運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1985-11-08 第103回国会 衆議院 大蔵委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和六十年十月十四日)(月曜日 )(午前零時現在)における本委員は、次のとお りである。   委員長 越智 伊平君    理事 熊谷  弘君 理事 熊川 次男君    理事 中川 秀直君 理事 堀之内久男君    理事 上田 卓三君 理事 沢田  広君    理事 坂口  力君 理事 米沢  隆君       糸山英太郎君    大島 理森君       加藤 六月君    金子原二郎君       瓦   力君    笹山 登生君       田中 秀征君    中川 昭一君       東   力君    平沼 赳夫君       藤井 勝志君    宮下 創平君       山岡 謙蔵君    山崎武三郎君       山中 貞則君    綿貫 民輔君       伊藤  茂君    川崎 寛治君       渋沢 利久君    戸田 菊雄君       野口 幸一君    藤田 高敏君       武藤 山治君    石田幸四郎君       古川 雅司君    宮地 正介君       矢追 秀彦君    安倍 基雄君       玉置 一弥君    正森 成二君       簑輪 幸代君     ————————————— 昭和六十年十一月八日(金曜日)委員長指名で 、次のとおり小委員及び小委員長を選任した。  税制及び税の執行に関する小委員       加藤 六月君    熊谷  弘君       笹山 登生君    中川 昭一君       平沼 赳夫君    山崎武三郎君       山中 貞則君    山本 幸雄君       伊藤  茂君    沢田  広君       野口 幸一君    坂口  力君       矢追 秀彦君    米沢  隆君       正森 成二君  税制及び税の執行に関する小委員長                 熊谷  弘君  金融及び証券に関する小委員       糸山英太郎君    大島 理森君       瓦   力君    熊川 次男君       笹山 登生君    田中 秀征君       平沼 赳夫君    山本 幸雄君       上田 卓三君    川崎 寛治君       渋沢 利久君    古川 雅司君       宮地 正介君    玉置 一弥君       簑輪 幸代君  金融及び証券に関する小委員長 熊川 次男君  財政制度に関する小委員       糸山英太郎君    大島 理森君       金子原二郎君    中川 秀直君       宮下 創平君    山岡 謙蔵君       山崎武三郎君    綿貫 民輔君       伊藤  茂君    沢田  広君       武藤 山治君    宮地 正介君       矢追 秀彦君    安倍 基雄君       簑輪 幸代君  財政制度に関する小委員長   中川 秀直君  金融機関週休二日制に関する小委員       金子原二郎君    田中 秀征君       中川 昭一君    藤井 勝志君       堀之内久男君    宮下 創平君       山岡 謙蔵君    綿貫 民輔君       戸田 菊雄君    野口 幸一君       藤田 高敏君    石田幸四郎君       坂口  力君    安倍 基雄君       正森 成二君  金融機関週休二日制に関する小委員長                 堀之内久男君     ————————————— 昭和六十年十一月八日(金曜日)     午前十時一分開議  出席委員   委員長 越智 伊平君    理事 熊谷  弘君 理事 熊川 次男君    理事 中川 秀直君 理事 堀之内久男君    理事 上田 卓三君 理事 沢田  広君    理事 坂口  力君 理事 米沢  隆君       糸山英太郎君    大島 理森君       金子原二郎君    笹山 登生君       田中 秀征君    中川 昭一君       長野 祐也君    平沼 赳夫君       藤井 勝志君    山岡 謙蔵君       山崎武三郎君    山本 幸雄君       綿貫 民輔君    伊藤  茂君       川崎 寛治君    渋沢 利久君       戸田 菊雄君    藤田 高敏君       武藤 山治君    石田幸四郎君       草川 昭三君    古川 雅司君       宮地 正介君    矢追 秀彦君       安倍 基雄君    玉置 一弥君       正森 成二君    簑輪 幸代君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 竹下  登君  出席政府委員         経済企画庁国民         生活局長    横溝 雅夫君         大蔵政務次官  中村正三郎君         大蔵大臣官房総         務審議官    北村 恭二君         大蔵省主計局次         長       小粥 正巳君         大蔵省主税局長 水野  勝君         大蔵省関税局長 佐藤 光夫君         大蔵省理財局長 窪田  弘君         大蔵省理財局次         長       中田 一男君         大蔵省証券局長 岸田 俊輔君         大蔵省銀行局長 吉田 正輝君         大蔵省国際金融         局長      行天 豊雄君         国税庁長官   梅澤 節男君         国税庁次長   塚越 則男君         国税庁税部長 冨尾 一郎君  委員外出席者         警察省刑事局捜         査第二課長   国松 孝次君         法務省刑事局参         事官      松尾 邦弘君         外務省経済局国         際機関第一課長 登 誠一郎君         大蔵省銀行局保         険部長     関   要君         文部省高等教育         局大学課長   佐藤 禎一君         厚生省生活衛生         局食品保健課長 大澤  進君         厚生省年金局資         金課長     丸山 晴男君         農林水産省農蚕         園芸局植物防疫         課長      岩本  毅君         通商産業省生活         産業局文化用品         課長      北畠 多門君         運輸省地域交通         局自動車保障課         長       西村 泰彦君         建設省建設経済         局不動産業課長 荒田  建君         参  考  人         (税制調査会会 小倉 武一君         長)         参  考  人         (日本銀行総裁澄田  智君         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ————————————— 委員異動 十月二十四日  辞任          補欠選任   綿貫 民輔君      山木 幸雄君 十一月七日  辞任          補欠選任   東   力君      綿貫 民輔君 同月八日  辞任          補欠選任   山中 貞則君      長野 祐也君   石田幸四郎君      草川 昭三君 同日  辞任          補欠選任   長野 祐也君      山中 貞則君   草川 昭三君      石田幸四郎君     ————————————— 十月十四日  貸金業規制等に関する法律の一部を改正する  法律案伊藤茂君外十三名提出、第百一回国会  衆法第一〇号)  出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関  する法律の一部を改正する法律の一部を改正す  る法律案伊藤茂君外十三名提出、第百一回国  会衆法第一一号)  国家公務員等共済組合法等の一部を改正する法  律案内閣提出、第百二回国会閣法第八一号) 同月三十日  共済年金改善等に関する請願上田卓三紹介  )(第一〇〇号)  国家公務員等共済組合法等の一部を改正する法  律案反対等に関する請願(林百郎君紹介)(第  一二四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  小委員会設置に関する件  参考人出頭要求に関する件  国の会計税制及び金融に関する件      ————◇—————
  2. 越智伊平

    越智委員長 これより会議を開きます。  この際、御報告申し上げます。  本委員会委員でありました塩島大君が、去る九月二十日、逝去されました。まことに哀悼痛惜の念にたえません。  ここに、委員各位とともに故塩島大君の御冥福を祈り、謹んで黙祷をささげたいと存じます。  御起立をお願いいたします。——黙祷。     〔総員起立黙祷
  3. 越智伊平

    越智委員長 黙祷を終わります。御着席願います。      ————◇—————
  4. 越智伊平

    越智委員長 この際、新たに就任されました大蔵省主税局長関税局長理財局長国税庁長官及び国税庁次長から、それぞれ発言申し出がありますので、これを許します。水野主税局長
  5. 水野勝

    水野政府委員 このたび、主税局長を拝命いたしました水野でございます。よろしくお願い申し上げます。(拍手
  6. 越智伊平

  7. 佐藤光夫

    佐藤(光)政府委員 このたび、関税局長を拝命いたしました佐藤でございます。よろしくお願いいたします。(拍手
  8. 越智伊平

  9. 窪田弘

    窪田政府委員 理財局長を拝命いたしました窪田でございます。よろしくお願いいたします。(拍手
  10. 越智伊平

  11. 梅澤節男

    梅澤政府委員 国税庁長官を命ぜられました梅澤でございます。今後ともよろしく御指導をいただきますようお願いいたします。(拍手
  12. 越智伊平

  13. 塚越則男

    塚越政府委員 国税庁次長を拝命いたしました塚越でございます。どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)      ————◇—————
  14. 越智伊平

    越智委員長 国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  国の会計に関する事項  税制に関する事項  関税に関する事項  金融に関する事項  証券取引に関する事項  外国為替に関する事項  国有財産に関する事項  専売事業に関する事項  印刷事業に関する事項  造幣事業に関する事項の各事項につきまして、今国会中国政に関する調査を行うため、議長に対し、国政調査承認要求を行うこととし、その手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  15. 越智伊平

    越智委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  16. 越智伊平

    越智委員長 次に、小委員会設置に関する件についてお諮りいたします。  先刻の理事会において協議いたしましたとおり、それぞれ小委員十五名より成る  税制及び税の執行に関する小委員会  金融及び証券に関する小委員会  財政制度に関する小委員会  金融機関週休二日制に関する小委員会を設置することとし、各小委員及び小委員長委員長において指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  17. 越智伊平

    越智委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————  小委員及び小委員長は、追って指名の上、公報をもってお知らせいたします。  なお、委員異動に伴う小委員及び小委員長補欠選任並びに小委員及び小委員長辞任の許可、それに伴う補欠選任につきましては、あらかじめ委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  18. 越智伊平

    越智委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  19. 越智伊平

    越智委員長 国の会計税制及び金融に関する件について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  各作調査のため、本日、参考人として税制調査会会長小倉武一君及び日本銀行総裁澄田智君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  20. 越智伊平

    越智委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  21. 越智伊平

    越智委員長 この際、大蔵大臣から発言を求められておりますので、これを許します。竹下大蔵大臣
  22. 竹下登

    竹下国務大臣 単身赴任者に対する税務上の措置につきましては、単身赴任者業務出張に付随して留守宅に帰宅する場合に支給される旅費について、本来の旅費趣旨から著しく逸脱しない限り非課税とする方向で検討してきたところでありますが、これについては本日付で国税庁長官通達を発遣し、来る十一月十五日から施行することといたしました。     —————————————
  23. 越智伊平

    越智委員長 質疑申し出がありますので、順次これを許します。渋沢利久君。
  24. 渋沢利久

    渋沢委員 税調会長に早くからお出ましをいただきまして、大変恐縮でございます。幾つお尋ねいたしたいと思いますが、最初大蔵大臣に、先般総理の名において税調諮問されました税制改革についての諮問、もう既に税調は作業を始めているわけでありますが、この諮問特徴、性格ということで、ちょっとお尋ねをしておきたいと思います。  私、大蔵、新しいものですから、最近の事情しかわかりませんけれども、しかし今度の総理諮問は、諮問文を読んだ限りにおきましても、なかなか異例な、といいますか、今までにない念の入った諮問中身になっているように思うのであります。これは並み並みでないという感じがするわけでありますけれども、最初にこの諮問の、特に幾つかの注文をつけているようなところがありまして、特徴だと思うのでありますが、今度の諮問は、通常の諮問と違った意見でどういう特徴を持ったものか、というようなことについてお尋ねをしておきたいと思います。     〔委員長退席堀之内委員長代理着席
  25. 竹下登

    竹下国務大臣 一番変わっておるとでも申しましょうか、従来は三年に一度新しい税調先生方、任命をされますと、いわば国税、地方税あり方についてというような非常に総括的な、しかも一般的な諮問の中で御自由にいろいろな御討議をいただいて、中間答申なりあるいはその年次の税制あり方についての答申を受ける。が、今度は、今渋沢さんもおっしゃいましたように、構えてとでも申しましょうか、そういうことから税調に対しまして、まさにちゃんとした機会に「下記の事項諮問します。」こういう諮問で、「記」として「最近における社会経済情勢の推移と将来の展望を踏まえつつ、公平かつ公正な国民負担の実現、簡素で分かりやすい制度の確立及び活力ある経済社会の構築を目指し、かつ、国民の選択の方向を十分くみとり納税者理解と協力を得られるような望ましい税制あり方について審議を求める。」とされて、「審議とりまとめに当たっては、まず、税負担軽減合理化のための方策について明らかにし、次いでその財源確保のための方策等を含めた税制改革の全体的方向について明らかにすることとされたい。」という、かなり構えた、またあるいは踏み込んだ形の諮問になっております。
  26. 渋沢利久

    渋沢委員 そこで、言われるところの減税部分といいますか、「まず、税負担軽減」この部分でひとつ意見をまとめて出してほしい、「次いで」ということで、非常に諮問内容をあらかじめ区切って諮問をしている。大変異例な、おっしゃるとおりまさに気負ったと思われる中身諮問されておるわけでありますが、これは二つ答申、まあ答申一つのものでしょうけれども、しかし内容的には区切りのある、まず第一次答申といいますかそういうものがあって、次いで包括的な第二次答申というような——答申という表現を使うとか使わないということは別問題であります。内容として、第一次提言といいましょうか中間報告という形式になるか、そういう形式論は別といたしまして、ボールを投げた側、諮問した側の願望というか意図というものをお尋ねするわけですけれども、そういう趣旨からいうと、これは、いわゆる第一次的なものとしてまず出してほしい、一区切りついたところで包括案を、第二次案というのでしょうか、二段階論というのでしょうか、そういう形で返ってくるボールを期待しているという中身として理解されるのですけれども、そういうものでしょうか。
  27. 竹下登

    竹下国務大臣 これは御指摘なさいましたとおり、さらに総理大臣あいさつの中には、「御審議に当たりましては、税に関する重圧感を除去し、まず、国民理解を得ることが重要であることに鑑み、とりまとめ手順としては、負担あるいは負担感軽減合理化に資するものからお願いし、それを踏まえた上で、一体としての包括的な御指針を来年秋頃までにいただければ幸いに存じます。」こういうことになっておるわけであります。  まさに精力的に今御審議、御検討をいただいておるさなかでございますが、審議日程を具体的に申し上げられる状況にはございませんけれども、答申の時期は、今申し上げましたように来年秋ごろを目途に包括的な指針を示してほしいというごあいさつがなされておるわけでございますので、中間的な取りまとめ方をいつどのような形で行うかというような問題につきましては、今後やはり税制調査会においてその審議状況等に応じて御判断いただく事項で、こちらから期待をするとかあるいは希望するとかいう形のものではないというふうに理解をいたしております。
  28. 渋沢利久

    渋沢委員 それはおっしゃるとおり、最終的には受けた側の税調でお決めになることですけれども、私は投げた側の願望といいますか意図というものについてお尋ねをしているわけですが、その内容でいうと、中間答申というか中間報告というか第一次提言というか、言い方は別として、まず一つ区切りのついたものを出してもらう。それから最終的には来年の秋ごろまでにまとめたものを出してもらう。そういう二つ答申ないし答申的な提言を、報告を求めるという趣旨である、どう見てもそういう内容になっておるわけです。ただその時期はまだ何ともこちらが言うべき立場でもなければ時でもないという意味では、今大臣のおっしゃることはわかるのですけれども、しかしその中身区切り方というのは、この文章はそういうことです。これは後で会長お尋ねするけれども、もしそういうことであれば、時期は別といたしましても、まず第一次答申あるいは中間報告あるいは第一次提言というか、どういう表現になろうと、ともかく「まず」ということで区切りをつけた部分についての一つのまとまった答えがいずれかの時期に返ってくるということをスケジュールとして理解したらいいのかということをお尋ねしていこうと思うのですけれども、投げた側の意図としてもそういうことだというふうに理解してよろしゅうございますね。
  29. 竹下登

    竹下国務大臣 まず、重圧感等々の問題を除去するという角度から御審議を始めてくださいませ、しかし、いただく答申は来年秋ごろで包括的に御答申くださいませ、こう言っているわけでございますから、第一次とかあるいは中間とかそういうことをあらかじめ予測なり希望したものではございません。  ただ先生、いずれにせよ六十一年度税制というのがございますよね。そこのところの問題はまた別の問題として存在するであろうと思っておりますが、あらかじめまず、簡単な表現で言えば減税あり方をやって、それでひとつ答申をちょうだいして、さて、包括的に、安定的歳入源として何を考えるかということを後からやってというふうな、区分けをしてお願いしておるという気持ちはございません。
  30. 渋沢利久

    渋沢委員 それはよくわかる。それは当たり前のことだと思うのですが、ただ、予算委員会総理自身説明しておられることによりますと、例えば、これはそのまま読みますと、政府税調諮問したのは、まず減税の案を先行させてくれということである、それを国民の前に示していろいろ議論して形を整えた後、財源案をどうするかという包括案を示して議論をしていくんだという趣旨説明をしておりました。私もテレビで予算委員会の討論を聞いておりました中にもそういう趣旨のことがありましたし、新聞で今報道されております表現でいいますとそういうことになっております。つまり、まず減税の案を先に出してもらう、そしてそれを国民の前に投げかけて議論をしてもらう、それで形を整えて、さらに引き続いて包括案をと、こういう趣旨説明をされておるわけであります。  そういうことでいいますと、どうも税調の側からまず当然私が先ほどお尋ねいたしましたような第一次案的なものが出るということを想定して諮問されたのかな、まずこれこれ、まず減税、次いで財源案、こういう区切りを、諮問の中で異例な表現注文をつけられたというのも、まさに総理予算委員会答弁しておられるように、そういう返し球答申手順についてもかなり具体的なものを想定してお出しになっているというふうにこれは受けとめざるを得ないわけであります。今大蔵大臣は、いや、そんなことはない、第一次とか中間報告というようなことを想定しているのじゃなしに、順序としてまず減税を検討してもらいたい、次いで財源を考えてもらいたい、包括して一つ答申を来年秋に出してもらえばそれでいいんだと。常識的にはそうなのでありますが、しかし、予算委員会での総理説明は、このことについては違う説明をしておられると思うので、念のためにまた伺っておきたいと思います。  そうすると、答申は一本という形で出るのであって、まず減税と言って区切りをつけた部分について中間答申とか中間報告とか提言とかいう形のもので途中出てくるということは想定しない、一括して来年秋ごろ、抜本的な税制改革の案が税調から一つのものとして一定の時期に出てくることを期待する、そういう諮問であると受けとめてよろしいわけですか。
  31. 竹下登

    竹下国務大臣 一番最近が、去る六日の参議院予算委員会質問がございまして、その中で明らかにされました総理のお答え、諮問した際にはこれはまず減税というものを考えてください、そうして次に、それを賄う財源について包括的一体としてまた御答申を願いたい、それは来年の秋までにお願いしたい、そういうふうに言ってきておるのでございまして、若干誤解があると私とすれば遺憾でございます、こういう答弁がございました。  だから、やはりその答申の、中間報告とかいうような問題については、これは今後の税制調査会においての御審議状況等に応じて御判断をいただく事項であって、あらかじめ、まず税負担軽減等で何らか中間報告でも何でも出してくださいませよという意図でもって言ったものではないという趣旨答弁がございましたので、それはあくまでも税調の自主的な御判断の問題で、最終的にお願いしておるのは来年秋ごろまでの包括的答申だ、こういうことにおおむね区分けされたんじゃないかなと私も承っておりました。
  32. 渋沢利久

    渋沢委員 しかし、例えば今度の税制改革に当たっての中曽根総理が描くプログラムというものは、明年度、六十一年度減税の実施、そして六十二年度ないしそれ以降、いわゆる増税を含む、財源方策を軸とする税制改革案という形で、二段にこの増減税を分離して施行するというプログラムがあるのではないか。これは予算委員会でも、自民党の小泉さんの御質問も聞いておりましたけれども、総理、自分の任期の時代に減税をやって、あとは任期が切れた先に増税を残すなどというようなことでいかがなものかという趣旨お尋ねがあったり、あるいは参議院で今御指摘公明党議員質疑も私も聞いておりましたけれども、そういう観点での指摘に対して総理大臣は、いや、税調に言っているのは、プランを分けて、まず先行して減税の案を立ててくれ、そして次いで二次案を、包括案を出してくれ、こういうことを言っているのであって、何も実施ということを前提にして考えているのでは全くないんだ、実施を分離するということは考えてない、もちろん答申も包括的に一体として出てくるものだけれども、しかし、あえて答申の案づくりについてはまず減税部分をひとつ先行してほしい、そういうことでありますという説明をしておる。したがって、まず六十一年度減税、六十二年度以降増税という分離方式を考えているわけでもやろうとするものでもない、こういう説明をしておる。しかしその中で、案としてはまず当面減税案をまとめて出してくださることを期待しているという趣旨で言っておられるように思うのであります。  ただし、それを税調がどう受けて、どう対応するかは税調のこれからのお仕事になるわけですから、今から、いつどうするということはおっしゃれないことだろうと思いますけれども、出された意図というのは、総理の言葉でいえばそういうことになるだろう。その点を大蔵大臣から説明を受けようと思っているわけですが、いかがなものでしょうか。だとすると、やはり何らかの形で案が出てくることを期待した総理の計画、お考えになっておるんじゃないでしょうか。それとも、今おっしゃるように、それはあくまでどういう順序でやるか税調内部のものでありまして、この諮問に対して税調が世間に出してくるもの、政府に出してつまり世間に出てくるのは来年の秋ごろまとまった形で出てくる、それが総理の期待したものであるとすれば、その文章の前段が減税部分で後段が財源部分である、そういう仕分けでしかないというものとして理解せざるを得ない。その辺がどうも鮮明でないものですから、しつこいようですけれども、いま一度わかるようにお話をいただきたい。
  33. 竹下登

    竹下国務大臣 一番近いものでいいますと、今渋沢さんのお受けとめになる一つの根拠として、諮問に際しては、これはまず減税というものを考えてください、そしてその体系を国民の前に、速記がちょっと明らかでないのですが、ただしてください、あるいは出してくださいの意味かもしれません、そして次に、それを賄う財源について包括的一体としてまた御答申を願いたい、来年の秋までにはお出し願いたい、そういうことを言ってきております、こういう若干ニュアンスのこもった言葉にとれるかもしれませんですね。  したがってそれは、総理の気持ちの中には若干なり、中間報告の形でお出しになるのかあるいは審議の実態等を記者会見でお述べになるのか、国民がいずれにせよそういう審議に対しては関心を持つものでございましょうから、それが国民の前に明らかになることは期待しておられるかもしらぬ。ただ、税調の自主判断ではございましょうが、できるだけ中間答申を出してくださいとか、そこまでは踏み込んでいないのじゃないかと考えます。
  34. 渋沢利久

    渋沢委員 そういうことだろうと思うのです。それは、中間報告とか中間答申とか第一次とか、そこまで際立っておっしゃったら大変おかしいことなんですが、しかしニュアンスとして総理が言われた意味は、今大臣もおっしゃるように、形はどうあれ、まずその部分について受けとめて、国民にわかる形で引き出して、そして一緒に考えてもらうというか投げかける、国民の中につまり提起するというか、そういう趣旨の気持ちを説明されておるわけです。ですから、途中である部分が世間に出て、それが議論される、世間に正式に出てくるというふうに受けとめるべきではない、これはあくまで最終的に一本で出るものだと決めつけてしまうのは、ちょっと私は総理の考えていることとはニュアンスの上で違いがあるように思うのです。ですから、正直言って、総理のそういう説明の中では、中間報告とかいうものを受けて国民に物を言う、投げかける、そういう部分をちゃんと頭に描いておっしゃっているということは非常にはっきりしているように思うのです。  そこで、それでなければ大蔵大臣、わざわざ諮問の中で、まずこれ次いでこれというような諮問をお出しになる理由がないのですよ。それは一括して秋ごろまでに出してくれというなら、常識からいえば、増税部分減税部分を区分して特に検討しろなんという出し方自体にちょっと問題がありませんか。どだいシャウプ勧告以来の抜本的な税制改正と言っておるんですね。そういう中で、減税部分財源部分とを分けて案づくりを期待するということ自体が通常考えられない。まず減税、次いでこれ、この諮問自体の意味が私は非常に不可解に思うのです。しかし、明らかに総理はこういうものを提起し、そして途中でそれがどこかで国民の中に投げかけられるという場面を想定して物をおっしゃっていることだけは間違いない、そういうことであります。しかし、諮問のありようとして、増減税を分離して物を考えるというあり方というのはこれは筋としていかがなものでしょう。ちょっと筋の通らぬ問題の出し方ではないだろうか。それは税調がお考えになることであって、専門家で最も信頼する御自身の諮問機関に、中身について増減税を分離して答えを出してくれというような趣旨のことを諮問なさる意味というのは、私はちょっと理解しがたいので、説明願いたいのです。
  35. 水野勝

    水野政府委員 今回の諮問につきましては、諮問本文の前に諮問の「趣旨」というのがございまして、その趣旨によりますと「社会経済情勢の変化は著しく、これを背景として、税制に関し、さまざまなゆがみ、ひずみや税に対する重圧感等が指摘されてきているところであり、その中にあって国税、地方税を通じ、中堅所得者層を中心とした負担軽減合理化、企業負担の適正化を求める声も高まってきている。」という前文がありまして、それを受けて諮問本文があるわけでございます。したがいまして、とにかく税に関する重圧感を除去し、まず国民の御理解を得ることが重要であることにかんがみ、取りまとめの手順としては軽減合理化からお願いをした、こういうふうな考え方になるのではないかと思うわけでございます。その取りまとめの手順をこのような形にしたということが、また諮問総会での総理のごあいさつの中でもそういった説明がなされているところでございます。
  36. 渋沢利久

    渋沢委員 つまり、二つに分けて国民理解してもらいたいということを、正直に今あなたも御説明になったように、総理あいさつの中にも、税に関する国民の中にある重圧感を除去したい、国民理解を得ることが重要であるということにかんがみて、取りまとめの手順としてはまずここをお願いしよう、こう言っているわけです。つまり、その部分についての一定の報告を受けて、それを国民にまず理解してもらうという作業を考えて、その上で、税に対する不信感、重圧感を払拭した上で本格的な包括的な指針を提起して、またそれもあわせて考えていただく、こういう手順をお考えになっているということですから、今あなたの御説明のとおり、また総理の当日の説明あいさつのとおり、これは明確にまず減税案を一次案的なものとして受けとめて国民理解してもらうという作業を政府の作業として考えているというふうに受けとめるわけであります。  私が聞いたのは、しかし、そういう本来税制改革の中で減税部分だけを取り出して、そのことについての回答をまとめ上げてそれを国民にまず理解してもらうというような発想はいかがなものか、増減税ぐるみで、つまり財源ぐるみで減税というものについての税調の案を求めるというのが筋ではないか、こういうことを聞いているわけであります。  村山調査会の中間報告を読みましたけれども、その中にもこういうことを言っています。「税制全体の抜本的見直しである以上、全体として斉合性のとれた総合的な改革案でなくてはならない。ワンセットとしての改革案のうち都合のよい部分だけを取り出して実施するが如きは厳に慎まなくてはならない。」これは常識論、税制を扱う上では大変正当な御議論だろう。減税部分だけ先に出してください、これをまず国民に不信感と重圧感があるから理解をしてもらって、その作業の後にその財源案を出してくださいというこの説明と提起それ自体に大変問題がある、不合理性があるというふうに思うのです。これは本来一括して御検討いただきたいという形で諮問すべきものではなかったか、それが本来の筋ではなかろうか、こうお尋ねしているわけです。村山調査会のおっしゃるそのことについては、それが一つの筋ではなかろうかということを聞いているわけです。
  37. 竹下登

    竹下国務大臣 従来まで申し上げてまいりましたのは、税制調査会はプロの先生方の集まりだから、可能な限り予見めいたものを挟まないで、国税、地方税あり方について、こういうような大綱をお示しして諮問をした。しかし、国会等におきまして、この両三年、議論の大半がいわば税制の問題である。そして、シャウプ勧告以来三十五年を経過した。なかんずく税制議論の中で、その比重からしていわば重圧感の問題とか、あるいは言葉が適当かどうかは別として、不公平感の問題とかそういう議論がなされておる。その点を、まずこの御議論を詰めてください、しかし包括的な答申は秋ごろまでにちょうだいしたい、言ってみれば少しプロの世界に私見を交え過ぎた諮問じゃないか、こういう御意見であろうかと推察いたしますが、事ほどさように、国会等の議論というのがそういうところへ重点が指向されておるから、あえてそれらを整理して異例のことながら諮問を申し上げた、こういうふうに理解をしていただけたらいかがなものかというふうに考えます。
  38. 渋沢利久

    渋沢委員 これはとても理解のできる話ではないのでありまして、何といいますか、私は、この諮問には政治的なにおいがまつわりつき過ぎていますよ。選挙のさなかにまさか税調答申を出すということは、どうあってもまずありませんね。まして、国政選挙が予定されている時期が来年あるわけですから、場合によれば選挙の政党間の争点になりかねない課題で政府税調が選挙中に答申を出すことはない。  そうすると、この答申、特に財源案、つまり増税案と世間で言われる部分については、来年の秋ごろまでにという時期設定を特にしておる。ことし出しておいて、しかしこれは来年の秋までに、こう言っておるのです。特にそういうことを言っておるのは、選挙以後、秋ごろというのですから、まあ十月の三十日が総裁の任期でしょう。まさか自分が任期が切れた先に期待するはずがありますまいから、常識的には、任期が来年十月三十日までである中曽根総裁が、来年秋ごろまでにこの増税案、財源案を出してくれ、最終答申を出してくれと言うことは、おおむね九月ごろには出してほしいということを頭に置いて、夏の終わりとは言ってませんから秋ごろと言ってますから、九月ごろ出してくれということを想定しておっしゃっているわけだ。これは参議院選挙の後ですね。参議院選挙の後に、御自分の任期切れに増税案を含む財源案をひとつ時期として出してくれ、こういうことを言っているんですね。そして、それより先にまずは減税部分について出してくれと言っている。これは、国民とともにまずこの重圧感を取り除くために——今大蔵大臣国会議論があるからと言うが、国会に転嫁しちゃいけませんよ。それはとにかく、総理のこの諮問内容は、なるべく早く国民重圧感を取り除けるような問題提起をこの減税部分について欲しい、こういう注文をつけているわけです。選挙中に答申を期待するということはあり得ないとすれば、これは参議院選挙以前の時期ですね。まず減税部分について議論のできるような状況をつくりたいということは、もうだれが見てもわかるような形で説明され諮問され、予算委員会答弁をされている、こういうことだと思うのです。ここまで念の入った諮問がされる。明らかに、予定されている国政選挙の前に減税案を諮問してほしい、それを国民に投げかけたい、議論したい、重圧感を取り除きたい、こう御自身も税調諮問の際のあいさつでおっしゃっておる、予算委員会でもまずこの案で国民に投げかけて議論したいという趣旨のことをおっしゃっておるのですね。そして、自分の任期切れ、参議院国政選挙の後に増税を含むところの財源案をぜひお出しいただきたい、時期まできちっとして出しておられる。これは大変異例な諮問文総理あいさつとその後の総理の態度を見て、何とも異例の諮問ではなかろうか。税調というものに対して、しかも増減税分離論なんという無理なことをやって回答を期待するというような、こんな諮問はないのじゃないですか、今まで、例のないことじゃないですか。これは少し立ち入り過ぎた諮問の姿勢ではなかろうか、同時に、余りにも政治的ではないか。  参議院選挙は、もう既にあらかじめ予定された国政選挙なのです。これは衆議院がダブるかもしれないということで、それは困るということでいろいろそれを牽制する議論もあるわけです。しかし、だれよりもたった一人その権限を持っておられる方がどうもその意図がおありになるようだから、だからこそみんな、まさに派利派略ですから、そういうことをやらしちゃいかぬ、こういって自民党内のリーダーの皆さんもいろいろ物をおっしゃっておられる。野党もいろいろ言っておるということがある。これはそうですよ。衆議院の選挙を、たまたま参議院の選挙があるからというスケジュールにのせてやるなどという、そういう性質のものであろうはずがない、本来。どう考えても、だれが見ても、解散によってしかこの課題を乗り越えることができないという状況の中で、これは本来行使できない性質のものであろうと思う。ここのところ、どうしてもちょっと力入っちゃうけど、しかし、どうもダブル選挙ということが言われるから、それについていろいろ議論がある。そういう状況の中で、その国政選挙の前に税調に対して減税の案を出してほしい、国民に投げかけたい、PRしたい、そして増税を含む財源案はその後という区切りをつけたい、これは大蔵大臣、ちょっと踏み込み過ぎだと私は思うんです。  私はこの諮問について大変不審に思うというのは、これは大蔵大臣も御理解いただけると思う。第一、その形だけじゃなしに、特別委員をここでにわかに任命された。今まで特別委員という税調委員はいらっしゃるけれども、特定のこういう諮問に絡んでこうして大変たくさんの特別委員をお願いするなんという例も余り聞かない話だ。大変な気負い方の中で、しかも私に言わせれば、こういう先走った注文をつけて税調を動かそうとしているとしか見えないわけです。  いろいろ申しましたが、税調会長として耳ざわりなお話もあったかもしれませんが、今の私の大蔵大臣とのやりとり、質問等を通してひとつ税調会長お尋ねしたいのは、どうも例のマル優の限度管理の強化ということで、せっかくの税調答申をひねってみたり、あるいはまたにわかにこれが出てみたり、グリーンカード問題しかりですけれども、まさに党税調とか政治の頂点に立っておられる人の思惑で税調というものがいつも手玉にとられて利用されているというふうにしか国民の側から見えない。税調国民の信頼を欠くようなことになったら、これは日本の税制を考える上で大変重大なことなんです。政府に対して、これは政党がやっていることですからいろいろ間違いがあり国民からさまざまな物の見方、判断はあるにしても、政府税調というのはやはり政治に対して中立的に、日本の国民税制というものをきちんと追求していくものであってほしいが、どうも最近の政府あるいは党税調の動きの中に、党高政低などと言われるように、引き回されているという印象を率直に言って私は受けるわけです。今度の諮問、しかも重大な抜本改正の諮問に当たって、私はこういう大変臭みのある総理諮問に対して非常に憤慨しておる一人なんでありますが、今後のこの運営についてぜひお考えをお聞かせいただきたいと思います。  それからあわせて、言われるところの分離答申ですか、答申と言わなくても減税部分について何らかのコメント、中間報告というものを総理が期待しておることはほぼ明らかなわけですけれども、それをどうお受けとめになっていらっしゃるか、伺っておきたいと思います。
  39. 小倉武一

    小倉参考人 大変大所高所からの御意見でございまして、まず党と政府税調の関係ですけれども、直接党と政府税調とは関係ございませんので、私ども別に党の税調にそう振り回されておるとかいうような感じは持たないのです。振り回されておるのはあるいは役所かもしれませんけれども、これは政府・与党、政党政治ですから党の意見に従って行政なり政策が立てられるということは当然のことで、その余波が間接には税制調査会、あるいは税制調査会に限らず各種の政府の委員会調査会等に影響があることはもちろんだと思うのです。  それから諮問の形でございますが、ちょっと異例に属するじゃないかという御説は、私などもそういうふうに思います。税制調査会委員の中にも、ちょっと腑に落ちかねるというような方もないことはなさそうです。ただ、考えてみますに、一つは「増税なき財政再建」という言葉がございます。したがいまして、仮に増収を目的にしておると受け取られるような税制改正に早く着手するというわけにもこれはまいらないだろう。他方、国民全体からいうと、何といいますか、税の重圧感といいますか、あるいは不公平感といいますか、そういったものがある程度ありまして、それを是正するということであれば当然減税ということも考えなければならぬというわけでありまして、減税ということを考えれば、これはまさにお話しのとおり、他方増税ということも考えざるを得ないというのが今日の状況かと思います。したがいまして、増減税というのがどうも絡み合うわけです。その絡み合う中で、しかし何でも必ず両方を同時並行的に審議していくというわけにもまいりませんし、便宜上減税ということでまず考えてみて、そしてその税源はどれくらい要るのだろうか、税制上どう対処できるのだろうかというふうな接近の仕方も一つの接近の仕方かと思います。そういうわけで、切り離すとか離さぬとかいうことよりは、仕事の順序として、いきなり増税ということじゃなくて、減税ということからスタートするのがこういう時世ではまあ穏当ではなかろうかという気もいたします。  そういうわけでございますので、ただいまのところ税制調査会では、所得税、法人税、住民税等等についてどういう減税措置といいますか、不公平感を脱却するために何が必要かというような観点から審議を進め始めた、こういう段階であります。
  40. 渋沢利久

    渋沢委員 会長、もう一つだけ伺います。  そうしますと、今のことで、まず減税で作業を始めたから、そのことについてのまとまりができた時期に、中間的だけれども、総理にそれを中間報告をするということは頭に置いておられるわけですか。
  41. 小倉武一

    小倉参考人 釈迦に説法みたいな話ですけれども、増税減税と完全に切り離して減税だけを論じて、そしてそれを表に出すということはなかなか難しいと思うのです。  例えば法人税でありますが、仮に法人税の減税を考えるにしましても、他方増税というようなことを、例えば課税ベースを広げてみる。簡単に申しますれば、特別措置について当たってみる。それとの関係もありますから、そういうことになれば減税案といったところで増税分も含んでくるわけです。そういうのがいけないというのではちょっと審議のしようがないということになりますから、余り簡単に増税減税と切り離して云々というわけにはまいらないので、恐らく考え方として減税ということをまず最初に頭に置いて、そのために増減税がどういうことになるか。その差し引きがなお他の税目によらざるを得ないとか、あるいは別の新税を起こさなければいかぬということになるのではないかということがつながってくるということで、その辺までは相当程度審議した上で、減税だけについて報告するとかしないとかということになろうかと思います。
  42. 渋沢利久

    渋沢委員 よくわかりました。これで総理意図もある面では、そのとおり行われれば期待外れということになるだろうと思うのです。総理は明らかに、先ほど来申し上げたように、途中でその部分だけ切り離してつかみ取りをして国民の中に投げかけてということをお考えになっておったことは間違いない。そういうことで税調が動いてはならぬというふうに私は思っておりましたものですから、今の会長説明を伺ってある意味で安心をしたわけですが、ぜひひとつこれからも御努力をお願いしたい。  時間がありませんので、問題を変えまして大蔵大臣お尋ねしたいことがございます。  貿易摩擦絡みであれこれ大変な課題を背負っておられるわけであります。しかし、いわゆる摩擦の原因について日本の側にだけ問題がある、原因があるというふうに言い切れないこと、課題、問題もあるわけで、ドル高、財政赤字、経常収支の赤字、アメリカの状況の中でアメリカの経済運営、財政運営の失政と言っていいような問題が逆に日本の黒字をふやす結果を招くような部分すらあるわけでありまして、この貿易摩擦解消のためにアメリカの要求を筋の通らぬものまでのみ込むというわけにまいらぬというのは当然のことだろうと思うわけであります。やはりけじめのある対心をしてもらわなければならないというふうに思うわけであります。ところで、この九月に、レーガン大統領が突如としてたばこと皮革、靴革問題を取り上げまして、そしてアメリカ通商法の三百一条の発動というものを言明いたしました。十二月一日までにこれをきちんとしない限りはさらに強硬な報復処置をとるというような大変きつい言明が出てきたわけであります。     〔堀之内委員長代理退席、熊川委員長代理着席〕 靴や革に関する限りで日米関係はむしろ日本の入超なんです。これは事実が示しておるわけであります。アメリカが世界から輸入している革靴の日本のシェアは〇・四ないし〇・五というふうな数字、これは政府の出した数字でそう示されております。日本の革靴の原料は大部分がアメリカから輸入をしておるというような状況である。日本の靴革産業がアメリカ市場に、あるいは向こうの企業、労働者に何らの損害も迷惑も与えているという部分はないわけであります。むしろ利益を与えることはあっても迷惑も損害も全く与えてない、そういう靴革産業が特に取り上げられて、貿易摩擦のいけにえにされるということがあったのではこれはたまったものではありません。  アメリカの要求の中にも、当然受け入れて前向きに検討しなければならない課題が多く、そのために御苦労いただいておると思いますけれども、こういう一方的な余り筋の通らないものに対してまで政府が弱腰でのみ込むというようなことがあってはならぬと思います。特に靴革の問題については毅然として、こういう不当なアメリカの恫喝めいた言動に対してこれははね返していくという政府の態度が望まれるわけであります。これを期待しておったわけであります。通産はガットその他を通して、アメリカ、EC諸国その他のいろいろな要求に対して粘り強い努力をしてきたことは知っております。しかし、それも通産の担当部局が飛び回っているだけでありまして、アメリカのレーガン大統領の一撃に遭うや、率直に申し上げて、この通産を含めて政府は非常にもろくも後退をするような姿勢をとろうとしているかに見えるのであります。  まず、その数量制限の枠を外して関税処置に移行するという方針を決めたということなんでありますが、これは私はいずれにしても、靴革産業の実態その他から、またその経緯からいいまして、いかに貿易摩擦の前向き解消とはいいながらこのことについてのアメリカの態度はとても納得のできるものではないし、これに協調するという政府の姿勢は非常に問題がある、慎重でなければならぬ。外務省の担当にも来ていただいていると思うのです。通産省もおいでいただいているのですが、時間がないから簡単でいいのですが、一体どうするつもりかお答えをいただきたい。後で大蔵大臣にもちょっと意見を求めたいと思います。
  43. 北畠多門

    ○北畠説明員 ただいま先生の御指摘の点について御説明をいたしたいと思っております。  皮革及び革靴をめぐる米国からの強い要望、特に数量制限を撤廃するようにという強い要望はかなり前からあったわけでございまして、具体的には、皮革については昨年の五月でございますが、日本の数量制限がガットの規定に違反するということでガット理事会において判断が採択されたわけで、これに対する改善措置を求められておる。一方、革靴につきましてはECとか米国等からも要望があったわけでございますが、具体的に本格的な議論になりましたのはことしの二月からで、日本とアメリカの間あるいはガットの場で私どもとしては鋭意最善の協議をしてきたつもりでございますが、皮革と同様ガット違反ではないかというような議論があったりいたしまして、撤廃すべきだという要求が非常に強かったわけでございます。  私どもといたしましては、これに対して非常に厳しい国際世論があるということを認識しておるようなわけでございますが、一方におきまして、国内においては小規模零細企業が非常に多いとか、国際競争力が十分ではないとか、現在不況であるなどなどのいろいろな理由がございまして、この厳しい状況に対して、それに対するきちんとした配慮もしていかなければいけない、こういうような考え方を持って具体的にはこういう困難な国内の状況をよく考慮に入れて関税上の措置に移行するということで、ガットの規定に基づいてガット事務局に、九月二十日でございますが通報をして、現在関係国と鋭意交渉を行っておる、こんな状況でございます。
  44. 登誠一郎

    ○登説明員 皮革及び革靴問題の経緯につきましてはただいま通産省の方から御説明があったとおりでございますが、問題は、我が国の現在の輸入制度をガットに整合させるということが基本的に重要であると考えておるわけでございます。したがって、これを実現するための関税交渉を行いたいという要望をガット事務局及び関係国に通報した次第でございます。したがいまして、今後はこの交渉において我が国の事情を十分に踏まえて対応し、関係国の理解を得るよう適切な対応を行っていきたい、かように考えております。
  45. 渋沢利久

    渋沢委員 関税割り当てで守るといっても、これは非常に限界がある。関税引き下げを課題に摩擦解消のための折衝がやられようとしている中で、靴革についてだけは大幅に関税の壁をつり上げてガードしようという、しかしもうそれでしか守れない、それでも本当に守り切れるかどうかということであって、これは非常に業界も心配をしている。  今通産の課長が言ったように、この業界も大変に貿易摩擦とは無関係に長期不況、長期にわたって需要の停滞に悩まされて、惨たんたる状況ですね。五年の間に二〇%も倒産をしているというような状態です。最近の五年間のデータだけでも、二割がつぶれて廃業、倒産というような状況ですから。しかも、この前我が党の上田議員が大蔵大臣質問をされた中でも本件を取り上げて指摘をされておりましたけれども、従業員九人以下の小零細企業が全体の七〇%、三人以下が五〇%近いというような、そういう微細、零細、家内工業の非常に広いすそ野に支えられた脆弱な企業体質というものがこの業界の一つ特徴である。ここをもっと育成、強化の指導がきちんと政府の手で行われておるなら別だけれども、中小企業対策は言うまでもなく大変薄い扱い、全体の中でそういう状況で、十分な手当ても指導も育成もできない。こういう状況の中で自由化のあらしを受けるなんということになれば、もう本当にひとたまりもないという状況だろうと思う。倒産、失業というような状態がこの業界の中ではもう目の前に来ている。もう既に、この通産の態度、政府の態度を見ただけでもうこれは転廃業というものを考えざるを得ないという、そういう業者も出てくるというようなありさまでありますから、ここはひとつ、今外務省も我が国の事情をよくつかまえて頑張る、こうおっしゃるのだけれども、ぜひこの実情を——通産省は担当の省庁として業界の状況を知っておるからそれは精いっぱいの努力をしておるということは見えるんだけれども、政府全体として日米折衝の中で本当にこの業界を守り切れるような対応ができるかどうかということについては、非常にやはり心配があるわけであります。  時間がありませんが、最後にひとつ大蔵大臣、こんな状況でありますので、これはぜひこの日米交渉の中で、確かに売り過ぎて稼ぎ過ぎて摩擦を起こすような材料をたくさんつくっている大手の企業が存在するわけであります。政府は必死でこれをかばいながら日米折衝、摩擦解消に今努力しておられるが、全く関係のない業界、貿易摩擦を起こす全く何の原因も持ってない、しかもこういう弱い産業が、この日米交渉の中でまさにいけにえにされる、こういう弱い業界に対しては政府も必死でこれを守り切るという対応にならないというのは、これはまさに弱者切り捨ての思想がそのまま出ているというふうに思うわけであります。  靴革産業の実態を踏まえて、ぜひひとつ大蔵大臣も、経済閣僚会議の中枢であられるし、通産任せというようなことだけでは私はこの危機を乗り切れないというふうにも思っております。同時に、いずれにしても大変危機的なこの業界の状況に対応して、通産のしりをたたいて、ぜひもっとこの業界の体質が強くなるようなその育成指導を、財政処置を含めてきちっとやるようなことをこの機会にやっていただかないと大変なことになるという心配をしているわけであります。今後の対応策を含めて、通産と、最後に大蔵大臣から所見を伺いたいと思います。
  46. 北畠多門

    ○北畠説明員 ただいまの点について御説明をいたしたいと思います。  私ども通産省といたしましては、現在行っております交渉あるいは関税交渉において最善の努力を尽くしてまいりたい、こういうふうに思っておりますし、その具体的な関税交渉の内容については現時点では申し上げられないというふうに考えておりますが、いずれにいたしましても、私どもといたしましては、現在の抱えております国内産業の状況というのをよく認識をしておるつもりでございまして、その認識の上に立ちまして、従来から実施してきております各種の皮革の振興策、例えば海外の調査を行うとかあるいは海外の見本市に出すとかあるいは技術の研究をするとかいろいろな方法があるわけでございますが、それらの実施を確実にするというようなこと等、それから中小企業施策の中にこういうような皮革関係のものもきちんと位置づけるというようなこと、あるいは関係の都道府県等ともよく連絡をとるというようなことでこれからも対処をしてまいりたい、こういうふうに思っております。
  47. 竹下登

    竹下国務大臣 第一義的には今通産省からお答えがございました。私どもの担当するところといえば、言ってみれば、まずその交渉の推移を見きわめて、関税審議会等の問題は私の所管になるでありましょう。なお、今もお話のありました中小企業対策としての位置づけというような問題につきましては、今後協議をしていくべき課題であろうという問題意識だけは持っております。
  48. 渋沢利久

    渋沢委員 終わります。
  49. 熊川次男

    熊川委員長代理 伊藤茂君。
  50. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 竹下大蔵大臣に本当に久方ぶりに質問する機会を得まして、この夏の間もG5とかまたそのほかのさまざまの問題とか、また、竹下さん来年十一月に向けて徐々に意欲を燃やされておるようでございまして、まことに御苦労さまでございます。  税調会長にも忙しい中をお越しいただきまして、先ほどの渋沢さんの質疑の中にもございましたが、まことに大きな課題を抱えて、長年の御活動の上にさらに大きな課題と、まことに御苦労さまですし、また、先ほどもお話がございましたが、十人の暴れ馬か何かもお相手をしなくちゃならぬ。また当委員会にお越しいただきまして、御苦労さまでございます。  幾つか当面の問題を質問させていただきます。  一つは、六十一年度の予算編成にかかわる問題でありまして、既に十一月になりましたから、大蔵省でもさまざまの査定作業を進めておられるだろうと思います。年末、国会状況どうなりますでしょうか、またさまざまの難しい予算編成をしなくちゃならぬという段階になりまして、大臣もいろいろなお考えがあるだろうと思いますが、まず、六十一年度予算の性格づけ、あるいはどういう性格のものとして努力をしなくちゃならぬか、内外の経済情勢も変動しておりますから、大臣とのようにお考えになっておりますか。
  51. 竹下登

    竹下国務大臣 六十一年度の予算の性格ということにつきましては、概算要求が出そろいまして、今それに基づいての作業を各省とそれぞれ行われておるところでございますので、この位置づけというものを明確にお答えする状態には必ずしもございませんが、いずれにせよ、この今日の状態からして予算編成作業そのものは大変厳しい内容のものにならざるを得ないという問題意識の上に立って、あるいは経済、貿易摩擦問題にどう対応するかとか、いろんな問題についてこれから各省と協議を進めてまいりたいというふうに考えておるところであります。
  52. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 さっき配られておりました「ファイナンス」を読んでおりましたら、来年度予算編成、何か学者の論文が載っておりますが、一つは、厳しい財政状況で一層の財政カットを目指さなければならない。それからもう一つは、内需ということが、具体的テーマは後回しにいたしますが、さまざまやはり当然クローズアップされる。また、政府もそれに対する対応を迫られるであろうというふうなことなどいろいろあると思いますが、今言った一般論のほかに幾つか念頭にある柱と申しましょうか、いかがでしょう。
  53. 竹下登

    竹下国務大臣 予算編成が厳しい状態にある。そして、このいわば公債の減額をどれだけやっていかなきゃならぬかというような問題もございますが、今おっしゃいました内需の問題というものも、先般発表いたしました三兆一千億。これは、来年度予算を伴うものと税制改正を伴うものというのは残されております。しかしながら、二兆七百億円、あれは五十七年度でございましたか、相当な規模のものをやった。しかし、今度はさらにそれを上回るものでございますだけに、規模としては相当なものが期待できる内容である。  で、災害復旧、それからいわゆるゼロ国債による債務負担行為等の問題は当然補正予算を伴うものでございますが、さらに今度は、六十一年度予算にこれをつないでいきます場合にはどのような形をとっていくべきか。あるいは、執行面で傾斜配分というようなものが議論されておりましたり、また民活に要するところの環境の整備というようなものがいろいろ議論されておる今日でございますので、そういう問題もこれからの十二月までの間に詰めていかなきゃならぬ重要課題だ。  また、昨年暫定措置として行わしていただきました補助率問題につきましても、検討委員会で検討していただいておるところでございますが、これに対する結論も得てまだ対応もしていかなきゃならぬなどなど、重大なる問題がまさに山積をしておる、こんな感じでございます。
  54. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 まさに重大問題山積だと思います。  ただ、私は思うんですが、ことしは昭和六十年、戦後四十年、二十一世紀へ十五年とか言われましたが、さまざまな議論がございます。そして、六十一年度というものを考えますと、やっぱり何かよりいい方向に持っていく、例えば後ほどお伺いしたいと思いますが、六十年から六十一年、戦後四十年が軍拡元年になっては困るじゃないかということで、予算委員会でもさまざま一%枠論争などが激しくございましたし、これから共済年金の議論の中でもさまざまな法律制度にわたる議論もしなければならないというふうに思っておりますし、また二十一世紀に向けた設計図を今という段階でありますから、さまざまの福祉の表期展望というものも必要であろうと思います。  この間そういう関係の人の集まりに行きましたら、大分切実な要求が出まして、六十年度予算の内容、次への動きなどについて御説明をいたしましたら、失礼ですけれども、大蔵大臣の「蔵」という字は、お金の入っている倉庫のクラではなくて暗やみのクラだという話も出まして、私は、いや竹下さんはそんな人柄じゃないと言おうと思ったのですが、なかなか納得しないというようなことがございました。  幾つか関連をしてお伺いをしたいと思いますが、今大臣のお話があった補助金の問題がございます。これは、春、当委員会で長い議論をいたしましたときに、六十年度限りということがそれぞれ御答弁の中でも、また附帯決議の議論その他の中でも実はあったわけであります。  今配られた「ファイナンス」の十月号をちょっと読んでおりましたら、「六十一年度概算要求基準と概算要求」という文章が載っておりまして、主計局の方がお書きになったものですが、補助金のことが書いてあります。その内容をぱあっと読んでおりましたら、「補助金等については、第3表の」これは後でまた伺いますが、「第3表の基準により、引き続き昨年と同様の考え方によるいわゆる一割カットを行うほか、臨時行政調査会等の答申趣旨に沿ってその整理合理化を引き続き積極的に推進するものとする。」という文章が載っております。これを書いた人は主計局総務課長補佐、まあキャリアの、若い人だと思うのですが、大臣おっしゃったように今さまざまの検討作業の途中、やがては恐らく政治折衝までいくんではないだろうかというふうに見ておりますけれども、そんな段階で、春の議論の経過もあり、当委員会の附帯決議もあり、政府の意思表示もある。それがこういうところに、大蔵省が出している文章の中に、昨年と同様の考え方によっていわゆる一割カットを行うほか、さらに積極的に云々というのが載っているのですね。何かきょう委員会で、ちょうどいいときに配ってくれましたね。これはどういうことですか。
  55. 小粥正巳

    ○小粥(正)政府委員 ただいまの補助金についてのお尋ねでございますが、六十年度にお願いをいたしました高率補助金のいわゆる一割カット等の措置、これは当然のことながら六十年度の暫定措置ということでお願いをしたわけでございます。したがいまして、ただいま先生が御指摘の今後の六十一年度予算の問題につきましては、もちろんこれから予算編成過程において検討してまいる問題でございます。  「ファイナンス」と申します大蔵省の雑誌に出ておりました問題は、六十一年度の各省からの概算要求の内容につきまして、たまたまそういう内容の要求があるという紹介ということで御理解をいただければと存じます。この点は、要求に対しまして私ども財政当局といたしまして、その要求の内容を現在検討中でございますし、取り扱いはもちろん今後の予算編成過程において検討させていただく問題でございます。
  56. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 私どもは不満ですけれども、まあ今の答弁の線ならばまだわかるのです、それは大臣がおっしゃったことですから。今回のああいう一括一律カットという方式は六十年度限りということを関係大臣もいろいろと言われた。そして今後のことについては検討委員会ですか、何か検討の機関をつくって、それから三大臣覚書でしたか、いろんな経過もございますし、検討していこう、それについての論議は我々もしなくちゃならぬということです。賛否は別にして、確かにそういう筋でございます。  ここに書いてあるのはそれとは違うのです。そういうふうに書いてあればまだ意味はわかるのです。ところが、引き続き昨年と同様の考え方によるいわゆる一割カットを行うほか、さらに積極的に推進するという文章ですね。まあ若い人が勉強して書いていることをどうこう言うわけじゃないけれども、ちょっとこういうことは、しかも大蔵省の発行している雑誌に載るわけだから、適切ではないんじゃないですか。
  57. 小粥正巳

    ○小粥(正)政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、六十年度の暫定措置としてお願いをいたしましたいわゆる高率補助率の一律一割カットにつきましては、先ほど申し上げたとおりでございます。  ただ、その高率補助率のおおむね一割削減とは別に、先生御案内のように、一般的に補助金の一割カットという歳出の節減合理化一つの手法といたしまして、ここ近年の予算で、例年あるグループにつきまして補助金を一割カットという形で削減をしている、こういう手法がございます。ただいまの御指摘の点は、申しわけございません、私その記事を現在手元で正確にチェックしておりませんが、あるいはその点を申し上げたところではないかとも思うのでございます。二分の一を超える高率補助率のおおむね一割削減につきましては、先ほど申し上げましたようにあくまで六十年度の暫定措置でございますから、今後の取り扱いにつきましては、要求官庁からの要求にはいろいろ内容がございますが、これは当然のことながらこれから検討すべき問題でございます。  ただ、念のために申し上げますが、節減合理化の一手法としての補助金のあるグループにつきましての一割削減というものは、近年、例年やらせていただいておりますので、その点は引き続きという表現で御説明をした場合もあるいはあろうかと存じます。
  58. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 大臣ならいじめがいがあるけれども、若いこういう勉強している人が書いたことでしょうから、そうえらくは言いません。いずれにしても、フェアルールで物事は運んでもらいたい。中身議論のお互いの違いは私どももわかります。注意をしておきます。  それから、この補助金に関連をして、今言われたような段階にあると思いますが、その中でいわゆる調整交付金制度というのですか、何か財政力指数によって、指数の高いところは補助率を大幅に削る、そうでないところは州とか、そういう発想も一、二度この夏のうち新聞に報道されました。私は大都市出身だから言うわけじゃないけれども、やはり大都市の場合でも、そういうせこい意味でのお金の配り方の調節をするということじゃなくて、自治省ももうちょっと頑張ってもらわなければならぬと思うけれども、せめて大都市ぐらいは自立できるような一つ制度、例えば交付金とかそういうものだけじゃなくて、全般にわたるさまざまな規制もあるし、起債の問題もいろいろございますね。そういうふうな一つのパターンというものをどう構想するのかということだろう。そういう意味では、何かやり方が非常にせこいのじゃないかという気がいたしますし、それからほかの新聞を見ましたら「六十一年度公共事業補助率は原則二分の一 大蔵省が削減方針」ということで、既に建設、農水、運輸など各省に打診を始めているというふうな報道もございました。それから、目玉として教育費負担の一千億何ぼかカットですか、出ておりますが、ちょっとざっくばらんに言って、それらのことに対する考え方というのはどういうことで今のところ進んでおりますか。
  59. 小粥正巳

    ○小粥(正)政府委員 ただいま先生指摘の、六十一年度予算におきます国と地方のいわば費用負担あるいは役割分担をどうすべきか、それを予算の中にどのように織り込んでいくかという問題でございますが、これは新聞記事にはいろいろと書かれているかと思いますけれども、当然のことながら現在予算編成過程でございます。私どもも極めて厳しい財政事情の中で、先ほど申し上げました国と地方の役割分担の見直しという大きなテーマのもとで、関係省庁と実はいろいろと工夫を凝らしながら御相談をしている最中でございます。したがいまして、そこはまだあくまで関係省庁との間の御相談の段階でございまして、具体的内容につきましては検討、協議の内容が煮詰まってまいりますのにまだしばらく時間がございます。それから、もちろん国会で御審議をいただかなければいけない問題も多々あろうかと存じますが、一般的に申し上げまして、六十年度予算で既に国と地方との関係の見直しにつきまして予算編成上もいろいろな措置をお願いしたわけでございますが、六十一年度予算の問題といたしましては現在のところあくまでまだ検討中でございます。いろいろな案を事務的にはお互いに議論を激しくしている段階でございますけれども、内容につきましてはいましばらくお時間をいただければと存じます。
  60. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 年末まで議会もあることですから、また春以来の大きなポイントでございましたから、さらに突っ込んだ議論は別途したいと思います。  査定に関連いたしまして大臣に伺いたいのですが、GNP一%防衛費論争は随分予算委員会で中心議題となりました。また、五九中業に関連をした枠組みの中では何か大蔵大臣も非常に御苦労をなさったというようなことも伺っているわけでありますが、それらの中で六十一年度の査定作業が進められているというわけであります。  この間ある新聞を見ておりましたら四段見出しで「防衛費四%増に圧縮 大蔵省方針 増員要求を認めず」、とにかく「防衛費についても聖域扱いせず」、さまざまの圧縮の努力をやる。毎年そういう努力をなさいまして、最後には政治折衝でふやされるということをたどっておりますが、ただ、立場は違いますけれども、五九中業のときの大蔵省なり大臣のお気持ち、苦労ということもわかります。それから歴代大蔵大臣も言ってこられましたけれども、こういう分野も聖域ではない、それもわかります。恐らく今のままいくと、六十一年度補正になりますか、あるいは六十二年度予算になりますか、場合によっては竹下さんは総理として全体の予算編成を指揮することになるかもしれませんね。竹下さんの今後の活動の中でも非常に重要なポイントだろうというふうな気もするわけでございますけれども、そんな新聞報道を持っておりまして、私はこれは結構なことだなと思いますが、査定作業、防衛費についてはどんな姿勢で臨まれますか。
  61. 竹下登

    竹下国務大臣 これは先般、いわゆる計画、俗に格上げという言葉が使われておりますが、私が元来申しておりましたのは、いわゆる五三中業、五六中業、五九中業というのは、国会答弁いたします際は政府部内の一防衛庁内部の予算要求の一資料にすぎません、こういうお答えをしておりました。私が内閣官房長官をしておりました昭和四十六年の四十七年度予算編成の際に、この国会において、いわば第四次防衛計画の先取りではないかということで厳しく議論されて、予算が二十一日間とまりまして、ついに修正を余儀なくされたことがありました。そのとき私なりに言い分はあったといたしましても、やはりきちんとした計画だから国会でチェックされるんだ、そういう意味においては中期業務見積もりというあり方よりも、本来あるべき姿はやはり計画というものがあってしかるべきだという考え方を私は持っておったわけであります。したがって、今度計画ということが策定されたことについては私なりに、額の問題は別として、当時の考え方からすれば、これは私の考え方が実現したという気持ちも心の中には幾らかございます。それによって、いわば中業と違って計画の段階から我々の予算査定権も及ぶ、こういうことに相なるわけでございます。  しかしいずれにいたしましても、防衛費というものもこれはもとより聖域ではございません。したがってぎりぎりの調和をどこに求めていくかというのが、結局諸施策との調和をどこに求めるかというのが最終的な結論ではなかろうかと思っておりますので、私どもも、今後におきましても予算編成作業を通じまして諸施策との調和点を求めるぎりぎりの努力を行って厳しく対応していかなければならぬというふうに考えております。
  62. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 上手にお答えになりましたけれども、新聞に出ているように、防衛費といえども聖域とせずという姿勢は当然お持ちになっておられるわけでしょうね。  私は思うのですが、もう間もなく米ソ首脳会談も開かれます。いろいろな状況が変わっている。アメリカの議会でも、財政赤字もあって軍事費凍結という大きな世論が盛り上がっている。いろいろな意味での転換期だろうと思います。ですから、中曽根総理の姿勢云々は私はここでは申しませんけれども、そういう中で、しかも次の我が日本国の責任を持とうという意欲を増大させている竹下さんにとって、やはり従来の大臣がおっしゃった防衛費といえども聖域とせずやはり厳しく対応する、さっき補助金のことでは随分厳しい話が出ましたが、当然のことではないだろうかと思いますが、そういうふうに今後の査定作業を理解してよろしゅうございますか。
  63. 竹下登

    竹下国務大臣 これは聖域とせず、しかも計画は策定をいたしましたものの、その年度年度、各種の諸施策とのバランスをとって厳しく対応していく、こういうこと、その年度年度の予算についてもまさに厳しく対応すべきものだというふうに考えております。
  64. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 小倉税調会長、時間も限られてございますから、幾つ質問をさせていただきたいと思います。  今の私の前の渋沢さんとの応答を伺っておりましてちょっとけげんな気がするわけでありますが、一つ総理税調への諮問、それから審議の進め方に関係するわけであります。諮問の方は、何か今までは減税先行、後で増税財源問題という印象だったのが、参議院予算委員会の段階でやや明確になって、減税案先行であっても実際にはセットで答申があり、それがどう実行されるかという扱いであるということでございました。ただ、この経過を振り返っておりますと、自民党の中での大変勉強家の村山さんの調査会の中間報告がございましたし、それからさまざまな自民党の責任ある方の御発言なども報道されております。それらの方々からいたしますと、増減税同時同額というのは常識であるという趣旨の御発言が大分あったと思います。村山さんの調査会の報告の中でも、分離をするようなことはなかったと思います。     〔熊川委員長代理退席、堀之内委員長代理着席〕  私は減税してもらって小倉さんから増税するとか税金取るとかいうならば、その案を分離するというのはわかるのですね。ところが同じ私、これは一市民、国民が、減税がどうなるのか、それから消費税問題その他もありますから新たな税負担はどうなるのか、これは同じ人の問題でございまして、いろいろな新聞報道も読んでおりますと、この間に小倉さんの言われたことが全部正確にマスコミに報道されているかどうかは別にいたしまして、何かそういう分離分割型みたいな審議というものはおかしいんだ、政策理論としておかしいんだというふうな印象で発言をされていたように私は記憶しているのです。  また新聞もいろいろな、それをチェックして読み返してはいないのですが、他党の機関紙を引用して恐縮なんですが、これはきのうの話ですね、赤旗に、小倉税調会長がインタビューをなさって、「財源を明らかにしないで減税だけを答申するのは人をばかにしたものだ」と。かぎ括弧をしてありますから会長の言葉だろうと思うのです。政党の機関紙は、うちの社会新報も含めて、真実を語る機関紙だと思いますからうそは書いてないと思うのですが、私は、いろいろな意味で政府税調としての権威といいますか主体性といいますか、そういう意味でやはり国民に対する信頼感が必要だろうという気がするのです。各新聞に暴れ馬の発言なんというシリーズが載っておりましたから、それもささっと読んでおりましたら、同じような趣旨のことが大分載っておりました。まず先に減税案ありというのも一理あるだろうというような趣旨のことを先ほど言われておりましたが、税制のまじめな議論からしたら、新たな減税、新たな負担あり方などを含めて表裏一体ですから、議論審議も当然そういう立場からなされるべきではないだろうか、きちんと区切ったようなことはおかしい、今までの印象からして、先ほどの渋沢さんに対する御答弁総理に遠慮をなさっているわけじゃないでしょうけれども、何かそんな感じが大分いたしましたので、率直な見解をもう一度伺っておきたい。     〔堀之内委員長代理退席、熊川委員長代理着席〕
  65. 小倉武一

    小倉参考人 なかなか難しい御質問でございまして、減税を論ずれば財源はどこから持ってくるのだろうかという話は当然伴うわけで、したがって、そういうことを切り離して仮に減税だけを論じて世間に発表するということになりますと、これは余計国民を迷わすことに恐らくなるかもしれませんね。だから程度問題でありまして、減税を論ずる以上は財源をどうするのだということが、そう細かくはなくても大筋としてなくてはならぬ。あるいは一義的にこれだと決めなくても、ある程度の選択肢を残して、こういう方向財源は考えるのだということがどこかになくては、それを全く切り離して減税だけを先行させる、無論、案としてでございますけれども、案としてもそれはちょっとどうかと思うのです。  しかし、これは政府の御意見もございましょうし、税調の中の意見もございます。したがいまして、そういうことになるかどうかは今後の話で、まだ序の口でありますから、何とも申し上げられません。財源なんか考えずに減税を考えなければ減税案というのはできないのだという人は、税調の中にもおるわけです。したがって、みんなが私の申し上げたようなことで一致しているとは思いませんし、また政府がどういうふうにお考えになっているのか、これまたよくは存じませんけれども、とにかく、仮に今後一年間の審議期間があるとしますと、ほぼ一年間になるでしょう、一年間たつまで税調は何しているのだ、さっぱり音さたないというのでは申しわけないので、しかるべきときには、こういうようなことを審議しこういう段階になっているということは、どういう形かでまとまった報告をするということは当然考えるわけです。恐らく総理の御諮問趣旨は、そういう際には減税部分をよりよく鮮明にしてほしい、こういう趣旨ではなかろうかというふうに思っております。しかし、そういうふうになるかどうか、これは大勢の方がこれから審議するわけですから、無論今からどうだというふうに私から申し上げるわけにはまいりません。
  66. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 小倉さん、率直に申し上げまして、若い者から申し上げて恐縮ですが、今の税調の仕組み、今の国民とのかかわりも含めたあり方その他、私もいろいろ意見がございますし、前に当委員会意見を述べさせていただいたこともございました。ただ、総理諮問の仕方、それから党税調の関係の議論もございましたが、現実を無視するわけにまいらないでしょう。すべての国民に関連するわけですから、極力国民に信頼の持たれる税調という気概を持って進めていただくようにお願いをいたしたいと思います。  それから次に、小倉会長に伺いたいのですが、大きな焦点は、減税とも関連をして所得税制の問題になるわけであります。  何か一つ方向づけとしてクローズアップしてくるのは、刻みをもっと少なくする、アメリカのようにはならぬと思いますけれども、六がいいか、八がいいか、十がいいか、さまざまな御議論になると思います。それから、人によって違いますが、年収は三百万から五百万がどうとか、いやそうではない、五百万から八百万だとか、いや五百万から一千万だとか、いろいろな議論がございますが、これらもきちんと実態的に調査をした上で、いわゆる中年層、負担の大きいところをなだらかにするというのも出ておりますし、それから、そうなれば、これはカーブがまだとれませんから、最高税率の方もどのように下げるのかということも関連をしてくるというようなことが大まかに言われているわけであります。  ただ私は、その大前提に所得税における総合課税の方向というものがもっとクリアに出てこないと、それが欠落をして税の浸食が今のままというようなことになりますと、金持優遇改正ではないかということが当然に世論としても現実に出てくるというふうなことだろうと思います。そういう視点が勉強家の村山さんの調査会にも出てこないということは非常に遺憾に思っている。わかっているんだろうけれども、非常に残念に思っておるわけでありますが、それらのベースを踏まえる必要がある。これは、アメリカの場合にはああいう背番号制に近い制度もあるし、ヨーロッパの国それぞれやり方の違いもありますし、日本ではそれがなかなか難しいところもあるし、技術的な工夫は必要でしょう。しかし、やはり総合課税が前提で初めて刻みをどうするのかということが議論されるということではないかと思いますが、その辺はどうお考えでございましょうか。
  67. 小倉武一

    小倉参考人 お尋ねのことと関連しましたような議論も、税調の中でもされております。どういうような帰趨になるかはまだ判断できませんけれども、総合課税の建前というのを貫くべきだという議論は、これは従来大体そういう方向で来たわけですが、ところが近ごろ、総合課税でなくて所得の分離によって分離課税にしたらどうかとか、あるいはフラットの税制にしたらどうかとか、こういう意見も出てまいりまして、二、三年前とはちょっと税調の中の機運が、二、三年前はほとんどができるだけ総合課税に持っていくのが税制上公平で公正なゆえんであるというふうに来たわけですけれども、最近はどうやら違った意見もございまして、その辺をどうするか。  これからの問題とは思いますが、恐らくお話の要点の一つは、所得税減税ということを仮に考えるとすれば、その所得税の中に入ってこない所得源があるじゃないか、やみの話じゃありませんで、制度上うまく総合化されていないという所得源がある。こういうものについてどう考えるかということは、所得税減税を相当程度、考えれば考えるほどその辺の考慮も必要である。それは資産所得というか、そういったものが十分課税ベースに乗ってないということだと一般に言われており、また制度の上でもそういう嫌いがあることは否定できませんので、その辺もにらまないと税制の公正を欠くというようなことにかえってなりますので、そういうことは十分留意したいと思っております。
  68. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 何か税調の中にも幅広いいろいろな意見が出て、二、三年前とは違うというお話がございましたが、最近見ておりますと、本当に税制の根幹となる所得税のシャウプ以来プリンシプルとしてあったものが理解されず、何か目の前の発言をさまざまとやられる。暴れ馬にその傾向が特に強いのかもしれませんが、あの方式は僕は賛成しませんけれども、とにかくあるような気が随分いたします。それは、みんなが発言するときにはそういう時期というのは短期間はあってもしようがないかもしれませんけれども、やはりきちっとしたベースを踏まえるということが必要であろう。私どももさまざま、当然勉強も進めておりますし、もっとしなくてはなりませんが、そういう中でも、今市し上げたような総合課税をベースにし、さまざまの浸食された課税ベースも拡大をするという方向のもとに、より簡素化した、あるいはフラットなといいますか、税制国民理解を得られるというのがまあプリンシプルだと思うのです。そういう立場に立った議論というものを私どもはもっとやっていきたいと思いますし、ぜひそういう面はきちんと主張なさってやっていただきたいと思いますが、この二年間御苦労なさる主税局長も、専門家だからその視点は同じでしょうね、水野さん。
  69. 水野勝

    水野政府委員 総理からいただいております諮問も、公平、公正というプリンシプルを掲げられての諮問でございます。税負担の公平、公正、適正化はもう税の大前提でございますので、そういう考え方で税制調査会でも御審議をいただけるものと私どもは思っておりますし、そうした御審議に向けて私どもも一緒に勉強をしてまいりたいと思っているわけでございます。
  70. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 小倉さん、もうちょっとの時間のようですからもう一つ伺いたいのですが、今さまざま話題となっている非課税貯蓄の扱いの問題であります。     〔熊川委員長代理退席、堀之内委員長代理着席〕  議論の現状その他は改めて申し上げません。ただ、私この間こういう問題について政府税調の経過はどうだったのかなと思いまして、私は五十一年暮れの初当選でありますからまだ九年目でありますけれども、税調の方は小倉さんずっと長かったと思いますが、五十二年の国会から出てまいりまして、それから九年間ぐらい、この問題についての部分をずっと拾って実は年度ごとの税調答申のファイルしたものを読み直してみたわけであります。  こういう印象を持ったんですね。やはり税制としてもあるいは税理論としても一番しっかりしているのは、グリーンカードの、前の御答申昭和五十四年十二月でしたかの答申ですね。スケジュールをきちんと組んで総合課税に移行する、その前に、不正がないようにさまざま手間は大変だけれどもきちんとした管理をしなければならない、そして税制のあるべき方向の総合課税に移行するんだというプログラムを主張されて、ああなったわけであります。  私は正直に言いまして、小倉さんはいろいろな意味で苦汁をなめさせられた方だろうと思いまして、私も苦汁をなめさせた方には大分じゃくにさわって、その面では同情する面もあるわけでありますけれども、それから後、六十年度税制答申の中であのような低率課税というものが出てまいりました。その文章も読んでみましたら、長い、二、三ページにわたる文章の中に、そういう総合課税の方法をという意見も多いとかいうのが一節だけはさんであります。まあしかし全体のあれから見たら、何か本当に申しわけに文章が、これはだれが書いたか知らぬけれども、入っているよう係な気持ちがいたします。  さらに、いろいろと思惑があって、一兆五千億取れるから、自民党の何とか部会できのう決めたと新聞に載っておりましたが、それを公共事業の拡大に使おうとか、だれがどうとか、あるいは減税案とのセット論とか、いろいろなあれが出ているわけであります。そんなことを言ったって、六十一年度に実施したって六十一年度の税収というのは大したことはありませんからね。六十二年度にならなければ本格的な税収はないということでしょうし、私は、非常に混雑に混雑を重ねてきた——それから竹下大蔵大臣もこのグリーンカードの扱いについては二転三転、二転三転どころじゃないですね、今度また自民党が態度を変えるとすれば回転石転と申しましょうか、そういうことになってくる。こういう混雑をしたときには、やはり税理論として正しかったことの原点に戻って考えてみるというのが国民にとっても一番わかりやすい方法じゃないだろうかというふうなことを、ずっと年度の税調答申報告を読みながら実は思ったわけであります。  したがいまして、六十年度税制についての政府税調答申はございます。あの部分答申がございます。しかしこういう状況を見てみますと、やはり政府の方に、やりなさいと一何か竹下さんも来年度やりたいみたいな非常に前向きの御発言をなさっているようでありますけれども、こういう問題はこういう混雑した状況に出してきたって国民は信用しないと思いますね。貯蓄状況を見たって、平均六百何十万ですか、それから三百万以下が大部分。一番多いのは二百万足らず。マル優の額はがらがらあいているというのが大体普通の市民でありまして、恐らく百人のうち三、四人か四、五人くらいしか、そういうところがごまかして、それを非常に不正利用しているということだろうと思いますね。百人のうち九十何人の人が、そういうものをきちんとするためになぜ自分の二百万か三百万の中から、一万円になるか二万円になるか税金を払わなくちゃならぬのか。これは私は、国民理解できない、何かさまざまのグループのところががやがやと言っているだけというふうなことになるんじゃないだろうかという気がいたします。  そういう経過を振り返りますと、こういう問題こそ六十二年度改正に向けて二年間、二年ももうないわけですが、ほぼ二年間のこれからの議論の中で冷静に考えるという扱いに移行した方がいいのではないだろうか。私は、やろうと思って自民党の方が決めたって年末大混雑すると思いますし、とてもじゃないけれども、そんなことができるかどうか。むしろ税制に対するさまざまの紛糾がふえるだけという実は気がするわけでありまして、その辺の見通しをきちんと持っていなければならぬ。  私は、全体の税制の検討の中で先ほど申し上げた総合課税問題なども含めて位置づけをして、国民の御理解を得られるようにするということが妥当な態度ではないだろうかと思いますが、その辺、六十年度税制でああいう答申を出されました税調会長、特別六十年にああいうことを決めたからということになるかもしれませんが、申し上げましたように、一度原点に戻って構築をすることが必要じゃないかなという気がしますが、その辺の御感想と、それからこれは大蔵大臣予算委員会その他で見解も言われているようですから、私の主張にどう思われますか、伺いたいと思います。小倉さんから。
  71. 小倉武一

    小倉参考人 御質問の御趣旨は、五十四年、五十九年ですか、グリーンカードの答申をしたことに関連して、あれがよかったのじゃないか、したがって今後もあれでいったらどうかというようなお考えのようですが、私どもの税制調査会と政府とちょっと違っておりまして、税制調査会では低率分離課税ということを昨年答申をいたしまして、残念ながらこれは政府の受け入れるところとならなかったわけですが、一遍そういう考え方を出して否定されたからもう御破算で、あとはすぐ考え直すというのも一つの方法かと思いますけれども、グリーンカードから低率分離課税というこの経過を見ていますと、やはり低率分離課税というのも一つの理のあるところで、税制調査会としてあれをほごにしたということにはまだなってないのじゃないかと思います。  無論、そういうことを仮に考えるとすればまた改めて審議をする必要があるかと思いますけれども、要すれば、また改めて討議をするということになろうかと思います。
  72. 竹下登

    竹下国務大臣 私が先般来の予算委員会等で申し上げておりますのは、いわば六十年度税制あり方についてという御答申をいただいた際、低率分離課税というものが入っておった、しかし政策選択の際は限度管理ということで、これが一月一日から実施される。そういう状態下において、いわゆる分離課税というものはそれとの整合性はないではないかという御質問がありましたときに、先般私がお答えいたしましたのは、限度管理は、それはどういう分離課税があろうと限度管理というものの必要性は存在するであろうから、全く異質なものではない、こういうことを申し上げたわけであります。しかし、いずれにせよ、この問題につきましては税制調査会等でも一度は御答申をいただいた問題でございますだけに、抜本改正の中で十分御検討がなされる課題であろうというふうに私も考えております。  そうして、いま一つのいわゆる五十五年度税制あり方についての答申というもの、すなわちグリーンカードを含むものでございますが、あれを伊藤さんは、やはり考え方の基本として今でも一番いいんじゃないかというお考えがあろうかと私も拝察をいたします。  現実問題として、その制度、施策というものが完全に国民理解を得るに至らなかったということで、今二転、三転、回転、五転とこういうお言葉がありましたが、私の時代に全部それがちょうど来るものでございますから、まさに悩みつつも現実に即応したそういう法律改正をお願いして今日に至っておるということで、悩みながらももらってきておるということは率直に認めなきゃならぬことだと思っております。
  73. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 小倉さん、もう一言だけいいですか。お時間のようですが、小倉さんいらっしゃるうちにもう一つだけ。  これから二年間と申しましょうか、二年間にわたる大きな焦点は、税調の言葉をかりて言えば課税ベースの広い間接税となるわけであります。ことしの春でございましたか、中曽根首相のおっしゃった長い長いわかりにくい表現ですね、投網というところで終わるさまざまな言葉がございまして、それに関連をしてあるいはまた一般消費税問題もございましたけれども、それらのことも余り制約なしに白紙からもう一遍勉強させてもらいたいというお気持ちのことを伺ったような気がいたします。同時に、財源目当て、増収ということだけではなくて、目的税とか福祉目的税とか、学者の中でもいろいろ議論がございます。賛否もあるでしょう。それから減税セット論とかいろいろな形で議論も出ているということも事実あるわけでありますが、これは大きな問題ですし、時間がありませんから私は申し上げませんけれども、全体の税制改革がどうなるのかという中で、もっと客観的にさまざまな詰めといいますか議論がなされなければならないという気がいたしまして、そこだけ焦点になるということは私は反対なんですが、これからどういう形でそういう議論税調でお進めになるのでしょうか。あるいは今申し上げたようなお考えの理解で、小倉さん、よろしいのでございましょうか。それだけ一言伺って御退席をいただきます。
  74. 小倉武一

    小倉参考人 先ほども申し上げましたように、とりあえずは所得税、住民税、法人税等につきまして減税を中心にいかなることが必要かというようなこともやっておりますので、間接税につきましてもそのうち審議の対象になるかと思いますが、財源としての間接税という考え方のもとでの審議はまだいたしておりませんです。  お話しのように、一般消費税というような提案をしましたころと今日と状況が非常に違っております。違っておると申しますのは、仮に一般消費税に次ぐ課税べースの広い間接税を考えるといたしましても、それは恐らく減税財源ということが主たる目的になろうと思います。その点は、この前の一般消費税が論じられたときはいわば歳入の足しにするという趣旨だったと思うのです。もう一つ違います点は、今お話の中にございましたように、それはこの前のときから議論があったわけですけれども、目的税として考えたらどうかという議論がありまして、それは採用しなかったわけですが、やはり目的税として考えた方が妥当なのではないかという考え方もあり得るわけでありまして、先行きあるいはそういうことが議論になるかもしれませんけれども、今のところは先ほど御批判もございましたが、増税じゃなくて減税案を先行させて、その上で必要なら財源措置を考えてみるというふうなことになっておりますので、まだ間接税一般について広く討議はいたしておりませんです。
  75. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 何か小倉さんお時間のようですから、結構でございます。ありがとうございました。
  76. 堀之内久男

    ○堀之内委員長代理 小倉参考人にはどうも御苦労さまでございました。
  77. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 もうお昼ですから大臣二つだけお伺いしておきたいと思いますが、一つは、予算編成の方向に関連をいたしまして、株の売却の問題です。  この前の財確法で随分いろいろな議論がございまして御答弁をいただいたわけでありますが、これを質問をすれば、恐らく、まだまだ年末まで時間のかかることでというふうなことであろうと思います。また、議論すれば我々もこの審議論したさまざまな理屈があるということになるわけでありますけれども、どうですか、これでいってこういう問題の扱い、一つはNTT、たばこの株という問題があります。どちらかといえばNTTが先行するという形のことも事実であります。その後JALの株の売却の問題ですね。これはJALの経営改革と相まって早くやらなくてはならぬというふうな方向になっているようでありますが、JALの問題とそれから特にNTT、これらについては大体今の感じと言ってはなんですが、腹の中の考え方として、初年度決算も出ないことだし、六十一年度はやらぬと断定的にそうお考えになりますか。これは新聞にも、そんな報道もあれば、そうでなくてあり得るのじゃないか、あるいは必要であるとさまざまの報道がございますが、政府持ち株の処理について、唯一株主である竹下大蔵大臣となっておりますがということ。  それからもう一つ、これも断定的に今どういうふうになったか知りませんが、いわゆる一・三%法人税の上乗せの問題であります。私は、いろいろな議論が財界その他からあるでしょうけれども、筋としてこう思います。減税財源として、酒その他消費税とそれから法人税一・三%上乗せという措置がとられました。消費税にわたる部面の方は恒久法改正であります。こちらの方は二年ということ。おかしいじゃないかと言ったわけでありますけれども、法人税の上乗せの方は、期限が来るからやめてもらいたいという要望が出てくる。それからお酒やその他の税金の方は、上げちゃったのでビールは売れないしウイスキーは売れない。堀之内さんの方のしょうちゅうなどは売れて結構なんでしょうけれども、本来業界に一律であるべき税制が非常に大きな影響を与えたというふうな困った現象も起きているということです。私はとにかく筋論として、これは今やめるというのは経過から見てもおかしいので、二年前の減税が続いているわけですから、こういうことも当面続けて、それで抜本的な改正の中で法人税制あり方も含めて検討するというのがまさに情勢に見合った現実的方向であろうと思うわけであります。またさっき大臣答弁では、この利子課税に関する問題でも、今伺うところでは六十年度という意味ではなくて抜本的改正の中で十分税調の御議論がなされるものと思いますという御答弁でございましたから、泡食って来年急々にやろうというふうな意味でない感じで受け取りました。それはほっといたしました。  一つは法人税の上乗せの問題、もう一つは株の売却の問題、見解を伺って、終えたいと思います。
  78. 竹下登

    竹下国務大臣 まず法人税の上乗せ一・三%の問題でございますが、五十九年度の所得減税の見合い財源、こういうことからして、国際競争力等からしても大丈夫だろうというので二年間の経過措置、こういうことになっております。したがって、伊藤さんのおっしゃる抜本改正をやるんだからそれまでは現行のままでいいじゃないかという議論も当然あり得ると思うのでありますが、何分期限が一応切れるとしてありますので、六十一年度税制あり方というものもやはり税調で抜本策とは別に審議していただけると思いますので、その中で検討されるべき課題だろうというふうに思っております。  それから株の問題につきましては、この問題はやはりいろいろ議論を毎度いただいているところでございますけれども、中間決算がやっと数日後に出るようでございますが、その中間決算というものもまたいわゆる検討してもらうための一つの素材がな。やはり民営になった限りにおいては、本当は一刻も早くそれは売り出さなければいかぬというのが本来のあるべき姿でございますから、したがって、そういう新しい事態等も踏まえながらこの問題についてさらに電電株式売却問題研究会、今まで三回にわたって研究会で議論していただいておるところでありますが、これは国有財産中央審議会の了承を得てつくった研究会でございますから、法律でつくったわけじゃございませんが、国有財産中央審議会というものは法律で存在しておる権威あるもので、それの了承を得てつくった研究会でございますから、それらの研究会の意見を参考にして今度は国有財産審議会に諮問をして、それから答申をいただく、こういうことになっております。したがって、この問題についてはいましばらく断定的なことを申し上げるには時間をちょうだいしたいなというふうに考えておるところでございます。  それから、先ほどの御答弁申し上げました中の利子課税の低率分離課税の問題につきましても、これとて抜本策の中で当然議論が出てくるでありましょうが、六十一年度税制改正のあり方という議論の中では恐らく出ないだろうという断定はやはりできぬじゃなかろうかというふうに言わざるを得ないのかな。そのときに限度管理の問題との矛盾はないというふうには言えるのではなかろうかというふうに、この間来、自問自答しておるところであります。
  79. 堀之内久男

    ○堀之内委員長代理 午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時六分休憩      ————◇—————     午後一時一分開議
  80. 越智伊平

    越智委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。伊藤茂君。
  81. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 日銀総裁にはお忙しいところお越しいただきまして、ありがとうございます。  G5以降のさまざまな問題について質問をさせていただきたいと思います。あわせて大蔵大臣にも若干御意見を伺いたいと思います。  九月二十二日以降大分ドラマチックな展開になりまして、またG5に至るさまざまのマル秘作戦なども含めて、出たものを読んだり関係者のお話を伺ったりいたしますと、本当に御苦労も多かったかと思いますが、ドラマチックな思いがいたすところであります。ただ、大分変動が進んでまいりましたし、文字どおり日に日に状況が進展をしているというふうな状態でございまして、幾つかお伺いしたいと思うのですが、まず第一は、澄田さんに、今日ただいまでの現状をどうごらんになるか、どのような状況判断をお持ちになるかということを伺いたいわゆであります。  それは、G5以降五カ国の共同歩調、相当積極的、強力な介入、しかも持続的な対応、恐らくまさに今までに例を見ない状態ということになっているわけでありまして、その背景、アメリカの状況変化なども伺うわけでありますが、その後短い期間でありますが、相当の円高になったと思います。また、ドル高是正にもなったと思います。何かぼちぼち経済のそれぞれのファンダメンタルズに合った状況になってきたのかなという印象も多いのではないかと思っております。また、非常に心配しておりました二百円とか、いわゆるアメリカの議会の保護主義法案も、議会内部の雰囲気も鎮静化というふうな効果も出たのではないかと言われております。  また他面では、きのうNHKテレビを見ておりましたら、中曽根総理の言葉の中にも、ちょっと不安も出始めているという言葉もございましたが、先行きどうなるのかということについてもさまざまの見方があると思います。また、為替の決済の内容も、実需といいましょうか、新しい状況が見えている。さまざまな状況が起こっていることだと思います。他面ではまた、ドル急落説なんというのも一部にはあるようでありますけれども、相当急テンポに進んできたという中で、けさの新聞を見ましても、いま一段の円高をというよりは定着が大事であるというようなことが大場財務官の発言として載っておりましたが、G5以降ここまで進んできた今日時点での現状の見方、状況判断、いかがでございましょう。
  82. 澄田智

    澄田参考人 今日までのところは、大筋におきまして、G5の合意とこれに基づく各国の協調介入が為替市場で評価をされて、そして円高化が進展してきている、こういうふうに見ております。こういう点においては極めて望ましい動きというふうに受けとめております。  ただ、現在の為替市場の状況について現時点でどうかというお尋ねでございますが、現時点においては、円安方向に動くというようなときには介入警戒感が非常に強く働く、それから円高方向に動く場合には、やはりポジション調整等の買いを含めて実需、そういうふうなことでドルを買う値ごろを求めている、そういう需要というものがございまして、そういう動きが出てまだ戻る、こういうようなところが基本的に変わったわけではございません。したがって、円高方向に参ってはおりますが、まだ定着したとは判断しがたい、こういう状況であるというふうに見ております。  私どもといたしましては、最近の円高傾向によって市場参加者の相場観が円高基調で定着してくる、これが現実の円高相場を支えるという形が最も望ましい、そういう状態を期待しているというところでございます。もちろん必要に応じて機動的な介入ということは引き続いていたすつもりでございます。  円高が定着するためには、少なくとも現在でもなお依然として相当の金利差が——若干縮まってはまいりましたが、相当の金利差が残っておるわけでございますので、我が国の側から内外金利差を拡大するようなそういう政策は厳にこれを慎みまして、そういうことは行わない、これが基本的には重要である、こういうふうに考えております。
  83. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 次にお伺いしたいのは、この数日来の新聞でも、円高によるさまざまの影響というものをどう見るのか、あるいはどういう対応が必要なのか。これも難しいところだと思います。何か一部には二百円まではもつだろうけれども、二百円を超える円高になった場合には産業政策上のさまざまの対応が必要なのではないかとか言われておりましたが、それぞれの産業分野を見ましても、価格の面でも競争力はまだ強いとか、あるいは非価格競争力のウエートも大きいとか、さまざまの分野がございますし、一概にそう簡単には言えないというところだろうと思います。予算委員会でも、通産大臣の担当の方でしょうか、何らかの特に中小企業への配慮とかいうふうなお話も出ているように伺っております。  ただ、そういうのを見る場合に、やはり相当冷静に物事を見なければならぬということは私は前提だと思います。何か数字をはじけば、いろいろな銀行がはじいておりますけれども、えらく差のある数字を報道で見るわけでありますけれども、相当冷静な対応が非常に大事であろうと思います。ただ、前に百八十円台で半年ちょっと続いたことが、五十三年ごろでしたか、ございましたが、あのときと比べて経済の構造がまた違う。あのときにはまだ財政の余裕というものがあったし、円高法ですか、何かいろいろな対応も議論された当時のことだと思うのですが、財政も含めていろいろな面で経済の構造も違う、そういうことを背景にしながらどう判断したらいいのかということになるわけであります。  二つに分けてお伺いしたいのですが、一つは、各産業分野に対する見方をどういうふうに考えたらいいのかという問題であります。確かにG5以降の経過は、マクロで見た場合には望ましい変化、対応というふうに言えるのではないだろうか。しかし、ミクロと申しましょうか、個々には、現在あるいは今後、さまざまの対応があるのではないだろうか。当然でありますが、一面では円高デフレ効果も起きる。それから交易条件も改善されますから、その辺ではプラスの条件も起きる。まあ、各産業、企業、輸出産業の部面でも、自動車はどうとか電気はどうとか、あるいはまた運輸の面でも、東京電力は一円について二十億とか四十億とがよく知りませんが、いろんなそういうふうな数字も出ております。  現時点で考えた場合に、冷静に考えてトータルとして大きな政策上の手配を必要とするとかというようなことではないかと思いますけれども、通貨政策に責任を持たれる中央銀行の立場から、トータルとしてどのような御判断が。それから個々には幾つかの対応というものが行政ベースで必要になってくるという部面もあると思いますが、その辺、経済、産業分野というものを大局的に現時点でどうごらんになりますか。
  84. 澄田智

    澄田参考人 為替の円高によりまして、マクロの面においては何よりも経常収支あるいは貿易収支の黒字が、一定のタイムラグは必要でございますが、そういうタイムラグを置いて考えれば縮小の方向に向かう、これがマクロ面の大きな効果である、これはもう申すまでもございません。  一方、産業、これも輸入面、輸出面それぞれ影響がありまして、総体として見ればプラスの面とマイナスの面、こういう形になって、それが相当平均されるわけでございますが、輸出産業について見ますれば、採算面あるいは受注面、商談面、これで何らかの影響が及ぶということは、業種及びその企業の規模の大小等にかかわらず、いずれも影響があることはこれは避けられないと思います。ただ、それぞれの影響につきましては、業種や企業の競争力の問題でありますとか、あるいは需要面の市場の状況でありますとか、そういうことによって非常に違うわけでございます。  しかし、全体として見て、輸出産業、なかんずく中小企業等におきましては、直接の輸出あるいは競争相手の国、それがアジアの諸国等であるよう広場合においては、そういう国々の為替はドルと同じような動き方をしておりまして、それに対して円高、円の方は非常に高くなっておる、そういった国々の為替は変わらない、あるいはドルと同じ水準である、こういうようなことで、そういう国との輸出の競争、あるいは日本への輸入等の影響も加わるわけでありまして、こういう点を合わせてみまする場合には相当の影響があるというのは事実だと思います。  ただ、現在日本の経済全体としてとってみました場合には、輸出の伸びが鈍化をして、それだけ影響はあるわけでございますが、しかし内需が底がたい推移を示している、さらに、企業収益の水準はかなり高い、そういう状況でありますために、当面景気全体の基調に大きな影響はない、個個の企業の影響というのは十分注意をしていく必要がございますが、総体として見て特に懸念を要する、こういうふうな状態ではない、かように考えております。
  85. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 次にお伺いしたいのですが、国際収支の今後にどのような影響があるのかという問題であります。  通常言われていることでありますけれども、国際収支の影響、今度の円高基調、当然Jカーブ効果がございますから短期的には円高によってむしろ拡大をする、いろんな銀行の試算なども新聞に報道されたりいたしておりまして、今年度は五百二、三十億ドル、黒字縮小は六十二年度以降ようやく数字になってあらわれるというふうなことではないかなどなど、定着をしてもそういう状況があると言われております。  こういう数字が、例えば来年春、その他の段階でございましょうか、出た場合、それなりの数字のもたらす影響も、資本主義経済ですから当然いろいろとまた出てくるというようなこともございますから、それらを含めて、先ほど総裁おっしゃいましたが、なお当分の間、機動的対応が必要であるというふうなことに一般論としてはなるんだろうと思います。  ただ、こういう状況ですから、国際収支との影響、関連からいってその黒字幅拡大の程度が、来年春までになりますか、もっと年度末、五月ごろになりますか、その程度、見通し、それから中長期の視点とかというものを含めて、どのような御判断を国際収支との関連でお持ちになるのかということ。  先ほどのお話にもございましたが、金利差とか資本収支の関連の問題、今、日米で言えば四%を切って三%台の金利差になっているという状況、これから考えますと、アメリカの方はやや下げ基調とか新聞にも言われているわけでありますけれども、その辺は急な変化は望めないのが実態だろう。前々から資本の移動、金利差、アメリカの高金利ということを言われてきたわけでありますが、この円高・ドル安という状況の今後ということとも関連をしながらも金融、金利政策というものがいろいろと大きな問題になってくるであろう。  片や国債暴落という、原因、経過は別にして現象もございましたし、けさの新聞を見ますと、〇・五%今月上げなくちゃならぬ、長期プライムレートにもそれは当然響いてくるであろうというようなことを言われておりますが、そういう資本収支あるいは金利差の将来とか、あるいはそれに関連をした金融、金利政策の将来、非常に注意深く展開をしなければならないというふうなことでございましょうけれども、資本収支、国際収支という視点でのお考えをお伺いしたい。
  86. 澄田智

    澄田参考人 円高基調の国際収支に及ぼす影響でございますが、貿易収支及び経常収支におきましては、これは一定の時間を要することは当然でございますが、そうした一定の時間を置いて考えれば黒字が縮小する方向に働く、これは間違いのないところであろうと思います。  ただ、そのJカーブ効果の期間はどのくらいかというような点につきましては、過去の場合の例といろいろな条件が違っておりますので、いろいろモデルの計算を行ったりなにかいたしましても、必ずしも今回の場合がどのくらいかというのは的確にはとてもわからない、こういう面がございます。まあ半年ぐらいであると常識的に言われたりいたしておりますが、あるいは輸出価格の引き上げというようなものがいつごろ、どのくらいの期間を置いて今後、各業種によって違いますが、行われていくかというようなことによっても決まってくるという面もございますので、一概には申し上げられない、こういうことであると思います。  それから資本収支面への影響でございますが、総体といたしまして、為替相場が資本取引に影響を及ぼしていく、逆に資本取引が為替相場に影響を、今まで及ぼしてきたわけでありますが及ぼす、こういう両面の影響をお互いに持ち合う、こういうことでございます。本年前半までは日米間の金利差が非常に大きかった、五%あるいはそれを超えておったというようなところから、我が国から巨額の資本流出が行われたわけでありますが、G5以降におきましては相場観が急速に変わってきたというようなこと、また最近におきましては、短期金融市場における需給の引き締まりの地合いをそのまま金利に反映させることが適当であるという観点に立って金融調節を行ってまいりました結果、我が国の長短金利が今もおっしゃられたように上昇をしてまいりました。日米金利差が縮小を見ている、これもやはり対外証券投資を慎重化させる要因になっているというようなことがあるわけでございます。したがいまして、そういう意味におきましては従来の資本収支の状況とはかなり変わってくるという面がある、かように考えております。
  87. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 続けて恐縮でございますが、澄田さんにお伺いしたいのです。  先ほどの冒頭のお話の中でも、定着したと言える状態にはまだ至っていない、さまざまの努力がまだ必要であるという御認識でございますが、定着という方向に向けてどのような努力を、通貨政策の面でもあるいは政府経済施策の面でも、どうするのかということが非常に大事なところではないだろうかと思うわけでありまして、そういう意味でのプランニングがどうできるのかということが大きな焦点ではないだろうかと思うわけであります。  先月でしたか、雑誌「エコノミスト」を読んでおりましたら、シュミットさんの論文が載っておりまして、全部当たっているかどうかは別にして、非常におもしろい論文なので読ませていただきました。その中にも相場介入で長期の是正というのは、「錯覚」という言葉をお使いだったと思いますが、ちょっと厳しい表現をなさっておりました。私もそうだろうと思います。それから「金融財政事情」でしたか「ファイナンス」でしたか、大場財務官がG5以降のことを語った文章がございまして、それも読みましたら、大臣と一緒にシュミットさんと三人でお会いしたときのことがちょっとその中に述べられておりまして、そのときに財務官の方から、今回の介入の意味というものは二つある、そのうちの一つは、「ブリッジング・アクション」という言葉遣いをなさっておりましたが、言うならば協調介入から政策協調という意味だと思いますが、そういう次の構造的な経済体制をお互いにどうつくるのかという方向に向けたブリッジングアクションとして位置づけるという説明をしたところ、シュミットさんは、それは長い橋ですねという話をされて、大場さんは、いや、なるべく短く、なるべく頑丈にというお話をなさったという表現のことが載っておりまして、興味深く読んだのですが、それはやはり大場さんが言われたように、極力短く、しかも橋の構造は非常に頑丈であるということが非常に望ましいということだろうと思いますが、つまるところ、それはアメリカの財政赤字、日本の内需ということが中心に出てくることだろうと思います。  アメリカの財政赤字の問題もいろいろな局面が、私どもが知る範囲でも、勉強する範囲でも生まれてきているのじゃないだろうか。議会とかエコノミストの広い部分の中で、それが最重点の経済政策の目標ではないかと見ているようでありますし、それから例えば日本の議会でもGNP一%論争が華やかになされましたけれども、やはり議会筋の方では上院、下院とも軍事費増の凍結、財政赤字の改善が大事だというのが多数の声になっているとか、それからまた米ソ首脳会談が成功すれば非常にいいだろうと思いますけれども、そういうデタント基調も含めて、私はそういう声がやがてアメリカの中でも主要な政策に位置づけられてくる可能性も持っているのだろうと思うんですね。日本の内需のことはこれからになるわけでありますが、それらも含めまして何か、協調介入から政策協調、言葉遣いがどうかは知りませんが、求められてくる。  そういうことになりますと、アメリカでの努力、日本での努力、両面あると思います。それから、ほかの国の関係もそれぞれ考慮しなければならぬ。そうなりますと、今度のG5の協調ということも、恐らく今まで例がなかった仕組みとして進行したと思いますが、次の協調政策と申しましょうか、そういう面でも何らかのシステムか何らかの場でもっとフランクに、内政干渉するわけにまいりませんけれども、それは別といたしまして、平等互恵か友情の立場から、もっとフランクにお互いに可能な意見交換と可能な政策調整というようなことも非常に大事になってくるのではないだろうかというふうな気もするわけでございますけれども、それらのことも含めた、言うならば定着のべースとなるべきものをどう考えるべきなのか。それから、言うならば構造的な、安定したあるいは定着した円ドル関係というものをどう構築をしていくのか。そういう意味での、長いか短いかは別として頑丈な橋を構築しなければならぬという課題にぶつかるわけでありますが、これは行政も絡みますから、澄田さんに御感想を伺って、その後、大臣の方からも御感想を伺いたいと思います。
  88. 澄田智

    澄田参考人 G5の合意におきましても、協調介入のほかに各国が政策面において整合性のとれた政策をするということで、五カ国それぞれ各国別に政策の項目を列挙いたしまして、各国そういう政策目標について努力をする、こういうことになっておりまして、おっしゃる政策面での協調の第一歩はG5においても既にあるところである、こういうふうに言えると思います。     〔委員長退席中川(秀)委員長代理着席〕  それから、介入のブリッジングの橋の延長のようなところで、私どもといたしましては、御承知のように、先ほども申し述べましたように、基本的にはこちらの側から内外金利差を拡大するようなことは厳に慎む、こういう基本姿勢を堅持いたしておるところでございますし、その上、先ほども申し述べましたように、短期金融市場が資金の需給においてきつ目に推移をしている。このきつ目の中には、財政の揚げ超あるいは銀行の資金ポジションが悪化しているということに加えて、介入によってそれだけドルを売るわけでありますから円は引き上げられる、こういうことで円が吸収されるということで市場がさらにきつくなる、こういうことでありますが、そのきつい状況、きつ目の状況をレートにそのまま反映させることが適当であると考えて反映させてきております。その結果、長期金利の方も上がってきている、こういう状況でありますが、こういう状態を維持していくというのも、当面介入にあわせてとって、今後もこれを継続をしていく、こういうところでございます。  その上で政策面の協調ということになりますと、何といってもやはりアメリカの財政赤字が高金利の原因にもなっているということで、アメリカ財政赤字についてこれがある程度、当然時間は要する問題でございますけれども、しかし前進が見られるというようなこと、そしてそれが市場に影響を与えるというようなことがどうしても必要である、こういうふうに思いますし、日本の場合においては、アクションプログラムを着実に実行するということに加えまして、やはり先般決められました内需拡大に関する対策というような民間活力を十分に発揮させるということを中心にした内需の拡大というようなものは、これは着実に実行されていくということが望ましい、こういうふうに考えるわけでございます。  また、政策面の協調につきましては、大蔵大臣を初め政府におかれても、いろいろな国際会議等で機会あるごとにこれをアメリカを初め各国に要望をし、そうして合意の形成に努めておられるというところである、かように承知をいたしております。
  89. 竹下登

    竹下国務大臣 私どもが平素からお話ししております問題点というのは、要するに各国の政策調整、コンバージェンス、こう呼んでおります。しかし、そうはいってもなかなか完全な政策調整は行われない。そこで、それをより確実にするためにいわゆる相互監視、サーベーランスと言っておりますが、相互監視をやるべきだということで、我々集まるたびに相互監視をやるわけであります。  その相互監視の中に、これは伊藤さんいみじくもおっしゃいましたが、内政干渉の域を、毎度集まっておりますから時には内政干渉の域を越えたりする議論にも率直に言ってなります。なりますが、それがお互いの相互監視ということになりますと、やはり正直に、自分の国の持っておる今の経済あるいは財政の欠点をそれぞれがお互い明らかにするわけでございます。したがって、そのサーベーランスをある国はむしろ公表して、その方が若干、公表することによって外圧を使って国内政策に、特に国会に対して外圧を使って余り言わせないようにしようというような意思が時には見えぬわけじゃございませんけれども、公表すべきだという議論もありますが、それはおのずから限界があると思います。思いますけれども、そういう相互監視を行う中に、まあそれを具体的に申しますと、先般のG5のときにいわゆる附属文書で各国がやるべきことをそれぞれ声明しておるわけであります。だからやはり基本的には、もうおっしゃるとおり、政策調整をいかに進めていくかというのが基本になるべきものであるというふうに私どもも考えております。
  90. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 お忙しい澄田総裁、大変恐縮でございますが、もう一つだけお伺いさせていただきます。  私は、今回のG5以降の経過、それから今澄田さんもまた大蔵大臣も率直にほかの国との関係の問題意識についてはお話がございましたが、いろいろと今後考えるべき問題意識が生まれてきたのかなという気が実はしているわけであります。  この間国会で配られてきました、これはまだ十月の上旬の方でしょうか、タイムに載った「国際通貨の新時代」という論文がありまして、ちょっと読んでおりましたら、その一番最後の方に、レーガン政権第一期の国務次官補であったロバート・ホーマッツという方の発言として、「我々が今日にしているのは新しい時代——それは自由変動制というよりも、むしろ管理変動制の始まり——かもしれない」と言っております。私は思うのですが、何かこうシェーマティックな概念規定とシステム論というふうな議論をするつもりはありませんから、それは別にいたしまして、要するに自由変動相場という時点の中での、構造の中でのさまざまの問題が出て今回の対応がなされたというわけでありまして、何らかの協調、言葉をかえて言えば何らかのコントロール、共同のコントロールといいますか、そういうようなものがベースになって今後を考えるというふうなことが、これも持続され、必要な時代なのかなという気持ちがするわけであります。シェーマとして何から何へという言い方は、あなた方としては経済の現実として余り望ましくないと思いますが、一つの例えば半年なら半年の時期G5に基づくそういう対応とか、介入相場とか、協調介入があったということをないものとして、こういうものも安定的に発展させるべきものではないだろうかということ、これが一つであります。御感想を伺いたい。  もう一つは、日本の中でもさまざまな問題が起こっております。前総裁に最後にここへ参考人でお越しいただきまして、今後短期市場の育成ということを大きなテーマとして感じておりますという、おやめになる前に最後の御発言がございましたが、そういう問題もありますし、進行中の自由化のプログラムをどう進めるかという問題もございますし、それからこういう中で起こってきているオフショアマーケットというものをどういうふうに位置づけたら解決すべきなのかということもありますし、それからG5の発表の中にもございますけれども、円の国際化、進展というものをどう考えるのか。ですから我々が、我々といっても我々野党ですからあれですが、国内で金融政策上取り組むべき課題というものもますます大きくクリアになってきているのではないかという感じが実はするわけであります。  その二点、最後にお伺いしたいと思います。
  91. 澄田智

    澄田参考人 円の国際化の推進を含めまして、その中に今お話しのオフショアマーケットというような問題も含め、国際通貨面での我が国の対応というものが、全体の国際通貨制度に及ぼす影響というようなものが非常に多面にわたって大きくなってきているということは、おっしゃるような意味合いを十分持っていると思います。ただ、おっしゃられた新しい管理変動制というような点につきましては、G5の場合も、これはドル高の修正、非ドル通貨の安過ぎる点をもっと高目に修正をする、こういう点についての合意でありまして、それはターゲットゾーン、目標圏を設けて、そしてそこへ持っていくという、そこを維持するという国際通貨制度、そういうシステム、そういうものを考えているものではないということははっきり合意の過程において指摘もされ、またそういう議論もあり、そういうことでそういうものではないということで合意されて協調介入体制がとられてきている、こういうことでございます。したがいまして、これが新しい通貨システムを構築するというような方向における試みということは到底言えないものである、かように存ずるわけであります。  ただ、繰り返しになりますが、ドルの独歩高であって、それが長く続いたという状態を修正し、そしてドル以外の主要通貨をドルに対して高目にする、こういうことについての合意によって各国がその方向で協調を続ける、こういうことであるわけでございます。
  92. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 澄田さん、どうもありがとうございました。次の御日程があるようでございますから、どうぞ。  ちょっと今の話の続きで大蔵省に伺いたいのですが、国内の経済に及ぼす影響の問題であります。国際金融も担当部門の一つである大蔵省ですから、さまざまな勉強はなさっているんだろうと思いますが、新聞を読んでいますと、幾つかの銀行が幾つかの試算などを今後の経済について出しております。  その中の一つに、例えば経済成長率がどのように円高と関連をしてくるのかということ、十円違ったらどうとかいろいろと数字を言われるわけでありますけれども、その内容を見てみますと、非常にこれまた種々雑多な話ですね。あるところでは、とにかく二百四十円が二百十円になったら〇・〇九か〇・一くらいでしょうかというどこかの銀行の試算もあれば、いやとにかく二百二十円になっただけでも〇・九くらい影響があるとか、えらい差があってあれなんですが、いろいろなシミュレーションを描けるんだと思うのですが、国際金融を担当する大蔵省としては、例えば二百円という段階で円高基調というものが定着した場合に経済成長全体にどの程度の影響があるのか、あるいは経済成長率にどの程度の影響があるのかというその辺、どの程度の勉強なり研究をなさっているのかという問題です。いかがですか。
  93. 北村恭二

    ○北村(恭)政府委員 円高が我が国経済に及ぼす影響につきまして確かに民間の調査機関等でいろいろな試算をしているということは私ども承知しているわけでございますが、このような試算にっきましてはモデルを使って計算していることが多いわけでございますので、過去のパターンというものにかなり引きずられている面があるのではないかと思います。ですから、円高が具体的にどういう影響を持つかということについては、いろいろな要素を考えてその行方を見定める必要があるのではないかと思います。  ごく一般的に申しまして、円高というのが輸出の減少、輸入の増加といったような効果を生じます一方、物価の安定ということから個人消費等の内需拡大効果という面もあるわけでございまして、そういった両方の効果がどの程度のものになるかということにつきまして、言いかえますとそれが経済成長率にどういう変化を与えるかということにつきましては、いろいろなかなり複雑な要素を考える必要があると思います。ですから、当面そういった試算はしておりませんし、いろいろな情勢を見きわめながら今後の経済成長率というものを考えてまいりたい。具体的には、年末の予算編成というようなことに向けての経済見通しの作業の中で、ただいま申し上げたような問題を総合的に考えて判断してまいりたいと考えている次第でございます。
  94. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 そういう勉強をしてまいりたいと考えておりますということですが、経企庁なり通産省なり、いろいろなところでも研究しているのでしょうね。そう時間を置かずに恐らくそういう研究か議論をなさっているのだと思いますが、迅速にそういう勉強はぜひしてもらいたいと思います。  水野さん、当分主税局長は明るい顔がなかなかできない、まことにお気の毒な立場だと思います。何かもらった数字を見ますと、今でも税収の見込みはなかなかきついような見通しのようであります。これからこの円高の影響というものが産業分野によってそれぞれプラス・マイナス、メリット・デメリット違いますけれども、来年三月決算などを含めて出てくるとなりますと、難しいときの主税局長で、しかもこれから二年間シャウプ以来の大改革を担当しなければならぬ、まことに御苦労さまだなと思っておりますけれども、そういう現下の変動の状況などについては、税金を取る方、これは国税庁長官、ルールをつくる方の主税局長としては、どんな気持ちでおりますか。
  95. 水野勝

    水野政府委員 ただいまのお尋ねが現在の経済変動のもとでの具体的に税収の問題であるというふうにおとりをさせていただきますと、現在の時点での税収は三一%まで九月末でまいっておりますが、これは前年を〇・九ポイント下回っておるわけでございます。しかし、これは年度後半に入ってまいりますたばこ消費税等がまだ全く入ってないという要素もございますので確たることは申し上げられないわけでございますが、いずれにしても去年の現時点のようなかなりの増収が見込まれたような事態とはどうもさま変わりで、もうひとつ税収については難しい段階にあるという感じでございます。  また、今後の経済の動向を見きわめた上での税制方向ということでございますれば、これはけさほどから申し上げております税制の抜本的改革の中でいろいろ検討がされると思いますが、現在着手されております改革作業は、税制それ自体を不公平感、重税感を少しでも減らすということでございますので、直接経済変動等との関連というものは入ってはまいらないわけでございますが、内外の社会的、経済的な動向についてももちろんそういったものを検討する際の大きな要素でございます。そういったものを適切に見きわめていろいろ勉強してまいりたいと思っているわけでございます。
  96. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 もう時間がわずかですから、大臣一つと、もう一つ週休二日のことで銀行局長でしょうか銀行局でしょうか、二つお伺いして終わりたいと思います。  大臣にお伺いしたいのは、先ほど来澄田さんに伺った延長線からいって、大場さんのおっしゃるところのブリッジングアクション、なるべく短く頑丈な橋をかけたい。こうなってきますと、振り返ってみてアクションプログラムがあり、G5があり、先般の経済対策閣僚会議でお決めになった内需対策があり、重なってきております。しかし、全体の印象として、先般の内需対策の方も当面の処方せんということになるわけですね。財政出動の問題その他なかなか難しい問題があることは私どももわかります。しかし、なるべく短くなるべく頑丈な橋をかけるためにも、なるべく早い時期に本格的な内需対策ということが必要になってくるということではないだろうか。難しい次の予算編成とも関連をするだろうと思いますが、円高が定着なるかならぬかという論争をなさっているわけでありますから、幾ら遅くとも年内、予算編成の前ぐらいには、スケルトンでもいいから、柱を立てるのでもいいから中期的な一つのプランニングというものを出す、それは姿勢の意思表示という意味でも意味があると私は思います。来年度に全部具体化をすることができるかどうかという問題もいろいろあると私は思うのでありますが、そういう意味でのまとめた内需対策の大きなプランというものを出していくということが必要ではないだろうかと思うわけであります。財政の余裕がないという大蔵大臣に聞くのは余り適切ではないかもしらぬけれども、これはつまるところそういうことになってくるわけなので、そういう必要性をどう御認識なさっているかということを大臣にお伺いしたいと思います。  ついでで恐縮でございますけれども、今回の内需対策の中で一つだけ聞きたいのですが、週休二日制の問題です。新聞のスクラップを見ておりましたら、通産省の試算では、完全週休二日制が定着すればレジャー支出だけでも年三兆円ふえる、内需対策の柱に掲げるのは当然であろうというふうな印象のする記事が載っておりましたが、内需対策の中に金融機関週休二日制ということが取り上げられておりまして、「金融機関の自主性を尊重しつつ、消費者金融への積極的な取組みを要請」、それから金融機関のCDの問題ですね。  お伺いしたいのは、この中身を見ますと、いろいろ字は並べてあるけれども一般論をただ書いてあるだけ、やることは前と同じ、何も変わらないというふうな懸念が非常にあるわけであります。やはり掲げたのですから、政府の方から、大蔵省から各金触業界に対して、金融業界の中でもさまざまな論議がありまた進んでいくことも承知をいたしておりますが、具体的にそういう申し入れをするとか行動をするということが必要ではないか、そういうアクションというのはどうなったのか。これが十五日に発表されてから経過は全然表に出てこないわけでありまして、一体どうなっているのかということです。やはりそれをやることによっていろいろな意味での効果が生まれてくるのではないだろうか。  来年夏から月二回というプランが進行中のようでありますけれども、例えば来年五月にはサミットもある。日本にお見えになるわけだし、それからその前に、四月には日本で労働サミットをやって、週休二日制の問題も含めたことを政府に申し入れしようというふうな計画も、実は労働界でもなされているようであります。そういうことを考えますと、せっかく掲げた柱を、直ちにアクションを起こしまして来年の四月から、まあ五月には休日もふえるということがありますけれども、来年の四月から実行するというふうなアクションはとらるべきではないだろうかというふうに思いますが、そういう大局的なことを大臣一つと、具体論を一つ、伺いたい。
  97. 竹下登

    竹下国務大臣 まず一つは内需問題でございますが、私は、あれは五十七年でございましたか二兆七百億円、その参画したときに、これは相当なものだなと思いました。したがって、今度もどういうふうに積み上げていくか。結局は三兆一千億、こういうことでございますから、これが向こう一年間にわたってどういう効果が出てくるかということに対して、私どもは大変な期待を持ってこれを見ておるわけであります。  従来、財政主導ということが前提になっての内需拡大論が主として行われておりますだけに、いわば民需中心の内需拡大ということに対しては、従来の経験からするととかく評価が消極的ではなかろうか。だから、結果をごろうじろという気がまんざらないわけでもございません。しかし、これですべてが済んだとは私も思っておりません。ただ、今の段階で中期的な内需拡大のプログラムをつくるというのは、何分経済がこれだけ変動し流動的であるときにそれは大変に難しい問題じゃなかろうか。大蔵省は大蔵省、通産省は通産省、あるいは経済企画庁は経済企画庁でいろんな勉強をいたしておりますが、当面は先般決定いたしました内需拡大策というものがかなりの効果を上げるものであろうというふうに、私なりに大変な期待を持っておるということであります。  それから、これが金融機関週休制の問題になりますと、労働省が中心でいろんなお世話をしていただいておりますが、具体的な問題でございますので銀行局長からお答えをさせます。
  98. 吉田正輝

    ○吉田(正)政府委員 先生週休二日制の御質問は、内需拡大策に主たる焦点をお当てになって御質問なさっておられると思いますが、そういうふうに内需拡大策を決めながら、何かその後アクションをとったかと、こういう御質問だと存じます。  私どもといたしましては、その政府の決定を受けまして、本月の七日でございますけれども、全国銀行、地方銀行、信託協会、相銀、信金、信用組合あるいは関係省庁、農林省、労働省とも協力しまして、農協関係あるいは労働金庫も含めまして個人消費金融の積極的取り組みをお願いしたいということで、お願い的通知を出しているわけでございます。そこでは、消費者金融に対するニーズの多様化に即応し消費者利便の向上を図るために、かつまた個人消費の喚起に資するという観点から、もちろん民間金融機関でございますから自主的な判断はあるであろうけれども、一層特段の配慮をお願いしたいということで、特に、例えば消費者ニーズに合った商品を金融機関の健全性に配慮しつつ提供するように努めていただきたい、こういうような消費者金融への積極的な取り組みについてお願いをしたところでございます。  さらに、同日でございますけれども、御質問のCD稼働につきましても、週休二日制が次第に拡大していくというようなことでなりますれば、土曜日休業日にCDが稼働できるかどうかということは、預金者並びに消費者にとっても重要なことでございます。同様にまた、内需拡大策についてもCD稼働は漸次充実することを期待しておるわけでございますので、この点につきましても、毎土曜休業日のCD稼働ができるように、週休二日制の拡大の関連にも配慮しつつ着実に実施するよう努めていただきたいと改めてお願いを発出いたしたわけでございます。  それからこのCDにつきましては、毎土曜休業日以外にもCDの稼働時間の延長という問題があるわけでございますので、その延長にっきましてもコスト面や体制整備等にも配慮しつつ対処するようにしてもらいたい、こういうお願いをいたしております。これを受けまして、金融機関の方でもこういうCD稼働の時間の延長等についても検討をしておるところでございます。  政府全体の週休二日制の姿勢につきましては、ただいま大臣申し上げましたように、政府全体として法令等の整備に努めながら環境整備に努めていくわけでございますけれども、大蔵省といたしましても、これは時代の流れということで、今全銀協を中心にしまして、少なくとも八月には実施したいということで各金融機関といろいろと協議をしております。この協議にっきまして積極的な支援を大蔵省としても図ってまいりたい、かように考えておるわけでございます。  最後の御質問の実施時期の繰り上げの問題でございます。八月をめどとして今金融機関と相談しておるけれどもこれをさらに繰り上げられないかということでございますけれども、やや専門的な、細かく申し上げるようで恐縮でございますが、銀行の業務と申しますと決済——預金、貸し付け、為替、手形交換というようなあらゆる資金の動きにつきましての決済網を利用した業務になっておるわけでございます。したがいまして、金融機関が休業するには相当程度の銀行が一斉に実施する必要があるということがございまして、さればこそ各金融機関がその準備態勢を含めましていろいろ協議をしているわけでございますけれども、やはり休業日に利用者の現金需要というものがございます。そういう点も含めまして、現金需要あるいは預金者利便ということで、休業するだけではだめなんで、先ほど申し上げましたCD稼働など機械設置傘のばらつきがございます、相当おくれている業態もございますので、そこを充実する時間も要るというようなこともございます。というようなことでございますので、今目標にしております八月をさらにまた早める、このめどを早めるというのは、現時点ではやや無理があるというふうに判断しておりますけれども、今はさておき、その八月実施に向かいましてCDの設置率等を含めて全体の環境を整備していく点につきましては、私どもとしては積極的に応援してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  99. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 時間が過ぎましたから質問を終わりますが、銀行局長はそう言うだろうと思います。しかし大臣、現下の状況から見れば、サミットの前にやったら非常にいいと思いますよ。それから中期的プラン、非常に難しいというお話でしたが、財政当局からすればそうかもしれません。しかし、そういうことが国際的責任その他を含めた状況からいって必要じゃないでしょうか。  なお、我が日本社会党は既に内需拡大五カ年計画を発表いたしておりますことを申し添えまして、以上で終わります。
  100. 中川秀直

    中川(秀)委員長代理 草川昭三君。
  101. 草川昭三

    草川委員 公明党・国民会議の革川昭三でございます。  私は、本日、お許しを得まして、債券の先物市場の問題と自動車保険の保険契約の拒否という問題を具体的な事例を挙げて質問をしたい、こう思います。  まず最初に、東京証券取引所で発足をいたしました債券の先物市場が、発足早々に過去最大ともいうべき暴落に遭い混乱をしておるということが既に新聞等でも大変話題になっておりますし、それなりに深刻なショックを投資家の方々にも与えているわけであります。十月十九日に発足したことは御存じのとおりでございますけれども、六日目の二十五日、日本銀行の短期金利高、これは先ほど来国際金融の面かももいろいろ議論が出ておるところでございますが、この誘導策をきっかけに六・八国債が一気に四円十四銭と過去最大の暴落相場を示すことになってきました。当然のことながら先物相場にも影響を与えたということになり、二日間連続して出来高できずというのですか、商いが不能になりまして、一体これはどうなるのかというような状況になっているわけであります。これは一体どういうところに原因があったのか、まず当局の御意見を賜りたいと思います。     〔中川(秀)委員長代理退席、熊川委員長代理着席〕
  102. 岸田俊輔

    ○岸田(俊)政府委員 先生指摘のように、国債の先物市場でございますが、十月十九日に発足をいたしました。当時債券の価格は非常に順調でございまして、金利で見てまいりましても標準銘柄の六十八回債で五・四二というような状況でございます。それがやはり短期金利の上昇を契機といたしまして、現物市場が相当の安値になってまいりました。それに引きずられまして債券先物もある意味では混乱が生じたわけでございます。  制度構築に際しまして、やはり債券の乱高下を避けるために値幅制限というものを設けるということで、発足当時は一円ということでやっていたわけでございますが、現物の変動が、先ほど先生指摘のように一円を超えて四円というような程度になってまいりました。こういう事態に対応いたしまして、最初制度の構築のときから考えておりましたが、急激な変動の場合には弾力条項を用いてその一円の幅を広げるという措置をとったわけでございます。その間、若干現物市場の情勢を眺めるために二日間市場を一応停止するという形になりまして、その間に弾力条項の発令によりまして三円の値幅をつけるということにいたしました。それ以後ようやく順調な市場に戻ってくるということになったかと思います。
  103. 草川昭三

    草川委員 今のようなお話は、原因が一体どこにあるのかというのは、直接的には今も触れられておりますが、短期金利の高目誘導ということになりますけれども、実際上は十分な市場整備ができていなかったのではないかという反省を当局は持たなければ本質的な解決にならないのではないかと思うわけであります。特に、今もお話がありましたように言うところのストップ幅、いわゆる値幅制限ということ、これと証拠金の関係あるいは売買単位の問題にも関連がしてくると思うのでございますけれども、当初なぜそのストップ幅というのですか値幅制限を一円に決めたのか、その一円と決めたことについての反省はなかったのかどうか、お伺いしたいと思います。
  104. 岸田俊輔

    ○岸田(俊)政府委員 当初値幅制限を一円にいたしましたのは、従来からの過去の国債の相場の動きを見てまいりますと、最大限動きましても一円五十銭程度だったわけでございまして、安定的な市場の動きとしては一円の値幅制限でいいのではなかろうかなというふうに考えていたわけでございます。ところが、発足六日目にいたしまして従来にない大きな変動がございました。それに対応いたしますために、弾力条項を用いまして一応三円の幅に広げたということになるのかと思います。
  105. 草川昭三

    草川委員 そこの点についてはいろいろと事前に議論があったようでございますけれども、例えば昭和五十八年の七月に大和証券のレポートでは、金融先物の市場が創設をされることについて二円ぐらいの幅が必要ではないかというようなことを証券会社も言っておるようでありますし、同じ年の十二月に日興証券の方もレポートでは、やはり一円五十銭というのが適当ではないだろうかと言っておりますが、実際的には昭和五十五年の三月十四日には、今一円幾らとおっしゃいましたけれども、二円六十三銭の急落があったわけですよね。少なくとも五十五年の三月にはそういう実績もあるわけですから、特に今日のように、百三十兆円を超す大量の国債を発行しておる現状では、もう少し幅を持って臨まれた方がよかったのではないかと思うのですが、その点はどうでしょう。
  106. 岸田俊輔

    ○岸田(俊)政府委員 市場の安定的な推移というものを確保するためには、やはりある程度まで絞った形の値幅制限の方が望ましいのではなかろうか。ただ、変動の多い場合には、それに対応して値幅を広げていくという即時の対応はしなければいけないと思っておりますが、平常の場合にはやはり一円程度の方が順調なのではなかろうか。私どもも、現在は相場の変動が相当激しくなっておりますので三円の幅を続けておくつもりでございますが、市場が現物を含めて安定をした段階には再び一円の幅に返していきたいと考えております。
  107. 草川昭三

    草川委員 それでは、今度はいわゆる委託証拠金の方にいきますけれども、これも国会審議に先立ちまして当初大蔵省は、委託証拠金というのは一千万円程度にしたらどうだろうというようなことを言ったことがありますね。ところが、それに対して業界の方からもいろいろな意見があって結局六百万円に落ちついたと言っておるわけであります。私はこの委託証拠金の問題とかいわゆる取引の量、そういうものを含めて議論をしていく必要があるのではないかと思うのでございますが、この委託証拠金の考え方は今でも正しかったと思っておみえになるのか、お伺いしたいと思います。
  108. 岸田俊輔

    ○岸田(俊)政府委員 制度の構築に際しまして、先生指摘の一千万円程度というものの議論もございました。ただ、一方におきましては、やはり個人投資家にも参加をしてもらって市場の厚みを加えなければいけないというような議論もございまして、両サイドを考慮いたしまして六百万円という形にいたしたわけでございます。  そのほかさらに、現実に各社が先物市場に参加をいたします個人投資家の顧客の勧誘に際しましては特別な基準を設けておりまして、預託金が二千万円以上というようなさらに絞った形の制限もいたしているわけでございまして、現実に今回の市場の参加者を見てまいりましても、小口の参加者というものはほとんどございませんので、ある程度の大口の投資家に限られているという現状でございます。
  109. 草川昭三

    草川委員 たまたま一般の参加者が少なかったからというお話が今ありますが、もちろんけがは少なく、大きい機関投資家に被害があったということなんでしょうけれども、そういうことでは本来、いわゆる国際金融時代に対応する目的にそぐわないわけですね。いわゆる一般の大衆参加があってこそ、ボリュームが厚いからこそ先物市場というもののリスクヘッジができるわけなんですね。ですから、今のお話は矛盾するのではないでしょうか。
  110. 岸田俊輔

    ○岸田(俊)政府委員 先物市場の創設の意味合いでございますけれども、やはり最近の大量の国債発行に基づいて大量に所有している機関投資家のリスクヘッジというものが基本的なニーズではなかろうか。ところが、そのヘッジだけでは市場ができないわけでございまして、これに対応するスペキュレーダーと申しますか、投資家も参画していただくことによって市場が成立するわけでございまして、その場合のスペキュレーダーとしての個人の参加をどの程度まで考えればいいかということが制度構築に際して議論が行われたわけでございますが、証券取引に対しますある程度の知識経験があり資産がある者にやはり限るべきではなかろうかという意見の方が大勢を占めたということで、現在のような構築の姿にいたしたわけでございます。
  111. 草川昭三

    草川委員 確かに知識経験のある方々の参加がなければボリュームが厚くならないというのは当然だと思うのです。ということになると、今の債券の先物というのは証券取引法で当然網をかぶせられますけれども、将来金融商品がたくさん出てまいりますね。という場合に、果たして証券取引法だけの網でいいのかどうか。  もう一つ、我が国の法律には、御存じのとおり商品取引所法というのがあるわけです。こちらの方は通産省なり農林省の扱うべきいろいろなものもあるわけでございますが、そういう意味では先物取引法というような法律でもつくってボリュームを全体的に厚くして対応をしていきませんと、今回のような事件がこのまま残りますと、当然のことながら大衆参加は遠のいていきますね、足は。その点はどうお考えになられますか。
  112. 岸田俊輔

    ○岸田(俊)政府委員 先物市場の考え方でございますけれども、諸外国のように商品も取り込んだ一つの市場をつくるというのも考え方かと思います。しかし、私どもといたしましては、この大量の国債発行下におきまして、国債を大量に保有する機関投資家のリスクヘッジというものが急務である、諸外国にもそういうものができてきているという状況から、まずそれから始めていきたいということで国債の先物市場の創設をお願いをいたしたわけでございます。  ほかの商品、国債の先物以外の金融先物その他の問題につきましては、私どもといたしましては、この国債の先物市場が健全に発達することをまず見守って、その次のステップとして検討していきたいというふうに考えているわけでございまして、現在非常な、予想いたしませんような大きな変動に見舞われた国債先物市場でございますけれども、これが一つの契機となりまして、将来円満な、確実な、健全な市場ができるように最大限の努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  113. 草川昭三

    草川委員 では、そのままの延長の質問になりますが、例えば今回のような事態のままで海外の金融先物取引を許可をしていくお考えになりますか。
  114. 行天豊雄

    行天政府委員 海外の金融先物市場への日本居住者の参加につきましては、従来はそもそも我が国に金融先物市場はございませんでしたし、今委員指摘のように、この先物市場にっきましてはいろいろと配慮しなければならない問題もあるということで、現在のところそれを許可していないわけでございます。  ただ、国内でも国債先物市場が成立いたしましたし、同時に、御承知のとおり、最近では日本の居住者が海外の金融債券を取得するという例が非常にふえておるわけでございます。したがって、当然そのためのヘッジの必要性ということもふえておりますものですから、そういった事情をいろいろと考えまして、今後この海外金融先物市場への参加の問題をどうするかということを検討を始めておる段階でございますので、まことに申しわけございませんが、今の段階ではまだいついかなる形でというところまで申し上げるに至っておらないわけでございます。
  115. 草川昭三

    草川委員 これがスムーズにいくならば早急に省令改正が行われておると思いますが、そういう上に立って実施をするというようなお話もあったようでございますので質問したわけでございます。  そこで、余りこの問題について時間をとっておれませんので、大臣ちょっとまとめた御感想をお聞きしたいわけですが、実は、証券取引法の網の中で債券の先物をするということについて、以前に随分譲論があったわけですよね。特に商品取引業界の方からは、こういうような形でやると、いわゆるジャンルというんですか、債券というものと先物というのは専門の分野が違う、債券というか証券界と先物というのは分野が違う、我々の方にも参加をさしてもらいたいというような意見もあったようでございますし、彼らのいろんな勉強会の中では、今回のこの政府のやり方は長期的展望を欠く、そして、法律の解釈上も妥当性を欠くものであって、必ずや将来に禍根を残すであろうと、こういうことを言っておるわけですよ。そのとおりに今回の事案というのはなっているわけですよね。これは私が先ほど来申し上げておるように、百三十兆円という大量の債券を発行するような場合には、当然これを引き受けた人だって将来のリスクを考えるわけですから、かなりの大衆参加ということもお願いをしなければいかぬわけです。ということになりますと、売買単位の引き下げたとかあるいは委託証拠金の関係ということで、もう少しバランスを持ちながら、そしてこのヘッジを受ける、あるいは相対という形になるのでしょうか、とにかくそういう全体的なバランスが必要ではないかと言われておるのですが、今回のこの大暴落についての大臣の見解をお伺いしたい、こう思います。
  116. 竹下登

    竹下国務大臣 今回の問題につきましては、先ほど来御議論のあったところでありますが、私どもも率直に言って、できたばかりで、その最初の日に、人はよくお祝儀相場とか申しましたけれども、相当な出来高であった、やれやれと率直にそんな感じを持っておりました。しかし、その後間もなくして一円を三円と、こういうようなことにせざるを得ぬ状態になりましたが、これからも私どもはやはり、今の御議論わからぬわけではございませんけれども、この投資家というのは今度の場合はかなり熟知された方々が多いのじゃなかろうか、したがってむしろ証券業界には、過剰な誘導とでも申しましょうか、勧誘と申しましょうか、そうしたことに対しての注意は絶えず喚起していかなきゃならぬ課題である。したがって、発足間もない今日でございますので、今後とも不断の注意を払いながらその推移を見て、健全な市場として育成していくことに心がけていなければならぬ課題だというふうに問題意識を整理をいたしております。
  117. 草川昭三

    草川委員 時間の関係がございますので、次の、保険の方に移ります。  私は、九十五回当時の国会から自動車損害賠償保険の問題を、質問主意書等を中心に取り上げてきておりますが、きょうは時間の許す限りその質問主意書の内容についても質問をしていきたいと思うのです。  一つ、具体的に、一部の損害保険会社において自動車保険の契約を、加入希望者の年齢それから事故歴、車両の種類等によって拒否をしているという事例がございます。こういうことを行政当局は御存じかどうか、お伺いします。
  118. 関要

    ○関説明員 損害保険会社が保険契約を義務的にいたさなければならない自賠責、強制保険のものは別といたしまして、任意の自動車保険等一般の保険の引き受けに当たりましては、保険会社といたしまして諸般の契約者の事情等を考慮いたしまして危険の選択を行っていくということは、保険会社は一人の契約者だけでなくて全体の保険契約者の利益を考えて行動しなければならないので、当然必要なことだというふうに考えておるわけです。  しかし、保険事業が非常に被害者保護に資するという非常に公共的な役割も持っているということでございますので、可能な限り契約者の保険の需要に応じていくということも必要であろうということで、かねてから損害保険会社を指導してまいっているわけでございます。  ただいま先生が言われましたような、拒否をしていくというようなケースにつきましては、非常に極端にリスクの多いということが明々白々であるような人についてはそういう行為をするのが当然であろうと思いますけれども、そういう極端な例を除きますと、損害保険会社全体を通じてそういった引き受け拒否のような事例が発生しているというふうには承知していないわけでございます。
  119. 草川昭三

    草川委員 今、部長の方から、そういう事実は承知していないという御答弁でございました。  私、今ここに、ホーム保険という会社がございますが、これは外資系でございますが、「自動車保険継続に関するご案内」といって客先に出した写しを持っておるのですが、その目付は昭和六十年七月十二日です。つい最近です。いろいろなあいさつ文がありまして、「来る八月八日」、ことしのことでございますが、「満期の自動車保険のご契約継続に関しましてはお引受けをご辞退致したくご案内申し上げます。事情ご賢察の上何卒ご理解」を願いたいといって拒否をするわけです。  こういうことは、私、ずっと代理店に聞いたら、これはもう今周知の事実だと言うんです。もうアメリカなんかではこんなことは当たり前なんで、今さらおかしいじゃないですかとこう言うのですね。私、それを実は承知をしていなくてびっくりしておったのです。  この会社がなぜこんなことをやるかということは、本件とちょっと違いますが、豊田商事事件を私ずっと追っておりまして、たまたまモーターボート協会で豊田商事がマリーンのいろんなフェスティバルをやったときなんかは、ホーム保険が協賛しているのです、これのパンフレットを持っておりますけれども。片やそういう悪徳商法にはどんどんその保険の契約をしながら、宣伝をしながら、一般の中小企業の、特に今おっしゃいました悪意ある人物じゃないのです、普通の、たまたま事故が若干あったという、そういう中小企業のおやじさんなんでございますけれども。そういうところに、あなたの上積み保険、任意保険はだめですよ、こう断られるわけです。非常に困るわけですよ。事故があった場合には、当然個人で今度は被害者の救済に向かわなければならない。保険というものの今おっしゃった公共性というものがこの際ないというのはいかがなものかと思うのですが、いかがでしょう。
  120. 関要

    ○関説明員 先ほどお答えいたしましたように、損害保険会社全体を通じまして保険契約を全面的に拒否するというようなことのないように、それは十分今までも指導し、損保業界としても努力をしてきたことだとは思っております。しかし、具体的な各会社のそれぞれの経営方針になりますと、それはそれぞれの会社の事情、判断がございまして、実際に募集活動をする代理店に対しましてそれぞれの会社の方針というのを出して、こういったものについての契約についてはこういう方針で臨んでほしいというようなことを通知をしているということは大いにあり得るだろうと思います。  また、先生指摘の具体的な会社については、確かにそのような通知が出ているということも後から私ども承知をいたしまして、それについては、そのやり方等について十分留意をして対処するように指導を行っているところでございます。
  121. 草川昭三

    草川委員 部長、具体的な事例をもう少し申し上げますので、今のような非常に消極的な態度でなくて、悪いことは悪いという行政指導をぜひしていただきたいと思うんです。特例の人間があるとするならば、事故が非常に多いというのは、それはまた別に警察庁当局から免許の取り消しをするとかそういう指導をすべきであって、企業全体をくるめて保険業務を引き受けないというのは問題だと思うのです。特に免許事業ですからね。  私、今ここにもう一つ持っておる資料は、これは外資系のグループの勉強会のときに使って、現実には各社がセールスマンに引き受け禁止の事例として挙げておるんですが、引き受け禁止の事例で職業的な制限というのとその他の制限というのが分かれてあるんです。職業というのは、どういう職業は引き受けを禁止をするのかというと土木・建設請負業、これは5ナンバーの自家用小型乗用車、こういうところはだめだというんですね。職業的な制限でまず第一関門を通せというんですね。  もっとひどいのがありますよ。自家用普通乗用車の場合に、清掃業もだめだというんです。清掃業はどうして引き受け禁止の職業になるのでしょうかね。さらにその次、風俗営業はだめだというのです。その次に遊技施設業、パチンコ屋もだめだというのです。それからまだあるのですよ。余り言うとあれですが、芸能関係もだめだというのです。それから港湾業者もだめだというのです。それから、その他疑わしい職業、疑わしい職業というのは何かちょっとわかりませんが、とにかくそういう指針を出しておるわけですよ。ということになると、国会議員も疑わしい職業というふうに向こうは言うかもわかりませんよ。国会議員の秘書なんというのは朝から晩まで走り回っているんだから、もう徹夜で我々は後援会活動をやっておるのですから、これは交通事故が多いから拒否だと言うかもわからない。そんなことを相手にされておるようなことでは私は問題が出てくると思うのです。今度は、その他の制限の中にスポーツカーというのがあるんですね。スポーツカーも引き受けられない対象になっているのです。括弧してフェアレディ。メーカーの名前も書いてあるのです。サバンナRX7、トヨタMR2。これはもうメーカーが怒るでしょうね、メーカーがつくったって、上積み保険を受けてもらえないわけですから。それは私は非常に問題があると思うのです、こういうやり方で保険会社がするということについては。  私は何回か申し上げますけれども、本当に事故率の多い人間については、特定の個人については経歴が出るわけですから、それは別な、いわゆる公安委員会的な発想から車に乗ることを禁止させるとかということにしないと——今保険というのは総括的な保険をやるわけでしょう、ファミリー的にも。一方では乗用車とバイクを共存して引き受けましょうというような上積み保険、任意保険もあるわけです。現実に売っているわけです。私は非常に得手勝手な営業を損保業界がやっておるのではないかと思うのですが、その点どうですか。
  122. 関要

    ○関説明員 損害保険会社が保険契約をするわけでございますが、もうこれは先生十分御承知のところでございますが、保険はあくまでも保険数理に乗って保険料率等が計算をされているわけであります。したがいまして、強制保険の場合は別でございますが、任意の保険につきまして、他の契約者に比べて非常にリスクが高いというようなものが入ってくるというようなことになりますと、先ほど申しましたように、損害保険全体としての保険数理が徹底できなくなる、また他の契約者にも不公平になるというようなことがありまして、保険会社がそういう意味で契約者を選択する、これはどうしても必要なことだというふうに考えております。  それは一般論でございますが、先生が御指摘になりましたその個別の会社のケースでございますが、これは会社の経営方針、またその当該会社が恐らく自動車保険の経理の内容がかなり悪くなっておりまして、それをカバーするために一時的に任意の自動車保険の引き受けをある程度抑制的にやりたい、そういう気持ちでそういう指示を損害保険代理店に出したものだというふうに思っております。ただ、その出し方につきまして、確かに先生が御指摘のように、我々の目から見てもやや行き過ぎの面があるということは感じますので、これからも引き続き十分指導していきたい、こういうふうに考えております。
  123. 草川昭三

    草川委員 今部長がおっしゃられたように行き過ぎの面を判断されるならば、ぜひそのような指導をお願いをしたい、こう思います。  それから、これも私どもかねがね主張しておるのでございますけれども、いわゆるこの自賠責は被害者救済を主目的とした強制的なものですね。このような保険料というのは火災保険料や生命保険料に優先をして所得控除の対象とすべきではないか、こう私どもは主張しておるわけです。政府はこの際、自賠責保険料、自動車保険料についての所得控除という問題についてどのように考えられるか。あるいはそういうことによって加入者の経済的な負担軽減を図らなければなりませんし、またそのことによって任意保険の加入の促進を図って上積みを与え、被害者救済にも対応をすべきではないだろうか、こう思うのですが、その点どうでしょうか。     〔熊川委員長代理退席、熊谷委員長代理着席〕
  124. 関要

    ○関説明員 強制保険でありますいわゆる自賠責保険の保険料を所得控除の対象としてほしいという税制改正の要望は、かねてから損害保険業界等からも出ているところでございまして、従来から税制当局といろいろお話をしてきておるところでございます。しかし、そのような税制改正につきましては、税制当局の方にはいろいろ御意見もありまして、これまでのところ実現を見ていないという状況にございます。
  125. 草川昭三

    草川委員 私どもも本当にいろいろと地域で運動をいたしておりますと、強い声がございますので、これはもちろん当然のことながら、税制調査会というのですか、いろいろな関係の網があるわけでございますが、ぜひ均等に、不公平な取り扱いのないよう、他の損害保険、生命保険と同様な取り扱いを求めたいと思います。  それから、これも私、前国会質問をしたことの回答が出ておりますが、非常に不満な点でございますが、いわゆる自賠責保険の加入者が負担する保険料の中を分析しますと、いうところの純保険料と付加保険料と大きく二つに分けることができると思うのです。その中で、原動機付自転車の営業保険料というのは、一年契約の場合ですが、八千円。この中に占める純保険料というのが三千三百三十円、約四一・六%になります。保険会社の手数料等の保険料がそれを上回るわけですね、四千六百七十円、営業保険料の五八・四%。こういう料金体系の不合理がある。早く言うならば、中身よりも包装紙代の方が高いわけです。だから、大きい車、小さい車関係なく保険会社のコストが要るんだというのが反論だと思いますけれども、私はどうしてもこれは承知できぬわけです。これは国が強制力を持って行う制度でありますから、私は欠陥だと思うのですが、その点はどうですか。
  126. 関要

    ○関説明員 保険料の中には、先生の御質問にもございましたように、純保険料と付加保険料とがあるわけでございます。また、これも御質問の中にありましたけれども、付加保険料は、損害保険に係ります事務的経費、つまり社費でありますとか代理店手数料を賄う部分でございまして、これにつきましては車種別に余り大差が出てこないという性格のものでございます。それに対しまして損害をカバーするいわゆる純保険料、これはやはり車種によって大きく変わってくる、こういう実態を有しているわけでございます。  したがいまして、その純保険料の額が高い車種につきましては、どうしても営業保険料に占める純保険料の割合が大きくなりますけれども、御指摘の原動機付自転車は、その車の性格からいいまして、事故の発生とかその損害の大きさとかいうことから純保険料の額を計算いたしますと、どうしても純保険料が低いことになるわけでございます。そういった関係で原動機付自転車の営業保険料の中に占める純保険料の割合が小さくなってくる、こういう関係にございまして、純保険料、付加保険料それぞれ計算をして出しておりまして、結果的にこういうことにならざるを得ないというふうになりますものですから、御理解をいただきたいと思います。
  127. 草川昭三

    草川委員 これは時間がございませんので簡単に御答弁願いたいのですが、いわゆる自賠責保険の保証金の代理店制度の問題について触れておきたいと思うのです。  自賠責保険の保証代理店の保証金残高が、運輸省の方の御答弁を願いたいのでございますけれども、今一体幾らあるかということだけちょっとまず答弁していただきたいと思います。
  128. 関要

    ○関説明員 自賠責保険の保証代理店から受けております保証金の総額は、約五十五億円になります。
  129. 草川昭三

    草川委員 約五十五億円という金額が保険会社の方に、預託というのですか、保証金として預けられているわけですが、契約を解除した場合にはこれは利子を含まず返還をされています。私が主張したいのは、保険代理業というのは非常に零細業者が多いわけでございまして、一社だけではなくて数社と契約をいたしております。この金額もばかになりません。非常に苦しい状況にあります。ですから、その五十五億円の保証金の運用については、少なくとも利子相当分はやはり保険代理業に還付をすべきではないか、こう思うのです。  事実、保険代理業というのはいろいろな勉強会をやっておられるようでございますけれども、有料で行われております、一部無料の点もあるようでございますけれども。こういう細かい点ではございますが、損保業界というのは非常に高収益を上げておるわけでありますから、何も零細な代理店から保証金を取ったものについての運用も、自分たちだけでするのではなくて、そういう配当を考えてもいいのではないか、私はこう思います。私はそのことを非常に強く要望しておきたいと思うのです。その点についてどのようにお考えになられるのか、お伺いをします。
  130. 関要

    ○関説明員 この保証金の性格でございますが、これは先生も御承知かと思いますけれども、自動車損害賠償保険は、車検等におきまして保険契約書をできるだけ早く車を運転する方に渡さなければならない、渡すことが便利である、こういう観点から特別にそういう制度をしているわけでございます。つまり、本来であれば損害保険会社が保険料を収受してから危険の担保を発生させるということが本則ではありますけれども、それが遠隔地等なかなかうまくいかない、その場合には、そういった証明書の発行を代理店に授権をする、代理店が証明書を発行すればそこで危険の負担が発生する、こういう仕組みにするわけでございます。その場合に、損害保険会社の方とすれば果たして保険料がちゃんと入ってくるだろうか心配でありますので、その点を保証していただくためにそういう保証金を取っている、こういうことでございます。  この保証金に付利をするかどうかということにつきましては、あくまで損害保険会社とその代理店になる方との間の私的なコマーシャルな契約の問題でございまして、現在そういった契約において付利をしない、こういうことになっているわけでございます。  なお、先ほど五十五億円と申し上げましたけれども、代理店一店当たりにいたしますと、約十六万五千軒ございますので、これは三万円強という非常に小さな金額になるということはつけ加えさせていただきたいと思います。
  131. 草川昭三

    草川委員 時間が来ましたので、最後に一言だけ運輸省の方にお伺いします。  先ほどもちょっと触れたのですが、普通乗用車の任意保険の場合に、一般家庭でミニバイクの場合特約制度をつくってダブルで掛けることで、これは非常に歓迎をされております。自賠責についても普通乗用車と原付を一体化した契約制度を設けることを考えられるかどうか。簡単で結構ですから、その答弁を得て終わりたい、こう思います。
  132. 西村泰彦

    ○西村説明員 先生指摘のミニバイク特約でございますが、確かに御指摘のとおり、保険料は大分安くなっておるわけでございます。ただ、私どもで調べた範囲では、これは被保険者を限定いたしましたり損害の範囲も多少狭めるというようなことでございまして、バイクが単独で任意保険に入る場合とちょっと内容的に違っておるわけでございます。したがって保険料全体が多少安くなっておるということでございまして、必ずしも付加保険料を割り引いたというようなことではないようでございます。  これは私どもで任意保険を所掌しているわけではございませんので、やや不正確な点があるかもしれませんが、そういうことでございまして、このような制度をしからば自賠責制度に導入できるかというようなことでございますが、今申し上げましたとおり被保険者の範囲などが多少狭くなっております。したがいまして、御承知のとおり大変社会保障的な性格の強い強制保険であります私どもの自賠保険といたしましては、被保険者の範囲が限定されるというようなことではちょっとまずい、こういうふうに考えておるわけでございまして、早急な導入は困難かと思っておるわけでございます。
  133. 草川昭三

    草川委員 終わります。     〔熊谷委員長代理退席、中川(秀)委員長代理着席〕
  134. 中川秀直

    中川(秀)委員長代理 宮地正介君。
  135. 宮地正介

    宮地委員 私は、最近の悪徳商法の再発防止の問題等につきまして、少し総括的にお話を進めてまいりたいと思っております。  この臨時国会におきましても、まず中曽根総理大臣は所信表明演説の中におきまして、特に「豊かな国民生活の実現」こういう項目の中におきまして、「最近大きな社会問題となっている、高齢者などを対象とする悪質な商法に対する対策など、消費者関連施策の一層の充実に努めることにより、安全な社会づくりを進めてまいります。」大上段からかぶったわけでございます。具体的に豊田商事の問題あるいは投資ジャーナルの問題等大変ゆゆしき問題が発生をしてまいりまして、政府といたしましても関係当局の努力によっていろいろ対応してまいったと思います。  しかし、最近のそうした状況を総括して見てまいりますと、いまいちといいますか、国民もその解決にどうもしっくりしていない面が多々あるのは事実でございまして、特にそうした消費者保護というもののためには既に消費者保護基本法というものができておりまして、その第二条では「国の責務」といたしまして、「国は、経済社会の発展に即応して、消費者の保護に関する総合的な施策を策定し、及びこれを実施する責務を有する。」また第六条におきましては「法制上の措置等」こういう項目がございまして、「国は、この法律の目的を達成するため、必要な関係法令の制定又は改正を行なわなければならない。」「政府は、この法律の目的を達成するため、必要な財政上の措置を講じなければならない。」あるいは第七条におきましては「危害の防止」、第十八条におきましては「消費者保護会議」、このように、そうしたいわゆる悪質な商法、取引に対しましても、いろいろと法律的な面におきましても対応の措置があるわけでございます。  まず最初に、大蔵大臣に、こうしたいわゆる悪質な商法、豊田商事事件あるいは投資ジャーナルあるいはそれに類似した事件がいまだにやまない、大変ゆゆしき事態が国民の中で大きな社会問題になっているわけでございますが、特に経済閣僚の中心的立場におりますところの大蔵大臣、こうした事件というものに対してどのような見解をお持ちになっておるか、また今後の対応について政府としてどういうふうにお考えになっているか、率直な御所見をまずお伺いしたいと思います。
  136. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる悪徳商法、こういうものが存在し、ゆゆしき問題を惹起しておることは我々も承知をいたしております。  先般消費者会議が、毎年一回でございますか、ありまして、経済企画庁の方でいわゆる消費者保護という立場からいろいろな対策についての計画等が私どもに示されました。したがって、こういう複雑な経済社会の中にありましてそうしたものがまかり通っていかないように、まずは消費者の皆さんに対するところの啓蒙宣伝、そして具体的には法的措置というふうなものを総合して勘案しなければ、根絶を期することは難しいなという印象をその会議議論を通じながら私自身も率直に感じたことでございます。
  137. 宮地正介

    宮地委員 きょうは、経済企画庁国民生活局長見えておりますが、まず具体的に豊田商事の事件につきましては、実は私、昭和五十九年四月に物価対策特別委員会におきまして、当時の河本経済企画庁長官に、今から約一年半前でございますが、この豊田商事問題というものは大変ゆゆしき問題である、早急に政府として手をつけないと大変なことになりますよと、当時の被害の実態調査をもとにいたしましてお話を申し上げました。河本長官は、会議録を見てもおわかりのとおり、豊田商事問題はゆゆしき事態である、至急に前向きに政府として解決するように努力したい、さらに関係省庁と至急相談する、至急、至急という二度にわたって強いお言葉の中でその解決の意欲を見せました。至急、至急ということは、日本語で言いますと大至急ということですね。一般的にはこれはSOSということです。  そういう事態にもかかわらず、その後今日のような状態になってしまった。私は、その事務方である経済企画庁、特に国民生活局はこの問題をどういうふうに反省をし、今日までこうした事態になったことに対して責任を感じておられるか、国会の場におけるこうした委員会質疑というものはそんなに軽々なものなのかどうか、この点についてまず篤とお伺いしたいと思います。
  138. 横溝雅夫

    ○横溝政府委員 お答え申し上げます。  先生が今御指摘になりましたように、豊田商事問題にっきましてはかねてから国会でも議論のあるところでございました。政府といたしま一しても、五十七年から今の大蔵大臣のお話にもありました消費者保護会議におきまして、こういった金の現物まがい取引、現物まがい商法に対する現行法の厳格な適用あるいは消費者に対する啓発というものに力を入れるべきということを決めておりますし、それに沿いまして、テレビとかラジオとかパンフレットとかいろいろな手段を講じてPRに努めてまいりました。各省とも消費者保護会議の決定に基づいていろいろ連携をとってまいったわけであります。  それから国民生活センターとか、あるいは地方の県に消費生活センターがございますが、そういうところが豊田商事問題で苦情を持ち込まれた場合に、豊田商事との間に立ちまして、契約の解約とかあるいは契約更新が順調に進むように手助けをするというようなこともやってまいったわけでございます。それがことしの五月、六月になりますと、御承知のとおり豊田商事側からそういう返済の現金の支払い等がぴったりとまってしまって、非常に大きな問題になったわけであります。  そこで経済企画庁といたしましては、関係六省庁、これは大蔵、通産、法務、警察、公取と当庁でありますけれども、六省庁が集まりまして、これへの対応につきまして検討を鋭意開始しておるところでございます。その後も、豊田商事一一〇番というようなものを国民生活センターに設けましたり、いろいろな手を通じてPRを進めるとともに、このような商法の再発防止のために最大限の努力を払っておるところでございます。
  139. 宮地正介

    宮地委員 国民生活局長、やはりもう少し責任を感じ、解決のために遂行をいかにすべきかということを私はもっと真剣に考えて対応してもらいたいと思うのです。決して私は経済企画庁だけじゃないと思うのです。通産省におきましても、これはもう既に、あなた方がつくったこの「かしこい消費生活へのしおり」という、これは五十八年三月発行の六十一ページに「金の現物まがいの悪質取引について」、この豊田商事の問題を大阪T商事(株)と、Tというイニシアルは使っているにせよ、「大勢の顧客が一度に解約を申し出た場合に倒産する恐れが強いことから極めて不明朗な取引と言わざるを得ない。」こういう形で、通産だってこうした問題をわかっていたのですね。そうしたわかっていた事態を踏まえて、私は昨年の五十九年四月十二日に河本長官に追及をしたところ、先ほどのような、ゆゆしき事態である、至急解決に政府は取り組み、至急関係省庁と協議を重ねて検討すると。この一年半価やっていたんですか。そして今、十一月一日の中曽根総理大臣会長をやっております第十八回消費者保護会議、この「消費者行政の推進について」という中でやっとそれらしき政府のやる気が出てきた、対応が出てきたじゃありませんか。今まで何をやっていたんでしょう。そしてこの消費者保護会議の中におきまして、今後来年の三月まで、六十年度中に当面講じようとする措置ということで明確にしてきたじゃありませんか。一年おくれているんじゃないですか、これは。去年の四月に本当に決意したら、昨年の十一月の第十七回消費者保護会議でここまでなぜ具体的な方向というものを出せなかったのですか。経企庁、もう一回答弁してください。
  140. 横溝雅夫

    ○横溝政府委員 消費者保護会議の決定文の、通常前文と言っておりますが、「消費者行政の推進について」という、全体二百八十項目にわたっておりますけれども、その重点を取りまとめたものがございますが、ここで今先生が御指摘の金等の現物まがい取り引きについて、ことしの十一月一日の決定でも触れておりますけれども、実はこのような決定は去年の十一月にもなされておりました。  ただ、去年の段階では、ことしの文章から申しますと、「各省庁連携の下、不法事犯の取締りの強化等各種法令の厳格な運用及び迅速な情報提供に努める。」という趣旨は去年も決めておったのですけれども、ことし新たにつけ加わったのが、その後の「更に、消費者被害の防止のための方策について、法制度の整備も含め関係省庁連携の下に検討を進める。」それから、「また、」以下のところもつけ加わったわけでございますけれども、これが、去年以来の事態のより一層の進展に対応して、さらに思いを新たにして真剣に取り組むということでつけ加わったわけでありまして、去年全然触れなかったわけではございませんで、去年もかなり重要な事項として取り組む決定をしておったわけでございます。
  141. 宮地正介

    宮地委員 今あなたが言ったように、「法制度の整備も含め関係省庁連携の下に検討を進める。」これがことし入った。いみじくもここがポイントなんですよ。あなたときょうお話ししてたって時間がないのであれですが、私は、経済企画庁は、いろいろ手足がない省庁として大変なところは承知しております。しかし、かなめの消費者保護を担当する政府でございますから、どうかしっかり腹を据えて関係省庁と頑張っていただきたい、ここに私はとどめておきたいと思います。  そこで、先ほども大臣から、こうした悪質な商法をやはり解決していくためには、いろいろな処方せんがあるけれども政府としても法整備も含めて検討している、これは今この消費者保護会議でも述べているとおりでございます。特にその中で、二つは投資ジャーナルの問題ですね。これはやはり証券取引の適正化という問題でございますから、投資顧問業務のあり方などについて証券取引審議会の検討を受けて、この投資顧問業務のいわゆる法律の新規立法、こういうものも当然考えでいかなくてはならないのではないか、このようにも思っているわけでございますが、まず、この投資ジャーナル事件を通じましての反省の中から、この「法制度の整備も含め」の中で、今申し上げましたような投資顧問業法などについて新規立法の方向性、こういうものを大蔵省として検討されているかどうか、まずお伺いしたいと思います。
  142. 岸田俊輔

    ○岸田(俊)政府委員 誠備事件とか投資ジャーナル事件、有価証券の投資顧問をめぐります社会問題が発生したわけでございまして、私どもといたしましては、昨年の十二月からこの投資顧問業にっきましてどうあるべきかということについて証券取引審議会の特別部会で検討を続けておりまして、現在までのところ十回行っております。大体そろそろ議論も煮詰まってまいりまして、できれば今月中に答申をいただいて、そのお答えに従いまして適切に対処してまいりたいというふうに考えておるわけであります。
  143. 宮地正介

    宮地委員 次の第百四回通常国会に間に合うように努力をする御決意はありますか。
  144. 岸田俊輔

    ○岸田(俊)政府委員 同審議会の特別部会の答申によりまして、法整備が必要であるという結論になりました場合には、できるだけ早く法的整備に対する準備を進めたいと思います。
  145. 宮地正介

    宮地委員 次に、やはり豊田商事問題ですね。いわゆる現物まがいあるいはベルギーダイヤモンドみたいなこういう悪を、ワルを退治あるいは取り締まるためには、やはり現物まがい商法規制法的なものの新規立法というものが当然必要ではないか。恐らく現行の法律では、これから具体的に伺っていきますが、いろいろ行き詰まっている面がある。私は、いわゆる現物まがい商法規制法的な新規立法、こういうものを当然やはり考えるべきだと思いますが、この点については経済企画庁、検討の余地がありますか。
  146. 横溝雅夫

    ○横溝政府委員 現在、金等の現物まがい商法に対する対応といたしましては、先生指摘の消費者保護会議の該当部分にございますように、現行法の厳格な適用、それから消費者に対する情報提供、それから法整備も含めた対応、こう三つまず挙がっております。現在、御存じのとおり警察あるいは検察当局で捜査が依然続行中でございまして、現行法の適用についても現在検討中でございますので、法制度の整備だけがすべて残った手段ということではないわけでございますけれども、しかし他方では、現行法の適用が十分やはり事態に対応できないということになった場合に備えまして、法制度の整備の検討も始めなければならない時点になっております。それは保護会議で決定されているとおりでございます。  そこで、その内容でございますけれども、現在、関係各省所管の関係法令を豊田商事の商法の実態に照らし合わせまして、その問題点なりなんなりを検討しておるところでございます。それから、外国におけるこういう欺瞞的商法の取り締まりの法律を参考にしたらどうかという国会の御指摘もございましたので、外国の調査もこれからやろうとしております。そういうことで、いろいろ検討をまだしばらく続けませんと、今の段階で法制度内容がどういう方向になるかというのはちょっとまだ定かになっておりませんが、鋭意遺漏なきよう努力したいと考えております。
  147. 宮地正介

    宮地委員 今回のこの事件にっきましては、警察庁あるいは法務省、関係当局もいろいろな法律に基づいて努力をしてきましたが、結果的にやはりデッドロックに乗っておる、現行の法制ではなかなか縛りにくい、これはやはり私は現在の率直な置かれた立場ではないか、環境ではないか。  そういう意味で、例えば昭和四十九年にはマルチの問題が出てまいりまして、このマルチ商法を退治しようということで訪問販売法の立法で割賦販売法にマルチの規制条項を追加したとか、昭和五十五年には例の金のブラックマーケットの問題が出てまいりまして、この先物取引については御承知のように商品取引所法の政令指定品目に金を加えたとか、昭和五十八年には海外商品先物取引規制法を実施しておる。こういうようにいろいろ規制の網というものを、そのときのやはり悪質な商法あるいはネズミ講なんかの天下一家の会を中心とした問題のときには、超党派でネズミ講の禁止法の議員立法をつくった。あれなんかは、私は当時かんでおりましたが、大変すばらしい立法府の果たした責任であり、役割であったと私は思うのです。やはり、今度の事件などもこのまま放置しておきますと、かえって逆に手の内をさらけ出して、ワルがワルをさらに考え出してくる。そういう兆候も既に出てきているわけですね。  ですから私は、来年一月には経企庁が団長になってアメリカにいろいろ調査、勉強に行くようですけれども、ぜひこの現物まがい商法規制法をつくるという方向を、しっかり目的を持って勉強し、研究し、調査をして、一日も早くこの社会問題に大きな終止符の打てるように努力をしてもらいたい、こう思うのですね。そうしなければ、今回の事件も何のためにあれだけの大きな社会問題になって、大山鳴動してネズミ一匹も出ない、これじゃ国民の期待にはこたえられないし、我々国会における責任も痛感しているわけです。その辺のまず御決意を、簡単でいいですから。
  148. 横溝雅夫

    ○横溝政府委員 この問題についての法的整備の方向につきましては、現行法の改正で対処するか、新規立法になるか、もうちょっと議論して詰めてみないと明らかにはなっておりませんけれども、先生御提案の現物まがい商法規制法でございますか、そういうつかまえ方で対応することも含めて、かかる悪徳商法の再発を防止すべく最大限の努力を関係各省とともに払いたいと存じます。
  149. 宮地正介

    宮地委員 そこで、最近の円高の大変な傾向、また十月の十九日からの債券先物取引市場の開設、こういうタイミングをとらえてまたワルが動き出しているんですね。本当にワルというのは悪知恵が働くんですね。こういう円高に急激になって、今二百四円ぐらい、二百円前後になってきた。九月の初めごろ二百四十円前後だったのがだあっと円高になってきている。十月にちょうど国債を初め債券先物取引ができた、こういう一つの経済環境というか、世相の一つの流れというものをとらえまして、大変また海外の金融先物をねらってワルが動き始めてきているのであります。  そこで、まず最初に、この海外商品先物取引の問題については、これは当然大蔵省の認可が必要なんでありますが、こうした動きを政府としては承知しているかどうか、まずこの点について伺いたいと思います。
  150. 行天豊雄

    行天政府委員 海外金融先物市場に本邦居住者が参加をいたします場合に、当然証拠金の預託であるとか差金の決済が必要になるわけでありますが、このためには、現行外為法によりまして大蔵大臣の許可が必要ということになっておるわけでございます。私ども、一般的に申しまして今まで海外金融先物取引のためにそういう許可の申請がなされたという事実を了知しておらないのが実情でございます。
  151. 宮地正介

    宮地委員 私は今非常に重要なことをお伺いしたのですが、当然海外での金融先物取引は外為法の十七条、二十一条で許可が必要であります。ところが、こうしたドルだとかマルクだとか外貨預金を一つのネタにいたしまして、特に最近は円高を利用しての悪質な商法がふえてきておる。  具体的に既に政府委員室を通じましてお話をしてありますが、本社が新宿区の住吉にあります日立商事株式会社というのがあるのですね。この代表取締役は花田実という方だそうですが、これは元豊田商事の役員をやっていたそうですね。これが今度は外貨預金を使ってやはり悪質な商法を始めた。ところが、この会社もおかしくなってきて、最近はどうもぐらぐらしている。この関連会社に日本アイビー株式会社というのがあるのです、千代田区神田錦町に。これが最近同じような外貨預金を使っての悪質な商法を出してきております。  私の手元に、これは日立商事株式会社に被害を受けた方が、皆さん御存じの悪徳商法被害者対策委員会の方に、何とか対応を、助けてもらいたいということで相談に行った六十二歳のおばあちゃんがいるのです。この人は何と一千六十七万円相当のお金を出資しているわけですね。  それで、実際にはこの人はこういう言われ方をしたのです。外国の貯金です、高い利子がつきますと女性から電話があり、次に三十八歳になるセールスマンが来た。そして大きな車で、会社を見てくれといって迎えにきた。そのとき通帳を持ってきてねと言われ、百万現金にして会社に渡した。こういうことで、この会社も先ほど申し上げたように今倒産寸前である。  これについて、今国際金融局長は外為法で認可してないということですから、恐らくこの会社も認可してないと思いますが、まず、いかがでしょうか。
  152. 行天豊雄

    行天政府委員 先ほど御答弁申し上げましたとおり、海外金融先物取引のために外為法上の許可の申請がなされたということを私ども了知しておりません。したがいまして、当然そういったものに対する許可というものも一般的にはいたしておりません。
  153. 宮地正介

    宮地委員 そうしますと、外為法違反の可能性がありますけれども、例えば実際に取引をしていないという状況であれば今度はこれは完全に詐欺になるわけですね。この点、警察庁としてはどういうふうにごらんになりますか。
  154. 国松孝次

    ○国松説明員 お答えいたします。  私、ただいまお尋ねの具体的な事案につきましてつまびらかではございませんけれども、その事案の内容によりましては詐欺になる場合もあると思いますが、いずれにいたしましても事案の内容がはっきりいたしませんと、一般論として欺罔の声があればそれは詐欺になるという一般的なお答えしかできないのでございますが。
  155. 宮地正介

    宮地委員 後ほど委員会が終わったら資料をコピーして差し上げますから、お調べいただけますでしょうか。
  156. 国松孝次

    ○国松説明員 資料をいただけるのでございましたら、いただいた場合には検討させていただきます。
  157. 宮地正介

    宮地委員 こうしたワルというのは社会的タイミングというのに大変巧妙に対応するのですね。そして対象としてはお年寄りとか御婦人とか知識のない人にやっていくわけです。そういう点で、海外金融先物問題についても私はぜひ関係当局で目を光らせていただきたいし、海外商品先物取引の適正化については大蔵省としても厳重に監視をするとともに、そうした一つのワルに対しても経済企画庁等に協力し関係当局に協力して取り締まり、規制、こういうものにも対応していただきたい。特に私は今一つの日立商事の例を申し上げましたが、これはほんの氷山の一角でございまして、まだまだたくさんのこうしたワルがいるようでございますので、ぜひチェックをしていただきたい、こう思いますが、まず大蔵省の見解を伺っておきたいと思います。
  158. 行天豊雄

    行天政府委員 海外金融先物取引への日本居住者の参加の問題は現在検討中でございますが、その検討に当たりまして、委員指摘の諸点を十分踏まえて行ってまいりたいと思っております。
  159. 宮地正介

    宮地委員 それからもう一つ、大変悪質な取引の問題の一つとして、第十八回消費者保護会議の中でも述べておりますが、宅地建物取引の問題における悪質な商法がまた最近非常に出回っておるのです、昔からもいろいろあったようでございますが。まずこの点について、建設省きょうは来ていると思いますが、最近こうした問題についてどういう対処の仕方をしているか、お伺いしておきたいと思います。
  160. 荒田建

    ○荒田説明員 最近、まさに先生おっしゃいますように、不動産の取引をめぐるトラブルが多いわけでございます。現在、私ども及び都道府県の宅地建物取引業を所管しております部局に対しましても、年間二万件を超える紛争件数が上がってきておるのが現状でございます。それに対しまして私どももできるだけ消費者保護の観点が貫かれるように業者の方に厳しく指導するなどの措置をとっておるところでございます。
  161. 宮地正介

    宮地委員 実は皆さん御存じのように、テレビでも大変有名な磯村建設、こういうのをよく聞いたことがあると思うのです。この磯村建設の破産事件に関しまして若干対応をお伺いしたいのです。  磯村建設というのは本社が東京にあるわけですが、一回目の不渡りが昭和六十年七月二十三日、二回目の不渡りが八月二十三日、破産宣告の決定がなされたのが九月十七日、総負債額は約八十九億円、被害者の数は約百七十人、これが言われております。実際はもっと、下請等の業者を入れますと、総負債額百億、被害者数はさらにふえて四百五十人ぐらいになるのじゃないか。  こういう中で、大変に簡単に申し上げますと、埼玉県の寄居町に宅建分譲をやったのですね。その実態というのは、土地が平均しまして約三十坪ぐらい、その上に建坪二十坪ぐらい、大体一千五百万ぐらいの家を売られた。ところが、お金を完済しても自分のものにならない。抵当権が設置をされてしまっている。外されてない。常識じゃ考えられない被害の状況が起きておりまして、そういう中で特に被害者の同盟が約六十人できました。実際に被害者の状況を見てみますと、代金を完済している人が四十三人のうちで十人いるのですね。ところが抵当権つきである。頭金を払って後はローンを組んでいる、これが十二名。これもやはり抵当権つきである。代金が完済されておらない、これが二十一名。そうして四十三人の中で購入物件に入居している人は三十一人。これは、国税庁それから大蔵省に、私は大蔵大臣あてそれから国税庁長官あての陳情書を既に政府委員室を通しまして差し上げて、資料として皆さんお持ちだと思います。そういう中で、そうした大変に不幸な目に遣われた方々に対して国としてもできるだけ誠実な対応をしてあげてもらいたい、これが私の願い、ございます。  例えば、簡単に申し上げますと、Aさんという方は、土地と建物を六十年五月七日に契約をして、そして売買代金が一千四百八十万円で契約をした。そしてそのうち一千万円、これはもう既に代金を支払い済みであります。ところが、登記の名義人は磯村建設でありまして、一番抵当が大和銀行、二番抵当が棚沢商事というところが入りまして、この物件について大既省は差し押さえをしておるわけであります。あと残り四百八十万円の支払いが済みますと本人のものに本来ならなるわけであります。ところが今の現状では、四百八十万円を支払ってもいわゆる抵当権の解除あるいは大蔵省の差し押さえのダブルの網がかかっていてなかなか厳しい。  こういう点で、今後の対応といたしまして、まず大蔵省銀行局に私はお願いしたいのですが、幾つかの銀行が第一抵当権の中に入っております。これはなぜかというと、地上げをするときに銀行から磯村が借りてやっておるわけですね。本人は契約して金を払うときは磯村に払っているけれども、磯村が銀行に払ってなければ抵当権は抜けない、こういう仕組みになっているわけですね。そのために本人たちが大変な苦労をしているわけです。こういった状況をどうか御理解いただきまして、関係の金融機関に対して大蔵省としても、こうした実情をよく理解の上、何らかの対応をしていただければありがたいな。また国税庁におきましても、この差し押さえの解除の問題について今後何らかの対応はできないものかどうか。この辺を検討していただければありがたい。この二点について、まずお伺いしておきたいと思います。
  162. 吉田正輝

    ○吉田(正)政府委員 一般的に申し上げまして、金融機関が融資に際しまして抵当権を設定して、借入金の返済があるまで保全措置を講じますのは、銀行といたしまして預金者保護、資産の健全性維持の観点から通常行われておるところでございます。  しかしながら、本件にっきましては、ただいま先生からもお話しございましたとおり資料もいただいており、気の毒な事情もあるように感じられるわけでございます。どのような実情になっているか調査いたしまして、先生の御指摘の御趣旨も踏まえまして、必要に応じ関係当事者間で十分話し合いが行われるよう、関係金融機関に対して指導することなども考えてまいりたいと存じております。
  163. 塚越則男

    塚越政府委員 国税当局といたしましてもよく実情を調べました上で、ケース・バイ・ケースによりまして、購入者のお立場も配慮して実態に即した処理をしてまいりたいと考えております。
  164. 宮地正介

    宮地委員 これは氷山の一角ではないかと私は思うのです。まだまだこうした事件で、実際に消費者が家を購入して金を払い終わっても抵当権が解除されない、大変ゆゆしき事態だと思うのですね。私もこういう話を実際に伺いましてびっくりしたわけですが、まずこうした問題に対しても経済企画庁、消費者保護の立場から少しチェックをして、関係当局と連携をとってもらいたいと思うのですが、この点についていかがでしょうか。
  165. 横溝雅夫

    ○横溝政府委員 先ほどからお話に出ております十一月一日の消費者保護会議の決定におきましても、宅地建物取引の適正化というのは重要な一項目として取り上げておりまして、この宅地建物取引業法の的確な運用等、この問題の適正化には政府としても重点を置くことにしておりますので、今のお話も踏まえまして、関係省庁連携のもとに適正化に努力を払いたいと存じております。
  166. 宮地正介

    宮地委員 法務省になりますか、これも後ほど資料を差し上げますが、この中で東京地検の方に一件告訴が出ております。告訴状として、告訴人は被害者の武田喜三郎さん、東京都世田谷区瀬田一丁目三番十七号武本方、そして被告訴人は株式会社磯村建設、東京都練馬区北町二丁目三十五番二号、代表取締役磯村穂久治。この案件について早急に調査あるいは事務処理を進めていただきたい。この点についてよろしくお願いしたいと思います。
  167. 松尾邦弘

    ○松尾説明員 先生お尋ねの件、まだ私承知しておりませんが、資料をいただきまして至急検察当局の方に問い合わせをしたいと思っております。
  168. 宮地正介

    宮地委員 多くの方々の間で今大変な問題となっておりますので、法務省としてもぜひ積極的に取り組んでいただきたい。御要望しておきます。  そこで、時間もあと五分でございますので、関係省庁の方々の中で特に私お伺いをしておきたいのは、まず大蔵省。豊田商事の事件が出資法に触れるか触れないかというのが非常に大事な問題の一つなのですが、この点については大蔵省として現段階でどのように対応されているか、まず伺っておきたいと思います。
  169. 吉田正輝

    ○吉田(正)政府委員 出資法上の預かり金でございますけれども、これは預金などと同様の経済的性質を有するものということになっておるわけでございます。この要件は四つございまして、一つは不特定かつ多数の者が相手であること、二つ目に金銭の受け入れであること、三番目に元本の返還が約されていること、四番目に主として預け主の便宜のためになされたものであること、こういう要件になっておるわけでございます。  御指摘の豊田商事の商法が預金と同様の経済的性質を有しているものであるかどうかということにつきましては、これは取引の実態になるわけでございまして、勧誘行為の実態及び当事者の認識等につきまして慎重に判断する必要があると考えておりまして、現在捜査当局が実態を解明中と聞いておりますので、その結果を見守っているというのが現状でございます。
  170. 宮地正介

    宮地委員 豊田商事の源泉所得に対する差し押さえの問題については、国税庁、現段階ではどういうふうに対応しておりますか。
  171. 塚越則男

    塚越政府委員 豊田商事の源泉所得税の滞納に関する差し押さえの問題でございますが、まず、国税当局としましては、国税の滞納があります限り、法律に従って滞納処分を続行して国税債権を確保しなければならないという立場にありますことを御理解いただきたいと思います。  ところで、国税当局は、豊田商事の財産を破産宣告前に差し押さえしたわけでございますが、結果的に見まして、これによりまして同社の財産の散逸を相当程度防止することができたと思っております。  さらに、差し押さえました敷金あるいは保証金といったようなものでございますが、国税当局としまして、管財人の協力を得て家主側と強力に折衝いたしまして、その返還額の増加に鋭意努力をしてきたところでございます。これによりまして、同社の滞納処分に当たっては、国税債権を確保した上で、さらに被害を受けられた破産債権者に対する配当財源がふえる結果になったと考えております。
  172. 宮地正介

    宮地委員 あと、問題はこうした悪質商法が詐欺罪になるのかならないのか、これも非常に大きなポイントなのですが、この点については法務省、警察庁、どういう見解を持っておりますか。
  173. 国松孝次

    ○国松説明員 いわゆる豊田商法に対して詐欺罪を間擬することができるかどうかということにつきましては、現在七つの府県におきまして十四件の告訴がなされております。それにつきまして、現在関係府県において鋭意捜査中でございます。
  174. 宮地正介

    宮地委員 最後に大蔵大臣に締めくくっていただいて終わりにしたいと思うのですが、こうした悪質な商法、悪徳商法、豊田商事事件あるいは投資ジャーナル、あるいは先ほど何点か指摘いたしました海外商品取引問題、宅地取引。ワルは時代を非常によく知っておりまして、そしてなお弱いところがどこにあるかもよく承知しておりますし、また法の網をくぐることも十分に研究してやってくるわけですね。それだけに、消費者の教育ももちろん大事であろうと思いますし、また同時に政府としての法の網をくぐられないような消費者保護のためのきちっとした規制の立法も必要であろう。現行の法律を改正することによって再発が防止できるのか、あるいはそれでも限界があるなら新規立法をするとか、また、現状のそうしただまされやすい方々にできるだけだまされないような情報を提供する、また、来やすい相談の場というものをつくってあげる、こういうことは非常に大事だと私は思うのですね。ところが、残念ながら、そうした政府の苦情処理とか苦情に一番対応しなければならない国民生活センターの消費者行政に関する予算が、六十年度は五十九年度に比べて約五千七百万円削減されているのですね。大体傾向的に見てまいりますと、毎年逆に一〇%ぐらい予算が削られている。ですから、そういう中で国民生活局長は、局内の予算のやりくりで恐らく大変御苦労が多いのじゃないかなと思います。やはりこうした問題をやるときにはある程度人手もかかるわけですね。確かに技術によっての対応とかいろいろ必要でありますけれども、まず私は、そういう点で、こうした事件が大変多発している今日でございますから、そうした現場の窓口である国民生活センターなどについて余り予算を削ってもらいたくない。むしろ人を少しぐらいふやして対応できるようなことも検討してもらいたい。  第二点としては、先ほど申し上げたような法整備、何といいましてもこれが大事じゃないかと私は思っております。経済の中心的閣僚の大蔵大臣でございますので、この法整備についてもぜひ積極的に取り組んでいただきたい、このことを要望したいと思います。この点についての大臣の所見を最後に伺って、終わりにしたいと思うのです。
  175. 竹下登

    竹下国務大臣 先日の消費者保護会議、私も非常に関心を持って企画庁の御説明を承らしていただきました。かてて加えて、今日はまた具体的な問題についての御質疑を拝聴いたしましたので、私の知識は乏しゅうございますが、部内でも十分議論をして対応しなければならぬという問題意識を私自身抱かしていただきました。
  176. 宮地正介

    宮地委員 終わります。
  177. 中川秀直

    中川(秀)委員長代理 米沢隆君。
  178. 米沢隆

    米沢委員 今回私は、第二の予算と言われます財政投融資計画の改革、見直しの問題と、それに関連する厚年、国年の高利運用の問題について、政府の見解をただしてみたいと思います。総論はさておきまして、早速各論に入りたいと思います。  五十九年度の財政投融資計画の実施状況を見ますと、財投計画に基づいて資金配分を受けながら、年度中に消化できなかった使い残し額は、すなわち翌年度への繰越分と不用額の合計は、財投計画全体の約五分の一、二〇・二%、四兆九千億円にも上っております。このように未消化が多いというのは一体いかなる理由によるものか。毎年こういうぶざまな格好なのか。融資部門、投資部門に分けてその理由を述べていただきたい。
  179. 窪田弘

    窪田政府委員 財政投融資計画の五十九年度の実績で申しますと、御指摘のように不用と申しますか、計画に対する未達額が約一兆三千億円発生をいたしております。それから、繰り越しにつきましては三兆五千七百億、こういうことに相なっておりますが、ただ繰り越しにつきましては、毎年大体三兆円程度の繰り越しが出ております。これは、事業実施の翌年度への繰り越し等で、摩擦的なものであると考えておりますが、不用につきまして一兆三千億といいますのは、例年三千億程度でございますから、非常に多いわけでございます。  五十三年度にやはり一兆五千億程度の使い残しが出たことがございます。財政投融資は一種の金融組織でございますので、金融の繁閑によりましてある程度余ることもあり、また不足の時期もあるわけでございますが、特に五十九年度多額の不用を出しましたのは輸銀と中小公庫でございます。  輸銀につきましては、プラント輸出の不振でございますとか、資源需要の低迷による開発実施のおくれ、債務の累積問題によるプロジェクトのおくれ等でございます。また、中小公庫については、金融緩和を反映した貸付計画の未達成、こういうことになっております。その背景には、全般的な金融緩和という状況があることは否定できないわけでございます。  ただ、この一兆三千億のうち一兆円は、既に昨年の十二月に六十年度の財投計画をつくりますときにその原資に組み入れておりまして、弾力的な執行を図っております。  投資的経費とその他のものは、今数字をはじいておりませんので、申し上げかねるわけでございます。
  180. 米沢隆

    米沢委員 輸出入銀行の未消化率は約四九%、海外経済協力基金が三五・三%、医療金融公庫が五九・二%、環境衛生金融公庫が二四・一%、地方公共団体が四七%。特に今、輸銀等については御説明がありましたが、地方公共団体の四七%というのはどういうことですか。
  181. 窪田弘

    窪田政府委員 これは大半繰り越しでございまして、地方団体は、金利を節約するために年度間ずっと短期で泳いでいて年度末に借りる、あるいは繰り越しされる事業の執行に見合って年度末に借りる、あるいは翌年の出納整理期間内に借りるというふうな執行をするものが多いために、常に多額の繰り越しが出ている現状でございます。
  182. 米沢隆

    米沢委員 地方公共団体のこの多額の繰り越しですね、それから繰越額については毎年三兆円ぐらい出るとおっしゃいますけれども、毎年三兆円ずつあるということは、三兆円余計なものをつけておるということじゃないですか。
  183. 窪田弘

    窪田政府委員 ただし、その年度の借り入れ権限というものは、年度の予算に計上してお認めいただいているわけでございますから、結果においてはずれて借り入れが執行されますが、計画はその年度のものとして計画せざるを得ないわけでございます。
  184. 米沢隆

    米沢委員 ですから、その計画自体がずさんだということじゃないですか。
  185. 窪田弘

    窪田政府委員 必ずしもずさんというか、執行と計画とのずれといいますか、そういうことでございますが、確かにそれならその翌年度に計上したらいいじゃないかという問題がございますので、今後の検討課題の一つとして検討してまいりたいと思います。
  186. 米沢隆

    米沢委員 それぞれ未消化の理由についてはそれなりの理由があるのでございましょうが、計画の約半分近いものがこんなに使い残しになるといいうことは、私はやはり大変問題なんじゃないかと思います。財投計画がつくられる段階でずさんなのか、そうでないとするならば、財投では計画をつくってこうやりたいと思いながらも、実際は世の中がその動きについていけない、これはこういうことを示すわけですよね。特に大蔵省あたりは、よく財投については、いろいろ大切なお金を集めて使うのだから、その公共性にかんがみて、それぞれの政策目的を持って投融資を行うものだ、そしてできるだけ有効かつ整合性を持って配分するために統合運用するのだと言って、いろいろと理屈をおっしゃっておりますけれども、こういう姿を見ておりますと、実際は財投の持つ、財投がねらう政策目的そのものが欠陥商品みたいにしり抜けになっておりまして、結果的には財投の持つ機能が発揮されてないということをこれは意味するんではないのかな、こう考えるのですが、いかがですか。
  187. 窪田弘

    窪田政府委員 大変厳しい御指摘でございますが、しかし、今の金融緩和時期における公的金融あり方というのは非常に難しい時期に差しかかっておりまして、政府の信用、組織を背景にして集めました公的資金とその需要との間に、金融緩和を背景に若干のギャップが生じていることは否定できないことでございますが、それだからといって、財政投融資のシステムそのものが要らないとかずさんだとかということには必ずしもならないので、そのギャップは、例えば国債を引き受けますとか、そういう形で有効に運用さしていただいております。今はそういう曲がり角の時期ではございます。これは否定いたしません。そのあり方向体も謙虚に反省してまいりたいと思いますが、それだからといって、財投のシステムそのものを否定することにはならないと思います。
  188. 米沢隆

    米沢委員 私も、何も財投すべてを否定しておるわけではありません。しかし、財投計画を組んで、そして実施状況がこういうぶざまな格好で残っておれば、財投そのもの、計画そのものに無理があるのか、問題があるのか、それとも、幾ら計画を組んでも実際に世の中が全然ついていかないという実情が実際あるのかどうか、そのあたりが本当は厳しく問われなければ、せっかく有償資金を集めて、そして大事に有利運用されるなんて、その上にまた統合運用するんだとおっしゃる割には余りにも未消化の額が多いと、一体何だと国民が思うのは当たり前の話だと思いますね。  特に政府系金融の未消化分が大変多い。これは金利等の関係もあるんでございましょうが、これは御案内のとおり、特に政策金融みたいなもので、一般会計から利子補給みたいなものをしなきゃなりませんよね。結局未消化を残すということは一般会計からの繰り入れを少なくするということですから、ひょっとしたら、五十九年は住宅金融公庫とか農林漁業金融公庫とか国民金融公庫とか中小企業金融公庫あたりに余り貸すなよ、そんな行政指導をなされたのではないですか。
  189. 窪田弘

    窪田政府委員 そういうことは全くございません。
  190. 米沢隆

    米沢委員 特に我々は、それぞれ財投計画をつくられるときには大蔵省でも真剣に議論されて計画ができるんだ、そう思っておりますけれども、しかし、その性格上、資金運用部というものは資金需要に応じて金を集めるのではなくて、集まったものを受け身で使う、こういう状況でございますから、結果的には財投機関の資金需要というものにお構いなしに何か資金が振り分けられていくのではないか、そういう懸念が絶対ないとは言えないのではないか、私はそういう懸念を持つのですが、いかがですか。
  191. 窪田弘

    窪田政府委員 確かに、御指摘のように資金運用部資金の大宗をなしますのは郵便貯金と年金資金でございますが、郵便貯金は自発的な貯蓄ということで、私どもからいえば受け身のお金でございます。年金資金も年金掛金を強制的にいただいたものでございます。そういう意味では原資は経済情勢と関係なく集まるわけでございますが、それに対して運用の面は、資金需要というのは経済の情勢によって繁閑がございます。しかし、その調整は、例えば国債の引き受けをどのくらいにするとか、あるいは資金の不足の場合は政府保証債を発行して足らない資金を補っておりましたが、これを調整していくとか、その辺の弾力的な運用を図っていくべきものだと考えております。
  192. 米沢隆

    米沢委員 まあ今財投機関もかなり赤字の部門がふえておりますよね。私は、国鉄だとかあんなのは、財投資金があるがゆえにどんどん金を繰り入れる、その結果、甘さがかなり残ったんじゃないのかなと思うのですね。もし財投資金がなかったならば、もっと真剣に国鉄再建は十年前ぐらいから本当は始まっておったんじゃないかな。そういう意味で、入ってきたものを受け身で受け入れてそれを資金配分する、そのときに安易に国鉄なんかに流れてきたという、それは必要性はあったかもしれませんよ、しかしながら、国鉄に振り向ける際にもし財投資金がかなり窮屈であったならば、もっとまた別の方法があったのではなかろうか。財投があったがゆえに安易に流れて、結果的には経営姿勢を改めないままに今日まで来てこういう状況になってきた、そういう反省を鋭くなさねばならない、私はそう思うのですね、大蔵大臣
  193. 竹下登

    竹下国務大臣 国鉄というのは昭和三十八年までは黒字であったわけでありますが、モータリゼーション等の変化から、三十九年からまさに雪だるまのように赤字になりました。しかし、確かに御指摘のことは私も十分理解のできることであります。  私も今聞きながら、さて、もし原資が不足しておったらどうしたんだろうかというと、今度は債券をあるいは発行しておったのかな、こんな感じがいたして承っておりましたが、しかし例えばそれが債券発行であってもやはり厳しさは——あるいは今おっしゃった財投資金というものをいわば財政需要のある方が要求する立場に立ったときにやはり要求しやすかったのかな、こんな印象を受けながら承ったところでございます。
  194. 米沢隆

    米沢委員 そういうことで、最近では銀行が長期プライムレートを実質的に下回るような金利で貸し出すケースが多いということで、政府系金融の魅力がなくなった、そういうことで結果的には政府系金融機関の未消化がかなりふえておるのではないか、こう思うわけです。結果的には、政府系金融機関は利用者が減少する、そして利ざやが縮小して収支が悪化する、こういう状況になって、今度考えられたのがいわゆる預託金利を何とか引き下げよう、こういう悪巧みだったわけですね。  さて、この財投関連の金利引き下げ交渉が、先般十月三日やっと決着した、そして十一日から施行されたということが発表されました。御案内のとおり、現行の預託金利年七・一%から〇・三%引き下げて六・八%になったわけでございますが、この交渉の過程で厚生省は、厚年、国年の自主運用が認可の条件だとして引き下げにかなり頑強に抵抗されておるやに聞いておったのですが、ついに大蔵省の軍門に下ったようなことになっておりますが、自主運用という観点に立ったときに、何か曙光でも見えてきたのですか、それとも何かやみ取引をやったのですか。
  195. 丸山晴男

    ○丸山説明員 お答えいたします。  厚年、国年の積み立てにつきましては、全額資金運用部に預託しておりまして、十月十一日までは七・一%の預託でございましたが、十一日から六・八%と、〇・三%先生御案内のとおり下がっております。  この交渉につきましては、ことしの夏以来、大蔵省当局と厚生省当局で非常に真剣な議論がございまして、厚生省の立場からするならば、年金の積立金の金利というのは高ければ高いほどいいということでございますが、他方、長期金利の低下といったような当時の事由がございまして、大蔵省当局の全体のお立場ということを踏まえまして、私どもとしては当面やむを得ない。でございますけれども、本来、積立金の運用というのは、やはり高利であることが保険料拠出者の立場あるいは将来の年金財政の長期的な安定というものを考えます場合に一番大事であるということで、別途、別建て高利運用案というのを来年度の厚生省の重要事項として要求いたしまして、それの実現につき強力にその具体化を協議してまいりたい、こういうようなお話を申し入れまして、○・三%の引き下げにつきましては当面やむを得ないということで了承した、かような次第でございます。
  196. 米沢隆

    米沢委員 この財投の貸出基準金利は、長期プライムレー小に連動いたしまして〇・二ですよね、下げられたのは。しかし預託金利は〇・三%引き下げられた。その分だけ運用部の方にとってはプラスかもしれませんが、年金を出しておる皆さんにとりましては、これはマイナスに働いておるわけですね。一体この〇・一%差額はどういうような理由でつけられたのか。  それから、まさに本来ならば公定歩合が変わらぬままに預託金利を下げるなんというのは、これは異例のことですよね。特に、預託金利が下げられると普通は郵便貯金の金利が下げられた、これが今までの慣例みたいなものになっておったわけですが、一体これは今後どういうふうに扱われるのか。もし下げないということになりますと、今度は郵貯特別会計がかなりしわ寄せを受けますね。特に預貯金の金利と預託金利の差は大体一・三五%おったのですから、これが〇・三%下がったのですから一・〇五%、これは御案内のとおり、五十九年末の郵貯特別会計の赤字は大体三千五百七十億円といいますよね。これが今度のようなこういう措置によって、ますます赤字がふえていくだろう。第二の国鉄、第二の林野、こういうことになるんじゃないですか。
  197. 窪田弘

    窪田政府委員 今回の引き下げを行います前は預託金利が七・一%でございましたけれども、そのときの長期プライムレートが八・二%でございまして、一・一%の差がありました。その後、御指摘のように預金金利が下がらないままに長期の金利がどんどん下がりまして、現在では長期プライムレートが七・〇%というふうに一・二%下がったわけでございます。  そういうことで、政府金融機関、特に財投機関の収支が大変圧迫される、あるいは資金運用部としても大変困った状況になるということで、これは従来の例にはございませんが、預託金利というのは長期金利の一つの中心でございまして、これはやはり長期金利の大きな変動に応じて緩やかに、その実勢を反映して変動していくべきものではないか。そうしないと金利のバランスにいろいろひずみが生じますので、そういった点、大変異例ではございますが、この際ぜひ預託金利を下げさせていただきたいというお願いを郵政省及び厚生省にいたしまして、折衝の結果六・八%と、○・三%の引き下げということで決着をいたしたわけでございます。この○・三に特別の理由があるわけではございませんが、関係者のこの辺ならという合意でございます。  郵貯についての御指摘は、一・三五の利ざやが一・〇五になったことは確かでございますが、聞くところによりますと、郵貯のコストは〇・七ということでもございますし、五十九年度ほぼ収支とんとんになりまして、六十年度は黒字が見込まれておりますので、御指摘のようなことにはならないと考えております。
  198. 米沢隆

    米沢委員 これは確実に約束できるんですね。
  199. 窪田弘

    窪田政府委員 ほぼ大丈夫だと思います。
  200. 米沢隆

    米沢委員 そこで今度は、預託金利を決める新しいルールづくりを協議しよう、こういう話になったのだそうですが、預託金利を市場連動型にするようなルールを考えようとしておるのか、その場合何を基準にしようと考えておるのか。そのあたりについてもし腹案でもあれば御説明いただきたい。しかし、これは自主運用の是非等も絡みまして、かなり議論はもめると思いますね。その意味で、いつまでに決着するおつもりなのか、予算編成の前までということが常識だろうと思いますが、そのあたりのめどを持っておられるのか。
  201. 窪田弘

    窪田政府委員 預託金利変動のルールをつくるという話は、私どもも望ましいと思っておりましたし、預託者側もそういうことを提案していた向きもございますが、例えば国債の金利、これが一つの基準になるのではないかということで、これをいかに反映するかという議論をした段階もございます。しかし、御承知のように国債の金利が最近非常に変動しておりまして、一時は市場流通利回りが五・四%台にまで下がってしまうという異常な事態になりました。そこで、国債と機械的に連動いたしますと非常に大変なことにもなりかねないわけでございます。そこで私どもは、誠意を持って早急に、できれば予算編成前にもとは思っておりますが、こういった金融情勢のもとでは、なかなかフィックスしたルールというものは難しいのではなかろうか、やはり預託者側の事情、それから資金運用部の事情、政府金融機関の収支状況その他を総合的に勘案して、御相談で決めていくほかないのではないかなという感じを持っております。     〔中川(秀)委員長代理退席、熊川委員長代理着席〕
  202. 米沢隆

    米沢委員 いろいろと預託金利の引き下げに関連しまして、大変御苦労なさった様子が今ありありとわかりますけれども、私は、こういうような公的金融をめぐるジレンマというものは、やはり政府系金融機関や資金運用部の仕組みを現状のまま存続することを大前提にしておるからこういうジレンマが起こるんだ、そう思いますね。しかし、御案内のとおり中長期的に見通した場合には、金融の自由化とかあるいは金融の緩和状況というのは構造的なものであって一時的なものではないだろう、こういう見通しがつけられるのではなかろうか。そうなりますと、やはり硬直化した金利体系を持つ財投と金融自由化はなじまない、こういう問題に答えが出されない限り、こういうような預託金利あたりをかなり難航の末に決めていく、こういう対策は根本的な解決にならないのではないか、こういう見解を持つのでございますが、大蔵大臣いかがですか。
  203. 竹下登

    竹下国務大臣 基本的な認識として、金融の国際化、特に自由化、その中で金利の自由化、こういうようなことを考えますと、これはまず、我が国の金融機関全体の中における郵貯の位置づけとかあるいは簡保の位置づけとか、そういうところからも議論してかからなければならぬ。やはり既定のものを全部将来改革することなく位置づけた議論というのはできなくなってきたのではないかと私も思っております。  そこで、私どもは部内でそれなりの勉強をしておりますが、ある意味においては、大蔵省対郵政省とか大蔵省対厚生省とかいうことではなく、もっと別の次元で議論をしてもらわなければならぬのじゃないかな、これはまだ私のひとり考えにすぎませんけれども、そういう認識すら持たざるを得ぬじゃないかという心境になっておるわけでございますので、恐らく税制論議がずっと論議の中心になり、これからの論議というのは、第二の予算と言われる財投に対する改革論議というのは国会でも相当にいただける議論になってくるのじゃないか。その辺を見定めて対応しなければいかぬというふうな気持ちになっておることは事実でございます。     〔熊川委員長代理退席、中川(秀)委員長     代理着席〕
  204. 米沢隆

    米沢委員 今の話を敷衍をいたしますけれども、いわゆる財政投融資計画だとかあるいは財投の対象機関、このあたりは、経済情勢の変化だとか、今御案内のとおりの金利の自由化等々の変化を受けまして、やはり大きな曲がり角に来ているということは事実だろうと思いますね。我々も財投というものを先ほど言いましたようにすべて否定するものではありません。財投が、御案内のとおり戦後の産業復興だとか、高度経済成長時代から今日に至るまで、産業構造の強化とか社会資本の充実とか生活基盤の整備など、時代の要請に従って、それぞれ一元的に金を集めて、大規模な資金量を確保して効果的な投資を行ってきた。その成果がGNP世界第二位の国をつくったのだろう。同時に、それゆえにまた大きな役割を担ってきたことは我々は否定するものではありません。  しかしながら、それは御案内のとおり資金需要の超過が慢性的に続いた時期のことであって、現在のようにかなり緩んでくるという状況になっておる今日においては、やはり従来のように民間の金融機関で不足する資金を量的に質的に補完するなんというそのうたい文句が、大義名分もかなり変化せざるを得ないだろう。そういう意味では財投の機能そのものをやはり見直す時期に来ているのではないか、これが第一点の質問でございます。  同時にまた、最近の金融自由化の進展や長期金利の低下等に伴いまして、財投機関の貸出金利が、先ほどから言っておりますように、民間機関に比べて必ずしも有利なものではない。そういうところから、もろもろの分野で民間金融機関と競合していくという状況はこれからも続くのではないか、こう思われます。そうなったときに、果たして競合してまで政府の金融機関がやっていかねばならないのか、あるいは民間に任せるものはなぜ民間に任せられないのか、こういう問題が次の問題として浮上してくるのではないか、私はそう思います。  臨調も御案内のとおりいろいろとそのあたりを指摘されておりました。そういう意味で、今後財投の果たすべき役割を一体どういうふうに考えておられるのか、あるいは財投計画のあり方も抜本的に見直す時期に来ておるのではないか、そして今後財投事業にどういうような役割を期待しておられるのか、そのあたりをあわせて大臣答弁いただきたい。
  205. 竹下登

    竹下国務大臣 基本認識はそう違っていないと私も思っております。確かにあの焼け跡、やみ市の中から今日の復興があったということについて、財投が果たした役割は大きなものであったと思っております。そしてその目的も、まず輸出振興から始まって、それがあるいは公害問題そして生活基盤、こういうような非常な変化を来しております。あくまでも民間の補完機関であらなければならぬということは私も認識をひとしくしておりますので、競合してまでやるべきものではないと思っております。  もう一つありますいわゆる民間金融の誘導の役割という点につきまして、あるものがその基盤に達するまでに民間ではいささかリスクが多過ぎるというようなところには、それなりの果たさなければならない役割は残っておると思います。したがって、今抜本的見直しとおっしゃいましたが、私も感覚的にはその言葉はわかりますが、その抜本的見直しにしても、どういうふうな打ち出し方をしていいものかというようなことからまずはフリーディスカッションという形で部内で議論を始めておるというのが現状でございます。
  206. 米沢隆

    米沢委員 いろいろと御検討いただいている様子でございますけれども、私は時期をもう少し早目に、今からのフリーディスカッションなんというのは余りにも悠長に過ぎる、六十一年度の財政投融資計画あたりの議論から少なくともある程度の変化を持たせていくような方向が本当は今求められておることではないのかな、こういう感じがします。  特に今後の財投を考える場合、基本的な問題の一つとして指摘しなければならぬのは、財投機関の行政改革だと私は思います。例えば、国民金融公庫だとか中小金融公庫といったような十一ある政府関係金融機関の場合、その役割をもっと厳しく洗い直して整理統合を図る必要があるのではないか。再編成の必要もあるのではないか。特に、政府関係金融機関の目的は、御案内のとおり民間金融機関の融資を補完奨励するということでありますけれども、金融緩和が構造的に進んでおる現在、資金量だけではなくて低利長期の質的な補完機能も大幅に低下しておる。この認識は、先ほどおっしゃったように、私の認識と大臣の認識とは大体似ておるのではないかと思います。そういう意味で、今おっしゃったように本当に必要な融資分野と役割を詰めていけば、おのずから政府関係金融機関の姿は変わってくる、それは整理統合あるいは再編成につながる、こういうところをもう少し早目に御検討いただいて結論を出してもらうということ、このことが財投を考える場合大事なことではないか、私はこう思うのですが、いかがですか。
  207. 竹下登

    竹下国務大臣 今、米沢さんのおっしゃったような基本認識からして、本当は研究会でフリーディスカッションから行っていくかということも始めたわけでありますが、そのスピードの問題は今御意見として十分承りましたので、これは私だけの問題というよりも本当は政府全体の問題として議論しなければならぬ問題であろうかと思いますが、部内でも早急に議論を尽くして、一つ方向を提示してみたいという気持ちは持っております。
  208. 米沢隆

    米沢委員 私は検討を早急にやってもらいたいと思います。  同時に、こういう観点からの見直しは、特に公団や事業団などの特殊法人、このあたりも洗いざらい本当は議論してもらわなければいけません。御案内のとおり、臨調もかなり特殊法人の合理化等については指摘をいたしておりますね。臨調の第一次答申の五十六年七月十日のにも出ておりますし、第三次答申の基本答申、五十七年七月にも出ておりますし、五十八年の三月の第五次答申の最終答申にも出ておる。そういう意味で、まさに特殊法人をいかにして合理化していくのかというのは行政改革の大きなテーマであったと思うのです。しかし、我々の判断からするといかにも遅々として進まない、こんな感じがするのですが、こういう臨調答申を受けた後、一体どういうような特殊法人の整理合理化がなされていったのか、今なされつつあるのか、そのあたりをもっとはっきりしていただきたいなと思うのです。
  209. 窪田弘

    窪田政府委員 臨調のフォローアップとしまして、行革審の小委員会におきまして今特殊法人の検討を始めていただいております。聞くところによりますと、来年の四月ごろ結論が出るように伺っておりますが、それに私どもも御協力を申し上げて合理化を図ってまいりたいと考えております。
  210. 米沢隆

    米沢委員 大臣、何かありますか。
  211. 竹下登

    竹下国務大臣 行革審で精力的に議論をしてもらおう、それに対して我々も最大限の協力をしていこうという考え方で対応していきたい。私自身も問題意識を全くひとしくいたしております。
  212. 米沢隆

    米沢委員 運用部資金を本当に有利、確実に、安全にという運用をする場合の大前提は、そういう意味で財投機関そのものの行革ですね。そして特に特殊法人等については厳しい見直しをやっていただきたい、こういう注文をつけざるを得ないわけであります。  いずれにいたしましても、今後の金融自由化が進展するに従いまして財投の調達コストはますます高まる一方だろうと思いますし、あるいはまた、貸出金利は民間金融機関との競争上低くせざるを得ない、こういう状況は財投の宿命みたいなものですよね。そういうことであるとすれば、財投が今から生きていく活路は何かと言われれば、低い資金調達が行われるかどうか、このことに尽きるのだと思うのです。大蔵大臣は、今後財投をいろいろとチェックをしながら、見詰め直しながらまた新しく財投としてこれからも生かしていかねばなりませんけれども、低い資金調達が行えるかどうか、見通しは持っておられますか、大臣
  213. 竹下登

    竹下国務大臣 これは、金融の国際化、自由化の中でその努力は民間であろうとまた政府であろうと当然のこととして行っていかなければならぬわけでありますが、今おっしゃった原則どおり、金利は高くなり貸出金利は低くなるというそのはざまの中でどう生き抜いていくかというのが今民間の金融人なんかに与えられた一番大きな課題だと言われておりますだけに、財投におきましてもそのことは大変重要な問題である。さればとて、それじゃ今おまえの方で特別にいわゆる低コストのものを調達するだけの自信があるかとかあるいはその準備があるかと言われますと、今その準備がありますと答える状態にはございません。
  214. 米沢隆

    米沢委員 ところで、財投の事業も資金消化の伸び悩みという傾向があらわれた。そしてまた今度は、財投の運用部資金もかなり国債発行に充当されるような傾向がこれかけも続いていくだろう。  そうなったとき、御案内のとおり資金運用部による国債引き受けというのは、現在の金利体系のもとでは、今度変わった段階でも、やはり財投金利よりもはるかに低い国債を引き受けるということになるわけですから、これは資金運用部の運用利回りは低下するということですね。特にことしは国債を五兆円も引き受けるということになっておるわけでありますが、運用部は大変赤字を大きくするという可能性はないのですか。
  215. 窪田弘

    窪田政府委員 新発債の運用部引き受けは早い時期に行いましたので、半分ぐらいは六・八%の国債を引き受けておりますし、これでそう大きな損失が出るということはないと思っておりますが、今度の十一月債の発行条件の改定も今進展をしておりまして来週決着がつくと思いますが、これによりますと、今の預託金利に非常に近づいた形になると思います。ここ半年くらいの国債金利の動きの方がむしろ若干例外的な時期であったので、長期金利の水準というのは大体同じところにそろってくるのではないかと見ております。
  216. 米沢隆

    米沢委員 私は今までの議論を通じて感じますことは、やはり資金運用部の資金の運用のあり方そのものがかなり時代の要請に合わなくなってきておる部分があるのではないか、そういう感じがするわけでございます。そういう意味では、資金運用部のあり方そのものをやはり根本的にこれまた見直す必要が出てきておる、これは私はそう言えるのではないかな、こう思うのです。  従来、先ほども申しましたように財投につきましては、まず資金ありき、こういうような感覚で、毎年度の政府資金をややもすると財投事業としていかに消化するか、そういう観点からばらまきみたいなものがあったのではないかど、先ほどそういうことを申し上げましたけれども、そこまで言われることはないとおっしゃっても、やはりあったものは配る、こういう形で消化されてきたのではないか、そういう危惧の念は私は払拭できないのでございます。同時にまた、それゆえに財投計画額が、このごろはかなり締めておりますけれども、どんどん肥大化してきた、こういう歴史もその裏づけになっておるのではないか、こう考えるわけでございます。  まあ、今後資金需要がかなり低迷していくということを背景にいたしますと、この余剰資金を——いわゆる余剰資金といいますのは、先ほど言いましたように、政府系の金融機関あたりも整理統合して本当に必要なものだけ政策金融を施していくというスタイルに変えていく、特殊法人あたりも合理化したりあるいは見直しをしながら、赤字がたまったまま全然払えないようなところまで自転車操業みたいに金を出しておるわけですからね、そのあたりも一回見直してしまおう。そういうふうにしますと、結局集めた金も使いどころが少しずつ縮小されて、かなり余剰資金を持ってくるという可能性がありますね。また新たに別に何か新しい政策金融をやるんだなんていいますとぐっとまたこれは伸びてくると思いますが、少なくとも私は現在の延長線で物を考えていった場合、新しく財投を計画に組み込まなければならぬ分野は、あるかもしれませんけれども、それは急激に大きくなることはないだろう。そういう意味では、財投そのものの投資対象を合理化することによってかなり余裕資金というものが出てくるであろう、そう思うわけですね。そういう意味では、もっと運用の妙を任せてくれとおっしゃるならば、私はやはりそのあたりに配意した資金運用のあり方を考えてもらうことが大事だ、こう思うんですがね。
  217. 窪田弘

    窪田政府委員 御指摘のような方向で、例えば六十年度も政府系金融機関の財投は、三角五・八%ということでマイナスを立てておりまして、若干その辺の芽を出したつもりでございます。一財投の見直しという場合、御指摘のように財投機関の見直しと財投のシステムの見直しと二つ種類があると思います。財投機関の見直しは、先ほど御指摘のようなことで今後進めてまいりたいと思います。財投のシステムにつきましては、公的資金は公的な用途に運用する、こういう必要性は今後もなお続くのではなかろうかと考えております。それは、高度成長期には民間に資金の不足がございましたので、その民間資金不足を埋めるという点で財投の役割がありましたが、現在は国、地方という公共部門の資金不足が大きいわけでございますから、むしろそちらの方に財投の重点が移っているということだと思います。それから、先端技術でございますとか第三セクターによる公共投資とか、六十年度あたりでも新しい公的資金需要の芽が出ております。これが、今後昭和六十年代にだんだん大きくなってくるものと考えられますので、現在は古い需要と新しい需要がまだ小さい間の端境期みたいな段階ではないか、こういう考え方もいたしております。
  218. 米沢隆

    米沢委員 五十九年度に不用額を大分出しましたので今度は厳しくやられると思いますけれども、このように五十九年度の不用額なんかを見ておりますと、やっぱりちょっと問題があり過ぎる。繰越額あたりも毎年三兆円だなんていったら、これを引いたら、三兆円を余計計画に組み入れておることになりますよ。それから、今後まじめに財投機関合理化なりを議論していただけば、新しい需要があったとしても、資金はかなりタイトにしていってもいい状況になるのではないかな、こう私は思うのです。  特に、そのあたりが野方図にやられておる結果、このころ一般会計のツケ回しばかりやっていますね。地方交付税についてはもう大体解決しましたけれども、住宅金融公庫の利子補給だとか、林野庁の特別会計への融資だとか、何か一般会計のしりぬぐいみたいなことを財投計画がやる、本来これはおかしい話だろうと思うのです。こういう利子補給みたいなものは一般会計の一般的な経常経費で埋めるのが本来の筋でしょう。それを結局、一般会計が苦しくなったから財投にツケを回す。これでは財投なんというのは完全な赤字金融と笑われてもおかしくないですね。この一般会計のしりぬぐいを財投に持ってくるというのは、財投に余裕の金があるからでしょう。私はそう思いますね。財投にぎりぎりの金しかなかったら、需要が逼迫して金も集まらない、こういう状況だったら、一般会計だってツケ回しなんかこんなものはできないはずだ。  そういう意味では、財投そのものが一般会計の赤字金融的な存在であるということ自体、早くこんなものは脱却してもらわないと筋が通りませんね、幾らきれいごとを言われても。大臣、どうですか。
  219. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに、今金融が緩んでおります。したがって、財投にある程度の資金があった。したがって、国、地方の財政の面は非常に窮屈になった、そのいわば、ツケ回しという言葉をお使いになりましたが、肩がわり的性格を持つところの役割を果たしたということは私も認めます。しかし、あれがなかったら、あるいは一般会計の中でもっと増税していかなければならなかったではないかという、その矛盾も感じながら、その辺の調和点をどう求めていくか。  いずれにせよ、財投議論というのが国会議論で大きなシェアを占めるようになると思いますし、そのはしりがきょうの議論でもあるわけでございますから、私が考えておりましたように、ひとつフリーディスカッションから始めて学者の意見を聞いてというスピードは、いささか遅いと言われる批判もむべなるかなという感じで承っておりました。
  220. 米沢隆

    米沢委員 一般会計のツケ回しという表現がちょっと悪いかもしれませんけれども、しかし、実際は財投にツケを回すことによって一般会計の矛盾をいかにも粉飾決算をする、こういうやり方こそ逆に難問を先送りする手法であって、一般会計の一般歳出はここにおさまりました、電電に比べて〇・何%の増ですと幾らきれいごとを言われたって、これはまさに粉飾決算なんだからね。そういうツケ回しを財投そのものが受けること自体は、本当はそこまで我々は頼んでないと私は思うのですよ。そういうことを予定もしてないと私は思うのですね、実際は。  大体、いつもおっしゃいますように有償資金ですからね。皆さんからいただいた有償資金ですから、公共的に有利に運用する、安全確実に運用するとおっしゃるならば、そういう意味ではもっと金融的な判断みたいなものが財投そのものにあってしかるべきですね。一体、一般会計からツケ回してどういう金融判断があるのですか、これは。
  221. 窪田弘

    窪田政府委員 御指摘のような点もなきにしもあらずでございますけれども、しかし、財投というのは、一面金融ではございますが、他方財政的な側面も持っておりまして、一般会計と裏腹の面も否定できないわけでございます。そこで、一般会計で年度間の調整をする、その資金繰り等を財投でカバーする場合もあるわけでございますが、やはり資金の償還の確実性、それから、利子をちゃんと払っていただける、こういう金融の原則を貫きまして、そこは線を引いているわけでございます。
  222. 米沢隆

    米沢委員 次に、今財投に投げかけられておる問題の第二の大きなものは、自主運用させるという議論だろうと思います。御案内のとおり来年度の財投計画に対しまして、厚生省は年金積立金の一部四兆一千億円、郵政省は郵貯の一部三兆五千億円の自主運用を要求する、労働省の方も中小企業共済年金の自主運用を主張される。こういうようにまさに財投そのものの姿を見たときに、もっと我々にだって自主運用させてくれ、こういう声が出てこざるを得ないような状況にあることは事実だろうと私は思うのです。そういうものについて大蔵省は一体どういうふうにこれから対応されるのか。  まず最初に厚生省に聞きたいのでございますが、今、厚生省は年金積立金の一部四兆一千億円を有利運用したい、こういうような案を持っておられるように聞いておりますが、その内容、効果、額、そして年金安定化にどういうふうに資するのか、ちょっと説明してもらいたいと思います。
  223. 丸山晴男

    ○丸山説明員 お答えいたします。  来年度の概算要求として厚生省から提出しております厚生年金、国民年金の自主運用につきましては、一つは新規積立金及び満期償還金のそれぞれ二分の一、合計約四・一兆円について、民間活力を活用して資金運用部と別建てで運用いたしたい、こういう考え方でございまして、各種公的年金制度の一元化が進む中で、運用の基準についても各種共済とのバランスということが大きな議論になってまいっておりますので、各種共済年金の運用のあり方をにらみながら、厚生年金、国民年金についても準じた運用にしてまいりたいというわけでございます。  その効果につきましては、要求額どおり四・一兆円ずつ積み立ててまいりますと、複利計算でございますが、目標利回りを現在の厚生年金基金並み、五十八年度で八・六%でございまして預託金利との金利差が一・五%ほどございますが、一・五%の利差でございますと四兆円を掛けますと年間約六百億円、七年間累積で二兆三千億円という計算になるわけでございます。
  224. 米沢隆

    米沢委員 今度預託金利がまた六・八%に下がりましたので、この利ざやはもっと大きくなりますね。そういう意味では、今厚生省の話では利益差だけで七年間で約二兆三千億円にもなる。新聞によりますと、年平均三千億円余りで、厚生年金のモデル年金は年二百万円余りなので利益差だけで年間十五万人分の年金を賄える計算になる、こういうような試算も出ております。これは古くして新しいといいましょうか、新しくて古い問題でございまして、国会において私も何回かごの自主運用をやるべきだということを取り上げてまいりました。私は、そういう意味で、この際、従来のいろいろな御答弁は聞いておりますけれども、財投の見直しと次元を一にして、自主運用等についてもいかにして組み込んでいけるかというそのあたりを大蔵省も前向きに検討してしかるべきではないのかな、こう思うのです。  私はこの質問に立つ前に、例えばこの自主運用をやったらいいじゃないかという高利運用に関するいろいろな審議会の答申一体どれぐらいあったかを調べてみますと、これはまさに古くて新しい問題ですね。社会保険審議会、昭和二十七年、二十九年、三十三年、三十五年と、今日に至るまで特に社会保険の関係の審議会等からは自主運用をやってくれというような要請が相当あったにもかかわらず、今日まで一元的な統合運用だという理屈ではねつけられてこられた。     〔中川(秀)委員長代理退席、委員長着席〕 我々も何も財投の統合的な運用を認めないわけではないわけです。統合的な運用をやってもらって結構だ。しかし、その原資をちょっとこっちに譲ってくれというだけの話ですよね。そういう意味で、財投のこれからの改革を行うに当たって、財投の原資といいましょうか事業そのものをかなり減らして、結果的にはその余った分を自主運用に回す、そういうぐらいの議論は、この際抜本的な財投の改革論をやられる場合、フリーディスカッションあたりから始まるのではなくて、これは本当に古い時代からの要請であるわけですから、まず最初にこのあたりに一回メスを入れて検討する、こういう御回答が私は欲しいものだと思うのです。  厚年の自主運用、郵政省の自主運用、それは意味はちょっと違いますね。あるいは労働省の自主運用。特に労働省や厚生省あたりの自主運用等については、聞く耳を持って、もっとまじめに具体的にオーケーするような方向で検討を進めてもらいたいと思うのです、大臣
  225. 竹下登

    竹下国務大臣 私も、国の制度、信用をもって集めたものは一元化運用すべきだといういわゆる一つの哲学だけでこれに対応していこうとは思っておりません。今おっしゃった財投原資として必要なもの、それを上回る、信用によって集まったものをさてどこで運用するかということになりますと、それはそれぞれの省で運用した方がいいのか、別途そういう運用をする機関があった方がいいのか、その辺も議論のあるところであろうと思います。と同時に、金融の自由化の今日でございますから、政府関係金融機関そのもののあり方についてもメスを入れなければならぬ時代でございますので、いつも考えますのは、毎年毎年各省から要求を受けますのが結果として継続審議ということになって、エンドレスに継続審議になっておるわけでありますから、私自身も、どこかその場所というものがありはしないかな、こういうふうに思っております。  また、それぞれの法律に基づいてできた審議会は、大体そこの考え方に基づく答申をお出しになりますから、確かに答申はいっぱい出ております。また一方、行革審等の意見も出ておる。だから、これはどこかで議論する場がないことには、予算折衝の最終段階で大蔵大臣と所管大臣とが集まって、いや、それでは継続審議だということで、継続審議なのか継続棚上げなのか、私自身もそれらについて自問自答を繰り返しておりますので、御意見はよくわかりますが、それこそ大蔵省プロパーでやる議論がどうかということについても本当は疑問を持っておりますので、十分検討をさせていただきたいと思います。
  226. 米沢隆

    米沢委員 いみじくも今大蔵大臣がおっしゃいましたけれども、私はかねてから大変疑問に思っておることがあるのです。例えば予算編成に関連して自分たちの省庁でいろいろな計算をして、建設省が出す、厚生省が出す、何省が出す。我々経済企画庁というのを持って、そこで政府は一元的に数字的なものは計算をし、その数字に基づいて政策判断をするというのが本当でしょう。ところが、予算編成に関しては、高い金を使ってみんなが、各省が自分の都合のいい数字をつくるために頑張る。相当のエネルギーと相当の金が要るのですよ。何のために経済企画庁があるのだ、私はいつもそういう疑問を持っていました。したがって、出てくる数字は我々の計算によるのとはみんな全然違うわけですね。同じ政府でありながら、経済企画庁というものがありながら、経企庁の持ってくる数字を信じない。それで結果的には自分たちの都合のいい数字をつくろうとして努力する。そして予算編成でがたがたそれを利用しながら頑張る。何のための政府なのか、何のために統一した企画庁があるのか、そのあたり、私は大変疑問を持っておるのです。  同じように、大蔵省は財投の改革あたりを白紙からいういろと議論するために、財投研究会みたいな私的諮問機関理財局長のもとにつくった。そこで議論されたものを大蔵省は都合よく使うでしょう。同時にまた厚生省の方は、自主運用するためにはどうしたらいいかという委員会でもつくって、おれたちにさせろさせろと頑張って議論するでしょう。結果的にはかみ合わないわけですね。  私は、本当にこういうものを前向きにやっていくためには、おっしゃったようにもっと——政府は一つなんですからね。省があって政府なしなんという感覚でこんな議論をされたのでは、それを待っている連中にとってはたまったものではありませんね。そういう意味で、今おっしゃったように、この自主運用の問題も財投の改革も、財投の改革と時期を一つにして自主運用の議論がなされないと、一方のが決まってから後から追いついていくのは予算編成が決まってから減税を要求するようなもので、これは本当に簡単にスムーズにうまくおさまらない。こういう状況がありますから、そのあたりは意を尽くして自主運用というものをぜひまじめに考えてもらいたい。私はこういうことを申し上げておきたいと思います。  特に、考えてみれば、市場の実勢を無視した、人為的に設定された金利で資金運用部が公的資金を一元的に統括して、そして運用するなんというのは、せんじ詰めれば合理的な意味はないとまで言いたいのでございますが、最後に大臣の御見解を承って質問を終わりたいと思います。
  227. 竹下登

    竹下国務大臣 国の制度、信用を通じて集めたものは一元運用する、こういうことを言い続けて今日までやってきた。が、しかし、その哲学が変わったというよりも、いわゆる金融そのものの状態が違ってきた。むしろ、かつての資金不足から、大変な資金過剰という言葉は適切かどうか別といたしまして、環境が大変に変化した。それらに対応しての対応というものはきちんとしたものを出さなければいかぬ。  さあ、それで、今おっしゃいましたが、研究会といえば私的諮問機関にすぎない、それはそうでございましょう。資金運用審議会というのもありますが、あそこが適当かどうかということに対しても、私もちょっと首をかしげてみたりいたしております。政府一体の形で議論を詰めていかなければならぬ問題だ、やはり大改革のときでございますから。ただ、米沢さん御指摘なさいました六十一年度財投までにひとつ抜本的な結論を出していくだけの自信は、率直に言って今のところございません。いま少し時間がかかるのじゃないかな、こんな感じがいたしております。
  228. 米沢隆

    米沢委員 どうもありがとうございました。
  229. 越智伊平

    越智委員長 簑輪幸代君。     〔委員長退席熊谷委員長代理着席〕
  230. 簑輪幸代

    簑輪委員 政府は、貿易摩擦の解消ということでのさまざまな施策の中で、今回基準認証、輸入プロセスに係るアクションプログラムというようなことで、特に、我が国市場が閉鎖的であるという指摘を解消するためにということで、原則自由、例外制限という観点からこのプログラムがつくられたというふうにされております。  私は、このアクションプログラムとの関係で、特に輸入食料品の問題について幾つかお伺いしたいというふうに思っております。  私どもの食料品の大体四割が輸入食料品だというふうに言われております。したがって、この輸入食料品の安全性確保ということは、私たちの食生活に直接のかかわり合いを持つ、そして健康、生命にもかかわり合いを持つ重大問題であるというふうに考えております。きのう、きょう、消費者大会も催されておりますけれども、こうした問題はだんだん国民の関心も高まり、特に今回、有毒ワインの問題等も大きな社会問題になりましただけに、注目を集めているところでもあろうかと思います。  輸入食品の手続等について幾つかお伺いしていくわけですけれども、まず最初に、輸入食品の届け出について、すべての食品について事前届け出制を導入し、検査の必要なものを除き貨物の到着前または到着後速やかに届け出済み証を交付するなどの手続の簡素化、迅速化のための幾つかの措置とか、それから輸入プロセスに関する改善措置については、手続の適用範囲の縮小として、動植物原料油脂、モルト、ホップ等、最終食品の製造加工段階で安全性が確保される一部の加工食品原料については輸入届け出を不要とするというようなことがアクションプログラムの中に盛り込まれてきているわけですけれども、これで本当に大丈夫なんだろうかという大変大きな不安を抱くわけです。現状でもこの輸入食料品の安全性についてはさまざまな問題点が指摘されておりますし、むしろ今日でも不十分であり、一層の体制の充実を求めて安全性確保をというふうに運動が展開されているという状況のもとで、大丈夫なんだろうかということを検証してみなければならないというふうに思っています。  現状についてお伺いするわけですけれども、まず最初に、輸入食品届け出件数、それから検査の件数、それから検査率、それから不合格件数と不合格率について、厚生省から御報告いただきたいと思います。
  231. 大澤進

    ○大澤説明員 輸入食品についての件数あるいは検査の実態等についてお答えいたしたいと思います。  ここ数年は、件数では三十万から三十五万件、重量トンで二千万トンから二千三百万トン程度の間で推移しております。ちなみに五十九年は、輸入件数が三十六万四千二百二十七件、重量トンで二千二百四十六万五千トン、こうなっております。  検査率についてでございますが、これにつきましては行政検査と自主検査と二つに分かれますが、いずれにつきましても約五%、したがって、全体で一〇%となっておりまして、件数で申しますと、検査件数は五十九年では三万五千二百九件、こうなっております。違反件数が、そのうち四百四十四件、こういう状況になっております。  食品衛生法違反件数につきましては徐々に減少の傾向にありまして、最近五年間では、昭和五十五年一千六十六件あったわけでございますが、最近の五十九年では四百四十四件と大幅に減少している状況にあるところでございます。
  232. 簑輪幸代

    簑輪委員 検査率についてですけれども、ここ数年の推移を見てみますと、実はどんどんと低下してきているということなんですね。十年前の昭和四十九年には九・六%の検査率、これは行政検査だけで九・六%の検査率であったものが、年々下がってきまして、五十五年は五・四%、五十六年六・〇%、五十七年五・三%、五十八年四・八%、五十九年四・六%と、この検査率自体が着実に低下してきているというわけです。五十九年実績を見てみましても、自主検査を入れて九・七%、約一割にも満たない。  私は、この検査率という点だけをとりましても非常に不十分だというふうに考えて、果たしてこれで安全性をちゃんと確保できている、十分な検査だと言えるのだろうか。今の御答弁を聞きますと、違反が少なくなってきているというふうに答弁しておられましたけれども、それは必ずしも安全であるということを決して意味しないわけでして、むしろ、この検査率がうんと少なくなった中で本当に大事なものまで漏れているのではないかということさえ疑わざるを得ないというふうに言えるわけです。  厚生省としては、こうした検査率の推移等を見ながら、果たしてこれで十分な検査というふうにお考えなのかどうか、その辺ちょっとお伺いいたしたいと思います。
  233. 大澤進

    ○大澤説明員 輸入食品の検査でございますが、輸入食品を輸入する際には輸入届け出書というものがございまして、それによって書類審査を全般的に行うわけでございますが、食品の性状といいますか特性、すなわち腐敗しているとか変敗しているとかいうことがあるかどうか、そういう状況、あるいは生産地の事情ですね、輸出国の生産地の状況等から見て食品衛生上問題となる可能性のある食品を中心に、現在効率的、重点的に検査を実施しているわけでございます。  また、この輸入業者自身による自主的な衛生管理の一環として、指定検査機関、これを活用した自主検査も実施しているところでございまして、結果的に約一〇%程度、こういう状況になっておるわけで、これでよいかどうかというのは議論のあるところであるとは承知しておるわけでございますが、私どもといたしましては、やはりさらに充実させることが必要である、こういうことを考えておりまして、従来からも監視員の増員確保等に努めてきておるところでございますが、六十一年度も監視員の増員要求もしており、今後とも人員の増あるいは検査機器の整備、さらに技術研修等の実施により監視指導体制の充実に努めてまいりたい、こういうぐあいに考えております。
  234. 簑輪幸代

    簑輪委員 そこで、食品衛生監視員というのは全国で何人おられて、一人当たりの処理件数は何件なのか、お答えください。
  235. 大澤進

    ○大澤説明員 現在、全国十九の海と空の港、ここの検疫所に全体で六十七名の食品衛生監視員を配置し、輸入食品等の衛生に関する指導あるいは届け書による書類審査を行うほか、必要な検査を行っているところでございます。  また、先ほど申しましたように、指定検査機関においても自主検査を指示し、食品衛生法に違反するものについては必要な処置もしている、こういう状況でございますが、ちなみに昭和五十九年のこれの件数につきまして、監視員が年間一人当たりどれだけ処理しているか計算しましたところ、約五千四百件、大ざっぱに申し上げますが、一日約二十件、こういう状況になっているところでございます。
  236. 簑輪幸代

    簑輪委員 先日、横浜の検疫所にお邪魔いたしましていろいろ勉強さしていただいたわけですけれども、横浜の検疫所で見てみますと七名ということのようで、実際監視業務に携わる方は六名であるというふうにも伺いました。管轄しているのは神奈川を初め六県である。出張所も含めれば随分たくさんあるというわけですが、これだけの人数では、実際問題として常時監視員のいない出張所というものもあるわけで、そういう出張所では一体検査というのはどういうふうになるのでしょうか。すべて書類だけで、検査というのはないものなのかどうか。それでは輸入食品はフリーパスになってしまうのではないか。あるいは問題のあるときには横浜から出張するというようなことがあるのかどうか。それは一年に何件くらいあるのかというのがわかれば教えていただきたいと思います。
  237. 大澤進

    ○大澤説明員 検査員の配置してない港もあるわけでございますが、それにっきましては、もちろん届け書は管轄の検疫所に来るわけでございますが、必要なものについてはいわゆる出張検査といいますか、出張監視という形で適宜対応している、こういう状況でございます。
  238. 簑輪幸代

    簑輪委員 そういうのは過去にどれくらいあったのでしょうか。一年に大体どれくらいあるものなのでしょうか。——もしわからなければ後ほど。
  239. 大澤進

    ○大澤説明員 今手元に資料がありませんので、径ほどまた提出させていただきたいと思います。
  240. 簑輪幸代

    簑輪委員 それでは、輸入食品の中で検査をするというふうに決めるための検査対象の選択基準というものは一体どういうふうになっているのか、その根拠はどこにあるのか、そしてその選択基準ごとに具体的にはどんなケースがあるのか教えていただきたいと思います。
  241. 大澤進

    ○大澤説明員 輸入食品の輸入時の検査の対象をどうして選ぶか、こういう御質問でございますが、先ほども申しましたように、輸入食品にっきましては常時その衛生に関する指導及び輸入届け書による書類審査、こういう形で行い、しかも必要に応じて検査を行う。  その検査の要否になるわけでございますが、これにつきましては、輸入食品等検査実施指針というものを定めておりまして、これに基づき一般的に申し上げます。  まず、どういう点にポイントを置いてこの検査の要否を決めるかというと、まず食品等の衛生的性状はどうなっておるか、それから過去の食品衛生法違反の程度はどのようになっているか、それから生産地の事情がどうなっておるか、さらにその他の状況も含めて食品衛生上の問題を生ずる可能性を考慮してその検査の要否の判断をしておる、こういう状況にあります。  具体的にはどうしているかということになりますが、具体的なその要否の判断のポイントは、一つは、輸送途中において海水をかぶったとかあるいは雨に当たったとか、こういうことが間々あるわけでございますが、そういう状況があった食品。それから二番目としては、初めて日本、我が国に輸入される食品。それから三番目といたしましては、過去に違反があったものと関連する食品あるいは同種の食品かどうか。それから次に、緊急かつ直接に人命にかかわる問題がある食品かどうか。さらには、税関の方から食品衛生上の問題があるという連絡のあった場合の食品等につきまして、今申し上げたような要点、ポイントを置いて選別しまして、優先的に検査を実施している、こういう状況でございます。  具体的事例もあわせて御説明いたしたいと思います。  具体的には、今申し上げた第一点の輸送途中において事故のあった場合としては、これは船の場合だと海水等にぬれるわけでございますが、大豆とか小麦、これらが変敗したりあるいはカビが発生する、こういう状況があるわけですが、こういう場合です。  それから初めて本邦に輸入される場合としては、やはり最近の食品加工技術の発達でいろいろな加工食品が出ているわけでございます。それの例としては、いわゆる健康食品みたいのが比較的多く入ってきておるわけでございますが、そういうもの。  それから第三番目の例として、同種の食品で過去に違反のあった場合としては、例えばジャムに防腐剤が使われておりますが、ジャムの例とか、あるいはキャンディーの着色料、こういうものについて過去違反が比較的あるということで、ここに着目している。  それから緊急かつ直接人命にかかわるような場合としては、いわゆる毒フグの混入があり得るわけでございますが、こういう例がある。  それから、特に問題があるということで私どもの方から直接検疫所に指示する場合があるわけでございますが、これは一番最近の例といたしましては、ワイン中にジエチレングリコールが混入した事例があったわけでございます。こういうものについて必要な検査の指示をする、こういう状況でございます。
  242. 簑輪幸代

    簑輪委員 そのほか、税関職員から食品衛生上の問題があるという連絡があった食品ということで最近あったケースを御報告ください。
  243. 大澤進

    ○大澤説明員 最近の例といたしましては、お茶の中にダニが混入していた、こういう事例がありました。
  244. 簑輪幸代

    簑輪委員 こういう検査対象の選択基準に基づいて検査をされるということですけれども、それを行政検査に回す場合と自主検査に回す場合との違いはどこにあるのでしょうか。
  245. 大澤進

    ○大澤説明員 一般的に申し上げますと、行政検査は、特に食品衛生上問題があるという判断をした場合には直接行政検査をやる。したがいまして、例えばジエチレングリコールの場合は行政検査で取り組んでいったわけでございますが、その程度によりけりでございます。それから、違反のレベルといいますか状況、例えば規格基準で、添加物の規格基準が幾つかいろいろ定められておりますが、それらについて量的な問題でオーバーするかしないか、こういうものについて、比較的多く出てくるような場合はあらかじめ自主的に検査をするように輸入業者を指導している。こんな状況でやっておるところでございます。
  246. 簑輪幸代

    簑輪委員 明確な区別というのがわかりにくいわけですけれども、実際には自主検査の方が数が多いわけですね。パーセンテージをとってみましてもそうですけれども、そういう自主検査に負うところがかなり大きいにもかかわらず、自主検査について、その信頼性に大きな疑問も出されているようです。厚生省の指定検査機関で行うとはいえ、検査のための抜き取りサンプリングを輸入業者がみずから行ってもよいというふうにされているために、サンプルのすりかえの可能性もあり、現にそういうふうなサンプルのすりかえとしか考えられないケースもあったというふうに聞いております。常識から考えてもそういうことはあり得るわけで、サンプルすりかえの可能性は否定できないのではないかというふうに思いますが、厚生省はどう考えておられますか。
  247. 大澤進

    ○大澤説明員 自主検査そのものにつきましては、輸入者による自主的衛生管理の一環として行っているわけでございます。したがって、サンプリングあるいは検査機関の選定等についても業者の自主的な判断にゆだねる、こういう状況になっておりますが、今御指摘のようなサンプルのすりかえ等の可能性ということももちろん考えられるわけでございます。  現在まで、自主検査に供された検体が実際に輸入される貨物以外のものから採取されたという事実関係は、私どもの方には報告なり聞いておらないわけでございますが、仮にそういう事実があるとすれば、食品衛生を確保する上から重大な問題と考えておりまして、今後こういうことがもし仮にあるとすれば、すりかえが行われないような適切な方法を検討してまいりたい、こういうぐあいに考えております。
  248. 簑輪幸代

    簑輪委員 今日厚生省が知るに至っていないということと現実がないということとは同じではございませんで、私が聞いたケースでは、例えばあめとかチューインガムの粘着防止用に使われるマンニトールというものについての自主検査において、ある指定機関に持っていって検査を受けたところ、その結果が不合格となるデータであった。そこで、その輸入業者は別の指定機関でサンプル検査を受けて、そして合格の判定を受けたというふうに聞いているわけです。  輸入業者というのは、食品が不合格というふうになれば廃棄処分とか積み戻しとかしなければならなくなって、莫大な損害をこうむるということは当然考えられることです。何としても検査に合格をするために手段を選ばないという方向に進むであろうことは当然考えられることだし、あり得ることだというふうに私も思うわけです。その危険というのを取り除くためには、制度的にそれが行われないような仕組みをつくっていくことが何より肝心である。したがって、基本的には、このような自主検査ではなしに、行政検査ですべての検査をカバーしていくという体制を充実することがぜひ必要だというふうに私は思っています。そして、仮にどうしても自主検査によらなければ事実上厚生省の力ではどうにもならないということになる場合でも、抜き取りサンプリングそのものが輸入業者で行われるというのではなくて、検疫所の監視職員とかあるいは厚生省指定の検査機関のメンバーが責任を持って輸入食品の現場まで出向いて、直接その手でサンプリングを行って、そして検疫所に持ち帰って検査を行うようにするというふうにしない限り、この不安を解消することはできないし、危険を除去することもできないというふうに思うわけです。  したがって、今課長さんからもお話がありましたように、増員の要請を行っておられるということですけれども、私はちょっとやそっとの増員ではなく、これは食品監視行政の重要性というのをしっかりと認識した抜本的な体制、十分な増員というものを行わなければならないのではないかというふうに考えます。  日本弁護士連合会も、五十九年一月二十日、理事会で承認された「最近の食品衛生行政の後退に対し食品衛生法の緊急改正を求める意見書」というのにおいて、輸入検査手続等の緩和について問題点を幾つ指摘しております。その中で、そもそも輸入食品については基本的に全部検査するのを原則とすべきであるというふうに述べておりますし、「輸入食品は国内産品と比べて長距離、長時間の輸送が行われるものであり、しかも気候等の大きく違うところを経由してくることが多く、また輸送中の水ぬれその他のトラブルもよくあり、必然的に保存料、酸化防止剤等の食品添加物の添加、病害虫防除のための農薬の残留、腐敗・変敗等の率が高くなる。それに海外における製造・加工の状況も正確にわからず、衛生、安全に対する不安は大きい。」というふうに指摘しております。  ところが現状は、この検査率というのは先ほどお述べいただいたように本当にわずかなものにとどまっておりますし、不合格率が少ないといっても、不合格のものが相変わらず見つかってくるという状況でもございます。その不合格率が低いということが必ずしも大丈夫ということでないことは、私が先ほど申し上げたとおりでございます。したがって、大半の輸入食品は検査されずに国内の流通に置かれて、そして不合格なものもどんどん出回っているのではないかという不安を消費者、国民が完全に除去できない状況に今日あるというわけだと思うのです。したがって、この日弁連の意見書も検査体制の確立というのを指摘しており、食品衛生監視員の増員その他の検査体制の強化が重要であるというふうに述べているわけで、私もこれを何とかしなければ輸入食品の安全性という点について大きな不安をぬぐうことができないというふうに思います。  その状況を踏まえて、実際の現場では不合格となった場合にどんな処理が行われているのか、そしてその不合格処理の件数と割合についてお述べいただきたいと思います。
  249. 大澤進

    ○大澤説明員 食品衛生法違反となったものについての状況でございますが、それぞれ違反内容に応じて積み戻しをさせるとか、あるいはそのときに廃棄させる、食用外に転用させる、さらに保税中に一定の処理加工の措置を講じさせる、こういう措置なり指示をするわけでございます。  不合格になったこれらの内容別の割合でございますが、五十九年で申しますと、全体で四百四十四件あるわけでございますが、積み戻しをさせたものが百二十件で二七%、それから廃棄させたものが百九十八件で約四五%、それから食用以外の転用、これは七十一件で約一六%、それから保税中に処理させたもの、これは十件で約二%、その他四十五件で約一〇%ある、こういう状況にあります。     〔熊谷委員長代理退席、委員長着席〕
  250. 簑輪幸代

    簑輪委員 こういう処理を命じて、その結果がどう行われているのかということを厚生省はきちんと確認しているのでしょうか。廃棄を命じながらその後始末をきちんと見ていないと、例えば業者が適当に選別して流通に置いたというようなケースもあるのではないかと思いますし、最後まで確認をしないと本当に厚生省の処置をとったということにはならないのではないか。処理計画書を出させて念書や確認書だけで許可したというだけでは、本当に安全が確保されたということにならないのではないかと思いますが、この処理についての確認、どうされているのでしょうか。
  251. 大澤進

    ○大澤説明員 こういう処置したものについてはその結果の報告を求めている、こういうことでやっております。
  252. 簑輪幸代

    簑輪委員 報告というのは一方的な報告でございますので、確実に廃棄されたのか、あるいは積み戻しされたのかということを最後まで確認しているということではない。報告書を受け取っているということだけなんですね。
  253. 大澤進

    ○大澤説明員 そういうことでございます。
  254. 簑輪幸代

    簑輪委員 そういうことでは本当に命じた結果どおり行われているかという点にまた不安が残るわけでございます。その点に関するトラブルも過去にもございましたし、こういう点まできちんと厚生省が責任を持てるような体制というのはやはりこの点からも必要ではないかと私はつくづく思うわけです。  さらに、食品の安全性の問題について大きな不安が広がっております中に、輸入食品の残留農薬の問題がございます。この残留農薬のチェックということがどのように行われているのか、お答えください。
  255. 大澤進

    ○大澤説明員 食品中に残留する農薬につきましては、昭和四十二年度より主要農産物につきまして残留農薬基準というものを設定しております。現在までに野菜、果実等のこれら農産物五十三品目に使用されている二十六の種類の農薬、これにつきまして残留農薬基準を設定しているところでございます。
  256. 簑輪幸代

    簑輪委員 輸人届け出書には、使用農薬というのは記載される欄はないはずですね。厚生省が定めたこの基準というのは五十三品目、二十六農薬がチェックの対象になるということでございますが、それ以外の農薬についてのチェックは全く行われないということで、フリーパスというのが現状だろうと思います。したがって、岐阜県の衛生研究所の調査によれば、五年前ですけれども、調査したいずれの農作物も、輸入物は国産品に比べて有機塩素系農薬の残留値が高く、モチ米や小豆の中には日本の基準を超える例もある。DDTは、タイ産黒ゴマ、ベトナム産ササゲ、メキシコ産白ゴマ、マダガスカル産バター豆からかなり高濃度、〇・〇七五から〇・一二二ppmが検出された。ドリン剤は、モチ米、ディルドリン〇・〇〇二PPmが不検出という基準を超えて検出されている。それからメキシコ産白ゴマにアルドリン、ディルドリン、ガルバンソービーンスにディルドリン、それからビルマ産小豆にエンドリンが検出されたけれども、我が国にはそれらの残留基準そのものがないということで、どんどんとこういう農薬が輸入食品にあるわけでございます。食品衛生上の見地から見てこの問題は大変重要なことだろうというふうに私は思います。  そこで、農作物の輸入相手国でどのような農薬が使用されているかわからないわけですし、先進国で使用禁止または規制された有害農薬が開発途上国へ輸出されて、その国の人々や環境に被害を与えるという大変大きな問題とともに、そこでは我が国で禁止された農薬が非常にふんだんに使われまして、結局残留農薬で汚染された農作物が再び輸入される農薬ブーメランという現象があるというふうに指摘されています。  こうした事態から見ますと、現行の厚生省の基準は全く不十分でありまして、早急に現状に合った残留農薬基準に見直す必要がありはしないかと思いますが、この点、厚生省のお考えを端的にお答えください。
  257. 大澤進

    ○大澤説明員 御指摘の点でございますが、現状、これまでのものは先ほど申し上げたとおりでございますが、今年度、六十年度より計画的に輸入農産物の残留農薬についての実態調査を進めまして、それを踏まえた上で必要なものについては残留農薬基準というものを設定していこうということで、今準備をしているところでございます。
  258. 簑輪幸代

    簑輪委員 いつごろまでにその検討結果が出て、結論が出てくるのでしょうか。
  259. 大澤進

    ○大澤説明員 もちろん、予算は一年単位でやっているわけでございますが、六十年度につきましては、国内登録農薬関係というのは十三農薬、あるいは国内の未登録のものについても六農薬について実態調査を行うことにしています。いずれにしましても、相当年数をかけて年次計画的に実態調査をし、必要なものに基準を設定していく、相当の期間を考えております。
  260. 簑輪幸代

    簑輪委員 事態はどんどん進んでおりますので、ぜひとも早急に十分な調査研究の上、適切な基準を設定していただくようにお願いをしたいと思います。  時間がなくなりましたが、植物防疫所の関係で農水省にちょっとお尋ねしたいのですけれども、農作物の場合には、同時に植物防疫の対象にもなっているケースがあるわけで、ここでの病害虫の防除が問題になりますけれども、乾燥ナツメヤシについてここのところいろいろとトラブルもあったようですので、その点についてお伺いしたいと思います。  実は私の調査によりますと、乾燥ナツメヤシに害虫が発見されて、薫蒸処理がされているというケースがあるということなんですけれども、聞くところによりますと、ことしの四月初め、中近東から四百数十トンの乾燥ナツメヤシが輸入されて、植物防疫の対象になっていなかったため」に、結局税関まで行ってしまって、そこで虫が見つかった。税関からの通告により横浜で薫蒸処理されたということですけれども、どうしてこういうことが起こるのでしょうか。実は、植物検疫と食品監視とをくぐり抜けて税関のところに行くはずだと思うのですけれども、どうしてこんなことが起こるのか、そしてこういうことが絶対に起きないようにするにはどうしたらよいか。植物防疫所としてはこれをどう受けとめておられるのか、お伺いをしたいと思います。
  261. 岩本毅

    ○岩本説明員 お答え申し上げます。  先生指摘の乾燥ナツメヤシの問題でございますけれども、私ども、従前から乾燥ナツメヤシの中でも乾燥程度の低いもの、非常に生乾きのものにつきましては、病害虫が寄生するということから植物検疫の対象品目として扱っております。  ただいまお話のありました点でございますけれども、たまたま本年四月に輸入した者が大変こういった品目の扱いにふなれであったということから、検査対象外であるナツメというものがございますが、そのナツメと今申し上げました検査対象品でございます生乾きのナツメヤシとを混同いたしましてそういった事態が出たというふうに私どもは理解しております。したがいまして、今後はそういった誤りがないように。関係者を十分指導し、我々の検疫の制度の実態についても十分周知させたいというふうに考えております。
  262. 簑輪幸代

    簑輪委員 いろいろそれぞれに熱心にやっておられるのでしょうけれども、そういう中でさまざまなケースがこういうふうに起こっております。  そこで、大蔵大臣お尋ねいたしますけれども、国民の命や健康に直接かかわる食品の安全について、現状でも極めて不十分な問題点もありますし、厚生省からも一層の充実の要求もあります。私は、手続的にもこういうのを簡素化していくという方向ではなくて、もっともっと全量検査等、要するに安心できる食品行政というものをぜひ進めていく必要があると思いますし、さらに予算の面でも、体制を整えるためには大蔵省もきちっとその重要性を認識しなければならないというふうに思いますけれども、これらの点について大蔵大臣の御見解をいただきたいと思います。
  263. 佐藤光夫

    佐藤(光)政府委員 御指摘の輸入食品の安全性の問題につきましては、御指摘のとおり大変重要な問題であろうかと思っておりますが、先ほど来諸官庁からるる御答弁を申し上げましたように、それぞれ周到に配慮をし、また工夫を凝らし、安全性の確保のために十分尽力をされておられる、かように私どもといたしましては理解をいたしておる次第でございます。  また、委員指摘のアクションプログラムにおきます簡素化の問題につきましては、それぞれ、この場合には厚生省でございますか、こういうカテゴリーの食品等についてはまず問題あるまい、例えば冒頭に御指摘のようにモルトとかホップというような食品原料でございますが、製品の段階、ウイスキーやビールの段階でもう一回チェックがきくというようなものは、その都度の届け出書を廃止してもこれは大丈夫じゃないかということをそれぞれ専門家の見地から御検討なさってそういう措置をとられ、税関において実際に輸入届け出書が必要であるものかないものかの判定を行う、こういうシステムにしたものと理解をいたしておる次第でございます。
  264. 簑輪幸代

    簑輪委員 感想で結構ですので、大臣の……。
  265. 竹下登

    竹下国務大臣 随分細かくよくお調べになっていらっしゃるという、勉強さしていただいたという感想でございます。
  266. 簑輪幸代

    簑輪委員 私が申し上げたいことは、やはり経済摩擦の解消ということのために国民の命や健康を犠牲にされてはたまらないという国民の気持ちをしっかり踏まえてやらないと、取り返しのつかないことになるということを重ねて申し上げておきたいと思います。  最後に一点だけお伺いしたいのですけれども、実は大蔵省の方から先日、売却できる国有地ということでリストが出されました。その中に岐阜大学の跡地も載せられているのですけれども、この大学跡地につきましては、かねてから私どもも強く要望をし、また地元岐阜県当局、岐阜市当局においても払い下げをいただいて公共的に有効に活用したいという意思がございまして、その方向で話が進んでいるやに理解しておったのですけれども、このリストが出まして大変驚いたわけです。民間に売却できる国有地のリストということで大変みんなも心配をしたわけですけれども、この問題について一点、文部省からぜひ現状を御報告いただき、大蔵省の意向をお伺いして、終わりたいと思います。
  267. 佐藤禎一

    佐藤説明員 岐阜大学の長良校舎でございますけれども、この用地につきましては、地元の岐阜県及び岐阜市から公園や学校用地として利用したい、こういう旨が要望されておりまして、現在県や市に処分をするという方向で事務手続を進めておる、こういう状況でございます。
  268. 中田一男

    ○中田政府委員 大蔵省の方からことしの九月十日に民間活力可能土地ということで公表しました中に岐阜大学用地が含まれておりますのは、御指摘のとおりでございます。  この発表をいたしましたときも、私どもはその前文で、「相当規模のもので地方公共団体等から現に利用要望があるものが含まれており、」「今後調整を要する。」というふうに断り書きをしてあるのでございますが、なぜこの中に岐阜大学を入れたか。その時点で地元の岐阜県あるいは市から利用要望が出ておったことは十分承知しておりました。しかし、この発表は、実は私どもが五十九年度に実態調査をしましたものをベースに、臨時行政改革推進審議会の答申を尊重してまとめたものなんですが、その行革審の答申の中で、実は地方公共団体の利用要望があるものであっても、相当規模の土地については一応民間活力活用可能土地にリストアップをして、そして国有地等有効活用推進本部の企画小委員会報告をしてくれ、そこでなるほど地元に使ってもらうことがいいということであればその承認を得て地元に使っていただくというふうにしたらどうか。小規模な土地につきましては従来からそんな面倒なことはしないで、どんどん地方公共団体の公用公共用に充てておるわけですけれども、大規模な土地についてはひとつそういうチェックをしてみたらどうかということが答申の中に含まれておりましたので、この答申を尊重して一応リストには載せました。  しかし、十月の三十一日に開催いたしました国有地等有効活用推進本部の企画小委員会で、本年度中に処分予定二十件というのを一応挙げまして、そしてこれらのものについてどうやっていくか御相談をしましたが、岐阜の用地については岐阜県及び岐阜市から公園、中学校用地等として利用したいという要望があってこうなっておりますという現況を説明しまして、企画小委員会としては、その要望を尊重して処分することがよい、こういう結論になっているところでございます。
  269. 簑輪幸代

    簑輪委員 終わります。
  270. 越智伊平

    越智委員長 次回は、来る十二日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十七分散会