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国務大臣(
竹下登君) 今おっしゃいますように、米国財務省の税制政正提案は、公平、簡素そして
経済効率を高めるような
税制改正を目指したものと、こういうような評価がございます。総理は、公平、公正、簡素、選択、それに先般の
梶木さんの御質問に対して、いわば
経済効率を高めるというような米国財務省の提案の
考え方を活力という言葉でこれを表現いたしたわけであります。これは財務省が大統領に対して今後の
税制改正の方向を示したものでございましょう。
それと、私はリーガン財務
長官ともう長いつき合いになりますが、これは私見でございますけれ
ども、幾らか環境が違う点は、私
どもは歳入、
歳出、みんな
大蔵省が担当しておる、アメリカの場合は、財務省は金融はもちろんでございますが、いわば歳入省であります。
歳出は大統領府の
行政管理
予算局が持っておるわけでございますので、したがって、その点はときにはみずからの
立場に比べるとアメリカの方が財務
長官に対する
負担が日本の
大蔵大臣より
歳出の面だけが除外されるから少し楽じゃないかなと、こんな感じを持つこともございますが、これは私見であります。したがって、どういうタイミングで実現されるのか、どういうふうな帰趨になるかというのは、今おっしゃったとおりいまだ未知数であると思っております。
ただ、おっしゃったとおり連邦税収の九割を占めるのが個人及び法人所得でございますから、その
基本的
考え方を、仕組みを変更するという点は確かに興味のある提言でございます。俗に、今もおっしゃいました、今アメリカは十四段階、一一%から五〇%でございますが、それを一五、二五、三五の三段階、これをモディファイド・フラット・タックス、いわば修正フラット税制と、こう呼んでおるようでございます。我が方も大体
基本的な
考え方として、先般の五十八年十一月の税調答申を読んでみますと、「所得水準の平準化の動向等にかんがみ、中堅所得階層の
負担の緩和にも
配慮しつつ、全体として、若干なだらかな累進構造とする方向で
見直しを行うことが適当である。」と。そこで、五十九年度税制におきまして、言ってみれば一九を一五ということにしていただいたわけであります。
アメリカの提案は、個人所得に対する所得税の
負担水準については、今回の提案によれば現行水準より低下すると説明されております。所得税だけで見ました場合は確かに低下をいたしますが、我が国の現行の所得税の
負担水準に比べますとなお高い水準にとどまるということに読めるではないかなと、こんな感じがしております。しかしモディファイド・フラット・タックスという三段階、あるいは日本でも五段階というような
議論がいろいろなされますけれ
ども、これらこそまさに国会の今のような
議論を正確に報告した、まさに税調で御
議論をいただく点ではないかというふうに思っております。評価の方向は私は余り変わっていないのじゃないかなと、日本の税調の
指摘もそう大きな逆行するものじゃないというふうには思っておりますが、大変興味ある
指摘であります。
それから、いわゆる設備一般を対象とする広範な投資税額控除、あるいは加速減価償却制度、これはむしろ我が方がそれらの提案に対して、現実問題としてそれはさらに租税特別
措置というのはその体系そのものから見ますとやっぱり
一つの特別
措置によってゆがみをつくるわけでございますから、非常に消極的であったのじゃないか。その意味においてはそれらはむしろ廃止、縮減すべきものというふうに提言されておるというのは、私
どもがいわば投資税額控除とか、加速減価償却制度についてお答えしておった方にアメリカの税制がいささか近づきつつあるのじゃないかと、こんな感じでもって見ておるわけであります。
そうしてもう
一つは、いわば我が国の税制調査会におきましても、法人の
基本的性格や
経済に対する中立性から法人税率は
基本的には単一の比例税制であるべきである、こういう
指摘がされておりますが、アメリカの今回のこの提言というのは、確かに現行は法人税も一五%から四六%という五段階税率をアメリカはとっておりますので、それを三三%一本にしようというのは税調の答申に大体近い答申になっておるのじゃないかなと、そういう感じがいたしております。ただ、この提案は、アメリカの現行税制から見ると十四段階を三段階にする個人所得といい、そして法人税の段階税率をやめて単一にして、しかも特別
措置を廃止する、現行の税制から見れば大変なドラスチッ
クな提言だなと、こんな感じをもって見ておるところでございます。
したがって、総理が
指摘を受けて、さらに活力という点を、公平、公正、簡素、選択。公平というのは垂直的公平と水平的公平があるそうでございます。所得の多い者がそれだけ税
負担が多いというのが垂直でございますか、水平というのは同じ所得のある者が特別
措置等でゆがめられないで公平な税を払うという意味において水平的、垂直的、あるいは公正というのはそれに多少の倫理観が加わったものじゃないかと思いますし、簡素というのはできるだけわかりやすいということでございましょう。選択というのは、最終的には
国民の合意と選択が得られなければ税制はもたないという意味で使われておるわけでございますし、さらに活力というものを加えられたということが、いわば重税感とかというようなものに対する活力を失う方向に作用するものに対して、活力を生み出す方向を念頭に置いていなければならぬという意味でおっしゃった言葉だと思っておりますが、アメリカの提案は実現性とか、これからのプロセスは予断ができませんけれ
ども、大変興味のある
指摘であるというふうに理解をいたしておるところであります。