのだと思うのです。同じ人間ですし、同じ日本国民でございます。そしていろんなトラブルが起こって解決するときに、市民の感じている正義感、裁判官の感じている正義感が食い違ったのでは、これはえらいことになってしまうだろうと思うのです。そこで、裁判官がその良心に従って下した判決というものが市民の常識と食い違わないように、食い違うとすればそれはどういうときにおいて特に食い違いを生じてくるものなのか、あるいはそれをどうしたら是正していくことができるものなのか、これをお尋ねして質問を終わりたいと思います。
  120. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 先ほども御説明申し上げましたように、裁判官は専門的法知識と健全な社会的常識とを裁判の基本とすべく努力しておるわけでございまして、平素から健全な社会常識の涵養に努めているわけでございます。そういう点からいたしますと、私どもは裁判官に必要とされる健全な社会常識が市民的常識と異なるものだというようには考えていないわけでございまして、今御指摘のアンケートで指摘されているところも、新聞で見ましただけでは全体を理解しているわけではございませんが、必ずしも裁判官の常識と市民的常識が食い違っていることを指摘しているようには受けとめていないわけでございます。私どもといたしましては現在両者が食い違っているとは考えておりませんけれども、あえて両者の差があり得るといたしますと、裁判官の場合は裸の常識によって裁判するわけではございませんで、常に法律的な観点から判断するという点で多少市民的常識とそごする場面もあるいはあり得るかもしれません。しかしそれは、裁判官が良心に従って憲法法律に拘束されて法律適用して判断しなければならないという裁判の性格から来る若干の乖離というものがあるいはあり得るかもしれない、こういうふうに考えているわけでございます。
  121. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 たしか昔読みました徳川実紀の第一巻にあったと思うのですが、徳川家康に対してそのときの奉行が、裁判とはどのようにして行ったらよいものでしょうかと言ったことに答えて、家康が、それは条理に従って裁くべきであるというふうに答えているのですが、ではその条理とはどのようなことですかと言ったときに、君臣の争いは君主を勝たすべし、親子の争いは親を勝たすべし、それが条理だというふうに言っているのがあるのです。今現在はもちろん違うと思いますが、このアンケートの要旨は若干そういうニュアンスを持っているのだろうと思うのです。国民と国家とがもし争うような場合に、常に裁判所は国家の側にというかいわゆる権力の側につくのではないだろうか。ですから、先ほど言ったように裏返しで、そうならないように、公平に国民の側にも立ってほしい、裁判官の常識というか良識もぜひそうあってほしい、私はそういう願いがこもっているのだというふうに解しております。  時間ですので、質問を終わりにしたいと思います。
  122. 片岡清一

    片岡委員長 柴田睦夫君。
  123. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 同僚委員からそれぞれ質問がありましたけれども、給与に関連いたしまして基本的な問題として最高裁に伺っておきたいのは、最高裁給与に関する人事院勧告をどのように受けとめていらっしゃるのか。民間の労働者の給与水準、物価上昇、いろいろな事情から、公務員としてふさわしいいわば最低限の給与保障の水準というように考えるのが常識だろうと思いますけれども、この基本的な見解をまず最高裁に伺っておきます。
  124. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 本年度の人事院勧告は、人事院の方で民間給与についてその調査の機能を十分に発揮して調査をされた、その結果に基づいて出された勧告でありますので、それは現在の民間賃金労働者及び国家公務員給与の較差を埋めるべきものとして出されたものとして適正なものと受けとめるべきものと考えております。
  125. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 先ほども出ておりましたけれども、憲法第八十条の問題。裁判官については特に憲法八十条の関係で「すべて定期に相当額報酬を受ける。」そして「在任中、これを減額することができない。」とわざわざ書いてある。こういうことから考えてみました場合に、人事院勧告の線を最低限下回らない、そういう報酬を確保する、これもやはり憲法趣旨であるというように考えております。四月一日実施の勧告にもかかわらず七月一日実施とする法案、これは私もやはり一般公務員がそうだからこれに裁判所が唯々諾々として従っているというように思いますし、司法の分野、司法府としては安易な態度だと思います。こういう点から考えてみまして、司法の方から立法府あるいは行政府に対して物を申したい点があったら言ってください、
  126. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 御指摘のとおり、裁判官報酬につきましては憲法第八十条で相当額報酬を受ける旨が定められております。ただ問題は何が相当額報酬であるかということでございますが、この点につきましては既に申し上げましたように、裁判官の職務を行っていくにふさわしい、その地位を保障するに足る十分な報酬額ということであろうと思います。しかし、この相当額といいますのも、やはり裁判官国家公務員であるということ、そして現在のような裁判官の任用制度をとっているということ、そういったさまざまな事情の中で考えなければならないわけでありまして、私たちとしましては裁判官報酬額国家公務員全体の報酬額の中で適正な地位を占めるということがその相当額報酬となるゆえんであろうというふうに考えているわけであります。  したがいまして、今回の人事院勧告実施は七月一日となりましたが、国家公務員全体の給与の改定というものがそういったことになります場合には、その中での裁判官報酬の相当性というものを考えていかなければならないものと思っております。やはり今までの裁判官報酬額と行政官の報酬額との格差というものが保たれて、そして裁判官報酬というものが今までと同様に全国家公務員報酬の中で適正な地位を占めているということであります場合に、その実施時期が七月一日以降ということになりましてもやはり相当額報酬は保たれたものというふうに理解すべきものと考えております。
  127. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 裁判官については一般公務員よりも高い報酬を支給する、これは常識であるわけですが、今の人事院勧告の問題を考えてみましても、この数年間政府が勧告を無視した態度をとる、間違ったこの態度に対して、司法の方でもこれに従っている、司法権独立という考え方が薄れているというふうに見ざるを得ないわけで、こういうことにつきましても、裁判官の待遇問題、裁判所等の独立という点からやはりもっとしっかりしてもらいたいというふうに思います。  ところで、報酬俸給増額の割合を見ますと、判事あるいは検事八号以上の増加率が五・六から五・八%、これに対して判事補あるいは検事九号以下は五・三ないし五・五%となっておりまして、上厚下薄の給与体系を一層進めるものになっておって、私どもは、この上厚下薄をなくさなくちゃならないということを絶えず言ってきた者として、今度の改正案は納得できないものがあるわけです。財政事情だとかあるいは一般政府職員との並び、こういうものを理由とされているかもしれませんけれども、こういうことがあってもやはり納得できないわけです。上厚下薄、この体系を改めるようにすべきだと思いますけれども、どう考えますか。
  128. 井嶋一友

    井嶋政府委員 ただいま御指摘のように、お手元の資料の改定対比表によりますと、指定職以上に対応しております判事検事八号以上が五・六ないし五・八となっているわけでございまして、その下が五・三ないし五・五ということになっておるわけでございますが、御案内のように判事八号、検事八号以上は手当額は極めて限定されておりまして、アップに見合う手当がないわけでございます。他方、一般、それ以下のところにつきましては、今回勧告に基づきまして手当額がそれなりに増額をされるわけでございまして、手当額を主にいたしまして平均いたしますと人事院の勧告どおり平均五・七四%になるということでございまして、この表はあくまで本俸のアップだけの率が書いてあるわけでございます。  ところで、今回の人事院勧告は、そういった意味で指定職、一般職含めまして平均して五・七四%ということでございまして、いわゆる指定職の傘とそれ以下の傘とが違っておるというようなことはございません。そういう意味では全く上厚下薄というような御指摘の当たらないアップになっておるわけでございます。先ほど来御説明のように、そういった一般職職員のアップ率に対応いたしましてスライド方式によって算定をいたしておりますので、今回の改定額も全体として見た場合に決して上厚下薄というようなものになっておらないと考えております。
  129. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 上厚下薄の問題、私はちょっと考え方が違います。調整手当だとか特別手当などを含めた年額でもやはり同様の状況となって、問題があると思います。  調整手当に絞ってお尋ねしますが、まず質問の前提といたしまして、お願いしておきました東京、八王子、千葉、松戸、浦和、横浜、川崎、この各地裁、支部について民事訴訟法の一裁判官当たりの手持ち件数、これを教えていただきたいと思います。
  130. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 裁判官の手持ち件数と申しますのは、柴田委員御承知のように時期に応じて変動いたしますし、その内容もさまざまでございますので、そのことによって裁判官一人当たりの負担量を示すというわけにはまいりませんけれども、お問い合わせがございましたので調べてみましたところ、昭和六十年六月現在の各裁判所裁判官一人当たりの民事訴訟の手持ち件数というものを見てみますと、東京地裁の本庁が約百九十件、八王子支部が二百二十件、横浜の本庁が同じく二百二十件、川崎支部が百七十件、浦和地裁本庁が百八十件、千葉地裁本庁二百十件、松戸支部が三百件、こういうことになっております。
  131. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 わかりました。  そこで、それぞれの地裁、支部の裁判官の調整手当というのは、裁判官の調整手当に関する規則第二条の特例を考慮しないときに、月額はどうなりますか。
  132. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 裁判官の調整手当につきましては、裁判官の調整手当の規則がございまして、そしてそれぞれの支給区分を定める地域をまた別途定めでいるわけでございますが、八王子の場合は東京都の特別区に勤務する者と同じ調整手当が支給されております。
  133. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 先ほどの数字から見ましても、千葉の松戸が一番多い。それから千葉も東京の本庁よりも多い。浦和も川崎よりも多い。そういうところが乙地とされている理由、これは非常に納得できないことであるわけです。今度甲地については百分の六、これが特別な場合百分の十となりますし、乙地の場合は百分の三、こうなりますと、調整手当というのが非常に違ってくるわけです。判事一号で特別であれば十万四百円、それから甲地であれば六万二百四十円、乙地であれば三万百二十円、こういうようになってまいります。異動などに伴う特例を定めた規則の第二条も、見方によってはこれは非常におかしな内容になるわけです。東京を中心に異動すると言われるいわゆるエリート層、こういう人たちは三年内に異動することによって常に百分の十の手当を受ける。それから乙地の裁判所においては同じ号の裁判官であっても実際に受ける報酬に大きな差が出る。それからまた甲乙の指定のないところ、例えば仙台高裁管内、高松高裁管内、こういうところは指定がないわけですから、もちろん調整手当は出ない。恐らくこの甲地、乙地、人事院規則に従って、それに倣って決めているわけでしょうけれども、甲地、乙地を最高裁判所が決めるという規則があるわけですから、今日の状況においてこの調整手当の問題も抜本的に改善する必要、そういう時期が来ているのじゃないかと思いますが、最高裁判所の規則によって見直しをする、そういう考え方はないかという問題。物価の問題といいますけれども、千葉の物価なんかは東京よりも高い、こう言われておるのです。そういう点からひとつ見解を願います。
  134. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 調整手当の基本となりますのは一般職職員給与に関する法律の定めでございます。十一条の三で、「民間における賃金、物価及び生計費が特に高い地域で人事院規則で定めるものに在勤する職員に支給する。」となっておりまして、またそのほかに同様なそれに準ずる地域に所在する官署で人事院規則で定めるものに在勤する職員にも同様に支給するというように定めでおります。そのように、要するにそういった経済諸事情の特に高い地域にある官署に勤務する職員に、その地域における物価、生計費の事情を配慮して、地域による実質的な給与格差を埋めようというのが趣旨でございます。  裁判所の場合、人事院規則に対応してそれぞれその地域を定め、また人事院規則で一定の官署を定めている場合に、隣接する場所に裁判所の官署がある場合には、その官署を指定しているわけでありますが、ただ、調整手当といいますのはそういう各地域の経済事情に関連する手当でありまして、その裁判所の事務量の多いか少ないかということとは関連しない手当であるわけでございます。したがいまして、裁判所によりましては特定の裁判所の方が繁忙であるけれども、しかしその調整手当は低いというような場合も生ずるわけであります。こういったそれぞれの地域差というものは、裁判所職員でありましても一般職国家公務員でありましてもそこは違いがないわけでありますので、それに倣って指定していくというのが適当であろうというふうに考えております。
  135. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 一般論でなくて現実が変わっているんだ、裁判所としても全体的に考え直す時期が来ているんだということを私は言っているわけです。  本会議の時間になりますが、午後法務省の刑事局長がおられないそうですから、あと裁判所の老朽庁舎問題について法務省の刑事局長の方に聞いておきます。  法務省の独立区検、ここで冷房のないところ、それから建てかえを要するところ、こういうところは幾つありますか。
  136. 筧榮一

    ○筧政府委員 最初に立てかえを要する方から申し上げますが、単独区検二百八十三庁のうち建てかえを必要とすると考えております庁は六十七庁ございます。明年度、昭和六十一年度の予算要求におきましては、この六十七庁の中で建てかえの必要性、緊急性の高いものを選びまして、八庁につきまして建てかえ予算の要求をしているところでございます。  それから冷房設備の関係でございますが、現在までまだ冷房設備の入っていない庁、現在百八十四庁でございます。  以上でございます。
  137. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 時間ですから、あとは午後の質問時間にさせていただきます。
  138. 片岡清一

    片岡委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十五分休憩      ————◇—————     午後一時三十二分開議
  139. 片岡清一

    片岡委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。中村巖君。
  140. 中村巖

    中村(巖)委員 今回の法案につきましては午前中に質問をいたしました。引き続き質問をいたすわけでありますけれども、法案に直接関係のないというか、別の問題を若干短時間聞かせていただきたい、こういうふうに思っているわけでございます。  最初にお聞きいたしますことは、先月の二十何日かの新聞の報ずるところによりますと、栃木県の黒羽刑務所というところで看守脅迫事件というものがあったということでございまして、この新聞の内容を見ますると、受刑者の暴力団員が一人の看守、Aといたしますと、Aと非常に癒着をしておった、そしてそのA看守にわいろを贈って、A看守からB看守の住所を聞き出し、それでB看守に脅迫状を送った。脅迫の理由は、自分が懲罰房に入れられたので懲罰房から出せ、言うとおりにしないと家族を殺す、こういうような脅迫をしたということであるわけでありまして、これは事実かどうか、まずお伺いをいたしたいと思います。
  141. 石山陽

    ○石山(陽)政府委員 本年の八月下旬でございますけれども、ただいま委員仰せのように、黒羽刑務所勤務の工場担当職員の自宅あてに脅迫状が参った。その内容も、ただいま委員仰せのように独居拘禁中の者を工場に出役させよ、もしそれができない場合には家族に危害を加えるという趣旨の脅迫文であったことは事実でございます。  私どもはその事態を大変重視いたしまして、すぐ関係検察庁であります宇都宮地方検察庁に御連絡をいたしまして、本件の背後関係を含めた徹底的な捜査をお願いしておるところでございます。現在まで捜査はなお続いております。一部の者につきましては今月五日に起訴されたということでございまするが、なおその余の者につきまして捜査を続行中だということでございますので、内容にわたりましては詳細申し上げることは控えさせていただきたいと思いまするが、それに私どもの職員がかんでおったという事実が明らかになってまいりまして、大変申しわけないことだと私どもとしてはこの事態を非常に深刻に受けとめておるところでございます。
  142. 中村巖

    中村(巖)委員 脅迫をされた看守の方はともかくといたしまして、その脅迫をした方に何らかの関与をしていたもう一人の看守、これは今事実の詳細は差し控えさせていただきたいということでありましたが、こういうふうに新聞紙上言われている看守について何らかの措置、こういうものはなされておるのでございましょうか。
  143. 石山陽

    ○石山(陽)政府委員 ただいま申し上げました脅迫事件に関係があると私どもの部内の調査でも判明しました職員につきましては、本件によりまして逮捕をされる直前でございますが、懲戒免職処分に付しております。
  144. 中村巖

    中村(巖)委員 独居拘禁というか、懲罰房に入れられたというこの被収容者は、新聞によりますと覚せい剤取締法違反で懲役六年の判決を受けておる、いわば暴力団員である、こういうようなことでありますけれども、それも事実でございましようか。
  145. 石山陽

    ○石山(陽)政府委員 覚せい刑事犯の中身は、いわゆる覚せい剤の売人関係の事犯でございます。刑期、それからただいま申しましたような暴力団組織に関係を持っておる、いずれも事実でございます。
  146. 中村巖

    中村(巖)委員 この委員会でも前から大変に刑務所の職員の綱紀の問題というものが取り上げられておりますけれども、この種一部の職員の綱紀弛緩というか、そういうような事犯が後を絶たないというように思われるわけでありまして、事実関係については詳細お話をいただけないわけでありますけれども、その脅迫事件に加担をした職員は新聞によりますと商品券等をもらって買収をされたんだということでございまして、こういうようなことがあっては困るわけでございます。また、こういう事件が伝えられるたびに、それは多くは暴力団員と刑務所職員の癒着というような形態にあるようでございまして、暴力団員と刑務所職員というものが、どうも暴力団員の方が巧妙なのかもしれませんけれども、すぐ癒着をしてしまうというか、悪い言葉で言えばたらし込まれてしまうというような傾向があるようでありますが、そういうことについて法務省当局としてはどういうように考えておられて、またどういうような対策を考えておられるのか、お聞きをいたしたいと思います。
  147. 石山陽

    ○石山(陽)政府委員 ただいま委員御指摘のように、最近の私どもの特に行刑施設へ入ってきます被収容者には暴力団の占める比率が非常に多くなってきております。例えば累犯の収容施設でございますと、多いところでは五〇%から六〇%が暴力組織関係者である、それからいわゆる初犯が入りますA級施設と申しますが、ここでも二、三〇%は何らかの形で暴力組織に関係があった者が多いというのが実情でございます。したがいまして、これらの被収容者はどうしても世間にありましたときの暴力組織の風潮というものを所内に持ち込もうとする。例えば職員に対しましても何らかの形で突っ張った行動に出て、職員をおどして精神的あるいは環境的優位をかち取ろうとする、あるいは言葉巧みに何か面倒を見てもらいたいそぶりをし、そういったことにかこつけまして二度三度と面倒を強要し、最後には上司に言いつけるぞというような形でもって深みにはまらせる、こういったような傾向がございます。私の矯正局といたしましては、こういったことの弊害が過去幾多の事例であったこともございますので、こういう事態が決して起こることのないように、平素から職員教育ということについては私なりに力を尽くしてきたつもりなんでございます。  たまたま本件のような事例というのはやはり年に一、二件ぐらい全国各地で出てまいるわけで、そのたびに私にとりましてはまことにつらく悲しい思いをせざるを得ないわけでありまするけれども、私どもといたしましては、ただいま委員御指摘のように世代交代期で若い職員が多いところにいわば世なれた形の中年の暴力組織団が来たときに、いろいろな形で世なれた誘惑、脅迫があるという事態は、平素職員教育の上で重視をいたしまして、できるだけそういうことのないように、職員に対しましては職務研究会、入りました当時の初任者教育、こういったあらゆる機会を通じまして誘惑にかからぬようにという教育はしているつもりでございます。したがいまして、私どもなりに考えますると、弁解申し上げるわけではありませんが、刑務所の職員がとかく癒着しがちであるという風潮までは至ってないと思うわけであります。しかし、そういう機会が非常に向こうから差し伸べられやすいという環境にあることは間違いないと思いますので、今後ともそういうことのないように、この事件を契機に気を引き締めて若い職員の再教育を実践してまいりたいというふうに考えております。
  148. 中村巖

    中村(巖)委員 この問題で最後に、そういう不祥事を起こす職員というものは、どういう事情か個々的にいろいろ違うのでしょうけれども、やはり職員として質の悪いというか、そういう感じがするわけでございまして、今この刑務所の職員というものは質のいい職員を採用をし得るような体制にあるのか、それとも何でもかんでも採用しなければならない、そういう実情にあるのかという点はいかがでしょうか。
  149. 石山陽

    ○石山(陽)政府委員 刑務所の職員の採用につきましては、戦後幾つかの変遷がございます。例えば昭和二十五年に全国の矯正施設が収容定員の数倍にも達する十万人を収容したという時代がございます。それから現在はやや落ちついてまいりまして、大体行刑施設で申しますれば五万五千人ぐらいが常時入っておるわけでございます。この非常に過酷な時代には、正直言いまして戦後の混乱期でもありましたので刑務所職員の希望者が非常に少なく、採用に非常に困難を生じておった時期がございます。そのために多少その時代では、猫の手をかりると言っては失礼でありまするが、とにかく希望する者はできるだけたくさん採用せざるを得ないという時期がございました。世の中が落ちつくにつれまして、ここ数年の実情を申し上げますると、毎年刑務所の職員が五、六百名年間で退職してまいります。それに対しまする新規採用希望ということで、刑務官の初級職採用試験というのを通りまして一般刑務官の採用をしているわけでございますが、全国各地でそれぞれ管区ごとに応募をさせまするが、大体採用定員の数倍に及ぶ志願者が出てきております。それで現在のところは、いわばどんな人でも採るという状態ではございませんで、それぞれその採用試験を経過して難関を突破してきた者の中から採用しているのが実情でございます。  なお学歴について申し上げますると、戦後の一時期はいわば高等学校卒業程度の人が多うございましたし、現在も採用資格は高等学校卒業程度でいいわけでありますが、最近の若い採用職員の学歴を見てまいりますると大体三割以上が大学卒業者であります。これらのせっかく優秀な素質を得た職員が採用される以上、これら職員に先ほど申しました点に十分気配りをいたしまして、二度とそういうことのない、誘惑に負けない、環境に強い刑務官を養成していかなければならないというふうに考えておるところでございます。
  150. 中村巖

    中村(巖)委員 そういうことはあってはならないことで、法務省としても努力を願って、こういう事件が何度も申し上げていることかもしれませんが二度と起こらないようにしていただきたいというふうに思うわけでございます。  次に、別の問題で最高裁判所へお尋ねをいたしますけれども、最近破産事件というものが非常にふえたということが事件の傾向でございます。ただ、その中で同時廃止という事件も多いわけでありますから、必ずしも破産管財人が選任をせられる事件がそんなにふえたということでないのかもしれませんけれども、破産管財人の選任があるわけで、選任された破産管財人について一部の破産者の債権者あるいは債務者の方から、どうも余り管財人はひどいじゃないかというような苦情というものも時には聞くわけでございます。  そこで、破産管財人の選任というものを今裁判所はどういうやり方でやっているのか、どういう点を注意してやっておられるのか。まあ破産管財人は大体弁護士でありますから、弁護士が悪いというのも、私も弁護士でありますから余り言いたくはないわけでありますけれども、やはり弁護士の中にもいろいろな程度というか、そういう人がありまして、余り無差別におやりになると弊害も起こるだろうというふうに思いますので、ちょっとお聞きをしたいと思います。
  151. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 ただいま委員が御指摘のとおり、破産管財人はもう大部分が弁護士をもって充てておるというのが実情でございます。大きな裁判所とそれから小さな裁判所では若干事情が違いますので、一番問題が多いと思われます大規模の裁判所を例にとって申し上げますと、例えば東京、大阪の裁判所の場合には弁護士会の方にお願いいたしまして、破産管財人に選任されることを希望される方の名簿をお出しいただいております。その名簿の中から、例えば事件の大小、法律問題が多いか少ないか、そういうふうなことを一方で見ながら、今度は弁護士さんとしての経験年数を勘案いたしまして、さらに、一度管財人をお願いしたことのある弁護士さんにつきましては、その事件でどのように御活躍いただいたかということは裁判所の方もよくわかっておりますので、そういう過去の管財人としての職責をお尽くしいただいたときの適格性、そういうようなものを総合いたしまして事件別に選任しておる、そういうふうな方法がとられております。  ごく大ざっぱに申しますと、比較的小規模の事件でありますと弁護士の経験年数が例えば五年程度比較的経験の少ない人でも扱うことができますので、そういう方に最初事件の処理をお願いいたしまして、だんだん経験を積んでいただきますと非常に問題の多い難しい事件を御担当いただく、ごく一般的に申しますとそういうふうな選任方法をとっておると申し上げてよいかと思います。
  152. 中村巖

    中村(巖)委員 弁護士会の方から出した名簿に基づいて、こういうことでございますけれども、また一部には、裁判所の管財人の選任のやり方がはんぱではないか、こういう声もあるわけでございます。というのは、やはり管財人というものは管財人の報酬がありますから、多くの弁護士は管財人になりたいという希望があるわけでございますけれども、大きな事件になりますと特定の人間に偏重するのではないか、こういうような不平もあるわけでございます。その辺のことも考慮に入れられて御選任になっているのか、その辺はいかがでしよう。
  153. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 今御指摘のような点につきましては、先ほども申し上げましたとおり管財人の方がそれぞれ事件を処理していただいたときの仕事のしぶりと申しますか、そういうようなものを十分裁判所の方で把握しておりまして、それをその次の選任の際に考慮するということを行っておりますので、たまたま一件処理していただいて必ずしも適任ではなかったというふうな人はその次には御遠慮いただくということになりますし、非常によく処理をしていただいたという方にまたその次をお願いするというようなことになりますので、今おっしゃったような適任者を選ぶという道は大きな裁判所でも最近は非常に整備されてきておると思います。  初めてお願いする方につきましては、これは裁判所で一度おやりいただいたという経験がないものでございますから、実績による適格性の判断はできないわけでございますが、やはり弁護士の経験年数あるいはその他、裁判所の内部のいろいろな情報をできるだけ収集いたしまして適任者を選ぶというふうに努めておるわけでございます。  特定の人にある事件が偏るということになりますと、今お話のございましたような弊害も出てまいりますので、その辺のところは各裁判所とも十分配慮をして、そういうふうな不満の出ないような方策をとっておるというふうに報告を受けております。
  154. 中村巖

    中村(巖)委員 最後に一点、法律上の問題ではあるわけですけれども、裁判所が破産管財人に対してどれだけ監督ができるのだろうか、また現実にどれだけ監督をしているのだろうか、こういう問題があるわけでございます。この間もあるところにある事件がありまして、それは、破産管財人が破産者の帳簿を精査すれば、その破産財団側の債権というものが債務者は弁済をしてもう消滅をしておったことがわかるのに、ずさんにも債権を請求した、こういうケースがあったようであります。そういう請求をされた債務者といたしますれば、そういうことをやられて大変けしからぬ、裁判所は責任を持って選んでいるのに、そういうずさんな管財人では困るじゃないか、こういうことを言っておりますので、一般的に管財人の選任後の監督状況というか、そういうことをお話をいただきたいと思います。
  155. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 今の御覧間の点も、大規模な裁判所と中小の裁判所で若干違いがあると思います。大規模な裁判所、例えば東京のような裁判所になりますと、破産管財人が現在約六百件ぐらい選任されておるわけでございます。そういう多数の管財人を裁判所が監督しなければ  ならないということでございますし、もう一つは、実は先ほどから申し上げておりますとおり破産管材人は弁護士でいらっしゃいますので、いわゆる裁判所の分身のような形で公正に職務を行っていただくという上からは、監督もさることながらやはり裁判所と管財人との間の信頼関係というのが大変重要でございます。その辺の信頼関係を維持しながらどのように監督権を行使していくかというのは各裁判所とも非常に御苦労なさっておるわけでございますが、ごく一般的に申しますと、管財人を選任します際に業務の運用の状況等を定期的に、例えばこれも事件によって異なりますが、三カ月ごとであるとかあるいは二カ月ごとであるとかというふうに指定をいたしまして必ず裁判所に報告をしていただく、そういうふうなことを実行していただいております。それから、法律の規定の中にもございますとおり、本来は債権者集会あるいはまた債権者集会によって選ばれました監査委員の同意によって行動するのが通常でございますが、監査委員が選任されないというのがむしろ多うございます。そういう場合には、例えば不動産等の売却でございますとか和解でありますとか、そういうようなことについて一々裁判所の許可を要するということになっておりますので、そういう行為を行う都度裁判所の監督を受けるということになるかと思います。それからもちろん、例えば配当等を実施いたします際には、具体的に裁判所の許可を得て業務を行うということになりますので、そういうふうな場面を通じて監督していくということになるわけでございます。  ただ、最初にも申しましたとおり弁護士さんでいらっしゃいますし、一般的には業務の遂行について裁判所が信頼関係を基礎にして、その上で個々的に御相談いただくというのが実務の取り扱いでございますので、場合によれば非常に細かい点についで十分な一つ一つのチェックはできないという場面はあるかもしれないと思います。そういうふうな不行き届きの点がございましたら、債権者なりあるいは債務者あるいはまた事件の関係人の方から裁判所の方に御連絡いただきますれば、裁判所の方で職権発動という形で、監督の必要があるかどうか十分調査して対応するというようなことになろうかと思います。
  156. 中村巖

    中村(巖)委員 終わります。
  157. 片岡清一

    片岡委員長 天野寺君。
  158. 天野等

    ○天野(等)委員 最初に、午前中の質疑と多少重複にわたるかもしれませんが、今度の給与法の問題につきまして、人事院勧告を完全に実施をしなかったといいますか、それをそのまま準拠しなかった、実施時期を七月におくらせたその理由はどういうことなのか、もう一度ちょっとお答えをいただきたいと思います。法務大臣の方からお答えをお願いします。
  159. 嶋崎均

    嶋崎国務大臣 御承知のように、今の中央の財政事情というのは非常に窮屈な状態にあるということは御承知のとおりでございます。そういう中にありまして国家も、公務員の給与につきましてはそういう財政事情を反映をして、ひところ出ていた給与の差額につきまして三年間ぐらいで解消をするというようなことが基本的な方向ではないかということで処理をされて今日まで来たわけでございますが、何しろ現在の公務員の給与の実態をよく検討し、また人事院勧告の性格というものを検討して、それを実施をしたいというような気持ちで寄り寄り相談した結果、六十年度においてもまた引き上げを行い、そのことは六十一年度の予算にも反映する形になるわけでございますが、非常に窮屈な予算の中でそういう処理を図ることにしたわけでございます。しかしその場合でも、こういう事情でございますので四月一日までさかのぼって実施するというようなことは事実上なかなか困難であるということで、七月一日から実施をするという結論になった次第でございます。
  160. 天野等

    ○天野(等)委員 簡単に言うと、政府の財政事情ということに尽きるのかと思います。  それで、人事院の方にお尋ねをしたいのですが、人事院としては当然のことながら一般公務員について人事院の勧告どおり四月からの実施を要望しているのだと思いますが、アップ率は人事院の勧告どおりということになったとしましても、実施時期がおくれるということはやはり人事院の勧告を政府が完全には実施しないということになるわけでございましょうね。
  161. 小堀紀久生

    ○小堀説明員 お答えいたします。  本年の給与改定に関します政府の決定は、従来のように政府における俸給表の作成という変則的な事態を回避し、時期はおくれておりますけれども、その時期から民間と均衡する給与水準が確保されるということになりますので、実施時期という点を除きますと勧告内容が尊重されておると考えておりまして、ここ数年の取り扱いに比しまして一歩前進したものと考えております。しかしながら、先生の御指摘のとおり勧告の趣旨に照らしますと、私どもとしては完全実施されることがとりわけ重要であると考えておりますので、実施時期を含め今後一刻も早く勧告どおりの実施が図られるよう、関係者の御理解をお願いしたいと思っております。(「庶民の生活を考えてみろ」と呼ぶ者あり)
  162. 天野等

    ○天野(等)委員 今、出席しています議員の方から庶民の生活を考えるというような不規則発言がありましたけれども、その発言がありましたので私はあえてここで議事録に載せていただきたいと思いますから、人事院勧告のできました経過といいますか、どういうことを基礎にして人事院勧告がなされているのかということを、ここで一言人事院からお話しをいただきたいと思います。
  163. 小堀紀久生

    ○小堀説明員 人事院の給与勧告は、公務員の労働基本権を制限いたしましたことによります代償措置ということでございますので、そのために公務員の生活が圧迫されないようにということで、私どもといたしましては民間の給与を正確に調査をいたしまして、それと公務員の水準を比較いたしまして民間の給与に合わせるようにということを基本的な考え方として勧告をいたしております。
  164. 天野等

    ○天野(等)委員 その場合の比較の基準の月が四月ということになるわけでございましょうか。
  165. 小堀紀久生

    ○小堀説明員 調査時点は御指摘のように四月でございます。
  166. 天野等

    ○天野(等)委員 ということになりますと、七月実施ということになれば、四月から七月までの分については当然のことながら公務員の給与は民間の給与よりも低いということにならざるを得ないわけでございますが、七月実施ということで一般公務員の給与について決定をされました総務庁は、なぜ七月実施というふうにされたのか、この点お答えいただきたい。
  167. 水谷英明

    ○水谷説明員 今年度の給与改定に当たりましては、昨年度に官房長官談話というものが示されておるわけでございます。これは、五十九年度の公務員の給与改定に際しまして三・三七%の給与改定を行ったわけでございますが、公務員の中で今先生いろいろ御指摘なさいました問題もございまして不安感が広がっているということで、限られた厳しい情勢の中で将来展望を示さなければならないということで、昨年の官房長官談話では、まず人事院勧告制度を尊重する方針を堅持して、今後とも勧告の完全実施に向けて最大限の努力を尽くすのだという基本を明確にいたしますとともに、仮に昭和六十年度以降におきまして勧告の完全実施が難しい場合でございましても、給与改定後の官民較差を、五十九年度の場合には約一・四%程度縮小されておりますが、少なくともそれと同程度は縮小するように努めて、五十九年度からおおむね五十九、六十、六十一の三年間をめどとして官民較差を解消して、勧告が完全実施されるよう鋭意努力するという考え方が一つ基本としてあったわけでございます。  もちろん、私が申し上げるまでもなく、人事院勧告制度を尊重しなければいけないという大切な意義がございます。また、これまで維持されてきた良好な労使関係というものもございますし、給与改定が公務員の士気や生活に与える影響にも大変重要なものがあるということは第一の基本でございます。しかし、今年度の場合に、端的に申し上げれば税収が昨年度とは異なって非常に厳しい状況にある。まだ補正予算も組まれておりませんので数字は明確になっておりませんが、どうも年度間を通じて予定された税収が入らない可能性もあるというような厳しい財政事情でございます。それからまた、当初予算で既に厳しい行政経費が予算に計上されておる、そういう状況でございますので節約にも限りがあるということで、そういう厳しい財政事情等の中におきましてどうやれば一番いいのかという方法を鋭意数カ月、三カ月ないし四カ月にわたって検討をいたしてまいったわけでございます。その結果といたしまして、その限られた財源の中で、少なくとも五十八年度、五十九年度のように俸給表をつくるというような異例な事態は避けたい、しかし、昨年度の官房長官談話の官民較差一・四%の解消という精神は貫きたいということで、公務員の方々にとっては非常に不満足なものとは存じますけれども、実施時期だけ調整させていただきまして七月一日から、俸給表等は人事院勧告どおりに実施する、こういうふうにいたした経緯でございます。
  168. 天野等

    ○天野(等)委員 官民較差が七月から是正されるというのはわかるのですが、三年間で官民較差を是正するのだということが時々言われるのです。しかし実際問題として、例えば五十九年度あるいは五十八年度の官民較差が六十年度になってその分上乗せされるわけじゃありませんから、過ぎてしまった年度の較差はもう埋めようがないわけでしょう。今度の人事院勧告だってその分を埋めているわけではなくて、官民較差の是正といいますけれども、結局六十年の四月時点における官民較差が是正されることにすぎないわけで、たとえ今度の人事院勧告が完全に実施されたとしたって、今まで値切られてきた分が取り戻せるわけのものじゃない。ましてこれが七月実施ということで値切られるとすれば、その分はもう永久に労働者のところには入ってこないという性質のものでしょう、この官民較差の是正というのは。その点はいかがなんですか、人事院。
  169. 小堀紀久生

    ○小堀説明員 御指摘のとおりでございまして、四月時点で公務員の給与と民間の給与にございます較差を埋めていただくということでございますので、その前の時点の較差は依然として残ったままでございます。
  170. 天野等

    ○天野(等)委員 その辺もはっきりしておかないと、何かごの人事院勧告で今までの公務員の低かった分が戻ってくるような、そういう印象が一般的にもないわけじゃないように思いますから、この点ははっきりさせておきたいと思います。  それから、これは総務庁の方からもお話がございましたように、人事院制度というものが公務員に対する労働基本権抑制の代償措置として行われているものだ、これはやはり憲法上の原則からきているものだと思いますが、そこの観点からいけば財政のやりくりがつかないというのはおかしいことであって、本来人事院勧告を完全に実施した上で他の財政のやりくりをしていくというのが労働基本権の考え方からいけば当然のことだろう。だからこそ人事院では、これを完全実施してもらいたいという要求を政府に出せるわけだ。この点で、財政事情が悪いから人事院勧告は無視してもいいんだ、あるいは減らしてもいいんだという理屈は、人事院勧告という性質上本来許されないことではないかと私は思うのですが、人事院いかがですか。
  171. 小堀紀久生

    ○小堀説明員 人事院といたしましては、今お話がございましたように、この制度が労働基本権の代償としての機能を果たしているということにかんがみまして、完全実施をぜひお願いしたいということを前々からお願いしているわけでございます。
  172. 天野等

    ○天野(等)委員 これはもう人事院勧告を完全実施しないという形での政府決定があって毎年国会の中で議論が繰り返されている問題ですけれども、今度は法務大臣、私はこの前の外国人登録法、指紋押捺の問題でも質問をしたのですが、法を守るという立場に立つとすれば、法を守らなければならぬのはまず第一に行政府であって、人事院勧告制度ということが法に規定されている以上、これはまず守らなければならぬのは政府のはずです。それを、法治国家というのは国民が法を守れということだというような形ですりかえてしまうものですから、おかしなことになるのです。法務省、法を守れと言う以上、まず自分のところで法を守って、人事院勧告どおりの検察官裁判官に対する給与を支給する、それを要求するという態度に立つべきだと思うのですが、大臣いかがですか。
  173. 嶋崎均

    嶋崎国務大臣 非常にその問題だけを取り上げられてぎりぎりされた議論をされておるわけでございますが、御承知のように、この制度が発足しまして当初は現在のような財政事情ではなく、特例公債を発行しておるというような実情ではなかったと思うのですが、その時分でも四月まで全部繰り上げて実施ができなかったというのは随分長い期間あったのだろうと思うのでございます。我々としましても、人事院勧告の性格というものを考えて、できる限りその完全実施を図りたいという気持ちでいることはもちろんでありますけれども、それが財政事情からなかなか難しいということであろうと思うのでございます。  御承知のように、こういうケースにつきましては外国でもこれと同じような制度をとっている例もあるわけでございまして、それらの国々の実情を調べてみましても、必ずしも人事院勧告をそっくりそのままその時期までさかのぼってということが行われない事例も最近の財政事情等から間々あるわけでございます。ましてや今の日本の場合は、御承知のように特例公債を出しておるという事実があるわけでございます。これはどちらかというと今の者がその利益を享受するけれども、その利子や元本の返済というのは後年度に任すというような厄介な問題を抱えておるわけでございます。そういう意味で、その部門だけとって考えますと、さしずめ四月が実施だから四月という非常に一こくな議論もあると思うのでございますけれども、私は今の日本の財政状況というものをよく考えてみれば、ある意味でそういう調整というものは避けて通れない現実があるのではないか。今後とも我々はその精神というものを十分意識をして行動はしていかなければなりませんけれども、そういう財政事情というものをよく御理解願って、この取り扱いについては御理解を賜りたいと思っておる次第でございます。
  174. 天野等

    ○天野(等)委員 私は、国の財政事情が悪くなった理由は何も公務員がそれの責任を負わなければならない、そういう事柄ではないと思うのですよ。公務員の皆さんはそれなりに一生懸命仕事をなさっていらっしゃる。この赤字を生み出してきたのは、むしろ政治の責任あるいは政策の問題、あるいは経済事情というようなことがあるかもしれません。しかし、そういう国家の歳入が厳しくなってきたという事情に合わせて政策を選択していかなければならないのは政治の責任であって、その分を実際に行政に携わっている公務員の個々の人たちに責任を負わせるというのはおかしいと思うのですよ。この人事院勧告を完全に実施しないというのは、結局そういうことで個々の公務員に今の財政赤字の責任を負わせるといいますか、その負担を負わせてしまうということだろうと思うのです。そういう点で私はどうも納得できないというふうに思います。  この点では、恐らく議論にわたるだろうと思いますから、時間もございませんのでこのくらいにしようかと思いますけれども、やはりまず働いている人たちの生活の安定ということを考えた上で、その上で個々のいろいろな政策を選択していく必要があるのじゃなかろうかというふうに思うわけですが、この点についての御意見をひとつ伺った上で、また別の質問にいきたいと思います。
  175. 嶋崎均

    嶋崎国務大臣 御承知のように政府の財政運営の仕方につきましての御批判はいろいろあろうと思うのでございますけれども、我々も国民の福祉をどうして立派なものにするかということを基本に据えながら、一方で歳入を求め一方で支出をして財政運営を精いっぱい努力をしてきたつもりでございます。しかし、御承知のように公務員の場合にはその制度が非常に落ちついておる、どちらかというと人員等につきましてもどんどんふえてきておる、そういう一方の議論があることも事実であるわけでございます。我々もそういう過去のいろいろな点については十二分にこれを検討して、今御承知のように財政改革なり財政再建ということをかけて努力をしておるわけでございます。したがいまして、これを一律に国家公務員にしわ寄せしようというような事柄で考えているわけでありませんで、我々もできることならそれは実現したいと思います。しかし、この決定というのは御承知のように政府が責任を持ってそういう案を出しておるわけでございまして、それについてのいろいろな論理というのはおのずから世の中にあることであろうと思うし、また政治の責任というのはその時の政府が責任を持って処理をするということであろうというふうに思っております。我々はいろいろな点を考えまして、せっかくの努力をして、今年におきましては七月一日からともかく全面的に実施しようということに踏み切った点については、ひとつかえって御理解を願いたいというふうにすら思っておる次第でございます。
  176. 天野等

    ○天野(等)委員 私は、一方で軍事費だけどんどんふやしていくというふうな形で、一方で公務員の給与については人事院勧告さえ守らないという政府の姿勢について、これはもう納得するわけにはいきませんから、この場でも断固反対でございますけれども……。  それで、今度は人事院勧告の内容なのですけれども、民間と公務員の給与を比べるというときに、民間の給与体系というのは例えば能率給であるとかいろいろな職能給であるとか、そういう細かい要素が含まれてくるのかと思うのですが、その点で公務員の給与との比較の際にそういう要素はどういうふうに考えられるのか、この点いかがでございましょう。
  177. 小堀紀久生

    ○小堀説明員 私どもが行っております職種別民間給与実態調査と申しますのは、民間の従業員一人一人につきまして四月分給与として支払われた給与総額を実際に賃金台帳に基づきまして調査をいたしてきております。したがいまして、四月分給与の中には御指摘のようなそういう業績手当だとか奨励手当、それから、はたまた人事考課の結果といたしまして昇給等が行われている分がございますけれども、そういうものがすべて含まれております。それと公務員の給与比較をするということになっておりますので、全体として成績給的なものがお互いに反映をしているというふうに考えております。
  178. 天野等

    ○天野(等)委員 よくわからないのですけれども、結局出てきた額で比較をしているにすぎないということになるのでしょうか。個々の要素ごとに公務員給与についても考えるというふうなことではないのですか。
  179. 小堀紀久生

    ○小堀説明員 民間の給与と申しますのは、各企業ごとに非常にばらばらな取り扱いになっておりまして、今御指摘のような能率給的なものにつきましても、例えば業績手当として支払われていたりあるいは奨励手当として払われていたりあるいは本俸の中の成績査定分として払われていたりということがございまして、そういう種目別につかまえてくるというのが非常に難しゅうございます。したがいまして、先ほどお話ししましたように金額でつかまえてきているということになります。
  180. 天野等

    ○天野(等)委員 そうすると、今度は公務員の給与の方でいきますと、これは公務員の勤務評定というようなものとはどういうふうにかかわってくるものなのでしょうか。
  181. 小堀紀久生

    ○小堀説明員 職員の勤務評定あるいは勤務実績というものにつきましては、給与上いろいろな反映をいたしておりまして、その第一は普通昇給でございます。この普通昇給は、職員が良好な成績で勤務したときに一号俸上位の号俸昇給させることができるということになっておりまして、具体的には昇給させようとする者の勤務成績について監督者の証明を得て行うということにされております。そして、その場合の勤務成績の証明というのは、勤務評定記録書等、その者の勤務成績を判定するに足ると認められる事実に基づいて行うということになっております。  それから次に特別昇給と申しまして、勤務成績が特別に良好である場合の昇給がございますけれども、これは勤務評定記録書に記載されている職員の勤務実績が上位のランクにあるということが要件になっておりまして、そういう意味でも勤務成績が直接反映するということになっております。  それから三番目といたしましては、民間で言う賞与の成績査定分がございます。これは私どもの制度では勤勉手当と言っておりますけれども、これも成績率に応じてその額が定められることになっておりまして、その際にも勤務評定記録書等の勤務成績を参考にしながら成績率を判定しております。  それから、もちろんのことでございますけれども、昇格等の場合も勤務成績の優秀な者を昇格させるということで、勤務成績を給与に反映をいたしております。
  182. 天野等

    ○天野(等)委員 公務員天国だということで、公務員については民間のような査定がないのだというような論がよく言われるのですけれども、現実の人事院の考え方、公務員給与についての考え方について言えば、やはり民間給与の体系そのものではないけれども、その考え方も取り入れながら行われている、いわばそういう合理的な考え方で行われているというふうに考えてよろしいわけでしょう。
  183. 小堀紀久生

    ○小堀説明員 今お話しいたしました勤務成績を給与上に反映のさせ方というこの制度そのものは、民間に必ずしも同一のものがあるというわけではございませんけれども、考え方といたしましては御指摘のとおりでございます。
  184. 天野等

    ○天野(等)委員 これは裁判官検察官というような場合には勤務評定というのはどういうことになるのですか。裁判官の場合には勤務評定がやはりあるわけでございますか。
  185. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 裁判官の場合、制度的に定まった勤務評定というものはございません。
  186. 天野等

    ○天野(等)委員 裁判官独立の原則からいえば私もないのが当然だろうと思うのですが、ただ、午前中の稲葉議員との質問のやりとりもちょっとお聞きをしておったのですけれども、いわゆる勤務評定というものではないけれども、何というのでしょうか、やはり評価でしょうか、そういうものがあって、特に三等級より上へ行く場合にはそういう評価もあるのだというようなお話がありましたが、結局給与関係されるような何らかのそういう評定はなされているのではないのですか。
  187. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 最高裁判所では、二千数百名の裁判官でございますが、これを全国に配置しているわけでございます。そのためにはそれぞれの裁判官をどういう土地、どういう裁判所配置するのがいいのかということを的確につかまない限りは全国的な裁判官配置というのはできないわけでございます。そのためには各裁判官に接している地方裁判所あるいは家庭裁判所の長が日常の所属裁判官との接触の中からその裁判官のいろいろな面を把握いたしまして、そしてそれを常時上級の裁判所に意見を述べているという事実はございます。そういったものを判断の材料にして最高裁判所が全国配置を決めるということになるわけでございます。  ただいま昇給についてのお話もございましたけれども、最高裁判所がそれぞれの裁判官報酬の号を決めるときに、下位の号俸は別といたしまして、上位の号俸につきましてはそれぞれの裁判官の特性というものを見ながらその裁判官報酬の号が決定されるということになっているわけでございます。
  188. 天野等

    ○天野(等)委員 だから建前としては勤務評定はないという建前になっていながら、実際としては同期に裁判官になったからといって常に同じ給与で来るというわけにはならないわけだと思うのですが、検察官の場合はどうなのですか。
  189. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 法務省におきましては法務省職員勤務評定実施規程というものを設けておりまして、これに基づきまして法務省職員の勤務評定を行っておるわけでございます。その規程によりますと、検察官につきましては別に検察官調査表というものに基づいて実施することになっておるわけでございまして、これは検察官の職務の内容とか責任の特殊性というものから別扱いになっておるわけでございます。  検事の場合、若い間と申しますか経験年数の浅いうちは大体同期の検事、ほぼ同じように昇給してまいるわけでございますが、二十年くらいもたちますと、その間に自然にやはり能力の差といいますか、そういったものも出てまいるわけでございまして、こういったものを客観的に考慮いたしまして、そのころから昇給の時期等について差が生じる、こういうふうな取り扱いになっておるわけでございます。
  190. 天野等

    ○天野(等)委員 そうすると、それはどこでそういう評定がされるのですか。これは法務省なのですか、それとも最高検察庁なのですか。
  191. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 これはそれぞれの検察官が勤務しております庁の長、例えば地方検察庁の場合は地方検察庁の検事正、これが一定の評価といいますか、これをするわけでございます。これを法務省に集めまして人事課の方でそういう整理をいたす、こういうことでございます。
  192. 天野等

    ○天野(等)委員 ちょっと時間がなくなってしまったのですが、もう一点。裁判所の場合の事務官とか書記官、裁判所裁判官以外の職員の勤務評定、それから検察庁の場合、検察官以外の検察庁の事務官等の評定というのは、これは当該官署の長だけがそういう評定のあれを持っているのですか。それとも裁判所ですと、裁判官個々がやはりそれと関係をしています担当の書記官とか事務官に対する評定権を持っておるのでしょうか。検察庁の場合も同じようなことで、この辺はどうなのでしょうか。
  193. 櫻井文夫

    櫻井最高裁判所長官代理者 裁判所一般職員の勤務評定でございますが、御承知のように国家公務員一般職につきましては、国家公務員法の七十二条で勤務成績の評定に関する規定がございます。裁判所職員臨時措置法でこの条文を準用しているわけでございます。ただ、準用いたしておりますのは、その勤務成績の評定を行わなければならないという部分だけを準用しておりまして、勤務成績の評定の手続等に関する事項は政令で定めるというふうになっております七十二条二項の方は準用されてないわけでございます。さらに、この関係の人事院規則、これは裁判所職員にも準用されておりますが、この人事院規則も根本基準が定めてあるだけでございまして、詳細な手続等についての定めは裁判所に準用されるものはないわけでございます。  裁判所では現在、国家公務員法の定めるような意味での勤務評定というのはまだその制度ができていないわけでありますが、例えば書記官研修所の養成部に入所する人を決定するときとかあるいは主任書記官に昇任するときとか、そういったような場合に、そのときそのときの各人の評定というものは必要に応じてやっております。  これを評定いたしますのはそれぞれその裁判所の任免権を持つ者でございまして、任免権を持つ者は所長通常任免権を持っておりますので、それが評定を行う、こういうことになっております。
  194. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 検察庁の職員の場合は検察庁の長がそういう勤務評定を行う、こういうことになっております。
  195. 天野等

    ○天野(等)委員 持ち時間がなくなりましたので、きょうはこれで終わらせていただきます。
  196. 片岡清一

    片岡委員長 柴田睦夫君。
  197. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 最初裁判所の老朽庁舎の建てかえ問題ですが、まず最高裁は現在全国の独立簡裁のうちでどのくらいの庁舎が老朽化しているとつかんでおりますか。
  198. 川嵜義徳

    川嵜最高裁判所長官代理者 庁舎の整備の関係でありますが、高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所の本庁につきましてはほぼ整備を終わっております。問題は独立簡裁でありまして、二百六十二ありますが、整備を終わってないのは九十四というふうに御理解をいただきたいと思います。
  199. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 最高裁は、昨年の七月に出しました「裁判所の適正配置について」というか、骨子ですが、昭和二十年代に建築され、老朽化が進み、新営の必要な時期を迎えているものが約百庁ある、こうしておりまして、そこで効率性なんかを説いて逆に統廃合の理由にしようとしているのですが、これは午前中論じられましたように私もとんでもない話だと思うのです。適正な配置問題につきましては法曹三者協議に付されております現状から、ここで私は論じません。が、少なくとも現時点では統廃合を前提として今の九十四庁に及ぶ老朽庁舎を放置しておくということは裁判所が怠慢であると言わなければならないと思うのです。独立簡裁の建物の建てかえは小さいやつですから一庁舎当たりせいぜい三千万あるいは五千万円でできるものであって、全部建てかえても三十億から四十億ぐらいあればできると思います。最高裁の中世のヨーロッパのお城のようなあの建物と比べてみましたら、本当にささやかな国民の要求であるわけです。そこで、最高裁は国民の声に耳を傾けなければいけない、国民のための裁判所にならなければならない、そういう点から直ちに老朽庁舎の建てかえに着手してもらいたい。決意を伺います。
  200. 川嵜義徳

    川嵜最高裁判所長官代理者 ただいま申しましたように、老朽庁舎で建てかえをしなければならなくなっているものがかなりあることは十分承知しております。この老朽庁舎につきましては、御指摘のとおりただいま三者協議におきまして簡易裁判所等の適正配置問題が議論されております。この議論がどのような結果になるか、それを見守りながら進めていかなければならない問題だというふうに理解をしております。この問題から外れるといいますか、対象から外れることが明らかであることがわかれば、その九十四のうち幾つそういうものがあるかまだはっきりいたしませんけれども、これはできるだけ早く整備を進めるという方向でいきたいと考えております。
  201. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 ひどいところがあるわけです。私たちがちょっと調べてみましたら、例えば三重県の鳥羽簡裁では道路から一メートルも低い地形、要するに谷底のようなところにあるわけです。ですから、職員が建物の周りに二重、三重に溝を掘っておりまして、それでも少し雨が降ると床上浸水してくる、そのため床がぶかぶかになっております。待合室は床が十センチメートルも沈んでゆらゆらと揺れるためにストーブが置けないので、昔ながらの火鉢を置いている。資料室も床が十センチ沈んでおりますので、本棚が大きくゆがんでおります。和歌山県の海南簡裁ではやはり床が膨れ上がって、階段もウグイス張りのごときであって、しかも地主から退去の申し立てがなされておる状況です。このほかにも似たような簡裁がかなり多いと聞いております。これらの安全性に問題のある庁舎は直ちに修繕しなければならないと思うのですが、どうですか。
  202. 川嵜義徳

    川嵜最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘の二つの簡裁を含めまして、昭和二十年代の前半にでき上がった木造の簡易裁判所はかなり老朽が著しいことは十分承知しております。ただ、先ほども申しましたとおり、簡裁の適正配置問題が目睫に迫っておりますので、その結論を見るまではできるだけ修繕等によりまして裁判所の機能が果たせるように努力をしていきたい、こう考えております。
  203. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 要するに、今挙げた例はもう本当に人間が使うというような建物じゃないわけです。だから、ちゃんと修繕しなければいけないということなんです。  次に、裁判所の冷房化の促進という問題についてお尋ねしますが、独立簡裁の冷房化の実態を報告していただきないと思います。
  204. 川嵜義徳

    川嵜最高裁判所長官代理者 裁判所の小規模庁舎の冷房化がおくれていることは事実であります。いわゆる独立簡易裁判所について申し上げますと、総施設数が二百六十二あるわけですけれども、そのうち全館冷房として整備を終わったのは十二でありまして、法廷、調停室等の部分冷房が八つということで、まだ極めて少ないという状況であります。
  205. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 そうすると結局ほとんど冷房がないという状況ですね。  そこで建設省に伺いますが、冷房を要する地域の官公庁の新営の場合に冷房設備は当然つけるものだと思いますが、建設省ではどのように考えておりますか。
  206. 塚田滋

    ○塚田説明員 一般的には冷房設備を設置することが望ましい、このように考えております。
  207. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 じゃ建設省、結構です。  私どもが調査したところによりますと、鹿児島県の大隅簡裁ですが、窓をあけておりますとハエの大群が入ってきて悩まされる。同県の他の簡裁では火山灰にも悩まされているわけです。それから和歌山の海南では道路の交差点にあるために騒音で窓があけられず、法廷が終わると関係者はワイシャツまで汗でびっしょりになってしまう。そのほか多くの地方の簡裁てばヤブカに悩まされる。もう本当に笑い事でない、そういう実情であるわけです。私の千葉県でも銚子、東金それから大原、こんなところがそれに類するものだと思うのです。そういう点から、部分冷房でも間に合うところはそれでもいいのですから直ちに設備すべき問題だと考えますが、この決意を伺います。
  208. 川嵜義徳

    川嵜最高裁判所長官代理者 裁判所の庁舎の冷房の状況は、独立簡裁だけではなくまだ乙号支部も相当残っておりますが、できるだけ規模の大きいところから順次、しかもただいま御指摘がありましたような公害をこうむっている庁を憂先させ、しかも暑い方から、そういうような方向で順次整備をしていきたいと考えております。
  209. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 午前中に定員の問題について質問がありましたが、私もともかく必要な定員をふやすべきだと考えます。  ちょっと大臣の決意を伺いたいのですけれども、国会におきまして法務局、更生保護委員会、入国管理官署の大幅増員に関する請願昭和五十五年から五年間にわたって連続して全会派一致で採択されているわけですけれども、いまだ見るべき改善が図られておりません。大臣はこの国会の決議をもっと深刻に受けとめていただいて大いに努力していただきたいと思うのですが、この問題についての決意を伺います。
  210. 嶋崎均

    嶋崎国務大臣 法務省の仕事は、御承知のように本当に人によってできておるというような形でございます。したがいまして、最近の事件の状態等々を考えまして、できる限り定員の充足を期していかなければいけないと思っておるわけでございます。またそういう要望のあることも承知しておりますが、何しろ非常に厳しい行財政事情の中でございます。せっかく努力をして少しでも定員の充実を期していきたいと思っておる次第でございます。
  211. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 次の問題ですが、これは八日の新聞に発表されました。「地裁で「盗聴器」 最高裁の部外秘文書で判明 別室の警官に情報 日弁連「現在にも通じる問題」という記事が出ております。この問題につきましては「法と民主主義」の十一月号に阪口弁護士が「ある刑事裁判官会同の一幕」ということで既に発表されているわけです。最高裁に伺いますが、このような事実はあったのか。
  212. 吉丸眞

    吉丸最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  私どもも毎日新聞に出た昭和二十八年六月の裁判官会同議事録以外には当時の資料を持ち合わせておりません。この議事録によりますと、浦和地裁及び京都地裁において法廷警備の必要性を考慮し法廷の音声を警察官控室に伝える装置を設けました。しかし、そのいずれの裁判所においても現実にこれを使用することはなかったようでございます。  なお、この装置により法廷の大体の様子は警察官控室で聞き取れますが、被告人相互または被告人と弁護人の協議をする声などは全く聞き取れないものでございます。また、この装置のスイッチは法廷の裁判官席に置かれまして、法廷の状況により裁判長が必要と認めるとき装置を作動させるものとされていたということでございます。そういうことで、この装置を盗聴器と呼ぶのは適当でないように思われます。そのような法廷警備の必要から考えられた装置でございますが、先ほど申しましたとおり浦和、京都地裁でも現実には使用されなかったとのことでございます。また、この会同の席上でも、法廷の模様を法廷外の警察官に伝えるためにそのような装置を必ずしも使う必要はなく、またそのような装置を設けた場合裁判所の公正を疑われるおそれがあるので、そのようなことはできる限り避けるべきであるという旨の意見が強く出ております。  以上のような協議の状況からいたしますと、当時いわゆる荒れる法廷が続出しておりました特別の状況のもとで一、二の庁でそのような装置を備えたことはあるようでございますが、その庁でも現実にこれを使用することはなかったというふうに推測されます。
  213. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 時間がありませんので私から言いますと、昭和二十八年一月二十九日の新聞の「声」の欄に主任弁護人の投書が出ております。「最近浦和地裁の法廷に立会った際、盗聴器とりつけの事実を発見して裁判所の態度に暗然とした。裁判長は法廷警備の必要上警察の要請を容れて盗聴を許したのだと釈明した。」警察の要請を入れて盗聴させたということです。それから警備においても、「法廷の窓に金網を張る。裁判長の足下には非常ベルをとりつける。傍聴人に対しては身体検査をする。」「表門をとざして人一人がやっと通れる程度に木さくを設けて通行を制限し、法廷外には百人以上の武装警官を待機させ、法廷内には数人の私服警官をしのばせた。」「まだ足らぬから警官に盗聴器を利用させる必要があるというのでもあろうか。」もっと長いのですが、こういう投書を出されました。  これに対して、今度は二月十六日の朝日に最高裁判所の情報課から釈明が出ております。使わなかったどころではなくて、「裁判所の要請により派遣された警察職員が法廷の模様を別室で聴取したことは投書の通りです。しかしこれは廷外で待機している警察職員が裁判長の命を受けて退廷命令執行等の場合突然廷内に呼び入れられたのでは、それまでの状況がわからず、裁判長の命令を正しく速やかに実行することができないという警察側の要望」があってこれをやったのだ、こう言っているわけです。  これが問題なのは、盗聴器を備えつけたということ、そして今最高裁の投書を見ますとそれを使ったということであります。担当の弁護人に聞いてみましたら、実際は法廷の壁の一部をくりぬいて警察官がのぞけるように穴をあけたということもあります。それから弁護人、被告人が法廷で打ち合わせをします、小さい声でやっても盗聴器が備えつけられているのであれば聞かれたと思わざるを得ないということであります。法廷の天井にくっつけていたわけです。  この弁護人の投書の中で、「担当裁判長は円熟した人格者であるが、この人格者ですらが法廷の盗聴器を不見識とも何とも思わないらしい所に、むしろ司法の権威をおとす危機がひそんでいるのだと私は敢て直言したい。」二十八年にこの大先生は看破しているわけです。今それを使わなかったというようなことを言われますけれども、そういう態度ではまさに阪口弁護士が言っておりますように、「おどろくべき裁判官の認識である。もしかすると、今でも、特別な法廷には盗聴器がつけられているのではないかという不安感におそわれた。」私もこの事件を知っておりますけれども、そういう疑問を解消することができないわけであります。そういう点から、現在はこのような盗聴器は使っていないと断言できるのか、もしそれに反して裁判長が盗聴器を使ったりした場合は処分の対象になるのか、御意見を伺って終わりたいと思います。
  214. 吉丸眞

    吉丸最高裁判所長官代理者 まず、現実にこれを使ったか使わなかったかの点につきましては、私ども先生御指摘の新聞については存じませんので、調査が行き届かなかったところがあろうかと存じます。  現在そのような装置を使っているのではないかという点でございますが、さきに御説明申しましたとおり法廷と警察官控室の間にそのような装置を設けましたのは、昭和二十八年ごろいわゆる荒れる法廷が続発した特別の状況のもとに若干の裁判所で考案されたものでございまして、先ほど御紹介いたしました会同におきましても、そのようなことはできるだけ避けるべきであろうという意見が強く出ております。そのようなこともございますし、現在は当時とは状況が違ってきておりますので、そのようなことを行っているところは全くないと考えております。
  215. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 終わります。
  216. 片岡清一

    片岡委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  217. 片岡清一

    片岡委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  まず、裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  218. 片岡清一

    片岡委員長 起立十四名。  念のため、反対の諸君の起立を求めます。     〔反対者起立〕
  219. 片岡清一

    片岡委員長 起立十四名。  可否同数であります。よって、委員長は、国会法第五十条の規定により、可と決します。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  次に、検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  220. 片岡清一

    片岡委員長 起立十四名。  念のため、反対の諸君の起立を求めます。     〔反対者起立〕
  221. 片岡清一

    片岡委員長 起立十四名。  可否同数であります。よって、委員長は、国会法第五十条の規定により、可と決します。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  222. 片岡清一

    片岡委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  223. 片岡清一

    片岡委員長 この際、理事補欠選任についてお諮りいたします。  本日、岡本富夫委員辞任により、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例によりまして、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  224. 片岡清一

    片岡委員長 御異議なしと認めます。よって、委員長岡本富夫君を理事に指名いたします。  次回は、明十一日水曜日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後三時二分散会      ————◇—————