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1985-11-20 第103回国会 衆議院 法務委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和六十年十月十四日)(月曜日 )(午前零時現在)における本委員は、次のとお りである。   委員長 片岡 清一君    理事 太田 誠一君 理事 亀井 静香君    理事 高村 正彦君 理事 森   清君    理事 天野  等君 理事 横山 利秋君    理事 岡本 富夫君 理事 三浦  隆君       井出一太郎君    上村千一郎君       衛藤征士郎君    熊川 次男君       栗原 祐幸君    塩崎  潤君       玉置 和郎君    丹羽 兵助君       宮崎 茂一君    山崎武三郎君       稲葉 誠一君    小澤 克介君       高沢 寅男君    日野 市朗君       山花 貞夫君    中村  巖君       橋本 文彦君    伊藤 昌弘君       柴田 睦夫君    林  百郎君     ————————————— 昭和六十年十一月二十日(水曜日)     午前十時二十五分開議  出席委員   委員長 片岡 清一君    理事 太田 誠一君 理事 亀井 静香君    理事 高村 正彦君 理事 森   清君    理事 天野  等君 理事 横山 利秋君    理事 岡本 富夫君 理事 三浦  隆君       上村千一郎君    熊川 次男君       栗原 祐幸君    丹羽 兵助君       宮崎 茂一君    山崎武三郎君       稲葉 誠一君    小澤 克介君       中村  巖君    橋本 文彦君       伊藤 昌弘君    柴田 睦夫君  出席国務大臣         法 務 大 臣 嶋崎  均君  出席政府委員         法務大臣官房長 岡村 泰孝君         法務大臣官房司         法法制調査部長 井嶋 一友君         法務省民事局長 枇杷田泰助君         法務省刑事局長 筧  榮一君         法務省矯正局長         法務省人権擁護 石山  陽君         局長      野崎 幸雄君         法務省入国管理         局長      小林 俊二君  委員外出席者         警察庁長官官房         審議官     小池 康雄君         外務大臣官房審         議官      福田  博君         外務大臣官房領         事移住部旅券課         長       飯田  稔君         告税庁調査査察         部調査課長   友浦 栄二君         文部省初等中等         教育局中学校課         長       林田 英樹君         厚生省援護局業         務第一課長   石井  清君         最高裁判所事務         総局家庭局長  猪瀬愼一郎君         法務委員会調査         室長      末永 秀夫君     ————————————— 委員の異動 十月二十八日  辞任         補欠選任   熊川 次男君    小此木彦三郎君   小澤 克介君     堀  昌雄君 同日  辞任         補欠選任   小此木彦三郎君    熊川 次男君   堀  昌雄君     小澤 克介君 同月二十九日  辞任         補欠選任   上村千一郎君     小渕 恵三君 同日  辞任         補欠選任   小渕 恵三君     上村千一郎君     ————————————— 十月十四日  外国人登録法の一部を改正する法律案稲葉誠  一君外七名提出、第百一回国会衆法第二一号) 十一月十一日  刑事訴訟法の一部改正に関する請願(林百郎君  紹介)(第一七〇号) 同月二十日  外国人登録法改正等に関する請願横山利秋君  紹介)(第三二三号)  同(横山利秋紹介)(第三三一号)  同(横山利秋紹介)(第三五四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  参考人出頭要求に関する件  裁判所司法行政法務行政検察行政及び人  権擁護に関する件      ————◇—————
  2. 片岡清一

    片岡委員長 これより会議を開きます。  国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  裁判所司法行政法務行政及び検察行政等の適正を期するため、本会期中  裁判所司法行政に関する事項  法務行政及び検察行政に関する事項並びに  国内治安及び人権擁護に関する事項について、小委員会の設置、関係各方面からの説明聴取及び資料の要求等方法により、国政調査を行うため、議長に対し、承認を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 片岡清一

    片岡委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  4. 片岡清一

    片岡委員長 お諮りいたします。  本日、最高裁判所猪瀬家庭局長から出席説明要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 片岡清一

    片岡委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  6. 片岡清一

    片岡委員長 裁判所司法行政法務行政検察行政及び人権擁護に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。横山利秋君。
  7. 横山利秋

    横山委員 短い時間で意を尽くせないかもしれませんけれども、まず最初に、世界基督教統一神霊協会の問題についてお伺いをしたいと思います。  私の手元にこれだけの手紙が来ておるのであります。この手紙は一様に基督教神霊協会全国的な組織の中で、娘や息子訪米をするということについて親が心配をして、何とかしてそれをとめてもらいたい、親は絶対反対であるという内容がほとんどであります。  例えば、一つ読みますと、   私共の娘は昨年より統一教会入信家庭を捨て職場を捨て友達をも捨て、文鮮明に献身し多くの嘘をつき持てる預金は全部献金をし無一文になりながら友達を騙し借金をし語学も出来ないのに渡航しようとしています。  こういう事は悲劇が目に見えています。  多くの無知な若者を騙し嘘でかためたこのでたらめの宗教の今回の渡航を私共親としてどんな事があっても絶対に許す事が出来ません。  どうぞ許可しない様にお願い致します。これは外務省及びアメリカ大使館に出した模様であります。  それからこの陳情書は、岩手県の人でありますが、  昨年九月に渡米の動きがあり札幌のアメリカ領事館宛陳情手紙を出したところ、統一教会側から、息子(幹雄)と連名でニセの親の承諾書が提出されており憤慨しております。 という内容がございます。  あるいはまたこちらの手紙によりますと、秋田県の人ですが、   最近の情報によるとアメリカ在住の教祖に現金を運ぶ目的観光旅行と称し渡航費用は往路だけ教会より支給し用件が済むと伝道と称し募金活動をさせ次第に行方不明とさせられると、被害者の会員の方々より聞いております。 という内容であります。  あるいはこちらの手紙は内部的な信者から信者への手紙のようでありますが、中間を省略いたしますと、  今は、その為の人材復帰であり万物復帰なのです。日本はたくさんの技術を提供するのです。とにかく、今、摂理世界は大きく動いています。今年中に四千名渡米人事になります。  一日も早く、地上天国を創造し、神の国を実現するのです。  神様はいつでも小原さんを愛し、待っています。 という内容であります。  こちらの方はある組織からの連絡事項でありますが、  父母成婚式摂理が一六年伸びた。(二〇〇一年) 一九八八年までに五万人を米国に送る。 ビデオセンターを二五〇から七五〇にする、八八年までに。(米国) 日本から韓国に三五〇〇組を結婚式に送る。(日本でやるかも知れない。) 千葉のチグサで米国行きの灯さらいをする。「今後、カインがアベルに従るようになれば蕩滅はしなくても良い。」 七年かかる摂理ダンベリーの為一年で終わった。 米国の七〇〇〇人の牧師を韓国に連れてゆく。非原理の人を判らすためには、金と人材が必要である。 親に捕まったらなんとしても逃げだせと言われていた。 等々、これはもう全部その種の手紙でありますが、親の方から本当に悲痛な叫び声を上げて、渡航をさせないようにしてもらいたい、こういう内容であります。  これはある脱会をした人の手紙内容でありますが、   自分は六日に出発するつもりでした。文鮮明の御用の為に、医療奉仕団二十名の一員として行く所でした。 英語はまるきり駄目でしたし、看護婦の資格はありません。 幹部の話では日本人二百人、イギリス人二百人、アメリカ人百人が今回動員されると云っています。 三年は日本に帰れないと云っていますが、自分は一生アメリカにいるつもりでした。 上司は文鮮明の為に働く事だし名誉だと云い、自分もそう思った。「親に反対されたらどうするか」と聞かれたので「反対されても行きます」と云ったので「よし判った」と云いました。結局は、親たちは賛成する筈はなく、ゴマ化すか反対されても強行するしかなかったのです。 レールの上にのって、どこまでも死ぬまでやるしかなかったし、今考えると恐しいし、親に感謝する。 これは脱会した人の手紙であります。事ほどさような状況で、日ごとごと私のところへ電話がかかるか、あるいはまた手紙が来るか、面会に来るかという状況なのであります。  今日まで私はしばしば本委員会で取り上げてきたわけでありますが、大体においては、法務省東京法務局人権擁護部窓口になってくださるというので、そちらへお渡しをして善処を望んでおったわけでありますが、最近このような大規模な渡米計画があるということですから、一遍政府側に次の点を聞きたいのです。  もちろん、改めて私は言いますけれども宗教世界でありますから、私ども統一協会教義がいいとか悪いとかという立場にあるわけではございません。また統一協会も、いろいろな問題はありますけれども、とにかく今日国際的な宗教団体であることは間違いないのであります。私がかつて久保木会長にお目にかかったときに、宗教のことについて私とやかく申しません、意見は違いますけれども申しません、けれども違法なり不当なり人権じゅうりんなり脱税なりそういうようなことは、これは法を守ってもらわなければ困ります、もしもそういう違法性があるならば、私ども法務委員としても断固として追及をせざるを得ませんよということは強く言ってあるわけです。久保木会長はそのときに、親が反対するならば入信をさせません、親の同意というものは大事ですからと、かたく私に言われたことなんです。それが最近において、これだけ親が反対するのに渡米計画全国的にある。こういうことは家庭悲劇を続発をさせていく傾向にありまして、成人者でありますから本人の自由と言い切れない家庭的な問題が続出をいたしております。  御存じのように、先般名古屋小松真弓さんという女性アメリカに派遣されまして、そして物売りをやっておりましたところ殺害をされました。これは大問題になりまして、マスコミも取り上げ、名古屋でも大々的に取り上げられて、結局、小松さんのお父さんは統一協会相手にして損害賠償の請求をいたしました。最近これは和解になったそうであります。しかし、小松真弓さんが殺されたということは、そういう殺されるようなところで物売りをさせられたというところにあって、小松さん一人の問題ではないと私は思います。小松さんの米国内死亡に関する協会の責任ある報告を求め、今後の活動の安全を保障されるべきである、私はそう思いますが、いかがでしょう。
  8. 野崎幸雄

    野崎政府委員 御指摘事案につきましては、私ども新聞等の報道で承知をいたしておるところでございまして、その内容が非常に悲惨な事件でございますところから、まことにお気の毒であったというふうに考えております。統一協会におきましても、今後このような不祥事が二度と発生しないように、格別の御配慮をお願いしたいと考えておるものでございますが、ただ、私ども人権擁護行政立場から統一協会にその事案についての報告を求め、特段の要求をするということになりますと、いささか疑問がないわけではございません。しかし本日、今御指摘のような御要望がございましたことは、東京法務局協会としょっちゅう接触をいたしておりますので、その旨をお伝えしておきたい、かように考えております。
  9. 横山利秋

    横山委員 四千名とうわさされている訪米計画、数年間に五万名という情報もあるわけですが、これが小松さんのように観光ビザ出国をして、期限が切れても不法残留させる可能性が極めて多いと言われています。それが今回、親が外務省なりあるいはアメリカ大使館査証課に対して主張しておる多くの理由の中の一つ。そして外務省大使館査証課も、もしそれが顕著な疑いがあるならばビザは出しませんということをかねて言っておられるのでありますが、今回このような大量の訪米計画について、外務省はやはり法務省とともに一体どういう計画なのかということについてだめを押す必要があるのではないかと思いますが、いかがですか。
  10. 飯田稔

    飯田説明員 不法残留疑いがあるものという場合、これはもう申し上げるまでもなく、相手国政府行政処分の問題になるわけで、外務省といたしましては、これに介入するということは非常に難しいと考えます。しかし、私どもといたしましてできるという問題につきましては、まず旅券申請段階の問題がございます。御承知のように、関係子女が犯罪を犯しているといった極めて限定された場合以外は、旅券法発給をとどめるということはできないわけでございます。そこで、外務省といたしましては、実際上の措置といたしまして、父母会から陳情がございました九月以降、各都道府県と協力いたしまして、旅券申請が行われた際に家族それから関係者に連絡いたしまして、基本的な家族子女との話し合いが行われるような措置をとっております。現在までのところ、こうした措置が何回か全国的に行われておりまして、その中には渡航を中止したケースもあるやに聞いております。  他方旅券法の観点から申し上げますと、観光ビザということで渡航して実際に不法残留する者がかなり多いというふうに伺っておりますが、申請の際に渡航目的を虚偽の申請を行えば、これは旅券法上罰せられることになっております。他方不法残留ということで強制退去ということになれば、これも次回の旅券申請の際に旅券発給を停止するあるいは規制するという対処ができるわけでございます。  それから、在京米国大使館との関係につきましては、この九月以降、外務省といたしましては米国大使館と非公式に話し合いを行っておりますし、現状につきましても説明いたしまして、善処方を要望いたしております。今後も、父母会の方からこういう陳情がございますれば、米国側に取り次ぐことはやぶさかではございません。
  11. 横山利秋

    横山委員 ぜひそれを徹底をしていただきたいと思います。私も、親が承諾し合法的に出国をする者までとめよと言っているわけではありません。少なくとも久保木さんが数年前私に約束しまして、入信はもちろん、家を出ることももちろん、外国へ行くことももちろん、親の了解なしにはさせませんと言いました。ところが、先ほど事例を挙げましたように、親の同意書を、にせの文書をつくる、そういう事実が明らかになったケースがあります。まことに言語道断だと私は思うのであります。  今お話がありましたが、訪米する青年や若い女性旅費滞在費、それから帰国旅費、これは一体だれが負担するのか。今までの事例を見ますと、結局は本人が親に銭をもらう、何としてもせびる。親が出さないとすれば朝鮮つぼなりなんなりを売って資金をつくる。それもそんなにできやしないから帰国旅費はなくなる。統一協会があるいは負担なさることがあるかもしれぬ。負担の原資になりますものは、訪米中に小松真弓さんが体験したように、物売りをする、そういうようなことがございまして、極めて危険であります。  私は、今人権擁護局長が言われたように、一つ民間団体宗教団体のことについて役所から説明を求めるということが少し問題があるとは承知しています。けれども、いやしくも宗教団体であり、社会的責任を持っており、国際的活動をなさっておるところであるから、私はよく言うのでありますけれども世界基督教統一神霊協会ももう少し問題を公開して堂々となさったらどうであろう。いろいろな誤解中傷や何かがあると統一協会は言われる。そうであるならば進んで、今回の訪米計画はこういうことなんです、こういう条件なんです、旅費滞在費帰国旅費はこういうことで調達をいたします、どうぞ御家族の皆さん御心配がないようにというようにやったらどうか。  そういうことを私がこの場で言っても仕方がありませんが、少なくとも人権擁護局としては、役所の仕事ではないんですけれども、聞く立場ではありませんけれども具体的事例が余りにも山積しておりますから、私どもとしても差し支えなければ十分計画承知しておきたい、誤解誤解中傷中傷といって整理をして、そして私どもも対処さしてもらいたいということをじゅんじゅんと話して、今回の訪米計画は全体的な計画なのか、あるいは地方ホームに話してそれぞれの地方から具体的に出てきたものが全体になるのか、それにもやはり疑問があり、ことごとく秘密の状況になっておるようでありますが、そういう点を法務省として協会のトップクラスと十分お話をなさったらどうであろうか。今や、ここまできますと、ここまで膨大に全国的な問題になりますと、一東京法務局人権擁護部にお任せをされてその報告を聴取なさっておる段階ではないのではないか、そう思いますが、局長はどうお考えになりますか。
  12. 野崎幸雄

    野崎政府委員 これまで入信者父母との間にいろいろ問題がございまして、法務局に対しまして人権擁護立場から何とかしてもらいたいという申し出がかねてよりなされてきておりました。その都度、私ども東京法務局を通じまして協会と接触いたしまして、父兄入信者が会って話し合える機会をつくるということに努力をしてまいりましたし、また協会の方でも、成人者とはいえども父母の方、父兄渡米に絶対反対であるという者についてはアメリカヘ連れてはいかないということも明言してもらっております。また、外国における宣教活動のために入信者を個々的に派遣することはあるけれども、今御指摘のありましたような大量の者を訪米させる計画はないといったことも私どもは伺っておるのであります。  それで、法務局といたしましても、どんな問題が起きても法務局が常に仲介の労をとるというのもかなり迂遠な方法でございますので、できれば父兄と直接お話し合いをなさったらどうか、またいろいろな計画についてかなりオープンにされたらどうかということもかねてから申し上げてきておるところでございまして、協会の方でも、例えば教義についての議論であるならばいつでも応ずる、また、父兄の方から直接、協会の方に話をしてくれるならばいつでも交渉に応じるということを最近は言っておられます。今先生が御指摘になりましたような方向につきましては、私どももこれまでも努力をしてまいっておるところでございますけれども、今後とも人道上の立場から努力を継続していきたいと考えております。
  13. 横山利秋

    横山委員 今あなたのおっしゃったように、あなたのお話は、第一は、全国的な一定の計画ではないというふうに報告というか向こうから話を聞いたとおっしゃる。それから、親が反対している者は送らないと言ったとおっしゃる。それから、いつでも協会へ来てくだされば御説明をするとおっしゃる。問題はこの三点なんであります。  第一点は、私もその話をそのまま素直に受けてみますと、全体的な計画はないけれども、これだけの手紙が来ているのですから、地方ホームではやはりこのアメリカ行きを何らかの形でどんどん進めておるということが現実だと思います。それから、親が承知しない者を送らないと言っておいて、親の承諾書を偽造している協会があるわけです。それからその次は、いつでも会うと言っているのですけれども、この人たちホームヘ行く。それぞれの県にホームがあります。ホームへ行った経過というものがずっと出てまいりますけれども、極めて不親切であります。おらない、わからない、言えないということが全国的な状況なのであります。協会がそういう態度をおとりになるということは、あなたの報告とは違っておるわけであります。東京人権擁護部がお世話をされたものについてはまあまあという状況のようです。けれども地方ではそういうことがうまくいっておりません。それから地方人権擁護部があなたのおっしゃるような対応を必ずしも親にしておりません。統一協会についての知識がないことにも原因があると思います。そういう点については、私どもとしては極めて形式的なあなたのお答えだと言わざるを得ないのであります。もしそれ、あなたがそれを額面どおり信じておられて、そして全国的に訪米計画が、あらゆる秘術を尽くし、あらゆる方法を通じてどんどん送られたということがあったら、あなたは食言です。あなたは子供の使いじゃあるまいし、向こうから言われたらそのままオウム返しにこういう議事録に載せる。この議事録全国父母が見るわけですよ。法務省人権擁護局長が三点をここで確認をした、向こうがそう言ったから。それをまともに信じて、ここで麗々しくお話をなさった。実際はそうでないではないかとなったらどうなりますか。ですから、私はくどく言うのですけれども、一遍あなた自身統一協会幹部にお会いになって、じゅんじゅんと誠意を披瀝して、私が今言ったような趣旨に基づいて、事態の真相というもの、真実というもの、それからお約束のあった、親の反対があるならば行かせないということを全国に徹底する手段をしてもらいたい、ホームヘ行ったら親に対して親切丁寧に、言わない、うそを言う、そしてわからないということでいっておる実態を改善してもらいたいということを、あなた自身がやるべきではないかと思うのですよ。いかがですか。
  14. 野崎幸雄

    野崎政府委員 委員も冒頭に仰せられましたように、国の人権擁護機関宗教団体に対してどのような働きかけができるかということを理屈から考えてまいりますとなかなか難しい問題がございます。ただ、私どもはかねてより人道上の立場から統一協会とずっと話し合ってまいりまして、統一協会の方では東京法務局窓口にして折衝をしてくれるならば、いつでも協会幹部が会う、話し合いに応ずるということで、これまで推移してまいっております。私どもは今までそれで一応成果を上げてきておると考えておりましたが……(横山委員「全然上がっておりませんよ」と呼ぶ)今地方法務局関係についてもお話がございましたので、その趣旨を再度徹底してまいりたい、また、これから統一協会とどのように対応するかについては、ひとつ勉強させていただきたい、かように思っております。
  15. 横山利秋

    横山委員 誓約式あるいは結婚式ということがかつて日本韓国で行われました。これは結婚をした人たちの言い分といいますかなんかは、お父様、文鮮明師ですね、文鮮明が引き合わせてくださった、神様が引き合わせくださった人だからということで、きのうまで会ったこともない人と唯々諾々として結婚する。ある日忽然として娘にあるいは息子に嫁さんが来て、韓国結婚式をやる、日本結婚式をやる、親がびっくりして、そこで大騒動になったわけであります。  局長は、最近韓国日本で三千五百組の集団結婚式があるといううわさがありますが、そんな話を聞いていますか。
  16. 野崎幸雄

    野崎政府委員 ただいまお話のございましたような集団結婚式が、最近韓国または日本で行われるといううわさがあることは承知しておりません。
  17. 横山利秋

    横山委員 では、それもお会いになったときに確かめてください。  それから、先般の委員会で、朝鮮つぼあるいは印鑑の販売が倍、十倍、途方もない原価と販売価で行われております。不当利益あるいは販売法違反あるいは脱税というような問題がございます。これも今回たくさんの訪米をするということになりますと、その資金をつくらなければなりません。これが発展をする可能性がありますが、国税庁おいでになってもらっておるのですけれども統一協会系統のいろいろな会社があります。その会社がやっておるので統一協会関係がないとかなんとか言うていつも話題になるのですけれども、これはもう歴然として統一協会関係の系統で、信者があるいは入信者の若い者がみんな売りに歩いているのですから、そんなことは言えた義理じゃないと私は思っておるのですが、どうもこの種の脱税の摘発が成果を上げていない。成果を上げていない原因は、私も大蔵委員をやってわかっているのですけれども、内部告発がない、それから調査に対する協力度合いが非常に悪い、だからいつまでたってもこの問題がうまくいかないと痛感しているのですが、国税庁のその後の調査経過はいかがですか。
  18. 友浦栄二

    ○友浦説明員 お答え申し上げます。  個別にわたる事項につきましては答弁を差し控えさせていただきたいと思いますが、前回申し上げましたけれども、私どもとしましては新聞、雑誌あるいは外部の諸情報、それから国会でいろいろ御議論になりましたことを踏まえまして、これらの情報をもとに、また内部の資料それから申告書等を総合勘案して、課税上問題があるというときは事実調査を行うなど適正な処理に努めております。今お尋ねの法人につきましても、そういった観点について鋭意適正に対処してまいりたいと考えております。
  19. 横山利秋

    横山委員 まあ個々の問題に触れるのは避けますが、もう既に先般の法務委員会で私が具体的な事例を内部資料をもとにして御説明をして善処を求めておいたのですが、この間私が当委員会で内部資料を含めて問題提起したことについては調査はなさっていらっしゃるでしょうね。
  20. 友浦栄二

    ○友浦説明員 調査をしているかどうかお答えすることは差し控えさせていただきますが、先般委員会で先生からいろいろ御指摘のありました点、それから提示いただきました資料については、重要な資料として活用してまいりたいと考えております。
  21. 横山利秋

    横山委員 北海道では、先ほど御紹介したように、牧師さんを除いて信者は根こそぎ訪米させるという話があるそうでございます。  この際、人権擁護局長にもう一回だめを押しておきたいのですが、東京法務局はもう何回も経験しておるので対処についてまずまずだと思うのですけれども、この間、父母の会が東京法務局の担当のところに行ったら、こういう返事があったそうです。あなた方はうそを言っているのじゃないか、あなた方は、言うならば一大虎にほえて万夫実を伝うということで言っているのじゃないか、そんな事実はないと言うて、あたかも父母の会が偽りの作文をつくって方々に宣伝しているのじゃないかと言わんばかりの態度を示したので、非常に憤慨をしたそうであります。私もさっきからくどく言っているように、何のたれ子はどこにおるとか、何のたれがしは今どこにおるとか、そういう具体的な事実の連絡だけやっておるのであって、今日的な統一協会の全貌というものについて知識が足らないのではないか。情報収集が足らないのではないか。地方法務局陳情があったやつが本省に集まり東京に集まっている情報網というものが整理がされていないのではないか。いわんや地方法務局では、担当者はこの種の問題についての対処の仕方、それから、親から相談があったときに、あなたが今言った、親のうんと言わないことは行われないということについての徹底が足らないのじゃないか。ホームヘ行ったら十分にいろいろと話をしてくれると約束をしたことが行われないことを、なぜ地方法務局で担保してやらないのか。ということを考えますと、各地の法務局の対処の仕方が極めて不十分ではないか、もう少し本件についての徹底を期し、知識を十分送ることが適当ではないか、こう思いますが、いかがですか。
  22. 野崎幸雄

    野崎政府委員 統一協会の件につきましては、地方法務局に相談がございましたときには、それを東京法務局に取り次いで処理をしてまいっておるのでありまして、私どもは一応これまでのいきさつ等を地方法務局に徹底させているつもりでございますけれども、今委員から重ねてもう少し徹底さすべきではないかという御指摘がございましたので、その趣旨を踏まえて、一層全国法務局が一体となってこの問題に取り組めるようにしていきたい、また、父母の会等との接触に当たりましても万遺漏なきを期したい、かように考えております。
  23. 横山利秋

    横山委員 大臣、ここに、私の手元にこれだけの、お父さん、お母さんから整理された人名録があるわけでございます。私は、恐らくこの全国的な訴えの人名録は、東京法務局なりあるいは法務省に整備されていると思うのですけれども、一人一人と言わないで一遍整理されて、訴えのあったものを全部そろえて、先ほどから私が言うように一遍統一協会幹部と総括的な話し合いをされて、そして私が希望いたしたいのは、一つは、信仰の是非について議論しようとは思わない。しかし法律には従ってもらわなければ困る。それから親との、キリスト教ですからね、キリスト教は愛ですから、愛の根源は家庭なんですから、その家庭を破壊しなければ入信がさせられない、訪米もさせられない、そういうことでは困る、という点も含めて一遍大臣としても一これは放置ができません。かつての法務大臣であり今の衆議院議長が法務大臣在任当時、めいの方が入信されたことがあります。それで、法務大臣として今まで私の質問にまあまあとお答えになっておったのですけれども自分のめいが入信して親戚一同大問題になったというときに、私は想像するに本当に苦悩されたと思うのです。そういうことを考えますと、自分の身になって初めてよくわかる親子の問題であります。ですから法務大臣もひとつこの点について少し検討をされて、全国父母の痛切な訴えにこたえていただくような手当てを指示してもらいたいと思うのです。
  24. 嶋崎均

    ○嶋崎国務大臣 ただいま横山委員から御質問の統一協会の問題につきましては、最近、私は余りよく存じておりませんでしたが、この機会にいろいろ承ってみますと、大量の渡米だとかいったようなことが考えられておるという話をお聞きをしたわけでございますけれども、これらの問題につきましては、もう既に御承知のとおり、東京法務局を通じましてある程度統一協会の方と連絡をとってその対処をやるということで今日まで経過をしてきたようなふうに聞いております。またその内容につきましても、ごく最近の状態では少しそういうケースが少なくなっておるやに聞いておったわけでございます。そういうところへ本日のようなお話でございますので、もう一度きちっとそういう話については再構築を考えてみまして、どういうやり方をやったらいいのかというようなことについてよく検討をさせていただきたいというふうに思っておるわけでございます。特に、東京法務局を中心にして運用しておりますけれども、各地域それぞれ問題があるというようなことになるならば、法務省の中でもその横の連絡というものをより緊密化させることによってこの問題の処理に間違いがないように対処をいたしたいというふうに思っておる次第でございます。
  25. 横山利秋

    横山委員 念のために申し上げておきますが、私は大臣を初め皆さんに、政治の世界から統一協会教義そのものについては言及すべきことではないと申し上げました。しかしそのことと私個人の、私も社会党の宗教問題特別委員長をやっているものですから、多少宗教的な教義なりなんなりについては関心があるわけであります。各キリスト教系統のいろいろな牧師さん、いろいろな人の話も聞いてみましたし、統一協会教義も多少は読んだつもりであります。けれども私は賛成するわけにはまいりません、私の個人的な見解ではございますけれども。それはキリスト教のカトリックにしてもプロテスタントにしても、キリスト教系統の人たちの意見は、これは間違った教義である、歪曲した教義であるという点でほぼ一致をいたしておるわけであります。しかしそれはとやこう言うべき問題ではなく、やはりアフリカの土着の国民が太陽を神様だと言い、あるいは石を神様だと言えばそれだけの話でございますから、そういう意味合いにおいては、それをとやこう言うわけではございません。その点だけをちょっと付言をいたして、私の意見だけは申し上げておきます。さて、次に外国弁護士問題についてお伺いをいたします。  日米通商航海条約が発端になったこととは思いますけれども、昨年来外国弁護士問題が、法務省でも本当に鋭意努力をされておるし、日弁連でも十七回にわたる熱心な討議が行われてきました。私は、中曽根内閣がこの外国弁護士問題を貿易摩擦の問題の中に取り入れたということについては納得ができませんけれども、言うならば日本の国際化の時代、あるいは弁護士の国際化の時代に、政治的にもう避けて通れない問題であるというふうに私も理解せざるを得ないのであります。しかしながら、この外国弁護士問題が重大であればあるほどこの問題の扱いについては慎重でなけねはならぬとは思いますが、今や大詰めに来たような感じもいたします。  まず最初にお伺いしたいのは、日本の弁護士の法律を変え、そして外国弁護士を招くということと同様に、相互主義なんですから、我々国会から法務省から日弁連あるいは最高裁に至るまでいういろと苦労して、工夫して何とか円満な解決をしようとしておる。対応するアメリカが、今承れば一州か二州しか相互主義の体制がないというのでありますが、この法律が仮に制定をされるならば日本全国に及ぶものであります。そういう点ではアメリカ側は日本要求をしながら自分の方の体制については欠くるところがあるのではないか、実行をアメリカ側でどこが一体担保してくれるのか、そういう点に非常に疑問を持っておるわけでありますが、まずその点からどうなっておるか伺いたいと思います。
  26. 井嶋一友

    井嶋政府委員 お答えいたします。  委員指摘のとおり、外国弁護士の受け入れの問題につきましてはまさに我が国の弁護士制度と深くかかわり合いを持つ問題でございますから、政府といたしましては、日弁連の自主的な意見を尊重しつつ国際的にも国内的にも妥当とされる解決を図るという立場で従来終始してまいったところでございまして、現在もその立場を堅持しておるわけでございます。  御案内のように、日弁連が九片に第一次案をまとめられまして、これをたたき台として来る十二月九日の臨時総会で会内の意見の形成を図るという段階に至っておるわけで、まさに大詰めの段階に至っておるわけでございます。私どもといたしましては、まずこの問題の適正な解決が図られるように会内意見の形成を見守り、またそれを期待をしておるというのが現在の状況でございます。  ところで、ただいま御指摘の相互主義の問題でございますけれども、御案内のようにアメリカは現在ニューヨーク州一州のみが外国弁護士を受け入れる制度を持っておるわけでございます。我が国がこの外国弁護士受け入れ制度を確立いたしますと、もちろん我が国の全土を開くという立場になるわけでございますから、御指摘のようにアメリカとの関係において不公平ではないかという問題が起こるわけでございます。この問題にっきましては、先ほど御指摘しました第一次案におきましては、そういった公平、公正を欠くという観点から、少なくともアメリカのような州を単位とする制度を持っておる国との関係におきましては、相当数の主要な州がこれを開くことによって実質的な平等性を保証するということを主張すべきであるということが書かれておるわけでございまして、私どももその線にのっとりましてアメリカとの交渉も現在いたしておるところでございますけれども、問題は日弁連の自主的意見の形成がまず先決でございますので、その辺を見守りながら、さらに日米との間でもそういった立場を尊重して協議を続けてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  なお、アメリカにおきましてはニューヨーク州だけが現在開いておりますが、現在ハワイ、カリフォルニア州、ワシントンDC、シカゴ等におきましても、我が国の動きを見つつ開放に向けての努力をしておるというふうに承知をいたしております。
  27. 横山利秋

    横山委員 本件については、私が想像するに、先ほど言ったような政治的必要性ということがわかる人とそのことについて余りわからない人とある。中央と地方とで弁護士の認識について違いがある人がある。それから筋をとうとぶ一本やりの人と政治的に判断をせざるを得ないじゃないかという人と違いがある。単位弁護士会の中でもやはり意見の取りまとめに相違ができる。  そういうことでございますので、まとめ方の内容もさることながら、日本側が決めたらアメリカ側がそれを見守りながらやると言うんだけれども、そのやることを、実行を担保するのはアメリカ側で一体だれなのか、各州がやってくれるだろうなのか、アメリカ側で、じゃおまえの方がそれをやってくれたら、おれの方はおれが責任持って各州をそういうふうに指導し必ず約束を果たすという組織なり人は一体だれなのか、当てにならぬではないかという感じがやはり私にもあるわけであります。それが一つ。  それからもう一つは、大なり小なり内容によって違いがありますけれども、とにかく話がついた、法律が改正された。そして日本の弁護士の職務にアメリカの弁護士が入ってくるというそのデメリットのことばかり考えている人があるわけですね。どうしてもそれはやむを得ぬと思う。しかし、こういうようなときになってみますと、日本における弁護士業務についてやはり新しい工夫が必要になるんではないか。この間、弁護士会で、弁護士業務の宣伝について間口を開くか開かぬかで随分論争なさったそうですけれどもアメリカの弁護士がやっているように弁護士の職域を拡張して、企業の相談なり庶民の相談なりというものがアメリカや各国で行われているように、そういうものがもっと素直に、率直に、広範に、簡易に行われるような土壌をこの際つくるべきではなかろうか。それがメリットになるかどうかわかりませんけれども、少なくともそういうことをしなければ——アメリカで法廷外における弁護士活動というものが極めて広範に行われている人たちが来るんですから、日本においてもそういう工夫をこれから少しすべきではないか。弁護士さんといえば高い報酬、弁護士さんといえば時間がかかる、裁判に持っていけば何年もかかる、そういう日本の国民が弁護士に抱いております、裁判に抱いております印象というものを、もっと法廷外における弁護士活動というもののジャンルを広げるということをあわせて行わなければならない時期ではなかろうか、そう思いますが、いかがですか。
  28. 井嶋一友

    井嶋政府委員 委員先ほど御指摘になりましたように、社会的、経済的な国際化の進展に伴いまして、法律サービス分野におきましても国際化の必要性が高まってきておるという御認識を述べられましたが、まさにそういうことでございまして、こういった新しい傾向、あるいは今委員が御指摘になったような法廷外活動の強化といったような観点、そういったものすべてがこの問題を解決する際に考慮され、またウエートを置いて考えられなければならない問題だということで、日弁連内でもそういった議論のもとに受け入れを決め、受け入れについての施策を進めておられるわけでありまして、この方向につきましては私どもも全く合意をしておるわけでございまして、そういった方向に向けてさらに努力をしてまいらなければならないというふうに思っておるわけでございます。もちろん会内においては各種の立場からいろいろの御意見があることはよく承知をいたしておりますけれども、まずはやはり日弁連の自主的な意見が形成されるということが大事であり、おっしゃるような種々の観点から日弁連が自主的に態度をお決めになるということが大事であるというふうに思っております。
  29. 横山利秋

    横山委員 あわせてお伺いしたいのですが、この間、弁護士の皆さんと話をしておったら、今度、通産省ですか、多重多層被害者の救済機関をつくる。要するに、豊田グループだとかあるいはサラ金だとか、そういう広範な、しかも層がダブっておる多重多層の被害者を救済するには裁判ではとても時間がかかるから、この際ひとつそういうことを、信販をやっているような会社、サラ金をやっているような会社等も参加して、通産省だったと思うのですが、そういう救済機関をつくって、もっと迅速に問題を処理するための要綱を、私も拝見したのです。私はこの前この法務委員会で言ったのですけれども、このごろ準司法機関といいますか、そういうものがめちゃくちゃにできてきた。簡易裁判所があるじゃないかと言いたいのだけれども、簡易裁判所はこのごろ背広を着てネクタイもしてきちんとしてござって、整理統合で統合をしてしまう。裁判所みたいな顔をして、駆け込み寺みたいな顔はもうしなくなった。これは悪口でございますから、私はそんなことはないよと言うのですけれども、裁判機能というものが遠のいて民間あるいは準司法機関というものがどんどんできていく傾向にあることを裁判所は一体何と思っておるのかと言うてこの前、嘆いたことがございましたが、そういう通産省関係の多重多層被害者の救済機関をつくるという話はあなたは知っていますか。
  30. 井嶋一友

    井嶋政府委員 ただいま御指摘の構想につきまして、私は承知をいたしておりません。しかし、御指摘のように社会経済の進展に伴いましていろいろなそういった問題が提起されつつあるということは認識をいたしております。しかし、それは結局司法制度という国の基本にかかわる問題との関連におきましていろいろ適切に考慮してまいらなければならないことだというふうに思っておりますけれども、そういった傾向があるということは十分承知をいたしております。
  31. 横山利秋

    横山委員 十分承知をしておるじゃないですよ。これは国の司法機関に対する国民の不信のあらわれだと私は思うのです。弁護士会としては単に職域の問題だから反対するということではないと私は思うのですけれども、少なくともそういうような状況下にあることについて、きょうは最高裁判所来ておらぬのか、少し襟を正してやらなければいかぬし、それから弁護士活動の問題について議論をいたしますときにやはり考えなければならぬことだと思うのです。  さて、その外国弁護士問題の大詰めは、要するに外国弁護士の名称、職務の範囲それから日弁連内の議決権等の問題、この三点に要約されていると私は思います。今、非常にデリケートなときですから、どうなっておる、こうなっておるということを余りここで言うのは適当ではないと思いますけれども、一体大詰めはどんな状況になっていますか。差し支えのない限りで結構ですから説明をしてもらいたい。
  32. 井嶋一友

    井嶋政府委員 先ほど来申し上げておりますように、現在、会内意見の形成の大詰めの段階でありますので、今御指摘のように個々の問題につきまして詳細に申し上げることは差し控えさせていただきたいと思いますが、御案内のように九月に理事会内の小委員会がつくりました第一次案というものがたたき台になっておるわけでございまして、これには御承知のとおり私どもも十数回にわたる検討会ということを通じて意見を申し上げておるわけでございまして、その中に結集されておるということでございます。そういったものをたたき台として現在作業が進められておるということでございますから、詳細な点につきましては差し控えますが、いずれにいたしましても、こういった考え方をもとに会内の意見が形成されることを期待し、見守っておるという現状でございます。
  33. 横山利秋

    横山委員 ともかくこの問題については、法務省、日弁連、それぞれ一年有半にわたって非常に精力的に、御苦労さんと言うほど何回も何回も討議を尽くされてきたのでありますから、ひとつ十分目配り、気配りをして、日弁連とコンセンサスを得て提案をしてほしいと思います。  これは、でき上がったときは政府提案になるのですか、議員提案になるのですか。
  34. 井嶋一友

    井嶋政府委員 その点につきましては、日弁連との間でも意見の合意は、検討は十分進んでおりません。したがって、現在の段階におきましては、まだその立場を私どもとして表明する段階ではございません。
  35. 横山利秋

    横山委員 次に、通常国会に関する問題についてお伺いをいたします。  まず第一に拘禁二法については、私ども拘禁二法に反対し、特に留置施設法に反対をし、その意味においては、法務大臣としてこのままではいかぬからこの際ひとつ政治的な決断をなさるべきだということをお勧めをし、理事会においても与党の皆さんに要望をしてきたのでありますが、拘禁二法はこれからどうなさるおつもりですか。
  36. 嶋崎均

    ○嶋崎国務大臣 既に御承知のように監獄法の改正、何しろ明治の終わりの方にできた法律でございまして、何らかの意味でその改正を図りたいという気持ちはかねてから持っておったわけでございますし、また、御承知のように過去に法案も提出をした、しかもそれが相当期間継続審議になったという経過もあるわけでございます。そういう観点から見まして、私たちはぜひこの刑事施設法案の成立を期したいという気持ちは全く変わっておらないわけでございます。不幸にしてさきの通常国会の場合には留置場法案との絡みというようなこともありましてついに意見調整ができなかったわけでございます。しかし、その後もそういう気持ちは変わっておりませんので、現在事務当局にせっかくそれらの折衝を進めて、調整をして御審議をいただけるような方向で努力をしてもらいたいということで調整を進めておるというのが段階でございます。したがいまして、それらができれば次の通常国会には出したいという気持ちを引き続き持っておるというのが実情でございます。その形等につきましては、既に御審議を願ったときの二法案、並べて整理をしていくというようなやり方が基本であろうというふうに思いますけれども、さきの通常国会の中でもいろいろな議論がありましたので、いかなる事態にも対応できるような準備はしていかなければならぬというふうに思っておる次第でございます。
  37. 横山利秋

    横山委員 どうも大臣のお話は新鮮味がないので、聞けばありきたりの御答弁に終始するような感じがするのですが、私の方は別に、拘禁二法今度出しません、調整がつかない限りは出しませんとお答えになればそれで済むことなんであります。しかし、今後私どもも勉強もしなければならぬし、大臣が政府部内で決断を待って一つ方法になればそれ相当に対処しなければならぬのですから、今のお話によると調整がつけば出すということなんですが、本当につく自信がおありになるのですか。調整という意味はわかっているのですか。わかっているでしょう、私の言う調整は。私の言う調整とあなたの言う調整と違うのですか、一緒ですか。どういう意味の調整を言っていらっしゃるのですか。
  38. 石山陽

    ○石山(陽)政府委員 今、委員の仰せでございますが、委員の調整というのと私ども事務当局が考えている調整もまた違うかもしれません。それを全部調整するために調整という言葉があるわけでございますから、私どもといたしましては、前回廃案といいますか提出を断念いたしましたその経緯に関する諸問題がございました。それらをあわせまして、やはり提出すべき時期、方法、そういった手段等については国会でぜひ御審議をいただけるような案に十分事務的にまとめて出したいということで現在調整中でございます。
  39. 横山利秋

    横山委員 調整がつかなければ出したってまた同じことだから調整がつかなければ出さない、こういうふうに理解していいのですね。
  40. 石山陽

    ○石山(陽)政府委員 先ほど大臣からもお答えいたしましたように、私どもの刑事施設法は明治四十一年で、ことし七十七歳になる法律でございます。古くてぼろぼろだということは与党、野党の皆さんを問わず、国民の皆さんも絶対にこれは御異存ないと思います。ですから私どもは、近代的な刑事施策をやりたいということでこの法案を出しましたが、いろいろな経緯がございまして、五国会、一遍も審議が行なわれないまま廃案になりました。私どもとしては、この吹出せる場合にはぜひ審議をしていただきたい。それだけの条件が整えないのは、私どもは国会に対しての責任を持つ事務当局の立場としていかぬと思いますし、また国会の諸先生方にもぜひ御理解を得て、国会の審議をできるような法案にして出したい。そのためには関係方面の調整を十分尽くして、まあこれならば仕方がないじゃないかという雰囲気をつくらなければいかぬ、そのための調整を続けてまいりたいということでございます。
  41. 横山利秋

    横山委員 警察庁お帰りになったですか、いらっしゃいますか。警察庁はどういう考え方ですか。私は、本当に警察庁に悪いですけれども、ちょっとあきらめてもらえぬだろうかと思っておるのだけれども、小池さん、不幸にして留置場でちょっと問題が起こったもので今あなたのところは状況が都合が悪いのです。どうしてもあのままですか。
  42. 小池康雄

    ○小池説明員 警察庁といたしましては、留置施設法案について早期にその成立を図ることが必要だ、こういうふうに考えておるわけでございまして、このため法案の内容につきまして関係方面に十分御理解を得られるように努めておるわけでございます。また、先ほど調整の問題がございましたが、その内容につきまして法務省とも十分詰めているところでございます。
  43. 横山利秋

    横山委員 それでは、私の言う調整の意味と政府内部の調整とはちょっと違うようでございますけれども、私の意味がわかっていらっしゃれば結構なことなんでございます。同じような内容を国会へ出してもだめだということは、もうこれはしかと申し上げておきます。英断を持った処置をしなければ国会は通過しない、審議にも私ども協力ができないということを申し上げておきます。  それから、この間、東京法務局長がテレビ会社を呼んで、いわゆるやらせに警告を発したということを新聞で見ました。フィナーレで幕がおりてから、おれもちょっとごあいさつするわというような感じを私は受けたのですね。今ごろ何だ。私はいつも言っているのですけれども、とにかく法務省人権擁護のとりでなんだから、局長さんがいるのだから、この種の問題について一番最初に物を言わなければいかぬじゃないか。これは明らかに今の法務省人権擁護というものが、市井のちょこちょことした一大事なことですよ、しゅうとと嫁とがけんかしたとか、大事なことだ、大事なことだけれども、毎年毎年私が警告を発しておりますのは、そういうことをやっているとだんだん地盤沈下してしまう。憲法により法律により人権擁護法務省の大きな仕事の一つであるとすれば、時には法務大臣みずから出て、そして法務大臣ここにあり、人権擁護のとりで健在ということをやらなければだめだと私は言っているのです。やらせを新聞や雑誌やマスコミや、あらゆるものが取り上げているときに、一体人権擁護局は何をしておったか。そして幕切れになって東京法務局が出て、やらせの会社に警告を発したということでは、出しおくれた証文みたいなものじゃないか。そう思いませんか。
  44. 野崎幸雄

    野崎政府委員 私どもが今御指摘のやらせの事件につきまして事件として取り上げ、そして東京法務局長が説示処分に付しましたのは、実はやらせそのものではなく、事情を知らない中学生五名に対して暴行を加えたこと、そしてその暴行に心身ともに未成熟な未成年者を使ったこと、これを人権侵害であると考えたからでございます。  問題のシーンの放映は八月二十日に行われたわけでございますが、東京法務局では早速放映直後から調査に入りました。御承知のように、直後におきましてはプロデューサーはいろいろ、事情は違うんだとか、あれは本当のシーンであったというようなことを言っておったのでありますが、時を同じくして警察がこれに対して捜査に入りました結果、人権擁護機関の方で調査をするすべがだんだん封ぜられてまいったわけであります。しかし、いろいろな調査をして情報を集め、私どもはこれが人権侵犯である、少年に対する人権侵害であるという結論に達しましたので、十一月十一日に東京法務局においてテレビ局に対する説示処分を行ったわけでございますが、これは、今申し上げました刑事事件につきまして刑事裁判が確定した直後のことでございまして、この事件についての調査を全うするためにはこの程度の時間はどうしてもかからざるを得なかったという点をぜひ御理解をいただきたいと思います。
  45. 横山利秋

    横山委員 御理解はいいのですけれども、私の言う意味もあなたの方は反省してもらわなければいかぬ。そんなことを世間がどう受け取るか。何だ、そうか、東京法務局というのはそういうところか、もう終わってしまったじゃないの、今ごろ何言っているのというような感じを与えたのでは、人権擁護という旗印が泣くですよ。これはたびたび僕は申し上げていることなんです。きょうはいじめの問題も取り上げたかったのですが、時間がないので言いませんけれども、いじめを初めとしてさまざまな人権擁護の問題に、訴えがあるなら取り上げる、訴えがないならわしの方は知らぬというような態度を捨てて、それから重要な問題であればやはり人権擁護局長が、さらに重要ならば法務大臣が社会に対して警告を与えるというようなことをして、傘下の法務局人権擁護部を一斉に活動させるとか、そういうようなことをしないと、せっかくの憲法、法律に基づく人権擁護の基本精神が地盤沈下をしてしまうと、かねがね私は警鐘を鳴らしておるのですが、大臣の人権擁護の問題についての所見を少し聞かしておいてもらいたい。
  46. 嶋崎均

    ○嶋崎国務大臣 ただいま問題として取り上げられた点につきましては、今説明のありましたように、十一月九日に、刑事事件の整理、その直後にというような処理をやったわけでございまして、その時期がタイミングを失しておるというような御指摘があったわけでございますが、そういう事情であることを御了承願いたいと思いますとともに、どうも人権擁護もそんなに遅い話ばかりじゃなしに、三月十二日にはいじめについての私の方の通達が出ておりまして、それが割合導火線になりまして、警察でもあるいは文部省等でも非常に取り上げていただいたという経緯もあったわけでございます。ひとつそういう点もよく御理解を願いまして、御指摘の点につきましては我々も今後十分注意をして、その処理について遺漏のないような対処の仕方をしてまいりたいというふうに思っております。
  47. 横山利秋

    横山委員 終わります。
  48. 片岡清一

    片岡委員長 天野寺君。
  49. 天野等

    天野(等)委員 私の方から外国人登録法の問題について、毎々でございますけれども、やはり問題が大きいものでございますからお尋ねをしたいと思います。  最初に、ことしの登録切りかえというのも時期的にいいまして一つの山を越えたかという感じでございますけれども、まだ保留者の問題があるかと思いますが、この点で、現在までの指紋押捺の拒否者、保留者、あるいは保留していた方がその後どういうふうな態度になられているか、拒否になられているのかあるいは押されているのかというようなことも含めて、概括的にお話しいただきたいと思います。
  50. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 私どもが手元に持っております統計は、市町村から都道府県経由で受理した個人別の報告を集計したものでございます。この集計した結果によりますと、十一月十五日現在で、引き続き指紋押捺を拒否している人間は千六百四十五名であります。また、引き続き指紋押捺意向を表明したまま説得期間中にある者が四千三百四十名でございます。  現在までの経過を見ますと、一遍押捺を拒否したけれどもその後押捺した者が五百十三名ございます。それから、拒否ではございませんで、留保の意向を表明した者でその後押捺した者が三千七百八十名ございます。そして、そのほかに押捺するようにと説得を受けて結局三カ月程度の説得期間を徒過いたしまして押捺を拒否するという状況になった者が三十三名でございます。したがって、この三十三名は先ほど申しました押捺拒否者千六百四十五名の中に含まれるわけでございます。  こうした状況を分析いたしますと、現在までのところ、押捺の留保を意向表明した者につきましては全体の約九九%が押捺をしておる、結局拒否という状況になった者は一%であるということが言えるわけでございます。
  51. 天野等

    天野(等)委員 ちょっとお尋ねしたいのですが、留保が四千三百四十名、これは現に保留をしているご二千七百八十名という数字は内数ではなくて外ですね。−−そうしますと、当初、留保という形のあれをされた方が合わせますと八千百二十名いたということですね。そのうち三千七百八十名の方が押捺をされたということですね。  その九九%というのは何が母数になっているのかちょっと言ってください。
  52. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 現在までに大体三カ月という説得期間を経過した者が三千七百八十名と、それから結局拒否をした三十三名の合計ということになります。したがって、三千八百十三名ということになります。三千八百十三名のうち三千七百八十名は押捺を行ったけれども、三十三名は拒否になったということで、全体の大体一%足らずが拒否という状態になったということを申し上げたわけでございます。現在までに三カ月以上を大きく経過した人間の内数でございます。
  53. 天野等

    天野(等)委員 これは大臣に見解をお尋ねしたいのですが、今の数字でいきましても、その後指紋を押したりあるいは拒否をしたりという方があったといたしましても、一応この切りかえの時点では指紋を押さなかった方が結局一万名を超しているかと思います。保留が八千百二十名それから拒否の方が二千百五十八名になりますか、結局一万名を少し超えるという形の不押捺の意思表示と言ってもいいのではないかと思うのです。また、そのほかにこの外国人登録法改正を求める署名というようなものも、伝え聞きますと三百万以上の署名が出されているということもあり、また地方自治体等でも、この外国人登録法改正を求める自治体の決議というようなものがかなり多数に上っている。新聞に報道されておりましたところだけでも二府十一県、四百十三市、全部で九百八十六議会という数字も見られる。ことしの大量切りかえに当たって、この指紋押捺問題について、これを改正してほしいという意思表示がやはり全国で大きく広がった。また、特に外国人登録をしなければならない当事者の外国人の方々の中で、裁判あるいはそこで結論が出れば有罪というようなこともかなり考えられる状況でありながら、あえて意思表示としての指紋不押捺という手段にまで出た方たち、当初は少なくても一万人の数があるという状況です。こういう状況について、大臣としましてもこの問題をどういうふうにお考えになっておられるか、この辺の御見解をお聞きしたいと思います。
  54. 嶋崎均

    ○嶋崎国務大臣 ただいまの指紋押捺の問題でございますが、先ほど来局長から説明がありましたような状況になってきておるわけでございます。御承知のように、ことしの七月から十月ぐらいの間が最も切りかえの時期の多いときに当たっておったわけでございまして、しかも御承知のようにいろんな錯綜した事情がありましたけれども、三カ月にわたりまして説得をする期間というようなものを設けて対応をしてまいったわけでございます。したがいまして、現在の時点はまたそれらの整理が十分ついてないというような状況でもありますし、御報告がありましたように指紋不押捺の意向を表明をした方々が相当数現在残っておるというのが実態であるわけでございます。したがいまして、これらの推移というものをきちっと見守って、少しでも円滑に処理ができますように関係の皆さん方の御協力を得たいというふうに思っておるわけでございます。一方、御承知のように指紋不押捺の方も相当数に上っておるという現実があるわけでございまして、私たちはこの問題について非常に残念なことであるというふうに思っておるわけでございます。  こういう席でございますから余り長い話はするつもりはありませんけれども、御承知のように昭和五十七年に法改正が行われまして、その中で指紋押捺制度というものを維持をするということ、また、いろんな意味で登録証を持って歩いていただくというようなこと、そういうことが決まったわけでございます。したがいまして、現在そういうことの制度自体を変えるというような事態ではないと思うのでございますが、いろいろ考えて、御承知のように五月十四日の政令改正におきまして、回転指紋を平面指紋にする、しかも色をつけないで指紋ができるような工夫を凝らしておる、そういうことで、ぜひ御協力を願いたいということで今日までやってまいったわけでございます。したがいまして、我々のそういう改正の意向というものも十分ひとつ勘案をしていただきまして、日本に居住をされておる外国人の皆さん方でございますから、日本もある意味ではきちっとした法治国家であるわけでございます。決まった法律、二字はぜひこれを守っていただきまして、この問題が円滑に整理をされますように御協力を願いたいというふうに思っておる次第でございます。
  55. 天野等

    天野(等)委員 私がお伺いしたのは、現にこれだけの指紋押捺に対する不押捺の意思表示があったということをどういうふうにお受けとめになるかということであって、大臣が、とにかく全員が指紋を押してくれればいいんだ、全員に指紋を押させればいいんだというふうに今の状況をお考えになっていられるとすれば、それは行政としてはなるほどそういうことがあるかもしれません。しかしやはり政治家としての大臣の立場ということから考えれば、私はそれだけでは足りないのではないかということで大臣に御意見をお伺いをしたわけでございます。  ところで、今大臣、制度の問題は既にこれで終わっているんだというようなお話がございましたけれども、しかし、実は八月に行われました日韓閣僚会議の際に、日韓の外務大臣会議での外務省側の意見といいますか見解といいますか、その中にも「制度の問題を含め引き続き誠意をもって努力する。」という言葉が明確に述べられていたように思うのですが、この点について外務省、いかがでございますか。
  56. 福田博

    ○福田説明員 この問題につきましては、本年八月の閣僚会議におきまして、いわゆる閣僚会議における外務大臣会談の際に、この五月の改善措置は政府として当面とり得る最大の措置である、今後については、長期的な視点に立って自主的に研究、検討するというのが政府の基本的な立場であるが、本問題は、将来長きにわたる日韓関係の安定、日本社会の国際化という中で考えていくべき問題であると認識しておって、このような認識に立って制度の問題を含め引き続き誠意をもって努力したいという趣旨を発言いたしました。  ここで、その「制度の問題を含め」というのはどういう意味かという御質問だと思いますが、私どもとしましては、本問題についてさらに何ができるのかということを種々の可能性について引き続き研究、検討するという、そういうことを努力したいということで、現時点において特定の結論を念頭に置いているわけではございません。
  57. 天野等

    天野(等)委員 この日韓閣僚会議における外務大臣見解、これについては法務省としてはあるいは法務大臣としては、これは私の方は知らぬ、外務大臣が述べた見解にすぎないんだというふうなお考えなのか、あるいはやはり主管大臣としての法務大臣の見解もこの中には込められておるわけでございますか。その点いかがでございますか。
  58. 嶋崎均

    ○嶋崎国務大臣 もう御承知のとおりでございまして、韓国の大統領がお見えになったときに、在日の韓国人の法的な地位及び待遇の問題につきましては引き続き努力をするというような趣旨のことが書いてあるわけでございます。そういうことを考える場合に、指紋問題というのは非常に重要な問題の一つであるということは私たちも承知をしておるわけでございます。しかし御承知のように、今度大量切りかえが五十七年の改正以後初めて来る時期であったわけでございまして、そういう意味ではやはりこういう法律の趣旨をきちっと整理をして、この問題を守っていただきたいということをお願いをし、またそれに対応する意味で、先ほど申し上げましたような制度的な改正というものも行った現実があるわけでございます。したがいまして、さきの日韓の閣僚会議お話のあった件は、そういう事実というものを踏まえまして、やはりこの問題というのは長期的にあるいは自主的な立場でいろいろ検討していきましょうということでございまして、何しろ今、先ほども申し上げましたように本年はその切りかえのピークであり、現実その処理が進んでおる、そういう段階で、将来これをどうするかというような議論を今申し上げるのは余り私は適当なことではないというふうに思っておるわけでございます。と申しますのは、そういう改正をやるということだから指紋をやらなくてもいいという論理を行使された方もあるわけでございまして、そんな感覚ではなしに、やはり今はこの問題をどうしてうまく円滑に処理するかということが一番であり、またそういう中でそれが円滑に処理されるかどうかということが私は次の問題を考える場合の一番重要な問題ではなかろうかというふうにも思っておるわけでございます。したがいまして、外務大臣の発言につきましては、我々は十二分にその趣旨は、在日韓国人の法的な地位及びその待遇については引き続き検討するという前提があるわけでございますから、そういうことを前提にして今後ともこの問題について引き続きいろいろな意味で検討をしていきたいという気持ちにおいて何ら変わったところはないわけでございます。
  59. 天野等

    天野(等)委員 この問題は、実は九月六日の閉会中審査のときに法務委員会でも問題になり、その際に、韓国側からの外務大臣会議における要望、それからそれに対する日本側の見解という形で外務省から御説明はいただいたわけです。それを見ましても、韓国側は明らかに「指紋問題についても是非前向きの姿勢を示してほしい。」という具体的な問題を挙げて要望をしている。これに対して外務大臣が「制度の問題を含め引き続き誠意をもって努力する。」という回答になっている。これは当然のことながら、やはり指紋問題について制度の変更ということを日本政府としては前向きに考えるということを韓国政府に対して、いわば約束をしたといいますか、そういう見解を示したというふうにとれるのじゃないか。その時期については、なるほど今すぐにとは言っていないかもしれません。長期的視野に立つとか自主的にとかいうような言葉が入るかもしれません。しかし今度は、法務省としてはこの政府見解を受けて、やはり当然のこととして具体的に指紋問題についての制度の変更を考えなければならない、そういう時期に、そういう立場に来ていると思うのですが、この点いかがですか。  先ほどから大臣のお話を聞いていますと、この点についてはもう制度の変更はないんだというふうにお答えになっているように思うのですが、政府見解としてはそうではないというふうに私は思うからお尋ねをしているわけです。
  60. 嶋崎均

    ○嶋崎国務大臣 先ほど来御説明申し上げましたように、在日韓国人の法的な地位及び待遇について、その中では指紋問題も非常に重要なウエートを占めておりますからということを私は中に入れながら説明したつもりでございます。しかし、先ほど来申し上げましたように、ことしはこの指紋押捺のピークの年に当たっておるというようなこともあるわけでございまして、そういう中でどういう処理をされるのかという基盤もなしに将来の制度問題ということを直ちに具体的に御説明申し上げるというような段階にはなってきていない。したがって、そういう制度の具体的な方向としてどういうことが考えられるのかというようなことを説明するような状態ではなかろう。したがいまして、長期的に自主的にこの問題を解決いたしましょう、その考え方については変わっておりません、こう御説明申し上げておるわけでございます。そういうことでひとつ御理解を願いたいと思います。
  61. 天野等

    天野(等)委員 法務省としては、現に法制度の改革について検討、研究はしているのですか。
  62. 嶋崎均

    ○嶋崎国務大臣 五月十四日にああいう改正をやるにつきましては、十二分の検討をした上で処理をしたつもりであるわけでございます。それから日月ももちろんあるわけでございますけれども、出せる知恵はそのときに相当思い切って出してあるというふうに御理解を願いたいと思うのでございまして、したがって、長期的に自主的な立場で検討をするということであろうと思います。
  63. 天野等

    天野(等)委員 そうしますと、五月十四日を過ぎている八月になってからのこの閣僚会議の外務大臣見解というものは、一体どういうことを言っているのかという問題になってしまうと思うのですよ。この点について外務省としてはどうなんですか。やはり外務省としては、指紋押捺制度の問題について、この変更を含めて研究、検討をしていくということではないのですか。既に終わったということではないでしょう。
  64. 福田博

    ○福田説明員 先ほど来申し述べましたとおり、閣僚会議におきましては外務大臣より、我が方が五月に決定した措置、それから今後の問題についての我が方の考え方を申し述べたわけでございます。御承知のとおり、この問題につきましては、外務省は直接所掌する立場にはないわけではございますが、いずれにせよ、韓国側の要望とかいろいろなことを念頭に置きつつ、今後とも関係各省とともに検討させていただきたいと考えております。
  65. 天野等

    天野(等)委員 この指紋押捺拒否という問題、特に外国人登録法改正の意思表示の手段として指紋押捺の拒否という一つ方法をとられてきた当事者の方たちがあるわけですが、この問題について、韓国政府の側で指紋押捺拒否というような手段をとらない、それを受けて韓国の居留民団の方でも戦術の転換をしたという状況があるかと思います。  この点で、これは外務省にお伺いをしたいのですが、韓国外務省がこの外国人登録法改正の問題について、拒否という戦術をとらないという形の声明を出されたその背後にある考え方は、もうこれで外国人登録法改正ということは当分要求をしていかないということなのか、それとも、これについて日本政府から一歩進んだ前向きの回答が得られたからここで戦術を転換していこうということなのか、この辺の状況について外務省はどうお考えでございましょうか。
  66. 福田博

    ○福田説明員 この指紋押捺の問題につきましては、九月二十七日に国連で日韓外相会談がありましたときに、先方から指紋押捺問題について、閣僚会議の際の外相会談の結果を踏まえて、韓国側としては民団に日本の法律を守るように指導してきているということ、それから民団に対しては、より長期的な観点から日本政府の善処を求めていくという形で行動するよう指導を行っているという発言があったと聞いております。
  67. 天野等

    天野(等)委員 ということは、この指紋押捺問題について既に問題はなくなったのだという見解ではないということでしょうね。
  68. 福田博

    ○福田説明員 私どもといたしましては、従来から、現行の法制は遵守されるべきである、そういう必要があると考えておりましたし、そういうようなことを言ってきたわけでございますので、先般の国連における外相会談等において韓国側の外務大臣がそういうことを申されたことは大変好ましいことだと思っております。
  69. 天野等

    天野(等)委員 いや、それが好ましいか好ましくないかを私はお尋ねしているのじゃないのです。韓国側としては、指紋押捺問題についてはここでこれ以上の要求をしなくてももう決着はついているのだから日本の法律制度に従って指紋を押すようにということなのか、そういうふうにだけ理解していいのか、そこをお尋ねしているのです。この八月の日韓閣僚会議では、引き続き制度の問題を含めて検討をしていくということがあるわけですし、その前文といいますか、韓国側から指紋問題についてもぜひ前向きの姿勢を示してほしいという要望があるわけですから、この要望が今の時点では解決済みの問題となってしまったのかということなんです。そう理解しているのですか。
  70. 福田博

    ○福田説明員 この前の九月六日の閉会中審査におきまして、先生の御質問に対して、この問題につきましては韓国側から要望があって、それに対して我が方から三点お答えしたということを御説明したと思います。八月の会議において我が方の説明、それについてのやりとりということじゃなくて、向こうからそういうことを言ってこちらからそういうことを答えたということでございますが、私どもといたしましては、韓国側はこういうふうに私ども説明したことについてそれなりの評価をしているのではないかと思っております。  他方外国政府の考え方がどういうふうかということにつきましては、先方が例えば国連の外務大臣会議において発言したことをそれなりにそのものとして受けとめることが重要かと思いますので、それについていろいろ解釈するということは私どもとしては差し控えたいと思います。
  71. 天野等

    天野(等)委員 ここで押し問答をしていても仕方がないので、もう少し具体的な問題について見解を伺いたいと思います。  先日来、新聞等で、指紋押捺を拒否した在日外国人について在留期間の更新を許可しないという方針を法務省が固めたのではないかというようなことが報道されておるのですが、この点についてはいかがでございますか。
  72. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 在留期間の更新は法務大臣の裁量行為でございます。これを許可するか否かを決定するに当たりまして検討する要件と申しますか事項は大別して二つございます。一つは、在留目的の絡みでございます。在留目的が既に完成されておるか、あるいは在留目的が妥当に達成されつつあるかという点でございます。第二の点は、在留状況でございます。その本人の素行その他、行動が問題になる点でございます。  この後者の関連におきまして、指紋押捺を故意かつ公然に拒否するという行動は従来からも検討の対象に当然なっておったのでございますけれども、現在までと申しますかことしの初めぐらいまでの状況のもとにおいての評価の程度と申しますかあり方と現段階における評価が同一であってよろしいのかどうかという問題意識があるわけでございます。そういう状況のもとで現在改めて押捺拒否という行動をこの在留状況の評価の上でいかに考えるべきかという点を検討中であるということでございます。私どもとしては、いまだ明確な結論を出すに至っておりません。したがいまして、この問題を発表する段階にも状況にもなかったのでありますけれども、これは特定の人物、すなわち仙台の某神父がみずから記者会見を行ってベルギー大使館から説得を受けたことを発表したということから表に出たのであります。したがいまして、現在のところ私どもとしては、何ら見通しを確定的に御説明する段階にはないということでございます。
  73. 天野等

    天野(等)委員 この問題について、ベルギー人のカトリック神父のE・ド・グドネールさんがベルギー大使館から、ことしの十一月二十二日に滞在許可の期限が切れる、あなたが日本の法律に従って指紋押捺に応じなければさらに滞在許可の更新はしないという法務省からの通告があったという外務省からの電話だった、そういう手紙を受け取った。この手紙の文言によれば、外務省からの電話では指紋押捺に応じなければ滞在許可の更新はしないということが既に決定されているかのように受け取れるわけで、それを受けてグドネールさんが記者会見をなさったのだと思うのです。そうすると、この手紙自体は法務省から見れば不正確なものだということになりますか。
  74. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 私どもは、この神父の在留期限が間もなく切れる、したがって更新という問題が起こるということを承知いたしておりましたし、その当時においては更新申請はまだ出ておりませんでしたけれども、いずれこの問題について決定しなくてはならないことは明瞭でございました。したがって、もしこの再検討の結果更新を認めないということになった場合に、本籍国であるベルギーの大使館がこれについて外交上の反応を示すことは好ましくないと考えましたので、そういう事実がある、いずれかを決定しなくてはならないということをあらかじめ外務省を通じてベルギー大使館に通報してもらったわけであります。ベルギー大使館がその点を懸念いたしまして本人を呼んで説得を試みだというのはベルギー大使館の自主的な配慮でありまして、その手紙にありますようにもし拒否が続くならば更新は行われないという決定が既にあったというのはベルギー大使館誤解でございます。     〔委員長退席、高村委員長代理着席〕
  75. 天野等

    天野(等)委員 これは法務省から外務省に対してそういう決定があったという通知をしたということではないわけでしょうか、あるいは外務省としてもそういう通知を受けてはいないということなのでしょうか、この辺を局長外務省の両方からお伺いしたいと思います。
  76. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 法務省として、そのような決定をしたというふうに外務省には通報いたしておりません。しかし、いずれかを決定しなくてはならない状況にあるということを御説明したわけでございます。
  77. 福田博

    ○福田説明員 私ども承知しているところでは、先に法務省から、当該ベルギー人が指紋押捺を拒否しておるということから日本の法律によればこのままでは滞在許可の更新ができなくなる場合があるという通報を受けましたので、外務省としてはこういうベルギー人がいますよということをごく非公式に、参考までに在京ベルギー大使館に通報したということでございます。
  78. 天野等

    天野(等)委員 今の御答弁によると滞在許可が更新されない場合があるというようにベルギー大使館にも話をしたということのようですけれども、これは電話の問題ですからベルギー大使館がどういうふうに受け取ったかということは、この文面によるとベルギー大使館の方では指紋押捺に応じなければ滞在期間の更新はしないんだ、できないんだと受け取ったように思えるのですが、この辺の誤解を解いておく必要はないものでしょうか、外務省
  79. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 更新を許可しないという可能性がないのであれば本来通報する必要は全くないわけでございますから、いずれかを決しなくてはならないことになるということは、もちろん不許可にする可能性があるということでございます。したがって、外務省の了解には私どもとの間では別段誤解があるとは存じません。そういう決定が行われたのではないという点においてそのベルギー大使館手紙状況誤解している面があると申し上げたのであります。     〔高村委員長代理退席、委員長着席〕
  80. 天野等

    天野(等)委員 問題は、更新が許可になるかならないかという問題になってくるわけでございますし、それについて検討中だとは言うのですが、しかしこれはもう十一月二十二日で一応滞在許可の期限が切れるということでございます。現時点では申請は出ておるのでございますか。
  81. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 所管官庁は仙台入国管理局でございます。入国管理局に対して既に申請は提出されたと承知いたしております。現在仙台入国管理局におきまして本人からも事情を聴取し、また周辺の事情を調査しつつ、仙台入国管理局としての意見を取りまとめ中でございます。仙台入国管理局からは、事情聴取、調査の結果を同局の意見を付して本局に上げてくることになっております。いまだその段階に達しておりませんけれども、近日中に書類が私どもの方に回ってくることと存じます。
  82. 天野等

    天野(等)委員 これは申請が出されても許可がないと滞在できないという形になるのでしょうか。
  83. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 従来から在留期間更新の申請はもちろん在留期間が切れる前に行われるのでありますけれども、直前に行われることもございますし、私どもといたしましては、申請が受理されますと、申請後これに対する決定が本人に通報されるまでに在留期間が切れておりましてもその間は不法残留の扱いはいたしておりません。したがいまして、二十二日以降でございますか、本人がそれまでに決定の通報を受けなくても不法残留ということにはなりません。
  84. 天野等

    天野(等)委員 そこで、これは大臣にお尋ねしたいのですが、私、九月六日の法務委員会でも、この在留期間更新の問題ではございませんけれども、指紋を押さないならおまえたちは国へ帰れという投書といいますかそういうものがかなりあり、それが程度としても非常にひどいものだったということを大臣にお話ししたことがございます。在留期間の更新不許可ということになれば、まさに指紋を押さなければ出ていかなければならない、指紋を押さない限り漏れということです。確かに指紋押捺をしてもらいたいという法務当局の気持ちが私はわからないわけではありません、現在の法を守るという立場から言えば。しかし、果たして指紋を押させることだけが何か究極の目標になってしまっていやしないか。そのために、指紋を押させるためにこの在留期間更新の許可もしない、あるいは再入国の許可もしないというような形で、いろいろな規定を使ってといいますか、それで指紋をとにかく押させるということが何か法務省の今の究極の目標になっているような感じがするのです。しかし実際に指紋を押すということは、本人の同一性確認の一つの手段にすぎないのでございまして、それ以外で同一性の確認ができているとすれば、果たしてこれは指紋を押さないからといって国外に退去させてしまうというまでのことなのかどうかということで、私はこの問題について注目をしているわけですが、この問題については大臣の御見解を伺いたいと思います。
  85. 嶋崎均

    ○嶋崎国務大臣 この指紋の問題というのは、御承知のようにさきの法改正がありまして、ことし五月十四日に、ある意味で少し工夫をした制度改正というのですか、やり方の改正を行って今日まで参ったわけでございます。したがいまして、そういう中で、ちょうど大量切りかえの時期もありまして、今相当不押捺の方もおいでになる。またこの問題が非常に大きな議論として論議をされた経過もあるわけでございます。そういう中で、意識を持って不押捺をされるという姿勢を示されることに対してどう評価するかということは、私はなかなか難しい問題だろうと思うのでございます。  それからまた、永住許可の人でない方々なんかの場合に、そういう条件、例えば渡航している目的あるいはその意図というようなものをどういうぐあいに判断をし、どういうぐあいに具体的に整理をするかというのも、先ほど局長から説明がありましたように具体的にまだ検討をしておる段階であるということでございます。しかし、日本もきちっとした法治国家でございますから、何もそれを目的にとやかく言っているわけではない。その問題についてのその人の考え方というものがある程度そういう行動の中に出てきておるんだという事実だけはやはり判断の中に入れなければいけないことではなかろうかというふうに私は思っております。  いずれにしましても、そういう意味で指紋問題というのは手を汚すということもなくしておりますし、犯罪その他ということではなしに、平面指紋にしている。そういう工夫も凝らして今日に至ったわけでございます。そういう事実というものをよく御判断願って、やはり日本に長くおろうということと指紋の問題ということを、在留外国人の皆さん方が自分たちの選択の一つとして的確にやっていただきたいというふうに、私は個人的には今思っておるような状況でございます。いずれにしましても、そういう制度がある以上、それを守って実行していただくことを心からお願いを申し上げたいというような気持ちでおるわけです。
  86. 天野等

    天野(等)委員 今大臣の口からも法治国家という言葉が出されました。先ほども大臣の御答弁の中に法治国家という言葉がありました。私は、正確に言えば、法治国家というのは政府が国民に対して法を守れという意味での国家ということではなくて、むしろ行政を進めていく上にとって法に従って行政を進めていくというのが法治国家だろうと思います。これは田中二郎先生の「行政法」にもそのように書いてございますが、まあこれは普通でいつでも行政についての当然の事柄だろうと思うのです。  それで、その立場に立ったとしましても、指紋を押してもらうということ自体は行政当局として当然のことかもしれないのですが、ただ、在留期間更新とか再入国の許可とかということについては、明確に、指紋を押さなければ在留許可は更新しませんよとか再入国は許可しませんよとか、そういう法の規定が直接あるわけではないわけでしよう。先ほどから局長お話にもあるように、これは法務大臣の裁量行為だというふうに言われているわけです。これはいわゆる法治国家論で済む問題ではないだろうと思うのです。現に、指紋を押さなければ滞在を許可しないというような法文はないわけでございましょう。とすれば、その滞在を許可するか許可しないかの判断については、むしろ明文にないということを考慮するということもやはり行政の立場としては当然あり得るのじゃないかと私は考えるのです。いかがですか。
  87. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 私、先ほどお答え申しましたとおり、在留期間の更新許可につきましては、在留目的状況と在留そのものの状況を検討の上、判断をしてまいっておりますということを申し上げました。今問題になっております押捺拒否という故意の違法行為は、在留状況ということを検討するに当たって念頭に置かざるを得ない問題である、その事の重大性がこの一年の間に高まっておるというふうに考えねばならないのじゃないかということが入管当局内の検討の基礎にあるわけでございます。したがいまして、法律に書いていないということは、法律上の建前が裁量行為であるということから当然でございまして、この裁量に基づく行政の運営をどうするかということを考えるのは行政当局の責任に任されておるということなんでございます。
  88. 天野等

    天野(等)委員 私は、その範囲ではそれは否定いたしませんよ。だからこそ、今この指紋問題についてどういう立場をとるのかというのが大事なところだ。  先ほど来私は、法務当局はひたすら指紋を押させることだけを第一義に考えた行政をやっているのじゃないか。しかし、そうではないだろう。現に在日外国人の方からも、一万人を超える指紋を押したくないという意思表示の方があらわれている、あるいは日本の国内での地方自治体でも、九百以上の自治体から、外国人登録法改正してほしい、指紋押捺制度を廃止してほしい、そういう意見も出されていることを当然考えなければならないだろう。先ほどこの一年間の状況を考えなければならないというふうにおっしゃった局長のお言葉、私はそのとおりだと思います。この一年間の状況をどう見るかというところにかかわってくるのであって、この一年間の状況は、ひたすら指紋を押させなきゃならぬのだ。そのあれとして法治国家というよう空言葉をよく使われました。しかし、法治国家というのはそういう事柄ではありません。指紋をひたすら押させなければならないということをそれほど重視しなければならないのかどうか。私は、そうではないだろう。むしろ、日本が国際社会の中でそれこそ名誉ある地位を占める立場に立ったとしたら、この問題について今検討をしていかなければならないだろう。そういう約束を外国政府に対して外務大臣がしているわけでしょう。そういう状況も、これまた法務省が当然考えなければならない状況じゃないか。  そういう意味で私は、この一年間の状況を考えに入れた上で、この問題については指紋を押させるだけを目的にしないということをぜひ考えていただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  89. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 私、国会の場におきましても答弁の中で申し上げたことが何回もあると存じますけれども、この法律改正に対する要望の表明と、自分反対するけれどもその法律を遵守するかどうかというのは別の次元の問題である、その二つは分けて考えていただきたいということを何遍も申し上げておるわけでございます。したがいまして、先ほど法治国家という言葉が出ましたけれども、単に法治国家ではなくて、言論の自由も政治活動の自由も保障された法治国家であるということを考えていただきたい。そういう特定の政治的な意見を表明する場は幾らでもある、方法も幾らでもある。そういった方法を使って法律に対する見解を表明される、これは自由であります。しかし、その見解を表明するためにその法律に違反するということは正当化する余地はないということを申し上げておる。  例えば、税金が高いからといって、その改正要求するからといって、納税を拒否する、留保するということは認められない。同じことであります。また、例えば米国におきましては、永住権者については、永住査証をもらった者については大使館で査証の交付を受けるときに十本の指の指紋の押捺を求められておる。それを拒否したらどうなるか。それを拒否したら査証は発給されないではありませんか。そういうことと同じことであります。
  90. 天野等

    天野(等)委員 それは局長、考え違いですよ。私が言っているのは、指紋押捺を拒否した者についてそれを無罪にしろとかなんとか言っているのじゃないのです。そうではなくて、まさに指紋不押捺は指紋不押捺として、それは別の事柄である。それから在留期間の更新というのは、指紋不押捺だからそれは即、在留期間の更新不許可だということにはならない。そこのところで法治国家ということを考えなきゃならない。そこで指紋不押捺、指紋を押させるために在留許可を更新させない、いわば出ていってしまえ、あるいは再入国を許可しないというのは、それこそ二つの事柄を混同しているのは局長の考え方の方だろうと私は思います。私は何も指紋不押捺の場合にこの場で無罪だとかなんとか言っているわけじゃない。これは裁判所が判断するわけですから、それを言っているわけじゃない。しかし、裁量行為である行政の行為だから私はそういうことを申し上げているわけです。
  91. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 指紋押捺を拒否したから論理的に即、押捺拒否者に対しては在留期間更新をしないというふうに申し上げているのではなくて、更新の許可を検討する際に検討すべき対象として二つある、一つは在留状況であり、他は在留目的の現況である。在留状況を検討する際の一つの重要な要因として評価すべきではないかということを申し上げておるのでありまして、したがって、これは論理的な結びつきというよりは在留状況を評価する際の一つの材料だということを申し上げておるのです。
  92. 天野等

    天野(等)委員 在留許可の状況として在留状況というものを考えに入れるというのは、これはわかりますよ。その場合、それならば在留状況としての指紋不押捺ならば、これは単に指紋不押捺という事柄だけではなく、どういう状況の中でどんな気持ちで指紋不押捺をしているのかということを当然のことながら考えなければならないと思う。今のベルギー人の神父さんが単に日本の法違反を目的として、法に従いたくないからそれでこの指紋を押さないのだという状況なのか、そうではなくて自分たちのこの指紋問題についての意思表示としてこれしか表現の手段がないということでやられているのかということは、これは在留状況としては大違いでしょう。この違いはわかると思うのですよ。この違いをやはり判断をしてもらわなければならないだろうということですよ。  それで、先ほどどんな自由もあるのだというふうにおっしゃいましたけれども外国人にとっては政治活動の自由はありません。外国人が日本国内で政治活動をするわけにはいかないでしょう。単に見解を述べることはできるかもしれません。投票権もありませんし、それからそのために選挙の応援をするわけにもいきません。私が幾らここでこうやったって、外国人が私の応援に駆けつけてくるわけにはまいりません、選挙の応援に。そういう状況の中で、やはり一つの表現の手段として行われた。これが妥当かどうかの問題はあるといたしましても、しかしそういう状況の中で行われているんだということを、これをやはり在留状況として判断をしていただかなければならない。単に指紋不押捺ということだけが在留状況ではないということでお考えをいただきたいと思うのです。
  93. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 先生のおっしゃることはよくわかります。どういう状況のもとで拒否が行われているのか、あるいはどういう考えで拒否が行われているのか、そういうことももちろん検討の対象にいたすつもりでございます。そういうことを含めて現在検討を進めておりますし、また仙台局から所要の書類が届きましたならば、先生のおっしゃられたことも念頭に置きながら検討いたしたいと存じております。
  94. 天野等

    天野(等)委員 ぜひとも慎重な、また理解ある御配慮をお願いしたいと思います。  それから、やはり指紋押捺の問題に関係をしまして、これは人権問題としてこの指紋押捺拒否者に対して非常に汚い言葉を投げかけられたり、差出人不明の脅迫状まがいの手紙が届いたりというような状況があるわけでございます。  そこで、これは人権擁護局長にお尋ねしたいのですが、ことしの人権週間の中の一つの重点的な項目として当初、少年とかあるいは同和問題とか、それにあわせて外国人に対する差別というようなことも取り上げられていたというふうに実は漏れ承っておったのですが、その外国人差別というのが今度、人権週間の重点的な中からは外されているというふうに、これまた漏れ聞いているのですが、いかがでございますか。
  95. 野崎幸雄

    野崎政府委員 ことしの人権週間の重点事項外国人に関する事項を決定したというふうな新聞報道があったことは確かでございますが、それは実は事実ではないのでありまして、私どもの方ではその情報を出したところに対して抗議をした事実がございます。  ただ、今のに関連して申し上げておきますが、指紋押捺拒否者に対して指紋押捺拒否に関する意見とか抗議とかいった書状が相当数届いておる。しかし、その中には、その内容が意見、抗議の範囲をはるかに超えて、極めて悪質ないたずら的なものが含まれておるということは遺憾ながら事実でございます。投書を受けた方は、実は指紋押捺を拒否しておるという法律違反の事実があるわけでございますが、だからといってこういった悪質な投書を黙って受け取らなければならない、そういうものが送られてくることを忍受しなければならないというわけではないわけでありまして、私どもはそれは人権擁護上問題があるというふうに考えております。現に大阪法務局には四百五十件を超える申告がなされておりまして、大阪法務局ではこれを人権侵犯事件として調査しておるのでありますけれども、今委員から御指摘がありましたようにその多くは匿名または仮名でございまして、発信者を確定することができない状況にございます。したがいまして、個別啓発はできませんので、私どもとしてはこれはどうしても一般啓発の方法によらないといけない、こういうものが多発している地区を重点として一般的な啓発活動をやっていきたい、かように考えておるわけであります。  先ほど申し上げましたのは、全国的にやる方針を決めたかということについてはそういう方針は決めておらないということを申し上げたわけでありますが、大阪法務局を初めとしましてこういった問題を抱えております法務局では、ことしの人権週間に外国人に対する人権擁護立場から、この点に触れた啓発を折に触れてやっていくという方針を固めておるところでございます。
  96. 天野等

    天野(等)委員 私としては、まだその決定もしていないということなら、実はぜひとも全国的な人権擁護運動の重点的な項目として取り上げていただきたいと思うわけです。これは単に指紋押捺拒否者に対する嫌がらせということだけではなくて、今置かれている在日韓国人、朝鮮人の人たちの生活状況というようなものを見ましても、やはり差別という状況が就職一つとってみても大きいのじゃないかとそういう意味で、私はぜひとも法務省人権擁護局としてもこの問題を取り上げていただきたい。やはりこの外国人登録法の問題は、今指紋を押すか押さないかというようなところに集中をしているようでございますけれども、実際の問題はもっと幅広く在日韓国人、朝鮮人の人権をどういうふうに守っていくのか。現に就職差別、結婚差別、いろいろな差別が行われている。その実態を人権擁護局としてもひとつお調べをいただいて、その上で啓発なりなんなりという形での対策をお願いしたいと思うのであります。いかがでございましょうか。
  97. 野崎幸雄

    野崎政府委員 日本に滞在する外国人の人権を擁護することはもとより私どもの重大な職責の一つでございます。これまでに折に触れて啓発活動を展開してまいっておりますし、具体的な人権侵犯が起きたときは人権侵犯事件として処理をしてまいっておりますけれども、今後ともその方向を強めてまいりたい、かように考えております。
  98. 天野等

    天野(等)委員 これで終わります。
  99. 片岡清一

    片岡委員長 午後一時三十分再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十一分休憩      ————◇—————     午後一時四十四分開議
  100. 片岡清一

    片岡委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。中村巌君。
  101. 中村巖

    中村(巖)委員 本日は大きく分けて二つの問題を質問いたしたいと思っております。一つは学校における児童生徒の人権問題、もう一つは最近の法務省の立法の問題、こういうことでございます。  最初に、学校における児童生徒の人権問題でございますけれども、最近教育の荒廃ということがいろいろ言われておるわけでございまして、教育の荒廃、その実態は、一つには最近新聞紙上で大きく取り上げられておりますようにいじめの問題というものが非常に起こっておるということでございます。さらには教師の体罰の問題、こういうものが起こっておる。さらには学校における校則や生徒心得というようなもので生徒に対して甚だしい人権侵害が行われておるのではないか、こういうことがあるわけでございますし、さらにはまた、最近は鎮静化をされておるというふうに言われておりますけれども、校内暴力の問題があるわけでございます。これらの問題はいずれも教育の荒廃という立場からとらえればそういうことであるわけでありますけれども、反面をとらえれば、例えば、いじめならいじめあるいは体罰ということで、その被害に遭う生徒の側からするならば、これは児童生徒の人権の問題である、こういうことに帰着するわけでございまして、こういう問題をないがしろにするわけにはいかない。教育の問題というものをいろいろ考えなければならないけれども、それと同時に現場で起こっておるところの人権問題というものを考えていかなければならないだろうというふうに私は思っているわけでございます。  そこで、まず最初に学校における児童生徒の基本的人権の保障というものについての基本的な考え方、やはり学校におきましても児童生徒の基本的人権は保障されなければならないのじゃないか。これは現在憲法が十一条におきましても人権の保障、基本的人権の享有ということをうたっておりますし、あるいはまた十三条におきましても基本的人権の最大の尊重、こういうことをうたっているわけでございまして、これはひとり大人に対してのみならず、児童生徒にも及ばなければならぬのだというふうに考えているわけでございます。  そういう点について、従来行政法学におきましては特別権力関係、こういうことが言われておりまして、古い特別権力関係の考え方に立ちますと、公立学校の設置者と児童生徒の関係は特別権力関係である、したがってそこでは必要があれば幾らでも人権は制限できるのだ、こういう考え方になっておった。その意味で、その関係は矯正施設における監獄当局と被収容者の関係と同じなんだ、こういうことであったわけでありますけれども、今やこの特別権力関係論というようなものは行政法学の分野においてももう古いということで捨てられて、人権の保障はそういう場においても働くのだ、こういう考え方になってきたように思われるわけであります。それらの点に対しまして、法務省としては児童生徒の基本的人権の保障ということをどういうふうにお考えになっておられるのか、まずその点からお聞きをしたいと思うのです。
  102. 野崎幸雄

    野崎政府委員 児童生徒につきましても基本的人権が尊重されるべきことは当然のことであると考えております。私どもがいじめというものを人権問題としてとらえておるのもまさにその理由によるものでございます。
  103. 中村巖

    中村(巖)委員 いじめの問題もありますけれども、そのほかのいろいろの人権問題、人権問題というか人権というものはあるわけでございまして、一つの問題としては、先ごろ新聞紙上でも大きく取り上げられましたけれども、十一月十三日ですか、熊本県玉名郡の玉東中学校における丸刈り、子供の坊主刈りという問題についての地裁の判決があったわけでございます。学校当局が子供に対して校則によって丸刈りを強制しておるという中で、親御さんなり本人なりがこれは憲法違反ではないかということを訴えた、こういう事案であるわけであります。やはり丸刈りを強制するということは、基本的人権として保障されておるところの人身の自由なりあるいはまた表現の自由を侵犯するものではないかという疑いが非常に濃厚であると私は考えますけれども、この判決は、結論的には著しい不合理がないからその校則そのものを慰謝料の対象にすることはできないのだ、こういう内容のようであります。私も判決をつぶさに読んだわけではありませんで新聞紙上で見ただけでありますけれども、こういうようなことは、判決はそれなりにあるわけでありますけれども、人権の保障という観点から見たときにやはり問題ではなかろうかと思います。この判決に対しまして法務省としてはどういうふうにお受け取りになっておられるのか、伺いたいと思います。
  104. 野崎幸雄

    野崎政府委員 御指摘の判決が熊本地裁におきまして今月十三日に下されましたことは私どもも新聞を通じて承知をいたしておりますけれども、事は司法権の発動があった司法機関の判断の内容にかかる問題でございますので、その点につきましては見解を述べることを差し控えさせていただきたいと思います。
  105. 中村巖

    中村(巖)委員 そこで、次にいじめの問題、これもまた人権侵害の問題であることは先ほど御指摘を申し上げたわけでありますけれども、前にこの委員会におきましても我が党の橋本委員が六十年四月十七日にいろいろお尋ねを申し上げているところであるわけです。その中で人権擁護局長は大変に的確なことを言っておられるわけでございます。いじめ一般というものは昔からある問題である、子供のころから私どもも経験をしてきたところの問題であるけれども、今日のいじめの問題というのは社会常識上到底容認することができない大変陰湿化、深刻化した問題だ、そういう意味で括弧をつけた「いじめ」なんだということをおっしゃられた。このいじめの問題について、法務省人権擁護局が人権問題としてとらえられる、そういう視角というものをもう一度御説明をいただきたいということでございます。人権侵害として基本的な考え方はどういうことであるのか、お伺いをしたいと思います。
  106. 野崎幸雄

    野崎政府委員 私どもがことしの三月十二日以来いじめの問題に積極的に取り組んでおりますのは、今御指摘がございましたようにいじめというものが生徒児童に対する人権問題であるという考えからでございます。いじめというものはいろいろなことを理由にして行われておるようでございますけれども、いじめを受けた側の精神的、肉体的苦痛は大変なものでございまして、そのためにある者は自殺をしたりあるいは自殺を図ったり、またそれから逃がれるために相手方を傷つけたり、あるいは登校拒否をするといった事象が多く見られておるのであります。  ところが、いじめる側の生徒を見ますると、必ずしもいじめの深刻さを理解しておらない、いじめというものが何か娯楽のような、楽しみとなっておるような傾向が見られるのであります。また、いじめを傍観しておる者はそのいじめの深刻さを知りながらこれを先生や親に申告することをしない、こういう状況にございます。  それで私どもは、こういう現象は、つまりいじめる例あるいは傍観者になっておる人たちを見てみますると、人の心の痛みというものがわかっていないというところからこういう現象が出てきておる、したがって人権意識の立ちおくれがその奥にあると考えまして、人権思想の普及啓発機関である人権擁護局といたしましては、いじめというものは相手方の心を深く傷つけるものである、それは人権問題なんだ、もっと他人に対する思いやりが必要なんだということを啓発し、また具体的な侵犯事件を処理することによっていじめの問題の解消に一役買うべきであるということでこの問題に乗り出すことにいたしたものであります。
  107. 中村巖

    中村(巖)委員 いじめの問題、まだいろいろ後でお尋ねをしたいこともあるわけでありますけれども、それと同時に、いじめがなぜ起こってくるのか、これは文部省にもお尋ねをしなければならぬのですけれども、最近言われておるところでは、いじめの問題が起こってくる一つの原因として学校における管理主義の強化ということがあるのではないか、その結果として子供たちは余りにも管理をされ過ぎておる、自己表現の場を失っておるということからしていじめに走る、こういう傾向があるのではないかということが言われておるわけであります。その管理主義というものを実行をしておるもとになりますものは学校の規則、校則、多くは生徒心得とかいうような形で呼ばれておるようでありますけれども、そういうものが非常に厳しくなっている、精密化している、学校の中に非常に自由な空気がないではないかということでございます。  この問題につきましては、本年の十月十八日に秋田県で行われた日本弁護士連合会の第二十八回の人権擁護大会のシンポジウムにおきましても取り上げられたところでございまして、校則の内容は余りにもひどいじゃないか、ここまで規制をするということになれば、子供のいろいろな意味での人身の自由の問題、表現の自由の問題、そのほか言論表現の問題あるいはプライバシー権といったような、人権を侵していることになるのではないか、こういう論議がその場で行われたようでございます。この点につきまして、校則の実態そのものを法務省当局は承知をされておるかどうか、あるいはまたそういう大変に厳格なというか、その結果として人権を侵害するような校則、そういうものについてどう考えておられるか、お伺いをしたいと思います。
  108. 野崎幸雄

    野崎政府委員 今委員が御指摘のように、管理の強化あるいは校則、生徒心得といったものがいじめの原因ではないかという議論がなされておること、また日本弁護士連合会の報告書の中にもそういったことが書かれておりますことは私ども承知いたしておるところであります。  いじめの問題は、偏差値主義教育とかいろいろな問題に子供が出くわして非常にフラストレーションが強くなって、それがいじめという形で暴発しておるというふうに一般によく言われておるのでありまして、そういうフラストレーションを与える原因として今御指摘の校則とか生徒心得というものの問題が提起されておるのではないかと考えております。ただ私どもは、校則や生徒心得というものをこれまで集めて検討したことはございませんし、今のところそういうことをやろうという計画も実は持っておりません。と申しますのは、先ほど来申し上げておりますように、仮にそういうフラストレーションがあってそれの暴発としていじめが出ておるのだといたしましても、私ども人権局として、例えば進学問題について議論できる立場にはないというふうに考えるわけであります。むしろ私どもは、そういったフラストレーションの爆発が人権侵害の形で出てくるのは困るじゃないかということからこのいじめの問題に取り組んでおるわけであります。したがいまして、校則といったような問題につきましては、所管官庁でいろいろな角度から御検討願うのが相当ではないか、かように考えております。
  109. 中村巖

    中村(巖)委員 いじめの原因の一つとしての校則の問題ということもありますけれども、校則自体が人権侵害を来しているのではないか、人権を侵犯しているのではないか、こういう問題があるわけであります。日本弁護士連合会の人権擁護大会に向けて連合会が収集したところの各学校の校則というものを見ますと、内容的には私も大変びっくりするようなことがあるわけで、そのことの指摘はともかくといたしまして、校則そのものがやはり人権侵害になるという可能性について法務省としてはどうお考えですか。
  110. 野崎幸雄

    野崎政府委員 校則等が必要最小限のものであるべきであり、それが好ましいということは申し上げるまでもないところかと存じます。したがいまして、校則が非常に厳しい結果人権侵害が理論的に起きることは全くないのかというふうにお尋ねになれば、そういうことも考え得るということになろうかと思います。しかし、個々の具体的な校則、生徒心得といったものが果たして人権を侵害しているのかどうかということになりますと、その学校の置かれておる環境でございますとかもろもろのことを考えなければならないわけでございます。もし、そういうものが人権侵害になっておる、あるいは人権侵害を引き起こすおそれが非常に強いということになりますと、もとより法務省人権擁護機関として到底放置することができないわけでございますが、今の段階で私どもはまだ、校則というものにつきましてはまず教育関係機関で検討してもらうのが筋ではないか、かように考えておるのであります。
  111. 中村巖

    中村(巖)委員 校則の内容報告された限りで見てまいりますと、例えば服装とか髪型の問題についても、先ほどの丸刈り事件の熊本判決がありますように、髪は丸刈りにしなくちゃならぬ、丸刈りでない場合においても髪型はこういうふうでなければならない、あるいは髪を分けたり油をつけたりしてはいけない、さらに服装についても、女子の服装のスカートの丈がひざの皿の中央部から下十センチ、プラス・マイナス・三センチの範囲になければならない、あるいは女子のソックスにしても、かかとからソックスの上端まで十八センチメートル、色は白のみ、あるいはスカートのひだが何本でなくちゃならぬ、こういうことが非常に事細かに書いてあるわけであります。また、校内における行動におきましても、清掃時間にはしゃべってはいけないのだ、無言で無音で働くのだということを規定したり、あるいは登下校時におきましても、登下校は一列でしなければならないとか二列に整列をしてしなければならないとか、その際のカバンはこういうかけ方でなくちゃならぬ、あるいは授業時間中におきましても、先生に質問されて手を挙げる場合の角度は何度である、こういうことを皆事細かに決めているということであります。  さらにまた、それは単に学校内にとどまらず、校外生活にまで及んでいるわけでございます。生徒の外出は日没まで、その後は父兄同伴でなくちゃならぬ、外出は夏は七時、冬は六時まででなくちゃならぬ、夜間外出の場合は事前に担任に届け出る、休日や祝日の午前中は外出をしてはいけない、こういうことを定めたり、ラジオ、テレビ、課外読み物についてはよく先生と相談しその指示に従う、映画は学校で推薦したもの以外は見ない、そういった日常生活についての規制まで校則で定めている。これは余りにも行き過ぎではないか。ここまでやられれば、児童生徒の側においても非常に反発も感じるし、窒息するような感じがして、今局長がおっしゃられるフラストレーションに陥ることもあり得ることであると思わざるを得ないわけであります。教育現場における問題ではありますけれども、この種の問題が野放し的にされているということになれば、私が冒頭に申し上げましたように、教育現場においても人権の保障はなくてはならぬのだ、児童生徒も基本的人権を享有できるのだということとの間に大きな懸隔があると思わざるを得ないわけでございます。こういうことについても、人権擁護という職責を有する法務省としては関心を持って取り組まなければいかぬのじゃないかというふうに思っておりますけれども、その点いかがでしょう。
  112. 野崎幸雄

    野崎政府委員 生徒学生の服装の問題でございますとか規律の問題は、私どもが学生だったころからいろいろ議論されてきておるものでありまして、古くて新しい問題であろうかと思います。幸い、最近いじめの問題をめぐりまして、校則、生徒心得といったものについての問題点が指摘され、また今委員が御指摘のように日弁連でも校則、心得などについて問題点があるのじゃないかということを言っておられます。こういったことを機といたしまして、この問題は今非常に社会的な関心を集め、各方面で議論をされておるところでございますので、私どももそういった議論の推移というものは真剣に見守っていきたい、かように考えております。
  113. 中村巖

    中村(巖)委員 次に、学校内におけるもう一つの人権侵害というのは教師による体罰というものでございまして、この教師の体罰の結果、相当の傷害をこうむるというようなこともありますし、あるいはまた、教師の体罰の結果、傷害をこうむった、だから学校あるいは教師に対して損害賠償の請求をするというような訴訟すら起こっているわけでございます。  この体罰の問題について、人権擁護の観点から法務省がお取り扱いになったという事例というものはございましょうか。
  114. 野崎幸雄

    野崎政府委員 体罰というものは学校教育法第十一条が厳に禁じておるところでございまして、いかなる体罰も許されないのだと考えられております。私どもは人権局が創設されまして以来、体罰は人権侵害であるという考えに立って、人権侵犯事件としてこれまで処理をしてまいっておりますし、今後ともその態勢を貫いていきたい、かように考えておるところであります。
  115. 中村巖

    中村(巖)委員 その体罰が最近では非常にひどくなってきているということがいろいろな形で報道されておりますし、また現実にも体罰によって処分をされた学校の先生というものが相当数に上っているわけでございます。確かに各学校とも学校内暴力というものが一時期、非常に盛んでございまして、こういうものを抑えつけるためには管理を強化しなければならないということで管理強化の一環として体罰を加える、場合によっては鉄の棒とか、こん棒とか、そういうものを持って先生が学校内を巡回しておる、それによって、言ってみれば校則に違反したような人間をぶん殴るというようなことが行われて、それが最近、管理主義の非常な強化という全般的な流れに乗って非常に多くなって音でいるということがあるわけでございまして、そういうような体罰が盛んになるという風潮は人権の見地からいってゆゆしき問題であると思うわけでございます。  この体罰の問題について、確かに法務省も従来、父兄あるいは生徒からひどい体罰があったという訴えがあれば、それをお取り上げになったということは事実でありましょうけれども、もう一つには、そういう体罰を加えないような教育を行わなければならないんだ、そういう啓発ということもやらなきゃならぬのじゃなかろうかと思っているわけでございます。  それと同時に、最近茨城県の土浦市の土浦一中というところにおいて、新聞に報道されたところによりますと、先生が体罰を加えて抗議をされた、そうして若干もめごとになって、それから先生の側が謝って子供を食事に招待した、その後においてまたこれを警察に先生が告訴をした事案があったということが報道をされておるわけでございます。これは先生がみずからの責任を棚上げにして教師にもとる態度だということで、補導された生徒とその父母たちが水戸地方法務局に事実関係調査の申し立てをした、こういうふうに言われておりますけれども、この事案については法務省承知でしょうか。
  116. 野崎幸雄

    野崎政府委員 ただいま御指摘の事件につきましては水戸地方法務局被害者から申告がございまして、現在調査を続行中でございます。  なお、いじめと並んで体罰がややエスカレートしておるんじゃないかという御指摘がございました。私どももそのように考えまして、ことしの人権週間の啓発の重点事項の中に「いじめ、体罰の根を断とう」というのを入れて、人権週間を機会に大いに啓発を展開していきたい、かように考えております。
  117. 中村巖

    中村(巖)委員 今の事案など新聞に報ぜられたところでありますから、事実関係はどうであるかもう一つ明確ではありませんけれども、やはりこういうようなことをやる先生が実際にいたとしたならば、これはひどいことであるというふうに思うわけでございます。これは文部省の問題でありますけれども、先生の資質というものも最近は問題のある先生が大変多いのではないか、先生自身の人権意識というものが非常に希薄ではないか、教師としての能力、資質、それに加えて人権意識というものを教師は持たなければならぬ、そういう点で非常に遺憾な点があるのじゃないか、こんなような気がしているわけでございます。  法務省はまた後でお伺いをするといたしまして、ここで文部省にお伺いをいたしたいというふうに思うわけでございます。文部省お見えでしょうか。——文部省も教育問題についてはいろいろ頭を痛めておられるところであろうかと思いますけれども、まず、先ほど来問題にしておりますいじめの問題について、最近のいじめの実態というものがどういうような状況なのか、把握をされているかどうかお伺いをしていきたいと思うわけでございます。ただ、私どもは新聞紙上で見ている限りにおいていじめというものが突如としてクローズアップをされてきて、物すごく多くなったんだ、日本じゅう至るところでいじめが起こっているんだ、こういうような感じに襲われるわけでありますけれども、必ずしもそうでもなかろうという感じもいたします。まず実態を文部省はどういうふうに把握をされておるのか、その御説明を伺いたいと思います。
  118. 林田英樹

    ○林田説明員 お答えいたします。  ただいまのいじめの実態の問題でございますけれども、正直申しまして、私どももいじめの科学的なデータと申しますか、過去の統計的な把握はいたしておらないわけでございます。     〔委員長退席、太田委員長代理着席〕 一つは、いじめそのものの事象の把握というのがいじめられたかどうかというその本人の判断にかかわっているところもございますので、科学的な把握というのが難しい面もあるわけでございまして、データ的なものを持ち合わせていないわけでございますけれども、最近のいじめの問題が深刻な状態にあるということで、文部省といたしましても、最近各都道府県を通じまして、学校のいじめの実態について把握するような実態調査を今いたしておるところでございます。なお、そのほかにも各都道府県等で実態調査をしたものがあるわけでございまして、それらについて見ますと、いじめの事象の起こっておる実態は都道府県によりましてもかなり差があるなという気はいたしております。しかしながら、それぞれの差につきましても、現在文部省で全国的な調査をいたしておりますので、これらのデータをもって判断をせざるを得ない状況でございますので、御理解いただきたいと思います。
  119. 中村巖

    中村(巖)委員 実態の把握というものがまだ必ずしも十分でないようなお話で、そうなると非常に困るわけでありますけれども、いじめの実態把握をしなければなかなかわからぬのですが、「いじめ」というか、そういう最近の深刻化した陰湿化したいじめというものの原因、これはどういうところにあるというふうに、複雑多岐にわたると言えばそれまでですけれども、どういうことが今日のような状況を生ぜしめているのか、その辺について文部省としては何か考えておられるところがあるか伺いたいと思うわけであります。  ちなみに、前の百二国会で私ども橋本委員が前の文部省の中学校課長にお伺いしたときは、余り原因というものを明確に申されなくて話をずらしてしまった、こういうことがあります。今の段階ではいかがでございましょう。
  120. 林田英樹

    ○林田説明員 いじめの問題の原因についてのお尋ねでございますけれども、私どもといたしましては、いじめの原因、背景といたしましては非常に多様な要素が絡んでいるのではないかという気がいたします。私どもが主要な要因として考えておりますのは、一つは、家庭における親の養育態度というふうなこともおろうかと思います。物質的な豊かさの中で、他人への思いやりや弱者へのいたわりなど、心の大切さを見失いがちな社会的風潮というふうなこともあろうかと思います。さらに、よく指摘されます問題といたしましては、テレビ、雑誌等のマスメディアや青少年を取り巻く有害環境の及ぼす影響というふうなこともあろうかと思います。さらには地域社会における連帯感の欠如というような社会環境の急激な変化というようなこともあろうかと思いますし、教育関係では、社会における学歴偏重の風潮というふうなこともあろうかと思います。また学校におきましては、教師の指導力、それから教師の協力体制のあり方や過度の受験競争の状況というふうな問題が複雑に絡み合っているのではないかと思いますけれども、私ども教育関係者といたしましては、いずれにいたしましても学校がまず学校の問題として受けとめて指導を充実していくことによっていじめの解消に努めていかなければならない問題ではないかと思っているわけでございます。
  121. 中村巖

    中村(巖)委員 確かにいろいろな複雑な原因が相互作用しながらこういうような現象が生じてくるのだろうということは私どもも想像がつくわけでありますけれども、しかしながら、こういうような現象を生じてマスコミにおいても大きく取り上げられているという状況下にありますと、とりあえず何とかいじめを少しでもなくすようなことはできないのか、こういうことになってくる。そういう意味で、その対策というか、文部省がこのいじめの問題について、さきに「児童の友人関係をめぐる指導上の諸問題 小学校生徒指導資科3」というようなものを出されて、事例を挙げて、こういう場合にこういうふうに指導をしなさいという指針のようなものを出しておりますけれども、これは個別事例に対する指導というようなものにとどまるわけでありまして、それ以外に文部省としていじめをなくすためにこういうことが必要であるからこういうような施策をしていくということは、今何かやっておられるのでしょうか。
  122. 林田英樹

    ○林田説明員 いじめの問題につきましては、私どもといたしましても事態が非常に深刻であると受けとめているわけでありまして、今先生御指摘の生徒指導資科の発行もいたしました。これは現在では各教育委員会、学校にとりまして指導の非常に重要な参考資科になっているのも事実でございます。  さらに、従来とってまいりました施策といたしましては、今の指導資科の作成のほかに、文部省の予算をもちまして、教育相談を充実するということで、専門的な知識と経験を持ちます相談指導員を委嘱いたしまして市町村を巡回訪問させる教育相談活動推進事業というようなこともやっておるわけでございますし、さらに教員に対しまして、カウンセリング技術等の専門的な研修を行うという事業も国段階それから地方レベルでも実施をいたしておりまして、毎年一万人以上の先生方に対しての研修も実施しておるわけでございます。さらに、各学校におきます取り組みを推進するための生徒指導の総合推進校というようなことを各都道府県に指定いたしまして、指導の充実の実践研究をしてもらっている実態でございます。  さらに、最近におきます事態が非常に深刻化したということで、文部省でも、この春に児童生徒の問題行動に関する検討会議を発足させまして、この六月にはこの会議から基本的な取り組みの充実のための緊急アピールをいただいたわけでございます。これを受けまして、文部省といたしまして各都道府県に対しまして指導通知を発しまして、いじめの問題に対する取り組みの充実を図ったわけでございます。この中では、先ほどお話もございましたけれども、体罰の根絶等も含めまして指導の充実の方策を各都道府県教育委員会等に示したわけでございます。しかしながら、その後もいじめによります自殺事件が起きるというふうなこともございましたので、さらにこの十月二十五日には、各都道府県の生徒指導の主管課長会議を開催いたしまして、さらに文部省として各教育委員会、学校におきますいじめに対する指導の取り組みの充実を図るために、具体的に指導の状況をチェックいただくポイントをお示しいたしまして、これに基づいて指導の実態をチェックしていただくということと同時に、各都道府県それから市町村教育委員会、各学校の指導の取り組みに関します実態調査もいたしたわけでございますし、さらに各都道府県におきます取り組みを情報交換などもいたしまして、問題点それから積極的な取り組みの有力なヒント等をお互い同士情報交換もいたしまして、各都道府県の指導の充実に資するという対策を講じたわけでございます。文部省といたしまして、これらの各都道府県の指導の実態に関します調査結果を見まして、また今後とも指導の充実を図ってまいりたいと思っております。  さらにまた、この問題につきましては、臨時教育審議会からの談話も先般出されたわけでございますけれども、こういうものも受けまして去る十一月十五日には、各省で構成いたします非行防止対策推進連絡会議というものも開催いたしまして、ここで局長レベルで申し合わせをいたしまして、関係各省それから地方レベルも含めまして一致協力した取り組みを進めていこうという申し合わせもいたしたところでございますので、こういう線に沿いまして今後いじめの問題の解消に向けて努力してまいりたいと思っているところでございます。
  123. 中村巖

    中村(巖)委員 今文部省は取り組みを強化をされているということはわかりましたけれども、それにしても、やはり今のお話の限りにおきましては、何となくそれは対症療法的なものではないかというような感じがするわけでございまして、対症療法的なものも、とりあえずの今のしょうけつをきわめているこのいじめというものを鎮静化させなければならないという意味では必要であるということはよくわかりますが、この問題というのは、問題そのものが前に人権擁護局長が言われた構造的なものが非常にあるということ、構造的なものというのはとりもなおさずそれは教育制度の根本にかかわる問題があるのではないかというふうに思うわけで、先ほどの原因のお話の中にもありましたけれども、そういうようなさまざまの原因を除去するような教育制度の整備というものを考えていかなくちゃならぬ。例えば偏差値偏重教育、こういったようなものもやはりいじめをつくり出している一つの大きな要因であるというふうに思いますし、さらにまた、先ほど来私が申し上げております管理主義の強化というものもこのいじめをつくり出している一つの大きな要因である、さらには教師そのものの問題というものも大きくあるんだろうというふうに思うわけで、私どもの子供の時代と比べて今日の教師が何となく子供と疎遠な関係にあるような感じがしてならないわけで、子供の中に本当に入っていって子供と一緒に子供のすべてを知るというような人間的な関係を形成しておらないんじゃないかという感じがするわけでございまして、言ってみれば、子供の実態に応じた十分の力量というものを教師が備えていないのではないか、こんな問題もあろうかと思うわけでございます。問題が大き過ぎるわけでありますけれども、その辺のことを文部省に十分にお考えをいただかなければやはりいじめの問題を根絶することはできないというふうに思っているわけでございます。  そこで、先ほど来私は法務省に聞いておりますけれども、校則、生徒心得あるいは体罰による管理主義の強化というもの、これは私ども見ますると目に余るものがあって、教育の場に管理主義の強化というものが持ち込まれることは望ましくないというふうに思うわけでありますけれども、文部省としてはいかがお考えでしょうか。
  124. 林田英樹

    ○林田説明員 先生ただいま御指摘の入試制度の問題でございますとか教員の資質の問題は非常に重要な問題だと私どもも受けとめております。また、今後の教育を考えていく際に改善を図っていかなければならない重要なポイントであると思っておるわけでございまして、それぞれ各種の審議会等の場におきましてもいろいろな検討が行われているところでもございますし、そういうものを受けまして今後の改善に努力してまいりたいと思っております。  それから、もう一点今お話がございましたが、生徒心得でございますとか校則のお話でございます。この点につきましては、よく最近、管理主義が強化されておってそれがいじめの原因になっておるのではないかというふうな御指摘があるわけでございます。私どもといたしましては、特に最近におきます校内暴力問題に対します学校の取り組みの充実の中で一つ感じてまいりましたのは、学校におきまして適切な、生徒が心得べき基本的な生活習慣でございますとか、学校が教育の場としてふさわしい雰囲気として維持されることは、学校が教育機関としてその役割を果たす上で極めて大切なことであるということを感じておるわけでございます。したがいまして、学校が子供たちの誤りを見逃さない、場合によっては厳しい対応も必要であろうということで、そういう点での努力は必要であろうと思っているわけでございます。ただ先生御指摘のように、それがいたずらに力でもって子供たちを抑えるということでは教育の本来の目的は達せられないわけでございます。もちろん子供たちが自発的に自分たちで物を考え、社会人として心得べき規範を身につけるよう指導するのが当然でございまして、もし力で抑えるような形になっておるのであれば見直しも必要であろうかと思うわけでございますけれども、一面、現在の学校が非常に問題の多い子供たちを抱えながら適切な教育活動を実施するということで努力をしておることもお認めをいただきたいと思いますし、また学校として、ある面、場合によっては厳しい指導も必要ではなかろうかというふうな点は御理解をいただきたいと思っております。  ただ、もちろん今先生御指摘のような生徒心得、校則などが適切にその役割を果たすためには、各学校においてそれぞれ適切なものでなければならないわけでございますし、また、ただ単に生徒が決められたものを消極的に守るというだけでは十分とは言えません。進んでその内容を実践するようにすることが大切であることは申すまでもございませんし、私どもとしても従来から、学校、教育委員会が時期に応じてこれらのものを見直し、それぞれの規則が定められている意味を子供たちにもよく理解をさせることが必要であるという指導をしてきているわけでございますし、現在、教育委員会、学校においても必要に応じそういうことも行われていると私ども承知しているわけでございます。いずれにしましても、このような趣旨が今後とも実現されるように努力してまいりたいと思っております。
  125. 中村巖

    中村(巖)委員 私、必ずしも文部省の考え方に満足するわけではないのですが、時間もありませんので、もう一点、これに関連をして文部省に伺っておきます。  それは、文部省としては学校管理のために警察を積極的に介入させるという考え方をとっておられるのかどうか、こういうことでございます。いろいろ言われるところによりますと、校内暴力が大変盛んになった時代に、警察を積極的に入れるんだ、こういうようなことが学校現場におきましてはやられたようであります。さらにはまた、学校と警察との連絡協議会というようなものが各所においてつくられている、こういう実態もあるようでありますし、先ほど御指摘を申し上げました水戸法務局事例なんかにおきましても、生徒に体罰を加えた先生の方が暴行を受けたといって警察に告訴をした、こういうふうに新聞報道をされておるわけであります。その辺、警察と教育の問題、これを文部省としてはどういうふうにお考えになっておられるのか。
  126. 林田英樹

    ○林田説明員 学校と警察との関係でございますけれども、私どもも、御指摘のように学校が安易に警察の力に頼るというふうなことはあってはならないことだと思います。しかしながら、実際に学校におきまして先生が殺されるというふうな殺人事件もあったわけでございまして、事実の問題といたしまして警察の力をおかりしなければならない場面もなきにしもあらずでございます。しかしながら、御指摘のように実際学校が警察と協力する場合には、適切に教育の場としてふさわしい連携の仕方があろうかと思うわけでございます。ただ、これは一概にどういう場合はどうすべきだという判断はなかなか難しいわけでございますけれども、教育の場としてふさわしい連携の仕方を考えつつ、適切な連携、協力は必要であろうかというふうに思っておるわけでございます。
  127. 中村巖

    中村(巖)委員 この問題全般を通じまして、私は今申し上げたように必ずしも文部省の考え方に納得をいたしませんけれども、ここは文教委員会でございませんで、教育論議をする場でございませんから、文部省はこれでやめにいたします。どうも、結構でございます。  最後に、この問題に関しまして法務省にお尋ねをいたしますけれども、今年の三月十二日に人権擁護局長通達でもって、いじめの問題に取り組むようにということをやっておりますし、また、全国人権擁護委員連合会の会長の方からも人権擁護委員会に通知をしているようでございます。そういう通達を出された後に、個々の問題に対して具体的にどういうような取り組みがなされているか、そしてどういうような成果が上がっているか、これについて最後にお伺いをしておきたいと思います。
  128. 野崎幸雄

    野崎政府委員 法務省のこの問題に対する取り組みの基本の一つは、まず人権思想の普及啓発機関としまして、いじめというものが他人に対する思いやりとかいたわりの気持ちを欠く結果出るものである、つまり人権意識の立ちおくれに原因があるんだと考えられますので、人権擁護機関組織を挙げてこの点に関する啓発活動を強力に展開いたしまして、現在のいじめを生んでおる土壌というものを、いじめをしない、させない、許さないという土壌に改めていきたいと考えております。  第二点は、いじめに関する情報の収集でございます。御承知のように、いじめというものは水面下で非常に広まっておりまして、なかなか表面化してこないということが言われております。私どもは、人権擁護機関を挙げてこの水面下にあるいじめというものを何とか表面化させていきたい。そのために人権擁護機関を挙げて、例えば人権相談であるとか、いじめ一一〇番を設ける、あるいはその他もろもろの活動をいたしまして、水面下にあるいじめの情報を把握していきたい。  第三は、把握した情報をどうするかでありますが、私どもは、いじめというものが主として教育現場で行われるものでございますので、いじめの情報を把握したときには学校にこのことを通報いたしまして、まず学校側が適切な措置をとっていただく方向で解決をしていきたい。その場合に、学校側から要請がありますときはもちろんできる限りの協力はしていくということでございます。  いじめの問題というものは学校当局や行政機関だけの対応で解決する問題とは思われません。家庭や地域社会においてもいじめというものの深刻さを認識して、これは許されないものである、見逃してはいけないものであるということを十分に理解し、その方向に従って行動してもらうことが必要でございます。私どもは、関係機関がそういった方向に向かって手をつないで立ち上がっていけますように、全国の各地域におきまして学校、教育委員会、PTA、保護者あるいは関係諸機関との間のいじめ問題対策協議会という組織をつくっていろいろ勉強もし打ち合わせもして、関係諸機関がそれぞれの分野でいじめの問題に対応していくことができるようにやってきております。今後ともこういった方向でいじめの根絶に努力をしていきたい、かように考えております。
  129. 中村巖

    中村(巖)委員 では、別の問題に移ることにいたします。  先ほど申し上げたように、最近の法務省の立法の問題でございます。  第一点は民法の改正の問題でございまして、そのうち、最初に、今法務省で養子法の改正を進められておるようでございます。法務省から「養子制度の改正に関する中間試案」というものが出されているわけでありますけれども、この立法作業が今後どう進捗していくのかをお伺いしたいと思います。
  130. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 法制審議会の民法部会の中に身分法小委員会というのがございますが、ここで昭和五十七年以来養子制度の全面的な見直し作業を進めてまいっております。いろいろな角度から検討いたしました結果、特別養子制度というのを導入したらどうかということを骨子とする案が一応まとまりましたので、これをただいま御指摘のように取りまとめまして、民事局の参事官室の名前で各界に意見を照会することにいたしております。三百数十カ所に照会をいたしまして、来年の四月中ごろまでに御意見を寄せていただくようにお願いをいたしております。その御意見を取りまとめました上で、さらにその意見を踏まえて審議を進めて法案をまとめていきたいと考えております。したがいまして、今の時点でどのくらいで成案を得ることになるかということは必ずしも明確ではございませんけれども、早ければ一年、遅くても二年以内には成案がまとまることになるのではないかというふうに考えております。
  131. 中村巖

    中村(巖)委員 この養子法改正は養子法のほぼ全般にわたるように思われるわけですけれども、その中の目玉商品というか、それは特別養子制度、こういうことになっているわけです。この特別養子制度を創設しなければならないというか、する必要性というか、それはどういうことですか。
  132. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 今度の中間試案で考えております特別養子制度と申しますのは、早く申しますと、実親子関係と断絶をして、相続とか扶養とかという関係に立たないで、いわば養親子との間に実親子と同じような関係をつくる、そういう特別な養子制度を現行の養子制度のほかに設けることにしてはどうかということでございます。その特別養子制度を考えるに至りました理由はいろいろございますけれども一つには諸外国の立法が、養子制度というものが大体原則的には先ほど申しましたような断絶的な養子制度になる傾向がございます。それからもう一つは、この親子の関係と申しますか、養子と養親との関係を法律的にも強めることによって、養子になった子供が成長していく上において非常にプラスになる面があるのではないかというような観点から、従来からそういう特別養子制度を設けたらどうかというふうな意見がかなり強かったわけであります。そういう声を受けまして、いろいろな関係する問題がございますけれども、そういうものを整理しながら、この特別養子制度を設けることにしてはどうかというような中間的な結論に達しておるという次第でございます。     〔太田委員長代理退席、高村委員長代理着席〕
  133. 中村巖

    中村(巖)委員 それから、同じ民法の問題ですけれども、先般国籍法の改正がありまして、男女差別の禁止という条約の批准との関係で男女平等をさらに推進していかなければならないのではないか、こういうことで最近言われている意見では、民法の親族法の婚姻法の中の婚姻適齢あるいは再婚禁止期間というものは一つの差別であるからこれを改正する必要があるのではないかという意見があるわけでございます。これについては法務省としては何らかの対応をなさるおつもりがございましょうか。
  134. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 かねがね婚姻適齢において男女に違いがあること、それから離婚した場合のいわゆる待婚期間について、女性についてだけ待婚期間を設けているということが男女差別につながるのではないかという議論があることは承知いたしております。そのような現行制度がいわゆる男女平等の原則に反するものであるかどうかにつきましては議論のあるところではございますけれども、私どもはそういうふうな議論があることも踏まえまして、いろいろな角度から婚姻法を、ほかにも問題がございますので将来見直すことがあっていいのではないかという考え方でございます。ただいま養子制度の見直しをやっておりますので、その養子制度の改正作業が終わりました後で多分その婚姻法の見直しに入っていくことになるだろうと思います。その際に、ただいまのような問題も当然検討の対象になるだろうと考えております。
  135. 中村巖

    中村(巖)委員 今の問題に関する限りはかなり先の問題だ、養子制度の改正そのものでも、法案になるのは恐らく一年あるいは二年後であるという話ですから、それからさらに先の話だというふうに理解をしてよろしいわけですか。
  136. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 そのとおりでございます。
  137. 中村巖

    中村(巖)委員 次に借地法、借家法の改正の問題でございます。  法制審議会の民法部会財産法小委員会は、先ごろ借地・借家法の改正についてのアンケートというか質問事項というか、こういうものを策定されたということでございまして、こういうものについて各界各層の意見を聞くということだろうと思うわけでありますけれども、この借地法、借家法の改正法務省としては必要である、こういう観点に立って、これを推進するというおつもりで今やっておられるのでしょうか。
  138. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 借地法、借家法につきましてはかなり古い法律でございまして、その制定以来何度かの改正は行われておりますけれども、戦後の住宅事情というものから比べますと現在社会情勢がかなり変わっておりますために、借地法、借家法の見直しというものは当然必要であろうという認識はかねてから持っておるところでございます。昭和三十五年にも、いわばその改正要綱案というようなものも作成したような経緯もあるわけであります。したがいまして、時代の変遷に合わせて見直しをすべきであろうということは、私どももそう考えておる次第でございます。  しかしながら、この改正につきましては、貸し主と借り主との利害関係の調整という面につきましてはいろいろ難しい問題もございます。したがいまして、各界の御意見を十分に伺って一つの合理的なまた納得のいく改正案が見出せるものならば改正すべきであろうというふうな立場でございまして、現在各方面から提起されている問題、また我々が昔から考えておる問題点を整理をして各方面の御意見を伺って、その御意見を踏まえた上で今後の審議の方針も定めていく必要があるだろうというふうに考えておる段階でございまして、一つの方向性を強く持っているというふうな段階ではないわけであります。
  139. 中村巖

    中村(巖)委員 借地法、借家法の改正の問題につきましては、そういうふうにその問題の新聞報道がありまして以来、一般におきましては近々借地法、借家法が改正になる、こういうことで、地主、家主というか賃貸人の側はそれを非常に強く言いまして、賃貸借関係についてそれをいろいろ利用しているというか、悪用しているというか、そういう向きがあるわけでございます。殊に正当事由の関係でもって今度は賃貸人の方が強くなるのだ、そんなことを言って、その反射的な問題として貸借人の側は非常に恐慌に陥っているというか、そういうことがあるわけでございます。その辺、それは法務省の意図されるところとは全然関係がないわけでありますけれども、そういうような結果を来しますので、この改正作業というか改正問題の取り扱いについては慎重にしていただきたい、こういうふうに申し上げておきます。  次に外国人弁護士問題でございますけれども、この外国人弁護士問題を私は既に二回にわたって質問をいたしておるところで、問題の所在はすべて承知をしているわけであります。しかもなおかつ、十二月九日にこの問題をめぐっての日弁連の総会がある、こういうことでありますけれども、だんだん問題が押し迫ってまいりましたので、ここで一応お伺いをしておきたいというふうに思っております。  一つは、前回私がお伺いしたときに、今度の通常国会にこの法案を何とか出したいということであったわけでございますが、そのことは変わりがないのかどうかということ。  それからもう一つ、その際にどういう立法形式によるのだということを私がお伺いしたときに法務大臣は、弁護士法の改正といたしますと議員立法ということになるかと思うけれども法務省の関与ということがあるので別の考え方もあり得る、こういうことをおっしゃっておりました。時期が非常に微妙でありますからあれでありますけれども、現状を踏まえて、来年の通常国会への提出、それは弁護士会とのコンセンサスというか弁護士会の会内合意ができたということを仮定をいたしまして、今度の通常国会への上程は可能か、その場合にはどういう立法形式によることになりそうなのか、その辺をお伺いしたいと思います。
  140. 井嶋一友

    井嶋政府委員 委員、問題点はすべて御承知でございますので、お尋ねの点だけ申し上げます。  まず、今御指摘のとおり、日弁連が国際的にも国内的にも合理性のある意見を形成してもらうということが前提でございまして、その十二月九日に向けて、いよいよ大詰めになっておるという段階でございます。そこで、そういった観点からの会内の合意が成立いたしますならば、それを受けまして私どもといたしましては、アクションプログラムで明記しておりますように次期通常国会をめどに制度をつくり上げるということを目的として作業を進める所存でございます。  それから立法形式の問題でございますが、これはけさほども御答弁申し上げましたように、その関係につきましてはまだ日弁連との間で詰めが進んでおりません。したがいまして、現段階におきましては、その点については全く未定であるというふうに説明させていただきたいと思います。
  141. 中村巖

    中村(巖)委員 最後になりましたけれどももう一点、刑事法の問題についてお尋ねをしたいと思っているわけでございます。  先ごろの刑法学会においてコンピューター犯罪というものが取り上げられた。そのせいかどうか知りませんけれども、法律雑誌なんかにおきましてコンピューター犯罪の問題、その刑事立法の問題というものが取り上げられているわけでございます。ジュリストの十月十五日号にも、法務省刑事局の古田参事官ですか、あるいは刑事局付の的場検事等が論文、座談会でいろいろ言っておられるわけですが、コンピューター犯罪といっても、コンピューターに関連する犯罪の中からCD犯罪は除いた部分だろうと思うのですが、法務省としては、この辺について具体的に立法をお考えになっておられるのか、お考えになっておられるとすればどういう作業を進めておられるのか、まだその段階に至っていないのか、その辺のところをお聞かせをいただきたいと思います。
  142. 筧榮一

    ○筧政府委員 お尋ねのいわゆるコンピューター犯罪につきましては、最近、学会あるいは法律雑誌等でいろいろ論ぜられておるところでございます。  申し上げるまでもなく、最近の社会のコンピューター化、高度情報化は著しいものがございます。さらに日進月歩どんどん進んでいくという状況にあるわけでございます。これに関連して起こりますコンピューター犯罪、これは現行刑法によって適切に対処し得るかどうかという問題でございます。内容は雑誌等に書いてございますが、偽造の問題にいたしましても、財産犯の問題にしましても、あるいはデータの不正利用というような問題、コンピューター犯罪は非常に広範にわたるわけでございます。果たしてそれを現行法令でカバーできるかという点でございますが、私どもとしても何らかの立法的対応が必要ではなかろうかというふうに現時点で考えておるところでございます。  そういう考えのもとに、現在はコンピューター犯罪の実情あるいは外国法制の調査ということを中心に検討を進めておるわけでございます。外国法制と申しましても、現在立法化ができておるアメリカあるいはイギリス等を初め、ドイツ、フランス、スイス、フィンランドその他では法案の段階で今検討中でございますし、その他の国でも何らかの形で何らかの対応を検討されておるところでございます。世界的にそういう動向でございますので、各国の情勢等も十分調査をした上で、果たしてどこまでどういう法律が必要であるか現在検討の作業を進めておる段階でございます。
  143. 中村巖

    中村(巖)委員 終わります。
  144. 高村正彦

    高村委員長代理 伊藤昌弘君。
  145. 伊藤昌弘

    伊藤(昌)委員 教育現場につきまして、また教育の諸問題について政府は事実を余り御存じないようですから、私はきょうは少し長くなりますが事実を申し上げますから、その上で御判断を願ってお答えをいただきたいのであります。これは質問者の私と答弁者の政府側だけで討論をするということでなくて、国民にわかる考え方で御答弁を願いたい。私もそういう気持ちで質問をいたしますから、くれぐれもお願いいたします。ひとつ逃げ答弁ということはよそうじゃありませんか。私もはっきり物を言いますから、国益ということを考えて物を言いますから、そういう考え方で答弁をいただきたいのであります。  まず、日弁連という指導層の団体が義務教育という国の問題に対して左翼としての立場で問題提起をしてまいり、マスコミの一部がこれを取り上げ、臨教審も緊急総会を開いてこれの一部に共鳴し、東京都教育委員会が体罰否定の通達を出し、文部省、法務省もこの一部に賛同しかかっているが、少なくとも日弁連のこの報告書の中の十の提言を、これは間違っておる、誤りとしている言動は政府には見られません。法務大臣、文部省が日弁連の言い分を受け入れることは、乱れた教育を正そうとするまじめな教師にやる気を失わせ、わがままな子供を一層増長させるから、これをはねつけてほしいのであります。法務委員である私あてにも日弁連からその文書が参っております。この中の十の提言をどう考えているか。いじめと体罰、いじめと校則は密接な関係があるとお思いになるかどうか。これから私の論をお聞きくださり、最後にお答えをいただきたいのであります。  まず、この報告書をまとめた弁護士の多くは共産系の弁護士と考えられます。自由民主主義路線を歩む弁護士がこんなおかしな報告書をつくるはずがありません。社会主義革命を目的として階級闘争理念を持つと思われる人の考えに自由民主主義の路線を歩む政府やその機関がそうだそうだと共鳴することは何たる不見識かと私は考えます。政府は国益をよくお考えの上この問題を取り扱っていただきたいのであります。いつ日弁連は共産主義者の代弁者になったのか。委員長、日弁連の会長に一遍ここへ来ていただいて、このいじめの集中審議をやらなければいけないと思う。これは早速ひとつ御検討願いたいのであります。  日弁連は自由民主主義国家日本の最高の知識団体であるはずであります。法務省は、この報告書をつくり上げましたところの三十数名の弁護士の方々、この方々の中にどれだけ共産系、左翼に関係しておる者があるか、これは恐らくお調べになっておられると思う。これについてどの程度調べられたものか。私が言うことが正しいかどうか、間違っておるかどうか、ひとつ法務大臣御答弁をいただきたい。
  146. 嶋崎均

    ○嶋崎国務大臣 どうも私よく勉強しておりませんので、その点は承知をしておりません。
  147. 伊藤昌弘

    伊藤(昌)委員 それは勉強していただかなければならぬ。何でこのごろ自民党というのは、だれに遠慮して本当のことを言わなくなったんだ。何が怖いのですか。日弁連の中に左翼の思想を持っている人がいる、この人は共産系の人らしいと言うのが何がいけないのかというのだ。はっきりした答弁をしていただかなければいけないですよ、本当に。このごろ自民党は何が怖くて本当のことを言えなくなったかね。  我々の子供のころは、校則などつくらなくたって先生の教えに素直に従いました。しかし、今は全くそれと異なり校則は必要であります。家庭でしつけられなかった子供が学校でも道徳教育を受けない。大臣、社会科教科書は悪過ぎる。自主性の名をかりて、これが大事ですよ、教師は子供を甘やかす。そこで、善悪の区別のつかない、自制心に欠けた、他人の痛みのわからない子供たちに生活習慣のわずかでも身につけさせねばならないという配慮から、校則は生活習慣という配慮から、生徒のためを思う校長先生や教師の権限でつくった校則に対して、校則をつくる権限を持たない弁護士たちが、この校則は憲法の人権違反だなどと三百代言のごとき詭弁を弄するとは何たることだ。こんな間違った日弁連の行為を許しておくと、勇気喪失症になっている現在の校長先生たちを一層萎縮させ、かつ子供の自主性尊重の名をかりての教師の放任が一層顕著になり、結局子供はなお悪くなる。当たり前のことじゃありませんか。     〔高村委員長代理退席、委員長着席〕 校則とは基本的に守れというものであって、その中には問題のないときでも無理やりに守らなければならないものではないものもある。生活習慣が生まれてくればそれでよいのです。そうでしょう。私は自分のことを言って恐縮ですが、幼稚園のこち、げたの脱ぎ方が悪くて、片方と他方が五十センチも離れて玄関で脱ぎ捨てたことがある。その家のおばさんに私はえらくしかられた覚えがある。それが生活習慣となって、今では他人の家の玄関の履物まで直してあげたいなと思って直してあげる。校則というものは生活習慣を教えるもの、人権違反なんというものではないのです。こういうおかしなことを左翼の連中が指摘をして、そして正しいことを間違ったごとのように、そういうような誤った社会をつくり上げようとしておる。文部省、とうとうこんなでたらめな公立学校現場にしてしまったじゃないですか。  それでは、その校則の一体どこがいけないか。日弁連が出してきたところの報告書について簡単に申し上げます。  まず、「日々の生活心得」「登校」「朝八時一五分までに到着するよう準備し、家の人々にあいさつをして元気よく家を出ましょう。」結構なことじゃないですか。「みなりは清潔清そにし、校章、学年章、名札は、きちんとつけ、みだしなみをよくしましょう。」「交通規則をよく守り、正しい歩行で登校しましょう。」正しい歩行で登校しましょうというのがいけないという。「途中先生におあいしたら、機をはずさずにあいさつしましょう。」結構なことじゃないですか。「生徒同志があいさつをかわすように心がけましょう。」  「右側通行二一列以内、あばれたりしないで帰る。」これは、二列以内がいけないというのです。当たり前のことでしょう。道路を歩くのに二列以内で歩かなかったら、後ろから自転車が通るでしょうし、速足で通る人もあるでしょう。一列に並ぶのは当たり前のことだ。これがいけないという。それから「道路の歩行は右側を一列縦隊で登下校する。」これも当たり前のことだ。それが棒を引っ張ってある。いけない、やり過ぎたという。それから「通学の途中は言動をつつしみ、公衆道徳を守るようにしよう。」言動をつつしみというところに線が引っ張ってある。「カバンは正しく短くさげる。」カバンは正しくというところに線が引っ張ってある。  それから、授業に入るときには「大きな声で初めてのあいさつをする。」「おねがいします」おねがいしますという言葉に棒を引っ張ってあるということは、これが行き過ぎだということでしょう。それから終わりのときには「大きな声で終りのあいさつをする。」「ありがとうございました」一番いい生活習慣の言動じゃありませんか。「挙手は、ひしと指先を伸ばし、右手を挙げるようにしよう。」きちんとしていいじゃありませんか。何がいけないんだ、文部省。「無駄話をせず、廊下を走らず迅速に行動する。」これが棒を引っ張ってある。「横に広がって歩かない。」これも棒を引っ張ってある。  「登下校の際は、校門で感謝の気持ちをこめて礼をする。」こんなに立派な習慣はないじゃないですか、道場に向かって礼をするのは。これが棒を引っ張ってある。どういう子供をつくろうと思っているのか、弁護士会の連中は。どういう日本人をつくろうと思っているんだ。これは本当に委員長、弁護士会の会長を呼んで徹底的にやるんだ、こんなのは。日本の国をつぶすつもりだ、弁護士会は。  「国旗掲揚」「国旗掲揚塔方向を向き、背筋・指先をぴんとのばす。」当たり前のことじゃないですか、お国の象徴に対して礼をするのに。どうですか、法務大臣。  それから十の提言。「子どもの人権の侵害を救済することは、いま全国民が一致して取り組まなければならない急務である。」人権侵害どころか子供はわがままほうだい。きょうは恐らく東京都の校長先生が随分見えているはずだ。何が人権侵害だ。「いまある校則を見直し、」「子どもの自主性と人権を尊重する内容に改める。」自主性の名をかりて、生徒は放任、子供は自分勝手。教育になっていないじゃありませんか。それから「子ども父母の発言と参加の機会を最大限保障して、」子供や父母の発言なんというのは過大じゃありませんか。PTAを見てごらんなさい。PTAがやかましいものだから先生が萎縮しているじゃありませんか。「体罰が子どもの生命、身体、名誉を侵害する明らかな違法行為であることを再確認し、」こんなことを書かれますと、教師のすべてが暴力教師であるかのごとき感を与えます。次、「学校・教師は、生徒名簿、PTA名簿などの警察等への提出を直ちに中止する。」不良少年は警察の名前を出すとおとなしくなる。学校は治外法権じゃないです。共産党の人たちは警察を敵のように考えておる。だからすぐこういう警察のことが出てくるんでしょう、この提言の中に。「学校・教師は、子どもに対して懲戒、自宅謹慎などの不利益処分を行う場合には、事前に父母の立会いのもと、子どもに理由を告知し、」「学校や教師が行なった不利益処分に対する異議申立の機会を十分に保障する。」何ですか、これは。「学習指導要領に法的拘束力があるとする立場および教科書検定制度を見直し、主任制や研修制度に象徴される教師に対する管理強化を改める。」大臣、日教組の言っていることと全く同じです。わかるでしょう、文部省。これが自由民主主義の弁護士の報告書ですか。とんでもない。  管理、管理と言うけれども、今学校を管理しているのはだれが管理していると思う。日教組じゃありませんか。まず日教組の綱領。政府が、日教組は社会主義革命に参加している団体とみずから規定していると受け取られる資料というのを文部大臣がちゃんと出して括られる。社会主義革命団体でしょう。日本の憲法というのは自由主義の憲法でしょう。資本主義の憲法でしょう。日教組の教育方針は、子供に対して反抗や抵抗の精神を植えつけ、素直さを忘れた、ひねくれた子供をつくろうとする。道徳教育に反対、国旗、国家に反対、規則や決まりを尊重する素直な人間をつくろうとしない、不平不満を持った人間をつくれという時そういう教育ばかりしているじゃありませんか。  日本の体制を破壊する日教組の先生は、教研集会で何を研修しているか。日本の憲法体制を破壊する反抗と抵抗、その相手は自民党政府、文部省、教育委員会、警察、校長先生、これを倒せというのでしょう、日教組の運動方針は。ストライキはこのごろやらないけれども、一時はやりたいほうだい。階級闘争むき出しの行動。職員室を拠点とする選挙運動。生徒の家庭訪問に見せかけた赤化運動。  「国民が教育を受ける権利を誰かが保証しなければなりません、それが政府であり、政府が責任と義務を負っているのです。丁度、民法にある「親が子供を監護する」とありますが、親が子供を監督して、学校教育を受けさせるというふうになっているのと同じです。国家に義務と責任があるならば、その責任を果すべき権限が国に与えられなければなりません。」権限を持たなければいかぬにもかかわらず権限を放棄しちゃって、日教組の言いなりに振り回されてしまったから、こんなだらしのない学校現場になってしまったんでしょう。憲法第二十九条財産権にも反対をする。日教組は憲法を自分の都合のよい一部分だけを利用しているだけ。  長くなりますから詳細については飛ばしますが、さて、日教組が学校を管理をした大もとをひとつお話を申し上げますから、ぜひ知っておいてください。  これは私が東京都議会議員のころ、「教育行政を司る教育委員会が、学校を直接管理運営する校長の知らないうちに、監督をうける都教職員組合と左のような確認書をとりかわしました。」「教職員組合が学校を管理するレールをひいてしまったのです。」  この中身、まず第一、「教員の研修は自主的、自発的に行ない、主催者によって差別するものではない。」この解説をします。自主的、自発的にやることは当たり前のことであり、そんな心の問題を、学問を教える先生が教育委員会と確認する必要はない。法律によって決められている教育委員会の研修をできるだけ受けないで、日教組の研修を受けるように持っていこうとする口実を、この確認書の第一につくってしまった。そうして、新しい先生が入ってくると、まともな研修をさせないで、そして反抗と抵抗の先生をつくるための研修をさせちゃう。  「職員会議は全教職員の意志が反映するように、民主的に行なう。」解説しますと、職員会議を民主的に行うなどという当たり前のことを、学問を教える資格を持つ先生が確認する必要があるのでしょうか。職員会議を議決機関のようなものにしてしまった。校長先生と教頭先生、管理者はたった二人、日教組は大勢。決議機関にしてしまったから、みんな日教組の言いなりになってしまう。  「校務分掌は職員会議その他において民主的に行なう。」この解説をします。校務分掌によって、校長は学年主任その他の主任を決める権限を持っているのに、教職員組合が多数の力でもって、職員会議でこれらを決めてしまう。  その次、「勤務条件にかかわる問題は、すべて組合との交渉事項とする。」この解説。学校の管理運営事項については、組合が教育委員会や校長と団体交渉することができない。管理運営事項は組合交渉の対象外だからです。それをこの確認書によって組合との交渉事項とする、規則違反です。  次、「実働勤務時間は一週四十一時間十五分で運用するものとする。」労働基準法は一週四十四時間。それを四十一時間十五分に短縮しちゃう、働く時間を。  その次、「時間外勤務は修学旅行で泊を伴うものに限る。かつ代休を講ずる。」修学旅行だけが時間外勤務であり、かつ代休を講ずるというのですから、働くことは損がいくという全く奉仕の心を忘れた先生の集まりだと言わざるを得ないです。  「時間外勤務は教育集団の了解を得る。」時間外勤務するときも教育集団で相談をして了解を得なければできない。  大臣、一体日弁連が言っておる教育管理——教育、学校を管理しているのは、これは日教組が管理しておる。そして生徒に対しては放任主義、自主性尊重に名をかりて、きちっとした教育をさせようとしない。校長先生は小さくなって日教組が威張っておる。これが学校現場じゃないですか。どうですか。今のこの弁護士の言っている、まとめた報告書はどうですか。全然学校現場を知らない詭弁じゃありませんか。本当にだめですよ、こういうものを出してきたら文部省、黙っていちゃ。私ぐらいのことを言って反省させなきゃ。弁護士だっておかしな人ばかりじゃないのですから、まともな人の方が多いんだから。どんな手順でこんな報告書をつくり上げたか私は知らないけれども、こんなものをつくられてきたんじゃ弁護士の、日本弁護士会の不名誉です。  余り自分ばかりしゃべっているといけないから、内容もおわかりになったと思いますから、法務大臣、この学校現場というものをどうお考えになりますか。
  148. 嶋崎均

    ○嶋崎国務大臣 私は教育について一人の親としてよく知っているつもりでありますが、やはり日本が今日まで来たのは学校の教育というものが非常にきっちりしておったということによって今日まで参ったのだろうというふうに思っておるわけでございます。  ただ、今いろいろ問題として取り上げられた問題につきましては、私たちもこの提言を読ませていただきまして、我々自身の感覚としてもぴんとこないところがあるということは事実だろうというふうに私は思っているわけでございます。やはり教育の問題を考えるときには教育の実態というものをよく踏まえて判断をしていくことが必要なのではないかというふうな感じを持っているわけです。言葉の一つ一つをとればそれぞれの立場からある程度の意味はあると私は思うのでございますけれども、全般としてとらえて、この提言、何もかも非常にわかるというような性格のものでは全くないと私は思っております。
  149. 伊藤昌弘

    伊藤(昌)委員 時間がありませんが、めったにこういう機会はないから全部お話しします。  次に、体罰。体罰は一般的に望ましいものではありません。しかし、いかなる場合でもいけないというものではありません。なぜならば、今は学校が悪過ぎる。私が先生だったら体罰はしない。教育というものは言ってわからせるのでなくて、行なって、やってみせてわからせる。ところが、今の先生たちにそれを言ったって無理です。行なって、やってみせてわからせる。怠ける考え方で学校を管理されてしまっているような学校現場で、教育というものは言ってわからせるものでなくて、先生自身が模範となるべき行為をとって、行なって、やってみせてわからせるなんて言ったって、なかなかそれは無理だ。家庭教育だって乱れておるし。  そこで、まず感情の体罰はいけない。教える先生が感情を出してそして体罰するなんということは最もいけない。しかし、戒めの体罰というものはいつの世でも必要であります。特に、今の時代は怒りの体罰というものがあるのです。これは教育経験の深いプロの教育家がおっしゃったことを私はなるほどなと思って聞いた内容であります。戒めの体罰は教育上の効果を考えて行う。怒りの体罰、これは実例を申し上げます。幾らでもあるんだ。  ホームルーム、学活—学活というのは反省会、その時間に、いつも授業の邪魔をしてくる男の生徒が教室に入ってきたので、女の先生が注意すると、先生に向かってスリッパを投げてきて、かつ教師の顔を生徒の前で平手でたたいた。生徒の前で、よその不良少年が入ってきて、女の先生のほっぺたをたたいた。女の先生は悔しがった。本当ならそのとき、教師たる者は怒りをもってその暴力生徒を殴りつけなきゃいかぬ。これは愛のむちじゃない、怒りのむちだ。その体罰は決して愛のむちであってはならない、怒りのむちでなければなりません。相手は無頼といえども恥じるような行為をしてきたのだから、そんなのは学生じゃない。いじめの原因は教師の体罰にありなどと間違ったことをこの報告書に書いてあるけれども、とんでもないことであります。こういうことがあるんだ。一口に体罰はいけないなんというような今の学校教育法もおかしい。   今日の社会では教育制度こそ完備に近いが、反面、「得がたい時期」に心身を鍛えるとか、修業に努めるとかの機関に類するものは皆無にひとしい。  そうした面ではまさに野放しに近いのである。しかもこの野放しの状態は確実に甘えなるものに結びついていくのだ。野放しだから甘えに結びついていく。  悪いことをしても誰にも叱られず、どこへ行っても食いはぐれの心配なし。……ということであれば、安逸を貧る。 これは当たり前。   昔の大人達は人間が「易き」につきやすいことをよく知っていた。だから「他人の飯を食わせる」とか、「可愛い子には旅をさせる」とかで、人間づくりをしてきた。そこにはまさしく大人としての知恵と本物の愛情があったのである。だからこういう教訓が出るのであります。  現下の校内暴力に思いを戻すとき、「体罰」そのものを少なくとも頭から否定してしまうわけにはいくまいと私は考えるのである。   こうした風潮の元凶の一つは、学校教育法第十一条にある。「生徒及び児童に懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加えることはできない。」体罰条項とも言えるこの第十一条には形影相伴うように、法務省見解という奇妙な代物がついてまわる。この法務省見解こそ、戦後三十余年をへて現在まで延々と教師たちを金縛りにし、無責任体制へ否応なく押し流している根源なのである。   それは昭和二十三年、文部省から法務省に対して「学校教育法第十一条に示す子供に対しての懲戒の中でどのような行為が体罰になるのか」という質問に対して法務省の回答は、  「体罰とは懲戒の内容が身体的性質のものをいい、」「身体に対する直接の侵害を内容とするもの、さらには被罰者に肉体的苦痛を与えるような懲戒はこれに該当する。〈たとえば、端坐、直立の姿勢、居残り、疲労、空腹など〉」 これは懲戒だというのだ。   しかし、実際にある特定の行為を、それが体罰に含まれるかどうかを判断することはむずかしい。たとえば同じ時間立たせるにしても教室内と炎天下、又は寒空の下の校庭とでは違うし、何よりも個々の子どもの体力の違い、健康の条件に留意して判断しなくてはならないからである。従って肉体的苦痛という場合には、個々の子どもの持つ発達条件や健康条件など、さまざまな条件をひっくるめて考えなければならない。 それでは体罰はいっさいいけないのかということで文部省が法務省に質問をしたところが、  「授業中学習を怠り、また喧嘩その他、ほかの児童生徒の妨げになるような行為をした生徒を、或る時間内教室外に退去させ、または椅子から起立させておくことは許されるのか」という内容である。   これに対しての法務省の見解は「児童生徒を教室外に退去せしめる行為については、遅刻した生徒に対する懲戒としてある時間内、この者を教室内に入らせないと同様。懲戒の手段としてかかる方法をとることは許されないと解すべきである。ただし生徒が喧嘩その他の行為によりほかの児童生徒の学習を妨げるような場合、ほかの方法によってこれを制止しえない時には、懲戒の意味においてではなく、」 これはおかしいね。  「懲戒の意味においてではなく、教室の秩序を維持し、ほかの一般の児童生徒の学習上の妨害を排除する意味において、生徒を教室外に退去せしめることは許される」というものであった。  子どもへの体罰として教室外に退去させることは、教室の秩序を維持出来ない場合に許され、  「退去させでもよろしい」が、それは「懲戒」の意味ではないのだ。 法務大臣、室外退去は懲戒であり体罰ですよ。室外退去というものは懲戒でもなきゃ体罰でもないと。  この回答文を作成したお役人が幾晩かかってこれを作りあげたか、私の知るところではないが、皮肉ではなく、解ったような解らないような、そういうたぐいの文章の一つであることだけは確かである。  しかもこれを、最終的にそっくり戴く学校現場としては頭をひねらざるを得ない。  第一、「他の方法で制止しえない」という他の方法とは何をさしているのであろうか。  静かにさとすことか、それとも大声で叱りつけることか、取っ組み合いをしている場合、小学生ならいざしらず中学生の場合に、声で止めるだけでなく両者の間に飛び込んで突き離すことだって考えられるわけだが、たまたま強く突き離したことによって子どもが机の角に当って、仮に負傷でもしたら、それは体罰になるのかならないのか、さらには教室の「維持」ができる、できないの区切りの判別はどこでどうつけるのかなどなど、「方法」の問題だけでなく、すでにそこには、体罰そのものに直接絡んでく  る問題があるのだ。  つまり教室外に連れ出す前にそういう事柄が出てくるのである。  ところがその辺には全く触れておらず、「他の方法で制止しえない場合」などという至極曖昧な表現に終っている。  もっとも、喧嘩している生徒の間へ割って入るだけの勇気ある教師がいるかどうか、むしろそちらの方が気になる昨今ではあるが、それにしても「教室外」へ退去させるのが「懲戒の意味であってはならない」……とは一体どういうことであろう。  「お前を罰しているわけではないよ、喧嘩だって悪くはないんだ、だけど教室の維持が保てないからな」……だから暫く廊下に立っているや……ということになると思うのだが、それで教育と言えますか。  当時の法務省のお役人も三十余年後に、まさか今日みるが如き校内暴力という逆様現象が頻発し瀰漫するとは神ならぬ身の考え及ばなかったのであろうが、それにしても悠長にして且つ、判断のしにくいこの「見解」は、まさにお役人的でみごとである。  たとえば教師に対して、きわめて不遜な態度、反抗的な態度を示した、しかもその内容は、教育という立場からみて他の生徒への影響も大きい。 生徒の大勢おるところで、ある不良の生徒が先生に対してひどい反抗的な態度をとった。  教育という立場からみて他の生徒への影響も大きい。教える者と教わる者の立場の維持が不可能、というそうした場合の懲戒については何もないのである。先生はどうしていいかわからぬです。生徒にばかにされるだけだ。  要するに教師側の立場にたって考えられているものは全くないのである。これはきわめて重大なことである。いいですか、法務省それから法務大臣。  いわゆる教育学的発想ではなく、あくまでも法的発想なのである。法的発想で物を考えて回答するからこんなものができてしまう。子供をよくするということが目的なんですから、教育的発想で法務省も考えていただかなければならないと思います。  昭和二十三年の法務省の見解なるものが、逆様現象の続発の時代に合致しようがしまいが、学教法十一条の解釈の只一つの拠所としていまだに厳存しているのである。  父母の中には、それを知ってか知らないでか学校側が少しでも厳しい態度を示したり、ちょっと体罰を加えたりすると、直ちに教育委員会に電話したり駈け込んだり、或いは告訴さえするという親が増えているのは事実であろう。  こうした親たちに共通することは、忖度する事を一切無視し、従って逆様現象の良し悪しなど全然無関係、ひたすら吾が子への愛を先行させることである。 ゆえに、ただ体罰はいけないと言うだけではなくて、懲戒と体罰を教育的発想で改めて早急に大臣、検討していただかなければならないと思うのです。こういう難しい問題ですから、今すぐお答えというのは無理でありますけれども、ぜひこれを慎重に考えていただきまして、可及的速かにこういう問題について教育的発想、見地から、本当に子供のためになる教育、正しい先生が本当の教育のできるような、そういうものをひとつ早く検討してつくり上げていただきたいのであります。学校の先生も人間であります。  戒めの軽いゲンコツやビンタの一つぐらいで、その都度教委などへ駈け込みされたのではバカらしくなるのは当然というもの、意気沮喪し終には触らぬ神に崇りなしで事なかれ主義となる。  しかし、そうした覇気のない、頼り甲斐のない教師は、一般の子供たちからさえ信頼を失っていくのはこれもまた当然で、いわば悪循環を作り出しているのではあるまいか。  子供が、教師に対して暴力を振ってもお役所からは何一つお吃りはない。逆に教師が子供に対して一回でも体罰を加えると直ちに暴力教師として問題にされる。  文部省も教委も先にあげた法務省見解だけを後生大事にし、ひたすら「体罰は不可」の念仏一途で教師側を責めるのみ。従来のこうした事例が——一般の子供たちの目にどう映り、その心にどのような影響を与えているか——についての配慮はまるでみられない。  考慮していると思えるのは教師に暴力を振った子供に対するものばかり、一体どうなっているのかと問いたくさえなるではないか。  教育は対等の立場では成立しないはず、従って教師が教師としての誇りを捨てたら既にそこには教育の存在はない。  教師は神様ではないのである。どこの世界に、教える立場の教師が教わる側の子供に殴られて黙っているという法があろうか。  これらの事は、教頭四年、校長十二年、計十六年の年月を、文字通り汗と泥んこになりながら学校経営をしてきた私の経験からもはっきり言えるのである。また、「通りやんせ」と「ストップ」のけじめをはっきりさせながら、ユーモアを忘れず、垂範を忘れずの指導を、日常の中で徹底していくところには、暴力の芽は育ちにぐいと私は確信している。 私だって、昔の先生を思い出すに、ユーモアがあって、そして私が間違ったことをしたらぴしっとしかってくださって、そしてまた夏は夏で海へ連れていってくださったりアルプスヘ連れていってくださったり、そういう先生は一生忘れることができない。学校を卒業して何年たっても先生、先生と慕う。それが弟子であり、弟子に慕われる、これが先生の喜びである。体罰を受けたって私はそういう思いを今も持っております。体罰によって受けた教訓を忘れがたく思っている人たちも、私のように少なくはないと思います。  校内暴力がこれ程に激化し、その非行は「殺人以外の悪なら何でもある」〈日教組五十五年・東京大会における分科会報告〉という凄まじい事態にまで進展しているのに、体罰条項に誰も目を向けようとしないのはなぜなのか。体罰是非論だけでなく、「法的」な問題、つまり三十数年前のままでよいのかどうかについても、この際この時期に徹底した検討が必要ではないかと、私はそれを言いたいのである。文部省はもっぱら「禁止一点ばり」の通達に依存し 今度の都教委だってそうだ。それから臨教審だってそうだ。一体臨教審は何をやっているんだ。日教組にはメスを入れない。私が昨年の予算委員会で、今のでたらめな学習指導要領は永井文部大臣が日教組型の学習指導要領につくりかえちゃった、指導要領がでたらめだから今のように教科書がでたらめになっちゃう、指導要領というものは大臣の権限だけでできるのだから本当の指導要領をつくってくださいと言ったってつくらない。だから臨教審にそれを早くやってくださいと言ったってちっともやろうとしない。教科書も直してくださいと言ったって直そうとしない。資質のある先生をつくる教員養成制度を検討してくださいと言ったってこれもやりやしない。だれに遠慮をして日教組は教育荒廃にメスを入れようとしないのだ。そんな姿勢で教育の改革なんかできるわけがないじゃありませんか。この時期に、  文部省はもっぱら「禁止一点張り」の通達に依存し「厳然とのぞめ」式の指示をし、教委は教委で腰が定まらず、一方、日教組の委員長は一教師よ毅然たれ——とカッコよく獅子吼してそれで終り。そこに共通して窺えるのは現場の実態から遠く離れた空々しさだけである。御自分の子供にも自主性尊重で、子供が親をばかにする、こんなやり方で一体よろしいのでしょうか。幼児のころから子供に親がばかにされて自主性尊重。自主性尊重なんか本当に親がやっているかどうか。そうじゃない。まともな家庭ならば厳しくすべきところは厳しくしているはずだ。なぜ学校だけが厳しくしてはいかぬのだ。   評論家ならしらず、仮にも教育行政の立場に在る人間というのは、難波しかけた船の乗組員に向かって「波の静まるまで我慢して漂流していろ」と言うにひとしい無責任で冷酷な発言は厳に慎まねばなるまいと思う。今少し現場を直視し、真面目教師達の立場に立っての行政を望みたいのである。  そこで、もう時間がありませんからお尋ねいたしますが、校則の一部はさっきおっしゃっておりましたね。室外退去というものは懲戒であって、これもやはり体罰である。これはだれが考えたってそうだと思う。これは局長、答えてみてください。それから懲戒と体罰を教育的発想で改めて検討してもらえるものかどうか、そして検討していただけたら文書でこちらへいただきたい。  それからいじめの元凶、これはあの俗悪なテレビ。ああいうものを子供が見たら、非常に間違った欲望というものが際限なく出てくるのは当たり前です。  もう一つ、ここに「悪の芽は早く摘むべし」という、これは朗読しようと思いましたが、時間がないからできませんけれども、これをごらんになればそれはひどいものです。小学校の女の子たちがいじめに参加して、そして参加することがストレス解消だと言う。そういうことを言っておりますよ。  俗悪テレビに対しては、文部省もいじめのことを検討されたときには、今のマスコミの間違いについては後書きかなにかで、番外でちょこっと言っているだけで本論に入ってない。何で政府がマスコミに遠慮するのですか。最も間違っている、今の俗悪番組というものは。それは正すように放送局に物を申していただかぬと困るのです。それと家庭のしつけ。それと今申し上げたように学校の中がいかにも悪過ぎる。そして正しい先生がいらっしゃっても正しい教育のできないような間違った学校現場になってしまっている。この三つがいじめの元凶です。私はそう思いますが、最後に、時間がありませんから大臣、今の事柄についてお答えをいただければありがたいと思います。
  150. 嶋崎均

    ○嶋崎国務大臣 非常にたくさんの説を拝聴したわけでございます。私は、学校の問題というのは教師が自分のきちっとした考え方の中で教育を行っていくということが基本的に一番大切なことであると思っておるわけでございまして、どうも法務大臣がそういう問題について一々申し上げるような条件にはないように思いますけれども、私は基本的にそのように考えておるわけでございます。教育学的な方法というのも非常に抽象的な話でございますけれども、一番大切なことは子供たちを将来日本を背負えるような立派な人間に仕立て上げていく、そういう過程であろうと思うのでございます。我々自身も育った環境というのはなかなか厳しい環境の中で育ったわけでございますが、そういう中で非常に厳しい先生に鍛えられて錬成されてきたというところもあるわけでございます。ただ、学校を運営していく場合に特異なケースがあり、そういう中からいろんな校則その他の規制ができてくる。それが非常に拡大をされて日本全国そういうような形でぎすぎす整理をされておるというような感覚で事柄を読むべきじゃないので、私たちはやはり学校の実態に応じてきちっとした校則なり規則なりを定めて、そういう中から一つの新しい子供の教育というものを考えていくべきではないかと思っておるわけでございます。  御承知のように、私は体罰を公に認めるというようなことは適当じゃない。先ほど委員も御指摘のように、まず学校の先生みずからがきちっとした形で教育の場に臨んでいただき、またそういう姿勢で教育をやっていただくということが、行く行くそれを見ながら子供たちが育っていくという環境になるわけでございましょうから、一律に体罰云々ということをとやかく言うつもりはありませんけれども、先ほど教室の外に出たからそれがどうだこうだというのは私きょう初めて聞いたわけでございます。昭和二十二年の時分ですから今とは様子が非常に変わってきているのだろうと思うのです。そういうことについては、どういう経緯でそういうものができ、またそれがどういう形で現在受け取られておるのかというような点もひとつよく検討させていただきたいと思っておるわけでございます。  いずれにしましても大切なことは、せっかく教育問題というのが今の時世、何とかこの問題について改革を進めていかなければならぬというような雰囲気ができておるわけでございますから、こういう機会をとらえまして、いろんな審議会はもちろんのこと、関係者一同がこの問題を真剣に取り上げて整理をしていくいい時期であると我々は考えておるわけでございますので、今後とも我々もそういう観点で、御指摘になったような問題点については研究を重ね努力をしていかなければならないと思っておる次第でございます。
  151. 伊藤昌弘

    伊藤(昌)委員 ありがとうございました。終わります。
  152. 片岡清一

  153. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 最初に、中国残留日本人孤児問題についてお伺いします。  昨日、第九次訪日調査団百三十五名の中の第一班、遼寧省の四十五人の中国残留日本人孤児が来日されました。みんなが肉親にめぐり会えることを心から念じております。中国残留日本人孤児問題の一日も早い解決を実現していただきたい、こういう立場から、現在解決の障害となっております問題点の中で重点的にお尋ねしたいと思います。  質問に入る前に、まず最初に厚生省の方に現況を簡潔に報告していただきたいと思います。
  154. 石井清

    ○石井説明員 御説明いたします。  中国に残留する日本人孤児の現況でございますが、現在中国に残る孤児数は千八百八十九名、その内訳を申しますと、身元判明した者が六百三十、それから訪日しましたけれども身元が判明しなかった、それが二百九十四名、それから六十年度、今先生がおっしゃいましたが、昨日第九次が来たわけでございますが、これが百三十五名、それから来年の二月、三月にかけまして百三十名ということで二百六十五名、それから六十一年度に訪日を予定しておりますのが七百名というのが現状でございます。
  155. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 既に帰国された数はわかりますか。
  156. 石井清

    ○石井説明員 現在までに身元が判明した孤児で帰国いたしましたのが二百四十六名でございます。
  157. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 訪日調査はようやく来年度でほぼ終了するということになっておりますが、この点につきまして、一回の調査人数の絞り方あるいは調査日数の延長、広報活動の徹底、こうした多方面から改善意見も出されております。私は、ここでは再度訪日調査が実現することを含めてさらに努力されるように要望しておきたいと思います。  そこで、きょうお尋ねしたいのは、孤児の帰国永住に政府が責任を持って、本腰を入れて対策を急いでほしいという問題です。先ほど言われました、現時点でいまだ中国に残留するおよそ千八百八十九人の孤児の中で仮に半数が帰国を願ったといたしましても、半数といいますのは今までの実績などからの推定ですが、半数であっても人数は一千家族に及びますし、現在の政府の受け入れ態勢では何年かかるかわからないという状況だと思うのです。  ちなみに、今年度の中国残留孤児対策予算で見ますと、身元未判明孤児の永住帰国受け入れ対策が三十二世帯、百四人分三千三百万円であるわけです。現在までの実績はゼロ。十二月予定が五世帯、年度宋まででもわずかに十五世帯。これは予算の半分以下ということです。こういう見込みしか立っておりません。しかも身元判明孤児につきましてはほとんど関係者任せになっているというのが現状であるわけで、これでは政府が残留孤児対策に責任を持って取り組んでいる、こういうふうには見ることができないと思います。  時間の関係で、ここでは身元未判明者の帰国問題に限ってお尋ねしますが、まず最初に日中両国間の申し合わせによります、判明者の永住帰国の受け入れについての厚生省の見解です。すなわち、帰国希望者については政府が責任を持って家族を含め全員を受け入れる、これは国籍の有無にかかわらずですが、このことはこの場で確約できるでしょうか。
  158. 石井清

    ○石井説明員 身元未判明者であっても、日本に帰国する場合におきましては、家族を含めまして援護の対象、といたしております。
  159. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 厚生省の見解はそのように全員を受け入れるということであるわけですが、法務大臣に伺いますけれども、厚生省の方が身元未判明者の帰国永住希望者全員を受け入れるという方針を明らかにしておられますが、法務大臣もこれには異存はないと思いますけれども、一応見解を伺っておきます。
  160. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 お尋ねの件は身元が判明していないいわゆる中国残留孤児の方々のお話だろうと承知いたしますが、こういった場合には身元保証人を確保することについて困難があるというような状況がございます。私どもが最も関心を持ちますのは、入国を認めた結果国内で去就に迷うあるいは路頭に迷うといったようなことがあっては困るということなのでございまして、したがって入国後の手当てがしっかりついておるということを入国の際にあるいは入国に先立って確認したい、これが私どもの基本的な立場でございます。そういうことで、例えば入国後厚生省において孤児定着促進センターへの入所であるとかあるいは同センターを退所したときには身元引受人のあっせんが行われるとかいった援護措置が講じられておるという場合には身元保証に関する書類を省略するといったようなことで入国を促進しておるということでございます。
  161. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 結局厚生省は全員受け入れるということであるわけですが、そのことには法務省としても、一つの要件はあるでしょうけれども、身元引受人という問題が、これは後でやりますけれども、政府が受け入れる、厚生省が受け入れる、こう言っていることについて、これは法務省からの条件があるかもしれませんけれども、そういう条件を満たせば全部受け入れる、こういうことは大臣、当然でしょうね。
  162. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 そのことにつきましては、法務省といたしまして異論はないところであると存じます。
  163. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 大臣に聞いているわけです。
  164. 嶋崎均

    ○嶋崎国務大臣 御承知のように、入国する人の日本におけるところの将来ということを考えますと、身元保証人がその身元保証の意思が非常にしっかりしておる、そして後の整理もうまくできるという条件が整っておるというような場合には、これは受け入れることは結構だろうというふうに思っています。
  165. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 では次に進みますが、身元の未判明者が帰国した場合の受け入れ態勢につきまして、現在は日中友好協会を初めとしていろいろなボランティア団体などから多くの改善策が出ておりまして、私も一層の改善を求めるものでありますが、この帰国者の方々の国籍取得問題に絞ってまずただしたいと思います。  この問題は、二月二十六日のこの委員会で、私の質問で、就籍申し立てにつきまして大変な労力と金がかかる実態を明らかにいたしまして、中国残留日本人孤児の個人責任でさせるのはどう考えてもひど過ぎる、そういう点で裁判所も考えてもらいたい、政府の特別の援助を検討してもらいたい、こういう質問をしたのに対しまして法務大臣が、「関係省庁とよく連絡をして推進を図りたい」、こういう答弁をいただきましたが、今後申請件数が一挙に増大することが予想されますし、それに備えて至急検討して援助の手を差し伸べてもらいたい。この点、法務大臣の決意と厚生省の見解をお伺いしたいと思います。
  166. 石井清

    ○石井説明員 未判明の帰国孤児の就籍等にかかわる費用の負担でございますが、この点になりますと厚生省といたしましては所掌事務の範囲外ということになりますので、費用負担については非常に困難であろうと考えております。
  167. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 ただいまの経費の件は、まことに申しわけございませんが、入国管理局の所管事項ではないようでございますので、ただいま担当のところに照会をさせておりますので、判明次第御報告を申し上げたいと思います。
  168. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 今言いましたように、ことしの二月の二十六日の法務委員会で大臣が今の問題で、「関係省庁とよく連絡をして推進を図りたいと思います。」こう答弁していただいているわけです。その後余り進んでいないようでありますので、この問題についての協議、解決策を早く立てていただきたいというように思います。  それから、政府が今まで手をつけなかった就籍申し立てにつきまして、中国残留孤児の国籍取得を支援する会というのがありますが、こうしたところを初め、民間人が全くの奉仕活動で手伝っておられるわけです。この会では現在までに既に三十七名の就籍許可を得ているわけですが、これは最高裁の方に伺いますが、全体ではどのようになっているのか、昭和五十七年から現在までの就籍申し立て及び許可件数などについてお知らせいただきたいと思います。
  169. 猪瀬愼一郎

    ○猪瀬最高裁判所長官代理者 私どもへの報告の結果によりますと、残留孤児の就籍許可申し立て事件の受理状況は、昭和五十七年の一月一日から昭和六十年九月三十日まで現在で合計百四十五件でございます。その年度別の内訳は、昭和五十七年が十件、昭和五十八年が七件、昭和五十九年が六十二件、昭和六十年が九月末日現在で六十六件、こうなっております。  そして処理結果でございますが、同じ期間の既済件数は合計六十五件でございまして、処理内容別で見ますと、認容、つまり就籍許可でございますが、これが五十三件、却下が三件、取り下げが九件となっておりまして、この認容を年度別で見ますと、昭和五十七年、五十八年がいずれもそれぞれ五件ずつでございます。そして昭和五十九年が十二件、昭和六十年が、これも九月末日までですが、三十件、こういう状況でございます。
  170. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 そうしますと、今の就籍許可件数五十三人というのは今度新しく発表された数字だと思いますが、この五十二人の晴れて日本国籍を取得された人、これは全員帰国を希望しておられる方と考えますが、一体このうち何人が帰国できているのか、厚生省あるいは法務省、わかっておれば答えていただきたいと思います。
  171. 石井清

    ○石井説明員 就籍した人がどのくらい帰ってきておるか、私どもそれをつかんでおりません。
  172. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 問題はやはりここにあると思うのです。日本の国籍を取得しているというのにかかわらず、その中で帰国ができていない、そしてそういう人はまず帰国希望者であるということははっきりしていると思うのですけれども、これを厚生省、法務省でもつかんでいないという状況、これは大変だと思うのです。  さきに言いました中国残留孤児の国籍取得を支援する会、ここでは国籍を取得した人々の帰国に本当に努力をしているわけですが、この会が世話した人が三十七名あるわけですけれども、三十七名の国籍取得者の中で帰国が実現したのは五名しかいないわけであります。その原因は何かと検討してみますと、これはずばり法務省入管の態度、私に言わせれば無責任な対応にあったというふうに思います。すなわち入管におきまして、中国残留日本人孤児という政府が責任を負うべき特殊な条件下にある人々に対し、全く一般的な永住許可に準じた取り扱いをしてきたわけです。  一般的にやりますと、申請に当たって本人の入国理由書、これは中国に渡った時期というようなことを書くわけですが、本人が知っているはずはないわけです。これに加えまして身元保証人が求められて、この保証人に保証能力を立証する資料、納税証明書などを提出させる、さらにこの人が日本に来て企業などに勤めるその採用予定証明書や就職先の企業の実態を疎明する資料、こうしたものの提出が今まで求められてきたわけです。日本語もできない孤児に雇用契約書を提出せよとか、あるいは保証人に保証能力、それも財産関係、そういう面でそれを立証せよとか、こういうことを要求するということ、これは日本の国籍を取得した中国残留孤児にとってもう実現できることではない。この無理なことを要求してきていたわけです。全面的に受け入れるという方針、こういうことと、そういう保証人にいろいろな要件の書類を要求するということと矛盾する態度だと思うのです。これまでの取り扱いの実態と、この点についての善処する方法を明らかにしていただきたいと思います。
  173. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 就籍の許可を受けた者は本来、法的にも日本人として扱われるべき人々であります。したがって、日本旅券を取得して入国するのが当然であると思うのでございますが、何か中国側の事情があるようでございまして、中国国内においてそれまで中国人として法的に扱われてきた人々が就籍許可を受けたということで、中国国内で日本旅券発給を受けることを好まないという何か事情があるようでございます。そのために就籍許可を受けた者であっても、入国の瞬間におきましては外国人として入国をするということにならざるを得ないのが現況でございます。そのために、これらの人々は、実質的には日本人でありながら入国の時点におきましては外国人として取り扱われておるということのために、その他のいわゆるいまだ就籍に至っていない人々と同じように、入国理由書、親族一覧表あるいは夫婦、親子関係等を証する中国側の発給する公文書、さらに帰国旅費の国庫負担承認書といったものを提出していただいておるわけでございます。  ただ、先生がさっき御指摘になりました身元保証人の在職証明書であるとか納税証明書とかにつきましては実際にも弾力的に扱っておりまして、それが出ないからということで入国を認めないということはいたしておりません。  私どもの関心事は、先ほど申しましたように、これらの人々が入国してから路頭に迷うことがないことを事前に確認したいということに尽きるのでございます。したがって、身元保証人に身元保証の明確な意思があり、かつ能力があることが確信できれば、書類の型式、書類の数あるいは書類の記載方式、記載内容について、形式的なことでこれの取り扱いを左右するということは実際にもいたしておりませんし、そういった関心事が立証できれば、そこで身元保証の要件は満たしたものというふうに扱っているわけでございます。
  174. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 先ほどの団体が扱った場合に、その三十七名の就籍許可を取って五名しか入国していない。このことは、結局は書類をいろいろなものを要求される。だから、そういうことになりますと、身元保証人になる人がいなくなる、こういうことが隘路になってきた現実があるわけです。きょうの局長お話を聞いておりますと、それに比べると非常に簡便な措置をやっていくと言われるのか、そういうふうに感じるわけでありますけれども、そうしますと、身元引受人があって、その人が、この人物については日本ではどこに住ませ、そして当面は生活保護というふうな問題になるでしょうけれども、そういう手続をとることになるわけです。要するに身元引受人がある、そして就職しているという現実はないにしても、あるいは生活の手段は当然生活保護の方法もありますし、それから住宅については公営住宅などもある。そういう住居と生活についての問題はもう当然日本に来れば解決できる問題であって、そういう面の世話をするいわゆる身元引受人があればいいということでよろしいんでしょうか。
  175. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 身元引き受けをされる方に身元引き受けの意思と能力があるということが確認できればよろしゅうございますということでございます。
  176. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 今までとられた書類の中に、保証能力を立証する資料、個人経営の場合は所得税、事業税の納税証明書、社員であれば在職証明書及び源泉徴収票等、こういうのがあります。こういうものを必要とするということであるわけですか。要するに、一般の場合と日本の国籍を有する、既に取っている在留日本人孤児の場合とは別扱いをするということであるわけですか。
  177. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 御指摘のように、在職証明書あるいは納税証明書あるいは申請人、入国する人々の採用予定証明書といったものの提出を求めてはおりますけれども、しかしそれが提出し得ない合理的な理由がある場合に、なおかつ保証人に保証の能力がある、あるいは意思があるということが別途の資料、説明その他で確認できれば、その書式については弾力的に取り扱っているということでございます。
  178. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 その点ちょっと念を押しておきますが、今までともかく難しかったのです。これは変わる、あるいは最近方針を緩めたということがあるわけですか。
  179. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 地方の入管局レベルにおきます取り扱いにおきまして、必ずしも今申し上げたような趣旨が十分に徹底していなかった点があるやに思われますので、この点は間違いのないように今後とも徹底を図っていきたいと存じております。
  180. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 時間が大分迫ってまいりましたが、午前中横山委員がただしました世界基督教統一神霊協会、いわゆる統一協会の問題ですが、要するにあれだけの違法活動をやっていながら、政府の関係当局が取り締まり対策を講じないためになお違法活動が大々的に繰り返されているというのが現実であるわけです。彼らの活動の中で、午前中にも話が出ました小松さん殺害事件に次いで八月、岐阜県で彼らの言うところの伝道活動、具体的にはアフリカ難民救済をかたるにせ募金活動中に新たな犠牲者が出ております。原理運動被害者父母の会の集計で、統一協会にかかわる死者がこれで二十一名となっているわけです。  この点、前回質問いたしました元「世界日報」幹部の副島嘉和らが勝共連合の理事長梶栗玄太郎らに暴力的に「世界日報」から排除された事件についてお聞きしたいんですけれども、警視庁は昨年の六月の十二日、被告訴人五人を暴行、傷害及び暴力行為等処罰ニ関スル法律違反で東京地検に送検した。この点につきまして検察庁の対応を聞きましたら、ともかくできるだけ早い時期に処理ができると思うということでありましたけれども、現在はどうなっておりますか。
  181. 筧榮一

    ○筧政府委員 御指摘の事件につきましては、現在なお東京地検において捜査中でございます。事案の性質上、背後関係や動機等を十分解明する必要がある、いわば手間のかかる事件と言えようかと思います。  本年六月、柴田委員からこの点について御質疑がございましたが、その後におきましても東京地検で被疑者、参考人等多数を取り調べて、現在まで捜査を継続中でございます。検察当局といたしましても、迅速かつ適正に処理すべく努力中でございますので、近い機会に処理がなされるものと考えております。
  182. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 結論的には六月の答弁と同じ中身になっております。こういう問題はやはり全国的に問題になっておりますので、厳正な対応をしていただきたいというように考えております。  ちょっと時間が参りましたけれども外務省の方にお伺いしておきますが、午前中問題になりましたアメリカ日本から四千人を送る、それから一九八八年までには五万人を各国から米国に送る、こういうような計画がある。そういう状況が出ているのですけれども統一協会員のアメリカでの活動、これは法律に違反するということで一九七四年には二百八十一名が不法滞在者とされ、また一九七六年にも百六十五名が不法滞在者とされ退去を命ぜられた、そういう前歴を持っているわけです。この協会員と父母との間で家庭の破壊が起こり、父母が子供の身を心配して、渡米させないでくれ、こういう陳情がいろんなところに出ているわけであります。この問題について法務大臣、どういう決意で臨まれるのか。また外務省の方には、今日の事態を踏まえて家族と子供の話し合いの便宜を図りたいと言っておられますが、今日の事態で再度善処方をしていただきたい、そういう点についての答弁を求めます。
  183. 嶋崎均

    ○嶋崎国務大臣 御指摘のように、この統一協会の布教活動入信者の信教活動によりまして親子の間の断絶が生じたりあるいは家庭の破壊が進んだりというような事態もあるやに聞いておもわけでございます。そんな観点から、入信者の親族の方々から、入信者を捜していただきたいとかあるいは面会を求めたりされるというような場合が過去にもあったわけでございまして、それに対応して東京法務局におきまして統一協会との連絡をよく保って今日までいろいろな面で努力をしてきたわけでございます。午前中もお話し申し上げましたように、そういう考え方が各地域にも十分理解ができるような努力を積み重ねていきたいというふうに思っておりますし、また今後とも今までやってきたような努力というものを続けまして、人権相談等の手続によりまして問題の解決に努めていきたいというふうに思っておる次第でございます。
  184. 飯田稔

    飯田説明員 けさほど同じ問題で御説明申し上げましたが、特に旅券立場からは都道府県と協力いたしまして話し合いの場を設けるという努力をいたしております。具体的にも時々父母の金その他から陳情がございますので、そのリストを各都道府県に配付して、外務省とよく協議するようにという通達を出しております。そして、事実、現在までに何件かございまして、けさほど御説明申し上げたとおり、若干一部成功したと申しますか渡航を中止したケースもあるというふうに聞いております。  それから、アメリカ大使館ビザの件の要望が非常に強うございますので、この辺も非常に私ども理解できますので、非公式でございますけれども既に在京大使館に伝えてございますし、先方もこの点につきましてはかなり理解を示しているようでございます。今後とも父母の金その他から陳情がございました際にはできるだけその内容を取り次ぐという方向で努力したいと思っております。
  185. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 終わります。      ————◇—————
  186. 片岡清一

    片岡委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  裁判所司法行政法務行政及び検察行政に関する件調査のため、来る二十七日、参考人の出頭を求め、意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  187. 片岡清一

    片岡委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人の人選につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  188. 片岡清一

    片岡委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は、来る二十七日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時三十四分散会