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1985-12-11 第103回国会 衆議院 文教委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年十二月十一日(水曜日)     午前十時三十一分開議 出席委員   委員長 阿部 文男君    理事 大塚 雄司君 理事 白川 勝彦君    理事 船田  元君 理事 佐藤  誼君    理事 池田 克也君 理事 中野 寛成君       青木 正久君    赤城 宗徳君       臼井日出男君    榎本 和平君       北川 正恭君    田川 誠一君       中村  靖君    二階 俊博君       町村 信孝君    木島喜兵衛君       佐藤 徳雄君    田中 克彦君       中西 績介君    有島 重武君       沼川 洋一君    滝沢 幸助君       藤木 洋子君    山原健二郎君       江田 五月君  出席国務大臣         文 部 大 臣 松永  光君  出席政府委員         臨時教育審議会         事務局次長   齋藤 諦淳君         文部大臣官房長 西崎 清久君         文部大臣官房総 五十嵐耕一君         文部省初等中等         教育局長    高石 邦男君         文部省教育助成         局長      阿部 充夫君         文部省高等教育         局長      大崎  仁君         文部省高等教育         局私学部長   國分 正明君         文部省学術国際         局長      植木  浩君         文部省体育局長 古村 澄一君         文化庁次長   加戸 守行君  委員外出席者         法務省人権擁護         局調査課長   永井 敬一君         外務省アジア局         中国課長    槇田 邦彦君         文化庁長官   三浦 朱門君         厚生省援護局業         務第一課長   石井  清君         運輸大臣官房国         有鉄道部業務課         長       荒谷 俊昭君         日本国有鉄道常         務理事     長谷川 忍君         日本国有鉄道地         方交通線対策室         長       佐々木建成君         日本国有鉄道旅         客局総務課長  川崎 孝夫君         文教委員会調査         室長      高木 高明君     ――――――――――――― 委員の異動 十二月十一日  辞任         補欠選任   伏屋 修治君     沼川 洋一君 同日  辞任        補欠選任   沼川 洋一君     伏屋 修治君     ――――――――――――― 十二月五日  私立学校教職員共済組合法等の一部を改正する  法律案反対等に関する請願山原健二郎紹介  )(第一〇〇三号)  同(藤木洋子紹介)(第一一一二号)  信州大学大学院総合科学研究科設置に関する  請願串原義直紹介)(第一〇二四号)  同(清水勇紹介)(第一〇二五号)  同(中村茂紹介)(第一〇二六号)  私学助成増額に関する請願野呂昭彦紹介  )(第一〇六〇号)  幼稚園補助金増額等に関する請願経塚幸夫  君紹介)(第一一〇〇号)  同(工藤晃紹介)(第一一〇一号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第一一〇二号)  同(田中美智子紹介)(第一一〇三号)  同(辻第一君紹介)(第一一〇四号)  同(不破哲三紹介)(第一一〇五号)  同(正森成二君紹介)(第一一〇六号)  同(松本善明紹介)(第一一〇七号)  同(三浦久紹介)(第一一〇八号)  同(簑輪幸代紹介)(第一一〇九号)  同(山原健二郎紹介)(第一一一〇号)  公立幼稚園学級編制及び教職員定数の標準に  関する法律制定に関する請願佐藤祐弘紹介  )(第一一一一号)  義務教育学校学校事務職員に対する義務教  育費国庫負担制度維持に関する請願市川雄  一君紹介)(第一一一三号)  同(木内良明紹介)(第一一一四号)  同(権藤恒夫紹介)(第一一一五号)  同(宮地正介紹介)(第一一一六号) 同月六日  義務教育学校学校事務職員に対する義務教  育費国庫負担制度維持に関する請願大野潔  君紹介)(第一二〇〇号)  同(西中清紹介)(第一二〇一号)  同(横手文雄紹介)(第一二〇二号)  同外九件(青木正久紹介)(第一二五六号)  同(江田五月紹介)(第一二五七号)  学生寮充実発展等に関する請願木島喜兵  衛君紹介)(第一二〇三号)  同(江田五月紹介)(第一二五八号)  同(田中克彦紹介)(第一二五九号)  同(藤木洋子紹介)(第一二六〇号)  外国人のための日本語教育指導講師制度の法制  化に関する請願嶋崎譲紹介)(第一二五四  号)  私学助成大幅増額に関する請願近藤豊君紹  介)(第一二五五号)  幼稚園補助金増額等に関する請願多賀谷眞  稔君紹介)(第一二六一号)  同外一件(横山利秋紹介)(第一二六二号) 同日九日  信州大学大学院総合科学研究科設置に関する  請願小沢貞孝紹介)(第一二九四号)  同(林百郎君紹介)(第一二九五号)  同(井出一太郎紹介)(第一二八七号)  同(唐沢俊二郎紹介)(第一二八八号)  同(田中秀征紹介)(第一二八九号)  同(中島衛紹介)(第一三九〇号)  同(羽田孜紹介)(第一三九一号)  同(宮下創平紹介)(第一三九二号)  同(若林正俊紹介)(第一三九三号)  養護教諭配置等に関する請願小川国彦君紹  介)(第一三四〇号)  同(兒玉末男紹介)(第一三四一号)  同(佐藤誼紹介)(第一三四二号)  同(辻第一君紹介)(第一三四三号)  同(村山喜一紹介)(第一三四四号)  同(佐藤徳雄紹介)(第一四七五号)  私学に対する公費負担制度の確立に関する請願  (田村元紹介)(第一三四五号)  私学に対する公費助成大幅増額等に関する請願  (藤木洋子紹介)(第一三四六号)  私学に対する公費助成大幅増額等に関する請  願(藤木洋子紹介)(第一三四七号)  義務教育学校学校事務職員に対する義務教  育費国庫負担制度維持に関する請願新井彬  之君紹介)(第一三四八号)  同(石田幸四郎紹介)(第一三四九号)  同外二件(田中慶秋紹介)(第一三五〇号)  同(塚田延充紹介)(第一三五一号)  同(橋本文彦紹介)(第一三五二号)  同(古川雅司紹介)(第一三五三号)  同(矢追秀彦紹介)(第一三五四号)  同(和田一仁紹介)(第一三五五号)  学生寮充実発展等に関する請願佐藤誼君  紹介)(第一三五六号)  同(中西績介紹介)(第一三五七号)  同(伏屋修治紹介)(第一三五八号)  同(佐藤徳雄紹介)(第一四七四号)  同(山原健二郎紹介)(第一五〇五号) 同月十日  義務教育学校学校事務職員に対する義務教  育費国庫負担制度維持に関する請願外二件  (安倍基雄紹介)(第一五三七号)  同(大塚雄司紹介)(第一五三八号)  同(北川正恭紹介)(第一五三九号)  同(佐々木良作紹介)(第一五四〇号)  同(中井洽紹介)(第一五四一号)  同外一件(中野寛成紹介)(第一五四二号)  同(二見伸明紹介)(第一五四三号)  同(伏屋修治紹介)(第一五四四号)  同外一件(吉田之久君紹介)(第一五四五号)  同(伊藤英成紹介)(第一五九一号)  同(小沢貞孝紹介)(第一五九二号)  同(春日一幸紹介)(第一五九三号)  同(小平忠紹介)(第一五九四号)  同(田川誠一紹介)(第一五九五号)  同(永末英一紹介)(第一五九六号)  養護教諭配置等に関する請願小林恒人君紹  介)(第一五四六号)  同(武部文紹介)(第一五九七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 十二月六日  私学助成充実に関する陳情書外七件  (第三七号)  中学校租税教育推進に関する陳情書  (第三八号)  義務教育費国庫負担法の一部適用除外に関する  陳情書外三件  (第三九号)  社会教育施設国庫補助制度の改正に関する陳  情書  (第四〇号)  校地の取得及び造成に対する国庫補助事業の適  用に関する陳情書  (第四一号)  非木造校舎の大規模改修事業に対する起債の制  度化に関する陳情書  (第四二号)  四十人学級早期実施に関する陳情書外二件  (第四三号)  豊橋技術科学大学大学院工学研究科博士課程の  設置に関する陳情書  (第四四号)  大阪大学法学部国際関係講座設置に関する  陳情書(第四五号)  文化財保護施策充実に関する陳情書  (第四六号)  首里城跡等戦災文化財の復元に関する陳情書外  二件(第四  七号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  文教行政基本施策に関する件      ――――◇―――――
  2. 阿部文男

    阿部委員長 これより会議を開きます。  文教行政基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中西績介君。
  3. 中西績介

    中西(績)委員 私は、先般問題になりました国鉄の共済年金問題で、国鉄なりあるいはその所管の運輸関係皆さんが全く国庫助成などについても検討すらもしておらないということが明らかになり、そうした結果が、これだけではありませんけれども、ほかの分野についても重なり合った結果が国鉄を今のような状態に陥れた、私たちはこういう見解を持っておったわけでありますけれども、先般それとあわせましてお聞きいたしておりました公共負担の問題でありますけれども、この点についてもう一度確認をしておきたいと思います。  それは、公共負担軽減をすべきだということで、学生割引などについての問題を論議し始めましたのが、国鉄再建のための提案として五十年ごろから徐々に論議が始まり、五十二年ごろになりますと公共割引制度については全般的な見直しをする閣議了解事項があり、さらに、構造的欠損とこれを確認をする、こういう問題等も出てまいりまして、五十二年の十二月には運賃上の割引制度を全般的に見直すという閣議了解がなされました。それを受けて、文部大臣あるいは厚生大臣に対しまして国鉄総裁名公共負担軽減方を、文部省には六百九億、五十三年八月三日付で出しています。ところが、さらに五十四年の八月の十日には同じように文部大臣に対しましては、文部省六百四十九億円という、こうした公共負担をやっておる、この点についての解消策について申し入れをし、これを受けて十二月の二十九日には、「関係省庁において検討を進め、早急に結論を得ることとし、これに基づき所要措置を講ずる。」こういう閣議了解までいたしておるわけであります。ところが、先般お聞きをいたしますと、その後国鉄側からは何らこれについての追及なり要請が行われておらないということを言われておるわけであります。国鉄当局お見えになっておると思いますけれども、この点どうでしょう。
  4. 川崎孝夫

    川崎説明員 先生がおっしゃいますとおり、五十四年八月の国鉄概算要求に際しまして、厚生省文部省等公共負担措置方について要望してまいりました以降、五十四年十二月に閣議了解がございまして、それに基づきまして国鉄公共負担軽減対策検討するため五十五年五月に関係省庁間で国鉄公共負担軽減対策検討会議設置されてございます。そこで諸対策検討が始められた点を踏まえまして、国鉄といたしましては五十四年以降は文部厚生両省への直接の要望は差し控えているところでございます。
  5. 中西績介

    中西(績)委員 それでは、その後の検討結果、どうなったかについての確認はいたしておりますか。
  6. 川崎孝夫

    川崎説明員 関係省庁間で数回正式な話し合いが持たれておりますし、さらにそれ以外でも各省間でいろいろ折衝が進められておりまして、それらの内容につきましては私どもでも一応了知いたしております。
  7. 中西績介

    中西(績)委員 そうしますと、最初要請から少しでもそれが前進をしておるかどうか、この点を確認をしての了知の仕方でありますか。——時間がかかるから、もうよろしいです。大体しておらないということが明らかになりました。  そこで、文部省の方は、先般お聞きしたときに、五十四年十一月二十九日の閣議了解に基づいて負担等についての検討を始めたということになっておりますけれども、この点、内容はどうなっているのですか。資料提出を求めておりましたけれども、いまだに私の手元には届いておりませんが。
  8. 大崎仁

    大崎政府委員 先生指摘閣議了解等も踏まえまして、運輸省厚生省文部省等関係省庁担当者から成る国鉄公共負担軽減対策検討会議というものが持たれまして、五十五年五月以降現在まで十回にわたりまして会議が開かれ、検討が進められておるところでございます。ただ、先般も御説明申し上げましたように、国鉄側のお申し入れの根拠となっておりますのは、法定割引率の下限を上回って割り引いている部分を一応公共負担というふうにお考えになっておられるわけでございますが、ただ、私鉄等でも独自の総合的な判断で通学割引ということはやっておられるということもございますので、その公共負担というものをどういうふうに考えるべきか、あるいはその公共負担というものを政府において仮に負担するという場合におきましても、各国等の例を見ますと、負担をする省庁等がまちまちでもございますので、どういうふうに考えるかということで、その他いろいろ議論すべき問題が多岐にわたっているというようなこともございまして、現在までまだ関係省庁間で結論に達していないというのが状況でございます。
  9. 中西績介

    中西(績)委員 ですから、始まってからことしまで大体六年を経過しておるわけですね。そうしますと、十回にわたって関係省庁話し合いを持ったということになっておりますけれども、実質的には時間を延長するだけで、この問題について閣議了解しておるように、検討し「所要措置を講ずる。」という目的に向けて内客を詰めていくという段階にまでなっておらない、このことは確認できますか、よろしいですか。
  10. 大崎仁

    大崎政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  11. 中西績介

    中西(績)委員 例えば、諸外国の例なんかを見ますと、公益事業としての国家との契約方式などをとって、そうした問題等については国が負担をするとか、いろんな内容のものが諸外国にはたくさんありますね。あるいは、例えば踏切一つをつくるにしても、こういう問題を討議をして国との間における契約を結んでその分については国が負担をするというような、こういうところまで相当高度なあるいは深く論議をし尽くしてやっておるところがたくさんあるのですね。ところが、日本の場合には、先般も申し上げたように、年金問題についても全く処理されてない、こうした問題等についても検討されておらないというそのツケが、国鉄をして本格的に赤字解消をするとかあるいは再建をするという、こうした論議発展をし得なかった大きな問題ではないかと私は確認をせざるを得ないわけなんですね。ですから、少なくともそうした内容的なものがどういうところに向いておったかということくらいは、この十回の審議過程で明らかにすることはできませんか。
  12. 大崎仁

    大崎政府委員 国鉄再建をめぐりますその後の論議過程等では、一つ考えといたしまして、私鉄のとっておる方針ということが国鉄にも準用し得るのではないかというような考え方があるわけでございます。そういたしますと、通学割引に限っての話でございますが、通学割引について申しますと、私鉄割引率国鉄を上回っておるような区間もございますし、あるいは地方によりましては下回っているというところももちろんあるわけでございますが、そうすると、その割引をすることが純粋の奨学という観点からということもございましょうし、あるいは交通政策一つのあり方としてというようなこともあるのではないだろうか。あるいは、文部省としてそれに文部省の立場で対応する場合には奨学という道も片やあるわけでもございますので、そういうもろもろのことを考えますと、当初の国鉄の御主張のように私どもとして少なくとも文部省自体として対応するというのがなかなか困難な点が多いわけでございますので、そういう関係省庁の場で検討を続けて現在に至っておるというのが状況であるわけでございます。
  13. 中西績介

    中西(績)委員 いずれにしましても、そうした公共交通、その部分における問題をどう処理をしていくかという、例えば今指摘がありましたように、私鉄との関係等につきましても一定のそうした内容が報告できるくらいの、六年間ですから、内容的なものを出されなくてはならぬと私は思うのですね。ところが実態としては、全くその中身というのは多くの皆さんには知らされてないし、そして結果的には何もしておらないと私たちは断ぜざるを得ないような状況に置かれておるといたしますならば、まさにこの公共負担問題については、こうした閣議などで了解はいたしておりますけれども、ただその場を取り繕う、そういうこととしか考えられません。  今指摘のありましたように、例えば地方におきましては、いろいろな資料を見ますと、これから後、地方交通線問題とのかかわりがあるわけでありますけれども、今大変な問題になっています。特にバス路線などにつきましては、もう二倍あるいは三倍の通学費用がかかるということでもっていろいろ多くの問題が出ておりますから、そうした問題とあわせて、この公共負担問題は当然これから考えられていかなくちゃならぬ問題だろうと思いますから、この点はひとつ後でまた論議をしてみたいと思います。  そこで、地方交通線問題についてお伺いをいたしますけれども、第一次特定地方交通線廃止に当たって協議会設置したようでありますが、その一つとして、私の地元を走っておる添田線というのも廃止された一つでありますけれども、この協議会の中で国鉄当局が当初代替道路をつくるということを確定をいたしておりましたけれども、後になりましてだんだん進んでまいりますと、それはチョンボであった、できなくなったというよう空言い方をし始めております。そして、その後運輸省あるいは県におきましても全く責任を持った対応策を示しておらないということがだんだん明らかになってきたわけであります。これは一つの例でありますけれども、さらに、赤谷線というのが新潟にございますけれども、ここでもやはり線路敷の払い下げ問題、あるいは踏切、ホームなどの撤去の問題など、最初この協議会でいろいろ論議をされておって確認をされておった部分が後になってどんどん変更してくる、あるいは全くそれを無視していくというこうした対応というのが出てき始めております。  こうなってまいりますと、この協議会というものの性格は大体何ですか、国鉄当局
  14. 佐々木建成

    佐々木説明員 御答弁申し上げます。  特定地方交通線対策協議会性格でございますけれども特定地方交通線を廃止するに当たって必要となります代替輸送を確保するという目的協議を行うために、再建法に基づきまして運営しておる協議会でございます。構成員関係行政機関の長、あるいは関係公共団体の長、あるいはその指名する職員、あるいは国鉄といったところで構成されて、代替輸送機関が的確に確保されるようにということで設けられたものでございます。  今御指摘添田線の件でございますが、先生指摘のような代替道路をつくると言っておりながら後でそれができないというようなことはなかったかと思います。代替道路そのもの廃止転換をいたしますためにあらかじめ用意をされておる道路でございまして、ただ、線路数等を廃止転換後に何か関連道路に使うとかそういったことがございます場合に、地元計画等をお出しいただいて、それに基づいて用地を譲渡するとかそういった手続が進んでいくというのが実態でございます。
  15. 中西績介

    中西(績)委員 今説明ありましたように、代替輸送するためにいろいろ話し合いが持たれるところだということになっておりますけれども、そこで、これは直接出席をしておるその地域の自治体の長から聞いたのですからね。最初確認をしておったところが、道路はつくりますということを約束をしておって、後になってあれはチョンボでした、こう言っているんですから。チョンボなんという言葉は特殊な言葉ですからね。こういうものを使うということまで明確に聞いてきているんですから、今間違いなどと言うけれども、これは決して間違いじゃないと私は思いますよ。  ですから、最初、この代替輸送に当たって、これを廃止するに当たっての潤滑な運営、そういうものを目指してみんなやるわけです。ところが、後になってそれはチョンボでしたなどと言って取り消されたんでは、こうした協議会そのもの性格が非常に問題だと私は思います。しかも、ここの場合には道路そのものが鉱害によって沈下しておりまして、それを今度上を通っておった添田線立体交差などの部分におきましても大きな貨物なんかは通れないような状況というのが出ておるようなところで、こうした道路問題については随分論議をされておるのですね。そうした中でこうした問題がまず第一出ておる。したがって、これから後どういうふうにこの協議会やっていくか知りませんけれども、このような無責任な国鉄当局態度というのは私は絶対に許せない、こう言わざるを得ないわけです。  そこで二点目、第二次特定地方交通線、現在調査に入っておるようでありますけれども協議会を発足をさせなくてはならぬわけですが、この協議会、発足して二年間協議をするということになっていますね。ところが、今出されておる再建監理委員会案によりますと、もしこれがこのまま、今国鉄あるいは運輸省考えておるような方式でもって来年からそのことが具体化され、まだ協議が成立をする前に国鉄そのもの当事者能力をなくしていくのではないですか。そうしたときにはこの協議はどういう内容になるのか、これまた大変な問題を抱えておると私は思うのですけれども、この点はどういうことですか。
  16. 荒谷俊昭

    荒谷説明員 お答えいたします。  確かに現在の再建法では、会議を最低限二年間やる、二年協議をして協議の調わない見込みがあると認められたときには国鉄廃止申請をする、こういうことになってございます。先生指摘のように、第二次線の協議会の開始が大変おくれました結果、六十二年四月時点、これは今後また国会で御審議をいただいてからのことでございます。けれども国鉄経営形態が変更するまでに各線の協議が調わないということはないわけではないというふうに私ども考えておりまして、その辺の取り扱いにつきましては、今後の国鉄改革法関連におきまして十分検討をし、しかるべき措置をしてまいりたいというふうに考えております。
  17. 中西績介

    中西(績)委員 ですから、この六十二年四月を越える可能性というのはあるわけですから、そうなってきたときには果たして国鉄当局当事者能力があるのですか。話を進めておる国鉄当局にそれはちゃんとあるのですか。
  18. 荒谷俊昭

    荒谷説明員 仮に六十二年四月一日で新しい経営形態に変わった場合にはもう国鉄という形ではなくなるわけでございますので、以後の手続をどういうふうにするかということとの関連におきまして今後検討してまいりたいというふうに考えております。
  19. 中西績介

    中西(績)委員 今後検討してまいりたいと言うけれども、いいですか、国鉄を廃止するというのですよ。そのための協議をするのに対象になるというものが不明確で今後検討してまいりたいからあしからず今やっていけなんというのは、この態度なんですよ、問題は。既に入るときから少なくとも閣議決定しているわけでしょう、監理委員会案については。そして話を今進めようとしておるのですよ。そうなってまいりますと、今から考えていつやられるかわからぬというようなこのやり方は全く傲慢、傲慢じゃないな、詐欺だな、こう言わなきゃなりませんね、これは。こんなばかげたことはないですよ。私たちに言わせると、やはり責任ある態度というものが全然ここには見受けられないですね。だから、少なくともこの点はこの次の通常会が始まるまでは——この協議会に入り、地元は反対しておるにもかかわらず強制的に調査はどんどん入っていますから、これは進められるということを意味しているのですよ。そうすると協議は当然やらなくちゃならぬ、こういう状況が出てくることは必至です。そうした前提に立って物事を考えたときに、これは大変な中身だと私は思います。したがって、この点は期日を決めて明確に答えるようにしてください。いつまでにしますか。
  20. 荒谷俊昭

    荒谷説明員 ただいま先生指摘の点でございますけれども、現在、監理委員会の最終意見書を踏まえましていろいろな準備に取りかかってございます。できるだけ早期に関係の法案を提出して御審議をいただきたいというふうに考えておりまして、その法案の中でしかるべき内容が盛り込まれてくるというふうに考えております。  その時期につきましては、まだ明確に何月というところまで申し上げかねますけれども、何分、六十二年四月一日を目標としてございますので、来年の通常国会に提出できるように現在鋭意作業中というところでございます。
  21. 中西績介

    中西(績)委員 私は、この問題については、少なくとも廃止される側、これを利用しておる人たちの側に立って物を発想しなくてはならぬと思うのです。ところが、今つぶす側に立っての物の言い方ですから、これでは将来的にもコンセンサスを得るそうした運営あるいは国鉄の将来あるべき姿というものを追求することはできないと思うのですね。ですから、あくまでも、少なくともこういうものを出す以上、この時期がこうなれば当然でありますから、事前にその対応策については明確にしておく必要があると思うのです。この点は、きょうは運輸省課長しかおいでになってないでしょう。そうでしょう。ですから、こういう実態では大変困ると私は思うのです。したがって、ぜひ委員長からも運輸省に対して、こうした問題については早急に事前の策を求めるべく要求をしてほしいと思うのですが、よろしいですか。
  22. 阿部文男

    阿部委員長 よろしゅうございます。
  23. 中西績介

    中西(績)委員 私、これはなお追及してまいりたいと思いますから、後に保留をします。  そこで、第一次特定地方交通線廃止によって問題が幾つか出ておりますけれども、この点について、どういうように通学生などから喜ばれておるだろうか、私は考えますが、むしろ大変な問題があるのではないかというようにいろいろな点からお聞きをしておりますけれども、この点はどのように理解をしておりますか。
  24. 佐々木建成

    佐々木説明員 お答え申し上げます。  廃止後バスを運行させます場合には、通常の鉄道のときの便数よりは便数が増加する、あるいは駅の数に比べまして停留所の数が相当ふえるということで、比較的サービスの向上に結びつくという格好で輸送が行われているかと思います。  一方、運賃の関係では、バスでございますので鉄道の場合より相当高くなるというのは御指摘のとおりでございますが、そういうことにつきましても、通学生につきましては卒業までの間、それから通勤者につきましては一年間、定期運賃の差額を転換交付金を原資にいたしまして補てんするというようなことで、できるだけ輸送が不便にならないようにやっていくということで各地区とも対応いたしておるわけでございます。
  25. 中西績介

    中西(績)委員 これは鹿児島の、妻線の場合を聞きましたけれども、佐土原から杉安まで通っている線でありますけれどもバス路線にした結果二倍ないし三倍の運賃になっておるようです。したがって利用するのが大変だということで、家計に余りにも大きく響くということで、不便さと両方あわせて考えるならばむしろ鹿児島に下宿をということで下宿をする生徒が多くなってきている、こういう実態があります。あるいは、ある地域におきましては進学率にも影響しておるのではないかというような話だって出てきておるわけであります。  この点について、私は運賃についてのいろいろなあれを取り寄せて検討してまいりましたけれども、結局都会地域、都市周辺地域における私鉄の場合には、これはもう当然乗車率すべてが物すごいわけですから一定の割引率はありますけれども、こうして出てくる結果は割引率がうんと違いがあるということも一つの理由にはなりますけれども、もう一つ大事なことは、文部省が調べました学校種類別父兄が支出した学校教育費、これは私五十八年度しか持っておりませんけれども、これを見ますと、公立の高等学校の場合の構成比を見ますと、交通費が一七・四%、これは全部の平均であります。ところが、このように特定の地域で、今までの二倍も三倍も、学生割引定期だけれどもかけて、ローカル線がなくなったところにおいてはこの比率というのは物すごく高くなっておるはずであります。こうしたことを考え合わせていきますと、例えば十キロくらいのところを見ますと、バスなんかの場合を見ていきますと、例えば今の鹿児島交通でこれを割り当ててまいりますと、十キロであれば四千三百円ぐらいのものが約一万円ですね。それから中国バスなんかになりますと一万三千七百円、最も高いところでは濃飛乗合など、あるいは下北バスなんかになりますと十キロで一万五千円をはるかに超える。これはキロ数でそれぞれ全部違いがあるのですけれども、こういういろいろな問題がたくさん出てまいります。そうしますと、全国平均が一年間で三万七千円程度が交通費になっているわけです。ところがこれは二カ月くらいで全部飛んでしまうわけですね。ということになると、この比率というのはうんと高くなってくるということになるわけであります。ですから、こうした問題等が、地方交通線を廃止することによってその地域の子供たち、教育に大きな影を落としておるということが実態として出ておるわけです。  先般局長の答弁では、第一次線で三万人ですか、あるということを言われておったのですけれども、この点はそう確認してよろしいですか。
  26. 高石邦男

    ○高石政府委員 国鉄赤字ローカル線廃止に伴う通学生徒の影響については、昭和五十六年度に都道府県の教育長協議会調査しておりますが、その時点での推計の影響を受ける子供は約三万人という推定をしているところでございます。
  27. 中西績介

    中西(績)委員 ですから、ますます地域が過疎化していく中で、こうした子供たちが完全にそこから追い出されてしまうという状況が出てくるわけでありますから、この点について私は、先ほど内容的にはいろいろ問題があるという言い方をしておりますけれども、第一次線だけでこれだけ多くの人が影響を受けています。そして、先ほど回数が多くなったあるいは停留所が多くなったから有利になったなどと言っておりますけれども、それでは、赤谷線なんか降雪量の多いようなところあたりを走っておる場合には、こういういい面だけかというと決してそうでない。こうした点についてさらに国鉄は細かく検討を加えておりますか。
  28. 佐々木建成

    佐々木説明員 積雪地域にあります特定地交線を廃止するというようなときには、もちろん代替道路が雪の場合にはちゃんと除雪体制が整っておりましてバスがきちんと運行できるということを確認した上で実施しているのが現状でございます。
  29. 中西績介

    中西(績)委員 調査したあれを見ますと、時間が狂うことたびたびであるし、しかも駅舎がある場合にはその中にみんな入っておったのですけれども、今度は吹きさらしのところにあり、除雪をすればその範囲内だけしかしておりませんから非常に危険だという問題等、交通事故の問題等幾つか出てきておりますよ。そしてさらに、代替道路なりあるいは道路拡張をやれば、キロ当たり三千円の廃止転換交付金、これでは到底賄い切れないという問題等も幾つも出てきますね。ですから、結果的にはどうなるかというと、その地域の住民あるいは生徒、そしてそこにおける地方の衰退をますます重ねていく以外にはないという結果になってしまっております。したがって、私は、さっき申し上げたように、国との契約の中で将来的にもこういう問題が出てくるわけですから、どのようにこれを補完し保障するかということが当然なくてはならぬと思うのです。  これはまた後の討論に任すとしまして、次に、第二次特定地方交通線で、私の近くに上山田線というのがあります。ここには周辺に四校高等学校があるのです。直接これを利用しておるのは二校であります。一つの工業高校の場合には半数以上の生徒が利用しておるし、もう一つの場合には三分の一程度が利用しておるという状況です。ところが、これがもし廃止をされてバスに転換されたといたしますと、今度は他の普通高校一校、農業高校一校、こういうものと路線が全部一緒になってしまうのですね。現在でも満員になって雨の日などは大変困っているという実態があるのでありますけれども、これに今度は、三分の二以上あるいは半数に近いという二校の者が全部乗っていくということになりますと、相当数のものをそこに出してもこれは運び切れない。いわゆるだんご状のものが出てきて必ず大きな問題を醸し出すであろうということを今一番心配しておるわけですね。こうした問題についてはどのようにお考えなんですか。
  30. 佐々木建成

    佐々木説明員 上山田線につきましては、現在協議会廃止転換について御協議をいただいておるところでございます。代替道路につきましては、選定をいたしますときに的確な道路があることを確認した上で選定をいたしておるわけでありますが、具体的にバスに転換するということになりますと、転換する輸送量がどの程度かということを見きわめながら適正な型式の、大きさのバスを選定いたしまして、需要にマッチした増便その他をやりまして適切にやっていくというのが従来の方針でございます。上山田線につきましても、これから議論が具体的になってまいります段階で、地元の高等学校の生徒の輸送といったことは地元の方の御意見を十分聞きながら、できるだけ効率的な望ましい交通機関を設定するという考え方で臨んでまいりたいと思っております。
  31. 中西績介

    中西(績)委員 こうなってまいりますと、もしこれが廃止されると、今言う運賃高からしまして、今度は福岡市の方の私立高校などに国鉄を利用して通った方がいいというような格好になるわけですね。そうすると今度は、公立高校に入りませんから私立高校に入らなくてはならぬ。そうすると一カ月の学生の費用が通学費から授業料から全部入れますと大体五万円ですよ。こういうような状況が出てまいりますと、今我々の住んでおる筑豊地区あたりの収入面から対比いたしますと、これが果たして耐え得るものであるかどうかということが一つまた大きな問題になってくるのです。しかも、こうしてバス代替などと言っておりますけれども、これは到底不可能に近いと私は思っています。こうしたことから考え合わせてまいりますと、今行おうとしておる、第一次を廃止をして第二次にいよいよ取りかかろうとしている、ところが、この協議会そのものは将来無責任体制になるということが明らかになっていてそこでこういう問題を論議しなくちゃならぬ。しかもそれは、今申し上げるようにいろいろ多くの問題を残して、二年を過ぎればこれは廃止ということなんですから、いかにここを利用しておる人、その地域の実態等からかけ離れた中でこうした問題が進められておるかということが明らかになってくると私は思うのです。  ですから、少なくともこうした生徒にかかわる問題、あるいは厚生省関係にかかわる福祉関係、あるいは地域における多くのお年寄りなどの足をどう確保するかという、こうした問題を考えますときに、ぜひ地方交通線というものの位置づけを明確にしておく、基本的な考え方がそこにないとこれはできないと私は思うのですね。そうでなければ、赤字が出ると言いさえすればこれはつぶすことになるわけでしょう。御存じのように、例えばこれは国鉄だけではないのですね。私鉄を見てみましても、私鉄の中小の現行の走行距離が五十七年で千五百八十七・六キロ、ところがこの四十一年から五十七年までの間に廃止した線が千二百八十七・四キロあるんですよ。ということになってまいりますと、私鉄におきましてもそういうように倍近くあったものがどんどん廃止をされていく。と同時にまた、バスも不採算路線はどうなっているかというと、今まだ一応百億近い第三種の補助金が出ておるから何とか維持をしておるけれども、これにも今手をかけようとしているわけでしょう。そうなりますと、この不採算路線というのは今でもどんどんつぶされていっておる実態があるわけでありますからこのようにして追い出していけばだんだん人が少なくなる、生徒の数が少なくなる、乗車率はどんどん落ち込むということになれば、これは当然将来、民間でも五年間の交付金なりをもらって、その後になれば私はもう知りませんと言って全部逃げてしまうのですよ。これはもう火を見るよりも明らかじゃないですか。  ですから、地方交通線というのはもともと公共交通としてどうあるべきかということを、明確にここで私たち確認をしておかなければならぬ問題ではないかと私は考えます。この点についてどうなんですか。
  32. 荒谷俊昭

    荒谷説明員 地域地域に応じまして輸送需要の大小がそれぞれございますものですから、かつてのように国鉄しか輸送手段がなかったという時代と大分状況も変わってきております。やはりそれぞれの交通機関がその特性を発揮できるようなところを伸ばしていくという形で、地域の実情に合った交通網を整備をしていくということが基本というふうに考えておりまして、そういう意味で、地方交通線の中で特に輸送量が非常に減ってきて、鉄道としての相当の合理化をやったとしてもなかなかやっていけないというところについては、むしろある程度少量の需要にも対応していけるバスの方に転換を図っていく必要があるのではないかと考えておる次第でございます。
  33. 中西績介

    中西(績)委員 民間にあれしましても、一番いい例が、例えば九州でいえば南薩鉄道というのがあったのですね。これは何でやめたかといったら災害ですよ。九州などで災害が出れば、第三セクターで何だかんだ言っていますけれども、これは採算がとれないのははっきりしていますよ。大災害が出れば一発です。ですから、民間だってそうだ。そしてさらに、バスの代替によってと今言いますけれども、それは少量になってくれば採算路線だってどんどん撤退をしていることははっきりしているわけでしょう。ではそれを地方自治体なり第三セクターなりが支え得るかということになりますと、今九州の自治体の財政状況はどうなっているか、見ていただけばすぐわかります。大変な状況になっている。ですから、何といっても地域の公共交通というものは、交通福祉をだれが守るかというこの思想なしには私は論議できないと思うのですね。  ですから、そうした赤字採算路線の限度がどういうところまで許容できるのか、そしてその部分をどれだけ——先ほど私が申し上げておったように、外国でとられておるようないろいろな方式、画一的に論議する必要はないと私は思うのですね。そうした問題についてやはり十分考えていかないと、この地方交通線の位置づけというものが不明確になってくるんですね。足をどう守るかというこの面が明確にされないままに終わってしまうのです。ですから、少なくともこれから本格的にこうした問題について論議をし続けていくわけでありますから、今の分割・民営ということが先にあってすべてが律せられて、赤字のところを全部ぶった切れ、これが一番早い方法であるということはだれしもわかりますよ。しかし、そこをどう我々が守っていくかということなしには論議できないんじゃないですか。  そこで、私は文部大臣にちょっとお聞きしますけれども、第二次になりますとこれからまた大変な問題が派生しますね、たくさん出ますから。そうしたときに、地方ローカル線と教育の問題についてどういう態度を大臣はとるおつもりですか。
  34. 松永光

    ○松永国務大臣 赤字ローカル線等の廃止に伴う影響が学生生徒にでるる限り及ばぬように、特に大事なのは通学条件が破壊されないように十分な配慮が必要だというふうに考えます。したがいまして、文部省としては従来から、路線が廃止された場合のバスなどの代替通学手段の確保、それから通学費の軽減などについて適切な配慮が行われるよう、関係当局に要望をしておるところでありますが、将来そういう問題が起こった場合にも同様な考え方で対応してまいりたいというふうに考えております。
  35. 中西績介

    中西(績)委員 大臣に私、要望しておきますけれども、先ほど一番最初に出てまいりました公共負担問題等につきましても、六年にわたってやった結果は全く内容的なものが出ておらない、こうした態度では、生徒の通学をそして地域の文化を守るなどということは到底不可能だと私は思いますね。ですから、ただ単に赤字であるかどうかあるいは採算路線であるかどうかということだけの論議ではなしに、教育、福祉を織り入れた論議をぜひしておいていただきたい。このことは今まで余りやられておらないようでありますから、この次の機会でも内容的にどういう論議がされておるかということについてお聞きしますので、宿題として問題提起をし、この分については終わりたいと思います。  そこで、私は、国鉄問題で非常に残念な面がたくさんありますから、この点についてお聞きしたいと思うのです。その一つでありますが、労使間の問題であります。  私は、先般直方の自動車営業所に調査に入りました。部屋に入ってひょっと見たら、前にかけられておったのが、この営業所は営業成績の伸び率が日本一であったということで、ことしの五月十八日付で自動車部長名による表彰状をもらっているのですよ。ところが、ここでこの表彰状の出る直前、四月の段階で昇給があっておりますけれども、そのときに勤務成績不良だと言って、注意、戒告、訓告という処分が出されておる。ところが、聞いてみるとこれは二年あるいは三年前の問題であったというのですね。新しい九州総局の自動車部長というのですか、これが任命され、そして今度新たに別のところから営業所長が来たところが、すべての皆さんが一致協力して日本一の伸び率を示したという表彰状をもらうようなところで、二年前に問題があったといってこうしたやり方をしています。  それから、もう一つは、やはり九州総局でありますけれども、鹿児島なんです。やはり同じ自動車です。五、六年前にさかのぼって、車両の接触事故あるいは人身事故があったということで、六月一日付で懲戒処分、停職一カ月、そして退職した人にもそうしたものが出されておる。  私は、これは一つの例でありますけれども、ほかにたくさんありますが、こんなことで労使間がうまくいくだろうかと考えますと、ぞっとしますね。私もいろいろなところで経験してきていますが、もう常識じゃ考えられない事態が起こっている。この点、国鉄当局はどうお考えですか。
  36. 長谷川忍

    ○長谷川説明員 お答えいたします。  先般、政府の方針といたしまして国鉄の改革の基本方針が決まったわけでございますが、それに沿いましてただいま国鉄拳げまして、全力を挙げて国鉄の改革へ向けて取り組んでおるのであります。その中で、やはり何と言いましても、企業は人なりと申しますけれども、重要なことは、職場の規律というものがきちんとしていることが非常に大事である、このように考えております。さらに、職員の意識の改革といいますか、いよいよ民営化を控えましてその方向で今取り組んでおるのでございますが、先生も御承知かと思いますが、三年前に国鉄は職場規律問題につきまして国民各位から大変な御批判を受けた次第でございまして、それ以来、職場規律問題につきまして総点検を毎年実施しておりまして、先般第八次の総点検の結果を運輸大臣に報告したところでございますが、まだまだ依然として問題は残っている、こういった状況になっております。  そういう中で、九州総局の自動車営業所におきまして、先生のお話につきましては私、今具体的に資料を持っておりませんので明確なお答えになるかどうか、その辺はあれでございますけれども、いずれにいたしましても、職場秩序を乱したということで鹿児島なりあるいは直方の自動車営業所で処分が行われたものというふうに思っておるところでございます。
  37. 中西績介

    中西(績)委員 今の常務理事態度に今の国鉄の問題があると私は思うのですよ。鹿児島の自動車部で起こっている問題として、五、六年前にさかのぼって、車両接触事故、人身事故があったということで六十年の六月一日付で停職一カ月を含む処分が出ている。退職者にも出しているというのです。それから、今言ったことしの五月十八日付で自動車部長名で——私は自動車部長に言ってやったのですよ、営業成績の伸び率が九州一、日本一になったというところで、何で二年前の問題を、新しい所長が来て、前の人の処置に対して不満か何か知りませんけれども、それをあげつろうてこうした処分を出さなければならぬのですかと。少なくとも今国鉄が求めておる営業成績です。さっきあなたが言う職場の意識の改革でも全部そうでしょう。そういうものに対して全然答えぬで一般的な答えをするところに問題があると私は思うのです。だから、これはもう九州総局の自動車部長も答えができなかったのです。自分が出している表彰状ですよ。どうお考えなんですか。
  38. 長谷川忍

    ○長谷川説明員 職場規律がきちんと守られるという点につきましては、大事なことはやはり信賞必罰の徹底である、このように思っておりまして、ただいま先生指摘の営業成績が非常に上がったということはそれはそれで褒めるべきことでございますし、またそれとは別に、個々の職員におきまして秩序を乱したという場合におきましてはそれなりの対応をするということが大事か、このように考えております。
  39. 中西績介

    中西(績)委員 それが五年前であってもですか。
  40. 長谷川忍

    ○長谷川説明員 そのとおりでございます。
  41. 中西績介

    中西(績)委員 五年たったら時効ですよ。  私もう一つ挙げますけれども、同じようなことですね。これはやはり鹿児島です。ことしの四月タクシーと接触事故を起こして、そこには何も損傷がなかったことで、現場で運転者同士が話をしまして事故扱いにしないということを確認しまして帰って、この人はまじめなものですからそれを所長、助役に報告したのです。ところが数日後助役から、局の自動車部に報告したから始末書を書けと言われたのです。それが不当であると異議を申し立てると、七月二日から八月三日まで三十三日間の乗務停止、再教育の取り扱いを受けたケースが出ていますね。  ちょっとここで皆さん聞いてくださいね。このような厳罰をすることが何かすべてなんだという国鉄の体質がここにあらわれていると思うのですよ。さっきの問題でもそうでしょう。二年前に国鉄当局指摘をするようなことがあったかもしれませんけれども、そのようにしてすべてが一致団結してでき上がったことは所長だって認めています。皆さんが一致団結しなければこういう成績は上げられるわけありません、こう言っている。それに今度は水をぶっかけるようなこうした処分をやることが、国鉄の成績を上げるということになっておるのですか。そう考えでいいですか。
  42. 長谷川忍

    ○長谷川説明員 鉄道輸送というものは、御承知のとおり、非常に大勢のお客さんを運んでおる安全第一のものでございまして、その安全がきちんと正確に守られるためには、何といいましても職場の規律がきちんとされるということが経営以前の問題としての基本である、このように考えておりまして、先ほど申し上げましたとおり、正すべきことは正し、褒めるべきことは褒めるという精神が基本であろうか、このように考えております。
  43. 中西績介

    中西(績)委員 今の褒めるべきは褒める、頭をなでておいて、おまえたちはばかだと言ってほっぺたをひっぱたくようなやり方が常識であるのですか。この態度では、すべての皆さんの主体性を引き出して、本当に体制立て直しをするなどという感覚では全然ないですね。  文部大臣、こういうような感覚が文部省の中にはびこって、県教委にその影響を及ぼし、それが現場の教師たちに影響を及ぼしていくとするなら、これは大変なことですね。これでは国鉄がどうだこうだと言ったって再建できるわけないでしよう。  もう一点お聞きしますが、入ってみてわかりますのは、お上の言うことがすべてなんだという、法律などというものは、協定だとかなんとかいうのは全部無視。例えばこういう事例がありました。ことしの九月に起こった内客ですけれども、列車に乗務する人たちが四半期ごとに訓練をする。したがって、余剰人員を活用してやるということが確認されまして、予備勤務者として局と組合側とで話がつきまして、そういうことが行われるようになってきたのですね。ところが、訓練が終わったときに草取り作業をやれということになったのですね。ですから、そこの代表の人が、駐車場ですから、駐車をなさっておる人たちが時間をお互いに話し合って草を取ったらいいんじゃないですか、こういうように言ったところが、その言ったことが否認だと言ってこれに対して処分するのですね。そして、草取りをしなかった者に対して戒告と賃金カットをやっておるわけですね。少なくともこの予備勤務者というものはちゃんと国鉄の勤務すべき条項がありまして、その中にちゃんとうたい込まれてある。ですから、そういう新しい別個の提案をして、みんなでやれることをやれば私は何も問題がないと思うのに、あえて上司の業務指示だ、命令だということによってこうして処分をしていくというこのやり口。  それから、もう一つ、同じところで起こったのですけれども、これは十一月十日の朝日新聞に出ておるのですけれども、「国鉄これが指導教育!?」ということで、一つの部屋の中に一カ月閉じ込めまして、就業規則だとかトクトクきっぷだとかいろんなものを写させる。ですから、私はこの前行ったときに、本当にやるつもりならカリキュラムぐらい組んでやるべきじゃないか、そうしたものがあるならそれを示してくれと言ったら、それは何にもないのですね。そして、新聞に出た途端にその人たちのあれが解けている。これは直方で起こった事実です。  ところが、同じようなことが九州ではたくさん起こっているんですね。職場教育と称しましていろいろ出ています。そして、上司の言うことが、私はこれを見て驚いたのですけれども、暴言そのものですね。いいですか。例えば職員の結婚式で、この人は余剰人員でワッペンをつけてますなどということを上司である駅長が言うのです。そして、今度は職員に向かっては、おまえたちも威張りたかったら管理者になれ、あるいは職員のあいさつが足りないとして、あいさつをしないやつは犬畜生にも劣る、それから部下の管理者には、ゴルフをしない者はおれの部下ではない、職員がテープレコーダーを持っていると、おまえはオオカミ少年か、あるいは今度は別の人だけれども、雇用安定協約が切れた結果、いつでもおまえの首は切ってやるなんということを言うのですね。挙げるとたくさんある。  こういうようにして、職員にばり雑言、そして犬畜生に例えて差別的な言辞を弄している管理職のあり方というのはよろしいと思っていますか。
  44. 長谷川忍

    ○長谷川説明員 管理者と職員との関係というものは、もとより信頼関係と申しますか愛情の関係といいますか、そういうものに基づいて初めて職場の秩序等が確立される、このように考えております。  ただ、先生今おっしゃったような点につきましては、私どもが聞いているところでは、職場秩序を乱したり上司に対して暴言を吐いたり、そういったような状況の中できちんと規律を正すためにそれなりの措置をしたというふうに私どもといたしましては聞いておるところでございます。
  45. 中西績介

    中西(績)委員 問題は、法律だとかそういうものに沿って物を言えば、いろいろ進言をすれば、それが全部そういうようにはね返ってくるわけですよ。この場合だってそうでしょう。草取りは駐車場ですから、新しくつくられたところですから、駐車をする人たちは決まっておるわけです。その人たちが時間外にやるからそれでいいじゃないかということを言ったんです。そうしたら、そのことが問題だと言うのですね。だから、提言などということはできないのですよ。一つの指示が出たときにそれに対していろいろ論議をすると全部そうなるのでしょう。人権を第一認めておらないという実態がここにあらわれておると私は思うのです。それに従わなかったら、直ちに戒告処分だとか賃金カットもすべてかけてくるわけです。これが国鉄の労務政策といたしますと、国鉄の労務政策というのは右に行ったり左に行ったりでしょう。マル生のときがそうでしょう。だんだん変わってきて今度また変わるのです。そこにいる職員皆さん、働く皆さんはたまったものじゃないですね。ですから、少なくともこうした問題については十分納得のいくような体制をとって、そして、今の国鉄態勢をどう盛り返すかということでもって本格的に論議をしないとだめだと思いますね。  この国鉄が行っておる教育的指導という内容について、いろいろな写真がここに出ていますけれども一つの部屋の中に一カ月間閉じ込めて、一日かけて筆写させられたフルムーン夫婦グリーンパスの広告のパンフレット、それを書き写させられたのですから。あるいはトクトクきっぷとかいろんなものがたくさんありますね、そういうものを全部書かせるのです。時間が来るまでの間は一つの部屋に閉じ込めて、そこから出るのは結局排便のために行くだけです。このことは本当に、やられたその人が書いていますけれども、例えばこの人の場合には氏名札をつけていなかったというのですね。その人が反省書を書いていますけれども、品位の保持、それからサービスの向上、旅客に対する安心感、責任体制の明確化、こう言っておるというのですね。しかし、品位というものは名前をつけなくては品位が保てぬのかというところに問題があると私は思うのですね。その人は言っておるわけです。むしろ内から出てくる温かさがどう旅客との間におけるコンセンサスを深めるかということなしに、名札をつけることによって形だけ繕って、サービスを向上したあるいは安心感を与えたというこうした問題がどうなのかということを基本的に考えていかぬと、今言うように、一室に閉じ込めてこんなものを書かせることが何が教育なのかということですね。私は常務理事がそういう態度でおられることが非常に残念です。本当に立て直しをしてやるとすれば、今民間なんかもう既にタイムレコーダーだってなくなっているところがあるでしょう。皆さんの意思を引き出してやるようになってきている。このようにして処分から処分をかけていきますと、私はあれで見ましたところ、むしろ今何をしておるかといったら、結局新会社に採用しない者をこうして徹底的に、内部文書でこれは明らかになったことでありますけれども、差別をすることによって今からそのふるいをかけている、こういう状況ではないかということを言っています。これは本当ですか。
  46. 長谷川忍

    ○長谷川説明員 先生が今御指摘の点は、恐らく今後法案がかかってそれが成立したならば問題になってまいります旧国鉄等への振り分けの問題等であろうかと思いますけれども、その点につきましては、現在とのように今後具体化すべきか関係方面といろいろ検討中でございまして、そのような事実はないという状況でございます。
  47. 中西績介

    中西(績)委員 事実がないと言うけれども、これは東京のある管理局で八月にやっておる会議の中で明らかになっているじゃないですか。このような振り分けをもう既に始めておる。そういううそを言ってはいけませんね。  と同時に、私はもう一つ聞きますけれども、こうして新聞に出ているような事実がないと言うのですか。こんなむちゃくちゃをやらせている事実がないと言うのですか。一件だけじゃありませんよ。直方だけじゃありませんよ。長崎でもあるし、鹿児島でもあるし、挙げていくと幾通りもあるけれども、私は時間がないから一つだけを今例に挙げている。こういう事実がないと言うのですか。
  48. 長谷川忍

    ○長谷川説明員 今先生がお手元に持っておられる朝日新聞の報道の件につきましては、直方の車掌区の件であろうかと思いますが、これは氏名札いわゆるネームプレートでございますが、それを不着用等々職場の規律を乱すというか就業規則に従わない者につきまして再教育をする必要があるということで、これは現場におきまして職場内教育というものをやっておりますけれども、その一環として教育をやったと聞いております。
  49. 中西績介

    中西(績)委員 いいですか、例えば「うれしはずかしフルムーン」だとかいろいろ書いていますよね、そういうやつを全部写し取らせることが教育ですかと言っているのです。そういう事実はあったんでしよう。
  50. 長谷川忍

    ○長谷川説明員 職場内教育の内容につきましては現場の方に任せておりますので、詳しい内容につきましてただいま私ども手持ちを持っておりませんけれども、就業規則なりあるいはフロントサービス等につきまして現場の状況の中で再教育を行ったというふうに思っております。
  51. 中西績介

    中西(績)委員 例えばフルムーン夫婦グリーンパスの広告パンフレットを書かせることが教育ですか。トクトクきっぷを写し取らせたりいろいろなやつをやらせていますよ。それが教育だというそのことが、まず第一に国鉄当局の教育という問題についての中身が全く確立されてない、このことがここで明らかになったわけですね。ここは文教委員会ですから教育問題を論議するところですよ。ところが、企業の教育の場合は違うといっても、少なくとも本人のそうしたものを、自発性をどう引き出して皆さんで一体的に今の国鉄再建していくかという、ここが最大の目標だと私は思います。それに向けてどうあるべきかという具体的なものが、この中からは実際職場に入ってみて区長なりから聞いてみて全くないですね。これが私は問題だと言っているわけです。しかむ、新会社に採用しないなどというそういう事実はないと言うけれども、これははっきりしていますよ。正式にそうした会議がなされまして、その会議の議事録の中にこれがちゃんと取扱注意で示されています。こういう問題があるわけですね。  ですから、いかに中身が欺瞞に満ちたものであり、しかも教育などと称してこのようなことが行われておる、人権を侵害するようなことが平気で行われておるとしますと、国鉄再建などということは到底なし得ないし、大変な中身だということを私は指摘をしておきます。もう答弁は要りません。時間がありませんからたくさんのものを申し上げることはできませんでしたけれども、大変残念です。  それから、あと十分になりましたけれども文部省に、問題がたくさんございますが、定数改善について質問をしたいと思います。  今までずっと長い間、歴代の大臣、松永大臣も含めまして、いろいろ連合審査なり文教委員会なりで発言をしまして、この定数改善については昭和六十六年より少しでも早めるように努力をしたいし、延長されないようにしたいということを言っておるわけでありますけれども、それに沿ったのがこの概算要求の中身ですか。
  52. 松永光

    ○松永国務大臣 先生御承知のとおり、昭和六十年度で児童減少市町村内のすべての小学校について四十人学級の実現ができたわけでありますが、六十一年度の概算要求においては、小学校は、今申した児童減少市町村以外の市町村の学校の第一学年、中学校については、児童減少市町村の中学校の第一学年において新たに四十人学級を実施する、それと教職員の配置率の改善をするということで予算要求をいたしておるわけであります。そして、申し上げますと、計画年度である昭和六十六年度までに計画全体を円滑に実施してまいりたいと考えておるところでございます。
  53. 中西績介

    中西(績)委員 そうしますと、補助金一括法で一年限りということになっておりまして、後藤田長官もそう言っていましたけれども、これは今度はもう絶対に延長させない、この点はそのように確認していいですね。
  54. 西崎清久

    ○西崎政府委員 補助金一括法の関係につきましては、御指摘のとおり本年度補助率十分の一カットの経緯がございます。来年度どうするかにつきましては、現在大蔵省を中心に補助金問題検討会という学識経験者を中心とした会が持たれておりまして、この補助金問題検討会の中で、文部省も含め各省関係の地方団体に対する補助金について、今いろいろ検討が重ねられておるところでございます。その検討結果を踏まえまして予算編成が行われるわけでございますので、その結果を踏まえて、私どもは財政当局と適切な対処をしてまいりたい、現在そういう状況でございます。
  55. 中西績介

    中西(績)委員 これは局長もそうですけれども、大臣、この点は何としても一年限りにしないと、ずるずるやりますと、これからほかのものだって全部そのようにひっかけられてやられますよ。この点は最後に決意を聞きますから。  そこで、先ほど、この概算要求の中身というのは第五次の計画を昭和六十六年までに円滑に終わらせるためだということを言っておりますけれども、この自然減と、学級編制と改善に要するそうした人員の中で従前出されておった分と、今度皆さん方がそうした計画を立てていかれるでしょうけれども、その際の差は、依然として自然減の方が多いのですか。どうなんでしょう。
  56. 阿部充夫

    阿部政府委員 かねて申し上げておったかと思いますけれども、これから後の自然減とそれから改善で計画しております改善増、差が約四千くらい自然減の方が多いという数字になっております。
  57. 中西績介

    中西(績)委員 そうしますと、これから後少しでも改善措置をとろうとしておる分、そうした分等をずっと含めてまいりますと、その人員がある程度多くなっていきますね。今まで出されておったものでは四千から五千くらいの差があるでしょうけれども、これを内容的に少しずつ変更したり、その所期の目的を少し変えて、養護教員なり事務職員なりいろいろの者をずっと数をふやすような措置をある程度していかぬと、全学校措置されないという問題が残るわけですね。ですから、そういうものをずっと勘案していくといたしまして、その自然減の中であればやるつもりですか。
  58. 阿部充夫

    阿部政府委員 ただいま申し上げましたように、自然減の方が若干多いということでございますから、そういう意味で若干のすき間は数字的にはあるわけでございます。しかしながら、現在のような財政状況の中で、私ども六十六年までに現在の計画を達成するということは大変難しい、全力を挙げて実施をしたいと考えておりますけれども、決して易しいことではないと思っておるわけでございます。そういう意味で、現在の計画を達成するということを最大の目標にやってまいりたい、かように考えておるところでございます。
  59. 中西績介

    中西(績)委員 それで、この分については、やはり少なくとも要求をするときにはそうした内容をある程度出して、今まで不足しておる分あるいは充足し得なかった分についてこれを少しでも引き上げていくという努力をしていかぬと、財政状況が将来豊かになるなどということは今到底考えられませんよ。景気の状況からしましても、伸び率はずっと落ち込んでくる。そして、今度はまた五千億近くも税の減収になるのではないかなどということがささやかれておりますね。そうなるとできっこないです。ですから私は、そうした要求をすき間をあける必要はないのじゃないか、このことを考えますから、概算要求ではことしの分はことしの分として一応あれしますけれども、将来的にはそうしたものも含んで考えなくてはならぬと思います。ぜひこの点は将来論議をしてください。  それから、時間がありませんが、国庫負担の問題でたくさん聞こうと思っておったのですけれども一つだけ聞いておきます。  大蔵省が義務教育費国庫負担制度改革案を五十九年十一月に出した際には、事務職員それから学校栄養職員、この分を国庫負担法から除外せいということを言っています。いよいよことし、これをかけての問題になってくると思います。なぜかといいますと、この給与費アップ分が、聞いてみますと千七百二十六億円必要だと言っていますね。そうすると、義務教育関係の職員の場合が千二百億、これは全部概算要求の中で処理をせいなんということを言われておるわけでしょう。ということになってきますと、どこかにしわ寄せをする。そうすると、実質被害を受けぬから交付税に切りかえさえすればという安易な考え方が出てこないとも限りません。そうすると、今まで大臣が言っておったいわゆる義務教育という観点から、事務職員あるいは学校栄養職員の場合は絶対に外さないと言っておったことをここで変えなければならないようになってくるのですが、そういう考え方はよもやないでしょうね。
  60. 松永光

    ○松永国務大臣 今先生のお話しのようなことをあちらこちらで耳にすることはありますが、しかし、大蔵省から正式にそういう意見の申し出はまだございません。したがいまして、文部省としてそれをどうするかこうするかということを言うことは現在のところは差し控えておかなければならぬと思っております。いずれにしても、私どもの基本的な考え方としては、事務職員及び学校栄養職員いずれも学校の基幹的な職員でありまして、国庫負担制度の対象から外すことは困難であると考えておりますので、そういう考え方で努力をしていきたいと考えておるわけであります。
  61. 中西績介

    中西(績)委員 教材費だって義務教育であれば当然措置をしなければならぬということでもってやられたわけですから、今度は人件費だからそれはならぬということにはならぬと私は思う。今の大蔵省の理屈から言うならば、金がなければ何でもできるというやり方でしょう。この点は絶対にしてはならぬわけですから、これはひとつ、大臣の政治生命をかけるぐらいの決意を持ってもらわぬとできぬと思いますよ、いよいよかけられてきたときには。その点はひとつ最後に決意を聞きたいと思います。  ちょっと時間が参りましたけれども、もう一点だけ。今のようなしわ寄せが私学の場合にまた出てくる可能性があると私は思うのですね。大臣は私学を初めとするその頂点にあるわけですから、この問題もあわせて、先ほどの定数改善等を含めまして、この予算問題は今最も重要な段階に来ておりますだけに、ぜひ大臣の決意を最後にお聞きして終わりたいと思います。
  62. 松永光

    ○松永国務大臣 私学助成につきましては、私立学校振興助成法を議員立法で制定をいたしまして、その法律の趣旨に沿って私学の助成に努めてきたところであります。現下の財政事情、大変厳しいわけでありますけれども、私どもは私立学校振興助成法の精神に基づいて、私学教育の振興充実は大変重要な政策だというふうに考えて、その考え方で対応していかなければならぬというふうにかたく決意しているところでございます。
  63. 中西績介

    中西(績)委員 先ほど申し上げましたように、振りかえをされぬようにぜひ頑張っていただくよう、皆さん方のさらなる活動を要望いたしまして、終わります。
  64. 阿部文男

    阿部委員長 午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三分休憩      ————◇—————     午後一時三分開議
  65. 阿部文男

    阿部委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。佐藤徳雄君。
  66. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 私は、与えられた時間の範囲内で、特に中国残留孤児問題を中心にいたしまして、文部省を初め厚生省、外務省、それぞれの省の関係者の皆さんにお尋ねをしたいと思います。  私は、第百二回通常国会の会期中であります四月十日の文教委員会で、中国からの引揚者、残留孤児子弟の教育問題についてお尋ねをいたしまして、文部大臣初め文部省の見解をいただいたところであります。そのことに関連をいたしまして、内容的にはもっと深く突っ込んだ、私の経験と調査をもとにいたしまして、問題解決のための質問を幾つかしたいと思います。  その第一でありますが、厚生省援護局の方いらっしゃっていますね、中国残留孤児訪日調査の経緯と現状について、どういう状況になっておりますのか、御説明をいただきたいと存じます。第一次から第九次までの孤児訪日調査実態、さらに判明件数と未判明件数とそれぞれの割合についてお答えをいただきたいと思います。
  67. 石井清

    ○石井説明員 お答えいたします。  訪日調査でございますが、訪日調査は五十六年三月の第一次からこの十二月行いました第九次まで実施したわけでございますが、その間に調査した孤児数は七百十二人でございます。うち身元が判明した孤児は三百十二人、この判明率は四四%となっておるわけでございます。これまで調査によりまして判明した孤児は九百五人でございます。うち、永住帰国をした者が二百四十九人、一時帰国をした者が三百九十三人。なお、訪日によりまして未判明であった孤児数につきましては三百九十二名、こうなっております。
  68. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 冒頭申し上げましたように、四月十日の文教委員会で幾つか私は問題提起をして、文部省の方でお調べをいただくことをお願いをした問題があります。関連することになりますが、中国引揚者子弟の就学状況と、そして今日抱えている問題点は一体何であるのか。特に就学状況につきましては、全国的な就学分布はどういうふうになっているのか、校種別にひとつお知らせをいただきたいと思います。
  69. 阿部充夫

    阿部政府委員 四月の御質問の際にお答え申し上げましたように、その後御指摘の中国引揚者子弟の就学状況等についての調査をいたしまして、現在集計中でございますので最終的な数字ではございませんけれども、現在までの大体持っております数字でお答えをさせていただきたいと思いますが、六十年五月一日現在ということで調査をいたしておりまして、中国から引き揚げた子弟の公立の小中高等学校の在籍者数、全国で二千三百十二人となっております。  これを地域別に見てまいりますと、首都圏と阪神地区で全体の約半数、そのほかに幾つかの県に散らばっておって、いわば全国的に散在をしておるという状況でございます。  具体に幾つかの県について申し上げさせていただきますと、首都圏のところでは東京が五百八十二名でずば抜けて多いわけでございますが、埼玉百二十一名、神奈川百十五名、千葉九十七名というようなことで、九百名余りが首都圏に在籍をいたしております。それから中京地区、愛知県でございますが、八十七名。阪神地区、大阪府が百五十五名、兵庫県が八十一名。そのほか全国で比較的多いところといたしましては、岩手県五十六名、福島県五十四名、長野県百三十四名、福岡県九十七名、その他ほとんど全国の各県に散在して在籍をしているという状況にございます。  これを小中高等学校別で申し上げますと、小学校に在籍をしている者が、全体で二千三百十二名と申し上げましたが、その中で九百二十六名が小学校、中学校に在籍しております者が八百三十一名、高等学校五百五十五名というような状況となっております。  なお、この調査は先ほど申し上げましたように公立の小中高等学校についての調査でございまして、私学関係は追ってさらに調査をいたしたいと思っておりますが、私立関係のこれまでわかっている数字で申しますと、私立の学校へ入っている者は学校基本調査等でごく一部出ておりますが、小学校三名、中学校一名、高等学校七名といった程度の非常に微々たる数の子供たち私学に通っているというようなことでございます。  なお、具体にこういった子供たちを引き受けて教育するに当たりましていろいろ問題があるわけでございますけれども、特に前回のときにもお答え申し上げましたように、教育指導という面から見てまいりますと、何といっても一般の海外勤務者の帰国子弟などの場合とは違いまして、一つには日本語の能力というのがほとんど乏しいということが大きな問題点でございますし、それからまた、これまで暮らしてきました生活環境あるいは生活習慣といったような点が日本のものとかなり違っているというようなあたりのところで、逐次この子供たちを適応させていくという面で指導面ではなかなか問題があるということが言われておるわけでございます。  以上のようなことでございます。
  70. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 続きまして、今後における訪日調査受け入れの予定についてはどうなっておりますか、わかっておりましたら明らかにしてください。
  71. 石井清

    ○石井説明員 今後におきます訪日調査でございますが、六十年度におきましては既に第八次、九次と終わりまして、なお明年二月十七日から三月十一日にかけまして第十次の訪日調査、百三十人を予定いたしております。そうしますと、本年度は四百人ということになるわけでございますが、六十一年度におきましては、未訪日の孤児、約七百人おるわけでございますが、これを日本に迎えまして訪日調査を行い、明年度をもって概了したい、こういう計画でございます。
  72. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 日本側と中国側の残留孤児の数の実態把握はどういうふうになっておりますか、おわかりですか。日本側で把握をしている孤児の実数、それから中国側で把握をしている実数、もしおわかりでしたら……。
  73. 石井清

    ○石井説明員 中国政府からの通報等によりまして、現在厚生省が把握しております孤児数は二千百三十五人でございます。このうち、既に永住帰国している者が二百五十七人おりますので、中国に残留すると思われる者は千八百七十八人と想定しております。
  74. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 中国側はどうなんですか。すり合わせしているのだろうと思いますけれども、中国側と日本側で把握している実数について食い違いがありませんか。
  75. 石井清

    ○石井説明員 大体において食い違いはないものと思っております。
  76. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 今お答えありましたように、第九次の方は先ほどお伺いいたしましたらきょう無事お帰りになったそうでありますが、私も第八次、第九次に来られました孤児の皆さんと、オリンピック青少年センターに訪問して何回かにわたりましてお会いをしてまいりました。厚生省皆さんは大変なお骨折りをされておりまして、改めて敬意を表したい、こう思うわけであります。かなり大きな問題でありますから、さらに二月の段階あるいは来年度の七百人の問題等も予定されているようでありますので、ひとつ十分対応されますよう心からお願いを申し上げたいと存じます。  さて、私はことしの七月二十九日から八月六日までの十日間、日本社会党中国残留日本人孤児調査団の一員といたしまして、黒竜江省のチチハル市とハルビン市を訪問いたしまして、残留孤児並びに残留邦人、養父母など、正確には七十三名と面談をしてまいりました。我が文教委員であります田中克彦議員も一緒に行ってまいりまして、多くの事情を知ることができました。  残留孤児並びに残留邦人と申し上げましたが、その残留邦人というのは大半が御婦人でありまして、その中には男の方が若干含まっているので残留邦人と呼んでほしい、こういうお話でありましたから、そういう呼び方を実はさせてもらっているわけであります。そして、この七十三名の皆さんとお会いをして、事情を聞き取ったりあるいは家庭訪問も行ってまいりました。とりわけ、黒竜江省チチハルには私どもが戦後初めての国会議員だったのだそうです。そういう意味では、チチハル市の人民政府からも非常に歓迎をいただきまして、親切な対応をしていただいたことを報告しておきたいと思います。  今申し上げましたように、私どもが訪中期間中、黒竜江省の人民政府を初め、チチハル市やハルビン市の人民政府幹部とも会談をしてまいりました。そして、中国側から、孤児や残留邦人の実態把握や生活の現状、それに対する見解等もお聞きをいたしまして、相互に意見の交換をしてきたところであります。  また、北京におきましては、大使館の皆さんともお会いをして、いろいろ現地のお話もつぶさに聞くことができました。さらにまた、孤児問題を直接取り扱っている中国政府の外交部それから公安部にお伺いをいたしまして、とりわけ公安部の出入境管理局の責任者、局長さんでありますが、局長さんと会談をしてまいりまして、それぞれの意見の交換を行ってきたところであります。これは、後ほどその意見の内容については申し上げたいと存じます。  さて、私たち調査によりますと、孤児問題の抱える問題というのは極めて深刻でありまして、そしてまた複雑多岐にわたっており、戦後四十年たった今でも、戦争のつめ跡の深さを改めて思い知らされたような感じであります。中曽根総理が戦後政治の総決算等と言っておりますけれども、この孤児問題が日中戦争の歴史的事実の中で発生した問題でありますだけに、まさにまだ戦後は終わっていない、こういう感じであります。  現地の実態調査をして痛感をいたしましたことは、戦争責任の当事者である日本政府の本問題についての対応が、そのスタートにおいて立ちおくれていたのではないか。そしてまた、その後の諸対策も、全くとは言い切れませんけれども、いま少し積極的であってもよかったのではないかという指摘を中国側から実は受けてまいりました。少なくとも十年前にこの孤児問題を日本政府がもし手がけておったとすれば、肉親判明はずっとずっと高まっていたに違いありません。同時にまた、あと十年たったら、未判明孤児たちは永久に肉親を捜すことは不可能になるだろう、こんな感じを実は私持ってきたわけであります。育ててくれました養父母は今でもかなりの高齢に達しておりますし、あるいはまた、肉親と思われる人たちも、その証人となる人たちも同様の状況であるだけに、全力を尽くして今の問題に取り組んで、政府は金も人ももっと出すべきであろうし、孤児や残留者の希望をかなえてやるべきではないか、こう思っているところであります。政府は、国家の責任において本問題の根本的解決を図るために諸対策の改善強化を図るよう、これからの質問に先立ちまして私は強く要請をしておきたいのであります。そして、そのことは、残留孤児及び残留邦人が子々孫々にわたる日中友好のかけ橋として積極的な役割を果たしてくれるに違いないと信ずるからであります。  さて、そういう見解を明らかにいたしまして、次の質問に移ります。  まず、孤児問題に関しての戦争責任の問題でありますが、これは四月十日の文教委員会でも、これに類似した質問を私はいたしまして、文部大臣から一定の見解をいただいたわけでありますが、既に第九次まで訪日調査が完了しておる、そして二月、来年度七百人をまだ控えておるという現実の上に立って考えるならば、日中戦争、中国に対する戦争責任について一体どのようにお考えになっていらっしゃるのか、文部大臣は中曽根内閣の閣僚の一人でありますから、大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  77. 松永光

    ○松永国務大臣 中国に対する戦争の責任についてどう考えているかという御質問でございますが、中国に対する戦争責任については我が国は昭和四十七年の日中共同声明において次のようにはっきりしておるわけであります。すなわち、「過去において日本国が戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し、深く反省する。」こういう認識を述べておるわけでありますが、私もそういう認識のもとに今後の日本と中国との友好関係をさらに発展させていかなければならぬと考えておるところでございます。
  78. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 大臣、あなたも公式参拝をされたそうでありますが、御承知のように、靖国神社公式参拝問題についてはかなり中国側を刺激し、アジア全地域を刺激し、とりわけ中国においては学生がデモをするなどの新聞報道が実は出されているわけであります。この問題についての言及は別の機会にさせていただきますけれども、しかし、少なくとも中国に対する日本の侵略戦争の責任、そしてそこから発生をいたしました悲劇的な残留孤児、残留邦人の問題がいまだに解決されておらないという現実をぜひ直視をしていただきたい、こう思っておるところであります。  それで、これは厚生省でも外務省でも結構でありますが、残留孤児問題解決に当たって今後の政府の方針と具体的な方策がありましたらお聞かせをいただきたいと思います。
  79. 石井清

    ○石井説明員 厚生省といたしましては、中国残留日本人孤児の問題につきましては、国民の理解と協力を得ながら、まず肉親捜しの早期完了、それから帰国孤児の定着、自立の促進等その問題の早期解決ということに全力を挙げて取り組んでいきたいと考えております。  先ほども申し上げましたとおり、肉親調査にっきましては、六十一年度におきまして未訪日の孤児七百人をすべて日本に迎えまして完了させたいという方針でございます。また、帰国後の定着、自立促進対策ということにつきましては、これら孤児が大量に帰国する時代を迎えるということから、現在ございますところの帰国孤児が入ります定着促進センター、ここにおきましては四カ月間集中的に日本語の指導であるとか生活指導というものを行っておるわけでございますが、それを拡充いたしまして、その受け入れ能かを現在約三百三十名でございますが六百六十名にして、そのセンターを卒業後には定着先でなお生活指導なり日本語の指導をやっていただくということの施策の充実強化を図ることを考えております。
  80. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 実は持ってきたのでありますが、一部でありますけれども、私に毎週と言ってよいほど残留孤児の皆さんを中心にして手紙が来ております。時間があったらお見せしたいのでありますけれども、訴えておる中身というのは、本当に切実な問題がたくさん寄せられてきているわけであります。全体を紹介するわけにはまいりませんけれども、例えば、私は孤児であっても日本人である、そして私の血統祖国日本に帰りたい。私の血統祖国日本、こういう言葉をやはり使いたいのですね。そして、父や母を捜し出してお父さん、お母さんと呼んでみたい、こういう手紙が実は何通も私のところに来ております。ところが身元引受人がいないため日本に行きたくても帰れないという訴えもたくさん来ていることをひとつ御承知おきいただきたい、こう思っておるところであります。育ててくれた養父母の御恩は決して忘れない。養父母を中国に置き去りにして日本に永住帰国をする考えはないけれども、訪日調査という極めて短期間であったために、いま一度日本に行って肉親捜しをしてみたい。訪日調査はありがたかったけれども、滞在期間が余りにも短かったために思うようなことができなかったとも訴えているわけであります。先ほど大臣の戦争責任に対する見解をいただきましたけれども、そういう歴史的過程考えてみますと、まさに身元引受人そのものは基本的には日本政府がなるべきだと私は思っているわけであります。しかし、残念ながら現実にはそういう状況にはなっておりません。とりわけ未判明孤児の一時帰国制度は極めて限定的であります。未判明孤児の一時帰国制度を認めてほしいという訴えも現地からの手紙で私のところにたくさん寄せられていることも、ひとつぜひ御承知おきいただきたい、こう思っているのであります。  それで、未判明孤児の一時帰国の実態はどうなっているのか。さらに、私が先ほど主張いたしました基本的には戦争責任の一環として日本政府が身元引受人になるべきだという考え方についての見解をお尋ねいたします。
  81. 石井清

    ○石井説明員 まず、身元未判明の孤児に対する身元引受人でございますが、その実態を申し上げますと、身元未判明の孤児であっても日本に永住を希望する場合には日本に帰国ができるという道が開かれたわけでございますが、これらの方に対しましては、帰国後における相談相手となっていただくという意味から身元引受人制度をことしの三月に発足させまして、現在各都道府県を通じまして個人の方を対象に募集を行ってきているところでございます。その結果、現在身元引受人として二百五十人の方から登録をいただいております。また現在このほかに百四十人につきまして審査をしているわけでございます。しかし、先ほど申し上げましたとおり、やはり今後多くの身元未判明孤児の帰国が見込まれるわけでございまして、これに十分対応するまた対応できるようにということから、ことしの十一月から法人の方にも身元引受人になっていただけるように現在対象範囲を広げまして、都道府県を通じまして募集をしているところでございます。(佐藤(徳)委員「答弁漏れがある、政府の身元引受人……」と呼ぶ)政府として身元引受人というところは、現在まだ検討いたしておりません。
  82. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 今のお答えで概略についてはわかりましたけれども、一度訪日調査に来ました、そしてその次に来る未判明孤児の一時帰国というのは、かなりの手がかりがあるあるいは血液鑑定の関係もある、そういう一定の条件に該当する者のみしか第二回の——第二回といいますか、つまり未判明孤児の一時帰国制度はないわけでしょう。どうですか。
  83. 石井清

    ○石井説明員 そのとおりでございます。
  84. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 現地に行きまして、実は何人かからこの問題の提起がありました。つまり、未判明孤児が永住帰国できる道が開かれていますね。ところが、養父母がいる、養父母を置き去りにして自分たちだけが日本に帰ってくるわけにはいかない、だから何とか少しの手がかりをもとにして、三カ月なり半年日本に行って肉親を自分の手で探したい、こういう訴えもあります。直接受けてまいりました。ところが、それは該当してないのですよ。同時に、自分で来る場合については自分で旅費を出さなければならない。ところが、御承知のとおり中国というのは、一カ月間の労働者の平均賃金が大体六十元くらいでしょう。そうすると、約八百元が必要になってくるということになりますと大変な財政負担になるわけであります。だから、金の問題だけではありませんけれども、そういう意味では、永住帰国ができないあるいは日本にどうしても来たいという人——永住帰国をする人は現在三、四人だかおりますが、まだまだたくさんいるわけですよ。やはり私は養父母のことも考えてやらなくちゃいけないと思いますし、そういう意味では、一定の限界はあるでしょうけれども、未判明孤児の一時帰国制度というものを検討してもいいじゃないか、私は自分の調査の上からそういう実感を実は持ってきたわけであります。厚生大臣来ておられませんから責任あるお答えにならないかもしれませんけれども検討の用意がありますか。いかがですか。
  85. 石井清

    ○石井説明員 まことに申しわけないのでございますが、現在まだ検討するということをお答えずる段階ではないと思います。まず、私どもとしましては、孤児が訪日をしたい、そして肉親捜しをしたいということを第一義に早期完了したいという観点がございますので、今先生にお答えすることはできないわけでございます。
  86. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 失礼な言い方になって恐縮でありますが、これは事務レベルの問題じゃないのですね。政策的な問題です。だから、そういう意味では、厚生大臣の方にもぜひ私の発言内容というものをつぶさに伝えてほしいと思います。機会がありましたら社会労働委員会に赴きまして厚生大臣と直接やり合いたいと思いますから、その点も含めてお伝えいただきたいと思います。  さて、次に入りますが、前段申し上げましたように、私は、ハルビンにおきましては黒竜江省の人民政府、北京におきましては中国公安部の出入境管理局の局長とそれぞれ会ってまいりました。丹念にメモをしてきたのでありますが、この会談には日本大使館の有信参事官が同席をしていらっしゃいます。それで、御承知のとおり中国公安部は直接孤児問題、残留邦人問題を担当するところであります。その出入境管理局の局長は曹履和という方であります。一定の時間をいただきまして意見の交換をしてまいりました。そのときに彼はこういう中身を発表しているわけであります。  その第一は、孤児問題は日本軍国主義の残虐な行為が生み出した問題である。  第二は、日本政府、民間団体の行っている問題解決に中国側は協力をする。  第三は、原則に基づいて一回も訪日調査をしていない孤児の全部について中国がこれから調査をすることにしている。これが七百人になったのだと思うのです。  第四は、孤児の永住帰国後の家族の問題もある。  第五は、以上の見解に基づいて各省とも円満に解決するようにしている。こういう見解が出されました。  さらにまた、永住帰国について、希望している者につきましては判明、未判明の者を分類する必要があるし、希望もとらなければならない。永住帰国の希望者名簿ができれば日本側に提供したい。こういう好意的な発言もされているわけであります。  そして、日本語習得についての日本学校創設問題は、経費が必要である。新しい学校を建てるというのには経費の問題があり、非常に困難である。それは日本側が経費を出せばよいのではないかと最後に結んでいるわけであります。  いま一つ紹介しておきましょう。今申し上げました管理局長との会談は八月五日でありますが、これは八月二日であります。八月二日にはハルビン市人民政府の副市長李嘉廷という方とお会いをしてまいりました。彼の発言をまとめてみますと次のとおりであります。  第一、日本政府が孤児問題で積極的に対応するよう希望する。  第二、一番大事な問題は孤児の家庭問題である。養父母、妻の関係を大切にしなければいけない。  第三、政府と省は一貫して孤児問題を積極的に対応している。  第四、日本学校を各学校に創設することは非常によい提案である。これは後で注釈を加えますが、日本政府に働きかけてほしい、こう言っておるのであります。  御承知のとおり、所沢センターに四カ月間入所されて、一生懸命日本語の勉強を今でもされております。ついこの前、未判明孤児が帰ってまいりまして、これは中国名李桂芹という方でありますが、きのう私は所沢センターから手紙をいただきました。中国語で書いてありましたから判読の域を出ないのでありますけれども、いずれ翻訳を頼みまして明快にしたいと思いますが、あの四カ月間で果たして日本語がマスターできるだろうか、私は今でも心配であります。そして、四月十日の文教委員会で私が申し上げた中にも入っているわけでありますが、言葉がわからないために不自由を感じたり、それだけではなくて、心のいらいらが募って大きな事件に発展したりという事例が何件か出ていることは御承知のとおりであります。だから、私ども実態調査に入りましてまず感じてまいりましたのは、帰国希望者が中国現地で一定の日本語を習得して帰国をした場合にはかなり有利な条件で生活することができるという判断をしてきたところなのであります。それには何といっても、中国現地で日本学校日本政府自体がつくってやり、そして温かい手を差し伸べる、これが今求められているのだろうというふうに感じ取ってまいったわけであります。  実は、昨年の十月からことしの十月まで丸一年間でありましたが、福島県引揚者団体連合会の会長の滝田さんという方がこの問題について非常に本気になりまして、ハルビンの黒竜江大学にみずから滝田日語学校というのをつくられました。そこには講師といたしまして、元小学校の教員でありましたが、退職をされた小島マサ先生という方が一年間派遣をされまして、孤児を対象にして日本語を教えてこられました。私が行った時点でお会いをいたしまして、あるいはその学校の生徒ともお会いをいたしました。日本語がかなり上手になっています。ところが、この点についてはかなりいろいろな問題があることが私もわかってまいりました。同時に、調べてみましたら残留孤児だけの対象ではありませんでした。中国人の学生が十四名、残留孤児が十一名、合計二十五名で一学級の編制をして一年間学習をしてきたわけであります。黒竜江大学の責任者ともお会いをいたしまして、いろいろ意見の交換をしてきたのですが、独立採算制をとっているだけに黒竜江大学では限界があると言っています。だから、日本政府が金を出して学校を設立してくださるとすれば大変ありがたい、場合によっては、用地が非常に応うございますので私どもの黒竜江大学の用地を提供してもいいから、ぜひ働きかけてほしいという依頼もされてまいりました。  この問題、孤児の皆さんが帰国をして生活に溶け込む絶対的条件の日本語習得のためには、まさに本気になって取りかからなくてはいけないのではないかと私は感ずるわけであります。ただ、これは単に事務レベルで話がつく問題じゃありません。まさに外交上の問題であります。それで外務省の方に来ていただいたのであります。中国課の課長さんでありますか、即答できるかどうかわかりませんけれども、私の申し上げました真意を酌んでいただきながら、現地に日本学校を開設するという検討をしてみる考えがないかどうか、御見解を承りたいと思います。
  87. 槇田邦彦

    ○横田説明員 お答えいたします。  委員指摘の問題でございますが、残留孤児の方々あるいは残留邦人の方々が日本にお帰りになってから日本語を勉強するのでは遅過ぎるのではないか、むしろ帰国前に日本語を十分習得してお帰りになれば日本での生活に不便を生じないからその方がよいのではないかという問題であろうかと思いますけれども、そういう委員のお考え方そのものについては、私はそれなりに非常に理解できるという感じを持っておるのであります。ただ、しからば直ちに御希望を受けまして中国において残留孤児の皆さんのために日本学校をつくるのかどうかという問題につきましては、率直に申しましていろいろな問題があるのではないかという感じがするわけでございます。  まず、残留孤児の皆さんに対する日本語教育をどうするのかという問題につきまして、政府の方での考えといたしましては、基本的に、日本に戻ってその上でセンター等において勉強されることが日本の文化あるいは風俗習慣に直接触れながら勉強ができるという意味においていいのではないか、その方が効率的ではないかという考え方があること、さらに外国日本学校をつくるということにつきましては、いろいろな財政上の問題もあることは御理解いただきたいと思うわけでございます。さらにまた、中国のようなお国柄のところで外国語を教える学校をつくる問題につきましては、問題といたしましては決して簡単ではないのではないかと思うのでございます。特に残留邦人の皆様を対象としたものをつくるということ、そのほか中国人の人々を対象とする日本学校にするのかという問題、そういういろいろな面での問題があるかと思います。なかんずく、中国側が例えば政府レベルで日本側にそういう希望を出してきておるかどうかということを見ますと、そのような希望は表明されていない状況でもあるわけでございます。  そういうことでございますので、私どもといたしましては、一般的に日本語が普及されていくということについては非常に重視しておりまして、外務省の文化交流部あたりでもいろいろな点での御援助ができるように努力しておるわけでございますし、かつまた、先生の御指摘の残留邦人の日本語教育の問題についても決して軽視しておるわけではございませんけれども、中国あるいはその東北地方において日本学校をつくるという計画は当面持ち合わせていないわけでございます。
  88. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 失礼だが、私から言わせれば極めて歯切れが悪いです。不満です。もっと実情を知ってもらいたいと思います。  例えば、中国側が希望していないから、そういう受け身の形ではないのではありませんか。中国側もかなり真剣に取り組んでいるのです。それは課長さんよく御存じのはずなんであります。だから、私はこれを実現するまでは何回でもやらしてもらいたいと思っておるのであります。先ほど申し上げましたように、あと十年たったら肉親はわからなくなってしまうのです。もうみんな、養父母が生存していなくなったり、証人がいなくなったり、そして自分が孤児であることを意識しながら悶々として一生を送らなければならないたくさんの孤児の皆さん、まさに戦争責任としての日本政府のやるべきやり方というのは私はたくさんあると思うのです。  例えば、昨日の朝日の夕刊です。ごらんになったかどうかわかりませんが、「祖国でも自立の道険しく」と出ております。この中に、既に永住帰国してきました重光孝昭さんの事例が出ております。「この年齢で、四カ月というセンターでの研修は短すぎる。せめて一年にならないものか」という談話を出している。それから「「永住帰国するのが、もう十年早ければ……」というこの帰国者のつぶやきは重い。」と新聞に出ております。そのとおりだと思うのです。だから、こういう孤児の立場に立って今政府は何を考えて何をしなければいけないのか真剣に取り組んでいただきたいと私は思っておるところであります。  私も所沢センターにお邪魔してその実態はよくわかります。しかし、これからどんどん帰国するであろうことを考えますと、あそこで間に合うかどうかということについては問題があるだろうと思います。時間がありませんからこれ以上は踏み込めませんが、日本学校の問題については外交上の問題でもありますので、どうぞ問題提起があったということを外務大臣にもよく伝えてほしいと思います。  これは教育に関係した問題で、所管が違うかもしれませんが、大臣、御感想はいかがですか。
  89. 松永光

    ○松永国務大臣 先生おっしゃいますように、中国残留孤児に対するいろいろな施策を進めていく上で日本語の教育というのは非常に大切だろうと思います。したがいまして、この日本語の教育をどういう方法で進めていくかは非常に重要な課題だと考えております。  ただ、現地ですなわち中国において日本語を教えるというためだけの学校をつくるということに関しましては、これは中国側との関係もあろうかと思いますので、外務省その他の関係機関とも協議しながら慎重に検討しなければならぬなかなか難しい問題だな、先生のおっしゃる気持ちはよくわかるのでありますけれども外国において日本語を専ら教える学校を、ある程度日本側がリーダーシップをとりながらの学校であるとするならばなおさら中国政府との関係でいろいろ難しい問題もあるのではなかろうか、こう思うのでありまして、これは外務省その他専門機関とも十分検討して慎重に対応しなければならぬというふうに思いました。
  90. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 大臣のおっしゃること、理解できます。これは中国側に対する内政干渉になることも十分配慮していかなければいけないと思って、私も慎重に構えているつもりでありますが、ぜひひとつこういう現状にあるという認識をしていただいて、伝えられるところによりますと今月中に内閣改造があるやに新聞に報道されておりますけれども、どの部署に行かれましても御協力をいただきたい、こう思うところであります。  実はもっともっと中身があるのでありますが、もう時間もあとわずかしか残っておりませんから、中国残留孤児問題はいずれ機会がありましたらまたやらせていただくことにいたしまして、残された時間、初中局長にいろいろお尋ねしたいと思っています。  昭和五十九年七月二十日付、文部省初等中等教育局長高石邦男名で出しました公立学校の入学者選抜についての通知がありますね。概要を説明してください。
  91. 高石邦男

    ○高石政府委員 公立高等学校入学者選抜方法に関する指導の主な内容を申し上げます。  一つは、選抜の基本的原則として各高等学校、学科等の教育を受けるに足る能力、適性等を判定して行うということで、それぞれの学校の種類、性格に応じて選抜のあり方が変わってもいいという考え方。それから、受験機会の複数化を進めるということが第二番目です。第三番目は、学力検査実施教科などの実施の方法及びその結果の利用については、それぞれの学校の特色に応じて工夫が払われるようにしてほしいということでございます。四番目は、学力検査は中学校の学習指導要領に望ましい影響を与えるものとなるように配慮するということでございます。次は、調査書については学習の成績以外の記録についてこれを積極的に利用してほしいということでございます。それから、推薦入学につきましては普通科においてもその実施を配慮してほしいということでございます。それから、面接も積極的に利用してほしいということでございます。それから、帰国子女に対する配慮も最大限の配慮を払ってほしいというようなことが通知の内容でございます。
  92. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 局長、その通知の中の第六項目、こういう内容でしょう。「調査書の各教科の学習成績以外の記録については、これを積極的に利用することとするが、安易に点数化して利用することのないよう十分に配慮することが望ましい。」間違いございませんか。文部省といたしましては例えばこの六項の問題についてはこういう趣旨でやってほしいということに理解してよろしいですか。
  93. 高石邦男

    ○高石政府委員 そのとおりでございます。
  94. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 既に係の人を通して資料を提供してありますからおわかりかと思いますが、実は私の県の福島県の教育委員会が今お答えいただいた内容にそぐわない入学選抜方式の定義をやっておりますね。例えば、御承知かと思いますけれども、「行動及び性格の記録」等についてA、B、Cの三段階に区分する。そしてA、B、CのAは三〇%、その三〇%は五段階評価の五の配点をする、こういうことなんですね。従来までは絶対評価だったと思うのですけれども、こういうふうになると相対評価に変化してしまうわけですよ。そういたしますと、先ほどお答えいただいたその通知の第六項にそぐわないと思いますし、かなりの問題を内包するだろうと私は思うのであります。いかがですか。
  95. 高石邦男

    ○高石政府委員 福島県の教育委員会で、六十一年度から県立公立高等学校の入学者選抜の内容を改正している、内容も承知しております。県でいろいろな論議を重ねた結果、最終的にこのような決定になったと思っております。  先ほど御指摘のございました、調査書の各学習成績以外の記録について安易に点数化しないようにというようなことは指導で述べているところでございます。しかしこの内容は、絶対に点数化してならないということまでを強調しているのではなくして、安易な点数化の戒めをしているわけでございます。福島県で、受験の物差しとしてどういう形にするのが一番いいかということをあらゆる角度から検討になった上で、六十一年度の選抜の実施要綱が定められたのではないかと思っているところでございます。
  96. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 それぞれの教育委員会は自主性を持っていますから、それは私も理解できないわけではありません。局長、ただ少なくともこの通知の第六項からいったら、そぐわないという言葉を私は使わしてもらったのであります。反するという言葉はちょっときついと思いましたから、そぐわないと思いますけれども、望ましいことじゃないでしょう、あなたの名前でみずから出してあるんだから。それにそぐわないようなやり方をして、これは結構だなんということにはならぬでしょう。いかがですか。
  97. 高石邦男

    ○高石政府委員 安易に点数化して利用することのないようにということでございますから、いろいろな慎重な検討を加えて、より客観的にはどういう物差しがいいかということを検討した上で、これを点数化して表示するのが福島県内の事情としては一番いいという判断に達すれば、そういうことを処理されても、別にこの通達に反しているというふうに考えていないところでございます。
  98. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 そんなことを言ったら、通達は単に参考だということにしかならないじゃありませんか。都合のいいときにはもう本当に強制的に文部省がやらせている部分があるわけでしょう、時間がありませんから引用することはできませんけれども。しかし、私はきつい意味で聞いているのじゃないのですよ。安易に点数化しないというこれにはいろいろな、今日の受験競争体制の問題もあるし、それからいじめの問題に関係するかどうかは別にいたしましても、幾つか内包している点があるわけですね。そういう意味では、この通達が生かされるように各都道府県教育委員会が行うということが通知の本筋ではありませんか。余り逃げないで、あなたの名前で通知を出しているのだから、確信を持って言ってください。
  99. 高石邦男

    ○高石政府委員 同じ答弁になろうかと思いますが、十分に配慮することが望ましいということでございまして、十分な配慮をした上で、より客観的な物差しとしてこういう物差しをつくるということを県がお決めになれば、それはやはり県の主体的な判断でございますので、そのことがこの通達に反するというふうには理解していないところでございます。
  100. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 これ以上やっても水かけ論になりそうですけれども、ただ、少なくともあなたの名前で出されたこの通知から判断をすれば、もっと素直に理解してよろしいのではないか。局長、余り意地になる必要はありませんよ。  ですから、そういう意味で、現地でどれだけの問題に発展するのかわかりませんけれども、ひとつ十分文部省の立場からも協議をなさったりあるいは指導を加えたりす谷ことをぜひお願いしたいということを要請しておきます。よろしいですね。  時間になって残念でありますが、これで終わります。ありがとうございました。
  101. 阿部文男

    阿部委員長 池田克也君。
  102. 池田克也

    ○池田(克)委員 今国会の延長がこれから話題になると思いますが、会期からいきますと、こうしてこの委員会で一般質問をしてまいりますのはひょっとすると最後になるかもわからない、こんな気持ちでおります。  最初に、松永文部大臣御就任以来約一年が経過をされたわけでありますが、大臣はこの一年を振り返って我が国の教育の最高責任者としてどんな感想を持っていらっしゃるだろうか、そんな気持ちを私は持っているわけでございます。  中曽根総理の教育改革の熱意、私どもはその熱意については今日までそれなりの評価を持って臨んでまいりました。この一年を振り返りますと、臨時教育審議会の第一次の答申も出ました。しかしながら、この臨時国会はGNPの一%問題、あるいは共済法の問題、さらには定数改正の問題等、政治的な大きな問題で今日まで推移してまいりましたが、本来であるならば、もっと教育改革の進め方について国会の大きな議題になり、その進捗状況について私どもは国民に対して的確な道筋を国会の場で示していかなければならない使命を持った臨時国会ではなかったか、そんな気持ちもあるわけでございます。  唐突で大変恐縮でございますが、大臣就任一年を振り返って、今の教育の置かれている状況、また今後どうあるべきかという問題について御答弁をいただければと思うわけでございます。
  103. 松永光

    ○松永国務大臣 政治家というのはその与えられた部署におきまして全力を投球して任務を果たしていくというのが政治家の使命であろうというふうに思っております。私は幸いにして去年の十一月一日に文部大臣という大変大事なポストに中曽根総理から抜てきされまして就任したわけでありますが、一年一カ月と十日たったようであります。普通一年と言われるのに一カ月と十日もたってしまったわけでありまして、平均的に言えばそのポストに長くおるような気がします。  ただ、教育というのは国家百年の大計と言われますように極めて大事な国政の問題だというふうに認識をいたしております。その認識を持って今日まで職務に精励してきたつもりでありますが、同時に、事柄の性質上直ちに効果があらわれるという面がやや難しい点があるわけでありまして、教育というものはやはり時間がかかるものだということもかねがね私は考えておったわけでありますが、幸いに臨教審から審議が煮詰まったものをまず第一次答申として出していただきましたので、第一次答申に基づく教育改革のためのいろいろな施策を今実行に移しつつあるというところでございます。  もう一つは、私が就任する前から起こってきておった問題でありますが、学校荒廃という現象に対してどう対応していくかという問題があるわけでありますけれども、これも優秀な部下を持っておりますので、よく協議しながら全力を挙げてその対応策を今実施しつつあるというところでございます。  これからも閣僚はやめましても政治家は続けていきたいと思っておりますので、機会あるたびごとに日本の文教の振興、充実発展のために尽くしてまいりたいというふうな気持ちでおるわけでございます。
  104. 池田克也

    ○池田(克)委員 率直な御答弁をいただきまして、ありがとうございます。まだ留任ということは当然あるわけでございますし、私は、教育を統括する大臣は毎回毎回の内閣改造でポストがかわるというのは余り適切なことではないのじゃないか。かなり継続的な施策、効果がすぐ出るものでないことはおっしゃるとおりでございます。そんなことで、継続的な文教行政というものが望まれるわけでありますし、また、後からいじめの問題についてお伺いをしたいのですが、松永大臣の今日までの御経歴を伺いますと、法曹界にいらっしゃった、そうした御経歴でございますので、先ごろもこの委員会でおっしゃっておられましたが、いじめの問題についても必要であるならばきちんとした法にのっとった処置をすべきだというような御意見も承ったように記憶をしております。そんな観点からまた後ほどその面についての御答弁をいただきたいと思っております。  本論に入る前に、実は私の友人が一生懸命働きまして、世界の教科書を集めてまいりました。そして、現在東京の池袋で世界の教科書展という展覧会をやっておりまして、これを見ますと、いわゆる原爆についての世界の教科書の記述の仕方、あるいはフジヤマ、ゲイシャと言われていた日本についての記述、こうしたものが世界でかなり変わってきているように思うわけでございます。文部省としてどなたかごらんいただいたように伺っておりますが、概括的で結構でございますので、この教科書の展覧会をごらんになっての印象をお聞かせいただければと思うわけでございます。
  105. 高石邦男

    ○高石政府委員 実は、先週の土曜日に参りまして、約一時間その展示の状況をつぶさに説明を受けながら見てまいったのでございます。主要国五十カ国の教科書五千冊を集めて、ただ教科書を集めただけではなくして大変内容を分析して整理されております。したがいまして、それぞれの教科書を通じて各国の教育がどう展開されているかが大変よくわかるようにされております。また、教科書だけではなくて、それぞれの国の学校制度、そういうものもいろいろな調査を重ねて比較表をつくってあるということで、実は私たち専門家にも大変参考になる有益な展示であるというふうに思って帰ったわけでございます。その企画に対して敬意を表しているところでございます。
  106. 池田克也

    ○池田(克)委員 ありがとうございました。  さて、本論でございますが、最初に放送大学の問題についてお伺いをしたいと思います。  既に私、この放送大学については何度がこの委員会でも質問をしてまいりました。公明党は、生涯教育とかあるいは教育の場、機会をふやす、勤労学生あるいはまた勤労者に向けてそうした機会をふやすということで、かねてからこうした文教の新しいあり方について力を入れてきたつもりでございます。開学されてまだ半年をちょっと過ぎたというような状況でございますが、放送大学が概況として今日とのような状況にあるのか、まず最初に総括的に御報告をいただければと思います用
  107. 大崎仁

    大崎政府委員 放送大学につきましては、テレビ、ラジオ等を十分に活用いたしました新しい形態の大学といたしまして、本年四月から学生の受け入れを開始いたしたわけでございますが、関係者の努力ということもあり、片や非常に強い関心を一般から寄せられたこともございまして、一万人の募集人員に対しまして一万九千人という倍近い出願者がございました。できるだけ御熱意にこたえるという観点から、ほぼ条件を満たした方々につきましては全員入学をするということで、一万七千人余りの入学を認めたということでございます。その後順調に授業が進んでおりまして、現在三学期の授業を行っているところでございますが、全科履修生、選科履修生と申します者、これは通年一応申し込んでおられるわけでございますが、その方々もごく少数の例外を除いては継続をしていただいておる。科目履修生は若干減っておりますが、逆に高等学校を出ておられない特修生の方はむしろふえておるというような状況でございまして、現在の在籍数は約一万六千ということで、一年経過いたしましても千人前後の減しかないということで非常に熱心に学生も勉学をしておる状況にあるということでございます。
  108. 池田克也

    ○池田(克)委員 試験をして単位を一つ一つ得ていくわけでありますが、この単位の得力、データを見ておりますと、登録者に対する合格率が記述式五十四科目では二九・六%、択一式四十九科目では三六%、併用一科目で二〇・六%、総じて三三・四%、登録者に対する合格率がかなり厳しいのではないか。通信制の学校というのはなかなかこれは勉強が継続あるいは試験による単位の取得が大変だと聞いておりますが、この放送大学は出発したばかりでありますし、皆さん意気込んでこれに臨んだのに対しては若干率が少ないのではないか、こんなふうに私見ておりますが、一つはこの数の見方、さらにはこれらの方々がさらに次に単位を取得していくチャンスがどのように設けられているのか、この二点についてお伺いをしたいと思います。
  109. 大崎仁

    大崎政府委員 単位の取得状況でございますが、第一学期の結果が出ておりまして、第二学期につきましては現在採点中でございます。  第一学期について見ますと、これは科目ごとに延べで見る場合と、それから実際人員にして見る場合と異なるわけでございますが、つまり一人の人間が複数科目受けてどうかということがあるわけでございます。便宜その受験者という実人員の方で申し上げますと、一科目以上受験された方というのが先ほど申し上げました入学者の五八・二%の九千九百二十一人ということになっております。ですから、一万七千人中の約一万人が受験をした、これは実は通信教育、ほかの場合もそうでございますが、非常に厳格な指導といいますか、完全に学習をしていただきたいという配慮でもあるわけでございますが、通信の指導というのは、まあ要するに報告なりあるいは論文等を出して、それに対する添削指導というものが前提にございまして、それを出した人が受験をするということになっておるわけでございます。したがいまして、その通信指導を受けていわば受験資格を得て受験をした者が五八・二%、こういうことでございますが、その受験者だけをとってみますと八七・九%の方が合格をしておられるわけでございます。このうちには、ある科目は落としたけれどもある科目は通ったという者もあろうかと思いますが、受験者ということで応募数にして考えますと約八八%の方が合格をしておられる、しかし全学生では五一・二%で約半分強、こういう数字になっているわけでございます。この評価はいろいろな評価があろうかと思いますが、私どもといたしましては、まず妥当な数学ではなかろうか。一般に通信教育を続けますには非常に強い意思力あるいは生活条件というようなものが必要とされますので、その中でともかく受験者の八八%、九割近い方が合格をされた、それから申し込まれた方の六割近い方が受験をされたということはまず評価をしてよろしいのではないかというふうに感じている次第でございます。
  110. 池田克也

    ○池田(克)委員 身体障害者の問題なんですが、特に体育の実技などは大変難しいのじゃないか。社会体育で単位を取得するようになっているとは思いますが、各地方自治体などで社会体育などが用意されておりますが、身体障害者の場合にはこれも思うに任せないのではないかと心配をしております。身体障害者を受け入れるについてはこうした放送による大学というのは私は一番適切なものじゃないかと思っておりますし、期待も大きいのじゃないか。率直に申しますと、聴覚障害者あるいは視覚障害者からも何とかもっと便利なものをという陳情が私のところに来ておりました。そうしたものを含めて、身体障害者への勉学の道を開くという施策について現時点でのお考えを聞かせていただきたいと思います。
  111. 大崎仁

    大崎政府委員 身体障害者の方々にも勉学が可能な限りぜひ入学をいただきたいということで、九十三名の、これは視覚障害、聴覚障害、肢体不自由各障害にわたりまして志願者がございまして、そのうち九十一名が合格をし、実際に入学をされた方が八十七名ということでございます。それで、これがさらに二学期、三学期と多少増加をしておられまして、現在では九十七名の方が在学をしておるわけでございます。  その方々の就学あるいは試験方法等々については大学もいろいろ工夫を凝らしているわけでございますが、特に御質問がございました体育の授業につきましては、一般に通信教育の学生については各種の社会体育事業その他における参加ということで大学における履修とみなすという制度がございまして、これを放送大学も当然採用はいたしておるわけでございますが、ただそれだけでは、身体に障害のある方が気軽に参加できるそういう諸活動というのは必ずしも多くございませんので、放送大学では学習センターで体育の実技授業というのを実施いたしております。その体育の実技授業に当たりましては、これは身体障害者の個々の方々の障害の程度というものを十分に踏まえた授業ということで、一応の実施要綱的なものを設けてやっておられるわけでございますが、例えばその方々がどこまで運動能力があるかということをいろいろなテスト等を通じて自分で確認をされるということ等も含みまして、一人一人の身体的能力に応じました指導というもので体育の授業を行っているというのが実情でございます。
  112. 池田克也

    ○池田(克)委員 放送の内容を私見たり聞いたりしておりますが、これは全部テープででき上がっておりまして、全国各地からもなぜ放送大学は関東一円しか受講できないんだという声を私聞くわけでございまして、先般も沖縄へ参りましてそうした声があったわけでありますが、これほどビデオ時代になってまいりましたので、放送大学が用意した講義、あるいはその他の映像として収録されている材料というものを、他の大学に貸し出したりあるいは個人に貸したりあるいは売ったり、これは著作権上の処理がありますので売るということは私どうかと思いますが、図書館的に放送大学ライブラリーみたいなもので全国にそうしたものを用意して、個人が自分でビデオ機械を動かして放送大学のすぐれた講義内容を受講できる、こういうことであれば非常にいいんじゃないかなと思っておりますが、その辺の御研究はどうなっておりますか。
  113. 大崎仁

    大崎政府委員 放送大学のスタートに当たりましては、まず正式な開学をし学生を受け入れるだけの授業内容を完備をし実施をするということで全力を注いだということもございまして、実は御指摘の面の取り組みが若干おくれておるわけでございますが、放送大学の一般の学習意欲、生涯教育への貢献という点では非常に重要な事柄であるということで、放送大学におきまして放送教材の市販あるいは貸与を実施をする方向で現在検討いたしておるわけでございます。ただ、この場合どこまで需要を見通すか、またこれは著作権処理等とも絡んでまいりますので、その辺のところを関係団体とも協議をしながらいろいろ案を練っておるというのが状況でございます。  ただ、一番難しいのは外国の著作権等が絡みますケースがございまして、例えば「英語I」という番組が一番人気があるわけでございますが、この中には諸外国の関係団体の作成に係るフィルム等も使っておるというような事情もございまして、そういう諸外国の著作権等も含めましてどう考えるかということで関係者は今努力をいたしておるところでございます。
  114. 池田克也

    ○池田(克)委員 ぜひ早い機会に放送大学のそうした教材というものが自由に必要な人たち、向学心に燃える人たちに使えるようにしていただきたい。私なども車で動いておりますが、放送大学のラジオでの講義をしばしば聞きますけれども、非常に内容がわかりやすいし興味のあるものだと思っております。  関連してでございますが、単位の互換つまりほかの大学もしくは短期大学等でこの放送大学の講義をとった者は自分の大学の単位をとらなくてもいい、いわゆる単位の認定でしょうか、あるいは互換と申しましょうか、こうしたことを検討している大学は幾つあるのか、具体的にもし名前が発表できるものがありましたら、放送大学の今後について考える材料になりますのでお聞かせいただければと思います。
  115. 大崎仁

    大崎政府委員 一般的に大学あるいは短期大学相互間の単位の互換というのは、大学相互の協議というのを前提として制度的に認められているわけでございます。特に放送大学につきましては、建学の精神の一つとして各大学との交流協力ということがあろうかと存じまして、重要な事柄ではないかと考えておるわけでございますが、現在、数大学において放送大学との単位互換の話し合いが進められ、あるいは大学内部での検討が進められているという状況にございます。  全部を網羅して申し上げるだけのデータがございませんが、例えば本部の所在します千葉大学におきましては、既に学内で委員会等を設けまして放送大学との単位の互換のあり方等について具体の検討に入っていただいているというようなこともございますし、それから産業能率短期大学の通信教育部からは放送大学に対して申し入れが行われだというような状況もございまして、今後こういう動きが活発化していくことを期待をいたしているとこうでございます。
  116. 池田克也

    ○池田(克)委員 放送大学の将来についてはこれからもいろいろ問題があると思いますが、機会を見てまたお伺いをしていきたいと思っております。  別の問題に移ります。そろばんの問題でございます。かねて珠算教育の必要性について私、本委員会でも力説をしてまいりました。たしか予算委員会の分科会だったかと思いますが、我が党の宮崎角治委員からも御質問いたしまして、松永大臣からも大変共鳴をしていただいた記憶があるわけでございます。かつて本委員会で当時の宮地高等教育局長からも答弁をいただいておりますが、日本教育大学協会の研究促進委員会等でそろばん教育が今後どうであるべきかということを検討させます、こういう御答弁があったわけでございますが、その後の経過についてお伺いしたいと思います。
  117. 大崎仁

    大崎政府委員 その後の状況を御報告を申し上げますと、日本教育大学協会研究促進委員会では、ただいまお話のございました事項についてその後検討いたしまして、その結果といたしまして、本年六月発行の同協会の会報に記載されておるわけでございますが、「教員養成大学・学部の算数教材研究等の講義内容検討にあたっては、「そろばんの扱い方」に関する指導について、充分配慮される必要があることが認められる。」というような指摘を行ったということが会報に掲載されているところでございます。
  118. 池田克也

    ○池田(克)委員 この会報に掲載されていることは私も承知しておるのですが、この結果どういう具体的な移り変わりというものが予想されると考えていいでしょうか。
  119. 大崎仁

    大崎政府委員 教員養成大学・学部の教育のあり方につきましては、教員の養成というはっきりした目的を持っている限りは、免許の基準及び例えば教材研究という科目でございますと、学習指導要領の内容というようなものが当然教育内容に大きい意味を持つわけでございます。ただ、その具体的な内容あるいは方法というのは、これは大学のことでございますので、個々の大学の担当教員の判断、方針ということにゆだねられるわけでございますが、ただ、ただいま申し上げました教育大学協会の研究促進委員会というのはまさにその大学の先生方がお集まりになって共同の御研究をなさっておられるということでもございますので、その研究の成果というものは各大学の教育に反映をされていくのではないかというふうに期待をいたしておるところでございます。
  120. 池田克也

    ○池田(克)委員 今御答弁いただいた日本教育大学協会の会報には幾つかの項目として珠算の問題が取り上げられております。例えば「かねて関係機関から検討要請があった、標題」つまり「教員養成課程における珠算教育の研究と促進について」「当委員会は、数次にわたって議論を重ねた結果つぎのような結論を得た。」   小学校教育課程のなかの「算数」の教科内容として、珠算が指導されることになっているが、担当教員の実状では、指導しにくい内容の一例になっている。  これは、教員養成課程における、珠算教育に関しての教科研究の機会が少なくなってきたことが原因の一つになるであろうと推定できる。これから結論が出ておりまして、このため、教員養成大学・学部の算数教材研究等の講義内容検討にあたっては、「そろばんの扱い方」に関する指導について、充分配慮される必要があることが認められる。  広く算数・数学教育において、珠算技術を履修する機会をもつことの、教育的意義についての研究がさらに進められることが期待された。こういうふうな結論になっているようでございます。  そこで、今度は具体的な教育のカリキュラムの今後の問題について、これは初中局になるのでしょうか、そろばんの実情、いろいろと議論がなされた中で、やはり「算数・数学教育にあって、こうした数概念を理解する別な教材が具体的にあるのかどうか明らかではないが、そうした事とそろばんとの関係、あるいは計算器が普及する現状にあって、広く人間にとってそろばんによって形成されるであろう数概念などどうすればいいのか、そうした若き回答者たちの素朴なそろばんに対する期待にどう答えていくかは、数学科教育の課題であることは勿論、教科教育学全体の責任であるようにも思う。」これは今の御答弁に出ました「教科教育学研究」に一つ結論として出ている部分でございます。  大臣も前に御答弁いただいておりますが、その前に、やがて年を追ってカリキュラムなどが変わっていくであろうと思いますが、この問題について、今後、教育養成課程での一つ結論は出ましたが、それを受けて都道府県がそれぞれ設置している学校での教育内容に何らかの影響を持って具体的な進展をさせたいなと私は望んでいるわけでありますが、それについての見通しなどについて御答弁いただければと思います。     〔委員長退席、大塚委員長代理着席〕
  121. 高石邦男

    ○高石政府委員 そろばんにつきましては、小学校の算数の三年生、四年生で取り扱うようになっているわけでございます。その取り扱いがここで期待するほどの着実性のある内容になっているかどうかというのは現在も一つの問題であろうと思います。  それから、なお今後小学校等におけるそろばんの取り扱いについてどう考えたらいいかというのも、現在教育課程審議会で教育内容についての審議を進めておりますので、各方面からの意見を十分お聞きした上で最善の方途を考えてまいりたいと思います。
  122. 池田克也

    ○池田(克)委員 今の御答弁は将来どうなるかわからぬということのように私は受け取れるわけでございます。しかし、教育全体の問題の中で、やはり伝統的な計算手段でもありますし、また、よく割り切れるという言葉日本語の中に出てくるわけでありますが、数というものを扱っていくについて確かに明治以来いろいろな歴史があったように私も承知しております。そういう中で一概にそろばんだけを突出して考えることはどうかと思いますが、突出どころかかなり落ち込んでいるというのが実感だと私は思って見ているわけです。したがって、今日の教育荒廃という、先ほど大臣からもお話がございましたが、その一つの原因だと断定するわけではございませんが、やはりそうした数の問題について、昔がよかったとあえて言うわけではございませんけれども、はっきり答えの出る一つの学習の姿だと思います。そろばんの先生の御意見ですから、ある意味では手前みそということになるかもしれませんが、やはり子供たちの社会に何が正しい、何が間違っている、はっきりとした答えが出る、そして努力の結果、それについてそれなりの成果が上がるという非常に素朴な教育の実習の場がそろばんの社会である。そして基礎、基本の重視というのが臨時教育審議会の答申にも出ておりますが、一番の基本が計算力である。今日子供たちの教育の場でそうした計算力とか漢字の能力だとかいうものが昔と違って少しおくれているのじゃないかというような指摘を耳にするときに、文部省も乗り出していただいて、そしてこの珠算を小学校レベルでもう少し具体的に学べるように、場合によっては課外でもいいのじゃないかと思いますけれども、そうした方向性というものを打ち出すべきではないか、こう考えておりますが、これは大臣、前に共鳴していただいた経過もありまして、大臣から御意見を何一いたいところでございます。
  123. 松永光

    ○松永国務大臣 私は珠算教育というのは大切だと思っておるのです。そろばんをやれば必ず自分の頭の中で九九をやりながらはじいていくわけですから、したがって、計算をする場合に自動的に頭を使うのです。そしてまた手も使うわけでありまして、言うなれば、手と頭の訓練をしながら計算をしていく、あるいは計算能力を高めていくということでありますので、私は、日本人の計算能力が諸外国の人たちに比べて高いのはそろばんというものが相当大きな効果を上げているんじゃないかというふうに思います。  実は、数カ月前にアメリカの前の教育長官のベルさんという人が日本に参りました。ベルさんが日本ではそろばんというのがあるそうですなという話になりまして、私は余り上手じゃないのでありますけれども、数字をたくさん並べさせて、そしてそろばんを入れてみせた。それは料理屋でございましたので上等なそろばんじゃなかった。昔酒屋さんにあるようなでっかいそろばんでございましたが、それでぱちぱち入れてみせたのでありますけれども、ベルさんびっくりしておった、早いものですから、私でも早く見えたらしい。そういうことでありまして、言うなれば日本の国民の計算能力を高めていく上で大きな役割を果たしておるというふうに私は思っております。ただ、これを学校教育の現場でどういうふうに取り入れていくかということは、これはいろいろな問題もありますので、さらに検討してまいらなければならぬというふうに思っているわけであります。
  124. 池田克也

    ○池田(克)委員 ベルさんが松永大臣にそろばんの話を持ち出したのは私初めて伺いましたが、実は森大臣に私お願いしまして、ベルさんのところへ行かれたときに日本製のそろばんを持っていっていただいた、そういう経過がございました。それで、今アメリカではこれについてかなり御熱心でして、東京でも外人によるそろばんのいわゆる大会というものが行われております。そのようなことから、アメリカで御熱心で、そう言ってはなんですけれども日本で少し力が入ってないんじゃないかという感想を私持ったものですから、そうしたことをお願いしたわけで、逆にアメリカからそうした啓蒙があるということは大変いいことだと思っております。この問題についてはこれからも文部省としてもぜひ前向きで御検討をいただきたい、こう思っております。今の大臣の御答弁でも文句はないのですが、改めて高石局長、この問題について確認をさせていただきたいのですが……。
  125. 高石邦男

    ○高石政府委員 この場で私がこうですということを申し上げるのはどうかという気持ちが心にあります。先生の御質問の気持ちはよくわかっているつもりでございます。したがいまして、そういうことを十分踏まえて検討してまいりたいと思っております。
  126. 池田克也

    ○池田(克)委員 ありがとうございました。  問題を次に移したいと思います。いじめの問題でございます。法務省お見えになっておりますか。  実は、いじめの問題は非常に広範な問題でして、毎日、新聞やテレビをにぎわしております。痛ましいことだと心を痛めております。どこからどう手をつけていいのか、文部省としてもいじめ対策についてたくさんの資料を用意されて関係者に指示をしておられるわけでありますが、私の申し上げたいことは、具体的なことを一つ一つ取り上げてできるところから手をつけていくということではなかろうか、全部対策がそろって、さてそれからということではないのじゃないかと私は思っております。  概括的に、大臣、いじめ問題について今置かれている状況の中で私申し上げたのですが、どんなふうにお感じになっていらっしゃるか、最初に、いじめの問題という大きなテーマですが、御答弁いただきにくいかなと思いますけれども、いろいろとお考えだと思いますので、一言お聞かせいただきたいと思います。
  127. 松永光

    ○松永国務大臣 私は、今中学校や高校などでよく起こっておるいじめという問題について、このいじめという言葉が実情に合った言葉だろうかというふうにまず思っておるのです。いじめという言葉の語感からすれば、それは意地悪とかちょっとしたいたずらとか、その程度にとられるおそれもあるわけでありますが、いじめというのはそういうたぐいから、大変な傷害行為を与えたり、継続して暴力行為を行ったり、あるいは恐喝をしたり、そこまでいじめという言葉でくくられているようでありますけれども、後で述べた方はいじめという言葉で表現するのには余りにもひどい違法行為あるいは犯罪行為でもあるわけでありまして、必ずしもいじめということだけでこういうひどい犯罪行為までくくるなどというのはどういうものかなというふうに思っているぐらいであります。  それで、いろいろ問題があるわけでありますが、まず私どもの立場としては、いじめられている子供の人権を擁護しなければならぬ、あるいはいじめられている子供が正しく教育を受けて心身の発達をさせていく上で非常なマイナスになっておるわけでありますから、そういう状態を一日も早く排除していかなければならぬという点が一つあります。  もう一つは、いじめをする子供、これは言うなれば他に対する思いやりとか、あるいは他の人の人権を大事にするとか、そういう意識が薄い連中が多いように感じられるわけでありまして、これまたそれを放置しておればそのいじめをする子供もまともな発達がなされないということでありますので、その子供の正しく発達をしていくような教育をしていかなければならぬ。  もう一つは、いじめをするということは許しがたい悪をなしておるわけでありますから、あるいは犯罪を犯している場合もあるわけでありますから、そういったものが見逃されておればその人間はますますそういう傾向に走るような人間になっていくおそれがある。したがいまして、そういう子供を発見したならば、学校においては校長以下全教員が一致協力してそういうことをしないように厳しく指導する、厳しくしかるということで、そういう非行あるいは違法あるいは犯罪行為といったものがなされないようにしていく必要がある。そういったことで、学校の現場から児童生徒の間のいじめと言われるものを根絶するように対応策を進めていかなければならぬというふうに考えているところでございます。
  128. 池田克也

    ○池田(克)委員 実は、いじめの問題で、「時の動き」という政府の広報ですが、これの十二月一日号に、法務省の人権擁護局長が「子供たちの「いじめ」をどうなくすか」というインタビューをしておられるわけであります。新聞でも随分いろいろな例が出ておりますが、この中にこういう記述があります。  私どもで扱った事件の中には、例えば小学校三年生の子供に対して、後片付けをしなかった男の子にはズボンとパンツを、女の子にはパンツを膝まで下ろさせて授業をしたという事件、つまり先生の行為であります。  先生学級会で、忘れ物をした子には皆で雑巾をぶつけようじゃないかと提案して、忘れ物を繰り返した生徒を黒板の前に立たせて、三回雑巾をぶつけて見本を示して、こういうふうにやろうと言い、二人の生徒が、それはかわいそうだから止めようと言ったにもかかわらず、希望者を募って、三、四回ずつ雑巾をぶつけさせた事件、あるいは、忘れ物をする生徒の頬に、フェルトのペンで、忘れ物の内容を書きつけて帰らせた事件、期末テストで六十点以下の生徒は殴ると宣言し、足りない点につき一点ごとに一発ずつ殴った事件、などをみていますと、果たしてこれが教育効果をねらってやったのかどうか、非常に疑問だと思います。しかも、その内容が、陰湿で徹底的で「いじめ」と一体どこが違うかと言われると、答えに窮するところがあるんですね。  法務省はこの事実についてお調べになっていると思いますが、どんな処置をなさっておられたのか、あわせて何県の何という小学校で起きたのか、御本人の名前まではこれは人権問題だからお出しになれないかもしれませんが、そうした資料をあわせてお出しいただければということもお伺いしたいと思います。
  129. 永井敬一

    ○永井説明員 法務省の人権擁護局におきましては、児童生徒に対する大きな最近の人権問題としていじめの問題及び体罰の問題を取り上げまして、重点的な啓発活動を行っておるわけでございます。  先ほど御指摘ございましたように、いじめの問題につきましては、いわゆる体罰というものが一つの原因になっているのではないかという一つ指摘があるわけでございまして、いじめというものにつきましては、いろいろな原因があるということで、人権擁護局として一つのこれがそうだということではございませんけれども、あわせて調査をしております体罰の中にこういう事案があるということを指摘させていただいたのが今の御指摘資料でございます。  私どもは啓発機関でございまして、特にその先生方の責任を追及するとか、あるいはそれを告発して刑事事件へ持っていくとかということを主たる目的とするものではございませんので、人権上こういう行為につきまして、児童生徒の健全な育成という観点から遺憾であるということをお話し申し上げ、また先生方にもわかっていただきましたら、私ども言葉で説示と呼んでおりますけれども、説示という処置をとってそれでその事案を終了させてございます。そして、そのような具体的な事例を幾つかここに挙げておりますような形で一般的な啓発活動に使用させていただいておるというのが私どもの扱いでございます。  したがいまして、私どもといたしましては、こういうふうに終わった事例につきまして、一件一件を具体的に県名等を挙げて紹介するという形のものは極力差し控えるという方針でございますので、何分御了承をいただきたいと存じます。
  130. 池田克也

    ○池田(克)委員 具体的な名前はお出しになれないということでございますが、この体罰の問題は、法務省の人権擁護局が出しております「体罰をなくそう」というパンフレットによりますと、「体罰の態様は、「殴打」が小・中・高校を通じて最も多く、全体の七六%を占めています。この殴打は、約半数が平手で行われていますが、中には、平素から竹刀や木棒を持ち歩き、それを用いて殴打したものや、テニスラケット、アルミパイプ、金属バットなどを用いて殴打したものもみられます。」大変すさまじいことが起きているわけであります。  そういうような状況というものが単なる説示ということで、説示というのは専門用語なので私はよくわかりませんが、この次からは気をつけなさいみたいなことではなかろうかと思うわけでありますが、法務省のそうした人権擁護的な観点からのことについて、文部省は具体的に資料をお持ちであり、それについて適切な処分あるいは対策がなされているかどうか。資料をお持ちでしょうか。
  131. 高石邦男

    ○高石政府委員 体罰については、学校教育法第十一条で禁止されていることでございますし、常日ごろから体罰の厳禁を周知徹底させているところでございます。  各市町村、都道府県のいろいろな事例が発生していることは予想されます。そういう事例に対してはそれぞれの教育委員会で適正な処置をとってほしいということで、既に懲戒処分の対象になった事例も幾つかあるわけでございます。文部省が承知しておりますのは、そういう行政処分の対象になったような体罰についてはある程度報告を受けているわけでございますけれども、その他のそこまで至らないものについてはなかなか実態の掌握が困難な状況でございますので、今ここで述べられているような内容については具体的には承知していないのでございます。
  132. 池田克也

    ○池田(克)委員 これは法務省にもお伺いしたいのですが、さらに、繰り返して行われるとか悪質であるということに対して、このパンフレットの中にも説示以外にも勧告というのが一つの例として挙がっておりますが、説示の次のステップがどんなふうになっているのかお答えをいただきたいと思います。
  133. 永井敬一

    ○永井説明員 私どもの処置につきましては、人権侵犯の内容の程度に応じまして若干内部的な規定でとる処置の段階を設けておりますが、一番重いと申しますか重点的に行う啓発活動が勧告という処置、その次が説示、説示も段階がございまして、文書による説示と口頭説示がございます。そして勧告をとる場合には、単にその先生だけの問題ではなくてその学校全体として考えていただきたい、あるいは教育委員会でもう一度よく考えていただきたいというような場合には、学校長ないしは教育委員会に対して勧告ということで文書で啓発活動を行っております。  それから、こういう調査過程では学校長あるいは教育委員会からも事情を伺っておりますので、これらのひどい事案につきましては、ここの資料にも出ておりますように、行政処分が行われておりますのが七二%、刑事事件でとられましたのが二五%ございまして、単に私どもの説示だけで終わっている事案ではない、非常にひどい事案につきましては、関係者によってそうした処置もとられておるのが大半であろうと考えております。
  134. 池田克也

    ○池田(克)委員 教室の中では一人の担任の先生が責任を持って子供を教育しているのだと思います。先生も人間ですから、子供の反発によってかっとなさることもあるだろうと思います。そうした異常な出来事が起きた場合に、学校全体の中では一体どういう仕組みになっているのだろうかと親は心配するわけであります。臨時教育審議会の議論の最初のころ、自由化の論争があったときに、先生を選べない、先生に当たり外れがあるというふうな意見がありまして、先生を選ぶ自由、学校を選ぶ自由という議論がございました。今こうしたいじめの状況の中で、文部省としては、別の学校に移らせるとか、学校へ来なくてもいい、つまり登校をしばらく見合わせてもいいという救済的な措置、いわゆる教育的な弾力運用と申しましょうか、そうしたことが挙げられているようでございますが、具体的にどういう手だてをお考えになっていらっしゃるのでしょうか。
  135. 高石邦男

    ○高石政府委員 いじめ等の原因で、当該学校にその子供が在学して学習を続けることが非常に困難であり、またその子供にとって有害であるというような状況判断の場合においては、一定の手続によって区域外就学という方途を利用しながら他の学校へ転校することができるように、運用上の指導をことしの六月にやったのでございます。その運用によってどういうようなケースがどういうようにされているかという実態追跡は、まだ半年ぐらいしかたっておりませんのでわかりませんが、その後の推移というのは今後見守ってまいりたいと思っております。
  136. 池田克也

    ○池田(克)委員 きょう時間がありませんので詳しいお話ができなかったのですが、私の友人が「いじめ」という本を出しました。大臣にも後ほどお届けしますのでぜひごらんいただきたいのですが、五千人の子供たちにアンケート調査をしておりまして、非常におもしろいデータがたくさん出ております。いろいろなアンケートの結果、点線と実線で並べているのですが、実線がいじめっ子、点線がいじめられっ子というようなデータなんです。困ったときに親に対して相談するかとか、お母さんは食事のマナーについてうるさいかとか、いろいろ日常的なことを聞いているのです。大体いじめっ子といじめられっ子のカーブは同じなんです。  この調査結論一つに、いじめっ子といじめられっ子は共通したものがある。いじめっ子があって、片っ方にいじめられっ子があるという、全く相対峙するものではなくて、いじめられっ子というのは、何かうっせきしてたまったものがあったときにいじめっ子に転ずるという分析をしておりまして、これはこれからのいじめ問題を研究する上に私は非常に参考になるのじゃないかなと思ったりしたわけです。  もう一つ、この本の結論には、子供たちに表現力がない。先生にも、表現力がないと言っては語弊がありますけれども、表現力の問題がある。この宮川先生という方は子供の作文の指導をしている先生で、その作文を通じて接した子供たちの五千人アンケートなどをしているのですけれども、十分に自分の意思が伝えられないというところからいじめの問題が起きてきている、こんなふうに分析をしております。きょうは時間がありませんのでこの問題は御紹介するにとどめますけれども、この問題はいろいろな角度で根絶するように法務省にもお願いしたいし、また文部省にも努力をしていただきたいと思っております。  きょうは、先般大臣にもお願いいたしましたし、予算委員会の分科会でも取り上げました旅芸人の子供たちの転校問題について、同僚の沼川議員の関連質問の形でお伺いをしたいと思いますので、お許しをいただいて交代したいと思います。
  137. 沼川洋一

    沼川委員 ただいま御紹介がありました旅芸人の子供たちの転校手続の簡素化の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  内容につきましては既に大臣もまた高石局長もよく御承知と思いますけれども、再度ここで問題の内容について触れさせていただきまして、その上で御答弁をちょうだいしたいと思います。  これは一般に旅回り劇団と呼ばれておりますけれども、旅芸人の家族で構成する劇団のことでございまして、一定地域で定住できない宿命を背負っておりまして、各地を転々としているグループであるわけでございます。現在全国でこのような劇団が約百団体ございまして、この中で子役を演ずる小中学校の生徒が約二百人いると聞いております。私の出身の九州だけ見ましても二十三劇団がございまして、子役を演ずる子供たちが約七十人いると承知いたしております。興行は各地の温泉センターを中心にしまして、短くて大体一カ月、長くて二カ月か三カ月公演をしておるわけでございますけれども、この中に義務教育を受けなければならない子供がいるというのが問題でございます。したがいまして、親の一番の悩みは、子供が一定の決まった学校に行けないということで。すけれども、これはいわば宿命的なものですから親もあきらめておるわけでございます。  しかしながら、転校の問題で毎回悩まなければならぬという問題がございます。これらの子供たちは、平均しまして年間六回から八回転校を余儀なくされておるわけでございます。しかも、転校の手続が非常に煩雑なために一週間ぐらいつい休んでしまう。年間通算しますと四十日から八十日間ぐらい休む子供が非常にふえておるということで、心配はむしろここにあるわけでございます。そこで、この問題につきまして三月七日の予算委員会の分科会で大臣に御質問申し上げました。さらに、五月三十日には九州演劇協会長の片岡さんを大臣に御紹介いたしまして、大変お忙しい中陳情を受けていただいたわけでございます。ぜひ前向きに検討していくということで、関係者の方々が実は一日千秋の思いでこの問題の解決を待ち望んでおるわけでございます。大臣も恐らく今ごらんになっておるかと思いますが、NHKの朝の連続テレビ小説で「いちばん太鼓」というのが今放送されております。ここに登場します主役の銀平というのが、実は大臣に会っていただきました九州演劇協会長の片岡さんでございまして、それだけにあの劇団の内容等につきましてもよく御承知ではないかと思います。したがいまして、前向きで検討するというお約束をいただいてあれから大分になるわけでございますが、その後この問題について恐らく調査なり検討なりなさっていると思いますけれども、その経過についてぜひひとつ教えていただきたいと存じます。
  138. 松永光

    ○松永国務大臣 「いちばん太鼓」は毎朝私は見ております。親子の情愛、それからまた夫婦の情愛がよく出ておるわけでありまして、私はああいうものが好きなものですから毎朝見ておるわけでありますが、しかしあれが沼川先生指摘の劇団であったとは知らなかったわけであります。  この問題は、先生今お話しのとおり、ことしの三月の予算委員会の分科会で先生から御指摘をいただいたわけでありますが、聞きますと年間のスケジュールが大体決まっておるということでありますので、それならば何か簡素化の方法はあるはずだということで検討を当局に依頼をしたわけであります。そして五月二十四日に九州地区指導事務主幹部課長会議でこの問題を協議するようにということで協議をしていただき、さらに九月二十日に九州各県の指導担当課長を招集して、年間の巡業スケジュールが決まっておる場合には、あらかじめ住所地の教育委員会が巡業先の教育委員会学校と連絡をとって区域外就学の手続をとり、巡業先で児童生徒がスムーズに転入学ができるようにするという方向で検討するように具体的に指導をしたところでありまして、現在各県で具体的な手続について検討を行っているところでございます。したがいまして、具体的な手続はこれからでございますけれども、そうなされるものだというふうに私は期待をしておるわけでありまして、なおこれからも担当を通じて指導してまいりたいというふうに考えております。
  139. 沼川洋一

    沼川委員 非常に前向きに取り組んでいただきまして感謝申し上げますが、いろいろ問題もたくさんございますけれども、今大臣から御答弁いただきましたように、この問題の解決がどこにあるかということを詰めてまいりますと、今おっしゃったように、この劇団が一年間のスケジュールが、九州だけを回っている、こういったスケジュールが大体多いわけでございまして、演劇をする場所も、また学校も一年間のスケジュールがきちっと決まっております。したがいまして、例えば佐賀県の場合、嬉野で公演をするとなると、嬉野町だったらいつも会場は嬉野温泉センター、小学校ならば嬉野小学校、中学校は嬉野中学校。例えば大分県の別府で興行する場合には、別府市の場合はヤング温泉、小学校は朝日小学校、中学校は朝日中学校。非常にこれが明確になっておりますだけに、今大臣からいろいろと御答弁いただきましたように、ぜひとも各学校で受け入れがスムーズにいくような、何かそういう通達なりあるいは指導なり、これをぜひやっていただきたいと思います。  実は五年前にも、これは各県段階でお願いをして一時的にうまくいった時期がございましたけれども、担当がかわったり、その辺の事情がわからない方になりますとまたもとに戻ってしまう、こういうケースを何回も重ねてきておりますだけに、ただいま御答弁がありましたようなそういうものを、制度化とまでは言いませんけれども、何かもっと各県にうまく連絡がとれて、こういう問題がスムーズに運ぶような方法がありませんでしょうか。局長、ひとつその辺についてお願いします。
  140. 高石邦男

    ○高石政府委員 考え方は先ほど大臣が申し上げたような方向で処理したいと思います。したがいまして、問題は今度は具体的な処理方式でございますが、一つは、様式を統一して決めて、この様式で事前にそれぞれの教育委員会または学校に連絡をしてもらうというような手続を完了させるということを例えば毎年度の年度当初にそれぞれの教育委員会に出してもらう、こういうようなふうにすればいいという感じがいたしますので、この具体的な様式、手続まで含めて、該当の市町村の教育委員会を含めて少なくとも来年の三月までにはそこまで行くように徹底をさせていきたいと思います。
  141. 沼川洋一

    沼川委員 非常に前向きに取り組んでいただいてありがとうございます。一応そういうことで今まで以上にうまくいくんじゃなかろうかと思いますが、ただ、今後の抜本的対策としまして、やはり現在あるこの転入転学についての文部省の法令自体が、内容をずっと見てまいりますと、どうも一般の公務員の方の転勤の場合あるいはサラリーマンの転勤の場合を想定してつくってある法令でございますので、今私が申し上げますような旅芸人、こういった方々の転校というのは恐らく想定してつくってはないと思います。聞くところによりますと、何も九州だけの問題ではなくて、全国に約二百人ぐらいの子供さんがいらっしゃると聞きますし、また、旅回り劇団だけではなくて、ほかにサーカスの一団とか、あるいはハチみつを追っかけて回る家族の子供たちとか、あるいは祭りから祭りへ転々としますいわば露店商の子供とか、そういった方々、広げればこういう問題で悩んでいらっしゃる親たちは非常に多いのじゃないか、こういう気がいたします。できれば全国的にそういう実態調査をしていただいて、何かひとつ法令の上で抜本的な解決策というのを考えていただきたいと思うわけです。そういう意味で具体的に私が提案申し上げましたのが、これはあくまでも仮称ですけれども、転校パスポートみたいなものが何か考えられていいんじゃないか。今「いちばん太鼓」の主役でございます片岡長次郎さんに伺いますと、あの方々のころ、たしか三十七年ごろだったと思いますけれども、大学ノート一つで校長の判をもらって学校を転々とした記憶があるということをおっしゃっておりますだけに、この辺の抜本策をぜひともひとつ御検討いただけませんでしょうか。いかがでしょうか。     〔大塚委員長代理退席、委員長着席〕
  142. 高石邦男

    ○高石政府委員 まず、転学が迅速にスムーズにできるようにするという基本的な方向は必要であろうと思います。ただ、児童生徒数が教職員の定数の基礎になるといういろいろな問題もございますので、それが安易に利用されるとやみ定員みたいな形で、これだけの子供が入ってくるから児童生徒数がこうなる、したがって教員定数は一ふやさなければならぬとかいうような議論になっていろいろな問題が派生している事件もあるわけでございます。したがいまして、そういう問題を克服しながら、しかも子供たちがスムーズに転学できるような対応ということをあわせて考えていかなければなりませんので、パスポートということになると、ちょっと教育委員会学校が事前に了知しないというようなことにもなってしまいますので、むしろ年間のスケジュールが決まっておれば、あらかじめ年度当初にそういうものをそれぞれの学校なり教育委員会に知らせることによってその手続が完了したというような方途がいいのではないか。なおいろいろな意見を聞きながら、方向としてはスムーズに就学ができるようにというふうに進めてまいりたいと思います。
  143. 沼川洋一

    沼川委員 時間がございませんので、御要望申し上げておきたいと思いますが、確かに、文部省がおっしゃる、例えば学級編制基準をつくる場合においても、子供が一人多いか二人多いかでがらっと変わってまいるという問題もあると思います。また、教科書無償配付という制度の中で教科書の問題もあると思います。ただ、問題は、そういった面で子供の教育権を守るためのそういう法令を正しく手続をするということは大事かと思いますが、そのことによって結果的に子供が落ちこぼれていく。したがいまして、どうも何か文部省の都合だけで考えていらっしゃるような面もちょっと強く感じるわけでございまして、子供の実態に即して、どうしたならばそうした子供が——学校に行きたいと言っている子供ですから。今落ちこぼれの問題やあるいはいろいろいじめとか、これも大きな問題ですけれども、本人たちは行きたくてたまらないわけです。ところが、確かに親にも責任があると思いますけれども、非常に親たちも忙しいということで学校に行けない、こういった現状をどうかひとつ全国的にもぜひとも実態を把握していただきまして、抜本的な解決策ができ象すよう、このことをお願い申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
  144. 阿部文男

  145. 中野寛成

    中野委員 きょうは文化の問題につきましてお尋ねをしたいと思います。とりわけ、ひとつ文化庁に大いに頑張っていただきたいという応援の質問をさせていただこうと思います。文化庁長官にわざわざ御足労いただきました。お礼を申し上げたいと思います。  さて、大臣と文化庁長官にそれぞれお聞きしたいのですが、最近の中曽根総理大臣の所信表明演説それから文部大臣の所信それから臨教審へ諮問いたしましたときの文章等を見ますと、大変に文化という言葉がよく出てくるのです。それで、文化の振興または国際文化交流、こういうふうなことが次々に出てまいりまして、これ実は文部省の方で、大臣の所信表明と総理大臣の所信表明、臨教審だより、この中で文化という言葉がどれだけ出てくるかと思って探していただいたらこれだけ出てきたのです。本当に文化、文化と、何か昔は、ざんぎり頭をたたいてみれば、あれは文明開化の音がするですか、常に歴史の中でも文化というのは興味深く語られるわけでありますが、しかし、この文化ぐらい正体がなかなかつかみにくい、また文化を振興すると言ったって何を一体したらいいのかわからないというふうなことで、ややもすると取っつきにくかったり、またはそれについて何か政策的なことを提案したり行政上進めていこうとすると、それは干渉し過ぎであるという批判があることを恐れてついつい及び腰になったりというふうなことがあると思うのでありますが、その辺の誤解を招くことをきょうはあえて恐れずに御質問を申し上げ、また御提言も申し上げたいというふうに思います。  そこで、文部大臣及び文化庁長官のお考えになっておられます文化とは一体何であるのかということからお尋ねをしたいと思いますし、同時にまた、文化庁長官には、長官倒就任のときに文化庁長官として何をしようというふうにお考えになられたか、そのことと、今の文化庁の仕事の範囲とお考えとの間に落差はありはしないかというふうなことについてまずお伺いをいたしたいと思います。
  146. 松永光

    ○松永国務大臣 非常に難しい、私の頭の程度を問われているような感じがするわけでありまして、大変答えにくい面もあるわけでありますが、要するに文化というのは人間が形成した物質的なあるいは精神的な成果の総体だというふうに一言で言えば理解をいたしております。
  147. 三浦朱門

    三浦説明員 文化とは、基本的には、総理が言われております人間の生命力、創造力に根差したさまざまな営み、このすべてを言うと思います。つまり、社会といたしましてはより原始な状態からより進んだ状態に行こうとする意欲、それに基づいた一切のこと、個人で言いますと、生まれたときの本当に動物に近い状態から、より人間的になろうとする、周り、環境とそれから当人の意欲、それに結びついたものすべてが文化になると思います。したがいまして、人間の営みすべてが文化になってしまいますので、私は、狭い意味での文化というのは、このような人間の文化的な営みの中から特殊化されたすべてのものを引き去りまして、そのどこにも所属しがたい、しかもなお捨てるわけにはいかない、そのようなものを狭い意味での文化と考えてよろしいかと思います。つまり、生産もそれから消費もそれから何もかも文化の一部ではございますけれども、どの部分にも属さない部分、それが狭い意味の文化と私は考えてよろしいかと思います。  先ほど、私が文化庁の仕事をするに当たって何をお考えかとお尋ねくださいましたけれども、その狭い意味での文化の中でも比較的つかまえやすいものがございます。それは例えば芸術とかあるいは伝統的な文化財とか、そのようなものは手にとることができますし、また何かの意味でこれは文化であるとはっきりつかまえることができるものでございます。ですけれども、中にはそのような手にとることのできないあるいは漠とした、先ほど先生がおっしゃいました本当に漠然として何が何だかわからない、そのような部分についても私はできるだけ手を広げたいと思いまして、この仕事をさせていただくつもりになりました。  その一つのあらわれが、例えば多くの国民が漠然と持っている自分の自己表現の衝動、中には幼稚なものあるいは愚かしく大人が見るかもしれないもの、そのようなものがありますけれども、しかしそれを一つ一つ見ますと、それなりの向上心とか自分の表現とかよりよい自分、よりよい社会を目指していく、そのようなものを多く発見することができます。そのようなものをできるだけ組織化すると申しますと、このものの持っている生命力を壊してしまいますけれども、できるだけそのようなものが強く育つような状況を備えていきたいというふうに考えております。
  148. 中野寛成

    中野委員 今お答えになられましたこと、大臣がそして長官がお答えになられたそのどちらも正しいと思いますし、また私どももそのことに異る唱える部分は全くないわけであります。まあ私流の単純な言い方をいたしますと、言うならば生活のパターンが文化だ、こう言ってもいいのであろう。しかしそれも、その生活なりそしてその人間としての精神作用なり、よりよいものを求める、それが文化であるというふうに積極的に考えるということがまず大前提になければならないわけで、そういう意味で長官のお考えと全く一致するわけでありますが、さてそこで、今なぜ文化かということをお尋ねをしたいと思うのであります。  私の方から簡単に言いますと、今日まで戦後四十年間、もちろん文化はそれ以前から続いているわけでありますが、ある意味では戦前と戦後では一つの文化に対する考え方の断絶というものもあったと思いますし、大きな変化も遂げたというふうに思うわけであります。そういう中でややもすると我々は物質の豊かさ、経済的豊かさを追い求め、そしてそれがある程度成功をした。今ふと振り返ってみると、何か置き忘れてはいないかというふうなことに今気づき始めた。言うならば、その豊かさの質について問い直すという気分が国民の間に広く生まれてきた。そしてそれは、二十一世紀を展望するとか国際化時代を見た場合に、なお一層そのことを痛感するようになったというふうに言ってもいいのではないだろうか、こういう感じがするわけでありますし、また一方、先ほど来論議がありましたいじめの問題、非行の問題等考えましても、これはある意味では文化の欠如がそれを生ぜしめていると言っても過言ではないと思うのであります。文化的な物事の考え方、生活の仕方、そういうことを忘れ、そして人生の目標や希望を忘れるというところの中に、結局青少年は非行やいじめに走ってしまうということが言えるのではないだろうか。  また、社会環境の一面から考えても大変これは退廃している。その退廃そのものが見る人によっては文化であるということもあり得ますけれども、しかし、今三浦長官がおっしゃられましたいわゆるよりよいものをより、またみずからを向上させたいという意識の中に存在するものが文化だとするならば、やはりその社会環境の退廃を防ぐ努力が必要だ。その退廃を防ぐ場合に、規制をするだけではなくて、むしろ積極的によりよい文化を創造していくという考え方、簡単に言えば、テレビの番組が退廃しているというときに、よりよい文化的番組をつくろうという努力がなされるならば、おのずから退廃的なものは除かれていくであろうというふうに思うわけであります。  こういういろいろな面から文化行政の重要性というものが今望まれていると思うわけでありますが、これらのことにつきまして、今なぜ文化か、この問いに、大臣そして長官はどうお答えになられますか、お聞きをいたしたいと思います。
  149. 松永光

    ○松永国務大臣 今、中野先生はいじめとか非行の問題について言われましたけれども、我々は我々の前の時代の人が築き上げた文化を受け継いで、それをよりよいものにして、そして次の時代へ引き継いでいくということが大切だろうと思います。その営みの繰り返しの中で今日の文化はでき上がってきたというふうに思います。したがいまして、今に生きる者は自分の次の者に対してよりよい文化を引き継いでいく責務があると私は思います。その責務を果たしていかなければ、その国の文化は遠からず衰退するであろうというふうに私は思います。  そうした中で、最も基本的に大事なことは、自分の次の世代、より狭く言えば自分の子供をよりよい人間として養育するという責任が親にあると思います。その親の責任をきちっと果たしていけば、次の時代を引き継ぐ我々からいえば子供たちも立派に育ってくるのじゃないか。今ややともすれば物の豊かさの方にのみ目をとられて、基本的に大事な自分の子供をしっかり養育するという責務を十分果たしてない現在に生きる人間がいるのではないか。その被害をある意味で受けておるのが現在いじめに走ったりしておる子供だという感じもしないわけではありません。  そういう意味で、よりよい文化を築き上げていくために基本的に大事なことは、自分の責務を自分の立場においてきちっと果たしていくことではないかというふうに私は思っておるわけでございます。
  150. 三浦朱門

    三浦説明員 中野先生が今なぜ文化かということをお尋ねくださいましたけれども、それは今から約二十年と少し前にパキスタンの政治家が言い始めたと覚えておりますが、日本人はエコノミックアニマルである。エコノミックアニマルというのは経済的な動物であって人間でない。初めに文化というのは人間としての生命力、創造力なんだということを申しましたけれども、つまり、エコノミックアニマルという言葉の中には、日本人は人間であると認められていない、そのことに対して私たちは深く強く憤激したのだと思います。  同じ勤勉に働いた場合でも、例えば産業革命前後の西欧の労働者の場合には、あれはプロテスタンティズムのモラルが労働を通して神を賛美するという論理を持っていたために、倫理を持っていたためにあのような勤労精神が生まれたということで、その勤労精神が宗教的なあるいは倫理的な良心を裏づけるという極めて人間的な評価をなされた。それに対して、日本人の場合には、アリのように無目的的に本能的にがむしゃらに働く、それだけなんだというふうに言われた。それは何かといいますと、日本人とは何かあるいは人間としての日本人は何なのか、あるいは日本的なものあるいは日本文化というものは何かということが全く知られていなかった。私たちが営々として働くその底にある本当の気持ち、そしてそれは日本の何千年の長い伝統の中から培われてきた一つの文化的な活動であったということを理解してもらえなかった、そこに私たちが動物と言われた理由があると思います。  したがいまして、今ここで文化とは何かというのは、日本がいわゆる物の面で成功した、経済国家として、社会として、個人として成功した、そのときにこそ私たちは決して無目的的に働くものじゃない、本能の命ずるがままあくせく動く人間じゃない。私たちはさまざまな価値を求めている、追求している存在なんだということを訴えたい。同時に、私たちはではいかなる価値を求めたらいいのかということを一人一人において、また社会の中において、国の問題として問いかけていかなければならない、そういうときだと思います。したがって、今こそ日本の文化とは何なのか、日本人にとって、外国で言いますと同じことですけれども、教養とは何なのかということが問題にされてしかるべきだと思います。  いじめのことというのは私どもの役所とは直接関係がないようでございますけれども、昔でもやはり上級生が下級生を殴るというふうなことがございましたけれども、それはよかれあしかれ、それはいいものとは申しませんけれども、中根千枝教授の言い方によりますと、一つのタテ社会というふうな価値の基準がありまして、その中においてその系列、そのルールに違反したものを修正するというふうな意味があった。したがって、その価値基準が制裁される者を縛ったばかりでなくて、実は制裁する者をも縛っていた。つまり、そのルール違反というものは制裁する側にもされる側にもあった。それが、戦前のそういう価値基準が崩れまして、そして戦後の新しい価値というのは何かということがまだもことした状態にある。少なくとも子供たちの間では漠然とした状態にある。そこでは子供と子供との関係がルールのないいわばアナーキーな状態で行われている、そこに一つの問題があるかと思います。そこにもカルチャー、文化と申しますか教養と申しますか、どちらの言葉を使っても同じだと思いますけれども先生指摘のとおりの悲しむべき現実があるかと思います。  それでは、よりよい文化をつくるというのは、よりよい教養を身につけるということはどういうことかといいますと、これは必ずしも国が指導し、これがよい価値なんだということを国が与えてはならないものと思います。私たちはその誤りの結果を昭和二十年の八月十五日に痛感したわけでございます。私はやはり何がよい価値かということは国民が決めるのだというふうに考えております。その中には極めて俗悪なものあるいは好ましくないものと一人一人が考えるものが存在するかもしれませんけれども、私たち国民が本当に文化的な国民であるとするならば、日本の文化が本物であるならば、私たちの中の自浄作用が自然に働きまして、俗悪なるもの、好ましくないものについてはある一定の枠を与えて、そしてよいものあるいは守るべきものに対して積極的な支持を与える、そういう機運が出てくるに違いない、そのようなものを文化庁というものは見守りながら手助けしていくというのが本務であろうと考えております。
  151. 中野寛成

    中野委員 今大臣のお答えを聞きながら思ったのでありますが、一つの責務として、我々の義務として子孫によい文化を残していく、そういう義務があるとおっしゃられたわけでありますが、それだけではなしに、むしろ我々は将来を展望してよりよい文化をつくる、その文化をつくることのできる土壌をいかにして我々が提供していくかということが政治の課題である。我々は、義務としての文化ではなくてむしろ権利としての文化をもっと将来を展望しながら、文部省がまた文化庁が考えていただきたいということを大臣の御答弁に対してはお願いをしておきたいというふうに思うわけであります。  それから、今長官がおっしゃられましたけれども、確かに、文化というものは個人の内面的な精神作用、精神活動にかかわる問題でございますから、これは極めて自律的な問題であります。他からそのことについて規制を加えたり統制を加えたりというものではないと思いますが、最後に結びでおっしゃられた、やはりだれが考えても悪いと思うものは何らかの形でそれを縛っていくということもまたしかしこの共同社会の中では必要なことではないか、こう思うのでありまして、そういう意味で、我々政治家もまた行政に携わられる皆様方も、積極的な文化政策というものはやはり必要なのではないかというふうに思うのであります。  そこで、文化政策をつくるに当たっての基本的な態度として、私は次の五つのことを考えてみたわけであります。これは我々の生活をあらゆる側面にわたって文化の視点から見直してみるということであります。これは、町づくりの問題であれ、そしてまた経済政策であれ同じことが言えるだろうと思うのであります。もう一つは、自主的に国民一人一人が参加し創造する文化のその基盤を整備をしていくということであります。それからもう一つは、今大臣がむしろこのことをおっしゃられたと言ってもいいと思いますが、固有の文化を継承し発展させていくという作用、その作用を助長するということであります。それからもう一つは、今言われた文化の退廃を克服していくということであります。それにどう我々は臨むかということであります。そして五つ目には、国際的な文化を育成していく、国際社会に日本の文化を知っていただく、また我々が国際社会の中における文化を吸収する、知る、そしてまたその交流を図っていく、時には他の国の文化が発展していくための土壌づくりをお手伝いをするというふうなことが当然あってしかるべきだろうと思うのであります。  これらの基本的な態度についてどうお考えか、そして、もしこれに御共感をいただけるならば、その基本的な態度にのっとって文部省は、文化庁は、あるいは政府は何をなすべきだとお考えになられるか、お尋ねをしたいと思います。
  152. 松永光

    ○松永国務大臣 文化の面から見直すということでありますが、具体的ないろいろな政策を展開する場合に、大体そういう見地からいろいろな施策は進められるような時代に入ってきておる。また相当程度そういう考え方で行政というものも進められつつあるというふうに思います。十分であるとは思いませんけれども、大体そういう考え方で物事は出てきておると思います。先ほど町づくりという話も出ましたけれども、町づくり、都市計画あるいは都市の改造、やはり文化という視点からいろいろな計画等は練られるというのが今の情勢になってきたように私は見ておるわけであります。  また、固有の文化の助長も大変重要なことでありまして、日本の古くからの伝統を大事にしながらさらにそれを伸ばしていくという考え方、これが大体日本の社会には定着しつつある。さらにそれを進めていく必要があるというふうに私は考えます。  文化の交流、これはある意味では学術の交流もその中に入るわけでありますけれども文部省としては重要な施策としてそれを進めておるわけであります。留学生問題もやはりこの分野に入ろうかと思いますけれども、さらに拡充をしていきたいというふうに考えておるわけであります。  問題は、文化の退廃をどう防ぐかというそこなんですけれども、これはやりようによっては非常に難しい点も実はあるわけでありまして、その点を先ほど長官の方は、国がこれが退廃これが退廃でないというふうに決めて、そしてそれを力でやっていくということよりは、日本人それぞれ常識と良識があるわけでありますから、いずれ退廃的なものは廃れ、より創造的なものが伸びていくであろうというふうな基本的な考え方があるわけでありますが、今日の民主主義の国家の場合にはやはりそういう方向で行かざるを得ないのかな。特に、表現の自由とか営業の自由とかいろいろな規定が憲法に定められておるわけでありまして、そうしたことと抵触しない範囲内での措置がいろいろな場合になされておるわけでありますけれども、そういう基本的な自由を侵害しない範囲内での退廃を防ぐための法的な行政的な措置は、今後とも継続していかなければならぬわけでありますけれども、国があるいは政府が断定をするなどということはできるだけ慎みながら、良識と常識で対処していくことが今の時代ではないかなという感じがするわけであります。
  153. 中野寛成

    中野委員 文化の退廃についてのこれを克服するための手段が大変難しいことはよく承知をいたしておりますが、しかし、だからといって手をこまねいていていいということではないと思います。消極的な対応策と積極的な対応策があると思います。むしろ、よりよい文化を創造していけば、おのずからその退廃した文化というものはなくなっていくという考え方もありますけれども、もう一面で、積極的にそれを取り除いていく。しかし、それは政治権力で取り除くというのではなくて、むしろ国民のコンセンサス、その中で文化に対する考え方をいかにしてつくり上げていくかという積極的な対応策というものがあるのではないだろうか。その辺の国民の意識を、より一層、権力というものではなくて別の観点から活性化させていくという意味で、例えば今回三浦先生文化庁長官になられたこともやはりそこに一つの意味を私どもは見出すわけであります。  また、今臨教審の審議が行われておりますが、例えば臨教審のようなところでこの文化に対する国民のコンセンサスをつくっていくということもあってしかるべきではないか。また、その総理からの諮問の内容の中にも文化について触れているわけであります。しかし、果たして臨教審が文化について論議をされているかというと、教育基本法の中の文化の解釈について質問が出たという程度のことは聞いておりますけれども、どうも今後文化政策のあり方について論議をしようというような雰囲気は見られないというふうにも思うわけでありまして、そのことについてまず臨教審からお聞きをしたいと思います。
  154. 齋藤諦淳

    ○齋藤(諦)政府委員 臨教審におきましては、第一次答申で、今後の社会の変化と文化の発展が人間形成にどのような影響を及ぼすかとか、あるいは個性豊かな文化の創造を目指す教育を現実の教育の営みの中で実現することを願う云々、そういうような考え方は、一次答申の基本的な考え方でも示されておるところでございます。  ただ、先生の御指摘のように、文化行政全体を正面から取り上げるという議論は目下のところなされていない。教育並びにそれに関連する分野、この関連する分野ということで教育を取り巻くという立場から文化が議論されているという状況でございます。
  155. 中野寛成

    中野委員 後ほど文化と教育については触れたいと思いますが、しかし、私は、少なくとも文化についての積極的な行政のあり方というものはもっともっと、大臣、大変御答弁が慎重でありますが、しかし本当はもっと積極的であっていただきたいというふうに思うのであります。  そこで、文化に関して政治がやっていいことと悪いこととあると思うのですね。積極的にやらなければいけないことがどういうことがあるかなと思って、それなりに並べてみたのです。十項目に及びますので全部を具体的には申し上げられませんけれども、しかし、その項目だけ申し上げてみたいと思います。  文化施設を適正に配置していく、これは国そして地方を通じてのことであります。またその中で、例えば国がやるべきことと地方にお任せすべきこととあると思います。ちなみに、例えばアメリカにはスミソニアン博物館があります。フランスにはルーブル博物館があります。イギリスには大英博物館があるわけでありますが、日本の場合にはいろいろな、幾つかありますけれども、それは分散されておりまして、なかなかもってこれは日本の博物館と言えるものが実はないわけであります。何も大きなものをつくれという主張をしようというのではありませんけれども、しかし、これだけの経済大国と言われる日本でそういうものがないというのは、何か日本の文化のシンボルみたいなものがないような気がしてならないわけであります。そういうところにも大胆に取り組んでいいのではないだろうか、私はこういう感じがするわけであります。  同時にまた、中央、地方を通じての文化施設がお互いに情報交換が頻繁に行われれば、有効にその施設を活用することができるでありましょう。これだけ情報化社会であります。そのために文化施設の中のネットワークを確立するということを積極的に取り組んでみてはいかがでしょうか。  また、三番目に、文化活動の指導員をもっともっと養成をしていく必要があると思います。  そしてまた、四番目に、市民の自主的な活動、これは大事でありますが、これをやはり引き出す、奨励をしていくという方策がもっとあっていいのではないでしょうか。  五番目に、学校の開放、そして既存の公民館等の活用、これがもっと活発に行われてもいいのではないでしょうか。  そして、環境アセスメントはよく言われますけれども、文化に対するアセスメントというものをもっと実施して、国民の文化に対する意欲をもっと活性化させるということも大事ではないでしょうか。  それから、これは文化庁のまさに仕事になると思いますが、官民の間また各行政部門間の調整、こういうものに文化庁がもっと積極的に取り組めるような権限、資格、そういう制度というものを織り込んでみてはいかがでしょうか。例えば環境庁程度の——程度のと言っては失礼かもしれませんが、環境庁ぐらいの格上げいいますか、文化庁にそれぐらいの権限があってもいいのではないでしょうか。きょう文化庁長官にここへお越しいただきました。私は当然政府委員だと思っておりましたら、説明員ということでございました。これは、文化庁の中の政府委員の割り当ての数の問題とか、いろいろ技術的なことがあるそうでありますが、そういう技術論を問おうとしているのではありません。むしろ私は、文化庁長官が国務大臣(文化庁長官)というふうなぐらいの位置づけがなされてしかるべきではないのかという気がするわけでありまして、こういう文化庁の任務、役割というものをもっと、文化、文化と総理や文部大臣がこれだけ言うのならば考えてしかるべきではないだろうかというふうにも思うのであります。  次に、民間活力を大いに活用するという意味では、文化トラストの設立、一部では行われておりますが、もっと積極的にこれが行われるように税制面での対応も含めてお考えになられたらいかがでしようか。  また、健全な文化の育成は、先ほどの退廃文化の克服というところで申し上げました。  そして十番目に、国際文化交流であります。諸外国との間の相互理解を深めるために、国際文化交流というのは確かに必要であります。しかし、具体的に一体何をやるのだ。留学生の交流、また学者の交流、いろいろなことがあるでしょう。しかし、もっと日本の目に見える文化交流の基点となるものをどんと考えてみたらどうでしょうか。筑波博の跡地を利用してハワイにあるような東西文化センターみたいなものをつくってみたらどうでしょうか。世界じゅうから学者にも、学生にも、芸術家にも集まっていただいて、大いに宿泊をともにしながら交流していただくというふうなことを、日本ならもうそろそろ考えなければいけないのじゃないでしょうか。とりわけ、その中に言うならば東洋文化——日本文化に限りません、東洋文化のセンターぐらいつくったらどうなんでしょうか。  こういうふうなことをいろいろと考えるわけであります。するべきことがいっぱいあると思います。今の文化庁の権限にも予算にもこんなことをやるものはありませんけれども、しかし、文化庁として、また私どもが期待した三浦長官のお考えの中に、むしろそういうものを将来展望していくというふうなお考えがあっていただきたいな、またそれを大いに促進するような考え方が文部大臣にあっていただきたいなと私は思うのでありますが、いかがでしょうか。
  156. 松永光

    ○松永国務大臣 いろいろな御提案をいただきましてありがとうございました。  ただ、その中ではもう従来からずっと力を入れてきておることも幾つかあるわけでありまして、例えば地方文化施設の整備というのは、文化庁の方で各県あるいは各市などが設置する文化施設に対して補助金を出して、そしてあちらこちらに文化センターができておる。相当程度できてきておるわけであります。あるいは東京博物館もあれば、あるいは民族博物館もあれば、いろいろな日本の文化的な遺産を展示する博物館等、これが一つだというのはありませんけれども、相当程度整備が進んできたというふうに見ておるわけであります。  それから、市民の自主的な活動の奨励などというのは、三浦長官が来年度の予算要求の中で国民芸術祭というのをやってはどうだということで来年度予算要求をしているわけでありまして、これなどは市民の自主的な活動の奨励に大きく貢献するのじゃなかろうかというふうに思っておるわけであります。  それから、国務大臣(文化庁長官)というのがあってはどうだというお話でございますが、大臣の数がふえるのは我々としては反対ではありませんが、今は余りふやさない、むしろ簡素化するという時代であるようでございますので、なかなか難しい問題がなというふうに思っておるわけであります。  健全文化の育成、本当に大事なことだと思います。その場合に、できることならば国民の間で自主的に不健全なものは伸びないというふうな形に持っていくことができればなと思うのであります。かつて先生が予算委員会で質問をされました俗悪テレビ放送ですか、英国その他ヨーロッパの場合等にはもうそういう俗悪なテレビ放送にはスポンサーがつかないのですってね。スポンサーに対して非常に抗議が来るそうですね。したがって、中身を見て、良識を持っておればとてもじゃないがこういう放送はいかがなものかというのにはもうスポンサーがつかない、こういうことだそうであります。それで、自主的に俗悪なものはだんだんなくなってきておるという状況のようであります。しかし、先生の予算委員会指摘で少しは自粛された面があったようでありますけれども、また出てきたようでありまして、やはり時には反省を求める機会があってもいいのかなというふうに思っているわけであります。  国際文化の交流、先ほども述べましたけれども、非常に大事なことだというふうに思っております。今調査費がつきまして設立が進められつつある国際日本文化研究センター、これなどは今先生のおっしゃいました国際文化の交流に大きく貢献する構想ではないかなというふうに思っております。  さような中でそれなりの努力はしておるわけでありますけれども先生の御指摘、同感の点も多うございますので、これからの施策の貴重な参考にさしていただきたいというふうに思った次第でございます。
  157. 中野寛成

    中野委員 三浦長官にお答えをいただく前に、もう一つ質問を加えさしていただきたいと思います、というのは時間の関係で。  私は、今何ともいろいろな御提言を申し上げました。大臣もちょっと私の質問の真意ではなくて、その言葉じりだけでお答えをいただいたような部分もあるのですが、しかし内心では御理解なんだろうと思っておりますが、そういうものをやっていこうとしますと、文化庁の今の体制では、やはり行革が叫ばれておりますが、しかしどこかを削ってでも文化庁というのはもっともっと強化をしていく必要があるのではないかというふうに思うのであります。第一これは文教委員会と言いますよね。私は、「文教」というのは文化の「文」と教育の「教」だと思って、文化の方が上にあるのではないかと思うのでありますし、文部省の「文」もこれは文化の「文」だろうと思うのですね。国によっては文化省の中に教育庁があるのですね。教育というのは文化を伝達したり育てていったりするための手段でしょう。文化の方が上にあるのだ、教育よりはもっと大きいのだというふうな考え方さえ持つわけでありまして、その辺の発想の転換が必要ではないでしょうかということと、それから、しかも文化庁の仕事といったら何です。文化財保護と著作権と芸術活動と三つかいなというふうに言いたくなるような現状でしょう。これだっておろそかにできる問題ではありませんけれども、もっと大きく文化の視点から考えていくべきではないでしょうか。まして年々文化予算というのは減っているのですね。それは計算の仕方によるでしょう。しかし、決して文化予算というものがふえているとは言えませんね。  私はそういうこと等を考えますと、もっと文化についての考え方を広げていくべきではないか。今むしろ文化振興基本法などをつくるために審議会を一つぐらいつくって、そしてもっと文化政策について活発な論議を国民の間に展開したらどうですか。臨教審にはとてもじやないけれども今期待できそうにないですよ、そういう視点はまだ臨教審持っていないんだもの、教育の分野から考えるんだもの。もっと文化の視点から考えるということに力を入れる、そういう文化についての認識というものをもっともっと高めていくという考え方があってしかるべきではないでしょうか。そういう将来に向かっての文化政策の展開、展望、そういうことを私は三浦長官から、むしろ民間から登用されたという意味で期待を申し上げているわけでありますし、むしろ言葉じりをとらえられるなんということを気にしないで、思い切ってぶち上げてみていただいたらどうかというふうにも思うのでありますが、最後に長官からお願いをしたいと思います。
  158. 三浦朱門

    三浦説明員 文化行政について中野先生からいろいろ本当に深い御理解とすぐれた御意見を伺いまして、私ども文化行政に携わる者として本当に心から感謝を申し上げたいと思います。  しかし、文化庁の仕事の内容あるいはいかにあるかということにつきましては、それは文化庁の人間が云々すべきことではなくて、国会の先生方とそれから政府が基本的につくられるより仕方ないことではないかというふうに思っております。  それでもなお、先生が今いろいろお教えくださいました事柄の中で、私どもできることを少しずつでもやっていきたいと考えております。できること、できないこといろいろございますけれども、私たちが今やっていることでできることの一つは、例えば、先ほど大臣が言われましたような国民一般の表現活動に対してそれを訴える場を用意するということでございます、私ども仮に国民文化祭というふうに申しておりますけれども。  それから、もう一つは、先ほどスミソニアンのような大博物館をということをおっしゃいました。私はそれも一つのすぐれた方法だと思いますけれども、実は今は博物館というものに対する考え方の過渡期でございまして、世界的にさまざまな形の博物館あるいは昔の博物館的な考え方では博物館と言えないようなものができつつございます。そのような国立、公立、私立のさまざまな博物館、美術館というものが戦後できておりまして、それらのものが今のところ個々別々の形で自分の仕事をしているわけですけれども、もしその中に相互の情報交流のようなネットワークができましたならば、結果的にはスミソニアンとかルーブルのような大博物館に匹敵するような仕事ができるのではないか。よく第二次大戦後に西ドイツは組織的に復興をやってきた、それなのに日本はその場その場のことばかりでだらしがないというふうなことを言われたわけでございますけれども、戦後四十年たってみると、復興という意味では西ドイツと日本と結局それほど違いはなかったのではないか。そういうことを考えますと、国が強力に大博物館を建設することも一つの方法ですけれども、国は国で、自治体は自治体で、あるいは個人は個人で、それぞれの形の望ましい博物館をつくっていく、美術館をつくっていく、そのような結果、実に内容豊かな博物館のシステムができてくるということもあながち夢ではない。ただ、そのために私たちは相互の博物館をつなげるための情報網をつくっていかなければとは考えております。  それから、もう一つ、国民の表現活動ということでございますけれども、今日までの公会堂のたぐいは、おおむねプロの芸術家が公演するのをアマチュアが一方的に受け入れるという形でございましたけれども、これからはもっと自分たちがやるべき場所、例えば一人の国民がお芝居をやりたい、あるいは歌を歌いたい、ダンスをしたいというときに、その希望がかなえられるような場及びそのような組織をつくるという方法もまた必要だろうと思います。  それから、最後になりますけれども、退廃的な好ましくない文化をどういう形で排除していくかということでございますが、俗に悪貨は良貨を駆逐するということは文化についても言えることかと思います。ですけれども、多くの国民は日常悪貨を使っていても良貨に対するあこがれというものはある。ですから、何かの形で良貨が手に入りましたら、それをじっと大事にするに違いない。私はそういうところ、そのようなものを持っている日本国民というものを信じております。したがって、私たちは悪貨を抑えつけるというよりも、良貨というもの、よい文化というもの、これは私たちが一方的に決めるのではなくて、やはり専門家なりあるいは国民なりの支持によって決まるわけですけれども、その国民が、もし自分のところに入ってきたらば大事にしまっておくに違いない、簡単に使わないに違いないと思われる良貨を選び出しまして、それに対して奨励する、それを保護する、補助するという形で、結果的には悪貨を抑えるということはできるのではないか。直接的に悪貨を抑えるのではなくて、北風か太陽かということでございますけれども、よいものを国民の理解のもとに守っていく。もし私たちの守っていくものが不適当なものを守ろうとするならば、国民の支持が得られないに違いない。ですから、国民の支持が得られるような形でよい貨幣を、よい文化を守っていくならば、必ずやその対照のもとにおいて何が悪貨がということが国民の目にも明らかになっていくのではないか、そのように考えております。
  159. 中野寛成

    中野委員 時間が参りましたから終わりますが、これからはこれをきっかけにして、よりよい文化をつくっていくための大論議を国会の場においてもまた繰り返して大いに行ってまいりたい、こう思いますし、ひとつ文部省においても文化庁におかれても大いにまた御努力をいただきたい。御要望を申し上げて、質問を終わります。ありがとうございました。
  160. 阿部文男

  161. 山原健二郎

    ○山原委員 文部大臣に、いよいよ予算の大蔵原案が出るということを目前にしまして、教育予算の問題についてお伺いしたいと思います。  きょうは文部省を激励する意味で質問するわけですから、いじめっ子が励ましっ子になったというようなところもあるわけですが、しっかり答えてもらいたい。  これは私の県の高知新聞、この一面のトップに「文教予算に大なた」、こう書いてあります。大蔵省は一千億円節減へ、研修費、私立校助成費も削るということを書かれておりますが、この中を見ますと、先ほども中西さんでしたか質問がありまして大臣答弁されたわけですけれども、少しダブりますけれども、この中に、義務教育費国庫負担金の対象から小中学校の事務職員、栄養職員の給与を外して補助を打ち切るというのが一つ、もう一つは教育研修費を大幅に削減をする、三つ目が私立学校の助成費を減らす、こう報道されています。確かに報道には違いないけれども、まず伺いたいのですが、事務職、栄養士について大蔵省はどう言っているのでしょうか。それを伺います。
  162. 阿部充夫

    阿部政府委員 義務教育費の国庫負担制度につきましては、現在の段階では、先ほど中西委員の御質問に大臣からお答えいたしましたように、大蔵省から公式にどうこうしてほしいという要請が参っているわけではございません。しかしながら、御案内のように、昨年、昭和六十年度予算編成の際に幾つかの改革案と申しますかの提言が大蔵財政当局からあったわけでございますし、そしてまた現在のような非常に厳しい財政事情ということもございますので、これから年末の予算編成に向けて議論の種になってくるということはあり得ることだと思っておるわけでございます。
  163. 山原健二郎

    ○山原委員 先ほど文部大臣もかなりきっぱりしたお答えをしておったように思いますが、もう一回言ってください。
  164. 松永光

    ○松永国務大臣 何で高知新聞にそんな記事が出たのか私はわからないです。(山原委員「高知新聞だけじゃないです、例を持ってきたのです」と呼ぶ)いや、新聞で既成事実化されたりあきらめムードで出されたりしちゃたまったものじゃないです。  私どもとしては、義務教育費国庫負担の中の事務職員、栄養職員、これは義務教育費国庫負担の基本にかかわる部分でありますので、これを国庫負担の対象から外すということは極めて困難なことだ、したがいましてそういう措置がなされないように最大限の努力をしていく決意でございます。
  165. 山原健二郎

    ○山原委員 ちょっと局長とニュアンスが違いますね。局長はこれからの最終段階で何とかいうお話がありましたね。一つの問題になるであろうという意味の御発言があったわけですが、これは高知新聞だけじゃないですよ。たまたま私は高知新聞を持ってきたんだけれども、私の県のような田舎でもこういうのが出るのですからね。だから、かなりしっかりした態度を持っていないと不安だという声が自治体においても出るのは当然ですね。  十一月十一日の「官庁速報」によりますと、「文部、大蔵、自治三省による義務教育費国庫負担金見直し問題が大きな焦点として浮上してきた。」こう書きまして、それはベースアップ財源捻出のため大蔵省が同負担金の抜本見直しを非公式に求めているのに対し、文部省は同負担金に含まれている共済、恩給費を国庫負担の対象から外す、自治省は学校事務職員と栄養士の地方一般財源化を求めるなど三省の思惑に食い違いがあるためだ、こう報道されていますが、そういう事実がありますか。
  166. 阿部充夫

    阿部政府委員 先ほどもお答え申し上げましたように、現在までの段階で大蔵省から公式に義務教育費国庫負担制度についてどこをどういうふうに直したいというような意向の表明がなされているわけではございません。ただ、昨年来の経緯もございますし、現在のような厳しい財政事情というものもございますので、もちろん事務的のいろいろな話し合いの中にそれに触れた議論等がないわけではないわけでございますし、ある段階であるいは公にそういう意思表明が出てくるかもしれないと思っているわけでございます。先ほどはそういうことがあるかないかという御質問でございましたので、現在までのところ公式には意見の表明が財政当局からはないと申し上げたわけでございまして、私ども文部省としての態度は、大臣がたびたびお答えしているように、現在の義務教育費国庫負担制度の基本についてこれを堅持していくという建前でこの問題には対処していくという気持ちに変わりはないわけでございます。
  167. 山原健二郎

    ○山原委員 局長の御発言は少し動揺がありますよ。これはその次に文部大臣に対して、それが出てきた場合どうするかという質問になるのは当然ですけれども、これは今は聞きません。さっきの朝の答弁で、はっきり断る、こうおっしゃるわけでしょう。そうでしょう。もし出てきたら断る、そんなことはやらせない、こういう御決意でしたね。
  168. 松永光

    ○松永国務大臣 仮定の話でございますからなんでございますが、私は午前中もお答えいたしましたとおり、この義務教育費国庫負担の根幹を変えてはならぬ、こう思っておるわけでありますから、出てこないようにするのが大事だと思っておりますが、出てきた場合におきましても根幹を守るように努力をしていく所存でございます。
  169. 山原健二郎

    ○山原委員 大臣のおっしゃる義務教育費国庫負担法の根幹である、これは銭金の問題ではないわけですから、その点ははっきりおわかりになってお答えになっていると思います。  ところで、ここの「官庁速報」に、共済、恩給費を国庫負担の対象から外すという考え文部省は持っている、こう出ているのですが、こういう事実があるのですか。
  170. 阿部充夫

    阿部政府委員 現在の段階で個々具体の問題が提案されているわけではございませんので、文部省としてそれについての対案を一々持っているわけではございません。ただ、事務職員等の問題につきましては、大臣がかねてお答えしておるとおりでございますし、基本的には、先ほど申し上げましたように現行制度の基本を守っていくという姿勢で対応するということでございまして、それ以上のことにつきましては具体の問題が出てまいりました段階で適切に対応していくようにしたい、かように考えております。
  171. 山原健二郎

    ○山原委員 この「官庁速報」というものがどれほど信懸性があるか私にはわかりませんけれども、今言いましたように、この中に、文部省は同負担金に含まれている共済、恩給費を国庫負担の対象から外すという見解、自治省はそうでなくて事務職員、栄養士を国庫負担の対象から外す、こういう意見の食い違いがある、こう出ているのですが、そういうことを文部省が言ったことがあるのでしようか。
  172. 阿部充夫

    阿部政府委員 昨年の十一月あるいは十二月くらいでしたか以来の経緯がある話でございますから、関係省庁の中でいろいろな話等しておりました際にいろいろな話は出てくるわけでございますけれども、公にやりとりをしているわけでもございませんし、それぞれの省がある考えを現段階で決めたというわけでもございませんので、現段階でその政府部内での非公式な話について御報告することはお許しをいただきたいと思います。
  173. 山原健二郎

    ○山原委員 予算の厳しさということはもう政府が言い続けて、この枠が押しかけてきているのですから、その中で義務教育費国庫負担法というものを守るというのは大変なことですよ。だから大変な努力が要るんですけれども、しかし、非公式に話はいろいろ出る、でも公式になった場合は決まるときですよ。だから、私たちはこのことについて心配をして質問をしているわけです。ほかの議員の方も質問しておられるわけですね。義務教育費国庫負担法の中の非常に重大な部分であった教材費が外されたわけですから、そういう経験があるわけですからね。一度外されたものを取り返すということはそれまた大変な努力が要るわけでしょう。私どもは国庫負担法ができたときのことを今思い起こすのですけれども、あれは本当に国民的な大運動の中でつくられていった経過を私たちは体験しておりますから、これは外されたらもう際限なくとまでは言いませんけれども、復元するのが大変な事態を迎えるわけでございまして、その意味できょうは、この栄養職員と事務職員の問題については断固としてそのようなことは許さないという決意で頑張っていただかなければならぬと思います。  次に、私学助成についてです。文部省概算要求で大学は一%増、高等学校は二%増を要求しておりますが、これまた大蔵省はこれを減らすということを言っているわけです。大学一%、高校二%の増で、大学一%の場合、総経常費に当たる割合はどれくらいになりますか。
  174. 國分正明

    ○國分政府委員 総経常費に占めます国の補助金の割合でございますが、これは五十九年度だけが決算としてわかっておりますが、二〇・三%となっております。これの六十一年度がどうかということでございますが、現在のところ経常経費全体については推計をするよりございませんので的確に申し上げられませんが、以後の人件費のアップ等を考えますと二〇・三%を下回るということは言えようかと思います。
  175. 山原健二郎

    ○山原委員 九年前に法律ができまして私学に対する助成が行われたとき、そのときがたしか二三・二%であったと思うのです。その前の年はいわゆる法律がなくて文部省の予算措置で行われておったときです。それが二〇・六%でございますから、法律のできる以前よりもまた悪くなるというのが私学助成実態です。国会の方は二分の一に速やかに実現をするという附帯決議をつけておるわけですが、附帯決議の実現どころか、率直に言って一%増でも二〇・三%を下回るということになりますと、法律作成以前に返ってしまう。自民党の皆さん私学助成ということで随分活躍もされたことを知っています。それから、随分また私学関係者に対して宣伝もなされたことは知っていますけれども実態として見ると、これは二〇・三%を下回るなんということになると法律ができる以前に返ってしまうことになりますから、この私学助成については絶対に今要求している概算要求の金額は少なくとも守り抜く御決意があるのかどうか、これは大臣に伺っておきたいのです。
  176. 松永光

    ○松永国務大臣 私立学校振興助成法の素案をつくる場合に私も関与したわけでありますが、大変な苦労をしてあの法律はつくったわけであります。もしあの法律ができていなければ、この補助は法律補助じゃなくして予算補助にとどまっておったわけでありまして、そうであったならばえらいことであったな。苦労してあの法律をつくっておったからまだこれだけの予算は確保できていると思うわけでありますが、あくまでも私立学校振興助成法の精神に基づいて、私大等に対する経常費補助の予算が確保できるように私は懸命な努力をする覚悟でございます。
  177. 山原健二郎

    ○山原委員 随分たくさんの請願署名も毎国会のたびに出ておる問題でございますし、これは大臣も御承知のように、随分私学関係の父母の皆さん、教職員の方たちが本当に苦労して署名を集めて国会へ出したり、いろいろ集会を開いて政府要請したりされておることは、もう十分御承知のことと思うのです。せっかくつくった助成法、生まれて十年になろうとしておるときに、法律ができる以前の経常費に対する比率だということになると、これは全く情けないことでございまして、ぜひこの点でも頑張っていただきたいと思います。  次に、マンモス校解消の問題ですが、時間の関係もございますので詳しくは申し上げることができませんが、文部省はマンモス校解消の計画をお持ちでしょうか。
  178. 阿部充夫

    阿部政府委員 いわゆるマンモス校でございますけれども、私ども当面三十一学級以上の学校の解消をいたしたいというようなことで努力をしてまいっておるわけでございます。昭和六十年度現在におきまして、三十一学級を超える小学校、中学校が約千五百校という状況でございまして、二年前にいろいろ御議論がございました際の数字が二千百三十校でございましたので、約六百校その間に減少してきたという状況になっておるわけでございます。  これらのものにつきましては、今後の児童生徒数の減少傾向から、ごく近々のうちに解消見込みのものもございますし、それからまた、学区調整その他によって解消可能ということで検討中のもの等もございます。そういうもの以外に新たに校地を求めて解消していくという性格のものにつきましては、これまでの校地取得費の補助金の制度が六十年度で切れることになっておりますけれども、六十一年度以降も継続をする、同時に、従来は急増市町村に限っての補助でございましたけれども、今度は急増市町村以外の市町村にありますいわゆるマンモス校に対する対策という面にもこれを広げていくということで、現在概算要求を行っているところでございまして、その実現によってマンモス校問題が逐次解消していくことを期待しておるわけでございます。
  179. 山原健二郎

    ○山原委員 この問題もこれはやはり「官庁速報」を持ってきていますけれども、これは十一月二十五日付ですが、これによると、大蔵省は市町村の恒久的な財産となる用地費は国の補助になじまないという理由をつけまして、同補助を今年度限りで廃止する方針を固めたと伝えておるのでございます。私は、四十六年から発足をしましたこれが、今になって国の補助になじまないという言い方はけしからぬ話だと思うのでございますけれども、こういう状態の中でこれを継続させていくこともまた大変なことだと思いますが、そういう確信をお持ちでしょうか。
  180. 阿部充夫

    阿部政府委員 これはもちろん相手方があって現在折衝中のことでございますから、現段階で必ずできるあるいはだめだというような判断をすることは難しいわけでございますけれども、私どもといたしましては、従来からの経緯もある重要な課題だと考えておるわけでございますので、その実現に向けて最大限の努力をしたい、こう考えております。
  181. 山原健二郎

    ○山原委員 次に、さらに重大だと思うのですが、大蔵省は国の補助率五〇%を超える高率補助を原則二分の一に引き下げるという方針を出し、さらに二分の一の補助率を三分の一に引き下げると言われております。これも「官庁速報」十二月三日付でございますが、例えば会館建設など箱物は補助を廃止するというふうにも言われておりますが、こういう事実はありますか。
  182. 西崎清久

    ○西崎政府委員 高率補助金の問題を予算上どう扱うかにつきましては、先生御案内のとおり、六十年度予算では高率補助の一〇%カットが行われまして、これは六十年度の措置であるという含みでございまして、六十一年度につきましては、午前中もお答えいたしましたが、現在大蔵省を中心に補助金問題検討会がございます、それから大蔵省等を中心とした関係閣僚会議もございまして、補助金問題全般についての扱いを現在検討しておるところでございますので、これらの検討結果が出た暁におきまして、財政当局としての意見が示され、各省がそれに対応する、こういう段取りになろうかと思いますので、全体の姿が整うにはもう少し時間がかかろうか、こういう段階でございます。
  183. 山原健二郎

    ○山原委員 四十人学級はどうですか。これも一部削減するという声が聞こえておりますが、これもいよいよ一年生から始めるということですから、六十六年完成という文部省の今までの言明からいいましても本当に重大な時期を迎えたわけですが、これは今予定されておるとおり文部省としては守り抜く決意を持っておられるのでしょうか。
  184. 阿部充夫

    阿部政府委員 四十人学級につきましては、先生御案内のように、児童減少市町村の小学校について今年度で完成というところまで来たわけでございますので、あとは児童減少市町村以外の小学校そしてまたまだ手がついていない小学校に手をつけていくということで、私どもといたしましては、昭和六十六年度の法律で定められております日程の中でこれを円滑に処理をしていくということで、来年度の概算要求は行っておるわけでございまして、その実現のために現在折衝中でございますので、先ほど来のお答えと同じになるわけでございますが、見通し等申し上げるというのは非常に困難でございますけれども、私どもとしては、この実現を期するということがどうしても大事なことである、こういう考え方で対応しているところでございます。
  185. 山原健二郎

    ○山原委員 最後に、文部大臣の御決意を伺いたいと思うのですが、いわゆる大学の臨時増募の問題でございますが、この状況もお聞きしたいのですけれども、時間がないものですから、教職員の確保の問題、それからさらにこれに伴う施設、建物など、これも幾つかの大学から要請を私ども、恐らく文部省もそうだと思いますが、手紙もいただいているわけです。例えばこれは神戸大学教養部の場合ですね。本当に文書を読みましても、これは教授会の決定なんですけれども、「病める教養部」というふうにみずから書きまして、このままでは臨時増募の受け入れは不可能な状態だというふうないわば悲痛な声が表現をされているわけですが、教職員並びに建物の確保というのはどのようになっているのでしょうか。
  186. 大崎仁

    大崎政府委員 六十一年度から始まります十八歳人口の増加、それに伴って予想されます受験生の増加ということに対応いたしまして、臨時増募を国公私立大学にお願いを申し上げておるわけでございますが、国立大学につきましては、各大学いろいろ御努力をいただきまして、その結果をまとめまして、五千弱でございますが要求をさせていただいておるところでございます。要求に当たりましては、各大学の既存の施設等の活用というようなことも十分御勘案をいただいておるところでございますし、また教養部等の教員の手当てというのもある程度私どももいたすつもりではおるわけでございますが、ただ、臨時増募ということでございますので、この際、大学関係者にはいろいろと御協力をお願いしたいというふうに考えておるわけでございます。
  187. 山原健二郎

    ○山原委員 これは七年度の問題も出てくるわけですね。本当に各大学とも文部省の言うことに対して随分苦労をしながらやって、教育条件が随分困難な中で、狭隆な中で学生が膨大な数になると本来の大学教育ができるのかという事態まであるわけですから、これは高等教育局としても、いわば悲痛な要請に対してぜひこたえるようにしていただきたいと要請しておきます。     〔委員長退席、船田委員長代理着席〕  大臣、最後に、今私が私学助成の問題、あるいは事務職、栄養職員の国庫負担法を外してはいかぬというような問題、あるいは四十人学級の問題など申し上げましたが、いよいよ最終段階を迎えようとするこの予算編成の段階で、文部大臣としていかなる決意で臨まれるか、最後に伺いまして、私の質問は終わりたいと思います。
  188. 松永光

    ○松永国務大臣 先ほどから話のあります事務職員、栄養職員の問題、あるいは私学助成の問題、四十人学級問題等々、いずれも私どもが進めてまいりました文教施策の極めて重要な柱でありますから、これを今後とも推進するための予算の確保には全力を挙げて当たる決意でございます。
  189. 山原健二郎

    ○山原委員 終わります。
  190. 船田元

    ○船田委員長代理 藤木洋子君。
  191. 藤木洋子

    藤木委員 千葉県下で行われております教育につきまして、教育界、教育者など広く教育に携わる人たちの間でその管理教育あるいは管理主義教育の問題点が指摘をされております。ことし秋田で日本弁護士連合会が開きました第二十八回人権擁護大会でもその報告が詳しくまとめられておりますが、私も、千葉県下で行われております管理教育がどういうものかにつきまして調べてみました。実にいろいろな問題をはらんでいることを感じておりますが、それらにつきましては追って明らかにしてまいりたいと思います。  きょうは時間もございませんので、三旗掲揚、日の丸、自治体の旗、そして学校の旗でございます、この問題に絞りまして質問をさせていただきます。  文部省は、千葉で行われております管理主義的教育についてどのように把握をしていらっしゃるか、またこれに対してどのように考えていらっしゃるか、文部省の御見解といいますか認識についてお伺いをしたいと思います。
  192. 高石邦男

    ○高石政府委員 具体的に千葉県で行われている教育の内容で何が管理教育であるかということ、いろいろな見方があろうかと思います。そういう点で、私たちは一般的に千葉県の教育委員会が法令の規定に基づき適切な学校教育を展開していくためにいろいろな努力をしているというふうに思っておりまして、千葉県だけが特に変わった教育をやっているというふうに考えているわけではございません。
  193. 藤木洋子

    藤木委員 それでは、これまで文部省が千葉県の教育委員会に出向させてこられました、人事交流をしてこられた件数がどのくらいあるでしょうか、ここ十年間について行われたものを述べていただきたい。どのようなポジションにどのような人が派遣をされてきたかということについてお述べをいただきたいと思います。
  194. 西崎清久

    ○西崎政府委員 文部省におきましては、地方公共団体の幹部職員につきまして、地方公共団体の要請に基づいて出向、派遣という形で処理してきておるわけでございますが、今お尋ねの千葉県につきまして過去十年の例で申し上げますと、教育次長につきまして現在の者を含めて三人でございます。昭和五十年度以降六十年度までで三人でございます。それから、文化課長につきましては、過去に十年間で三人出向者を出しておりましたが、現在は六十年三月三十一日で切れておりますので、文化課長はおりません。社会教育課長につきましては、過去十年で二名でございまして、現在在職しております。したがいまして、現在の姿で申しますと、教育次長と社会教育課長である、こういうふうな実情でございます。
  195. 藤木洋子

    藤木委員 極めて大事なポジションに派遣をしていらっしゃるわけで、千葉県の教育に文部省が極めて御熱意があるように私にはうかがわれます。  ところで、千葉県で、さきに私が申し上げました三旗掲揚、そして降納、これを毎日やっている小学校、中学校、どのようになっていますでしょうか。毎日でなくても定期的に三旗掲揚というのを行っているのはどうなっておりますでしょうか。これはお調べいただくようにきのうお願いしたのでございますけれども、いかがでございますか。
  196. 高石邦男

    ○高石政府委員 これは千葉県の教育委員会に照会してその報告を受けた内容でございます。  野田市の小学校十四校、中学校七校のうち、小学校五校、中学校三校が毎日。小学校、中学校各一校が例えば月曜日などの特定の日に三旗掲揚をする。流山市では中学校八校のうち一校が毎日二旗掲揚している。こういうような報告を受けたのでございます。
  197. 藤木洋子

    藤木委員 簡単にお答えいただきましたけれども、この千葉県教職員組合東葛支部がまとめた資料によりますと、これは去年の調査資料ですけれども、毎日三旗掲揚、降納、これが行われているのは野田市では小学校の六二%になっております。中学校で四三%でございます。我孫子市では小学校が四二%、中学校が一七%。流山市では小学校が二〇%で中学校が四三%となっております。しかも、この三旗掲揚というのが二十年も前から続けられているということでございます。その中でもこの三旗掲揚、降納時に児童生徒、教職員に対して、直立不動の姿勢をとらせている学校というのが少なくないということなんですね。野田市では小学校で三旗掲揚を行っている学校のうち七五%がこの対応をしております。中学校は一〇〇%でございます。流山市では中学校五〇%、我孫子市では小学校の五〇%が直立不動の姿勢をとらせられているとなっております。野田市では三旗掲揚、直立不動をとっているのが八校、脱帽が一校、直立、礼をするのが一校、旗の方を注目するというのが一校というふうになっております。こうしたことがやられていることにつきまして文部省のお考えはいかがですか。
  198. 高石邦男

    ○高石政府委員 千葉県の教育委員会、各市町村の教育委員会並びに学校が、子供の教育上三旗掲揚をしていくことが適当であるという判断に立ってやっているわけでございますから、三旗掲揚自体が悪いというような気持ちは毛頭ございません。
  199. 藤木洋子

    藤木委員 それぞれの自治体であるとか学校の判断でやっていることだという御返事でございましたけれども、日の丸を子供たちや教師を含めまして全員に掲揚することを強制しているということについてはどのようにお考えでございますか。
  200. 高石邦男

    ○高石政府委員 我が国のシンボルである国旗に対して敬意を払う、そういうことの教育は当然必要でありまして、その教育がそれぞれの発達段階で教育されるのは当然なことであります。
  201. 藤木洋子

    藤木委員 今、国旗というふうにおっしゃいましたけれども、私いろいろ調べましたけれども、戦前にも戦後にもこれを国旗と定めた法律は何もないのですね。しかし、日の丸につきましては国民の中にいろいろな考え方が存在しております。それで、日の丸の掲揚を強制することで児童生徒、教師を含めた国民の思想、信条の自由、これが侵害されているわけです。日の丸の掲揚を義務づけたり強制したりすることはできるのですか。できないのではありませんか。それはいかがですか。
  202. 高石邦男

    ○高石政府委員 それぞれの国で国旗に対するいろいろな取り扱いがありますが、ある意味では日本ほどあいまいな取り扱いをしている国はない、こういうふうに言われています。日の丸については国民の大多数が国旗として我が国のシンボルである、こういうふうに理解しているわけであります。これから国際社会に生きていく日本人が、その国の国旗を大切にしていく、そしてその国の国旗に対して敬意を払うという教育をするのは当然のことでありまして、そういうものを小学校の段階で正しく教えるということは必要であると思います。したがいまして、学校の行事の中で日の丸を掲げるというのは学校の教職員、校長、そういう者の判断でやっているわけでございまして、国旗に対して敬意を払わせる、そういう教育をやるのは当たり前であると思っております。
  203. 藤木洋子

    藤木委員 私が伺いましたのは、それは義務づけてもよいものか、強制をしてもよいものかということを伺ったのですけれども、今の御返事ではわかりませんね。いかがですか。
  204. 高石邦男

    ○高石政府委員 強制というのは、国が一定の入学式、卒業式のときに国旗を掲揚し国歌を斉唱するということが望ましいという指導をしております。それを受けて、それぞれの教育委員会ないしは学校がそういう式事のときに日の丸を揚げる、そして国歌を斉唱するという方針を決定しているわけであります。その決定に従って、それぞれの学校で子供たちが国旗、国歌について一定の敬意を払って対応をするということの仕掛けになっているわけでありまして、そういう手続を経た上で行われている教育でございますから、文部省が命令をもって子供たちに強制しているという手続ではないと思っております。
  205. 藤木洋子

    藤木委員 文部省が強制しているかどうかを伺っているのではないのです。義務づけたり強制したりすることはできるのですかと伺っているのです。
  206. 高石邦男

    ○高石政府委員 当該学校一つの教育方針としてそれを教育する必要があると考えた以上は、それを子供たち全部に教えるということは当然できるわけでございます。
  207. 藤木洋子

    藤木委員 では、義務づけても構わない、強制もやむを得ない、このようにお答えになったのですか。そう認識してよろしいですか。
  208. 高石邦男

    ○高石政府委員 小学校の段階で漢字を子供に教える、数学を教える。なぜ教えるのか、強制するのかという議論と全く同じでございます。(発言する者あり)
  209. 藤木洋子

    藤木委員 局長、今大変なことをあなたは発言されました。取り消されるのでしたら今のうちです。——漢字とは違うのです。日の丸だとか君が代に対して国民がいろいろな考え方の相違を持っているということは局長も御存じのはずであります。これは個人の思想、信条にかかわる問題です。これを一方的に強制をしていいか、そのことを義務づけてもいいものかどうかということは、漢字を教えることとは違います。もう一度お答えください。
  210. 高石邦男

    ○高石政府委員 国民のそれぞれの発達段階で、基礎的に必要とされる教育、それを義務教育段階で教えるわけであります。したがって、我が国の国家社会の中でこれだけの国語、これだけの算数、これは身につけさせなければいけないということでそれぞれの教育の中身が決められているわけであります。国旗、国歌に対しましても、およそ日本人としては、我が国の象徴であるわけでありますから、そういうものをしっかり教えるということは当然必要なことでありますし、何も漢字を教える、数学を教えるのと違うという論理ではないと思っております。
  211. 藤木洋子

    藤木委員 重大な発言をされたということを私は重ねてここではっきりと申し上げておきたいと思います。そのことがどんな教育を引き起こしているかということについて、私はこれから御質問をしてまいりたいと思います。  千葉県の東葛地域で行われております三旗掲揚、これは単なる精神的強要にはとどまらないのですよ。ある学校の昭和五十九年度の生徒手帳には、「国旗掲揚・降納」と表題をつけまして、「放送の指示に従い、起立・着席する。国旗掲揚塔方向を向き、背筋、指先をぴんとのばす。無言。終ったら軽く礼をする」と決まりが記されております。「国旗掲揚の時間です。全員仕事をやめ姿勢を正して国旗に注目して下さい」という放送が流れますと、君が代の演奏がやられるわけです。その間は直立不動で拝し、それが終わりますと礼をすることになっております。いついかなる場合であっても、そのときやっていた動作を停止して直立不動で押さなければならない、こうなっているんです。もっとひどい話もございます。トイレに入っていた生徒を、国旗が見えないのかと言って教師が無理やり連れ出して掲揚させる。みずからの良心、思想、信条の上から直立不動ができない、こう考えて座っている生徒に対して、国旗だ、立てと暴力を使っても強行をさせるという事実も出ております。こういうことまで行われているのですよ。往復びんたや殴るといった暴力的制裁を加えてまで三旗掲揚をさせなければならないのは一体何のためだろうかと、私は本当に大きな怒りを禁じ得ません。あるお母さんは、子供が家でテレビを見ていると君が代が聞こえてきました、あっと言って立ち上がり、直立不動の姿勢をとった、その異常さに本当に不安でたまらない、こうも訴えておられます。また、東京から転校してきたある男の子は、五月五日には三旗と一緒にこいのぼりも揚げて拝んだよと述べています。三旗掲揚への強要は、国民である児童生徒、教職員の人権侵害ではありませんか。いかがですか。
  212. 高石邦男

    ○高石政府委員 具体的にどういうような形で教育が行われているか詳細に知りませんけれども、基本的にやはり国歌、国旗に敬意を表して、そして対応していくという教育は必要であろうと思います。これは日本だけではなくして、諸外国に行けばみんなそういうような事例であることは皆さんよく御承知のことだろうと思うのです。したがいまして、そういう国旗、国歌に対する正しい理解、そしてそれに対する敬意を払って、そしてそれに対する一つの節度を持った対応を教えていくということは必要なことであろうと思うのです。したがいまして、そういうことが一定のイデオロギーとか特定の管理教育を強化するというものではないというふうに思っております。
  213. 藤木洋子

    藤木委員 とんでもないことをあなたは御答弁になっていらっしゃいます。  君が代や日の丸について、それが国歌であるとか国旗であるとかいう論争をきょうはやろうとは思っていませんけれども、しかし、公教育の場である学校というのは思想、信条を一つにした政治結社じゃないわけですよね。思想、信条を一つにした人たちの集まりではないわけですよ。ですから、君が代に対していろいろな考え方を持っていようと、あるいはあなたが国旗とおっしゃっていますけれども、日の丸に対して、それぞれ国民が抱いている感情だとか気持ちだとか意見の違いというものはあるわけですよ、あなたは大方の国民はというふうにおっしゃいましたけれども。しかし、大方の国民がそうであれば少数の国民がそれに従わなければならないというのは、それはまさにファシズムです。断固として許されることではありません。三旗掲揚、これを強制することは教育とは全く関係ないことです。日の丸、君が代については国民の中にもいろいろな考え方の違いがあることは今私も申し上げましたけれども、それを一方的に特定の考え方、これを強制して押しつけるということは、教育基本法第十条、これに反しませんか。義務教育の政治的中立、これには反しないでしょうか。まさに偏向教育そのものではないでしょうか。そのことをお伺いいたします。
  214. 高石邦男

    ○高石政府委員 今お挙げになった諸法律には全く反しないと思っております。見解が分かれるところでございますけれども、少なくとも我が国のシンボルである国旗、国歌に対して国民が敬意を払うというのは当然のことでありまして、そういう教育が行われていないというのが異常であると思っております。
  215. 藤木洋子

    藤木委員 とんでもないですよ。それじゃ国旗だとか国歌だというふうにいつ決められましたか。そんな経過はいささかもないではありませんか。法律的な根拠は全くありません。そのことについてお答えいただけますか。いかがですか。それは慣習であるとか定着をしたとか、そういうことであなたたちはおっしゃいますけれども、私は、そのような思想、信条の自由を踏みにじるような行為は教育の世界では絶対に許してはならない、このように思います。この偏向教育の押しつけこそ人権侵害の野蛮な行為そのものだと言わなければなりません。それを教育の名のもとに進めるということは断じて許されるべきことではありません。文部省はこのような事態が行われるということが好ましいとでも思っていらっしゃるのでしょうか。また、どんな教育のやり方が行われるか、その実態はわからないというふうにおっしゃいましたけれども、この千葉の東葛地域で三旗掲揚を通じて行われている管理教育、このことについては実態をお調べになる気持ちはおありでしょうか。
  216. 高石邦男

    ○高石政府委員 国旗、国歌に対していろいろな意見があることは承知しております。そして、それぞれの国でどういう形でその国の国旗、国歌が定められているか調べてみますと、それは憲法で定めてある場合もございますし、法律で定めてある場合もございますし、そして慣習として国歌、国旗として承認されている国もあるわけであります。そういう意味では、日本の場合は一つの従来からの伝統的な慣習として国旗、国歌というふうに国民が承認している、思っているというのが各種の世論調査の大部分での結論であるわけであります。したがいまして、国を代表するいろいろな行事のときに日の丸、国旗が掲揚される、国歌が斉唱されるというふうになっているのが、今日いろいろ行われている国際行事の中における一つの慣行であるわけであります。ですから、そういう教育が正しく徹底して行われるということは当然のことでありまして、そのことについていろいろ教育上不徹底である、そしていろいろな議論があるということについてはなかなか意見の分かれるところでございまして、我々はそれが異常であるとは考えていないのであります。
  217. 藤木洋子

    藤木委員 それでは、国旗掲揚を毎日、毎朝やっている学校、これはあなたの今おっしゃったことからすれば国旗を尊敬させるには非常に熱心な学校と言われる学校だと思うのですが、その学校で殴ってもたたいても、お便所から引きずり出してでも掲揚させるというやり方をしているのは好ましいことですか。これは極めていいことですか。
  218. 高石邦男

    ○高石政府委員 具体的にどういう教育の実態であるかというのを私も直接聞いたり見たりしているわけではございませんので、今御指摘のあるような異常な状態で行われることは適当でないと思います。
  219. 藤木洋子

    藤木委員 では、今私が挙げた事例は異常な事態だということはお認めになりますね。
  220. 高石邦男

    ○高石政府委員 そういう教育が行われているとは思いませんけれども、殴ったりけったりしてまでそういうことをやるということは異常であります。
  221. 藤木洋子

    藤木委員 それでは、ひとつ実態を御調査いただきますように私、御要望いたします。現にこれは体験をされたお母さんたちからも伺っていることでございます。先生方からも伺っていることでございます。いかがでしょうか。調査されませんか。
  222. 高石邦男

    ○高石政府委員 毎日の日常活動における実態でございますので、調査するといってもなかなか正確なデータが得られるとは思いませんけれども、県の教育委員会に、きょうの論議があったことを踏まえまして、そういう実態が把握されているかどうか、把握しておれば報告を求めたいと思います。
  223. 藤木洋子

    藤木委員 ぜひ調査をしていただきたいのですよ。把握していれば報告を求めたいと言われたけれども、把握していないとすれば、これは大変な事態なんです。把握していないとすれば、こういった異常な事態というのが日々進行していくということになるわけです。ですから、やはり調査を県の教育委員会に要求をしていただきたい。いかがですか。
  224. 高石邦男

    ○高石政府委員 県の教育委員会に十分照会をしてまいりたいと思います。
  225. 藤木洋子

    藤木委員 文部省が八月二十八日に初中局長名で通知を出されました。その「学校行事について」の項で、今あなたがおっしゃったように「入学式及び卒業式において、国旗の掲揚や国歌の斉唱を行わない学校があるので、その適切な取り扱いについて徹底すること。」として、日の丸の掲揚、君が代の斉唱、これを徹底することを求めておられますが、私は、このような通知を出したことで千葉県東葛地域の小中学校でも行われているような思想、信条の自由を侵し、児童生徒の人権を侵害する事態が全国的規模に広がるであろうということを大変危惧をいたしております。  私、きょうここに写真を持ってまいりました。これは清水台小学校で三旗を降納するときの写真なんです。放課後なんですが、子供たちがボール遊びをしたり鬼ごっこをしたり、いろいろなところで遊んでいるのですけれども、この降納が始まりますと、今やっていたことを全部やめまして一斉に起立させられている。少々休めの格好をしている子供もおりますけれども、これをちょっとごらんいただきたいと思うのですが、もう一枚の写真は旗が大分おりてきたところでございます。その間は、何秒かかかるのですが、ずっと直立不動の姿勢をとらなければならない。何をやっていてもやめてというのは、これは異常な事態じゃありませんか。いかがですか。
  226. 高石邦男

    ○高石政府委員 甲子園の野球の大会が毎年行われますが、あのときに国旗が掲揚されるときに全員起立をし国旗に注目をしていく、これがいわば当然のことであるわけでございます。したがいまして、学校でそういうような、国旗を上げたりおろしたりする際に一定の厳粛な気持ちで注目をしていくという教育が行われていることは異常であるとは思っておりません。
  227. 藤木洋子

    藤木委員 あなたが異常であるとは思っていない、そのことが重大なんです。甲子園球場は別ですよ。あれはみんな見る気になっている人たちが集まっているところですし、立たなくたっていいんです。立たないからといってしかられることはないんですよ。ところが学校はそうはいかないんです。  これは清水台小学校のPTAのお母さんたちが出している広報誌なんですけれども、これを見ますと、学校が始まるのは、一時間目は八時三十五分から始まるのです。ところが子供たちは七時五十五分にはもう登校しているのですね。そしてマラソンをしまして、三旗掲揚をして、掃除をして、朝の自習をやってから一時間目の授業が始まるということで、通常の時間よりもかなり早く行かなければならないようになっております。そして、下校は四時三十分になっておりますけれども、三旗降納が四時に行われるわけですから、六時間目の授業が終わってから校庭で遊んだりしていますと、クラブ活動をしていましてもその動作をぴしっとやめなければならない、こういう事態になっているわけですよ。これはいかがですか。このことはいいことですか。
  228. 高石邦男

    ○高石政府委員 特におかしいとは考えておりません。
  229. 藤木洋子

    藤木委員 これが強制につながっているわけです。とにかく何をやっていてもその動作を急に停止をして一斉に日の丸、三旗に向かって注目をしなければならないというような態度を定期的にとらせることは、これはもう号令教育といいますか、管理教育以外の何ものでもないわけです。これは教育だとは私考えませんよ。私は、恐らくこの間の通知以後全国的にこういった憂うべき事態というのが拡大するであろうと思いますが、その点はいかがですか。
  230. 高石邦男

    ○高石政府委員 国のシンボルである国旗、国歌に対して国民が正しい理解と態度を示していくということは必要なことでありまして、それが不十分であるとすればもっと徹底しなければならないし、一つも憂うべきことでないと思っております。
  231. 藤木洋子

    藤木委員 もう時間が参りましたからこれで終わりますけれども、あなたが極めて重大な誤りの発言をされたということを私は強く指摘をさせていただいて、質問を終わります。
  232. 船田元

    ○船田委員長代理 江田五月君。
  233. 江田五月

    江田委員 文部大臣、一年一カ月と十日ですか、本当に御苦労さんでございます。もちろんまだこの国会は終わってはおりませんし、延長ということも云々されております。しかし、常識的に考えますとどうやらきょうが最後のこういう質疑になっておるようで、もちろん大臣がくるくるかわることは余り好ましくもないと思いますし、特に松永大臣にはさらにさらに文部大臣を続けていただきたいと思いますが、どうも常識的に考えていきますと、もうこれでいよいよ最後の文部大臣に対する質問、松永文部大臣としての答弁ということになるかと思いますので、先ほども伺っておりましたけれども、まずこの一年一カ月十日の感想を伺いたいと思います。  いろいろありましたが、臨教審が発足をしておって諸問題がすべてといいますか、すべてではないにしても臨教審の結果待ちというようなことがあってやりにくかったところもあるのではないかと思います。しかし、今の教育のさまざまな問題について大臣として直接に肌にお感じになったことも随分おありだと思うし、一年の間に教育というものに対する理解も随分深めていただいたのではないかというような気もいたしますし、私どもも大臣とこうして議論をしながら教育についての理解を深めてまいったわけで、率直なところ今一体どういう感想をお持ちかをお伺いします。
  234. 松永光

    ○松永国務大臣 午前中もお答えしたわけでありますけれども、去年の十一月一日に幸運にも文部大臣に就任することができて、以来一年一カ月十日たったわけであります。私は、その与えられた部署部署で全力を挙げてその任務を遂行するというのが政治家のとるべき態度であろう、こういうように思っておりまして、この一年一カ月十日の間そういう姿勢で文教行政と取り組んできたつもりでございます。  臨教審からも第一次答申が六月になされまして、第一次答申で出されました具体的教育改革の提言につきましてはそれの実施に向けてスタートができたわけであります。そしてまた、一方においては学校荒廃という現象が続いておるわけでありますけれども、これにつきましても、文部省のそれぞれの責任の部署にある者と協力しながら学校荒廃の解消のために全力で取り組んできたつもりであります。  今月の二十幾日になりましょうか、六十一年度の予算編成という仕事が残っているわけでありますが、それは私がやることになるかどうかわかりませんけれども、私がやることになるとするならば最後の務めがそれではないか。先ほどからいろいろな激励もいただいたりしたわけでありますけれども、六十一年度の文教予算は、厳しい財政状況ではありますけれども、その中でできる限りめり張りのきいた予算になるように頑張らにゃいかぬと思っておるところでございます。
  235. 江田五月

    江田委員 大臣に今この段階で余り厳しいことを言いたくもないのですけれども文部大臣、まあそれぞれの個性個性があっていいわけですが、特に今のような状況学校現場でいじめというのが大変に問題になってきている。じめじめとしつこく精神的苦痛を伴うようないじめで学校へ行けない子供がたくさん出てきたり、自殺をする子さえ次々と生まれる。     〔船田委員長代理退席、委員長着席〕 つい先日も、これは九日ですか、青森県の方で中学二年生が自殺をした。絶対死んでやる、のろってやる、青春したかったのにおまえたちのせいで、このやろうというような遺書を書いて子供が自殺をする、そんな現実がありますね。そういう子供たち文部大臣として、直接とはいかないでしょうが、しかし子供たちと政治家と一番近いところにいるのは文部大臣で、文部大臣から温かい気持ちといいますか、子供たち一人一人に対する愛情といいますか、そういうものがほうふっとわき出てくる、そういう文部大臣を今本当に子供たちは欲しているのだと思うのですね。そういうような点に関して、ひとつ最後に、文部大臣として子供たちに対する愛情の言葉というものがやっぱり必要だ。今のお話は、制度面のことでさらに頑張るというお話で、それはもちろん必要なことですが、その根本にある、親が、国が、行政が、国会が、そしてその一番のかなめにいる文部大臣が、子供たちに対して、どんな子供も、いじめる子もいじめられる子も、非行を犯す子も暴力を振るう子も、みんなかわいいかわいい子供たちなんだという、そういう愛情がほとばしってこなければやっぱりいけないと思うので、そういう意味での、大臣、一年をやった、今大臣が心の中にお持ちの子供たちに対する気持ちをお聞かせ願いたいのです。
  236. 松永光

    ○松永国務大臣 みそもくそも一緒にするわけにいかぬと思うのでありまして、いじめの問題でございますが、今先生指摘になりましたいじめの中には、精神的な苦痛程度のいじめもあれば、肉体的にひどい損害を与えるような、あるいは財産的にひどい損害を与えるような、いじめというよりは犯罪行為みたいなものも実はあるわけでありまして、それぞれに適切な対応をしていかなければこの問題の解決はできないというふうに私は思っているわけです。  何よりも学校荒廃、いじめ、非行、暴力ということにつきましては、その被害を受けている者を速やか発見をして、そしてその人権を守ってあげる。そして、それぞれの学校で適切な教育が受けられるような状態にしていくことがまず大事なのではないかというふうに思っております。  二番目は、いじめをした生徒に対する対応でありまして、青森県の場合には、これはまだ詳細に私は承知しておりませんけれども、新聞やテレビの報道するところによれば、いじめをした子供はその前に青竹で教室の中で人を殴って相当大きな傷害を与えておるという、そういう前歴があるようであります。そしてまた恐喝行為を繰り返しておったようであります。これらに対する対応が必ずしも私は適切ではなかったというふうに感じられるわけであります。教室の中で青竹で殴ってそして大けがをさせたというのは、それが十四歳を超しておるならば大変な傷害罪を犯したことになるわけでありまして、それに対する適切な対応学校でなされたのだろうかと私は思うわけであります。その子供を厳しくしかることも必要であったでしょうし、親を学校に呼び出して、そして親に対して十分監督するようにすることも必要であったでしょう。そうしたことをしておらなかったということがあるとするならば、それは実は学校対応としては適切を欠いておったではないかな、そういうふうに思います。  やはりまず第一は被害者の救済、二番目は加害者の加害行為の阻止、そのための措置が必要だと思うのです。そういったことを適切にやることが学校荒廃を、いじめという現象を速やかに解決をし、そういう事態が起こらないようにするために基本的に大事なことだというふうに思っております。  ただ、長期的に言えば、概していじめをする子すなわち加害者の側は、他人の生命、身体に対して害を加えてはいかぬという基本的な規範あるいは他をいたわり思いやっていなければならぬというそういう心がけ、そういった基本的な規範とか道徳心とかというものがやや欠落している場合が多いように見受けられます。これは実は例えば中学生になって突然そうなったのではないと思われるのでありまして、幼少のときからの家庭における教育やしつけの面で欠点はなかっただろうか、そういった点も十分考える必要がある。もしそういう教育を受けることなく大きくなってきておったとするならば、そういう面では気の毒な子供でもあるわけであります。今からでもそういう面についての指導や教育を徹底をして、そしてまともな人間として成長するような、そういう教育や指導も必要であるというふうに思っておるわけであります。
  237. 江田五月

    江田委員 私も実は弁護士でございまして、大臣も弁護士で、私自身も弁護士として、権利義務とか加害者、被害者とか原告、被告とか検察官、弁護人とか、そういうような物のとらえ方をする方がすっきりするし、論理は組み立てやすいし論争もおもしろいし、まことにそっちの方が好きなんですけれども、しかしやっぱり教育の問題というのは、そこではちょっと解決のつかぬ、そういう手法では本当に深く入っていけない、入り切れないものがあると思うのですね。  先日、日弁連がいじめについて、いや、いじめというよりも校則、体罰、警察への依存ということをめぐって、「学校生活と子どもの人権」ですか、こういう調査、基調報告書というものをお出しになって、文部大臣、日弁連調査を批判をされている。私はこれはこれで、日弁連の報告は報告で非常に大切なところをついておりますが、同時に、日弁連的なアプローチと違うアプローチが実は教育の場では、教育という面では必要だと思って、文部大臣の批判というのをなるほどなと、ある意味では理解をしながら読んだわけですが、しかし今の大臣のお話を聞いておると、やはり大臣も随分骨の髄、もう腹の底から法律家だなというような感じがしまして、確かにいじめる子供、いじめられる子供それぞれに、もちろん正すべきはきちんと正すということがある。しかしやっぱり、例えば中曽根総理はつい先日いじめのことについて、子供が根性を持つことが大切だ、やられて天井裏で泣いていたんじゃだめだというようなことをおっしゃって叱咤激励をくださったわけですが、私は今、いやそれは違う、根性もいいけれども、しかし本当にやわらかでしなやかな、ちょっと何かがあればすぐに傷がつく、そういう本当に弱い弱い感性というものもまた、そこにきれいな本当に美しい花が咲くことがあるわけで、そういうものをそういうものとして大切にしていくということが教育の場になければいけない。あるいはいじめの方だって、いじめる側の子供がまたいろいろな心の苦しみを持ち、いろいろなものがうっせきをしていじめという行動に走っている。その子もいじめることによって自分自身を傷つけている。自分自身の尊厳を害している。決していじめることによって自分が解放されていない。ますますうっせきをしていくというそういう子供たちの悩みというものを深いところで理解をしてやるというところから教育は始まらなければならぬと思うのですが、どうですか。
  238. 松永光

    ○松永国務大臣 私は、実は江田先生ほど法律に精通している男じゃないのでありますけれども、まあ法律をかじった一人なんでありますが、ただ私が申し上げておるのは、いじめといえば普通は意地悪がいたずらかあるいはそれに少ししんにゅうをかけた程度の精神的な苦痛を与える程度のことならば、これは温かく包むということも必要でしょう。しかし、今福島で被害者が自殺をした事件にしても、あるいは青森県の場合でも、いじめという表現になっておりますけれども、大変な暴力行為ですよ、あるいは反復継続して加害者が行った恐喝行為です。しかも、その加害者は小学生じゃないのでございます。十四歳、もう刑事成年に達している子供なんでありまして、これは温かさということだけでは、そういうふうに甘やかしてはいかぬような感じがするわけであります。  私は日弁連の調査や意見についてそれほど批判したつもりはないのです。ただ、先生も、先生の方こそまさしく経験があると思うのでありますが、非行とか犯罪とか犯した人の場合には、弁護しようとすれば必ずそこに走った要因ですね、誘発要因を取り上げて、そしてこれこれしかじか、こういう背景があるからこういうふうに走ったんだというわけで、誘発要因だけをよく取り上げるわけでありますけれども、しかし、本当に本人を改心させる、本人をして改過遷善せしめるためには、みずから道徳に反した行為をした、みずから悪いことをしたという認識を持たせなければ実は改過遷善もなされない、言うなれば真人間に立ち返らせることはできないわけでありまして、そこのところだけはきちっとさせてもらいたいというふうに私は感じておったわけであります。そういう点で、この宣言の中には主として、非行をした、いじめをした者の場合に弁護だけしてありまして、要するに誘発要因だけ挙げてあって、その人の道徳的な判断力や行動力や規範、意識などというものが欠落している者が、ほとんどの場合そういう子供が実は加害者になっておるわけであります。その意味で、みずからの反道徳行為、犯罪行為についての自覚を持たせなければならぬ、そういう点がやや足りないかなという感じを持ったからそういう点を指摘しただけのことなんでありまして、日弁連さんという大変大きな団体のしたことについて批判をした気持ちは実はないわけなんであります。
  239. 江田五月

    江田委員 日弁連に対する温かい御理解をいただきまして、本当にどうもありがとうございます。  確かに、大臣のおっしゃるようなところはあります。既に刑事犯罪、それも生易しいものでない刑事犯罪を犯しているというような実態があることも確かですが、同時に、さはさりながら教育だ。大体少年法適用年齢であることは当然ですから、これは教育ということが一番先にいかなければならぬ。教育ということはやはり子供に対する信頼、こちらは教える側、おまえたちは教わる側というそのけじめも大切ですが、同時に、子供たちと教える側とが人格的に触れ合っていくということが必要だと思うのですが、どうも今学校現場などが余りにも管理管理といって、すべて、子供は管理されるもの、教師は管理するもの、もっと言えば教師の中でも管理するものされるものが分かれていくというようなことが余りにも強くなり過ぎているのじゃないか。その一方で、子供は子供で、まさに異文化といいますか新人類といいますか、およそ大人の理解できない別のエイリアンが登場してきておって、ETみたいなものがばっとあらわれてきているというような感じがあって、学校の方はしきりに管理と言いますが、一方で子供たちは、例えば大臣、「夕やけニャンニャン」とか「とんねるず」とか、私もメモして初めてわかるわけですが、「少年ジャンプ」四百万部とか、ファミリーコンピューターが五百万台ですか、そういうような子供文化というものが学校以外のところでだあっと押し寄せているわけですね。子供の方は、学校でまことに管理が強くて、したがって学校にいる間というのは子供文化からすればまさに異文化の中におって、その間はとにかく死んでおるというような学校になっておるとすると、多少言い過ぎかもしれないけれども、私は当たっている面があると思うのですよ。そういう中で、この今のような管理優先というものでいいのだろうか。校長室とか職員室とか、ああいう学校の棟を管理棟と呼んでいるのですね。全部が全部じゃありませんが、呼んでいるところがかなりある。管理棟というふうに学校の中でそんな言葉が堂々と使われているというので本当にいいのでしょうか。
  240. 高石邦男

    ○高石政府委員 今おっしゃいましたように、教育が一人一人の子供の心情に合致して、そして一人一人の子供がみずから学習していろいろな行動の規律規範、そういうものを行うような形になっていくのが一番いい姿だと思うのです。ただ、そこに至るまでに、一定のしつけであるとか指導をしていかなければならない。その指導のあり方が強いとか弱いとか、場合によったら管理的過ぎるとか、そういう批判として出てくる場合があろうかと思うのです。ですから、あくまでその子供たちに対する発達段階に応ずる適切な指導ということは非常に重要でございますし、指導に当たっては、そういう繊細な微妙な気持ちを酌み取りながら、子供にマッチしていくような指導をしていかなければならないという点はそのとおりだと思います。(江田委員「管理棟、管理棟」と呼ぶ)管理棟というのはいつごろからどういうふうに呼ばれているか知りませんけれども、子供が冷やかしてそういうふうに言っている学校もあるかもしれませんが、通常の場合には職員室であるとか校長室であるとか、そういう言い方をしていると思います。
  241. 江田五月

    江田委員 局長、これはやはり認識を改めてほしいのですが、学校に入りますと木札で「管理棟」と書いて、あちらというふうな矢印をつけておったり、学校の中の建物の配置の中に管理棟という言葉を使っておったり、使われているのですよ。よく認識を改めてほしいと思いますね。  ところで、時間が余りありませんが、大臣、冒頭、いよいよ予算のときが最後の仕事になる、頑張るという力強いお言葉をいただいているわけで、まさに頑張っていただきたいと思いますが、その点に関係して、養護教諭の全校配置ですね、全校とはいかないかもしれませんが、第五次配置計画の二分の一、六カ年を経過する段階でもまだまだ必要数の五分の一程度というようなことで、ことしの五月二十九日の本委員会では、佐藤徳雄委員の質問に答えて、「六十六年度までかけて残りの計画について着実に実施していくように最大限の努力をしたい、」こういう答弁があるわけです。それにしてはどうも来年度の概算要求は、本来なら四百五十でなければならぬ——いや本当はそれでも足りないので、この間随分おくれてしまいましたので、六十六年度に完成をしようとするならば四百五十が五百、六百、いやもっとにならなければならぬかと思うのですが、これがわずかに三百という概算要求だと伺っております。これは本当なんでしょうか。そして、この三百という概算要求で本当に六十六年度までに着実に実施、完成するところまで持っていけるのでしょうか。そして同時に、三百は絶対にただの一名たりとも削ることはまかりならぬという大臣のかたい決意での、仮に削られた場合ですが、復活折衝をぜひぜひお願いをしたいと思いますが、その点の大臣の決意はいかがですか。
  242. 阿部充夫

    阿部政府委員 先生既に御案内のように、第五次の改善計画で五千名ほど全体でふやしまして、配置率九六%というところまで持っていこうということで努力をしておるわけでございます。御承知のような財政事情から、現在この定数改善計画の進行がスローダウンせざるを得なかったという状況にあるわけでございまして、二〇%程度の進捗率にとどまっておるわけでございますが、あと六年間で予定のものはぜひ完成させたいと思っておるわけでございます。ただ、毎年度の予算の事情等もございますので、ならして要求するというわけにもまいりません。その年度その年度の自然減がかなりございますので、その自然減の数との対比等を見ながらほぼ適当な数をということで、先ほどお話しになっていた三百名の要求をしておるわけでございます。もちろん大変厳しい中でございますけれども、全力を挙げてこの実現に努め、さらにまた六十六年度まで円滑に完成するように努力を重ねてまいりたい、かように考えております。
  243. 松永光

    ○松永国務大臣 概算要求したものが確保できるように最大限の努力をする所存でございます。
  244. 江田五月

    江田委員 どうもありがとうございました。  大臣、どうぞひとつ文部大臣としての経験をさらに生かして大いに頑張っていただきたいし、弁護士の先輩、政治家の先輩として今後とも御指導いただきますようにお願いをして、質問を終わります。
  245. 阿部文男

    阿部委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十九分散会