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1985-12-03 第103回国会 衆議院 大蔵委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年十二月三日(火曜日)     午前十時三十分開議  出席委員   委員長 越智 伊平君    理事 熊谷  弘君 理事 熊川 次男君    理事 中川 秀直君 理事 堀之内久男君    理事 上田 卓三君 理事 沢田  広君    理事 坂口  力君 理事 米沢  隆君       大島 理森君    金子原二郎君       亀井 静香君    瓦   力君       北川 石松君    笹山 登生君       自見庄三郎君    田中 秀征君       中川 昭一君    額賀福志郎君       平沼 赳夫君    宮下 創平君       山岡 謙蔵君    山崎武三郎君       山中 貞則君    山本 幸雄君       伊藤  茂君    川崎 寛治君       渋沢 利久君    戸田 菊雄君       武藤 山治君    石田幸四郎君       古川 雅司君    宮地 正介君       矢追 秀彦君    安倍 基雄君       玉置 一弥君    正森 成二君       簑輪 幸代君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 竹下  登君  出席政府委員         経済企画庁調整         局審議官    宮本 邦男君         大蔵政務次官  中村正三郎君         大蔵大臣官房総         務審議官    北村 恭二君         大蔵省主計局次         長       小粥 正巳君         大蔵省主税局長 水野  勝君         大蔵省関税局長 佐藤 光夫君         大蔵省理財局長 窪田  弘君         大蔵省証券局長 岸田 俊輔君         大蔵省銀行局長 吉田 正輝君         大蔵省国際金融         局長      行天 豊雄君  委員外出席者         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ————————————— 委員異動 十二月三日  辞任          補欠選任   中川 昭一君      亀井 静香君   藤井 勝志君      北川 石松君 同日  辞任          補欠選任   亀井 静香君      中川 昭一君   北川 石松君      藤井 勝志君 同日  理事中川秀直君十一月二十九日委員辞任につ  き、その補欠として中川秀直君が理事に当選し  た。     ————————————— 十二月二日  国家公務員等共済組合法等の一部を改正する法  律案反対等に関する請願中川利三郎紹介)  (第六三五号)  同(正森成二君紹介)(第六三六号)  同(松本善明紹介)(第六三七号)  同(柴田睦夫紹介)(第六六六号)  同(正森成二君紹介)(第六六七号)  同(三浦久紹介)(第六九一号)  国鉄共済年金改善に関する請願左近正男君紹  介)(第六三八号)  同(元信堯君紹介)(第六三九号)  同(伊藤茂紹介)(第六六八号)  同(岩垂寿喜男紹介)(第六六九号)  同(岡田利春紹介)(第六七〇号)  同(加藤万吉紹介)(第六七一号)  同(新村源雄紹介)(第六七二号)  同(小川省吾紹介)(第六九二号)  同(川崎寛治紹介)(第六九三号)  同(串原義直紹介)(第六九四号)  同(上坂昇紹介)(第六九五号)  同(佐藤観樹紹介)(第六九六号)  同(佐藤徳雄紹介)(第六九七号)  同(上田哲紹介)(第七四五号)  同(小川省吾紹介)(第七四六号)  同(大原亨紹介)(第七四七号)  同(金子みつ紹介)(第七四八号)  同(小林進紹介)(第七四九号)  同(左近正男紹介)(第七五〇号)  所得税課税最低限度額引き上げ等に関する請  願(林百郎君紹介)(第六四〇号)  同(正森成二君紹介)(第六四一号)  同(沢田広紹介)(第六九八号)  同(沢田広紹介)(第七五一号)  国民本位税制改革に関する請願(林百郎君紹  介)(第六四二号)  同(不破哲三紹介)(第六四三号)  同(藤木洋子紹介)(第六四四号)  同(正森成二君紹介)(第六四五号)  同(武藤山治紹介)(第六四六号)  同(沢田広紹介)(第六九九号)  同(藤田高敏紹介)(第七〇〇号)  同(沢田広紹介)(第七五二号)  同(藤田高敏紹介)(第七五三号)  北陸財務局存続に関する請願外二件(横手文雄  君紹介)(第七四四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  租税特別措置法の一部を改正する法律案起草の  件  国の会計税制及び金融に関する件      ————◇—————
  2. 越智伊平

    越智委員長 これより会議を開きます。  理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名することに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 越智伊平

    越智委員長 御異議なしと認めます。よって、中川秀直君を理事に指名いたします。      ————◇—————
  4. 越智伊平

    越智委員長 この際、租税特別措置法の一部を改正する法律案起草の件について議事を進めます。  本件につきましては、先般来理事会において協議の結果、お手元に配付いたしましたとおりの草案を得ました。  まず、本草案趣旨及び概要を御説明申し上げます。  御承知のように、去る五月、自由民主党・新自由国民連合日本社会党護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・国民連合の三党派との幹事長書記長会談において合意を見た政策減税等処理のうち、いわゆる寝たきり老人減税問題につきましては、その後、関係党派間において協議が行われた結果、従来七万円とされていた同居特別障害者に対する特別控除額を七万円引き上げて十四万円とすることで合意を見たところであります。  この合意に基づき、その立法措置について、先般来、当委員会関係党派間で御協議願いました結果、お手元に配付いたしましたとおりの起草案を得ました。  以下、本起草案概要を御説明申し上げます。  本起草案は、昭和六十年分以後の所得税について、同居特別障害者に対する特別控除額を七万円引き上げて十四万円にしようとするものであります。  これにより、同居特別障害者については、扶養控除額三十三万円、特別障害者控除額三十三万円、同居特別障害者に対する特別控除額十四万円の合計八十万円の所得控除が認められることになります。  また、この引き上げは、昭和六十年分の所得税確定申告から適用することといたしておりますが、本年の年末調整の際にも適用することとし、そのための所要の措置を講ずることといたしております。  なお、本案による国税の減収額は、昭和六十年度において約三十億円と見込まれております。  以上が本起草案趣旨及び概要であります。何とぞ御賛成くださいますようお願い申し上げます。     —————————————  租税特別措置法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  5. 越智伊平

    越智委員長 この際、衆議院規則第四十八条の二の規定により、内閣において御意見があれば発言を許します。竹下大蔵大臣
  6. 竹下登

    竹下国務大臣 この法律案につきましては、政府としては、諸般事情に照らしやむを得ないものと考えております。ありがとうございました。
  7. 越智伊平

    越智委員長 お諮りいたします。  本草案委員会の成案と決定し、これを委員会提出法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立
  8. 越智伊平

    越智委員長 起立総員。よって、本案委員会提出法律案とすることに決定いたしました。  なお、本法律案提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 越智伊平

    越智委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  10. 越智伊平

    越智委員長 国の会計税制及び金融に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。武藤山治君。
  11. 武藤山治

    武藤(山)委員 久しぶりに竹下先輩と本委員会議論をすることができますことを大変光栄に存じます。  昨日夕刻、理事から突然おまえあした質問せよという通告を受け、戸惑いをして何も調べる時間はなかったのでありますが、常日ごろ考えていることについて大臣の御意見を伺いたい、また私の見解も申し述べたい、かように考え、これからしばらく議論を続けたいと思います。  大臣、これからの日本、二十一世紀展望して、今何が難問であり、処理を誤ると大変なことになるなと感じていらっしゃるでしょうか。  私は、今日本の困難という問題では三つ四つあると思いますが、一つは、何といっても財政の困難。赤字が百三十三兆円、明年度恐らく百四十兆円、利息だけで年間十一兆円に達する、この問題が、国民生活を向上させる上でも諸般の施策を推進する上でも足を引っ張る大変大きな問題であり、後世の子孫にこの負担を転嫁するということも、私たちのせがれや孫の時代までこの財政問題の処理は長引く大問題であります。これをどう処理解決するか、難問であります。  第二の問題は、今の道義退廃、青少年の非行増大、脱税の横行、こういう現象は社会の進歩に大変な影を落としておると思うのであります。国家の存亡は、戦争によって国家が消滅をしたということよりも、その国の道義退廃から崩壊をしてきたと歴史は教えているのであります。  この道義退廃をもう一度とう高揚するか。今までの学校の教育方針知育徳育体育の順序で戦後教育を進めてきたのが過ちだったと思います。徳育知育体育という形で人間の育成を図らなかったところに今日の大きな弊害を生んできたような気が私はいたします。もし道徳という言葉が気に食わなければ倫理という言葉でもよろしいし、共同社会を生き抜く人間ルールと言ってもよいと思うのでありますが、そういうものが今大変退廃をしてしまっておる。この問題に政治家はどう取り組んでいくかも日本の将来にとって大問題だと感じております。     〔委員長退席中川(秀)委員長代理着席〕  また第三の難問は、急激に高齢化を迎える日本で、この高齢化社会にどう対応し適切な措置をとるか。  私は、この三つの問題が長い日本の将来を見渡したときに大きな難問であると同時に、解決を迫られている大問題ではないのかと感じているのであります。もちろん、もっと近視眼的に言うならば、日米貿易摩擦とか、これから訪れるであろう不況の問題あるいはやがて起こるであろうアメリカインフレーションの問題、そういう問題もさることながら、日本独自な立場で考えたときには、ただいま申し上げた三点は政治家として十分心せねばならない課題ではないのかな、こういう感じを持っているのでありますが、大臣としては、二十一世紀展望した長い日本ということを考えたときに、今一番どんなことをお感じになっていらっしゃるか、まずこの点の御見解を承りたいのであります。
  12. 竹下登

    竹下国務大臣 順番をつけるということになると難しい問題になりますが、私の今担当しておるところからして、当然、武藤さんが御指摘になりましたように、まず財政の将来展望、これについて私も、また本院に籍を置かれる皆さん方も、日夜苦悩をしていらっしゃるところであると思います。  そしてまた、二番目のいわゆる共同社会を生き抜くルール、こういうことに対して、日本国民全体の考え方がその辺に重要性を認めてきつつあるではなかろうかというふうに私も意識をいたしておるところであります。ある意味において物資物偏重社会の中に、極端な人の言葉をかりればこれもある意味においては先進国病一つかとも思うわけでありますが、心していかなければならない問題意識であるということは思いをひとしくいたしております。  それから三番目の問題の、高齢化社会あるいは長寿社会、いろいろな言葉がございましょうが、これはまさにお互いが、二十一世紀に予測される姿というものが非常に明らかになればなるほど、みんなの問題意識として定着しつつあるということでも思いをひとしくしておると考えております。
  13. 武藤山治

    武藤(山)委員 きょうはこれらの長期的な展望について論争しようとは思っていないのでありますが、冒頭に大臣の認識を伺ったわけであります。  そこで、通告項目に基づいて順次進めたいと思います。  最初は、アメリカ経済現状と明年の展望と題して少し論じてみたいのでありますが、今アメリカ経済はもう大変難しい局面に入ってきた。従来のアメリカ金融財政政策を大幅に転換をしたのがことしの九月と見ております。この九月からのアメリカ連邦準備制度理事会の決定やボルカーの政策レーガン政策も大きく転換をして、アメリカもいよいよ本腰で財政再建あるいは国際収支均衡ということを本気で考えるようになったなという感じがいたします。  しかし、その場合にアメリカの後遺症が余りにも大きく広がってしまったために、これはなかなか解決困難な状況であるなという感じでありますが、現状アメリカ経済というのはどういう状況になりつつあるのか。例えばドル安影響アメリカ経済にどういう影響を与えておるのか。また、景気現状余り好ましくない。この四—六月を見ると一・九ぐらいの前期比年率GNP伸び、前年同月比で見ると二%程度、七—九月も大体二・七ぐらいのGNP成長率であります。また、個人消費状況を見ましても、余り芳しい状況ではありません。八四年の初めごろからジグザグの山は大変低い状態で、個人消費もこれからさらに盛り上がるという情勢ではない。設備投資に至ってはほとんど横ばいで伸び余りない。全産業でマイナス一・〇ぐらいのところになっていると言われております。  これは野村総研調査資料で今私は質問しているわけであります。かなり詳しいデータを書き並べて、詳細にアメリカ経済の分析をしているようでありますが、大蔵省は今アメリカ経済動向というのをどのような情勢だと把握をしているのか、大蔵省見解を少し聞かしていただきたいと思います。
  14. 北村恭二

    北村(恭)政府委員 アメリカ経済現状についての見方でございますけれども、ただいまお話がございましたようにアメリカ経済、一九八二年の末に底入れいたしまして以来、非常に急速な拡大が一九八四年にはあったわけでございまして、成長率も六・八%といったような非常に高い伸びを示したわけでございます。ただ、このような拡大は、八四年の年央以降そのテンポが若干緩んでおります。  その原因といたしまして、基調的には個人消費を中心といたしまして国内最終需要というのは依然として堅調であると見ているわけでございますけれども、そのほか物価も、賃金上昇率等が落ちついておりまして、落ちついております。さらに、石油その他の一次産品価格軟化傾向といったようなことも、こういった鎮静化傾向に寄与していると思っております。それから雇用情勢というものも、景気の回復につれまして、若干ではございますが改善が行われているというふうに見でいるわけでございます。  最近の一番新しい国民所得統計は七—九月の数字が出ているわけでございまして、先ほど先生指摘のように四—六月、年率一・九%という後を受けまして二度にわたり改定が行われておりまして、七—九月の第二次改定後の実質GNP成長率は四・三%ということになっているわけでございます。若干その内訳を需要項目別寄与度で見ますと、この四・三%の成長を支えておりますのが、個人消費が三・五%、それから政府支出が三・四%ということでございまして、国内最終需要で見ますと六・八%ということでございますから、国内最終需要はかなり強いということがまだ言えるのだろうと思いますが、逆に在庫投資、それから経常海外余剰、要するに輸入の増加といったようなことで成長率が引き下げられておりまして、それで四・三%といったような姿になっているわけでございます。こういった数字を見ます限り、先ほども申し上げましたように現在に至るまで緩やかな成長過程ということは続いているのではないかというふうに思われるわけでございます。
  15. 武藤山治

    武藤(山)委員 緩やかな成長過程にあるというのでありますが、これはつくられた成長で、やはりレーガン政策の大減税需要誘導拡大、そういうことの結果が内需拡大となって、今内需の四割が輸入に依存しているという形態にアメリカ経済はなっているのですね。ですから、国際収支の面にこれが全部はね返って赤字がどんどんふえてきている。したがって、国内だけのつくられた需要喚起ということの結果が国際収支の大赤字という形にこれが悪循環をしているわけであります。ここが問題なんでありまして、私は、やはりレーガン政策は大失敗したと思うのであります。二、三年間でこれだけの財政赤字国際収支赤字をつくり出したというのはやはり政策の失敗だと断定していいと思うのでありますが、それをここで論じても仕方ありません。今、そういうアメリカのつくられた内需拡大による輸入増大、そのことが国際収支赤字となり、やがて日本に対しても、世界に対しても、アメリカは、輸入を削減する方策をとれということで大変強力な要請をしているわけであります。その結果、一体どういうことになるのだろうか、どういうことが起こるのだろうか。そのことについているじくも下村治さんが大変ショッキングな特別論文金融財政事情に発表しましたね。私はこれを見て、この下村さんの見解にやや賛成部分が大変多く感じるのであります。  下村さんは、このままいくとドル暴落をする可能性が十分ある、そのことを指摘しております。  第二は、ドル安を維持しようとしてドルのたれ流しが行われてスタグフレーションアメリカは陥るということを彼はここで断定をしているわけであります。  そして、今のようなドル安を人為的にやっていってもアメリカ輸入増は改まらない、こういう見通しを立てて、アメリカが今日の事態を五年も十年もかかって解決をしようとするのか、これだけの赤字、千三百億ドルになる貿易赤字をつくり出す構造、体質を何年間で変化させるのか、再建するのか、そのことによって世界にいろいろな影響を与えるんだという大変すばらしい論文を出しているのでありますが、審議官はこの論文読みましたか。また、これを読んだとすれば、この説に対してどんな見解をお持ちですか。
  16. 北村恭二

    北村(恭)政府委員 今お尋ねの下村先生論文というものは、ちょっと私直接読んでおりませんが、従来から下村先生日本経済あるいはアメリカ経済につきまして大変私どもの参考になる御意見を書いておられるということは、一般的には承知してございます。  アメリカ経済の今後の動向ということにつきましては、確かにいろいろと懸念材料がございまして、特に先生指摘のような貿易赤字それから財政赤字、いわゆる双子の赤字と言われております赤字の基本的な問題の解決ということが依然解消されていないという点は、アメリカ経済にとって大変な懸念材料であろうかということではございます。  ただ、先ほどお話ございましたように、G5合意によっていわゆるドル高というものが是正されてくるといったようなアメリカ自体の変化というものがあるわけでございますし、先ほどもちょっと申し上げましたような物価とか雇用が安定しているという点は、これはアメリカ経済にとってはかなり強い面でございます。  それから、金融政策のスタンスというものも、FRBによりましてかなり緩和基調が維持されている、注意深くそこは政策運営が行われているということでございますので、いろいろと懸念材料はあろうかと思いますけれども、また一方では、そういったことについてのアメリカ経済の強い面ということ、安定的な面ということもございますし、また政策当局によってそういった成長を支えるためのいろいろな政策が今後も維持されるだろうということでございまして、必ずしもアメリカ経済について非常に悲観的な材料だけを見ているということでなくてもよろしいんじゃないかというふうに考えているわけでございます。
  17. 武藤山治

    武藤(山)委員 悲観的な面ばかりを見ているというわけではないのでありますが、この悲観的な面を見落としますと、例えばドルが大暴落をした、そういうときに、そのリスクを考えたとき大変なことになるのだし、またドル安さえ続けばいいんだ、円高だけ続けばいいんだという視点で協力をした結果——アメリカは何ぼでも支えられますよね、ドル国際通貨なんですから。日本外貨準備が大分減ってきたようでありますが、外貨準備の範囲内でやっていかなければならぬ。アメリカの場合はドルでどんどん手当てができる。その結果はインフレーションスタグフレーションになっていくという、この警告ですね。これはやはり十分注意をして見ておかないと、国際会議へ行ってアメリカの言いなりに何でもイエスイエスと言っていた結果が大変なことになるのではないか。下村さんは、結論的にはアメリカ世界から信頼される均衡ある経済体質に変わる以外に解決策はないんだ、したがって、アメリカ経済全体をどう好ましい方向に、輸入依存率を低下させる経済体質にどう変えるかということなんだ、それにはアメリカが一回くぐらなければならぬ道として不況を覚悟しなければならぬということであります。どういう方法を考えてみても、自由経済である以上、アメリカはやはり近いうちに大きな不況局面を迎えなければこの問題の処理は不可能だと彼は断定をいたしているのであります。そういう道を通らずに、インフレにもならない、そして輸入依存率は低くなる、それでうまいぐあいに均衡経済になるなんといううまい手法はあるのでしょうか、審議官。あるとすればそういう手法をちょっとしゃべってみてください。
  18. 北村恭二

    北村(恭)政府委員 今後のアメリカ経済、ひいては世界経済にとりまして、それぞれの政策運営をどういうふうにやっていくかということについては、ただいま御指摘のように大変難しい環境にあるということは御指摘のとおりだと思いますけれども、ただ、通貨面について申し上げましても、各国政策協調を行うという中で各国経済のファンダメンタルズというものが十分そういった通貨に反映し、しかも、各国政策協調を十分やっていくということでそういったことが維持されていくということに今各国とも努力しているところでございまして、いろいろ世界経済にとって難しい問題がある、政策運営についても非常に注意深くやっていかなくちゃならないという点は御指摘のとおりでございますけれども、そういった今進められている各国協調というものが十分実を結んでいくということに私どもとしても努力していかなくちゃいけないと思っているところでございます。
  19. 武藤山治

    武藤(山)委員 大蔵大臣、結局アメリカ経済体質が変わらない限り、この問題は、アメリカは、完全な解決ということにならないんですね。  例えばアメリカという国の今の国内需要物資の四割が輸入品だというような体質をどう変えるかといえば、アメリカ企業家経営者、この人たちが今の国際競争に打ちかてるような経済体質に変えていかなきゃだめなんだ、結論は。しかし、アメリカでは、多国籍企業というビッグビジネス国家の目的とか国家方針とかにかかわりなしにどんどん外国で物を生産している。今その数字をちょっと調べてみたら、アメリカの多国籍企業というのは企業数が二百三十九、一兆四千二百七十億ドルを一九八一年の段階で販売している。そして、このうち外国での子会社の生産額が四千八百十七億ドルだというんですね。だからもうかなり大きな部分をこの多国籍企業生産をしている。日本でもこの多国籍企業が大体日本にノーハウを提供し、特許を提供し、いろいろ輸出をしている金額が百九十億ドル。多国籍企業関係生産した物の輸出が百九十億ドル。それがかなりアメリカへ行っているんですね。だからアメリカの企業がアメリカへ輸出させて、アメリカ国際収支をさらに困難にさせている、そういうような今の企業体制なんですね。こういうようなものも含めてアメリカが本気で経済のバランスをとろうとしない限り、これは幾ら円高ドル安政策に協力しても、仮に百八十円に円相場がなったとしても、輸入超過を打ち消すような力にはならない。それよりもインフレーションの方が先に来てしまうという心配の方が大きいのであります。  大臣は、こういうようなアメリカの今の経済体質、産業構造というようなものに対して、もう少し国際会議で警告を発し、アメリカ自身がもっと信頼される経済構造に改めるような努力を期待する、そういうようなことをもっと会議の席で言うべきじゃないのかな。私は、これから三、四年先に危機的な状況が出てくるような気がするので、今から転ばぬ先のつえでありますが、その辺大臣としてどういう見解を持っているのか、少し聞かせていただきたいのであります。
  20. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに今武藤さんおっしゃいましたつくられた需要喚起というものには、必ず反動が伴うわけであります。大なり小なり我が国の財政赤字というものもそれに遠因が存在していると思うわけでありますが、アメリカの場合、先ほど審議官が申しておりましたいわゆる双子の赤字というようなものも、急激なつくられた需要創出ということがそういう結果をもたらしたではないか。したがって、これを取り戻すということになりますとかなり荒療治が必要だ、こういう意見ももっともだと、私も下村先生議論なんかも拝見させていただいております。今、アメリカとしてもろもろの選挙等を控えた政治情勢もあるでございましょうが、それをいかになだらかな形で回復していくかということに非常な神経を使っておるのではなかろうかというふうに思います。武藤さんの言葉をかりれば、この九月ごろからの政策転換あるいは政策転換と受けとめられるような一つの動きというものもそれの一環ではなかろうか。しかし、多少さすがアメリカだと思いますのは、いわゆる失業率、それから物価、もちろん日本に及びもございませんにいたしましても、割に安定しておるというところにアメリカそのものの強みもあるのではなかろうかなというふうには感じます。  そこで、我々は国際会議等のたびに双子の赤字に対していろいろな我々の主張をいたしますが、結局は、かつて五〇%のGNPを持っておったアメリカではないにしても、巨大なアメリカであることには間違いありませんから、それを中心にして日本、そして俗に言われるG5あるいはG10でもよろしゅうございますが、そこが可能な限りの政策協調をしていくということを絶えずお互いが監視しながらやっていかなきゃならぬではないか、こういうふうに考えまして、その多角的サーべーランス、相互監視というものはどうしても五カ国が中心になってこれからも行っていかなきゃならぬというふうに考えます。  それから、いま一つの御主張でもっともだと感じますいわば経済の構造自体の問題があろうかと思うのであります。これは我が国にもあるんじゃないか。したがって、総理が私的諮問機関で、いわゆる構造問題について先月以来、前川さんを座長にして勉強を開始されたというのも、彼我の構造問題ということに非常に関心を持って、両国のあるべき経済構造の姿というようなものを多角的に議論し合おうというので今議論が進んでおるんじゃないかというふうに考えます。したがって、私どもの方もそうした勉強を土台といたしまして、国際会議の場においては、いわゆる政策調整と相互監視を基本に双方の構造問題も議論し合うように展開していくんじゃないかというふうに、私もおよそ考えを等しくしておるところであります。
  21. 武藤山治

    武藤(山)委員 結局、今の国際化された世界では一国だけの存立は不可能なんでありますから、それは確かに連帯、話し合い、協調、これがなければ世界経済は保てないと思います。過去のように、気に食わないから戦争によって自分の主張を通すようなことは許されない、そういう時代でありますから、それはあくまで諸外国との協調、連帯、話し合いというものは大変重要であるし、その手法によってのみ最悪の事態を回避することができる、そういう点では大臣と同じ見解であります。しかし、アメリカの五十一州目が日本だと思われるような、何でもアメリカナイズすればいいんだという脱亜入米一辺倒ではいかぬと思うのであります。私は、脱亜入米から、今や脱米入亜になる時代がやってきたんだという観点から、世界経済なりアメリカとの経済摩擦解消の視点というものを持たなければ、やがて振り返ってみたときに、竹下蔵相のときの財政経済政策は失敗だったんだなということになるんじゃないかな、そういう気がしてならないのであります。  アメリカにも日本の文化をよく知ってもらう、また日本アメリカの文化や伝統というものを十分知り尽くす、そういう努力をお互いがやりながら、ここまでは譲歩できるがここからは無理だということをお互いがもっとはっきり言い合える、もうそういう緊密な仲になったと思うのでありますが、アメリカはもっと日本人の需要にかなうようなものをつくって、日本人が欲しいと思うものをつくってくれないことには、欲しいものが余りないのですね。ですから、宇宙科学とか情報産業の先端技術などはアメリカ世界一でありますが、これから二十一世紀に向かうとますます情報化社会になってそういう機器は非常にたくさん必要になってくるわけであります。しかし、それを実用化の面で見ると、日本の品物の方が非常に小型できれいで丈夫で便利だ、こういうことになると、基礎的な科学技術知識はアメリカがいつも発明、発見をしても、それを実用化し大量生産する段階となると日本に追い越されていくという姿に今なっているわけでありますが、こういう点をこれからもっといろいろ、経済圏のつくり方などについても考えなければいかぬなと思います。  これは余談になりますが、私は、太平洋経済圏という漢とした余り大きい構想でなくて、日本海・東シナ海経済圏というようなことをまず考えて、日本海をアジアの共通の海とし、またその海に面するところの工業開発、そういうようなものに日本がもっと先駆けて力を入れていくというようなこと、アメリカをにらむと同時にアジアのそういう経済圏確立ということを考えていったらどうかな、そんな提言をしているのでありますが、大臣はそんな考えについてはどうお答えいたしますか。
  22. 竹下登

    竹下国務大臣 大平内閣の当時からのいわゆる環太平洋というのは、非常に広範囲にわたりまして、しかも、いわば日、米あるいは豪、カナダも含め先進国が存在しておる中に、相互理解の中にもろもろの問題を論じていくのに適切だという背景は存在しておると今でも思っております。  いま一つ日本海ということになりますと、ソ連圏というものもそこに当然入ってまいりますので、経済状態の相違等からしての問題がある。私もにわかに判然とお答えするだけの頭の整理が今お話を聞きながらできなかったわけでありますが、アジアという問題について見てみますと、先進国は我が国だけてあります。そして人口で見ますと、日本海、東シナ海ということになりますと、それから先のインド洋等は仮に除外して考えましても、世界のほぼ半分の人口規模になろうかと思います。  そういうことを考えていきましたときに、アジア外交の必要性があって、そのアジア外交がいわば経済外交として非常なスピードで動き出したのがここのところ十年じゃなかろうかと考えておるところであります。したがって、先般来、自由民主党でも藤尾ミッションなどが今言われたような地域を主として回ったりいたしまして、相互理解と構造上の問題についての議論もしながら経済外交の積み重ねをやっておるのが現状ではなかろうかと思っておるところであります。
  23. 武藤山治

    武藤(山)委員 次に、為替円高問題であります。  為替相場が九月二十日以降大体二百三円前後、きのうは二百三円ちょっとです。五カ国蔵相会議以降、円は何%ぐらい上がりましたか。
  24. 行天豊雄

    行天政府委員 ニューヨークで五カ国蔵相会議が行われましたのが九月二十二日でございまして、その直前の相場が約二百四十円前後でございましたが、それと比較いたしますと、きょうは二百三円台でございますので、切り上げ率ということで計算いたしますと大体一八%弱というような感じになっております。
  25. 武藤山治

    武藤(山)委員 円が九月から一八%弱値上がりしたということは、輸出品目によっては、一八%も高くなったのではなかなかコストに見合わない、採算がとれない品目、一八%上がっても採算はとれるという品目といろいろバラエティーに富んだ形になると思うのでありますが、今、日本の輸出品目で一八%上がっても平ちゃらだという産業はどういうもので、一八%がこたえているなと思われる商品はどんなものがあると大蔵省は把握しているのですか。
  26. 北村恭二

    北村(恭)政府委員 円高の競争力に及ぼす影響ということでございますので、一般的に輸出競争力があると言われている業種とそうでない業種ということになると思いますけれども、中小企業庁等でもその辺がなり調査をしているようでございまして、そういった調査の結果、私どもの承知しているところでは、いわゆる地場産業的な業種が現在の為替相場ではかなり影響が出ているという調査になっております。  私ども、財務局等ございますので、そういったところを通じましても、影響の度合いあるいはそれぞれの企業がどの程度の円レートで採算点を考えておるかというようなことをいろいろな形で聞いております。私どもが産地産業といいますか地場産業といっているところで、例えば洋食器とか織物類あるいは陶磁器といったところで、輸出面について例えば成約関係影響がかなり出ているとか、あるいは今後これ以上の状態が続くとなかなか採算点にはやっていけないのではないかというような企業家の見通しといったものをヒアリングしているわけでございます。
  27. 武藤山治

    武藤(山)委員 今ちょっと資料をどこかに忘れたのでありますが、日本の輸出が約一千六百億ドルぐらい、輸入が一千二百億ドル強で、どうしても輸入はそれだけしなければならない。輸出の一千六百億か七百億は、中身を調べると自動車が最高の額で、その次が機械製品、鉄鋼という順序で、多分四品目か五品目で日本の輸出総額の一千億ドルを超えるのです。ですから、この四品目は百八十円になっても競争力があるのか、大体どの程度が分岐点になると見ておるのか、日本の輸出の大宗を占めるこの四品目はどうですか。
  28. 北村恭二

    北村(恭)政府委員 今手元にございます資料等で五十九年度の輸出のベストテンを見ますと、自動車が一七・五%ということで一番多いわけでございまして、以下鉄鋼、テープレコーダーあるいは事務用機器という順序になっておりますが、分類の仕方によって業種がいろいろ違うかもしれません。ただ、これらの産業がどの程度の円高が採算点であるかと申しますかあるいは損益分岐点になるのかといったことについては、私ども直接そういったことについての調査という形では調査してございません。いろいろ社の事情等によって事情が異なると思いますので、定かには把握しておりません。
  29. 武藤山治

    武藤(山)委員 きのうのニュースでは半導体などの値上げをアメリカ通告したというNHKの報道がありましたが、政府としてはこの一八%円高になったことによってアメリカへの輸出は一体どのくらい減少するという試算なんですか、現在の状態でどのくらい減るだろうという見込みはどうなんですか。
  30. 北村恭二

    北村(恭)政府委員 直接には来年度の輸出見込み、特に対米輸出見込みといったようなことになろうかと思いますけれども円高の輸出に及ぼす影響ということになりますと、価格面、数量面でこれがどういう影響を持つかというふうに分析して考えることになるわけでございます。価格面では、いわゆるJカーブ効果と申しておりますけれどもドル建て価格の値上げを今後どの程度行うかということが影響してくると思います。いずれにいたしましても、そういった価格面の影響というのが輸出には数量面の形で出てくるわけでございますけれども、これがまたどの程度の期間を置いて数量に影響してくるかということになりますと、これは大変周囲の影響と申しますか、環境あるいは相手国の関係といったようなことでかなり変動的な要因が多いわけでございまして、全体のマクロの数字としては、いずれ経済見通し等で輸出見込みというのをつくるわけでございますが、現在のところ、来年度につきまして具体的な数字まで詰め切っておりません。  来年度あたりは数量面でもう既に若干影響が出てくるのではないかというふうには見ておりますが、価格面の上昇ということを考えますと、全体として例えば輸出額自体がどの程度になるかというような点については、もう少し時間をかけて詰めたいというふうに考えているところでございます。
  31. 武藤山治

    武藤(山)委員 審議官、もう少し時間をかけて検討するとおっしゃいましたが、もう予算編成期で、来年の経済見通しをそろそろ立てなければならぬ時期に来ているわけですね。だから、来年の景気がどうなるのか、アメリカ経済がどうなりそうで、それが日本にはね返る部分がどういうぐあいに見られるのか、それによって来年の成長率をどう見たらいいのか、中小企業対策をどうしたらいいか、輸出の自主規制をどうしたらいいのかなとが出てくるので、十二月に入れば、来年のこの円高影響というものをどうとらえるかというようなことは、企画庁と大蔵省はもう検討しているのじゃないのですか。まだしてないのですか。
  32. 北村恭二

    北村(恭)政府委員 それぞれのところで内部的には今作業をしているところでございますけれども、まだ各省庁のすり合わせといった段階まではいってないわけでございます。     〔中川(秀)委員長代理退席、委員長着席〕
  33. 武藤山治

    武藤(山)委員 大蔵大臣円高は二百三円前後で安定をしたと見るのか。それはかなり人為的な操作でこうなっているので、もっと上がるかもしらぬ。日銀総裁は、さらに円高基調を期待する、再三そういうことをおっしゃっていますね。大蔵大臣は、余り行き過ぎても大変だからという配慮からか、安定的になった、こういう認識を前にちらっと発表したことがありますが、これも発表するとまた投機家にいろいろ利用されるので言えない部分がたくさんあるのですね、この円相場の問題については。しかし、これはかなり持続的に今のような相場が続くと見た方がいいのか、それともまだかなり変動があるんだと見た方がいいのか、その辺はいかがでしょうか。
  34. 竹下登

    竹下国務大臣 非常に難しいところでございますが、きょうが寄りつきが二百三円九十銭で、九時半現在が二百四円十銭、この程度でしたら、普通の場合、言葉のあやという言葉があるように、あや戻し、こんな言葉で使っておりますので、その背景に何か大きな経済的な変動の背景があるというふうには思っておりません。  確かに、九月二十二日にG5をやって、二十二日からいわばドルが他通貨に対して安くなっていく。日本の場合は、二十三日が旗日でございましたから、二十四日から始まったわけであります。今日の状態は、私はまさに自律的に市場が相場を決めておるというふうにこれを見ておるわけでありまして、各国のファンダメンタルズが為替相場によりよく反映されるようになってきておるんだというふうに評価しておるわけであります。一般にどのような水準が適正な為替相場であるかということは非常に難しい問題でございますが、具体的水準は市場の合理的判断にゆだねざるを得ないわけでございます。  きょうはフリートーキングという感じでございますのであえて私自身も若干乱暴なお話をするといたしますと、ちょうど一九七一年、昭和四十六年にドルの兌換性が停止されたときに私は内閣官房長官でありました。それでしばしフロートして、それからスミソニアン・レートというもので三百八円に固定されて、そのときは大蔵大臣は水田三喜男先生で、私どもは関心がありますから、関心があるというよりはむしろわからぬといいますか、知識が乏しかったから、その知識を吸収しようという意味において関心がありますから、横目で眺めておりましただけの立場でありましても、やはり相場というのは市場が決めるべきものだということで変動相場制というものに落ちついたわけですから、何か介入ということも、人為的に悪いことしているとは思いませんが、余り欣喜雀躍してやるべきものじゃないという印象が私自身にもございます。  それで、いささかお話が長くなって申しわけありませんが、ちょうどシュルツさんがその後の変動相場制がいよいよ確定するときの財務長官でありました。したがって、シュルツさんも恐らく気持ちの中では——あの変動相場制のときに参加した人はみんな何か市場至上主義みたいな感じになりがちでございます。しかし、いろいろな議論をした結果、G5で協調介入というような時期としてそれをとらまえたわけでございますから、そのことはみんながもやもやとした気持ちじゃなしにすっきりした気持ちで対応したわけでありますが、今の段階は、私は自律的に市場が機能をしておるというふうに思っております。  そこで、やはりいわゆる乱高下というのが一番いけませんので、秩序あるドル高是正、こういうのが定着していくことを心から期待しておるということが、我々の答弁のある意味において限界ではないかなというふうに考えておるわけでございます。したがって、特定の水準というのを考えているわけじゃございませんが、もとより政府としては、為替レートの動向がいわば国内経済に及ぼす影響ということになりますと、先ほど来四業種の点についての御議論もあっておりましたが、絶えず大変な注目をしていなければならぬ問題だという問題意識は十分持っておりまして、先般も中小企業対策というのを一応決めたわけであります。  もう一つ、幾らか自分自身少し粗っぽい議論のようですが、心配しますのは、円高の場合でも堂々と競争力のある企業というものは御指摘なさったように我が国にあると思います。それが仮に今度受けとめる側の方で、いわばそういう相場の変動にもかかわらず価格が全く変わらないということはダンピングじゃないかという懸念を持たれることがあってもこれは困ることになりはせぬかな。そうすると、ある程度競争力のあるものがさらに値上げをする余裕、余地が出てきて、しかも割り当て物資などは、制限物資などは値上げしてもなお競争力がある。だから、そういうことになると貿易バランスの上では一向改善されない場合もあるし、その辺一体どういうふうに対応していいのか、素人ながら、それぞれの産業別に指導しておられる通産省などとも協議しながら、今のところ私は私なりに興味を持って非常に注目しておるというのが現状でございます。  それともう一つ先ほど来御議論いただいておりますが、十二月になったわけでございますから、何だかんだ言っても来年の経済見通しをあと二十日ぐらいのうちに一応めどを立てなきゃならぬということでございますので、それぞれのセクションで今勉強しておりますが、経済企画庁を中心にすり合わせをやるような時期もそう遠くなくやってくるのじゃないかというふうに私も思っておるところであります。
  35. 武藤山治

    武藤(山)委員 時間に限りがありますから先へどんどん進めますが、通告国内中小企業に与える円高影響であります。  たまたま、地方銀行協会が地方経済天気図というのを時々出しておりますが、これをちょっと読んでみると、円高影響をもろに受けているという地域それから産業、そういうものを摘出をしております。新潟の合成繊維、それから滋賀の綿クレープ、大阪の綿スフ、群馬の繊維、静岡、島根の魚の缶詰、それから大阪の自転車、岐阜の陶磁器、新潟の金属洋食器などは五%から一五%の値引き要請が目立って、そして船積み金額も昨年より二〇%程度下回っていたり、大変な円高影響を受けておる。この中で円取引を終始行っている真珠は円高だからといって被害は受けていない、こういう報告を地方銀行協会が出しているわけであります。そういうような点から、かなりの産地で円高影響をもろに受けているという姿がこの報告を見ても如実に理解できるわけであります。  さて、そこでこういう円高による採算割れの地域あるいは産業に対してどうするかというのがいつも議論される問題ですが、これはなかなか難しいのですね。一時モルヒネ注射を打って、モルヒネ注射で回復を完全にすればいいが、モルヒネ注射が逆に後遺症を残してかえってまずかったという例もあるし、この辺の手だてを何でどうカバーするのかというのは、経済を本気で考えると大変難しい問題をはらんでいるような気が私はするのでありますが、政府政府金融機関の出動で金利をできるだけ安くして長期に面倒見よう、あるいは保証協会の保証を二倍拡大をしてやろう、あるいは赤字企業に対しては前年一カ年間の黒字の範囲じゃなくて三年間トータルして税金をまけてやろうというようなことも通産省は新聞で発表しておりますが、大蔵省、そういう税まで手を伸ばして救済策を考えようとするのか、それともやはり資本主義自由経済だから、自己責任なんだから、たとえ円高影響といえどもそのモルヒネ注射を打てるのはほんの限られたぎりぎりの分野だけだと考えるのか。後で財政問題を論ずるときの建設公債増発論なんというのも安易なモルヒネ注射に匹敵するようなものなのでありますが、いずれにしても、今金融問題を論じているので、この地場産業における手だてというのを何をどうしたらいいと考えるのか、その辺大臣、部下にどんなことを命じているのか、ちょっと見解を聞かしてください。
  36. 竹下登

    竹下国務大臣 今おっしゃいました中で、いわば円高傾向からいわゆる健全な中小企業が不測の事態に陥ることのないようにということで、具体的には輸出関連中小企業者等についての経営の安定や、それから競争力が為替相場の動きによって大影響を受けるところにつきましては、要するに経営の安定ということと、もう一つやはり事業転換というのも最終的にはやらなければならぬわけでございますから、そういうことのために十二月二日から特別融資制度というものを発足させる等の措置を講じたわけであります。それから、民間金融機関においては十分な資金枠を確保するなど、これはたまたま年末でございますから、年末金融対策をこれに講ずるということ、それから、公取、中小企業庁におかれて、円高に伴って下請中小企業が不当に圧迫されることのないよう親事業者、親事業者団体に要請を行う、こういうようなことを今、十二月二日からやろうということで決めたわけであります。  今一部において既契約分のキャンセル、条件変更、為替差損の発生ありとする企業があると私ども聞いておるわけでございますから、基本的には通産省でいろいろ御検討いただいておるわけでありますが、この間の通産省からの御発表のもので、私どもも今後の問題だという感じがいたしますのが、今おっしゃったいわゆる税の還付の問題でございますが、これは税の上でその措置をやるというのは非常に困難な状態であるのではないか。したがって、もちろん通産省と予算編成を通じて協議する事項でありますが、私は、あの還付の問題というのについては今そういう環境にあるとは言えないなというような感じで受けとめておったところでございます。  いずれにせよ、通産省との間では我が方としても十分協議を進めていくことになるというふうに、先般の第一回の会合で決まったもの以外のことにつきましても予算編成過程を通じていろいろ詰めるように指示をいたしておるところでございます。
  37. 武藤山治

    武藤(山)委員 中小企業に対する対策というのは本当に難しいと私も思うのですね。ですけれども、やはりこれほっておくわけにもいかぬ。自分の懇意で円高になったわけじゃない。やはりそういう経済的な大きな力でそうされてしまうわけですから、できるだけの手だてはしてやらなければいけませんけれども、従来の税制とかあるいは基本を守らねばならないような問題まで出動していいのかどうかということについては十分配慮してやらねばならない、そういう感じがいたします。  いずれにしても、今のような自由為替体制で日本アメリカやEC、世界各国から袋たたきに遭っているという情勢、これを抜け出るというのは並み大抵なことではないし、かなり長期間時間を要する問題でもある。中には、もう自由貿易体制は危機的状況だ、日本電子機械工業会長の盛田さんは日本経済新聞に、通貨システムを改革しなければもうだめなんだと、大変悲観的な見解を述べております。しかし、通貨改革をやるといっても、これまたもう一回金本位に戻るというわけにもいかぬし、日本円が世界通貨になるという実力もない。この小さな国土で資源のない日本がそれだけ世界から信頼を持続的に得られることも不可能だし、そうかといってアメリカの今の財政赤字国際収支問題が均衡するというのはかなり先の話で、信頼を回復するというには長期間またかかるのじゃないかと私は思うのですね、アメリカも。こういうジレンマの中で国際経済秩序というものを本当に混乱なく維持するということが非常に難しい段階に差しかかってきているのだな、こう認識をしているわけであります。  このかじ取りを誤ると大変なことになるのじゃないか。特に。中曽根総理は、経済に対しては少しうとい感じがいたします。財政経済金融政策などについてはちょっと本職の域に達していない。防衛とか軍事とか演説とかそういうのには大変だけておるのでありますが、どうもそういう点で政府のかじ取りを大蔵大臣が間違うと大変なことになるので、その辺はやはり総理といえども遠慮なく物を言ってもらいたいのですね。  この間、何か中曽根さん総裁任期三年にしたるいいじゃないかということが、本当かうそか知らぬけれども竹下さんの口から出たようなことが新聞に出たりして、いささかがっくりきたのでありますが、毅然とした財政金融経済政策というものを主張してもらいたい。そういう政治家がだれかきちっといないと、ちょっとした現象に右往左往して、その場だけの糊塗策を図って、そしてモルヒネ注射を打った結果が取り返しがつかないことになる。そういう経済というものの見方を本当に過ちのない方向に政府は毅然とした態度をとるべきじゃないか。政党主導、自民党主導の予算編成は、それは政党政治だからいいのでありますが、しかし本当にわかっていてくれて、事の真相なり成り行きなり結果がどうなるかということを本当に国民の立場に立って考えてくれるなら結構なのでありますが、どうも新聞報道などを見ていると、思いつきが多過ぎるのですね。そういう点、大蔵大臣として何か感ずるところはありませんか、最近の状況を見て。私は大変心配をしておる一人なのでありますが、いかがでございましょうか。
  38. 竹下登

    竹下国務大臣 元来、政党政治でございますから、党主導というのは結構なことであると私は思っております。その範囲の中で現実の実態をどう調和させていくかということが私どもに与えられた務めであろうというふうに基本的には感じておるところであります。私は、いろいろなところでいろいろな提言がなされるというのは、これは民主主義ですからいいことじゃないか、ただ、それが声高の中で一つの流れをつくることはやはりチェックをしていかなければならぬのではなかろうかというふうにいつも心がけておるつもりでございます。  やはりきょうの問題ももとより重要でございますけれども、中長期にわたる、一番最初御意見の開陳がありました、見通しの中に立ったかじ取りそのものもまたこれは誤ってはならぬということを考えますだけに、そのときどきの現象に対しての単なる措置というものを考えることなく、それが中長期にどういうふうに位置づけされていくかということを絶えず念頭に置いて対応しなければならぬというのもまた行政府の立場ではなかろうかというふうに考えております。
  39. 武藤山治

    武藤(山)委員 次は内需拡大輸入増の問題であります。  内需拡大内需拡大と言って、その目的は輸入をふやすためだ、輸入を増加するために内需拡大をやるのだ、これが当初の政府の目的であったわけでありますが、最近はドル安円高で、来年不況だぞ、来年は大変な不況局面に入るぞ、だから来年度予算は内需拡大、そういう面に力を注がねばならないというふうに目的が変わってきましたね、来年度予算編成をめぐって。輸入をふやすための内需拡大ではなくて、来年の景気対策としての内需拡大という方向に今議論が変わってきていると思うのであります。私が今ここで論ずるのは、前段の蔵相会議で決めてきた問題を中心にして、輸入増内需拡大、この関連を少しお尋ねしたいのであります。  大蔵大臣は五カ国蔵相会議の発表の中で、大変用心深く、日本財政を十分心得てこの日本部分の附属声明ができていると思うのでありますが、どうして輸入をふやすか。その場合に、一、二、三は月並みのことを言っているわけでありますが、五番目、「国の財政赤字の削減と、民間活力を発揮させるような環境づくりという二つの目標に焦点を合わせてゆく。その枠組みの中で、地方団体が個々の地域の実情を勘案して一九八五年度中に追加投資を行おうとする場合には、所要の許可が適切に与えられよう。」こういう具体策を述べているんですね。  私もこれを読んだ限り、日本の今の財政事情というものを十分頭に置いて、はみ出ないようにその範囲内でやれることになると、ごくごく限られたことしかできない、苦慮の結果、こういう表現になったのだろうと思うのでありますが、これによって一体内需拡大が本当に功を奏するのか、そして輸入の増加というものが本当に見込めるのか。九月からこの十二月までの間輸入増に結びついた形跡が何かあるのでしょうか。どんなものが輸入増としてあるのか、そこらをちょっと説明をしていただきたいのであります。
  40. 竹下登

    竹下国務大臣 あるいは総務審議官から後からお答えした方が適切かとも思いますが、十月十五日の内需拡大策、これは経済企画庁で一定の前提に基づいて試算されたところでは、向こう一年間で二十億ドル前後の輸入増の効果があるという一定の前提を置いた試算がございます。これは定量的に示すことはもともと難しい問題でございますので、それが限度ではなかろうかというふうに考えております。  そこで、今どれだけ出てきたかということを明瞭に申し上げることはできないと思いますが、住宅金融公庫の特別割り増し貸付制度、この貸付枠の追加、これについてはこの国会で成立さしていただきましたので、募集が十一月二十五日から十二月二十日でございますが、これを今行っておる最中でございます。  それから個人消費の喚起については関係部局から通達を出しておる、こういうことになるわけであります。  それからもう一つ、今武藤さん用心深く読んでいただきましたが、地方単独事業のことについては自治省と相談しないままにG5のときにがけから飛び降りたようなつもりで書いたわけでありますが、幸いその後の情勢を見ますと、地方の九月県議会から始まって十月にずれ込んでいる議会のときにそういう方向に対応した地方議会の予算撤置ができて、起債等の要求が自治省の方へやってきておる、こういう実態が出ておりますので、これとてまだ地方単独事業の追加というのはどれだけトンカチが始まったかということは別問題といたしましても、あのときに余り自治省と詰めないままに発表するのはどうかなとも思いましたが、連絡だけとっておいてあのときに書き込んだものがちょうどタイミングよく追加財政需要として出てきつつあるな、こういうことは横目で私も見ておるところでございます。  いずれにせよ、公共的事業を三兆やって十三億ドル輸入増になると言う人もおりますし、いろいろな見方がありますので、おおむね二十億ドルということで、ある前提を置いての試算を経済企画庁でなさったわけでございます。確かにおっしゃいますように内需によってトタで輸入がふえるというのが非常に少ないというのが我が国のある意味において構造的なものじゃないかな。ふえるエネルギー源なんというのは今度は値段そのものが安くなっておりますし、それからまた例えば鉄鉱石というようなものを考えても、これはアメリカじゃなしにむしろ豪州とかあるいはブラジルとかということにもなっていくでありましょうし、総体的には二十億ドルというようなことは見込めるが、対米を考えた場合には必ずしも大きな変化がこれによってあるということは言えない。しかし、原則的に内需拡大すれば幾らかでも輸入がふえるということは言えるわけですから、その原則は貫いていかねばならぬというふうに考えております。  それから民活の問題につきましては、具体的に何が出たかということになりますと、関西空港にいたしましてもこれから補償問題をやるかというような話でございます。それから西戸山の方がやや進んでおりますが、他の問題はいろいろなことが今言われております。今後一年間の中には影響が出るでありましょうが、民活で今直ちにこういう影響が出ておりますというものは余りカウントできないのじゃないかな。それで先ほど来の議論にもありましたように、あのG5で約束しましたのは輸入をふやすための内需であって、今国内では景気対策としての内需という方へ議論が行き過ぎておるという感じが私もしないわけではございません。
  41. 武藤山治

    武藤(山)委員 大臣の率直な御意見を承って大変結構なのであります。  いずれにしても三兆一千二百億円の事業費を前倒しあるいは財投あるいは電気、ガス事業、こういうところでやれという政府方針輸入増加を年間二十億ドル者えるというのですが、私は、これは輸入増につながちないんじゃないかと結論をしているのであります。  日本の貿易構造は、先ほどもちらっと申し上げましたように、輸入の中身を見ましても、五十九年度の輸入の中身、分類を見ますと、千三百四十五億二千八百万ドル輸入のうち、原燃料、燃料は七百八十二億ドル、鉱物性燃料が五百九十億ドル、それに食料品が百五十五億ドル、鉄鉱原材料が九十億ドル、金属原料が六十三億ドル、こうなっているのですね。そうすると千三百四十五億ドルの大半がこの原料で終わってしまうのですよ。先ほどの住宅関連で一体輸入があるんだろうか、あるいは電気、ガスの四千億円の中で輸入材料を何か買うんだろうか、こう見ると、あるとすれば、合板とか材木が住宅建築に幾らがある程度、しかし、これも今大分だぶついていまして、必ずしもアメリカのものが来るわけでもないし、そういうことを考えてみると、輸入構造がこうなっていたのでは、政府がこういう糊塗策をやってもこれは気休めにすぎないな、輸入増大にはなかなか結びつかないな、こういう感じがしてなりません。しかし、やらないよりはやる方がましだろう、こういうことであろうと思いますが、この中で国有地、公有地の活用四千億円というのがあります。これは大蔵省、具体的にどこの土地を売るつもりなんですか、国公有地の活用四千億円は。
  42. 北村恭二

    北村(恭)政府委員 国有地の処分の具体的な場所は既に確定しているわけでございますけれども、今先生がお尋ねの四千億というものにつきましては、その国公有地が処分された後そこに住宅等が建設されるということの見込みというものを計算いたしまして、それが需要拡大効果に結びつくという計算を企画庁でしているわけでございます。
  43. 武藤山治

    武藤(山)委員 国公有地は大蔵省所管だから、どこなのかと聞いている。理財局、来てないのか。いなければしようがないけれども
  44. 宮本邦男

    ○宮本政府委員 ただいま大蔵省の総務審議官がお答えしたとおりでございまして、四千億という数字は、国公有地の販売金額ではございませんで、向こう一年間に国公有地販売可能であると推定されるものにつきまして、その上に現在の国公有地の存在状況、それから都心部におけるビル建設需要等を勘案いたしまして、どの程度の金額のビルあるいはマンション等が建つかというのをいろいろな仮定を置いて推計いたした数字でございます。
  45. 武藤山治

    武藤(山)委員 理財局を呼んでおかなかった私のミスですからやむを得ませんが、国有地を今順番でどことどこを売り払ってそこヘマンションを建てるのかということを聞きたかったわけでありますが、大蔵省も売却する中身、大体わかっているんでしょう、理財局は、大体どこを売り払おうかというのは。どんなマンションをどこへつくるのかをちょっと聞きたかったわけですが、これは後で理財局から私のところへ資料で報告を願いたいと思います。委員長、よろしゅうございますね。
  46. 越智伊平

    越智委員長 はい、結構です。
  47. 武藤山治

    武藤(山)委員 結局政府のこの内需拡大策をいろいろ読んでみてもなかなか輸入増には結びつかない問題が多い、こう私は思うのでありますが、大臣、結局輸入をふやすよりも輸出を減らすということを考える以外ない。しかし、輸出を減らすために政治権力が介入してはいけない、自由経済でありますから。そうなると、これは業者間の話し合い——幸い日本の輸出というのは先ほど申し上げましたように、業種の数からいくと大宗を占むるものは業界の数が少ないのですね。自動車が昨年度の輸出が二百九十七億七千万ドル、一般機械が二百七十八億ドル、鉄鋼が百三十九億ドル、金属製品が百九十億ドル、ラジオや受信機など電気関係百三十三億ドルということで、千六百九十六億ドルの輸出の中で一千三十九億ドルをもうこれだけの業種で輸出しているのですね。ですから、業界が話し合って、協議して、自主規制をできるだけやる、そういうこと以外に、業者間のガイドラインを設けてやる以外に名案はないなというのが私の結論なんです。  政府がああせいこうせい、税金をぶったくるぞというのは経済の活性化を阻害するからこれはよろしくないな、こう思います。それで、結局どうしてもそういう自主規制ができないんだったら法人税を段階税率にして、利益のたくさん出たところにはたくさん税金を納めてもらう、その税金を内需拡大策の財源に使う、そういう方法でも第二段階は考える以外ないかな。しかし、自由経済というのは、やはり生産性の競争でアメリカ日本に負けたわけですから、そういうことを日本が一方的にやるというのもどうも胸くそ悪いのですね。胸くそ悪いけれども、日米の協調、日米の緊密化という観点からいくとこれもやはりやらぬといつかどこかで爆発してしまう、保護貿易主義にどんどん突っ込んでしまう。どうもその辺が非常に難しいところだなと思うのですが、このアメリカ貿易赤字を減らし、日本の輸出を少し減少させるということはいいのか悪いのか。大臣見解ですが、その場合にどういう手だて、どういう方法が一番後遺症も残さない、障害も少ない、これがベターだなという、幾つも選択肢はありますが、その中でこれ以外にないのかなという感じ、それは一体どんな手法があるでしょうかね、大臣
  48. 竹下登

    竹下国務大臣 内需拡大をすれば買えるものといいますと、私は鉄鉱石がどうかなとか、そんなことをいつも考えてみておりますが、全体的な、いわば内需が振興されることによって輸入物資がふえてくるということは原則的には言えると思っております。そこで今度は、一方、輸出の問題ということになりますと、これはいろいろ議論のあるところでございますけれども、例えば乗用庫が百八十五万台から二百三十五万台に上がったとはいえ、いわば自主規制というような形が続いておる。これも本当は結果としてそうなれば好ましいので、自主規制をやるということそのものが自由経済に反するじゃないかという意見アメリカ側にもありましたが、結局は秩序が保たれておるわけであります。したがって、武藤さんのおっしゃるのは、稲山さんがよくおっしゃるような議論一つでもあるわけです。結局業界同士の話し合いの中におの。ずから秩序を保っていくというのが番いいんじゃないか、こういう御議論でございます。  それから税の問題ということになりますと、かっての臨時利得税というのがございましたけれども、あれも本来からいうと、企業の活性化というものからすれば必ずしも好ましい姿ではない。むしろ今度の内需拡大策の中にあります電力、ガスの問題などは、いわば設備投資の前倒しを予測される円高差益等も考えながらやってくれというお願いをして、それである程度の合意を見たというような、その都度の両国の業界同士の話し合い、そしてまた、国内内需問題については、行政指導という言葉余り適切ではございませんけれども、そういう意見交換の中に、結果として、電力、ガスのような設備投資の前倒しのようなものが浮かび上がってくるというような姿が一番穏当じゃないかな、こんな感じがしております。
  49. 武藤山治

    武藤(山)委員 内需拡大するといっても、今言った財政赤字、地方財政の方は五十兆以内の赤字起債残高、地方はもっとふやしてもいいじゃないかという意見もあるわけでありますが、これもしかし借金に変わりないんで、利息負担がやがてどんどんぶえてしまうわけですから、地方に起債をどんどん認めてやるというのも限界はある。限界はあるけれども、私は、今なし得るとすれば、選択肢の中で一番可能性があるのは、五千億ぐらい地方債をばんと認めて町営住宅、市営住宅、県営住宅、これが大変老朽化しておるし狭い、これを一斉に思い切ってやらせる、これは一つの方法だ。  もう一つは、一定の道路幅、五メートル以上の道路に面したところは調整区域内でも農振地域内でも農業に支障がないと判定されるところは、住宅や小さな公害の起こらない家内工業なら認める、特に内需拡大として、目玉として現実にやり得る方策というのは、この二つぐらいかな。  今、ただ住宅融資をふやしたとかあるいは利子補給をするとかいろいろやっても、新たな土地を手に入れて住宅を建てるということはなかなか地価が高いからできないし、また今の労働者の残業がここのところに来てほとんどないです。残業率がたつと下がってしまっていますから、住宅ローンで借りて返すということは本俸だけではなかなか無理がある。そのためにちゅうちょしているという状況もある。ですから、国の今回の内需拡大策の住宅政策で大して住宅はふえないと私は思いますね。ただ、ちょっと広い屋敷があれば建てかえあるいは増築、そういう希望はかなりあるのだと思うのでありますが、しかしなかなか宅地が狭いためにそれもできないということで、私はやはり町営住宅、市営住宅、県営住宅を思い切ってこの際、本当に来年が不景気になるんだったら、一兆円ぐらいばっとやらせる。  究極的に私は、耐震耐火都市構造、何かそんな都市改造大法案をつくって、日本都市改造法案というようなのを竹下内閣になったらつくって、まず地震と火事に耐えられる町づくり、そんなものを五十年計画ぐらいでやる。そして日本経済成長内需状況というものを十分長期的に見て、インフレにならないよう歯どめをかけながら都市構造の大変革をやる、そういう大構想。昔だったらバチカン宮殿をつくったり、すばらしい芸術文化の殿堂みたいな建築物を建てて金を使うのでありますが、そういうことよりも耐火耐震都市改造法案、そんな法律をつくって、当然そこへ往んでいる人たちもそこへ入居できるようなメリットをちゃんと与えて、そういうような思い切った改造法案をつくって長期的、五十年サイドの展望を持つ。  そしてまた、国際的には軍事費を年々三%ずつ減らして、その金で世界開発にお金をかける。この前、国際論を言いましたときに、竹下さんは、私の言うふるさと何とか論に相通ずるとおっしゃったのでありますが、そういう国内と国際関係の二つの世界経済、新秩序を建設するのだという大構想をひとつ日本世界に先駆けて提唱し、やるべきだ。  日本は戦争で勝てる国じゃないし、また戦争の準備をしたってへの役にも立たないのですから、やはり平和国家に徹した国内の改造と、国際的には開発途上国へり思い切った技術供与、資金供与、そういうようなことを通じて世界の平和に貢献する、そういう大構想、やはり国民に夢を持たせる、そういう政治が今望まれているのじゃないのかな。  後段のは答弁しなくてもいいですが、前段の町営住宅、市営住宅、県営住宅、来年度予算で思い切って地方起債を認めてやらせることはどうかな、そんなことについては大蔵大臣としてどうですか。この提言は無理があるな、こう思いますか、考えてみようという気持ちになりますか、ちょっとお聞かせください。
  50. 竹下登

    竹下国務大臣 前段の方の住宅政策について、公営住宅等の問題はしばらくおきまして、いつも考えておりますのは、いわば新しく土地を求めるというのは、私もいろいろなことを計算してみることが好きでございますけれども、ちょうど日本の面積がアメリカの二十六分の一ですが、平らなところの面積が七十七分の一、約八十分の一、人口が半分ですから一人当たり四十分の一しかないということになりますと、あの三浦さんがロサンゼルスの方にいらっしゃったところが坪五万円で、それでちょうど四十倍で大体二百万というので、これは経済原則にかなうなという感じを持ったことがございます。ことほどさようにいわば土地の問題というのは大変な問題でございますので、これについてはいろいろな抜本策が考えられなければならぬだろう。  そこで当面の住宅政策ということになりますと、いわば増改築ということに勢いなるわけです。ある県で、何か住宅公庫の融資を受ける人に対して、壊し融資といいまして、そこの家を壊すための融資で二百万とかいうのを県の単独事業でやっておるというところがありまして、これは一つの考え方だなと思ったことがかつてございます。もっとも私が建設大臣をしておりましたのはもう十年も前でございますけれども、そんなことを感じたことがあったわけでありますが、今のようにいわば既存の住宅があって、しかも敷地があるわけでございますから、改築というのは大変魅力のある課題だというふうには私も思っております。ただ、地方自治体にそのときにお願いしなければならぬのは、補助はないよ、こういうことと、それで単独事業でやってちょうだいよ、こういうことをお願いしなければならぬということが考えられるなというふうにお伺いしたわけであります。  後段の問題は余りにも構想が気宇壮大でございますから、にわかにお答えする能力の範囲外にありますけれども、謹んで拝聴させていただいた、こういうことでありましょう。
  51. 武藤山治

    武藤(山)委員 あなたも行く行くは総理になる人ですから、そういう気宇壮大な構想も持たないとやはり国民からの期待は沸き起こらぬじゃないか、後輩の一人として将来を憂えるものであります。  次にもう一点、蔵相会議のときの四番目に、「円が日本経済の潜在力を十分反映するよう、金融・資本市場の自由化及び円の国際化の強力な実施。」こういう項目が入っているわけであります。私は、このことに関連して過日、ロンドンとニューヨークのオフショア市場を視察をしてまいりました。ロンドン市場とニューヨーク市場をいろいろ視察をして感じましたことは、やはり東京にユーロダラーが自由に取引できる市場を設けることは地球の裏表で二十四時間金融取引が行われるという体制になる、同時に円を国際化して国際通貨であるドルを助けるという意味からも、こういう市場は早くつくった方がいいんじゃないかなという感じを持ちました。まだ党内のコンセンサスを得ておりませんが、後ろにいる川崎寛治代議士が国際金融政策担当の責任者でありますから、川崎先生とも折々相談をしているわけなのでありますけれども大臣がこういう項目をG5で約束をした裏には、オフショア市場の開設ということを頭に置いてこういう文書ができたのか、いや、そこまでは考えておらぬ、成り行き任せだという考えなのか、いや、オフショア市場はどうしてもやらせたい、来年の通常国会には法案ぐらい出したいと考えておるのか、ずっと先になるのか、その辺の見解をちょっと伺いたいのであります。
  52. 竹下登

    竹下国務大臣 そのときに念頭にありましたのは、やはり信託の参入というのが一つございました。これは八つ——結論からいって九つ認可を開始したわけでございます。  それからその次に念頭にありましたのは、東京証券取引所の会員に外国の証券会社が参入する問題で、これも振り返ってみますと去年の四月、これは自主的に決めてもらうわけですから、政府の権限でやるわけじゃないものですから、お話し合いをしましたのが、やっと十一月と言っておりましたが、十一月ぎりぎりでこれは決まりまして、それできのうちょうど証券取引所の理事長等がかくかくしかじかになったということの報告がございました。それも念頭にありました。  それからもう一つ念頭にありましたのは、申すまでもなく今御指摘のオフショア市場の問題でございます。この問題につきましては、まずこれはことしの三月に外国為替等審議会の答申で「円の国際化の進め方」の中の「円の国際化のための方策」の「東京市場の国際化」として、   ユーロ円取引が活発化するのに伴い、そうした取引を円取引の中心である東京でも行えるようにする必要性が高まってくるものとみられる。またこれは、東京市場が国際金融センターとして発展する契機となるとともに、海外拠点を持たない銀行も国際的取引に参加できるようになる等我が国金融機関等の国際競争力強化に役立ち、ひいては、我が国企業等の資金運用・調達の効率化にも資するものと考えられる。こうした観点から、オフショア市場という形で制度面の整備を行うことについて、国内市場の自由化の進展状況にも配慮しつつ、積極的に検討を進めるべきである。 こういう答申がございました。それからその後、審議会の専門部会報告においても「東京オフショア市場の創設は国際的にも国内的にも大きな意義があり、早急に具体化を図るべきものと考える。」今、川崎さんがいわゆる金融の国際化の日本社会党の責任者で、今聞きながら、オフショア市場の最高顧問が我が党の二階堂副総裁でございまして、ははあ、鹿児島の人はオフショア市場なんということを考えられて偉いなと本当は今感じていたところでございますけれども、したがって、この報告の趣旨に沿って今検討を行っているわけであります。そこで、私は可能な限り早くいい結論を得たいと思っておりますけれども、今、次期国会に法案が出せますと断言するところにまではまだ至っていない、方向はそういう方向を指向しているというふうにお話しするのが今の段階がな、こんな感じでございます。
  53. 武藤山治

    武藤(山)委員 オフショア市場開設のために、もしロンドンやニューヨークのような市場にするとなると、地方税の問題あるいは源泉分離課税の問題、これらの問題の調整がつかないとなかなかメリットのある市場にはならない。ここらの詰めがなかなか難しいのだと思いますが、きょうは担当の国際金融局長来ていますね。——局長が今そういう事務的な折衝なり手続でいろいろ苦労しているのでしょうが、来国会に間に合うような作業手順にはならないと見ているのか、その辺はどうですか。
  54. 行天豊雄

    行天政府委員 ただいま大臣から御答弁申し上げましたとおり、オフショア市場創設のために、どういう仕組みにすべきか、それからまた、委員指摘のように、全融制度上それから税制上の問題で、こういうオフショア市場のようなものを有効に活用させるために必要ないろいろな手だてがあるわけでございますが、一方、国内金融制度への影響であるとかあるいは国内税制の原則を守って、これが税の通説というようなものに悪用されないような手だても必要だ、いろいろ検討すべき問題が多いわけでございます。私どもまさにただいまそういった問題につきまして部内並びに関係者の間で鋭意検討しておる段階でございます。したがいまして、まことに申しわけないのでございますけれども、現段階ではいっそういう法案につきまして御審議をお願いできるようになるかということにつきましてはまだお返事を申し上げられないということでございますので、御理解を賜りたいと思うわけでございます。
  55. 武藤山治

    武藤(山)委員 それはなかなか折衝が難しいと思います。誠心誠意ひとつ努力をしていただきたいと要望しておきます。  それから、通告になかったのでありますが、きょうは証券局長は来ているのですか。−来てない。では、これは大臣。証券投資の顧問業法、これも早くつくらぬと投資家がいろいろだまされたり、乱脈になって問題が多いようであります。投資顧問業法については通常国会に間に合うのかどうか、これもちょっと聞かせてください。
  56. 竹下登

    竹下国務大臣 この投資顧問業法の問題も、何とかことしじゅうに結論を出して通常国会に間に合うようにやったらどうだということを亡くなりました佐藤局長のときに相談をしました。そのときは、私も佐藤局長も必ずしも自信がなかったわけでございますが、その後順調に話が進みまして大体の整理がつきましたので、これはきょうの段階で次期通常国会には出せますということが言えるようになったなと理解をしております。
  57. 武藤山治

    武藤(山)委員 経済金融円高問題などの質問は大体以上であります。  次に、予算編成方針について伺いたいのでありますが、もう時間が大変迫ってあと三十分しかありませんので、通告をした九項目全部をお尋ねする時間がありません。かいつまんで、僕のしゃべるのは減らしてできるだけ大臣見解だけ聞くように心がけて、順次お尋ねをしてみたいと思っております。  来年度予算編成について、拡大均衡予算にしろという意見が自民党内にもかなりあるようだし、大蔵省は、いや、それは無理だ、これだけ国債を発行しているのに、それはもう緊縮予算しか編成できない、こういう議論があるようでありますが、大臣方針はどちらなんでしょうか。
  58. 竹下登

    竹下国務大臣 これは率直に申し上げまして、緊縮という言葉が当たるかどうかというよりも、逆に財政が積極的な役割を果たす状態にはないという前提の上に立って、可能な限り公共的事業も民活の環境をつくることに重点を置いて、財政の出動ということについては極めて厳しい対応をしなければならぬというのが偽らざる現状の認識でございます。
  59. 武藤山治

    武藤(山)委員 しかし、概算で前年度予算をさらに一〇%切り込んでこい、二〇%切ってこい、いろいろ概算段階の報道を見ておりますとこれはかなり緊縮型予算である。私は緊縮予算と認識をしているのでありますが、緊縮じゃないのですか。
  60. 竹下登

    竹下国務大臣 拡大でないことは事実でございますから、それは緊縮と言えると思いますが、経済学はある意味において心理学だ、こういうことになりますと、緊縮という言葉は可能な限り使わないように、財政が積極的に出動する環境にない、こういうことでお答えしておるというのが実情でございます。  仮にいわば財政の出動の一つの例を建設国債なら建設国債にしますと、一兆円出しますと試算によれば三年間ぐらいで大体四千億程度税収にはね返るのじゃないか、しかし一兆円は一兆円で残りまして、それは六十年間で三兆七千億のツケを、六十年といいますと、子、孫、ひ孫にまで回すということになりますと、生きとし生ける者やはり考えなければならぬな、こういう感じでいつも受けとめております。
  61. 武藤山治

    武藤(山)委員 二番目は、国債を年々一兆一千五百億円減らして六十五年度にゼロにしよう、この一兆円国債減額方針が最近ちょっと揺らいできたような気がするわけであります。というのは、公共事業費をふやすために国債発行をやれ、建設国債をふやしていいではないか。もう一つはきのうの夕刊で、中曽根総理は、免税国債を検討したらどうか、藤尾政調会長との話でこういう話が出た、総理はこの免税債に大変御執心であるような向きが新聞に報道されているわけですね。そうすると赤字公債一兆円は減額はする、建設国債に新たに増額をする、こういう方針になるのか。きのうの夕刊の報道によると、藤尾氏と金丸幹事長の間でこの問題は協議する、そして予算編成上の重点項目として検討するというのですね。これは大蔵省との見解がかなり衝突をする問題じゃないかと思うのでありますが、一兆円減額は貫く、それから免税国債はできない、こうはっきり答えられるのか、その辺はどうなんでしょうか。     〔委員長退席、熊川委員長代理着席
  62. 竹下登

    竹下国務大臣 まず、確かに六十五年度までに赤字国債の依存体質から脱却する、だから建設国債とは言ってないじゃないか、こういう議論はございます。しかし、これは西ドイツと日本ではこの建設国債と赤字国債の議論が通用しますが、ほかの国は、要するに財政赤字というのは等しいものではないか、こういう議論が大勢を制しております。したがって、やはり建設国債の場合も借金は借金でございますから、これに対してちゅうちょしなければならぬ。ただ公共事業ということになりますと、事業費をどうして確保するかということについては知恵を出さなければならぬ問題だな、それは地方単独事業の問題も一つの知恵でございましょうし、いろいろな角度から財政投融資資金の活用も考えていかなければならぬのかな、そういう事業費の問題については私どももこれをダウンさせてはいかぬな、こういう感じが非常にございますが、一般歳出そのものについてはやはり聖域としておくわけにはいかぬという感じでございます。  それから、赤字国債一兆円とおっしゃいましても、率直に言って単純な計算をいたしますと一兆一千五百億というものが平均の数値になりますが、これはやってみるとなかなか容易じゃないな、昨年同額にするためには概算要求時点のものを大体四千八百億ぐらい切り込まなければならぬ、その上に人勧の、表現は適当でございませんが、いわば月おくれ完全実施と申しますか、それによってのはね返りが六千億ございますから、一兆八百億を概算要求の中からなお埋め込むという作業をしていかなければならぬな、こういうことを感じますと、極力大幅な公債減額を目指すということにしておりますものの、今のところ公債減額がどれぐらいかというところを率直に申しまして申し上げるだけの自信はなかなかございません。  それから免税債というのは、あれは恐らく免税の国債ではなく、ある種の事業体が発行しますところの債券に対しての租税優遇措置に結論としてはなるのじゃないかと思うのでありますが、原則的に考えでどのような中身のものかまだつまびらかに勉強しておりませんけれども、今マル優問題というのがいろいろ議論されておるときに新しい特マル優をつくるような感じがいたすものですから、税制の上からも非常に慎重にこれは対応しなければならぬ課題だというふうに思っております。
  63. 武藤山治

    武藤(山)委員 免税国債という議論と全く同じじゃないのでありますが、結局、国鉄再建問題がいよいよ来年から俎上に上ってくると、約十五、六兆円の国鉄の債務を肩がわりする問題が出てきます。このときもやはり国債で賄う以外に手がないんじゃないかと私はひそかに思っているのですが、国債以外にこの債務をどうやって返すのかな、一般会計で毎年二兆円ぐらいずつ国鉄債務返済のために埋めていくのかな、それともやはり国債発行で埋めざるを得ないのだろうか。  そのときに、たまたま堀昌雄さんと私はこんな意見亀井さんに言ったことがあるのでありますが、相続税免税国債を発行したらどうだろうか、国鉄再建国債を買った人はその金額は相続税をかけない、そういう相続税免税国債にすればかなり売れるんじゃないか、こういう議論をしたことがあるわけなんでありますが、国鉄累積債務処理の財源と今度の公共事業のための免税債という考え方がどんどん広がっていくと、国債や社債の売れ行きというのは悪くなってしまう、今の国の財政の方の公債が消化できなくなるという心配も起こるんじゃないかなという反省を今ちょっとしているのでありますが、学者によっては、日本は貯金国家でこんなに資金がだぶついているんだから、十兆や十五兆の国債を出したって金融市場そのものは別に心配ないんだという意見もこれあり、そこのところの決断がなかなか難しいのであります。  しかし、大臣は、今の免税債の問題についてはまだこれから十分検討しないとわからぬと言っておりますが、国鉄の再建問題がやがて来年はもう出てくるのだということを頭に置くと、国債問題というのを将来長く展望したときに、そういう新規のものをつくって大丈夫かなどうかなという、そこらの不安については、大臣、どうお答えいただけますか。
  64. 竹下登

    竹下国務大臣 まず国鉄の十六兆七千億をどう始末するか。単純素朴な議論として、百三十三兆の上にぽんと上乗せすればいいじゃないか、こんな議論もございますし、いやそうじゃなく、もっと資産処分等をぎりぎりやればそれもかなり縮まって、そうして通行税の問題とかいろいろな、これはまさに目的税みたいな感じになりますけれども、そういう財源措置も考えなければいかぬじゃないかとか、いろいろな議論がございますが、この問題は、注意しなければならぬのは、安易に国債整理基金の中に突っ込んでしまうというようなことは一番避けなければならぬことだと思っております。  その際、議論のあったいわゆる相続税免除の国債というのは、前から一つの目的を限ってやったらどうだという意見があったことはございます。例えば防災国債というようなことにしたらどうだとか。この問題は、我が国の相続税の基本は、これは学問的な言葉じゃございませんけれども、西郷南洲「児孫のために美田を買わず」、一定のところまでは親の仕事として教育させたりいろいろなことをしよう、その後は本人の能力の問題だ、こういう思想で、三代続けばなくなるということをよく言われるような相続税体系になっておるのに、いわばある種の特権階級をつくる議論になるのじゃないか、こういうことから、私どもはこれは非常に否定的に考えて今日まで来たわけであります。  それで、やはり何によらず免税の国債というものをつくるというのは、結局マル優を拡大するという議論になりますので、今マル優問題等が税制の上で大きな議論の焦点となっておる際、これはやはり今考えの外に置くべきじゃないかというふうに思っております。それから免税社債も、議論を詰めていけば時々マル優をつくるようなものじゃないか、こういうことになりますと、議論はやはり私どもはこれに対して否定的に対応していかなければならぬということになりますだけに、これは容易な課題でない。しかし十六兆七千億の問題につきましては我々として、確かにことしの予算そのものにはすぐは関係ございませんけれども、国鉄の問題、六十二年までにはきちんとした対応策を議論して詰めていかなければならぬ課題でございますので、重大な問題意識は十分に持っておるところでございます。
  65. 武藤山治

    武藤(山)委員 大蔵省は、大変執念のようになった利子配当の非課税、マル優制度の廃止、そして一律課税、こういう議論が大変盛んになっているのでありますが、その際に、低所得者あるいは退職老人、一定の所得以下の人たちの貯金、これも全部一律一〇%なり五%なり一五%をかけるようにしたいのか、それともそういう人たちのは何らかの方法で還付できるような制度を同時に考えた方が私はいいと思うのでありますが、大臣はそういうことは一切考えないで一律課税をしようという発想なんですか。
  66. 竹下登

    竹下国務大臣 まず、利子配当の非課税、マル優制度の廃止という問題につきましては、税制調査会で今日までさまざまな議論があって、特にここのところ数年国会でもさまざまな議論が行われております。そういう機運が熟したことによって、税制調査会において税の抜本的な、全般にわたる検討をしていただいておる。そうなりますと、従来の経過からして、恐らく非課税貯蓄制度も含めて、利子配当課税のあり方の問題については当然検討の課題になるだろうと私も思っております。  したがって、そこへ持ってきてもう一つ、御案内のように、限度管理を一月からやろうということになりますと、さて六十一年税制でそこまで議論が進むものかどうかということについては、私もにわかに予見をもって申し上げる状態にはございません。  ただ、武藤さんのおっしゃいましたいわゆる還付問題は前から議論したことがございます、率直に言って。還付問題で一応のところで壁に突き当たったというわけじゃございませんが、議論の一番の問題点になったのは、例えば田舎なら村役場ででもお手伝いするかもしれません。が、私の島根県が七十九万人で、世田谷が七十九万というと、世田谷の税務署でそれだけのことができるかどうかというような議論まではしたことがございます。
  67. 武藤山治

    武藤(山)委員 利子課税の問題は、私はマル優制度廃止反対であります、社会党も反対でありますが、やはり税制の本則に戻って総合課税をきちっとして、そして税率の今の刻みをもっと粗っぽくして、五段階なり六段階ぐらいにして、それで上の税率も下がる、同時に総合課税をきちっとすれば、低所得者部分で利子の少しぐらいはほとんど課税にならない階層はいっぱいあるわけですから、アメリカのように総合課税をきちっとして税率の刻みを粗っぽくする。そういう手だてをしたときに一緒に利子配当課税問題というのは処理できるんだ。総合課税をしないで、利子配当だけばちっと全部一律にかけるというのはどう見ても公正、公平ではない、私はそういう持論なのであります。  でありますから、アメリカレーガン税制改革をやったら、いいところだけつまみ食いしようという中曽根総理の言うようなことには賛成できない。アメリカは個人所得というのはきちっと把握できるようになっているんですね。総合課税化をきちっとやっているんですよ、個人は。そういう上に立って、上の税率を引き下げるということをやったのであって、日本は総合課税化は法の建前にはなっているけれども、全然これには手をつけないで、しかもグリーンカードでやろうということを竹下大蔵大臣のときに法律をつくって、今度はきちっと名寄せができるように一月一日からは限度管理をしようと決めて、それをまだ実行しないうちに次のことをまたやろうなんということはまさに朝令暮改も甚だしい。政治に対する信頼というのは完全になくなりますね。そういうものは道義退廃につながっていくんですよ。  そういう意味で、私はマル優、非課税貯金問題に安易に手をつけることは反対。そして、総合課税化をきちっとやるときに同時に考える。そうなれば、低所得者や弱い層はそこで一応カバーされるのでありますから、そういう方向に二、三年がかりで検討するのが当然であって、銀行協会や金融機関の手間が煩雑だからこんなものはない方がいい、一律全部ばっとぶっかけた方が手間が省けていい、そういうことで銀行関係賛成のようでありますけれども、私はそういう安易に流れてはいけないという主張者なのでございます。大蔵大臣の任期中にこの問題が討議され結論を出されるようだったら、ぜひそういう総合課税化の問題を先にきちっと考え、同時にこの問題を処理する、そういう姿勢になってもらいたいという要望なのでありますが、大臣見解はいかがですか。
  68. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに総合課税の建前は我が国の税制でとっておるわけでございますが、グリーンカードの問題のお尋ねがありますと私もじくじたるものがございます。私の責任において国会へ提案して通していただいて、そして政令改正し、次は法律改正してポシャらせた、こういうことになるわけでございますから、私なりに言えば、まさに国民の理解と協力を得るに必ずしも至らなかったという大きな反省をしておるわけであります。  しかし、今の問題につきましては、今武藤さんのおっしゃったような議論があるということは私どもも十分承知しております。そして、税制調査会へも正確に伝えるべき議論でございますが、いずれにせよ今税調は始まったばかりで、実はきょうから今度は六十一年度税制をやらなければいかぬものですから、抜本改正の方がちょっとここのところ一月ほど中止とでも申しますか休止するという状態になりますが、この税制調査会の審議の過程において結論を見出していくべき課題だというふうに思っております。
  69. 武藤山治

    武藤(山)委員 もうやめますが、ちょうど今私も次のお客さんが来る予定になってしまったので参ったのでありますが、水野主税局長、きのうの新聞でしたかけさの新聞でしたか、今年度は減額補正しなければならなくなった、こういう見通しを述べておりまして、今年度の減収が三千億から五千億に上る見通しだ、このために赤字国債の追加発行など財源対策を検討する必要がある、こういう新聞発表でありますが、この新聞発表は事実ですか。もし事実だとしたら、こういう減収が来年の税収見込みにもかなり響いてくる。冒頭に国際経済論を少しやりましたように、来年の景気は大変落ち込むという心配を私はしているわけでありまして、この減額補正はそういう意味では大変大きな意味がある、こういうことで、少しこの辺の現状、見通し、ちょっと説明してください。
  70. 水野勝

    ○水野政府委員 六十年度税収につきましては、いろいろな機会に申し上げておりますように、前年度の進捗割合に比べますと低下しているわけでございます。したがいまして、前年度の今ごろにおきましてはかなりな増収が計上できるのではないか、その結果として実際にも二千億何がしの補正増を立てたところでございます。それに比べますと進捗割合が去年よりも低下しておる、あるいは全体として予算の見積もりよりも伸びが低い、こういうことからいたしまして、前年とはさま変わりの状態にあるというようなことをいろいろな機会に御説明をしているところでございます。その際に、補正増を立てた去年とはさま変わりの状態にあるというふうな御説明をいたしておりますところを、去年が補正増を立てたから、さま変わりだから補正減、そういうふうにどうもとられたような経緯でございまして、補正減とかなんとかそういうふうに御説明はいたしておりませんが、実際の見通しとしてはそんな感じを持っておるということでございます。  また、来年度税収につきましては、来年の政府経済見通しにつきましても全くまた準備作業中の段階でございますので、そうしたものを受けまして見通しを立てます六十一年度税収につきましても、なお余りはっきりした感触は得てはいないわけでございます。ただ、土台となる六十年度税収の伸び余りよくないということは、それはいろいろな形で六十一年度税収にも影響はないことはないだろうという、そんな感じを持っております。
  71. 武藤山治

    武藤(山)委員 そのほか、自民党税調が昨日から始まりまして、所得税、法人税、租特、間接税その他、また住民税、事業税など全般にわたる国税、地方税の検討に与党が入ったという新聞報道がありまして、これについて逐一大蔵省見解をただしておきたかったのでありますが、一つだけ、この中で水源税、水に税金をかけようというわけです。  栃木県などは非常に山の多いところで水源の県であるために、商工会議所初め農業団体、全国商工会議所などが反対の決議をして陳情書が届いているわけでありますが、税金のかけられるものには何でも税金をぶっかけようという発想から、また、公共事業費がぶった切られるということで、建設省も苦肉の策として流水占用料あるいは水源税というようなものをぶっかけようというのはいかにも思いつきで、しかも安易で実情を考えないやり方を考えているな。この構想について大蔵省賛成なんですか。
  72. 水野勝

    ○水野政府委員 お話しのように、水源税構想、それから河川の流水占用料を引き上げるといった構想がそれぞれ関係の省庁なりから出されておることは事実でございます。また一方、そういったものに対しては絶対に反対であるという関係省の御意見もあるわけでございまして、まずそういったものが政府部内なりなんなりでどういうふうに調整されるのか、私どもは現在注視しているところでございます。
  73. 武藤山治

    武藤(山)委員 大蔵大臣、こんなこそくな税金を考えるなんということはやめるように大蔵大臣としてぜひ腹を決めて部下に命じてほしい、また、閣議の中でもこういうことを主張する閣僚に対してよく説得をし説明してほしい、そういう要望を申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
  74. 熊川次男

    ○熊川委員長代理 正森成二君。
  75. 正森成二

    ○正森委員 今、武藤委員が最後の方で一言御質問になったわけですけれども、六十年度予算で歳入欠陥になるおそれがあるというように新聞で報道されております。これももっともな点がある。  例えば、本日の日本経済新聞によりますと、水野主税局長は九月までの税収実績を自民党税調で報告して、「一般会計分の税収が四—九月累計で前年同期比七・四%増と、予算見積もりの伸び率一〇・四%を三ポイント下回っていると説明した。税収不振の原因としては源泉所得税伸び悩みをあげた。今後の税収見通しについては、源泉所得税が好転することが期待しにくいうえ、これまで比較的好調だった石油税や関税が円高影響伸び悩むことが確実であることなどを説明した。」こうなっております。  これは理論的にも当然のことなんで、あなたは、こういうように説明なさった上、四、五千億円の減収はやむを得ないので、歳出増などを考えるとしかるべき対策を立てなければならぬという御見解じゃないのですか。公の席で余り言い過ぎでは困ると思って遠慮され過ぎると、権威ある大蔵委員会で新聞に載っている程度のことも局長が答弁しないというようなことでよろしくない。
  76. 水野勝

    ○水野政府委員 ただいまも御答弁申し上げましたとおり、九月末の数字で見ますと、進捗割合、伸び率等がやや低位にあるということ、その計数等それから税目等の内容につきましても、いろいろな機会に御説明申し上げているところでございます。  ただ、だからそういうところからいたしまして何千億の減収になるのではないかとか、また、それによりまして補正減が必要でありますとか、こういうふうな補正減をする考え方であるとか、そこまでは税制当局としての範囲を超えますので、いろいろな機会に税収そのものの御説明はしてはおりますけれども、そこまでのことは先ほど申し上げましたように御説明はいたしておらないところでございます。
  77. 正森成二

    ○正森委員 大蔵大臣に伺います。  かつて数年前に税収欠陥が生じまして発射台が大幅に下がったために翌年は大変なことになったという年がございます。それで、今回はそれほどのことはないにしても、昭和六十年の発射台が下がりますと、円高傾向が続くとすれば、法人税収もそれほど伸びないということで六十一年度の予算編成はなかなか大変なことになると思います。  さらに観点を変えて申しますと、税外収入がばかにならない。六十年度予算では二兆二千六百億円余りを計上しておりますけれども、その中で円高ドル安によって日銀の納付金が恐らく減るでありましょうし、為替市場への介入で外為特別会計からの繰り入れなどが非常に減少するということで、税外収入が七千億円近く減収するのではないかというような意見報道が見られます。同時に、ある局長は、そういう減少要因を指摘しながら、税外収入は前年度同程度を何とか確保したいと言っておられるのです。これは確保しなければ、大型増税をやらないということになれば予算が組めません。  こういう現状の認識が正しいのかどうかというのが一点。  それから、私の頭で考えれば、後の税外収入といえばNTTの株式売却益を思い切って計上するということ以外には考えられないのです。あとは、前のように納付金をふやさせるといっても民営化したものに納付金を押しつけるわけにはいかないということになりますと、それくらいしか考えられないのです。  こういう税外収入の減少等の認識とそれの対処策について、大蔵大臣に御所見を伺います。
  78. 竹下登

    竹下国務大臣 正森さんの御指摘と同じような心配を私もしております。税外収入を何とか昨年並みにということを考えますと、その選択肢の一つとしてはNTTの問題もあろうかと思っております。  NTTで予測されるのは、まずは配当は恐らくちょうだいできる。中間決算が出たばかりでありますから何%かは別としても、それは予測できる。それで税外収入を精いっぱいこれから工夫しようと思っております。  しかし、NTTの株の問題につきましては、本来あるべき姿ですから事実民営化したなら早く売った方がいいと思っておりますけれども、問題は決算の出ないものの見込み、その辺は国会とも相談して、仮に計上するという決断をすれば相談した上でやらなければならぬな、これは仮に一つ一つの単価を聞かれた場合答えられるだろうか、額だけで示していく方法もあるであろうかというようなことは知恵を絞って多少相談させていただかなければいかぬなという問題意識が現在の段階です。
  79. 正森成二

    ○正森委員 大蔵大臣としては非常に率直にお答え願ったと思います。  それで、NTTは最近の報道によりますと、大体一割配当は確実である。そして配当性向が五〇%台で、これは東京電力等の一流のところに遜色がないというような報道が出ておりますので、株式の売却をした場合にそんなに予想外の低い値はつかないということは予測されると思います。しかし、私が予算委員会その他でも何回か質問いたしておりますように、公正な値をつけるということになりますと、できるだけ早く証券取引所に上場しなければならない。上場するには証券取引所の規則の点に必ずしも今万全の受け入れ体制がございませんので、そういう点を、証券局長もおられますが、見ていく必要があるということになりますと、これは予算に編成するにいたしましても、何株売って何ぼ利益計上するなんということをやってしまいますとえらい問題になる。だから額だけにするかとか、いろいろ御心配があることはわかりますが、そういう点も含めて御検討いただきまして、またお知らせ願えればありがたい、こう思っております。  次の問題に移ります。  本年度の予算委員会その他で、地方自治体に対する高額補助金の一律カットはたしか経常部門だけで二千数百億円、生活保護費等だけで二千五百五十億円程度だったと思います。それが今度の概算要求では三千四百億円余りに逆にふえておりまして、一年限りではなしに、これはカット率を増大するというのではないかという心配が広がっておりましたら、十一月に入って、補助率を保育所運営費や特別養護老人ホームなどは二分の一に下げる、そして生活保護費などは七割にしたものをさらに三分の二に下げるという報道が頻々と出ております。生活保護費の場合には、さらに加えて一級地から三級地まで三段階に分かれている所在地別保護基準を見直すとかという記事が出ているのです。今でも生活保護費は地方自治体への補助金一律カットによりまして受給が減少をしておりまして、これも報道でありますが、厚生、大蔵両省が十一月十六日明らかにしたところによると、昨年十一月以来ごとし六月まで八カ月間マイナスを続け、人口千人当たり受給者数は六月十一・九と十年ぶりに十二人台を割ったというような報道がなされております。  そういうことになりますと、これは本年度の予算委員会での約束に異なるわけでもありますし、地方に大きな影響を与えるわけですが、この補助金の一律カットの問題について大蔵大臣としてはどういう方針で臨もうとされておりますのか、予算編成の前で微妙な時期ではございますが、御答弁願える範囲で御答弁願いたいと思います。
  80. 竹下登

    竹下国務大臣 一つだけちょっと訂正させていただきますのは、配当は産投会計へ直入で入って、それから、株式の売買は国債整理基金に入る。ただ、恐らく正森さんは国債整理基金にそれが入ればこっちという意味であるいは私の答弁が正確でなかったと思いますが、それだけまず申させていただきます。  それから補助金問題につきましては、学識経験者から成る検討委員会というのが今盛んに詰めてちょうだいをしておりますので、その前に両省で協議するとかという段にはどうも至っていないというのが率直な現状でございます。主計局から来ておりますので、あるいは正確を期するためにさらにお答えさせても結構だと思います。
  81. 小粥正巳

    ○小粥(正)政府委員 お答えいたします。  補助金問題につきましてはただいま大臣からお答え申し上げたとおりでございます。ただ事務的には、例えば私どもと厚生省と社会保障関係の補助金あるいは補助率問題についていろいろ議論をしていること、これは事実でございます。ただ、先生から御指摘がございました、例えば先般新聞報道がいろいろございましたけれども、私どもと厚生省が補助率あるいは補助金問題につきまして既に何らかの合意をして補助率をどうこうするという、そういう段階ではございませんで、その点は御理解いただきたいと思います。
  82. 正森成二

    ○正森委員 私の方も、売却益が国債整理基金に入って、そうすると予算繰り入れが減少して、したがってこっちが浮くという手間を省いて不正確な質問をいたしまして、大臣の答弁がやりにくかったということをおわび申し上げます。  次に、証券局長に伺いたいと思います。  ことし六月ですからついこの間ですが、債券の先物取引に関する法律が上程されましたときに、私は先物取引というのは投機性の非常に強いものであるように言われているということを指摘しまして、アメリカの例を引いて、やはり大多数がヘッジよりもスペキュレーションのために利用しているというようなことを指摘いたしました。そのときに岸田証券局長もるる答弁されて、例えばその対策としては、証拠金を徴収するとか、「値幅制限という制度を設けまして、前日の終わり値から例えば上下一円動いたような場合には、それ以上の売り買いにつきましては注文を受け取らないという形で、自動的に市場を縮小するというような制度も考えられるわけでございます。」云々という答弁が六月十二日の当委員会で行われております。  そのときは、まだやってみないから、そういうことかなということだったのですけれども、あなたも担当の局長ですから御承知のように、十月十九日に大活況で幕を切った債券先物市場がわずか六日目で売り物殺到で出来高ゼロに追い込まれる、逆に一円というのが足かせになって売買ができない、慌てて三円にしたら三円でもなかなか寄りつかないというような状況がございました。そして債券の現物市場と先物市場との取引実務の違いが混乱を大きくしておる。つまり、現物の場合には制限がないからどんどん売買されるけれども、先物の場合には制限があるから売買ができない、ますます落差が広がるということで、そもそもそうなるとヘッジの任務も果たせないじゃないかという声が起こりまして、最近の報道では、取引の技術的な面に改善すべきところがあるという意見さえ日本証券協会の会長から出ているようなありさまであります。  そこで、この問題についての証券局の感想、あえて反省とは申しません、感想と今後のシステムの見直しについて、特に証拠金を全部取られてまだ追い証拠金を出さなければならないという被害をこうむりました個人投資家の保護との関係で、御所見をお伺いしたいと思います。
  83. 岸田俊輔

    ○岸田(俊)政府委員 先生指摘のように十月十九日から先物市場を開始をいたしました。一週間足らずの間の十月二十五日にまず現物の市場が非常に大きく変動した。その原因は、短期金利の急上昇等を背景に現物市場が非常に大きな暴落をいたしまして、これに伴いまして先物市場も変動が大きかったというのが実情でございます。  私どもといたしましては、制度としては先生指摘の、この前の国会でも御説明申し上げましたような制度の構築に当たりまして過度の変動のないような制度を構築したわけでございますけれども、現実には確かに御指摘のように、当時は国債の市場大きく動いても一円程度ではなかろうかなというふうに考えておりましたが、これが国債市場始まって以来の四円というような大きな変動がございました。私どもといたしましては、こういう異常な事態ということも一応想定をいたしておりまして、こういう場合には変動幅を広げるという制度もつくっておりました。その制度を活用いたしまして、一応三円ということで市場の回復をしたわけでございます。  御指摘のように、現物の市場は値幅制限がないけれども先物市場には値幅制限がある結果、どうもそごを来すのではないかという御指摘もあるわけでございますが、私どもといたしましては、これからの長い先物市場の動きを見てまいります場合に、やはりある程度の値幅制限というものは必要ではなかろうかな、ただ、非常に変動の続いております場合には変動幅を広げるけれども、正常に戻ります場合にはやはり一円程度の値幅制限を設けていくのがいいのではなかろうかなというふうに考えております。この点につきましては、証券取引所におきましても先物市場につきまして債券先物業務委員会というものを設置をいたしておりまして、実務を含めましてさらに検討はしたいというふうに考えております。  それから、御指摘の過度の投機の防止の問題でございますけれども、私どもといたしましては、小口の投資家がこれに参入するという場合には非常に不測の損害がある場合もございますけれども一つの単位の取引を一億円以上といたしておりますし、さらにまた各社とも自主的にその投資の基準を設けておりまして、預託金が二千万円以上というのを一応の標準にしておるような状況でございます。今回の変動の動きを見てまいりますと、余り小口のものは参加しておらないで、大体が相当市場にも経験のある大口の投資家ということでございまして、今後とも私どもといたしましては、やはり過度の勧誘をして投機をあおるというようなことは証券会社の営業態度として非常に問題がございますので、この点は重ねて証券会社に注意を喚起してまいりたいというふうに考えております。
  84. 正森成二

    ○正森委員 そうすると、あなたの方としては、必ずしもシステムというものを見直して今の現状を、今のシステムを大きく変える必要はない、こういう御見解ですね。
  85. 岸田俊輔

    ○岸田(俊)政府委員 基本的な枠組みといたしましては変更するつもりはございません。
  86. 正森成二

    ○正森委員 次に、関税局長来ておられますか。  貿易摩擦の関係で皮革と革靴の自由化という問題が言われておりまして、アメリカが一方的に設定した報復措置発動の期限がもう迫っておるというように言われております。  これも報道によれば、皆さん方の方が輸入数量の割り当て制からいわゆる関税割り当て制、そういう方向へ移行するということで収拾案を出したけれども、米側は無条件の自由化を要求しているというようなことも言われておりまして、私はあえて詳しくは申しませんけれども、この皮革産業というのは、従業員が十名以下というのが報道によれば七〇%ぐらいに達しておると言われております典型的な中小企業分野でございますし、そして同和地区関係の非常に苦労なさっておられる方がおられる分野でもあるのですね。ですから、我々といたしましては、この皮革、革靴関係の米側の要求を安易に受け入れるということは、中小企業保護の上からいいましても、長らく社会で苦労なされました人を守っていくという点からも、我が国のそういう実情を訴えて国益を守っていかなければならないと思うのです。  それで、ここで御答弁願える範囲で、できるだけ詳しく現状と方向を御答弁願えればありがたいと思います。
  87. 佐藤光夫

    佐藤(光)政府委員 先生指摘のとおり、皮革、革靴につきましては現在関係国と交渉中でございます。  簡単に経緯を申し上げますと、昨年の五月にガットの場で、まず皮革につきましてこれはガットの規定に適合していないという意味での自由化勧告が行われたわけでございます。その後、革靴の方にりきましてもアメリカから同様の問題提起がなされておるわけでございます。そうした状況にかんがみまして、本年の七月に我が国政府といたしましては、先ほど指摘のとおり、ガットの規定に適合するような格好にしよう、片やまた、御指摘のとおり国内の産業事情も十分に踏んまえて、現在の数量制限制度から関税上の措置に移行する、こういう基本的な方針を決定いたしまして諸外国と交渉中である、こういう状況でございます。  簡単に申し上げますとそういうことでございますが、もうちょっと補足させていただきますと、アメリカ側は、通商法の三百一条という規定に基づきまして対抗措置をとるというようなことを公表いたしまして、公聴会その他の手続を進めておりまして、その期限が十二月一日ということに相なっておるわけでございます。この十二月一日というのは、向こう側のサンクスギビングの休暇等もございまして若干延びておりますけれども、そう大幅に何日も延びるという話ではないだろうというふうに理解をいたしております。     〔熊川委員長代理退席、委員長着席〕  そこで、まず我が国といたしましてはアメリカと交渉をして、そういう我が方の実情もるる説明をし、三百一条による対抗措置というような、いわば手荒など申しますか穏やかでない措置でなく、相互の理解を深めたい、こういうことで通産省の若杉審議官以下が訪米をいたしまして、先方のUSTRのヤイター代表との間で鋭意交渉中でございまして、今まさにその交渉のさなかという実情でございます。この細かい話につきましては、その事柄が外交交渉にかかわるものでございますのでちょっと控えさせていただきたいと思いますけれども、通産省はもとより私どもも、国内事情を十分に踏んまえ、かつまた、ガットの場でガットに適合しないということが決定されているような事柄でもございますので、そのことも他方において十分踏んまえながら鋭意交渉に努めているというのが現状でございます。
  88. 正森成二

    ○正森委員 まさに一番微妙な時期ですからこれ以上は伺いませんが、中小企業が非常に多いということも踏まえて精いっぱい頑張っていただきたいと思います。  時間の関係で最後に、銀行局長来ておられますか。えらい細かな問題で申しわけありませんが、一問だけ聞かしていただきます。  金融制度調査会の専門委員会の記録を見ておりますと、ある委員の方々が、金融機関がさらに積極的に消費者信用に取り組むためには利息制限法の上限金利の引き上げもしくは適用除外の検討が必要であると、利息制限法の改正を求めるという意味の発言をしておられますし、また、「金融財政事情」に載りました匿名の座談会なんか見ましても、「利息制限法は三〇年前にできた法律であり、そろそろ上限金利を見直してもいいのではないか。」とか、それからカードローンについては、融資のシェアが小さいのに収益の部分は非常に大きい、六倍ぐらいもうかっておるのだというようなことを言いまして、それで盛んに利息制限法の改正あるいは撤廃というようなことを主張しておられる方がいるわけです。  これは消費者信用という点でこういう御意見が出るのでしょうけれども、利息制限法はやはりそれなりの歴史があり、役割を果たしてきているので、軽々に制限利息の最高を上げるとかいうようなことは行うべきでなく、慎重でなければならぬと思っておりますが、銀行局としてはこういう金融制度調査会等で出ております何人かの委員意見についてどういうように評価されておられるのか、あるいは将来展望についてはどういうように思っておられるのかお聞きいたしまして、質問を終わらせていただきます。
  89. 吉田正輝

    ○吉田(正)政府委員 御質問の専門委員会の御意見でございますけれども、事実五十九年十月から私ども金融制度調査会におきまして消費者信用のあり方に関する専門委員会というのが設けられまして、消費者金融のあり方について議論しておるわけでございます。そのバックグラウンドは、やはり消費者ニーズにこたえること、あるいは消費者を保護するにはいかにしたらよろしいかというような議論をやっておりますけれども、これは関係省庁も多い、関係業界も多い、それから新しい分野としてもなかなか難しい問題があるということで、幅広く御意見を聞こうということで、いろいろな方をお呼びして意見を聞いている段階でございます。まだまだ結論も出ていない段階でございますので、最初に申し上げましたようにまだ結論は出ておりません。  行政のあり方とか業界のあり方とか立法のあり方、そういうことを御議論して、御意見を聞いている段階でそういう御意見が出てきているのも事実でございます。その考え方は、こういう消費者信用というのは小口であるとか、それから非常にリスクが高い、したがってそういうニーズにこたえるためにはやはり相当費用もかかる、だから一方では審査技術を向上するとか、その事務の効率化を図るとか、そういうような経費の節減を図りながら育てていくためには、三十年前という御議論がございましたけれども、消費者信用などのなかった三十年前の利息制限法というもののあり方も見直して、ある程度金融機関の側でもこういう効率化を図りながら適正な消費者信用というものを図っていくためには利息制限法も少し検討の対象にしなければならぬのじゃないかという御議論は、かなりあるのは事実でございます。  結論は出ておりません。しかし、利息制限法となりますと大蔵省というよりはむしろ法務省の所管でもございますので、結論を出す場合にはまたそういう議論を踏まえながらやっていきたいというふうに考えているわけでございます。
  90. 正森成二

    ○正森委員 終わります。
  91. 越智伊平

    越智委員長 次回は、来る六日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時二十四分散会      ————◇—————