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1985-11-27 第103回国会 衆議院 農林水産委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年十一月二十七日(水曜日)     午前十時一分開議 出席委員   委員長 今井  勇君    理事 衛藤征士郎君 理事 島村 宜伸君    理事 田名部匡省君 理事 玉沢徳一郎君    理事 小川 国彦君 理事 田中 恒利君    理事 武田 一夫君 理事 神田  厚君       大石 千八君    太田 誠一君       鍵田忠三郎君    菊池福治郎君       北川 正恭君    佐藤  隆君       鈴木 宗男君    野呂田芳成君       保利 耕輔君    松田 九郎君       山崎平八郎君    上西 和郎君       串原 義直君    島田 琢郎君       新村 源雄君    辻  一彦君       日野 市朗君    駒谷  明君       吉浦 忠治君    菅原喜重郎君       津川 武一君    中林 佳子君  出席国務大臣         農林水産大臣  佐藤 守良君  出席政府委員         農林水産大臣官         房長      田中 宏尚君         農林水産大臣官         房審議官    吉國  隆君         農林水産省経済         局長      後藤 康夫君         農林水産省構造         改善局長    佐竹 五六君         農林水産学術会         議事務局長   櫛渕 欽也君         食糧庁長官   石川  弘君  委員外出席者         厚生省年金局企         画課長     鏑木 伸一君         厚生省年金局数         理課長     坪野 剛司君         労働省婦人局婦         人政策課長   松原 亘子君         農林水産委員会         調査室長    門口 良次君     ————————————— 委員の異動 十一月二十七日  辞任         補欠選任   月原 茂皓君     北川 正恭君 同日  辞任         補欠選任   北川 正恭君     月原 茂皓君     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林漁業団体職員共済組合法の一部を改正する  法律案内閣提出、第百二回国会閣法第八三号  )      ————◇—————
  2. 今井勇

    今井委員長 これより会議を開きます。  第百二回国会内閣提出農林漁業団体職員共済組合法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。日野市朗君。
  3. 日野市朗

    日野委員 農林年金制度が今大きく変わろうとしているわけでありますが、それに関連して何点かにわたって質問いたしたいと思います。  農林年金という制度は、ほかの共済年金と比べてかなりユニークな点といいますか、目的においてほかと同一視しにくい点が幾つかあるのではなかろうかというふうに思います。農林年金制度、これは農林漁業団体職員に夢を与えるようなものでなければならないというふうに考えているわけです。そもそも制度としてそういう目的をこれは持っていたというふうに思います。  私、今こうやって、私がおつき合いをしている農協職員さん、森林組合職員さん、漁協職員さん、そういった人たちの顔を思い浮かべてみるのですが、みんな一生懸命それぞれの地域で頑張っているということが言えると思います。特に漁協職員なんかを見ますと、本当にわずかな人数で、しかもかなりのいろいろな専門的な職もこなして、そして給料の点はかなり低い、しかも休日なんかも魚が揚がるとなれば出なくちゃいかぬ、見ていて気の毒でございますね。ほかの町場のサラリーマンなんか見ると、その間のかなりの格差というものも感じます。私は今時に漁協職員の方についてのお話をしたのですが、その事情森林組合でも農協職員でもそうは変わらないと思っています。  この人たちが一生懸命働いて、そして農林漁業発展のために貢献しているわけでありますが、こういう人たちに報いていく、その必要がどうしてもあるんだろうと私は思います。この点についての根本的な認識といいますか、考え方、これは私の情念が先走っているのだとは私は決して思っていないわけでありますが、こういう人たち労働条件をできるだけよくしていこう、年金の上からもよくしていこうという目的がこの農林年金制度にはあったはずであります。この点についての根本的な認識についてはいかがでございましょう。
  4. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 日野先生にお答えいたします。  先生指摘のようなことで、昭和三十四年に厚生年金から分離独立した制度でございます。当時、厚生年金給付水準公務員共済組合制度給付水準比較して相当大幅な差異が生じておりましたため、厚生年金適用農林漁業団体職員は、同一地域におきまして共済制度が適用されている市町村職員との間に福利厚生面で不利な条件が出、優秀な人材確保に支障を生ずるという事情がございました。  そんなことで、農林漁業団体につきましては地方公務員と同等の福利厚生面の充実を図ることとして制度を創設したものであり、近年におきましては、数次改正を経まして地方公務員及び国家公務員共済制度と全く遜色のない農林年金制度となっております。  こんなことで、農林年金制度発足経緯及び沿革等から、農林年金の果たす役割は今後ともますます重要というようなことでございまして、先生指摘のとおり、公的年金一元化の中でも制度間の給付負担均衡を図っていく必要がありますが、今後とも農林年金制度の育成については一層の努力を尽くしたい、こう考えているわけでございます。
  5. 日野市朗

    日野委員 具体的に農協森林組合、それから漁協というようなところの職員給与水準なんかを見て、現実にその水準公務員あたりと比べてどういうような現状になっているか把握してございますか。
  6. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 農林漁業団体職員給与につきましても、全国連から都道府県連あるいは単位組合というようなところで水準にもいろいろ差がございますが、今大臣が申し上げましたような農林年金制度発足のときの経緯と申しますか、特に市町村職員と比べて遜色のない処遇あるいは福利厚生というようなことから発足したわけでございまして、そういう意味農林漁業団体職員給与をおおむねこれと同様の条件にあります町村の職員比較をいたしますと、これは農林年金対象団体の中で郡部単位団体平均をとりまして比較をいたしますと、平均給与月額で申しますと、農林漁業団体職員給与が約五%、月額で一万三千円程度高い水準に、これは賞与を含む平均給与月額でございますが、なってきております。  今お話がございましたような農山漁村農林漁家方々のために、ある意味では一般サラリーマンと違った条件の中で働いておられるこれらの方々でございますので、近年農協等給与水準も大体民間企業一般上昇率にどうにか追いつくような水準で上がってまいってきておりますけれども、今後ともこういった農林漁業団体経営基盤の強化といったような経営改善方については、私どもとしても努力をしてまいりたいというふうに思っているわけでございます。
  7. 日野市朗

    日野委員 大分よくなってきた、こういう局長お話でございますが、現実を直視してみますと、どういうところにその形態があらわれているかということになると、細部にわたるいろいろな問題点がございますけれども、まず、水産庁と労働省が協力をして漁協職員労働条件一般についての調査をやった、これは数次にわたってやったと思いますけれども現実にそういうところの調査もやってみて、その結果というものは余り思わしいものには出てきていなかった、つまり考えられているよりもかなり低い水準調査のレポートには表明されているというふうに思うのです。これは農協やなんかについてもほぼ同じようなことが言えるというふうに私は考えております。  その調査の結果を今ここで発表してくれとかなんとかという問題ではございません。要は、こういう人たちが働く意欲をちゃんと持てるような、そしてそこに人材も集まってくるというような国の側の施策、それから団体側施策も含まれるわけでありますが、そういう施策がこのような年金制度改正に当たっても十分に生かされるように、少し情緒的な言い方をすれば、国とか団体の側の人材に対する愛情といいますか、そういったものが十分に生かされるような配慮が必要だろう、こういうふうに私は思うわけでございます。  これから再計算もいたしますし、財政調査なんかもやらなくちゃいかぬ、それから政令に任された事柄なども大分あるようでありますから、そういう点をいじるに当たってこれらの職員に対する愛情の度合いがはかられるというふうに思うのですが、そこいらについてどのようにお考えになっているでしょう。きちんと基本的な精神、つまりこれらの団体に働く人たち意欲を持ってその職場に働けるように、そしてそういうことは人材確保を図るようにということですが、そういう観点をきちんと据えながらやっていかれる覚悟はおありかどうか。
  8. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 先ほど大臣がお答えを申し上げましたとおり、高齢化社会に向けてこの年金制度は非常に難しい時期を迎えるわけでございまして、今後この年金制度は七十年に向けまして一元化という方向給付負担両面にわたりまして調整を進めていくということになっておりますけれども、その中におきましても、農林年金制度発足経緯、そして農林漁業団体に優秀な人材確保するというこの制度の原点を忘れないように、今お話がございましたような点も含めて対応をしてまいりたいというふうに思っているわけでございます。  今回の改革におきましても、法案で示されておりますように、制度発足経緯ということも考慮いたしまして、農林年金におきましても、基礎年金の上の二階建て厚生年金部分の上に職域年金部分というものを設けましたのもそのような考え方によるものでございます。
  9. 日野市朗

    日野委員 一元化の話が今出てまいりましたが、ではずばり伺いますが、一元化というものはどういうことを言うのか、その絵が十分に描き切れていないのではないかというふうに実は私は思うのです。一元化一元化という言葉が先行するわけでございますね。給付については一元化ということでございましょう。では、一元化ということは現在農水省としてはどのようにイメージを描いているのか、ちょっと教えていただけませんか。
  10. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 御存じのとおり、公的年金制度につきましては、昨年の二月二十四日に閣議決定がございました。将来の一元化を展望しながら改革を行うということで、既にさきの国会におきまして国民年金厚生年金保険及び船員保険につきまして基礎年金の導入を図る等の改正を行いました。さらに今回、共済年金についてこれに沿った制度改正を行うということにいたしまして御提案を申し上げるわけでございます。  これによって制度一元化に向かって一つ大きな前進が図られる、特に、給付面での制度間の整合性を図っていくという点では大きな一歩であろうかというふうに思っているわけでございますが、その後の一元化に向けての具体的な構想ということにつきましては、今回の改正措置を踏まえまして、今後七十年までかかりまして順次検討をされていくということになるわけでございます。いずれにいたしましても、公的年金制度全体としての長期的な安定と整合性のある発展を図るという見地から、各制度を通じて給付負担公平性確保されるように、必要な調整を七十年を目途に進めるということを内容にしているわけでございます。  この一元化という言葉でございますが、これは単純に各制度を統合一本化するというようなことを直接に意味しているわけではございませんで、言葉としてはかなり広い概念でございます。今申し上げましたように、各制度間の給付負担均衡なり、その公平性整合性確保されるような措置を進めていくということを内容とするものというふうに私ども理解をいたしているところでございます。
  11. 日野市朗

    日野委員 今一元化というものの一般論お話しいただいたわけですが、私はもっと立ち入って、一元化を進めていくという場合、農林年金制度というもののイメージが描き切れないわけでございます。共済年金制度一般について、まず給付については今度の各法案でこういうふうに一元化されていくということになったわけでありますが、では負担調整であるとか掛金の調整であるとか、こういったことについて農水省として今何か見通しを持っておられますか。
  12. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 先ほども申し上げましたように、給付面では今回の改正によりましてかなり一元化が図られる。これが仮に実施をされました暁に、その後において、負担面での調整とかあるいは整合性ということが次の問題になってまいろうかと思っております。これにつきましては、公的年金制度がそれぞれ抱えております問題、また共通をしている問題、いろいろな問題がございますので、それをどのように進めてまいるかというのは今後の検討にゆだねられておるところでございます。
  13. 日野市朗

    日野委員 今後の検討にゆだねられている、確かにそうでございましょう。今後、検討を進める事項ではございますけれども農水省として一応の見通しを立てておかないと、年金に関係している者としてはなかなか気が休まらない。気が休まらないところか、安心して制度一元化ということに取り組めないというふうなことになるのではなかろうかと思いますが、どうでしょう。局長さんなんかはいろいろな方とお話ししておられると思いますけれども、皆さんどう言っておりますか。
  14. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 年金制度の問題につきましては、各制度それぞれの持っておる問題、また共通に抱えている問題、いろいろな問題がございますので、具体的にどうするということにつきましては非常に多様な条件なり要素を考慮いたさなければならないわけでございまして、具体的なことは申し上げられないわけでございますけれども、いずれにいたしましても、農林年金制度が果たしてまいりました役割、また発生の経緯と申しますか、優秀な人材確保するという制度目的、そしてまた、それを達成するために農林年金財政の安定が損なわれないようにするという、この二つの基本的な考え方の上に立って今後の検討に当たってまいりたいと考えているところでございます。
  15. 日野市朗

    日野委員 一元化でどの程度までやっていくのかということは、確かに局長おっしゃっているとおりこれからの問題でございますが、やはり農林年金サイドからの積極的な物の考え方、物言いがあってしかるべきだと私は思っているんですね。閣議決定一元化、こう言ったからといって全部それに押し流されてしまうという、あなた任せではいけないと思うのです。  私、今度の制度改正経緯を見てみまして、この共済年金制度改正ということについて、臨調を初め、いろいろなことで問題を提起されて、それが一つの原動力となって物事が進んできて、農林年金についての積極的な発言がないままに押し流されているような感じが若干するわけでございますが、この点について大臣はどのような感想をお持ちでしょうか。
  16. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 一々途中経過の議論をこういうところで申し上げるのは適当なことではないと思っておりますが、今ちょっとお話がございましたけれども年金制度議論をいたします場合に、総体的に申しますと、厚生年金あるいは国家公務員共済というようなものの世帯の大きさに比べますと、組合員が四十八万五千人という世帯規模は確かに小そうございますので、そういう意味で、そういう世帯規模を背中にしょった発言力というような点で御心配をいただいているお気持ちも私どもわかるわけでございますけれども、私どもなりに、先ほど申し上げましたような観点からこの問題については今まで政府部内で発言をいたしてまいりましたし、今後もそういう方針で臨む考えでございます。
  17. 日野市朗

    日野委員 先ほどから一元化というのはどこいらまでやるのだという話でございましたが、さっき局長指摘された閣議決定の中にも、現業業務一元化するというところまで踏み込んだ閣議決定がなされているわけですね。これについてどのようにお考えになっておられるか、そしてその見通しはどうなのか、いかがでございましょう。
  18. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 御指摘のとおり、閣議決定の中には「給付負担両面において制度間調整を進める。これらの進展対応して年金現業業務一元比等の整備を推進するものとする」ということが含まれております。  この年金現業業務一元化につきましては、年金制度のあり方と密接に関連をする問題であると私ども認識をいたしておりますが、明年四月に予定をいたしております改正の後の年金制度一元化進展対応しまして、各制度にまたがります現業業務に係るコンピューターの相違によりますデータ管理の違いでありますとか、給付の裁定、データ集計の様式の違い、あるいは業務処理手順の独自の手法等々をいかに調和させて、受給者のサービスの向上なり効率的な業務処理を行うための方策を講ずるかという検討を進めていくものというふうに考えております。  しかし、長年それぞれの年金制度ごとに、それぞれの沿革のもとにこの種の業務を処理してまいってきておりますし、これを担当します相当数職員現実に存在をしていること等を考えますと、公的年金制度全体の現業業務を画一的に一元化するあるいは統合するということは、正直なところ現実には相当困難な問題があると私ども認識をいたしているところでございます。
  19. 日野市朗

    日野委員 今、まず現業業務について一例として伺ったわけでございますが、年金制度一元化ということで、具体的にどのようなものをイメージとして思い描くかというのはこれからの問題だということだけでは、関係者としてはどうも安心がいかないところが数々あると思いますので、これからのこういう作業について、私が先ほど言いましたそもそもの農林年金制度の掲げた理念といいますか、それをきちんと生かすように、一元化という言葉に押し流されないようにしていただきたいということだけはここで強く要望をしておきたいと思います。  では、少し細部にわたった質問をさせていただきます。  まず、退職共済年金障害共済年金在職支給という問題についてでございますが、これは一応所得制限を付して行うことになるわけでございますね。この所得制限はどの程度のものを考えておられるのでしょうか。
  20. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 御存じのとおり、農林年金におきましては、職域年金という建前から退職年金給付前提になっておったわけでございますが、今回の改正案におきましては、厚生年金との整合性というようなことも考え、また、本当に給付を必要とする方には重点的な給付をやっていくという考え方もございまして、農林年金を含む共済年金制度につきましても、六十歳に達していれば、低給与者につきまして、在職中であっても給与高低に応じて年金額の八〇%、五〇%、二〇%相当額支給するという制度を取り入れたわけでございます。この給与高低区分につきましては政令で定めることにいたしておりまして、厚生年金保険制度に準じて措置をする考えでございます。  現在、厚生年金には在職老齢年金の規定がございまして、この八〇、五〇、二〇%の支給対応します標準給与月額所得の幅というものが決まっておりますが、明年四月からのこの新制度発足に際しましては、この幅につきましても最近時点の条件を考慮いたしまして見直しをする、金額的に若干の引き上げを図る方向検討をされることになろうというふうに思っております。  この問題につきましては、いずれにしてもこういった所得高低区分ということになりますと、それぞれの共済年金制度、あるいは厚生年金共済年金で基準が違うわけにはなかなかまいらないということがございますが、厚生省その他関係各省とも協議をしてこの設定に当たってまいりたいと思っているわけでございます。
  21. 日野市朗

    日野委員 障害共済年金について厚生年金との整合性をお考えになったということでございますが、では、今考えておられるところと厚生年金とで違うところはどこですか。
  22. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 障害年金在職支給につきまして、今回共済年金制度におきましては所得水準に応じまして低所得の場合には在職中であっても支給をするというふうにいたしたわけでございまして、今までの制度に比べますと一歩前進を図ったということでございます。厚生年金におきましてはかねてから在職支給障害年金制度がございまして、そういった低所得という制限がついていない点が違っております。
  23. 日野市朗

    日野委員 そこがどうもわからないのです。厚生年金では一応全部障害年金が出るものが農林年金では出ない、所得制限が導入される、これは余り整合していないと思うのですが、そういう感想はお持ちになりませんか。
  24. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 整合性を今回の制度改正の中で図っておるわけでございますが、厚生年金共済年金とでは、厚生年金の場合は広くいわば被用者一般についての制度でございますが、共済年金の場合には一定職域というものを前提にした共済組合という制度仕組みになっておりますので、その点での違いというものが若干はやはり残っている、こういうことになろうかと思います。  先ほども申し上げましたように、職域年金という建前から、農林漁業団体退職をして共済組合職域を離れた者について年金給付するということにいたしていたわけでございますが、今回の制度改正の際に、従来、障害年金であっても同じ職域において給与を受けてなお年金支給するということは他の組合との均衡からできないというふうなことを制度建前としてとっておったわけでございますけれども一つ制度間の整合性、それからまた、給与が低い方について実際に給付重点化という観点から見た場合に年金支給必要性があるだろうということを考慮いたしまして、在職中であっても給与が低い者について一定年金額支給するということで、厚生年金共済年金制度建前の違いの中で一定整合化を図った、こういうふうに御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  25. 日野市朗

    日野委員 厚生年金共済年金制度の差があることはよくわかるのでありますが、大体農林年金というのは厚生年金に負けないようなシステムをつくり上げよう、こういうことがあったわけでございますね。厚生年金に負けない、それをできるだけ上回るような年金にしていこうということがあったわけでございまして、一応障害共済年金を出すということになれば、そこで制度間の違いというようなことを乗り越えているわけですな。一つ乗り越えているわけですが、もう一歩突っ込んで厚生年金と同じような取り扱いはできなかったのか。つまり、厚生年金でやっているように障害年金については全部出すんだというところまでもう一歩踏み込めるのじゃないですか、どうですか。
  26. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 その点は今回の改正の過程でもいろいろ議論をいたしたところでございますが、結論的に申しますと、先ほどのような観点で今回制度改正を行ったということでございます。  また一方では、今度、制度仕組み全体が変わりますので、障害基礎年金につきましては障害者になりますれば一律に給付をされるという点もございまして、これを含めた全体としての年金給付考えるとかなり改善されているというふうに考えられますし、もう一つは、今お話のございました厚生年金よりはすぐれた点を持つ共済制度という点につきましては、共済年金制度におきましては、厚生年金部分の上に三階建て職域年金部分を設けるということでの対応をいたしておるところでございます。
  27. 日野市朗

    日野委員 今の答弁答弁として伺っておいて、ただこのことは忘れないでいただきたいのです。理想としては厚生年金よりも上回るものをできるだけつくっていこうという当初からの理想があったということですね、そういうことによって人材確保を図っていこうというねらいを持っていたわけでありますから。  そこで、これから所得制限を導入するについては政令によってやることになるわけですが、大体どのようなことを政令として決めていこうとお考えになっているのか。
  28. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 これは今後具体的に詰めて政令で規定してまいることにいたしておるところでございますが、先ほど申し上げましたように、年金額支給は標準給与月額で幅を設けまして、その所得が標準給与のランクに該当する方につきまして、それぞれランクごとに八〇、五〇、二〇という支給割合での支給をするという基準を定めることにいたしているわけでございます。
  29. 日野市朗

    日野委員 この所得制限は、私なんか考えまして、できるだけ高いところに決めてもらいたいということは当然でございますが、それと同時に、例えば二十万というところで線を引いたとしますね、そうすると二十万までは障害年金はもらえるけれども、二十一万になったらもらえないということになったりするのですか。
  30. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 刻みを設けまして、所得の刻みによりまして支給率を決めるということにいたしますと、どうしてもその境目のところにつきましてはおっしゃるような問題が生ずる場合が出てくることは避けられないことだと思います。
  31. 日野市朗

    日野委員 刻みのところで、線引きの問題ですから、線引きで利益、不利益はあると思うのですが、余りにも天国と地獄くらい、ゼロか出るかというようなところで、そこいらが余りにも大きく食い違うということは問題があると思うのです。そこらを緩和していくといいますか、その刻みをもっと合理的につけていく、こういうことは考えられないのですか。
  32. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 この問題につきましては、農林年金独自の問題ではございませんで、他の諸制度共通の問題でございますので、私が今ここで農林年金のみの立場からお答えを申し上げにくい問題でございますけれども、そのような御意見がございましたことは承っておきたいと思います。
  33. 日野市朗

    日野委員 この点は問題になっておりまして、協議をするしかるべき場もあるでございましょうから、そこではこちらからもぜひ強く主張していただきたいと思います。  では次に、どんどん時間の方がたってまいりますので、ちょっと別の観点から、まず掛金について伺いたいと思います。  これは政令で定める範囲内で定款で定めることになっているわけでございますね。再計算をやることになるわけでありますが、この再計算の結果、掛金というのは一体どのぐらいまでなるか、まだ計算中でございましょうけれども、大体の見通しを教えていただけませんか。
  34. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 御案内のとおり、農林年金は五年ごとに財政の再計算をやっておりまして、現在、五十九年度末を基準にして昭和六十年度、今年度に計算を行いまして、六十一年度から新掛金率を適用するということで、農林年金理事長の諮問機関でございます年金財政研究会にこの再計算に当たっての基本的な事項について検討していただいているところでございます。その答申は来年の一、二月ごろになる予定というふうに聞いておりまして、まだ研究会で検討が行われている段階でございますが、今回の財政再計算では、現行制度による計算のみでなく、今回の法律案改正内容も加味していろいろ検討をいただいておるところでございます。いずれにいたしましても、答申をいただきまして来年の三月の組合会で定款に規定してある掛金率の変更を諮って、四月から適用することになろうかと思っております。  現時点においてこの利用できる基礎データをもとにいたしました大ざっぱな見通しては、不足財源率が大体三〇パーミル、千分の三十程度になるというふうに聞いておりますけれども、具体的には今後さらに精査が行われまして明確にされてくることになると思っております。  いずれにしましても、六十一年四月からの具体的な掛金率にこういった研究会で明らかになります不足財源率というようなものをどのように反映させ、どういう要素をいろいろ勘案していくかということにつきましては、この研究会の答申後に研究をし検討する必要のある問題だろうというふうに考えておるところでございます。
  35. 日野市朗

    日野委員 現在計算中だけれども、大体千分の三十程度上がりそうだということのようでございますが、そうすると大体千分の百三十九ぐらいになりそうだということですか。
  36. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 先ほど申し上げましたのは不足財源率ということで、いろいろな条件を置いて計算をいたしまして、財源率としてどの程度不足するかということを計算いたしますとその程度の数字が出てくるということでございまして、今この研究会の検討から出てまいります不足財源率を、具体的な掛金率に、どのような要素を勘案し、どの程度反映させるかということは、この計算の結果に基づいてまた検討、研究されるべき問題というふうに考えておるところでございます。
  37. 日野市朗

    日野委員 この不足財源率をずっと計算をしてまいりますと、悪い予測でございますが、かなり掛金が上がっていくことが考えられまして、私は非常に心配なんです。  ちなみにまず伺っておきたいと思うのですが、どの程度の掛金までみんなたえられるものと考えておられるのでしょうか。
  38. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 この問題もいろいろな考え方があるわけでございますが、現在の制度前提にいたしまして、高齢化のピークを迎えます二十一世紀の昭和百年というような時点について、現行の給付水準を維持していくということを前提にして試算をいたしますと、現在の掛金率の千分の百九というのが大体四倍程度、四百四十近い掛金率になるものと推計をされておるところでございます。そうなりますと、仮に事業主負担が二分の一というふうにいたしましても所得の約二割、また、実際の総所得からは税金だとか社会保障費だとかそういうものが差し引かれることを考えますと、これはなかなか、負担の限度をオーバーするような水準ではないか、そういう認識であるわけでございます。  今回の改正によりまして給付水準の適正化を図ることを前提にして試算をいたしますと、この四倍になるというのが大体三倍程度でおさまるであろう、そのくらいのところであれば、いろいろ外国の例その他から見ましてもどうにか負担をしていただけるぎりぎりの範囲の中に入るのではないか、こういったことを考えておるわけでございます。
  39. 日野市朗

    日野委員 私の今の質問はちなみにの質問でございまして、そんなそら恐ろしいことが現実の問題になってきたら本当に困るわけでございますね。ところが、今の改正の延長線をずっと探っていきますとそこに行かざるを得ない、こういうことになるわけでございますか。
  40. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 現行制度前提にいたしまして現在の給付水準給付仕組みを維持いたしますと、先ほど申し上げましたように、昭和百年には今の千分の百九というのが大体四倍ぐらいに上がらざるを得ないというふうに試算をされるわけでございます。
  41. 日野市朗

    日野委員 とんでもない高いものになってしまうわけですが、私は、先ほど局長が言われた不足財源率で大体千分の三十というやつですね、これでもかなりの激変だと思うのです。急激な負担増として皆さんお受け取りになるに違いないと思っているのですが、そのような負担増にならないような手段方法、これは考えておいでになるわけでしょうか。例えば、農林漁業団体振興会なんかは今ある程度の財源上の操作をしているわけですが、こういうものをもっと利用するとか、いろいろな知恵を出して急激な負担増を避けるという方向をとってもらいたいものだというふうに私なんか思いますが、いかがでしょう。
  42. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 今度の制度改正に伴いまして、例えば、今まで厚生年金の二〇%という国庫補助率と農林年金の一八%という補助率との差というものに着目をいたして予算措置をしておりました財源調整費というようなものにつきましては、今回国庫補助の制度基礎年金の拠出額の三分の一ということで共通化をされたということに伴いまして廃止をせざるを得ないと思っておりますが、相互扶助事業につきましては、これは直接的に給付費等に対する補助金とは性格が異なりまして、系統団体におきます一つの事業、そしてその事業を通じて間接的に農林年金財政にも役立っているというものでございますので、これも財政事情が非常に厳しい状況でございますけれども、今後ともその確保に努めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  43. 日野市朗

    日野委員 急激な負担増にならないように配慮をするということはお約束いただけますか。
  44. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 先ほども申しましたように、いろいろなデータから積み上げられました客観的な数字が出てまいりました後に、それを踏まえて具体的な掛金率を定款の規定に従ってどう決めるかというのは、その後の問題として検討されるべき問題であるというふうに考えております。
  45. 日野市朗

    日野委員 それから、この掛金の率なんというのは、今までは農林漁業団体職員共済組合法の一部を改正する法律案はしょっちゅう国会に出てまいりまして、掛金率なんかも国会でいろいろチェックをしてきたわけでございますね。これから政令でその幅を決めてしまうということになると、国会との縁は切れてしまうということになりますかね。
  46. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 掛金率につきましては政令で幅を決めておりまして、それに基づいて共済組合が決めるわけでございますが、この仕組みはこれまでもそうでございましたし、今度の改正後も変わるところはないわけでございます。
  47. 日野市朗

    日野委員 では、今度は特別支給でございます。つまりつなぎ年金と言われるものでありますが、これについてちょっと伺っておきたいというふうに思います、余り時間もありませんので。  これは、定年制というのはどんどん先に行ってくれればいいんですけれども、なかなか定年制の方は伸び悩みということでございますね。一方、年金支給はそれこそ先に行ってしまう。そこのところのギャップでございますが、これはどんなふうに考えておられますか。つまり、定年をもっと延ばすということの積極的努力がないと、年金との間のギャップが非常に大きくなってきて、みんな違和感を持つだろうと思うのですが、ここらはどのようにこれから指導していかれるおつもりなんでしょうか。
  48. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 農林漁業団体職員の定年年齢は、男子総平均で五十七・八歳ということになっております。また、農林漁業団体の大宗を占めます総合農協の男子につきまして、現在の年金支給開始年齢でございます五十六歳、これが今後順次上がっていくわけでございますが、この五十六歳を基準にして見ますと、五十六歳以上の定年年齢を定めている組合が五十六年度六三・三%でございましたものが五十八年度七一・七%ということで、漸次延長をされてきてまいっております。  この農林漁業団体の定年年齢の延長につきましては、我が国全体が高齢化社会に向かっている、そういう社会状況に対処をする観点から、従来から私ども関係団体に対して通達で指導いたしてまいりましたけれども、今回また改革法の中で従来の支給開始年齢引き上げの経過措置が若干加速をされるということも含まれているということがございますので、年金支給開始年齢との間にすき間を生じることがございませんように、今度の制度改正内容も踏まえまして、定年年齢の延長について労働省とも連携をとりながら十分指導をしてまいりたいというふうに思っておるところでございます。
  49. 日野市朗

    日野委員 もう時間がなくなってきましたのでちょっと要点だけ伺いますが、このつなぎ年金について、基礎年金には三分の一が補助になるのですから、ここについても同じように三分の一ぐらいの補助を入れるという政治的な判断、これは当然やってしかるべきだというふうに思いますけれども、いかがなものでしょう。
  50. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 今回の制度改正によりまして、従来、各制度によって国庫補助の仕組みが異なっている、不均衡であるという議論がいろいろございましたので、公的年金制度年金の中で基礎年金というふうな形で共通部分を取り出しまして、その部分について全部拠出金の三分の一の国庫補助を行うという統一的な仕組みに変更をされたところでございます。したがいまして、これは国家公務員共済初め他の共済も同様でございますので、農林年金のみ独自の国庫補助を行うということにつきましては、難しい問題であるというふうに考えておるところでございます。
  51. 日野市朗

    日野委員 ほかとの並びの説明をされてしまうとこっちも聞きにくいことなんですが、では、ほかとの並びじゃないところで、職域年金について教えてください。  職域年金は、これはもうほかとの並びではなくて、まさにこれは農林年金の特徴的なといいますか、特色が出る部分だというふうに思うのですが、これは厚生年金給付水準なんかと比べてもっと引き上げるようにしたらどうなんでしょうか。これはできないですか。
  52. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 職域年金部分につきましては、これも共済年金の中で例えば国家公務員地方公務員方々につきましては、公務員という職務の特殊性なりあるいは特別な身分上の地位というようなものとの関係を考慮して、あるいはまた農林年金でございますと、いろいろな団体が対象になっておりますけれども、多少とも公共的な性格のある事業を行い、また地方公共団体ともいろいろ密接な関係がある、こういった職域の特徴に着目をいたしまして職域年金部分をつくったわけでございますが、それと同時に、やはりこれは職域年金として設けたということでございますので、共済年金全体の共通の問題として、この職域年金の大きさをどの程度にするかということにつきましては、現役組合員負担との均衡ということを考える必要がある、そういう意味での共通性も一面ではあるわけでございます。  今回もいろいろ検討いたしました結果、職域年金部分厚生年金相当部分の二割ということで、千分の一・五という支給率にいたしたところでございます。
  53. 日野市朗

    日野委員 私は、二割ではいかにも少ないではないかと思っているのですが、どうなんでしょう。この部分については農林年金の特殊性といいますか特色、そういうものを生かしながら自主設計をやってもいい部分ではないかとさえ私は考えるのですが、少なくとも農林年金の持っていた理念といったものは生かす。できるだけ生かしていくというふうに先ほど大臣もお答えになったし、局長もそういう考えを基礎にしてやっていきますとおっしゃっているので、こういう部分なんかやれるんじゃないかと思いますが、どうでしょう。
  54. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 この点につきましては、先ほど来御議論がございますような農林年金制度沿革市町村職員と劣らない制度をつくるという制度沿革からいたしますと、やはり地方公務員共済年金と比べて遜色のない仕組みということが必要でございますので、そういう意味で、公務員ではございませんけれども農林漁業団体につきましても職域年金部分をぜひつくってもらいたいということを私ども強く主張いたしまして設けたものでございます。  また、いろいろ、例えば厚生年金基金のような仕組みで自由にやったらいいではないかという御議論も確かにあるわけでございますが、昨日の参考人の意見陳述でも榊理事長からお話がございましたように、農林漁業団体は非常に規模の小さな団体がいろいろございますのでなかなかああいう制度にはなじみにくい、むしろ農林漁業団体全体として統一的な職域年金部分というものを制度として仕組んでもらった方がいい、こういう団体側の御意見もございましてこういう形にいたしておるわけでございます。
  55. 日野市朗

    日野委員 終わります。
  56. 今井勇

    今井委員長 次に、菅原喜重郎君。
  57. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 農林共済年金改正案につきまして質問をいたすわけでございます。  まず、近年における我が国の社会的変化の中で最も著しいのは人口構造の変化でございます。平均余命年数の伸長等により高齢化が進展し、昭和五十六年十一月の厚生省人口問題研究所の推計によりますと、国民総人口に占める六十五歳以上の割合は昭和六十年に一〇・一四劣であるものが、昭和百年には二一・二九%と実に二倍強になるものと予想されております。これは農林年金制度においても例外ではないと考えますが、農林年金制度における年金受給者組合員の将来見通しはどのように予想しているのか、お伺いいたします。
  58. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 農林年金制度の現状について見ますと、五十八年度末現在時点で組合員数が四十八万五千人で年金受給者数が十二万八千人、このうち、減額退職年金も含んででございますが退職年金受給者数が七万九千人ということでございまして、いわゆる成熟率という比率を見ますと一六・二%、組合員の方六人で退職年金受給者一人という割合になっております。  また、今後の将来見通しということになりますと、組合員数は今後従来のような増加はなかなか見込めないものと考えておりますが、年金受給者の方は平均余命の伸長によりまして今後さらに増大をしていくことになると考えておりまして、昭和八十五年度には成熟率が三七・五%、組合員二・六人で年金受給者一人の割合になると予想いたしております。したがいまして、現在、共済年金あるいは厚生年金も含めまして農林年金の成熟率は真ん中辺でございますが、今後成熟率の上昇がかなり急速に高まるというふうに見込んでおるところでございます。
  59. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 大臣にお伺いしますが、今の答弁のような人口構造の変化は年金制度に大きな影響を与えるものと考えております。現役組合員年金受給者の割合が増大していくと年金制度そのものを維持していくことが大変なことでありますが、今回の改正はどのような観点に立って制度改正を行うこととしているのか、お伺いいたします。
  60. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 菅原先生にお答えいたします。  先生御存じのとおりでございますが、我が国の人口構造は今後ますます高齢化が進展して高齢化社会へと移行するものと考えております。農林年金制度につきましても、このような社会経済情勢の変化に対応するために、三つの点に配慮して対処する必要がある、こう思っています。  その一つ公的年金制度全般の整合性を図ること、二つ目には制度の円滑な運営を図るため、適正な給付水準確保するとともに負担との均衡を図ること、また世代間の公平にも配慮することでございます。三つ目には制度財政の長期的安定を図る必要があること等に配慮いたしまして対処したいと考えております。
  61. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 我が国の就業構造の変化は、総理府の労働力調査によれば、昭和三十五年当時就業人口の約半数がサラリーマンであったが、昭和五十七年になりますと四分の三がサラリーマンということになっております。反面、自営業者や農業者が減少してきております。このため全国民に共通する基礎年金を設けて就業の形態に関係なく世代間の扶養のシステムを確立しようとしているわけでありますが、このことにつきましては私として異論はないわけでございます。  しかし、農林年金制度において基礎年金を適用する場合、農林年金組合員とその被扶養配偶者の給付はどのようになるのか、お伺いしておきます。
  62. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 今回、全国民に共通基礎年金制度ができることになりましたので、農林年金給付は原則として基礎年金に上乗せをして支給をする給与比例年金ということになるわけでございまして、公的年金としての性格を有します厚生年金相当部分の年金額共済年金としての職域年金相当部分の年金額を加えたものが給与比例年金ということに相なりますので、農林年金はこれの合計額を給付するという形になるわけでございます。  それから、組合員の被扶養配偶者につきましては、これも新制度のもとでは国民年金の被保険者ということになりまして六十五歳から基礎年金給付されるという形になりますが、その保険料につきましては直接国民年金に納付するということではなくて、奥さんの保険料相当部分については、農林年金から国民年金への拠出金として組合員の保険料相当分と一括して納入することにいたしております。  なお、基礎年金支給開始年齢が六十五歳からということになっておりますために、農林年金支給開始年齢が今五十六歳支給でございますが、昭和七十年に六十歳になるように段階的に引き上げるということにいたしておりまして、この支給開始年齢から六十五歳に達するまでの間は、農林年金から給与比例年金に加えまして組合員基礎年金相当額の定額年金支給するということにいたしておるわけでございます。
  63. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 一般サラリーマンは引退すると直ちに生活の糧を失うことになり、その結果、年金制度に対する依存度が非常に強いと考えるのであります。このため、給付水準の低下は年金受給者にとって最も関心のあるところであります。  基礎年金を導入して適正な給付水準を設定するとしているが、適正な給付水準とはどのような給付水準をいうのか、現行の給付水準を大幅に下回るということはないのか、お伺いいたします。
  64. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 給付水準の設定につきましては、掛金を負担いたします組合員所得年金を受給されます方の所得とのバランスというものが図られなければならないというふうに考えております。今回の年金制度改正の底に大きく流れている考え方といたしましては、これまで三十年とか三十五年というようなものを標準として考えておりました年金仕組みが、成熟率も高まってくる、高齢化社会の実現に伴いまして組合員期間四十年というような方が一般化してくることになりました場合に、今の仕組みで申しますと、掛金を負担しております現役の組合員に比べて受給者給付水準が相対的に高くなってくる、あるいはまたそれを賄うためにはかなり掛金を上げなければいけない、そういうことから年金給付仕組みを適正化する、こういうことがあるわけでございます。  今回の改正案によります給付水準は、現役組合員の標準的な四十五歳で夫婦子供二人というような方の給与を想定いたしまして、組合員期間四十年ということで計算をいたしました年金水準というものを考えますと、現役組合員の標準的な方の給与の大体七割程度給付水準ということになりまして、現役と年金受給者の間のバランスということから考えました場合、ほぼ妥当なものであろうというふうに考えておるところでございます。
  65. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 既得権を擁護するというのは政治の要請でもあると思いますので、この点への配慮をお願いしたいと思います。  次に、年金受給者所得と現役組合員所得均衡を図ることも大切であると考えるわけでございますが、高齢化社会が到来します二十一世紀ごろまで現行の給付水準を維持していくとすれば、組合員負担は相当過重なものになるのではないかと考えるわけでございます。今回の改正において給付負担についてどのような均衡を図ろうとしているのか、お伺いする次第でございます。
  66. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 現行の給付水準を維持してまいることを前提にして試算をいたしますと、高齢化のピークを迎える二十一世紀の昭和百年というような時点をとりますと、掛金率は現行の千分の百九が約四倍程度になると推計されるわけでございます。このようなことになりますと、仮に事業主二分の一負担ということで申しましても二割近い負担になりますので、これは負担の限界を超えることになるのではないかというふうに判断をされるわけでございます。このため、年金給付につきましては、現役組合員所得から租税だとか社会保険料等が控除されているということもございますので、いわゆる可処分所得の額において現役組合員年金受給者との所得均衡を失しないものにする必要があるということで、先ほど申し上げましたように組合員期間四十年で計算をいたしました場合の年金額が現役の所得の大体七割程度という水準にいたしました場合には、四倍に上がるであろうと推計をされます掛金負担が三倍程度にとどまるということで、この辺が負担給付のバランスのそれぞれの限界の範囲内にどうにか入るというところではないかと考えているわけでございます。
  67. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 現在でも相当の掛金負担増が見込まれるわけでございますので、この改正につきましては均衡が本当に図れるような対応策を十分に考慮するように、また対応するようにお願いしたいと思うわけでございます。  次に、今後高齢化社会を迎えて、年金制度はその維持に大変な時期が到来するものであると思いますが、先ほどからお伺いしておりますと、給付水準は適正な水準と言って実はある程度の引き下げを図っており、負担給付との均衡を図ると言って引き上げざるを得ないのではないか、私はこう考えるのでございます。このようなことは関係団体やその職員あるいは年金受給者にしてみれば大変な不安、不満なことであります。  農林水産省は農林漁業団体やその職員または年金受給者に対してどのような理解を求めてきたか、この点をお伺いします。
  68. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 この農林年金制度改正につきましてはいろいろな御意見がございます。参考人の御意見の中にもいろいろ出ておったわけでございますが、その中で、既得権あるいは期待権の保障の問題あるいはまた地方公務員等に劣らない職域年金部分を設定してもらいたいというような御意見がございました。特に、負担給付均衡という問題になりますと、既に年金を受けておられる方、それから近く組合員から年金受給者になられるような方、また若いこれから長期間掛金を払っていかなければならない方、具体的な問題になりますとなかなか御意見も一本にまとまりにくいという面もあるわけでございますが、これは非常に重要な問題でございますので、そういう中でこれまで事業主と組合員との間の利害の調整とか加入者団体相互の間のコンセンサスの形成というようなことに私ども努力をしてまいったわけでございまして、農林漁業団体職員共済組合の中に組合会というものがございますが、ここにおきます御議論、あるいは農林年金の構成団体でございます農協漁協等の系統ごとあるいはまた全国団体、県段階ごとの御意見、また年金受給者団体方々の御意見をも伺いながら、またさらに組合員代表、事業主代表、それに学識経験者の方々に入っていただきまして農林年金制度に関する懇談会というようなものを五十七年の十月から開催をいたしまして、関係者の御意見を十分伺いながら今度の改正案の作成に当たってまいってきたところでございます。
  69. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 農林年金制度は、農林漁業団体に優秀な人材確保するため、同一地域にある市町村職員あるいは学校の教師等と同様の年金制度を設けるため、昭和三十四年に厚生年金から分離独立した特定の職域を単位とする共済組合制度でありますが、今回の改正においてもそのような特殊性は維持していくべきであると考えております。しかし、維持されているのか、維持されているとすればどのようなところが特殊性なのか、お伺いいたします。
  70. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 この点につきましては、今度、制度仕組みの大きな変更があったわけでございますが、その際、いわゆる農林年金支給をします上乗せ年金給与比例の年金の中で厚生年金相当部分のほかに、農林年金公的年金制度としての性格と同時に農林漁業団体の事業の円滑な運営あるいは人材確保を図るというねらいがございますので、農林漁業団体職員の相互扶助の一環としての性格も持っているという観点から、これは公務員ではございませんけれども農林漁業団体職員共済につきましても職域年金部分給付を行うということにいたした点が、今先生指摘になったような点のお答えになろうかというふうに思っておるわけでございます。
  71. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 農林年金制度は、公的年金制度であると同時に農林漁業という職域に働く職員人たちのための職域年金制度でもあるわけでありますから、職域年金に相当する部分は農林漁業団体及びその職員負担の範囲において設計すべきではないかとも思います。負担給付均衡を図りながら各制度の自由に設計できるようにするのが職域年金の特殊性ではないかと考えているわけでございますが、この点についてはどういう所見をお持ちでございますか。
  72. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 確かに職域部分は自由設計にしたらどうかというような御議論があることは私どもも承知をいたしておりますが、組合員負担も考慮する必要がございますし、また厚生年金部分以外は自由に設計するということになりますと、公的年金としての厚生年金部分は結果として厚生年金に戻ることにもなりかねない、そうなりますと、農林年金制度というものの維持そのものにも問題が出てくるというようなこともございますし、何よりも、先ほど来申し上げておりますように厚生年金から分離独立いたしましたときの沿革というようなことを考えますと、そしてまたさらに申せば、農林漁業団体職員共済は非常に多様な団体を中に含んでおりますので、そういう意味でも自由設計ということでやれるところ、やれないところというような非常にばらつきが出てくるという問題もございます。やはり市町村職員と同じような職域年金の設定というものを制度的にやってほしいという関係者の御要望もございましたので、自由設計ということではなくて、制度的に組み込んで統一的な職域年金部分を設けることにいたしたわけでございます。
  73. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 先ほども申し上げましたが、サラリーマンは引退すると生活の糧を失うことになり、年金は老後の生活の支えになっておるわけでございます。それを、老齢者が多くなるとか負担が大変になるからといって、現に受けている給付まで適正化の名のもとに切り下げることは年金受給者の死活問題であると考えます。  また、近々退職をする人たち退職後の生活設計を立て、自分の年金を計算していると思います。そういった人たちの既得権、期待権は絶対に尊重していただきたい、またしなければならないと考えているわけでございますが、この辺のところはどのように考えているのか、お伺いします。
  74. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 この点はやはり制度改正に当たりまして受給者方々から一番強い御要望のあった点でございます。  その点につきましては、現在農林年金年金額の計算方式はいわゆる共済方式と通年方式とがございまして、それで計算をしまして、いずれか受給者にとって有利な方、高い方の額をその方の実際の年金額にするということにいたしておるわけでございますが、今回の改正案におきましては、既に年金を受けている方の年金額については、改正後の年金の算定方式に類似をしております改正前の従来の通算年金方式により算定した額にすべて改定をするということにいたしまして、新たに年金を受ける方の年金額水準との均衡を図るということを原則にしているわけでございます。  これで、従来共済方式で計算をした方が高い額になっておられた方につきまして現在受けておられるような年金額が減額をするというようなことになった場合には、現に支給をされている年金額についてこれを従前の年金額として保障するということで、まあ俗な言葉で申しますと既得権の保障という措置を講ずることにしているわけでございます。  また、期待権という問題が一つございまして、施行目の前日にこれも組合員期間が二十年以上の組合員である方につきましては、施行日の前の日に退職をしたならば受けられたであろう年金額というものを、やはり改正後の法律の原則にかかわらず、施行日前に退職した場合に受けられるであろう年金額の方が高い場合にはそれを保障するということで、期待権を保障するという措置もあわせてとっておるところでございます。
  75. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 再三申し上げるようでございますが、期待権とか既得権、そういうものの尊重を、ぜひ法改正の中で遺漏のないように対応できるようお願いする次第でございます。  次に、現行の法律の規定によって計算される年金額改正後の法律の規定によって計算される額を上回る場合は、現行の法律の規定によって計算される年金額は従前の額として保障するとしておりますが、この従前の額は物価スライドしません。年金額の毎年のアップを楽しみにしている高齢年金受給者には酷な措置ではないかと思いますが、この点はいかがでございますか。
  76. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 この既裁定年金の従前の額の保障を受けた方につきましては、制度改正後の年金額がいわばスライドで追いついできますまでの間は、物価スライドについては、俗な言葉で申しますれば足踏みをさせるという仕組みをとっておるわけでございます。これについては、年金受給者の楽しみを奪うものではないかという御意見、そしてまた受給者方々からも少しでもいいからスライドをしてくれることはできないかという声がありますことは私どもも承知をいたしておりますが、これにつきましては、やはり施行日以後におきます年金受給者と現役組合員との間の給付負担均衡という問題、あるいは施行日以後に新たに年金を受けられる方と既に年金を受けている方との間の給付のバランスという問題、また、スライドを仮に実施するということになりますれば、その仕方にもよりますけれども、当然給付費は増大をしてまいるわけでございまして、その分、現役組合員の方の負担がそれに応じて大きくなってくるというようなこと等がございまして、これは農林年金制度に限らず、各共済制度共通措置として最終的にはこういった足踏み椅置をとらざるを得ないということで、共通措置として決定をされたものであるということを御理解いただきたいと思うわけでございます。
  77. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 今回の改正は、公的年金制度整合性を図ることを改正一つの柱としておりますが、一般サラリーマンが適用されている厚生年金と同じような制度としなければ官民格差が是正されたとは言えないと思います。  ところが、障害年金者に対して厚生年金では在職中であっても全額年金給付を行なっております。農林年金改正案は、在職申の給付は行うが所得により一定給付比率を定めるやに聞いております。今まで農林年金の有利な部分は厚生年金に合わせているのでありますから、障害年金在職支給厚生年金と同様全額支給すべきではないかと思うわけでございます。この点についてはいかがでございますか。
  78. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 今回の制度改正におきましては、各種の年金制度給付の面での整合化をできるだけ図っていくことが一つの大きなねらいになっておるわけでございますが、同時に、一般被用者を対象といたします厚生年金職域年金として構成をされております共済年金とは、その共済年金という制度でありますがための特色を持っているわけでございまして、それゆえにこそ職域年金部分というようなものも設定をされておるということがあるわけでございます。  農林年金につきましては、職域年金ということで、その職域を離れて、つまり農林漁業団体退職して初めて年金給付するということが大原則ということで従来やってまいってきたわけでございまして、障害年金でも、同一の職域給与を受けながらなお年金支給するというのは共済年金の性格からして難しい、こういうことを言ってまいってきたわけでございますが、今回の制度改正に当たりまして、制度間の整合性を図る、そしてまた、特に障害者である方の場合、所得が低い場合には年金の受給の必要性があるであろうということ、給付重点化ということも今回の制度改正一つの大きなねらいでございますので、障害者であります場合、在職中であっても給与が低い方については一定年金額給付をするということで、共済年金制度建前の中で一歩前進を図って厚生年金との間の差を縮めた、こういうことにいたしておるわけでございます。
  79. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 私は厚生年金農林年金との違いはまだあると思います。それは、厚生年金は過去何回か改正しておりますが、旧法とか新法とかという区別がありません。ところが農林年金は、昭和三十九年の改正を境にして旧法と新法を区分して給付に差を設けております。こういったところも厚生年金に合わせて旧法、新法の格差を廃止して、厚生年金と同様、農林年金組合員退職した時期によって給付が異なるということではなく、相互扶助事業でありますから皆同じような給付が受けられるようにすべきだと考えるわけでありますが、この点はどうですか。
  80. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 この新法、旧法の格差の是正の問題につきましては、当委員会におきましても何度も取り上げられた問題でございます。御案内のことと思いますが、農林年金昭和三十九年九月以前のいわゆる旧法時代の期間につきましては、この制度発足当初から恩給制度及び旧国家公務員共済組合制度に準じて設計をされておりましたため、昭和三十九年十月以後のいわゆる新法時代の期間とはその取り扱いに格差が生じておったということがございます。  しかし、今回の農林年金改正におきましては、これまで当委員会で何回も出ておりました御議論というものも踏まえまして、そしてまた、農林年金におきます新旧制度の切りかえ、昭和三十九年でございますが、これが国民年金の創設によります国民皆年金の開始の昭和三十六年より後であったということ、そして、今回、基礎年金制度の導入に当たりまして、農林年金受給者については昭和三十六年以後の期間はひとしく基礎年金の受給の対象期間として扱われることになったというようなことも考量いたしまして、今回の改正に当たりまして、年金額の算定については旧法期間と新法期間を同様に取り扱うということで、このような格差は解消をされることにいたしたわけでございます。  この点は、共済年金制度の中でも、農林年金法の改正について、農林年金のこれまでの経緯の特殊性というものを踏まえた、ある意味では独自の改正部分になっておるわけでございます。
  81. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 今回の改正では、まだまだ厚生年金と違った面があると思います。一挙に合わせることも難しいと思いますので、今後においても整合性を図るようにしてほしいと思います。  また、制度が分立していることが原因がとも思いますので、現在七制度になっておりますが、制度が分立していることによって給付に有利、不利が生ずることは好ましくないと思います。公的年金制度整合性から、このような問題点は解消すべきものと考えますが、いかがでございますか。
  82. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 今回の改正のねらいというのはいろいろございますけれども一つのポイントといたしまして、年金受給者の相互間におきます給付面均衡ということについてもねらいにしているわけでございます。  現行の制度の分立によります給付の重複の問題につきましては、年金の併給調整によってその解消を図ることにいたしております。同一の制度内、他制度間を問わず、一人が二以上の年金を受けることができる場合には、原則としてその方の選択によりまして有利な方一つ年金支給することにいたしております。これは、公的年金給付と申しますのはそれぞれ一つ年金受給者の生活の支柱としての役割を果たすものとして設計をされているということがございますし、二以上の年金を受給できる方とそうでない方とのバランスを図るという必要もございます。また、将来にわたる年金給付の適正化を図ってまいります場合に、やはりより必要性の高いところに給付重点化していくということから、年金受給者間の均衡を図り公平を確保することが重要であろうということで、併給調整仕組みを設けているわけでございます。  それから、現在の公的年金制度の間におきます不均衡の問題につきましては、今回某礎年金を全国民共通に適用するという仕組みをつくりますと同時に、給与比例年金につきましても厚生年金との整合性を図ることにいたしておりますので、この点についても対応をいたしておると考えておるところでございます。
  83. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 農林漁業団体の定年年齢は平均的に見て五十七歳であると見ておりますが、定年年齢が六十歳になるにはまだ相当の期間がかかるものと考えます。基礎年金支給開始年齢は六十五歳となっており、農林年金基礎年金を導入することによって退職年齢と基礎年金支給開始年齢との間に相当のすき間が生じるものと考えるわけでございます。年金支給年齢と定年退職年齢との間にすき間が生ずることは好ましくないと考えるわけでございますが、この点はどうでございますか。
  84. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 私ども年金支給開始年齢と定年年齢との間にすき間が生じることは好ましくないと考えておるところでございまして、今回いわゆるつなぎ年金という制度が六十五歳になるまでの間設けられるわけでございます。これの支給開始年齢が、現在農林共済年金は五十六歳でございますが、これを昭和七十年までに六十歳に順次引き上げていくということになっておりますので、私どもといたしましても七十年を目途に定年年齢の引き上げの指導を労働省とも連携をとりながら努力をしてまいりたいと思っております。  農協中央会などの農協の定年制についての考え方、実態というようなものの調査から見ますと、きのうの参考人の意見陳述の中でも、昭和六十四、五年ぐらいまでには六割ぐらいの農協は何とか六十歳に定年を持っていけるのではないか、残った四割くらいを七十年までかかって定年延長していくという努力が必要だと認識しているというような御意見もございました。これは個々の組合経営状況あるいは人事管理とも関連をしますので、そう簡単なことではないと私ども思っておりますけれども、関係団体ともよく相談をしながら、今御質問にございましたような気持ちに対応すべく努力をしてまいりたいと考えております。
  85. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 農林年金制度農林漁業団体という職域年金制度であると同時に公的な年金制度でもあるわけで、国の補助金も定率補助の一八%と財源調整費補助があります。従来、国民年金についても給付費の三分の一の国の補助金があります。今回の改正農林年金制度についても基礎年金を導入すると、国民年金であります基礎年金に対する補助金と農林年金の補助金はどのようになるのか、大切な点でございますのでお伺いいたします。
  86. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 公的年金制度に対します国庫補助につきましては、現在、制度によってかなりまちまちでございまして、国民年金の場合は給付費の原則三分の一、厚生年金は原則二〇%、農林年金とか私学は原則一八%というようにそれぞれ異なったものになっております。このことにつきまして、これまでもいろいろ御議論のあったところでございまして、今回の改正に当たって制度ごとの国庫補助の不均衡というものをなくすということで、公的年金制度の中で共通部分を基礎年金という形で取り出しまして、このための拠出金の三分の一を国が補助するという統一的な仕組みに改め、農林年金制度につきましても、農林年金から基礎年金への拠出金の三分の一を国から補助をする、こういうことにいたしておるわけでございます。  なお、国民年金制度発足前の昭和三十六年三月以前の期間に係る給付に対する国庫補助につきましては、今度の国民年金の導入と関係がございません時期の、国民年金が存在する前の時期の期間に対応する給付でございますので、これにつきましては現行の補助の仕組み、補助率を継続するということにしておるわけでございます。  なお、農林年金につきましては従来財源調整費補助というものがございましたが、これは厚生年金が二〇%、農林年金が一八%というような補助率の差をできるだけ調整をしようという趣旨で設けられたものでございますので、この財源調整費補助は、今回国庫補助の方式が公的年金制度全体を通じて統一をされることに伴いまして廃止をすることにいたしておるところでございます。
  87. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 年金受給者は、物価の上昇等により年金額が目減りしていくことはそれだけ生活を圧迫されるわけでございまして、これは大変なことであります。年金額については物価の上昇率に合わせてスライドさせるべきであると考えておりますが、昭和五十八年度は、二・四%の物価上昇があったにもかかわらず年金額の改定を行いませんでした。その後昭和五十九年度は、五十八年度の積み残しを合算して四・四%の物価上昇を織り込むべきものを、年金額改定は二%しか実施しなかったわけであります。さらに六十年度は、積み残し分を合算すると四・五%になるものを三・四%の改定を行ったにすぎません。この積み残しは今後どのようにするのか、お伺いしたいわけでございます。
  88. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 この点もたびたび御議論になっているところでございますが、昭和六十年度におきます物価スライドによる年金の改定につきましては、国民年金法及び特別児童扶養手当等の支給に関する一部改正法が成立をいたしまして厚生年金においてスライドが行われましたことから、これに準じて三・四%のスライド措置を講じたところでございますが、御指摘のように、本年度三・四%のスライドを行いましてもなお現実の消費者物価指数、これはベースは昭和五十五年でございますが、これの消費者物価指数の上昇との間に差が一・二%程度あるといいますか、残ることは御指摘のとおりでございます。  今回、農林年金改革の中で年金額の改定方式は消費者物価による自動スライド制によることを考えておりますが、このような改革に際しまして過去の積み残しを残して来年の四月からスタートするというのは妥当ではないというふうに考えておりまして、今回提出しております農林年金改革法案の中におきまして、過去の積み残しを解消し、物価上昇分の積み残しも織り込んで、六十一年四月から新しい制度をスタートするというふうにいたしておるところでございます。
  89. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 今回の改正は、高齢化社会に備えて給付負担均衡を図り、制度の長期的安定を図るとしておりますが、将来の物価の上昇率組合員の動向、給与上昇率あるいは積立金の金利動向をどのように見込み、将来の年金財政の健全化を図るようにしているのか、農林年金制度の将来の収支見通しについてお伺いします。
  90. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 農林年金財政の将来見通しにつきましては、先ほど成熟率のことを御答弁申し上げましたが、これから成熟率がかなり速いテンポで上昇をしてまいるということが見込まれるわけでございまして、そういうことも踏まえまして、今回の改正案におきまして、長期間の経過措置を設けてではございますが、給付負担均衡あるいはまた給付水準の適正化というものを図りまして、世代間の負担の公平ということにもできるだけ配慮いたしておるところでございます。  具体的に申しますと、先ほどもちょっと触れたところでございますが、昭和百年というような時点につきまして、現行の制度仕組み、現行の給付水準というものを前提にいたしまして、五年に一度の財政再計算の都度ある程度掛金率を順次上げていくということを前提にいたしまして、一応給与改定なり年金改定は年五%、そして運用利回りを年七%ということで仮定をいたしまして将来の推計をいたしますと、現行の掛金率千分の百九というものを約四倍程度に引き上げないと財政が成り立たないということが推計をされるわけでございます。  そしてまた、早晩積立金が減少をしてまいりまして、これは財政再計算の際に掛金率を引き上げていくと仮定をしました、その仮定の引き上げの率のいかんにもよりますけれども昭和八十年代あるいはまた昭和百年というような時点になりますと、積立金がゼロになりまして賦課方式に移行せざるを得ないというような時期が到来をするだろうというふうに見込まれるわけでございます。  今回の制度改正によりまして、先ほど申し上げました千分の百九が四倍ぐらいになるというのが三倍程度の増加に掛金の増加を抑制することができるというふうに私ども見込んで今回の制度改正を御提案申し上げておるところでございます。
  91. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 全国民に共通の基礎年金制度を設けて公的年金制度整合性を図るとしているわけでありますが、国民年金厚生年金では既に基礎年金制度を適用することとして、六十一年四月から実施しようとしております。農林年金制度においても国民年金厚生年金と同趣旨の改正をして同時に実施しようとしておるものと考えていますが、仮に国民年金厚生年金と同時実施にならないとどのような問題が生ずるのか、お伺いします。
  92. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 今回の農林年金法の改正また各種の共済年金法の改正、これは公的年金制度改革の一環といたしまして、先般成立をいたしました基礎年金なり厚生年金改正とも内容的に不可分の密接な関係を持っておるものでございます。既に国民年金厚生年金につきましての法改正は成立を見ておるところでございまして、仮に御指摘のように農林年金法の改正が六十一年四月実施に間に合わないということになりますと、その制度の継ぎ目の面でいろいろな問題が出てまいります。  例えば、これまで国民年金に任意加入をしておりました妻についても今後任意加入の道が閉ざされて国民年金に加入することができないというような事態が生ずるわけでございますし、また年金額給付水準なり算定方法等に関しまして、いわば既に成立をしております法律と密接な関連のもとにこちらの共済年金の方の制度も仕組まれておりますので、片方だけが実施がおくれるということになりますと制度間における均衡を失する、あるいはまた長期的に農林年金財政の健全化を推進する上でも支障が生ずるということがございますし、また事務的にも種々の問題が実務上生じてまいりますので、農林年金法の改正につきましては六十一年四月から実施できますように、私どもといたしましてはそのことを強く期待をし、お願いをいたしたいと思っておるところでございます。
  93. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 次に、私も国鉄問題についてお伺いするわけでございますが、国鉄は今後民営化するということで職員の大幅な合理化を図ると聞いております。現在でも組合員に対する年金受給者の割合が高く、相当な額の不足財源があるということですが、さらに組合員数が少なくなると国鉄の年金制度では給付できなくなるわけでございます。国鉄の年金制度公的年金制度であり、公的年金制度において給付不能になるということは年金制度の不信につながるものと思いますが、この国鉄共済年金の救済についてどのように考えているのか、ひとつお伺いします。
  94. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 菅原先生にお答えしますが、国鉄共済問題の検討の具体的な手順、方法等については、できるだけ速やかに政府部内での協議に着手することとしております。  この場合、国鉄共済問題につきましては、国鉄改革の重要な一環として、国鉄改革の具体化に応じまして、これまでの経緯を踏まえつつ、財政調整計画のあり方、それぞれの役割等について検討すると同時に、年金一元化観点から所要の検討を行い、関係者理解や国民的合意を得ることができる適切なものとしたいというのが政府の統一方針でございます。
  95. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 農林年金制度農林漁業団体に働く職員のための相互扶助事業として、長期的安定を図るため、負担給付の適正化等を考慮して制度の健全化に努めてきているものと思いますが、共済グループ間で国鉄共済救済のための財政調整をすることとなった場合、農林年金はどうするのか、お伺いするわけでございます。
  96. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 お答えします。  先ほど申したようなことでございますが、国鉄の共済問題につきましては、国鉄改革の重要な一環として、国鉄改革の具体化に応じまして、これまでの経緯を踏まえつつ、財政調整計画のあり方、それぞれの役割等について検討すると同時に、年金一元化観点から所要の検討を行いまして、関係者理解や国民的合意を得ることができる適切なものとしたいというのが政府の統一方針でございます。  また、先ほど農林年金につきましても、私、申し上げたとおりでございますが、関係者の意向なり理解に配慮しつつ対処したいということでございます。
  97. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 最後に、民社党といたしまして共済四法案に対する修正要求をすることにしたわけでございますので、一応大臣に要望をしておきたいと思うわけでございます。   職域年金部分については、二十五年未満二分の一支給を廃止し、加入年数に応じた支給に改めること。   禁固刑、懲戒免職など職域年金部分支給停止は、遺族にまで及ぼさないこと。   標準報酬の算定については、本俸ベースで統一すること。   国鉄共済の財調期間に発生する原資不足分については、大幅な国庫負担の導入を含め抜本的な財政対策を早急に確立すること。   年金計算経過措置のうち、施行時四十歳を中心に年金水準を改善し完成時の水準を下回らないようにすること。   減額年金制度は存続すること。   年金制度一元化の今後の具体的なスケジュールと年全体系等のビジョンを明確にすること。 以上を要望いたしまして、質問を終わります。  どうもありがとうございました。
  98. 今井勇

    今井委員長 午後一時から再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時四分休憩      ————◇—————     午後一時開議
  99. 今井勇

    今井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。中林佳子君。
  100. 中林佳子

    ○中林委員 今度の農林年金改革案について質問させていただきます。  そもそもこの農林年金発足に当たっての生い立ちといいますか、制度目的はどんなものであったのか。つまり、どういう理由と背景の中で公務員ではない農林団体職員共済年金制度が誕生したのか、まず明らかにしていただきたいと思います。
  101. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 中林先生にお答えします。  農林年金は、昭和三十四年に厚生年金から分離独立した制度でございます。当時、厚生年金の給行水準というのは公務員共済組合制度給付水準比較しまして相当大幅な差異が生じておりましたため、厚生年金適用農林漁業団体職員は、同一地域にあって共済制度が適用されている市町村職員との間に福利厚生面で不利な状況にあり、優秀な人材確保に支障を生ずるという事情がございました。  そこで、農林漁業団体につきましては地方公務員と同等の福利厚生面の充実を図ることとして制度を創設したものでございまして、近年におきましては、数次改正を経まして地方公務員及び国家公務員共済制度と全く遜色のない農林年金制度となったわけでございます。
  102. 中林佳子

    ○中林委員 今、大臣の御答弁にもありましたように、平たく言えば、町村役場と農協漁協が隣り合わせにありながら、一方は共済が完備しているのに、農協などの方はそういう制度ではなくして、厚生年金では有能な人材が役場の方に流れてしまう、それを食いとめるためには農協の方にも共済年金が必要だ、こういうことで、当時、全国の農林漁業団体方々を先頭に大運動をおやりになってスタートしたものだ、こういうふうに聞いているわけです。そこにこの年金が政策年金と言われているゆえんがあるわけですが、その立場は今も変わらないわけですか。
  103. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 お答えいたします。  先ほど述べたようなことでございまして、農林年金制度発足経緯及び沿革等から、農林年金の果たす役割は今後ともますます重要なものになると考えております。  そんなことで、公的年金一元化の中で制度間の給付負担均衡を図っていく必要がありますが、農林年金制度の育成については一層の努力を尽くしてまいりたい、このように考えております。
  104. 中林佳子

    ○中林委員 今回の改正案制度を安定させるためとおっしゃったわけですけれども、そうではなくして、むしろ発足時の有能な人材確保するという積極的立場をも否定する大改悪案であり、ひいては、法の目的でもあります農林漁業団体の事業の円滑な運営に資する、このことすらも否定をしてしまう内容になってしまう、こう私は思います。  初めに、この法案の重大な改悪点について幾つか質問をしたいと思います。  まず第一に、年金額の算定基礎についてお尋ねするわけですが、現行では給付の算定の基礎期間が年単位となっており一年未満の月数が切り捨てられていることを考えれば、これを月単位に改められることは評価ができるわけです。しかし、給付額の算定基礎となる平均標準給与月額のとり方を、現行の退職前一年間または三年間の標準給与の平均額から全組合員期間の標準給与の平均額に変えることは極めて重大な改悪だと言わなければなりません。  そこで、昭和五十八年度発生者の平均金額で、例えば三十年加入した人で退職前一年平均給に対する全期間平均給の割合は、男女それぞれ何%ぐらいになりますか。
  105. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 今回の改正におきましては、御指摘ございましたように、従来、共済年金退職前一年間、被用者年金の大宗を占めます厚生年金保険では全期間平均ということで違っておりましたものを、年金制度全体の整合性を図るという観点から全期間平均の給与に改めることにいたしたわけでございます。この水準組合員期間の長短なり給与上昇率等によって相違がございますし、また過去の給与の再評価をどうするかというような問題がございますが、この低下率は、高い方で二〇%から三〇%近く低下するものというふうに予想をいたしております。  ただ、給与のとり方が違うことによりまして給与水準が低下するといたしましても、今度、制度仕組みが全体として変わりますので、定額の基礎年金制度の適用とか新しく定額の加給年金が創設されるというようなことがございますので、この低下が直ちに年金額にそのまま反映されるというものではないことは御理解をいただきたいと思っております。また、この措置によりまして、退職近くになって給与が大幅に上昇する方と平均的に給与が上昇する方との年金額の差が縮小されますので、低給与者について見れば、給付水準の低下は高給与者に比べますと相対的に小さいと考えております。
  106. 中林佳子

    ○中林委員 今お答えになったのでも二〇%から三〇%は減になるというお話でしたけれども農林年金当局が試算した資料で見ますと、これは五十八年度発生者の平均金額ですけれども、三十年加入者の男性の一年平均給が三十万九千八百九十九円に対して、全期間平均給になりますと十九万八千二百二十四円、六四%になるわけです。婦人の場合も一年平均給が二十四万五百六十三円に対して、全期間平均給では十五万四千七十五円ということで、これも同じく六四%ということになります。それから、この農林年金当局の試算の資料を見ましても、二十年者の場合などは、女性の場合は六一%になる。それから、さらに悪い例では、二十五年者は婦人の場合五五%になるというような状況になるわけです。こんな算定基礎の改悪は本当に許されないことだと私は思うわけです。  もちろん、今御回答になりましたように、施行日前の給与については政令で補正率を決めるということであるわけですが、この四つの共済、それから厚生年金などと比べましても農林年金は被用者年金中最低であることも考慮すれば、これは慎重に対処していただかなければならないと思うわけですけれども、その点いかがでしょうか。
  107. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 ただいまお話のございました資料は、以前農林年金の事務方がいろいろなケースについて試算をし作成しました資料の数字ではなかろうかと思っております。  この数字につきましては、今度の制度では過去の全期間平均をとる、政令で補正率を定めまして過去五年間の平均から推定をするわけでございますが、その際に、過去の給与につきましては全部現時点のベースに再評価をするということにいたしておるわけでございます。今お挙げになりました数字では、これは厚生年金の再評価のときのデータを使いまして昭和五十四年までの給与の再評価をしておるということでございまして、それ以後につきましては再評価をしておりませんので、再評価をいたしますとこれよりは若干上がると考えております。  ただ、先ほど申し上げましたように、当然のことながら、一年平均と全期間平均で比べますと、高い方では二〇ないし三〇%水準としては下がってまいるわけでございますが、給付仕組みが変わりますので、その率に比例して給付水準がそのまま直ちに下がるということでは必ずしもございませんので、そこは御理解をいただきたいと思っているところでございます。
  108. 中林佳子

    ○中林委員 補正率そのものがまだ決まっていないので何とも言えないわけですけれども農林年金は非常に低いということを考慮に入れられまして、本当に十分対処されるよう再度要望しておきます。  もちろん先ほどの数字は五十四年の評価がえで試算したものであることは十分承知の上で私は言っているのですが、今お答えになりましたように、二〇%ないし三〇%は下がることもお認めになっているわけですから、こういう基礎の算定のやり方は許されないということを私は申し添えておきます。  二つ目に、移行措置の問題についてお伺いするわけです。  法案成立後に年金受給対象になる人については、昭和八十一年までの間にすべて移行が完了するような経過措置がとられることになっているわけですが、いずれにしても、現行での制度よりも低い年金額になることは必至だと思います。この点については後で私の試算でも明らかにしたいと思います。  問題なのは、既に年金をもらっている人や施行日前に年金額が決定される既裁定年金者の移行措置です。少なくともこれらの方々年金が不利益をこうむることがあってはならないと思うわけですが、いかがでし、ようか。
  109. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 今回の制度改正内容的にかなり大きな改正でございます。年金は、農林年金に限りませんけれども、長期かつ安定的に健全な運営がなされることが必要でございますし、世代間の所得均衡とか給付負担均衡を図るという観点に着目して制度内容の適正化を図ることにいたしておるわけでございます。  その際、年金制度につきましては、その仕組み自体から、組合員個人個人にとっても非常に長期間にわたるいわば年金制度とのおつき合いになるわけでございます。そのため、今回の改正に当たって急激な変化が生じないように、給付水準につきましては二十年に及びます経過措置を設けることにいたしておりますし、既裁定年金者の既得権については従前額を保障することによってこれを尊重する、さらに、長期間の在職者につきまして、施行日前に二十年以上の組合員期間を持つ方につきましては、施行日前日に退職したと仮定した場合の現行制度による年金額を保障するといった期待権の尊重のための措置も講じておるところでございまして、こういった措置を通じまして、急激な変化あるいは既に得ております一種の既得権が失われることがないような配慮をいたしておるところでございます。
  110. 中林佳子

    ○中林委員 既得権は失われないようにするというふうなお話でしたけれども、また、従前額は保障するというお話でしたけれども、物価スライドを停止することが含まれているわけでしょう。皆さんに一番知られたくない部分はお答えにならないで、従前額は保障するとか、いいところばかりお話しになっても通らないと思うわけです。やはりスライド停止が非常に問題で、これでは従前額の保障はできないわけです。これは年金額の実質切り下げになってしまいます。  本法案では、既に共済方式で年金を受給している者は通年方式に裁定がえされます。その結果、約二割の現退職年金受給者年金額がダウンすることになるわけですが、従前の額は保障するというものであります。  問題なのは、裁定がえした額面が物価スライドによって共済方式による額面を上回るまでの間は、それが何年かかっても、その間スライドが停止されるという点です。現行法では共済方式の額面がスライドで引き上がっていくのに対して、改悪案ではその額面のままスライドなし、数年、場合によっては十年間もその間固定されてしまいます。  例えば、五十八年度発生者の二十年加入者、退職前一年間の平均月収が四十二万円の人で試算してみますと、共済方式で年額二百一万六千円、通年方式で年額百五十六万円となります。この場合、既得権ということで二百一万六千円が保障されるものの、百五十六万円が物価スライドして二百一万六千円に達するまでの間は二百一万六千円に固定されることになるわけです。仮に物価上昇率を年三%といたしますと、この人の場合は八年間たたないと二百一万六千円の年額がアップしないということになってしまいます。現行制度で年三%の物価スライドを考慮すると、八年目には二百五十五万四千円になっているはずですから、その間の損失額は累計で約二百三士二万円になるわけです。八年間にこんなにも損することになって、これで本当に既得権を守るとか従前額を保障するとかいうことが言えるのでしょうか。
  111. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 五十八年度新規発生者で所得四十二万円の方の場合という計算、今私は具体的な数字を手元に持っておりませんけれども、今お話がございましたように、共済方式の方が高いという場合でそれが保障されました場合は、通年方式でスライドいたしました額が追いついてくるまではスライドを足踏みしていただく、その間、所得の高い方ほど物価スライドで追いついてくるまでの時間が長くなるということは御指摘のとおりでございます。  私ども、この問題につきましては、特に年金受給者方々から、スライドの完全停止ということではなくて若干でもスライドをやってほしいというような御要望の声があることも承知いたしておりますけれども、とにかく制度の切りかえに当たりまして今までの既裁定年金水準は減らさない、保障するという措置を講じておるわけでございまして、それ以後におきますスライドの問題については、年金受給者と現役組合員との給付負担均衡という問題、あるいは施行日以後に新たに年金を受ける方と既に年金を受けている既裁定の年金受給者の方との間の給付のバランスという問題、さらに、スライドの実施の仕方によりますが、ずっとスライドを続けてまいりますとどうしても給付費が多くなりますので、その分また現役の組合員負担が大きくなってくるということも総合勘案いたしまして、スライドの足踏み措置をとることにいたしたわけでございます。受給者方々のお気持ちも私どもいろいろ考えたわけでございますけれども制度全体のバランスということで、このような形での既得権の保障、保護という仕組みにいたした点を御理解いただきたいと思うわけでございます。
  112. 中林佳子

    ○中林委員 今実際に計算で示しましたように、非常に高い例を言ったわけではございません。そのくらいはということでの計算で二百三十三万円くらい実質損をしていくわけです。ですから、既得権を保障するとか従前額を保障するなどということで宣伝されるのは、私は国民を大変惑わすものだと思います。  三つ目の問題として、本法案の最大の問題とも言うべき給付水準について質問いたします。  今回の改正案では、年金計算式において通年方式への一本化、それから退職一年前の平均給与から全期間平均給与への低減、係数及び定額部分の単価の漸減などにより、現行制度よりもモデル試算で相当給付水準が下がると思うわけですが、農水省としての標準モデル試算では大体何%ぐらい下がるというふうに計算されているのでしょうか。
  113. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 農林年金の現行制度改正後の給付水準の問題でございますが、農林漁業団体職員の標準的なモデル世帯ということで、四十五歳、夫婦子供二人の世帯考えまして、制度改正後の完成時の給付水準がそれの給与のおおむね七割程度になるというふうに見ておりまして、これは年金受給者と現役組合員との均衡ということから考えました場合ほぼ妥当なものであろうと考えております。  具体的に申しますと、全期間平均標準給与月額二十一万六千円の人で現行制度改正後の年金額比較いたしますと、現行制度組合員期間三十五年の年金額が十九万二千円、改正後は、新規発生年金者の組合員期間が今後とも伸長する制度の完成時ということを想定をしておりますので、組合員期間を四十年で計算いたしますと十七万八千円ということで、先ほど申しました十九万二千円に対しまして九三%、そしてまた、先ほどモデル世帯ということで申し上げましたが、このモデル世帯給与月額が二十五万一千円というふうに私ども考えておりまして、これに対します年金額の比率で申しますと現行制度が七六%、改正後の給付水準で七一%ということで、ほぼ同水準であると考えているところでございます。
  114. 中林佳子

    ○中林委員 私は数字のとり方がこれでは比較にならないと思いますね。現行は三十五年加入で計算なさって、改正後は四十年加入で計算なさっているということで九三%の水準だ、七%減になる、これでも現状とほぼ変わらない。七%減っても大変だと私は思うわけですけれども、では農水省のモデル試算で現行四十年加入にしたらどうかということで私計算してみましたら、月二十一万五千六百円です。そうしますと改正後と比較して八二%です。一八%の減になるわけですから、給付水準そのものが大変切り下げられるということが言えると私は思うのですね。  それで、私もいろいろと試算表をつくってやってみました。制度上の給付水準比較する際には、経過的措置を考慮して比較したのでは本当の比較にならないので、まず私は共通前提として、物価スライドはどちらも考慮しない、二つ目に退職前最終一年平均給与月額を三十万円、ほぼ現状の平均月額です。それから三番目に全期間平均低減率を六五%とし、四番目に四十年加入者の男性の四点を挙げて試算しました。この人を仮にAさんとします。  そこで、改正案と現行法が同時に完成して存在した場合の比較をやってみたのですけれども、A氏が単身者の場合、六十五歳以上で現行法は二十一万円、改正案では十二万二百円、何と五七・二%にしかならないという状況です。それから、A氏に既に旧国民年金満期の無職の同年の妻がある場合、これは同じく六十五歳以上の場合ですが、現行法では五万円がつきますから二十六万円、改正案では十七万二百円で六五・五%。これで明らかなように、このケースの場合で改正案に最も有利な試算でも、先ほど農水省がお示しになりました八二%、八割にしかならないで、最悪の場合では現行法でいく場合の五割から六割になってしまう。これは大変な改悪だというふうに思います。  そこで百歩譲って、いわゆる経過的措置を考慮した試算もやってみたわけですが、A氏が単身者で昭和二十一年生まれ、支給開始が昭和八十一年からという場合、現行法では二十一万円、改正案では十二万二百円で五七・二%です。それから、A氏が昭和元年生まれ、既に国民年金満期の同い年の妻がある場合は、現行法で二十六万円、改正案では二十一万五千九百円、八三%になります。さらに、一番有利と言われている状況ですが、A氏が昭和元年生まれ、既に国民年金十年加入の同い年の妻がある場合、現行法では二十一万円、改正案では二十万九百円で、九五・七%ということになるわけですね。  ですから、経過措置の加算をやれるケースで比較しても現行の五七%しか確保できない、そういう事例もあります。特に、今若い人が将来お金をもらうような場合が五割から六割になってしまうという試算になるわけです。もっとも、ごく限られた人ではありますけれども、施行後すぐにでも年金をもらえる人の場合で、しかも奥さんが旧国民年金では年金をもらえる年数に達していない一番極端なケースの場合、九五%というほぼ現状に近い額の人もいるわけですけれども、しかしこれは人数的には本当にわずかだというふうに思うわけです。  ですから、今よりも改正後の方が五割から六割しか保障されないということで、これを改悪と言わないで何だろうかと思うわけですけれども、いかがでしょうか。
  115. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 私、先生の今お挙げになりました数字の算式等その他について必ずしもつまびらかにはいたしておりませんけれども、今、制度を御研究になられまして、それに基づいた試算を挙げられました。  一つお答えで申し上げたいと思いますことは、今回の改正の一番基本に流れている考え方一つに、従来年金というのは大体組合員期間三十年とか三十五年というような方々が多かったわけでございますが、これから高齢化社会になってまいる、各制度も成熟度が高まってくる、そして人生八十年時代というようなことが言われておりますが、組合員期間四十年というような方がかなり一般化してくる、そういう状態になりますと、今の先生の試算の中でもちょっと数字を挙げておられましたが、現役の一年平均給与が三十万、全期間平均でその六五%といいますと二十万弱になると思いますが、現行制度のところで先生お挙げになりましたように、単身者で二十一万、それから国民年金に妻が任意加入でフルに入っていれば二十六万というような給付水準になりますと、全期間平均の現役の給与を上回るような給付水準になる。  これからの高齢化社会の中で掛金負担もやはり上昇せざるを得ないという中で、給付負担均衡ということを組合員期間がこれから伸長をしていくということの中で図っていくということが、一つの大きな考え方の基礎になっているわけでございます。  そういう意味で申しますと、確かにおっしゃいますように、現行の制度を続けてまいりまして四十年フルということに仮定をいたしまして計算した額に比べれば、今回給付水準の適正化ということで、高齢化社会前提を取り込んだ給付水準考えるということからいたしますと、これが下回るということはある意味では当然なことなわけでございますが、私ども先ほどモデル試算ということで私どもの数字を申し上げましたのは、今言いましたような考え方に従いまして、現在三十年とか三十五年で現役の大体七割前後という、現役の給与に対する比率を四十年の組合員期間の方について保障をするという基本的な考え方制度を仕組んでおるわけでございます。
  116. 中林佳子

    ○中林委員 いろいろ言いわけをなさいますけれども、だからこそ私は、前提条件を同じにして計算をして、あらゆるケース、まあ一番いい場合も含めて計算してお示しをしたのですよ。それなのに、いろいろ言いわけをなさいますけれども前提条件は同じでなければやはり比較にはならないというふうに私は思いますし、組合員期間がこれからは長くなるであろうなどとおっしゃいますけれども、きのうの参考人の方々の御意見を聞いても、定年制の延長という問題も含めて非常に困難だというお話もありました。  以上明らかにしましたように、本案では給付が二割から五割引き下げられることになる、これはもう明らかです。この原因のすべてが成熟度に起因するものばかりではないところに、日本共産党が最も強く反対している理由があるわけです。  実は、給付水準が激減する大きな要素の一つに国庫負担の大幅削減があるわけですけれども、現行では給付費に対して一九・八二%の国庫負担がされております。もっとも、この四年間は行革関連特例法に基づく四分の一カットがされているわけですが、これを今回基礎年金給付に要する費用、拠出金の額の三分の一国庫負担に変えようというものです。  これを一人の年金者の事例で試算しますと、昭和五十八年度末の退職年金平均額年間百三十三万七千六百二十三円として、その一九・八二%は約二十六万五千円の国庫負担となります。これは年金額がふえていく分だけふくらんでいきます。一方、基礎年金導入の場合、最高で一人六十万で、その三分の一は二十万円となります。現行と比べて六万五千円が一人について国庫負担の削減分となります。この差は年々ふえこそすれ減ることはありません。  農林年金について農水省も試算していらっしゃると思うわけですが、昭和九十一年度、つまり三十年後には国庫負担は現行制度改正制度と比べると、額及び率にしてどのくらい削減できるわけですか。
  117. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 今回、国の補助の仕組みを変えたわけでございます。ただ、昭和三十六年三月の国民年金発足前の給付費に関しましては現在の補助を継続をいたすことにしておりますが、その後につきましては大きく仕組みが変わります。  単純な比較はできませんけれども、将来の国庫補助額というものを一定前提のもとに計算をいたしてみますと、現行制度を維持をいたしました場合に、昭和九十一年に五千二百三十八億、制度改正を行いました場合には二千八百一十三億円というふうに見込まれます。これは給与改定なり年金額改定を五%ずつやっていく、それから掛金率も昭和九十一年まで一定の割合で五年に一度引き上げていくということで、そういった物価変動等の変化も織り込んで、想定で推算をしたものでございます。五十九年度価格ベースで申しますと、現行制度昭和九十年に千七十億、改正後で五百九十億というような数字が推計をされるところでございます。
  118. 中林佳子

    ○中林委員 率をお聞きしたけれども、率はおっしゃらなかった。国庫負担は五三・九%になるということだというふうに思うわけですが、結局今回の改正案では将来的に国庫負担を現行よりも約半分にする、こういうことができるということが今の御答弁でも明らかになったと思います。年金制度の長期的安定とか制度間の均衡をとるためだとかあるいは官民格差是正だとか、もっともらしい理由を並べてこの改悪案を成立させようとしているわけですが、政府の本当のねらいは年金制度への国の支出を大幅に減らしていくことにあるということはもう明白だというふうに思います。  そこでお聞きするわけですが、昭和六十年度の財政再計算について、昭和六十年度の財政再計算は現行どおり修正積立方式で計算するのか、あるいは厚生年金並みの総合保険料方式になるのか、それから二点目は、現行方式で計算するとすれば、修正率、利差益充当率等は現行どおりか、この二点についてお尋ねします。
  119. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 明年度が掛金改定の見直しの時期に当たっておりまして、現在、財政再計算につきまして基本的な事項、基礎データのとり方でございますとか計算方法でございますとか、こういう問題につきまして、農林年金理事長の諮問機関でございます年金財政研究会で検討していただいておりますが、この再計算のやり方につきましては、現行の制度でやった場合、それから今回御提案申し上げております制度改正を加味した場合、その場合も含めて現在検討をしていただいているところでございます。
  120. 中林佳子

    ○中林委員 私がなぜこういう質問をしたかといいますと、一部の情報によりますと、農林年金当局は総合保険料方式に切りかえていく方向検討しているとかあるいは修正率等も引き上げていく方向であるとか、こういう話も伝わっているわけですね。そうなると大幅な掛金引き上げにつながっていくことが懸念されます。農水省としても、そうならないよう十分配慮した指導をされることを強く要望しておきます。  次に、重大なことは、本案によって国の持ち出し分を大きく減らしていく見返りとして、組合員の掛金を逆に大きく引き上げようとしている点です。  農水省の収支試算においても、現行制度では、掛金率を千分の二十四ずつ五年ごとに引き上げていって、四十年後には掛金率千分の四百四十一というとても高い率にしても財政がパンクし、改正案に基づいて試算しても、四十年後には千分の三百以上で単年度収支がこのときちょうどとんとんになる、こういうふうに聞いているわけです。すなわち、保険料を現在の三倍以上に引き上げて何とか四十年間は制度が維持できる、こういうことだと思うのですね。  この試算で組合員の増減はどのように見込んでいらっしゃるわけですか。
  121. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 かつて農林年金組合員の数につきましてはある程度の増加を見込んでいろいろ再計算をやったこともございますが、現時点で考えますと、最近におきます組合員数の増加の停滞等ございますので、五十八年度実績で固定をして横ばいということで考えるように最近はいたしております。
  122. 中林佳子

    ○中林委員 先ほどから、現在新掛金率を決めるための財政再計算をやっているということをおっしゃっているわけですが、この五年間で組合員増加の見込み違いが最も大きな掛金改定の要素になっている。五十九年度の見込み違いが大体不足財源の四四%ということになっております。すなわち、年金者は毎年一万人以上ふえる一方で、組合員は数百人規模でしかふえていかないということが年金財政を悪化させております。  しかも、これからは農協中央会も大型合併だとかあるいは経営合理化を一層促進する方針を指示しており、組合員数が減っていくことも予想されます。国鉄同様に年金財政の破綻もこういうことでは考えられてまいります。そういう意味では、今回の法改正の引き金ともなった最も大きな要因が農林漁業団体の減量経営にあると言っても過言ではないと思います。減量経営による収入減の責任を棚上げにして、その負担組合員に押しつけるような今回の法改悪や掛金率引き上げは認められません。  そこで、私は次に、こうした農林団体で働く労働者が厳しい減量経営やなりふり構わぬ経営至上主義のもとでいかに大きな犠牲を強いられているか、具体事例を示して政府の対応をお伺いしたいと思います。  農協などが減量経営に陥らざるを得ない原因がどこにあるかは後で明らかにしたいと思いますが、どういう理由にしろ、そういう合理化だとか経営改善というものが、そこで働く労働者への締めつけとか犠牲の上で成り立つものであってはならない、こういうふうに思うわけですけれども、いかがでしょうか。
  123. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 私ども農林漁業団体、今農協というお話がございましたけれども、この辺の経営の問題、それぞれの農業協同組合経営姿勢ということにかかわる問題だと思いますけれども、今農協が行っておりますようないろいろな諸事業をめぐる状況も非常に厳しいものがございます。そういう中で経営の基盤を強化をしていくというためには、それなりの経営の合理化努力ということも必要であろうというふうには思っております。  ただ、この農業協同組合を初めとします農林漁業団体労働条件というものにつきましては、これが社会の全体の動きの中で改善の方向に少しずつでも向かっていくということは、それこそ年金制度のねらいということでも出ておりますような人材確保あるいは活力のある事業なり職場をつくるという意味でも大事なことでございまして、そういう点をないがしろにされてはならないというふうに私ども考えておるところでございます。
  124. 中林佳子

    ○中林委員 はっきりと締めつけとか犠牲の上で成り立ってはならないというような、活力とかそういうような表現で明確な御答弁を避けられたのはちょっと問題だというふうに思うわけですが、今の農協の減量経営のやり方としては、協同会社だとかあるいは業務の外注、委託といった間接的なものと、それから職員の削減、パート化というような直接的な方法があります。きょうは特に直接的な減量経営についてその問題点をただしたいと思います。  先日、第十七回全国農協大会が開かれ、私も出席いたしましたし佐藤大臣も出席しておられました。あの大会で千戸未満の農協の広域合併促進が強調されたわけですが、合併は第一に地域や農民へのつながりを弱くするだけではなくして、大型合併になればなるほど職員の削減が行われ、直接年金制度の将来に響いてくる問題だとも思います。  島根県下には現在六十七の農協があるわけですが、千戸以下は四十単協ありまして、全体の六割を占めております。これが合併対象にされていくわけですけれども、島根県の中央会の方針では、組合員戸数五千戸、貯金、共済、購買、販売の各事業をそれぞれ百億円を目安に大型合併を進めて、三年から五年後には現在の六十七単協を十ないし二十単協にまで合併を進める、こういう方針になっております。これは大変な職員削減になっていくことが予想されます。現在でも、昭和四十五年に八十単協あったものが六十七単協へとなって、その間約六百人の職員が削減されております。  この十年間の県下の農協の正職員の推移を見ますと、昭和五十年に四千四百九十八人だったものが昭和六十年には三千九百八十二人へと、約一二%の削減となっております。しかもその大半が女子職員の削減で、その削減のやり方、これは一例ですけれども、ある農協では、夫婦ともその農協で働いていた人が、夫が管理職に昇格すると半ば強制的に妻の方はその農協をやめなければならないという暗黙の仕組みがあるということです。管理職といっても農協職員の場合はまだまだ低い賃金の状況で、その上、家のローン、子供の学資など、夫婦の給料で精いっぱいの生計を立てていた世帯では、それは極めて過酷なやり方になっております。  こういうような状況まで引き起こしている合併方針について、農水省はどういう指導、援助をされていこうとしておりますか。
  125. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 今お話ございましたように、金融の自由化の進展等に対応いたしますために農協経営体制なり業務機能の整備強化を図らなければいけないというようなことで、今お話のございましたようなことしの三年に一度の全国農協大会というようなところでも、改めてまたこの体質強化のための合併の推進というようなことが大きな議題になってまいってきているところでございます。  この合併の問題につきましては、系統農協経営基盤の強化のために合併の推進が重要な一つの方策であるというふうに私ども考えておりますけれども、それはやはり地域の実態に即した自主的な合併の推進ということで、地域の実情に即したものである必要があるだろうというふうに思っておりますが、こういった系統団体の自主的な合併の推進努力というものにつきましては、必要に応じて適切な指導なり側面的な支援ということは考えてまいる必要があるというふうに考えております。  合併をいたしますと直ちに職員の数が減るかどうかということでございますが、直ちに職員数の減少につながるものではないと考えておりますし、来合併の比較的小規模農協に比べまして、合併をいたしますと営農指導体制が整備できるとか金融サービス機能の充実が図れるとか、あるいはそういった組合員サービスのほかに、経営基盤が強化されれば職員の処遇改善もできるというような面もございますので、合併そのものの善悪と申しますよりは、どういう合併の仕方をするか、そしてまた合併をした後で組合員サービスその他、農協が果たす本当の機能が発展するような合併を進めていくということで考えてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  126. 中林佳子

    ○中林委員 聞かないことまで言わないでくださいね。私は実例を挙げて、合併をやって実際に六百人から減っている地元の例も挙げました。いろいろな場面があることはわかりますけれども、善悪を聞いているんじゃなくて、実際に合併ですごく人数が減ることも予測されて、将来の年金制度そのものにも影響するという観点お話をしているわけですよ。  減量経営の最も典型的なやり方は、臨時職員化とパート化です。さきの国会でも私は臨時職員農林年金への加入状況が極めて低いことについて質問もし、その促進も促したわけですが、島根県下の農協だけ見ましても、正職員数の一割以上は臨時職員となっています。しかもその比率は近年ふえてきている、こういうふうな話です。平均的賃金ベースで諸経費なども含めて換算すると、正職員とパートでは、パートの方が三分の一以下の経費で賄えると言われております。そして、パートが安上がりの低賃金で職場に進出することによって、従来の正職員、特に女子職員がいづらくなる状況もあちこちで発生しております。  松江市内のある農協では、農協支店の店舗の職員をすべて削減し、パートに切りかえて営業時間を延ばすというやり方をしております。また、ほとんどの単協では、ここ十年間、女子の採用が全くない、男子のみ、つまり女子を採用すると結婚だとか出産に伴ういろいろなことをやらなければならないので非効率になる、こういう理由から男子のみの採用という状況が続いております。  労働省にお伺いしたいと思うのですが、労働省が十月末に諮問されました男女雇用機会均等法に基づく指針案でも、募集、採用は努力義務規定になっているという不十分さはあるのですが、男子のみ採用するやり方や婦人職員を事実上追い出すやり方については、この法に基づいて強力な指導が必要だというふうに思うわけですけれども、いかがでしょうか。
  127. 松原亘子

    ○松原説明員 お答え申し上げます。  先生おっしゃいましたように、男女雇用機会均等法におきましては、募集及び採用については事業主は女子に対して均等な機会を与えるように努めなければならないという努力義務規定になっておりまして、その具体的な努力目標を指針において定めるということになっております。その指針につきましては、労働省案をとりあえず取りまとめまして、先月末に関係審議会に諮問をいたしたわけでございます。  ここにおきましては、募集及び採用については二つの事項を努力目標として掲げておりますが、その一つは、「募集又は採用に当たって、募集・採用区分ごとに、女子であることを理由として募集又は採用の対象から女子を排除しないこと。」というのが一つ。二つ目は、「募集又は採用に当たって、年齢、婚姻の有無、通勤の状況その他の条件を付す場合においては、同一の募集・採用区分の男子と比較して女子に不利なものとしないこと。」という二つの事項を挙げているわけでございます。  ところで、今先生が御指摘になりました正規職員の募集、採用につきまして男子のみしか募集、採用しないということにしており、女子についてはパートという募集、採用区分しかないという場合につきましては、今申し上げました努力目標の一つ目、つまり女子であることを理由として募集、採用の対象から女子を排除しないことということに反するということになってまいります。  しかしながら、この指針の案は、現在労働省の案を取りまとめて審議会の御意見を伺っているところでございます。この審議会からの御答申をいただきまして最終的に取りまとめ、公布をいたしたいというふうに思っておりますし、また、均等法自身、来年の四月一日からの施行でございます。そういうことから、今後このようなことに対してどうように労働省として指導していくかについては十分検討をいたしてまいりたいというふうに思っているところでございます。
  128. 中林佳子

    ○中林委員 今御答弁があったように、諮問をされて答申を受けなければならないということは私も知っておりますし、来年四月一日からの実施だということも知っておりますけれども、そうであっても、やはり今のこういう状況は労働省としては放置できないのではないかというふうに思いますので、女子の募集、採用に対する差別是正のための厳然たる御指導を強く要望しておきます。  さきに開かれました農協大会で決議された三つの方策、方針の中心的支柱とも言うべきものが、総合力発揮を図る経営刷新方策であります。その総合力発揮の中には事業の総合セット化という方向も打ち出されております。例えば住宅建設会社との提携による融資、共済、生活資材の系統扱い品のセット推進とか、自動車、耐久財等について信用、経済、共済の三位一体事業の実践などというなりふり構わぬ経営至上主義の方向が打ち出されております。これは結果的に農協職員をセールスマン化するとともに、農家は農業以外の借金にも苦しめられるということになります。  島根県下の農協の事業内容を聞いてみますと、事業高は、信用事業、共済事業が圧倒的なシェアを占め、農協本来の業務ともいうべき販売、購買、指導というものは片隅に追いやられております。事業利益で見ましても、五十九年度二百六十八億円のうち、信用事業が九十六億円、共済事業五十二億円と、この両者で全体の六割を占めております。こうなると、農協ではなくして銀行と生命保険会社が合体した企業という方が的を射ているような状況になっております。そして当然ながら、農協職員は貯蓄と共済の勧誘員として駆り出されていくわけで、いわゆる推進と称する勧誘行動になってまいります。  県下のある農協では、一日二時間半という労使の約束のもと、この推進に駆り出され、農家、非農家を問わず勧誘に歩き回らされて、二時間半の約束はほごにされて夜中の十二時ごろまでかかることもたびたびある、しかも全員が駆り出され、中にはおなかの大きい人も夜中までつき合わなければならないという事例もあります。特に婦人労働者の場合は子供、夫との会話がうまくいかなかったり、あるいはそこから子供の非行が発生したり、しゅうとめから文句も出たり、家庭不和という悲劇も出ております。表向きは強制という形をとらないで、職員農協経営事態の深刻さを徹底するための研修に参加させて、自然に、推進をやらなければ賃金がもらえない、信用や共済事業を伸ばさなければ農協で勤められない、こういう状況に追い詰められていくということです。文字どおり、労働者の言葉をかりれば胃に穴のあく毎日だ、こういうことをおっしゃっておりました。  農水省はこうした農協などの信用、共済事業偏重による推進の実態、またそれによる職員への労働強化の状況、これを把握しておられますか。もし把握していらっしゃらなかったら、これは職員の健康破壊にもつながっている問題ですので、ぜひ実態調査をされてそれに対する対策を立てられるよう強く要望したいと思いますが、いかがでしょうか。
  129. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 二点ございました。  一つは、農協の事業が信用事業、共済事業に偏り過ぎているのではないか。私ども農協経営の収益というものが信用事業と共済事業に依存をしているということについては、これは決して今のままでいいというふうには考えておりません。やはりバランスのとれた事業運営になることを期待し、またそのようなことも機会あるごとに指導はいたしておるところでございます。  第二点の、そういうことから関連をいたしまして非常に厳しい事業推進、そしてまたその中でいろいろ労働条件の上で問題が起きているというお尋ねでございます。  この点につきましては、私どもも夜間に組合員を訪問するとかいろいろ会合を持っているような例もあるということを聞き及んでおります。ある程度はこれは農協組合員でございます農家の方々の農作業の都合というようなことで、夜にならないと会えない、集まれないという面もあると考えられますけれども、労働強化等労働条件の面で非常に行き過ぎがあるということにつきましては、今後ともその点は指導をしてまいりたいというふうに思います。  私どもとしましても全共連にいろいろ話をしまして、例えば共済事業につきましては、夜間労働についての労働時間の協定化とか規約化、あるいは推進手当支給方法の標準化でありますとか夜間活動に際して災害防止措置をきちんとしたものをつくるというようなことを話をしまして、全共連も傘下の組合にそういう指導をいたしておるところでございますし、私どもも労働基準法の遵守というような面から通達なり指導を今までもやってまいってきております。  今後とも、私どもも御指摘の点については十分注意を払い、実態に気をつけまして、行き過ぎのないように、また適切な労働基準が保たれますように指導その他について努力をしてまいりたいと思います。
  130. 中林佳子

    ○中林委員 いろいろこれまでもやってきたけれどもというお話がありましたけれども、もう今ますますエスカレートしているというのが実態です。共済や貯金推進のノルマが課せられて、それが達成できない場合は自分で自分を契約するということで、自爆分が物すごく多くなりまして、ボーナスのときはそれに大半が持っていかれるという状況があるということさえ、労働者の生の声として出てきているんですよ。ですから、ここは本当によく実態をつかんでいただいて、適切な指導を行っていただきたいというふうに思います。  私は幾つかの具体例を示したように、結局のところ、いずれもそこで働く職員へのしわ寄せで今の団体が成り立っているというふうに思うわけですけれども、本来の農林団体の活動をやっていくためには、やはりその原因をたださなければならないと思うわけです。  それは、もう言うまでもないことですけれども、市場開放要求とか農林予算の削減、農産物価格抑制と食管制度のなし崩し攻勢など、農林漁業の破壊への道を今日まで突き進んできている農政そのものが農林漁業を展望のないような状況にしている、このことが農林団体の本来の活動を阻害している一番大きな原因だというふうに思いますので、本当に農政の転換を求め、本来の活動ができるよう大臣に強く要望いたしまして、そして大改悪につながる今回の年金案撤回を要求いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
  131. 今井勇

    今井委員長 次に、新村源雄君。
  132. 新村源雄

    ○新村(源)委員 私は、この共済年金の基本的な問題からお伺いをしてまいりたいと思います。  私から申し上げるまでもなく、年金というのは人生にとって最後の締めくくりをつくる、いわゆる国家的な最大の社会保障であると思うわけです。現に、比較的恵まれた、と言ったら怒られるかもしれませんけれども、かつての恩給あるいは年金、こういうものから長らく御苦労なさった方がかなり年金をおもらいになっている。しかし一方、年金なんかもらえない、こういう人との生活の格差あるいは社会活動の格差というものを見れば、非常に大きな格差があるわけですね。  国民一人一人は、非常に恵まれたところの職場で働いていらっしゃる方もあるし、あるいは恵まれない、そういう職場で働いていらっしゃる方もあるわけです。私はゆうべちょっと遅くなりまして宿舎へ歩いて行きましたら、夜、道路工事なんかなさっていました。恐らく農村から出稼ぎに来ている方々ではないだろうか、こう思うのです。  こういうように、本来ならば一家団らんの時間であり、あるいは友達と一杯酌み交わしながらいろいろ話し合っている、そういう時間に、寒さに耐えながら一生懸命働いている、ああいう人たちは、それは今の場合、いろんな立場で何とかして現在の身分を保障することに全力を挙げなければならないんですが、しかし、恵まれた立場の人、恵まれない立場の人、こういう人たちは老後になって考えてみれば、国家的な立場で考えてみれば、恵まれた人もこれは非常に重要な立場である、あるいは恵まれない、そういう立場で働いているからこそ、国家のいわゆる総体的な社会というのが形成されていくわけですね。そうすれば、年金というのは国が最低限保障する、私はこういう考え方に立つべきだと思うのですが、こういう点について大臣どうお考えになりますか。
  133. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 新村先生にお答えいたします。  先生の御指摘のとおりでございますが、我が国の人口構造は、平均寿命年数の著しい伸長によりまして高齢化が進展しており、老後生活の安定を図ることについての政府の責任は極めて重要なものであると考えております。  そんなことで、老後生活の安定を図るためには御指摘のように年金制度が最も重要な役割を果たすものであることから、政府としましては、高齢化のピークを迎える二十一世紀におきましても、負担給付均衡を図りつつ、年金制度を健全かつ安定的に運営していくための基盤を確保していくことが肝要であると考え、今回の公的年金制度改革を進めていくこととしているところでございます。  なお、我が国の年金制度は、これまで改善が図られてきた結果、現在では欧米諸国と比較しても遜色のない水準に達しているため、今後とも着実な運営、改善に努めてまいりたいと考えております。
  134. 新村源雄

    ○新村(源)委員 今の日本の経済の仕組みというのは一体どんな格好になっているか大臣御存じですか。日本の経済活動は、トップはまさに世界の最高水準を行く、そういう企業がずらっとある。ところが、一番端的に申し上げますならば、後で数字をもって示しますけれども農林漁業のようにどうにもならないような状態に置かれておる産業もある、あるいはその中間的な産業もある。今大臣努力をされているとおっしゃったが、経済が均衡ある発展を遂げているときにこそそういうことが言えるのですが、日本のようにこういういびつな経済になってしまっているときには、国家が相当重要な役割を果たしていってもらわなければ、国民の老後、最大の社会保障である国民の老後というものは保障せられない、こういうように考えるのですが、どうですか。
  135. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 国民にひとしくできるだけ安定をした老後の保障を考えていくということは、やはりこれからの政府が考え一つの大事な点だと思います。今回の基礎年金制度の導入ということも、全国民共通に公平な年金支給するということを目的にしているものでございます。  今の先生お話は、その財源負担というような点を御指摘になられたのでは狂いかと思うわけでございますが、この点、農林水産省という立場でお答えを申し上げるのは適当かどうかという気もいたしますけれども、これまで我が国の公的年金制度はすべて保険料負担による給付といういわゆる社会保険方式で運営されてきておりまして、我が国社会にもこの方式が定着をしているということから、これを変更することは現時点ではなかなか難しいのではないか、やはりこの方式を基本として進めてまいるのが適正ではないかというふうに考えておるところでございます。
  136. 新村源雄

    ○新村(源)委員 私が今申し上げましたようなこういう経済の状態の中では、年金というものをもっと新たな視点から考えて、とれは適当であるかどうかわかりませんが、一つの例としていわゆる年金税、収入のあるところからは年金税をもらう、そして国が税によって年金の特別会計をつくって、そして基礎年金は拠出によらないで国が全国民に保障するという税方式に組みかえていかなければ、根本的に各種共済制度の間の整合性というのはいつでもおかしくなってくる、こういう危険性を持っておると思うのですが、どうですか。
  137. 鏑木伸一

    ○鏑木説明員 先ほど農水省の方から御説明がございましたように、現在、社会保険方式をとっておるわけでございますが、この体系を新たに税方式の体系とすることにつきましては幾つかの問題点があると我々は考えております。一つは、新しい税となりますと、恐らくは兆の単位の巨額の税負担ということになろうかと思いますが、こういったことにつきまして国民の合意が得られるのかどうか。また、若干具体的になりますけれども、仮に税を新たに取るということになりました場合に、どういったものを課税対象にしていくのかという点でも難しさがあろうかと思います。さらに私ども考えておりますのは、これまで社会保険方式で保険料を納めてこられた方がおられるわけでございますが、こういった方々と全く納めない方と同じに扱ってよろしいのかどうか、そういうことで公平性確保されるのかどうかといった問題もございますので、私どもは従来どおり社会保険方式というのが適当ではないかと考えておるところでございます。
  138. 新村源雄

    ○新村(源)委員 それは課長さんの答弁で、現在のところをすぱっと切って考えるとそういうことは当然言えます。しかし、この年金の方式は、長期展望に立って、少なくとも三十年、四十年の先を見通してやっているわけでしょう。そうすれば、その間にどういうような状態で転換をしていくかということは、基本的な矛盾を解決する上においては検討されるべきじゃないかと思うのですが、どうですか。
  139. 鏑木伸一

    ○鏑木説明員 御指摘のとおり、負担のあり方につきましては長期的に検討していかなければならない課題であろうかとは思います。これは先進諸国におきましても共通の悩みといいますか課題になっておりまして、現在は社会保険方式ということをとる国の方が多いかと思いますけれども、長期的には考えていくべき課題だと思います。  しかし、現時点では、先ほど申し上げましたような問題もございますので、社会保険方式を維持していく方が適当ではないかと思います。
  140. 新村源雄

    ○新村(源)委員 この問題は基本的に非常に大きな問題であります。私はそういう意見も持っている。政府としても、今のこの年金方式をやっていけば、私はこれからいろいろ申し上げたいと思いますが、いろいろな矛盾点が常に出てくる、そして、国民の老後をひとしく保障するということができない、こういうことを指摘をして、次の問題に移っていきたいと思います。  今回、私どもの審議しているのは農林漁業団体職員共済組合法の一部改正でございますが、この農林漁業団体職員の身分を保障する基盤は、何といっても農林漁業の現状がどうであるか、こういうことが基盤になっていくわけですね。  そこで、私は、経済企画庁の発表しております過去の農林漁業の生産、さらに、これがGNPいわゆる国民総生産に占める割合がどうなっているか、こういうことで見てまいりました。  一つは、金額的でございますが、国民総生産が昭和三十五年には十六兆二千七十億円、これが昭和五十年になりますと百五十一兆七千九百七十億円で、昭和六十年には三百十四兆円というようにどんどん上がってきています。  ところが、農林漁業、この三つの上昇はどうかといいますと、昭和五十年度において十一兆六千四百十八億円、そしてこれが国民総生産に占める割合は七・七%。しかし経済企画庁の昭和四十五年からずっと通算をしたGNPに占める農林漁業の比率は、昭和四十五年では六・一%、ずっと五十八年まで出ておりますが、その途中を省略いたしまして、昭和五十八年には三・三%というように下がってきておるわけです。こういうように農林漁業が国民総生産の中に占める割合がどんどん減っている。これによりますと、多いときには一年で〇・五%下がっております。それ以後、昭和五十五年から〇・五%あるいは〇・三%、〇・一%、〇・一%というように、ずっと農業の生産が落ちているという意味ではなくて、国民総生産に占める割合が年々低下をしていっているわけです。  ということは、農林漁業団体職員共済組合が果たしてこのまま健全に運営できるかどうか、こういう疑念に結びつくわけですが、この点についてどういうふうにお考えになっていますか。
  141. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 確かに経済発展の中で、一次産業、二次産業、三次産業というような部門別に見ますと、二次産業のウエート、そしてまた三次産業のウエートが次第に高くなってまいるということは一般的な傾向としてあるわけでございます。  農林年金の将来はそれで大丈夫かというお尋ねでございますけれども、大宗をなします農協について見ますと、確かにその基盤になっております農業生産額の伸びがGNPの伸びに比べて低いという面はございますけれども、農業協同組合かなり幅の広い総合的な事業をやっております。  農産物の流通加工段階におきます付加価値が高まっているということは先生よく御存じのとおりだと思いますけれども、こういうものは農業生産額というところには統計上反映をされておりませんし、また、農産物に対するニーズの多様化あるいは農家組合員農協諸事業に対するニーズの多様化といったような質的な面が金額ベースでは必ずしも反映されていないということもございます。  また、農協組合員数そのものについて見ますと、確かに近年停滞をいたしておりますが、長期的に見ますと、昭和三十五年に六百五十四万人でございましたものが五十八年度には七百九十九万人ということで増加をしておりまして、正組合員だけについて見ますと、五百七十八万から五百五十七万ということで若干減っておるわけでございますが、農業協同組合には地域協同組合的な役割、機能というものもございますことは、先生も北海道等でよく御存じのところと思います。  こういった状況も勘案をいたしますと、長期的に見ました場合に、事業の内容とか形態等々には経済、社会の変動に伴いましてこれから変化が予想されますけれども農協組織の存続について懸念が持たれるというようなことではないと私ども見ておるところでございます。
  142. 新村源雄

    ○新村(源)委員 今、局長さんから御説明ございましたが、私は現地で農業協同組合と肌でいつも接している立場ですけれども、それは大体昭和五十年度ごろまでの体制なんですよ。購買網を広げるあるいは新しい事業にも取り組んでいく。しかし、今日では、先ほど中林委員指摘をしておりましたように、どうやって減量経営をやっていくかということでみんな四苦八苦しているわけですね。しかも、その中で、これはもう私から言わなくても御案内のように、米はまた来年六十万ヘクタールの転作をやるというのでしょう。あるいは北海道では豆作もでん粉もてん葉も、全部作付を規制をされておるでしょう。そして最近また牛乳が、これも生産調整をしなければならぬという段階に入ってきておる。それから牛肉や豚肉を見たって展望がない。  そしてまた、林業はどうですか。林業はこの前の一般質問でも申し上げましたように、その地域では産業として成り立たなくなってきておるわけですね。そうすると、これにかかわる森林組合の将来はどうなっていくか。あるいは漁業もまた二百海里あるいは北方漁業の締め出し。こういうものによって農林漁業全体の状況というのは非常に厳しくなっておるわけですね。  こういうものにやはり活路を広げてやらなければ、私は、農林漁業団体職員の共済というのは前途は非常に厳しいものが予測される、こういうように断ぜざるを得ないわけです。先ほど局長さんのように、何か展望があるようなことではないということなのですが、どうですか。
  143. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 私、先ほど申し上げましたのは、私も先生と同じように、今農、林、水、それぞれを取り巻いている環境は非常に厳しいものがあるということにつきましては、私もそのように考えております。  ただ、GNPの中に占めます農林水産業の生産額のウエートの低下というものが、農林漁業団体経営基盤というものあるいはその存立というものを直ちに脅かす、それが農林年金制度の維持を困難ならしめるというふうには、先ほど申し上げましたようないろいろな事情考えますと、考えておらないということを申し上げたわけでございまして、大変厳しい中で関係団体はこれを切り抜けるために大変な努力をしておられるということについては、私どもも全く同感でございます。
  144. 新村源雄

    ○新村(源)委員 そこで、農林水産大臣に特に注文をつけておかなければならぬのは、農林漁業はいずれもそういう非常に厳しい状況の中に置かれておる。それで、新ラウンドによる農産物の交渉も始まりますね。こういうもので少しでも手を緩めれば緩めただけ、日本の農業は失地がだんだん大きくなっている、こういうことになりますので、この点については十分心しておいてもらいたいということと、それからもう一つは、林業の問題ですが、こういう林業の状態にあるにもかかわらず、いわゆる合板等の関税の引き下げをやる、こういうことで、これは私の町でも、ごく最近に歴史的にかなり古い製材工場が倒産をしてつぶれる、こういう状態になっているわけです。したがって、林業に対する対策はどういうようにお考えになっているか。
  145. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 先生にお答えいたします。  御指摘のとおりでございまして、我が国の農林水産業は、食糧需要の伸び悩みあるいは農林水産物価格の低迷や諸外国からの相次ぐ市場開放要求など、極めて厳しい状況に直面していることは先生の御指摘のとおりでございます。  そういうことで、今後の農政を進めていくに当たりましては、こういうような厳しい情勢を十分に踏まえた上で、基本的な方向としてはやはり経営規模の拡大や生産基盤の整備、技術開発あるいは豊かな村づくり等を通じまして、生産性が高く土台のしっかりした農林水産業を実現していくことが何より大切であると考えております。  また、先ほどの市場開放問題につきましては、特に林業の問題が出ましたけれども、いつも言っているようなことでございまして、この間、特に先生方の御理解を得まして千五百億特別枠で取ったということでございます。融資枠千億、国費五百億でございますが、これを十分活用いたしまして、合板、製材業につきましては十分経営の成り立つような形にいたしたい、こういうように考えておるわけでございます。
  146. 新村源雄

    ○新村(源)委員 そこで、今回の共済年金法案の取り扱いの中で問題になってまいりましたのは、国鉄年金の取り扱いをどうするか、こういうことがいわゆる四法案の基礎的な要件になったわけですね。そういう立場から、ことしの五月審議をしました農業者年金基金法、これをもう一回振り返ってずっと見てみたわけです。  ところが、農業者年金基金法というのは大変な内容でございまして、掛金が高くて給付が低い、ほかの年金、例えば厚生年金等とは比較にならないという状況にあるわけです。この点については、国鉄共済が今度の年金法案を審議していく上での関連として非常に重要な問題になったが、しかし、農業者年金基金法についてはこういう状態にあるのにこのままにしておいて一体いいのですか、そういう点について何か検討されましたか。
  147. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 先般、百二国会で成立させていただきました農業者年金基金法の改正におきましては、公的年金制度改正を踏まえて、本制度がよりよくその使命を達成できるように、給付負担の適正を図るとか、さらにまた農業構造の改善を促進する措置が講じられたところでございます。  この制度内容につきましては、給付額が低いにかかわらずその掛金が高いという御指摘をいただいたわけでございますけれども、長期的な基金収支の安定を図るという見地からそれぞれ改正を加えたわけでございます。  制度発足以来、給付水準内容につきましては、基本的に農業者年金基金の当然加入の対象となる農業経営者の農業所得を基礎として、厚生年金保険の算式に当てはめて算出したところでございます。  それから、さらに保険料の額につきましては、今回の財政再計算の結果は、長期的に保険収支の均衡を保つための保険料の水準といたしましては、昭和六十二年一月一日で一万三千二百三十八円と当時算定されたところでございますけれども、現行水準に比べ著しく高くなるということでございますので、その急激な負担の増大を緩和させるために、六十二年の保険料を八千円とし、以後毎年八百円ずつ段階的に引き上げることとした次第でございます。  さらに、今後の制度運営のあり方につきましては引き続き検討を続けてまいりたい、かように考えていることは先回も御答弁申し上げたとおりでございます。  以上のような趣旨を御了解いただきたいと思います。
  148. 新村源雄

    ○新村(源)委員 今いろいろおっしゃいましたけれども、基本は、昭和六十七年に被保険者が六十二万人、受給権者が六十三万人、ここにあるのでしょう。ここに問題があるのではないですか。
  149. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 先般の法律改正の際も資料として提出させていただきました。ただいま先生の御指摘になったとおりの数字でございますけれども、これは加入者と受給者とのバランスがそれ以後漸次改善されてまいりまして、昭和七十年から七十五年にかけて五十万人強という被保険者数が大体安定的に確保できるであろう、そのような観点から一応経営の安定が図られるのではないか、かような見通しを立てているわけでございます。
  150. 新村源雄

    ○新村(源)委員 この農業者年金で余り時間をとりたくないのですが、これは非常に重要な問題なので重ねて質問いたします。  農業者年金加入者は国民年金にも加入していなければならぬ、二重に加入するわけですね。ですから、掛金が倍になるわけでしょう。
  151. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 現在、国民年金の付加保険料を加えますと農家の夫婦が支払う保険料は二万二千六百円でございます。一方、厚生年金は平均的に見れば一万五千七百円でございまして、確かに農家の負担の方が高いことは事実でございますが、倍ということではないと思います。
  152. 新村源雄

    ○新村(源)委員 農業所得は十三万一千円、厚生年金の方の所得は二十五万四千円、半分ですよ。そして、支給はどうなるかといいますと、これも十二万九千八百円から毎年低減をしていって、二十年後には七万八千百円に下げるというのでしょう。これはどうなんですか。
  153. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 給付単価の計算の基礎になります標準所得については、確かに厚生年金の場合二十五万四千円、それに対して農業者年金の場合には十三万一千円でございます。これは客観的に見て一般勤労者の所得と農業所得の間にギャップがあるために生ずる現象でございまして、考え方といたしましては、十三万一千円の月収の方が厚生年金に加入された場合と同様な給付水準を農業者年金制度では実現しているわけでございます。
  154. 新村源雄

    ○新村(源)委員 しかし、そういうように算定単価は安いけれども、掛金は実際は高いのでしょう。負担は実際は高くて——所得を低く見積もるからうんと安いというならわかりますよ。しかし、所得は安いけれども両方足すと厚生年金に加入している方よりも実質月七千円高くなるのですよ。そして、実際にもらう金は半分ももらわない、こういうばかなことがありますか。
  155. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 この農業者年金制度は、御案内のように基礎的な年金である国民年金の付加年金であり、政策目的の見地から設けられたものでございます。  したがいまして、その保険料につきましては、一般厚生年金の場合には事業者負担があるわけでございまして、それに対して農業者年金では自営農という特質から事業者負担がないわけでございます。その反面、政策年金であるがゆえに、今回の公的年金改正において一切整理されました国庫の負担給付時において約五〇%あるわけでございまして、私どもとしてもそれなりに努力はしているわけでございますけれども、事業者負担がないというような農業の特質から、先ほど先生が御指摘になられましたような、平均的に言えば約七千円保険料負担の格差ができる、かような次第でございます。  私ども、二万二千六百円という負担が現在の農家経済から見ていかがであろうかという検討もしたわけでございますが、農家経済全体から見て五%程度負担で、この程度であれば御協力いただけるのではないか、かように考えておるわけでございます。
  156. 新村源雄

    ○新村(源)委員 ところが、局長さん、この経営移譲年金はどれだけもらうかというと、今の七万八千円を、経営を早く移譲する、経営移譲した者に限って六十歳から六十五歳までの五年間でしょう。それ以後は、新たに掛けている国民年金の上に、経営移譲年金はそれの一割、そして農業者老齢年金はそれの四分の一ですね。  これに要する農民の負担はどうなっているかというと、これは私が前に指摘をしたように、農林漁業団体年金にも同じようなことが出てきますけれども、今おっしゃったように六十二年一月に八千円、これを起点として六十六年一月には一万一千二百円。この一万一千二百円を固定して、これを毎月掛けていってこれに年六分の運用益を加える、これで計算していきますと、細かい数字は言いませんが、二十五年で七百四十二万六千円、三十年では一千七十二万円、三十五年では実に千五百十六万円という膨大なものを農民が積み上げていくわけですよ。  そして、これに対してもらう金は幾らかというと、さっき言いました七万八千円の五カ年間で、四百六十八万円よりもらわぬのですよ。しかし、その時点でとめて考えると、一千五百万の金利は八十五万ですから、金利だけでそれを払っているということですよ。こういう結果になるんです。農民が積み上げていったもので金利だけしか払っていかない、ということは、その原資はそっくり残っていく、こういう計算になりますよ。なりませんか。
  157. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 ただいまの数字につきましては、先般の農業者年金基金法の改正の際にも先生から御指摘いただいた点でございますけれども、私どもといたしましては、農業者年金は五%の物価変動がありますと自動的に給付額がスライドされる措置がございます。もちろん、給付額がスライドいたしますと掛金の方も当然上がるわけでございますが、過去にさかのぼっては掛金を上げないわけでございまして、それによるメリットというものもあることを御考慮をいただきまして、私どもとしては、先生の御指摘になられた数字を単純に比較することによって農業者年金制度のメリットを評価されるのはいかがであろうか、かように考えている次第でございます。
  158. 新村源雄

    ○新村(源)委員 そんな答弁ではとても納得するわけにいかぬのですよ。余りにも大きいでしょう。物価が上がれば給付金もスライドする、こう言っていますが、必ずそのときには、今局長もおっしゃっていましたように掛金もスライドしていくわけでしょう。そうすれば、一千五百万円余の農民が長い間積み上げてきたものが、五カ年間の支払いだけで、それも金利で払っていけるわけですよ。それ以後は四分の一に一割ですよ。それだけしか払わない、相当余ってくるという計算になる、そういう矛盾について私はどうしても納得いかない。お答えいただきたい。
  159. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 私どもの試算を申し上げて、一応お答えにしたいと思うのでございますが、今回の改正案前提といたしまして、払い込み保険料の運用利回りを五・五%、物価スライド率を五%、平均余命の七十九歳まで生存するものとして、六十歳到達時点の現価ベースで年金受給額に対する払い込み保険料の倍率を試算してみたわけでございますが、経営移譲年金額厚生年金の七五%の水準といたしましても、給付額は、六十一年度から二十年間加入した者では払い込み保険料の一・五倍程度、三十五年加入した者では一・四倍程度になるというふうに見込まれるわけでございまして、このような数字でこの制度のメリットを御評価いただきたいと思うわけでございます。
  160. 新村源雄

    ○新村(源)委員 そこで大臣、この問題をこの前指摘をしたときに井上構造改善局長は、これは制度の相違から来るものだ、特に厚生年金と農業者年金との甚だしい格差については制度の違いから来るものだということで逃げているわけですよ。ところが実際に金を払って受ける年金者にとれば、制度が違うんだということでは納得できないわけですね。  そこで、私がただいま申し上げましたような点について追及をいたしますと、これは農林省内部だけではとても対応できない。したがって、政府全体としていろいろな点から考えていきたい、こういう答弁をなさっているのですが、今日、国鉄共済がこういうようになってきているときに、農林水産省内部としてはこの問題について改めて検討なさったことがありますか。
  161. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 先般の審議に際しまして、五月十五日に先生の御質疑に対して井上前局長からお答えがあったことは事実でございます。  その趣旨は、要は先ほど申し上げましたように、客観的な農業所得と他産業部門の平均的な所得水準の格差から来ている問題だから、農業政策全般等通しましてその所得格差の是正に努めてまいる、こういう趣旨で答弁したわけでございまして、私ども、今後とも、所得均衡というのは私ども一つの政策の目標でございますので、そのような努力を続けてまいりたいと考えております。現にやっておる所存でございます。
  162. 新村源雄

    ○新村(源)委員 先ほど局長さんの手元で計算されたいわゆる農業者年金基金の財務の推移というものを後でゆっくり見せてもらって、本当にそういうことなのかどうか。  そしてこの問題は、端的に言うならば、農業者は自営だから、あるいは雇用者側が負担する二分の一がないから高くなっているのだ、こうおっしゃっているのですね。それはそのこととしてわかります。しかしこれは政策年金でしょう。政策年金であるとすれば、雇用者部分は国が負担すべきなんですよ。雇用者部分は国が負担すべきものである。  そういう原点が取り除いてあるから、こういうようにたくさん金をもらえる、たくさんと言っては失礼ですけれども、非常に有利な条件年金がもらえる方と、その三分の一近くよりもらえない農業者との間で、三分の一はちょっとあれですが、半分ぐらいよりもらえない農業者年金が、掛金が毎月七千円も高いなんという矛盾が起こるわけですよ。  ですから大臣、この点については今後早急に検討してもらう、今全体の年金整合性を図っているときですから、早急に検討していただく、こういうように要請をいたします。大臣の御答弁。     〔委員長退席、島村委員長代理着席〕
  163. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 先生にお答えしますが、先ほどからずっと局長と新村先生のやりとりを聞いて、また、私も前回のときに農業者年金につきましては所管大臣としてずっと質疑を聞いておったし、今第一に、お聞きしまして数字が大分食い違っておるような気がするのです。  それからもう一つ先生は五年間の平均で四百数十万円とおっしゃっておりますが、大体私の試算では、運用利益はどうかという問題はありますが、仮に我が省が五・五%の運用利益ということでやった場合に、少なくとも二十年あるいは三十五年で一・四か一・五倍ぐらいは支払うような形になっておる、ただしこれは七十九歳まで生きた場合、こうなっておるわけでございます。  そんなことでございますが、説明の不十分な点もあるかと思いますので、この問題については、後で局長もまた参上させますので篇とお話し願いたい、このように思っておりますので、よろしくお願いいたします。
  164. 新村源雄

    ○新村(源)委員 農林年金に入る時間がおくれましたが、今度のこの農林年金の基本的な問題は、やはり何といっても掛金が非常に高くなる、そして給付金が安くなる、さらに支給開始年齢が五年間も延びていく、そのほかさまざまな細かいといいますか、重要な問題がございますが、この三つが一番重要な問題じゃなかろうかと思うわけです。  そこで、これはさっきたしかどなたかお聞きになったかと思いますけれども農林年金団体の皆さんからいただいた資料によりますと、基礎年金部分で、物価スライド五%ということを計算していっても四百四十六万円余国に吸い上げられる、こういう試算が出ているわけですが、この点についてはどうなっているのですか。
  165. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 公的な年金制度におきましては、一定の国の助成も考えながら、世代間、そしてまた同一世代の中でも比較的恵まれている方、比較的恵まれてない方々がお互いに助け合う、こういった要素を含んで成り立っておる制度でございます。したがいまして、ある特定の世代をとりましたり、あるいはまたある特定の境遇の方をとりまして、その拠出した分を仮に信託あるいは貯蓄型の生命保険とかに運用した場合に比べて、平均寿命ぐらいまで生きた場合にはマイナスになるというケースも当然あり得るわけでございます。  ただ、これは国が召し上げるということではございませんで、それぞれ特別会計なり、あるいはまたきちんと区分した経理をやっているわけでございまして、その分は結局ほかの世代の方、あるいはまた同じ世代の中でも相対的に恵まれない方のところへいっていると御理解を願いたいと思うわけでございます。もし、出した分だけ全部必ず取り戻すということになりますと、年金制度自体が成り立たなくなることにもなるわけでございますので、その辺ひとつ御理解を賜りたいと思うわけでございます。
  166. 新村源雄

    ○新村(源)委員 さらにこの問題では、夫婦の場合、御主人が勤めておれば妻は基礎年金は掛けなくてもいいということですね。そして単身者とか共稼ぎの方はちゃんと払わなければいかぬのですね。これは甚だしい格差が出るんじゃないですか。一人分払って二人分もらう、それから一人分払ってそのまましかもらえない、こういう点についてはどうなっているのですか。
  167. 鏑木伸一

    ○鏑木説明員 今回の改正におきましては、サラリーマンの無業の妻、専業主婦の方でございますが、費用負担上は、扶養しております夫の属します保険集団、厚生年金保険といった保険集団の一員であるという整理をいたしたところでございます。  この場合に、妻分の負担をどうするかという問題があるわけでございますけれども、この場合の妻にはみずからの負担能力がないわけでございます。夫の報酬によって生計を維持されているということでございますので、そういった点に着目いたしまして、従来の被用者保険の考え方、原則に従いまして、負担できる方が同等に負担するということで整理させていただいたところでございます。  そこで、先生おっしゃいますように、共働きの世帯が被扶養配偶者のいる世帯に比べてより多く負担することになり不公平ではないか、こういう御指摘になるわけでございますけれども、共働きの夫婦はそれぞれ厚生年金の事業所に勤めて相応の報酬をもらっておられますから、当該保険集団の一員といたしまして同等の負担をしていただくことは合理的なことではないか、このように考えたわけでございます。
  168. 新村源雄

    ○新村(源)委員 都合のいい理屈をつけられますが、しかし、実際にもらわれる方はいいですが、払う側をもう少し安くする方法はなかったのですか、どうなんですか。
  169. 鏑木伸一

    ○鏑木説明員 社会保険方式におきましては給付負担の関係が関連づけられているということでございますが、この場合に、ある特定の人につきましてこれを減額するとかといった特例措置を設けることはなかなか難しいわけでございますので、ただいま申し上げましたような社会保険方式の通常の考え方に基づきましてこういった整理をさせていただいたところでございます。
  170. 新村源雄

    ○新村(源)委員 次に、給付水準でございますが、これは基礎年金共済年金を上積みしたものを支払う、こういうことになっているんですね。そのために年金が大体二〇%から五〇%ぐらいダウンする、こういうことが出ているわけです。  そこで、一番最初の問題としては、今までの算定基礎額は退職前一年間の平均給与、今度は全期間を通ずる、こういうことです。しかし、六十一年四月に既に組合員になっている人は前五カ年分の平均標準月額を出して、これに政令で定めた補正率を掛ける、こう言っているんですね。補正率というのは、当然これはそれぞれの給与に、かなり多くの方々ですから高い人もおれば安い人もあるわけですが、そういう人たちに一律で掛けるのか、あるいは金額によって掛けるのか、そういう点についてはどうなんですか。その補正率は一体どういうものなんですか。
  171. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 今回、標準給与の扱いにつきまして全期間平均という方式をとることにしたわけでございますが、これは、団体ごとに農林年金制度に加入した時期が違いますために、標準給与のございます組合員期間が農林漁業団体によって長短があるということがございますので、一律に全期間平均することには問題があるということから、過去五年間の標準給与の平均に一定の補正率を掛けるということにしておりますが、これは一律ではございませんで、組合員期間の年数に区分して補正率を定めることにいたしております。  と申しますのは、例えば過去五年間とりまして、組合員期間が五年の方はまさにそれが全期間平均になるわけでございますから、これは給与水準の再評価ということだけやればいいわけでございます。ところが、そこから全期間平均を計算いたします場合には、組合員期間によりましてその補正率が当然違ってまいると思いますので、組合員期間の年数によって補正率を区分して定めることにいたしております点が一つ。それからもう一つは、そのときどきのノミナルな給与そのものではございませんで、過去の給与水準を現時点における給与水準に再評価し直しましたものについて補正率を計算する。  したがいまして、一言で申しますと、過去の給与水準につきまして現時点での給与水準に再評価し直した後のものにつきまして、五年間と全期間との平均の比率というものを組合員期間の年数により区分して定めるという方針で作業をいたしたいと思っているわけでございます。
  172. 新村源雄

    ○新村(源)委員 まだいろいろ項目的にたくさんお聞きしたいことがあるのですが、特にこれをやってもらいたいと思いますのは、先ほど申し上げましたように農林漁業の情勢というのは非常に厳しい、そしてなかなか組合員対象団体が広がっていくという可能性が少ない、こういうことから、対象範囲を拡大してもらいたい。特に、農協が全責任を持っているような、いわゆる農協でないそういう関連会社があるわけです。これが全国で二百二十五社あるというのです。これの従業員が一万六千二百八十五人。そしてまた全農だけでも二十五社、これの従業員が四千五百十五人。全農の職員は四千人と言われておりますが、これよりも多い。いわゆる全農がほとんど責任を持っているという会社があるわけです。やはりこういうのは当然対象になれるようにやってもらいたいと思うのですが、どうですか。
  173. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 保険集団を大きくするというような意味合いで、もう少し対象団体を広げたらどうだというお尋ねでございますが、実は昭和三十四年に厚生年金から分離独立いたしましたときに、この制度の対象といたします団体の性格というものを厚生年金との仕分けの中で決めておりまして、法律に基づいて、一定の公共的なあるいは非営利的な事業を行っているような団体、そしてまたその構成員というものが、ずっともとをたどっていきますと農林漁業者であるというような団体という幾つかの定義づけをいたしておりまして、大体これに該当いたしますものにつきましては、今農林年金法の中で限定的にほぼ網羅的に対象になっておるところでございます。  ただいまおっしゃいましたような関連会社あるいは協同会社というようなことになりますと、先ほど申し上げましたような農林団体年金の対象としての性格からは外になりますし、またこれもいつか申し上げたことでございますけれども組合員数を増大いたしますために対象団体を広げるということは、未来永劫続けてまいるわけにはいかないわけでございます。また、広げました団体におきましても、だんだん組合員から受給者に卒業してなっていかれるということになりますれば、結局また給付面での必要を増大させるということにもなるわけでございまして、やはり基本的には制度仕組みと申しますか、そういうものの中でこの成熟率の向上なり高齢化社会への対応ということは考えていかざるを得ないのではないかというふうに私ども考えておるところでございます。
  174. 新村源雄

    ○新村(源)委員 時間が来ましたので終わります。
  175. 島村宜伸

    ○島村委員長代理 辻一彦君。
  176. 辻一彦

    ○辻(一)委員 きょうは私、法案審議でありますから、農林年金の問題を三、四点ただして、そして農林年金のバックグラウンドである農協、農業の展望について二、三点をぜひお伺いいたしたい、こう思います。     〔島村委員長代理退席、衛藤委員長代理     着席〕  まず、既に随分と論議をされておりますので、いろいろと重複する点もあるかと思いますが、農林年金昭和三十四年に厚生年金から分離されている。それは当時農業団体に働く人たち条件というか、そういう賃金、給与等が市町村に働く職員等々に比べて低いという格差がある、その中で人材を何とかして集めるには、これを充実し老後を保障していく、こういうことでよりよい人材を集めたいというところから厚生年金から半歩、一歩進めた形で分離をした、こういうように理解をいたしておりますが、そういう中で、そういう政策の目的というものが、この農林年金という時代の間に、今日までにほぼ実現をされたのかどうか、そこらのことについてどうお考えになっておるか、まず伺いたいと思います。
  177. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 辻先生にお答えいたしますが、農林年金制度先生指摘のとおりでございます。そういうようなことで、特に同一地域におきます共済制度が適用されておる市町村職員との間に非常に大きな差があったということで、優秀な人材確保が難しかったということで分離独立したわけでございます。その後数次改正を経まして、地方公務員及び国家公務員の共済に全く遜色のない農林年金になってまいりました。そんなことで、農業協同組合職員の学歴構成について見ますと、男子では大学卒が漸増してきており、男女とも高学歴化が進展し、すぐれた人材確保され、今日までその政策目的に沿ってその特色を発揮してきていると考えております。
  178. 辻一彦

    ○辻(一)委員 この制度発足以来かなりな人がそういうようにして農業団体に集まった、こういうような御見解ですが、それは大変結構だと思います。  そこで、きのう参考人の意見を聞かせていただいたのですが、その中で、例えば茨城の農協に働く代表の方から、本田さんでしたか御意見がありましたが、茨城の中でもいい方の農協で、五十五歳で大体二十八万四千六百円、数字は細かいのがありますが別として。ところが、同様に非製造業で働く五十五歳の場合に三十六万一千円というように、職場におけるこういう格差がまだかなりあるということが報告をされておりました。ここに挙げられた農協は恐らく相当しっかりした農協ではないかと思いますが、非常にたくさんあるところの農業、林業、漁業関係団体というのは、いわゆる農林年金の対象になる職場は、賃金や給与がもっと低いのではないかと思われますね。比較的いいと見られる職場においてもこれであるならば、今言ったように多数のより多くの職場ではかなりな格差がある、こう見なければならない。  こういう中で、改正案によるならば、ほかの非製造業、特に比較される公務員市町村職員等々と同程度並みに老後のことが保障されるのかどうか、そこらの認識はいかがでしょう。
  179. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 まず給与の問題でございますけれども農林漁業団体給与水準を五十八年度末の標準給与月額で見てみますと平均十九万一千百三十七円ということでございまして、私学共済の二十三万三千円あるいは国家公務員等共済の二十一万三千円、地方公務員共済の二十二万四千円というような水準と比べますと、一〇ないし二〇%程度低い水準になっております。しかし、標準給与月額の平均は、職場の男女構成でございますとか年齢構成、勤続期間等々によってかなり差が出てまいりますので、年金制度のベースになります標準給与月額の平均の高低だけでにわかに給与水準一般的に低いということは言い切れない面があろうかと思っております。私学共済のように非常に給与水準の高いところとの差につきましては、やはり農林漁業団体の約八割を占めます単位団体の所在地の大部分が農山漁村地域である、私立学校の所在地はその半数以上が六大都市に集中しているというようなことが影響をいたしておると思いますけれども、同じ農村部に位置をいたします団体としておおむね同様の条件のもとにある、そしてまた、農林年金制度発足をいたしますときに、近くにある市町村役場と同じような年金制度を持ちたいというところから発足をしましたときの比較の対象になっております町村役場の職員給与比較をいたしますと、ほぼ同様か、あるいは月額では、平均的に、賞与も入れました水準で比べますと若干高い水準ということに相なっております。  それから制度でございますが、これも先ほど大臣からお答えをいたしましたように、現在の制度数次改正を経まして、制度としては公務員遜色のない仕組みになっております。そしてまた今度の改正におきましても、民間団体ではございますけれども職域年金部分というものも設定をいたしまして、制度として市町村職員と同等の仕組みにいたしておるところでございます。
  180. 辻一彦

    ○辻(一)委員 その点について重ねて関連してお伺いしますが、具体的に言えば年金額の算定の基礎ということになると思うのですね。その場合に、改正案によると、給付額算定の基礎は、平均標準給与月額というものは全組合員期間の標準給与月額の平均額と、こうなっておりますね。ところが、さきに申し上げたように、今の御答弁では農林漁業団体に働く人と非製造業の間の格差は余りないということでありますが、これはいろんな見方によって見解もかなり分かれると思います。  例えば、農林団体から提供いただいた資料によると、標準退職年金額は、この農林年金の場合に百二十八万一千三百八十円、厚生年金の場合に百三十五万六千四百五十円というように差があるということは、これはやはり給与とかそういうものが最終的に影響しているんじゃないか、こう思うわけですね。そういう意味で、ある程度の、かなりの格差がある。  こういう中で、現行は退職前の一年の標準給与、あるいは退職の前三年間の標準給与の平均額で算定をする、こうなっておるんですね。ところが、全組合員期間というものを算定をすれば、ただでも低目であるところの年金算定がさらに格差がつくのじゃないか、こういうように思いますが、これらについて見解はいかがですか。
  181. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 まず退職年金の額が、例えば厚生年金でございますとか国家公務員共済などに比べて農林年金が平均年金額が低いという点につきましては、もちろん給与水準ということも率直に言って一つの要因になっておりますが、大きな要因といたしまして平均組合員期間がかなり違っております。今私の手元にあります資料は、これは五十八年度末の既裁定者分の数字でございますが、農林年金の平均組合員期間が二十四年でございます。国共済、地共済は三十年、こういったようなことでございまして、仕組みとしては同じでございますけれども公務員共済に比べますと組合員期間が短いために、算定方式によって出てくる金額が当然のことながら低い、こういうことも大きな要因としてございます。ただ、やめて新規に受給者になってこられます方々について見ますと、急速に組合員期間が伸長をいたしておりまして、新規裁定につきましては平均年金額も年々上がってまいってきているという実情にあるわけでございます。  それから、年金額算定の基礎になります給与を一年間平均から全期間にするということで、これによって国共済、地共済などよりもさらに不利になるのではないかというお尋ねでございますが、この措置は、仕組みといたしましては国共済、地共済、私学共済、全部共通措置でございまして、この措置によって農林年金制度的に特に不利になるということはないというふうに考えております。  退職前一年の給与から全期間平均にいたしますと、これはそれぞれの組合員期間の長短あるいは給与上昇率等々によってケース・バイ・ケースで違ってまいりますが、当然のことながら全期間平均の方が低いわけでございまして、低下率の高いところでは二〇%から三〇%くらい水準の低下にはなるわけでございますが、今回年金給付仕組みが変わりまして、定額の基礎年金が導入されるあるいはまた新たに被扶養配偶者についての定額の加給年金が創設をされるというようなことがございますので、ベースになります給与が下がるということがそのまま比例的に給付額の内容がそれだけ減るというところに直ちに結びつくものではないということを御理解をちょうだいしたいと思うわけでございます。
  182. 辻一彦

    ○辻(一)委員 いや、この改正案では四つとも共通して共通措置であることはもちろんわかっておるのですが、農林年金が格差があるとすれば、今の措置によってさらに格差が広がるんじゃないか、そういうことのないような歯どめといいますか、その心配がない対策が十分とられておるかどうか、このことをもう一遍お伺いします。
  183. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 制度仕組みとしては同じであっても、実際農林年金にはより大きなマイナスが出てこないかという御趣旨のお尋ねかと思いますが、これは賃金なり給与のカーブの問題とも関係をしてまいる問題でございまして、退職近くになって給与が大幅に上昇するような方と平均的に上昇するといいますか、上がり方が直線的に上がる方とで、全期間平均をとりますときの響きというのは違ってまいるだろうと思います。どちらかと申しますと、低給与者について見ますと給付水準の低下は相対的には小さいのではないかと思っておりますけれども、御心配の点、私どももわかりますので、実際に細かいルールを決めて制度を運用してまいります場合に気をつけてまいりたいというふうに考えております。
  184. 辻一彦

    ○辻(一)委員 全体としても随分不満な点があるんですが、少なくとも四つの年金が格差のつかないようにぜひ十分な配慮をしてやっていっていただきたい、このように特に要望しておきます。  それから、厚生省お見えになっておりますので、これはちょっと念のために一言だけ伺いたいのです。これは何回も論議をされたことですが、質問する立場からもう一回伺っておきたいと思います。  今度の改正案の骨子は、公的年金の中で基礎年金が導入されるということがまず一つの大きな柱だと思うのですが、その基礎年金の金額が五万円、生活保護費にも並ばない金額であって、少なくも最低の生活を保障する程度基礎年金として考えなくてはならないと思います。これは何回も論議されたことであろうと思いますが、いま一度これについて考え方をお伺いしておきたいと思います。
  185. 坪野剛司

    ○坪野説明員 お答えいたします。  先生よく御案内のとおりでございますけれども改正法といいますのは基礎年金を中心にした改正でございまして、この基礎年金は老後の生活の基礎的な部分を保障するものだという考え方に立っているわけでございます。したがいまして、高齢者の現実の生活費等を総合的に勘案いたしまして、月額五万円、夫婦で十万円という水準を設定したものでございます。  年金給付といいますのは、収入とか、あるいは財産その他、世帯の個々の状況にかかわりなく画一的に支給するというのが年金でございまして、これに対しまして生活保護というのは世帯の個々の状況に応じて最低生活を保障するために必要な額を保障するということでございますので、基本的に少し考え方が違うわけでございます。このように、年金給付水準は生活保護の基準と厳密に比較すべき性格のものではないのじゃないかというふうに考えているわけでございます。
  186. 辻一彦

    ○辻(一)委員 言われることは大体予想できることですが、公的年金を充実していくには、基礎年金の額を引き上げていくことと、二階、三階の面を高くしていくということがこれから大事と思いますので、不満はありますが、この問題に時間をかけられないと思いますので、これからの問題としてまた残しておきたいと思います。  そこで、将来、一段目の基礎年金を引き上げ、そして二段、三段を引き上げるということにならなくてはならないと思うのです。もう一つは、農林年金は、さらにそのバックグラウンドになる働く場所、言うならば、農協であり、漁協であり、森林組合とか、そういう職場の状況がよくなるということと、さらにそのグラウンドになる農林漁業自体の将来の展望が開け、これが発展していくというようでなければ、またある面では発展は難しいと思うのですが、そういう観点から、私はあとの時間をバックグラウンドの問題について少しお尋ねをしたいと思います。  九月の中旬に、十日ほど日米貿易摩擦と農業問題というのでアメリカの方に参って、森林地帯や穀倉地帯、それから肉牛地帯、牧畜地帯等を見て、あと各界と率直な意見の交換をしてまいりましたので、それらを踏まえて二、三お尋ねしたいと思うのです。  まず第一に、これからの農業を考えるときに、バイオテクノロジー、ハイテクの発展というものが非常に大事じゃないかと私は思うのです。それで、まず大ざっぱに見て、我が国のハイテクというものが欧米に比べてどれくらいの水準にあるのか、ちょっと聞かせていただきたいと思います。
  187. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 お尋ねのバイオテクノロジーの研究水準の国際的な比較でございますが、なかなかバイテクの領域も応うございますので一概には申し上げにくいわけでございますけれども、遺伝子組みかえ等の最も最先端のハイテクの技術、特に先端的な基礎的な分野について比較をいたしますと、やはりアメリカが最も進んでおる。我が国がそれに若干おくれをとって今日に至っているという見方が一般的でございます。
  188. 辻一彦

    ○辻(一)委員 具体的にはちょっとお尋ねしますと、アメリカのワシントン州で、ウエアハウザーという有名な世界一の林産会社ですが、ここと接触をして、一日、ヘリコプターで状況を見たのですが、その中で米松の組織培養をやっているのです。ハイテクで遺伝子の組みかえ等までやっているのかどうかを聞きますと、そこまではやっていないというのですが、優秀な米松等の葉を取って、それを寒天に植えて組織培養を相当大きな設備でやっておる。これを見て、林業関係で日本でこういうものがどれくらい進められているのか私も詳しくは承知しないのですが、かなり進んでいる感じが一つしたのです。  それからもう一つは、モンタナの肉牛地帯を見た中で、二万八千ヘクタールというと、山あり谷ありの大きな牧場ですが、そんな大きなところでかなり粗っぽくやっているかと思ったのですが、実態はかなり違って、優秀な赤牛の雌牛に人工授精をやって、受精した卵を一頭の腹から二十頭ぐらい取り出して新しい雌牛の借り腹に植えて、一回で二十頭くらいの子牛を生産している。専門家を置いて、もう既にこういうものに相当大々的に取り組んでおるのです。  我が国の場合は、実験段階あるいは試験場で一、二の例を聞いておりますが、ちょっと考えれば粗放とも言うべき広大な中でやっている牧畜でこれくらいきめ細いことをやっている。それに比べて、日本の狭いところで、もっともっとこういう面の力が必要ではないかと私は思うのですが、それが第二。ただ、福井県の農業試験場でこの間、ウリ類では難しいといったメロンの組織培養に成功したということが大きく報道されておりましたから、実験段階では相当な水準にあるとは思いますが、実態としては、これらの点でかなりおくれをとっていないかと思うのです。それらについて、今の現状とあわせてちょっと見解をお伺いしたい。
  189. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 今お話しの中の、最初のアメリカの米松の件と福井の試験場のウリの組織培養の件、これはハイテクの技術の領域としましては組織培養という一つの研究領域でございまして、我が国のハイテクの中では、この組織培養技術というのは、先生も御案内のように、例えば稲でありますと葯培養技術ということで稲の育種年限をぐっと短縮する方法とか、そのほか白菜とカンランからハクランというのを三十年前に農林省の研究機関でつくりました。こういう胚培養。こういった組織培養技術を駆使したハイテクの領域は我が国も非常に蓄積がございまして、今、松のお話がございましたけれども、私どもの林業試験場でも、今まで杉科、モミ科、松科、ヒノキ科とか、いろいろな二十一種類の林木でそういう組織培養技術に成功しておりまして、既に組織培養の段階から一歩進めて、今度は細胞融合という新しいこういった林木の技術に現在挑戦をしているのが現状でございます。  さらに、ウリ科の話も、いろいろな野菜の中で、やはり組織培養も種によっていろいろ難易度がありまして、確かにウリ科は大変難しいのだそうでございまして、今回の福井短大の成果というのは大変評価されているのですけれども、そういう点で組織培養は、そのほかイチゴのウイルスフリーでありますとかいろいろな花木なんかの大量増殖とか、農業生産の現場で非常に実用的な技術として現在広く定着しつつある状況でございます。  なお、牛の改良といいますか、そういう受精卵移植でございますけれども、これにつきましては、我が国では筑波にあります国立の畜産試験場と全国にございます種畜牧場、この連係プレーの中で、これまでに、先ほどもおっしゃいましたような双子生産技術というのは、特に今一つの借り腹に分割した二つの卵を入れまして同時に双子をつくる、これも既に昨年の十一月に成功しておりまして、日高種畜牧場でこういった双子生産に、これは牛でございますが成功してございます。  こういうことでいろいろ進んでおりますけれども、このほかに、先ほどちょっとアメリカに一歩おくれていると申し上げましたけれども、実はこういった細胞融合とか遺伝子組みかえ、こういう研究領域も昨今、昨年から今年にかけてかなり目立った成果が出ております。  二点ばかり御紹介しておきたいのですけれども一つは稲でございますが、稲の裸の細胞、プロトプラストというのがございますが、このプロトプラストの再生に、これから植物体を誘導することに成功して、これが世界で初の業績。それからもう一つは細胞融合で、オレンジとカラタチの雑種細胞の、これも植物体にまで、今このくらい大きくなりましたけれども、そういうこれも大変世界的に注目された業績でございまして、このほかある植物体から取り上げた遺伝子をほかの植物に移転するベクターというのがございますが、こういうベクター開発の分野でも非常に立派なバイナリーベクターの開発というのを筑波の農業生物資源研究所で成功しております。  これらがいずれも世界に先駆けた成果ということで、いろいろと全体のレベルとしては基礎的な分野はアメリカにまだ一歩おくれていると申し上げましたけれども、そういった幾つかの目ぼしい成果が出てきておりますので、私どもとしては今後さらに二十一世紀に向けてこういった成果を今後の育種に有効につなげていくような方向努力したいと考えております。
  190. 辻一彦

    ○辻(一)委員 随分頑張っているということですね。相当な水準にあるということを聞いて心強く思いますが、アメリカのように広い場所で粗放ではなしにあれだけの、畜産あたりでもこれは一般化というか非常に大規模にやっておるのですね。我が国の場合は、成功したと言ってもまだ一、二、試験場段階での成功であって、これを大規模に適用するにはかなりな時間がかかると思うのですが、応用面では世界にどこにも負けないはずなのですから、そういう面によりひとつ力を入れて頑張ってやっていただきたいと思います。  それから、稲の品種改良について、我が国が世界の最高であったと思っていたのですが、ハイブリッド米等を契機に中国からアメリカ等々が随分と伸びて、一歩おくれをとっておるのではないかという懸念がありますが、これをぜひ力を入れてもらって、特に、広く考えると他用途米なんかの多収穫米ですね、本当に余計どれればいい、こういう面の品種改革も、日本の科学技術、育種技術をもってすればできないはずはないと思うのですね。これらにひとつ力を入れていただきたいのですが、その見通しを、時間の点もありますから簡単で結構ですから一言聞かしてください。
  191. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 多収穫米の品種開発につきましては、実は五十七年から国の稲の育種組織を挙げて超多収等の開発のプロジェクト研究に取り組んでおるわけでございまして、それの目標は十五年先に現在の水準の収量を五割上げる、そういった全体の研究目標の中で進めております。  この研究の一環に、先ほどお話のありましたハイブリッドの技術も研究開発の中に取り込んでおります。それで、ハイブリッド米の技術もかなり力を入れておりまして、既にこの面でも昨年北陸農業試験場から我が国のハイブリッド品種第一号ということで北陸交一号という品種を育成したわけでございますけれども、今後こういった各地域に適した非常に特性のすぐれた超多収といいますか、多収穫品種、これを従来の日本の品種を軸にさらに外国の非常にすぐれた遺伝資源をふんだんに使いまして、今後の育種を展開していきたい、そういうふうに考えております。
  192. 辻一彦

    ○辻(一)委員 時間の点からあとは割愛しますが、大臣、やはり農業のこれからに、これは林業、水産業等も含めてですが、ハイテクの将来は非常に大事だと思うのですが、これは農林省で最近大分力を入れておられるようでありますが、これにしっかり取り組んでいただきたいと思います。その決意のほどを一言伺いたいと思います。
  193. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 辻先生にお答えいたします。  農業につきましては大変厳しい環境でございます。また、農業の将来につきましては、価格政策あるいは中核的担い手の育成とか基盤整備、生産対策、技術開発等いろいろございますが、技術開発のうち特にバイオテクノロジーに最重点を置く。これはある意味で基盤整備と同じで大変コストが安くなるというようなこともございまして、我が省といたしましてもバイオテクノロジーに最重点を置いて政策を進めているということでございますし、今後ともその方向で全力を尽くしたい、こう思っております。
  194. 辻一彦

    ○辻(一)委員 米の問題を伺いますが、この前アメリカのUSTR、米通商代表部に行って随分といろいろな論議をしましたが、穀物論議になったので、世界の先進国は全部食糧、穀物自給率をどんどん上げている、その中で我が国だけがどんどん下がっている、カロリーは五二、穀物の自給率は三二%と、もうこれ以上切ることは絶対できない、国の安全保障上も許されない、こういう論議をしてきたのです。  そんな中で通商代表部の代表は、日本は国土が狭い中での農業であるから、米だけはこの国のいろいろの関係からやむを得ないと思うが、やむを得ないということは、これの市場開放を要求しても無理だろうということを言ったわけなんですが、そういうことをどういうように受けとめておられるか。アメリカは、米の問題に触れれば日米の両国関係が重大な難しさになる、こういうような認識を本当にしっかり持っておるのか、あるいは機会があれば米をも日本へ送り込もうとするのか、そこらを政府としてはどういうように受けとめていらっしゃるか、それをひとつお伺いしたいと思います。
  195. 石川弘

    ○石川政府委員 日本の米というものは御承知のとおり主食でもございますし、農業の中の非常に基幹的な作物でございますから、そういう事情につきましては日米の農産物に関する定期協議等において逐一話をしております。そういう場合でも向こうもその重要性は十分熟知をいたしておりまして、今までも日本に米を出すという意味において米の問題が提起されたことはございません。かってそういう問題がお話の中で出ましたのは、日本が過剰米を輸出いたしました際、そういうことは伝統的な米輸出国の立場として困るという意味での議論があったことはございますけれども、これはあくまで自分の輸出市場をいわば補助金つきの形で侵されることに対する不満でございまして、日本国内に向こうの産物を持ち込むということは一切ございません。
  196. 辻一彦

    ○辻(一)委員 私も感じとしては、やむを得ないという言い方の裏側にそういう受けとめ方をしたのです。  これは素人考えで恐縮ですが、アメリカを見ると、火がつくとなかなか消しにくいところだと思うのですね。だから、火がつかないうちに、米に手を触れれば難しいことになるのだということはよく向こう側に徹底させておく必要があるだろう、こう思って、帰るときにアメリカの大使館とも、担当者とそういうお話をしたのですが、同じような意見を持っておりました。帰って全中にもそういうようなことを伝えたことがありますが、これはそういう努力を今やっていくことが大事だと思いますが、大臣、この点いかがでしょうか。
  197. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 お答えします。  今長官もお答えしたとおりでございますが、お帰りになりまして、私もお話を聞かせてもらいまして、そのことを長官、局長によく伝えたということです。  我が省としては、米の主要な輸出国である米国に対しましては、これまでも日米農産物定期会合等の場で、我が国の食生活と農業及び農政における米の重要性については繰り返し十分説明してきておりますし、アメリカも、米が我が国の主食であり、我が国農業にとって最も重要な作物であり、食糧の安全保障の観点からも国内産で全量自給することとしている点は十分理解していると考えております。米国から米の輸入を要請されることもないし、そのような要請があるとは考えておりません。  そんなことで、市場開放問題の一環として米が取り上げられたとしても、政府としては、国民の主食であり、かつ我が国農業の基幹作物である米については、食糧管理制度のもとで国内産で自給するという方針は堅持していく考えでございます。
  198. 辻一彦

    ○辻(一)委員 今の大臣答弁のとおり、国会では衆参両院で満場一致で決議をしておるのですから、完全自給をやってもらわなければならぬ、これは当然です。これはこれからともぜひ守り抜いてほしいと思います。ただ、カリフォルニア州出身のアメリカの上下院議員の中には、そういう加州の米をワシントンに送ってきて、こういう米ができるのだから日本へ、こういう声も出ておるということも事実なので、余り安易には考えられないので、これからともよく理解を求めていく態度が大変大事ではないかと思いますので努力をしていただきたいと思います。  それで、長官見えておりますが、自主流通米の検討委員会が九月半ばから五回開かれて、十二日にこのまとめが出る予定が延びておったのですが、きょうあたりそれが公にされると聞いておりますので、この機会に要点をお伺いしたい。  特に、検討委員会の中身として良質米の奨励金がどうなるかということに自主流通米の産地で大変深い関心を持っている。従来ならば米価運動のときの動き、今、十二月を目指して自主流通米の生産地には農民の動き、農協の動き等々があるわけなので非常に関心が深いと思うのです。そこらに重点を置いて、そのまとめについてお伺いしたい。
  199. 石川弘

    ○石川政府委員 自主流通米の問題点につきましては、本年の米価決定の際に、今後の自主流通のあり方等について検討して予算編成期までに詰めをするという約束をしておりまして、その一環といたしまして、生産者、流通関係者、学識経験者として米審の委員から何人かの方に入っていただきまして、九月以来五回にわたって会合をいたしておりまして、今月の二十日に最終的な会合をやりまして、若干修文のために時間を要しましたが、関係者の合意を得ましたのできょう公にして私どもの方にいただいたわけでございます。  良質米の助成の話だけではなくて、生産、流通全体にわたります討議をいたしておりますけれども、主な点を申し上げます。  まず、流通規模。御承知のように、五十九年は三百万トンを超えたわけでございますが、それがいわば自主流通の供給過剰というような状態で問題を起こしておりますので、そういう流通規模をどう見るかということ。  これは、三百万トン超えということにつきましてはちょっと過大なものであるということについては意見が一致しておりますけれども、それが豊作要因なのか構造要因なのかということでは若干意見が分かれております。具体的に二百七十五万トン程度というような水準についても若干意見が分かれておりますが、適正規模でなければ建て値その他なかなか困難な事態になってきているということではほぼ意見が一致していると思っております。  それから、政府米との関係でございます。御承知のように政府米と自主流通米のバランスがとれておりませんと自主流通で売りにくい、あるいは政府米の売り方次第では自主流通の価格にもいろいろな影響があるわけでございますが、この両者を一体的に運用するということについては皆さんそういう御意見でございますが、そうかといって自主流通比率を何%にするかとかそういうことではなくて、両者の制度運営、自主流通は自主流通として建て値だとかそういうことで弾力的にやると同時に、政府米も売却操作にいろいろ工夫をして、一体として運用していくというような形で意見が出ております。  それから、良質米生産につきましては、着実に拡大してきており、まだ作付の意欲がなかなか根強い。しかし、良質米をつくるには単収の低さとかつくりにくさというような不利性も確かにあるが、そうはいうものの肥培管理等の技術の進歩によってかなり単収が向上して、その不利性は克服されているのではないかということ。それから、何と申しましてもササニシキ、コシヒカリに集中してきておりますので、そういう単品集中というようなことは適地適産という面で問題がある、あるいは災害が来ました場合に一斉に当たるという意味で危険分散という問題があるのではないかということ、それから機械等が一時期に集中しまして、機械の効率的利用の観点から問題があるのではないか、そういうようないろいろな御意見がございまして、これらの考え方についてはほぼ一致しております。  それから、今後の作付動向がさらに生産拡大というようなことでの供給過剰につながるかどうかということでは必ずしも意見は一致いたしておりません。  それから、流通の諸問題といたしまして、自主流通計画の立て方なり情報提供の仕組み等につきましても御議論がございましたが、これは技術的に話し合いを進めれば足りる問題だと思っております。  それから、流通とか価格決定の仕組みをめぐる問題といたしましては、価格決定の仕組みに政府等の第三者介入が必要じゃないかというような御意見も一部ございましたけれども、やはり当事者同士で話し合って決めていく現行方式が適当ではないかということでは意見が一致しておりますし、価格への需給事情の反映は必要だ、余り量が多くなってきますとやはり価格的に弱くなる、あるいは少なくなれば高くなるわけでございますが、そういうことは必要だけれども、そうかといって余りに乱高下するようでは困るので、安定性というようなことについても極力考えなければならないとか、事情の変化に応じて適切な数量調整と価格決定を行う。御承知のように、今まで当初に決めますと一本調子でそれを守らせるわけでございますが、かつて、五十三年、五十四年のように過剰時期においては一定の数量については特別販売というような形でこなしたということもございますので、そういう点にはある程度の弾力性が必要ではないかということではおおむね意見が一致をいたしております。  価格形成の際に、今これは全国段階で卸売業者といわば生産者、集荷業者で価格決定をやるわけでございますが、二次集荷業者、県連段階にいきなりつないでやったらどうかというような議論だとか、あるいは需給事情をもっと今まで以上に価格に反映させて、供給過剰なら下げろ、あるいは少なければ上げろというような形にしたらどうかというようなことについては、いろいろ賛否がございまして意見が一致をいたしておりません。  それから生産者手取り額あるいは生産者手取り差額、これはメリットといっておりますが、こういうものの水準と良質米供給との関係でございます。生産者手取り額にしろ手取り差額、メリットにしろ、近年着実に上昇しているということ、それから良質米を安定供給するためには生産者にとって一定の有利性がなければ困るというようなこと、もう一つは過度の生産刺激、要するにソリッドが過度に多いということは供給過剰等を起こし、いろいろ問題があるということでは意見が一致をいたしております。では、どの水準ならば、要するに刺激もし過ぎず、あるいは適正な刺激として生産が維持できるかというような水準論になりますと、現状でいいんだというのと、現況はメリットがあり過ぎるということで意見が分かれております。  それから自主流通助成の問題点ということでございますが、最終的にこの点につきましては、通年販売促進費、これは金利とか保管料助成でございますが、これについては基本的に重要な助成であるということでは一致をいたしております。  それから良質米奨励金につきましても、良質米の安定供給のために今後とも必要であるということは一致をいたしておりますが、その具体的取り扱いといたしまして、現行単価水準の維持が必要であるという意見と、現行単価水準は刺激的に過ぎるということから縮減合理化を図るべきだということで、完全に意見が分かれております。  その理由としまして、現行水準の維持を主張なさる方々は、良質米生産の不利性を克服するに足る一定の有利性の確保が必要だということ、それから良質米奨励金の縮減合理化は生産者手取りの減につながる、これは現状がある程度生産が多いという前提でございまして、そういう供給過剰下で切れば手取りはそのまま下がるという意味でございます。それから、現在の生産者手取りが減少した場合には、一般多収米に切りかわるおそれがある。それから、最近の供給過剰は豊作原因であって、奨励金の要因ではない。それから、良質米が一般多収米に切りかわれば財政負担はかえって増高するんではないか。その場合に自主流通米Aランクと政府米の一類は、今のところ財政負担が自主流通米Aランクの方が多いわけでございます。そういうことで削減しろという意見があるわけですが、自主流通Aランクというのはほとんど政府に戻ってないのだから、これを比較するのはおかしいというようなことで現行水準を主張される方々がいらっしゃる。  一方、縮減合理化を必要とする論拠としましては、良質米は既に供給過剰基調にあり、良質米作付拡大意欲の根強さから見て現状のままでは需給の不均衡が拡大される心配がある。その背景には、近年、生産者手取り及び生産者手取り差額が差実に増加していること等があり、現行の良質米奨励金のままでは良質米の供給過剰に拍車をかけ、価格の下落により生産者手取りの減少を招くことになりかねない、これは五十三年とか五十四年の例を引かれて、そういうことになりかねないということでございます。  それから良質米奨励金を中心とする財政負担相当額に上るとともに、単位数量当たりから見ても、自主流通米の平均では政府米の財政負担に接近してきている。また銘柄によっては財政負担が逆転をしており、Aーランク米については政府米にUターンした方がかえって財政負担が少ないという異常な状態にあるのではないか。それから、消費者の需要動向から見て、消費者が望ましいと考える米と良質米の生産奨励の方向との間にはずれが出てきているのではないか。いずれもただ良質米だけがいいのではなくて、例えば品質等がほどほどであれば普通の米でも需要が伸びているのではないかという御意見。そういうことから良質米供給の現況を考えてみると、ということは、実は奨励金をもらいながら結果的に安売りというようなことも行われている、そういうことでは納税者の立場から現行水準の奨励が必要かどうか疑問だという御意見。それから、需要に見合った良質米の安定供給は、基本的にはプライスメカニズムの活用を通じて図られるべきだ、いいものならば自動的に値段が上がって、それで手取りが多くなるということでしかるべきではないか。それからさらに、二次臨調の答申の中でも単価引き下げをすることが提言されているではないかというような形で意見が分かれております。  これは、その出席者のお立場その他を考えますと簡単に統一できる問題ではございませんので、私たちはそういう論点が分かれている点につきましては素直にそのまま受け取りまして、その事態でどのような評価をするかということを政府部内で決定をしなければならぬと思っております。
  200. 辻一彦

    ○辻(一)委員 きょう公にされたわけですが、その内容に全部立ち入っている時間はもちろんないので、今生産側の農民にとって、農家にとって一番関心の深い良質米の奨励金をどうするのかということについて、最後は両論併記という形で両方の意見がそれぞれ出されている。これからどうするかというのが政府のこれからの手順であると思いますが、少し前に農林大臣は、閣議後の記者会見で、たしか良質米の制度は、奨励金は存続さすべきである、こういうような御発言があったことを記事でちょっと見たのでありますが、この答申を受けて、大臣としてはどうお考えになっているか。  私は、これはやはり良質米を生産する産地にとりましては、基本米価の一つにも今日、所得構成上なっている、これを変えれば多収米の方に、つくりやすい方に動いていく可能性が強い。こういう点から、いろいろな点を考えて、時間の点から多くは申しませんが、存続きすべきであるというように思いますが、これについてひとつ見解をお尋ねしたい。
  201. 石川弘

    ○石川政府委員 いわば報告書にもありますとおり、良質米奨励をなくするとかそういうことを実は論議しているわけではございませんで、大臣もそういう意味で良質米奨励金の必要性というのはかねがねおっしゃっているわけでございます。  私ども、今検討いたしておりますのはそういう奨励金があるという前提なんですが、その奨励が本当に農民のためになるような奨励措置として運営されるかどうか。端的に申しまして五十三年、五十四年に、良質米奨励をやってきたわけでございますが、結果的に大変な過剰になりまして、御承知のように特別販売といういわば安売りをやったわけでございます。安売りをやりますと、奨励金をもらいながら農民の手取りは結果的に下がったわけでございまして、五十五年に若干の良質米奨励金の水準の手直しをいたしました。  その後、その手直しがよかったかどうかというよりも、極端に言いますと作が悪かったという状態も一方あったのだとは思いますが、農民の手取りというのは着実にふえてきたわけでございます。そういう状況と似通った状況がこの二カ年の間に出てきておりますので、それをどのようにするかということを勉強しているわけでございます。  したがいまして、大臣もかねがね良質米奨励金の必要性は強調なさっているわけでございます。こういう水準をどう持っていくかということについては、まだ我々ももう少し詰めをする必要がございますので、さらにそういう詰めをしました上で大臣の御判断を仰ぐというのが手順でございます。
  202. 辻一彦

    ○辻(一)委員 事務当局の責任者としての長官の考え方はそれなりに今伺いましたが、大臣、この前閣議後の記者会見の記事もありますから、これを踏まえて大臣としての見解をお尋ねしたいと思います。
  203. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 辻先生にお答えしますが、先ほど長官が詳しく答弁いたしましたけれども、良質米奨励金というのは四つの理由で五十一年につくったわけです。その後、かなり内容が変わってきた経過を話したわけで、きょう実は米の自主流通に関する検討会議の結果を、今長官詳しく話したわけでございますが、こういうものを踏まえまして、長官も言ったとおりでして、良質米奨励金をなくすということじゃなくして、良質米奨励金の縮減合理化について今後予算編成期に向けて詰めを行いたい、こう考えております。
  204. 辻一彦

    ○辻(一)委員 今、きょう出たそれを踏まえてそれ以上聞くのも次かなか無理なことはわかりますが、これについては、生産する農民は非常に強い期待、希望ですね、それから所得の一部を既に構成している点で基本米価と同じようなつもりでおりますから、この点をひとつ十分に頭に入れてもらって、その答申を受けて前進的な結論を出して、存続されるように強く要望をいたしたいと思います。  最後に、アメリカの穀倉地をずっと見て、日本も前に倉庫に米を随分積み上げて大変な苦労をしたときがあったわけでありますが、アメリカの穀倉地、スポーケンというところでも、二千戸ぐらいの世帯の町に小麦を野積みにして、一山が一万五千トン、八つで十二万トン、言うなれば我が福井県の限度数量の八割ぐらいをそこに積み上げているという状況を見て、アメリカの農業も大変だなという感じを強く持ちました。  それと、いろいろな懇談をする中で、アメリカの農民や農業団体のいろいろな人が、日本は貿易で黒字なんだから、この小麦を少し買い上げてアフリカの飢餓状況の救援に使ってくれないかという率直な話をどこでも聞いたのです。私たちは、日本は貿易では黒字であるけれども、国家財政は六千億ドル、百三十兆円からの赤字であるし、現在でも米を二割減反している、こういう状況の中で日本だけがそういうことを言われてもなかなか難しさがあるが、しかし片方にアフリカのあの飢餓があり、片方に穀物過剰がある、これらを先進国が力を合わせて何らかの解決をしていく努力をしていく道も必要ではないか、こういう感じがしました。  それから、恐らく今保護主義はアメリカの議会でも小康状況にあるようでありますが、来年の二、三月には実際日米の貿易の数字が出てくる。恐らく四百億ドルを超えるであろうと思われますし、円高によって、あるいは関税を下げ、市場開放等によって努力をするものの、急速にその効果があらわれるとはなかなか思えない。したがって数字が大きくなることになります。そしてアメリカの上下院は夏休みに全部選挙区に帰って、農村の状況をいやというほど見、また聞いて帰ってくる、そして十一月に中間選挙、こういう道具立てを考えると、もう一度保護主義の嵐がアメリカ議会に吹いてくる可能性がかなりあるのじゃないかと思いますが、その中で食糧を日本に持ち込めば、こんなことは絶対できない、やるべきでありませんが、今言った、先進国が力を合わせて、アフリカの飢餓と結びつけて、目に見える効果といったら、あそこに積んである小麦の山がちょっと減れば一番目に見えるわけですが、こういうのも、心理的にいっても非常に貿易摩擦の緩和に影響するものではないかという感じがします。  国内的には、もちろん日本へ持ち込む筋合いでは絶対ありませんが、いろいろ難しさがありますが、こういう問題について政府部内でかなり検討はされているということも聞いておりますので、これらについて大臣のお考え方をひとつ伺いたいと思います。
  205. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 先生にお答えします。  先ほどの話につきましては、先生がアメリカからお帰りになった後、私もお話を聞かせてもらい、また写真等を拝見しまして、実は先生と同じような感じを持ったのは事実でございます。  そんなことで、アメリカの穀物倉庫が増加する一方で、アフリカ諸国が食糧危機にあることを背景とし、米国の穀物を我が国が買い付け、これを援助に回すとの構想があることは承知しておりますが、しかしながら、我が国が現在行っている食糧援助の規模あるいは食糧援助の実施に関する国際的ルール、さらには、いずれにしろ追加的な予算措置という問題があるので、食糧援助の問題は直接には外務省の所管でありますので、私どもとしては種々難しい問題があると実は考えております。
  206. 辻一彦

    ○辻(一)委員 所管は外務省の問題でありますが、一日だけ伺いたいと思いました。  時間の点から、これで終わります。
  207. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員長代理 駒谷明君。
  208. 駒谷明

    ○駒谷委員 きょうのしんがりでございますけれども、この間は国鉄共済の問題等について農林大臣あるいは厚生大臣の御所見を伺ったわけでございますが、きょうは農林年金の中身の問題について質問をさせていただきたいと思うわけであります。  最初に大臣にお伺いいたしたいと思うわけでございますけれども、戦後死亡率が大変急激に低下をしてまいりまして、御承知のとおり平均寿命が大幅に伸びてまいりました。昭和五十九年には、男性は七十四・五六歳、女性は八十一・一八歳というようなことで、世界的に長寿国と言われるようになったわけであります。六十五歳以上の人口の総人口に占める割合につきましては、厚生省の人口問題研究所が出されております、昭和五十六年十一月に推計をされました「日本の将来人口新推計」によりますと、昭和六十年には一〇・一四%でございますけれども、七十年には一三・六二、昭和八十年には一七・一〇、昭和九十年には二一・一二、九十年代には五人に一人、六十五歳以上の高齢化、こういう形に推計が行われておるわけであります。  この人口の高齢化につきましては、各委員からもいろいろと御質疑があったわけですけれども、老後の生活を支える公的年金受給者が増加をしていくことは火を見るより明らかであります。また年金受給期間の長期化という問題、それから年金給付額の増大、側面的にそういう問題があるわけであります。これらの年金受給者を支える現役世代と言われる後世代の人たち負担も大きくなるのではないか。これは年金制度の上におきましても大変重要な問題であり、国民にとっても大変憂慮されている問題でございます。  今回提案されました農林漁業団体職員共済組合法の一部を改正する法律案につきましては、高齢化時代の到来ということ、社会経済情勢の変化に対応して、公的年金制度の長期安定と整合性のある発展を図るために公的年金制度一元比等改革の一環として提案されたと思うわけであります。大臣、この改正案で、長期的な安定した農林年金制度が果たして確立できるのかどうか、また世代間の公平性確保できると考えておられますか、まず御所見を伺いたいと思います。
  209. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 駒谷先生にお答えいたします。  既に先生がおっしゃるようなことでございますが、我が国の人口構造は昭和九十年になりましたら六十五歳以上が二一%以上という急激な高齢化社会に移行するものと考えております。そんなことで、農林年金制度につきましてもこのような社会経済情勢の変化に対処するために三つの点に配慮して対処する必要があると思います。  一つは、先生も御指摘のように、公的年金制度の全般的な整合性を図ること、それから制度の円滑な運営を図るため適正な給付水準確保いたしますとともに負担との均衡を図ること、また世代間の公平に配慮すること、また三つ目には、制度財政の長期的安定を図る必要があること等に配慮して対処していくべきものと考えております。  具体的には、農林年金組合員及びその被扶養配偶者について国民年金の基礎年金制度を導入し、農林年金給付はこの基礎年金に上乗せして行う給付とすることといたし、財政の長期的安定を図りたい、こう思っているわけでございます。
  210. 駒谷明

    ○駒谷委員 それではこの改正案に入るわけでございますけれども先ほど大臣お話のありました一階部分に当たる全国民に共通する基礎年金の導入の問題でございます。  今回、農林年金につきましても基礎年金の導入が図られようとするものでありますけれども、この給付水準につきまして、国民一人一人の老後の生活設計にはこれは大きな影響を与えるものであると私は思うわけであります。一人につき月額五万円、年額にして六十万円、夫婦で百二十万円、そういう給付額でありますけれども、本当に老後の生活保障となり得るのかどうか。さきの百一、百二国会においてもこの問題は社労委員会で相当論議が行われたわけでありますけれども、この審議の過程で衆議院あるいは参議院、最終的に社会労働委員会におきまして附帯決議が行われました。また、参議院においては修正が行われたところでありますけれども、この基礎年金の導入に当たって、基礎年金水準等の検討、今後の問題でありますが、この修正について大臣個人としてどういうふうにお考えでございますか。また、今後この改正検討に向かって、大臣として基礎年金の導入を図られるわけでございますので、大臣としてどのような努力をされるお考えなのか、この点についての御所見を伺いたいと思います。
  211. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 先生にお答えいたします。  今回の農林年金制度改革に当たりましては、組合員及びその被扶養配偶者について新たに新国民年金法による基礎年金制度を適用することにしております。この基礎年金につきましては全国民に共通に適用するものでございまして、農林年金組合員等につきましても適用することといたしたものでございます。  基礎年金につきましては、先生も今御指摘がございましたように、前国会の参議院における修正により「基礎年金水準、費用負担のあり方等については、社会経済情勢の推移、世帯の類型等を考慮して、今後検討が加えられるべきものとする。」と法律上規定されております。この検討につきましては、基本的には制度を所管する厚生省を中心として行われることと存じますが、農林水産省といたしましても、農林年金組合員等にも基礎年金が適用されることにかんがみ、その検討に当たりましては社会経済情勢の変化等を勘案しつつ厚生省調整を図ってまいりたいと考えております。
  212. 駒谷明

    ○駒谷委員 これは総理府統計局の昭和五十四年の「全国消費実態調査報告」という資料でございますけれども、老夫婦世帯におきます全国での消費支出の調査が行われておるわけでございます。この消費支出の中で見ますと、十四万六千五百円というのが全国平均の老夫婦二人暮らしの消費支出額であるということが数字的に出ているわけであります。  先ほどから基礎年金の問題については、主たる生活の基本になるものだ、すべてがその内容にははまらないという御意見等があるわけでありますけれども基礎年金のあり方というのは今後農林年金にも大きな影響のある問題でありますので、この修正の趣旨を十分に踏まえてこの問題は早急に検討をしていただかなければならないのではないか、そのように私自身は思うわけでございます。この点については大臣に御意見を伺いません。そういういろいろなデータ等がございますので、生活実態に即したいわゆる基礎年金のあり方というものを、共通の問題でございますのでもう一度この際検討を積極的にして、ひとつ御意見を出していただきますように特にお願いをいたしておきます。  次に、この農林年金制度財政の現状と将来見通しについて若干お伺いをいたしたいと思うわけであります。  この農林年金制度によります組合員の数の増加率は低迷をしておる状況についてはよくわかっておるわけでありますけれども年金受給者の増加、給付額の増高、組合員の掛金の負担、成熟率の推移等はどのような現況になっているのか。これに対して将来どのように見通しを持っておられるのか、その点についてお伺いしたいと思います。
  213. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 農林年金制度の過去十年の状況を見てみますと、組合員数につきましては、昭和四十九年度四十三万八千人でございましたものが五十八年度には四十八万五千人ということになっておりますが、年金受給者数は四万七千人が十二万八千人。このうち、減額退職年金も含んでおりますが、退職年金受給者数は三万四千人から七万九千人というふうになっておりまして、退職年金受給者と現役組合員との割合を成熟率という形で見てみますと、七・八七%が一六・二〇%にという状況でございます。四十九年度当時は組合員十三人で退職年金受給者一人の割合、五十八年度には六人に対して一人の割合ということになっております。  また、収入支出の面についてもお尋ねがございましたが、五十八年度の給付費の総額が千百五十二億円ということでございまして、掛金収入は千二百二億円ということで若干掛金収入の方が上回っておりますが、五十九年度におきましては給付費総額が掛金収入を上回るという状況が出てきております。  将来の見通してございますが、組合員数は今お話のございましたように今後従来のような増加はなかなか見込みにくいというふうに考えておりますが、一方年金受給者につきましては平均余命の伸長がございます。今後さらに増大をしてまいるものと考えておりまして、八十五年度には成熟率は三七・五%、ちょうど組合員二・六人で年金受給者一人というような割合になるものというふうに考えております。また財政面から見ましても、平均余命年数が伸長をいたしますし、年金受給者の増大とともに年金受給期間も長くなります。それからまた組合員期間も延びてまいってきておりますので、一人当たりの年金額も高まってくるというようなこと等から、給付費総額は今後増大をしてまいるということでございます。他方、掛金収入の方は組合員数の増大が見込みにくいという状況にございますので、やはり給付の適正化なり掛金率の引き上げ等で対応せざるを得なくなるというふうに見通しておるところでございます。
  214. 駒谷明

    ○駒谷委員 この農林共済年金の事業を行う費用につきましては、先ほどからの状況の中で大変厳しい現況でありますけれども、この費用を賄う部分については、掛金の収入、資金の運用収入、そして国庫負担等によって賄われておるわけであります。組合員及び事業主が折半をして負担する掛金、これは五年ごとに見直しが行われて、所要の財源率を基礎にして、これに一定の修正率を乗じる等の方法で決定がなされているようであります。現行の掛金等につきましては、昭和五十四年度末を基準とした再計算の結果に基づいて千分の百九というふうに決定をされており、これにつきましては五十六年四月一日から適用されているわけでありますけれども、今年度は財政の再計算が行われなければならない時期であります。所要財源の見直しを行う時期ということでありますけれども昭和五十九年度末を基準にした財政再計算の実施ということになるわけであります。  実は、私の手元に「農林漁業団体職員共済組合収支試算」の資料をちょうだいをいたしておるわけでございますが、そちらにございますか。——そちらの方からちょうだいをいたしましたこの試算表を見ますと、私のお願いした形で試算をしていただいているのですが、「現行制度を継続した場合」「改正を行った場合」、この二つの形で試算をされておるわけであります。年度別には六十一年から昭和百年に向かって十年刻みで、掛金率それから収入。収入の中には掛金、国庫補助、運用収入ほかということで、収入そして支出の計、そして収支の残、積立金、こういう形で、先ほど言いました「改正を行った場合」と「現行制度を継続した場合」とが出されておるわけであります。ここに「掛金率は、五年毎に(九十一年まで)二四%引き上げとした。」という条件もあります。「給与改定、年金額改定は五%、運用利回りは七%とした。」というような形で試算をされた試算表があるわけであります。  ここでお伺いをいたしたいわけでありますが、農林年金を支える国庫補助について、現行制度の場合、それから改正された場合相当額の国庫補助が減額になるように思われるわけでありますけれども、その内容について御説明をいただきたいと思います。
  215. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 今お話ございましたように、今回の制度改正によりまして、公的年金制度に対します国庫補助の仕組みにつきましても、今までは例えば国民年金原則三分の一、厚生年金給付費の原則二〇%、農林年金の場合は原則一八%というふうにそれぞれ異っておったわけでございますが、これを公的年金制度給付の中の共通部分を基礎年金ということで取り出しまして、それへの拠出金の三分の一を助成するということで統一をいたしたわけでございます。ただし、昭和三十六年四月の国民年金制度発足前の期間に係る給付費につきましては、国庫補助についてはそれぞれの制度の既往のといいますか、現在の補助の仕組み、補助率を継続いたすことにいたしております。  この補助の仕組みが従来の給付費の補助から国民年金の拠出金への三分の一の補助ということに仕組みとしてがらりと変わりましたので、単純な比較はしいくいわけでございますが、これにつきましては、御案内のとおり、今回の制度改正で長年月にわたる経過措置もとっておりますので、当面は農林年金に対します国庫補助の金額が特に前年を下回るということはないわけでございますが、将来、長期をとってみますと、当然のことながら給付水準の適正化ということがございまして、掛金の負担につきましても、改正前に比べますと改正後に引き上げの必要の程度が小さくなってまいるわけでございます。そういったこととも見合いまして、国庫補助の金額につきましても現行制度では非常に急テンポで膨張してまいりますものが、将来かなり抑制される、こういう姿になってまいるわけでございます。
  216. 駒谷明

    ○駒谷委員 これは、先ほど金額的に現行制度継続の場合と改正の場合との補助金の中身の問題等で必ずしもイコールの対照ができないという話でございますが、金額的には相当額の補助金の減額に将来なっていくということになろうかと思うわけでございます。七十一年からは減額になってまいりまして、九十一年には約二千四百十五億、現行制度を継続した場合との差し引きの金額はそれだけ補助金としての受け入れが少なくなる、昭和百年においては半分近い四千三百四十一億受け入れが少なくなる、そういう数字であろうと私は読んでおるわけでございます。  この関係の中には、支出の関係におきましても、今度の改正によって支出の合理化という一つの形の中で支出の額が減少しておる。それに基づく国庫補助金の減少ということもあると思いますけれども、結局基礎年金三分の一、この額が国庫補助については大変少額になるのではないか。また、さらに考えるならば、この国庫補助が減額された部分については、掛金の方、事業者、団体組合員の折半の掛金、いわゆる二階、三階建て部分の掛金の方に国庫補助の削減の中のある部分は転嫁をされていっているのではないか、そういうふうな感じが私自身はするわけでございますけれども、その点について御所見を伺いたいと思います。
  217. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 今回の改正案によりまして国庫補助の仕組みが大きく変わりましたので、なかなかこれは直接に比較することは難しいと思っておりますが、長期的に今回の改正によりまして農林年金給付水準を適正化するということにいたしておりますので、これが国庫補助額の減少にも反映をしているものというふうに考えられるわけでございまして、その分が組合員なり事業主へ直接に負担が転嫁されているというふうな関連で論理的に整理をいたしますことは必ずしも適当ではないのではないかというふうに考えている次第でございます。
  218. 駒谷明

    ○駒谷委員 農林年金関係についての国庫補助金がこのような状況になれば、当然四共済の関係についても同じような条件になってくるのではないかと思うわけであります。それだけに国庫補助の対象になっております基礎年金の拠出金、この問題が、今三分の一というのは、ここでも各委員からいろいろと論議があったわけですけれども大臣、この数字等をごらんになって、基礎年金の問題については国の責任で社会保障という一つの立場から、国のいわゆる国庫拠出金、この問題についてはさらに積極的な検討の課題としていただかなければならないと私は思うわけであります。その点について大臣の御所見を伺いたいと思います。
  219. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 先ほど局長から答弁したとおりでございますが、この三分の一の助成につきましては、前国会参議院における修正によりまして「基礎年金水準、費用負担のあり方等については、社会経済情勢の推移、世帯の類型等を考慮して、今後検討が加えられるべきものとする。」と法律上規定されております。この検討につきましては、先生からいろいろの御意見を承りましたが、基本的には制度を所管する厚生省を中心としまして行われると存じますが、農林水産省といたしましても、農林年金組合員等にも基礎年金が適用されることにかんがみ、その検討に当たっては社会経済情勢の変化等を勘案しつつ厚生省等と調整を図ってまいりたいと考えております。
  220. 駒谷明

    ○駒谷委員 この問題はこれ以上お尋ねしても出てこないと思いますけれども、今国の改正案によりますと、報酬比例部分について、いわゆる二階、三階の部分でありますけれども、これについては国庫補助がなくなる、そして財政面では農林年金財政状況は大変厳しい状況である。先ほど経済局長答弁があったわけでございますけれども、今後健全な制度の運営のためにも、どうしてもやはり農林年金につきましては、この国庫の、何らかの形で支援という形をとらなければ大変厳しい状況ではないか。農林漁業団体振興会からの助成を今受けておりますけれども財政援助という問題について農林省としてどのように対応をされていくのか、御意見をお伺いしたいと思います。
  221. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 今回の国庫補助の仕組み改正につきましては、先ほども申し上げましたように、公的年金制度、各種の制度がございますが、その中でいわば共通部分を基礎年金という形で取り出しまして、それへの拠出金の三分の一の統一的な助成ということにいたしたわけでございまして、そういったことから申しますと、他の共済年金もございます中で農林年金だけ独自の国庫補助を行うということは、なかなかにこれは難しい問題だというふうに考えております。  なお、農林年金に対する助成につきましては、事務費についての国庫補助の問題がございますが、これにつきましては今後とも引き続いて所要の予算を確保してまいりたいというふうに思っておりますし、また、いわゆる団体側で農業協同組合が中心になってやっております相互扶助事業、これも結果的には年金財政の改善なり組合員負担の軽減に役立っておる面がございますので、これは助成の趣旨としては直接的に給付費用に助成をするというものではございませんので、引き続いて必要な予算の確保に努めまして、間接的にではございますけれども年金財政の改善と申しますか、組合員負担の軽減に役立ててまいりたいというふうに思っておるところでございます。
  222. 駒谷明

    ○駒谷委員 今後いろいろと財政的に厳しい状況の中で、組合員に対する掛金というのは、やはりこれは収入の中の大きなウエートを占めるわけであります。したがって、この掛金率が上昇するということは、組合員にとっては大変負担の大きい形になりますので、この国庫補助金あるいはその他の支援の体制等も含めて十分に検討をされまして、掛金の問題については負担の軽減を極力図っていくという方向でひとつお願いをいたしたいと思うわけであります。  次にお尋ねをいたしたい点は、退職共済年金支給開始年齢の問題であります。  この辺につきましては、各委員からいろいろと定年制の問題等についてのお尋ねがあったわけでありますけれども、この改正によりますと、年金支給開始年齢は基礎年金支給開始年齢と合わせて六十五歳という形になるわけであります。しかし六十歳から六十四歳までの間は、本人の基礎年金部分を含めて独自給付としてつなぎ期間の特別支給を行うことになっておるわけでありますけれども、この六十歳の問題につきましては現在の支給開始年齢の延長の経過措置を五年間短縮をして昭和七十年に六十歳、こういう形にすることになっております。  この支給開始年齢は、定年制の問題、参考人からの意見の中にもいろいろとあったわけでありますけれども、今の状況で、六十歳定年が昭和七十年には現況として大変厳しいといういろいろな意見があったわけであります。現在五十七・七歳というふうに伺っておるわけでございますけれども、この配置、運営管理上種々問題があるわけでありますけれども、今後どのように対応し行政指導をされていくのか。この昭和七十年に六十歳定年が完全に実現しない場合には、退職とそして年金給付との関係に大きなブランクができるという大きな問題になってまいります。そういう点について今後の農水省の方針をお伺いしたいと思います。
  223. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 農林漁業団体職員の定年年齢は、男子総平均で五十七・八歳というふうになっておりますが、農林漁業団体の大宗を占めます総合農協の男子につきまして、現在の年金支給開始年齢である五十六歳を基準として見ますと、五十六歳以上の定年年齢を定めている組合が五十六年度は六三・三%でございましたが、五十八年度は七一・七%というふうに、定年年齢は漸次延長をされてまいってきております。  今回支給開始年齢の繰り上げにつきましての経過措置の短縮ということが制度改正の中に織り込まれたわけでございますが、私ども従来から、定年年齢の延長につきましては高齢化社会への移行の対応ということで通達なども出しまして指導してまいってきております。年金支給開始年齢との間にできるだけ空白が生じないということが望ましいわけでございますので、今回の年金改革法の内容も踏まえまして、労働省とも連携を図りながら一層努力をしてまいりたいというふうに考えております。  正直に申しまして、これはそれぞれの団体経営実態と申しますか、あるいはまたそれぞれの団体の中での労使の交渉でやはり決定をされるという事項でございますので、私ども役所の側で一律に強制をするというわけにはまいらないわけでございますけれども、参考人の意見陳述の中にも、農協系統組織としてもこの問題については努力をしていきたいということを中央団体も言っておりますので、よく連携をとりながら、今お話のございましたような趣旨にできるだけ合うように努力をしてまいりたいというふうに思っております。
  224. 駒谷明

    ○駒谷委員 次に、年金額の改定方法についてでありますけれども、本改正案によりますと、物価指数が五%を超える上昇または低下が見られた場合には、翌年の四月から年金額を自動的に改正することになっておるわけであります。この五%というスライド基準、老後の生活保障として受ける年金の価値を維持するために妥当な基準なのかどうか、いろいろ疑問の点があるわけであります。二%あるいは四%の上昇ではいわゆる年金の額の改定はなされないという形に法律的にはなると思うわけであります。給与の改定が行われましても賃金スライドの実施も行われない、そういうことになるのではないかと思うわけでございますけれども、そうなりますと、年金受給者の期待権というのを大きく損なうことになりはしないか。年金制度の信頼を保つという点から、こういう五%の一つの基準というのは果たして妥当なのかどうか、その点についての御所見をお伺いしたいと思います。
  225. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 年金額の改定につきましては、国民の生活水準その他の諸事情に著しい変動が生じました場合に、変動後の諸事情に応ずるために改定措置を講ずるということで、今回の改正におきまして、この著しい諸事情の変動の基準として、消費者物価指数が五%を超えて変動した場合という条件を定めまして、そういう場合には法律改正を行うことなく、政令で自動的に改定ができるというように措置をいたしたものでございます。  この点につきましては、従来毎年改定法というようなことで、法改正での手当てをお願いをしてまいりました際に、客観的な指標である物価指数というようなものをとって、一定の変動があった場合には、一々法律改正をもってしなくても、政令で弾力的に改定ができるようにしたらどうかというような御意見も当委員会でいただいておったところでございまして、今回そのような御意見の方向に沿った規定に直したものでございます。  五%を超える場合の自動スライドということにつきましては、これは公的年金制度全体の一つ共通の基準を設定をしたということでございますし、先生も御案内のとおり、例えば人事院勧告というようなものにつきましても、民間の給与との比較で、五%以上差が開いた場合には引き上げの勧告をしなければならないというような、内容はちょっと違いますけれども、こういった刻みとして今まで五%というようなものがとられておる例もあるというようなことでこのような仕組みにいたしたわけでございますが、もっと少ないパーセンテージでも自動スライドすべきじゃないかという御議論も確かにあろうかと思います。ただ、そのような問題につきましては、やはり全体の各制度共通の問題として処理されなければいけない問題でございますし、それではどういった水準を新たな基準とするかという点も検討しなければならないことになろうかと思っております。  なお従来、厚生年金等におきましては物価の上昇率が五%以内の場合でありましても法律改正によりまして年金額の改定を行っているということがございますので、五%を超えなければ絶対に年金額の改定ができないということは、従来の例からしてもそういうものではないだろうというふうに私ども思っておりますし、この五%というのは、消費者物価が例えばある年に三%上がって翌年二%上がったという場合には、その五%は歴年でくくりまして消費者物価の上昇がありましたときにその時点でやりますので、若干の時間の後先ということはあるかもしれませんけれども、必ず物価の上昇は全体としてこの年金水準に反映されるということになるわけでございます。
  226. 駒谷明

    ○駒谷委員 政府の裁量で行う、そういう内容でありますけれども、やはり物価スライドというのは年金を受ける人たちの大きな期待であるわけであります。先ほどお話のありましたように、厚生年金制度におきましては五十九年に二%でスライドの特例が出ております。これは給与の改定というものを踏まえての形でありますけれども、そういう前例等がありますので、五%以下の問題についても積極的に、毎回のスライドというのは、老後の保障を受けております年金受給者にとっては大変楽しみな期待でもあるわけでありますので、その点は十分に配慮して行っていただきたい。この点については参議院の修正できちっと国民年金等の一部改正法のときに明記をされておるわけでありますので、その点を踏まえてがっちりとこの期待にこたえられるような一つ制度というものを政府として考えていただきたい、そのように思うわけであります。  これに関連をいたしまして、既裁定者に対する取り扱いについて若干お伺いをいたしたいと思うわけであります。  現在の農林年金年金額の計算方式、これはいわゆる共済方式と通年方式で行われておるわけでありますけれども、この双方の計算によりまして、そのいずれか高い方の額を年金額と決めておるわけであります。今回のこの改正案では、既裁定年金については、すべて通年方式で計算が行われる年金額、その年金額に裁定がえを行い、この場合に、共済方式で計算されている年金額、いわゆる既得権については保障する、そういう形になっておるわけであります。しかし、先ほど質問いたしましたいわゆる年金額のスライドにつきましては、共済方式の年金額に達するまで、いわゆる物価スライドあるいは給与の著しい変更によるところの改定、いわゆるスライド改定は行わない、そういうことになっておるわけであります。これも期待権の問題からいきますと、やはり年金受給者にとっては、これは大変期待をし楽しみにしておる問題であります。このスライドをしないという問題について考え方をお伺いしたいと思います。  これは、全額スライドということではなしに、やはり共済年金方式の金額に達するまで上げないという、その上げない額を少しでも上げることによって、期間的には延びるかもしれません、期間的には延びるかもしれませんけれども、そのスライドのときに少しでも上がったという、そういう期待を考えるべきではないか、私はそういうふうに思うわけでありますけれども、その点も含めてお伺いしたいと思います。
  227. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 今回の制度改正が行われますと、農林年金年金受給者方々のうちで、共済方式による年金額の受給権を持っておられる方が一七・六%おられましたので、この一七・六%の方々につきまして共済方式から通年方式への裁定がえ、そして通年方式の方が下回る場合には従前額の保障、こういうことになるわけでございます。  今お話しのございましたスライドを足踏みさせるという措置につきまして、少しでもいいからスライドということを考えるべきではないか、またそうしてほしいというような御意見は受給者方々からも私ども伺っておるわけでございますが、施行日以後におきます年金受給者と現役組合員との給付負担均衡、あるいはまた施行日以後に新しく年金を受けられる方と既に年金を受けている方との給付のバランスの問題、またスライドの実施の仕方にもよりますけれども、当然のことながら給付費の増大ということがございますので、それは現役の組合員負担にも響いてまいるということがございますし、部分的なといいますか、スライドの場合にわずかでもということで仮にやるといたしますと、今度は追いつくまでに年数が余計かかるという問題もございます。いろいろ議論し、検討したわけでございますが、この点は各種の制度横並びの、共済年金全体の共通措置といたしましてこのようなスライドの足踏みの措置をとることを決定いたしたわけでございまして、その点をひとつ御理解賜りたいと思うわけでございます。
  228. 駒谷明

    ○駒谷委員 制度改正の時点におきます利益を受ける人あるいはそういう不利益な結果が出るというような問題等は常時あるわけでありますけれども、この問題については、毎句申し上げているように年金受給者というのはそれが一つの生活の基本になっておるわけであります。物価が上がる、そして生活が大変厳しくなってくる、そうなってまいりますと、一般給与改定が行われるあるいは物価スライドが行われておる部分については我々は受けられない、確かに共済制度による条件というのがあるわけでありますけれども、その点は気持ちの面として大変釈然としないという点が出てくると思うわけであります。これは農林年金だけの問題ではなしに四共済の問題であり、全般にわたっての問題になろうかと思いますけれども、との点については、今後十分配慮することをもう一度検討すべきであると思いますので、要望にしておきたいと思います。  もう一点、この既裁定者の問題について、私はこれも問題だなと思っておるものがあるわけであります。それは、今度の法案が通ったとして、昭和六十一年の四月一日以降に退職をする方で三月三十一日に組合員期間が二十年以上ある者については、施行日の前日に退職したものとみなして現行の計算方式、いわゆる共済年金方式と通年方式で計算をされるわけですけれども、この年金額を計算してその高い方の額を既得権として保障することになっておる。この点についてはよくわかるわけでありますけれども、この場合に新しい年金方式の年金額がそこに達するまでこれまたスライドでアップしない、こういうことになっておるわけであります。この場合は、現に組合員という形でありますから、それから後定年まで四年あるいは五年と勤務をして退職するという形になろうかと思いますが、その間の組合員期間はどういう扱いをされるのか、あるいはその間掛金を掛けるわけですけれども、この掛金についてはどういう扱いになるのか、考え方をお伺いしたいと思います。
  229. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 今お尋ねがありましたような問題点お話を私ども関係者方々から承っておるわけでございます。いわば期待権の保障を受けられた方は、確かに施行日以後の組合員期間につきまして掛金を払っておりますけれども、その分、あるいはその組合員期間と申しますのは、新制度による年金額が追いついてくるまでは、その組合員期間なりその間の掛金というのは年金の額に直接反映されないということになるわけでございますが、この点につきましては、従前の年金額の保障措置というのが年金の期待権を尊重する趣旨からの特別の措置として講じられたものであるという点を御理解いただきたいと思うわけでございます。  また、こういう方でございましても、例えば二十一年目あるいは二十二年目に不慮の障害を受けられるというようなことになりました場合は、障害年金につきましては二十五年分、三百カ月分の保障があるということでございますので、組合員。であります限りはその間に生じた障害について障害年金給付が保障されるということでございますので、施行日以後の組合員期間あるいは掛金というものが全くむだになるということではないという点もひとつ御理解をいただきたいというふうに思っておるわけでございます。
  230. 駒谷明

    ○駒谷委員 この年代の人たちというのは、私も五十五歳ですから、大体五十歳から五十五歳、経済局長も同じような条件の中に当てはまるのじゃないかと思うのですが、やはり掛け捨てになっている、そして既得権は全然スライドしない、そういう形になりますと、掛金の問題については何らかの形で還元すべきではないかという意見があるわけであります。この問題については地元で相当いろいろな意見があるわけですけれども、政府に対して期待権を裏切るというような考え方というものが大変出ておるわけです。そういう点で、法律の一つの接点でいろいろな問題があるわけでありますけれども、この掛金の問題について今後どうするかということについて再度御検討なさるお考えはありませんか。退職の時点で何らかの形で還元する一つ方向性というものが出てこないのかどうか。これは共通の問題ですが、大臣、いかがでございましょうか。
  231. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 お答えいたします。  実は共済制度、掛金の問題、いろいろ検討した結果こういうことになったわけでございまして、その点御理解願いたいと思うわけでございます。
  232. 駒谷明

    ○駒谷委員 それではもう一点お伺いいたしますが、障害共済年金と遺族共済年金に関連をする問題でございます。  既裁定年金先ほども問題を提起したわけですけれども共済年金制度におきまして、今度は厚生年金制度に準ずる方式に改めるというのが改正案一つの流れでありますけれども、従前の共済年金の受給要件あるいは給付水準厚生年金よりも不利になっていた者については、国の社会保障水準である厚生年金並みに引き上げる必要があるのではないか。これは基本的な考え方でございますけれども、この点についてのお考えをまずお伺いしたいと思います。
  233. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 農林年金障害年金及び遺族年金につきましては、現行制度では原則として組合員期間が一年を経過した後の障害や死亡でないと支給されないというふうになっておるわけでございますが、今回の改正案におきましては、組合員である間の障害や死亡につきましては、農林年金農林漁業団体職員の相互扶助の一環であるということを考慮いたしまして、その前の組合員期間の長短を一切問いませんで障害共済年金や遺族共済年金支給することにいたしております。  なお、厚生年金につきましては、従来は原則として被保険者期間が六カ月を経過をした後の障害や死亡について障害年金や遺族年金支給するということにいたしておりましたが、今後は今回の農林年金改正と同様に、被保険者である間の障害や死亡についてはその前の被保険者期間の長短を問わないということにいたしております。ただ、厚生年金の場合は、その前に原則として国民年金の保険料、これには厚生年金の保険料として払い込んだものも含むわけでございますが、これを三分の二以上の期間にわたって払い込んでいなければならないという点で、この点は農林年金よりも厳しいものになっているわけでございます。  また、農林年金支給要件は、障害または死亡の原因が職務等に起因するか否かによって従来は取り扱いが異なっておりましたが、今回の改正案ではその差は一切ないというようにいたしておるわけでございます。     〔衛藤委員長代理退席、島村委員長代理着席〕
  234. 駒谷明

    ○駒谷委員 今回の改正一つの大きなねらいとして、公平性確保という問題、各制度間においていろいろと制度の問題にばらつきがあるということは、公平性確保の点からいろいろ問題が残るわけであります。そういう点、今後ひとつ十分に検討して、今後も内容等については検討されるようにお願いをしたいと思います。  そこで、先ほど経済局長の方からお話がありました件でございますが、障害年金と遺族年金の受給条件厚生年金と並んで改正をされるということ、これは大変妥当なことでありますけれども、そうなりますと、実は従来一年未満の障害者あるいは死亡者の遺族、これについては共済年金制度におきましてはそれに対する給付の対象にならなかった。したがって、今まではそういう対象にならなかった人たち、これは農林年金組合員の中に過去においてそれはあったであろうと私は思うわけであります。  一番身近な問題といたしますと、六十一年四月一日に改正をされるこの法案が施行されるということになりますと、六十年の四月一日に新しく採用になった人、この方がたまたま六十一年の三月三十一日までに私的な障害あるいは死亡、そういう形になった人についてもこの法律の内容は適用されない、そういう形になると思うわけであります。この点、一つの法律のけじめですから大変そういう問題が起きるわけですけれども、そういう身近な問題等について、これについての何らかの救済の方法はないものだろうか。これについては、実際にその人になってみると、わずかの問題でそういうことで切られるという形になるわけでありますが、その点について考え方をお伺いしたいと思います。
  235. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 この点も、制度の変更というような場合にある意味では常に起こってくる問題でございますけれども、今お尋ねのございましたような、施行日前における障害や死亡につきましては、年金制度仕組みが、そもそもこれは農林年金のみならず、他の共済年金とか厚生年金国民年金も含めまして、給付事由の発生いたしました時点における法令の規定を適用するということを原則にしてまいりまして、今までの年金関係の法律改正でも、大体やはり給付事由が発生したときの制度、規定を適用するという原則が貫かれておりまして、特定の方についてだけ過去にさかのぼって改正後の制度を適用するということはいたさない原則になっておるわけでございます。  なぜそういうことになっているかということでございますが、一つは、他の既裁定年金受給者との均衡を欠くことになる。また厚生年金との差ということにつきましては、一方では現行制度で平均標準給与のとり方なり年金額の計算方式なり、厚生年金よりも有利な点もいろいろあるわけでございまして、そういった過去の有利な点は残しながら、不利な点だけにつきまして制度の改善を過去にさかのぼらせるということにつきましては、いろいろやはり制度間のバランスの問題というようなことがございます。また私ども実際にそういうことをやった場合にどのくらいの方が対象者になるかということを実は正確には把握しにくいわけでございますが、過去の対象者の方々を掘り起こすということも、数もそう多くないと思いますし、実務的にもなかなか難しいというような問題がございまして、お気持ちは私どももわかりますし、この点につきましてもいろいろ検討はいたしたわけでございますが、特定の方について過去に、制度改善の効果といいますか、メリットをさかのぼって遡及はしないという従来どおりの扱いに今回もこの問題についていたしたわけでございます。ひとつ御理解を賜りたいと思うわけでございます。
  236. 駒谷明

    ○駒谷委員 過去の年金という問題でもう一つあるのですが、受給者の場合の扱い方であります。  これは組合員期間が二十年未満の場合で、私傷病等によって死亡した場合、現行の遺族年金については、現行の法に基づいて遺族年金が出ておるわけですね。改正が行われますと、今度の改正内容では、厚生年金の場合に準じて組合員期間をスライドしてあげる、いわゆる二十年未満という形の扱いをしない、こういうことになっているのではないか。そうして通算年金方式によって計算をされ、遺族者についてはその半額、そして加給年金を加えた額を下回らないような改正ができないのかどうかという問題であります。  これにつきましては、既に受けている年金者、先ほどの問題と絡むわけでありますけれども、今度の改正において、いわゆる遺族年金の受け方というのはかなり変わってくるわけであります。現に受けている人たちとの間に、いわゆる公平性確保という問題等からいきますと、その時点での問題が起きはしないか。そういう点から、これについてはやはり改正が行われた時点で条件のいい方向にその人たち制度を改定をする、そういうことを考えるべきだと思うのですけれども、この点についてのお考えをお伺いしたいと思います。
  237. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 この問題につきましても、本質的な問題ということにつきましては、先ほど私がお答えを申し上げましたようないろいろな制度の差があります中で、ある問題について一つ改善が図られたという場合に、その新しい改善が法改正として施行されます以前に給付事由が発生した方にまでさかのぼって適用するということが難しい、過去におきましてもそういうことでない扱いでこれまでの年金制度改正が行われてきているということと基本的には同じ問題でございまして、その問題につきましても先ほど答弁申し上げましたのと同じような理由で、私ども検討いたしましたけれども、そのような特別の措置はとりにくいという結論になったわけでございます。
  238. 駒谷明

    ○駒谷委員 最後にもう一点。  障害年金については、今回の改正案では、その受給者組合員である間障害年金支給を停止する、あるいは所得によって一部停止をする、そういう形になっておるわけでありますけれども、厚生障害年金の場合には在職者であっても満額支給、これはやはり公平性という問題からいくと格差があるわけであります。この問題については、これはこれからの状況でありますけれども、どういうふうにお考えでありますか、御所見を伺いたいと思います。
  239. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 今回の制度改正におきまして、実は今まで厚生年金農林年金では障害年金の扱いにつきまして異なっておりました点、具体的に申しますと、農林年金制度におきましては、職域年金という性格から、職場を離れなければ障害年金であっても支給をしないという原則でやってまいったわけでございますが、今回の制度改正に当たりまして厚生年金等の公的年金制度間の整合性という問題、それからまた給与が低い方につきましては給付重点化を図るという観点から見ても年金必要性があろうということから、共済年金という職域年金の性格の範囲内で、在職中でありましても一定障害年金給付するということで、厚生年金に一歩近づけたわけでございます。  この点につきましては、厚生年金と全く同じようにすべきではないかという御意見もいろいろあるわけでございますが、先ほど申しましたように、もちろん公的年金制度間の整合性を図るということは私ども今回の改正一つの大きな眼目であるわけでございますが、他方、被用者一般を対象にいたします厚生年金制度と、それから農林漁業団体あるいは私学の職員等々一定職域につきましての相互扶助という考え方を入れた職域年金と、この辺でやはり年金制度の間に性格の差というものもございますので、そういう差の範囲内で制度の接近を図るように措置をしたというのが今回の改正内容であるわけでございます。
  240. 駒谷明

    ○駒谷委員 まだ部分的には、そういう今度の制度一元化という問題を踏まえて、やはり公平性という問題から多少疑問のある点があるわけであります。したがって、今回の制度の問題についてはさらによく検討していかないと、負担のいわゆる公平性という問題、年金受給者にとっては、もう毎回申し上げておるように自分の年金受給の金額はどうなるかという問題については大変関心の深い問題でありますし、その問題、将来の問題等を考えていきますと、これは慎重にやっていかなければならない問題が多々あると思うわけであります。  時間は多少残っておりますが、私のお尋ねしたい予定の分が終わりましたのでこれで終わりますけれども、今いろいろと申された問題については、大臣、どうかもう一遍よく検討していただいて、救済する方法が何らかの形で出るものについてはやはりそういう方法をとるべきである。そういう公平性という問題から、いろいろ法の改正の段階でも難しい問題だろうと思いますけれども、今回の改正については昭和三十六年以後の大改正である、大改正であるだけに、部分的な改正であればそれだけ犠牲者というのは少ないわけでありますけれども、それによって影響を受ける問題というのは相当範囲に、いろいろな条件で出てくるのではないか、そのように思っておりますので、その点、今後とも十分に取り組みをいただきたいということをお願いいたしまして、時間が残っておりますけれども私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  241. 島村宜伸

    ○島村委員長代理 この際、申し上げます。  共済関係四法案の連合審査会を明二十八日午前九時五十分から開会する予定でありますから、御了承ください。本日は、これにて散会いたします。    午後五時十七分散会