運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1985-12-03 第103回国会 衆議院 公職選挙法改正に関する調査特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年十二月三日(火曜日)     午前十時四分開議 出席委員   委員長 三原 朝雄君    理事 伊藤 公介君 理事 奥野 誠亮君    理事 小泉純一郎君 理事 羽田  孜君    理事 佐藤 観樹君 理事 山花 貞夫君    理事 伏木 和雄君 理事 岡田 正勝君       上村千一郎君   小宮山重四郎君       佐藤 一郎君    坂本三十次君       塩崎  潤君    西山敬次郎君       額賀福志郎君    森   清君       角屋堅次郎君    上西 和郎君       川俣健二郎君    堀  昌雄君       斉藤  節君    中村  巖君       安倍 基雄君    小川  泰君       野間 友一君  出席国務大臣         自 治 大 臣 古屋  亨君         国 務 大 臣         (内閣官房長官)藤波 孝生君  出席政府委員         内閣法制局長官 茂串  俊君         内閣法制局第一         部長      工藤 敦夫君         総務庁統計局長 北山 直樹君         国土庁計画・調         整局長     星野 進保君         自治省行政局選         挙部長     小笠原臣也君  委員外出席者         議     員 羽田  孜君         議     員 森   清君         議     員 山花 貞夫君         議     員 伏木 和雄君         議     員 岡田 正勝君         議     員 江田 五月君         総務庁統計局統         計調査部国勢統         計課長     酒井 忠敏君         自治省行政局選         挙部選挙課長  吉田 弘正君         自治省行政局選         挙部管理課長  岩崎 忠夫君         自治省行政局選         挙部政治資金課         長       中地  洌君         特別委員会第二         調査室長    岩田  脩君     ――――――――――――― 委員の異動 十二月三日  辞任         補欠選任   村岡 兼造君     額賀福志郎君   小川  泰君     安倍 基雄君 同日  辞任        補欠選任   安倍 基雄君     小川  泰君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  公職選挙法の一部を改正する法律案金丸信君  外六名提出、第百二回国会衆法第二九号)  公職選挙法の一部を改正する法律案田邊誠君  外六名提出、第百二回国会衆法第三七号)      ――――◇―――――
  2. 三原朝雄

    三原委員長 これより会議を開きます。  第百二回国会金丸信君外六名提出公職選挙法の一部を改正する法律案及び第百二回国会田邊誠君外六名提出公職選挙法の一部を改正する法律案の両法案を一括して議題といたし、審議を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。西山敬次郎君。
  3. 西山敬次郎

    西山委員 一昨年の暮れの総選挙の際の定数配分につきまして、七月に最高裁判決がありました。もちろん憲法違反違憲判決であったわけでございます。最高裁判所違憲審査権を持っておることはもちろんでございますので、これは当然として受けとめなければならないわけでございますが、これに対しまして私どもが最も関心のありますのは、それでは国会は何をなすべきかということでございます。それにつきまして判決を読んでおりますと、「日本国憲法は、国会の両議院議員選挙する制度仕組み具体的決定原則として国会裁量にゆだねている」、憲法第四十三条、第四十七条が引用してあるわけでございます。  そこで、自治大臣にお伺いいたしますが、この「原則として国会裁量にゆだねている」ということは、具体的には何を指しているわけでございますか。
  4. 小笠原臣也

    小笠原政府委員 お答えを申し上げます。  昭和五十一年の最高裁判決では、我が国憲法は「国会議院議員選挙については、議員定数選挙区、投票方法その他選挙に関する事項法律で定めるべきものとし、両議院議員の各選挙制度仕組み具体的決定原則として国会裁量にゆだねている」としておりまして、この考え方は、昭和五十八年十一月、そして本年七月の最高裁判決にもそのまま踏襲されているところでございます。  ここで「原則として」とされておりますのは、国会は、衆議院及び参議院それぞれについて、人口以外の他にしんしゃくすることのできる事項をも考慮して、公正かつ効果的な代表という目標を実現するために適切な選挙制度を具体的に決定することができるのでございますけれども、何ら制約なしに決定できるというのではなくて、憲法第十四条の法のもとの平等からくる選挙権の平等の要求、あるいは憲法第四十四条の人種信条性別等による差別の禁止などの憲法要求されております事項や、あるいは憲法上の一定制約のもとで、国会がその裁量権を行使して具体的な選挙制度決定することができるものと解されるわけでございまして、その意味で「原則として」という言葉を使っているものと考えております。
  5. 西山敬次郎

    西山委員 そういたしますと、憲法第十四条のこの精神あるいは憲法第四十四条の人種差別あるいは信条性別社会的身分、門地、教育、財産、収入によって差別しないという精神による拘束はあるといたしまして、国会裁量権というものはかなりの部分あると思うわけでございます。  その、国会裁量にゆだねるということでございますが、国会がそれでは第一義的に立法する必要があるということじゃないわけでございますね。国会提案する義務があるということじゃなくて、提案権行政府にも立法府にもあるという意味でございますか。そういう意味においては、両方とも責任があるということでございますか。
  6. 古屋亨

    古屋国務大臣 西山先生お答えいたします。  選挙制度につきましては、憲法第四十三条におきまして「両議院議員定数は、法律でこれを定める。」としております。また、第四十四条で「両議院議員及びその選挙人の資格は、法律でこれを定める。」としております。さらに、第四十七条で「選挙区、投票方法その他両議院議員選挙に関する事項は、法律でこれを定める。」としているところであります。  選挙制度民主政治根幹にかかわるものでありますことから、憲法では以上申し上げましたような詳細な規定を設けまして、具体的な選挙制度決定は、国の最高機関であります国会専権事項としているものと考えます。  一方、内閣は、行政の立場から、国政全般に配慮することは当然でもありますし、また法案提出権内閣法第五条に基づいてありますことから、選挙制度の改善について検討し、これに関する法案内閣提出することはもちろん可能であります。また、その責任でもあると考えております。  現在問題となっている定数是正問題につきましても重要な課題であると認識して対応し、努力してきたところでございますが、この問題は、何といっても国会構成に関する基本的なルールづくりの問題でありますので、その性格上、まず国会自身において十分御論議を願うことが適当ではないかと考えております。  なお、過去の選挙制度根幹にかかわる改正につきましては、昭和二十二年の現行選挙区制の採用は議員修正による。昭和二十五年の公選法の制定は議員立法昭和三十九年の定数是正は、選挙制度審議会の答申を受けまして政府提案して、分区は議員修正をしております。また、昭和五十年の定数是正は、各党合意を受けて政府提案し、分区は議員修正でございます。昭和五十七年の参議院全国区制の廃止と比例代表の導入は議員提案となっているところでございます。
  7. 西山敬次郎

    西山委員 今回の法案議員立法でございますので、行政府提案でないわけでございますから、その点でいささか趣が違うかと思います。行政府責任問題あるいは解散権との関係につきましてこの後詰めて御質問したいわけでございますが、法制局長官がおくれて来られるようでございますので、その点につきまして法制局長官が来られましてから御質問することにいたしまして、ちょっと先に進みます。  その予備知識といたしまして自治省にお伺いいたしますけれども、欧米定数下院の総定員、それの議席配分方法をお聞かせ願いたいと思います。
  8. 小笠原臣也

    小笠原政府委員 ただいまのお尋ねでございますが、英、米、西独、フランス、この先進諸国定数配分について御説明を申し上げたいと思います。  まず、イギリスでございますが、御案内のよう良、下院は小選挙区制が採用されておりまして、総定数は六百五十名とされております。イングランドスコットランドウェールズ及び北アイルランドごと定数配分及び選挙区割り基準法律で定められているところでございます。  その定数配分につきましては、まずグレートブリテンにつきましては六百十三より著しく多くも少なくもない数となっておりますし、スコットランドにつきましては七十一より少なくない数、ウェールズにつきましては三十五より少なくない数、イングランドにつきましては残余の数となっております。北アイルランドにつきましては十八より多くないか十六より少なくない数というふうに弾力性を持たせておるわけでございます。  また、選挙区割り基準につきましては、まず第一に、地方公共団体境界地方選挙区等を考慮すること。第二に、各選挙区の有権者数を可能な限りそれぞれの地域ごとに全有権者数選挙区数で割った数値、すなわち議員一人当たり有権者数平均ということでございますが、この数値に近づけることとされております。  次に、具体的な定数配分の手続につきましては、イン、グランド、スコットランドウェールズ及び北アイルランドごとに置かれました選挙区割り委員会、バウンダリーコミッションと言われておりますが、これが十年ないし十五年ごとに先ほど申し上げましたような基準のもとに、担当する地域選挙区割り及び議席の再配分に関する勧告を行い、これを受けて国会の議決を経て是正が行われるようになっておるわけでございます。  次に、アメリカでございます。アメリカにつきましては、下院は同じく小選挙区制が採用されております。総定数は四百三十五人と固定されております。各州への定数配分は、十年に一度行われます全米人口調査の結果に基づきまして、各州に最低一議席を保障した上で、人口に比例して機械的に一比例配分されておるわけでございます。  各州におきます選挙区割り各州にゆだねられておるわけでございますが、各選挙区間人口ができるだけ等しくなるように選挙区の再区分をしなければならないということになっております。そうして、裁判所定数配分違憲判断した場合には、一定期間内に是正が行われなければ裁判所が暫定的に定数配分選挙区割りを定めることもあり得るということになっておるのが特色でございます。  次に、西ドイツでございます。下院は総定数五百十八名でございますが、ベルリン選出議員二十二名を除きますと四百九十六名ということになりまして、その半分の二百四十八名が小選挙区制、残りの半分二百四十八名が比例代表制によって選出されておるわけでございます。  ここにおきます選挙区の改定につきまして報告、勧告することを任務とする選挙区画委員会が設置されております。  同委員会選挙区の区画について勧告するに当たりましては、一、邦の境界を遵守しなければならないこと。二、一選挙区の人口選挙区の平均人口から二五%を超えて上下偏差を生じないようにすべきこと。偏差上下三三%三分の一を超えたときは新たに区割りを行わなければならないこと。三、各邦の選挙区の数ができるだけ総人口に占める当該邦の人口に比例すべきこと。四、選挙区がまとまりのある一つ地域をなすべきこと。五、市町村、郡及び郡と同格の市の境界をできるだけ遵守すべきこと等を原則とすべきものとされておるわけでございます。  最後に、フランスでございますが、フランスにつきましては、御案内のとおり、本年七月の法改正によりまして下院につきまして拘束名簿式比例代表制が採用されたところでございます。各県を一選挙区とし、原則として人口比例定数配分しておるようでございます。  以上でございます。
  9. 西山敬次郎

    西山委員 今伺っておりますと、大体欧米諸国人口に比べまして、米国を除きまして、ヨーロッパ諸国我が国よりも下院議員の数は多いように思います。これにつきましては特に私は質問は求めませんけれども、我が国よりはかなり多いと感じておるわけでございます。  それで、その他の国々につきましてもおのおの考え方が違うわけですが、一つお伺いしたいのは、英国、地域ごとの特定の人口以外の地域としての配分がされておる。また、アメリカの場合にも各州に一人は確保するという地域代表的な思想が入っておる、それと人口割りといった思想が混在しておるわけでございますが、これのいずれにつきましてもドイツはどうなっておるわけでございますか。地域的な考え方というのは入っていないわけでございますか。
  10. 小笠原臣也

    小笠原政府委員 お答えを申し上げます。  まず、イギリスについてでございますが、先ほど申し上げましたように、イングランドウェールズスコットランド北アイルランド四つ地域に分けて、それぞれ定数配分及び選挙区割りをすることになっております。これは、イギリス連合王国でございまして、この四つの国から成り立っておるという、我が国と違う特殊な国の構成からそういうことになっておるわけでございまして、それぞれにつきましては、もちろん先ほど御説明いたしましたような原則に基づいて人口に比例して配分をすることになっておりまして、最も最近に行われました一九八三年の定数是正におきましては、イングランド最大格差は一対二・〇五、それからウェールズは一対二・二三、スコットランドは一対二・八八、北アイルランド一対一・二七というふうに、極めて格差是正をしておるわけでございます。  それから、アメリカ下院に対します定数配分は、先ほど申し上げましたように、全く機械的に人口比例配分をしておるわけでございまして、上院については、御案内のように、それぞれの州が独立の国というような性格を持っておるということで、完全に平等に二名ずつ定数を割り当てておりますけれども、下院議員につきましては、憲法に基づきまして完全に人口比例配分をしておるわけでございます。  それから、西ドイツにつきましても、先ほど御説明いたしましたように、小選挙比例代表制をとっております。その小選挙比例代表制の基礎になる単位といいますのは各邦でございまして、各邦といいますのは、それが連合して西ドイツという国家を形成しておる一つの国家的な性格を持っておるわけでございまして、それぞれを単位として小選挙比例代表制によって議員連邦下院に送っておるということでございます。
  11. 西山敬次郎

    西山委員 そうしますと、英米におきましては、大体割合は人口一対定数一といった一対一原則で、上下どのくらいの格差になっておるわけでございますか。
  12. 小笠原臣也

    小笠原政府委員 お答えを申し上げます。  アメリカにおきましては、一九八〇年の人口に基づきまして格差一対一・八三というふうになっております。  それから、西ドイツにおきましては、一九八二年の人口による格差でございますが、一対一・九というふうに承知いたしております。
  13. 西山敬次郎

    西山委員 そこで、アメリカの場合には人口基準になっておるようでございますが、イギリス有権者基準になっておるわけでございますか。
  14. 小笠原臣也

    小笠原政府委員 そのとおりでございます。
  15. 西山敬次郎

    西山委員 私も前々から疑問に感じておったわけでございますけれども、統計局長にお伺いいたしますけれども、我が国人口に関する統計、いろいろとありまして、本当にそれが何のために利用されるのか国民にもわかりにくいわけでございます。  まず、最も権威のあると思われますのはもちろん国勢調査人口。そのほかに、住民基本台帳人口、それから有権者、これは対象が違いますけれども、有権者調査がございます。それと、私が最近知りましたのは、各県ごと市町村人口調査をやっておるといいます。このおのおのの調査につきまして、どういう調査方法で、どう違うのか、それをお聞かせ願いたいと思います。
  16. 北山直樹

    北山政府委員 お答えいたします。  まず、国勢調査人口でございますが、これは十月一日現在で、二十歳以上だけでなくすべての人口につきまして、ふだん住んでいる場所で、全国一斉に国勢調査員がくまなく巡回をして調査したものでございます。  それから、住民基本台帳による人口は、これは世帯主からの届け出に基づきまして、原則として生活の根拠のある場所把握されておりまして、自治省ではこれを通常三月三十一日現在で取りまとめて発表しておる、こういうようなものでございます。  それから、有権者数は、これは住民基本台帳に基づきまして二十歳以上の者につきまして、自治省において、これは九月二日現在の数字がありますが、九月二日現在で取りまとめて発表しておるものがあります。  それから、都道府県が公表する市区町村別推計人口、これは都道府県がやっておるものでございまして、これは普通、前回の国勢調査をもとにいたしまして、その後、人口動態統計というのがございますが、そこで出生、死亡等の数がわかりますので、あるいは県外等への転出、転入、これも別途調べまして、これは恐らく移動に関する統計がございますのでそっちの方から持ってきまして、そういうものを加除いたしまして、そして推計をしておる、こういうものでございます。  したがいまして、いずれの統計につきましても、範囲それから把握時点等いろいろ異なっておりますので、あるいは把握方法につきましても異なっておりますので、数といたしまして一致しない場合がある、こういうふうにお答えしたいと思います。
  17. 西山敬次郎

    西山委員 そこで、国勢調査人口とそれから有権者人口でございますが、現行法律上は国勢調査人口に基づいていろいろな定数配分を行うということになっておりますけれども、先ほども自治省からお話がありましたように、イギリスアメリカとでは、人口をとったり有権者をとったりいろいろと思想の混乱があるわけでございまして、どちらが妥当ということも一概には言えないかと思います。私は、どちらかといえば有権者をとった方が妥当じゃなかろうかという考えを持っておりますが、自治省はいかがでございますか。
  18. 古屋亨

    古屋国務大臣 国会議員選挙区別定数配分当たりまして、その基準として人口を用いるのかあるいは有権者数を用いるのかという点についての先生の御質問の由と思いますが、それぞれ意見があることは承知しております。また、どちらによるべきかという絶対的なものはないと考えております。  しかしながら、有権者数は、選挙人名簿に登録されている選挙人の数を都道府県選管及び市町村選管の協力を得まして自治省において独自に取りまとめたものにすぎないものであるのに対しまして、国調人口は、人口把握そのものを目的とした、法令に基づいて全国一斉の実調査に基づく人口であります。各種制度国調人口を用いていることが定着しておりまして、衆議院議員定数配分につきましても、明治二十二年の衆議院議員選挙法以来一貫して人口基準として定数配分が行われているという歴史がありますこと、また、議員定数配分はある程度安定性を要すること等の理由からいたしまして、どちらかといえば国勢調査人口によるのが適当ではないかと考えておるところでございます。
  19. 西山敬次郎

    西山委員 そこで、最初の質問に返りますけれども、「原則として国会裁量」と言われます。その国会裁量拘束します要因としまして、平等の原則というものにつきまして判決を読んでみますと、「本件選挙当時の右較差が示す選挙区間における投票価値不平等は、選挙区の選挙人数又は人口配分議員数との比率の平等が最も重要かつ基本的な基準とされる」云々とありまして、ここで判決では、必ず「選挙人数又は人口」という用語が用いられております。人口が妥当であるとすれば選挙人数という表現はないはずでありますが、必ず判決には「選挙人数又は人口」という表現がなされているのはどういうことかと思われますか。
  20. 小笠原臣也

    小笠原政府委員 定数訴訟におきましては、選挙区間における格差判定基準といたしまして選挙人数あるいは人口がともに使用されておるように見受けております。これは、両者がおおむね比例しておるものと見て妨げないという考え方に基づいておるものと考えておるわけでございます。  定数訴訟におきまして選挙人数が取り上げられますのは、定数訴訟といいますのは選挙権不平等理由として選挙の無効を訴える訴訟でございまして、その性格上、選挙当時の選挙権格差いかんが論じられるものでございます。したがいまして、選挙当時の格差を示す基準といたしまして選挙当日の議員一人当たり有権者数を用いて訴訟が提起されているものでございますので、判決においてもそれによって格差いかん判断されているものでございます。  昭和五十一年の判決におきましても、厳密には選挙人数基準とすべきものと考えられるけれども、選挙人数人口数とはおおむね比例するものと見てよいから人口数基準とすることも許されるとしておるところでございますが、定数配分基準として人口を用いるべきかあるいは有権者数を用いるべきかにつきましては、先ほど大臣から答弁がありましたように、絶対的なものはないわけでございまして、結局は立法政策の問題と考えられるわけでございますが、その場合、政府といたしましては、諸般理由から国調人口を用いるのが適当ではないか、このように考えておるわけでございます。
  21. 西山敬次郎

    西山委員 先ほどの判決を続けて申しますけれども、「選挙区の選挙人数又は人口配分議員数との比率の平等が最も重要かつ基本的な基準とされる衆議院議員選挙制度の下で、国会において通常考慮し得る諸般の要素をしんしやくしてもなお、一般合理性を有するものとは考えられない程度に達していたものというべきでありことあります。この「一般合理性を有するものとは考えられない程度」とはいかなる程度であるか、これにつきまして自治省の御見解をお伺いいたします。
  22. 小笠原臣也

    小笠原政府委員 お答えを申し上げます。  昭和五十一年、五十八年及び本年の最高裁判決のいずれにおきましても、憲法上許容される最大格差につきまして明確な基準といいますか判断を示していないわけでございます。しかし、昭和五十八年十一月の最高裁判決では、衆議院議員定数配分に関しまして、国会における裁量権をしんしゃくしても一対三・九四という格差については合理性を有するものとは考えられないということで違憲状態判断をいたしましたし、一方最大格差を一対二・九二といたしました昭和五十年の定数是正につきまして、それ以前の違憲とされた投票価値不平等状態は一応解消されたものと評価しておるわけでございます。本年七月の最高裁判決におきましても、昭和五十八年総選挙当時の格差一対四・四〇につきましては、憲法選挙権の平等の要求に反するという判断をいたしております反面、最大格差を一対二・九二といたしました昭和五十年の定数是正につきましては、昭和五十八年の最高裁判決と同様、従前違憲とされた投票価値不平等状態は一応解消されたものと評価することができるとしておるところでございまして、その辺に最高裁考え方があるというふうに考えております。
  23. 西山敬次郎

    西山委員 自民党案の御提案者と四党共同提案の御提案者に、「一般合理性を有するものとは考えられない程度」というその程度についての御見解をお伺いします。
  24. 森清

    ○森(清)議員 お答えいたします。  衆議院定数是正をする場合にどのような人口格差まで認められるかということは、我々、院の構成者として、また法律をつくる者として真剣に考えていかなければならない問題であります。現在は、そのつくっておった法律憲法違反と断定されておる状況でございます。したがって、とりあえず憲法違反と断定されないような形のものにしていきたいというのが今回の我々の提案の趣旨であり、恐らく野党四党案も同じ趣旨であろうと思うわけであります。  そのときに基準といたしました考え方は、先ほど政府委員から答弁がありましたように、最高裁判決判決理由の中に、二・九二ならば違憲状態を脱したものと認められるという趣旨のことがありますので、我々はそれを標準として考えて、それならば恐らく三・〇以内にするならば少なくとも最高裁において違憲判決は受けないのではないか、このような考え方のもとに、三・〇以内におさめるような案をつくって提案している次第でございます。
  25. 山花貞夫

    山花議員 御指摘の最高裁判決の「一般合理性を有するものとは考えられない程度」という判示につきましては、当該事案についての今回の判決判断でありまして、ここから直ちにこの文言についての解釈を導き出すことは困難であろうかというように思うところでありますけれども、今般の判決は、これまでお話しありましたとおり、過去の是正の経過を踏まえまして、五倍は明確に違憲である、そして、その次の判決における二・九二倍についてはどうか、そして今回の程度についてはどうか、それぞれの段階を踏まえているわけでありまして、我々としては、今回の判決は当該事案について一般に考えられる合理性を失っているという判断を示したものでありまして、この当該判決を離れての判断についてはまだ別の観点からさまざまな状況を議論しなければならないというものだと思っております。  結論的には、従来の裁判の流れからいたしますと、最高裁判断としては三倍を一つのめどとしているということだと思いますけれども、あくまでも最高裁の立場の判断でありまして、また、国会における裁量の範囲と指摘しておりますとおり、この問題については独自の立場で結論を出さなければならないものというように我々は考えているところでございます。
  26. 西山敬次郎

    西山委員 そういたしますと、先ほど申しました国会裁量の範囲内ということでございますが、本来、判決で何倍以上は違憲であると明示しておれば、それではっきりするわけでございますが、それが明示してないということになりますと、この何倍以内あるいは何倍以上という基準国会裁量の範囲内と考えてよろしゅうございますですか。森先生いかがでございますか。
  27. 森清

    ○森(清)議員 国会における立法権は何物にも制約を受けません。国権の最高機関としてどのような決定もできるわけでありますから、国会が合理的と考えることをやればいいわけであります。しかし、国会で決めた法律といえども、憲法に違反すれば最高裁判所において、これは憲法違反であるといって無効にされるわけであります。したがって、最高裁判所判決の流れを見ながらその範囲内で行動するのは、違憲判決を受けないということから当然のことであろうと思います。したがって、我々は今までの最高裁判決の例を見ておると、三・幾らは違憲である、こういう判決が一方あり、二・九二は合憲であるかのごとき判示理由があるわけであります。したがって、そこから考えると、三倍ということにしておけば最高裁において違憲判決を受けることはないであろう。それが国会の合理的判断の最終結論であるということを申し上げているわけじゃありません。そんなことに関係なく、先ほど申し上げましたように、国会は国権の最高機関としてみずから判断をして決めるべきことである、このように考えております。
  28. 西山敬次郎

    西山委員 五十五年の総選挙当時の三・九四倍が違憲状態であるということは判決の示すとおりで、それで五十年の是正当時の二・九二は妥当なものであるという判断でございますので、この間の数値であればどの辺がということになりますと、おおよそ足して二で割ると三・五というあたりまではあるいは合憲であるかという判断も、考えようによっては成り立つんじゃないかと思うわけです。これを三ということに固執しなきゃならない理由はないと思うわけであります。三・五でもこれは国会裁量権の範囲内と考えていいと思うわけでございますが、いかがでございますか。
  29. 森清

    ○森(清)議員 先ほど政府委員から御答弁がありましたように、世界各国の例を見ましても原則一対一なんです。我が国選挙制度の歴史においても、明治二十二年の衆議院選挙法以来、定数是正について大きな改正をしたときは――明治二十二年は完全に人口格差一対一です。明治三十三年に改正したときも一対一です。大正八年に小選挙区にしたときも一対一、大正十四年に中選挙区にしたときも一対一昭和二十二年にまた中選挙区に返したときも一対一、これで行ったわけであります。そして、その後行った昭和三十九年の改正は、御存じのとおり、選挙制度審議会の答申によって、平均に対して上下三分の一ぐらいの範囲内におさまるように、こういう答申に基づいてそういう案としたわけであります。それから、昭和五十年の改正は、そういう前例がございましたので、各党合意によって、これは後で判断したことでございますが、平均に対して一・五を超えるところは是正対象にしておる、このような結果でございます。  そういうことを考え、そしてまた最高裁の判示理由などを考えますと、やはり一応のめどとするときに二・九二とかあるいは三・五四とかそういうことではなくして、一応三倍ということが常識的であろうし、また先ほど御紹介ありましたように、西ドイツ、これは法律上下二五%とかあるいは上下三・三分の一というような、こういう基準法律化しておる。  こういうことを考えますと、我々が物事を判断するときは、数字で判断するときも、基準というのはそう細かい小数点以下のところにあるんじゃなくして、およそ何倍というふうなことを基準にして考えるのは当然であろう。また、国会においてこれから法律をつくって、そうして定数是正をするわけでありますから、そういうことよりか、我我が常識的に受け取れる違憲とされない格差の範囲は何であるかということを種々検討いたしました結果、三倍以内としておけば憲法違反判断を受けないであろうという判断であります。また別の判断もあろうかと思います。しかし、自由民主党でこういう提案をいたしました趣旨は、三倍以内にしておけば憲法違反判決は受けないであろう、こういうことで三倍としたわけでございます。
  30. 西山敬次郎

    西山委員 私はまだ三・五でも合憲の可能性もあり得ると考えるわけでございますけれども、ただいま森議員のおっしゃいましたように、欧米の事情を聞いておりますと大体一対一。私が考えましても、一対一が本当に平等であるという原則であろうと思うわけでありますが、仮にこれを三と考えましても、恐らくこれは非人口的な要素を加味してのことだと思うわけであります。判決上に「国会において通常考慮し得る諸般の要素」とあります。自治省にお伺いしますが、「国会において通常考慮し得る諸般の要素」というのは大体どういう要素を挙げておるか。
  31. 小笠原臣也

    小笠原政府委員 判決の内容についてのお尋ねでございますので、判決に即してお答えを申し上げるわけでございますが、最高裁判決におきまして、衆議院議員選挙区別定数配分の基礎をなすものは基本的に人口であるというふうに言っておりますけれども、それが唯一絶対の基準ではないといたしまして、次のような事情が考慮されてしかるべきであるとしておるところでございます。まず第一に、都道府県の区域が選挙区割りの基礎をなしておること、次に、従来の選挙の実績、選挙区としてのまとまりぐあい、市町村その他の行政区画、面積の大小、人口密度、住民構成、交通事情、地理的状況、社会の急激な変化、人口の都市集中化、こういうような要因を挙げて、これらの諸要素を勘案して決定されるべきものであるというふうに言っておるわけでございます。ただ、このような事情を勘案してもおのずから限度があるとしておりまして、その結果、合理性を有するものとは到底考えられないような大きな格差が生ずることは憲法上許されないというふうに考えておるものと承知いたしております。
  32. 西山敬次郎

    西山委員 そこで、私は、非人口要素といたしまして今自治省からお挙げになりましたけれども、その中の最も重要な要素の一つとしまして、過疎地の問題、これは当然考慮すべきかと思うわけでございます。例えば人口の変動、これを考えてみますと、三十九年の七月に是正いたしました。そのときに一対二・一九に是正した。ところが、その後四十五年の国勢調査では一対四・八三になっておる。さらに、四十七年の総選挙においては一対四・九九倍になっておる。それを五十年に一対二・九二倍に先ほどのお話のように是正したわけでございますが、それが間もなく五十五年の国勢調査では一対四・五四倍になった。そういう事情でございまして、日本の国土の中の人口の変動というものは非常に極端なわけでございます。  そこで、国土庁にお伺いしたいわけでございますが、私の選挙区の兵庫五区でございます。兵庫五区を例にとってみましても、兵庫五区の人口は、昭和三十年の国勢調査では四十万四千人、これが三十五年の国勢調査では三十八万六千人に減り、さらに四十年では三十六万人、さらに四十五年に三十三万八千人、また五十年には三十三万人、五十五年に三十三万人、さらに本年の国勢調査の結果は、兵庫県の集計速報は七日に発表ということでございますので、ただいまのところ知る曲もございませんけれども、大体予測されますのは、恐らくこれよりも千人ないし二千人くらいさらに減少しておるんじゃなかろうかと言われるわけでございます。  そういった状況につきまして、まず第一に国土庁にお伺いしたいのは、この三十年以来の毎回の国勢調査における全国人口をお知らせ願いたいと思います。
  33. 星野進保

    ○星野政府委員 お答え申し上げます。  ただいまの御質問は、日本の総人口の推移を三十年から述べよということでございますので、数字をもってお答え申し上げます。  昭和三十年が八千九百二十七万六千人でございます。昭和三十五年が九千三百四十一万九千人。昭和四十年が九千八百二十七万五千人。昭和四十五年には一億人を超えまして、一億三百七十二万人。昭和五十年に参りまして一億一千百九十四万人。昭和五十五年が一億一千七百万人でございまして、昭和五十九年が、推計でございますが、恐らく一億二千万を超えておるという形になっております。
  34. 西山敬次郎

    西山委員 今の国土庁のお話を伺っておりますと、全国人口昭和三十年から六十年までの三十年間におおよそ三割以上の上昇を遂げております。それに反しまして、兵庫五区では四十万人が三十三万人に減るということでございまして、二割五分の減少でございます。  こういった状況はいかにして発生したか、その原因をお聞かせ願いたいと思います。
  35. 星野進保

    ○星野政府委員 原因につきましては、いろいろな角度から考えられるかと思いますので大変難しい問題でございますが、一つの見方といたしまして非常に大きな影響を持ちましたのは、戦後高度成長期の産業構造の変化というのが大きかったのではないかと思います。  その中身をもう少し申し上げますと、先生案内のように、高度成長期の産業構造というのは、それをリードいたしましたのが重化学工業でございまして、大体臨海部を中心にいたしまして工場立地が進んだということが一つでございます。  もう一つ、山村等にとって非常に大きな影響を与えましたのはエネルギー革命ではないかと思います。従来薪炭林等でエネルギー供給をかなり主体にしておりました山村地域にとりまして急速なエネルギー革命が発生したことによりまして薪炭林等の利用が非常に低利用になっていったことが、ある意味で山村地域での就業の確保という問題を大変困難にさせていったということの一つの大きな原因ではなかろうかと思っております。  それ以外に、就学の状況、高校を初め特に大学の影響は大きいかと思いますが、進学率がかなり高まってきたことで、大学の配置そのものが大体都会の方にございますので、そこらへ若者が就学をしていったということが人口の移動をもたらしたもう一つの要因かと思います。  そういったような要因が恐らく複合的にいろいろ重なり合いまして、昭和三十年くらいから人口の大移動が起こりまして、四十年になりましてもなお続いております。こういう大移動がやっとおさまりかけてまいりましたのは、ある意味では五十年代の安定成長期と申しますか、オイルショック以後のまた新しい産業構造の変動を迎えまして、現在徐々に人口の大移動というのが鎮静化しているのではないかというふうに考えております。
  36. 西山敬次郎

    西山委員 こういった人口の発表がなされるたびに新聞でも必ずみんな国民に報道されますのが定数問題であります。人口問題で定数問題というのはそのうちのごく一部であって、過疎地をいかにするかということで本当の人口問題の解決をしなければならない。あるいは日本の老齢化の問題、こういった根本的な問題を検討するべきであるにもかかわらず、人口問題の発表の都度に定数問題ばかり論ぜられるのは本当に枝葉末節の話であると思うわけでございます。  この問題は定数問題と関連して本当に大きな問題として取り上げなければならない。その意味におきまして、国土庁はこういった人口の東京一点集中、首都圏集中問題につきましてこれまでどういった対策を講じてこられましたか。
  37. 星野進保

    ○星野政府委員 お答え申し上げます。  これも恐らく先生の方がお詳しいかと思いますが、当初、昭和三十年代にとりました政策というのは、むしろ工業に着目いたしまして、新産業あるいは工業特別地域のような、新産・工特と通常申しておりますが、そういう形で四大工業地域に集中いたします工業というものあるいは太平洋ベルト地域に動いていく工業地域というものをいかにより遠隔地と申しますか、全国に工業基地としてばらまいていくかということをねらいまして、新産業都市というようなことをやったのがたしか昭和三十七年ころの第一次全国総合開発計画のときのねらい目でございまして、拠点開発方式というような形での一つの開発方式をとった経緯がございました。  それから次に、たしか昭和四十一年だったと思いますが、経済審議会の地域部会というところが過疎という言葉を初めてお使いになられまして、従来の過密という概念に対しまして過疎という概念が登場してまいりました。その過疎という概念が登場してまいります近辺におきまして、例えば山村振興法を先生方の御努力でおつくりいただくとか、むしろその過疎対策という観点、従来は工場をいかに分散するかということに対しまして、現に過疎になっている地域をどうやっていくかということを四十年代の施策としては中心に、山村対策あるいは過疎対策、それから後半に入りまして、農村工業導入であるとか、それからさらにもう一回、工業地域で見ますと工業再配置法というようなものが四十年代の後半にできまして、いかに工業を地方に誘導していくかという努力をしたわけでございます。定量的に現在どれがどのくらい効いたかということを申し上げるほど私ども分析能力はないのでございますが、かなりそういう施策が効いた面があるのではないかというふうに思っております。それと同時に、先ほど申し上げましたように、たまたま昭和四十八年のオイルショック、その後の産業構造の大きな変換ということがございまして、実は人口の流動化というのがかなり変化してきたということではなかろうかと思います。  それで、私ども、第三次全国総合開発計画というのを昭和五十二年に策定いたしました。このときの基本的な考え方というのは、これも先生案内だと思いますが、定住圏という言い方をいたしまして、ある一定地域的な生活圏域と申しますか、そういう生活圏域の中で自然環境、生産環境、生活環境、言いますれば、就業の場であるとか、あるいはその地域の許す環境容量と生産活動、そういったようなものがマッチするような努力をしていったらどうだろうかということで、実は兵庫五区で言いますとモデル定住圏というようなことをやっていただきまして、そういう地域単位でどうやってうまく生活し、就業の機会をつくり、さらに当時非常に問題になっておりました環境問題としての自然環境、そういったものとうまくつき合っていけるかといったようなことの方針を打ち出させていただきまして、全国各地で事実上のそういうモデル定住圏といったようなものであるとか、それから後半になってまいりますと、最近の通産省等でやっておりますテクノポリスであるとか、あるいは郵政省のおやりになっておりますテレトピアだとか、新しい時代を迎えまして、新しいテクノロジーを導入するといったような施策にだんだん転換してきておるというのが現状ではないかと思います。  どうも長々と話しましたが、大体そういうことがとってきた政策のおおよその流れではないかと思っております。
  38. 西山敬次郎

    西山委員 今、第一次新産のころからの御説明を伺いましたけれども、私、一昨年に、我々の兵庫五区と対比されて一番過密と言われている千葉四区にあります我孫子の日本電気の工場を見学してまいりました。その前々年に日本電気ができたわけでございますが、今はやりの非常に新鋭の工場でございます。驚くばかりの工場でございます。これが東京都からわずか四十キロくらいのところにできておる。我々の兵庫五区も、丹波篠山は大阪からわずか五、六十キロのところにあるわけでございます。同じ東京、大阪の近辺の土地にありながら、我孫子には飛躍的な人口増がある。これは何といいましても日本電気といったような工場がどんどん立地していく、全国の青少年諸君がそこに働きに来るという結果、人口は集中していくわけでございます。反対に我々の兵庫五区におきましては、いかに為政者が努力をいたしましてもそういった雇用の場が画期的に拡大することはできない。したがって、人口は、今申し上げましたとおりにだんだん減少するばかりであるというような状況であるわけでございます。  そういったことで、政府におきましてこれまでいろいろと御努力願った、あるいは昭和四十七、八年ごろには日本列島改造論もあったわけでございまして、日本海側にも日を当てるといった努力もなされたわけでございますが、結果はなかなか思うようにいかない。これはどういった理由でそういうふうになるか、その原因をお聞かせ願いたいと思うわけでございます。
  39. 星野進保

    ○星野政府委員 基本的にはやはり一番大きかったと思いますのは、産業構造の変化ではなかったかと私は思います。今先生の御質問で、しからば今後そういう産業構造の変化がどうなっていくかということを重ね合せながら考えてまいりますと、恐らく従来、高度成長期の重化学工業化時代のいわゆる臨海工業立地というのに比べまして、現在のハイテク産業その他のものというのはかなり立地条件は自由度が高まったといいますか、フットルースとよく言っておりますが、臨海地域でなくても、あるいは内陸地域でも立地ができるような可能性が出てきた。そういたしますと、そこにむしろ基本的に重要な立地因子は何かというと、人材の問題になるのじゃないかという気がするわけであります。それで現在、科学技術あるいは研究機関あるいは大学誘致であるとかそういうような、むしろいかに人材配置を適当にしていくかということの御努力を各地域がされておりまして、そのことの可能性というのは今後かなり高まるのではないだろうかというふうに、楽観的かもしれませんが、思っております。  なお、それを支える基本的な問題というのは恐らくこれから、私ども一つのスローガンとしては交流の時代というようなことを申しておりますが、交流をするための基盤整備、いわゆる交通体系の整備、高速交通体系の整備、そういったようなものがかなりそれを支える基礎になるのではないだろうか。したがいまして、高規格の自動車道であるとか、少し先走り過ぎるかもしれません、が、コミューター航空のようなものであるとか、そういったような地域地域を従来はいわゆる県単位で考えておりましたが、むしろ生活単位で結ぶとか、そういう観点でネットワークをしいていくことが非常に重要になるのではないだろうか。そのことは逆に言いますと、各地域に人材が残ってくださいまして、その人材を中心にしながら新しい産業への適応というものをしていくのじゃないだろうかというようなことを私ども今、国土審議会という審議会がございますが、そういう審議会でいろいろと議論を賜っておりまして、来年には第四次全国総合計画をつくってみたいというふうに考えている最中でございます。
  40. 西山敬次郎

    西山委員 第四次全国総合開発計画、今鋭意御努力願っていることは敬意を表する次第でございまして、これは一日も早く立案願いたいと思うわけでございますが、今局長のお話のように、その基本は何といっても交通体系の整備と思います。しかしながら、交通体系の整備といたしましても過疎地につきましては、例えば国鉄におきましては赤字線の廃止問題とか、あるいはローカル空港をつくろうとしましても採算が合わなければだめだとか、民活を利用しようとしても採算の合わないようなところにはなかなか民活も利用できないというような状況でございます。  そういった意味におきまして今後の四全総、口ではきれいなことは言えましてもなかなか実現は難しいと思うわけでございまして、もう少し四全総についての具体的な今のお気持ちをお聞かせ願いたいと思います。
  41. 星野進保

    ○星野政府委員 先生に今御指摘いただきましたところは大変痛いところでございます。  例えばコミューター空港等につきましての一つ考え方といたしましては、コミューターを飛ばす地域が、あるローカルな地域とローカルな地域だけでございますと採算性その他でかなり問題が発生する、したがいまして、できないということになると思いますが、例えば地域の基幹空港を経由いたしましてそれぞれのコミューター基地がつながりまして、それが幹線航空と結合しながらいろいろなルートを飛んでいくというような格好にもし考えたりいたしますと、多少経済性が出てまいります。したがいまして、高速道路につきましてもいわゆる有料の高速道路だけではなくて、従来の国道の規格を広げるとかいわゆる整備の方法をそれぞれの地域に適合したような形でいかにやっていくかというソフトウエアといいますか、いわゆる規格は同じだということではなくて、そういったようないろいろな知恵をこれから出すことが非常に重要になってくるのじゃないだろうかと思いまして、私ども、ただ施設の整備というだけではなくて、それを運用する方法と申しますか、ソフトウエアに関しましても鋭意勉強させていただいておるところでございます。
  42. 西山敬次郎

    西山委員 せっかく過疎地域の解消には御努力願いたいと思います。  それともう一つ自治省にお伺いしたいわけでございますが、非人口的要素、これは計量的にはじくことは難しいかと思うわけでございますけれども、投票率の問題でございます。  例えば、五十八年十二月の総選挙におきます投票率、兵庫五区の八七・五〇%に対しまして千葉の四区は五九・二七%でございます。投票率を掛け合わせますと、投票の総数でいきますと、兵庫五区に対する千葉の四区は三倍の中に入っておるわけでございます。これは別に計量的な問題を私は言うわけではないわけでございまして、今年の東京都の議会議員選挙、これも投票率は五三%でございました。  こういうふうに人口周密地帯における投票率は、過疎地に比べまして非常に低いわけでございます。これは何を物語っておるものでありましょうか。それについての御回答をお願いします。
  43. 小笠原臣也

    小笠原政府委員 お答えを申し上げます。  ただいま御指摘のように、大都市圏あるいはその周辺地域における投票率が全般的に大変低率であるということは私ども前々から承知いたしておりまして、大変遺憾なことであるというふうに思っておるわけでございます。しかも、大都市及び大都市周辺地域のみならず日本全体的に考えてみましても投票率が、国政選挙あるいは地方の選挙を通じましてだんだん低下する傾向が見られるのでございます。  この原因につきましてはいろいろな方がいろいろなことを言われるわけでございまして、何しろ国民の政治意識に関することでございますので、私どもがこれが唯一の原因であるとか、これが確定的な原因であるとかいうことは申し上げにくいわけでございます。よく言われておりますのは、現在の政治的な情勢が非常に安定しておるということで政治を任せておいてもいいというような安心感があるということも一方では言われておりますし、また一方では、政党が話し合って候補者をあらかじめ当選する可能性の強いように決めてしまうということについての批判とかあるいは政治不信のあらわれであるとかいろいろなことが言われておるわけでございます。  いずれにしましても、私ども、これは民主政治の健全な発展にとりまして大変大きな問題であるというふうに認識しておりますので、選挙の啓発とかいろいろな手段を講じまして投票率の向上に今後も努めてまいらなければならないと思っておるわけでございます。
  44. 西山敬次郎

    西山委員 政治に任せておいていいという考え方もあり得るとおっしゃいましたけれども、そうしますと、我々の地域は政治に任せておけぬ、これはひとつ投票して今の体制を何とかしなければいけないという気持ちがあるぐらい過疎地はお粗末に扱われておるということを意味するんじゃないかと思うわけで、揚げ足をとるようでございますが、そういうことでございます。私は本当は投票率が低いということは政治に無関心ということだと思うのです。我々の地域におきましてあらゆる段階、国レベル、県レベルあるいは市町村レベルの選挙におきまして五九%というようなそんな低率の投票は絶対にあり得ないことでございます。我々の地域におきましてはどうしても政治に期待したい、何とかしたいという住民の熱烈なる意向が反映しておるわけでございまして、国レベルであればこそ八七%でありますけれども、市町村レベルの選挙はすべて九〇%を超えるわけでありまして、そういった政治に対する熱意の度合い、こういったものは兵庫五区においては非常に厳しいものがあるわけでございます。そういった点も十分、計量的には勘案できないことはわかるわけでございますけれども、勘案していただかなければならない要素であると思うわけでございます。いたずらに一票の価値が弱いの軽いの重いのという以前に、その一票の価値の質自身がふまじめかまじめかということも大いに論じなければならない問題じゃなかろうかと思うわけでございます。  今法制局長官にお越し願いましたので最初に戻りまして、ひとつ法制局長官にお伺い申し上げますけれども、今般の最高裁判決違憲判決がございました。違憲審査権はもちろん司法が行うものでございますけれども、これに対しまして、立法面で国会はいかになすべきかということでございますが、この判決を読んでおりますと、「日本国憲法は、国会の両議院議員選挙する制度仕組み具体的決定原則として国会裁量にゆだねている」とありますが、「原則として国会裁量にゆだねている」ということは何を意味するものでございましょうか。
  45. 茂串俊

    ○茂串政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘の最高裁判決における「原則として」という言葉の意味合いでございますが、これは基本的にはというのとほぼ同様な意味でございまして、国会議員選挙制度仕組み具体的決定国会裁量にゆだねられているものではありますが、完全に自由裁量であるというわけではなくて、これも判示にございますよう」に、「議員定数配分規定の合憲性は、結局は、国会が具体的に定めたところがその裁量権の合理的行使として是認されるかどうかによって決するほかはない。」という趣旨を言うものであると考えております。
  46. 西山敬次郎

    西山委員 そういたしますと、それに基づく定数是正の問題は、これは法律といたしまして、選挙制度の手続が法律事項であるということは憲法第四十四条に規定するところでございますので、これにつきましては国会といたしましてももちろん責任を持つわけでございますが、今回の場合、議員提案ということになっております。それにつきまして行政府責任というものはどういうことで考えたらよろしゅうございますか。
  47. 茂串俊

    ○茂串政府委員 議員提案法律案については一体政府はどういう立場に立つべきかということでございますが、議員提案法律案は、言うまでもないことでありますが、提案議員の方々や議院の法制局などで十分その内容について御議論をされ、そして御検討を経た上で提案されるものでありますから、政府はその作成過程には関与しない立場にございます。ただ、法律案国会審議の中で政府としてお答えすべき事項について御質問があったりあるいは所要の関連資料の要求があったりしたような場合であれば、これに答弁するあるいは資料を提出するというように側面的には協力を行うべきことは当然であるというように考えております。
  48. 西山敬次郎

    西山委員 そういたしますと、今回のケースに関しましては行政府はただ側面的に見守る、あるいは必要があれば発言をするという程度でございますか。行政府責任ということは起こらないわけでございますね。
  49. 茂串俊

    ○茂串政府委員 政府はもちろん提案権を持っておりますが、今御指摘の問題はあくまでも議員提出法律案についてどうかということでございますれば、これは提案をされた議員あるいはその細かい内容につきましては国会の法制御当局の方で十分審議あるいは検討を経るべきことでありまして、政府側としてそういうことにつきましていわば責任を持つというようなことにはならないと思います。
  50. 西山敬次郎

    西山委員 そういたしますと、政府からこの法案審議促進ということを主張する立場にはないわけでございますね。
  51. 茂串俊

    ○茂串政府委員 法律的にはただいま申し上げたとおり、議員提案法律案につきましては、これは提案者がいらっしゃるわけでございますから、その提案者の御意思あるいはその議員の方がお立てになった政策に基づく法案でございますから、それについて政府がとやかく申し上げるということは一般的にはないという立場でございます。
  52. 西山敬次郎

    西山委員 そこで、ちょっと話題を変えまして、これも何度か質問のあったことでございますが、解散権定数是正の関係についてお伺いいたします。  私は、解散権というのは憲法第七条に基づいて天皇の国事行為として行われるもので、これに対しましては内閣に与えられた権限であると信じておるわけでありまして、定数是正問題とは法律上は関係なく解散は執行できるものと了解しておりますが、いかがでございますか。
  53. 茂串俊

    ○茂串政府委員 最高裁判決によりまして現行定数配分規定が違憲とされた以上は、早急にその是正のための法改正が実現されるべきことは言うまでもないことでございますが、定数是正前の衆議院解散権の行使の制約の有無につきましては従来から繰り返しお答えを申し上げておりますように、要約して申し上げますれば、第一に、本来解散権憲法が国政の重大な局面において民意を問う手段として内閣に付与した基本的に重要な機能であること、第二に、憲法解散権の行使を制約する規定がないということ、それから第三には、解散権の行使とこれに伴う総選挙の施行とはそれぞれ別の規定に従って行われる別個のものであること等々の理由によりまして、法律的には制約はないと私どもは考えております。
  54. 西山敬次郎

    西山委員 次に、法制局長官にお伺いいたしますけれども、次の問題は、この違憲状態に対しましてこれを是正するに必要ないわゆる合理的な期間内の是正という問題でございます。合理的な是正に要する期間というのはいかほどのものとお考えでございますか。その起点はいつから計算して大体何年くらいのものとお考えでございますか。
  55. 茂串俊

    ○茂串政府委員 合理的期間とはどのような意味を持ち、また、どのような長さを言うものであるかという点でございますが、これは最高裁判決に即してお答え申し上げた方がよろしいと思いますので、若干関係部分を読み上げさせていただきますが、御指摘の最高裁の五十八年十一月七日の大法廷判決におきましては、「制定又は改正の当時合憲であった議員定数配分規定の下における選挙区間議員一人当たり選挙人数又は人口の較差が、その後の人口の異動によって拡大し、憲法選挙権の平等の要求に反する程度に至った場合には、そのことによって直ちに当該議員定数配分規定の憲法違反までもたらすものと解すべきではなく、人口の異動の状態をも考慮して合理的期間内における是正憲法要求されているにもかかわらずそれが行われないときに、初めて右規定が憲法に違反するものと断定すべきである。」ということを判示しておりまして、また他方、同判決におきましては、「衆議院議員選挙における選挙区割と議員定数配分決定には、複雑微妙な政策的及び技術的考慮要素が含まれており、これらをどのように考慮して具体的決定に反映させるかについて客解的基準が存するものでもないので、結局は、国会が具体的に定めたところがその裁量権の合理的行使として是認されるかどうかによって決するほかはない」とも判示しておるわけでございます。  このような判示を前提として考えますと、合理的期間というのは、「複雑微妙な政策的及び技術的考慮要素」を十分に考慮した上で国会定数配分規定を改正するのに必要な期間、こういうものと解されるわけでございますが、その期間を数字的に何年間というふうに一定の長さを具体的に申し上げるということは、これは困難であり、ケース・バイ・ケースでそのバッククラウン下をなす事情に即して判断をすべきであるというふうに考えられます。
  56. 西山敬次郎

    西山委員 今の合理的是正に要する期間につきまして、自治大臣あるいは与党の提案者、野党の提案者の方から御答弁願いたいと思います。
  57. 小笠原臣也

    小笠原政府委員 お答えを申し上げます。  定数訴訟におきまして、是正のための合理的期間という考え方昭和五十一年の最高裁判決において初めて示されたものでございまして、その後の昭和五十八年判決及び本年の判決においても引き継がれておる考え方でございます。  是正のための合理的期間がどの程度であるかということにつきましては、判決の内容からは明確ではございません。が、昭和五十八年の判決では、昭和五十年の定数是正によって違憲状態は一応解消されたものとして、その法律改正の公布の日から五年後、施行の日から三年半後に行われた昭和五十五年の総選挙については、本件選挙選挙時を基準としてある程度以前において投票価値不平等状態憲法選挙権の平等の要求に反する程度に至っていたけれども、そのときから本件選挙までの間では是正のための合理的期間はいまだ経過していないとしたわけでございます。  しかし、本年の最高裁判決では、それから三年半後に行われました昭和五十八年の総選挙については是正のための合理的期間は経過したものというふうに判断をしておるところでございまして、先ほどお答えもありましたとおり、やはりケース・バイ・ケースで判断をしなければならない問題で、一義的に一定の期間が経過すれば合理的な期間が経過したとかしないとかいう判断はできないのではないかというふうに考えております。
  58. 森清

    ○森(清)議員 ただいまの政府委員の答弁に尽きるわけでありますが、要約して申し上げますと、合理的期間というのはそのときそのときの状況に応じて判断される、ただ一応の基準として五十年法改正、五十五年総選挙は合理的期間内にあったと判示され、五十年改正で五十八年総選挙はその合理的期間を過ぎているというふうに判示されたのは一つの目安になろうかと考えております。
  59. 山花貞夫

    山花議員 最高裁判決の中身につきましては、今こもごもお答えになったとおりだと思います。  五十一年判決が八年余、五十八年判決法律が公布されたときからほぼ五年後、施行のときから三年半という判断を示しまして、また今回の判決の期間などについて考えれば、裁判所の立場での一つの枠はここに示されていると考えるところでありますけれども、これはあくまでも裁判所が一方の判断の中心であった不平等の実態を踏まえて合理的期間いかん判断を進めているわけでありますから、いわば裁判所の側の判断基準ということに。なるわけでして、一応の枠はあるとしても、国会の立場におきましてはまた自主的な立場で違憲状態を速やかにという要請に我々は重きを置かなければならないのではないか、このように考えているところであります。
  60. 西山敬次郎

    西山委員 今皆様から御答弁いただきましたが、私もいろいろ判決を調べてまいりました。  ちょっと私が疑問にいたしておる点を申し上げますと、五十一年の判決におきましては、「公述法自身その別表第一の末尾において同表はその施行後五年ごとに直近に行われた国勢調査の結果によって更正するのを例とする旨を規定しているにもかかわらず、昭和三九年の改正本件選挙の時まで八年余にわたってこの点についての改正がなんら施されていないことをしんしゃくするときは、前記規定は、憲法要求するところに合致しない状態になっていたにもかかわらず、憲法要求される合理的期間内における是正がされなかったものと認めざるをえない。」ということで違憲判決になっておるわけでございます。それと、五十八年の判決を見てみましても「昭和五〇年改正法施行後既に約七年を経過している現在、できる限り速やかに改正されることが強く望まれるところである。」とあります。  これらを見ておりますと、これは法改正以後計算しておるような規定のようであるわけでございますが、私がこの前了解しておりましたのは、違憲状態になってからの是正に要する期間を合理的な是正期間といっておるのじゃなかろうかと思いましたが、これらの判決を見ておりますとすべて法改正以後の年限をいっておるわけでございまして、そう解釈するのでよろしいわけでございますが、法制局長官
  61. 茂串俊

    ○茂串政府委員 三つの判決がございまして、いずれの判決によって御説明したらよろしいかと思いますが、基本的にはいずれも同じ考え方であろうかと思います。今私持っております昭和五十八年十一月七日の大法廷判決におきまして申し上げますと、先ほどから御議論のございます合理的期間の問題につきましては、合理的期間についての判示の部分でございますが、「本件において、選挙区間における議員一人当たり選挙人数の較差が憲法選挙権の平等の要求に反する程度に達した時から本件選挙までの間に、その是正のための改正がされなかったことにより、憲法要求される合理的期間内における是正がされなかったものと断定することは困難である」というような判示をしておるわけでございます。  この点から見ますと、その合理的期間のスタート、起点は、それは「選挙区間における議員一人当たり選挙人数の較差が憲法選挙権の平等の要求に反する程度に達した時」からスタートするというふうにこの判決は述べておるものと私は理解しております。
  62. 西山敬次郎

    西山委員 そこで、私がこれをしつこく伺いましたのは、今度の六十年の国勢調査の関係を伺いたかったからでございます。私は、結論から申し上げますと、六十年の国勢調査の速報はもう旬日を出ずして発表になるわけでございまして、十二月の下旬には発表になるということでございますので、これを加味して是正をなすということが本来妥当なものである、これをしなければまたこういった合理的是正問題云々という問題が起こるということを懸念するわけでございます。  そこで、私は森先生にお伺いしたいわけでございますが、ことしの四月九日のエコノミストに森先生の論文として、「今是正しておけば、最高裁の合理的期間論もあることだし、直ちに再び是正をしなくても、違憲判決はさけられると考える。まして、是正が五年ごとになっている法律を一〇年ごと改正すれば、なおさらのことである。」という論文がございますが、これの関係はいかがでございますか。
  63. 森清

    ○森(清)議員 衆議院定数是正というのは、違憲でなければいいというものじゃございません。合理的に考えて、国民の参政権がそのまま的確に国会に反映するようにやるのが我々の義務である、こう考えております。  しかし、今考えておることは、憲法違反という判決を受けよう、あるいは受けた、こういう段階で考えると、少なくとも憲法違反にならないということを考えればそのような論理になる、こう申し上げておるのでありまして、本来国会において十二分に御審議を願って、そうして是正を図るべきであると思います。また、そのことは与野党合意をいたしておりまして、この五十五年国勢調査人口によってとりあえず是正を行う、そうして六十年国勢調査の速報値が出たならば直ちに追加して同じような考え方で暫定的な是正も行う、しかし、それでよしとせず抜本的な定数是正に取り組むということは与野党合意いたしておるわけでありますから、そういう観点からいえば、私は、どんどん改正について検討すべきである、単に最高裁判所憲法違反にならぬことならばそれでいいじゃないかということであれば、抜本是正についての与野党合意ができるはずがございません。私のその論文は最高裁違憲判決を受けないという観点から論ずればそういうことになる、こういうことでございます。
  64. 西山敬次郎

    西山委員 よくわかりませんけれども、今六十年国調の結果を踏まえて是正をするのが一番後問題が起こらない、合理的是正論、いろいろな論議が起こらないでいいと私は思うわけでございまして、その点について法制局長官見解はいかがでございますか。
  65. 茂串俊

    ○茂串政府委員 ただいまの御質問につきましては確かにそれはいろいろと法律問題はあろうかと思いますけれども、基本的には今、森議員のおっしゃったように、いわば新しい事態に応じてどのように対処すべきかということの問題に尽きるわけでございまして、ただいまそれをある仮定の与件を前提にして私からいろいろ申し上げることは差し控えたい、かように考えております。
  66. 西山敬次郎

    西山委員 いや、仮定じゃございません。これは仮定じゃないのです。今提案なされておる法案、与党案にしても野党案にしてもいずれもでございますが、この法案をどうしても国勢調査の速報値の出るまでに通さなければならない理由がどこにあるのだろうということを私は伺っておるわけでございます。そのために合理的な是正期間というものは、仮定の議論じゃなくて、これをどういうふうに考えたらよろしいかということを伺っておるわけでございます。
  67. 茂串俊

    ○茂串政府委員 ただいまの御質問意味を必ずしも私十分に理解してなくて恐縮でございますけれども、合理的期間の問題と今御指摘になっております今度の法案をいつまでに通すかという問題とは必ずしも関係がないことではないかというふうに考えております。
  68. 西山敬次郎

    西山委員 そうしますと、合理的是正期間というものは、この法案が通りましたときに、今長官がおっしゃいました合法的に、合憲で成立した法律が通った後何年かたってということを判決を読みながらおっしゃったですね。そうしますと、これが今与党案あるいは野党案を通しました場合、これは合憲的に通った法律であると考えるわけでございますか。
  69. 茂串俊

    ○茂串政府委員 今回御提案申し上げております公選法の改正案、これはもう提案されておる議員あるいは国会の法制御当局におきまして憲法問題との関連も十分に審議され、検討された上での法案でございますから、私としてもこれは当然内容的に合憲であるというふうに確信を持っておる次第でございます。
  70. 西山敬次郎

    西山委員 そういたしましたら、今提案なさっている法案のどちらかが通過いたしまして成立いたしました後、また数年間は是正をしなくても、これは合理的期間内ということでございますか。
  71. 茂串俊

    ○茂串政府委員 その点につきましては、いわば行政府の立場におります私から合理的期間との関係でどうなるかという点につきましては、これはちょっと御意見を申し上げかねる点でございまして、それにつきましては御提案者の方にお聞きを願いたいと思います。
  72. 西山敬次郎

    西山委員 それじゃ森先生にお伺いします。  その前に、これまで緊急避難としてという表現を使っておられましたが、緊急避難というのは法律用語上は何らかの危難を避けるための措置であると思うわけでございますが、どういう危害を避けるための措置であるとお考えでございますか。
  73. 森清

    ○森(清)議員 緊急避難という言葉は法律的に言えば三つほど使い分けがあります。  第一は、刑法第三十七条によって、急迫した危害に対してあることをしてもこれが合理的範囲内であれば罪にならない、こういう意味で刑法上の概念が一つであります。  二つ目は、民法上の概念でありまして、これは民法第七百二十条の第二項にありますが、これは」不法行為にはならないということ、これが一つであります。  それから、もう一つは、国際法上の概念でありまして、国家には当然自衛権があります。これは不正な侵害に対する自衛権でありますが、不正でなくても、ある侵害行為に対して緊急避難を行うことは国家の基本権利である。  こういうふうに法律的には三つありますが、そのほかに我々一般用語として、何か変なことが起こったら逃げる、火事が起こったら逃げる、あるいは地震が起きたら逃げるということも緊急避難をするとか緊急避難場所とかこういうことを言っておるわけでありまして、我々政治家が使っている言葉はそういうことを総合して何か急にやらなければいかぬ、こういうことを言っているので、何か侵害があったとかなんとかということじゃありません。急にやらなければいかぬことを緊急避難、このように申し上げておるわけであります。
  74. 西山敬次郎

    西山委員 急にやらなければならないことはわかっておるわけでございますが、そんな何でもかんでも、何を犠牲にしてもやっていかなければならないというほどのことであろうかということは非常に問題だと思うわけで、私は、この合理的な是正を要する期間とかあるいは緊急避難という問題につきましては、また質問を保留いたしたいと思います。まだまだ質問したいと思いますが、時間の関係で、後の二人区の問題をお伺いしたいので、この問題は保留しておきたいと思うわけでございます。  次に、二人区の問題でございますけれども、定数配分はそもそも府県に配分されるのが原則、あるいは原則はどうあろうと現実はそうなっておるわけでございますが、自治大臣、いかがでございますか。
  75. 小笠原臣也

    小笠原政府委員 議員定数の府県への割り当てということについてのお尋ねでございますが、公職選挙法第十三条第一項は「衆議院議員選挙区及び各選挙区において選挙すべき議員の数は、別表第一で定める。」というふうに規定しておるわけでございまして、同法別表第一で直接選挙ごと定数を定めておるわけでございまして、定数配分の具体的方法、府県に配分をして、さらに選挙区に配分するというような具体的な方式について法文上特段の規定を置いておるわけではございません。  ただ、過去の定数配分の経緯について申し上げますならば、初めていわゆる中選挙区制が採用されました大正十四年及び戦後再び中選挙区制に戻りました昭和二十二年に行われました定数配分につきましては、いずれも人口に比例して議員定数を各都道府県配分し、定数が五人を超える都道府県については都道府県内を数選挙区に分け、人口に比例して各選挙区の定数を三人から五人といたしたものでございます。  なお、その後昭和三十九年と五十年に二回定数是正が行われましたけれども、この際はいずれも議員一人当たり人口格差が著しい選挙区についてのみ是正を行うという方法をとっているわけでございます。
  76. 西山敬次郎

    西山委員 大正十四年にいわゆる中選挙区、三人ないし五人の制度がつくられましたときの第五十回帝国議会、大正十四年二月二十一日のその提案者である若槻礼次郎国務大臣提案理由の説明を読んでみますと、「府県を基礎として、之を議員定数三名乃至五名の選挙区に分割致しました」とあります。この伝統は恐らく引き継がれているのではないかと思うわけでございます。  そういたしますと、府県別に見ますと、先ほどからありました議論を適用してみますと、この九月二日に自治省調査されまして十一月十七日に発表になりました各県の有権者、これは国勢調査の結果が出ておらないので、便宜上有権者の数をとりましたけれども、これを見ましても、議員一人当たり人口の一番少ない鳥取県を一といたしまして、議員一人当たり人口の一番多い神奈川県でさえ二・四三倍でございます。二番目が埼玉県でございまして二・三四倍、三番が大阪府で二・〇五倍、あとは全部二倍の中ということになっておりまして、府県別には定数はまことにきれいに配分されておるわけでございます。  これにつきましては、これで三倍の中でございまして、これを基礎とすべきだと思いますが、自治大臣、いかがでございますか。
  77. 小笠原臣也

    小笠原政府委員 ただいま直近に公表いたしました有権者数に基づく各県別の定数格差についてのお話がございましたが、まさに数値はそのとおりでございます。それをもとにしてどう考えるかということにつきましては、今具体的に定数是正法案提出されておるわけでございますので、提案者の方からお答えいただくのが適当かと思います。
  78. 西山敬次郎

    西山委員 森先生、いかがですか。
  79. 森清

    ○森(清)議員 我が国は単一国家でありますから、議員定数は各選挙区に割り振るということは公職選挙法別表に書いてあるとおりでございます。  連邦国家であるアメリカ下院では各州に割り振る、各州各州の州議会において選挙区を決める、こういうことになっております。  イギリスは国の成り立ちが非常に異なっておりまして、先ほど政府委員から答弁がありましたとおり、イングランドスコットランドウェールズ北アイルランドに一応定数配分をいたしまして、それぞれの地域、もとは国でありますが、そこでやらせる、こういうことをやっております。  それから、連邦国家である西ドイツも日本と同じように各州配分をしないで選挙ごと配分をしますが、最終的には各州ごとに計算してもちゃんと人口バランスが合うようにしろ、こういう法律になっております。  フランスはもちろん単一国家でありますから、現在のやり方は各県ごと一つ選挙区でございますから各県ごと配分いたしておりますし、小選挙区のときもフランスの各県に一応定数配分いたしまして、その定数を各選挙区に配分しておる。  これは我が国と同じでありまして、選挙区というのはいろいろ区切り方はありますが、やはり行政区域、政治単位というものと離れては存在し得ない。そうすると、原則として市町村単位でやっております。しかし、その上の集合団体である都道府県というものが一つの政治単位行政単位でありますから、この府県の範囲を超えて選挙区をつくるという例はいまだかつてやっておりません。そういうことから、定教配分をするときに各県ごとに、しかも今までやったことは各県ごとに平等にまず配分する。平等ですが、これは八・五とか十二・三とかいう定数配分できませんから、そこで四捨五入とかいうことが起こって八人とか十三人になるわけでありまして、そこで多少アンバランスが生じますが、それは平等配分であります。それを前提にしてその県の中で今度はまた選挙区を割るときは、今までの例は、昭和二十二年にやったときまでの例は、市町村、郡市の単位を頭に置きながら選挙区を割り振って、それも人口平等案分にしてきた、こういうことでやったわけであります。  先ほど御指摘の鳥取県に対して神奈川県や何かが二・何倍にしかすぎないということで、それでいいじゃないかということにはならないということは、最終的に有権者ないし国民の意思はその選挙区を通じて行われるわけであります。県全体を通じて行われるわけではありません。それが第一。もし仮に、そういうことをすれば、神奈川県は二・五であるが、俗な言葉で言いますが、神奈川県の選挙区をつくるとき、ようかんを切るようにきちっと切れるならあるいは二・五におさめることができるでありましょう。しかし、市町村という単位がある、区という単位がある、これをやれば大きくなったり小さくなったりすることはやむを得ない。そうすると、仮に今のままで鳥取県を基準にして神奈川県を三倍以内におさめようということは技術的には不可能であります。私もやってみました。そういう案がありましたからやってみましたが、これは技術的に不可能であります。市町村単位を切り、もっと極端なことを言えば市町村の中のアパートを半分に切らなければならぬ、こういう事態にすらなりかねない。これはアリメカの裁判所の判例で数%の違いは憲法違反と言われたときにそういう議論があったわけであります。そのような判決に従って選挙区をつくろうとすればアパートの真ん中で切らなければいかぬようになるじゃないか、それはいかにも不合理じゃないか、こういう議論があったわけでありますから、市町村単位として選挙区をつくる以上、今言われたような御指摘、県単位ならば二・幾らになっているじゃないかという議論は架空の議論であって現実的ではない、こういうふうにお答えしておきます。
  80. 西山敬次郎

    西山委員 今お話しでございますが、一軒の家を二つに切るなんというのは極論でございまして、そのために一・三倍とか一対一とか、一対一を厳格に守れということであればそういうこともあり得るかもしれませんけれども、一対三とかそういった割に緩やかな倍率にしてあるわけでありますから、そういう極論はないと思います。しかも、県別に投票するわけじゃないとおっしゃいますけれども、そうであるからこそ県の中の区画を変更することを何か考えるべきじゃないかと言っておるわけでございます。  もう一つ、県別の今提案なさっている法案どおりにしました場合に矛盾が生じることを御指摘申し上げます。これは今さら申し上げるまでもございませんけれども、兵庫県の場合には一人当たり有権者数全国で七番目に多いわけでございます。しかも、定数は二十名でございます。これにつきましては、七月十一日にこの公選特が現地調査に参りましたときに、兵庫県の副知事が知事の意向として、兵庫県に割り振られた二十人の定数を何の理由もなく十九名に削減されることは耐えられないことであるということで意見を表明しておるわけでございます。  さらにまた、皆さん御承知のとおりでございますが、提案されておる案を実行いたしました場合には、石川県と富山県の場合、石川県が富山県よりも人口が多い。にもかかわらず定数が一人少なくなるという例が起こるわけでございます。石川県の場合は富山県よりも有権者で四千人多いわけでございます。四千人有権者が多いにもかかわらず定数は一名減になるという矛盾が起こるわけでございまして、その点につきましてはどういうふうに考えるべきであるとお考えでございますか。
  81. 森清

    ○森(清)議員 人口の適正配分をし、それに基づいて選挙ごと定数を定めるとすればそのような矛盾は一切起こりませんが、現実にできておる非常に大きな人口のアンバランス、これに部分的な手直しをしようということでありますから、そのような事態はやむを得ないことであります。  現在、四十七都道府県の中で人口の多い順に県を並べ、定数の多い順に県を並べて、しかるべき所を得ている県は、四十七都道府県のうち十一にしかすぎない、あとは全部順位が逆転しておるわけであります。そういう状況になっているということが第一。したがって、その中の部分的手直しをすればそのようなことになるということであります。  例えば、石川と富山の例を申されましたが、すぐ近くの県で言っても、奈良県と和歌山県、これも逆転しております。それから、鹿児島県と熊本県、これも逆転いたしております。そういうことでありますから、これは部分的手直しをする限りやむを得ない。また三十九年、五十年の改正のときもそういう事態があったわけです。これは増員区でありますから減員をされませんでしたが、増員の仕方にすればこちらの県の方が余計増員すべきであるが、あのような定数是正の仕方をするからある県にはこれだけ、それからもっとひどいところには少ない増員しかしなかった、こういう例もあるわけでありますから、このような部分的、先ほどの言葉ではありませんが、緊急的な手直しならばそういう現象が起こることはやむを得ない、このように考えておる次第でございます。
  82. 西山敬次郎

    西山委員 そういった逆転した例があるからまたさらに足してもいいではないかというのは暴論だと思うのです。そういった逆転した現象は好ましくないわけでございますから、これは抜本改正をなさる機会に当然していただかなければならない問題であるわけでございますが、これ以上逆転させることを促進するようなことはしてはいけないのではないかということを申し上げておるわけでございます。  それで今、県の中で境界線を変更しようということを私は申し上げたいわけでございますけれども、既に大正十四年の中選挙区制採用後現在までに境界線を変更した例として挙げますと、岩手県の上閉伊郡が二区から一区に変わっております。千葉県の君津郡が一区から三区に移っております。岐阜県の郡上部が一区から二区に移っております。愛媛県の喜多郡は一区から三区に移っております。鹿児島県の熊毛郡が一区から三区、鹿児島県の曽於郡が二区から三区といった例があるわけでございまして、こういったことも甚だ困難な作業ではありましょうけれども、絶対不可能といったものではないわけでございますので、そういった意味の線引きのし直しということも検討したらどうだろうということを前から申し上げておるわけでございます。いかがでございますか。
  83. 森清

    ○森(清)議員 過去の区割りの変更は、すべて人口平等原則を働かせるためにやむを得ず行った区割りの変更であります。特に熊毛郡をくっつけたのは、奄美大島が占領されたままで復帰をしておりませんでしたので、くっつけようがありませんからしょうことなしにやったわけでございます。そういうことで奄美大島を含んで三区だったわけであります。  そういういろいろなことで、少なくともそのときまでの考え方は、人口平等にするという原則が働き、また現実にそうであったからそのようなことが行われたのであって、今のように三倍以内の格差の中で変更しようというときはその範囲でやることでありますので、今のような例証は、今議題になっておる自民党案及び野党四党案を議論するときには例証にはならない、このように考えております。
  84. 西山敬次郎

    西山委員 一対一であろうと一対三であろうと、作業においては同じだと思うのです。一対一だからやらなければならなかったけれども、一対三だったらやらなくていいという問題ではないと思うわけでございます。  もう一つは、二人区をつくる問題についてでございますが、これもまた戦後三人ないし五人区を復活いたしましたときに、小沢佐重喜先生が第九十二回の帝国議会で昭和二十二年三月二十八日に議論しておられます中で、二人区をつくることについての欠陥として挙げておられるのが四点あるわけでございます。「その欠陥の第一は、選挙区域が非常に狭小でありますので、その区域内の地方的人物のみが多く選出されまして、中央政治界に活動する大人物が、当選困難であったということであります。その欠陥の第二は、選挙抗争が非常に激烈になりまして、その結果は当然の事実であるところの、情実と投票買収という点が横行することに相なってまいっておつたのであります。第三は、あるいは今後はこの弊害はないかも知れませんがこれは私はないと思いますけれども、「政府の官権濫用による干渉が非常に行われやすい。従って常に政府党が大勝しておつたというのが、われわれの苦い経験の一つであります。」と与党の小沢先生はおっしゃっております。これはないと思うとおっしゃっております。「その欠陥の第四は、議員の行動が常に地方的問題にのみ傾きまして、や々ともしますと中央の問題には、きわめて冷淡であるというような欠点を有しておつたのであります。以上の欠点というものは、ごくおもだったものだけを申し上げたのでありますが、このような趣旨におきまして、私どもはこの小選挙区を再び繰返すことのできないことは、言うまでもないのであります。」とおっしゃっておるわけでございますが、この二人区以下をつくる問題についての欠陥につきまして、何か御意見ございますか。
  85. 森清

    ○森(清)議員 それぞれ選挙区制あるいは定数はすべて完璧なものはないと思うのです。したがって、あるものにはある欠陥があり、あるものにはある長所がある。したがって、二人区について今の議論がいつ行われたか私は知りませんが、そのころ時の政権をとっておりました第一党である社会党は二名と三名の中選挙区制を提唱をいたしております。それからまた、今言われた昭和二十二年の改正のときは、そのときの自由党は三人から五人を原則とするが、例外的に二人を設ける、こういう案でずっと進みました。あるいはそのときの国民協同党だったと思いますが、それはたしか四名から九名であったと思います。そういうふうに中選挙区についてもいろいろな考え方があり、最終的には、これは言い方がおかしいのでありますが、妥協をいたしまして自由党の二名区というのを引っ込めまして、国会で相当の混乱の中で現在の三人から五人区ができ上がったということでございます。  さらに、国会決定によって選挙制度審議会を設けることになり、その法律の中に、選挙区制及び定数について調査審議するための審議会をつくったわけであります。そして、その同内容の諮問を総理大臣から発しまして、その選挙制度審議会は、三人から五人の中選挙区制は維持するが、このような是正方法をする限り兵庫五区は二名区とする、それからそのほか、東京、大阪等にあった選挙区は六人あるいは八人とする、これも暫定的にはやむを得ない、こういう答申を出しまして、政府はその答申に基づいて法案を閣議決定して国会提出しました。しかし、その法案は解散によって成立をしなかったのであります。そして、その次に出した法案は兵庫の二名区を落としまして、ほかの増員区だけの増員をして成立をした、こういう経過であります。  二名区についても欠陥がありましょうし、また欠陥があるが、そういうことをしなければやむを得ないということもありますし、その欠陥というのも今言われたような欠陥もありましょうが、またそれにいいところもあろうかと思います。それは見る人の見方でありまして、選挙制度というのは、最初に申し上げましたように、それぞれいい点もあれば悪い点もある、そういうことを総合勘案して、どのような選挙制度をとり、どのような定数配分をするかということは、せっかく我々がそれを審議決定する機能を持っておるのでありますから、ここで大いに論議をし、将来の抜本改正のときにはそれを含めて各党合意の上で決定していったらいいのじゃないか、このように考えております。
  86. 西山敬次郎

    西山委員 それと、この前の質疑で森先生からの御答弁でございますが、奄美の例があるからまた二人区をつくるのもやむを得ないという御答弁だったかと思いますけれども、私は奄美の例とこの場合の例とを一緒にされては本当に迷惑な話だ、奄美というのは特別に復帰の問題があったからやむを得ずできた問題でございます。今度そういうことをしますと、また今度の国勢調査の結果あるいはこのあとの広がるであろうときの場合にもそういった二人区をつくるということでございましたら、これはどんどん際限なくできるわけでございますが、その点についてはどういうふうにお考えでございますか。
  87. 森清

    ○森(清)議員 奄美については戦後復帰をして、そうしてそのまま帰るとすれば三区であったわけでありますから三区に帰る、しかし、そういう特殊事情であるから別の独立区としておいて将来はどこかへくっつけるということの大体の合意があったろうと思いますが、現実には、あの奄美という離島、こういうところから国政に参加する人間が必ず一人要谷のじゃないか、こういう配慮があって今までどこの区にもくっつけられずに来ておる、私はこのように考えておる次第でございます。  したがって、奄美について三人から五人の選挙区についての例外をつくったということと、今回このような是正方法であるから今度二人区が四つできるということとは、私はそういうことにおいては全く同じ趣旨、考え方である、このように考えております。  さらに、先ほどお尋ねの中に、将来はどうするのかということでございますが、それはまさしく各党合意のとおり、将来の選挙区制、選挙制度のあり方については抜本的に検討をしようということでありますから、そういう問題を含めてひとつ各党検討していただいて、それを持ち寄って抜本的に改正することについて合意が得られればより結構なことだ、このように考えております。
  88. 西山敬次郎

    西山委員 私はまだまだこの問題につきましては議論をしたい、特に合理的な是正期間の問題につきましても十分煮詰めてないわけでございますので、その点についてはさらに御質問をしたいと思います。  私の趣旨はこれまで申したところでございますが、もう時間も来たようでございますし、区切りでございますのでここで終わります。ただ、本日の質問はこれで終わりますが、今後また質問をしたいと思っております。  これで終わります。
  89. 三原朝雄

    三原委員長 この際、午後一時より再開することとし、休憩いたします。     正午休憩      ――――◇―――――     午後一時五分開議
  90. 三原朝雄

    三原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。角屋堅次郎君。
  91. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 午前の西山委員質問に引き続きまして、当面の重要な政治課題であります衆議院定数是正問題、この点については自由民主党からも提案があり、また野党四党の統一の提案があり、これを中心に全般的な問題も含めて議論をいたしたいと存じております。  きょうは藤波官房長官と茂串内閣法制局長官にも御出席をお願いしたわけでございますが、藤波官房長官は宮中の御行事もあられるようでありましたし、また法制局長官参議院内閣に呼ばれているというふうなこともございまして、しかも私の質問は本会議を挟んでやらなければならぬということで、最初立てました全体的な問題、そして具体的な問題に入るのになかなか難しいわけでございます。しかし、理事会で相談をされた日程でありますので、その点を了承いたしまして、各論というわけではありませんけれども、後ほど官房長官の出席のもとで触れる問題等もありますが、古屋自治大臣、そして自民党の御提案者であられる森委員に逐次御質問申し上げたいと思います。  私は国会に出てきてから相当の年数になるわけでありますけれども、選挙制度の問題というのは党中央本部の選対委員長を二度やりまして、実戦面の経験は相当持っておるわけであります。同時に、全国区をやめて拘束名簿式比例代表制にするという参議院全国区改革の問題のときにはちょうど選対委員長責任を持っておりまして、党中央の関係あるいはブロックの関係で連日飛び回りまして、約一年近く苦労した経験を持っておるわけであります。これらの問題は、官房長官がおいでになったらそういう問題にも若干触れたいというふうに思います。  選挙のベテランといえば、一次から七次まで、御承知のように、選挙制度審議会がございました。その前には選挙制度調査会もあったわけでございますけれども、選挙制度審議会にはここにおられます、自由民主党では奥野先生、我が党では本日永年勤続の表彰を受ける堀先生、そして公明党ではベテランの伏木先生、これが選挙制度審議会のメンバーで、その方面ではベテランでございまして、答弁者にそういうベテランの人が立っていただくとやりやすいのだけれども、行政面、制度面で非常に詳しい森先生とやるというのはちょっとやりにくくて政治論になりにくいといったような実感を率直に言って持つわけでございます。  私は選挙制度あるいは定数是正の問題というのは、単に立法政策上とかあるいは制度論の理屈の問題ばかりではなしに、政治の実態に即してどうやっていくかという面が当然考えられなければならぬ、こう思っております。自由民主党でも第一回、第二回の本日の審議までに西山先生が立たれたりあるいは近岡先生が立たれたりして、やはり現地の政治家の立場においていろいろな意見あるいは提言というものを含めて質疑されたのでありまして、私はその点については十分傾聴いたしたわけであります。同時に、本委員会が閉会中審査として、減員区になる六選挙区、それから増員になるところは一括本委員会に来ていただいて代表者から意見を聞き、八月三十日の本特別委員会において調査報告についての報告がなされ、そしてまた増員区についてはそれぞれ代表から意見を聞いた経緯がございます。  我々はこういった定員の問題を考えるに当たっては、全国的視野、特に対象になる減員区あるいは増員になる増員区、それら全体を見て我々が考えておる是正案で一体どうであろうかという、そういうものを検討してみるというゆとりがなければならない、こういうふうに私は思うのであります。  我々野党の場合も、御案内のとおり、社会、公明、民社、社民連四党統一提案になっておりますけれども、その過程におきましては、我々の方でも根本的是正として二を目指しながらも、当面二  五の案を検討したことは御承知のとおりであります。私も、二・五の案になれば対象区になるわけでありまして、今日提案されておる問題は決して自分に関係のない問題じゃなしに、やがて来る我が身の問題でもあるという、そういう実感もひしひしと持っておる一人であります。公明、民社等におきましても、一対二でどうであろうかという検討の結果、当面一対三の範囲内でいける、あるいは違憲状態というものを暫定的に解消しようということで、本日のそれぞれの提案になっていることは十分承知をしておるわけであります。  私は、この際、古屋自治大臣から、まず前提として今日行われておる中選挙制度というものに対してどういう評価を与えておられるのか。この制度については、今後ともやはり多数党時代の中で堅持していくべき制度である。かつて、小選挙区制なども鳩山内閣当時に国会提案されたこともありますけれども、これは激しい反撃を受けて廃案になった歴史的経過もございます。戦前にさかのぼれば、明治二十二年小選挙区制がとられ、その後大選挙区制がとられ、そしてまた小選挙区制になり、そして中選挙区制が大正十四年以来とられて、戦後一時期大選挙区制がとられたけれども、ほぼ六十年近く中選挙区制が今日まで続いておる。こういう歴史的経過等も踏まえて、古屋自治大臣としては中選挙区制というものに対してどういう評価を与えているのか、まず冒頭お伺いいたします。
  92. 古屋亨

    古屋国務大臣 角屋先生お答えいたします。  私も、現在の大正十四年以来行われております選挙制度というものは、三名ないし五名ということで選挙区は原則としてできておるところでございまして、三人ないし五人という選挙区制が国民の間に一般的に大体定住ということは悪い言葉かもしれませんが、ほとんどそういうような常識になっておる。また、国民もこれに対しまして、従来いろいろ選挙区の改正がありましたが、国民の間に安定感のある中選挙区制を一般には支持されており、つまり常識化といいますか、普遍化されておるというふうに考えておるところでございます。  実は私も、私自身はわずか七回の選挙でございますけれども、私の亡くなりました父が八回やっておりましたので、選挙の状況等は子供なりにも、それぞれ私も今の制度というものが定着しておる、私どももそういうふうに現時点には考えております。三人ないし五人というのが現在、国民に一番定着しておる制度ではないかというふうに考えておるところでございます。
  93. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 最高裁判決の点では、衆議院定数是正に関する最高裁判決が三度出ておりますけれども、六十年判決の中で今お尋ねをいたしました中選挙区制の問題について、大臣御承知のように、「衆議院議員選挙制度につき、公職選挙法がその制定以来いわゆる中選挙区単記投票制を採用しているのは、候補者と地域住民との密接な関係を考慮し、また、原則として選挙人の多数の意思の反映を確保しながら、少数者の意思を代表する議員の選出をも可能ならしめようとする趣旨に出たもの」と考えております、こういうふうに最高裁はこの制度を解しておられるわけであります。その点について私はどうこう言うつもりはございませんけれども、いわゆる中選挙区制における定数是正違憲訴訟という問題について、最高裁が中選挙区をどう考えておるかという点は、六十年判決の中で今読み上げたような形の中にあらわれておるかと思うのであります。  そこで、森委員の方にお伺いしたいわけでありますけれども、数日来の報道でも、与野党の出しております六・六案というものは、政府・与党の首脳部のところでいろいろの動きのあることが報道されまして、そして、あるいは参議院でリザーブするんだとか、あるいは今度の国会はもう成立は断念しなきゃならぬとか、いろいろなことが報道されておるわけであります。それは率直に言って今日の審議の事態あるいは会期延長とのかかわりというものを考えてみれば、私は、今度の国会で成立はそれはできないことである。もちろん与野党で完全に合意するということになれば別でありますけれども、そうでない限り、この両案のいずれかが成立をするということは審議の日程からいってもできないことであるというふうに判断せざるを得ないと思うわけであります。  私どもがこの問題を議論するときに、既に同僚の委員から質疑も出ましたように、やはり一番ちゅうちょを感ずるのは、この両案は五十五年の国勢調査というものを基礎にいたしまして一対三以内のそれにおさまる、つまり最高裁の五十八年判決で一対二・九二というのはこれはまあ評価できると言った、そういう判決に基礎を置きまして一対三以内のとりあえずの暫定措置を講じようということでそれぞれ前国会提案し、そして今日議論をしておることは十分承知をしております。しかし、六十年国調というものが恐らく十二月二十四日には速報値が出てくる。そうでなくても、既に各委員から議論が出ておりますように、例えば近岡さんの議論によれば、自分の選挙区と他の選挙区との間に明確に逆転が起こるのじゃないかというふうな御指摘もございましたし、また自民党の籍を持っておられながら西山委員熱心に御審議をやっておられますけれども、いわゆる自由民主党から出しました葉そのものに全面的に賛成という立場じゃなしに、かくかくしかじかのことを十分考えて、そして慎重にやるべきではないかというふうに質問を拝見をいたしたわけでございます。  そこで、これは内閣官房長官がおいでになれば同様に関連してお尋ねをするつもりでありますけれども、森先生提案者の立場にありますので、これはあくまでも今次国会で通したいと政府委員答弁式にやられるのじゃないかと思いますけれども、今日の審議の状況、しかも六十年国調がすぐもう速報値が二十四日ごろには出る、そこでは違憲状態にしないためにはさらに数選挙区を追加して速やかな措置をやらなければならぬ、こういう点では、二段構えではなしにその点も含んだ一段構えの措置ということを今日の状況では考える段階に来ておるのではないかというふうなことを思うわけでございますけれども、その点はいかがでございましょうか。
  94. 森清

    ○森(清)議員 角屋委員お答え申し上げます。  角屋委員は永年勤続をされて、院議をもって表彰され、また拝見いたしますとこの部屋に掲額をされておる、我々陣がさ代議士にとっては大変尊敬すべき大先輩でございます。このような大先輩から御質問でございますので。私も政治家としては駆け出してございますが、誠意を持ってお答えをしたいと考えております。  ただいまいろいろ御指摘になりました点につきましては、二十七日の質疑においてもそれぞれ御答弁を申し上げた次第でございます。現在提案されている案というのは、前国会提案された自民党案と野党四党案がそれぞれ継続審議になりまして現在に至っておるわけでございます。そこで、五月に提案いたしたわけでありますから、既に半年たっております。その間ずっと審議をしていいような形になっておったわけでありますが、現実にはいろいろな問題があって本格的なこの審議は始まって二日目、こういうことになるわけでありますが、その間公聴会的な現地調査、先ほど触れましたような現地調査、あるいは閉会中の審査、あるいは提案したときは本会議場において両案の趣旨説明及び両案に対する質疑、答弁も行われた、このような経過でございまして、それが今に至っても成立がいつになるかわからない、こういう状況になっておるのでございます。  しかし、よく考えてみますと、既に七月の最高裁判所判決によって現在の法律定数配分規定が憲法違反となっておるわけであります。したがって、立法府としては、この我々のよって立つ基盤で盛る公職選挙法憲法違反である、これは一日も放置することはできない。しかも、この五月あるいは六月の審査以来数回の実質的な審査が行われている。したがって、あと何回あるかわかりませんが、その間に審議は十分尽くせるのじゃないか。そして、この国会において議了をして、そして一つの、何というかルールづくりがそこでできるのじゃないか。そうすると、その同じような考え方に従って、六十年国勢調査の速報値が出る十二月二十四日を見まして、なるほどこういうことだ、五十五年国勢調査ではこういうことであったが六十年国勢調査ではこのようだということがあれば、一つのルールができておりますので、次の是正は比較的簡単にできるのじゃないか。ところが、これをこのルールづくりをしないまま国勢調査が発表になりますと、またそこから改めて議論をしなければなりませんし、またそういうことになりますと、六月に本会議審査を始めて半年近くたっても結論を得ないような大きな問題であります。  また、これについては私からこういうことを言うと差し出がましいかもわかりませんが、我々は精力的に審査をしようじゃありませんかということを常に申し出ておったわけでありますが、なかなかそれが実現しなかった、そういうことの結果今に至っている、こういう現実の政治の状態を踏まえて考えますと、我々は違憲であるとされたこの法律是正はこの国会でお互いに審議を尽くして、そして議了すべきである、そして新たな事態が起こったならばさらにそれに対応すべきである、また、その対応することは与野党合意をいたしておるわけでありますから、ぜひこの国会で成立を、いずれの案が成立するかは、これは審議の結果でありますが、成立をすることを強く提案し、私は自由民主党案の提案者の一人として自由民主党の案によって成立することを非常に強く希望している次第でございます。
  95. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 今、森先生の方から答えられた点で、この両方の法案、いわゆる自由民主党の提案と野党四党の提案を今度の国会で処理をして新しくルールづくりをやりたい、それでなおかつ、ルールづくりということを言われながら、後段の部分では自由民主党の案が成立することを強く望む、これではルールづくりにならない。我々の方がどういう基本的主張をしておるか、これはもう自由民主党の提案者も御承知であります。戦後のいろいろな時期に社会党がどういう主張をしたとかなんとかということはありますけれども、しかし、大正十四年以来中選挙区制の問題については、戦後の二回の修正を行ないました際にも、いわゆる第一回目の提案選挙制度審議会の答申に基づいてそのまま政府提案をされた。これは兵庫五区の二名区もありました。それから、六名以上もありました。それをそのまま出された。解散で廃案になった。再提案されるときには兵庫五区を訂正された。他のものは、提案されたのを議員修正で三ないし五ということにいたしたわけですね。二はなかったわけですけれども、要するに三ないし五ということにしたわけです。いわば国会の共通の土俵の中に軸ける合意というのがそこにあるわけです。  それから、第二回目のいわゆる五十年の改正のときも、言うまでもなく、これは国会にある公選法の特別委員会の中で小委員会をつくって、そして議論をして、そして増員を二十名にしようということまで一致をして、そして出してきたものに対しての分区という問題が意見がちょっと分かれる点がありまして、それで、自民、社会、民社でしたか、それから公明、共産がその分区ということについて反対があって、裁いたという歴史的経過がありますね。  つまり、大正十四年以来三ないし五で制度としてはきちっと歴史的に来ておるということは厳然たる事実なんですね。その厳然たる事実というのは、先ほど古屋自治大臣からも御答弁があり、最高裁も、この中選挙区というのはかくかくしかじかに制度の中身として、あるいは制度の評価として考えておるというところでも示されておるとおりだと思うのです。  私は、ここで新しいルールづくりをこの法案の成立によってやって、そして、あとそれに基づいてというふうに言われますと、野党側としては、そういう延長線上で考える場合には、これまでも議論がされておりますように、いわゆる抜本改正ということを考えます場合に、これは一口に抜本改正と四文字では言っておりますけれども、自由民主党から野党それぞれの党に至るまで、抜本改正とは中身は何かということになったら、やはり相当議論の分かれる点が率直に言ってあるというふうに思っておるのであります。すべて与野党ともに満場合意で抜本改正の基本が決まるというふうには、私は必ずしも政治論としては思っておりません。  そういうことは別として、仮にいわゆる昭和五十五年の国勢調査に基づいて、社会党が当初考えた二・五倍以内といったら大体十五選挙区ぐらいが入るのだろうか、あるいは一対二でいけば二十八番目ぐらいまでが入るのだろうか、これは計数によって若干それぞれ違いがあると思いますが、大体そういうことに相なろうかというふうに、御案内のように、マスコミの報道でも出ておるわけであります。二名区を仮に自民党が押し切ってやるということになりますと、一対二の場合には十二選挙区が対象になってくる。これは計算の結果出てきた、まことにやむを得ない特例中の特例でございますということにならない。これはもう拡大をしていく。それを認めるということは、一つには山花委員質問の中で言いましたように、三人よりは二人、二人よりは一人ということは、何といっても政権を担当しておる自由民主党に極めて有利であって、他の政党には極めて不利であるということは選挙のこれまでの経過からもはっきりしておるわけでありまして、そういう点で二名区をこの機会に新しくルールづくりをやって、このルールをつくったことを物差しにしてこれからの是正をやろうということには、我々基本的に賛成できない。ということになりますと、いわゆる共通の土俵が生まれない。そういうことにはもう政治日程から見てなりませんけれども、彼に自由民主党の案が通ったとしても、共通の土俵はないわけですから、たちまち違憲状態になる、追加の是正もできないまま、いわゆる合理的期間と称するもので逃げ込むということに自由民主党の態度としてはなりかねない、こう思うわけでありまして、それはやはり有権者にこたえるものとはいえない。  したがって、ここでやはりこれからの抜本改正に向けての措置を考えます場合には、二名区問題という点では、これまでのいわゆる定数是正のときにもよくやりましたように、自由民主党の譲歩ということも含めて、まず共通土俵というものをつくるということが基本的に大切である。これを抜きにしてはこれからの共通土俵はできないんじゃないか、こう思うわけでありますが、その点について御答弁を願います。
  96. 森清

    ○森(清)議員 今問題になっております定数是正あるいは抜本改正でございますが、我々通俗の言葉で言えば三段ロケットになっておるわけでありまして、現在やっているのは第一段であります。それから、十二月二十四日に速報値が出た場合に二段ロケットをやろう。そこまでは予備ロケットみたいなものでございまして、その後抜本的改正という本ロケットが走るわけでございます。私が先ほどルールができるじゃありませんかと言ったのは、まあ二段ロケット、予備ロケットまでの段階のことでございます。しかも、ルールといいましても、三十九年の改正、五十年の改正、それを通じて一つのルールがあるじゃないかと我々は感得したわけでありまして、これがルールであると決めてやったわけじゃございません。したがって、今回、三十九年改正のやり方、これは格差是正をするために定員増をやって、そうして上下三分の一以内とか、あるいは平均の一・五倍とかいうものを外れるものを直そうというふうな一応のルール、今回は三倍以内におさめるが定数は増加しないという範囲でやろうということ、こういうことが重なってきたわけでありまして、大体その三つを重ね合わして、次の四つ目ですか、四回目の二段目ロケットのルールがこうではないかということができるんでありまして、それがしかも頭の中にはルールでありますが、仮にそれがルールであったとしても、格言に例外のないルールはない、こういうことを言われておりますので、それは臨機応変に政治的に御判断なり、しかも院の構成に関することでございますから、与野党が一致したルールを持てれば一番いいわけでありますし、また、さらにそれの具体的な適用についても与野党が合意することが最も望ましいことであります。したがって、今我々この審議を通じて与野党が一致する線が見出せるかどうかということを鋭意検討中でございますので、皆さん方の方もおれの言うことだけがあれで、自民党がおりなければ絶対に応じないということではなくして、やはりこの審議を通じて共通点が見出せるならば、そうして、それが与野党が合意できるならば、それは私は院の構成として最もいい方法である。しかも、それが合意できてルールになれば、それは第二段ロケットはうまくいくわけであります。  しかし、ここではっきり主張しておきますが、我々は二人区をつくるということは、奄美大島が復帰したときに小選挙区そのものである一人区を例外的につくったと同じような趣旨である、しかも、それは三十数年行われておる、六十年間のうちの半分以上は、三人-五人だけじゃなくして奄美の小選挙区、一人制を含んでおった、こういうことも考えて、このような定数増をしないで定数をそのまま置いて、そうして三倍以内におさめるという方法をやる限り二人区もやむを得ないんじゃないか、こういう考えてつくった二人区であるから、二人区を新たにつくろう、例えば五人区になったら三人に分けようとか六人区になったら四人に分けようということを提唱しているわけではないということを十分御理解いただいて、二人区の位置づけについて与野党に違いがあるということはよくわかりましたが、果たしてその二人区をつくることがどういうことなのかということを十分審議を通じて明らかにしていきたい、このように考えておる次第でございます。(発言する者あり)
  97. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 今こちらからもちょっと声がありましたけれども、森議員の方は奄美大島、奄美大島と盛んに一人の問題を言われるのですけれども、これは西山委員も午前の質問でも触れられましたように、奄美群島の復帰に伴って、そこの選挙区を暫定的に一名でいこうかということでこれが続いてきておる。これは計数的に言えば、例えば一対二ということで、数字だけでいきますと二十八という前後のところまでの間に、奄美群島の選挙区はちゃんと一であったのがゼロという計数になるというのが出てくるわけですね。それはともかくとしても、これこそ特例中の特例、復帰に伴う暫定措置ということなんですね。これを強調されることは余り意味がないと私は思うのですけれども、ただ、森議員の場合は自治省の官房長までやられる間に選挙制度あるいはいろいろな問題については精通しておられたから、その精通しておられるという実態は答弁を通じて私もよくわかりましたけれども、しかし、それと政治論というのはやはり違った側面があるということを私は感じておるわけです。  私はこの機会に、深くお尋ねしようとは思いませんけれども、サンケイ新聞の先月の二十三日、そして地方紙にも二名の減少地域の若干のところで、いわゆる二名区というものはやめて、そして合区によって該当の四選挙区を解消しようという森私案なるものがサンケイあるいは関係の地域で報道されているわけです。私はこの点については深く触れようとは思いませんけれども、ただ、説明の立場に立たれて、二名区の正当性というのか、これでやらなければならぬということを強調されておられる森先生の方が他面ではこういうものを出される。何とかまとめたいということで苦慮してまとめられたというふうに善意に解釈すれば解釈できない面もないかと思いますけれども、とにかくこの点がよくわからない。説明員でなくてこちらでおられる人なら、ああ自民党のしかるべき選挙制度の関係でそういう私案が出たのかと思ってもいいのですけれども、これはどういうことなんでしょうか。
  98. 森清

    ○森(清)議員 自由民主党で昭和五十五年以来、選挙制度調査会において定数是正問題に真剣に取り組んでまいりました。五十八年判決を受けた後、五十九年一月からさらに具体的に選挙制度調査会において調査をし、そうして定数是正委員会をつくり、さらにその中に定数是正プロジェクトチームというものをつくって、私もその一員になりまして精力的に案を考えました。その当時考えました案は、たしか私の記憶では二十通りぐらいはあったと思います。その二十通りぐらいの案は、今言ったあらゆることを考えて、境界変更も考えていました、あるいはいろいろなことを考えて、そうして、それをそれぞれプロジェクトチームの中で討議をし、そうして、さらに大体のプロジェクトチームの結論は現在提案いたしております六・六案になり、それは小委員会で大体了承され、選挙制度調査会で了承されて、そうして我々自民党案として決まったわけであります。したがって、ちょうどそのプロジェクトチームで私が研究するときにたたき台として二十ぐらいの案をつくりました中の一つの案が今ごろ出てきたのじゃないか、このように考えております。
  99. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 何となく答弁になっておるようで答弁になりにくい点があるのですね。二十幾つぐらいの案の中でその一つが引き出されて出てきたというのを答弁どおり受けとめていいのかどうか。サイケイにも出ましたが、地方紙に出たのは恐らく共同通信のニュースを通じて報道されたのではないかというふうに観測はするのですけれども、二十幾通りなら二十幾通りの中から一つを選ぶというのがなかなか難しいのでありまして、率直に言って、全国紙のサンケイに載り、あるいは地方の二名区の減員になる四選挙区の、全部ではありません、愛媛その他にちょっと出たのですけれども、それは御答弁のようではちょっと理解しにくいですが、これはこれ以上深く触れません。  定数是正問題を考えていく場合に、人口的要素あるいは非人口的要素ということで午前中に西山委員の方からもいろいろ質問がなされました。全国的に見て選挙区というものを大きく分けて考えますと、大都市型選挙区で出ておられる方、私どものように、中小都市はちょっとありますけれども、主として農山漁村というところから、出ておる、これを称して農村型と言ったらいいのかわかりませんけれども、都市型、農村型、それぞれのところから出ておる人々はこういう定数是正問題を考える場合も、都市型から出ておられる人はそれは人口一本でいけ、農村の方は、面積も広いじゃないか、諸産業があって政治課題というのは多種多様にわたっているじゃないか。面積一つを言っても、例えば北海道の五区というのは、森委員も御承知のように、四国全体を合わせた面積の一・七倍くらいあるのですね。だから、一つ選挙区で四国全体の面積を合わせた一・七倍もあるというところを選挙区の五名区として活動していらっしゃる議員もおられるわけです。これは私ども議員として選挙区の広さというものが狭いように見えてもなかなか広いなということを実感することが多いんだけれども、そういう面で、最高裁の非人口的要素の中でもいろいろなファクターが書いてありますね。私はこのファクターについて一一触れようと思いませんけれども、そういった面で総合的な判断というものがやはり必要である。単に人口的要素だけで仮に定数を決めていくということになりますと、全国的な規模において、我が国の国権の最高機関である衆議院なら衆議院という構成が果たして全体的なものの基盤の上に立った構成と言えるかどうかということは私は基本的に問題だというふうに思うのであります。  そういう面からいって、いわゆる抜本改正という場合はそういった面にもメスを入れながら、人口的要素というものはもちろん基本になる、これは憲法の要請するところでありますからもちろん基本になりますけれども、いわゆる立法政策としての裁量判断の問題としてどういうものをどういうふうに、最簡裁はそういう点では科学的な物差しはなかなかできがたいというふうに判示でも示されておるわけですけれども、しかし、それにしても自治省としては具体的なそういうファクターの問題については資料を整備して、そして、そういうものについて考慮できることはどういうファクターであるか、あるいは考慮できない、ネグレクトしなければならぬ問題がどうであるかというふうなことがこれから抜本改正をやっていく場合には必要なことである。単に出てきた物差しに基づいて順番にやっていくというばかりの方式ではなしに、抜本改正という場合にはいろいろなファクターというものについての選挙単位の資料というものを十分整備しながら、考慮すべきことあるいは考慮から外すべきことというものをやって答えを出すべきじゃないか、こういうふうに考える一人でございますけれども、この点については古屋自治大臣と自民党の提案者から御答弁をお願いしたいと思います。
  100. 古屋亨

    古屋国務大臣 ただいまの角屋先生からの自治省としてそういうようないろいろの資料を整備して今後全国的な抜本改正に対処すべきではないかという御意見でございますが、私もさよう考えておるのでございまして、先ほど先生のお話の都市型、農村型、あるいはまた非常な過疎地域、先ほどの西山先生のおっしゃったような過疎地域、これは産業構造というものの変化によりまして過疎地域を招来をしたにいたしましても、面積あるいはそういう点を考え、また、そこの住民の政治意識ということを考えますと、先ほど十五くらいいろいろの要素を政府委員から申し述べましたが、そういうようないろいろの要素を検討して、抜本的改革の場合には十分資料を整備して対処すべきものであるというふうに私も考えております。そういうような問題につきましては、また人口も五年ぐらいでは随分変わってまいるところもありますし、現に今の日本の状態では急速な人口の変化あるいは産業構造の変化ということも行われておるのでございまして、そういう点におきましては抜本改正の場合にはそういうようないろいろの点もやはり参考としてその検討する資料をつくらなければならないと私は思っておりますし、また、そういうように努力をいたしたいと思っております。
  101. 森清

    ○森(清)議員 角屋委員の御指摘のとおりでございまして、抜本改正をするときには人口基準としながらその他もろもろの要素を勘案して選挙区割りを考え、定数配分を考えるものであるという基本的な考え方については全く同感でございます。
  102. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 四十分に藤波官房長官がおいでになる予定で、私は五十分までの間に一、二質問する予定でございましたが、官房長官、ちょっと日程がおくれておるようでありますので、本会議が迫っておりますし、各党それぞれ代議士会等もありますので、とりあえず前段の質問はこの程度で終わらせていただきます。
  103. 三原朝雄

    三原委員長 この際、暫時休憩をいたします。     午後一時四十七分休憩      ――――◇―――――     午後三時二十三分開議
  104. 三原朝雄

    三原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。角屋堅次郎君。
  105. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 きょうは私、同僚の我が党の山花委員に引き続いて、先ほど前半の質問戦を行ったわけでございます。本来は、私の質問の冒頭から藤波官房長官にも内閣法制局長官にもおいでを願って、系統的にやるつもりでございましたけれども、藤波官房長官、宮中の行事もあられたようですし、それは当然優先しなければなりませんから、冒頭、藤波官房長官、それから茂串内閣法制局長官、そこらあたりのところからまず始めたいと思います。  最初に、藤波官房長官にお伺いしたいのでありますが、御承知のとおり、来年参議院の定例選挙が行われるわけであります。これは参議院の従来の全国区、地方区の制度のうちで全国区を御案内のとおり五十七年の段階で法改正、随分与野党でも意見が分かれましたし、各党ともに大変御苦労したわけでありますが、いわゆる拘束名簿式比例代表制という新しい制度が発足したわけであります。来年は二回目の選挙戦を迎える。それで、この拘束名簿式比例代表制というものを五十八年に実施をし、来年さらに実施をする、その次以降どうするかというふうな問題があるわけであります。  本来制度は、選挙制度の場合は安定性が望まれるわけでありますけれども、しかし、この法案参議院先議で議論をいたしまして、参議院の最終段階のときに、当時の徳永議長談話というのが出たわけであります。これは各派代表を呼んで、そして、いろいろ調整に労苦しながら、最終的に徳永議長談話というのが出たわけであります。我が党なんかはその談話を迎える形をとりましたが、野党の中にはこれに対する厳しい批判もあったことは事実であります。  中身は別として、徳永議長は、この制度で二回選挙をやって、二回の選挙を終わったらひとつこの制度そのものについて、継続するかあるいは他の方法に変えるか、参議院自身の選挙問題だからそこで検討しようじゃないかというような趣旨のものであります。そのことに何も拘束されるわけではありませんけれども、この制度のできる経過の中でそういう一節があったことは事実であります。  それから、私が承っておるところでは、参議院の各派代表会議の中では、寄り寄り相談をいたしまして、五月の時点にどういう相談をしたとか、最近ではそういう相談について確認をしたとかいうふうなことがいろいろ私どもにも伝わってくるわけであります。  私どもの承知しておるところでは、来年比例代表選挙、それから選挙選挙、この制度のもとでやってこの選挙が終わったらひとつ各派で三年先の選挙にどうするかということを真剣に検討しようじゃないか、そして三年先の選挙の前にどうすべきかの結論を出そうじゃないか、こういう話し合いをしておるというふうに承っております。これは参議院サイドの問題であります。選挙制度は、衆議院制度であっても参議院制度であっても、広くは国会全体の問題ではもちろんありますけれども、そういうことが言われております。  一方、参議院の従来の地方区、今日言っておる選挙区の定数是正問題、こういう問題については、いわゆる選挙制度審議会の中でもこの定数是正問題について議論が行われて、いわゆる答申なるものが出た段階がございます。しかし、これは実施されずに今日に至っておるわけであります。つまり、貴族院から参議院制度は基本的に変わりましたけれども、参議院の地方区、現在の選挙区においては定数は四十年間そのままで変更することなく来ている。結局その間に衆議院といわず参議院全国的な人口変動が大きく起こっておりますから、いわゆる県別の定数比率というものを見ますと、数字は引用しませんけれども、やはりだんだんと格差が拡大をしているわけてあります。したがって、比例代表区の問題をどう考えていくべきか、あるいは参議院定数是正という問題については政府としては今までどういう取り組みをやり、今後の問題としてどういう姿勢で行こうとするのか、まずこの辺のところからお答えを願いたいと思います。
  106. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 まず、御質疑に対しまして、少しお昼の行事がおくれましたので出席がおくれましたことをおわび申し上げます。  まず一つは、参議院比例代表制の問題についてでございますが、五十八年の比例代表選挙、これは今委員が御指摘になりましたように、実施に当たりましてはいろいろな論議のあったところでございます。それらを乗り越えて比例代表制選挙が初めて我が国で行われたわけでございますが、選挙管理という面ではひとまずこの比例代表選挙を非常にうまく進めることができた、こういうふうに政府といたしましては考えておるところでございます。どういう選挙制度にもいろいろ一長一短と申しましょうか、それぞれ何らかの特徴があるわけで、それをどういうふうに評価するかということはいろいろ立場によってお考えがあろうかと思いますが、政府といたしましては、この比例代表制選挙が出発したことでございますし、第一回の選挙も非常にうまくいった、こういうふうに考えておりますので、この制度につきまして特に今政府の立場から論評すべき立場でも時期でもない、こういうふうに考えておるところでございます。  ただ、やはり参議院の中にもいろいろな御意見がある、各党にもいろいろな御意見があるというようなことは情報として私ども聞いておるところでございますが、こういう選挙制度につきましては各党各会派のいろいろな御論議が深まって、そして、この制度についてどうしようか、ああしようかというようなことになれば別でございますけれども、特にとりたてて今政府の方から働きかけをするというような考えは持っていない。むしろ各会派のいろいろな御意見などを静かに見守っていくことにいたしたい、こういう立場でおるわけでございます。  一方、二番目の御指摘のございました参議院定数配分の問題でございますが、参議院議員定数是正も非常に重要な課題であるというふうに認識をいたしておるところでございますが、総定数を何人とするのかを初めといたしまして半数改選制という制度でありますとかあるいは各選挙区の有する地域代表性格をどう考えるかというようなことなど選挙制度の基本にかかわる重要な問題でありますので、参議院定数の問題につきましてもやはり各党間で十分論議を尽くしていただきたい、政府としてはそれらの御論議をよく見守っていくことにいたしたい、こういうふうに今考えておる次第でございます。
  107. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 次に、茂串内閣法制局長官の方にお伺いしたいと思うのであります。  それは、衆議院で今議論しております衆議院定数是正問題、参議院で言えば選挙区の定数是正問題、これは国会の問題としては同じ基盤に立とうかと思います。ちなみに参議院議員一人当たり人口、最高・最低・全国平均格差表というのを見ますと、三十五年の国調では四・〇四倍、四十年の国調では四・六九倍、四十五年国調では五・〇一倍、五十年国調では五・五〇倍、五十五年の既に確定しておる国調では五・七三倍、要するに国調をやるごと議員一人当たり人口格差というものは五・七三倍まで拡大をしているということであります。  そこで、内閣法制局長官にお伺いしたいのは、衆議院定数是正問題の訴訟に対する最高裁大法廷の判決というのは五十一年、五十八年、本年の六十年と三たび出ておるわけであります。一方参議院の従来の地方区、今日の選挙区に対する定数違憲訴訟に対する最高裁判決というのは三十九年判決、五十八年判決、この二度出ておるように承知をいたしております。ちなみに衆議院で言えば五十一年判決では一対四・九九という格差が問われたのでありますし、五十八年の場合は一対三・九四という格差が問われたのでありますし、六十年判決では一対四・四〇倍の格差が問われた。そして、違憲違憲状態違憲という判決衆議院最高裁判決では下っておるわけであります。  ところが、参議院の場合は、三十九年は一対四程度では立法政策の当否の問題にとどまり、違憲問題を生ずるとは思われないということで一対四倍程度の場合にはこれは合憲ということに相なったわけでありますし、五十八年の場合は、一対五・二六ということで五十二年七月十日の参議院選挙のことに基づいて訴訟が起こったのに対してもいわゆる立法の裁量権の範囲問題ということで合憲の判決が下ったと理解をしておるわけであります。  そこで、衆議院定数是正に対する最高裁の基本的な判示の姿勢というものと参議院選挙区に対する最高裁定数是正問題に対する判示の姿勢の相違というものがなぜ起こっておると理解をしているのか。その場合に、当然のこととして憲法上の投票価値平等の原則というのは衆議院のみならず参議院選挙にも要請されるというふうに理解すべきものであると思いますし、それが肯定されるというふうにしたならば、参議院選挙区の議員定数の場合に人口数あるいは人口以外の要素というものはどういうふうに総合的に考えられるべきものだというふうに最高裁は示したのか、この辺のところについて御答弁をお願いしたいと思います。
  108. 茂串俊

    ○茂串政府委員 お答え申し上げます。  ただいま委員の御質問の中にありましたように、衆議院議員定数配分規定につきまして過去において三回最高裁判決が出されておりますし、また参議院議員定数配分規定についても同様三回の最高裁判決が出されておるわけでございますが、一番基本的な問題といたしましては、選挙権投票価値の平等、この点につきましては、いずれの判決におきましても衆議院議員参議院議員、両議院を通じて基本的には同様な考え方に立っておるわけでございます。ただ、御指摘のような相違が出てまいりますのは、結局衆参両院の議員選挙制度の違いによるものでございまして、これを端的に説明しているものといたしまして、昭和五十八年四月の参議院議員定数配分規定に関する最高裁判決を見ますると、衆議院議員参議院議員定数配分規定にかかわる相違点について非常に詳細に記述されておるわけでございますが、非常に長いので、そのまとめの部分をかいつまんで御説明をいたしますと、憲法が二院制をとって、参議院議員の任期を六年とし、いわゆる半数改選制度を採用し、また、参議院については解散を認めないとすることなどにかんがみますと、第一に、参議院地方選出議員につきましては、選挙区割り議員定数配分をより長期にわたって固定し、国民の利害や意見を安定的に国会に反映させる機能をそれに持たせるということにいたしましても立法政策としては許容されると解されるところであると述べております。さらにまた、参議院地方選出議員選挙について公職選挙法が採用した二人を最小限として偶数の定数配分を基本とする選挙制度仕組みに従えば、選挙区間における議員一人当たり選挙人数格差是正を図るのにもおのずから限度があるということを指摘しております。そして最後に、他方、昭和五十二年七月当時の参議院議員定数配分規定のもとにおきましては、投票価値の平等の要求も、人口比例主義を基本として選挙区割り及び議員定数配分を定めた選挙制度の場合と同一に論じがたいことを考慮するときはと述べまして、結論としましては、昭和五十二年七月十日の参議院議員選挙当時において、選挙区間議員一人当たり選挙人数に一対五・二六という格差があり、あるいはいわゆる逆転現象が一部の選挙区において見られたとしても、それだけではいまだ国会裁量権の限度を超えるものとして違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態が生じていたとするには足りないと認めるべきであるということを述べまして、昭和五十二年七月当時の参議院議員定数配分規定につきましては合憲の判決を下しておるわけでございます。  衆議院議員定数配分規定にかかわる諸判決の内容につきましては委員も十分御承知と思いますし、また今申し上げた参議院議員定数配分規定の特殊事情ということの裏返しになるわけでございまして、そういう意味で、結論的には衆参両院の議員選挙制度の違いによって、これらの衆議院議員定数配分規定に関する最高裁判決参議院議員定数配分規定に関する最高裁判決がいわば逆の結論を原則としては出しておるということが言えようかと思います。
  109. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 重ねてもう一点。今御答弁がございましたが、いわば衆議院定数格差訴訟については、いろいろな条件はありましょうけれども、最高裁としては総合的な判断要素もありますけれども、参議院選挙区と比べれば厳しく判示をする。参議院選挙区についてはいろいろな事情を述べて、一対五以上の格差があっても寛大な判決がなされる。にもかかわらず、この最高裁判決の全体を読めば、いわゆる倍率が投票一票の価値について相当拡大してきておる、あるいは逆転の選挙区もできてきておる、これは是正すべきものである、こういうことが立法府に対する要請として読み取れるのではないかと考えますが、いかがですか。
  110. 茂串俊

    ○茂串政府委員 参議院議員定数配分規定につきましては、ただいま申し上げましたとおり、合憲判決が出ておるわけでございますが、合憲判決が出ておるからといってそれが最良のものであるということは必ずしも言えないと思うのでございます。一般論としましては、憲法に照らしての判断立法政策としてどのような定数配分が望ましいかということとは別個の問題であるということが言えようかと思います。したがいまして、どのような形の参議院選挙区選出の選挙制度が最も実情に適するものであるかということは、立法政策の問題として別途に判断すべきものである、かように考える次第でございます。
  111. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 次に問題を進めまして、今度は官房長官にお伺いをいたしたいと思います。  今度の国会が始まりまして、本会議といわず予算委員会といわずあるいは本委員会も含めて議論された重要な問題の一つに、いわゆる衆議院定数配分規定について六十年最高裁判決違憲と出た、この違憲と出た定数配分規定に基づいて内閣が解散、総選挙ができるのかどうかということについていろいろな議論が行われました。八月三十日の本特別委員会においても、我が党の山花委員を初め官房長官あるいは政府委員の方でこの問題の議論をやりましたし、これは当特別委員会ばかりでございません、ある意味において平行線部分もございます。私は、そういう問題に重ねて触れるのではなしに、ただ一点お伺いしたいと思うのは、いわゆる内閣解散権問題と天皇の国事に関する行為とのかかわりの問題でございます。  現在の日本国憲法上、天皇の国事に関する行為そのものは、第三条あるいは第四条、それを受けました形で第七条で「天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。」ということで十項にわたる項目が天皇の国事行為として列記されておるわけであります。  従来、この国会で議論になりました第七条の第三項「衆議院を解散すること。」第四項「国会議員の総選挙の施行を公示すること。」これにかかわって、中曽根総理大臣あるいは藤波官房長官が御答弁になってきた、いわゆる定数是正のされざる段階で解散、総選挙が行えるのかどうかという問題について、官房長官の御答弁によれば、純粋な法理論上では解散権拘束されない、しかしながら、その事態になったときには各般のいろいろなことを考えながらどうすべきかを判断すべきものと考えております。言葉は官房長官の言葉そのままではありませんけれども、そういう御趣旨の御答弁をいろいろな記録の中からも承知しておるわけであります。  そこで、今の問題について、私は衆議院法制局の方にお願いをいたしまして、日本の有名な憲法学者、宮沢先生を初めいろいろな先生がこの問題についてどういう学説を述べておられるかということについても勉強させてもらいました。しかし、それぞれの学者がどういう学説を言っているかということには時間の関係もあって触れません。基本的にそう大きな違いはないと承知をしております。そういう学説は学説としても、この種問題というのは、いわゆる法理論上の問題と政治論上の問題がございます。そういうことも含めて、内閣としてどう考えておられるのか、一点お伺いをいたしておきます。
  112. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 天皇が憲法を尊重し、擁護する義務を負うことはもちろんでありますが、天皇は国政に関する機能を有していない。国事行為は内閣の助言と承認により行うものでありますから、国事行為についての責任は助言と承認をした内閣が負うことになる、このように考えておりまして、天皇と内閣の助言あるいは承認との関係をそのように私どもは理解をいたしておるところでございます。
  113. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 条文上ということではございませんが、しかも私はこのことについて深く議論をするつもりはございません。条文上という点で、第七条に第三条、第四条の関係は当然今御答弁のあったような趣旨で加わると思いますけれども、天皇の国事行為の中で、「天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。」特に「国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。」こういうふうに憲法の条文上ではうたわれておるということ、そして山花先生が八月三十日の本委員会質問の中で、森清先生質問主意書に対する内閣答弁というところで、憲法九十九条に対する内閣の答弁が出ております。私はこれを深く引用しようとは思いませんが、天皇の国事行為が、第一条で言われる日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であられる現在の天皇の地位の重さといいますか、そういうことを考えて、第七条で「国民のためにこと言っておる条文等も考えれば、いわゆる学問上の形だけでいいのである、これは儀礼的なものである、そういう形に天皇の国事行為を考えるのでなしに、全体的な第一条あるいは第九十九条も含めた総合判断の中で考えるのが適当であろうと私自身は受けとめておるわけでありますけれども、憲法上、違憲と言われたような定数配分規定の中で行うということで、天皇が国事行為をやられるときに大変お困りになった姿で、儀礼的にやるにいたしましてもそういうことはいかがであろうか、これは我々のような戦前、戦中派の気持ちの中にそういうものがあるからと言われればそれまででありますけれども、そういう点でこれ以上議論しようとは思いませんけれども、解散をするかどうかという事態の中ではいろんなことを総合判断をしなきゃならぬ、その場合は今のようなことも十分念頭に置くべき問題ではないか、こう思いますが、重ねてお伺いいたします。
  114. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 角屋委員の御質問の御趣旨はよく理解をするところでございます。それなればこそ、内閣の助言と承認、まさにこの大きな責任を負った内閣の助言なり承認なりというものは本当に慎重に、かつ責任を負ったものでなければいかぬ、こういうふうに考える次第でございます。  さらに申し上げれば、それなればこそ、最高裁判所判決の出ておることでもございまして、この立法府におきまして、指摘をされております定数について一日も早く是正が行われるようにぜひ各党間の論議を深めていただきたいと思いますし、内閣といたしましても大きな関心を持ってこの問題に対処してきておるところである、このように考える次第でございまして、各党各会派、各議員の方々の深い御理解を賜りますように内閣の立場からはお願いを申し上げたいと思う次第でございます。
  115. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 それでは、衆議院定数是正にかかわる問題に入らせていただきます。官房長官、また新聞記者会見等もあられるようでありまして、適当な時間で退席していただいて結構であります。それも念頭に置きながら質問を申し上げたいのであります。  今、一生懸命に自由民主党の案、それから社会、公明、民社、社民連の案、そういうものを中心にいたしまして、共通のコンセンサスを得られる方向が何であろうか、そういうことで、私自身は、対立した形じゃなしに、次につないでいく、コンセンサメを得た新しいルールというものを得たいものだという意味もありまして、午前、提案者の森先生の方にも質問をしたり古屋自治大臣にも質問申し上げたのでありますが、そういう重要な時期に、数日来、この法案は継続である、あるいは衆議院で真剣に議論しておる際に、参議院に送るんだというような発言が政府なり政党の首脳部から報道として出るわけであります。内閣の番頭としてこの法案はどうすべきものだ、あるいは内閣の番頭として、総理の御意向やらあるいは自由民主党の幹事長その他首脳部やら双方を駆けめぐっているんだと思いますけれども、双方を見てみた上に立って、どういうふうな判断をしておられるかという点はいかがでしょう。
  116. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 既に最高裁からの判決があり、これを一日も早く是正をしなければいかぬということにつきましては立法府並びに内閣の大きな責任であるというふうに認識をいたしておるところでございます。そこで、この状態から一日も早く是正を図りますようにということで、時間をかけて与党におきましても六・六案といったことをおまとめをいただいて国会提出をいただいている。野党でもいろいろお話し合いをいただいて国会に御提出をいただいておるところでございます。  いろいろと御相談があると思うし、いろいろな立場で御意見があると思いますけれども、長い時間かけて今日までおまとめをいただいてきたものをさらにまた修正するというようなことになりますと、それぞれ御意見のあることでございますから、またなかなかまとまりにくいことになろう、こういうふうにごく一般的に考えておりまして、第一党の自由民主党から出されております案を中心にいたしまして、ぜひこの案が成立をするようにお願いができれば、自民党と政府は一体になってこの成立を期して努力をしよう、こういう立場で終始きておるところでございます。いろいろなお話が出ておるようでございますけれども、その考え方は全く変わっておりませんで、ぜひそういった方向で論議を深めていただきますようにお願いをいたしたい、こう考えておるところでございます。  それぞれ政治生命のかかったことでございますし、選挙定数の問題は政治家お互いにとってなかなか厳しい問題でございます。長い間一つ制度定数できておりまして、そういう意味では、例えば三重県第二区の場合に私も角屋議員の驥尾に付して一緒に選挙をやらせていただいてきて、それがある日定数が変わるというようなことを考えてみましても、これは政治的にはなかなか大変なことだろうと思うのです。思いますけれども、やはり最高裁、三権の一方の司法当局からこういう判決が出ているということを重大に受けとめて、立法府としても内閣としてもやはり対処していく、そして関係議員の方々の深い御理解をいただき、各党派の論議を深めていただくということ以外にないのではないか、こういうふうに考えておる次第でございまして、ぜひそんな運びにしていただきますようにお願いをいたしたいと思う次第でございます。
  117. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 同じ選挙区の藤波議員の答弁でありますけれども、それはまかりならない。それは社会党の考え方ということだけじゃなしに、御案内のとおり、社会、公明、民社、社民連から共産党も含めて野党は大正十四年以来の三ないし五でずっと続いてまいりましたこの中選挙区制というものを堅持するという立場で、いろいろ意見のあるところを野党四党統一案をまとめて提案をしておるわけでありますから、新たに二名区を新設するということを含んだいわゆる自民党案をそのままでひとつのんでいただいてというのでは、これからの新しいルールづくりもできないということになる。せっかくの官房長官の御発言でありますけれども、それは受け入れるわけにはいかぬ。そこでどういうふうにすべきかというのが、こういう問題の場合に、非常に苦労するお互いの政党の立場だと思うのであります。  官房長官の次の日程の関係がありますから、その問題は論議の分かれるところとして、次に入ります。  いわゆる定数の問題は衆議院で三回、参議院で二回、有権者訴訟によって最高裁判決が下る、我々の場合は、これからは最高裁判決を受けることなく立法府の裁量において定数是正がなされていくということはやはり立法府の主体性において考えていかなければならぬ。これは当然のお互いの検討課題だと思うのです。抜本改正という言葉は四文字でありますけれども、自由民主党、社会、公明、民社、社民連から共産党に至るまで、本来の抜本改正とは何ぞやということになると、なかなか議論の分かれるところは率直に言ってあろうというふうに私は思っております。しかし、そういうものを乗り越えて、共通項としていわゆる国政舞台における定数是正のルールをどうするか、これは既に本会議での我が党の佐藤議員質問等からきょうの西山委員質問等に至るまで、アメリカイギリスフランス、ドイツ、イタリア、こういう先進諸国では、これは下院でありますけれども議員定数是正に対してどうしておるのかということになりますと、名前は若干違いましても性格としてはいわゆる区画決定をしていく機関、機能も、どんぴしゃりそれを受け入れてやっていくものもあれば、議会が検討をさらに加えて手直しをしてという、そういう形の委員会もありますけれども、第三者機関というものが報告なり勧告なりの答えを出すという形をルールとして法制的にもとっているというところが先進諸国に多いわけであります。我が国における場合には、それは選挙制度審議会がいろいろな制度論もやってまいりましたが、必要な場合には定数是正にも検討を加えてきた。いわゆる三十九年の定数是正というのは第二次選挙制度審議会の答申に基づいて、それを受けて政府提案をし、手直しをして成立をしたという経緯になっている。その役割を選挙制度審議会が果たしてきた。  さらにさかのぼれば、鳩山内閣が出した、最後は廃案になってしまったいわゆる小選挙法案といえども選挙制度調査会というところから答申が出てそれを受けてやったんだと言えばそういうことの一つの根拠はあったということでありますが、そういう戦後の審議会とかいろいろなものの歴史は別として、党内でもまだ方針を議論して決めていかなければならない問題でありますけれども、広い意味選挙制度審議会のような形に定数是正の問題も任せるのか、あるいはヨーロッパその他でやっているような形の定数にかかわる問題についての委員会をつくり、当然基本的には各党共通の合意に基づく前提条件を持ちながら、それに基づく答えについては国会でも議論をする余地を持つという意味における委員会をつくっていくことが必要であろう。  きょうは、同僚の、私と同期でありますが、堀君が、本会議場で選挙制度の問題で第三者機関の問題などに触れておりましたけれども、これは堀議員の意見であろうと思いますが、いずれにしても私自身が今言っていることも党内で十分議論しなければなりません。しかし、従来からも、抜本改正はやはり第三者機関に意見を求めてやらなければならぬということでは恐らく野党の各党といえども基本的には一致しているのじゃないか。問題はどういう第三者機関をつくるかということが重要である。坂本先生は当委員会の議論の中では、選挙制度審議会というのがあるじゃないか、今開店休業じゃないか、それをなぜ復活しないのかという意味の御質問がなされたと承知しております。  それはともかくといたしまして、今言った第三者機関を抜本改正ということを考える場合にはつくって、そこで、たたき台といいますか、勧告のあれをつくってもらうということが必要になるのじゃないか。その点について政府としてどうお考えになっておられるか、あるいは森先生の方もそうでありますけれども、党としてどういう議論をされているか、ひとつお答え願いたいと思います。
  118. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 森先生からまたお答えがあろうかと思いますが、問題は憲法精神あるいは憲法の条項に沿うように公平に民意が反映されるということをどのように達成をするかということが非常に大事だと思うのでございます。したがいまして、そのことに反しているという立場から最高裁判所判決が出ているというふうに思うわけで、そのためにはいろいろな方法があろうかと思います。今、委員が御指摘になりましたように、第三者的な機関を設けてできるだけ公平な意見が反映されるようにして国会に、立法府に勧告するというようなことも一つ方法であろうかと思うのでございますが、どういうふうにその方法を考えるにいたしましても、結局はそれを受けてまた立法府がどのように決定をするか、こういうことになるわけで、したがいまして最終的には国会でどのようにお決めをいただくかということに結局なるわけでございます。  そういうことを考えてみますと、どのような機関でどのような御審議をいただくかということはいろいろあろうかと思いますけれども、それらの扱いも含めましてやはりこの国会の中で御活動いただいております各党のいろいろな論議を深めていただいて、そして、その合意の上に立って進めていく、あるいは第三者機関を設けるならばそれを受けたらどういうふうな形でこれを進めるかといったようないろいろな問題について各党間でよく御論議をいただくということでありませんと、結局は実現をしないということになるのではないだろうかと考えておりまして、こういう中で政府が果たし得る役割というのは、主人公が立法府でございますだけに、どういうふうに関心を持ってどのように努力をしていったらいいのか、各党が論議を深めていただくのに一緒に勉強させていただき、一緒に努力をしていくということしかないかな、こんなふうに考えておる次第でございます。  いずれにいたしましても、くどいようでございますが、そういったことも含めて基本にかかわることでございますので、各党間の論議が深まることを御期待申し上げたい、こう考える次第でございます。
  119. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 森先生お答えの前に、官房長官、次の日程で退席されることは結構でございます。
  120. 森清

    ○森(清)議員 お答え申し上げます。  第三者機関についてはいろいろな角度から研究されなければなりませんが、自由民主党においては選挙制度調査会においてこの暫定的な案について精力的な検討を行いました。ただ、抜本的改正についてどのような改正あるいはどのような方法でやるかについてはまだ論議を深めておりませんので、自由民主党として第三者機関についてどのような考えを持っているか、今御答弁申し上げることはできないわけであります。ただ、一般的な傾向として考えれば、ただいま官房長官の御答弁にもありましたとおり、やはり院の構成に関することであり、民主主義の基本にかかわる問題でありますから、各党において十二分な御論議を尽くされ、そして、それを持ち寄って各党で協議、決定するということが一番望ましいのではないか、このように考えられます。また、先進諸国の例を申されましたが、アメリカフランスはそういう機関を設けておりません。西ドイツイギリスは設けておりますが、これは党の合意といいますか、国会でつくった法律によってどういう基準でどういう形で選挙区をつくるということがはっきり示されておるわけであります。したがって、あとは技術的なこととして第三者機関ができるわけでありますから、国会構成に関するこのような問題を国会において基準をつくらないで第三者に任せてしまうということではある意味では国会責任の放棄になりはしないか、やはり最終的に決定しなければならない国会において十二分に論議を尽くすべきであり、技術的なことになればあるいは第三者機関にも征していいのじゃないか、このような感じを持っておりますが、ただいま申し上げましたとおり、その点については自由民主党において抜本的改正に取り組んだ後に党としての御方針を申し上げることができますが、今は公式な自由民主党の答弁ではございません、私の個人の見解を申し上げた次第でございます。
  121. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 今の藤波官房長官と森議員の御答弁というのは、ことしの六月二十四日、公選法の一部改正案の自民党案と野党案とが討議されたときの藤尾政調会長の答弁とほぼ同じことを言っておられる。このことになると、これは重要なことでありますから答弁も慎重になるというのは理解できますけれども、これは当然つくらなければならぬことと存じておりますとは言われない、藤尾政調会長の議事録は改めて読みませんけれども。そうなると、従来の経験から見て後追いでやらなければならぬという形の危険が極めて強かろうという感じを率直に言って持つ。しかし、この定数是正の問題というのは該当の地区において、特に減員の場合は政治家の政治生命にかかわるという重大問題であるということは私どもも理解できますし、それであればこそこういう問題の処理はやはり関係地域の関係議員からも率直な意見を出してもらって、自由民主党からも若干意見として出されておるわけでありますけれども、私どもの方からも出ていただいて、そういう議論の上でどうするかというふうにすべきものだ、こう思っておりますが、第三者機関については政府も森議員も本会議における藤尾政調会長の答弁も極めて慎重な御答弁である。そういうことで今後の抜本改正に対する考え方、いわゆる制度的な歯どめというものが可能であろうかという疑問を持ちますけれども、この点については次の質問との関連もありますので、議論をしたという程度にとどめておきます。  私は、引き続いて古屋自治大臣にお伺いしたいのでありますけれども、定数是正問題、これは日本の場合は今百三十選挙区がありますけれども、百三十選挙区のA地区とB地区とがどうかというふうな倍率の問題で何倍になったということでこの定数是正問題が議論されるわけですけれども、そのこと自身は憲法体制の要請するどころとして基本的に十分理解できることですけれども、ただ今後この定数是正問題を将来推進するに当たって基本的に考えなければならぬ非人口的要素ということで私は若干申し上げて、そういう面のデータを自治省は整備すべきだということを言いましたけれども、具体的な問題として、いわゆる国の行政機関、地方公共団体都道府県あるいは市町村、特に地方行政機関のかなめになる県という単位衆議院定数という問題は、計算上こう出るからそれでよろしいということでいいのかどうかという問題がやはり重要な検討課題として私はあると思うのであります。  御案内のとおり、今いわゆる一県の中の定数を分けずに全県一区と言っておるところが、福井、山梨、滋賀、鳥取、島根、徳島、高知、佐賀、沖縄、奈良というふうにございます。これが全県一区という形になっておるわけでありますけれども、例の五十五年国調で、私はもう一回二倍のときの名前を拾いませんけれども、そういう中では鳥取とか島根とかあるいは次の県の名前までは言いませんけれども、こういうところはもう一対二ということになると数県俎上に上ってくるわけですね。特に鳥取の場合は今四名なんですね。次はそういう理論からいけば三人に計算上なる。あるいは将来、長い形の中で過密過疎問題が基本的に解決されずに、今までいっておるような形で総合的なあれをある程度ウエートを置かずにいくとすると、これが四から三になる。これは前提としては一対二でやった場合に対象になり、それがやられる場合の前提で申し上げておるわけでありますけれども、私はやはり衆議院の県一本あるいは数選挙区の定数割り振りという場合に、三ないし五という問題と同時に、いわゆる地方公共団体行政機関のかなめである県の定数問題ということについて、基本的な人口ばかりでなしに何名は確保すべきものであるという、そういう基本的な考え方があっていいんではなかろうか。それが立法府の裁量として許容されるかどうかという議論の問題はあろうと思います。  衆議院法制局に聞きましたら、ある学者は、これは県単位衆議院定数は最低五名はきちっとなければいかぬという議論を言っておられますということを私に教えていただきました。その所説までは見ておりませんけれども、いずれにしても現行は四名が福井と鳥取があるわけですから、これを引き上げるということも可能かもしれませんけれども、まあ今の段階で言えば四名というのが最低限度であるというふうな考え方というものは、やはり国全体の行政をやっていく場合に、あるいは憲法上明示されております地方自治を運営していく場合に重要な憲法上の要請でもないのかというふうに思うのでありますけれども、まずこの点について古屋自治大臣の方からお伺いをいたします。
  122. 古屋亨

    古屋国務大臣 角屋先生のお話のように、一対二になりますと、三県にとっては定数減になるわけでありまして、最高裁判決ではやはり都道府県の、お話のように、区画の重要性ということについて述べておるのであります。したがいまして、私ども、都道府県というものが我が国の政治及び行政の実際において果たしている役割あるいは国民生活及び国民感情の上におきまして占める比重というのは、府県というのは非常に大きいものがあると考えております。したがいまして、御指摘のようなそういう県において定数が減るがどうかというような御指摘の点につきましては、今後の抜本的是正を検討していく中で十分ひとつ私は論議をしていただく問題であると考えております。
  123. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 今後の定数是正を考える場合にこういう考え方をとるかどうかということは別にいたしまして、私は地方の行政機関のかなめである県の定数というものは、憲法上の許容の範囲においてどうすべきものであるかということは、抜本改正を今後考えるに当たっての重要な検討課題であるというふうに認識をいたしております。  そういった立場から、御承知の大正十四年にこの中選挙区制が当初発足するときに、森委員は御専門家でありますけれども、三ないし五で定数配分をしてつくったわけでありますが、そのときの定数が四百六十六でスタートしたわけであります。今日これが五百十一、本法で規定されておるものと、それから、それと関連をして暫定、「当分の間こということで規定されるのを含めて五百十一ということになっておりますが、私、参考までに自治省の方にお願いをいたしまして、大正十四年の定数配分の手法に基づいて五十五年の国調の人口に基づくもし仮に定数配分をするとすればどういう府県別の数字になるかということで数字をいただきました。これは一つの参考資料ということでありまして、それによりますと、そういう手法でいけばいわゆる府県単位で三という数字の出てくるところというのは、まあ県名を挙げさしてもらうことをお許し願えれば福井とか山梨とか鳥取とか島根というのが計算上は挙がってくるということがございます。何も与野党で合意してこういう方式でやろうということではございませんけれども、大正十四年にとった手法で今日のいわゆる各都道府県別の人口、そして現定数というものを前提に考えました場合にはそういった三名というふうな県が出てくる。そうでなくても五十五年国調による一対二というところでも数県が俎上に上ることは御案内のとおりでありまして、抜本改正を考えるに当たってはそういった全国的にとられる手法の段階の中で府県の行政単位の段階をどう考えるか、それが立法上、憲法上どの程度許容される問題であるかという検討の上に立ってそういうことを考えるべきだろうというふうに思うのであります。  それによりますと、やはり今日でも続いておりますけれども、首都圏というのは、私のいただいた参考資料からいけば相当の定数がふえる、そして他のところはほとんど軒並みに定数が減るという状態が計算上出てまいります。冒頭の私の質問のときに返るわけでありますけれども、いわゆる国権の最高機関としての衆議院構成というものは本来基本的にどうあるべきかという場合に、人口を基本にしてその他の諸条件をどう入れてやることが国政の全体的な面から見て合理的な手法であるのかということが非常に検討されなければならぬ問題だというふうに思っておるわけでありますが、これはいわゆる都市型選出の議員とある意味における農村型選出の議員との見解の違いということもあり得るかもしれません。しかし、冒頭でも申し上げましたように、我々が減員区の各県を訪れたときに切々として訴えておるそれぞれの地域代表の言葉は、いわゆる過疎を何とかして地方自治体の長としては食いとめなければならぬ、また石川の場合でいけば半島振興法が制定された、ここを起点にしてひとつ大きく人口の減少の食いとめをやろうということで、歯を食いしばってそういう過疎地帯になろうというところではやっておるわけでありまして、そういう場合にその地帯から出る国会議員が一人でも少なくなるということは、その地帯の人々からすれば大変な問題だろうと思うのです。だから、一票の価値によってやるのが国民全体の合意であるというふうに一般論としては言われます。しかし、昭和三十九年の定数是正、十九名やったのは増員であります、昭和五十年の二十名の定数是正をやったのも増員であります。大正十四年以来、身を切るような定数是正の減をやろうとするのは、対象区は六対六でありますけれども、これはいわば初めてということになる。それから、今日の日本の財政状況やあるいは国民全体の意向からいけば、定数是正の場合には増員ではなしに現定員の中でさらに定数是正を進めていかなければならぬということもこれは事実だろうと思います。  そういうことになればなるほど、私は口酸っぱく言っておりますように、共通の土俵のルールというものができ上がればこれからやっていく場合にそれは進めやすい要素になる。ところが、自由民主党の考えておるルールでこれからもいきましょうということになると、それはもう次々詰まってしまう。私は今回のこの法案に当たって、次の速報値が出たときの一対三の範囲内のとりあえずの措置も含めてやる場合には、ここの共通のルールづくりというものがないと、次の問題というのは、あるいは二つを含めてやる場合でもなかなかできがたいというふうに思う。だから、森さんの答弁としての姿勢と、政治論としてお互いが国会としてどうするかという問題は、ある意味における別個の問題だというふうに思うのでありまして、そういう意味からここはやはりスタートが大切ですという意味で与野党の一致しての見解というもの、藤波官房長官によれば自民党の案のそれをなるべく早くという趣旨のように承って、これは政府・与党一体の立場から答弁としてはある意味では理解できますけれども、ここが重要ではないか、現定員の中でこれからも定数是正をやらざるを得ないという制約条件がある、そういうことで進めるに当たっては与野党の共通のルールづくりというのが今求められておるというふうに私は思うのでありますが、その点森先生の方からの御答弁をいただきます。
  124. 森清

    ○森(清)議員 基本的な考え方は角屋委員のお考え方と全く同様でございます。ただ、今やっておりますのは憲法違反にならないようにとりあえずやろうという改正であり、さらに、この二十四日に出ます速報値に従ってやる是正もそういう考え方でやるわけであります。その考え方、手法というものと、それから与野党合意いたしまして将来抜本的な改正を行う、それの検討を開始するというその内容についてはまだこれからのお話でございますので、我々はそれについて確たる方針をただいま申し上げるようなものを持っておるわけじゃございませんので、それについてはお互いに謙虚に話し合って、そして本当に安定したルールづくりに取り組みたい、このように考えておる次第でございます。したがって、今角屋委員の仰せの点については、とりあえずやるこの提案されている法案の解決、あるいはそれと引き続いてやらなければならない暫定的な改正案、これのルールと、それから抜本的なルールは全然別である、このようにお考えいただいて対処をしていただきたい、このように考えます。
  125. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 最後、一点だけ質問して次の質問者に譲りたいと思います。  公職選挙法の第十三条「衆議院議員選挙区」というところの「衆議院議員選挙区及び各選挙区において選挙すべき議員の数は、別表第一で定める。」ということに基づきます別表の中で、御案内のとおり「本表はこという条項があるわけであります。別表の沖縄県の次のところに、「本表は、この法律施行の日から五年ごとに、直近に行われた国勢調査の結果によって、更正するのを例とする。」これは「五年ごとに、」というのが行われてきたわけではなくて、三十九年、五十年というふうに行われてまいりましたが、ちなみに戦前戦後の「本表はこのところを見てみますと、戦前では明治三十五年の改正で、「本表ハ選挙区ノ人口ニ増減ヲ生スルモ少クトモ十箇年間ハ之ヲ更正セス」というのが文言として入りました。そして、大正八年の法改正で、「本表八十年間ハ之ヲ更正セス」というふうに改正をされました。戦後二十年の法、それから二十二年の法ではこの条項はなくて、二十五年の法改正の際に「本表は、」が入って、今読んだような内容のものになったと承知をいたしております。これはこれからの抜本改正という問題を考える場合に関連のある条文ということになります。  戦前戦後の改正の経緯は別として、今直ちにこの問題についてどうするかという問題を私は提起しておるわけではございません。しかし、抜本改正というものを考える場合には、ここの文言をこういう別表第一の次に入れるのか、基本的な条文の中に入るのかというのは、抜本改正の第三者機関を含めたそういう検討ともかかわってくると思います。  これらの点については、自民党の提案者として森先生おられますけれども、本来は、政府提案の場合には古屋自治大臣が答弁の直接の責任者でありますが、こういった問題に対してどういうふうな御見解でございましょうか、最後にお尋ねをして終わらせていただきます。
  126. 小笠原臣也

    小笠原政府委員 お答えを申し上げます。  定数配分を定めております別表に、明治三十五年法以来別表の更正に関する規定が入っておりまして、戦後人口の変動が急激な時点におきます昭和二十年法改正あるいは二十二年法改正のときには十年間据え置くという趣旨のような規定はむしろなくて、昭和二十五年法、今の公職選挙法になりまして現在のような「五年ごとに、直近に行われた国勢調査の結果によって、更正するのを例とする。」という規定が入ってまいりましたことは、ただいま御指摘のあったとおりでございます。  この規定、ただいま今後の抜本的な検討課題の中で考えるべきではないかと御指摘がございましたけれども、まさに今後別表の抜本改正をどのように検討していくかということの中で、基本的なルールづくりの問題もございましょう、それらとの関連で今後の別表の扱いをどう考えるかということをお決めいただき、また、それとの関連で、ここの規定の仕方も当然論議をしていただくべき問題ではなかろうか、このように考えておるわけでございます。
  127. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 以上で終わります。ありがとうございました。
  128. 三原朝雄

    三原委員長 斉藤節君。
  129. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 前回、同僚議員であります中村議員がいろいろ御質問いたしたわけでありますけれども、今までの議論をお聞きしまして、どうも全体的にただただ自民党の六・六増減案だけをぜひ通してもらいたいというだけでございまして、実質的に我々の討議に対して本当に実のある議論はいただいてないような感じがするわけでございます。これからいろいろな問題について御質問いたしますけれども、実のある御答弁のほどをぜひともお願いしたいと思うわけでございます。  まず、自民党の六増・六減案はいかにもその場限りの感をぬぐえないわけでございます。五十五年の国調では格差約三倍であったのでありますが、現時点ではもう相当な格差の拡大が予測されていることだとか、あるいは二名区を新設し、選挙区制の変更につながる問題が多過ぎる、このように私は思うわけでございます。定数問題は議会制民主主義の根幹をなすものでありまして、現在の中選挙区制も国の伝統として今日まで継続されてきたわけでございます。したがって、定数是正は無原則であってはならない、このように私は思うわけでございます。六・六案は是正案としてどのような原理原則で作成したのか、お伺いしたいと思うわけでございます。森先生の御答弁をお願いいたします。
  130. 森清

    ○森(清)議員 お答えいたします。  二十七日の審議においてもお答えしたわけでありますが、戦後行われた定数是正は、三十九年は選挙制度審議会の答申に基づいてやったわけであります。それは、全国平均に対して上下三分の一くらいの範囲におさまるように是正をしよう、それを超えておるものについては定数の増減をするということが選挙制度審議会の答申であり、政府も一応それで兵庫五区を二名区とし、東京や大阪の選挙区については六名区ないし八名区という提案をしたわけであります。それについて御論議の末、それは一応廃案になりました。続いて出したときは、兵庫五区を二名区にするのは取りやめて、そのままにして、三名区から八名区ということで政府提案をいたしました。それを国会審議の段階において、六名区-八名区については分区をして、現在の三名区―五名区にしておるわけであります。これは定員増がありますからそういうことができたわけです。  昭和五十年は、後で見ますと全国平均に対して一・五倍を超える選挙区について定数増をし、それについては各党合意が行われまして、国会へ持ってくれば分区は国会責任でやるという合意がありまして、提案政府に仮に提案するような形でしていただきました。したがって、政府提案は三名から八名までですか、そういう提案がありまして、それについて当委員会において分区をいたしまして、三名から五名にしたわけであります。それは定数を増加させながら行った結果そういうことができたわけであります。  そういう経過を踏まえて、今回我々が違憲状態を脱するための方法として考えましたことは、これは最終的には野党の方々とも合意したわけでありますが、五百十一名の定数はそのまま据え置く、ふやさないということを第一にいたしました。それから、我々がその次に考えましたことは、格差は三倍以内におさめる、もう一つは、最小限の是正にする、これが我々自由民主党の選挙制度調査会において決定した基本方針であります。それに従って作業を行った結果、選挙区の一部を変更するということも論議になりましたが、それは皆さんが言われているとおり、今まで六十年間続いてきた選挙基盤を崩すことになる、それは大変な選挙制度の改変である、それよりは定数の増をし、あるいは減をするということの方が、より選挙制度の安定度からいっても適当である、選挙制度としても安定しておる、こういう考え方で増加するところを六選挙区、減員するところを六選挙区つくりましたところ、ちょうど七選挙区目を計算しますと二・九九くらいになって三倍以内に入る、こういうことで六減・六増案ができたのでございます。したがって、我々は三十九年の手法、五十年の手法、そして、それに定数をふやさないということがおもしとして加わったということを考えて、その方針に従えばこういうことになるということで決めさせていただいたわけでございます。
  131. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 そのようなもとでつくられたと思うのでありますが、しかし、定数問題を考える場合の大原則でありますけれども、私どもはこのようにいろいろわかっておるわけでありますが、まず一つは、選挙区間が異なっても投票価値は平等でなければならない、二つ目は、投票価値の平等は平均議員一人当たり人口を超えぬ数的価値の平等を言う、それから三つ目は、数的価値の平等の確保のために選挙区制の変革を意図して代表制を破壊してはならない、こういう以上の三点につきましてはぼ間違いないのかどうか、その辺をお伺いしたいと思います。
  132. 森清

    ○森(清)議員 ちょっと御質問の趣旨がわかりかねたのでありますが、私が申し上げましたことは、総定数を五百十一名に据え置くということ、格差は三倍以内におさめるということできる限り最小限の是正にとどめる、これが自由民主党において、選挙制度調査会においてとった基本原則であります。
  133. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 私の申し上げているのはいわゆる定数問題を考える場合の大原則でありまして、今、森先生お答えになったのは、それは自民党でそのようなお考えのもとにおやりになったと思うのでありますけれども、もう少し客観的な大原則、これはいわゆる数的価値の平等の確保のために選挙区制の変革を意図して代表制を破壊してはならないという一項があるわけでございます。  この大原則のもとで考えますと、このたびの六・六案というのは、今申し上げました三番目の数的価値の平等の確保のために選挙区制の変革を意図して代表制を破壊してはならないというこれに該当するような気がするのです。どうでしょうか。質問意味がわかっていただけますか。
  134. 森清

    ○森(清)議員 我々自由民主党で検討した段階では、三倍以内におさめるというところから今の六・六案も一つの案でありまして、先ほど御答弁いたしましたように、三十くらい案をつくりまして、その中には選挙区を合区してみたり境界変更をしてみたりする案もあったわけであります。そういうことを一つ一つ綿密に総合的に検討して、選挙制度のあり方としては、選挙区の改変につながることをすることはむしろ選挙制度根幹に触れる問題である、定数是正でありますから定数上下を行うことは選挙制度の基本にかかわる問題ではない、しかも大正十四年以来三名から五名に原則的にやってきたというこの重みは十二分に尊重する、したがって、その重みを尊重するのであるが、こういう方法でやってやむを得ずできた二人区は全く例外なんだ。したがって、五人区、六人区になったものを四人に割ったり三人に割ったりするのじゃないのだ、三-五というのはあくまでも原則を認めているわけであります。しかし、例外的にこのようになる方がいいのか。例えば野党案でいいますと、鹿児島三区と奄美は現状態において何の関係もない地域になっている、それを合区するようなことをするのがいいのか、鹿児島三区を二名にして奄美を一人区のままにしておくのがいいのか、こういう議論を党内で十二分に尽くし。ました。奄美の例で申しますと、鹿児島三区、つまり大隅半島でございますが、あそこは二名にし、奄美を一名にする方がより選挙制度として安定し、しかも国民代表という観点からその方がよりベターである、こういう考え方から二名区をつくることもやむを得ない、こういう考え方になったわけであります。
  135. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 その二人区が問題のことを私は申し上げているわけでございます。いわゆる数的価値の平等の確保のために選挙区制の変革を意図して代表制を破壊してはならないという、いわゆるその二人区でございますね。問題は、その二人区というのは小選挙区制そのものではないかもしれません。しかし、半世紀以上もの間、今、森先生お答えになりましたように、三から五という中選挙区制の原則を守ってきたわけでありますから、それを破壊してはならない。いわゆる二人区がこのたびは四選挙区できているのです。特例かもしれませんけれども、六選挙区の中に四選挙区までこのように二人区ができているということは選挙区制の変革そのものではないかと私は思うのですが、どうでしょうか。
  136. 森清

    ○森(清)議員 我々は選挙区を合区したり境界変更をすることが選挙区制の変更である、このように考えております。したがって、選挙区制も定数も含めて総合的にあるものが選挙制度なんだ。その選挙制度全体を考えてやるときに、先ほどの例で申しますと、鹿児島三区、大隅半島の三名を二名にする、奄美大島をそのまま一名区としておくことが選挙制度全体を考えてより安定した制度であるのか、大隅半島と社会的、経済的にほとんど関係のない奄美大島というところをくっつけて三名区とする方が選挙制度としていい格好なのか、安定した格好なのか。あるいは国民を代表するというのは、明治以来、あるいは外国にも例がありますが、ああいう島嶼部というところは大選挙区制のときでも無理をしてでも一人区、小選挙区制をつくったのであります。したがって、奄美大島は、明治二十二年以来現在まで三十七回の総選挙を行っておりますが、そのうち五回は占領下でやっておりません。三十二回選挙をやった。そのうち二十六回は小選挙区でやってきておるわけです。大選挙区制になろうと何しようとやってきたわけであります。しかも、その六回の選挙のうち、その当時、いわゆる大正十四年から終戦までは奄美大島の人口が約二十万、大隅半島の人口が約十六万です。したがって、奄美群島から必ず一名は当選する可能性があったわけであります。しかも、現実の選挙の結果は、そのうち三回は奄美大島から二名出ておるわけであります。あとの三回は一名。こういうふうに、あの離れた島の奄美大島から今後、野党案のようなことをすれば、今度は大隅半島の人口の半分以下です。そういう選挙区をつくったならば恐らく、あるいは出られるかもしれませんが、奄美大島の方は奄美大島を代表するものとしての国会議員を持つことができない可能性の方が非常に強くなるんじゃないか。そういうことは国民が各地域から議員を選出して国会構成するという考え方にふさわしいかどうか。  そういう点も総合的に考えて、二名区は今まで六十年間やってなかったんだからそれは反対だという形式論じゃなくして、もっともっと選挙というものの実態を考え、そして民主政治というものは各地域から代表が出なければならない、この原則も踏まえて、我々はやむを得ず、ほかにくっつけようがございませんので、そういう結果として鹿児島三区は二名区とすることが正しい――正しいというか、よりよい、こういう結論でございますので、よくその点をお考えいただきたい、このように考える次第でございます。
  137. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 どうも今の御説明では納得がいかないわけでありますけれども、時間の都合で次に進めさせていただきます。  格差を二倍にするか三倍以内にするか等についても議論がいろいろあるわけでございます。しかし、その論議も重要でありますが、選挙区制の変革をしないで数的価値の平等を図るのが憲法の要請する具体的な意味、内容ではないかと思うわけでありますけれども、いかがでございますか。
  138. 森清

    ○森(清)議員 どこの国でも人口、あるいは有権者の場合もありますが、平等というのは人口あるいは有権者を頭に置いてやっておることでありますし、これは最高裁判所判決でも人口あるいは有権者基準である、それが原則である、しかし、それで全部割り切ることができるかというと、そのほかの要素もいろいろあるであろうということを言っております。したがって、私は、選挙制度をつくるときは人口あるいは有権者というものが基本的な問題であり、それは格差が離れておっても、多少の離れ方はいいが、ある程度離れたらいけませんよ、こういうのが最高裁考え方であろうと思います。したがって、ある程度離れたから憲法違反という判決を受けたわけでありますから、やはり基準人口であろう、このように考えております。
  139. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 先ほどの議論の中にもいわゆる非人口的要素についても云々という話もありましたけれども、憲法の趣旨は今お答えいただいたようなことだと思うわけでございます。  次に、格差にしましても、五十五年国勢調査を前提に緊急避難としての六・六案でございますね、この案というのは確かに格差三倍以内、そういう案になっていることは事実であります。しかし、速報値の公表がもう間近であり、しかも、その時点で既に三倍をはるかに超すことは確実だと思うわけでございます。したがって、是正意味を失ってしまうのじゃないか、また合理性のない、党略以外の何物でもなくなってしまうのではないか、今のこの五十五年国調の是正案であってはそういうことにしかならない。そのようなものを世論だとか最高裁への対応と一体自民党側では考えておられるのかどうか、その辺お答え願いたいと思います。
  140. 森清

    ○森(清)議員 この点につきましても二十七日に十二分にお答えしたつもりでございますが、我々が今要請されておるのは、現在の公職選挙法は既に憲法違反だ、これを是正しなければならない。是正をするには、公職選挙法の別表に書いてある、書いてないにかかわらず、使えるのはもう五十五年国勢調査人口しかないわけであります。したがって、これに従ってやろうということであります。  そうして、与野党合意しておりますことは、この二十四日に速報値が出たならば恐らく何選挙区かは三倍を超える選挙区が出てくるでしょう、それならばそれに従って直ちに是正をいたしましょう、これも各党合意しておるわけであります。皆さん方の党を含めて合意しておるわけであります。  しかも、今言われたようなことは、我々がことしの五月に提案したとき、そしてまた、それに引き続いて野党四党案が出されたとき、そのときに既に十月一日には国勢調査が行われ、十二月ぐらいには速報値が出、そうして六・六ではなくして、大体十・十ぐらいになるであろうということは全部予測されておったことであります。したがって、そのときにおいて与野党とも同じ考え方法案をつくり、そして同じ考え方審議をすべきでありますから、今言われておりますようなことを言われますと、それでは皆さん方の党では今提案されている法案をどのようにお考えになっているのか、どのようにお取り扱いになるのか、私の方から質問するわけにいきませんから、そういう態度を明らかにされて申されますと私も非常に答弁がしやすくなるということだけお答えしたいと思います。
  141. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 確かにそういう問題はあると私は思います。しかし、いずれにしましても定数是正問題というのは国民の主権にかかわる憲法問題でありますから、国民サイドに立って是正されるべきであろう、そんなふうに私は考えるわけでございます。党略的に自民党サイドに立っているから国民の総意でない小選挙区制に通ずる六・六案で済まそうとしている、それは自民党サイドに立っているからではないか、そんなふうに私は思うわけでございます。自民党案の二人区をまず撤回していただきたい。そして、現行選挙区制の枠内で定数是正の与野党合意を目指す、そういうものが筋じゃないか。自民党案が出たからああいう野党案が出ていると私は思うわけでございます。あの六・六案が出なければああいう案は、野党の四党合意というものはなかったんじゃないかと私は思うのでありますが、その辺御答弁願いたいと思います。
  142. 森清

    ○森(清)議員 格差問題については、お認めのとおり、自民党案も野党四党案も同じでございますからそれについては論議はあれでございますが、その自民党案についての御批判の中に、二名区は小選挙区制につながる、このようにあなたの方は断定されておりますが、私たち自由民主党は、二名区は中選挙区制である、小選挙区制とは何の関係もない制度である。したがって、それがなぜ小選挙区制につながるのか、意味がわからないのでございます。したがって、もし小選挙区制につながると断定されるならば、どうしてつながるのか、それについて御質問いただけば、それについてお答えしたいと思います。
  143. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 いわゆる中選挙区制として大正十四年から六十年間もずっと続けられております三名ないし五名区、それに対して例外もあるということで、先ほど奄美群島の問題もありましたが、それは本当の例外でありまして、いわゆる二人区をつくっていく。しかも、今度の六・六案で四選挙区も二人区ができるということは、やがて三人区のところは全部減らしていくというようなことでどんどん二人区になっていくだろう。  これはまた後で時間があれば議論したいと思っておりますけれども、いわゆる二人区の場合と、それから、例えば石川一区と二区が合区して五人区になったような場合の死票を五十八年十二月の総選挙のデータをもとに単純計算したのがありますが、あれを見ても、森先生あたりの頭の中ではすぐおわかりだと思いますけれども、死票が非常に多く出る。二人区にすればするほどそれだけ多くなっていく、しかも大政党に有利になってくる、そういうことは事実であります。これがやがて小選挙区制につながるのじゃないかということは言わなくても暗黙のうちに了解できるのじゃないか、そんなふうに思うわけでございます。そういう意味で、私どもは二人区をつくるということに対しましては断固反対しているわけでございます。  では、次の質問をいたします。  抜本是正、抜本是正ということを森先生は今まで何回もこの委員会で発言しておられますが、この抜本是正の中身と段取りについてはどのように検討しておられるのか。先ほどから御答弁の中に、与野党合意の上でこれからいろいろ考えていこうというふうな返事がありますけれども、やはり抜本是正をなさるということを言われるからにはある程度の腹案がおありじゃないか、そんなふうに思うわけでありますが、それについてお伺いしたいと思います。
  144. 森清

    ○森(清)議員 抜本是正については、与野党が合意をして取り組もうということでございまして我々も今から研究に入らなければならない、こういう段階でございまして、自由民主党において抜本是正案の方向もまだ決めておりません。自由民主党においてもこれから検討をしていきたい、このように考えております。
  145. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 これからということでありますけれども、抜本是正をやりますと一応公約しているわけですね。公約した以上は、やはり今からその内容について具体的に是正方向を論じ合って検討していかなければ、実質的に抜本是正をやりますと言いましても信じられないと思うわけでありますが、どうでしょうか。
  146. 森清

    ○森(清)議員 自由民主党においては選挙制度調査会という正式の機関がありまして、その機関で正式に検討を開始したいと思っております。したがって、今の段階は個々の人がそれぞれお考えを持っているだろうと思いますので、そういうものを全部党の機関で出し合って自民党の考え方を固めていきたい、このように考えております。
  147. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 確かに選挙制度調査会でやられるのでしょう。  では、森先生にお聞きしますが、森先生のお考えとして、一票の重みをめぐる格差は何倍くらいが適当なのか、その辺どのように考えておられますか、お聞きしたいと思います。
  148. 森清

    ○森(清)議員 こういう自由民主党案の提案をしておる者の一人として、提案者代表してここで答弁を申し上げておりますので、私の個人の見解を聞かれましてもこの席からはなかなか答えにくいのでありますが、私は一票の格差はでき得る限り平等でなければならない、それがどの程度であるかについては、まだ私も結論を持っておるわけではございません。
  149. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 平等でなければならない、それは確かに一般論としてそうだろうと思います。しかし、二倍なのか、三倍なのか、あるいは偏差是正するのか、どのように考えておられるか、その辺。
  150. 森清

    ○森(清)議員 それでは、全く個人の見解というか、私の勉強ということで申し上げさせていただきたいと思いますが、学者やその他の人の意見の中には、二倍が限界であろうという説が非常に有力であるということは私も承知いたしております。それから、実際の外国の例では、先ほども御紹介がありましたとおり、西ドイツでは平均に対して上下三分の一でありますから、これは結果として二倍以内になるわけですね。そうやっております。それから、イギリスアメリカは完全平等を目指して、選挙区に市町村や何かがありますから差が多少あってもよろしい、こういう考え方でやっております。それから、ついこの間、当委員会から派遣されてフランスに行ってまいりました。フランスでも小選挙区制から比例代表制に変更いたしましたが、そのときの議員配分も、人口に平等配分するという考え方でやっておるようでありますから、方向は人口平等案分だ。  それが、現実の日本の選挙制度の中においてどういう形で実現していくか、そして選挙区制ができ上がっていくか。その結果があるいは何倍になるかということは、それぞれの作業を通じてやってみなければわからないことでありまして、必ず平等にするというわけにも技術的にもいかぬことでありましょうし、また先ほど来、例えば角屋先生からもあるいは我が党の西山委員からもいろいろ御意見がありまして、そういう考え方も加味しなければいかぬだろう、こういうことを考えますと、一律に格差は何倍以内ならいいかということは、私の個人の見解としてもなかなかお答えしにくい点でございます。
  151. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 過去、三十九年の改正では、増員是正でありますが、三分の一偏差是正しているわけでございます。五十年是正も、当初格差で検討して、結局二分の一偏差であった、そういうことでやっているわけでありますが、今度の場合はどうなのか、その辺ちょっとお答え願いたい。
  152. 森清

    ○森(清)議員 先ほど御説明いたしましたように、三十九年の選挙制度審議会の答申は、平均に対して上下三分の一、西ドイツ方式と大体同じ考え方であります。しかし、兵庫五区を二名にすべきところを三名で成立いたしましたので、結果としては二・一か二になったと思います。  それから、五十年の改正のときは、各党いろいろな案がありまして、何名増の範囲ならばどうするということを各党が持ち寄りまして、そして最終的に決まった案を拝見しますと、結果としては平均に対して一・五倍を超えている選挙区について是正を行った。このように承知いたしております。
  153. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 先ほども森先生が諸外国についてお話しされましたが。先進諸外国でも格差だけでいわゆる定数是正を行っている国は一つもないわけでございます。全部偏差で行っているわけです。それゆえ、格差でなくて偏差是正する考えはあるのかないのか、その辺聞きたいのです。
  154. 森清

    ○森(清)議員 これはたびたびお断りいたしておりますとおり、いまだ自由民主党において検討に着手したばかりでございますので、自由民主党の見解ということではなくして、全く私の個人の見解ということで申し上げさせていただきたいと思います。  憲法違反になるかどうかということをはかる尺度としては、それ以上超えたら憲法違反になりますよということですから、最小の選挙区と最大の選挙区とを比べてそれが三倍なら三倍以内になっておれば、いかなる選挙区、百三十の選挙区が全部三倍以内になっているはずであります。したがって、そういうものが合理的な基準であろうと私は思います。どの選挙区とどの選挙区を比べても三倍以内ということにするには、最小と最大を三倍以内にしておけばいいわけです。ところが、国民の投票権の平等を求めるには、合理的な基準としては平均に対して上下幾らまで離れていいかというふうな基準をつくる方がより合理的な考え方であろう、このように考えます。
  155. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 次に、中曽根総理は、定数是正は各党が協調してまとめてほしい、このように言っておられるわけです。自民党は二人区ができるのはこの六・六案に限ると言っていると聞いておるわけでありますけれども、その点どうでしょうか。
  156. 森清

    ○森(清)議員 我々は現在の手法を用いてやった例外的にできた二人区であるという認識を持っておりますので、この六・六に限るかあるいはその次に及ぶかはまた新しい問題として検討しなければなりませんが、この提案に関する限り、こういう手法を用いて結果としてできた二人区である、これをつくろうとしてつくった二人区ではない、こういうことで申しますればこの案限りであるとお考えいただいていいのであります。  ただ、先ほど御答弁しましたように、次の二段ロケット目がどうなるのか、これについては今お答えする限りではございません。また、皆さん方の案が通るかもわからぬわけでありますから、通ったときにはそれが一応ルールになるわけでありますからそういうことを今言いませんが、現在我我が提案している六・六法案の二人区の考え方については、積極的につくろうとしてつくった二人区ではなくして、今言ったようなやり方に従ってやむを得ずできた二人区であると認識をいたしております。
  157. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 万やむを得ずできた二人区であるということでありますけれども、新聞報道などをつらつら眺めておりますと、自民党の幹事長であられます金丸先生が二人区は抜本是正案を検討するときもできるとほのめかしておるわけです。  事実、これは十二月一日の朝日新聞でありますが、「二人区譲らぬ考え」ということで「「六・六案」で二人区ができることに野党側が強く反発している問題については「この時期になって、いまさらこの問題に手をつけることはできない。将来のことを考えても、二人区創設が今回限りとは約束できない」」と述べております。これは十二月一日、おとといなんです。それから、十月十八日の読売新聞によりますと、「「野党は二人区ができることは困ると主張しており、私も小選挙区制につながる二人区には反対だ」としながらも、「野党に(今後とも)二人区を作らないと約束するのは難しい」」このように述べて、二人区をつくらざるを得ない状況にあり得るとの認識を述べておられる。また、ほかの新聞も同じです。  いずれにしても、新聞報道によりますと、このように二人区というのは万やむを得ずできると言って、どんどんそのような状況にいくのじゃないか。しかも、金丸幹事長は小選挙区制につながるとはっきり言っておられる。そういうことですから、私どもは二人区の創設につきましては非常におそれておるしいまた反対しておるわけでございます。いかがでございますか。
  158. 森清

    ○森(清)議員 先ほどから申し上げておりますとおり、私ども自由民主党の方は、二人区についてはそのような認識を持っております。  そこで、新聞記事を引用されてございますが、私はそれについて何もお答えする力もございませんし、公党として提案し、そして、自由民主党の提案者としてここで答弁しておりますことが自由民主党の見解でございます。したがって、どういう役職にある人がどのような発言をされようと、それは別であります。ただ、そういうことになるならば、恐らく我々にもそういう御指示があるのだろうと思いますが、そういう指示も何もございませんので、私が今現在お答えしておることが自由民主党の考え方であると御理解いただきたいと思います。
  159. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 是正について全く混沌としておるわけでありますけれども、そういう意味でも、六十年の国勢調査の速報値の公表は、与野党の六・六案の違憲あるいは合憲の決め手となる重要な意義を持っていると思うわけでございます。しかし、その公表が十二月二十四日ごろでは、この臨時会の会期中に間に合わない。過去四十年、四十五年の国勢調査のときは十二月二日に公表しているわけでございます。  また、今までは増員是正で済ませてきたわけでありますけれども、今回は定数減を含めるという基本的な是正であるわけで、我が国の憲政史上初めての試みじゃないかと思うわけであります。そういう意味でも重大であるということは論をまたないと思います。  したがって、会期中に速報値を公表しなければ速報値のその速報の意味をなさないと私は思うわけです。定数是正のスケジュールもまた立たないと思うわけでございます。私は速報値を会期中に出すべきだと主張したいのであります。公表が出て初めて、公式の結果が出たときというように総理は言っておられますけれども、総理の発言が理解できるわけでございます。延長問題も何か今ささやかれているようでありますけれども、会期中にこの速報値を出すのか出さないのか、この辺を総務庁にお伺いしたいと思います。
  160. 北山直樹

    北山政府委員 お答えいたします。  私どもは統計の公表につきましては、これは全く統計技術的に考えておるわけでございまして、昭和五十五年の例を申しますと、最終的な県が統計局に対し、調査書類、要計表を出したのが十二月五日でございまして、それから二週間たちまして十二月十九日に公表したわけでございます。  速報値につきましては、昭和五十五年から官報に公示することになりましたので、私どもといたしましては、集計は実際は現在の総務庁の統計センターというところでやっておるわけでございますが、この統計センター等で慎重に検討いたしまして公表するということでしておるわけでございまして、今回も、今回は前にいろいろ御説明したと思いますけれども、調査技術上の問題がありまして十二月十日に最終的な要計表を提出させるというふうな格好になっておるわけでございまして、それから前回と同じ約二週間ということで現在のところは作業的に計画しておるわけでございます。ただ現実には、実際に都道府県からそういうふうな調査書類が統計局あてに届きませんと、いつ出るかということは申し上げられないわけでございます。  いずれにいたしましても、私どもといたしましては、御要望の趣旨はよくわかるわけでございますけれども、統計的に確信を持った数字を公表したい、そのためには全国の結果、全都道府県からの結果が集まりまして、これを前回との比較その他検討いたしまして私どもとして確信を持った数値を出すということでございますので、現在私どもが統計技術的に考えております期日を早めて公表することは、技術的な観点からして非常に難しいと考えておるわけでございます。
  161. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 これにつきましては私の同僚議員が、内閣委員会でも、速報値を早く出しなさいと前から言っておるわけでございまして、それをぜひともお願いしたいと思うわけでございます。コンピューターによらず手作業云々と言っているわけでございますけれども、事は憲法投票価値の平等という国民の基本権を守る上で重要な意義のある速報値であるわけです。このたびのは非常に重要な意味を持っているわけでございます。その速報値が公表できなければ審議する土台といいますか、いわゆる五十五年国調をもとに六・六案ができているわけでありますけれども、今国会に無理をすれば出せないことはないんじゃないか、私はそのように思うわけでございまして、それを出していただかないと審議する土台というか根拠が不明になってしまう。是正をめぐって与野党とも混乱するばかりであると私は思うわけであります。現に総務庁の後藤田長官は確定値と速報値の差異は九千人程度であるということも発言しておられるわけでありますけれども、これは要計表の概数をもう既につかんでいるからこのような発言をしているのじゃないか、私たちはそう思うわけでございます。そういう意味で、早急に公表できるよう努力するのが国会責任でもあり、また特に与党の責任じゃないかと私は思うわけであります。まだ十日あるわけでありますから何とか早く公表をすることを私はここで要求するわけです。どうでしょう。
  162. 北山直樹

    北山政府委員 後藤田長官が、内閣委員会でございましたか、速報値と確定値との差異が九千人というふうに答弁をされたと思いますが、これは市町村別の誤差をプラス・マイナス考えないで全部寄せたときの値というので、昭和五十五年の国勢調査についての値でございます。この誤差の原因というのは、どちらかといいますと、いろんな、例えば不注意等も含みますいろんな原因によって生ずるものですから、昭和六十年の国勢調査につきまして確定値と速報値とどれくらいの差ができるかということは、私ども統計技術的に見ましてもこれはなかなか予測がつかないというのが実情でございます。したがいまして、過去の国勢調査等につきましても必ずしも今の同じ差が九千人というわけではございませんので、そういうことで長官は五十五年についての結果を言われたというふうに理解をしていただきたいと思っております。
  163. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 そういうことでお答えになったのかもしれませんけれども、何しろ今非常に重要な段階に来ているわけでありますから公表できるものは早くしていただきたい、そのように思うわけでございます。  また、最近のNHKの討論会、十一月十二日でありますけれども、ここで自民党は、司会者が、六十年国調後の抜本改正がこの方向というがその意味はどういう意味なんだということをただしたのに対しまして、これは森先生お答えだと思いますけれども、比例代表制とか小選挙区制を含めて検討する、これは本音じゃないかと思うのですけれども、このように発言しておられるわけでございます。従来からもなお自民党は事あるごとに小選挙区制ということを発言しておられるわけであります。  こういう状態で、自民党は将来も小選挙区制は考えないと公言しているようでありますけれども、これでもなお信じろ、このように言われるのか、これは矛盾していると私は思うわけであります。この辺自治大臣のはっきりした御答弁を私はお願いしたいと思うのです。
  164. 森清

    ○森(清)議員 私は選挙制度については硬直的な考え方はしない方がいい、やはり国民の代表、政党としてどのような制度があるかということを本当にざっくばらんに考えていったらいいじゃないか。ずっと小選挙区制をやっているアメリカのような国もありますし、フランスのように小選挙区制をやったり比例代表制をやったりぐるぐる変わっている国もありますし、日本も割にぐるぐる変わった国の一つであります。  そこで、どうしてそういうことを申し上げるかといいますと、これは選挙制度審議会選挙制度のあり方、区制、定数について抜本的――抜本的という言葉は別でありますが、それについて政府が諮問をし、これは法律に従って諮問することになっておったわけであります、そうして答申をした四十二年の答申の考え方は、定数選挙区制の委員会のうち、意見を表明した人が二十八名、そのうちに小選挙区制あるいは小選挙区制と比例代表制を加味しろという意見が二十二名、それから中選挙区制で比例代表制にしろ、あるいは中選挙区制で連記制にしろ、これは現在の単記制と全然違う制度であります、こういう者が五名、それから現在の中選挙区制を少し改善しろという者が一名であった。それが第一委員会の結論であります、六案出まして、六案を整理しますとそういうことになるわけであります。  したがって、実務家あるいは学識経験者という者が何年もかかって選挙区制あるいは定数是正について検討した結果はそういうことになっておる。これは私は国民の常識として受け取っていいのじゃないか。それから、それを総合的にまとめた総会においては、会長から第一委員会においてはそういう結論であった、総会における論議も小選挙区制あるいは小選挙区制に比例代表制を加味するという案を加えれば多数の意見である、こういうことが答申にあるわけです。  したがって、そういう国民的な合意といいますか、国会以外の場所で行われた、これは国会法律をつくって、そして政府が正式に諮問した答申でございます。そういうところから、そういう答申も出ておるにもかかわらず、およそ小選挙区制とか比例代表制というのは考慮の外にして抜本改正をやるのですというようなことではなくして、やるかやらぬかは皆さんの御討議の結果決まるわけでありますが、そういうことを含めて、国民的討議を経ればそういうことも答申されたという事実も踏まえて、抜本改正について幅広い検討を行うべきである、私はこのように申し上げている次第でございます。
  165. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 次に、別な質問に移ります。  仮定の問題でありますが、仮に会期中に六・六案が成立したとしましても速報値が公表される、十日後には違憲状態になると私は思うわけでございます。そのように違憲状態に戻るような矛盾した是正案の成立に固執するそういう根拠といいますか、論拠は一体何なのか、私には解散権の確保のためだけの定数是正の対応としか受け取れないわけでありますけれども、その辺いかがでございますか。
  166. 森清

    ○森(清)議員 まず、解散権の問題については国会はいかなる権限もないわけでありまして、これは内閣に与えられた権限でありますから、先ほど来内閣代表して官房長官から御説明があったことを承っておりますと、そういうことには関係ない、こういうことでございましたので、そう我々は受け取らざるを得ないと思います。  そこで、なぜこの国会でそう固執するのか、こういうことを言われますが、我々は現在の法律が既に憲法違反になっている、これは一日も早く是正すべきではないか、放置するわけにいかない、これが第一点であります。  それから、政治的に考えまして、これは非常に失礼な言い方でありますが、我々は相当数の議員を抱え、また国民の半数の支持を得ている大政党であります。しかも、責任政党であります。その政党が一つの政策についてある案をつくるということについては、小さい政党よりか時間がかかります。そういう大政党でありますから時間がかかるという事情も御勘案いただきたい。この六・六案をつくるために党内で大変な論議を尽くしたわけであります。そういう中ででき上がって、一応自由民主党では六・六案でやろうという合意ができたわけであります。そうしてまた、野党の方も大体それに準じた案をお出しになられたわけであります。したがって、この国会でそれをつくっていただけば国会としての一つの大きなルールができるじゃないか。そうすると、今度は六十年国勢調査人口というものが発表になると、二つのルールができ上がったわけでありますからそのルールに従って、次の是正というのは党内取りまとめあるいは各党との合意についても多少楽じゃないか。  そういうことで、我々せっかく提案し、野党も御提案になっているこの案、いずれの案になるかは別として、できるだけ早くこの国会で議了していただいて一定のルールという事実をつくっていただきたい。これが急いでおる理由でございます。
  167. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 ルールづくり云々ということを言われますけれども、しかし、そのルールの中にいわゆる二人区が四選挙区も入っている、ああいうような状況のルールをつくられたのでは非常に困ると私は思うわけです。二人区のないような、野党四党提案のああいう合区して二人区を排除するというような案であればこそ我々もルールづくりには賛成するわけでありますけれども、今の六・六案、自民党案ではとても賛成できないと思うわけであります。いかがですか。
  168. 森清

    ○森(清)議員 自由民主党の提案する内容については、二人区というものは中選挙区制であり、しかも、つくろうとしてつくった二人区ではなくしてやむを得ずできた二人区ではありませんか、したがって御賛成いただきたいということで御審議をお願いしているわけであります。また、野党四党の方は二人区をつくらないということで合区をしたり境界変更をした案をお出しになっているわけであります。したがって、今両方がここの審議の対象になっておるわけでありますから、あなたの方の提案の二人区は絶対に認められないから自分の方に寄れというのもいかがかと思うのであります。したがって、その二つの案について十分審議し、論議を尽くして、そして、どのような形で成案を得たものが成立するか、これは今せっかく論議中でありますから、その点について十分御審議を願いたいと思います。
  169. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 早急に是正を行うということは我々も同感であります。また、反対などしていないわけであります。したがって、違憲の状態を先延ばししようというのではなくて、現段階では拙速は避けるべきである、このように主張しているわけでございます。会期後わずか十日ぐらいで六十年国勢調査の速報値が公表される段階で、五十五年国勢調査の、しかも問題の多い暫定案を一党独裁的に一方的に成立を図ろうとする自民党の姿勢が私は問題だと思うわけでございます。この姿勢を国民が納得できると考えているのかどうか、その辺いかがでございますか。
  170. 森清

    ○森(清)議員 自由民主党が一党独裁的にやろうとしているというようなことは発言を撤回していただきたいと思います。私たちはここで十二分に審議を尽くそう、そして国会構成に関する問題であるからでき得る限り各党の合意を得たい、こういうことで精力的に御審議をお願いし、審議をしておるわけであります。一党独裁的にやっておるじゃないかということはひとつ御撤回願いたいと思います。
  171. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 この五十五年の国勢調査をもとに行った六・六増減案というのは、何も拙速にやる必要はないじゃないか、もう十日もたてば速報値が出るわけでありますから、そういう意味でぜひとも拙速は避けよというのが私たちの主張でございます。  さて次は、話題をちょっと変えますけれども、定数規定についてお伺いしたいと思います。  現実に定数問題を考えた場合、六・六案は四野党統一案とそれから自民党の六・六案の二案が俎上にあるわけでありますけれども、定数問題を各党間で話し合う上で最もネックになっているのは、公選法に定数に関する法律制度的な規定が全く放置されてきているということにあると私は思うわけでございます。また、憲法の基本的人権の平等を幾ら主張しましても、公選法に定数の基本原則が確立されていないから、いわゆる公平であるべき定数問題がいつまでもルーズになる、致命的な欠陥と考えているわけでありますけれども、その辺どのように考えておられますか。
  172. 小笠原臣也

    小笠原政府委員 衆議院議員定数配分につきましては公職選挙法の別表、この別表というのももちろん法律の一部ではございますけれども、ここで直接その選挙区の区域とその定数を定めるをいうやり方をとっておるわけでございまして、具体的に定数配分をしたルール、原則というものを法文上明確に定めておるわけではございません。  ただ、経緯を申し上げますならば、大正十四年の中選挙区制を採用したときの改正にいたしましても、昭和二十二年に再び中選挙区制を採用しましたときの改正にいたしましても、完全に人口を基礎にいたしまして都道府県にまず人口比例に基づきまして配分をし、その中でさらに選挙ごとにこれまた人口に比例をして配分をした経緯があるわけでございまして、人口に比例して議員定数配分すべきであるという考え方は別表末尾の規定、すなわち、本表は、五年ごとに、直近の国勢調査の結果によって、更正することを例とするという規定の中にあらわれておる、このように考えておるわけでございます。  具体的な今後の定数配分のルールにつきましては、今後の問題として十分御論議をいただきたい、このように考えております。
  173. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 公選法に定数に関する基本原則の法定、すなわち法律的に基準を設けて今後定数問題の混乱を避けるべきではないか、そのように考えておるわけです。定数規定というのは必要欠くべからざるものではないかと私は思うわけでありますけれども、その辺どのようにお考えになっていますか。
  174. 古屋亨

    古屋国務大臣 私からお答えいたしますが、定数配分の基本的な基準をつくるべきではないか、これが先生の御意見だと思っております。  定数配分は立法府の構成に係る基本的な事柄でございます。議員の総定数選挙区のあり方とも関連をいたしております。したがいまして、総定数選挙区のあり方との関連を考慮いたしまして定数配分の基本的な基準をつくるということは私は傾聴すべき御意見であると考えております。  ただ、現行衆議院議員定数配分規定は、さきの最高裁判所違憲と判示をされておるところでございまして、その一日も早い是正が必要であると考えておりますので、現時点ではまず当面の是正を早急に実現していただいて、さらにその後の定数配分の見直しについてどう考えるかということにつきましては、御指摘の点も含めまして今後各党間で十分御論議をいただきたいと考えておます。
  175. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 確かにそういう点で定数規定の確立がなされていないということは、我が国が民主国家と言えない側面があるということを意味すると思うわけでございます。先ほども森先生からいろいろ御説明がありましたけれども、先進諸国などはいわゆる憲法上あるいは法律制度的健ほとんど規定されているわけでございます。私どもの党も定数規定の必要性を重視しておりまして、その案を持っているわけでございます。そういう点で、これらの点を自民党さんはどのようにお考えになりますか、その辺ちょっとお答え願いたい。
  176. 森清

    ○森(清)議員 お答えいたします。  私も、公職選挙法自体の基本に流れておる考え方は、やはり人口平等案分を求めておるものだ、そのように理解しております。ということは、別表そのものに、国勢調査人口によって、更正するのを例とする、こういう書き方をいたしておりますし、また現に、たびたび申し上げますが、明治以来昭和二十二年の改正まで人口平等案分で定数配分が行われたことも事実でございます。しかもまだ、衆議院定数配分にはございませんが、都道府県議会議員定数配分については人口平等案分をしろと法律に書いてある、例外はあってもいいがと書いてありますが。そのようなことで、一貫して流れるあの法律精神というのは人口平等案分だ、このように考えられるわけであります。それを現実の政治の中で法律をつくる最高権限が国会にあるわけでありますから、そのルールをつくらないけれどもそのルールどおり国会が動くであろうということで、国会自身を縛るルールを国会自身がつくらなかったということであります。  こういう考え方先進諸国皆と言われますが、アメリカ各州配分するときは法律があります。しかし、各州の中でどのように選挙区をつくるかについては、各州まちまち、いろんなことをやっております。それから、先ほど御紹介いたしましたように、ドイツとイギリスにはそういう法律がありますが、フランスは日本と同じように、別にそういう基準をつくった法律はないようであります。  したがって、そういう考え方についてはいろいろ考え方はあろうと思いますので、今後抜本的是正のときについては、ただいま自治大臣からも御答弁あったように、そういうことをつくれば現在議論しているようないろいろな混乱が非常に少なくなるということで、私も個人としては賛成をいたします。
  177. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 次に、定数是正の実質的な機関を設置してはどうかという考えを持っているわけでありますけれども、これにつきまして自民党はどのように考えておられるのか。
  178. 森清

    ○森(清)議員 沿革的に申し上げますと、明治三十五年に改正をしたときは、人口がどんどんふえるに従ってふえていくものですから、これは人口増加あるも十年間これを更正せず、こう書いたわけですね。それを受けて、大正八年、大正十四年は、人口増加あるもという規定はありませんが、十年間は更正しない。それを受けて、昭和二十五年の公職選挙法では、今度は五年になったわけであります。そのときは人口変動も非常に大きい、また国勢調査も、今まで十年ごとであったわけでありますが、簡易調査を入れて五年ごとになったというような事情があったかと思います。したがって、そういうことを考えますが、アメリカは十年ごとであります。それから、西ドイツ選挙ごとにやりますからこれは常時やるのでありましょうが、イギリスは十年ないし十五年ごと、こういうふうに書いてあります。  やはり少々人口異動によって異動があっても、それによって毎年毎年あるいは毎選挙ごとに変動を来すのも政治の安定の上からどうであろうか、しかし余り大きく離れてもいけないというようなことから、世界常識的になっているのは大体十年じゃないだろうかということで、実は内幕を申し上げますと、各党実務者会議の段階では、今の五年を十年に改めようということは与野党でほぼ合意に達しております。(「そんなことないよ」と呼ぶ者あり)。ただ、これについてはそのときの論議の中で――今不規則発言がございますが、審議議事録をごらんになっていただけばわかるとおりでございますから。ほぼ合意に達しておりますが、ただ今回のような緊急是正をするときに十年などとしますと固定しますので、それは取りやめようということでございますが。抜本的改正のときはやはり十年ぐらいだなということは大体常識的な線ではないか、こう思っております。
  179. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 英国では、先ほども御説明ありましたけれども、議席配分法の一条に、区画委員会を設置し――第三者のですね、委員会構成を決めて、常に可能な限り配分を検討し、国務大臣に報告するシステムを堅持しているわけでございます。西独の場合も、連邦選挙法第三条に、選挙区画委員会、これを設けて、格差二倍を超えぬ範囲で第三者機関で定数を決めているわけであります。  我が国も、このような両国のごとき公的に拘束力を持つ第三者機関を参考にして、中立的な学識経験者を中心に公平な機関の設置が必要じゃないかと思うわけでありますけれども、それはどのようにお考えになりますか。
  180. 森清

    ○森(清)議員 先ほども御答弁申し上げましたが、原理原則を法定するとか、何らかの方法をとらないで第三者機関にそのまま任じたのでは非常に混乱をするというか、あるいは適正な答申も得られない。したがって、国会が最終的に決定しなければならぬことでありますから、決定基準、大枠というものはやはり各党合意の上、法律の形にするのかそのほかの形にするかは別としまして、そういうものがあって技術的なところを第三者機関に任せる、こういうことでなければならないと思います。  現に日本でもやっておりまして、先ほど申し上げましたように、四十二年の選挙制度審議会の答申は、根本論についていろいろ分かれた答申ができて、そして法律には政府はそれを尊重しなければならぬということが書いてありますが、それを尊重して法案提出もできない、こういう状況になるわけでありますから、やはり根本原則はこの国会構成員である我々が十二分に各党協議して決めて、そして技術的な点を第三者機関に任せるというのがいいのじゃないか。また、御存じのとおり、西ドイツイギリスもそういう意味で確たる基準が法定化されておるわけでありますから、そういう線に従ってやるべきじゃないかと思います。
  181. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 では、次に質問を変えまして、同時選挙について質問をしたいと思います。  戦後、衆参両院が発足しました当初から長い間両院の同時選挙が行われずにきた理由、その一つには、両院の機能を混同させてはならないという政治家及び政党の深い思慮があってのことと思うわけでありますけれども、その御意見をお伺いしたいと思います。これは法制局長官
  182. 茂串俊

    ○茂串政府委員 私、法律関係の立場にある者でございますから、ただいま御質問のありました点につきまして、いわば政治的な立場における御答弁はいたしかねるわけでございますが、法律的な見地から申し上げますと、いわゆる衆参同時選挙にかかわりのある憲法の規定といたしましては第五十四条があるわけでございまして、衆議院が解散されたときの措置についていろいろ定めておるわけでございます。この憲法五十四条と今御指摘の衆参同時選挙とを対比してみますと、この規定と衆参同時選挙とは一般的には矛盾するところはないと考えておるわけでございます。  ただ、巷間よく問題になりますのが、いわゆる衆参同時選挙を行いますと参議院の緊急集会があるいは行えなくなるのではないかといったようなところで問題視される場合もあるのでございますけれども、この点について一般的な法律論を申し上げますと、一応問題になるのが、いわゆる同時選挙参議院議員の任期満了後に行われる場合でございます。その場合におきましても、参議院議員の半数が議員としての身分を失っている、半数がいわば残っておるわけでございます。残りの半数が存在しているわけでございますから、議事及び議決には総議員の三分の一以上の出席があれば足りるとされているわけでございますので、参議院の緊急集会を行うことは可能でございます。したがいまして、このような面におきましても、いわゆる衆参同時選挙を行うことが憲法五十四条の精神に反することにはならないと考えておるわけでございます。
  183. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 代表民主制とは選挙による国民のコントロールのもとに成り立っているわけでありますから、それが衆参両院制をとる我が国の議会政治というのは、両院各別の選挙によるものでなければならない、両院制は機能しないことになる、そのように私は思うわけでございます。したがって、性格の異なる両院の異質、各別の選挙を同時に施行する一般的な理由は存在しないと思うわけでありますけれども、いかがでございますか。
  184. 茂串俊

    ○茂串政府委員 先ほども申し上げましたが、私、政治家ではございませんから政治的な御答弁は申し上げかねるわけでございますが、確かに憲法は国民主権主義をその基本原理としておりまして、国政が国民の意思に基づいて行われなければならないということは、これは言うまでもないことでございます。  ところで、衆議院の解散は、立法府と行政府の意思が対立するなど国政上の重大な局面におきまして、国民に最も近いとされる衆議院構成について特に民意を反映させる必要がある場合に、主権者たる国民に訴えてその判定を求めることをねらいとして行われるものでございますが、憲法衆議院が解散された場合における総選挙の施行につきまして、その五十四条第一項で、「解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行うこと定めているだけでありまして、総選挙が行われるべき期日まで特に定めることはしておらないわけでございます。  このように、衆議院の解散に基づく総選挙は、特に衆議院構成につきまして民意を反映させるために行われるものでありますから、法律論としていいますと、衆議院の解散によって行われるべき総選挙の施行の期日が参議院議員の通常選挙の期日と必ず別でなければならないということにはならないわけでございまして、いわゆる衆参同日選挙憲法精神に反するとかいう憲法上の問題としては特に問題はないのではないか、かように考える次第でございます。
  185. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 どうも納得いかない御答弁なんでございますけれども、両院とも公選制でしかも衆議院憲法上優越していると言われるこの理由は、衆院の任期が短く、しかも解散があって、それだけ国民の意思が政治に反映する機会が多いからであろうと私は思うわけでありますが、同時選挙はこれを形骸化して両院ともにその機能を低下させることになる、そういう意味で納得のいく御答弁をお願いしたいと思うわけでございます。
  186. 茂串俊

    ○茂串政府委員 どうも若干御答弁の食い違いがあって申しわけなく思っておりますけれども、私どもといたしましては、衆参の同日選挙憲法との対比におきまして問題があるかというような質問と承りまして、そして憲法との関係ではその精神に反するものではないということを繰り返し申し上げている次第でございまして、それ以上のいわゆる政治的にそれが一体妥当なものであるかどうかということにつきましては、私は申し上げる立場にはないわけでございます。
  187. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 どうも納得がいかないのでありますけれども、選挙の基本は有権者の意思を尊重することが第一義でなければならないと思うわけでございます。  現在の二院制の本義に背く同時選挙は議会制民主政治を根底から破壊するものであり、政権政党の党利党略以外の何物でもないのではないか、そのように私思うのですけれども、この点森先生、いかがでございますか。
  188. 森清

    ○森(清)議員 これは自由民主党案を提案しておる者の一人として御答弁できる立場じゃございませんので、御答弁はひとつ控えさせていただきたいと思います。
  189. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 この問題についてどなたか答弁お願いしたいと思います。法制局長官どうですか。
  190. 古屋亨

    古屋国務大臣 私としては、ちょっと大きい問題でございまして答えるに適当かどうかわかりませんので、衆議院参議院同日の同時選挙という問題につきましては、先般本会議で総理から衆議院の解散は考えておらず、したがって衆参同時選挙についても考えていないということを答弁しておりますので、そのことは間違いないのじゃないかと思います。
  191. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 衆参同時選挙では参議院の特色である通常選挙の意義がなくなる、そのように私は思います。また、二院制ということから勘案して、衆議院参議院それぞれ安定かつ継続的に民意が反映されるべきであると考えるわけでありますけれども、自治大臣、いかがでございますか。
  192. 古屋亨

    古屋国務大臣 これも先生、私の答弁するには少し問題が政治的過ぎると思うのです。だから、先ほど、この前の同時選挙があったから憲法違反じゃないのじゃないかということは私もそう思っておりますが、やるべきかやらぬべきか、こういうような問題は私は答弁できませんけれども、総理がそういう答弁をしておりましたので、そのことをひとつ申し上げておきたいと思います。
  193. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 御答弁十分いただけないのが残念でありますが、重ねて御質問いたしますけれども、民主政治の運営上、国民の総意を問う必要ありと判断され得る十分な理由があって初めて国民に訴えるという点に解散の本質があるのではないかと思うわけでございます。その辺はどうでございますかね。これは総理に聞かなければだめかもしれませんけれども、いかがでございますか。
  194. 古屋亨

    古屋国務大臣 どうも申しわけありませんが、私は総理の答弁を先ほど申し上げたのでございまして、私でお答えするにはちょっと余りにも問題が大きい問題でございます。私の私見というのはちょっと私の立場で申し上げるべきではないと思いますので、先ほどの総理の答弁でひとつ御了解いただきたいと思います。
  195. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 これではもう質問を続けることができない状況になってまいったわけであります。大変残念であります。  あと三分か四分あるわけでありますが、最後にお聞きしますけれども、二人区をつくった場合と合区した場合について死票はどういうふうに違うかということは大体どうでしょうか、計算しておられるのでございましょうか。例えば、石川の一区と二区を合区した場合と、合区しないで石川二区を二人区にした、この場合の死票ですね、いわゆる無効といいますか死票ですね、これはどういうふうに違うか、計算されたことありますか、どうですか。
  196. 森清

    ○森(清)議員 いわゆる死票というのは当選できなかった人間に対する投票数、こういうことだと思いますが、それは単にその定数だけじゃなくして立候補者がどれだけおったかということも深く関係いたします。しかし、立候補者数において等しければ、小さい検挙区ほど死票が大きくなり、それから大きい選挙区――大きい選挙区というのは、要するに定数の多い選挙区ほど死票が少なくなるであろうということは、これは事実でありますし、また今度は最小限幾らで当選するか――最小限というか、これだけとれば絶対通るという数は、その投票総数を定数プラス一で割ったものに一票を加えたものをとれば絶対通るわけであります。  したがって、小選挙区の場合で百票であれば、二人で割って五十にして五十一票とれば絶対通る。それが二人区であれば、三で割って三十三と三分の一でありますから、それに一を足して三十五票、これをとれば絶対通る。  こういうことから申しまして、そうすると死票はどうなるか、計算でおわかりのとおりでございますから、それが二人通るわけでありますから、そういうことを考えますと、小選挙区あるいは二人区、三人区というほど死票が多くなる傾向にあることは御指摘のとおりだろうと思います。
  197. 斉藤節

    ○斉藤(節)委員 今、森先生お答えになられましたとおり、確かに私も五十八年の総選挙のあのデータをもとに計算したもの、ここにデータがあるのですけれども、もう時間がありませんから申し上げませんが、いずれにしましても二人区にすると相当の死票が出る。そういう意味で、二人区をつくるということはやはりやめた方がいいのじゃないか、ぜひこれは撤回していただきたい、そんなふうに私は思います。そういう点を申し上げて私の質問を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  198. 三原朝雄

  199. 安倍基雄

    安倍(基)委員 初めに、委員長にお話ししたいと思いますけれども、この委員会は予算委員会に匹敵する、あるいはそれ以上の重要性を持っておると私は考えております。予算委員会というのは一年間の予算を考えるのでございますけれども、この委員会はこれからの選挙制度をどうするかということで、それ以上の重みを持っていると思っておりますが、それとの関連におきまして審議を尽くすこと、単に野党に質問の機会を与えて一定の時間が終わったらそれで済むという問題じゃないと考えておりますけれども、いかがでございますか。
  200. 三原朝雄

    三原委員長 委員長は、理事会におきましても申し上げましたが、本委員会の重要性については十分心得ておるつもりでおります。
  201. 安倍基雄

    安倍(基)委員 実は冒頭にちょっと変わったことを言うのでございますけれども、私の友人で野口雨情の歌をパロディー風につくった者がございます。   あの町この町日が暮れる   今来たこの道帰りゃんせ これを   あの町この町票が減る   今来た先生かわいそう   ろくろく練ってない改正で   先生ろくろく寝られない というのでございまして、六・六法案というのは非常に練ってないのではないかということでございます。  まず、冒頭にお聞きしたいのでございますけれども、従来のいわば定数是正はすべて政府提案でございましたが、今回なぜ議員提案となったのか。これがちょっとろくろく練られていない一つの原因じゃないかと思うので、その点をまず御説明願いたいと思うのです。まず、提案者である森先生と、それから自治大臣に簡単にしていただきたいと思います。
  202. 森清

    ○森(清)議員 法律案というのは政府提案もできますが、私は原則として国会議員提案すべきものである、そのように考えております。しかも、これは院の構成に関することでありますから、議員提案の方がより筋道が通っておるのではないか。しかも、こういう大きな国会の院の構成に関する基本的な改正については、昭和二十二年に大選挙区制から中選挙区制にしたのもこれは議員提案によって議員修正をしたわけであります。それから、現在の公職選挙法、これはいろいろな選挙法をまとめたわけでありますが、この公職選挙法議員提案によって行いました。それから、つい五十七年に行われた参議院全国区制の制度議員提案によって行ったわけであります。議員定数増を二回やりましたが、そのときの提案は、選挙制度審議会設置法というのがあって、それに基づいて政府が諮問をして、そこで定数あるいは選挙区について答申をしろ、そして、その答申に基づいて政府提案した例がございます。それから、五十年の定数改正は当委員会において各党協議の上ほぼ合意したことであるから、これをひとつ政府提案をするようにということで申し入れをいたしまして、そして政府提案説明の中にも各党合意を得ましたものを政府によって提案をいたします、こういう提案説明をいたしております。したがって、新憲法になってというか、この国権の最高機関という位置づけを与えられて以来の大体の院の構成に関する重要な問題は議員提案が例であります。  しかし、その例外として、各党合意であるから政府提案をしろというような例もございますから、そういうことをいろいろ考えまして、各党合意はあの段階では得られなかったわけであります。したがって、そういう各党合意の得られないものを提案するのは、これはやはり自由民主党の責任において提案した方がいいのではないか、こういう判断のもとに我々は議員提案としたわけでございます。
  203. 安倍基雄

    安倍(基)委員 各党合意が得られなかったということを言われましたけれども、本来は各党合意の上に提出する約束であったと思います。  次に、ちょっと羽田議員、せっかく座られているのでお聞きしたいと思いますけれども、金丸幹事長がこの前のテレビの対談でも、とにかく早く直さなければ、本格是正には時間がかかる、けがが大きくなるともっと時間がかかるからとにかく通さなければいかぬという発言をされました。  そうすると、羽田先生、十増・十減とかいう話になると、どのくらい時間がかかると考えていらっしゃいますか。
  204. 羽田孜

    羽田議員  金丸幹事長はざっくばらんにお話しする方でございまして、けがが大きくなると言われたあれについては私から申し上げるべき筋合いのものではないと思いますけれども、六増・六減というのを今提案しております。これが可決されれば、とりあえずその次国勢調査の出た結果によるものについては、やはりこれを修正しなければいけないということで暫定的な措置ということになると思いますから、私は六増・六減、今皆様に御審議をいただいております我が党の法案が通った暁には、これはそんな遠くない、きちんとした国勢調査の結果が出た段階で私たちは直ちに審議に入るということを申し上げることができると思います。
  205. 安倍基雄

    安倍(基)委員 直ちにできるというお話でございますけれども、森議員も前回の討論会で、六増・六減が通ればあとはすぐだというお話をされましたけれども、通ればということだと思いますが、どういうお考えでいらっしゃいますか。森議員としてはどのくらいの時間でやれると考えていらっしゃいますか。
  206. 森清

    ○森(清)議員 これは物を製造するように製造工程で順々にやるようなわけにいきませんので、やはり党内でも議論を尽くさなければなりませんし、また野党の方とも御相談をしたり、あるいは提案をしたらそれについて御審議が行われるわけでありますから、私がいつまでに成立するかということをここでお答えするわけにはいかぬと思います。
  207. 安倍基雄

    安倍(基)委員 これはすぐやりますと言いますけれども、結果的には、六増・六減をもし万が一通しても、やはり何年かはかかるのではないか。本格的には非常に時間がかかると言いますけれども、相当の時間がかかるというぐあいに一般に見られております。それでなければそれほど皆さんは急ぐことはないだろう。ここで法案を通したとすると、恐らくあとの是正に相当時間がかかるだろう。そのときに必ず違憲の状態で選挙をせねばならないという事態になるのであろう。最高裁判決が何を禁じているかといいますと、違憲状態のもとにおける選挙を禁じているのであって、違憲状態そのものは二の次である。というのは、事情判決でも一応有効とした。もし、本当に違憲状態そのものだけを言うのであれば、選挙をやり直さなければいかぬ。選挙のやり直しまでは求めていないわけでございますから、その求めているところは違憲状況のもとの選挙だと思います。となると、この六・六でもってまたすぐ新しいあれが出るわけでございますから、違憲状態のもとにおける選挙が行われる可能性が非常に高いと思いますが、その点についてどうお考えですか。判決を本当に厳粛に受けとめた場合、果たして今やって違憲状態のもとで選挙を行うことがいいのか、あるいは違憲状態是正して選挙を行うことがいいのか。AとBとどちらが判決を厳粛に受けとめることとお思いになるか、森議員のお考えを承りたいと思います。
  208. 森清

    ○森(清)議員 たびたび御答弁申し上げておりますとおり、現在の法律憲法違反でありますからこれを一日も早く是正するということでございますから、ただいま二者択一的にどちらかといえば、もう当然これは違憲法律でないようにするわけでありますから前者でございます。     〔委員長退席、奥野(誠)委員長代理着席〕
  209. 安倍基雄

    安倍(基)委員 それならば、違憲の今の状況で是正して、その結果違憲状態選挙する。実質的な違憲状態ですね。六・六で通せば、すぐまた速報値が出るわけでございますから、その場合に違憲状態が出てくるわけでございますけれども、その状況で選挙することと本当に是正してから選挙することとどちらがということを質問しているわけでございますが、いかがでございますか。おわかりでございますか。
  210. 森清

    ○森(清)議員 いずれの状態にあっても、違憲の状態で選挙するよりか違憲でない状態で選挙するのがよりいいということは当然のことだと思います。
  211. 安倍基雄

    安倍(基)委員 どうも歯車がかみ合わないようでございますけれども、では、ちょっとあれを変えまして、現在速報値がどんどんと各県で出ておりますが、それがどの辺までと申しますか、日本全体のうちのどのぐらいの県まで出ているか御存じですか。既に発表しておりますが、委員は御存じですか。
  212. 森清

    ○森(清)議員 これは統計局が統計法に基づいて地方集計というものを許しておりまして、地方集計が終わった段階で発表する県がありますので、相当数がもう既に発表になっております。したがって、それを最終的に統計局において統計法上の人口調査として要計表によって発表するのは十二月二十四日ごろになるのじゃないか、このように承っております。
  213. 安倍基雄

    安倍(基)委員 統計局の方から、どのくらいの県について既に発表されておるか、御報告願います。
  214. 酒井忠敏

    ○酒井説明員 都道府県において地方集計の結果を公表したものは、十二月二日現在で三十七県でございます。
  215. 安倍基雄

    安倍(基)委員 その中で、この間の新聞によりますと、山形二区と新潟四区が逆転しておるということを言っておりますけれども、それは事実でございますね。事実ということはもう既にわかっておりますから一々追及しません。  そこで、いわば今度の問題点の二人区でございますけれども、これは既に何度も論議されておりますけれども、この点につきまして六十年の判決におきまして、さっきも話題になりましたけれども、「公職選挙法がその制定以来いわゆる中選挙区単記投票制を採用しているのは、候補者と地域住民との密接な関係を考慮し、また、原則として選挙人の多数の意思の反映を確保しながら、少数者の意思を代表する議員の選出をも可能ならしめる」、そういう趣旨に出たものと考えられる、こう言っております。これはある意味からいえば、最高裁判決は中選挙区を是認したと申しますか、いいではないかということを言っておると考えられます。さっきから二名は中選挙区だとかいろいろございますけれども、問題は少数者の意見を反映できる制度であるかどうかということでございまして、三ないし五名が中選挙区と定義していることは若槻内務大臣の趣旨説明で明らかになっておりますけれども、さっきの二名区も中選挙区だとおっしゃいますけれども、いわばこの最高裁判決で「少数者の意思を代表する議員の選出をも可能ならしめる」、そういう制度であるということの説明をしていることについて、森議員はどうお考えでいらっしゃいますか。
  216. 森清

    ○森(清)議員 その判決文は私は記憶はいたしておりませんが、現在の中選挙区制というのは、選挙制度の本質論からいえば、いわゆる少数代表法というべきものであろうと思います。それに対して多数代表法というものが小選挙区を代表とする例であります。しこうして、少数代表制に徹しようとすれば三人から五人などと言わないで十人、二十人という選挙区をつくる、これをもっと徹底すれば比例代表制をとる、足切りをしない、こういうことをやれば一番少数者の意見が国会に反映する。国会議員を国政の最高機関として国政をやっていく上について、そういうことを全体的に考えて、そして、どういう構成にするのが実際に現実に政治を行っていくのにいいかということで、国によっては小選挙区制のところもあれば国によっては完全な比例代表制のところもある、あるいはあるところではそれを併用しながら調整をしている、あるいは足切りをしている、こういういろいろな制度があるわけでありますから、そういういろいろな制度の中から我が国に最もふさわしい民主政治としての選出の方法はいかにあるべきかということを考えるのでありまして、先ほどの最高裁判決にそのような言葉ありとすれば、現在の中選挙制度はそのような要素もあるということでありまして、その要素を徹底すれば、先ほど申し上げましたように、もっともっと大きい選挙区制にする、あるいは比例代表制にすることの方が少数者がこの国会に出てこられる可能性はより強いと私は思います。
  217. 安倍基雄

    安倍(基)委員 全部よく聞いていただかねばいかぬですけれども、「多数の意思の反映を確保しながら、少数者の意思を代表する」というぐあいに言っておるのでございまして、そこに中選挙区の意味があるよという話でございます。したがいまして、私は何も十人にも二十人にもしてということじゃございません。今回の判決は決して選挙区をいじれとは言っていないので、定数是正せよということを言っておるのでございまして、この点、さっきから聞きますと、二から幾つまでは中だとおっしゃいますけれども、定義の問題ではなくてこの多数の意思を反映することを確保しながら少数者の意見も反映させる、そこに意味があるわけでございまして、さっきこれから六・六をやれば十・十もできる、それは一つルールがしかれるからだというのは、こういう二人区を考えたルールでございまして、それをのめば前へ進むという話でございまして、これはまことに自民党の内部のみを考えた、言い方によれば最高裁判決を手にとって、それで要するに党勢の減退を防ぐというか少数党を抑え込むということに悪用されると考えられても仕方がないじゃないかと私は考えるのでございますけれども、その点についていかがでございますか。
  218. 森清

    ○森(清)議員 たびたび御説明をいたしておりますが、このような手法によってやむを得ずできたものであり、しかも、これは定数是正でありますから、三人区を二人区にしたり、四人区を三人区にしたり、三人区を今度は逆に四人にしたり、四人区を五人にしたりしておるのが我が党の案でございます。したがって、定数是正をいたしておるわけであります。  そこで、二人区をつくることについては、たびたび御指摘のとおり、少数党には不利であることは認めます。しかしながら、現実に問題になっている三人区は、過去十回の選挙を調べますと、当選者が延べ三十人おるわけでありますが、その三十人全員が自由民主党である選挙区もあります。三十人のうち二十六、七人が自由民主党であるという選挙区がその次、二つであります。兵庫五区でも、三十人のうちたしか半数以上は自由民主党が議席を占めておったわけであります。そこで二名区にするということは、我々は確実に一議席を失うわけであります。したがって、この案が多数党である自由民主党に有利な案であるなどと私たちは毛頭思っておりません。しかし、このような原則に従ってやる以上、我が党に不利であってもこれはやらなければならないということで提案を申し上げておるわけでありまして、党利党略によってこのようなことをしたわけのものでは一切ございません。
  219. 安倍基雄

    安倍(基)委員 これは一つ制度の問題でございまして、さっきは定数の方は制度ではない、むしろ分区の方が制度であるというようなことを言われましたけれども、どういう選び方をするのかという話はまさに制度そのものでございまして、これはまことに私の認識と委員の認識が違うと思いますけれども、この点はさておきまして、次に、さっき統計局からちょっとお話が出ましたが、既にどんどんと新しい数字が上がってきておる。ある自民党の政策首脳がこういうことを言ったということです。国勢調査の発表があった後は六・六法案意味がなくなる、そう言っておりますけれども、森議員どうお考えでございますか。国勢調査の発表があった後、六・六法案審議する意味があるのかどうか、その点をお聞かせ願いたいと思います。
  220. 森清

    ○森(清)議員 現在は速報値を発表する前でありますので、精力的に審議を進めていただいておるわけでございます。
  221. 安倍基雄

    安倍(基)委員 私が聞いているのは、発表された後、六・六法案について審議する意味があるかどうかを聞いているのです。
  222. 森清

    ○森(清)議員 我々の提案している案あるいは野党案が通れば、この国会の会期は十四日までであります。したがって、二十四日に発表になるときには、六・六案は、あるいは野党案が、それはどうか知りませんが、そういうものが成立しておるわけでありますから、その発表後に六・六案を審議することはどうかということについては、そういう事態はないであろう、こう考えております。
  223. 安倍基雄

    安倍(基)委員 ということは、この国会でつまり成立せしめるということでありますな。成立しなかった場合いかがでございますか。意味がありますか、ないんですか、どっちですか。
  224. 森清

    ○森(清)議員 我が党の案も野党四党の案も、六・六の基本的な形は変わらないわけでありますから、それを、先ほどるる申し上げましたとおり、この国会において成立をさせていただきたい、成立をさせようじゃないか、こういうことでやっておるわけであります。  これは仮定の問題でありますが、もし通らないということになって、そうして国勢調査結果が出れば、法律にも「国勢調査の結果によって、更正するのを例とする。」と書いてありまして、その「国勢調査の結果」というのは、本質的には確定値だと私は思っております。しかし、速報値を使うこともあり得る、こういうことでございますので、それを使えば、既に恐らく、これは今推計でございますが、ただいま三十数県が発表になっているんだからわかるじゃないかといいますが、三十数県は小さい方の県でありまして、大きい方の県が出ないことにはわからぬわけであります。その大きい方の県、東京とか大阪とか神奈川のところに問題選挙区があるわけでありますから、そういうことを見て、なるほど三倍を超えた選挙区が幾つか出たなということになれば、それはそれに従って是正をしなければなりませんので、これは六・六案が通っておっても是正をしますということを与野党で合意しておるわけでありますから、通らなかったならば、その六・六案というのはもう審議の対象にはならないんじゃないかと私は思っております。
  225. 安倍基雄

    安倍(基)委員 では、今のお答えだと、速報値が出た後は、通っても通らなくても審議の対象にならないというぐあいに理解してよろしゅうございますね。――まあわかりました。  そこでは現在もう既に山形二区と新潟四区との逆転現象が明らかになっておりますが、それを知りながら立法することは憲法の趣旨に合致するのでございましょうか。憲法の趣旨というか、いわば何と申しますか、合理性を持っているのでございますか。いかがでございます。
  226. 森清

    ○森(清)議員 これは競争で一等、二等、三等、四等を決めて一等から表彰するというようなそういうものではなくして、三倍を超えたら全部アウトというか、全部表彰台に立たせるということで、順番を決めるわけじゃないのです。したがって、順番がどう異なっておっても、三倍を超えれば是正をしなければならぬ選挙区でありますから、順番がどっちということは大してここで意味がないことじゃないでしょうか。     〔奥野(誠)委員長代理退席、委員長着席〕  したがって、現在六十年国勢調査を使えば山形と新潟は逆転しているようでありますが、しかし、いずれにしても、今出ている数字に関する限りで言ってもこれは是正の対象に入る選挙区でありますから、今そこが逆転しているからこの案がおかしいではないか、しかし、この案は五十五年国勢調査を使ったわけでありますから、これについておかしいではないかという御議論の筋がちょっと私わかりかねるわけであります。
  227. 安倍基雄

    安倍(基)委員 これは、何と申しますか、山形二区の方が一定の期間選挙民がその権利を奪われるわけですよ。奪われるというか、不利な立場に立つわけですよ。でありますから、それは意味がわからないとおっしゃるけれども、この前も私はある人に聞きましたら、近岡委員質問に対して頭を下げだということが新聞に出ておりました。また、実際聞いたら、もうじき同じことになるからいいじゃないかというような答えをしたようでございますけれども、一定の期間事実が明らかに違っておるにかかわらず、一定の期間、一定の人々の権利を奪うことになりますね。これは競争の一番、二番、三番というのとちょっと意味が違う。それは非常に不謹慎な考えだと私は思いますが、いかがでございますか。
  228. 森清

    ○森(清)議員 ただいま御説明いたしましたとおり、三倍を超えるところを是正しようというわけでありまして、それが一番目であるか二番目であるかということを問うておるわけではありません。いずれにしても山形について五十五年国勢調査人口を使えば三倍を超えておるわけでありますから、これを是正するということであります。そのほかの基準を使って山形が六番目になろうと七番目になろうと、それはまた別問題である、このように申し上げておる次第であります。
  229. 安倍基雄

    安倍(基)委員 私が今提示している問題は、今度の立法は違憲立法ではないか、そのおそれがあるということでございます。と申しますのは、五十年の是正でございますが、あれは国勢調査の後に行われましたか、前に行われましたか。
  230. 森清

    ○森(清)議員 そういう事実関係は政府委員の方から答えさせます。
  231. 安倍基雄

    安倍(基)委員 私はそれはけしからぬと思う。非常に重要な問題です。(「そんなことは当たり前じゃないか、事務的なことは事務屋に聞けば……」と呼ぶ者あり)何が事務的か。  よし、じゃ、私は今から言う。いいですか。こういう判決があるのを御存じですか。五十三年の九月十三日の東京高裁の判決はこう言っております。前回の五十年の改正は制定時点において憲法違反の疑いがあると言っているわけです。なぜならば、読み上げてみますと、さかのぼって考えると、既に五十年の定数更正過程のうちにこの問題は胚胎していたということでございまして、これからさらにその格差が増大するであろうということを予測し得た、それを予測していたにもかかわらず改正をした。したがって、「同法における議員定数の更正は、その内容が憲法の要請する国民の投票価値の平等を害し、従って違法、違憲なものと断ずるよりほかないものというべきである。」これは東京高裁の判決が言っております。  それから、五十八年の大法廷におきまして団藤、中村、横井、それぞれ少数意見を出しております。横井裁判官は、多数意見はこの是正について違憲ではなかったと言っているけれども、自分は違憲と思うというぐあいに言っております。この場合、五十年の改正国勢調査以前に行われたわけです。それにもかかわらず違憲ではないかという判決が既に出ておるわけです。  いいですか。東京高裁の判決違憲であると言っている。しかも、大法廷で、少数意見であるが、多数意見は合憲というけれども違憲であるということまで言っている人がいるわけです。おわかりですね。今回は国勢調査の後に我々は審議しているわけです。いいですか。  それでは、私お聞きします。今まで十二月の速報値が出るとそれ以後は審議できないとおっしゃいますけれども、十二月の速報値は何であるか。十二月下旬に初めて違憲状態が生じるのか、あるいは十月一日に違憲状態が生じたことを確認する行為であるのか、いずれでございますか。
  232. 森清

    ○森(清)議員 政治的に言えば、十月一日で人口調査をしてということでありますから、今、安倍委員の言われることに政治的に判断してもいいかと思いますが、法律的に考えますと、憲法違反であるという断定は最高裁判所しかできないわけであります。したがって、我々は、この六・六案を通した段階は憲法違反でない。そうして、その後国勢調査結果が出て、それに基づいて仮にそのままの段階で選挙が行われたと仮定いたしますと、それについて恐らくまた違憲訴訟が起こるだろうと思います。そうして、高等裁判所最高裁判所といって、そこで憲法違反と判定されるまでは我我は憲法違反であるとかないとか言えないわけであります。それは予測の問題であります。したがって、我々はこれを通して、しかし、それは法律論をやっているわけであります。我々は政治家としてたびたび申し上げております。六十年国勢調査が出たら直ちに与野党一致して次の是正に取り組みます、このようなことは与野党一致して申し上げているわけでありますし、私もこの席から自由民主党を代表して御答弁申し上げておるわけでありますから、それによって御理解いただきたいと思います。
  233. 安倍基雄

    安倍(基)委員 ちょっと論旨がおかしいと思うのですよ。いわば十月一日から既に違憲状態がある、つまり六・六では処理できない方々の地区があるということが明らかになる。たまたま明らかになるのが十二月下旬です。さっき一生懸命しきりと各党が早く発表してくれと言っておりますけれども、発表ということはそこで効果が生じるのじゃないのです。十月一日にできたものが確認されるわけです。でありますから、現在我々の行うべきことは、この結果が出るまで待つのがやはり正しい判断でございます。そうじゃないですか。というのは、あなたは政治的とおっしゃるけれども、法的にいって既に十月一日にはもう事実があるわけです。それがわかるのが十二月です。わかったときは、十月からそういう状況が全部あるわけです。国勢調査の三カ月前の改正についても違憲と言っている高裁の判決もあるのです。最高裁の中でも、一応少数意見でありますけれども、これにつきまして違憲であると言っている人もいるわけです。すべて今までの最高裁判決は、制定または改正の当時合憲であった議員定数配分規定のもとにおける規定、それが後からいわば違憲の状態になったということを言っているのでございまして、制定当時の合憲さを要求しているのです。これからもし選挙がある、訴訟がある、そういうときに、今まではいわば違憲選挙だった、こう言っているわけです。今度は違憲立法を行ったということになるわけですね。私はさっき、何で政府提案でなかったかということを言ったのでございますけれども、政府提案であれば、こういった論議は原案者がすぐ法制局に行くなり、いろいろぎしぎし詰めるわけです。かつて提案した法案が、国勢調査の後合憲であるか違憲であるかということをけんけんがくがく論議した後提出するはずなんです。  それでは、提案者に聞きますけれども、この問題につきまして、法律の専門家あるいはそういった方々の意見を徴したことはございますか。いかがですか。
  234. 森清

    ○森(清)議員 お答えいたします。  高等裁判所判決を引用されましたが、恐らくあのときは双方不満で上告をいたしましたので、その段階でその判決の効力はなくなっておりまして、最高裁判決が有効なんであります。最高裁判決においては、違憲あるいは合憲の判決を下したときに、それは多数意見によってやるわけでありまして、最高裁は少数意見を付記することができる制度になっておりますので、たまたま付記しただけであります。最高裁決定は変わらないわけであります。  それから、議員提案にすると法律の専門家の意見とうこうという御意見でありますが、私たちは立法府として、国会議員として責任を持ってこの法案提案し、技術的な点については衆議院法制局というところがありますので、そこに十分な法律的な検討をさせて、そうして我々の責任において提案をしておるわけであります。さらに、この国会において成立をするということは、この国会において憲法違反法律を成立させるはずがございません。これは憲法に従わなければならぬ国会でありますから、国会で成立するということは、これすなわち我々国会が合憲の法律として成立させるわけであります。  さらに一言申し上げますと、そのような御意見があなたの党におありになるならば、あなたの党自身が御提案になっている法案についても同じことが言えるわけでありますから、それについてどのようなことをお考えになっているのか、ひとつ聞かせていただければ、我々も答弁しやすくなると思います。
  235. 安倍基雄

    安倍(基)委員 まさにそのとおりでございまして、私は民社党の中におきまして審議に反対したのです。それは自民党案、野党案ともに違憲立法の疑いがあるからです。  私は提案者にお聞きしますけれども、十月一日以降の事情変更について、一体衆議院法制局に聞いたことがございますか。検討したことがございますか。今そうおっしゃるけれども、将来もし違憲訴訟が起こったときに、そのときに国会違憲立法をした、今までは違憲立法じゃなかったですよ。立法はよかったけれどもその修正をしなかったと責められているわけです。違憲選挙で責められているわけです。もし、これから免訴訟が起こったときに、これは違憲立法であったと言われたら国会の権威はどうなるのですか。あなた自信がありますか。
  236. 森清

    ○森(清)議員 我々は最高機関国会構成する国会議員でございます。したがって、これが憲法違反になるかどうか、どういう政策をするか、各個人の国会議員責任において決定することでありまして、学者の意見を聞こうと法制局の意見を聞こうと、それは参考に聞くだけであります。したがって、我々は国会議員として信ずるところに従って行動をし、そして最終的には、国会で過半数を占めたものが国会の意思になるわけでありますから、他の学者の意見を聞いたとか法制局の係に物を聞いたということは、私は本質的な問題は何も関係がない、このように考えております。
  237. 安倍基雄

    安倍(基)委員 この問題につきまして、十月以降の審議というものが違憲立法の疑いがあるかないか。これはあなたの確信だけではなくて、あなたが幾ら確信しても、将来最高裁がこの立法は違憲であったと判定したらどうなるのですか。
  238. 森清

    ○森(清)議員 私の意思は五百十一分の一であります。したがって、国会の意思の決定は過半数で決まるわけでありますから、過半数の人が私のような見解に賛成していただけるかどうか、それがこの国会審議であろう、このように考えております。したがって、もしこれで通って、さらにまた、それが違憲判決を受けたならば、国会において責任をとっていただきたい。私は、これで憲法違反にならない、これでやっていこう、しかし、政治論として引き続いて是正をしなければならないということは各党合意してやろうと言っているのでありますから、何も問題はないのじゃないかと思っております。
  239. 安倍基雄

    安倍(基)委員 私は、委員の個人の意見を聞いているのではないのです。これから五年後あるいは三年後あるいは今度の選挙があった途端に、これは違憲立法であるという訴訟が出るかもしれない。そのときに、私は五百何十分の一でみんなが決めたから決めました、今度の選挙の問題についても、みんながいいと思ってやったけれども違憲判決が出たのです。いわば違憲立法であるという最高裁判決が将来出たらどうするのですか。何も国会最高機関なんて威張ることはないです。これは議員立法としてはまことに重大な立法ですよ。それが将来違憲立法をしたという判定を受けたらどうなるのですか。
  240. 森清

    ○森(清)議員 これは議員立法であろうと内閣法案であろうと関係のない議論であろうと思います。国会において、我々は自由民主党を代表して数名の名前によってこの法案提出し、そして、それは合憲的に解決していただけると思って提案をいたしておりますし、それについて賛成の方が多数であればそれが通るわけであります。賛成の方が少なければ通らないわけであります。国会違憲であるけれども通すということは、私はあり得ないと思います。したがって、これは通るときには合憲のものとして通るわけであります。
  241. 安倍基雄

    安倍(基)委員 それはまことにおかしな論理で、違憲か合憲かを最高裁判所判断したじゃないですか。それに我々は従おうとしているんじゃないですか。幾ら我々がこの法案は合憲と思ってやったと言っても、違憲である、違憲立法をしたという判決が出る可能性があるわけです。私は、この問題につきまして、野党案、与党案両方一緒に、これが違憲立法ではないという問題がはっきりしないうちは審議は続けられないと思います。
  242. 森清

    ○森(清)議員 我々は憲法を完全に守っております。したがって、国会違憲とわかっている法律を作成をしたり、それを通そうとしたり、あるいは国会が通すことはあり得ない、こう考えております。しかしながら、国会でつくった法律といえども、法的手続に従って争われて、そして最終的に、これは憲法違反であるという判決を受けて初めて憲法違反になるわけでありまして、現在つくろうとすること、それを国会で議決した段階においては、これは国会の意思として合憲の法律として議決するわけであります。もし、それが憲法違反であるからこの法律を通すべきでないという意見があるならば、そういう意見を表明して、その意見が多数になるか、そうではなしに、これは合憲であるから通すべきであるというものが多数になるかによって、国会の意思が決定されるわけであります。
  243. 安倍基雄

    安倍(基)委員 これは私は質問を留保しましょう。本当にこれはちょっとおかしいのですよ。大体最高裁判断した。さっきあなたは、速報値発表以後は六・六法案審議意味がないとおっしゃいましたね。ところが、私が言いましたのは、発表のときに違憲状態になるんじゃないのだ、十月一日からさかのぼって違憲状態のことがわかるんだ、であるから。みんな今まで十二月下旬になって違憲状態になる、その後あなたが六・六法案意味がないとおっしゃる。もし、六・六法案審議が十二月下旬以降やって意味がないのであれば、下旬以降をもし故意とすれば、今は未必の故意の時期に当たるわけです。私はこの答弁に満足できませんから、審議の中断をしないのだったら質問を留保します。私は、むしろこの問題が解決しないうちは、この問題につきましては一歩も進めないと思います。
  244. 森清

    ○森(清)議員 我々は、憲法違反法律になるかならないか、そういうことを含めて審議をいたしておるわけでありますから、一方的にあなたが憲法違反であると断定されて、それで審議をどうこうと言うのはおかしいのじゃないか。我々は、この法律審議するということは憲法の枠内での法律をつくろうとしているわけであります。そうしてしかも、安倍さんの所属される民社党、私は個人として反対だったということはこういう席では撤回された方がいいのじゃないかと私は思いますが、民社党を代表して提案をされておる。そうして、それはいまだこの国会では撤回をされておらない。そういう状況をどのように御判断になっておるか、お聞かせ願いたいと思います。
  245. 安倍基雄

    安倍(基)委員 私はもともと違憲性についての議論がおさまらないうちに審議してもいいのかどうかということを言っていたわけです。先生法律家でございましょうが、私も法的に考えたときに、違憲性の疑いがあるかないか、これを確認した上で進むべきだ。国会がやれば違憲性がないんだとも言えないのですよ。もし、私が言いましたように、発表後に六・六法案審議する意味がない、既に各地区によって格差が出るのはたくさんある、それを目の前にして六・六を審議できないというならば、その事実は既に十月一日に決まっているわけです。それは目の前に出てこないだけです。そうですね。いずれにせよ、この問題について委員はどうお思いになるかわからぬけれども、私ははっきり要求します。  この立法を行うことが違憲性の疑いが全くないのかどうか。将来要するに違憲訴訟が起こったときに、かつては選挙違憲であった、定数是正をするのが遅かったと言っています。今度は違憲定数是正をしたという判決がおりたらどうなるのです。私はそこを言っているのです。私は何も政治論を言っていません。法律論を言っているのです。審議すべきじゃない。与野党案ともに、既に提案日から法的環境は変わっている。提案日には確かにそういう状況だったろうと思う。ところが、十月一日の国勢調査の後、法的環境は変わっている。これについて提案者はどのくらい詰めて考えたか。私は法制局にも聞こうと思ったが、内閣法制局は一応提案者じゃございませんのでやめておきますが、私はいずれにせよ、これで質問を留保いたします。
  246. 森清

    ○森(清)議員 たびたび御答弁申し上げておりますが、十月一日に国勢調査が行われたことも事実でございます。しかし、我々は法律的に、あるいは最高裁判所においてもそれを使えるのは発表になってからじゃないと使えないじゃないですか。それが一つ調査をしておる、その発表を待っている、こういう段階。しかも、こういう事態にあることは、我々が提案をし、野党の皆さんも提案したときから十二分に予想された事態であります。したがって、もしも安倍委員におかれてそういうことを審査することも憲法違反と決まっているのだというふうに断定されるのであるならば、それが民社党の御意見であるならば、憲法違反法律提案して、継続審査にしてそのままにしておくということは、私はこれは憲法遵守義務にも反するのではないかと思います。したがって、直ちに撤回されてしかるべきじゃないか。ところが、それは撤回されない。自分たちの案は審議して通せと言っておられる。――通せとかどうかそれは知りませんよ。しかし、私は、提案した以上は通すという目的で法案提出しているのだろうと思っておりますので、それはそうだと思います。したがって、我々は、この法案を通すことによって憲法違反状態を脱することができると解釈しておるわけです。したがって、その後に起こる事態は、最高裁判所でまた判決をしていただかなければわからぬわけであります。我々は合憲の法律をつくっておるわけであっます。しかも、政治的には速報値が出た後、与野党一致しているのです。これに基づいて早急に是正をいたしましょう、このように言っておるわけでありますから、矛盾もなければ何もない、このように考えておるわけであります。
  247. 安倍基雄

    安倍(基)委員 いずれにせよ、私は質問を留保しますけれども、今度の質問の前に果たしてこれが将来訴訟になったときに違憲立法と言われる可能性が皆無であるかどうか、それを十分検討してください。  質問を留保します。
  248. 三原朝雄

    三原委員長 野間友一君。
  249. 野間友一

    ○野間委員 先ほど同僚委員の方からも質問がありましたけれども、六・六案と憲法との関係を背景にして、まず野党の提案者に一言質問をしたいと思います。  先ほどの質問にもございましたし、きょうあるいは前回の委員会、さらにはNHKのテレビ討論等、この六・六案そのものは欠陥と申しますか、これをやったところで憲法違反の状態がなくならない、あるいはこの六・六案を今の時期になぜ成立させなければならないのかというような筋論と申しますか、かねてから我々の主張と同じような主張が、質疑の中でもありましたけれどもテレビでも言われたわけであります。  そこで、そういう点を踏まえて考えた場合に、自民党の二人区は絶対反対だし、自民党の六・六案も撤回すべしというのが一貫して我々の主張ですけれども、野党案におきましても、先ほどの論議を踏まえて、あるいは筋から考えても撤回して、そして、みんなでいいものをつくるという協議をする場を設けて、そこで精力的に協議をすべきじゃないかというふうに私たちは考えておりますけれども、野党案の提案者にその点についてお伺いしたいと思います。
  250. 山花貞夫

    山花議員 先生の御指摘も一つの問題点だとは思います。しかし、私たちは、何よりも現在の私たちの地位そのものが違憲法律によってできているのではないか、最高裁のそうした指摘にもあるとおり、今艮の定数是正の問題はまさに国民的な課題である、これを大前提といたします。  第二番目に、はっきり指摘しておかなければならないことはの何かこの自民党六・六案と野党の統一案が同じ土俵の上で議論されるといった面があるようですけれども、根本的な違いは、我々は自民党案提出とは違いまして、将来の抜本的な改善ということを前提として当面の暫定的な措置としての提案をしているところであります。自民党は提案理由の中にも全くその抜本的な対策については触れておらなかったわけでありまして、その後の議論は別にいたしまして、経過としてはそうした状況だったわけでありまして、あくまでも抜本策を前提として当面の改革として位置づけてこの法律案提出したところでございます。  速報値につきましても、野党の四党の方針として、つい最近の方針といたしましても、十月の国勢調査によって直ちに是正措置を行う、引き続いて憲法精神に基づく抜本的な改正の実現を図る、このような位置づけの中に出しているところでございまして、抜本策を前提としながらの暫定的な措置として野党が意思統一をして出したとしう意昧におきましては、自民党の六・六案とは本質的にそのの置づけにおいて違っているという立場であることについて御理解をいただきたい、このように考えるところでございます。0野間委員 確かに二人区を認めないという点ではそうかもわかりませんけれども、六・六ということになりますと、格差三倍まで認めるという点で同じ土俵の仕事ではなかろうかというふうに私たちは理解しておるわけであります。  よく言われますように、五年前の国調でなくてもう間もなく出るわけですから、そうしますと、もし自民党案が撤回されるとするならば野党案は撤回されて、そして六十年の国調を踏まえて、格差の問題から二人区をつくらないという問題も含めて、国民の納得いくようなものをつくるというような用意、決意があるのかどうか、御意思あるのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。0山花議員 我々は、国調の取り扱いにつきましても、従来国調の結果によりというその解釈について必ずしも明確でありませんでしたが、速報値に基づいて直ちに是正措置を講ずる、議論を進める中でその方向というものを意思統一し、与党案に対しても主張してきているところであります。  国勢調査の結果、直ちに是正策を講ずべきである、これが我々の統一した見解でありまして、速報の結果が出た段階では、いわば六・六案についてはその意味を失うこととなろう、速報の結果が出たならば直ちに是正措置に取ウかからなければならない、このような関連で結びつけるということでありますから、御指摘の点につきましては、速報が出た段階、それ以降までいわば野党統一案に固執するということであるならば御指摘のような問題になるかもしれませんけれども、そのようなことではないということでありますから、先生の御心配につきましてはないのではなかろうかというように考えているところであります。
  251. 野間友一

    ○野間委員 時間の関係で、これが本論じゃありませんので、後また時間がございましたら重ねてお伺いしたいと思いますけれども、提案者の森さんに順次お聞きしたいと思いますが、先日の委員会で、十二月下旬に公表される国調の結果を待って是正するとなると、年末年始を挟み、予算委員会中は他の法案審議はしないということになっており、そうなると是正は一層おくれる、こういうことを答弁されました。これはテレビでも同じような趣旨のことを言われました。  しかし、考えてみますと、これは事実関係から明らかなんですけれども、五十六年の一月二十六日、私どもが大反対をしてまいりました政党機関紙誌の拡声機、これの選挙期間中の禁止ですね、これを中心とする公選法の改悪、この趣旨説明を一月の二十六日に強行して、二月の十二、十八、二十五、まさに予算委員会審議の真っ最中に審議を続けて、これを成立させたわけですね。この事実は間違いないと思いますが、その点の確認と同時に、当時、この当時も五十五年の国調の速報値が出ておるわけですね。五十五年の十二月二十三日、格差三倍以上は違憲とする東京高裁の判決もこれあり、そこで、私どもは、まず定数是正が先決だと当時も主張したわけでありますけれども、そうでなくて、今申し上げたように、この改悪についてこれが突破、そして成立させられたということになるわけですね。  こう考えますと、みずからの都合のよい、我々からしますと大変な悪法についてはこれを強行突破するし、そうでないものにっいては口をつぐむということになろうと思いますけれども、事実からしてもこの前も言われた森さんの答弁は間違いだというふうに思いますが、これは撤回すべきじゃないでしょうか。
  252. 森清

    ○森(清)議員 五十六年、七年ごろ、何月に委員会を開いたとか開かないというようなことについては私は記憶いたしておりませんので、後、調べてお答えいたしますが、そういう四年、五年前のことではなくして、現実にこの定数是正法案というものが審議されている状況を見ますと、たびたび申し上げておりますが、前国会において本会議において趣旨説明を行い、そうして、それに対して質疑を行し、答弁もいたしました。それで、その後現地調査も行いました それから、閉会中の審査を行い、そこに参考人の招致もいたしまして審査もいたしました したがって それに引き続いて次々と審査が行われるであろうと我々は期待しておりましたが、現実には十月十四目に臨時国会が召集されて、質疑に入ったのは十一月の二十七日、一月半たってであります。ニカ月の臨時国会という会期がわかっておりながら、一月半に近く空費をした。この問題についてはそのような事実があるわけであります。こういう事実をもとにして、私は、過去のことは一々覚えてはおりませんが、そういう事実はあっただろうと思います。しかしながら、そういう現実の事態を踏まえて、そうして、これがどんどん通常国会に入って審査できるという保証がありません、私はできないと言っているのじゃありません、保証がないではないですかということを申し上げたのであります。
  253. 野間友一

    ○野間委員 どうも質問をそらして答えられたわけですけれども、ですから通常国会、もうすぐ国調の速報値が発表されるわけですから、それを踏まえて通常国会でやろうということに対する森さんの答弁が、先ほど申し上げたように、通常国会になればずっと慣例でおくれるからだめなんだ、こういうことを言われたわけですからね。事実関係について誤りがあるから、私はその点について指摘をしたわけであります。  さて次に、私がこの前の質問のときにも、選ばれる側の立場に立つのでなくて選ぶ側の立場に立って定数是正はするべきであるというふうに私は認めたところが、森さんもそのとおりだというふうに言われました。しかし、同時に、当日の委員会での委員質問に対しまして、三倍以内なら違憲判決が出ないのも事実、それが憲法違反かどうかは選挙をやって訴訟が起こり、判決の結果が出ないと明確にならない、きょうも先ほどから同じような趣旨の答弁をされております。  しかし、前回も、きょうのそれぞれの委員からの指摘にも明らかなように、仮にこの六・六で是正しても現に現在現実に有権者比あるいは人口数、どちらをとりましても格差は三倍を超えておるとしうことは明確でありますね。ですから、六・六ではこれは間に合わない。私はいっも申し上げておりますように、これは憲法違反の部分的な修正にしかすぎない、このことが事実であります。それを森さんは、まあとにかく訴訟をやってみなければわからぬ、こういうふうにおっしゃる。しかし、これは昭和五十年のときに二・九九倍に抑えた、こう言われた。ところが、同じ年の国勢調査で、何と三・七二倍になっておった。その後の総選挙でこれが争われまして、高裁では違憲判決が出ておるわけですね。今これと同じような状態にあるわけですね。したがって、五年前の古い国勢調査に固執するんでなくて、有権者数人口数も今既に六・六では破綻しておる。しかも、目前の国調の速報値が出ればこれは破綻することは明白であります。したがって、五十年のときの轍を踏まないということが、やはり国会としての私たちの責務じゃないかと思うんです。  そうすると、森さんは、まあとにかく最終は最高裁判所判決が出るまで憲法違反かどうかわからないというようなことを言われますけれども、違憲訴訟が出ることは、これは目に見えているわけでしょう。五十年の轍を踏まないというのが国会の我々の責任じゃないかと私は思うのですけれども、いかがでしょうか。
  254. 森清

    ○森(清)議員 私は、三倍以内に是正しようと、野党案、提案はされておりませんが、二・五倍に是正しようと、その他是正しようと、違憲訴訟は起こるであろうと思います。二・五倍に是正したから起こらぬということじゃないと思います。したがって、法律的には、違憲訴訟が起こされて、そして、それに従って最高裁において最終的に確定するまでは、我々は合憲の法律と思ってやっておるわけでありますから、それでいいわけであります。しかし、それは法律論であります。たびたび申し上げておりますが、この六・六案を通していただけば、それが一つのルールになって、そうして内容はバリエーションがあってよろしゅうございます、例外のない原則はありませんから、例外はあっていいのでありますが、それは各党協議であります。したがって、次の国勢調査が出たら、各党協議の上、早急に是正にかかると政治的には申し上げておるわけでありますから、それで御納得いただきたいと思います。
  255. 野間友一

    ○野間委員 そんなこと言われたって、それは保証はないですよ。今全く出てないものを前提にして答弁されるのはおかしいと私は思うんですね。今六・六しかないわけです。そうでしょう。ですから、これが成立を仮にしたとしても、五十年と同じような経過を踏むということは明らかでしょう。森さん、違うんですか。同じことでしょう。
  256. 森清

    ○森(清)議員 それで、御答弁申し上げておりますように、共産党はまだ御提案されておらないものですから、どういうお考えかよくわかりませんが、仮に、そのように新聞紙上等で拝見しているような考え方に従って、共産党の案あるいは社会党の案、公明党の案いろいろな案がございます、そういうものによって、この国会でやったとしても、違憲訴訟は起こるであろうし、それが憲法違反という判決になるかどうかわからないことであります。  したがって、我々は、憲法違反でない、憲法違反の状態を是正した、こう考えてこの国会でやるわけであります。その次に、国勢調査の結果が出れば、そうすると、我々の憲法違反でないという基準に照らしても、憲法違反になりそうだから、だから早急に是正をいたしますということを各党合意いたしておるわけでありますから、我々の行動は何ら矛盾することでもないし、論理がおかしいことでもない、こう思っております。
  257. 野間友一

    ○野間委員 それはアバウトの答弁なんですね。あなたが言われる最高裁判所格差についての許容、これは一対三、三倍まで、こう言われるわけですよ。そうでしょう。だから、仮に三倍まで許容するとしても、今の現実の有権者とか人口、あるいは国調の速報がどんどん出てます、この前申し上げた、それからしたら六・六では間に合わないことは目に見えておるわけですよ。数字として事実あらわれておるわけですね。そうでしょう。そういう目前にあるものを全くネダって、そして五年前の古いものに拘泥するのは政治家としてはいかがなものか、こういうことを私は申し上げているわけですね。  ですから、確かに三倍以下の場合でも違憲訴訟が出るかもわからない。しかし、三倍までは許容されるという立場に立ったとしても、六十年の国調を踏まえた上で、少なくともそういう立場で是正されるならともかくとして、目前に迫ったものを全くネダってこういうものに固執されるということは、先ほどの論議にもありましたけれども、私は、憲法違反あるいは違憲状態判決、そういうものを前提として、しかも、それを肯定した上での今の六・六案の成立ということしか考えようがないのです。いかがですか。
  258. 森清

    ○森(清)議員 現在は国勢調査の結果は出ておらないのであります。今、一人当たり人口の少ないところについての国勢調査の地方集計の結果は出ておりますが、大きいところの方は地方集計の結果も出ておらないのであります。これは割り算をするわけであります。大きいところの選挙区と小さいところの選挙区を割り算してみて、三倍以上になったら憲法違反になるのじゃないか、是正の対象にしようというのが我々自民党の案でありますが、その大きいところの人口調査が出ておらない。したがって、二十四日にならないとそれはわからないわけでありますから、現時点においては五十五年国勢調査の結果に基づいて是正する以外にないし、また法律もそのようなことを要求しておるわけでありますから、現在五十五年国勢調査人口によって是正を行う。しかし、六十年国勢調査の結果が十二月の末に出れば、もし、そういう事態が現出すれば、それに従って早急に是正を図るということを各党合意しておるわけでありますから、この国会において五十五年国勢調査結果に基づいて是正するということは理の当然であろうか、こう思うのであります。
  259. 野間友一

    ○野間委員 私は、やはり国会の権威にかけて五十年のあの手法の過ちを絶対繰り返してはならないと。同僚議員からも話がありましたけれども、必ず違憲訴訟が起こり、違憲判決が出るということは明らかですから、私はその点について強く指摘をして、時間がありませんから、次に進めたいと思います。  緊急避難の問題であります。午前中の答弁で刑法上、民法上あるいは国際法上の緊急避難のいろいろなことを言われました。しかし、少なくともその緊急避難というのは何らかの法益侵害があるわけですね。何らかの法益侵害が迫ったときに、それを避けようとした行為、そして他の法益侵害をする、こういう場合の刑事上の免責、あるいは民事上の損害賠償の有無というのが法律上の概念なんですね。  森さんにお聞きしたいのは、先ほど何か火事か地震があってどこかへ避難する、これだってそうなんだとおっしゃった。これも火事や地震があって初めて避難するわけですよ。最高裁判所が火事か地震に例えられるとしたら、これほど不見識なことはないわけですね。私は、むしろ国会行政が今まで怠慢で、五十八年に違憲状態判決が出ても、長い間そのまま放置しておった、この報いだと思うのですね。むしろ加害者は国会であり、行政だと思うのですね。加害者と被害者をすりかえるような理屈になろうと私は思うのです。緊急避難というのはまさに適切でない言葉なんで、我我は国民の一票の価値の平等をどのように実現するかという点から堂々と行動するべきであって、いやしくも最高裁判所判決から避難をするということは絶対に許されないと私は思いますが、いかがですか。
  260. 森清

    ○森(清)議員 午前中の答弁で申し上げましたが、そのような刑法上の概念、民法上の概念あるいは国際法上の概念に従って緊急避難と言っておるのではなくして、世間普通にわかりやすいような意味で、急いでやらなければいかぬ、こういうことを緊急避難と申し上げているので、言葉の問題ではないんではないか、こう思います。
  261. 野間友一

    ○野間委員 いや、それなら避難という言葉は使わぬ方がいいですよ。緊急措置とならまだしも、私たちは改正に緊急も抜本もないという立場ですけれども、少なくとも使われるとするならば避難という言葉は適切でないということであります。  さて、これは私が勝手に言っておるのじゃなくて、東京新聞の社説でもこんなことを言ってますね。これは十一月十二日ですが、「二年間も事実上、棚ざらしにしておいた法案を、いまさら「緊急避難」を口実に早期成立を求めることは、説得力に乏しい。」し、「抜本是正に本格的に取り組む第一段階というよりは、むしろ、抜本是正からの緊急避難の印象が色濃い」、これはまさに言い当てて妙だというふうに私は思うわけであります。  そこで、関連して申し上げたいのは、世論が一体どうなのかということですね。これは例えば公法学者の通説が格差は二倍未満、それから、いろいろと専門家の意見も私申し上げたわけですけれども、その世論を見てみましても、これは十月一日放映のNHKの世論調査、これでありますけれども、すぐ手直しが迫られることがないように、時間がかかっても抜本的な是正を図るべきだ、これは四八%ですね。次の総選挙に間に合うように暫定的でも早急に是正すべきだ、これは二六%なんですね。私たちが主張しておることが国民の大多数の声だということがこの世論調査からもわかるわけですね。ですから、国民がだれしも言うのは、目前に迫っておるのに何でそれを無視して古い証文に固執するのか、私は国民の疑問はそのとおりだと思うのです。その点について合理的な理由が一とにかくこの二十四日出るわけですから、あとわずかですね、今なぜこれを急がして成立させて、そして、それを無視されるのか。これは国民が納得いくような合理的な説明ができないと思うのですね。  討論会のときに森さんは、多数党は少数党と違うのだ、共産党みたいに二十二、三人と違うのだと言われた。これは暴論であり、まさに選ばれる側の理屈なんですね。何かの本に書いてありましたけれども、一人の政治生命よりも国民の平等権の保障、これがどんなに大切かということがありました。私はまさにそうだと思うのです。数が多かろう、少なかろう、それはそれぞれの党の中で同じような利害があるのです。利害に拘泥しておったらできないのですよ。  ですから、わかりやすく素直に国民の期待にこたえるためにも、そういう点を踏んで、そして選ぶ側の立場に立ったそういう是正、これを緊急にそれこそ急がなければならぬ、これは正論じゃありませんか。
  262. 森清

    ○森(清)議員 一般論、原則論については野間委員のおっしゃることに賛成する部分が非常に多いわけであります。しかし、我々は国民から負託を受けて、現実に法律改正する、しないは世論調査にかけてどうこうするわけにいかないわけであります。現実に我々は国民の代表としてここで行動しなきゃならない。そうして、物事は多分に政治的に困難な問題を含んでおる問題でありますから、これを我々は現実の政治の中で実現していく。こういうことから考えると、何が正しいか、何がいい方法であるかということを我々自身の問題として考えなきゃならない。世論調査をかけて、どういう調査か知りませんが、それによってどうこうで我々国会が左右されるのもいかがかと思います。  また、世論調査をもしそのように引用されるならば、私の承知している限りでは、朝日新聞と読売新聞の社説、これはやはり最も世論に敏感な大新聞であろうと思いますが、その社説において、早急にこの国会で一応処理すべきであるという社説があったように記憶いたしておりますが、そういうことも考えますと、野間議員が国民世論がどうであるということを一方的に主張されるのもいかがか、やはりそういう国民世論というものも我我が頭に置いて、そして最終的に結論を出さなければならない、この国会において我々が結論を出さなければならない問題である、このように考えておる次第でございます。
  263. 野間友一

    ○野間委員 世論を言いましたのは、繰り返しませんけれども、五年前の基礎ではなくて間もなく発表される、そういうものをどうしてそれに依拠しないのか、これは国民が納得しない。それで、急ぐとか、時間がかかるとかいろいろ言われますけれども、しかし国民は決してそういうことではなくて、いいものをつくれということが世論なんだという趣旨で私は使ったのです。確かに新聞の論調なり主張はいろいろあります。森さんがおっしゃるような主張もあれば、逆に私が申し上げている主張もたくさんあるわけです。御承知のとおりですね。ですから、私は納得のいくような合理的な理由がない以上、そういうものに固執する必要は全くない、むしろ国民が迷惑する、国会の権威にもかかわるということを申し上げておるわけであります。  しかも、先ほどの安倍先生質問にもありましたけれども、あのけがの発言がまさに端的にそれが出ておると思うのです。これは何度も私が申し上げたわけですけれども、早くしなければけがが大きくなる、これは一体どういうことですか。自治大臣、どう思いますか。早くこの国会でやらなければけがが大きくなる、定数是正は一体けがなんですか、どうなんですか。自治大臣、あなたの見解を聞きたいと思います。
  264. 古屋亨

    古屋国務大臣 私はけがが大きくなるというようなことは言ったことはございません。
  265. 野間友一

    ○野間委員 あなたはそういう発言をどうお考えになるかということを、自治省の最高責任者としてお聞きしているわけです。
  266. 古屋亨

    古屋国務大臣 恐らくそういう議論があったのは、六・六よりももっと範囲が広くなってくるんじゃないだろうかということを予想されての議論ではないだろうか、これも私の想像ですから、と私は思うのですけれども。
  267. 野間友一

    ○野間委員 だから、その影響は大きくなるが、それはけがというとらえ方がおかしいということを言っているわけです。まさに選ばれる側の理屈でしかない。選ぶ側の一票の価値の平等、そういう観点が欠落をしているという点で私は指摘を申し上げておるわけであります。  さて、二人区制について、先ほどから論議がありましたけれども、お聞きしたいと思います。  これは死に票の問題がもう最大の欠陥だと私は思うのです。森さんにお聞きしたいのは、直近の衆議院選挙定数三人区の選挙区、それから参議院選挙定数一及び二の選挙区、それぞれのいわゆる死票、死に票ですね、この率が一体幾らになっておるのか、お答えをいただきたいと思うのです。
  268. 森清

    ○森(清)議員 そういう統計上のことについては、詳しい者がだれかおるかと思います。私は記憶いたしておりません。
  269. 野間友一

    ○野間委員 自治省どうですか。
  270. 小笠原臣也

    小笠原政府委員 お答えを申し上げます。  死票というものの定義がいろいろ実はあるわけでございまして、落選者に投ぜられた票を死票とする場合もありますし、落選者に投ぜられた雲と、それから当選者に投ぜられた票でも当選ラインに必要な票以上の余剰票も加えて死票とする場合もあるわけでございますけれども、一般的に言われております有効投票に対する落選者の得票の割合ということで、直近の五十八年十二月の総選挙の率だけたまたま計算をしておりますので申し上げてみますと、三人区では二六・八%、それから四人区では二四%、五人区では二〇・四%、こういうふうになっております。
  271. 野間友一

    ○野間委員 参議院はどうですか。
  272. 小笠原臣也

    小笠原政府委員 参議院についてはちょっと試算をしておりません。
  273. 野間友一

    ○野間委員 自治大臣はこの法案審議については十分資料を出すと言われた、また十分な準備をすると言われた。こんなことも試算していないなんて、そんなことありますか。これは後で試算して出してください。委員長、ぜひ提出するように……。自治省、どうですか、これはすぐ出てくるのですよ。
  274. 小笠原臣也

    小笠原政府委員 はい、計算して提出したいと思います。
  275. 野間友一

    ○野間委員 五十八年六月の参議院選挙で、これは一人区で死票が四六・三%、二人区で三六%、こういう状況なんですね。とにかく死票が物すごくふえるわけです。これがやはり二人区の最大の問題で、多様化する国民の意思が議席に結びつかない。これは当然の話です。森さんも午前中の答弁で、そういう死票のことを答えられたわけですけれども、こういう死に票をいろいちと計算してみますと、全国投票者総数ほぼ六千万人、衆議院に仮に二人区制が導入されれば、参議院と同程度の死票率が発生する、そういうことで試算いたしますと、何と二千万人以上の有権者の意思が国会議席に反映されない、こういうふうになるわけですね。それが国会構成において、国民の多様化した意思が議席に反映しないということは明らかなんです。自民党の中でも、例えば河本派の皆さんは、いろいろ文書を私はいただきましたけれども、その中でも、現行選挙区制を維持することは、いわゆる死に票を最小にする意味において与野党を問わず政界の大勢ともなっている、こういうふうに言われておるわけで、まさにそのとおりなんですね。  こういう死票がうんとふえて、多様化した国民の意思が議席に反映しない、こういう二人区制度そのものがいいというお考えなのかどうか、再度答弁をいただきたいと思います。
  276. 森清

    ○森(清)議員 選挙制度というのは、死票が多いか少ないかということも一つのメルクマールでありましょう。その他いろいろな考え方によって選挙制度ができ上がるわけでありまして、今御主張のようなことであれば、一人区については非常に多くなりますが、二人区、三人区、四人区、五人区、まあ大体同じようなものではないか、このようにも考えられますし、しかも、死票をなくしようという御主張ならば、完全比例代表制にし、足切りをしないというようなことになれば、国会議員は何万人おっても足らぬようなことになるのではないかと思いますが、仮に足切りをするとしても、やはり比例代表制が一番死票が少ないわけであります。  したがって、そういう選挙制度のあり方から、小選挙区制といって、死票は多くなるが、政治の現実の姿としては非常にいい制度である、いい制度理由はいろいろありますが、いい制度であるという考え方もあって、欧米先進国ではおおむね小選挙区をとっている、この現実も我々は踏まえなければならない。したがって、死票が少ないほどいい選挙制度である、こう一概に決めないで、そういう制度もありああいう制度もある、そういう中で日本の選挙制度としてはどうかということは抜本的是正のときにはお考えいただきたい、こう申し上げておるのでありまして、今回できる二人区は、四つしかできないわけでありますし、また例外的につくろうということでありますから、死票が多くなるからというそういう根本論とはちょっとかけ離れたところに今あるのではないか、このように考えております。
  277. 野間友一

    ○野間委員 いや我々は、三ないし五という中選挙制度を維持しなければならぬ、二人区制度の導入は絶対反対です。それは、一つは、今申し上げたように、今の制度からすれば二人区を導入すると死に票がうんとふえていくということと、もう一つは、言うように小選挙区制へずっと進んでいく、こういう一里塚であるから私たちは断固反対しておるわけですね。  いつか私は申し上げたわけですけれども、経済同友会の研究部会「グループ79」の「わが国の今後の社会体制」という提言がありますけれども、この中でも、ちょうど今の自民党の六・六案の手法と同じようなことがよろしいという提言があるわけですね。こうあります。「小選挙区制は究局的には上記諸前提を踏まえた上で一選挙区一代表制とすることが望ましいが、その場合には大量の死票が発生し、議席配分が国民の意思と大きく異なり、無視し難いリスクを生ずる恐れがある。したがって、ここでは第一のステップとして小選挙区制と中選挙区制を折衷した一選挙区二代表制を、」「定数是正と一体化した形で導入することを提案したい。」これがあるわけですね。  まさにこの経済同友会の考え方と同じようなものが今出されてきておる。過去いろいろな物の本を読みましても、森さんも、政治の安定のためには小選挙区制がよろしいというようなことを言われておる。これは自由新報の中で言われておる。後藤田さんも別の機会に、一対二というようなことは到底できない、その場合には小選挙区制なんだというようなことすら言われておる。ですから、野党がいろいろと二人区制の導入に反対するのは、決してあれこれのこじつけた理由ではなくて、そういうことで小選挙区制の導入があるんだということを深いところで危惧しておるから私たちは指摘をしておるわけであります。  さて、大正十四年に中選挙区制が採用されました。そのときの若槻内相が、衆議院議員選挙法改正理由書をまとめておりますが、この中で、中選挙区制とは三から五人区だということを明確に言っておるわけですね。そして、それ以下は小選挙区制だ。そして、それをとることができない理由として、小選挙区制について、「少数党ノ得票ハ其ノ効力ヲ発揮セスシテ空費セラルルコト多シ、此ノ如キコトハ、選挙ノ理論並ニ選挙権拡張ノ趣意ニ鑑ミテ適当ニアラス、故ニ成ル可ク選挙区ハ之ヲ大トスルヲ可トス」。そして、空費投票率、つまり死票のことですが、それ以前の大選挙区制、小選挙区制で行われた選挙について、これは別表をつけて論証をしておるわけですね。戦前のような国民が主権者でなかった当時ですら、このようにして空費投票率、死に票が多くなる、そしてさらに、申し上げたように、選挙権拡張の趣旨にかんがみて適当ではないということを言っておるわけですね。戦前は天皇主権です。戦後は国民主権です。まして、戦後の今の時点におきまして、議会制民主主義をとる我が国におきましては、当時より国民の意思が多様化しておることはもう言うまでもありません。  ですから、戦前ですらこういう非常に適切な指摘をしておる、こういうものをゆがめまして、憲法選挙権の拡張あるいは一票の価値の平等という点からもこの二人区制の問題は大変に大きな問題であり、戦前に逆戻りするようなことは絶対に許してはならぬというふうに私は思いますが、いかがですか。
  278. 森清

    ○森(清)議員 大正十四年に三人から五人の中選挙区制ができた政治的背景は、常に多数党であった政友会は小選挙区制を主張し、ほとんど少数党であった、名前はいろいろ変わりましたが民政党であります、民政党が大選挙区制を主張し、そういう段階で政友会が分裂をいたしまして、そうして^その半分が民政党と一緒になっていわゆる護憲三派をつくって多数党になったわけであります。その護憲三派の内閣において、民政党系統の大選挙区制の主張と、政友会から分かれて入ってきた人たちの小選挙区制の要求とを、ミックスして、そうして、まあまあ妥協をして三人から五人の選挙制度にいたしました。したがって、その直前の大正九年には民政党は二人から四人の中選挙区制を主張いたしております。そういう過程ででき上がったものであります。  でき上がったその製品については、自動車も同じでありますが、これは最高のいい品物であると言って売り出すのが当たり前の話でありまして、つくったものが欠陥がありますと言って売り出す人はおらないと思います。そういう意味で、あの提案理由の中にも、三から五とはこのようにいいのです、いいのですという説明がるる述べられております。しかし、直ちに政友会系続から、小選挙区制に戻すべしという提案もなされております。そのときには、中選挙区制あるいは大選挙区制とはこういう欠陥があるから小選挙区制にすべしという提案もなされておりますし、先ほども申し上げましたとおり、この国会で、選挙制度のあり方、区制のあり方について答申を求めるためにつくった選挙制度審議会において、数年がかりで学者、実務者、経験者が総力を結集して調査審議して政府に答申した内容、第五次選挙制度審議会でありますが、これは昭和四十二年に答申いたしております。  そのときの答申、これはもちろん新憲法になってから、国民主権になってからの答申でありますが、そのときに、先ほども御披露申し上げましたが、二十八名の第一委員会に属する委員が意見を表明しております。その中で、小選挙区制あるいは小選挙区制に比例代表制を加味したもの、これを支持する人が二十二名であります。その次に、五名の方が中選挙区制でありますが、現在の三-五の中選挙区制ではありません。これは中選挙区制にしてさらに比例代表制、こういうことでありますから全然違う案であります。それで、現在の三から五の中選挙区制を支持した人は一人だけてあります。したがって、選挙制度について本格的に審議していただいた、国会においてつくったこの選挙制度審議会で、学識経験者あるいは実務家の総力を結集してやった審議の結果はそういうことも出ております。しかも、それは、総会において多数の者が小選挙区制の導入であったという報告もなされております。  したがって、今、野間議員が言われるように、死票が少ないのがいい選挙だ、あるいはどうだというふうに一義的にお考えにならないで、そういうことを総合的にお考えになって我々は本格的是正に取り組みましょう、しかし、今言ったように、選挙制度審議会において、そのときにおける最高の権威者を集めた結論は、現在の中選挙区制を維持しようと言った方は二十八名中一名であった、こういう事実もひとつよくお考えいただきたいと思います。
  279. 野間友一

    ○野間委員 えらい長々と不必要なことを答弁されたわけですけれども、私は、戦前のあの時代ですら、選挙権の拡張のためには中選挙区制がよいのだ、こういうことを言っておる、これは今ましてそれよりももっと重要だということを申し上げたのです。  二人区は一たんつくりますと、金丸さんも言われておりますように、これはもう今後つくらぬという保証は全くないということを言われておる。そういう手法でやられたらどんどんどんどんふえるわけですからね。これは絶対我々は賛成することはできません。  やっと二人区に入ったところで申し合わせ時間が参りましたので、あとは次回に回しまして、きょうはこの程度で終わりたいと思います。
  280. 三原朝雄

    三原委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時二十分散会