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1985-11-08 第103回国会 衆議院 外務委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和六十年十月十四日)(月曜日 )(午前零時現在)における本委員は、次のとお りである。   委員長 愛野興一郎君    理事 奥田 敬和君 理事 北川 石松君    理事 野上  徹君 理事 浜田卓二郎君    理事 井上 普方君 理事 土井たか子君    理事 玉城 栄一君 理事 渡辺  朗君       石川 要三君    鍵田忠三郎君       鯨岡 兵輔君    河本 敏夫君       佐藤 一郎君    中山 正暉君       仲村 正治君    西山敬次郎君       町村 信孝君    山下 元利君       岡田 春夫君    河上 民雄君       小林  進君    八木  昇君       大久保直彦君    渡部 一郎君       木下敬之助君    岡崎万寿秀君       田中美智子君     ――――――――――――― 昭和六十年十一月八日(金曜日)     午前十時二分開議 出席委員   委員長 愛野興一郎君    理事 奥田 敬和君 理事 北川 石松君    理事 野上  徹君 理事 浜田卓二郎君    理事 井上 普方君 理事 土井たか子君    理事 玉城 栄一君 理事 渡辺  朗君       石川 要三君    鍵田忠三郎君       中山 正暉君    仲村 正治君       西山敬次郎君    山下 元利君       岡田 春夫君    小林  進君       八木  昇君    大久保直彦君       渡部 一郎君    木下敬之助君       岡崎万寿秀君    田中美智子君  出席国務大臣         外 務 大 臣 安倍晋太郎君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議室長         兼内閣総理大臣         官房審議室長  的場 順三君         内閣法制局第四         部長      工藤 敦夫君         外務省アジア局         長       後藤 利雄君         外務省北米局長 栗山 尚一君         外務省欧亜局長 西山 健彦君         外務省経済局長 国広 道彦君         外務省経済協力         局長      藤田 公郎君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省国際連合         局長      山田 中正君         外務省情報調査         局長      渡辺 幸治君         文部省初等中等         教育局長    高石 邦男君         文化庁次長   加戸 守行君         厚生省援護局長 水田  努君         運輸省航空局長 西村 康雄君         運輸省航空局技         術部長     大島 士郎君  委員外出席者         運輸省航空局管         制保安部保安企         画課長     土井 勝二君         外務委員会調査         室長      高橋 文雄君     ――――――――――――― 委員の異動 十月三十日  辞任          補欠選任   石川 要三君     小此木彦三郎君   鍵田忠三郎君      河野 洋平君   仲村 正治君      海部 俊樹君 同日  辞任          補欠選任  小此木彦三郎君      石川 要三君   海部 俊樹君      仲村 正治君   河野 洋平君      鍵田忠三郎君     ――――――――――――― 十月三十日  核トマホーク積載艦船日本寄港反対等に関す  る請願岡田春夫紹介)(第八六号)  核兵器全面禁止に関する請願岡崎万寿秀君紹  介)(第一二一号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第一二二号)  同(正森成二君紹介)(第一二三号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 愛野興一郎

    愛野委員長 これより会議を開きます。  国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  国際情勢に関する事項について研究調査し、我が国外交政策の樹立に資するため、関係方面からの説明聴取及び資料の要求等方法により、本会期中国政調査を行うため、議長に対し、承認を求めることにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 愛野興一郎

    愛野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ――――◇―――――
  4. 愛野興一郎

    愛野委員長 これより国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。土井たか子君。
  5. 土井たか子

    土井委員 運輸省、御出席でいらっしゃいますね。  昨日、日航機サハリン沖航路を大変外れて約一時間飛んで、ソ連側緊急発進をするという状況があったというニュースが報道されまして、私どもはびっくり仰天したわけでありますが、この問題についてまずお尋ねを進めたいと思います。  運輸省にお尋ねしますけれども航路を大幅に外れて約一時間飛んだというふうな状況、そして一触即発でございまして、難なきを得ましたけれども、事によれば大変なことになりかねない状況というのは、日常茶飯事事件と思っていらっしゃいますか、どうですか。ニアミスでも、その明くる日にはもう国民が知るようなぐあいでありますが、これは日常茶飯事事件でございますか、どうですか。
  6. 西村康雄

    西村政府委員 航空機航空路に沿って航行いたします際に、特に洋上航行、太平洋その他、そういうところでは若干の航空路から外れるというケースはございますが、今回のような大幅な航空路離脱というのは、これまでほとんど例を聞いておりません。また、この空域につきましては、特にソ連FIRの中に入っている空域でございますので、通常非常な注意をもって航行すべき空域でございます。そういうところでの離脱というのは、これまで聞いておりません。
  7. 土井たか子

    土井委員 そうすると、あってはならない事件であるというふうに、まず理解しなければならないと思います。そうですね。  中曽根総理は、事件直後に御存じであったということが新聞報道で伝えられておりますが、中曽根総理には運輸省から報告されたのですか。いずれからの御報告中曽根総理は知られたのですか。いかがでございましょう。
  8. 西村康雄

    西村政府委員 航空路からの離脱を知りましたのは防衛庁でございます。そこで、防衛庁から最初の連絡総理にさせていただいております。
  9. 土井たか子

    土井委員 運輸省からは、総理に対しての報告は何らなさらなかったのですか。
  10. 西村康雄

    西村政府委員 運輸省では、この防衛庁からの連絡を受けまして事情について取り調べの後、直ちに総理の方に連絡しております。
  11. 土井たか子

    土井委員 事情を調べた後直ちにとおっしゃるのはいつですか。
  12. 西村康雄

    西村政府委員 逸脱の事実につきまして日本航空モスクワ連絡をとりまして、そしてそこで事情を聴取いたしまして逸脱の事実を確認いたしまして、逸脱があったということを御連絡させていただいております。これは二日でございます。
  13. 土井たか子

    土井委員 それは十一月の二日。わかりました。それじゃ、運輸省総理大臣に十一月の二日に報告をされた直後に、総理からどういうふうな指示がございましたでしょうか。
  14. 西村康雄

    西村政府委員 これにつきましては、事故の再発防止措置と事実関係、そして原因の徹底的な調査ということについて御指示をいただいております。
  15. 土井たか子

    土井委員 それ以外にないのですか。
  16. 西村康雄

    西村政府委員 以上でございます。
  17. 土井たか子

    土井委員 これは、事件が起こったのは先月の三十一日なんですね。一週間余り国民に対しては知らせられなかった、この理由はどういうことに相なりますか。なぜですか。
  18. 西村康雄

    西村政府委員 私ども、十月三十一日に事件の発生を知ったわけでございますが、これの連絡を受けまして直ちに日本航空に対しまして、事実関係の究明ということの指示をしたわけでございます。そして日本航空では、十一月二日に機長が帰国してまいりました。そこで事情を聴取いたしました。  また一方、実際の航路離脱というのがどういうふうに行われたかということを厳密に調査しておく必要がございます。そこで、飛行機に積んでございますFDR飛行データ記録装置を取り外しいたしまして、これを日本に回送いたしております。この回送されたFDRからその記録の分析をいたしたのが一つでございます。  それに、さらに当日は強い偏西風がございました。この偏西風がどのように影響を与えたのか、偏西風についての調査をいたしまして、さらにこれらのデータをそれぞれコンピューターにインプットいたしまして四四一便の正確な航跡確認して、この航跡を得ましたので、その段階公表いたしたわけでございます。
  19. 土井たか子

    土井委員 それは大体技術的な問題なんですよ。二日の日には、機長は帰国されているわけでしょう。帰ってこられているわけですね。総理報告されたのも二日なんですね。運輸省は、七日の朝に平沢専務を呼ばれて報告を求めておられるわけでしょう。これはどういうわけですか。二日に機長が帰ってこられてから、七日までの間は一体何なのですか。二日の日には、もう既にはっきりわかっているわけです。フライトレコーダーをいろいろ分析するとか、飛行データについての記録装置というのを取り寄せて分析するとかいうふうなことは技術上の問題でありまして、事実、先ほど言われたソビエト側FIR圏域の中に入るくらいに航路からそれて大変危なかったという事実は、もうとっくの昔に判明しているのですよ。七日の日に平沢専務を初めて呼んだのではないですか。これはどういうことですか。
  20. 西村康雄

    西村政府委員 先ほど申しましたように、事実の調査につきましては、十一月二日に日本航空機長の帰国を待って取り調べをいたしました。その間、運輸省連絡をいたしております。そして、十一月七日の早朝に今までの、六日に調査の結果が判明いたしましたので、全体を取りまとめて平沢専務が正式に報告に来た、こういうことでございます。
  21. 土井たか子

    土井委員 それまでは運輸省としては何らなすべきことはなく、ひたすら待つということ以外にないという格好だったわけですね。
  22. 西村康雄

    西村政府委員 先ほど申し上げましたように、気象データ収集等当方でいたして、これを日本航空側に提供したり、そういうこともいたしておりますが、それのみならず、再発防止措置について日本航空側にどういうようなことをすればいいか、そういう具体的な検討を命じております。その結果を取りまとめて七日に正式に報告に来た、こういうことでございます。
  23. 土井たか子

    土井委員 この事件の事実と事後、これからの措置という問題は、これは区分けが必要であると思います。事件について事実がどういうことで洗ったかということは、二日の日にはもう明確に判明しているわけですよ。首相報告されたときに、公表はおくらしなさいというふうな指示首相からあったのですか。
  24. 西村康雄

    西村政府委員 航空路から離脱したという事実は申し上げておりますが、どの程度にどういうふうに離脱したか、その原因が何であるかについては、その時点ではわかっておりません。したがいまして、その後調査を継続したわけでございます。
  25. 土井たか子

    土井委員 自衛隊の方から、防衛庁の方から運輸省連絡があったその時点で、離脱している地点、どういう状況離脱しているか、これははっきりわかっていなければおかしいのですよ。レーダーでキャッチした結果が運輸省に伝達されてきたわけでしょう。したがいまして、今おっしゃっている御答弁というのは少しおかしいなと思って私は聞いております。  外務省は、この事件をいつ御存じになりましたか。
  26. 西山健彦

    西山政府委員 外務省本件を承知いたしましたのは十一月一日でございます。
  27. 土井たか子

    土井委員 そうすると、外務省はどこから聞かれましたか。運輸省ですか。
  28. 西山健彦

    西山政府委員 私ども本件を承知いたしましたのは、防衛庁からでございます。
  29. 土井たか子

    土井委員 随分それもおくれて、外務省に一日に言ってきたわけですね。運輸省から外務省に対する報告連絡はございませんでしたか。
  30. 西山健彦

    西山政府委員 運輸省から、この件につきまして正式に外務省通報がありましたのは五日でございます。
  31. 土井たか子

    土井委員 これは一体どういうわけですか。総理大臣には二日にさっき報告されているのでしょう。外務省には、つまり外務大臣には五日の日に運輸省としては報告されているのでしょう。一体その間のずれというのは、どういうことに相なるのでしょう。
  32. 西村康雄

    西村政府委員 外務省に対しましては、防衛庁から連絡が行ったということを私ども承知しております。ただ、防衛庁情報に付加いたしますのに、私どもがそのような状況についてどうであったかということについては、引き続きいろいろな調査が必要でございました。そういう段階で、一応調査がある程度進みました五日に連絡をした、こういうことでございます。
  33. 土井たか子

    土井委員 これは一体どういうことですか。運輸省は、軍用機について所管されているわけじゃないでしょう。防衛庁外務省に一日に、運輸省は大変おくれて五日の日に初めて言われた。問題は、これは民間航空機ですよ。民間航空機がどういうことになったかという所管は運輸省じゃないですか。しかも、起こっている場所は外国ですよ。要は外交問題なんです。運輸省から外務省にこれほど伝達することがおくれた、報告することがおくれたというのは、今の御答弁では納得できませんね。それだけの理由でおくれるということは理由にならない。どういうことですか。
  34. 西村康雄

    西村政府委員 先ほど申し上げましたのは、事実上の連絡はもちろん防衛庁外務省にされましてから、運輸省外務省連絡しております。ただし、さらに防衛庁情報に付加するような問題につきましては、五日に至りまして、いろいろな情報をさらにこちらから御連絡したということでございます。  なお、ちなみに申し上げますと、ハバロフスク当方との交信では、ハバロフスクからは異常なく航行しているという連絡札幌管制部で受け取っております。そういう意味で、管制上はこの航空機は安全に飛行しているという事実を確認しております。したがいまして、むしろ問題は、その時点でどういう航跡があったかということに専ら中心が移っておりました。
  35. 土井たか子

    土井委員 そんなことを私は聞いているわけじゃないのです。ハバロフスクでは正常に航行していなければおかしいのですよ、前後左右から考えて。そんなことを聞いているわけじゃないのです。防衛庁によるところの外務省に対する報告に、単に付加するだけのことしか運輸省はなさらないのですか。今の御答弁からすれば、はるかにおくれて五日の日に。
  36. 西村康雄

    西村政府委員 航空路からの離脱状況は、防衛庁防衛庁レーダーをもって認識されたわけでございます。運輸省は、そういう離脱状況についてはレーダーで観測しておりませんので、その部分につきましては存じておりません。したがいまして、防衛庁レーダーの、まず航空路からの離脱という情報に加えまして、さらに必要な情報収集に当たったということでございます。
  37. 土井たか子

    土井委員 聞いていたら背中が寒くなります。そうすると今のは、防衛庁レーダー網でキャッチしたことを運輸省通報するその瞬間は、何も運輸省としては関係ないという姿勢じゃないですか。民間航空機が非常に危機に瀕するような状況になったって、運輸省としてはあずかり知らぬという話ですか。安全航行に対して、運輸省としては責任ないのですか。そういうことになりますよ、今の御答弁を承れば。万事これは防衛庁マターであって、レーダーサイトに入っているから航路から外れているという事実は防衛庁が察知していることで、運輸省は何らあずかり知らぬという姿勢じゃないですか。
  38. 西村康雄

    西村政府委員 この航空路離脱した空域につきましては、第一次的に運輸省航空路から離脱したかどうかということを知る方法はございません。運輸省当該航空機連絡をいたしましたのは、東京FIRハバロフスクFIRとで管制移管をいたしておりますスキッド地点を通過するときに当該航空機交信をいたしまして、そして相手側ハバロフスクに対しまして管制移管連絡をいたしました。その後、管制移管連絡の後、さらに今度ソ連領への入域の許可手続というのを運輸省管制部がいたしております。これは、当該航空機がいたすべきところをハバロフスク連絡がとれないのでやったわけでございますが、この時点までの連絡は十分いたしております。その地点で、ハバロフスクからは特別の問題はございませんでした。  なお、航空路離脱の問題が防衛庁からありましたときに、私どもができますのは、モスクワを経由してハバロフスクに照会するということでございます。防衛庁からの連絡のあった時点では、ハバロフスク交信のときは、ハバロフスクからは当該機連絡がついているという交信を受けております。したがいまして、若干の離脱があったということについては、防衛庁からの情報当方は知っておりますが、どのような離脱があったかについては、ソ連側からは特別の注意喚起は何らございません。むしろその後、正常に飛んでいるということでございます。したがいまして、私どもは、防衛庁からの情報に基づきまして、これはむしろ日航機自身について取り調べる必要があるということで、日航機モスクワに到着し、さらにパリに到着するというときに、これを日本航空側を通じて調査をさせたわけでございます。
  39. 土井たか子

    土井委員 今の運輸省の御答弁ではっきり認識できることは、防衛庁から自衛隊レーダーサイト航路をはるかに外れているということが運輸省通報されたときに、運輸省としたら、それに基づいて、例えば成田とハバロフスクの間にあるテレックスで結ばれているAFTNなんかを通じて通信するとか、それからこれはもうだれでも知るところでありますけれども航空路監視レーダーというのが新潟県にもあり函館の近くにもあります。二カ所あります。これを通じてソビエト側に知らせるとか、ハバロフスクヘ逸脱申告の前に、稚内の運輸省通信所からハバロフスクヘ通報が安全のためになされるべきであるとか、いろいろな方法があるのですが、こういう措置は一切おとりになっていらっしゃらないのですね、今のお話を承っていると。
  40. 土井勝二

    土井説明員 防衛庁札幌管制部との連絡でございますけれども、当日十三時四十分ごろ、航空自衛隊から札幌管制部に対して、日本航空四四一便がコース逸脱しているが、何か異常があるかという問い合わせがございました。それに対して札幌管制部の方は、特に情報はありませんという回答をし、航空自衛隊の方は了解しましたという答えをされています。その後十三時四十七分でございますが、航空自衛隊から札幌管制部に対して、日本航空四四一便が経路をかなり逸脱しているが、連絡はあるかということでお問い合わせがありまして、札幌管制部といたしましては、先ほど局長がお答えいたしましたけれども当該機が十三時四十七分から二十三分前には既に東京FIRハバロフスクFIRの境界を通過しておりまして、それでハバロフスク管制部管制が移管されているということを言いました。管制が移管されますと、周波数札幌管制部周波数からハバロフスク管制部周波数に切りかえますので、交信はできなくなります。それでその旨を防衛庁の方に、航空自衛隊の方に回答をしております。その数分後、四十七分から見て五十一分ごろでございますけれども航空自衛隊から札幌管制部に対しまして、当該機コースに戻りつつあるという御連絡を受けたということでございます。
  41. 土井たか子

    土井委員 そういうきめ細かい、何時何分にどうだという御説明を承っていても、一向に、運輸省としては運輸省ハバロフスクとの通信網を通じてこういう措置をとりましたというお答えが出てこない。万事防衛庁任せですよ。防衛庁の方のレーダーサイトに入った、入ってないというふうな通報だけを受けて、何にもなすすべをなさらなかったということが今の御答弁ではっきりしているのです。要は、航路を外れて約一時間ですよ、その間、これを見てみますと。正確に言うと、今るる御説明ございましたけれども、当日の十二時五十二分から十三時四十七分に至る間はずっと航路を外れているのですから。この間、何ら運輸省としては連絡をとっておられないということが言えるわけであります。わかりました、それは。  そこで、先ほど五日の日ということを言われておりますが、運輸省外務省にどういうふうなことを連絡してこられたか、そのときに何らかの要請があったかどうかというのを外務省にお尋ねしたいと思うのです。どうですか。
  42. 西山健彦

    西山政府委員 私ども運輸省から通報を受けましたのは、そういうことがあったという事実の確認でございます。
  43. 土井たか子

    土井委員 事実の確認だけですか。事実の確認というのは一体何ですか。外務省として何を確認したのですか。
  44. 西山健彦

    西山政府委員 私どもは、十一月一日に防衛庁からこういうことがあったという通報を受けまして以来、運輸省に対しましてどうなんだということを聞いていたわけでございます。運輸省の方は、先ほど来御説明がありましたようにその事実を目下確認中である、そういうことでございまして、五日になってその事実を確認してこられた、こういうことでございます。
  45. 土井たか子

    土井委員 わかりました。それも外務省の方から催促して、運輸省としては補足的に防衛庁報告に従ってやっと物を言われたという、こういう関係になるということが今の御答弁で出てきているわけですが、外務省はこの一週間の間、どういうふうなことを今までされてきましたか。ソビエトに対して何らかの話し合いをなすったかどうか、何らかの措置を講じられたかどうか、いかがです。
  46. 西山健彦

    西山政府委員 この件につきましては、ソ連側からは何ら私どもに申し入れはございませんし、また、その事件が起こった、異常飛行が行われた地点ソ連の領空でもございません。したがいまして、私どもは少なくとも当面ソ連に対しては、何らか特別の措置をとる必要はないというふうに考えてきたわけでございます。
  47. 土井たか子

    土井委員 外務大臣外務省としては、いち早くこういう事件があったというふうなことについて公表するということは大事な問題だと思うのですね。何だか先ほどからの御答弁を承っておりますと、技術的な問題について具体的に検証してみないとこれは公表できないという姿勢で臨んでおられる。大変慎重と言えば慎重かもしれませんけれども、事実、航路をはるかに逸脱したという事実があり、ソビエト側スクランブルをかけたという事実もあったというふうなことについては、とっくの昔にその瞬間から事実としては明々白々としてあるわけです。やはりこういう問題に対しては、具体的に事実をはっきりさせる、公表するということは非常に大事な問題だと思われますが、大臣としてはどうお考えになりますか。
  48. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私も、防衛庁から連絡を受けましてこの話を聞きまして、事なきを得たからよかったわけですけれども、もし間違えば大変な問題になる、外交上の問題に発展するわけですし、大変なことにもなる可能性があったわけです。  こうした問題はまず第一に、こういうことを二度と繰り返さないというためにも国民の前に明らかにする必要がある。それからもう一つは、外交上の問題で、もちろん今局長が言いましたように公海の上空ですけれども、しかし、やはりソ連機スクランブルをかけてきたというようなこともあって、ソ連側との関係で、ソ連から事実が指摘をされてそれに対して発表するというふうなことでは大変まずいことになる。日本みずからが、こういう問題については率直に明らかにすべきじゃないか、こういうふうに思いまして、実は関係方面に、この問題は真相が明らかになった段階で早く公表をすべきであろう、こういうことを言ってまいりました。最終的には、ちょっと時間的には七日という時点でございましたけれども、全貌が明らかになったということでございます。  それで、私は、国民の皆さんもこの事実を知って大変驚かれたろうと思いますが、同時に、日航側もこれが大変反省の材料になると思いますし、我々もこれからの日ソ関係を進める上においても、こうした問題について日本みずからがまずこの点について明らかにしたということは、結論的にはよかったと思っております。
  49. 土井たか子

    土井委員 それでは、先に外務大臣にお尋ねしますけれども、今外務大臣言われるとおり、事実をいち早く明るみに出すということは再発防止のためにも必要である、特に相手国のあることであります。今公海上とおっしゃいますけれどもFIRの中に入って、つまりソビエトの防空識別圏に入っているという問題もありますから、ソビエト側から言われるまでもなく、こちらが先にそういう問題に対して遺憾の意を表明しながらはっきりさせるということは、私は外交上の一つの非常に大事な問題ではないかと思うのですよ。  そこで、今ソビエト側から何も言ってこないから、外務省としたら何も言う必要はないという御答弁先ほど局長はされましたけれども外務大臣、これはやはりスクランブルという事実もあったようであります。したがいまして、事情ソビエトに対して説明をして遺憾の意を表明するというのは、大事な問題だと思われますけれども、どうですか。――外務大臣、それはそのとおりだと思うのですよ、外交的に。外務大臣にお願いします。
  50. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ですから、私は、これはソ連側から指摘されるようなことがあってはまずい、むしろこちらの方から明らかにする必要がある、こういうふうに思って、発表を急ぐべきだということを言ってきたわけでございますが、ソ連との関係ではいろいろな問題も起こっておりますが、しかし、遺憾の意といいますか、そういう点については、やはり日ソの関係から見てそこまでの立場がどうか、これは十分検討しなければならぬ、こういうふうに思います。
  51. 土井たか子

    土井委員 ただ事実に対しては、ソビエト側スクランブルをかけるというふうな緊迫状況というのが一時あったはずでしょう。そうすると、遺憾の意を表明するかどうかは別として、迷惑をかけたという事実があるわけですから、この事情に対してやはり説明するということぐらいはしなければならないという問題ではないかというふうに思われます。どうでしょうね。
  52. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ソ連もいろいろの問題で、例えば日本の領空、領海にソ連機が接近をして日本自衛隊機がスクランブルをかけるというようなこともありますし、いろいろとそういう日ソ関係から見て、遺憾の意とかあるいはまた事情についての説明とか、そこまでの必要はなかったのじゃないか。幸いにして、スクランブルがかかったといいますけれども、話を聞いてみますと、飛び立ってはおるけれども途中で引き返しておるという状況にもあるようでございますし、いずれにしても事なきを得たわけでございますので、それはそれなりにソ連としても十分全体的な判断のもとにやったのじゃないか、私はこういうふうに思っておりますし、それで、今の問題で日本側がとにかく積極的に真相を明らかにしたということで十分じゃないだろうか、こういうふうに思います。
  53. 土井たか子

    土井委員 これは、後でこれから申し上げる問題にもかかっていくわけでありますけれども、北太平洋の航路に対して安全確保のために、大韓航空機のあの大事件以後、日米ソで口上書を取り交わしていらっしゃるという現実の問題がございます。こういうことについては、今回の問題にも関係があるというふうに外務大臣はお考えですか。
  54. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはオホーツク海の上空の問題で、民間航空路の安全という角度から、日本、アメリカ、ソ連の間で口上書を取り交わして、そして安全確保を図っていこうという合意ができたことは大変結構だと思いますし、これはただ単にオホーツク海の問題だけじゃなくて、ソ連日本あるいはアメリカ、そういう三国間にまたがる上空等の問題についての民間航空機の安全全体にもいい影響が出てくるのじゃないだろうか、やはりこうした問題は、二度とああした大韓航空機のような事故を起こしてはならないわけですから、そうした面で、とにかく日米ソの間で話し合うルートができた、事前にいろいろと連絡し合うルートができたということは大変結構だったと思いますし、そうしたことが一つのバックになって、今度の事件においてもそれなりの一つの成果というものが出てきたのじゃないだろうかと私は思っておるわけでございます。まだ日米ソ間では完全な合意ができておりませんけれども、これはさらに交渉を進めて合意に持っていかなければならぬ、こういうふうに思います。
  55. 土井たか子

    土井委員 完全な合意とおっしゃるのは、技術的な細目取り決めを指しておっしゃっていると思われますが、いかがですか。
  56. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 お答え申し上げます。  今大臣から御答弁ございましたように、北太平洋の複合ルートに関します三国間の取り決め、これは大枠を先般、十月八日取り定めたわけでございます。さらに、その管制当局間でそれを実施するための二回目の話し合いを現在ワシントンで行っておるところでございます。
  57. 土井たか子

    土井委員 いや、それは、現実の問題はどの辺まで進んでいるかということを聞いているわけじゃない。内容に対しての詰めがさらに必要だということをおっしゃったから、技術的な細目決定のためのいろいろな交渉ということに相なりますねということを、外務大臣に私はお尋ねしています。
  58. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 そのとおり最終的にこれからいろいろな問題が詰まっていくわけですが、全体的には合意ができておるわけですし、そうした合意というのは、これからこれを進めていかなければならない。そのままでほっておいてはいけないし、最終的な取り決めもつくって、北太平洋における民間航空の安全確保を図っていく、そしてそれがその他の海域における、また上空における民間航空の安全にもつながっていく、そういう前提をなすものであろう、こういうふうに思います。
  59. 土井たか子

    土井委員 その細目取り決めというのは、運輸省の所管じゃないですか、どうなんですか。
  60. 土井勝二

    土井説明員 基本的な三国間の合意に基づきまして、その合意はまだ具体的に、三国のACC、アンカレジそれから東京ハバロフスクという三つの航空交通管制部の間で実施するためには、先生今御指摘のように、回線の問題であるとかどういう調整手続をするとか、そういう技術的な取り決めをする必要がある、それの取り決めの規定というかあるいはそれに基づく実施というのは、基本的には運輸省の所管だと考えております。
  61. 土井たか子

    土井委員 基本的には運輸省の所管だと言われますけれども、取り決めるということについては、つまりこの細目取り決め、つまり技術的な側面は運輸省でしょう。今そのことに対して明確におっしゃらないから、あえて私は質問形式で言うわけですけれども運輸省がこれを具体的にお決めになったことが実施されないと、この三国で空の危機管理に対しての安全確保という点での実施は実効性を持ち得ない、こういうことになるわけですね。その運輸省が、今回の問題でも防衛庁から連絡を受けて、何ら相手方に対して、自分たちはちゃんとルートを持ち、発信のお互いのルートもちゃんとあるにもかかわらず、それを実行されてないのです。取り決めについても今のような姿勢で取り決められたのでは、私は困るなという気がいたします。  運輸省自身は、民間航空に対しての安全確保という点からしたら、日本の政府の中ではまず所管の省ですよ。これに対して責任を持つ省じゃないですか。そういうことからすれば、これは先ほど外務大臣の御答弁からしたら、日米ソのお互いの緊急通信網というのを密にして、そして危機管理に対して、安全確保という点で話し合おうということが、二年間詰められて口上書の取り交わしということになったということも、バックグラウンドとしては、今回報なきを得たという問題の背後にあるのではないかというふうなことが御答弁の中で出ておりますけれども、しかし、運輸省のそれに対する姿勢というのはいかがかということを、きょうの御答弁で本当に思いますよ。今このお互いの、取り交わしをするところの技術的な細目の問題に対して、いつこれが取り決められるかわからぬということを、昨日も伺ったら運輸省は言われるわけですが、心もとない話であります。これはやはり運輸省としたら、責任を持っておやりにならなければならぬと思いますが、どうでしょう。
  62. 土井勝二

    土井説明員 ただいま御説明いたしました技術的な手続について、現在ワシントンで協議をしているわけでございますが、この技術的な協議も、米ソというほかの国との間の国際的な協議でございまして、私どもだけで、いつごろこの手続がまとまるかという見通しを述べることはできないというふうに思っております。ただし、この協議を早急に私どもといたしましても詰めていきまして、具体的な実施手続を決めて、それに基づきまして早急に北太平洋航空路の航空交通の安全の向上のために措置を実施していきたいというふうに思っております。
  63. 土井たか子

    土井委員 今回のこの問題は、国内的には日航の大変な大ミスだということになります。と同時に、安全確保という点からすると運輸省の責任でもある。これに対しての報告とか対応ということに対して外務大臣、どうお思いになりますか。これは外交問題でもあるという側面から考えると、運輸省の対応というのは少しおかしかった、今回。また、三国で既にお互い口上書を取り交わしている北太平洋空路の安全確保という点からしても、細目取り決めはこれからであるけれども、対応については、いち早く防衛庁から知らされたら運輸省としては打つ手があるはずなんです。それに対して何ら手を講じていない。こういう問題を考えていくと、私はどうも問題点がありはせぬか、大変運輸省にその姿勢の上で甘さというか欠落している点がありはしないかという気がしてなりません。外務大臣、どのようにお考えになりますか、これ。
  64. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは日航の側の非常に大きなミスだ、重大なミスだと私は思います。間違ったら大変なことになる可能性を含んだ非常に重要なミスを犯したんじゃないか、こういうことが二度とあってはならないと思うわけです。  その後の経過については、運輸省としても真相を明らかにしてこれを表に出す必要がある、こういうことで真相を、パイロットを呼び寄せたり日航の関係者を招致したり、そういういろいろな点で時間がかかったんじゃないかと思いますが、私自身は防衛庁の話を聞き、またこれはスクランブルをかけられそうになった。実際はかかったわけではないようですけれども、接近したという事実はないようですが、そういう状況が発生したということでもあるし、ですからこれは外交的な問題にも波及する可能性もある。ですから、そういう点では早く事態を明白にして、そうしていち早く国民に対して明らかにする、そして再発を防ぐとともに、やはり日本側がそういうものに対してきちっとした姿勢を対外的にも示す必要がある、こういうことで真相の一日も早い発表を要請したわけですが、真相が明らかになった段階でこれが発表されたということは、私はそれなりに政府としての責任は果たした、こういうふうに思います。
  65. 土井たか子

    土井委員 それは事後調査の話でしょう、今大臣がおっしゃるのは。その問題が起こっているそのときの措置ですよ。それが肝心なんです。場合によったら大変なことになりかねないその瞬間の措置ですよ。これが肝心でしょうが。起こらなかったから幸いですよ。それで後、調査をすることも普通の気持ちでできますけれども、起こってしまってから後の調査をやったんじゃ、これはただごとではない。だから、今回はその瞬間の措置ということで、一つは今度は取り扱いの上で、これをよい反省材料として考えていかなければならぬ点があるなど私自身は思っています。外務大臣、どうですか。
  66. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 まあ起こらなかったから、多少時間がかかったわけでしょうけれども、しかし、起こったらもうそんなことじゃ済まぬわけですね。緊急態勢を日本としてもとらなければならぬ段階になった。もし何か起こればですね。幸いにして起こらなかったわけですから十分時間はかけても調査をした、こういうことじゃないかと思いますが、今運輸省からいろいろ説明がありましたけれども運輸省はそれなりに慎重に、運輸省としての民間航空に対する監督官庁としての責任を果たすべく全力を尽くしたんじゃないか、私はこういうふうに思います。
  67. 土井たか子

    土井委員 それは、事後の取り扱いについて慎重だったという点について言えばね。だからそれは、航路を外れていたその瞬間に対する取り扱いというのは、どうも聞いていて腑に落ちないのですよ。しかも外務省に対して、それは報告を求めて初めて防衛庁からの報告に対して補足の報告しかないという問題に対しては、外務大臣、そういうことでいいんですか、再度お尋ねしますが。
  68. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いや、これは我々は防衛庁からの報告で、ああした航路逸脱があって、そしてソ連機スクランブルのために発進をした、しかし途中で引き返した、事なきを得たというような防衛庁からの説明を受けまして、首筋が冷やりとするような思いがしたわけであります。ですけれども、実際どういうような形で航路をそんなに逸脱したのか、その辺のところは私自身も防衛庁から聞いた段階ではわからなかった。ですから事務当局に対しても、早くその内容を、説明を聞いて真相を明らかにして、こういう問題に対してはやはり国民に早く知らせる必要がある、こういうことを言ったまででありますが、問題としては事なきを得たわけでございますから、外交関係にも発展をしないでこれは済んだわけであります。
  69. 土井たか子

    土井委員 まあ、それは事ながれで、それは問題をそういうふうに見ればそういうふうな説明ができるかもしれませんが、外務大臣、あくまで民間航空機の所管は防衛庁じゃないのです。民間航空機に対しては運輸省なんですよ。だから、防衛庁からの説明を主にして運輸省からの説明はそれの補足というのは、民間航空機に対する報告としてはおかしいんです。そうじゃないですか。民間航空機の取り扱いについて、特に外国との外交問題にも絡む国際線についての話というのは、運輸省から直接まず報告があってしかるべき問題だ、これが順を追って言うと順当な報告と言うべきでしょう。そうじゃないですか、外務大臣。いかがです。
  70. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ですから、これは私も指示しましたから、恐らく事務当局で運輸省といろいろ話をして、その後の真相についての説明を求めたと思います。正式にまとまってきたのが五日に来た、こういうふうに思います。
  71. 土井たか子

    土井委員 今回は非常におかしかったということを、その点で私は言わざるを得ないと思うのですね。総理に対しては二日、外務省に対しては、外務省からの催促を受けて防衛庁報告に対する補足しか五日の日にはやっていない。こういう関係が政府部内ではお互いの間にあるという格好であり、特に問題は、外交問題にまで発展しかねないこの事件について、外務省についての対応というのがまことにおくれて、しかも不十分なものであったという格好に相ならざるを得ないという気が私はしてなりません。  さて、外務大臣に聞きますが、アメリカももちろん国交があります。ソビエトに対しても国交がございます。したがって、日米ソが合意して、空の安全に対して緊急通信網についての口上書を取り交わす、どういうふうにこれから安全確保をやっていくかということをお互いの取り決めとして具体化しよう、これは大事な話であります。非常に大事な話です。国交のない国に対しても、このことは問われていくのではないかというふうに思うのですね、空の安全ということを考えてまいりますと。例えば、朝鮮民主主義人民共和国に対してこういうことに対する話し合いというのも、私は大変大事なことになってくるんじゃなかろうかと思われますが、いかがでございますか。
  72. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いずれにしてもこういう状況の中で、今までできなかったような日米ソでとにかく民間航空の安全を確保するための話し合いをする、そうしてとにかく大枠で合意をするということは、まさに私は画期的な新しい展開であろうと思います。こうしたことが、これからやはり将来に向かって、世界の民間航空全体の安全確保というものにつながるいろいろな合意であるとかあるいは協定であるとか、そういうものに進んでいくことを期待をするわけであります。  いずれにしても、こうした画期的なことが合意が生まれたということは、これは日本外交にとりましても非常に大きな画期的な一つのことではなかったか、こういうふうに思います。
  73. 土井たか子

    土井委員 じゃそれで、その画期的なことをさらに広げていくということも、また画期的なこととして要請されていくということであろうと私は思うのですね。  そこで、先ほど私が御質問申し上げたことについてはいかがでございますか。
  74. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは今外交関係がないわけですから、政府間の話し合いはできないという立場にあるわけでございます。しかし、日米ソでこういうふうな形の航空協定ができるわけですから、これから将来に向かっては、やはり民間航空の安全というのは大事ですから、いろいろの角度から検討はしていく課題であろうと思いますが、それでは今現実問題として、具体的に北朝鮮との関係の民間航空に対する合意とか協議をすべきであると言われても、今の国交のない段階でそこまでに至ってはいない、こういうことであります。
  75. 土井たか子

    土井委員 まだこの問題については、運輸委員会等々を通じて具体的な質問が展開されるであろうと思われます。  それでは、ソビエトに対して――北方領土に対する墓参をただただひたすら待ち望んでおられる大体六十五歳以上の方々が四千人くらいあるようであります。この方々からすると、五十一年以後、正式な入国手続をとるようにソビエト側から要求されて以後、行くことが途絶してしまっているということに対しては、非常に心細い話であると同時に、先の見通しが全くないために、どこに持っていってどう言っていいかわからない気持ちで、毎月おられるという格好だろうと思うのですね。  昨日は「総理にきく」というテレビ番組がございましたが、その中でも、ソビエトに対しては、領土問題は避けて通れないから主張していくけれども、ほかのことにも幅を広げて、文化交流や経済協力など柔軟な包括交渉を考えていきたいなどということも総理は言われておるようであります。外務大臣とされては北方領土の墓参に対して、先日我が党の石橋委員長が訪ソされた節、話し合いの上でも感触を持って帰ってこられておるわけでありますが、何らかの打開の道を具体的に講ずる御用意がおありになるかどうか、御努力がおありになるかどうか、いかがでございますか。
  76. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 北方領土から引き揚げてこられた方々が墓参で帰りたいという一日千秋の思いを持っておられることは、我々としましてもまことに心の痛む問題なんです。実は、これまでもソ連側との間で合意ができまして、証明書でもって簡単に行けるという道が開かれておったのですが、残念ながらそういう形はソ連側が拒否するところとなって、現在では正式なビザ等の手続をとらなければ北方領土には行けないという状況になっておりまして、我々としても極めて遺憾であります。  日本政府としましては、かつて日ソ間で合意ができておりましたような、証明書でもって簡単に北方領土に帰れるという形が望ましいわけであります。かつて、そういうことでやっていたわけでありますから、ソ連側に対しまして私も事あるたびにそれを求めておりますが、今のソ連の態度は、なかなかそれに対してかたいと言わざるを得ないわけです。そういう中で石橋委員長もおいでになりまして、ゴルバチョフ書記長との間で問題にもなったようであります。その間の事情あるいは討議の内容について、私は直接委員長から承ってもおります。一つの考え方も持っておられるようであります。私たちはいずれにしても、結論的に北方領土から引き揚げた人たちが非常に簡単に行けるという形が何らかの形でできることを念願しておりますし、そのための一つの案も実はお考えになっているようです。  こうした問題は外交関係で非常に微妙な点もありますし、政府は政府としての考えもあって、そういう点でいろいろと今石橋さんとも話し合いをしておりますし、ソ連側に対してもこれからどうするか今検討しておるわけでありますから、具体的に今ここで申し上げる段階ではありませんが、せっかくそうした強い熱意を持っている人たちが何らかストレートな形でこれまでと同じような方向、多少はその点に一つの便宜的な面が含まれても、とにかく墓参できるということが必要じゃないか。それには最終的には外交ルートで話し合いをしたい。今その事前の根回しというものがこれから行われようという段階でありますし、何とかこの問題は日ソ間の重要な案件としてこれを解決するために努力していきたい。そして、できればシェワルナゼ外相が来年の一月中旬に日本に来るまでの間に、日ソ間で何らかその話に取っかかりができるような形に持っていきたい、私はこういうふうに思っております。
  77. 土井たか子

    土井委員 わかりました。それはさらに努力を積んでいただいて、ぜひとも来春の外相会談の席では、これに対して具体的に何らかの措置がはっきりできることを望んでいます。これはひとつ、努力方をさらに要請を申し上げたいと思います。  さて、ほかにも日ソ間の問題は基本的にございますけれども、きょうは特にあとの時間を靖国問題についてお尋ねを進めたいと私は思うのであります。  それでは後藤局長からお尋ねしたいと思うのですが、十月八日に後藤局長は急速、本当に急速訪中されたわけでありますけれども、どのような目的で中国にあのときいらしたのですか。
  78. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 お答えいたします。  御案内のように、十月十日から外務大臣同士の第一回の定期協議が開かれるということでございました。そこで、せっかく外務大臣が行かれますので、私ども単に呉学謙、ウー・シュエチエン外務部長との協議のほかに、できるだけ多くの要人の方にお会いいただいた方がいいということで、外交チャネルを通じていろいろと中国側にお願いしておったわけでございます。ただ、御案内のように、中国側はいろいろな御日程がありまして、その時点においてなかなか決まっておりませんでしたので、むしろぜひ今度の安倍外務大臣の訪中の意義をもう一度、鄧小平主任以下できるだけ多くの要人に外務大臣がお会いすることができて、この機会に日中関係を大局的にお話ししていただくことが非常にいいのじゃないだろうかという私どもの誠意を、東京におります私が参りまして中国側の関係者にお願いするということで、要人と外務大臣との表敬、会談の日程の最終的なお願いに伺ったということでございます。
  79. 土井たか子

    土井委員 局長、ちょっとそれは四角四面な切り口上でおっしゃるわけだけれども、急速いらしたのには、大変な御無理を重ねていらっしゃるはずなんです。今までの外務大臣の訪中についてこれだけ配慮して、これだけ局長自身が無理をして飛んでいかれるということはよもやございませんでした。飛んでいかれた当日は、外国の方とお会いになるお約束もあったはずであります。韓国の金泳三氏と会談されるということもキャンセルにした。しかも、航空券はなかなか手に入らない、難しいのに、無理をしてわざわざいらした。今おっしゃったような御答弁だったら、日本大使館を通じてアレンジできるのです。いつでもそのとおりやってこられている。特に、いろいろと事前の調整が必要だったのじゃないですか。
  80. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 今御指摘のとおり、八日の夜、韓国の金泳三氏と私会食をさせていただきたいという日程を立てておりました。大変乱もこの会談を、会談というか夕食を楽しみにしておりまして、私、体が二つあったら両方に本当に出たいなという感じがあったわけでございます。急に参りましたのは、私としては、大使館を通じてそういう日程のアレンジができればいいなと思っておったのでございますが、なかなかできないということでございましたので、できないと言ったらおかしいのですけれども、十日に行きまして……(土井委員「おかしいですよ」と呼ぶ)いやいや、そんなことは絶対にございません。行きまして、鄧小平主任――何日の何時ということはあるいはわかるかもしれませんが、私、事務当局の責任者といたしましては、日中外相会議は初めてでございますので、外務大臣ができるだけの要人にお会いしたいという希望に万一にも沿えない場合には、甚だ私責任を感ずるわけでございます。金泳三氏にお会いできなかったのは、まことに残念でございます。  それから、九日でもよかったかなという感じはするのですが、たまたま飛行機が八日の午後にとれたというものですから、結果的には急速飛んでいったということでございます。本当にそれだけでございます。
  81. 土井たか子

    土井委員 大変無理な御答弁だと思うのですよ。それはだれに会っていただけるかという調整だけではなくて、大事な懸案の内容に対する調整もあったのでしょう。それは既に巷間はっきり伝えられています。中国側がただいまの靖国問題に対して非常に強い姿勢を持っている、このことに対して外務省としては対応方が要請される、この調整がありはしませんか。
  82. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 八日に参りまして、九日に先方の外務部の次官、あるいは私のカウンターパートであるアジア局長と昼食などをしたことは事実でございます。その過程において、もちろん今の要人の表敬のほかに議題というものは、日中外相会談の議題は二国間で国際関係のいろいろなお話をしましょうということは既にお話ししておったわけでございますが、靖国問題について調整する等そういうような問題はございません。靖国神社問題というのは、もっと高いレベルの非常に政治的なあれでございますので、私がこれについて調整するというようなたぐいのものではないと思います。  ただ、靖国神社の問題について、昼食か何かのときに日本の公式参拝というのがあって、それは官房長官談話のラインで私がお話ししたということはございますけれども、それがいわゆる今先生の言われました調整とか、そういうことでは毛頭ございません。それはむしろ、外務大臣同士においてお話ししていただくべき筋合いのものであるというのが私の判断でございました。
  83. 土井たか子

    土井委員 それはそうだと思います。外務大臣から正式に言われるのが筋であろうと思います。しかしその前に、一応それに対してその席を通じて説明をされることぐらいに、この問題に対しては重要視されて行かれているのですよ。
  84. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 靖国神社問題が、日本の国内あるいは関係国において今非常に関心があるということは当然でございます。私もこの問題については、小さい心を常に痛めてきておることは御理解いただきたいと思います。その意味で官房長官の談話をお話しして、外務大臣もその点については呉学謙外交部長と率直なお話をさせていただくであろう、その点はよろしく外交部長にお話をお聞きいただきたい、そういうことでございます。
  85. 土井たか子

    土井委員 それごらんなさい。今の御答弁を聞いていると、やはりそういう調整じゃないですか。中身についてどうぞ聞いていただきたい、そういう調整ですよ。  さて外務大臣、中国の靖国に対する抗議というものについて、これは内政干渉だというふうなことを発言する人がおるんですね。しかし、日中共同声明の六項を見たり、日中平和友好条約の一条一項を見てまいりますと、そこに言うところの内政干渉には当たらないと私は思うのですが、これは内政干渉というふうに受けとめていらっしゃいますかどうですか、外務大臣にお尋ねいたします。
  86. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この問題についてはいろいろと議論もあるわけですが、私と外務長官との話し合いでは、内政干渉とかそういう立場で話をしているわけではありませんで、あくまでもやはり日中関係の将来の問題、それからこれまでの日中関係のあり方、そういうものを踏まえた形で靖国問題にも触れて、特に中国側としましては、日本に中国の人民の感情をやはり十分知っていただきたい、理解していただきたい、こういう趣旨でございます。中国側が、初めからそうした内政干渉とかそういう意図でもって、あるいはそういう気持ち、立場で日本に対して注文をつけたということではもちろんありません。
  87. 土井たか子

    土井委員 今外務大臣としては、内政干渉とは受けとめていらっしゃらないというお立場でありますが、そうすると、内政干渉でないということになるなら、その理由は、どういうふうなところでこの抗議があるというふうに受けとめていらっしゃいますか。
  88. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、具体的な会談の内容についていろいろと申し上げることは、やはり国際間の関係でもありますから差し控えるのが妥当じゃないかと思いますが、中国側としましては、やはりああした学生の一連の動き等もあって、そういう中でとくに靖国神社の公式参拝というのが、何か一部のといいますか、中国の人たちから、国民感情から見ると、日本がまた今まで来た道から方向を変えていくのじゃないか、中国が一番心配しているいわゆる軍国主義といった方向に、こうした総理大臣の公式参拝というものを契機に道を変えていくのじゃないか、そういうおそれ、心配というものが中国側にある。そうした心配というのが学生等の動きになってもあらわれておるのだ、こういうことも言っておられたのであります。  ですから、私はそれに対して、日本のとった今回の総理大臣の公式参拝というのは、官房長官の談話にも尽くされておるし、この官房長官の談話というのは、やはり日中関係についても、日本がこれまでアジアの人たちに与えた大きな犠牲というものに対する反省は常にしていかなければならぬ、同時に、これからの平和のために日本は努力をしていく。今回の措置というものは、一般の戦争の犠牲者に対して政府として弔意を表する、こういう形でやってきているわけで、中国側が心配しておられるような軍国主義への道を歩くとか、あるいはまた日中共同宣言に違反をするような立場で日本が何かやろうとしている、日中平和友好条約に背馳するような形で日本が何かやろうとしている、そういうものでは決してないのだ、これまでの日中間で約束し、結んだ原則、条約、基本というものはきちっと守っていきますということを、私からも詳細に説明したわけであります。
  89. 土井たか子

    土井委員 その外務大臣は詳細に説明をされたということも新聞記事に報道されているわけでありますけれども日本政府の真意を説明しましても、中国側の立場というのは、A級戦犯を祭った靖国神社へ政府が公式に参拝した行為そのものが相互の信頼を裏切る、侵略戦争の被害者である中国人民の痛みというものを踏みにじるものだというふうなとらえ方があるのじゃないか、こういうことに相なるわけでありますが、この点はいかがでございますか。
  90. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 そうした判断も、私は率直に言って中国側にはあるのじゃないか、こういうふうに思います。
  91. 土井たか子

    土井委員 そこでお尋ねしますけれども、中国側の理由というものが一応納得できるというものであるならば、日中間の関係を一層強固なものにしていくことのためには、納得できる内容に対して、日本としてはやはりこれにこたえるということが非常に大事な問題になってくると思うのです。日本は中国に対して侵略戦争を行い、大変多大の被害を与えたという過去の事情があるわけですけれども、この点に対して外務省としてはどういう認識を持っていらっしゃいますか。
  92. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 過去、日本が中国あるいは中国の民衆に与えた大変大きな犠牲というものに対しては、日本としては深く反省をして、その反省の上に立って日中関係というものを進めていかなければならない、こういうふうに思っています。
  93. 土井たか子

    土井委員 その過去の大変な、向こうに被害を与えたということの反省とおっしゃいますが、これはやはり中国に対して日本は侵犯した、侵略をしたという事実に基づくところの被害が中国側にはあったという事実関係に相なると思われますが、いかがでございますか。
  94. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 中国側がそういうふうに判断することは、それは日中間のこれまでのあり方からすれば、国際的にもあるいは客観的にもそれなりの意味があるのじゃないか、こういうことは日本としてもやはり十分受けとめなければならぬ、こういうふうに私は思います。
  95. 土井たか子

    土井委員 つまり、国際的に日本は中国に対して侵略をしたということが是認されておる、国際的それは認識である、このことを日本もはっきり認めなければならぬ、こういう関係になるわけですね。  東京裁判で「平和に対する罪」という概念が新しく出てきているわけですが、「平和に対する罪」というのは内容は一体どういうものなんですか。外務省いかがでしょう。
  96. 小和田恒

    ○小和田政府委員 極東国際軍事裁判所の条例で「平和に対する罪」というものが規定されまして、それに基づいて被告が起訴されたわけでございますけれども、その中で訴因の第二十七というのがそれに当たりますが、中国に対して侵略戦争が行われた、これが「平和に対する罪」を構成するという規定がございます。
  97. 土井たか子

    土井委員 それは、極東国際軍事裁判所条例の中にも明記がされているところですから、今局長がお答えになったとおり、中国に対して侵略戦争を行ったということに対する罪である、具体的に言えばそういうことに相なるかと思うのです。そうすると、東京裁判自身に対しては、日本はこれは認めているわけですね。また、東京裁判に対しては国として、政府として、それを是認するという立場にあるわけですね。いかがですか。
  98. 小和田恒

    ○小和田政府委員 土井委員御承知のとおり、日本国との平和条約の第十一条に規定がございます。「日本国は、極東国際軍事裁判所並びに日本国内及び国外の他の連合国戦争犯罪法廷の裁判を受諾し、且つ、日本国で拘禁されている日本国民にこれらの法廷が課した刑を執行するものとする。」云々という規定がございまして、ここで極東国際軍事裁判所の裁判を受諾するということを約束しておるわけでございます。
  99. 土井たか子

    土井委員 受諾するということになると、条約に対しては遵守するという義務が日本としてはございますから、したがって、平和条約の十一条に言うところで、はっきりそのことに対しては認めているという立場に日本の政府としては立つわけですね。日本の国としては立つわけですね。これを再確認します。
  100. 小和田恒

    ○小和田政府委員 ここで裁判を受諾しているわけでございますから、その裁判の内容をそういうものとして受けとめる、そういうものとして承認するということでございます。
  101. 土井たか子

    土井委員 この東京裁判、極東国際軍事裁判所において戦争犯罪人として処罰されることのためには、戦争を引き起こした、侵略戦争を行ったということで処罰されているわけであります。侵略戦争というのは、先ほど外務大臣がおっしゃるとおり、国際的にこれは犯罪ということに相なるかと思われますが、いかがでございますか。
  102. 小和田恒

    ○小和田政府委員 一般論として申し上げますと、極東軍事裁判の評価については学問的にはいろいろな意見がございますけれども先ほども申し上げましたように、国と国との関係におきましては、日本国政府といたしましては極東軍事裁判を受諾しているわけでございます。その裁判の過程におきまして、先ほども申し上げましたような「平和に対する罪」ということが起訴理由になっておりまして、その訴因の第二十七で、被告が中華民国に対し侵略戦争並びに国際法、条約、協定及び保証に違反する戦争を行ったということが挙げられておりまして、御承知のような判決が出ているわけでございますので、そういうものとして政府は受けとめておるということでございます。
  103. 土井たか子

    土井委員 したがって、侵略戦争は国際的に犯罪であるということを認めるということに相なりますね、もう一度お尋ねしますが。
  104. 小和田恒

    ○小和田政府委員 この極東軍事裁判において問題になった戦争あるいはこの被告の行動につきましては、それが極東軍事裁判所に言うところの「平和に対する罪」を構成するという判決、そういう裁判を受諾した、そういうものどして認めたということでございます。
  105. 土井たか子

    土井委員 ポツダム宣言というのがございますね。ポツダム宣言を日本が受諾したということ、これはイコール敗戦ということに相なったわけでありますが、このポツダム宣言の十項というところに「一切の戦争犯罪人」云々というのが書かれております。「平和に対する罪」で裁かれた者は、当然この中に含まれますか、いかがでございますか。
  106. 小和田恒

    ○小和田政府委員 御質問の趣旨を私、正確に把握したかどうかよくわかりませんが、ポツダム宣言十項には御指摘のとおり「一切の戦争犯罪人に対しては、厳重なる処罰を加へらるべし。」という規定がございます。我が国はポツダム宣言を受諾しておりますので、この内容を受諾したということでございます。
  107. 土井たか子

    土井委員 そうすると、その内容を受諾したと言われる「一切の戦争犯罪人に対しては、厳重なる処罰を加へらるべし。」と書いてあるその「一切の戦争犯罪人」というのは、「平和に対する罪」で裁かれた者は当然これは含まれるということになるわけですね。
  108. 小和田恒

    ○小和田政府委員 前後関係が逆になりますけれども、ポツダム宣言を受諾いたしまして、その後の事態におきまして極東軍事裁判所が設立をされて裁判が行われた、こういうことでございます。その極東軍事裁判所の裁判の過程におきまして、「平和に対する罪」として裁かれたわけでございますので、ポツダム宣言十項に言っておりますところの戦争犯罪者の処罰の規定が具体的に実施されたものとして、極東軍事裁判を受けとめるということでいいのではないかと思います。
  109. 土井たか子

    土井委員 いや、それは解釈の経緯についての御説明でございましたが、結論とすれば、時間的には相前後するけれども、ポツダム宣言の十項に言うところの「一切の戦争犯罪人」は「平和に対する罪」で裁かれた者は当然含む、こういう理解でよろしゅうございますね。
  110. 小和田恒

    ○小和田政府委員 委員の御質問の趣旨を私、正確に理解していないかもしれませんのでお許しいただきたいのですが、ポツダム宣言の第十項に言っております戦争犯罪人の処罰、それが具体的に実施に移されたものとして極東軍事裁判というものが位置づけられると思いますので、その意味におきましては極東軍事裁判の裁判の結果というものは、ポツダム宣言第十項に言っておりますところの戦争犯罪人の処罰に相当するものであると理解しております。
  111. 土井たか子

    土井委員 そうすると外務大臣、中国側に公式参拝の説明として、参拝は決して軍国主義の道を歩まぬという日本の決意を変更するものじゃないというふうに言われているわけですが、この説明では今の問題に対してちょっと的外れになってくるのですよ、今私がそういう御質問を申し上げて答弁をいただいた経緯からいたしますと。中国何からすれば、侵略戦争で親や子供や自分たちの身内が大変殺されて、まだその悲しみ、憎しみというものは消えていない、そういう人たちがたくさんおります。そういう中で、総理を初めとして、侵略戦争を引き起こした戦争犯罪人が祭られている場所に公式参拝することは許せないということ、これは当然の問題じゃなかろうかと思われますが、外務大臣いかがでございますか。
  112. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この点について、私も官房長官の談話を引用いたしまして日本の立場を説明したわけですが、今回の総理大臣初め閣僚の公式参拝は、特定の人たちに対する特別な哀悼の意をあらわすとかそうしたような考え方では毛頭なくて、やはり一般的に日本のために戦争で殉じた戦没者を追悼する、こういう立場から、そしてまた靖国神社がこれまで戦没者の中心的な施設である、こういう認識から総理大臣初め閣僚の参拝というものが行われたのであって、その辺についてはひとつ十分理解をしていただきたいということを述べたわけでございますが、私の詳細な説明に対して呉学謙外相は理解したと言っているわけではありませんで、日本側の説明は十分承りました、しかし中国には中国の人民の感情というものもありますし、そういう点についてはひとつ十分御配慮をしていただきたい、こういうような趣旨のお話がございました。
  113. 土井たか子

    土井委員 配慮をしていただきたいじゃないんですね、外務大臣御自身がどう対応されるかを私は承りたいと思うのです。戦争犯罪人として罰せられている戦犯が合祀されているのです。日本の国内でも、親兄弟を失った戦没者からすれば、戦争に駆り立てられた、そうして戦死を遂げた、駆り立てた側と一緒に合祀されることに対しては大変微妙な気になられるのじゃないか。むしろ、お断りだという気持ちさえ遺族の中にはあると私は思いますよ。ましてや侵略を受けた側からすれば、侵略者を祭っている場所に――お互い国交回復後、過去の過ちを二度と繰り返さない、深く反省するということの共同声明の中で、正常な、子々孫々に至るお互いの国交を平和裏に進めていくということが問われている中での問題ですから、このことに対しては大変深刻と言わざるを得ぬのです。  政府としては、靖国公式参拝は制度化していないと言われますけれども外務大臣御自身はこの問題に対してどう対応なさるのですか。中国に対して、るる説明をして済む問題ではなかろうと私は思っています。いかがでございますか。
  114. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは決して、中国側との間で交渉して解決するとかいう問題じゃないわけですが、日本政府として決定に至るそうした経緯については、やはり中国側としても非常に重大な関心を持っておられるから、るる説明をしたわけです。その中に、今私が申し上げましたように、決してそうした特定の人たちに対して哀悼の意を示すあるいは礼賛をする、そういうふうな立場で我々が靖国神社に参拝をしたわけでも何でもないんだ、我々の気持ちというものは、総理大臣以下、あくまでも一般的に戦没者全体に対する政府としての哀悼をささげる、こういう立場で行ったわけであるし、このこと自体によって日中関係、これまで築き上げたものを変えようとかあるいは変わっていくとか、そういう考え方は毛頭ないんで、あくまでもこれまでの基本というものはきちっと守って、これから進んでいきますということを私からも申し上げておるわけであります。
  115. 土井たか子

    土井委員 いや、そうじゃないんです。口先で幾ら説明をしたって、そんな問題じゃないでしょうと言っているのです。日本のそれに対する姿勢が問われているのです。中国のみならずアジアに対して、日本は過去大変な被害を与え、非常な悲惨な状況を繰り広げたんですよ。日本から被害を受けた国は、これは絶対忘れません。そういうことからすれば、これは先ほど来応答をしていただいたとおり、戦争犯罪人として国際的に罰せられた人たちが祭られている場所に日本の政府が公式に参拝するという意味は、どういう意味を持ちますか。外国から見てこれはどう目に映るでしょう、特にアジアの国から見れば。一%問題については、外務大臣は、軍事大国にならない、アジア、特に近隣諸国に対しての日本の大事なあかしであるということを言われた。同様に、この問題もアジアの目はじっと見ているということを忘れてはならぬと思います。軍事大国にならない、口先では幾らだって言える。軍縮も大事、これも口先で言えるのです。しかし、何をどうやっているかが大事じゃないですか。このことを考えれば、外務大臣がこれからこの問題に対してどう対処なさるかということはぜひとも聞かせていただかねばなりません。いかがでございますか。
  116. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 政府としては御承知のような公式参拝を決めまして、いろいろこれまでのいきさつについては御承知のとおりです。その決めるに当たっての官房長官談話で、政府の考え方というものあるいは気持ちというものは国際的にも明らかにしておるわけでございますが、確かに、日本がこれからいろいろと事を行う場合においては、国際的な関係あるいはまたアジアの人たちの気持ちというものは、それなりに十分配慮しながら問題に当たっていかなければならないという点については、私も変わらざる気持ちを今日も持っておるわけでございます。総理も、その後の国会での答弁等で、この公式参拝というものは制度として進めておるのじゃないんだということも申しておるわけでございます。  この問題は、日本日本なりに自主的に取り組んでいくべき課題でありますけれども、しかし同時に、一面また外国の、特にアジアの人たちの気持ちというものも、それはそれなりにやはり我々としても考えて対応していかなきゃならない。同時にまた、そうした国々に対する十分な説明といいますか、理解を求める、こういう努力は引き続いてやっていかなければならない、こういうふうに思います。
  117. 土井たか子

    土井委員 それはその努力も大事でしょうが、外務大臣、戦争犯罪人というのは戦没者じゃないでしょう。先ほどから、戦没者にもうでるとか戦没者に参るとかおっしゃっていますが、戦没者じゃない。いかがです。
  118. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはまさに宗教法人靖国神社自身が判断して、そして決める問題ですけれども、御承知のように戦争犯罪人、処刑された方々が戦没者と言えるかどうかということは、今までの靖国神社に祭られておる人たちの歴史的な経過から見ると、言えるかどうかという点についてはいろいろと問題はあると思います。しかし、宗教法人靖国神社が決めるべき問題じゃないか、こういうふうに思います。
  119. 土井たか子

    土井委員 外務大臣、靖国神社がだれを合祀するかという問題は、全く靖国マターであります。神社マターです。きょうここで討議をした中身というのは、国際法から考えて戦争犯罪人というのはどういう人たちを言うのか。少なくとも日本が受諾をし、そして今日まで有効であるポツダム宣言にしろ平和条約にしろ、その中で言うところの戦争犯罪人として処刑されている人たちは、国際法上これは戦没者じゃないんです。このことははっきりいたしましょう。国際的に考えて、戦没者と戦争犯罪人は違いますよ。同じに考えるわけにはいかない。これは違うでしょう。国際的に戦争犯罪人は戦争犯罪人なんです。極東軍事裁判条例を見ればちゃんと明記してありますよ。それを平和条約で日本も認めているのです。日本の国としたら、それを認める立場に立っているのです。いかがでございますか。
  120. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 極東裁判あるいはまたその結果生まれた戦争犯罪人あるいはまたこれに対する処罰、これは今条約局長が言っておるように、国際法的にもあるいはポツダム宣言受諾以来の日本政府の公式な立場からしても、これは日本としてこれを認める、そして平和を侵したものだ、こういう認定の上に立って受諾をしているわけですから、政府としてはその点に対しては明快であろう、こういうふうに思います。
  121. 土井たか子

    土井委員 明快になることに対して明快にまだ態度を示しておられない、そういうことになるのです。平和を侵した人たちに対してもうでることが、どうして平和に対する誓いになるのですか。こんな矛盾した話はないと思いますよ。ここのところをはっきりしていただかなければならぬと思います。外務大臣の御所信をお伺いします。
  122. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 総理初め我々としても、靖国神社に参拝をしたというのは、何も今お話しのように、戦争犯罪人で処刑された方々に対して哀悼の意を表するとかそういう立場で行っているわけでないことは、それはもうはっきり言えるわけです。総理初め我々が行っている立場というのは、あくまでも戦争犠牲者がお祭りしてあるといいますか、中心的施設が靖国神社だ、そしてあくまでも総理以下我々が行った対象というのは、一般的に戦争で生命を亡くした戦没者、一般的な戦没者、そういう立場に哀悼をささげる、そして平和を祈願する、こういう立場で行っておるということを、これは官房長官談話等でも明らかにしておるわけでございます。
  123. 土井たか子

    土井委員 理屈の上での区分けはできても、実態の上での区分けはできません、一体として合祀されているのですから、その場所に公式参拝されるのですから。よろしゅうございますか。そこの場所に行かれて記帳されるときに、戦犯者は除くとお書きになるのですか、そういうわけにもいかぬでしょう。これは非常に矛盾した話であります。個人としてもうでられるのは全く別ですよ。公式参拝という場所、この靖国の中に祭られているのが戦犯者である、そこにもうでられる。それだけは意識の中にございませんと言ったって、そこにもうでられるのですから、現実の実態としてはこれは幾ら理屈を言ったって通用する問題じゃない。その辺は外務大臣、どこまでもこの話は口で説明されたとしても解決できる問題じゃありませんよ。  来春、八月十五日、秋、それが問われるということになりまして、恐らくは、これは公式に制度化したものじゃない、また、なおかつその場所になったときに考えましょう、こうなるかもしれませんが、しかしそうじゃないので、基本姿勢というのがどういうところにあるかというのが常に問われているのです。その日が来るときにどう対応するかという問題もさることながら、そうじゃない、常日ごろが問われているのですよ。そういうことからして、外務大臣姿勢に対して私はきょうははっきりしたお答えをいただきたい、そういうつもりで質問をいたしております。いかがですか。
  124. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは今までるる申し上げたとおりでありますし、政府としてはとにかく制度化したわけじゃないのですけれども、公式参拝の道を開いたことは事実でありますし、その理由としては官房長官談話で明らかにしておるわけでございます。そしてこの問題について、あくまでも日本政府自身の問題として自主的にこれから総理大臣以下が判断をしなければならない。これは日本国民としての、あるいはまた政府としての自主的な独自の判断でやらなければならぬ、判断をしていかなければならない問題でありますけれども、同時に、国際的な例えば中国との関係とかあるいはまたその他アジアとの関係、そうした面についてもそれなりの配慮というものを、今後とも日本が国際的な国家としてアジアの一国として進む以上は、それはそれなりに考えていかなければならぬ、そうした大きな判断の中でその一つとして考えていかなければならない、そういう課題でもあろう、私はこういうふうに思います。
  125. 土井たか子

    土井委員 そうすると、戦没者でない戦犯者が祭られている場所に公式参拝することは好ましくない、このように外務大臣としてはお考えでいらっしゃいますね。
  126. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いや、これは総理以下我々も参っているわけで、そのときの立場というものは、あくまでも戦没者が祭られている中心的施設としての靖国神社、そして我々が哀悼をささげたのは一般的な戦没者、こういう立場でございますから、それ以上のものではありません。
  127. 土井たか子

    土井委員 さあ、そういう姿勢というのは、やはりアジアから見ると奇異に映りますよ。戦争に対する反省というものが全くないと言われてもいたし方ない、戦犯者にもうでるのですから。それは別であると言っても、それが祭られている場所にもうでられているのです、公式に。どこまでいったって、これは理屈で、説明で賄い切れる問題じゃありませんよ。アジアはその問題を注視している。確かに外務大臣がおっしゃるとおりに、外交的にこれは非常に大きな意味を持つ問題であります。こういうことからすれば、戦犯者が祭られている場所に行きながら、戦犯者にもうでているのではない、こういうことを口頭で言われますけれども、これは通用しない。このことは、良識のある外務大臣ですからわかった上で、非常にお困りになりながらお答えになっていらっしゃるのではなかろうかと私は推察するわけでありますけれども、しかしこんなことは、困って、いろいろとそれに対してどういうふうに言い回しを考えていったら摩擦が起きないで済むかという答弁で済む問題じゃないのです。後々、これから事実関係で、具体的なことに対しては思わぬ好ましくない問題も引き起こします。七二年に国交回復がなし遂げられた以前に戻るか、そのうち我々が努力をして積み重ねてきた国交正常化後の日中間のあるべき平和友好という問題がさらに促進されていくか、岐路に立つ問題だと申し上げても過言じゃないと私は思いますよ。  最後に外務大臣の御所信を承って、私は終わりにします。
  128. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 アジアの一国ですから、やはりアジアの国民の気持ちは大事にしなきゃならぬと思いますし、また、戦後四十年間の中で、アジアの中の一国としての日本の責任というものはそれなりに果たしておりますし、その努力も続けておるわけで、そういう中でアジアの中の一国としての日本と諸外国との信頼関係を徐々に拡大していることを私は大変喜んでおります。そして、日中関係もせっかくここまでいい関係に来ているわけですから、これをやはり不動のものとしてこれから発展させていかなきゃならぬと思います。  しかし、いろいろと問題は、これだけ広く、深くなっているのですから出てくるわけですけれども、それは両国の英知によって解決するということが必要ではないだろうか、こういうことを私は痛感をします。日本もそうですが、中国側もやはりこれまで築き上げた日中関係を損なわないように持っていこう、そういうことで中国側としては、非常に高い立場でいろいろと考えてもらえることを私はひしひしと感ずるわけです。それをやはり日本が知らなければならぬし、十分知って対応していかなければならぬと思う。  先ほどからお話がありましたような靖国神社問題、そしてこれに公式参拝したということが、反省が足らないとかそういうことでは全然ないわけです。それは、中国側もわかっていただけると思います。我々はあくまでも、日中平和友好条約とかあるいはまた日中共同声明とかその他の四原則とかそういうものは守っていくんだ、軍国主義の道はもうたどらないのだということは中国側にも十分説明しているし、これも十分わかっていただいているのではないか、こういうふうにも思っておるわけでございますが、いずれにしても今後の大事な関係に大きなひびが入らないように、とにかく我々も政治家として、外務大臣としてだけじゃなくて政治家としても努力をしていく必要がある、こういうことは痛感しております。
  129. 土井たか子

    土井委員 終わります。
  130. 愛野興一郎

    愛野委員長 次に、小林進君。
  131. 小林進

    小林(進)委員 靖国神社の問題で外務大臣のお考えもお聞きしておりましたけれども、私もこの問題、非常に心配しているのです。これは単なる日本の問題ではなくて国際問題だし、四十年積み重ねてきた日中友好にも大きな傷が入るという心配もあるものですから、私は静かに深く眺めていたのですが、今の内閣の中では、総理大臣よりは外務大臣がこの問題の重要性をやや理解されているのじゃないかと思っているのです。まだしかし、私どもの理解から見ると随分足りない。そこで、外務大臣を教育するというのはちょっとおこがましいけれども、いま少し問題を深めて理解してもらいたいという立場で私はひとつ質問をいたしますが、限られた時間ですから駆け足で申し上げたい。  第一番目には、外務大臣はこの十月十日から十三日まで両国の外相会議においでになった。私はその記録は全部あるのです。その中で外務大臣は、鄧小平顧問委員会主任あるいは越紫陽主席それから呉学謙外交部長それからまた谷牧にもお会いになっている、それから李鵬にもお会いになっている、それから王兆国、なかなかこれは大したメンバーです。このメンバーを見ると、中国が外務大臣の訪中を大変重要視している。  ちょっと余分なことになるけれども、あなたの帰られたその日にブッシュが北京に行っているのです。アメリカの副大統領が行っているが、ブッシュが向こうで会ったメンバーとあなたが会ったメンバーとほとんど同じ、メンバーは違いますけれども。あなたは胡耀邦にはお会いにならないが、ブッシュは胡耀邦にお会いになっているけれども、鄧小平には会っていないという形でメンバーは違うが、ブッシュ同等以上にあなたの訪中を中国は非常に重要視したなという感を受ける。  それを見ながら、今申し上げた巨頭諸君とあなたの話を、記録をずっと見ておりますと、重要人物が、この三首脳部が言っていることはみんな同じなんです。あなたに言っていることはみんな同じなんです。内容全部ありますけれども、これをやってはとても一時間ぐらいで質問になりませんから、かいつまんで結論を申し上げますと、やはり中心は二つある。  一つ、この問題だ。彼らは実に慎重で、靖国神社という言葉を一つも使っていない。また、あなたも使っていない。使っていないが、「このことにつき」と、このことについてだけれども、考えるような表現で言っているのです。非常に意味深長だが、この鄧小平の言葉をちょっと借りると「政治上の部分的な問題」だ。「部分的な問題について両国の政治家がそろってこのような問題を重視し、関心を寄せるべきである。」そして十分に話し合いを通じて、もう二度と起こらぬようにしてくれ、こういう表現。  それからいま一つ、このような問題をぜひとも解決してくれというようなことで三巨頭の言い分で重要なことは、いわゆる「国民」という言葉を非常に使っている。みんな使っている。人心を、いわゆる国民を刺激しないでくれ、中国人民とは言わぬ、人民の感情を害さないでくれ、これを繰り返し言っているね。  だから、安倍さん、あなたの両巨頭との会談の記録をずっと見ていると、落ちるところはみんなここだ。政治家はこんな問題を起こさないように、いま少しひとつ慎重に構えてくれというのが一つと、なお国民の感情を害さないでくれ、言いかえれば国民は非常に怒っていますよ、これを何とかこれ以上感情を高めないようにしてくれ、こういう言葉がにじみ出ているんですが、これに対してあなたは、大変迷惑をかけたから日本は非常に反省しておるとか、あるいは正常化の原則だとかあるいは平和条約の原則、あるいは国交回復の四原則に従って決して軍国主義にならないという通り一遍の――通り一遍じゃ非常に悪いけれども、あれで手いっぱいなんでしょう。一生懸命答弁をしておいでになるが、あなたはこの問題について、中国の要人が繰り返して言っているこの二つの問題に対して一体どういう理解をお持ちになってきたか、私はこれを率直に聞いておきたいんですよ。
  132. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今回の私の訪中、日中外相会談を中心として一連の要人との会談ですが、おっしゃるように呉学謙外相とは長時間やりまして、靖国神社そのものにつきましても時間をかけて日本の立場を説明いたしましたし、また中国側からの説明もありました。これは具体的にあったわけでありますが、鄧小平氏を初めとしてその他の要人との間では、具体的なそうした指摘というものはなかったように思います。しかし、今お話しのように、日中間は大変よくなってきているし、またこれからもそれを不動のものにしていかなければならぬ、この点については両国の認識がそれぞれ一致したわけです。  ただ、経済の問題あるいはまた政治の問題、両面にわたって、いい中でも問題が起こっておる。経済の問題では、インバランスの問題等がだんだん目立ってきておる。あるいはまた投資だとかあるいは技術移転とか、そういうところにこれからお互いに努力していかなければならぬ課題があるんだ、中国側からするとそういう点に不満があるんだという指摘がありました。また、今おっしゃるような趣旨の表現で、政治的には我々は不満といいますか問題を感じておる、ですからこういう問題を早く克服して、これからの日中関係をしっかりしたものにしたい、全体的にはこういうことでありました。  ですから、具体的に指摘をされたということではありませんけれども、私自身も呉学謙外相と先日十分な論議をしておりますし、そういう点で中国側がどういうことを言わんとしておられるかということについては、私自身もそれなりの認識を持って帰ってきたつもりでありますし、そうした認識につきましては総理大臣にもお伝えをいたしました。あるいは党の皆さんにも、私の認識は率直にお伝えをした次第であります。
  133. 小林進

    小林(進)委員 あなたの御答弁にも半分賛成ですが、私は、あなたと中国の首脳との会談を聞いて第一番目に感じたことは、中国の反靖国感情は予想以上に厳しいぞ、これが一つです。あなたがどの程度感じておるかわからぬが、とにかくこれは厳しいぞ。  それから第二番目は、これは私は両国の国民の感情の一番のずれだと思うのだけれども日本は、国交が回復して十三年たったものでありますから、もう日中両国の友好などということは何か空気が通り過ぎるような、もう当たり前のような、ムードだけに今流れているという感情だ。その中ですから、日本国民の中には、今さら戦争の反省だとか軍国主義とかのことが一体何で問題になるんだろう、我々は日中友好に賛成しているじゃないかという空気があるが、これは日本人の大方の気持ちかもしれませんよ。しかし、中国から言わせると、中国人国民から言わせると、なるほど、しかし私どもはこの日本の侵略戦争で、まず今二千万人と言いますよ、私は今まで一千万人と言いましたけれども、中国人は二千万人を殺された、それから一億人以上の人たちの家を焼かれた、土地も取られた。当時は中国五億と言った。だから二割、五分の一の人はもう家を焼き払われた。そういうような被害者が今まだ中国にはたくさんいるのだ。たくさんいて、あるいは近親者が殺されたとか家を焼かれたとか土地を取られた、こういうような方々が身辺にたくさんいて、今まだその戦争の傷跡を中国人は生々しく残しているわけだ。  そういうことで、先ほどの質問もありましたけれども、被害を受けた者はこの苦しさあるいは痛さ、悲しさというものは、これは忘れられない。その忘れられない気持ちでずっと日本を見詰めているわけですよ。その見詰めている人の感情や見方というものを、日本の政府、中曽根さんを先頭にちっともこういうことに対して考えてくれない。私は、最近よく中国へ行きますと、日本人ほど勝手な国民はいない、自分のことだけしか考えていない、人の痛さを一つも考えない、人の立場を考えない国民ですということを言われて、なるほどという感を深くしたのですが、これが靖国神社問題が爆発した潜在的な理由であるというふうに私は理解をしているのですけれども、中国のこの国民感情、今私が申し上げたこの感情というものを、一体外務大臣はこれをお認めになりますか、どうですか。どうでしょう、御理解になりませんか。外務大臣、ちょっとお伺いしましょう。
  134. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 やはり戦後四十年たったとはいえ、日本のつめ跡というのは、非常に深い傷を中国の人たちには残してきていると思います。それはまだ依然として心に残っておるのじゃないか。やはり日本並びに日本人もそういうことは十分知った上で、そうした反省の上に立って日中関係というものを進めていかなければならない、これはもう日本の基本的な認識、そうして基本的な考え方でなければならぬ、こういうふうに思います。
  135. 小林進

    小林(進)委員 これをいま少し掘り下げて、やはり日本もきちっと考えておかないと、問題を常に将来に持っていくと私は思う。御承知のとおり中国は、日本に対してはこのたびの大戦では一番被害者だ。その被害国民日本に対しては賠償は取りませんよ、無賠償。土地に対しては一寸の土地も取りませんよ、いわゆる無分割。無賠償、無分割という一番寛大な方法日本に戦争の処理をしてくれた。いいですか。一部の軍国主義者のために被害を受けたのは中国の国民だけではない、皆さん方日本人も被害者でありまするから、皆さん方にこれ以上苦痛を与えるような賠償は私どもは取りません、そして土地も領土も取りません、こういうことを言っている。  これはこの機会に外務省に要求しておきますけれども、こういう大きな戦争をしたこの歴史の中で、戦勝国が戦敗国に対して一銭の賠償金も領土も取らないような例が一体どこにあるか。私は、この資料をひとつ正確に外務省から後で届けてもらいたいと思うが、これは委員長、よろしゅうございますね。この資料ひとつお願いしますよ。よろしゅうございますね。  このたびの第二次世界大戦だってそのとおりだ。アメリカは朝鮮戦争の関係で、日本の沖縄を貸してくれという名目で活用し利用している。日本を基地にして戦争している。ソ連なんか、日本が戦争する一週間前にちゃかちゃかと入ってきて、そして北方領土を取り上げた。あるいは、旧満州における日本人六十万も取り上げてシベリア開発に使ったり、火事場泥棒より悪いことをしている状態だ。そういうような中で、この中国だけがこういう寛大な措置をしたときに、実は中国の国民は随分反対したのですよ。我々はこれほど痛い思いをしたのだから、我々の苦痛に相当するような賠償金を取らなくちゃならぬというのが中国国民の当時の声だった。私はよく聞いている。けれども、それは毛沢東、周恩来等首脳部が、過去のことは忘れよう、将来を友好にいくためにはそういう恨みを残すことをやめようと言って彼らを抑えて取らなかった。これが中国人の今でも残っている感情の一つです。  ところが、その後見るとどうですか。日本はこのとおり世界第二の経済大国だ。負けた日本がさっさと経済大国になってしまった。それで今中国はまさに発展途上国だ。第三世界の国です。そこで一生懸命に建設にいそしんでいる。それに対して非常に感情問題だけれども、最近日本人が北京に行くようになった。単に軍国主義者といった言葉が中国の国民から出てこなくなったのは、今軍国主義者だけじゃない、一般の日本人も中国に来る、若い者も来る。何だ、中国は貧乏じゃないか、我々日本から見れば大したことないじゃないか、こういうことを敢然と言うようになってきた。中国のホテル等へ旅行していくと、何だ冷房もないのか、暖房もないのか、暖房や冷房のないホテルに我々は泊ったことがない、こういう思い上がった、中国人の感情を逆なでするような言葉が今の訪中者の中からあらわれてくる、こういうのが一つ一つ中国人の感情の中に積まれてきている、こういうことです。  だから、今になってみると、靖国神社で火を噴いたが、中国人の腹の中では、何だ賠償金も取らなかった、領土も取らなかった、寛大な措置をして、こうして我々はこの苦難の中に苦しんでいるけれども、ちっとも日本人は反省もしなければ、ありがたいとも思わなければ、感謝もしないじゃないか。これでは、何のために一体こういう寛大な国交回復したのか、我々は意味がなくなってしまう。これは、いま一回原点に返ってやり直さなければならないという気持ちになっているということは事実なんでありますが、これは外務大臣、間違っていましょうか。この中国人の感情をあなた一体どうお考えになりますか。
  136. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 全部が全部ということも言えないかもしれませんけれども、しかし中国の人たちの感情の中には、今おっしゃるようなそうした日本人に対する気持ちというのは確かにあるのじゃないか。私も、今回上海なんかに行ってみまして、日本の広告なんか随分出ておりまして、こういうことが学生を刺激する一つの材料になっているのかなあというような率直な気持ちも持ったわけです。今お話しのように、日本の旅行者が随分中国の人たちの感情を傷つけておる、そういう発言をしておることも具体的にも聞いておるわけですし、そういうことが全体的な広がりを持つことは日中関係にとって大変危険なことだ、こういうふうに思います。
  137. 小林進

    小林(進)委員 外務大臣がそのように理解を持っていただくことはありがたいですけれども、政治を動かす上においてもこういう問題を腹の底に置いて問題を処理していただかないと、やはり本質的な解決になりませんからあえて私は申し上げたので、注意していただきたいと思います。  まだ私は、この際速記録をつけて言っておきたいことは、私も実は中国に行った。外務大臣は十月の十日から十三日まで、私は九月二十四日から十月五日まで、ちょうどあなたがおいでになるちょっと前に私は中国から帰ってきた。というわけで、十二日ばかりずっと中国の状況、靖国神社以後の状況を見に行ったわけですけれども、私は行って実に驚いた。私は二十数回行っているけれども、これくらい日本に対する対日感情が悪化しているとは夢にも考えないで私は行った。全く驚いてまいりました。その具体的な例を申し上げますと、今まで我々に会っても、戦争のことは忘れます、忘れましょうといった言葉がなくなっちゃった。今度は会う人、会う人、ともかく私どもは戦争のことを忘れろと言ったって忘れられません、中国の首脳部は昔のことを言うな、将来のことを言って指導していますけれども、私どもは忘れられません、こういうふうに言葉が変わった。  それから第二番目には、日本人に殺されかかって助かった、そういう被害者、体の傷ついた人たちを出してきて、それで大きな集会場へ行くとその人たちが、こんなぐあいで日本人に虐殺をされました、痛めつけられました、私の体にはこれほど大きな傷がありますという、公の席で自分の体の傷を、実態を見せながら日本の残虐なことを話をする、こういう形に変わってきた。  それから御承知のとおり、八月の下旬には北京大学において、靖国神社参拝に公然と抗議する学生のデモが一千数百名、二千名近くで大きなデモ行進が行われて火を噴いた。こういうことが始まったが、これを契機にいたしまして、中国の全国に学生の抗日、反日の運動が火を噴き出してきているという状況になってきた。私は、この実情を見てきたわけでございます。  なお、八月に入りますと、中国のマスコミが一斉に、抗日戦争勝利四十周年記念論文、回顧録、犠牲者の追悼文など、連続に全部掲載するようになった。これは今まで見たことのない、新しい現象です。それから、党の機関紙人民日報は八月中旬から、抗日戦争、世界ファシズム戦争勝利四十周年の通しタイトルの大型の企画を続けて、全国に日本の実跡を報道していますね。こうした一連の企画の中で、あなたも行かれる前にお聞きになったか知りませんけれども、八月二十八日、胡喬木政治局員、これはナンバーフォーですかね、ファイブですかね、あなたはお会いになったでしょう、胡喬木。今度はお会いにならないか。実力者だ。彼が四十周年記念学術討論会においてこういう演説をしていますよ。ちょっと一席読み上げますから、聞いてください。  抗日戦争と反ファシズム戦争の歴史的意義を説き、侵略に抵抗した人々をたたえた後で、「かつての侵略者とそのシンパは、手を尽くして極東軍事裁判の厳正な審判を覆し、」これは今土井さんが言われた極東裁判の問題だな。これを彼ら、中国は言っている。「極東軍事裁判の厳正な審判を覆し、戦争の性質を歪曲し、戦争の罪悪を覆い隠し、中国で行った三光政策」三光政策とは、殺し尽くし、焼き尽くし、奪い尽くすというのが三光政策。この「三光政策や細菌戦、南京大虐殺などの戦犯を民族の英雄として美化し、甚だしくは崇拝さえしようとしている。」こういうことを公式で演説しているんですね。これは、胡喬木氏を通じて中国政府の代表演説ですよ。あなたも北京でこれをお聞きになったでしょう。お聞きになりませんでしたか。これくらい激しく、いわゆる靖国参拝の問題を取り上げて抗議しているんですよ。  それから、時間もありませんから急ぎますけれども、抗日戦争勝利記念キャンペーンは、九月二日、天安門の広場で英雄記念碑の献花式、三日には人民大会堂で記念大会が催されている。これも全部日本に対する排撃の集会です。  それから今度は、日本軍の侵略でひどい目に遭った中国とその他のアジア諸国が、戦争四十周年のいわゆる節目を迎えているときに、日本政府は従来の政策を一歩踏み出して靖国神社に公式参拝をした、これは我々被害国民に対して顔に泥を塗るような思い上がった行為ではないか、こういうことがこの集会で言われているわけでございますが、この問題はどうですかな。これに対して北京における外国の特派員、特派記者は口をそろえて、いかにも日本内閣総理大臣は国際政治のセンスがないね、こういう批判を一律に出しているというような問題が起きている。いいですか、安倍外務大臣。あなたも御存じでしょう。  それからSKD、これは松竹歌劇団。これはこの十月二十一日、中国の河南省の鄭州で開かれる日本映画祭に出席する予定ですっかり機材器具を送っていたけれども、それを取りやめにしてくれということが日本大使館を通じて言われてきたことは御存じでしょう。その理由は何ですか。これは中華全国青年連合会から北京の日本大使館を通じて、今中国では対日感情がよくない、治安に責任を持つことができないからこの公演はやめてくれ。それくらい、今日本に対してはいわば治安の保障もできないくらい悪化しているという。  いま一つの例を申し上げますと、あれは九月十三日ですか、北京でマラソンがあった。日本の家兄弟というのが、アジア国際マラソンに出て一、二位で優勝した。あのとき、中国が一体どういう警戒態勢をとったか御存じですか。今までは二十メートルずつに警備の警官を配備したのでありますけれども日本人が走ると、どこから抗日のデモ隊が日本人を捕らえるかわからないという心配があって、五メートルごとに警察官を配置してそれに備えた。日本人に不当な暴行があってはいけないというので備えた。こういうような中国側の配備が行われるくらい事態が悪化している。いいですか。  こういうような空気の中で、胡耀邦総書記が日中友好二十一世紀委員会において、二十一世紀委員会日本の代表にこういう注文をつけている。日中戦争を引き起こした張本人を許してはならない、これが一つですよ。これは二十一世紀委員会の諸君が言ったかもしれませんが。それから、両国の交流の中で問題が発生したとき、今発生しているのです、問題が。相手側国民感情を傷つけてはならない、これが日本に対する注文です。おわかりになりましょう。中国の国民の感情を傷つけないでくださいということです。これを胡耀邦総書記が注文をつけている。私は、こういうことをあなた方もよく御了承をしていただきたいと思うのであります。  また、あなたは李鵬副総理にお会いになったでしょう。その李鵬さんが九月の末日ですか、中南海に北京大学と清華大学の代表の学生を四百人呼んで、そしてこの問題についてこれ以上問題を悪化させないようにという、大きな鎮圧の工作をしたことは御存じでしょう。そういうこともやっております。  それから十月二十七日、中国共産党中央書記局が、中曽根首相の靖国神社公式参拝に対して噴き出した学生の反日感情を重視して対策検討会議を開いた、中国共産党の首脳部が。これはお聞きになっていますか。御存じですか。そして、各地方党委員会の指導者も学生との対話集会を開いております。対日問題の感情の高まりを鎮静せよと言って、各地方の共産党の首脳部に全部指令を出している。こういう実情なんだ。  では、この辺でやめまして、残りは午後の部にいたします。
  138. 愛野興一郎

    愛野委員長 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十一分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十分開議
  139. 愛野興一郎

    愛野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。小林道君。
  140. 小林進

    小林(進)委員 官房長官にお伺いいたしますけれども、「内閣総理大臣その他の国務大臣の靖国神社公式参拝について」という、八月十四日にお出しになりましたこの文書について質問をいたしたいのでありますが、その中には、まず第一に「国民や遺族の方々の多くが、」「祖国や同胞等を守るために尊い一命を捧げられた戦没者の追悼を行うことにあり、」という、この多くの方々という多くが一体どういう計算で出てきたのか、私はそれをお伺いしたいと思うのです。少しこれは独善ではないかと私は思うのだ。  時間がないから申し上げますけれども日本はなかなか信仰の国で、信仰者が非常に多いのです。仏教信者が多いのです。だから仏教では、浄土宗、日蓮宗、真宗とか、あるいはそのほかに天理教があったり、大本教があったり、創価学会があったり、霊友会があったり、立正佼成会などがある。こういうような多くの宗教団体の中で、靖国神社の参拝を支持しているという宗教団体はほんのわずかだ。何とかというのがあるだけで、ほとんどの宗教団体はこの靖国神社の公式参拝を支持しておりません。宗教団体に所属をしているキリスト教もそうでありますよ。イスラム教もそうだ。こういう集団を統制してみたら、日本国民の過半数を占めていると思う。いいですか、過半数を占めている。その自分たちの所属をする宗教の派閥が過半数を占めているにもかかわらず、こういうふうに国民の大多数が支持しているなんという決めつけ方は、私は少しいわゆるファッショ的な、独断的な言い方だと思うが、この問題はどうですか。
  141. 的場順三

    ○的場政府委員 官房長官は所用がございまして、私がかわりに、官房長官のつもりでお答えをさしていただきますので、お許しいただきたいと思います。  お尋ねの件につきましては、先般の予算委員会でも官房長官がお答えをしておりますが、まず一つは、靖国神社の公式参拝につきましては国会でいろいろな御議論があったということは十分に承知しております。与党の中には、これはもう合憲だから早く参るようにというような、非常に強い意見がございます。それから、例えば例を挙げますと、五十六年の七月に読売新聞が世論調査をしておりますが、その中で公式の立場でも参拝するべきだという意見が過半数を占めております。それから、例えば地方公共団体等におきまして、四十七都道府県のうち、県議会から靖国神社に公式に参拝すべきだというふうな御意見の出てきておるのが三十七県ございます。それから市町村議会におきましても、千六百の市町村議会においてそういう御決議がございます。その辺のところをもろもろ勘案いたしまして、この官房長官の談話におきまして、多数の国民が要望しているというふうに判断したものでございます。
  142. 小林進

    小林(進)委員 その調査自体が大概手前勝手な、自己の田に水を引くような、そういうインチキな調査をしている。だから、それぞれの宗教を持つ人々が、自分の宗教には宗教の儀式があるのだから、その儀式を度外視して一律に神道だ、あの神主と称するおかしな物を着た者が、そしておかしな器具を持ってやるあの儀式に対しては承服していない。それはそうだよ、宗教というのは一つの形式が宗教の内容なんだから。仏教は仏教のけさを着て、衣を着て、そしてかねをたたいて、仏前に数珠を持ってお経を読む、これが仏教なんだ。この形式を取ったら仏教は成立しない。その仏教を信ずる人たちに強制的に、いわゆるあのわけのわからぬ祝詞をぐじゃぐじゃ上げるものに、ひとつその儀式に従えということは、これはやはり間接的な宗教の統制なんですよ。だから言いかえれば、仏教はもっと静かに、我々仏前に灯明を上げて、どうか戦死した我がせがれは仏様になってくれよ、こういう祈りをかけているんだ。仏になることを祈っているんだよ。神様になることを祈っていないんだ。それを無理に連れていって、おまえのせがれは神様だ、神様だといって、そしてわけのわからぬ形に押しつけられるということは、これは宗教の強制ですよ。  あるいは、その人たちが線香を持ってお寺参りをして、自分の子供が安らかに仏様になっていくことを祈っている、あるいはお花を持って、おけを持って墓参をして、墓場で手を合わせて、そして我が子の成仏を祈る、これが戦死者に対するそれぞれの家庭の宗教の自由にできた祈りの仕方なんだ。そのほかに、やはり市町村や各部落などでは公共の戦没者慰霊祭、その慰霊祭へ行って我が夫、我が父、我が子の安らかならんことを祈るという行事もある、これもいいじゃないか。あるいは教会に行く人がある。キリストの前にぬかずいて我が子の未来や将来が安らかにと祈る、これが本当の祈りの仕方なんだ。あるいは近くの護国神社へ行く人もいますよ。それはまたそれで護国神社へ行って、その人の将来を祈るのもいいじゃないか。  八月十五日の正午に一分間の黙祷をささげて自分たちの関係者の冥福を祈る、それも立派な行事だ。あるいは、その日には千鳥ケ淵の無名戦没者の墓に参って、そして静かに花をささげて冥福を祈る、いいじゃないか。我が社会党の委員長も行っていますよ。千鳥ケ淵なら私も行きますよ。あるいは、政府が挙行する武道館の戦没者慰霊祭に行って、そこで安らかに国に倒れた人の霊を慰める、いいじゃないでしょうか。私は、ことしだってちゃんと武道館へ行って、静かに静かにあそこへ座りながら冥福を祈りました。それから私は、毎年毎年我が郷土に行われる、我が自治体、公共団体が行っている戦没者の慰霊祭には欠かさずに、私と一緒に戦場へ行ってみんな死んでしまった、一番死ぬべき私だけが生きてきた、申しわけないという気持ちで、この我がふるさとの公共の慰霊祭へ行っている。それでいいじゃないですか。これが一体なぜ間違っているか。  それをなぜ一体靖国神社に統制をして、そこへ、神様なんかにしてもらわぬでよろしい、仏様になってくれと祈っているその親の気持ちを土足でけって、何で一体神様に祭らなくちゃならぬ、なぜ祭らなくちゃならぬ、これをひとつ聞かしてくれないか。親は、決して神様になることを祈っていないんだ。仏に成仏してくれることを祈っているのです。キリスト教徒は、キリストのみもとにひとつ招来をして、天国に住んでくれることを祈っているのですよ。それを何で一体神様に無理にしなくちゃならぬのか、その理由をひとつ教えてください。教えてください。
  143. 的場順三

    ○的場政府委員 靖国神社は宗教法人でございまして、戦没者をどういう形で合祀するかというのは宗教法人である靖国神社が自由になし得るところでございます。決して強制ではないと考えております。ただ先生、申し上げますけれども、靖国神社に参ることを強制しているわけではございませんで、先ほど外務大臣からも御答弁が午前中ございましたけれども、靖国神社は戦没者を追悼する中心的な施設であると国民の多くの方々が思っておられる、そこに参りまして総理大臣以下国務大臣が神道の儀式にのっとらない形で一礼をするというのが今回の公式参拝でございます。
  144. 小林進

    小林(進)委員 時間がないから、その議論はまたやりますよ。やりますが、だがしかし、勝手に人のせがれや人の親や人の兄弟を、親戚、身内に断りなしに神社に祭った祭ったというのは強制じゃないか。こっちは仏様でいいんだ、仏壇に祭っているんだ、仏壇でかねはたいて子供の成仏を祈っているんだというのを無理に、断りなしに靖国神社に祭っていくのは強制じゃないか。これが一つ。  それからいま一つ。戦時中には、靖国神社というのは各宗教の上に介在する国の宗教だから、何教を問わずあそこへ行ったら頭を下げる。私は門徒宗でございますから神社に頭下げられませんというのは不忠の臣だ、国賊だと言われたんだ。そして、宗教のいかんを問わず、自分の上の宗教に神道靖国神社ありといってみんな頭を下げさせられたんだが、それが今日まで尾を引いてきているじゃないですか。戦後それが変わったと言うのなら、私は変わっていない証拠を出すよ。時間がないからきょうはやめておくが、この次にやろう。形式は残っている、法規も残っている、規則も残っている。そんなことを言っていると時間がないけれども、規則が残っている。戦時中の形態をそのまま継続する、その方式によるという規約がちゃんと残っているじゃないですか。だからこの問題は、今の答弁には了承できない。この次にまたやります。  官房長官に次の質問だが、いま一つは、靖国神社はいわゆる昭和殉国者を祭っている、こういうことを言っている。その殉国者というのは何か、連合国側によって一方的に処刑をされた一千有余名の方々を当神社は昭和殉国者と呼んで、いわゆる祭神としているというのであります。極東裁判によって処刑された千余名の方々を殉国者と呼んで祭神としている。ただ、東条大将以下十四名だけは、そのときにはこれをいわゆる極東裁判の人たちから除いたけれども、これも先ほど問題になったように、いつの間にやら追加してみんな入れてしまった。その入れた理由は殉国者だと。これに対しては、先ほども言ったように、東南アジア、中国の方々は、厳正に行われた極東裁判を否定して、いかにも国の英雄のごとき、あるいはこれを崇拝するような行動に出ることは了承ならぬと言っている。これは本当に殉国者ですか。官房長官は、極東裁判によって処刑された千有余名の方々を殉国者というふうに位置づけられているのかどうか、お聞かせを願いたい。
  145. 的場順三

    ○的場政府委員 靖国神社の発行しておられます「靖国神社の概要」を見ますと、確かに御指摘のように、「大東亜戦争終結時に責任を負って自決された方々、いわゆる戦争犯罪人として連合国側によって一方的に処刑された千余名の方々」を、当神社においては昭和殉難者というふうに呼称しているという文書がございます。ただ政府は、別にこれについて特段の判断をしているわけではございませんで、先ほども申し上げましたように、戦没者追悼の中心的施設であると国民の多くの方々が思っておられる、そこに赴いて全戦没者に対して追悼をするということでございます。
  146. 小林進

    小林(進)委員 その人の判断をしない、ただ漠然と行って拝む、そういう説明でいいんですか。国家の首脳部たる政府の国民に責任を持つ人が、その人が殉国者であろうが、いわゆるA級戦犯であろうが、極東裁判で死刑にされた、そんなことはお構いなしだ、政府の関与するところじゃないんだ、政府は行って拝めばそれでいいんだ、こういうことですか。今の答弁は了承できません。時間がないから、これも改めて問題にします。問題が幾つもあるんだ。  また、この官房長官の書類の中にこういうことが書いてある。「その目的は、あくまでも、祖国や同胞等を守るために尊い一命を捧げられた戦没者の追悼を行うこと」になっている。一体これでよろしゅうございますか。祖国や同胞を守るために一命をささげるのも、外国の侵略を受けて我が祖国の領土の中で国家防衛のために戦って死んだ、いわゆる国土と国民のために死んだ人もいるだろうけれども、いわば誤れる戦争の指導者によって他国を侵略するために他国の領土へ行って、悪いことの限りをやって善良な他国の国民を殺したり領土を奪ったり火つけ強盗をしたりした侵略戦争のために死んだ、こういう人たちもやはり祖国と国民のためにとうとい命を落とした人であるというふうにこの文書は位置づけているのかどうか、それをも指しているのかどうか、お聞かせを願いたい。
  147. 的場順三

    ○的場政府委員 先ほど御指摘の言葉は戦没者に係る形容詞でございまして、太平洋戦争史観というのは相当の年月を経て定まってくるものでございますし、個々の戦争に赴かれた方の中には確かに先生御指摘のようなこともあったと思いますが、少なくとも大部分の方々は自分は祖国を守るためにというふうなお気持ちがあったということで、こういうふうにしたわけでございます。  そこで、御指摘の点につきましては、後の方で例えば「国際関係の面では」云々というふうに相当の行を割きまして、そこのところのただし書きをしているところでございます。
  148. 小林進

    小林(進)委員 これに対して、いわゆる被害国の国民、韓国、中国、東南アジアの人たちがこの官房長官の文書を見て何と言ったか。これは侵略戦争で痛めつけられ、殺され、傷つけられた跡が歴然と残っておる、その被害者たちが多く現存しているその前で公然と加害者たちを英雄として賛美をし、これ見よがしに中曽根首相以下閣僚がそろって恭しく参拝して追悼するということは、被害者国民の立場に対して一顧も考慮しない非常識きわまるやり方である。真に日本が戦争に責任を感じ、遺憾千万であるという気持ちがあるならば、この被害者国民の気持ちをもそんたくしながら静かに深く行動に出るのが当たり前ではないか。公然と英雄視したり、祖国のためにだということのようなこのやり方は被害者国民の立場からは断じて了承できない、不愉快でたまらないと言っているのだが、日本の侵略を受けた国々の国民がこう言っていることに対しては、これは間違いかどうかということを、ちょっと一言、イエスかノーかで言ってください。
  149. 的場順三

    ○的場政府委員 あの文書の後の方で、決して戦争を賛美するものでもないし、それから多大の迷惑をかけたというふうなことをお断りしておりますように、そういうお気持ちがそれぞれ諸外国にあるという前提で考えているものでございます。
  150. 小林進

    小林(進)委員 それさえもやはり相手国は言っているのですよ。こういうような我々の国を侵略し、我々を痛めつけた人たちを英雄視してお参りをしながら、これが平和の祈りだと、牽強付会も甚だしいじゃないか、そんなことを言うだけ、これが平和のしるしだなんて言われるけれども、なおさら不愉快千万でたまらないと言っているのだ。そこら辺が、いかにも被害者国民の感情を土足でけるような思いやりのないやり方だということを言っているのだ。これが一つ。まだあなたの答弁はだめだ。次に官房長官をまた呼んで聞かなくちゃならない。  それからまた、第三番目に一つ申し上げますが、それは靖国神社、外務大臣、あなたもこれに揚々と御参拝になりましたけれども、あそこにいわゆる戦争の跡形がちゃんとあるのをごらんになったことがありますか。時間がないから簡単に言いますけれども、靖国神社には大きな灯籠がありますよ。その灯籠の台座です。台座にはいろいろ刻まれている。その中には十数枚のいわゆる石板がはめ込んである。彫刻だ。その石板の中には、十数枚あるけれども一つ、上海事変勃発の彫刻、爆弾三勇士の彫刻、天津城の攻撃の彫刻、奉天入城式の彫刻、熱河長城攻撃の彫刻、こういう彫刻が全部はめ込んである。  その中に説明文が書いてある。どういうふうに書いてあるかと言えば、「上海事変勃発 昭和七年一月二十八日我海軍陸戦隊は十倍の敵に当り武威を発揚す」こういう字がさんと入っている。それから「昭和六年乃至九年事変 爆弾三勇士 昭和七年二月二十二日払暁歩兵第二十四連隊第一大隊の廟行鎮攻撃の際工兵第十八大隊第二中隊突撃路爆破の状況」「天津城の攻撃 明治三十二年七月十四日払暁我軍は天津城南門を破壊し更に其第二門を排し突入して天津城を占領せり」「明治三十七八年戦役 奉天入城式 明治三十八年三月十五日大山満州軍総司令官其幕僚と共に奉天入城の光景」「満州事変 熱河長城攻撃 昭和八年三月我軍は長城の線を攻撃し歩兵第十六旅団は三月十日午後五時三十分付近の一角を占領せり」  こういうちゃんと名文句の灯籠ができている。これを見た外国人が、一体これで日本は戦争を反省したということなのか、あれは全部戦争を美化した彫刻じゃありませんか、どこに一体反戦のしるしがあるのですか、こういうことを――それじゃまあやめましょう、これでやめました。そういうわけだ。この問題、一体どう考えるか。そのほかに、あそこにはまだ大砲や戦車などがちゃんと陳列してある。いかにも勇ましく。そういうことが一体、靖国神社参拝をせらるる閣僚の耳に入っているのがどうか、それが一体好ましい姿であるのかどうか、ちょっと答弁してもらって、まだ山ほど質問あるのですけれども、時間と言ってきましたからこの次にいたしますので、どうですか。
  151. 的場順三

    ○的場政府委員 そういう御質問があるということで官房長官に伺いましたが、その具体的なことは知らないが……(小林(進)委員「知らなきゃ話にならないよ」と呼ぶ)歴史的に見て靖国神社も経緯のあるところだからそういうこともあるかもしれぬな、ただ、我々の靖国神社公式参拝というのはそういうものとは無関係に、繰り返しになりますが、戦没者追悼の中心的施設である靖国神社に赴いて一礼をするということであるということを御理解賜るように、御説明するようにということでございました。
  152. 小林進

    小林(進)委員 外務大臣、いかがですか、今の灯籠の問題や何か。
  153. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今審議室長か言いましたように、我々もそうした具体的なお話を聞きましたのは今初めて聞いたわけですが、私たちがお参りしたのも、これまでもそうでしたが、あくまでもやはり中心的施設と一般的に国民が多くそういうふうに思っている、そういう中で国に殉じた人たちの霊を追悼する、平和を祈る、こういう気持ちで参っておるわけであります。
  154. 小林進

    小林(進)委員 委員長、時間が来ましたからこれでやめますけれども、またこれは終わったわけではありません。これからも徹底的にひとつやりますことを宣言いたしまして、終わります。
  155. 愛野興一郎

    愛野委員長 次に、渡部一郎君。     〔委員長退席、野上委員長代理着席〕
  156. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私はきょう、二つの項目について御質問したいと存じます。  第一番目は、国際すず協定の問題でございます。  国際商品協定群は当委員会にもしばしば提案され、その協定の成り立つ構造からいいまして、世界の商品相場を安定的に推移せしめるため極めて有効な働きをするものとして論議されてきたところでありますが、その構造上、余りにも商品相場が下がり過ぎる場合あるいは余りにも暴騰する場合、には、この商品協定群では多くの対応ができないのではないかという質問を私もしたことを覚えておりますが、今回の国際相場の暴落を見ておりますと、商品相場それ自体が相当下がっていることも事実でございますが、特にこの中のすずに関しましては、ロンドン金属取引所、LMEにおきましては十月の二十四日以降すず取引停止を続けておりまして、すずの国際取引全面ストップというものが行われ、その影響は生産国だけではなく、世界的にも非常に大きな影響を与えているようでございます。  まず、その辺の御認識から承るのでございますが、国際すず協定、ITAの存続が危ぶまれており、そしてどうなっていくんだろうかというふうに言われている様子でございますが、私はこの問題の処理は、世界に貢献する平和外交としての日本外交の質が問われるものでもございますし、ぜひともこの問題について特段の注意を喚起したいと思いまして取り上げるわけでございますが、現状どうなっておるか、その辺をお尋ねしたいと存じます。
  157. 国広道彦

    ○国広政府委員 お答え申し上げます。  国際すず協定は、今御指摘のとおり、一九五六年に発足して以来今日まで比較的円滑に運営されてきておりました。現行の協定は、一九八二年七月に発効しまして八七年六月まで有効の第六次協定でございます。  この協定には、消費国としましては我が国、EC各国等、また生産国としましてマレーシア、インドネシア、タイ等計二十二カ国が加盟しております。この協定は、全加盟国によって構成される国際すず理事会により運営されております。  それからこの協定は、緩衝在庫の操作及び輸出統制を通じましてすず価格の安定を図ってきておりますが、八四年ごろからすず価格の低迷が続きまして、次第に買い支えのための緩衝在庫資金が不足してまいりました。ついに、最近に至りましてその買い支えができなくなりまして、十月二十四日、御指摘のように緩衝在庫操作を停止しました。他方、すず市場の混乱を避けるため、同じ二十四日からロンドン金属取引所におけるすず取引も停止されまして、現在に至っております。  国際すず理事会は、十月二十九日及び三十日、また十一月六日及び七日にロンドンにおきまして緊急理事会を開催しまして、今後の対応策について討議いたしました。これまでのところ、残念ながら今後の対応策について合意を見るに至っておりませんが、さらにこの十四日に引き続き理事会が開かれることになっております。
  158. 渡部一郎

    渡部(一)委員 このような価格安定のための経済条項を抱えております商品協定の中で、つまりコーヒー、ココア、天然ゴム、すず等の中で、ゴムもどうやらこれがだめになりかかっているし、特にITAは緩衝在庫制度と輸出規制という二つの価格操作を持ち、三十年間にわたり安定的に推移してきたと思われているわけでございますのに、ここのところへ来てそれがだめになってきた理由は何なのか、端的に承りたい。特に、アメリカがITAに対して、もうお金を出すのはやめたと言っていることが重要な要素になっていると聞いているわけでありますが、その点はどうなのか、聞かせていただきたい。
  159. 国広道彦

    ○国広政府委員 近年、すずの需給につきまして、八一年以降の世界景気の後退の影響に加えまして、技術革新を背景とするすずに対する代替化、それから省資源の促進、それらによります需要の減少が起こりまして、その結果として慢性的な供給過剰傾向が生じたわけでございます。協定国たるマレーシア、インドネシア、タイ等の生産国は、理事会の決定に基づきまして輸出統制を行ってまいりました。しかしながら、ボリビア、ブラジル等の非加盟生産国におきましては、むしろ増産を行ってまいりまして、生産国全体としては効果的な供給調整を行うことができないまま推移してきたのでございます。  こういう供給過剰のもとで、国際すず理事会としましては、緩衝在庫の操作による買い支えを続けまして、協定所定の価格の範囲内に価格を維持すべく努力してまいりましたけれども、そのための借り入れがかさみまして、ついに資金繰りがつかなくなりまして、今般の事態に立ち至ったのでございます。この間、我が国としましては、再三にわたり、緩衝在庫操作による介入価格を引き下げるべきだということを理事会において指摘してまいりましたけれども、残念ながら理事会の賛同が得られないまま今日に至ったのでございます。  それから米国につきましては、現在の協定には米国は参加しておりません。しかしながら、参加しないことを意思表示する段階におきまして、協定には参加しないけれども協定の円滑な運用に関する協力的姿勢は保つという趣旨の声明を出しておりまして、今日までほぼそれは貫かれているように私どもは思っております。
  160. 渡部一郎

    渡部(一)委員 ここから我が国の対応を問題にしたいのでありますが、いよいよ大臣に御答弁いただかなければならぬわけでありますが、アメリカがこの第六次すず協定に加盟しなかった、そして出資金を引き揚げてしまった、こういう状況は、この種の協定については非常に致命的な影響をもたらすことは明らかである。我が国は、アメリカに対して言うべきは言い、なすべきはなさなければならない立場にあるのに、こうした問題についてはほとんど発言がないように見えるのはどういうわけなのか、まずその辺から伺いましょうか。
  161. 国広道彦

    ○国広政府委員 私ども承知しておりますところでは、アメリカは現政権になりまして、市場価格メカニズムが貫かれることということを経済政策の根本としておりまして、その見解によりますと、商品協定は世界市場における経済原則といいますか、市場価格原理をゆがめるものであるという見方を基本的にしておると理解しております。したがいまして、新しくこういうふうに緩衝在庫を設けるような、価格操作を行うような協定には、原理原則の問題として参加しないという姿勢を示しております。私どもとしましては、このような物資の商品協定というのは、生産国は大部分開発途上国でございますし、このすずの場合にはASEANが主たる供給国でございますので、アメリカに対して参加を勧奨したことはもちろんでございます。しかしながら、現実の結果といたしましては、米国は参加するに至らなかったということでございます。
  162. 渡部一郎

    渡部(一)委員 この協定が破壊することによりまして、実質上運用しないことによりまして、世界のすず総生産十六万五千トンのうち、四万一千トンがマレーシア、二万三千トンがインドネシア、二万二千トンがタイ、〇・八万トンが豪州、一・八万トンがボリビア、二万トンがブラジル、一・七万トンが中国というふうに私は聞いているわけでございますが、いずれも発展途上国ないしは後発国が主体であります。したがって、これらの市況の崩れは重大な影響を与えている。先年、非常に問題になりました骨なしチキンの輸入をめぐりまして、日本政府も非常に対応されたところは明らかでございますけれども、こうした問題について的確に手を打っていかないと、日本は何をしているんだということになりかねないと思うのです。  アメリカが市場メカニズムを最大限に尊重しているというのは、実質においてはそうでないと私は思う。自動車においてだって規制はちゃんと加えて、日本の自動車は一定限度しか入れないのだし、鉄鋼はヨーロッパと日本には圧力を加えて、鉄鋼はついに割り当てと同様のレベルになっているのだし、マーケットメカニズムを採用すると言いながら、やっていることは実質的には弱い者を切り捨てるだけの政治ではないかということを、私たちは言うべきことは言わなければいけないのではないか。その意味で、緩衝在庫あるいは輸出生産国に対するところの生産割り当てという二つの柱をもってしたこうしたシステムが壊れてしまうことによって、これらの弱い国々に大きな打撃を与えてしまったアメリカ外交に対して、日本はもっともっと物を言っていいのではないのか。それは日米協議で何回も言っていいのではないか。国務長官と外務大臣とのお話し合いで何回も忠告していいのではないかと思いますが、大臣、どうお考えですか。
  163. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは先ほど経済局長答弁しましたように、アメリカの基本政策ですから、商品協定等に参加しないということですね。ですから、日本として、例えば第一次産品の開発途上国の共通基金の問題でも、何回かシュルツさんとも議論しました。私たちは、何とか共通基金に参加すべきであるということを慫慂したのですが、アメリカの政策ということでついに入らない。これでもって共通基金はなかなかでき上がらないわけです。それと同じように、商品協定に入らないというのがアメリカの政策そのものですから、我々として強要といいますか、それ以上主張しても変えさせることはできない。ですから、この商品協定は、参加国でもって何とか有効にできるように持っていかなければならぬわけですが、残念ながらすず協定については、今お話のございましたようにもう壊滅寸前ということになっておりまして、これに対しては日本も出資しておりますし、買い支えについていろいろと民間等も協力しておりますし、この問題はどういうふうに処理していくかということは、政府としても非常に頭を痛めておる問題であります。
  164. 渡部一郎

    渡部(一)委員 さっぱりわけがわかりません。今のお話で全くわからないのは、すずの場合はASEANの国々が主体ですね。そのASEANの国々を、ふだんはASEAN向けのときは大事にするようなことを言いながら、今あなたは全く対米追随外交の実を発揮されて答弁された。これはアメリカの基本政策でありますから仕方がないと言わぬばかりの御答弁ですね。私はそれは違うのではないかと思う。アメリカの基本政策であるけれども、ASEAN側の立場を考慮して、今後さらに交渉を進めたいという答弁があってしかるべきだと私は思うのです。あなたは、ちょっとアメリカに重点がかかり過ぎていませんか。私は大臣の御発言としては、きょうは非常に対米追随的なニュアンスが濃くて気に入りませんね。いつもの安倍節は一体どこへいかれたのですか。
  165. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 商品協定についてはアメリカの態度は非常にかたくて、私から言わせますと全くかたい壁といいますか、はしにも棒にもかからぬということですから、アメリカに今の段階で言ったって、倒れる寸前になっているすず協定ですから、アメリカ自身の協力が得られることはあり得ないと私たちは思っております。もちろん、全体的にアメリカがそうした商品協定そのものに対して政策変更をしてくれることを我々は期待しますが、これはアメリカの現政権の基本政策としてはどうも難しいように思っておるわけです。
  166. 渡部一郎

    渡部(一)委員 今後、現政権とのお話し合いの中で、こうした商品協定群の存続、特にすず協定の存続のために協力をしてほしいということを、これらの国々と立場を同じくして日本外交としては協力するつもりがおありでございますか。
  167. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これまで私もアメリカとの間でいろいろと話をしてきましたが、そういう中で、こうした世界的な立場で協力するところはアメリカ側も積極的に協力してほしい、日本も協力している問題は協力してほしい。今の共通基金の問題なんかもそうですし、あるいはまた商品協定等についても話し合いはしてきておるわけです。しかし、残念ながらアメリカの態度は極めてかたく、先ほどから申し上げましたように、アメリカの政策としてこれに対して進める意図はないということを、アメリカ自身も繰り返し強調しております。それ以上押しても、これはアメリカの現政権の基本政策ですから、なかなか容易じゃないと思います。
  168. 渡部一郎

    渡部(一)委員 あなたは、容易でないということを何回も何回もおっしゃいますが、容易でないのはわかりますけれども、今後努力されますかと伺っておるのであります。
  169. 国広道彦

    ○国広政府委員 ちょっと事実関係説明をさせていただきたいのでございます。  一つには、米国は今十八万五千トンぐらいの戦略備蓄を自分で持っております。米国自身の需要は、いざというとき十五万トンで足りるだろうと言われておりますので、大体三万五千トンぐらいの余剰があるわけでございます。まず米国に対して、この協定に入るか入らないかの以前の問題として、これの扱いを非常に慎重にしてもらわないと状態はますます悪くなるわけでございまして、これについては米国も協力的でございまして、この余剰在庫の処理は極めて慎重にしております。去年、八四年は、たしか二千四、五百トンしか放出しておりません。結局、世界の市場の一・何%かぐらいのところの放出しかしていないという慎重な取り扱いをしております。  同時にまた、別の話になりますが、商品協定一般の問題としては御記憶のとおり共通基金というものがございまして、その共通基金は、米国はもともと大変嫌がっていたのを、行政府の間の話としては長年我が方も米国に大変働きかけまして、とにかく検討するというところまでは来たわけでございますが、議会の方で最近共通基金を批准しないということを決めましたので、今の米国の状態がいかに難しいかというのは、先ほど大臣からお話があったように、事実としてそうでございます。過去におきまして、米国に、開発途上国との関係も考えて、商品協定にもうちょっと前向きの姿勢を示すようにという努力を我々はいろいろなレベルでやってきたことも、あわせて事実でございます。
  170. 渡部一郎

    渡部(一)委員 この価格維持帯が高いレベルにあって、このように暴落をし始めたときにこの価格維持帯の設定が全然ナンセンスなものになった、このときに価格維持帯を下げようという提案をしばしば行ったと経済局長は言われました。そうなんだろうと私は思います。しかしながら、これはすずの先物でも大分手当てをされていたと承っておりますので、こうしたときにはむしろすずの先物を売って収益を確保するということも、同時に考えられるわけであります。こうした運用の技術、運用のうまさ、まずさについて、この協定を結ぶだけではなく、この協定を運用する責任者が当然存在しなければならないと私は思いますし、ただ場当たり的な担当官ではなくて、長期的なマネージャーが日本側にも要るのではないかと思うのです。  このようなことで、ただお金がなくなりました、百億円損しました、そして倉庫は閉じました、価格帯は上の方に張りついたまま下へ下げることはできませんでしたでは済まないのであって、価格帯が上なら、下げなければ我々は脱退すると、それこそおどかしても下げることは可能だったと私は思いますし、こんな一方的な相場では、先物操作の手続によりましてもうけることは十分可能であったと思うのです。また、それに基づいてこの緩衝在庫の第二番目の在庫を新たにつくり直す提案もできるのではないかと思いますし、日本の経済協力の中からこの緩衝在庫を支えるための新しい経済援助を創案することも不可能ではないのではないかとも私は思います。  いろいろな提案を申し上げましたけれども、それをきょうここで言えというのはいささか残酷でありますので、お答えは留保いたします。今言えとは申しません。だけれども、そういったことについても検討して適切な処置をしていただきたいと思いますが、どうでしょうか。
  171. 国広道彦

    ○国広政府委員 今先生から御指摘がありました問題点は、まことに我々として検討を要することでございまして、まさに今回の危機到来以後、理事会等を通じまして、今まで行われたことの実態の調査、それから今後とるべき措置可能性、実効性ということを含めて、盛んにすず理事会において検討が行われております。今、何分にも調査、まず調査をすべき段階でございまして、その調査の進行と並行しまして、将来のあるべき姿について精いっぱいの検討をしてまいりたいと思います。  御指摘のとおり、我々の近隣のASEAN三カ国の利益が非常に絡んでいる問題でもありますし、非常に慎重に検討する必要があると心得ております。
  172. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私は、きょうはこれ以上ないくらい思いやりのある質問をしているわけでありますが、大臣、特に最後に申し上げる前に、この協定の中には中国とブラジルが入っていない。中国とブラジルはこのところ大増産してきたわけです。この両者の比率が明らかに全体の一〇%から二〇%のレベルを占めたのに、この協定の中に入らないで勝手に増産してくるという雰囲気になっておる。しかも、中国とブラジルというのは、日本が交渉相手として決して不可能な相手ではない。アメリカのように壁だなんということを言わなくたって済むのではないか、もう少しやわらかい存在ではないかと思うわけです。  それをほうっておいて、緩衝在庫がつぶれるのを見ておいて、先物相場の手口が一方向に行くのを見ておいて、価格帯が上の方に張りつくのを見ておいて、そしてむざむざお金がなくなるのを見ておいて、この協定がつぶれるのを見ておいて、きょう委員会で私が発言するまでは何も報告しないでおいて、そしてASEANが悲鳴を上げ続けるのを黙って見ておいて冷ややかに見ているというのは、特定の意図があるのではないかとさえ私は見えますね。それは余りいい態度ではないのではないかな、もしこういう協定群は役に立たないからつぶす、全然新たなものに変えたいというのだったらもっと積極的な取り組みがあってしかるべきであって、こういうだんだん絞め殺すみたいなやり方でこの協定を扱うべきではなかろうと私は思うわけです。  幾つもの手が今まで打てた、しかし担当官もはっきりしない、そして手も打たれない、こうした状況の中で推移してこられた。大臣、これは明らかにこうした問題に対する我が国外交の目の向け方に大きな穴があいたと言わざるを得ないのであります。今後のお扱いについてどうされるのか、最後にまとめて伺います。
  173. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 商品協定については、すずの協定だけでなく、その他にも日本は随分入っておりますし、またアメリカも、協定でこれまで入った協定もあるというふうに存じておりますので、今は入らぬですが、入っている協定もあるのではないかと思っておりますし、このすず協定の場合は、お話のように確かに運用上にいろいろと問題があったと思います。  そういう中で、いろいろと聞いてみますと、日本側も随分苦言も呈し、提案もしてきたようでありますが、しかし、マレーシアとかインドネシア、タイという国の立場を日本はアジアの国としておもんぱからなければならぬということで、日本の主張もなかなか思うように通らない。そういう中で、ブラジルとか中国がどんどん増産をしてきたというふうなことで、協定そのものの存在的な基盤というものが崩れてこういう状況になった。日本としましてはそれは極めて残念なことでありますし、今政府だけが百億出資してこれをかぶるという形になるわけですが、しかし、政府以外の民間も随分そういう面ではいろいろと努力を政府の努力と合わせてやっておるようですから、どの程度の被害ということになるかわかりませんが、この点については、これからどういうふうに収拾していくかということは今後の国際協力が必要だと思いますし、今局長が言いますように、やはりアメリカも在庫を持っておるわけですからアメリカの協力もかなり求めなければならない、こういうふうに思っております。  やはり大事なことは、日本が損するというだけじゃなくて、今のマレーシアとか肝心のタイとかインドネシア、そういう国々が非常に打撃が大きいわけですから、そういう面をどういうふうにこれから対応していくかということについても、日本としてひとつ努力を重ねていかなければならぬ、最後の努力を傾注していかなければならぬ問題じゃないかと思っております。  聞いてみますと、確かに日本も、中心のすず協定を支えておる国が何といいましても日本の友邦国であるアジアの国が中心であったというだけに、いろいろと主張はし、提案もしたようです。そこで、例えばすず協定をそれじゃ早目に先行きを見て脱退するとかそういう挙に出ることは、日本としては東南アジアの国々に対する立場から到底できることではありませんし、ある程度の方向というのがどうもだんだん悪くなっているというのがわかりながら今日に至ったという面は確かにあるんじゃないか、こういうふうに私は思っております。  そういう中で、やはりブラジルとかあるいは中国その他のいわばアウトサイダーといいますか、そういう国々との間の話し合いというものがもう少し早く進む状況にあれば、可能性があればやはり進める必要があったんじゃないだろうか、こういうふうな感じは実は私も持っておるわけでございます。それはそれなりに努力はしたと思うのですけれども、全体としては崩壊寸前ということになってしまったわけで、後どういうふうに始末をしていくかということについては、やはり日本もその中で一つの大きな役割を果たしていかなければならない、こういうふうに思っております。
  174. 渡部一郎

    渡部(一)委員 努力したというお言葉を私は評価したいと思いますが、本当は努力していなかったと私は思います。本当に努力するのだったら、もっと強力な圧力をこれらの国々に加え、協定加盟国をリードするのが本当でありますのに、うちが免責されるのに適当な注意を喚起した程度で終わるということは、長いおつき合いの上からいったらマイナスであると私は思います。明らかに友好な国との関係をさらに友好にするためには、今後こうした問題について力強く交渉しなければならない。こちらが免責される程度の忠告をするという程度ではいかぬではないかと私は思います。  大体、商品協定を扱われる部局が明確でない。商品協定を扱われる担当者が余り出世しない、そういうことも内部から私は聞かせてもらった。商品協定というものを扱うより、安保条約の第何条の端っこの小さな「の」の字が入っているか入っていないかというような問題を微細に研究した方が位が上がるのですというようなことが省内でささやかれるようでは問題である。百億円がなくなった、これは予算委員会でやればとまるところですよ、この問題は。きょうは、おとなしくこんなところでやっているからここらでおさまっているけれども、本当はとんでもない問題だと私は思う。むざむざお金がなくなっていくのに、何年もかかってああなくなります、なくなりますと言って、三年たったらあらいっちゃった、お金が百億円なくなりましたという答弁じゃありませんか。そんないいかげんなことでは総理の道は閉ざされると私は思うな、本当に。これは真剣にやっていただかなければいけない。  担当者が決まっていない。協定の運用に関する担当者が必要だ。条約局が今までは必要だったけれども、条約、協定を運用する担当責任者が必要なんです。それが明快じゃないのです。だれに聞いたってわからない。だから私は、前にもかんかんになって言ったことがあるのですけれども、ココア協定は本年九月、天然ゴム協定が今年十月に協定の期限が切れているはずです。切れているのにその後はどうなっているのか、当委員会に対して何も報告がない。前は暫定適用というので大騒動をやって、当委員会理事会に対して報告をしないで、そして当委員会で大問題になって決議まで行われたじゃないですか。何も報告ないじゃないですか。理事諸君、だれか聞いておられますか、この問題について。また抜き打ちでやっているのだ。協定が切れたのか切れてないのか、後の交渉をしているのかしてないのか、暫定適用なのか適用じゃないのか、どうなっているのです。当委員会をいいかげんに扱うのも、もう程度を超えておる。私はふざけていると思う、こんなことは。いかがでございますか。
  175. 国広道彦

    ○国広政府委員 協定の期間が終了した段階におきまして、我が外務省事務当局から御説明を申し上げなかったことは大変申しわけなく、おわび申し上げます。現実は、暫定適用という段階の前でございまして、まだ次にどうするかということについての話し合いが実は生産国と消費国の間で一向につきませんで、今当事者間で、暫定適用という意味ではございませんで、とりあえず今のやつがあるのと同じように運営しようという合意をしまして、それが事実行為として延びているわけでございまして、現実は次の合意を目指してまだ交渉中であるというところでございます。  また、先ほど申し上げましたように、その時点で御報告申し上げなかったことは大変申しわけございませんので、改めて報告させていただきたいと思います。
  176. 渡部一郎

    渡部(一)委員 条約局長に伺いたい。  大体協定の扱い方について当委員会に、各国との交渉について、重大なテーマについて、きちんと報告しないのはいつからですか、これは一体本当に。当理事会に釈明されたい。勝手過ぎる。憲法に基づいてこっちは言っているのじゃないですか。事前事後にちゃんと協定や条約が報告書になっているじゃないですか。承認を受けろとなっているじゃないですか。だから、大事な問題についてはちゃんと報告しろと言っているのに、報告しないじゃないですか。すず協定だってそうだ。百億円なくなってしまって協定がぶっ壊れた、百億円がなくなった、迷惑を受けている企業はたくさんいる、日本の銀行まで損した、マレーシア銀行がパンクしそうだ、そういういろいろなことがあっても、黙って一言も言わないじゃないですか。それが国会に対する軽視じゃなくて何ですか、本当に。私はふまじめだと思う、そんなやり方は全部。まじめにやらなければいけない、まじめに。
  177. 小和田恒

    ○小和田政府委員 渡部委員がただいま御指摘になりました件のうち、天然ゴム協定とココア協定の期間延長の問題につきましては、御連絡に手違いがあったといたしますれば大変申しわけないことをしたと思います。  それから、すずの協定につきましては、合いろいろの問題点について御指摘がございました。すず協定につきましては、確かに今運用上いろいろ問題が生じて、理事会でいろいろ議論している段階であるということはそのとおりでございますが、協定自体について今どうこうということまではまだいっておりませんで、理事会の中で、現在の危機的な状況の中で取り扱いをどうするかということについて今相談をしている段階でございますので、その内容につきましてはさっき経済局長から御報告したとおりでございますが、これがどういうふうにこれから発展するかという事態を見きわめた上で、必要に応じて御報告申し上げたいと思います。
  178. 渡部一郎

    渡部(一)委員 外務大臣、こんな答弁ばかりじゃ納得できませんよ、本当に。要するに職務怠慢ですよ。当外務委員会の審議に対して、誠実に力を尽くして説明するという態度がなさ過ぎる。見つかってどなられるまでは資料一枚出さないじゃないですか。私が今手元に持っている資料はたった一枚ですよ。ほかの委員は何にもないですよ。新聞の切り抜きの小さいのがあるだけじゃないですか。外務省からのニュースは新聞を通して受けなければならないのですか、この委員会は。どうされるのですか、こんなやり方は。当委員会についての質疑応答じゃないんだ。委員会のやり方が問題なんだ。最近、まるで防衛庁みたいに秘密主義になってきた。何にも出さない、何にも知らせない。しくじったことはとりわけ言わない。ぐあいの悪いことは小さな声でちょこちょこ話す。JALの飛行機の話は外務大臣の卓抜なる御処理によってここに出てきたけれども、一週間後じゃないですか。こっちの協定は何カ月後ですか。
  179. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 天然ゴムあるいはココア協定が期限が切れておる、私も不肖にして承知しておりませんでしたけれども、やはりこうした国会で承認を求めなければならない条約とか協定とか、十分審議をした結果生まれる協定についての処理であるとか、あるいは切れた場合のあり方等については、これは当然国会に報告をして御了解を求めるのが外務省としての責任であろうと思いますし、議会政治の建前からしてもそうだろうと私は思っております。そういう点で、今申し上げましたような結果になったことは私も大変残念に思っておりますし、遺憾に思います。これは早速、詳細について理事会に報告させていただきます。  それから、すず協定については、私も最近この状況が非常に悪化しているということを聞いておるわけですが、このすず協定に対して、悪化をしているけれどもこれを何とか救えないかということで努力を重ねられていることもまた事実でございますし、そういう中で、今、国会で御質問があったのでこうして今の状況を御説明をいたしましたけれども、今後のすず協定の推移については、もちろん政府も大きな出資をしているわけでございますし、重大な関心を持っておりますし、また国会でも関心を持たれておるわけでございますから、政府としましても、これが推移そして今後のあり方等につきましても詳細に国会に御報告をさせていただきたい、こういうふうに思っております。  何といいましても、協定とか条約、今お話がありましたような点は私も同感でありまして、これは外務省としても、何も秘密にする必要のないことでありますし、してはならないことでありますし、こういう問題は、やはり国会の承認を受けたわけですから、国会に御報告をしなければならない政府の義務がある、こういうふうに思います。
  180. 渡部一郎

    渡部(一)委員 では、今の大臣の御答弁によって一応そのとおり行われるものと信じまして、今後の善処を期待したいと存じます。きょうは、この問題についてはこれにとどめたいと思います。  同僚議員の御質問がございますから、残余の質問は次回にいたしまして、玉城議員に席を譲りたいと存じます。
  181. 野上徹

    野上委員長代理 次に、玉城栄一君。
  182. 玉城栄一

    玉城委員 運輸省の方いらっしゃっておりますか。――ただいま外務省に対して、渡部委員から怠慢という厳しい御指摘があったわけでありますが、私も全くそのとおりであると思います。そういう立場から、実は運輸省の方に、午前中も土井先生からも御質疑があった、きのう公表されましたいわゆる日航機事件についてお伺いしたいわけであります。  先月三十一日、成田発モスクワ経由パリ行きの日航ジャンボ機が、定期航路を大きく逸脱をしてサハリン沖上空を一時間にわたって迷走飛行というのですか、その間、ソ連機緊急発進して途中で引き揚げた、その原因はパイロットのミスであったということは、午前中でも明らかにしておられるわけであります。この問題については、特に日航の場合、前回のああいう大きな事故を起こした直後に、また今回こういう事件が起きたということで、全国民、まさに日航あるいは運輸省も含めて厳しい非難の目が注がれている、その責任は極めて重大であるということを前提にして、運輸省にお伺いをしたいわけであります。  第一点は、運輸省は日航の責任ある監督官庁ですね。その運輸省が三十一日の時点で、防衛庁から日航のそういう飛行の状態についていわゆる報告あるいは通知を受けていながら、皆さん方のそのときの判断として、あの一昨年の大韓航空機事件という悲惨な事件もあった、さらに外交問題として発展する可能性が十分にある、そういう判断もあったかなかったかわかりませんが、なぜその事件について外務省報告しなかったのか、その点をまずお伺いいたします。
  183. 大島士郎

    ○大島政府委員 お答えいたします。  十月一二十一日の時点で、防衛庁から現場の札幌管制部等に、日航機コース逸脱している事実の通報がございました。また翌一日には、運輸本省に対してそういう事実の情報が参りました。私どもは、その時点では航空路逸脱の程度がまだ十分確認できませんでしたので、その後、情報収集と正確度を上げる作業をいたしまして、十一月二日の時点当該機長の帰国によって事情聴取を行いまして、それに基づきまして、そのような事実を含めて外務省に御連絡申し上げた、こういうことでございます。
  184. 玉城栄一

    玉城委員 外務省に御連絡したと言っても、これは外務省の催促によって、あなた方が外務省連絡したのは五日でしょう。午前中そういう答弁をしていらっしゃる。これはまさに、先ほどの御指摘もあったように皆さん方の怠慢ですよ。あの状況からすれば、一昨年の悲惨な大韓航空機事件を思い浮かべる、これは行政の責任者として当然でしょうね。あるいは、これは外交問題に発展するぞ。防衛庁は、外務省にちゃんと知らしているわけでしょう。なぜ肝心の日航の監督責任を持つ皆さん方が、外務省にその一報を入れないのか。しかも五日になって、外務省から催促されて報告をする、これはどういうことですか。
  185. 土井勝二

    土井説明員 十月三十一日に、私ども防衛庁からレーダー情報について第一報をいただきまして、そのときに、前後したと思いますけれども防衛庁さんの方から、この情報については外務省にも入れてありますということを聞いておりました。それで外務省御存じだということはその時点で私どもも承知いたしまして、あと運輸省としてやはり日本航空等から聞くなり新しい情報を集めて、その上でさらにより正確なものをお知らせするというふうに考えたわけでございます。
  186. 玉城栄一

    玉城委員 ですから、そこですよね。防衛庁はちゃんと外務省に知らせているわけでしょう。ところが肝心の運輸省は、もう防衛庁外務省に知らせているからいいだろうと、そこが怠慢だと言うのです。皆さん方が直接の監督官庁じゃありませんか。しかも、過去にそういう悲惨な事件もあった。これは外交問題に発展していく、そういう判断がその場でつくのも、やはり行政の責任者の皆さん方の立場だと思うのですね。それをしなかったというのは、明らかにこれは皆さん方の怠慢ですね。それは認めますか。
  187. 大島士郎

    ○大島政府委員 運輸省といたしましては、やはり日本航空に対する監督官庁あるいは民間航空の運航を監督する立場でございますので、正確度を期するということにまず重点を置いた次第でございます。
  188. 玉城栄一

    玉城委員 そういう言いわけでなくて、じゃ、あなた方あれですか、これは外務省にそういうことを知らせなくたって、運輸省としては別に問題ない、後日に来て催促されて報告する、それでいい、それでよかった、今でもそういうお考えですか。
  189. 大島士郎

    ○大島政府委員 先ほど答弁申し上げましたが、防衛庁からの情報外務省に入っているということと、私どもとしてはそれに加えまして、さらに正確な情報を得た上で通知するのが適当と考えたわけでございます。
  190. 玉城栄一

    玉城委員 運輸行政を預かる皆さん方がそんなのろいというか無責任というか、まさに運輸行政の本質を今回の事故でさらに見せつけられたような感じがするのですよ。だから、いろいろな事故が起こるじゃないですか、皆さん方のそういう無責任な態度が。まず外交問題に発展する可能性、十分だれが考えてもあるわけでしょう。それを外務省通報しない、防衛庁が知らせたからいいんだろう。しかも後日になって、外務省から催促されて報告する。幾らあなた方が弁解しても、これはあなた方の怠慢ということについては、だれが見ても--大体、第一報を知らせるというのは常識ですよ。とにかくこれは、午前中もそういう質疑がありまして、非常に納得いかないということでその点お伺いしているわけです。  もう一点は、先ほど渡部委員からもちょっとお話ありましたけれども、きのう一週間後にこういうことを公表した、一週間国民の前に隠していた、こういうことはどういう理由ですか。
  191. 大島士郎

    ○大島政府委員 当該航空機は国際便でありましたので、事情聴取のため機長の帰国を待たなければならないこと、それから航跡の正確な判定のためには、飛行機に積んでおります飛行記録装置を解析する必要がございました。これらの技術的な操作、コンピューターによる解析等に時間を要したものでございます。その結果、十一月の六日に正式に状況がわかりまして、それで正確なところを発表したものでございます。
  192. 玉城栄一

    玉城委員 いろいろ午前中もおっしゃっていらっしゃいましたけれども、一週間もこういう大事な問題を国民の前に発表することを隠していたということは、これはある意味では非常に政治的な意図があったと私は思うわけですね。これは、中曽根内閣の一つの体質なのかわかりませんけれども、その片棒を運輸省の皆さん方が担いだという感じもするわけです。日航のいろいろな人事の問題とか、予算委員会が開会中であるとかいろいろなことで、今こういうことを表に出すとえらいことになる、まずいというようなことで、一週間も運輸省はこれをおくらせたのではないですか。
  193. 大島士郎

    ○大島政府委員 ただいま申し上げましたところでございますが、機長の帰国が十一月二日でございます。それから、飛行記録装置日本へ回送をしましたのがやはり十一月二日でございまして、コンピューターによる解析に数日かかったわけでございます。私どもとしては、技術的正確さを求める点においては十一月六日までかかったことは、やむを得なかったと考えております。
  194. 玉城栄一

    玉城委員 今回の事件につきましては、パイロットのこういう、ミスということも非常に大問題ですけれども、皆さん方が一週間もこういう大事な問題を隠していた。いろいろ、正確を期するためとかどうとかこうとかおっしゃいますけれども、これとても午前中の外務大臣のお話を伺っていますと、むしろ外務大臣は、運輸省をかばったような感じの答弁をやっておちれるわけですね。大体、あれでしょう、第一報も外務省に入れない。それは外務省にこんなこと言ったって、外務省に何ができるかということが運輸省にあったかもしれません。ましてや、一週間ぐらいこの問題を公にすることを抑えておくということは、そういう基本的な考え方からすれば、運輸省姿勢としては、こんなの一週間置いておいて何が悪いかということかもしれませんね。それは非常にまずいと思いますね。運輸行政を預かるというのは、一瞬にして例えば航空機事故あるいは外交問題に発展する、大惨事になるという、そういう行政を預かる皆さん方の立場からすると、今のようなことはいただけない。もう一回釈明してください。
  195. 大島士郎

    ○大島政府委員 やはりこういった本件のような場合には、正確度、パイロットが何をしたか、あるいは飛行機がどこからどの程度航空路逸脱したか、これを説明することが事実の公表というふうに考えておりまして、そういった点から検討した結果、十一月六日の時点までかかったということでございます。
  196. 玉城栄一

    玉城委員 外務省の方にこの点で関連してお伺いしたいのですが、大臣いらっしゃらないのですが、大臣がいらっしゃるまで……。  午前中大臣はこのことについて、ソ連側は何も言ってきてない、したがって、そういう意味で事実を公にしたのだからそれでいいのではないか、あるいはソ連側だって、いわゆる我が国の防空識別圏に入ってきているから、まあお互いにということでこの程度でいいのではないかという意味のことをおっしゃっておられたわけですけれども、今回ソ連側がいわゆるスクランブルをかけて途中で引っ返した、これは先月から外務省も日米ソ航空安全についていろいろな話し合いをやっている、そういう一つの緊張緩和というムードの中で、あるいはまた日ソ外相会談とかいろいろなそういうムードの中で、いわゆる実力行使ということはやらずに大事に至らなかったということからすれば、やはり大臣御自身が遺憾の意を表明するとかということは、大臣はその必要はないのではないかという感じの御答弁がありましたけれども、それにかわるようにどなたか事務当局の方がソ連側に対して何らかの形で、今回こういうふうなことでありましたといういわゆるあいさつといいますか、そんな感じのものをしておくことが、外交として、これから良好な日ソ関係外交関係を構築していくという意味からすれば、私はこれはまさに大人の外交ではないかという感じがするのですが、いかがでしょう。どなたでも……。
  197. 西山健彦

    西山政府委員 先生御指摘のとおり、現在日ソ関係は次第にいい方向に向かって進んでおります。したがいまして、我々といたしましては、今回の事件がそれを逆戻りさせるようなことにならなかったということを非常に喜んでいるわけでございます。しかし、このことと、それから今回の事件につきまして我が方として何か、先生のお言葉を拝借すれば、ソ連にあいさつをする必要があるのではないかということにつきましては若干切り離して考えておりまして、我が方の飛行機が異常飛行を行ったのは、けさほども申し上げましたことでございますけれども、公海の上であってソ連領ではなかった。確かにソ連FIR、いわゆるフライング・インフォメーション・リージョンという地域に入っていたのは事実でございますけれども、これはいずれにいたしましてもモスコーへ行く飛行機はその中へ入るわけでございます。  さらに、領空に異常に接近するような気配が見受けられる場合には、これはソ連に限らず我が国としましてもやはりスクランブルをかけるというのは例でございますので、従来ソ連の飛行機が我が領空に近づいて我が方がスクランブルをかけたときに、ではソ連側からそれについて一々ごあいさつがあったかというとそういうことでもないわけでございます。したがいまして、そういうことを総合的に判断いたしますと、少なくとも現在の時点においては、けさほど大臣が発言されたとおり、特に我が方として何かをする必要はないのではないかというふうに考えております。
  198. 玉城栄一

    玉城委員 今おっしゃることもあるいはそのとおりかもしれませんが、大臣がいらっしゃらないのでこれは大臣に聞きようがないのですが、創造的外交ということでやはり柔軟な、いろいろな意味で平和な方向に向かっての外交を展開していらっしゃるわけですから、そういう一つのきっかけをとらえて、何も謝りに行くとかそういうことではなくて、実はこうだったんですよ、ひとつ了解してくださいとかそういうことをやっていくことが、今後の日ソ関係をさらに良好な関係にしていくのではないか、このように思うわけでありますので、ひとつ考えていただきたいと思います。  次に、質問を変えます。  フィリピンの情勢についてなんですが、一昨日ですか、イメルダ・マルコス夫人が来日されて、お帰りになったということも報道で承っておるわけでありますけれども、最近のフィリピンの政情不安あるいは経済危機あるいは現マルコス政権の行き先不安等々、しばしば新聞で報道されておるわけですが、簡単でよろしいですからその情勢と、そしてイメルダ夫人との会談の内容を概略御報告いただきたいのですが。
  199. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 大臣にかわりまして御答弁させていただきます。  先日、イメルダ夫人が来られまして、外務大臣にお会いになるのに私も同席したわけでございますけれども、イメルダ夫人は参りまして、フィリピンのいろんな情勢について外国においてやや誤解があるのをこの際御説明したいということでございました。その説明によりますと、経済状況は、昨年が例えばインフレ率が五〇%であったのがことしは一四%ぐらいに下がってきているとか、GNPも昨年はマイナス五・五%、ことしはマイナス四%前後ぐらいというように、ことしになりまして殊のほか経済状況はよくなっているという説明がございました。それから政治につきましても、一番私どもの関心がありますところの一つであります大統領の健康も、最近は非常にいいということがございまして、そういう説明がございました。  これに対しまして外務大臣よりは、フィリピンの経済、政治情勢に押しなべて我が国内におきましても、国会あるいは国民においても非常な関心を持っているということを申し上げまして、私どもとしてはフィリピンが非常に近い国、ASEANの重要な国であるから今後とも良好な関係は続けていきたい、特に経済協力においては基本的に続けていくけれども、福祉の安定、民生の向上との関係においては、その資金の効果的な運用についてはさらに配慮を得たいということを申しております。  私どもの現在のフィリピンの政情、経済状況の全体的な把握でございますけれども、全般としては、フィリピンの政情とか経済状況が非常にいいということではないというのが我々の判断でございます。昨今、マルコス大統領が新しく大統領選を来年早々にやるというようなうわさがございます。いろいろと、一月十七日といううわさもございましたけれども、現状においてまだそれが必ずしも確定しておりませんけれども、そういうことがフィリピンの政治の安定に資するものになるように我々は祈願するわけでございます。  最後に、特に大臣は、米国とフィリピンの関係というものが非常に重要である、その点については、フィリピンと米国との関係において十分な意見交換を行って、お互いにおいて考え方にそごがないようにしてほしいということを強く希望されたわけでございます。
  200. 玉城栄一

    玉城委員 おっしゃるように、アメリカとフィリピンの関係、ある意味では非常に緊張しているわけです。そういう中でイメルダ夫人がソ連に行かれて、ソ連側といろいろ経済協力の約束をしてきた。イメルダ夫人の訪ソについては、あなたはどういうふうに評価されるのですか。
  201. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 訪ソにつきましては、私ども外務大臣、やはり訪ソの趣旨を伺いました。それにつきましてイメルダ夫人は、自分は国連の特別総会の際にレーガン大統領にお会いして、その帰りにソ連を訪問して、グロムイコ幹部会議長それからシェワルナゼ外務大臣にお会いしてお話しした。第一のポイントは、近く行われる米ソの首脳会談が世界の平和に資するものになるということを、ぜひこの両首脳において自分たちの願いとして聞いてほしいということを強調しました。第二点は、ソ連に行きましては、これは詳細は説明を聞いておりませんけれども、文化交流についての話し合いがあったということは承知しております。それから、フィリピンとソ連の貿易の問題についてお話をしたということは伺いましたけれども、今の御質問の経済協力について云々というお話については、特に先方からも御説明は聞いておりません。
  202. 玉城栄一

    玉城委員 そういうふうにイメルダ夫人の訪ソという、ある意味でフィリピンのソ連接近ということは、現マルコス政権の延命策の一つではないかという感じもするのですが、どうなんでしょうか。
  203. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 率直に申し上げまして、そういう報道とか見方、分析というのがあるということは承知しております。しかし、私どもとしては、今回のイメルダ夫人の訪ソがそういう趣旨のものであったかどうかということにつきまして、私ども現在において、特にコメントする材料は持ち合わせておりません。ただ、そういう報道があるということでございますが、繰り返しになって恐縮でございますけれども、イメルダ夫人は、自分たちフィリピンはやはり自由陣営の一国であるので、その限りにおいて、その基本的な立場というものは今後とも守っていきたいということを強調されておりました。
  204. 玉城栄一

    玉城委員 今アメリカ側は、フィリピンに対しては大変厳しい注文もつけているわけですが、現マルコス政権は当事能力を欠いて、そういう政権にこれ以上経済あるいは軍事援助を続けることは、共産ゲリラの勢力拡大を許すことになりかねない、いわゆる第二のイランとかニカラグアになりかねない、そういう非常な危機感があるわけですね。そういう米側の見方については、外務省としてはどのように見ていらっしゃるわけですか。
  205. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 新人民軍と申しましょうか、いわゆるNPAでございますが、これの数が今どのくらいかというのはいろいろな情報がございます。例えばフィリピンの政府では、ことしの五月ぐらいでは、そのNPAの人員は大体一万か一万二千くらいということを言っております。それからアメリカの国務省等では、一万五、六千ということを言っております。さらに非常に悲観的な数字では、二、三万ということを言っておる人がおりますが、この問題につきましてなかなか正確な数字というものは把握しにくいわけでございます。先ほども触れましたけれども、フィリピンに非常に大事なクラーク基地、スビック基地を持っております旧宗主国の米国としては、フィリピンの政情の安定、経済の安定というものについて殊のほか関心を持っておって、その範囲内においてできるだけのアドバイスというか忠告というか、関心を示しているというのが現状であろうかと思っております。
  206. 玉城栄一

    玉城委員 これは大臣にお伺いしたいのですが、現在のフィリピンのいわゆる政情不安とか経済悪化というのは、今のNPAとかいわゆる新人民軍、共産ゲリラの勢力拡大ということによって、いわゆる反マルコス勢力というものがどんどん拡大していっている、アメリカ側としては、三年ないし五年に内戦状態に陥るのではないかという非常な危機感を持っている。私は、こういう今のフィリピンの情勢というものは、イデオロギー的というよりは、むしろマルコス一族の今まで行っている政治に対する腐敗的な、そういうものに対する一つの民衆の不満といいますか、いわゆる貧富の差を拡大していく、イデオロギーというよりはそういういろいろなものが一つの大きな原因にもなっているのではないかという感じもするのですが、大臣いかがでしょうか。
  207. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 フィリピンの内政について日本政府という立場でいろいろのことを言うことは、ちょっと立場上慎重にしなければならぬ面もありますが、しかし心配はいたしております。特に、アメリカのいろいろの分析が出ております。公聴会における証言等もあります。それによっても、大変マルコス政権が不安な状況にある、そして新人民軍が力を得ておるということで、このままの状況でいけばフィリピンが危なくなるというような認識すらアメリカ政府の一部では持っておる、こういうふうに証言等も行われておるわけでございます。私も、先般マルコス夫人といろいろと懇談する機会がございました。日本のそうした憂慮を伝えましたし、また、フィリピンとアメリカがやはり同盟国として安定した関係を持つことが必要だということも強調したわけでございますが、全体的に見ると、やはりアキノ事件以来フィリピンの政情そして経済も全体的にどうもうまくいっていない。多少改善の状況は見えている、こう言いますが、全体的にはまだまだ安定というところには相当遠いのじゃないかという感じを認識として持たざるを得ない、こういうことであります。
  208. 玉城栄一

    玉城委員 そういうことで、フィリピンの情勢についていろいろな新聞報道等見る中で、またアメリカは、この政権はもうこのままだったら長もちしないというようなことからして、我が国が従来どおり経済援助だとかいろんな貿易問題もさらに強化、拡大していくということが、果たしていいのかどうかという疑問も持つわけであります。  これは別にしまして、そこで、アメリカ側としては二つの大きな基地をフィリピンに置いている。クラーク、スビックですね。これ以上フィリピンの情勢が悪化すれば、この二大基地は移設するということも検討している。そのときに、あるいは我が国にフィリピンの二大基地の機能を移設されるということもあり得るのかどうか、その辺はいかがでしょうか。
  209. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 スビックとクラークのフィリピンにおきます米軍基地の問題につきましては、御承知のように、最近におきましてもアメリカの国防省の担当次官補が、アメリカ政府としてはフィリピンからのこういう基地の移動、移設というものは検討していないということを議会において明言しておりますので、政府としてもそのように受けとめておる次第でございます。
  210. 玉城栄一

    玉城委員 常識的に考えますと、フィリピンのクラーク、スビック、それからグアムのアンダーソン、沖縄の嘉手納、あるいは三沢、これは一つの一貫したもので、フィリピンの基地機能を我が国に持ち込んだからといって、フィリピンだからその基地機能が発揮されるわけですからね。そういうことは、例えば沖縄も含めてフィリピンの二つの基地の機能を移設するということは、ちょっと考えられないと私も思うわけです。  それで、時間もありませんので、次に、これは粟山局長さんになりますか、最近非常に問題になっておりますAIDS、後天性免疫不全症候群、これは最近米軍基地内で非常に問題になっておりまして、これは先月ですか、ワインバーガー国防長官も二百十万余の米将兵についてAIDS検査をするということも言っておるわけですが、在日米軍基地米将兵の中から、そういうAIDS患者あるいはそれに類する保菌者とかそういう者が発見されたのでしょうか、どうでしょうか。
  211. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 そういう例があったというふうには聞いておりません。
  212. 玉城栄一

    玉城委員 聞いておりませんということは、やはり在日米将兵についても米軍は検査をちゃんとやった結果ということですか。
  213. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 AIDSにつきましてはアメリカ自身非常に関心を持っておる問題でございますし、私どもも全く無関心でおられる問題ではございませんので、別に正式に照会したわけではございませんが、いろいろアメリカ側と接触、意見交換をいたします機会に、先方にはそういう事例が出ておるかというようなことを照会したことはございます。それに対しまして米軍の事務当局からの回答としては、現在までのところそういう例が軍人あるいは家族の中に発見された例はない、こういうことでございます。
  214. 玉城栄一

    玉城委員 先月ですからね、ワインバーガー国防長官が米将兵についてそういうAIDS検査をするということは。ですから、在日米軍基地では、まだ正式には一斉にその検査は行われていないと思います。こういう非常に特殊な、また極めて危険な病気が、これは一般の発見率よりも軍人からの発見率が高い、こう言われているわけですから、特に大きな基地を抱える沖縄なんかでは、こういう問題は看過し得ない重大問題で、基地の中からそういうものが一般地域に入ってくるということはこれまた重大な問題ですから、やはり向こうの長官もおっしゃっているわけですから、きちっと厳重にチェックをして、そういう特殊なものが一般地域に侵入してくることのないように、そのためにはきちっと検査をやるべきであるというようなことはやはり米軍に強く言うべきではないかと思いますが、いかがですか。
  215. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 この問題は、国民の健康にもかかわる問題でございますので、適当な機会を見つけて、米軍の方にももう少しきちんと話をしようというふうに考えております。
  216. 玉城栄一

    玉城委員 時間がもうあと二分半しかありませんから、これは粟山さんに、この委員会で私、何回も取り上げて、伝統ある米国軍隊の名誉を守るためにもまた申し上げておきたいわけでありますが、ついこの間、沖縄でまた米兵の婦女暴行事件があったわけです。県も関係町村もかんかんになって厳重な抗議、決議をして、外務省の方にも恐らく来ていると思うのですが、外務省はどう対応されましたか。
  217. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 十月二十九日に御指摘の不祥事件が発生いたしまして、一月の前泊さんの殺人事件以来、不祥事件としては三回目になるものですから、私どももこれは非常に遺憾なことであるというふうに考えまして、先週合同委員会の場におきまして、合同委員会の政府代表であります私から直接米軍の代表に対しまして、本事件の発生は極めて遺憾であるということ、それから、従来からしばしば事件発生の都度、米軍の綱紀粛正について日本政府として要望をしておるにかかわらず、こういう事件が発生するのは極めて遺憾であるので、もう少し具体的な綱紀粛正措置を大至急検討して我々にも知らせてほしい、こういう申し入れをいたしました。先方は米軍の参謀長でありますけれども事件の発生について同様に極めて遺憾であるということを言いつつ、綱紀粛正、事件再発防止のための具体的措置については、現地の海兵隊司令官とも連絡をとって至急誠意を持って検討したい、こういうふうに申しておりました。  その一環といたしまして、四日から五日にかけてキャンプ・ハンセンにおきまして二十四時間外出禁止令が出されたというふうに聞いておりますが、これでこの種事件再発防止措置として十分であるというふうに米側として考えておるわけでもございませんので、今後とも引き続き米軍と密接な連絡をとりつつフォローをしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  218. 玉城栄一

    玉城委員 時間が参りましたので、終わります。
  219. 野上徹

    野上委員長代理 次に、渡辺朗君。
  220. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 久しぶりでございますので、幾つかお尋ねをしたいことがございます。  それに先立って、けさほどからお話が出ておりました日航機航路逸脱事件でございます。本当に聞いておりまして、あるいはニュースを見まして慄然としたことでございましたが、特に痛感されるのは、やはり危機管理システムがちゃんとできているかどうか、これは大変大事なことだなということを痛感をいたしました。     〔野上委員長代理退席、浜田(卓)委員長代理着席〕  これからも想定されることとして、きょうは、もう今後ないように重々対処しなければというお話がありましたけれども、そう言いながらも国際情勢は大変変動もいたしますし、そういう中で思わず巻き込まれるようなこともあり得るわけであります。また、人間ですからいろんな事故が起きる。例えばハイジャックもあるでしょうし、シージャックもあるでしょうし、中東などで貨物船などが誤爆を受けるというようなこともあるでしょうし、こういうことに関連して、大臣、これはやはり危機管理の能力というものを我が国がどうやって高めるか、大変大事なことだと思うのです。今回の場合も、危機管理の下地づくりがあったかう事なきを得たという外務省首脳の発言がございましたが、そのとおりだと思います。では、こういうことを一つの奇貨としてどう進めたらいいのか、あるいはだれが中心になって進めるのか、この点一点に限りまして、大臣の御所見をお伺いさせていただきたいと思います。
  221. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本の立場からいきますと、まず国際情勢、特に極東情勢が安定していくといいますか、緊張から緩和の方向へ進んでいくことが基本的には大事だと思います。そういう中にあって、先般我々合意に達しました日本、アメリカ、ソ連の三国によるところの民間航空の安全航行確保、そういう措置等がやはり事前にいろいろと準備されておるということが基本的には大事だ。そういうことは、やはりそうした危機というものを防ぐ一つの大前提になるわけでございますから、常々そうした危機の起こらないような状況をつくっていくということが大事だと思います。しかし、危機が起こらないといっても、いつ、どういうことで突然起こってくるかわからないわけですから、そういう中で政府としてもそれに対応する措置というもの、対策というものは、平生から練っておかなければならないと私は思います。  大韓航空機事件のときなんかも非常に痛切に感じたわけでございますが、日本もハイジャック等の経験もありますし、その間にだんだんと外務省自体も危機管理の体制も整ってきておりますし、あるいは政府間の連絡調整というものも経験を経るに従って進んできておるわけでございます。これをきちっとしたシステムな形にするということも、これは大事じゃないか。今度の国会で安全保障会議といいますか、そういう形の危機管理に対する政府のいわゆる組織体を平生からつくっていこうというための法案も準備をされて、今これをかけようという段階にあるように承知をいたしておりますし、そんなことも踏まえながら、これからもそうした危機管理体制というものを充実してまいりたい、こういうふうに思っております。
  222. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 時間の関係でこの問題は深くは入りませんけれども、ぜひ今おっしゃったような形で、早急に国会の中でもいろいろな角度から協議していただきたいし、また、各官庁間でもコーディネーションが機能的に有効にできるように、そういうことも国会の中で論議することが私はやはり大事だろうと思いますので、大臣、ひとつ先頭に立ってその点はお願いしたいと思います。  さて、四十周年を迎えました国連で、九月二十四日でございますが、大臣が国連総会において演説をしておられます。これは目の前にして申し上げるわけではありませんが、大変中身のある演説だったと思います。具体的な提案もしておられます。それだけに私は大変興味を持って読んだわけでありますが、同時に、このことはやはり国際的な日本の方針といいますか、宣言といいますか、後に行われた中曽根総理の演説と合わせて、私は、国際的に日本のあり方みたいなものを鮮明に打ち出したということが言えると思うのです。ですから、評価するにやぶさかではありません。  しかし大臣、あなたの演説の中で二つの点を言っておられる。一つは平和維持の分野においてでありますが、特に強調されたところでありますけれども、安保理の平和維持機能を回復するための方途、これを真剣に模索すべきだということをおっしゃっているにとどまって、じゃどういうふうにそれを強化するべきなのかという、肝心かなめの中身の方にちょっと具体性が欠けるのではなかろうか。言っておられるとするならば、事務総長の機能を拡大するというところをちょっと触れておられるにすぎない。私は、ここら辺のところはもっとはっきりと提案をされてしかるべきだと思うのです。まずその点第一点。  もうちょっと具体的に、お持ちの案があるならば、あるいは腹案があるならばひとつおっしゃっていただきたい、明らかにしていただきたいと思います。
  223. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 国連の平和維持機能の強化の関連で、今先生御指摘のように、外務大臣が安全保障理事会の機能の強化を訴えられておるわけでございます。これは、国連創設当時の当初の考えのように安保理が機能いたしておらないわけでございまして、ただ、今先生御指摘の具体的な案、これは国連の中に現在憲章再検討及び国連機能強化という委員会がございまして、そこで審議を重ねておるわけでございます。     〔浜田(卓)委員長代理退席、委員長着席〕  一つの考え方といたしましては、常任理事国の拒否権が安保理の活動を阻害しておるという面がございますので、例えば安全保障理事会が事実調査をするとかそういうふうな段階においての拒否権の自粛でございますとか、そういう具体案について現在いろいろ検討しておるところでございますが、総会演説では大臣から、その大きな目標としての安保理の強化という発言をされたのにとどめたわけでございます。
  224. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 私は、もっと具体的ないろいろな案をお持ちだろうと思うのですけれども、大胆に出していいのではないでしょうか。物の言い方は、そういう国際会議の場所ですから、言わないことも優雅でよろしいのかもわからぬけれども、なかなか言いにくいこともえんきょくですけれども言っていらっしゃる。多数決で決めるのではなくて、コンセンサスづくりは大変立派なことであるなどというような物の言い方もしていらっしゃる。もっとずばずばとおっしゃった方が、日本国民に対してもわかるし、ましてや国際的に日本が注目されている。特に、第二番目の点として行財政の分野における改革、行革の問題を提案されたわけですから、おっしゃる以上は、それだけの一つの覚悟なり腹案があっておっしゃるのだろうと思いますので、本当はもっとはっきりとおっしゃった方がよろしいのではないかと思いますが、だんだんと小出しにしていただきましょう。  まず、第二番目に行革の方で、具体的にどういうことをしようとしておられるのか。あなたの演説を聞く限りにおいては、賢人会議の設定というようなことで具体案をつくれ、こういう提案がございました。何か賢人会議に任せてしまったようなところがあります。しかし、率直に言って、具体的にもう財政の問題なんかでもいろいろ出てきているのではないでしょうか。そういう点、一つのはっきりした案がありましたら出していただきたいと思います。
  225. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今、国連についてはいろいろと批判が出ております。特に四十周年を迎えて、平和維持機能についてのいろいろな批判であるとかあるいはまた国連のあり方、特に肥大化した機構の改革の問題あるいは財政の問題等いろいろな角度から、四十周年になってこれまでを振り返って批判が出ております。もちろん私は、基本的には、国連というのは世界の平和と安定に大きな寄与をした、こういうふうに考えておりますが、これから長い将来を考えてみると、やはり国連自体の今のそうした批判も踏まえた反省と、それから改革が必要ではないかというふうに率直に思うわけであります。  そういう中で、さっきの平和維持機能の強化あるいはまた安保理のあり方の再検討とか、そういう問題とともに、やはり今国連で、例えば財政一つをとってみましても、アメリカが二六%ぐらい負担しておりますし、日本は一二%ぐらいで二番目に負担をしておるわけですが、日本にしてもそれだけ膨大な負担をしながら、果たしてそれでは国連が非常に効率的に機能しているかどうかということになると、なかなか具体的な問題点もあるように私は思っております。したがって、この際、国連の行財政機構をやはりもっと世界の信頼が高まるような形で再検討する必要がある。  日本は、アメリカに次いでの最大の出資国、負担国でありますだけに、はっきり物が言える立場にあるわけですから、そうした負担をしているだけに、思い切った行財政改革というものをこの際検討してみる必要があるのではないか。それには賢人会議といった諮問委員会でもつくって、そして国連の行財政のあり万全体をもう一回振り返ってみて、そこで一つの答申を受けるということも案ではないだろうか。こういうことで、実はデクエヤル事務総長にも提案をいたしましたし、国連総会においても正式に日本側の提案として打ち出したわけであります。これは、ただ演説しただけでは能がありませんし、実はその後のフォローアップを黒田大使に指示をいたしまして、いろいろと今行っているわけであります。私は、全体的には比較的私の演説、特に賢人会議を提唱した行財政改革については多くの国からの評価を得ておる、こういうふうに思っております。何らかこれを実りのあるものにしたい、こういうふうに考ええております。
  226. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 おっしゃるように、賢人会議というアイデアも大変立派だとは思います。そして同時に、けれどもあなたは直ちに加盟国は具体的な行動をとるように要請するというふうにもおっしゃっておられるので、積極的にすぐやはり動きを出されることが大事だと思います。その点で、余談になりますけれども、もう一方の演説を読んでおりましたら、俳句などが入っておりまして、あれはどういうふうに翻訳したのかなと実はちょっと懸念を持ったのですけれども、具体的なことを提案されてそれを日本が具体的に推進する、大変結構なことだと思います。  しかし、今おっしゃった分担金の問題を取り上げてみても、今外相はアメリカは二六%とおっしゃいましたが、分担金をアメリカは二五%から二〇%にすると決定しているのではないでしょうか。そして、日本はこの問題を提案されたときにはどうなんですか。それから後に決められたのですか、前に決められたのですか。日本の国連分担金、負担率は、来年度には一〇・八二%に上げるというふうに決めておられるのではないでしょうか。ここら辺はもう決めておられるのですか。事実関係を明らかにしてください。
  227. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 まず、米国の分担率でございますが、これはシーリングと申しますか天井がございまして、国連加盟国のいずれの国も二五%以上払わないということになっておりまして、二五%でございます。  先生御指摘ございました二〇%と申しますのは、アメリカの議会を通過いたしまして成立いたしました法律の中のカッセバウム・アメントメントというのがございまして、明年以降国連での予算を決定するに際して加重投票が実現しない場合には五%分をウイズホールドする、払わないで留保するという修正案があるわけでございます。これにつきましては、明年度以降のことでございますので、アメリカの行政府といたしましては、国連の動きを見つつ、また明年については議会と話をしたい、そのように申しております。  それから日本の分担率でございますが、現在の分担率は一〇・三二%でございますが、ことしが分担率の改定の年でございます。現在、国連の第五委員会においてその分担率の審議が行われているところでございますが、一応の予想といたしましては、我が国の国民所得等を勘案いたしますと、一〇・八四くらいになるのではないかと予想いたしております。
  228. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 なかなか大変ですね。行財政改革、これをやるのに今度は日本の場合は減らすのではなくて逆にふやしていかなければならぬという問題も同時に出てくる。私は、この問題に関してだけは、何でも減らせばいいということではないと思うのです。日本は大いに、マルチの機関である国連というもの、国際機関を強化するという意味では、積極的に必要ならばふやすというくらいな姿勢で臨むべきだろうと私は思います。ですから、それは決して文句を言ったり何かする意味ではありません。ですが、そういうことをする以上、日本の発言権というものもやはりきちっと確保しておかなければならぬだろう。それは伝えられるように、日本は国連の非常任理事国、安保理の非常任理事国として立候補する予定というようなことが言われておりますが、この問題については大臣、お決まりでございますか。どうなっておりますでしょうか。
  229. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 そろそろ日本も非常任理事国に立候補したい、こういうふうに思っておりますが、やはりアジアブロックの協力が取りつけられないとなかなか困難でありまして、無理して出て失敗するということになりますととんだ醜態でございますから、やはりまず地元のアジアの協力を得ておるという見通しがついて立候補したい、こういうふうに思っております。
  230. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 それは来年十月ですね。非常任理事国の国連総会選挙ですね。事実関係をちょっと。
  231. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 今大臣から御答弁ございましたように、日本は従来安全保障理事国を国連加盟以来五回務めております。前回が八一年、八二年でございますので、そろそろまた非常に重要な安全保障理事会に出て、応分の役割を果たしたいと思っておるわけでございますが、明年から始まります三年間が、アジアグループから非アラブの国が選出される番でございます。その三年間の中のできれば早い方がいいと思いますが、大臣から御答弁申し上げましたように、アジアグループ全体の支持を得るような形で円満に出ることができるような環境づくり、これに努めたいと思っておりまして、選挙は毎年の総会でございますので、選挙の行われます時期は十月か十一月の辺でございます。
  232. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 今、大変またこれは謙虚に言っておられますけれども、アジアのグループの支持が得られればと言っておられますが、どうなんでしょうか。決意を固められたというか、あるいは決意をしたいと思っているというならば、もう事前にそれだけの支持は得られた、慎重なる大臣のことでありますから、それだけの目算あっての発言ではないかと思いますが、いかがでございますか。
  233. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今日本は希望として持っておりますけれども、まだアジア諸国に対する話し合い、要請等も行っておりませんし、これから本格的に取り組んでいきたい。できれば、せっかくの重大なときですからアジアの協力を得て、そして非常任理事国になりたい、こういうように思います。
  234. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 もうちょっと聞かしてください。これから取り組んでいかれるということになっておりますが、ネパールが立候補の意向があるというようなお話がありますけれども、いかがでございますか。そことの調整はできているのですか、それとも両方ともアジアということで枠の中に入るということでございますか。
  235. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 先生御指摘のネパールは、アジアグループに属する国でございます。御指摘ございましたように、ネパールが非常任理事国に立候補したいという意向を有しておるということは、私どもも聞いております。
  236. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 ですからお聞きしているのは、そこら辺調整はできているわけですか。
  237. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 安保理の選挙、明年、明後年の分につきましての選挙が行われたばかりでございまして、明年以降の選挙についてはまだ調整を行う段階にはなっておりません。先生御指摘ございましたネパールを含めまして、アジアの他の諸国との調整というのは、これからやる必要のあるものでございます。
  238. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 一九七八年、我が国はバングラデシュと選挙で争って敗れたという大変苦い経験がございました。それだけに大変慎重な配慮をしておられるであろうし、目は配っておられることと思いますけれども、それは先ほどからもお話が出ておりますように、アジアの諸国民の、中国のみならず、例えば今の靖国問題一つ取り上げましても、アジア諸国民国民感情、民族感情、こういったものに対してもやはり心配りがあるということが、日本の大事な姿勢になってくるであろうと私は思います。そういう点で、非常任理事国として立候補するということの前提は、そういうようなアジア諸国に対しての心配り、それからまた、一部もう既にいろいろと批判や何かで海外から言われておりますように、傲慢さを持っているんではないか、アロガンスというふうな言葉で表現されるような日本姿勢がいささかでも見えてはならぬのではなかろうかと憂慮するものでありますが、この点について大臣、どのようにお考えでございましょう。靖国との関連でお答えいただきたいと思います。
  239. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本としては、特にアジアの国々に対しては非常に大きな犠牲を強いたわけでございますから、そうした原点というものを忘れないでつき合っていかなければならない、こういうふうに思っております。そういう中で、ですから日本が世界第二の経済大国になった、あるいはまた国連でアメリカに次いで第二の拠出国になったからといって、ただいたずらに胸を張って、そして当然だというふうなそうした姿勢で対応していくということは、日本自身にとっても決してためになることではない、私はそういうふうに思っております。あくまでも謙虚な立場で、しかし同時にまた世界に対する責任はそれだけ大きくなったわけですから、そういう点は十分踏まえながらやっていかなければならない、こういうふうに思います。私は、率直に言いまして、今の世界情勢の中で日本はアジアの協力を得れば、何とか大事なときですから非常任理事国に選出をされて、そして世界の平和と安定のために積極的に動いていかなければならない、そういうふうに考えます。
  240. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 それを聞いて安心をいたしました。繰り返しになりますが、おっしゃるように経済的優位、そういうような気持ちあるいは実力を背景に、かつては加害者であったことがあるという私たちの歴史上の負い目もあります。そういった問題を忘れての政治行動あるいは経済行動というのは、大変慎重を要する問題だろうと思います。  関連して、もう一つだけお伺いをしたい。  これは五月であります。新聞によりますと、政府・与党の幹部の一人の方でありますけれどもインドネシアを訪れておられる。その際にスハルト大統領に、日本は安保理事会常任理事国入り、こういう希望を持っているんだが、協力してもらえるかと要請したというふうな記事がございます。これはいかがでございますか、本当にそういうことを言われた方があったんでしょうか。私は、どういう立場でおっしゃったのか、大変に高名なかつ実力者の幹部の方の発言でもございますから、これは我々がどこか会合でそういうようなことを雑談したのとまた意味が違ってくる。まして、新聞紙上にそのようなことが報道されるということはちといかがかと思いますけれども、まず事実関係いかん、そしてまた、外務大臣はそういうようなことに対して事前に恐らくは相談もあったかと思いますけれども、よしというふうなことをおっしゃったのか、そこら辺をちょっと聞かしていただきたい。
  241. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 与党の幹部がインドネシアでそういう発言をしたということは聞いております。事前に私は何も聞いておりません。日本の政治家、与党も野党も含めて外交に対して、あるいは日本の国連におけるあり方についてそれぞれの見識あるいは見解を持っておることは、これは当然のことだと思いますし、外国人と会う場合もそうした見解を述べることもあり得ると思いますが、こうした外交の問題については、日本政府を代表する立場でありますし、政府の立場としては国連ができたいきさつあるいはまたその後の状況、経緯から見まして、日本が常任理事国になれることは筋合いとしてはあり得ないということは、政府としても十分承知をいたしております。したがって、そのような主張をするとか提案をするとかいう考えはありません。
  242. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 実際問題としてそういう論議はあって、私はいいとは言いませんけれども、あるのも当然だろうと思います。戦後四十年もたちました。日本の国際的な地位というものも違ってきております。今日の国連の行革を言っておられるし、安保理の持っている機能を活性化させるということも言っておられるならば、そういう問題も含めて、検討をしたならした、あるいはする予定は全然ない、いろいろなこともあるでしょうけれども、ひとつあらゆる分野からフリーに考えてみることも必要ではなかろうかと私は思います。ただし、先ほども申し上げたように、何か日本がアロガントになったというような誤解を受けるような行動だけは慎む必要があるだろう。しかし、まじめな角度から国連の活性化を考える、安保理の機能を考えるには、私は自由な発想で大いにいろいろな議論をしてみたらいいのではないかと思います。大臣に対して、ひとつそこら辺はかじ取りをよろしくお願い申し上げたいと思います。  もう一つ、国連のあなたの演説と関連してお尋ねをしたいのです。  あなたは国連の総会での演説の中で、日本は核実験の全面禁止、これを核軍縮の重要な課題として重視してまいりましたということを述べておられます。そのとおりだと思います。最近、たしか十月下旬に、ムルロア環礁でフランスが核実験を何度かやっております。これに対して、日本政府はどのような対応をされたのでしょうか、お教えいただきたいと思います。
  243. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 お答え申し上げます。  大臣が総会演説でも述べられましたように、我が国は核実験の全面禁止を主張いたしておりまして、あらゆる国のいかなる核実験にも反対との立場を鮮明にとっておるわけでございます。核実験の実施国に対しましては、これまで累次このような我が国の立場を伝えて、遺憾の意を表明してきておったところでございます。最近行われております地下核実験に対する申し入れにつきましては、地下核実験の回数が非常に多うございます。また、核実験が行われます場合に正式発表しない国もございます。したがいまして、ここ最近の例は、ある程度実験数がまとまりました段階ですべての核実験国、五カ国でございますが、これに申し入れをすることといたしております。前回行いましたのは昨年の二月二十四日でございます。それ以後のものについてはいまだ処理いたしておりませんが、適当な機会にそのような措置をとりたい、このように考えております。
  244. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 ちょっと事実関係で……。十月の二十四日に実験が行われて、申し入れをされたということですね。ところがもう一遍やっていますね、すぐ二、三日後に。一両日のうちに二回ぐらいやったのではないでしょうか。まず事実関係から……。
  245. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 ちょっと私の答弁が正確でなかったのかもしれませんが、私が申し上げましたのは、まとめて行っておる、そして前回の申し入れは昨年の二月二十四日でございます。それ以後のものについては、申し入れを行っておりません。適当な機会にやりたい、このように考えております。
  246. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 それではもう一遍聞きます。フランスはムルロア環礁において実験を始めてから、今まで何遍やっておりますか。数字がわかっていたら教えていただきたい。  ついでに、ことしになってから各国の核実験の回数は何遍ぐらいでございましたか。
  247. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 フランスが、ムルロア環礁での核実験を始めましたのは一九六六年からでございますが、実験の回数は合計百十五回と承知いたしております。そのうち大気圏内が四十一回、地下核実験が七十四回、このように承知いたしております。各国の核実験は、ここ数年大体年五十回程度でございます。本年の各国の核実験回数で私ども承知いたしておりますのは、本年の一月からでございますが、ソ連が七回、米国が十四回、フランスが六回、英国、中国は現在のところゼロでございます。
  248. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 大臣、今の数字をお聞きになってもこれは大変なことですね。ムルロア環礁だけでも、これはサハラの実験場がら南太平洋に実験場を移してからでありますが、百十五回。そしてまた、ことしになってからソ連、フランス、米国というところがやっているのが二十七回。昨年度は五十三回、中国も英国も入っております。あなたは、核実験全面禁止を核軍縮の重要な課題として重視してきた、こう演説をしておられる。今のお話を聞きましても、まとめて機会があったら今度は申し入れをするという状況だ。これは何かもうルーティンワークみたいなことで流れてしまって、やったって効果がないからそのうちにやっておこう、その都度申し入れで文書か何かで渡しておこう、こういうことでは核実験の全面禁止をという、何か言葉と行動が大変に乖離をしてしまっているのではなかろうか。もっと間髪を入れず文句も言い――特に今回の場合は、ミッテラン・フランス大統領まで来て言っているではありませんか、我々は必要ならさらに継続するということをはっきり言っている。あるいはファビウス総理も来て、実験場で立ち会っている。あなたはその前に、あるいは後で国連においてそのような発言をしておられる。あなたの発言に対するある意味では挑戦とも言えるそのような行動に対して、やはりはっきりとしたもっと強い態度をとらなければならぬのではないかと思います。  その点で、この夏に南太平洋フォーラムで南太平洋諸国の非核地帯宣言決議が行われました。それなんかも、ムルロア環礁における百十五回というちょっと想像に絶するような回数の実験が行われた、海洋汚染あるいは大気汚染も出てきているのではなかろうかと思いますけれども、こういうものに対する大変生理的な危機感、何か人間の命という立場からの危機感ではなかったかなと私は思うのです。どっちかいうと、そういう問題についてもう少し反応を鋭くしていくことが、国連の中において非常任理事国として、アジアのグループの中から――私は、アジアのグループと言った場合、今回の場合は特に南太平洋の島嶼諸国なんかも含むものでなければならぬと思います。そういう観点から外務大臣にお答えをいただきたいのですが、これはちょっと対応が鈍過ぎはしませんか。
  249. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 我が国は、とにかく核廃絶を最終的に理想としておるわけですし、その大前提として核実験全面禁止を高く掲げて、これまで国連を中心にして努力してまいったわけです。しかし、残念ながら世界各国の現状は、今お話しのように次から次へと核実験をしていく、こういうことが繰り返される。日本としましては、その都度遺憾の意を表明し、抗議の意をあらわしております。しかし、状況としては、残念ながら世界での核実験が続いておるということでございます。  そういう意味で、日本だけが幾ら理想を高く掲げて、核実験全面禁止ということをいたずらに理想として演説しておっても、これだけでは確実な進歩はあり得ないというふうに思いまして、一昨年私も軍縮会議出席をいたしまして、実は全面的な核軍縮という旗はおろさないけれども、その目標を達成するために検証ができるような、いわゆるステップ・バイ・ステップ方式によって全面核実験禁止に向かっての努力をやっていこうじゃないか、これなら各国でも協調できるのじゃないか、また日本もそれなりに地震探知等についての世界にないすぐれた技術を持っているので協力もできる、やはり検証というものを伴わないとそれだけの効果も上がらないということで、現実的な方法としてステップ・バイ・ステップ方式を提案をして今日に至っておりますし、これは国連総会でも私からもしはしはその提案を繰り返しております。  残念ながら、今まだ大きな軌道に乗ってないという状況でありますが、これは極めて大事な日本の懸案であろうと私は思っておりまして、根気強くこれが議論をされ、何らかの成果が生まれるように努力を重ねてまいりたい、こういうふうに思っております。決して、核実験が行われると、そういうものに対してなれてしまった、あるいは不感症になった、こういうことではなくて、やはり日本、そして国民、鋭敏な気持ちを持ってこれには対応していかなければならぬし、そのような感じを持っております。
  250. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 私は、これも時間が余りありませんから多くを言いませんけれども、これはぜひ日本外務大臣としてはあらゆる機会に、そしてまた積極的に取り上げて核実験禁止の問題を強く訴えていただきたいし、それが実行できるような方向で進めていただきたいと思います。でないと、やはり何かもうフラストレーションといいますか失望感、絶望感、こういったものもあるいは我々の中に、国民の中にも出てくるかもわからない、大変憂慮される事態でもありますので、お願いをしたいと思います。  残された時間、短いですけれども、それではあと一つだけ問題に触れさせていただきたいのでお願いをいたします。  それは日米経済摩擦であります。端的に言いまして、これまで議会を中心にして非常に保護主義的な傾向も燃え上がっておりました。三百になんなんとする保護立法というようなものも出されているやに聞いておりました。しかし、最近の動きの中で、円ドルレートのあの大変な激動ともいうべき変動が起こってきております。それからまた、レーガンさんの貿易政策の発表もありました。そういうもので、これは日本の新聞論調や何かを見ている限りにおいては何だかちょっと火が消えたような感じでありますけれども、そうなんでしょうか。別の方の意見を聞くと、そうではないよ、まだまだこれは大変な深刻な問題で、円ドルレートがちょっと変わったからといって膨大なアメリカの対日貿易赤字、こういうものはすぐなくなるわけでもない、財政赤字がなくなるわけでもない、したがって、やはり依然として深刻な問題として、火種として残っているし、深刻だぞ、こういう意見があります。これはどういうふうに現状を今認識したらいいんでしょうか、まず大臣としての現状認識をお知らせいただきたい。
  251. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 表面的には、アメリカの議会もちょっと一息ついているというような感じがしないわけでもありません。これは、とうとうたる勢いでありました保護主義立法が議決をされるという状況がちょっと一服している。もちろん、繊維法案、輸入制限法案等は下院で可決をされて、今上院に移っているようですし、通信機器関係の法案も審議がされているわけで、いろいろと論議がされているようですが、全体的に見ると、それ以外に税制の法案とかあるいはまた農業の法案とか重要な法案もメジロ押しになっておるということもあるし、あるいはまた米ソの首脳会談というのもアメリカ政局の大きな焦点になっておるということもありますし、同時にまた貿易摩擦という観点からいえば、いわゆるG5の決定によって円ドル関係が逆転をして、円がどんどん強くなっておるということはアメリカには相当いい印象を与えているのではないか、あるいはまた同時にレーガン大統領の自由貿易を守るという強い決意もそれなりに議会に対して影響が出てきておる、こういうふうに思います。  同時にまた、日本がやっておるところのいわゆるアクションプログラム等一連の関係法案が今度の国会で上がるんだ、そして関税の引き下げも今度の国会で処理されるんだという期待、あるいはまた日本の内需振興が具体的な形をとってきておる。今回は第一弾でしょうが、来年に向かって新しい第一歩をとってきておる。さらに政府間におきましては、MOSS委員会等で、私とシュルツさんとの話し合いで一応の見通しをつけることができた。さらにまたレーガン大統領、中曽根総理の間で今度諮問委員会をつくって、中長期にわたる日本経済と世界経済との調和点を見出すための努力をこれからいろいろとやっていくんだ。そういう一連の米国あるいは日本、あるいはまたマクロ的な面での努力というものが一つの成果を徐々にあらわしてきた。  しかし、これでもって問題が、黒字が急に減少するかということになるとやはりそれは非常に難しいわけで、この一年間の黒字がはっきりした時点ではまたちょっとアメリカの議会もいろいろと問題が出てくるんじゃないだろうか。だから、底流としては非常に厳しいものが依然として残っておりますが、表面的には今言うような努力の評価を率直にするという空気も出てきて、ちょっと一服ぎみ、その他の原因もあってちょっと一服ぎみだということでしょうが、決してこれは油断ができるような状況ではない、結論的に言えばそういうふうに私は思います。
  252. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 そうしますと、確認しておきますけれども、ちらっと新聞などで見たんですけれども、秋の陣はこれで一応乗り切った、年内は大丈夫だ、小康を得たというような外務省幹部の発言が新聞に載ったことがありますけれども、そんな状況ではないと判断していいですね。やはり今はまだまだ大変深刻な状態が続くだろうし、いつ何ときでもまたばっと燃え上がる、こういう可能性があるというふうに判断してよろしいですか。
  253. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いろいろとお互いに努力をしておるわけですけれども、しかし流れとしては非常に厳しいものがありますし、特にアメリカの議会の空気は根本的にそれじゃ改まったかというと、そういう状況では決してありませんし、何が契機でまた燃え上がるかわからない、こういう危機感を私たちは持っております。
  254. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 特に私心配するのは、新通商法が成立したために大統領が、通商相手が不当あるいは不合理な貿易を行っている、それによってアメリカ側が権利を侵害されている、こういう判断をしたときには、いつでも大統領の報復措置をとることができるわけだ。そういう体制を整えたと見るわけでありますが、そうなりますと、新通商法の場合、特に三百一条の問題でありますけれども、これが恣意的にもし行使されたということになった場合に、これは大変だなという懸念を持っておりますけれども、こういうことは大臣、懸念はお持ちではありませんか。
  255. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、シュルツさんとの会談で私もシュルツさんに念を押したのですけれども、いや、アメリカだけが一方的に不公正だとかなんとか判断をしてやられるのは困る、やはり日米関係についてはこれまでの信頼関係もあるので、十分ひとつ相談をしてやってもらわなければならない、こういうことを言ったわけです。今おっしゃるように恣意的にやられると、どういうことかちょっと私も十分理解できませんけれども、一方的にといいますか、そういうことで三百一条が実行されるということになれば、やはり日米間でそれはそれなりに大きなしこりも残ってくる可能性もあるわけですから、こうした重大な決定等については一方的な立場だけではなくて、やはり自由貿易を守るという中で慎重に、そして日本とも話し合いの中でそういうものが進められていかなければならぬ、こういうふうに思っております。アメリカ側もその辺は十分承知しているのではないだろうか、こういうふうに思います。
  256. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 実は、先般私ども委員長と一緒に私はアメリカに参りまして、議会の方々ともいろいろお話をしてまいりました。そのときの感じは、今大臣もおっしゃっておられるように、あるいはこういうことで小康を得ていく状況が出るかもわからぬけれども、他方来年の中間選挙というのは、私は依然として貿易問題あるいは財政赤字問題は選挙イシューになるという可能性は大いにあると思いますし、それだけに小康が得られたというような状態であるならば、この時期に本当にやはりいろいろな対策を講じていくべきだろうというふうに思います。  時間もありませんから、一言、二言、大臣の見解を私はお尋ねしたいのですけれども、まずこのときに、一つには、もう内需拡大待ったなしで日本は今迫られているというふうに私は認識をいたします。それと同時に、アメリカなんかに対しても、緊急輸入の問題なんかはいろいろお話がされたこともあるようでありますけれども、こういった問題について実際に手は打たれたのか、実行されるのかされないのか、ただあれは話だけに終わってしまったのか、これらの点について最後にお聞かせをいただきたいと思います。
  257. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 やはり、それぞれ手を打っていかなければならぬと思います。特にマクロの面で、一方においてはG5のああいう政策が進んでおりますし、同時にまた、二面アメリカ側も高金利の是正とかあるいは財政の再建とか、そういう方向にマクロ的な面でファンダメンタルズを変えていく必要があると思いますし、また日本日本で内需振興ということについて財政面での制約がありますけれども、その中でやはりできるだけの努力はもっと傾けていかなければならぬ。三兆一千億ぐらいの規模の民活を中心にした第一弾は一応決定したわけですが、これから年末から年始にかけての予算編成でどれだけやれるか、私は相当この点については、ただ国内問題だけでなくて、国際的な貿易摩擦というものを全体的に解決する方向での大きな問題として、この内需問題というのはやはり真剣に取り組んでいかなければならない課題ではないだろうかと思います。  同時にまた緊急的な輸入の促進、これは民間の方は相当熱心にやっておられるようですね。この成果を我々は期待をしておりますし、政府調達の方もやはり何らか進めていく必要があるのじゃないだろうか。それから、MOSSなんかいろいろと残っている問題等についても、できるだけ早くこれは見通しをつけるということが必要じゃないだろうか、こういうふうに思っております。あるいはまた、この国会でアクションプログラム、それに関連する法案の成立あるいは関税関係の法案の成立等、ぜひともひとつ御協力をお願いをしたい。こういう全体的な動きが出てくれば何とか切り抜ける可能性も生まれてくるのではないか、こういうふうに思います。
  258. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 御努力を御期待いたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  259. 愛野興一郎

    愛野委員長 次に、岡崎万寿秀君。
  260. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 中曽根内閣の外交姿勢について二、三質問いたします。  最初はSDIです。九月三十日から五日間、政府の調査団がこのSDI問題でアメリカに派遣されました。四月にもアメリカの方から専門家チームが来て説明をしたはずなんです。今度の日本調査団はどういう目的でどういう調査内容を調べに行かれたのか、ポイントだけ御説明ください。
  261. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 調査団は、九月の三十日と十月の一日の二日間だけ国防省においてSDI関係者と会いまして、アメリカ側の説明を受けたわけでありますが、内容は、ポイントだけを申し上げますと、主としてSDIの技術的研究の進捗状況、すなわち例えば指向性エネルギー兵器でございますとか運動性エネルギー兵器、それから監視追跡システム、それから全体のシステム分析、そういう種々の分野における研究の進捗状況について、アメリカ側から説明を受けだというのがポイントでございます。
  262. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 四月にも説明を受けていますし、今回も説明を受けたわけですね。これで大体政府がSDI問題に対して態度を決定する、そういう材料はそろったと見てよろしいですか。
  263. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 まだ今後引き続き検討をしていく必要があるというふうに考えております。
  264. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 何が問題点として残っていますか。
  265. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 まだ検討中でございますので、余り具体的に申し上げることは差し控えたいと思いますが、やはり技術面、制度面、法律面、そういう点についてまだ種々詰めるべき点があるというふうに考えております。
  266. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 中曽根首相は、これは非核兵器だというふうに言われましたが、しかし、実際には核爆発のエネルギーを利用する核兵器ではないかという国民の疑問は非常に強いわけです。この国会でもしばしば追及された問題点なんですね。ラパーソン米空軍エネルギー兵器担当補佐官がアメリカの議会で証言をしていますが、エックス線レーザーと呼ばれているシステムは事実核兵器であって、第三世紀の核兵器である、こういう証言さえもあるわけです。今回の調査によってこの肝心な点はどうだったのでしょう。この問題についてはっきりお答え願いたい。
  267. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 エックス線レーザー兵器につきましても、ブリーフィングの過程でアメリカ側の研究状況については一応聴取をいたしました。しかしそれ以上の、これが核兵器であるかとかないとかいうような問題については、特に今回話をいたしませんでした。
  268. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 これは外相に御見解をお聞きしたいのですけれども、今アメリカでは科学者の間でSDIに反対する声が非常に広がっていますね。例えばプリンストン大学では、物理学者の七五%が反対の署名を行っています。また、大学の七十以上に上るところが、国防総省からのSDI関連研究費を返上するところも生まれている状況なんです。さらにアメリカ議会技術評価局も、SDIは攻撃、防御両兵器の軍拡競争を招くという警告もしています。中曽根首相はレーガン大統領の説明をうのみにされて、SDIを理解するという態度をとってみえたわけですが、その後広がっているこのような科学者さえも巻き込む、あるいは米議会の中でさえも起こっているこの懸念や反対の声について、当然日本政府も耳を傾けるべきだと思うのです。これは、政府のSDIに対する態度決定に対して当然考慮されることになりますか、安倍外相にお願いしたいと思うのです。
  269. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 我々は今SDIについては、その研究を理解する、こういう立場に立っております。そうした中でいろいろと検討している。確かにアメリカの一部に反対の声もありますし、また、強い賛成、支持の声もあるわけですから、そういうことはいろいろと日本日本なりに、そういう意見等も参考にして、そして自主的に最終的に日本が決めるべき問題だろう、こういうふうに思います。
  270. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 アメリカにある、特に科学者などのそういう声についても考慮して自主的に判断するというふうに言われたわけですが、一部の報道などによりますと、このSDI問題について政府の態度決定がおくれておるのは理由があるからじゃないか、それは宇宙の軍事利用を禁止している国会決議、これにひっかかる点があるのではないかという報道もあります。また、非核三原則とのかかわりも出てくると思うのです。先ほど、栗山局長はまだ検討中だというふうにおっしゃいましたけれども、実際は中曽根首相が緊急サミットに訪米する前に一定の結論を出したかったわけでしょう。ある程度の判断があるわけでしょう。そういう報告も外相を含めて受けておるはずです。あなた方は国会では、逐次報告するというふうに当委員会でもおっしゃっているわけなので、検討中ということにしないで、具体的にこういう問題点があるから今のところまだ最終的な態度決定をしかねているのだということをおっしゃるべきだというふうに思うのです。何がひっかかっているのでしよう。
  271. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 先ほど申し上げましたことの繰り返しでございますが、まだ具体的な技術面、制度面、法律面について種々詰めるべき点があるというふうに考えております。  それからまた、これは当然のことでございますが、西欧諸国とアメリカとの間でもいろいろ話し合いが行われておりますので、そういう西欧諸国の出方というものも外交上考慮すべき点だろうと思います。  国会決議等につきましては、従来から政府が申し上げておりますように、態度決定に当たってはそういう国会決議も踏まえて決定をするということを申し上げておりますので、当然国会決議についても検討の対象になる、こういうことでございます。
  272. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 二回にわたってそれぞれ行ったり来たりしながら研究、調査されたわけですが、それでもなおかつ自主的な判断をするに至らない、技術面や制度面や法律面でいつごろになればそれがはっきりするのでしょうか。
  273. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 これは御承知のように、アメリカから別にいつまでに結論を出してほしいとか、そういうふうに催促をされたりせっつかれたりしておる問題ではございませんので、十分に時間をかけて慎重に検討の上決定をする、こういうことであろうというふうに理解をいたしております。
  274. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 その際は、先ほど言ったように日本の国会決議や非核三原則などに照らして、断ることもあり得るわけですね。この点についても明確にお答え願いたいと思います。
  275. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 もちろん結論を出しておらないわけでございますから、そういうふうに御承知おきいただきたいと思います。
  276. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 断ることもあり得るという意味ですね。では、いずれにせよ、ほかの国はいろいろと研究参加しているようなところもありますけれども日本は被爆国、非核三原則を持っている国です。宇宙の軍事利用に反対する国会決議もあるわけでございますから、こういう点をしかと踏まえて、宇宙の軍拡には絶対協力しない、こういう立場を貫いてもらいたいと思います。  次は、日米安保条約と非核三原則との関連について質問をしたいと思うのです。  六日の参議院予算委員会で中曽根首相は、安保条約が主で非核三原則はその運用の一つだ、いわば従であるというふうに答弁されています。中曽根首相自身は、一九八三年二月の予算委員会でも、非核三原則が国是であるという立場をなかなかお認めにならなかった、最後渋々言われましたけれども。今回の発言も、そうした中曽根首相姿勢とも関連しているように思うのです。いわば、非核三原則崩しの本音があらわれているのじゃないかという批判もあります。  安倍外相にお尋ねしたいのですけれども、これまで、非核三原則が日本の国是となって、政府もしばしば答弁する過程には、これを安保条約の従的存在にしようという意見なども確かにありました。しかし今日では、非核三原則は国是であるということを、しばしば政府も首相もはっきり明言されていますし、三木首相に至っては、日本の不変の原理であるとまでも言われているわけです。外相は、非核三原則が国是である限り、安保条約の単なる運用の一つ、従的存在であるとはお考えにならないと思いますけれども、そのように確認してよろしゅうございますか。
  277. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 先般の中曽根総理の発言、十分確かめていませんけれども、あれはやはり安保条約が先にできてその後非核三原則ができたという、そういう順序を言われたのではないかと思っております。  非核三原則については、これまでの政府の答弁のとおりであります。中曽根総理もこの点については明確に言っておりますし、非核三原則はいわゆる国是であるという政府の一貫した姿勢は変わりありません。
  278. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 確かに、中曽根首相は歴史的経過を述べられていますけれども、運用の一つと言ったところが問題なんですね。私は、たとえ安保条約がなくなっても、非核三原則というのは続くと思うのですよ。つくらない、持たない、持ち込ませないということ、これを単なる運用の一つにするというのは、これは安保が優先であって、非核三原則は従的存在にしているわけなんです。安倍外相は、この運用の一つという形の軽い扱い方はなさらないと思いますけれども、その点もう一言お願いしたいと思うのです。
  279. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いや、これはやはり非核三原則も全体の政治運用の一つだろうと思いますね。国是でありますけれども、同時に全体的にはこれは正しく運用していかなければならぬ、そういう課題だろう、そういうふうに思っています。
  280. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 正しく運用するのはいいのですけれども、安保が主で非核三原則が従でないということは、はっきり言えますね。
  281. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、主とか従とかいう関係ではないように思いますね。いわゆる歴史的な経過の中での順序というのはあるわけですけれども、しかしどちらが主であり、どちらが従であるということでは私はないように思います。
  282. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 非核三原則が従でないということは、今はっきり言われたというふうに思うのです。これはやはり日本の国是であると言われましたので、しっかり守っていく姿勢が必要であろうと思いますが、この非核三原則にかかわって三海峡封鎖の問題に質問を進めてみたいと思います。  一九八三年の三月八日、衆議院予算委員会に提出された通峡阻止問題での政府見解、私ここに持ってまいりましたけれども、これによりますと、日本への武力攻撃が発生しない事態、当然ここで米軍が封鎖をやろうとする場合を想定してありますが、ここでは必ず日本に同意を求める。中曽根首相答弁によりますと、「求めてこなければならぬ」というふうに言われているわけなんですね。この政府見解において判断の基礎になっている三海峡は、領海部分、公海部分両方含みますか、それとも領海部分だけですか。
  283. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 この五十八年三月八日の統一見解につきましては、この見解が出ました当時、種々御質問がありまして、その際に政府委員の方から累次御答弁申し上げておりますが、この統一見解は、海峡の公海部分についての政府の見解を申し上げたということでございます。
  284. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 領海を含まずに公海部分についての政府の見解だということですね。  それでは聞きましょう。この公海部分に対して、米軍が単独で機雷等の通峡阻止行動に出ることについて、なぜ日本の同意を求める必要があるのか、安保条約第何条、これにかかわるのですか。
  285. 小和田恒

    ○小和田政府委員 これは安保条約の問題と申しますよりも、一般国際法上の考え方に基づくものであるというふうに御理解いただいた方がよろしいかと思います。要するに海峡というものは、いろいろな国際航行に使用されるところでございます。いろいろな意味で沿岸国が、その通航については深い利害関係を持っているわけでございます。したがって、その海峡を広く利用しております、利害関係を持っておる沿岸国の立場からいたしますと、たとえ公海上でありましょうとも、非常に近接した場所でその通航を阻止するような行動がとられるということになりますと、公海使用の自由ということの関連から申しまして、沿岸国として一定の一般国際法上の権利関係に対して影響を与えるという事態が生じることが予想されるわけでございます。そういう意味におきまして、沿岸国として当然この問題についてはある種の発言権を持っておるというのが考え方でございます。
  286. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 当然そうであろうと思うのですね。  さて、これは公海部分についてそういう政府の統一見解とおっしゃいましたけれども、当然領海も入るでしょう。領海は日本の領海でございますからね。その承諾なしに、同意なしに勝手に海上封鎖されては、いかに同盟国であってもまずいと思うのですね。当然これは公海と領海を含む、そう理解してよろしいですね。
  287. 小和田恒

    ○小和田政府委員 領海につきましては法理的な観点がいささか異なるかと思いますが、領海はその名のとおり国家領域の一部でございます。したがいまして、他国が、第三国が沿岸国の領海の中にそういう行動を勝手にやる、機雷を敷設するというような行動を勝手にやるというようなことは、沿岸国の主権との関係において認められないことであるというふうに御理解いただきたいと思います。
  288. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 そこまでは了解しましょう。さて、そこからが非核三原則とのかかわりなんです。  米軍の三海峡封鎖、これは原則的にはノーだという立場なんです。しかし、日本の船舶が撃沈されたりするようなそういう緊迫した事態のもとでは、日本に武力攻撃がなくてもイエスがあり得る、こういうふうに中曽根首相答弁され、政府の統一見解になっているわけなんですね。  そこでお聞きしますけれども、最近は核爆雷等がいろいろと発達してまして、この通峡阻止行動の中には当然核兵器も含まれるというふうに思いますけれども、その際でもイエスがあり得るのですか。
  289. 小和田恒

    ○小和田政府委員 先ほど申し上げました考え方は一般的な考え方でございまして、それが先ほど委員から御指摘のあった政府統一見解に示されているわけでございます。具体的に非常に極限的な状況を仮定をいたしまして、それについて一々こうなったらどうなるか、ああなったらどうなるかというようなことを仮定すること自体が必ずしも適当ではないというふうに考えますので、答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
  290. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 しかし、現実には三海峡封鎖という問題は、日米共同作戦の場合でも、米軍の戦略の中で非常に重要なポイントを占めているところですね。これは仮定の問題だけでなくて、現実にそのような訓練もあり研究もあるはずなんです。現実問題なんですよ。ですから、ここで答弁されたくない気持ちはわかりますけれども、否定なさるんですか、ノーと言わないのですか、そのことをはっきりお示し願いたいと思います。
  291. 小和田恒

    ○小和田政府委員 先ほど岡崎委員が御指摘になった問題というのは統一見解の後半の部分でございますが、全く理論的な可能性の問題として、我が国に対する武力攻撃は発生していないけれども、我が国に対する武力攻撃が非常に緊迫性を持っているというような場合であって、それが我が国自身の安全の確保のためにぜひとも必要と判断されるような可能性も完全には排除されない、そういう例外的な場合にはそのような事情を考慮に入れるべきである、こういう非常に抽象的かつ一般的な、理論的な可能性について触れているわけでございますので、それ以上具体的にどういう事態が個々のケースについてあり得るかというようなことは、余り取り上げてここで議論をすることは適当ではないというふうに私ども考えております。
  292. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 今想定された場合も、これはあくまで想定なんですよ。しかしそれでも、公海上であっても非常に近接した地域の航行の自由の問題、そういうことを考慮して原則的にはノーと言うんだ、しかし緊迫した状況のもとではイエスもあり得るというふうに言われているわけなんで、こういうときにイエスもあり得る中に核兵器を使うことがあり得るかどうか、これは当然その延長として想定として入っているわけです。ですから、ここでノーと言うべきだと思うのですよ。というのは、この海峡というのは公海といいましても本当に狭いところなんですね。  例えば宗谷海峡にしましても、三海里が公海なんです。津軽海峡にしても四海里、対馬の東水道にしても十九海里です。こんなところで通峡阻止行動が行われ、その一つとして核兵器が使われますと、これは直接領海内にも影響します。こういう三海峡といいましても、実際には日本列島の一部分なんですね。  こういう点から見ますと、そういう原則ノーの姿勢を持っている海峡封鎖問題につきまして、やはり核兵器については非核三原則の立場から――どこからどこまでが領海であるいは公海で、その区別さえもはっきりしないような形になるでしょう、核の爆発というのは。したがって、こういう三海峡封鎖については、米軍の単独行動であっても核兵器についてはノーと言う、このことをはっきり言うべきだと思いますが、言えないのですか。
  293. 小和田恒

    ○小和田政府委員 私が先ほど来お答えしておりますのは、あくまでも一般論として、理論的にどういうことであるかということについての政府統一見解の内容を御説明しているわけでございます。委員からは、あたかも現実に核兵器が使用されるという場合にどうなるかというような前提でいろいろ御質問でございますけれども先ほど来あるいは前々から総理外務大臣がお答えしておりますように、核兵器が現実に安易に使用されてはならない、核兵器というものは本来使用されることがあってはならない種類の兵器であるということについては、政府は前々から申し上げているわけでございますし、日米双方とも同じ認識を持っているわけでございます。そういう中におきまして、核の問題というのは抑止力の維持という観点から、核は一切使わないんだ、理論的にもいかなる場合にも核は一切使わないんだというように可能性を一切排除してしまうということは、抑止力の維持という観点から必ずしも適当ではない、こういうことで従来からお答えをしているわけでございます。  したがいまして、今お尋ねの点につきましても、そういう抑止力の観点における問題という見地から、先ほど来申し上げておりますような政府統一見解と、あるいは核を使うか使わないかというような問題についての政府の考え方を御説明しているわけでございまして、繰り返しになりますけれども、核兵器というものが容易にあるいは安易に使われてはならない、あるいは本来使われることを想定していろいろなことを考えるべき兵器ではないということは、政府が前々から申し上げているとおりでございます。
  294. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 容易に使われてはならない、当然だと思うのです。しかし、核抑止力の立場からこれを排除しないというのも政府の姿勢なんですね。  私がここで問題提起しているのは、一般的な公海の問題じゃないのです。日本のすぐそばにある三海峡で使うなと言っていることなんですね。そのことについて、三海峡を特殊の理念、日本とのかかわりのある、日本列島の一部分として国民の生活圏の部分として、ここでは領海と同じように核兵器の使用は認めないということをはっきり断言できないのですか。むしろそれは、使う方向に振り子が動いているような判断を受けるのです。そうとってよろしいですね。
  295. 小和田恒

    ○小和田政府委員 繰り返しになって恐縮でございますけれども、政府は核兵器が使われるようなことがあってはならない、現実に核兵器が使われるような事態というものはあくまでも避けなければならないという考え方であることは、従来から申し上げているとおりでございます。  今お尋ねになっております関連につきましては、一番最初に申し上げましたように、日本の領海の外における公海部分におきまして米軍がどういう行動をとるかということとの関連におきまして、沿岸国である国が沿岸国として持っている利害関係から、一定の発言権というものは持ち得るであろうということを申し上げておるわけでございまして、そういう一般論の範囲内において先ほどの統一見解ができておるということでございますので、その範囲において御理解いただきたいと思います。
  296. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 そこがわからないのですよ。一般の公海と違って、日本が発言権を持っている海峡の公海なんですね。ですからノーと言うべきである、そう言っているわけです。  じゃ、また新しくもう一つの問題を出しましょう。これは二月十九日の衆議院予算委員会での私の質問に対して、今度は日本有事です。日本有事で、公海上という限定つきではありましたけれども、日米共同作戦の最中に米軍の核兵器の使用を排除しない、つまり使うことを容認するという重大な発言が中曽根総理からありました。この総理の論理でいきますと、日本有事の際に三海峡封鎖をする、公海上では核兵器の使用を容認するというふうになりますけれども、そういうことでよろしいですか。これは、近接国があるので一般の公海と違うのですよ。私は、絶対そういうことは許すべきではないという判断を持っているわけですが、どうでしょう。
  297. 小和田恒

    ○小和田政府委員 ただいま御指摘のありました総理の発言も、私どもが理解しておりますところは、核の抑止力というものに重点を置きまして、我が国防衛のために真にやむを得ざる状況があったときに、仮にそういう事態になったときに、核は一切使わないんだという、核の使用の可能性というものを一切排除してしまうということになりますと、抑止力の維持という見地から適当ではないという考え方に立っているわけでございますので、そういう見地から総理答弁が出てきておるというふうに御理解いただきたいと思います。
  298. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 そういう立場から言われたことはわかっているのですよ。その先を聞いておるのです。一般的な公海の問題じゃなくて、日本に本当に隣接している三海峡の公海部分について言っているわけなんです。これは現に昨年暮れ、日米軍首脳部によって調印されている日米共同作戦計画の中にも、こういう問題についてはっきり書いてあるわけでしょう。何回要求しても国会に提出なさらないわけですけれども、かなり現実的な問題なんですね。日米共同作戦、その訓練が現に行われている。ですから、単なる可能性、単なる仮定の問題じゃなくて、既にそういう想定をした訓練があり、研究計画があるわけでしょう。ですから聞いているのですよ。そこを逃げないで、もしそれならそれとはっきりおっしゃっていただきたいのですよ。しかし、三海峡の場合は余りにも近接しているので、ここは核使用については一般の公海とは違った扱い方をします、こうおっしゃるなら、そういうふうにお答え願いたいと思います。
  299. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 日米の共同作戦計画については、既に防衛庁、防衛当局の方から累次御答弁がありますとおりに、当然その前提となっておりますガイドラインに従いまして、非核三原則の問題については研究の対象としないということでございますので、そういうふうに御理解いただきたいと思います。
  300. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 私が聞いているのはそこまでじゃない、その先です。私が言ったその先の方についてお答え願いたいのですよ。つまり、三海峡というのは一般の公海と違って極めて近接をしている。したがって、政府の統一見解でさえも、公海部分について日本の同意を求めておるような国際法上のそういう地域なんです。そこでも、公海上だから核兵器の使用を排除し得ないのかどうか。しかし寸公海とはいっても、非常に日本に近接した特別の地域だからはっきりノーと言う、どちらかということを聞いているのです。
  301. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 先ほどから累次条約局長答弁申し上げておるとおりに御理解いただきたいわけでありますが、核兵器の問題は、そもそも私ども政府としての考え方は、抑止力ということに意味があるわけでございまして、現実の核兵器の使用について論ずることは適当ではないということが政府の基本的な考え方でございます。あくまでも抑止力としての核ということでございます。したがいまして、そういう意味におきまして、かくかくこういう場合には核兵器は絶対に使用しないということを政府として明言するというわけにはまいらないということでございますので、そのように御理解いただきたいというのが、先ほどから政府委員が御答弁申し上げている趣旨でございます。  したがいまして、どういう地域であろうとなかろうと。我が国に近接しておりましょうと遠い洋上でありましょうと、そこにおいて核兵器を現実に使うということは政府は考えておらないわけでございますので、そのように御理解いただきたいと思います。
  302. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 論ずることは適切じゃないと言いながら、総理自身が論じられたわけですよ。そして、日本有事、公海上という限定つきでありながら核兵器の使用を容認されているわけです。その論でいきますならば、日本にごく近接した三海峡封鎖作戦で公海上で使われる危険性がある。だから問題にしているわけなんです。これでは非核三原則もすぐ破られることになるし、日本自身が核戦場になる危険性があることを指摘しているわけなんです。ここで答えることは適当でないと言うが、私は政府として言いにくいことはわかりますよ。しかし、総理の論理から言うなら当然イエスになるのです。しかし、一方の政府の統一見解から言うならば、これについては日本の発言権も強いし、当然ノーと言える立場にあると思うのです。そこを逃げないで、言いにくい言葉であるでしょうけれども、ここは国会なんです。まだ時間もありますから、はっきりとお答え願いたいと思うのです。
  303. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 私も、たびたび総理の御答弁を横で聞く機会がございますが、総理がおっしゃっておられることも、質問があったので理論的な問題として答えたのだということを常に御答弁のときには言っておられます。したがいまして、先ほど申し上げたことの繰り返してございますが、核の問題はあくまでも抑止力として認識するというのが政府の立場でございまして、現実にいかなる場合に使うべきであるとか使うべきでないということを断定的に申し上げるということは、今申し上げました抑止力という観点から適当でないということが政府の基本的な立場でございますので、そのように御理解いただきたいと思います。
  304. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 抑止力という言葉が非常にくせ者ですね。抑止力という言葉さえ使えばそれを論ずるのは適切じゃないという形になってしまう。質問があったから中曽根総理が答えたのだったら、この外務委員会でも私が質問しているから答えてもいいと思うのです。この抑止力という言葉の中で、現実にはそういう事態が進んでいることを私は懸念するからこそ、指摘しているわけなんです。特に三海峡封鎖という形で、具体的な日本に極めて身近な問題として出しているわけなので、これをあいまいにすることは、実際的には抑止力の名前で公海上核兵器の使用を排除し得ないという立場を、これは手を練らないということを優先的にお考えになっている結果でないかと思わざるを得ないわけです。  安倍外相、この問題は極めて重大だと思うのです。一般的な公海じゃなくて、日本のすぐそばにあるこの三海峡について、核兵器は使わせるべきじゃないと思うのです、公海上でも発言権があるわけですから。そういう立場を明確にできませんか。
  305. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この点についてはもう政府の統一見解も出ておりますし、官房長官の統一見解、中曽根総理答弁も出ておりますから、それでもって御理解をいただきたいと思います。
  306. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 もう終わりますけれども、何かさっぱりわからないですね。いずれにせよ、私たちは中曽根内閣の外交――平和、軍縮と言いながら、こういう肝心の問題については、事実上アメリカの核戦略の片棒を担ぐようになっていないか、私は非常にそこを懸念するわけです。そういう危険性を指摘しまして、時間が来ましたので終わります。
  307. 愛野興一郎

    愛野委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十分散会