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1985-11-13 第103回国会 衆議院 商工委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和六十年十月十四日)(月曜日 )(午前零時現在)における本委員は、次のとお りである。   委員長 粕谷  茂君    理事 浦野 烋興君 理事 田原  隆君    理事 森   清君 理事 渡辺 秀央君    理事 後藤  茂君 理事 城地 豊司君    理事 長田 武士君 理事 宮田 早苗君       甘利  明君    尾身 幸次君       奥田 敬和君    奥田 幹生君       加藤 卓二君    梶山 静六君       高村 正彦君    佐藤 信二君       椎名 素夫君    仲村 正治君       野上  徹君    野田  毅君       林  大幹君    原田昇左右君       松野 幸泰君    水野  清君       奥野 一雄君    上坂  昇君       浜西 鉄雄君    水田  稔君       横江 金夫君    和田 貞夫君       渡辺 嘉藏君    木内 良明君       草野  威君    西中  清君       福岡 康夫君    青山  丘君       横手 文雄君    工藤  晃君       野間 友一君 ――――――――――――――――――――― 昭和六十年十一月十三日(水曜日)委員長指名 で、次のとおり小委員及び小委員長選任した。  エネルギー基礎素材及び鉱物資源問題小委員       甘利  明君    梶山 静六君       佐藤 信二君    椎名 素夫君       仲村 正治君    林  大幹君       原田昇左右君    松野 幸泰君       森   清君    渡辺 秀央君       奥野 一雄君    後藤  茂君       城地 豊司君    水田  稔君       横江 金夫君    木内 良明君       西中  清君    青山  丘君       宮田 早苗君    工藤  晃君  エネルギー基礎素材及び鉱物資源問題小委員  長              渡辺 秀央君  流通問題小委員       浦野 烋興君    尾身 幸次君       奥田 敬和君    奥田 幹生君       加藤 卓二君    高村 正彦君       田原  隆君    野上  徹君       野田  毅君    水野  溝君       上坂  昇君    城地 豊司君       浜西 鉄雄君    和田 貞夫君       渡辺 嘉藏君    長田 武士君       草野  威君    福岡 康夫君       横手 文雄君    野間 友一君  流通問題小委員長       上坂  昇君 ――――――――――――――――――――― 昭和六十年十一月十三日(水曜日)     午前十時一分開議 出席委員   委員長 粕谷  茂君    理事 浦野 烋興君 理事 田原  隆君    理事 渡辺 秀央君 理事 後藤  茂君    理事 城地 豊司君 理事 長田 武士君    理事 宮田 早苗君       甘利  明君    奥田 幹生君       梶山 静六君    高村 正彦君       佐藤 信二君    椎名 素夫君       仲村 正治君    野田  毅君       林  大幹君    原田昇左右君       奥野 一雄君    上坂  昇君       浜西 鉄雄君    水田  稔君       横江 金夫君    和田 貞夫君       渡辺 嘉藏君    木内 良明君       草野  威君    西中  清君       福岡 康夫君    青山  丘君       工藤  晃君    野間 友一君  出席国務大臣         通商産業大臣  村田敬次郎君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      金子 一平君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     高橋  元君         公正取引委員会         事務局取引部長 利部 脩二君         公正取引委員会         事務局審査部長 樋口 嘉重君         経済企画庁調整         局長      赤羽 隆夫君         経済企画庁国民         生活局長    横溝 雅夫君         経済企画庁物価         局長      斎藤 成雄君         経済企画庁調査         局長      丸茂 明則君         通商産業政務次         官       与謝野 馨君         通商産業大臣官         房長      児玉 幸治君         通商産業大臣官         房総務審議官  鎌田 吉郎君         通商産業大臣官         房審議官    松尾 邦彦君         通商産業省通商         政策局長    黒田  真君         通商産業省貿易         局長      村岡 茂生君         通商産業省立地         公害局長    黒田 明雄君         通商産業省機械         情報産業局長  杉山  弘君         資源エネルギー         庁長官     野々内 隆君         資源エネルギー         庁公益事業部長 山本 幸助君         中小企業庁長官 木下 博生君         中小企業庁小規         模企業部長   照山 正夫君  委員外出席者         警察庁刑事局保         安部保安課長  伊藤 一実君         北海道開発庁企         画室長     大串 国弘君         大蔵省国際金融         局短期資金課長 金子 義昭君         国税庁徴収部徴         収課長     加藤 廣忠君         厚生省薬務局監         視指導課長   大木 知明君         厚生省社会局生         活課長     矢野 朝水君         運輸大臣官房国         有鉄道部財政課         長       後出  豊君         運輸大臣官房国         有鉄道部業務課         長       荒谷 俊昭君         労働省職業安定         局雇用政策課長 井上 文彦君         商工委員会調査         室長      倉田 雅広君 ――――――――――――――――――――― 十月十四日  官公需についての中小企業者受注確保に関  する法律の一部を改正する法律案長田武士君  外四名提出、第百一回国会衆法第二号)  下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法  律案長田武士君外四名提出、第百一回国会衆  法第一四号)  武器等の輸出の禁止等に関する法律案後藤茂  君外九名提出、第百一回国会衆法第二三号)  訪訪問販売等に関する法律の一部を改正する法  律  案(長田武士君外四名提出、第百一回国会衆法  第二六号)  官公需についての中小企業者受注確保に関  する法律の一部を改正する法律案小沢和秋君  外一名提出、第百一回国会衆法第三一号)  下請代金支払遅延等功上法の一部を改正する法  律案小沢和秋君外一名提出、第百一回国会衆  法第三二号)  大企業者等小売業事業活動の規制に関する  法律案小沢和秋君外一名提出、第百一回国会  衆法第三三号)  大規模小売店舗等調整法案上坂昇君外八名提  出、第百二回国会衆法第三二号) 十一月六日  一般電気事業会社及び。一般ガス事業会社の社  債  発行限度に関する特例法の一部を改正する法律  案(内閣提出第二号) 十月三十日  悪質な商行為を防止すみための法制度確立に関  する請願田中直紀紹介)(第一一一号)  企業人材資源専任制度法制化に関する請願  (嶋崎譲紹介)(第一四三号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  小委員会設置に関する件  一般電気事業会社及び一般ガス事業会社の社債  発行限度に関する特例法の一部を改正する法律  案(内閣提出第二号)  通商産業基本施策に関する件  経済基本計画及び総合調整に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件     ―――――――――――――
  2. 粕谷茂

    粕谷委員長 これより会議を開きます。  この際、国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  通商産業基本施策に関する事項  中小企業に関する事項  資源エネルギーに関する事項  特許及び工業技術に関する事項  経済計画及び総合調整に関する事項  私的独占禁止及び公正取引に関する事項  鉱業と一般公益との調整等に関する事項以上の各事項につきまして、議長に対し、国政調査承認を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 粕谷茂

    粕谷委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ――――◇―――――
  4. 粕谷茂

    粕谷委員長 次に、小委員会設置に関する件についてお諮りいたします。  エネルギー基礎素材及び鉱物資源に関する諸問題を調査するため小委員二十名よりなるエネルギー基礎素材及び鉱物資源問題小委員会並びに  流通に関する諸問題を調査するため小委員二十名よりなる流通問題小委員会を、それぞれ設置することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 粕谷茂

    粕谷委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  両小委員会の小委員及び小委員長選任につきましては、委員長指名に御一任願いたいと存じますが御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 粕谷茂

    粕谷委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  両小委員会の小委員及び小委員長委員長において追って指名し、公報をもってお知らせいたします。  なお、小委員及び小委員長の辞任、補欠選任につきましては、あらかじめ委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 粕谷茂

    粕谷委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ――――◇―――――
  8. 粕谷茂

    粕谷委員長 通商産業基本施策に関する件、経済計画及び総合調整に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。奥野一雄群
  9. 奥野一雄

    奥野(一)委員 きょうは余り時間がございませんので、三つの問題についてお尋ねをしていきたいと思うのですが、いずれ時間をこれからたっぷりとっていただきまして、本格的な質疑については後ほどまたぜひやらしていただきたいと思っております。きょうは人口の段階の程度、こういうことになろうと思いますが、お考え方をひとつお聞かせをいただきたいと思っているわけです。  一つは、国鉄再建監理委員会の方から、七月二十六日に分割民営化方針が出されました。これは日本の経済全体にとっても大変な影響を及ぼすというふうに思うわけですが、特に私の住んでおります北海道の場合には大変大きな打撃をこうむる、こういうふうに言われておりまして、道内の各関係者においても今大変な困惑を来しているところです。  そこで、お尋ねをしておきたいと思いますのは、これは北海道に与える経済的なダメージ、相当なものがあると思っているわけですけれども、当然経済影響を与えるということになりますというと、これは通産省としてもそのことについて何らかの対応もしなければならないと思っているわけでありますが、どういうような影響を与えるのかということについての認識の度合いということについてお尋ねをしていきたいと思っているわけであります。  これは、通産省通産省としての立場からひとつ御判断をお示しいただきたいと思いますし、それから、北海道地域開発ということについては開発庁がそれぞれ主務官庁として行っているわけでありますけれども開発庁としてはこの点についてどういう御認識を持っておられるか。あるいはまた運輸当局、きょうは国鉄の方にはおいでをいただいておりませんが、私も率直に申し上げまして、今の国鉄の場合には余り当事者能力がないんじゃないかという感じを持っているわけですから、監督官庁であります運輸省としては、この国鉄再建監理委員会の出しました分割民営方針地域経済にどういう影響を及ぼすか、そういう点を考慮されているのかどうかということもあると思うのでありまして、その点について関係の各省庁の方から認識についてお伺いをいたしたいというふうに思います。
  10. 松尾邦彦

    松尾政府委員 先生指摘のように、政府国鉄改革につきまして、七月に、国鉄再建監理委員会提出されました「国鉄改革に関する意見」を最大限に尊重するということにいたしたところでございますけれども通産省といたしましては、やはり地域交通地域貨物輸送確保ということが関連地域の振興を図る上で極めて重要な点だと考えておりますので、今後とも関係省庁協力してその対応を図ってまいりたいと考えておるわけでございます。  いろいろな路線につきまして、特定地方交通線として承認されているものも幾つもあるわけでございますけれども、それぞれの路線ごと特定地方交通線対策協議会輸送確保に関し必要な協議が行われていると承知しておりますけれども、私どもといたしましても、札幌通産局におきまして、このような事態が経済にどのような影響を与えるものかという点につきまして影響調査を行っているところでございます。そのような影響調査をこの協議会の推移を見守る中で十分生かしてまいりたいと考えております。
  11. 大串国弘

    大串説明員 北海道でございます。お答えいたします。  今後、国鉄民営分割によりまして新しい鉄道会社に移行するということになりますと、再建監理委員会の見通しにもございますように北海道では一万三千人の余剰人員が発生する、こういう意味から地域経済にもかなりな影響が出るんじゃないか、このような認識を持っておるところでございます。
  12. 後出豊

    後出説明員 国鉄事業につきまして、今後、先般の再建監理委員会の「意見」に従いまして改革を進めてまいるということにしておるわけでございますが、私ども運輸省といたしましても、そのような改革を進めるに当たって、鉄道の持つ役割、特に地域経済に与える影響などについても十分踏まえて行っていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。  そもそも今般の改革を行うという趣旨自体が、このままで推移いたしますと国鉄経営が、今日抱えております大幅な赤字のために事業運営自体が支障を生ずる、これをどうするかということから端を発したことでございまして、今後の経営改革を進めるに当たりましても、そのような国鉄の持っている地域経済に与える使命ということも十分踏まえて、むしろそれを生かす方向経営改革を進めていかなければならない、こういうふうに考えているところでございます。  特に北海道における鉄道経営につきましては、非常に経営の困難が予測されるところでございます。したがいまして、再建監理委員会答申におきましても、特別の配慮をしてその経営健全性が図れるようにするということも答申しております。私どももその趣旨に従って、それを実現するようにいたしたいと考えております。  なお、今般の経営改革とは別に、昭和五十五年の法律に基づきまして特定地方交通線対策が進められております。これは、鉄道としての特性を失ったものについてバスなどに転換を図る、そうすることによって真に地域に密着した輸送体系というものがつくれる、それが翻って地域のためになる、こういう判断でやっているものでございます。ただ、その実施につきましては、地元協議会におきまして十分議論を尽くしていただきまして、皆様の納得を得るようにしながら進めてまいっているということでございます。
  13. 奥野一雄

    奥野(一)委員 今関係各省の方からそれぞれお答えをいただいたのですけれども、正直に言ってさっぱりわからないという状態でございます。少なくとも国が行政改革の一環として国鉄再建対策というものを取り上げられる。特に北海道の場合には、今まで開発路線ということで、北海道開発のために国鉄は大変重要な役割を果たしてきたわけでありまして、そのことによって地域産業というものが開発されてきた、こういう歴史的な経過があるわけであります。単に旅客を運ぶとか貨物を運ぶということだけではないわけだと思うのです。ですから、そういう役割を果たしてきた国鉄が分断されていく、特に北海道の場合には六つの分割会社のうちでも一番条件が悪い、そういう状況になっているわけです。  しかも、今さら申し上げるまでもなく、今北海道経済は全国の状況になかなか追いついていかないという状態になっているわけです。それに加えて、重要な開発路線という役目を持っている国鉄がこのままの状態でいきますと、これは運輸委員会あたりに行って国鉄問題について本格的に議論をしたいとは思っているわけですが、きょうは商工委員会の中ですからそちらの方に余り重点を置くわけにまいりませんので、主として経済関係するということでお尋ねしているわけですけれども、仮に北海道会社ができたときに、監理委員会の出しているような答申中身北海道鉄道会社経営されるというふうには私は考えられないですね。もっともっと悪化していくと考えざるを得ない状況です。  そうだとすれば、国鉄がそういうふうになっていくということであれば、それが経済に与える影響というものは、国がやる一つの仕事なんですから、当然そのことによって経済影響を与えないようなものを国は考えていかなければならないのではないか、その辺の対策が非常におくれているというふうな印象を受けるわけです。後で触れますが、例えば余剰人員対策や何かについても非常におくれていると思っているわけでありまして、今予定されている六十二年四月から仮にそういう状況になった場合には、地域経済に大変大きな混乱を与えていくだろう、こういうふうに予想されますので、その点について特にお伺いしたわけですが、具体的なお答えという段階にまではまだ至っていないと思っているわけです。  これは、同じ北海道の中でも私どものおります道南地域南北海道の場合には特にまた条件が悪いわけでありまして、全くの過疎地帯になっている。今函館本線、それから松前線江差線あるいは瀬棚線という三本の地方線本線が走っているわけです。この計画によりますと、大体二次交通線松前線瀬棚線は危ない、こういう状況になっておりますし、それから江差線もまず危ないというような状況になるわけです。そうすると、渡島半島の場合にはもう函館本線だけしか走らないという状況になるわけです。  しかもまだ、御案内のとおり、北海道の中でも渡島半島というのは一番景気の悪い地域でございます。仮に青函連絡船一つなくなるということを考えてみた場合、これは私ども調査でありますけれども、少なくとも五百億くらいの経済的な影響を受ける、多ければ七百億を超えるのではないかという試算が学者の中からも出されているわけです。例えば地元でそのことについて対策考えるということになりましても、そう簡単にいくものではないと思うのですね。  ですから、そういうことについて、国のやる国鉄再建ということで、あとのことは全部おまえたち勝手にやれということでは、これは大変な問題になると思っているわけなのでありまして、協力をしてくれということであれば、協力をしてもらえるだけのそういう対応というものについて政府考える必要があるのではないか、こういうふうに思っているわけであります。そういう宙について各省庁の方では具体的にお考えになっておられないような感じがするわけですが、おられるのであればその中身について聞きたい。  それから、先ほど通産の方では札幌通産局あたり影響調査などをやられているということでありますけれども、これはもちろんある程度時間もかかると思いますが、仮に具体的にそういうものが出てきた場合には、それなりの対応ということについては措置をされるというふうにお考えになっているのか、これは通産の場合でもそうですし、あるいは開発庁の場合もそうでありますけれども、そういう面の具体策がもしあったらお知らせをいただきたい。また、なければ、先ほど言いましたように、調査が完了した段階でこれは大変影響があるということであれば、何らかの国としての施策をやろうという考えがあるかどうか、その辺も含めてひとつお答えをいただきたいと思うのです。
  14. 後出豊

    後出説明員 今般の国鉄改革地域経済との関係につきまして私ども運輸省としてどう考えているかということをまず基本的に申し上げますと、先ほど申し上げましたとおり、今後の鉄道維持に当たりましては地域と密着した形で行っていくことが不可欠である、こういう判断があるわけでございまして、今般の改革を実施することによりまして、地域に密着した、それぞれの地域のニーズに合った鉄道経営維持が可能になる、こういうふうに考えているわけでございます。  とはいいながら、北海道におきます鉄道経営が非常に経営的に苦しいであろうということは先生の御指摘のとおりでございますが、再建監理委員会の「意見」におきましてはその辺について特別の配慮をしているということを先ほど申し上げましたが、より具体的に申し上げますと、経営の移行に当たりまして現在の国鉄から事業用資産を新会社に引き継ぐわけでございますが、それにつきましては債務を承継させないで引き継ぐ、すなわち事業用資産については無償で譲り渡す、こういう措置をまず講ずることとしております。  第二に、それでもなお生ずると見込まれる営業上の欠損につきましては、目下四千九百億円と試算しておりますが、そのような額を北海道会社に積む、その果実でもって営業上の欠損を償っていく、こういうような計画にしているところでございます。  これは監理委員会答申でそうなっておるので、その趣旨に沿いまして今後政府としても具体策を検討していきたいということでございますが、基本的にはこのような線に沿ってやっていきたいと思っているわけでございます。  また、ローカル線の問題が具体的な綴名を挙げて御指摘ございましたが、松前線瀬棚線につきましては、今般の経営改革より前に、五十五年法に基づきましてバス等への転換が適当な路線として措置をすることとされまして、そのための協議会が開催されておりますので、この場での議論を十分尽くしていただきまして、地域の真の足に役立つような形で転換を図っていただきたい、私どもこういうふうに考えているところでございます。  また、江差線につきましては、新会社に引き継ぐということで私ども考えております。  また、青函連絡船につきましては、青函トンネルが完成した暁には青函連絡船の本来の意義が失われるということでございますので、廃止する方向で検討したいと考えておりますが、その場合におきましても、青函トンネルの建設によりまして北海道本州とを結ぶ安定的な輸送ルートが形成されまして、従来以上に北海道本州との一体化が図られるということによりまして、地域経済への発展にも寄与するものではないかと私ども考えているところでございます。
  15. 松尾邦彦

    松尾政府委員 先ほど申し上げましたように、先生指摘松前線等道南地方はもとより、北海道にはいわゆる特定地方交通線として承認されている路線もたくさんございますので、私ども通産局におきましても、今後のあり方が経済にどういう影響を与えるかいろいろ調べておりますが、いずれにいたしましても、それぞれの特定地方交通線対策協議会において輸送確保に関し協議が行われるに当たりましては、地域経済に与える影響について十分配慮をした上で結論が出ますよう当省としても十分その推移を見守ってまいり、北海道が有する開発ポテンシャルが効果的に発揮できることに支障のないよう対処してまいりたいと考えておりますが、立地面からの政策につきましては、立地公害局の方からお答えさしていただきたいと思います。
  16. 黒田明雄

    黒田(明)政府委員 国鉄対策という観点から講じているわけではないのでございますが、通産省といたしましては、地域経済の振興によります国土の均衡ある発展を図るということで従来から立地政策を展開しているわけでございまして、具体的には工業再配置促進法でございますとか高度技術工業集積地域開発促進法、いわゆるテクノポリス法でございますが、こういったものに基づきまして種々の施策を講じているところでございます。  御質問の道南地域でございますが、この地域も工業再配地促進法上の誘導地域ということで指定をいたしておりますほか、函館地域についてテクノポリス法に基づく開発計画昭和五十九年七月十四日に承認いたしておりまして、先端技術産業の振興をてこといたします地域開発、いわゆるテクノポリス構想を推進しているところでございます。
  17. 大串国弘

    大串説明員 先生指摘のように、道南地域につきましては、青函航路の問題、さらには松前線瀬棚線の特定地交線の問題、鉄道をめぐる情勢が非常に厳しい、加えて地域経済に与える影響も大きい、このように考えております。  北海道開発を所管する立場からは、今後とも関係省庁と緊密な連携のもとに、この地域の特性を踏まえた既存産業の活性化、それから新しい産業の育成導入を図りたいと考えております。  特に道南の方につきましては、水産がなかなか不振だということで、これからはとる漁業から育てる漁業ということで、現在日本海南部の方でいそ焼け対策調査をやっております。それから、噴火湾の方ではケガニの育成の調査をやっている。こういうことで、徐々ではございますけれども産業の活性化のために努力してまいっている所存でございます。
  18. 奥野一雄

    奥野(一)委員 この問題だけを質問しているわけにいかないので、ちょっとあと一つ二つ固めてお尋ねしておきます。  通産の方はいろいろの施策を講じられまして、地域経済の振興とかあるいは中小企業者の振興対策などいろいろおとりになっているわけで、新しい施策というのは次から次へと今まで出してきていただいておるわけですね。テクノポリスあるいはコミュニティーマートとか、通産省がそういうふうにして一方においては企業の活性化などのために力を注ぐ。同じ政府の方では、今度企業がダウンするような施策を行う。我々からすれば、一体何やっているんだというふうに思わされるわけですね。  先ほどちょっと例に出しました青函連絡船なんかが廃止になりますと、影響を受ける業者というのは百数十社くらいに及ぶ。そのうち全部が連絡船におぶさっているわけではございませんけれども、何社かはやはり連絡船にほとんどオンリーに近いくらいの業種もあるわけです。これは完全に今から転換をしなければ、倒産してしまうということになるわけですね。  ですから、同じ国でありながら、一方においては地域経済活性化のためにやっており、一方においてはそれを無視するように一挙に地域経済が崩壊するのではないかと思われるくらいのことをやる。大変地域の方々にとっては迷惑千万な話であるわけでありますが、一体どうなっているんだという感じ一つあるわけです。  それから、最近の企業活動というのは、単に物を生産をするとかサービスを提供するということだけではなくて、輸送との関係というのが当然出てくると思うのです、輸送の形態もいろいろあるわけでありますけれども。これから二次線なんかが切り捨てられていくということになるわけで、バス転換がいいんじゃないかということで今話が進められているわけですが、旅客の輸送の場合にはそれでまたできるかと思いますが、貨物輸送ということになりますと、さてどうかなという感じがしないわけでもないわけですね。トラックだけに依存できるという状況になっているのか、これは道路の問題なんかもあるわけであります。  ですから、国鉄の今までのやり方を見ていますと、そういうことについては、地方線は廃止するということだけが焦点になっておって、いわゆる旅客の代替輸送ということについてはある程度考えていられるようだけれども貨物輸送ということになると全く見捨てられたような感じになっている。この辺は一体どうするつもりなのかということがあります。  それから、北海道開発庁の方では、二十一世紀を目指してのビジョンということでこれからの総合開発の計画を今立てられているわけですけれども、その中身をちょっと見せていただきましたが、鉄道関係は、難しいのか国の方針がはっきりしないということなのか、さらっと流しているというような感じを受けるわけでありまして、北海道開発の当面の責任者であります開発庁考え方も一つお聞きしたいと思いますし、運輸省では、国鉄の二次線の切り捨てられた場合の貨物輸送ということについてはもう地元で勝手にやれ、こういう考えになっているのか、この辺お尋ねをしたい。  それからもう一つ、人員の削減という問題があるわけでありまして、一万三千人ということになっておりますが、これは六十二年末の在籍人員を予定してのことでありますけれども、五十八年の在籍人員から予定いたしますと、三万五千人からいるわけでありますから、これはもう約二万人からの人員削減ということにつながっていくわけであります。  けさのテレビだったですか、ゆうべのテレビだったですか、何か気象庁の方でも、二百人くらいですか、余剰人員の受け入れを決めたという話を聞いておりますが、北海道の場合は、私はなかなかそう簡単には人員の吸収ということにはならないだろうという予測をしているわけであります。  御案内のとおり、北海道は今有効求人倍率が〇・二五から二六、よくなっても二八ということでありまして、全国の〇・六八から比べますと相当低いということになるわけです。しかも、私どもの住んでおります道南地帯というのはなおそれより悪い。恐らく全国で今一番悪い状況にあるのじゃないかと思うのです。せんだつて造船合理化の中で函館ドックが大変な目に遭いまして、その第一次の退職者ですらまだ就職先が決まらない方が四百人くらいもいる。こういう状況の中で、これは非常に大変だと思うのです。  それから、自治体関係を回りましても、自治体の方々も、国鉄の方から受け入れをしてくれと言われても、何人か受け入れしますというと新規採用をストップしなければならないということに当然つながっていくわけであります。ことしの春先の場合は、函館市を含む道南関係では、当初は百人のうちわずか六人より新規卒業生の就職が決まらないという状況がありまして、今やっと二十五、六人くらいまで復活をしてきたと思うのですが、そういう状態でありますから、自治体とか民間に吸収をしてくれということで吸収いたしますというと、新卒者の行く先がなくなるということにつながっていくわけでありまして、これは大変なことになると思うのですね。  だから、そうなった場合には、それでは今度は最終的に労働省が責任を負うということになるのか、あるいは、国鉄なり政府の方では対策本部などをつくってやっておられるようでありますが、最後までそういう面倒を見られるという責任体制になっておるのか、この辺のとこみが非常に不明確でございます。昨日あたりも、大蔵委員会などでも年金問題で議論になって、今一時ストップしておるようですが、そういう後のことまで全然面倒を見ないというやり方は不安を残すだけだと思うのですね。  やはり国鉄のそういう大きな再建ということをやられるのであれば、その最後の最後まで政府の方で責任を持ってきちんと見るということを明確に示してやらなければ、だれが安心して協力するということになるのかということだと思うのですよ。私は、一番いいのは国立の施設を何かつくってくれと言いたいのですね。そうすれば、そこで百人でも二百人でも吸収できるじゃないか。それぐらいの面倒を見てくれなければ大変なことになると思うのですが、その辺のところは関係各省庁の方からひとつお答えいただきたいと思う。
  19. 後出豊

    後出説明員 まず初めに、地方交通線における貨物輸送の問題についてお答え申し上げます。  貨物輸送を行っておりました国鉄特定地方交通線につきまして、そのバス等への転換に伴いまして大きな問題が発生するということでございますれば、もちろんその協議会で御議論の対象にしていただいて、十分関係者の御理解を得てやっていきたいというふうに考えております。現在までも、全国で行っております協議会議論の場でそのような結論に導いている例も多々あるわけでございまして、例えば、荷主の御理解を得てトラック輸送に切りかえた場合でございますとか、あるいは荷主の出資を得まして第三セクターを設立し、その第三セクターでもって旅客及び貨物輸送する鉄道を残すという形で解決したところもございます。そのような方途によりまして、貨物につきましても関係者の理解を得ながら進めてまいるということで臨んでいきたいと思っております。  それから、次に余剰人員の問題でございます。  国鉄余剰人員問題は、残ります新事業体を私鉄並みの効率的な経営形態にするというために発生する問題でございますが、これは大変重要な課題でございまして、今般の国鉄事業再建の成否にかかわるものであると私ども考えております。特に北海道におきましては余剰人員の発生が多いということも先生の御指摘のとおりでございまして、これに対しては政府全般で全力を傾注して対処しなければならないというふうに認識されておりまして、政府におきましても、先生おっしゃいましたとおり、内閣に余剰人員対策本部が設立されておりまして、内閣総理大臣みずからが本部長に就任しております。  目下、雇用対策本部におきまして、国あるいは地方公共団体における一定の採用数の受け入れあるいは一般産業界に対する採用の要請などにつきまして、具体策を検討しておるところでございます。その具体策によりまして、もちろん、運輸省あるいは国鉄は当然みずからの努力として行うわけでございますが、政府を挙げてこれに取り組んでいただけるものと私どもとしては考えているわけでございます。  ただ、具体的にその余剰人員対策はいろいろ難しい問題があるだろうということは、これまた先生の御指摘のとおりでございますが、一遍に六十二年四月一日に余剰人員が生ずるということですと、これまたなかなか解決を困難にするということでございますので、例えば、経営形態移行前にも希望退職を募って六十二年四月一日段階での余剰人員を少なくしておく、あるいは、六十二年四月一日以降も、清算法人的な組織、いわゆる旧国鉄と称される組織にとりあえず余剰人員の方を在籍いたしまして、三年間を限度としてそこで職業指導を行う、教育訓練を行う、あるいは求人開拓、就職あっせんを行う、あるいは早期再就職促進のための手当を支給するというようなことなどの方途を講じたいと思っているわけでございます。このようなことによりまして、余剰人員対策ということにつきましては、政府全般でできる限りの措置を講じて対処していきたいというふうに考えているところでございます。
  20. 大串国弘

    大串説明員 先生の方から、開発庁で出した長期ビジョンについて、鉄道はさらっとしか触れてないんじゃないかという御質問がございまして、それにお答えしたいと思います。  「北海道総合開発の長期ビジョン」といいますのは、現在行っております新北海道総合開発計画、これは五十三年度から六十二年度までとなっておりますが、これに続く次期計画の策定作業のたたき台ということで、北海道開発の長期的な発展方向ということで、本年六月に当庁において作成したものでございます。  このビジョンにおきましては、道内のそれぞれの地域社会の特性に応じて、鉄道を含めた各交通機関の有機的な組み合わせ、効率的な地域交通のシステムを構築しなければならないということで、考え方は明記してございます。  先生のおっしゃるとおり、鉄道をめぐる最近の情勢から、非常に難しい問題がございます。次期計画の策定に向けまして十分勉強しまして具体的な問題を詰めてまいりたい、このように考えております。
  21. 井上文彦

    ○井上説明員 お答えいたします。  余剰人員対策の具体的内容につきましては、現在、国鉄余剰人員雇用対策本部を中心に検討が進められているところでございますが、労働省といたしましても、地域の実態を踏まえまして、国鉄関係機関々連携をとりつつ、職業安定機関による求人開拓とか職業訓練、再就職のあっせん等を通じて雇用の場の確保に努めてまいりたいと考えております。  特に北海道につきましては、先生指摘のように雇用情勢が厳しい中でございますので、その中で余剰人員の割合が高いと現在見込まれておりますので、関係機関とより緊密な連携をとりながら、求人開拓等を通じて再就職の促進のために努力してまいりたいと考えております。
  22. 奥野一雄

    奥野(一)委員 もうこれだけでちょっと時間がなくなってしまいそうなんで、これはまた次の機会にもう一遍やらせていただきたい、こう思っております。そのときにはもう少し時間をとりまして、細部にわたって詰めていきたいと思っております。  ただ、申し上げておきたいと思うのですけれども国鉄分割民営化ということで方針が出されて、政府の方では恐らくそれの法案づくりを今一生懸命やっていると思うのですけれども貨物は別会社全国一本、それから新幹線も別会社全国一本、旅客だけは六つの会社分割するということは、どだいこれは分割というのは無理なんだろうと思うのですね。そうでなかったら、新幹線だって貨物だってみんな分割していいはずなんだけれども、まあそういう議論はまた後でさせてもらいます。  時間がありませんので、次に、最近、生協、いわゆる消費生活協同組合の関係について、何か規制をしなければだめなんだというような動きがあるように実は仄聞をしているわけでありますけれども、厚生省なりあるいは通産省なりで、この改正をしなければならないというような動き、そういうものについて承知をしているかどうかということ、それから、生協の進出によりまして小売業者がどの程度影響を受けているのか、そういう実態について把握をしておられるかどうか。  それから、私は生協の創立の際にもいろいろお手伝いをさせていただいた一人だし、また一面においては中小企業者の団体も組織をしておりまして、両方にまたがっているような感じであるわけでありますけれども、具体的に例えばいろいろな事例があったというときに、片一方は厚生省、片一方は通産省ということで、末端に行ってみますとそんなに区別はないのですね。ところが法律も違うあるいは所管官庁も違うということで、何かその辺のところがうまくいってないような感じがするわけなんですが、これは両省が協議してうまく両省で行政指導をやられるということで、トラブルが起きないような状態をつくり出すことができないのかどうか。その辺のところをいろいろ内容についてお聞きしたかった点があるのでありますけれども、時間の関係がありまして中身まで入れませんので、その点だけひとつ考え方をお聞かせいただきたいと思います。
  23. 照山正夫

    ○照山政府委員 お答え申し上げます。  生協と中小小売商との間の紛争の状況でございますが、御承知のように小売を取り巻く環境は大変厳しいものがございまして、消費支出の伸び悩みでありますとか商業環境の変化でございますとか、そういう中で小売の環境は厳しくなっておるわけでございます。小売の伸びは全体で、現在年間大体一%程度の伸びということになっているわけでございますが、一方、地域生協の方は現在千店ほど全国に展開しておられますが、五十九年度も約九十店程度の出店がある。また、売り上げと申しますか、物資の供給高の方も年間一割程度の伸びを示しているというような状況であると承知しております。  こういった中で中小小売商と生協との間に、生協店舗の設置でございますとか、あるいは員外利用の問題でございますとか、あるいは生協の地区を拡大するというような問題につきましてさまざまな摩擦が生じておるのが現状でございます。  こういった摩擦事例の中では、当事者間の話し合い等によりまして一応調整がついたというふうにされているものもあるわけでございますけれども、その一応の調整に至るまでには相当の困難があったものもございますし、あるいは調整がついたとされた中でも、中小小売商の側ではなお相当不満が残ったままになっておるものもあるというのが実態ではなかろうかと思うわけでございます。  こういったことで、生協と中小小売商との間の紛争と申しますか、摩擦は全国各地でいろいろ生じておる。それを背景といたしまして、中小小売商ないしはその関連団体の方から、生協の事業活動をこの際規制をしてもらいたいという要望が今日非常に強く出ておるというのが現状であると認識しておる次第でございます。  また、規制の動きについて承知しているかという御質問でございますが、こういった中小小売商業団体からの規制の要望が出ているという点が一つございますし、最近、自由民主党の方で規制強化について種々検討しておられる、それで一つの結論を出されたということを私どもも承知しておるわけでございます。
  24. 矢野朝水

    ○矢野説明員 第一点の生協法を改正しなければいけない理由があるかという問題でございますけれども、これはただいま答弁がありましたように、生協活動につきましていろいろな問題点が指摘されておるわけです。それからまた、法律ができましたのが昭和二十三年でございまして、その後、社会経済状況が非常に変わってきておる、あるいはまた生協が非常に大きくなってきておる、こういう変化がございますので、こういった点を踏まえまして、一年をかけまして厚生省としては生協法の見直しをしていきたい、その結果どうしても改正しなければいけないという答えが出ますと、それは対応しなくちゃいけない、こう考えております。  それから、二番目の小売業者との摩擦、あるいはどのような影響を与えるかといった問題でございますけれども影響の度合いにつきましては個個のケースが非常に違っておりまして、一般的にどのような影響がというのを把握するのは非常に難しゅうございます。私どもとしましては、生協が出店する際には地元で徹底的に話し合いをする、その結果地元と調整をして出店する、こういうことを強く指導してまいっておるわけでございます。  ちなみに、五十九年度に出店しました生協につきまして私どもが都道府県を通じて調べた結果によりますと、九十店舗ございますけれども、この中で問題なしに出店した事例というのが十三でございます。それから、出店説明をやりまして、その結果特に問題がないということで出店した事例が七、それから、協議の結果調整がついて出店した事例が六十九、それから、出店後現在も協議中の事例というのがたったの一件ということでございまして、ほぼ地元での調整がついて出店したと思っております。ただ、先ほどの答弁にありましたように、小売商のサイドからは、調整といいましてもいろいろ問題がある、不満が残っておるということでございまして、この辺は複雑な事情があると認識しております。それから最後に、通産、厚生との連携の問題でございますけれども、これは従来から相談してやっておるわけでございまして、今後とも連携を密にして対応してまいりたいと思っております。
  25. 奥野一雄

    奥野(一)委員 私も地元の方の関係についてはいろいろ調べてきているわけでありますけれども、例えばスーパーとか普通の大型店は同じ通産の所管ということになるわけです。しかし、消費生活協同組合の場合には所管は厚生省、そのための法律もできているわけでありまして、法律は、申し上げるまでもなく、「国民の自発的な生活協同組織の発達を図り、もって国民生活の安定と生活文化の向上を期する」。悪いことではないわけですね。ところが、関係省庁通産と厚生という立場の中で、私はやはり両省の協議というのが少し不足しているのではないかという感じがしてならないわけなんですね。  だから、両省の間でうまく対応をして、行政指導をきちんとうまくやっていけば、ある程度解決がつけられるのではないか。例えばそういうことを十分やらないで、ただ法律で規制をすればいいということになりますと、これは規制の中身だっていろいろ問題が出てくると思うわけでありますが、今時間がありませんからその中身まで触れられませんけれども、その辺のところはどうなんですか。  きょうは通産大臣がおられるわけでありますので、通産大臣としては厚生省とその部面についてはよく協議をして、行政指導の中で地域のそういう活動がうまくいくような、そんなようなことについておやりになるという考え方はございますか。
  26. 村田敬次郎

    ○村田国務大臣 奥野委員お答え申し上げます。  生協と中小小売商との間では、現在もなお生協店舗の設置であるとか員外利用などをめぐって摩擦があるということは事実でございます。通産省としては、このような摩擦について円滑な解決が図られる必要がある、このように考えておるわけでございます。先ほど来両省の政府委員から御答弁を申し上げましたように、こうした観点から通産省としては、厚生省とも連絡を密にする、それからまた、生協問題に対する各方面の動向を踏まえながら適切に対処してまいりたい、このように考えております。  なお、私、先ほど来奥野委員北海道に関する御質問を拝聴しておりまして、この機会に通産大臣として一言申し上げたいと思います。  というのは、北海道経済というのは日本の四つの島の中でも非常に特異な経済である。先ほど来の御質問は、国鉄の問題に関連をして非常に痛切な問題として御高見の発表があったわけでございまして、考えてみますと、明治初年に北海道の人口は十数万しかなかった。それが百年の間に現在の五百数十万という大きな人口に伸びたわけでございますが、その間に北海道地域経済は大変な発展をしたわけであります。これは北海道開拓使でありますとか、あるいは北海道一級町村制、二級町村制でありますとか、こういったものを眺めてみますと、まさに公共投資等による先導があり、そして北海道としてのフロンティアとしての性格から現在の発展がもたらされておると思います。  したがって、国鉄の機構改革等に伴って北海道経済に大きな打撃があるという御指摘は大変ごもっともでありますが、これは北海道開発庁運輸省通産省や各方面から御答弁を申し上げましたように、産業構造の高度化というものも通産省の立場からいえばぜひやってもらわなければならない。そして、国に対する依存経済というものはもちろん今後も相当続けなければなりませんし、公共投資というものは各方面に行うべきであると思いますが、北海道自体の自助努力とそういった国の大きな支援というものが相まって、今後の北海道の発展がもたらされるものであると思います。  したがって、通産省としては、先ほど政府委員から御答弁申し上げましたようなテクノポリスであるとか、あるいは新しい産業の立地でありますとか、北海道経済構造の改善であるとか各般の努力をしていく予定でございますが、そういった点で関係各省とも十分連絡をとりながら、あすの北海道がさらにフロンティアとしての、日本全体に大きなプラスになるような、そういった方策を進めるべきであるということを先生の御質問を伺いながら感じましたので、この際所感を申し上げておきます。
  27. 奥野一雄

    奥野(一)委員 もう時間になりましたので、最後に、豊田の関係で経企庁とそれから大蔵省の方に端的に二言だけでお答えいただきたいと思うのです。中身お尋ねする時間がありませんので、中身まで詳しく申し上げることはできません。  九月の二十九日、私のところでも被害者の総会を開きました。三百二十何名かの被害者で、被害額が十一億以上あるわけであります。その方々から痛切に言われておりますのは、自分たちももちろん責任はあるけれども、やはり野放しにした国だって責任があるんじゃないか、だからこの際、被害者の救済について国の方では積極的に努力をしてほしいという要望があるわけです。  そこで経企庁の方では、被害者の救済について今後努力をするという考えがあるかどうかということ。これはないということはないと思うのです。それから大蔵省の方は、問題の国税分でありまして、これはもうぜひ国の方では放棄をしてもらいたい、幾らかでも被害者の方にそのことについては還元してやる、そういうことをぜひお願いしたいということを言っているわけでありますので、その辺、時間がもう終わりましたので、一言ずつだけでお答えいただきたいと思うのです。
  28. 横溝雅夫

    ○横溝政府委員 経済企画庁でございますが、豊田商事の被害者の救済問題につきましては、基本的にはこれは民事上の破産手続で処理される問題だと理解しておりますけれども、行政当局といたしましても、それぞれの所管省の権限の範囲内でできるだけの債権確保への御協力というのはしなければならないと考えております。  それから、特に被害を受けて生活が困窮化した方々に対しましては、国民生活センターあるいは地方のセンター等を通じまして、通常の医療補助、生活補助等の生活援助の措置につながるように努力いたしておるところでございます。
  29. 加藤廣忠

    加藤説明員 お答え申し上げます。  国税当局としましては、本件のように課税処分が行われておりまして既に国税債権が確定しておりますものについて、滞納になっておりますが、こういうものはやはり債権の徴収を確保しなければならない責任がございますので、放棄とか免除は法律上できないということを御理解いただきたいと思います。
  30. 奥野一雄

    奥野(一)委員 終わります。
  31. 粕谷茂

    粕谷委員長 これをもちまして奥野一雄君の質疑は終わりました。  引き続いて、和田貞夫君の質疑に入ります。
  32. 和田貞夫

    和田(貞)委員 実に長い間豊田商事の問題につきまして各委員会でいろいろと議論をされ、そして政府の方に対しまして、被害者ができるだけ多く出ないようにそれぞれ意見を私は述べてまいったわけでございますけれども、常に行政の面が後手後手に回りまして、八月の末における被害者の届け出数だけでも二万人を超える、こういうことになったわけでございまして、しかもこの点についての刑事責任の追及がしり切れトンボになっておる。国民の多くの皆さん方が、その後におけるところのこれらの金の現物まがいの取引について行政側がどういうように対応しているのか、どのように改善をしつつあるのか、深い関心を持っておられると思うわけであります。  したがいまして、その問題とあわせて日増しに批判が高まりつつあるジャパンライフのマルチまがい商法、これはマルチまがい商法というよりもむしろマルチ商法であるというように断定せざるを得ないわけでありますが、この点につきまして質問をさせていただきたいと思います。  まず、現物まがい取引対策についてでありますが、今申し上げましたように国民の皆さんが深い関心を持っておられる。政府としてはその後関係省庁会議の進行等を含めましてどのような対策を講じておられるのか、この機会にお聞かせ願いたいと思います。  なお、今月の一日に消費者保護会議が開かれておるわけでございますが、これは言うまでもなく総理が座長であって、十八省庁関係しておるわけであります。  一日の日経新聞、東京新聞、朝日新聞等を見てまいりますと、その中で、消費者保護会議の中で新しい立法措置考えて、次の通常国会に上程するという記事が載っておるわけでございますが、その内容をいかがな内容として考えておられるのか、あるいは新しい立法措置はどの省庁が主管庁になられるのか、これもあわせてお聞きしたいと思うわけであります。  なお、そのためにアメリカに調査団を派遣するという記事も載っておるわけでございますが、しかし通常国会に法案上程ということになりますと、その上程の時期から考えまして、一月に調査団を派遣するというようなことは余りにも悠長過ぎるのじゃないか、こういうふうに思うわけでございますので、その点についても二言お聞かせ願いたいと思うわけであります。  要は、過去何回となく消費者保護会議が開かれておるわけでございますが、その消費者保護会議で決めるということは、ただ検討をするということだけにとどまる、あるいは努力目標としてその会議でいろいろな意見を出して取り決めるというようなことであってはこの際はならないのじゃないか、私はこういうように思いますので、今申し上げた点につきましてひとつ関係省庁からお答え願いたいと思います。
  33. 横溝雅夫

    ○横溝政府委員 まず、現物まがい取引の対策をその後どうしているかという御設問でございますが、今先生もお触れになりましたように、六月初めから関係省庁公正取引委員会、警察庁、法務省、大蔵省、通商産業省及び当庁、この六省庁会議協議の場を設けまして、この悪質な現物まがい取引についての問題点の検討あるいは被害防止のための方策について検討をしてまいっております。これが一つでございます。  それから第二は、国民生活センター等地方のセンターも含めまして、ことしの六月末に豊田商事関連一一〇番というのを設けまして被害者の相談に応ずる、あるいはそれを今度の破産手続にうまくつながるように御相談にも応ずるというようなこと、あるいは特にお年寄りが多く被害を受けたということでありまして、パンフレットを作成したりしまして、このセンター等を通じまして高齢者に重点を置いた消費者啓発を積極的にきめ細かく行うというようなことをやってまいりました。  それから第三番目でございますが、この豊田商事等の現物まがい取引の契約上の問題点につきまして、本年九月から国民生活審議会の消費者政策部会で約款適正化委員会というのを設けまして、そこで検討をお願いしております。  さらに、今御指摘のありました十一月一日の消費者保護会議におきまして、金等の現物まがい取引に対する対応を重点項目の一つとして取り上げまして、「不法事犯の取締りの強化等各種法令の厳格な運用及び迅速な情報提供に努める。」とともに、この種の商法による「消費者被害の防止のための方策について、法制度の整備も含め関係省庁連携の下に検討を進める。」ことを決定したところでございます。  特に、今お触れになりました「法制度の整備も含め関係省庁連携の下に検討を進める。」という文言がことしの消費者保護会議に入ったのが特徴でございまして、一方において現在警察当局等を中心といたしまして現行法令の適用につきまして捜査が進められておるところでございますけれども、他方におきまして、やはりこのような悪質な商法の再発を防止するために、法制度の検討も含めて関係省庁とともに検討しなければいけないということを決めたわけでございます。現在関係省庁で、特に六省庁会議でいろいろな面から検討しておるところであります。  今お話のありましたアメリカのこういう詐欺的な商法の取り締まりの体制等の調査に行きたいと考えておりますが、現在いろいろな面で検討途中でございまして、この新しい法制度というものがどのような内容で、主管官庁がどうなるかという点については現在のところまだ検討の途中でございまして、これから明らかになってくるところでございます。  アメリカへの調査団の派遣というもののタイミングにつきまして、今のところ、その六省庁の現在の法制度の検討等を考えますと来年の一月ごろになろうかと存じておりますけれども、できるだけ早く法制度の整備について検討を進めたいと考えておるところでございます。
  34. 和田貞夫

    和田(貞)委員 古いことでは、ネズミ講の規制について何回となくこの消費者保護会議で決議をしておる、それを繰り返すばかりで、とうとう最終的にこれは政府の方から法案を上程するということにはならなくて議員立法で決める、そういうような実績が悪い実績としてございますし、あるいは豊田対策につきましても、実はこの消費者保護会議が五十七年から毎年繰り返して決議しているのですが、決議だけにとどまってしまった。昨年の予算委員会では我が党の松浦議員が前の通産大臣の小此木さんに質問をして、これはもう断固として対策を講ずる、こういう約束をされておるにもかかわらず、そのままのんべんだらりとして何らの対策を講ずることなく被害者がどんどん出る、こういうことになってまいった。これもまた悪い実績が残っておるわけです。  したがいまして、この十一月一日の消費者保護会議というのは、従来のそのような悪例を繰り返すのでなくて、努力目標じゃなくて、少なくともここで決めたことは、今話がございましたように、いろいろと私たちが議論する中で警察当局もあるいは検察の方も現行法規では難しい、難しいということを繰り返されたわけでありますから、やはり今言われたように新しい立法措置を講ずるあるいはこの訪問販売法を改正に持っていく、こういうことはぜひとも次の通常国会に出していただくということを私はひとつお約束願いたいと思うわけでございますが、どうですか。
  35. 横溝雅夫

    ○横溝政府委員 消費者保護会議の決定は、今申し上げましたように、本件について「法制度の整備も含め関係省庁連携の下に検討を進める。」ということが決定でございまして、私どもとしてはこの線に沿いまして関係省庁と御相談しながらできるだけ早く結論を得たいと考えておりまして、その方向で努力したいと思っております。
  36. 和田貞夫

    和田(貞)委員 できるならば次の通常国会にこれらの新法の制定なりあるいは訪販法の改正について積極的に上程してもらいたいということを意見として申し上げておきたいと思います。  次に、ジャパンライフの問題に入りたいと思うわけでございますが、これも消費者保護会議におきましてマルチまがい業者五十五社の実態調査を進めるということが記事として載っておるわけでございますが、その五十五社の中にジャパンライフは対象に入れておるのかどうか、そのことをお答え願いたいと思うわけであります。  なお、その実態調査というのは、既に経済企画庁がことしの八月二日にマルチまがいの被害状況調査をして公表されておる向きもあって、経済企画庁の方は非常に積極的な面がうかがわれるわけでございますが、これらを含めまして、この新聞記事に載っておりました点についてひとつお答え願いたいと思います。
  37. 横溝雅夫

    ○横溝政府委員 消費者保護会議の決定におきましては、「悪質な商取引の防止等」というのを重要な一つの項目として取り上げておりますが、その中の一つが先ほど先生がお取り上げになられました金等の現物まがい取引問題でございますが、これだけではございませんで、そのほかの悪質な消費者取引についても適切な対応が必要ということを決めております。「的確に対応するため実態の究明に努めるとともに、特に消費者取引に係る経済犯罪が多発傾向にあることから、これに的確に対処するため、悪質な事犯の取締り体制を更に強化する。」というパラグラフが先ほどの豊田商事問題の後に出てくるわけでございます。  この点に関連いたしまして、このほかの悪質な消費者取引の中の一つの項目としてマルチまがい取引というのも当然入るわけでありまして、このマルチまがい取引につきましても、ここで決めましたように、実態の究明に努める等、関係省庁と適切に対応してまいろうと思っておるところでございます。  具体的にその実態調査をどうするかというようなところは、まだちょっと決まっておりませんで、先生指摘のその五十五社というのは、実はこれまた今先生がおっしゃられました、経済企画庁が八月に資産形成取引にかかわるトラブルに関する調査という委託調査を発表いたしましたが、その中のマルチ及びマルチまがい取引等に関係する企業の数が大体五十五社くらいあるということがそのときの調査で明らかになったわけでございまして、五十五社の出どころは既に行った調査の方のことかと存じます。
  38. 和田貞夫

    和田(貞)委員 ジャパンライフは入っておるのか、入ってないのか。
  39. 横溝雅夫

    ○横溝政府委員 ちょっとこれは委託調査で現在正確にはお答えしかねますけれども、この委託調査が分析の対象にいたしましたのは、国民生活センター及び地方のたしか七つのセンターに出てきた苦情を中心に分析したものでございまして、ジャパンライフについても若干ではございますが国民生活センターに相談あるいは苦情が参っておりますので、それも含まれておるかと存じます。   〔委員長退席、渡辺(秀)委員長代理着席〕
  40. 和田貞夫

    和田(貞)委員 当然対象になっておるというように解したいと思うわけであります。  現在、きのうの週刊誌を見てみましても、最近の商業紙を見てみましても、日に日にこのジャパンライフに対する批判が高まってきておるわけでありまして、今月の五日には被害者の会ができております。あるいはその後におきましても、地域で別のグループとして被害者の会ができておるわけであります。  このジャパンライフは、極めて法の盲点をくぐって、マルチ規制に該当しないように、例えば再販でなくて委託販売取引というように称しておるわけでございますけれども、その実態は決してそうでないわけでありまして、返品に応じない、そのために在庫が非常に重なってきて被害者が出て、行方不明になったり自殺をしたり離婚をしたり、そういうような被害が出てきておるわけであります。  現実の問題として、返品を求めても、包装のビニールが破れておったとかあるいは商品に髪の毛がついておったとか入っておったとかというような、まことにいわば難癖をつけるようなそういう理由をつけて、返品を求めてもなかなかそれに応じないで、とにかく押しつけるということでございます。委託販売というのは本来返品が自由であるべきでありますが、その自由がない。したがって、実質的には再販取引であると言わざるを得ないわけであります。  さらには、そのような被害が出てくると同時に、その被害を受けておるにもかかわらず、いまだに被害を受けておることに気づいておらないケースがあるわけであります。特に若い人たちが対象とされるわけであります。例えば二十一歳の中央大学三年生の学生であります。布団と磁気マットをセットにして二十四万円ぐらいで買うた。早速このクレジット契約を組まされておる。そしてその学生さんが言うには、最初は五万円か十万円ぐらいのアルバイトだが、代理店になれば月に四百五十万円ぐらいの収入が可能になるというように言われた。  あるいは、後からも話をいたしますけれども、ジャパンライフが発行しておるこのようないろいろな雑誌や新聞等を見てみますと、極めて、いかにも関係のあるような記事になっておって、医師会の皆さんやあるいは団体等の皆さんがバックについておるというようなことをその勧誘において言われたというようなことを明らかにしておるわけです。  あるいは二十九歳の自営業をやっておる方でありますけれども、これも羽毛布団と磁気マットをセットにして三十六万円で買って、そして早速クレジット契約をされておる。これも多額収入ということを売り物にして契約をしておるわけであります。そしてAランクで代理店になれば最低限二百四十万から三百万程度がもうかるというようなふれ込みで会員になって、そして先ほど申し上げましたように返品がきかないということで在庫が重なって困っておる、こういう被害が出ておるわけであります。  したがいまして、そのようなことを考えるならば、全くマルチ商法であると断ぜざるを得ないわけであります。この実態、内容を関係当局としてはきちっと把握しておるのかどうかということについて質問いたしたいと思います。
  41. 松尾邦彦

    松尾政府委員 ただいま御指摘の企業につきましては、私どもといたしましても会社からしばしば実情の把握を行い、あるいは消費者からの私どもの相談窓口への照会に対しましても、この販売システムの実情を十分理解して慎重に対処するようにというような御相談に応じてまいってきているわけでございますけれども、今おっしゃいました返品との関係に関して申しますと、先生もおっしゃったところでございますけれども、確かに、委託販売契約ということになっているわけでございますから、販売員が売れない商品を引き取る義務はないと私どもも理解いたしております。  ただ、先生もちょっとお話の中にございましたように、商品の保管中に汚損が生じた、例えば汚れてしまったとかあるいは傷ができてしまったとか、そういうものにつきましては、あるいは当事者間で負担関係を調整する必要があるケースも生じ得ると思いますけれども、そのことからすぐに返品ができないというようなことにはならないのではないかと考えているわけでございます。    〔渡辺(秀)委員長代理退席、田原委員長代理着席〕  御案内のように、私ども法律で対象といたしておりますのは個人についての保護でございますけれども、個々の消費者が預かった商品の返品ができないというようなケースがあるのでございましたら、通産省といたしましても、個別の実情に応じまして、会社に対しまして適切な対処をするよう指導いたしてまいる所存でございます。  たまたま、それが個人ではなく法人としての取引ということである場合も多いわけでございますけれども、法人同士の取引ということになりますと、これは商取引の問題ということになるわけでございますので、当事者間での処理ということが基本になろうかと考えております。  しかし、いずれにいたしましても、実情については引き続き把握に努めてまいりたいと考えております。
  42. 和田貞夫

    和田(貞)委員 これは法人もあれば個人もあるわけですね。だから、今答弁されたように当然返品はきかないというような、商品価値がなくなったというようなものであればいざ知らず、今私が具体例を挙げましたように、包装のビニールが破れておるということだけで、いわば難癖なんです、羽毛ふとんに髪の毛がついておった、これも全く難癖なんです、そういうようなことを理由にして返品を求めても聞かないというようなことは明らかに押しつけであるというように言わなくてはならないのでありますから、これはもっと実態を調査をしてもらうことを要求しておきたいと思うわけであります。  厚生省にお尋ねいたしたいと思います。  これはジャパンライフがそれぞれ、販売員あるいは営業所、代理店あるいは新しい顧客に対応するためにロールプレーニングテキスト、Cさん用とかBさん用とかAさん用とか、これは内容はみんな一緒なんですね。Cさん用の場合は、Cさんがしゃべるところは太い字で書いてある。Bさん用というのはBがしゃべるところが太い字で書いてある。内容は皆同じことなんです。そういうものを発行いたしまして、その中で、例えば「この際、A・Bさんとも絶対に立ち上がってはいけない」ということで、Aさんがしゃべる内容あるいはBさんがどういうことをするという内容を書いてあるのですね。  そこで、厚生省がこのジャパンライフの商品のヘルスパットを五七B第五六六号ということで認可しておるわけですが、それはどういう効用があるということで医療機器として認可しておるのか、お答え願いたい。
  43. 大木知明

    ○大木説明員 お答えいたします。  先生指摘のヘルスパットの効能でございますけれども、私どもとしては、装着部位のこり、血行、それによい、そういうことで製造承認をしておるところでございます。
  44. 和田貞夫

    和田(貞)委員 そうすると、こり、血行以外の効用を顧客に宣伝をすれば、これは医師法なり薬事法の違反になりますね。
  45. 大木知明

    ○大木説明員 お答えいたします。  薬事法の第六十六条第一項には、医療用其の効能、効果につきまして、「虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。」そういう規定がございます。したがいまして、私ども承認した範囲を超えた効能、効果を標榜して販売する、そういう事実があれば当然薬事法の違反になる、そういうふうに考えております。
  46. 和田貞夫

    和田(貞)委員 それじゃ具体的に申し上げますと、今お示しをいたしましたジャパンライフが発行しておるこのテキストの中に、Aは「貧血や寝つきが悪い症状の人もすっきり良くなるんですよ。」というように言えと書いておるのですね。そしてBさんの病気が治った例を示すのに、その「Bさんの奥さんも冷え性や便秘で苦しんでいたのが、このふとんのおかげで治ったんですよね。」こういうように言えと書いておるのですね。ここに書いておるだけでも、貧血、冷え性、便秘という言葉が出てきておる。でありますから、それ以上のものを言っておるということを予想しなくちゃならない。  なお、このジャパンライフが発行しておる販売促進資料にユーザーの喜びの声、こういうことで、膠原病に苦しんでいたが楽になった、糖尿病が治った、宵のポリープが消えた、ぜんそくが治った、腰痛が治ったというようなことを書いておる以上は、そういうようなことを言っておるということを裏づけするわけです。  そういうようなことをこの宣伝に使っておる事実があるわけですから、これに対しては薬事法違反ということが明確になるわけですが、お答え願いたいと思います。
  47. 大木知明

    ○大木説明員 先ほどお答えいたしましたように、装着部位のこり、血行以外の効能というものをうたいまして現に販売する、そういう行為が、現に販売され、事実としてとらえられる、そういうことであれば薬事法の違反になる、そういうふうに考えております。
  48. 和田貞夫

    和田(貞)委員 わかりましたが、具体的にテキストに書いておるのですよ。最低限このことをしゃべっておるのです。しゃべれと言っておるのです。だから薬事法違反になるかということを、はっきりと違反になるというように答えなければいかぬ。
  49. 大木知明

    ○大木説明員 お答えいたします。  一般的に、テキストに書いてあるそれに基づいて販売するということになれば違反する……(和田(貞)委員「販売しろと言っておるんじゃないか。販売するのにそないしゃべれと言っておるんだよ」と呼ぶ)販売するという事実をとらえれば違反になる、そういうふうに考えております。
  50. 和田貞夫

    和田(貞)委員 極めて明確でございまして、薬事法違反行為によってこの商品を販売しておるということであります。したがいまして、薬事法上問題があるということでありますので、以後警察当局はどういうように対処されますか。
  51. 伊藤一実

    ○伊藤説明員 お答えいたします。  私どもといたしましては、現在のところ、まだ事実関係を詳細把握しておりませんので一概には申し上げられませんけれども、警察といたしましては、いかなる場合でありましても、具体的な法律に触れるような事実が明らかになれば、関係機関とも密接に連絡をした上で適切に対処してまいりたいと考えております。
  52. 和田貞夫

    和田(貞)委員 薬事法の違反をやって物を売りに行けというように販売員や代理店や営業所にこのパンフレットを配っているのですよ。先ほども読ましていただいたことは、厚生省は違反だと言っておるのです。その違反行為をやって商売をやりなさい、販売をしなさいというようにテキストを渡しておる以上は、最低限そのことを言っておるじゃないですか。それ以上のことを言っておるのです。  したがって、これは薬事法の違反であるわけでありますから、薬事法違反という観点に立って警察はもっと積極的に、被害者をできるだけ最小限に食いとめるために、これは取り締まるのが当然じゃないですか。また、これは薬事法の違反であるということで厚生省もジャパンライフに対しまして勧告するというようなことをやるのが当然じゃないですか。そういうような当然なことをやらないがために被害が大きくなってくる。そこが一体何をしておるのだという国民の皆さんが政府に対する不信を持つわけなんです。そのことをひとつ積極的にやってもらわなくちゃ困る、強く要望しておきたいと思います。  さらに、ジャパンライフの商法は、先ほども申し上げたわけでございますが極めて欺瞞的なもうけ話を持ちかける、あるいは薬事法違反行為をやってでも物を売れというようにセールストーキングをさして、そして不要不急の磁気マット、羽毛布団を、しかも市価の二倍以上の高い値段で抱えさせておる。そして、先ほども例を挙げましたように、クレジット契約をさせる。  でありますから、裕福な者だけを対象にするのじゃなくて、お金があり余った人だけを対象にしておらない、極めて金銭的に余裕のないような人たちも多く対象にしておるわけでありまして、「愛用者の会」というように称して集団催眠説明会なるものをやって、映画を見せたりあるいはないでもあるようなことを経験者だとかなんだとかといってしゃべったりして人狩りをやっておる。こういう行為はマルチまがいというよりもマルチそのものじゃないですか。  したがって、先ほども触れたわけでございますが、訪問販売等に関する法律の中で連鎖販売取引と定義をしておるものとほんのわずかしか違いがないわけであります。しかも法すれすれの、個人を対象というのを、代理店以上になれば法人化させていく、有限会社や株式会社にさせていくというようなことで脱法行為をする、あるいは現実的には再販取引であるにもかかわらず形式的には委託販売取引だというようにしておるにすぎないわけでありまして、まさにこのジャパンライフというのはマルチそのものである。  したがって、このジャパンライフ商法も訪問販売法の対象にすべきではないか、またそのことが必要ではなかろうか。現行の訪問販売法でそれが不可能であるというならば、そのことが対象になるようにして被害者を救済するあるいは消費者を保護する、そういう考え方があるかないかお答え願いたいと思う。
  53. 松尾邦彦

    松尾政府委員 確かに、先生指摘ございましたように、この会社の商法は、私どもの訪問販売法で定義しております連鎖販売取引の定義からいたしますと、物品の再販売をするという定義には当てはまらない、委託販売という形をとっているわけでございまして、私どもとしては連鎖販売取引に法律上は該当しないと考えております。  ただ、さればと申しまして、このような形態の商取引を新たに法の規制の対象に加えるということになりますと、いろいろな点でまた別の面からの問題も出てくるわけでございまして、正常な商活動との間に果たして明確な線を引くことができるかどうか、せっかくの民間活力を損ねるような法改正を行うことには私どもは慎重であらねばならないと考えているわけでございます。  しかしながら、いずれにいたしましても、どういう商法であるかは問いませんが、消費者保護の観点から、私どもといたしましては、トラブルに巻き込まれました消費者からの相談には十分応じまして、ケースによりましては企業との間に入りましてあっせん等適宜の措置を講じまして消費者の被害の拡大を防ぐようにいたしたいと考えております。
  54. 和田貞夫

    和田(貞)委員 私は、もう少し前向きにお答えいただいて国民の皆さんに納得できるような答弁をちょうだいいたしたいと思うわけでございますが、通産省は従来からこの種の問題については極めて消極的であることを遺憾に思います。  ジャパンライフの手口が法律に触れるとか触れないということは差しおいて、このようなジャパンライフ商法というのは好ましい商法であるというように思っておりますか、お答え願いたい。
  55. 松尾邦彦

    松尾政府委員 消費者の相談窓口に照会等のある種類の商法でございますので、気をつけて対応してまいるべき種類のものであろうと考えております。
  56. 和田貞夫

    和田(貞)委員 極めて警戒心を強めなければならない商法である。その商法会社にクレジット会社がいとも簡単に信用供与をするということは問題じゃないですか。通産省は、今ジャパンライフと契約をしておるクレジット会社、中心はオリエントファイナンスがメインになっているわけでございますが、その他あろうと思います。大体どの会社とどの会社とがジャパンライフに信用供与の契約をしておるかということを、把握しておったらお答え願いたいと思います。  なお、その額はどのくらいになっておるかということが把握できておったらお答え願いたい。  さらに、既に倒産をしていっておるわけでありますから、これらのクレジット会社がどれくらいの焦げつきがあるかということも、わかっておったらお答え願いたいと思うわけであります。
  57. 松尾邦彦

    松尾政府委員 ただいま御指摘の点につきましては、現在具体的に実態を把握している点はございませんが、今後実態把握に引き続き努めてまいりたいと思います。
  58. 和田貞夫

    和田(貞)委員 これは今把握できておらなかったら、ひとつ早急に、これはまた豊田商事のような結果にならないために、早急にその実態を把握して、資料として常任委員会の方に提出してもらいたいと思います。委員長、ひとつよろしくお願いしたいと思います。
  59. 松尾邦彦

    松尾政府委員 実態把握に努めさせていただきたいと存じますけれども、何分にも個別企業の営業上の秘密に属する事項にかかわるものでございますので、実態把握の上、可能な事項につきましては御報告をさせていただきたいと存じます。
  60. 和田貞夫

    和田(貞)委員 実態把握をすれば、資料として提出してもらわぬと実態把握をしたのかしてないのかわからぬじゃないですか。実態把握をしたと言っても、それは出してもらわぬと実態把握はしたかしてないかわからぬじゃないですか。これはひとつ委員長、資料として要求します。  なお、通産省に、今後クレジット会社をどういうように指導しようとしておられるのか、お答え願いたいと思います。これは法に触れるか触れないかということ、あるいは先ほども申し上げましたように、極めて警戒心を強めなければならない会社のことでございますから、あえて言っておるわけであります。
  61. 松尾邦彦

    松尾政府委員 まずとりあえずは実態把握にさらに努めたいと存じますけれども、その上で判断をいたしたいと思います。
  62. 和田貞夫

    和田(貞)委員 実態把握をして、ひとついいかげんにやめてくれというように指導せぬと被害が大きくなりますよ。あえて警告しておきたいと思います。  公正取引委員会お尋ねしたいわけなんですが、アメリカからマルチ商法というのが渡ってきて、非常に全国的に広がった時期がございます。その当時は、訪問販売法というのがなかった。五十年の二月にホリデイ・マジック、五十年の七月にはエー・ピー・オー・ジャパン、おのおの独禁法十九条違反で摘発されておるわけですね。そういう解釈というのは、公正取引委員会、今もお持ちになっておるのかどうかという見解を第一点としてお聞かせ願いたいと思うのであります。  さらに、マルチまがいと呼ばれている中で、さきのベルギーダイヤモンドに対して、この二月の二十一日に京都の弁護士さんと悪徳商法被害者対策委員会が独禁法違反として公正取引委員会に申告がされておるのですが、その審査はどうなっておるかということについてお答え願いたいと思います。
  63. 樋口嘉重

    ○樋口政府委員 お答えいたします。  まず第一点のホリデイ・マジックあるいはエー・ピー・オー・ジャパン等のマルチ商法についての独禁法違反事件の処理の状況及びその見解が今どうなっているかというような御指摘でございますが、ホリデイ・マジックにつきましては昭和五十年六月に勧告をいたしております。また、エー・ビー・オー・ジャパンにつきましては五十一年の六月に警告いたしております。  いわゆるマルチ商法と呼ばれる販売行為のうち、公正かつ自由な競争を維持、促進する観点から、独占禁止法上の不公正な取引方法の問題のあるものについてそのような措置をとったものでございます。このように、不公正な取引方法に該当する行為につきましては、今後とも厳正に対処してまいりたいと考えております。  また、第二点のベルギーダイヤモンドに関する事件についてでございますが、先生指摘のとおり、本年の二月に独占禁止法で禁止している不公正な取引方法に該当する疑いがあるとして調査を求める旨の申告がございました。  そこで、当委員会といたしましては、申告書に添付されております各種の資料、それからその他の関連資料をもとにいたしまして、独占禁止法の規制の対象になるかどうかということにつきまして検討を行いました。また、関係者からも逐次説明、報告を求めてきたところでございます。  その後、本件につきましては、事実関係に不明な点もございますため、ベルギーダイヤモンド社に対しましてさらに説明を求めるということを予定していましたところ、本年の七月上旬以降、同社は事実上閉鎖されているというような状態になりまして、審査はこれ以上継続することが困難な状況になっているわけでございます。  調査の経過は以上のとおりでございます。
  64. 和田貞夫

    和田(貞)委員 倒産したから困難だと言われたらかなわぬですな。公正取引委員会は過去に、先ほど例を挙げましたように、訪問販売法というものがなかった時代から積極的に取り組んでいる姿勢があったわけです。非常に消極的になっていることを非常に残念に思うわけです。  独禁法というのは、申告があろうがなかろうがみずからが乗り出していってやるべき性格のものであります。同じシステムのマルチまがいというのは他にもたくさんあるわけですから、みずから積極的に調査をし、審査するという積極姿勢を公正取引委員会としては示していただきたいことを特に厳重に申し上げておきたいと思うわけであります。  時間が参ったわけでございますので簡単に申し上げたいと思いますが、警察庁は、さきの豊田グループの一つである、先ほども申し上げましたベルギーダイヤモンド社に対するネズミ講禁止違反ということで捜査をされたこの積極姿勢、久方ぶりに評価をしておきたいと思うのであります。しかし、法務省の指図でこれが強制捜査にならなかったということは非常に残念であるわけでございまして、これは強制捜査をやって、そして法律というのは法務省や検察が決めるのではなくて裁判所が最終的に決めるべきであるわけでございますので、法務省がどうあろうともひとつこれからも積極的に警察庁としては国民の信にかけて頑張ってほしいという激励をしておきたいと思うわけであります。  そこで、ジャパンライフの問題であります。  先ほど薬事法の違反ということが明々白々であるわけでございますし、またジャパンライフ株式会社の社長が元中部管区警察局長、五十五年に退職しておりますが、相川孝氏であります。あるいは代理店の指導部長をやっておる佐藤恒夫、これも元山形県警察本部長か副本部長をやっておったという肩書であります。あるいは組織部取締役部長というのですか、神田修道さんというのも元関東管区警察学校長であります。警察のOBを徹底的に利用しておる姿がジャパンライフの運営面に非常に多く見られるわけであります。したがいまして、この点につきましては警察当局としては、社長が我々の先輩であるからというようなことがないように公正にこの問題について処理をしてもらいたい、取り上げてもらいたいと思うわけでございますが、その決意のほどをお聞かせ願いたいと思います。  なお、時間が参ったわけでございますので、最後に経済企画庁長官、さらには村田通産大臣お二方から、きょうは時間がございませんので取り上げることはできませんでしたが、警察のOBの利用とともに政治家を巧みに利用している、そういううわさもあるわけでございますので、ジャパンライフの問題につきましては、我々立法府といたしましても威信にかけましてこの問題に対処していかなくてはならないと決意をしておるところであります。したがいまして、このジャパンライフの問題については国民の皆さんから誤解を受けないような真摯な態度に立って取り組んでほしい、こういうように思うわけでございますが、両大臣から決意のほどを述べてもらいたいと思います。
  65. 伊藤一実

    ○伊藤説明員 お答えいたします。  先ほどもお話しいたしましたとおり、警察といたしましては、この種の事犯に対しましては、今後ともいかなる場合であっても消費者保護あるいは弱者保護の立場に立ちまして、個々の事案に即して各種法令を的確、多角的に適用するなどいたしまして対処してまいる所存でございます。
  66. 村田敬次郎

    ○村田国務大臣 先ほど来の御質疑、よく承りました。よく実情を把握いたしまして対処してまいりたいと思います。
  67. 金子一平

    金子国務大臣 村田通産大臣からお話しのございましたとおり、実情をしっかり把握して、前回の豊田商事のような被害を広げないように対処してまいりたいと考えております。
  68. 和田貞夫

    和田(貞)委員 時間が来ましたのでもうやめますが、運輸省の方が来ておられますので、一言だけ。このことはこのことで終わりとして、運輸省の方にちょっとお答え願いたいのです。  国有鉄道の財政の再建に関する基本方針が閣議決定されておるのですが、そういう中で利用者の利便のために、あるいは国鉄余剰人員の解決のために、いろいろと書籍だとかクリーニングだとかいうような店舗の進出を考えておられるのですが、これはたしか、運輸省通産省との間にこの間何か覚書等をお互いに交換されて、当該の商工業者に迷惑を及ぼさないということを前提にしておられるようにお聞きしているのですが、その覚書があればひとつ出してもらいたいと思います。付近の小売業者等との摩擦がないように、一方的に話し合いなしに出店するというようなことのないようにしてもらいたいと思いますが、その点についてだけひとつお答え願いたいと思います。
  69. 荒谷俊昭

    ○荒谷説明員 お答えいたします。一ただいま御質問の覚書の件でございますが、一般的に各省それぞれの仕事を進めていく上に調整が必要な場合がいろいろとあるわけでございますが、そういった場合の一定の約束事ということは一般的にないわけではございませんけれども、私ども中小企業者事業機会の確保、これは大変な問題であるというふうに認識をいたしておりまして、これまでも通産省中小企業庁の方と必要に応じまして緊密な連絡をとりながら、他方、国鉄に対しても、今御承知のように大変厳しい状況にあるわけでございますけれども地元関係者と十分話し合いを行って今の厳しい状況を十分理解してもらうように最大限努力をしながら円滑に進めていくようにということでこれまでも指導をしてきたところでございますが、今後ともそのような方向でさらに指導を徹底してまいりたいというふうに考えております。
  70. 和田貞夫

    和田(貞)委員 次の機会に譲らしていただきまして、資料がありましたらひとつ出してもらいたいと思います。  終わります。
  71. 田原隆

    田原委員長代理 渡辺嘉藏君。
  72. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)委員 第一の質問は、川崎岐阜協同組合、理事長井上勉さんですが、昭和二十六年十二月に設立をいたしまして、組合員は三十八社、従業員数二千九百四十六人、これは川崎重工業株式会社の下請企業が集まりまして組織をした組合であります。親会社は川崎重工業、航空機を製造いたしておりまするこの岐阜の工場ですが、これにいま一つは川重車体、これは川崎重工が一〇〇%株を持った子会社ですが、そこのバス事業、これの下請をやっておるわけです。この航空機部門の仕事を三十五億それから川重車体のバス部門の仕事を八十億、両社合わせまして約百十五億から百二十億、こういう仕事を受けまして、これを協同組合が傘下の組合員に配分し、そしてその組合員の各工場で生産したものを納品、代金を受け、金融を図る、あるいはまたそれぞれの組合員の設備の近代化、技術の向上、こういうことに努めてこられた協同組合です。  今回、この親会社である川重車体が、工場、従業員全部を岐阜県の各務原市から、栃木県に川崎重工の鉄道車両製造工場がありますのでそちらへ移してしまおう、こういうことで先月末に通告があったわけなのですが、これらの一連の事実につきまして通産省並びに中小企業庁はどういうふうに承知していらっしゃるか、まず承りたいと思います。
  73. 杉山弘

    ○杉山政府委員 お答えをいたします。  ただいま御指摘ございましたように川重車体、これは川崎重工業の子会社でございまして、バスの車体の生産をいたしておりますが、バス需要の低迷等によりこのところ業績不振でございまして、この三月末で累積損失七億円以上を計上し、会社としては債務超過になっておるようでございます。したがいまして、会社としては合理化が必要でございますが、現在の各務原工場におきましては、土地の形状とか建物の配置等、これ以上の合理化は難しいという状況にあるようでございます。  一方、お話のございましたように、親会社の川崎重工業が持っております宇都宮の車両工場が遊休化しておりますので、むしろそこに移って合理化をしたいということで、親会社の川崎重工業とバス車体受注先のいすゞと合弁事業計画しておるようでございます。  御指摘の下請事業者との関係でございますが、会社としては今後下請の方々と御相談をして、下請の方々に対する影響を最小限度にとどめたいということでお話し合いをすると承知いたしております。  現在、会社から私どもが聞いておりますところでは、会社の宇都宮への移転は二年後になるようでございますが、移転をいたしました場合でも、地元の下請の方々で十分競争力をお持ちの方々については発注を継続する。さらに、二年後大型、中型は宇都宮の方で製造いたしますが、小型のバス車体につきましては各務原での生産も続ける、こういうような方針だそうでございまして、今後の下請の方々と会社の話し合いを見守ってまいりたい、かように考えておるところでございます。
  74. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)委員 今いろいろ承りましたが、まず第一にこの各務原市の現在の工場では合理化ができない、こういうことですが、現在三万坪です。宇都宮の工場は五万坪あるわけです。これは鉄道の貨車をやっています。これが鉄板のような厚いものからバスの薄いものに移るわけです。それで、中身もいろいろ違うわけですね。そういうところへ移って合理化ということは、これは企業の問題ではありますけれども、むしろ無理ではないか。まして、一万人からおります関連の下請、孫請、そういう熟練した下請企業がかなりの部品をつくることによって初めて車体は完成するのです。こういうような意味から、これはどう考えても合点のいかない民族の大移動と言わざるを得ない。  と同時に、大企業、親企業が自己の都合で一方的にこういうことを行うということになると、この下請三十八社のうち十一社は二分の一以上をこの川重車体から受注している。  ちなみに、十四億の事業をやっております二百十人の会社がありますが、この会社は八億、六〇%をこの仕事でやる。三十四人の小企業があるのですが、ここは五億の仕事のうちで約三億五千万、七〇%川重車体の仕事をやっている。十一社は二分の一以上の仕事をここから受けておるのですよ。この人々は一つ間違えば倒産か半分以上の人員整理をしなければやっていけない。じゃ、その人々を民族の大移動で宇都宮へ連れていけるか。用地から何かから大変で、かえって餅より粉が高くなるのですね。  こういうことから考えますと、中小企業基本法を初め各種の振興法や代金支払遅延等防止法、その他いろいろな法律があるのですが、そういうものがありながらこういうことになりますと、この川崎岐阜協同組合で中小企業の組織に基づいて今まで健全に運営してきた組合が一遍に崩壊するのですね。こういう親会社の一方的なやり方に対して、通産省なり中小企業庁はもっと適切な指導をして、そういうトラスチックな出来事の起きないようにすべきではなかろうか。  まして、各務原市にとっては第三の企業で、地域産業としても重大な影響を持っておるわけです。これは、各務原市だけじゃない、岐阜周辺、かなり広範囲にわたっておるのですが、これに対するもっと適切な指導、助言等によって、従来と同様現地生産でやっていけるようなことをむしろ指導すべきではなかろうか、こう思うのですが、どのようなものですか。
  75. 杉山弘

    ○杉山政府委員 お答えいたします。  私ども、川重車体から聞いておりますところでは、先ほど申し上げましたように、現在の敷地におきましては敷地が四角い形をいたしておりまして、バスの車体生産ラインの合理化を図りますためにはむしろもっと細長い形が望ましい、それから建物につきましても古い建物を継ぎ足しをいたしておるような状況でございますので、そこでの合理化には限界がある。  それから宇都宮の工場につきましては、親会社の川崎重工業の所有地でございますが、現に遊休をしておりますので、新しい会社はかなり安い値段でその譲渡を受けるというようなこともございまして、会社としては、そこに移りますことの合理化効果というものを相当期待できると考えておるようでございます。  もちろん、地元の下請の方々への影響を最小限度にとどめるという方向でこれからお話し合いをするわけでございますが、先ほど申し上げましたように、とりあえず移転をしました大型、中型のバス車体につきましても部品はできるだけ地元の下請に発注をしたい。高速道路を使いますと、宇都宮と岐阜、離れてはおりますけれども、そう大きな支障にはならないということのようでもございますし、また親会社の川崎重工業は依然としてそこにあるわけでございまして、こちらの方の発注等の増加というようなこともあるいはこれから考えられるかということで、できるだけ影響を少なくする方向でお話し合いを進めている、こういうふうに承知しております。  一方、川重車体の現況につきましては、先ほども御答弁申し上げましたように、全体として債務超過になっているという状況でございますので、このまま現地にとどまってやっていくということも難しくて、今考えている合理化計画会社としてもそれなりの考え方に基づいて立案されているのではないか、かように判断をしているわけでございます。
  76. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)委員 今の局長の答弁を聞いておりますと、もう移るという前提に立ってすべての御答弁をいただいておるわけですが、私が今聞いておるのは、移らなくてもいい指導をむしろ行うべきではないか。なぜかというと、大きな建物がありますとか長いラインがありますとか、そんなものよりも民族の大移動をすることによるデメリット、それから一方からおる下請、孫請の技術を持った労働者と離れるわけですね。そういうことから生ずるマイナス。  それから今、何だったらパーツは岐阜でやらせて栃木まで運びますよ、こういう話が出たのです。今でも下請工賃の交渉のときには、ぎりぎりいっぱいというよりも親会社の賃金の六割ぐらいで査定を受ける、そして工賃が決まるのですよ。これをもっと切り下げなければ運賃は出てこないのですよ。運賃は会社持ちというわけにはいかないからこっちが持たなければならない。こういうことから考えたら、これは本当に親会社の恣意的な考え方に。すぎないのです。  そして今まで三十有余年、一生懸命技術を磨き、一体となって生産に当たってきた、こういう大きな産業構造を抱えて工場を運営しておるわけなんですから、そういうような意味で地域産業に与える影響も考慮して、いろいろなそういうデメリット等もありまするので、現地で今までどおりやれることをするために、県並びに市並びに協同組合等に対して、中小企業を守る立場にある通産大臣並びに長官等は、この際かくすべきではなかろうかという助言をすることによって深刻な打撃を与えないことの方がむしろ好ましいのではないか、こう考えます。  と同時に、県も市も、必要によっては三万坪を五万坪に協力しましょう、あるいはまた固定資産税その他についても、新しく工場誘致をするという観点等から考えても、優遇措置考えましょう、こういうことに積極的に乗り出し、県知事を初め、市長を初め、全体が今このまま現状でやっていけることを前提に運動を展開しておるわけですから、これにこたえてひとつ大臣並びに長官の方から適切な指導助言をお願いできないかどうか、まず承りたいと思うのです。
  77. 村田敬次郎

    ○村田国務大臣 渡辺委員の御質問にお答えいたします。  先ほど来杉山局長から御答弁を申し上げておりますように、このケースについては親会社の不況による影響が非常に強いわけでございまして、渡辺委員地元の事情を見ながら御意見、御質問をなさることはよく理解のできるところでございますが、親会社の工場移転あるいは営業活動の縮小などは、これまで取引関係のあった下請中小企業に悪影響を及ぼすことのないようにする、そのことが望ましいことは言うまでもありません。  しかし、こうしたケースにつきましても、下請代金支払遅延等防止法などのルールに反しない限り、自由主義経済体制でございますために、当事者間の問題という基本的な枠がございます。したがって、両者の話し合いによって、極力摩擦を生じさせないような形で解決が図られるべきものと考えられるわけでございます。  中小企業庁長官も参っておりますが、下請企業振興協会に対して、親企業との取引の縮小等によって影響を受ける下請企業について、下請取引のあっせん等に積極的に努めるように指導してまいりたい、このように考えております。  通産政策全般からいいますと、好不況によりまして、好況にある産業については大変指導がしやすいわけでございますが、不況産業その他の経営の実態を見きわめながら対応しなければならない、これは一番基本的な問題だと考えますが、できるだけ地元に被害の及ばないということを前提として具体的な指導をしてまいりたいと思っております。
  78. 木下博生

    ○木下(博)政府委員 川重車体の移転の問題につきましては、杉山局長の方から御答弁があったことに関して、私どもとしては、会社計画については十分話を聞いておるわけでございます。  ただ、先生の御指摘は、移転しないでむしろ地元でそのまま残ってやれる方策はないのかということの御質問かと思いますが、川重車体の方の会社考え方については杉山局長の方からお話があったとおりだと思います。私どもとしても、もし残れるものであればそれにこしたことはないわけでございまして、そのために川重車体と下請の組合の方とは、コストダウンや何かについても従来から十分いろいろと話し合いをやってきたのではないかと私は思います。  それで、組合の方としてもそれなりに協力し努力をしてきたというふうに考えるわけでございますが、そのようなことの結果、川重車体として最終的にそのような判断を下さざるを得なかったということであれば、次には次善の策をどうしても考えていかざるを得ない。ただ、残れる方策のために、下請の組合の方に対して、私どもの方あるいは県や市の方からいろいろと助成措置を講ぜられるものであれば、その点についてもし御相談があれば十分に相談に応じていきたいというふうに考えております。
  79. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)委員 今それぞれ中身のある御答弁をいただいたわけですが、その意味では感謝申し上げます。  この協同組合は、井上理事長のも士、実に堅実で、全国的にも模範と言われた下請の協同組合なんです。これがこういうふうに一瞬にして崩壊をすることのないように、ひとつ通産省としても中小企業庁としても、ぜひ現地の実態調査を踏んまえて対処していただきたいことと、できるならば商工委員会としても、委員長にお願いしておきますが、こういう実態を調査されまして、現地調査をいただいて、そして今後の中小企業並びに下請企業の健全な育成のために御指導あることを最後にお願いをいたしておきます。  次に、円高の問題について質問をいたします。  今回の急激な円高が中小企業、零細業者に深刻な打撃を与えておることは御案内のとおりです。岐阜県の陶磁器、関刃物等には特に零細企業が多いので深刻なんですが、陶磁器四千百社、四万五千人、千二百億の生産のうちで六百億を輸出いたしておる。関の刃物業者は千二百五十社で、一万人、五百億の生産中三百億を輸出いたしております。  春と秋にそれぞれ二回契約シーズンがある、その秋の契約シーズンの最中に円高が来たわけです。これも大変な、二割に近い円高でございます。バイヤーからはたたかれることは言を待ちません。やっと五%から一〇%の値引きで秋物百二十億のうち約九十億は成約ができました。それでも七、八億の損でございました。そのほか残りの三十億はついに契約ができませんでした。いつもならできるのです。こういう大変なことが年末を目の前にして起きたわけなんです。  そこでまず第一に承りたいのは、今のこの円高が二百四十円から二百五円というところに来ておるわけですが、日銀総裁並びに大蔵大臣等は、もっと円高を進めるのだ、この七日の名古屋での日銀総裁の談話でも明らかにしていらっしゃるわけですが、もっと円高に誘導して定着させる。こういうことになりますと、どこまで落ち込んでいくだろうか。まあ高くなるわけですが、輸出業者にとっては、同じ価格でアメリカは欲しい、同じ価格で外国は欲しい、こう言いますから、日本のメーカーがそれだけ落とし込む、値引きをするわけです。そういうような意味で、どこまでこれが誘導されるのか、この際、まずこれを明らかにしていただきたい。そしてこれをどの程度で定着させるのかということですね。
  80. 村田敬次郎

    ○村田国務大臣 この御質問は、実は非常に難しい御質問でございます。  九月二十三日の5G会議以来、ドル高に対する国際的な介入が始まりまして、渡辺委員が御指摘のような円高現象が起こった。そしてこれが一体どのくらい続くのか、あるいはどのくらいが適正であるかということはだれでも考えるのでございますが、これは率直に申し上げて、日銀総裁といえどもこれに対する正確なお答えはできないだろうと思うのです。  というのは、この問題については、各国政府のドル高に対する介入、それから各国の景気の動向、物価の動向といったような予測しにくいいろいろな変数があるからでございます。したがって、この方程式はなかなか解けないわけでございますが、しかし私どもとしては、全体としては円高基調というのは現在の輸出入のインバランス、いろいろ貿易摩擦等の解消にとって好ましいものであると考えておりまして、なお現在、円高が始まりましてから約五十日間でございますので、今後の推移をひとつしっかりと見きわめながら、渡辺委員の御指摘になったようないろいろ具体的な個々の問題に対応をしてまいらなきゃならない、そういった意味で、個々の調査にも着手をしておりますし、誠実に対応してまいる決意でございます。
  81. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)委員 今大臣から御答弁をいただきましたが、この円高につきましての効果は、私どもも認めるところです。それから、これがG5から誘導されてきておることも事実でございます。  しかし、そういう一部の大手、大企業の一方的な輸出の犠牲を零細業者が全国民的なシェアで受けるということは、これは私どもとしてはお断りしなきゃならぬ。しかし、それによる効果もあるわけですから、この際、私は二百円を割るような円高誘導は好ましくないのではなかろうかと思うんです。せいぜい二百円から二百十円くらいでコントロールすべきじゃなかろうか、こう思うんですが、この点。  それと、こういう円高によるところの成約不成立というような事態が幾つもできてきたり、値引きがどんどんできてきておるわけですね。これに対しまして、私どもとしては、今大臣おっしゃったように、誠実にきめ細かく今度はそれの対応考えたい、こう言っていただいたので非常にありがたいわけですが、年末を控えておりますので、私どもから要望いたしておりまするこの関並びに東濃の刃物、陶磁器業者に対する救済のための緊急融資を、六十一年度なんて言っておったらつぶれてしまいますので、年末対策をひとつぜひやってもらう。だから、事業転換資金等で一時的に糊塗するというようなことでなくて、ばんとやってもらわないと、これからこの円高は長期になると私ども見ておりますので、百八十円に一時なりましたが、あれは一時的でございましたのでこれはよかったのですが、長期になると考えておりまするので、ぜひ緊急融資について御配慮いただきたいということ。  いま一つは労働省の関係ですが、この地方は雇用調整給付金制度で指定業種に入れていただいておるわけです。これがことしの十一月三十日で切れるわけなんですが、こういう緊急事態を迎えましたので、この際これをもっと延長していただいて、これの対応考えていただき、雇用面での救済も考えていただきたいと思っておりますが、御答弁をそれぞれお願いいたします。
  82. 木下博生

    ○木下(博)政府委員 円のレベルにつきましては、今大臣の方から御答弁があったとおりでございまして、私、中小企業庁長官でございますので、その点について発言できる立場にはございませんですが、緊急融資の点について私どものやっておりますこと、また今後考えておりますことを御説明申し上げたいと思います。  確かに、急激な円高によりまして、私どもも名産地においてどのような影響が出ておるかという点を、現在調査いたしておる段階でございます。まだ最終的にそれがまとまっているところではございませんが、確かに新規の契約がやりにくくなっているということを言ってきている産地がたくさんございまして、今先生から御指摘のあったように、刃物についてもそのような状況があるようでございます。  それで、そのようなことでございますと、既契約を食いつぶしてしまった後の操業の問題というのが非常に大きな問題となってまいりますので、ちょうど年末にもかかりますし、年末の金融対策ということとあわせまして、金融面については万遺漏のないようにやりたいというふうに考えております。とりあえず大蔵省と私どもと連名で、中小企業三機関に対して通牒も出しておりますし、それから信用保証協会に対しても、機動的に信用保証をやるようにというようなことをやっております。  私どもといたしましては、調査の結果いかんによってはその内容、程度が非常に深刻であれば、それに応じた対策も今後十分検討していきたいというふうに考えております。
  83. 井上文彦

    ○井上説明員 お答えいたします。  陶磁器製造業関係業種、これは十業種ございますが、それと刃物製造業につきましては、昭和五十四年十二月一日から昭和六十年十一月三十日までの六年間、雇用調整助成金の対象業種として指定いたしまして、雇用の安定を図ってきたところでございます。  今般、十一月三十日の期限切れを前に、雇用調整助成金の対象業種として再指定できるかどうかにつきましては、現在検討を進めているところでございます。雇用調整助成金の指定基準に照らしまして、指定が適当と思われるものにつきましては再指定することとしてまいりたいと考えでございます。
  84. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)委員 時間がありませんので、まだあともう一つ質問を持っておりますので。  先ほど、円高のレートの希望的な数値と、それからどこで安定させるかということを経済企画庁に聞こうと思っておったのですが、これをひとつ経済企画庁。  それから労働省の関係、この基準に合うか合わないかということで慎重に検討するということですが、これもこういう事態ですからぜひ緊急に検討していただいて、前向きに対応していただくように再度お願いをいたします。
  85. 赤羽隆夫

    ○赤羽政府委員 九月二十二日のG5会議認識におきましては、現在、といいますのは九月当時の為替レートでございますけれども、これが各国の経済の基礎的な条件、ファンダメンタルズを反映するものではない、こういう認識のもとに、ドル以外の主要通貨、といいましても特に我が国の円でありますけれども、これの為替レートを引き上げる、このために協調行動をとる、こういう決定がなされたわけであります。その決定に従いまして、現在まで円高傾向が続いているというのは既に先生の方からも言及のあったところでございます。  これをどの程度の水準で定着させるのか、これにつきましては、しばしば日銀総裁などがお答えになってお話しになっておられるところでございますけれども、この水準というのをどの程度のところで見るのか、こういうことを公的な立場において言いますと、つまりその水準が近くなったときに既にドル相場は最安値である、これからは反騰して上がっていく、こういうふうに投機業者が考える、こういうことでありますので、そうなりますと、せっかくの円高も定着てきない、こういうことで、政策当局としてはこの水準が望ましいとか、この水準で定着させるとか、こういうことを言うことは適当ではない、こういうふうに言っておられます。私どももそのように考えます。  また、大蔵大臣が予算委員会などで御答弁になったことでもありますけれども、どこが適正な水準かというのは神のみぞ知る、こういうことで、私どもその力のない者としてはお答えできない、こう思います。  ただ、円高傾向というのは一方でそれが望ましいということでやっているわけでありますけれども、その反面におきまして、確かに中小企業等、経済の一部の分野におきまして深刻な影響が出る、こういう点は政府としても認識をしておりまして、先日「内需拡大に関する対策」を決めました際にも、円レートの動向が国内経済に及ぼす影響に注視をし、弾力的な政策運営をする、こういうことをはっきり明示しておるわけでございます。そういうことで、弾力的な政策運営ということで対応する、これはマクロの政策もそうでありますとともに、個別のミクロの政策、つまり主として通産省でおやりいただくような、そういう個別対策においてもその方向でやっていただく、こういうことで対処していきたい、こう思う次第でございます。
  86. 井上文彦

    ○井上説明員 お答えいたします。  今後、関係業種の生産量の動向を見ながら、早急に検討してまいりたいと思います。
  87. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)委員 時間がありませんので次に飛びますけれども、労働省、ひとつ早急に再指定ができるようにやっていただきたい。  それから、神のみぞ知るというレートのあり方ですけれども、ある程度の目標値を持ってやっていらっしゃることは事実だと私は思います、まあしかし、なかなか言えないと思いますけれども。しかし私は、むちゃくちゃ円高ばかりが能ではない、一定の水準に維持させる、このことが大事だと思います。そのことで中小企業でも零細企業でもそれに対応した企業運営をやりますから、それによってまた競争力をつけできますから、早急に安定させるということが大事だと思うのです。こういう意味で今後の施策の推進をお願いをしたい、こう思います。  そこでいま一つ、時間がありませんので簡単に農畜水産物の輸入の問題について承りたいわけです。  この輸入品目二十一項目を見せていただいておるわけですが、それぞれ国民の生活に重要な諸品目であるわけですが、これらの輸入につきましては通産省で、特定の商社等に輸入の枠を割り当てをしていらっしゃる。これについて、商社名を公表せよということ、数量も明らかにすべきじゃないかということは国会でも何回も出ておるわけですが、なかなかこれが明らかにされてこない。  企業の秘密であるとかいろいろなことをおっしゃる、あるいはまた価格操作が行われるとかいろいろなことを言っていらっしゃるわけですが、こういうことはむしろ企業秘密というよりも、行政行為を国民に明らかにするのであって、どこにどういうふうに割り当てをして、どういうふうにどこが入れておりますよということは、今日の輸入品を安く消費者に渡す意味から見て大事なことなんですね。  こういうことを秘密主義で明らかにしないということは好ましくないと思うのです。この際これを明らかにして、そして妥当な価格によって公正な競争を行わしめて、そして妥当な価格で消費者にこれを供給する、こういうことが必要だと思うのですが、この点についてどうですか。
  88. 村岡茂生

    ○村岡政府委員 割り当て物資のそれぞれの割り当て数量等は毎期公表しておるわけでございますが、先生お尋ねの輸入割り当て業者ごとの名称並びに数量というのは、先生の御意見もわかるわけでございますが、他方同時に、それは各私企業の営業上の秘密になるものでございますので、公表しないということになっております。  御参考までに、ガットでの取り扱いがどうなっているかということを申し上げますと、輸入ライセンスについて、総数量あるいは供給国間ごとの数量、これは公表しなければならない、こう規定されておりますが、同時に、輸入ライセンスを受けた企業の名称に関する情報は提供する義務がないというぐあいに規定されておるわけでございます。そうしてまた、このようなガットの規定がガット加盟国間の慣行にもなっておるという事実がございます。今まで何回も委員会等で取り上げられた問題ではございます。私どもといたしまして、仮に公表に踏み切りました場合に、外国輸出業者との間の取引上のポジションを弱くする、その他いろいろな弊害がありますので公表しないという建前にしております。何とぞ御了解いただければと思います。
  89. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)委員 時間がありませんので結論に入ります。  それでは、この件で承りますが、割り当てを受けた商社等がこれを空売りをしてもいいのですか。枠を空売りするというようなことがあったらどうなんですか。
  90. 村岡茂生

    ○村岡政府委員 それぞれの物資の輸入公表におきまして、輸入割り当てを取得した者は、自己の名と計算において輸入を実行すべしということが記載されております。したがいまして、委員指摘のように空売りが行われました場合には、これは私どもの意に反するところでございます。通常、このようなことが発生いたしました場合には、翌朝以降の割り当てを行わないという方針を堅持しております。  以上でございます。
  91. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)委員 ここにそれの事実を明らかにした書類も持っておるのです。これは空売りしておるのです。キロ当たり五十円から百円というマージンを取って空売りしていらっしゃる。空伝票なのです。名前だけは何々商社、こうなっている。こういう事実が出てくるのは、そういう商社名が明らかでなくて、そうして秘密裏で行われておることによって生ずる弊害だと私は見ておるのです。  こういうような意味から、いま一つは、私は特にイカを問題にしたわけですが、このイカなんかでも八百トンも空売りしておる、こういう事実も明らかなんですね。そうして、そういうところに対して新規参入を認めずに、一時は二百五十社からあった輸入業者が、年平均大体二百社ぐらいあるのですが、今百二十社ぐらいになっております。こういうふうにどんどん減らしてきておる、もちろん時代もあるのですが。  ところが新規参入は一切認めない、こういうことをするものですから、枠を持っておる既存の、既得権を持っておる人が空売りをやってくるんですね。私は、この際こういうものを公表し、新規参入もある一定の条件があるならば認めていく、そうすることによってこういう弊害をなくすことが必要ではなかろうか、こういうふうに考えておりますので、御答弁を賜りたい。
  92. 村岡茂生

    ○村岡政府委員 空売りをいたしますような不当な行為をした輸入業者を取り締まれということについては、私も全く同意見でございます。  実は五十九年度におきましても、割り当ての際の審査を厳格にいたしまして、上期で、農林物資だけでございますが、合計三十八社、下期におきましては六社、本年度の上期におきまして四社、それぞれ割り当てを拒否をいたしました。そのような空売りの事実が発見されたからでございます。  これは、企業ごとの割り当て枠を公表すれば、必ずしもそのような空売りがなくなるというものではございません。我々は、現行のシステムの中でそのような空売りが行われないように厳重に今後とも監視していきたいと思っております。
  93. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)委員 新規参入について……。
  94. 村岡茂生

    ○村岡政府委員 新規参入につきましては、我々といたしましては、この割り当てをいかに公平に行うかということについて通常心魂を砕いているわけでございます。  現在、国内需給上必要な物資の確実かつ継続的な供給を確保するということで実績割り当てをしておるわけでございますが、ルールといたしまして私どもが持っておりますのは、割り当ての枠が大幅かつ継続的に拡大が見込まれるような場合におきまして、かつ、その輸入割り当てを受けている業者の数を勘案いたしまして、輸入秩序の混乱その他の事態が生じないというぐあいに判断される場合におきましては新規割り当てということを検討することになっております。  現在でも魚類の中で幾つかの品目については新規割り当てを認めておるところでございまして、韓国産の水産物とか魚介類の割り当て枠等では新規割り当てを認めているところでございます。
  95. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)委員 では、時間がありませんので以上で終りますが、私は、そういう新規参入等も含めて公正な競争をやられること、それからイカについては今新規参入を認めていらっしゃいませんので、こういうものも含めてやられますることをお願いいたしまして、時間がちょっと超過して申しわけありませんでしたが、それぞれの大臣以下の御答弁を感謝して、終わります。ありがとうございました。
  96. 田原隆

    田原委員長代理 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四十一分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十一分開議
  97. 粕谷茂

    粕谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。長田武士君。
  98. 長田武士

    長田委員 初めに、経済問題について金子長官にお尋ねをいたします。  去る九月二十二日のG5で為替市場への介入が同意されましたけれども、それ以来十一月七日には一ドル二百二円まで円は実に一九・五%切り上がりしたわけであります。ニクソン・ショックの後、スミソニアン合意によりまして、円は当時三百六十円から三百八円に切り上がったわけでありますけれども、そのときの切り上げ幅が一六・八%であります。今回の円高はそれ以上ということになるわけですね。円が一九・五%も切り上がったその間、西ドイツではマルクは一一・六%、イギリスではポンドは六・五%、スイスフランは一一・六%の切り上がりでありますから、やや円高の独歩高の感はあるわけでありますけれども、大幅黒字によりまして貿易摩擦に悩み続けております我が国といたしましては好ましい状況であろうかと考えております。  しかし、この円高も現在のところ為替市場への介入によりましてつくられた円高でありまして、市場の流れ自体が変化して、この円高定着が果たして本物かどうかという見方も、非常に懸念されておる部分もたくさんございます。しかし、一方ではことしは二百円台のボックス相場が続きまして、来年早々には二百円を突破するという見方も実はあります。  今後、円高が定着すると見ておられるのか、あるいはまた円安の傾向に流れていくのか、ここいらの感じは長官どうお考えでしょうか。
  99. 金子一平

    金子国務大臣 お話しのとおり、十一月十二日では、円は二百五円七十銭というところまで来ております。  それで、これが定着するかどうかという問題でございますけれども、アメリカの財務長官リーガンがベーカーになりましてから大分アメリカの円ドルレートの見方に対する考え方が変わってまいりまして、やはりドルが高過ぎたのはアメリカの責任に大部分帰すべき点があるという考え方をとってきまして、それが先般のG5の協議に反映したと私ども考えております。  今まで何回か協調介入をやる機会はございましたけれども、今回ほどアメリカがそれこそ真剣になって協調介入のリードをしたことはいまだかつて私はないと考えておるのでございまして、アメリカ自身も自分の国の産業の将来を考え経済の将来を考えたら、ある程度やはりドルを切り下げないことには何ともならぬという感を強くしておるのだろうと思います。  我が国といたしましても、今回の貿易摩擦の原因である黒字解消のためには、今の円高が一時続いたといっても、Jカーブの関係ですぐ黒字が減るものではありません。そういうふうには考えておりませんけれども、この問題の解決の一つの大きな手がかりがここでできたという点で、大いに歓迎すべきものと考えております。  ただ、G5の協議の結果がいつまで続くかについては、お話のような御心配の点もあると思うのでございますけれども、各国、この際はひとつドルの適正化に努力しようという気持ちが続いておりますし、そういった気持ちがなくならぬ限りは私はこれは定着するもの、現在の二百円がいい悪いは別にいたしまして、ある程度定着してくることを希望いたしますし、またそれができると考えておる次第でございます。
  100. 長田武士

    長田委員 私は、為替市場の流れが変わりまして円高が定着するためには、どうしてもマクロ面の経済運営の転換が必要であろうかと考えております。この点については、私は、順次そういう観点から御質問を進めたいと考えております。  そこで、まずアメリカの経済運営に対する考え方でありますけれども、G5を境にいたしまして変わったと言われておりますけれども、そういう点についてであります。  ドル高の原因はアメリカの大幅な財政赤字、この原因が多々あるということは今大方の皆さんが指摘をされたとおりであります。こうした財政赤字の原因は、レーガン大統領就任以降特に大幅な減税をやりました。もう一つは、軍事費に相当拡大された予算が使われておる、こういうような二つの原因があるように私は考えております。その結果、アメリカは、双子の赤字と言われるように財政それから国際収支の大幅な赤字をつくり出しました。我が国は逆に国際収支が大幅黒字になるなど、世界経済に大きなひずみを生じてきたわけであります。  ところが、アメリカについては、数カ月前までは、ドル高のおかげで物が安く輸入できるとか、あるいは設備投資も安上がりで済むとか、あるいはおかげさまでインフレも抑制できるとか、そういうような点を非常に誇示されておったように私は考えております。そして、我が国などがいろいろな形での指摘をいたしましても、なかなか耳をかそうとしませんでした。それがここへ来まして、突如としてドル高是正にアメリカが態度を変えてまいりました。  そういう意味では、私は、アメリカの経済運営の態度は変わったのかどうか、一時的なものであるかどうか、ここいらがどうもちょっとはっきりしないわけであります。変わったとすれば、その背景には一体何があったのか、アメリカは本気でドル高是正に取り組んでおるのかどうか、ここいらの点については、経企庁長官、どうでしょうか。
  101. 金子一平

    金子国務大臣 今御指摘のございましたように、アメリカの財政赤字を相当思い切って削減しない限りはドル高是正はできない、アメリカの経済の活性化をもたらすことはできないということがだんだんとわかってまいりまして、特に有識者がそういう気持ちを持ってまいるようなことになりましたものですから、先般のアメリカ議会におきましても、八六年度では五百五十五億ドルの財政圧縮を提案しておるようなことになっておりますし、また、金融政策の面におきましても今までと違って柔軟な姿勢を連邦準備銀行がとるようなことになっておりますのが、アメリカの金利が長期金利を中心にして緩やかな低下を続けておる原因だと考えております。  その背景には、お話のございましたように、ドル高による輸入の急増がアメリカの生産を妨げておる、したがって生産が落ちますから失業者がふえるというようなマイナス効果をもたらしておる、この際こういった問題を片づけぬ限りは景気の拡大ができないということを悟ってきた、これがやはり今度のアメリカの政策が転換した一番大きな原風ではなかろうかと考えておる次第でございます。
  102. 長田武士

    長田委員 かつてドル高を反映いたしましてアメリカの農業が競争力を失いました。アメリカ自身も非常に苦しい立場に追い込まれました。また、国際収支の大幅な赤字に対処するために、十月十日には繊維輸入規制法が下院を通過するなどいたしまして、アメリカは保護主義に急傾斜しているようにも思えます。しかし、今回のドル安・円高によりましてアメリカ議会あたりの空気が大分和らいだようにも思うわけであります。日本の立場としては、アメリカは本気で財政赤字の圧縮をやってもらわなくてはならないと私たちは考えております。そのためにはまず軍縮でありますけれども、そういう意味からも今月の十九日と二十日に行われますレーガン大統領とゴルバチョフ書記長との会談に私たちは大きな期待を持っております。  そこで、アメリカの財政赤字の削減についてでありますけれども、これは八月一日にアメリカの上院と下院で、八六年度から八八年度までの三年間で合計二千七百六十二億ドル赤字を削減することに合意したということを聞いておるわけであります。その後列の予算修正案が出されて、毎年度三百六十億ドルずつ削減をいたしまして、一九九一年には財政的な均衡を保ちたいというのも出ておるようであります。  そこで、アメリカの財政赤字削減については実際はどのようになっておるのか、予算修正案の成立のめども含めて、長官御存じでしたら教えていただきたいと思っております。
  103. 金子一平

    金子国務大臣 アメリカの財政赤字は、八五年度で二千百十九億に達しております。これがやはり高金利の一番大きな原因だということを悟っておるわけでございますので、今御指摘のございましたような財政赤字削減の計画が議会に提出され、議会におきましても、八六年度予算については五百五十五億ドルの削減の決議をしておるというふうに私ども聞いておるわけでございますけれども、これは今後のいろいろな審議の段階で、正直言ってこのとおり実現するかどうか、私どもはぜひ実現させたいと思っておるのですが、いくかどうかわかりません。しかし、近く行われる米ソ首脳会議等の動きもこれに影響することと思いますので、ぜひ米ソ首脳会議が成功裏に終わって少しでも赤字圧縮が実現し、それによってドルの適正な評価が行われることを私どもは期待しておる次第でございます。
  104. 長田武士

    長田委員 アメリカの七-九月期の実質的GNPは年率で三・三%とやや持ち直してきたようにも思います。この原因はいろいろあるようでありますけれども一つは自動車の売れ行きが非常によかったということです。その原因は、自動車のローンの金利を、特別措置などによりまして非常に買いやすくなったということのようであります。二つ目には、輸入が減って貿易赤字が縮小したということで言われております。その三つ目には、政府が農産物を買い入れだということが大きな原因のようであります。以上三つが、GNPがやや持ち直したという原因のようであります。  しかし八月から九月にかけて、この自動車の問題でありますけれども、年率一千百十八万台も売れているのですね。この自動車が十月上旬には六百六十四万台、十月になりましてちょっと陰りが見えまして落ち込んでまいりました。それにG5以後約二割のドル安によりまして、今後輸入の減少という効果を通じて景気に対してはプラスに作用するでしょうけれども、輸入物価の上昇をもたらしますから、生産コストを押し上げるわけでありますから、それだけで物価高を招くことにもなりますし、設備投資や個人消費には悪い影響が出てくるのじゃないかというふうに私は見ております。  アメリカの景気にとっては、ドル安というのはプラス面とマイナス面の両面を持っておるなという感じがいたしております。そこで経企庁長官、このドル安がアメリカの景気にどう影響するのか、その点についてはお考えはどうでしょうか。
  105. 金子一平

    金子国務大臣 お話しのとおり、ドル安になることによってアメリカの経済に及ぼす影響は両面があろうかと思っておるのでございます。一面においてはアメリカの経済を活性化させる面を持っておりますると同時に、一面においては大きなマイナスの面も出てくるのではなかろうか。  最近のGNPの年間を通ずる見通し等につきましては、年間三%の下の方であるいは落ちつくのではなかろうかというような見通しも出ております。最近アメリカの貯蓄水準も大分落ちてきておりますし、一方においてはお話しのようにアメリカの自動車の売れ行き等がなかなか活発になりまして、これは割賦販売をフルに利用しておる関係でそういうような状況も出てきておるわけでございますが、そこら辺が一体どういうふうなことになろうか。日本の経済にすぐ影響を及ぼすわけでございますので、そこら辺の先行きを十分注意しながら我々も見てまいりたい。アメリカ経済の先行きは決して楽観を許さないぞ、こういう気持ちで見ております。
  106. 長田武士

    長田委員 ここに実は野村総研の予測があります。これによりますと、アメリカのことしの第四・四半期と来年の第一・四半期の実質GNPは、それぞれ年率マイナス〇・三%とプラス〇・五%なんですね、予測が。また、この同じ時期を我が国と比較してまいりますと、GNPもそれぞれ前期比〇・四%、それから〇・二%と予測しておりまして、大変落ち込んでおるわけであります。円高が進んだとしても、Jカーブ効果があるので、我が国の輸出が急に落ち込むことはないだろう、このように楽観視されている向きもありますけれども、我が国の輸出の伸びは実は既に大きく落ち込んでおりますね。  ちなみに私はベストテンの状況を見てまいりますと、船舶が六十年の一-七月の七カ月間で一五・七%落ち込んでおります。半導体等電子部品もやはり一〇・九%落ち込んでおります。そうして金属製品も一三・三%落ち込んでおります。自動車が八・五%ふえておりますから、日本の輸出はこの点によって辛うじて支えられておるなという感じを強くいたします。そういう点で非常な落ち込みで、全体的に見れば先行きちょっと不安を抱いております。  これは原因はどこかということをいろいろ調べてまいりますと、アメリカと中国への輸出の伸びが落ち込んでおるということがどうも原因のようであります。今後アメリカの景気が減速するということになりますれば、Jカーブのタイムラグ等がありますけれども、それに関係なく輸出が落ち込むわけでありますから、この効果が解消される来年度において輸出は完璧に景気の足を引っ張ってしまうというようなことになりかねない状況ですね、今の見通しは。  また、円高は我が国の経済に逆にデフレ効果というのを生んでまいります。金融当局市場介入によって今の円高が続きまして、それから国際収支の均衡がとれたといたしましても、そのままでは縮小均衡であり、景気は落ち込むのではないかというふうに心配をされます。  ですから、政府は去る十月十五日、史上最高規模と言われております三兆一千二百億円の内需拡大策を発表されたわけであります。これは経企庁を中心といたしまして、大変な御努力によりましてつくられたということも私も伺っております。しかし、この対策が実施されますと、名目ではGNPはその波及効果も含めまして四兆一千百億円押し上げられる。名目成長率は一・三一%上昇いたしまして、輸入は二十億ドル増加するというものであります。私は、この対策を見てまいりまして、正直なところちょっと期待外れの感を否めません。  と申しますのは、民間の経済研究所などでも、これでは民間と地方自治体を頼りにした他力本願対策で、名目成長率の押し上げ効果も大体〇・三%程度で、四百七十億ドルにも達しようとしている経常黒字の改善効果もほとんどこれでは出ないであろうというふうな危惧をされておるわけであります。  私は、今、アメリカ経済の減速とか保護主義への急傾斜とか累積債務国問題の再悪化とか、アメリカ一国だけではとてもじゃないけれどもコントロールできない、このような大きな問題に直面しておる、このように考えておるわけであります。そうなってまいりますと、一九三〇年代の悲劇が繰り返されるようなことにもなるかもしれません。  世界経済が重大な時期に、我が国といたしましてこの程度の内需拡大しかとれないのかといういら立たしさを私は感ずるわけであります。これには補正予算を組んで建設国債でも発行するぐらいの積極的な財政運営というものが必要ではなかったのか、そういう点を私は考えます。もしかそれができないということになれば、私は、住宅減税であるとかあるいは投資減税の方針だけでも打ち出してほしかったなという感じがいたしております。この内需拡大策について、自民党内部でさえ不満の声が上がっておるということも聞いております。大変苦労されて長官もおつくりになったとは思いますけれども、大変失礼な言い方でありますけれども、私は何となくこの私たちの危惧が当たるんじゃないかというような感じも実はするのであります。長官としてはこの内需拡大策に満足されていらっしゃるのでしょうか。
  107. 金子一平

    金子国務大臣 内需拡大策、これは不十分と考えるかどうかという問題でございますが、正直言って、内需拡大策と銘打ては、普通の場合は財政政策を思い切って活用して大幅の減税をやるとか、公共事業費をふやすとか、あるいは金融政策を活用するとか、そういう基本的な柱が入らないと、せっかくの内需拡大が思い切った効果が出ないと思うのであります。しかし、御承知のとおりの財政事情なものですからそれが十分できない。特に減税につきましては、今、財政全体がどういう格好になるか、税収の見通しその他を考えて減税財源、果たしてどういうことになるのか、いろいろ大蔵省が模索しておる最中でございますし、また一方においては、党税調、政府税調でこの問題を扱っている際だものですから、年末まで、減税等についてはこの問題を取り上げることを控えようというようなことになりました。  ただ、気持ちとしては、お互いの政府部内の合意としては、住宅減税につきましては本年あるいはそれ以上の減税をやりましょうということには合意を見ておるわけでございますが、それを取り上げるのは少し遅くなっておるということであります。投資減税についても同様でございます。  それから公共事業費につきましても、ことしはいろいろ苦労して三・五%ばかり前年に比べて引き上げたのでございますが、予算が使えるのか、予算が使えない場合に財政投融資の金利を引き下げることによってどれくらいのプラスが実現できるのか、それはこれからの問題として今検討しておる最中でございます。  金利につきましては、むしろ、先ほど夫お触れになりましたように、アメリカとの関係の金利差による為替レートの開きをこの際幾らでも縮める必要があるために、公定歩合をそう簡単に引き下げられる状況じゃございませんし、そういう大きな問題が後回しにはなっております。  ただ言えることは、民間住宅投資はもちろんでございますけれども、住宅開発にいたしましても都市開発の促進にいたしましても、民間設備投資の促進、あるいは公共事業で一番おくれておった下水道につきまして地方債を発行してもらって、縁故債募集をやって、場合によれば政府が保証いたしますよ、あるいは予算の前倒しをやりますよというような、今まで余りやってないようなことも取り上げましてこの際全面的に実現することになりましたものですから、先ほど来お話のございましたGNP規模で四兆一千数百億円の効果があるような、これは今後一年間のことでございますが、案がまとまったわけでございます。  これに加えて、民間活力の導入なり規制緩和の種々の方策を実行することを第二弾として考えておりますので、今後はこういう民間活力を大いに伸ばす方向で景気の振興を図ってまいりたいと考えておる次第でございます。
  108. 長田武士

    長田委員 それでは、私、内需拡大の対策がございます、この項目に従いまして長官にお尋ねしますから、具体的に明快に答えていただきたいと思っております。  まず、住宅金融公庫の融資枠の拡大の問題であります。  これは、当初四十九万戸、これを五十一万に二万戸ふやしましたね。長官、そうでしたね。ところが、この五千億円分につきまして、公庫への今年度の第一回、第二回の個人向けの申し込みは前年度よりも一三・五%落ち込んでいますね。申し込みが少ないのです。したがいまして、実効性は非常に疑わしいというふうに私は考えております。実際の追加額も千五百億円、五千億掲げておりますけれども大体千五百億円ぐらいでとまるのじゃないか、このように私は考えております。  それから、国有地の払い下げによる建設促進につきましても、長期的には需要増も期待できなくはないのでありますけれども、短期的には民有地からの振りかえ投資ということになろうかと思います。  これらの疑問について経企庁長官はどうお考えですか。
  109. 赤羽隆夫

    ○赤羽政府委員 今先生の御質問でございますが、まず住宅金融公庫の貸付枠二万戸について申し上げます。  まず、この二万戸でございますが、これによりまして五千億円の事業規模が見込まれる、こういうことでございます。これは、住宅金融公庫につきまして今回特別割り増し貸付制度というのを、法律を改正いたしまして実施することにいたしました。さらに貸付枠の追加ということで二万戸でございます。これを講ずることによりまして五千億円の金額を見込んだということでありますけれども、基本的な考え方といたしましては、この特別割り増し貸付制度というものを創設することによりまして、プラスアルファの、と申しますのは、公庫利用者にとりましては広いうちをつくりたい、自分たちが考えていたよりは若干なりとも広い面積のうちをつくりたい、あるいは質のいい住宅をつくりたい、こういう潜在的な需要、気持ちがあるわけでありますから、これを具体化しよう、その形で、そういうことを通じて住宅投資の拡大を図りたい、こういうことでございます。  中には、一部民間資金を使ってやる、銀行からお金を借りてやるというふうに計画していたものがこちらの方へ振りかわるものがあると思います。私どもこの五千億円を見込む場合に、そういったような点のシフトということも考慮に入れてございます。そういうことで計算をしたということです。  最近の統計を見ますと、公庫住宅の着工が伸びていない、これまた事実でございますけれども、これにつきましては、やはり住宅関係の融資金利の引き下げの期待がある、こういうことでございまして、そういったようなところが多少先倒しと申しますか前送りになっていた、こういうふうに理解をしております。決してそういうことを見込んだわけではありませんけれども、来月くらいからまた一般の民間の住宅金利が引き上げられる見通しになってまいりました。他方、今回の措置によりまして、住宅金融公庫の特別融資制度、これは六・八五%と大変有利な金利でプラスアルファの貸し出しを実現しよう、こういうことでございますから、今後の情勢というものを踏まえて判断をいたしますと、この二万戸の枠の拡大というのはこれは消化できるであろう、それによりまして五千億円程度の事業規模のプラスアルファがあるだろう、こういうふうに見ているわけでございます。  それから国公有地の有効活用でございますけれども、土地というのは潜在的に非常に不足をしているということがございます。したがいまして、これまで未利用あるいは低利用の国公有地というものを活用する、こういうことになりますと、これはほぼネットに純増の形で住宅あるいは非住宅関係の投資需要がそこに実現されるもの、こう考えておるわけでございます。
  110. 長田武士

    長田委員 それでは、また来年このくらいの時期に実績と比較して御質問いたします。  それでは次は、電力やガスにおける設備投資の追加、これは民間資金によるものでありますけれども、四千億円ありますね。しかし、これも過去の例を私ずっと調べてきたんでありますけれども、例えば電力設備の投資は、産構審ベースでありますけれども、毎年当初計画に比べまして実績が下回っておるというのが実情なんですね。私はきょうは、特に景気対策が打ち出された年だけに絞りましていろいろ調べてみました。  昭和五十一年十一月の十二日、これは三木内閣のときでありますけれども、景気対策七項目というのが発表されました。電力については八千億円の繰り上げ発注を行うことに決定をいたしております。この年の電力の当初の設備投資計画は二兆二千九百三十九億円でありました。繰り上げ発注で追加したにもかかわらず一兆九千八百六十四億円にとどまっております。  次に、昭和五十三年九月二日、福田内閣のときに総合経済対策を発表いたしました。このときも一兆六千五百億円の繰り上げ発注を行おうといたしました。この年の当初の設備設資計画は三兆三百九十七億円でありました。そして、一兆六千億円もの繰り上げ発注を行ったにもかかわらず、実績は当初計画よりも少ない二兆八千八百五億円にとどまっております。  また、昭和五十八年十月二十一日、中曽根内閣の総合経済対策でも六千二百億円、うち一千百億円は繰り上げ発注という追加投資を決めております。この年の当初計画は三兆五千七百二十七億円でありましたけれども、実績は三兆四千四百六十億円と当初計画を下回る額に終わっておるわけであります。  現在、電力の設備は御案内のとおり、夏の冷房あるいは高校野球、これが大体ピークとされておりますけれども、それを最高のピーク時になおかつ予備率というのを一〇%以上持っておる、ややもすると設備過剰ではないかという非難もございます。もともと私は追加投資をするのが全部だめであると否定するものじゃありません。しかし、やはり企業の投資というのは企業自身が決めるということが本来の姿勢でなくちゃならないと私は思います。  しかしそこで、電力は公共料金でございますから、資本費が増大してくる、将来は必ずコストプッシュの原因になる、そうなると、ひいては電力料金への影響というものが出てくるわけです。経済対策、いわゆる景気浮揚対策に電力、ガスを使う意味は私はわからなくはありませんけれども、結果的には需要者にツケとして回ってくるということに対しまして、私は果たしていかなるものかという疑問を持っております。  今回もいわゆる内需拡大の対策として電力、ガスについて四千億掲げております。過去の実績を見るとこのように下回っておるというのが実情であります。そういう点では、企業としてはそれにはとても耐えられないということで下回ったんだろうと私は考えておるのです。こういう対策は果たしてどうなのか疑問なんですけれども、その点どうでしょうか。
  111. 野々内隆

    ○野々内政府委員 御指摘のように、電気、ガス事業者に対しましては、従来から景気対策といたしまして、数次にわたりまして設備投資の発注の前倒しというものを要請いたしております。先生指摘のように、この投資そのものは将来資本費の増大につながるわけですから、減価償却費あるいは金利を通じまして料金に影響してくることは事実でございます。したがいまして、必要のないことをやらせるというのは絶対に避けるべきであろうと思っておりますので、必要なものについて前倒しでやるということを原則にいたしたいというように考えております。  他方、現実の設備投資額につきましては、御指摘のように計画と実績にずれがございます。これは電源開発におきます地元調整というものが中心でございまして、残念ながら当初の予定値と実績に若干の差ができております。ただ、その前倒し発注の場合には、この設備投資金額と直接の関係なしに、先ほど先生がおっしゃいました数字は設備投資そのものでございますが、前倒し発注につきましては設備投資の時期そのものは計画の時期でございますが、前倒しに発注をすることによりまして発注を受ける企業の仕事の計画が非常に立てやすくなる、その他景気刺激的な効果があるということでやっておるわけでございます。  今回の内需の拡大策につきましては、電力、ガス各業界につきまして送配電の高度化とかあるいは保安対策の強化というような必要な事項につきまして追加的な設備投資の要請をいたしておるのでございまして、確かに従来同様各種の問題点はあろうかと思っておりますが、内需拡大に関する政府趣旨を御理解いただきまして、両業界とも着実な実施に努めていただけるんじゃないかというように考えております。特に発電関係では地元調整にかなり時間をとられますので、計画と実施に差ができるというような事態もございましたが、今回はどちらかといいますと、送配電の部分に多いウエートを置いておりますので、発電における地元調整に比べましては、計画の推進に関してはやや容易性はあるのではないかというように考えております。     〔委員長退席、田原委員長代理着席〕
  112. 長田武士

    長田委員 それから次は公共事業なんであります。一般公共事業の四千五百億円、これを前倒しするわけでありますけれども、そうなりますと六十一年度の分は少なくなるんじゃないですか。そういう意味で私はこの前倒し、確かに手前へ持ってくるわけでありますから効果はないとは言いませんけれども、結局六十一年度でそれがやはり大きな穴になってしまうということですね。  それから災害復旧費でありますけれども、この五千億円につきましては、建設国債を発行するとかそういうことは一切ないわけでございますから、したがいまして予備費の充当とかあるいは歳出の削減をして充ておということでございましょう。したがいまして、新規財源の追加されるのは、このような景気対策でありますけれども、公団に対する財投計画の追加七百億円、それから地方単独事業の八千億円だけてあります。この地方単独事業の八千億円も、地方自治体が財政的に非常に困難を来しておりますから、これはなかなか応じにくいだろうという感じが私はいたしております。  以上、内需拡大策の主なものでありますけれども、私はこういうふうに一つ一つ検討してまいりますと、景気対策の決め手になり得るかどうか、この点非常に問題だろうというふうに考えております。経企庁長官、その点どうでしょうか。
  113. 赤羽隆夫

    ○赤羽政府委員 御提起のありました各項目につきまして御説明申し上げます。  まず前倒しでございますけれども、これは前年度もそういうことをやっておりました。したがいまして、もし今回そういうことがなければ、それは当然六十年度におきましてへこむと申しますか減額になるわけでありまして、それを戻す、こういうことでございます。もちろん、明年度どうするのかといったような問題はあると思います。しかしながら、そのままこういう対策をとらなければ減ってしまうといったものをもとへ戻すというところは、それなりにプラスの対策ということで御評価いただけるのではないかと考えている次第でございます。  それから災害でございますけれども、災害復旧約五千億円ということでございますが、この金額をはじくに当たりまして、九月末までの災害の状況、こういうものを踏まえまして、六十年度の災害発生額というのを八千数百億円、こういう推計をいたしました。その分の中から今後一年間ぐらいの間に実施される事業規模ということで、五千億円というのを見込んだわけでございます。もちろん、御指摘のように当初計上の予備費の一部が充当されるという点はございます。しかしながら、それだけでは今申し上げましたように八千数百億円、こういう災害発生の見込みに比べまして足りなくなるということでございます。現在の時点では補正予算といったようなことをどうするということを決めているわけではございませんけれども、予備費の一部の充当だけでは足りないということでございまして、ネットのプラス効果があるもの、こういうふうに考えております。  それから地方の単独事業でございますけれども、地方の単独事業につきましては、それぞれの地方公共団体におきます補正予算の状況というものを調査いたした上で、単独事業八千億円の追加といったものを積み上げておるということでございまして、これは実行に移されるものと理解をしております。
  114. 長田武士

    長田委員 過去の景気対策における公共事業の問題でありますけれども、私いろいろ調べてみました。これはGNPベースで政府固定資本形成と政府在庫投資とを加えたものであります。この加えたものを当初見通しと実績の額で比べてみますと、景気対策で追加投資をしたにもかかわらず、実線額が当初見通し額を下回っている場合が実は多いわけです。つまり、景気対策が中心である公共事業が期待どおり機能していないということが、この数字で明らかであると私は考えております。経企庁はこの実態をお認めになるのでしょうか。また、どうしてこのような結果になっているのか、私は非常に疑問を感じます。この点はいかがでしょうか。
  115. 赤羽隆夫

    ○赤羽政府委員 公共事業、さらには広い概念でございますけれども政府の固定資本形成につきまして、ただいま先生の方から御指摘のありました当初見通しと実績の間の乖離、それも対策をとられた年次によりましては、対策をとった後にもかかわらずむしろ当初見通しを下回る、こういう実績が出ているという点につきましてはそのとおりでございます。  この原因でございますが、その年次によってそれぞれ原因が違うと理解しておりますが、一つの原因といたしましては、当初の見通しを積み上げる場合に、特に地方財政計画をもとに積み上げておる、これがやや過大であったということが当然あり得た、こういうふうに思っております。その点につきまして、経済企画庁はずっと経済見通しを作成する担当をしているわけでありますけれども、今後なお検討して、改善をしなければいけない問題点であると反省をしております。  それから、実際にその実績が見通しよりも下回る一つの理由といたしましては、これはGNP統計におきます固定資本形成のいわば概念があると思います。概念と申しますのは、いわゆる工事進捗ベースということで統計が把握されておりますので、工事の進捗に応じまして金額が固定資本形成として把握されるわけであります。しかしながら、実際には完成ベースに近い段階で統計上は把握されるという点がございます。したがいまして、工事を契約する、さらに工事が進んでいく段階でいろいろな資材とかあるいは雇用に対する需要効果が発生をする、さらにこれに加えまして、乗数効果と言っておりますけれども、生産活動が活発になり、その結果所得がふえて消費などもふえてくる、こういう効果が期待されるわけであります。しかしながら統計的にはそれがおくれる。具体的に申しますと翌年度にその効果が統計上は計上される、こういったような点もあるのではないか、こういうふうに考えております。  いずれにいたしましても、追加対策をとりました後の実績が当初見通しよりも低い、こういったような点は確かに今後検討を要する課題であろう、研究課題であろうと考えている次第でございます。
  116. 長田武士

    長田委員 経企庁長官は今の問題についてはどうお考えですか。
  117. 金子一平

    金子国務大臣 これはやはりGNP統計で少しずれますから、資本形成としては翌年度にずれることが多い、一つはそれが御指摘の点にあらわれているのだろうと思います。全体としてのプラス効果は相当大きなものがあると私は考えております。
  118. 長田武士

    長田委員 長官、私が言っているのは、公共事業の当初見通しよりも実績が下回っている、それは工事が途中だから統計に出てこないんだと言うなら、前年度は本年入るじゃありませんか。こういう詭弁じゃ公共事業の効果などというものは出ませんよ。もう一回きちっと答えてください。前年度分の実績は今年度入るのですから。別になっちゃうなら話は別だよ。
  119. 赤羽隆夫

    ○赤羽政府委員 今の点は仰せのとおりの面がございます。ただし特別に追加をする、補正予算等におきまして追加をした分につきましては、前年度にそういうことがなければ、これは前年度からの繰り入れはなくて翌年度への繰り越しがある、こういうことだと思います。しかし、先ほども申し上げましたように、これは主要な要因である、決してこういうふうに申し上げているつもりではございません。そういう要因もあるだろう、こういうふうにその原因を推測をしているということを申し上げました。
  120. 長田武士

    長田委員 それでは次に。  いずれにいたしましても、世界の経済、なかんずくアメリカを中心とした先進主要国がこれから大きな課題に取り組まなくちゃならないものは、お互いに内需拡大、内需振興ということが大きなポイントであります。アメリカも財政赤字の解消策を予算の編成によって具体化いたしております。さらにこれに呼応しまして、イギリスやあるいは西ドイツでも減税が実施されようといたしておるわけであります。そういう意味で、日本一国が、減税もやりません、公共事業もふやしません、ただこのような手先の考え方で内需振興策をとるというのは、私は甚だ日本は責任を果たせないのじゃないかという感じがいたしております。  そういう意味で、私は今内需拡大の具体策について触れたわけでありますけれども、この点については効果が余り出ないのではないか、私はそういう点を非常に心配をいたしております。そういう意味では、この計画は甚だ不満であります。そういう点で、金子長官のこの内需拡大の具体策、これについて率直な意見をひとつ聞かせてください。
  121. 金子一平

    金子国務大臣 今度のG5では、御承知のとおり、アメリカは極力赤字の削減をやりましょう、それからその他のヨーロッパ、日本各国は、現在の各国の財政赤字をふやすことなくできるだけの景気振興策を講じていきましょう、こういうような申し合わせの結果、今お話を申し上げたような内需拡大策をまとめたわけでございますが、私どもといたしましては、別に税制問題につきましては今シャウプ税制以来の税制の全面的な見直しを政府税制調査会に答申をしておりまして、減税につきましては来年の早い時期に、増税につきましては秋以降にというようなことで総理から諮問をされております。  私は、やはり今の税負担が特に中堅層に重い負担を課しておりますから、思い切ったここら辺の所得税のある程度の累進度の緩和をやることによって景気振興をやることが一つの大きな内需振興の柱になろうかと考えておるのでありまして、できれば本年度内にでもこれを実現することを期待しておったのですが、なかなかまだ税調審議等の関係で思い切った先取りができないような状況になっております。  ただ、私といたしましては、それができなくても住宅減税につきましては、あるいは投資減税につきましては、相当規模のものを新年度において実現したいと考えておりますし、特に先ほども触れましたように、今の財政投融資の金利が硬直しておりまして、七分一厘でありましたものを〇・三%くらい下げることにいたしたのでございますが、なお市中金利等の動きに関連いたしまして、さらにこれを引き下げることによって公共事業等の上積みができるように持っていきたい。これは十一月の末から十二月にかけての仕事になるわけでございますので、決して内需振興策がこれだけで終わるわけではございません。私どもとしては全力を挙げてこの問題に取り組んでまいりたいと考えておることを申し上げておきます。
  122. 長田武士

    長田委員 何といいましても、私は内需拡大の大きな大きな柱というのは個人消費であろうと考えております。アメリカのGNPがことしの一-三月期年率〇・三%、四-六月期が一・九%、七-九月期が三・三%、やや持ち直したかに私たちは聞いておりますけれども。これは先ほどもちょっと私触れましたけれども、自動車の売り上げが非常に好調だったということ、もう一つは農産物を政府支出によって買い入れたということが大きな原因のようであります。中でも自動車がよく売れた理由といたしましては、ことしの夏場アメリカでは、車を買うローンですね、この金利を下げました。これが拍車をかけたということが大きな原因のようであります。したがって、自動車は八月下旬から売れ始めまして、九月いっぱいにかけまして年率で一千万台、八月下旬などは年率一千三百万台、このように言われておるわけであります。  ところで、今月初め割賦販売審議会から、自動車やカラーテレビなどの割賦販売の標準条件、これは割賦販売法の第九条でありますけれども、この緩和ないしは撤廃の答申が出ました。したがいまして、カラーテレビや乗用車などは標準条件が撤廃され、今後頭金なしで返済回数も長目にして支払いが楽になる、こういう方向が示されたわけでありまして、期待されるわけでありますけれども、しかしエアコンなどは標準条件が残されるのではないかというふうに言われております。そこで、内需拡大のために標準条件というのはできる限り撤廃すべきだ、私はこのように考えておりますけれども通産省としてはどういうふうに考えていらっしゃいますか。
  123. 松尾邦彦

    松尾政府委員 御指摘のとおり、本年十月十五日の経済対策閣僚会議で決定されました内需拡大対策の中で、消費者信用の一層の活用を通じて個人消費の喚起を図っていくために割賦販売の分野におきましても標準条件の見直しを行うべしという御指摘があり、先般の割賦販売審議会におきまして、御指摘のとおり、カラーテレビ、乗用車、小型のバス、トラックにつきまして標準条件の緩和ないし撤廃を行うことを決めたところでございます。  ただ、先生も御指摘ございましたエアコンと大型のバス、トラックにつきましては、業界の取引実態などから見まして、標準条件を廃止した場合には、流通秩序の混乱を招き割賦販売の健全な発展を図ることが困難になり、場合によっては、ひいては消費者の保護にも欠けるものとなるおそれもなしとしないということでございましたので、これらのものにつきましては標準条件の改定は行わなかったわけでございます。  しかし、今後とも法の趣旨に照らしまして適切にこの標準条件の運用を図ってまいることにいたしたいと考えております。
  124. 長田武士

    長田委員 割賦販売の条件が緩和されることは非常に喜ばしいことだと私は思います。しかし、割賦ローンの金利が下がりませんとこれはやはり消費の拡大につながっていかないように私は思いますね。私、先日東京トヨタに乗用車のローンの金利を聞いてみました。ところが、十月中旬に実質年利一七・五%を一四・五%に下げたそうであります。しかし、私はこれでもまだ高いように思いますね。銀行の消費者ローンが一三・五%ですから、私はこれも高いと思っておりますが、それよりもなおかつまだ一%高いのですから、金利としては相当負担が大きいわけであります。金利の問題は日銀や大蔵省の所管でありますから、通産省としても答えにくい問題もあるかに私は思いますけれども、やはりこの問題意識は重大だろうと私は考えております。これについての通産省の見解はどうでしょうか。
  125. 松尾邦彦

    松尾政府委員 御指摘の割賦販売の手数料につきましては、信用を供与する側の資金調達コストに加えまして、信用を供与するのに伴いますいろいろな与信コストがかかることもありまして、先生おっしゃいましたように十数%の手数料になっているのが実情でございます。もとより、この手数料はコマーシャルベースで決まるものでございますから、私どもとしてその引き下げにつきまして具体的に関与し得る立場にはないのではございますけれども先生もおっしゃいましたように、一部の企業ではまだ十分ではないにせよ引き下げの方向も出てきているわけでございますし、私どもといたしましても、消費者がクレジットを利用しやすいよう今後とも関係企業にはサービスの向上に努めていくよう指導してまいりたいと考えております。
  126. 長田武士

    長田委員 次に、中小企業問題について何点か触れたいと思います。  商工中金の調査によりますと、中小企業の景況は七月以来十月まで四カ月連続いたしまして低迷しております。これは輸出の不振に加えまして、内需も力不足ということに私は理由があるのではないかと思います。もともと中小企業は、去る七月三十日の市場開放のためのアクションプログラムによりまして環境が厳しくなっているところに、さらに円高で輸出関連の中小企業が相当打撃を受けております。また、内需関連でも、国の予算も公共事業や一般歳出がマイナスシーリングで、官公需中小企業への契約率は毎年若干ずつでも改善されてきておるのでありますけれども、契約額は落ち込んでいるというのがその実態であります。  こうした中にありまして、市場開放に伴う中小企業対策といたしまして事業転換法の改正も考えているようでありますけれども、確かにそのことも私は重要だと思います。思いますけれども、しかし依然として生産性が低いとかあるいは技術水準が低いとかあるいは情報化のおくれや人材確保の困難性など、古くて新しい問題が内在しておりまして、そのために販売不振に陥る企業も数多く見られるわけであります。  当面、年末も近づいておりまして円高問題も深刻であります。特別融資を初め中小企業対策についてきめ細かな問題について、私は去る十一月の七日、八項目にわたりまして通産大臣に申し入れいたしました。この点につきまして、大臣はどのように対処されるのかお答えをいただきたいと思っております。
  127. 村田敬次郎

    ○村田国務大臣 長田委員お答え申し上げます。  中小企業経営安定を図るための年末緊急対策等について、先般お申し入れをいただきました。これは各項にわたっておりますが、非常に重要な問題ばかりであります。まして、現在は円高の問題、それからまたいろいろな貿易問題等が絡んでまいっておりまして、その意味で中小企業の年末緊急対策というのは非常に重要な意味をさらに持っておるということを感じておるところでございます。  先般の公明党からの御要望につきましては、その中には既に実施をしているものもございます。それからまた概算要求中のものもございます。あるいは検討中のものもございますが、そのすべての項目についてそれぞれが極めて重要な問題である、こういう認識に立って検討ないし対応をしておるところでございます。  急激な円高の進展など、中小企業を取り巻く環境が厳しさを加えつつある折、通産省としては今後とも中小企業、零細企業のより一層の経営の安定を図るという点で、公明党の申し入れを踏まえながら、具体的な六十一年度の予算要求、年末の緊急融資等々に取り組んでまいる決意でございます。
  128. 長田武士

    長田委員 どうか、緊急な課題でございますので、実効ある処置をいただきたいと思っております。  公取委員長、大変お忙しい中をお待たせをして恐縮でございます。公取委員長に何点かお尋ねをいたします。  丸三年という長い不況のトンネルをやや抜け出しまして、五十八年三月からは景気も多少上向きでございます。昨年度などは実質五・七%という昭和五十年以来の五%台の成長を遂げたわけであります。ところが、そうした好況と言われる中にありまして、中小企業の倒産は昨年度件数、金額ともに史上最高でございまして、件数では二万件、金額では三兆四千六百億円という数字が実は出ております。  こうした中にありまして、中小企業はこれまた空前の下請法違反によりまして大変苦労されておるわけであります。そのうち下請代金の遅延、それから長期手形の交付あるいは不当な値引きなど、取引によりまして行政指導を行い改善させたものが昨年度は一千二百二十四件、中でも不当な値引きによるもの、返金させたものが百九件、返金を受けた事業所の数では一千五百四十九事業所ございます。またその金額は四億九千四百万円と、件数、金額ともに一昨年の大体二倍、二・五倍くらいに値いたしております。  不当な値引きの中には、共同宣伝費などと称しましてその費用を下請代金から差し引いてしまう会社なんてあるのですね。そういうことを私耳にしたわけでありますけれども、これはかつての三越の協賛金と同じような押しつけ販売などと性質的には似ているのではないかと私は感じております。  いずれにいたしましても、景気が久しぶりに回復の基調をたどっておりますけれども、そういう中にあってどうしてこのような下請いじめの実態がふえてしまっておるのか、この点については私たちもちょっと原因がわからないのでありますけれども、公取委員長の見解をお尋ねいたします。
  129. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 下請行政の非常に重要な問題についての御指摘でございます。  実情は今お話のありましたとおりに推移してきておるわけですが、なぜこのように下請法違反、殊に不当値引き事案がふえておるかということの原因でございますけれども、一概になかなか申し切れませんのですが、一つは、最近の経済情勢の中でコスト引き下げ、コストの削減、合理化ということが非常に重要なテーマになってきておって、その一環として下請の単価の引き下げが要請される場合があるのではないか。また、量産によるコストのダウンというものもかなり見込まれますので、そういうことから今の話が起こっておると思うのですが、何よりも、経済的な要因はともあれ、こういう法律違反が頻発をいたしますのは、下請代金支払遅延等防止法の定めるルールというものを各親企業が十分認識しないで、いたずらに下請事業者に対する単価の引き下げを急ぐということから起こっておると思います。法の不知によってこういう違法な事態が起こらないように、私どもとしては一つには調査体制の充実ということをやるとともに、一つには企業、業界、そういうところを通じての指導に熱意を投じておるところでございます。
  130. 長田武士

    長田委員 最近の新聞を見てまいりますと、例えば半導体の値段がこの一年間で半額になっているのですね。そういう記事が出ておりました。そうしたリスクを下請企業に負わせるということは、私はどうも納得できないのですよね。製品価格のリスクは当然発注者が負うべきでありまして、製品を売っている親企業が全額負うのがやはり道理だろうと私は思います。  そこで、中小企業庁お尋ねしたいのでありますけれども、こうした下請法違反を中小企業庁において処理いたしておるわけでありますが、改善指導なり即時改善等を求めた件数が昨年は二千八百二十一件あったわけでありますけれども一つには違反を内容別に明らかにしていただきたいということと、二つ目にはどのような業種が多く違反しておるか、この点について明確に答えていただけませんか。
  131. 木下博生

    ○木下(博)政府委員 中小企業庁公正取引委員会とでちょうど同じ数ずつの調査を下請に関連いたしてやっておりまして、昨年中小企業庁といたしましては三万四千九十六の親事業者に対して調査をやっております。  それで、その中で違反に関連して改善勧告をし、それによって会社の方で三カ月以内に改善報告した件数が、今先生がおっしゃったような二千八百二十一でございます。それでその改善の内容は、先ほど先生の方からも御指摘ありましたように、文書によってちゃんと注文を出さなかったとかいろいろたくさんの項目があるわけでございますが、業種ごとについて言いますと機械関係が三三%、金属関係が一八%、繊維関係が一三%ということで、この三つの業種で全体の約七割を占めておるということでございます。  機械関係、金属関係が非常に多うございますが、これは当然のことながら下請関係事業者を使う業種がこういう分野に多いということによって起こってくるものでございます。
  132. 長田武士

    長田委員 公取にいたしましても中小企業庁にいたしましても、下請法の趣旨の徹底についていろいろ御苦労されているのは私もよく理解をいたしております。しかし、年々このような悪質な違反がふえていくということはやはり問題であろうと私は考えます。  そこで、より一層親企業に対する啓発活動をしていただくことはもちろんでありますけれども、再び違反を犯した者について、改める意思がないわけでありますから、下請法第七条第四項の規定によりまして企業名を公表したらどうなんでしょうか。こうした強い措置をとりませんと、違反事件は依然として続くだろうというふうに私は考えております。この点について公取委員長はどういうお考えでしょうか。
  133. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 お話しのとおり、下請法の第七条の第四項では、公正取引委員会の行いました勧告に従わない場合には事業者名の公表をするということにいたしておるわけでございます。     〔田原委員長代理退席、委員長着席〕  御案内のとおり、下請法は、親事業者と下請事業者の間の特殊な関係にかんがみまして、制裁措置として公表ということだけを考えておるわけでございます。その趣旨をさかのぼって考えてみますと、下請事業者の受けた不利益の原状回復を速やかに行うということが何よりも大事だということから発しているのだろうというふうに考えております。下請法制定以来三十年間そういう形で、まず現状を速やかに把握して、違法な現状の回復措置を行政措置として勧告をいたしていく、また行政指導いたしていくという形で救済をしてきておるわけでございます。  法律の七条による勧告というのは事例が非常にまれでございますが、行政指導によって、一たん約束しましたことを後から翻すというような非常に悪質な場合に勧告をしたこともございますが、その勧告に従わないという事業者が生じたことはないわけでございます。もちろん法律の規定に従って違反行為の未然防止とその違反行為に対する制裁ということは両々相まって進めていかなければならないことであるというふうに考えますが、私どもといたしましては、当面、周知徹底ということを図りますと同時に、迅速な行政指導による解決ということをもって下請事業者の保護に全力を挙げたいというふうに考えておる次第でございます。
  134. 長田武士

    長田委員 どうかひとつ強い態度で臨んでいただきたいと考えております。  最後に公取委員長お尋ねするのでありますけれども、去年の三月、私は当委員会で運輸業における下請取引の実態の把握の必要性を指摘いたしました。公正取引委員会としてはその後この問題にどのように取り組んでいらっしゃるのでしょうか。
  135. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 机上調査経済の一般概況調査等、準備のための措置を進めておりましたが、前回行いました下請取引の調査から十年以上経過しておることもございますし、経済構造の変化もございますし、取引形態の変化もございます。そこで、お話がございまして私もお答えを申し上げたいわゆる運輸における下請取引の実情調査を今明日から始めたいというふうに考えておりまして、大体貨物自動車運送事業者二千五百人を対象にいたしましてアンケートの発送をして、その後必要に応じて親事業者も含めてヒアリングをやっていきたい。これによっていわゆる運輸の下請問題の解明とそれの是正に努力をいたしたいと考えておる次第でございます。
  136. 長田武士

    長田委員 最後の問題でございますけれども、民間活力と税制問題について少しお尋ねをしたいと思っております。  政府が民間活力の活用をうたい文句にし始めまてからもう既に三、四年経過をいたしております。しかし、具体的にはいまだに経済効果において顕著なものが実際にあらわれていないというのが実情であろうかと思います。それは、今産業社会において起こりつつある変化に的確に対応し、輝かしい二十一世紀を開くための政策の欠如によるものだと私は考えるわけであります。今の産業社会は、かつての大量生産時代から多品種少量生産へと移りつつあります。したがいまして、一層厳しくなる競争の中でも企業が活力を維持し続けるためには、企業の創造的努力を引き出すインセンティブを与えるような税制その他の政策が的確に行われなければならないというふうに考えております。  企業の創造的努力について言いますと、例えば最近の研究開発費を見てまいりますと、昭和五十八年で七兆二千億円でありますが、これはアメリカの大体三分の一ぐらいですね。それに加えて基礎的な創造的な研究が大変おくれているということが日本では随分指摘をされておるわけであります。それから設備投資の面を見てまいりましても、アメリカではレーガン政権になってから設備投資が進みました。最近では設備年齢が我が国よりも若くなったのではないかというふうに大変大きく設備投資が進んでいるようであります。そういうことで、アメリカの設備投資はGNPの拡大に大きな貢献をしてきておるわけですね。  こうした企業の創造的努力が進み、新しい時代に対応して企業の活力が維持されるのは、実は研究開発費に対します税制や設備投資に対する減税あるいは減価償却期間の短縮など、税制面からの的確な対応が大きな効果を生んでおるようであります。  経団連の調査によりますと、我が国における法人税の税負担は主要先進国の中でも最も高いというふうに指摘をされております。そのためか、我が国の自己資本比率が外国に比べますと非常に低いのですね。日本は二六・七%、アメリカにおいては四八・六%、企業の財務力が弱いというようなことが大きな問題として指摘されております。  我が国では、五十九年度には三千六百億円、六十年度には四千億円程度の法人に対する特別措置減税を行ったわけでありますけれども、アメリカにおける一九八五年の特別措置は実に十六兆円であります。イギリスでも一九八二年には特別措置が行われましたけれども、これが三兆三千億円、規模という点では日本は非常に劣っております。イギリスではそのほかにも法人税を一九八二年の五二%から順次引き下げまして、八五年度、本年度でありますけれども四〇%、来年度は三五%に引き下げることになっておるようであります。  中曽根総理は、公平、公正、簡素という視点に立って税制改正を進めると大変力説をいたしておるわけでありますけれども、それに加えて企業の活力を発揮させるという視点は、世界の産業社会の変化の動向を見るときに欠かせない大きな大きな視点だろうというふうに私は考えております。  最近、通産省が減価償却のための耐用年数の見直しを始めるという新聞の報道を私は見ました。大変結構なことでありますけれども、技術革新で、従来のような機械設備の物理的寿命をもとにした耐用年数ではとてもこれは対応できないようですね。技術革新は、耐用年数の半分も使わないうちに機械などは陳腐化させてしまうという状況であります。つまり経済的寿命が終わってしまうわけですね。  また経団連の調べで大変恐縮でありますけれども、例えば自動車製造装置は法定耐用年数は十年ですね。ですけれども、実際にはモデルチェンジ等で大体四年で陳腐化してしまうというのが実態のようであります。また鉄綱の熱間圧延装置は法定耐用年数は十五年でありますけれども、技術革新のために大体二年で陳腐化してしまうというのが実情のようであります。  以上、私いろいろ述べましたけれども政府が真に民間活力を活用しようというのであれば、規制の緩和とともに税制面からの見直しはぜひとも必要であるというふうに考えております。この点について通産大臣の見解をお尋ねしまして、私の質問を終わります。
  137. 松尾邦彦

    松尾政府委員 先生指摘のとおり、我が国の経済の成長基盤を活性化させまして内需中心の成長を図っていくためには、民間活力を最大限に発揮させることが不可欠でございますし、そのためには、その環境整備といたしまして、通産省といたしましてもかねて設備投資減税あるいは技術開発促進税制等の措置を年々実施してまいってきたところでございますが、先生先ほど御指摘ございましたように、今般の政府税調に対する税制の抜本的見直しに関する諮問におきましても、公平、公正、簡素と並びまして、活力ある経済社会の構築を目指すべきことがうたわれておるわけでございますので、このような観点からこの方向での議論が深まることを期待いたしておるわけでございますが、十月十五日の内需拡大策の中におきましても、今後の予算、税制改正の過程で引き続き検討すべき項目の中にはもとより、来年度にはぜひ実現したいと私ども考えております設備投資減税措置、幾つか項目がございますけれども、それらにつきまして実現に向けて努力してまいりたいと存じているわけでございますし、また御指摘の耐用年数の短縮につきましても、最近の実勢に合うように検討課題として勉強してまいりたいと考えておるところでございます。
  138. 村田敬次郎

    ○村田国務大臣 長田委員の先ほど来の御質疑を承っておりまして、大変共感するところが多いわけでございますが、設備投資減税、技術開発促進税制、そういった問題については従来からもこれを心がけており、今後も内需拡大のためにぜひ努力をしてまいりたい、このように考えております。  それから、設備投資その他の関連について、内需の拡大をあらゆる面からやっていかなければならないというのは全く同感でございますので、極力努力してまいりたいと存じます。
  139. 長田武士

    長田委員 終わります。
  140. 粕谷茂

    粕谷委員長 以上をもちまして長田武士君の質疑は終わりました。  続きまして、青山丘君の質疑に入ります。
  141. 青山丘

    青山委員 最初に私の方から総括的に一問だけ、世界経済、世界貿易の動向、見通しについてお尋ねをいたしたいと思います。  昨年度、一九八四年の世界貿易は、金額ベースで見てまいりますと六・五%の伸び、数量ベースで見てまいりますと九%の伸びを示してきました。OECDあたりでは、今年度、一九八五年では数量ベースで五%ぐらいの伸びを見通しておるようでありますが、政府としては今年度の世界貿易の動向についてどのように見ておられますか。世界経済の一割国家として、その動向については正確な見通しを立てて、その対処についても世界の国々が注目をし、またいろいろな意味で要請が出てきておるであろうと思うのです。その的確な把握を聞かせていただきたいと思います。
  142. 黒田真

    黒田(真)政府委員 一九八四年は、アメリカ経済が大変力強い景気の拡大をいたしましたし、輸入もそれに従って非常にふえたということで、世界経済の伸び、世界貿易の伸びは大変大きかったわけでございます。  八五年に入りましてがらの状況でございますが、これはアメリカの経済が拡大はしておるものの、そのスピードが大分鈍ってきたということを反映いたしまして、世界経済及び世界貿易の伸びは、それぞれ八四年に達成した非常に高い水準に比べるとやや下回るのではないだろうかというのが、現在通常考えられているところでございます。  細かい数字につきましては、春にIMFあるいはOECDが発表した数字もございますけれども、もう既に相当時間が経過しておりますし、その後の状況は、当時想定されたよりもアメリカの成長の伸び悩み、またそれにつれて東南アジアを初め各国の経済の調子が必ずしもよくございませんので、二、三年前のマイナスというようなことはもちろんございませんけれども、一九八四年に我々が経験したような大きな伸びは残念ながら期待できないというようなことでございます。
  143. 青山丘

    青山委員 我が国の貿易は、一九八四年の収支が三百三十六億ドル、相当な黒字となっておりますが、同じように西ドイツにおきましても近年は常に黒字国となっております。我が国は一九八一年が八十七億ドル、八二年が六十九億ドルの黒字、この二年間は百億ドル以内でありましたが、八三年以降になりますと三けた台、二百億ドル、四百億ドルぐらいになってきておりますが、こうした状況で、我林国の貿易に対して世界の赤字国から、日本の市場は閉鎖的である、フェアではない、こういった批判が出て、保護主義的な動きが非常に顕著に出てきました。  そこで、我が国の輸出を金額ベースで見てまいりますと、大幅な黒字になってきたのですが、これは日本製品の競争力が強いということもありますけれども、原因は円安・ドル高、こういうところにもあったと思います。そこで、先般のG5、五カ国蔵相会議において合意され、実施されてきた通貨市場への介入、これは非常に適切、有効な措置であったと私は認めておりますが、今後貿易摩擦解消のためにそれぞれの国がよりタイムリーに話し合っていく必要がある、こういうふうに思います。そういう意味で今後の有効な手段、方法というものを今どのように考えておられますか。
  144. 黒田真

    黒田(真)政府委員 ただいま御指摘がございましたように、九月二十二日のG5と言われております五カ国の蔵相及び中央銀行の総裁会議におきまして、非常に明らかなアメリカの政策変更が行われたと思いますし、また同時に各国の政策協調の必要性が一段と強調されたということは、非常に画期的なことだったように思います。そこで打ち出されたねらいが今後とも持続的に維持されるように、為替面でもあるいは政策面の協調でも協力関係が必要であるという点については御指摘のとおりだと思います。  それにつけ加えて、我が国として当面実施すべきことという点についてのお尋ねでございますけれども、私は大きく分けて三つぐらいあろうかと思うわけでございます。  その第一は、先般決定いたしました「市場アクセス改善のためのアクション・プログラム」の着実かつ迅速な実施ということでございまして、既に基準・認証制度における自己認証制度の導入等に関する措置を含んだ法律の改正案は、今国会提出いたしまして御審議をお願いしておるところでございますし、また関税の引き下げをねらいました関税暫定措置法についても準備をしている。こういうものの法律改正を一日も早く実現していただきまして実施していく、アクションプログラムの着実な実施を図るということが第一だと思います。  また、それとともに輸入拡大策を促進するということでございまして、通商産業省といたしましても、通産大臣みずから日本の主要企業の幹部、社長さんを呼びまして、四月には六十社、さらに八月には七十四社に対して輸入要請を行うとともに、十月、十一月の二月間を輸入拡大月間ということで、全国で千カ所以上の輸入品バザールを開くという形で、国民の皆さんに輸入が必要であることをアピールするとともに、関係企業の努力を要請しているということでございます。  さらに抜本的に言えば、内需の拡大ということが経済の拡大均衡を通ずる摩擦解消の王道であろうと思うわけでございますが、そのような観点から、十月の十五日にも当面実施可能な政策というものが取りまとめられておりますし、また予算、税制に伴う措置というものも今後の予算編成過程、税制改正の過程で検討されるというふうに理解しているわけでございまして、こういったものを着実に実施することによって今後の貿易問題に対処していくということが基本ではないかと考えておるわけでございます。
  145. 青山丘

    青山委員 次に、製品輸入、内需拡大については後で触れさしていただきたいと思いますが、貿易摩擦に対する我が国政府対応について少しお尋ねしたいと思います。  我が国における貿易は、海外から一次産品を輸入して、我が国で付加価値をつけた工業製品として輸出してきました。したがって、必然的に金額ベースではどうしても黒字にならざるを得ない、そういう貿易構造がずっと続いてきたわけです。そういうように貿易収支で大幅な黒字が続いてまいりますと、先進国からは日本の市場開放、特定品目の輸出規制、こうした要求が出てきております。次に、最近における我が国に対する要望として、世界貿易の拡大均衡の観点から日本市場の開放、これが強く要請されてきております。  既に我が国は、これらの要請にこたえて七次にわたる対外経済対策を実施してきたところでありますが、アメリカ、ヨーロッパでは有効であったというふうにはなかなか認めておりません。この効果がもしあらわれないということになってきますと、アメリカもヨーロッパも今度は共同して日本の製品の輸出に対する規制を求めてくる、そういう動きが今出てきております。  ただ、ここで注目すべきは、西ドイツも貿易黒字国でありますが、西ドイツの方は比較的摩擦が少ない。なぜ日本がこんなに激しい批判と攻撃の対象になってきておるのか、西ドイツと日本では貿易の構造が違ってきておるのかどうか、その辺の御見解を示していただきたいと思いますし、もう一点は、貿易摩擦の問題となってきますと、これは人事交流、文化の交流、それから経済協力、こうした問題もまたどうしても必要になってくると思うのです。これらに対する方針をひとつ聞かしていただきたいと思います。
  146. 村田敬次郎

    ○村田国務大臣 青山委員の御質問、非常に全般的にわたっておると思います。  日本の貿易構造というのは、青山委員が御指摘になったように、原料を輸入して、そして製品を輸出するという構造でございます。資源が極めて少ない国で、しかも国土は極めて狭い、そして人口が過大でありますから、どうしてもそういった貿易構造にならざるを得ないわけでございます。したがって、先ほど来黒田通商政策局長からお答え申し上げておりますように、今まで、そういったいろいろ累次の貿易のインバランスを解消する、あるいは世界の中の国際国家としての役割を果たしていくという意味の努力を積み重ねてまいったわけでございます。  その意味で、ことしは非常に画期的な年であるわけでございまして、四月九日の中曽根総理の対外経済対策の確定、七月末のアクションプログラムの骨格決定、その後の、例えばニューヨーク・ミニサミットでございますとか日米首脳会談等々を通じて、一つには自由主義経済体制、ニューラウンドの推進、そういう方針をしっかりと推進をする。一つには、今御指摘になった、アメリカやヨーロッパで起こっておりますような保護貿易主義的なマイナスの動きを断固として封ずる、こういった方針を貫いておるわけでございます。  特に、今お触れになりました日本と西独との違いでございますが、アメリカを第一位といたしますと、自由主義世界の中で確かに日本と西独とは第二位を競っておる。非常に似たところがあるわけでございます。ただ、西独は先進諸国の平均的な輸出入構造に比較的近い構造をしておる。ところが日本の場合は、輸送機械でございますとか電気機械、こういったものの輸出に占める割合が非常に大きい、そして輸入に占める割合が小さいということが特徴的でございまして、そういった点で西独に比べて日本の輸出入の貿易体制は非常に目立ちやすい。  加えて、先ほども指摘になりました、一九八四年でいえば四百五十億ドル、これはIMF統計でございますが、恐らく八五年には五百億ドルを超すであろうというような非常に大きな貿易黒字を抱えておることが、何といっても諸外国の失業率であるとかいろいろなものとの対応において目立ち過ぎておるということであろうかと思います。  そこで、今後はニューラウンドの推進、それから保護貿易主義の打破ということと同時に、委員が御指摘になられました文化あるいは技術、そしてまた人づくり、貿易以外のそういったような本来的な問題で国と国との交流を深めていくというのは非常に大事なことだと思います。  その意味で中曽根総理の対外的な対応考えてみますると、文字どおり、総理としては、そういうマクロ経済、内需拡大という経済の基本にわたっての問題を検討し、アメリカやヨーロッパ、世界と話し合っていくということでございますし、その裏には、青山委員が御指摘になったような文化、学術、そういったものも含めての交流ということが大切であるという哲学が中曽根総理の頭の中にはっきりと組み立てられておるのだ、私はこのような理解をいたしております。
  147. 青山丘

    青山委員 製品輸入の活発化についてお尋ねいたします。  最近のニューヨーク・タイムズでは、日本人は豊かな国民であるにもかかわらず、快適の生活を犠牲にすることになれてきて、それを享受する方法を余り知らない妙な国民である。それは、道路であるとか下水であるとか住宅であるとか、アメリカやイギリスに比べて快適さに乏しいことに大変なれている妙な民族というようなことなんでしょうね。だから総理大臣が、製品輸入をしよう、外国のすぐれた製品を日本で買おうではないか、こういうことを訴えても、まるでぴんとこない珍しい民族だ、こんなような印象が述べられてありましたが、そういう一面がきっとあるんでしょうかね。その辺どんな感想をお持ちなのか。現実的には、製品輸入をもっと進めてこないと大幅な貿易黒字がなかなか解消していかない、バランスがとれていかない、こういうことで、製品輸入に対してこれからもっと積極的にやっていく必要がやはりある。これらの取り組みについて御見解をぜひ聞かせていただきたいと思います。
  148. 黒田真

    黒田(真)政府委員 私は、今お示しいただいたような意味で、日本の人たちが何か特別の感情を持っている、特別の対応をする国民だとは必ずしも考えないわけでございまして、我々一般消費者、国民といたしましては、品質のよい物、安い物についてはこれをその国籍のいかんにかかわらず買っていくという気持ちにおいては人後に落ちないものだと思います。ただ歴史的に、先ほど先生が御指摘になられましたように、戦後の発展の過程で、残念ながら外貨の壁というものが成長の壁になるという時代が長く続いたわけでございまして、まず必要なものから買っていくというようなシステムが長く続いたという歴史的な事実はあります。  それからまた、近隣に、日本に対して製品をどんどん提供してくれるような国がヨーロッパ等と比べて少ないというような地理的な条件もあって、必ずしも我々の目の前に他の欧米の諸国と同じような形で輸入製品が提供されているかどうかという現状になりますと、やや立ちおくれているかもしれないという点は否み得ないと思います。  ただ、これは決して国民性とか国民の感じ方の差ということではなくて、何かそういったような歴史的な、あるいは地理的な条件というものが支配をしてきた。そして、特に昨今におきましては、一九七八年に大変に円高になって、輸入をするというような感じが相当出た時期もございましたが、その後、石油危機等のこともございまして、円が安く推移してしまった。そのために非常に外国品の競争力というものが相対的に弱くなって、日本品に立ち向かい、日本人の魅力を十分に引きつけるに至らなかったというような要素があるのではないかと思われるわけでございます。  しかしながら、そういった環境の変化も見えてきておりますし、また、御指摘のように貿易問題を拡大均衡の中で片づけていこうとすれば、我々としては輸入の拡大が必要になるわけでございますし、原材料の面で輸入の拡大ということが考えられない以上、当然そこでは製品の輸入というもの、国際的に見てやや水準の低い製品の輸入というものにもっともっと着目されるべきだと思います。  そしてその際には、消費財というようなものがさらに提供される。その面では、通産省が今努力しております輸入品のバザール等というようなものは、日本の国民の方々に輸入品のよさを再認識していただくいい機会だと思っておりますが、さらに、生産資材といいますか、中間材といいましょうか、部品等のようなものにつきましても、これはむしろ為替レートの変化に伴う外国品の競争力の強化ということが経済原則に従って今後増加してくるという状況にあろうかと思いますので、我々としてはそういった傾向がますます促進することをぜひエンカレッジしていきたい、かように考えておるところであります。
  149. 青山丘

    青山委員 日本も非常に工業製品のすぐれたものができる国ですし、サービスも諸外国に見劣りするものでもない。しかし、生活の豊かさの中に諸外国で安くて高品質なものができれば、できるだけ入れられるような仕組みにしていかなければいけないと思います。  アメリカでもヨーロッパでも製品輸入の輸入率、率といいますか、これは六〇%以上なんですけれども、日本ではまだ三〇%、こういう点ではやはり諸外国から見ると何となくフェアでないような、どこかにガードが固められているかのような印象を強く持つのもあながちやむを得ない。そういう点ではひとつこの製品輸入、これからも進めていただかなければならないと思います。  それから、アメリカとの特定品目で交渉が進められてきております例のMOSS品目、一つには電気通信機器、一つには木材製品、一つには医薬品・医療機器、そしていま一つはエレクトロニクス、この四品目について話し合いが進められてきたようであります。一部では今回の対外経済対策に盛り込まれておるようでありますけれども、MOSS品目の折衝や進捗状況がまだひとつどうもすっきり。つかめておりません。  そこで、今日までの話し合いの状況、進捗の成果、今後の見通しについて、これは何といってもアメリカというのは日本にとって大切な国でありますから、このあたりの取り組みが日本にとっても極めて重要だと私は思います。そういう意味で、このMOSS品目に対する取り組みの経過、現状認識、今後の見通しについて御説明いただきたいと思います。
  150. 黒田真

    黒田(真)政府委員 ただいまお話がございましたように、本年一月二日に中曽根総理とレーガン大統領がロサンゼルスで会談をされた際に、特定のセクター、今御指摘になりました電気通信機器、エレクトロニクス、医薬品・医療機器、林産物という四つの分野についてMOSSという特別の、若干奇妙な名前でございますが、市場アクセスの改善を図るために協議をしようということが決められたわけでございます。  そして、その協議というものは、できるだけ事務的なハイレベルで次官級の代表が参加してこれを行うべきである、こういうことでスタートいたしまして、以来それぞれ四つの分野につきましては数回の会合を、あるいは東京で、あるいはアメリカ側で今日まで行ってまいったわけでございます。その内容というものも非常に多岐にわたっておりまして、関税問題あるいは基準・認証のような問題から、もっと大変細かい、それぞれの産業の実情にまで立ち至ったような詳細の話し合いを行ってきているわけでございます。  これらの現状につきましては、実は九月二十六日に安倍外務大臣がニューヨークでシュルツ国務長官とお会いになる機会がございまして、そこで一応の中間的な取りまとめというようなものを行いまして、分野別討議に関する日米共同報告というものが九月二十六日付で発表をされております。  これらは、その四項目のそれぞれにつきまして、既に実施されている事項、話し合いがついているけれども今後実施されるべき事項、さらに討議さるべき未処理案件というような形で、四つについてそれぞれの今申し上げた三つの項目について全体を整理した、相当詳細な紙が出ているということでございます。  実施したものは、もちろん既に実施されて効果を上げつつあるわけでございますが、今後実施さるべきものについては、当然できるだけ早い時期にこれを完全かつ迅速に実施するということが私ども考えでございますし、今後の課題とされた三番目の点につきましては、引き続き十月以降も協議がそれぞれの分野で進められておりまして、原則として本年末までには両国の間で合意に達しようということも、この安倍・シュルツ会談で取りまとめられているということが全体の姿でございます。  私どもといたしましては、ここで一応中間的に取りまとめられたことを背景にして、未処理の問題をできるだけ多く年末までの間に片づけるということが、何といっても日米間のとげを抜いてと申しましょうか、問題を減らしていく必要条件だということで鋭意努力をしているところでございます。
  151. 青山丘

    青山委員 私は一つの誠意として、例えば木材のように一九八七年の四月まで、それ以降実施しようというような形で、これはこれで誠意ある態度だと思うのですね。今はできないけれども何年ならできるというような、そうした将来のある話の方が相手は信用するのではないかと思います。  それから、アメリカの経済が大変財政赤字、貿易赤字が増大してきておりまして、景気の先行きに対する不安も出てきておる。そういうようなことから、議会では大変保護貿易主義的な空気が強くなってきております。例えばダンフォース上院議員あるいはパックウッド上院議員等々あたりから、どんどん対日不公正貿易是正法案で、あるとか、貿易緊急輸出促進法案であるとか、繊維貿易法案であるとか、自動車関連云々とかいろいろ出てきておりまして、これらの保護貿易的な動きが非常に強まってきておりますが、政府としてはどのように受けとめておられますか。また、これらに対する対処、方針についてひとつぜひ聞かせていただきたいと思います。
  152. 黒田真

    黒田(真)政府委員 御指摘のように、アメリカにおきまして貿易赤字というものが非常に巨額に上っているということ、そしてまた私は、特にドルが過大評価されていたということがそれに拍車をかけたと思いますけれども、非常に保護主義的な動きがことしに入ってから大変顕著にあらわれたと思います。今御指摘のような各種の法案が議会に出されております。  ただ、これをずっと時系列的に見てみますと、春先にはやや感情的といいましょうか、異常にも見えるほどの高まりがございまして、その時点でダンフォース議員が対日決議案というようなものを提案してそれが可決される、そしてそれを法制化しようというような動きが出る、これに対抗して民主党の方からは、課徴金をかけようというような法律が出たというような点については御指摘のとおりでございます。また、繊維についての輸入規制を要求する法案というものも既に下院を通過し、上院をいつ通過してもおかしくないだけの支持者を集めておるというような状況が一方にあるわけでございます。  ただ、先ほど来のお話にもありましたように、九月の終わりあたりから若干空気が変わってきているのかなということもあるわけでございまして、レーガン大統領が、こういった議会の保護主義的な傾向にある意味では対応する形で新貿易政策というものを発表をいたしました。自由貿易は堅持する、アメリカの輸出を大いに振興しよう、そのかわり相手国の不公正については厳しい態度で臨む、そして日にちは一日前でありましたが、G5の合意というものがやはりアメリカの新しい貿易政策の極めて大きな要素をなしていると私は思うわけであります。  そういうことで、行政府側の対応一つ行われたということとともに、アメリカの議会におきましても、やや個別の、あるいは特定国を相手にした法案というものから、もう少し包括的に貿易の現状、貿易体制というものを考えてみようじゃないかといったような空気が最近出てきておるようやございまして、既に下院の共和党が貿易パートナーシップ法案というようなことで、輸出促進、新ラウンド等国際交渉の推進というような点を目的とする包括法案を出しておりますし、また最近には、上院の民主党が包括法案を用意している、そして幾つか提案をされているという状況もございますし、それぞれが比較的包括的な法案を考え始めているということで、空気が変わって、その中には春先に見られたようなやや極端な保護主義的な要素を必ずしもすべて取り込んでいるわけではないというあたりは、ある意味で好ましい変化ではないかと思われるわけでございます。  しかし、アメリカの抱えている諸問題がすべてG5によって片づいたわけでもないわけでございますし、アメリカ経済が直面しているいろいろな問題というものの根がある以上、今後もいろいろな保護主義的な動きというものが出てくることは考えておかなければいけない。それに対して現行政府、レーガン大統領は、非常に強い決意でこれに対抗するという姿勢を維持しておられます。  我々としても、そういったレーガン大統領の自由貿易体制維持のための強い決意というものをできるだけ応援するということが必要だろうと思うわけでございまして、先ほども申しましたように「市場アクセス改善のためのアクション・プログラム」をできるだけ早期に確実に実施する、あるいは輸入の拡大を図っていく、そしてそれは各社に依頼をするという形とあわせて、より根本的には内需の拡大を図るというような形で対応していくことが必要なのではないか、かように考えているところでございます。
  153. 青山丘

    青山委員 ぜひひとつそんな取り組みを進めていただきたいと思います。  内需拡大策の効果について若干お尋ねいたします。  十月十五日政府が発表いたしました内需拡大策は、これまでのような金融財政の裏打ちがない、そういう意味で力不足の感は免れませんでしたが、この対策が貿易摩擦をめぐる今日のアメリカに対して果たして説得力を持つものかどうか疑問であります。ただしかし、国内的には景気に陰りの見られる現在ですから、内需に多少のてこ入れになることは間違いないと思います。  そこで、二点について政府のお考えを伺っておきます。  まず、当面早急に実施する対策のうち、個人消費の喚起に関連して、この際、全消費者信用取引の分野において抜本的な対策を講ずるべきときが来ておるのではないかというふうに考えます。今回の対策においても、消費者金融の問題、それから割賦販売、先ほどやりとりがありましたが、標準条件についての見直しが行われているようでありますが、アメリカにおける法律制度、この分野に関する法律は約八十本ぐらいあるということなのですが、アメリカの方ではかなり法律制度の整備が進んでいるのに、我が因の場合ですと、関連法案では割賦販売法等三本のみ。もっとも計算の仕方はいろいろあるようですけれども、三本のみというような状況下にあると思います。このために、最近では不良債権の増大によって信販業者、これの経営内容が悪化しているということであります。昨今の金融問題研究会や消費者信用適正化研究会中間報告等においてそんなことが明らかにされております。  それで、政府が今回の内需拡大策を将来に向けてその効果を期待できるものとするためには、消費者信用取引に関する法令の整備、これを急ぐ必要があると思いますけれども、いかがでしょうか。
  154. 松尾邦彦

    松尾政府委員 先生指摘のように、確かに個人消費はGNPの中でも最も大きな費目でありまして、内需拡大の中では最も、力を入れれば入れただけの効果のある重要項目だと存じます。  そうした中で消費者信用は近年大変大きな伸びを示してきておりまして、現在ですと、家計可処分所得の一五%ぐらいを占めるほどになってきているわけでございますけれども、このような消費者信用の著しい発展が、確かに個人消費の喚起にも大きな寄与をしてきたことは事実だと存じますけれども、その反面、先生もちょっと御指摘ございましたように、消費者の支払い能力を超える与信によりまして、多重債務者の問題が顕在化しているわけでございます。各国におきましてもこの問題についての取り組みが行われておりますけれども、私どもといたしましても、これにつきましてはいろいろな対応を進めてまいらなければならないと存じております。つまり与信段階でのチェックを厳格に行いまして、多重債務者の発生を未然に防止する観点から、消費者信用情報の整備充実を図るため、以下のような方策を講じているところでございます。  一番目には、信用情報機関の整備、統合ということで、効果的な情報管理体制をつくるために既存の信用情報機関を統合いたしまして、株式会社信用情報センターを既に設立いたしまして、本年四月から営業を始めたところでございます。  第二に、このような機関の適切な運営を図りますために、プライバシーの保護等には十分留意しながら、消費者信用情報の収集、管理、提供、本人への開示などに関しまして、割賦販売審議会の消費者信用情報分科会におきまして検討を重ねまして、先般七月報告をいただいたところでございますので、この報告を踏まえまして、関係業界に信用情報の適正な管理の徹底を指導いたしてまいる所存でございます。  第三に、過剰与信の防止を一層徹底するためには、私ども所管しております物販系の消費者信用情報機関とあわせて、大蔵省系統の金融系の消費者信用情報機関との間での相互の情報交流についても現在検討を進めているところでございまして、これらによりまして、私どもといたしましては、消費者信用の健全な発展を図ってまいるための環境づくりに努めたいと思っております。  先生は法制の整備という御指摘でございましたが、このように一歩一歩実態を積み重ねていくことによりまして、御指摘趣旨を生かしてまいりたいと考えているところでございます。
  155. 青山丘

    青山委員 一点は、今触れられましたように、多重債務者の救済のシステムですね。これをこれからしっかりやっていかないと、無責任な多重債務者が出てきますし、それによって不利益を受けるのは公正で良識のある、といいますか、まじめな利用者がそのしわ寄せを受けることになるわけです。例えば手数料とか金利とかにそういうしわ寄せがどうしても来ざるを得ません。  個人消費を喚起する対策として、予算を伴わないで行政指導でできると考えられるのが、今申し上げたように、消費信用取引に関連するいわゆる取扱手数料の低減化の問題、金利の低減化の問題、こういうことであろうと思うのです。これがやはり新たな需要を喚起していくものではないかと考えます。いかがでしょうか。
  156. 松尾邦彦

    松尾政府委員 先生指摘の多重債務者問題に対する救済措置、これはまことに重要な問題でありまして、先ほど申し上げました信用情報機関の整備ともども車の両輪のような役割を果たすべきものだろうと存じております。  先ほど申し上げた信用情報機関のことは別といたしまして、多重債務者に対する救済措置の点につきましては、現在クレジット債権回収問題研究会を設置いたしまして、来春を目途に、海外の実情も調査しながら、多重債務者に対するカウンセリング等の対応策を検討いたしているところでございます。  そのほか、先生の御指摘かございましたように、いわゆるクレジット社会の到来を迎えまして、消費者が安心してクレジットを利用できるようにする、あわせてまた業界の健全な発展を図るためには、いろいろ環境整備をしてまいらなければならないと思っております。昨年改正していただきました割賦販売法の徹底もそうでございます。  それから、今申し上げました信用情報機関あるいは多重債務者に対するカウンセリングシステム、これらはもとより大事でございますけれども、今先生最後に御指摘がございましたように、クレジット業界に対しましては、消費者利便の向上に対する積極的な取り組み、この点につきまして特に指導を強化してまいりたいと思いますが、あわせて、厳格な与信管理等による経営基盤の強化にも努めてもらわなければならないと思っております。  さらに申せば、消費者に対しましては、返済能力に応じた合理的なクレジットの活用が行われますよう、消費者の啓発にもあわせ努めてまいりたいと考えております。
  157. 青山丘

    青山委員 最後に一、二間、流水占用料と水源税構想についてお尋ねいたします。  現在建設省から流水占用料の改定と、林野庁からは水源税の創設の構想があると聞いておりますが、本来河川の管理であるとか治山治水といったたぐいのものは政治の基本であります。そういう意味では、こうした政治の基本にかかわる予算措置が特定財源に依存しなければならない、これは全くなじまないものだと思います。当然一般財源で対処されるものであると思うのですが、いかがでしょうか。この点が一点。  それから、もし仮にこの構想が実現するというようなことになってきますと、今度は地下水源の方へどうしても依存せざるを得なくなってきます。そうするとまた、かつてのように地盤沈下の問題であるとかが出てまいります。これもやはり国土の保全、国民生活の安定、こういう政治が当然なさなければならない重要命題、こういう政治姿勢に対して、これは逆にまた政治に対する信頼をなくすことになってしまう、こういうふうに思うのですが工いかがでしょうか。
  158. 村田敬次郎

    ○村田国務大臣 この問題は大変重要だと思っております。今お挙げになりました二つの構想は、地下水のくみ上げによる地盤沈下の防止を目的にして展開してまいりました工業用水政策に矛盾するばかりでなく、我が国産業界に過重の負担を強いるとともに、「増税なき財政再建」という政府の基本方針趣旨に反するなど、多くの問題点を内包していると認識をしております。  青山委員指摘のように、そもそも治山であるとか治水事業であるとかということは国の基礎的な施策でありまして、これは本来一般財源で手当てすべきものである。したがって、通産省としては基本的に本構想に反対でございます。  それと同時に、地下水くみ上げによる地盤沈下の防止で工業用水政策をとってきたわけでございますが、こういったものに課税をするということになれば、また地下水をくみ上げるというようなことになりかねない。個人的なことをこの際申し上げて恐縮ですが、私は愛知県で水道部長をやったことがございまして、したがってアロケートの問題であるとか、いわゆる工業用水、上水道それからまた農業用水、そういった諸般の関連についてもかねてからいろいろな体験を持っておりまして、今申し上げましたように一般財源で断固対処すべき問題である、これを特定財源によって考えていこうという考え方自身に基本的な矛盾がある、このように考えておるところでございます。
  159. 青山丘

    青山委員 大臣が今申し述べていただいたとおり、「増税なき財政再建」というのは中曽根内閣の基本的な姿勢であります。にもかかわらず税が創設されていくなどというのは全く自己矛盾も甚だしい。これが第一点。  それから、通産省が所管しております各産業分野においても、例えば電力ですと中小水力発電所の開発に一生懸命取り組んできておられます。また紙パルプ産業は、構造改善事業で今進めておる最中であります。繊維も同様であります。鉄鋼産業においては大変な経営努力を今やっている最中。こういうときに、片方では構造改善事業を進めながら、片方では新しく税を創設して首を絞めていく、全く理解できない。こんな政治はあるはずがないと思うのですが、最後にひとつ大臣の強い決意を述べていただきたいと思います。
  160. 村田敬次郎

    ○村田国務大臣 青山委員の御指摘、非常によく理解できるのでございまして、実は流水占用料、水源税といったようなものが各業界に与える影響等の問題につきましても、立地公害局を中心に実はいろいろ試算その他の調査を行っておるところでありまして、こういった負担に現在の非常に厳しい産業界が対応、負担し切れないという情勢がございますので、先ほど申し上げましたように明確な姿勢を通産省としては打ち出しまして、両構想に反対を表明しておるところでございます。
  161. 青山丘

    青山委員 ありがとうございました。
  162. 粕谷茂

    粕谷委員長 青山丘君の質疑は終わりました。  引き続いて、工藤晃君の質疑に入ります。工藤晃君。
  163. 工藤晃

    工藤(晃)委員 最初に、国際通貨の問題について大蔵省に伺います。  アメリカのレーガン政権の政策として、急速な軍拡を進め、同時にレーガノミックスなどといってかなり大企業向け減税をやって、そのあげく非常に大きな財政赤字を出す。同時にまた景気の拡張をやる。そこで貯蓄と投資の非常に大きなアンバランスができたけれども、それを日本やヨーロッパその他からの巨額の外資流入を進める。その媒介項となったのが高金利だと思いますが、その結果ドル高がどんどん進み貿易の赤字がますます大きくなる。そしてついにアメリカの債務国転落ということになってまいりました。  これは歴史的に非常に大きな変化で、したがいまして、ドルの暴落とか下落がいつ来るかというのはもはや時間の問題になっていたというところで、例の九月二十二日の五カ国蔵相会議の合意というのがあったと思うわけであります。  これは私、ヨーロッパ共同体の人たちに会いまして彼らの意見も聞きましたし、最近海外経済協力基金総裁の細見草氏がある雑誌にも書いておりましたけれども、ともかくアメリカとしては非常な方針転換である、考え方を変えだということが広く認められているわけであります。  しかし、今後どういうふうになっていくのかいろいろ考えられるわけであります。私はそのときベルギーに行っていたのですが、九月二十八日のイギリスの新聞、英語の新聞はそれしかないので読んでいたら、ニューヨーク・タイムズのサービスとして早くもこの九月二十八日の時点で、問題は今度の五カ国蔵相会議というのは円に対するアクションである、円が目的である、そうして一番いいのは二百円から二百十円であるというのが書かれております。切り抜きを持ってきております。あのころまさかそこまでいくとは私ももちろん思っておりませんでしたけれども、最近の事態を見ますと何かうまくここにはまっていっているという感じもするわけなんです。  そういうことで、第一の質問というのは、この五カ国の合意、これは文書としてもいただいておりますからどういう内容になっているかはもう十分承知しているわけでありますけれども、この中でいろいろ言われていることは、結局これまでの変動相場制そのものをかなり大幅な手直しまで持っていくんだろうか、そうすると当然それぞれの通貨のある目標値、かたく決めるか緩く決めるかは別としてそういうことになるのではないか、そういう見通しを持ってやられておるのではないか。  さっき言いました細見草氏も大体そういうことを書いておりますし、きょうのある新聞を見ましたら、いつも話題になるベーカー財務長官が、これは一時的な協調ではなくて、より安定した通貨体制への踏み台となるというようなことを言っておりますので、かなり長期的にこういう円高を定着させていくという目的で何らかの変動相場制の修正をやるのではないか、そういう方向を目指しているのではないか、少なくとも日米ではそういう方向ではないかという考え方。これはヨーロッパはもちろんそういう考えが非常に強いわけですから、とりわけ日米もそういう考え方になってきたのではないか。その辺どうか伺いたいと思います。
  164. 金子義昭

    金子説明員 先生指摘のとおり、九月二十二日のG5の合意以降ドル高是正が急速に進んでいるということでございます。これは、各国の経済ファンダメンタルズがそれぞれ為替相場によりよく反映されるようになった、こういうことではないかと思っております。  G5の合意と申しますのは、やはりドル高が問題である、現状の対外不均衡を前提にいたしますとやはりドル高是正が重要ではないかということで、一応各国がそういう認識のもとに協調して介入をいたしますと同時に、その附属声明にありますような協調政策をとっていくということになったわけでございます。  今先生の方から、何かG5の方である特定の相場水準あるいは特定の目標を持ってこういう合意ができ、場合によってはこれが変動相場制の変更につながっていくのではないかというようなお話がありましたけれども、このG5におきましては、そういう特定の目標を合意したということは全くないわけでございます。基本的には、とにかく為替相場がもう少し経済のファンダメンタルズをよりよく反映するようになってほしい、そのために政策協調をするなり介入をするなりということで、実際にどういう水準が適当かというのは結局は為替市場の合理的な判断にゆだねざるを得ないところでありまして、私たちは、新聞等にもよく言われましたように、二百円を目標にしているんだとかそういうことは全くなかったわけでございます。  変動相場制の変更に将来つながっていくのではないかというお話がありましたけれども、ことしの春に行われましたG10の報告書という中で、やはり現状においては変動相場制以外の選択はないのではないかという趣旨の結論が出ているやに聞いております。  ただ、いずれにしましても通貨制度をどうするかというのは確かに重要な問題でありまして、いろいろな場で今後検討されることはあり得ると思いますけれども、このG5の合意が直ちにそれを背景にできたものだということはないのではないかと思っております。
  165. 工藤晃

    工藤(晃)委員 もう一問伺いますけれども政府としては、あるいは日銀としては、何円が目標とかいうことはこれはあっても公表できないし、あるいはないかもしれないし、何とも言えないと思うのです。  それはさておきまして、この合意書そのものの中にはっきり書いてあることとしては、ただファンダメンタルズを反映するというだけでなしに、対外インバランスを調整する上で為替レートが役割を果たさなければいけないということがまず第一に書いてあって、そういうことを前提として対ドルレートのある程度の一層の秩序ある上昇が望ましい、そのために協力しましょうということになっておりますので、結局アメリカの赤字が減り、あるいは日本の黒字が減る、そういうところへ持っていくための為替レートでなければならないという趣旨だと考えるわけです。  そうであるならば、この合意が今後生きるとするのであるならば、よくJカーブとかなんとか言われるように、今のレートがどうなるかは別として、ともかく今のような円高の状態というのをやはり半年とか一年とか続けないと、このインバランスの調整ということにならないのではないかと思いますが、その点に限って御答弁をお願いします。
  166. 金子義昭

    金子説明員 先生指摘のとおり、対外インバランスの改善のために為替相場がある程度経済ファンダメンタルズを反映しなければいけないという趣旨が書かれていることは御指摘のとおりでございます。  ただ、対外インバランスというのはいろいろな要因があるわけでございまして、もちろん為替相場も一つの要因でございますし、それから各国の成長率格差というようなものもそのインバランスの原因になっているわけでございます。したがいまして、為替相場の改善だけでもってインバランスを完全になくすということはなかなか難しいわけであります。  ただ、G5の趣旨は、対外インバランスを改善する方向で為替相場がより経済ファンダメンタルズを反映するようになってほしい、そのために政策協調しましょう、こういうことでございます。協調介入というのはそういうことでとりあえず始められたわけですが、その附属声明にありますように、やはり各国がそれぞれとるべき施策をとって協調政策を着実に実施していく、例えばアメリカで言えば、今お話のありましたように、アメリカの財政赤字を縮減していくということが必要なのでありまして、そういう意味で、今後ある程度の期間にわたって各国はそれぞれそこにありますような政策を実施していくことが必要だ、かように考えているわけでございます。
  167. 工藤晃

    工藤(晃)委員 私は一般論として、為替レートだけで調整できるとかできないとか、そういうことを聞いているわけじゃないんだけれども、ともかく今のドル高を是正しなければアメリカはどうにもこうにもならないし、世界経済はおかしくなってしまうというので今度始まったことは明らかであり、そしてアメリカが協調的に介入を始めだということも今度初めてのことでありますので、やはりこれは国際通貨におけるかなり大きな変化でありますし、それからねらいは、やはりこれによっても対外インバランスを減らすということをねらわれていることはここに書いてあるとおりでありますから、それを前提にすれば、私の議論しているように、一年とかあるいはかなり長い間円高というのを続けるという方向に向かっているということは明らかだろうと思います。  もちろんこの中にもその他のことをやると書いてあるし、私自身もそういうことはいろいろと議論しておりますから、この問題はこれ以上続けようとは思いません。きょうの問題は、そういう今度の国際通貨の一つの変動、円高ということで、どうしても我々としてはこれがかなり今後続くということで、日本の経済問題、国民の生活問題を考えていかなければならない、これもまた責任だろうと思います。  そういうことで、最初に、先ほど来委員会の中でも特に円高による中小企業への影響ということが議論されましたので、私も少しこの問題に触れてみたいと思いますが、例えば全国中小企業団体中央会がやった産地組合における円高の調査というものももうまとめられております。一ドル二百十円台でも極めて深刻だという答えが五六・九%ですから、仮に二百円から二百十円だということからすればもっと多くなるに違いありません。  しかし、この問題については私はきょうここでこれ以上伺わないで、限られた時間でありますので、輸出関係の、大きな企業の下請に対してやはりこの円高をきっかけにして工賃の切り下げがかなり広がり出している。これは私自身も、あるいは我が党関係のいろいろな調査によって出てきておりますが、一、二例だけ挙げておきますと、例えばエヌ・テー・エヌ東洋ベアリング、これは全国にある主要な工場で五%ないし一〇%の下請単価の切り下げという要請が出されております。それからシャープ、これはテレビ、ビデオ部品で三〇%、これはちょっと信じられないほどですが、いろいろ念を押してやはり三〇%だというのですね。これは一次下請が二次下請を呼んで、三〇%と言われてきた、一次下請の方では一五%持ちます、しかし二次の方ではともかく一〇%のカットをのんでほしい、あとの五%は今後いろいろ協議してやろうではないかということが出てきたわけであります。  これは私、ただ二つの例だけを挙げたにすぎません。時間の関係でいろいろ例示するのをこれ以上控えさせていただきますが、ともかく円高で輸出関連の大きな企業がそういう下請に対する一方的な工賃の切り下げを求めてきて、業者の方は対応に困っているというのが今の事実であります。  そこで、これは道産大臣にもよく聞いていただきたいし、中小企業庁長官にもよく聞いていただきたいのですが、そもそもこれは中小企業白書、これは五十八年度の中小企業白書を見ましても、大変びっくりするいろいろな資料がありますけれども、例えばこの中の四百六ページに下請受注単価の推移それから卸売物価の推移のグラフが書いてありますが、ちょうどこれは五十六年の一-三月期から五十八年の十-十二党期までの四半期、そして三年間とられておりますけれども、ともかく下請受注単価というのは毎期毎期対前年比がマイナスなんですね。ただ五十六年一-三月期だけが辛うじてちょっと一〇〇を上回っておりますが、みんなマイナスでずっと三年間続いてきている。  卸売物価の方は御存じのようにこうですね。一〇〇から上がったり、少し下がったりしている。そういうことですから、この中小企業白書そのものの中で、下請企業を取り巻く経済環境は年々その厳しさを増しつつある。この中に、間断ないコストダウンの要請ということがはっきり出されていて、中小企業庁日身もこれは非常に新しい大事な事実として認められている。その上今度のちょっと思いがけないと育っていいほどの急激な円高が来ている。そこで今のエヌ・テー・エヌ東洋ベアリングやシャープみたいな事態が起きているというのは、私法して不思議ではない。中小企業白書にさえ、こういう事態、こういう状況があったのですからね。  しかし、こういうことは規制しなければいけないんではないかということで、まず公正取引委員会に伺うわけでありますが、下請代金支払遅延等防止法による、下請企業に一律に一定比率で単価を引き下げる、こういうことを求めてくる場合は第四条一項五号のこれに該当する、一律に一定比率で単価を引き下げさせる場合、これは不当に定める行為というふうに説田もされているわけでありますが、そういうことになるのではないか、この点をまず伺いたいと思います。
  168. 利部脩二

    ○利部政府委員 全くその先生指摘のとおりでございまして、下請事業者の責任でない理由により、また下請事業者に発注する製品の単価の合理的な算定とは無関係に、それ以外の条件を理由にして一律に下請代金を切り下げるということは、現在の下請法違反になる行為でございます。
  169. 工藤晃

    工藤(晃)委員 それでは公正取引委員会にお願いしますけれども、今私が挙げたエヌ・テー・エス東洋ベアリングやシャープその他の件については、ぜひ調査していただきたい。また全国的にこういうことがどうなっているか調査していただきたい。これが一点。  それから、前回円高のとき、これは五十三年九月二十日付になりますが、通産大臣、公正取引委員会委員長の名前で「円高に伴う下請取引の適正化について」というのが特別通達として出されておりますね。そうしてまた、そういう円高との関連ということでありませんが、毎年暮れにはやはり親業者などに対して、下請との関係が正しくない方向へいかないようにという通達を出しておりますけれども、やはりこの機会に、どうせ暮れには出すというからじゃありませんけれども、ともかくこういう事態が起きておりますから、ちょうど五十三年九月二十日の例に倣って、通産大臣と公正取引委員会委員長の名前で、こういう趣旨の通達をぜひ出すべきだと思います。それをお願いするわけでありますけれども、出すなら早く出してほしいということですが、この二点について公取と中小企業庁からお願いします。
  170. 木下博生

    ○木下(博)政府委員 下請取引の適正化につきましては、常時公正取引委員会協力いたしまして、法律が適正に実施されるようにやっておるわけでございまして、毎年その関係関係事業者に対し通達を出し、あるいは下請企業振興協会等に対する通達を出してその実現方を図っておるわけでございます。  そういうことでございますので、そういう一環といたしまして、最近の円高事態も踏まえて、各企業に対して指導を十分やっていきたいというふうに考えております。  ただ、先ほど先生から御指摘のありました点につきましては、一般論として、こういう円高の事態で、下請代金の切り下げというような要請が親企業者から出る可能性というのは十分あり得ると思いますが、ただ、具体的な二社について御指摘ございましたけれども、私どもとしてはまだ承知していない状況でございます。
  171. 工藤晃

    工藤(晃)委員 承知してないということでなしに、じゃ、調べていただきたいということです。
  172. 木下博生

    ○木下(博)政府委員 一億円以上の大企業者、親企業者につきましては、毎年その企業を中小企業庁とそれから公正取引委員会と分けまして、下請についての調査を悉皆調査でやっておるわけでございます。したがいまして、今御指摘のありましたような企業につきましては、当然その対象となりますので、そういう悉皆調査の中で十分調べていきたいと考えております。
  173. 工藤晃

    工藤(晃)委員 調査が大体四年で全数調査になるというけれども、たまたまことしはこの企業が入ってなかったというのじゃ困るので、やはり直接訴えのあったことはその年すぐにやっていただかなければ困るということと、それからもう一つ、さっき言った通達をお出しになるということで、大変結構ですが、なるべく早く出していただきたいということです。その二点よろしくお願いします。
  174. 木下博生

    ○木下(博)政府委員 たまたまでございますが、先ほど御質問のあった二社については、今回中小企業庁調査の対象の企業の中に入っておりますので、そういうのを含めて調査をすることになろうと思います。  それから、通達につきましては、できる限り、公正取引委員会とも協議いたしまして、早目に出すように努力したいと考えております。
  175. 工藤晃

    工藤(晃)委員 私が特にこの問題を取り上げますのは、日本の大企業の輸出ラッシュということが問題になるときに、政府としては最近長時間労働の問題まで取り上げるように一応はなってきましたけれども、それはそのほかいろいろ労働条件の問題はありますけれども、特に下請に対して、円高になると下請企業をちょうど緩衝装置のように考えて、それで、いや百八十円でも耐えられるぞという中には、その分はみんな下請にやるんだということがこれまでもやられてきた日本の経済構造の特徴なんで、こういうことをよく言うわけです。  一例だけ挙げておきますが、これは通産省とも関係の深い機械振興協会、その経済研究所が、ちょっと前になりますが、自動車産業について調査したとき、千人以上の企業の賃金を一〇〇とすると、下の方になるとどうなるか。二十人から二十九人になると六〇・九、十人から十九人になると五九・〇、四人から九人になると四六・五、一人から三人になると一九・七、一番下のところは、韓国での海外生産並みの三割安というのですから、韓国の海外生産の七割水準だということ、これは通産省関係のちゃんとした研究所がこういう結論を出しているわけで、こういうところにやはりメスを入れていかなければならないという考えてあります。しかし、きょうはちょっと時間の関係もありますので、先の問題に移っていきます。  次の問題は非鉄金属の問題です。これも今の円高の中で大きな問題になってきておりますけれども、これは、一つは非鉄金属の世界的な価格が急落している。すずの取引が全面停止になった。銅、鉛、亜鉛なんかの相場が非常に落ちております。それに加えて、円高の影響ということが来ておりますので、例えば銅の価格、きょうの新聞で見てまいりましたら、大体一トン当たり三十一万円を前後しているというところであります。一時は七十四万円というときがありましたから、どんなに下がっているか明らかだと思います。  いろいろそういう実情は、私が述べなくても、これは通産省資源エネルギー庁の側でよく御存じだと思いますから、これ以上述べませんけれども、ともかく我が国の金属鉱山というのは、一九七〇年ごろ約二百あったのが今六十七になってしまった。それで、LMEの価格の変動で直接経営が左右される、為替レートで直接左右されるという極めて特殊な事業だと思いますが、しかし、一時的に価格が下がったり相場が動いたときに我が国の重要資源が失われていくということは、これはまことに残念であり、認めることのできないことであります。  そういうことで、今から七年前になりますが、この委員会におきまして、金属鉱業事業団法の一部改正ということで金属鉱業緊急融資事業というのを新たにつくりまして、附帯決議も行いました。私もそのときの商工委員として、それがどう実施されるか、責任を負っている者の一人でありますから、今のこういう事態に対して少なくとも、まず金属鉱業緊急融資事業を拡充して実施するということをぜひやっていただきたいと思いますが、その点どうでしょうか。
  176. 野々内隆

    ○野々内政府委員 緊急融資制度につきましては、そのときの景気、状態によりまして融資規模が違うわけでございまして、五十九年度に約四億円の融資実績がございますが、六十年度につきましては、上期の融資実績が三千三百万円でございまして、下期には五十億円程度の融資見込みになるのではないかというふうに考えておりまして、事態の推移を見ながら弾力的な運用を図っていきたいと考えております。
  177. 工藤晃

    工藤(晃)委員 じゃ、この問題でもう一問、これは具体的なことを伺います。  宮城県の細倉鉱山、細倉鉱業株式会社といいますが、ここは鉛、亜鉛が中心で、出鉱と同時に製錬も行っております。既に価格の急落と円高ということで全山的に時間外カットが行われる、あるいは探鉱延長の削減などが行われるということで、ともかくそこの従業員はもとより、そこの地元の住民の皆さんは、閉山になっては困るということで大変不安が広がっているわけであります。それで、どうも会社の方では年内に資金ショートを起こすのではないか、こういうことが言われたりするために余計そういうふうになっていると思うのです。  それで、ここで特に通産省の方にお願いしたいのは、さっき言ったように、全般として金属鉱業に対する緊急対策を強めるということと同時に、これはすべての日本の金属鉱業会社がそうじゃないんですが、三菱金属の場合は、もともと三菱金属のドル箱であったのを、ある不況の際に別会社にしてしまって、実はそこの生産物を一手販売するとか、もちろん株主の関係でいえば主要株主になっているとか、そういうことですが、一応別会社にしてしまいまして、それで三菱金属の方は、最近は新素材で世界的な企業になるんだというようなことを言っているわけでありますが、それだけに、別会社にしているだけに、責任逃れみたいなことをやられると閉山に追い込まれるおそれが非常にある。  それから、事実上これは三菱金属と一体であるということをまず見ていただきたいのです。具体的に心配なのは資金の問題で、保証はするけれども直接資金の援助はしない、こういう問題もあるのです。しかし、これは日本の金属鉱業を大事にするという立場からいっても、三菱金属自身は大変力強くやっている企業でありますから、政府としても当然、これは切り離して閉山するとか追い込むようなことはさせないように三菱の方にも指導していただきたいし、また、全体としてこの山が守れるようにいろいろ対策をとっていただきたいということですが、その点いかがでしょうか。
  178. 野々内隆

    ○野々内政府委員 分離いたしました子会社と親会社関係というものは、経営の基本的な問題でございますので、私どもとしても介入は難しゅうございますが、この御指摘の鉱山につきまして今のところまだ閉山というようなことは聞いておりませんし、私どもとしても、現在の緊急融資制度というものの利用も多分可能であろうかと考えておりますので、できる限りの支援を検討してみたいと思います。
  179. 工藤晃

    工藤(晃)委員 その点ぜひ大臣の方も、商工委員会としてはもともとそういう制度をつくったときの精神がありますので、それを引き継ぐ意味で、事実上の子会社でありますから親企業の方にも指導する、そういう点をよろしくお願いしたいのですが、その点に関して御答弁願いたいと思います、
  180. 村田敬次郎

    ○村田国務大臣 国内鉱山は、最も安定した供給源でございますし、また地域社会の中核的な存在であるとともに、海外資源開発のための鉱山関連技術の蓄積の場として重要な役割を果たしていることは十分認識いたしております。  先ほど工藤委員が御指摘になりました五十三年五月の衆議院商工委員会の決議を十分尊重いたしまして、現下の円高等による地金価格低迷のための経営悪化、そういった鉱業関係企業への金属鉱業経営安定化融資制度の適用であるとか、中長期的な鉱物資源の安定供給確保のための探鉱促進策など、各種の施策の推進について鋭意努力をしてまいる所存でございます。これは、今御指摘になりました件についても同様でございます。
  181. 工藤晃

    工藤(晃)委員 それでは、その問題で通産省として一層努力していただきたいという希望を重ねて申しまして、最後に、円高差益問題などについて残された時間伺いたいと思います。  直接は電気料金、ガス料金になりますが、これは二つ問題点があって、一つは燃料の価格がどうなるか、どうなってきたか、それからもう一つは為替レートが今後どうなるであろうか、この二つと関係がおるわけなんです。燃料の方は、特に石油とLNGは非常に連係して動いておりますから、石油を代表させれば大体動きが出てきますがいこれはIEAの見通しなどでも、二〇〇〇年まではエネルギー需給の中で石油はむしろ需要がそうふえない、そういう見通してあります。つまり、石油は一九八二年の水準まで二〇〇〇年になっても追いつかないだろうという見通しさえ出しているぐらいであります。  それに加えて、最近はOPECの方も、加盟国は今やいかなる価格で原油を売っても構わないというところに来ているということがオタイバ・アラブ首長国連邦石油相のあるテレビインタビューで伝えられるような状況ですね、これはどこまでそうかは別としまして。こういう状況がありますし、それから円高の見通しについては、冒頭に私が伺いましたように、これはかなり長期的な状況だと判断せざるを得ないわけなんです。  そこで、電力業界筋でも円高が十円進むと九電力で千二百億円差益が出る。この前の電力料金算定のときは二百四十二円でありますから、最近みたいに二百円から二百十円、中間をとって二百五円だとすると三十七円。したがって、四千四百四十億円という差益が出る。これが消費者、国民に返されるとそれこそ内需拡大にもなるし、今の生活のいろいろな困難を助けるということになるわけなんです。  これは十月十四日12チャンネルの報道番組で、野村週報編集長の青山浩一郎氏がこういう例を出しておりました。さっき言った円高の方で三十円の円高とすると三千六百億円、原油差益は一ドルで千億円という見積もりを出して、五ドルの原油安だと五千億円、合わせて八千六百億円という額だ。そして三〇%家庭に返すならば二千七百億円で、二月当たり五千四百円である。現行料金を七・五%値下げできる。ここまでが青山氏のレポートなんでありますが、私がつけ加えまして、六〇%家庭に回していいじゃないか。そうすると五千四百億円になりまして一五%下げられるだろうということにもなるが、こういうことが今広く国民の世論にもなっておりますし、我が党としても強く要望しているわけであります。一この点につきまして、担当であるのは通産大臣でありますが、同時に金子企画庁長官も先月、これは十一月八日の記者会見として伝えられておりますが、円高でいろいろな輸入品の値下げを指導したいというふうに言われておりますので、ぜひそういう方向で前向きに取り組んでいただきたいということで、お二人の答弁をいただきたいわけであります。
  182. 村田敬次郎

    ○村田国務大臣 お答え申し上げます。  工藤委員の円高差益還元の問題でございますが、今お挙げになりました原油価格あるいは為替レートの変動等の問題で過去の例を見てみますと、実は昭和五十三年に消費者に還元をしたという例がございますが、あのときの平均為替レートの変動は、五十一年から五十三年の間にたしか九十円よりももっと多い変動があったわけでございます。そしてあのときは、その円高差益還元の措置をとりましてから一年何カ月かで今度は逆に、いろいろな客観的条件が変動いたしまして、ついに電気料金の値上げに踏み切らざるを得なくなって、相当幅の値上げをしたということでございます。  今回のG5会議の決定以来始まりました円高問題でございますが、まだその現象が始まってから約五十日間、非常に短い期間でございまして、この期間においてそういった円高差益還元問題等に言及をするのは早過ぎる、タイムラグその他を見てみれば少なくとも相当期間の観察が必要である、このように考えておるわけでございます。  事実、原油価格等の条件その他、昭和五十三年のときとはいろいろ異なりますけれども、我々は国民生活の安定という意味では、この問題については今後事態の推移を見守りながら慎重に対応をしなければならない、そのことが国民にとってプラスであるような措置考えるべきである、このように考えておるところでございます。
  183. 金子一平

    金子国務大臣 先般記者会見の席で、円高利益の還元について私発百いたしましたけれども、一般論として、ある程度円高が定着して差益が出るようになりまして、しかもそれが消費者に還元されないようならば、必要によって適切な手を打たなければいかぬという趣旨で発言をしたのでございます。  電力料金につきましては、今村田通商産業大臣からお話のございましたように、いろいろな問題もあるようでございますし、十分連絡をとりながら今後の推移を見きわめて必要な手を打ってまいりたい。  消費者保護の立場から申しますれば、ある程度円高が続いて利益が出たら、それは消費者の懐に還元してもらうのが筋だ、こういうふうに考えておる次第でございます。
  184. 工藤晃

    工藤(晃)委員 時間が参りましたので、この問題は今度の電力やガスなんかの法案の中で私はいろいろ問題にしたいと思いますが、一言だけ申し上げておきたいのは、国税庁が申告所得上位五十社というのを出すのですが、どういうわけか、例えば八〇年は電力会社六社、翌年は五社、その次も五社、その次は七社、八四年は五社というようなぐあいで、ともかく、例えば昨年なんかを見まして、一番がトヨタ、二番目が日立というのはわかるのですが、三番目が東電になって、それから六番目に関西電力、七番目が中部電力。トヨタなんかがアメリカへの輸出で稼ぎまくっているのはわかりますが、一地域を受け持っているにすぎない電力会社が、これはもうけ過ぎですよ。  こういうのがずっと続いているわけなんですから、今まででもこの前の料金の値上げがかなり不当であったということがこういうことで出てきておりますから、まして急激な大幅な経済的な変化が起きたとき、いわゆるケース・バイ・ケースで見直せというのが電力料金に関するこれまでの方針でありますから、この問題はやはり今の緊急課題として提起して私の質問は終わります。
  185. 村田敬次郎

    ○村田国務大臣 ちょっと一言。  工藤委員の御指摘は、こちらで御発言は承っておりますが、私は、現在の段階で円高差益の還元の問題を云々するのは早過ぎる、こういうふうに考えております。  また、内需の拡大でありますが、きょうずっと御質問がございましたように、九電力それから三大ガスで一兆一千億でございますか、相当の設備投資の繰り上げ施行ということもあえてやってくださるという協力体制をしいておるわけでございまして、究極的に国民生活にとっていかなる対応措置が正しいかということは、これはよく円高その他の推移を見きわめながら慎重に判断をすべき問題であるということを特にお答えをしておきたいと思います。
  186. 工藤晃

    工藤(晃)委員 終わります。
  187. 粕谷茂

    粕谷委員長 これにて工藤晃君の質疑は終わりました。      ――――◇―――――
  188. 粕谷茂

    粕谷委員長 次に、内閣提出一般電気事業会社及び一般ガス事業会社の社債発行限度に関する特例法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより趣旨の説明を聴取いたします。村田通産大臣。     ―――――――――――――  一般電気事業会社及び一般ガス専業会社の社債   発行限度に関する特例法の一部を改正する法   律案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  189. 村田敬次郎

    ○村田国務大臣 一般電気事業会社及び一般ガス事業会社の社債発行限度に関する特例法の一部を改正する法律案につきましてその提案理由及び要旨を御説明いたします。  現行の一般電気楽業会社及び一般ガス事業会社の社債発行限度に関する特例法、いわゆる社債特例法は、昭和五十一年に制定され、一般電気事業会社及び一般ガス事業会社の設備設置のための資金需要の増加に対処するため、これらの会社の社債の発行限度に関し、電気事業法における社債の発行限度及び商法の一般会社発行限度額に対して、それぞれ特例を設けております。  現在、政府は、喫緊の政策課題である民間活力による内需振興策として、一般電気事業会社に対し、今後昭和六十三年度までの間に、総額一兆円程度の追加的投資を要請しているところであります。また、中長期的にも、電力需要の増加に対応しつつ電源の多様化を進めるための発電施設の建設、それに伴う送電線綱の整備、さらには経済社会の高度化、情報化に対応するための供給信頼度の向上等を行うことが必要であり、これらに要する設備資金は確実に増加していくものと見込まれております。  これらの事情を勘案いたしますと、一般電気事業会社による設備投資額は、今後十年間で総額約四十六兆円に達するものと予想されます。これに必要な資金を調達するため、長期安定的な資金源である社債の発行額は今後も増加し、現行の発行限度、すなわち商法の発行限度額の四倍を超え、昭和七十年度末には、一般電気事業会社の平均の社債発行倍率は商法の発行限度の五・五倍にまで達するものと見込まれております。  したがって、今後当分の間大幅に増大する見通しにある一般電気事業会社の設備投資のための資金需要に対処し、電気の安定供給の確保を図るためには、一般電気事業会社が社債による所要の資金調達を円滑に行い得るよう、現行社債特例法の期限を延長し、当分の間の措置として、一般電気事業会社の社債発行限度額を拡大することが必要であります。  なお、一般ガス事業会社につきましては、今後の設備投資のための資金需要の動向から見て、昭和五十二年に制定された社債発行限度暫定措置法によって、社債による所要の資金調達が可能であると見込まれるところから、改正された後の社債特例法の対象とはしないものとしております。  次に、この法律案の要旨について御説明申し上げます。  まず、題名を一般電気事業会社の社債の発行限度に関する特例法と改めるものとすることが第一点であります。  第二に、一般電気事業会社は、現行法では、社債の発行限度額を商法の社債発行限度額の四倍に定めておりますが、当分の間、この限度額を商法の発行限度額の六倍に引き上げることとしております。  第三に、一般ガス事業会社の社債発行限度に関する特例は、廃止することとしております。  なお、内需拡大策として、政府一般電気事業会社に要請している追加的設備投資を円滑に実施するためには、これら会社は、本年中にも周到な資金計画を策定した上で、関係金融機関との事前調整を行う必要があります。このため、できる限り早く社債発行に係る法的整備を行い、今後の社債発行を含めた資金調達について確実な見通しを与えることが政府の責務であると考えられます。  以上が、この法律案の提案理由及びその要旨であります。  何とぞ、慎重御審議の上、御賛同くださいますようよろしくお願い申し上げます。
  190. 粕谷茂

    粕谷委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。  次回は、来る十五日金曜日午前九時四十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会をいたします。     午後四時二十七分散会      ――――◇―――――