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1985-11-27 第103回国会 衆議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年十一月二十七日(水曜日)     午前十時三分開議 出席委員   委員長 愛野興一郎君    理事 奥田 敬和君 理事 北川 石松君    理事 野上  徹君 理事 浜田卓二郎君    理事 井上 普方君 理事 土井たか子君    理事 玉城 栄一君 理事 渡辺  朗君       鍵田忠三郎君    佐藤 一郎君       中山 正暉君    仲村 正治君       町村 信孝君    山下 元利君       岡田 春夫君    河上 民雄君       小林  進君    八木  昇君       渡部 一郎君    木下敬之助君       岡崎万寿秀君    田中美智子君  出席国務大臣         外 務 大 臣 安倍晋太郎君  出席政府委員       内閣官房内閣審       議室長       兼内閣総理大臣       官房審議室長    的場 順三君       内閣法制局第一       部長        工藤 敦夫君       外務大臣官房外       務報道官      波多野敬雄君       外務省アジア局   後藤 利雄君       長       外務省北米局長   藤井 宏昭君       外務省中南米局   堂ノ脇光朗君       長       外務省欧亜局長   西山 健彦君       外務省中近東ア       フリカ局長     三宅 和助君       外務省経済協力   藤田 公郎君       局長       外務省条約局長   小和田 恒君       外務省国際連合       局長        中平  立君       外務省情報調査       局長        渡辺 幸治君       文部省初等中等       教育局長      高石 邦男君       文化庁次長     加戸 守行君       厚生省援護局長   水田  努君  委員外出席者       労働省労働基準       局補償課長     佐藤 正人君       外務委員会調査       室長        高橋 文雄君     ――――――――――――― 委員の異動 十一月十三日  辞任         補欠選任   仲村 正治君     江崎 真澄君 同月十九日  辞任         補欠選任   石川 要三君     大石 千八君   鍵田忠三郎君     稻葉  修君   西山敬次郎君     田川 誠一君   町村 信孝君     渡辺 栄一君   山下 元利君     石原健太郎君 同日  辞任         補欠選任   石原健太郎君     山下 元利君   稻葉  修君     鍵田忠三郎君   大石 千八君     石川 要三君   田川 誠一君     西山敬次郎君   渡辺 栄一君     町村 信孝君 同月二十二日  辞任         補欠選任   木下敬之助君     青山  丘君 同日  辞任         補欠選任   青山  丘君     木下敬之助君 同月二十七日  辞任         補欠選任   江崎 真澄君     仲村 正治君 同日  辞任         補欠選任   仲村 正治君     江崎 真澄君     ――――――――――――― 十一月十一日  核兵器廃絶等に関する請願田中恒利紹介)  (第一六〇号)  宇宙兵器核兵器凍結実現等に関する請願  (井上一成紹介)(第一七一号)  同(上田卓三紹介)(第一七二号)  同(武藤山治紹介)(第二九一号)  同(元信堯君紹介)(第二九二号)  核トマホーク積載艦船日本寄港反対等に関す  る請願武藤山治紹介)(第二五六号)  同(元信堯君紹介)(第二八九号)  核兵器全面禁止に関する請願梅田勝紹介)  (第二五七号)  同(浦井洋紹介)(第二五八号)  同(小沢和秋紹介)(第二五九号)  同(岡崎万寿秀紹介)(第二六〇号)  同(経塚幸夫紹介)(第二六一号)  同(工藤晃紹介)(第二六二号)  同(佐藤祐弘紹介)(第二六三号)  同(柴田睦夫紹介)(第二六四号)  同(瀬崎博義紹介)(第二六五号)  同(瀨長亀次郎紹介)(第二六六号)  同(田中美智子紹介)(第二六七号)  同(津川武一紹介)(第二六八号)  同(辻第一君紹介)(第二六九号)  同(中川利三郎紹介)(第二七〇号)  同(中島武敏紹介)(第二七一号)  同(中林佳子紹介)(第二七二号)  同(野間友一紹介)(第二七三号)  同(林百郎君紹介)(第二七四号)  同(東中光雄紹介)(第二七五号)  同(不破哲三紹介)(第二七六号)  同(藤木洋子紹介)(第二七七号)  同(藤田スミ紹介)(第二七八号)  同(正森成二君紹介)(第二七九号)  同(松本善明紹介)(第二八〇号)  同(三浦久紹介)(第二八一号)  同(簑輪幸代紹介)(第二八二号)  同(山原健二郎紹介)(第二八三号)  同(岡崎万寿秀紹介)(第二九〇号) 同月二十日  核兵器全面禁止等に関する請願田中恒利君紹  介)(第三三二号)  宇宙兵器核兵器凍結実現等に関する請願  (上原康助紹介)(第三三三号)  同(岡田利春紹介)(第三三四号)  同(伊藤茂紹介)(第四三〇号)  同(土井たか子紹介)(第四三一号)  核兵器全面禁止に関する請願経塚幸夫紹介  )(第三八五号)  核兵器全面禁止に関する請願中林佳子君紹  介)(第四〇五号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 愛野興一郎

    愛野委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。土井たか子君。
  3. 土井たか子

    土井委員 外務大臣、まず私は、今月の十九、二十、二十一日にジュネーブで行われました米ソ首脳会談について、少しお尋ねを進めたいと思います。  今回の首脳会談は六年半ぶりなんですね。お互いがいろいろと相手に対して、悪口の数々をののしり合うという形で今まで来ている間柄なんですが、会談の機会が熟したというのは、いろいろな理由があるのでしょうが、外務大臣は、一体どの辺に今回こういう会談に持っていくことができた理由があるとお思いになっていらっしゃいますか。
  4. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今回六年半ぶり米ソ首脳会談が実現した、これは大変結構なことであったのですが、その背景はいろいろあると思います。  やはり全体的な世界情勢動きの中で、両国首脳が会うというタイミングが合ってきたのじゃないか、こういうふうに思うのでありますが、一つは、ゴルバチョフ政権が誕生したということが大きな要因でもあったと思いますし、それから、ジュネーブにおける軍備管理あるいはまた軍縮交渉等が先行して行われるようなことになってきた、そして、こうした軍縮を求める世界的な世論もほうはいとして起こってきたということも背景にあると思います。同時にまた一面、アメリカSDI構想というものに対するソ連の重大な関心ということも、首脳会談を始める一つ要因にもなったのではないだろうかと思うわけでございます。またアメリカにおきましても、レーガン大統領が再選をいたしまして、米ソ首脳会談というものに対してレーガン政権、特にレーガン大統領が非常に意欲的な姿勢で対応してきた、やはりそうしたいろいろな背景のもとにいわば機が熟した形で行われたのではないだろうか、こういうふうに判断しております。
  5. 土井たか子

    土井委員 今回は、約束の中に相互に訪問し合うということが合意されているわけでありますが、これに大変期待をかける向きもあるようであります。外務大臣自身も、今回の会談の結果というのは、両国間において、あるいは世界全体の緊張緩和方向に向けて新しいスタートを切ったというふうに御理解と評価をなすっていらっしゃるかどうか、いかがでしょう。
  6. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、共同声明あるいはまた両国首脳が他人を交えず二人だけで五時間余りにもわたって会談をしたということ、さらにまた今の両首脳相互訪問約束をされたということは、やはりこれからの米ソ関係、さらにまた軍備管理軍縮等の面におきまして非常な大きな前進といいますか、新しいスタートが将来に向かって切られたのではないか、こういうふうに評価をいたしております。これが一回だけでなくてとにかく続けて行われることが、両者の、お互いを知り合ったという中にあってこれが継続して行われるということは、今後の米ソ関係緊張を緩和していく、あるいはまた東西関係状況を好転していく、世界全体の平和と安定のためにも非常に意義深いものではないか、こういうふうに思います。
  7. 土井たか子

    土井委員 過去、米ソ首脳会談たびごとに、新しいスタートだ、新しいスタートだと言って期待をし続けてきたということであります。五九年九月のアイゼンハワー・フルシチョフ会談を皮切りにしまして、六一年六月にはケネディフルシチョフ、六七年六月にジョンソンコスイギン、七二年五月にはニクソンブレジネフ、七三年六月、七四年六月と続けざまに三年連続で、このニクソンブレジネフ会談があります。七四年十一月にはフォード・ブレジネフ会談、七九年六月にはカーターブレジネフ会談、八五年十一月にはレーガンゴルバチョフと、こうなっていくわけですね。この間、ジョンソンコスイギンおるいはニクソンブレジネフ、そのあたりでは、ケネディフルシチョフ会談のあった後にキューバ危機がございますし、あるいは六八年にはプラハヘの侵攻がございますし、ニクソンブレジネフとの会談の間に、アメリカ北ベトナムヘ北爆が強化されたこともございますし、七九年六月のカーターブレジネフ会談後、アフガンヘの侵攻問題があったりいろいろございまして、その都度ずっと裏切られ続けてきているのです。  今回、世界じゅうの国々が米ソ首脳会談期待をしている限りにおきまして何かをしなければならない、国際環境というものをつくり出していくということのために何かをしなければならない。これは、緊張緩和という方向に向けて何かをしなければならないということを考えますと、力の対決お互いがする限りはだめなんでありまして、力の対決ということを薄めていく必要がどうしてもあるわけなんです。日本としても、ソビエト脅威論というものを振りかざして外交を行っていても、これはどうにもならない話でありまして、やがて来年一月にはシェワルナゼ外相が訪日される予定になっておりますが、日本としては、そういうことからすればどういう努力が問われ、そして具体的にはどういうことをやりたいということを外務大臣自身、お心づもりとしておありになるか、その辺をお聞かせいただきたいと思います。
  8. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、まず基本的には、今回の米ソ首脳会談合意が確実にこれから守られていくといいますか、この合意がさらに進められていくということが極めて大事であって、これに対して世界期待を裏切らないように両首脳がやっていただかなければならないと思います。そして日本も、そのための環境づくり努力をしなければならぬわけです。  確かに、おっしゃるようにこれまでの米ソ首脳会談、いろいろと歴史を勉強してみましても裏切られたことも何回かあるわけで、フルシチョフケネディ会談等でも、フルシチョフ回想録を読んでみますと、やはりフルシチョフケネディ力量というものを軽く見てキューバに入っていったというようなこともありますし、カーターブレジネフ会談で、その結果としてむしろアフガンヘの侵入が行われたということもあって、一面においてはこうした首脳会談というのは、お互い力量をはかり合うというような面もあるようで、そういうことがかえって問題を惹起させる状況歴史の中ではあり得たと思うわけでございますが、そういう中で今回の米ソ首脳会談は、二人だけの会談という中で両方がお互いに力を認め合ったというような状況も出てきたと私は思いますし、さらにまたその結果として、二国間の改善等が具体的に大きく進んでおるというふうなこともありますし、同時にまた両首脳とも、核戦争勝者敗者もないということを確かめ合った、そしていわば不戦というものを約束し合ったという、まさに歴史的な合意だと私は思います。  そうした点から見まして、さらにまた相互訪問するという今後へ向かっての新しい路線が構築されたというふうなことから見ますと、今回の両首脳の間の――確かに軍備管理あるいは軍縮問題等については、相当基本的な面にわたっての相違点もあるようでございますが、しかし少なくとも私は、これは今後の世界情勢にいい影響を与えてくるであろうし、またその関係は続いていくであろう、こういうふうに全体的に見ております。  そういう中で、やはり日本日本なり努力を傾けていかなければならぬ。特に私は、日本ソ連との間の外相会談もいよいよ行われるわけでございますし、この首脳会談のいい雰囲気といいますか影響が、日ソ関係に及んでくるといいますか反映してくるということを期待もし、そのための努力日ソともやっていかなければならない、こういうふうに思っております。
  9. 土井たか子

    土井委員 それは大臣自身の御決意と、日本外交姿勢についてあらまし御所信のほどを含めての御答弁だったと思うのですが、核戦争があってはならないということと不戦決意ということを今お述べになったのですが、今回の共同声明の中の「安全保障」というところを見てまいりますと、「核戦争を戦って勝つことはできないし、決して核戦争を戦ってはならない、との点で合意した。双方はソ連と米国の紛争がいかなるものであれ、破滅的な結果を起こしかねないということを認めた上で、核戦争であれ通常戦争であれ、両国間のすべての戦争を防ぐことの重要性を強調した。」こう書かれているのです。ここの点が、今外務大臣お答えになった核不戦ということに相なるかと思いますが、核不戦というのは、核不使用を誓い合ったというふうに理解してよろしいのですか。いかがですか。
  10. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 核不使用不戦というのとどういう違いがあるのか、厳密なことは私もわかりませんが、しかし、少なくとも戦争をしないということを誓い合った、それで核戦争には勝者敗者もないということを認識し合ったということは非常に重要な、少なくとも超大国として核兵力を、核兵器世界の中で二分している両国首脳がそういうことを合意し合ったということは、非常に歴史的な意味があるんじゃないだろうか。そしてまた、これが今後ともこうした歴史的な意味を持たせなければならぬ、こういうふうに私は思います。
  11. 土井たか子

    土井委員 歴史的な意味を持たせるためには核不戦、戦わないということです。不戦というのは、まさに戦わないのです。すなわちそうすると、核を使って戦うことをしないということにこれはなるわけであって、核不使用というふうに考えていいんじゃないでしょうか。これはやはり歴史的と言われれば言われるほど、はっきりしておく必要があると思うのです。いかがですか。
  12. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 両超大国戦争ということになりますと、これはもう核を無視した、核を別にした戦争ということはあり得ないんじゃないかと思います。ですから、あくまでも両超大国が戦う、戦端を開くということになれば核そのものが出ていくということを、それはもう両者とも十分認識した上の合意であろうと思います。
  13. 土井たか子

    土井委員 そうすると、十分に核不使用ということを認識した上の合意というふうに理解してよろしゅうございますね。
  14. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 もちろん、そういうことが前提にあると思います。
  15. 土井たか子

    土井委員 と同時に、先制攻撃はしないという意味も、これは当然のことながら含まれてこなければならないと思います。いかがでございますか。
  16. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 もちろん、これは基本的な両首脳認識の問題であろう、いわゆる全体的に道義的に戦争というもの、そして核戦争というものに対する、両者のそうした基本的な認識が一致した、こういうふうに思います。
  17. 土井たか子

    土井委員 それは意に含んで、そういうことを是認なすってお答えになっているわけでありますが、外務大臣国連において御案内のとおり、核不使用に対しての決議を出す提案国日本は気に入らないという立場で、今まで核不使用に対して反対をするという立場を二度ばかりとってきているのです。棄権をするとかいうことを、非常に今まで続けてきているわけであります。これは、提案する国が気に入らないとか気に入るとかいうふうな立場で判断する問題じゃないんで、むしろ今の大臣決意がおありになることが強ければ強いほど、日本として提案国になっていいんじゃないでしょうか、核不使用国連における決議については。国連において果たす役割というのは、日本は非常に注目をされている国でもあり、影響力が大きいわけですから、そういうことからすれば、これは日本提案国としてやるべき問題であるというふうにも考えられます。大臣自身、どうお思いになりますか。
  18. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 核不使用決議に対して、日本がそれぞれ留保したりあるいはまた反対をしたりというケースがこれまであったことは事実でありますし、また賛成をした決議もあったと私は思いますが、日本の基本的な立場はこれは明らかであります。最終的には核廃絶ということであるし、これは終始一貫した日本の基本的な方向だと思います。ただ、その間のいろいろの提案理由とかあるいは提案の趣旨とかあるいは検証の問題とか、そういうものとの関係日本立場をそういうふうにこれまで明らかにしてきた、私はこういうふうに思っております。  この点についてもう少し質問があれば、これは局長から答弁をいたさせますが、基本的には我々としては、今の核廃絶そしてやはり今の米ソ首脳会談に言われているような核戦争を防止するためのいろいろの動きに対しては、積極的にこれは日本としてはみずから努力もし、協力していかなければならない、こういうふうに思っております。したがって我々は、軍縮会議等において、核実験禁止特に全面禁止については、日本がこれまで先頭に立って実は国連等でも努力をしていることは御案内のとおりです。
  19. 土井たか子

    土井委員 余り努力と思えないのですよ、大臣、今までのところ。それで、御説明は要りません。これは、第一軍縮総会、第二軍縮総会国連軍縮総会の前には、当委員会において相当突っ込んだ議論を何回かやっておりますから、事情についてはよくわかっております。したがって、外務大臣は、それは今まで賛成したこともあると小さい声でおっしゃいますけれども、過去の非常に古い話でありまして、最近はいかがですか、賛成した例なんてございませんよ。提案国提案内容に対して吟味をして、せいぜいのところがおっしゃったとおり留保であります。これは、この前の第二軍縮総会の前夜、賛成をいたしますということを言われて、国連場所に行って留保という格好に相なってしまった。そういう提案国提案の仕方に対して吟味するという消極的な姿勢では、もはやあってはならないんじゃないかと私は思います。  今回の米ソ首脳会談の結果、どのように国際緊張緩和方向に向けて努力できるかということになると、東西陣営対決ではない、西側陣営の結束をより固めるということじゃないのです。いかにしてソ連との雪解けをつくっていくかということじゃありませんか。そうなると、むしろ日本が唯一の被爆国という立場からしても、この問題に対しては、提案国として国連場所で堂々と核廃絶に向けて声を上げる、努力をするということがもっともっと問われていると思うのです。核不使用決議ぐらいは、日本提案国になって当然だと思われますよ。大臣、いかがですか。
  20. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、これまでの軍縮総会においても鈴木総理演説であるとか、あるいは今回の中曽根総理演説におきましても、核の問題に対する日本立場は明らかにしておると私は思います。日本立場は、先ほど申し上げましたように、最終的には核の廃絶にあるということであります。しかし、それにはそれなりの国際的な管理も必要でありましょうし、あるいはまた検証も必要でありましょうし、特に基本的には二大核保有国、超大国である米ソの基本的な合意ということも必要ではないかと思います。  そういう中にあって、とにかく日本がやっておることは、国連等の舞台を通じまして積極的な核の廃絶、そしてまた核の実験全面禁止というものを表に立てて努力しているわけですから、日本のそうした真意といいますか政策というものは世界の中でも明らかになっておる、こういうふうに私は思います。
  21. 土井たか子

    土井委員 どうもそれはひとりよがりというものでございまして、国連場所でとっている姿勢を見ますと、今おっしゃったような真意世界に通じているとはとても思えないのです。今検証とかいろいろおっしゃいますが、不使用決議をせめてと私は言っているのです。どうして核不使用検証の問題が出てくるのですか。問題は不使用決議なんですよ。それすら留保というのは、こんな情けない話はない。言ったら、いろいろとそれに対して理屈をおっしゃるのです。提案している国はこういう立場提案しておりますから、この点が気に入らない、この点が問題がありますという、そんな問題ではないと私は思います心日本は何をしているのかという格好になると思うのです。外務大臣、これについて再度お尋ねをして、先に進みます。説明は要りません。外務大臣、どうぞ。
  22. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 先ほどから申し上げました核不戦という両国首脳合意というのは、両国が超大国、核超大国としての道義的な責任を認め合った形での非常に高度な政治的な意図表明であると私は思いますし、これはそれなりに非常に重要な歴史的な意義を持つ、また意義がなければならないと思っておるわけです。  ただ、これに対して今お話しの核不使用、核の第一使用などの具体的な措置を伴う決議に対する態度は、今の両首脳のそうした意図表明あるいは合意とはまた別の具体的な問題ではないか。実際には、核不使用という前に核削減がなければならぬわけで、そのための軍備管理交渉とか核軍縮等についてのジュネーブ会談等が行われておるわけでございます。また、日本が出しておる全面禁止に至る段階的な核実験禁止というようなことも非常に具体性を持ったもので、やはり段階的に核軍縮から最終的には核廃絶ということになっていかなければならないと思います。  ただ、核不使用ということを決議されたからといって、今の現実的な情勢、これだけの大きな核が世界に存在している中で、具体的にそれがそのまま非常な拘束力を持ち、そしてそれが非常に現実的な方法だというふうに直接的には私は思わないわけです。やはり大きな立場核戦争をしない、そして現実的に今行われているような核の軍縮交渉等が具体的に積み上げられるという中で、これに日本も積極的な協力をして、最終的には核廃絶というようなところへ持っていくのが、今の世界の現実的な情勢から見れば筋ではないかと私は思います。
  23. 土井たか子

    土井委員 外務大臣、今のは何をおっしゃっているのかわからない。今の御答弁安倍外務大臣らしくないですよ。御自分でも何をおっしゃっているかわかっていますか。支離滅裂です。核戦争をしない、その上に立って核を段階的に解消して廃絶する、つづめて言えばそういうことをおっしゃっている。核戦争をしないということは、つまり核不戦であり核不使用じゃないですか。核を段階的に解消して核を廃絶する方向に向かう、それと全く別のことですか、核不使用というのは。そうじゃないですよ。核不使用というのも、そういうことからすれば意味があるのです。  せめて核不使用国連決議することぐらいは、これは段階的解消ということに対して状況をつくっていくことに大変意味があるのじゃないですか。それを支援しているのじゃないですか。核廃絶についての意思表示を、核は不使用であるという前提に立ってやりましょうという意思表示じゃないですか。不使用くらいできなくて何の段階的解消ですか。今のは何をおっしゃっているのですか。――後ろからメモを渡す人、要らないですよ。外務大臣の方がよっぽど立派だ。外務大臣お一人でお答えになった方が筋が通っておるのです。後ろから変なメモを渡すために外務大臣に混乱が起きている。外務大臣、もう一度お答えください。外務大臣のお言葉でやってください。後ろからのメモ不要。
  24. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 まず基本的に、核を大量に保有している米ソ首脳核不戦ということを約束し合ったということは非常に重要な意味があるし、それはお互いに核は使わないという一つの基本的に政治的な合意がなければ、これは両超大国不戦の誓いですからあり得ないと思うのです。ですから、これは非常に重要なものです。その重要な歴史的な意義世界じゅうが支えていくことが、非常に大事なことだと私は思うのです。ですから、これからの動きの中で、そうした両首脳意図表明というものが世界一つの大きな流れの中で決まっていく、進められていくために、日本努力していかなければならないと思います。  ただ、現実的に具体的に国連なんかで行われている今の議論が、そのまま一挙にそこまで持っていかれるかということになれば、それは相当これから両首脳の声明といいますか合意具体性を帯びてきて、これから状況がいろいろの面で進んでいく。特に核の問題で、核の軍縮の面で具体的に進んでいくという姿が見えなければならないのじゃないかと私は思うのです。そういう中で、日本の役割というのはそれなりにあるのじゃないか。  日本は、今申し上げるまでもなく、核軍縮、そしてまた最終的には核廃絶日本の基本的な姿勢でありますし、そういう中で日本が具体的に核実験全面禁止を大きく掲げて闘ってきております。ですから、世界の流れというものがそういう方向に持っていかれることが大事であろう。我々は、核不使用に決して反対しているわけではありませんし、核不使用世界的な合意となって、それが最終的に核廃絶につながっていくということは日本としては歓迎すべきことだ、こういうふうに思うわけです。  ただ、そういう中でいろいろとこれから議論が進んでいくであろうと思いますが、そういう議論を十分煮詰めていかないと、今ここで簡単に世界じゅうの合意ができるかどうかというと、やはり米ソのこれからの動きも十分見た上でないといけないのじゃないだろうか、こういうふうに私は思います。
  25. 土井たか子

    土井委員 国連での決議日本が積極的に提案をするということについてのさらなる努力を、今の外務大臣の御答弁からこちらとしては期待を持って申し上げることにして、幾らやってもこれは恐らく繰り返しを御答弁される限りであろうと思います。  そこで、今御答弁の中で、核実験全面禁止などという大事な問題がという御発言ございましたが、共同声明の中を見ますと、「双方は、最近行われた核兵器拡散防止条約再検討会議の全般的な前向きの成果に満足の意をもって留意する。」と書いてあります。ことしの九月にありましたあの再検討会議では、最重要問題で合意された部分というのは何であるかといったら核実験全面禁止なんですね。今回は、この核実験全面禁止についてということが文章上ははっきり出てきておりませんけれども、しかし当然のことながら、これは米ソの両首脳合意されたと考えていいですね。いかがでございますか。
  26. 中平立

    ○中平政府委員 お答え申し上げます。  せんだっての米ソ首脳会談におきましては、核実験廃止まで合意されたというふうには我々は通報を受けておりません。
  27. 土井たか子

    土井委員 我々は通報を受けておりませんというのは、一体どこからどういうふうに通報を受けたの受けないのとおっしゃっているのですか。
  28. 中平立

    ○中平政府委員 この間国務省のウォルフォウィッツ国務次官補が東京に参りまして、我々はいろいろな話を聞いたわけでございます。そのときにそういう質問をいたしましたけれども、そういう肯定的な回答は得ておりません。
  29. 土井たか子

    土井委員 それはアメリカ側の説明でしょう。ウォルフォウィッツ国務次官補というのはアメリカ側の説明でしょう。ソビエト側の説明は聞かずして、アメリカ側の説明だけで今そういうことをおっしゃっているのですか。それはアメリカ側の認識ですよ、両首脳会談についての。両者合意したのか、していないのかというのは、アメリカ側の見解が聞きたいといって私は質問しているわけじゃないのです。外務大臣どうですか。外務大臣としてはどのようにこれを御理解なさっていらっしゃいますか、核実験全面禁止について。――説明はいいです、外務大臣どうですか。
  30. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 アメリカ日本との関係は御承知の、とおりでありますし、アメリカ政府は大統領、そして国務長官の指示でもってウォルフォウィッツ国務次官補が米ソ首脳会談について、当事者であるアメリカソ連との間で交わされた合意であるとか論議とかというものを詳細に伝えてきておるわけであります。そういう意味ではアメリカ説明というものは、当事国であるわけですから、そして少なくともアメリカ政府を代表して日本に来ての説明であるから、これは当然信頼に値する説明であると思いますし、そういう中での詳細な説明、それに対する日本側の質問というものを踏まえていろいろと我々承った限りにおいては、今局長が言うとおりであると思います。  なお、これはソ連側からもきのうアブラシモフ大使を通じまして、米ソ首脳会談におけるソ連としての説明日本が受けたわけでございますし、その文書等もあるいはまた説明等も我々承っておるわけでございますが、核実験全面禁止という問題については触れられておりませんし、そこでどういう合意がなされたかどうかというふうなことについては、我々は現在の状況の中でそういうことは行われていないということは承知をしておりますが、それ以上のことは、我々当事国でないですから知る由もございませんが、少なくともアメリカ側の詳細な説明の中では、そういうことが合意されたということについての説明は受けておりません。
  31. 土井たか子

    土井委員 そうすると、わざわざ一項を起こしてこの共同声明の中で「最近行われた核兵器拡散防止条約再検討会議の全般的な前向きの成果に満足の意をもって留意する。」と言っているのは、これは何に満足しているのですか、何に留意すべきであるということを両者合意したのですか。この中身は何なのです。
  32. 中平立

    ○中平政府委員 NPTの再検討会議におきまして、三点大きな成果があると思われます。  第一点は、NPTに対する両国のコミットメント、及び核不拡散体制強化さらには加盟国の増加を初めとする同条約の実効性の強化についての両国共通の利害を再確認したことであります。第二には、先般の第三回NPT再検討会議の積極的成果を満足の意をもって注目しておるわけであります。それから第三点は、両国がNPT第六条で約束した核軍縮交渉を誠実に行うとのコミットメントを再確認したわけでございます。この三点を両国は満足の意を表しているわけでございます。
  33. 土井たか子

    土井委員 しかし日本の外務省とされては、この前のNPTの再検討会議の最重要な問題というのは、全面核実験禁止について合意が取りつけられたことであるという評価をされておりますよ。今の御答弁を聞いておりますと、何だか紙を持ってきてそれを棒読みされておるようでありますけれども、そんなことじゃないのであって、そのときの最大の課題であり、お互いNPTの再検討会議に対して期待を寄せていた人たちの期待の中身というのは、やはり核実験が全面的に禁止される方向努力をしていくことが合意された点にあった。外務大臣もそれはよく御存じですよね。外務大臣、どうですか、九月のあのジュネーブにおける再検討会議
  34. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今国連局長が申しましたように、九月の合意に基づいた今回の米ソ首脳会議で発出された共同声明の核不拡散部分についての我々の判断は、今の三点に要約されるというふうに思います。
  35. 土井たか子

    土井委員 それは、文章の上で書いてあることをコメントとしておっしゃればそうなるでしょう。だけれども、その文章自身が果たして適切なコメントであるかどうかというのは、私はさらに問題だと思うのです。  いずれにせよ、今回の共同声明の中身を私たちは見たときに、核実験全面禁止に対して両首脳に何らかの合意があるということを期待してきたのです。このことに対して、全世界大変期待をかけてきたというふうに申し上げねばならぬと思います。外務大臣も先ほどからの御答弁では、核実験禁止とか段階的に核兵器を縮小していくということによって、全面的に核を廃棄するということが大切であるという節も述べられてきました。  そういうことからすると、来年一月にシェワルナゼ外相が来られまして、外務大臣会談をなさる予定になっておりますが、核実験禁止を実効性あるものにするように、そこでお話し合いをなさる御用意がおありになるはずだと私たちは期待しているのです。特に、ソビエトは地震探知器を持ち込むということを大変嫌がっておられるという向きも仄聞しておるわけでありますが、そういうことについて外務大臣としては、外相会議の席上、いろいろお話し合いをなさる御用意がおありになるかどうか、いかがですか。
  36. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 来年の日ソ外相会談というのは、非常に重要であると思います。これは二国間の問題だけではなくて、国際情勢全般にわたって、特に米ソ首脳会談を踏まえたいわゆる核軍縮の問題等について、積極的な議論を展開をしていかなければならない、そういう中で日本の基本的な核政策を十分説明するとともに、やはり米ソ首脳会談合意というものに対するソ連の誠実な履行、さらにまたソ連の全体の核政策というものに対しても十分聞くことは聞いておかなければならない、こういうふうに思います。
  37. 土井たか子

    土井委員 今、私が申し上げた件についてはいかがでございますか。
  38. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本がこれまでやってまいりましたいわゆる核廃絶あるいは核全面禁止についての努力、そしてまたこれからの日本の考え方を説明をすることは、当然のことであろうと思います。そういう中で我々が軍縮会議提案をして、今推進をしています核全面禁止を実現するための段階的な、ステップ・バイ・ステップの核実験禁止努力日本提案、そういうものをソ連側に説明をしてソ連側の理解を求めたい、こういうふうに思います。
  39. 土井たか子

    土井委員 核実験全面禁止に対して、日本としてはそれにどんどん努力をしていくという具体的な用意があるということも、ソビエト側に強力に申し述べられた、こういうふうに考えていいですね。その中に地震探知器等々についての活用も、先日来問題にされてきているわけですから、それは改めて外務大臣としては、外相会議の席でお話しになるということに相なるわけでありますね。そうでしょう。
  40. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 もちろん、軍縮会議提案している我々の段階的な核実験禁止提案については、その中身としての日本のなさねばならない一つの役割、それはいわゆる核実験禁止に対する検証を進める。それはやはり、日本の持っておる地震探知についてのノーハウといいますか、技術力を提供していくということを言っておりますし、そういう点は十分説明をしなければならない課題であろう、こういうふうに思います。
  41. 土井たか子

    土井委員 また、この共同声明を見てまいりまして、外務大臣自身はSDIについて共同声明が書いていない、ということはSDIという問題を核兵器の削減の問題や中距離核暫定協定構想から切り離して取り上げられた、あるいはソビエトがこの問題に対して譲歩したというふうなお考えなんですか、どうなんですか。  先日、私は、日曜日の朝の国会討論会での外務大臣の御発言をお伺いしておりました。そういうことを外務大臣がおっしゃっているので、私はええっと思って聞いていたわけでありますが、いかがでありますか。(「それはなかなか重要なところだ」と呼ぶ者あり)
  42. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私も非常に重要なところだと思うのですが、私は、ソ連が譲歩したとかなんとかということを言っているわけではなくて、やはりSDIについては両国間で基本的な差異があった。これは我々が説明を受けた中から見ましても、米ソ両国から説明を受けた中にあっても、SDIが両首脳の間で相当大きな議論として闘わされたということは、私は承知をいたしております。そして、これはまた基本的に意見の相違があったというのは、これは米ソ首脳の記者会見、特にゴルバチョフ書記長の記者会見等でも明らかにされているわけです。  ただ、こうした中で注目すべき点は、軍備管理あるいは核軍縮の問題が、いわゆる宇宙兵器といいますか、SDIそのものとすべてリンクした中で取り上げられていくのではないか、そうすると、これはなかなか米ソ首脳会談というのは容易でないなというような感じを持ったのですけれども、しかし少なくともSDIについては、そうした重大な意見の相違があったけれども、この共同発表で見る限りは、軍備管理核軍縮等について、例えば核兵器についても五〇%削減であるとか、その他INFについての暫定合意、そういう点で一つの大きな前進が見られたということを我々は注目をしなければならない、こういうふうに思っておるわけでございます。  どちらが譲歩したとか譲歩しないという問題ではない。両国とも首脳が、積極的に核不戦という立場でそういうところに一つ合意を見出したということは、今度の米ソ首脳会談の大きな成果じゃなかったか。これからどういうふうになっていくかというのはこれからの問題ですが、私は、少なくとも現在の段階においては、そうした両首脳合意というのは高く評価をされなければならない、こういうふうに思います。
  43. 土井たか子

    土井委員 それじゃ譲歩をした、しないという問題点は、今おっしゃったような御発言で別問題にしましょう。  ただ、当日の日曜日の朝の国会討論会を見ておりますと、こう外務大臣は確かにおっしゃったと私は記憶をしております。それは、戦略防衛構想つまりSDIと切り離された形で、核兵器の削減原則や中距離核暫定協定構想が米ソ共同声明に盛り込まれたことは、非常に注目すべき点だと言われています。切り離された形でと言われているのです。これは、SDIと切り離された形でというふうに大臣自身は見ていらっしゃるわけですか、だれかがそれを言ったのですか、いかがですか。
  44. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私の全体的な感想といいますか、そういうものを述べて、私が全体的にいろいろな米ソ首脳会談に伴うところの、ゴルバチョフさんの記者会見とかレーガン大統領の国会での演説であるとか合意であるとか、それから我々が説明を受けたそうした感触から見まして、少なくともSDIというものは基本的に対立しておる、しかし同時に、五〇%核兵器の削減あるいはまたINFというのがこの合意の中で積極的に取り上げられたということは非常に注目をすべきじゃないか。私が先ほど申し上げましたように、SDIとそういう問題が全部絡めてそういう中でなければすべて解決できないというふうな印象を、率直に言いまして私は持っております。  そうなってくると、米ソ首脳会談はなかなか容易でないというふうな感じを持っていた中に、ここまで具体的に軍備管理核軍縮について、あるいはINFについて合意が生まれてきたということは、それなりに両首脳の大きな努力といいますか、二人だけの会談の大きな成果じゃないだろうか、こういうふうに思うわけです。
  45. 土井たか子

    土井委員 お二人だけの会談の成果というのは、それはいろいろ我々の聞き知ることのできない、また知り得るはずもない問題としてあるでしょう。しかし、外務大臣自身の御認識というのは、米ソ関係というのは、宇宙の軍事化防止と核兵器の削減というのは相互に関連させた安全の問題によって決定されていくということについて、ことし一月の米ソ共同声明の中にあったあの部分、それは今日に至るもそのとおりに考えていらっしゃるのでしょう。いかがですか。
  46. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これからの問題でしょうけれども、やはりこれは全体的にそれらが完全に切り離された形で物が進んでいくということではないだろうと私は思います。あのソ連のSDIに対する姿勢から見ましても、これは全体的な絡みの中で確かに進んでいくと思いますが、少なくともそれはそれとして全体的に見れば私はそうだと思います。しかし、少なくとも首脳会談で我々が想像した以上に一つのものが出てきたということは、それなりの成果であって、これはまたこれから行われるジュネーブ会議等で継続していろいろと論議をされることになるわけですから、そういう意味では米ソ首脳会談というのは、これから米ソジュネーブで行う会議を進めていく上においての大きな前進を意味すると私は思います。  SDIについては、これは恐らく非常に長い将来の問題でして、全体の絡みの中でもちろんSDIというのは考えられる、あるいはまたソ連もそういう立場というものをそう容易に放棄するとは私は思いませんけれども、しかしこれから長期レンジを持った研究とか開発でありますし、そしてまたこの問題については重大な相違がありますが、米ソ首脳相互訪問がここで約束されたということは、これはそうしたSDIに絡んでの重大な相違はあったとしても、これから十分ひとつ何らか話し合える余地が残ったという意味においては、まさに米ソ首脳会談の継続開催というものが大きな意味を持つのじゃないだろうかということは、私は非常に期待をしておるわけです。
  47. 土井たか子

    土井委員 何だかもやもやした御答弁説明になってきたのですけれども、要するに先日のあの外務大臣の御発言というのは、SDIと核軍縮は別問題だ、SDIを切り離して今度は問題にしたところに大変評価すべき点があると言われていると、みんなそれはあの画面を見て、おっしゃったことを聞いて理解している向きがございます。これはちょっと今の御答弁からしたら、違っているのじゃないか店と思うのですよ。しかし、これははっきり外務大臣とすればおっしゃっておく必要があるのじゃないか。あのNHKの画面を見ると、SDIを切り離して軍縮とは全く別の問題だというふうに両者が意思統一をできたところに、評価すべき点があると外務大臣がおっしゃっているのはおかしいという格好として今残りますから、ひとつその点ははっきり御訂正なり追加御意見なり、おっしゃっておく必要があると私は思いますが、どうですか。
  48. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは時間の関係もありますし、またそう詳細に具体的に述べる立場にもありませんし、また我々が米ソ首脳会談について聞いた範囲でもどこまで真相に迫って聞いておるのか、それは我々の立場としては今の我々が聞いた範囲で解釈する以外にないわけですが、少なくとも私の言わんとしたところは、全部一体一緒になって絡み合った中で今度出てくると非常に厄介だ、そうなるとデッドロックに乗り上がってしまうのじゃないかという心配があったのですけれども、しかし表に出ておる状況から見ると、SDIはSDIとして、両者に重大な相違がありながらこれから継続して話し合うということに十分なると私は思いますし、そういう中で今ジュネーブで行われておる核軍縮、核軍備管理交渉は続けていく、そういう中での例えば両者の五〇%核の削減であるとかINFであるとか、そういうものがとにかくこの合意の中でちゃんと出てきたという、これが非常に重要ではないか。  ですから、私が早急にこれをもうはっきりと右か左かということをこの場で言うことは、なかなか困難ですよ。今後の状況を見なければわかりませんけれども、ただしかし合意文書の中で出てきたということは、我々がこれまで考えておったよりは大きな前進というものが今後考えられるのではないだろうか、それはやはり重要な注目すべき点ではないだろうか、こういうふうに思っております。  これは形の上ではいわば切り離されたといいますか、一応何かそういう具体的にここでピックアップして取り上げられたということは、全体的に見れば、私のこれまで考えておったことよりは何か大きな前進があり得る可能性が出てきたんじゃないか、そういうふうに思います。これは核軍縮、核軍備管理とSDIという問題が、全体的に全然切り離された形でこれから米ソの中で話し合いが完全に行われていくということは話は別だろう、そう簡単に考えることはまた早計である、私はそういうふうに思います。ただ、これだけが少なくとも具体的に今の共同文書の中で取り上げられたということ、これは大きな前進で注目すべき米ソ首脳会談の成果ではなかろうか、こういうことを私は申し上げたかったわけであります。
  49. 土井たか子

    土井委員 どこに取り上げられているんですか。これは、共同声明の中にないからこそ問題になったんですよ、どういうふうに理解をするかというのが。そうじゃないですか。恐らく外務大臣は、ウォルフォウィッツ国務次官補からの御説明を聞かれた上で、あの国会討論会での御発言になったんじゃないかと思うのです。アメリカ側の説明というのを聞いて、このことに対してこういうふうに理解をしたということを言われるにとどまっていたら、ちょっとこれは問題があるんじゃないかなと私は思うのです。米ソ共同声明ですから、アメリカ側の理解はこうだというんだったらまだいいですよ。だけれども、そんなことは何もアメリカ側の理解を外務大臣がわざわざコメントされる必要もないわけでありまして、外務大臣の御理解としてアメリカ側からだけの意見を聞いて、あたかもそれが共同声明の中身についてこうなのだと言わんばかりに言われるというのは、私は大変問題が多いと思います。むしろ共同声明の取り上げ方からすると、はんぱな取り上げ方になる。  果たせるかな、これはソビエト側からいたしますと、最高決定機関である政治局会議を開きまして、宇宙の軍事化防止と核兵器の削減を相互に関連させた安全の問題に対して決定していくということを強調をしているということが、はっきりあの首脳会談後出てまいりました。こういうことからすると、今外務大臣がおっしゃったようなことではない向きも、ソビエト側からはっきり出ているんです。  したがいまして、私は聞いておりまして、これはちょっといかがかなと思いました。外務大臣の御発言というのはちょっとへんぱですね、そして誤解を生ずるんです。したがって、これははっきりSDIについて切り離された形というふうに理解をしないで、以前の一月の共同声明のあの線上でずっと今日まで及んでいるということは変わりはないという事実は、外務大臣としては認識をされておりますね。このことだけははっきり確認をしておいて、先に行きましょう。
  50. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 少なくとも共同文書といいますか、これの中では合意された部分が出ておるわけですから、合意された中で、核兵器の五〇%削減とかINFの暫定合意とかいうものがここで合意という形で出てきているということに、私は非常に太さな意義があるんじゃないだろうか、こういうふうに言っておるわけでありまして、ですから私は、米ソどちらが譲歩したとかしないとか、そういうことを言っているわけではないのでございます。  ただ、共同文書を見た感じ、それからまたSDIにおける米ソ首脳の厳しいやりとり、そういう中で少なくとも米ソ首脳が何とか核の戦争を回避しなければならぬという、そういうところまで積極的に合意を進めたということには大きな意味があるのじゃないか。ですから、今後どういう形へ進んでいくかということはこれからの問題であろう、こういうふうに思います。
  51. 土井たか子

    土井委員 アフガニ又タンについて、アフガニスタンに対するソビエトの政策変更については、いろいろ御説明を受けられるときに何らかの示唆がございましたか、アメリカ側からもソビエト側からも。いかがでございますか。
  52. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 地域問題については、両首脳で相当時間をかけて話し合いをしたということでございまして、その中でアフガニスタン問題も論議が行われたということについて私は聞いておるわけですが、それ以上の点については、我々深く掘り下げて聞いておるわけではありませんし、またそれ以上の問題について説明は受けておりません。
  53. 土井たか子

    土井委員 地域問題について、いろいろ取り上げがあったということを今おっしゃいましたが、朝鮮半島問題が議題になったということが、アメリカ側のウォルフォウィッツ国務次官補からの御説明の中にございましたか。いかがですか。
  54. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 朝鮮半島の問題については、両首脳が話している間に、シュルツさんとシェワルナゼ外相との間にいろいろと議論が行われたということの説明は受けました。
  55. 土井たか子

    土井委員 その内容については、どういうふうなことがその間話し合われたということでありますか。
  56. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 少なくとも基本的には南北の対話が重要である、シュルツ長官からもあるいはシェワルナゼ外相からも、南北の対話を進めていくということが極めて重要であるという認識が表明をされたというふうに受けとめております。
  57. 土井たか子

    土井委員 それは大枠でありまして、さらにそれについて具体的にはどういうふうなことが取り上げられたというふうに御報告をお受けになりましたか。
  58. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 時間の制約もありましたし、それ以上の説明は受けておりません。私たちも、日本政府として南北対話というのは非常に重要視しておりますし、そして米ソ両国とも南北対話が進むことを非常に期待をしておるということが話し合われたということは、これは非常に意義が大きかったというふうに判断しております。
  59. 土井たか子

    土井委員 南北対話というのは、従来からそれは当然のことなんでありますが、南北対話をさらにスムーズに平和裏に促進していくことのために、アメリカ側はアメリカでソビエト側はソビエトで、それぞれいかなる努力をするかというふうなことについての問題は、さらにお聞きになりませんでしたか。いかがですか。
  60. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 そこまでは聞いておりません。
  61. 土井たか子

    土井委員 それで、国連について、常々外務大臣国連中心主義ということを言われる。それから内閣総理大臣も、国連にお出かけになって演説をなさる中では国連中心主義を披瀝される。最近も外務大臣は、やはり国連中心主義というのを強調して演説の中で述べられていますが、そうなってまいりますと、ユネスコに対して日本はやはり大事に考えていくということをはっきり認識をなすった上で対応をお進めになる、こういうことですね。
  62. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、もともとユネスコにはいろいろと問題がある、これに対しては日本の意見も十分反映されてユネスコの改革は行われなければならぬ、こういうことを申し述べておりますが、その背景としては、ユネスコは日本国連に加入する前から入っておる機関であるし、そして重要な仕事を今日までしてきておるわけですから、このユネスコというものを大事にしながら、これがさらに積極的な効率のある活動が行われることを期待し、そのための努力は惜しまない、こういう考えてあります。ユネスコを大事にしていこう、今後とも大事にしていかなければならないという私の基本的な考えは、変わりはありません。
  63. 土井たか子

    土井委員 したがって、そういうユネスコに踏みとどまってさらに大事にしていくというふうな日本姿勢というのは公に明示をされている、明らかに公になすっているというふうに見ていいわけですね。  最近、もう大臣御存じのとおりで、イギリスが脱退する方向で検討中というふうに言われております。しかし、カナダであるとかオランダであるとかその他英連邦諸国を中心に、イギリスに対して踏みとどまっていくということにいろいろと呼びかけをされていっているようでありますが、日本としては、イギリスに対してもやはり踏みとどまって、ユネスコについてさらに努力を積み重ねていくことが大切だということをお勧めになるべきだと思うのです。第三世界から見ても、やはりイギリスがユネスコにとどまって努力を積み重ねていくということに対して期待をされている向きもありますから、非常に国際的に、特に第三世界に対して今日本姿勢というものが大変大きな意味を持つであろう、こういうふうに考えられるのですが、外務大臣はどのようにお考えですか。
  64. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、アメリカに対しましてもイギリスに対しましてもそうですが、日本としてはユネスコを大事に育てていく必要がある、改革はしなければならないけれども、やはりユネスコを大事にしていきたい。日本はとどまって改革を今進めておるのだ、この日本の考え方、改革案が進められるようにひとつ全力を尽くしたい。ですから、アメリカも英国もこの大事な機関であるユネスコにともにとどまって、そしてむしろ一緒になって改革を進めるべきじゃないかということを、両国政府に対しては、公式の席上においてもこれまで私は言ってきておるところです。
  65. 土井たか子

    土井委員 過去形じゃなくて、さらなる努力をこれからもイギリスに対してなさるということでありますね。どうですか。
  66. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 イギリスに対しては積極的にやりたいと思います。
  67. 土井たか子

    土井委員 それからあと簡単に二問。  大変悲惨な事故が起こりました。それは、タンザニアにおける青年海外協力隊員の六人が事故で亡くなられ、二人が重体であり二人が重傷であるという、マイクロバスでの途次事故に遣われたというニュースを聞いて、非常にショッキングだったわけでありますが、御家族の方々が現地に赴かれる前も、それから現地において仮葬儀をなさることも、それからマラウイ、ザンビア駐在の方々ですから、タンザニアからさらにマラウイとかザンビアに行かれる前も、この派遣本部から費用が一切賄われるということであります。私はこれを当然だと思いますが、今回のこの事故に遭って亡くなられた方々についてはどういうふうな取り扱いになるのですか。公務災害ということに相なるかと思うのですが、労働省の方に今労災の申請ということがなされていると思われます。労災の申請についての手続の進捗状況それから見通し、そういうものについて承りたいと思うのです。  なぜかといったら、青年海外協力隊については、海外でいろいろな危険な地域でも果敢に活躍をなすっていらっしゃる方々でございますし、後々青年海外協力隊として活動したいというふうに思われている方々とすると、この問題は非常に大きなことです。取り扱い方によって大変影響が大きいですから、労働省、せっかく御出席いただいておりますので、この点についていかがですか。
  68. 佐藤正人

    佐藤説明員 お答え申し上げます。  労災保険におきましては、海外で働く日本人労働者の保護をするということでございまして、特別に労災保険の中に海外派遣者の特別加入制度という制度を設けております。それからさらには業務上外の認定につきましても、国内労働者と同様な取り扱いをやっております。  今回の事故に遭遇されました青年海外協力隊員の方々につきましては、保険関係につきましては、国際協力事業団を通じて加入しておりますので問題がないだろうというふうに考えております。しかしながら、今回の事故そのものが業務遂行中であるのかどうかということがまだ定かではございませんので、現在調査中という段階でございます。  それから、もう一方の遺族からの請求関係でございますけれども、現在の時点でまだ請求書が出ておりませんので、詳細は残念ながら不明でございます。しかし、請求書が提出され次第、私どもは速やかに業務上外の判断をいたしたい、このように考えております。
  69. 土井たか子

    土井委員 さらにあと一問だけいたしまして、小林先輩に場所をおかわりいただきたいと思うのですが、最近原子力潜水艦の寄港が急激にふえてきております。これは、アメリカの戦略上どういうふうなことに相なってきているのか。付近住民の方は言うまでもありませんが、非常に多くの国民からすると、この中身に対して危機感と疑問視をするという向きが募っていっているのです。どう考えてもトマホークに対して、積載されているというふうに考えなければならない、一般常識からするとそうしか思いようのない原子力潜水艦も寄港をしてきているわけでありますが、これは質問は次回に譲りますので、きょうは資料要求をしておきたいと思うのです。  原子力艦船の入港というのは、二十四時間前に必ず届け出があるわけでありまして、到着予定時刻、停泊または投錨の予定地、これについて届け出があるはずであります。全部集約をして持っておられるはずであります。この一年間の月別、どこの港に何隻入港したか、隻数、さらに入港した艦船の艦名、これを全部資料として提出をいただきたいと思うのです。委員長、この資料要求をいたします。
  70. 愛野興一郎

    愛野委員長 後刻提出させます。
  71. 土井たか子

    土井委員 後刻速やかに。
  72. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 ただいま手元にございますが、最近までのこれを後刻、時間の都合もございますので、委員御指摘のとおり速やかに提出いたします。
  73. 土井たか子

    土井委員 ありがとうございます。
  74. 愛野興一郎

    愛野委員長 次に、小林道君。
  75. 小林進

    ○小林(進)委員 私は質問に先立ちまして、委員長一つ重大なる提案をいたしたいと思うのであります。  私もこの外務委員会に所属して、途中が切れても十数年の歳月を経過しているが、その当時、対アメリカ関係においても、やれロッキードが起きるとかあるいはグラマンが起きるとか問題が発生した場合には、行政府の対米交渉とはまた別個に、立法府としてこういう問題は直ちに着手して、現地の調査に行くなり対米交渉をやるなり、そういう一つの長い伝統を重ねてまいりました。  今、貿易問題が若干鎮静したようでありますけれども、しかしまだまだ火を噴いている。これについてアメリカでは、上院、下院といって、大体日本に問題を提起してくるのはみんな向こうの立法府なんです。それを受けて当然日本の立法府としても、こういう国家、国民の重大な問題でありまするから対処しなくてはいけない。あるいは、自民党の国会議員がチームをつくって行ったとか言うけれども、立法府としての行動がない。ちょっと委員長も、五十年前後の我が外務委員会あるいは国会の動き等を見ていただくとわかると思います。お忙しいでしょうけれども、こういう審議も重大だが、時にはやはり衆参両院あるいは衆議院だけでも、ひとつ立法府としてアメリカの上院なり下院なりに日本国民の言い分もちゃんと通ずるような、そういう運営をしていただきたいと私は思います。時間がありませんから、この点をひとつ要望しておきます。  それでは質問に移りますが、私は靖国神社の問題、この前の質問の延長ですからずっと申し上げます。これは民族的あるいは国際的にも重大問題ですから、私も今本腰を構えて質問しているのでございまするけれども、それについて第一に官房長官――私は、官房長官が来ていないのが気に入らないのだ。官房長官に聞きたいのは、第一に例の靖国神社の公式参拝、それは去年の八月、官房長官の諮問機関として設けられた閣僚の靖国神社参拝問題に関する懇談会、その懇談会が一年有余に二十一回も会談を続けたその結果として、政府は公式参拝をする方向を検討すべきであるという答申をした、林修三なる者がその原案をつくって。それを受けて政府は公式参拝に踏み切った、こういう形になっている。  しからば、その二十一回重ねられた、十五人の委員が一年間かかって答申したと言っている審議の内容は何だ。最近の情報をとりますと、一番重大な憲法問題なんか途中で議論が出るけれども、みんなそれを消してしまっている。あるいは宗教問題。靖国神社教と他の宗教との関係がどうなっているのか。根本的な問題を提案するけれども、途中で消えてしまった。そこで、十五人の委員の中にも参加をせられた学習院大学の何とかという教授、あるいは東大の何とかという教授、二人がそれぞれの意見をジュリストを通じて述べられているけれども、こんなに統一の意見が出るとは夢にも考えていなかった。いつの間にやらちゃんと出た。そこまでやるためには、内閣審議室の官僚が全部ちゃんとリードして視点というものを出して、官僚が思うままにそっちの方向へ引っ張っていったのだ。我々自身も予想のつかないような結論が出ているという一つの論陣を張っておいでになる。実際私は、実にけしからぬと思っているのだ。  そこで、時間がないから残念ですけれども、私は申し上げておくのだが、官僚、事務当局がまとめた、そのときの審議をせられた意見の概要というものが官房にあるはずですから、これを資料として要求するからひとつ見せていただきたい。それから、私が特に資料としてもらいたいのは、まだ幾つもあるけれども、宗教団体からの意見聴取をされた、その意見聴取の内容も資料として要求したい。海外における戦没者追悼状況調査も、これは審議室がまとめて提出されているから、その資料もあるだろうから、そのコピーもひとつこっちに見せていただきたい。いいですか。  そこで、この問題について私は言いたい。この公式参拝は、今中国を初めアジアにぼうぼうと火を燃やしているのだから、こういうようなインチキな審議の形態を続けて、いかにも統一意見で決定したような、その回答を受けて公式参拝に踏み切ったなどというインチキなやり方をやり直すために、これは白紙に戻して、来年の八月までだから期間はある、いま一回懇談会を再出発せしめてもっと慎重にこの問題を審議し直すという、そういう見解である。これは私の要望です。これはやる意思が一体あるのかどうか、まず官房長官にひとつお伺いしておきます。今までのは全部白紙に戻して、こんなインチキな答申は全部白紙に戻してやり直すかどうか、そしてその結論に基づいていま一度、公式参拝をするかしないかという政府の態度を決定してもらいたいと思うのだが、いかがですか。
  76. 的場順三

    ○的場政府委員 お答えをいたします。  靖国問題懇談会は、昨年の八月以来一年間をかけて非常に熱心に御議論をいただいた結果が報告書として出ているものでございまして、再度やるということは現段階では考えておりません。
  77. 小林進

    ○小林(進)委員 それでは、考えていないと言うならば、その審議の内容を国民が納得するように、それを公開する意思があるかどうか。私が要求した資料はもちろん出してもらいますよ。これを出すか出さないか。同時に、その二十一回重ねられた審議の内容を国民の前に公開して、国民の納得を得るようなそういう手段方法をとられるかどうか、それも聞いておきましょう。
  78. 的場順三

    ○的場政府委員 懇談会が最初に会合を行われまして、議事を進められるに際しまして、どういうやり方で懇談会をやっていこうか、委員の方々の自由な意見の表明をいただくために、どういうようなやり方が好ましいかということで御議論いただいた際に、非公開ということになっております。したがいまして、事務局は座長あるいは委員のメンバーの方々から、こうこうこういうことを調べると言われればそれをお手伝いする立場にございますので、指摘されたことを調べたり、あるいは議事の概要を次回の議事のために整理するようにというふうな御指示がございましたので整理したものはございますけれども、これは懇談会のためにつくったものでございまして、懇談会自身が非公開ということを決めておられます。したがいまして、事務局がそれをお出しするとかしないという判断をするような立場にございません。御理解いただきたいと思います。
  79. 小林進

    ○小林(進)委員 かくのごとく官僚の仕事というものは、非公開という一つの傘の中へ入って、そして国民を愚弄しながら全部インチキなやり方をしておる。その証拠に、十五人のメンバーに加わられた東大の名誉教授の小口偉一先生は、ジュリストを通して、あれよあれよと思う間に、まさかこんな統一見解などというものは二十一回の審議に参加していながら夢にも考えていなかった、それがひょっとあの場にこういう統一の見解が発表された、こういうことですし、いま一人の学習院大学教授の芦部先生も、問題は宗教問題だ、靖国神社教と他の宗教との関係、本質的なこの問題を議論しよう、特に憲法の問題、合憲論といわゆる憲法違反論と議論は二つに分かれていた、激しく議論しているうちにいつの間にやら官僚が持ってくる議論の視点、今度の懇談会にはこれを審議してくださいという原案、討論の材料を持ってくる、その官僚の討論の視点からちゃんと外されていた。一番激しく論議せられた憲法論もちゃんとその中から外された。  第七回から二十一回までに至る間は、官僚が問題を狭めて狭めて、全部こういう問題を排除してしまって、ただ靖国神社を公式に参拝するためにはどういう手段がいいかという、その一点だけに問題を集約して各会議に提起してきた。これは内閣審議官ですよ。この内閣審議官がこういう視点を出した。その視点も全部出してもらいたい、第七回から二十一回まで。議論はこれだけにつづめてくれと範囲を定めてちゃんと持ってきている。最初に官房長官が諮問したときは、目的はありません、広い範囲でひとつ自由に論議をしてくださいと言ったのです。確かに一回、二回、三回、四回、五回、六回までは一応その形をとったが、七回目からはすかっと変わってしまった。論点を全部絞ってきた。この事実、こういうインチキをしておきながら、これは秘密でございますの、諮問機関で公開はいたしません、そういうインチキでこの重大問題を処置していることが、これは一体許されるとお考えになりますか。そのままほおかぶりしていけると思いますか。  私が今要求いたしました資料だけは正確に通してもらいたい。それから、官僚はちゃんとこの問題点を指摘して、きょうはこれで議論をしてくれという素材を提供したのだ。第七回から二十一回まで官僚が提供した素材の資料を出してもらいたい。それからやり直しましょう。こんなインチキな懇談会で、国際的にも大きな波乱を起こしている問題を進めたということになるならば、これは了承できませんから、資料を出してください。要求しておきますよ。出さないなんと言ったって承知しませんよ。わかりましたね。  大体的場なんというものは、君、何が的やら、的が外れちゃってわけがわからぬじゃないか。そういうものが君……。
  80. 的場順三

    ○的場政府委員 先ほども申し上げましたように、事務局が会議をリードするということは本来あり得ないことでございまして、懇談会の座長、座長代理あるいはメンバーの先生方の御意思に従いましてお手伝いをすることはございます。お手伝いをするのは、例えば非常にわかりやすい例で言いますと、お茶を出したり会場を設営したり、あるいは鉛筆のかわりに筆記をするという役でございます。  懇談会のいろいろな御意見は報告書という形に、確かにそれぞれの先生方両論ございましたが、それも含めて全部入っているわけでございまして、この懇談会報告そのものがすべて尽きているわけでございます。それから、事務局が、懇談会の議事運営でこれは非公開にするというふうに決めておられるものを、我々の判断でお出しすることはできません。よろしく御理解をいただきたいのでございます。
  81. 小林進

    ○小林(進)委員 こんなものは、吹けば飛ぶようなものを相手にして議論したところで、私自身の権威を失墜するだけだ。何にも答弁にならない。  そこで、私は委員長提案いたしますけれども、この次の外務委員会に、重大問題ですから、ここへ官房長官を責任を持ってお呼びいただくことが一つ。国会は国権の最高機関ですよ。あなた、官房長官がおっかないような顔をしているけれども、そんなことではだめですよ。あなたは、国権の最高機関の一番権威ある外務委員長ですから、まず官房長官を次の会議に呼ぶこと。  それからいま一つは、今申し上げました東大の名誉教授の小口偉一先生と、学習院大学の芦部先生に参考人としてこの委員会においでいただく、そのようにひとつお取り計らいをいただきたい。その席上において、いま一度この問題を詰めていきたいと思いますから、以上委員長に要望いたしておきます。
  82. 愛野興一郎

    愛野委員長 ただいまの小林委員の御要望につきましては、後日、理事会で検討させていただきます。
  83. 小林進

    ○小林(進)委員 ひとつ委員長の善処を特にお願いいたしまして、次に移ります。  この前も私は質問しているが、答弁がなっていなかったからまた繰り返すのだけれども、靖国神社はもちろん、日本の宗教団体の中で靖国神社への公式参拝に賛成している宗教団体、反対している宗教団体の資料をちょうだいいたしたい。これは前にも文部省に言っておいたから、もう資料はできているはずだ。日本の宗教団体の中で、反対している宗教団体のメンバーとその数。例えば真言宗だとか念仏宗だとかキリスト教だとかあるいは立正佼成会、創価学会、みんな反対している。その集団を支えている信者が一体、何百万名いるか、それを出してくれ。これを出せますか。要求したでしょう。時間がないのだ。外務大臣に言っているのじゃない。文部省、来ているでしょう。
  84. 加戸守行

    ○加戸政府委員 宗教団体はたくさんございまして、この問題に関する意見の持ち方を文化庁として調査はいたしておりませんが、新聞報道その他によりまして承知いたしておりますところでは、そういった団体を統括するといいますか連合体のようなものがございまして、一つは、例えば全日本仏教会あるいは新日本宗教団体連合会といったような団体からの反対意見等は承知いたしております。  個々の具体的な問題については、掌握いたしておりません。
  85. 小林進

    ○小林(進)委員 これも靖国神社参拝問題の懇談会の中に、宗教団体からの意見聴取というものがあって、そういう資料はちゃんと内閣審議官がとっているはずだ。とっていますよ、それはないとは言わせない。そして、我々のところに来るとそういうインチキを言って、個々にとっていません、そのような答弁は了承できません。内閣審議官が懇談会に出した資料をちゃんと持っていらっしゃい。ないなら、今も言うように、個々の宗教団体はみんな公開の席に出しているのだから、私どもの宗教団体は公式参拝は了承しませんと言っているのだから、調べる気になればすぐわかる。一週間以内にその資料を全部出してもらいたい罰その資料に基づいてまた質問いたしますから。これが一つ。官房長官が言っているように、決して多数を占めていませんよ。公式参拝を国民の多くが支持してなんて、そんな結論は出ていない、うそだ。  それから、宗教法人である靖国神社が戦没者を合祀することは自由なことであるとこの前答弁した。それは一体、合祀することが自由であるという証拠はどこにありますか。その証拠を示してくれ。靖国神社に合祀することは今自由になっている、その自由になっているという証拠を出してください。
  86. 加戸守行

    ○加戸政府委員 靖国神社の設立目的自体が、国事に殉ぜられた人々を奉斎することを目的といたしております。したがいまして、その国事に殉ぜられた人々がどのような人々であり、それをどういう形で合祀するかは、靖国神社が宗教法人として自主的、自律的に決定される事柄だと理解いたしております。
  87. 小林進

    ○小林(進)委員 靖国神社が一方的に決定することが自由意思ですか。それが自由という言葉によって表現されますか。自由と言うからには、本人の意思に基づいて賛成反対か、おまえは祭ってもらいたいか祭ってもらいたくないか、その本人の意思に基づいてやるのが本当だろう。しかし、本人は死んでいるんだ。戦没者ですから、その本人を代理する親族、身内、親なり兄弟なりによって、おまえさんの関係者は亡くなられたけれども、どうでしょうか、祭りましょうか、お祭りしないでおきましょうか、自由な意思を表明してください、御意見を承りたい、これが自由な意思に基づくお祭りじゃないですか。一方的に祭るのがどうして自由なんです。国事に殉ずるというのはどういう意味なんだ。あなたが言われた、国事に殉じたから一方的に靖国神社がやることなんだという、その関連をひとつ教えてもらいたい。
  88. 加戸守行

    ○加戸政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、靖国神社は現在宗教法人としての宗教活動をする団体でございます。したがいまして、その宗教活動を行う内容が、国事に殉ぜられた人々を奉斎するということを目的といたしておりますので、その靖国神社が宗教法人としてお定めになりました事柄の解釈、運用は、宗教法人である靖国神社が行われるということでございます。
  89. 小林進

    ○小林(進)委員 君の言っていることは何にもわからない。何を言っているんだよ、それは。宗教法人だから勝手に人を祭るのだ、そんなインチキな答弁があるかね。君は高級官僚だろう。文化庁の次長だなんて言って高給をはんでいるのは、本当に情けないね。  いいかね、君。靖国神社というのは、政府に言わせると、これは戦没者を追悼する中心的施設であると国民の多くの方々が思っている、こう言う。国民の方々は思っていないことは、今宗教団体の記録を求めていますから明らかになりますからね。その上でこれは論ずるけれども、これもインチキな答弁ですよ。そんなことは、国民の多くの人は思っていませんよ。ただ、戦中、戦前は靖国神社はいわゆる国家行事だ。この靖国神社教、神社神道は各宗教の上に超然としてある。これは国民全部が崇敬、参拝をしなければならない国の宗教であるというふうに権力者が位置づけた。位置づけて、そして何宗を問わず必ずそこへ参拝をする、お参りをする。そして今度は、靖国神社の前を黙って通ったやつは非国民だと言われる。必ず頭を下げて参拝、敬礼をして通れ、これが戦時、戦前におけるいわゆる日本の軍国主義、国家権力の宗教強制であった。いいですか。その形が今そのまま残っているじゃないですか。今あなたの言っていることはそのまま残っている。  ただ、公然と国家権力が、これをやらない者は非国民だ、刑務所へ入れちまえ、手を縛られて刑務所へ引っ張っていかれたり、弾圧を食って公の地位から追放されたという明らかな、露骨ないわゆる権力の弾圧というものだけがちょっと表から排除せられたけれども、その形態はいや応なしで人の自由もない。一方的におまえは靖国神社に祭ってやる、権力者が決めてちゃんとこれを祭って、いや応なしに参拝せい。私は南無阿弥陀仏ですからお数珠を持ってきました、何を言うか、ここは神道教だから神主の祝詞を聞かなきゃだめだ、こういう形でもってちゃんと強制せられている形は、戦時中と何も変わらないじゃないですか。どこに自由がありますか。どこに新憲法における変革がありますか。どんなに変わったか教えてください。国家権力が、不忠の臣だといって靖国神社に参らない者を弾圧したという形だけはなくなったが、それ以外は戦中、戦前と全部同じじゃないか。何一つ変わってないじゃないか。どこが変わったか教えてくれ。
  90. 加戸守行

    ○加戸政府委員 靖国神社は、戦前におきましては、明治二年に東京招魂社として設立され、そして明治十二年に別格官幣社として靖国神社の名称が与えられたわけでございまして、当時は陸海軍省の所管の神社として存在をしたわけでございますが、戦後になりまして、宗教法人あるいはその後の宗教法人法に基づく宗教法人として、他の神社、仏閣、教会等と同様な立場におきます一つの単立宗教法人として存立しているということでございます。
  91. 小林進

    ○小林(進)委員 それならば問います。あなたにまた資料の要求をしますよ。私も知っているんだ。戦中、戦前において、私の宗教は私の信じているこの神様どこの仏様が人類における最高の唯一絶対のものと思っていますから、私はこれを拝むことによって戦没者の遺族もみんな拝んだことになりますから靖国神社にお参りいたしません、そういうことは二つの宗教を選ぶことになる、だから私はお参りしませんと言ったら、その人たちが国家権力に弾圧されてどんなに痛い目に遭ったか。そして、刑務所にぶち込まれて、刑務所の中で死んでいったのもいる。  それから、学生。学生が靖国神社の前を通った。おまえはここでお参りしない、私は宗教違いますから、何空言うか、この絶対的な靖国神社にお参りしないなんというのは、そんな宗教は非国民の宗教だから存在は許されない、頭を下げないおまえは不忠の臣だからもう学校なんか入れておかないぞ、このやろう、不良学生だ、こう言われて弾圧されて多くの痛みを受けた。そういう経験はたくさんありますよ。あなた、その資料ありますか。なければ、ひとつ文部省はその資料を調べて、必ず私のところに出していただきたい。ないとは言わせぬ。私自身もたくさん持っているんだ。委員長、よろしゅうございますか。靖国神社問題のときには、こういうことは一つの重大な歴史上の実績なんですから、文部省からそういう資料をちゃんと出すように、委員長、ひとつ言ってください。でなければ、あなたの不信任案も出さなければならない。ひとつちゃんと出してください。いいですか。そういうふうに、宗教の上にその絶対的な靖国神社教という宗教を置いて、そして国民を弾圧した、その形がずっと今そのまま残っているじゃないか、君が何空言おうと。  それから、時間がないから次にいきますけれども、いわゆる靖国神社教は平和条約第十一条に基づく人たちもお祭りしている。平和条約十一条というのは、御承知のとおり極東裁判で処刑をされた人たちで、一千有余名だ。この人たちは殉国者だ。この一千有余名の中にはA級戦犯十四名も入っている。それも含めて、この人たちは殉国者でございます、こういうふうに位置づけて、内閣総理大臣以下がこの殉国者をお参りになっている。これは間違いじゃない、この位置づけは正しい、こういうふうに官房長官は考えておられるのかどうか。この前も答弁をごまかしたから、今ここでひとつ明確に言ってください。
  92. 的場順三

    ○的場政府委員 前回もお答えいたしましたが、総理、各閣僚が靖国神社に赴いて戦没者の追悼を行ったというのは、靖国神社の御祭神にお参りしたのではなくて、靖国神社という場をお借りして戦没者の追悼を行ったものでございます。したがって、御指摘のようなことは事実としてございますけれども、その点御理解をいただきたいと思います。
  93. 小林進

    ○小林(進)委員 時間がないから、そんなインチキな答弁空言わぬでくれ。  それでは、同じ八月十五日、天皇陛下もお呼びして、武道館でいわゆる戦没者慰霊祭をやっているじゃないか。あの慰霊祭をやったのに、なぜまたのこのこ靖国神社まで出かけて同じことを繰り返してやらなければならぬのか。戦没者の慰霊にとどめるならば、何もあそこへ行って、神主といわゆる神道宗教のあの拝殿だ。いわゆる神道というのは、靖国神社教というものは、神社教の祝詞だけじゃないのですよ。あの宗教形式は神道教の絶対要件なんだ。鳥居をくぐって、第二鳥居をくぐって、拝殿へ行って、手をはたこうとはたくまいと、あの一つの儀式の中に入っていくこと自体が、いわゆる宗教容認なんだよ。それをこのインチキな答申書の中で、かしわ手を打たなければ宗教行事じゃないんだ、何とか料金を出さなければ宗教行事を否定したことになるという、あんなのは子供だましもインチキも甚だしいよ。あの神社の境内へ行くことそれ自体が、もはや宗教の容認なんだ。インチキなことを言うな、君は。そんな答弁はだめだ。  だから、今も言うように、あそこに祭られた一千数百名のいわゆる平和条約十一条によって処刑せられた人たちを殉国者と位置づけて、名誉ある戦没者と位置づけてお参りしたのかどうか、これだけはイエスかノーか明確に答弁しなければだめですよ。これに対しては、この前も言ったように中国は色をなして怒っている。胡耀邦総書記は、日中戦争を起こした張本人を許してはならない、それから第二番目には、相手国――相手国というのは、自分の国の相手国の国民の感情を傷つけてはならない。これは二十一世紀委員会が行かれたときに、彼はそこに出てきて激しく日本の代表に、これを一つ忠言をして言った。  それから、この前も言ったように胡喬木政治局員は、「かつての侵略者とそのシンパは、手を尽くして極東軍事裁判の厳正な審判を覆し、戦争の性質を歪曲し、戦争の罪悪を覆い隠し、中国で行った三光政策や細菌戦、南京大虐殺などの戦犯を民族の英雄として美化し、甚だしくは崇拝さえしようとしている。」これは、靖国神社公式参拝に対する胡喬木氏の公の席上における日本に対する非難の声だ。この相手方の見方が間違っているかどうか、イエスかノーか、言いなさいよ、国際問題だから。  A級戦犯と一千有余名のいわゆるB級、C級、D級等の処刑せられた人たちとは、私自身は区別をしてあげたいと思うわけです。捕虜収容などといって、大したこともしないで気の毒にも戦犯にかけられて命をとられた人たちもいる。情においては忍びないけれども、私自身も捕虜収容所の主計大尉をやっていたから、捕虜収容所の虐殺をやったのではないかといって、いま少しで首をちょん切られるような際どい経験があるから、なおさら惻隠の情やまないものがあるけれども、被害を受けた相手国の首脳部が、かくのごとく怒りを持って論じているこの問題に対してどう答えようとするのか。  これを私は中曽根内閣総理大臣に聞いている、官房長官に聞いているのだ。的場君に聞いているのではない。官房長官の代理で来たのなら、官房長官になった気持ちで答弁してくれ。これをごまかしてはだめだよ。参拝したのは、そんなことと別個だなんという答弁は通らないのだ。あなた、そんな答弁をするつもりなら出てこなくてよろしい。悪うございましたと言うのなら、出てきて答弁すればよろしい。
  94. 的場順三

    ○的場政府委員 公式参拝に当たりまして、諸外国にいろいろ誤解を受けることも心配をいたしまして、事前あるいは事後にも外務省を通じまして、関係国に十分御理解をいただくようにそのお願いをしたところでございます。  それから、繰り返して申しますけれども、公式参拝は、国民の多数の方々が靖国神社を戦没者追悼の中心的施設であるというふうに考えておられるということを踏まえまして、靖国神社に赴いて、宗教儀式にのっとらない方式で戦没者を追悼したものでございまして、中国にそういう誤解があるということになりますと、この誤解を解くような努力を今後とも続けていく必要があると思います。真意は、決して先生のおっしゃるようなことではなく、戦没者を追悼し平和を祈念するという目的で行ったものでございます。御理解をいただきたいと思います。
  95. 小林進

    ○小林(進)委員 そういう独断的な物の言い方はだめなんだ、そんなことでは世間は通らない。私は悪いことをする気持ちはありません、そんなことは裁判所に言ったって通らない。相手が納得するような、第三者が納得するような理論を展開しなければいけない。相手が今も言うように、いわゆる戦争の罪過を覆い隠し、中国で行った三光政策や細菌戦あるいは南京虐殺事件の戦犯をも民族の英雄化し、なおかつこれを崇拝するような行為に出ているという、この相手の見方が一体間違っているかどうか、それを聞いているのです。イエスかノーか、私は聞いているのだ。君たちの、日本の方の立場はそんな悪気で言ったのじゃないのだ、そんな理屈を聞いているのじゃないのだ。この問題はイエスかノーか、中国側のこの主張は間違っているかどうか、これがイエスかノーかはっきりするまでは私はこの質問は留保して、また官房長官を呼んでお聞きいたします。  この前も質問した。あの大灯籠の中に、日本がいわゆる満州事変からあるいは熱河省攻撃から、あるいは大山巖の日露戦争のときの奉天入城から堂々たる戦勝の記念の絵画が彫刻をせられている。その彫刻の前を、総理大臣以下、官房長官、閣僚が粛々としてそれを見ながら、我が意を得たような顔をして拝殿に行ってお参りをしている。それを見ている被害国、アジアの諸民族が一体どう感じているか、いささかでもそれを気にとめられたことがあるか。あの靖国神社の大灯籠の、侵略戦争を象徴する彫刻の銅板か何だか知らぬけれども、あの大きなものを一回撤去する考えがあるかどうか。  あなた方は、そういうものの撤去は靖国神社が個人でやることだ、自由にやることだとおっしゃるかもしれませんけれども、せめてその戦争を正しく反省し、平和のために祈るとおっしゃるならば、そういう銅板が麗々しく世界人民の前に明らかになっていることを好ましいことであるとお考えになるかならないか、それだけでも教えてもらいたい。それはそのまま存置していく、それは結構だ、日本の過去の赫々たる武勲を明らかにする一つ歴史的事実だから結構だとおっしゃるなら、それは結構だと返事してくれればよろしい。どっちですか、イエスですかノーですか。アジアの諸民族は全部怒っていますよ。
  96. 的場順三

    ○的場政府委員 靖国神社自体も、百年の時間の経過を経た歴史的なところでございますから、過去のいろいろな事柄が存在しているという事実はあると思います。ただ、これに対しまして、前回もお答えいたしましたけれども、政府は論評する限りではございませんし、それから戦没者の追悼に赴くということと、過去にそういう事実があったということをあるいは正当化するということとは無関係でございますので、どうぞ御理解いただきたいと思います。
  97. 小林進

    ○小林(進)委員 無関係だからよろしい、そのまま存置してでも政府は賛成だとおっしゃるのだな、そのように解釈いたしますよ。よろしい。それはそれでよろしい。もう出なくたってよろしい。過去の歴史的事実だから、存置しても差し支えないということは賛成だということだ、それは。そういうことは重大なる発言であります。そういう根性は、みんなこれは戦争を美化することだ、戦争の美化に通ずるのだ。それを認めることは、再びこういうような名誉ある実績を踏むように、一たん緩急ある場合にはまた飛び込んでいってくれ、それは無言の教育を示していることなんですから。だめだ。  それから言うけれども、靖国神社をいわゆる参拝せしめるという、祭るという、その選択、セレクションは一体だれがやっているのですか。
  98. 加戸守行

    ○加戸政府委員 靖国神社がどのような戦没者を合祀されるかは、靖国神社自体が決定なさる事柄でございます。
  99. 小林進

    ○小林(進)委員 政府は関係しておりませんか。
  100. 加戸守行

    ○加戸政府委員 戦前におきましては、陸海軍省がその合祀対象を内部的に決定されたような事実がございますが、戦後におきましては、靖国神社が自主的、自律的に決定されております。
  101. 小林進

    ○小林(進)委員 厚生省は関係しておりませんか。
  102. 加戸守行

    ○加戸政府委員 戦後におきまして、靖国神社が合祀対象追加のために、厚生省を通じ都道府県に対しまして調査協力をされたという事実は聞き及んでおります。
  103. 小林進

    ○小林(進)委員 ここに資料があるのです。靖国神社の「合祀基準と手続き」というのがある。その中には戦前と戦後を分けてある。  戦前は今言うように、「合祀の手続きについては、戦没者が生じた時点において、陸(海)軍省大臣官房内に審査委員会が設置され、高級副官を委員長とし、各部将校を委員に任命、出先部隊長または連隊区司令官からの上申に基づき、個別審査の上、陸海軍大臣(他省関係大臣合議の場合もある)から上奏御裁可を経て、合祀が決定され、官報で発表、合祀祭が執行された。」これは戦中戦前だ。  戦後はどうなっている。「終戦後の第一、第二復員省の資料」、復員省というのはどこだ、これは厚生省じゃないのか。「復員省の資料及び厚生省経由」、これは関係していないのかね。「厚生省経由各道府県に照会して得た資料に基づき、旧陸海軍の取扱った前例を踏襲して、合祀の取扱いを決定した。」陸海軍に準じているというんだ。戦中、戦前のやり方を、「取扱った前例を踏襲し」だよ、準ずるじゃないんだ。戦前のやり方をちゃんと引き継いで、そしていわゆる合祀を決定する。そして、ちゃんと厚生省を経由してやっている。明らかじゃないですか。  今、陸海軍がなくなった。陸海軍に今かわるべきものは何だ。天皇に上奏という立場もなくなった。その上奏にかわるべきものはどこだ、いわゆる踏襲をしているんだから。それは内閣だ。だから、内閣が決定しているんじゃないですか。それは靖国神社が自主的にやっているんじゃないのです。どうです、この問題は。なんならこの規約が間違っているか。
  104. 加戸守行

    ○加戸政府委員 まず、厚生省関係の事柄につきましては厚生省からお答えするのが適当だと思いますが、その合祀事務は、靖国神社の定めました基準に従って協力をしたというぐあいに理解いたしております。戦前の取り扱いにつきましては、先生ただいま御指摘なさいましたように、陸海軍省において決定された事柄でございますけれども、戦後におきましては、その具体的な合祀対象は靖国神社がお決めになっているというぐあいに承知しております。
  105. 小林進

    ○小林(進)委員 厚生省を経由してということになっている。第一復員省も厚生省の管轄下にあった。しかも、これをやるときには、その手続きは全部厚生省を経由してやることになっているじゃないですか。これは一体どうなんだ。これはうそなんですか。
  106. 水田努

    ○水田政府委員 お答え申し上げます。  旧陸軍、海軍の軍人軍属の身分に関します履歴事項というのは現在厚生省が引き継いでおりまして、この軍人軍属に関します一身上の身分の記載事項について、個人あるいは団体から調査依頼がありました場合には、これに私ども原則としてお答えすることにいたしておりまして、靖国神社から調査依頼のあったものについてもこれはお答えいたしております。
  107. 小林進

    ○小林(進)委員 依頼を受けたのか、靖国神社にそれを強制したのか、そんなのは君、どっちかわからぬじゃないか。君たちの方がみんな資料を集め、あるいはその資格者を決定し、それを靖国神社に送り込んで、靖国神社は君たちの指令どおりやっているのだろう。さもなければ、戦中、戦前を踏襲したことにはならぬじゃないか。この踏襲とは一体何だ。踏襲の解釈を聞いているんだ。
  108. 水田努

    ○水田政府委員 私どもは、踏襲したつもりは全くございません。合祀されるのは、先ほど文化庁からのお答えにありましたように靖国神社みずからがなさることでございまして、私どもは単に事務的に調査依頼にお答えしているにすぎません。
  109. 小林進

    ○小林(進)委員 こんなのは、最もこすからい官僚の答弁ですから、私はちっとも了承することも信用することもできません。この問題はまた改めてやりますから。残念ながら時間がないが、資料はみんなあるんだ。君たちがいかにこれに深入りしているかということがみんなあるのだよ。繰り返し言うけれども、その形は戦中、戦前と同じだよ。何にも変わっていないのだ。ただ言いわけだけで、今の宗教法人になってからは別だなんて言っているけれども、それは言いわけの材料だけで、実態は一つも変わっておりません。  これだけ申し上げてあとまた言いますが、今の日本の靖国神社を中心にして、東南アジアや中国に燃え上がっている反日、抗日の空気というのは、なかなか鎮静しがたいほど強い。私は、その原因を今度は安倍外務大臣にお聞きしようと思ったのだけれども、時間がないので困っちゃう。  問題の発生は、第一には周・田中会談から始まっている。あれは一九七二年の九月二十五日です。この第一回会談の後、人民大会堂で開かれた周恩来首相主催の夕食会で、初めて田中総理が日本立場を表明した。そのときに、田中角榮首相の公式のあいさつの中で、「この間、わが国が中国国民に多大のご迷惑をおかけしたことについて、私は改めて深い反省の念を表明するものであります。」これが公式の日本の中国に対するおわびの言葉だった。あなたは、今度十月十日にも中国へ行かれてこの言葉をよく利用されて、日本は深く反省しています、反省していますと言われて、これで十分だと思っているだろうけれども、これは間違いなんです。  この田中発言に対して、当時の中国がどんなに沸いたかわかりますか。これを言うと同時に、何千名もいたその会場、あの広い会場が一瞬にして激しくざわめいたんだ。わあっとざわめいた。それは、中国人の不満がその会場の中でうっせきしたのが爆発したのですよ。当時の中国国民は、田中総理のあいさつを通じて、これほど中国にひどい侵略をしたんだから、もっと丁寧懇切な心からなるおわびの言葉があると思ったら、深く反省いたしますという言葉で終わっちゃった。そういうことで、翌朝の新聞初めすべての報道機関は、一斉にこれを非難したんだ。何だ、田中総理のあの言葉は。あれは何だ。当時のその言葉がありますよ。記録もありますよ。あれはちょうど婦人の服に水をはねて、いや失敬、こういった程度の謝り方じゃないか。これは、私はそのときに初めて聞いた言葉だ。中国の原語もありますよ。人のスカートに水をはねて、いや失敬という程度の軽いあいさつにすぎない。こんなことで、二千万人も虐殺せられ、一億国民の家屋、住みかを焼き払われたこの大きな被害に対して、中国国民として了承できますかということで、非常にあのときには燃えたんだ。  そこで、翌日の周恩来総理との会見のときにおいても、会談に入る前に、この世論の圧力に周恩来総理もどうもたまりかねて、田中さんに、きのうのあのあなたのあいさつに対してはどうも了承できない、いま少し善処をしてもらわなければならない、こう言ったことに対して田中首相は、いや深く反省の意思を表明するというのは、日本では最も深くおわびをしてお許しを請うという言葉の表現でございますから、どうかそのようにひとつ御理解をいただきたい、こういうことで田中一流の弁舌でごまかした。けれども、そのときは対アメリカ関係、対ソ連関係があって、これ以上追及するのはというので周恩来総理が、ではそういうことでひとつおさめることにいたしましょうと言って大局から手をとった。けれども、これに対しては中国だけじゃありません、日本の国内においても、あの田中総理のおわびの言葉は何だ、あれはちっともおわびになっていないじゃないか、しかも、無賠償、無分割の原則も与えて、これくらい日本にも情けをかけてくれた中国に対するあんなあいさつはあったものじゃないということで、大変非難の声が起きた。  これを安倍さん御存じですか。あなた、さっきからあくびしているようだけれども、この事実を知っておりますか。これが今でも延々として、中国国民の中に燃えているのです。事があるとこれは出てくるのです。だから、こういうことまでもちゃんと深く掘り下げて、問題の処理に任じてもらわなければならない。御存しかどうか、ちょっと聞いておきます。今、中国における国民、学生が抗日運動に立ち上がっているその根底には、この問題も心底にあるんだということをあなたが理解しているかどうかと聞いているのです。
  110. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 当時の田中首相と周恩来首相との間に、それはいろいろとやりとりがあったと思います。また、このときの共同声明という、この精神がやはり今日の日中関係の基本を律しておる、私はそういうふうに思います。いろいろなやりとりがあったのでしょうが、そういう中で日中間ではっきりしていることは、共同声明が発せられた、その共同声明の中で、我が国が戦争を通じて中国国民に大きな損害を与えたことについて深い反省の念を表明したものであります。また、戦争は二度と繰り返さない、平和国家としての道を歩むとの我が方の決意を踏まえたものである、こういうふうに理解しておるし、そのときの基本的な日中間の合意あるいは共同声明の精神というものは、今日においても確固として守られなければならない日中間の基本である、こういうふうに思います。
  111. 小林進

    ○小林(進)委員 半分だけわかったようなわからないような答弁ですが、一応了承しておきます。  まだ今もめている問題の中には、この田中あいさつの問題、それから南京の虐殺事件と、特に一番この問題が直接に火を噴いたのは文部省の教科書問題だ。だけれども、ここまで行きたいんだけれども時間がないからやめますけれども、特に最近の新聞なんかを見るとこの南京事件を、歴史を改ざんをしている、恐るべきものがあります。田中正明などというどんな人物だか知らぬけれども、松井大将の日誌までも全部改ざんをして、こういう虐殺事件がないような恐ろしいデマをやっておる。こういううそ八百の出版記念日に、我が日本の国会議員もそれには出席をして万雷の拍手を送っているなんという事実もある。こういうことも僕は追及したいが、やめろという時間が来ましたからこれはまた後に譲ります。  それから、厚生省にも言っているけれども、中国における遺骨収集の問題あるいは現地慰霊祭の問題、みんな厚生省が関係している。していないとは言わせない。これはまた、改めて次の機会に事実を挙げて証明しますが、あなたたちが、対アジア、中国あたりの激高を買っている種を皆厚生省がまいている、文部省がまいている。厚生官僚、文部官僚、これが全部元凶だ。  最後に、時間が来ましたから申しわけありませんからいま一つでやめますが、いわゆる慰霊碑建立の計画だ。これは、昭和四十七年十一月二十四日、フィリピン戦没日本人慰霊碑・慰霊園建設委員会、こういうものを発声して、それでフィリピンに慰霊碑を建てたり公園をつくったりしているが、その会長が残念ながら外務大臣の岳父の岸信介氏、その下に外務省の所管と、それから昭和四十九年七月三日から外務省と厚生省が共管にしてこの仕事を進めているというのだ。いいですか。これで一体あなた方は、戦争関係しないの靖国神社に関係しないのと言えますか。みんなこんなことをやっているじゃないですか。  それから、これももう時間がないから言うが、中国における慰霊碑の建設の計画もあった。旧満州に行って慰霊碑を建設しようという計画、その計画はどうなっている。それも聞いておく。侵略をしたその国の中心地に行っていわゆる加害国の慰霊塔をつくる、それも厚生省、外務省、関係しているはずだ。関係してないとは言わせない。それもひとつ教えてもらいたい。  それから第三番目に、特に私は外務大臣に言いたいんだけれども、最近は蒋介石先生の遺徳を顕彰する会というものの計画が進められている。最近台湾の蒋介石生誕百年の顕彰会が日本に設立されて、政府要人が多数参加しているという。この問題についても、これは日本の内政干渉になるかならぬか知らぬけれども、九月十二日に日中友好議員連盟の伊東正義会長以下が行ったときに、中国は非常に不愉快の意を表明されたという。その蒋介石氏の顕彰会をつくる理由は、蒋介石総統は恨みに報いるに徳をもってしたという。日本にいわゆる賠償も取らない、領土もとらない、恨みに報いるに徳をもってしたから蒋介石先生の顕彰碑をひとつつくらねばならぬ、こう言っているんだ。安倍さん、聞いておりますか、よく聞いてくださいよ。  昭和二十七年ですか、いわゆる日華平和条約というものを台湾政府と結んだときには、なるほど日本に対して無賠償、無分割の原則をしてくれた。けれども、そのときはもう蒋介石さんは台湾なんだ。無賠償であろうと、賠償を取るぞ、よこせと言ったところで、中国本土を支配していないのだ。中国本土を支配し北京政府を構成しているものは毛沢東主席であり周恩来総理。この中国十億の民を支配している指導者が七二年に日本と国交も回復したのだ。そして昭和五十三年には、福田内閣を通じて日中平和友好条約というものを結ばれた。そこで正式に、日本には一銭の賠償も取りませんよ、あるいは一つの領土もとりません、日本にこの寛大なる処置をしてくれたものは、蒋介石さんの方は言葉だけなんです。これを実行して、事実日本に寛大なる処置を与えてくれたものは毛沢東主席じゃないですか、周恩来総理じゃないですか。  それに対して、戦争が済んで四十年、今、日本国民がそのことに対する歴史を忘れている、風のごとく忘れている。感謝の気持ちもなくなっちゃった。これが、今中国で盛り上がっている抗日、反日の空気の中心なんですよ。我々はこれくらい寛大にしてやって、まだ中国には日本人から被害を受けた被害者が山ほどいるんだ、旧東北には山ほどいるのです。そういう人たちがじっと耐え忍んでいるにもかかわらず、一体何だ、一つも痛くもない台湾の蒋介石先生だけは顕彰し、感謝の会を持つけれども、これを実行し、日本にこの恩典を与えた北京政府、北京の巨頭に対してあいさつしないというのはまことに言語道断ではないか、こう言うのは間違いでしょうか。  そこで、時間が来ましたから、安倍さん、ひとつあなたが主催者になって、実際に日本世界歴史にないような寛大処置をしてくれた当時の中国の首脳部であり指導者である毛沢東主席、周恩来総理の顕彰碑、感謝の碑、これを日本に建立する意思がないかどうか。あなたが代表発起人になれば、私も喜んでその傘下に入って発起人になる。これは事実でしょう。我々はその恩恵に浴して、今日世界第二番目の経済大国になったんだ。やったところで、国民はだれも異議を唱える者はありません。あなたがこれを発起人になっておやりになると言えば、恐らく日本の指導者の大半はあなたの傘下に入って、日本に寛大な条約を結んでくれた中国の指導者に対する顕彰碑なり感謝辞なりに全部賛成すると私は思う。これがまた、安倍さんが平和の使者として次の内閣総理大臣に通ずる一番の近道だと私は思う。これはプラス一〇〇%、あなたにとってマイナスは一つもない。これをおやりになる意思があるだろうか、きちんとしたところをお聞きして、きょうは私の質問は終わることにします。これは半分です。また次にやります。
  112. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いろいろとお話がございました。今日までの日中間には、歴史的ないろいろの経緯があったわけでございますが、少なくとも今日においては、日中共同声明、さらにまた日中平和友好条約を基礎として日中間の平和が確立し、日中間の友好親善が進められておるわけでございますし、我々は戦争中の中国に与えた惨害というものを一日たりとも忘れてはならない、そういう基本的な反省のもとに、この条約の精神に基づいてこれからも日中関係を展開をしてまいらなければならぬ、こういうふうな決意であります。
  113. 小林進

    ○小林(進)委員 顕彰碑のことを聞いているのですよ。発起人でやるかやらないか。
  114. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 政府としては、今申し上げましたような基本的な――これ一番大事だと思うのですね。基本的な精神、日中関係に対する精神、そういうものでこれから誠意を持って日中関係を進めていきたい、こういうふうに思っております。
  115. 愛野興一郎

    愛野委員長 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十二分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十一分開講
  116. 愛野興一郎

    愛野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。渡部一郎君。
  117. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 午前中に行われました当委員会の審議の中で、靖国神社の公式参拝の問題で政府はいろいろ難しい御答弁をなさっておられましたが、質疑応答を聞いておりますと、どうも討議が集約されてないなという感じが極めて濃厚にするわけであります。  と申しますのは、この問題が当外務委員会の所管事項であるべき国際情勢にも絡むほどの問題になっておりますが、本質的には国内問題であり、宗教法人のあり方をめぐるテーマでもあり、多方面からのアプローチが必要だと思いますのに、何回もそれが収れんされないままに取り扱われるというのはいかがなものかなと思っているわけであります。  そこで私は、論議を急速に一定のところにおさめるためにも、また多方面からするアプローチを集中するためにも、当外務委員会におきまして小委員会をつくり、論議を進められんことを切望したいと思います。この扱いは理事会において討議されることになろうと思いますが、小委員会がもしもできないのであるならば、その前提として、集中審査をするなり一遍徹底的に議論をしてしまうという態度が当委員会において必要なのではないかと思うわけであります。  休憩中、理事の何名かの皆様方には直接御案内をし、御説明もしたところでございますが、委員長におかれましては、この問題を理事会のテーマとしてしかるべく処理されるよう御要望したいと思います。いかがでしょうか。
  118. 愛野興一郎

    愛野委員長 ただいまの渡部一郎委員の御要望につきましては、後日、理事会でもって討議をいたしたいと思っております。
  119. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 よろしくお願いします。  では私は、災害救助問題につきましてお諮りをいたしたいと存じます。  この間からブラジル、メキシコ、コロンビア等におきまして、大きな災害が発生しております。この状況について、他国のこれに対する救援状況並びに日本国のこれに取り組む状況につきまして、御担当の方からまず御説明を受けたいと存じます。よろしくお願いします。
  120. 堂ノ脇光朗

    ○堂ノ脇政府委員 お答え申し上げます。  ブラジルにつきましては、一九八三年に豪雨災害がございまして、ブラジルの南の方にございます三州が被害をこうむったわけでございます。  また、メキシコにつきましては、ことしの九月十九日に大きな地震災害がございまして、メキシコ市自体に大変な被害が及んだということでございます。  コロンビアにつきましては、今月、十一月十三日に、首都ボゴタの西百キロぐらいのところでございますが、火山が爆発しまして、アルメロ市が非常に大きな被害をこうむったということでございます。  我が国の援助につきましては、ブラジルにつきましては、三州に対して合計二万五千ドルの見舞い金を送っております。     〔委員長退席、浜田(卓)委員長代理着席〕  それからメキシコにつきましては、百二十五万ドルの緊急災害援助を供与いたしまして、また、累次にわたり、既に五十名を超えていると思いますが、いろいろな専門家チームを派遣しております。また、安倍大臣自身、地震のお見舞いのためにメキシコを訪問しまして、デラマドリ大統領、セプルベダ外務大臣に対して、日本国民及び日本政府を代表してお見舞いの意図を伝達いたしましたほか、五千万ドルに及びます緊急融資の供与を提案いたしました。これにつきましては、メキシコ側も喜んでお受けしたいということで、現在、この五千万ドルにつきましては一般アンタイの商品借款の形で、これは交換公文で合意するという方向で協議中でございます。  コロンビアにつきましては、地震の発生した直後に、まず国際協力事業団を通じまして国際救急医療チームの派遣を行っております。十六日には現地入りしておりまして、このチームは八名、医師、看護婦、その他通訳等が入ったチームでございます。また、すぐ翌日には、青年海外協力隊のOBチーム四名を現地に派遣しております。また、十六日、土曜日でございましたが、百二十五万ドルの緊急災害援助のほか、国連災害救済調整官事務所に対して五万ドルの拠出を決定しておりまして、合計して百三十万ドルの緊急災害援助の実施ということになるかと思います。このほか、今後の問題としまして、コロンビア政府の要望にこたえて、火山災害の予防等のためあるいは復興のために協力していくということを、先方の要望があれば検討していくという状況でございます。
  121. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 ただいまお話を伺っておりますと、費用の出し方が、相手の国の災害の程度にもよるわけでございますが、ブラジルに対しては二万五千ドル、メキシコについては五千万ドルに百二十五万ドル、コロンビアについては百三十万ドルと、かなり支援のレベルにいろいろ差がございますね。これは、どこでだれが算定してこうした数字をお決めになるのか。そこのところが、ちょっと発作的に行われるような感じがしないでもないので伺うわけでございますが、この点はどうなっておりますか。
  122. 藤田公郎

    藤田政府委員 ただいま中南米局長から御説明申し上げました金額を、もうちょっと敷衍して申し上げます。  メキシコに対しますその金額、当初発生直後に百二十五万ドル、これは無償の緊急災害援助という形で行いました。今般のコロンビア火山噴火に対する援助につきましても、今御説明いたしましたように、百二十五万ドルの緊急災害援助に加えまして国連を通じて五万ドルということで百二十万ドル、ほぼ同額でございます。  このとりあえずのお見舞いと申しますか、災害に対する無償援助の金額を決定いたします場合には、この二国について申し上げますと、その災害発生直後に、外務省内に官房を中心といたしますタスクフォースが設けられまして、そこで、メキシコもコロンビアも中南米局の所管でございますので地域局、それから私ども経済協力局等、関係局が集まりまして、損害、被害の状況、どのくらいの方が被害に遣われ、かつ亡くなられたとか、それから洪水等の場合ですと、被害を受けました農地等の面積がどのくらいかというような被害状況を勘案いたしまして、それによって大体金額を決めておる。その際には、外務省としてのただいま申し上げましたタスクフォースとしての案というのをまとめますが、これを今度は大蔵省との間で協議を行う、それで合意に達して政府としての金額を決定する、こういう過程を経ております。もちろんその過程におきまして、省内におきましては、タスクフォースのつくりました案を大臣を含めます幹部の御決裁も得て大蔵省との協議に入る、こういう手順になっております。  それから、メキシコの場合には五千万ドルというのがございますが、これは緊急の災害に対するとりあえずのお見舞いと申しますか、医薬品等を購入していただくために提供いたします無償援助とは違いまして、地震が発生しましてから二週間後に外務大臣が現地入りをなさったわけですが、その段階では、メキシコは既に地震のとりあえずの応急的な状況というのを脱しまして、復興段階という状況にあったものでございますから、経済の復興、地震に伴う損害からの復興を助けるための緊急融資、これは円借款でございますけれども、緊急融資という形で五千万ドルを提供するという申し出を外務大臣からなさいまして、向こう側が非常に高くこれを評価した、こういうことでございます。  したがいまして、コロンビアの場合には、その段階というのにはまだ至っていないということでございまして、メキシコの例で申しますと第一段階、とりあえずお見舞いを贈っている、ないしは緊急救助隊を派遣しているという状況にいまだにとどまっているものでございますから、コロンビアに対する金額の支出がこれでおしまいになっておるということでは必ずしもございません。したがいまして、こちら側が五千万ドルあるけれども、コロンビアはないという御指摘かと思いますが、まだそこまでの段階になっていないということもございますので、その点をちょっと一言補足して御説明申し上げます。
  123. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私が言おうとしたことを想像でおっしゃいましたから、質問の方は私流の質問をさせていただきます。  コロンビアで二万人もの人々が亡くなられているのに、メキシコの方の被害はそれよりばるかに劣るわけでありますから、メキシコで五千万ドルをお出しになったというのはどういう意味なんだろう。これは外務大臣がお行きになるときは、お手土産金としてこういう金が行われるのであるならば、今後日本外務大臣がお行きになるときに、かばんの中によほど大きな手形をいつも用意しておかなければならなくなるわけだから、これはバランスを失するよと見えるわけであります。やはり日本には、ある種類のバランス感覚がなければならない。  しかも五千万ドルが、他国のメキシコに対する支援を見ておりますと非常に金額が大きいわけですね。復興段階であるとはおっしゃいましたけれども、その他の国々の支出を見ておりますととりわけ大きい。米国においては二万五千ドル、六百万円を在メキシコ大使名で提出したとか、フランスの場合は四千万フランの無償援助の供与及び二億一千万フランの借款供与であるとか、西独では建物修繕に八百三十万円、派遣員に五千万円というようなものであるとか、英国においては一億五千五百万円を緊急災害援助額として提出したとか、こうしたレベルの話が政府からちょうだいした援助状況のペーパーには記載されておるわけであります。メキシコに特別巨額にどんとお出しになることに異議を申し立てているわけではないのでありますが、そういう態度でいくならば今後もいくべきだし、特にコロンビアなどという災害については、最近の報告を見れば見るほど悲惨をきわめておりますがゆえに、もう少し配慮のしようもあるのではないか。  ただ、ただいま藤田局長は、コロンビアについてはまだ災害に対する復興段階の円借款のようなものはこれからだというようなことをにおわされましたが、このにおいがするだけでも大変な発表でございまして、これは明らかに大臣日本の方針としてお述べにならなければならぬテーマでございましょうし、今後こうした問題をどうなさるのか、ここのところでお伺いをしなければならないのじゃないかと思うわけであります。大臣、今後こうした問題についてどうなさるのか、コロンビアに対する災害復興のための円借款等についてはどういう御計画でおられるのか、この際お述べいただきたいと存じます。
  124. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本の見舞い金であるとかあるいは特別融資であるとか、これまで日本としては非常なバランスを考えてやっております。これはアフリカに対する援助もそうでありますし、また最近ではベトナムの水害ということでベトナムに二十万ドル援助をしております。そういうことで、全体的にその国の被害の状況とか実態とかいうもの、それからまた規模等、それは確かに情報等十分ない面もありますけれども、新聞等で報ぜられ、また現地の大使館からの緊急の報告を聞きまして、外務省のタスクフォースで大体の見当をつけて出しておるわけであります。  私がメキシコに参りましたときの五千万ドル、これは緊急融資でありますが、行く前からメキシコ政府といろいろと折衝もしておりまして、メキシコの災害は、人命の災害は五千人ということであります。しかし、果たして五千人にとまったかどうか、その辺のところはまだ実態がわからぬ面もあるとは思いますが、しかしメキシコという大都市、それ以外にまた地方都市も随分やられておりますし、それは相当深刻である、そこで復旧に大変な金額を要するというふうなこともあって、日本もそれに対応して見舞い金だけじゃなくて、メキシコの災害復旧に対して、日本とメキシコとの友好関係もありますし、それも踏まえて考えなければならぬということを前提としまして、ちょうど私が行くときにメキシコ大統領以下に会うわけですから、これはやはり効果的な日本政府の援助でなければならぬということで五千万ドルということを決めました。  メキシコ政府も喜んでこれを受けるというふうな内々の話も承って、私から正式に提案をして、これをメキシコ政府は喜んで受けられたということで、実は非常にタイミングのよい日本の緊急融資でありました。またそうした緊急融資の申し入れ等も世界各国からなかったようで、日本にそうした先鞭をつけてもらったことによって自分たちの復興も大変順調に進む、まず日本がやってくれたということは非常な評価を得たんじゃないか、私はこういうふうに思っておりますし、その面では復興の中ではありますが、日本政府の措置は非常にタイミングを得たものではないか、こういうふうに思っております。  コロンビアの場合も、今いろいろと実情等も調査をしております。とりあえずはメキシコに匹敵する、あるいは人命についてはメキシコ以上の損害を受けておられるわけですから、メキシコと同じのあるいはそれ以上の援助、見舞い金を出すべきだということで、こういう措置になったわけです。しかし、今後の復興措置については、コロンビア政府がどういうお考えを持っておられるのか、そしてまた、どういう形の援助をしたら一番喜ばれるのか、そういうこと等については、これは日本とコロンビアとの間でいろいろと政府間で十分話し合いもして、そしてコロンビア政府に喜んでいただけるような形の援助といいますか、援助といいましてもこれは円借になりますか、メキシコと同じような緊急融資という形になりますか、いろいろとそういうことを考えて対応していきたい。  日本とコロンビアとの関係からいいましても、また今後のことを考えましても、そしてまた被害の非常に甚大な状況から見ましても、これをそのまま日本政府として何もしないでおくというわけには私はいかないだろうと思う。しかし、コロンビア政府の意向も踏まえて、コロンビア政府の御要望等も十分踏まえながら、これはやっていかなければならぬと思います。ですから、基本的にはやはりコロンビアに対しても、日本政府として何らか誠意のある援助、協力を行いたい、こういうふうに思っております。
  125. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうしますと、メキシコに対する緊急援助あるいは円借款等とバランスをとった形でコロンビアに対してもしかるべく措置をする、こうおっしゃっているわけでございますね。
  126. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはコロンビア政府の意向もありますから、その意向も踏まえながら日本政府としては何らかの形の協力はしなければならない、こういうふうに思います。
  127. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 では、お金の支出についてはそれでよろしいといたしまして、今度は人の派遣でございますが、いろいろなタイプの方々がお行きになっておられるわけでありますし、その内容というのは、青年海外協力隊の御関係の方もあれば公務員の方々もあれば、中には在野の方々をお願いするケースもあればいろいろの御様子でございますが、派遣のための費用なんかも含めて人を派遣することが、スピードの上でも規模の上でもレベルの上でも、少し適切を欠いているのではないかなという感じがするわけであります。  と申しますのは、メキシコのケースでは、あの地震の地域にフランスの輸送機が飛んでまいりまして、そして着陸した途端に中からフランスの国旗をつけたブルドーザーが町中へ行進して出ていく。そして直ちに、災害救助用の資材を携行したフランスの青年たちが町の中へいきなり踏み込んでくる。このことは、メキシコの報道機関によっても大々的に報道されまして、非常に大きなインパクトを与えたのを、私もちょうど近接のあたりを通過中でございましたので、その影響を身で感じた一人でございます。大臣は、そのときに非常に多額の金品を向こうに寄附されましたが、新聞写りとしては、向こうの大臣と握手している写真が新聞に載っているだけなので、どうも気合いがかからぬなと私は思った印象がございます。  もちろん、それをけなしているわけでは毛頭ございませんが、やはりああいうときのTPOと申しますか、そのタイミングを得て日本国民が踏み込んでくるという、おっ取り刀で駆けつけたというニュアンスは人情の機微に甚だ触れるものであり、金額以上の効果を与えるものであり、かつ、先方の国民に立ち上がろうとする非常に大きな意欲を与えるものではないかと私は思うわけでございますが、関係局長さんはどういう認識を持っておられるか、その辺からまずお伺いいたしましょうか。
  128. 藤田公郎

    藤田政府委員 メキシコの場合におきましても、我が国の人員面での派遣は、医療チーム、それから地震専門家チーム、石油精製施設安全確認のためのチーム等々を先方の御要望に応じまして、前後合計で四十一名の専門家を派遣いたしました。この派遣につきましては、我が国の場合には、先方が本当に必要とされているということを確認いたしまして派遣をし、そういう点ではメキシコ政府からも非常に高く評価もされましたし、メキシコのマスメディア等におきましても、日本が援助国のリストの中では一番初めに報道されるというような、感謝ないし高い評価を得たものと考えております。  ただ、ただいま先生おっしゃいましたように、フランスの場合ですと多くの青年が、例えば犬を連れていまだに埋もれている人たちの安否を捜し当てるというPR面と申しますか、そういう面ではフランスですとかそれからアメリカも随分人数を送りましたけれども、そういう他の国に比較しまして割と地味であったということはあると思いますが、感謝はされているのではないかと考えております。  コロンビアでございますけれども、コロンビアは発生しました日の夜に、医療チーム八名を現地に派遣いたしまして、本日その医療チームが帰ってみえますが、外国の医療チームとしては、一番遠い国でございますけれども真っ先に現地に行けたということで、非常に高い評価を得ているというふうに承知いたしております。
  129. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そう長々質問するつもりもないのですが、ここで大臣にぜひ御配慮をいただきたいと思っておりますのは、日本が平和国家としてやっていく以上、こうした災害とか災難に遣われた地域あるいは領域に対して、日本国民は助けたいと思っている気持ちが非常にたくさんあるわけですね。飛行機にだれでも乗っけてくれるなら私でも行きたいと言った人は、私のところに何人も何人もございましたし、日本国民のそういう気持ちというのは非常に多くあるわけであります。そういう意味からいって、ふだんから、国際的な災害が起こった際に国際的な災害救助隊を編成できるようなシステムを政府としてもお考えになるべきではないのだろうか。  余り詳しく言うとまたぐあいが悪いのでありますが、私の思いつき程度を申し上げるならば、災害救助隊の隊長を任命する、その災害救助隊の隊長に対しては飛行機の便その他を供与することを明瞭にする、災害救助隊として飛び出す用意のある人はふだんから登録しておく、そしてその人たちは電話一本で駆けつけてこれるようにしておく、またその災害救助隊の必要とされる医薬品あるいは建築資材あるいは建築するための工具一式、それからその他必要な道具、物品等については飛行場等に集積をしておく、こうしたことが要るのではないだろうか。  我が国の災害救助に対する出動は、市町村長の指揮のもとに行われますし、また自衛隊に対しても出動を要請することができるシステムが整っているが、国際的にはそのシステムができ上がっていない。もちろん公務員を派遣する場合には、その資格上、いろいろな出張であるとかあるいは肩書上とか問題になるだろうから、そういう公務員の出張に対する肩書上の問題あるいは資格の問題、そうしたことも事前に処置していかなければいけないのじゃないだろうか。特に南米の場合は、まだ遠くて日本として駆けつけるというのには、地球の反対側という状況もあるから余り目立つことも少ないのかもしれないとは思いますけれども、東南アジアの場合とか中国とか、日本の近隣諸国の災害の場合には、そうはいかないのではないかと思うわけであります。  貿易で非常にもうけておるという批判の強いときでもありますから、そうした面について、特にふだんから充実した災害救助部隊をつくっておくことが必要なのではないか、それこそ緊急時出動可能なタスクフォースをつくっておくべきではないのだろうか、そうしたことをお考えいただいたらどうなんだろうかと私は思っておるわけでございますが、いかがでございましょうか。
  130. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、今の渡部さんの構想は、基本的には全面的に賛意を表したいと思います。救急医療チームについては、確かに今JICAで平生から全国の医師の皆さんにお願いして登録していただいておる。これは百何人がおると聞いておりますが、コロンビアのように、緊急事態が発生したときにはその日に出かけていけるような体制ができておるわけでございます。その他総合的な救助体制については、建設省とか厚生省とかにお願いをしてやるということで、メキシコとかコロンビアの例等を見ますと、平生からの総合的な救助体制の準備というのがもっと必要じゃないかということを、実は私も痛感しておるわけです。  今まで日本がやってきたことに対しては、非常に評価は高いと思っておりますけれども、さらにもっと日本の誠意というか人道的な考え、行為を効果的にてきぱきと実行していくためには、そうした体制が必要じゃないか、こういうふうに思っております。  医療チームについては、今JICAが責任を持っておりますから、JICAなどでももう少し検討させるようにしたいと思いますし、JICAだけでなくて、政府全体としての一つの形をいろいろと研究する必要があるのではないかと私は思うわけです。ですから、私も現実にメキシコ等に行ってみまして、今の渡部さんの御意見、構想には同感でございますので、いろいろな面でひとつ研究してみたいと思います。
  131. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 非常に画期的ないい御答弁をいただいて、私は高く評価したいと思います。  私は、今回コロンビアに派遣された医師の方々に、深い敬意を表したいと思うのでございます。情報を集めておりますと、この日本の八名のお医者さん方の御活躍のとりわけすごかった理由一つとして、言葉のしゃべれる人が一緒に同行したということがどうやら出ておるようでございます。災害救助のときに生じます難問として、日本語を用いる日本国民が踏み込むということがあるという感じがしておるわけでございます。  実は、私の地元の神戸市におきまして、この間ユニバーシアードを開催させていただきまして、大学生のオリンピックが行われたわけでございますが、その際ボランティアを募りましたところ、結局言葉のボランティアが一番大量に要ったのでございます。合計八千名近いボランティアが登場いたしまして、入れかわり立ちかわり外国の方々を応接した事実があるわけであります心外国語をしゃべれる人集まってくださいと言うだけでこんなたくさんの青年たちが集まったというのは、我々としても想像外だった、新しい日本人というのは新しい感覚を持っているなということを、市長たちがそれこそ感動して述べておりました。  私はその意味で、そういう青年たちの気持ちをお願いするならば、災害時には、今よりもはるかにレベルの高い支援グループが派遣できるのではないかと思うのです。ただ、若い方々のボランティアに共通するのは、車代がないことと食事代がないこと、そして資材を自分で適切に運び出すことができないということに問題があるわけでありますから、その輸送方法それから交通費、食費等について支援をする必要がある。できるならば、自衛隊の一個師団レベルぐらいの災害救助隊というものを実質用意しておくというやり方が必要なのではないか、レベルが余り少なくて十人、二十人というのはまずいのではないかと私は思っておるわけであります。  もう一つ、私は非常に高く評価しておきたいのは、相手の欲する援助を与えるという意味で、コロンビアに対する援助は見事なものであったと思いますし、メキシコに対する援助も見事なものであったと評価したいと思います。災害が起こって、さっと駆けつけるのが大事だということと、向こうが本当に困ってどうしようというときに応接する部隊とは、種類が違うと私は思っております。その高い専門家レベルの支援の小さな芽が、日本政府のすばらしい官僚機構を通して出始めだというのは大変立派なことであったのではないか。これも、そういうことがしょっちゅう起こり得るということを前提にしておやりになっておいた方がいいのではないか。そして、この芽を大きく育てて、専門家支援グループを政府がしょっちゅう組織できるように常時体制をつくられていることは、日本の緊急災害時等における広い支援にもなるし、広義の意味安全保障にも資するのではないかと思いますので、この二つもあわせて御検討いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  132. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 非常に適切な御指摘ではないかと思います。今回も、コロンビアに青年協力隊のOBに行ってもらったわけであります。青年協力隊の先輩も随分できておりますし、そうした青年海外協力隊等が、かつて経験した人たちですから現地を一番知っております。そういう意味で、今のお医者さんの方は組織ができておりますが、そういう組織とかあるいは言葉のできるボランティアの人とか現地を知っている人とかを、政府のそうした援助の中に機敏に組み込めるような平生からの体制は確かに必要だ。  これが最終的に相手の国と日本との関係をより一層結びつけることになるわけでありますし、また災害復旧、救助にストレートに大きな成果を上げることになるわけですから、これは一つの大きなテーマとして十分検討させていただきたい。世界でいつ何が起こるかわからないですから、そういう場合に日本がどういう役割を果たすかという面からも、大事な課題であろうと私は思います。外務省で研究してみまして、JICAでやってもらうか、政府全体の何らかの組織、体制を考えるか、ひとつ我々検討してみたいと思います。
  133. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 非常に意欲的な御答弁をいただきましたので、今後の御検討、前進を期待いたしまして、私の質問とさせていただきます。
  134. 浜田卓二郎

    ○浜田(卓)委員長代理 次に、玉城栄一君。
  135. 玉城栄一

    ○玉城委員 私は、この間の米ソ首脳会談について、時間がございませんので大臣に端的にお伺いをいたしたいと思います。  この間の米ソ首脳会談については、大臣も午前中も大変高く評価されるということをいろいろな言葉を通して何回もおっしゃっておられましたし、私も全くそのとおりだと思います。問題は、今後どうなるかということではなくして、むしろ今回の首脳会談を本当にどう世界的に実りある確かなものにしていくか、発展をせしめていくか、我が国もそのためにどういう努力をしていくかが、非常に大事なことだと思うわけであります。  それで、午前中土井先生もおっしゃっておられたのですが、国連の核不使用決議についても我が国としては非常にあいまいで、留保ということで非常に意外な感じもしたわけでありますが、これは非常に大事な点でありますので、私、もう一回この首脳会談共同声明の「安全保障」の項をちょっと読ませていただいて、この点についてはやはり私も大臣評価をきちっと承っておきたいわけでありますが、「平和を維持するため、ソ連と米国が負っている特別の責任を認識し、核戦争を戦って勝つことはできないし、決して核戦争を戦ってはならない、との点で合意した。双方はソ連と米国の紛争がいかなるものであれ、破滅的な結果を起こしかねないということを認めた上で、核戦争であれ通常戦争であれ、両国間のすべての戦争を防ぐことの重要性を強調した。双方は軍事的優位の達成を求めようとはしない。」これは非常に肝心なところで、この部分は大臣も、歴史的な意義の深いものであるということはこういうところを指しているのではないかと思います。改めて大臣評価を伺いたいと思います。
  136. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この合意というのは非常に重要な意味を持っておる、まさに歴史的な意味があるのじゃないか。超核大国両国首脳が、少なくとも核戦争には勝者もなし敗者もなしということで、いわば不戦約束をしたということは極めて大事だったと思います。そしてまた同時に、軍事的な優位を求めないということも非常に重要であろうと思うわけでございまして、やはりこうした両国合意が実を結んでいくために、これから両国とも努力をしていただかなければならぬし、世界じゅうがこれを支援して、日本それなりの役割を果たしていかなければならない、こういうふうに思っております。
  137. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、我が国としても、これまで平和、軍縮問題についていろいろな具体的な努力をしておられることもよく承知をしておるわけですが、こういう新しい緊張緩和へのスタートという新しい事態を踏まえて、これから我が国として、この首脳会談合意を実りあるものにしていく具体的な努力はどういうものがあるかということについては、従来やっていらっしゃるいわゆる段階的な核実験全面禁止ということのほかにどういうことがありますか。
  138. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 やはりまず米ソ両国に対しまして、せっかく行われました今の米ソ首脳会議の精神、そしてまた合意、これが全面的に実を結んでいくように、我々としてもあらゆる面で彼らに強くこれからも要請をしていかなければならない。日本も、自由国家群の中でサミットの一員でもありますし、そうした立場からも強く求め続けてまいらなければならぬと思います。  同時にまた、国連とか軍縮会議、そういう場がありますから、そうした国連軍縮会議の場を通じまして、日本のかねてからの念願でございます核廃絶、そしてまたその前提としての核軍縮、さらに日本が今軍縮会議提案をしております全面的な核実験禁止、そのための段階的な提案、そういうものが積極的に討議をされて実を結んでいくように、我々はあらゆる面で協力努力を続けていかなければならぬ、そういう場は幾らでもあるだろう、私はこういうふうに思っております。その中で日本の主張をはっきりと述べるということがやはり大事じゃないか、こういうふうに思います。
  139. 玉城栄一

    ○玉城委員 今大臣がおっしゃられたことも一つ一つ大事なことだと思うのですが、この際、私も一つ提案させていただきたいわけであります。  さっきも申し上げました共同声明一つ核不戦、通常の戦争であれ核戦争であれ、戦わないということを米ソ双方の首脳合意した、約束した、決意した、あるいは誓ったということは、歴史的に非常に重大な意義があると思うわけですね。ですから、こういうことを一つ国連の宣言として、あるいは決議として我が国の提案でやることは、例えば世界不戦宣言というような形ででもやるということは非常に大事な、大臣が午前中からずっとおっしゃっている、今回の首脳会談を本当に後退させないで前進させていくという意義が非常に深いと思うのですが、この国連の宣言や決議を我が国が提案していく必要がある、こう思いますが、いかがでしょうか。
  140. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 まず、やはり国連に参加する国は国連憲章を守っていかなければならぬわけで、国連憲章で不戦という立場ははっきりしておるわけですから、基本的には国連に参加している国々は、戦争はしないという決意を持ってこの中に参加をしている。国連憲章を守るということは大事だと思いますが、しかし、こうした米ソ両国のいわば歴史的な合意ができている、こういうことですから、そういう中でこうした両国合意がさらに世界的なものに広がっていくために、日本がこれからどういうことをやったらいいかという点については、今御提案の点も含めて、いろいろと日本のこれからなすべき行動、そういう中でひとつ検討してみたいと思います。
  141. 玉城栄一

    ○玉城委員 検討でなくて、ぜひ本気になって、大臣がおっしゃっている、高く評価をし、我が国としてやるべきことをこれから真剣にやっていくということでありますと、これは非常に画期的な首脳会談でもあったわけでありますから、ぜひひとつやっていただきたいわけです。これはレーガンさんにしても、ゴルバチョフさんにしましても、いわゆる人類の運命を担った責任と自覚のもとに、こういうふうに核不戦あるいは通常戦争も含めて戦争をやらないでおこうということを合意し合っているわけですから、まさに我々全人類の生存の権利を確保するという立場からも、これは第三回の国連総会において、世界人権宣言が全会一致で採択されているわけですね。  ですから、こういう高度な、人類の生存をかけたそういうせっかくの合意を、なぜこれを我が国の提案でと申し上げるかと言いますと、これは午前中もありましたとおり、我が国は世界で唯一の被爆国ですから、しかもやはり全人類に対する信頼感を貫いた恒久平和主義を掲げた憲法、そして国の交戦権は認めないという憲法を国の根幹としているという我が国の立場からすれば、これを我が国が国連決議として、先ほど申し上げました世界不戦宣言という形で提案していくことは、最もふさわしいし、大臣もおっしゃられた世界の平和と安定に我が国が大きな役割を果たすことになる、こう思うわけでありますが、いかがでしょうか。
  142. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本が、やはり世界の平和のためにそれなりの役割を果たしていく、むしろ積極的な役割を果たしていくことは大事であると思います。そういう立場で、これまでも国連で活動してまいりましたし、今お話しのような点も踏まえながら、どういうことでさらに世界の平和のために貢献できるかということについて、積極的にいろいろと検討してみたい、こういうふうに思うわけです。
  143. 玉城栄一

    ○玉城委員 積極的に検討していきたい、これはぜひ、こういう新しい事態を踏まえて、我が国として当然やるべき大事な問題だと思うのですね。世界不戦宣言という、これは午前中の外務省の御説明では、別に具体的な措置を伴う決議でもないわけですね。これは米ソが双方首脳合意した、共同声明の中で盛られた一つの大きな理念であるわけですから、それを世界的に確かなものにしていく、こういう決議反対する国は、よほどの戦争屋でない限り、いないと思うのですね。それを我が国が提案するというところに、また意義があると思うわけですね。ぜひひとつ、積極的に検討したいということでありますから、実現のために御努力をお願いしたいと思います。  また、対ソ問題とかいろいろお伺いしたいのですが、これは次回に譲るといたしまして、今度は外務省、大変頑張っていらっしゃるということでお伺いしたいのですが、外務省は「一日外務省」とか「ミニ外務省」とか、五十八年からいろいろとやっていらっしゃいますね。これは非常に結構なことだと思うのです。外務省というのは国民から離れている、浮き上がっている、そういう意味で開かれた外務省、国民に根差した外交をこれから展開するという意味でも、非常に結構なことだと思うのですね。  私も、ここ五、六年、この委員会に所属させていただいて、外務省の方々といろいろお話し合いをする機会もあるわけですが、これから若い外交官の方々が入ってきましても、研修をして外国に行って、本庁に帰ったら自宅と外務省と国会に用事があるとき。他省庁であれば、いろいろ地方に出先を持っていらっしゃるので、ちゃんと交流していらっしゃるわけですね。ところが、今は外国に行くといっても、いろいろな人が外国へ行ったり来たりしている時代ですから、そういう意味ではこういういろいろ複雑な国際情勢、変化が伴う中で、外務省がこれから国民に根差した、本当に国民の方々の意見を肌で感ずる、さしでということも含めて、非常に大事なことではないかと思うのですね。  そういうことで、これからの我が国の外交を背負って立つ若い方々が幅広く伸びていくのではないかという意味で、この「一日外務省」とか「ミニ外務省」とか地方でやっておられることは、非常に評価をしているわけです。それを外務省の御当局から、どういう目的で、いつから、どこどこで、その成果はということをお伺いしたいわけです。
  144. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 まず私から答弁をさせていただきます。  この「一日外務省」は、私、外務大臣になりまして、やはり日本外交というものが非常に大事である、そして国民全体に理解された中で外交を進めていかなければならないし、また同時に日本外交というのは、日本の内政と大変大きな絡みが出てきているといいますか、非常に深い関係ができてきている。それは、日本がそれだけ国際的な国家になりつつあるということで、国民の中でも日本外交を知りたい、そしてまた外国の情勢等についても十分知りたい、これはただ単に日本外交を知るというだけじゃなくて、地方の都市なんかでも姉妹都市とかいろいろと国際的な交流がありますし、同時に、個人、団体等の交流も最近非常に深まってきておるわけです。  そういう意味で、お互いに外務省は外務省としての考え方、日本外交のあり方というものを十分知っていただく、同時にまた、外務省がどういうお役に立ち得るかということも、皆さんの意見を聞きながらこれから考えていくということもありますし、今お話しのように、外務省自体ももっと国内の情勢等を勉強する必要がある、そういうことも考えましてこれを始めたわけでありますが、各地で非常に盛り上がった論議が行われますし、その成果というものは非常に見るべきものがあったと私は思っております。  ですから、ぜひともこれは今後とも続けていきたい。外務大臣が出ていく「一日外務省」さらにまた外務省の若手の外交官諸君が出ていく「ミニ外務省」、そういうものをこれからも積極的にやることが、これから日本が国際的な国家としての役割を果たしていく、そしてまた、国民の中に国際的な感覚が大きく醸成されるという意味においても大事だと思っておりますし、これはひとつこれからも時を見て積極的に進めてまいりたい、こういうふうに思っております。
  145. 玉城栄一

    ○玉城委員 御説明はこの前いただいておりますが、今大臣は、今後も続けていきたいし充実もしていきたいという、非常な決意もお話ししておられます。ぜひ、新しい外務省という言い方は非常に口幅ったいのですが、これだけ非常に変化が激しい時代で、さっき申し上げましたとおり、一般の国民の側も、茶の間にどんどんその日のニュースがテレビを通して入ってくるわけですから、情報はみんな知っているわけです。ただ、そこをどう理解すれば、どう整理してどうすれば、我が国の外交は一体どうなっているのかということについては、そういう機会を通して懇談しながらということになるわけでありますので、五十八年から大分北から南にかけて、「一日外務省」も「ミニ外務省」もやっておられるわけですが、ぜひ国内のあらゆる地域でやっていただきたいわけです。  それで、私は沖縄の方ですが、沖縄の場合も国際交流の拠点として位置づけられておりまして、地元では、東南アジアとか太平洋諸地域との交流を県そのものが先頭になってやっておるわけです。そういうことで、外務省のいろいろな意見も聞きたい、懇談もしたいという要望は前々からあるわけです。これは沖縄に限るわけではありません、全地域にいろいろな特性があってそういう要望があると思うのです。ですから、沖縄も含めて、今後充実していただきたいということを要望したいわけですが、大臣、いかがでしょうか。
  146. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 沖縄につきましては、沖縄の県当局を初めとして多くの有志の皆さん方からも、「一日外務省」をぜひ開いてもらいたいということですが、沖縄は今おっしゃるように、我が国の外交の面あるいは安全保障の面で非常に重要な地域でありますし、また東南アジアとの関係で、東南アジアを中心とするいわゆる人材センター等も立派にでき上がったわけでありますから、そうしたことも踏まえて、これは積極的に開催するという考え方でこれからいろいろと相談してみたいと思っております。
  147. 玉城栄一

    ○玉城委員 時間が参りましたので、これで終わります。
  148. 浜田卓二郎

    ○浜田(卓)委員長代理 次に、木下敬之助君。
  149. 木下敬之助

    ○木下委員 皆さんも質問されておりますが、私も、さきにジュネーブで開催されました米ソ首脳会談についてご質問いたしたいと思います。  この会談は、両国の間に幾つかの重要問題で重大な相違が残っている旨を明記した共同声明を発表して幕を閉じましたが、少なくとも米ソ首脳会談では不戦を誓い核戦争だけは何とか回避したいという合意が生まれ、その対話の拡大に世界は大きな期待を寄せているのが実情ではないかと考えます。この共同声明を見る限り、抽象的表現ながらも、核抑止の枠内で米ソ両国核兵器相互削減の方向性を示したものと受け取れますが、外務大臣は、この共同声明で示した核軍縮についてどのように理解されておられますか、どう進展すると考えておられるか、お伺いいたします。
  150. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは六年ぶりに開かれた首脳会談ですが、開催自体が、ソ連初の具体的な数値を含む対案の提示とこれに対する米側対案の骨子提示と、既に軍備管理軍縮交渉に二足のモメンタムを与えてきておるわけですが、さらに今次米ソ首脳会談共同声明におきまして、両国政府首脳がことし一月の米ソ間の合意をもとに、米ソ間の交渉を促進することを改めて確認したことは、今後の軍備管理軍縮交渉に一層のモメンタムを与えることとなるものと期待いたしております。いずれにしましても、米ソ軍備管理軍縮交渉は、米ソ双方の主張にはまだ相当基本的な隔たりがあると承知しております。したがって、今後相当の紆余曲折を経ると見られるわけでございます。しかし、これが何とか実りあるものになっていくように双方で努力してもらいたい、せっかくの世界期待を裏切らないようにしてほしいと思っております。
  151. 木下敬之助

    ○木下委員 米ソ首脳が、対話の継続と相互訪問による再会談合意したということでございます。これは考えてみますと、来年ソ連の方からアメリカヘ行き、次の年にアメリカの方からソ連へ行くということで、少なくとも今後二年間については、危機による極度の緊張は回避し得ることを保障し、その間両国は健全な対話の継続が可能になった、このように考えますが、その意義外務大臣はどのように受けとめておられますか、お伺いいたします。
  152. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 レーガン大統領が帰国後の米議会への報告の中で、ゴルバチョフ書記長が来年訪米をし、同大統領は再来年訪ソする予定だと述べておりますが、相互訪問に関しこれ以上の具体的な時期等については、今後とも外交チャンネルで行われると思いますが、そういう大筋が決まったということは大変意義のあることだろうと思います。確かに両首脳とも、双方で重要な意見の相違があった旨は認めておるわけでありまして、そういう点では、今後の米ソ間の協議あるいはまた米ソ首脳の交流といったものにつきましても、我々としてもただ希望だけを抱くということでなくて、冷静に見ていかなければならぬ面もある、こういうふうに思っておりまして、いたずらに幻想だけを抱くべきじゃないと思います。しかし、とにかく二年間の相互訪問ということは、東西の安定化あるいはまた米ソの安定化については大きな前進となっていくであろう、こういうふうに思います。
  153. 木下敬之助

    ○木下委員 そういう幾つかの相違点核軍縮、こういった問題については、これから何年もかけていろんな交渉を積み上げていくわけですが、当面の問題として、今年末までに米国議会が批准手続を完了しないと失効することになる、このように聞いております第二次米ソ戦略兵器制限条約、SALTⅡ、これを米ソ首脳会談の結果を受けて、米議会はこの条約の批准手続を進めるもの、そのように外務大臣は考えておられるか、予測されるかどうか、お伺いいたします。     〔浜田(卓一委員長代理退席、委員長着席〕
  154. 中平立

    ○中平政府委員 SALTⅡ条約は、御存じのように一九七九年六月十八日に署名されたわけでございますが、その年の暮れにソ連のアフガニスタン侵入等もございまして、アメリカの議会においては批准されないままになっておるというふうに承知しております。現在までのところ、我々といたしましては、米議会におきまして右条約の批准の動きはないものというふうに承知しております。
  155. 木下敬之助

    ○木下委員 重ねてお伺いしたいのですが、米ソ首脳会談両国が責任ある行動をとることが必要である、この旨を表明して終幕した、このように思いますが、このSALTⅡを批准することが責任ある行動を裏づけることになるのではないか、このように考えるのですが、この点はどうですか。
  156. 中平立

    ○中平政府委員 お答えいたします。  その点につきましては、アメリカはことしの六月十日に、SALTⅡ条約の遵守継続につきまして暫定決定をいたしました。アメリカは、従来からSALTⅡ条約の遵守をやっておるわけでございますが、その決定は、次の二つの条件のもとに従来どおりに遵守するということでございます。その二つと申しますのは、ソ連が同様の抑制を行うという限度においてやるということが一つ。それからもう一つは、ソ連が今後米ソ軍備管理交渉におきまして積極的に軍備削減の合意を追求する、この二つを条件といたしまして今後も遵守するということでございます。また、アメリカはその際に、このような暫定的な政策をとっていくに当たりまして、アメリカ及び同盟国の長期的な安全保障の利益に与える意味合いというものを、常に再検討していくということを同時に表明しておるわけでございます。
  157. 木下敬之助

    ○木下委員 次の質問に移ります。  米ソ首脳会談で論争の争点となったものはどういうところが問題であったのか、また、SDIについて米ソ両国の見解の相違点大臣はどのように理解されておられるか、お伺いいたします。
  158. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 米ソ首脳会談では、非常に重要な意見の相違もあったと言われております。例えばSDIについては、相当長時間にわたって首脳だけの会談が行われた。それは相当積極的といいますか、厳しい議論が展開されたということは後で大体判明をしておるわけでありますし、我々も通報を受けております、SDIについては、米ソ両国とも依然として見解に大きな隔たりがあるということでございますし、その他地域問題等、具体的な詳細の議論にわたっては承知しておりませんが、やはり議論が行われたのじゃないかと思っておりますが、特に今申し上げましたSDI、これは両国の考え方は基本的に対立しておるのではないか。  ですから、これについては今後とも米ソ間で首脳会議等も継続して行われるわけでありますし、それは非常にロングレンジの問題でございますから、私としては、こうした大きな意見の相違点両国によって何らかのひとつ合意といいますか、解決の方向へ進んでいくように期待しております。しかし、これは大変難しい問題だ、こういうふうに思っておるわけであります。
  159. 木下敬之助

    ○木下委員 SDIの交渉で、これからどんなふうに意見の相違が縮まっていくか、そういう方向を長期にわたって期待されておるという大臣の観測はわかりましたが、現時点で相違というのを、どの点が相違しておると認識されておるのかをお伺いいたしたいと思います。
  160. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これまで得られた情報を総合しますと、レーガン大統領ゴルバチョフ書記長に対しまして、SDIは攻撃兵器ではない、SDI研究の成果はソ連側と共有し得るものであること等の米国の基本的な立場説明しながら、米国としては、SDI研究についてソ連側に譲歩して制限を加えるつもりはないとの立場を貫いたものではないかと承知しております。これに対しまして、ゴルバチョフ書記長も従来よりのソ連の主張を主張し、ソ連としてはこのSDIはむしろ軍拡につながるといったようなことも、ゴルバチョフ書記長は記者会見もしておりますが、そうした基本的な主張を繰り返した、そこで両首脳間の意見の一致は得られなかった、こういうふうに承知をしております。
  161. 木下敬之助

    ○木下委員 我が国も、このSDIに理解を示すということを総理が言われ、そして参加とか支持とかをめぐって今いろいろと論議されておる。これは我々も大変重要な問題として、国民の代表として真剣に勉強して取り組まなければならぬ、このように考えております。  そういう中で、今言われた二つの相違点で軍拡につながるという、しかも宇宙を軍拡に巻き込んでいくという、こういう問題と防御兵器であるという問題と出てきておりまして、見ようによっては二つの点のようでありますが、防御兵器というこの概念、このことがある程度明らかになってくると、もう少し状況も違うのじゃないかという感じも持っておるし、我々は今まで、攻撃兵器と防御兵器なんというものがあるのだろうか、兵器というのは皆攻撃に決まっておるという感覚だったのですが、この防御兵器というものの考え方を少しわかるように教えていただきたいのです。
  162. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 防御兵器とは何かという一般的な問題について、ただいまこの場で私から御説明する立場にございませんけれども、SDIとの関係につきまして、アメリカ側がSDIが防御兵器であるということを主張しております根拠は、核のように大量破壊兵器ではなくて、SDIが志向しております全体のシステム、それから技術的にSDIにおいて使われると想定されます粒子ビームあるいはレーザーというものが、極めて焦点の小さいものにしか適用されないということ、それからSDIを導入しようという、研究を進めようというその全体の意図が防御的な意図であるというような、総合的な考え方にのっとったものであるというふうに理解しております。
  163. 木下敬之助

    ○木下委員 私、何度もこのSDIについて質問してきたのですが、聞いたら何か少し答えてくれるのですね。ところが、我々はかなり膨大なSDIというものについて、何をどう聞けばいいのか、聞いて出てきたものだけでは、我々の理解の度合いというのはそんなに進んでいかないのですね。前にも、ぜひSDIに関するものは資料をくれと申し上げておりまして、そんな中で日本に向こうから説明の方が来られたときのことも、聞けば答えてくれると言ったままで終わっております。その後、日本の方から調査も行かれたのでしょうから、その調査の結果報告等を出していただけませんか。ちょっとその点だけ、一体このSDIの審議というのはどんなふうにやっていけばいいのか。  私も、この四十分の時間をいただいたら、最初にSDIに関して報告するものを全部報告してくれ、四十分の間、そちらで言いたいことを言ってくれというようなことでも言わない限り出てこないのかなと、余り好意的じゃなく受け取っておりますので、この質問をし出してからかなり長いですから、そろそろ少しはそちらにある資料を親切に出されるという姿勢になられたらどうかと思うのですが、どうですか。
  164. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 SDIは一つの構想でございまして、そこには科学技術、戦略、制度、あらゆる面があるわけでございます。したがいまして、ただいま委員御指摘のように、先方からも来、こちらからも人を派遣いたしまして、いろいろの一般的な研究を進めておるわけでございまして、現在も政府といたしまして慎重にこれを検討しているところでございます。したがいまして、個々の会談あるいは個々のミッションにつきましての先方の説明等をこの国会の場で御提出するということは、残念ながら適当でないというふうに考えざるを得ないわけでございます。この点、御了承いただきたいと思います。
  165. 木下敬之助

    ○木下委員 今まで私が聞いてきた範囲では、聞いてください、答えられるものは答えます、こういう返事でずっと積み重ねてきたのですよ。局長がその辺の事情みたいなものを全部引き継いでおられるかどうか、また自分のお考えで今後どのようになさるかわかりませんが、何も言われないような機密まで皆教えると言っているわけじゃないのですから、今の総理、その次の総理とかいろいろありますけれども、これは将来、その時代からもっと離れた先まで影響があるかもしれないような問題、その問題を我々は国会議員として国会で審議するのに、資料も何ももらえない、これでは話にならない。どうですか。今までの過去の答弁の中で、聞いてください、お答えします、こういう答弁だったのですね。聞いてくれ、答えるといったって、私が気がついたことを聞いて答えられたって、膨大なものの中の自分の気がついたことだけを聞くようなことで、審議にならないじゃないですか。  だから、この四十分の時間をもらったら、冒頭に私が、四十分間何でもいいからSDIに関することをしゃべってくれとでも言わないとそちらからはしゃべらないのか、こう聞いているわけですね。何かそちらで出せるものを、調査まで派遣したのだから、言える範囲のものを出されたらどうですか。(「聞いてもらわなきゃ答えられない」と呼ぶ者あり)だから今私は聞いておるわけですよ、そちらで出せるものを出してくださいと。今言われたように、これは今出せない、じゃいつ、どう出すのですか。終わった後出せないというのなら、私が自分の質問時間を使って、その間に出せるものをみんな出してくれと言えば出すのですか、こう申し上げているのですから、何か答えてくださいよ。
  166. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 出せるものは、当然こちらにお出しすべきではあるわけでございますけれども、先ほども述べましたように、SDIについてはいかんせん、非常に広い広がりを持つ問題でございまして、調査団が行きまして、九月三十日、十月一日でございますけれども、いろいろ話を聞いておりますが、それもほんの一部ということでございます。先方におきましても、もちろんこれを公表するということで話しておるわけではございませんので、その調査団の本当の概要というようなことを除きまして、調査団の報告自体を出すというわけにはまいりません。我々といたしましても全体を、制度面、戦略面、それから技術面等につきましてまさに検討中でございますので、そういう段階におきまして物を出すということはできないわけでございますが、本件につきましては、先生御存じのとおりアメリカの権威ある機関等からいろいろな報告書が出ていることは出ております。それは我々も全部所有しておりますので、そういうものでございましたならばいつでもお出しいたしたいと思います。
  167. 木下敬之助

    ○木下委員 そういうことで、ぜひそちらの方から出せる資料を出して、一緒に理解をしようという姿勢で当たっていただきたいと思います。この問題はどこから出てきたかというと、米ソ首脳会談の中の最大の相違点、そういうことで、今後の一番大きな問題になっていくであろう世界相違点でもあるようなSDIですね。その問題で論議のしようがないというのは、とんでもないことだと申し上げているわけですから、長期にわたる大きな問題であることも踏まえまして、そのときそのときの責任者だけでなくて、我々が本当に将来にわたって責任を負わなければならない問題ですから本気で当たってもらいたい、このように思います。  それでは次に移ります。  外務大臣は、米ソ首脳会談の結果を受けて、米ソ会談全体としては、米ソ関係がこれまでと違う新しいスタートを切ったとはっきりと言えると思う、このように評価されておられますが、外務大臣が新しいスタートとして着目しているのはどのような点を指しておられるのか、お伺いいたします。
  168. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 第一には、長時間にわたって個別会談、いわゆるテータテートが行われたこと。これは、米ソ首脳会談歴史の中でも少ないのじゃないかと思いますが、全体十五時間の会談の中で五時間以上費やされた。そこで首脳お互いを非常に知り合うことができた。そういう意味では、個人関係というものがつくられたことは非常に大事じゃないか。個人関係によって問題がかえって逆になった――フルシチョフケネディ会談の後で、フルシチョフキューバに攻撃をしかけたというようなこともありますけれども、しかし、今回の場合はお互い力量を知り合ったということで、非常によかった面の方が強いのじゃないか、こういうふうに私は思っております。  それから第二に、近い将来における両国首脳相互訪問、これが合意をされたこと。  第三番目に、大きな相違点は残しながらも、軍備管理交渉の促進につき合意がなされたこと。これはやはり、今後の両国間の安定化と世界平和と軍縮への第一歩として新たな出発点だ。  さらにそれに加えるならば、二国間について相当前進があって、例えば航空交渉等で具体的な合意がその後なされた。それからまた、領事館の相互設置とか具体的文化協定の調印とか、そういうことは全体的に踏まえますと新たな出発点といいますか、そういうふうに呼ぶにふさわしい会談ではなかったか、こういうふうに思っております。
  169. 木下敬之助

    ○木下委員 大臣が今最初に言われた個人的関係がある、この辺でちょっと重ねて質問いたしますが、会談すれば個人的関係はあるわけですけれども、特に今回幾らか個人的に胸襟を開いたというか、そういうふうなムードみたいなものが少し感じられたのか、どんなところでそういうことを大臣が感じられたのか、お教えいただけるとありがたいと思います。
  170. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 事前のお互いの個人的な認識というのは、レーガン大統領それからゴルバチョフ書記長とも、会って話をした雰囲気とは随分違っておったのではないか、相当決定的に相離れておった。レーガン大統領のこれまでのソ連に対する発言、あるいはゴルバチョフ書記長のアメリカに対する発言あるいはレーガンに対する認識、そういうものが、会ってみて五時間も真剣に論議をし討議する中で相当これは意識の問題として変わってきて、これは十分お互いに話のできる相手だというふうな認識が深まってきたんじゃないだろうか。それが結局、事務当局等でいろいろと用意した文書等もむしろ抑えた形で、両首脳の非常なリードでもって積極的な合意がこの中に組み込まれるというふうな場面もあったようで、私は、そういう意味では二人の関係というものは非常にいい方向に進んできているんじゃないか、こういうふうに思っております。
  171. 木下敬之助

    ○木下委員 私の感じたことですが、米ソ首脳会談をめぐってソ連が提示した核軍縮案では、従来ソ連が主張していた現状凍結から核弾頭の削減に切りかえ、INF削減交渉については英仏との個別交渉によるとの方針を示すなどのこういった点を見ると、従来のソ連の対応姿勢ゴルバチョフ政権になってから徐々に変化しているように受け取れますが、このようなゴルバチョフ政権のアプローチの仕方の新しさについては、外務大臣はどのような感触でこれを受けとめておられるか、お伺いいたします。
  172. 中平立

    ○中平政府委員 お答えいたします。  木下先生御存じのように、米ソ首脳会談を控えましてことしの九月末から十月にかけまして、核兵器運搬手段とか核弾頭の削減につきまして、具体的な数字を含む提案ソ連がしてきたわけでございます。こういうことから一つの進展ではないか、こうみなし得るわけでございます。しかしながら、ソ連案と申しますのは、戦略核兵器の定義に関するものとか、それから今おっしゃいましたINFにつきましては依然として英仏の核を算入しようとか、それから対象地域をヨーロッパに限定しようとかいうようなことで、ソ連側にとって一方的に有利な要素がかなり含まれておるわけでございまして、そういうことから、アメリカ立場からしますとかなりの大きな問題を含んでいるのではないか、こう判断したものと思われます。  これに対しましてアメリカは、やはり米ソ首脳会談を控えましてソ連提案の諸要素を十分に勘案いたしまして、迅速にアメリカ案を提示したわけでございます。このようにアメリカは、米ソ首脳会談を実のあるものにするということで、積極的に努力したというふうに我々は非常に評価しているわけでございます。  首脳会談の共同発表のように、この首脳会談におきまして今後とも米ソ間で交渉を促進するということを改めて確認いたしましたので、先ほどから大臣が言われますように、今後この軍備管理交渉に一層弾みがつくというふうに判断されるわけでございます。両方の基本的な立場にはかなり相違点もございますし、いろいろな経緯があると思いますが、我々といたしましては、今後両国が真剣に交渉して実質的な成果をできるだけ早く上げるように期待したいと思っておるわけでございます。
  173. 木下敬之助

    ○木下委員 外務大臣は、米ソ首脳会談について、真剣かつ充実した話し合いが行われたことは将来に向けてよいスタートだ、このような評価もされておられるようですが、この首脳会談米ソ関係歴史的分水嶺になるのか、それとも歴史の中でのただ小さな起伏にとどまるかは、これからの米ソ両国の責任ある行動にかかっている、このように思います。外務大臣としましては、ゴルバチョフ政権米ソ首脳会談で表明した責任ある行動をとるもの、このように受けとめておられますか、また、このジュネーブ会談を境に米ソ関係の流れは変化するものと考えておられますか、お伺いいたします。
  174. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 レーガン大統領も言っておりますように、結局言葉ではなく行動であるということであろうと私は思います。私はこの両国首脳合意というのは、まさに歴史的な意味を含んだ合意であろうと思いますし、これが大枠として決まって、そのもとで弾みがついて今の軍備管理とか軍縮交渉とか、その中身で対立しているような問題もこなされていって一つの見通しがついてくることを期待をしておるし、また世界期待しておると思います。したがって、この会談の成果というものが一層大きく前進をしていかなければならない、そういうことになればまさに歴史的な分水嶺だ、私はこういうふうに思うわけでございます。これは、日本としても心から期待もし、そのための日本なり努力もやはりやっていかなければならぬと思っております。問題は、この首脳会談合意がこれからどういうふうに実現され、実行されていくかということにかかっておるのじゃないか、こういうふうに思います。
  175. 木下敬之助

    ○木下委員 そういうことで、米ソ首脳会談の結果、米ソ間の対話交流の進展は東西関係緊張を緩め、日本を取り巻く国際環境に及ぼす影響は少なくありません。したがって、ソ連のアフガン侵攻以降、西側の団結を基軸としていた我が国の対ソ外交の基本方針について改めて検討する必要に迫られているのではないか、このように考えますが、大臣のお考えをお伺いいたします。
  176. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、この米ソ首脳会談のいい雰囲気というものが、これからの日ソ外相会談等にいい意味での影響が出てくるということを期待をしておりますし、これは日ソとも努力をしていかなければならぬ点だ、こういうふうに思っております。  しかし、日ソ関係は、これまで日ソだけの問題としていろいろと歴史を繰り返してきておりますし、特に領土問題という日ソ間につきましては長い間の未解決の最大の懸案があるわけで、この点について残念ながらソ連と意見が一致してないわけでございます。そういう特別な事情もあるわけでございますし、これを我々はひとつ何とか解決をして、そして平和条約を結ぶという基本的な外交の方針には今日も変わりはないわけでございますが、そうした基本的な姿勢は踏まえながら、しかし、米ソ関係の変化あるいはまた東西関係の変化というものも十分念頭に置いて、これからの日ソ関係改善に新しい一つスタートがこれまた生まれることを期待をして努力をしてまいらなきゃならぬ、こういうふうに思います。
  177. 木下敬之助

    ○木下委員 日ソ関係については言わずもがなですが、ちょっと言ってみますと、日ソ関係が急激に冷却し出したのは、七八年の反覇権主義を盛り込んだ日中平和友好条約締結からである、このように思いますが、いわゆる七八年体制によるソ連の対日政策が我が国を硬化させました、この政策ももう述べませんけれども。しかし、ゴルバチョフ政権の誕生は強硬な対日姿勢を変化させるとともに、先ほどから述べてまいりましたように、米ソ首脳会談の結果を受けて東西関係の新しい動向は我が国の対ソ外交に新たな対応を求めている、このように思います。  そういう中で、東西関係の変化に伴う世界政治情勢の動向を見きわめて、世界経済の動きを踏まえた上で、我が国の基本的立場を固める必要があるわけですが、日米協力を基盤とする我が国は、この際日米首脳会談を開いて日米双方の立場を確認する必要はないのかな、このように考えるのですが、どうでしょうか。大臣はどうお考えになりますか。
  178. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今の段階で、日米首脳会談を開くというような議論とか、そういう話し合い等はまだ出てきておりません。
  179. 木下敬之助

    ○木下委員 お伺いいたしたいのですが、何か来年の一月上旬に中曽根首相がカナダヘ公式訪問すると聞いております。この予定があるのかどうかを聞いて、あるとすると、その機会にちょっとレーガン大統領との日米首脳会談を考えられないのかな、こういうふうに思うのですが、どうでしょう。
  180. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 中曽根総理は、カナダを訪問したいという気持ちを持っておられることは事実でございますが、何せ臨時国会の日程も見通しがつかないということでありますし、その辺のところはまだ確定しておりません。
  181. 木下敬之助

    ○木下委員 米国は、ソ連軍のアフガニスタンヘの侵攻により、対ソ抗議のため報復措置を実施していますが、今回の米ソ首脳会談の結果、その報復措置の一部が解除された形となっておる、このように思います。我が国が実施しておる対ソ制裁措置に関しては、その再検討の必要性を外務大臣は今回の共同声明からはストレートに感じない、米国から通報を受けてから検討する、このように言ったと思われますが、米国から通報がなければ解除をしないのか、また解除をする場合にはどのような形で行うのか、お伺いいたします。
  182. 西山健彦

    西山政府委員 お答え申し上げます。  本件につきましては、先般来日いたしましたウォルフォウィッツ国務次官補からも話は聞きました。しかし、まだいろいろとわからない点もございますので、さらに外交ルートを通じて説明を受けるということになっております。  ただ、この段階で申し上げられますことは、確かにアメリカは一九八〇年、カーター大統領がアフガンと関連いたしまして対ソ制裁措置として取り上げた幾つかの措置、そのうちの相当部分をその後事実上解除をしてきているということはそのとおりなのでございますけれども、他方、現在のレーガン政権のアフガンについての態度というものは、むしろカーター大統領時代よりも厳しい姿勢というふうにアメリカ国内でも評価されているわけでございます。したがいまして、アメリカのそういう実態的な態度を見ます場合に、やはり我が国といたしましても、アフガン問題の本質が変わらない限り、我が国の独自の判断として、現在行っておりますところのいわゆる公的信用供与についてはケース・バイ・ケースに慎重に検討していく、そういう措置を現在の時点で変えるというつもりはございません。
  183. 木下敬之助

    ○木下委員 そのアフガンの情勢なんですが、アフガン問題の政治解決の可能性も取りざたされておるようなんですが、アフガンからソ連軍が撤退する、こういった旨の情報は入手しているのかいないのか、何かございますか、お伺いいたしたいと思います。
  184. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 アフガン問題については、首脳会談でも相当論議されたというふうに聞いておるわけでございます。その後いろいろと報道は出ておりますが、また、私たちも米国側から話も聞いたわけでございますけれども、何らかの動きは出てくるかもしれないと思います。しかし、今ここで具体的な方向を今の情報で私から申し上げる立場といいますか状況にはない、こういうふうに思っております。
  185. 木下敬之助

    ○木下委員 ポーランドに対する制裁措置、これはきのうですか、二十六日にこれを解除した旨、外務大臣は明らかにされておられますが、解除するに当たり、やはりアメリカより何らかの意思表示を受けて解除したということでしょうか、お伺いいたします。
  186. 西山健彦

    西山政府委員 ただいま先生御指摘のケースは、債権の繰り延べについて合意ができたということを指しておられるんだろうと思いますけれども、この件は、実は既に八三年の段階におきまして、西側諸国がそういう方向に進もうというふうに一致していたわけでございます。したがいまして、今回その後の交渉の結果といたしまして合意が成立いたしましたけれども、これは確かにその限りにおいては、ポーランドに対する制裁措置が一つなくなったということを意味いたしますが、しかし、ポーランドに対する制裁措置は、そのほかに新規の信用供与は行わないという項目があるわけでございまして、これにっきましては何ら変更していないわけでございます。
  187. 木下敬之助

    ○木下委員 時間が参りましたので、最後にSDIに関する資料をよろしくということをもう一度申し上げまして、質問を終わります。
  188. 愛野興一郎

    愛野委員長 次に、田中美智子君。
  189. 田中美智子

    ○田中(美)委員 昭和五十四年、八十七国会の三月一日の衆議院の決算委員会で、園田外相が南ア問題について次のように答弁していられます。ちょっと読んでみます。「残念ながら実情やむを得ずというか、一部の貿易をいまなおわが国もやっておるのが実情でございます。したがいまして、わが方としては、国連憲章の決定にかかわらず人種差別ということは断じてやってはならぬことでありますから、これについてはブラックアフリカ諸国との経済関係の拡大を図りつつ、一方には南アに対する関係は逐次縮小していって、世界の世論に訴えていきたいと考えておるところでございます。」「まだはなはだ不徹底の段階でございます。」このように答えていられます。  今、南アフリカのアパルトヘイト問題に世界の関心が集まっているときに、外務大臣としては、この園田元外相の態度、これを引き継いでいかれるのか、これをさらに進めていかれるのか、御見解を伺いたいと思います。
  190. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 我が国は、従来より一貫して南アのアパルトヘイトに強く反対するとの立場から、南アとの間に外交関係を有さず、領事関係にとどめ、また南ア投融資を制限するなど、西側主要国に比しまして厳しい措置をとってきておりますが、さらに十月九日に追加措置を発表しまして、全体として南アとの関係はより制限的になっておるというふうに考えております。  南アとの貿易一般の制限につきましては、自由貿易の原則に立脚するとの我が国の基本的立場、また資源の大部分は海外からの輸入に依存している我が国の実情にかんがみまして、現時点ではこれを行うことは考えておりません。現実としても、過去五年間の貿易量は横ばいでありまして、決して伸びてはおらないということを申し上げたいと思います。今後、南アの情勢の推移いかんによっては将来貿易面での追加措置を考えるとしても、我が国一国のみで効果はありませんので、諸外国と一致した措置として行う必要があろう、こういうふうに思うわけであります。
  191. 田中美智子

    ○田中(美)委員 園田外相は、貿易縮小ということを言っていられるわけです。安倍外相の態度は、縮小ではなくて横ばいでよろしいということなんでしょうか。
  192. 三宅和助

    ○三宅政府委員 園田外務大臣の御答弁は、関係全般について縮小の方向に持っていくということでございます。現実問題としましてそれ以来、例えば血漿製剤の輸入の自粛、それから、最近また行いましたコンピューターとかあるいはクルーガーランド金貨の輸入の禁止または自粛ということは、ある意味におきましては縮小の方向でございます。また、直接投資その他につきましても……
  193. 田中美智子

    ○田中(美)委員 違うことを答えないでください。安倍外相に伺っているわけです。コンピューターがどうしたとか、こういうことはもうはっきりと表明されていることですから、各国と一緒にやっていることです。全般として縮小を図っていきたいというふうに言っていられるので、これよりも後退していくのか、これよりも前進していくのかということを伺っているわけですね。ところが今外相は、より厳しくやっていくというふうに言われているわけですけれども、この時点から横ばいだということは、縮小の方向に持っていくということではないのかと私はあなたに伺っているので、コンピューターがどうのこうのということは伺っておりません。
  194. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いや、コンピューターとかクルーガーランドという通貨は非常に大事だと私は思うのですね。これはやはり、縮小の方向に向かっての政府の大きな措置であるわけであります。全体的には、貿易そのものは自由貿易という原則でなかなか政府が手を下せない。しかし、政府の関係する投融資等については制限をしている。私は、園田外相時代よりは、日本の政府の態度は全体的には厳しくなってきている、縮小している、そういうふうに思っております。特に、今回の措置等でも政府は毅然とした対応策をとっておりますし、また、今後の南アの情勢次第によっては、国際的な協力のもとに日本としてさらに措置をとる必要がある、追加措置をとる必要があるということになればやっていかなければならない。やはりアパルトヘイトに対する反対という日本政府の基本方針は、今後ともいろいろな面で貫いていきたいというふうに思っております。
  195. 田中美智子

    ○田中(美)委員 いろいろの面で制裁をしていきたいということは結構だと思いますけれども、やはり貿易面で、幾ら自由貿易といっても、縮小していくと言いながら横ばいである。確かに、部分的に金貨やコンピューターなどに対することはアメリカと歩調を合わせて、特に一部分に対してだけやっているということは承知しておりますけれども、非常に厳しいと言われますが、私はなまぬるいのではないかというふうに思うわけです。  その点で次の質問をいたしますが、先日、共産党・革新共同の小笠原議員と岡崎議員と私と三人で南ア問題についての申し入れをいたしました。そのときに大臣が、今もそのようなことをちょっとお触れになりましたが、これから新たな情勢が出れば新たな制裁も考えたいということ空言っていられたわけです。それを私は覚えております。十月九日に日本政府も、国連決議への対応の措置というものを、今言われたような四項目を出されたわけです。ところがその後、十月二十五日、ソエトで暴動が起きまして――暴動は、ずっとあっちこっちで連続して一年以上続いているというふうに思いますが、ソエトの暴動が起きたときに南ア政府は、報道陣の立入取材禁止という措置をとられたわけです。  それから十一月二日には、徐々にですけれども、今全国三十八地区にわたって写真撮影を禁止している。テレビの撮影も禁止、それから音声の録音も禁止するということをしました。それから一般の新聞記者も警官の許可があるか、もしくは警官と同行すれば取材できるということで、事実上は取材禁止。非常に警察の強い国ですので、事実上は取材禁止である。もし、この禁を犯した場合には懲役十年もしくは二万ランドの罰金、日本円にして百六十万円ぐらいだと思いますが、こういう厳罰に処するということを聞いております。この新たな事実も外相は御存じでいらっしゃるでしようか。
  196. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今の報道規制については、私も承知しております。我が国は、御承知のように十月九日に対南ア措置を発表したわけでありますし、今後さらに追加措置をとるか否かということについては、南ア情勢の進展を十分見きわめた上で検討すべきである、これはお答えをしたとおりでございます。そういうことも考え得る、こういうことでありますが、南ア政府が報道規制措置をとったことは望ましくないと思います。世界がこれは批判しておる、そのとおりだと思うわけです。  しかし、こうした動きによって我が国としてさらに追加措置をとる、報道規制措置に対して何らか我が国が措置をとるべきじゃないかという点ですが、我が国としましてはこれまで南ア政府に対しまして、アパルトヘイトに一貫して反対立場である、また、右早期撤廃に向けて話し合いによる解決が図られるべきである、さらに、南アにおける人権抑圧は認められないということを機会あるごとに伝えておりますし、同時に、世界にも日本のその政策を明らかにしております。したがって、右一環として、今後の報道規制についても望ましくないことを適当な機会をとらえて南ア政府には伝えてまいりたい、こういうふうに思うわけであります。
  197. 田中美智子

    ○田中(美)委員 適当な時期というのは大変あいまいですけれども、ぜひこれは今おっしゃったように厳しく申し入れて、こういうことがないようにというふうに思うわけですが、この情勢に対して、どうして報道規制をしたかということは御存じでしようか。
  198. 三宅和助

    ○三宅政府委員 お答えします。  南ア政府の説明によりますと、これはいろいろな報道がなされますとかえって暴動が激しくなる、そうなると流血が激しくなるので、全体の措置の一環として、むしろ事態を鎮静化するためにしたんだという説明をしております。
  199. 田中美智子

    ○田中(美)委員 日本政府はそれを了解できるでしょうか。
  200. 三宅和助

    ○三宅政府委員 私たちといたしましては、既に大臣から御答弁いたしましたようにやはり報道の規制は望ましくないということで、既に一部は申し上げてありますが、今後とも機会を見ましてそれはお伝えしたい。なお、正確な情勢につきましては、別途また総領事館を通じまして情勢の把握に努めてまいりたいと考えております。
  201. 田中美智子

    ○田中(美)委員 この報道規制をしいてから、今政府の言われたことと私が調べましたこととほぼ一致していると思うのですけれども、報道されたりテレビで放映しますと、それに放映されたいがためによりめちゃくちゃなことをやる、だから報道陣が暴動を扇情している結果になっているというようなことを南ア政府は言っておるわけですが、それから約一カ月たっておりますが、この間に、報道されなくなってから約八十人から百人の人たちが殺されています。鎮静化するどころか、もっと激しくなっているわけです。しかし、残念ながら私たちは、テレビではついこの間までは部分的に見ることができたわけですが、今はほとんど見ることができなくなっている、聞くことも読むことも非常に少なくなってきている。その陰で八十人から百人が死んでいる。この一週間でも、約五十名が死亡しているということを私は聞いております。一昨日、二十五日ですが、夜のNHKのニュースで報道されておりました。ここでも、この一週間のうちに四十人以上が殺されているということを報道していたわけです。治安部隊が民衆を射殺しているのがほとんどだということです。  こういうことを見ますと、報道規制をする理由というのは全く根拠がない、むしろ世界に対して耳と目をふさいで弾圧を自由にやっていける、やっていくんだということ、また、右翼や白色テロの横行をしやすくしている、もう一つは、アパルトヘイトと正義の闘いをしている人たちの闘いが世界にわからなくなるということは、世界からの精神的な、また物質的な支援というものの効果を弱める役割をこの報道規制はやっているというふうに思います。そういう点からしても、これは新たなアパルトヘイトの強化策と見ることができるのではないかと思います。  安倍外相は、新たな情勢が出ればこれに対して制裁を考えたいと言っておられますので、南ア政府に対して、報道規制をやめさせろということを言うだけでなく、新たな制裁というものを検討すべき時期に今来ているのではないかと思いますが、これを検討していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  202. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 南ア政府はそれなり理由を言っておりますが、日本政府は、しばしばお答えしているように報道規制は好ましくないという態度で、南ア政府に対してこれまでも全般的な形の中で述べておりますし、今後とも機会を見て南ア政府に申し入れたい、こういうふうに思っております。  制裁措置については、これは日本だけやるということじゃなくて、国際協力のもとにやって初めて効力があるわけですから、そういう点は今後国際協力がどういう形で進んでいくか、そういう情勢になるか、十分ここら辺は検討して今後の対応は考えていかなければならない。報道規制が行われたからといって直ちに制裁をするという考えは、今のところ、日本政府として単独にやるという考えは持っておりません。
  203. 田中美智子

    ○田中(美)委員 世界と一緒にと言っているのですが、これは十月十五日の朝日新聞です。朝日の芝実さんという方が国連公聴会などのときに記事を書いていられますが、この中で「米国の企業が南アから撤退しても、日本がすぐその穴を埋める、という見方も出ている」、こういう報道をしていられます。結局、今のようなあいまいな、世間を見ながら、どこかがやったらそれからゆっくり考えるんだという態度では、こういう見方をされても仕方がないのではないかと思います。そういう態度が結局南ア政府に対しても、日本はアパルトヘイトに対しては余り怒っていないんだというふうな印象を非常に与えているのではないかというのが、この新聞広告です。  これは、十一月十六日付のある新聞にこんなに大きく載っておりました。伝えておきましたので、大臣もごらんになっているかと思います。これは現物のコピーですから、大きさも全部一緒です。これを見ますと、「発展を支える力」という形でESCOMという電力会社が、今後の計画やESCOMに対する投資の機会へのお問い合わせはここにと書いてあるわけですね。日本は、投資は長いこと禁止しているはずですね。それも最近の話ではなくて、投資はもっと前から禁止しているはずです。そういうことをわかっていながら、投資してくださいと言わんばかりのこんな大きな広告が載っている。その下には石炭会社のこういう大きな写真が出まして、この石炭会社がこの電力会社をこんなに支えている、だからこれは非常に発展する電力会社ですから投資したら有利ですよ、こういうふうな感じになっているわけです。  それからもう一つは、こういう果物のような写真が出ておりますけれども、これは全部読みますと長くなりますのでちょっと短くしてみますと、肥料やウール、果物、皮製品、ファッションウエア、精密機器、あらゆる原材料など輸入して、貿易のパートナーになりましょうという形で、日本の企業ともっともっと貿易をやっていきましょうということです。  安倍外相、これは見せながらやっているわけですから、ちょっと目をあけてごらんになってください。  それから、鉱山物資のたくさんある国ですので日本の産業の発展に貢献させてください、こういう大きな広告を出しています。  まだあります。「輝く太陽が育てた南アフリカ共和国のドライブルーツ」という形で果物をいっぱい並べまして、これのドライにしたものを買ってくださいということ。この下には、「喜望峰・ケープタウンとビクトリアの滝」十二日間のツアーですね。これは近畿ツーリストの名前になっておりますけれども、協賛という形で南アフリカ観光局、それから南アフリカ航空、これは日本に乗り入れをしていないところです。それが協賛という形で、まさに南ア政府とじかにやってこういう大きな広告を出しています。観光は、今のところ政府は制裁としてやっていないようですけれども、相手の政府とこういう連携をしている。  こういうことをしている。これは一体どういうふうに大臣は思われますか。こんなことが許されてよろしいでしょうか、こういう南アフリカの政府及び企業の態度ですね。
  204. 三宅和助

    ○三宅政府委員 お答えします。  今の先生御指摘の記事、私も読ませていただきました。直接投資は政府として禁止しております。したがいまして、果たしてどういう意図でもってこういう広告をしたのかわかりませんが、政府としては民間の通常の活動でございますから、広告活動を禁止するという立場にないわけでございますが、少なくとも政府といたしましては、直接投資に対しては厳然たる態度をもってこれを禁止しております。また、それ以外の問題につきましても厳しい態度をとっております。
  205. 田中美智子

    ○田中(美)委員 大臣、今のは全くお答えになっていないです。それは大臣のかわりのお答えですか。これについてどうお考えになるかということです。私からすれば、あなたのようなそういう答えでは何のことかわかりません、おかしいじゃないですか。こんなことをしているということは、日本政府をなめているのか、それとも、日本政府はアパルトヘイトをやっている南アに対しては厳しくないからこうやっているというのか。  また、これは「南アフリカの内側」という共同通信の記者が書かれた本です。これを読んでみますと、やはり投資はいろいろなところにやっている、それから貿易も多国籍企業などを通してやっているというようなことが書いてあります。これは一人の記者の書いた記事ですので、別に、政府は絶対やってないと言うなら結構なことですけれども、日本国内でこういうことをされていて、これに対してどうお考えになるかと聞いているのです。何も厳しくやっているかやっていないかを聞いているのじゃない、これはどうしてかと聞いているのです。
  206. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今の局長答弁で尽きておると思いますが、しかし、私からも申し上げますと、今の政府のアパルトヘイト反対のための措置についてはもう世界に明らかにしておりますし、南ア政府に対しても何回か通報をしております。そして、さらに業界等にも政府の立場説明して、周知徹底せしめるように努力をしておるわけです。  こういう広告につきましては、自由貿易の中でそれぞれやっておるわけでしょうから、政府として関与する立場にないわけでございます。今、観光勧誘の広告等もありましたけれども、これを調べてみますと、観光者といいましても、一九八五年の上半期では四百八十五人、一九八四年では九百二人という非常に限られた観光旅行者数ですから、日本が今四百数十万人の人たちが出ておりますけれども、そういう中で、南アには非常に限られた人しか観光していないということは言えると思います。  そしてまた、そうした投資については、日本政府は厳然としてこれを貫いておりますし、今の業界等に対しても政府の立場は周知徹底しておるわけですから、この点についてはこれからも厳しく対応してまいりたいと思います。
  207. 田中美智子

    ○田中(美)委員 そうすると、こういう広告というのは、自由貿易の点からして、向こうの政府がかんでいようと何していようと、そんなことは全く構わないということですか。私は、観光の人が何人行っているからどうだとか、そんなことを言っていません。日本の企業に対して、こういう投資をやってください、貿易をもっと進めてくださいと言っている、こういう大きな広告を出す南アフリカ政府の態度、これに対してどういう感じを持たれるかと聞いているのです。その肝心のところがお答えになれないということですか。
  208. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 広告のことまで、私が一々関与する立場にはないわけです。しかし、少なくとも日本政府の主張、日本政府の政策は貫いていかなければならぬ、そういう面で日本の業界もこれを厳しく守ってくださいということはこれまでもやってまいりましたし、今後とも、彼らにきちっと説明もし、徹底もしてまいりたいと思っております。
  209. 田中美智子

    ○田中(美)委員 日本政府が厳しく禁止しているものを、日本の新聞で平然と投資いたしましょうと言われても、何の関係もないとしかお答えできないことが明らかになったということだと思います。そういう姿勢だから、こういうことを書かれるわけです。米国の企業が撤退しても日本がその穴埋めをする、これはミッキー・リランド下院議員にインタビューしたときに言われた言葉なんですが、こういうことが朝日新聞に書いてありますし、それから国連事務次長は、「経済第一主義は国連で通用しない。日本の経済大国化は日本人の有色人としての意識を希薄にした。日本は米国追随と批判されるが、南ア制裁でせめて一歩先んじて行動できないものか」、これは国連で働いている日本の方の切実な気持ちだと思うのです。こういうことが平然と行われているから、なまぬるいと見られているのです。  今の安倍外相の言葉、厳しく厳しくと言いますけれども、日本禁止しているものをやってください、投資してください、こんな大きい広告を出しても、私は知りませんと外務大臣が言っているようでは、これは腰抜けと思われても仕方がないのじゃないかという感じがするのです。こういうことが朝日新聞に書かれているということです。これは世界の人たちにインタビューしたときの感想として書かれているものですし、こういうものを見ましても、安倍さんは厳しくやっているつもりかもしれませんけれども、日本の政府がなまぬるいと見られて、誤解かもしれませんが、非常に大きな誤解を与えていることは事実だと思います。今後、口だけでなく、行動をきっちりとしていただきたいと私は思うのです。  もう一つ、これは「南アフリカの内側」という本の百四十三ページに書かれていることです。  今いろいろ行われております暴動と、これに対して弾圧する警察官とのぶつかり合いがあるわけです。そのときに、ガス放射車にはニッサン、警察が連行に際して使用する車にはトヨタのマークがついている。また、弾圧に駆けつける警官が乗っているオートバイはヤマハ、ホンダ、スズキ、カワサキ、証拠写真として撮影用に使われているカメラはニコンというふうに、弾圧の現場に出てくる機材は、別にこういうオートバイや自動車が悪いと言っているわけではありませんけれども、これには人格はないわけですけれども、みんな日本の商品の名前が出ているということは、いかに貿易が横ばいだとかなんとか言っても、今非常にたくさんのものが南アに送られている。その弾圧の機材として使われて、それに商品名が出ているということは、また日本がアパルトヘイトに対して弱いのではないかという印象を与えているわけです。  ですから、これが世界の誤解であるならば、この誤解を解くためには、今までの努力では足らないのではないですか。今まで一生懸命に努力してきた、してきたけれども世界からこんなに誤解されるのは何なんだ、それならもう一度原点に立ち返って、誤解されないような毅然とした態度をとってほしいというのが私の要求なわけです。  そこでもう一つ、「スプリングボック」のことです。これは、南アの日本人会の月刊新聞として出されているものです。この中で領事の束原麻夫さんがこういうふうに言っております。「世界中に対南ア制裁の強化という暴風が猛威をふるっている」とか、「対南ア制裁措置の強化を訴える世論が世界中で益々その高まりを見せ、」とかと現状認識を書かれた上で、「しかし、このような制裁措置の強化や世論の盛り上がりが果たしてアパルトヘイトの撤廃に役立つのであろうか。残念ながら逆効果でありある意味では危険な途であるように思えてならない。」ということで、制裁することはよくないということを日本領事館の領事の方が、それも文書にして配るということをしている。  これに対して、これは本人に対する厳重注意とかそんな問題ではなくて、個人がどういう考え方を持とうがそれは自由ですが、しかし、政府の代表として行っている人が政府の態度とは全く違う、安倍外相とは全く違うことを平然と書くことは、世界の誤解を非常に招いている。この誤解を解くことは、本人にはできないことだと思うのです。やはり日本政府が、この誤解を解くようなことをきちっとしなければならないと私は思います。どういう対策をとったのですか、その点をお伺いいたします。
  210. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 まず、何か南ア政策につきまして、アメリカに追随しているようなお話もありましたけれども、日本は毅然とした態度をとっております。むしろ、アメリカ外交関係を持っておりますし、あるいは直接投資も行っておるのじゃないか。ですから、アメリカ人に批判される筋合いはないと思いますよ。日本は西側の世界の中では一番厳しい姿勢をとってきておる、こういうふうに思います。そして、これは続けていきたい。  それからまた、今広告の話も出ましたけれども、これは政府が直接投資を認めていないのですから、企業がやる場合に。これは広告を出してもむだなんですよ。ですから、そういう事業者に対しましても、そうした政府の立場あるいはわかっていないで出しているのかもしれませんから、十分これは周知徹底をさせなければならない、こういうふうに思うわけです。  それから今の領事の投稿、これは個人的な立場と銘打っておりますけれども、何といいましても肩書が肩書ですから、これは我々としても放置できない、非常に不心得な投稿であった、こういうふうに思っております。おっしゃるように、これでもって日本のせっかくの努力している外交政策が誤解をされるということになりましたら、これは大変日本の国益を損なうものですから、したがって厳重な注意もしましたし、同時にまた、局長もアフリカの国の大使等も招致いたしまして、日本真意日本の変わりない外交政策を説明しております。また、在外公館等に対しましても私から、こういう点については日本政府の基本的な外交方針に従って行動をして、これに誤解を招くような発言とか行動は外交官である以上はしてはならない、すべきではないということは厳しく言ってあるわけでございます。  いずれにしても、アパルトヘイト政策というものは、我々は断固として南アに対する反対姿勢を今後とも貫いていく、世界に対してもあるいは南ア政府に対しても、この主張は今後とも強く貫いてまいりたい、こういうふうに思っております。
  211. 田中美智子

    ○田中(美)委員 時間がありませんからこれで終わりにいたしますが、南ア問題は日本から非常に遠い国の問題のように思われますけれども、今世界の中では非常に重要なこれからの問題として、日本がどう処していくかということは世界から見られているということをお忘れなく、今後ともこういう誤解的なことが起きないように、また政府も毅然とした態度でやっていただきたいということをお願いして、質問を終わりたいと思います。
  212. 愛野興一郎

    愛野委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時四十三分散会