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1985-12-06 第103回国会 衆議院 外務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年十二月六日(金曜日)     午前十時四分開議 出席委員   委員長 愛野興一郎君    理事 北川 石松君 理事 野上  徹君    理事 浜田卓二郎君 理事 井上 普方君    理事 土井たか子君 理事 玉城 栄一君       鍵田忠三郎君    鯨岡 兵輔君       佐藤 一郎君    中山 正暉君       仲村 正治君    西山敬次郎君       岡田 春夫君    小林  進君       渡部 一郎君    岡崎万寿秀君       田中美智子君  出席国務大臣         外 務 大 臣 安倍晋太郎君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議室長         兼内閣総理大臣         官房審議室長  的場 順三君         内閣法制局第一         部長      工藤 敦夫君         防衛施設庁総務         部長      平   晃君         外務省北米局長 藤井 宏昭君         外務省経済協力         局長      藤田 公郎君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省国際連合         局長      中平  立君         外務省情報調査         局長      渡辺 幸治君         文部省初等中等         教育局長    高石 邦男君         文化庁次長   加戸 守行君         厚生省援護局長 水田  努君  委員外出席者         外務大臣官房審         議官      福田  博君         外務大臣官房外         務参事官    久米 邦貞君         外務委員会調査         室長      高橋 文雄君     ――――――――――――― 委員の異動 十二月三日  辞任          補欠選任   石川 要三君      藤井 勝志君   江崎 真澄君      仲村 正治君 同日  辞任          補欠選任   藤井 勝志君      石川 要三君     ――――――――――――― 十一月二十八日  核トマホーク積載艦船日本寄港反対等に関す  る請願上原康助紹介)(第町七二号)  非核三原則堅持等に関する請願(佐藤敬治承紹  介)(第四八九号)  核兵器廃絶等に関する請願吉原米治紹介)  (第四九〇号)  同(井上一成紹介)(第五二八号) 十二月二日  核トマホーク積載艦船日本寄港反対等に関す  る請願河上民雄紹介)(第六八九号)  同(大原亨紹介)(第七四〇号)  同(河上民雄紹介)(第七四一号)  同(山中末治紹介)(第七四二号)  宇宙兵器核兵器凍結実現等に関する請願  (河上民雄紹介)(第六九〇号)  同(大原亨紹介)(第七四三号) 同月四日  核トマホーク積載艦船日本寄港反対等に関す  る請願大原亨紹介)(第八〇〇号) 同月六日  核トマホーク積載艦船日本寄港反対等に関す  る請願稲葉誠一紹介)(第一二四六号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 十二月六日  核兵器廃絶に関する陳情書外四件  (第二六号)  アフリカの飢餓救済に関する陳情書  (第二七号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 愛野興一郎

    愛野委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小林進君。
  3. 小林進

    小林(進)委員 私は、やはり靖国神社の問題について、継続して御質問をいたします。  どうもおまえ、少ししつこいじゃないかと言われるのでありまするけれども、国際問題に籍口いたしまして、国内でも実に賛否両論が激しく盛り上がっておりますとともに、問題はアジア国際問題としてどんどん火を噴いております。外務大臣も御存じでしょうけれども中国では首脳部が一生懸命に、中央都市地方都市等における民衆、特に学生を中心とした燃え上がりを消すために、鎮静するために大分苦労しておりまするけれども、火は消えない。むしろ、だんだん燃え上がっていく空気が強いのでありまして、これをこのまま、アジアの諸国はもちろんでありまするが、日本国内においてもこのままにしておきますと、私ども敗戦後四十年、アジア隣国との友情のために積み重ねてきたその苦労が全部水泡に帰す、こういう危険性も予測せられるのでありまするから、そういう心配を基本に置いて、この靖国神社問題について質問を継続していきたいと思うのであります。  限られた時間でございますので、余り余分なことを言う暇はない、そのものずばりでお尋ねいたします。靖国神社、二百四十六万有余の御柱ですか、祭神をお祭りになっているというのだが、その中に台湾出身軍人軍属二万七千六百五十六人が合祀をされておりまするし、朝鮮韓国出身軍人軍属が二万六百三十六人合祀されている。この合祀認定、選定は厚生省がおやりになっているはずですが、これは間違いありませんね。
  4. 水田努

    水田政府委員 靖国神社から朝鮮籍台湾籍戦没者についての調査依頼があって、それにはお答えを申し上げておりますが、数については私ども把握はしておりません。
  5. 小林進

    小林(進)委員 何をしていない。……。いま一回はっきり言え。
  6. 水田努

    水田政府委員 合祀されている方の数は把握はいたしておりません。
  7. 小林進

    小林(進)委員 把握しておらない、間違いないですね。この問題は後でひとつお伺いいたしますよ。これはあなた、今重大な発言をしていますよ。  この問題について、また厚生省にお伺いしよう。今、把握していないならそれでいいが、これを中国——台湾中国ですから中国政府、それから韓国朝鮮、それらの国々に対して、これを合祀していることに対して大体了承を得ているのか、相手の国の承諾を得ているのかどうか。これは、ひとつ外務省にお伺いをいたしましょう。
  8. 福田博

    福田説明員 合祀そのものにつきましては靖国神社が決定する問題でございますので、相手政府了承を取りつけるとか政府ベースでやるべき話ではないと思います。
  9. 小林進

    小林(進)委員 どうも君は何だね、発音が悪いからしゃべっているのがわからない。もっとはっきり、聞いている者にわかるように発音してくれ。今始まったことじゃない、この前からその感じを深くしているんだから。  そこでお伺いをしますが、七七年の夏、来日をいたしました台湾人に対して靖国神社が、台湾出身軍人軍属戦没者二万七千六百五十六人の合祀通知書遺族に配付するようにお願いをした。しかし、これを知った台湾人遺族が大変怒って、そんなの取り下げてくれ、靖国神社合祀なんかしていることはとんでもない話だから、これを取り下げてくれということを日本政府に訴えたというんだね。その日本政府は、こういう現実の問題があるのだから、これを知らないと言うわけにはいかぬだろうと思うけれども日本政府はそれを一体どう取り扱われたか、また、以後その経過がどうなっているのか、これをひとつお聞かせ願いたい。
  10. 福田博

    福田説明員 外務省としてあるいは政府として、そういう問題があったということは、私承知しておりません。
  11. 小林進

    小林(進)委員 こういう国際的な、大変基本に関する重大問題を知らぬ存ぜぬで過ごすということ自体が、私は大変な行政の怠慢だと思う。知らないでこれまた通せると考えていられたら、これは大変な間違いです。こういうことを含めて、今みんなこれはアジア方々で火を噴いている原因の一つなんですから、こんなことを知らぬで過ごせるなんて思ったら大きな間違いでありまして、これは朝鮮韓国出身軍人軍属合祀されているということが明るみに出てから、こういう関係国の間からは、旧植民地政策を今なお押しつけられているという、いわゆる日本植民地支配からまだ日本国はこれの独立を認めない、まだ植民地政策残滓を残している、だから日本植民地政策から脱却したこれらの国々は、非常に屈辱を感じているのであります。自分たちの一番逆コースでやっつけて弾圧をしたその残滓が、そのままいわゆる敗戦国日本の形がそこに残っていることに対して、たまらない憤激と怒りと侮辱を感じている。  こういうことを外務省は、これを知らないでいるということも実に行政の怠慢ではあるけれども、こういうことを、祭られている相手国気持ちを少しでもしんしゃくをしないというこの言われ方も、私は実にけしからぬと考えておる。こういうようなやり方に対して、靖国神社側は一体何と言っていますか。厚生省、よく知っているだろう。こういう祭っていることに対して、靖国神社自体は何と言っているの。
  12. 水田努

    水田政府委員 合祀のことにつきまして、私どもは一切靖国神社と話し合ったことがございませんで、わかりません。
  13. 小林進

    小林(進)委員 君は、よくまあずうずうしい答弁をしているけれども、これは厚生省の役所の中でもなければ、あるいは道路や部屋の中で話しているんじゃない。国民の代表なんだ、おれは。国民の意向を受けて、正式な立法府の中の外務委員会で速記をつけてしゃべっている。そんな君、ずうずうしい答弁してここを通せると思っているのかね。それでまた、援護局局長なんて勤まると思っているの、君は。     〔委員長退席北川(石)委員長代理着席〕  靖国神社はこういうことに対して、台湾朝鮮などの合祀を取り下げてくれという要求に対して、戦死したときは日本人だったのだ、だから戦後も日本人でなくなることはあり得ない、日本の兵隊として死んだら靖国に祭ってもらうんだという気持ちで戦って死んでいったのだから、遺族申し出で取り下げるわけにはいかぬ、こういうことを言っているとおれは聞いている。その答弁の筋は厚生省が知恵をつけている、こういうふうに聞いているんだ。これは本当かうそか。
  14. 水田努

    水田政府委員 先ほどお答えいたしましたように、私ども靖国神社からの調査依頼範囲内で、一般的な陸軍あるいは海軍軍人軍属の身分上の記録を持っておりますので、それをもとに事務的、機械的にお答えしているにすぎません。
  15. 小林進

    小林(進)委員 時間がないから、そういううちゃらかしの答弁も黙って——黙って聞いているんじゃない、後でまた言うけれども、特に台湾がそういう合祀の問題に憤慨をして、そして七八年の夏だ。靖国神社のそういう言い分を聞いてなおさら憤激をして、七八年の夏、東京で、靖国への合祀拒否という名目の集合を持った。そして日本の各関係庁、もちろん厚生省にも当然言っている。それで、こういうことをやめてもらいたいという集会までやったんだから、それを知らないで通せるとあなた方考えているとすればずうずうしいんだよ。知らないとすれば行政の怠慢も甚だしい。     〔北川(石)委員長代理退席委員長着席〕  このことについて、外務省にもお伺いをするんだ。いいですか。大体こういう、死んだのはあくまでも日本人だ、だから中国政府が何と言おうと朝鮮国民が何を言おうと、日本人として死んだんだから日本人として靖国へ祭るんだ、遺族言い分なんか聞かない、こういうことを靖国当局は言っているということなんだが、こういう言い分が通るならば、あの横井庄一君だのあるいは小野田寛郎君だの、彼と前後して三十年、ジャングルの中で発見されたあの台湾高砂族出身中村輝夫さん、これが戦後の補償、いわゆる横井庄一小野田寛郎並み補償を与えてくれという日本政府に対する要求に対して、戦後、おまえはもう日本人でなくなったんだ、中国人なんだから、だから補償もしてやれない、こういうことを言って、こういう生きて帰った者には補償を拒否しながら、死んだ者だけは日本人なんだ、いいも悪いもかかわらない靖国神社合祀するんだ、こういう理屈が一体国際社会に通ると外務省はお考えになっているかどうか。この中村君の問題と靖国神社合祀の問題、これはあわせて外務省はどんなぐあいにお考えになっているか、お聞きをしておきたいと思います。
  16. 福田博

    福田説明員 先ほども申し上げましたが、靖国神社にどなたが合祀されているかということは、すぐれて神社そのものが決めていかれる話であると私ども考えております。  名前をちょっと失念いたしましたが、中村さんでございましょうか、今、戦後、元台湾兵として補償を求めるかどうか、それは全く別の話として私ども把握しております。
  17. 小林進

    小林(進)委員 国内においてあなた方は、それは靖国神社の自主的な判断に任せると言っているけれども、私は、国際問題としてどう考えるかと言っている。相手が、中国朝鮮韓国が、独立国家の我々の国民敗戦国日本が勝手に靖国神社へ祭っているのはけしからぬから、それをやめてくれと言っているにかかわらず、日本人として死んだんだからそんなことの要求は通らない、それは靖国神社の自主的な問題に任せて外務省はノーコメントだということで、一体済むと考えているのかどうか。  なおそれに関連して、同じく台湾人でも今生きて帰ってきて、三十年間ジャングルの中にいて苦労した、それはもう戦後は日本人でなくなったんだから賠償は一銭も出せません、そういう相矛盾した理屈国際社会で通用するとお考えになっているかどうか。問題は靖国神社の問題じゃない、国際的な問題であり外交の問題であるから、この問題は政府みずからがちゃんと判断して、相手国もあるのだから、相手国政府に対していかようかの答弁をしなければならぬ状況に今追いやられているのだと思う。相手国政府言い分も知っているから、私はこうやって質問しているのだ。靖国神社が自主的にやったなんということで済むと外務省考えているのか。
  18. 福田博

    福田説明員 民間のいろいろな私的の活動が行われていることについて、どういうことが行われているかつまびらかにいたしませんが、政府ベースの話として韓国あるいは台湾というところから、祭られている朝鮮人あるいは台湾人の削除を求めてきているという話は、私どもは承知しておりません。
  19. 小林進

    小林(進)委員 知らないということでほおかぶりしていこうとするから、この靖国神社の問題はだんだん火を噴いていくのですよと私は言っているのだ。ちっとも鎮静していないと言うのだ。相手が何か言ってこなければ、あなた方は腰を動かさぬというのか。そういう根性だから、問題の本質にちっとも触れていないと言うのです。そんな答弁で満足しちゃったら、問題はむしろだんだん追い込まれていくだけだ。  この前、石灯籠の問題もここでしゃべりましたね。靖国神社の大灯籠の中に、いわゆる戦勝国日本南京入城、爆弾三勇士、嚇々たるその戦績を語る彫刻が全部彫ってあるが、それをやめなさいと言ったときにも、あれは靖国神社が自主的にやっていることだ、あなた方は知りませんと言ったけれども、知らないで済むと考えていられればこの問題は鎮静することはないと私は言っている。  この問題についていま一つ、時間がないからあなた方に問題を提起するために言うのだけれども昭和五十五年、一九八〇年に鈴木内閣総理大臣以下閣僚が靖国神社参拝をされたときに、これを受けて中国の人民日報が大きく記事にした。そのときに何と言ったかというと、「鈴木内閣成員大挙参拝靖国神社」と報じた。そこで、靖国神社社頭の大灯籠日本侵略軍中国の地で万歳を叫んでいるレリーフが飾られ、軍国主義と密接な関係のある神社で、中国人民侵略を受けたというその事実を報道していることに対して我々は十分注目している。靖国英霊とは一体何だ、総理大臣以下が参拝した靖国英霊というものは中国人民にとって一体何なのか、忘れようとしても忘れられない存在ではないか、こういうことを大きく報道をして、間接に日本国民並びに政府の反省を求めている。  これに対して、日本政府は何にもこたえようとしない。むしろだんだん大げさに、公式参拝などということまで言っているのであって、中国公式参拝に対してチェックをしてくるには、五年前からこういうふうなことが幾つ幾つも積み重ねられてきているのだということを外務当局が知らないということは、実に怠慢じゃないですか。時間もないからそんなのは答弁は要らぬけれども、次に私が質問するまでちゃんと答弁考えて、答弁だけじゃない、これに対してどう対応するかという対応策も含めて考えておいてもらいたいと思うのです。  そこで、さっき厚生省局長が、厚生省はあくまでも関係ないということを言ったが、関係しているのだ。あなた方は一番関係しているのだ。私はこれを断定して言うけれども、今靖国神社に祭られている神様は幾らあるかというと二百四十何万もいる。  その中で、東京招魂社と言っていた十年の時代にお祭りを受けた者はたった一万人、それから別格官幣社靖国神社であった六十八年間、終戦の直前までに祭られた者がわずかに三十一万人、合わせて三十二万人だ。残りの二百十四万人は昭和四十六年だ。戦争に負けた以後、靖国神社宗教法人となって以後に二百十四万人が祭られた。だから靖国神社祭神は、ほとんど全部が戦後に祭られたのです。第二次世界大戦で戦死した人は戦中には祭られていない。戦争に追いまくられているから、その手続をやっている暇がなかった。戦後やったのだ。  その昭和十六年以後の二百十四万人を祭った認定をやったのはだれだ。厚生省じゃないか。あなた方がやったのじゃないか。靖国神社には、調査する資料もなければ材料があるわけでも何でもない。そこで私はこの前から、この合祀の事業は一体だれがやったのだとあなた方に質問した。  ここに資料があるように、戦前は「合祀手続きについては、戦没者が生じた時点において、陸(海)軍省大臣官房内に審査委員会が設置され、高級副官委員長とし、各部将校委員に任命、出先部隊長または連隊区司令官からの上申に基づき、個別審査の上、陸海軍大臣他省関係大臣合議の場合もある)から上奏御裁可を経て、合祀が決定され、官報で発表、合祀祭が執行された。」これに対して戦後はどうなったかというと、「終戦後の第一、第二復員省資料及び厚生省経由各道府県に照会して得た資料に基づき、旧陸海軍の取扱った前例を踏襲して、合祀の取扱いを決定した。」旧陸海軍がやったのを踏襲したのは厚生省じゃないか。厚生省がやったのじゃないか。神様を決めたのはあなた方だ。そのうち決めたのが二百十四万人。決めたのはあなた方が決めたのじゃないか。これは間違っているかね。
  20. 水田努

    水田政府委員 お答え申し上げます。  先ほどからもお答え申し上げておりますように、私ども靖国神社から調査依頼のあった範囲内で調査回答をいたしているわけでございまして、厚生省がその合祀の作業を積極的に行ったということは決してございません。私どもが、国立国会図書館調査立法考査局がおつくりになりました資料靖国神社合祀された基準を見ますと、厚生省が持っておりません記録の方も相当祭られていることから見ても、私ども祭神行為を積極的にやったということは全くございませんで、先ほどからもお答えしているとおりに、陸海軍軍人軍属公務死した人を調べてくれという調査依頼に対してお答えしているにすぎません。
  21. 小林進

    小林(進)委員 それでは、具体的にお聞きいたします。  祭神合祀基準などの事情を、靖国神社を代表して神野藤禰宜が昨年二月十六日に盛岡地方裁判所に来て、法廷において答弁をしている。禰宜というのは何だといったら、神職であって、靖国神社では宮司がトップ、権宮司が二番目、その三番目の地位にいる靖国神社最高首脳部の一人だ。  それに対して盛岡裁判所で、「旧靖国神社と現在の靖国神社というのは何が連続をし、何が断絶をしているのか。」、戦前とどこが違ってどこが同じなのかという質問に対して、「旧靖国神社のお祭りの方法というのは、大体変わらないと思います。」旧神社の方式と何も変わっておりません。「ただ制度上、昭和二十一年二月以降と以前とは、変わったということは言えると思います。」そうだろう。国家神道から神社宗教になったんだから制度は変わったけれども、やっていることは同じだと言っている。  そこで質問して、「旧靖国神社には合祀基準があったでしょうか。」お祭りする基準があったでしょうか。「それは陸軍省海軍省でやっておりましたので、あったかもしれませんし、なかったかもしれません。よくわかりません。」こう禰宜が答えている。次にまた質問して、「現在の靖国神社には、合祀基準というものはあるんでしょうか、ないでしょうか。」戦後はあるのかないのか。それに対して彌宜が答えて、「現在は戦没者調査するのは厚生省援護局でやっておりますので、ここで調査いたしまして公務死亡認定された方々があります、それを神社側から御照会申し上げて、公務死亡認定された方々神社先ほど申し上げましたけれども宮司合祀するという形をとっておるわけでございます。」  そこでまた問うている。「結局厚生省判断を任せて、厚生省公務死亡という認定をした戦没者については、すべて合祀をするということなんでしょうか。」と聞いたら、「おおよそのところは、そのような形をとっております。」こう答えている。みんなあなたのところがやっているじゃないか。これはどうなんだ。また問いだ。「おおよそのところはと申すと、合祀基準を明確にしたような文書はございませんか。」「はい、ございません。」と答えている。問い。「今までの、例えば戦前の例を踏襲しているというようなことはございませんか。」これに対して答えている。「厚生省の方では、あるいはそうかもしれません。」厚生省がみんな戦前を踏襲してやっているのだと思いますと答えている。  また問いだ。「公務死亡というのは、どういう定義になるんでしょうか。」その問いに答えて、「それは厚生省認定したものでございますから、それを照会するわけでございます。」言いかえれば、いいですか、靖国神社は、あなたたち認定したものをただ関係者遺族に照会しているにすぎないと、こう言っている。どうです。ここでまた問いですよ。「合祀をする対象の方としない対象の方は、どこで線を引くことになりますか。」答えて、「これはやはり、先ほど公務死亡認定されたということで、大体線を引くことにしております。」  問い。「問題は、死亡の事実がはっきりしているかどうか、本当に戦没者であるということがはっきりしているかどうかということ、事務的なことですが、それはだれが一体わかっているのですか、そういうことは宮司さんでなければわからないのですか。」と聞いている。公務で死んだかどうか、だれが一体知っているのだ、宮司さんでなければわからないのですかと聞いたことに対して、答えは、「宮司でも、いわゆる厚生省公務死亡認定を受けるということであって、御照会して名簿にするわけでございますので、詳しいことは神社側では難しいのです。」みんな厚生省認定以外にはないのです、神社は難しくてできないのですとちゃんと答えているじゃないですか。これは完全に、祭神をみんな認定し決定しているものは厚生省であると、靖国神社側責任者みずからが法廷答弁している。  問いですよ。「どうして一体、厚生省公務死亡という認定をよりどころにして合祀対象にしておるのですか。」まあ、敵前逃亡云々はどうなっておるかということを聞いておる。これには答えない。また問うておる。「お答えがなければ別の言葉でお伺いいたしますが、戦前合祀者陸海軍省で決めた上、天皇の御裁可を得たというお話でしたね。」これに答えて「はい、そのように聞いております。」そこで問うて、「現在の手続としてはどういうふうになっているんでしょうか、だれを合祀者として決定するかという事務的なことですので、難しいことはないと思うのですが。」と聞いて、これは「はい、宮司が決定いたします。」  そこで、次にまた問うている。「天皇の関与はないということになっているわけですか。」これに対して、「ただ御報告を申し上げるということでございます。」だから、今もやはり厚生省が全部認定し、厚生省が決めたものは一応宮司がそれを名簿に記載して、上奏とは言わぬけれども、ちゃんと天皇陛下のところに御報告申し上げる、こういうことになっている。これはどうです、違っておりますか。
  22. 水田努

    水田政府委員 私どもは、靖国神社の神官がどういうふうに証言されたがは今初めてお聞きしたわけでございますが、厚生省は恩給並びに援護法の年金の裁定の業務をやるわけでございます。年金の裁定の上で、公務死亡した方と公務外の方は年金額が決定的に違うわけでございまして、死亡原因が公務上であるということは年金の裁定上極めて重要なことで、それは全部身上記録の上において把握でき、チェックするようになっております。  靖国神社からは、その公務扶助料の認定を受けた方を教えてほしいということがあるので、そういうお答えをしているにすぎませんで、靖国神社のために作業しておるのではなくて、公務上の高い年金を裁定するために作業をやっておるので、その裁定をした方の名前等を教えてくれということで、それをお答えしているにすぎません。
  23. 小林進

    小林(進)委員 君、同じ行為を裏側から言うか表から言うか、そういうのを詭弁と言うんだよ。靖国神社祭神調査したり認定したりするということは、靖国神社側では何もできません、全部厚生省から認定し提供されてきたものを、ただ宮司祭神として決定するだけです、これだけ明らかに言っているじゃないですか。あなた、完全に国家自体が、いわゆる祭神という一番中心の内容を全部やっておるのですよ。それが、恩給の関係がどうだとか年金の関係がどうだとか、そういういろいろのへ理屈はあろうとも、靖国神社祭神自体をだれが決定するといったら、厚生省が全部認定されて、認定のための地方庁からも資料をとったりして、そして決まったものを我が靖国神社に下さるのですと言っているじゃないですか。これは一体、憲法二十条で言う国家の干渉じゃないのかね。  だから、戦前と戦後で今も言うているように、一体靖国神社に対する祭神の形式が変わっているかと言ったら、宮司さんも言われているように、何も変わっておりません。ただ政治上、宗教法人になっただけでありまして、内容は何も変わっておりません、こう言っているじゃないですか。あなた方が全部やっているじゃないですか。これは事実上、戦中、戦前と同じなんです。陸海軍がやった仕事を今やっているのは厚生省です。その中心が援護局です。それを年金がどうの、恩給がどうのと言う。理屈はあろう、泥棒にも三分の理屈があるんだ。おれは、そういう理屈を聞いているんじゃない、事実を聞いているのです。現実の運営を聞いているのだ。君、やっているじゃないか。それで一体、この靖国神社が国家から離れていると言えますか。  憲法第二十条は、国と神社との密着を打ち切ると言っているだけの話なんです。——おれはまだ質問しているんだから、のこのこと出てくるな。神社との関係を断ち切るというのだ。年金があろうと言いわけがあろうと、何も断ち切っていないじゃないか、君。一緒じゃない、これは関係がない、国はちっとも靖国神社とは因縁因果がないと言い得るか、君。一番大事な神様の中心をなす祭神まで君たちが全部決めておいて、これで関係なしと言い得るか。これほどインチキなことがあるか。よろしい、君、答弁したまえ。
  24. 水田努

    水田政府委員 私どもは、年金裁定を行うことを主たる業務としております。先ほど申し上げましたように、年金は公務上、公務外で年金差がございますので、公務上の認定をするということは、援護業務にとって極めて重要な事項でございまして、その公務の年金を裁定した人の名前を教えてくれという調査依頼に私どもお答えしているにすぎませんで、靖国神社のために仕事をしているとは全く考えておりません。  と同時に、厚生省が何か合祀を決めているようなことを御指摘でございますが、先ほど申し上げましたように、例えば朝鮮総督府、台湾総督府、それから樺太庁、関東庁の文官の職員も合祀されているようでございますが、こういうものについては私ども一切記録を持っておりませんし、照会も受けたことございません。また、対馬丸の疎開学童も合祀されているようでございますが、そういう方の名簿も一切我々持っておりませんで、そういう意味で私どもは、一切合祀事務は神社側が主体的におやりになっておられることで、照会のあったことに事務的にお答えしているにすぎません。
  25. 小林進

    小林(進)委員 今の答弁は、全く無礼、インチキです。委員長は、立法府においてこんな答弁をさしておいて、あなた黙って聞かれるならば委員長の資格はありませんよ。理由が理由であろうともやっていることが、君たちのやったのが靖国神社の中心になっているのだよ。祭神のもとになっている。君たちのやったことがもとになっているんだよ。君たちがだめだと言えば、宮司の方はそれはだめにして祭らないのだ。君たちが出した資料が、これは祭神の資格ありと言えば、それは祭神に祭っている。それを年金がどうの何がどうだの、年金を教えてくれと言ったからその年金の資格者だけを教えたなどという三百代言的な主張で、黙って聞いていられるか、そんなことは。君たちの出したものが靖国神社のもとをなしている、その影響力を君は否定するのか。そんなインチキなことを答弁したってだめだ。了承できないが、何しろ残念ながらもう五分しかないというから、いま一つ申し上げて、これはまた次の機会に譲ります。これは連続してやるのです。これは、国の基本国際情勢に関する日本の重大な問題ですからやるのだ。  いま一つ申し上げますけれども、一番悪いのは日本戦争の負け方に対して、日本とドイツやイタリーと大きな基本的な違いがある。これが今日、問題がここまで来ている。日本は、戦争に対する加害者だ、侵略国家だという反省がないのだ。ドイツ、イタリーなどは、御承知のとおりもはや敗戦に近づいたときに、あのファッショ、ムソリーニをイタリーの国民はレジスタンスで立ち上がって、戦争を暴発したムソリーニの首を切って、そしてファッショの追撃をやって、イタリー国民自身がこの戦争、いわゆる誤れる戦争を、人民の側からその主謀者を処刑していくことによって反省を促した。  ドイツはどうですか。あのナチスの横暴なる戦争政策をドイツ国民は、連合国にドイツを占領されながらも、この戦争を挑発し、ドイツ国民を痛めつけ、世界に惨禍を及ぼしたナチスだけは断じて許し得ないといってドイツ国民は立ち上がって、今でもなおナチスの巨頭を、戦争の主謀者を追及している。  日本にはそれがないんだ。政府みずからがそれがない。だから、今でもまだ第二次世界大戦を誤れる戦争だ、侵略戦争だという反省が一つもなくて、まだこの戦争はもっとこれをやれば勝っていたんだけれども、どうもソ連なんかが参加したから間違って謝ったんだから、いま一遍やらなくちゃならぬ、そういうような誤った戦後の戦争観念が今でも日本に残っている。  それを根本的に否定された人が、日本に一人いるんですよ。日本にも偉い人がいるんだ。それをちょっと私申し上げて、きょうの質問をまた後日に譲りますが、あなた方、石橋湛山先生というのを御存じだろう。これは我々よりは、かえって自民党の先生方の方がよく御存じだろう。石橋湛山先生が、戦争に負けた後、「東洋経済新報」の中に自分の署名を入れて社説を述べられた。そのときに述べられた意見は何だ。石橋湛山先生は「靖国神社廃止の議」だ。靖国神社をやめてしまえ。「難きを忍んで敢て提言す」、こういう表記で論陣を張っておられる。  その言い分は、概略して言うと、「靖国神社は存続すべきものなりや否や」とまず自分で問うて、それに答える形で「大東亜戦争は万代に拭う能わざる汚辱の戦争として、国家を殆ど亡国の危機に導き、日清、日露の両戦役の戦果も亦全く一物も残さず滅失したのである。遺憾ながら其等の戦争に身命を捧げた人々に対しても、之れを祭って最早「靖国」とは称し難きに至った。」こういう国家を亡国に導いたような戦争に参加したその戦没者は、国を安んじたという名称をささげて祭るわけにはいかないじゃないか。そうである以上、こういう神社を残しておいても「ただ屈辱と怨恨との記念として永く陰惨の跡を留むる」のみで、決して歓迎すべきものではない。  廃止は、この戦争がどうしてこうなったかを検討し、この経験を生かし、「真に無武装の平和日本を実現すると共に、引いては、その功徳を世界に及ぼすの大悲願をたてる」そのためにこの靖国神社を廃止することが必要である。また、戦死者が「国家を殆ど亡国の危機に導いた者である以上、満州事変以来、軍官民の指導的地位に居った者」は、その罪人としての責任をとれという論旨である。これは明らかですね。満州事変以来第二次世界大戦を指導した軍と官の首脳部は、罪人としてこれは処置すべきであるという石橋湛山先生の主張です。  自民党の総理・総裁であったこういう立派な人が、我が日本の歴史の中にいられたということを拳々服膺するんだが、こういうような石橋先生のこの戦争責任論、こんな国家を滅亡に陥れた戦死者を祭るということは間違いだから靖国神社はやめてしまえ、それを指導した軍官民の指導者は罪人として罰する、そして無武装平和の旗を掲げて、世界にそのおわびのしるしをひとつ明らかにしなさいと言われておる。どうですか。時間が来ましたからきょうのところはこれでやめますが、安倍外務大臣、この石橋先生の御主張に対して、外務大臣の所見を承っておきたいと思うのであります。
  26. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 石橋先生の戦争に対するお考えが述べられておると思いますが、私もやはり第二次大戦が日本を亡国の危機に陥れた、大変誤った戦争であると思っております。国際的にも、この戦争侵略戦争であるという厳しい批判があるわけであります。政府としても、そうした批判に対しまして十分認識をしてこれに対応していかなきゃならない、これがこれからの、そしてこれまで日本が歩んできた世界平和を求める日本基本的な姿勢でなければならぬし、今後ともそうでなければならない、こういうように思います。
  27. 小林進

    小林(進)委員 外務大臣のこの御答弁は、私はちょうだいをいたします。けれども、これは外務大臣の御意見であって、これが政府の意見であり閣僚全般の意見にならなければ対外的に影響力はない。できれば、今の御答弁がもし総理大臣の御答弁であれば、私はありがたくちょうだいするのでありますけれども、まだしかし大きな開きがありますから、これは国際的事情を考えて、この質問はこれで終わるわけにはいきません。あとの質問は、また次の外務委員会でひとつやらしていただくことにしまして、きょうのところはこの辺でやめておきます。
  28. 愛野興一郎

    愛野委員長 次に、井上普方君。
  29. 井上普方

    井上(普)委員 私は問題を一点に絞りまして、きょうはお伺いいたしたいと思います。  南アフリカ共和国のアパルトヘイトの問題についてでありますが、この問題につきましては国際世論の非常な非難があり、本年の十月の九日に安倍外務大臣の談話が出されておりますし、また参議院の本会議におきまして、我が党の久保議員の質問に対しまして中曽根総理大臣答弁がなされております。特に中曽根総理大臣答弁なんというのを読みますというと、非常に我々から見まして心強い答弁をなされておるのであります。しかし、実行はどうかという点につきましては、私はどうも国際世論からいたしまして、まだ我が国が非難を受けておるのが現状でないかと存じます。  中曽根総理大臣の本会議場における答弁は、「各国の対南ア措置の中でも特に厳しい措置をとっております。」こう申されておるのでありますが、どうもそのように国際社会からはとられていない。現に、国連の経済社会理事会人権委員会差別防止・少数民族保護小委員会は、八四年に引き続きましてまた八五年におきましても、日本に対する勧告あるいは非難決議が出されようといたしておるように承っておるのであります。この総理大臣答弁並びに安倍外務大臣の談話、このアパルトヘイトに対しまして日本は具体的にどういうことをやろうとしておるのか、ひとつお伺いしたいのです。
  30. 中平立

    ○中平政府委員 お答えいたします。  先生御存じのように、いわゆるカリファー・リポートというものがございまして、昨年度の報告書におきましては、南アフリカとの間で経済的関係を有しておる日本企業といたしまして、五十六社が取り上げられておるわけでございます。このカリファー・リポートと申しますのは、一九七六年以来、毎年または隔年に発表されておるわけでございまして、実は一九七九年の報告書におきまして、日本企業につきまして五十六社が挙げられておりましたので、我が方といたしましては、事実誤認とか通常貿易を行っているとの理由で取り上げているのではないかということで、その削除を要求したわけでございます。  しかるに、依然としてそのカリファー報告書の中には、我が方の削減要求というものが反映されていないということがわかりましたので、去る五月に、この事実誤認のものにかかわる日本企業名の削除を要求したわけでございます。その結果、七月になりまして、日本企業四十社が削除されたというふうに発表されたわけでございます。
  31. 井上普方

    井上(普)委員 何聞いているんだ。我々はそんなこと聞いているんじゃないんだよ。こういうような非難があるが、日本政府としてはどういう具体的な経済的な行動をとっておるのか、アパルトヘイトに対してどういうような措置をとっておるのか、これを聞いているんだ。今のは言いわけばかりじゃないか。具体的に日本政府としては、こういうようなアパルトヘイトに対してどういう行動をとっているか、これを聞いているんだ。
  32. 久米邦貞

    ○久米説明員 我が国といたしましては、従来からアパルトヘイトにつきましてはこれに断固反対するという立場で、国連総会あるいはその他の種々の国際的な場裏におきまして我が国の主張を行っておりますし、また、南ア政府に対しましても直接、アパルトヘイトの改革、是正を進めるように、機会あるごとに進言をしております。  また、こういう改革を進めるに当たって、国際社会が一致した協調行動をもって南アに対する圧力を高めていくことが必要であるという認識から、日本は従来から投融資について規制する、あるいは文化交流を規制する、スポーツ交流も規制するという措置をとっていたわけでございますけれども、これに加えまして、この十月九日に各国と協調しまして、新たに南アのクルーガーランドの輸入の自粛、それから南アのアパルトヘイト執行機関に対しますコンピューターの輸出禁止という、新たな措置をとっております。今後とも国際協調のもとに、南アに対する対策というのは検討していきたいと考えております。
  33. 井上普方

    井上(普)委員 具体的に、一九八五年の第七十一回のILOの総会におきまして、アパルトヘイトに対する決定が出されて、加盟国政府がとるべき行動として十六ここに示されておる。この中において日本政府としては何々を採用して、どういうようなことをやっておるのですか、ひとつお伺いしたい。
  34. 中平立

    ○中平政府委員 我が国といたしましては、南アの軍隊、警察等、アパルトヘイトを強制する機関の活動用に供されるコンピューターの輸出を禁止するということでございます。それから、クルーガーランド金貨の購入、輸入の自粛という点でございます。これは毎年日本政府としては、南アに対する政策というものをILOに報告しておるものでございます。
  35. 井上普方

    井上(普)委員 日本は武器輸出を禁止している。まして、軍隊が使おうとするようなコンピューターに対しましては、日本は国の政策としてもこれをやめるのは当然のことなんです。これを麗々しく取り上げる、そこに日本政府のこの南アに対する経済政策の無能さといいますか、やってないことを示す一つの証拠になると私は思う。  さらには、あなた二つ例を挙げられたコンピューターとクルーガーランド金貨、自粛していますか、今日本で。テレビに堂々とコマーシャルが出ておるじゃありませんか。こんなことをやっておって、それを麗々しく言われるというのは一体どういうことなんですか。いや、あなたはもういいよ、役人は。大臣、あなたもテレビ見られたでしょう。このコマーシャルを見なでしょうが。
  36. 愛野興一郎

    愛野委員長 まず事務的に。久米外務参事官
  37. 久米邦貞

    ○久米説明員 ただいま私が申し上げましたのは、クルーガーランドの新規の輸入を自粛するということでございます。従来、かなりの量のクルーガーランドが既に日本国内に入っておりまして、これは個人が資産として保有する、あるいは個人の投機家が保有するという形で既に国内に入っているものがかなりございまして、そういうものが流通しているのは、現状としても流通しているわけでございますけれども、これをとめるということはいろいろ問題がございましてできないということで、現在とりましたのは、新しい輸入を自粛するという措置をとったわけでございます。
  38. 井上普方

    井上(普)委員 それでは、今まで幾ら入っておったのです。いつからいつまでの間に幾ら入っておったのです。数字を挙げて言ってごらん。
  39. 久米邦貞

    ○久米説明員 総計でどれだけ入ったかということは、ちょっと手元に資料を持ち合わせておりませんけれども、大体これまでのここ数年の間の年間の輸入量は約五千万ドルでございます。
  40. 井上普方

    井上(普)委員 総額がわからず数字は持っておらぬと言うが、新規のクルーガーランドの輸入は自粛するというのはいつ決定したのです。そして今のコマーシャルがやられておることは、しかも銀座の二丁目へ行ってごらんよ、麗々しく広告が出ている、どんどん売られておる実情、これに対してどういう処置をとるのです。五千万ドル入ったと言うけれども、それは一体いつからいつまでに入ったんだ。そして、いつから輸入を自粛するようにあなた方は輸入業者に言っているんだ。
  41. 久米邦貞

    ○久米説明員 輸入の自粛は、十月九日の外務大臣の談話の日と同時に関係業者に対して自粛を申し入れておりまして、それ以後の輸入は行われてないと承知しております。
  42. 井上普方

    井上(普)委員 このクルーガーランド金貨の輸入自粛というのは、このたびの七十一回の勧告、これより以前にも出されておったはずだ。ところが日本は、今遅まきながら十月の九日からこういうようなことに相なって、政府は新規の輸入を自粛するようにと言われておる。  しかし、あなた方先ほども言われた、五十六の日本企業が非常に活動しておるといってカナダの代表から非難を受けた、これに対して削除要求を去年出されたと言うけれども、実際南アにある日本の企業を見てみますと、ことしの十月に外務省が調べた南アフリカに事務所を有する邦系企業というのを見てみますと、これはもうあなた大手商社は全部入っている、銀行も入っている。南アフリカに事務所を持っておる企業が五十六ある。通常の貿易行為であればこれは認められる、こういう逃げ道をあなた方はつくっておる。つくっておるけれども、実際にほかの日本の企業の南アとの貿易は、見てみますと毎年どんどんふえておるんじゃございませんか。現在においても、外務省の調べによりますと、八四年にこれまた三十五億ドルに及ぶ貿易量に拡大しておるんじゃありませんか。その点どうなんです。
  43. 久米邦貞

    ○久米説明員 南アに今進出しております日本の企業は、五十九年十月現在で、御指摘のとおり支店が六と駐在員事務所が五十、合わせて五十六でございます。これらの事務所は、いずれも専ら貿易の分野で仕事をしているわけでございまして、先ほどから申し上げておりますとおり、投融資については一切これを行っていないというのが現状でございます。貿易額につきましては、御指摘のとおり八四年往復で三十四億ドル強でございますけれども、これは過去に比べまして特に大幅にふえているというわけではございませんで、八〇年の初めから南ア貿易はほぼ横ばい状態になっております。
  44. 井上普方

    井上(普)委員 このカナダの代表のごときは、毎年毎年ふえておるじゃないかという指摘をされておる。この点につきましては外務省の言うことを信用しましょう。しかしながら、大手商社あるいは企業の系列がここに五十六ある。これも、進出する企業は毎年毎年ふえているのでしょう。この実態を一体どう考えられるか。  しかも、南ア連邦といいますから気候がいいということで、アフリカの総本山みたいなところ、総支店みたいなところをつくっておるのでしょう。銀行にしてもこういうのをつくっておる。こういうようなことについて自粛さすような行動をとらなければ、日本は世界から非難せられるのじゃありませんか。私は日本の今後のあり方としては、世界の各国から信用を受ける、信用される国になる、これが必要だと思うからあえてこのことだけは申し上げるのだ。それは、企業のやっておることだから知らないと政府はおっしゃるかもしらぬ。しかし、こういうような非人道的なことがまかり通っておる今の南ア連邦、南ア共和国なんだ。これに対して国が方針を立てたら、それに従わせるのは当然じゃありませんか。どうなんです。
  45. 久米邦貞

    ○久米説明員 従来から我が国政府がとっております投融資の規制、あるいは今般十月に新しくとられましたクルーガーランドの輸入停止、あるいはコンピューターの輸出禁止という措置につきましては、自粛要請の形をとっておるものもございますし、あるいは法的規制をしているものもございますけれども日本の各企業から十分な御協力をいただいていると承知しています。
  46. 井上普方

    井上(普)委員 しかし、各企業の協力を得ておるものと思っておると言いますが、世界各国が認めていない。事実、こういう例があるじゃありませんか。このアパルトヘイトに関する七十一回のILOの総会においての決定の一つに、また安倍外務大臣の談話の一つに、政府機関は領事館以外は置かさないというようなことをうたっておるけれども、南ア共和国の観光協会が日本には駐在しておるじゃありませんか。そして新聞広告を大々的に出して、観光旅行を勧誘しておるじゃありませんか。この点、どういうような考え方であれを認めておるのですか。観光局の出張所が日本にあることに対して、領事館だけだとあなた方は言っておった。どうなんですか。
  47. 久米邦貞

    ○久米説明員 観光についての南アのPR活動につきましては、領事活動の一環として広報活動というのがございますので、当地の南ア総領事館がやっておりますそういう観光誘致の活動については、領事活動の一環として考えております。
  48. 井上普方

    井上(普)委員 それで世の中通用すると思っているの。領事館以外は置かさないんだ、しかもそれは制限しているんだと、あなた方は麗々しく談話でも言っておる。観光局があることはちゃんと出ているじゃありませんか。それが、領事館の行動の一つだから認めておるなんということはいいのですか。こういうことを平気でやらせておいていいのですか。
  49. 久米邦貞

    ○久米説明員 我々の方針は、外交関係を持たないというところに非常に強調点があるわけでございまして、それから投融資を行わないということが従来の方針でございます。
  50. 井上普方

    井上(普)委員 投融資を行わない、そんなことで一世界各国から非難の材料になるんじゃないですか。時間がございませんので、この点ひとつ外務大臣、もう少しお調べ願いたいと思います。よろしゅうございますか。  もう一つ伺いしますが、日本の公的金融機関が南アフリカのいわゆるホームランド投資を保証しておる事実はございませんか。どうですか。
  51. 久米邦貞

    ○久米説明員 この南アの国内にございますいわゆるホームランドにつきましては、我が国としましてはこれの独立を承認しておりませんので、南アの一部と考えております。したがって、南アに対する投融資規制という考え方はホームランドについても同様でございまして、この政府の方針に従って、南アのホームランドに対する我が国からの投融資はないと了解しております。
  52. 井上普方

    井上(普)委員 ないと了解しております、ですか。あったらどうするのですか。
  53. 久米邦貞

    ○久米説明員 我々はその事実について承知しておりませんけれども、もしそういう事実が存在するのであれば、従来の規制、政府の対処方針どおりに処置する所存でございます。
  54. 井上普方

    井上(普)委員 従来の政府のやるとおり処置いたしますというのは、どんな処置をするのですと聞いているんだ。あればどういう処置をするか。
  55. 久米邦貞

    ○久米説明員 投融資の態様いかんかと思いますけれども、許可申請の段階での直接投資のような形であれば、許可申請の形でこれは当然申請が出るのでそれはチェックし得るわけでございますし、それから自粛要請という形で行っておるものについては、新たにそういう事実がわかれば自粛を直ちに要請するということになると思います。
  56. 井上普方

    井上(普)委員 この場において、その具体的例を出すことは差し控えます。しかし、そういう今のようななまぬるい態度を政府がとろうとするから、国際社会から日本は非難を受けておるのじゃございませんか。この点、ひとつ反省を求めたいと存じます。  時間がございませんので、最後に安倍外務大臣の御決意をお伺いしたい。  南アフリカ政府に対して、国内での人種隔離政策の停止、人権と市民的権利の尊重、代表的黒人団体との平和的交渉による解決、政治犯の釈放などを要求して、経済、文化、スポーツなどのすべての関係を断絶して南ア共和国に対して圧力をかける、国際的世論の先頭に立って事態の平和的早期解決のために日本はイニシアチブをとるべきじゃないだろうか。アフリカ大陸で歴史的に植民地主義で手を汚してまいりました西欧先進国とは違いまして、アジア・アフリカ諸国のよき友人として日本はそういう立場をとるべきであると私は思う。  この談話の中におきましても、痛みはひとり南アフリカ共和国のみならず、広く国際社会全体が分かち合うべきものと考えると、第一項目目に安倍外務大臣は談話で発表せられておる。むしろ日本は、世界に先駆けてこのアパルトヘイト撤廃のための努力をすべきである、こう思うのでございますが、御決意のほどをお伺いしたい。
  57. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 我が国は、年来からアパルトヘイト政策に対しては、断固反対の主張を世界的にも展開をしております。この方針は堅持してまいりたいと思いますし、また我が国と南アとの関係におきましては、西欧諸国と比較いたしましても我が国はアパルトヘイト政策に対する反対という立場から、南アとの間ではより厳しい措置を講じておるわけで、例えば外交関係を一切持たないということ等も特徴的なものでございますし、同時にまた、これまでいろいろと政府委員から述べてまいりましたが、我々はアパルトヘイト政策に反対という立場から、南ア政府に対しましてはこれまでも事あるごとに反省を求めてまいりましたが、今後ともそのあり方等についても厳しい反省を求め続けてまいりたい。また、世界世論にも訴えてまいりたいと思います。  同時にまた経済的制裁については、これは日本だけやったって大きな意味を持たない、やはり関係国で協調してやるというところに大きな影響力、圧力というものを行使できるわけでございます。これまでもそういうことでやってまいりました。今後ともこうした国際協調を進めながら、我が国としても今後の南アの行動を見てさらに経済制裁を強化すべきである、こういうことになれば、我が国としても国際協調という立場でこれは進めていかなければならない、こういうふうに思っております。いずれにいたしましても日本としましては、こうしたアパルトヘイト政策に対してはあくまでも反対ということを正面に掲げまして、各国とも協力しながら積極的に対応をしていかなければならない、こういうふうに考えております。
  58. 井上普方

    井上(普)委員 外務大臣のお話の中で、各国が共同してやらなければ意味がないなどというお話は、私は受け取れないと思う。少なくとも日本が、こういうような立場をとるのだという毅然たる態度を世界に示すことによって、経済政策をがっちりと示すことによって、初めて世界からの信頼が得られると思います。この点は、ほかの国と協調してという考え方でなくして、日本独自の考え方を鮮明に具体的にやられる必要があると私は考えるのであります。それがまた世界から、アフリカの諸国から信頼せられるゆえんであると思うがために申し上げます。  最後に、日本南ア友好協会というのがあって、外務省の現役役人どもがたくさんこれに加入しておるということは、新聞に出て皆さんも御存じのとおりです。その後おやめになった、現職の役人はこれから脱退せられたというお話でございますが、まだOBは入っておられますか。外務省の顧問がこの友好協会に入っておりませんか、どうですか。
  59. 久米邦貞

    ○久米説明員 外務省現役、OBを含めて、全員自主的に脱退をいたしました。
  60. 井上普方

    井上(普)委員 以上で質問を終わります。
  61. 愛野興一郎

    愛野委員長 次に、土井たか子君。
  62. 土井たか子

    ○土井委員 まず、フィリピン問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  非常に新しいところなんですが、私どもはある意味では予想していたものの、実はびっくり仰天をしたのが、十二月二日の例のアキノ氏暗殺事件に対する判決でありました。私たちは一縷の望みを持っていたんですよね。ところが期待と予想は見事に裏切られる形で、ベール参謀総長ら二十六人の被告全員の無罪が確定したという格好になりました。しかも、注目のベール参謀総長は、その日のうちにマルコス大統領によって、国軍参謀総長の現職に復帰するということにもなったわけであります。これはよその国ではとても考えられない。少なくとも我々日本の国の常識からしたら、とても常識に合わないことがこの日一日のうちに展開をされているのですが、外務大臣、この裁判結果に対して、率直な御意見をまずお聞かせいただきたいと思うのです。どうでございますか。
  63. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 先般、フィリピンの裁判所で判決が下されましたが、政府としましては、この判決について何らかの判断を示すという立場にはありませんが、比国情勢の安定化を希望するという見地から、本件判決が今後比国情勢の進展に及ぼす影響について注目をしていきたい、こういうふうに考えております。
  64. 土井たか子

    ○土井委員 何をおっしゃっているんですか、一体、今のは。またまたこの前と同じように、メモを持ってお話しになると外務大臣は怪しげになってくる。支離滅裂になる。外務大臣本来のあるべき姿というのが、いずれかにかき消される格好になるのです。  私は、昨年十月に真相究明委員会、アグラバ委員会が、具体的に軍部の陰謀による暗殺と結論づけた二つの報告書を出された節、当委員会でも質問をいたしております。きょうはこの議事録も持ってきておりますが、この十一月九日の議事録によりますと安倍外務大臣は私の質問に答えて、「フィリピンにおいてもこうしたアグラバ委員会というような真相究明の委員会ができて、そして公正な真相の究明が熱心に行われておる、その結果がこの報告にあらわれておるというふうに私は判断をしたわけであります。」はっきり言われているのですよ。アグラバ委員会報告に対しては、大変評価をするという認識をされている。そうすると、今度はアグラバ報告に対してはまるでひっくり返しじゃないですか、判決は。無視しているんですよ。釈然としないということをおっしゃるのが、昨年十一月から同じ安倍外務大臣ならば、変わらずにおっしゃるべきである。これが筋です。もう一度、御答弁をお願いします。
  65. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 私は、アキノ事件が起きたときから、これは徹底的に究明してもらいたい、真相はやはり明らかにしてもらいたいということを申し述べてきました。その考え方は今も変わりません。そういう中でアグラバ委員会の報告も出ました。この報告につきまして、先ほどお話のあったような見解も示したわけです。  最終的に、今回フィリピンの法廷におきまして判決という形で出たわけでありますが、これは外国のいわゆる司法当局、裁判所における判決ですから、今日本政府が外国の判決に対してとやかく言う筋合いではない。ですから判断を示すという立場にはない、こういうふうに私は思っております。そういうことで先ほど私の意見を述べたわけです。これはこの判決が出された直後も、私が政府判断として今申し上げたようなことを言っておるわけです。  ただしかし、これによるところの結果というものがフィリピンの中でどういう反響といいますか、どういう情勢になっていくのか、これは日本としても重大な関心を持って注目をせざるを得ない、こういうことでございまして、ああいう判決は、少なくとも裁判所による判決でございますから、それは外国の判決でありますから、それなりに我々としてもこれを判断せざるを得ない、こういうふうに思うわけです。
  66. 土井たか子

    ○土井委員 反響をいろいろ見ながらと、今外務大臣はおっしゃいましたね。反響の中には、もう既に出てきている問題もあるようであります。  新聞によりますと、アメリカの場合は、マルコス政権に対する態度をこれまで以上に硬化させる要因となるというふうなことが刻々新聞紙上伝えられてきています。議会筋も大変毅然たる姿勢ですよ。アメリカの議会もマルコス政権に対しての不快感を示すために、フィリピンに対する軍事援助を削減するということをはっきり決めている。  このうちの一つに、報道によりますとアメリカの国務省は、今回の裁判結果についてレッドマン報道官が声明を発表されているようであります。べール参謀総長が事件に関与したと判断した真相究明委員会の報告を模範的で徹底したものというふうに称賛したその後に、今回の無罪判決というのは同委員会の結論とかみ合わないということを述べたという報道が出ているのですが、向こうの上院のルーガー外交委員長も、裁判結果とマルコス大統領がとった措置については、これまた厳しい批判をされているようであります。  外務省の方は、こういう情報というのは入手されていないのですか。もちろん、その日のうちに入手されているのが当たり前だと思いますが、こうした一連の態度表明というのは、当然のことながら外務省としたら入手されているでしょうね。それは声に出しておいてください。
  67. 福田博

    福田説明員 先生がただいまおっしゃいました米国政府の反応でございますね、これは具体的にはプレスガイダンスという形で出ております。また、議会の方におきましても、先ほどおっしゃいましたベール参謀総長、つまりベール参謀総長は無罪になったために参謀総長に復帰したわけでございますが、べール参謀総長がその職にある限りにおいては、軍事援助を見直すべきであるということを検討していいのではないかということをソラーズ小委員長が発言している、そういう資料はみんな入手しております。
  68. 土井たか子

    ○土井委員 アメリカ政府の方の今回の批判並びに態度というのは、極めて常識的だと私は思っているのです。国際的な感覚からすると極めて常識的ですよ。率直な意見表示であると考えなければならぬと思うのです。日本政府も、何らかのコメントがあっていいのじゃないでしょうか。外務大臣、どうなんですか。  それは出方待ちだの、やれ情勢の推移を見てたの、それはわざわざ聞くまでもない話であります。やはり外務大臣とされては、日本の外交に対して最も責任あるお立場ですから、そういうことからすれば、今回の問題についても一言あってしかるべきだと思いますよ。どのようにお考えになっていらっしゃるか。アメリカ側からのいろいろなニュースも入手なさっているわけであります。どうですか。
  69. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 アメリカはアメリカなりに政府の意見もありましょうし、あるいはまた議会の判断というものもあると思いますが、日本の場合におきましては、日本政府のコメントとしては、先ほどから私が申し上げますようにフィリピンの裁判所における判決でございますから、これに対して我が国として判断を示す立場にはないというのが私のコメントであります。
  70. 土井たか子

    ○土井委員 外務大臣、マニラに日本の大使館がありますよね。フィリピンにおける情勢というのは、日本大使館を通じて日本としては掌握されておるはずであります。日本大使館としてこの間の事情について、今回の結論をフィリピン国内では納得して受けとめるという情勢に相なっているかどうか。新聞では、納得して受けとめている人は少ないというのが、情報として我々には入ってきております。それは当たり前だと思うのですが、そういうことをどうお聞きになっていらっしゃいますか。外務大臣、いかがです。
  71. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 フィリピンの大使館からいろいろと情報も受けておりますし、あるいはこの判決に伴うフィリピンの国民の反応等も情報として受けておるわけですが、おっしゃるような賛否についてそれぞれ意見があるようであります。この裁判所の判決は、それなりに受けとめざるを得ないという立場の評価、この裁判所の判決は到底受け入れられるものではないという評価といいますか反響、そういうものがフィリピン国内において非常に交錯しているというふうに受けとめています。
  72. 土井たか子

    ○土井委員 今おっしゃったフィリピン国内の情勢、それは言うまでもなく、一番大きな掌握して判断する対象であると思います。と同時に、アメリカの方でどういう対応がこれからなされていくか、もう既になされた声明、批判、そしてそれに対応する姿勢、そういうものを総合して、参考にして考えていくのは当然だと思うのです、さっき、参考にしていろいろるる考えていきたいという御発言があったわけですから。当然のことながら、これからの日本政府の対フィリピン政策の姿熱としても、そういうものはもちろん勘案の上でお進めになりますよね。どうですか。
  73. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 判決については我々は判断する立場にはないわけですが、しかし、判決に伴ういろいろな状況というものが生まれておるわけですから、これに対しまして我々としても、隣国のことでもありますし、長い間の友好関係を維持してきている国でもありますし、したがってフィリピンのことは心配しておりまして、この反響、そして、どういうふうに問題がこれから生じてくるかという点については実は注目をして、重大な関心を持ってこれから見守っていかなければならない、こういうふうに思っております。
  74. 土井たか子

    ○土井委員 注目と関心という表現は、これまたまことに都合のよい日本語なんですがね。憂慮しながら今見て、これに対する対応というのは今までどおりでいいのかどうかということもあわせて考えていかねばならないというお気持ちも含めて、今その表現を日本語としてお使いになった、このように理解してよろしゅうございますか。いかがでございますか。
  75. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 私は、フィリピンの情勢に対しましては、やはり友好国の外務大臣として心配をいたしております。そういうことで、これからフィリピンの情勢はどういうふうになっていくだろうかということ等については注目せざるを得ない、このように思うわけです。
  76. 土井たか子

    ○土井委員 私の申し上げたことに対して、それをお認めになるという意味で今の御答弁があったように私は思うのです。  いろいろ伝え聞くところによりますと、八七年に予定されていた大統領選挙が繰り上げられて、来年の二月七日に決められるという格好になってまいりました。もう事実上そうなったわけですが、これは外務省はどのように分析なすったか、また外務大臣はなぜこうなったかといういきさつを分析して考えていらっしゃるか、その辺の御見解はいかがですか。
  77. 福田博

    福田説明員 事実関係といたしましては、先生御存じのとおり一九八七年の予定であったわけでございますが、十一月初めにマルコス大統領が正副大統領選挙を明年初めに繰り上げて実施するという意向を表明いたしまして、その後選挙法案が国民議会の審議を経まして、当初一月という話もあったようでございますが、結局二月七日にこれを実施するということが決定されております。
  78. 土井たか子

    ○土井委員 そんなことは聞くまでもない話。それは事実関係でしょうが、なぜそうなったのです、いきさつについてどうか分析されているのです、そこのところはどうですか。私の聞いているのはそれなんですよ。外務大臣の御見解はどうですか。
  79. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 その辺のところは、マルコス大統領の判断もあったと思いますし、あるいはまた議会のこれに対する反応もあったと思います。野党はこの繰り上げ実施ということについては、反対という意向を表明しているというふうにも聞いておるわけです。いずれにしましても、この二月七日というのが決まったわけです。この選挙が、とにかく公正に自由な雰囲気の中で行われるということがフィリピンにとって極めて大事じゃないか、世界じゅうもこれを極めて注目しておると思っておりますし、日本としても、この大統領選挙が公正にそして自由に行われるということがフィリピンの将来にとって極めて重大なことではないだろうか、こういうふうに考えております。
  80. 土井たか子

    ○土井委員 分析は余り聞かしていただけなかったのですが、公正に自由に行われる選挙に対して期待をする、これは当然のことだろうと思うのです。  そこで、今までの例からすると交換公文というのは、円借款を約束してからどれくらいの間に取り交わされるのですか。
  81. 藤田公郎

    ○藤田政府委員 国によって事情が必ずしも同一ではございません。日本の円借款の制度になじんでいる国、フィリピンもその中に入りますけれども、ASEANでございますとか中国韓国等は割とスムーズに進む方かと思います。特に内容でございますとか条件等について問題がない場合には、意図表明をしましてから一カ月ないし三カ月ということで合意に達するというのが、従来の交換公文の例でございます。それから、関係がそれほど密接でない国ですとか、例えば金利を上げるというようなことでいろいろ問題が生じている国という場合には、かなり長く時間がかかりまして、半年かかってようやく妥結するというような例もございます。今、先生のお尋ねのフィリピンを例にとってみますと、フィリピンを含めますASEANは、一カ月ないし三カ月程度というのが今までの例と考えます。
  82. 土井たか子

    ○土井委員 第十三次のフィリピンとの間の円借款というのの約束はあるのですか、ないのですか。約束したのですか、しなかったのですか。したとすれば、どういうことになっているのですか。どうですか。
  83. 藤田公郎

    ○藤田政府委員 十三次の円借款につきましては、意図表明を本年の十月の八日に行っております。意図表明でございますので、もちろん厳密な意味での約束ということではございません。我が方として、十三次の円借款をこのような十一案件の事業に対して、金額としては幾ら供与する、商品借款はどの程度供与する、条件は云々という意図表明を行いまして、現在交換公文交渉を行っているという状況でございます。交換公文が締結されました段階で、約束をしたということになります。
  84. 土井たか子

    ○土井委員 その意図表明の中で、円借款に対しての金額はどういうことになっているのですか。国民の血税ですからね。意図表明はどういう中身ですか。
  85. 藤田公郎

    ○藤田政府委員 十月の九日に、資料といたしまして十三次円借款の供与の意図表明ということで発表いたしております。交渉が妥結しました段階で閣議の御決定を得て、交換公文の署名ということになります。  金額を申し上げますと、総額としましては四百九十五億円でございまして、事業計画借款、これに俗にプロジェクトと称しておりますけれども、プロジェクト援助、プロジェクト借款が三百二十億二千七百万円、これは十一の案件に対して行われることになっております。それから、それに加えまして商品借款が百六十四億七千三百万円。これは、双方とも限度額でございますけれども、この限度までの円借款を供与するための所要の措置をとる意図があるということをフィリピン政府側に対して表明をいたしました。
  86. 土井たか子

    ○土井委員 第十二次の円借款のときにたしか商品借款がありまして、大変当委員会でも問題になりましたが、商品借款というのはあのとき額が幾らでしたか。
  87. 藤田公郎

    ○藤田政府委員 第十二次の円借款は総額が四百二十五億円でございまして、うち商品借款が三百五十二億円でございました。
  88. 土井たか子

    ○土井委員 三百五十二億の第十二次の商品借款についての消化率は、どれぐらいになっているのですか。
  89. 藤田公郎

    ○藤田政府委員 本年十一月現在の数字が、消化率三七・二%までいっております。
  90. 土井たか子

    ○土井委員 十一月現在で三七・二%。三七・二%というのの中身はどういうふうになっているかという明細を、ひとつ資料として出してもらえませんか。消化率はまことに低いですよ。三〇%そこそこなんです。
  91. 藤田公郎

    ○藤田政府委員 第一点の、低いではないかという御指摘でございますけれども、私どももフィリピン側も、もうちょっと消化率が高くてしかるべきではなかいかという認識は持っておりまして、この商品借款の消化率の改善のために、手続の改善でございますとか、一体ネックになっているものをどういうふうに除去していこうかということで、実は種々協議を重ねております。基本的な問題はもう委員もよく御承知だと思いますが、IMFのコンディショナリティーと申しますか、経済引き締め政策というのが極めて強力に行われているものでございますから、フィリピン経済自体が非常に停滞をしておりまして、それはそれなりに健全化の方向にはあるのでございますけれども、どちらかというと縮小均衡の方になっている傾向です。それが基本的には、商品借款に対する需要というものをそれほど高からしめてないということかと思います。  それから第二の問題は、私どもが取り組んでおりますのはむしろ第二の方でございまして、商品借款は当然のことながら、御指摘ございましたように国民の血税でもございますし、本来そうなんですけれども、使用についての極めて厳しい手続が定められております。この厳しい手続でもって行っているものでございますから、若干機動性に欠けるというようなことがございまして、それが一つの問題ではないか。したがって、私どもとしましても、公正な使用というものは確保しつつも、もう少し消化の促進に資する方途がないものかということで実は種々検討を重ねておりまして、例えば対象の品目を増加しようというようなことは考えております。  それから、内容を後ほど資料でもって提示せよというお話でございましたが、どこの国からどのくらいの、どういうような品目を買っておりますという状況、概要につきましては、後ほどきちんとした資料でお届けするようにいたします。
  92. 土井たか子

    ○土井委員 概要と言われますが、概要というと外務省は半ペラ一枚なんですね。国民の税金がそれに使われているのですから、中身については、三七%そこそこの数字をさっき言われましたけれども、細目もきちっと出してもらわぬといかぬのです。この商品借款というのはさっぱりわけがわからぬですよ、何にどう使われて、どういうふうに還元されてどうなっているのか。  しかも、申し上げたいのは、これは四〇%足らずの消化率であって、新たにまた第十三次で商品借款を問題にするというのは一体何ですか。前年度の消化率が非常に低いままに、新たにまたこれを問題にしているんでしょう。さっき言われたとおり、意図表明の中にばちっと入っているのです。額も少なくない。こういうやり方というのは大変問題だと思いますよ。外務大臣、どうお思いになりますか。——いや、もういいです。あなたの説明を聞いていると、時間が本当にむだなの。(藤田政府委員「短くやります」と呼ぶ)短くても何でもいいです。あなたのは要らぬコメントを言うから、いいですから。外務大臣お答えいただきたい。
  93. 藤田公郎

    ○藤田政府委員 全体の資金の流れというのは、フィリピンはああいう経済的な苦境でございますので、例えば日本は今回は昨年の三百五十二億に比べますと百六十五億、切り上げますと百六十五億円ということで半減以下でございます。しかしながら、恒常的にフィリピンの輸入需要というものを満たしていく継続的な資金の流れを確保しておく必要があるということは、これはフィリピン側もIMFなんかも要望しているところでございまして、その需要に従って約束といいますか、意図表明をしているというのが今の状況でございます。ただし、委員御指摘のとおり、昨年の消化率が余り芳しくないということなので、今回の十三次につきましてはプロジェクトを非常に重く見まして、商品借款の方は半減以下にしているというのが実情でございます。
  94. 土井たか子

    ○土井委員 重く見ましてって、そんな言いわけがましいことを言わなくてもいいのです。商品借款がまた出てきているのは問題ですよ、以前の消化率から見たって。この前の国会でもこれは取り上げられて、大変問題にされたといういわくつきなんです。これは、細目を出してもらうということを局長には言っておきます。  外務大臣に申し上げましょう。以前からの商品借款、一九七四年以後ずっと七五年、七六年、七七年、七八年とありまして、七九年から八三年までは商品借款を見合わせたのです。これを機会に、七八年以前の商品借款についても私は細目を要求します。商品借款の中身がどういうふうに使われたか、これはきちっと局長要求しておきます。あなたの答弁は要らない。今から外務大臣に対して御質問します。  さて、外務大臣、こういうフィリピン情勢の中で、さっきお伺いしたら、意図表明をやってから通常は一カ月ないし三カ月くらいで、交換公文の取り交わしができるという御答弁だったのです。フィリピンについてはどういうふうに考えられるのですか。交換公文の取り交わしというのは、外務大臣は今どういうふうに考えていらっしゃいますか。
  95. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 フィリピンだから特別に扱っているというわけじゃありませんで、意図表明して両国で交渉しながら、交渉が妥結すれば交換公文ということになっていくと思います。
  96. 土井たか子

    ○土井委員 妥結すればというのは、その妥結の見通しは、今の様子でいくといつごろを考えていらっしゃいますか。これは政治問題ですから外務大臣に聞きます。
  97. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 今最終段階に入っているようで、年内には交換公文ということになる可能性が非常に強いということであります。
  98. 土井たか子

    ○土井委員 冗談じゃないですよ。二月七日に大統領選挙が行われるというのは、はっきりしているのです。このときに、交換公文を取り交わして具体的に援助に対して踏み切るということになったら、どういう状況になるかというのはよく御存じでしょう。今までも再々言われて、イメルダ夫人が来られたときに、外務大臣自身が会われた席でこの問題に対しても取り上げておっしゃっているくらいなんだから、外務大臣自身がよく御存じなんです。  さっき、公正で自由な選挙を期待すると言われました。伝えられるところによると、マルコス大統領側は、既に各地の選挙管理委員を自派で固めつつあるという情報が聞こえてきています。昨年は、国政選挙前に援助すべきでないということを口をきわめて言ったのだけれども強行されたのです。その結果、私が夏にフィリピンに行ってみると、果たせるかな、マルコス政権側の選挙のてこ入れに日本からの経済援助が各地でなっているのです。こういう批判をどんどん受けて、日本とフィリピンとの友好がスムーズに促進できるとお思いですか。フィリピンに対して民主的な政治を願われる外務大臣としては、大統領選挙前に、こういうことに対しての妥結をして援助をやりますなんとおっしゃることは慎むべきだと思われますが、どのようにお思いになりますか。
  99. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 フィリピンに対しましては、これまでもずっと経済援助を続けてきておりますし、フィリピンと日本との関係から見まして、特に最近のフィリピンの経済が非常に悪い、IMFが非常に厳しいコントロールに入っておるという状況から見ましても、援助は今後とも引き続き行わなければならない。これは何も今お話しのように、マルコス政権を支持するとかマルコス政権を援助するとかいうことじゃなくて、今直面しているフィリピンの経済、そして苦しんでおるフィリピンの国民の生活、そういうものを考えますと、これまでの日本とフィリピンの関係から見ましても、このまま見送るというふうなことは到底できない。我々としては、あくまでもフィリピンの民生の安定、経済の回復を願う立場で援助は続けていきたい。  ただ、援助のあり方については、日本も十分に納得した形でしなければならないわけで、これがフィリピン経済に確実に裨益して、フィリピンの国民生活に直接間接にプラスになってはね返ってくるというものでなければならないと思っております。これまでも私は、交渉当事者あるいは援助する日本関係者に対しても、その点は見ながらしていかなければならないということを厳しく言ってきておるわけで、そういう意味では日本の援助は、フィリピンの経済あるいは国民生活を大変配慮した立場で行われておると私は思っております。  商品借款等が未消化という点も、他の国に対するよりも厳しい姿勢といいますか配慮、そういうものがあって結局なかなか消化もできないという一面もあるのではないか、しかし、それはそれなりにやむを得ないことであろうと私は思っております。  そうしたことは十分に考えながら、そしてまた、この援助が効率的に行われなければならぬということは、私はフィリピン政府にもしばしば言ってきております。先般、イメルダ大統領夫人がお見えになったときも、日本政府としてはこれからも援助を続けていきたいと思うが、援助がフィリピンの国民生活と経済の安定に確実に資するという点で効率的に使われることを期待するということを申し述べたとおりであります。そういう基本的な考えは変わっておりませんし、今後ともそういう方向で取り組んでいきたいと思います。
  100. 土井たか子

    ○土井委員 外務大臣が願われるそっちの方向にフィリピンに対する経済援助が本当に効果を発揮することを思えば、それから、先ほど外務大臣がおっしゃったように大統領選挙が自由で公正な選挙であってほしいと願われるお立場からすれば、少なくとも二月七日の大統領選挙までは、日本からの今回の交換公文に対して手控えるということが常識だと思うのです。最初の判決に対しての反応、その後の対応、いろいろな事情を勘案しながら慎重にやっていきたいという御発言が答弁の中であったのですが、アメリカの姿勢やましてや肝心のフィリピンの国内情勢をごらんになった節に、今回の経済援助のあり方は、大統領選挙が終わるまでは手控えるのが国際常識にかなう日本の立場、日本の姿勢じゃないか。本当に民主主義を思い、公正な選挙を考えるという立場からすればそうでなければならないと思うけれども外務大臣、私の言っていることは御理解願えると思うのです。外務大臣、どうですか。——人の質問している最中に横から局長が何ですか。あなたは失礼ですよ。大臣からのはっきりした御答弁を承りたいと思います。
  101. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 今交渉している第十三次円借款の内容を見ておりますと、フィリピンのインフラとか人づくり、その他いろいろとやられるようでありまして、具体的なプロジェクトとしては、フィリピン経済の発展、安定には非常に裨益するものではないかと思います。これまでもフィリピンヘの援助は、フィリピンの経済開発とか民生安定に大きく裨益してきた、こういう成果が大きく上がってきていると私は思うわけで、これは日比関係から見て今後とも続けていかなければならない。  また、政治の情勢はいろいろ非常に流動的でありますけれども、しかし日本の立場からすれば、今のフィリピン経済というのは非常に悪いわけですから、そしてそれによってフィリピンの国民が苦しんでおられるわけですから、これに対して今何らか日本が経済援助するなら、それを効果的なときにやるのが必要ではないだろうか。何もこれでもって政権を支えていくとかということではないわけでありまして、あくまでもフィリピン経済の安定、国民の民生向上というものが基本であることには変わりはないわけです。
  102. 土井たか子

    ○土井委員 大臣、私の言うことに対してのお答えをまだ聞かせていただいていないから、もう一言言っておいてそのお答えを聞かせていただきますが、この問題は政府政府でしょう。政府対フィリピン国民じゃないんですよ、政府政府なんです。プロジェクトに対して約束があるからということを、こちらが質問すれば御答弁なさるでしょう。そのプロジェクトを通じて民生安定に資する経済援助であるとお答えになるでしょう。教科書なんです、それは。実際問題は、向こうの政府が経済援助に対して国内でどのようにそれを使っていくか。この問題は向こうの国民が一番よく知っているのですよ。今まで各国に対しては、経済援助の中身について思わしくないことも聞くことがしばしばありました。だけれども、フィリピンの場合くらい向こうに行って——もう総スカンですよ。  日本からの経済援助がどのようになっているか、もっとしっかり調べてください、しっかり知ってください。マルコス政権とマルコス大統領に対して、それほどまでに日本の経済援助の援助中身で応援する必要があるんですか。そのことが民生安定につながっていれば何も言いません。そうじゃないんですよ。むしろ民生を抑えられる方向に大変に大きく、日本の経済援助というのは悪い意味で使われていることをよく知りなさいということを、行けば私たちは嫌というほど知らされるし聞かされるし見させられますよ。外務大臣、そういう実情というのは大事だと私は思うのです。  先般来られたイメルダ夫人も外務大臣にお会いになったときに、フィリピンの経済は大幅に回復しています。経済は上向いてきていますと言われているんじゃないですか。実情は大変深刻なので、助けなければどうにもならぬと外務大臣が思われるほどのことはないじゃないですか、向こうの大統領夫人が上向いてきていますと言われるのだから。  しかし、その問題は横におきましょう。まずは、大統領選挙の日がはっきり決まっているのですから、決まっている前に、大変批判のある経済援助をわざわざよりによってその時期に日本はすべきじゃない、これは常識なんです。今後の日比間からいっても思わしくないですよ。こんなときに、経済援助に対して交換公文を取り交わしている。大臣、これはどうか真剣に聞いてください。そうして大統領選挙前には手控える、この常識にかなった取り扱いをしていただきたい。どうですか、外務大臣
  103. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 日本の援助というのは、相手の国の政治的な状況等に左右されるのではなくて、しっかりしたプロジェクトを積み上げた形で毎年毎年やってきているわけで、これはフィリピンに対してもそういうことだと思っております。今、いろいろと批判があると言われました。確かに、一部に批判があることも承知していますが、しかし、やはりフィリピンに対する日本の援助の大宗は直接間接にフィリピン国民の経済安定、そしてフィリピンの経済開発に大きく裨益しておる、全体的にはそういう評価であろうと私は思います。これは私は間違いないと思う。日本のそうした援助は、決してむだに使われているわけではないと思いますし、それからまた、これが一部流用されるとかということでは決してない。積み上げた形で、確実にフィリピン経済に裨益されるようにやられてきておる。  ですから、今度の援助を見ましても、地方上水道整備計画とか空港施設の近代化計画、沿岸の無線計画とかいろいろと具体的に確実に、フィリピンの経済にプラスになるという立場でずっと積み上げられてきておると私は思っております。ですから、今の政権をこれでもって大きく助けていくとかというものではなくて、そして日本の援助というのは、やはり全体的には同じベースでずっと毎年毎年確実にやっていくというのが、相手の国の国民経済に裨益することではないかと思っております。ですから、そうした立場でずっと続けていっているわけですから、決して今おっしゃるようなことではないのではないか。  これは、フィリピン政府ともずっと相談をしておりますし、日本政府としてもチェックするところは着実にチェックしながら、そしてそのプロジェクトについては実施するということで合意を図るということは、日本の東南アジア、ASEAN諸国に対する責任の一つではないかと私は思います。
  104. 土井たか子

    ○土井委員 これは大事なことですから。マルコス政権を援助するのではないと、今外務大臣はおっしゃいました。その意思表示をすることのためにも、二月の七日なんですよ、もう目の前なんです。交換公文の取り交わしをその間、今回はちょっと手控えるということぐらいの措置がどうしてできぬのですか。それは客観的に見た場合、マルコス政権をてこ入れしたり応援したりするのではないと今おっしゃった意思表示でもあるわけです。今度のは大変な選挙なんです。だから、大統領選挙に対して日本としたら冷静に、自由で公正な選挙であってほしいという目で見ておりますよということからすれば、二月の七日まで待つのが当然じゃないですか。これはいかがですか。——局長、あなた横から出てきて何ですか。外務大臣外務大臣、政治家としての御発言を承ります。
  105. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 政治家として、事務的なことをいろいろ聞いておるわけですが、これは毎年毎年やっているわけですから、去年の十二次に次いで十三次ということで、十二次が終われば十三次の円借款について協議に入っていく。これは、事務的に入っていくのは毎年のことです。そして結局十月何日ですか、意図表明ということになったわけです。  あと、今プロジェクトごとにそれぞれ詰めておるわけですから、この詰めが煮詰まらないときは交換公文が延びることもあるわけですけれども、しかし、これでもって政治的な、大統領選挙がどうだこうだということは、もちろん予測しておったわけではありません。大統領選挙に左右されて日本の経済援助が行われるということは、逆の意味においても、何か日本の経済援助というものが政治的な要因を含んでおると思われるわけですから、むしろそういうことは非常に危険ではないか。毎年確実に着実に積み重ねていくということが、日本の経済援助の基本的なあり方じゃないだろうか、私はこういうふうに思います。
  106. 土井たか子

    ○土井委員 毎年毎年積み重ねられる、前の援助が終わったら次に移る、終わっていないじゃないですか。第十二次の商品借款というのを、消化率を見ただけでも国民は、そんなことを平気でおやりになる外務省は一体どういう神経ですかということになりますよ。これは外務大臣、心してやっていただきたいと思うのです。大統領選挙があるからどうのこうのということに今度はかかずり合いますよ、援助すれば、逆に言えば。もう公然たるマルコスのてこ入れだという理解を持っている人たちが多い。フィリピンであの判決を見て、どう思っている国民が多いかということもひとつ考えていただきたい。マルコス政権に対する物の見方、判断というのは非常にシビアですよ。  そういうことからすると、交換公文の取り扱いに対しては慎重にやりたい、こういうことの意思表明を聞かせていただいて、私はこの問題に対する質問を終えたいと思いますが、外務大臣、これはひとつ慎重にやっていただきたいと思うのです。どうですか。
  107. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 フィリピン援助というのは、これまでも非常に慎重にやってきておるわけです。ですから、余り政治的な要因を日本の援助というものに加えるということは、むしろ日本の援助の本質という面から見まして問題があるのではないか、人道主義とかそういうものを踏まえた日本基本というものから見て、特にアジア国々との間は、確実に毎年積み上げていって、そして合意に達したものからこれを実行していくということがむしろ大事なことであろう、いたずらに政治の要因で日本の援助が振り回されるというのは、日本の援助の本質をむしろ害することになるのじゃないか、こういう心配をいたしております。
  108. 土井たか子

    ○土井委員 そうですか。それじゃ、どんな政権に対しても援助するということを原則になすっているというふうに理解させていただいてよろしゅうございますね、例えばヒトラー政権のような政権に対しても。今の論法からしたらそうなりますよ、日本と少なくとも国交を持つという相手方だったらどんな政権に対してでもいいと。国交のない政権に対しても、援助することを考えている、そういうふうに理解してよろしゅうございますね、政権によって云々と今おっしゃったのだから。
  109. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 我々は、別に体制がどうだこうだということじゃなくて、いわゆる人道主義、相互依存という基本的な姿勢を踏まえて援助は続けていかなければならない、こういうふうに思っております。特にアジア国々に対しましては、過去の日本が与えた損害というものもあるわけですから、そういう点もやはり我々は一つの反省として、これはアジアの発展のために、日本の国際責任の一つとして積極的に続けていくのが日本の立場じゃないだろうか、こういうふうに思います。
  110. 土井たか子

    ○土井委員 そういう大臣のおっしゃっている御趣旨に反するような結果が経済援助から出てきた場合には、どういう措置をなさいますか。例えばフィリピン援助に対して、大臣がここでるる述べられているような答弁でないような結果が出てきたことが明るみになった、またそういうことを事実認識せざるを得ない、そういうときにはどういう措置をお講じになりますか、大臣とされては。
  111. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 私は日本の援助が、そういう日本の援助というのは政府を通じてやるわけですけれども相手の国の国民、経済というものに非常に裨益していきたいというのが基本でありますし、その国の経済的な安定というものにも大きな目標があるわけで、そして基本には人道的な考え方、相互依存というものがあるわけでして、ですからこれでもって日本の援助が、何か相手の国に非常にマイナスになっていくというふうなことはあり得ないことであって、これまでもあり得ないし、今後もあり得ないというふうに私は思うわけです。  ただフィリピンについては、先ほど申し上げましたように、この大統領選挙は世界が注目をしているわけですし、我々もフィリピンの平和と安全、経済の安定というものを心から念願をしております。相手の国に対して何ら干渉するという立場じゃありませんが、しかし、選挙をやる以上は公正に自由に行われることを心から期待をする、それがやはりこれからのフィリピンにとっては大事なことじゃないだろうかという考え方に、私は変わりはないわけでございます。
  112. 土井たか子

    ○土井委員 だけれども、公正とか自由とかおっしゃいますけれども、この選挙に対してもさっきちょっと申し上げたとおり、各地にマルコス大統領の自派で選挙管理委員なんというのは固めていっているという情報が既に入っているのですよ。もう実権を持っているのです。大変な実権を持っている。軍部の力をかりて実権を持っているのです。むしろ、軍部を使って実権を持っているのです。この力たるや、すごいですよ。そこに日本政府は援助をしているのです、プロジェクトの名目さえ整っているということでありさえすれば。よろしゅうございますか。この影響は絶大であるということは、ひとつ外務大臣としては覚めた目で、そうしてやはり本当に日比の友好を真剣にお考えになるというお立場で、お取り扱いを切に切望しますよ。よろしゅうございますね、大臣、きょう私が申し上げたことは。したがって、慎重にひとつお取り扱いをなさるであろうということを私は要求して、この質問を終わりたいと思うのです。よろしゅうございますね。  年内と言われたけれども、それもよくわからぬ、交換公文については。努力はしているけれども、そのとおりになるかならないかわからない。いろいろな諸般の事情も、最初にこれから考えて推移を見守らなければならぬということも、判決結果に対してはおっしゃっています。判決内容に対しては、立ち入って言うべき対象ではない。しかし、判決結果についての反応は、これはやはりいろいろな影響が外交問題についてもあるわけです。したがって、自主的判断をなさる際に参考として考えるということもおっしゃっていますから、これは経済援助についても慎重に対応するというお考えであるというふうに私自身は理解をさせていただいて、これでよろしゅうございますね、大臣。
  113. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 とにかく、日比の友好親善という基本はやはり我々は続けていきたいと思いますし、その根底はフィリピンの経済が安定していく、それには日本がそれなりの役割を果たしていくことが必要であろう、こういうふうに思っております。そういう中で、我々としてもフィリピンの情勢については注目もしておりますし、そしてフィリピンの経済援助に対しては慎重に対応もしていかなければならない、こういうふうに思うわけであります。  ただ、先ほどからお話しのように、大統領選挙と援助というものを直接結びつけて考えるのはどうか、私はそういうふうに思っております。交渉のことですから、それは日本政府考え方もありますし、フィリピン政府考え方もありますし、交渉を今続けておる段階ですから、交渉がまとまるかまとまらぬかというのはこれからの状況といいますか、交渉次第によるわけでありますが、大分一応の意図表明はいたしておりますから、基本は一応決まっておりますから、そういう中でこれからの交渉も続けて行われるであろう、こういうふうに思うわけでございます。
  114. 土井たか子

    ○土井委員 もう時間が参りましたし、私はきょうはこれでやめますが、前回いただきました原子力潜水艦の資料がございます。この資料については、また時を改めて私は質問をぜひしなければ、せっかく資料を提出してもらったわけですから、これはぜひとも聞かなければならないというふうに考えています。次回にこれをしたいと思いますから、委員長に、ぜひ年内にまた外務委員会を開催することを理事会で決めるべく我々は努力したいと思いますので、その点の御協力をここで要請して終えたいと思います。ありがとうございました。
  115. 愛野興一郎

    愛野委員長 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十七分休憩      ————◇—————     午後一時三十九分開議
  116. 愛野興一郎

    愛野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。玉城栄一君。
  117. 玉城栄一

    ○玉城委員 大臣、けさの新聞を読みますと、ちょうどあしたで外務大臣御在任連続三年余、千百六日を超すという記事がございましたし、それから外遊も三十四回、記録更新中ということで、確かに我が国に対する内外の厳しい批判もあるわけでありますが、大変長い間この激動の中を我が国の外務大臣として、我が国の国益はもとより、世界平和のためにも大変御健闘してこられたことについて心から敬意を表するわけでありますが、御感想をひとつ教えてください。
  118. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 とにかく全力を尽くしてやりましたし、それなりに日本の世界における存在は非常に重くなったという感じを痛感しておりますし、それだけにまた責任も重くなったということもあわせて感じております。そういう世界の期待とさらにまた責任の重さというものを痛感をして、これからの世界の平和と安定のために、世界の諸外国からやはり日本が信頼を得るという基本的な姿勢で努力していかなければならぬ、こういうふうに思っております。
  119. 玉城栄一

    ○玉城委員 いつまでも外務大臣というわけにもいかないと思うわけですが、新聞ではまた外務大臣留任をされる、確定的ということも報道されているわけでありますが、私としては、やはりハト派の安倍さんが保守の政治家として、さらにまた総理・総裁としてなられることを期待しまして、私、質問をさせていただきます。  国連の問題について、いろいろ細かい点をお伺いしたいのですが、一つどうしても基本的な点でお伺いしておきたいことは、国連に対する、国際的にもいろいろな批判があることも事実です。そういう立場から、大臣とされては我が国として、日本国民が現在の国連のあり方についてどういうふうな考えを持っているか、どういうふうな支持状況にあるという御認識を大臣は持った上で、国連外交というものを展開していらっしゃるのか、その点をお聞かせいただきたいと思います。
  120. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 国連は、戦後四十年たったわけでありますが、そういう戦後の世界の中において国連の役割というのは非常に重かったのじゃないか、私はこういうふうに思っておりますし、もう既に国連というのは、世界の中で定着をしておるというふうにも思っております。日本としましては、いわば国連中心外交といいますか、国連の存在、国連の役割というものに大きな期待をして、そして日本自身も、国連の中で積極的な役割を果たすという立場で努力してまいりましたし、四十年たった今日、国連が世界の平和と安定のために大きな役割をさらに果たしていくような、そういうあり方をやはり求めていかなければならない、こういうふうに思うわけです。  ただ、四十年たった今日、過去の国連のあり方を踏まえてみますと、非常に大きな前向きな役割もあった、あるいはその成果もあったと思いますが、反面、やはり長く続いた中で、国連の機能が効率的に動いていかないという面もありますし、あるいはまた国連の関係の諸機関の中でも、いろいろと国際的な批判にさらされておる機関もあるわけでございます。  私は、そうした国連の実態というものを踏まえて、国連を強化するという立場から国連を見直して、そうしてもっと効率的な運営、そしてまた国連がさらに大きな役割を果たすような、そういう一つの機能を持つためのいろいろな検討というものを今日すべきじゃないか、こういうふうにも考えますし、実は九月の総会で賢人会議というものを主唱をいたしました。今、国連の内部でいろいろと検討をしていただいております。場合によってはひとつ決議案でも出していただいて、この賢人会議が設置されるように今全力を傾けておる最中でございます。
  121. 玉城栄一

    ○玉城委員 ことしは国連創立四十周年ということで、大臣も総理も、去る九月、十月国連で演説しておられるわけですが、総理もちょっとそのことに触れておられますし、大臣自身もまたそのことを強く提案して、国連の行財政改革について賢人会議の設置提案をしていらっしゃる。  これもちょっと後でお伺いしたいのですが、けさの新聞では、またユネスコから英国が正式に脱退したという報道もあるわけです。そういう意味では国連というものは、ある意味では非常に孤立無援といいましょうか、ある意味では非常に大きな曲がり角といいますか、批判もある。そういう中で今後、今大臣のおっしゃったような方向に国連をどう充実強化せしめていくかということは、大きな課題になってきているのではないかと思うわけです。  そこで、ユネスコから正式にイギリスが脱退した、その理由、背景、そしてまた今後の我が国の立場、今後のユネスコの方向について、御説明をいただきたいわけです。
  122. 中平立

    ○中平政府委員 お答えいたします。  先生御指摘のとおり、ユネスコの過去の実績は、必ずしもイギリスを初めとする我々の立場からいたしまして、満足すべきものではなかったわけでございます。イギリスといたしましては、先生御存じのように昨年脱退通告を出しまして、この間のソフィアにおける総会に当たりまして、ユネスコの改革のために最善の努力をしたわけでございます。しかしながら、イギリス側が昨日発表した声明によりますと、一生懸命努力したけれども、成果は必ずしも十分でなかったということを言っておる次第でございまして、我々といたしましては、イギリスが脱退するということは非常に残念でございますけれども、残ったもので、今後ユネスコの改革のために大いに力を合わせてやっていきたいと考えておるわけでございます。
  123. 玉城栄一

    ○玉城委員 イギリスが正式に脱退したことは非常に残念である、しかし日本は残って頑張っていくということですね。しかし、日本もまたそのうちにという話もあるわけですが、そうならない前提として、どういうユネスコの改革を我が国としては考えていらっしゃるのか、お伺いいたします。
  124. 中平立

    ○中平政府委員 この間の総会におきまして、三つのことをなし遂げたのではないかと考えておるわけでございます。  一つは、予算の実質的なゼロ成長ということでございます。それから二つ目は、事業に関しましては、ほかの機関と重複するような事業とか、それから政治的にいろいろな問題があり得るような事業とか、それから緊急性を要しないような事業とか、こういうものをできるだけ削減するということでございます。それから第三には、今後改革を監視するための組織、機構をつくりまして、十八カ国がそのメンバーになったわけでございますけれども日本もその一カ国として今後やっていくというのが、この間の総会の成果でございます。  しかしながら、これは先生御存じのように、我々の見解でも、確かにある程度の成果ではあったけれども、これは正しい方向への第一歩であるというふうに認識しておるわけでございまして、今私が申し上げましたように、今後はイギリスの脱退という事態を踏まえまして、志を同じくする諸国と力を合わせて、ユネスコの今後の一層の改革に努力したいと思うわけでございます。  それで、改革といたしましては、やはり事務局の行政改革というものが、何といっても大事ではないかと思うわけでございます。それから第二には、事業内容をもう少しスクリーンいたしまして、健全なものにしていくということではないかと思っておる次第でございます。
  125. 玉城栄一

    ○玉城委員 アメリカもそうでしたし、イギリスも今回そうだということで、いろいろな理由がそれぞれあると思うのですが、そういうふうにしてむしろ我が国としては、そこで踏ん張って本当に改革を、本来の正しいあり方のために一層の努力をしていく。それをまたイギリスと同じように、我が国もこれはだめだというようなことがあったら、国連そのものが非常に重大な危機に陥ってくると思うわけでありますので、その点を要望しておきます。  今、ユネスコの行政改革というお話もありましたけれども、国連全体の行財政改革ということで、賢人会議というものを設置すべきであるという提案を大臣がされたわけですが、国連の会期は今月の十七日で終わります。今会期中にそのことを提案され、そして国連加盟国というのは百五十九あるわけですが、やはり過半数でないと採択されないわけで、その見通しとか、それから賢人会議というのは、名前は出ていますのでわかりますがこれはどういう形ですか、どういう関係方々がそのメンバーになるのか、その辺をわかりやすくちょっと説明していただきたいと思います。
  126. 中平立

    ○中平政府委員 おっしゃるように、国連総会は十二月十七日で終わるわけでございますが、ことしは先生御存じのように、通常の一般演説のほかに四十周年記念ということで日程が押せ押せになっておりまして、従来よりスケジュールがずっとおくれているのが現状でございます。安倍大臣が提唱されました賢人会議につきましては、やはり広く各国の支持を得なければならないという観点から、その後鋭意各国と意見のすり合わせをやっておりまして、今週、来週、再来週しかございませんので、近く決議案を提出するべく、今最後の努力をしている次第でございます。  この具体的内容でございますけれども、これは今作業中でございまして、いろんな国がいろんな意見を持っておりまして、最終的に決議案がどういう形になるかということは、この段階では確言できないわけでございますけれども日本側として一応考えておりますのは、これは非常に重要な問題でございますので、そういうものが設立した暁には集中して審議していただきたい、それで早急に勧告を出してほしいという観点から、活動期間一年ということを考えておるわけでございます。  それでは、だれが賢人かということでございますけれども、やはり客観的に申し上げまして、その人の意見にすべての人が謙虚に耳を傾けるというような、立派な力量を備えた人が望ましいのではないかと考えるわけでございます。日本側といたしましては、余りメンバーが多くなることは必ずしも望ましくないということで、十名から十五名程度ではないかと考えておるわけでございますけれども、開発途上国を初めといたしましてやはりもうちょっと多くしたらどうかという意見もございますので、最終的には何名ぐらいになるかということはこの段階では申し上げられませんが、いずれにいたしましても十数名ということではないかと思います。
  127. 玉城栄一

    ○玉城委員 見通しはいかがですか。
  128. 中平立

    ○中平政府委員 見通しは、西欧諸国それから東欧諸国は基本的にかねてより賛成しておるわけでございますが、開発途上国の中には、日本考え方を当初におきましては必ずしも十分理解しておらなかった段階がございました。それはなぜかと申しますと、こういう行財政改革といいますか、改革という言葉は使っておりませんが、やはり自分たちの国にとって不利なことが勧告されるのではないかという疑いの念を持っておった段階があるのではないかと思うわけでございまして、そういう疑心暗鬼であったのを我々としては大いに現地の代表部が説得いたしまして、最近に至りまして、開発途上国も大体のところ賛成だというところまで来ておる次第でございます。
  129. 玉城栄一

    ○玉城委員 そうしますと、西洋と開発途上国も、この賢人会議の設置については賛成の方向であるということからすれば、これは十七日ですか、来週あたりに提案されるのですか。上程されますか。
  130. 中平立

    ○中平政府委員 現地のニューヨーク時間で、本日六日までにその作業を完了したいと考えておるわけでございまして、その際には、できたら月曜日に上程したいと思うわけでございます。
  131. 玉城栄一

    ○玉城委員 これはもう総会への上程になるわけですから、当然過半数ということになりますね。百五十九の過半数の八十カ国の同意を得なくては設置されないわけですが、今おっしゃったように、それは提案されたら採択の見通しは十分ついたという自信の上に立って、日本としてはこれは上程されると思うわけであります。大臣も強く、こういうものを設置をして国連の行革をしていこうではないかという趣旨で演説をされた。総会に出したわ、否決になったわでは、これはどうなっておるのか、これまた我が国側としても国連に対する不信が当然出てくると思うわけでありますので、再度局長さん、見通しについては承っておきたいわけであります。
  132. 中平立

    ○中平政府委員 先生おっしゃいますとおり、これは通過する、採択されるということは非常に重要なことでございますので、従来若干の国が我が国の提案に消極的であったときには、反対の国が少なくなるように努力してきたわけでございまして、最近になりまして、先週と先々週二回にわたりまして、国連事務総長が主催いたしまして主要関係国を集めまして、事務総長として日本案に賛成である、ぜひこれを推進したいというようなことをやってもらいまして、かつて反対であったような国もかなり反対を和らげておるという状況でございますので、来週早々にもし上程することができるならば、これは採択されるのではないかと私どもは思っておる次第でございます。
  133. 玉城栄一

    ○玉城委員 これはせっかく我が国が提案するわけですから、そのメンバーの中に、これは賢人ということですから、当然国連の現状改革について造詣を持つ方々でなくてはいかぬわけですが、我が国もそのメンバーの中に御予定はしていらっしゃると思うのですが、そのメンバーの中の一人でも二人でも——その辺はどうなんでしょうか。
  134. 中平立

    ○中平政府委員 先ほど申し上げましたように、人数といたしましては十数名ということになろうかと思うわけでございますが、日本は提案国といたしまして、当然この作業に積極的に参画していく必要があろうかと思う次第でございます。したがいまして、その決議が採択された暁には、これはまた国連で常に地域的な配分ということが基本的に考えられるわけでございますが、日本としては提案国の責任を全うするという観点から、この賢人をメンバーとして出したいと考えておるわけでございます。
  135. 玉城栄一

    ○玉城委員 ぜひ提案国として、我が国内においても行財政改革ということが今されておる最中でありますし、国連もそういうむだがあれば、当然むだは省きながら充実強化をしていただきたいわけであります。  そこで、よくこれまで言われているのですが、国連の職員の方々の中に日本人の方が少ない、比率からしても日本は非常に低いということが言われておるわけですが、その理由として一つはなかなか日本人を採用しないということがあるのか、あるいは日本人にそういう資格者が少ないということなのか、あるいはまた考えられるのは、希望者が少ないということは待遇が悪いというようなことなのか、その少ない理由、そして外務省とされてはどういうふうに今後改善をして、日本人をあるべき比率に国連職員として採用せしめていくといいますか、そういうことを考えていらっしゃるのか、その辺いかがでしょうか。
  136. 中平立

    ○中平政府委員 先生御指摘のとおり、国連を初めとする国際機関におきまする日本人職員の数が少ないということは事実でございます。この理由につきましては、いろんな点が指摘されるであろうと思いますけれども、私たちは、基本的に語学力の問題というようなこととか、我が国が終身雇用制をとっておるということで、一回出かけて親元と縁を切ってやるというようなことはなかなかできないというようなこともございましょうし、それからやはり子女教育の問題というようなこともあると思います。  しかし、我々としては、かねてから日本人の職員の数が少ないということは深く認識しておるわけでございまして、これを何とかしなければいけないということは先生の御指摘のとおりでございまして、この問題は一朝一夕には解決できない問題ではございますけれども、我々としては最善の努力をしているわけでございます。ささやかではございますけれども外務省の国際連合局に国際機関人事センターというものを設けまして、国際機関の職員の空席ができた場合、そういう情報を収集して提供するというようなこととか応募者の推薦を積極的にやるというようなことで、日本人の職員の数をふやしたいとも考えておるわけでございます。  それと、最近私たちがやっておる一つの方法といたしまして、若手の日本人の職員の国際機関での育成という観点から、一定期間そういう若手の人を国際機関に派遣する、いわゆる研修でございますね、そういうことをやっておる次第でございます。現在は、そういう人たちは八十六名おるわけでございまして、二年間の研修ということでやっておるわけでございます。実は一昨日と昨日、東京におきまして国連主催のアフリカシンポジウムというものが行われたわけでございますけれども、そのときに、これはUNDPのモースという事務局長主宰でやったわけでございますが、このモースさんが言っておりましたけれども先ほど申しました八十六名の若い日本人の研修生は非常によくやっておる、だからそういうのからどしどしと職員として採用していきたいし、いったらどうかという考えを表明しておられました。
  137. 玉城栄一

    ○玉城委員 これは要望。待遇の問題についても、特に日本人の方は明石さんが事務次長でいらっしゃるわけで、ほかに幹部の方は少ないわけですね。だからそういう意味では、これから我が国の外交の非常に重要な柱として国連中心とおっしゃっている割にはそういう状況というのは、言っていることと実態が非常に違うのではないかということ。そういう方々日本人の方で国連に入られる方々についても、待遇の問題についてもやはり国として特別に手当の問題とか、そういう問題は当然考慮してやっていく必要があるのではないか、こう思うわけであります。  実はきょうは国連の財政の問題で、収入や分担金とか拠出金とかいろいろな各国のものがありますね。活動費とか、どれくらい今赤字があるのか、職員の数が幾らかとか、給与はどれくらいなのか、本当に高いのか低いのか、本当に国連という組織が肥大化しているのか、あるいはそうでないのかということを実は細かくお伺いしたかったのですけれども、実は私、ちょっと時間短縮しまして、この程度でとめておきたいのです。  もう一つは、次の機会にどうしてもお伺いしたいのは、国連の平和維持の分野についても大臣は指摘されておられますので、私はぜひこの点について抽象的な問題だけではなくてお伺いしたいのは、決して国連というものが世界の平和維持機関として無力ではない、なかった。むしろ主役として、中東紛争とかいろいろな停戦の問題についても国連がむしろ主役でやってきたし、双方紛争当事者をテーブルに着ける努力もしてきたし、いろいろな努力がされていることも事実ですね。それを、だめだ、では国連がなかったらどうなっていたかという逆の面から考えると、国連に対する評価というものはそういう面ではもっとあってしかるべきではないか。むしろ大国のエゴというものが、国連の本来の平和維持機関としての機能に障害を与えているのではないか。そういうことで大臣、ひとつ最後にその点をお伺いして、質問を終わりたいと思います。
  138. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 国連が平和維持機能として、これまで戦後四十年間にどれだけ世界平和のために役に立ったか。これは具体的には随分多くの例があると思います、おっしゃるように、国連がもし存在してなかったらもっと世界は複雑で混乱しておったかもしれない、私も同様に思います。そういう意味でも、国連の存在は私は大きいと考えておるわけでございますが、同時に国連がそういう努力をしながらも、現在地域紛争等存在しているということでもありますし、こうした紛争の平和解決に国連も努力しながら、今日において大きな成果も出てないという面もあることもこれは事実でございます。  したがって、国連の平和維持機能というものをもう少し強化すべきだという議論が相当強いことも、これは皆さん御承知のとおりでありますし、日本としても平和外交を推進していく上において、国連がもっと平和維持的な機能というものを強化して、地域紛争等に対してもっと役割を果たしていただきたいということを強く期待をするわけでございまして、そういう面でこれからは日本も国連を大事にしながら、国連がもっと平和維持的な役割を果たしていくように、場合によっては国連の事務総長とも協力しながら努力をしていきたいし、また、国連内部においてそうした維持機能が強化できるような、そういうことに日本も何らかの貢献をしていかなければならぬ、いきたいものだな、こういうふうに思っておるわけであります。
  139. 玉城栄一

    ○玉城委員 以上です。ありがとうございました。
  140. 愛野興一郎

    愛野委員長 次に、岡崎万寿秀君。
  141. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 ことしは被爆四十年で、私はほとんど毎回のように核兵器問題を取り上げて質問をしてまいりましたが、今回は核兵器と国際法の問題について、最初に質問したいと思うのです。  政府は、昨年秋の第三十九回国連総会に、核時代における戦争防止という決議案を共同提案されようとされたのです。しかしこれは、非同盟諸国の反対もありまして結局は撤回になったわけですが、聞くところによりますと、ことしの国連総会でも同様の共同決議案を出されて、また撤回されたやに聞いておりますが、事実関係をお尋ねします。
  142. 中平立

    ○中平政府委員 ただいまの件につきましては、まことに失礼でございますが、至急に調べましてお答えいたしたいと思います。
  143. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 あなた、条約局長なんでしょう。これは、私どもが聞いたところでもそのような返事を承っているわけですが、それは至急、質疑中でも調べてくれませんか。  時間の都合で先に進めましょう。  核時代における戦争防止の決議案というものの最大の問題点は、私、二月十九日の予算委員会でも指摘しましたけれども、つまり自衛権の行使の場合はいかなる兵器——これには核兵器も入るわけですが、核兵器を使ってもよいという見地があることなんです。自衛権の名前で核兵器の先制使用が正当化される、この点であろうと思います。非同盟諸国が、この共同決議案に猛烈に反対している理由もここにあると思うのです。ことしについてはまだ答弁なさいませんけれども政府はなぜこんな共同決議案をしばしば出そうとなさるのか、お聞きしたいと思います。
  144. 愛野興一郎

    愛野委員長 答弁局長はどなたに……。
  145. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 どなたか適当な方に。
  146. 中平立

    ○中平政府委員 失礼でございますが、これも先生の質問のあれを承っておりませんでしたので、今すぐお答えできないのは非常に残念でございますが、早急にあれしたいと思います。
  147. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 ちょっと困りますな。きのうからちゃんと言っておいたのです。
  148. 愛野興一郎

    愛野委員長 岡崎委員に申し上げます。  まことに申しわけありませんが、答弁者が質問の趣旨をわかっておりませんので、もう一回覧間をお願いいたします。
  149. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 答弁者来ているのですか。この趣旨はきのうも伝えておいたのですよ。国際法とのかかわりで、特に核時代における戦争防止の決議。
  150. 小和田恒

    ○小和田政府委員 ただいま国連局長からも御説明いたしましたが、岡崎委員からは、本日原爆と国際法の関係、特に国際法上の違法性の問題について御質問があるということは伺っておりますが、ただいま御覧間のありました、国連における我が国の提案ないしは投票態度という事実関係につきましては国連局長の所管でございまして、国連局長はそういう具体的な御質問があるということの通告を受けておりませんでした。したがって、今資料を取り寄せているところであります。
  151. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 私、二つに分けて言っておいたのですよ。核時代における戦争防止の決議についてはどういう状況になっているのか、個別に質問していたのです。そして、そちらに対するレクのときには一般的に言っていたので、そういうふうなことになったと思いますけれども、しかし、そのくらいの準備はしてほしいと思います。これは後で御返事を聞くことにしまして、先に進みましょう。  今の質問を受けたことになるわけですが、自衛権の行使であればどんな兵器を使ってもよいというわけではないということは、国際法上からもはっきりしていると思うのです。ハーグの陸戦規則などの国際法では、害敵手段の規制、つまり不必要な苦痛を与える兵器の禁止を原則としていることは、御承知のとおりであります。毒ガスなどの化学兵器や生物兵器の使用禁止は、既に慣習法としても十分に確定されている、これは国際法の学者が一様に指摘しておる点です。  そこで聞きますけれども核兵器は毒ガスなどの化学兵器や生物兵器以上に、不必要な苦痛を与える残虐兵器だというふうに思いますけれども、そう認識してよろしいですか。
  152. 小和田恒

    ○小和田政府委員 ただいま委員から御指摘のありましたハーグ陸戦法規、特に第二十二条、第二十三条等におきまして、害敵手段が無制限ではない、一定の制限があるのだという規定があることはそのとおりでございます。それでは、核兵器はどうかということになるわけでございますが、政府は前からお答えしておりますように、核兵器は非常に大きい破壊力を持っておる、あるいは殺傷力を持っておるということから、人道主義的な見地からいえばいろいろ問題がある、人道主義の精神には合致しない面があることはそのとおりでございますけれども、実定国際法上の問題として核兵器をどういうふうに考えるべきかということにつきましては、御承知のように現在学説もいろいろ分かれておりますし、国家慣行から申しましても、従来の既に条約をもって律せられております他の兵器と類推をもって解釈することは適当ではないというのが、政府が従来から申し上げている立場でございます。
  153. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 その答弁は聞いております。私が聞いているのはそういうことじゃなくて、毒ガスなどの生物化学兵器、不必要に苦痛を与える兵器、これより以上の残虐兵器ではないのか、その性能について聞いているのです。
  154. 小和田恒

    ○小和田政府委員 核兵器の性能について条約局長お答えするのは必ずしも適当ではないかと思いますが、今お尋ねのありました点のうちで、委員も御指摘になりましたように、不必要な苦痛を与えるということが国際法上の一つ基準になっておりますので、そういう見地から判断するということでございまして、絶対的な破壊力の問題あるいは殺傷力の問題が必ずしも基準にはなっていないわけでございます。
  155. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 そんな遠回しに言わなくたって、毒ガスなんかとは比較にならないほどの残虐兵器だということははっきりしているでしょう。この辺をまずお認め願いたいと思うのです。  同じようなことですけれども、ハーグの陸戦法規など戦争法規の規定は、軍事目標主義、つまり戦争に際して一般住民の保護を原則としていることは御承知のとおりですが、これは一八六八年のセントピータースブルク宣言でも、既に戦闘外に置かれたる人の苦痛を無益に増大する兵器の使用を規制していることもその一つなんです。  そこで聞きますけれども、戦闘員も一般住民も軍事目標も非軍事物も無差別に大量破壊する核兵器は、この原則に抵触する非人道的兵器ではないか、この見地からお答え願いたいのです。実定法がどうのこうのと聞いているのじゃないのです。
  156. 小和田恒

    ○小和田政府委員 戦時における武器の使用につきまして、あるいは戦闘方法の選択につきましては、軍事的な必要性ということが一方にございます。他方、文民あるいは民間の者を保護しなければならないという人道的な要請がもう一つございます。従来、伝統的な戦時国際法の規則と申しますものはそういう二つの要素を考慮して、それをバランスするというところに成り立っているわけでございまして、そういう見地から、軍事目標の問題あるいは戦闘員と非戦闘員の区別というものが出てきているわけでございます。したがいまして、ある特定の武器を頭に置きまして、それがその二つの要請のバランスをどういうふうに満たしておるか、あるいは満たしていないかということが重要でございまして、一概に文民の保護あるいは民用物の保護という見地だけから判断するわけにはいかないと思います。
  157. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 どうもすっきりしない答弁ですね。なぜそういうふうに端的に返答ができないのか。  次に進みましょう。  一九七七年の第一追加議定書では、一般住民の生存に不可欠なもの、例えば農業施設、飲料水施設などですが、あるいは危険な威力を内蔵する工作物や施設、これはダムとか堤防とか原子力発電などが入るわけですが、これらの保護の諸規定を決めて、戦争による環境破壊を厳しく規制しているわけです。  そこでお聞きしますけれども、「核の冬」といった人類死滅に通じるような核兵器の使用、これは比較するものがないくらい人類の生存環境を破壊するというふうに考えますが、それでよろしゅうございますね。
  158. 中平立

    ○中平政府委員 国連におきまして「核の冬」ということで、そういう核爆発が起こったときに世界がどうなるかということを研究しようという決議は採択されておるわけでございますが、しかし、先生おっしゃるように、爆発したときに本当に人類が住めないようになるのかどうかということは、まだこの段階ではなかなか申し上げられないのではないか、今後の研究の結果を待つ必要があるのではないか、こう思うわけでございます。
  159. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 答弁したくないようですね。  私は三つ挙げました。一つは人類に苦痛を与える極めて残虐な兵器であるということ、二つ目には非戦闘員も含む大量殺りく兵器であるということ、三つ目には人類の生存に必要な環境をすべて破壊する兵器であるということ、これらは三つとも戦時国際法でそれぞれ規制をしている問題なんですね。そのあらゆる点から見ても、この核兵器の使用というのは国際法に対して違法であるということは、はっきりしているというふうに思うのです。これでもなおかつ実定法がないからと言われるのですか。その辺をしかと御答弁願いたいのです。
  160. 小和田恒

    ○小和田政府委員 先ほどお答えしたことの繰り返しになりますが、委員がお挙げになりましたような三つの問題というのは、確かに戦時国際法における害敵手段あるいは戦闘手段の規制との関連を持っている要素でございます。ただ、これも先ほど申し上げましたけれども、そういう三つの要素というものが絶対的な基準として適用があるということではなくて、伝統的な戦時国際法の発展の過程の中において、戦闘手段の実効性という問題と人道主義の配慮との間のバランスをどういうふうにとるかということとの関連で、個々の具体的な問題、例えば毒ガスの問題でありますとかあるいはその他有害な害敵手段についての個別の規制が行われてきて、その個別の規制は、その武器の特性、それからその武器の使われ方というものに着目をして、それを禁止するあるいは制限するという措置が国際条約の形でとられてきているわけでございます。  他方、核兵器につきましては、学説上も種々議論があるところでございますけれども、しかしながら、核兵器そのものについてそういう実定法上の条約的な措置がいまだにとられていない。とられていないということは、日本政府としては大変残念なことであると思いますし、またその方向に向かって軍縮会議等の場において努力はしているわけでございますけれども、そういう措置がとられていない状況において、今委員が御指摘になったような御意見にくみするわけにはいかないということを申し上げているわけでございます。
  161. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 バランスという点からいうならば、この核兵器というのは、もう比較にならないほど大量破壊殺りく兵器なんですよ。ただ、実定法の問題にいつもお逃げになるけれども、しかし一九六三年十二月の東京地裁の判決、これはいわゆる原爆訴訟判決なんですが、これは次のように述べています。「もとより国際法が禁止していないかぎり、新兵器の使用が合法であることは当然である。しかしながら、そこにいう禁止とは、直接禁止する旨の明文のある場合だけを指すものではなく、既存の国際法規の解釈及び類推適用からして、当然禁止されているとみられる場合を含むと考えられる。さらに、それらの実定国際法規の基礎となっている国際法の諸原則に照してみて、これに反するものと認められる場合をも含むと解されなければならない」、こう書いてあるわけです。  政府は、実定法に禁止されていないからと盛んに答弁なさるけれども、しかし、被爆国日本の立場から見て、この東京地裁の判決の見地、まことに道理があるというふうに考えますが、政府はどうしても核兵器が不法だと認められないのですか、こういう見地には立つわけにいかないのですか。もう一回お願いします。
  162. 小和田恒

    ○小和田政府委員 ただいま委員が御指摘になりました昭和三十八年の判決、いわゆる下田判決というものは政府も十分承知をしております。これは司法府の判断でございますので、そのことにつきまして行政府の立場から、この判決そのものについてあれこれコメントすることは適当ではないと思いますので、差し控えさせていただきたいと思いますが、その関連におきまして、今委員が御質問になった点について、ちょっとお答えしておきたいと思います。  この判決の中で述べられております学説の検討、理論的な分析というものは、それなりに傾聴すべき点をいろいろ含んでいると考えております。ただ、先ほど来申し上げておりますように、私どもが、核兵器というものが現在の国際法社会において合法なものであるか、あるいは違法なものであるかということを判断いたしますときには、立法論ないしは政策論の問題としてそういうものが禁止されるべきであるという問題とは一応区別して、それが現在の国際法の認識におきまして既に禁止されている、あるいは違法な武器になっているという国際的な法的な認識というものが、国際社会の中において確立しているかどうかということを問題にするわけでございます。そういう意味において、実定法ということを申し上げているわけでございます。  もちろん、これは判決でも指摘されておりますように、一九四五年に原子爆弾が使われた時点におきまして、原子爆弾というものは初めてそこでできたわけですから、原子爆弾そのもの対象にした条約というものがなかったのは当然であるから、そのことをもって直ちに、したがって原子爆弾が合法であったということ空言うことができないのはそのとおりでございます。  私どもが、実定法と言って申し上げておりますのはそういう意味ではなくて、これまでに存在している種々の特定の兵器の使用に関する禁止あるいは制限を定めた条約の枠内において、核兵器のような武器がそこで禁止されている武器の範疇に属すると考えることができるかどうかという意味で、この条約の規定上もそれから各国の国々の慣行も、さらに国際法学者の学説を見ましても、その点で既に核兵器が国際法上違法なものであるという認識が国際社会の認識として確立しておる、そういう意味において実定法として確立をしておると言うことは、残念ながらできないのではないかということを申し上げているわけであります。
  163. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 国内法の場合は実定法が中心ですけれども、国際法の場合は主として慣習法ですよ。どうしても政府は実定法がないからといって、国際法違反だということを認めたがらないようでございますけれども、しかし、この問題は極めて人類の死滅にかかわる大問題であるわけなんです。そして、これを不法だと認めない前提には、核兵器の使用を合理化する、そういう背景があるのじゃないか。私もしばしば追及してきましたけれども政府核兵器の先制使用を核抑止力の立場から是認されているわけですね。先制使用を是認する限りは、これを不法、違法と認めることができないのは当然だろうというふうに思うのです。  中曽根首相は私への答弁の中で、「日本侵略されて、生存が危ない、そういう状況のときに、それを排除するということまでは、それは我々は考えられないと思うのです。何しろ日本が生き残らなければ、日本民族はどうなりますか。」二月十九日の予算委員会での答弁ですが、こういうことを言われているわけです。これは明らかに、自衛権の名前で核の先制使用を肯定する、むしろ積極的に肯定する御答弁だと思います。  そこで、安倍外務大臣にお聞きしたいのですけれども核兵器の使用が日本の自衛権の行使のためにはどうしても必要だというふうに判断されますかどうか。一たん使用されれば、本当に全面核戦争にも発展する危険性、人類人殺りくにも発展する危険性を持っている核兵器の使用というのが、日本の自衛権にとってどうしても必要だという判断にお立ちになるのかどうか。これは政治的な立場から御答弁願いたいと思います。
  164. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 我々は、やはり核兵器というのは廃絶されなければならないという立場でもありますし、そのための軍縮も積極的に主張してきて今日に至っております。  核兵器につきましては、今日厳然として存在しておる、そしてあくまでも抑止力という立場で、我々もこれを認めておるわけでございます。核の抑止力というものを認める以上は、どんな場合においても核は絶対使われてはならないということであれば抑止力というものにはならないわけでありますから、我々は核の使用というものがあってはならない、こういうふうには思っておりますけれども、現実問題として核の抑止力によって平和が維持されているということでございまして、そういう点からやはり現実的に対応していかなければならない、こういうふうに思います。
  165. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 大臣、したがって日本の自衛権を行使するためには、核兵器の使用も認めざるを得ないという見地になりますね。
  166. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 日本は核を持っておりませんし、日本の自衛権を行使する場合において、核兵器を持っていない国が核を使うことはあり得ないわけです。
  167. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 日本の場合を言っているのじゃないのですよ。日米共同作戦の場合、米軍が使うことを是認するかどうかという問題なんです。先ほど、核抑止力の立場に立つ限りは、核兵器の使用を認めざるを得ないというふうにおっしゃいましたけれども、そういう見地は、日本の自衛権行使のためにどうしても必要だ、そういうお考えになりますね。それでいいですか。
  168. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 我々は、アメリカとの間に日米安保条約を結んでおります。これは一面においては、アメリカの核の抑止力に依存しておるということでございます。その限りにおいては、抑止力というものに依存をして条約が存在して、日本の平和と安全が存在をしておるという立場に立つ以上は、どんなことがあっても、核はいかなる場合であっても使ってはならない——我々の気持ちとしてはそうでございます。しかし、抑止力というものに依存している以上は、核の使用をあらゆる場合に認めないという立場に立つわけにはいかないわけであります。
  169. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 そうすると結局、あらゆる場合ノーと言えないというわけですから、自衛権のために必要だということなんですね。私、繰り返し聞きますのは、私が最初に質問したことに返ってきているわけなんです。つまり、自衛権の行使のためにはあらゆる兵器を使ってよい、核兵器を使ってよいという立場が核時代における戦争防止の共同決議案なんですよ。これを再三政府は出しているでしょう。だから、問題にしているわけなんです。これはどうなりましたか。
  170. 小和田恒

    ○小和田政府委員 委員御承知のように、三木内閣当時、三木総理とフォード米国大統領との間で、今御質問の問題について共同新聞発表が出たことがございます。そのときに、この第四項でございますが、米大統領は総理大臣に対し、「核兵力であれ通常兵力であれ、日本への武力攻撃があった場合、米国は日本を防衛するという相互協力及び安全保障条約に基づく誓約を引続き守る」こういうことを確言しているわけでございます。  これは、先ほど来大臣が御答弁申し上げております安保条約の抑止力の本質を言いあらわしているわけでございます。つまり、抑止力の見地からすれば、核兵器というものは絶対に使わないということを約束することは、抑止力の効果そのものを否定してしまうことになるわけであります。もちろん核兵器というものは、絶対に使われてはならない兵器でございますけれども、それはいかなる場合にも絶対に使わないということを約束する、あるいは使用の可能性というものを完全に排除してしまうということになると有効な抑止力を損なうことになる。そういう意味におきまして、米国が核兵器を使う可能性、今申し上げたような意味における可能性というものを排除してしまうことは、適当ではないということを申し上げているわけでございます。
  171. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 私は、国連における核時代における戦争防止決議がどうなったか、一番最初の質問について聞いているのですよ。ちょっと時間の都合もありますので、もう三十分近くたちましたから、どうぞ答弁願います。
  172. 中平立

    ○中平政府委員 先生御存じのとおり、我が国といたしましては、基本的に核兵器は絶対使用されてはならぬという立場でございまして、かかる観点から実効的措置を講ずべしという立場をとっているわけでございます。現在の国際情勢におきまして、平和と安全というものが核と通常兵器とのバランスの上に築かれておるという認識に立っているわけでございまして……(岡崎委員「いや、時間がないから端的にどうぞ」と呼ぶ)そういうことで日本側といたしましては、西独等と決議案を提出したわけでございます。しかしながら、その審議の過程におきまして、非同盟国から我々西側の立場を全く認めないような修正案を提出されまして、数でその修正を強引に押し通そうという動きがありましたので、それでは我々の立場が損なわれるという観点から、当初提出いたしました決議案を撤回したわけでございます。
  173. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 つまり、二回にわたって核の先制使用を自衛権の名前で合理化する決議案を出されようとした、これははっきりとした事実だと思うのです。二回連続して出したことは、中曽根内閣になって初めてのことなんですね。この見地が、結局自衛権の名前で核の先制使用を容認するという見地なんですよ。ここに問題があると私は思うのです。先ほど大臣や局長答弁から見ましても、日本の自衛権のためにも、核抑止力の立場に立つ限りはやはり核兵器の使用はあり得る、容認する、必要だ、そういう御答弁のように判断するわけですが、それでよろしゅうございますね。これは極めて大問題です。
  174. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これはもう何回も答弁いたしたことですからね。何回答弁したって同じ答えしか出ないわけでして、我々日米安保条約を結んでおる、それはやはり核の抑止力に頼っておるわけでありますし、そういう核の抑止力に依存している以上は、理論的には完全に核の使用というものを排除できない、こういうのが日本の立場であります。
  175. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 結局、自衛権のためには必要だという判断だと思います。  先ほどがたがたしたので、ちょっと時間を下さいよ。それで、私は三宅島の問題について最後に一言お聞きします。  四日の政府・与党連絡会議の席上で、三宅島のNLP基地建設について金丸幹事長が、日米関係からいえば建設を積極的に推進すべきだと述べたことに対して、外相も総理と同じく、円満な日米関係という点から見ても重大な問題だというふうに発言されたと報道されていますね。この問題は、私も何回かここでも質問しました。昨年四月四日の当委員会外務大臣は、「もちろん民主主義の時代ですから、住民の意思とか議会の意思というものは十分踏まえながら事を進めなければならない、そういうふうに思うわけでございます。」と明快に答えられたわけですが、この見地は今も変わっていませんか。
  176. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これは、三宅島に今の厚木の代替として艦載機の夜間訓練の基地をつくろうということで、今防衛施設庁がいろいろと努力しているわけです。しかし、これはそれこそ民主主義的に解決していかなければならないのですから、そこで今決着がそう簡単にはまいってないということで、政府・与党としては、非常に大事な問題であるし、厚木の住民の非常に強い要請もありますし、また、これは日米安保条約の建前からやはり夜間離発着の訓練基地というものは必要である、こういう立場から、これは日本政府としても何とか早く解決したいと考えております。その考え方は変わりません。努力をしておるわけでございます。そして、その重要性というものが、政府・与党の連絡会議において確認をされたわけでございます。お互いに、政府・与党一体となって努力していこうということでございます。
  177. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 努力していこうということは、それはそちらのお立場でしょうからいいわけですけれども、民主主義の立場からいって住民の意思を十分尊重するという、そのことは変わっていないかということですが、そうでございますね。
  178. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 日本は民主主義の国ですから、手続を踏まないで物事は解決しないわけであります。
  179. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 それじゃ、住民の意思を以前同様に尊重するという立場を表明されたというふうにお聞きしました。  この住民の意思という点から見ますと、三回にわたって反対の署名が行われているのです。去年の一月ですが、全島民の有権者の中の七五・七%が反対の署名をしています。そして五月の段階では全有権者の七八・一%、上がっているわけです。そして今回、十一月十一日から十日間に行われた反対署名では、全有権者の八五%ですね。特に滑走路予定地になっている阿古地域でも、七七・三%が強い反対の意思表示をしているわけです。政府が工作すればするほど、村民の反対の意思表示は広がってきているという状況にあるわけです。そういう点で、今外相は住民の意思を尊重するというふうに言明されているわけでございますが、住民の意思を尊重するならば、この八五%の圧倒的な意思を軽く扱うわけにはいかないと思いますが、これについてはいかがでしょう。
  180. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 その後の状況については、私もよく承知いたしておりませんが、例えば成田の第二滑走路の建設にしてもそうですが、日本の場合は、意を尽くして住民の皆さんの納得を得て問題は解決していくという手法で取り組んでおるわけですし、三宅島の場合もそういう点で住民の皆さん、議会の皆さんに対して、説得の努力を続けておると私は承知をしております。そして、何とか理解を得て解決をしていきたいというのが政府考えであると思います。
  181. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 成田と三宅島は基本的に違います。  これは米軍の基地と言えるようなもので、そして納得の上と言いながら、納得しないでますます反対の意思を強めているわけです。  それで、十月十八日に東京防衛施設局が村長さんに説明書を配ったわけです。その中身が、私は非常に無責任なものだと思いますが、時間がありませんから一例だけしか挙げませんけれども、飛行場の予定地域の薄木地域では、島の農業の約四割を占める農業の振興地域になっているわけです。この土地を航空法に基づいて、数メートルから五十メートル近く削土しなければならないことになるわけです。それに対するこの説明書の中身は、「ご要望により代替農地を造成することもできる。」などと言っていますけれども、一体どこにこういう代替農地があるのかと農民は非常に怒っているわけなんです。こういうことなどについて、十分責任ある立場に立ってつくられたのかどうか、この問題について、きょうは来ているんでしよう、平さんどうぞ。
  182. 平晃

    ○平政府委員 御指摘の農地の問題でございますけれども、三宅支庁でつくりました農地の統計資料によりますと、三宅島の農業耕作地は現在二百六十四ヘクタールございます。それから切りかえ畑という、旧来の手法のようですけれども、六百二十二ヘクタールが寝かせられておる。これは、地力回復を待っているということだと思いますけれども、こういう土地について近代的な手法を用いれば、これを同時に農耕するという方法も考えられるのじゃなかろうか。この面について地元の御要望を受けて、十分お話し合いをした上で御希望に沿っていきたいと考えております。
  183. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 とんでもない話なんです。時間がないからもう反論しないでおきましょう。最後に一問だけで終わります。  私は、十月二十四日に質問主意書を出しまして、その答弁が十一月八日に来たわけです。その中で、NLP期間中に米軍要員が駐留するという回答があったわけです。若干の陸上要員を必要とすることを認められているわけです。そこで聞きますけれども、訓練期間中は駐留する米軍要員というのは、指揮、訓練評価や機体整備や基地整備あるいは補給や事故対策、いろいろ考えられるわけですが、どういう部隊が何名くらい来るのか。もうこの段階になっていますから、はっきりお答え願いたいと思うのです。これが一点です。  第二点は、訓練期間中は、米軍要員は毎日帰るわけじゃないでしょう。この訓練期間中は三宅島にいると思いますけれども、隊舎をつくってそこにいるのかどうか。もうこの段階ですから、その辺のところをはっきりお答え願いたいと思います。
  184. 平晃

    ○平政府委員 仮に三宅島に訓練場がつくられた場合、当初、官民共用空港をつくってほしいという島の御要望が一昨年十二月にございました。その後反対に変わったわけでございますけれども、民間空港との共用ということを当初考えられております。したがいまして、その後反対があったために、その辺をまだ運輸省、東京都と詰めておりませんけれども、民間空港として使用される、それを米軍が地位協定の二条四項(b)によりまして必要な都度使わせてもらうという形であれば、施設の管理要員も要らないわけでございます。したがいまして、まだ具体的な施設の管理運用について米軍とも詰めておりませんけれども基本的には米軍は訓練の都度出向き、訓練が終わったら帰る。もちろん、指揮とか評価の要員もおりますけれども、これも訓練のときに出かけて、訓練が終わったら同時に帰るということで、現在のところ宿舎あるいは隊舎等の要望は出ておりません。したがって、島に滞在するということは、私ども現在のところ全く考えていないということでございます。(岡崎委員「一の問題、まだ答えていませんよ、どういう部隊で何名くらい要るのか」と呼ぶ)  したがいまして、航空機や訓練のために出向いて、タッチ・アンド・ゴーの訓練をしたら帰るということでございますから、部隊が出向くということはございません。
  185. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 時間がないから、これで終わりましよう。
  186. 愛野興一郎

    愛野委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時四十八分散会