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1985-12-13 第103回国会 衆議院 外務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年十二月十三日(金曜日)     午前十時三分開議 出席委員   委員長 愛野興一郎君    理事 奥田 敬和君 理事 北川 石松君    理事 野上  徹君 理事 浜田卓二郎君    理事 井上 普方君 理事 土井たか子君    理事 玉城 栄一君 理事 渡辺  朗君       鍵田忠三郎君    中山 正暉君       仲村 正治君    西山敬次郎君       小林  進君    大久保直彦君       渡部 一郎君    岡崎万寿秀君  出席国務大臣         外 務 大 臣 安倍晋太郎君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議室長         兼内閣総理大臣         官房審議室長  的場 順三君         内閣法制局第一         部長      工藤 敦夫君         外務大臣官房外         務報道官    波多野敬雄君         外務省北米局長 藤井 宏昭君         外務省欧亜局長 西山 健彦君         外務省中近東ア         フリカ局長   三宅 和助君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省情報調査         局長      渡辺 幸治君         文部省初等中等         教育局長    高石 邦男君         文化庁次長   加戸 守行君         厚生省援護局長 水田  努君  委員外出席者         外務大臣官房外         務参事官    柳井 俊二君         外務省アジア局         南西アジア課長 河村 悦孝君         外務委員会調査         室長      高橋 文雄君     ―――――――――――――  委員の異動 十二月十日  辞任          補欠選任   木下敬之助君      伊藤 昌弘君 同日  辞任          補欠選任   伊藤 昌弘君      木下敬之助君     ――――――――――――― 十二月九日  核トマホーク積載艦船日本寄港反対等に関す  る請願外一件(土井たか子君紹介)(第一四五  七号) 同月十日  捕虜の待遇に関する千九百四十九年八月十二日  のジュネーヴ条約に関する請願渡部行雄君紹  介)(第一五八八号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 愛野興一郎

    愛野委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小林進君。
  3. 小林進

    小林(進)委員 これは内閣官房長官にまずお伺いいたしますが、櫻内義雄さんという前外務大臣がいらっしゃいます。この方は、中曽根派閥重要幹部でいらっしゃるということを承っておりますが、この派閥の中ではどれぐらいのランクと言ってはなんでございますけれども、その関係を承っておきたい。いや、これは決して枝葉の問題じゃありませんよ。やはり重大な関係がありますから、私は速記録をつけてお伺いしているのであります。どうかひとつ、まじめにお答えを願いたいと思う。
  4. 的場順三

    的場政府委員 私からお答えするのが適当かどうかという問題はございますが、いわゆる中曽根派会長というふうに存じておりますが……。
  5. 小林進

    小林(進)委員 よく答えていただきました。そのとおりでございまして、これは何も秘密にしておくことじゃない。  中曽根派会長でいらっしゃるこの櫻内さんが、十二月の初句に中国おいでになって、それで呉学謙外務部長とお会いになっておる。その会見の後で、北京記者会見をおやりになっているわけであります。その内容は、客観的にだれが見ても、やはり総理・総裁あるいは官房長官等意向を十分持って、外務部長との会見にも臨んでおられると憶測するに足る発言が多いのであります。でありまするから、今内閣その他行政府の重要なポストについていられないとしても、その発言は非常に重いと見なくてはいけない。  その発言を見てまいりますと、靖国神社A級戦犯合祀をされていることは、戦犯を認めたサンフランシスコ条約第十一条から見て確かに問題がありますという疑問を表明をされた、こういうことが報ぜられているのでありまするが、この点どうですか。これは間違いはございませんか。  だから私は、こういうことは官房長官出席していただきたいと言うのでありまするが、官房長官いらっしゃらない。外務大臣は一応対外国との関係ですから、あるいは御答弁願わなくちゃならぬかもしれませんけれども、これは派閥が違いますからな、外務大臣には事の真相はどうも伝わっていないのではないかという懸念がある。ただ靖国神社に関する限りは、どうも総理大臣外務大臣の間に若干認識相違、問題のとらえ方の相違、感じ方の相違があるような気がして仕方がない。  だから、この際私は、総理大臣に一番身近な官房長官から本当の話を聞きたいと思って、再三再四この委員会官房長官出席を願っているのでありまするけれども、どうも外務委員長、どういうわけか、私の要望に対しては一つもこたえてくださらない。あるいは、私がなめられているのか外務委員長がなめられているのか。こういう点は、やはりもう少し立法府権威というものを重んじてもらわなくちゃならぬ。何か行政府の長になると、立法府なんか出てくるものじゃないと思っている。自分の所管以外の委員会は、出てくるものじゃないと思っている。これは間違いです。大変間違いです。憲法を一度見直してください。立法府は国権の最高機関、そういう機関なんだ。  確かに、この国が民主主義である限りは、国民最高権力者。その最高権力者代表して我々出ているのです。行政府の長であろうと総理大臣であろうと官房長官であろうと、その主権者の要望する、主権者代表の前には辞を低うして出てくるのが当たり前です。それぐらいの形ができ上がらなければ、民主政治なんというものは成り立ちませんよ。その点、ひとつまずちゃんと腹を決めて、我々やはりただすべき問題をひとつ詰めようと思って要求したときには、総理も来い、官房長官も来い、それくらいの権威外務委員長が持たなければどうにも問題になりません。官房長官を呼んでくださいよ。呼べませんか。今の私の質問に、官房長官に成りかわって立派な答弁ができるというなら、答弁を聞きましょう。
  6. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 櫻内外務大臣が今回中国訪問をされたのは、日本国際貿易促進協会国貿促会長櫻内さんはやっておられますから、その会長という立場で訪中されたというふうに聞いております。なお、前外務大臣という立場でもありますし、今お話がありましたように確かに党内の中曽根派会長という立場もそれはあるわけでしょうが、正式な立場国貿促会長ということで訪問されたわけです。中国側との意見交換もされまして、そのときの要人との会談内容について、私も櫻内さんから直接お話を承っております。  今お話がありました呉学謙外交部長との会見では、櫻内会長より、日中関係については、胡耀邦書記から十月に日中友好二十一世紀委員会メンバーに対し四つ意見が示されたが、そのような考えていきたいという趣旨の中曽根総理のお考えを伝えたところ、呉学謙外相より、総理のメッセージに謝意を表するとともに、日中関係につき両国政府がともに努力をし、相手国国民気持ちを傷つけるような行動は避け、両国友好協力関係を発展させたいとの発言があった、こういうふうに直接聞いております。  それから先ほどお話しの、櫻内さんが靖国神社へのA級戦犯合祀サンフランシスコ条約第十一条との絡みで問題があるという見解を示した、こういうことでございますが、これに対しましては、サンフランシスコ平和条約第十一条で我が国が極東国際軍事裁判所の裁判を受諾したことは御承知のとおりでございますが、靖国神社にだれを合祀するかにつきましては宗教法人靖国神社が決めるものであって、政府としてこれを云々するという立場ではございません。櫻内さんは櫻内さんの御意見があるとも思いますけれども、しかし政府見解を申し述べれば、これはあくまでも宗教法人靖国神社が決めるものである、こういうふうに解釈をいたしております。
  7. 小林進

    小林(進)委員 今外務大臣のおっしゃった、靖国神社宗教法人政教分離ができて国家とは、日本政府とは何にも関係がない、これは公式的通り一遍の御答弁ですけれども、それは、この前の質問でも言ったようにもう崩れているのです。だから、厚生省なんというものは全く理屈にならない。泥棒にも三分の理屈と言うけれども、三分にもならぬような理屈で牽強付会な答弁をしているけれども、そんなようなひきょうなごまかしの答弁はとても、立法府の中で、公式討論の中で許されるべきじゃありません。これはまた後でやります。  今おっしゃった政教分離靖国神社は独立しているから自主的に決めるんだという、その答弁はいただくわけにはまいりません。それが政府の公式の見解だとすると、そんな公式の見解はだめです。それはいただきません。そんなことをやったら日本アジアで孤立しますよ。国際的にも今孤立するという心配があるから、私は執拗にこの問題を繰り返しているのです。我々が四十年かかって日中の平和条約、子々孫々に至るまで仲よくいこうと一生懸命に積み立ててきて四十年苦労した、それが今一朝に瓦解するような非常に危険な状態にあるじゃないですか。それを政府認識していない。ましてや、小わっぱ役人と言っては悪いけれども、官僚なんというものはちっとも問題の重大性なんか理解していない。委員会でも、こういうような小ざかしい答弁で逃げていけばそれでよろしいと思っているが、それはだめです。この問題は、国の本質に関する重大問題ですから、私は何回でもやるんだ。政府姿勢が変わるまでは、三百六十五日、継続してやりますよ。それぐらい問題が重要性があるから、私はとなっているのだ。  今おっしゃった中で、櫻内さんのことはそのとおりです。前外務大臣国際貿促会長です。それは前の藤山愛一郎先生が亡くなられたから、それを引き継いで去年から彼が会長になったけれども、国際貿促会長が行って、何で靖国神社の問題を呉学謙外交部長と話をする必要がある。そこに出ている話は、国貿促という貿易関係とは全然関係がない。中曽根総理のエージェントと言ってはなんだけれども、代理として行ったとしか思えないような発言が幾つも出ている。今あなたのおっしゃったのはそれは公式の話で、だれか官僚の書いた文章を外務大臣がお読みになっただけだろうけれども、そんな通り一遍の答弁ではだめですよ。問題の解決になりません。  そこで、まだ詰めていきますけれども、中曽根首相は、靖国神社からA級戦犯分離することで、公式参拝問題に解決を図りたいという意向だ。この意向を受けて櫻内さんが呉学謙との会見をやられた、これが一般の推定ですが、これは間違っていませんか、どうです。間違っていませんか。――答えがない。
  8. 的場順三

    的場政府委員 大変重要な問題でございますし、事務のお答えする話かどうかという問題はございますけれども、櫻内先生自由民主党遺家族議員協議会会長というお立場でもあられますので、そういった点からお話をなさったのではないかというふうに推定いたしております。  もし、総理あるいは官房長官が今おっしゃったような、新聞にもそういう記事がございますけれども、そういうことをお考えてあれば、事務の私たちにも意向をおろされるでございましょうし、それから本来、建前からいきますと、これは靖国神社自主裁量の範囲の話でございますから、政府としては、その靖国神社がだれを合祀するかということについていろいろ意見を申し上げるということは、差し控えるべき事柄でございます。
  9. 小林進

    小林(進)委員 それはあなた、中曽根さんが、いわゆるA級戦犯靖国神社合祀から分離する、分離することによってこの問題に対外的な関係も含めて終止符を打ちたいという意向櫻内さんに持たして、そして中国へやらせたということをこの場で正式に認めれば、これは首相立場もないだろうから、あなたのようなわけのわからぬ、愚にもつかない答弁で逃れる以外にないのだろうけれども、余り人を小ばかにしたような答弁をしなさんなよ。役人の小手先で我々はここでやりとりするわけじゃないのだ。あなた、だれが聞いてもわかるようなちゃんとした答弁をしなさい。そういう小ざかしいことを言ってはいけない。  それではまた続けて言いますよ。櫻内さんは北京における記者会見の中で、いいですか、なぜ一体A級戦犯なんか祭ったかということから解説しているのです。なぜA級を祭ったかと言えば、日本遺族会が七年前に目立たないような形で戦犯合祀したことから始まった。その七年前に、公に合祀をするとあるいはやかましい国会議員等が騒ぐだろうから、そういうような騒ぎを起こさせぬようにこっそり祭ったのだ、こういうことを説明している。これは櫻内さんが説明しているのだよ。だれが櫻内さんに教えたかどうか知らぬけれども、これは官房長官が教えたのじゃないの、どうですか。政府で話し合って行ったんじゃないの。
  10. 的場順三

    的場政府委員 先ほど申し上げましたように、櫻内先生がどういうおつもりで言われたのかということは、御本人に伺う以外に手がないわけでございますが、自由民主党遺家族議員協議会会長でございまして、この靖国問題等については大変深い御見識をお持ちでございますから、そのお立場御存じであったのだろうと推定いたします。
  11. 小林進

    小林(進)委員 私も、櫻内氏とは個人的に非常に親しい。親しいだけに私はこの問題については、あえて彼の見解を聞いてない。聞けば、みんなあなたと違ったことをおれに教えるだろうから、だから聞かないんだ、恥かかしては悪いから。しかし、あなたたちは、そういうこともちゃんと勘定に入れて答えてくださいよ。いいですか。  そのときに櫻内氏は、記者会見でこういうことも言っているのですよ。今後、靖国神社公式参拝をどう取り扱うかという問題について、日本遺族会会長村上勇氏から長谷川峻衆議院議員に交代した、このことは挙げて長谷川君が靖国神社はおかしいぞと思うというところから解決をしなければならないと思う、こう櫻内氏は述べている。中曽根派閥会長ですよ。中曽根さんに一番近い人ですよ。その彼が、遺族会会長がかわった、かわった現会長長谷川峻君がどうもこれはおかしいじゃないかと思ってくれることから問題の解決に着手しなければならない、こういうことを言っているという。この点は何を指すんでしょうかね。官房長官、お聞かせいただきたい。
  12. 的場順三

    的場政府委員 先ほど来申し上げておりますように、櫻内先生靖国神社の諸般の問題につきまして従来から大変御熱心でございますし、自由民主党には自由民主党としてのいろいろなお立場があり、お考えがある。そういうお考え櫻内先生がやっておられるのではないかと推定する以外に、お答えする方法がございません。
  13. 小林進

    小林(進)委員 全く私がここで何ぼ質問したって、壁に向かって物を言っているようなものだ。委員長御存じでしょう。この委員会権威をお考えになったり、私の言っていることが国の基本に関する重大問題だと思ったら、いま少しまともな答えがはね返ってくるような政府委員を出してくださいよ。それが官房長官であり総理大臣なんだ。何も総理大臣がここに来れない理由はないし、官房長官が来れない理由はないんだ。わけのわからない者を出して時間だけを空費するというようなことは、実際遺憾にたえない、残念にたえない。まだ問題の本質をとらえて――委員長も、本質をとらえておいでにならぬのじゃないかと思うのです。何も意地悪でこんなことをやっているんじゃない。国の存立に関する、国の基本に関することだから私は質問しているんだ。  さらに続けますけれども、なお櫻内さんはこういうことを言っている。遺族会A級戦犯分離について靖国神社話し合いに入る、遺族会A級戦犯合祀の問題について靖国神社との話し合いに入るということを、これは言明したというんじゃないんだ、示唆をしたというんだ。北京における新聞談話において示唆をしたというんだな。そういうことはありますか。聞いたってむだだろうけれども、本人示唆した。  同氏は、また言葉を継いで、遺族会平和条約第十一条については了解している。遺族会はというのだから、ここでは遺族会代表する長谷川峻氏がこれに了解しているということなのか、遺族会幹部全部が了解しているのか、この点は不明ですが、櫻内氏は、遺族会平和条約第十一条については了解しているということを強調した。これは示唆じゃない、非常に強調したというのだ。こういうことは、これは裏を返して、推定ですけれども、十一条に基づく戦犯十四名だけは合祀を取り消すということを強調したととらざるを得ない。この点はどうですか、官房長官A級戦犯十四名、平和条約十一条に基づいて、靖国神社話し合いをしてこれを取り下げるということを強調したと言っているんだから、少なくとも遺族会遺族会代表内閣総理大臣あるいは官房長官の間にこのような話ができ上がっているのですか。でき上がっておりますか、おりませんか。わからないなら、ちょっと電話をかけて官房長官総理大臣に聞いてください。
  14. 的場順三

    的場政府委員 総理官房長官と党のお考えの間に意思の統一が図られて、党の方でいろいろなことを言っておられるということはないと思います。党には党のいろいろなお考えがあってそのお立場遺族会遺族会のお立場があってその考えで動いておられるのだと思っております。
  15. 小林進

    小林(進)委員 とにかくあなたは官僚だからそれ以上のことを、政治の場面における総理官房長官のことをしゃべれぬと私は思うから全く困ってしまうんだ。けれども、櫻内さんは、先ほども言うように中曽根総理との、いわゆる会長とか身内よりも近い仲においてこういうことを強調されているんだから、これはよっぽど政府意向総理意向官房長官意向代表して言っているものととるのが普通なんだ。さもなければ、戦犯靖国神社合祀から取り外しますということを強調した、そういうことまで言明できるわけないじゃないですか。これはいま一回、あなたは答えられないのだから、これはネックにしておきます。改めて官房長官から、あなたは私の質問に対する回答を持って、いま一度私のところへ寄せてください。いいですか。  委員長、こういうことがありますから、それもちゃんと含んでおいてください。いいですか。A級戦犯靖国神社合祀から外すという話は、ちゃんと遺族会との話し合いでできているんだということが真実真実でないかという回答だけは、官房長官に、直接に私にお答えいただきたい。わかりましたか。これを注文しておきます。  さっき外務大臣が言われたように、そのとき櫻内氏は呉学謙外相との会見で、靖国問題は胡耀邦書記日中友好関係発展のための四つ意見に基づいて対処したいとの、その四つ意見に対して中曽根さんが伝言を託されたということについて、呉学謙外相謝辞を述べられたということはそのとおりである。それは会見の中の一部分に入っている。入っているが、問題はそれで済んでいるのじゃない。その呉学謙中曽根書簡について感謝をしたというところの総体的な雰囲気として、それに立ち会った有力な北京側中国側所見がそれにつけ加えられている。その所見は何かと言えば、呉学謙外相日本政府中国人民感情を傷つけるようなことを避けるよう要望したというのです。感謝もしながらつけ加えて、日本政府中国人民感情を傷つけないようにしてもらいたいということを要望された。  それで、その前後の関係から見て、靖国神社の問題はまだ中国側においては決して解決をしていないという姿勢外務部長は示したものだ、こういうふうに解説を加えているんですよ。先ほど外務大臣説明では、謝辞を呈して、何かこれで感謝したような話だけで終わったが、中国側解釈はそうじゃないんだ。感謝をしながら、まだ中国人民感情を害さないでくれ、靖国神社の問題は未解決ですということを呉学謙は言外に述べているんだ、こういう解説なんですよ。だから、同じ言葉のやりとりでも、これほど大きな開きがあるんですよ。  外務大臣いかがですか。この私どもの解釈がいいのか、さっきの外務大臣の御答弁で、もうこれで済んだのだという解釈でいいのか、どっちが本当か。
  16. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私も、この前の答弁ではっきり言っておりますが、呉学謙さんのお話は、櫻内さんに対するお話、私が会ったときのお話とも変わっておりません。これはやはり、日本側説明については十分わかったけれども、しかし中国人民感情を傷つけないようにしてほしいということは、呉学謙さんは私のときの会談でも言っておられます。同様のことを、櫻内さんとの会談でも言っておられます。これはもう一貫しておるというふうに思っております。
  17. 小林進

    小林(進)委員 外務大臣の御認識はやや正鵠に近いと思っておりまして、これは中国人民に対して今中国の首脳が全力を挙げて努力をしている最中、あなたが呉学謙外務大臣にお会いになった。彼が非常にあなたに感謝をした。感謝をしながら、今述べたように、中国人民感情を害さないようにしてくれということをつけ加えられた。ところがそのとき、あなたに直接かあるいはあなたの随行者にかどうか知らぬけれども、呉学謙部長が、今の中国北京、西安、その他藩陽で、学生がデモなんかで非常に大騒ぎをしております、それを鎮圧するために苦労しておるが、あれはあんなものではないのですよ、それはもう中国全土にこの反日感情抗日感情は広がって蜂起しておるんです、それはもう大変なものですということをささやかれた、こういうふうに言われたというのですが、これはあなたに言われたんですか、あなたに直接じゃないのですか。呉学謙部長が言われたことは、これは私も情報は取っているが、お聞きになりましたか。
  18. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今の小林さんのような説明ではありませんでしたが、呉学謙部長から中国学生動きについてお話がありました。これに対して、鎮圧するとかしないとかいうふうな御発言ではございませんが、中国政府としてもいろいろと説明をしておる、説得をしておる、こういうふうな説明をしておるというふうなことであったように思います。中国のそうした動き中国人民動き学生動き、そういった面についてはお話がございました。
  19. 小林進

    小林(進)委員 今一週間もたちませんけれども、例の北京胡耀邦書記が、日中戦争については、この先今後なお四十年間中国人民は忘れることができない、なぜかと言えば、私もその先はちょっと聞き違いかもしれません、私の推定がありますけれども、アヘン戦争じゃないかと思いますが、その戦争中国人が心の痛みを忘れ去るにはちょうど八十年かかった。これはどうも八十年かかったということは、香港返還の問題について説明されているのかと思うのでありますが、ともかく八十年間。それから見れば日中戦争はまだ済んで四十年、ちょうど半分だ。まだこの先四十年はこれを忘れることはできない、言いかえれば、日本の不当なる侵略戦争によって中国人民が受けたこの痛み、この恨み、この悲しみは、なお今後四十年どうしても忘れることができないということを発言されたというのでありまするが、外務大臣はこれをお聞きになったかどうか。これは、日本のマスコミ、テレビも放送したことでありますからお聞きになったと思いまするが、それに対する所感を承りたいと思います。
  20. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 かつての中国との戦争において日本中国に与えた多大な損害、あるいはまた中国人民の受けた非常な惨禍、多くの犠牲者が出ました。これに対しては、中国人たちが忘れることができない気持ちを持っておられることは十分理解ができるわけでございますし、日本としても、その点は常に反省をしながら中国との交わりを進めていかなければならない、こうした基本的な立場につきましては、日中共同声明にも、中国に与えた損害というものを反省をして日中関係を発展していきたいという趣旨のことが書かれておるわけでございまして、これは日中関係を進める上における日本政府あるいは日本国民基本でなければならぬ、こういうふうに思っております。
  21. 小林進

    小林(進)委員 外務大臣がおっしゃった、そのお言葉のとおりだと思いますよ。常に加害者としての立場を反省しながら友好を続けていかなければならないというその基本姿勢は、私は全くそのとおりだと思うのでありまするが、しかし、残念ながら日本の首脳部――あなたも首脳部ですけれども、あなたを除外するとしても、首脳部にそれができてない。それから日本国民の中にもそれができてない。これが一番問題の本質だと私は思うのであります。  くどいようでありまするけれども、四十年前の第二次世界大戦、我々は敗戦国。敗戦国の仲間は、ドイツであり、イタリア。その敗戦国が、いわゆる不当戦争の挑発者として戦勝国側から非常に追及をされた。しかし、それに対して、今の戦勝国側のこの三つの敗戦国に対する考えが皆違っている。これは私は、全く本質だと思うのですが、イタリアは御承知のとおり、敗戦に近づいたときにイタリアの国民が立ち上がった。こんな不当な侵略戦争で我々イタリア人民を痛めつけ、世界の平和を破ったその張本人はムソリーニとファッショだ。そのファシズムを、我々イタリア国民はこれをひとつ排撃し、排除しなければならないといって、レジスタンスに立ち上がり、ムソリーニを殺してしまった。同時に、イタリア人民国民の手で、このファッショ、ファシズムの追撃を徹底的にやった。そして戦争の贖罪を、平和を愛する世界人民の前にその姿勢を示した。これが敗戦に処したイタリア人民姿勢であった。  ドイツはどうですか。ドイツは御承知のとおり、ヒトラーは愛人とともに自殺をして死んだ。それから連合軍はドイツを占領したけれども、その中でやはりドイツの国民は、占領軍の政策に抵抗する前に彼もはヒトラーのナチズムに対する怒りを爆発させた。ヒトラーの誤れる戦争政策、侵略政策、これが我々ドイツ国民をこんなに苦しめ、悲惨と苦しみを与えたんだ。同時に、世界の平和、ヨーロッパの平和を乱したのは、このヒトラーを頂点とする誤れるナチス、ナチズムなんだから、これを徹底的に追撃しなくちゃいけないという、あのドイツ国民の怒りが爆発して、今、四十年たってもどうですか、あのナチズム、戦争を挑発したナチズムの首謀というものは、世界のどこへ隠れていようと、ドイツ国民は一生懸命追及している。二、三年前も、ラテンアメリカのどこかに隠れていたナチスの一首脳がやはり見つけ出されて、そしてドイツ国民の手によって裁判にかけられて、厳重なる処罰を受けているという。こういう平和を愛するそれぞれの国民の怒りが爆発して、戦争を挑発したその国の指導者に対して大きな懲罰を与えているんだな。  それに対して日本はどうかというんだ。日本は、このイタリア、ドイツとともに同じように戦争を挑発し、加害し、やったけれども、ナチスを排撃するドイツ国民、ファシズムを排撃するイタリア国民のような運動が、戦後ついに日本に起きてこなかった。それで、一億国民総ざんげなどと言って、戦争した者もしない者も、賛成した者も反対した者も、戦争を計画した者も計画せられた者も、一律同様にみんな反省しようということで問題の処理がおさまってしまった。これが四十年たって、アジアの国々から日本はおかしいじゃないか、こんなことで、一体我々は何のために極東裁判をやったり、日本から賠償を取ったり――あるいは賠償を取らない国もあるが、それぞれ戦争を処理をしてきたか、それが日本では一つも実っていないではないかという、これが中国人民の怒りであり、台湾の人民の怒りであり、南北朝鮮の怒りであり、アジアにおける国々の怒りなんだ。  そういうところを指導者である政府がいま少し反省してくれればいいのに、靖国神社公式参拝でございます、なぜ参拝するか、これは殉難者だ、国の平和と安全と日本国民のために戦ってくれた英霊だからお参りするんだ。そこには、戦争挑発者に対する怒りもなければ反省もない。これが、日本国民は別として、アジア靖国神社公式参拝を頂点にして今火を噴いている根本の理由なんですよ。これを大いに反省してもらわなければ問題の解決にならない。靖国神社A級戦犯だけを取り外せば、また公式参拝に行っても一向に支障もないだろう、そんな甘っちょろい問題ではない。先ほどから私が繰り返しておりますように、四十年続けてきた日本の平和政策、これが今がらがらと崩れようとしている重大問題だから、私はこうやって執拗に質問している。この反省です。  このための基本点をとこか政治の場で明らかにしなければ、問題の解決になりません。問題は、靖国神社じゃありませんよ。ドイツやイタリアと非常に変わっている戦争処理のあり方が、こうした靖国神社公式参拝の問題を契機として今火を噴いているのだという、くどいようですが、それをひとつ大いに反省してもらわなければならない。官房長官はもちろんでありますが、中曽根さんにも反省してもらわなければならない。反省してもらわなければだめです。  私は、繰り返し申しまするが、そういうように日本が一つの反省の上に立っていく、そのためには今当面している問題は何か。今、私が申し上げました原則を認めていただくとするならば、未解決の問題はたくさんある。A級戦犯十四名だけを除いたらいいだろう、それではB級はどうなるか、極東裁判でやられたことは同じなんです。しかし、私はこの前も申し上げましたよ、A級とB級は違う。B級は、主として捕虜を虐待したとか、あるいは戦争途中において何々をしたとか、だから俘虜収容所の職員やらあるいは憲兵隊等、そういうところに所属している者が多いので、中には本当に気の毒な人たちもおりますから、日本国民から見れば、戦争を計画し、戦争を挑発し、戦争を実行したそういうA級戦犯の首脳部と、B級というものは同一に考えられないという気持ちはよくわかる。しかし、極東裁判を行って厳正中立、公正にやったんだといういわゆる第三国、戦勝国側から見れば、一体この区別が許されるかどうか、相手側がこれを了承するかどうか。政府はこの問題を一体どう処置をするのかという問題がある。  先ほども言うように、あなたはまた、いやそれは靖国神社独自の問題で政府は干渉しない、対外交問題、国と国との問題が今火を噴いているときに、政府関係ありません、靖国神社が独自にやる問題ですということで、一体、対国際関係、対外交問題が済むとあなたはお考えになりますか。済むとお考えになったら、中曽根総理大臣はノーテンホアイラと申し上げても失礼じゃないと私は思う。そんな甘っちょろいものじゃない。これをひとつ外務大臣、というよりは閣僚の一人ですから、もちろんあなたは承知しているから言っている。何だ、的場君。君、眠ったような顔をして。少し目をあけていろ。君は、帰ったら、この問題で官房長官総理の耳に入るように、ちゃんと伝えてやってくれぬか。おれはまた聞きに行くよ。A級とB級をどう取り扱いの差別をするのかという、前から聞いている問題だ。答えられるかい。  きのうもおれは、きょう質問するから、ちゃんと官房長官がこれに対する答えを持って来てくれるようにと注文をつけておいた。持ってきましたか。対国際問題なんだよ。本当解決する気なら、今も言うように、遺族会を媒介として靖国神社からそういう者を排除するなどというのはちっとも困難な問題じゃない。その手段方法は、櫻内さんがちゃんと北京において説明しているじゃないですか。A級戦犯はこんな、こんな、こんな手段で排除いたしますと言っている。B級だって、政府見解が出れば、そういう手段を使って排除することができる。やる気があるのかないのかという見解を私は承りたい。これが一つです。的場君、答えますか。君はこっちだな。そうか、おれ顔を間違えた、ちょっと目が近いものだから。
  22. 的場順三

    的場政府委員 A級戦犯、B、C級戦犯戦犯についてどう考えるかというお話は、確かにいろいろあると思いますし、御指摘のような点もあると思いますが、ただ、再三再四お答えしておりますように、宗教法人靖国神社が祭神としてだれを祭るかということは靖国神社が自由になし得るところでございますので、政府としてこれに対して干渉することはできない。これは、憲法上の制約がございます。したがいまして、例えば先ほど来御質問のございます櫻内先生、これは党のいろいろなそういう問題を考えるお立場会長でもございますので、櫻内先生櫻内先生のお考え、あるいは自民党は自民党としてのお考えでいろいろお話があろうと思いますが、政府としては、これはとやかく言うことができないという問題でございます。御理解いただきたいと思います。  それからもう一つ、この前もお答えいたしましたように、靖国神社公式参拝をいたしますのは、靖国神社国民の多くから戦没者追悼の中心的な施設であると思われているという社会通念をとらまえまして、靖国神社の祭神にお参りをするのではなくて、靖国神社の場をかりて戦没者の追悼と平和の祈念をする、しかもそれは、神道儀式にのっとらない形で行うものであるということでございます。御理解をいただきたいと思います。
  23. 小林進

    小林(進)委員 今までの答弁は全部うそです。こういう答弁で国内問題、国際問題を解決できるなどと考えたら、大変な誤りですよ。先ほどからも私が言っているように、私はこの外務委員会でこれは三回やっている。今、四回目だ。  第一番目に、靖国神社は場所をかりて戦没者だけ祭るのだ、何をでたらめを言う。あれは神社宗教だとは言いながら、靖国神社というものは、宗教というものは、宗教法人の存在しているものはやかたなんだよ、鳥居なんだよ、灯籠なんだよ。仏教へ行ってごらんなさい。仏教に鳥居があるか、靖国神社のような灯籠があるか。それを全部兼ね備えることが宗教法人成立の絶対要件なんだ。鳥居も神社も関係ありません、かしわ手二つ打つところを二つ打たないで一つ打ったから、だからあの神社を何も認めたことにもお参りしたことにもならない、ただ戦没者にお参りした、そんな宗教の解釈なんというものはありません。  いやしくも一国の総理大臣ともなったら、宗教の基礎要件は何だぐらいはちゃんと勉強しておかなくちゃだめだ、それは。靖国神社の玉砂利を踏んで、あの拝殿で中に頭を下げること自体が、もはやあの神社を認めたことなんだ。あの神社をお参りしたことなんだ。かしわ手が一つや二つ、玉ぐしが懐から出ようと公の金で出ようと、そんなことは宗教の成立の一つの要件にしかすぎないのだよ、君。そうして、坊さんは衣を着るよ。それは、いわゆる仏教の成立する重大な要件だ。坊さんから衣をとったら仏教は成立しない。かねをとって仏壇をとったら成立しない。靖国神社から鳥居をとって拝殿をとったら、靖国神社は成立しないんだ。靖国神社教は成立しないんだ。そこへ行ったこと自体が、靖国神社教を認めたことだよ。君、そんなことは、あれを借り物にして、戦没者にだけお参りに行ったなんて、そういう牽強付会なことを言ってはだめです、そんなことは。子供だってそんな理屈は承知しませんよ、ばかなことを言うものじゃありませんよ。  それから今も言うように、宗教靖国神社は独立している、国家は関与してない。おれはこの前も言ったけれども、これは重大問題だからまだずっと追及しますけれども、祭神を全部決めているのは政府じゃないか。靖国神社、一人も認定していません。それは、靖国神社の宮司自体がそれを証明している。私どもには調査能力もなければ認定能力も資格もない、厚生省が認定してくれたものを、厚生省が決定してくれたものを一〇〇%お祭りしているのです。戦後二百四十数万人を祭ったけれども、これは全部第一復員局、第二復員局、それから厚生省の援護局、これが決めてくれたのを祭っている。それを、これは独立しているから政府は、行政は何にも干渉、関与していませんなんというものは、うそもうそ、真っ赤なうそだ。  そんなことで一体この場所が、この関所が通過できるとあなた思っているのか。そんなことを官房長官考えているのか、おい。そういう甘っちょろいことで、君、この場所が過ごせるものじゃありませんよ。おれは、この舞台がだめなら、また国会だって舞台は幾つもある。場所をかえて幾つでもやりますよ。なめちゃいけないよ。(「おい、ちょっと待てよ。寺に鳥居あるぞ」と呼ぶ者あり)やりなさい、やりなさい、何でもやりなさい。
  24. 愛野興一郎

    愛野委員長 質問者は、答弁者の方に向いて質問してください。
  25. 小林進

    小林(進)委員 よし、やりなさい。(「うそ言うな」と呼ぶ者あり)何を言うか。おれはおれでやはり経験があるから、経験の深さを言っているんだ。(「うそを言うな、鳥居があるよ」と呼ぶ者あり)経験の深さを言っている。つまらないことを言うな、何もわからぬで。(「さっきから言っているのはみんなうそだよ」と呼ぶ者あり)第三番目で言う。何を言うか。やじりたかったら、正式に発言を求めてしゃべれ。正式に発言を求めてしゃべれ。つまらないことを言うんじゃない。
  26. 愛野興一郎

    愛野委員長 発言を停止して。質問を続けてください。
  27. 小林進

    小林(進)委員 第三番目だ。先ほども言っている大灯籠における戦勝国としての彫刻は、何だあれは、君。あれも靖国神社を形成している重大な要件じゃないのか。それには君、ちゃんと南京入城から日本戦争に勝ったことが、灯籠の中へ全部彫刻してあるじゃないか。しかし、それは一体日本本当に敗戦を深く反省した形がね。どこに一体加害者としての反省があるのかね、君。それも政府関係ないと言うのか。靖国神社が独自にやっていることだから、政府関係しないと言うのか。どうだい。
  28. 的場順三

    的場政府委員 小林進先生、長い経歴をお持ちで、大変学識経験の深い方であると大変尊敬しております。誠心誠意答えているつもりでございますが、これもこの前にも御質問がございましてお答えをいたしております問題でございますが、靖国神社も百年の歴史がございますから、過去のいろんなものが残っているという事実はございます。  ただ、その事実を政府が認めるとか認めないとかということではなくて、先ほどもお答えしておりますように、公式参拝というのは靖国神社に参って一礼をすることを、戦没者追悼の中心的施設であるから、そうしてほしいということを国民の多数の方が望んでおられるという要望に従って実施したものでございますので、靖国神社の御祭神についてのA級戦犯の問題でございますとか、これは確かに平和条約日本政府は極東裁判を追認しておりますからそういう事実はございますけれども、そういうものをとやかく批判したり、あるいは今おっしゃいましたような灯籠の問題につきまして、歴史の事実というものをどう判断するか、批判するかということを考えているわけではないわけでございます。靖国神社に赴いて、恭しく一礼するということでございます。  それから宗教行為というのは、若干議論をするようで大変申しわけございませんけれども、先生もおっしゃいましたように要式行為がございますから、神道の儀式というのはいろんな手順がございまして、二社二拍一礼あるいは玉ぐし奉奠というふうなことが必要になるわけでございますが、これは私、大変尊敬している小林先生に議会でお会いいたしますとおのずから頭が下がる、そういう意味で宗教色を払拭したような形で一礼をするということにとどめているわけでございますから、これは宗教的な行為でないわけでございまして、御理解をいただきたいと思います。
  29. 小林進

    小林(進)委員 そういうのは三百代言的答弁だと言うのだよ。かしわ手の二つを一つにしたから神社のお参りにならない、神社の拝殿に入っていってかしわ手二つを一つにした、二つ下げる頭を一つにしたからお参りしたことにならぬ、そういう小汚いへ理屈はやめなさいと言うのだ。そういうことにこだわっているから、問題がますます火を噴いていくのです。  ただあなた、さっき言った。小林先生はいわゆる経験の深い政治歴の長い人だから、その点尊敬いたしますと言った。これだけはおまえ、立派だ。そのとおりだ。これだけは立派だ。どこの世界へ行ったって、長幼序ありだ。小学校に行ったって一年生や六年生がある。やはり上級生を尊敬するというのは人の道だ。この道で三十年飯を食って、君たちの――君たちだって、君ら行政官なんか、君たちを言っているんじゃないけれども、ここにいられる議員諸君の先輩として、この道で汗を流した小林先生に敬意を表するというのは、これは当たり前だ。これは政党政派の問題じゃない。まだ少し尊敬の仕方が足りないから、その点いま少し拳々服膺してやってもらわなければいけないが、それはそれとしても、今の答弁はこれは問題にならぬ、そんなことは。  先ほども言っているように、問題は靖国神社の問題じゃないと言うんだよ。この間も私は、だから同じことを言わなければならない。一九八〇年、鈴木総理がいわゆる閣僚大挙して靖国神社を参拝した。あのときはまだ公式か非公式かと問われて、黙して語らず、公式でもなければ非公式でもないといって、鈴木さんは黙って閣僚を引き連れて参拝されたときに、中国人民日報は大きくページを割いてその灯籠問題を取り上げた。何にもあそこには加害国へ侵略国としての日本の反省がないじゃないか、おの灯籠なんか、戦勝国としての堂々として南京入城その他爆弾三勇士等、それらの彫刻がみんなある中へ、粛々として一国の総理が参られたんなら、一体被害を受けた我々中国人民感情はどうしてくれるんだ、こういうことを言われたから、この問題を政府はどう扱うかということを言ったのだ。  あなた方は靖国神社靖国神社と言っているけれども、対相手国は、戦争関係した相手国は、靖国神社なんか問題にしていませんよ。日本政府は一体こういう我々の感情をどうしてくれるか、この戦争で痛めつけられた我々の痛さを一体どう解釈してくれる、その問題を今日本に投げかけているんじゃないか。その外国からの投げかけた、この投げかけに一体政府はどうこたえるのかということを私は聞いているのだ。それを聞いているのですよ。答えになっていないじゃないですか、あなた。いま一回言ってくださいよ。
  30. 的場順三

    的場政府委員 靖国神社公式参拝は、国民や遺族の多数の方々が要望しているという視点から行ったものでございますけれども、諸外国からいろいろなお考えもあるやに聞いておりましたので、本質を十分に理解していただくように、これは外務省当局を初めいろいろな手を打って、御理解いただくように努めてきたところでございます。  ただ、小林先生御指摘のような問題が起こっているというのも事実でございますし、また靖国神社公式参拝が外交問題を大きくするような、あるいは大きな外交問題に発展するようなことは本意でもございません。ただ、国内で大変多くの方々が靖国神社公式参拝をすることを望んでおられるという事実もございますので、外交上の配慮と内政上の配慮を加えて、今後そういう機会ごとに検討していくべき問題であろうと思います。小林先生の言っておられることは、十分承知しているつもりでございます。
  31. 小林進

    小林(進)委員 ようやく問題のさわりまで来たけれども、それはこれから外務省と連絡をとって、外国における風当たりの強さを鎮静するようにあの手この手を考えていきたい、それは確かにやらなければいけない。私の言っているのは、緊急性がありますよということなんだ。まごまごしていると、だんだん火を噴いてきますよと言っているんだ。そこまで思い至ったのなら、もっと勇敢に早急に手を打たなければだめだと言っているんだ。それが一つだ。  次の問題は、この前も言ったが、台湾人が二万七千人靖国神社合祀されている。南北朝鮮人が二万人合祀されている。やめてくれと言っているんだ。ところが、それをやめないと言っているんだ。この問題はどうかね。これもだんだん火を噴いてきたろう。  これはここにも出ているように、「台湾の対日意識 有力紙・誌に世論調査」とある。いわゆる靖国神社問題については、靖国神社や補償問題で台湾の怒りが噴出したと書いてある。これは十二月七日だから一週間前の新聞記事だ。日本は、加害国である、我々を痛めつけた侵略国家であるという歴史をみんな改ざんしている、補償問題については一つも払おうとしない、そして靖国神社だけやめてくれと言うのを、日本人として死んだんだからちゃんと祭っているんだ、国民の要望にこたえることができない、そういう返答をしている。この二万七千名も朝鮮の二万名も、一体だれが認定した。これは靖国神社が認定したんじゃないんだ、これは政府が認定したんだよ。厚生省が認定したんだ、自分たちが資料から、資格から。その認定を全部やっていて、靖国神社が自主的にこれを認定したんだ、厚生省初め政府関係ありません、そんな詭弁が一体通ると考えているのかね。
  32. 水田努

    ○水田政府委員 私どもは、前回からお答え申し上げておりますように、軍人軍属に関します人事記録というものを旧陸海軍省から引き継いでおりまして、この旧軍人あるいは軍属に関します身分上の調査事項についていろいろと調査依頼がありました場合、特に業務に支障のない限りお答えするということをいたしておりますので、その一環として靖国神社から照会のあったものをお答えしているにすぎませんので、どうかその点を御理解願いたいと思います。
  33. 小林進

    小林(進)委員 靖国神社は、照会したとは言っておりません。照会するというのは、その中の何人かを照会するのでしょう。二百四十万だ。二百四十万そっくり厚生省が認定してくれた、その認定したものを宮司が祭ったんです、こう言っている。照会なんてものじゃありません、手続なんてものじゃありません。あなたのところから、これを祭りなさい、これは祭りなさんな、これは認定する、これは資格がない、全部やっているんだ。戦争中には、それは陸海軍が審査委員会というものを設けてそこでやって、上奏して、祭祀を決めた。今は厚生省が決めて、上奏はしないけれども報告はしていますよ。宮内庁から宮中へ報告しているのは、靖国神社厚生省がどっちかがやっているけれども、上奏ではない。それは違う。けれども、それ以外の手続は戦中、戦前とちっとも変わってない。同じことをやっている。そして、陸海軍にかわるべき仕事を全部担当しているのは厚生省援護局だ。それを、そういうような詭弁でもって舞台を逃げようと思ったところで、逃げられるものじゃありません。だめです。  あなたがそのような答弁をしている限りは、舞台はかえてもずっとやっていきますよ。参ったと言うほどやります。人間をなめてはいけません。こういう公の舞台で人をばかにしたって、これはいかぬわけだ。まだ質問は山ほどあるのです。一年分あるんだ。あるんだけれども、二十五分までと言うから、ひとつ息抜きをするつもりで文部省にでも質問しましょうか。  私は、文部省に資料を貸してやりましたね。ただ貸してやったわけじゃないんだ。これは日本軍南京侵略大虐殺の資料だ、読んでみなさいと。「侵華日軍南京大屠殺史料」の四百八十七ページ。「侵華日軍南京大屠殺暴行照片集」、これは写真集だ。文部省、よく見なさいと言って貸してやった。これは事実と違っているかどうか答えてもらいたい。違うならどこが違っているか。
  34. 高石邦男

    ○高石政府委員 先生からお見せいただいた資料をざっと見たわけでございますが、その内容について、そういう事実が書かれていることは承知しておりますけれども、その内容真実であるかどうかという点については、私が断定できる立場でございませんので、歴史の事実関係は、もうちょっと学問的にいろいろな角度から検討されて明らかになってくると思います。
  35. 小林進

    小林(進)委員 これは、三年前からいわゆる南京虐殺事件といって、日本の教科書改ざん問題なんだ。アジアの国々が全部蜂起して問題にした重大事件だ。三年前から火が噴いて、文部省はもう済んだと思っているが、済んではいないんだ。済んではいないのみならず、これがひいては、中曽根靖国神社参拝を契機として火を噴いてきた重大なる問題の要素なんだ。要素だから、中国はことしの二月から昼夜の分かちなく動員をして、六カ月で記念館を南京に設立した。そして、これだけの資料を全部陳列した。その玄関の入り口には、鄧小平、今中国ではナンバーワンだ、この人のみずからの筆に成る、日本軍の三十万人中国人南京虐殺の、これはちゃんと表札を掲げている。その三十万人も、「三十万」じゃないのだ「三〇〇〇〇〇」、三に〇をずっと連ねた、この部屋にも書かれないくらいな大きな数字が横に掲げてあるという、こういう事実なんだよ。こういう事実を掲げて、これは日本の侵略に対する、あわせて日本の今の政府の、あるいは日本国民と言っていいかもしれない、あり方に対する、これは無言の反撃なんだ、反撃なんですよ。  しかし、そういうような事実まで問題の火を噴いた根本は文部省なんだよ。文部省が小手先で、教科書なんかで侵略じゃない、進入だとか、あるいは虐殺事件なんというものはあるとかないとか、そういうつまらないことをやった。中国人民の怒りが今爆発してこういうような、もはや永久に滅びることはない、ああいう永久建築を建てられてしまったら。  私どもは、三十数年中国へ行ったり来たり。私は、日中議員連盟の創設者であり副会長でもある。だから、会長は常にかわる、超党派だからやはり政府・与党から会長を出す。しかし、会長はかわって今四代目だが、創設者の、副会長の私はずっとかわらないのだ。会長はかわったって私はかわらない、この先もかわらない。だから、中国動きは見ている、三十数年行っているが、今までは行くたびに、もはや戦争の痛みは忘れます、日本の皆さん方も被害者です、一部の戦争侵略者がこれは誤った戦争をやって日中両国人民を痛めつけたのだから、私どもは忘れます、言いません、将来子々孫々まで仲よくしていきましょうというのが向こうの通り言葉だった。  ところが、最近変わってしまった。文部省がこの教科書問題で火を噴いてから、中国の言い分はくるっと変わってしまった。戦争の被害は忘れるわけにはいきません。それを代表して、先ほど胡耀邦書記が言われたように、まだ四十年しかたっていないから、まだこの先四十年忘れることはできませんという説明に話が変わってしまった、中国は。どこへ行っても、日本軍から痛めつけられたこの痛みは私ども忘れるわけにはいきません、年々歳々その苦しみは強くなっていったって薄れることはありませんという、こういう説明に変わってしまった。その説明を象徴するようにつくり上げたのが、これ、南京虐殺大事件。  教科書の編さんをし、日本国民に君たちが書いたその教科書のために、我々が四十年も積み上げてきた日中友好のその礎さえもぐらつくようなところまで問題を発展さしてきて、今また火を噴いている、今また拡大しようとしているときに、そんなものは事実か事実でないか、真相を聞いてみないとわかりません、そんな他人事の回答で世の中済むと思っているのか。そんなおちゃらかしの答弁で済むと思っているのか、一体。本当に君たちのやった教科書が改訂版を命ぜられて、間違いだった、やはり侵略だと、そういう言葉を改めるほどのことまで追い詰められていったのなら、何をおいてもこれは真相をはっきり見に行ったらどうだ。真実真実でないかわからぬと言うのなら、真実を求めて行ったらどうだ、一体。その熱意もないのか。ノーコメントだ、私は知りませんで済ますつもりでいるのかね。いま一回出てきたまえ、君。(「偉そうなことを言うな。もう少し謙虚にやれ」と呼ぶ者あり)何を言うか。
  36. 高石邦男

    ○高石政府委員 教科書というのは、検定教科書の制度になっておりまして、どういう内容のものを著者が書いてくるかということがまず出発点でございます。それから、検定する場合に、小学校の段階で教えるべき内容、中学校の段階で教えるべき内容、高等学校の段階で教えるべき内容、発達段階によって変わるわけでございます。したがいまして、小学校の時代にそう難しいことを教えられてもなかなか身につかないというようなことで、教科書ができ上がっているわけでございます。  したがいまして、南京事件の問題については、小学校の段階でも扱っているわけでございますが、その事件の概要は大体わかるようになっております。しかし、何人死んだかというのは、これはまだ論争のあるところでございますので、そういう数字が二十万であるとか三十万であるというものを、論争のあるものを教科書に書くわけにいかないという態度で対応しているだけでございまして、南京事件自体について取り上げてはならないというような態度はとっていないのでございます。
  37. 小林進

    小林(進)委員 今のその回答などというものは、全く君たちは朝令暮改だよ。かつて君たちが、いわゆる日中戦争は進入だ進入だと言っているころには、そんな答弁は一つもしなかった。それが世論にたたかれ、外国からたたかれ、どうにもならなくなったときに初めて侵略に直したら、今度はその言葉に対して今も言うように、小学生がどうだ、中学生がどうだ、そんな難しいような解説は子供の教育にならぬからこんなところでいいんだ、そういう説明にまた変えてきた。なまっちょろいことを言っちゃいけませんよ。  同時に、私はここで言うけれども、あっちの方で、私は何もあんな外野のやじに答えるわけじゃないけれども、私どもは国会議員なんだ。国民代表なんだ。主権者代表なんだ。ここで我々に答弁するのは、行政の長と国民代表する我々が一対一で答弁するんだ。何も行政官、局長や課長が物の答弁をするなんというのは、これは正道じゃない。大臣と国会議員同士でやるんだ。けれども、まあ局長政府委員だ。やはりこれは、責任を持って答弁するだけの資格を持っている。だから、私は質問するけれども、陳情じゃないんだよ。何も役人に頭下げて、物をお聞かせ願いたいなどと言う必要はない。こんなのは大臣の補助機関なんだ。補助機関らしく、つつましく君たち答弁すればいいのであって、私は、外務大臣だとか総理大臣が来れば、ちゃんと行政府の長として尊敬してやりますよ、何もそこらの、国民に使われている行政官にまで私はそんな……(「もうちょっとおとなしくやれ」と呼ぶ者あり)何事を言うか。(発言する者あり)
  38. 愛野興一郎

    愛野委員長 静かに願います。
  39. 小林進

    小林(進)委員 今言うように、そういう答弁の仕方は了承できない、そんなものは。いま少し勉強したまえ、君、三年前にこういう教科書の問題について君たち答弁したことを、いま一回振り返ってみたまえ、君。国会の中でどういう答弁をした、どういう発言をした。まるで君、裏と表とひっくり返すようなごまかしの答弁で終始しているじゃないですか。各教科書が、小学生であろうと中学生であろうと、その根底をなすものにはきちっとした基礎というものができていなくちゃいかぬ。事実というものを正しくつかんでいなくちゃならぬ。さもなければ、教科書の編さんなんかできるわけないじゃないか。子供だから、何も真実を追求して真実をつかんでいく必要はない、この程度でいいんだというのが君の今の答弁になるじゃないか。そんなことは了承できませんよ。そんなことはいけません。  なおかつ、今も言うように、君たちはことしの七月か、教科書改訂に対する文部省の査定に基づく意見というものを出したね。改訂しなくてもいい部分、これだけは改訂しなくちゃならぬ部分、出したね、七月に。その内容についてここで承っておこうじゃないか。どういうことを出したのか、承っておこう。
  40. 高石邦男

    ○高石政府委員 検定をする際に、その内容が適切になるように修正意見を述べることもございます。そういう場合には、それに従ってより正確な記述をしてもらうようにということで、それぞれの教科書について申し上げるわけでございますが、南京事件等につきましては、どの程度の犠牲者があったかという数字についてはいろいろな説がございますので、その数字を書く場合には、出典を明らかにして書いてほしいというような意見を申し上げているところでございます。
  41. 小林進

    小林(進)委員 それでは君に質問するが、田中正明という人を知っていますか。
  42. 高石邦男

    ○高石政府委員 詳しくは知りませんが、そういう人が南京幻事件についてお書きになった、中身を読んでおりませんけれども、そういう事実は知っております。
  43. 小林進

    小林(進)委員 いま少し歯切れのいい答弁をしたらどうかね。  その田中正明氏がいわゆる出版会をやったときに、文部省から何人参加しましたか。
  44. 高石邦男

    ○高石政府委員 私どもには招待もございませんでしたので、出席しておりません。
  45. 小林進

    小林(進)委員 あなたが出席したとか聞いているんじゃないんだよ。文部省の役人が何人参加したかを聞いている。
  46. 高石邦男

    ○高石政府委員 今課長に聞きましたら、文部省関係では招待もなかったようですし、だれも行っていないのではないかというふうに言っております。
  47. 小林進

    小林(進)委員 ではないのではないかというような逃げ言葉を残しているけれども、私の方では参加したという資料がある。すれ違いがあるから、これはいま一回調査してもらって後で報告してもらおう。いいですか。  この田中正明という人は、一体文部省とどういう関係があるのか知らぬけれども、最近南京虐殺事件について、松井石根大将の陣中日誌までも改ざんをしてしまった。この人は、南京虐殺事件などというものはほとんどないという主張をした人だ。何万とか何十万なんということはない、そんなのは数千人しか殺していないという資料を発表した人なんだ。その出版会には、政界人も国会議員も出席をして、彼を称揚しているんだね。  ところが、最近の資料に基づくと、南京虐殺事件に対しては九百カ所も原文とずれている。それを雑誌の編集者等が誤りを発見して問題にした。松井大将は、南京事件の虐殺を主たる犯罪としてA級戦犯になった一人で、絞首刑になられた人だ。その松井大将が、南京の入城とそれに対する日誌をつけられておるのだが、驚くなかれ、その事実の日誌までも全部改ざんしてしまった。そして、南京虐殺事件がさもなかったかのごとき出版をしてしまった、こういうことだ。そして甚だしいのは、南京の虐殺事件と上海事件をすり違えちゃって、同じような状況を描きながら、上海で起きたことなんだけれども、それがいかにも南京で起きたような形にして、上海と南京をすりかえて創作した、こういうこともやっている。  これが、いわゆる南京虐殺事件はないなどという世論を巻き起こすための大きな材料をなしていることだけでも、これは巷間伝うるところでありますが、文部省は一枚かんでいるというふうに言うんだが、私はそこまでも疑いたくないけれども、参画した者があるか、一体どれくらい関係しているのか、先ほども言うようにいま少し明確に回答をしてもらいたい。よろしゅうございますね。田中正明さんのことは、文部省の知っている限りのことを報告してもらいたい。
  48. 高石邦男

    ○高石政府委員 私は知りませんし、担当課長も知らないと言っておりますし、文部省は田中さんとは何ら関係がないわけでございます。
  49. 小林進

    小林(進)委員 君らの局長が知らぬ、課長が知らぬということだけで、文部省の責任は免れたわけじゃないんだ。文部省は継続して存在しているんじゃないか。君らは個人のことを言っているが、個人に関係あったかどうかと聞いているんじゃないんだよ。文部省としてどういうつながりがあったかということを聞いているんだ。何を言っているんだ、君は。その報告をしてもらいたいと言うんだ。報告をしますね。
  50. 高石邦男

    ○高石政府委員 文部省とは関係ないと思いますが、先生の重ねての御質問でございますので、帰ってよく調べてみたいと思います。
  51. 小林進

    小林(進)委員 文部省は、教科書の検定について最近、これはメモの方式で発表したが、南京事件について、「南京事件の際に日本軍は、婦人や子供を含めて、少なくとも十万人以上の中国人を殺しました。」などの記述について――あなた方が改訂を命じたところだ。「南京事件を記述する場合は、人物と文化遺産を中心として教材の精選を図るという学習指導要領の趣旨や、児童の心身が未発達で詳細な事実を理解させることは困難であることを考慮し、多数の住民が犠牲になったという基本的な事実を記するにとどめてもらいたい。」こうやって、今すぐ文章を改訂することを君たちは命じている。こういうことをやって、今もなおかっこの問題を歪曲、縮小しようという、文部省の意図が明らかにあらわれている。しかし、時間が来ましたから、これは了承できませんので、またこの次に私は論ずることにいたします。  また、外務大臣には長くお座りいただいて恐縮でございますけれども、私は、まだ中国では、遺骨巡回の問題等に対しても中国の民衆は非常に不快感を持っていることも考えていかなければならぬと思って、外務大臣にはこれから質問しようと思ったのですが、この次にいたします。  それから、何といっても台湾人と朝鮮人を靖国神社合祀している問題は、決して靖国神社の独立性なんかという問題でおさまる問題ではありません。これは国と国との関係ですから、政府もうんと腹を決めて、どう収束するかをひとつ対処してもらわなくてはならぬ。まだ問題は山積しております。時間が参りましたから終わります。どうもありがとうございました。
  52. 愛野興一郎

    愛野委員長 次に、玉城栄一君。
  53. 玉城栄一

    ○玉城委員 大臣も既にニュースで御存じになっていらっしゃると思いますが、昨日、大変痛ましい空の大惨事が発生をいたしております。十二日午前六時三十分、日本時間で午後七時過ぎ、カナダ・ニューファンドランド島のガンダー国際空港を離陸直後の米軍チャーターDC8型旅客機が墜落、炎上した。乗客二百五十人、乗員八人の二百五十八人全員が死亡した。こういう痛ましい惨事であります。  ことしは、我が国も含めて、こういう空の大事故が非常に起きているわけですが、このDC8は現在既に我が国でも民間航空機で多数使われているわけですね。ですから、本当にしっかりと原因を究明をして、我が国としても当然対策をとっていかなくてはならない。これは頻々と起こっているわけでありますので、ひとつ大臣のお考えをお伺いいたします。     〔委員長退席、北川(石)委員長代理着席〕
  54. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 昨日の米軍チャーター機の事故につきましては、まことに痛ましい限りでございまして、犠牲者に対して深甚な弔意をあらわしたいと思います。政府としましてもこの事故を重要視いたしまして、早速総理及び私から弔電を発出する用意をいたしておるわけでございます。  現時点までに明らかになった点につきましては、政府委員からも答弁させますが、真相についてはまだはっきりしてないように承知をいたしております。
  55. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 カナダ大使館、それからモントリオール総領事館等からの報告でございますけれども、ただいま先生が御指摘になりました事実関係は省かせていただきますが、事故原因につきましてはいまだ不明であるということでございまして、同機はガンダー空港で給油の後、離陸直後に炎上したもので、機体は分解し、死体が散乱しているという状況のようでございます。また、アメリカの国防省によりますと、乗員は全員第一○一空挺師団に属する軍関係者で、シナイ半島平和維持軍メンバーとしてシナイ半島で二カ月間の勤務の後、帰国の途上であったということでございます。乗客には邦人はいないということでございます。  ただいま先生御指摘のとおり、この飛行機はDC8ということで、極めて広範に使われている飛行機でございます。今後、運輸省等とも相談しつつ、さらに事故の原因等について、情報を入手したいと思っております。
  56. 玉城栄一

    ○玉城委員 二度とこういう大惨事が起こらないように、政府としても万全の対策をとっていただきたいということを要望いたします。  来月、日ソ外相会談が行われるわけですが、当初会談場所は東京、しかし警備の関係で静岡県の伊東の川奈、そこもまたまずいということでさらにまた東京、こういうふうに伺っているわけです。非常に大事な外相会談ですから、そういう万全な警備態勢は当然おとりになると思うわけであります。ソ連の漁船が補給のために寄港している塩釜は、連日、右翼団体が物すごくボリュームを上げて妨害をやっているわけです。そういうことがもし今度の会談でも、東京において行われるということになりますと、当然相手に対しても失礼になりますし、不快の念を抱かせることもこれまた大変なことであります。大事な問題を静かな中で、会談が実りあるものになっていくためにも、そういう態勢というものは非常に大事だと思うわけでありますが、そういう点、いかがでしょうか。
  57. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日ソの再開第一回目の大事な外相定期会談でありますから、静かな雰囲気の中で時間をかけてひとつ率直に話し合いたい、こういうふうに思っております。そういう意味でも、警備当局にもお願いをして、警備については万全を期してまいる考えてあります。
  58. 玉城栄一

    ○玉城委員 東京のどの場所ということは、そういう関係もあって今はちょっとお答えは御無理だと思うわけでありますが、不快の念を抱かせない、そういう態勢をぜひとっていただきたいと思うわけであります。  そこで、その外相会談なんですけれども、この間の米ソ首脳会談でも出ておりましたアフガニスタンの問題なんですが、今度の日ソ外相会談でも、その点は当然お話し合いなさることと思うわけであります。アフガニスタンにソ連軍が武力介入をしたのは一九七九年十二月ですから、ちょうど今月で満六年になるのです。非常にソ連軍の損害も大きい。したがってソ連側も率直に、条件が整えば撤退してもいいという感じの意思表示もしておるわけであります。来月の日ソ外相会談の前に、十一万五千と言われるソ連軍が何らかの形でその一部でも撤退への動きが見られる、そういう可能性というものはあるのかないのか。その辺、どういうふうな感じをお持ちなんでしょうか。
  59. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 アフガニスタンの問題については米ソ首脳会談、いわゆるテータテート会談でも十分話し合いがなされたというふうに承知をしておりますし、いろいろその後の情報とか報道等によりましても、何らかの進展があるのではないかという推測もあるわけでございます。私もアフガニスタン問題は、何か動きが出てくる可能性があるというふうに思っておりますし、我が国としましても、アフガニスタンから一日も早くソ連軍が撤退をして、真に自主独立の政権が生まれることを期待いたしております。これから様子を見ないとわかりませんけれども、何か動きが出る可能性があるように私としては推測をしております。
  60. 玉城栄一

    ○玉城委員 可能性としてはあり得るというお話でありますが、外相会談でソ連軍のアフガンからの全面撤退ということは当然でしょうけれども、外相会談の中におきましても、何らかの撤退への一部の動きが緊張緩和、デタントを前進させるという意味で、我が国としても、ソ連側に対して説得をしていくことも大事ではないかと思うわけでありますが、お気持ちはいかがでしょうか。
  61. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 外相会談におきましては、二国間、さらに国際問題につきまして広範に話し合いをしたいと思います。そういう中で、日本立場も明快にしてまいりたいと思っております。そういう立場から、アフガニスタンについても日本側姿勢、そして一日も早い解決を望みたい、こういうふうに考えています。
  62. 玉城栄一

    ○玉城委員 一昨日の沖縄北方特別委員会でも私、ちょっと申し上げましたけれども、朝鮮半島情勢についての話し合いの中で、緊張緩和の環境づくりの一つとして、南北両朝鮮の統一チームづくりについても提案してみることも必要ではないかということについて、大臣からそういうことも含めて検討してみたいというようなお話もあったわけでありますが、大きく前進することは望ましいわけですけれども、一歩でも二歩でもそういう緊張緩和に向かって具体的な提案を、さっきの一部撤退についてもその動きをすべきではないかということも含めて、前進のために会談の中でぜひお話をしていただきたいと思うのです。  それから、質問は変わりますが、今月の六日だったと思いますが、バングラデシュのダッカでいわゆるSAARC、南アジア地域協力連合が正式に誕生したわけでありますが、こういう地域連合機構が今回誕生したという背景について、外務省の方から御説明いただきたいと思います。
  63. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 きょうは、ちょうど局長が病気のために失礼をいたしておりますが、南アジア地域協力連合、SAARCが発足をしたことは、南西アジア地域の安定と発展に寄与するものとして、我が国としても歓迎をいたしております。既に合意されている運輸、通信、農村開発等の、九つの分野における協力が見込まれるわけでございますが、我が国としては、今後同連合が地域協力機構として発展をしていくことを期待しているわけであります。ASEANが地域連合として非常にすばらしい結束と発展、成果を上げておられますが、SAARCもおいおいそうした方向に進んでいくんじゃないか。そういう意味で、SAARCが地域の発展と世界の平和あるいはまた安定のために大きな寄与をしていく、そういう地域連合に向かって進むことを念願いたして、心から歓迎をし、期待をするものであります。
  64. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、このSAARCの中のインド、パキスタン、この間ラジブ・ガンジー首相が来日されましたときに、インドは核兵器を持つつもりはないと言明しておられたわけですが、他方また、三度にわたる印パ戦争を交えて、パキスタンとの絡みに対抗上、核兵器を真剣に考えているというような発言もしていらっしゃるわけです。パキスタンも、核兵器を持つのではないかというような話も伝わっているわけですが、インド、パキスタンが核兵器をこれから持つ可能性もあるのかどうか、それはどういうふうに外務省は情報を入手していらっしゃるのでしょうか。
  65. 河村悦孝

    ○河村説明員 パキスタン側も、中曽根総理とジアウル大統領との首脳会談におきましても、パキスタンの核開発は平和利用に限る、そのように申しております。
  66. 玉城栄一

    ○玉城委員 核兵器をインド並びにパキスタンが持つ可能性というのはあり得る、あるいはそういうことはない、どういうふうに外務省は見ておられるのかということをお伺いしているわけです。
  67. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 よく情報として、パキスタンで核兵器を持つという準備が進められているんじゃないかということもありますし、あるいはまたインドでもそういうことも言われておるわけでございます。これは能力の問題は別といたしまして、パキスタンもインドも、そうした核兵器といったものを持つということはむしろ緊張激化という方向につながるわけでございますし、我々としては、そういう状況が生まれることがないように期待をいたしております。  そういう意味において、こうしたSAARCの会合、首脳の会合が行われたということは、パキスタン、インドというのは非常に関係が悪いわけでございまして、そうした非常な悪い関係が続くということによって、そうした核兵器の保持という問題も生まれてくるわけですから、SAARCのこうした首脳会談が行われるということは、そうした核兵器を持つというふうな雰囲気をつくらない、そういう意味においても非常に意味のある会合ではないか。そしてまた、このSAARCが、これからさらにそういう意味でも進んでいくことを期待いたしておるわけであります。     〔北川(石)委員長代理退席、委員長着席〕
  68. 玉城栄一

    ○玉城委員 今大臣がおっしゃられたように、不幸にしてインド、パキスタンが核兵器を持つということになりますと、核不拡散体制が崩れていくということになって世界の緊張激化ということになるわけでありますので、今おっしゃったように、我が国としてはそういうことのないようにということを、これから今おっしゃったSAARCの中でも主張していくべきではないか、このように思うわけであります。  そこで、このSAARCなんですけれども、これから具体的に我が国に対していろいろな要望も出てくると思うわけでありますが、我が国としてもその対応は慎重にやっていかないと、そんなことは考えられないと思いますけれども、もしその対応を失敗するとそろって日本非難を始めるというようなことになったら、これはまたえらいことになるわけでありますので、そういう点を外務大臣とされてもひとつ慎重な対応をお願いしておくわけであります。  それで、アジアにおけるそういう地域ブロックとして先輩格のさっきおっしゃいましたASEAN諸国、これは当初はまさに海のものとも山のものともわからなかったわけですが、現在では目覚ましい経済発展はもとより、国際的な地位の強化、また国際政治への影響力の増大等々大成功しているわけですね。幸いに我が国との関係においても、これといった大きな問題は今のところないわけです。良好な状態と見るべきだと思うのですが、我が国とASEAN諸国との今後の関係がさらに非常に重要になってくると思うのですが、大臣、いかがでしょうか。
  69. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ASEANとの関係は、これまでも非常に密接な関係を保持しておるわけでございますが、今後はいわゆるアジア・太平洋時代ということも言われておりまして、今後の日本との関係はさらに深まっていくものである、こういうふうに思っておりますし、また深めていかなければならない関係である、こういうふうに考えております。
  70. 玉城栄一

    ○玉城委員 関係も深めていかなくてはならないということは当然だと思うのですが、実はそこで大臣の御所見をお伺いしたいのです。  実は先月の二十六日から三日間、沖縄でアジア・ラウンド・テーブルというものが行われました。米国、韓国、ASEAN諸国、それから我が国の学識経験者、地元の経済人が参加をして、我が国がアジアの国々と交流を深め広げるため、地域レベルでどういうことができるかというテーマでシンポジウムが行われて、その結論としていろいろな提言がなされておるわけです。この提言についても、近く政府の方にも申し上げたいというふうに関係者の方々は言っておるわけでありますが、ちょっと申し上げて大臣の御所見をお伺いしておきたいわけであります。  そのASEAN、東南アジア、それから太平洋諸地域との関係で、沖縄を我が国の国際化の先端地域として位置づけて、日本市場の開放について、商品輸入の面ばかりでなく、資本交流や人的交流の面でも飛躍的開放政策をとり、アジア・太平洋地域との文化交流と広範な技術移転に取り組む拠点とすべきである。  さらに、国際交流強化の方策として、韓国、中国、ASEAN諸国との航空路の拡大と各種国際交流施設の充実。  さらに、文化交流を促進するために、世界の伝統的、民族的文化を結集するカルチャーオリンピック、いわゆる文化オリンピックの開催。  さらに、国際化のための教育機能の強化として、日本人とアジア・太平洋諸国などの外国人とがともに学べる高等教育機関の拡充として、琉球大学国際交流学部の設置、語学センターの設置、いわゆる英語等を仲介せずに日本語が習得できる施設ですね。  それから、実務訓練機能を持ったフリーゾーン設置では、物財の出入りや資本投資だけでなく、外国人の居住、勤労をも許容する自由地域の設置、特定地域を指定して外国人従業員の長期実務訓練を兼ねた工場などを集合させ、多数の外国人が日本人とともに働き、日本の技術、企業経営の方法が習得できるようにする、概略こういうふうな提言をしておるわけでありますが、今申し上げた点を大臣はどういうふうにお感じになられますか。
  71. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 先般、沖縄で行われました民間人の有識者を中心とするアジア問題に関する協議、それは大変有意義であったと私は思います。今いろいろと御提言のお話がございましたが、外務省としてもこうした提言については耳を傾けてまいりたいと思いますし、沖縄県でもまた、その提言の中で積極的に推進しなければならないという御判断が出てくると思いますが、そういう中で外務省も十分御相談にあずからせていただきたい、こういうふうに考えております。
  72. 玉城栄一

    ○玉城委員 我が国は、経済問題、貿易問題等で大変厳しい情勢に置かれている。それを切り開いていくためには、今申し上げたお役所の発想といいますか、官僚の皆さん方の発想ではなかなか思いつかないような、例えば文化オリンピック、カルチャーオリンピックとか、外国人が三年とか五年とかの長期研修を兼ねて一緒に働く場であるとか、一緒に学ぶ教育機関等々、こういうところに外務省とされても真剣に目を向けてぜひ御検討もしていただきたい、このように思うわけであります。  それでもう一つ、外務省の海外広報活動についてなのですけれども、我が国は先進国に比べて非常に弱いのではないかと思うんですね。さっきもちょっとお話がありましたが、例えば我が国が孤立化するのではないか、とにかく結論からはそういうふうに言えるわけですね。日本はけしからぬ、貿易問題についてもアンフェアである、国際世論をそういうふうにさせないように、もっと我が国としての、特に外務省の海外広報活動について力を入れていかなくちゃいけないと思うんですね。先進国に比べて我が国の海外広報活動というものは、例えば人員の問題、予算の面でどんなふうな状態にあるのか、お伺いいたします。
  73. 波多野敬雄

    ○波多野政府委員 我が国が今後国際社会で積極的な役割を果たしてまいります上で、我が国の真意と実情を十分に海外に知らせるために海外広報活動を拡充する必要があることは、御指摘のとおりでございます。政府といたしましても、この広報活動を一層拡充強化するように努力してはおりますけれども、先生御指摘のように、確かに予算面、人員面で、諸外国と比しましていまだ十分でないということは言えるかと思います。  ちなみに、御質問の予算、人員面をとってみますと、これはどの範囲までとるかというのが非常に難しくて、例えばアメリカのVOAとかの海外放送のようなものまでとるのかとらないのかとか、いろいろ難しいと思いますけれども、そういうものをひっくるめて海外放送分まで全部とってみますと、人員の面では日本は約六百名、米国が四千五百名、英国が五千五百名、西独が二千名、フランスが千名程度というようなことになるかと思います。
  74. 玉城栄一

    ○玉城委員 大臣、今お答えがありましたとおりアメリカは四千五百名、これは国も大きいから。イギリスは五千五百名です。西ドイツですら二千名、我が国はたったの六百名。こういう状況を大臣はどうお感じになっていらっしゃいますか。
  75. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 何としても限られた広報予算で精いっぱいやっておるわけでございますが、今おっしゃるようにやはり諸外国、特に先進国と比べますと、日本の場合はまだまだ広報活動が十分行われている状況にない、その点は痛感をいたしております。人員一つをとってみましても、外務省の定員は大変限られておりまして、五千名の体制にほど遠いわけでございますし、予算からいきましても、いろいろな点でまだ目標は到底達成できないという状況でございますが、そうした限られた予算の中でも、やはり我々としては全力を尽くして広報活動を進めてまいらなければならぬ。  今おっしゃいますように、どうしても日本に対する認識が足らない点がありますし、また、誤解が誤解を生むというふうな状況も貿易摩擦等では明らかに出ておるわけでございますから、これは今後の最大の課題の一つとして努力を重ねてまいらなければならない、そういうふうに考えて、一生懸命に全省を挙げて取り組んでいるところであります。
  76. 玉城栄一

    ○玉城委員 実際に、限られた予算また定員の中で一生懸命、必死になってやっていらっしゃることはよく理解しているわけです。仰せ、裏づけになる予算にしても人員にしても、そういう先進国の中で我が国が一番低い。しかも、五分の一とか七分の一という状況で、世界の中の日本として、これはますます大事になってくると思うのです。  そこで、ちょっとお伺いしたいのですが、「世界の教科書展」というのを今池袋の方でやっているわけです。私が申し上げるまでもなく、教科書というのは次代を担う子供たちに教えるものだ。その世界の教科書の中で、我が国が本当に正しく伝えられているかどうか。外務省もこれまでいろいろと御努力をされてきたと思いますが、誤った記述の割合、それはどんなふうに把握していらっしゃいますか。特に教科書の問題に限って、我が国が正確に伝えられていないのはどういう割合になっているのでしょうか。
  77. 波多野敬雄

    ○波多野政府委員 諸外国で使用されております教科書等には、我が国に関して誤った記述や誤解を生ずる記述が多く見られることは事実でございます。  このような外国の教科書それから副読本的なものの内容を是正するために、外務省認可の公益法人であります国際教育情報センターというのがございますが、これが活発な活動を行っております。このセンターでは、年間二百件前後の教育資料について内容を子細に調査いたしまして、その結果、我々が聞いておりますところでは、約六割ないし七割程度について訂正の申し入れを行っているということであります。  なお、外国の教科書の是正活動をなぜ政府がやらないかという問題があり得るかと思いますが、この問題につきましては、政府が直接にこういう問題に介入することは無用な疑惑、誤解などを生むおそれがあるということで、民間レベルで行わしめている次第でございます。
  78. 玉城栄一

    ○玉城委員 これは外務省の方からいただいた資料なんですが、諸外国の教科書における日本に関する記述の変化で、誤った記述の割合、これは一九五〇年代では八〇%が全然違っている。日本が正しく教科書に記述されてない。現在でも欧州で約一〇%誤っている。アメリカで八%、東南アジアが三〇%、日本の姿が教科書に正しく記述されてない。こういうことなんですが、外務省は今、どういう考え方を持って対策といいますか、対応をされるのでしょうか。特に、東南アジアの三〇%というのは高いですね。
  79. 波多野敬雄

    ○波多野政府委員 まず第一に、正しい日本の実情を知らせるための広報活動を的確に進めていくことだと思います。それからもう一つ、現在使われております教科書、副読本的なものを丹念に調べまして、その都度訂正を申し入れ、訂正をされたかどうかについても十分確認を図っていくことだと思います。  こういう面について、我々もできる限りの努力は尽くしているつもりでございますけれども、遺憾ながら、いまだにかなりの数の誤った記述が見られることは事実でございます。
  80. 玉城栄一

    ○玉城委員 ですから、これは要望になるわけですが、人員の面でも予算の面でも、我が国が正確により多くの国々、より多くの人々に伝わるように、特に教科書によっては、誤った記述が東南アジアは三〇%あるということは非常に重大な問題だと思うので、ぜひ御努力をお願いいたしたいわけであります。  それから、最後にお伺いしておきたいのですが、さっき申し上げました提言、我が国と東南アジアとのこれからのかかわり、広がりを深めることとも関係するわけでありますが、沖縄自由貿易地域の設置ということで、私もこの委員会で申し上げて、大臣の非常にいいことだ、実現に向けて努力したいというお話も承っておるわけです。  実は、これは沖縄振興開発特別措置法の中に制度化されてもおるわけでして、沖縄開発庁も今年度中にこれが実現するということで、その作業を現在進めておるわけです。ところが、この設置の場所なんですが、いろいろな検討の結果、現在の那覇港、いわゆる那覇軍港の一角に米軍が使用していない部分がありますので、そこを米軍と共同使用せざるを得ない、こういうことで、米軍絡みであるわけですから、開発庁等も調整をしているわけです。  これは、当然地位協定に関係してきますのでぜひ確認をしておきたいわけでありますが、地位協定の二条4項(a)「合衆国軍隊が施設及び区域を一時的に使用していないときは、日本政府は、臨時にそのような施設及び区域をみずから使用し、又は日本国民に使用させることができる。ただし、この使用が、合衆国軍隊による当該施設及び区域の正規の使用の目的にとって有害でないことが合同委員会を通じて両政府間に合意された場合に限る。」共同使用という場合は、この地位協定の二4(a)でなされるのかどうか、その場合、調整された後外務省としても、日米合同委員会でその点を米側と話し合う用意があるのかどうか、その点をお伺いいたします。
  81. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 ただいま委員御指摘の件につきましては、いろいろな可能性もあるかと思います。地位協定二4(a)の可能性も含めまして、沖縄県民が安保条約におきまして非常に大きな課題をしょっていらっしゃるわけでございますので、そういう意味におきまして、防衛施設庁等とも話をいたしまして検討してまいりたいと思っております。
  82. 玉城栄一

    ○玉城委員 これも確認なんですが、この二4(a)で、これは米軍への提供施設区域になるわけですから恒久的な建物ができるのかどうか。この那覇港湾施設という米軍へ提供の施設区域は、たしか十五回日米合同委員会だったと思うのですが、移設を条件に返還合意されているわけです。ところが、移設先がはっきりしないということでそのままになっているわけです。そういうことも考えましたときに、ここでそういう施設をつくることについて、将来に不安のないような建物ができるような、そういう話もあわせて日米合同委員会で米側に話をしておく必要があるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  83. 小和田恒

    ○小和田政府委員 地位協定の第二条4項(a)の問題につきましては、一般論として申し上げれば、先ほど玉城委員から御指摘がありましたように、米軍に提供されている施設区域であるけれども日本側が臨時に使用するというケースについて規定しているわけでございます。その臨時の使用という形態は、具体的な話がわかりませんとなかなか難しいわけでございまして、いろいろな形があり得ると思います。一定の条件のもとで日本側に使用させることが、米軍に提供した施設区域の目的それから使用の形態等に対して不都合を生じないというような、正規の使用目的を阻害しないということが条件になろうかと思いますけれども、先ほど北米局長がお答え申し上げましたように、もう少し具体的なことがわかりました段階で検討することが適当ではないかというふうに考えます。
  84. 玉城栄一

    ○玉城委員 この設置の場所が、ここが条件として非常にいいということで共同使用させてもらいたいという調整を今しておるわけでありますので、建物はつくったが臨時的なものしかできないとなりますとこれまた意味がないわけでありますし、返還合意がされていることも前提にして将来の不安のない建物ができ得るように、外務省としても御尽力願いたいとお願いいたしまして、質問を終わります。ありがとうございました。
  85. 愛野興一郎

    愛野委員長 次に、渡辺朗君。
  86. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 きょうは時間が余りありませんので、幾つかの点を簡潔にお尋ねさせていただきたいと思います。  まず第一番目に、ソ連の外相が来年一月には来日されるわけであります。今お話を聞いておりますと、広範な問題について話し合いをしたいというお考えでございますけれども、外務大臣は、特にどういう点に重点を置いてのお話し合いをされようとしておられるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  87. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 具体的にどういう問題点を議論するかということについては、ソ連側ともまだ打ち合わせをしておらない状況でありますが、基本的にはまず国際問題、そして二国間問題ということになるわけであります。  国際問題としては、米ソ首脳会談に伴っていろいろな事態が起こっておりますので、こうした状況を踏まえて議論していかなければならぬと思います。地域としてはやはりアジア地域、特に朝鮮半島の状況等は、我々としても重大な関心を持っておりますし、率直な意見の交換をしたいと思います。  さらに二国間問題としては、我が国として対ソ外交の基本であります領土問題を解決して平和条約を締結するという、この日本の不動の考え方をソ連側にも伝えてソ連側の対応を求めてまいりたい。我々は対ソ外交について、まずそうした基本問題が解決されることが、真の友好関係を築き上げることにつながっていくという認識を持っております。その他経済、貿易の問題、文化交流の問題、あるいはまた人的交流の問題等々、二国間にもいろいろと懸案、それから問題がございますから、これらをすべて話し合ってみたい、こういうふうに考えます。
  88. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 今、国際問題の中で重要な問題の一つとして、朝鮮半島の問題についてもお話し合いをと言われましたけれども、どのような基本立場といいますか、そういうものを持って朝鮮半島の平和問題をお話しなさるわけでございましょうか。特に、例えば現在の分断されている状態というもの、これがクロス承認の形も考えられるでありましょうし、あるいはまた国連同時加盟というような問題もあるでありましょうし、いろんな問題が付随して出てくるわけでありますが、これらについてはどんな方針を持っての交渉をされますか。
  89. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 基本的には、やはり米ソ首脳会談に伴いまして、いわゆる平和と軍縮の問題というのが世界的な課題になっておりますし、これはソ連が重大な関心を持つだけでなく、日本も非常に重要な関心を持っております。ヨーロッパが安全である、あるいは米ソが戦争をしないというだけでなくて、やはりアジアにおいても真の平和というものが確立されなければならない。そういう面で日ソ間の、極東情勢、安全保障、そうした問題をめぐっての率直な話し合いがやはり大事だろうと思います。  そうした中で、地域問題としてもちろん中東問題とかあるいはカンボジア問題等、いろいろ取り上げてみたいと思っておりますが、朝鮮半島の問題は何としても、日本にとりましてもあるいはソ連にとりましても、隣国の関係でございますから重点を置かなければならないと思っておりますし、日本としましての考え、これは今行われております南北対話というものが積極的に進んでいく、そして民族和解の方向へ流れが出てくるための南北対話への支援、さらにまたその環境づくり、そういう点についての日本考えを述べなければならぬと思いますし、またソ連側の考え方も聞きたい。これはソ連、日本、そしてアメリカ、さらに中国、そうした関係の国々が相協力して朝鮮半島の緊張緩和、そして対話の推進には当たっていく必要があろう、こういうふうに私は基本的に考えております。
  90. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 これは、ぜひ有意義な話し合いをしていただきたいし、特に隣国でありますから、よく言われるように好きであっても嫌いであっても引っ越すことのできない関係でございますので、相互の信頼醸成措置をどういうふうにつくっていくのかということが大変大事になってくると思います。そういう観点から取り組んでいただきたいと思いますが、今もおっしゃった文化的な問題一つとっても、お話しされるということを私は聞きましたが、新聞その他で拝見いたしますと、外務省首脳としては文化協定ぐらいはぜひ調印したいという、そのような積極的な報道がある反面、それは不可能であろう、その文化協定の調印すら重大な食い違いの問題があるので不可能だ、こういう報道も行われております。  そうしますと、具体的な問題でどこに何が前進するのか。朝鮮半島の平和の問題、そういうことになったら恐らく大変大きな意見の食い違いも出てくるだろうが、文化問題一つでも重大な懸案が対立しているというようなことが報道されて、それがゆえに調印もできないということであるならば、一体何が前進のあかしになるであろうかなと懸念をするものであります。今の文化協定ということ一つ取り上げて今どのような状態にあるのか、外務大臣としてはお考えを持っておられるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  91. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日ソ関係は、ただ一回外相会談をやったからといって、それでもってすべて解決一するという問題ではないと思います。日ソ間には、いろいろな意見の食い違いも会談の中で出てくることは当然予想されておりますし、必ずしも楽観をしておるわけではございません。しかし、こうしてやっと十年ぶりにソ連の外相が来るわけですし、八年ぶりに定期外相会談がスタートを切るわけでありますから、それなりに大きな意義を持つわけですし、この会談がこれから継続して行われるという一つの筋道をきちっとつくっていくことが、今回の会談に当たっては大きな意義があるだろう、私はこういうふうに見ておりますし、同時にまた、率直な意見の交換というのが問題解決の糸口を見つけ出すことにもつながっていく、こういうふうにも思っております。そういう意味では、一方においては決して楽観をしておるわけではございませんが、一面においてはああした米ソの首脳会談の雰囲気の中で、この日ソ関係を改善していく一つの方向が出てくる可能性がまたあるのじゃないか、こういうふうにも思って全力を傾けなければならぬと考えます。  そういう中で、文化協定については今交渉しておりまして、残っている問題は難しい問題だけ残っておるわけでございますから、交渉当事者としては解決がなかなか容易でないというふうな判断が出ることは、これは当然のことだと思うわけでございます。しかし、せっかくここまで来ておるわけですから、そして両国の外相が会うわけでありますから、それまでの間にこうした問題点が双方の話し合いによって解決をして、できれば合意を外相会談までに見るということを私としては希望いたしております。そのためにこれから鋭意折衝は会談まで続けていくということで、今努力をさせておる最中であります。
  92. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 今お話がありました文化協定一つとっても、事務方の方では相当に煮詰めた話し合いはしておられると思うのです。新聞報道その他では、三つ四つくらいの何か重大な対立点があって難航しておる。これは交渉ですから、発表できないものもあるいはあるかもわかりません。ですから、機密の条項にまで触れようと思いませんけれども、発表できるものであるならば、私は国民の前に、どの点が争点あるいは対立点であるのかということはおっしゃることが大事だろうと思うのです。ただ、対立があるだけがぼっと抽象的に話が出ますと、緊張緩和を期待しておる国民、そういう立場からすると、何か冷や水をかけられたような感じにもなります。そういう点で発表できるものがあるならば、どこが対立点なのか、教えていただきたい。
  93. 西山健彦

    西山政府委員 先生御指摘のとおり、ただいま交渉中の問題でございますので、それぞれの立場がこうであるということを明らかにいたしますと、それぞれがもうそれから後に引けないというような問題になりますので、詳しいことを申し上げることは御容赦いただきたいと存じます。ただ、我々が終始一貫、何とかこの交渉を通じてなし遂げたいと思っておりますことは、御承知のとおり先方から日本に入ります情報量というものは非常に大きいわけでございます。ところが、我が方からソ連の中に入りますさまざまな情報量というのは、非常な制限のもとに置かれておりますので、何とかこれをできる限り平等に近いものに持っていきたい、そういう観点から努力をしているわけでございます。  このくらいで御容赦いただけたらありがたいと存じます。
  94. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 それでは、深追いをするのはやめましょう。ひとつ、最大限折衝をしていただきたいと思います。  それではちょっと問題を変えます。  お尋ねをしたいのは、最近のアジア情勢の中での焦点になっているフィリピン問題がございます。これについて、外務大臣あるいは外務省の御見解を聞かせていただきたいのでありますけれども、今実情というのは一体どういうふうになっているのか。特にこの問題に関しまして、最近は大統領選挙が行われる日程も決まりました、候補者も決まりました。そういう事態に対してアメリカの上院下院においては、自由にして公正なる大統領選挙が行われることを期待する、これば恐らくまさに異例の決議だと言われるでありましょうが、そういう決議案まで出ている。しかも、下院のごときは四百七対ゼロというような数字でもって、本当に全員一致でそのような決議が行われる。  一見すれば内政干渉かもわかりません。しかし、そこまでアメリカなり、アメリカのみならずASEAN諸国なども大変に関心を持っている今日のフィリピンの情勢であり、来るべき大統領選挙だと思います。したがって、我が国がどういうふうな態度をとるのか、あるいは日本の国会においてどういう議論が行われているのかということは、当然国際的に注目されているところでもあろうと私は思います。日本とフィリピンの関係は、言うまでもなく大変緊密なものが今日までありました。それだけに、今の置かれている情勢と今後の問題についてどのようなお考えを持っていられるのか、外務大臣に御所見を賜りたいと思います。
  95. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 外国の内政につきまして、政府として立ち入った答弁をすることは差し控えた方がいいと思いますが、フィリピンにおきましては八三年八月のアキノ暗殺事件の発生を契機としまして、折からの経済状況の悪化等もありまして、八三年秋以降国内政情が不安定化しております。最近、マルコス大統領の健康が一応回復しインフレが下火となるなど、部分的な好材料は見られますが、依然として経済は本格的な回復を示すには至っておらず、また一部に反政府ゲリラの活動が見られるなど、全般として政情が安定しているとは言いがたい状況と言えると思います。我が国は、ASEANの一国であり、地理的にも我が国に近いフィリピンの政治、経済の安定化を願っておるわけです。  フィリピンの大統領選挙に関する今御指摘の、米国上下両院の十一月十四日の決議につきましては、我が国としてはフィリピンにおける大統領選挙の具体的手続につきまして、立ち入ったコメントをすることは差し控えたいと思いますが、御質問のフィリピンの選挙に限らず、すべての国における選挙についての一般論として述べれば、米議会決議に言う選挙方法等の合憲性、あるいはまた選挙管理委員会の独立性、市民による選挙監視活動の保障、すべての政党関係者のマスメディアヘのアクセスの保障、軍を含む政府当局の中立性の確保は、選挙の公正さを確保する上で望ましいものと考えております。  今回のフィリピンの大統領選挙に対しては、世界じゅうが注目をいたしております。日本としましても、今申し上げましたような基本的な立場の中で、この選挙が自由に公正に行われることを期待しておるわけであります。
  96. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 今、外務大臣がおっしゃった点でございますが、まことに重大な点を御指摘されたと思います。これはある意味では日本国民気持ちを、あるいはまた日本政府意向をここに表明されたというふうに私は受け取ります。確かに、これはフィリピンのみならずASEANなり、それからまたアジア・太平洋地域の安全保障の問題についても、重大なかかわり合いのあるものでございますので、今おっしゃったような立場から、大統領選挙が公正に行われるということを期待したいと思います。  ただし、それに対してどうなんでしょうか、日本政府は今そのような態度を表明されましたが、ほかに何らかの方法を講じられるような用意はございますか。例えば、政府なり民間なりそういうものからミッションが行くとか、これはケースが違いますけれども、ナミビアというようなところにおいては、かつて日本政府が選挙が行われる際に参加した経緯もございました。そのような話し合い、あるいはまた御用意というようなものはあるのでございましょうか、お聞かせいただきたい。
  97. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 フィリピン側から御要請があれば別でありますが、日本政府立場は私が国会で答弁したとおりでありまして、フィリピンとしましてもそうした日本政府立場、あるいはフィリピンの今度の大統領選挙に対する日本の期待、政府の期待というものについては十分承知しているもの、こういうふうに見ております。
  98. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 これは私も具体的な方策だと思っておりませんけれども、少なくとも私が個人的に希望をいたしますのは、ASEANの国々のしかるべき方々とかアメリカの政府筋であるとか、あるいはまた国会議員の間であるとかというところにおいて、この問題を中心にした情報交換なりあるいはまた話し合いが行われることが、具体的な、モーラルなプレッシャーにもなるのではないかと思いますが、この点について再度、いかがお考えでございましょう。
  99. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今度のフィリピン大統領選挙には、アメリカや我が国だけではなくて、ASEAN諸国も非常に重大な関心を持っておると私は思います。そうした関心は、それぞれの形で表明をされておると思っております。そうした世界の注目の中で行われる選挙でございますし、私どもは、この選挙がとにかく自由な雰囲気の中で行われることを期待して、これを重大な関心を持って見守っていく必要がある、こういうふうに思うております。
  100. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 時間がありませんので、二、三最近の戦後処理問題に関連いたしまして、お尋ねしたいと思います。  中国残留日本人孤児の身元判明率というのが、今回は最低であったというようなことを聞きますと、四十年たった今日、本当に胸が痛む思いなのであります。が、また同時に、北朝鮮における日本人孤児の何人かの方々も来られたというようなことも聞きました。この北朝鮮における日本人孤児という問題については、どういうふうな調査が行われているのか、あるいは外務当局としてどういうアプローチをしていこうとしておられるのか。国交関係がないわけでありますから、大変困難があると思いますけれども、この問題についてはどのような状況でございましょうか。
  101. 柳井俊二

    ○柳井説明員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘のように、北朝鮮との関係につきましてはいろいろ制約があるわけでございます。政府といたしましては、従来から日本赤十字社等を通じまして、北朝鮮残留邦人の消息調査というものを北朝鮮側に依頼しておるわけでございます。ただ、残念ながらいまだその回答はございませんで、本件の進展は見られておらない状況でございます。  本件につきましては、最近、留守家族の方々の会が結成される等の動きがございますので、外務省、厚生省あるいは日赤の間で、本件に関する検討を行っているところでございます。今後とも、日本赤十字社等を通じまして、消息調査努力いたしますとともに、肉親等関係者から北朝鮮渡航について御希望が出るという場合におきましては、人道問題の解決という立場に立ちましてできる限りの協力をしていきたい、こういうふうに考えております。
  102. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 これはぜひ進めていただきたいと思います。  あわせて、同じく人道問題でありますが、これは外務大臣中国に行かれた際、訪中の際に第三者に対しての仲介を頼むというようなお話もされまして、北朝鮮における日本人妻の帰国の問題あるいはこれからの連絡の問題、こういったことについて、日本人妻の問題についてのお話もされたわけであります。私どもも野党ではありますが、同じように働きかけをしてまいりました。しかし、その後どうなっておりますでしょうか。北朝鮮に行かれた日本人妻の問題であります。たびたび国会において取り上げたし、外務大臣は前向きなお話をしておられました。したがいまして、ここら辺で前進したお話が恐らく聞かれると思いますが、いかがでございますか。
  103. 柳井俊二

    ○柳井説明員 ただいま御指摘の北朝鮮の日本人妻の里帰りの問題でございますが、日本政府といたしましては、この問題はあくまで人道的な観点から取り組むべきだという方針のもとにおきまして、ただ北朝鮮とは国交がないということから、とり得る手段にはおのずと限界はあるわけでございますが、昭和五十年ごろから日本赤十字社を通じまして北朝鮮側に安否の調査を依頼すること等、種々の努力をしてきております。  この結果、昭和五十七年の十二月に至りまして、初めて北朝鮮側から日本赤十字社を通じまして、特に家族から安否調査の要望の強かった九名の日本人妻につきまして、その消息が判明したという旨の連絡がございました。その後も、最近になりまして昭和五十九年の七月でございますけれども、北朝鮮側から日本人妻からその家族にあてた手紙十二通が伝達されますとともに、別途五名の日本人妻の安否につきましても、日赤に対して連絡があったというふうに承知しております。北朝鮮側からの連絡によりますと、今後とも日本赤十字社を通じるこの種の安否調査には、通信連絡を容易にする等の措置によりまして、できる限り協力するということであったというふうに承知をしております。  私どもといたしましては、この結果も踏まえまして、今後とも安否調査につきまして家族の方々からの御要望があれば、日本赤十字社等のルートを通じまして北朝鮮側に取り次ぐというふうにしております。また、日本人妻の安否が判明いたしまして、家族と日本人妻の通信が確保された段階になりまして、さらに双方の再会につきまして本人それから家族の御希望があれば、これが実現するように努力していきたいというふうに考えております。
  104. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 ぜひこれは進めてください。  大臣、今お聞きになっておられて、十数名の方々の消息がわかったというふうなお話がありました。しかし、私の記憶する限り、日本人妻で行かれた方は六千名なんですね。そのうちの数名というようなことでは、これはどういう努力が行われたのかというふうにも言わざるを得ない。外務大臣、ぜひこれは督励をしていただきまして、積極的に進めていただくようにお願いをしたいと思います。  さて、時間がありませんので、もう一件お尋ねしたいのですが、戦後処理の問題の最たるもので懸案のままになってきております、これはもう深刻な状態にまでいっている一つの問題が、いわゆる台湾人元日本兵士の戦死された方々に対する補償問題でございます。これまた人道問題なんです。一体何が原因で、どこにネックがあってこの問題が解決できないのでしょうか。もし政府の方で困って、この問題を例えば赤十字社に頼みたいけれども、赤十字、中国側で言うならば紅十字、これなんかは一国一社主義だということならば、我々の方からでも、野党の方からでも、他の政党レベルからでも、そういう問題については話し合いに行ってもいいのではないかと思っています。事実、我々がやっている交渉もございます。そしてまた、超党派でこういった問題を早く処理しようではないか、これは国際的な信義にかかわる問題だということも言われている今日、一体全体どうしてこれが解決できないのか、どこにネックがあるのか、それをぜひ外務大臣、ここでひとつお考えを聞かしていただきたいと思うのです。今予算編成を目前にいたしまして、この時期を逃がしてしまったら、これはどうにもならなくなるのじゃなかろうか。  一緒くたにいろいろな話をしますけれども、御存じでしょうが、二十一万人の元兵士とあるいは軍属ということで台湾人の方々は従軍した、その中で三万人も死んでおられる。そのときに、給与あるいは軍事貯金というような形で貯金したものも、日本政府が預かったままで返しておらぬのです。私の記憶では、昭和五十年の衆議院の外務委員会で当時の外務大臣が、宮澤外務大臣でございましたけれども、これは日本政府の債務だということ空言っております。債務だったら、返さなければ信義にもとります。ましてや、戦死した人に対して一銭の補償もしてない、これはいかぬと思いますね。安倍外務大臣のイニシアチブで、あなたの外務大臣在任中にこれはひとつ解決していただきたい。これが信義に則した行動だと私は思いますので、お考えを聞かしていただきたいと思います。
  105. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 旧日本軍人軍属として戦死した台湾住民の遺族及び戦傷した台湾住民に関する補償問題につきましては、人道上の面から誠意を持って検討していかなければならないというのが私の認識でございますが、この問題を対外的な請求権問題として検討することにつきましては、日台間の全般的な請求権問題が未解決であること、これは今御指摘のとおりでございます。さらに、台湾以外の分離地域等との公平及び波及の問題があること、さらに本問題については、我が国の厳しい財政事情等の問題があること等も考慮して検討を重ねていかなければならないと考えております。  なお、具体的には本年度予算におきまして、いわゆる台湾人元日本兵問題についてどう考えるかを検討するための五百万円の経費が総理府に計上されております。これを受けまして、本年五月以来関係省庁連絡会議が開かれておりまして、今後ともこの連絡会議及び同幹事会にて鋭意検討を続けていく考えでございます。
  106. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 時間が参りましたので、これ以上続けると次の方に御迷惑をかけますが、今おっしゃった問題点は解決できる問題であろうと思います。要は、政治的な決断だと思います。もう一遍申し上げますが、安倍外務大臣、今日までのいろいろな議論を踏まえていただいて、ここで大臣が政治的決断をしていただきたい、これをもう一度申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  107. 愛野興一郎

    愛野委員長 次に、岡崎万寿秀君。
  108. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 私は、ニュージーランドの非核政策と我が国のとっている非核三原則の問題について質問したいと思います。  十日にニュージーランドのロンギ政権が、非核法案、正確に言いますと非核地帯・軍備管理・軍縮法案というわけですが、これを議会に提出して、来年成立の見通しだというふうに聞いています。当然政府は、これについて情報を得ておいでになると思いますし、一定の判断もあろうと思うのですが、これをどうごらんになっているのか、お聞きしたいと思います。
  109. 西山健彦

    西山政府委員 この法案は、核爆発装置の製造、取得、保有等の禁止、並びに外国艦船がニュージーランドの内水に入域するときに、核爆発装置を搭載していないと首相が認める場合にのみその入域を許可するというような一連の項目を含む法案で、二十四条から成っているというふうに承知いたしております。  御指摘のとおり、十二月十日にニュージーランドの議会に提出されましたが、今後の審議日程等、またいつごろこれが採択されるかということにつきましては、私どもはまだ十分な判断をするだけの資料を持っておりません。
  110. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 その程度のことは新聞に載っていますので、もう少し立ち入った見解を聞きたいと思いましたけれども、先に進みましょう。  今説明があったように、これは非常にアメリカに対する配慮をした法案になっています。アメリカの場合は、核兵器の存否については肯定も否定もしないという態度なんですね。したがって、ニュージーランドに入港する船が核積載艦であるかどうかについての判断はニュージーランドの政府自身がする、そういう中身になっているわけなんです。これについてロンギ首相自身が、ANZUS条約を含めてニュージーランドが国際的に負っている責務を果たす上で何ら矛盾するものではない、こういうふうにも述べられているわけです。しかし、一方アメリカの方は、これ自身がもし成立するならば、これはANZUS条約同盟の再検討が迫られるものだ、中身は条約の破棄さえもあり得るというような、いわば政治的圧力を加えている状態なんですね。  ここで、私たち被爆国日本、非核三原則を国是としている日本立場から見ますと大変不思議なのは、軍事同盟関係にある国というのは非核政策をとれないのかどうか、非核政策と軍事同盟関係というのは両立できないのかどうか、この辺についてしかと御見解を聞きたいと思います。
  111. 小和田恒

    ○小和田政府委員 御質問の趣旨が政策的な御質問であるのか、法律的な関係についての御質問であるのか、必ずしもはっきりいたしませんが、安全保障の取り決めというのは、それぞれの国がそれぞれの安全保障上の要請に従って、その置かれております具体的な状況のもとで一番適切だと考える措置を講ずるわけでございます。したがいまして、ニュージーランドの場合は、先ほど御指摘のありましたANZUSという協定で取り決めを行っているわけでございますので、一般論として今委員がお尋ねになりましたような関係について云々することは、必ずしも適当ではないと思います。現にANZUSの場合につきましても、ニュージーランド側が言っておると伝えられておりますところと、米国が言っておると伝えられておりますこととの間には若干違いがあるようでございますが、安全保障の取り決めの当事国が、それぞれの共同の利益というものを考えて判断すべき問題であろうというふうに考えます。
  112. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 私は、日本政府見解を聞いているのです。では、日本の場合を聞きましょう。日本はアメリカと、日米安保条約という軍事同盟関係にあるわけですね。しかし同時に、非核三原則、核兵器を持たない、つくらない、持ち込ませないという非核三原則を国是としているわけなんです。これは日本では、非核政策と軍事同盟関係というのは両立しているというふうに見てよろしいですね。
  113. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 我が国は、核の脅威に対して我が国の安全を維持するために、安保条約に基づいて米国の核抑止力に依存しておるわけでございます。米国の核兵器が我が国の防衛のために使用されるという可能性があるという事実自体が、我が国に対する核攻撃あるいはその脅威を未然に防止する、抑止するという力になっていることを意味するわけでございます。しかし、このことと日本に米国の核兵器を持ち込むこととはおのずから別個の問題でございまして、このような米国の核抑止力が働く上で米国の核兵器が日本の領域内に存在している必要はございません。したがいまして、米国の核抑止力に依存するということと核を持ち込ませずということとは、矛盾いたさないというふうに考える次第でございます。
  114. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 聞いているように答えてもらいたいのですけれども、答えにくいからでしょう。  それと関連して話を進めたいと思いますが、十一月六日の参議院の予算委員会中曽根首相が、安保条約が基本、主であって、非核三原則はそれに従たる運用の一つだというふうに述べられたわけです。それに関連して私は、十一月八日の当委員会で安倍外相に質問いたしました。安倍さんは、十分確かめていないがということではございましたけれども、安保条約が先にでき、その後非核三原則ができた、そういう順序を言われたのではないか、こういうふうな答弁でありました。私もここに持ってまいりましたが、歴史的経緯について述べた後で非常に重大な発言をされている、ここが問題なんです。  こういうふうに言われております。「私はやはり日米安保条約というものが一つの基本である、その運用の一つのやり方というものに非核三原則というものがあるんだと、そういうふうに考えております。」ここではっきりと、日米安保条約が基本で非核三原則というのは「その運用の一つのやり方」、つまり一つの手段のようになっているわけなんです。これは、安保条約に対して非核三原則という日本のとうとい国是を低めるものだと私は思いましたし、この間もそのような質問をしたわけなんです。  そこでお聞きしたいのですけれども、外相は国是というものについてどういうふうにお考えになっているか、お伺いしたいと思います。
  115. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、私の答弁につきまして岡崎さんが勘違いしておられるのじゃないかと思いますね。非核三原則というのは日本の国是ですから、これは日本国民にも周知徹底している基本的な日本の原則であります。同時に安保条約というのも、日本の安全保障という面においては基本である。ただ、非核三原則と関連して申し上げたのは、やはり安保条約の事前協議というものとの関連で言ったのではないか。安保条約における事前協議ということによって核の持ち込みは行われないという日本立場、それは非核三原則から来ておるわけですから、そういう点については私の答弁、私の考えは終始一貫しておりまして、私は岡崎さんの方が少し考え違い、誤解をしておられるのだと思います。
  116. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 安倍さん、それは違いますよ。私が言ったのは中曽根首相答弁を言ったのです。あなたはそういうふうに言われていないので、今引用したのは、あなたが歴史的経緯について言われたんじゃないか生言われたことを引用したのであって、ここで私が取り上げているのは中曽根首相答弁について言っているわけです。今言われたことは、私はよく承知しています。  しかし、ここで国是であるということについて、もっとしっかり政府認識してもらわぬといかぬと思いますので改めて聞きますけれども、外相は国是ということについてどういう深い認識をされているのか、もう一度お伺いしたいと思います。
  117. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはしょっちゅう日本政府が、総理大臣さらに外務大臣からも国会を通じまして国民の皆様には明らかにしておるように、国是というのは国の基本的な原則である、そういう意味における非核三原則というものが存在しているということであります。
  118. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 非核三原則は、安保条約との関係で言うならば核持ち込みに関してでしょう。私は非核三原則というのは、核持ち込みについて言うならば安保条約を拘束する最高の政策規範でないかというふうに思うのです。そうでしょう。つまり、非核三原則があるために安保条約の、先ほど運用とおっしゃいましたけれども、実際上は核兵器を持ち込むことができない、そういう規範になっているわけですから、この辺のところはやはりはっきりと、非核三原則というのは、核持ち込みについては安保条約を拘束する最高の規範だと、大臣、そうじゃありませんか。
  119. 小和田恒

    ○小和田政府委員 安保条約は、岡崎委員御承知のとおり、我が国が国会の御承認を得て締結いたしました国際約束でございます。憲法九十八条によりまして、国際約束は誠実に遵守する義務があるわけでございます。他方、先ほど大臣からもお答えいたしましたように、非核三原則は日本国民の世論の支持を受けた最も基本的な政策でございまして、その両者が矛盾することがないようにという趣旨から、安保条約の運用の問題として事前協議制度というものが設けられているわけでございます。その点においで、両者の調和が図られているということでございますので、安保条約を拘束するような原理であるかどうかというような問題は、そもそも生じないというふうに理解しております。
  120. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 いろいろ述べられていますけれども、要するに安保条約そのものの手、自由な発動を縛っているわけでしょう。そういう点では、安保条約を拘束する一つの規範じゃありませんか。国是というのは、そういう重みを持っているんじゃないかと思いますが、大臣、そう思いませんか。
  121. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いや、安保条約を拘束するとかしないとか言われますけれども、安保条約の中にこの事前協議制度というのはあるわけですから、それが安保条約ですから、拘束するとか拘束しないとかいうものではない、私はこういうふうに思います。
  122. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 少なくとも安保条約の自由な発動については、持ち込みをさせないという点でははっきりと縛っているというふうに私は思うのですね。これを従たる存在、単なる運用のやり方みたいな、そういうように軽視、低めてはならないと、はっきり私は強調したいと思うのです。  そこで再確認したいのですけれども、被爆国国民の願いがここに込められているわけなんですね。それが非核三原則なんですよ。これはやはり安保条約があろうとなかろうと、この中のつくらない、それから持たないというもの、これは安保条約と直接関係ないでしょう。ですから、これは普遍の政治原則だというふうに思いますが、そう言明できますか。大臣、どうでしょう。非核三原則は普遍の政治原則であると。
  123. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 非核三原則は国是であるということを、国会で明快に政府答弁しているわけです。国是となれば、条約局長も申し上げましたように、国民の広範な支持を得た中で生まれた政策の基本ということでございまして、我が政府が続く限りはこの三原則というのは守っていかれなければならぬ、少なくとも基本的な政策として我々はこれを守っていかなければならない、こういうふうに思っております。
  124. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 基本的政策、普遍の原則でしょう、これは。単なるやり方じゃないと思いますよ。中曽根首相はこれを非常に低い形で扱われて、単なる運用の問題というふうにされている。ここに私は問題を指摘したわけなんですよ。これは持ち込みだけじゃなくて、持ち込みにかかわりない、日本の核武装をはっきりとその手を縛る、そういうつくらない、持たないということも人づているわけですから、そういう低い形にこの三原則を扱うのは絶対認めるわけにいかないというふうに思うわけです。こういう政府姿勢の中で、国民の核持ち込みに対する疑惑は非常に広がっている。  最近の世論調査の結果を私は持ってきましたけれども、有力新聞の世論調査によると、「日本政府は、核兵器を持ち込む恐れのある外国の軍艦や飛行機が、日本に入ることをはっきり拒否すべきかどうか」、こういう問いに対して、「はっきり拒否すべきだ」というのが七二%、当然ですが、あるわけですね。続いて、「非核三原則のうち核兵器を『持ち込ませない』という方針は守られているか」という問いに対して、「そうは思わない」というのが何と七三%あるわけなんです。最近の横須賀等への核積載可能艦船の入港が相次いでいるわけですが、外相はこういう世論状況があるということについては御理解されていますか。なぜこういうのが起こるのか、はっきりお答え願いたいと思うのです。
  125. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ちょっと、世論調査もいろいろありまして、それは共産党の世論調査ですか。(岡崎委員「そんなことないですよ。一般新聞です。とんでもないことをおっしゃる」と呼ぶ)今ちょっと御質問したのですが、一般の新聞でそういう調査もあるかもしれません。しかし、我々としてはあくまでも非核三原則が国是ということで、これを守っていく。そして、安保条約という中で事前協議制度というのはちゃんとあるわけですから、アメリカが核を持ち込む場合においては日本政府に協議をしなければならない。これはアメリカの義務ですからね、条約上の義務ですから。日米関係は、お互いにそうした権利義務の上に成り立っておるわけで、条約というものはちゃんと守っていかれなければならぬわけですから、その義務をアメリカは負っておるわけです。  そして、その義務に基づいて事前協議をするということになったときは、日本政府は今の非核三原則という立場から、核の持ち込みに対しては、これはできません、こういうことをはっきり申し上げるということは、この国会でしばしば申し上げたとおりであります。したがって、アメリカによるところの核の持ち込みというのは、これまでもあり得なかったし、今後とも安保条約、そして事前協議制度という存在がある限りはあり得ないということを、明確に何度も申し上げているとおりでございます。
  126. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 何度も同じことを繰り返されておる、しかし、国民はそれを信用してないというのが事実なんです。日本に核兵器が持ち込まれている、そして非核三原則は空洞化されているのじゃないか、そう考えているのが何と七三%もいるわけなんです。とんでもないですよ、共産党だけの調査なんというのは。こういう状況について、やはり深刻に考えなくてはいかないと私は思います。そして、非核三原則について首相みずからが、これを安保に従たる存在であるかのように発言される、とんでもないというふうに思うのです。  これまで国会決議もありました。武器輸出三原則というのも、実際は対米武器技術供与をめぐって、これが抜け穴になっている状況もございますね。そういう点から見るならば、これを国是と言うならば、国是らしくはっきりと法制化する必要がある、私はそう思うのです。今の状況は余りにもあいまいにされている。ここに国民の疑惑があるし、ここにやはり抜け穴があるのじゃないか。外相、法制化する意思ございませんか。
  127. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは御承知のように国是という、いわば日本の我が政府基本的な政策でありますから、そうして、これは国民の世論の中で広範に支持されておる、そして周知徹底されておる原則であろうと我々は思っております。したがって、今これを法制化するという考えはありません。
  128. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 そういうふうな答弁の中で、実際上空洞化されているからこそはっきりと、ここではあいまいさを許さないような形で法制化すべきであるということを重ねて強調しまして、時間が来ましたので、私の質問を終わります。
  129. 愛野興一郎

    愛野委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時五十九分散会