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-
○
委員長(
長田裕二君) 御
異議ないと認め、さよう決定いたします。
─────────────
-
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-
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-
○
国務大臣(
松永光君) 現在では健康上の問題とかそういったのが一、二項あるようでありますが、例えば
少年院等に入っていた者がそこから出てきてどの
中学校に入るかという
問題等がありますが、現在の大体のやり方では、本来の地域の
学校というようなのが現在の取り扱いのようでありますけれども、それが果たして
教育的な
配慮から言って妥当かどうか
検討に値する問題だというふうに考えるわけです。
-
-
-
-
-
-
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-
○
国務大臣(
松永光君)
通学区の拡大とか、
学校選択の自由というのはまだ中身が定かでありませんので、今この
段階で的確にお答えすることは難しゅうございますが、要はそれぞれの
学校の
内容を充実して今
委員が指摘されたような事柄が起こらぬようにすることが大事なことであると考えております。
-
○
吉川春子君 それで受け入れる側はどうでしょうか、やはりいつでもどこでも転校生を受け入れる
条件があるのかどうか。こういうことを認めたら
現場は大
混乱するのではないかと思います。それで、
子供たちが転校するようなことを考えなくてもよいような
学校をつくるという
努力がないがしろにされるのではないかと思いますが、いかがですか。
-
-
○
吉川春子君
大臣の小幅なら自由を認めるというその
答弁が
現行でも、
大臣自身お認めになっておりますように、
選択の自由があるわけですから、それを広げて大幅に
選択の自由を認めて、そして
混乱を来すことが予測されるわけですけれども、そういうことがないようにやっぱり絞っていきたいと、こういうふうに理解してよろしいでしょうか。
-
-
-
○
国務大臣(
松永光君) よい
学校、よい
教育というのはどういうものかということを短い言葉で言いあらわすことは難しゅうございますが、要するに知育、徳育、体育、
バランスのとれた
教育がなされ、かつ生き生きとした
教育現場であることがいい
学校であり、また望ましい
教育であると考えます。
-
○
吉川春子君 そういうあしき
学校を淘汰するというようなことで、よい
教師、悪い
教師、よい
学校、悪い
学校というようなことを決めることが実際できるのでしょうか。
-
-
○
吉川春子君 仮に
学校選択の自由ということで、いわゆるいい一部の
学校に
児童生徒を集中させるということになれば、
学校の方でも
子供を選別せざるを得ないようになるのではないでしょうか。目指す
小学校へ入るために幼稚園から塾へ入れなくてはならない、こういう
事態が起こることが予想されます。
高校入試競争のために
中学教育が今大変ですけれども、さらにそれを幼児の
段階から味わわせるというような
偏差値教育の激化につながるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
-
-
○
吉川春子君
仮説といいますか、有力な
臨教審の
メンバーの方がどんどんこういうことを
各所で発表なさっているわけで、そういうようなことを目指して
教育改革の提言がなされる
可能性があるわけですから、私はそういうようなことを
文部省は認められるのかどうかという
立場で聞いたのですけれども、いかがですか。
-
-
-
-
-
-
○
吉川春子君 そうしますと、
自由化論者の言っているように塾まで
学校として認めるというようなことには
文部省は反対であると、こういうことでしょうか。
-
-
○
吉川春子君
臨教審の場でということではなくて、
臨教審の
メンバーの方がそういうことを
各所で積極的に言っておられるわけで、こういうことも盛り込まれる
答申が出される
可能性は十分にあるわけです。
文部省は塾を
学校として認めるというようなことに賛成できるのかどうか、重ねて伺います。
-
-
-
○
政府委員(
高石邦男君) 現在も
法令上は
市町村立、県立のほかに、
学校法人が
設立する
私立の
学校を、
小中学校もつくることができるわけでございます。したがいまして、
一定の
要件さえ満たしておれば現在でも
私立は自由につくれるというような状況でございますので、そういう法制の上に立って
私立が申請され、設置されるということはあり得ると思うのです。しかし、現実的に
小中学校の大部分は公立によって維持されているという背景は、長い一つの明治以来の伝統に基づく一つの
教育観と、それから
私立についてはどうしても授業料その他
父兄の負担を伴うというようなことから、おのずから
国民の
選択が限定されるということで、非常にわずかな
小中学校の
私立というのが今日存在しているということでございます。
-
○
吉川春子君 そうしますと、塾を
学校として認めたり、
私立の
小学校、
中学校がふえて、そこへ
子供を通わせなければならないとなると、
教育費の負担に苦しむ保護者がさらにふえるということになりますが、
国民の
教育を受ける権利、
義務教育の無償の原則がそうなると損われるというふうに考えられますが、いかがでしょうか。
-
○
政府委員(
高石邦男君)
現行制度ではあくまで保護者は就学の義務を負う、そしてその義務を履行するに必要な
学校の設置を
地方公共団体がしなければならないという設置義務を負っているわけでございます。したがいまして、
国民が公立
学校の
選択ができて、自由にその
学校に行けるという
制度上の保障は十分に
現行制度でも行わなければならないし、将来もそういう仕掛けの保障はしていかなければならないわけでございます。
-
○
吉川春子君 最近の東海銀行の
子供の
教育費アンケートの調査によりますと、幼稚園から高校卒業まで十四年間の
学校教育費は、公立だけのケースで百三十七・五万円、
私立だけのケースでは七百九・五万円で、公立だけの約五倍というふうになっています。
そこで、経企庁長官にお伺いいたしますが、
国民生活白書の中で、
昭和五十八年度
教育費の伸びが実質名目が幾らになっているか、
教育費の中でもこの伸びを支えているものは何なのか、
教育費が
国民生活をどのように圧迫しているのか、その辺についてお伺いします。
-
○
国務大臣(金子一平君) 今お示しの数字は、年齢階層別で大分違っておりますし、具体的な数字につきまして
政府委員から
答弁をさせます。
-
○
政府委員(及川
昭伍君) 消費支出に占める
教育費の割合は、
昭和五十八年度では、全体で三・七%となっております。この
教育費は、
昭和四十年には三・九%でありましたけれども、その後
子供の数の減少によりまして
昭和四十六、七年ころには二・六、七%になりましたけれども、最近再び
教育諸費の増加によりまして増勢を示しておりまして、五十七年三・八%、五十八年三・七%、五十九年四・〇%となっております。これをさらに、
教育関係費と申しますけれども、
教育費のほかに
学校給食であるとか、男子学生服であるとか、
通学定期等々加えた
教育関係費という費目で見ますと、
昭和五十八年度で六・五%を占めるようになっております。これをさらに年代別、世代別に見ますと、二十五歳台では一・三%程度でありますが、四十五歳台では一〇%を超えるように、世代別に負担の割合は相当違ってきているということを昨年度の
国民生活白書では示しております。
-
○
吉川春子君
国民生活白書の中で、
教育費は実質では費目別の三位の伸びでありますけれども、名目では一一%と第一位であって、これは授業料、それから補習
教育の物価指数の上昇によるものだということを生活白書の中で指摘されておりますが、このように
国民生活の中において非常に
教育費の占める負担が大きいということについて長官どうお考えでしょう。
-
○
国務大臣(金子一平君) やはり
教育費に対する関心が各家庭とも非常に強くなってまいりまして、
子供を育てるためにはうんとつぎ込もうという気持ちになっておりまするけれども、また、それに関連していろいろな塾通いその他の問題がございまして、今
政府委員から説明しましたように、だんだんと
教育費関連支出がふえてきておる。これは私は家計全体に対する圧迫が大きいですから必ずしも好ましい姿ではないと思っておりまするけれども、現実の姿としてはそういう状況になっておるということを申し上げておきたいと思います。
-
-
○
国務大臣(
松永光君)
教育費の父母負担が過大になりますと
教育の
機会均等という理念が実現されなくなりますので、
父兄負担が過大にならないよういろいろな施策を進めていかなければならぬと思っております。
-
-
-
○
吉川春子君
文部省は、
教育の
機会均等については今後ともその実現を確保し、特に弱者切り捨てにならないように
配慮する必要がある、こういうことを
臨教審でも述べておられます。
教育の
自由化というものが非常に極端な形でどんどん進もうとしているわけですけれども、これはそういう点で
教育の
機会均等を踏みにじることになるのではないでしょうか。
-
○
政府委員(
高石邦男君)
自由化という言葉で言われる
内容が、いろいろな
立場でいろいろ使われますので、ここで
一定の定義なくして論ずることは非常に適切でないわけでございます。ただ、基本的には、
教育の
機会均等が保障されながら、しかも
教育が活力を持って行われるということは非常に重要なことでありまして、具体的な政策として何を取り上げていくかというのがより重要であろうと思っております。
-
○
吉川春子君
文部大臣、第一部会で
教育憲章を新たに設けるべきだという論議がなされているということを御存じでしょうか。
-
-
○
吉川春子君 中曽根総理は、昨年の七月十三日の参議院本会議で、私の質問に対して、「新たに官製の
教育憲章を設ける考えは」ないというふうに明確に
答弁しておられます。
臨教審の論議は明らかに総理の国会での
答弁と食い違っていますが、
文部大臣、この矛盾についてどうお考えですか。
-
○
国務大臣(
松永光君) 我が国の
教育の理念、目的につきましては、
教育基本法に明らかに定められておるところであります。ただ、いろいろな方面で
教育基本法の文言その他、どうもわかりにくい点もあるなと。わかりやすいようなものをつくってみてはどうかと、こういう実は
意見があるわけであります。しかし、それも一つの
意見だと思いますが、さてそうなりますというと、どういう
内容にするかと種々の問題もありますし、なかなか
国民のコンセンサスは得にくいという点もあろうかと思います。そういうこともあって、
意見は
意見として承るが、総理は官製の憲章をつくる意思はないと、こういうふうにお答えはなったと思うのでありまして、私も総理と同じ
意見でありますが、
臨教審の中での
議論は自由闊達になされて結構でありますから、その
議論について枠をはめる気持ちはありませんけれども、私どもの
考え方は今申し上げたようなところでございます。
-
○
吉川春子君 そういたしますと、
教育憲章をつくれというような
答申が仮に出てきても、
文部省としては
教育基本法の原則に合わないからこれはつくらないと、こういうふうに受け取ってよろしいでしょうか。
-
○
国務大臣(
松永光君) 仮定の話でございますからお答えにくうございますが、私の
考え方は、総理が
答弁されたように、官製のものをつくる気持ちはないわけであります。
-
○
吉川春子君 一言、九月入学についてお伺いいたします。
文部省としては、大学入学の時期だけではなくて
義務教育も含めて九月入学の方向というふうにお考えでしょうか。
-
○
国務大臣(
松永光君) この問題も
臨教審で
議論がなされているところでございまして、その
議論の深まり、まとまりを見守っているところでございます。
-
○
吉川春子君 もし大学のみ九月入学ということになった場合には、その半年間において
子供たちはどういう状態になると予測なさいますか。
-
○
国務大臣(
松永光君) 大学だけ九月入学で卒業はいつか、そういったこともまだ
議論がなされ始めているところでありまして定かではありません。いずれにせよ、この九月入学につきましては、高校以下の入学、卒業がいつになるのかまだまだ定かでないわけであります。やり方によってはいろいろな
混乱も予想されます。メリットもあればデメリットもある、こういうことでございますので、メリット、デメリット双方にらみながら
議論が進められていくことを見守っておるところでございます。
-
○
吉川春子君 今の時点で
文部省が考えているメリットとデメリットはどういうことでしょうか。
-
○
政府委員(
高石邦男君) 詳細にそういうことを前提として
文部省で
検討し、詰めているわけではございません。この問題は慎重にいろいろな角度から
検討した上で最終決定が行われるべきという重要な課題であるということで、
臨教審内部においての論議も、そういうあらゆる角度から
議論を詰めて結論を出してもらいたいというのが現在の
文部省の心境でございます。
-
○
吉川春子君 いずれにいたしましても、
自由化論を唱える方々が非常にいろいろなことを言っていて
教育の
現場を
混乱させかねないような
答申が出る
可能性があるというふうに私は懸念をいたしております。
文部省は、
教育基本法とかそういう
立場を十分守って、やっぱりしっかり対処していくべきではないかと思いますが、いかがですか。
-
○
国務大臣(
松永光君) 私は
教育基本法の
精神にのっとって今回の改革を目指しておるわけでありまして、そのことは
臨教審の
委員の
先生方も、
専門委員の
先生方もよく御承知のことであると思います。改革ですから、ある程度の変化があるわけでありますけれども、しかし
教育の
現場に大
混乱が起こるようなそういうものにはならないというふうに私は期待をいたしております。
-
○
吉川春子君 厚生省に伺います。厚生省は、昨年四月、「児童扶養手当法の改正について」という問答集、これですけれども、自治体に配付しておられますが、その「問10」の中で、いわゆる未婚の母を支給対象から除外する理由についてどういうふうに書かれているか読んでください。
-
○
政府委員(小島弘仲君)
児童扶養手当は、正式の婚姻をした夫婦とその子どものいる通常の家庭で、夫が死別し、あるいは夫と離婚した場合に、残された母子の生活の安定と自立を援助するために母に支給するもので、全ての児童を対象にした児童手当
制度とは違います。
「未婚の母」とは、結婚をしないで子どもをつくった女性のことですが、このような女性には、実際には、夫なり、子の父親に当たる人がおられる場合が多いので、今回の改正で受給をご遠慮いただくこととしたのです。現在の
制度でも父が子を認知すれば、支給対象になっていませんし、いわゆるおめかけさんまで税金による手当が受けられることについて、これまでいろいろと批判もありましたので、今回改めることにしたのです。
なお、今既に「未婚の母」として手当を受けておられる方は、引続き支給を受けられます。
また、児童を対象にした児童手当
制度や児童福祉法の上で、児童を区別するのであればともかく、所得の高い母子家庭や父子家庭の児童も対象になっていないこの
制度で、「未婚の母」を支給対象から除外しても法の下の平等や児童の人権問題とは関係ありません。」
以上です。
-
○
吉川春子君 八三年度未婚の母の母子家庭世帯はどれだけの数になりますか。
-
○
政府委員(小島弘仲君) 五十八年八月の調査によりますと、未婚の母は三万八千三百名となっております。
-
○
吉川春子君 この母親が全部いわゆるおめかけさんなんでしょうか。厚生
大臣、おめかけさんの定義はどういうことですか。
-
○
政府委員(小島弘仲君) 未婚の母のすべてが、いわゆる世間一般で言われておりますようなおめかけさんに該当するものではありません。通常、おめかけさんという場合には、法律婚が成立しているのにもう一方でもう一つの事実婚があるようなケースをいうものと考えます。
-
-
○
国務大臣(
増岡博之君) 私は法的な関係はよく承知いたしておりませんけれども、その言葉は従来は使われておりましたけれども、最近では余り耳なれないような社会情勢になっております。
-
○
吉川春子君 耳なれない言葉を厚生省はどうして使っているんですか。
-
○
政府委員(小島弘仲君) 児童扶養手当
制度につきましては実施上非常に
運用の難しい面もございますし、とかく従前、今まで三十七年から二十三年間施行してきたわけですが、その間特にいろいろな形の不正受給やなんかがあるというようなことで、またおめかけさんというような方まで出すのかという非難もありましたので、こういう用語を使ったものと考えます。
-
○
吉川春子君 三万八千三百世帯を全部おめかけさんだということで、未婚の母という
立場で支給をカットするわけですね。こういう不適切な言葉を使って自治体にこういうものを厚生省はよくぞ配ったと私は思うんですけれども、これは全く不適切なものであるとお考えではありませんか。
大臣から伺います。
-
○
国務大臣(
増岡博之君)
先生御承知のように、この児童扶養手当の認定事務につきましては各都道府県において行ってもらっております。したがいまして、今回の改正につきましてあらかじめその
内容を十分承知していただくということは必要であったと思います。特に新規認定分から給付の二割を負担していただくことになっておりますので、十分な認識をしていただくという意味で配付したものだと思いますが、ただいまの御指摘の言葉につきましては不適切であったと思います。
-
○
吉川春子君 不適切なものであるというふうに
大臣がお認めになりましたが、それでは、不適切な言葉を使ったこのパンフレットは自治体から回収していただきたいと思いますが、いかがですか。
-
○
政府委員(小島弘仲君) 大変不適切な説明のところ、不十分なところがあったことは十分反省しておりまして、
機会あるごとにそこの正しい理解をお願いしておるところでございます。説明を加えまして御理解を願っておるところでございますし、実際上今後ともその本来の趣旨の十分な説明には
努力してまいりたいと考えております。
-
○
吉川春子君 このおめかけさんの言葉について正しい理解をどのように図っておられるのですか。
-
○
政府委員(小島弘仲君) 今回の改正の趣旨はおめかけさんだから外すという趣旨のものではございませんで、離婚等によりますそういう原因で従来の夫による生計の維持ということが期待できなくなった、いわゆる生活が激変したという母子家庭について今回手当を支給する
制度に改めることにいたしました。激変を
緩和いたしまして自立を促進するための
制度であるという趣旨に変えたものですから、そういう形で対象を見直した結果、その以前から夫またはそれに当たる人によって生計を維持されたという事実のない、いわゆる未婚の母は受給資格の対象外になったという
制度でございますので、そういう理由で未婚の母が結果として今後改正後の児童扶養手当の支給対象にならないという趣旨の説明をいたしております。
-
○
吉川春子君 このところにはそういうふうに書いてないわけですね。おめかけさんを支給の対象から外すものだと、ここには説明してあるわけです。
大臣どうですか、不適切なものは回収なさってはいかがでしょうか。
大臣に聞いています。
-
○
政府委員(小島弘仲君) 十分その箇所を正しい説明にかえるような措置をとってまいりたいと思います。事実上、回収という問題はなかなか困難な面がありますし、配付の対象が都道府県でございますので、そういう趣旨で十分徹底してまいりたいと思います。
-
○
吉川春子君 全く厚生省の頭の構造を疑うようなパンフレットに私は非常に立腹いたしました。女性としてというか、人間として、こういうひどい言葉を使って都道府県を指導するというようなことは許されないと思いますので、撤回を含めて、今適切な措置もとるというふうにお答えがありましたけれども、そういうふうにやっていただきたいと思います。
未婚の母への支給打ち切りは差別撤廃条約の十六条の(d)項に反するのではありませんか。
-
○
政府委員(小島弘仲君) 差別撤廃条約の十六条は、「婚姻及び家族関係に係るすべての事項について女子に対する差別を撤廃するためのすべての適当な措置をとるものとし、特に、男女の平等を基礎として次のことを確保する。」ということで、(d)項には、子に関する事項についての親——婚姻をしているかいないかを問わない——としての「同一の権利及び
責任。あらゆる場合において、子の利益は至上である。」、こういう規定でございます。これは
子供についての権利義務につきまして父も母も全く同一の権利義務を有する、それは婚姻をしているかしていないかにかかわらない、子の利益は至上のものであるという見地からこうすべきものであるという趣旨の規定であると考えております。
-
○
吉川春子君 仮に扶養とかそういうことの規定であっても、その後半に今指摘されたように「児童の利益は至上である。」というふうに書いてあって、それについて差別的な取り扱いをしてはいけないんだということがこの条約全体の
精神でもあると思うんですけれども、この条約の
精神と照らして、今度のいわゆる改正案は違反しないのかどうか、抵触しないのかどうか。
-
○
政府委員(小島弘仲君)
子供に対する利益を福祉の増進のためには最大の政策目標として厚生省も努めております。ただ、どういう状態の
子供に特別の政策目的からどういう措置を講ずるかという見地からは必要な施策を実施しておるものとして考えておりますし、今回の児童扶養手当の改正は、離婚等によります母子世帯の生活の激変
緩和という見地からの政策目的で
制度全体を見直したものでございまして、どういう出生の
子供であるかということに着目した改正ではございませんし、この条約あるいはその他の人権条約に違反するというような
事態はないものと考えております。
-
○
吉川春子君 まさにどういう出生の
子供であるかということに着目して支給するかしないかということを分けているんじゃありませんか。だから、この条約の
精神から言っても認められないわけです。また、先ほどの問答集の中に「「未婚の母」を支給対象から除外しても法の下の平等や児童の人権問題とは関係ありません。」と、こういうふうにも書いてあります。これは全く問題だと思うんですね。これについて法のもとの平等ということを定めた憲法に違反すると思うんですけれども、未婚の母の子という社会的な身分によって公法上の扱いが異なるということはまさに憲法に違反するんじゃないでしょうか。
大臣、いかがですか。
-
○
政府委員(小島弘仲君) 法律
条件の組み立て上そういう規定が今までの法律にあったことは事実でございますが、これは現在でも同じような例えば生活
水準でございましても、父子家庭の
子供には出ませんし、もちろん両親がそろっている
子供はどんなに経済的に貧しくてもこの手当は出ません。
どういう趣旨でこの手当を出すかということについてちょっと御説明申し上げますと、一般的に母子の生活
条件というのは父子家庭より厳しい、特に離婚によって途端に生計の道を断たれると生活状態が激変すると、従来の支え手であった夫の援助はもはや期待できないというような
事態に立ち至りました母子家庭につきまして、その自立ができるまでの期間必要な援助の措置をしようという趣旨で、それを通しまして児童の福祉を守っていこうということでございますので、対象者を合理的な
範囲に限定することは、決して
子供を不合理な理不尽な区別をすることには該当しないものと考えております。
-
○
吉川春子君 父親がいないということ、そして激変
緩和という
立場に立っても、未婚の母の子であろうと離婚した母の子であろうと同じわけですね。しかし、それは対象とするかしないかをまさに未婚の母の子かどうかということで分けているんですから、やっぱり社会的な身分による差別で法のもとの平等に反するのじゃないか。
大臣、いかがですか。
-
○
政府委員(小島弘仲君) 現在の児童扶養手当
制度は、
国民年金の発足によります母子福祉年金の補完的
制度としてとらえておりまして、ほとんど同じような母子家庭であって、一方は死別であれば年金が出る、しかし生別等については出ない。その場合の生別母子世帯に対する母子福祉年金と同様の給付をしようという形で進んでまいっておりましたが、既に母子福祉年金は消滅しようとしております、現在の受給者も千名を割っております。一方、児童扶養手当法による受給者は離婚の増加等によりまして六十万人を超えるというような状態になってまいっておりますので、これを今後の社会保障の中での位置づけを明らかにするという形で再
検討を進めました結果、これは母子家庭の生活の激変
緩和措置、自立促進措置として位置づけるのが適当だと考えましてこういう整理をしました。
そういう形で対象者を再
検討した結果、いわゆる未婚の母、従前から夫によって生計を支えられた事実のない未婚の母という母子家庭につきましては、対象として挙がらなかったということでございまして、理不尽な区別とか不合理な差別というものではないと考えております。
-
○
吉川春子君 全く理不尽な差別が行われていて、夫が生活を支えたかどうかというそういうことじゃなくて、未婚の母かどうかということで区別しているわけですが、
委員長、
大臣からこの件についての回答を要請してください。
-
○
国務大臣(
増岡博之君) 先ほど
政府委員から御説明申し上げましたような歴史的な経過がございます。まず死別の母子についてお手伝いをいたそうというのが法律の趣旨でございます。しかし、戦後数十年たちます間に死別の方がもう千人以下ということでございまして、その間、この法律の適用につきまして、離婚の母子というものが六十万人にもなるということになったわけでございますから、年金を補完する
制度から純然たる福祉政策に変えようということでございますので、したがいまして、その離婚ということに着目して、そこで生活の激変があるというところでこの
制度をつくっておるわけでございますから、したがいまして、先ほど
局長から話をいたしましたように、未婚の母子の問題についてはこの法律の中で今後は、これまでの方はそのとおりいたしますけれども、救済できなくなったというのが実情でございます。
-
○
吉川春子君 そうすると、未婚の母の子でも激変がある場合には救済し得るという意味ですか。
-
○
政府委員(小島弘仲君) 年金は端的に死亡等完全な父親の喪失の状態でございますが、そのような場合に、一家の生計を支えてきた夫にもはや頼れなくなったという
事態の生活の激変
緩和でございますので、未婚の母の方が
子供が生まれたために生活が苦しくなったというような状況については対象になりません。
-
○
吉川春子君 衆議院の
予算委員会でこの件について
大臣は、何らかの対策を講じていきたいというふうに
答弁なさっておりますけれども、その何らかの対策の具体的な中身について明らかにしていただきたいと思います。
-
○
国務大臣(
増岡博之君) 衆議院におきまして金子みつ議員にお答えをいたしました。その際には、未婚の母の問題につきましては、この法律は現在衆議院社労
委員会で審議をいただいておりますので、その中身については言及するわけにはまいりませんけれども、この法律以外に未婚の母をお助けするようなものがあれば十分
検討してまいりたいという意味のことを申し上げたわけでございます。
さしあたり、厚生省の所管といたしましては母子福祉資金の貸付
制度がございます。また母子寮への入所の措置もございます。それから母子相談員による相談業務もございます。さらに保育所への入所措置があり、さらに生活保護の問題もございますけれども、これらの五項目にわたりましては、ほかの離婚の場合と同じように未婚の母にも対処いたしたいと思っております。
またさらに、就労その他の問題もございますけれども、これは他省庁にわたる問題でございますから、今後
検討さしていただきたいと思います。
-
○
吉川春子君 そういたしますと、今度の法案で決めているような原則は変えない、法律の中ではもう見捨てるということですね。
-
○
国務大臣(
増岡博之君) 先ほど申し上げましたように、現在衆議院の社労
委員会で御審議をいただいておるわけでございますので、その中身につきましては、私どもが言及をする
立場にないということを申し上げておるわけでございます。
-
○
吉川春子君 ちょっとそこをもう一度伺いたいんですけれども、この法案のこの部分を何らかの形で改めなければ、未婚の母というのは救済できないというふうに思うわけですけれども、そういうことも含めて考えるというふうに受け取っていいんですか。
-
○
政府委員(小島弘仲君) 今後の社会保障全般としてのあり方という形で、その一環といたしまして児童扶養手当
制度の見直しを行ったものでございますので、政府といたしましては、これが最善の策であるというふうに考えております。十分御審議いただければと考えております。
-
○
吉川春子君 この児童扶養手当の問題は、きょうは時間の関係で一つだけ問題点を指摘したにとどめましたけれども、非常に問題の多い、とんでもない法律なんですね。だから、こういう改正案、改悪案を撤回するように私としては強く要望いたします。
続きまして、国際青年年の問題についてお伺いいたします。第三十四回国連総会は、一九八五年を国際青年の年として、テーマを参加・開発・平和と決定しました。この国際青年の年を真に実りあるものにすべきと思いますけれども、政府としての対応をお聞かせいただきたいと思います。本来は総理
大臣に伺いたいところでありますけれども、外務
大臣、内閣を代表するような
立場でひとつお答えいただきたいと思います。
-
○
国務大臣(
安倍晋太郎君) 国際青年年は、参加・開発・平和のテーマのもとに、青年問題に対する国際的、国内的関心の高揚を図るとともに、社会の発展に対する青年の役割の認識及び参加の促進、世界平和への青年の貢献を実現しようとするものであります。本年秋の国連総会におきまして、青年問題に関する集中審議が行われる予定になっております。我が国は、これらの国際青年年のテーマに関する我が国の経験等を踏まえまして、同会議の成功に貢献をすべく積極的に参加する考えであります。
また、開発途上国の青年関連プロジェクト等を援助するための国連の国際青年年信託基金に対しまして約十万ドルを拠出すべく今回の予算に計上しているところでございます。
-
○
吉川春子君 私ども日本共産党は、一月八日に、国際青年の年に当たって具体的な施策を行うように六項目にわたって政府に申し入れました。それは、一、十八歳選挙権、二、雇用における地位向上、三、
教育の保障、四、スポーツ・文化のために、五、平和と国際交流のために、六、記念事業についてであります。各項目について自治省、労働省、
文部省、外務省、総務庁からの見解を簡単で結構ですから伺います。
-
○
国務大臣(古屋亨君) 国際青年の年の意義につきましては、今外務
大臣からお話がありましたように重要な問題でございます。またお申し入れの点もよく存じております。
選挙年齢の問題、十八歳にしたらどうかという問題は、私はそれ自体単独の問題として扱うべきではなくて、他の民法の成人年齢とか、あるいは刑法における刑事年齢その他の法律関係全般との関連、それが一つ。それから世論の動向や青年層の政治意識も十分に考慮しながら将来にわたって慎重に
検討すべき問題だと考えております。
-
○
政府委員(瀧澤博三君) 総務庁でございますが、私どもの方では青年年の各種の事業全体を取りまとめるような
立場であるわけでございますが、国連の趣旨を踏まえまして、青年年の各種の事業が十分盛り上がりますように、各省とともに
努力してまいっているところでございます。
我が方は、私どもの方独自の問題といたしましては、青年の国際交流の事業がございますが、青年自身の国際的な相互理解、これは平和の一番の基礎であると理解しております。そういう
立場から、この
機会に一層青年同士の国際交流が推進してまいりますように、従来からの事業を一層拡大充実してまいるよう
努力してまいりたいと思っております。
-
○
国務大臣(
松永光君)
文部省としては、青少年が自主的に行う国際青年年記念事業に要する経費の一部を補助すること、それからこの
機会に青少年の
教育施設の充実を図っていくということ、さらにまた青少年の社会参加を一層促進するという施策を進めていくことにいたしております。
-
○
政府委員(寺園成章君) 労働省におきましては、勤労青少年の健全育成を図るということが極めて重要であるという
観点に立ちまして、勤労青少年福祉法などに基づきまして、かねてから各般の施策を推進してまいっておるところでございますが、特に本年が国際青年年でありますことから、勤労青少年の日の中央大会の開催、全国勤労青少年スポーツ大会の開催、あるいは若年者が適切な職業
選択を行い、職場で十分能力が発揮することができるよう職業ガイダンスセンターの設置等の施策を推進してまいる所存でございます。
-
○
政府委員(山
田中正君) お答え申し上げます。
お申し入れの外務省に関連いたします部分といたしまして、まずお申し入れの第二項の雇用における地位向上の関係で、ILO条約第百十一号、第百三十二号、第百二十二号及び第百四十号の批准の御要望がございますが、ILO条約につきましては、国内法制の事前の整備が必要でございますが、この四条約につきましては、現在の国内法制ではまだこの条約の
水準に合致いたしておりません。したがいまして、批准に至っておらないものでございますが、今後とも関係省庁と連絡をとりつつ
検討してまいりたいと思います。
第二点といたしまして、お申し入れの第三項の
教育権のところで、国際人権規約A規約第十三条2(b)及び(c)の留保の撤回がございますが、この条約を締結いたしました際に、我が国といたしましては、後期中等
教育及び高等
教育について
私立学校の占める割合の大きいために、私学進学者との均衡から国公立についても妥当な負担を求めることとなっており、
私立学校を含めて無償化を図ることができない状況でございましたので留保したものでございます。現時点におきましてもこの状況は変わっておりませんが、人権規約の留保についての衆参両院の要望決議も踏まえまして、今後とも諸般の動向を注視して引き続き
検討してまいりたいと思います。
次に、第五項の平和と国際交流の点でございますが、まず核兵器全面禁止国際協定の締結につきましては、言うまでもなく我が国の核軍縮の基本的
立場は核兵器の廃絶でございます。ただ、私どもはそれを実現するために効果的な検証措置を伴った具体的な措置をもって核兵器の削減を図る方針でその
努力を国連軍縮会議で行っております。今後ともこの点を積極的に推し進めたいと思っております。
青年の国際交流につきまして、青年海外協力隊事業は草の根レベルの技術協力として極めて高い評価を外国から受けておりまして、今後とも推進していく所存でございます。
昭和五十八年度より三年間で新規派遣隊員数を八百名に倍増することとして、本年度の予算でもそれをお認めいただくよう計上いたしておるわけでございます。青年の国際交流につきましては、各国の次代を担う若い世代の対日理解の増進は努めてまいっておりまして、青年招聘事業の一層の拡充に努めております。六十年度におきましては、韓国からの招聘人数を百二十人から百五十人、南西アジアからの招聘人数を五人から五十人、東南アジアからの招聘人数を五十人から五十五人と拡大する等、また新たにアフリカよりの五名招請を実施するというふうな形での積極的な拡大を図る所存でございます。
-
○
吉川春子君 日本の青年が置かれている現状というのは、国際的に比較してみましても大変劣悪な
条件にあるというふうに言えると思います。職業あるいは
教育、そういうものが非常に青年にとって厳しい現状にあると思います。例えば選挙権はいまだ十八歳というふうにはなっておりませんし、初任給の抑制によって青年労働者の全体の賃金が低くて、結婚とかあるいは生活、そういうものに対しても大変な状態にあります。また勉学にいそしむ青年について言えば、大学の学資は連続値上げ、進学の
機会を狭められています。スポーツ、文化
施設も極めて貧困であり、こういう要求が青年の間に強いにもかかわらず、それにマッチした
施設が不足しているという実態があります。
政府はこのような実態の調査をどの程度していらっしゃるのでしょうか。労働省、
文部省、外務省、自治省、どこでもいいです。
-
○
政府委員(瀧澤博三君) ただいま御指摘の点につきましては、従来から各省がそれぞれの
立場で取り組んでいる問題でございます。私から個々にお答えする
立場じゃございませんが、細かくは各省庁から御説明が必要なことかと思います。
国際青年年は、国連の趣旨は、主として途上国の青年の状況に目を向いているように私ども理解しておりますが、我が国としては、この青年年にどのように取り組むかということにつきまして、官民一体の構成によります国際青年年事業推進会議を設けまして、そこで御
議論をいただきまして、重点的な目標として青年の社会参加の促進、あるいは国際的な相互理解の促進、こういったことを主として大きな目標として推進していこうということになっておりまして、そのような趣旨に即しまして各省とともに
努力してまいっているところでございます。
-
○
吉川春子君 今申し上げましたような日本の青年の置かれた実態について、労働省、
文部省、外務省、自治省などが具体的に調査しておられるのかどうか、おられたらちょっと御
答弁お願いしたいと思います。
-
○
国務大臣(
松永光君) 日本の青年、例えば進学率で言えば、高等
教育の進学率は三五・五%を超えるようになりました。これは諸外国に比べてそれほど劣悪とは思えませんが、より一層
内容の充実に努めていかなければならぬとは思っております。それから青年の家があり、青年の船があり、我が国の青年が大いに活躍するような施策が今まで進められてきましたけれども、先ほど申し上げましたように、国際青年年を
機会により一層そういう施策の推進に努めてまいりたい、こう考えておるわけであります。
-
○
政府委員(寺園成章君) 賃金につきましては、初任給を含めまして年齢階層別の賃金を把握いたしておりますし、また例えば勤労青少年ホームの設置等、労働省がやっております数字は当然のことながら私ども把握をいたしております。
-
○
吉川春子君 お答えのないところは実態調査も全くやっていないということであるというふうに私は受けとめました。実態調査もしないのでは国際青年年のどのように事業計画を立てていいかということもわからないわけなんです。
それで、外務
大臣に伺いたいのですけれども、今政府として国際青年年に向けて具体的にどういう施策を立てて取り組んでいこうとしているんでしょうか。
-
○
政府委員(山
田中正君) 国連の青年年が決まりまして以来、関係省庁の間での対応の協議を進めてまいりまして、この問題は政府全体として取り進める必要があるということで、昨年の二月に総理
大臣を議長として関係省庁、民間の代表を含めた国際青年年事業推進会議を設置いたしました。現在、そこにおきまして全体としての取り組みを行っておるところでございまして、秋の国連総会に臨むに当たりましては、関係各省からのいろいろな御建議を受けて対処したいと思っております。
-
○
吉川春子君 この問題で最後に外務
大臣に伺いますが、記念事業だけではこの国際青年年の取り組みとしては非常に不十分だというふうに思うわけです。それだけで終わらせないために、この年を契機として日本の青年の国際的にもおくれている劣悪な諸
条件を改善させる、おくれているものは改善させるということで実態をよく調査して、それを改善するための年次計画を立てて政府としてぜひ取り組んでいただきたいと思います。外務
大臣、お答えいただきたいんですが。
-
○
国務大臣(
安倍晋太郎君) 関係各省庁とも相談をいたしまして、この国際青年年を意義ある年にするために
努力をしたいと思います。
国際的には、先ほど申し上げましたように、国際青年年に当たりまして積極的な拠出を我が国もいたしておりますし、国連軍縮総会における討議にも積極的に参加をいたす考えでありますし、また海外からの青年と我が国の青年との交流もこれまでもやってまいりましたが、さらにひとついろいろな面でこれを充実発展さしていきたい、こういうふうに思います。
-
○
吉川春子君 時間も残り少なくなりましたが、最後にユネスコ問題について一、二点伺います。
ユネスコの二月十三日の臨時執行
委員会で日本の加川大使が、具体的な改革が実現されない場合にはユネスコとの関係の再
検討をせざるを得ない、こういうふうに発言されたわけですけれども、この態度の変更は、従前の政府の態度と比べて急激な変化があったわけです。二月十三日の午前中までパリの日本代表はユネスコとの関係の再
検討への態度変更については全く知らなかったと週刊誌で報道されていますが、これは事実ですか。
-
○
国務大臣(
安倍晋太郎君) 我が政府のユネスコに臨む態度は何ら変更しておりません。今ユネスコに対していろいろと国際的な批判が高まっております。アメリカも脱退する、あるいはイギリスも脱退するというふうに、いわばユネスコの危機だと言ってもいいわけですが、我が国としましては、何とかこのユネスコを、国連前に我が国が加盟いたしました我が国にとりましても非常に大事な組織でありますから、これを大事に育てていかなければならぬ。しかし、現状では多くの国が不満を持っておりますし、日本も不満を持っておるわけですから、何とか内にとどまって、そしてこれを改革していきたいというのが我が国の基本方針でありまして、そういう基本的な
立場に立っての加川代表の演説であったわけであります。
-
○
吉川春子君 私は参議院選出のユネスコ国内
委員の一人でありますが、その一月前に行われた国内
委員会では、日本は脱退せずに踏みとどまって改革をするんだと、こういうことが意思決定されましたけれども、そのことを御存じですか。
-
○
国務大臣(
安倍晋太郎君) 承知しております。ですから我が国はユネスコ内にとどまってそして改革を行いたい、こういう熱意を持っておるわけです。
-
○
吉川春子君 そうすると、これからユネスコ国内
委員会の決定どおりにユネスコの内部にとどまって改革をする、脱退ということはないというふうに言明してください。
-
○
国務大臣(
安倍晋太郎君) 脱退とか、そういうことは考えておりません。ただ改革を行っていく。しかし改革がこれからどういうふうに行われるかということについては、日本も発案をしておるわけですから重大な関心を持ってこれを見守っていくわけですし、日本も先頭に立って改革を進めたい。こういうことでこれから最大の
努力を傾けたいと思います。
-
○
吉川春子君 その日本が要求しているユネスコの改革の中身ですけれども、軍縮平和問題とか、
意見の対立する事業については縮小せよということを要求しておりますけれども、軍縮平和問題についてユネスコでやるなというようなことはユネスコの
精神からいっても反するし、あるいは唯一の被爆国としての
立場としても反するのではありませんか。
-
○
国務大臣(
安倍晋太郎君) 軍縮につきまして、これは世界の平和にとって非常に大事なことですから、この軍縮問題についてユネスコ内で扱われることは我々反対しているわけではありません。ただ、その扱いはあくまでも、国連総会等で決議されたような軍縮問題のそうした決議等についてこれを推進していくという形の扱われ方ならいいんですけれども、しかしその中身の実質的な
議論等は、これはユネスコで扱われなくて、軍縮
委員会、軍縮会議だとか国連総会だとかあるわけですから、そういう場で十分これは実質的な討議等は扱われるべきであって、軍縮はもちろん扱われてもそれなりに意味はあると思いますけれども、ユネスコとしてはユネスコの本来の
教育だとか文化だとか科学だとか、そういう問題があるわけですから、そういう問題を中心にしてやるべきじゃないか。軍縮を扱ってはいけないなどということを日本政府は言っているわけではありません。
-
○
吉川春子君 これで私の質問を終わりますけれども、アメリカに追随してユネスコを揺さぶるような、そういうことだけはやらないように強く要望して質問を終わります。
-
○
国務大臣(
安倍晋太郎君) 決してアメリカに追随していないわけです。追随していないから、アメリカは脱退しましたけれども日本は残ってやるわけですから、どうぞその辺は御理解いただきたいと思います。
-
○
委員長(
長田裕二君) 以上で
吉川君の質疑は終了いたしました。(拍手)
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-
○
田渕哲也君 まず、大蔵
大臣にお伺いします。
財政再建のアウトライン、やや長期的な
観点からのアウトラインというものをお示しいただきたいと思います。
-
○
国務大臣(竹下登君)
田渕さんおっしゃいますのは、言ってみれば、今日は、六十五年までに赤字公債の脱却をしますが、その後は逐次公債依存度並びに国債残高を減していく
努力をしようと思いますと。非常にいわばアバウトではないか、いま少し精度の高い、少なくとも六十五年目標であるならば、その後どのようにして公債残高を減していくかというような具体的なものも示していったらどうだ、こういう御趣旨であろうと思っております。私どもといたしましても、中長期的に何とかこれをできるだけそれなりに明らかになるようなものを、一歩でも半歩でも近いものをお示しするような
努力をしたいということをたびたび考えまして、それについていろいろな角度から
検討を加えてみましたが、結局ことしお出ししたのも試算であり、そして仮定計算である。このことは年々
努力してまいりまして、いわば健康保険の改正をしましたり、あるいは中長期の年金の改正をしましたり、そういう具体的政策というものがいわばその裏側に存在しておって、それを表側に定量的に示すにはなお至らない。結局、国会の問答等を通じながら逐次明らかになっていく方向でこれからも
努力していかなければならぬ。新たなこととして申しますならば、いわゆる電電株の売却等が行われた際、それが国債整理基金に直入されるという仕組みを法律の上でお願いしておるということが裏側の一つの姿であって、それも定量的なものとしては出し得ないというのが残念ながら現状のお答えの限界でございます。
-
○
田渕哲也君 定量的なものを余り長期にわたって出すことが困難なことはよくわかるわけです。私はもう少し抽象的でも構わないと思うのですけれども、例えば臨調の基本
答申の中に財政についていろいろ基本的な問題が触れられております。これは例えば当面の財政再建とか中期的にはどうとか長期的にはどうとか書いてありますけれども、大体この
答申の線はきちっと守ってやられるおつもりですか。
-
○
国務大臣(竹下登君) いわゆる五十七年の七月三十日の臨調基本
答申、これは
議論が進んでまいりますと、当面とはどれぐらいかとか、いろいろな
議論があるでございましょうけれども、大筋これを踏まえて財政再建に当たっていくという方針ではございます。
-
○
田渕哲也君 この
委員会でも瀬島龍三
参考人等からいろいろお伺いをしておるわけですが、当面はという時期は、これは六十五年にこだわらない。具体的には政府や国会が決めるべき問題だということを言われております。これについて大蔵
大臣はどういうめどを持っておられますか。
-
○
国務大臣(竹下登君) 私も聞いておりました。確かに当面ということはまさに国会等の
議論を通じながらその中でコンセンサスを見出していくべき当面であろうというふうに考えております。六十五年というものを当面としてこの
答申をなさったものではないというふうに私も理解をいたしております。
-
○
田渕哲也君 当面とか中期的にはとか長期的にはという言葉で書いてあるわけですけれども、これについて大まかなめどがなければ、この基本
答申に書いてある
考え方というものは守れるわけがないわけであります。大蔵
大臣は財政の
責任者として大体どの程度のめどを持っておられるのかお聞かせいただきたいと思うのです。
-
○
国務大臣(竹下登君) 私はこれは一つ一つによって若干の相違はあろうかと思いますが、当面の財政再建に当たっては、言ってみれば、租税負担率の上昇をもたらすような税制上の新たなる措置は基本的にはとらない、こういうことが言われております。それがこの
議論の展開の中で、言ってみれば抜本改正についての御
議論をいただこうというところまで来たわけでございますから、その
議論の結果を踏まえてそういうところへ手をつけていかなければならぬとすれば、当面というのが大体この六十一、二年ということが税の上においては考えられる一つのことかなと、こう思います。
それから
国民負担率の問題、将来の
国民負担率がヨーロッパよりはかなり下回るということになりますと、この問題については当時はヨーロッパ五〇%でございましたが、もう五五%になっております。そうすると、その当時
議論されたのは四〇とか四五というようなことを念頭に置いていろいろ御
議論があったと私も推しはかっておりますが、したがってこれらの問題はいましばらく税制論議の後の問題として出てくるのか、あるいは年金問題とかそういう
議論がそこになされますので、並行しつつ出てくるが少しくおくれる課題かなと、こんな感じでございます。
-
○
田渕哲也君 今の御
答弁の中で、当面とは大体六十一、二年かなというふうなお話があったわけですが、そうすると増税なき財政再建はそれまでで、六十一、二年が過ぎれば増税をやろうという意図ともとれるわけですが、この点はどうですか。
-
○
国務大臣(竹下登君) いや、そういう意味ではなく、言ってみれば新たなる措置というようなもの、抜本見直しとすればあるいはそういうものも出てくるかもしらぬ。しかし、租税負担率の上昇をやはり急激にもたらす、自然増収とかそれなら結構でございますけれども、そういうことは六十一、二年でもう終わりだという考えはございません。
-
○
田渕哲也君 臨調の
答申を見ますと、増税なき財政再建の項にこういうことが書いてあります。「特例公債依存からの脱却は、
昭和六十年度からの本格的な公債の元本償還の時期を控え、今後の社会・経済情勢の変化に的確に対応できる財政の体質をつくり上げるためにも喫緊の急務であり、「増税なき財政再建」という基本方針は断固堅持すべきである。」この文章から見ると、やっぱり特例公債依存からの脱却は増税なき財政再建の方針に従ってやるべきである、つまり赤字国債を返済するため、あるいは赤字国債の発行をなくするための増税ということは基本的に認めていないと解釈できると思いますが、いかがですか。
-
○
国務大臣(竹下登君) お答えいたします。
私は、理念としてはそうあるべきだと思っております。一たび赤字公債の体質から脱却するためという前提においてのいわゆる増収目的が立てられた場合に、歳出削減に対する意欲が完全に、まあ完全という表現は適切でないかもしれませんが、減退する。したがって、やっぱりそれはてことしては持っておるべき課題だというふうに考えます。
-
○
田渕哲也君 そうしますと、六十五年をめどとした特例公債の削減、発行をゼロにするという目標まではやっぱり増税、いわゆる新たな税制、租税負担率を上げるような新たな措置はとらないという解釈をするのが私は妥当ではないかと思いますが、いかがですか。
-
○
国務大臣(竹下登君) これは将来の問題でございますけれども、新たなる措置というものの定義の仕方も難しくなろうかと思われますけれども、増があり減があり、そういうことで自然増収分を除いた場合、大きな増収措置は結果としてとられていないということになればその許容の
範囲内ではなかろうかというふうには思っております。
-
○
田渕哲也君 そうすると、赤字国債脱却まではいわゆる臨調
答申に言う増税なき財政再建は貫くということですね。
-
○
国務大臣(竹下登君) これはやっぱり理念として貫くべきだと。例えばもう
現行動いております税法の中で法人税を上げて所得税を下げてというような
バランスをとりました。そういうような問題はこれはあり得る。それまで完全に否定しておくというのはまた後々の人の手かせ足かせになりますので、そこまでは否定しませんが、やはり理念としてはそれは貫き通したいものだと思っております。
-
○
田渕哲也君 それから、「中期的にみて」というところに行政サービスと
国民負担の関係があるわけです。これは「適度の経済成長率が維持されていることを前提に、」というのがありますが、「国の一般会計歳出の伸びは、名目経済成長率以下とする」、同時に「一般政府総支出の対
国民総生産(GNP)比は、ほぼ現状程度とする」、これはやはり中期的に見ても財政規模と
国民経済の関係というものは大体現状を維持するのだということでありますから、赤字国債を減らすための増税をしないとするならば、新しい行政需要とかそういうものもこれは抑えていく、それは入れかわりはあるでしょう、古いものをカットして新しいものをつけるということはあるでしょうけれども、財政規模の増大は中期的には図らない、つまりこれも増税を否定しておるということになると思いますが、いかがでしょうか。
-
○
国務大臣(竹下登君) 基本的な立論としては私も
田渕さんの立論と大体
考え方を等しくする問題だと。ただ、古いものをつぶすとか新しいものを立てていくとか、それもございましょうし、それの問題の基本はやっぱり
制度、施策の根幹にさかのぼって我々としては
議論をしていかなければならぬだろう。それから、国と地方との役割分担とか費用負担のあり方とか、そういうものも含めた
議論の中で、可能な限りその幅の中でやっぱり
努力をしていかなければならぬ課題だと思っております。
-
○
田渕哲也君 それと、それに続いて「長期的には」というのがあるわけですけれども、ここで、これは「社会保障関係の費用増大への対応が重要である。」、だから租税プラス社会保障移転費で、つまり
国民負担というものは上がらざるを得ない。ここで初めて増税的な要素が出てくるわけです。これも「社会保障関係の費用増大への対応」ということが主である。だから、その他の要素で増税ということは、臨調の基本
答申というものは全面的に否定しておるというのが理念であると、私はそのようにとらざるを得ないと思います。
それから、先ほどちょっと御
答弁のありました将来の
国民負担率も、瀬島さんはある雑誌のインタビューの中で大体こういうことを言っておられます。やっぱり四五%を超えたら西ドイツでも働くのがばからしいという風潮が高まって先進国病になったと。こういうことからしますと、五〇%をかなり下回る
水準というふうに
答申にはありますけれども、やっぱり四五%というのは最大限で、できれば四〇%から四五%に余り近づかない方が好ましい、そのようにも受け取れるわけですが、この辺についてどう考えておられますか。
-
○
国務大臣(竹下登君) これも言ってみれば、どの辺が妥当かというのはこれからのいわば
国民のコンセンサスが那辺にあるかということでおのずから決まっていく問題ではなかろうか。その点につきましてはあの臨調にもかなり下回るということでございますが、あのときの
議論で四〇という頭で
議論された方もおりました。四五という頭で
議論された人もあったようでございますけれども、私どもは、それこそこの高齢化社会というものだけはこれは必ずやってくる、その中でどうなっていくかということについては、結局は給付と負担との問題でございますから、問答を通じながら、おのずからその方向が出ていくような形でやっていかなければならぬではなかろうか。それのはしりみたいなものがいわゆる健康保険法の改正というようなものがはしりといいますか、着手された一つの事象ではないかというふうに考えております。
-
○
田渕哲也君 社会保障負担率、これの長期的な見通しについてどう考えておられますか。これは大蔵
大臣に聞けばいいのか、厚生省にお聞きすればいいのかわかりませんが。
-
○
政府委員(長門保
明君) お答え申し上げます。
社会保障負担率の問題でございますが、現在、
昭和六十年度の見込みでは
国民所得対比一〇・八%、でございます。これが将来どうなるかということでございますが、具体的にどの程度の
水準になるかということにつきましては、今後の経済情勢の推移等、いろいろ不確定な要素が大変多うございますので予測するのは灘しゅうございますが、ごく大ざっぱに言いまして、この社会保障負担率を年金と医療その他というふうに二つに分けまして、後の方の医療その他については医療費のむだを排除していく、適正化対策を進めていくということによりまして、現在大体五%程度でございますが、これとほぼ同じ程度にとどめるという目標でいくといたしますと、問題は年金でございます。年金については受給者の増加等がございますので、どうしても給付費が増大するということでございまして、今御審議をお願いしております年金の改正案、
制度改革を行いましても、ピークを迎えます
昭和百年ごろには現在の大体二倍程度、現在六%程度でございますので一二%程度になるものと、こういうふうに予測しているところでございます。
-
○
田渕哲也君 ちょっと低過ぎるように思うんですね。例えばこの中で一番ふえる要素は年金ですけれども、厚生年金のあれが改正になりましても、
昭和九十年ですか、現在より保険料は約三倍近くなる、二・八九倍になる。それから、共済保険の場合どうかというと、これも将来どのように改正されるかという問題がありますけれども、見通しはもう三倍をはるかに上回ってくる。それから、社会保障負担率の中で年金が大体六割ぐらいを占めておると言われますから、それから計算しましてももっと高くなるのじゃないでしょうか。
-
○
政府委員(長門保
明君) 確かに、
先生が今お述べになりましたように、厚生年金につきまして現在の一〇・六%という保険料率、これ将来は二八・九%ということで、三倍弱ということでございます。ただ、年金
制度は厚生年金だけではございませんで、
先生も御案内のように、そのほかに
国民年金それから各種共済
制度がございまして、そういうふうな関係で、
国民年金につきましては将来は二倍程度に負担率を抑えたいというのが現在の計画でございますけれども、そういったことをにらみ合わせますと、社会保障負担率は必ずしも厚生年金の保険料の引き上げの倍率とは一致しない、やはり低くなるというような次第でございます。したがって、社会保障負担率、年金分につきましては将来二倍程度になるのではないかと、こう見込んでいる次第でございます。
-
○
田渕哲也君 二倍程度になるとしましても、約六割のものが二倍になるわけですから、全体でも一・三倍ぐらいになるわけですか。臨調
答申では「二十一世紀初頭には二〇%程度に達すると予想されており、」と書いてありますが、これとの関係はどうですか。
-
○
政府委員(長門保
明君) 先ほど申し上げましたように、現在の負担率一〇・八でございまして、将来年金の関係が倍になるといたしますと、一二と医療その他の五を加えまして一七程度と、これは一・五倍程度になろうかと存じます。
-
○
田渕哲也君 いずれにしましても大体一・五倍、それから臨調
答申では二十一世紀初頭で二〇%程度ということになるわけであります。大体一六、七%ないし二〇%というところではないかと思いますけれども、そうしますと現在の租税負担率を加えますと、これが全然上がらないで二五・二%がそのまま推移したとしましても、これは四〇%を超えて四五%に近い数字になる。そうすると、現在の租税負担率を上げる余地は余りないのじゃないかと思いますが、大蔵
大臣の御見解はいかがですか。
-
○
国務大臣(竹下登君) 今予測される
国民負担率というものを、社会保障負担の方を今の前提に置いて
田渕さんがお考えになっている
国民負担率の限界とかいうことになると、それは確かにその許容
範囲は狭いものになることは事実でございます。
-
○
田渕哲也君 そういうことを長期的に考えましても、六十五年までの見通しを立てるに当たってもやっぱり歳出の伸びをできるだけ抑えるということが大事だと思います。仮定計算例では〇%、三%、五%というふうにありまして、〇%の場合は要調整額はなくなって、それを埋めるための増税も不要になる。この〇%の伸びということは実際に可能なのかどうか、お伺いをしたいと思います。
-
○
国務大臣(竹下登君) 一般歳出の伸びを〇%とするケース、これは五十八、五十九、六十年と三カ年間にわたって横ばいないしそれ以下として続けてきました。それで、単純な仮定計算としてそれを使ってみたわけでございますが、今後五年間一般歳出全体の伸びをゼロにしておくという想定には、これは大変難しい問題があると思います。
それから、あの計算によりましても、六十五年は三角が立ってまいりますけれども、まず六十四年まではやっぱり要調整額がまだ残るわけですから、率直に申し上げましてこれは容易なことじゃないなというふうに思っております。
-
○
田渕哲也君 非常に難しいというお話ですが、具体的にどういう問題が起こってくるでしょうか、〇%を目標にして予算を組んだ場合に。
-
○
政府委員(吉野良彦君) これはあくまで仮定の計算上の数字でございますので、そのようなものとしてお聞き取りいただきまして御参考にしていただければと思うわけでございますが、仮定計算例でお示しをいたしておりますように、仮に今後六十五年度まで一般歳出をずっと〇%で続けるという仮定を一つ置き、それからこの一般歳出の中で、先ほど来御
議論ございますように、いわゆる社会保障移転支出につきましては高齢化等の事情を背景にいたしまして増加圧力というものが大変強いということも念頭に置きまして、例えばその社会保障移転支出の伸びが、これが毎年今後例えば五%ずつ伸びていく、それからいわゆる公共事業、公共投資でございますけれども、公共投資はずっと六十一年度以降横ばいに仮に置くと、そういたしましても、結局先ほど申しましたように社会保障移転支出の伸びが大きゅうございますから、一般歳出を全体としてゼロにしようといたしますと、社会保障移転それから公共投資以外の部門でそれを全部、社会保障移転の出っ張りの分を削っていかなければならない、こういう計算に相なるわけでございます。
先ほど申しましたように、仮に社会保障移転支出を五%ずつ伸ばしながら一般歳出をゼロにしていこうということにいたしますと、いわゆるその他の一般歳出、これをざっとでございますが毎年毎年五%ずつ削っていかなければならない。そうなりますと六十五年度の
水準というものが六十年度に比べてどうなるかといいますと、いわゆるその他の一般歳出の
水準は六十年度の
水準に比べて二割以上マイナスの
水準になる、こんな計算ができるわけでございます。
具体的な不都合という御指摘ございましたが、なかなか将来のことでございますので具体的な御説明は困難でございますが、今のような数字が一つの参考の数字としてお考えいただるのではないかと、こういうふうな感じでございます。
-
○
田渕哲也君 大蔵
大臣は、財政再建に当たって歳出削減か増税か、あるいはその組み合わせか、これは
国民の
選択によるということをしばしば言われております。ところが、その中身が明らかでないと
国民も判断のしようがないわけです。〇%ならこうなるのだ、こういう不都合が生ずると、あるいは五%にした場合にはこうなる、三%ならこうだと、こういうものが明らかにならないと
国民の
選択といいましても
選択のしようがない。それから、今のお話を聞きますと、もう〇%というのは不可能に近い。そうすると、赤字国債の発行をゼロにするにはもう増税が不可欠だという言葉にも聞こえるわけです。そうすると先ほどのお話の、臨調の増税なき財政再建によって特例公債の発行をゼロにするという理念とは矛盾するということになるわけですが、これはいかがですか。
-
○
国務大臣(竹下登君) とにかく五十五年度予算、このときが一〇%増のいわば概算要求
基準でございます。それから五十六年が七・五%、五十七年がゼロ、それで五十八から三年間頑張ったわけです。たまたま五十五は私は大蔵
大臣でございましたが、そのときも大変なことだと思いましたが、今になると今の方がなお大変だという意識をさらに強くしておりますが、三年連続わずかでも一般歳出をマイナスという形でやってきて、それで確かに歳出削減の幅というものが非常に狭くなったという実感はございます。しかし、やはり費用負担のあり方とか
制度、施策の根源に踏み込むとかという
努力によって、やっぱり増税なき財政再建というかんぬきの中で
努力をしていかなければならぬ。仮に
国民の
選択が、ここまで厳しく削減したならば負担増もやむを得ないというコンセンサスが成り立つまでは、やはりこの旗印は現実問題としてはおろせない旗印だというふうに考えております。
-
○
田渕哲也君 つまり、
国民のコンセンサスが増税はノーだと言っている限りは守らざるを得ないということですね。やっぱり歳出カットをせざるを得ない。私は歳出カットも非常に厳しいと思いますけれども、ある程度発想の転換ということがないと、現状の発想のままで一律マイナスシーリングとかなんとかいうだけではやっぱり限界がある。政策というものまで踏み込んで、既存の政策の思い切った見直し、不要なものはどんどん切っていく、それからそれを必要な方に回す、そういうことがないとなかなか無理だと思いますが、増税なき財政再建で特例公債の発行をゼロにするという基本方針を極力守っていただきたいと思います。
次に、税の問題について若干質問をしたいと思いますが、大型間接税論議、これもいろいろ言われておりますけれども、税制の改革を目指すものかあるいは増税をもくろむものか、この点についてまずお伺いをしたいと思います。
-
○
国務大臣(竹下登君) まず大型間接税論議というのが確かに高まっておりますのは、一つには税調の
答申の言葉として、直接税、間接税を通じ、税制全般について広範な角度から論議と
検討を行う必要があると考えるという、異例のことながらという前提のもとに六十年度税制の
答申をいただいたということも一つございます。それから、ちょっと古くなりますが、臨調で直間比率という言葉が一遍使われております。したがって、今度の税制の
検討とは初めに大型間接税ありき、何だかこういう印象を与えておるような気がしておりますが、本来は、中曽根総理の使っている言葉をそのまま申しますならば、まさに公平、公正、簡素、
選択並びに活力、この活力というのは、参議院へ参りまして梶木さんの質問からついた言葉でございますけれども、そういう基本的な
考え方を示して、そして税制の抜本的な見直し。したがって、初めに増収ありきという発想でなく、これまた総理の言葉をかりますならば、シャウプ以来の税制でいろいろなゆがみ、ひずみができたものに対して、公平、公正、簡素、
選択、活力という点からまず見直すということで、初めに大型間接税ありきとか、初めに増収ありきとかいうことでこの
議論をしていただくという考えではございません。
-
○
田渕哲也君 私は、今までの政府の
答弁その他を聞いておりますと、本当に増収をもくろむものか税制改革を目指すものか、その辺があいまいな点があると思うんです。税制改革を本気にやろうとするならば増収と税制改革をはっきり分けた方がいい。アメリカの財務省の税制改革案というのはそうなっております。これは税収に対しては全く中立だと、初めからそういうことを明らかにして論議しないと国会の論議も私はやっぱり突っ込んだ論議はできにくくなると思うんです。やっぱり増税につながるという警戒心があれば余り踏み込んで論議するのもいかがかという気も起こってくる。だから、これははっきり分けた方がいいのじゃないか。増税が必要なときには、こうこういう理由で増税が必要だからこういう税率はこれだけ上げたいということにすればいいわけであって、それがまず私は第一の問題だと思います。
それから第二は、税制改革をやろうとするなら政府自身が現在の税の問題点をもっと明確に摘出をして、こういう問題点があるからこれを変えたいということを明らかにすべきである。これもアメリカの財務省案はそれをはっきり政府は認めて明瞭にしておるわけです。
それから第三点は、税制改革をやるとするならば、その理念と構想、こういうものをやっぱり示すべきである。これもアメリカの財務省案というのは非常に体系的にこれを示しております。そういう点で私は、中身のよしあしよりも、やり方の問題として日本のやり方というのはどうもおかしいのじゃないかと思うのですが、どうなんですか。
-
○
国務大臣(竹下登君) おおむね国会の
議論を通じながら、今、
田渕さんがおっしゃったような方向で前段が、今序曲が続いているのじゃないかと、私はこういう感じがいたしております。したがって、どこにさればゆがみ、ひずみがあるのか。理念としては公平、公正、簡素、
選択、活力。いわゆるアメリカには中立性というのが入っております。そうして、ゆがみとは何ぞやということになりますと、これも従来とも国会で
議論した問題を税調へ報告して出してもらったおおむね分類をしますと、一つは所得の再配分機能、二つは所得捕捉の問題、三つ目は課税ベースの浸食の問題、四つ目は間接税の課税ベースと税率構造というようなものが一応指摘されておるわけであります。
そこで、税に対する論議が、私もずっとここのところ二十年ばかりの大蔵
大臣が
予算委員会で
答弁した時間とかというのを見てみますと、圧倒的にことしは多くなっております。それは、中身で見ますと税論議でございます。したがって、そういう問答を続けておればおるほどこの国会の双方の問答というものが正確に報告されて、それが土台になって税調論議が始まっていくと、こういうことでございますから、今指摘されたような形で税論議が進みつつあるような、まあ序曲という言葉はちょっと適切でないかもしれませんけれども、そんな感じで私自身今受けとめております。
-
○
田渕哲也君 もともと発足が、何となくもう取るところがないから大型間接税だというようなところから始まったのはやや誤りであった。やっぱり税制改革と増税とははっきり別である、今の税体系にこういうひずみがあるからこれをこう直したい、それから増税を改めて必要な時期に必要なことをお願いすると、そういうふうにされるべきであって、したがって現在の大型間接税も含む税体系論議の問題は増税にはつながりませんということを大蔵
大臣がはっきり言われることが大事だと思いますが、いかがですか。
-
○
国務大臣(竹下登君) 大筋それで結構だと思うのでございますが、ただその税の
議論のところにもう一つ下敷きがありまして、それはいわゆる安定的な歳入の確保という論議だけはやっぱりベースとして置いておかなければいかぬという
考え方も持っておりますが、大筋として今仮に大型間接税という論議が出ても、それは言ってみれば現在の直間比率の
バランスとかそういう中で出た論議であって、これによっての増収措置ということが第一義にあるものではございませんという
議論は、私は自分なりにも結構だと思っております。
-
○
田渕哲也君 第一義にという言葉が入ってくるからややこしくなるのです。全くありません、増税が必要なときにはお願いします、別個提案しますと言われたら、これは非常に進むと思うのですが、いかがですか。
-
○
国務大臣(竹下登君) 結構だと思います。ただ、私がいつでも気にしておりますのは、いわば税制理論の学者の論議にだけ進んでいきますと、そのことを若干気にはしております、率直に申しまして。だから、まずは税というものは、それは歳出に対する財源ということがあるわけですから、安定的確保というべースだけは可能な限り私も言うようにしております。
-
○
田渕哲也君 税の改革も別に学者の論議だけじゃないわけで、税をどういう形で払うというのは
国民が払うわけですから、学者の
意見は参考にしてやっぱり国会を通じて決めるわけでありますから、その決める論議のときにこの二つをはっきり分けた方がいい。何となくこれは増税のための路線だということが前提にあると論議も進みにくいということを指摘したいわけであります。
それから、シャウプ税制以来のひずみとかいろいろ言われていますが、直間比率が上がってきた原因は何だとお考えですか。
-
○
国務大臣(竹下登君) これは、我が国の国税収入のうち所得税、法人税等の直接税の占める比率を三十年度以後について見ますと、三十年度はこれは五〇%でございましたが、四十年度は六〇%、それから五十年度は七〇%、六十年度は七三・四。また、この問題は、いわゆるまず所得税につきましては課税最低限の設定と超過累進税の組み合わせによりますところの累進構造をとっておること。それから、法人税におきましては高度成長期に年々多額の自然増収が出ましたこと。間接税につきましては消費の態様の変化、物価上昇によって課税ベースが相対的に縮小した。それから、我が国の間接税というのは御案内のとおり、どちらかと言えば従価税じゃなく、従量税の形式が多うございますから、仮に一遍直しても、また年々趨勢としては直の方が上がって間の方が落ちていく、こういう税体系にあるというふうに思っております。
-
○
田渕哲也君 やはりこれは、直接税と間接税とはGNPに占める租税弾性値が違うわけです。直接税の方が高い。だから、ほっておくと直接税がどんどん重くなるわけであります。言うならば、物価調整減税とかいろんなことを今まで野党も労働組合等も要求してきましたけれども、そういうことをやらずにほったらかしておったから直接税の自然増収がふえて比率が上がってきたと思うのです。言うならば政府の怠慢じゃないかという気がするわけです。だから私は、これは今後も続く問題でありまして、今後もほっておくと自動的に直接税の比率は上がっていく傾向に常にある。だから、それを防ぐためには、例えば所得税の中に物価自動調整税制というような
制度を取り入れたらどうかと思いますが、いかがですか。
-
○
国務大臣(竹下登君) いわゆるインデクセーション導入問題というのは、これは古くてまた新しい
議論でもございますけれども、問題は要するにこの
議論が本当は最近では少し下火になってきている。それは物価安定ということもございますでしょう。でありますが、いろいろこれについても勉強しておりますけれども、基本的に我が国の所得税の負担
水準は諸外国よりも低いということ、それから先ほど申しましたようにこの物価安定というもの、そうして近時財政再建が急務の課題となっておること、そういうことを考えますと、いわゆるインデクセーションを導入するということを
検討する環境は、今日は私は非常に少ないというふうに思っております。
私は、インデクセーションの問題につきましては、それこそシャウプ博士と主税
局長が五十六年に対談をしたときの資料をいつも見ておりますが、この問題はシャウプ博士の論をかりますならば、一つはやっぱり
国民のインフレ心理を是認してしまうということが一番大きな問題でございましょう。そういうことから私は、このインデクセーション、今までも国会等の論議でいわゆる物価調整減税を戻し税みたいな形でやったりしたことは過去にございますが、今はインデクセーションの環境というのは最も少ない環境じゃないかというふうに思っております。
-
○
田渕哲也君 それから、もう一つ言われておりますことに所得税の累進性が非常に高いということがありますが、これもシャウプ勧告のときに下げたわけです。八五であったものを五五%に下げたのです。ところが、その後これをどんどん上げてきておるわけです。二十八年に六五%、三十二年に七〇%、三十七年に七五%、そして昨年それを七〇%に下げた。これは人為的にどんどん上げてきておるわけです。この上げてきた理由はどこにあるわけですか。
-
○
国務大臣(竹下登君) おっしゃるとおり、シャウプさん、二十五年は五五%でございます。その後の二十八年、このときはいわば独立後ですね。シャウプ税制のときはまだ言ってみればGHQの間接統治下とでも申しますか、そういう状態にあったわけでございますが、独立後、富の集中を防止するために別途所得税の補完税として設けられておりましたいわゆる富裕税が廃止された、したがって富裕税のかわりと、こういう感じでございます。それから、三十二年は大幅な税率の累進度を
緩和した。いわゆる一千億円減税の実施の際に、経済が伸びてまいりましたためにかなりの高額所得者があらわれてきたということでこれを下げたということでございます。——失礼いたしました、七〇%に上げた。それで三十七年には、これは都道府県民税への移譲の際に、都道府県民税の税率が累進税率から比例税率に改められたことに関連して、所得税の最低税率の引き下げとあわせて今度は最高税率を七五に上げたということでございます。それで、いよいよ指摘されてきて、
現行動いておる五十九年度税制で、諸外国に比べてかなり高い
水準にあるということからして、この七〇%に初めてといいますか、振り返るとまさに初めて引き下げられて今日に至っておるということでございます。したがって、この問題は、税制全般の見直しの中で
答申の流れを見てみますと、まだ引き続き
検討の方向で動いておるというふうな事実認識をしております。
-
○
田渕哲也君 これは、シャウプ勧告に言われた富裕税とか、あるいは所得の包括課税、それが実施できなかった、だから、その代替として所得の多い者にたくさんかけようということになったのだと思うのです。したがって、これを下げるという論議は当然あるわけですけれども、そうすると、この資産課税との関係をやっぱりきちんとしないとおかしいのではないかと思うのですが、いかがですか。資産課税ですね、富裕税とか、資産所得、利子配当所得、そういうものに対する課税との関係をちゃんとしないと、これだけ下げるという一方的な論議はおかしいと思いますが。
-
○
国務大臣(竹下登君) 確かに、いわば今度の税調の
答申でも、所得とそれから資産と消費と、いずれにしてもその
段階に担税力を求めていかなければならぬわけでございますから、それに対するこの配分と申しますか、それも見直すべきだという
答申の大筋になっておることは御指摘のとおりであります。
-
○
田渕哲也君 私は、今まで政府が言われておることは、とにかく大型間接税の導入ということと、それから所得税の累進税率を下げる、この二つが非常に強く表面に出ておるわけです。ところが、この二つが出るというのは非常におかしい。なぜならば、大型間接税も逆累進性が非常に高い。それに、さらに所得税の累進性を低めるということは税の逆累進性をますます増すことになる。だから、所得税の累進税率との関係で言うならば、資産課税というものをどう考えるかということとセットでないとおかしいと思いますが、いかがですか。
-
○
国務大臣(竹下登君) いわゆる資産課税に対しても、その税調の
答申でも言われておりますように、これは当然
議論の対象になる問題であろう。したがって、今度の利子配当課税の
問題等にいたしましても、言ってみれば限度管理を強化するとかいう方向で昨日六十年度税制としては議了していただきましたが、やはりいわば継続
検討の中身の大きな問題の一つだというふうに認識しております。
-
○
田渕哲也君 それから、今一般に言われておる税の不公平の問題、クロヨンの問題があります。こういうものを生じた原因は何とお考えですか。
-
○
国務大臣(竹下登君) クロヨンというような言葉に象徴されるような、言ってみれば不公平感あるいは不満感、これがあることは事実であります。これは一つは、税務調査の実績等を見ますと、過少申告を行う不誠実な納税者ということがそういう言葉を生じさしたことにもあるのでございましょう。いわゆる所得の捕捉の難しさ、あるいはそれに対する調査体制とか、いろいろな問題でそういうことを言っておることも事実であろうと思っております。税制そのものは、国権の最高機関たる国会で
議論していただいてでき上がるわけでございますから、租税法定主義のもとに。これに不公平があるというのは、これは当局者としては言えない話でございますが、そういう不公平感というものが、そういう捕捉の難しさとか、あるいは過少申告をする不心得な人がいらっしゃるとか、大部分は立派な申告をしてちょうだいしておりますが、そういうところに不公平感というものは存在しておるというふうな答えでございましょう、私が答えるといたしますならば。
-
○
田渕哲也君 私は、クロヨンという問題が生じ、さらにそれがいつまでも是正されない原因は、まず政府当局者、大蔵
大臣がなかなかその存在をお認めにならないことである、そこに大きな原因があると思いますが、いかがですか。
-
○
国務大臣(竹下登君) だから、
制度上のクロヨンがございますとは言えませんですわね。それは、国会で通った税制の中にクロヨンがございますとか、これはまあ言えません。だから私も気をつけて言いますのは、クロヨンという言葉に象徴されるような不公平感、不満感がある、こういうふうに申し上げておるわけでありますが、これはやっぱり過少申告を行う不誠実な納税者がいることも事実でございますが、大多数の納税者は誠実に申告していらっしゃるという前提の上に私どもは対応をしますので、したがって、
国民の大多数というものを対象に言う場合に、クロヨンが存在しておりますという表現はなかなかできない。一部そういう不誠実な納税者がいることは事実でありますと言うのが限界ではないかなと思っております。
-
○
田渕哲也君 私は、世上でもあれだけ騒がれておる、それから実際税を払っておる者自身からもそういう声が非常に強く出ておる。それにかかわらず、
立場としてそういうことが言えないとか、大部分の人は正常に納めておられるとかいうことを言っておられるからこれがよくならないと思うんですよ。不公平の実態がどこにあるかということを、やっぱり当局者自体がもっと調べて実態をつかまれる必要がある。クロヨンの実態はどうかといいましても、出てくる資料がないでしょう。しかし、現実にはあるわけです。その大部分は、
制度の問題もありますが大部分は執行上の問題だと思うんですね。
それから、大部分の方が税をきちんと納めておられると言われましたけれども、その前提は必ずしも確かではない。これは、
国税庁の資料を見ましても、実調率は非常に低いわけですけれども、調べた中の、個人申告所得にしても、法人所得にしても、譲渡所得にしても、相続税にしても、大体七〇%から九七%までの人が脱税しておるわけですよ。それから、その脱税額が総計して、五十八年で年間約六千億円もある。だから、そういう前提に立っておる。みんなが、大部分の人がまじめに納めておられるからいいんだという前提に立っておられる限りはこの不公正は是正されないと思いますが、いかがですか。
-
○
国務大臣(竹下登君) これは、いわゆる実調率の問題もございますが、したがって、実調の対象になるのは、いろいろな情報等を集めて対象とするわけでございますから、平均的に、ことしはこの地域でございますという形ではなしに、いろいろな情報等を集めてから実調の対象とするわけでございますので、その比率が全体に及ぶという性格のものではないというふうには御理解をいただかなければならぬのかなと。それで、その中でも、いわば知識が不足しておったとか、あるいは単純な計算ミスとかいうようなものもございますが、実調率が、要するに人員の関係等々ありますし、そうして実調率は必ずしも多くはございませんけれども、その対象となるところにある種の的を絞ってやりますから、その比率が全体に及ぶという性格とは言えないというふうに思います。
-
○
田渕哲也君 それは私もそう思いますけれども、それにしても非常に高過ぎる。それから、実調率をもっとふやせば、総額とすれば、さらにこの金額は膨れていくだろう。例えば、個人申告所得の実調率は四%だから、個人申告所得の脱税が一千億余りもありますけれども、それの二十五倍あるとは言いません。あるとは言いませんけれども、その全部を含めて、六千億の脱税の数倍はあるということは間違いないと思います。まあ、兆単位の脱税があることは間違いがないんです。だから、これを改善する措置をやっぱりとってもらわないといかぬと思うんですね。
それから、その原因はどこにあるかというと、私は、
国税庁の調査能力というものが、対象件数がどんどんふえておるのにそれに追いついていけないことだと思うんです。法人数は
昭和四十年と比べたら現在二・三倍になっております。ところが、税務職員の数はほとんど横ばいですね。それから、個人申告所得の対象は、これは一・五倍にふえておる、こういうところに問題があるのじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
-
○
国務大臣(竹下登君) 実調率がより高いことが好ましいということは私もそのとおりだと思います。したがって、税務職員のいわば人員の確保というような問題がいつでも本院におきまして税制論議の際、必ず附帯決議としてそのことをつけてちょうだいをいたしておるわけであります。
ただ、そんなことを申し上げても、もういつも申し上げることでございますけれども、予算編成いたしますと、健制順で言いますと、法務、外務、大蔵文部というふうになってまいります。大蔵はまあ別といたしまして、法務省という役所がお見えになりますと、あそこは紙と鉛筆と人間だけで成立した役所であると。そうすると、
議論はまずは人員の問題から来ますと、それを防がなければならない
立場に私はある。そうすると、次は外務省からお見えになりますと、これはやっぱり外交官は少なくともイタリー並みにしなければいかぬと、こういうところから対応していく。そうして、三番目が大蔵省でございますと、自分を自分が査定するという
立場になったときに、側から言われるのは、まず隗より始めよと、こういうことになります。
その中において税務職員の方の苦労を承知しながらも、なかなかこれは難しい問題でありますが、理解をいただいて、しかし純増にはしていただいております。しかし、純増で何ぼしたかと言われると、十一名でございますので、余り大きな声では言えませんけれども、しかし、その際の、いわば我と我が身をむち打ちながら予算調整をする際の支えになっておるのは、それはまさにハウスにおいていつでもこの税務職員の増員はもっとあってしかるべきだという決議が支えになってささやかながら呼応しておりますので、より
教育、能力の向上等も図りながら、実調も精度の高い実調というふうなことに方向を進めていかなければならぬというふうに思います。
-
○
田渕哲也君 時間がなくなりましたので、最後に、貿易摩擦の点を若干触れたいと思います。
現在の貿易摩擦というのは、非常な危機的な状況に来ておると思いますが、五月のボンサミットでも日本は、日本の黒字がやり玉に上げられる、それから、日米間の非常に険悪な状態、これに対してどのように対応されるおつもりですか。
-
○
国務大臣(
安倍晋太郎君) きょうも実は対外経済対策閣僚会議を開いたわけでございますが、今の日米間は、経済摩擦をめぐりまして非常に深刻になっております。アメリカの議会で日本に対する非難決議が出るというふうな状況で、さらに保護立法等もどんどん上程されるというふうな
段階に来ておるわけでございます。何とか我々としてもこうした
事態を解決していかなければならない。
アメリカは、日本の輸出が増大をして黒字が三百四十億ドル以上にも上ろうということ、さらにまた、累次の日本の改善措置を行いながらも、日本に対するアメリカの輸出が伸びてない、まだ日本の市場開放が十分でないと、こういういらだちがああした動きになっておると思います。
そうして、ただアメリカだけではなくて、こうした日本の状況につきましては、ASEAN諸国もEC諸国も非常に注目をいたしておるわけでございまして、自由貿易体制を堅持していかなければならぬ日本としましては、いろいろと我々としてはアメリカに対してもECに対しても言うべきことはありますけれども、しかし、やはり自由貿易を守るという中で、みずからやはり指摘された問題についてはできるだけ市場開放をしていかなければならない、私はそういうふうに考えております。
今MOSS
委員会がありまして、各省とも全力を挙げてこの折衝を行い、日米間で円満に解決するように
努力をして相当な成果も上がっておるわけでございますが、さらに
努力を重ねて、九日の対外経済対策閣僚会議では、何とか日本の基本的な方向を打ち出しまして、日本がOECDだとかあるいはまたボンサミット等で孤立するといいますか、袋だたきになるとか、そういうことだけは避けなければならない、そういうふうに考えておるわけでございます。
なお、その際日本として言うべきことはやはりきちっと言わなければならない。しかし、日本みずからがなさなければならない問題については、時間も迫っておりますが、最大の
努力を傾けていかなければならないと、こういうふうに思います。
-
○
田渕哲也君 対米自動車輸出規制の問題について通産
大臣にお伺いしますが、アメリカの政府が求めていないのにあえて行う理由はどこにありますか。
-
○
国務大臣(
村田敬次郎君) 対米自動車輸出規制の問題についてお答え申し上げます。
先般のこの
委員会でも申し上げたのでございますが、ことしの三月末に対米自動車輸出規制の期限が切れる。三月一日に、アメリカ政府の決定として、レーガン大統領は自主規制の延長を求めないという発表をなさいまして、三月二日に日本政府としての対応を
官房長官から、それからまた
官房長官と私から発表いたしました。これはアメリカ政府の決定を歓迎するけれども、今後対米親善のためにもモデレートなと申しますか、どしゃ降り輸出にならないような
配慮が必要であるということを申し上げたわけでございますが、通産省としていろいろ、ことしの、一九八五年の対米自動車の見通しを調べてみますと、各社のいろいろな思惑その他を合わせますと、ほっておけば二百七十万台前後になるのじゃないかというような憶測がございました。現在は百八十五万台でありますから、これが非常に集中豪雨的な輸出になるようになりますと、日米親善にも非常にマイナスになる。そしてまた、現在続けておる、先ほど外務
大臣のおっしゃいました対米貿易のいろいろな
配慮の上でも大変な
事態になることが避けられないという
考え方がございまして、二百三十万台を超えない
範囲ということで、日米親善のためにも、また今後の日米両国の業界の繁栄のためにも、また米国の消費者の
立場からも一番これが適切な決定であるということで、私の談話の形で発表さしていただいたところであります。
-
○
田渕哲也君 従来と違ってアメリカの政府は要請していないけれども、日本の政府が自主的にやったということだけに、いろいろ問題が起こることが考えられる。
一つは、これはガットの
精神に反するという攻撃が出ないか。それから、アメリカの独占禁止法の違反ということで消費者から訴えられないか。それから、アメリカの自動車のディーラー、販売業者から商標権の
問題等で訴訟が起こらないか、この点についてどうお考えですか。
-
○
国務大臣(
村田敬次郎君) お答え申し上げます。
この自動車輸出規制については、過去四年間続けておったわけでございますが、今回は日本政府の決定として行ったわけでございます。ガット上の問題は、私は、従来の四年間継続をし、そして今回新たに日本政府の決定として行ったことでございますので、灰色的な措置にはなりますが問題はないと、こういうふうに考えております。
それから、アメリカの独占禁止法上の問題は、これは非常にアメリカの独占禁止法の措置は厳しいわけでございまして、この点については実は十分にいろいろ
検討いたしました。もし日本の輸出業者間の方で自主規制をいたしますと、かえって非常に問題が起こるのではないかということがありまして、日本政府がこれを行うことが適切である。そして、今後、これは一年限りの措置でありますから、一年限りの措置を実践をしていく上において、米国独占禁止法上の問題は少ないと思いますが、なお慎重な
配慮を続けてまいりたいと思っております。
なお、米国消費者の
立場からという
観点は、よく理解ができます。なお、この発表いたしました後のいろいろの米国世論の動向もまだ定まっておりません。いろいろ出ておりますが、私は、これが輸出規制措置を行わなかったことによって非常な
混乱を巻き起こすことに比べれば、米国消費者の
立場も考え、日米親善の
立場も十分考えた措置であるということを考えております。
-
○
田渕哲也君 一年限りということは、来年からは全く撤廃されるわけですか。
-
-
○
田渕哲也君 アメリカの大統領はこの報道に接して非常に失望したという記事が出ておりましたけれども、この点はいかがですか。
-
○
国務大臣(
村田敬次郎君) レーガン大統領府の
意見あるいはそのほかダンフォースさんのお
考え方に対する憶測、いろいろなものが入ってきておりますが、まだ私は、これは発表直後でございまして米国世論は定まっておらない、いろいろな思惑というものが交錯をしておるのではないかと推測をしておりまして、時間の経過につれて我々のとった措置が正しいという認識を得られるものと思っております。
-
○
田渕哲也君 貿易摩擦をやっぱり抜本的に解消するためには、何といいましても収支のアン
バランスということの改善策をしなくてはならない。そのためにとるべきことは内需の拡大が大事だと言われておりますが、現状においてとり得る内需拡大策というのはどういうものがありますか。
-
○
国務大臣(
村田敬次郎君) これは、貿易の問題とあわせて内需の拡大というのは中曽根総理が考えておられる最も根本的な問題の一つであります。先ほど外務
大臣が申し上げましたけさの対外関係の閣僚会議、また党の協議会におきましても特に発言をしたのでございますが、公共事業あるいは民間設備投資、住宅建設、そういったようなものが内需を拡大する大きな要因の一つであると言われておりますが、そういった問題についてひとつ大蔵
大臣にもぜひ恐縮でございますが御苦労をいただいて、消費の問題も含めてぜひ内需拡大に
努力をしていただきたいということを御要望申し上げたところであります。
-
○
田渕哲也君 建設省の資料として、
一定限度の建設国債の発行は非常に重要である……
-
-
○
田渕哲也君 これは財政再建にそんなに影響を及ぼさないという資料が出ております。この点についてどう考えられますか。
-
○
国務大臣(竹下登君) 一兆円建設公債を発行すれば三年間にわたって恐らく四千億ちょいのいわゆる税収があると、こういう
議論が基礎にあると思っております。確かにそれはあり得ることであろうと思っておりますが、ただ問題は、一度ふやした場合、されば次は減すことができるかというと、なかなかそのことは、景気の動向に応じて減したりふやしたりすればいいじゃないかということは現実問題としてはなかなか難しいことになる。そうすると、仮に三年間で四千億の税収が上がったといたしましても、結論は一兆というものを六十年間で十年に六分の一ずつ返していけば、やっぱり後世代に対して三兆七千億の負担を残すことになるという論理が一方にあるわけでございますので、弾力的な政策運営をする中でその
議論はいつまでも続くであろう
議論ではないかなと、こういうふうに思っております。
-
○
田渕哲也君 終わります。時間がなくて経企庁並びに総務庁に質問ができませんでしてどうも恐縮でした。(拍手)
-
○
委員長(
長田裕二君) 以上で
田渕君の質疑は終了いたしました。
午前の質疑はこれまでとし、午後一時二十分に
委員会を再開することとし、これにて休憩いたします。
午後零時二十三分休憩
─────・─────
午後一時二十二分開会
-
-
○中西珠子君
昭和六十年は、政府の国際公約でもございますODA五カ年倍増計画の目標達成年であります。しかし政府の予算原案におきましては目標は達成されておりません。そこで、社会党、公明党、民社党、社民連の四野党が共同修正要求を出しました中に、このODA五カ年倍増計画の国際公約を達成するため、また民生の安定を図るための効果的な活用ということを
条件にしまして、五百八十億円の増額を要求しているわけでございますが、これは一応実務レベルにおける詰めを行うということになっておりますけれども、大蔵
大臣、外務
大臣、
経済企画庁長官はこの問題に対して前向きに取り組むお考えがございますでしょうか、お伺いします。
-
○
国務大臣(竹下登君) いわゆる政府開発援助関係予算の問題でございますが、これは中西
先生、政府としては現時点においてこれがぎりぎりの調整をした結果の予算を御審議いただいておるわけでございますから、何とぞ御賛成をいただくようにという気持でいっぱいでございます。
-
○
国務大臣(
安倍晋太郎君) 倍増計画につきましては、各方面大変な御
努力によりまして、予算では九八%達成することができました。来年度予算案も非常に厳しい中に一〇%以上の伸びがあったわけでありますから、我々としても国際的な役割、
責任を果たすことができておる、こういうふうに思っております。この次をどうするかという問題が今ありますけれども、我々はさらにこの予算を増額するためにこれから
努力してまいりたいと思います。
-
○
国務大臣(金子一平君) 今、外務
大臣から御
答弁のございましたように、新年度予算では一〇%前後の予算を伸ばすことにどうやら成功することができましたが、何といっても、日本は今黒字大国になっておりますし、資本輸出国として世界的
責任を果たさなければいけませんから、新年度につきましては精いっぱいのことでございましょうけれども、六十一年度以降の新しい目標をどうするか、これはこれから関係省庁と十分調整しながら日本としての
責任を果たしてまいりたい、かように考えております。
-
○中西珠子君 六十一年度からの新中期目標をどうするかということを考えているという今企画庁長官のお話でしたが、新聞報道などによりますと、新中期目標については大蔵
大臣が大変難色をお示しになっているというふうな報道がございますが、大蔵
大臣、いかがですか。
-
○
国務大臣(竹下登君) この問題は、今の場合ODAの拡充は
現行の中期目標のもとでその拡充に努めてきたわけでございますが、六十一年度以降の政府開発援助は今まさに関係省庁間で
検討中でありますので確たることを申し上げる
段階には残念ながらございません。が、財政当局でございますから、当然のこととして財政再建が喫緊の課題でありますとか、あるいはなおODAの効果的な実施のあり方について問題が指摘されてはいないかとか、そういう
意見を、財政当局側は当然そういう
立場からやっぱり
議論に入っておるわけであります。したがって、いわゆる新計画を策定するといいますか、そういう新目標を策定することも含めてする方がいいのか悪いのか、やったらそれが実行可能なものでないことにはまた信頼を裏切ることになる。したがって、それらの是非も含めて今まさに鋭意
検討しておるという
段階でございます。
-
○中西珠子君 外務
大臣としてはどのようにお考えでいらっしゃいますか。やはり新中期目標をつくって日本の国際援助への姿勢をはっきりしませんと国際的にまずいのではないかという心的もございますが、いかがでしょう。
-
○
国務大臣(
安倍晋太郎君) 何とかやはり国際世論といいますか、国際的な期待にこたえてこれからODAをどういうふうに持っていくかという基本的な方針はこれを明らかにしなければならないと、こういうふうに思います。
-
○中西珠子君 日本のODAは御承知のとおりいろいろな批判がございまして、私も本会議でいろいろ申し上げましたけれども、質的な改善はぜひ必要ということで、外国のある人々の中ではODAは大体において日本の一部の企業に還元しているのではないかと、こういう批評もあるわけでございますが、質的な改善という面では外務
大臣はどのような御
努力をなさろうとしていらっしゃいますか。
-
○
国務大臣(
安倍晋太郎君) ODAにつきましては、これ長い間日本がいろいろな改善も加えながら各国の意向を踏まえて
努力をしてまいったわけでありまして、最近ではこうした日本の行っておるODAに対しましては、全体的に見て各国から感謝をされておると、こういうふうに判断をいたしておるわけでございます。しかしさらにODAのあり方については、そういう中でもいろいろとこの際再
検討をしろという批判も出ていることも事実でございますので、我々としましてはこのODAのフォローアップ、これ外務省も既にやっておりますが、これをさらにきちっとやっていかなければなりませんし、あるいはまた事前調査等につきましても、これは私は諸外国の中で最も日本がきちっとやっていると思いますが、そういう点もしかしさらに振り返って反省して、改める点があったら改めていかなければならぬ、こういうことで外務省自体だけでなくて、いわゆる学識経験者の
意見も聞きながら、これからODAがやはりふえていくわけですから、さらにこのODAが世界の期待、特に開発途上国の期待にこたえられるように、いろいろな角度からひとつ
検討してみたい、そういうふうに思っております。いやしくもODAについて今お話しのような批判が出ないようなそういう形に持っていきたい、こういうふうに思っております。
-
○中西珠子君 企画庁長官の御
意見はいかがでしょう。ODAの改善についてどのようにするべきであるとお考えでいらっしゃいますか。
-
○
国務大臣(金子一平君) 今外務
大臣からも御発言ございましたけれども、量的には六十年度でほぼ目標の九十数%まで達成するような状況になりました。これは一つの大きな進歩だと思いますけれども、中西
先生もお話しのように、アンタイの問題がございますし、無償援助のウエートの問題がございますし、やはり質的な向上につきましては先進国並みの
努力を払っていかなければいかぬ。そういう点私どもも十分考えて、関係方面とも調整をしながら、話し合いをしながら、実現に向かってその
努力を進めたいと考えております。
-
○中西珠子君 今先進国並みに近づけるように
努力をしなければならないという考えを披瀝していただきましたが、実際日本のODAは、グラントエレメントとか贈与比率におきましてはともにDAC加盟国十七カ国の中で十六位ですし、それからGNP比は〇・三三%ということでDAC加盟国中十二位でございますね。そして、殊に技術協力がODAに占める比率というのは非常に少なくて一〇・二%、GNP比で言いますと〇・〇四%にすぎないわけです。技術協力がこのように立ちおくれている理由についてはどのようにお考えでいらっしゃいますか。日本はハードはいいけれどもソフトはだめだということが盛んに言われるわけですけれども、技術協力の立ちおくれている理由につきましてはいろいろあると思いますが、外務
大臣いかがお考えでいらっしゃいますか。
-
○
政府委員(藤田公郎君) ただいま
先生御指摘のように、我が国の場合には技術協力はODAの約一割、先進国の平均の半分程度ということでございますが、この立ちおくれの原因、いろいろなことが考えられるかと思いますけれども、我が国の場合には、植民地を持っておりました旧宗主国のように、英語とかフランス語の母国語がそのまま通用する地域に行って技術協力を行うということに比べますと、まず技術とともに外国語を少なくとも知っていなければいけない、そういう大きなハンディキャップがあるということが一つ申せるのではないかと思います。それから、その他いろいろ指摘されております点では、我が国の社会の職業を変更します自由といいますか、移動性が割と制約されているという理由、それがなかなか専門家が海外に行って活動していただくのに不便だ、制約要因になっているということ等が考えられるのじゃないかと思います。いずれにせよ技術協力を今後伸ばしていかなければいかぬとおっしゃる点はまことにそのとおりだと思いますし、私どももそういう方向で一生懸命
努力しているというのが現状でございます。
-
○
国務大臣(
安倍晋太郎君) 今
局長から申しましたとおりの原因もあると思いますが、私も各国を回ってみまして、日本の技術協力に対する非常な期待が高まっております。アフリカなんかへ行ってみましても、食糧援助、そうした緊急的なものと同時に、やはりもっともっと大事な技術援助を日本に非常に強く求めておるという現況でございますから、我々としてもこの点は特にODAの中で最重点を置いて進めるべきである、こういうふうに考えます。
-
○中西珠子君 ODAの中で最重点を置いて進める考えであるとおっしゃっていただきましたので、どうぞこれを着実に御実行願います。
参考人として
国際協力事業団の
総裁をお呼びしているのでございますが、おいでになっておりますでしょうか。——直接に技術協力、専門家の派遣とか人材の育成にお携わりになっている
国際協力事業団の
総裁としてどのような御
意見を、技術協力をこれからもっとふやしていき、また人材もふやしていく、技術協力の比重をODAの中で伸ばしていくという点について
総裁の御所見を伺いたいのでございますが、いかがですか。
-
○
参考人(
有田圭輔君) お答え申し上げます。
技術協力につきましては、最近内外でもっと力を入れろというような考えが高まっております。昨年事業団創立十周年を迎えましたが、我々のキャッチフレーズも人づくり、国づくり、心の触れ合いというのをキャッチフレーズにいたしましたが、途上国の方でも幸いやっぱり国づくりは人づくりからだと、そして有償、無償のいずれの資金援助もこれが技術協力と結びついて本当に効果を上げるという認識が深まってまいりまして、その要望もたくさんございます。
そこで、今予算の話もございましたが、それと同時に、その裏づけになるものは途上国の人づくりの以前に、日本側で本当に的確な専門家を多数養成、確保するということも必要になってくるわけでございます。一昨年、実は予算をいただきまして長年の念願でありました国際協力総合研修所というものの設置が許されました。ただいま生涯、途上国の技術協力に専念するという、一応我我国際協力専門員という名前にしておりますが、その方々たちを現在まで十六名確保しております。二名は今選考中であります。六十年度の予算でもこれの増員が許されております。このように事業団自体が中核となる専門家を一応確保すると同時に、一般の専門家の方々の派遣前の研修あるいは中期研修、そういうことに力を注いでできるだけ途上国で十分に活躍できる専門家の養成に努めておる次第でございます。
-
○中西珠子君 先日国際機関から技術協力専門家として派遣された人たちとか、それからまた、JICAから国際協力、殊に技術協力の専門家として派遣された方々、その方は国際機関からも派遣されたこともあり、JICA、
国際協力事業団からも派遣されたことがある方々ですが、そういった方々にお集まりいただいて、いろいろ技術協力の問題について話し合いを持つ会合を開いたわけでございます。その際、
国際協力事業団の派遣する専門家の給与とか待遇の面が非常に十分でないということが指摘されたわけでございまして、それで
国際協力事業団の方にどのような給与体系を持っていらっしゃるのか資料を欲しいと申し上げましたところ、ちょうだいできなかったわけでございまして、
総裁としてはこの点についてはどのようにお考えでいらっしゃいますか。
-
○
参考人(
有田圭輔君) お答え申し上げます。
給与体系は、一般に海外で派遣される専門家につきましては外務公務員に準じて給与を定めるということになっております。若干外務公務員よりも下ということであります。それで、格付は特一、二、それから一号から六号までというものを経験その他は応じて格付をして派遣するということでございます。それで、給与の
内容は在勤の基本給のほかに、今、家族手当、それから子女
教育の手当その他各種の手当、住宅手当もございます。そういうものを総体にすると同時に、国内で受ける給与がございます。これにつきましては事業団の方で予算をいただいて所属先の補てんということをしております。この所属先補てんにつきましては、最高額が六十万円ということで切られております。そういうことで補てんをしている。
そのほかもちろん我々の方にも海外共済会がございますので、その共済会において医療の問題あるいは死亡したときの弔慰金というもの、これも最近はかなり増額されております。三千七百万円というものを死亡の場合に出すというようなことにしておりまして、できるだけ我々、専門家の行っていただくところは瘴癘の地が多いわけですから、それに対しては十分な手当てをするという考えでやっております。ただ、これはやはり給与のことですから、高ければ高い方がよろしいということで、もっともっとという希望は確かにあると思うのです。しかし、我々としては予算上できる限りの
努力をしておりますし、また今後も十分専門家の方々の御
意見も伺って、改善できるところはさらにさらに改善したいと、このように考えている次第でございます。
-
○中西珠子君 給与規程とか海外共済会の規程といったものは門外不出で秘密事項ですか。私は研究させていただきたいと思って資料を要求したんですけれども、お出しいただけませんでしょうか。
-
○
参考人(
有田圭輔君) 私はそういう資料の御要求があったということは存じませんでした。帰りまして御要望に沿うように
努力いたしたいと思います。
-
○中西珠子君 それから、もう一つお伺いしたいんでございますが、なかなかやはり終身雇用制という日本におきましては派遣専門家の身分保障が難しいと思うのでございますね。ですからその点について、ちょっとどのように考えていらっしゃるかお聞きしたいと思います。
-
○
参考人(
有田圭輔君) お答え申し上げます。
身分保障というのをどういうふうにお受け取りになっているか必ずしも判然といたしませんが、専門家の方々は五割が公務員あるいは公社、公団から、一部の五%ぐらいが地方団体から出ている。その他民間ですね。ですから、それぞれやっぱりお帰りになる場所はあるわけです。お帰りになる場所のない方につきましては、それが優秀な方であれば、つなぎとして我々の方では特別嘱託という
制度を設けまして、かなり長期にわたって若干の給与を差し上げて待っていただく、そしてさらに次の専門家として出していただくというふうに処置しております。
-
○中西珠子君 特別嘱託の
制度は大変結構だと思います。
もう一つ
総裁にお伺いしたいのは、JICAの予算は十年前に比べますと三倍になっておりますね。しかし定員は三%減っているそうでございますが、非常にJICA職員が人数が足りなくて困るというふうなお考えはお持ちでございますか。
-
○
参考人(
有田圭輔君) お答え申し上げます。
十一年前にJICAが創設されましたときは定員が約千名でございます。その後十周年を祝いました
段階では事業団自体の予算は三・三倍、人員は約三十名減りました。しかし六十年度の予算におきましては、差し引き、この大変厳しい折から二名の純増になっております。これは関係当局の方々にいろいろJICAの窮状を認識していただいたというふうに我々大変感謝している次第であります。事業団の中でただいま重点事項として、一つは評価活動ですね。我々のやっている仕事を逐次評価をし、そしてその反省の上に立ってよりよい仕事をしようということと、それからもう一つは合理化であります。このように三十数名減ってきた
段階ではどうしても合理化をして、そして忙しさを少しでも
緩和していかなければならないということで、今後もこの合理化は続けていきたいと思います。ただ、私ども今後も技術協力の仕事というものは拡大すべきであるし、当然拡大すると思います。そういう過程の中では最小限度の人員は確保していきたい、このように考えている次第であります。
-
○中西珠子君 今、
総裁のお話の中で評価ということが出ましたけれども、
国際協力事業団の中で評価
検討委員会というのを数年前からおつくりになっておりますね。それで、この評価というものをどのようになすっているか。
それから、いろいろいいプロジェクトをこれまで実施していらっしゃいまして、あちらこちらに訓練校ができたり、病院ができたり、看護
学校ができたりしていますけれども、日本から行った専門家が帰ってしまった後は、もう日本から送り出したものは低開発国とか開発途上国にとっては非常に斬新な機械なんですね。高度な技術的な機械というものも使いこなすことができなくてそのままになっているとか、それからまた、いわゆるマニュアルというか、使い方が英語になっていなくて、日本語の使い方を指示したものはあっても全然わからないからというふうなことがありまして、私は本当にフォローアップというかアフターケアというものが必要だといつも痛感しておりますので、この前の代表質問を一月三十日に本会議でいたしましたときもフォローアップとアフターケアの必要性を指摘いたしまして、そして何とか体制づくりをしていただきたいと外務
大臣にもお願いしたわけでございます。外務
大臣は非常に色よいお返事をしてくだすったわけでございますが、
総裁としてはその点はどのようにお考えでいらっしゃいますか。
-
○
参考人(
有田圭輔君) お答え申し上げます。
このフォローアップというのはやはり重点事項で、この評価活動の一環として今後も進めていきたいと存じます。先ほども申し上げましたように、いろいろ技術協力を展開する
段階で機械が十分使われていないとか、その機械を持って行ったけれども現地の実情に合わなくて、電気のボルトが合わないとか、いろいろなこともあったようでございます。そういうことに対しましては反省をし、よりよい仕事をしていくということにいたしております。また、その機材の供与につきましては、余談でありますが、やはり途上国に対する機材の供与の場合にはできるだけ規格化して、余り特殊な、余り高度な機械というものはできるだけ割愛していきたい。長く途上国の人から十分に使われるような機械の選定をしていく必要が一方ではあるのじゃなかろうかと思います。
それから、もちろん技術協力の場合には三年、五年でやめるのではなくて、いいプロジェクトについては長い期間継続してこの協力関係を保っていくことが大変必要だと思います。御承知のように、タイのモンクット工科大学というのは二十年前に通信関係で訓練所をタイに建てたものが今は立派な大学に成長して、タイでも最も権威のある大学に成長している。このように十年でも二十年でもそれがいい技術協力のプロジェクトであれば、日本とのかかわり合いを持って協力を進めていくというのが効果を上げる一つの方法であろうかと思っております。
-
○中西珠子君 最近、朝日新聞にシリーズで「援助途上国ニッポン」という記事が出ましたでしょう。お読みになりましたですか。御感想はいかがですか、
総裁。
-
○
参考人(
有田圭輔君) お答え申し上げます。
大体毎回読みましたが、今特に印象には残っていませんけれども、全般的には好意的に書いていただいたというふうに感じております。特に特定の問題がございますれば、御指摘いただければお答え申し上げます。
-
○中西珠子君 私は、JICAが一生懸命御
努力なすって、技術協力を大いに増強しようとなすっている点、その他のまた
総裁の御
努力に関しまして大変尊敬申し上げているわけでございますけれども、今後一層フォローアップやアフターケアの面でも大いに力を入れていただきたいし、また技術協力の専門家の育成の面でも大いに一層の
努力をお願いしたいと思います。
きょうはお忙しいところ本当にありがとうございました。もうお帰りくだすって結構でございます。
外務
大臣はその朝日の「援助途上国ニッポン」という記事をお読みになりましたですか。もしお読みになったとしたら、御感想はいかがですか。
-
○
国務大臣(
安倍晋太郎君) 全部読んだわけではなくて拾い読みみたいなことはいたしました。なかなか実情を正確に報道している、こういうように思いました。
-
○中西珠子君 大蔵
大臣はお読みになりましたですか。御感想がございましたらお聞かせください。
-
○
国務大臣(竹下登君) 今の外務
大臣からの答えがまことに適切な感想だと思っています。
-
○中西珠子君
官房長官はお読みになりましたですか。御感想がございましたら、朝日の「援助途上国ニッポン」というシリーズがずっと続いて出ていたわけでございますが。
-
-
-
○
国務大臣(金子一平君) 拾い読みいたしましたけれども、大体前の
大臣の
答弁と同じでございます。
-
○中西珠子君 それでは、政府開発援助、ODAの予算は非常に関係各省に分かれておりまして、その予算の
内容につきましてなかなか私よくわかりませんので、御説明願いたいと思います。この順序でいかがでございましょう。大蔵、外務、経企と当てずっぽうに書いた順序でございますけれども、大蔵
大臣から、恐れ入ります。
-
○
国務大臣(竹下登君) 大蔵省の政府開発援助関係予算の
内容は、まず大蔵省所管一般会計ODA予算は二千三百四十四億円であります。これは前年度比七・一%の増、その主たる
内容は、一、海外経済協力基金への出資千六百九十億円、二、食糧増産等援助五百九十四億円、三、国際開発金融機関への出資等五十九億円、これが中身でございます。
それで、これは大蔵省設置法の中に「国際金融及び外国為替に関する
制度の調査、企画及び立案をすること。」、それから次は「国際通貨基金、国際復興開発銀行、国際金融公社、国際開発協会、アジア開発銀行、米州開発銀行、アフリカ開発銀行及びアフリカ開発基金に関すること。」、それから「本邦からの海外投融資に関する事務を管理すること。」という設置法に基づいて、我が方が所管しておる中身であります。
-
○中西珠子君 次は外務省よろしくお願いいたします。
-
○
国務大臣(
安倍晋太郎君) 外務省六十年度のODA関係の予算は、合計で二千五百十七億円です。その内訳としては、無償資金協力が千六十五億円、
国際協力事業団への出資、これへの予算が八百十五億円、これは非ODA合算でいきますと八百二十四億円です。それから国際機関への出資、拠出が五百七十二億円、こういうふうになっております。
-
-
○
国務大臣(金子一平君) 経済企画庁のODA関係の予算は、海外経済協力基金の交付金二百九十五億一千四百万円、直接借款推進費が六千八百万円、それから経済協力推進調査費が二千三百万円、こういうことになっております。
-
○
国務大臣(
村田敬次郎君) 通産省関係申し上げます。
通産省は政府開発援助、ODAの中期目標のもとに、発展途上国の多様な開発ニーズに対応した効果的な経済協力を推進するために、海外開発計画調査、人づくり協力、研究協力、発展途上国に関する総合的研究及び発展途上国貿易促進協力費、事業費等の援助と貿易投資とを組み合わせた総合的な経済協力の一層の展開を図ることとしております。
六十年度政府開発援助は二百三億余円でございます。これは前年度に比べて一七・五%の増、それから研修生受け入れ及び民間専門家派遣事業等の推進、研究協力の推進、発展途上国に関する総合的研究の推進、発展途上国貿易産業振興を通じる協力の推進等でございます。
-
○中西珠子君 あと、農林、文部、厚生、労働、総務庁、運輸、法務、建設、科学技術庁、郵政省、全部ODAの予算
内容をお聞きしたいのでございますけれども、時間的に大変長くなりますでしょうから、資料を要求いたしまして、そして具体的な細かい御説明を後でいただくようにいたします。
しかし、十四省庁にわたるODA予算の予算要求の法的根拠につきましては、それぞれやはりお答え願いたいのでございます。大蔵
大臣は既にお済みになりましたけれども、外務、経企、通産、農林、文部、厚生、労働、総務、運輸、法務、建設、科学技術庁、郵政
大臣、時間とって全く申しわけありませんけれども、ちょっと大事なことでございますので、それは御説明願います。
-
-
○中西珠子君 はい。
-
○
政府委員(藤田公郎君) 恐らくこれは各省庁同じかと思いますけれども、外務省の場合には外務省設置法第三条、第四条及び第五条の関連規定を法的根拠といたしましてODA事業を実施いたしております。
-
○中西珠子君 次々とお願いできませんか。私が一つ一つ申し上げないとだめでございますか。通産
大臣。
-
○
政府委員(吉野良彦君) 便宜私からお答えを申し上げますが、各省庁の予算要求は、当然のことでございますが、各省庁それぞれの設置法に各省庁の所掌事務が定められてございます。この所掌事務にかかわりますODA予算についてそれぞれの各省庁から要求が出されている、こういうことでございます。
-
○中西珠子君 それでは、すべての省庁は設置法に基づいて予算要求をなすっているというように理解いたします。しかし、どこが総合的な立案、企画、調整をなさるんですか。それぞれ好きなようになすっているわけですか。もちろん大蔵省で最終的に総合調整はなさいますでしょうけれども、立案と企画の
段階ではどこが総合調整なさるんですか。それをなさるところはないわけですか。
-
○
国務大臣(金子一平君) ODAの予算は、今お聞きのように各省庁にまたがっておるものですから、経済企画庁は国際経済協力に関する基本的政策、計画の企画、立案及び総合調整を所掌することになっておりまして、長期計画、経済計画、毎年度の経済運営の基本的態度等における経済協力の位置づけとか、基本的な方針等の作成、あるいはODAの中期目標の策定等におきまして各省庁との調整機能を果たしております。
-
○中西珠子君 確かに調整機能を果たしていらっしゃるかもしれませんけれども、まだできていない新中期目標をつくるために一生懸命今やっていらっしゃると。それからまた総合的な企画、立案ということは具体的にどういうことをなすっていますか。
経済企画庁長官。
-
○
国務大臣(金子一平君) これは毎年度予算策定に当たりまして、関係省庁との打ち合わせをしながら全体計画を決めてきておる、こういうのが実情でございます。
-
○中西珠子君 各省庁で
意見の相違があったときにはどうなさるんですか。企画庁長官が調整なさるわけですか。
-
○
国務大臣(金子一平君) これはもう総合調整官庁ですから、大蔵
大臣が金を、財布を握っておりますし、外務省も外務省でODA予算の大もとを占めておりますから、あるいは各省庁それぞれの
立場がございますから、十分な話し合いをして妥当な結論を出している、こういうのが現状の姿でございます。
-
○中西珠子君 外務省の方は国際協力、殊に経済協力の面では対外的な折衝はすべて外務省がもちろんなさるわけでございますし、協定の締結もなさるわけでございますね。そういった面から、外務省が総合調整機能を持っていらっしゃるというふうに御
答弁になった
答弁もあるわけですけれども、外務
大臣、いかがでしょうか。
-
○
国務大臣(
安倍晋太郎君) ODAの予算については、今それぞれ
答弁がありましたように、各省庁の権限に基づいて予算を要求し、予算を獲得しているわけですが、外務省がこのODA予算については大半を占めております。そういう中で、対外的ないろいろな問題についてはこれはやはり外務街が中心になりまして、実質的に各省庁との連絡調整を図っておる、国内的には今長期目標その他について、これはやはり経済企画庁が総合調整官庁としての役割をされておる、こういうことで、やはり非常にうまくその辺は調整をしながら遺憾なきを期しておるということであります。
-
○中西珠子君 これは
昭和六十年二月十二日の
予算委員会の議事録なんでございますが、ここで外務省が主務官庁であるというお答えを外務
大臣がなすっているんですね。それで、これにつきましてはやはりどちらが主務官庁でいらっしゃるんですか。私、ちょっとわかりませんけれどもね。九ページです。
-
○
国務大臣(
安倍晋太郎君) これは四省——速記録がそのとおりであり、和田
先生の御質問に対してお答えしたのですが、実質的にこれはやはり外務省が対外的な問題ですから中心となって調整的な役割を果たしておる、こういうことであります。
-
○中西珠子君 法的には企画庁が総合調整機能があり、財政面では大蔵省が調整機能があり、外務省は実質的にはやはり総合調整機能があるということでございますけれども、全省庁が
意見が違うときには一体どなたが総合調整をなさるんですか。
官房長官でいらっしゃいますか、総理
大臣でいらっしゃいますか。
-
○
国務大臣(藤波孝生君) 今、外務
大臣あるいは
経済企画庁長官からお答えを申し上げましたように、実質的に対外政策の中の一環として仕事を進めておるわけでございますから、外務省が中心になって調整をしていく。しかし、いわゆる経済計画その他、経済全体の動きの中でどのようにこれを構えていくかということにつきましては、経済企画庁を中心としていろいろ御
検討をいただくというようなことで、それにいたしましても、やはり案件案件によりましていろいろ省庁が多岐にわたりますので、関係省庁よく連絡をとり合って外務省を中心にして
検討を進める、こういうことで来ておるところでございます。
意見がまとまらないで最終的にだれが
責任かと言われれば、内閣の仕事でございますので
内閣総理大臣と、こう申し上げなければいかぬかと思いますが、総理
大臣を煩わすということよりも、各省庁が十分密接に連絡をとってやっているのが実情でございますので、今後ともさらにその機能を大事にして進んでまいりたい、このように考えておる次第でございます。
-
○中西珠子君 主要援助国の中で日本だけがやはりODA予算を一括して支出する、予算計上する法的な根拠になる基本法というものを持っていない国なんでございますし、それからやはり外交の一元化といいながら、このODAの問題でも総合調整がなかなか難しく、どこがやっていらっしゃるかわからないような状態でございます。そして開発援助
大臣とかそれから国際協力
大臣というふうなものもないし、外務省ももう少し総合調整機能が強いといいのではないかというふうな気もいたしますけれども、こういった援助のための基本法というものがぜひ日本でも必要だと思うのでございますが、外務
大臣はいかがですか。
-
○
国務大臣(
安倍晋太郎君) これはこれまでのこのODAの実施、実際のところ実施に当たりまして関係各省庁で十分連絡をして、そしてこれを行っておりますが、今までそうした実施に当たりましてそう大きな困難は来したことはありませんし、そしてこの実施につきましても各国ともこれを評価いたしておるわけですから、私は今ここで何か新しいものをつくることがさらに効率的であるとも言えないのじゃないかと、こういうふうに思っておりますし、今のそうした調整をさらに円滑にやっていくということの方が必要であろうと、こういうふうに思います。
-
○中西珠子君 大蔵
大臣はどのようなお考えでいらっしゃいますか。開発援助基本法とか、やはり開発援助庁とか省というふうなものをつくったらどうかという考えにつきましてはどのようにお考えでいらっしゃいますか。
-
○
国務大臣(竹下登君) 各国との折衝におきまして、やっぱり外務省で今おやりいただいておって、例えば私どもの方で言えばIMFでございますとか世銀でございますとか、そういうところの連絡も私の方のいわゆる大蔵省からではありますが外務省へ出向して公使とか一等書記官とかいうことにしていただいて連絡をしていただいております。したがって、今の外務
大臣のお答えと同じでございます。
-
○中西珠子君 企画庁長官はどのようにお考えですか。
-
○
国務大臣(金子一平君) 先ほど来お話が出ておりますように、対外的には外務省が表に出ますけれども、国内では長期計画あるいは海外経済協力全般の調整役ということで、各省庁と話し合いを企画庁が中心で進めると。
制度の
運用につきましては、今後改善すべき点が多々あるかもしれませんけれども、十分それなりの機能を果たして、そしてまた各国からも評価されておるのではなかろうかと思います。今後さらに
努力をいたしてまいりたいと考えます。
-
○中西珠子君 六十年度予算でも事業予算としては一兆二千五百四十七億以上のODA予算が組まれているんですし、一般会計からは五千八百十億以上の予算が組まれているわけですね。これはやはり
国民の血税でございますから、これがどのように使われているかということは非常に
国民として関心があるところでございますし、いろいろなスキャンダルめいた話が出たり、また日本の援助が公害を引き起こしているとか、またそれぞれの援助を受ける国々の民衆の福祉とか
教育とか民生の向上というふうなものに役立っていないというふうな批判が出てきますと、これはやはり大変
国民としては心外なわけでございますから、やはり国会に対する少なくとも報告を義務づけたような、そして予算の計上の根拠をはっきりと明確にしたような基本法というものが絶対必要だと思います。
それで、それにつきましては今は必要ないというお考えらしゅうございますが、とにかく
国民の税金を使っているわけですから、国会への報告の必要性というものは強調したいと思いますし、国政レベルでの現在のいろいろの批判のあるODAを調査する調査団の派遣というものを提案したいと思いますが、外務
大臣いかがでございますか。
-
○
国務大臣(
安倍晋太郎君) ODA全般については、今お話しのように、確かに
国民の血税というものが中心でありますから、これは厳格に行わなければなりませんし、そしてその使途につきましても明らかにすることがこれは当然の
責任であります。この点につきましては、初めの、事前の各国との協議につきまして一つ一つのプロジェクトを精査して、これに対してこちら側で
検討をしてそして交換公文等で決めておるわけでございますし、これは明らかにしておりますし、また、事後のフォローアップ等につきましても、これは報告書等で明らかにいたしておるわけでございます。しかし、いろいろとODA全体の先ほどからお話ありました
運用の問題、あるいはまた質と量との関係とか、全体的なそういうあり方については、これはやはりいろいろな面で見直していく必要もあるということで、今各省庁がもちろんやっておりますし、外務省もフォローアップしておりますが、私自身も懇談会をつくりまして、そしていろいろと有識者に集まっていただきまして、全体をひとつ見直してもらって適切な御助言を得たいと、こういうふうに思っております。
-
○中西珠子君 大蔵
大臣はこの点についてどうお考えでいらっしゃいますか。
-
○
国務大臣(竹下登君) やっぱりフォローアップは大事なことだと思っております。
それから国会に対する報告、それは恐らくこの当該
委員会等でそれぞれ御質疑に答える向きもございましょうし、最終的にはいわゆる予算の毎年度毎年度の決算で御審議をいただくということに、窮屈に言えばそういうことでございましょうが、絶えずフォローアップの機能を発揮さしていかなければならぬ問題だと思っております。
-
○中西珠子君 国会レベルでの調査団の派遣についてはいかがですか。
-
○
国務大臣(竹下登君) それは私も国会議員ではございますけれども、やはり国会自体でお決めになることでございますから、行政府が言葉を差し挟むことは遠慮すべきだと思っております。
-
○中西珠子君 外交・総合安保特別
委員会というのがございますね。これは調査特別
委員会なんですが、ここでやはりODAの調査のために
委員を派遣したいという要望が強いわけですね。ところが予算がないからだめだということで、国内に一遍ちょっと近いところへ行ってくればおしまいというぐらいの予算しか与えられていないので、外国へODAを本当に実地調査というふうなために調査団を派遣なんということはとんでもないことだと、こう言われているらしいのですね。それで、自費でもいいから行かせろ、しかし自費で行ったにしても現地における扱いはやはり公的な国会からのODA調査ミッションであるという扱いをしていただかなくちゃ困るということなんですが、外務
大臣どうお思いになりますか。
-
○
国務大臣(
安倍晋太郎君) これももちろん国会の問題でございましょうし、今大蔵
大臣の述べられましたように、国会自身で決定をしていただく問題じゃないかと思います。政府は政府としまして、このODAのこうした実施状況につきましては、時に応じて調査団等を派遣して調査をいたしております。
-
○中西珠子君 外務省は調査団などを派遣したり民間に委託したりしていろいろ調査をなすっていらっしゃるのは存じておりますけれども、これが全部部外秘になってなかなか読ましていただけないということなんですが、この点はいかがなんでございますか。
-
○
国務大臣(
安倍晋太郎君) 具体的にお示しをいただければ、できるだけ御要望にこたえたいと思います。
-
○中西珠子君 どうもありがとうございます。後ほどそれではリストをつくりまして御要望をいたします。
先ほどの総合調整機能に戻りますけれども、先ほどやはりどうしても各省庁の
意見が違う場合は
官房長官なり総理
大臣が調整をお果たしになるということでございましたが、総理
大臣の諮問機関に対外経済協力審議会というのがございますね。それで、この前私が客観的な評価の必要性を一月三十日の本会議の代表質問で申しましたところが、総理
大臣はぜひこの対外経済協力審議会の場を活用して、そして客観的な評価をいろいろな各方面の代表を入れてやっていくようにしようと思うというふうにおっしゃってくだすったのでございますが、その後どのように実際にはやっていらしてくださるか、その後の進展をお伺いしたいということと、これまでやっぱりこの審議会、有名無実と言っていいぐらい余り集まってないのじゃないかという評判があるのでございますが、いかがでございますか。
官房長官、恐れ入ります、お答え願います。
-
○
国務大臣(藤波孝生君) お話しのように、援助を適正かつ効果的、効率的に実施をいたしてまいりますためには、評価を重視していくということが非常に大事であるというふうに政府として考えておりまして、そのフォローアップとかアフターケアに努めておるところでございます。その評価の実施に当たりましては、いろいろな人に依頼をして、現地の実情調査などをやってもらうということを従来も進めてきておるところでございまして、できる限り公正、客観的な評価、主観的にだれかさっと行って報告書をまとめてくるというようなことではなしに、公正で客観的なやっぱり評価をするという姿勢が大事であるというふうに考えまして、そんな取り組みをいたしてきておるところでございます。
総理がお答えをいたしました対外経済協力審議会につきまして、従来もいろいろとそういった面でお知恵もいただいたり、評価についていろいろな御
意見を寄せていただいたりしてきておるところでございますけれども、今申し上げましたような
考え方に立ちまして、さらにこの審議会が一層活用されてまいりますように
努力をしていきたい。総理も非常に大きな関心を持っておりまして、そのことを事務的にも指示をいたしまして、取り組んでいく姿勢をとっておるところでございます。今後とも、きょう御指摘をいただきましたことどもを十分頭に置きまして、この審議会を中心にいたしまして活用を進めていくようにいたしたい、こう考えておる次第でございます。
-
○中西珠子君 きょうのお約束は実行していただきますようにお願いいたします。
それから、なかなか総合調整機能を果たす場所もよくわからないということから、やはりODAの協力案件とか対象国の選定の
基準というものをどのように決めていらっしゃるのかということが疑問なんでございます。相互依存関係とか人道的な
配慮とかいうことが
基準であると外務
大臣がこの前からも何度もお答えくだすっているわけでございますが、最近の新聞報道によりますと、アメリカ側が非常に日本の戦略的な援助を要請してきているということが出ているのでございます。この前、戦略的な援助はしませんというお答えを既に外務
大臣から本会議においてちょうだいいたしておりますのでございますが、もう一度御確認の御
答弁をお願いいたします。
-
○
国務大臣(
安倍晋太郎君) 我が国の援助はあくまでも平和国家として開発途上国の民生の安定、福祉の向上のために役立つものでなければならない、そういうことで基本的には長い間のODAの思想、
考え方は人道援助、そしてまた相互依存という
立場を守ってきておりますし、この
立場はあくまでもこれはもう貫いてまいらなければならない、こういうふうに思っております。例えば軍事的な援助につながるものは一切しないとか、あるいはまた各国の紛争を助長するような援助等も一切しないということ等もこれは当然のことでございます。
したがって、こうした日本の基本的な援助の
考え方からすれば、これはまた日本独特の
考え方でありますから、各国との間でそれぞれ援助についての
考え方の差も出てくるわけで、アメリカはアメリカの援助の
考え方があるわけでございます。したがって、日本の援助がアメリカの戦略的なと言われるいわゆる枠組みに組み込まれるというふうなことは全然ありませんし、これは日米間で援助については効率的に行おうじゃないか、両国とも膨大な援助をしているわけですから、その点で世界の平和と安定のためにそれぞれやっていこう、しかし協力できる
範囲では協力していこう、効率的な面があるならばこれは協力していこうという話し合いもできておりますけれども、しかしそれはあくまでも両国のそれぞれの援助の基本的な
考え方という枠組みの中での協力でありまして、それを一歩も外に出るという考えは日本としては到底持ってないということをはっきりと申し上げておきます。
-
○中西珠子君 ただいまのお約束として受け取っておきます。公約でございますよ、外務
大臣の。戦略的な援助はやらない、アメリカに追随して、アメリカの戦略的な行き方というものに追随するような、それにプラスになるような援助はやらないということをお願いいたします。
それから、やはり人道的な見地、また相互依存の
立場からODAをやっていくということは結構なことでございます。平和国家日本としては本当に重要なことでございますが、
国民のこれに対する理解というものがまだいまだしというところもございますので、
文部省と外務省は大いに連携を保って、いわゆる開発援助、そういうものの重要性というものを
学校レベルにおいても、また社会
教育においても、また外務省の国内の広報宣伝においてもやっていただきたいと思うのでございますが、外務
大臣いかがでございますか。
-
○
国務大臣(
安倍晋太郎君) やはりこれから開発途上国、そうしたおくれておる国々に対して積極的に援助をしていくというのは、これはもう日本の国際的な
責任であり役割であろうと思いますし、その点はやはり
国民の皆様方にもしっかりひとつ理解をしていたたかなければならない。そのために政府としても
国民の皆様にそういう理解を求めるいろいろと
努力はしておりますし、これは今後とも続けていかなければならぬと思っております。
今回、アフリカに対する援助等につきまして、政府も一生懸命やりましたが、
国民の中から大変大きな援助に対する動きが出てまいりまして、これはやはり日本の
国民がそうした開発途上国に対して何らか日本人として、日本の国として応援をしていかなければならぬ、支援をしていかなければならぬ、そういう気持ちを日本
国民全体が十分持っておる、こういうあらわれではないか、こういうふうに私は思っておりますが、さらにこうした日本の将来を考えまして、
国民の皆さんにも十分援助のひとつ基本というものを理解していただきますように
努力をしてまいりたいと思います。
-
○中西珠子君
文部大臣、いかがでいらっしゃいますか。
-
○
国務大臣(
松永光君)
中学校や高等
学校の社会科の時間等で、発展途上国に対する援助の必要性等々につきましては十分指導し教えてきているところでございます。これからも一層努めてまいります。
-
○中西珠子君 社会
教育の面ではいかがですかということをお聞きしたわけでございますが、
文部大臣、
学校教育ばかりでなく、社会
教育も一言私はつけ加えたつもりでございますが、いかがですか。
-
○
国務大臣(
松永光君) 社会
教育の場におきましても各種の国際交流事業を活発にするとともに、開発途上国の理解を深める上でいろいろな役に立つ各種の
機会を提供することは大事なことであると思いましてそういう事業をやっておるわけでありますが、これからもなお一層努めてまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。また、国立婦人
教育会館においてもその種の事業をいたしておるわけでありますが、これからも充実に努めてまいりたい、こういうふうに考えております。
-
○中西珠子君 今、外務
大臣、
文部大臣からお答えをいただきましたが、この開発協力については大いに推進して実施していただきたいと御要望を申し上げます。
それから最後に一つ、やはり政府開発援助が、いろいろな開発途上国の現政権とか、その周りの支配層の人たちとか上層部とか、そういった人だけを潤すのではなくて、本当に草の根のレベルにいる民衆の福祉とか、それから民生の安定とか向上というふうな面で役立つためには、NGOというものを活用なさるとよろしいのではないかと思うのでございますが、外務省はこのODAにおけるNGOの活用についてどのようにお考えでいらっしゃいますか。ほかの西欧の先進諸国におきましてはODA予算の中にNGOを活用して、そして仕事をさせる予算が組み込まれていると聞いておりますが、外務
大臣のお考えはいかがでいらっしゃいましょう。
-
○
政府委員(藤田公郎君) ただいま
委員の御指摘のとおり、欧米の国はむしろNGOの活動が先行、数百年の歴史を持って、政府開発援助というのは後追いだったという歴史を持っております。日本の場合はそういう点では歴史は非常に浅うございますけれども、今御指摘のとおり、約二百ぐらいのNGOの団体が援助の面で活動してくだすっております。
政府といたしまして、このNGOとの関係密接化は一応三つぐらいの方途で現在考えているということが申せるかと思います。一つは補助金という姿で行っております。それからもう一つは、NGOの活動と政府開発援助の連係プレーと申しますか、政府の開発援助で例えば建物をつくりまして、NGOの方が
先生を送られて訓練センターを動かす、殊にこれはバングラデシュで明年度始めようと思って考えております。それからもう一つは、シルバーボランティアズが行かれる場合の旅費の一部をこちらで負担するというような形でございます。それから第三番目は、NGOはやはり自主性というものは尊重していかなければいけませんので、NGOの相互の連絡協議体というようなものをつくられるのであれば、例えばその案内書といいますか、名簿、リストみたいなものの印刷の費用を政府で負担して、自主性を損なわない
範囲でNGO相互間の連絡協議に貢献する。この三つの方法でNGOに対します政府の支援、ODAの支援というものを図っていきたいと思っております。
-
○中西珠子君 次は老人対策に移りたいと思いますが、日本は御承知のように世界に類例のないような急激なスピードで高齢化が進んでおりまして、老人対策がむしろ立ちおくれておるということが指摘されております。速やかに総合的な老人対策を樹立して実施すべきものだと思っておりますが、厚生
大臣にお伺いいたします。厚生省はどのような老人対策をお持ちになり、それを実施しておられますか、お伺いします。
-
○
国務大臣(
増岡博之君) 厚生省は従来から、年金でありますとか、医療保険でありますとか、高齢者の健康確保の対策、生きがい対策、在宅福祉対策等、厚生省独自の対策をやってまいりましたが、御指摘のように、総合的な推進を図るということが必要でございまして、そこで従来から総理
大臣を本
部長とする老人対策本部が総務庁に設置をされておりまして、総務庁長官と私が副本
部長ということでございまして、緊密な連絡を図っておるところでございます。特に厚生省では労働省との間で厚生、労働両省連絡会議を設けまして、両省が深いかかわりを持つ諸問題につきまして共通の認識を持って一体となって対処しなければならないと考えております。また、住宅の問題も重要でございますので、今後住宅対策等の問題につきましても必要に応じ建設省とも十分相談をしてまいりたいと考えております。
-
○中西珠子君 年金の支給開始年齢が六十五歳に徐々に引き上げられるということもありますし、そして中高年の失業率が非常に高いということもありますので、中高年に対する雇用対策というものは非常に重要性を帯びております。これはやはり労働
大臣の御所管でございますから労働
大臣がどのようなお考えをお持ちかということを伺うと同時に、また厚生省との間で整合性を持った政策をおとりになるためにいろいろ御
努力もなすっていると思います。その点に関しまして労働
大臣の御所見を伺わしていただきます。
-
○
国務大臣(山口敏夫君) 高齢化時代、人生八十年時代と、こういうことでございますし、これは平均寿命が延びこそすれ縮むことはない、こういうことでございますから、単なる高齢化時代ではなく健康な高齢化時代ということを考えますと、厚生
大臣から御
答弁ございましたが、年金、社会保障の問題も非常に重要でございます。ございますけれども、やはり健康に恵まれ、あるいは仕事への意欲のある方には最大限その職場を提供する
努力が政府としては必要であると、かように考えまして、特に当面の問題としては六十歳の定年の延長の問題、あるいは六十五歳までの、あるいはそれ以降の雇用の延長の
問題等につきまして、今労働省としても雇用審議会とか中央職業安定審議会、そういった関係審議会においていろいろ御論議をいただいておる。特にことしの四月からそういう審議会が再開する予定であったわけでありますけれども、昨年の暮れに一日も早く結論を出していただきたいということで、今御審議のテンポを速めていただきながら結論を待っておる
段階でございます。そういう結論を踏まえて、あるいは国会でのいろいろ御論議も踏まえて、六十歳以降の雇用の問題にどう最終的な取り組み、結論を出すかということを、労働省としては今大事な問題として取り組まさしていただいておるわけでございます。
さらに、厚生
大臣からも御
答弁ございましたが、厚生省と労働省で高齢化時代に伴ういろいろな関係する問題が年金、雇用の継続のみならずたくさんあるわけでございまして、特に年金と雇用の継続の問題も踏まえて、今両省間で英知を結集して協議をスタートさしたと、こういう状況でございます。
-
○中西珠子君 労働省、厚生省の定期協議が実りあるものになりますようにお願いいたします。
それから、公明党は高齢化社会対策
委員会というのをつくりまして総合的な老人対策というものを研究もし、また打ち出してもいるわけでございますが、その中の重点施策の一つといたしまして、老人の住宅問題を非常に緊急の課題として考えておるわけでございます。
と申しますのは、一人暮らしの老人が死んでしまっているのが何日も気がつかれないというふうな状況がありまして、これは本当に悲惨なことでもございますし、建設省としては三世代が入れるような住宅というふうなものはおつくりになってきたらしいですけれども、一人暮らしの老人のやはりケアつきの集合住宅、ケアといってもそんな厚生省関係の大変難しいケアではなくて、やっぱり管理人を置いて、そして異変があるときにはすぐに電気か何かがぱっと下の方につくとか、それからベルが倒れたときも押せるような位置にあるとか、また高いところにもある、ベッドのそばにもあるというふうな、そういうふうな、健康ではあるけど一人暮らしで、しかし、どうしてもだれかの目が必要だというふうな、そういう一人暮らしの老人の住宅というものも必要ではないかということを北欧とか西欧諸国を回ってきて痛感したわけでございますけれども、建設
大臣としてはそのような一人暮らしの老人の集合住宅というものをつくるお考えがおありになるかどうか、お聞きしたいんです。
-
○
国務大臣(木部佳昭君) 今御指摘いただきましたようなお年寄り向けの住宅対策というものは、非常に大事な、これからの国政の大事な問題だと思っております。イギリスなんかでは御承知のとおり、老人ホームと住宅との中間形成のような小規模な集合住宅というものがあるわけでありまして、そういうふうなことも我が国におきましてもこれから、御指摘いただきましたように、大変高齢化社会を考慮した場合には大事な問題でございますから、そういう問題について
検討してまいりたいと、こういうふうに思っております。
ただ、その場合に、今お話もございましたように、費用の分担は一体どうするとか、寝たきり老人をどうするとか、常時看護を必要とする方々は一体どういうふうになるのかといったような
問題等につきましても、福祉関連当局とよく御相談してまいりたいと、こういうふうに思っております。
-
○中西珠子君 各省庁とも
大臣に前向きのお答えをいただきまして、大変ありがたいと思いますが、ぜひこれは総合的な老人対策というものを各省庁のいわゆるセクショナリズムを克服してやっていただきたい、有機的な連携をとって進めていただきたい。これは緊急な課題であると思います。
総務庁長官が、一応この老人対策については総合調整の権限をお持ちだそうでございますけれども、きょうはどうしても来られないというお電話が昨晩ございましたので、これは前からの御予定でいたし方がないと思いますので、かわりに
官房長官からその老人対策をやっぱり総合的に、有機的にお考えになって、そして早くこれを実施に移していただきたいという点を御要望したいのでございますが、御所見をお伺いいたします。
-
○
国務大臣(藤波孝生君) 御指摘のように、老人対策を進めていく上で一番大事なことは総合性、整合性をもたせて進んでいくことだというふうに考えておるところでございます。ともいたしますと、それぞれの省庁では非常に熱心に取り組んでおりますけれども、横の連絡に欠くところがありましたり、あるいは総合調整するところで、ともすると縦割り行政の欠点のところが前へ出てしまうというようなこともございますので、先ほど厚生
大臣からお答えがございましたように、
内閣総理大臣を本
部長といたしまする老人対策本部、そしてそれを総務庁長官、厚生
大臣が副本
部長として助けて総合調整をしていくといったような機関もございますので、政府一体になって老人対策を進めていくというふうにいたしたいと存じます。
以上、総務庁長官にかわりましてお答えをいたします。
-
○中西珠子君 どうもありがとうございました。
もう残り少ないのでございますが、では、次の問題に移らしていただきまして、男女雇用
機会均等法についてちょっとお伺いしたいと思います。
これは婦人差別撤廃条約の批准に向けて、法的な整備の一環として政府がお出しになってきた、殊に労働省がお出しになってきたわけでございますけれども、これは働く婦人の……
-
-
○中西珠子君 働く婦人の期待を裏切る形で出てきたということでございまして、私といたしましては勤労婦人福祉法の改正案の形と、それから労働
基準法改正案の形をとったもの、二つを一つにまとめて統合した法案として出ておりますけれども、この男女雇用平等を確保するという勤労婦人福祉法改正案の部分と、それから労働
基準法改正案の部分とを切り離していただきたいという要求をしたいのでございますが、労働
大臣、いかがでしょうか。
-
○
国務大臣(山口敏夫君) これもまた参議院の方でいろいろ御論議をいただくべく今お願いをしておるわけでございますので、その際にも詳しくまた御指摘に対してお答えもさしていただきたいと思いますが、労働省といたしましては、やはり憲法に保障された女性の権利、特に職域における職場の拡大、あるいは地位の問題、または給与の問題、いろいろな意味で女性勤労者に対して平等の権利と職域を拡大したい、こういう
立場でいろいろ作業を進めて、またいろいろな婦人団体の皆さん方からの御
意見でございますとか、また審議会等の
議論を踏まえてまとめさせていただいた経過もございます。いろいろ私どもも考えがございますけれども、現在の
段階においては、理想と現実の接点を何とかまとめさせていただいて、まずはそういう女性の職域あるいは権利の平等の枠をひとつ一層広げたい、そういう不平等やなんかを少しでも是正したい、こういう
立場で出させていただいたような経過もございまして、ぜひ政府案を中心として御論議もいただき、また御理解いただければ大変ありがたい、かように考えているところでございます。
-
○中西珠子君 私の時間がなくなりましたので、この問題は社労の場で引き続きまた御質問申し上げて、私の考えも申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。(拍手)
-
○
委員長(
長田裕二君) 以上で中西君の質疑は終了いたしました。
─────────────
-
-
○久保亘君 最初に、国鉄の余剰人員問題について、雇用不安を生じないよう政府としてはこれにどのように対応なさる御方針でございますか。
官房長官に、政府の見解としてお伺いいたしたいと思います。
-
○
国務大臣(藤波孝生君) 余剰人員の問題につきましては、御心配のような雇用の不安の問題を生じさせないために国鉄当局が退職
制度、休職、派遣の余剰人員対策を推進しているところであると承知をいたしております。これらの対策を労使が相協力をいたしまして確実に実施をして、実効を上げていくことが肝要である、こういうふうに思いますので、関係者の御理解と御協力を賜りたい、このように考える次第でございます。
-
○久保亘君 余剰人員については、これは単に国鉄労使の問題ということだけではなくて、政府全体として真剣に取り組むべき問題だと思っておりますが、この点についてそのようなお考えで対処していただけますか。
-
○
国務大臣(藤波孝生君) 余剰人員問題につきましては、まず国鉄がみずからの経営の問題としてその対策の最大限の
努力を払うことが基本であると、このように私ども従来も考えてきておるところでございます。政府といたしましても、国鉄における対策の進捗状況に応じまして国鉄再建監理
委員会の第二次緊急提言、これは
昭和五十九年八月十日に行われております提言でありますが、その趣旨に沿いまして国鉄の最大限の
努力をまず前提として、政府全体としてこれに取り組んでいくべきだと、こういうふうに考えておる次第でございます。
-
○久保亘君 既に労使の間で話し合いが行われて、その結果二万人を超える合理化の問題が出てきているわけでありまして、結果的にはこの余剰人員の問題は、国鉄労働者並びにその家族に対して雇用と生活の大きな不安を与えております。この問題については政府としては一方的な解雇はしないという約束をすべきことではないかと思うのでありますが、いかがでございますか。
-
○
国務大臣(藤波孝生君) 余剰人員問題を含む国鉄事業再建の方向につきましては、国鉄再建監理
委員会で本年半ばごろには最終
答申が取りまとめられる予定と聞いておる次第でございます。この
委員会の最終
答申が得られておりません現在の
段階で、解雇するかしないかという論議ができる状況にはありませんけれども、雇用の問題は国鉄の事業再建を進める上で極めて重要な問題であることはよく承知をいたしておるところでございますので、雇用の安定には十分留意しながら再建対策を進めてまいりたい、このように考える次第でございます。
-
○久保亘君 ただいまの
官房長官の
答弁に対しては納得できかねるのでございまして、最終
答申が出てからではこの問題はなかなか難しい問題ではないか、こう思います。
既に国会でも亀井
委員長も、長年国鉄に勤め、
努力された方々を路頭に迷わすことは絶対に許されない、そういうことをしない基本対策をどう考えるか、これに真剣に取り組んでいきたいと思っております、こういう発言をされているのでありまして、一方的解雇はしないという約束を政府が行うことが私は必要だと思うんですが、重ねて
官房長官のお答えをいただきたいと思います。
-
○
国務大臣(藤波孝生君) 労働行政のあり方といたしまして、労使の問題は常によく話し合うということが大事であり、一方的に解雇することは望ましいことではないと考えております。このことを念頭に置いて、雇用の安定に十分留意をいたしまして再建対策を進めてまいりたい。政府といたしましては、以上の
考え方を大事にいたしまして取り組んでまいりたいと考えておる次第でございます。
-
○久保亘君 ただいま
官房長官から政府の見解としての御
答弁をいただきましたが、きょうは国鉄
総裁にも御
出席いただいておりますが、もうこの際国鉄
総裁としての
意見を求めることはきょうは時間もありませんのでやめたいと思いますが、ただいまの政府の見解を最低限のものとしてこれを尊重して、今後余剰人員問題に取り組まれるように強く要請をいたしておきます。
それでは次の問題でございますが、今度の政府予算案に、台湾出身元日本兵の補償にかかわって調査費が計上されておりますが、この調査費はどういう目的で、何を調査されるおつもりですか。
-
○
国務大臣(藤波孝生君) いわゆる台湾人元日本兵問題につきましては、六十年度予算案に総理府に五百万円の予算を計上いたしておるところでございます。これは台湾人元日本兵問題をどう考えるかということを
検討するための経費として計上いたしておるものでございます。
この問題につきましては、六十年度予算の成立後、
検討の場を設けることになると思いますが、
検討の方法、
内容等につきましては、予算成立後、関係省庁と十分相談をいたしまして進めていくようにいたしたい、こう考えておる次第でございます。
〔
委員長退席、理事梶木又三君着席〕
-
○久保亘君 これは人道上の問題としてももう前から問題が提起されていることでございまして、補償を行うという目的で調査をするのだということで理解してよろしゅうございますか。
-
○
国務大臣(藤波孝生君) 従来国会におきましてもいろんな御論議がありましたことを十分心得ておるところでございます。そういういろんなお声を背景にいたしまして、六十年度予算案の中に五百万円のいわゆる
検討費を計上する、こういう運びにいたしたところでございますが、どのようにこの問題を考えていくかということを中心にいたしましてこの予算を使って
検討していくことになろう、こう考えておりまして、従来の経緯、いろいろな御
意見等も十分参考にさせていただきまして
検討をしていくようにいたしたい、こう考える次第でございます。
-
○久保亘君 外務
大臣、この問題はこの調査の結果一つの方針が出れば、外交上はもう問題ございませんね。
-
○
国務大臣(
安倍晋太郎君) この問題につきまして外務
大臣としての見解を申し上げさせていただきますが、旧日本軍人、軍属として戦死をされました台湾住民の遺族及び戦傷を受けられた台湾住民に関する補償問題につきましては、人道上という面から誠意を持って
検討しなければならないとの認識を持っておるものでございますが、この問題を対外的な請求権問題として
検討することにつきましては、これは日台間の全般的な請求権問題がまだ未解決であるということ、あるいはまた台湾以外の地域との公平であるとか、また波及の問題であるとか、そういうものを考えなければならない。これは外交上の問題でございます。さらにまた財政事情等の問題もあることもございまして、慎重に
検討する必要があるのじゃないか、こういうふうに考えております。
-
○久保亘君 この問題については、また
機会を見て、少しいろいろ政府の具体的な考えをお尋ねしたいと思っております。
次に、
日本道路公団の路線用地の購入の問題及び建設工事をめぐる疑問点についてお尋ねをいたしたいと思いますが、その前に通産
大臣にお尋ねしたいのは、セメント業界並びに生コン業界は、現在不況にある業種の一つでございますが、通産省はこの生コン業界についてはどのような指導を行っておられますか。
-
○
国務大臣(
村田敬次郎君) お答え申し上げます。
セメント、生コン製造業は、二度にわたる石油危機の影響によりまして、原材料、エネルギーコストの上昇、需要の低迷、過当
競争の激化、生産能力の過剰というような産業構造的な問題を抱えておりまして、
昭和五十四年を需要のピークといたしまして年々需要も低下をし、そして稼働率も低下をしておる非常に厳しい経営状態に直面をいたしております。
このため、通産省といたしましても、昨年の五月二日に特定産業構造改善臨時措置法の特定産業にセメント製造業を
指定をいたしまして、構造改善基本計画を策定をいたしたところでございます。これを受けまして、現在業界としては、共同事業会社を核とするグループ化をいたしまして、これによって過剰設備の処理を含めて生産、流通等の合理化を
内容とする構造改善を目下推進をしておるところでございます。
-
○久保亘君 今のことに関連して、国のいろいろな工事、公共事業等について、地元業者の育成というようなことについても指導なすっておりますか。
-
○
政府委員(篠島義
明君) 特に生コンの構造改善につきましては、現地のいろいろな需給の状況等を勘案しながら、構造改善が円滑に進むよう、しかるべく行政的な対応をしております。
-
○久保亘君 建設省や道路公団は、今の通産省の指導などについて具体的にどのような
配慮をされておりますか。
-
○
政府委員(
田中淳七郎君) お答え申し上げます。
建設省は普通、直轄工事その他補助事業のコンクリートの工事がございますが、それに関しましてはJISに合格する工場であれば別にどこでもよい。要するに安い値段のところということでございます。ただしJISに合格するものでないと困る、そういう指導をいたしております。
-
○
参考人(
高橋国一郎君) 生コン業者につきましては、組合に加入しておるのが六割と聞いております。私どもは工事の発注に当たりましては、その工事
現場の近くにあるプラントを全部調査いたしまして、そのプラントが規模の上においても適正であるかどうか、品質でも良好かどうか、また私どもの工事
現場にも距離が割に近いところにあるかどうか。これは一時間以内に到達しませんといけませんので、そういう調査を綿密に行いまして、その中から選定しているような方式をとっております。
-
○久保亘君 今の通産省の指導というのは、そうすると建設省ではほとんど
配慮されない、こういうことになるようですね、道路
局長の話では。
-
○
政府委員(
田中淳七郎君) お答え申し上げます。
JISといいますのは、
先生御案内のように、日本工業規格に合格したものでございますので、したがいまして、今私が申し上げましたように、まずJISの工場の
指定に合格している工場であること、それから、
先生も御案内のように、工事には仕様書がございますので、その工事仕様書の要求
条件を満足していること、それから要するに安いところ、そういうことになろうかと思います。
-
○久保亘君 だから、通産省の言うことは関係ないということでしょう。
-
○
政府委員(
田中淳七郎君) いわゆる日本工業規格といいますのは通産省所管でございますので、全然関係ないというわけじゃないと思います。
-
○久保亘君 話が違うじゃないか。
-
○
政府委員(篠島義
明君) 先ほど構造改善事業についていろいろ行政的に対応しておると申し上げましたが、さらに具体的に申し上げますと、今のJIS規格の徹底というような問題もございますが、それ以外に特に問題になっておるのは新規の業者の参入、ここら辺については地元で既存の業者としばしば調整問題が生じておりまして、本来供給過剰の中で新規参入があるということに伴ういろいろなトラブル、ここら辺についてはケース・バイ・ケースで必要に応じて行政的に対応しておる。ここら辺が一つの構造改善の重要な行政
内容になっております。
それからさらに、いろいろ共同事業として設備投資を必要とするようなものについては、いろいろ中小企業の特別低利の融資がございまして、そうしたものについては計画を認定した上で適宜助成をしていく。具体的に申し上げますと、構造改善についての行政の対応というのは以上申し上げたような
内容でございます。
-
○久保亘君 それでは次に、単刀直入にお聞きいたしますが、最近、私の出身の県であります鹿児島でも、志布志湾の埋立工事をめぐっていわゆる天の声論というのが、これは与野党を含めて県議会で大変問題になりました。そのような建設工事にかかわって政治的な圧力とか、いわゆる天の声とかいうようなものが作用することが絶対にないと言い切れるのかどうか、建設
大臣と公団
総裁にお聞きいたします。
-
○
国務大臣(木部佳昭君) 絶対ないものと信じております。
-
-
○久保亘君 それでは後でまた具体的にお聞きしましょう。
今度は道路公団の建設工事用地買収等にかかわって少しお尋ねいたしますが、山陽自動車道の路線予定地が、道路公団と工事の上で非常に関係の深い業者によって買収されている事実を
総裁御存じでしょうか。
-
-
○久保亘君 御存じでしたらどういうふうに御存じか、ひとつ報告してください。
-
○
参考人(
高橋国一郎君) 山陽自動車道でございますが、山口県の周東町におきまして、御指摘のように、路線発表された後に道路予定地内の土地が売買されていた事実がございました。
以上でございます。
-
○久保亘君 どうも余り歯切れがよくないようですが、要するに、今公団の方も、路線予定地が公団と関係のある業者によって買収されているという事実をお認めになりましたですね。
私が調べておりますところでは、その周辺部も含めて三万八千平米に上るように思いますが、五十六年十月に買収されております。その買収の
段階で既に公団の路線くい打ちは済んでおりますね。
-
-
○久保亘君 それでは、その買収された土地に御丁寧に道路公団の看板も立っておるようですが、これは公団がお立てになったんですか。
-
○
参考人(
高橋国一郎君) 私どもは存じておりませんが、そういうことはないと思います。
-
○久保亘君 それじゃちょっとこれ調べてもらいましょう。いいですか。これは公団がお立てになったものですか。
-
-
○久保亘君 そうすると、公団の名前をかたってこの業者は自分の私有地に看板を立てておるということになりますね。
-
-
○久保亘君 公団でお立てになったものでないことだけは確実でございますね。
-
-
○久保亘君 この業者は、自分で土地を買い占めてそこに道路公団の看板を立てて、そしてそのそばに今度は生コンのプラントをつくろうとしておるのであります。このような自動車道の用地になることが決まっている土地を買って、これを値上がりさせて公団に買わせるということになった場合には、公団どうされますか。
-
○
参考人(
高橋国一郎君) 道路公団が買収する場合には、用地買収の価格の決定に先立つに当たりまして、二人以上の、数人の不動産鑑定を行いまして、その評価を参考にして、それから近傍類似の正常な取引価格をもとにいたしまして、この買い取る土地との関連を、例えばその位置であるとか、形状であるとかあるいは環境等、そういうものを調査いたしまして総合的に
検討して適正な評価を行っておりますので、私どもはその土地だけ高く買うこともございませんし、適正な価格でもって買い取ることにしております。
-
○久保亘君 この土地は五十六年の十月に買い取られて直ちに所有権移転が行われ、そして同時に第一勧銀の銀座支店で五千万の抵当権の設定がなされております。大体その程度の価格で取引されたものと思いますが、それならば公団の
総裁は、この五十六年十月にこの業者が先行取得した価格を上回るような価格では買わない、筋の通る価格でちゃんとこれを買収するということを約束できますか。
-
○
参考人(
高橋国一郎君) ただいま申し上げましたように、
日本道路公団が買収する場合には、その時点におまして評価をいたしまして、これは一人ではなくて数人が評価をいたしまして、その価格をもとにして先ほど申し上げましたような近傍類似の価格から判定するわけでございますので、土地を買った人の価格のようになるかどうかは私は存じません。
-
○久保亘君 大体周辺の、公団がお買いになります用地買収の価格をいろいろな角度から専門家に推計をさせますと、買収したときの予想される価格よりもはるかに高い価格で公団は買うことになるはずです。そうすると、その支出される金はこれは
国民の税金ですよ。明らかに公団の事業を食い物にした土地ころがしをあなた方認めていくということになりませんか。
-
○
参考人(
高橋国一郎君) 再三申し上げましたように、鑑定士に依頼して調査した結果をもとにして、適正な価格でもって買収しております。
-
○久保亘君 適正な価格であなた方が買収されたらこの先行取得した業者はもうかると、こういうことになるんですよ。そうなりませんか。
-
○
参考人(
高橋国一郎君) おっしゃるとおり、ルート発表した後に買収されることは好ましくないことで、私どもできるだけこういうことはやっていただきたくないのでございますが、現在、私有財産制を守る
現行法制下におきましては、残念ながらそういう事例はたまにはあるわけでございます。しかし、価格の決定につきましては、再三申し上げますように、我々が購入する時点におきまして鑑定士を入れまして評価していただいて決めております。
-
○久保亘君 これは建設
大臣の
意見もちょっと聞いておきましょう。
-
○
国務大臣(木部佳昭君) いやしくも
国民の前に立った場合に、道路公団御自身がそうしたものを食いとめるために行政上長善な
努力を尽くされておると、私は信じております。
-
○久保亘君 特に、私は道路公団と関係のない不動産業者がやったというのではなくて、道路公団の仕事をかなり長期にわたってやっているその業者がそういうことをやるということは、これは大変問題だと思うんですよ。そうお考えになりませんか。あなたもさっきあると言われたが、この会社の名前は御存じでしょう。
-
○
参考人(
高橋国一郎君) 本日の
先生の質問があるということで調べさせていただきまして、名前を知ることができました。
-
○久保亘君 これは明信産業と称する東京に本社がございます資本金四百万の会社でございます。この資本金四百万の明信産業はどういうわけか五十三年ごろから道路公団の仕事に深く食い込むようになったように思いますが、それは間違いございませんか、五十三年ごろから道路公団の仕事をするようになったというのは。
〔理事梶木又三君退席、
委員長着席〕
-
-
○久保亘君 そして、まずこの明信産業が手がけます仕事は、山陽自動車道よりも少し前に中国自動車道で島根県の六日市というところに突然プラントをつくるのであります。地元の業者とトラブルを起こし、地元の自治体等からも地元業者を保護してくれという陳情がある中で断固としてそこにプラントをつくってしまう。そして、道路公団の仕事を最高率でそこへ落下傘でおりた会社がとる。地元業者であるという装いをするために中国明信産業という名前をつけているんですが、これは御存じですか。
-
-
○久保亘君 六日市の仕事が終わるとこのプラントは閉鎖いたします。そして今度は、山陽自動車道の岩国市小瀬にヤマト住建という名前で出てくるのであります。そして、このヤマト住建でまた最高率で公団の生コンの仕事をやらしてもらう、こういうことになるんですが、これも間違いありませんか。
-
-
○久保亘君 そして、この中国の小瀬でそういう生コンの公団の仕事を、ここでやっぱり業者とトラブルを起こしながら落下傘でおりていってヤマト住建という名前でやるんです。そして今度は、そこの仕事が一段落つくことを二年も前に見越しておいて、さっき申しました周東町の土地を買収して、そこに今度は移転していくのであります。そして、ここでまた公団の生コンの仕事をとる、そういう計画を進めていると聞いておるのですが、この用地はそういうことになっているのだということを御存じですか。
-
-
○久保亘君 あなたがさっきお認めになりました用地を買収しているというその買収は、三万八千平米の中にそれが予定されているわけですね。ずっと道路公団の仕事にくっついて、地元とトラブルを起こしながらもその資本金四百万の東京の本社が資本金百万でダミーをつくっていくのです。そして、このダミーが工事を一番多くとるんです。こんなばかなことがあり得るでしょうか。
-
○
参考人(
高橋国一郎君) 事実かどうか私も存じませんが、ただ私どもが生コンの業者を選定する場合は、先ほどもちょっと触れましたが、工事を行うその
現場の近くにあるプラントを全部調べます。そのプラントが果たして設価が十分か、あるいは生産能力があるか、あるいは品質がいいかどうか、それから工事
現場までの距離が一時間以内に達することができるかどうか、そういうのを調べまして、それで、かつ今度は道路公団の検査を行いまして合格したものを使うことにしております。ただ、たくさんございますというと、あるセメントの製造の銘柄が集中してもいけませんので、全国的な
バランスはとることにはしておりますが、そういう方策でやっております。たまには、全く山の中ですというとプラントがない場合がございます。どこからも一時間以内で運べないときがございます。そういう場合には請負建設業者につくらせる場合もありますが、あるいはそういうのを知ってどこかがつくる場合もあるかと思います。今回の場合そういうのに該当するのではないかと存じますが、そういう一つの盲点をつかれたように感じております。
-
○久保亘君 冗談を言っちゃいかぬです。それだったら地元の業者には仕事をやれるはずがないじゃないですか。一時間よりも遠いからだめだとか、それから能力がないとかいうなら。このヤマト住建とか中国明信産業が三割から五割の仕事をとって、あとは地元に分けているんですよ。地元でできるものが何でこれでないといかぬのですか。
-
○
参考人(
高橋国一郎君) 先ほど申しましたように、製造セメントの銘柄によって公平に全国的にシェアを決めましてそれでやっております関係上、地元によっては違った取り扱いになる場合があるかと思いますけれども、原則は先ほど申しましたとおりでございます。
-
○久保亘君 いろいろ理屈を言われるけれども、私はそういう
基準でもってやられたとはとても思えないんです。そこへ突然出てくるんですよ。そして、地元の業界といつもトラブルを起こす。知事も市長も何とかしてくれというので、公団の
総裁にも陳情がいっぱい来ているはずですよ。そういうものはいつも無視されて、そして落下傘でおりていったこの業者が一番たくさんとる。こんなばかなことはない。それは認めてもらわなければ困りますよ。
-
○
参考人(
高橋国一郎君) 一般的に、地元の生コンの業者を使ってくれとか、あるいは建設業者を使ってくれという要請は県当局その他から再三来ております。そのように私どもは処置しているわけでございます。
-
○久保亘君 こういうようなことがなぜ生まれるか、このことについて公団としてお考えになってみたことはございますか。なぜこういうような業者が出てくるか、それはお考えになってみたことはありますか。
-
○
参考人(
高橋国一郎君) 恐らく、先ほどちょっと申し上げましたように、プラントの少ない山の中のところに、そういうところを目指してそういうプラントをつくりますと、私どものやり方を知っておってそういうことをやる会社ではないかというふうに私どもは判断しております。
-
○久保亘君 全然公団の仕事がとれるかとれないかもわからぬのに多額の投資をやって山の中につくるはずがない。初めから、公団から今度はあそこへプラントをつくったらおまえのところには仕事はどれだけやる、こういうことの約束がなければそんなところへ投資する者はないと私は思うんです。
-
-
○久保亘君 あなたはそう信じられても、しかし信じがたいことが世の中には起こるものですね。私がさっき言った事実をあなたずっと認められた。しかし、それは何も特別なことではなくて偶然に起こったことだ、こういうふうにおっしゃるのですか。
-
○
参考人(
高橋国一郎君) 詳細に調べてみなければわかりませんが、あるいはほかにもこれに類似したのがあるかもしれません。自信はございません。
-
○久保亘君 そうです。自信があるはずがないんです、こういう問題は。
それで、私はやっぱりこういうような関係が生まれてくるのは、先ほど言った政治的介入、天の声と称するやつ、これが一つはあると思う。もう一つの問題は、公団がほかには余り例を見ない資材の直接支給方式をとっておられますね。この直接支給方式というのをおとりになっている理由は何でしょうか。
-
○
参考人(
高橋国一郎君) 当公団は、セメント支給材料ということで支給材料
制度をとっております。これは大規模な道路建設工事を円滑にかつ計画的に実施するためにとっている措置でございまして、セメント価格が急激に変動したときやセメントの市場が逼迫したときにおいても適正な価格で円滑に調達できるという利点がございますし、またコンクリート構造物の品質管理が適正に実施できること、また大量購入することによりまして低廉な価格で購入できる上に経費も節減が図れるというふうな利点がございますので、道路公団創立の直後から、
昭和三十二年からずっと今日までとっておる方式でございます。
-
○久保亘君 建設
大臣、ほかにこのようなセメントや鋼材の直接支給方式をとっているところはございますか。
-
-
○久保亘君 非常に少ない例だと思うんですが、確かに
総裁がおっしゃったように、ある種のメリットもあろうかと思う。しかし、私がさっき申しましたような、非常に問題となるような疑惑を生むような業者の暗躍というのは、こういう直接支給方式でなければ生まれにくい。この直接支給方式があるから生コンの業者も公団が
指定していくことになる。そこへうまく食い込んでくるわけですね。だから、やっぱりこの直接支給方式には問題点もあるということをお認めになりますか。
-
○
参考人(
高橋国一郎君)
先生のおっしゃるような問題点もあろうかと思いますが、利点も非常に多いものですから、この方式は今後も続けたいと思います。
-
○久保亘君 そうすると、そういうことであなたの方から、セメントはおれの方からやるからおまえの方には練り賃をやる、そのかわり生コンの業者は、業者とも相談するんでしょうが公団が
指定する。こういう形になっておれば、どうしてもそういう落下傘でおりていくのが出てくるんです。そうすると、そこにやっぱり疑惑や不公平や不正を生んでくるじゃないですか。そういうことよりもあなたの言われるメリットの方が大きいですか。
-
○
参考人(
高橋国一郎君) メリットの方が大きいと存じますので、今後はそういう
先生の御指摘のないように厳正にまた正しくやっていきたいというふうに思っています。
-
○久保亘君 この問題についてはもうあなたがそう言われるのならなにですが、建設
大臣はどう思われますか。
-
○
国務大臣(木部佳昭君) いろいろ御指摘いただきましたが、私は先ほど来申し上げておりますように、そういう疑念を抱いたり疑惑を招く、こういうことはやはり
制度の
問題等についても問題があるかないか、改善すべき点は改善し、そしていやしくも疑念を抱かれないような、そういうことを公団その他に対して強く指導してまいりたいと思っております。
-
○久保亘君 じゃ最後に、
総裁はこの明信産業の社長と面識ありますか。
-
○
参考人(
高橋国一郎君) 私も毎日大勢の方に会っていますので、あるいは会ったことがあるのじゃないかとは存じますが、今言い出されまして、顔をちょっと思い出すことはできません。その程度のつき合いでございます。
-
○久保亘君 何か大変政治家ともつき合いの多い方のように伺っておりますけれども、ちょうど五十三年に公団の仕事を始めます、そのちょっと前に大蔵
大臣は建設
大臣をお務めになっておりますが、最初の仕事が島根県でもございますので、念のためにお尋ねいたしますが、大蔵
大臣はこの藤本さんという方を御存じでしょうか。
-
○
国務大臣(竹下登君) お会いしたことはございません。この間そういう情報を入れていただきましたので、本人さんに聞いてみたら、竹下登という政治家の顔はテレビで知っておる、ただし本人に会ったことはないということでございました。
ただ、念のために申し上げますならば、私の後援会、長期政策総合懇話会というのがございます。会員がおよそ二千六百人ぐらいだと思っております。月額一万円。その会員の一人であるということは調査の結果わかりました。その会員になるためには二名の推薦者が要るということになっております。それが今、五十四年入会だそうでございますので、そのころの書類を調べておりますが、どなたがこの推薦人であったかということはちょっと定かには調べがついておりません。
-
○久保亘君 五十四年に後援会の一つに御入会になりましたということは、ちょうど島根県で道路公団の仕事をこの業者がやった、その翌年のことでございますね。それで、やっぱり
大臣の方はもうたくさんの後援会員をお持ちですから、一々面識その他思い出せないのかもしれませんけれども、私が聞いておりますところでは、用地を買収するときに使われる名前は要という名前を使っておられるんです、藤本要。そうすると、会社の代表のときには藤本泰史という名前になっておるんですね。これもちょっといろいろいわく因縁を感じさせるような気持ちがいたすのですけれども、こういう非常に小さな会社で、どこで事業所を持っておられるのか知りませんけれども、東京に資本金四百万の本社を建てておいて、公団の仕事を目がけて百万の会社をつくっておりていく。これは百万の大軍というんだろうけれどもね。そういうような形で道路公団の仕事を食い物にしたり、用地を先行取得して土地転がしをやったりするようなことは、これはもう絶対に認められちゃいかぬことだと思うんですね。だから、大蔵
大臣もその種の者に対しては、これは後援会からすぐ除籍すべきだと思うのですが、いかがですか。
-
○
国務大臣(竹下登君) 実態をよく承知しておりませんので、よく調査をしなければ、仮にもし私の方が間違っておったとしたら本人の名誉にも関することでございましょうし、にわかにお答えするわけにはまいりませんが、私の方で調査しなければならないことだと思います。
なお、もう一つ事実としてわかりましたのは、事務所等へいらっしゃったことは全くないそうでございます。
-
○久保亘君 それでは、この問題についてはさらに公団の方も調査をし、そして厳正にこの問題を処理していただく、こういうことで
総裁の御
意見を承っておきたいと思うのですが、最後に
総裁のお考えをお聞きいたします。
-
○
参考人(
高橋国一郎君)
先生の御指摘、肝に銘じましたので、厳正に調べまして、厳正に処置するつもりでございます。
-
-
-
○久保亘君 次は、今非常に話題にもなってまいりました酒税の改正をめぐる問題についてお尋ねをいたしますが、五十九年度の酒税収入が当初の見込みから大幅に減額補正された、その要因は何でしょうか。
-
○
政府委員(梅澤節男君) 御指摘のように、五十九年度の補正予算におきまして酒税の税収額二千四百五十億円の減額をいたしました。その主な要因といたしましては、ビール、それからウイスキー類の課税数量の動きが当初予算で見積もりましたものに比べまして非常に鈍化しておる、そういう実態に即しまして減額補正したものでございます。
-
○久保亘君 最初から見積もりに少し無理な点があったのじゃないですか。
-
○
政府委員(梅澤節男君) これは毎度申し上げておるわけでございますけれども、五十九年度の税収見積もりを立てますときに、各酒の酒類ごとの課税数量を一体どう見るかというのは大蔵省が独断で立てておるわけではございませんで、その翌年度の課税数量といいますか、市場の状況等について各業界のヒアリングを行いまして見積もりを立てたものでございますけれども、それが結果的に狂ったということでございます。
-
○久保亘君 この酒税の収入減額の原因に何か
国民の酒に対する消費の嗜好がしょうちゅうに大きく移動したということが原因だと主張する人たちがおりますが、そういうことがありますか。
-
○
政府委員(梅澤節男君) これは大変難しい問題でございますけれども、事実といたしましては五十八年の十一月からしょうちゅう類の伸びが非常に顕著になっておりまして、それと並行いたしましてウイスキー類それからビールの伸びが鈍化してまいりました。
ただ、五十九年、つまり昨年の十月、十一月あたりから特にビールは若干持ち直しをしてきております。ウイスキー類もやや持ち直しの傾向がございます。これが一九七〇年代に起こりましたアメリカのいわゆるホワイト革命と言われるものがございまして、色物から白物の方へ大きく消費が動いた、そういうものが日本に起こってきているのかどうかというのは種々
議論がございまして、私どもとしてはもう少し情勢の推移を見守る必要があると考えております。
-
○久保亘君 五十九年の十一月の統計では、しょうちゅうは前年比甲類で一〇六・〇、乙類九三・九ですね。
-
○
政府委員(梅澤節男君) 御指摘のとおりでございます。
-
○久保亘君 ところで、大蔵省が六十一年度の酒税改正に当たっては、大衆酒であるしょうちゅうの課税強化の方針を考えているというような報道がしばしばございますが、
大臣いかがですか。
-
○
国務大臣(竹下登君) 今、主税
局長からお話ししましたように、本当はいわゆる嗜好の変化なのか、それは一時的なものなのか、恒久的なものなのか、それはいましばらくの時間をいただきたいと思います。
それで、まず結論から申し上げますと、現在この問題は具体的な
検討を行ってはおりません。ただし税制調査会の従来からの
答申で見ますと、五十八年十一月に中期
答申をいただいて、そこで「酒類間及び級別間の税負担格差の縮小を図ることが適当」だと言われて、五十九年、今の税制が動いているわけです。さらに、六十年度税制改正の
答申の中においても「最近における酒類消費の実態等をも踏まえつつ、中期
答申に示した
考え方に即して、今後とも
検討を行っていくことが適当である」という、
検討事項としての指摘は受けておるわけであります。
税制でございますからいつもそれは
検討はしておかなければなりませんが、現在、今おっしゃったことに対しては具体的な
検討は行っておりません。
-
○久保亘君 昨年の、五十九年度の酒税改正のときにはしょうちゅうは平均よりもかなり高いアップ率で税率の引き上げが行われておりますね。
-
○
政府委員(梅澤節男君) これはただいま大蔵
大臣が引用なさいました五十八年の税制調査会の
答申の
考え方に基づきまして、一般的には税率アップの引き上げ幅を二〇%を軸にいたしまして、御指摘のしょうちゅう類については、これは甲類と乙類によって若干段差は設けてございますけれども、引き上げ幅といいますか、引き上げ率を高くしたという改正をいたしました。
-
○久保亘君 最近しょうちゅうの税率が低いからウイスキーが売れないんだというようなことをメーカーの代表のような人たちが主張しておりますので、私いろいろ調べてみましたら、サントリーの社長という方は、今政府の税制調査会
委員や中央酒類審議会の
委員をされておりますね。これ間違いございませんか。
-
○
政府委員(梅澤節男君) その役職をお願いいたしております。
-
○久保亘君 そのお願いの仕方に問題があるんじゃないでしょうか。税制調査会の
委員が自分の企業の利害にかかわって他の税率を上げろとか、そんなことをやるようでは私困ると思うんです。
それから、酒類審議会の
委員になっておって、しょうちゅうを飲むやつは非文化人であるとか、これ本当に言っておるんですよ。それから、しょうちゅうは女で言えば芋ねえちゃんだ、こんなことを言っているんです。私はこういう人が税制調査会の
委員とか酒類審議会の
委員になっておる資格はないと思うのだけれども、どうだろう。
-
○
政府委員(梅澤節男君) まず、中央酒類審議会の方は、これは
国税庁の審議会でございまして、これはあらゆる酒類業界からの代表が加わっておられるその
委員会の
委員でございます。
それから、税制調査会の方は、これは実は酒類業界の代表ということじゃございませんで、従来から経済団体ということで関西の経済団体の御推薦がございまして、私どもが指名をしたというわけじゃございませんで、御推薦をいただいて総理
大臣が任命されたという経緯がございます。
それから、今おっしゃいました個人の御発言の問題については、私どもがとやかく言う問題ではないということで、御
答弁は差し控えさしていただきたいと思います。
-
○久保亘君 私はサントリーの社長にどうこう言っているのじゃない。税制調査会の
委員や中央酒類審議会の
委員をしている人がそんなことを言っていいか、そういう発言をするような人がその
委員におっていいのか、こういうことを言っているんです。
-
○
政府委員(梅澤節男君)
委員の御任命の手続なり経緯はただいま申し上げたとおりでございます。
税制調査会の
委員としての御発言ということになりますと、私は問題があるかと思いますけれども、恐らくそれは個別の業界の社長として御発言になっておるという側面もやはり否定はできないのではないかと思います。
-
○久保亘君 そういうことであれば、問題があるのであれば、大蔵
大臣、税制調査会と酒類審議会の
委員はやめてもらいなさい、いかがですか。
-
○
国務大臣(竹下登君) サントリーはしょうちゅうもつくっております。恐らく酒屋さんでございますから、私も酒屋でございますけれども、自分の製品のことについて、これは税制調査会での発言だとは私も思いません。そういう発言があったかないかも定かには存じませんけれども、自分のつくっておる酒類についていろんな評価をされたことなのかなと思います。
酒類審議会の方は、これは各業界の大体代表的な方が入っておられて、学識経験者では前参議院議員であった小谷
先生に入ってもらってあの辺で上手に調整していただいておると、こういうことでございます。
-
○久保亘君 大蔵
大臣ね、間違っちゃいかぬですよ。あなたのところもしょうちゅうつくっておるんじゃないかと聞かれたら、あれはしょうちゅうじゃない、ウオッカだと言ったんだ。おれのところはしょうちゅうはつくっておらぬと、あれはウオツカだと。しょうちゅうというのは一升瓶に入っておるもんだと、こう言っておるんですよ。
-
○
国務大臣(竹下登君) しょうちゅうの免許をお持ちでございますから、それは、その発言のちょっと論評は私も実際に聞いた話じゃございませんので、コメントしにくい問題でありますが、見識の広いお方でございますし、結構じゃなかろうかと思っております。
-
○久保亘君 それは私は納得できませんね。第一、差別的な言辞を弄したり、それから自分の会社の利益にかかわるような税制上の発言をしたり、そういうことをする人を適当な人だと、私は納得できない。
-
○
国務大臣(竹下登君) そういう事実があれば、それはいわゆる私的にでも御忠告申し上げなければいかぬことでございましょうけれども、まあ大阪商工会議所の代表でもございますし、私は差別的な発言というのはなかろうかと思います。事実、しょうちゅうは恐らく本当にここの中にいらっしゃる方々も、大分ウイスキーや清酒からしょうちゅうの方へシフトしていらっしゃいますし、むしろ差別どころか、日本の国酒と言えば清酒でございましょうが、国酒のまた粋とでも言えるものじゃないかなあというふうに、差別などは絶対にいたしませんから。
-
○久保亘君 日本の国酒は清酒じゃありませんよ。しょうちゅうの方が歴史ははるかに古いんです。そういう認識は間違いだと思うね。
-
○
国務大臣(竹下登君) あれは、久保さんの御出身地はそう言いますし、私の出身地はヤマタノオロチの、そこから清酒を国酒と声うておるわけですから、これは一つのお互いが地域プライドを持った発言として選挙区では評価されるではなかろうかと思います。
-
○久保亘君 いや、これは中曽根総理もしょうちゅうを大変お好きだと私伺っておりますけれどもね。総理
大臣が非文化人では困るんで、それでやっぱり政府の審議会の
委員をされているような方はこういうのは慎重な発言でないといかぬ。それから、税制調査会に一つの暗示を与えるようなことを、しょうちゅうの税金をもっと上げるとか、そういうようなことは言うべきことでは私はないと思うのです。
それで、この際大蔵
大臣は、しょうちゅうの課税強化について現在大蔵省は全く考えていないということを明確にしていただきたいと思います。
-
○
国務大臣(竹下登君) これは、税は動いていくものでございますから、三年に一遍ぐらいの見直しはいつもすることでございますが、現在
検討を行ってはおりませんと言うにとどめておきましょう。
-
○久保亘君 それでは時間が余りありませんので、次は航空路線の問題で、日米航空協議の現状とその見通しについて、運輸
大臣。
-
○
国務大臣(山下徳夫君) 日米航空交渉の主たる
内容はNCA、つまり日本貨物航空のアメリカ本土乗り入れでございます。この問題につきましては昨年来ずっと交渉を重ねてまいりましたし、ことしに入りましてかなり詰めてしかも真剣に交渉が重ねられ、ワシントンから東京、そして東京から再びワシントンということで中座されまして、そして二十八日からまた再開をいたしております。
私どもといたしましては、まず筋を通してやるということ、筋とは一体何かというと、他のいろんな
要件に左右されない、アメリカにおいて今日本とアメリカの貿易の不平等とかいろんなことを言われておりますけれども、そんなことじゃなくて、日米間に現在ございます航空条約に基づいてやるということがまず第一の筋である。それからもう一つは、日本とアメリカの航空がややもすれば過去において不平等であったと言われておりますが、それがさらに格差が開くことがないように、むしろ縮めると、この二つが主なる私どもの筋というふうに私も理解いたしておりますし、そういうことで交渉には真剣に取り組むように私も常に指示をしてまいっております。
しかしながら、四月一日という一つの目途、私の方の要求もございますし、いよいよ今度の交渉、私はもう最後だという気持ちでもって激励してワシントンに向けたのでございますが、今回はそういう意味から事務次官も派遣いたしまして、トップ交渉、もう
現場において既にいかなる問題についても解決できるような我が方の強力な体制でもって今臨ましております。
きょうは三十日でございますが、今、ワシントンは三十日の恐らく午前一時か二時かと思いますので、丸々あと二日間ございますので、非常に詰めたような言い方でございますけれども、いよいよぎりぎりのところまで来るならば、これはサインよりも前にお互いの口約束でもっても四月一日から飛ばせよというぐらいの腰でやれということまで私は言っておりますが、どうしてもいけない場合が仮にあったとしても、四月一日という線に私は非常にこだわるわけではございませんが、我が方の
立場からしても、まずこれを実現できない、万が一今申し上げましたようにできないとしても数日おくれぐらいでできるようにぜひとも交渉の成立を見たいと、このようなつもりでございます。
-
○久保亘君 そのことに関連をして、国際線の事業分野の見直しが日米協議の中で話し合われておりますか。
-
○
国務大臣(山下徳夫君) まあ具体的に申し上げますと、我が方からの複数の乗り入れということでございますが、その
内容の中にはそれも入っておりますが、詳しく申し上げるということでございますれば
政府委員から具体的に申し上げたいと思います。
-
○
政府委員(
仲田豊一郎君) 政府間で具体的に日本の企業が何社アメリカに乗り入れるべきか、それからアメリカの会社が何社乗り入れるべきかということは既に航空協定の
内容で定まっております。お互いに複数、解釈の問題といたしましては両方に違いがございますが、少なくとも三以上の企業がお互いに業務を行えるという仕組みになっておりまして、現在やっております日米間の包括的な交渉の中には、そういうお互いに乗り入れができる企業の数を路線ごとに、大きな路線については多数の企業、小さな路線については、需要の少ない路線については例えば一社とか、そういうような整理をすることを念頭に置きながら包括交渉をやっている次第でございます。
-
○久保亘君 そうすると、運輸省としても、将来国際線に全日空や東亜国内航空を乗り入れさせると、四五、四七体制の見直しをだんだん
検討しなければならぬ
段階であると、こういうふうに考えていいんですか。
-
○
国務大臣(山下徳夫君) 国際線の複数社による乗り入れにつきましては、相手国との航空権益の
バランスを図るという
観点から、例えば日米間のようにこの権利を確保しておくという必要があるわけでございますが、現実にこの権利を行使して新たな日本企業の国際進出を図るべきかどうかという問題につきましては、航空政策上の基本的な命題であると理解をいたしております。
そういう
観点から、今御指摘の四五、四七につきましては、もしも複数入るということになりますと、俗に言う四五、四七憲法でございますが、この根幹に触れる問題でございますが、国際間の交渉の成立のいかんによっては直ちにこの問題に触れるという今申し上げたとおりの
立場からも見直しが必要でありまして、あわせてまた、国際間の協定のいかんによっては各社間の
バランスということになって、それは勢い国内にも影響してまいりますので、それまで含めて私はやはり四五、四七憲法の見直しという時期に来ていると、こう申し上げて差し支えないのではないかと思います。
-
○久保亘君 その四五、四七体制の見直しの時期に来ているというお話でございましたが、国際線の複数就航ということになります場合には、今もちょっとお話しになりましたけれども、当然国内幹線のあり方についても見直しが必要になってくる、こういうふうに理解をしてよろしゅうございますね。
-
○
国務大臣(山下徳夫君) 四五、四七憲法の見直しの広い
範囲内においてその幹線問題は当然入ると思いますけれども、それは今申し上げましたように、国際線、国内線あわせてどのように見直すかということで、直ちに最初からそれがテーブルの上で議題になるかどうかということは、まだ今のところはっきりそれは予定的には申し上げることはできないと思うのでございます。
-
○久保亘君 現実には、国際線の問題を離れても国内幹線は利用の状況、利用者の何といいますか要望ですね、そういうものを総合的に
検討してまいりますと、幹線の見直しが
検討されなければならぬ
段階に来ているのじゃないかと、私はこう思うのでありますが、もう一遍そこのところを。
-
○
国務大臣(山下徳夫君) おっしゃることはよくわかるのでございますが、そもそも四五、四七憲法ができましたゆえんというものは、国内、主として国内三社でございます、その三社間に長い間いろいろな問題があったということで、関係者、権威者等の御
意見を十分聞いた上で、各社の了解も得て、そういった問題ができ上がったわけでございます。その後いろいろな経過を経て、今申し上げましたように、私は率直に申し上げて見直しの時期が来ていることはまあ事実でございますけれども、これを全面的に改革するということになるとこれは大変な作業になってまいりますので、緊急やむを得ないものから改正していくかどうかという点がまず一つあると思います。
それからもう一つの問題は、今、現在七十七の空港がございまして、その中の三十七がジェット化されております。あとの四十のジェット化とか新規空港の開設とか、とにかく大変な空港の開設等について希望が殺到いたしておりますが、これらが思うようにはかどらないということは、一つは、日本の三大空港、それは成田であり、あるいは東京国際空港であり関西空港でありますが、新しい計画に対して今事業を着工しておりますが、これらの問題が解決しなければ、ここのキャパシティーというものが大きくならなければ全く解決できないわけでございますから、これとの関連において四五、四七憲法の国内における三社の調整ということも当然これは影響を大きく受けてくることはまた一つの問題であると思っています。
-
○久保亘君 最後にもう一つ。国内空港における国際線の空席利用について、これがなかなか実現できないのは何が隘路ですか。
-
○
国務大臣(山下徳夫君) 具体的に申し上げまして、例えば
先生のところの香港—鹿児島—東京という問題もあるかと思います。これはほかにも、例えば長崎であるとか名古屋とかございますけれども、いわゆるフィルアップというやつでございますけれども、これが簡単にはなかなかいかない問題がございまして、例えば、そうなりますと国際線と国内線が混乗になりますから、それに関していろいろ国際線に乗る客の手続の問題ございますね。税関であるとかイミグレーションであるとか、それに対する一つの公務員の配置であるとか、いろいろな問題がありますと同時に、先ほど申し上げました四五、四七憲法の中に、例えば鹿児島—東京というものは東亜国内航空と全日空のこれはもう権利として認められている路線でございますから、これに例えば日本航空が入るということになりますというと、いわゆる日本航空が認められております主たる幹線という、そのカテゴリーというものが全く変わってくるわけでございますから、そこらあたりの調整がなかなか難しい問題であろうかと思っておりますが、もちろん四五、四七憲法を改正するときには、そういういろいろなものも含めて俎上に上せて、より合理的な解決を図らなければならぬことは当然のことでございます。
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○久保亘君 先ほど四五、四七を見直す時期に来ていると、こういうお話でございました。今、将来これを見直すときにはと、こういうことでございましたが、見直しに入る入らないは別にして、その見直しの時期等については、既にもう運輸省としても
検討を進められているのでしょうか。
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○
国務大臣(山下徳夫君) いつから見直しの作業にかかるということはまだ決めておりません。さっき申し上げましたように、日米航空交渉の問題がございます。あるいは二国間の交渉でもって権利だけ留保して飛んでいない路線もあるとか、そんな問題もございますし、あわせて今申し上げました国内の主たる空港の開設の時期等の問題がございますので、これらをいろいろ
検討の上、私は必要があるとするならば、やはり比較的早い時期の方がよかろうという程度のことは今申し上げられますけれども、それが一年後であるとか、二年後であるということまでは、ちょっとまだ運輸省自体の
考え方がまとまっておりませんので、申し上げることはできないかと思います。
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○久保亘君 時間がなくなりましたので、あとちょっとお伺いしたいことが幾つかあったのですが、最後に一つだけ。
裁判における訴因の変更について、刑事訴訟法三百十二条における起訴状の変更について、裁判所が変更を命ずるということはしばしば起こり得ることでしょうか。これ最高裁にもお聞きしたいと思います。
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○
最高裁判所長官代理者(
小野幹雄君) お尋ねのとおり、訴因変更については刑事訴訟法の三百十二条に規定するところでございますが、事柄の
性質上、第一次的には審判の請求者である検察官が行うということでございますので、検察官がやらないという場合にのみ裁判所が行うというわけでございますので、事例としては極めて少ないかというふうに思います。
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○久保亘君 一たん結審をした後に訴状の変更を命ずるということは、これは大変異例な場合と考えていいのでしょうか。
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○
最高裁判所長官代理者(
小野幹雄君) 大体訴因の変更と申しますのは、証拠調べが終わりまして、要するに検察官の主張するところと、それと証拠調べの結果とにそごが生じた場合に起こることでございますので、大体において訴訟の終わりの方で行われるのが通例でございます。まして、裁判所がそれを促したり、あるいは命ずるということになりますと、非常に慎重に対処するわけでございますので、結審をした後に再開してやるという場合も間々あることではございます。
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○久保亘君 法務省にお聞きいたしますけれども、最近東京地裁で、芸大汚職事件の審理で訴因変更が行われたという報道がございましたけれども、この場合には、刑訴法における被告人の十分な防御準備については保障がされておるのでしょうか。
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○
政府委員(筧榮一君) 御指摘の事件は、本年三月十九日、裁判所で、昨年に一たん弁論が終結されておりましたものを再開した上で、裁判所の勧告で訴因の変更を検察官が請求し、裁判所がこれを許可したものでございます。
三百十二条には何項かの規定がございますが、その趣旨においては、被告人の防御権あるいは弁護人の弁護権を侵害することのないようにという趣旨で規定がなされておるところでございます。本件につきましても、弁論を再開した上、検察官から訴因の変更の請求がなされ、これに対して弁護人も
意見を述べた上で裁判所がこれを許可すると。許可した上で、さらに弁護人から
異議申し立てがございましたが、裁判所はこれを却下いたしまして、結審をいたしたわけでございます。したがいまして、その間に裁判所としては、被告人の防御権を侵害することがあるかないか慎重に判断した上でこの措置がとられたものというふうに承知いたしております。
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○久保亘君 それは刑事訴訟法の三百十二条から言うと、ちょっとまたいろいろ
意見も残るところだと思うのでありますが、報道されるところでは、この訴因変更については検察側は、名を捨てて実を取ったなどという解説がございまして、私、裁判そのものに、進行中の裁判にここで
意見を申し上げる気持ちありませんけれども、
国民の
立場から見ますと、名を捨て実を取った検察側ということに対しては、非常に何か気になる表現でもあるんです。それで、法務
大臣、この問題については何かお考えになることがございますか。
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○
国務大臣(嶋崎均君) お答えいたします。
ただいまのお話、裁判が進行しておりまして、昨年結審がありました。そしてこの十九日、訴因の変更というようなことが行われたわけでございます。この
内容につきましては、現在公判係属中でございますので、私の
立場からその当否について
意見を申し述べるということは適当ではないと思うのでございますけれども、先ほど来刑事
局長からお話がありましたように、あえて申し上げるならば、今回の訴因の変更というのは刑事訴訟法の手続に基づいて的確に行われたものであると思っておりまして、お尋ねのような、結託をして云云というようなこととか、あるいは何か特別な
配慮の中で行われたものであるというふうには思っておらないというのが現実でございます。
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○久保亘君 そうするとこれは結論的には、訴因の変更を行った後は弁論の
機会はなく判決に至るという、こういう手続になりますか。
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○
政府委員(筧榮一君) 本件につきましても、訴因の変更を許可されました後で改めて裁判所から他に立証あるかということを双方にただし、双方とももう立証はございませんということで、論告、弁論を改めて行いました上で結審なされております。
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○久保亘君 終わります。(拍手)
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○
委員長(
長田裕二君) 以上で久保君の質疑は終了いたしました。
明後四月一日は午前十時に
委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後四時一分散会