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1985-11-25 第103回国会 衆議院 内閣委員会社会労働委員会商工委員会運輸委員会建設委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年十一月二十五日(月曜日)     午前十時二十分開議 出席委員  内閣委員会   委員長 中島源太郎君    理事 石川 要三君 理事 戸塚 進也君    理事 深谷 隆司君 理事 宮下 創平君    理事 小川 仁一君 理事 元信  堯君    理事 市川 雄一君 理事 和田 一仁君       池田 行彦君    石原健太郎君       堀内 光雄君    綿貫 民輔君       角屋堅次郎君    新村 勝雄君       鈴切 康雄君    田中 慶秋君       三浦  久君  社会労働委員会    理事 小沢 辰男君 理事 浜田卓二郎君    理事 池端 清一君 理事 大橋 敏雄君       斉藤滋与史君    谷垣 禎一君       野呂 昭彦君    林  義郎君       沼川 洋一君    森本 晃司君       浦井  洋君    小沢 和秋君       菅  直人君  商工委員会   委員長 粕谷  茂君    理事 浦野 烋興君 理事 城地 豊司君    理事 長田 武士君       加藤 卓二君    佐藤 信二君       奥野 一雄君    和田 貞夫君       野間 友一君  運輸委員会   委員長三ツ林弥太郎君    理事 鹿野 道彦君 理事 小林 恒人君    理事 吉原 米治君       堀内 光雄君    薮仲 義彦君       梅田  勝君    辻  第一君  建設委員会   委員長 保岡 興治君    理事 桜井  新君 理事 木間  章君    理事 新井 彬之君       池田 行彦君    東家 嘉幸君       浜田 幸一君    上野 建一君       清水  勇君    前川  旦君       山中 末治君    伊藤 英成君  出席国務大臣         通商産業大臣  村田敬次郎君         運 輸 大 臣 山下 徳夫君         建 設 大 臣 木部 佳昭君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 後藤田正晴君  出席政府委員         臨時行政改革推         進審議会事務局         次長      山本 貞雄君         公正取引委員会         事務局取引部長 利部 脩二君         総務庁長官官房         審議官     米倉  輝君         総務庁行政監察         局長      竹村  晟君         経済企画庁調整         局審議官    宮本 邦男君         経済企画庁総合         計画局審議官  勝村 坦郎君         国土庁土地局長 末吉 興一君         大蔵大臣官房審         議官      大山 綱明君         大蔵大臣官房審         議官      亀井 敬之君         大蔵省理財局次         長       中田 一男君         厚生省生活衛生         局長      北川 定謙君         厚生省薬務局長 小林 功典君         通商産業大臣官         房審議官    松尾 邦彦君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       逢坂 国一君         運輸省運輸政策         局長      栗林 貞一君         運輸省地域交通         局長      服部 経治君         運輸省地域交通         局陸上技術安全         部長      神戸  勉君         運輸省貨物流通         局長      武石  章君         運輸省海上技術         安全局長    間野  忠君         運輸省航空局長 西村 康雄君         運輸省航空局技         術部長     大島 士郎君         労働省労働基準         局長      小粥 義朗君         建設大臣官房長 高橋  進君         建設省建設経済         局長      清水 達雄君         建設省都市局長 牧野  徹君         建設省河川局長 井上 章平君         建設省道路局長 萩原  浩君         建設省住宅局長 渡辺  尚君         自治大臣官房審         議官      石山  努君  委員外出席者         大蔵省国際金融         局次長     橋本 貞夫君         農林水産省食品         流通局消費経済         課長      三戸 隆男君         運輸省航空事故         調査委員会事務         局長      藤冨 久司君         参  考  人         (日本航空株式         会社専務取締         役)      平沢 秀雄君         内閣委員会調査         室長      石川 健一君         社会労働委員会         調査室長    石川 正暉君         商工委員会調査         室長      倉田 雅広君         運輸委員会調査         室長      荻生 敬一君         建設委員会調査         室長      佐藤 毅三君     ————————————— 本日の会議に付した案件  許可認可等民間活動に係る規制整理及び合  理化に関する法律案内閣提出第一号)      ————◇—————
  2. 中島源太郎

    ○中島委員長 これより内閣委員会社会労働委員会商工委員会運輸委員会建設委員会連合審査会を開会いたします。  先例によりまして、私が委員長の職務を行います。  内閣提出許可認可等民間活動に係る規制整理及び合理化に関する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明聴取につきましては、お手元に配付してあります資料により御了承願うこととし、直ちに質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。和出貞夫君。
  3. 和田貞夫

    和田(貞)委員 今回提案されております許可認可等民間活動に係る規制整理及び合理化に関する法律案は、その内容以前の問題として八省庁所管のそれぞれの法律改正一括法案として上程されているものでありまして、本来ならば、それぞれ関係常任委員会審議すべき性格のものであります。これはまさに立法府軽視措置であり、常任委員会なきものと同じではありませんか。さきの補助金一括法案といい、今回のこの法案といい、まことにけしからぬ話だと言わなければなりません。総務長官責任ある答弁を求めたいと思います。今後このようなことは繰り返さないということを明確にしてもらいたいわけであります。
  4. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 同じような御趣旨の御質疑は、先週内閣委員会でもあったわけでございます。  申し上げるまでもなく、この法律案は行革審から御答申があり、それを受けて閣議決定をいたしたものでございますが、今回の答申の中には二百五十八事項規制緩和内容が含まれておるわけでございます。そして、当面そのうち法律改正を要するものということで二十六法律、四十二項にわたる改革案一括審議を願う、こういうことにいたしたわけでございますが、このことは公的規制緩和に係る事項の実現、こういう統一的な政策のもとに閣議決定をしたわけでございます。  つまり、閣議のこの決定は、今回の改正趣旨目的、これが時代変化に即応して過剰であるとか不必要であるとかあるいは不合理であるとか、こういったものをこの際、主として社会経済活性化というような観点から取り上げて改革をすべきである、こういう共通趣旨目的を持っておる、こういうことで取りまとめて御提案を申し上げる、こういうことにしたわけでございますが、民間における事業活動に対する公的規制緩和という共通の理念に係る施策の是非、改廃の是非について、国会の御判断を一括してお願いをするということの方が一般理解を得やすい、こういう観点で取り上げておるものでございます。  これは従来から、過去十一回ばかりこういったやり方お願いをしておるわけでございまして、政府昭和五十六年でございましたか、こういった場合に一括をする事柄についてはこういう基準によってやるべきであるといった法制局内閣見解等も既に国会でも明らかにしておるわけでございますので、私どもとしては今回の立案に当たっては、そういった過去の法制局見解による基準、これらも十分頭に置きながら御審議お願いをする、こういうことになったわけでございまして、委員が御発言のように委員会審議を無視しておるではないかといったような御意見があることはかねがね承知しておるのですけれども、こういった従来からのやり方お願いするということは、私どもとしては必ずしも委員会審議を無視する、こういったことにはならないのではないか、こういう観点お願いをしておるわけです。つまりは、一口に言えば趣旨目的が同じで、統一的な政策のもとで取り扱っておるんだ、かように御理解いただきたい、こう思うわけでございます。
  5. 和田貞夫

    和田(貞)委員 それは余りにも行政府としての、政府としての身勝手主義な言い分であると私は思うのですね。法律というのは、立法趣旨というものは、やはりそれぞれ異なるわけでありまして、またその立法の過程というのは、これはそれぞれ歴史的な事情の中で歩んでまいって生まれてきたんですからね。また、その時代に合うように、情勢に合うように改正してきたんですから、これは一括ということは理屈にならぬと私は思う。まあ今回はこういうようにして審議に入っておるわけでありますから、このようなことは、二度と繰り返すようなことはもう私は絶対にあってはならぬということを強く政府に要求しておきたいと思う。  私の所属しておる商工常任委員会でございますが、別にわざわざここへ通産大臣に来てもらって質問せぬでも結構機嫌よういつもやってますからな、これ。それで、通産省所管三つ法案がこの中に含まれておるのですが、この通産省所管三つ法案を見てみましたら、この資料の約半数のページを占めておるのですよ。  その三つ法案を、私の割り当て時間はわずか五十分。五十分でやれというのは、これは至難のわざですよ。しかもその一つ消費生活用製品安全法、この改正は、特定製品製造販売に係る検定販売等規制緩和自己認証制度導入という問題でありまして、一般消費者生命身体に対する危害発生防止に関する重要な内容であります。  さらに、ガス事業法改正につきましては、ガス用品に係る保安規制緩和であり、自己認証制度の創設をするものであって、災害発生防止の上からも十分に議論を尽くさなければならない内容を包含するものであり、国民に不安を与えないためにも、その内容について十二分に議論をするというのが、我々国民から負託をされた議員の責任であるわけです。その責任を果たすためには、やはり立法府におきまして十分議論をする時間を保証するような内容政府提案の方法を考えてくる、これが政府としての——先ほど御答弁いただいたような便宜主義じゃなくて、やはり国民生命身体あるいは危険にかかわるような内容法案であるのですから、それも一緒くたにしてしまって提案してくるというのは余りにも無責任過ぎると私は思います。改めてもう一度御答弁お願いしたいと思います。
  6. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 あなたの御趣旨は私も十分理解をするわけでございますが、たくさんの規制が隅々にまで行われておることは事実でございますし、それらの中からこの際やはり不合理であるとかあるいは行き過ぎておるとかいったようなものを取りまとめて、そういう観点から緩和をして社会経済活性化を図っていく。もちろん御意見の中にありました、国民消費生活に関連のあるいわゆる安全等確保といったような点につきましては、こういった立法の際にも私どもとしても十分各方面の意見を聞いて、経済上の規制緩和やり方と健康あるいは安全、こういったような社会規制にかかわる規制緩和、これは考え方をよほど変えた立場でやらなきゃならぬということで、十分安全の面についても配慮した上で、なおかつ今回のように現状に合わないといったようなものはこの際改正をすべきである、こういう立場一括をして御審議を願っておるわけでございますので、そういった点は政府十分配慮はいたしておりますけれども、我々の考えについてもぜひ御理解を賜りたい、かように思うわけでございます。
  7. 和田貞夫

    和田(貞)委員 まことにけしからぬ話でありまして、了解することはできません。しかし、時間が限られておるわけでございますから、私の責任を果たすためにひとつ質問を続けていきたいと思うわけであります。  消費生活用製品ガス用品規制自己認証制度導入につきましては、これはアクションプログラムによるものでございますが、この二つ規制緩和によって一体どの程度の輸入が拡大されることになるのですか。
  8. 松尾邦彦

    松尾政府委員 今先生お述べになられました自己認証制度導入につきましては、御指摘のとおりアクションプログラムにおきまして、例えば消費生活用製品安全法につきましてはその位置づけがなされているわけでございまして、私どもといたしましては、このアクションプログラムの精神にのっとりまして、通産省といたしまして関係しております制度の中でまだこれが導入されておりませんでした、ただいま申し上げた消費生活用製品安全法並びにガス事業法につきまして自己認証制度導入を図ることにいたしまして、今般一括法で御審議お願いしておるところでございます。  自己認証制度導入によりまして、外国事業者または輸入事業者外国製品我が国市場におきまして販売するに当たりまして、従来ですと必要でございました我が国政府認証が要らなくなるということになるわけでございますので、外国事業者我が国市場への参入が容易になりますし、ひいては輸出者の努力とも相まちまして輸入の拡大が図られることが期待されるところでございますが、具体的な効果ということになりますと、なかなかこれは定量的にはかることは難しゅうございますけれども我が国市場開放性ということにつきまして内外に大きな印象を与えることができ、かつ具体的にも対日市場アクセスということが海外の企業にとって容易になるという点において、アクションプログラム趣旨を体した市場開放の意義ある策だろうと考えております。
  9. 和田貞夫

    和田(貞)委員 この二つ改正輸入枠がそんなに拡大されるというようなことは考えられない。ただ並べたらいいんだということで、これもあれもということでつけ加えておるような向きがある。しかも、その中で大事に考えなければいかぬのは、先ほども申し上げたようにやはり消費生活用品であり、ガス用品であり、いずれにいたしましてもこれは国民危害防止にかかわる問題です。保安確保にかかわる問題です。それをアクションプログラムの中に入っておるからということで、今日の現行規制緩和して、それぞれ一種、二種というように分けて自己規制導入するというようなことによって、果たして国民不安感というものを与えるようなことにならないのかということが一番大事な問題だと私は思う。  この法案は、いずれにいたしましても検定販売の制限、規制であります。消費生活用製品の第二種特定製品には、その制度をつくっても製造事業者輸入事業者損害賠償措置義務づけておる。ところが、第二種ガス用品製造事業者輸入事業者については、これを義務づけておらない。これは一体どうなのかということが私は疑問点一つであります。  さらに、第二種のガス用品製造事業者輸入事業者については表示制度義務づけておらない。消費生活用の第二種特定製品についてはこの表示義務づけておる。そこらにつきましても消費者に対しまして余りにも不親切じゃないか、こういうように思うわけでございますが、今お答えがありましたように、そのことによってどんどんと輸入製品がふえてくるということになれば、なおさらこのことが必要じゃないか、こういうふうに思うわけでございますが、その点について国民皆さんの前に安心ができる答弁をこの場でひとつやってもらいたい。
  10. 逢坂国一

    逢坂政府委員 お答え申し上げます。  御質問の件は二つございまして、一つは、ガス用品につきまして損害賠償措置義務づけがないのではないかという点、もう一つは、第二種ガス用品につきまして表示義務がないではないか、この二つだと思います。  最初に、損害賠償措置義務づけの件でございますが、現行ガス事業法におきましては、消費生活用製品安全法とは異なりまして、製造事業者等に対して損害賠償措置義務づけを行っていないのは、先生の御指摘のとおりでございます。これはこれまでも、いろいろガス用品によります事故が生じた場合に、製造事業者等ガス事故中立者に対しまして賠償が事実上行われておりまして、特段問題も今のところ起こっておりませんので、今回導入する自己認証制度におきましても、製造事業者または輸入事業者等に対する損害賠償措置義務づけは行わないことといたしたものでございます。  それからもう一点、第二種のガス用品についての表示でございますが、これは第一種のガス用品についての表示はございます。この第一種のガス用品の方は、検定によりまして販売規制をする、こういうことで不良品の流通防止しようということでございまして、販売事業者技術基準適合性を確認する上で表示をする、こういう点で表示が必要である。一方、第二種のガス用品につきましては、もちろん製造事業者に対しましては技術基準適合義務を課する、こういうことは基本的にあるわけでございますけれども、その検定の中身といいますか、技術基準適合の状態につきましては第三者チェックがないということでございますので、この表示義務がないということになります。  それで、先生消費者が心配ではないかという点でございますが、ガス用品製造者名がどうであるかとか、あるいは製造年月日がどうであるか、あるいは使用上の注意はどうであるか、そういう意味の表示でございますと、これは技術基準の方で担保しておりますから、当然、新しくやりました第二種のガス用品につきましても技術基準の方で消費者のための便といいますか、そういう表示がつけられることになりますので、十分御満足いただけると思っております。
  11. 和田貞夫

    和田(貞)委員 これは余りにも不親切です。今のような答弁国民皆さん消費者皆さんは安心しませんよ。生活用品については、二種になる特定製品についても表示をするのでしょう。ところがガス用品については表示をしないということでは、これは納得しませんよ。国民安堵感を与えるためにそのことはぜひとも必要なんです。  そこで、消費生活用製品安全法というのは、もともと炭酸飲料瓶詰事故が起きたことからこの法律ができてきた経緯があるのです。現在の炭酸飲料瓶詰事故件数は一体どのように推移してきておるのかをこの機会に御報告願いたいと思います。  あわせて、具体に金属バット特定製品からの除外が去る五十八年に行われておるのですが、その後に金属バット事故が続発しているという経緯もあるわけですね。今残されておる八品目特定製品の中から一体どの順序で第二種の特定製品にしていこうとしておるのか、その点あわせてお答え願いたいと思うのです。
  12. 三戸隆男

    ○三戸説明員 炭酸飲料瓶詰事故件数について御報告いたします。  炭酸飲料瓶詰昭和四十九年に現行法特定製品として指定をされたわけでございますが、その後十年余り経過をいたしまして、状況が若干変化をしてきております。事故件数といたしましては、昭和五十年度に二十七件ございました。それがここ三年間見てみますと、五十七年度が十二件でございます。それから五十八年度が五件でございます。それから昨年度ゼロという状況になっておりまして、事故件数といたしましては着実に減少してきておるということでございます。
  13. 和田貞夫

    和田(貞)委員 これは規制があるから事故件数が減ってきておる。先ほど申し上げたように、金属バット除外をされた途端に事故が起こったでしょう。甲子園の夏の野球大会の前に起こったじゃないですか。事故件数が減ってきておるというのは、規制があればこそ、検定基準を国の責任で行っておるがためにこれが少なくなってきている。そうすると、そのように規制緩和をして自己認定制度ということにすると、事故がさらにそれぞれの品目で増発してくることになるとは思いませんか。  あわせて、先ほど質問いたしました、現在の八品目特定製品のどこから順序に第二種の特定製品にしていこうとしているのか、お答え願いたい。
  14. 松尾邦彦

    松尾政府委員 先生仰せのように、特定製品を第一種と第二種に区分けいたしまして、言うなれば第二種の方は、企業自己責任にゆだねることができると判断される製品につきましてこれを第二種特定製品指定しようという考え方に立っているわけでございますけれども、第二種特定製品にどのような品物指定していくかということにつきましては、今後法律の規定に基づきまして製品安全及び家庭用品品質表示審議会に諮った上で決定していくわけでございます。具外的にはどのような視点から第一種、第二種の区分けがなされるかという基本的な考え方について申し上げますと、およそ次の三つの点を基準にすることになろうかと考えます。  第一は、その品物につきまして安全性確保を図るために必要な製造技術水準あるいは技術普及度でございます。第二には、その品物につきまして安全性を確認するために必要な検査技術水準でございますとか、あるいは検査技術普及の度合いでございます。第三は、その品物にかかわります事故発生状況の推移とか現状とか、そういうことになろうかと思うわけでございます。  先生が御指摘になられました事故状況というものは、考える際の大事な要素として私どもとしても審議会にお諮りして、第二種の特定製品指定を考えてまいりたいと考えているわけでございます。
  15. 和田貞夫

    和田(貞)委員 特に生活用特定製品生産者中小企業に極めて多いわけなんです。したがって、今三つ要素を言われましたけれども技術能力の問題あるいは検定能力問題等で、自己認証にして果たして消費者皆さんに迷惑がかかるようなことがないかという危惧をするわけです。さらに、そのこととともに一応生活用特定第二種製品については表示をされるわけでございますけれども、そのことによって国の方が法の改正消費者皆さんに絶対に迷惑をかけぬということが断言できるのかどうか、ひとつお答え願いたいと思います。  さらにあわせて、ガス用品についても同じように言えるわけでございますが、ガス用品事故はここ数年の間必ずしも激減しておるというようには言えないと思うのであります。現行制度によるガス用品の国の検定による不合格の率をこの際明らかにしてもらいたいと思います。
  16. 松尾邦彦

    松尾政府委員 初めに消費生活用製品安全法につきまして申し上げさせていただきますが、自己認証制度導入するに当たりましては、現在と同じ水準安全水準確保し、消費者保護上遺漏のないように、先生指摘のような点を十分踏まえて臨むことといたしておるわけでございまして、今度の改正法案におきましても、具体的に申しますと、第一には、自己認証品目製造事業者及び輸入事業者に対しまして一定事項届け出義務を課するほか、製品基準適合義務あるいは自主検査義務などを課すとともに、もし義務に違反することがありました際には改善命令とか回収命令等を発することができますほか、罰則も整備いたしておりまして、このような義務の履行を担保することといたしております。  第二に、製品が満たすべき安全基準につきましても、自己認証制度に移行はいたしましても今後とも安全性確保に遺漏なきよう、国がこれを定めることといたしておるわけでございます。  第三に、この自己認証品目の具体的選定に関しましては、先ほど申し上げましたように、技術水準あるいは事故状況等を十分勘案した上で審議会に諮り決定することといたしておるわけでございまして、私どもといたしましては、今般の法改正によりましてこのような点に配慮を行った上で行うことといたしたいと考えておりますので、今後ともその点において消費者の安全の十分な確保ができるものと考えている次第でございます。
  17. 逢坂国一

    逢坂政府委員 ガス用品検定の不合格率のことを御説明いたします。  検定不合格率を抜き取り台数に対する不合格の台数で統計をとっておりますが、これによりますと、各品目とも年次別にまた各品目別のばらつきはもちろんございますけれども、おおむね〇・〇二%から〇・〇一%程度で推移してきておりまして、低下傾向にあるものと私どもは判断しております。
  18. 和田貞夫

    和田(貞)委員 必ずしもそういうように言えないと私は思います。ガス用品事故件数通産省のお調べの資料を見てみましても、そのことは言えないと思うのです。しかも、ガスの瞬間湯沸かし器にしてもガスバーナーつきふろがまにしてもガスストーブにしても、死亡事故や中毒事故というのが繰り返されているのです。ただけがをするとかいう問題ではないのです。そんなに激減しておるというようなことにはなっておらぬのです。そういうことを見てみましても、今の不合格率というものは、〇・〇二、〇・〇一ずつ減ってきておるというようなことは、消費者立場に立った行政当局の物の言い方ではないのではないですか。現在のガス用品の六品目の中で、一体どれとどれが具体に第二種のガス用品に移行することができるというように自信があるのですか。
  19. 逢坂国一

    逢坂政府委員 ガス用品につきましても、第二種ガス用品に移行していく品目につきましては今後検討することにしておりまして、その考え方といたしましては、新材料の開発等の技術の進歩、進展あるいは製造事業者の品質管理、検査能力等の向上等によりまして判断してまいりたいと思っております。  なお、この用品を決める場合には、もちろん私どもだけではございませんで、専門家の御意見も伺いまして、また公聴会などによりまして消費者等の関係者の御意見も伺った上で選定してまいりたいと思っております。
  20. 和田貞夫

    和田(貞)委員 これは、ガス用品にいたしましても生活用特定製品にいたしましても、これからこれからと言うけれども、この法律が通ってしまってから、後は野となれ山となれとまでは私は言いませんが、今後審議会で云々だとか検討してどうだとかというようなことでは、この法律審議する我々の立場というのはそういうことでは国民皆さん責任は持てませんよ。そういうことについて、一体大臣どのように思いますか。
  21. 村田敬次郎

    ○村田国務大臣 国民の安全確保の意味から和田委員の御指摘になる点はよく了解できるところでございます。今回改正お願いしております消費生活用製品安全法の一部改正にいたしましてもガス事業法改正にいたしましても、アクションプログラムの実施に基づいてできるだけそういった手続を簡略化するということから改正お願いしているわけでございます。それによる国民生活の安全を確保する、その安全の担保につきましては、先ほど来政府委員からお答えを申し上げておりますように、審議会における審議、その他いろいろな手続を経まして十分万全を期していきたい、このように考えておるところであります。
  22. 和田貞夫

    和田(貞)委員 私が納得できるような答弁をいただき、そして国民皆さん消費者皆さんに安心をしてもらえるような答えを報告できるような——そのためには、先ほども申し上げたように、もう時間ないですね。無理な話でしょう。だからこういうような法案提案がいかぬということを言っておるのですよ。あと十五分しかないじゃないですか。今までの答弁国民皆さんが納得できますか。消費者皆さんがこれで安心できますか。だからこういうような法案の提出の仕方というのはまことにけしからぬということは、総務長官も御理解できるでしょう。時間ないですよ。総務長官自身が、今までの答弁でああそれでよかったというように思いますか。
  23. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 大変時間が足りなくて恐縮ですけれども、大変密度の濃い御指摘でございますから、これは、安全に関する事柄については何もかも政府検査検定をやらなくても、民間のそういった能力も向上しておりますしするので、この際基準政府が決めても検査あるいは認証等は民間に任せよう、その際には審議会等に諮って御趣旨のような国民の生活に心配をかけるといったようなことのないように、ここらは十分政府としても配慮していきたい。御意見は十分拝聴させていただきましたので、政府は安全については心配は絶対かけない、こういうやり方でやらさせていただきたい、かように思っております。
  24. 和田貞夫

    和田(貞)委員 先ほど生活用製品のメーカーが中小企業が多いということを言いましたが、そのこととあわせて、例えば登山用のロープなんかは、日本の製造メーカーには日本の山の状態を十分踏まえて製造させているわけです。日本の山と諸外国の山とはやはり違うでしょう、山という字は一緒だけれども。そうするとその国々の山に合うような登山用のロープをつくっているはずです。だから、それを輸入枠を拡大するんだということでどんどん入ってきて、それに対してこれは第二種の製品にしていくということに仮になるとするならば、政府責任持てますか。そういうようなことを考えましたら、この二つ法律につきましては、一つ国民危害防止のための法律であるのです。一つ保安規制法律であるわけです。非常に大事なことなんです。国民の生活に一日でも欠かすことができないこの二つ法律なんです。したがって、この法律につきましては、仮に成立をしたとしても第二種製品に移行するに当たっては慎重に考えてもらい、検討してもらい、取り扱ってもらわないと大変なことになるというように私は思うわけでございますが、時間の関係もございますので、その点についての責任ある通産大臣の御答弁をこの機会にお願いしておきたいと思います。
  25. 村田敬次郎

    ○村田国務大臣 御趣旨、まことにごもっともでございます。この法律案を成立させていただきますれば、今和田委員指摘の点は誠心誠意、誠意を持って一生懸命対応してまいる決意でございます。
  26. 和田貞夫

    和田(貞)委員 その点はひとつ国民皆さんに不安を与えないように取り扱ってもらいたいと思います。あわせて、石油及び可燃性天然ガス資源開発法というのは乱開発防止のための立法趣旨から生まれた法律でありますので、この改正に当たって乱開発防止立法趣旨が十分に生かされるように運営面について留意をしてもらいたいということをつけ加えておきたいと思うわけでございます。  時間の関係もあるわけでございますが、同僚の議員の了解を得ましたので、若干食い込むことがありましてもひとつ御了承いただきたいと思うわけでございます。  この機会に、市場開放問題に伴う木材の市場開放と皮革、革靴の市場開放、この点については、時間的な問題もございますので改めて商工常任委員会十分議論をしてみたいと思うわけであります。しかし、この皮革、革靴の市場開放については、これはアメリカの方から十二月一日を期限に脅迫してきておるわけですから、この機会にその原則的な面についてのみ質問をしたいと思いますので、お答え願いたいと思うわけであります。  まず、木材市場の開放問題についてであります。  政府はこれまで林業、木材産業については、林政審議会を持って、川上の方を主にしたいろいろの対応をやってこられたわけですが、今日、木材産業は大変なことでございまして、特に製材業あるいは合板製造業は極めて不振というよりも崩壊の寸前にあると言っても言い過ぎでないと私は思うのであります。そこで、政府はさきに「森林・林業、木材産業活力回復五カ年計画」というのを発表されたわけでありまして、国費が五百億、融資枠が一千億、計一千五百億をもってこれに充てるということであるらしいのでございますが、この中で過剰設備廃棄に伴うところの対策事業というのに国費八十五億、融資枠四百七十二億をもって充てるというようになっておるわけです。しかしこの点については、少なくともその事業が行われることになりますと廃業がどんどん進んでいくということになってまいって、雇用対策は非常に大きな問題になってこようと思うわけであります。したがいまして、この雇用対策というものを欠かすことができないわけでありますから、過日官房長官が、政労使の三者によるところの調査会を設置することに努力するということを言明されておりますし、また農林大臣も、事態の進展に照らして対応するということを発言されておるわけであります。これらの発言を実体化していくためにも、この際、政府と労働側と使用者側とが一体となった、林政審にかわる調査会というものを設置して、そして雇用対策を含めた結論を労働側の意見も入れた中で出してもらう、そういう考え方に立ってもらえないかというのが木材の市場開放についての質問内容であります。  なお、二つ目の皮革、革靴の市場開放の問題についてでありますが、先ほども申し上げましたように、政府自体が現行輸入数量規制を今日まで堅持してきたというのは、日本の皮革、革靴産業というものは大方は中小の地場産業であるということ、しかもそのすそ野は膨大な零細企業や家内工業を抱えておるということ、さらにもう一つ欠かすことができないのは、伝統的、歴史的、社会的な背景の中で生まれた被差別部落の産業であるということ、これを十分銘記してもらっておるがためにこの制度というものを今日まで持続していただいたと思うのであります。しかしアメリカの方は、そんなことはお構いなく十二月一日をもって自由開放、これを関税割り当て制に移行するということをあなたの方が提示しても、それでもいかぬ、完全な自由開放だということで、それができなければ原皮の日本への輸出を半減するとか四十一品目輸入規制をやるとかというようなことで、まことにけしからぬ脅迫じみた内容をもって押し寄せてきているわけですね。その点につきましても、ここに働く多くの労働者がおるわけでございまして、また家族を含めましたならば、これらの皮革、革靴の産業にかかわる人口は約三十万人であります。それを路頭に迷わさないためにも、業者だけじゃなくて労働代表を入れた何か委員会を持ってもらって、そしてこのことについての議論をしてもらい、結論を出してもらう、そういうようにしてもらいたいと思いますし、また、中小の地場産業である、しかも部落産業としての皮革、革靴産業の抜本的な振興策をこれからどうするのかということをこの機会にひとつ御答弁願いたいと思います。
  27. 村田敬次郎

    ○村田国務大臣 皮革産業対策の問題について私からお答えをしたいと思います。  今和田委員指摘になりましたように、皮革産業の問題につきましては非常に重要な問題であるということで、IQからTQへの移行を言っておるわけでございます。つまり数量割り当てからガット上の協議ということで、実は今、通産省の若杉審議官がアメリカに参りまして、私の代理としてブロック通商代表その他と話をしておるところでございます。これは期限が、御承知のように三〇一条発動に関連して十二月一日となっておりますから、非常にせっぱ詰まった選択が迫られておるわけでございますが、これについては今真剣に対応しておるところでございます。  そして、和田委員お示しの将来の皮革産業のあり方についての基本的対策、これは非常に根本的な問題だと思いますが、御指摘のように皮革産業は零細企業が非常に多い、そして国際競争力がまだまだ非常に弱いということで、ぜひ今後は国際競争に耐えるような産業体質をできるだけ早期に実現することが重要であると考えております。このために通産省としては従来から、技術研修、海外調査、海外見本市への参加でございますとか、その他皮革産業の体質強化に資するための各種対策を実施しておりますが、また各種の中小企業関連施策の活用、地方公共団体との十分な連絡等も図ってきたところでございます。今後とも委員指摘のような根本的な対策という観点から、皮革産業を取り巻く内外の厳しい環境を十分に踏まえながら、国産業に対するきめの細かい振興策を講じてまいりたいと思っております。
  28. 和田貞夫

    和田(貞)委員 木材産業と皮革、革靴産業の問題につきましては、これは時間がありませんので母屋の方で、商工常任委員会の方で十分に議論をしたいと思います。今まで根本的な抜本的な皮革産業あるいは革靴産業の振興策というのがなかったために、脆弱な基盤が今日なお続けられておる。このことによって非常に大変だということになってきておるのですから、これは抜本的な産業政策と振興政策というものを早急に打ち出してもらわないと大変なことになると思いますので、警告しておきたいと思います。  また、木材産業につきましても同じことです。最高が五億程度の企業しかないわけですから、今まで木材産業の中で大手と言われるところ三つまでが倒産をしてきておるというような状況です。特に合板製造企業というのは大変です。したがいまして、自由化によってむしろアメリカよりも、これは両者に通ずるわけでございますが、極めて賃率の低い東南アジアあるいは韓国あるいは台湾、そういうような開発途上国からの押し寄せる輸入によって木材産業も皮革、革靴産業も全くつぶれてしまう、こういうことになりかねないわけでございますので、十分配慮してもらいたいと思います。あとは担当の常任委員会でひとつ質問をして議論をしてみたいと思うのです。  先ほど申し上げましたように、三つ法案の中で消費生活用特定製品の二種への移行、あるいはガス用品の二種への移行、これに当たりましては十分にひとつ消費者立場に立った配慮の上で、仮にもそのことによって大きな事故が起こったり、大きな被害が起きたりすることのないようにしてもらいたいということをつけ加え、質問の時間が非常に短かったことに不満の意を表しておきまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
  29. 村田敬次郎

    ○村田国務大臣 ちょっと済みません。私、ブロック代表と申し上げたそうですが、もちろんヤイター通商代表です。ここで訂正しておきます。
  30. 中島源太郎

    ○中島委員長 木間章君。
  31. 木間章

    ○木間委員 関連いたしまして、建設委員会立場でこの法案に対する質疑をいたしたいと思います。  政府は、臨調答申を受けて今日までさまざまな行政改革を押しつけてまいりましたし、引き続き制度面、運営面全般の見直しの検討を続けております。そして今般、民間活力導入のための条件づくりを行うため、許認可規制緩和一括法と同時に「当面の行政改革の具体化方策について」を閣議決定いたしました。規制緩和は二百五十八項目に上っておりまして、法律改正で処理するものも提案をされていますが、多くの事項が行政通達で処理をしようとしておるのであります。重要な行政手法の転換に通達行政が適法かどうか疑問を持つものであります。地方自治体が行ってきた都市開発規制、建築規制が今度の通達の準備の中に二十一項目触れておりますし、建設省はそのための行政通達の準備をしておるところであります。地方自治体にとっては極めて重要な政策の転換になるわけでありますが、この点いかがお考えなのか、まず建設大臣にお尋ねをしたいと思います。
  32. 木部佳昭

    ○木部国務大臣 今回の措置につきましては、臨時行政改革推審議会答申に基づきまして、規制緩和に係る個別の事項についていろいろ検討され、そして民間活力のためとか、またこれを推進するため、従来建設省といたしましても通達によりいろいろ処理をしてきた事項を含め実施することとし、そして閣議決定をいたしてまいったわけでございます。これらの通達につきましては、国と地方公共団体が双方に共通するいろいろな政策を遂行する課題というものをいかに円満に解決をしていくか、そういう適切な行政指導を図るために実は行った措置でございまして、私どもといたしましては、地方自治に対して干渉するとか関与するとかというような意思は持っておらないところでございます。
  33. 木間章

    ○木間委員 大臣の御答弁は当を得ていないと思うのです。と申し上げますのは、五十八年七月、建設省がまとめた「規制緩和等による都市開発の促進方策」、この中の国公有地等の活用の項で「国公有地等の有効活用の推進を図る。」としております。国は地方と協力し合って今日まで国公有地の拡大に努めてきたのは御案内のとおりでありますが、特に公有地の拡大の推進に関する法律を積極的に昭和四十七年に法制化をし取り組んできました。それはまた時代の要請に合った町づくりのために、例えば保留床をつくるということで極めて有効なものであったと思います。ところが行革審が始まりますと、打って変わったように政府みずから不動産業を始めたと申しましょうか、今土地を売りまくっておるのであります。この法律は現在も生きておるのでありますが、この法律は残したまま国公有地の処分に入っておるというのは極めて遺憾でありまして、そういったことなども行政通達は法律制度を超えておるのではないだろうか、こう実は私は判断をするわけです。したがいまして、行政通達がその政策の転換に大きなウエートをかけておるということになりますと言語道断と言わざるを得ませんし、大臣、今例を申し上げましたけれども、この行政通達の本来の意味などについて重ねて答弁をいただきたいのです。
  34. 高橋進

    ○高橋(進)政府委員 先生今御指摘のございました国公有地の活用に関する法律がございます。これは、具体的に地方公共団体が将来道路とか公園とかそういったものに使う目的があるときに、いろいろ公有地の取得に関することを可能にする方策を定めた法律でございます。一方、国公有地の活用というのは、国公有地として具体的な使途がないものについて民間も含めていかに有効利用を図るかという観点からのものでございまして、必ずしもその法律の存在と国公有地の活用施策というものが矛盾するものというふうには考えてはおらないわけでございます。
  35. 木間章

    ○木間委員 我が国の建設省、地方自治体もそうであったように、ヨーロッパ先進諸国でも国公有地の確保にお互いに努力をしておるところでありまして、そういったことがあったからこそ、ヨーロッパ各国の都市計画は私どももうらやましいような道路づくりあるいは公園づくりなどなどが行われておるのであります。したがいまして、使用目的がいかんであれ、後々の我が国の都市計画事業を進めていくための代替用地として確保してきたのがこの法律趣旨でもあったでしょうし、ということになりますと、仮に国立の、あるいは公務員宿舎等の用地が不用になったからといって、安易に民間その他に処分をするべきではなかったと思いますし、あるいは積極的に自治体にその用地を買っていただいて後々の都市計画づくりに貸すべきではなかったろうか、建設省方針にもそのことが盛られておった、こう私どもは実はかねがね確信してきておるところであります。したがいまして、官房長、どうも皆さんのお考えが百八十度変わったのじゃなかろうか、このように残念でなりませんし、このことはまたこれからの委員会等でも申し上げていきたいと思います。  もう一つ、今度の民活の活用ということの中に重要なことが含まれております。例えば行政通達のあり方の問題でございますが、今日までさまざまな各省庁の行政通達が出されております。これらを見てみますと、例えば建設省は五十八年七月、例の都市対策推進委員会などプロジェクトチームをつくって、これからの宅地開発指導要綱等に対する措置方針をまとめて、次官通達で出してまいりました。これはあくまで建設省内部の都市対策推進委員会のプロジェクトで判断をされ、通達をしたのであります。ところが、今度の一連の動きを見ておりますと、行政通達といえども、先ほど総務庁長官がおっしゃったように閣議決定をされて進んでおるのであります。特にその前段には、初めに行革審ありきであります。そして、わざわざ閣議決定をし、今準備をしておる。行政通達というのは法の枠内の作業でありまして、それは当然に、法の趣旨にのっとって全国的に事務の一元化を図ろう、法律制度の一元化を図っていこうという中身でございますが、このたびはどういうことでしょうか、そういう私どもにとってはどうしても理解、納得のできない手法がとられております。総務庁長官、こういった点について行政通達と閣議決定はどういう関係を持つのか、ひとつ明らかにしていただきたいと思うのです。
  36. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 もちろん、行政改革をやる場合にも、立法事項法律改正を要するわけでございますが、政省令あるいは行政通達、これは言うまでもなくやはり基本は法律の枠内であるということが大前提でございます。したがって、従来からの行政通達、政省令等も法律改正になればそれによって変わっていく、こういう手順になっていくのだろう、かように考えるわけでございます。  そこで、第二臨調、またその後を受けた行革審の問題は、御案内のように国と地方、これが並行して行政改革をやらなければならない、しかしながら地方団体との関連においては、国と地方との関係がある事項についてこれを第二臨調なり行革審が取り上げて改革を提言していく、こういう趣旨でございますから、本来的に地方独自でやることについては、こういう時代でございますから、当然のことながら地方団体もみずからやっていただかなければなりません。しかしながら、国と地方との関連する事項については第二臨調なり行革審の答申、それを受けての閣議決定、それに基づいてそれぞれの主管庁が地方に指導したりあるいは助言したり、そういうことによって地方の手によってやっていただく、こういうことで今の行政改革が進んでおるのだ、この点を申し上げておきたい、かように思います。
  37. 木間章

    ○木間委員 一つの具体的な例を申し上げて見解をただしたいのであります。  今、例えば都市計画法や建築基準法が制定されまして、各地方都市は民間、個人を問わずこの法律で日本の国土建設に邁進しておるところであります。ところが、この法律制度は全国三千三百の自治体すべてを一般的にくくるわけでありまして、所によっては差異が出てこようというものです。そこで、全国の自治体では宅地開発指導要綱などを作成しておるのは御案内のとおりであります。昭和五十六年九月の建設省、自治省の合同調査の結果によっても、三千三百団体のうち一千七団体がつくっておる。三〇・七%のようでございますが、特に三大都市圏はこのうち六七・三%にも達しておるということのようであります。これはその後も進みまして、先般の建設委員会での答弁によりますと一千百を超えておるだろう、こういうことにもなっておるわけでありますが、それはどういうことから出てきたか私なりに考えてみますと、もともと国の法制度の貧困が原因じゃなかったろうか、こう思えてならぬわけです。つまり、この間悪徳デベロッパーや不動産業者の開発行為で随所にトラブルが起こってきた。住民とのトラブルが絶え間なく起こったので、あるいは最終的には訴訟闘争にも入っていってなかなからちが明かなかった。やむにやまれず自治体が仲介の労をとってこれらの手順を決めたのだろう。また、幾つかの市に問い合わせてみても担当者はそのように言っておるのであります。つまり、仲介に入った自治体が何とかスムーズな開発行為ができるように、あわせて町づくりがその気候風土あるいは住民ニーズに合ったようなものをつくっていかなきゃならないという使命感もあったと思いますし、またそのことが百年、二百年後世に伝える自治体の任務でもあったろうと思うのであります。したがいまして、今長官は法制度にのっとって国も地方もやっておるんだとは言われながらも、都市計画法や建築基準法のそういう不備に自治体の知恵として生まれてきたのではないだろうか。ということになってきますと、やはり今日、行政通達手法、しかも行革審や閣議決定までおやりになったその手法よりも、この法の整備に先に手をつけるべきではなかったろうか、こう私は思って、今の政府の手法が極めて残念でならぬわけでありますが、長官どうでしょうか。
  38. 清水達雄

    清水(達)政府委員 宅地開発指導要綱につきましては、確かに先生おっしゃいますように、各公共団体におきまして良好な環境を備えた市街地をつくりたいという考え方から制定をされている点もあると思います。そのほかにも、財政負担が非常に大変なので開発者に負担を求めるとか、いろいろな要素があると思いますけれども先生指摘のような点も確かにあると思います。そういう意味におきましては私どもも評価はしているわけでございます。  ただ、その中に、例えば開発面積の一〇%を超えるような公開緑地の確保義務づけるとか、あるいは区画道路の最小幅員にしましても十メートル以上求めるとか、こういうふうに、都市計画法で開発許可技術基準を定めておりますけれども、そういうものを大幅に上回るような施設の整備水準を求めるというふうな行き過ぎがあるというふうなことでございまして、そういうことになりますと、開発者に過重な負担を課す。そうしますと、これは結局宅地価格が上昇してエンドユーザーに過重な負担を課すということになりますので、私どもとしてはそういうものの是正の指導をしなければならぬと考えているわけでございまして、法律では開発許可技術基準というのはちゃんと設けているわけですけれども、そういうものをかなり大幅に上回ったようなものを求めている点について改善の指導をする必要があると考えているわけでございます。
  39. 木間章

    ○木間委員 過重な負担という言葉もとられたわけでありますが、果たして過重な負担がどうか。それは建設省あるいは政府の一方的な判断だと私は言わざるを得ないのです。というのは、そもそもこの要綱の発生は、人口急増地帯、しかも環境変化がその本来のもともとの自治体のベースと数段かけ違えて激しいものがあった、こういう認識を私たちはしておるところであります。例えば、道路問題だけではないのですが、人口が集中いたしますと、当然ごみが排出されましょうし、下水道の整備もより拍車をかけていかなければなりませんし、箱物の学校やコミュニティー文化施設なども整備をしなければなりませんし、また消防、防災、そういったものも同時に総合的な町づくりをしていかなければならぬわけでありまして、そういったものに対する開発者の一部負担あるいは寄附金等であらわれてきたのではないでしょうか。したがいまして、閣議は暇ではなかったと思いますが今わざわざ閣議決定までされてやろうというのは、明らかに地方自治への介入そのものでありましょうし、地方財政への介入以外の何物でもない、こう私は断ぜざるを得ないのです。建設大臣どうですか。まずあなたの所感でございますけれども、この要綱の随所に通達での見直しを迫ろうとしておりますけれども、これについてのお考えをまずお聞かせいただきたいと思うのです。
  40. 木部佳昭

    ○木部国務大臣 先ほど私申し上げましたように、そうしたいろいろな措置、通達等につきましては、国と地方公共団体双方が共通する政策課題について共同で解決する、そういうふうな適切な行政の確保を図るためでございまして、これは何といっても地方自治に介入するとか——今やまさに地方の時代と言われているわけであります。それで、先ほど先生から民活のお話もございましたが、民活なんかにいたしましても、良好な町をいかにしてつくり上げていくかということがその主たる目的であるわけであります。例えば東京に例をとりましても、各区の都市計画審議会とか、またそういう手続を経て、東京都の方の正式な審議会にかけてそれらのものが決定されるというようなことでございまして、むしろ地方自治体の方がかなりの権限を持ってそうした政策の遂行をいたしておるわけでありますので、私ども今申し上げますように、地方自治への介入とか干渉とかいうようなものはもちろんしてはならないことでありますし、もし指導する場合でも、これは全く共同の課題でやっていくことであって、介入するとか干渉するとかいうことは考えてはならおことであろう、むしろ地方自治体が自主的に行政を推進し、住民福祉の向上のために努力するものである、さように考えておる次第であります。
  41. 木間章

    ○木間委員 町づくりは国と地方と表裏一体でやっていくんだ、まさにそうでなければなりません。しかし、先ほどからも申し上げておりますが、従来の通達は内部行為で、内部の知恵を出し合って、法制度の範疇で処理をやってもらおうという形で出してこられたのでありますが、今回の一連の動きは、それをさらに上回る閣議決定、さらに行革審がまず指導をして進められてきましたし、今準備をされておる通達の中身もそういう位置づけであろうと思うのです。  そこで総務庁長官、こういったやり方は、手続としては間違いではないと私は思いますけれども、建設大臣がおっしゃっているように、決して自治への介入ではないし、もちろん地方財政への介入では毛頭ありません、こう言っておるのでありますが、各地方は、先般、五十八年のときにも大きな戸惑いがあったところであります。長官、今度のこのような手法について地方がどのように受けとめておるか、率直な御感想をお聞きしたいと思います。
  42. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 御質問の町づくりというようなことになれば、地方団体に積極的にいろいろな施策を講じていただくということは当たり前の話であろうと思います。ただ、その際に、御質問の宅地開発指導要綱等、これはそれぞれの地方団体がおつくりになっておるようでございますが、その結果、今度は逆に最終ユーザーの負担が余りにも過重になるといった面もまた出てきておるわけでありますから、そこらを考えながら建設省としてはしかるべく調和を図ってやってもらいたい、こういう意味で御指導なさっていらっしゃる、かように私は理解をしておるわけでございます。  そこで、行革審云々と、こういうことでございますが、これは先ほどお答えしたとおりでございます。そこでお考え願わなければならぬのは、日本全体の統治機構がどうなっておるかということでございます。これはもう釈迦に説法でございますけれども、国の機関が末端まで行政をやる、地方は独自に全部やる、こういった二本立てではございません。やはり機関委任事務あるいは団体委任事務といったようなやり方で国の事務も地方にやっていただく、こういう仕組みに我が国はなっておるわけでございますから、そういった場合に、国と地方との関連しておる事項について、地方自治の本旨ということをもちろん基本に置いて尊重していかなきゃなりませんけれども、同時に、そういう関連した事項については国としてもしかるべき通達等を出して地方の御協力を仰いでいくというやり方が、これが日本的な知恵でございますから、そういう行政の仕組みを前提にして、第二臨調なりあるいはその後を受けた行革審に行政改革を車の両輪として取り組んでいただこう、こういうことでやっておるのでございますから、そういう点についてはぜひひとつ御理解をいただきたい。もちろん、御趣旨の点は政府としても十分心得てやっていかなければならぬということは我々も十分理解をいたしております。  以上でもって、あるいは抽象的かもしれませんが、御質問に対する私の答弁で御理解を賜りたい、かように思います。
  43. 木間章

    ○木間委員 今長官の方から、自治権を尊重していくんだ、そう御発言もありましたから、私はこれからの通達の中身等を私どもなりに吟味をしながら、追跡をしながら、ぜひ住民のための国づくりといいますか町づくりが達成されますように、これからもお互いに対応していきたいと思います。  自治省の方、お見えになっておると思いますが、質問よりも要望を申し上げておきますけれども、寄附金とか負担金、実態はさまざまな名目で徴収されておりますし、収入科目も一定ではないようです。極端なのは一般会計の雑収入扱いにされておるところもありますから、こういったものこそ、住民の立場から見て町づくりにいそしんでおるんだな、そういうことがわかるような会計処理もされていかなきゃならない。当然のことでありますから、ぜひそういった徴収のあり方あるいは使途についても明確になるように指導をお願いしたいと思うのです。例えば地域環境整備基金などに使うんだということを明確にされるようにこれから指導をお願いしたいと思います。  それから、建設大臣、今度の中に開発許可審査や確認手続の簡素化あるいは迅速化を求めておるのであります。申請から許可認可まで長過ぎるという前提に立っておられるようでありますが、もともとこの申請あるいは確認の仕事というのは、単に開発をすればいいあるいは建物を建てればいいというだけではないと思うのです。それは土地利用を初め、農林、防災、環境、道路、河川、文化財保護などなどたくさんの行政分野との整合性、調整が求められるところであります。したがいまして、今自治体がやっておる中身の実態は、従来の縦割り行政を今度は市町村全体の総合的な立場からとらえようということで、多くの分野での事前協議が進められておるところです。また、それは陳情を受けておる自治体あるいは環境保全をどうしてもやっていかなきゃならぬという自治体の立場から見れば当然のことではないでしょうか。したがいまして、この時間的な配分については法で定められた期間内でやるようにというのは考え直すべきではないだろうか、私はこう思っております。  いま一つは、その受け皿の対応でございます。今、国もむだな職員は採用しない、こういうことで行政改革を進めておるのと同様に、自治体でも同じような手法がとられております。当然でありましょう。例えば開発許可件数、昨年一年間を見ておりましても一万八千件。それから建築確認件数百万件。ところが、建築主事は全国で千五百ないし千六百人と聞いておりますが、この受け皿にまず無理があるのではないだろうか。早くやってくれ、やってほしいと言われてもこの人的機能が備わっていないのではないだろうか、こう思っておりますが、いかがでしょうか。
  44. 清水達雄

    清水(達)政府委員 開発許可につきましては、先生は、非常に多分野にわたるチェックが必要であって、そう簡単にはできない手間のかかる仕事だというお話でございます。全くそのとおりでございます。したがいまして、私どもといたしましても、そういった多分野にわたる調整あるいは県と市町村との調整とかいろいろあるわけでございまして、そういうことにかなりの日時が必要だということはもう当然だと思います。  ただ、例えば開発許可の場合について申し上げますと、まず市町村レベルの審査、検討というようなこと、それから知事の段階でのこと、それから例えば環境でありますとか農林行政とか、あるいは各分野の公共施設とか、いろいろな面でチェックをしなければなりませんが、一つが終わらないと次が始まらないよというふうなことでは非常に時間がかかるわけでございます。したがって、いろいろな分野につきまして同時並行的に審査が行われるというふうなことになりますればかなり時間の短縮も可能ではないかというふうな点に立ちまして、合理的に、できるだけ効率よくやろうという観点から、開発許可の審査の事務手続の迅速化とか簡素化とかいうふうなことを進めていきたいという考え方でございます。  また、建築確認の問題もございましたけれども、やはり同じような考え方でできるだけ効率的にやって、民間の申請をする人たちにもいいし、またできるだけ行政事務の効率化にもなるようにという観点から指導をしていきたいというふうに考えております。
  45. 木間章

    ○木間委員 また、行政通達の準備の中に、ビル建設などに際しての周辺住民の同意書問題にも触れております。不要論を主張しておるのであります。この同意書要件は、先ほどから言っておりますように、紛争仲介の経験から出てきたものでありまして、この同意書を廃止するということになれば、これからまた乱開発を認めることになりましょうし、またかえって紛争の処理が長引く、再び呼び起こす、こういうことにもなろうと思うのです。今、緑や日照権等に住民の関心が特に高まってきておりますから、私はこのお考えについては時代のニーズに逆らうものである、こう思うわけですけれども、どうでしょうか。
  46. 清水達雄

    清水(達)政府委員 開発許可に際しまして周辺住民の同意を求めるということにつきましては、開発に伴う環境問題とか工事中の騒音防止といったふうな近隣住民と事業者との紛争を未然に防止するという趣旨から、そういうふうなことを自治体がおやりになっているというふうに私どもも認識はしておりますけれども、ただ、例えば宅地開発の内容がこういう内容であるとか、あるいはそういうことを十分説明する、また問題が生ずるおそれがある場合には十分開発事業者と地元の住民の方々と話し合いをしていただくというふうなことは大変必要なことだろうというふうに思っております。  ただ、何ら法的根拠あるいは拘束力を持たない指導要綱などにおきまして、周辺住民の同意書が全部そろっていないと建築確認もしないし開発許可もだめだということですと、これはやはり行き過ぎではないかというふうに考えているわけでございます。したがいまして、指導要綱の措置方針におきましても、全員の同意書をそろえるということは行き過ぎである、ただし、住民に対するいろいろな説明とか話し合いとかそういうことについては、都道府県なり市町村においても十分配慮してやってほしいということを申し上げているわけでございます。
  47. 木間章

    ○木間委員 周辺住民に対する説明とか、そういったものを的確にやればこの同意書は要らないぞ、今局長はこういう趣旨の御発言だったのでしょうか。
  48. 清水達雄

    清水(達)政府委員 開発許可や建築確認に際して周辺住民の同意書を全部とってこないとだめという行政運用は、法律でもそういうことは求めておりませんし、それは行き過ぎであるという趣旨でございます。
  49. 木間章

    ○木間委員 せっかく地方が、開発業者の気持ちも察して、しかし前提は新しい町づくりをしなければならぬ、その町づくりを後世に引き継ぎ発展させなければならぬということで編み出した手法であります。まあこれ以上告さんと議論をしておっても平行線でありましょうが、今乱開発をさせない、あるいは紛争を的確に処理する、あるいは事前に紛争の起こらない環境をつくり出そう、そういうためにはぜひ必要ではないだろうか、私はこう考える一人でございます。したがいまして、この問題についても、これからも建設委員会等所管の委員会十分議論をしていきたいと思います。  今まで幾つかの閣議決定された行政通達の中身についてピックアップしながら尋ねてまいりました。地方の自治体への介入は絶対に考えておらぬ、こういう長官の御答弁もいただいたわけでありまして、私たちはこれからも追跡調査をしていくのでありますが、そういう前提に立ちまして、この行政通達の時期の問題が一つは気がかりになるわけであります。  従来建設省は、法案審議等に当たりまして、一連の政令その他の役所の態度決定については審議中は控えてこられました。今度の場合もぜひそのようにならなければならないと思いますが、今準備をされておる建設省の行政通達などはいつ出されるのか、見解をお尋ねしたいと思います。
  50. 高橋進

    ○高橋(進)政府委員 閣議決定に基づきます事項の通達の時期のお尋ねでございましたが、これは建設省関係の事項だけでも三十四事項ございます。それぞれ内容やまた緊急度等も違うわけでございまして、一律にいつということを申し上げる段階にちょっとございませんけれども、それぞれの内容、緊急度等を勘案いたしまして、適切な時期に措置いたしたいと考えております。
  51. 木間章

    ○木間委員 時期についてはひとつ従来の方途を踏襲していただいて、法案審議中は控えてもらいたい、このように要請をしておきたいと思います。  いま一つ内容の問題でございますが、閣議決定まで前段で行っておられますと、私どもやはり先ほどから申し上げてきたような中身について変化が感ぜられるわけです。そうはいっても、既に五十八年七月に出されておるわけでありますから、私はこの五十八年七月の内容を超えるべきではない、こう思うものでありますが、この点ひとつ意見として申し上げておきたいと思います。  それから次に、地代家賃統制令の問題について一、二お尋ねしたいのでありますが、この問題は、本来の建設委員会でもしばしば取り上げられてきましたし、あるいは内閣委員会でも話題になったのでありますから、私は極めて簡単に一、二点だけ申し上げたいと思うのであります。  建設大臣は今まで、この地代家賃統制令の扱いについては、敗戦直後当時の社会情勢などからいって極めて効果もあったし、そういった点では必要であった、このようにおっしゃっておられます。しかし、今日、家賃の値上がりが少ないことや、あるいは対象者も年々減ってきて非常に少なくなっておる、加えて、その対象家屋が古くなって傷んできたなど、こういう変化があったし、また、受け皿としてのアフターケアも十分用意をしておるから廃止を求めておるのだ、このようにおっしゃってこられたのであります。  しかし、私は、その中にもやはり社会保障的通念がなければならないと思っております。つまり福祉施策としてとらえるなら、対象者が少ないからといって切り捨てるべきではない、私はこう考えるものであります。したがいまして、対象者が少なくなっておればおるほど、やがては自然消滅状態に入っていくのではないだろうか。したがいまして、地代家賃統制令の部分をこの一括法から削除修正をしてもらいたい、つまり削除を要求いたしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  52. 木部佳昭

    ○木部国務大臣 地代家賃の統制令につきましては、今先生からもいろいろ御指摘いただきましたように、特にお年寄り、高齢者の方々や弱い立場の方々、そういう方々に対して、もしこの法案を認めていただいて通過した後には一年間の余裕期間もございますから、その点につきましては心配や不安を与えないように最大限の努力をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  今さら申し上げる必要もありませんが、行革審の答申を受けまして、時代変化その他いろいろ勘案して、そして、今先生のおっしゃるとおりもちろん福祉的な面その他についても、私は、今申し上げましたように弱い方々の立場、また高齢者の方々、そういう方々にいやしくも不安や心配を与えないようにすることが行政や政治の基本でありますから、そういう点を最大限しかと酌み取って、皆さん方の立場に立ったところで行き届いた配慮をさせていただくということが一番大事である、そういうふうに思っておるわけでございまして、どうぞそういう点を——撤回するということは、私どもは行革審の答申も受けてお願いをしておるわけでございますから、ひとつその辺は御理解賜りますようにお願い申し上げたい、かように考えております。
  53. 木間章

    ○木間委員 重ねて、削除すべきだという意見を申し上げておきたいと思います。  最後でございますが、総務庁長官にお尋ねをいたします。  この一括処理という形、そして今、国会法では常任委員会制度をとっておるわけでありますが、最近の行政改革が進行する過程を見ておりますと、先ほども話題になったのでありますけれども、中曽根式法案づくりの特徴はまさに一括法で進められております。こうなってまいりますと、議員の周辺では、国会には内閣委員会と大蔵委員会があればいいのだという、ある意味では投げやり的な面もないではないと思いますけれども、そういう気風が今進んでおって極めて残念であります。あるいは、うがった見方をしますと、他の委員会は行政改革で削られていくのかなということも出てくるわけであります。  今度のこの法案は八省二十六法律になっておるわけでありますが、本来でありますと、七つの常任委員会でそれぞれ審議をするのが姿であったのです。こうなりますと、戒厳令のような形がこの手法の中に入っておると私は見ざるを得ぬのでありまして、極めて残念であります。国会法四十一条に盛られております常任委員会制度そのものを否定するものだと思いますし、そのことは議会制民主主義に逆らうものでないだろうかと思うわけです。  例えばこの二十六法案の中で地代家賃統制令について、私は先ほども言いましたように、一年と言わず十年二十年、そんなに長い時期ではないですから、やがては自然消滅する中身でありまして、今ここでくくって廃止するのは言語道断に思えるのであります。他の法案については、私は賛成もやぶさかでありません。しかし結論的には、そういうものが一つ忍び込んでおりますとそれを取り上げざるを得ませんし、それに反対いたしますと一括法全部が反対ということになるわけであります。そこに議会制民主主義がどのように保障されておるのだろうかと思うのでありまして、そういった点では、私はこの一括法でくくるというやり口については極めて納得できない一人であります。そういった点で後藤田長官の重ねてのお考えをお聞かせいただきたいと思うのです。
  54. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 なぜ一括法にしたのかという点につきましては、先刻来お答えしておるとおりでございまして、経済社会の活性化という観点規制緩和する、こういう趣旨目的のもとに共通的な事項として一括としたわけでございますので、その点は御理解いただきたいと思います。もちろん議会制民主主義のもとにおいてそれぞれの常任委員会があるわけでございますから、政府として、我々としても国会の権威ということは十分配慮して今後ともやってまいりたいと考えるわけでございます。
  55. 木間章

    ○木間委員 国会の権威を失墜させないように、そしてそれぞれの委員会活動が十分に行えるように、今後こういった轍を踏まないようにと忠告申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。
  56. 中島源太郎

    ○中島委員長 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四分休憩      ————◇—————     午後一時開議
  57. 中島源太郎

    ○中島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。吉原米治君。     〔中島委員長退席、三ツ林委員長着席〕
  58. 吉原米治

    ○吉原委員 午前中の論議にもありましたように、最初に今回の法案の提出のやり方について後藤田総務庁長官に御意見を聞かしていただきたい。  午前中の論議の後藤田長官のお答えの中に、目的が同じだから一括法で出すのが至当ではないかという、表現はそのとおりじゃなかったのですがこの種の御回答がございましたけれども目的が同じだからいいじゃないかというようなやり方でございますと、それぞれの専門の常任委員会があるのは御案内のとおりでございますが、こういった連合審査などという形で審議を余儀なくされるわけでございまして、今度の二十六本の中の八本は実は運輸省所管の法案です。八省の中で一番多い法案の数になるわけでございまして、そういう意味からいくと私どもはごく専門的な分野にわたります関係上どうしても運輸委員会で専門的にゆっくり論議をしたい。今長官のおっしゃったようなごく事務的に改正される問題は我々も大して重要視しておりません。それはそうでしょうということになるのですが、言ってみれば不燃物と燃物とをごちゃまぜにして捨て場に捨てるようなやり方ですね。はっと気がつくと中に重要な問題が実はあるにもかかわらず一括法で処理しようという——意識的にされたのではない、むしろごく事務的に考えられたのでしょうけれども、中身を検討すればするほどこれは重要な法案だからひとつごく専門的にやりたい、こういう認識がどうしても出るわけでございまして、その中の典型的なものが航空法六十五条の改正なのでございます。後ほど触れますが、特に交通事業分野については規制緩和するのではなくてむしろ規制を強化していってこそ初めて交通秩序が維持されるというふうに我々は考えておるわけでございまして、規制緩和はこういった事業分野については必ずしもなじまない考え方だと思っておりますので、本法案の提出のやり方について総務庁からひとつお答えを願いたい。
  59. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 午前中の御質疑の中にも常任委員会制度を形骸化するものではないのかという御批判がございましたが、私どもといたしましては、政府みずからが議院内閣制のもとで常任委員会を形骸化するなどという意図は毛頭持っておりません。このことは大前提として申し上げておきたいと思うわけでございます。  今回の改正は、しばしばお答えいたしておりますように我が国経済、社会の活性化を図らなければならない。それにはやはり時代変化に適応して従来からある規制の中で不合理なものであるとか過剰なもの、あるいは物によっては不必要になっていったものはこの際改廃をすべきである、こういう行革審の御答申もあり、政府としても検討の結果そのとおりであろうということで、立法趣旨は、趣旨目的共通にしておるという事項、殊にまた重大な政策変更は伴わないといったような観点に立って、従来から政府でも厳しい基準を実は設けておるわけでございます。この基準適合しているや否やということは法制局審議の中でも十分に検討していただきまして今回の一括法を取りまとめた、こういうことでございます。  御質疑の中に、運輸関係については特に他の事業と性格が違うではないかということがございます。まさに今日の運輸事業、何よりも安全ということが重要でございましょうし、またその対象の業界も非常に数が多い、あるいは中小企業が多いというようなことも十分配慮をした上で、なおかつ時代変化に伴う国民のニーズの変化、こういうものも我々としては考えざるを得ない。こういうような考え方のもとに、運輸行政に伴う特殊性にも十分配慮した上で、今回の法律改正を必要とするという事項について一括して御審議を仰いでおるわけでございますので、こういった政府の基本的な態度につきましてはぜひひとつ御理解を賜りたい、かように思うわけでございます。
  60. 吉原米治

    ○吉原委員 総務庁のお考えはそれなりに僕も理解しておるつもりでございますが、前国会でも総務庁の意向を受け、あるいは俗に言っております臨調答申の意向を受けて運輸省独自の法改正運輸委員会に提出された。例えば日本自動車ターミナル法だとかあるいは船舶法の改正だとか国際観光振興会法の改正だとかいうのは、すべてその意向を受けて運輸委員会提案をなさっていらっしゃる。今回なぜそういう手法を用いることができなかったのか。前例がないとおっしゃるのなら、私はあえて前国会の経過も今御案内申し上げたのですが、そういう手順はなぜとれなかったのか。それはそれなりに今のような答弁に返ってくるのでしょうけれども、これだけの、各委員会それぞれ批判の強いこういう法案の提出のやり方については、長官、今後はそういう批判を受けないようにやっていただけますか、今回は仕方ないのですけれども
  61. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 実は今回も全部法律改正を要する事項一括法にまとめておるわけではございません。やはり法律で別個にやらなければならぬものも残っておるわけでございます。したがいまして、この一括法で取り上げておる事項は、先ほど私がお答えを申し上げたような観点のもとで取りまとめておる、かように御理解をいただきたいと思います。  なおまた、当然のことながら重大な政策変更であるとかといったような問題につきましては、これはやはりそれぞれの常任委員会改正案を出すべきものであるという、これはまた政府の基本的な考え方一つでございますので、いずれにいたしましても委員会審議を形骸化するといったような考え方政府はとっておりませんので、従来からの扱いに従って政府としては処理させていただきたい、かように考えるわけでございます。
  62. 吉原米治

    ○吉原委員 そうなりますと、今から質問をします航空法六十五条の問題について、具体的には日航の平沢専務にきょう来ていただいておりますので、日航の現状等々を認識していただいて、これはやはり一括法では無理だったんではないかという認識を後藤田長官に持っていただくために今から六十五条をやりますので、お聞き取りを願いたいと思います。  実は今回の六十五条の二項一号の削除の提案でございますが、俗に四発、三十五トン以上。この法律ができたのは昭和二十七年であったと聞いておりますが、この当時の四基以上の発動機、かつ三万五千キログラムという飛行機は、言ってみれば今日の大型機種、大型航空機という認識があってこういうものがつくられておると思うのです。ところが、現実には三十五トンなどという飛行機は、少なくとも旅客を積んで営業をやっておる飛行機にはこんな飛行機はないだろう。あるいは四発にこだわらずに二発だって大型機はある。だから、現状にそぐわなくなったから四基を二基以上にする、四基以上というのを現状に合わせて二基以上にする、あるいは重さも百トン以上を優に超えておる大型機になっておりますから百トン以上にするとか、そういう現実に合わせた数字の基準の改定を提案なさっておるのなら、それなりに私は後藤田長官の趣旨はわかるのです。ところが、これを全部削除するというのでしょう。言いかえますと、今後は重さが何トンあろうとも、エンジンが何基づいておろうとも、そんなこと関係なく、従来の航空機関士を乗務させずに、つまり三人乗務を二人乗務にしていこう、そういうことにつながると私は思うのです。  したがって、八月十二日の日航の一二三便、あの墜落事故、今日飛行機を利用しておる利用客は飛行機に対する不安を大変感じておる今日でございますが、そういう国民的な感情からして、わざわざ今後は航空機関士を乗せなくて三人乗務を二人乗務で運航させるという、まさに国民感情を逆なでするようなこういう法案をこういう時期に提出されるというのは一体いかがなものか。まず、この一項を削除する真意のほどを、運輸大臣お答えになりますか、航空局長ですか。
  63. 山下徳夫

    ○山下国務大臣 基本的な問題だけ私からお答えいたしておきたいと思います。  御指摘の点は私もよくわかります。やはり過渡期にはいろいろな不安というものがあると思うのでございますが、そもそもこの法律昭和二十七年に制定されているということが第一点。それから特に飛行機は日進月歩で、全く当時からは想像できないような時代に入っているし、今から三十年ぐらい前の機種を使っているというのはもうほとんどありません。そういう時代でございますので、これを外形的に、例えば長さとかそういう大きさであるとか、あるいは発動機の数とか、そういうもので規制するというのは、外国にもそんな法律はないのでございまして、やはり機種別の性能の度合いに合った一つ基準を決めてやっていくということの方がより合理的である。そういう意味から今回の一項の削除ということに相なったわけでございまして、そういう意味では、公的規制ということで一括してもいいのではなかろうかということが私ども考え方でございます。
  64. 吉原米治

    ○吉原委員 大きさ、重さあるいはエンジンの数、こういうものに拘束されずに、こういうように運輸大臣お答えになりましたけれども、そうしますと、この航空機関士の果たしてきた今日までの役割というのは一体どういう認識をされておるのか。航空機関士というのは、言ってみればおってもおらなくてもいいような存在に見ていらっしゃるのかどうなのか。航空機関士の役割についてどういう認識を持っておられるか、この点をひとつお答え願いたい。
  65. 西村康雄

    ○西村政府委員 今回の航空機関士の乗務についての規定の改正趣旨でございますが、どういう場合に機関士が必要であり操縦士が必要かというのは、その航空機の操縦の難易、操縦の仕組み、これはコックピットの中の構造の問題、全体にどういうふうにコックピットの中の運航関係者が業務を分担してやれるかということが基本でございます。したがいまして、一つ一つの飛行機の個性、状況に応じて何人乗務をするか決めていくということでございますから、航空機関士の業務それ自体も年とともに変わりますし、実際に航空機関士と操縦士の関係というのは常に全体として、トータルとして考えていくというようなことになってきているわけでございます。したがいまして、徐々に徐々に航空機関士の業務も当初と変わっていくわけでございます。  典型的に航空機関士の業務は、機体の内外部の点検とか整備状況の確認あるいは燃料、滑油の搭載量の確認、発動機系統その他受け持ちの諸系統の機能が正しく維持されているかどうかの確認、点検リストの呼びかけあるいは機長の指示に従い緊急時における操作及びその他の補助を行う、こういうようなことでございますが、先ほども申し上げましたように、航空機関士が要るかどうかというのは、全体の操縦の仕組みの問題でございます。  昭和二十七年当時の飛行機のコックピットの中というのは、各エンジンごとにスロットルその他三つもレバーが要る、結局十二のものをコントロールしながら全体の調整をする、操縦者は大変な負荷があったわけです。そういう点で機関士がどうしても補助しなければいけない。それで当時の技術水準からいえば、四発機には、そしてある程度の重量の、全体として構造の複雑なものについては三人要るというのが一つの核心ではございますが、その基本は、あくまでも全体に操縦ができるかどうかということの総合的な判断に基づいていたわけでございます。  今日、技術革新が進みました結果、別に四発でなくてもなお三人乗務している機種は大変ございます。逆に一方、四発でも二人で十分できる、技術革新の進んだものは、そういうことで諸外国では二人乗務の飛行機というのが出始めている。それがBAe146というような飛行機でございます。こういう飛行機になりますと、機関士の業務はすべて操縦士が一体的に行えるような設計になっているということで、現在、各国はそういう採用をしているという実情についてひとつ御認識いただければありがたいと思います。
  66. 吉原米治

    ○吉原委員 多分そんなお答えをされるだろうと実は思っておったのですが、予想どおりの回答でございます。  ところで、航空機関士を乗せなくともいい、あるいは乗せなくてはならぬという判断は、日航の例で実態をひとつ御報告願いたい。私が聞いておる限りでは、二人乗務でいくか三人乗務でいくか、つまり航空機関士を乗せるかどうかという判断は、日航の場合は会社の判断でやられて今日まで来ておる、つまり現場で働いておるパイロットの意見というのは一応聞きおく程度だ、乗せるか乗せないかの判断は会社の判断でやらしていただくということで現実に行われておるようでございます。私は、少なくとも航空機関士を乗せなくてはならぬあるいは乗せなくてもいいという協議の場、労使で少なくとも理解と納得の上でやるべきだという考え方を持っておりますが、日航の場合はそうじゃないのですか、どうですか。
  67. 平沢秀雄

    ○平沢参考人 お答え申し上げます。  ただいまの御質問でございますけれども、私どもは、767型機が現在導入されつつございますが、これが久しぶりに二名編成機、こういうことでございます。この附型機の導入に当たりましては、まず乗員編成につきましては、型式証明がなされる段階で、関係政府機関によって十分に審査をされて型式証明が出された、こういうベースに立っております。そこで、その導入に当たりましてはそういうことを踏まえました上で、会社といたしましては、テストフライトを含めました点について経験ある乗組員による検討もあわせて十分に行ってまいりました。そして、会社といたしましては、ただいま御指摘がございましたが、基本的な編成につきましては、会社が今申し上げたような検討も含めまして決めるものだというふうに考えております。ただ、それから出てきます勤務の条件、例えば時間当たりの乗務手当でございますとかあるいは勤務時間といったようなものにつきましては、ただいま組合と勤務協定がございますが、そういうものとして協議、決定をしていくものだ、そういうふうな考えでやっております。
  68. 吉原米治

    ○吉原委員 航空機関士を乗せるか乗せないかは会社の判断でやる。しかし、機関士を乗せなくて今度は二人でフライトを続けるわけでございますから、どうしても今日の大型機になりますと航続距離といいますか、長い距離を飛ぶことが傾向としては強まっておる。そういう意味では、従来エンジン部門については航空機関士が自分の責任でモニターを続けてくれておったから、パイロットにさほどの一操縦に専念ができるという、そういう体制が、今度は航空機関士の従来受け持った分野もパイロットが同時に目で確認をする、そういう意味では精神的な疲労度、これは高まってくるはずだ。その上にフライトをする時間は非常に長くなる。長くなるといったって、途中でとめるわけにいきませんから、どうしても目的地まで行くわけでございます。この場合の労働時間は、組合とちゃんと協議をされて決める、今こういうお答えのようだったけれども、そういうふうに理解をしてよろしゅうございますか。ただ、労働時間の何といいますか、手当の金額を上げればそれでいいというものじゃないのですよ。そのことによってまた再び起こしてもらってはならぬ八月のあんな大事故につながるという、そんなことにもなった場合に、大変なことになると私は思う。しかも、今三名から二名乗務については関係分野ではどの組合もそれでは困ると反対しているでしょう。それに対しては会社はどういう考え方でございますか。
  69. 平沢秀雄

    ○平沢参考人 一定時間をより超えました長い時間の飛行ということに関しましては、従来三人編成の航空機でも一定時間を超えます場合には、基本編成ではなくて、それに予備の交代要員を乗せましたマルチ編成あるいはダブル編成というものをとっております。それの基本的な何時間以上はそうするということはまずオペレーションマニュアルに入れまして、当局の御承認を得るわけでございますが、さらに組合との間で勤務協定で取り決めを行っております。そういう意味ではこの二名編成の航空機におきましても、ある時間以上の長いフライトにおきましては同じような手順を踏むことに当然なると思っております。その何時間以上であるかということは、今後検討または協議すべき問題であると考えますけれども、現在、諸外国並びに私どもが今回承認をいただきましたオペレーションマニュアルにおきましては八時間ということになっております。
  70. 吉原米治

    ○吉原委員 そこで、航空機関士の乗務しておる、つまり三名編成であったがゆえにパイロットは大変助かった、あるいは有効なアドバイスを受けた経験が——航空機関士の存在というものを重要視するがゆえに私は関心を持っておるわけでございますが、これは乗員の皆さんのアンケート調査によりましても、パイロットが航空機関士が乗務しておったために大変助かった、あるいはまた適切有効なアドバイスをしてくれた、パイロットの中の八三・五%が実はそういう経験があると答えておるわけでございます。二、三の例を言いますと、積乱雲が飛行場の上空にあって、INSにより風の変化指摘し、日本アジア航空の沖縄事故の二の舞を回避することができた。あるいは悪天候時、フライトエンジニア、つまり航空機関士が会社との無線連絡を一手に引き受けてくれた。あるいはドアの警報灯が点灯したときの機内のチェックをやってくれたとか、たくさん項目があるわけでございます。もう一つ申し上げますが、気象状況が悪く、ホールディング、空中待機ですね、ホールディングからダイバート、目的飛行場から他の飛行場へ向かうという、そういう中の航空機関士の働きはすばらしかった、頼りになった。こういう三十七項目にわたってパイロットが航空機関士が乗務していたために本当に助かったというアンケートの調査が私の手元にあるわけでございまして、そういう意味では航空機関士の存在というのは絶対不可欠のものだ、あるいは技術革新がどんどん進んで、今日では航空機関士がおらなくても十分やっていけるだけの機器の改造、計器の改造等がされておるやに言われておりますけれども、それだけで安全というものはより確かめることはできない、私はこう思っております。  特に、とかく外国のやったことについては日本人は信頼しがちでございますが、この間の墜落事故で、ボーイング社が修理をした、だから大丈夫だ、しかも五年も六年もノーチェックで飛んでおる、こういう無条件に外国のやっておることに必ずしも信頼をすべきじゃない、私はこう思っております。特に、自動車に例えれば、日本は右ハンドル、外国は左ハンドルが多いのですが、そういう意味ではやはり日本の家風に沿った形で安全というものを考えるべきであって、外国で問題ないから、あるいはそういう機種、機材は今日つくられておらないからもう大丈夫なんだ、こうはならないだろうと私は思うのです。この間のような大惨事に至るような事故は起こってはならぬと私は思うわけでございます。  そういう意味で、これは航空局がお答えになりますか、この間の墜落事故の中で、空中で三十分有余さまよった時間帯がございますが、その中でパイロットとFEの発言の内容がボイスレコーダーに載っておるわけでございます。どういうやりとりがこの三十分の間にやられたのか、私は資料を持っておりますが、お答えできれば運輸省の方からひとつ答えていただきたい。
  71. 大島士郎

    ○大島政府委員 八月十二日の日航機の墜落事故、このフライト中におきまして航空機関士あるいは操縦士の操縦室内で交わした会話については、航空事故調査委員会の方から既にその概要が公表されております。個別に申し上げますとかなりの量になりますので……(吉原委員「二、三の例でいい」と呼ぶ)二、三の例といたしましては、十八時二十五分五十六秒に、「ハイドロプレッシャが落っこちてます。ハイドロが。」それから十八時三十分二十七秒に、「キャビンプレッシャどうでしょうか。キャビンマスクは落っこってますか。ああそうですか。じゃあキャビンプレッシャ……」というようなぐあい、あるいは十八時三十分五十二秒には、「キャビンマスクがドロップしているから。」「キャビンプレッシャはドロップしてます。」等々ずっと続くわけでございますが、全体として申し上げますと、操縦士の会話の中に、航空機関士につきましてはまず航空機関士の業務を忠実に行っている様子がうかがえます。墜落の直前と申しますか、十八時五十七分ごろに墜落したと推定されておりますが、この五、六分前の段階では操縦室内もさらに緊迫いたしましたようで、航空機関士が管制機関との交信あるいはエンジンの出力の操作、フラップの操作等、最後の瞬間まで手を出して行った、こういうようなことが記録により推察されておりまして、私どもとしましては、この事故に当たっては操縦室内で航空機関士も含めた乗員全員が飛行の維持に最大限の努力をしたということを十分うかがわせるものだと思っております。  しかしながら、この事故では事故の態様が、相模湾の上空を飛行中に垂直尾翼が破壊した、それにより同時に尾部関係の操縦機能がほとんどすべて失われてしまったというような特別な態様でございまして、そういった点では今回の事故と、したがって航空機関士が必ずすべての飛行機に乗らなければいけないかというような問題と、直接に論ずるのは多少難しい面があるかと考えている次第でございます。
  72. 吉原米治

    ○吉原委員 ボイスレコーダーの対話の、言ってみればとぎれとぎれの対話ということになるでしょうが、これは大島技術部長はそれなりに評価しておりながら、何か航空機関士がおらなくたっていいじゃないかという余り必要性を認めてない発言が最後にございましたが、私は、結果論でございますけれども、少なくとも航空機関士がパイロットを励まし、いろいろのアドバイスをしておるというのがこの対話の中でわかるわけです。もうパイロットは操縦に専念をしておる、そういう状況の中で適切なアドバイスをするということは、パイロットの精神的な安定を非常に高めることになるわけでございまして、ボイスレコーダーの中身は評価しながら、航空機関士の存在価値というものは余り認めぬ発言でございましたが、そうでございますか。おってもおらなくてもいいという考え方ですか、あなたは。——時間ないから簡単にやってください。
  73. 大島士郎

    ○大島政府委員 私どもはそのような認識ではございませんで、この飛行機には操縦士二名と航空機関士が必要というふうに認められた航空機でございまして、そのような航空機に当たって、非常事態の際に航空機関士が十分自分の職務あるいはさらに一般的注意義務を含めた最大限の努力をしていたということを御報告申し上げたわけでございます。
  74. 吉原米治

    ○吉原委員 そこで、きょうは日航側にわざわざ来ていただいたのは、この事故以降どういう整備体制を確立、充実されたのか。私の聞いておる範囲内では、運輸省が出された整備勧告というのですか改善勧告ですか、それは型どおりやったけれども、それ以外は従来と変わっていない、そういう現状の報告を聞いております。したがって、事故以後の、再び事故を起こさないためにどういう整備点検箇所をふやし充実したのかということが一つと、もう一つは、俗にC整備、こう称しておるフライト時間三千時間ごとにやられるようでございますが、これは本格的にやろうとすれば大体五日か六日くらい格納庫に入れて点検をしなければならない。それだけの日数がかかるようでございますが、最近四分の一分割整備なんというような方式がやられておるように聞いております。国鉄分割じゃないですよ。分割整備だ。しかも、これ何の意味かなと思ってよく聞いてみたら、ナイト時間を使って整備する、つまり十カ所なら十カ所ふぐあい箇所があるとすれば、今晩はひとつそのうちの一、二、三カ所やってあとはそのままでフライトを続ける、次の晩また今度は四から五、六ぐらいをやってまたフライトをするという。この四分の一分割整備というのは、一体なぜこういう方式をとるのか。その間に重大事故が起きて重整備をしなければならぬ機種が飛び込んできた場合には、日航の場合一体どういう整備のやり方をするのか、この点についてちょっと、余り航空問題で長くはやれませんが、ひとつ簡単に答えていただきたい。
  75. 平沢秀雄

    ○平沢参考人 ただいまの事故後の整備体制の問題でございますけれども、私ども事故後747型機の一斉点検を始めまして、運輸大臣よりの御勧告に従いました安全運航確保のための業務改善策というのをお答えいたしまして、それに従いまして現在鋭意実施をしておりますが、そのほかにも自主的な点検あるいは整備管理面の点検強化、こういうこともあわせて実施をいたしております。  それで、具体的には整備要目といたしまして、第一次分ということでございますが、十月末までに合計四十項目の整備項目を新設または改定いたしました。この四十項目のうち二十七項目が耐空性改善通報による検査の結果並びにこれまでのいろいろ私どもが経験いたしましたふぐあいの内容の再解析によって追加あるいは改定いたしたものでございまして、残りの十三項目が、これも御勧告にございましたが、整備用のドアによって容易に接近できる構造区画について検査をC整備で行う、こういうことを追加したものでございます。その他、前に大きく修理をいたしました航空機については特に長期の監視プログラムをつくるということにつきましても、実際に対象になります八機の飛行機につきましてそれぞれプログラムを設定いたしております。さらに、その他整備管理面で自主的にいろいろと現在も改善を図っておりますし、今後もやっていくつもりでございます。  それから、御質問の四分割整備ということでございますが、C整備というのは、おっしゃいますように、747の場合ですと一機四日ないし五日寝かしましていたす整備でございますが、これはある時間、例えば三千時間までにそれを一回やる、こういうことになっておりますけれども、その時間に達します前に、一機の飛行機であれば、例えば二つに分けまして一区画を早くやる、その残りの区画を次にやって、合わせて三千時間以内に点検並びにそれに基づく整備を実施する、こういうようなやり方のことを言っております。四分割というのは四つに分けてということでございますが、現在四分割というのは検討はいたしておりますが、まだ御認可はもちろんいただいておりません。そういう状況でございます。
  76. 吉原米治

    ○吉原委員 検討しておるけれども、まだ。これは運輸大臣、運輸省の認可事項でございますか、四分割整備方式というのは。
  77. 大島士郎

    ○大島政府委員 整備のやり方あるいは分割してやる方式、これらは整備規程あるいは整備規程の附属書によって運輸大臣の認可または承認事項となっておりますが、一般的に整備と申しますのは、飛行時間あるいは飛行回数に応じて必要な整備がなされるかどうかということがまず基本でございまして、必要な整備を決められた飛行時間内に行うということの前提に立ってこれを分割して整備するということは、従来からも認められておる方法でございます。  ただいま日本航空からまだ申請がない段階でございますので、内容について言及することはできないわけでございますが、基本的に分割整備方式そのものは従来からも各社において整備管理の必要上やっておることでございまして、その中で安全性は十分保たれるよう審査していきたいと思っております。
  78. 吉原米治

    ○吉原委員 わかりました。  そうしますと、日航の専務にもう一回お尋ねするのですが、この事故以降整備要員は一体増強されたのでございますかどうてすか。私が聞いておる範囲内では、検査係あるいは技術屋というのをそれぞれ十三名とか十四名ぐらい増員をされておるようでございます。それは言ってみれば、整備分野の要員の中で操作しただけであって全体のトータルとしては一向にふやしてない。内部で、お前は今度検査係の方へ回れとかいう内部操作であって、全体の整備要員の増員はしていないということだが、事実ですかどうですか。
  79. 平沢秀雄

    ○平沢参考人 ただいまの整備検査要員等につきましては、今般の点検の結果にかんがみまして、検査員の増強並びに技術企画立案部門の増強が必要である、こういうことで、その実施を考えまた任命をいたしておるわけでございます。  おっしゃいますように、それでは現場の人数がさらに減るではないか、こういうことでございますけれども、747SR型機の特別点検など今後の作業量というものの増大に対しましては、まず長期的には、年度ごとに定める人員計画の中で作業量に見合った整備員の配置を計画するということでざいますが、とりあえずの短期的では採用も間に合いません点もございます。そこで整備の職種内の相互応援それから残業の一部実施等によって整備作業を現在実施いたしておるわけでございますけれども、さらに一部対応能力に不足が生じておりますので、これは航空機関連企業の応援をいただきまして、作業外注という形でやっていただいております。そのほか現在、受託整備というものをいたしておりますが、この機体整備に関します受託整備はできるだけ削減すべく調整いたしまして、今のような作業量と人員のアンバランスを解消するというふうな考え方をいたしております。
  80. 吉原米治

    ○吉原委員 だんだん時間がなくなりますので簡潔にしたいと思いますが、今回のこの六十五条の改正目的というのは、英国製の四発ジェット機BAe146型機を我が国に購入できる、そういう条件整備をするための改正だというふうに表向きの理由としては我々も聞いておるわけでございますが、今後こういった経済効率を目指して二名編成の747型機等々、既にもうボーイング社では二名編成の機体、これの検討が進められておるようでございます。でありますから、今後は大型機、つまり効率のいい二名編成の大型機を将来とも導入することができるし、そういう体制にしようという意図があるんじゃなかろうか、こういう心配を私どもはしておるわけでございます。運輸大臣、とかくコストを安くするために三名よりも二名、二名よりも一名という形に、業界の方はそういう方向をとりやすい体質なんです。そういう意味では、言わずもがなの話でございますが、一たん事故が起こりますと人命に影響する飛行機であるだけに、ひとつ安全性の問題については十分な考慮をしながら、再び過般の大事故になるような、運輸行政が最後の責任追及を受けなければならぬような、そういうぶざまな運輸行政をされないように、十分ひとつ決意を新たにやっていただきたいと思いますが、いかがですか。
  81. 山下徳夫

    ○山下国務大臣 先般の五百二十名がお亡くなりになった大きな事故等からいたしましても、とにかく他の交通機関一切そうでございますが、なかんずく死亡につながるという危険性を持っている航空事業というものは、安全の上にも安全ということにまず主眼を置いてすべてが行われなければならぬことはもちろんのことでございますが、先ほど申し上げましたように昭和二十七年当時の飛行機はもう現在使われておるのはほとんどないというぐらい機種も変わってまいりましたし、また電子制御装置であるとかコンピューターとか導入いたしておりますし、そういった一つの進歩に従って世界の航空業というものがそうした傾向をたどっておるということでございますから、これを減らすということは今日においては当然のことかと私は思っております。  ただ、先ほども申し上げましたように、過渡期においてはいろいろ不安がつきまどうものでございますし、それが航空に対する利用者の信頼性というものを阻害することがあればこれは大変なことでございますし、こういう時期においては例えば操縦教育訓練というものを、もうこれで本当に大丈夫だといういよいよ確信が持たれるまではその飛行機に十分なれるための訓練などやったりして、とにかく安全の面から全きを期した上での転換を図らなければならぬ、このように思っておる次第でございます。
  82. 吉原米治

    ○吉原委員 じゃ日航の平沢専務に一言だけ申し上げておきます。お答えは要りません。  今度の六十五条の改正に伴って航空機関士を乗せるか乗せないかという判断については労使協議をして、少なくともパイロットの皆さん理解と納得の上でやっていただく、こういう一つのけじめといいますか、会社の権限はわかっております、権限はわかっておるけれども、現実に乗務する、フライトをやる人たちの意見を、聞くのは聞くけれども聞き置く程度だということでなしに、本当に理解と納得の上で乗務させる、させないの判断をつけてもらう、そういう労使協議を徹底してやってもらいたい、こう思います。  御異議があるようだけれども、この問題だけで長くやるわけにはいきませんから。それでは、一言だけ聞いておきます。
  83. 平沢秀雄

    ○平沢参考人 会社の考え方は先ほど申し上げたとおりでございます。  767の導入に際しましても、私どもは乗組員、乗員に対しましてはいろいろと説明をし、また疑問に答え、また実機のオブザーブ等もいたしておりまして、これまでやってきたわけでございます。今後もそういうふうなことで、しかるべく十分な理解を得ていけるものと考えております。
  84. 吉原米治

    ○吉原委員 それでは、日航の専務は退席してもらって結構です。  これからあと三十分と思っておりましたが、もう十分も切れたわけでございますが、この今度の法改正と同時並行的に、運輸関係では省令、政令、通達等々の八十件にわたる項目があるようでございますが、この中で共通して言えることは、トラックについての事業区分あるいは貸し切りバス、タクシーの事業区域、こういうものの見直しと、既に現行やられております幅運賃、これをさらに拡大をするという、これは航空も海運の方も言えるかと思いますが、まさに交通戦国時代といいますか、全く弱肉強食型の競争を政策的に交通事業分野で助長するような省令、政令、通達の中身であるという認識を私は持っております。特に、事業区域のあるいは事業区分の見直しというのは、縮小でなくて拡大のはずですからね。より競争の場を広げるということですから、いよいよもってこれは福運賃の幅を拡大をするということと相まって、かつての神風タクシー、神風トラック、こういうものを再現をさせるような方向の省政令の改正ではないか、こう一口に言えると私は思うのです。幅運賃の問題だって、これは業者自体が自分の主張を、自分の考え方を通すということになかなかまいらない。特にトラックについては荷主側の圧力、あるいはまた貸し切りバスについては旅客との関係で真ん中におります旅行業者の対応、現行貸し切りバスでも一〇%までぐらいはこの幅運賃は導入されておるようでございますが、一〇%さえもなかなか守れてない。ダンピングはあちこちに横行しておる。そういう実態からして、さらにこれを拡大をするということは、経済的運賃制度の面からいっても、より競争を激化させることにつながる。あるいはハイヤーについても司じことが言えます。  これは弾力化をやるということでございますが、業者自身がなかなか判断できにくい問題です。利用者との間で、どういう認可運賃をまけることができるのか、あるいは回数券のようなもので、そういうものを一つの値下げ運動として、利用者の立場に立って、これは好ましい方向だなんというような解釈に立って、将来のハイヤー、トラックの自由化の方向というものをこの中からうかがい取っておるわけでございまして、まさにそういう意味では戦国時代、弱肉強食の時代がやってきやしないかという危惧を持っておるのでございますが、競争の原理という、今度の行政改革の一連の中曽根さん独特の、民間活力を導入するとか、いろいろ格好いいこと、耳ざわりのいいことを言っておられますけれどもい私どもは、冒頭言いましたように、この競争原理というものが運輸行政の中であるいは交通業界の中で一体なじむ考え方なのかどうなのか、まことに心配をしておるわけでございまして、よしんば競争原理を導入するにしても、同じ条件で競争させるというのなら、それはそれなりに意義はわかるわけでございますが、一方で二七通達も労働基準法もへったくれもないというふうな考え方でやられ出したら、まじめに法を守ってやっておる業者の方がばかを見るわけですから、そういうまじめにやっておる者がばかを見るような運輸行政がこれから進められるとするなら大変なことになると私は思っておるわけでございます。  残り時間がわずかでございますから、この問題もっと細かくやりたかったのですが、政省令合わせますと八十件に及ぶ内容でございますから、とても五分や十分でできません。一まとめにして質問をしましたから、それぞれお考え方を述べていただきたい。
  85. 山下徳夫

    ○山下国務大臣 基本問題だけ一言申し上げて、政府委員から答弁いたさせますが、おっしゃる点よくわかりますが、やはり地域的に見ますというと、道路の状況であるとかいろいろな地域差がある、そういう場合に許容限度が全くないという従来のやり方の方がむしろダンピングにつながるのではなかろうか。若干の幅を持たせる、許容限度を設ける、ちょうど言うなれば自動車のハンドルみたいなもので、若干の遊びがあった方が運賃という制度は守られるのじゃないか。一つは行革に盛られたように、そういった競争原理の導入という方向ではございますが、そこらあたりも勘案しながら一〇%という程度のものを取り入れる、それがむしろいいのではなかろうかという、いろいろ熟慮した結果、協議した結果の判断でございますが、さらに基準等についてはまだ政府委員から答弁させます。
  86. 栗林貞一

    ○栗林政府委員 先生おっしゃいますように、現在運輸省では政令の改正などを含めまして相当数に上る検討を行っております。基本的には行革審の答申さらには政府の行革大綱に基づいて検討を進めておるわけでございますが、その際の基本的な考え方あるいは共通的な問題につきましてお答え申し上げますと、まず、運輸事業につきましては現在参入規制とか運賃規制等の規制が行われておりますが、これは運輸事業の特性から、利用者が必要な輸送サービスを安全かつ良好な状態で安定的、効率的に受けることができるようにするという運輸行政の目的を達成するものと考えております。したがいまして、運輸事業につきましては、業種により強弱の差はあるものの、今後とも何らかの形で参入規制や運賃規制を維持していく必要があるというふうには考えておりますが、ただ、一方では運輸事業が経済社会情勢の変化に伴う利用者ニーズに的確に対応し得るようにするとともに、国民負担の軽減等を図るため、そのあり方を検討する必要があるというふうに考えて現在進めておるところでございます。  先生、先ほどおっしゃいました競争という話でございますが、これは私ども、野放しにして自由に競争すればいいというふうに考えておるわけではございません。やはり一定の秩序の中で公正な競争をするということが基本的な考え方でございます。競争という場合には、やはり常に公正な競争ということがその内容になっているということを頭に置きながら今後の検討も進めてまいりたいと思いますし、当面は行革審の答申、先ほどの行革大綱に基づきまして、これを計画的、着実に実施していくということで進めてまいりたいと考えております。
  87. 吉原米治

    ○吉原委員 後藤田長官、今お聞きになっておわかりになったかどうかわかりませんが、少なくともこの一時間で、陸海空全分野にわたる今回の規制緩和やり方については、非常に重要な問題をたくさん内包しておるわけでございまして、とても届け出の日数を七日を十日にするとか、そんな簡単な、事務的にさばかれる問題じゃないのでございまして、今後も起こり得るかもわかりませんが、少なくとも今回のように十把一からげで提案するなんというようなことはされないように、最後にひとつ決意のほどを聞いておきたいと思います。
  88. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 御趣旨はよくわかっておりまするので、いずれにいたしましても規制緩和の必要性はあるわけでございますが、その結果国民に不安を与えるといったようなことのないような配慮を十分やってまいりたい、かように考えております。
  89. 吉原米治

    ○吉原委員 終わります。
  90. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林委員長 新井彬之君     〔三ツ林委員長退席、中島委員長着席〕
  91. 新井彬之

    ○新井委員 私は、ただいま議題になっております規制緩和一括法案につきまして、特に初めに地代家賃統制令の廃止の問題についてお伺いをいたします。  この地代家賃統制令の廃止の問題につきましては、建設省からもよく説明を伺ったところでございます。そういうことで、いろいろな問題を抱えている。したがいまして、そういう問題についていろいろお伺いしたわけでございますけれども、今までいろいろの経過がございまして、特にこの地代家賃統制令ができた時代というのは、四百二十万戸程度の住宅の不足、非常に家賃の高騰、そしてまた住宅難、こういうようなことがあってつくられた。それからまた、昭和三十五年—三十八年にこれも国会で問題になって廃止法案が出される。そのときには住宅不足がまだ三百万戸もある。そしてまた地代、家賃の上昇というのが非常に著しい状況である。こういうような経過を経て、今回また廃止の法案が出てまいったわけでございます。  私は、規制緩和ということにつきましては大賛成でございますし、民間活力、これも非常に大事なことである、基本的にそう思うわけでございますけれども、行革審からの答申を見ましても、もっともっと規制緩和をしていかなければいけない問題が多々あろうかと思います。その中でこういう一括法案ということで今回出されたわけでございますが、この法案の扱いについては、やはり一括というよりも専門委員会に任せた方がいいような問題も多々あるのじゃないか、こういうぐあいにまず思うわけでございます。今回こうして一括にされたということも、これだけのものが規制緩和されるのだな、これは非常にプラスの面もありますけれども、やはり内容がよくわかって審議するという面から見ますと、専門委員会に任じた方がいいのじゃないか、こう思うわけでございますが、その点について総務庁長官、どのようにお考えになりますか、初めにお伺いしておきます。
  92. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 御説のようにやはりそれぞれの常任委員会審議をするのがいいのではないか、これは私は御説は十分理解をするところでございますが、何しろ今回のような改正は、改正趣旨目的共通である、そしてまた政府としてもみずからの基準を設けておるわけでございまして、その基準に照らしても、一括して御審議を仰ぐ方が一覧性という意味においても理解をされやすい、こういったようなことで扱っているわけでございます。  重大な政策変更を伴うといったようなものであればこれはやはり別個の立法を必要とするであろうと思いますが、今回の一括して御審議お願いしておるものは少なくともそういった重大な政策変更を伴うものではないのではないか。不必要になっておるとか不合理になっておるといったようなものを改廃をしよう、こういうことでございますから、その点はぜひひとつ御理解をしていただきたいと思います。もちろん、先ほどお答えしておるように、常任委員会の役割、これについては政府としては、当然のことながら今後とも十分尊重してやっていかなければならぬ、かように考えておるわけでございます。
  93. 新井彬之

    ○新井委員 それも、常任委員会の方が専門的にやってもいいのかどうか、内容によって非常に違いがあるかと思いますけれども、ひとつ今後もよく考慮をしていただきたい、このように思います。  そこで、今回この統制令を撤廃するということが出てきたわけでございますが、今日ここに出さなければいけなかったということについての考え方についてお伺いしておきたいと思います。
  94. 渡辺尚

    ○渡辺(尚)政府委員 ただいま先生からもお話がございますように、現行の地代家賃統制令は、戦後の混乱に対応する対策の一環としまして、非常な住宅難、先ほどもお示しございましたように、四百二十万戸不足しておったというような時代を背景として、地代、家賃の急騰を防止するために制定されたということでございます。  一方、翻って現在の状況を見てまいりますと、住宅総数は御案内のとおり一世帯当たり一・一戸、量的にも充足しておりますし、また一人当たりの畳数等の指標で見ましても向上を続けております。年々住宅水準は改善されております。また、当時はほとんどなかったと思われるような低所得者層に対します公営住宅の供給でありますとかあるいは公社・公団住宅の供給、あるいは公庫融資といったいろいろな各種の住宅施策も充実してきております。ということで、往時に比べれば住宅事情は大幅に改善してきているという認識でございます。  それから、だんだんと統制対象の数が減ってきておりまして、現時点では住宅総数で比べますと三%という一部の住宅に限定されております。なお、さらに統制に服しているものの割合というのは、対象住宅の中でも、地域等によって差があるわけでございますけれども、一割ないし三割というような状況であるということで、統制に服している住宅とそれ以外の住宅との間で均衡を失しているという状況が出てきていることでございます。それからさらに、統制によりまして対象住宅の維持修繕が十分に行われない、老朽化が進むというような弊害も出てきておるわけでございます。  こういった状況を総合的に判断いたしますと、元来統制というものは必要最小限に行うべきものというふうに考えられますので、今やその必要性は失われているということで、今回一括法の一部として出させていただいたわけでございます。
  95. 新井彬之

    ○新井委員 そこで、この規制を外すというときにおきましては、プラスもありますけれども、非常にマイナス面がある。そういうことで、全国借地借家人組合連合会の方からも、いろいろな問題があるのではないかということで、「地代家賃統制令廃止についての要望」というのが出ているわけでございます。その内容についてここで私これを読み上げますので、そういう危惧はないのならないというぐあいに、きちっとお答えをいただきたいと思います。   第一に、「統制令」廃止は、住民無視の民間活力による都市再開発事業を促進し、そのため借地借家人は立退きを強制されることになります。また地価の高騰を招き、一般勤労者が住めなくなります。 こういう問題でございますが、いかがお考えでございますか。
  96. 渡辺尚

    ○渡辺(尚)政府委員 統制対象住宅の居住者について見ますと、確かに高齢の方あるいは低所得の方がやや多いという傾向もあるわけでございますが、非常に長期間継続して入居しておられるという実態がございます。それからまた、これは昭和二十五年七月十日以前に建築された住宅を対象にしているということから、一番新しいものでも既に三十五年経過しているということでございまして、家屋が非常に老朽化しているということでございます。それからもう一つ、統制令が廃止された場合も当事者の借地・借家法上の地位には何ら変更はないということから考えまして、一般的にでございますけれども、統制令の廃止による影響は少ないというふうに考えております。  では統制令が撤廃された場合の家賃はどういうことになるのかということだと思いますが、やはりある時間をかけまして適正な水準に向かって緩やかに改定されていくというふうに考えておるわけでございます。  それから、追い出しにつながるということで、建てかえの問題だと思いますが、現在の家主が高齢化して建てかえの意思も余り強くないということもございます。それから先ほど申しましたような家屋の実態、こういうものから見まして、直ちには建てかえが進むというふうには考えておりません。ただ、非常に中期的あるいは長期的に方向として考えた場合には、居住水準の向上という政策目標もあるわけですからだんだんとそういう建てかえなども行われていくのかとは思いますが、直ちには影響がないというふうに考えております。
  97. 新井彬之

    ○新井委員 今、第一の問題を言ったわけでございますが、あと第二、第三、第四、第五とありますので、まとめてここで言っておきたいと思います。   第二に、民間の地代、家賃は既に高額化しており、しかも何らの基準がないなかで、統制令が唯一の基準となっていて、一定の役割を果しています。同会の廃止はこの基準がなくなり、地代、家賃の高額化に一層拍車がかかり、借地借家人の住居費負担が過酷なものとなります。  第三に、統制令対象家屋の居住者は、高齢者及び母子世帯などが多く、住み替えが困難であり、統制令廃止は弱者切り捨てとなります。  第四に、統制令廃止は、規制緩和という同じ次元で審議されようとしている借地、借家法見直しの前段ともいえるもので、全世帯の半数にものぼる借地借家人の死活の重大問題となります。  第五に、統制対象戸数は、一二四万戸にのぼり、その存在は大きく、生活の安定に重要な役割を果しています。  右の通り、統制令が廃止されることによって国民に及ぼす影響は極めて大きなものがあります。私たちはこうした重大な内容をもった法律を、一括法案によって処理してしまうことに強く反対するものです。 こういうことでございますが、先ほどの答弁で漏れているところについて御答弁を願いたいと思います。
  98. 渡辺尚

    ○渡辺(尚)政府委員 まず第一点の、地代家賃が高額化するのではないか、目安となっているのではないかということでございますが、先ほど一般的に申し上げましたように、諸種の情勢から考えましてその影響は比較的少ないというふうに考えておるわけでございます。  なお、従来、その統制対象外の賃料の決定に当たりまして統制額を確かに目安として用いるという場合もあるかもしれませんが、このような目的のために必要性の失われた統制というものを継続することは適切ではないと考えております。したがいまして、統制令の撤廃に当たりましては、その趣旨が誤解されましたりあるいは周辺の便乗値上げ等が生ずることのないように万全を期する意味で、国あるいは地方公共団体から概要でありますとか廃止の趣旨、あるいは廃止に伴います種々の正確な情報を提供いたしたいというふうに考えております。それから、便乗値上げ等を防止するために、借家の経営者団体あるいは仲介業団体等に対しましてその防止につき指導を行ってまいりたいというふうに考えております。  それから、高齢者あるいは母子世帯等が多く住みかえが困難であるというような、弱者切り捨ての問題でございますけれども、これは前々から申し上げているとおりでございますが、公営住宅のいろいろな制度、あるいは公営住宅の資格を上回っている方々に対しては公社・公団住宅の優先入居の制度、さらには、そこの場所を動かない、かつ賃料が払えないというような場合には、これは住宅扶助の問題として生活保護部局と十分に連絡をとってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  それから、借地・借家法の見直しの前段とも言えるものではないかという点でございます。その影響は比較的少ないというふうに思っておるわけでございますが、借地・借家法とは直接は関係がないというふうに考えておりますが、現在、その借地・借家法の見直しはこの六月から法制審議会におきまして審議が開始されたばかりでございます。改正内容はもちろん明らかでございませんけれども、いずれにしましても居住者の生活の安定ということは十分に考慮に入れて討議が進められるものというふうに考えております。これらによって国民の居住に悪影響を与えることはないというふうに理解をいたしておるところでございます。  大体以上かと思いますが、もし漏れがありましたらまた、
  99. 新井彬之

    ○新井委員 とにかく長い期間にわたりましてこの地代家賃統制令というのがずっと継続をしまして、今お話がありましたように百三十数万戸が対象になっているわけでございます。したがいまして、そういう中では当然そういう改正があっても別状がない、廃止になっても別状がないという人もいるでしょうし、その中には母子世帯とかあるいはまた非常にお年寄りの方であるとか、そういう方で困っている方が出てこられるということも考えられるわけでございます。局長としてはそういうことを万全な救済措置というものを考えて廃止されるということのお考えでございますが、ひとつこの問題について最後に大臣にどのような決意であるのかお伺いをしておきたいと思います。
  100. 木部佳昭

    ○木部国務大臣 今新井先生からいろいろ御指摘いただきましたように、この統制令を廃止をするというような場合に、社会的に非常に弱い方々、そういう方々に対して不安であるとか心配事のないように最善の努力を尽くすということが行政上、政治上一番大事な問題だ。先ほど先生おっしゃいましたように、統制令、借家借地というもの、そういう法律をつくったのは、戦後の非常な混乱の時期で住宅も大変不足いたしておりますし、そういう方々がある程度安定するためにやはりこういうものができていると思うのです。  そういう意味を考えてみましても、私どもは原点に立ち返って、そして弱い方々や特に居住者の低所得の方であるとかまた母子世帯であるとか、そういうふうな方々に対しては最善の努力をして、相談に応ずるとか、またそういう相談の体制についてはこれを思い切って充実していくとか、それからまた公営の賃貸住宅にも御協力いただくとか、また生活保護の関係につきましてもそうした部局とも最善の協議をして、そして心配、不安を与えないように最大の努力を尽くすことが我々の責任である、私はそういうふうに考えておる次第でございます。
  101. 新井彬之

    ○新井委員 次に、住宅問題の解決というのは、いろいろな方策があるわけでございますけれども一つはやはり土地問題の解決ということが非常に大事でございます。今、地価が半値になれば住宅というのは十二分に潤うことができる、そういうふうなことも極端な話考えられるわけでございますけれども、「行政改革の推進方策に関する答申」におきましても、国有地の払い下げ問題というのが答申をされております。  そこで大きな問題となってきておりますのが、本年の八月に千代田区紀尾井町の国有地、旧司法研修所の跡六千七百八十六平米が、一般競争入札で総額五百七十五億円、坪当たり二千八百万円、こういうことで、公示価格の約三倍で落札をされたわけでございます。これは当然、競争入札でございますし、国民の財産たる国有地を安く払い下げる、こういうことはとんでもないことでございますが、また他方、例を挙げていきますと、品川駅の貨物駅跡地の落札、これが昭和五十九年の三月十四日に行われたわけでございますが、これの単価が七百二十四万九千四百円。これが非常に高い落札のために、例えて言いますと、この近くにある公示地である日本通運の東京支店重機輸送課、港七—三、これの五十九年一月一日の公示価格が百七十一万六千円、それが六十年の一月一日、一年たって百九十二万六百円、年間一一・九%値上がりしている。また、公示地である港五—四、ここの喫茶ルノアールという地点におきましては、五十九年の一月一日二百四十万円のものが、三百十二万円に一年後に上がっている。あるいは、東京都の基準地でございますが、港五—四、碌々産業株式会社、五十九年の七月一日が二百十万であったものが、同じく一年後には二百九十五万に、四〇・五%アップしている。  こういうぐあいに挙げていきますと、そういう一つの国有地なり国鉄用地なりの払い下げによって、地価というものは物すごく上がるわけですね。そうしますと、高く売ることは、これは一つの当然な義務でございますけれども、しかし逆に今度は区であるとか都であるとかが公共用地を買収するときは、非常に高い値段で買わなければいけない。二度と再び買えなくなってしまう。こういうことで、特に住宅地においては、とてもじゃないけれども建てられるような状況ではないわけですね。この紀尾井町なんというのは、二千八百万円でございますけれども、容積率が四〇〇%でございますから、まあ七百万円。これは何の事業をやってもできないというような状況になるわけでございます。  国有地とかそういうものを払い下げるとき、これは当然一般民間みたいな法律規制はないわけでございますから、上限なく幾らでも高く売れるわけでございます。国土利用計画法は民間には当てはめられますけれども、国有地にはない。そういうことで、今回もそういうことに対して国土庁はびっくりしまして、通達を出しております。あるいは大蔵省もそういう問題について地価動向ということをよく考慮していただきたい、こういうぐあいに出ているわけでございますけれども、やはりこれからの国有地の活用というものは、そういうぐあいに売却をして民間活力という方法もありますけれども、そうではなくて、信託方式が二年ほど前から急激に出ておりまして、地方公共団体、そしてまた民間で、それをどのように活用するかということが今大変問題になっておるわけでございます。やはりそういう形で、今大蔵大臣も審議会に諮問をしたようでございますけれども法律改正しないと土地信託制度はできない、こういうことであるわけでありますが、この土地信託制度をやはり今後きちっと推進をしていかなければいけない、このように強く私は申し上げるものでございますけれども、国土庁と大蔵省に御所見を伺っておきたいと思います。
  102. 末吉興一

    ○末吉政府委員 土地信託は、土地の所有よりもむしろ利用を重視する、こういう世の中の傾向の中で、先生指摘のように、大都市圏を中心として最近急激に増加してまいっております。それだけ需要が強いものだと思っております。その原因といたしましては、土地信託が、土地の所有権を実質的に留保したまま有効利用を図るということでございますので、それだけ高い関心を呼んでおるものと考えております。  国土庁といたしましても、土地の有効利用を推進するという観点から、この土地信託制度の積極的な活用が図られてしかるべきだと考えておりまして、促進のための条件整備に努めていきたいと考えております。このため、その一環でございますが、土地及び土地所有者について認められております税制上の特例措置なりにつきましても、信託への適用についての税制改正を要望しておるところでございまして、この土地信託制度の条件整備に努めてまいりたいところでございます。
  103. 中田一男

    ○中田政府委員 お答え申し上げます。  土地信託制度は、先ほど国土庁からも御答弁がございましたように、民間では非常に急速に広がってきておるようでございまして、昨年の三月に第一号の契約ができてから、現在もう百七十件ぐらいの契約ができておるということでございます。  一方、国有地、公有地についてもこういう制度を活用してはどうかという御意見がございまして、御指摘のとおり、去る七月二十二日の行革審の答申においても、国有地への土地信託導入については「必要な法的整備の内容について早急に結論を得るものとする。」というような御答申をいただいておりまして、これらを受けまして、現在大蔵省では、国有財産中央審議会に法制小委員会というのを設けまして、この九月十九日以来審議を始めて、既に四回、回を重ねております。できるだけ年内あるいは年明け早々ぐらいまでに審議会の御答申を得て、次期の通常国会には必要な法律改正を準備をいたしたいというふうに思って取り組んでいるところでございます。
  104. 新井彬之

    ○新井委員 とにかく土地の値上がり、これが諸悪の一番の根源でございます。国が土地を値上げするような先導力になるということはとんでもないことでございまして、そのことについては早急に法律案を出していただきたい、このように思うわけでございます。  それからもう一つ、どうしても言っておかなければいけないことは、住宅問題について、今住宅減税ということが非常に言われているわけでございます。これは、御承知のように、アメリカでは住宅の減税についての額が、要するに住宅対策費の中で四・一%、それからイギリスが三・七、フランスが一・八、西ドイツが三・七、日本では〇・二、こういうような現状にあるわけでございます。  住宅減税をなぜしなければいけなかったか。各国のいろいろな経過がありますけれども、日本といたしましても当然居住水準の向上というものを望まなければいけない。しかし今の状況は、居住水準は上がらなければいけないのですけれども、だんだん取得しにくくなっているために、居住水準が低くなっている。それで着工戸数も、最高百八十万戸くらいあったものが、今百二十万戸を持つのが精いっぱいになっている。そういうわけで、今後住宅問題の解決を目指そうと思うならば、どうしても諸外国に並んで住宅減税を強力に推し進めなければいけない。これは、建設省としてもいろいろ検討されて、今大蔵省と煮詰めているところでございますけれども、これはどうしてもやっていただきたいと思うわけでございますが、それについての御所見を伺って私の質問を終わりたいと思います。
  105. 渡辺尚

    ○渡辺(尚)政府委員 まさに先生お示しのとおりでございまして、我が国の住宅の居住水準というのはいわゆる欧米先進諸国に比べますとまだまだ立ちおくれているということでございます。それから、新設住宅建設戸数も百十万戸から百二十万戸ということで低迷をしておるわけでございます。そういうことから、居住水準の向上のためにもこの建設を促進していかなければいけない。また一方、内需の拡大を通じた安定的な経済成長というのが求められているわけでございますが、そのためには景気への波及効果が非常に大きく関連業種も非常に多岐にわたっております住宅投資の拡大が望まれるというところでございます。  そこで、建設省といたしましては、これらの居住水準の向上という住宅政策の目標、それからもう一つ内需の拡大というものの要請にこたえるものといたしまして、昭和六十一年度におきまして税制改正を要望しておりまして、大幅な住宅税制の拡充の要望を行っているところでございます。  その主なものを三つ申し上げますと、一つは、住宅投資の大幅な促進を図るために、新築住宅につきまして、持ち家、貸し家を問わず毎年取得費もしくは建築費の一%を五年間にわたって税額から控除するという住宅投資促進税制の創設であります。第二には、現行民間住宅ローン負担の軽減のためにあります住宅取得控除制度について、控除率の引き上げでありますとか補助期間の延長等大幅な改善でございます。それから三つ目は、若年層の手持ち資金の確保に資する住宅資金贈与制度というのが五十九年に創設されておりますが、その活用の一層の促進を図るため、集合住宅の取得を新たに適用するなどの拡充を要望しておるところでございます。  これらの要望が実現されますと、住宅建設の促進によります居住水準の向上、内需の拡大に対しまして税制面からも大きく寄与できるものと考えておりまして、建設省といたしましては鋭意その実現に努力いたしたいと思います。
  106. 木部佳昭

    ○木部国務大臣 今局長からもお答え申し上げましたとおり、住宅税制ということは非常に大事な問題でございますし、それから皆さん方が住宅を取得したり新築したりなんかする場合に、まあ言えば非常に細かくいろいろなことを研究されているわけですね。そういう意味では、私は率直に申し上げて建設省とすれば何とかしたいということで今日まで努力はいたしたつもりでございますけれども、先ほど来外国との比較等もいろいろ御指示いただきましたように、やはり税の関係の改善というものがありませんと第一番に意欲がわいてこない、これは内需の振興のためにも住宅政策にとっての一番大事な点である、私どもはこういうことを認識して、来年の予算編成には関係省庁に働きかけて、苦しい中でございますし厳しい中でございますが、何とか皆さんから御理解を得るために私といたしましても全力を挙げて努力をさせていただきたい、かように考えております。
  107. 新井彬之

    ○新井委員 終わります。
  108. 中島源太郎

    ○中島委員長 薮仲義彦君。
  109. 薮仲義彦

    薮仲委員 私は、規制緩和一括法案の中で運輸省に係ります道路運送法の一部改正、それから航空法の一部改正に関する件について、建設大臣と運輸大臣に何点か質問させていただきたいと思います。  最初に建設大臣にお伺いしたいわけでございますが、道路運送法の一部改正、これにかかわる部分でございます。この道路運送法というとすぐ思い出されますのは、これは建設大臣にも早速現地に調査に行かれたことに対して敬意を表する次第でございますが、あの長野市の地附山の地すべり災害、ことしの七月に発生しまして二十六人の方が亡くなられたという大変な災害でございました。この原因は一体何だろうというと、ただいま審議しております道路運送法、これにかかわります長野県企業局が所掌しております戸隠有料道路、バードライン、ここから端を発した地すべりでございます。  この問題は、私も災特委員会で大臣にもお願いした経緯がございます。その経緯を踏まえましてその後どうなったか確認の意味を含めて質問させていただきたいわけでございます。この道路運送法によってできた道路というものは道路法によってできた道路とは違いまして、どちらかというと民間企業といいますか、私的な性格を持った有料道路でございます。ですから、そのような私的な性格を持った道路に国費を投入することが非常に困難であるという性格の道路でございます。しかし、これは大臣も御承知のように、県としては四、五年前からあそこの道路は危ないぞというようなことは十分気にしておった。ところが道路運送法上の道路であるので、この復旧のための県費もしくは国費を投入することができなかった。だんだん地割れがひどくなった。ではあそこを何とか地すべり防止の事業にできないか。この地すべり防止指定も県の方ではいろいろと建設省と協議をした。ところが御承知のように、あの大量の土砂崩れがあって、渓流または河川に流入して河川に被害を及ぼすとか、あるいは鉄道とか都道府県道以上の道路があって災害を及ぼすとか、学校だとか病院があって被害が及ぶとか、あるいはまた人家が十戸以上なければ地すべりの防止指定基準には該当しません等々ありまして、道路法上の道路じゃないということで国費を投入できない、あるいは指定基準によってどうしてもそこを地すべり事業にはできなかった。それで四、五年たってあのような人命に及ぶような災害があったわけでございます。その事故にがんがみまして、大臣から何とか法の範囲を乗り越えても人命救助は積極的に取り組みたいという御発言を災対の委員会でいただいているわけでございまして、私はあのときの大臣のそのような御発言を大変心強く思っておりました。今後たとえこのように地すべりの基準には該当しない、でも人命に及ぶような場合は、何とか積極的な対応ができないものか。あるいはまた原則的に指定基準を見直していただけないかというようなお願いをしたところでございますけれども、大臣もそれについては取り組む、検討するという御発言をいただいておるわけで、その後どのように取り組まれたか、ちょっとお聞かせいただきたいのですが。
  110. 木部佳昭

    ○木部国務大臣 長野のああいう悲惨なことにつきましても見識のある御意見をいろいろ承っておるわけでございまして、心から大変感謝をいたしております。先般の災害委員会の際も私からも申し上げまして、建設省といたしましては全国のああした道路につきまして実は総点検をいたしたところであります。たしか全国でああした道路が六十九本か何かあるようでございますが、いろいろ事務当局から報告を受けております範囲では、そのうちで四本か五本ぐらいのものについては非常に注意を要するような、そんな感じの報告を実は受けておるわけでございます。  したがって、私どもといたしましては、今いろいろ御指摘のありましたように、社的会条件とかまた地域の開発なんかが、建設した当時よりも大きく変わっているところもあると思うのです。そういう点等を見直す必要もあるということでございまして、先般の際にも答弁申し上げましたように、今そういう意味で建設省としてこの点検をし、また都道府県からもそうした問題についての未然防止に対する意見を伺っておるということでございます。これで終わるわけではございませんので、そうした災害に対する未然防止ということは、人命尊重その他の意味からいって我々建設行政の一番大事な問題でございますから、私が前回の災対で答弁申し上げましたように、我々といたしましてもできる限り前向きの姿勢で続けてそういう問題と取り組んでまいりたい、かように考えております。
  111. 薮仲義彦

    薮仲委員 今の大臣の御答弁にもあったわけでございますが、あのとき私も危険な道路について総点検をしてほしいというようなお願いをしました。大臣も今御答弁のように、総点検をさせましてということでございますが、具体的にその総点検の結果をもう少し詳細にお伺いしたいと思いますが、わかりますか。
  112. 萩原浩

    ○萩原政府委員 先生指摘のように、今回の地附山の災害を契機にいたしまして、去る八月に全国の一般自動車道五十六路線の事業者に通達を発しました。通達は、道路局長並びに運輸省の運輸政策局長の両名の名前で発しまして、その結果を徴しましたところ、五十六路線中地すべりその他そういう問題が起こるおそれがある箇所を抱えております路線は九路線でございました。この九路線につきまして、いろいろ復旧方法並びにその補強方法について検討させましたところ、大体今年度中に完成するものが数路線でございますが、ほとんどのものは六十一年度中にこれを完成させるということで事業計画を立ててきております。したがいまして、今回の調査の結果六十一年度中にはかなり安全度が向上することになろうと思います。私どもといたしましては、今後ともこれらの安全向上につきまして常日ごろから注意をしてまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  113. 薮仲義彦

    薮仲委員 よくわかりました。道路運送法の六十八条の四項には、維持管理という項目があるわけでございますが、これは確かにその管理者が建設、運輸両大臣に事故の有無を報告する、こういうことになっておるわけでございます。ですから、ただいまのように総点検をしていただいて九つの路線が維持管理上問題ありということを今報告を聞いたわけでございますが、その上に立って、どうかあのような事故が再び起きないように大臣の十分な指導よろしきを得ていただきたいと思います。  もう一点は、先ほどの大臣の御答弁を確認させていただきたいと思いますが、いわゆる道路運送法上の道路には国費は投入できないけれども、周辺の道路の状態が危険な場合には地すべり対策事業を積極的に取り組むべく、規制緩和も含めて検討しておる、そういうことでよろしいのですか。
  114. 木部佳昭

    ○木部国務大臣 先ほどの数字の点につきましては、ちょっと訂正を局長答弁でさせていただきます。  現在、例えば危険箇所と家屋が非常に接近しているところが全国的に見て五千七百カ所もあると言われておるわけであります。これは非常に危険な状態のようでありまして、そういうことのないようにこの辺の実態をもう少し把握して、そして私は、予算の厳しい中でございますが、これを一歩でも半歩でも不安のないように未然防止に全力を尽くす、こういうことを事務当局にも指示をいたしております。また、これからいよいよ予算が大詰めに、編成期に入っておりますので、私どもとしてはそういう点に全力を挙げたい、こういうふうに考えております。今御質問のありました点等につきましても前向きで検討させていただきたい、かように考えております。
  115. 薮仲義彦

    薮仲委員 どうか人命にかかわる災害について万全を期していただくよう重ねてお願いして、建設大臣結構でございますので、ありがとうございました。  次は、航空法の問題について運輸大臣並びに関係当局にお伺いしたいわけでございますが、今度航空法を一部改正する、航空機関士を乗り組ませなければならない条件の一項が外れるわけでございますが、改正の理由をごく簡単におっしゃってください。
  116. 西村康雄

    ○西村政府委員 今回の航空法の航空機関士乗務に関する規定の改正目的は、航空機の技術革新によりまして操縦士の操縦が非常に容易になりまして、特に航空機全体の運航につきましては、現在の航空法の規定が四発かつ三十五トン以上の航空機には必ず航空機関士を乗せろということになっておりますが、このような特別な考え方ではなくて、一般的にその飛行機ごとの操縦の容易さによって飛行機の乗組員の数を決めるという基本の考え方、その原則を適用することが現在の技術革新の状況に合っているということで、決して安全性を損なうような改正ではなくて、技術の革新に基づきまして、それに適応する規定を整備したい、こういうことでございます。
  117. 薮仲義彦

    薮仲委員 余り時間がありませんから具体的な問題をちょっとお伺いしたいわけでございます。  先般の悲惨な日航のボーイング747墜落事故にかんがみまして何点かお伺いしますが、まず与圧隔壁を点検したということになっておりますけれども、墜落以前の最終点検の日時、そのとき異常は認められなかったのかどうか、時間がないから要点だけきちんと答えてください。
  118. 大島士郎

    ○大島政府委員 お答えします。  墜落の時点からさかのぼって最近のと申しますと、たしかに五十九年の十一月、十二月にかけて行いましたC整備という時点でございました。このときに後部耐圧隔壁の点検は行っておりますが、当時の点検の基準と申しますのは亀裂をくまなく調べるという詳細な項目になっておりませんので、いわゆる一般的に状況を調べたということでございまして、その当時発見できなかったのかどうか。発見できないような傷であったのかあるいは発見できる程度のものであったのか、これは現在事故調査が進んでいるところでございますので、これの結果を待たなければはっきりしたことはわからないというのが現況でございます。
  119. 薮仲義彦

    薮仲委員 私の言ったのは、異常が発見できたかできなかったのか。大分お疲れのようですけれども、発見されなかったというのならされなかったでいいですよ、発見されなかったのですか。
  120. 大島士郎

    ○大島政府委員 ただいま申し上げました当時の基準に基づいた点検の結果では、異常は認められておりませんでした。
  121. 薮仲義彦

    薮仲委員 事故調査委員会お見えだと思うのですが、ちょっとお伺いしたいのは、十一月十一日前後の新聞報道に「日航ジャンボ機墜落事故の原因調査に当たっている運輸省航空事故調査委員会は、ジャンボ機の垂直尾翼が客室内の与圧の半分程度の圧力で、内側から破壊されることを示すデータを米ボーイング社から入手したことを十一日明らかにした。」とありますけれども、これは事実ですか。
  122. 藤冨久司

    藤冨説明員 航空事故調査委員会におきましては、先生おっしゃったような事実をその時点で明らかにしたということはございません。
  123. 薮仲義彦

    薮仲委員 明らかにしたというのではなくて、この事実はボーイング社から入手しておりますか。
  124. 藤冨久司

    藤冨説明員 今回の事故調査におきましては、事故機の製造国であります米国が国際民間航空条約の第十三附属書に基づきまして製造国として参加をいたしております。そこでこの製造国としての立場から、事故調査に必要な航空機製造上の基礎的データにつきましては同条約附属書に基づいて必要に応じ逐次米国調査チームの代表であります米国国家運輸安全委員会、いわゆるNTSBから入手をいたしているところでございますけれども先生の新聞記事のようなデータが直接この中でということは、私どもまだ見ておりません。
  125. 薮仲義彦

    薮仲委員 じゃ、ここの中で言われているように「内圧に弱い垂直尾翼」というのはうそなんですか、それとも事故調査委員会としては内圧に弱いと認めるのですか、認めないのですか。
  126. 藤冨久司

    藤冨説明員 垂直尾翼の破壊過程等につきましては、現在委員会におきましてその調査解析を鋭意進めているところでございまして、今後ともこの調査解析につきましては、委員会が独自に検討を進めてまいりたいと考えているところでございます。
  127. 薮仲義彦

    薮仲委員 では運輸省に聞きますけれども、「ジャンボ機設計改善へ」と、やはり同じようにでっかく書いてあるのですね、ジャンボ機改善を要請、日航がボーイング社に改善要求しましたと。どういう改善かというと、一つはいわゆる尾翼へ与圧の噴気流を防ぐドアをつくってくれというのが入っているわけですね。与圧隔壁が破れてもその噴流がいわゆる尾翼の方へ行かないような扉をつくってくださいよ、こう書いてあるのです。いずれにしても、日航がボーイング社にこのような設計改善を出しているのは運輸省は当然知っていると思うし——知っていますか、まず。
  128. 大島士郎

    ○大島政府委員 日本航空が事故の当事者である立場からボーイングの方にそのような要望を出した、これは十月九日にボーイング社へ電報で申し入れたということは承知しております。
  129. 薮仲義彦

    薮仲委員 この一番最初に、「噴出気流が機体後部から垂直尾翼へ上昇するのを防ぐ扉を、新たに胴体と垂直尾翼の境界に設ける」と、こうある。しかもまだ、ボルトをいわゆるステンレス製にしろとか書いてある。きょうは時間がなくて非常に残念なんですけれども、こう書いてあるということは、日航がボーイング社にやったということを監督官庁の運輸省がおかしいと思ったらやめなさいと言うわけでしょう。おかしくないからそうだと言うのでしょう。ということは、垂直尾翼に行く扉を新設しなさいということは、明らかに、安全設計上フェールセーフというけれども、危ないなと思うから日航がこういうことをやったことについて運輸省がやめろと言わないということは、これを認めたということなんですね。
  130. 大島士郎

    ○大島政府委員 これは大変難しい問題でございますが、まず日本航空の考え方としましては、後部耐圧隔壁、これが壊れないようにするのが第一である。仮に今度の作業ミスと申しますか、ボーイング社自身が認める作業ミスがあって、後部の方へ空気が抜けた場合に、いろいろ報道されているような垂直尾翼の方に空気が上がって内圧が高まって壊れた、もしこういうことが可能性あるいは蓋然性としてあるとすれば、垂直尾翼に空気が上らないような措置をしてほしい、こういう意味でいわゆる万全の措置を要望したというふうに私ども受け取っておるわけでございます。  通常はこの垂直尾翼に高圧空気が流れ込むということは考えられないことでございますので、これをもってにわかに設計上欠陥がある、こういうような認識はまだ私どもは持っておらないところでございます。
  131. 薮仲義彦

    薮仲委員 運輸省さん、ちょっと大臣もよく聞いておいてもらいたいのですけれども、いわゆるフェールセーフということはどういう概念で設計をやっているかというと、いわゆるリダンダンシーといって、余分なことだけどやっておこうというのがフェールセーフですよ。これは、ボルトは一本でいいけれども、もう一本やっておいて被害を食いとめよう、これがリダンダンシーの設計概念ということでやっている。今、技術部長は、その上にさらに万全をということは、フェールセーフじゃないということになってしまう。きょうは時間の制約でこのぐらいにしておかなきゃならない。これは重大な問題ですよ。  さらに、事故調査委員会お見えですからちょっとお伺いしますけれども、プレッシャー・リリーフ・ドア、いわゆる与圧隔壁が破れたら下から空気がばあっと逃げますよというあのドア、あれは発見されたのかどうか。  それから、もう一つ聞いておきますけれども事故調査委員会はこの事故調査の結論を大体いつごろをめどとして結論をお出しになるのか、この二つ
  132. 藤冨久司

    藤冨説明員 お答えいたします。  プレッシャー・リリーフ・ドアについては発見されております。  また、この調査の結論がいつかという御質問でございますが、現在、十月の初めに回収いたしました墜落現場等の主要な機体残骸を整理し、その詳細調査に当たっている段階でございまして、事故原因の早期究明には鋭意努力いたしたいと存じますけれども、現時点でその結論が出る時期がいつだということは申し上げる段階まで至っておりませんので、御理解を願いたいと思います。
  133. 薮仲義彦

    薮仲委員 これは大臣にお伺いしますけれども、もっと具外的なことをたくさんやりたかったのですが、もう結論を急がなければならない。大臣にお伺いします。  いわゆる航空機を購入する際に輸出国の政府が型式証明を出す、こうなるわけですね。先ほども事故調査委員会の方でいろいろ言っておりましたけれども、国際民間航空機関の安全基準というのがあるわけです。これは、日本の飛行機がアメリカに行くし、あるいはソ連に行くし、国際的にこの安全基準というのは了承された、国際的に通用する安全基準というのがあるわけです。国際的に安全性というのが確立されておる、こう言われているのがこの航空機の安全です。  しかし、日本の国に航空機を買うときには、日本の国は運輸省が耐空証明を出さなければ日本の航空機として飛ばすことはできないわけです。  今ちょっと技術部長のお話とか修理の状況を聞いていますと、その当時の修理の状況であっては破損の状況がわからなかった。あるいはさっきの法案の説明を聞いてまいりますと、三十五トンとかあるいは四発というのは合理性に欠ける、あるいは、技術の革新によってそういうのは必要ない、こうおっしゃるけれども、そう言う前に、私は、運輸行政全般にわたって最も必要なのはやはり安全だと思うのですよ。  そうなってくると、この安全性観点から、耐空証明を出すときに、あるいはこの法案の説明も我々もらっておるわけですけれども、この法案の説明、冒頭に、これは政府が出したこの法案の説明ですよ、改正の理由、ここには、局長、あんなことは書いてない。発動機数及び航空機の大きさにより一律に規制する方法が合理的でないと判断されること等から六十五条の改正を行うことにしたと書いてある。それから。既に上記機材の製造国から、航空法第六十五条の航空機関士に関する規定が非関税障壁となっているから、苦情があったから変えると、こう書いてある。  苦情とか、技術革新によって合理性に欠けるとかということじゃなくて、まず私は、これだけ事故を起こしたらば、運輸省がこの法案改正の中でも、安全ということはもう国民の中に浸透するように——なぜ私がこういうことを言うかというと、もっと資料があるんですよ。きょうはできなくて残念だから大臣にまとめて言っておきますけれども、これは日航運航本部が出した、なぜ三人パイロット制がよいかというのにはこういうことが書いてある。これは、この間日航機が迷走したけれども、それに該当する。ちょっと読みますよ。  自動化された機器の特性は、たった一つの間違った操作手順やデータのインプットで、数多くの間違った計器指示と共に異常な飛行をまねくことがあり、これに乗員が気がつかなければ、非常に危険な状態となりかねない。乗員も人間であり、能力に限界があること、状態によっては錯覚や誤操作もおこす可能性があることを前提に、安全施策が必要となるのである。  こうした観点から、装備に対するフェイルセイフと同じ考え方を乗員編成に対しても採用し、ヒューマンリダンダンシーとして第三の乗員もパイロットであることが、安全面で良策として3—PILOT制を採用したのである。こう書いてある。 しかも、   特にこの編成は、悪天候における運航やトラフィックの輻湊している空域で効果を発揮し、こうした姿が、将来のオールウェザーオペレイションにとって大切な要素となるのである。 これは何かというと、機械はだんだんコンパクトに合理化されてくるかもしれない、確かに超LSIというのが出てきて、どんどん計器はコンパクトになるかもしれない。しかし、乗っておる乗員の精神状態、コックピットの中の労働安全衛生法上の問題はどうなのか。  例えば、ニューヨークから東京までは十四時間コックピットの中で拘束されるのです。そういう人の安全性問題等も、きょう労働省を呼んでいるのですが、時間がないから大臣に聞いてもらいたいことがあるのです。精神的に、最近はテクノストレスといって非常にストレスがたまっているのです。ですから、あのようにメカニックばかり見ておったら、三人あるいは二人の、航空機関士がいるかいないかという問題よりも、あのコックピットの中の安全性が一体どうなんだ、労働安全衛生法上問題ないかどうか、あるいはまた今申し上げたように、検査も日航がやっています、運輸省がやっていますと言うんじゃなくて、第三者機関にきちっとした、公平な検査をゆだねて、断じて事故は起こさないような検査方法を第三者機関にゆだねるべきだと思う。これが二つ。  三番目は、耐空証明を出すについても、技術部長から、今のフェールセーフの上にさらに万全を期すという言葉があった。フェールセーフの上にさらにもう一つ万全を期すると言うんだったらば、日本の国として単なる関税障壁がどうのこうのとか言うんじゃなくて、日本の国の国民を乗せ、あるいは世界へ飛んでいく飛行機は日本の設計上の哲学からいって絶対に安全は軽視しません、そんなものと関税障壁とか合理化ということは全然違うと思うのです。やはり生命の安全の上から、耐空証明を出す際も安全は大丈夫だというしっかりした哲学を大臣に持ってもらわなければ、今私が申し上げた事柄に関して航空の安全あるいは海上、陸上の安全を所掌する大臣として、しっかりとした安全に対する方策を講じていただきたいと思う。この三つについて大臣の御答弁をいただいて、私の質問を終わります。
  134. 山下徳夫

    ○山下国務大臣 技術的な問題を兼ねての御質問で、私の答弁が御満足いくかどうかわかりませんが、要するに航空機というのは国際的な商品でございまして、しかも国際的に航行するということから、国際民間航空機関を通じてやはり一つ基準というものが国際化されていることは御承知のとおりであります。したがって、航空機のメーカーというものは、そういった一つの国際的な基準に合うような設計でもってつくるわけでございまして、したがってその設計に基づいてつくった飛行機というものは、そういう基準に合うかどうかというその証則をすることがまず一つ基本になっていると思うのでございます。  そこで、我が国におきまして外国から航空機を輸入する場合には、その飛行機の型式に関しまして、その安全性の審査について、外国航空当局が実施した試験あるいは審査の結果を踏まえてその設計審査を行うとともに、さらに個々の飛行機についても完成後の現状について飛行試験を行うなど、非常に厳しい検査を何回か繰り返しながら導入しているということは、そういう面について、安全性について十分配慮しているということになるんじゃなかろうかと思う次第でございます。
  135. 薮仲義彦

    薮仲委員 大臣、私の聞いたのは三つあるんですよ。これで終わりますけれども、いわゆる労働安全衛生法上コックピットの中を点検する必要がありませんか。あそこも労働者です。操縦士、副操縦士、セカンドオフィサー、この三人でいいのかどうか、あるいは二人で大丈夫なのかどうか、そういう労働安全衛生上の問題から見直していただきたいということが一つ。  それからもう一つは、整備、点検に関しては第三者機関をつくってしかと確立なさったらどうかという点、この点いかがですか。これで終わります。
  136. 山下徳夫

    ○山下国務大臣 第一点は私よく伺いましたけれども、これはそれぞれ組合等と十分話を詰めまして、基準をつくりまして、例えば八時間以上の場合はダブル機長制でいくとか、まあ労働安全と申しましょうか、そういう基準をつくってきちんとやっていると思いますが、第二点は技術的な問題だということでございますので、部長から答弁させます。
  137. 大島士郎

    ○大島政府委員 検査の独立の問題でございますが、現在、航空会社が日常定期飛行を飛ばしておるわけでございまして、私どもは日常の整備に万全を期することが運航の安全の基本であると思っております。検査の独立機関で、ある定期的、一年に一遍あるいは二年に一遍等の検査を行うだけでは安全運航は十分ではないという考えでございます。
  138. 薮仲義彦

    薮仲委員 はい、わかりました。どうもありがとうございました。
  139. 中島源太郎

    ○中島委員長 森本晃司君。
  140. 森本晃司

    ○森本委員 きょうは私は、今回の法案に関しまして、労働省それから厚生省にいろいろと質問をさしていただきたい、このように思うわけでございます。  最初に労働省の方から入らしていただきたいと思いますが、局長さんもこの後いろいろと大事な会議もあるようでございますので、私も質問を簡単にさしていただきますので、また簡単にお答えいただければ、このように思う次第でございます。  まず最初に、今回の労働省関係の法案改正は、作業環境測定法の一部改正というところでございますが、その一番に、労働大臣はその指定する者に作業環境測定士の登録の実施に関する事務を行わせることとする。行革の中で、今まで労働大臣がやっておられたのを、こうして簡潔にされるということ、これは私も何の異存もないところでございます。しかし今度は、労働大臣がその「指定する者」というところに責任をお任せになるわけでございますので、それだけに、その「指定する者」とはどういう目的を持っているのかということが非常に大事な点ではないかと思うのです。  そこで、その「指定する者」というのは社団法人日本作業環境測定協会だと思うわけでございますが、そのことについて、今までこの環境測定協会が指定講習機関であったわけでございますが、今回の改正指定登録機関としての登録業務を行われることになりました。これはどういった目的を持った法人なのか、お願いいたします。
  141. 小粥義朗

    ○小粥(義)政府委員 お答えいたします。  作業環境測定協会は、作業環境測定法に基づきまして、事業場における作業環境改善のための環境測定をやる、いわゆる測定士の問題あるいは測定機関の問題、さらに測定技術の向上の問題、そうしたことを推進していく団体として全国でただ一つつくる、こういう形でつくられておるものでございまして、五十四年に発足しているものでございます。
  142. 森本晃司

    ○森本委員 それで、測定士とそれぞれ測定機関があるわけでございますが、この協会の現在の会員数と測定士の人数とを比べますと、加わっておる会員の方が非常に少ないような私の調べた手元のデータでございます。五十九年度末で全国に環境測定士は一万二千七百三人、測定機関は五百四十九機関がある。その中で、測定士で会員になっておられるのが五百六十三人、わずか四・四%である。測定機関は三百四十二で、これまた六二%である。この協会に加わっていない方について今どのようにされているのか。私は、測定士の技術や地位向上をやっていかなければならない、このように思うわけでございますが、余りにも会員と非会員の人数が大きく変わっておるわけでございます。この点いかがでしょうか。
  143. 小粥義朗

    ○小粥(義)政府委員 日本作業環境測定協会の会員としましては、実は三種類ございます。一つは作業環境測定士、それから作業環境測定機関、それに自社測定事業場、要するにこれは、測定士を自分のところで雇用しまして、自分の事業場の作業環境を測定させる、この三種類がございます。  先生指摘のように、測定士でこの協会に加入しているものは五百数十名という非常に少ない数字で、測定士全体の数から見ますと極めて少ない率になっております。ただ一方、測定機関あるいは自社測定事業場もそれなりに測定士を抱えておりますので、それが会員として入っております分がどれくらいの数になるかちょっと正確にはわかりませんが、個人で加盟している測定士のほかに、そうした測定機関ないしは自社測定事業場の測定士もこの協会の関係者ということになるわけでございます。したがって、その面では先ほど御指摘の四・数%よりは高くなるのでございますが、いずれにしても御指摘のように率としてはまだまだ極めて低いものがございますので、まだ加入していない測定士の方にも現在測定協会がPRの活動をいろいろと広げております。測定士が一万二千数百人いるのでございますが、中には、測定士の試験は通ったけれども既に引退をされている方もおられますので、それらの方がどの程度おられるか、まだ正確に把握はできておりませんけれども、会員に限らずその他の非会員の測定士に対しても、協会としての目的である測定技術水準向上であるとかいったようなことは今後も積極的に進めていかなければならないというふうに考えております。
  144. 森本晃司

    ○森本委員 社団法人という性格から考えてみましても、本当にこの測定士の多くの方々のためになっていかなければならない性格のものではないかと思います。特にこの指定機関というのは日本で法的には今一つしか認められていません。会員、非会員を問わず、この測定士協会は大変な悪条件の環境の中で働く人たちの環境改善のためにいろいろ監視したりあるいは測定される人たちの立場ですから、同時にその人たちの地位が向上しなければ、悪環境で働く人たちの条件は変わってこない。それだけに、まだ協会ができて新しいようでございますけれども、働く人の立場から労働省としてはいろいろとこのモラル、地位向上のために、また技術革新のために協会の運用について、社団法人でしかも我が国一つだけしか認められていない機関でございますので、的確な運用をしていただくようにお願い申し上げたい。  と同時に、いろいろな補助金が国から出されております。五十六年度に九千八百五万円、約一億近い補助金が毎年出ておるわけでございます。これは何も環境測定士協会が使用するためだけのものではないということも私はわかりますが、中小企業共同作業環境管理事業補助金であるというふうに我々も説明も受けております。ただ、この補助金については、協会を通じなければいただけないように伺っているのですが、その点はいかがですか。
  145. 小粥義朗

    ○小粥(義)政府委員 今御指摘中小企業の作業環境測定助成事業でございますが、中小企業での作業環境改善にはやはりそれなりの経費がかかる。したがって、中小企業の場合、自力ではなかなかしにくいということから、そうした助成事業を実施しているわけでございます。その事業を日本作業環境測定協会に委託をしておりますので、結局測定協会の手を通じてそうした測定事業の助成費が流れていく、こういう仕組みになっているわけでございます。
  146. 森本晃司

    ○森本委員 この中の問題について一つずつ論議する時間もございませんのでこれだけにさせていただきますが、いずれにしましても一億近い補助金が協会を通じて支給される問題でもございますし、特に会員数と非会員数の人数の格差が大きいだけに、私は今後もよくよく労働省としての指導をお願いしたい。並びに、先ほど申し上げましたように、この環境測定士というのは非常に大事な立場でございますので、その地位向上に協会ともども労働省の方の今後の指導をお願いし、私の質問とさせていただきます。  局長、大変お忙しそうですから結構でございます。ありがとうございました。  続きまして、厚生省に質問をさせていただきます。きょうは生活衛生局長にお見えいただいておるようでございますので、私は公衆浴場法に関する問題について御質問をさせていただきたい、こう思うわけです。  私は、我が家にも家庭ぶろがございますが、元来公衆浴場に入るのが非常に好きなものでございまして、今でも時々公衆浴場へ行っては、そこに来られた人たちと、まさに庶民の人たちと私自身のコミュニケーションの場として入らせていただいておるわけでございます。また同時に、我が家のふろは大変狭いふろでございますので、公衆浴場へ参りますと湯水もたっぷり使えるし、気分も極めて爽快になり、非常によきストレス解消の場になっているわけです。しかも低料金でストレス解消ができ、時間は無制限でございますので、どれほど入っていてもいいというところでございます。それだけに公衆浴場の人で大変親しい人が何軒かあるわけでございますけれども、きょうは最初に、質問に入ります前に、私の手元に寄せてくださいました公衆浴場の経営者、これは全国の浴場組合の理事長さんでもなければ私の選挙区の理事長さんでもございません。そういった立場の人ではないけれども、本当に庶民とのコミュニケーションの場として、むしろ利害を超えて浴場を経営していかなければならないという使命感に燃えていらっしゃる浴場主が私のところに手紙を寄せてくださいました。最初にこの手紙を読ましていただきますので、それに対する所感をひとつお伺いしたい、このように思う次第でございます。   民衆の環境衛生を維持する上において公衆浴場の役割は、家庭ぶろが普及された今日とは申せ、その一方では核家族化が進み、少数家族あるいは独身世帯が目に見えて増加しつつありますが、それらの社会情勢を見ますとき、公衆浴場の使命は、それらの人たちのために事業の利害を超えて、ぜひとも存続しなければならない性格を持つものであります。ところが、我が奈良県の例を見ましても、過去十五年前に比べて百五十軒近い業者が現在では九十軒余り、特に近年の廃業が著しく、それはまた全国的にも同様の現象と見られてます。しかる中で、昭和五十七年四月「公衆浴場の確保のための特別措置に関する法律」が立法化されましたが、現実は地方公共団体に再三の陳情にもかかわらず、一部の地区を除き全く実りなき状態にあり、有名無実の存在に尊しきで、そればかりか、奈良県下におきましては、ほとんどの公共団体は六十歳以上の年齢を対象に公設浴場が設置され、無料または百円という低額料金にて公衆浴場業界を圧迫し、それに加えて、一部特定地域では法外な料金で公衆浴場が設置される等、もはや公共団体においては環境衛生上の、家族的に恵まれぬ人たちのためにある公衆浴場の必要性とその使命についての認識不足も甚だしきものあり、公衆浴場の救済に寄与されねばならぬはずの公共団体が、かえって逆に業者の足を引っ張るといった矛盾が浮き彫りされているのであります。その中で暗黒のうちにも一つの救いとして、奈良県では知事の御理解があって、一軒でも浴場業者を減らさぬよう借入金の利子補給、設備助成等の御援助により、ともすれば緊迫せる廃業への道を辛うじて食いとめているのが現状であります。しかし、それは直接経営の深刻さを緩和するに至るものではありません。私たちの切実に希望するものは、老人福祉等に事寄せて、少数家族、独身世帯者のために地方公共団体は公衆浴場の重要性を認識され、足を引っ張るといった弱者いじめを改善し、老人福祉と公衆浴場救済の両立、その具体的策を厚生省は地方公共団体に実施されるようお願いするものでございます。この手紙を寄せられました。  局長、この手紙をお聞きいただいて、これは現在の浴場の経営者のことをすべてまとめられておりますけれども、現在の公衆浴場の位置またその必要性についてどのような考えを持っておられるかお伺いしたいと思います。
  147. 北川定謙

    ○北川政府委員 先生指摘のように、公衆浴場というのはこういう日本の自然、気候、環境の中で国民の中に非常に定着をしてきておる、そういう習慣でございまして、単に習慣ということではなくて、医学的な観点からも身体の清潔を保つとか、あるいは循環をよくするとか、あるいは精神を爽快にするとか、健康保持の上で非常に重要な問題であると私どもは認識をしておりまして、厚生省といたしましても、今だんだん自家ぶろがふえてまいりまして公衆浴場の経営が非常に苦しくなってきておるという状況の中でいろいろな手だてを尽くしておるわけでございます。また後ほど御質問がありますれば詳細なことを申し上げますが、環境衛生金融公庫の融資等の措置をもって非常に有利なバックアップをしておるところでございますし、先生の今のお手紙の中にございました自治体によっていろいろな対応のところがあるやに承ったわけでございます。私どものところにある資料から見ましても、全国四十七の都道府県のうち四十の都道府県で公衆浴場に利子補給をするとか、さらにそれ以外のところで設備費の補助だとか、経営費の補助だとか、老人福祉、生活保護に関係するいろいろな入浴券の交付だとか、そういうようなことをいろいろやって公衆浴場の維持ということについては相当に努力をしておるのではないかというふうに考えておるところでございます。
  148. 森本晃司

    ○森本委員 厚生省も各省庁も相当努力はしていただいてはおりますけれども、まだまだ公衆浴場の持つ社会的な役割の重要性にかんがみて、歯どめをどう加えていくのかということが不十分ではないのだろうかと私は思うのです。  私は、このお手紙の方ときのう二時間ばかりいろいろな話をしてまいりましたけれども、その方は、私は単に浴場経営だけを守ってくれと言っているのではない、出稼ぎに来られた方あるいは一人でアパート住まいをしておられる方、そういった方々のために公衆浴場があるという社会的な立場から言っているんだと非常に切実に訴えておられました。同時に、あす質問に立つのであれば、一度偉い大臣先生にも聞いてもらえないだろうか、恐らくそういった声は大臣先生は御存じないし、大臣先生は最近公衆浴場へ入ってもらったことはないのじゃないだろうかというふうにその人は激怒しながら言っておりました。きょう、幸い後藤田総務庁長官にお見えいただいておりますが、恐らく最近公衆浴場へは余りお入りになったことはないのじゃないだろうか。入っていただければその社会的に持つ役割も非常によくおわかりいただける。  また、浴場の経営者の皆さんの大変な要望で、公衆浴場の確保のための特別措置に関する法律が五十七年に制定されました。「国又は地方公共団体は、公衆浴場について、その確保を図るため必要と認める場合には、所要の助成その他必要な措置を講ずるように努めるものとする。」こういう「助成等についての配慮」という項目が掲げられました。五十七年にせっかくつくった法律ではございますけれども、具体的にはほとんど運用されていないのではないだろうか。特に地方公共団体とのトラブルが今も絶えず起きているのではないだろうかと私は思うのです。  ことしの春、五月に私の奈良県のある町で一軒のおふろ屋さんが廃業されました。そのおふろ屋さんの町の周り、ちょうど北と南に福祉センターができたわけでございます。一生懸命自助努力されてきたけれども、もうこれ以上経営が成り立っていかないということで、とうとう廃業されたわけです。今私の手元に関西浴場新聞というのがございます。十月号の一番新しい浴場新聞の一面に「完全廃業四軒」、恐らくこの新聞を読まれている浴場組合の皆さん、あああのおふろ屋さんもまた廃業したのか、いつ自分の立場がそうなるかわからない、そういう思いでいっぱいだと私は思うのです。  時間がないから十分にできませんけれども、五十七年あるいはそれ以後、「老人福祉センター等と公衆浴場との競合問題調査票」というのが私の手元にある。これは公衆浴場とある地方公共団体との紛争がいろいろとあって解決したものです。この法律が出た五十七年でも、この紛争解決のための問題調査票は六件あるわけです。あと五十八年、五十九年、六十年、絶えずこういった問題がある。この問題調査票ができてそれで問題が解決したところはまだいいです、ここに挙がっているところは。しかし、問題が解決できずに廃業になっていったところは本当に数多くあるのじゃないだろうか。地方公共団体の老人福祉という問題については、これは大事な問題ではございますけれども、そういった問題をなくせと言っているわけではございませんけれども、これと浴場経営者の方々が両立できる方策を地方公共団体に指導されているかどうか、その点をお伺いします。
  149. 北川定謙

    ○北川政府委員 先生先ほど御指摘の公衆浴場の確保のための特別措置に関する法律、これが五十七年度から施行になっておるわけでございますが、その後、当時七・八%であった環境衛生金融公庫の貸付金利を六・五%に下げるというような措置をとりまして、公衆浴場の維持確保一つの方策としてこういう努力もしたところでございます。  また、老人福祉センターのおふろとの調整につきましては十分に配慮するようにという関係課長の通知を出しておるところでございますが、先ほど先生の御指摘のありましたような地域もあるようでございますので、今後さらに十分配慮してまいりたいと考えております。
  150. 森本晃司

    ○森本委員 そういった関係については、紛争が起きてからじゃなしに事前によく通達をし、福祉センターができるということはありがたいことだけれども、そこに行くには相当距離もかかるわけですね。そこが無料だから、我が奈良県ではバスに乗って行っておられるわけです。そのために一つの浴場がつぶれていくと、今度はその周りの六十歳に該当しない人たちが今度行き場がなくなってくるわけです。うどん屋さんの横に、四百円のうどんが百円で売れるような公営のうどん屋さんができたら、こっち側のうどん屋さんがつぶれていくのは間違いない。私は、公衆浴場だってそういう形になっていくと大変だというように思うのです。  また、これは私の奈良県のある地方でありますけれども、お年寄りの人が何もバスに乗っていかなくてもいいという形でお年寄りのためにやる方法として、おふる屋さんに週に二回入れるパスをつくり、六十以上の人がその曜日に気楽に行けるようにしてあるわけです。そのかわりに、その分だけ奉仕で頑張ってください、町村から補助金を出しますよというふうにいろいろ工夫をしている町村もある。そういった状況をもう一度よく掌握をされまして、本当にコミュニケーションの場としてのおふろ屋さんであるように、またそれが存続していくように今後も指導していってもらいたいと思うのです。  今非常に自助努力を一生懸命されております。この手紙のおふろ屋さんも、ふろの中にカラオケの場をつくりまして、そこで少しでも皆さんがコミュニケーションを図れるようにという意味で、おふる屋さんとしての自助努力を一生懸命されているわけです。そういった状況を考えまして、きょうは私の方がそのおふろ屋さんにかわって訴えることの方が多いわけでございますけれども、きょうは長官も聞いていただいておりますので、ひとつぜひ具体的な指導を地方公共団体にもしてもらいたい。今後のあり方について回答をいただきたいと思います。
  151. 北川定謙

    ○北川政府委員 自家ぶろがどうしても多くなるとか、あるいは先ほど先生指摘のように老人福祉センター、周辺の競合施設ができる等、いろいろな要因でどうしても公衆浴場の経営に対する圧力がふえていっているわけでございますが、厚生省としては、そういう財政上の措置をとっていくことももちろんでございますが、一方では浴場経営の多角化努力というようなことについてもいろいろと知恵を出していかなければいけないということで、モデル的にいろいろなことをやっておる地域を推奨していくとか、いろいろな施策を考えていく必要があると考えておるところでございます。先生指摘のように、地方自治体もそういうことについては十分認識を持っていると思いますが、私どももまた機会をとらえまして、新たにそういう点に対するいろいろな配慮を喚起してまいりたいというふうに考えております。
  152. 森本晃司

    ○森本委員 質問を終わります。
  153. 中島源太郎

    ○中島委員長 伊藤英成君。
  154. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 許可認可等民間活動に係る規制整理及び合理化に関する法律案について御質問いたします。  まず最初に、この規制緩和の進め方の問題についてでありますけれども、行革審の答申によりますと、「規制緩和の進め方」について「政府は、その具体的方策の検討に当たっては、必要に応じ、関係者の意見を聴きつつ、消費者、労働者、中小企業などに向けた対策を準備すべきである。」こういうふうに書いてあります。これは、行革審において労働側代表の強い意見によって追加挿入されたものであるというふうに聞いておりますが、この行革審答申の「関係者」ということについてどのように理解をされているか、総務庁にお伺いいたします。
  155. 山本貞雄

    ○山本(貞)政府委員 社会経済情勢の変化に応じまして不合理な規制が是正されます際に、場合によりまして、市場の一時的な混乱によりまして企業等にマイナスの影響の生ずる場合があるわけでございます。そのような場合に、政府といたしましてできるだけ対策等を講じまして、このマイナス面の影響を小さくするという必要があるわけでございます。したがいまして、行革審答申におきましては、御指摘のとおり、政府は必要に応じまして関係者の意見を聴取しつつ所要の対策を講ずる、このように指摘しておるわけでございますが、その場合の関係者と申しますのは、学識経験者あるいは消費者、労働者あるいは中小企業その他関係団体を指すわけでございます。その場合に、それぞれのケースに応じまして具体的に政府がどのような関係者の意見を聴取する必要があるか、これは場合、場合によりまして政府が適切に判断をすべきだ、こういうふうな趣旨でございます。
  156. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 今のお話ですと、政府がそのときどきに判断をして云々ということでありますけれども、実は私どもの方にその関係する労働組合の方から具体的に、いろいろそこに働く労働者に影響のあると思われる問題についてでありますけれども、事前に意見を聞くということもないということでの不満が寄せられているわけであります。そういう意味で、今後進めていく上において、その規制緩和を行うに当たって、特にそこに働く労働者に関係があるという場合にはぜひ関係労組の意見を聞くようにということを推し進めていただきたい、こういうふうに思うわけであります。改めて今後の進め方についての御意見をお伺いいたします。
  157. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 ただいま行革審の事務局からお答えをしましたように、規制緩和をやる場合に一時的に市場が混乱をするということも予測しておかなければなりません。これはやはりそれを防止する。あるいはまた、雇用問題その他にも大きな影響を及ぼす心配もあるわけでございます。したがって、そういうことを受けて、関係団体から十分な意見を聞くようにという御答申になっておりますが、政府といたしましても具体化に当たりましては、まず関係省庁で政府の案を決める際に、いろいろな団体から御意見を聞いておると私は承知しておるのです。その中には当然のことながら組合等の御意見も聞いておる、かように理解をいたしております。  ただいま御質問の中に、自分たちに全然関係なしにということがございましたけれども、私はそこは、今の世の中でございますから、雇用問題その他に影響があるときに関係省庁が意見を聞いていないということはないんじゃないか。そして同時に、積極的にこちらから意見があれば云々とこう言わなくても、実は組合からいろいろな御要望が出ておりますから、これらについては関係省庁で十分意見を聞いておると思います。しかし、御意見のような点があれば、私どもとしては、これは取りまとめ役は私のところの役割でございますから、十分注意をしまして、本当に影響のあるいろいろな方々から御意見を聞いた上で案を取りまとめるようにしたい、かように考えます。
  158. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 今の長官のお話で、ぜひ今後も今のような趣旨で進めていただきたい、こう思います。  次に、今回の規制緩和一括法案の評価の問題でありますけれども、この七月二十二日の行革審の答申において、「規制行政の在り方」の「基本的考え方」としてこういうふうに述べられております。「規制緩和は基本的には、競争原理の導入による経済活性化を目指した長期的な構造改善対策であり、本格的に取り組むことにより、経済成長に大きく寄与するものであるが、短期的にみてもその効果は少なくない。」こういうふうに述べられております。そして、九月二十四日の閣議決定の「当面の行政改革の具体化方策について」、この「規制行政」の中の「個別事項規制緩和」というものの中に多くの事項が掲げられております。  そこで、実は各省にそれぞれ御意見をお聞きしたいのですが、ちょっと時間の都合もありますので、今回の改正法律案の数の一番多いのは運輸省の関係でございますので、運輸省の方にお聞きしたいのですが、今触れました「競争原理の導入による経済活性化」だとか、あるいは経済成長に大きく寄与させるという観点から見たときに、今回の法律案、運輸省ですと八本当ておりますが、さっき申し上げたように、今回の趣旨からしてこの八本の法律案をどういうふうに評価するのだろうか。実は今回の規制緩和は、大々的に打ち出しておりますけれども、中身を見ますと、どちらかというと細かいものというか、効果がそんなに大きくないものじゃないのだろうか、こう私は思うわけなのでこういう質問の仕方をさせていただいたのですが、どういうふうに評価をするのか。  もう一点は、それに関連して残された問題というか、あるいは今後なすべき事項が多いと思われるのですが、それに対して今後どういうふうに取り組んでいこうと決意をされているか、この二点についてお伺いいたします。大臣、よろしくお願いします。
  159. 山下徳夫

    ○山下国務大臣 現在御審議いただいております規制緩和一括法案、これは時代変化とともに不要になったもの、不合理になったもの、あるいは過剰であるというようないろいろなそういう面を考慮しながら民間活動に対する制約を除去するという意味において、非常に大きな意味があると私は思っております。  そういう観点から、運輸省関係におきましても、その趣旨に沿って標準約款制度導入あるいは船舶検査についての民間検査機関の活用等、こういう問題をいろいろやっていくわけでございますが、これは運輸事業に携わる人あるいはまた利用者の利便の向上あるいは事業者の負担の軽減、こういう意味から、民活の導入という意味もあわせて非常に効果があるものと存じております。  先生冒頭におっしゃいましたように、運輸省が一番件数が多い。例えば、政府が持っておる一万近い許認可の中で二千二百近くが運輸省であるということでございますから、いち早く運輸省ではその審査する機関を省内に設けまして、一つ一つチェックをしてまいりました。しかし、その源泉にさかのぼってそれらの制定の趣旨を見てみると、やはり社会秩序の維持、特に交通関係から見たそういう秩序の維持、それぞれの意味があるわけでございまして、一挙にこれを何か胸のすくように全部たたき切るとかいろいろ改正するとかいうわけになかなかまいりません。しかし、一つ一つ丹念にチェックしながら少しでも民活の導入、これからの時代に合うような方向に持っていくことに努力してまいりたいと思っております。
  160. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 今、大臣が言われましたように、運輸省の関係の問題は実はこれからたくさんあるわけでありますね。そういう意味でも、今回そもそもの行革の目標というのが「活力ある福祉社会の建設」ということであり、そしてまた同時に、国際社会にどういうふうに貢献をしていくのかということを目標にしながら行革というのは推進されてきた、こういうふうに思うのです。そういう意味でも、今回提案されている問題はもちろんその一部でありまして、これからたくさんのことをやっていかなきゃならない。それも、急に処理をしていくのはいろいろ問題があるということも理解できますけれども、しかし可及的速やかにやっていかなきゃならないことも事実でありますし、そしてそれが国民生活の向上のためにもなり、また対外摩擦に対する対処ということにもなるわけなので、ぜひ積極的に推進をしていただきたいと思います。もちろん、先ほど申し上げたように、そこに働く労働者の問題につきましてもいろいろな摩擦は生じるかもしれない。それについてはまだ万全の策をとっていかなきゃならないことはもちろんでありますが、ぜひ積極的に推進をしていただきたい、このように思います。  それから次に、運輸省関係の問題でありますけれども、船舶安全法について質問をいたします。  この船舶安全法の改正案は、国の検査を船級協会に代行させる、あるいは船級協会の活用範囲を拡大させるということが内容でありますけれども、第二臨調の最終答申にこういうふうにあります。権威ある検査機関として「メーカーやユーザーに属さず、行政機関からも独立した第三者的な検査を実施する」機関の実現を図るというふうにしているわけでありますね。そして今回、この検査事項を移すというか活用範囲を拡大させるその対象の船級協会は、日本海事協会は、この臨調の答申で述べられたような性格のものとして当てはまるのだろうかということについてまずお伺いいたします。
  161. 間野忠

    ○間野政府委員 今先生おっしゃいましたように、船舶の検査の一部を日本海事協会に任せようという趣旨改正でございますけれども、日本海事協会は、英国のロイド船級協会あるいは米国のアメリカ船級協会と並びまして三大船級協会と言われているところでございまして、大体八十年に及ぶ船級検査の実績を有しております。したがいまして、その組織あるいは検査員の能力というものも十分でありまして、公正な第三者的機関ということで評価されておると考えております。したがいまして、従来でも船舶安全法のもとで船体、機関、そういった部分につきましては、海事協会の船級を有する間は国の検査に合格したものとみなすというふうな規定になっておりまして、今回そのみなしの部分をふやすわけでございますけれども、その部分についても十分な検査能力を有しておるというふうに考えております。
  162. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 今のお話は、先ほど私が申し上げた第三者機関として臨調が考えているのが、メーカーとかユーザーに属さずに、しかも行政機関からも独立した第三者的な検査機関というふうにしているわけでありますけれども、そして一方、この海事協会の役員構成等を見ると、船会社とか造船会社等が中心になっているわけですね。そういうふうに考えたときに、臨調の言う第三者機関と同じ性格を既に具備していると考えていいのでしょうか。
  163. 間野忠

    ○間野政府委員 日本海事協会と申しますのは、本来は、海上保険に関連いたしまして船体あるいは積み荷の価値を第三者的に決定する、そういう意味で造船所、船主あるいは損害保険会社あるいは国、いずれからも独立の第三者的機関ということをねらってつくったわけでございます。そういう意味で第三者的な公正な機関であると信じておりますけれども、その管理委員会等の構成につきましては、確かにおっしゃるように、それぞれの専門家という立場から造船所、船主の方それから損害保険会社の方、こういった方が参加されております。
  164. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 今局長言われましたとおりに、役員構成、理事会の構成にいたしましてもあるいは管理委員会にいたしましても、船会社とか、先ほど申し上げたように造船所だとかあるいは保険会社の人がほとんどを占めているわけですね。そういう意味では、臨調の言う第三者的な機関と言うにしてはやや問題ではないかという気がいたします。まずその点を申し上げておきたいと思います。  そして、今回の船舶安全法の改正の理由に、国が行う検査との重複を避けて、国民負担の軽減及び行政事務の簡素合理化を図るため、こういうふうになっておりますけれども、まず一つは、どういう検査が重複をしているのか、そして今回の改正によってその国民負担の軽減等どういう効果が具体的にあると考えられるのか、お伺いいたします。
  165. 間野忠

    ○間野政府委員 従来は日本海事協会が、船の船体ですとか機関あるいは電気設備、その船自体とその積み荷について非常に重要な関係があるものについて検査し、その部分について国の検査に合格したものとみなしてまいったわけでございますけれども、その後、船級協会の方も船級協会規則を若干広げるような方向にございまして、例えば、防火設備でありますとか消火設備でありますとか脱出設備でありますとか、それから船内でできた廃棄物を焼却するための設備ですとか、そういったものが船級協会の規則の中にも入ってまいりましたので、こういったものにつきまして今や国と船級協会と若干重複した検査になっておる可能性がございますので、こういった部分につきましては国の検査を省略して、船級協会で行った検査をもって国の検査に合格したものとみなそうという趣旨改正でございます。(伊藤(英)委員「効果は」と呼ぶ)どうも失礼いたしました。したがいまして、国が行います検査が従来よりかなり少なくなるわけでございますので、その分だけ検査の期間も短縮いたしますし、国の行政事務も簡素化されるわけでございます。そして船主さんにとりましても、検査に要する時間が非常に短縮されるというような意味で負担の軽減になるというふうに考えております。
  166. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 そういたしますと、今回の措置によって船級協会に移行しないというか、今回の措置によって船級協会の活用範囲が拡大するとしても、なお国の方で今後も責任を持って検査する項目というのは具体的にどういうことになりますか。
  167. 間野忠

    ○間野政府委員 今後国が直接検査をやっていく部分でございますけれども、先ほど申し上げましたように、船級協会の検査が本来損害保険という見地から出てまいっておりますので、船体、積み荷の安全に関する部分から発生しておりまして、人命の安全とか衛生に直接関係する部分については船級協会の規則がまだできていないような状態でございますので、救命設備、居住設備、衛生設備、そういった船員の人命の安全に直接結びつく事項については国が検査をやってまいりたいというふうに考えております。
  168. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 今言われました人命に関する部分については、特に救命設備あるいは居住設備、衛生設備と言われましたけれども、ぜひ今後もよろしくお願いをしたいと思います。  それから、今もちょっと局長も触れられましたけれども、実は船級協会の検査というのは、あくまでも船舶の保険価値を評価する観点からつくられたものであるわけですね。それは船舶のいわゆる堪航性及び人命の安全確保観点から行う国の検査とはやはりその目的は異なるのだろう、こう思うのです。そういう意味で今回のこの法改正は、検査民間移行が国会のチェックを受けることなく省令の改正によってゆだねられるということにもなり、公正な検査の維持についてはやはり懸念が残るわけであります。そういう意味からしても、これは最初に総務庁長官にもお願いしたことでありますが、運輸省の方にもぜひお願いしたいのは、この問題だけではなくて、規制緩和の実施に当たっては、特にそこに働く者の雇用の問題あるいは安全の問題あるいは衛生の問題、職場の環境等に関係する問題については十分に関係組合等の意見も聞きながら慎重に行っていただきたい、こういうふうに思います。最後の点についてはいかがですか。
  169. 間野忠

    ○間野政府委員 今先生おっしゃいましたように、安全に関する部分につきましては海員組合等に影響する部分が非常に多うございますので、従来から、安全保護関係の規則を改正したりする場合には海員組合の御意見をできるだけ伺ってやっておりますし、今後もそういうふうにしてまいりたいと思っております。
  170. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 突然でありますけれども、運輸大臣にもお願いしたいのですが、運輸省関係のものは先ほどのお話のとおりにたくさんのことがこれからも考えられるわけなので、特に働く者に関係する部分については組合の意見等を十分に聞きながら進めていただきたいと思いますが、一言。
  171. 山下徳夫

    ○山下国務大臣 率直に申し上げまして、労使協調というこの時代に、働く方々の意向を無視してこういった改革ができるわけはございません。その点を十分考慮しながら進めてまいりたいと思います。     〔中島委員長退席、保岡委員長着席〕
  172. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 ありがとうございました。ぜひよろしくお願いいたします。  次に、建設省の関係の地代家賃統制令の廃止の問題につきまして、何点か質問をさせていただきます。  まず最初に、地代家賃統制令の廃止を規制緩和一括法案に盛り込んで提案してきた理由についてお伺いいたします。
  173. 木部佳昭

    ○木部国務大臣 今回の一括法案につきましては、行革審の答申を受け、公的規制にかかわる事項でございますし、同時にまた時代変化、そういうようなものが非常に大きく変わっておるときでございますので、そうした点で、これを言えば合理的に、不合理な面もありますから、廃止してまいりたいというふうな判断で提案お願いしたわけでございます。
  174. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 この問題は、今後の対策いかんによりましてはいろいろ大きな問題が出るのではないか、こう危惧するわけであります。その意味で、まず統制対象となっている住宅の現状でありますが、その統制対象住宅の借家それから借地上の持ち家の老朽度についてお伺いをいたします。それぞれ現在どのような状況になっているか、また、それぞれ対象外住宅と比べた際にどのような違いが出ているのかについてお伺いいたします。
  175. 渡辺尚

    ○渡辺(尚)政府委員 統制対象住宅は、昭和二十五年七月十日以前に建築されたものということになっておりまして、既に建築後三十五年以上を経過しているわけでございます。法定耐用年数も経過しておるわけでございます。お尋ねの点でございますけれども昭和五十八年の住宅統計調査の結果によりまして老朽度合いを見てみますと、統制対象の民営借家、これは九十万戸ございますけれども、危険または修理不能、それと大修理を要するといったものの戸数は合わせて二十七万戸、割合にして二九%を占めております。一方、これに対応するという意味で、面積が九十九平方メートル以下の民営借家一般、これは約八百二十六万戸ございますけれども、同様のものは七十五万二千戸ということで、割合にして九・一%、約三分の一ということでございます。  それから、統制対象の借地上の持ち家でございますが、先ほどと同様の分類をいたしますと、全部で三十四万戸あるわけでございますけれども、そのうち七万四千戸、割合にいたしまして二一・五%ということになっております。やはり借地上の持ち家一般でございますが、これも対比の関係から九十九平方メートル以下のものをとってみますと、全体で百五十九万戸ございますけれども、同じような老朽度のものが十五万九千戸、割合では一〇%ということでございまして、この分では二倍強というような状況になっております。  それからさらに、経年的にちょっと申し上げてみますと、五十三年と五十八年を比較いたしまして先ほどのような分類でいたしますと、五十三年に一〇・八%ございましたものが先ほど申しましたように五十八年には二九%と約三倍にふえておる。それから統制対象借地上の持ち家につきましても、やはり八・一%から二一・五%と約三倍にふえているといったように、老朽化が著しくひどいということが言えると思います。
  176. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 それから、この統制対象住宅の地代家賃それぞれの遵守状況はどういうふうになっておりますか。また、それが守られていない状況があるとすると、地代家賃それぞれどの程度の水準になっておりますか。
  177. 渡辺尚

    ○渡辺(尚)政府委員 先ほど申しましたように、対象が限定されておるわけでございますし、かつ老朽があるわけでございますが、そういう滅失によりまして減少の一途をたどっておるわけでございまして、現在は全借家の七%ということになっておるわけでございます。これに加えまして、今御質問の点でございますけれども社会経済情勢の変化もありまして、地代家賃が統制の限度内にあるものが非常に減少してきております。  建設省が五十九年度に実施いたしました実態調査、これは東京、大阪、京都でございますけれども、これによりますと、統制対象の賃料で統制額以下となるものの比率は、借地につきましては二割程度、借家につきましては、地域によって差がございますけれども一割から二割程度といった状況でございます。そういったような状況もありまして、実際の支払い賃料というのは統制賃料を相当上回っておりまして、いわば市場賃料化しているというものも多いわけでございます。  先ほど申し上げました調査によりますと、三つの都市の平均でございますけれども、地代につきましては、平均統制額が平方メートル当たり七十円であるのに対し、実際の支払い地代の平均は百円程度ということで、統制外地代の平均地代百三十円の約八割になっているというのが実情でございます。それから家賃につきまして、同様に統制対象住宅の平均統制額が平方メートル当たり二百八十円というのに対しまして、実際支払い家賃の平均は四百六十円と、市場家賃の八割程度に達しているということが見込まれております。
  178. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 そこの居住者への対策についてお伺いをしたいのですが、ちょっと時間が余りありませんので私の方からデータも含めて申し上げたいのですが、今統制令対象借家の老朽度だとかあるいは家賃などの実情についてはお伺いいたしましたけれども、そこに住んでいる人の状況を見ると、例えば年齢別に見てみますと、私が見たのは五十八年度の総務庁の統計でありますが、それで見ますと、六十歳以上の方が住んでいるのが統制対象民営借家の場合に約三割を占めているわけですね。そしてこの範囲を広げて五十歳以上までといたしますと、統制対象民営借家の約五割を占めるということになります。こういうふうに、高齢者が非常に多く住んでいるということが言える。  そしてまた、今度は居住者の収入別に見てみますと、百万円以下の方が統制対象借家の約二三%を占めております。そしてまたちょっと金額を二百万円まで広げまして二百万円以下というふうにいたしますと、これまたやはり五割を占めることになります。すなわち、今申し上げたように、この統制対象民営借家の五割以上は収入が二百万円以下ということになるわけですね。そういうふうに見てみますと、この居住者への対策がどれだけ十分にされるかということはやはりこの法案の非常に重大な問題であると思うのです。  そういう意味で具体的な対策をちょっとお伺いしたいのですが、この統制令を廃止した場合にその地代とか家賃が急激に上がっていくことが考えられるわけですが、この高騰防止策をどういうふうに考えているのか。そしてまた同時に、この統制令を廃止したときには、居住者と家主とのいろいろなトラブルも発生するかもしれない。そういう意味で、そのトラブル防止策についてどのように考えておられるのかをお伺いします。
  179. 渡辺尚

    ○渡辺(尚)政府委員 ただいまの御質問にお答えす前に、先ほど私ちょっと借家につきまして、地域による差があるが一割ないし二割程度と申し上げたかと思いますが、これは一割ないし三割程度の間違いでございましたので、御訂正申し上げたいと思います。  地代家賃の高騰防止策の問題でございますが、まず前提条件といたしまして廃止の影響でございますけれども、先ほど申し上げましたように非常に限定されているということで、住宅総数全体に占めます割合は三%であるということ、それからやはり先ほど申しましたように、実際の支払い賃料が統制額以下となっているものは借地で二割程度、借家で一割ないし三割程度というふうになっていること、それから統制令が廃止された場合でも当事者の借地法あるいは借家法上の地位には何ら変更がないということ、それから先ほども指摘がございましたように、老朽度が非常に著しいというようなことから申し上げまして、直ちに著しく高騰するというようなことはないのではないだろうか、比較的影響は少ないものと考えております。  しかし、やはり先生指摘のように、この廃止に伴いまして便乗値上げでありますとかいろいろトラブルというものが当然考えられるわけで、そういうことで万全を期する意味で、まず国及び地方公共団体が広報等によりまして関係当事者に正確な情報を流すということを徹底いたしたいと思います。それから便乗値上げを防止いたしますために、借家の経営者団体あるいは仲介業者団体、これに対しまして十分な指導をいたしたいと思います。それからさらに無用なトラブルの発生でありますとか生活にお困りのような場合があるかと思います。したがいまして、そういうことにつきまして、法律相談でありますとか生活相談でありますとか、そういうものを含めた住宅相談体制、この整備を充実いたしたいというふうに考えております。
  180. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 今はそこに住んでいる人の家賃等についてお伺いしましたけれども、次に、現在住んでいる人が他の住宅へ転居を希望する場合もあると思うのですが、そういうときのあっせん等は行うのかどうか、あるいはその場合に、現行制度で公営住宅や公社公団賃貸住宅へ優先入居をすることができるようになるのか、あるいは現在住んでいるところの近隣に適切な住宅を確保することができるんだろうかというようなことについてお伺いいたします。
  181. 渡辺尚

    ○渡辺(尚)政府委員 三点のお尋ねかと思います。  一般的には、先ほど申しましたような広報体制あるいは相談体制をしくことによって万全を期したいと思っておりますが、万が一、先ほど先生がお示しになりましたように、統制令の撤廃に関連して他への転居を希望され、あるいはそれがやむを得ない、かつ公営住宅の入居資格というのがございますので、それを有しておられる方につきましては、現在、公営住宅には特定目的公営住宅制度というのがございまして、そこに優先入居することができる制度がございます。したがいまして、この家賃統制令の撤廃に関連いたしまして、通達をもちましてその措置をするようにこれをやっていきたい。それから、必要に応じまして、募集枠の拡大でありますとか、これは多少時間がかかると思いますが、建設の促進を図るようにやはり通達によって措置をしてまいりたいというふうに考えております。  それから、その場合は公営住宅の収入基準というものがございます。したがいまして、それに合致される方が対象になるわけでございますけれども、それを超えた場合はどうするのかという問題が残ります。そういう方々につきましては、公団や公社の住宅につきましてもやはり優先入居制度というのがございますので、こういったものを活用いたしまして、ちょうど現在公営住宅の収入超過者につきまして優先入居を受け入れております、その例に準じまして、優先的に入居するように通達をいたしたいというふうに考えております。  それから、転居するということが、いわゆる今入っておられる住宅の撤去、不良住宅であるということで撤去するというような場合につきましては、これは公営住宅でございますと特定入居制度というのがございます。これはそのまま入れるということでございますけれども、そういった制度を活用するように、これも通達で手当でいたしたいと思います。  さらに、ちょっと質問と外れますが、そこにいて生活をしたいんだけれども家賃との差ができてきた、こういう方々については生活保護部局との連携を十分にして生活扶助でやりたいというのが第一の御質問かと思います。  それから第二の御質問で、現行制度でできるのかというお話でございますが、これは先ほど述べましたように、現在幾つかある制度につきまして、その運用でできることになりますので、通達によりまして措置をしたいというふうに考えております。  それから三つ目の御質問だったと思いますが、近隣に適切な住宅が手当てできるのかという問題でございます。これはなかなか難しい御質問でございますが、しかし、入居者の希望をできるだけ満たすということで、できるだけ近いところの既存住宅の空き家を考えて、それの募集を中心に優先入居等の措置を講ずることができるのではないかというふうに考えておるわけでございまして、そういう方向で公共団体を指導したいと思っております。  ただ、ざっくばらんに申し上げまして、統制対象住宅というのは都市の中心部など比較的いい場所にある場合が多いわけでございまして、一方公営住宅等でこのような立地のものはかなり限られているということもございます。したがいまして、すべて近隣に適切な住宅が確保できるかという点につきましてはなかなか難しい問題もあるかというふうに考えております。
  182. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 今局長からいろいろ説明していただきましたけれども、やはり一番この法律案の心配なところは住んでいる人に対する対策だと思うのですね。そういう意味で大臣にちょっとお伺いいたしますが、今局長が述べられたことに関連するわけですが、今後万全の措置をとる上での大臣の決意を一言お願いします。
  183. 木部佳昭

    ○木部国務大臣 先ほど来先生から御指摘いただきましたように、私どもは、弱い立場の方々、また高齢者の方も相当いらっしゃいますし、それから母子世帯であるとかそういう方もおいでになられます。そういう意味で、こういうときにはやはり皆さん方に心配や不安を与えない、これがもう大きな前提になると思うのです。先ほど局長もいろいろな点を考えて、また具体的にこれを実行するために答弁をさせていただきましたが、私どもそれ以上に、考えられるすべての英知を結集して皆さん方に不安や心配のないように、そしてまた親身になって相談に応じたり、最善の努力を尽くすことが一番大事だ、こういうふうに認識をいたしておりますので、全力を挙げて努力をさせていただきます。
  184. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 今のはぜひよろしくお願いいたします。  それからさらに、この法案についてでありますけれども、建てかえの問題であります。この統制令の廃止は民間活力の発揮をさせること、あるいはそれを推進するための規制緩和の一環としても考えられているわけでありますけれども、では、この統制令の廃止によってどの程度民間活力の発揮というか建てかえが進むのか、どういうふうに見ておられますか。
  185. 渡辺尚

    ○渡辺(尚)政府委員 先ほど申し上げましたように、統制令はいろいろな状況から総合的に判断して、現在では統制の必要性が失われているということでこれを廃止するということにしたわけでございます。  それで、御質問の建てかえについてどうかという点でございますが、先ほどからいろいろ申し上げております点、それと賃貸借契約がかなり長期にわたっておられるという実態があるということ、それから先ほど申しましたけれども、借地借家法上の地位には何ら変化がないというようなこと、そういうことから見ますと、先ほど申し上げましたようなことも総合いたしまして、廃止後直ちに建てかえが行われることはないというふうに考えられます。しかしながら、先ほど先生からもありましたが、統制対象住宅は耐用年数も経過しておりまして十分な維持修繕も行われていない、老朽化が進行しているということもございまして、基本的な方向といたしましては、中長期的にはやはり建てかえが進んで居住水準の向上が行われるというふうに考えておるわけでございます。  そこで建設省といたしましては、統制対象住宅の適正な維持管理が図られていくことを期待すると同時に、居住水準の向上でありますとか良好な市街地住宅の供給を図っていくために、こういった統制対象住宅を含めました老朽住宅の建てかえを円滑にするためのいろいろな制度を実施しておりますし、新しくいろいろ要求もしているわけでございまして、そういうものを総合的に駆使しながら長期的に対応していくべきではないだろうかと考えております。
  186. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 今いろいろ対策も考えられているという話をされましたけれども、実際にはまた今回の措置によって散発的に退去者が出ていくとかいうようなこともあるかもしれませんし、そういうふうに考えるとますます建てかえを早く実施しなければいけないというようなこともあると思うのです。そういう意味で、今若干触れられました建てかえを行うときの対策、それを促進するための策をどういうふうに考えておられるのかお願いします。
  187. 渡辺尚

    ○渡辺(尚)政府委員 統制対象住宅につきましては先ほどからいろいろ申し上げているような特性がございます。そういうことで、建てかえそのものについてはいろいろな問題があると思います。例えば、もう既に経営者の方も高齢化されておって、建てかえをするという積極的な経営意欲に欠ける傾向が強いというようなこと、あるいは資金力の問題、それから先ほどもございましたが、入居者側を見ましても高齢者あるいは低所得者がいる、したがって建てかえた際の負担能力の問題がある、それからまた立地的に道路の幅員なども狭小であるとか敷地が狭いとか、それから建物の物理的な面でもいろいろな隘路があるところでございます。  そこで、建設省といたしましては、住宅金融公庫の土地担保住宅制度、あるいは住宅・都市整備公団の民営賃貸用特定分譲住宅制度、さらには特定賃貸住宅建設融資利子補給制度といった融資制度の改善あるいは活用を図る、そのほかに木造賃貸住宅地区総合整備事業といった再開発手法等を活用いたしまして、統制対象住宅を含めた老朽住宅の建てかえを促進していきたいと考えております。ただ、その際、先ほどの繰り返しになりますので恐縮でございますけれども、不良住宅の撤去が行われる場合には公営住宅の特定入居あるいは公団公社住宅への優先入居といった制度を活用するなどして、入居者の対策も十分考慮しながら進めてまいりたいと考えております。
  188. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 次の問題に移りますけれども、線引きの見直しについてお伺いいたします。  九月二十四日の閣議決定、先ほども申し上げました「当面の行政改革の具体化方策について」、この「規制行政」の中の「個別事項規制緩和」を分野別に見たところに「都市整備」というのがありますが、その中に「計画的な開発促進のための都市計画の見直し等」として「線引きの見直し」について述べております。この問題についてお伺いします。  まず最初に、第二回線引き見直しの進捗状況がどうなっているのか、そしてまた、実施スケジュールにおいて昭和六十年中に早期完了について通達で指導するというふうにありますけれども、通達は出したのか、あるいはその通達の内容はどうなっているのかについてお伺いいたします。
  189. 牧野徹

    ○牧野政府委員 線引きの第二回の見直しでございますが、五十七年九月に出しました通達に基づきまして現在鋭意各都道府県で行われております。  まず、数字的に申し上げますと、見直し完了の告示の県数は二十五県でございます。それから見直しを完了した都市計画区域の数は百五十でございます。その結果、見直し前に市街化区域はその百五十区域につきまして六十三万四千ヘクタールございましたが、これは実は三万七千ヘクタールふえまして、逆線引きで三千ヘクタール減る、差し引き三万四千ヘクタールふえまして、見直し後は六十六万八千ヘクタールになっております。  それから、ただいまお話のございました早期完了についての通達でございますが、現在他の項目もございますのであわせて検討中でございまして、まだ通達そのものは出しておりません。ただ閣議決定後に、たまたま十月に全国の都市計画主管課長会議がございましたので、その席上で早期完了するようにという方針については口頭で指示をしてございます。
  190. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 市街化調整区域における開発許可の規模の要件の引き下げの状況、それから引き下げ未実施地方公共団体の未実施となっている理由はどういうところにあるのか、そしてまた建設省としてはその理由についてどういうふうに考えるのかお伺いいたします。
  191. 清水達雄

    清水(達)政府委員 市街化調整区域における計画開発の規模要件の引き下げにつきましては、現在まで四十二の道府県、市において実施いたしておりまして、十五が未実施ということになっております。  未実施の主たる理由でございますけれども、人口抑制とか緑地保全とかいうことで、もう余り開発をさせたくないというのもございます。また、市街化区域内に未利用地が残っているというふうなことで末実施のところもございますが、地域とか開発の種類などに限ってやろうということで現在検討中というのがございまして、こういうのは近々実施されるのではないかというふうに考えております。  建設省といたしましては、良質で低廉な宅地に対する国民のニーズにこたえるために、また地域の実情に応じた円滑な都市整備を推進するために、このような市街化調整区域における計画開発を促進する観点からなお一層指導してまいりたいというように考えております。
  192. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 この線引き制度についてでありますけれども、一部の地方都市においては線引き制度そのものを見直すべきではないだろうかという意見が出されたりしていると理解をしておりますが、それは、実際にはいわゆる開発許可制度とどういうふうに組み合わせるかとかいうことになるのだろうと思います。今申し上げたような線引き制度の見直しの必要性についての意見についてどのように考えられますか。
  193. 牧野徹

    ○牧野政府委員 先生も御案内のように、いわゆる線引き制度は、良好な市街地を形成するあるいは宅地供給を促進するという意味で、四十三年の新都市計画法で設立された制度でございます。実際に線を引きましたのは四十五年からでございますから、十五年間の実績がございます。私どもは、総じて言えば大いに効果があった制度だと思っております。ただ、個々のところについて見ますと、ただいまお話にもございましたように、きめ細かくその実情に対応し切れているかといえば必ずしもそうとばかりも言えないという点もございますので、線引き制度の運用そのものあるいはそれと裏腹の関係にある開発許可、それぞれにつきまして通達等で運用の改善を図っておるところでございます。ということで、私どもとしてはやはりこの制度の根幹は維持しつつも、具体の運用に当たっては弾力的な対応をしていくということで対処してまいりたいというふうに考えております。
  194. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 最後に大蔵省にお伺いしたいのですが、今大蔵省の関係も自由化の問題等いろいろあるわけでありますが、一点のみお伺いいたします。  御承知のとおりに、国際通貨改革の問題で最近その論議が非常に高まっているわけでありますが、要するにそれは、これから例えば固定相場制に復帰すべきではないのだろうかという話が出たり、目標相場圏構想、これは中曽根総理も関心を示していると新聞などには報道されたりしておりますが、そういう問題も出たり、あるいは国際通貨の安定化勘定を創設して、言うならばアメリカ、日本、ドイツ等が協調して為替相場を安定させるというような新通貨構想が出たりしているわけでありますけれども、これからのこうした問題についての考え方を大蔵省にお伺いいたします。
  195. 橋本貞夫

    ○橋本説明員 お答えいたします。  変動相場制に移行しまして約十二年経過したわけでございますが、変動相場制というのは、石油危機等の外的なショックを吸収して経済の均衡を回復す局上で有用な役割を果たしてきたとは思います。ただ、変動相場制のもとにおきましても、為替相場が短期的に不安定であるとか、経常収支を均衡させる水準から大幅な乖離が見られるとか、そのような欠点に近い状態が貿易や資本取引の安定を損なっておるという不満も少なくございません。  そこで、御指摘のような国際通貨制度をめぐるいろいろな提案が出ておるわけでございますが、基本的には本年の六月に行われました十カ国蔵相会議におきまして、その十カ国蔵相代理によって、二年間にわたって一層の安定を図るための現実的かつ漸進的な改善策と私どもは呼んでおりますが、その取りまとめが行われております。これは基本的には、各国のコンセンサスの一致したところでは、昔のような固定相場制に戻るのは現実的には難しいであろう、またターゲットゾーン構想、いわゆる目標相場圏構想と呼ばれておりますけれども、その採用につきましても、我が国を含む過半数の諸国は現状では現実的でない、そういうふうな方向を出しておりまして、基本的には、現在の変動相場制の中での運営の一層の改善を図ることにより今後対処していこうというものでございました。  この十カ国蔵相会議の提案について、先般ソウルにおきまして行われましたIMFの暫定委員会で発展途上国も交えまして予備的な検討が行われ、今後来年の暫定委員会で本格的な討議を行うというふうな予定になっております。したがいまして、我が国としましては十カ国蔵相会議の結論と提案を支持して、その着実な実施が図れるようにこのような討議に積極的に参加していきたい、こういうふうに思っておるところでございます。
  196. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 質問を終わります。
  197. 保岡興治

    ○保岡委員長 辻第一君。
  198. 辻第一

    ○辻(第)委員 私は、運輸事業の中のトラック事業について質問をいたします。  九月二十四日「当面の行政改革の具体化方策について」という閣議決定規制緩和の推進が行われ、今国会にはいわゆる規制緩和一括法案などの改正として提出をされているわけでありますが、運輸事業の中のトラック事業では省令、告示、通達など二十一項目が改正をされるということになっています。  さてお尋ねをしたいのは、トラック運送事業の実態についてであります。ごく最近出ました六十年度の運輸白書、その中では「トラック輸送は我が国国内貨物輸送の大宗を占めているが、約三万六千に上るトラック運送事業者は、そのほとんどが経営基盤の脆弱な中小企業であり、全体の約四分の一が赤字となっている。また、トラック輸送においては、過積載、過労運転、違法白トラ、運賃ダンピング等が発生し、いわゆる輸送秩序の乱れの問題が生じている。」このように記されております。昨年の十一月の運輸白書にも大体同じように書いているのですね。「トラック輸送は我が国国内貨物輸送の大宗を占めているが、約三万五千に上るトラック運送事業者はそのほとんどが経営基盤の脆弱な中小企業であり、荷主に対し取引上弱い立場に置かれることが多い。このため、運賃ダンピング、過積載、過労運転、違法自トラ等のいわゆる輸送秩序の乱れが生じ、問題となっている。」このように記されていると思うのですが、運輸省、そのとおりですね。
  199. 武石章

    ○武石政府委員 先生指摘のとおり、運輸白書にはそのような記載がされておると承知しております。
  200. 辻第一

    ○辻(第)委員 それでは、総務庁長官にお越しいただいていますのでお尋ねをいたすわけでありますが、今運輸白書に示されたような運輸省の認識、これと同じような認識を総務庁長官もお持ちだと思うのですが、いかがですか。
  201. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 確かに総輸送量の三分の一ぐらいをトラック輸送に依存しているわけですね。それだけに国民生活あるいは産業活動に大きな影響がある、これは事実でしょう。そして同時に、今御指摘のように業者の中には大変小さな業者もたくさんある。こういったようなことで、今日までいろいろな規制がかかっておったと私は思いますね。その規制は、一方においては業者の保護にもなっておるだろうし、一方においては輸送秩序云々の問題にもなっておったと思います。しかしながら、今日余りにもそれのみで、実際はニーズに適合してない面もたくさん出てきておるのじゃないか。ならばやはり最近の交通の実態に即しつつ、今言ったような点も十分配慮しながら、行き過ぎた規制であるとか行き過ぎた排除であるとかあるいは不合理であるとかといったところはそれなりに緩和をして、全体として調和のとれた輸送秩序をつくり上げていくことが肝心なのではなかろうか、私はかように考えているわけでございます。
  202. 辻第一

    ○辻(第)委員 端的に言いまして、輸送秩序が乱れておるという実態だと思うのですが、その点だけについて言えばどうですか。
  203. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 確かに輸送秩序が今のままでいいとは私は考えておりません。これはいろいろな面から配慮して直すべきところがあれば直さなきゃならぬだろう、かように考えております。
  204. 辻第一

    ○辻(第)委員 実態としては、大変な輸送秩序の乱れがあるというのが実態だと思うのですね。  次に、公正取引委員会にお尋ねをいたします。お越しをいただいていますか。  今月八日、貨物自動車運送事業者の運送取引に関する実態調査を行うことを全日本トラック協会あてに出されておりますね。公取がこの調査に乗り出された理由といいましょうか、なぜこの調査に乗り出されたのか、お尋ねいたします。
  205. 利部脩二

    ○利部政府委員 お答えいたします。  貨物運送業につきましては、荷主と運送業者、あるいは強い力を持っている運送業者とそれから仕事を引き受ける取引上やや弱い立場にある運送業者との間の取引の条件が、強い立場にあるものの経済的な力で優越した取引条件になって、一方に不利益になっているのではないかということが、関係企業などからの訴えもございましたし、その他国会の他の委員会等でも御指摘がありました。そういうことにつきまして、当公正取引委員会といたしましては、独占禁止法の優越的地位乱用の規制観点から実態を把握してみたいということで、調査を開始したわけでございます。
  206. 辻第一

    ○辻(第)委員 それでは、公正取引委員会にもう少しお尋ねをするわけでありますが、先ほどの運輸白書に見られますようなトラック輸送の実態の認識ですね、その点については同じように認識をされているのではないかと思うのですが、簡単にお答えをいただけたらと思います。
  207. 利部脩二

    ○利部政府委員 実態について、同様の認識を持っております。
  208. 辻第一

    ○辻(第)委員 もう一点お尋ねをしたいわけですが、お尋ねというか要望といいましょうか、下請代金支払遅延等防止法にトラック運送事業も対象業種として加えるべきだ、私どもこのように考えているのですが、いかがでございますか。
  209. 利部脩二

    ○利部政府委員 貨物運送業の御指摘の問題が現在の下請法の規制と同様の性格を持つ問題を含んでいるということは承知しておりますが、現在の調査は下請法の改正ということを意識しての調査ではございません。まず実態を把握いたしまして、独占禁止法の優越的地位乱用の規制を図ろうという観点から調査をしてみたいということでございます。
  210. 辻第一

    ○辻(第)委員 ちょっと答弁が違ったみたいな感じがするのですが、下請代金支払遅延等防止法にぜひトラック運送事業も対象事業として加えていただくように努力をいただきたい、重ねて要望しておきます。  今お尋ねをいたしました中で、運輸省も総務庁も公正取引委員会もトラック事業者の実態、運賃ダンピングだとか過積載だとか過労運転、違法白トラの横行ですか、このような輸送秩序の乱れがあるということをお認めになったというふうに思うわけであります。さらに補足するのであれば、低成長下で荷物だとかが減る、それは輸送量が減るということですね。そして原価を償えない運賃が押しつけられる、ダンピングをやる。そのことはまた、労働者の労働条件の悪化でありますとか、長時間労働であるとか、あるいは賃金の引き下げ、またダンピングに関係があるわけですが下請、これが子請、孫請というような重層的になっている状態だとか、あるいは名義貸しの問題、物流予会社の横暴の問題、こういうようなものがあるわけですね。そして欠損企業がふえておる、深刻な事態が続いているということだと思うのです。  私もトラックの労働者、労働組合の方、また中小の経営者の方に何人がお会いをいたしましていろいろお話を聞かしていただいた、あるいは向こうからぜひ聞いてくれというようなお話があって聞かしていただいたのもあるわけでありますが、このような深刻なトラック運送事業の実態の中で、今回の事業区域の拡大でありますとか積み合わせの弾力化、個建て運賃の導入特定トラックの拡大、こういうような規制緩和を行いますと、一つは新規参入がふえる、そして運賃が低落をし倒産が増加をする、そのことは雇用不安につながる、こういう問題がありますね。  二つ目には、そういう状況の中で長時間の運行だとかスピード運行、過積載が横行する、これも労働条件の悪化につながりますね。こういう状況の中で交通事故がさらにふえるのではないかということですね。  第三番目には、トラック運送業界の現在の混乱に拍車をかけ、業界全体として大企業の下請に落ちる、一層の支配のもとに入っていくということですね。  結局、中小業者の経営や労働者の生活や労働条件に重大な影響を与えるものとして今回の規制緩和に反対をする、また深刻な不安を抱いておられるというのが現状ですね。私もそれは当然のことだと意見を同調するわけでありますが、そういう状況の中で、このような規制緩和をやめて、本当に安全、確実な輸送を確保し、公害、交通事故をなくし、中小企業の安定と労働条件向上を図り、国民生活に責任を持つ、そのような運輸業界の確立を求めておられるということだと思うのですね。  そこでお尋ねをするわけでありますが、ことしの七月の行革審答申では、運送事業の規制緩和に当たって「安全確保が強く要請されるなど運輸事業の持つ特性及び中小零細企業や労働集約性の高い事業が少なくないなど各事業の実態に留意」することが述べられているのですね。私は、行革審の答申というのはいろいろと大問題があって、本当に今の産業構造の変化に対応するために大企業本位の経済の仕組みであるとか制度をつくっていく、こういう立場から今の行革審の答申が出ているというふうに思うのですが、その行革審答申ですら、このような中小零細業あるいは労働集約性の高い事業ということで特に留意してやりなさいというようなことが述べられているのですね。今回の一括法案等が行革審の答申を尊重した閣議決定であるならば、先ほどの行革審の運輸事業の規制緩和に当たっての留意点についてどのように反映されているのか、お尋ねをしたいということであります。
  211. 山下徳夫

    ○山下国務大臣 デレギュレーションすなわち規制緩和を行うことが直ちにダンピングにつながったりあるいは弱肉強食につながるということは、私は絶対ないと思っております。  現にトラック業界、先ほどお話がありましたように、確かに一部に乱れもございましょう、違反者もいる。しかし、それが必ずしも大口の業者とは限っておりません。一台持った自家用車で有料運送行為をやる、いわゆる白トラの横行ということも確かに目に余るものもあります。したがって、そんなものの交通整理をしながら規制をある程度緩和し、また残すべきものは、新規参入であるとか運賃の規制をやりながら民活を導入していく、これが一つの今日の方向であるという観点から、私ども今後対処してまいりたいと思っております。
  212. 辻第一

    ○辻(第)委員 私がお尋ねしたのは、行革審の答申に中小零細企業や労働集約性の高い事業が少なくないからその実態に留意をしてやりなさい、こういうことに対して、そのことをどのように反映されてやられたのかということをお尋ねしているわけです。
  213. 山下徳夫

    ○山下国務大臣 行革審の答申を最大限に尊重しつつ、今申し上げましたような実態を踏まえ、そして零細業者といえどもこれをつぶすというような観点は私は全く持っておりませんし、それはそれなりに零細業者のなりわいというものを十分考慮しながら、これから民活導入のための諸施策をやっていくというふうに御理解いただいたらよかろうと思います。
  214. 辻第一

    ○辻(第)委員 実際は行革審でさえこのように留意しなさいと言っているわけでありますが、それも十分ところか反映されていないと言わざるを得ないのが実態だと思うわけですね。労働者や中小零細業者にとっては本当に一層の運賃ダンピングにつながりますし、労働条件の悪化につながりますし、交通事故につながるというような大変な問題だと思うわけです。もっと赤字企業がふえる、もっと倒産がふえると私は言わざるを得ないわけであります。本当にそのことも反映をされていないということだと思うのです。  今回の一括法案等の閣議決定に際して、関係業者や労働組合等の人々から意見をお聞きになったのかどうか、いかがですか。
  215. 武石章

    ○武石政府委員 私どもは、例えば物政懇、物流政策懇談会というものを設けておりまして、事業者、労働組合それぞれの方々との意見交換は行っているところでございます。それから今回の答申につきましても、それぞれの趣旨につきまして十分意見交換をしておるところでございます。
  216. 辻第一

    ○辻(第)委員 この一括法閣議決定に際して、関係業者や労働組合の人々から意見を聞きましたか、いかがですか。
  217. 武石章

    ○武石政府委員 行革審の答申が出されるまでの過程においても意見を聞いておりますし、今回の答申閣議決定するに当たりましては、ほとんどそのままの内容閣議決定いたしております。したがいまして、閣議決定のために特別に御意見を伺ったということはございませんが、十分に行革審の段階で私どもとの間では意見交換をしておるわけでございます。
  218. 辻第一

    ○辻(第)委員 それでは、行革審の段階では意見を聴取した、しかし今度の法案が出てくる閣議決定に際してはやはり意見を聞いていないということだと思うのですね。そういう点はやはり非常に民主的でないと私は言わざるを得ないと思うのであります。トラック事業の深刻な実態も考慮せずに、行革審の留意点も反映をしていない、関係者から意見も十分に聞いていない今回の一括法案等の閣議決定は、国民に対する最低の政府責任も果たしていないのではないか、極めて重大な問題だと厳しく指摘をしたいと思います。  さて、道路運送法は、第一条の目的で「道路運送事業の適正な運営及び公正な競争を確保するとともに、道路運送に関する秩序を確立することにより、道路運送の総合的な発達を図り、もって公共の福祉を増進する」このようになっております。この法目的からいっても、輸送秩序は道路運送の公共性を確保するために大事であり、そのため事業の免許制、運賃の認可、参入や価格規制等を行っていることは御承知のとおりだと思うのです。このような法目的を達成するためには、例えばトラック事業の需給のバランスというのですか需給の策定というのですか、そのような基準は大変重要なものだと思うのですが、現在トラックの需給策定の基準は定められておるのかどうか、お尋ねをいたします。
  219. 武石章

    ○武石政府委員 現在の道路運送法の運用に当たりまして、トラック運送事業の新しい免許申請がございますと、当然にその申請が当該申請の意図しております需要に適合しているか、あるいはその地域における輸送の状況からいって容認すべきであるかどうかというようなことは、十分判断してやっておるところでございます。ただ、現実には地域的な問題ということで判断しにくい面もあろうかと思いますけれども、そういう点についても公聴会といいますか聴聞をするというようなことによって、関係の事業者意見などを聞く機会も十分持ちました上で審査をしているという状況でございます。
  220. 辻第一

    ○辻(第)委員 やはり需給策定の基準というのがつくられていないと思うのですが、そういうものはちゃんとつくっていって、そして物事を処理するという方向で進めていただきたいと思います。  今回の省令で区域、路線トラック運送事業の免許について事業用自動車の種別ごとの数に係る規制を廃止する。路線トラック運送事業では、各運行系統に配置する事業用自動車の最大積載量ごとの数に係る規制の廃止、各運行系統に配置する事業用自動車の総数及びその所属営業所に係る規制の廃止、これは輸送秩序の乱れを改めるのではなしに、より一層輸送秩序の乱れ、需給の乱れをひどくするのではないか、このように考えるのですが、いかがですか。
  221. 武石章

    ○武石政府委員 まず現状について御説明申し上げますと、トラックについての自動車の種別としては、道路運送法施行規則の第一条第二項におきまして、路線、区域の事業用自動車について、被牽引貨物自動車、普通貨物自動車、小型貨物自動車、特殊用自動車の四種別に大きく分けられておるわけでございます。また、道路運送法十八条によりまして、車両総数の増減については認可にかかわらしめられておるわけでございます。事業用自動車の種別ごとの数の変更につきましては、軽微な事項として施行規則十四条におきまして届け出事項となっているところでございます。     〔保岡委員長退席、中島委員長着席〕  今回のいわゆる行革大綱では、トラックの種別ごとの数についての規制を廃止するというものでございまして、供給輸送力に大きく影響を及ぼすような車両総数の変更などについての規制を廃止するというものではございません。したがいまして、運輸省といたしましては、この措置によりまして需給調整に大きく影響を及ぼすものとは考えていないところでございます。  また、トラック運送事業におきましては、道路運送法第六条に規定されておりますように、事業計画をみずから適確に遂行するに足る能力を有するものであることが要請されますので、使用車両について実態を把握することが必要でございます。これについては、種別ごとの数についての規制を廃止しても、各種の自動車についての実際の報告事項、営業報告書とかそういう報告事項あるいは登録原簿によりまして把握することが可能でございます。保有車両の実態が的確な事業運営の支障となる場合にはその是正を求めることも可能でございますので、今回の種別規制の廃止が理由となって先生御心配のような事態は生じないと私どもは考えておるところでございます。
  222. 辻第一

    ○辻(第)委員 とんでもないことですね。我々の心配することは本当に起こり得ますよ。今の輸送秩序の乱れを、そのままどころかさらにひどくするというような内容につながるものだと言わざるを得ないわけであります。傭車、代車の一層の横行を合法的に認めることになりますし、運行車を事実上一台も走らせない、そのような路線会社の出現する可能性もありますね。それから、路線と区域免許を持っている会社が路線の許可地域以外で区域行為を行っても見分けがつかなくなる、こういう問題も起こるわけであります。言い出せばいっぱいあるわけでありますが、時間がありませんのでこの程度にしておきますけれども、大変なことだと思うのですね。  それから、省令で区域事業の積み合わせ許可について使用車両の特定廃止、有効期間の延長等運用を弾力化したり、事業区域の拡大、路線、区域車両の併用禁止の廃止等を行うことは、道路運送法の第四条で定めた免許制、免許区分をますます区別しがたいものにするのではないかというふうに考えるわけでありますが、いかがですか。
  223. 武石章

    ○武石政府委員 積み合わせ運送許可の運用の弾力化がトラックの事業区分の見直しにつながるのではないかという御質問と考えます。  積み合わせ運送の許可は、道路運送法によりまして、一般路線貨物自動車運送事業者によることが困難な場合に行うものとされております。今回、当面の措置として考えております積み合わせ運送許可の弾力化は、この法の規定の範囲内の運用の弾力化でございまして、使用車両の特定の廃止、有効期間の延長など、従来から省令または通達で定められてきた事項についての弾力化を予定しているものでございまして、トラックの事業区分の見直しにつながるものとは私どもは考えておらないところでございます。  なお、使用車両の特定の廃止につきましても、最大積載量ごとの使用車両数はチェックすることを考えておりまして、積み合わせ車両が自由に増加するということはないと思っております。特に積み合わせにつきましては、その禁止の趣旨から、そもそも一般区域貨物自動車運送事業者には一般的に積み合わせが認められているケース、それは例えば「一般路線貨物自動車運送事業者又は鉄道により運送される貨物の集貨又は配達のためにするとき。」というのがございます。それから「多数の貨物の集散する場所に発着する貨物の運送であって、」例えば「市場に発着する運送」「水陸連絡運送」「空陸連絡運送」「倉庫に発着する運送」などは、許可を得なくても積み合わせ行為を行うことが法律上許されておるわけでございます。これ以外に「一般路線貨物自動車運送事業者によることが困難な場合において、運輸大臣の許可を受けたとき。」に積み合わせの許可をするということになっておりまして、今申し上げましたある程度の集散地、そういうところを中心にした積み合わせ輸送というものが広く認められている中で、並行してさらに一般路線貨物自動車運送事業者が十分なサービスを提供できないというようなことを前提に、積み合わせの許可というものが運用されてきておるところでございます。
  224. 辻第一

    ○辻(第)委員 区域事業の積み合わせ許可の問題で言えば、これは結局、積み合わせ行為の自由化につながると思うのです。現在二年というのをさらに延長して弾力化するということは、事実上の自由化につながる。それから、積み合わせ行為の自由化ということになりますと、現在の運賃制度であります車建て、キロ建ての運賃制度の崩壊を促進するということにならざるを得ないと思うのです。こういう点で免許制の基盤そのものを揺るがす、そういうことになるのではないかということであります。  次に、今回の閣議決定で、近い将来近距離路線と区域積み合わせ事業の事業区分の見直しや、区域限定事業と特定事業の事業区分の見直しを行う法改正をすることを決めております。これは、政府が輸送秩序を確立するといった道路運送法の目的を放棄するだけではなく、深刻な輸送秩序の乱れという実態に法を合わすということによって、事実上政府の行政責任まで放棄するものである、このように考えるのであります。  さらに、次の点だけお答えをいただきたいと思うのですが、運賃に個建て運賃制の導入など多様化、弾力化について言えば、現行の貸し切り運賃制に固定運賃制が並行して認められるようになれば、機械物のような単体重量物や家庭の引っ越し以外はほとんど個建て運賃に進むのではないか。これは貸し切り運賃制度の形骸化や運賃の自由化につながる、このように考えるのであります。これは私の言いっ放しに終わります。時間がありませんので、次へ行きます。  区域路線の運転者の乗務記録について、運行記録計、タコメーターによる記録に所定の事項を付記することにより代用できることとする、このようになっておりますが、現行乗務記録というのは、運行管理でありますとかあるいは労働時間の管理の面で大変大切な役割を持っておることは言うまでもないと思うのです。それを、タコグラフのチャート紙ですね、非常に小さくて書くところが少ないようです。それから一週間分ですか、そういうことになっているのですね。そういうところへ付記してやるということは、もう不十分なものにならざるを得ないと思うのです。ですから、将来いろいろなタコグラフができるようなことも聞いておるわけでありますが、現時点ではこの改正は当然見送って、そして乗務記録ははっきり残すべきだ、このように考えるのですが、いかがですか。
  225. 神戸勉

    ○神戸政府委員 お答えいたします。  運輸規則におきまして、運転者に乗務記録としまして必要な事項につきまして記録をし、一年間保存することを義務づけております。また一方、自動車の速度、運行距離、それから運行時間等運行記録計による記録も一年間保存することを義務づけておるわけでございます。  ただ、今回改正を検討しています事項は、その乗務記録と運行記録計による記録の間には、非常に数多く重複して記載されているものがあるわけでございます。そういう意味から、運行記録計によります記録に、乗務記録に必要な事項を当該チャートに記入することを考えているわけでございまして、ここに一つサンプルを持っておりますけれども、チャートはこのようなものでございますが、ある社はその裏側を使いまして、これは仕業点検の記録簿に使っておりますけれども、これと同じような形で余自分を使って活用したらということを考えているわけでございます。そして運行記録計のこのチャート紙に記録するということを義務づけているわけではございませんで、現行の方式であろうとどちらをとっても、その辺は事業者の選択に任せているわけでございます。私ども今回の改正というのは、運転士、乗務者の負担を軽減するということを考えているわけでございまして、安全を軽視するという考え方は全くございません。
  226. 辻第一

    ○辻(第)委員 やはり乗務記録というのははっきりした形で残すべきだということを強く言っておきたいと思います。  次に、トラックによる交通事故が近年増加しております。非常に重大事故、悲惨な事故が多いというのが特徴ですね。その背景には、長時間無理な運行でありますとか、過労、過積、スピード違反等が関与していることは明らかであります。  そこで、ぜひ要望しておきたいのは、無理な運行、過労運転をなくすために、旅客輸送と同じように乗務距離の制限を法令で設けるべきだということが一点。  もう一つは二七通達、自動車運転者の労働時間等の改善基準でありますが、この遵守徹底を図るために、これを法律にして道路運送法の事業免許の要件にこの遵守を明記すべきだ、このように考えるのでありますが、いかがですか。
  227. 武石章

    ○武石政府委員 二つ質問でございますが、乗務距離の問題につきましては、トラック輸送というのは状況が非常に一般のタクシーとかそういうものとは違いまして、地域によって運転の時間当たりの距離が非常に違う。それから時間帯によっても違う。特に都市においては、交通が混雑しておりますので走れないというようないろいろな各種の状況がございますので、実際問題としてそういうものを設定するということは極めて困難ではなかろうかと思っておるところでございます。  それから第二点の二七通達の問題でございますが、二七通達は、御案内のように労働省が労働基準法の遵守のために事業者を指導するというためにつくった通達でございます。本来労働省の所管に属する関係の法案でございますので、その内容についてそのまま私どもの道路運送法の体系の中に取り入れるというのは極めて困難かと思っておるところでございます。  道路運送法の運用におきまして、運輸省といたしましても、交通の安全の問題は極めて重要な問題でございます。道路における交通安全、さらには積み荷その他の輸送されるものの安全という面につきまして十分な体制を整えさせるというために、各種の運輸規則上の規制をいたしまして万全を期しておるところでございますが、労働条件に関する指導事項である二七通達について道路運送法の体系の中で書くということは極めて困難であると考えておるところでございます。
  228. 辻第一

    ○辻(第)委員 今のトラック運送の実態の中で、何遍も言いますけれども、ダイピングをやる、過積みをやる、それから長時間労働をやる、スピードをどんどん出す。殊に後半の面で言えば、反社会的なそういうところで今の厳しい状況を切り抜けていこうということ、公正な競争になっていないというのが今の現状なんですね。その中で交通事故の問題も起こりますし、公害の問題も起こりますし、いろいろな問題、もちろん労働者の労働条件の問題、こういうことも起こってきますね。ですから、こういう問題は社会的な規制といいますか、これをもっと充実をさせていただきたいというふうに強く要望をするのです。今私が申し上げたことはぜひ実現をしていただきたい。重ねて強調いたします。  総務庁にお尋ねをいたすわけでありますが、高速道路の料金問題であります。  高速道路の料金がどんどん引き上げられているのが現状であります。ところが、全く自由に引き上げられているみたいな感じがするのですね。私は、最低限公聴会を開く、そして関係者の意見を聞いてやるべきだ、最低それぐらいはやっていただきたいというふうに考えるのですが、いかがですか。
  229. 竹村晟

    ○竹村政府委員 ただいま高速自動車国道の料金の決定手続についてのお尋ねでございましたが、その御趣旨は、現在の料金水準あるいは料金区分等につきまして利用者に不満がある、こういうことが背景になっているのではないかというふうに思われます。総務庁としては、御承知のように各省庁の特殊法人の監督行政、これにつきまして監察をできるようになっております。それで、道路公団等の料金制度の問題につきましては、料金の基礎となっております路線間の内部補助、いわゆる料金プール制の問題でありますが、こういったことにつきまして臨調答申を受けて決定されております行革の推進に関する閣議決定、これは昨年の十二月になされておりますが、これに基づきまして建設省において現在検討されております。  それからまた、料金の車種区分等につきましても、道路審議会答申を受けまして建設省において検討されております。こういったことでありますので、当庁としてはその推移を見守ってまいりたいというふうに考えております。
  230. 辻第一

    ○辻(第)委員 最後に、運輸省は、この十月三十一日に米国運輸事業規制に関する講演会というのを開かれましたね。その中で、米国トラック協会の委員長のエールドーブ氏が講演をされているのでありますが、この中で、米国の新自動車運送業者法、これは一九八〇年七月に成立したものだそうでありますが、そのもたらした影響として、「この規制緩和によって区域事業者の倒産がふえ、安全面の処置も不十分となり、事故もふえた。路線積み合わせ業者も大手の集約が進み、地域間輸送業者は廃業がふえ、地域内輸送業者も合併統廃合が進んだ。小都市では輸送サービスも受けられない状態が起こった。」こういうふうに言っておられるわけであります。  もちろん米国と我が国の事情はいろいろ違うというふうには思うわけでありますが、しかし、この米国トラック協会委員長の御発言の中に、今度の規制緩和の中で私どもが心配をしている問題をいろいろと示しておられるように思うのですね。それから、いろいろと条件は違っても、やはり共通するものがあるというふうに私は考えるわけであります。この点も十分考慮していただきたいというふうに考えるわけであります。先ほど私がいろいろお尋ねをしましたその中での皆さん方の御答弁は大分うまい話だったわけでありますが、既にやられたアメリカではこういう実態があるということであります。  最後に私は、道路運送法による輸送秩序の確立とは、安全などを十分確保した上で公正な競争と輸送の公共性を維持するためだ、このように考えます。今回の一括法等の閣議決定、特に運輸事業の規制緩和を見ますと、このような道路運送法の目的国会審議案件にならない省令で済ましてしまったり、実態に合う法改正という大義名分で、運輸の秩序の乱れた現実、実態に合わせるようなそのような規制緩和を行う。安全や公正な競争、輸送の公共性を損なう結果になるということだと思うのです。運輸行政の責任を放棄するようなことになっている、このように考えるわけであります。こういうことで、しかも労働者や中小経営者にとっては重大な事態を迎え、しかも結局大企業が支配をしていく、そのような状況に入っていくことだと思うのです。そういう意味で、この一括法案等の閣議決定を撤回をされることを強く要求をして、私の質問を終わりたいと思います。
  231. 中島源太郎

    ○中島委員長 菅直人君。
  232. 菅直人

    ○菅委員 きょうは、連合審査に社労の委員の一人として最後の質問に立ったわけであります。  今回のこの一括法案、一体中身が何なのかというのが、幾ら見ても余りにも多岐にわたるというよりは、適当にかき集めて一緒に出しちゃったという感じでありまして、どうも議論そのものも全く焦点が定かでないわけであります。私は、この中でいわゆるアクションプログラムに関連したとされる問題が幾つか入っているわけですが、必ずしも法案という形にはなっておりませんけれども、そういったアクションプログラムに関する国会質疑というものをやり得る機会が比較的難しいものですから、この機会に厚生行政の中で、アクションプログラムに関する問題について何点かお尋ねをしておきたいと思います。  厚生省が「基準認証輸入プロセスの改善」という方針を出された中に、薬の認可について、一つには外国での臨床試験データの受け入れということを決められているわけですけれども、まず第一点として、この外国での臨床試験データを受け入れるということは、少なくともこれまでの薬事認可の関係からいえば実質的にはかなり大きな政策変更になっていると思うわけですが、政策変更を決定された理由、根拠、背景をお尋ねしたいと思います。
  233. 小林功典

    小林(功)政府委員 ただいまお尋ねの医薬品の承認の際の外国の臨床データの受け入れの件でございますが、実は従来は臨床データの範囲につきまして、外国の臨床データも受け入れるけれども、それと同時に国内のデータも要求していたわけでございます。実は、臨床試験データ受け入れにつきましては、専門家による研究班を組織して約一年がかりで検討してきたわけです。その結論を見ますと、人種差とか医療実態といったものに関係ないところは外国データでもいいではないかという結論でございました。しからば国内データ、つまり人種差とか医療実態あるいは食生活もあるかもしれませんが、そういった国内データをどうしても必要とする範囲をいろいろ議論した結果、具体的に申しますと、吸収、分布、代謝、排せつに関する試験、それから投与量設定試験、比較臨床試験、この三つについては、やはりどうしても人種差等の違いがございますから日本のデータを必要とする、それ以外はまずそういう問題はなかろうということで、この三つに絞って国内データを要求するけれども、そのほかは外国データを受け入れるということにした、こういう経緯でございます。
  234. 菅直人

    ○菅委員 局長、かなり大きな政策変更だと思うのですが、これはどこで検討したのですか。例えば薬事審議会そのもので検討したのですか。
  235. 小林功典

    小林(功)政府委員 薬事審議会ではございません。臨床試験の専門家にお集まりいただきまして、これのための専門家会議を開きまして、そこで検討いたしました。ちなみに、班長は内藤周幸東京逓信病院内科部長でありますが、この方をキャップにします専門家会議をつくって検討していたものでございます。
  236. 菅直人

    ○菅委員 その検討会の名前か何かあるのですか。つまり、何が言いたいかというと、薬事行政が以前からガラス張りにずるずると言いながら、もう一つ国民から見えないわけです。大きな政策変更については、どういうことで変えるというその根拠となることを国民が納得できるような形で提示をしていただきたいわけです。そういった意味で、厚生省の中のプロジェクトなのか、外部の人ならば何らかの審議会なのか、あるいはどういう手続でそういうことを選ばれたのか、その点はいかがですか。
  237. 小林功典

    小林(功)政府委員 名前を申しますと、外国の臨床試験データの評価に関する研究班というのをつくりまして、先ほど申しました内藤先生をキャップにしまして、臨床データの本当の専門家でございます六人のメンバーの方たちに議論をしていただいたその結論でございます。
  238. 菅直人

    ○菅委員 時間もなくなりつつあるのですが、最後にもう一点これに関連した問題をお聞きしておきたいと思います。  同じくこの「基準認証輸入プロセスの改善」の「薬事法関係」の中で、「医薬品、医療用具や化粧品の承認許可について、標準的な事務処理期間を定め、当該期間内に処理できない場合には、その旨及びその理由を申請者に示すこと」、こういう項目があるわけですが、この「標準的な事務処理期間」というのは、例えば薬の認可であればどの時点からどの時点までを事務処理期間とし、かつ一般の薬、新薬の場合にどの程度の期間を定めてあるのかお聞かせをいただきたいと思います。
  239. 小林功典

    小林(功)政府委員 標準処理の期間でございますが、製造業者または輸入販売業者から申請があった時点から起算いたしまして、承認がおりるまでの期間でございます。ただ、その中に、例えば申請者側において提出書類の不備を補正するような期間でありますとか、中央薬事審議会における指摘事項に対する回答に要する期間は除外いたします。そういう除外をした上での先ほど申し上げたような期間でございます。  それから医薬品、医療用具、化粧品といった区分ごとに決めておりますけれども、今お尋ねの医療用医薬品の新薬でございますと、一年六カ月という期間を考えております。
  240. 菅直人

    ○菅委員 このアクションプログラムそのものは、日本とアメリカの貿易摩擦問題の解消という意味で、私も基本的には実施をするべきだと思っておりますが、厚生行政はそういった国際関係と同時に国内の、特に薬の場合は安全性の問題あるいは副作用の問題等々、我が国は薬害大国とも言われる状況でありますから、それだけにこういうものの規制緩和するときには十分な調査が必要だということで、きょうはそれに関連したことを二点にわたってお尋ねをしておきました。そのことを特に申し上げて、質問を終わりたいと思います。
  241. 中島源太郎

    ○中島委員長 以上をもちまして本連合審査会は終了いたしました。  本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十七分散会      ————◇—————