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1985-12-09 第103回国会 衆議院 決算委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和六十年十月十四日)(月曜日 )(午前零時現在)における本委員は、次のとお りである。   委員長 安井 吉典君    理事 糸山英太郎君 理事 白川 勝彦君    理事 東家 嘉幸君 理事 林  大幹君    理事 井上 一成君 理事 新村 勝雄君    理事 貝沼 次郎君 理事 玉置 一弥君       小坂徳三郎君    小山 長規君       桜井  新君    澁谷 直藏君       藤尾 正行君    松野 頼三君       森下 元晴君    渡部 恒三君       金子 みつ君    中村 重光君       斉藤  節君    春田 重昭君       塚本 三郎君    中川利三郎君       阿部 昭吾君    田中 角榮君     ————————————— 昭和六十年十二月九日(月曜日)     午前十時二分開議 出席委員   委員長 安井 吉典君    理事 糸山英太郎君 理事 白川 勝彦君    理事 東家 嘉幸君 理事 林  大幹君    理事 井上 一成君 理事 新村 勝雄君    理事 貝沼 次郎君       小坂徳三郎君    小山 長規君       桜井  新君    金子 みつ君       中村 重光君    斉藤  節君       春田 重昭君    田中 慶秋君       中川利三郎君    阿部 昭吾君  出席国務大臣         外 務 大 臣 安倍晋太郎君  出席政府委員         外務政務次官  森山 眞弓君         外務大臣官房長 北村  汎君         外務大臣官房外 波多野敬雄君         外務省北米局長 藤井 宏昭君         外務省欧亜局長 西山 健彦君         外務省中近東ア         フリカ局長   三宅 和助君         外務省経済局次         長       池田 廸彦君         外務省経済協力         局長      藤田 公郎君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省国際連合         局長      中平  立君  委員外出席者         防衛庁防衛局防         衛課長     宝珠山 昇君         防衛庁経理局工         務課長     中川 虎三君         防衛施設庁施設         部連絡調整官  芥川 哲士君         外務大臣官房審         議官      福田  博君         外務大臣官房審         議官      小野寺龍二君         外務大臣官房会         計課長     林  貞行君         大蔵省主計局司         計課長     西澤  裕君         大蔵省銀行局検         査部管理課長  増田 煕男君         文部省学術国際         局国際教育文化         課長      田原 昭之君         文部省学術国際         局留学生課長  雨宮  忠君         運輸省航空局技         術部運航課長  赤尾 旺之君         会計検査院長  大久保 孟君         会計検査院検査         官       中村  清君         会計検査院事務         総局第一局長  竹尾  勉君         参  考  人         (国際交流基金         常務理事)   七田 基弘君         決算委員会調査         室長      大谷  強君     ————————————— 委員の異動 十一月二十八日  辞任         補欠選任   阿部 昭吾君     菅  直人君 同日  辞任         補欠選任   菅  直人君     阿部 昭吾君 十二月三日  辞任         補欠選任   金子 みつ君     森井 忠良君 同日  辞任         補欠選任   森井 忠良君     金子 みつ君 同月九日  辞任         補欠選任   塚本 三郎君     田中 慶秋君 同日  辞任         補欠選任   田中 慶秋君     塚本 三郎君     ————————————— 十月十四日  昭和五十八年度一般会計予備費使  用総調書及び各省庁所管使用調  書(その1)  昭和五十八年度特別会計予備費使 (承諾を求  用総調書及び各省庁所管使用調 めるの件)  書(その1)          (第百一回  昭和五十八年度特別会計予算総則 国会内閣  第十一条に基づく経費増額調書 提出)  及び各省庁所管経費増額調書   (その1)  昭和五十八年度一般会計予備費使  用総調書及び各省庁所管使用調  書(その2)  昭和五十八年度特別会計予備費使 (承諾を求  用総調書及び各省庁所管使用調 めるの件)  書(その2)          (第百二回  昭和五十八年度特別会計予算総則 国会内閣  第十一条に基づく経費増額調書 提出)  及び各省庁所管経費増額調書  (その2)  昭和五十九年度一般会計予備費使  用総調書及び各省庁所管使用調  書(その1)  昭和五十九年度特別会計予備費使 (承諾を求  用総調書及び各省庁所管使用調 めるの件)  書(その1)          (第百二回  昭和五十九年度特別会計予算総則 国会内閣  第十一条に基づく経費増額調書 提出)  及び各省庁所管経費増額調書 (その1)  昭和五十七年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十七年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十七年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十七年度政府関係機関決算書  昭和五十七年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和五十七年度国有財産無償貸付状況計算書  昭和五十八年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十八年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十八年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十八年度政府関係機関決算書  昭和五十八年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和五十八年度国有財産無償貸付状況計算書 は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  参考人出頭要求に関する件  昭和五十七年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十七年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十七年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十七年度政府関係機関決算書  昭和五十七年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和五十七年度国有財産無償貸付状況計算書  (外務省所管)      ————◇—————
  2. 安井吉典

    安井委員長 これより会議を開きます。  この際、会計検査院長に就任されました大久保孟君並びに検査官に就任されました中村清君の両君からそれぞれ発言を求められておりますので、これを許します。大久保孟君、
  3. 大久保孟

    大久保会計検査院長 お許しをいただきまして、一言ごあいさつ申し上げます。  私、去る十月二十五日、会計検査院長に任命されました大久保でございます。微力ではございますが、全力を尽くしましてその職責を全ういたしたいと存じております。何とぞ御指導、御鞭撻のほど切にお願い申し上げます。(拍手
  4. 安井吉典

  5. 中村清

    中村検査官 去る十月二十四日、検査官を拝命いたしました中村でございます。微力ではございますが、全力を尽くして職責を全ういたしたい所存でございますので、何とぞ御指導、御鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。(拍手)      ————◇—————
  6. 安井吉典

    安井委員長 次に、国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  すなわち、決算の適正を期するため、本会期中において  一、歳入歳出の実況に関する事項  二、国有財産増減及び現況に関する事項  三、政府関係機関経理に関する事項  四、国が資本金を出資している法人の会計に関する事項  五、国又は公社が直接又は間接に補助金奨励金助成金等を交付し又は貸付金損失補償等財政援助を与えているものの会計に関する事項 以上の各事項につきまして、関係各方面からの説明聴取、小委員会設置及び資料の要求等の方法によりまして国政に関する調査を行うため、議長の承認を求めることにいたしたいと存じますが、これに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 安井吉典

    安井委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  8. 安井吉典

    安井委員長 次に、昭和五十七年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、外務省所管について審査を行います。  次に、外務大臣概要説明及び会計検査院当局検査概要説明を求めるのでありますが、便宜これを省略し、本日の委員会議録に掲載することといたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 安井吉典

    安井委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————    外務省所管 昭和五十七年度決算について  昭和五十七年度外務省所管一般会計歳出決算につきまして、その概要をご説明申し上げます。  歳出予算現額は三千九百三十七億五千百八十六万円余でありまして、支出済歳出額は三千四百九十六億六千二百五十一万円余、翌年度繰越額は四百十九億八百八十五万円余、不用額は二十一億八千四十九万円余であります。  歳出予算現額の内訳は、歳出予算額三千四百四十四億五千二百五十万円余、前年度繰越額四百七十二億二千八百六十二万円余、予備費使用額二十億七千七十三万円余でありまして、前年度から繰り越したものの内訳は、経済開発等援助費四百七十二億二千八百六十二万円余であります。  支出済歳出額の主なものは、エネルギー対策のため国際原子力機関に対し同機関の憲章に基づく分担金及び拠出金として二十三億五千七百八十万円余、並びに各種国際機関に対する分担金等として六十三億九千九百二十六万円余。  次に、経済協力一環として、青年海外協力隊派遣開発調査センター協力機材供与保健医療協力農林業協力開発技術協力開発協力専門家養成確保等の事業、アジア諸国等開発途上国に対する経済開発援助および国連開発計画等の多数国間経済技術協力のための拠出等に要した経費二千五百十六億三千百十万円余であります。  次に、翌年度繰越額について申し上げますと、財政法第十四条の三第一項の規定による明許繰越のものは四百十一億七千四百十五万円余でありまして、その内訳は、経済開発等援助費四百十億七千六百十九万円余、在外公館施設費九千七百九十五万円余、及び財政法第四十二条の規定による事故繰越のものは七億三千四百七十万円余、その内訳は、外務本省九千六百十五万円余、経済開発等援助費六億三千八百五十四万円余。  不用額の主なものは、外務本省の項で退職手当を要することが少なかったこと、国際分担金其他諸費の項で為替相場変動等に伴い、経済協力国際機関等拠出金を要することが少なかったこと、並びに在外公館の項では、職員手当を要することが少なかったこと等のためであります。     …………………………………    昭和57年度決算外務省についての検査概要に関する主管局長説明                            会計検査院  昭和57年度外務省決算につきまして検査いたしました結果、特に違法又は不当と認めた事項はございません。     —————————————
  10. 安井吉典

    安井委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上一成君。
  11. 井上一成

    井上(一)委員 まず、国連の設立がなされてからことしで四十周年、まさに国連の前文にうたわれた理想は、我が日本人にとって理屈抜きで共感できるものであったと私は思いますし、同時に大きな期待をも国連に対して持っているわけです。しかし、最近国連に対する批判が指摘されるようになってまいりました。  国連事務次長明石康さんがエコノミスト誌で、国連批判の一番手はアメリカである、次はイギリスだ、既にアメリカはユネスコを脱退した、イギリスも脱退に踏み切る、三番目は西ドイツである、我が国は最も国連に協力的な態度を示した国であったと思っていたが、最近の言動から見ると西ドイツくらいのところまで後退してきている、こういうふうに述べられているわけです。  そこで、西ドイツくらいというと、明石さんのこのエコノミスト誌報道されている言葉によると、国連批判の三番目ということになるわけです。他の人が言われているなら別問題として、国連事務次長である明石さんがそういうことをおっしゃっているということは、大変その言葉は重い、私はこういうふうに受けとめるわけです。  九月、安倍外務大臣国連演説において、国連一定の限度において成果を上げできたものの、国連創設当初予定した機能を現実のものとすることができない、こういうふうに言い切っているわけです。  日本明石さんの言うように第三番目くらいの国連批判国なのかどうか、国連に対する認識をここで外務省に聞いておきたい、こういうふうに思います。
  12. 中平立

    中平政府委員 お答えいたします。  ただいま先生がおっしゃいました明石国連事務次長国連批判が強い国の三番目として西ドイツがある、日本も恐らく西ドイツぐらいではないかということでございますが、明石次長個人的見解ではないかと考えている次第でございます。  確かに、おっしゃいますように、国連創設以来四十年たちまして若干非効率的な面とかそういうことが目立っわけでございますけれども、やはり唯一の普遍的国際機関である国連に対する我々の支持というものは変わらないわけでございまして、国連に対する支持が揺らいでおるというようなことはございません。
  13. 井上一成

    井上(一)委員 それでは、明石さんのおっしゃっていることとは全く違った見解であるということなのですね。
  14. 中平立

    中平政府委員 今申し上げましたように、明石さんの御意見は直接知りませんが、私どもといたしましては、明石さんがそういうことを言っていらっしゃるとすれば、見解を異にするものと申し上げられます。
  15. 井上一成

    井上(一)委員 さっきも言ったように、十月二十九日発売のエコノミストで、少なくとも明石さんは国連事務次長なのだから、発言あるいは見解等について外務省当局が十分承知していなければいけない。まあ見解が違うということだから、それはそれなりにお答えとして聞いておきましょう。  さらに、最近国連が行政、財政の面で非常にむだがある、肥大化しているとの批判があるわけなのです。このむだ、肥大化について、安倍外務大臣国連演説で、二十一世紀国連の将来に向け二つの問題を指摘されておるわけです。その一つは、国連平和維持の分野においてその責任を十分果たすべきだ、こういう批判。第二点は、国連行財政改革を訴え、そのための賢人会議設置を提案なさっているわけです。  たしか、きょう九日、賢人会議設置のための決議案国連提出されるそうでありますが、決議案内容はどういうものなのか、ここで教えていただきたいと思います。
  16. 中平立

    中平政府委員 お答えいたします。  新聞には、ニューヨーク時間の九日に提出する予定であるという報道がございます。私どもも、ニューヨーク時間の本日中にでき得れば提出したいと考えておるわけでございますが、開発途上国等との最終的なすり合わせが残っておりますので、ニューヨーク時間の九日、月曜日、そういう方向で努力しておるということを申し上げたいと思います。  賢人会議決議案内容でございますが、今申し上げましたように開発途上国等とのすり合わせが残っておりますので、最終的な文言につきましてはまだ東京においてはわかりませんが、一応、問題の緊急性、それから重要性にかんがみまして、もし決議案が通るということになれば、来年一年で報告書を出していただくということにしたいと考えておるわけでございます。  それから、その具体的活動内容でございますが、これも開発途上国等がいろいろな注文をつけたりしておりますので、最終的にはどういうことになるのか。もちろん、行財政改革といいますか、国連の非能率その他のむだをなくするという観点から機構を設置するわけでございますので、そういう目的に合致する活動をすることになると思いますが、具体的なことは今の段階では申し上げられません。
  17. 井上一成

    井上(一)委員 ニューヨーク時間のきょうということですが、東京ではわからないとさっきお答えになられたのだけれども国連局長、そんなことであなたの仕事というのは果たせたことにはならぬですよ。本当にわからないのですか。新聞報道だけの知識しかあなたはお持ち合わせでないのですか。
  18. 中平立

    中平政府委員 もちろん、私どもは現在まで行われておる作業文言について知っておるわけでございますけれども、最終的にどういうふうに変わっていくかということは、先生も御存じのように、国連のあの場では、いろんな国がいろんな注文をつけて、こういうふうに書いたらどうかという作業が行われますので、そういう観点から申し上げられませんと申した次第でございます。
  19. 井上一成

    井上(一)委員 そんなあほな話をしておったらあかぬよ。きょう出すという。それは確かに開発途上国からいろんな意見なりは報道されております。私は、あなたがどのように修正されるか、あるいはどのように変わっていくかわからないんだという一定不安感を持っていらっしゃるということについては理解ができるのです。しかし、今日、きょう国会の議論の場でどういうことなのか申し上げられませんなんということで決議案を出せるのですか、出そうとしているのですか。ばかなことを言いなさんな。  報道では、たしか賢人と称する有識者十八人で集中的に国連機能等について審議をしながら、いわば勧告に近いものを出したい。私は、十八人のメンバーがどんな人で構成されていくのか、その中に日本有識者が入るのか入らないのか、そういうこともやはり事前に聞いておきたかったのですよ。私個人は、安倍外務大臣が提起された国連の再活性化のために財政改革を進めていく、その必要性は原則的に賛成なんですよ。しかし、ともすれば開発途上国から、負担金が多いからそのことでクレームがついておるんじゃないかとか、あるいは先進国ペース国連を改革されてしまうんではないだろうかという誤解がないとは言い切れないのです。  私は、そういうことを考えると、我が国明石さんが、国連事務次長として発言をされているこの内容というものは、非常に問題があると言うのです。国連批判国の第三位に位置づけられるというぐらいの烙印を押されてしまうということは、とりもなおさず、安倍外務大臣が提起している賢人会議を本当にうまく持っていけるんだろうか。外務省は一体何を考えているんだ。大臣が一生懸命やったって、あなた方がそれに対してどれほどのフォローアップができるんだろう。  私はこの決議案は原則的に賛成であるけれども、慎重でなければならない。それほど重要な問題である。せっかく外務大臣が提案をなさったわけですけれども、あなた、否決でもされるようなことがあったら大変なことになりますよ。どのように考えていらっしゃるのですか。
  20. 中平立

    中平政府委員 先生おっしゃいますように、委員の数とかそういうものも、十八名という報道もございますが、これも日本としては、できるだけ集中的に能率的に審議するためには数が少ない方がいいのではないか、こういうふうに提案しておりましたけれども、そういう開発途上国等意見もございまして、数がだんだんふえるのではないかという見通してございます。その一環といたしまして十八名という説もあるわけでございます。  もちろん、日本が提案いたしましたし、これが設置された暁には日本が積極的に参画してこの問題に取り組んでまいりたい、こう考えているわけでございます。安倍大臣が提案されましたし、この問題は、国連の将来、二十一世紀を展望いたしました場合には、非常に重要な問題であるという認識は変わらないわけでございまして、安倍大臣が提案されて以来、東京及び各国の首府、それからニューヨークにおきまして、開発途上国を含めました関係諸国と鋭意意見交換をしているわけでございます。  それで、最初には西欧及び東欧諸国賛成したわけでございますが、最初は必ずしも賛成でなかった開発途上国も、これらの意見交換によりまして、最近に至りまして日本の意図するところに対する誤解というものも解けてまいったわけでございまして、そういう意味で、関係諸国の十分の理解を得た上でこの決議案を出したい、こう考えているわけでございます。
  21. 井上一成

    井上(一)委員 採択される見通しを持っているわけなんですね。
  22. 中平立

    中平政府委員 私どもも毎日ニューヨーク国連代表部連絡をとっておりまして、現地からの報告では、これは採択されることは十分考えられるということを言っております。
  23. 井上一成

    井上(一)委員 それでは、きょうは大臣が午前中いらっしゃらないから、具体的な質問を事務当局に若干しておきたいと思うのです。  国連予算というものは一体どういう状況であるのか。あるいはその予算に対して占める比率、人件費相当数だ、八〇%くらいが人件費だ、職員がたしか五万二千人だと思うのですが、五万二千人の職員は今の国連機能からいって多いと考えていらっしゃるのか、妥当だと考えていらっしゃるのか、どちらなんですか。
  24. 中平立

    中平政府委員 国連職員は現在五万二千人程度でございまして、日本政府といたしましては、この数字はおおむね妥当ではないかと考えておる次第でございます。
  25. 井上一成

    井上(一)委員 予算的な国連の実態というのはどう把握されているのか。例えば五〇年から八四年までの通常予算伸び率がどうであるとか、あるいはそれは我が国予算伸び率に対してどうなんだとか、今の国連加盟国の数から比較して、五万二千人はおおむね妥当だ、職員は妥当だ、しかし予算というものについてはどういう認識をしていらっしゃるのか、そういうことについてはいかがですか。
  26. 中平立

    中平政府委員 お答えいたします。  国連分担金及び拠出金を合わせまして、大体年間三十八億ドル程度でございます。最近は、国連予算は毎年五ないし六%の伸びを示しておるわけでございます。しかし、来年につきましては、最近の財政支出を有効に使うという観点から、〇・四%の伸びにとどめたいと考えておるわけでございます。
  27. 井上一成

    井上(一)委員 新聞報道では、国連年間通常予算十億ドルという額は、ニューヨーク市が一年商に支出する清掃費にも満たないのだから、いわゆるニューヨーク市の年間清掃費にも満たない通常予算で世界の平和が維持できるということであれば、大変安い平和維持への予算なんですけれども、この辺はどうなんですか。外務省はどういう認識を持っていらっしゃるのですか。
  28. 中平立

    中平政府委員 お答えいたします。  先ほど申しました三十八億ドルは、国連ファミリー全体の分担金及び拠出金の総額でございまして、国連本体予算は約八億ドルでございます。この八億ドルという数字は、先生今おっしゃいましたように妥当な数字ではないかと考えておるわけでございます。
  29. 井上一成

    井上(一)委員 局長もおかわりになってすぐだから、大変お答えもしにくいかもわかりませんので、お答えがしにくい分はほかの政府委員でも結構ですよ。  私は、本年三月末に我が国分担金の約半分、三千三百万ドルを支払ったという報道を見たわけなんです。これは国連予算、いわゆる財政が非常に不足をした、四月の職員の給料が遅配になるおそれがあるので、我が国は身動きのできない国連財政を救済というか、救うために分担金の半分を支払った、こういうふうに報道されているのです。そこまで国連財政が落ち込んでいるのか、あるいはまたそういう報道が事実なのかどうか、ひとつその点も聞いておきましょう。
  30. 中平立

    中平政府委員 お答えいたします。  確かに、この特別に払った時期におきましては、国連予算がやや赤字になっておったという時期でございまして、緊急的な措置としてこういうことをしたわけでございます。  一般論といたしまして、最近はやはり国連財政は非常に苦しいということが言えるかと思います。
  31. 井上一成

    井上(一)委員 その苦しい国連予算の中にあって、分担金の未払い、滞納が多くあると聞いておるわけなんです。これまでどのくらいの額が焦げついているのかどうか。専門機関活動費の未払いや焦げつき債権、いわば国連の累積赤字は現在総額どれくらいあるのですか。
  32. 中平立

    中平政府委員 分担金の未払いの具体的な額につきましては、至急に調べましてお答えしたいと思いますが、私どもの聞いておりますのは、一部の国、特にソ連は自分の反対しているものについては金を出さないというような状況もございまして、赤字が若干出ておるというふうに理解しておる次第でございます。
  33. 井上一成

    井上(一)委員 私の手元に、ことしの四月二十七日の新聞報道で、国連の「苦しい財政 累積赤字四億ドルへ」、その中に、滞納の筆頭はソ連だ、通常予算で四千百四十五万ドル、平和維持活動費では一億四千六百万ドル、滞納分全体の約半分を占めている。さらに、アメリカもここ二、三年経費分担を拒んで、滞納額は四百万ドルというふうに、いわゆる政治的と経済的の二つの理由で不払いがあるというふうに報道されているのです。これは事実なのかどうか。  今、額は別としてソ連の滞納を言われました。私はあえてここで額を指摘したわけです。いわば超二大国、アメリカ、ソ連が国連予算を窮屈にしているいわゆる張本人であるということになるのですが、そういうことについて外務省としての感想というか、見解というか、そのことについても聞いておきたいと思います。
  34. 中平立

    中平政府委員 お答えいたします。  ただいま御指摘のありました具体的な数字は、今直ちにこの席に持ち合わせておりませんが、先生がおっしゃいますように、ソ連及び若干の数字でございますがアメリカも滞納しておるということは事実でございます。この二超大国のこのような状態は必ずしも望ましいわけではございません。したがいまして、我々といたしましても、機会をつかまえましてこういうことの是正に努力してまいりたいと思うわけでございます。
  35. 井上一成

    井上(一)委員 国連憲章の第十九条で、「延滞金の額がその時までの満二年間にその国から支払われるべきであった分担金の額に等しいか又はこれをこえるときは、総会で投票権を有しない。」とある。この条項に達する国は現在あるのかどうか。ソ連はことしこの十九条に該当すると私には思われるわけなんですが、どうなんですか。このことも聞いておきたいと思います。
  36. 中平立

    中平政府委員 私ども理解では、ソ連の滞納の額は十九条に言及されております条件にまだ満たないと理解しております。
  37. 井上一成

    井上(一)委員 まだ満たない。具体的にはそれじゃ後で数字を挙げてください。ことしこのままであれば、ソ連は十九条に触れるのではないだろうかと私は思うのです。  要は、国連の運営あるいは安倍外務大臣が提起されている賢人会議等を成功さすためにも、国連機能をより効率化さすためにも、もっともっと努力が必要であり、外務省当局の一層の精進を私は期待するというか、お願いをしておきたいわけです。  次に、私は南アの問題についてひとつ聞いておきたいと思うのですが、外務省にまず聞いておきます。我が国から南アフリカに対して散弾銃の輸出がなされているということは承知しているのでしょうか。
  38. 三宅和助

    ○三宅政府委員 お答えいたします。  外務省としても最近知ったわけでございますが、実際の統計を通産省を通じまして承知したところによりますと、個数では四十九個、これは昨年でございます。ことし一−九月には百十九個の散弾銃が輸出されているということを、実は通産省を通じまして最近承知しているわけでございます。
  39. 井上一成

    井上(一)委員 南アに対する経済制裁、いわゆるアパルトヘイト政策に対する我が国の基本的な対応、認識から考えて、こういう状況はどのように受けとめられるのでしょうか。
  40. 三宅和助

    ○三宅政府委員 お答えします。  散弾銃に関しましては、我々が承知しておる限りにおきましては、通常の狩猟用の目的で使われているということでございますと、一般貿易の範囲内に属しまして、我々としては特に現在どうこうということは実は考えていなかったわけでございます。
  41. 井上一成

    井上(一)委員 三宅局長がおっしゃるように、散弾銃それ自身は決して殺傷力が強いわけでもないわけなんです。ところが、南アフリカの暴動等騒乱状況が多発していることし、輸出量が昨年の倍以上になっているということと、輸出をした後の使用目的というものは確認がとれないわけなんです。武器でないから、武器輸出に抵触するわけではない。いろいろな使用目的まで現地へ行って制限することは不可能である。これは事実。しかし、今日の南アの状況を承知し、あるいはそのことにもしこの散弾銃が利用されているとするならば、これは大変なことである。  同時に私は、南アに対して外務省がとっている基本的な姿勢は、このような散弾銃を輸出するということは好ましくないという判断に立っていらっしゃる、こう思うのです。散弾銃がどのように使われているかということは、私も現地で一部のプライベートな情報ということだけで、ここで議論を確実に固めてしようとはいたしませんけれども、南アの国内情勢から考えてそれが暴動を鎮圧する威嚇に使われている、そういうことも含み合わせると、このような状況というのは厳に慎むべきである、私はこういうふうに思うのです。  外務省が南アのアパルトヘイト政策に対して厳しい対応をとり続けている反面に、もし私の想像するようなあるいはそういう事態が南アで起こった場合に、私は大変残念なことだと思いますから、そういう可能性を持たさないような状況をやはり環境としてつくる必要がある、そういう認識で外務当局にこの問題についての、所管は通産省でありますが、外務省としての見解を重ねてお聞きをしておきたい、私はこう思います。
  42. 森山眞弓

    ○森山政府委員 散弾銃が暴動鎮圧に使われているというような情報は入手しておりませんし、またその可能性も少ないと思いますが、もし仮にこれがそのようなことに使われる、南アフリカにおけるアパルトヘイトあるいはその関連の暴動を鎮圧するというような目的のために使われるということが仮にございまして、それが殺傷的な効果を結果的に招来するというようなことになるとすれば、それは甚だ遺憾であり、望ましくないことであると考えます。このようなことにつきましては、通産省初め関係各省庁と十分協議をしていきたいと考えます。
  43. 井上一成

    井上(一)委員 時間が参りましたので、一応私は午前の質問はこれで終えます。
  44. 安井吉典

  45. 新村勝雄

    新村(勝)委員 初めに外務省にお尋ねしたいのですが、いわゆるNLP、米軍の夜間訓練でございます。この問題については、既にかなり前から懸案になっておりますけれども、その後アメリカから何らかの要請があったかどうか。それから、最も最近にアメリカからこの問題について要請があったのはいつか。
  46. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 NLPにつきましては、委員御承知のとおり、アメリカから累次円滑なNLP訓練の実施について希望を寄せられております。しかし、最近特にアメリカ側から希望を寄せられたということはございません。
  47. 新村勝雄

    新村(勝)委員 ですから、最も近い過去においてあったのはいつかということです。それを伺っているのです。
  48. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 本年の首脳会談の際にもこの話が出たわけでございますし、随時出ておるわけでございます。
  49. 新村勝雄

    新村(勝)委員 防衛庁に伺います。  防衛庁では、今海上自衛隊下総基地の滑走路の改修を計画しておるようですね。この工事の概要、それからその目的をまず伺います。
  50. 中川虎三

    中川説明員 お答えいたします。  海上自衛隊の下総基地の現在の滑走路は、昭和三十七年にP2Jの前身でございますP2V7用に建設されまして、既に二十三年を経過しているものでございます。舗装の各所に老化が見受けられております。このたびP3Cの配備に伴い、舗装強度が不足するため増強を行うものでございます。その主な内容につきましては、滑走路につきましては過走帯を含めてほぼ全面的に改修を行います。また誘導路、灯火等につきましても、その一部を改修するものでございます。
  51. 新村勝雄

    新村(勝)委員 これは六十一年度の予算に要求中ということのようですが、その予算の総額は幾らであるのか。それから、滑走路の改修は主体の工事でしょうけれども、それに伴うそのほかの建設工事があると思いますので、それらの詳細を伺いたいと思います。
  52. 中川虎三

    中川説明員 お答えいたします。  ただいま申し上げました滑走路、誘導路、灯火等につきましては、約二十億円を六十一年度の概算要求でお願いしているところでございます。また、そのほかの施設につきましては、いわゆるP3C関連施設といたしまして整備格納庫、補給倉庫等の計画で、約七億円を要求しているわけでございます。
  53. 新村勝雄

    新村(勝)委員 改修を終わりますと、この滑走路の強度、どの程度の重量の航空機が発着できるのか、その強度はいかがですか。
  54. 中川虎三

    中川説明員 お答えいたします。  改修が終わりました後につきましては、先ほど申し上げましたように、下総基地の改修工事につきましてはP3Cを対象にしておりますので、P3Cの航空機が運航できるような強度を予定しております。
  55. 新村勝雄

    新村(勝)委員 ですから、この滑走路の構造、それから強度、何トンの重量の航空機にたえられるかというような具体的なものを挙げていただきたい。
  56. 中川虎三

    中川説明員 滑走路の構造でございますけれども、滑走路の構造につきましては、舗装の種類等いろいろございまして、検討しなければいけないわけでございます。けれども、対象航空機の大きさにつきましては、ただいま申し上げましたように、P3Cの航空機荷重五十六トンの強度にたえられるような構造を考えております。
  57. 新村勝雄

    新村(勝)委員 滑走路の強度、重量は五十六トン、これはP3Cの全備重量が五十六トンであるということだろうと思います。そうしますと、関連してお伺いしたいのですけれども、今懸案になっておりますいわゆるNLP、夜間訓練ですね、これを行うと予想される飛行機、ミッドウェーの艦載機、F4ファントムあるいはA6イントルーダーその他数種類あるようですけれども、それらの飛行機はいずれも重さがこの五十六トンの半分くらいですね。二十三トンあるいは二十六トン、三十トンくらいと言われております。  そうしますと、ミッドウェーの艦載機の訓練も十分できる強度になる、こういうことになりますけれども、実はこのNLPとの関連について地元で今強い関心を持っておるわけであります。そういうことで、この改修が当面はP3Cの受け入れのためであると説明されておりますけれども、同時にNLPを実施することもできる施設になるわけですから、そういう点でNLPを受け入れる可能性が一層増したと考えてよろしいかどうか。
  58. 芥川哲士

    ○芥川説明員 お答えいたします。  ただいま他の説明員より説明申しましたとおり、昭和六十一年度に実施する改修というものは、あくまでもP3Cの配備に伴い、老朽化した滑走路等の改修を行うというものでございまして、NLP、いわゆる艦載機の着艦訓練に必要なアレスティングギア、制動装置その他の設置工事は行われないということでございますので、NLPを行うことはできないわけでございます。したかいまして、下総基地でNLPの訓練を行うという可能性が高くなるのではないかという先生の御指摘には、この際当たらないというふうに考えております。
  59. 新村勝雄

    新村(勝)委員 NLPを行う場合には、滑走路の強化のほかにアレスティングギアが必要だと聞いております。しかし、このアレスティングギアというものは鋼索にかぎをつけたもの、それを固定すればすぐできるわけですから、これは数日の準備でできるわけですね。そうなりますと、一定の時間と経費を必要とするのは滑走路であって、それ以外の装置については、やる気になればすぐできるわけです。数日でできると思います。そういった点で、NLPを行う潜在的な可能性が増したということは事実だと思いますけれども、いかがですか。
  60. 芥川哲士

    ○芥川説明員 先ほどの繰り返しになりますけれども、そういう制動装置を設置しない限りはできないということでございますし、それから現在のところ、下総基地におきましてはそのような訓練を行う計画もございません。
  61. 新村勝雄

    新村(勝)委員 今回行う下総基地の改修は、最近行われました八戸基地の改修と、規模においてあるいは質において同じものと考えてよろしいですか。
  62. 中川虎三

    中川説明員 お答えいたします。  一部の施設を除きまして、ほぼ同じでございます。
  63. 新村勝雄

    新村(勝)委員 一部の施設というとどのようなものであるか、内容がわかりませんけれども、P3Cが配置をされるということは、下総基地の性格あるいは基地の機能も当然変わってくるというふうに考えられるわけですけれども、その場合にP3Cの活動を補助するための施設が当然必要になってくると思いますけれども、そのためにはASWOC、対潜作戦司令所というのですか、あるいはソノブイ、魚雷、そういったものが当然必要になってくるわけです。ですから、ASWOCあるいはまた魚雷の格納庫、弾薬庫、こういうものも同時に附属施設としてつくられるのかどうか。
  64. 中川虎三

    中川説明員 お答えいたします。  先ほど申し上げましたように、下総基地の滑走路等の整備におきましては、ASWOC施設の計画はただいま持っておりません。
  65. 新村勝雄

    新村(勝)委員 弾薬庫の現状はどうなっているのか。それから、これを強化、増設する予定はあるかないか。
  66. 中川虎三

    中川説明員 弾薬庫は、現在五棟ございます。
  67. 新村勝雄

    新村(勝)委員 ですから、そのほかに今回の改修に伴って増設の計画はあるのかどうか。
  68. 宝珠山昇

    ○宝珠山説明員 下総基地においては弾薬庫として五棟ございますが、これを現在増強するという計画は持っておりません。
  69. 新村勝雄

    新村(勝)委員 P3Cを新たに下総基地に配備をするという方針のようでありますけれども、新たに配備をされるということについての戦術上あるいは戦略上の理由、あるいはその背景について伺いたいと思います。
  70. 宝珠山昇

    ○宝珠山説明員 お答えいたします。  現在、下総基地には教育航空集団の隷下の一個航空隊を置きまして、P2J六機などをもちましてP2Jの搭乗員の教育などを行っております。P2Jは、六十年度において現在約六十機ほど保有しております。しかし、逐次耐用年数に参りまして減勢途中にあるわけでございますが、六十二年度段階ではP2Jの数は二十数機という状況になりまして、他方P3Cが四十機近いというような状況に変わってまいります。したがいまして、要約的に申し上げますと、今後の固定翼対潜哨戒機の搭乗員の教育というのは、P2JからP3Cに切りかえていかなければならないわけでございます。  そのようなことを踏まえまして、下総基地における固定翼対潜機の教育もP3Cに変えたいということで、同じ機数を目途にいたしまして、先ほど来御説明いたしております滑走路の改修などを予定しているところでございます。
  71. 新村勝雄

    新村(勝)委員 現在の下総基地については、今お話しのようにP2JあるいはB65、YS11、バートル、こういう飛行機が配属されておりまして、あそこの飛行場の基地の目的は、主として訓練ということを伺っております。P3Cは、P3Cの訓練ということもあるでしょうけれども、これは直接対潜作戦に従事をする最新鋭の飛行機ですね。それをここに配備をする。近い将来十機程度になるということも聞いておりますけれども、そうなると、これは単なる教育隊というだけではなくて、対潜水艦作戦の基地になるということは当然考えられるわけです。そういった点で、あそこの飛行場の基地の機能なり任務、性格というものが当然変わってくるのではないか、こういうように我々は見ておるわけでありますけれども、その点はいかがですか。
  72. 宝珠山昇

    ○宝珠山説明員 固定翼対潜機につきましては、八戸あるいは厚木、鹿屋、那覇というものを実任務の基地として考えているところでございます。下総基地につきましては、現在と同様、教育部隊の基地として考えているものでございまして、例えば八戸といったところと同じような作戦基地に変えていくという計画は、現在持っておりません。
  73. 新村勝雄

    新村(勝)委員 今当局では、P3C百機体制を考えておるわけですね。その百機体制の中の一部を下総に配属をさせるということでありますから、しかもP3Cというのは最新鋭の対潜機であるということになれば、それをあそこで遊ばしておくということはないでしょう。あそこを基地にして作戦に出動するということは当然あり得る。ないというのはおかしいのです。そういう意味であそこの基地の機能は変わるのじゃないか、こういうことです。いかがですか。
  74. 宝珠山昇

    ○宝珠山説明員 P3Cは、御指摘のとおり最新鋭機でございまして、今度の中期計画におきましては、完成時九十四機であったかと思いますけれども、およそ百機体制を目途に整備いたしているものでございます。しかし、このP3Cを十分に作戦行動で使い切るためには、その以前に、およそ一年間くらいをかけまして十分な教育が必要なわけでございます。この機能は、いろいろ検討いたしました結果、下総基地が最適であるという判断のもとに、先ほどのような機数を配備したいと考えているわけでございます。  では、ほかのおよそ百機の固定翼対潜機の配備をどのようにするかという点につきましては、詳細は年々決定していくことになりますけれども、現在配備しております八戸から那覇までにかけての基地に配備することで、体制的には十分間に合うというふうに考えております。  では、下総基地を全然作戦基地にしないかと言われますと、今申し上げたのは平時における教育訓練あるいは海上哨戒等の任務を達成するためのものでございまして、有事というようなことになったらどうかという点については、事柄の性格上お答えを差し控えさせていただきたいと思います。
  75. 新村勝雄

    新村(勝)委員 P3Cというのは最新鋭の飛行機で、日本の防衛力の中でいわばとらの子ですよ。大変重要なものです。そういうものを十機近くここへ置くわけです。訓練だけに使って作戦には使わないというのはあり得ないですよ。ですから、下総にあるP3Cも、作戦の任務を帯びてあそこから発進するという事態は必ずある、そう理解せざるを得ないのです。  そうしますと、あそこから作戦に発進することはあり得るというわけですから、あそこの基地の任務が急変するわけではないにしても、作戦基地として機能する潜在的な可能性はますます高まると言わざるを得ないわけですけれども、それはいかがですか。
  76. 宝珠山昇

    ○宝珠山説明員 P3Cを運用いたしますために教育訓練を十分に行わなければ、他の基地におけるP3Cも十分に運用できないわけでございますので、どこかでP3Cを使って教育訓練をする必要があるわけでございまして、下総基地でそれを行うというのが現在の考え方でございます。  じゃ、その不十分な中でもやらせるのかということになりますと、これはそのときの状況によるわけでありまして、繰り返しになりますが、現在P3Cを下総に持っていきますからといって、これを八戸と同じような意味あるいは厚木と同じような意味で作戦基地にするという計画を持っておりません。そういうことでございます。
  77. 新村勝雄

    新村(勝)委員 作戦基地になる可能性が増すということは言えるでしょう。どうですか。潜在的な可能性は増加する、これはもう疑いのないところだと思いますね。
  78. 宝珠山昇

    ○宝珠山説明員 自衛隊の基地が作戦基地になる可能性が高いであろうということでございますと、現在P2Jを配備いたしておりますが、P2Jの場合についても同様に御理解いただきたいと思います。
  79. 新村勝雄

    新村(勝)委員 時間がないので次の問題ですけれども、NLPの問題についてはもう長い間の懸案の事項ですけれども、これについて日本政府としては何らかの対応をしなければならないというふうに言われておりますが、現状はどうなっていますか。
  80. 芥川哲士

    ○芥川説明員 お答えいたします。  NLPの問題につきましては、関東地方及びその周辺地域において円滑にこの訓練が行われるように、そのような施設をぜひ確保したいというのが私どもの念願でございまして、現在のところ、既存の飛行場の中で米側の考えておりますような訓練ができるような適地があるかどうか、それから、新たに飛行場を新設して、そこで所要の訓練を行うことができるかという、そういう適地の調査、さらに、洋上に浮体飛行場を設けるという、そういうことが実行可能であるかということについての資料の収集というのを行ってきたわけでございますが、極めて残念なことではございますが、現在のところ、具体的な解決の見通しを得ておりません。  なお、昨今話題になっております三宅島につきましては、三宅島の位置が厚木飛行場から約百五十キロというところにありまして、極めて近いと我々は判断しておりますし、それから、御承知のとおり三宅は島でございますので、そこには比較的平たんな飛行場を新設できるということでございますので、騒音の影響というものを最小限に低減することができるのじゃなかろうか、あるいは夜間の照明等による訓練の障害がないといったこと等ございまして、私どもとしては、立地条件が極めて適しておる、したがいましてそこにぜひとも飛行場の建設を実現したいと期待しておりまして、ぜひとも関係地方公共団体、それから関係住民の方々の御理解と御協力を得たいというふうに考えております。
  81. 新村勝雄

    新村(勝)委員 まだ最終的な結論になっておりませんけれども、いずれにしても厚木はもう長く使うことはできないわけですね。そうしますと、今まで当局が言っておられるように暫定使用、しかも暫定分散使用の考え方についてはいかがですか。今でもそのお考え、お持ちですか。
  82. 芥川哲士

    ○芥川説明員 お答えいたします。  仮に三宅島あるいはその他の島嶼というところに飛行場が新設できるということになりましても、そこに飛行場を完成するまでには相当の期間を要するというふうに考えておりまして、その間、現在の厚木飛行場における騒音の状況というのを放置できないというふうに我々は認識しております。したがいまして、先生御案内のとおり、関東地方及びその周辺地域にある既存飛行場での暫定的な分散訓練ということについても検討せざるを得ないというふうに考えております。  しかしながら、現在のところでは、下総基地におきましてはこのような分散訓練を行う計画はないということを申し上げておきます。
  83. 新村勝雄

    新村(勝)委員 そうしますと、暫定分散使用の考えはある、しかし下総は使わないというふうに理解してよろしいですか。
  84. 芥川哲士

    ○芥川説明員 先ほど来申し上げておりますとおり、現在のところでは、下総基地においてこのような分散訓練を行う計画はないということを言っておるわけでございます。
  85. 新村勝雄

    新村(勝)委員 そうしますと、今計画をしておる下総基地の改修は、これはNLPとは全く関係ない。したがって、分散暫定使用があったにしても下総は使わない、それから、ましてや下総を恒久的なNLPの訓練場にはしない。この二つ、はっきりしてよろしいですか。はっきりその二点についてのお考えを伺いたい。
  86. 芥川哲士

    ○芥川説明員 先ほど来申し上げておりますとおり、この分散使用訓練と申しますのは、仮に島嶼に新しい飛行場を建設するということが決定され、そしてさらにそれが完成する、そういう事態の話でございまして、現在のところ私どもとしては、まだその恒久的な飛行場をどこにつくるという、そういう実行可能な案を持ち合わせていないわけでございます。そこで、現在の段階で申し上げられますのは、現在のところ、下総基地を恒久的な着艦訓練の飛行場あるいは暫定的な分散使用としての飛行場として用いる計画はないということでございます。
  87. 新村勝雄

    新村(勝)委員 わかりました。それではっきりしましたので、その方針でずっと一貫して貫いていただきたいと思います。強く要請を申し上げて終わります。     —————————————
  88. 安井吉典

    安井委員長 この際、お諮りいたします。  本件につきまして、本日、参考人として国際交流基金協会常務理事七田基弘君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  89. 安井吉典

    安井委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  90. 安井吉典

    安井委員長 斉藤節君。
  91. 斉藤節

    斉藤(節)委員 私、公明党の斉藤節でございます。  まず最初に、国際交流基金関係について御質問申し上げたいと思います。  交流基金の中でも特に日本語学習についてお尋ねしますが、日本語学習熱が海外で非常に高まっているということが聞かれておるわけでございますが、特に役立つ日本語を教えてほしい、そういう要望が強いと言われております。そういう役立つ日本語といっても、特に経済や技術のわかる教師とか教材が欲しいとの希望が非常に多いわけでございます。  これまでの日本語を学ぶ目的というのは、日本文化への関心がほとんどであったのでありますが、最近では、高度な日本語を身につけビジネスに役立てるとか、あるいは日本の最新の科学技術を吸収するために技術、自然科学関係日本語を勉強したい、そういう希望に変わってきているわけでございます。  そこで、これに関連いたしまして質問を申し上げますけれども、まず、日本語普及総合推進調査会というのが国際交流基金の諮問を受けまして、日本語普及国際センター、仮称でありますけれども、この設立を柱としました答申を行っております。ここにもありますけれども、これが答申でございます。六十年十一月に出されておりますけれども、この中で特に、「国際交流基金における日本語普及のための事業及び体制の強化」というところに、「海外における日本語普及の中心的機関として、日本語普及事業の強化拡充と海外ネットワークの構築、整備を図るとともに、日本語普及の実施体制を確立するため、日本語普及国際センター(仮称)を設立するよう提言する。」このように答申がなされておるわけであります。  この答申を受けて、交流基金を利用してどう対応していくのか、日本語普及国際センターの設立に関して、いつごろこれを発足させるのか、どういう形でいくのか、こういうことについて御答弁願いたいと思います。
  92. 七田基弘

    ○七田参考人 ただいま斉藤先生からお話がございましたように、海外におきます日本語普及事業は最近とみに高まりを見せております。これは非公式な調査でございますけれども、五十九年度の学習者数が約五十八万人という数が出ております。そうしまして、また学習の動機あるいは勉強の態様も非常に多様化しておるというのが実情でございます。  こういうような海外におきます日本語学習熱の高まりということにかんがみまして、やはり抜本的な日本語普及施策というものを必要とするのではないかということで、先ほど先生から御指摘ございましたように、各界有識者意見を聞きますために、国際交流基金理事長の諮問機関という形で、日本語普及総合推進調査会を設置いたしまして、そして会長には井深ソニー名誉会長をお願いをいたしまして、十一月二十八日に答申をいただいたわけでございます。特に、先生の御指摘ございましたように、その中で、日本語普及国際センター、これは仮称でございますけれども、それを設立すべしという御提案を受けております。  私どもといたしましては、この日本語普及国際センターに関しましては、極力早期にセンターを設置をしたいというつもりでございます。しかし、予算措置が必要でございますので、財政当局の理解を得るよう努めておりますし、なお、来年度予算におきましては、基本計画等に要する経費外務省を通じて財政当局に要求をしているというのが実情でございます。なお、その結果といたしまして、さらに計画そのものについての実施案というものをつくっていくということになると思います。
  93. 斉藤節

    斉藤(節)委員 その答申の一ページにこのように出ているわけであります。「他の先進諸国の自国語普及活動と比較して極めて不充分である。我が国としてはこの状況に鑑み、新たな認識に立って、日本語普及体制の確立を図ることが国民的課題であると考える。」このように答申の中にあるわけでありますけれども、さらにここを見ていきますと、将来「必要な教師数は六万人に達すると推測される。」このようにあるわけでございます。  そこで、教員養成のスケジュールですね、それについて御質問したいと思います。
  94. 七田基弘

    ○七田参考人 答申には今御指摘のございましたような認識がございます。諸外国といいましても、ここではイギリス、ドイツ、フランス、この三つの対比で調べたわけでございますけれども日本語普及の努力というのは、従来諸外国に比べて弱かったのではないかという御指摘があったわけでございます。私どもといたしましても、これをさらに強めていきたいというように考えておりますが、同時に、諸外国の自国語の普及と国際交流基金あるいは日本の行います自国語の普及というものの中には、やはり物の考え方その他につきましてもいろいろと変わりがあるのではないかということで、この調査会の御審議をいただいたわけでございます。  そしてその中で、そういうような御議論を踏まえまして、今申し上げましたような答申をいただいたわけでございますが、私どもといたしましては、そこに書いてありますように将来六万人というような先生を必要とするであろうという認識に立ちまして、ただ、先ほども申し上げましたように、その学習の活動といいますのは非常に多様化するのではないかと思います。上は大学におきます日本語の教育もございましょうし、あるいは日常に必要な日本語の会話というようなことを必要とするような、非常に多様な形態が出てくるのではないかと思います。  国際交流基金といたしましても、このような問題につきましては基金で努力することは当然でございますけれども、同時に、関係当局との分担、協力関係を構築いたしまして、そういうことによってこれを進めていきたいというように考えております。さしあたりまして、この日本語普及国際センターを中心にいたしまして日本語の教育についての施策を進めていきたいということでございます。
  95. 斉藤節

    斉藤(節)委員 そういうスケジュールだと思うのですが、先ほども最初に申し上げましたように、単なる日常会話的、そういうような日本語だけじゃなくて、いわゆる専門分野にもわたるような、そういう日本語がわかるような日本語教員養成というものを考えていただきたいと思うわけでございます。  そこで私は、日本語教育を現地で行って、そして日本へ留学したような場合には、すぐ専門教育に入ってはどうかと思うのですけれども、これについてはいかがですか。
  96. 七田基弘

    ○七田参考人 先生お話がございましたように、今回の答申の基本的な構想も、私ども実は現地化と言っておるわけでございますけれども、それぞれの国々の自主性を尊重いたしまして、そしてそれぞれの国の実情に合った協力体制をとっていく必要があるのではないかというように考えております。特にこういう日本語教育のようなものにつきましては、押しつけということはやはり避けるべきであるというような御意見調査会の席上でございましたし、私どもといたしましては、それを十分に意を体しながら、今申し上げましたような日本語の現地化ということを中心にしてやっていきたい。  そうなりますと、現地の日本語の先生の研修ということが非常に重要になるものですから、今回のこの国際センターも、その日本語の先生の現職研修といいますか、そういうような性格のものとしてとらえておる次第でございます。
  97. 斉藤節

    斉藤(節)委員 そういうようなことだと思いますけれども、そのためにも、まずある程度の専門語、いわゆるテクニカルターム、こういったようなものも教えるような教育を行うことが必要だと思うわけでございます。それゆえ専門用語のわかる日本語教員が望まれると思うのでありますけれども、その辺はどうお考えですか。
  98. 七田基弘

    ○七田参考人 日本語の普及につきましては、これは実は国の中と外と含めた総合的な戦略が必要ではないかというように考えております。国内につきましては、さきに文部省の方で調査会をおつくりになりまして、その後結論をお出しになっておるようでございます。それで、現在目下検討中のようでございますけれども、だんだんとそういうような体制が整ってくるのではないかと思います。  私ども国際交流基金といたしましては、海外におきます日本語普及ということで進めていくわけでございますが、その際にやはり国内的なバックアップがございませんと、これは必ずしもうまくいかないという認識がございます。そういう意味で、文部省の方で日本語の教師の養成をやっていただきましたら、そういう方たちも使わせていただくということにしたいと考えております。
  99. 斉藤節

    斉藤(節)委員 次に、教員派遣のことにつきましてお尋ねしたいのですが、日本への留学生以外の人々に対しても、日本語習得希望者がもしおりましたら、それに対しても教育することができると思うわけでございますけれども、交流基金をこのような方にも活用すべきだと私は思うわけでありますが、これらについて御答弁を願いたいと思います。
  100. 七田基弘

    ○七田参考人 今お話がございましたように、正規の日本への留学といいますものは国費留学生その他の制度があると思います。私どもといたしましては、さしあたりましては日本語の先生の養成ということが、ある意味では外国に対する影響が一番強いものですから、そういうことに力を入れていきたいと思いますけれども、例えば現在も日本語の成績優秀者の日本への招待ということもやっております。あるいはそれぞれの現地の方でこういうような人を養成したいという場合には、日本だけではなくて、例えばアメリカの方に留学をさせてPDDを取るというようなこともやっておる次第でございます。
  101. 斉藤節

    斉藤(節)委員 外国語大学で日本語学科があるわけですけれども、この日本語学科に日本人も入学して将来日本語の教員になるために勉強しているということでありますが、これについて基金としてはどのようにお考えになっておられるのか、またこれについての計画でもあればお聞きしたいと思います。
  102. 七田基弘

    ○七田参考人 東京外国語大学で日本語の先生の養成をやっていただいているわけでございます。日本語の教育といいますのは、普通の国語教育とちょっと違いまして、外国人に対する日本語の教育というものが中心でございますので、おのずからカリキュラムあるいは教育内容というものが変わってくるのではないかと思っております。したがいまして、今先生からお話ございましたように、外国語大学で日本語の先生の養成の中に日本人も入れてやっていただいているというのは非常にありがたいことではないかと考えております。私どもといたしましても、そういうようなことで出てまいりました先生たちを、これから大いに活用させていただければと考えております。  外国語大学の方の養成計画は、基金の問題でございませんので、御遠慮させていただきます。
  103. 斉藤節

    斉藤(節)委員 次に、外国人向けの日本語教員の養成が体系的に今までなされていなかったのじゃないか、そんなふうに思うわけでありますけれども、これについて基金並びに文部省の方から御意見をお伺いしたいと思います。それぞれよろしくお願いします。
  104. 七田基弘

    ○七田参考人 実は昭和四十二年に、諸外国の日本語の学習者数は三万七千人ほどしかございませんでした。それが五十九年度では五十八万人という非常に急激な増加をしたわけでございます。そういう意味で、日本語の教育といいますものがまだ不十分であったことは私ども認識いたしております。一つは日本語の先生が不足しておるということ、もう一つは教授方法が今のところまだ確立されていなかったのじゃないかということ。しかし、もう既にだんだんと先生方の教育というものが進んでまいりまして、そういうような形の教授方法というものも進展しつつあるのではないかというように、一部楽観しておるわけでございます。  しかし同時に、先ほど申し上げました日本語普及の現地化というようなことを考えますと、それぞれの国によって教育方法も変わりますので、それぞれの国に合った教育方法というものをやはり開発していかなければならないのではないか。これは国際交流基金でも頑張りたいと思いますが、同時に、それぞれの教員養成機関あるいは教育機関でもそういうことをお願いしたいというように考えております。
  105. 田原昭之

    ○田原説明員 お答え申し上げます。  今先生のお話にございました日本語の教員の養成について文部省としてどのように取り組んでいるかということでございますが、先ほど来お話ございますように、国の内外を問わず日本語に対する需要というのは最近非常にふえておりまして、毎年一〇%以上学習者がふえておる、こういう実情でございます。これに伴いまして、日本語の教員の数も大学その他でふえてはおりますけれども、現実問題として必ずしも十分な対応ができていないというのが実態でございます。  ちなみに、現在の日本語教員の養成の実態を申し上げますと、昭和五十九年度で、大学院で日本語の教員を養成しているのが五大学院、大学で教えておりますのが十三大学でございます。それから、大学、大学院以外のいわゆる専修学校等一般の機関で教えておりますのが三十三の学校でございます。都合五十一の機関で、現在約三千六百九十人の日本語の教員になりたいということで勉強されている日本人がおるわけでございます。しかしながら、先ほど申しましたように、この数は内外の日本語教員の要請に対応するためには必ずしも十分ではございません。  したがいまして、文部省では昭和五十八年度に日本語教育施策の推進に関する調査研究会というものを設けまして、日本語教育の推進のための施策を検討していただきました。この研究会の御答申といいますか御報告をいただきまして、まず日本語教員養成のための標準的な教育内容を定めまして、この標準的教育内容、カリキュラムを持った日本語の養成機関というものを今後ますます促進していくということでございます。先ほど先生からもお話がございましたように、東京外国語大学におきましても、本年度から、従来の特設日本語学科を日本語学科に改めまして日本人の学生を入れた、あるいは筑波大学にも本年度から四十名定員の学科を設けたということでございます。今後私どもとしては、内外の需要に対応して、標準的な教育内容のございます大学等を計画的に整備していきたい、このように考えておるわけでございます。
  106. 斉藤節

    斉藤(節)委員 最近、外国といいましても、特にASEANの方で日本語熱が非常に大きくなってきておりますので、基金並びに文部省当局も大いにこれに力を入れていただきたい、それが国際間の親睦といいますか、よりスムーズにいくようになるのではないか、そういうふうに思いますので、よろしくお願いします。  次に、留学生関係について質問を申し上げたいと思います。  我が国が留学生を受け入れても、留学生が我が国に失望したり反感を持って帰国したのでは、せっかくの努力もむだになってしまうと思うわけでございます。やはり日本のよき理解者になってもらわなければならないし、また今後の国際関係を担う大事な人材群であるとも私は思うわけでございまして、留学生は我が国として大切に扱わなければならない、このように考えているわけでございます。これに沿って以下御質問申し上げますので、御答弁願いたいと思います。  まず文部省の方に、奨学金について、現在月額は大学院あるいは学部学生、これ以外、どういうふうになっていますか、その辺ちょっとお尋ねしたいと思います。時間がないので、できるだけ簡単にお願いします。
  107. 雨宮忠

    ○雨宮説明員 お答えいたします。  先生ただいまお尋ねの奨学金のことでございますが、昨年の五月現在で我が国で受け入れております外国人の留学生の数は一万二千四百人余りでございます。そのうちの二千三百人余りが日本政府の奨学金、国費の留学生ということでやっておるわけでございます。  その奨学金につきましては、大学院レベルの留学生に対しましては一月十七万三千円、それから学部レベルの留学生に対しましては十三万円ということになっております。  国費留学生以外の留学生の場合でございますが、一部は中国とかあるいはマレーシアの場合がそれに相当するわけでございますが、向こうの政府負担で来る留学生の場合もございます。約千人近くございます。この場合には、おおむね国費留学生の場合に応ずるような措置を相手国政府が講じておるところでございます。  残るところは、いわゆる私費の留学生ということでございまして、基本的には親の仕送りなり、あるいは日本国内でのアルバイト等で支弁しておるということになっておるわけでございます。
  108. 斉藤節

    斉藤(節)委員 そういうことで、大学院並びに学部学生などの奨学金についてわかったわけでありますけれども我が国の厚生面、いわゆる寮、そういったものが諸外国、特にアメリカなどにおける留学生受け入れに比べて少し貧弱じゃないかな、我々日本人の居住も余りよくないわけでありますから、そういう点でそういうことになるかなと思いますけれども、しかし非常に大事な学生でありますので、もう少し大事に扱うということから、留学生会館みたいなものを大都市周辺にまとめて建てて、もっとサービスをよくしてはどうかなと思うわけでありますが、その辺いかがでございますか。
  109. 雨宮忠

    ○雨宮説明員 留学生に対します宿舎の確保ということにつきましては、今後の留学生受け入れの拡充を図っていく場合に非常に大きな要素の一つである、これは先生御指摘のとおりでございます。  私どもといたしましては、現状は、ごく大ざっぱに申し上げますと、留学生のうちの四分の一程度を留学生宿舎あるいは一般の学生の宿舎なり、いわゆる学生の宿舎と呼ばれるような施設に入れているわけでございます。残る留学生は、民間の下宿、アパート等に入っておるわけでございます。その環境条件とか、あるいは何よりも経済的な負担というようなこともございますし、留学生にとっては留学生宿舎を整備していくということも重要なわけでございます。  私どもといたしましては、国立大学に附属した留学生宿舎の建設につきまして年々整備を図ってきておりますし、今年度も四大学に整備を図ることにいたしております。また、財団法人の日本国際教育協会、駒場に留学生会館を持っておるわけでございますが、新たに世田谷の祖師谷の方に約三百五十人収容程度の留学生会館を計画しておるところでございまして、その準備も進めておるところでございます。  ただいま御指摘の大都市周辺にひとつ大きな会館をどうかということにつきましても、留学生宿舎の確保策ということで幅広く検討してまいりたいと考えております。
  110. 斉藤節

    斉藤(節)委員 雨宮課長御自身、留学生会館、留学生の宿舎などをごらんになられたかどうか、よく見ていただきたいと思います、私は見てまいりましたから。ひとつよろしくお願いしたいと思います。  さて、次は留学生の数でありますけれども、中曽根総理は前に、二十一世紀までに十万人を受け入れたい、そういうようなことを申しておりますし、またほかにも出ているわけでありますが、これについてのスケジュールはどういうふうになっているのか、簡単にお知らせ願いたいと思います。
  111. 雨宮忠

    ○雨宮説明員 先ほど、昨年の五月現在で一万二千四百人余りの留学生ということを申し上げたわけでございますが、計画といたしましては、西暦二〇〇〇年の時点におきましてはこれを十万人程度の規模にまで拡充を図りたいということでございます。  なお、この計画の中間点といたしまして、昭和六十七年、これが我が国の高等教育人口がピークに達する時点でございますが、それの時点におきまして約四万人程度の規模のところにまで拡充を図りたいという、そういう想定のもとに種々の受け入れ態勢の整備を図っていく、こういうことでございます。
  112. 斉藤節

    斉藤(節)委員 もう時間がなくなってきまして大変残念なんですが、最後にお聞きしたいのですが、いろいろこの間国際シンポジウム、討議があったのですね。それによりますと、その中でASEANなどから来た留学生から述べられたことでありますけれども我が国で取得した資格、何か学位、学士号、こういったものを持ち帰った場合に、それぞれ認められているのかどうか。特に医師免許など、これはせっかく日本の大学で七年間もかかってアルバイトで生活しながらようやく歯科医師の免許を取ったと思って本国へ帰ったところが、それが全然通用しなくて、もう一回英国へ留学して、そして取り直した、今現在政府のそういう関係機関に勤めているんだというような討論の中での話があるのですけれども、一体、そういう医師免許だとかあるいは弁護士などの資格を取る者もおるかもしれません、そういった取得した資格あるいは単位、こういったもの、単位などは互換性があるのかないのか、そういったような問題について御答弁を願いたいと思います。
  113. 雨宮忠

    ○雨宮説明員 お尋ねにつきましては、二種類のお尋ねであろうかと思います。  一つは、いわゆる学校教育の部内での話でございまして、学位とかあるいは単位の互換の話でございます。学位の関係につきましては、ある調査によりますと、大体日本の学位の評価というのは年々高まってきておる。七割の留学生が大体欧米並みに正当に評価されているというような調査もございます。また、単位の互換につきましても、年々いわゆる大学間協定というような形を通じましてお互いの単位を一〇〇%認めるという場合もありますし、また一部について認めるという場合もございますが、そのようなケースがふえてきているということは言えようかと思います。  それから二番目に、各種の職業資格の問題でございます。先生が例としてお挙げになりました医師の免許の問題につきましては、これは例えば諸外国で医師免許を有する者が日本に来た場合に、日本の医師免許として認められるかどうかというようなこととも関連するわけでございまして、現在の多くの場合、日本で医師の免許を持ったとしても、それがそのまま諸外国、例えばASEAN諸国等におきましてストレートに向こうの国の医師免許として認められるかということにつきましては、むしろ全体としてはそういうようなことは認められていないという方が多いわけでございます。  各種資格の場合に、そのような一種の相互主義的な考えもあるわけでございまして、私どもの立場からいたしますと、日本で得られたものがそのまま認められるようにということを願っているわけではございますが、そのような基本的な問題もあるように伺っておるわけでございます。
  114. 斉藤節

    斉藤(節)委員 そこで御提案申し上げたいのでありますけれども、このような問題について二国間協定あるいは多国間協定、そういった協定を我が国と結びまして、こちらで取った学位——まあ学位はいいとしましても、そういう職業免許ですね、医師の免許など、そういったものが十分向こうでも生かされるように、そういう協定などをあるいは結ぶ考えがあるのか、その辺ちょっとお尋ねしたいのです。
  115. 雨宮忠

    ○雨宮説明員 学位等の問題につきましては、私どもでできることは、日本の高等教育の状況なり水準なりというのが諸外国に適正に理解されるようにというようなことで、各種の広報なりあるいはいろいろな手段を用いまして、日本の高等教育はこういう制度のもとでこれだけやっているんだということが正しく理解されるような努力を払ってまいりたいと思っております。  各種の職業資格の問題につきましては、これはむしろ関係省庁が異なりますし、また職業資格それぞれにまつわる問題点もあろうかと思います。ということで、私どもの立場でお答え申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思います。
  116. 斉藤節

    斉藤(節)委員 では、これで時間がなくなりましたので、外交官の任期につきまして、それからまたユネスコの問題につきましては午後に御質問を申し上げたいと思います。これで私の午前の質問を終わらせていただきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  117. 安井吉典

  118. 田中慶秋

    田中(慶)委員 私は、民社党の立場から、在外公館のあり方等々の問題について質問させていただきたいと思います。  御案内のように、日本も戦後今日に至って世界の国民総生産の一〇%を担う、こういうことで内外ともに評価をされていると思いますけれども、そういう中で一番活躍をされているのは、やはり在外公館の皆さんではないか、こんなふうに考えるわけでありますけれども、こういう中で、今在外公館の維持運営に関する問題について、それなりに確立された中で行われているかどうか、あるいはまた情報活動というのがスムーズに行われているかどうか、これが果たして完全にいっているかどうかというと、疑問であるわけであります。  こんなことを考えてまいりますと、貿易摩擦の問題を一つとっても、やはりこの辺から情報を一日も早く収集をして、それが日本の経済やあるいは諸施策に反映しなければいけないであろう、こんなふうに思っているわけですけれども、現在、最低でも七人程度の人員は必要であるということが言われているわけですけれども我が国在外公館のうち、これを満たしている公館、あるいは満たされていない公館、これを明確に述べていただきたいと思います。
  119. 北村汎

    ○北村(汎)政府委員 ただいま委員の方から、私ども外務省の外交活動のいわば第一線にあります在外公館重要性について大変御理解ある御見解をいただきまして、感謝を申し上げます。  御質問の七名以下の公館は、私ども在外公館の数は六十年度現在で百六十九ございますが、その中の五十六の公館、パーセンテージにいたしまして全体の三三%でございますが、これが館長を含めて七名以下の公館でございます。
  120. 田中慶秋

    田中(慶)委員 約三三%ということは、これらの国との情報交換ということを考えてまいりますと、おくれや、あるいはまたこれらに対して諸活動がスムーズにいかないのではないかという懸念が大変あるのですけれども、その辺はいかがでしょう。
  121. 北村汎

    ○北村(汎)政府委員 御指摘のように、定員の数が少ない場合には、どうしても館員の分担をいたします仕事が兼務をせざるを得ないということになりがちでございます。そういうことで、私どもはできるだけ小規模な公館を少なくする努力をいたしました。また、関係方面の御理解、さらに先生方の御支持を得まして、この数がここのところ減ってまいりました。先ほど三三%と申し上げましたけれども、今から六年ぐらい前は六〇%近い、五八%ぐらいあったのでございます。それがだんだん減ってまいりました。  そういうことでございますが、まだやはりそういう公館がございますので、これは主として総領事館が多いのでございますけれども、そこで、先ほど申し上げましたように、できるだけ事務を兼轄させる、そして本当に何か事件が起きたときとかあるいはその館員に一時的な支障ができた場合には、応援要員あるいは交代要員というものを送りまして、事務に支障のないようにいたしておるわけでございます。
  122. 田中慶秋

    田中(慶)委員 この公館の人たちでも、外務省に所属をされて民間の人たちもここに勤務されているということも承っておりますけれども、その辺はどうなんでしょう。
  123. 北村汎

    ○北村(汎)政府委員 これは私ども在外公館の正式の職員、定員の中に入っている者ではありませんけれども、私ども、専門調査員という制度がございまして、学者の方とかあるいは銀行の方に、その地域のあるいはその国の専門的な事項調査していただくとか、あるいは派遣員という制度がございまして、便宜供与の面とかそういう点で我々の在外公館の仕事を手伝っていただいておるということがございます。
  124. 田中慶秋

    田中(慶)委員 この在外公館の定数との関連で、民間の今それぞれ御説明をいただいたような人たちが補てん的な仕事をされている、こういうふうに解釈してよろしいですか。
  125. 北村汎

    ○北村(汎)政府委員 そういうことでございます。
  126. 田中慶秋

    田中(慶)委員 そうしますと、現在三三%程度が満たされていない、こういうところはそれぞれ調査員とか専門員という形の中であるいは補てんしてもいいのではないかと思いますけれども、それらの考えはいかがでしょう。
  127. 北村汎

    ○北村(汎)政府委員 ちょっと質問の最後のところが聞きにくうございましたが、その補てんを
  128. 田中慶秋

    田中(慶)委員 要するに、外務省に所属じゃなく、民間から補てんをされて定員を十分満たすような活動はされてもいいのではないかということを申し上げているわけですけれども、その辺はどうですか。
  129. 北村汎

    ○北村(汎)政府委員 定員の問題は、外務省といたしまして大変重要なことでございまして、私どもは早く五千人体制を達成したい、こういうふうに考えておるわけでございますけれども、何分とも今の状況というのは厳しゅうございますので、なかなか定員というのは外務省が望むほどはふえないというのが現状でございます。しかし、先ほど申し上げました専門調査員とかあるいは派遣員とかという方々の御協力を得まして、我々として足らない側面を補てんしていただいておるということでございます。
  130. 田中慶秋

    田中(慶)委員 なぜこういうことを申し上げるかというと、私もいろいろなところを回ってまいりますと、そこに日本と諸外国との調査というか、情報のずれがあるやに感じてまいりました。例えばアメリカだけでも、ワシントンといいますか、あそこを中心としてその辺は大分満たされておりますけれども、そうではないその出先機関というところは、例えばアトランタへ行っても、そこは十分満たしていないような気がいたします。あの巨大なところで、一人で何州かを受け持っている。そうしますと、まさしくそこで情報の交換が完全にできているかどうかというと、疑問であるわけであります。  そんなことを考えたときに、私は、少なくても定数とか、日本が国際的に果たす役割、責任の中でそういうことを含めて必要ではないかということを痛切に感じてまいりましたのでそれらの問題を申し上げているわけで、その辺は積極的に取り組んでいただきたいということを要望しておきたいと思います。  そして、関連するわけでありますけれども、御案内のように、それぞれ在外公館の人たちが一カ所に対する勤務の任期といいますか、こういう問題がばらばらなような気がいたします。二年、一年あるいは三年ぐらい、こんな形で、確かに環境の問題とかいろいろな問題があろうかと思いますけれども、しかし今日の外交を考えてまいりますと、最低でも三年とかあるいは主要国については四年ぐらい、こういう形でお互いに国と国とのずれといいますか、解釈の相違とかずれとか、情報の交換をより精度を高めるためにもそういうことが必要ではないかと思うのですけれども、この辺についてはどのようになっているか、お伺いしたいと思います。
  131. 北村汎

    ○北村(汎)政府委員 私どもの在外職員のローテーションといいますか、任期の問題でございますが、先生御指摘のように、一つの地域、国に赴任をいたしました場合、知識を集積し、そしてまた人脈をつくっていく、これが情報収集にとっても欠くべからざることでございますが、そのためにはやはり相当長くその任地にとどまることが必要だと思います。他方、これも委員に御指摘いただきましたけれども、任地の事情によっては非常に瘴癘度といいますか、非常に不健康地なところがございますので、そういうところに非常に長くいることも問題だろうかと思います。そういう人事政策上の問題がございますけれども、できるだけ長く置きたいと思っております。  現在、平均をいたしますと二年七カ月が平均でございます。その中で大使だけを別にとりますと二年十一カ月、ほとんど三年近いローテーション、任期を得ております。これは諸外国、主要国と比較をいたしましても、これは国によってもまたその職種によっても違いますけれども、ほぼ二年から三年が平均のところでございます。四年とどまる人もおりますけれども、大体の平均としては、西独、フランス、イギリスアメリカについてもそういうところになっておろうかと思います。
  132. 田中慶秋

    田中(慶)委員 さらに私は、特に先進国の場合において、今日のように例えば日米の留易摩擦あるいはEC等の問題を考えたときに、できるだけ長い期間置いて、それぞれの人脈や情報の収集が必要であろう、こんなふうに考えているわけであります。特に転勤という場合において、先般も一つの公使というのですか出先機関で、六人が一人だけ残って五人が全部かわる、こういうローテーションというのは決していいことではないと思います。しかし、現実にそういうところもあります。そういう点では、人事管理やそれぞれローテーションというものは、いま少しきめの細かい形でやられる必要があるのだろうと思いますが、その辺はどうなんでしょう。
  133. 北村汎

    ○北村(汎)政府委員 私どもも、人事政策の面からできるだけローテーションが偏しないように努力をいたしておるわけでございますが、場合によっていろいろな事情がございまして、たまたま館員の多くがある一定期間のうちにかわるというようなことが過去においてございましたけれども、今後はそういうことが起こらないように努力一をしてまいりたいと思っております。
  134. 田中慶秋

    田中(慶)委員 これから経済状態やあるいはまた国際的に変化が激しい時代に入ってくると思います。例えば、今度の九月から今日に至るまでのドルの問題や円の問題を考えても、わずか一カ月、二カ月という時期に大きく変わってきておるわけですから、そんなことを考えたときに、より外交の皆さん方の、海外で勤務されている人たちの情報というものを、それいかんによって大きな政策の失敗ということもあり得るわけですから、そういうことのないようにぜひ努めていただきたい、こんなふうに思います。  そこで、海外の在外公館の人たちが勤められています公邸といいますか、こういうところの建物あるいは土地等については、我が国国有財産になっているかどうか、あるいはそれが我が国の建物としての比率はどのぐらいになっているのか、お伺いをしたいと思います。
  135. 北村汎

    ○北村(汎)政府委員 ただいま十一月末現在で百六十九の、一つは、藩陽はまだ実際の公館をつくっておりませんので百六十八の在外公館がございまして、それぞれ事務所と公館長の公邸というのがございますが、現在その事務所のうち四十七件、これは二八%に当たります、それから公邸は百四件、これは六二%に当たります、これが国有化されております。     〔委員長退席、新村(勝)委員長代理着席〕
  136. 田中慶秋

    田中(慶)委員 勤務環境という面からすれば、できるだけ国有化されておった方がいいと思うのですけれども、今後これらについてどう考えられておるのかをお聞かせいただきたいと思います。
  137. 北村汎

    ○北村(汎)政府委員 委員御指摘のように、私どもの大使の公邸とか事務所というものは、機密保全という観点からもあるいはまた事務能率を上げるという観点からも、できるだけ国有化が望ましいことは申すまでもございません。私どももそういう国有化の方向で努力をいたしておりまして、特に大使の公邸の場合は、場所が少し郊外になりますので国有化しやすい条件がございます。事務所の場合は割合目抜き通りにありまして、これはやはり賃貸のオフィスといいますか事務所なもので、国有化の率は、そういう意味で公邸に比べると事務所の方が下がっておるわけでございますけれども、方向といたしましては、外貨事情あるいは財政事情はございますけれども、できるだけ公邸及び事務所の国有化を進めていくというのが私どもの方針でございます。
  138. 田中慶秋

    田中(慶)委員 事務所というのは、機密保持とかいろいろなこともあろうと思いますので、できるだけ国有化をより一層進めていただいた方がいいのではないかと思います。特に安全確保という面からしますと、共同ビルの中に入っているところもあるようでありますし、そんなことを考えてまいりますと、警備の問題というものもそこには大きな問題が出てこようかと思います。特に最近の国際的な治安の問題を考えたときに、この警備という問題も大きく取り上げて、より安全確保のために行わなければいけないのであろうと思いますが、この辺についてどのように認識され、どのように考えられているのか、お伺いをいたしたいと思います。
  139. 北村汎

    ○北村(汎)政府委員 御指摘のように、最近いろいろ事件が起きることが多うございまして、警備の点は非常に重要な点でございます。私どもも警備を重要視いたしまして、その辺の予算もふやしていただいております。警備の責任者はできるだけ本省から行っておる者がなりまして、そしてそのもとで、例えば現地で現地人を採用いたしまして夜警とか門番に当たらせておる例とか、あるいは現地の警備会社と契約をいたしましてガードマンの派遣を受けておるという例もございますけれども、しかし、あくまでも警備を非常に必要とするところは東京から警備を専門とする者を送っておりまして、全公館のうち約四割の公館には東京から警備員を派遣しております。
  140. 田中慶秋

    田中(慶)委員 事務所等について、今後とも安全確保ということで、より配備強化をしていただきたいということを要請しておきたいと思います。  また、今それぞれ問題になっているのは、海外で勤務されている人たちが、転勤その他になってまいりますと、費用その他が大分自分で持ち出してあるということを私ども聞いているわけですけれども、こういう点で、例えば自家用車の問題やいろいろなことを含めて考えてまいりますと、転勤のために多くの借金をしなければいけないということ、そして借金返しが終わるころにまた転勤になる、こういう形で、私の友人も何人がおりますのでそういう話をよく聞くのですけれども、やはりそういうことであってはいけないのではないかと思うのですが、これらについてどのようにお考えになっているか、お伺いしたいと思います。
  141. 北村汎

    ○北村(汎)政府委員 職員が転勤をいたします場合に移転料というものを出すわけでございますが、いろいろ諸物価の高騰等がございまして不十分な面がございましたので、昨年の旅費法の改正によりまして二五%これが引き上げられました。ですから、大分改善されたということでございますけれども、まだいろいろ問題がございますので、私どもは依然としてできるだけこの面での負担を少なくしていくように努力をいたしたいと考えております。
  142. 田中慶秋

    田中(慶)委員 時間が参りました。そこで、最後に一つだけ、これは要請しておきます。  例えば、ドル高から円高になってまいりまして、海外で働く人たちに、そういう変動によって多くが個人負担にならないように、それぞれ検討しておくことが必要ではないか。決められているものですから、今円高になっておりますけれども、時によってはドル高の場合でも、そういうことを含めていろいろな形で海外で勤務されている人たちに支障のないように、絶えず配慮する必要があろうと思います。何かその辺の配慮が足りないように聞いておりますので、ぜひその辺も今後注意していただきたい、こういうことを要請して、私の質問を終わらせていただきます。
  143. 新村勝雄

    新村(勝)委員長代理 次に、中川利三郎君。
  144. 中川利三郎

    中川(利)委員 横浜市における米軍の上瀬谷通信所の艦隊作戦統制センター、つまりフリート・オペレーショナル・コントロール・センター、この建設問題でお聞きするのでありますが、アメリカ軍側から、思いやり予算で建設してほしい、こういう要請が来ておるようでございます。  そこでお聞きするのでありますが、どういうルートで、どういう要請がいつごろあったのか、御説明いただきたいと思います。
  145. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 本件につきましては、施設庁と米軍との日常的な接触の中で、非公式に米軍側から話があったというふうに聞いております。
  146. 中川利三郎

    中川(利)委員 非公式に米軍側から話があった、こういうことですね。  その際、米軍から、センター建設の全容といいますか、そういう問題の御説明はあったでしょうか。
  147. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 非公式の話し合いでございますので、この場で米軍側からどういう要請があったかということをいまだお答えする段階にないわけでございます。先ほど申しましたように、日常的な接触の中で話があったということでございますが、アメリカ側からは、ある程度説明はあったものと了承しております。
  148. 中川利三郎

    中川(利)委員 ある程度説明で、それが非公式だからここでお話しすることは適当じゃない、こういうことでありますが、この問題は、今大変重大な問題になっているわけであります。  次にお聞きしたいのは、計画されたこの艦隊作戦統制センターですね、これはこの前の国会の答弁でも、第七艦隊の通信は無論のことでありますが、太平洋艦隊に対しましても指揮コントロールする、こう思っておるわけでありますが、この点についてアメリカ側は何と言っているか、お答えいただきたいと思います。
  149. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 その点につきましては、既に国会におきまして栗山当時の北米局長からお答えしておりますように、太平洋艦隊にも関連するというふうに了解しております。
  150. 中川利三郎

    中川(利)委員 第七艦隊だけでなく太平洋艦隊を含めた指揮コントロールをする、こういうことが今明らかになったわけであります。  次いでお聞きするのは、アメリカ軍のこの計画によりますと、危機状況下における陸対艦通信の確保が目的だということが書かれているわけであります。いわゆる危機状況下における陸対艦の通信の確保、この危機状況というのは、今日アメリカが使う用語としては核戦争のことを指すと思いますけれども、米軍側はこの点についてどのようにおっしゃっているでしょうか。
  151. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 本件施設につきましては、核戦争に関係するということは一切承知しておりません。  本件施設の基本的な性格は、本件の施設が老朽化いたしましたので、従来の機能をさらに維持するために新たに建設を行うというものであって、新たなファンクションを付与するものではないというふうに了解をしております。
  152. 中川利三郎

    中川(利)委員 従来の機能を強化するという御返事でありますが、計画そのものは、危機状況下における陸対艦通信の確保ということがはっきり書かれているわけであります。そういう点で私は、今の御答弁では甚だ国民のそうした疑問に答えることにはならないと思っているわけでありまして、これにお答えいただけなかった、こういうことだと思うのです。一番大事なことが隠されているように思うわけであります。  次にお聞きをしたいのは、この計画によってこのセンターの中に弾薬庫がつくられるということがないのかどうか。計画ではパイロテクニックマガジーンという言葉が載っておるわけであります。これは弾薬庫と訳せるわけでありますので、アメリカ側はこの点についてどのようにおっしゃっているでしょうか。
  153. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 我々、弾薬庫というふうには了解しておりませんで、これは、機密書類を焼くための高度の熱が必要である、そういうような施設というふうに了解しております。  それから、先ほど私、強化すると申し上げたのじゃございませんで、老朽化しましたので、従来の機能を維持していくために新しくと申し上げたわけでございます。
  154. 中川利三郎

    中川(利)委員 高度の熱で処理するというのは、当然そういう問題があると考えられるわけでありますね。  それでは、今言ったようなさまざまの任務を持ったこの艦隊作戦統制センターですね。このセンターの計画に対してアメリカ側は、日本のいわゆる思いやり予算で建設しようということらしいのでございますけれども日本政府はこれを受け入れようというのでありましょうか。
  155. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 この施設は、上瀬谷という既に米軍が管理しております施設、区域の中の問題でございますので、三条によります米軍の管理権に従っての改造も可能でございますし、また日本政府がこの施設を建設することも理論的には可能である、そういう意味におきまして、思いやり予算の対象にはなり得るということが一般論としては言い得るわけでございますけれども、本件のこの特定の案件につきましては、本年六月ごろにアメリカから非公式な話がありましたときに、防衛施設庁の方から、この件のほかに米軍の住宅建設等があるのではないかという、やや消極的な考え方を述べたというふうに聞いております。  いずれにしましても、本件につきましては、米軍から正式な要請は今までないわけでありますので、ありました段階でこの事案について慎重にかつ自主的に判断していきたい、そう思っております。
  156. 中川利三郎

    中川(利)委員 理論的には可能だ、そういう大変微妙な言い回しでありますけれども、しかもこれを思いやり予算で受け入れるということは、せんだって我が党の参議院の山中郁子さん、共産党神奈川県委員会、この皆さん方の問い合わせに対しまして、公式に岡本行夫安保課長がこう話っているのです。「米国の予算もひっ迫しており、日本側に負担させるべきだという理由で(議会で)予算が落ちた。米側から非公式にそう説明があり、日本政府の”思いやり予算”で建設してほしいとの要請がきている」、こういうことをはっきりお答えになっているのですね。これで考えてみますならば、当然思いやり予算でやるんだ、こういう腹づもりがあると思うのでありますが、この点はいかがですか。
  157. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 先般岡本安全保障課長お答えいたしましたのも、私がただいま述べましたと同じことでございまして、本年の六月ごろに非公式に防衛施設庁の方に米軍から話がありましたということでございまして、米軍から正式な要請があったということは述べていないわけでございます。したがいまして、先ほど私、申し述べましたように、本件について日本政府としてどういう対応をするかということは、現段階では全く日本政府の態度は申し述べる段階にないわけでございます。
  158. 中川利三郎

    中川(利)委員 非公式に詰めているわけですね。あとは一定の段取りが煮詰まって、あと公式な要請が来ればいいばかりになっているということだと思うのですね。公式な要請が来た場合に、日本政府の腹づもりとしてはこれを受け入れるということでありますか、それともそうじゃないということでありますか、重ねてこの点をはっきりしていただきたいと思います。
  159. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 累次政府からこのような案件につきまして述べておりますように、日本政府といたしましては、特定のこの種の案件に対しましては、その案件が持っている安全保障条約目的の遂行上どうであるかということ、それから日本財政負担がどうであるかということ、それからこの特定の案件が日本にもたらす経済的社会的影響等々を勘案いたしまして自主的に判断するということでございまして、本件につきましても、正式な要請があった段階でそのような考慮に基づきまして自主的に判断するということでございます。     〔新村(勝)委員長代理退席、委員長着席〕
  160. 中川利三郎

    中川(利)委員 私が聞きたいのは、自主的に判断する中身ですよ。もう決まっているでしょう。それを全然、奥歯に物の挟まったような格好で、おっしゃらない。私は非常に不満でありますが、時間の関係もありますから、次に進みます。  そこで、思いやり予算というならば、これまで防衛施設庁の予算説明文書、私のところに、ここにありますが、これまでの文書によりますと、思いやり予算でやられているものは、私の手元に五十六年度の防衛庁の概算要求、その中で思いやり予算の項、日本側負担施設経費というものが書いてあった。いわば三種類あるわけでありますが、施設の整備といたしまして生活関連施設、これは隊舎だとか住宅だとかその他となっていますが、それから環境関連施設、これはごみ処理施設だとか汚水排水施設だとか、それから支援施設、これはシェルターなども支援施設になっているわけでありますけれども、そういうふうに限られていますね、今まで。それ以外のことがありましたか。
  161. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 ただいま私、すべての資料を持っているわけではございませんけれども、例えば横田基地におきまして指揮棟はいわゆる思いやり予算で提供されていると記憶しております。  御指摘のように、一般的にはいわゆる生活関連と申しますか、住宅等が思いやり予算で多いわけでございますけれども、必ずしもそれだけに限定されていないというふうに了解しております。
  162. 中川利三郎

    中川(利)委員 今まで防衛庁のあれを調べてみましても、生活関連施設と環境関連施設、支援施設以外にないのです。しかも今回の艦隊作戦統制センターは、まさに艦隊内の作戦行動を指揮コントロールするということ、まさしく作戦施設なわけですね。このことは、この前の決算委員会会議録の中にも、ここにありますけれども、あなた方がお答えになっていること自体、第七艦隊偵察部隊の司令部だということもお認めになっていらっしゃって、その仕事の内容としてはP3Cの運用をコントロールする司令部だ、第七艦隊全体との通信統制機能を持っているということをここにお答えになっているのです。  今のお答えによりますと、そのほかに今度太平洋艦隊といいますか、全体をひっくるめたコントロールをするわけですね。これが思いやり予算になりますと、いわば従来の枠組みを大きく踏み越えることになるわけですね。私は、米軍の作戦施設の日本側負担は地位協定に明らかに反すると思いますが、外務省見解はいかがですか。
  163. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 いわゆる思いやり予算というものの性格は、先ほどちょっと述べたことでございますけれども、米軍が地位協定三条に基づきましてみずからの管理権の範囲内で改築等を行い得るということがございますけれども、それにオーバーラップいたしまして、地位協定二十四条二項に基づきまして、さらに日本政府も提供し得るということがあるわけでございます。  そのような場合について、これがいわゆる思いやりということでございますけれども、確かに委員御指摘のように、思いやり予算で行っておりますのは従来から生活関連が多いわけでございますけれども、それだけではないということでございまして、理論的には、先ほど申し上げましたように、思いやり予算においていろいろな施設の提供が可能であると考えております。  しかしながら、それは先ほどから繰り返し申し述べておりますとおり、この上瀬谷の特定の案件について政府がこれを前向きに進めるということを意味しておりません。先ほど冒頭に述べましたように、本年六月に非公式の照会がございましたとき、施設庁の方からは、ほかに優先度の高いものがあるのではないかという回答をしておるわけでございます。
  164. 中川利三郎

    中川(利)委員 今までないことをやるわけですね。明らかに、今までの思いやり予算というものは、国民に合意された枠組みがあるわけですね。それを今度の上瀬谷のフリート・オペレーショナル・コントロール・センター、これに建設費を出すなんということになりますと、まさに大きく一歩踏み出したものだ、これは明らかに地位協定に違反するんじゃありませんかということを聞いたのですから、これに対してお答えいただきたいと思うのです。  そこで、いずれにいたしましても、この艦隊作戦統制センターについては、大事なことが何一つ解明されていないのですね。国民はわからないのです。そういう説明もなしに、いよいよになって日本は思いやり負担することになりましたというようなことに格好をつけられたとするならば、二重にも三重にも大変な問題であると私は思うわけでありますので、このことも含めましてお答えいだだきたいと思います。
  165. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 たびたびの御質問に恐縮でございますけれども、累次申し述べておりますとおり、本件につきましては、単に非公式の話があったということでございまして、これに対して日本政府が第一に正式に検討する段階にないということ、さらに前向きの態度を示しておったわけではないということ。いずれにしましても、委員御指摘のような日本政府が既に本件について内々アメリカ側にいいでしょうということを言ったというようなことはございません。そのようなことでございますので、将来もしアメリカ側から正式な話があれば、先ほど申しましたように、種々の財政上等々の見地から慎重に自主的に判断して決めたい、こういうことでございます。
  166. 中川利三郎

    中川(利)委員 理論的には可能だとか理論的にはこうだとか、非常に微妙な苦しい答弁に終始したようでありますけれども、この問題は非常に重要な問題だと思いますので、さらに今後この場であるいはそれ以外でも追及し、また皆さんから正確な報告を聞くことにしたいと思います。  きょうはこれで終わらせていただきます。
  167. 安井吉典

    安井委員長 糸山英太郎君。
  168. 糸山英太郎

    ○糸山委員 政務次官、昼食を抜きに御苦労さまでございます。最初に政務次官に伺いたいと思います。  来年の東京サミットにおける一番のビジョンといいましょうか、目的といいましょうか、その点は今外務省はどういうふうにお考えでございますか。
  169. 森山眞弓

    ○森山政府委員 先進国の経済は、全体として八五年は昨年よりも成長が鈍化する見通してございます。その中で依然、財政赤字、失業問題、通貨の問題、保護主義の台頭など持続的な経済成長達成のための根本的な取り組みを要する問題を擁しております。開発途上国の経済も、回復の緒にあるとはいいますものの、累積債務問題や一次産品問題など真剣な検討を必要とする状態でございます。  このような背景の中で開催されます東京サミットは、これまで築き上げてきました首脳間の信頼関係を通じまして、相互に密接に関連する目下の世界経済の課題につきまして、中長期的、総合的観点から実りのある意見交換を実現させたいと考えて、鋭意準備に取りかかるところでございます。  しかし、サミットの討議の事項につきましては、これからまだ半年近い先の話でございますし、流動する国際情勢、国際社会のさまざまな条件を勘案いたしまして詰めていくということになっておりまして、今の時点では確たることは何も決められていないのが実情でございます。
  170. 糸山英太郎

    ○糸山委員 時間がございませんから、次に参ります。  日米関係の問題で、貿易のアンバランスという、今度のサミットにおいても大変重要だと思います。日米皮革交渉の決裂、先ごろそういう問題も起きましたが、来年もアメリカに対する経済のかじ取りという問題をどう展開していくのか、これが最重要点だと思いますので、外務省の国広さんはきょうお見えになっていますか。——来ていない。経済局長がいなければ、どなたか御認識をお伺いします。
  171. 池田廸彦

    ○池田(廸)政府委員 お答え申し上げます。  日米貿易のアンバランス問題、これに取り組むに当たっての重要な視点は、次の二つに要約できるのではないかと思っております。  第一は、貿易問題ではありますけれども、貿易の側面だけに着目していたのではこの問題の解決は得られない。それぞれの国のマクロの経済情勢、金利の問題でございますとか輸出者の努力の問題であるとか、こういうふうに広い側面からとらえなければいけない。これが第一の視点でございます。  それから第二の視点は、貿易でございますから輸出する者と輸入する者、それぞれなすべきことがある。したがって、この問題を解決していくためには、日米で申し上げれば日本アメリカと双方の努力が要る、こういうふうに考えております。  したがいまして、例えば米国におきましては、財政赤字の縮小、高金利の是正、それから輸出機会をもっと活用してもらう、こういった施策が重要でありますし、我が国のサイドといたしましては、アクションプログラムの完全迅速な実施、それから内需拡大等これらの施策を総合的に着実に実施していく、これによって相乗効果が発揮される、これを期待しているわけでございます。今後とも、米国との関係につきましては、こういう認識を踏まえまして対処してまいりたい、かように存じております。
  172. 糸山英太郎

    ○糸山委員 では、対ソ関係に入りましょう。  ゴルバチョフ政権発足後、ソ連の外交はより多角的になってきたと私も見受けます。しかし、来年の一月中旬ですか、八年ぶりに予定されている日ソ外相定期協議に臨む我が国の基本姿勢あるいは抱負についてどんなお考えをお持ちでございますか。例えば文化交流の点などでも結構でございます。
  173. 西山健彦

    ○西山政府委員 お答え申し上げます。  米ソ首脳会談を契機に、対話の強化という意味におきましては、東西関係がよい方向に向かうことが期待されております。ただ、我が国の場合には、御承知のとおり、中長期に見た場合に、最大の懸案でありますところの北方領土問題、これを解決して平和条約を締結するということが不可欠であるわけでございます。しかし、米ソ首脳会談の際にもうかがわれましたように、中核でありますところの軍備管理の問題については、やはり米ソ間の見解が食い違ったままであるということからも明らかなように、現在ソ連はまだ大きな外交的イニシアチブを発揮し得るだけの情勢にないのではないかというふうに考えられますので、私どもが考えておりますような平和条約を締結するという方向に一気に進むということは、現状ではなかなか難しいのではないかと思います。  そこで、さしあたり現在、日ソ関係におきましては、まず明年一月のシェワルナゼ外相の訪日をできる限り成功裏に実施いたしまして、次いで外務大臣が訪ソをするということによりまして、日ソ間の外相定期協議というものを文字どおり定期的なものとして定着させ、軌道に乗せるということが一番大きな課題であるというふうに考えております。そして、そのような過程におきまして、領土問題を含む平和条約交渉の再開を実現するように、ソ連側と鋭意接触するという所存でおります。  なお、文化交流の面につきましては、御指摘のとおり非常に重要でございます。現在、ソ連と日本とのこの面のバランスシートを見ますと、ソ連の側は非常に自由に日本にいろいろな文化面での働きかけができるのに対して、我が方は非常に限られている、何とかこのインバランスを正したいということで、御承知のとおり、目下文化協定についての交渉も進めておるわけでございますが、そういうわけで、両国間の相互理解を図るためにできるだけの努力を今後とも続けてまいりたいと考えております。
  174. 糸山英太郎

    ○糸山委員 時間の関係上、次に参ります。対中国問題に触れたいと思います。  さきに訪中した櫻内前外相が、北京で呉学謙中国外相と会談した後の記者会見で、靖国神社へのA級戦犯の合祀に疑問があるという、たしかそういう発言がありましたが、櫻内・県会談の内容はどうであったのか。もしかしたらサンフランシスコ平和条約の第十一条とのかかわり合いではないかと推察していますが、いかがでしょうか。
  175. 福田博

    ○福田説明員 お答えいたします。  櫻内元外務大臣は、国貿協会の会長といたしまして、十二月一日から四日まで訪中されて、種々の会談を行われたようでございますが、最後の呉学謙外交部長との会見では、櫻内会長から、日中関係については、胡耀邦総書記が十月に日中友好二十一世紀委員会のメンバーに対して示された四点意見、つまり、日中友好関係を長期的に安定して発展させていくためにはどういうことを考えていけばいいかということを四点に要約したものでございますが、そのことについてまさにそういう考えでやっていきたいという中曽根総理大臣の考えを伝達されたということでございます。これに対しまして呉学謙外交部長からは、総理のメッセージに謝意を表明するとともに、日中関係については両国政府がともに努力し、相手側の国民の気持ちを傷つけるような行動を避け、両国の友好協力関係を発展させていきたいという発言があったと承知しております。  次に、一連の会談が終わりました後、櫻内会長は日本の記者団と記者会見ないし記者懇談を行われたようでございますが、その際に、先生が先ほど申されましたサンフランシスコ平和条約十一条関係のことについて発言されたということを、これは新聞報道を通じて承知しております。  私どもといたしましては、サンフランシスコ平和条約十一条で我が国が極東国際軍事裁判所の裁判を受諾するということを述べておりますので、これは御承知のとおりでございますが、他方、靖国神社がだれを合祀するかというのは、宗教法人たる靖国神社が決める問題であり、政府としてこれを云々する立場にはないと考えております。
  176. 糸山英太郎

    ○糸山委員 外務大臣もお見えになったようでございますが、その前に三宅さんに一つ御質問をします。聞いていただくだけでいいです、答えは決まっていますから。  たしかことしの夏ですか、私はセイシェルのルネ大統領と単独会見をしました。大統領は、両国間に誤解があったとした上で、捕鯨問題では一貫して反捕鯨の主張の中にも、商業捕鯨の即時全面禁止を三年間猶予することを取りまとめたほか、さらに二年間の延長を考えるなど我が国捕鯨に理解を示され、また我が国に対し経済協力を強く要望されました。  初めての南アジア七カ国地域協力連合というような情勢も踏まえて、我が国にとって、対先進国外交と同様に、こうした第三世界外交がますます重要であると痛感するわけでございます。経済協力だけではなくて、特にノーハウあるいは技術指導ども、こういう弱い国、小さな国にも今後ますます力を入れていただきたいということで、三宅局長にお約束をお願いしたいと思います。
  177. 三宅和助

    ○三宅政府委員 お答えします。  アフリカに対しましては、いろいろな形で経済協力もふやしておりますし、人的交流の面でも最近非常に活発になっております。確かに民間投資の問題につきましては非常に多くの期待もございます。したがいまして、外務省といたしましても最大限の努力をいたしまして、アフリカ外交、特に経済協力、技術協力、民間の交流、さらには各種の人的交流のために今後方を尽くしてまいりたいと考えております。
  178. 糸山英太郎

    ○糸山委員 外務大臣、二つだけお時間を下さい。  五月のボン・サミットには、私も外務大臣に同行しましたが、フランスのミッテラン大統領が、当時森林枯渇、環境破壊防止に関して発言されていたことを覚えております。この問題について、ミッテラン大統領みずからの提唱による首脳レベルの国際会議が、来年早々にもパリで開かれるとの情報を私はキャッチしておりますが、我が国も積極的に参加し、協力すべきだと考えております。大臣の御所見をお聞かせください。
  179. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 今お話しのように、ミッテラン大統領が、世界の森林資源の枯渇状況から、これが回復のために、あるいはまた砂漠化の防止だとか公害防止の分野、いろいろな面で国際会議を開きたい、こういうことでございます。  日本としてもこれには賛成でございます。ことしは国際森林年でもありますし、世界的な規模で森林の将来というものを考える必要があるということを私自身も痛感しておりますし、この会議には日本も積極的に参加して、森林問題に対しまして日本の国際的な役割を果たしていかなければならない、こういうふうに考えます。
  180. 糸山英太郎

    ○糸山委員 それでは、時間でございますが、大臣、一つだけお願いしておきます。  私は、この夏、安倍外務大臣の親書を持ってザンビア、ケニアなどアフリカ諸国を歴訪した際、アフリカの今後の発展のために人づくり協力の重要性を痛感して、ザンビア大学に対しては十万ドルの奨学金を寄贈しました。また、安倍大臣も、十月九日に発表された対南ア追加措置の中で黒人の地位向上のための人づくり協力の重要性を指摘して。いらっしゃいましたが、例えば南アの黒人に対する奨学金の供与、二番目には国費留学生の受け入れなどに関して具体的な検討を私は提唱したいと思います。どうかお考えをお聞かせください。
  181. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 まず、糸山さんがアフリカ問題に対して非常な関心を持たれまして、この夏にはザンビア等を直接訪問されましたことに対して敬意を表したいと思います。  その際、ザンビアにおきましては大統領と直接会われまして、奨学金を寄贈されました。十万ドルと聞いておるわけでございますが、これはザンビアの政府のみならず、国民の皆さん方も大変に喜んでおられることでございまして、非常に高く評価されるべきであろうと思うわけでございます。  これからのアフリカ協力につきましては、現在の対症的な療法、食糧援助とか医療援助、今困っている人たち、飢えている人たちを直接救うことも大事でございますが、同時に、長期的な視点に立って人づくりの面で協力することも、また極めて重要であろうと思うわけでございます。  特にザンビアは、日本との関係は非常に安定しております。また、南部アフリカの安定問題につきましても非常に重要な役割を担っておるわけでございまして、こうした面でザンビアとの関係をさらに深めていきたい、そういうことから考えましても、糸山さんが行われた奨学金の寄贈等は、日本とザンビアとの関係を深める上において非常に意味のあることだと思います。  なお、人づくり協力としまして、南アの黒人学生に対する奨学金供与につきましては、アフリカ協会等の民間諸団体に呼びかけまして協力を要請いたしております。まず、民間の御協力を得まして一億円程度の資金をつくることから始めてまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。  同時にまた、政府としましても南アの黒人青年を招聘することも計画しておりまして、今年度中にも二名程度呼びたいということで、今候補者選定等具体的に検討しておる段階でございますし、あるいはまた国費留学生につきましても、なかなか難しい問題はございますが、実現に向けまして関係省庁と協議を進めてまいりたいと思っております。
  182. 糸山英太郎

    ○糸山委員 終わります。
  183. 安井吉典

  184. 井上一成

    井上(一)委員 米ソ首脳会談が六年半ぶりに開かれ、世界の多くの人々が、ジュネーブにおけるレーガン、ゴルバチョフ両首脳のこぼれるような笑顔、さらには五時間近くの暖炉の火の前での話し合い、握手する両首脳に強い期待と評価をしたことだと私は思うわけです。しかし、そのムードが現実の国際情勢を一変するほど甘くはないと私は思うのです。この両首脳のジュネーブにおけるムードが何とか現実の国際情勢の中で緊張緩和の方向に向けられないものかと強い期待をしているのも、また私一人ではない、多くの世界の人々がそのような熱い期待をしている、こう私は認識をするわけであります。  安倍外務大臣に、今後緊張緩和に向けて米ソが具体的にどう取り組んでいくべきであるのか、そういうことについても御所見を承っておきたい。  さらに、今回の共同声明の中で一番評価をすることのできる箇所は、両首脳が核不戦を誓い合った、そのことに私は強く目を向けているわけです。アメリカは、今まで核不戦とかあるいは核不使用という、その国際的約束を極端に嫌ってきたわけなんです。それは、米ソの対峙する戦略の中で一般に通常兵器ではソ連に劣っているというふうに報道されているわけで、むしろ核兵器を含めて総合的なバランスが成り立っているのだ。アメリカの安全保障の枠組みというものを考えた場合に、核不戦とか核不使用だとか、そういう言葉を、あるいはそういう約束をすることを強く拒んできたというのは、そういうところにあったのではないだろうか。  しかし、今回の核不戦の誓い合いというものは、核廃絶に向けての大いなる一歩前進であると同時に、そのことは、なぜ今回そのようなことを誓い合ったのか、約束をしたのか。考え方によれば、今までのアメリカの国際的な核不使用協定等の対応から考えて、核兵器は既に米ソが対等になったというような状況と見ていいのかどうか、そういう点についても外務大臣の御所見を承っておきたい、こういうふうに思います。
  185. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 米ソ首脳会談のその後の状況等を見ておりますと、いい面も国際的に随分出ているのじゃないか、こういうふうに思います。ここで約束されたことが確実に実行されるということが、やはり一番大事じゃないかと思うわけでございます。現在、米ソ二カ国間の改善は、少なくとも政治経済あらゆる面において徐々に進んでおる、具体的に進んでおることは御承知のとおりでありますし、それからやはりジュネーブの軍縮会談が再開をされて、首脳会談の基本的なこの合意に基づいて協議が行われることになると思います。これに期待をかけたいと思いますし、同時にまた、来年はソ連のゴルバチョフ書記長がワシントンを訪問するということになっておるわけでございます。これにも大きな期待がかけられておると思いますし、あるいはまた地域問題等につきましても話し合われたというふうに聞いております。そして、アフガン問題等を初めとしまして、こうした地域の紛争について今後の話し合いも進んでいくのじゃないかという期待も我々持つわけでございます。  同時にまた、反面、例えば米ソ首脳会談の中で基本的に意見の対立したSDIの問題等については、依然としてこれは米ソの基本的な対立としてだんだんはっきりしてきておるという面があるわけですし、あるいはまた核軍縮につきましても、核兵器五〇%削減という合意はできても、やはりアメリカとソ連の提案自体に大きな開きがありますから、具体的にどうするのかということになると、これは協議では相当困難な事態にぶつかるのではないだろうか。  そういう極めて難しい問題もあるわけですが、いい面も出ておる。ですから私としましては、やはりそうした中で着実に米ソの対話が拡大をして、少なくとも米ソの首脳会談の基本的な合意、そしてその精神というものがこれからいろいろな協議の中で生きてくるということが必要じゃないか。これに対しまして世界も関心を持っていますし、日本も重大な注目を持って見守ると同時に、やはりこれを実現するためのそれなりの努力をしていかなければならぬ、こういうふうに思います。  それから、米ソ首脳の核不戦の誓いといいますか、核戦争に勝者もなく敗者もない、核戦争は行われるべきではない、これは当たり前のことかもしれませんが、しかしやはり超大国の二カ国の両首脳が改まってこの約束をしたということは、これは大変意味があることではないだろうか、私はこういうふうに思っております。  核の対比等についてはいろいろな議論があるわけでしょうが、それは核軍縮の舞台で戦略核あるいはまた中距離核等を含めて論議をしていただかなければならない問題であろう、こういうふうに思います。
  186. 井上一成

    井上(一)委員 今お話があったSDIの問題、これは今回の首脳会談で最大の焦点であったと私は理解をしているわけです。アメリカはソ連が何らかの形でSDI研究を承認することをもくろんでいたと受けとめるわけでありますが、そのことは実現しなかったわけであります。そのことについての評価、さらには、レーガン大統領が帰国されて、アメリカのマスコミに向けて一定の首脳会談の成功をPRする中で、「ソ連にとって今回の会談の最重要課題は、米国のSDIをやめさせることにあったが、ゴルバチョフ・ソ連共産党書記長もわれわれの決意が固いことを悟ったようだ」、こういうことを指摘しているわけなんです、報道では。さらに、「SDIの研究と実験計画こそすべて頼もしい未来像であり、平和の保護者である」、こういうふうに力説をされているわけです。  外務大臣に、「SDIの研究と実験計画こそすべて頼もしい未来像であり、平和の保護者である」というこのレーガンの発言をどう受けとめていらっしゃるのか、このことも聞いておきたいと思います。
  187. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 SDIについては、これもやはり米ソ首脳間に基本的な対立があったと私は思います。今お話しのように、レーガン大統領としては、これはあくまでも防御兵器である、そしてこれは非核兵器であるし、最終的には核廃絶につながる防御体制であるという信念のもとにこれを主張されたと思いますが、これに対してゴルバチョフ書記長は、SDIを研究し、これを配備するというようなことになれば、さらに宇宙核軍拡につながっていくんだという考え方で、これに否定的な立場をとってこられたわけですから、今では基本的に対立しておる、そういうことが言えると思うのです。  我が国の立場は、御承知のように、日米首脳会談において中曽根総理から日本見解を示されたように、アメリカのレーガン大統領が言っているように、このSDIというのは防御兵器であって、そしてあくまでも非核兵器である、同時にまた弾道ミサイルを無力化する、そしてそれが最終的には核不用、核無用につながって、核兵器廃絶につながるんだ、こういう考え方に対して、我が国としてこれに対して理解をする、こういう姿勢をとったわけでございまして、今日もその基本的な姿勢を持っておるわけであります。
  188. 井上一成

    井上(一)委員 核不戦の誓いをする以前の状況とジュネーブにおける首脳会談後の状況は、少し変化をしていると思うのです。そういう意味から、SDIというのは、今も言われたように、先端技術を駆使して核ミサイルを撃ち落とす兵器である。米ソ共同声明で核不戦を誓い合った今日、SDIの研究、実験、開発を行うというのは、首脳会談での誓いと一見矛盾しているように私は受けとめるのですが、大臣、いかがなものでございましょう。
  189. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 それは、それぞれの立場が基本的に違っておるということだろうと思います。レーガン大統領の場合は、先ほどから言いましたようにSDIはあくまでも防御兵器であって、そして最終的には、これによって世界の最終的な平和というもの、核を廃絶する最終的な平和というものが確立できる、こういう信念に基づいて考え方をゴルバチョフに説明をしたんだろう、こういうふうに理解しております。
  190. 井上一成

    井上(一)委員 だから、平和を守るいわゆる風車である、そういうこともレーガンさんは言っていらっしゃる。私は、一見矛盾するような見解ではないだろうか、こういうふうに今申し上げているのです。それで、安倍外務大臣のお考えはいかがなものでございましょうか、こういうことなんですが、レーガンさんの考えはわかっている、理解をしているのですが、大臣のお考えはいかがなものでしょうか。
  191. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 私の考えといいますか、政府の考えとしては、今レーガン大統領の提唱しているSDIについては、いろいろと前提はございますが、そういう前提を踏まえて、これに対して十分理解できる、こういう姿勢であります。
  192. 井上一成

    井上(一)委員 じゃ、そこでお聞きをしますが、アメリカはたしか三月に、西側陣営十八カ国にSDI研究参加要請を行ったわけです。その後、各国はどのような態度をとったのか、まずこれを伺いたいわけです。  さらに、アメリカ側から研究参加要請を受けた我が国が、まだ態度表明を正確にしていないわけなんです。私の知る範囲では、態度未決定は我が国だけだと理解をしているわけです。それで、外務大臣は簡単に結論を出すわけにはいかないと、慎重な態度をとっておられるわけなんです。今日もまだ未決定なのか、いつごろまでをめどに態度決定をしようとなさっていらっしゃるのか、このことについても聞いておきたいと思います。
  193. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これまでの各国のSDIに対する態度決定に至るいろいろの状況等については、もし御要請があれば事務当局からお答えをいたしますが、我が国としましては、SDIというのは非常に重要な問題であろうと思います。  我が国も、それなりの基本的な国としての方針があるわけでございますから、そしてこれに対して理解を超えてさらに協力するというようなことになれば、それはそれなりに十分納得した上でなければできないわけでありますし、それについては、SDIそのものについて十分に慎重に我が国独自の立場でもっと検討していかなければならない。いろいろと今調査団等交互に派遣をして研究はいたしておるわけでございますが、基本的には私は、慎重に自主的に決める必要がある、そしてそう時を急いでやらなければならないということでもない、これはSDIそのものが非常に長い計画でありますし、我が国自身としても重大な決定になるわけでございますから、やはり慎重の上にも慎重を期す必要がある、こういう考えてあります。
  194. 井上一成

    井上(一)委員 参加要請を受けた国のそれぞれの対応はお答えがなかったのですが、私の方で承知している国としての不参加の中で、フランスとカナダの対応というのは、民間の参加を容認している、こういうふうに理解をしているのですが、これはそのとおり理解してよろしいでしょうか。
  195. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 お答えいたします。  アメリカから要請を受けました諸国の十八カ国の中で、イギリスは先般、委員御承知のとおり六日でございますが、アメリカ政府との間で了解覚書を結んだわけでございます。  さらに西独が、これはクリスマスまでには方針の決定を行うということを、コール首相が最近記者会見で述べております。  それから、フランス、カナダ、オランダ等につきましては、ただいま委員御指摘のとおり、政府としては参加はしないけれども、民間が参加するならば自由であるというふうに方針をとっているというふうに了承しております。  なお、イタリアにつきましては、いまだ方針が決まっていないと了解しております。
  196. 井上一成

    井上(一)委員 外務大臣、私は結論を出すことに非常に慎重であるというお気持ちは理解をします。しかし、早晩態度決定をしなければいけないし、五月の東京サミットというのは一つの区切りですね、それまでには我が国の態度というものは決めなければいけないのではないだろうかというふうにも思っているのです。  まず、大臣が慎重になっていらっしゃるということ、どういう点に慎重にならざるを得ないのか。例えば参加することによるメリットとデメリット。さらには、参加するためには新たな日米間の取り決めの意思を固めなければいけないということなのか。あるいは新たな両国間の取り決めの意思を固めることは必要なく、むしろ例えばMDA、今の対米武器技術供与協定ですかというような範疇の中でこういうことが処理できるような方法はないだろうかとか、あるいはいろいろなことを模索していらっしゃるから慎重にならざるを得ないのか、そういう点、もう少し具体的に聞かしていただければありがたい。  SDIの研究を通じて得られる新しい技術の取得というのは、それなりにまた一定の評価というのでしょうか、一定のメリットがあるのではないだろうか。しかしながら、我が国としては、そのことも含めて国内的な世論等あるいは国会意見等も踏まえた中で大変対処に苦しんでしらっしゃるのだ、そういうふうに私は理解をしているのですが、しかしそれもこれも含めて、やはり東京サミットというものが一つの目安でないと、この問題についてはいつかはいろいろな角度から議論をしていかなければいけない、こう思っているのです。  メリット・デメリットあるいは私の意見、考え等も質問として申し上げたのですが、いかがなものか、できれば御所見を聞かしていただければありがたいと思います。
  197. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 おっしゃるように、いずれにしても早晩これも日本としての方針を決めなければならないんじゃないだろうか、こういうふうに思っております。  私もまだ、ワインバーガー国防長官から手紙をいただきまして、これに対して返事も出していない、こういう状況でございますが、それはおっしゃるように、いろいろな角度からSDIというものについてもっと日本自身としても研究する必要がある、こういうことであります。  SDI本体そのものの実態といいますか、そういうものについての研究をもっと深める必要があるわけでありますし、同時に、SDIとの関連において、日本は御承知のように世界め中の独自な憲法を持っておりますし、その憲法に基づいた基本的な安全保障等についての原則を持っておりますし、あるいはまた国会決議等もあるわけでございます。さらにまた国際情勢の変化というものがあります。あるいはまた各国のSDIに対する対応というのもあると思います。あるいはまた米ソ首脳会談が今後どういうふうに移っていくのか。  私は、SDIというのは非常に長い時間の中で進んでいくのだろうと思います。今の時点においては米ソは基本的に対立しておりますが、とにかく米ソの首脳会談が継続されたということは大変意味があるのではないか。ですから、来年の六月に行われるであろうと言われるワシントンでの首脳会談あるいは再来年のモスクワにおける米ソ首脳会談、こういう中でこれはやはり中心的な議題になっていくのではないか、こういうふうにも思うわけでございますし、そうしたもろもろの状況というものを総合的に判断をして、日本の独自な立場でこれは結論を出していく必要がある。  それには、まだまだそうした結論を出すにはいろいろ諸点が熟してないという点があるわけでございます。アメリカイギリスとの合意、イギリスがSDIについて協定を結んだといいますが、これは一切外に出さないということでございますし、そういう中身、あるいはもしドイツとアメリカとの協力ということになれば、いろいろと協定も行われると思いますが、そういう中身等も我々十分知る必要があるのじゃないだろうかというふうに考えておりますし、そういう点を踏まえて日本が方向を出してもいい。何も日本はそう急いで、ほかの国がやったからすぐやらなきゃならぬという立場ではないように私は思っております。
  198. 井上一成

    井上(一)委員 もしSDIの研究に参加するとなると、日米の政府間で秘密保護のために新たな取り決めなりあるいは協定なり、名前は別としてそういうものが必要になるのではないだろうかと私は思うのですが、そこはいかがなものですか。まだ参加決定をしていない段階ですが、もし参加をするとすればそういうことが生ずると思うのですが、そこはいかがなのでしょうか。
  199. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 新しい取り決めということになりますか、あるいは今の日米安保条約の諸取り組みの中でこれがクリアできるかどうか、そういう点等をも踏まえて今いろいろと検討をしておるということでございます。まあ結論を持っておるわけじゃありませんで、そういうことも確かに検討の対象になると思いますが、これは米英あるいは米独、そういう協定の中でその点がどういうふうに取り決められるかということも参考にはなると思いますが、日本日本の独自の立場もありますから、そういう点も考えて今後研究の課題にしていかなければならぬ点だろうと私は思います。
  200. 井上一成

    井上(一)委員 それから、さっき私の意見として、五月の東京サミットが一つの節ではないだろうか、こう申し上げたのですが、この点についてはいかがなものでしょうか。
  201. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 今、日本から期限をそう切る必要もないのじゃないだろうか、そういうふうに思っております。これからいろいろの状況等は生まれてくる可能性はあるわけですけれども、しかしそういう期限を切って、日本みずからそこまでにと言う必要もないのじゃないだろうか。いずれにしても結論は出さなければならぬわけですけれども、それにはもっと融通無碍に考えていいのではないだろうか、こういうふうに思います。
  202. 井上一成

    井上(一)委員 さっき強く指摘をしておきましたが、研究参加を決定する場合、今日、いわゆる米ソ首脳会談がムード的に非常に期待の持てる中で成功であったという、そういう時点において、日本の態度表明をする場合には十分に、もっと世界観、トータルな配慮というか気配りが必要である、こういうふうに私は思うのです。ただ単に米ソ関係だけで、いわゆる緊張緩和の方向に前進するんだ——むしろ世界の国々が、良好な国際環境、状況、そういうことをつくるためにやはり努力をしていかなければいけない。私は、そういう意味では日ソの問題あるいは日中関係についても十分な気を配る必要があると思うのです。  そういう意味で、来年一月にソ連の外務大臣が訪日されるわけなんですね。そこでいろいろと話し合われると思うわけでありますが、私は大臣に一、二具体的にお伺いをしておきたいのです。  御承知のように日ソ間には北方領土問題があり、我が国は北方四島の返還を求めており、ソ連は解決済みだと言って譲らないわけなのです。北方領土問題は、国際法上からいって解決済みのはずがないわけなんですね。もし訪日されるソ連の外務大臣が、少なくとも七三年の田中総理当時、いわゆる田中・ブレジネフ書記長会談の際に述べた未解決の諸問題という言葉があるわけなのですが、未解決の諸問題、こり言葉をシェワルナゼ外務大臣が使うようなことがもしあれば、日本側の気持ちとして、我が国の気持ちとして、日ソ関係は他の面においても、あらゆる面においてという言葉が当たるかもわかりません、ぐっと前進できると私は思っているわけなのです。訪日されるソ連の外務大臣からそういう言葉があれば、日ソ関係はぐっと前進する、私はそういうふうに思っているのですが、私は、そのために外務省は努力すべきだという考えでもあるのです。私の持っている、そういう言葉が訪日の折に出ればぐっと前進だという私の理解、思い、こういうことについて外務大臣のお考えを聞かしてください。
  203. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 来月のシェワルナゼ外相の訪問を控えているわけでございますし、我々としても、十年ぶりにソ連の外相を迎えるわけでございますし、今の国際情勢、日ソ関係等も踏まえて何とか両国間の関係を大きく前進させたいと思っております。両国の間で国際問題、二国間の問題等について十分時間をとって論議したいと思いますし、これについてはソ連側も了承いたしておるわけでございます。  この内容については、これからいろいろと詰めてもいきますし、具体的には外相間で十分話し合わなければならない点でございますが、基本の問題については、これは今おっしゃったとおりでありまして、やはりそのことが日ソ関係をこれから大きく前進させるかどうかという極めて重大な分岐点だと、私も全く同感であります。
  204. 井上一成

    井上(一)委員 シェワルナゼ外相が、未解決の諸問題がある、このように述べてくれれば、大きな意味からして世界の緊張緩和の役に立つ、私はこういうふうに思っているのですが、外務大臣、いかがですか。
  205. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 心から期待をいたしておりますし、まさにこれは日ソ関係だけでなくて、世界の平和、極東の平和に対して非常に大きな意味を持つ、こういうふうに思います。
  206. 井上一成

    井上(一)委員 重ねて私は外務大臣にお聞きをします。当然、先ほどから指摘するように、そのような状況をつくるために努力をしてほしい。もう一度確認をしておきたいと思います。  今の段階で未解決の諸問題があるという発言を訪日されるシェワルナゼ外務大臣がするということになれば、二歩も三歩も日ソ関係は前進だ、こういうふうに思う。これは私は正しいと思いますし、外務省もそういう意向だとさっきおっしゃったわけですけれども、繰り返してここで、それが大きな意味で世界の緊張緩和に大いに役立つのだということを、やはり外務省は訪日をされるソ連のシェワルナゼ外務大臣に忌憚なく言うべきだ、私はこういうように思うのです。その強い決意をひとつ聞かしていただきたいと思います。
  207. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 やはり二国間の最大の問題は、何といいましても領土問題であります。我々は、領土問題を解決して平和条約を締結したいというのが日本の確固不動の外交方針でありますし、ソ連との間では今日までも、おっしゃるような田中・ブレジネフ会談でも、未解決の問題を解決して、懸案を解決して平和条約を締結しようという合意がなされたわけでございます。そして、その平和条約を締結しようじゃないかという日ソ外相会談もその後行われたわけでございますが、しかし最近では、御案内のように領土問題は解決済みだというふうなソ連の態度が出ておることは極めて遺憾でございます。  我々は、やはりそういう意味では日ソの歴史を両国外相がいろいろと振り返って、お互いに忌憚のない意見交換をしなければならない。そういう中で日本のこれまで主張し続けてまいりました、未解決の問題を解決して平和条約を締結するという日本の変わらざる決意というものを、ソ連のシェワルナゼ外相にもぜひ理解をしていただきたい。そのことによって日ソ関係というものは大きく前進すると思いますし、そして今大きい——日本の場合でもソ連の場合でもそうですが、平和条約を締結していないという国は残念ながら日ソだけではないかとも言えるわけでございますから、この点については十分話し合って、お互いにとことん議論をして、そして何らかの合意に達せなければならないし、そのために非常な決意を持って臨みたい、こういうふうに思います。
  208. 井上一成

    井上(一)委員 ゴルバチョフ書記長の訪日要請をされようとしているのか、訪日要請をしよう、そういうお考えを持っていらっしゃるのか、あるいはまた、その可能性はあると思っていらっしゃるのか、そういう点についてはいかがなものでしょうか。
  209. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 私の立場で軽々に言えることではないかもしれませんが、実はこれまでも、田中訪ソのときもそうだったと思いますが、ブレジネフ書記長の訪日招請を行っておるわけでございます。ですから、日本としてはずっとこれまでもソ連の最高首脳の訪日招請というものは行ってきているという前提にありますし、これが実現をすれば日ソ関係にとっても大変有意義だと思います。日本の総理大臣は何回も出かけておりますが、ソ連の書記長は来てないということでもあります。  最近では、ゴルバチョフ書記長も積極的な国際外交をみずから展開しておりますし、フランスにも行かれまして、今度イタリアにも行かれるということでございますし、アメリカにも行かれるわけでございます。そうして、ゴルバチョフ書記長自体も、日本アメリカ、そしてヨーロッパ諸国とともに、世界の中の経済の大きい拠点であるということをはっきり言っており、日本は世界にとって極めて重要な国だということもはっきり言っておるわけでございますし、そういう面で、やはり今の新しいゴルバチョフ体制になって、またこれまでとは違ったアプローチというものがあり得る。ですから、日本を訪問するということも、今のゴルバチョフさんの日本に対する期待といいますか認識、そういう面を見ますと、私は、これは可能性としてはあるのじゃないか、こういうふうに判断しております。
  210. 井上一成

    井上(一)委員 それでは最後に、シェワルナゼ外相の訪日に際して、いろいろな日ソ間の懸案が解決できるべく努力をなさることだと思いますが、少なくとも日ソ文化協定あるいは日ソ租税協定、日ソ投資保護協定、この三本のいずれかには署名あるいは仮署名ぐらいはできる見通しを持っているのかどうか。さっきの領土の問題は当然でありますが、具体的にこの三つの協定に対して署名あるいは仮署名のできる見通しを持っていらっしゃるかどうかをお聞きして私の質問を終えたい、こう思います。
  211. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 租税協定と貿易支払い協定、これは合意に達しておりますから、これはもうできるわけであります。問題は文化協定ですが、これは今ちょうど折衝中でございます。これからその折衝の山場を迎えるわけでございますが、率直に私の気持ちを言わしていただくならば、シェワルナゼ外相を迎えた際に、調印といいますか、仮調印といいますか、合意ができればいいがなと、こういうふうに考えておるわけでございます。しかし、まだなかなか難しい両国の相違点もありますし、これを詰めることで今鋭意やっておるという段階でございます。
  212. 井上一成

    井上(一)委員 どうもありがとうございました。
  213. 安井吉典

  214. 中村重光

    中村(重)委員 安倍外務大臣外務大臣在職最長期間の記録をつくり上げた、諸外国からも非常に好感を持って迎えられているようですから、私は敬意を表したいというように思います。  そこで、ポスト中曽根の最短距離にあるあなたに対して、憲法上の問題その他いろいろお尋ねをしたいことがあるのですが、何しろ時間が制限されておりまして、そのようなことをお尋ねをする時間的余裕はないのではないかと思っているのです。決算委員会ですから、やはり決算に関連をする問題をまず第一にお尋ねをしておかなければいけないのだろうと思っておるのです。  会計検査院から配付されております資料を見ますと、特に違法または不当と認めた事項はない。これは五十七年度決算に対してであります。したがいまして、具体的ないろいろな数字についてお尋ねをすることは割愛をいたします。  ただ、ODA、政府開発援助、これは第三次計画は公約のとおり実施をすることは間違いありませんね。
  215. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 ODA新七カ年倍増計画、これは国際的にも既にしばしば我が国として決意を表明いたしておりますし、来年度から始まるわけでございますが、四百億ドル以上の七年間での倍増というものは、果たしていかなければならないという強い決意を持っております。いわば、これは国際的にも約束しておるというふうなこともあると私たちは自覚をして、この実現には最大の決意を持って取り組んでまいる考えです。
  216. 中村重光

    中村(重)委員 そこで、一九八六年を初年度として七カ年計画、四百億ドルですね。ところが、大蔵省は円高分を減額をする、ドル建てを主張しているようですが、外務省はこれに対しては同意できないという態度のようでございますが、この点に対してはどのようにお考えですか。
  217. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 今いろいろと折衝しておりますし、これからいよいよ本格的な予算の折衝に入るわけでございますが、確かに援助の場合に円建ての分もありますし、またドル建ての分もあるわけでございますし、同時にドル建てで行う分については、御承知のようにこれまでと違って円レートが非常に高くなっておりますから、それに応じた予算を組むということになれば、円高になった分だけ予算については抑えられるという理屈になるわけでございます。  最終的には四百億ドル以上という目標を覆すことは、もちろん大蔵省としても考えておるわけではありませんし、政府全体の感覚として受けとめておるわけでありますが、今の円レートの変更に伴う予算については、それなりの変化といいますか、そういうものが出てくることも、これはやはりレートの変化によっては、予算そのものが、二百三十七円とか二百五十円で数えておる分と二百十円とかあるいは二百十五円ということになりますと、それだけ変化が出てくることは数字の土としてはやむを得ないことであろうと思うわけでございますが、しかし我々としては、全体的にそうはいってもやはり予算全体の中におけるODAというものの姿がよくなければならぬと思います。  それから、ただ四百億ドル以上というだけではなくて、GNP比で日本の場合は〇・三五去年いきましたし、これを高めていくということも一つの約束になっておりますから、そういう面でも考えていただかなければならぬ課題ではないか、こういうふうに思うわけであります。
  218. 中村重光

    中村(重)委員 それは外務大臣のおっしゃるとおりで、公約をなかなか守らないできて国際的な非難も受けてきたんですから、これを高めていくという努力はされるべきだと私は思うのです。しかし、大蔵省が言っているドル建ても、従来のOECDの実績からいったらば、必ずしもそれは間違いだということにはなりませんね。
  219. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 数字の点においては、確かに円高分というのはありますから、これはそれなりに予算にはね返ってくるということまでは否定はできないのじゃないか、私はこういうふうに思います。
  220. 中村重光

    中村(重)委員 発展途上国に対する経済援助が計画のとおり進まないですね。タンザニアに対するところのこれも計画のとおり進まないで、四年間延長契約を結んだということですね。なぜに援助が計画のとおり進まないのか。せっかく援助したものが、どうも効果を発揮していない。どこに原因があるのだろうかということですね。  私どもも現地を調査したりしまして勉強していかなければならないというように思うのですが、日本の場合は窓口が余り多過ぎるのじゃないか。それに形式に流れ過ぎる。外国が援助を求めるために決定した額を要求する。ところが、あっち行けこっち行けと言って、外務省に行ったりあるいは農林省へ行ったり経企庁に行ったりするわけですね。それから調査調査調査というので、日本の方からも出かけていかなければならぬ。それをやめろということは、実際の内容をつかまないと言えないわけですから、それは言いませんけれども、ともかく期間が延長されるということは、それだけ長期滞在という形になるわけでしょう。諸経費もたくさん要るわけですね。日本だけじゃなくて、相手国も同じように余分な負担をしなければならぬということになる。したがって、援助効果が非常に減殺されるということになるのですね。  あなたは外務大臣として最長期間経験を積んでいるわけですから、改めなければならないという点は勇断を持って、あなたは国際的にも影響力というものもあられるわけですから、強調していくところは強調して、進んで改善をしていくというようなことをされる必要があるのではないか、こう思います。いかがですか。
  221. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 御指摘のような問題点もなきにしもあらずだと私も率直に思います。しかし、全体的には日本の援助というのは各国で大変高く評価をしていただいておるのじゃないか。そうして、いろいろと問題点も逐次改善をされてきておると思うわけでございますが、日本の援助の場合は、御承知のようにつかみ金というようなことじゃなくて、各国との間のプロジェクト等について積み上げて計算を詳細に行って援助を行うということですから、そういう面では相当手数もかかることは事実でありますが、それだけにより確実な効果というのもあるわけでございます。  しかし、全体的に見て、この援助については、各国が本当に喜んでもらえるそういう援助でなければならぬということで、そういう点を踏まえて、問題点があるならばこれを率直に指摘をして、改善すべきことは改善しようということで、私のもとで今ODA研究会等もつくっていただいて、民間の有識者等も集まっていろいろ問題点を総合整理をして答申もいただいておる、こういうことでございまして、今後とも改善すべき点は率直果敢に改善しながら、本当に日本の援助が世界の開発途上国のニーズに合うといいますか、本当に期待をされる方向で進んでいくように努力を重ねてまいらなければならぬ、こういうふうに思います。
  222. 中村重光

    中村(重)委員 それから、エチオピアの飢餓対策というのか、食糧であるとか医療であるとか等々の援助にしても、何かせっかく送ったのが、本当に飢餓に苦しんで命を失いつつあるそういったような人たちに対して、手に渡ることが非常におくれている。テレビであるとかあるいは新聞等々報道によって、もどかしさを感じますね。  だから、どこに原因があるのだろうか。これは必ずしも相手国の物理的な関係だけじゃないのじゃないか。形式というようなものに余りとらわれ過ぎるといったような点もあるのではないかというように思うのですが、あなたの経験からして、改善をしていかなければならないという点をお気づきになってはおられないのですか。
  223. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 エチオピアにつきましては、私も昨年参りまして、その惨状に、目を覆うような状況言葉を失うほどのショックを受けました。政府としての援助もその後迅速に強化をいたしまして、五千万ドルの援助も行ったわけでございますし、その他食糧援助等も続けるとともに、民間にもお願いして、民間からの資金も膨大に集まりまして、エチオピアを初めとする諸外国に対してこれは着実に流れておる。毛布にしましても百七十万枚以上集まりまして、これが飢餓に苦しむ人たちに今送られておるということでございます。  全体的にはアフリカの国々は、日本の非常に積極的な、そして迅速な対応に対して非常な感謝の気持ちを寄せられております。私も今度国連に参りまして、国連に来ておられるアフリカの外務大臣の皆さんをお呼びしたところ、ほとんどの国から集まっていただきまして、その国々の外相を初めとして代表の皆さんが、口をきわめて日本の援助姿勢というものに高い評価を投げられました。我々もやったことがよかったなというふうに実は考えておるわけでございますが、こうした取り組みというものは今後ともいろんな面で、確かに改善をする点はないわけではないと思いますし、そういう点は改めながら進めていかなければならない、こういうふうに思っております。全体的に見れば、今度やったアフリカ援助、官民ともの援助というものは、やはりアフリカの国々あるいは国民に対して、大きな影響と同時に好感を持って迎えられたんじゃないか、こういうふうに思っております。
  224. 中村重光

    中村(重)委員 先ほど井上委員から日ソ外相会議に対するところの対応についてお尋ねがあったんですが、この領土問題というのは基本的な問題ですから、返還を求めていくということ、これは最優先課題であるということは私もわかるんですね。ところが、中曽根総理が懸案事項というものの包括的な話し合い、交渉をしたいということに対して外務省は戸惑いを感じている、むしろこれに反発をしておるように感じるのですが、この基本的な領土問題というもの、これは相手方が、未解決の問題があると外務大臣が言ってみたところで、言ってもらえればいいんだろうけれども、これは願望ですから、相手方がそれを言うか言わぬかわからぬですね。  まず、日本政府の態度はどうなのか、外務大臣はどのような態度で対応していこうとしているのか。これは交渉を前にして、こういう委員会で慎重発言ということにならざるを得ないだろうということはわかるんですが、総理大臣ははっきり言っていることですから、包括的な交渉というのか、会談というのか、こういうことでいいのですか。あるいは領土問題、基本的な問題というものをまず前面に立てて、これでうまくいかないと懸案事項には入れない、こういうことになるのですか、いかがです。
  225. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 包括的という言葉がどういうふうに解釈をすべきか、それはそれぞれの解釈というのはあると思います。やはりこれまで、例えば田中・ブレジネフ会談においても、それはそれなりに両国の最高首脳が行ったんですから、包括的にやったということは言えるかもしれませんし、あるいはその後開かれました日ソの外相会談も、包括的に両国間の問題、それから国際問題等も踏まえて議論をしたことは事実であろうと思うわけでございますが、しかし、日本の対ソ外交の基本は、何といいましても領土問題を解決して平和条約を結ぶというのが基本でございますから、その基本点というものはあくまでも大前提にして、日ソ間の交渉、そして日ソ間の改善というものを行うべきであるというのが我々の考えてあります。
  226. 中村重光

    中村(重)委員 私は、それはそのとおり理解をしているのです。やはり平和条約を結ぶということになってくると、基本である領土問題をうやむやにした形では結べない、国民もこれは納得しないということは、これは異論はないのです。ですけれども、やはり日ソの関係だけではなくて、日ソ関係が有効に働いていくといろいろな問題が解決をしていくということが国際平和にも大きく役立っていくということを考えるならば、余り形式にとらわれないというか、知恵を出して、そしてせっかく両外相が、これはもう本当に日ソ両国民だけではなくて、世界の人たちの期待を受けて話し合いをするのですから、やはりそういった点は本当に実りある成果を得るような対応が必要であろう、そのように思います。その点に対してもう一度。
  227. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 領土問題を解決して平和条約を結ぶという我が国の基本は変わらないわけでありますが、しかし、これまで戦後、日ソ間にはいろいろの歴史があったわけであります。特に鳩山・フルシチョフ会談といいますか、日ソ共同宣言が生まれて以来、日ソ間でも非常によかったときと、また非常に悪かったときと、領土問題というのは中心的な課題としてありながら、しかしそういう関係は両国間にあったわけでございますし、私どもは体制は違うとしても、ソ連は日本の隣国でありますし、そういう状況の中でまた極東の平和あるいはまた世界の平和、そういうものを考えていくときに、やはり日ソ関係をいい方向に持っていくということは極めて大事じゃないか、私はこういうふうに思いますので、そういうことも前提にしながら、特に米ソ首脳会談があって世界のムードというものがいい方向へ移っていっていますから、やはりそういう点も考えながら、この日ソ会談を何とか実りのあるものに持っていきたいな、こういうふうな気持ちでいっぱいであります。
  228. 中村重光

    中村(重)委員 ともかく、日本には対ソ外交というものはなかったのですよ。そうでしょう。あなたがお考えになっても、田中さんが総理のときにソ連を訪問したというだけのことですね。それに比較をすると西欧諸国というのは、それは事情が大分違うことは私も理解をしているのですけれども、せっかく今度開かれるわけですから、今大臣お答えになったようなことで成果あらしめる、そういうことでこれから大きく改善をされていくように取り組みをしてもらいたいということを、強く求めておきます。  それから、南北朝鮮の赤十字会談、これもなかなか厳しいものがあるようですが、これに対しての見通し等についてどのようなお考えをお持ちですか。
  229. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 見通しとしても、これは確固たる見通しを申し上げる自信も私ありませんが、今の南北会談というものは、ジグザグはしておりますが、しかし順調にといいますか、方向としてはいい方向に進みつつあるのじゃないだろうか、こういうふうに思います。米ソ首脳会談においても、シュルツ長官とシェワルナゼ外相との間で、朝鮮半島の状況についていろいろと議論が交わされたようでございます。両国外相とも、南北の対話を進めることが非常に大事だ、そういう基本的な方向で考え方は一致しているような感じを私は受けておるわけであります。  なかなか難しい問題もあるようですが、やはり米ソもこういう状況になってきましたし、そして北も北なりにそれぞれの問題を抱えておる、南は南でやはりオリンピックの開催とかいろいろな問題があるわけですし、何とかこの際関係を大きく前進させたいという決意が両国の首脳にもあるように見受けられますので、これからもまだいろいろな動きがあると思いますし、表に出ているだけの動きではなくて、やはり表ではない動きも、外交のことですからいろいろとまたあると思いますけれども、それは全体的に見て、やはり流れとしては今の状況でだんだんといい方向に持っていっているのじゃないだろうか、そして我々もこれを心から期待をして見守っておる、こういうことであります。
  230. 中村重光

    中村(重)委員 ソ連の外務大臣は訪中もされるわけですね。中ソの関係というのは大きく雪解けというようなことの期待をお持ちですか。
  231. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 中ソの関係につきましては、私、日中の外相会談その他でもいろいろと議論もしております。中国からも様子を聞いておりますし、日本日本なりに考え方も述べておるわけでございますが、御承知のような中ソ間には三大障害がありますし、今もまだ存在しているということでございます。その他のいろいろの国家間の改善等については相当進んでおるようでございます。また、党対党の関係もそれなりに改善が行われておる。そして中ソの外相会談までこぎつける、こういうところまで来ておるようでございまして、これも改善の方向にずっと進んでおるように思いますが、しかし、そうした大きな障害というものが解決されるということにならないと、やはり真の中ソ間の改善というものにはならないのじゃないだろうか。今の状況ではなかなかそこまではいってないように私たちは状況を判断しております。
  232. 中村重光

    中村(重)委員 ともかく日本外交というものも、アメリカさんの顔色ばかりうかがうというのじゃなくて、少なくとも経済大国であるということで胸を張っておる日本、外交の面においても大きくリーダーシップを発揮するように今後の対応を期待をいたしたいというように思います。  時間が少しありますから、あなたのこれからの取り組みについてお尋ねをするのですが、ニューリーダーの最短距離、この間の世論調査でも期待が大分高まっているようですが、総裁選挙、来年の秋にあるのでしょうが、もう出馬の決意は固めたのですか。
  233. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 まだ来年のことでございますから、来年になっていろいろ考えたいと思います。
  234. 中村重光

    中村(重)委員 そこで、衆参ダブル選挙、これは私は憲法の精神である二院制の趣旨に反するというように思いますが、あなたの見解はいかがですか。
  235. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これも私はそこまで考えたことはありませんけれども、解散権は総理大臣にあることは御承知のとおりでありますが、しかし解散というのは、これまでの歴史を見てみましても、国会で不信任案が通るとか、何か政府・与党として大義名分があるとか、そういうことでない限り解散というのはやはり行われるべきではないだろう、四年間任期を与えられておるわけでございますから、基本的に私はそういうふうに思っております。ただ何か目標だけつけてやるんだやるんだというのじゃ筋は通らない、こういうふうに思います。
  236. 中村重光

    中村(重)委員 非常に良心的な見解ですね。解散権というものは総理に与えられている、こうおっしゃる。総理や与党の利害、打算ということによって解散を行うべきではないということです。これは憲法の精神に反する、そのような考え方であるというように理解をしていいのですね、今の答えは。
  237. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 そういうことだけで解散というものは行われるべきではない、こういうふうに思います。
  238. 中村重光

    中村(重)委員 現在の政治情勢というものはもう連合時代に入った、自民党だけではなくて、どの党でも単独で政権を担当し得るような情勢は生まれてこない、私はそういう認識を持つのですが、あなたはいかがですか。
  239. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 もう既に自民党の場合は連立に入っておりますけれども、しかし我々としては、これはどこの党でもそうだと思いますけれども、一党でもって国民の支持を得て、過半数を得て政権を維持できれば、それはそれにこしたことはないわけでありますし、自民党がそれだけの力を持っておるということならば、国民の答えがそれに応じて出てくると思いますし、これからの問題だ、こういうふうに思います。
  240. 中村重光

    中村(重)委員 時間がありませんから、ちょっと一言言いたいことがありましたが、時間を守って、これで終わります。
  241. 安井吉典

    安井委員長 斉藤節君。
  242. 斉藤節

    斉藤(節)委員 私から外務大臣に質問したいと思いますので、よろしくお願いいたします。  ユネスコに関していろいろお尋ねしたいと思います。  最近、英国がユネスコを脱退したわけでございますけれども、それに関連しまして御質問でありますが、まず米国が脱退した後、ムボウ・ユネスコ事務局長に対して我が国はどのような対応をしてこられたのか、その辺お尋ねしたいと思います。     〔委員長退席、新村(勝)委員長代理着席〕
  243. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 御承知のようにアメリカが脱退しましたし、それからまたイギリスも脱退をしたわけでございます。これは私は非常に残念だと思っております。イギリスはそれなりの理由があるから脱退したわけでございますけれども日本としては、ユネスコというのは国連に入る前から日本が入っておる機関でありますし、日本国民としてもユネスコというものに対して特別な気持ちを持っておりますし、確かに今のユネスコの現状というものは飽き足らないものがありますけれども、私は、やはり日本はできるだけ残って、そして改革を志すのが日本の行く道ではないだろうか、こういうふうに思います。
  244. 斉藤節

    斉藤(節)委員 私は、米国が脱退した後、我が国がムボウ事務局長にどのような手を打たれたかということを御質問申し上げたのですけれども、英国の前にどうであったかということですね。まず、英国が脱退の動きがあったことは知っておられたと思いますけれども、それに対して何らかの働きかけをなされたのかどうか、その辺いかがでしょうか。
  245. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 英国が脱退しそうだという話を聞きましたので、早速私からもイギリスのハウ外相に直接書簡を発しまして、ユネスコにとどまってともに力を合わせて改革を行おうじゃないか、こういう趣旨のことを申して慰留に相努めました。残念ながら、英国は脱退を決心をした次第でございます。
  246. 斉藤節

    斉藤(節)委員 米国に次いで英国が脱退したわけでございますけれども、米英二国以外に脱退の動きがある国があるのかないのか。その辺いかがですか。
  247. 中平立

    中平政府委員 米国及び英国以外では、シンガポールが昨年末に、ことしの末で脱退したい、こういうことを言っています。これは米国及び英国が脱退しようという動機と違いまして、分担金が不公平である、たしか〇・〇九%で十五万ドルくらいでございますけれども、シンガポールの負担能力を超えておるという理由で脱退したいということでございます。それ以外は、現在のところ脱退の動きはございません。
  248. 斉藤節

    斉藤(節)委員 ユネスコの分担金も国民の税金である以上、やはり使い方が適切でなければならないと思うわけでありますけれども、その辺いかがお考えですか。
  249. 中平立

    中平政府委員 先生のおっしゃるとおりでございまして、ユネスコに限らず、いかなる国際機関におきましてもそのように考えておるわけでございます。特にユネスコにつきましては、過去におきましてその使い方が必ずしも妥当でないということもございまして、御存じのようにアメリカ及びイギリスがこのような措置に出たわけでございますが、我が国といたしましても、現在はユネスコにとりまして未曽有の危機であるという認識のもとにことしは対処してまいりまして、ことしの執行委員会とかこの間行われました総会におきまして、我が国としても十分なる主張をしたわけでございます。
  250. 斉藤節

    斉藤(節)委員 ユネスコに対する改革の要望には、我が国としてはどんなものがあるのか、これをお聞きしたいと思います。
  251. 中平立

    中平政府委員 ことし我が国が主張してまいりましたのは、一つには予算の抑制、二つには事業の精選、それから三つには事務局運営の合理化ということを主張してまいりました。  予算の抑制につきましては、この間の総会の結果、次年度の予算は実質成長ゼロということで抑えましたし、事業の精選につきましても、従来から、ほかの機関と重複している事業とか、それから政治的にいろいろな問題のある事業とか、その他必ずしも関係国の賛成を得られないのもあったわけでございますが、こういう事業をできるだけ合理化するということに努力してまいりまして、ある程度は成功したわけでございます。  それから第三といたしましては、一年でこの改革は完全にできないわけでございますので、今後この改革を監視するメカニズムをつくりまして、そのメカニズムを通じて今後合理化の遂行を監視していくということになったわけでございます。
  252. 斉藤節

    斉藤(節)委員 そういう合理化、そういった問題のいろいろな要望があるわけでございますが、その要望が受け入れられなかった場合に我が国はどういう対応をするつもりなのか、脱退をしない方がいいということもいろいろ新聞報道でありますけれども、その辺どのようにお考えですか。
  253. 中平立

    中平政府委員 もちろん先生のおっしゃるように、この改革ができなかった場合どうするかというのは、すべての国が関心を持っている問題でございますけれどもイギリスが脱退することによって有力な同志を失ったことは事実でございますけれども、まだ志を同じくする同志がおるわけでございまして、こういう諸国と力を合わせながら今後努力してまいりたいと思うわけでございます。  それで、先ほど大臣からもお答えがありましたように、ムボウ事務局長がことし四月に日本に来ましたときも我が国の重大な決意をお話しいたしましたし、今後そういう国々と力を合わせて、ムボウ事務局長を大いにおしりをたたきながらといいますか、改革の目的のために努力してまいりたいと思います。それで、そういう努力の結果、我々といたしましては、アメリカとかイギリスが帰ってこれるような状況をできるだけ早い時期につくることができればと思っておる次第でございます。
  254. 斉藤節

    斉藤(節)委員 ユネスコというのは大変重要な国連機関の一つでもありますので、今後は内部にとどまって、改革に一層力を入れていただきたいという御要望を申し上げておきます。  次に、あとほんの少しの時間でありますけれども、外交官の任期についてちょっとお尋ねしたいと思います。  先ほども民社党さんの方から質問があったようでありまして、タブる点もあろうかと思いますけれども我が国の諸外国におけるいろいろなこういう事象につきましての情報収集力が劣っているんじゃないか、そのように言われております。例えばイラン・イラク戦争をめぐる情報不足の反省なども聞かれているわけでありますけれども、外交官の任期にもその点問題があるんじゃないかな、そのように思いまして、現在任期はどのくらいになっているのか、お答え願いたいと思います。
  255. 北村汎

    ○北村(汎)政府委員 在外公館と申しますのは、外交活動のまさに第一線の拠点でございますので、在外公館の情報収集能力というものを高めるために、やはりある程度その任地に長くとどまるということは必要でございます。知識を収集し、人脈を形成するというために必要でございますが、また同時に、余り不健康地に長く置いておくということも問題がございますので、その点もあんばいをいたしまして、今大体在外職員が二年七カ月が平均でございます。大使だけをとりますと二年十一カ月で、ほぼ三年の任期を得ております。
  256. 斉藤節

    斉藤(節)委員 情報収集について我が国は弱いと先ほども申し上げたとおりでありますけれども、情報収集は民間、商社よりもさらに弱いのじゃないか、そのように言われておりますけれども、これについてどのように対応していこうとしておられるのか。例えば民間活力を利用するとか、あるいはそれとも独自にそういう収集力をつけていく方向にあるのか、どちらに力点を置かれようとしているのか、その辺お聞かせを願いたいと思います。
  257. 小野寺龍二

    ○小野寺説明員 お答えいたします。  外務省在外公館を通じまして行っております情報収集の活動と申しますのは、商社等民間が行っております情報収集活動とは、内容、それから対象、関心事項等必ずしも一致しないわけでございます。我が国の外交を推進していく上で必要な情報につきましては、外務省の集めております情報が劣っているということはないというふうに私どもは信じております。  ただ一方では、近年民間でも非常に多面的に外国との接触が行われております。そういった関連で、その民間が持っております情報も非常にふえていることは事実でございます。そういうものもできるだけ活用する方向で、外務省としても十分注意してやっているつもりでございます。  先ほど先生最初にイラン・イラクに関して外務省の情報収集が不十分であるという御指摘がございましたけれども、まさにイラン・イラクにつきましては、我が国はいろいろ両国に対する働きかけなんかを強めておりますし、それから外務大臣の平和イニシアチブというのがございます。こういった点は各国から非常に注目されておりまして、最近では、むしろ日本が各国からイラン・イラクの情報について聞かれるような状況になっております。
  258. 斉藤節

    斉藤(節)委員 もう時間がありませんので、最後の質問をさせていただきますけれども、情報収集のやり方、仕方について、例えばコンピューターを利用する、あるいは人工衛星などを利用いたしまして本国とのいわゆる緊急連絡などについてやっていくとか、いろいろあると思うのですけれども、そういうような必要性は考えておられるのかどうか。
  259. 小野寺龍二

    ○小野寺説明員 先生御指摘のコンピューターにつきましては、既に外務省に情報処理のためのコンピューターというのは導入しております。それからさらに、最近、情報化社会と言われておりますので、データ通信とか衛星というようなハイテクについても、今後利用については外務省で目下検討を始めているところでございます。
  260. 斉藤節

    斉藤(節)委員 もう私の時間がなくなりましたので、以上で終わらせていただきます。次に貝沼委員とかわります。  どうもありがとうございました。
  261. 新村勝雄

    新村(勝)委員長代理 次に、貝沼次郎君。
  262. 貝沼次郎

    貝沼委員 きょうは大変限られた時間でありますので、簡単にお尋ねしたいと思います。  まず、対ソ外交の問題をお尋ねいたします。  昨年の五月、チェルネンコ書記長は、日本の北方領土返還要求を報復主義として厳しい非難を浴びせたわけでございます、  また一方、ゴルバチョフ書記長になってたしか十月ごろ採択された共産党新綱領草案では、アメリカ、西欧、日本という帝国主義間の競争の三つの指導的中心が形成された、こういうふうに述べて日本の地位を昇格させたと報道されております。  さらに、十一月二十七日、ゴルバチョフ書記長はソ連最高会議で演説をしまして、ソ米首脳会談の結果及び国際情勢に関する報告の中で、特に対日関係では、我々は日本との関係改善を望んでおり、実現可能だと確信する、こう対日関係改善に強い意欲を示したわけでございます。  また、先ほどからずっとお話が出ておりますけれども、来年一月十五日ごろ予定されておりますシェワルナゼ外相の来日も含めて、こういう一連の動きに対しまして大臣は、ソ連の日本に対する姿勢というものは本当に変わったと認識されておるのか、あるいはそうでないならばどのようにお考えなのか、その辺のところをお聞かせ願いたいと思います。
  263. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 確かに、最近のソ連の対日認識については、これまでと違った変化があるように見受けます。これはゴルバチョフ書記長の発言だけでなくて、我々が接触している限りにおけるソ連の要人の発言、あるいはまたソ連の新聞等の論調、そういうものから見まして、日本に対する認識というものはこれまでとは変化があるように見受けられますし、積極的に日本との関係改善を求めておるということは間違いないと私は考えております。  日本としましても、御承知のように、領土問題を解決して平和条約を結ぶという日本の基本的な外交の姿勢は変わらないわけでございますが、こうした基本を踏まえながら、日ソ間の関係改善、これはこれまでも日本が取り組んで努力してまいった課題でございますから、こういうソ連が求めておる時期に何らかの実りあるものに持っていきたい、こういうふうに思うわけであります。
  264. 貝沼次郎

    貝沼委員 違った変化が見られるということでありますが、それならば一体そのねらいは、何をわらってこういうふうに変わってきたとお考えなのですか。
  265. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これは、やはり日本の国際的な地位が年とともに向上してきておる、同時にまた日本の経済力が非常に強くなって、特に科学技術面等における進歩というものが非常に著しいものがある、そうした全体的な日本の位置づけというものがソ連において変わってきたのではないだろうか、これまでとは違った受けとめ方がソ連でされるようになってきたのではないだろうか、全体的にはそういうふうに思っておるわけであります。
  266. 貝沼次郎

    貝沼委員 確かに私も、そういう日本の地位、特に国際的な地位、経済力、科学技術、こういう面が恐らくねらいだろうと思っているわけです。その中でも特に経済的には、ソ連としては二〇〇〇年まで所得倍増計画などあるわけでありますから、サハリン沖の石油あるいは天然ガスなどの極東シベリアの開発などがその底にあるのではないかと考えるわけでありますが、この辺については大臣はどうお考えでございましょうか。
  267. 西山健彦

    ○西山政府委員 ソ連が現在直面しております最大の問題は、何といいましても国内の経済の活性化ということでございます。そのためには、なかんずくエネルギー供給ということについて新しい方策を見出さなければなりません。したがいまして、シベリアというものの持つ重要性、特にそれが東に次第次第に進んでくるわけでございますが、東シベリアの重要性というものがソ連にとってはだんだん大きなものになっていると思います。そこで、ただいま先生が御指摘になりましたようなプロジェクトを含めて、そういうものの開発に日本の資本なり技術なりを協力として求めたいという気持ちは、ソ連側において高いものと私どもは考えております。
  268. 貝沼次郎

    貝沼委員 ソ連の対日姿勢がそのように変わってきたことは、結構なことだと思います。それならば、我が国の外交方針として、あるいは外務省といたしまして、こういう変わった姿勢に対して我が国も従来と変わった姿勢で対応しよう、こういうふうなお考えがあるのでしょうか。
  269. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 我が国の対ソ外交は従来から一貫しておりますし、今日といえどもこれは変わっていません。すなわち、領土問題を解決して平和条約を締結するということを念願いたしておりますし、そのためにあらゆる努力を傾注する。同時に、ソ連との間は隣国でもありますし、関係改善というものはできるだけ積極的に進めていこうというのが日本のこれまでの姿勢でありましたし、不幸にしていろいろの問題がありまして日ソ関係には非常に波の多い関係が続いたわけですが、安定した関係を持つことが必要であろう、こういうふうに思っております。
  270. 貝沼次郎

    貝沼委員 どうも変わるのか変わらないのか、今はっきりわかりませんでしたが、先ほどもちょっと質問が出ておりまして、総理大臣があたかも変わったごとく、向こうが変わってきたから総理大臣のあの言葉は変わったという意味でおっしゃっておるのだな、こういうふうに私どもは受け取ったわけでありますが、見出しによりますと、対ソ打開の意欲を示したとあります。総理大臣は十一月二十八日、日本記者クラブで、日ソ関係打開のチャンスが来つつある、これは認識ですね。そして、領土問題は避けて通れないが、文化、経済、科学技術の問題もあり、硬直した教条主義にとらわれず包括的に考えていきたい。  今この総理大臣言葉だけを見ますと、何となく大臣のおっしゃっておるのが硬直した教条主義の言葉に含まれるのかどうか、私わかりませんが、外から読みますとそのように受け取られますね。したがって、それでいいのかどうか。もし総理大臣がこういうことをおっしゃった意味が違うというならば、どういう意味でおっしゃったのか。恐らく外務大臣と相談なしでこういう話をされるはずはないと思いますので、この辺をお伺いしたいと思います。
  271. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 別に相談があったわけではありませんが、総理は総理としての考え方を述べられたと思います。しかし、本質的に私たちの考えと総理大臣の考えが変わっているとは思いません。総理も言っておりますが、これから日ソ関係が動く場合においては、来年一月の日ソ外相会談がどうなるかというのが前提ですから、総理もそれを見ようと言っているわけですし、我々もそれを前提にして日ソ関係の今後というものに対応していきたい、この点について私は変わらない、それを飛び越えてどうだこうだということではない、私はこういうふうに思います。
  272. 貝沼次郎

    貝沼委員 ところが、総理大臣がこういうことをおっしゃっているのは、十一月二十八日に初めておっしゃったのじゃないんですね。これは昨年の十一月、チーホノフ首相ともこういう基本路線で話し合っておるわけですね。したがって、このことを外務省が知らないはずはないわけでありますから、恐らくその時点で外務省からどういう意味でそれをおっしゃったのか、あるいは外務省と総理大臣との間に何らかの話し合いか調整があってしかるべきであったと私は思うわけですね。ただ、今回のこの発言についても外務大臣は相談はなかった、こう言っておりますが、これでは一体内閣意見あるいは日本の外交の基本路線というのは本当はどれなのか、こう迷わざるを得ません。一体これはどういうことになっておるのですか。
  273. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 チーホノフさんとの会談にも私も一緒に出席しておりますし、ゴルバチョフさんとの会談にも一緒に出席をしております。したがって、総理大臣発言については十分承知をいたしております。少なくともやはり総理と私の間で対ソ関係について考え方の差があると私は思っておりません。  総理大臣外務大臣の間に考え方や戦略、そういう点で差があっては大変なことですし、そしてまた、いやしくも外交というのは一元的でなければならぬわけですから、それについては十分一体となって対応していかなければならぬ、ソ連との問題は特にそうだろう、こういうふうに私は思っております。そういう点については何ら御心配の状況にはないと思います。  総理の言っていることも、これからの空気として日ソ関係に一つの明るさが出てくる可能性は十分ある、打開の道は開けてくるという空気は私は同じ認識であります。しかし、同時に総理の言っておりますのは、やはり日ソの外相会談、これを基軸としてこれから出発していきたい、ソ連の外務大臣日本を訪問する、それに引きかえて今度は日本外務大臣がソ連を訪問する、そういう対応があって、そこからやはり日ソ関係の新しい関係が生まれる可能性は十分ある、それは一つの大きなポイント、大前提だということを言っておられる。これは全く同じ考えてあります。  ですから、言葉の点だけでいけば、おっしゃるように何か別のことを考えておられるように思われるかもしれませんが、それは私は全然ない、こういうふうに思っておりますし、またそういうはずはありませんし、その辺は心配しておりません。
  274. 貝沼次郎

    貝沼委員 そういたしますと、日本の対ソ外交姿勢は変わっていない、こういうことですね。  それから、ただいまもるるお話がありましたが、日ソ外相定期協議の質問も先ほどありまして、それに対してはゴルバチョフ書記長の訪日を要請する、こういうことで、その可能性としてもあると思う、こういうふうに答弁がございましたが、どうしてもゴルバチョフ書記長に訪日してもらいたい、これは今順序の話もありましたけれども、それだけでなく、そのときにぜひこの問題ということがもしあるのであれば、お聞かせ願いたいと思います。
  275. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これは先の話でありまして、いずれにしてもまず外相会談から始めて、日ソ関係を積み重ねていく中にいろいろと新しい道が開けてくるんじゃないだろうか、こういうふうに思っております。  まずまず、十年ぶりに開かれる日ソ外相会談で徹底的に日ソの基本、二国間の基本に関する問題、二国間のあらゆる問題、さらに国際情勢等分析し合って、お互いにお互いを知り合うといいますか、そしてまた我々としても、ゴルバチョフ体制になってソ連がいろいろと日本に対する重大な関心を持ってきておりますから、それが果たしてどういう点にあるか、具体的にどういうことを考えているのかという点もやはりはっきりと知る必要があると思います。同時に、日本の考えというものを十分知ってもらいたい、こういうふうに思っておりますし、日本としても日ソ関係を改善したいという意欲は十分持っておりますから、そういう点についての日本の真意というものを十分知っていただいて、そういうところでまた新しいスタートが生まれる可能性はあり得る。ですから、大前提はやはり日ソの外相会談であろう、今私はそういうふうに思っております。
  276. 貝沼次郎

    貝沼委員 時間があと何分もありませんので、ちょっと変わった話題になりますが、先般、太平洋北部における飛行機の安全性に関する日米ソ三国間の了解覚書というものの口上書が交換されました。これが十月八日でありました。それで、その後十月三十一日に、それを待っていたかのごとく日本航空の四四一便の航空路逸脱問題が起こりました。それで、結果的には無事であったのでよかったわけでありますが、これは非常に危険性をはらんだ事件であったと私は思います。  そこで、時間がありませんのでごく簡単に運輸省にお尋ねいたしますが、これは客観的に危険性をはらんでおった事件であったかどうか、あったか、なかったか、この点を一点お願いいたします。
  277. 赤尾旺之

    ○赤尾説明員 お答えいたします。  問題になりました日本航空のモスクワ行き四四一便でございますが、航空路の逸脱につきましては、公海上におきましてその事実に気づいて、乗務員は直ちに回避のための操作を行いながら、ソ連管制当局と通信設定をしたわけでございます。そして、その指示に従って所定のコースに戻ったのでございますので、さらに当該便はモスクワ行きということで、ソ連の領空に進入する前に進入の許可を日本海海上で得ていたということがございますので、危険はなかったと考えております。
  278. 貝沼次郎

    貝沼委員 危険はなかったけれども、危険性ははらんでおったのかどうかということを尋ねております。
  279. 赤尾旺之

    ○赤尾説明員 仮定的の問題でございますが、そのままの状態で位置確認をしないで飛んだ場合、北あるいは北々東の方向に飛んでまいりますので、あるいは危険があったかと思います。
  280. 貝沼次郎

    貝沼委員 これははらんでおったと思いますね。もしこれが事件になっておれば、航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律という法律がありますから、これは過失犯として本当は刑事事件になるところだったのですね。それだけ重大な問題であったのですが、この問題の後、ソ連と日本外務省の間では、あるいは運輸省の間では何らかの話し合いはあったのでしょうか。私は、これはあってしかるべきであると思うわけでありますが、いかがでしょうか。
  281. 西山健彦

    ○西山政府委員 先ほど運輸省の方から御説明がありましたように、本件は幸いにも大事に至らないで終わったわけでございます。加えて、この場合には、この飛行機がソ連の領空の中に入ったということでもございませんし、ソ連のいわゆる飛行情報区という区域の中にあったのは事実でありますけれども、既にその方向を転換する段階で、当該航空機とハバロフスク管制部との間の連絡が行われておりまして、事実関係がソ連側に十分伝わっていたわけでございます。したがいまして、我々といたしましては、本件については十分な知識がソ連に行ったものと考えておりまして、その後外交ルートを通じて特段の措置はとっておりません。  ちなみに、ソ連側の航空機が我が方領空に接近するようなケースは非常にしばしばございまして、我が方がスクランブルをかけるのも年間数百回ということでございます。しからば、そのたびにソ連の側から我が方に何がしかの通報があるかといえば、そういうことは全くございませんので、本件の場合にもそういうことで十分であったと考えております。
  282. 貝沼次郎

    貝沼委員 もう時間が来ましたけれども、今みたいに、向こうがないからこっちもやらないとか、向こうは何回あったじゃないか、そういうことを言っていたら、お互いにけんかになるんです。やはり外交はお互いに寄っていかなければならないと思うのです。したがって、これは言う必要のないことであったかもしれない、だけれども、そういうことでお互いに一つ一つ仲よくしましょうと言うことが大事ではないかと思いましたので、私はあえてこの問題を言いましたが、大臣、何かありましたら一言お願いします。
  283. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 やはり航空の安全ということは極めて大事でありますし、そういう意味で、問題が起こらないように、今度アメリカとソ連と日本との間で北太平洋の上空の安全運航についての協議が行われて合意に達したということは、私は非常に画期的だと思います。いずれにしても、事前に通報し合って問題を解決しようという精神が三国合意ということでできたことは、今までの長い戦後の歴史の中でも、特にソ連とアメリカ日本と、この三国の中でできたというのは、非常に私は意義が深いと考えております。
  284. 新村勝雄

    新村(勝)委員長代理 次に、田中慶秋君。
  285. 田中慶秋

    田中(慶)委員 私は、日米貿易摩擦の問題に関連しながら、大臣に質問させていただきたいと思っております。  アメリカでは、日米貿易摩擦の問題で、特に日本に対してアンフェアだという認識が極めて強いというふうに聞いておりますけれども、これらについてアクションプログラム等日本側の努力は努力として認められているにもかかわらず、あるいはまた通貨の問題も、二百四十五円台から二百円台にという形でドル高の是正がされて、円高に逆転しているわけであります。アンフェアというものについて今鎮静化されているかどうか、このような問題について大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  286. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 アメリカからよく言われますアンフェアという問題については、日本もそういう指摘を受けることは非常に残念であります。これに対しまして、確かに日本自体としても改善すべき点があるということで、これまで一連の努力をしてまいりました。そして今回は、アクションプログラムという思い切った措置をとることにいたしたわけでございます。その他MOSS委員会等いろいろな協議等を通じまして日本も改善をやっておりまして、不公平という面ではそうアメリカから指摘をされるいわれはないというところまで日本は国を開いてきている、問題は多少残っておるとしても全体的には開いてきている、ヨーロッパに対してもそういうことが言えると私は思うわけでございます。  問題は、黒字の問題がある。これがやはり増大をしていって、今まだ統計が明らかになっておりませんが、来年の初めごろには明らかになるだろう。そうなってくると、今G5等の結果、円ドル関係が調整をされて円高に推移しておるということで、多少空気は和らいでおるようでありますが、そうした黒字問題がまた再現をするとなると、また厄介な問題になるなどいう率直な感じは実は持っておるわけです。  また、ECとの関係も、先般ECとの閣僚会議をやったわけですが、やはりECに対して百億ドルという黒字の問題があります。ECは日本のそうしたアクションプログラム等に対しては評価しておりますし、私たちはむしろECの方にいろいろと問題があるということを言ってもおるわけでございますし、やはりECが問題にしているのは黒字の問題で、そこで、日本に輸出の目標をつくれというようなことも言ってきているわけであります。この点はなかなかこれから大きな問題になる可能性をはらんだ事態であろうと考えます。
  287. 田中慶秋

    田中(慶)委員 いずれにしても、この日本の努力というものがまだ認められていないような気がいたします。特に認識のずれといいますか、あるいは国民性の問題なのかどうかわかりませんけれども、確かに結果的に黒字が生まれておりますけれども、この辺の日米の貿易摩擦の背景になっております認識のずれというものについて、最近いろいろ問題を指摘されているのですけれども、この点については大臣、どのようにお考えになっておりますか。
  288. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 認識のずれは、確かに我々もアメリカと話し合っていまして、あるようにも思います。我々ももっとアメリカを知らなければなりませんし、アメリカにもっと日本の率直な姿を知ってもらわなければならぬ。非常に近い関係にありながら、案外お互いに理解されてない面が随分あるように思っております。アメリカがよく指摘をする、もうそれは既に日本では改善をされてしまっているという事例についても、今になってまだ指摘を続けておるというふうなこともありますし、そういう点で、やはり日本の実情をもっと率直にアメリカ側に理解していただくような、政府努力だけではなくて、いろいろな面でのアメリカ国民、議会に対する努力が必要である、特にアメリカ議会等の認識には、私は相当誤解に基づく点があるように思っております。  また、黒字問題が非常に大きな問題になってくるわけですが、同時に、依然として日米間について非常にアンフェアが存在しているというふうな感じをアメリカの議会は強く持っておるという感じを持たざるを得ないわけで、この点について我々としても、もっと日本の真の姿というものを理解させる必要がある、もちろん、日本が改むべき点があれば、それは積極的に改善していくことは当然なことである、こういうふうに思います。
  289. 田中慶秋

    田中(慶)委員 私どもも九月に、民社党の塚本委員長を団長として、私も随行させていただいたわけですけれども、議会と政府との認識の違いというものも出ているような気がいたします。特に日本の場合、議会対策が、外務省職員の人たちも努力をされていらっしゃると思いますけれども、先ほども指摘をした任期の問題、非常にローテーションが早過ぎる、そういうところで現実には情報が正確にキャッチをできないのじゃないかということも一つ。もう一つは、やはり議会対議会のお互いの交流が何かないような気がしてならない、こんな感じを受けてきたんですけれども、この辺については大臣、どういうふうに認識しておりますか。
  290. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 確かに、率直に言わしていただきますと、政府対政府の関係と比べますと、議会対議会という関係はまだまだ薄いといいますか、もっと密接な話し合いをしていただく必要があるのじゃないかというふうに私も感じとして持っておるわけでおります。やはり議会同士が話す、議員同士が話すということは、私も議員の一人でありますけれども、率直に物が言えるわけでありますし、大いに議論もできるわけでありますし、それはやはりお互いを知り合うという意味では非常に大事であります。それがまた全体に誤解を解いて、そして正確な認識を持つということにもつながっていくのじゃないだろうか、こういうふうにも思います。
  291. 田中慶秋

    田中(慶)委員 実は外交評議会とか議会とか、あるいはまたそれぞれマスコミ関係、至るところにニュアンスのずれというのが非常にあったような気がいたします。例えば農産物の自由化を唱えていらっしゃるわけですけれども、しかし、じゃその現場に入ってみますとどうかというと、いや、完全自由化よりは毎年少しずつ枠の拡大をしていただければいいんだと生産者の人たちあるいは組合の人たちは言っている。こういうことと議会とのずれというのは確かにあるような気がいたします。  こういう一連の問題で、皮製品等についてもそのときも指摘をされておりましたけれども日本もそういう点ではこれらの問題を具体的にもっともっと率直な形の中で話せる外交というものが必要ではないか。大使館の職員の人たちも一部遠慮があるような形で受けとめてきたわけですけれども、こういう点を含めて、今後もっと日本が、少なくとも世界第二位のGNPを中心とした責任という形の中ではもっとこれらの問題を率直に話し合える場所、率直にまた正確に、それをお互いに誤差のないように努力をされるためには、やはり外務省の外交官といいますか、この職員の人たちがもっと正確なデータが必要ではないか、こんな認識を受けたわけです。  そういう点では、現実にその農産物の出荷組合、こういう現場に行かれているかというと、残念ながら初めて私どもの視察団といいますか、団が行かれた、こういうことでもあったわけでありますが、こういうことを含めて、人的な問題、情報の収集、そういうところを含めて足りないような気がしますけれども大臣は率直にどのようにお考えになっているか。
  292. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 アメリカの大使館は、日本の世界各国に設置している大使館の中では最大の規模を誇っておるわけでありますし、各省からも皆出てきておる、アタッシェとして出てきて活躍しているわけでありますが、膨大な国でありますし、今の日本の外交スタッフだけでは十分こなし切れない。予算の面におきましても人員の面においても、そういうことは確かに感ずるわけです。  とにかく、精いっぱい働いて、我々が見ておりましても夜も星もないような状況で努力をしていることは事実でありますが、今おっしゃるように、全体を把握するという点についてはこれからもいろいろな面で努力を重ねていかなければならぬ、こういうふうに思いますし、同時に、これはもう外交スタッフだけではなくて、日本の議会もそうですが、経済界その他相当力を入れておりますけれども、もっともっといろいろな面でパイプを太くしていく必要があるということは間違いないと思います。
  293. 田中慶秋

    田中(慶)委員 いずれにしても、私は外務省職員の人たちが一生懸命やられていることもこの目で見てまいりましたし、また人的にも足りないなというふうな感じも受けました。そういう点では、大臣が今後の日本の経済やあらゆる問題を考えたときに、外務職員を少しでもできる範囲内の努力をして、そういう点ではもっと正確なデータを収集される努力が必要だと思いますし、民間活力といいますか、民間の人たちでもこういうことはできるわけでございますので、そういうことをぜひお願いをしておきたいと思います。  そこで、実は現在ドル高から円高に向けて、我が国は積極的な貿易摩擦解消のために努力をされて、評価をされておりますが、黒字がどれだけ縮小するかという問題については、専門家の間でもそれぞれまちまちな見解を出されております。はっきり申し上げて、現在政府あるいはまた日銀、それにあらゆる金融機関等を含めて、これらに対する見解がまちまちのような気がしますので、黒字減らしの効果というのは具体的にどのように期待をされているのかということが一つ。  もう一つは、来年春になってそのことが明らかになって、サミットで集中攻撃をされるようなニュアンスも出てくるんではないかと思います。そういう点では、今例えばアクションプログラム一つをとっても、このニュアンスが全然違っております。例えばアメリカでは、アクションプログラムというのは、すぐやることをアクションプログラムと言うんだということを指摘をされました。日本では、画期的だと言われておりますけれども、二年、三年間に分けて何とかしよう、前倒しとかいろいろな形で努力をしておりますけれども、しかし全体的に黒字が減らないということになれば、来年のサミットではまさしく対日批判というのが新たな問題として出てくるんではないか、こんなふうに考えておりますけれども、こういう通貨調整の問題等々を含めてどのような期待をされているか、この辺についての見解をお伺いしたいと思います。
  294. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 通貨調整は、それなりに貿易摩擦という点から見ましても効果は出てくるであろうと期待をします。これは、それだけドルが安くなる、日本には輸出しやすくなるわけでございますし、輸入する側の日本としましても、円高ということになれば、それなりに今までとは違った国内的な問題もあって輸入が将来にわたって今までよりはふえる。これは、円高・ドル安という面からいえば、理屈としては出てくるわけです。     〔新村(勝)委員長代理退席、委員長着席〕  しかしただ、それでは来年中でそれが著しく出てくるかということになると、御承知のようなJカーブ等もあって、むしろ今の調査等では、来年いっぱいはまだまだ黒字というものが相当大きく存在をするということは、これは見通しとしてそのとおりだろうと思います。  それから、ことしの黒字は来年二月ごろには明らかになると思いますが、相当膨大なものになって統計として示されるということになると、確かにアクションプログラム、MOSS委員会その他いろいろの協議で日米間のアクセスの方は相当これは前進をしております。これはアメリカも非常に評価をしておりますし、アクションプログラムについて三年という言葉がありますが、何か今やらないで三年先にやるんじゃないかという、初めはアメリカも随分誤解をして、それこそ誤解でしたけれども日本が前倒し等積極的にこれに取り組んでいく、今度の国会でも関税率の問題でも早速取り上げた、あるいはアクションプログラムを法案化するものは積極的にやっているということから、日本がアクションプログラムを今から始めるんだという積極的な姿勢は、だんだんとわかってきておるようでございます。  しかし、具体的な成果としては、とにかく黒字というものが大きく存在しているわけですから、そういう面では、なかなかアメリカの議会その他の今後の動きというのは容易ならざるものが私はあると思います。しかし、この円高状況というのが定着をしていけば、方向としてはやはり黒字の解消に前進をしていくことは間違いない。  ただ問題は、私はマクロの問題だと思います。円高になれば、日本におけるある意味においてはデフレ傾向が出てきます。来年のいろいろの経済指標等民間で調査している——政府の方はまだ出していませんが、状況を見てみると、大変低い数字が出ておるので心配しておる、卸売物価はマイナスというようなことですから。ですから、こうしたデフレ傾向が続けば、せっかく輸入が容易になるという状況の中で輸入が伸びないということにもなるわけですから、その辺は世界のマクロの経済という形でこれから世界各国で話し合う、そういう必要が出てきつつある、こういうふうに思っておりますし、そういう点は日本も踏まえて責任を果たしていく努力をしていかなければならぬのじゃないか、そういうことを感じておるわけであります。
  295. 田中慶秋

    田中(慶)委員 大変努力をされ、そしてその成果も期待をされていると思いますが、しかし現状はなかなか進まない。そういう点で一層の円高移行というものがアメリカ政府から求められてくるんではないかと思うし、先般もヤイター通商代表や商務長官でありますボルドリッジさんが、貿易のアンバランス是正のために一ドル百八十円台から百九十円台、こんな形、日本に対する通貨の問題でこれが一番適正ではないかというようなことも言われたわけでありますが、こういう問題についてどのように感じておられるか、お伺いをしたいと思います。
  296. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 今までも急激な変化でありますし、相当調整といいますか、介入が続けられた結果であろうと思いますが、大事なことは、ファンダメンタルズといいますか、そういう円高傾向が定着する基礎といいますか、経済の基本がそういう方向に移っていかないと、ただ人為的に円高だけを進めれば問題が解決するというわけではないと思うわけであります。  それには、アメリカに対して言わせていただくならば、アメリカの高金利、こういうことが非常に大きな問題。財政の赤字、そして特に高金利、そういう問題がある程度改まっていかないと、経済の基礎が今のままの状況で、いつまでも介入によって円高だけを進めていくということは不自然でございますから、それはとるべきではない。円高を進めながら経済の基本というものをこれからそれに適応した形で変えていくということがむしろ大事じゃないか、こういうふうに私は思います。
  297. 田中慶秋

    田中(慶)委員 いずれにしても、これからいろいろな問題が出てこようかと思いますけれども、実際にこの日米貿易摩擦の問題で急激な円高になった関係で、国内的には円高対策というものをより強力に進めていかなければいけない。片方では、貿易摩擦のために相反した矛盾というものがここに生じているわけですけれども、それを早急にコントロールするのが今の日本の経済問題であり、かつまた外交問題であろうと思います。  こういう中で、例えばアメリカが今貿易摩擦の解消のために、アラスカ石油とかあるいはまた西部炭の日本に対する輸出解除について一部報道されておりますけれども、これらの見解はどのようになっているのか、お伺いをしたいと思います。
  298. 池田廸彦

    ○池田(廸)政府委員 お答え申し上げます。  アラスカ原油の問題と西部炭と二つの論点があったかと存じますが、まずアラスカ原油につきましては、今般いわゆる解禁措置がとられましたのは、厳密に申しますとアラスカ原油のごく一部でございますクック入江地区の原油でございまして、全体としまして四万五千バレル・デー、しかも解禁の対象になっておりますのは、アラスカ州政府持ち公約五千六百バレル・デーでございます。したがいまして、解禁したということの象徴的な意義、これは大きな意味があると思いますが、実際の貿易インバランスに対するインパクト、これは小さいと言わざるを得ません。  他方、米国炭につきましては、基本的には我が国の需要の動向、それと米国炭の価格でございます。くだくだした説明は省きますが、我が国の石炭のユーザーは、八二年ごろまでの高い石炭需要をもとに手当てをいたしまして、現在はむしろ供給過剰になっておる。それから他方、氷炭の価格は恒常的に割高になっておる。今度の円高が、ドル安と言っても同じでございますが、ドル安がどれくらい高価格の是正に役立つか、これから先を見なければわかりませんが、依然として今でも高い、そういうことで、短期的には貿易収支改善への効果は少ないのだろうと思っております。  しかしながら、中長期の視点を入れますと、やはり石炭にせよ石油にいたしますにせよ、日米のエネルギー協力、これは双方のためにもっともっと続けていかなければいかぬ、この認識は共有されておりまして、エネルギー協力の協議が続いております。政府としましては、今後ともこういう形での日米エネルギー協力を拡充してまいりたい、かように考えております。
  299. 田中慶秋

    田中(慶)委員 時間が参りましたので終わりますけれども、いずれにしてもこれからの大変厳しい環境の問題でありますので、大臣初めそれぞれの外国に出ている皆さんとより連携を密にして、これらの問題に積極的に取り組んでいただくことを要望して、私の質問を終わります。
  300. 安井吉典

  301. 中川利三郎

    中川(利)委員 巨額な不良融資が指摘され、問題になっております平和相互銀行での融資の実態等の解明につきましては別の機会にただすことにいたしまして、本日は限られた時間でございますので、平和相互銀行と安倍外務大臣との関係についてお伺いいたします。  最初に大蔵省にお伺いするのでありますが、大蔵省は八月二十日から平和相互銀行に対し定期検査に入っております。検査に入ってからほぼ三カ月半の日時を費やしているのでありまして、銀行に対する検査期間の長さは異例中の異例でございます。平和相互銀行に対する検査項目はどんな内容なのか、検査はいつごろ終わる見通しなのか、明らかにしていただきたいと思います。
  302. 増田煕男

    ○増田説明員 お答えします。  平和相互銀行に対します検査は、先生御指摘のとおり去る八月二十日から行っておりますが、調べるべきは調べるという観点から厳正に進めておりまして、まだある程度の時間がかかる見込みでございます。いつまでと期限を決めておるわけではございません。  また、検査内容といいますか、項目でございますけれども、金融機関の健全性確保という観点から業務全般にわたりまして検査を行っております。
  303. 中川利三郎

    中川(利)委員 世間では、この不良債権、特に平和相互銀行の第三分類、回収困難ですね、第四分類、回収不能ですね、この分類債権が二千億円とも言われておるわけでありますが、この点について大蔵省はどのように把握しておりますか。
  304. 増田煕男

    ○増田説明員 お答えいたします。  現在検査が続行中でございまして、検査結果はまだ確定してございません。ただ、いずれにいたしましても、個別検査内容につきましては答弁を差し控えさせていただくことになっております。
  305. 中川利三郎

    中川(利)委員 答弁を差し控えるということでありますが、さらに大蔵省にお聞きします。  平和相互銀行はいつごろから巨額の不良債権を抱えるようになったのか、この点について大蔵省はどう承知しておりますか。
  306. 増田煕男

    ○増田説明員 資産の内容につきましては、検査の都度調べておりまして、その都度それなりの実態というものが把握されておりますが、今回の検査につきましては目下続行中でございます。
  307. 中川利三郎

    中川(利)委員 いつごろから巨額の不良債権を抱えるようになったのですかと聞いておるのです。
  308. 増田煕男

    ○増田説明員 そのことを含めまして、目下検査中でございます。
  309. 中川利三郎

    中川(利)委員 それも答えられない。この十年間、平和相互銀行に対する大蔵省の検査は、昭和五十二年六月、昭和五十四年十一月、昭和五十六年八月、昭和五十八年七月、そしてことしの八月、ほぼ二年置きに検査に入っておりますね。間違いありませんね。
  310. 増田煕男

    ○増田説明員 間違いございません。
  311. 中川利三郎

    中川(利)委員 世間一般では、平和相互銀行は、創業者が死亡した昭和五十四年ごろから銀行内部での対立があり、銀行関連企業への乱脈融資が問題化しておったわけであります。事実、私ども調査によっても、五十四年当時の融資状況は、この銀行の関連企業への融資が非常に高いことが証明されております。検査に入っている大蔵省は、当然このことを承知しているはずでありますね。担保不足だとか追い貸しなどの不良融資をこの銀行の関連企業に集中したことが、今日の経営危機を招いた原因にもなっていることはもう当然であります。大蔵省は毎回の検査でこの点を指摘し、改善を銀行に伝えてきたのか、それとも、大蔵省が伝えても銀行側が聞き入れる状態でなかったのかどうか、この点はどうなんですか。
  312. 増田煕男

    ○増田説明員 お答えいたします。  これまでも、平和相互銀行に対しましては、検査の実施の都度、経営姿勢、特に与信姿勢の厳正化、融資体制の改善強化、与信構造の是正、大口信用集中の排除などにつきまして、厳正な指導を行ってまいっております。
  313. 中川利三郎

    中川(利)委員 厳正な指導を行ってきて、なおかつどんどんこのような社会問題が発生するということ。したがって、私が聞いたことは、大蔵省がそういうことを指導しても銀行側に聞き入れるそういう状態があったのかどうかということ。でなければこういうふうにならないのですから、この点はどうなんですかということを聞いたのです。
  314. 増田煕男

    ○増田説明員 お答えいたします。  その都度指摘すべきはしてきておりまして、それに対しまして金融機関といたしましても、それに対応してこたえてくれたと思います。
  315. 中川利三郎

    中川(利)委員 あなたはその都度指摘したと言う。それをこたえてくれたと思う、大蔵省の意向を。こたえてくれたものなら、なぜこんな状態になるのですか。現状ではどうですか。皆さんの指導で今銀行の頭取がかわったとかなんとか言っているけれども、そういう皆さんの意向をはっきり経営陣が受け入れるという状況があるかどうかということを重ねてお伺いします。
  316. 増田煕男

    ○増田説明員 今回の検査につきましては、御指摘のとおり、ややいつもよりも時間をかけまして綿密な検査を行っております。従来ですと大体一カ月前後で行ってまいったわけですけれども、今回既に三カ月以上ということで、かなり時間をかけて綿密に検査しております。さらにまた調べるべきことが残っているというふうに考えておりまして、その処置については検査が終わった段階でまた考えさせていただきたいと思います。
  317. 中川利三郎

    中川(利)委員 大分苦しいお答えのようでありますが、大蔵省は毎回の検査で、平和相互銀行の自分の関連企業への融資状況、実態については当然承知しているはずですね。担保不足だとか追い貸しなどの不良融資を、これは当然割り出せるはずであります。そうでなければ検査を行う意味がないわけでありまして、平和相互銀行の乱脈融資に根本的にメスを入れる機会は幾らでもあったはずだと思うのです。預金者保護や信用不安を招いた責任の一端は監督官庁である大蔵省にもあることを、私は強く指摘をしておきたいと思うわけであります。  それでは、本論の安倍外務大臣にお聞きするのでありますが、平和相互銀行の監査役に伊坂重昭氏という人物がおりますが、この伊坂氏と外務大臣はどの程度懇意な間柄ですか。
  318. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 二、三度会ったことがありますから、その程度です。
  319. 中川利三郎

    中川(利)委員 二、三度会ったことがある、その程度の方が、とりわけ、この伊坂氏は平和相互銀行の中では監査役のポストでございますけれども、いわば銀行の実権を握っておる、こういうことが今大きく注目されておる人物であります。あなたの政治資金団体に晋太郎会というのがございますけれども、この伊坂さんがあなたの晋太郎会に五十八年十二月十七日百万円、五十九年十二月十五日百万円、それぞれ寄附をしておりますけれども外務大臣は承知しておりますか。
  320. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 私が知ったのは、確か平和相互銀行のそういう立場に立つ弁護士をしておられまして、そのとき知り合って、あと平和相互銀行、私に全然関係ありませんし、別に平和相互銀行とかその関連とかいう関係ではなくてつき合っている個人的な関係です。
  321. 中川利三郎

    中川(利)委員 二、三回しか会っていない人が、個人的な関係ということであなたに二年も連続してお金を献金するというようなことは、世間一般の常識では通らない話でありますが、私、なぜこういうことを申し上げるかというと、ほかの企業に比べまして、金融機関というのは非常に高い公共性や社会的責任を持っているわけです。その金融機関の一つである平和相互銀行の経営危機が、先ほどの大蔵省の答弁の中にも明らかになっておりますように、相当前から明らかになっているわけです。しかも、その原因が銀行関連企業への不良融資に端を発していることははっきりしておるわけでありまして、銀行経営者の責任というものは重いものがあるわけです。  特に私が申し上げたいのは、今ほど申し上げました伊坂さんという方、この方は、平和相銀の融資の中に伊坂氏関係という特別な形で六十九億二千万円の融資がなされておる、こう言われているわけであります。個人とはいえ、問題ある銀行の経営者の一人である人物から、そのことが既に指摘されておる一人から政治献金を受けておるのはいかがかと思うわけでありますが、この点、外務大臣見解をお聞きしたいのであります。
  322. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 別に個人的な関係、二、三回というのはそうなんですよ、そんな何回も会っているわけではありません、お互い忙しいのですから。ですから、別にそれがどうだこうだと言われる筋合いはないと思います。  私は、平和相互銀行と何も関係があるわけではありませんし、伊坂さんから個人的に——今初めて御指摘があったのですから調べてみなければわかりませんけれども、政治資金を受けておった、それは個人的なあれで、ちゃんと政治資金として届け出ておれば、それで別に何も間違いないと思いますね。何か平和相互と関係があるとかなんとかということなら別ですけれども、何もありませんから。  また、平和相互銀行が今問題になっているのですよね。それまで別に何かそういう関係を我々知っておるわけではありませんし、今いろいろと大蔵省も調査に入って、世間でもいろいろと問題が出ておるということは、最近の事態として私は知っております。
  323. 中川利三郎

    中川(利)委員 平和相互銀行が今問題になったのではないのです。大蔵省でさえも先ほどの答弁や質問の中にも明らかなように、あの前創業者が亡くなったその当時からいろいろ問題になっておって、社会的なそういう問題がうわさされていたことは、あなた、政治家である以上おわかりだと思うのです。個人だからといって、この伊坂さんという方は決して平和相銀と離れた個人ではないわけであります。しかもこの方が実権者といいますか、実権派の頭といいますか、言い方がいろいろあるでしょうけれども、そういう、個人からもらったから関係ないんだ、おれは平和相銀のことは全然知らないんだということは通らないと私は思うのです。  特に私が申し上げたいのは、今あなたはニューリーダーということになっておりますけれども、いろいろなニューリーダーが二、三おりますが、お互いに集全迫ヘを競争し合うというような状況が一つあるわけですね。そういうことをやっていけば、やはり出てくる結論は、金権腐敗政治ということに落ちつかざるを得ないわけでありまして、法律的にはあなたちゃんと届け出ているというから、それは問題ないということはわかりますよ。だけれども外務大臣の政治姿勢、道義的には一体どうなんだということを私は先ほどからお聞きしているのでありまして、改めてお答えいただきたいと思います。
  324. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 先ほどお答えしたとおりで、何もそれ以上答えることはありません。
  325. 中川利三郎

    中川(利)委員 あなたは先ほど、調べてみるということさえおっしゃっているのです。何でもないなら調べてみる必要もないはずでありますが、何かじくじたるものがあるからそういうお答えがあったと私は思うのです。外交というのは諸外国に対しても公正で清廉なことが求められているわけでありまして、そのことによって諸外国との本当の友好が図られるわけであります。その任の最高責任者であるあなたが社会的に問題になっている企業の役員からこのような寄附を受けているということ、政治姿勢の問題として重大だと私は思うのです。余計なことかもわかりませんが、そういうことを少しでも反省するなら、今からでも遅くないからお返しになったらどうかと私は言いたいのでありますが、この点についてはどうです。
  326. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 別にやましいところは何もありませんから、何か特別に関係があるような話ですが、そんなことはないですから、はっきり言っておきます。  それから、もうあなたの方で調べられたのでしょうから、私は調べるまでもない、政治献金として届け出ていれば、そのとおりだと思いますね。
  327. 中川利三郎

    中川(利)委員 やはり安倍さん、今の自民党のニューリーダーのセンス、感覚、時代感覚、とにかく届けさえすれば何でもいい、そういう姿勢だということを、私、改めて勉強したわけではないのですけれども、改めてあなたに対する認識を、こういうものかな、この程度かなということがわかったということを申し上げまして、終わらせていただきます。
  328. 安井吉典

    安井委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時一分散会