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1985-03-11 第102回国会 参議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年三月十一日(月曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員の異動  二月十三日     辞任         補欠選任      竹山  裕君     西村 尚治君      藤田  栄君     森田 重郎君      松岡満寿男君     斎藤 十朗君      近藤 忠孝君     上田耕一郎君  二月十八日     辞任         補欠選任      斎藤 十朗君     長谷川 信君      久保田真苗君     本岡 昭次君      上田耕一郎君     安武 洋子君  二月二十二日     辞任         補欠選任      本岡 昭次君     久保田真苗君      安武 洋子君     上田耕一郎君  三月六日     辞任         補欠選任      中野  明君     鈴木 一弘君  三月七日     辞任         補欠選任      中村 太郎君     山東 昭子君      西村 尚治君     林 健太郎君      海江田鶴造君     矢野俊比古君      成相 善十君     吉村 真事君      長谷川 信君     斎藤 十朗君  三月八日     辞任         補欠選任      村沢  牧君     大森  昭君  三月十一日     辞任         補欠選任      斎藤 十朗君     水谷  力君      吉村 真事君     成相 善十君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         長田 裕二君     理 事                 井上  裕君                 岩本 政光君                大河原太一郎君                 梶木 又三君                 亀井 久興君                 志苫  裕君                 太田 淳夫君                 内藤  功君                 伊藤 郁男君     委 員                 安孫子藤吉君                 岩動 道行君                 梶原  清君                 古賀雷四郎君                 沢田 一精君                 山東 昭子君                 志村 哲良君                 杉山 令肇君                 関口 恵造君                 田中 正巳君                 土屋 義彦君                 成相 善十君                 鳩山威一郎君                 林 健太郎君                 増岡 康治君                 水谷  力君                 宮澤  弘君                 宮島  滉君                 森田 重郎君                 矢野俊比古君                 吉村 真事君                 穐山  篤君                 大森  昭君                 久保  亘君                 久保田真苗君                 矢田部 理君                 安恒 良一君                 和田 静夫君                 桑名 義治君                 鈴木 一弘君                 高桑 栄松君                 中野 鉄造君                 上田耕一郎君                 柄谷 道一君                 青木  茂君                 野末 陣平君    国務大臣        内閣総理大臣   中曽根康弘君        法 務 大 臣  嶋崎  均君        外 務 大 臣  安倍晋太郎君        大 蔵 大 臣  竹下  登君        文 部 大 臣  松永  光君        厚 生 大 臣  増岡 博之君        農林水産大臣   佐藤 守良君        通商産業大臣   村田敬次郎君        運 輸 大 臣  山下 徳夫君        郵 政 大 臣  左藤  恵君        労 働 大 臣  山口 敏夫君        建 設 大 臣  木部 佳昭君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    古屋  亨君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 藤波 孝生君        国 務 大 臣        (総務庁長官)  後藤田正晴君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (国土庁長官)  河本嘉久蔵君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  加藤 紘一君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       金子 一平君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       竹内 黎一君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  石本  茂君        国 務 大 臣        (沖縄開発庁長        官)       河本 敏夫君    政府委員        内閣官房内閣審        議室長        兼内閣総理大臣        官房審議室長   吉居 時哉君        内閣審議官    海野 恒男君        内閣法制局長官  茂串  俊君        内閣法制局第一        部長       前田 正道君        内閣総理大臣官        房審議官     田中 宏樹君        内閣総理大臣官        房管理室長    藤田 康夫君        総務庁長官官房        審議官      佐々木晴夫君        総務庁人事局次        長        吉田 忠明君        総務庁行政管理        局長       古橋源六郎君        北海道開発庁総        務監理官     西原  巧君        北海道開発庁計        画監理官     滝沢  浩君        防衛庁参事官   古川  清君        防衛庁長官官房        長        西廣 整輝君        防衛庁防衛局長  矢崎 新二君        防衛庁教育訓練        局長       大高 時男君        防衛庁経理局長  宍倉 宗夫君        防衛庁装備局長  山田 勝久君        防衛施設庁長官  佐々 淳行君        防衛施設庁総務        部長       梅岡  弘君        防衛施設庁施設        部長       宇都 信義君        防衛施設庁労務        部長       大内 雄二君        経済企画庁調整        局長       赤羽 隆夫君        経済企画庁調査        局長       横溝 雅夫君        科学技術庁計画        局長       堀内 昭雄君        科学技術庁研究        調整局長     内田 勇夫君        科学技術庁原子        力安全局長    辻  栄一君        科学技術庁原子        力安全局次長   藤咲 浩二君        環境庁長官官房        長        岡崎  洋君        環境庁企画調整        局環境保健部長  長谷川慧重君        環境庁自然保護        局長       加藤 陸美君        国土庁長官官房        長        永田 良雄君        国土庁長官官房        会計課長     北島 照仁君        国土庁計画・調        整局長      小谷善四郎君        国土庁土地局長  鴻巣 健治君        国土庁地方振興        局長       田中  暁君        法務省入国管理        局長       小林 俊二君        外務省アジア局        長        後藤 利雄君        外務省北米局長  栗山 尚一君        外務省欧亜局長  西山 健彦君        外務省経済局次        長        恩田  宗君        外務省経済協力        局長       藤田 公郎君        外務省条約局長  小和田 恒君        外務省国際連合        局長       山田 中正君        外務省情報調査        局長       渡辺 幸治君        大蔵大臣官房総        務審議官     北村 恭二君        大蔵省主計局長  吉野 良彦君        大蔵省主税局長  梅澤 節男君        大蔵省理財局次        長        中田 一男君        文部大臣官房会        計課長      坂元 弘直君        文部省教育助成        局長       阿部 充夫君        厚生大臣官房総        務審議官     長門 保明君        厚生大臣官房会        計課長      黒木 武弘君        厚生省年金局長  吉原 健二君        農林水産大臣官        房長       田中 宏尚君        農林水産大臣官        房予算課長    鶴岡 俊彦君        農林水産省経済        局長       後藤 康夫君        農林水産省構造        改善局長     井上 喜一君        中小企業庁長官  石井 賢吾君        運輸大臣官房国        有鉄道再建総括        審議官      棚橋  泰君        建設大臣官房総        務審議官     松原 青美君        建設大臣官房会        計課長      望月 薫雄君        自治省行政局長  大林 勝臣君        自治省行政局公        務員部長     中島 忠能君        自治省財政局長  花岡 圭三君    事務局側        常任委員会専門        員        桐澤  猛君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○昭和六十年度一般会計予算内閣提出衆議院送付) ○昭和六十年度特別会計予算内閣提出衆議院送付) ○昭和六十年度政府関係機関予算内閣提出衆議院送付) ○派遣委員報告     ─────────────
  2. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 予算委員会を開会いたします。  昭和六十年度一般会計予算昭和六十年度特別会計予算昭和六十年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。     ─────────────
  3. 長田裕二

    委員長長田裕二君) まず、総括質疑に関する理事会協議決定事項について御報告をいたします。  総括質疑は七日間分とすること、質疑割り当て時間は九百七十九分とし、各会派への割り当て時間は、自由民主党・自由国民会議及び日本社会党それぞれ二百九十分、公明党・国民会議百八十一分、日本共産党及び民社党・国民連合それぞれ七十三分、参議院の会及び新政クラブそれぞれ三十六分とすること、質疑順位及び質疑者等につきましてはお手元の質疑通告表のとおりとすること、以上でございます。  右、理事会決定のとおり取り運ぶことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 長田裕二

    委員長長田裕二君) それでは、これより総括質疑を行います。志苫裕君。
  6. 志苫裕

    志苫裕君 最初に、ちょっと通告にない部分もあるかもしれませんが、今、国の内外で注目を集めております二つの問題から尋ねます。  一つは、あした十二日からジュネーブで始まります米ソ包括軍縮交渉、いろいろと事前の駆け引きやあるいは宣伝は行われておりますが、両国交渉再開にこぎつけたエネルギーから見てその期待は大変大きい、このように思いますし、また、過去の手詰まり状況を打開するためにも、米ソはこれを成功させる以外に道はない、このように思います。どうもこの米ソ大国というのは似た者同士で、お互いに相手をしのぐことだけに精いっぱいで、地球が人類共存のものだということを忘れがちだ、このように思えてなりません。また、交渉当事国の一方だけを応援をする総理もどうもそれに似たところがある、このように思いますが、とまれ、軍縮交渉が、管理交渉軍備拡大につながったという悪循環を断ち切る意味でどうしても軍縮から廃絶へ、これは世界はかたずをのむだけじゃなくて成功のために声を上げなければならぬ、こういう思いひとしおでありますが、この際ひとつ、総理それから外務大臣所見をこの場を通じてやっぱり世界にも訴えてもらいたい、こういう気がいたします。いかがですか。
  7. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いよいよあすから世界注目しております米ソの核軍縮に関する交渉が始まるわけでございます。我々が承知している限りにおきましては、米ソ両国とも今回の交渉をぜひ成功させたいというふうな非常に意欲というものが感じられるわけでございますが、しかし同時にまた、米ソ両国意見の相違も相当際立っておるわけでございます。  この交渉は三分野に分けてこれから行われることになるわけで、宇宙軍縮の問題、さらにまた戦略核兵器交渉、さらにまたINF、中距離核兵器交渉の三部門に分けて行われるわけでございまして、この両者が意見の対立を乗り越えてもし協定にこぎつけられることができ、そして両国が言っております核廃絶につながっていくということになれば、今おっしゃいますように、世界にとりまして、これまで軍備管理交渉軍縮交渉の結果、むしろ軍拡という方向へ続いて世界は非常に不安な気持ちを持っておるだけに、この核廃絶という方向空気が出ていくことを、我々特に四十年前に日本としましてはあの広島、長崎の原爆の惨たんたる経験を受けた国としてこれほど願わしいことはない、こういうふうに思っておりますし、この両大国交渉が何とかひとつ道を開いて成功へこぎつけていくために日本としても最大の注目を払い、関心を払い、そして力を尽くしていかなければならないと、こういうふうに考えます。
  8. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 政府といたしましては、あすから始まる米ソ軍縮交渉が実りある成果を得るように心から念願しておるものでありまます。特に、平和、軍縮核兵器廃絶等を目指しておりまするこの交渉世界的な大きな意義を持っておるものでございます。したがいまして、両国とも必ず実りあらしめるという考えに立って誠意を尽くして、持続的努力を払って、そして成果を得るように切に希望するものでございます。こういう因縁で成立した会議でございますから、これが失敗に終わるということになりますと事態はさらに悪くなる、そういうふうにも憂えられます。そういう観点からも政府としては、これが必ず実りある成果を得るように熱望し、また我々が、許す範囲内におきまして環境の醸成その他について努力してまいりたいと思う次第でございます。
  9. 志苫裕

    志苫裕君 軍事交渉のみならず、この交渉をきっかけにして東西関係のあらゆる分野にそういう対話の空気を広めていくべきだと、こう思いますが、いかがですか。
  10. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まさに同感でこざいまして、ジュネーブ会議成功するためには単にジュネーブ一点にとどまることなく、ワシントンにおいてもモスコーにおいても、あるいはパリにおいてもロンドンにおいても、あるいは中近東においても、そういうような空気が醸成されて一体となって進むということが望ましいと考えております。
  11. 志苫裕

    志苫裕君 それでは次に、国内では田中元首相の病状が注目を集めている。人情としては一日も早い回復を祈りますが、国民田中支配の終えんを肌で感じています。だからといって、政治倫理問題が終わったことにはならない。総理の認識はいかがですか。
  12. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、田中総理の突然の御病気に対しましては深い御同情の念を禁じ得ません。一日も早くお治りになるように祈っておるものでございますし、お医者さんの発表によりますとそれほど重いものでもないし、その後の回復は順調であるようでありますから、その日の一日も早からんことを熱望しておるものでございます。政局に対する影響については、別に変わったことはないと思っております。  そして、国会が政治倫理の問題について与野党で取り組んでおりますが、これらにつきましても与野党の間に合意ができるだけ早く成立して目的を達するように願っておるものでございます。
  13. 志苫裕

    志苫裕君 ここ十年の政局はあらゆる意味において田中絡みでありまして、やみ権力が存在をしたことは事実であります。このやみ権力というのは直接に国民と向き合うことがないために、権力に対するチェックを困難にしています。このゆがんだ政治構造政治を不透明にし、無責任損得勘定体系に陥れてしまった、大変残念であります。改めて落ちた政治倫理、信頼の回復、透明な政治の構築を急がなければならないと思いますが、その手順よりも、仲間うちの腹の探り合いや駆け引きばかりが先行するようでは国民のいらいらは募ります。果たして自民党政治改革活力があるか、怨念の抗争から解放されるか、ニューリーダーと言われる人たちはPTAから自立をできるか、のぞき込むようで大変恐縮ですが、現実に政権党である以上国民は知る権利があります。この際ひとつ総理、総裁としての所見と混沌とした政局についての展望を語ってもらいたい。
  14. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 別に御心配のことはないと思います。自民党は健在でございますし、たくましく責任を持って政局を推進しておると思います。自民党は公党でございまして、最近の模様を見ますと、国民支持率も非常に高いようでございます。これは、やはり自民党員が結束してその責任にこたえる懸命な努力をしていることを国民の皆さんが御認識くだすっているからではないかと思いますし、ますます我々はその御期待におこたえしていかなければならないと思っております。
  15. 志苫裕

    志苫裕君 まあその程度の答弁かな。  安倍外務大臣見解ありますか。
  16. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今、中曽根総理の言われましたように、自民党はいろいろの難局にも対面いたしますが、これを乗り越えていくだけの私は活力を持っておる、国民期待にこたえる政権政党としての刀を持っておる、こういうふうに確信しております。
  17. 志苫裕

    志苫裕君 竹下大蔵大臣は何か見解ありますか。
  18. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 政権政党が、言ってみれば国民皆様方の負託にこたえるために相互が切磋琢磨することによって、より国民の大きなニーズを吸収していくという意味においての活力は現存をしておる、怨念というよりもむしろ切磋琢磨が今日までも行われ、これからも行われていくのではなかろうか、こういう感じでございます。
  19. 志苫裕

    志苫裕君 もっと天下をとるような話を聞きたかったんだけれども、あとの人は省略をします。そうすると、全部にまた聞かなきゃなりませんので。  話を次に進めますが、いろいろのことがあって、二期目の中曽根政治がスタートしました。先般、施政方針演説を伺ったんですが、どうも思うことが多過ぎて焦点定まらずという感じをちょっと受けました。歴史に残るような仕事は一つ内閣一つだとよく言われるが、そう言われる意味において、中曽根政治目玉はこれだというものを何かお示しいただけますか。
  20. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 前から申し上げておりますように、戦後政治の総決算を目指して、そして外には国際国家日本を確立していく、内には行革以下三つの大きな改革を推進していく、そして文化と福祉のたくましい国家をつくっていく、これが目玉であります。
  21. 志苫裕

    志苫裕君 どうも総理のそれは情念なんですね。言柴情念総理多いんですが、大変失礼だけれども、総理はナショナリストと知られるのですが、ナショナリズムというのは常に感情でありまして、そう理論的体系なものではない。ですから、状況をつくるようでいて状況に流されるということも多いわけで、日本的風土の欠陥とも言える。情念世界はそういう意味では無責任体系で、景気づけにスローガンで叫んでいるうちにいつの間にかそうなっちゃうという、そういう意味では今のお話もそうですが、どうも情念で論じられても政策体系論議政策論議になじまないという気がしてしようがありませんが、そういう意味中曽根政治を特徴づけておる若干の問題についてひとつ検証してみたいと思うのです。  今、戦後民主主義の総決算と言いましたが、施政方針では戦後民主主義価値を高くうたい上げました。これと政権担当以来のスローガンである戦後政治の総決算とはどう重なるんでしょうかね。ちょっとわかりにくいんです。いかがですか。
  22. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、累次申し上げますように、戦後展開されました日本政治及び社会の発展については非常に大きな敬意と誇りを持つものでございます。特に戦前と比べまして、民主主義あるいは国際主義、あるいは自由と平和、基本的人権の確立、こういうような人類が営々として努力して築き上げました価値日本にも充実して展開しておりまして、市民社会の岩盤が厳然と広がってきた、これは我々が目の前に体験していることでございまして、しかもその間においてこれだけの大きな富を蓄積し、そして社会的平等が達成され、教育水準が高まり、しかも世界最高高齢時代を迎える、そういうようないろいろな問題を見ましても、戦後政治には大きな歴史的なピラミッドが建設されたと、そう思っておるのであります。  しかしそういういいところばかりに酔っておるわけにはまいりません。やはり日本の体質を見ますと、明治以来中央集権あるいは官僚国家というようなものやあるいは縦割り行政等々の、あるいは縄張り争い等々の過去の沈殿物もまだありますし、また高度成長以後の日本の戦後政治における経費の膨張あるいは浪費という問題もございます。ややもすれば大きい政府へ移行して、国民の負担が過重されるという危険性が常にあるわけであります。これは中央地方ともに見られる現象でありまして、そういう問題を解決して、しかも二十一世紀に向かって日本のたくましい新鮮な創造的な軌道を敷設するということが政治の大課題になってきている、そういう意味において戦後政治の総決算ということを申し上げている次第であります。
  23. 志苫裕

    志苫裕君 今のお話を伺いますと、高成長時代を含めてそういう諸制度の見直しというトーンでちょっと感じたんですが、言うまでもないんですが、戦後価値の中心というのは平和あるいは主権在民さらには基本的人権とうたった憲法なわけでして、どうも総決算のイメージが憲法体制の清算というイメージと重なっていたわけですが、その点はいかがなんですか。
  24. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は戦後生まれました憲法が持っておる諸価値については非常に高く評価しておって、我々が大事と思う価値については今後ともこれを護持していくということを申し上げておるのであります。しかし前から申し上げますように、制度というものは一〇〇%万全なものではない、時代の経過とともに制度というものは常に見直されると一般論として申し上げておるのであります。そして憲法につきましては、中曽根内閣においてはこれを政治日程にのせる考えはないと前から申し上げておるとおりであります。
  25. 志苫裕

    志苫裕君 そのように伺っておきましょう。  建国記念日の式典に歴代総理としては初めて出席なさった。これは総決算一つですか。
  26. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国の祝日として決められておりますにつきまして政府の所管庁は後援をしておるものでございます。国の生まれた日としてみんなで喜び合うという意味でこの祝日がつくられておりますので、私も総理大臣、国民の一人でもありまして、国の誕生日を祝おう、ともに喜び合おうという意味で出席いたしました。これは自然の感情で、子供の誕生日や妻の誕生日にハッピー・バースデー・ツー・ユーと、そう言って贈り物をするのと同じで、ハッピー・バースデー・ツー・ユー・ジャパン、そういうような気持ちで出席したものであります。
  27. 志苫裕

    志苫裕君 これがバースデーであるかどうかが議論がありまして、国民のコンセンサスはやっぱりまだできておらない。ですから歴代首相や立法、司法のトップも慎重であったというのが紛れもない現実だと思うんです。そこを総理は無理に模様がえをさせて、あくまでも出席にこだわった。あるいは自然の感情と言うが、それが不自然に映っているんですよ。いかがですか。
  28. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その点は志苫さんとやっぱり考えが違うのでありまして、国民皆様方はどういうふうにお考えになっているか。どうも世論調査等を見ますと、七〇%がやっぱり出席してよかったと、そういうふうに肯定的な見解を国民がお持ちのようだと承っております。  私は、やはり国の誕生日を祝うというのは自然の感情であると思いますし、いつが建国の日であるかというような場合、革命記念日をある意味において記念日として持っている国は明確でありますが、しかし古い国におきましてはいろいろ神話というものがありまして、必ずしもそれは科学的に論証されるものではないでしょう。キリストが生まれたのが十二月二十四日であるというのですけれども、別に見た人がいるわけじゃなし、そういうふうに伝えられてきているということであります。それと同じように、歴史的伝承というようなものを太陽暦に直した、そういうふうに伝えられているのはそれなりにやはり民族的伝承としてみんなでことほいでいい日ではないかと常識的に考えておるわけであります。
  29. 志苫裕

    志苫裕君 それは私は改めてまた二月十一日を議論しようとは思わないんで、この間、あなた二月十二日のここでは、それは国会で決めた日だというふうなことを言っていましたけれども、国会で決まり切らぬで政令の方にいったといういきさつもあるぐらいなんで、あなたの答弁は、あれは間違っているんですよ。  しかし、それはともかくとしまして、あなたもこの間天皇のお言葉の話を出したけれども、天皇のお言葉では、生い立ち、国の始まりのことを言及された部分があるし、あなたもそれをまた述べた部分があるわけでしょう。だから我々は国の生い立ちや成り立ちを祝おうとか検証しようとかいうことに異論を言っているんじゃないんです。二月十一日は問題だなということを言っているんですね。お祝いするにはお祝いする雰囲気がなきゃ。あなた一人で喜んでいたってこれはだめなんで、やっぱりそれは見直すべきですよ。
  30. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国会の法律として祝日が決められまして、国会の意思として政令にゆだねられた部分において十一日が決められたと思いますが、これはやはり国会の意思の延長線上においてそれは是認されておると思うのでございます。十一日が問題であるというのは、これは随分長い間論争が学界にも、また国会にもございました。しかし、先ほど申し上げましたように、記紀の神話というようなものはどういうふうに評価さるべきか、それが科学的なものとして厳格に取り上げらるべきものか、人間社会のような、こういう社会性を持ったものにおきましては、ほんのりとしたものがまた大事なという面もあるわけであります。私たちはそういうような考えに立ちまして、ふっくらとした、ほんのりとした、目に見えないものも大事にしたい、そういう立場に立っておる点もあるのであります。
  31. 志苫裕

    志苫裕君 総理、お祝いに行ったというレベルでないと思うんですね。やっぱりあなたもう少し正直におっしゃった方がいいんでして、あなたの例えば式典におけるあいさつも、二月十一日をいろいろ模様がえしてあなたが出るような環境づくりの間にも一貫をして貫かれておったのは、それをきっかけにするあなたなりの愛国心であるとか、国民国家に対する求心力の回復であるとか、そういうものをあなたは目指しておるんじゃないですか。それが無理をしてでも歴代総理がやらなかったことをやった根底に流れているんじゃないんですか。それをおっしゃったらどうですか。
  32. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 別にそんな緊張した気持ちで行ったわけではないのでありまして、ごく自然に国の誕生日を国民の皆さんと一緒にことほごう、そういう自然の感情で列席した次第なのであります。
  33. 志苫裕

    志苫裕君 はぐらかされてもしようがないんですが、どうも私は、おたくの情念は強いアメリカと標榜するレーガンさんと似ていて、世界で大きくなった日本、これに団結力、活力回復したいというのが恐らく執念のようにあるんだろうと思うんです。  観点変えますが、国家の求心力の強化のために天皇あるいは天皇制の役割を求めますか。
  34. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 天皇は憲法第一条に決められておりますように国の象徴であり、国民統合の象徴としての地位を厳然と憲法上お持ちであります。国民統合の象徴という解釈につきましては憲法制定当時いろいろ議論がございました。金森国務大臣が当時答えたのは、あこがれの的であるとか、そういうような表現が行われております。私は、天皇陛下に対しましては、全国民、まあ多少異端者もありますけれども、ほとんど大部分の国民は天皇陛下については、心からなる敬愛の念を持っておられると思うのでございます。そういう陛下のお人柄、あるいは日本の国の長い伝統、文化的な所産、さまざまなものを含めまして、この国を愛し、そしてその象徴としておられる天皇を敬愛する、これがやはり国をまとめている一つの大きな要素でもあると思っております。  こういうような国の統合に関する機能というものは、単に合理的要素だけで国が統合されるのではないと、これはマックスウェーバーが前から言っているとおりで、伝統的な要素もございますし、あるいは国によっては権威的要素もございます。日本の場合にはそういう非常に伝統的要素が、歴史的要素というものが多いのではないかと思いますが、これは自然なことではないかと思っております。
  35. 志苫裕

    志苫裕君 はぐらかさぬでくださいよ。国家の求心力の強化のために天皇制の役割を期待しますかと聞いている。
  36. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 憲法第一条に決められている、そのとおりに私は天皇制というものも考えており、自然の感情において国民皆様方が統合の象徴としての天皇をあこがれ、敬愛しておるということはとうといものであり、それはそれなりに機能しているものである、こう考えております。
  37. 志苫裕

    志苫裕君 法制局長官、今の象徴という言葉を使いますが、私も象徴の意味はわからぬわけじゃないんですが、求心力の中心だというふうに理解するんですか。
  38. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) お答え申し上げます。  先ほど総理もお答えになりましたように、憲法第一条では「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」であるというふうに定められておることは御承知のとおりだと思いますが、ここで言うこの規定の趣旨はどういうところにあるかと申しますと、天皇の御存在を通じてそこに日本国の姿を見ることができる、また日本国民統合の姿を見ることができるという日本国民全体の信念をあらわしたものであると考えております。これはまた日本国の象徴としての地位にある天皇が、先ほど総理もお触れになりましたように、その地位にふさわしい国民の尊敬を受けられるべき方であるという国民的確信をあらわしている、我々はこのように一条の趣旨を考えている次第でございます。
  39. 志苫裕

    志苫裕君 二月十一日の歴史は、それが特定の政治目的に使われた、国家国民を破局に追い込んだというところに国民のコンセンサスが得にくい問題があるわけです。その点はいかがですか。
  40. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先ほどから申し上げておるとおりでございますが、いわゆる戦前の皇国史観というものが日本に対しまして世界大戦に関連する思想的な影響をもたらしたという点はこれは否定できないものがあるだろうと思います。しかし、現在におきましては憲法のもとに国民的合意というものが確認されて、そして今日本は発展、成長しつつあるのでございまして、そのような昔の考え方というものに拘泥しているものではないのであります。
  41. 志苫裕

    志苫裕君 念を押しますが、これをステップに建国記念の式典を政府主権にする気持ちがありますか。
  42. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今のところそういう考えはありません。
  43. 志苫裕

    志苫裕君 今のところないというのはこれは奥底にあるんですか、じゃ。
  44. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは、民主政治というものは国民の意思というものがやはり中心で動いていくものでありまして、国民の大多数の意思がどういうふうにあるかという点を我々は将来はやはり留保しておくべきである、今のところ私たちはそういう考えはない、そういうことであります。
  45. 志苫裕

    志苫裕君 四省後援に、外務省まで今度仲間になって、四省後援というのは事実上、またそのいきさつから見て政府後援だ、これは。それを政府主催というふうに一歩進めることには反対であるということを申し上げておきまして、総理、戦後の総決算を言うのであれば、もう一つ、やっぱりかつての植民地支配についての贖罪といいますか、和解といいますか、新しい関係の取り結びといいますか、これも大事だと思います。  去年の九月に韓国大統領が来日しましたが、これは天皇のお言葉、言いかえれば遺憾の意を聞く目的であったということを見ても、日韓条約二十年にしてなお朝鮮民族あるいは韓国国民との和解ができていなかったということを示すわけでありまして、まして分断国家の残る一方は四十年も無視され続けておるわけであります。そういう意味で、全斗煥大統領に対して謝罪の意を表明された総理でありますが、同様のことが分断国家のもう一方、北の方にも残っておるという認識はお持ちですか。
  46. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 戦前の日本の行為が朝鮮半島全般に及んでおったということは事実でございます。韓国に対しまして、先般全斗煥大統領おいでの節に天皇陛下からもお言葉があり、また私も申し上げましたが、朝鮮半島全体の人々に対しまして私たちは同じような気持ちはある、そう思っております。ただ、北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国に関しましてはいろいろないきさつで、特に朝鮮動乱というようなああいう事件もございまして国交はございません。したがって、国交のない国につきましてはやはりそれなりの日本のあり方というものがあり、また日本は韓国とは非常に友好協力の関係を確立しております。この韓国と北側との融和、協調というものがどういうふうに進展していくか、この南北会談の趨勢というものも我々は厳に細心の注意をもって見ておるところであり、これが推進されることを希望しておるものなのでありまして、韓国のお気持ちというものも尊重しつつ考えていくべきものであると考えておるわけであります。
  47. 志苫裕

    志苫裕君 私、今いろいろな主張がありますが、きょうは差し控えます。  国際政治の枠組みにかかわることは一遍になかなかいかぬでしょうし、しかしさしあたって在日韓国人あるいは朝鮮人が歴史的に日本人と変わらぬ社会的な成員であるということにかんがみて、さまざまな日本国内における差別の解消であるとかそういうことなら手をつけることができるという意味で、職業選択の自由あるいは就職の差別、この間も何か長野の先生の採用の問題があったようですが、あるいは指紋押捺の問題、こういう問題はこれはやっぱり解決すべきだ、あるいは北朝鮮との通商代表部でも何でもいいですが、それぐらいの窓口は設けるべきだという点についていかがですか。
  48. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 我が国と北朝鮮とは国交はないわけでございますが、しかし民間の関係はこれまで経済、文化、人的交流は続いております。時にはこの関係が例えばラングーン事件等で途絶したような状況もありましたが、現在はこの南北対話が行われる、朝鮮半島の緊張緩和を迎えてのいろいろの努力が行われるという状況にありますので、この民間の交流というものはこれまでどおり維持していかなければならない、そのように努力も行われておる、こういうふうに認識をいたしております。
  49. 志苫裕

    志苫裕君 もうちょっと、私は北のことばかり言っているんじゃないのでね。全斗煥韓国大統領とああいうことがあったけれども、しかしやっぱり民族間の和解という点ではまだまだ韓国も含めてあるという意味で、日本における職業選択あるいは就職の問題、指紋押捺、こういう問題などの解決なら国際的枠組み云々でなくて、日本でもやれることだということを言っているんですよ。
  50. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 日本における在日の韓国人に対しましては、これは法的地位の回復はもちろんでございますが、日本人と同じような在日韓国人に対して扱いをすべきである、こういうことでこれまでいろいろと努力が重ねられてきております。まだ問題が残っている点もありまして、韓国大統領の訪日の際もこうした点について指摘もあり、我が国としても努力を重ねていくということをお約束をしておるわけでございます。そうしたやはり日本人と同様の扱いをしていくという基本的な立場でいろいろな問題に対処していかなければならないというふうに私は思っております。
  51. 志苫裕

    志苫裕君 総理もその点いかがですか。
  52. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 外務大臣と同じであります。
  53. 志苫裕

    志苫裕君 ちょっと連合政権飛ばしましょう。  その次に、総理の看板、財政再建、財政改革についてちょっと入ります。  この問題、今中曽根内閣の金看板ということなんですが、そこで財政の対応力を緊急の課題として早急にやりたいと施政方針演説でも述べておられるわけでありますが、財政の対応力の回復というのは一体どういうことで、そのメルクマールになるものは何ですか。
  54. 竹下登

    国務大臣竹下登君) この財政の対応力というのは、今日の時点においてはいわゆる財政が経済に対しまして対応するだけの力、その大小の差はございましても、それを失っておる現状にあることは事実であります。したがって、いついかなるときでも財政があるいは予算、財投等々弾力的に出動することのできる体力を回復することであります。
  55. 志苫裕

    志苫裕君 それでメルクマールになるものは何だ、指標は何だということです。
  56. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いわゆる財政の対応力の回復、その方途として考えられておりますのが、一つは六十五年度赤字公債依存体質からの脱却であり、そして二つ目には公債残高を減していくことによって財政の対応力を、これは中長期にわたっての問題でありますが、回復していく、こういうことであります。
  57. 志苫裕

    志苫裕君 幾つか指標があって、そのうちの集中的な表現としていついつまでに赤字国債の発行を減らすとかなくするとかいうことなんでしょうが、それだけでは少し財政改革を矮小化しておるという感じがします。  ちょっと資料配って。    〔資料配付〕
  58. 志苫裕

    志苫裕君 私なりに少しあちこち勉強さしてもらって、財政の先ほど大蔵大臣からお答えありました対応力の回復というのは大体こういう指標を挙げてみるとわかるのだろうと思ってまとめてみました。大蔵大臣、何か見解ありますか。
  59. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まさにこれは貴重な資料でございます。  まず、私どもとしましてこの中で申し上げましたのがいわゆる赤字国債の、最後の欄でございますが、赤字国債発行額の削減をかつては五十九年度にその目標を置き、今や六十年度に目標を置いております。そうして、いわゆる国債残高の対GNP比、下から三行目でございますが、これをいかにするかということになりますと、いわば多額の公債残高を抱えた財政がここ当分続くわけでございますだけに、それに対する対GNP比、長い今までの議論の中で最初は五%とかいろいろな数字から上がってまいりましたが、これをどこに定めていくかというのは私は二番目に大事な課題であって、国会の問答等を通じて明らかにしていかなければならぬ課題であると思っております。  それから、国債費というものが下から二行目に書かれてあります。これがいわゆる一般会計に占める予算の比率、これはやはり一九・五%ということになっておりますだけに、まさに社会保障費を超したということは大きな対応力にマイナスする今の状況でございます。それから国債依存度、若干の減少を見ましたものの、これも対応力回復の指標として貴重な指標であります。そして、さらにはその中における建設国債と赤字国債との問題がございましょう。そして租税負担率あるいは税収比率、この問題もその手法の中で議論の中心となる課題であるというふうに、志苫さんのおつくりになったものを評価するのは失礼でございますけれども、当を得た資料であると私どもは思わしていただいております。
  60. 志苫裕

    志苫裕君 あなた、これ見て感心していてはだめなんですよ。私がまとめた六つの項目、この表は何を言っているかといえば、金看板は何一つよくなっておらぬということを言うているんです、これは。あなたこれを評価して感心しちゃ困る。ことごとくが財政再建すなわち財政の対応力の回復には向かっておらないというこれは表なんだ。むしろ悪くなっておるということを言うておるんですよ。どうですか、それは。
  61. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私が評価したのは、いわば財政対応力の問題、これの回復の問題について我々が議論する場合に、率直に言って念頭に置くべきそれぞれ重要な指標であるということであります。それで、今おっしゃいましたので、いわば国債依存度、二番目の問題につきましては、評価とは申しませんが、ここのところ幾らかずつ減っていっておるという傾向数値は出ておる、さらにこれは将来にわたって引き下げすべき問題であるというふうに思っております。
  62. 志苫裕

    志苫裕君 これは今までいろいろと税収以外のものをかき集めてきまして、後ほど予算のところでやりますが、もうこれ以上どうにもならないというやり方、あなたのおっしゃるやり方をして、少し傾向値がいいということにあなたは目をつけられたようだが、しかし、いずれにしても六十五年度に赤字国債発行額をゼロとするという政府計画だけで見ると、五十八年から六十年の三カ年実績、一兆二千七百八十七億くらいですか、これを上回る額を、これから今までの三年分を毎年返していかなきゃならぬということになってしまって、およそこれはもう不可能です。財政再建期間を五年から七年に延ばしたが薬石効なし、かくて中曽根内閣の金看板は倒れたと、こういうことになるわけだ。総理、いかがですか。これは総理、あなただ。あっちの看板じゃないんだ、そっちの看板なんだ。
  63. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まず私から申し上げますが、私どもは六十五年度の赤字公債依存体質の脱却という第一期目標というのはこれは容易ならざることだと思っております。しかし今日まで、ことしの場合一兆円減額して、それが全部赤字公債ではございませんが、とにかく年を追うに従ってそういう努力の積み重ねをして、やっぱり何が何でも、この目標をおろしました途端にやっぱり歳出圧力に対して気持ちの上でも抗し切れなくなるのじゃないか、この看板はおろすわけにはいかぬという私の財政担当者としての心境をまず申し上げておきます。
  64. 志苫裕

    志苫裕君 いや、あなた、信念のことを言っているのじゃないんだ。事実は看板は倒れたと言っているんですよ。中身はありません、中身はまた同僚が続けてやりますから。あらゆる数字を並べてみて、せっかく五年から七年というふうにしたんだけれども看板は倒れた。倒れちゃって、木口小平のラッパみたいに幾ら握っていたって音は出ないんだ、もう死んじゃっているんだから。鈴木内閣は五十九年目標達成を困難としてその責任をとったとされるんだ。それを七年に延ばして余裕を持ったが薬石効なし。中曽根さん、あなたこれ実行できませんよ。どう責任とります。
  65. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 六十五年赤字公債依存体質脱却というのは我々の大きな目標であり努力する対象である、そう考えておるわけでございます。財政状況が厳しいということは六十五年赤字公債依存体質脱却ということを申し上げたときから既にこれはわかっており、その覚悟の上で最大限努力しようと、そのかんぬきを外してしまったら、これは相当な歳出増に対するプレッシャーがかかってきて、なかなか予算の編成もできなくなるし税負担が重くなる、それを回避するためにはかんぬきがどうしても要る、そういう考えに立って、予算の膨張を防ぐという意味もありましてやってきておるわけです。  私は、来年度、再来年度もっと厳しくなると思っております。なぜかと言えば、やはり公債に依存しなければなりません。我々は公債依存体質から脱却しようというので一般会計における公債比率は二二%に減らしてきております。志苫さんの表にあるとおりで、この点だけはいいんです。しかし、公債費になると十兆二千億円にふえておるし、GNPに対する比率になると四二・三%、あなたの表でも書いてあるようにふえてきておる。それは毎年これから予算を組むたびごとにお金が足りませんから公債に頼ると、その公債が累積の中へ入っていく、したがって来年三月には百三十三兆にもまた上がっていく、こういう傾向で、毎年公債にやはり多少とも依存しなければ財政が難しいという状況であり、景気が後退するということもおそれがあり、野党の皆さんはまたいろいろこの仕事をやれ、この仕事をやれとおっしゃってきておるという状態でもありましょう。我々の方の与党でも同じようにそういう圧力は強いわけであります。与野党を通じてそういう圧力の強い中でどういうふうにして予算を組んでいくかということで実は苦労しております。  したがいまして、毎年度公債に依存する金額がかなりに上っておる。十兆以上にも上っておる、こういう情勢が続いておる限りは後段に示された数字は上がっていくわけで、状況は悪くなっていくのであります。そういうことから、六十五年には大体公債残高が百六十五兆でございましたか、一応機械的に計算すればそれぐらいになってくる。これは六十五年依存体質脱却ということを申し上げたときからそれは覚悟しておることであり、その上に立ってできるだけ最大限の努力をして目標を達成しようということで精いっぱいの努力をしておるというのが実情でありまして、国民皆様方にもこの点はぜひ御理解願いたいと思うのであります。
  66. 志苫裕

    志苫裕君 それは今のだめですよ、あなた。金看板は倒れたから責任をどう考えるのかと言っているのに、それは野党が予算をふやせふやせと言うからという答弁ではだめだ。そんなものでは承諾できぬ。
  67. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 仕事をしろという意味で申し上げたのでありまして、例えば公共事業をふやせとかいろいろな御議論が党内にもございますし、また野党の皆様方にもおありであります。そういうことを申し上げたので、別に他意はないので御了解いただきたい。政府といたしましてはできるだけ景気を維持して失業状態を解消しよう、そういうことで事業量もふやしたいと思います。しかし、今のような財政状況のもとで精いっぱいの努力をして事業量は減らさない、そういう意味では財投その他あらゆるものを動員して事業量を減らさないように努力をしておるということで、今後ともあらゆる総合的な対策によりまして目的を達成していきたい、こう考えておるのでございます。
  68. 志苫裕

    志苫裕君 これはまたいずれ同僚がやりますが、念を押しますよ。不可能でしょう、大蔵大臣。
  69. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは不可能を可能にするというような哲学的な表現を申し上げるわけにはまいりませんが、私は、経済情勢の推移の中で六十五年を極めて難しいことではあるが今から不可能と断定すべきものではないと思う。志苫さんの資料に基づきましても、とにかくこの五十九年が目標を達成することができなくて断念したことは事実ですが、その後ささやかながらその努力の積み重ねの中で、私は不可能という断定をする時期ではないというふうに考えております。
  70. 志苫裕

    志苫裕君 総理が所信表明で言うておるのは、財政の対応力を回復したいと言っている。財政対応力の回復一つがあなたが言っておる先ほどの要素だということは私も認めておる。しかし、全般とすればますます悪化をしておるじゃないか。そうすれば金看板は倒れておる。責任のある政治をとろうとすれば責任の所在を明らかにすべしだというときに来ておるということを私は言っておるんです。総理、どうですか、もう一遍。
  71. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 民活であるとかあるいは将来において電電やあるいは専売の株式の処理であるとか、そういうような問題も組み合わせ、そして赤字公債も減らし所期の目的を達する、そういうことで努力してまいりたいと思っておる次第でございます。まだ倒れたと断定する段階ではない。努力すればやりがいがある段階ではある、そう思っております。
  72. 志苫裕

    志苫裕君 これは今はやりの脳死だ。もう臓器なんかを無理して動かしているという感じでしょう。それは、あなたはいろいろ目標にするとかなんとか、理念は失わないと言うけれども、だから私は冒頭に言ったように、あなたのあれは情念だと言うんですよ。情念は無責任体系であると、こういうことを言っているんです。これは責任をとってもらわぬといけません。いずれこれは同僚が詰めます。これは厳しく指摘をしておきます。  ところで、税制全般にわたる改革というのがこの所信表明に載っておるわけですが、いろいろと虚々実々、小田原評定みたいな論議がずっと続いていますが、まず聞きましょう。いつごろまでに検討して、いつごろから実施するんですか。
  73. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まず検討の時期でございますが、これはいわゆるこの税制調査会の答申で、異例のことながら、とにかく抜本的な検討をしなさい、する時期に来たと、こういう答申をいただきました。そこで、やっぱり一番大事なことは、国民の世論の動向をまずは詳しくその基礎資料として専門家でつくられております審議会に報告しなければならぬ、そうすると、やっぱりその一番の場はどこかというと国会論議だと思うのであります。その他にもいろいろございますが、それをまず正確に整理して税調へお伝えする、そこから審議が始まると思います。したがって、それはいつかということになりますと、私は今の段階でにわかに断定することはできないではなかろうか。やっぱりできるだけ早くという気持ちはございますものの、何分にも抜本改正ということでございますから、それこそ国会の論議等を聞きながらきちんとした整理というものが議論の土台になりますだけに、それを踏まえて今後検討さしていただく問題だということでございます。
  74. 志苫裕

    志苫裕君 総理、今どうも時期もはっきりしませんが、財政再建や増税のために行うのではないということは、私も議事録持ってきておりますが、随所に約束をされているのですが、我々も不公平税制の是正など大いに改革をしたいこともあるし、税制の改革はぜひやりたいという思いは持っていますが、そこで確認を求めますが、財政再建や増税のためにやるのじゃない、したがって結果においても国民の租税負担率を高めるような税制改正をやるのではない、約束していいですね。総理だ、これは。
  75. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いや、やっぱりこれは私からまずお答えすべき問題であります。  まず、初めに増税ありきとか初めに減税ありきとか、あるいは財政再建のためにとかいうものでないことは志苫委員御指摘のとおりであります。まずは税体系の抜本的見直しありきというところから御議論をいただくわけでございますが、いわば志苫委員は、それを政府がこの国民の世論の動向を見ながら政策選択としてどのようなことを行うか、その場合にいわゆるこの租税負担率等が変わるようなことはないだろうなという御指摘であろうと思うのでありますが、いわゆる租税負担のみならず国民負担率というのがどういう水準にあるかということは、いわば公共支出の水準がいかにあるかと、それに見合う歳入として考えますので、年々の予算編成過程における国民の選択によって決められるべき問題でありますので、あらかじめ固定的にこれを決めておく性格のものではなかろうというふうに考えております。
  76. 志苫裕

    志苫裕君 それはだめですよ。あなた、ですから、私はどんな税制にするかとかいろんなことは何かずっとやっていまして、ああ言ったり取り消したり今は何だかごちゃごちゃやっているうちに、聞いている方も答えている方もわからなくなっちゃうくらいなことをやっているでしょう。そういうのを小田原評定と言うのだけれども。そのことはもうちょっと詰めますが、私は、ここではいろいろやりましょう、知恵出せばいいでしょうが、しかし総理の大前提、国民に向かっての約束は、いろんなことをやるが結果として国民の租税負担率を高めるようなことにはしないということが連綿として約束なんで、それを私は改めて確認して次にいきたいんです。総理どうですか。
  77. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは臨調答申を守ってやりますと、そういうことを申し上げておるのでありまして、臨調答申の中では国民総生産、GNPに対する租税負担率というものは云々と、そういうふうにあそこで書いてございます。それを守ってやると、そういうことを申し上げましたが、そのとおりやっていきたいと思っておるのであります。もとより財政再建や、あるいは増収のために今度の税制改革をやろうとしておるものではありません。
  78. 志苫裕

    志苫裕君 ですから、くどいようですが、それは増税や財政再建が目的じゃないと言っているのですよ。それはだめなんですよ。あなた臨調答申と言うけれども、ここで租税負担率の上昇をもたらすような税制上の新たな措置はとらない。言葉をかえて言えば、いろいろやった結果、国民の租税負担率は高めませんねということを私は聞いているんです。はっきりしてください。
  79. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは先ほど申し上げましたように、臨調答申を守ってやりますということでありますから、そういう意味で御理解願いたいと思うのであります。
  80. 志苫裕

    志苫裕君 私がこう聞いたらこう答えないで、租税負担率を高めるようなことはしませんねと言ったらそうしませんと言えば向き合うじゃないの。
  81. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは御案内のように、今、税制改正前の既存の税制のもとにおきましても、租税弾性値の方が年々いささかいわゆる経済の名目成長率より高うございますから、したがって租税負担率が高まってきておることは事実でありますが、それを臨調でおっしゃっておりますのは、いわゆる租税負担率を高めるような新たなる施策を行うなということでございまして、既存の税制で考えますならば、自然増収でございますとか、あるいはまたでこぼこ調整によったもので結果として租税負担率が幾ばくか上昇しておるということは事実であります。  ただ、志苫さん、いま一つおっしゃっておりますのは、私の推測でございますが、かつての経済社会七カ年計画には二十六カ二分の一という目標値があったじゃないかと、今度は目標値ないままに定量的でなく定性的に租税負担率を高めない、こう言っていると、だからそれは守るべきだと、こういうことでございますが、今、総理からもお答え申し上げておりますように、定性的な意味における臨調答申はこれを守ってまいりますが、結果として景気の動向とか、あるいはでこぼこ調整とかで今日も、年々わずかずつでございますが、この租税負担率が上昇してきておることは事実でございます。
  82. 志苫裕

    志苫裕君 だんだん話が悪くなって、そうすれば結果として租税負担率が上がりますと言っているんでしょう。そうすれば、増税なき財政再建あるいは財政改革という、あなたそれは公約やめることになるじゃないか。だから、一つずつとめ金を外すようなことをしてもらっちゃ困るという意味で、私は細かな議論してないんですよ。EC型がどうとかなんとかということはいずれやるでしょうけれども、総理からそれだけはきちっとしておいてくれと、こう言っているのです。
  83. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 臨調答申は、あれを書くときにかなりいろいろなことを配慮し、注意してやっていただいておるのであります。ですから、増税なき財政再建ということを我々は守りますと申し上げております。しかし、その定義につきましては、臨調答申におきましては、臨調答申なりの定義があるわけであります。それを守ってやりますというので、それは今大蔵大臣が御答弁いただいたようなものでありまして、そういう精神でやりますということを申し上げておるのであります。
  84. 志苫裕

    志苫裕君 いや、それは総理とやっていると次々と何か話は飛躍しちゃうんだ。臨調答申はいろいろと配慮してもらって書いてもらっていると言ったって、あなた書いてもらったんじゃないでしょう。臨調答申は、あなた書かしたのかね、あれ。
  85. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) こっちから頼んだという意味ではなくして、向こう様がそういうふうに配慮してやっていただいておると、こういう意味であります。
  86. 志苫裕

    志苫裕君 今の大蔵大臣の答弁、総理の答弁もちょっとずつずれがあるし、それから私今ここで議事録ちょっと捜したけどないのですが、この間の二月の十二、十三でしたかの答弁で明確なんですよ、総理。実を言うと、あなた衆議院へ行ってここまで来る間に言い分を大分変えている、それはだめだ。認められない。これはちょっと整理して、もう一遍まとめて答弁してよ。だめですよ。
  87. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まず臨調の答申の趣旨を申し上げますと、租税負担率が……
  88. 志苫裕

    志苫裕君 いや、総理の答弁が違っているから言っている。整理してください。
  89. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 租税負担率が変わるような新たなる税制上の措置をとらないということと、全体として上昇してくるものの、国民負担率というものをヨーロッパの水準よりはかなり低いところへ、これも定性的で定量的ではございませんが、とどめるべきであると、これが臨調のおっしゃっていることであります。したがって、総理はその臨調のおっしゃっているいわゆる根幹を守っていかなければならぬ。  私に対する質問は、その中の租税負担率そのものについてでございますから、恐らく志苫さんはかつての七カ年計画のように二十六カ二分の一というような目標値をちゃんと示してやるべきだろうという考え方が背景にあるのだろうと思いますが、それは今日困難でございますので、いわばそれを定量的なものを定性的なもので示されたわけでございます。そうして、租税負担率というのは、十年間の弾性値等を見ますと、名目成長率に一・一というものが出てまいりますので、租税負担率はわずかながらでございますが、経済の動向によってはこれは上昇していきますので、租税負担率をあらかじめ固定して、かつての二十六カ二分の一のときのように将来の目標値を設定した数字でございますが、あらかじめ固定して租税負担率はおくということは、それは難しい問題ですと、こう答えているわけでございますので、総理は臨調の答申そのものを基本に置いてこの財政改革を進めていくということでございますから、大体同じことを言っておるわけであります。  ただ、衆議院のときにも言われましたけれども、私の答弁は特に言語明瞭なれども意味不明というようなことを言われるその嫌いは、私の言葉の拙劣さだと思ってお許しをいただきたいと思います。
  90. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は違ったことを申し上げていることはないと思っています。一貫して申し上げておりますのは、臨調答申の線を守ってやりますということを一貫して申し上げておるのであります。特にその部分でも、国民所得に対する租税負担率というものは、志苫さんがおっしゃいましたように、原則として新たなる税目を起こすとかそういう形でない、今、大蔵大臣が申し上げましたようなでこぼこ調整とか、不公平税制の是正とか、あるいは自然増収とか、そういうものでやるものは臨調答申でもこれは認めておるわけなんですから、それを申し上げておるので、そういう意味において実行してまいりますということを申し上げておるのであります。
  91. 志苫裕

    志苫裕君 いや、それは財政経済運営よろしきを得て自然増収がわんわん入ってくる、それを増税だと私ら何も言ってないわけです。総理国民もこれは聞いているわけで、どうも竹下さんと話しすると意味不明だから、わかりやすくいきましょう、国民は面倒な租税負担率とか、面倒でしょうから。  いろいろなことをやる、でこぼこ直したりすると上がったり下がったりはします。しかしオールジャパンの税金は結果としては負担率は上がりませんということを約束してくださいと言っている。総理どうですか。
  92. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 中曽根内閣におきましては、先ほど申し上げましたように臨調の答申を守ってやるので、その臨調の答申では何と言っているかといえば、今おっしゃったように国民所得に対する比率というようなものを今の新しい税目を起こしてやるというようなことはやらないで、しかし自然増収とか、あるいは不公平税制の是正とか、あるいはでこぼこ調整とか、そういうようなものについて上がることは認めていただいておるのであります。したがって、その範囲内において実行してまいりますと、そういうふうに明らかに申し上げておるのであります。
  93. 志苫裕

    志苫裕君 ですから、私もそのでこぼこ調整、現に税制改正をしようというのは水平的公正とか垂直的公正とか、そういうようなものがいろいろゆがんでいるから、トーゴーサンとかいろいろなことも言われておるし、いろいろな特別措置もくっついたりして体系がゆがんだから、これをひとつ見直そうということについて異存はないんだ。ですから、我々の方も提案もあるし、いろいろやろうじゃないか、その結果としては国民の租税負担率は上がりませんと、そう言ってくれればいいのです。いいでしょう。
  94. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ただ自然増収や、あるいはでこぼこ調整、今言ったことの中では租税負担率は上がることも機械的に見たらあり得るわけであります。現にここ二、三年若干上がってきておる。これを今言ったでこぼこ調整とか、あるいは法人税を多少ふやすとか、いろいろなそういうことによって上がったり下がったり、これは今言った臨調答申の線の上において実行しておる、そういうことでまいりますと、それ以上大増税するとか、そのほか新しい措置をどんどんやることによってやるというようなことは考えておりませんということを申し上げておるわけなのでございます。
  95. 志苫裕

    志苫裕君 少し不明確なんですが、総理は臨調答申と言うのですが、今までの答弁は増税やあるいは財政再建のためにやらない、こう言っているので、少し今答弁したこととも違うような気がするのですが、これはもう少し整理してちょっとペンディングにしておきましょう。  そこで、ことしの予算の減税について衆議院レベルで与野党の幹事長会談の話があったようで、その辺の与党幹事長発言もありましたが、減税についての与党幹事長発言について政府の見解はどうですか。
  96. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 各党の書記長、幹事長会談において合意を見ました線は、我々としてもその結果を踏まえまして、誠意を待ってこれを守っていきたいと、そのように尊重してまいりたいと申し上げる次第でございます。
  97. 志苫裕

    志苫裕君 大蔵省は何かぐずぐず言っているのですか、大蔵大臣。
  98. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは議会制民主主義、なかんずく政党政治のもとでございますから、大蔵省がぐずぐず言うべきものでもございません。ただ、よくこれは与野党を問わずこういうものに対しては、なぜ税体系上できなかったのかという質問に対しては、その際はこういう理屈で今日までできませんでしたという答えは国会の場で野党の先生方に対してもお答えしていることでございますので、ぐずぐずではなく、国会等では今までの経過等については正確に申し述べております。
  99. 志苫裕

    志苫裕君 次に、中曽根政治を特徴づけるものの防衛問題ですが、防衛、安全保障に対する考え方ですね。ちょっとSDIを引き出して考え方を確かめたいと思いますが、総理は、年初の日米首脳会議でのSDIについての「理解」発言以来、国会でのやりとりをずっと聞いていますと、どんどんどんどん踏み込んでいるという感じです。そういう感じがしてならぬのです。最初の記者会見等では、これからよく勉強してみるというのがだんだん踏み込んでいるという感じですが、どうですか。
  100. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 別に踏み込んでいるという考えはいたしません。申し上げているとおり、レーガン大統領から説明を受けまして、そしてその説明の内容が、これは非核兵器であり、核兵器廃絶目標とするものであるという趣旨の話があり、その限りにおいてそれはよく理解する。ただし、まだ長期間であり、これからいろいろ開発が進められるという問題で不確定要素が非常に多いものですから、そこで常に情報の提供を求め、また協議するということについて先方から承諾を得まして、大事な留保は十分つけておるのであります。
  101. 志苫裕

    志苫裕君 私どももチームを組みまして、得られる限りの情報に目を通しているつもりです。しかし、わからない分野が多いのじゃないか。軍事戦略の変更はもちろんですが、国際政治の枠組みにも重大な影響を与える問題だし、あるいはまた、下手するというと地球の生存にまでかかわるような問題なので、冷静に科学的に理性的な検討を要する問題だ。したがって、情緒的に論ずるのはいかがなものかという感じがひしひしといたしますが、いかがですか。
  102. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 別にこれは情緒的に論じておるということでもないと思います。ロサンゼルスにおける首脳会談におきまして、レーガン大統領と中曽根首相との間で、また私とシュルツ国務長官との間で特にアメリカ側が説明をいたしたわけでありまして、このSDI構想が御承知のように中距離弾道ミサイルの無力化を目指すものであって、そしてこれは非核兵器である、あくまでも防御的な兵器であって、最終的には核廃絶につながる構想であるという趣旨の説明がアメリカからありまして、これに対しまして中曽根総理から、このアメリカのSDI構想についてはこれは理解をする、しかし今研究が始まったばかりでありまして、今後の非常に長期間の課題であるので、その間における情報の交換といいますか、情報の提供、あるいはまた時点時点に応じた協議を行うということについての要請がありまして、アメリカ側ももっともなことであるということでこの要請を受け入れておるわけでございます。  したがって、あくまでも「理解」というのは、いわば今後の情報の提供を受ける、あるいはまた場合によっては協議を行うという、いわば留保条件つきの日本側の姿勢である、こういうふうに御理解をいただきたいと思います。
  103. 志苫裕

    志苫裕君 ですから、そういう「理解」発言にも私は問題があるし、議論をしたいところですが、そこまではきょうは別にしまして、その「理解」発言から国会の本会議に至り、衆議院のさまざまな議論を通じているうちに、総理はどんどんどんどん情念世界に踏み込んだみたいになっているのじゃないか。事柄は、米ソ交渉を前にしてアメリカのちょっと肩を持たねばならぬとかという、レーガンを景気づけねばならぬというレベルの問題じゃないという意味で、総理がどうもどんどんと踏み込んでおるということに私は非常に懸念を覚えているんです。そのことを総理に申し上げているんです。
  104. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は踏み込んでいる答弁をしているとは思いませんが、もしそういうような踏み込んでいる印象を与えているということがありましたら、それは訂正しておきます。私がロサンゼルスで記者会見をし、また国会におきまして答弁申し上げたとおりのことなのであります。
  105. 志苫裕

    志苫裕君 言うまでもありませんが、軍事科学の面でのミサイル防御というのは理論的にあり得ることなんでしょう。しかし、その対抗手段もまた理論的にはあり得るという論理になるわけですから異論も多いわけで、アメリカの国内でもいろいろの高名な科学者、専門家にも御意見があるようだし、国民の大多数は反対だという世論調査を出しているようだし、あるいはまた議会の帰趨だって決まっちゃおらぬ。この間は予算を削ったというふうなこともあるわけです。またソ連の反発は当然としましても、同盟国の諸国の間にも、何かアメリカだけが要塞化して、聞くところによるとICBMには有力だが、下からやってくるのとかSLBMには、そういうことになりますと、当然同盟国は不安を感ずるという動きももう十分あるわけでありまして、今、総理、訂正ありましたが、日本中曽根康弘ひとりどんどんと踏み込むという印象。どうもレーガンの力わざだけに外交や主権がフィットしていくのなら、外交や主権も要らぬわけでありまして、私は慎重に振る舞うべきだということを再度主張しますが、よろしゅうございますか。
  106. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 記者会見やあるいは国会答弁で申し上げた限度を我々は守ってまいりますということをここでまた申し上げるわけであります。
  107. 志苫裕

    志苫裕君 総理、そこであなたの従来からの安保哲学と言われる抑止と均衡論なんですが、どうなんでしょう、あなたは今まで抑止と均衡論が安全防衛哲学だと。投げたら、よりでかいやつを投げ返すという恐怖の報酬で抑止力というのが働いて均衡が保たれるというものでありましたが、SDIに理解を示す、賛意を表するというのは、その論理からは異質のものじゃないのですか。
  108. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) SDIはまだ構想中のものでありまして、具体的にどういうふうに展開してくるかわかりませんが、それが非常に高性能の有効なものであるということがわかってくれば、それ自体が抑止力に作用してくると考えております。
  109. 志苫裕

    志苫裕君 総理はまだ、このSDIが今までのMADに依存してきた戦略環境よりも安定をし、リスクが少ない、したがって平和に貢献できるというふうに認めているわけじゃないのですね。
  110. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今までの大量破壊という発想自体は、攻撃力を持ってお互いがにらみ合っていて、その攻撃力の均衡状態で平和が維持されている、そういう形でかなり物騒な均衡状態であります。物騒であるがゆえに両方とも慎んでやらないという抑止力も働いておるわけです。今度SDIになりますと、説明されている範囲内におきましては有能なる防御力によって相手の企図を排除する、そういうことでありますから、攻撃力によるよりも、我々から見れば物騒さが少なくなるという感じもしているわけです。それが非核兵器であって通常兵器でやれる、そしてそれは終局的には核兵器廃絶を目的としておる。そういう意味において、これが完成された場合には、これはなかなかおもしろい、考うべき要素があるなという点も私は考えまして研究に理解を示したということなのであります。
  111. 志苫裕

    志苫裕君 子供の戦争じゃあるまいし、おもしろくも何でもないのであります。  それで、あなた、盾を持っておる人がやりを持たないのなら別ですよ。盾とやりと両方を持つのですから一方的抑止じゃないですか。絶えず相手が攻めてくるものだとして一方的抑止を考えるというのを逆の例から見ますと、それは不安でたまらぬわけでしょう。そこでまたそれに対する対抗を考えるという形になりますので、みんながこれはいかがなものかと考えておるのが恐らく世界空気ではないかと思うのです。だって現にあれでしょう、今度国防長官なんかもあれしていますように、SDIという盾は持つが、ICBMやSLBM、戦略爆撃機等のこれはこれで近代化して強化すると言っているのですから、盾も持つがやりももっと強化するという、こういう戦略への移行を、あなた、おもしろいと思って研究されたりサインされちゃ困りますよ。いかがなものでしょうね。
  112. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今度のジュネーブ交渉におきましても、ICBM等はこれを削減しよう、またIRBM、INF等についてもこれを削減しようと、こういうことで合意が達成されるように強く期待しておりますが、SDIというものが有効性が発揮されるような情勢になってくると、ICBMあるいはINF等の削減が非常に強化される、削減が進むだろうと、そういうふうにも考えられるわけでありまして、そういう点からもこれは考慮すべき内容もある。そういう意味において理解を示したという点があるのでございます。
  113. 志苫裕

    志苫裕君 ですから、これは一般質問なんかでもう少し専門家とのやりとりもしなければなりませんが、どうやら日本じゃあなたが今一番専門家みたいだからやっているのですけれども。  我々も勉強しなければならぬのですが、ただ問題なのは、レーガンさんや中曽根さんが描いておる戦略状況というのは、常にソ連が邪悪の帝国であっていつやってくるかわからない、したがって防御だと。盾も持とう、やりも持とうという、絶えずこういう一方的単独主義と言われるものに陥っているところに私は問題があることを指摘しておきたいのです。この場合の防御が一体その相手国にとってどう映るのかという観点は全くない。一方的抑止は気分がいいでしょう。しかし、同じ人類にして宇宙船地球号に乗っておる人類の共存を考えれば、一方的抑止が逆にいろいろな意味での危険を増幅するということがあるから世界が知恵を出しているのでありますから、私は、これはSDIのみならず、中曽根総理の発言に対して国民は素直に、中曽根さん、危ないことはやめてくれと言っていると思うのですよ。このことは強くあなたに申し上げておきたいので、ひとつぜひその点の回答をいただきたいと思う。
  114. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は広島、長崎の原爆の惨害を受けた国の総理といたしまして、できるだけ早期に核兵器を地上から追放さしたい、そういう念願に燃えておる一人でございます。そういう意味におきましても、ICBMにせよ、あるいはINFにせよ、できるだけ早期に合意が達成されて、これが減少され、そして廃絶に向かう、そういうために努力してまいりたいと思っておるのでございます。SDIというものがそういうものに顕著に役立つというようなことであるとするならば、これは理解を示してしかるべきである。我々が目標としている核兵器の削減あるいは地上からの削減につながるものでありますから、研究には理解を示す。しかし、今後の発展についてはまだ未知の部分が非常に多いわけでございますから、十分留保をつけまして、そして情報の提供及び協議を要請して向こうの了承を得ているということなのでございます。
  115. 志苫裕

    志苫裕君 今のお話はもう少し見守る以外にないと思いますけれども、世界が特に米ソ以外、いずれアメリカが持てばソビエトも持つことになるのでしょう。そうしますと両国だけが要塞になって、拡張の今日、一体西欧やその周辺はどうなるのだという不安、これは当然のことでして、むしろ我が国の総理としてはそちらの側で懸念を表明すべきだということを申し上げておきます。  私は、そういう意味では外務大臣の国連軍縮会議における演説、さらにはロサンゼルスにおけるパシフィック・ドリームを求めてでしたか、その演説を高く評価をするわけでありまして、ああいう脈絡からはSDIは出てこないというふうに思うんですが、安倍さん、どうです。
  116. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私はロサンゼルスの首脳会談に同席したわけでありますが、レーガン大統領と中曽根首相との会談のやはり主題というのはあくまでも世界軍縮であったと思います。あくまでもレーガン大統領は今度の米ソ交渉にかける、そして米ソ交渉を何とか成功させなければならないという熱烈たる信念を持っておられました。そういうところから、私は今度の首脳会談というのは平和と軍縮というのが主題であったように思いますし、そういうところからSDI構想が出ましたし、またSDI構想については、アメリカ側も言っておりましたが、これはソ連においても既に研究をされておるということでありますし、またSDI構想をアメリカが独占しようとは思わない、世界のためにこれを活用して、そして核廃絶に持っていかなければならない、こういうことであったと思います。したがって、現在の世界情勢の中で、アメリカもそうでありますが、日本もともどもに手を携えて今回の米ソ交渉成功さして、世界の平和、そして核廃絶に一歩でも近づいていこう、そういう点については、我々といいますか、日本の考え方は一貫をしておる、私はそういうふうに考えております。
  117. 志苫裕

    志苫裕君 中曽根政治の特徴的なものに、お気に入りのメンバーを集めた仲間内の政治という発想があるということがよく批判をされるわけでありまして、これも特に私的諮問機関のあり方につきましては、去年公明党の先生でしたか、同僚議員が随分ここで詳しくやり合いましたから、私はそのことに触れるわけじゃない。問題は、この手法というのが民主主義の根幹にかかわる、議会政治に対する挑戦だという受けとめ方なんです。  物の本を読むのですから無責任かもしれませんが、総理が言っているのじゃないでしょう。そういうブレーンと称する諮問機関のメンバーが、議会が、立法府が無気力だから我々がやっているんだ、こういう発言だ。見逃せませんよ、これは。何か御発言ございますか。
  118. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 審議会あるいは懇談公等を設けましていろいろ意見を聞いておりますのは、官僚独善に流れることを防いで、民意がどこにあるかということを模索する意味もございまして、またその間におきまして国民の皆さんに問題を知っていただいて、よく御理解、御批判を願うという面もございます。しかし、終局的には、すべてそれは予算とか、あるいは政策として議会の御審議、御批判をいただく手続になっておるわけでございまして、決して議会を無視するものではありません。議会に提出するものの仕出しをそういうやり方で準備している、そういうふうに御理解願えればありがたいと思います。
  119. 志苫裕

    志苫裕君 ブレーン政治と言われるんですが、あなた自身の中に、こういうブレーンの台頭、諮問機関の対応というのは立法府に対するいら立ちでもありますか。
  120. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 現在の時代が大衆民主主義の時代でございまして、国民の御理解なくしては一歩も政治は前進することができないのでございます。そういう意味において草の根の段階から国民の御理解を政策的にもいただいていく、そういう意味も若干ございまして、懇談会を設けていろいろ御議論を拝聴し、またそれが新聞に出ることによって国民からいろいろな批判の声が我々のところへ参ります。そういうものを受けて最終的な政策を練り上げて国会へ出して御審判を願う、こういう手続をとっておる次第なのであります。
  121. 志苫裕

    志苫裕君 民意がどこにありやを探るとあなた言うけれども、ブレーン政治というのはあなたのお気に入りのメンバーを集めるんですから、あなたとの関係は垂直的秩序なんですよ。だから仲間内政治と言われるのじゃないですか。  委員長、私は、これは何遍か総務長官も答えたり、いろいろな人が答えて、諮問機関のありようなんか答弁の限りにおいてはまともになっているのだけれども、さっぱりやってない。そして何か立法府を無能呼ばわりするようなことではもう我慢がならぬから、ひとつ国会はしかるべき調査機関を設けて、立法調査権を発動して、こういうブレーン政治、諮問機関政治に対して対応するということを提案したいと思いますが、どうですか。
  122. 長田裕二

    委員長長田裕二君) ただいまの御提案については理事会に諮りまして協議をいたします。
  123. 志苫裕

    志苫裕君 以上、中曽根政治を特徴づけている問題、ちょっと連合問題ございましたが、時間がありませんので飛ばしますが、どうも私は一つ一つを検証してみると中身があるようでいて実はない、非常に具体的だと思うことは実行されてないという印象をぬぐえませんが、以下若干今度は政策面でやってみたいと思うのです。  まず、予算編成の過程で非常に問題になりました整備新幹線のいわば予算をつけた問題と、総理の一言で決まったと言われる防衛費の予算のいわば復活というのですか、このいきさつを説明してください。
  124. 山下徳夫

    国務大臣(山下徳夫君) 整備新幹線の予算につきましては、先生御承知のとおり、昨年度の予算におきましても、つまり五十九年それから五十八年度予算においても大体同額程度、同じようないきさつを経て計上されておったのでございます。ただ、今年度違いますのは、今年度の鉄建公団及び国鉄の五十億、五十億につきましてはそれぞれ所要の措置を講じなければならぬ。すなわち、それは三つございまして、一つは立法措置による並行在来線の廃止の問題、二番目は国と地方の経費分担に伴うところの事業実施方式の問題、それから三番目は今年の中ごろ予定されております再建監理委員会の答申との調整の問題、これらの手続を経て実行に着手するということでございます。
  125. 志苫裕

    志苫裕君 防衛費は。
  126. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 防衛費についてお答え申し上げます。  大蔵原案は御承知のように五・一%の増でございまして、その概略を申し上げますと、人件費につきましては自衛官の再任用の実施、それから新規物件費につきましては前年度より大幅に抑制、この二つがございました。これを前提とすることでございました。これにつきまして私たちがその後復活折衝をいたしまして、最終的には六・九%のアップになりましたが、その復活の内容につきましては練度の維持向上、それから隊員の処遇改善、それから車両、通信機器等の損耗更新による正常な隊務運営の確保、基地の安定使用のための基地周辺対策の充実や、先ほど申しました自衛官の再任用の実施を見送ることとしたこと等が含まれております。もちろん新規物件費につきましても若干のアップが認められております。
  127. 志苫裕

    志苫裕君 新幹線、これはことしの予算編成全体、中曽根内閣のいわば財政再建看板と整合性があるのですか。
  128. 山下徳夫

    国務大臣(山下徳夫君) これも御承知と存じますが、再建委員会の緊急提言の中には、整備新幹線についてはこれを当面見合わせるという趣旨の提言がなされておりますし、これを受けて閣議もそのとおりの決定をいたしておるわけでございます。ただ、その趣旨とするところは、これだけ膨大な赤字を抱えておる国鉄の負担においてはもうこれ以上やるべきでないという御趣旨でCざいまして、これも私、先般、衆議院においても申し上げたのでございますし、参議院の本会議においても申し上げましたとおり、新たに計画されております整備五線の地域におきましては、整備新幹線に対する切々たる希望がもう極限に達しているという状況から見まするならば、何か予算の執行につきまして手だてはないかということをいろいろ研究いたしまして、先ほど申し上げました三つの条件と同時に、とりあえず財投と利用債ということで予算を計上いたしまして、いよいよ着工する段階においてはこれらの問題についてさらに検討を進める、こういうことになっておりますから、私は現内閣の整合性に反するものではない、かように理解いたしておる次第でございます。
  129. 志苫裕

    志苫裕君 新幹線五項目合意の第三項、これを説明してください。こういうことができますか。
  130. 山下徳夫

    国務大臣(山下徳夫君) 先ほどもちょっと触れましたように、この五項目の問題につきましてはことしの八月を目途として調整する、このようにいたしておるわけでございます。
  131. 志苫裕

    志苫裕君 いいですか。新たな立法措置、在来線の廃止、国鉄再建監理委員会の答申との関連、そういうことについての調整を進めて、その結論を待って六十年八月をめどにこれを行う。こんなことができますか。
  132. 山下徳夫

    国務大臣(山下徳夫君) 先ほど申し上げましたような手順を踏みながら実行に向かって進めていくわけでございまして、その手順さえ踏めれば私はできると思いますが、ただ、先ほど申し上げました以外に閣議決定がございますので、他の面の合意、手順等が一応でき上がった段階におきましては、当然閣議の決定についての処置も行わなければならない、このように思っておる次第でございます。
  133. 志苫裕

    志苫裕君 大蔵大臣、こんなことできると思いますか。
  134. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは恐らく国鉄再建監理委員会の答申が、およそ私の口から言うべきではございませんが、この夏ごろあるであろうという前提の上に立っておるわけであります。その答申を得ましたならば、そこには、それも予見するわけにはまいりませんけれども、経営形態とかいろんなことが含まれておるといたしますならば、それとの関連においてこの調整を図っていかなければならぬわけでございますので、それは可能であると私は思っております。
  135. 志苫裕

    志苫裕君 いいですか、ばかなこと言っちゃだめですよ。在来線の廃止、さまざまな意見を聞かなければなりませんよ。国鉄監理委員会の答申との調整、これだって容易なことじゃありませんよ。どうして八月までにできますか、そういうことが。
  136. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは六十年八月を目途にこれを行うという取り扱いについての合意をしたわけでございますから、私の直接の関係とは別にいたしましても、これはやっていかなければならぬ問題であります。恐らく、私どもに一番直接の関係があるといたしますならば、国及び地方負担というような問題ではなかろうかと思います。
  137. 志苫裕

    志苫裕君 運輸大臣、在来線の廃止についてもう意見を聞き始めているんですか。
  138. 山下徳夫

    国務大臣(山下徳夫君) 予算をお認め願ってからこの問題については意見をお聞きしたいと思っておりますが、先生御指摘の在来線、これは並行在来線という趣旨に御理解いただきたいと思います。
  139. 志苫裕

    志苫裕君 何言っているのかさっぱりわからぬじゃないか。無理な答弁しなさんな、こんなものできっこありはしませんよ。そういう整合性のないことをやって無理に詰めておる。ありていに言えば、党の方が無理にやったので、政府の方は困っているのでしょう。  総理、こんなことできますか。あなたがやれると言うのなら私はお目にかかりたい。
  140. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは予算編成の最終段階におきまして、党との最終的な合意で方式を決めたわけでございますから、八月までにそういう努力をしてまとめ上げるようにしていきたいと思います。
  141. 志苫裕

    志苫裕君 これは幾ら経費がかかるのですか。これは政府がやったのじゃなくて、党がやったのじゃないのか。君たちがこれを積み上げたのか。運輸省の予算じゃなかったのだろうがね。
  142. 棚橋泰

    政府委員(棚橋泰君) お答え申し上げます。  いきさつを申し上げますと、整備新幹線の経費につきましては、ここ何年来、大変いろいろ問題のあるものでございますので、要求の段階では未定という形で要求をいたしております。そして最終的な予算編成の段階におきまして、例年各五十億と調査費というような形でつく、こういうことでございます。  それから、どのくらいかかるかという御質問でございますけれども、これは若干古い時点の調査でございますが、五十四年度の調査では、今回対象になっております東北新幹線の盛岡—青森間が六千百億、それから北陸新幹線は高崎から大阪までの間で二兆二千五百と、こういうことになっております。
  143. 志苫裕

    志苫裕君 中曽根さん、グライダーが風がないと飛ばないから風吹かしてくれと言いますが、これは逆風だ。あなたそう思いませんか、あなた。どうしてあなたの金看板を掲げてやっているときにこういう話が出てくるんですか。
  144. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 整備新幹線の敷設は、関係住民の皆さんの非常に熾烈な長い間の御要望でございます。政党としても、ぜひ何とか住民の御期待におこたえしたいという希望もまた多々あるわけであります。しかし、財政上の問題があり、また臨調答申の線もございまして、その間の調整をどういうふうにしてやるかという点で出てきているのは、在来線の問題であり、それから地方の負担の問題であり、そして最終的に再建監理委員会との調整の問題でございますから、そういう点に関する合意を見まして、そして八月までに決めたい、そういう政治的裁定が党の内部において行われた次第でございます。
  145. 志苫裕

    志苫裕君 ですから、そういう手順をやってから新幹線合意をしたっていいじゃないですか。我々だって意見はありますよ。地域は要望がありますよ。手順がめちゃくちゃだ。  それから防衛予算、長官、あなた、今言った額を言ってみてください。
  146. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 復活折衝の具体的な数字につきましては政府委員よりお答えさせていただきたいと思います。
  147. 宍倉宗夫

    政府委員(宍倉宗夫君) 復活の金額でございますが、先ほど大臣から申し上げましたように、全体で五百十四億ということでございます。その復活になりました事項につきましては、施設整備費でございますとか、油購入費でございますとか、装備品等整備諸費、それから武器車両等購入費、施設運営等関連諸費、人件費、教育訓練費等でございます。
  148. 志苫裕

    志苫裕君 私も昔役人の端くれしていましたから、大蔵原案、それからいろいろな折衝、復活というときには何が復活してそれは幾ら。人十人と言ったら五人に切られたが三人戻してもらったとかね。道路延長五百メートルにしようと思ったが二百で切られたのでまた頑張ってもらってきたと、こういうことでしょう。五百十四億伸びたのなら、最後は総理の裁断で、三百三億までは大臣あたりで伸びたのだが、あなたが二百十一億円だけふやしている。その中身を言ってください。これは大臣レベルなんだろう。事務レベルじゃないじゃないか。
  149. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 最後の大臣折衝が二回行われまして、そしてその後総理官邸における党四役を交えての政治折衝がございました。それがそれぞれ続いた形で行われておりますので、計数的にはまた経理局長よりお答えさせたいと思いますけれども、私の段階で人件費、正面装備費、例えば護衛艦DD三隻なんかが認められましたし、またP3C十機が認められましたけれども、これはキャッシュベースのものはゼロでございます。あとF15が十四機、それからパトリオットの〇・五群程度のもの、これはキャッシュベースはゼロでございます。また重要なものは、いわゆる正面以外に例えば隊員の宿舎改善等が認められましたけれども、政治折衝と大臣折衝がかなりつながって行われておりますので政府委員よりお答えさせていただきます。
  150. 宍倉宗夫

    政府委員(宍倉宗夫君) 今、大臣から御報告申し上げましたように、大臣折衝では金額的には三百三億円の復活になりまして、その後、その三百三億円の復活では、なお油購入費、教育訓練費等、要すれば自衛隊の練度の維持を図るためにはどうしても経費が足りないということで、いわゆる党四役折衝という形になったわけでございまして、そこで二百十一億円の配分が決まりまして、大蔵省と詳細積み上げました結果、油購入費、教育訓練費、武器車両等購入費、施設整備費、装備品等整備諸費及び基地周辺対策経費といたしまして二百十一億円を配分いたしたものでございます。
  151. 志苫裕

    志苫裕君 切りのいいところで切りますけれども、これは再開までにお願いします。  これはわからないですよ。いろいろ節約して、しかし何かいろいろ大事なことなんで防衛費を足しましたということなんでしょう。そうしたら、これに幾ら、これに幾ら、これに幾ら、これはどうしても避けがたいことなんで追加をしましたと、こう言ってくださいよ、午後の再開までに。それをお願いします。
  152. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 復活折衝のそれぞれの段階につきましての金額等その過程ということでございますと、復活折衝といいますのは、御承知のように政府内部の一種の作業過程でございますので、ほかの省庁の予算との横並びもございます。したがって、最終的に御議論いただくのは、現在私たちが御提案申し上げておりますいろんな経緯を経ながら最終的に決まりました政府原案、これが詳細な数字として皆さんの御審議、つまり国民の御審議をいただく形になっておりますので、その点で御了解いただければと思います。
  153. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 午前の質疑はこれまでとし、午後一時に委員会を再開し、志苫君の質疑を続けます。  これにて休憩いたします。    午前十一時五十五分休憩      ─────・─────    午後一時一分開会
  154. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 予算委員会を再開いたします。  昭和六十年度総予算三案を一括して議題とし、休憩前に引き続き志苫裕君の質疑を続けます。志苫君。
  155. 志苫裕

    志苫裕君 向こうの答弁からどうぞ。
  156. 長田裕二

    委員長長田裕二君) それでは加藤防衛庁長官
  157. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 御答弁申し上げます。  午前中の際にも申しましたけれども、私たち政府といたしましては、最終的にでき上がりました政府予算案というものをかなり詳細に大変な膨大な資料として御審議いただくよう提出しているわけでございまして、その意味におきまして復活折衝の内容は政府部内における過程の一つと考えてこの今の最終予算案で御審議いただければと思う次第でございます。
  158. 志苫裕

    志苫裕君 大蔵大臣、あなた何の復活を認めたの。
  159. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まず私が復活で合意に達しましたのは、いわゆる後年度負担を伴います問題、これは先ほど防衛庁長官からのお答えにもあっておりましたものでございます。護衛艦でございますとか航空機でございますとか、そんな問題が大臣折衝で復活され、それは主として後年度負担であって、いわゆる顕金の問題でございますから金額よりも装備の後年度負担の問題が主としてございます。それが新聞等でも報道されておりますいわゆる大臣折衝で合意に達したものであります。
  160. 志苫裕

    志苫裕君 ほかの予算は何を復活したということがわかるんですよ、乏しい予算を分け合うのですから。しかし、いろいろ言われますように、防衛予算だけは何を復活したのか、五百十四億。三百三億と二百十一億ですか。何をどう復活したのかがどうも説明つきません。これは国民が聞いていて、防衛予算はどんぶり勘定かと思いますよ。鉛筆をなめなめ一項目ごとチェックしまして、老人の医療費は今度二万円上げましょうとかというのをやっているんでしょう。防衛予算だけがそれがわからない。国民は納得できませんから、これはひとつ後日までに、総括が終わるまでには出すようにしてくださいよ。  次に入る前に、お昼のニュースで、アメリカに行っておったソビエトの代表団の帰国を早めたという重大ニュースが入りまして、何か変事があったのではないかということですが、何か情報ございますか。
  161. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 十一日の朝、東京でいろいろとキャッチしましたサンフランシスコ及びワシントン発の各種の情報あるいは報道を総合すると、三日から十一日までの予定でアメリカを訪問中でございましたシチェルビツキー政治局員、ソ連の政治局員を団長とするソ連最高会議議員団、約三十名でございますが、この議員団が十日午前サンフランシスコに到着をいたしまして、市内見学等を行った後、午後のサンフランシスコの予定をキャンセルして十日の夜、これは現地時間でございますが、急遽帰国することとなり、今一行が帰国しつつあるということを国務省スポークスマンが確認をして発表いたしたということでございます。この計画変更、急遽帰国といった事情等につきましては、今、目下外務省といたしましても情報収集に努めておるところでございます。  今回のこうしたシチェルビツキー政治局員の帰国が何かソ連の中で変事があったのではないか、こういうことに結びつけられて伝えられております。その可能性もあるのではないかとも思われますが、一方におきまして、十日にはジミャーニンという書記、ソ連共産党書記を団長とするところの最高会議の議員団が予定どおり西独に向けて出発をしたという報道もございますし、また十日のモスクワ放送によれば、デュマ・フランス外相一行が予定どおりに同日モスクワに到着してグロムイコ外相らが空港に出迎えた。こういうことでございまして、そういう情報との関係の中でどういうふうにこれからなっていくのか、今まさに関心を集中して情報を集めておるわけでございます。
  162. 志苫裕

    志苫裕君 委員長、ちょっと防衛予算の問題は納得できないので、取り扱いを相談してください。
  163. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 速記とめて。    〔速記中止〕
  164. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 速記を起こして。  ただいまの志苫君御質問の防衛庁予算の編成過程の問題につきまして、加藤防衛庁長官から答弁をお願いします。加藤防衛庁長官
  165. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) ただいまの予算復活過程における資料提出の問題でございますけれども、これは単に防衛庁予算というだけではございませんで、政府の予算と作成過程におけるプロセス、過程の問題と国会審議にお出しすべき資料の問題という予算全体の問題であろうと思っております。したがって御審議いただくのは今提出しております政府予算原案、これには本当に詳細にわたるところまで積み上げた資料をつけて御審議いただいているわけですけれども、それで御審議いただければというのが政府全体の考えでございます。
  166. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 志苫君、それでよろしゅうございますか。
  167. 志苫裕

    志苫裕君 審議するのは予算書だけあればいい、予算編成経過は審議の対象でないという物の言いぐさは納得できませんよ。
  168. 長田裕二

    委員長長田裕二君) ただいまの問題につきましては、後ほど理事会におきまして検討、協議をすることにいたしますので、ひとつ御了承願います。
  169. 志苫裕

    志苫裕君 今のああいう答弁は納得できない。編成過程は文句、物を言うな、出た物だけでやれという言いぐさがあるか。
  170. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  171. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 速記を起こしてください。  加藤防衛庁長官から答弁の補足がございます。加藤防衛庁長官
  172. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 若干言葉が足りなかったので誤解をいただいたかもしれませんが、私たち国政の審議権というのは国政全般、行政全般にわたりそれは非常に幅広いものだと思います。私たち政府サイドがとやかく言うべき筋合いのものではないというふうに思っております。  ただ、資料の提出という問題、予算の作成過程の資料の提出の問題といいますと、本来私が申し上げていいかどうかわかりませんで、大蔵大臣から御答弁いただいた方が適切かなと思って若干用心してしゃべっているところがございますけれども、やはり防衛庁ということではなくてすべての予算、各予算、各省庁全般にわたりましてどうもその過程の話は資料提出を御勘弁願いたいという形になっているようでございまして、そういう意味で途中の経過につきましてはなしで、現在の資料で何とかお願いできればというつもりでございます。
  173. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは防衛庁長官からも今お答えがあっておりましたように予算全般のことにも触れるかと思います。予算審議権、大きくは国政調査権に政府として最大限の御協力を申し上げるのは当然のことであります。例示として、志苫委員のおっしゃいました例えば定員十を三つ復活するとか、そういう非常なシビアな議論が過程においてなされます。その場合、例えば、さればこの予算を削減してそれの引きかえに充てるかとかそういう議論も志苫さんの経験上十分御理解いただけることであろうと思うわけであります。  したがって、その予算編成、私の立場から言えば予算調製の過程における資料というものは私は資料としてのていはなしていないものであって、それはあくまでも予算審議の過程の中でさまざまな議論がなされ、結果として千八百ページの予算書を提出しておりますので、それに基づいて例えばこのような議論があったかとか、それは当然答えるべきこともあろうかと思いますが、資料として予算編成過程のものを国会に提出するというのはその事実上の取り扱いとしても大変難しい問題ではなかろうかと、このように考えます。
  174. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 先ほどの志苫君の御質問につきましての取り扱い方、これは後刻理事会において協議をすることにいたします。
  175. 志苫裕

    志苫裕君 一言申し上げますと、防衛費に限りませんが、やっぱり何がふえたのか、しかも防衛費はみんなが注目していて総理の裁断までいったんですからね。どこをふやしたのだ、国民の皆さん納得してくださいという説明ができなきゃだめですよ。資料を出せなんてけちなことを言っているのじゃないんだ。ふえた分説明しなさいと言ったら、説明できぬって電報みたいな箇条書きで言っているからね。それを幾らふえたのかと言ったら、説明できぬと言うんでしょう。それじゃ国民は聞いていたってわかりませんよ、あなた。これはいずれ理事会で相談してもらいます。  防衛費のGNP一%枠、いろいろと議論がございまして、わかったようなわからぬような話になったんですが、総理、あなたが守りたいと言うことと自民党の幹事長が最善の努力をすると、これはどういう違いがあるんでしょうね。
  176. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 防衛費一%の枠の問題については、国会におきまして今まで一連の御答弁をしてきたわけでございます。基本的姿勢は守りたいと、そういう考え方でおります。そして、この点につきまして与野党の幹事長の間でもお話があり、自民党幹事長の見解が出されたわけでありますが、これは与党の幹事長の見解としての御所信を述べたものでありまして、私はそれは尊重していきたい、このように考えております。
  177. 志苫裕

    志苫裕君 これはいずれまた同僚がやりますし、私もちょっと時間が詰まってきたので念を押しておきましょう。幹事長は職を賭してと、こう言っています。あなたは総裁として幹事長の職を賭させることはありませんね。
  178. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 総裁と幹事長の関係というのは、そんなぎくしゃくしたものではないのであります。それはおたくの政党でも同じだろうと思います。両方でよく話し合ってやっていく、そういうことでやってまいりたいと思います。
  179. 志苫裕

    志苫裕君 それで総理、これは少なくとも予算編成までは、あるいはこの予算までは、あなた去年からの約束であります守るということできたわけですね。ですから、この予算編成というのは、政府の経済見通しも全部立てましてその年度の追加需要もそれなりに見込みまして予算を組むのですから、あなたが守るということを予算編成に貫いたのであれば、追加需要も見込んでそれだけの余裕を残しておくのが約束というものじゃありませんか。その点いかがですか。
  180. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 一般的にはそういうことを言えるかもしれませんが、給与の問題その他は後からいろいろなものが出てきて不確定的要素も多いわけでございます。そういうような面から国会における先般来申し上げたような御答弁をしてきたわけであります。
  181. 志苫裕

    志苫裕君 経企庁長官、経済見通しで雇用者所得の伸びはどのくらい見込んでおりますか。
  182. 金子一平

    国務大臣(金子一平君) 六十年度の雇用者所得の伸びは六・八%でございます。
  183. 志苫裕

    志苫裕君 違うな、雇用者所得ですよ。
  184. 金子一平

    国務大臣(金子一平君) 雇用者所得の伸びを六・八と申し上げております。
  185. 志苫裕

    志苫裕君 総理政府の見通しでそうなっているんですから、追加需要はちゃんと見込んでおくべきですよ、あなた。どうですか。
  186. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 去年も国会におきまして不確定的要素の中には人事院勧告というものも入れてあるわけでございます。景気の動向もございますし、そういう意味におきまして人事院勧告やその他の問題等々の問題も将来はあり得ますからそういうふうに申し上げてきておる次第なのであります。
  187. 志苫裕

    志苫裕君 今、防衛大綱と一%の枠の関係で総理は何か大綱が優先されるような、後先みたいなことを言っていますが、これは大綱を実現していく上で財政上の見地を決めたわけでありますから、これは一本のものなんですよ。いきさつについて今やり合う時間がありませんが、そのことはよく飲み込んでおいてほしい、後先の問題じゃありませんから。いかがですか。
  188. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは五十一年十月に大綱を決めましたときに、政府は国防会議そのほかの所要の手続をとりまして閣議でも大綱を了承した、その後一週間たってから大綱の運営実施につきまして財政的めどの問題をつけたわけであります。しかし大綱を達成せよというのがやっぱり第一義的にあるのでありまして、それの達成の上についての注意的な心構えとしてそのようなものが出てきたので、やはり中心的なものは大綱というものであると私は考えております。
  189. 志苫裕

    志苫裕君 それは総理間違いでしょう。大綱は四次防までのいきさつを踏まえて防衛力整備の発想転換を図りましたね。大綱が示す前提条件のもとでは量的には概成されたという認識に立ちまして、したがって質の向上が目標になったわけですよ。質の向上というのは、相手もあることでありますから、際限なく上がっていく、そういう意味で財政面のコントロールをかましたという、これが一%枠の持っておる意味なんであって、でなかったら脅威対抗論にもう一遍戻らぬといかぬですよ、質だけで言えば際限なくいくのですから。それに対して脅威対応や所要防衛力論をやめたんですから、それをまた持ち出すのなら五十年に戻らぬといかぬということだけを私は指摘をしておきたいと思う。あなた、それは後先の問題、大綱を決めたから財政面のコントロールを決めたのでありまして、その点はひとつ総理、間違えないようにしてくださいよ。いかがですか。
  190. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 時間的経過を見ましてもわかりますように、まず大綱が決められて、そしてそれを行うめどとしての一%というものが一週間後に決められた、四次防の次にどうするかという点で防衛政策についていろいろな議論が行われたようでありますが、大綱という形でそれが実現を見た、その大綱を実施するについて注意的にあのようなものが当面の措置としてつくられたと、そういうふうに理解しております。
  191. 志苫裕

    志苫裕君 いずれにしても幹事長は職を賭すと。あなた、幹事長と総裁は何とかとわけのわからぬことを言ったけれども、これは我々は今予算委を通じて絶対に容認ができないという立場で再度詰めます。  ところで、私はこの間、数日前に外務省にお願いをして、今まで日本に入ったアメリカの艦船の一覧表を出してもらいました。原子力を動力とするもの、そうでないものを全部含めましていただいたんですが、私どもの得た資料でこれをチェックをしたところ、実は原子力艦船二百六十一隻が入っておりますが、このうちの七五・五%の百九十七隻は核艦船であります。さらに問題なのは、この在日米軍施設区域たる三つの港を除いた日本の普通の港、普通の港に外務省から提出してもらったものによりますと百九十一隻入港いたしておりますが、いわゆる普通の商業港、工業港です、このうち百九隻、五七%に当たる艦船が核艦船であります。この事実をどのように御存じですか。
  192. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) まず数字につきましては、原子力艦艇、昭和三十九年以降本日現在までの入港実績は委員御指摘のとおり延べ二百六十二隻でございます。それから施設区域以外の港につきましては昭和四十五年以降の数字ということで御連絡申し上げましたが、これは数字が不完全でございますが、一応一昨年末現在までの間の延べ隻数として二百六十四隻ということで御連絡申し上げたように承知しておりますが、その中でいわゆる核搭載可能艦船が具体的に何隻であるかということにつきましては、私どもの方はさような分類を行っておりませんので、ただいま御指摘の数字についてコメント申し上げることはできません。  ただ、一般論として申し上げれば、従来から政府から申し上げておりますように、核を現実に積んでおるということと核の搭載可能であるということとは全く別の問題でございまして、核を現実に積んでおる場合には事前協議の対象になり、事前協議があればこれはノーと言うということは従来から政府が申し上げておるとおりでございます。
  193. 志苫裕

    志苫裕君 実は検証の問題は年がら年じゅうやっていて、あなたたちはらちは明かぬのだけれども、原子力推進、いわば原子力艦もさることながら、在来艦が一般の商業港、これは工業港ですか、一般の港に百九十一隻入っていて、そのうち百九隻が最低限核積載可能艦なんだ、このことを皆さんは知っていたんでしょう。
  194. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 施設区域以外に、例えば函館でございますとか舞鶴でございますとか、その他の港に入港をしておる艦船につきましては、御承知のように巡洋艦でありますとか駆逐艦でありますとかフリゲート艦でありますとか、各種の艦種のものがございます。これはいずれも御案内のように安保条約に基づきます地位協定によりまして入港が認められておる、一般的に条約上の建前として自由に入港が認められておるわけでございまして、そのような安保条約地位協定の仕組みに基づきましていろいろな港に随時入港をしておる、こういうことでございます。
  195. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 矢田部理君の関連質疑を許します。矢田部君。
  196. 矢田部理

    ○矢田部理君 核艦船の寄港問題が出たところで、核にかかわる質問をやっていきたいと思いますが、総理はことしは平和と軍縮の年だと言われる。けさもまたジュネーブ軍縮会議が始まる直前の言葉として、核廃絶を人一倍願うかのような話をされたわけでありますが、そういう言葉にもかかわらず、実際に総理がやっておられることを見ますと、どうも非核の思想を広げることよりもどんどん狭めていくような傾向が顕著になっているのではないでしょうか。衆議院の論議を見ましても、アメリカの艦船が有事の際に核使用することを容認する、あるいはまた在日米軍の核通信施設の存在を認めるなどなどがその一例でありますが、その点、総理の核に対する考え方を改めて伺っておきたいと思います。
  197. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、けさも申し上げましたように、平和と軍縮の年にしたいと思っておりますし、核廃絶をできるだけ速やかにこの地球上に実現したいと念願をしておるのであります。しかし現実に世界の情勢が抑止力と均衡によって維持されていることは否定できませんし、その抑止力の中には広義における核による抑止力というものも効いておりますし、日本もその効果を受けておる国の一つでございます。そういうような情勢のもとで、衆議院におきましていろいろ、このところはどうだ、このところはどうだという限界点について質問を受けたわけであります。したがいまして、私は安保条約及び日本の憲法や日本の防衛政策等の範囲内において、ここまではやれます、ここまではやれます、これは個別的自衛権の範囲内ですということを前提条件つきで、例えば日本が侵略されておる状態のもとにとか、あるいは公海上においてとか、そういうように条件つきで、可能な範囲内の御答弁を質問に応じて行っておるのでありまして、そういう質問がなければ私は答えるものではないのであります。
  198. 矢田部理

    ○矢田部理君 質問があったから答えたというほど問題は軽くはないのであります。  そこで、どうも総理は非核という思想よりも核抑止力に全体として重きを置き過ぎているのではないか。一、二の例を指摘しておきたいと思うのでありますが、例えば一月にニュージーランドを訪問された。その際、総理はロンギ首相に対して、御承知のようにニュージーランドはアメリカの核積載可能艦船が寄港することを反対しているわけであります。その反対の政策を少し弱めたらどうか、変更できぬかというような話をした記憶はございませんか。
  199. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そのような話をしたことは一切ありません。外国の政策について内政干渉がましいことは一切言っておりません。
  200. 矢田部理

    ○矢田部理君 そういう総理の否定の御答弁にもかかわらず、報道はまず予告をしましたね。日本の新聞でありますが、正月早々の日米首脳会談で、レーガン大統領から、ニュージーランドを訪問したときにはニュージーランドの厳しい非核政策を少し柔軟化させることができないか、ぜひ働きかけてほしいと依頼されたという話も伝わっておるのですが、いかがでしょうか。
  201. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) レーガン大統領からそういう依頼を受けたことは一切ありません。
  202. 矢田部理

    ○矢田部理君 ここにシドニー・モーニング・ヘラルドという新聞があります。あなたのニュージーランド訪問にかかわってその記事が出ておるわけでありますが、中曽根もまたロンギに圧力をかけるという見出しであります。ニュージーランドに行かれたときに、十八日の日にはロンギ首相と公式会談、その翌日の晩、晩さん会などがあったようでありますが、どうもその席らしい。非公式な会談、私的な会合で、極めて如才のない外交的な方法ではあったが、ニュージーランドが米の核艦船寄港を阻止することに対してはっきりと懸念を表明した。日本高官もそこに付き添って強調したが、日本はANZUSの現状に影響を与えるようなことはいかなる変更にも懸念を持つ、ジュネーブ米ソ軍縮交渉、その前に西側同盟の結束を弱めるようなことは何であっても望まない、艦船のニュージーランド寄港でアメリカの要求をウェリントンが拒絶するのを見たくない、その船が日本に来たらまた大変なことになるという向きを強調されたと報道は伝えておるのですが、いかがでしょうか。
  203. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういう事実は一切ありません。もしそういう新聞の記事があればそれは捏造であります。特に晩さん会の席上で何か言ったようなことが書いてありますが、そんな難しい話を晩さん会の席上でやる例はありませんし、そのときもそういう話は一切しておりません。
  204. 矢田部理

    ○矢田部理君 今申し上げたのが一月二十六日の新聞報道でありますが、同時に、そういう日本政府が否定するであろうことを十分見越したのでしょうか、二十八日のヘラルドはまた、外務省が早速否定をしたわけでありますが、記事は正確であると署名入りで新しい記事を載せております。そして次のように述べております。東京の否定はこの種ケースで通常とられるやり方である、日本で微妙で政治的に意見が分かれる問題では、これが暴露されると否定声明を出すのがこれまた常である、ここまで念入りに報道をしておるのでありますが、本当にかた苦しい話はしないと言っておりますが、記事そのものも極めて巧妙に外交的な零囲気の中でやった、こういう記事にもなっておるんですが、もう一度だけ総理、及び外務大臣も行っておられたと思うので、外務大臣からもあわせて答弁をいただきたいと思います。
  205. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今、総理の答弁のように、私もオーストラリア、ニュージーランドに同行をいたしましたが、そうした話は一切出ておらない、こういうことであります。
  206. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今の記事は全く事実無根の記事であります。外国人のいいかげんなそんな記事よりも日本総理大臣をぜひ御信用願いたいと思うのであります。
  207. 矢田部理

    ○矢田部理君 総理は時折、例えば前のサミットのときにも、ヨーロッパに中距離核戦力を配備するのはよろしい、やるべきだというようなことで結構おせっかいな口を国際的にかなりきいておるものですから、この外国の報道も相当程度信憑性ありと受け取らざるを得ないような状況が実はあるわけであります。  それはそれといたしまして、それならばこう観点を変えて聞きたいと思いますが、我が国は非核三原則をとっております。ニュージーランドもまたこの非核三原則、これを基本にしてアメリカの核積載可能艦船の拒否を決めたわけであります。そうすると、総理としてはまさに我が国の思想と同じような立場に立ってニュージーランドが非核政策を進めることに対して積極的な支持を与えられたでしょうか。
  208. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本は非核三原則を堅持していると同時に事前協議というしっかりとした制度的な保障も持っておる、これがニュージーランドと違う場合でございます。私は、そういう意味におきまして、日本日本独自の政策を堅持していけばいいので、外国の政策を奨励するとか、反対するとか、そういうような第三国の問題について干渉がましいことは一切やらない方針でおります。
  209. 矢田部理

    ○矢田部理君 この核の問題はそれぞれの国の問題ではないんですね。すべての人々が関心を持たなければならぬ大変な事態に実は立ち至っているわけです。その意味では人額共通の課題と言っていいでありましょう。ニュージーランドで制度がどうなっているかを聞いているのじゃないんです。非核の思想をより広げていこう、貫いていこうという姿勢はまさに我が国のとっている思想と同じ基盤に立っているのではないかというふうに思われるわけですから、そういう意味では、よくやってくれる、そうお互いに広げましょう、やりましょうということで話をするのが首脳会談ではなかったのでしょうか。その点、もう一度だけ伺っておきたいと思います。
  210. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういう点はやっぱり与党と野党、あるいは政府と野党の皆さんとの立場の相違があると思うんです。野党の皆さんの場合はそういうふうに自由に御発言できると思いますが、政府の場合にはやはり相手の国あるいは第三国あるいは同盟関係にある国、そういうものに対するすべての配慮をした上で発言というものをやらなければならぬのであります。そういう意味におきまして野党の皆さんより、より慎重になるということは当然のことでありまして、そのように配慮してきておるものなのであります。
  211. 矢田部理

    ○矢田部理君 これは先ほどの話と裏表の関係になるわけですね。どうも核艦船の寄港阻止はやめなさい、こちらについても支持できないというようなニュアンスで問題を受け取ると、どうも総理の核に対する物の考え方が極めて否定的、要するに非核に対する考え方を否定的にとらえているのではないかという疑いを持たざるを得ないわけであります。  もう一点関連して伺っておきたいのは、南太平洋非核地帯設置構想、これが大詰めにきているわけでありますが、これについて総理はロンギ首相との会談では何か言及をされましたでしょうか。
  212. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) たしかロンギ首相から南太平洋諸国で話し合っておる構想について話があったような記憶があります。それに対しまして私は、それはそれらの国々が自由におやりになることであって我が国がそれに対してとやかく申し上げることではないと、そういうふうに申し上げました。ただ我々の方で申し上げるとすれば、これは国際法の範囲内でやってほしい問題である、つまり航行の自由とかそういう問題に絡んでまいります。そういうふうに申し上げた記憶はあります。
  213. 矢田部理

    ○矢田部理君 新聞の報ずるところによりますと、四つの条件をつけた。その一つに今の問題もあるわけでありますが、例えばこんな内容が入っております。世界全体の平和と安定に悪影響を与えない——非核地帯設置の構想をまとめることがどういう悪影響を与えるのでしょうか。どうもこの構想にすら足を引っ張っている感じがするのでありますが、いかがでしょうか。
  214. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ロンギ首相との話の中では安全保障問題について我が方の政策を申し述べたところがあります。そういう中で、我々は広義の核抑止力に依存しておる、しかし我々は非核三原則を持っておると、日本のそういう防衛の体系、核を含めた体系について我が国の考えを話したことはあります。  そういう中において、世界的安全保障の中には核の抑止力も含まれておるということも我が方の政策であるということは申し上げました。そういうような点を今の点があるいは指摘しておるのかもしれませんが、やはり安全保障というものは世界全体のスケールでできておると自分は思っておる、そういう意味において、我が国も我が国周辺の問題については関心も持ち、我が国の固有の国策、憲法その他の認める範囲内における固有の国策のもとに我が国の仕事はやっておるんだ、そういう説明もした記憶はございます。
  215. 矢田部理

    ○矢田部理君 どうもニュージーランドの非核政策に対して積極的な評価を与えずに足を引っ張るかのような発言が多かったのではないかという節があるわけであります。例えば西側の結束を強調されたそうでありますが、その裏にはニュージーランドの核政策が西側の結束を乱しているかのような受けとめ方をされるような言辞があったのではないか。  この非核地帯設置構想に対する対応もそうだったと思うのでありますが、もう一つ総理の核に対する考え方を伺っておきたいと思いますが、ベラウ共和国というのがあります。もとパラオでありますか、ここは現在国連の信託統治になっておりまして、アメリカが施政国でありますが、ことの憲法が非核憲法であります。いよいよこのパラオが独立をする、ベラウ共和国として独立をする運びになるわけでありますが、アメリカは非核条項を削除しない限りこの独立を認めない、こういう厳しい対応をとっておるわけでありますが、総理、これについてどうお考えになりますか。外務大臣にもあわせて見解を伺いたいと思います。
  216. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) パラオ諸島が独立をするということでございます。これはアメリカとの間で今その協議が進んでおるわけでございますし、パラオが独立する、主権を持つ国家としてこれから南太平洋諸島の一員になっていく上においては、まず第一にはやはりアメリカとの円満な協議が成立しなければ困難ではないか。我が国としては、やがて独立するであろうパラオとはこれまでの歴史的に非常に因縁の深い関係にあるわけですから、独立した以上は積極的に協力をしなければならぬ、こういうふうに思っておりますが、このパラオ自体がどういう国としての憲法を持つのか、あるいはまた国としての国家原則を持っていくかということについては、これはパラオ自身の問題でありまして、我が国がとやかく言う筋合いではないのじゃないかと、こういうふうに思っております。
  217. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 外務大臣の御答弁のとおりであります。
  218. 矢田部理

    ○矢田部理君 これは総理、それから外務大臣にも申し上げたいのでありますが、非核政策、非核三原則を国是とする日本の外交政策の基調は、抑止力に供したり、それを強調したりすることに労力を費やすのではなくて、非核の思想をできるだけ国際的に広げていく、そのことが核軍縮への道、あるいは日本のやるべき立場だというふうにも考えるわけでありますが、その点総理としていかがでしょうか。
  219. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いわゆる抑止力というものは、現在の世界情勢のもとにおきましては、核、非核の軍事力あるいは国際世論、あるいはそのほか資源とか経済とか、あらゆる問題が作用していると思います。そういうような問題の中におきまして、核兵器につきましては一般論といたしましてできるだけこれが縮小していくことが望ましい。したがいまして、今米ソ核兵器制限の交渉を支持しておるわけであります。一般論としては我々はそういうことでありますけれども、特定の国と国との間の問題等につきましては内政干渉にわたることは一切やるべきでないと考えております。
  220. 矢田部理

    ○矢田部理君 相当核の問題では国際的に、SDIもそうでありますが、口をきいておる総理が、非核の問題になると今度はそれぞれの国の問題だと言って消極的になる。ここに総理の非核に対する消極姿勢を見るわけでありますが、翻って国内の問題に問題を移したいと思います。  アメリカは依然として、ニュージーランドに対する対応もそうでありますが、核の有無について明らかにしない、これがアメリカの基本政策だと言っております。ところが、先ほどもちょっとありましたが、日本に関して言えば、日本に寄港であれ通過であれ、核を持ち込むときには事前協議の申し入れをする、それがないのだから日本には持ち込まれていない、こういう説明、態度をとっているわけですね。そうなると、ここでアメリカの核の有無を明らかにしないという基本政策と、日本に関しては持ち込んでいない、つまり有無のうち無を明らかにする政策になるわけでありますから、明らかに衝突するんですが、この点はどう外務大臣考えておられますか。
  221. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) おっしゃるように、我が国とアメリカとの安保条約で事前協議制度がありまして、核を持ち込む場合にはアメリカは事前協議にかけなければならない、こういうアメリカにとっては義務があるわけでございます。そういう中で、日本政府としては、しばしば国会で総理大臣も答弁されておりますように、日本としては非核三原則を貫く、こういうことで、核持ち込みについての事前協議があった場合はこれを拒否する、こういう日本の基本姿勢を内外に対して明らかにいたしておるわけでございます。したがって、核の持ち込みという問題に関しましては日本の立場はそれで明快でありますし、また日米間の信頼、その信頼の基礎の上に立った日米安保条約によって事前協議制度としてこれはもう明快になっておるわけでございます。  そういう安保条約の体系があるわけでございますが、もちろんアメリカはアメリカの基本政策を持っておりまして、アメリカが核の有無を明らかにしないということは、これはアメリカの世界政策といいますか、そういう中でアメリカの基本方針としてとっておるわけでございまして、このアメリカの基本政策と安保条約における事前協議制度とは、今申し上げましたような関係から私は矛盾したものではないと、こういうふうに考えております。
  222. 矢田部理

    ○矢田部理君 日本に入ってくるときだけ核の有無を明らかにしているのですね。これはお認めになるでしょう。ところが、ついせんだってもワィンバーガーはアメリカの下院軍事委員会で、核兵器の存在を肯定も否定もしないのがアメリカの政策、それは全世界に適用される普通のものである、日本は例外だなどとは言っていないのです。加えて、アメリカの動きを見ますと、日本に寄港する艦船について核を積載して寄港することはない、それは日米の約束だと明言したことはただの一度もないのです。アメリカが言っているのは、ただ日本との条約上の義務は守っていると、こういう抽象的な言い方しかしていない。寄港の際も持ち込まないんだというのが日米間の約束だと言ったためしがありますか。
  223. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) アメリカの核政策、いわゆる核の有無を明らかにしないというのは世界に対するアメリカの普遍的な原則である、そのとおりであろうと思います。同時にまた、アメリカと日本との間の日米安保条約、これを遵守する義務もまた日本にもありますし、アメリカにもあるわけでございまして、この事前協議制度は核についての取り決めを行った制度でありますから、したがってアメリカとしては安保条約を支持するといいますか、安保条約を守るという義務、そういう上に立って日米関係を進めていかなければならぬ。そういう立場にあるわけでございますから、我々としてはアメリカはその責任において、その義務において核の持ち込みについては日本に協議をせざるを得ない、こういうことになるわけでありまして、アメリカが普遍的な原則と、そして安保条約による日米間の約束というものについてこれを守るということとは必ずしも矛盾するものではないと、こういうふうに私どもは思っておるわけであります。
  224. 矢田部理

    ○矢田部理君 アメリカの核の有無を明らかにしない政策日本に関する限りは別だということであるならば、持ち込みの中に寄港や通過も入るんだということを明確にする措置をアメリカとの関係でとるべきだ、単に信用しなさい、信じなさいということでは国民の疑惑は晴れません。その点アメリカと交渉し、明確にすべきだと思います。その点を要求しておきたいと思いますが、いかがですか。
  225. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) この点につきましてもしばしば議論されておるわけでございますが、一時寄港あるいはまた領海通過につきましては、政府もしばしば答弁いたしておりますように、これまでの日米間の、例えば藤山・マッカーサー口頭了解であるとか、あるいは岸・ハーター交換公文、そういう約束事に準拠いたしましてこれは明らかになっておるということでございまして、我が政府といたしましても、日米間のこの約束事はきちっと守っていくということについて日米間でしばしば話し合いをいたしております。  私もこれに関連をしてマンスフィールド大使ともお目にかかりまして、そうした日米関係あるいはまた日米安保条約、あるいはまた関連規定は遵守する、そして日米の安保体制を効果的に運用していく、こういう点についてかたい約束を取り交わしておるわけでございますし、アメリカ側も、日本の国会の論議、あるいはまた日本政府の累次にわたる国会での、国権の最高機関であるところの国会での日本政府の公式な見解というものについては十分知悉しておるわけでありますし、そうしたことを踏まえての日米間の一般的な約束はきちっと成り立っておる、こういうふうに我々は信じております。
  226. 志苫裕

    志苫裕君 それで、また話戻しますが、私は先ほど施設区域のみならず普通港も含めますと四百五十二隻の艦船が入港をして三百六隻が核積載可能であるという指摘をしました。あなたの方からもらった資料で、私のデータでチェックしたんですから、これは後刻皆さんの方でチェックして報告してください。どうですか。
  227. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 先ほど申し上げましたとおりに、私どもといたしましては個々に入港してくるアメリカの艦船につきまして核積載能力があるかどうかという観点からの分類を行っておりません。潜水艦であるとか、駆逐艦であるとか、巡洋艦であるとかという、そういう艦種別による分類につきましては一応の資料を持ち合わせておりますので、それに基づいての御答弁は可能でありますが、一つ一つの艦艇につきまして核の積載可能であるかどうかということに、そういう観点からの分類は行っておりませんので、その点御了承いただきたいと思います。
  228. 志苫裕

    志苫裕君 私さえ持っているのに、そっちが持ってないことはないだろう。これは可能な限りやってください。  総理、もう時間なくなりましたが……
  229. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 志苫君、時間が参りました。
  230. 志苫裕

    志苫裕君 この一%枠の堅持は、二十五年間、四半世紀にわたって我が国がとってきた政策ですし、そして大綱の前提を変えなければならぬ状況があるというわけでもないわけですから、いずれまた詰めてやりますが、総理としては、特に防衛の、国防の基本方針は三つを挙げて、国情に応じた限度の防衛力整備と言っているんです。国情とは何かというと、国民の世論だと言っている。国民の世論というのは大多数がこれでいいと言うているわけ。そこのところをちゃんと踏まえてくださいよ。よろしいですか。
  231. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 前にも申し上げましたように、一%は守りたいと思います。
  232. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 志苫君、時間が過ぎております。
  233. 志苫裕

    志苫裕君 これ最後にしますが、いろいろと質問が残りまして、何か答弁したがっていた人にはまことに申しわけありませんが、最後にこれだけは答えてください。  私は一律補助カットの問題に入りたかった。だけどもちょっと入れませんでしたが、自治大臣と厚生大臣に言いますが、どうやらこれは、とりあえずお金がないので一割分を自治体に持ってくださいという趣ではないようだ。もう既に政府でも、厚生省でも制度の検討に入ったように、こいつを足がかりとして将来制度改正にいくということになっておるわけで、そうなるとこれはなかなか見逃せない。一体自治大臣は、制度改正で将来も実は減りっ放しになるんだ、逆に言うと自治体の方が負担のしっ放しになるんだということを承知の上で地方財政対策をやったのか。  厚生大臣に言いますけれども、同じことは昭和二十九年にあった。緊縮財政を組んで、吉田ワンマンから随分言われて、時の厚生大臣山縣さんは八割から五割に下げると言われたときに職を賭しても頑張った。さっきの職だ。職を賭しても頑張るというので、予算復活の最中に吉田ワンマンに首を切られているんですよ。しかし、その首が引きかえになってこの制度は八割給付でもとへ戻った、こういう歴史がこの制度にはあるんだ。今度の厚生大臣、首の一つもかけて、この連綿と続いた制度を守るぐらいの気概をあなた出しなさいよ。中曽根ワンマンから首切られたっていいじゃないか、それで国民が守られるものなら。今聞いてみておると、何かつまらぬ検討をやっているそうだけれども、この決意のほどを二人答えてくださいよ。
  234. 古屋亨

    国務大臣(古屋亨君) ただいま先生の御質問に対するお答えでございますが、自治省としては、御承知のように予算編成の直前まではこの問題として私どもは志向しなかったところでございますが、非常に厳しい財政のもとにおきまして、第一には、その補てん額を、足らない分を国で全部補てんする、第二には、これは一年限りの措置である、第三は、大蔵、厚生、自治の三省においてこの問題を六十年度において検討をして決めます、こういうことでございましたので、私はその覚書を信用しており、またそういうふうにやっていきたいと考えております。
  235. 増岡博之

    国務大臣増岡博之君) 今回の、生活保護に関係する問題が一番大きゅうございますけれども、これは国と地方との役割並びに負担の問題でございます。福祉に直接関係のあることではございませんし、また、おっしゃいました昭和二十九年でございますけれども、当時の地方財政と国の財政とのバランスを考えますと、現在の状態とはかなり違う局面でございまして、従来から地方と国とがそれぞれ負担をしておったものでございますので、おっしゃる問題には、私は事情が違う、事態が違うとお答え申し上げます。
  236. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 以上で志苫君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  237. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 次に、梶木又三君の総括質疑を行います。梶木君。
  238. 梶木又三

    ○梶木又三君 私は、自由民主党・自由国民会議を代表いたしまして御質問をするわけでございますが、その前に、今NHKのニュースで、ソ連のチェルネンコ書記長が亡くなった、こういうニュースが入ったのですが、外務省の方にもうそれは入っていますか。
  239. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 先ほど志苫委員にお答えをいたしましたが、今情報をいろいろと集めております。ABC放送が死亡説を流したということを今聞いたわけでありますが、日本政府といいますか、外務省が確認したところでは、モスクワで、ほかの番組からクラシック音楽に切りかわったということで、これはいつもソ連の場合は、要人、最重要の要人が亡くなったときは、こうしたクラシック音楽が流れるわけでありまして、そういうことについては確認をいたしました。何かがあるのじゃないかと、こういうふうには思っておりますが、確たるまだ情報には接しておらない、そういうところです。
  240. 梶木又三

    ○梶木又三君 そこで質問に入りますが、簡単にお答えをいただきたいと思います。  今申し上げたように、チェルネンコ書記長が亡くなった、こういうことを考えましても、あるいはまた、今、けさも話出ました米ソで新軍縮交渉をやっておる、いろいろ国際的にこれから大変流動的になってくるんじゃないか。軍縮交渉やりましても、私はこれは息の長い話で、そう簡単に話がつくとは思いません。そういうことで、国際政局、これから大変流動的になってくると思いますし、経済面見ましても、我が国もそうですが、アメリカ、若干景気がよくなったといいましても、まだまだ不安な要素もございます。こういうことで、大変重要な事態を迎えておる。内政面とりましても、総理、いつもおっしゃっておるわけでございますが、教育改革、財政改革、行政改革、これ三本柱にされましてやっておられる。まだまだ緒についたばかりで、これから総理はふんどし締めてやっていただくことが大変多いと思うわけでございます。  そういう内外大変厳しい事態でございますし、特にことしはいろいろ言われておりますが、戦後四十年、あるいは我が党も結党してちょうど三十年、大きな節目を迎えておると思います。こういうことで、これから総理政局を担当されていく決意、まあいつも冒頭に聞くわけでございますが、改めてひとつ、こういう重大な局面に立って、今まで二年有余よくやってこられましたが、それを踏まえてどのように政局を担当されていくか、この決意のほどをまず伺っておきたいと思います。
  241. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 本国会の施政方針演説でも申し上げましたように、ことしは歴史的な節目の年に当たると考えております。そして、特に一番大きな世界的関心事は平和と核軍縮を推進するということであるだろうと思います。幸いに米ソ交渉ジュネーブで始まりましたが、これをぜひ実りあるものたらしむるように、我々も側面的に努力してまいりたいと考えております。それと同時に、日本を国際国家たらしむるという意味において、今市場開放の問題であるとかさまざまな問題が提起され、あるいは発展途上国に対する援助協力の問題等も重要な問題として浮上しておりますが、これらについても大いに充実していきたいと思うわけであります。  内政につきましては、三つの大きな改革を進め、さらに税制の根本的改革を課題として受けとめて、いよいよこれを処理しなければならないと、そう考えております。特に税制の問題については、戦後の税制の大きなゆがみと申しますか、ひずみを是正する、そしてぜひとも法人税や所得税の思い切った減税を実行したいと、そう考えておるのでございます。これらにつきましても、いずれ情勢を見まして、手続を進めるようにいたしたいと思っておるのでございます。  いずれにせよ、事態はしかし我々が考えているように甘くは動かないと思っております。米ソ軍縮交渉にしても、おっしゃるように非常に息の長い、そしてしかも息詰まるような激しい瞬間が交渉の過程に出るだろうと思います。そういう意味において、この厳しい現実をどういうふうにして和解と融和の方向に持っていくかということは並み大抵ならぬ努力が必要であると考えておりまして、決して甘い幻想にとらわれないで、一歩一歩着実に進む方向に私たちも努力してまいりたいと思っております。  内政の問題については、非常に厳しい予算を組みまして国民皆様方に御迷惑をおかけいたしておりまして恐縮でございますが、これも行政改革や財政改革をやるためにぜひとも通らなければならぬ道なのでありまして、国民皆様方にも御理解をいただいて汗を流していただく、それについては政府がみずから先に汗を流す必要がある、そういう考えに立ちまして実行してまいりたいと思う次第でございます。今後もいろいろと足りないところがあると思いますが、いろいろの御批判、あるいは野党の皆様方のお考え等も謙虚に受けとめまして、まじめにやってまいりたいと思う次第でございます。
  242. 梶木又三

    ○梶木又三君 今総理から力強い決意を伺ったわけでございます。実際二年有余、総理政権担当されまして、私、率直に申し上げてよくやってこられたと思います、まあ失礼な、生意気な言い分だけれども。我々もそれは満点上げるわけじゃございませんよ、不満もございます。御注文つけたいこともあります。しかし実際、総理、一生懸命やってこられたと思う。それがいつの世論調査でも中曽根内閣支持率が大変高い、五〇%以上をずっと前後しておりますけれども、五〇%以上を維持されておるゆえんだと思います。  そこで、そういうように総理一生懸命やっておられますが、総理政治手法なんですが、朝もちょっと志苫委員の方からも出ておりましたが、総理のブレーンで、諮問機関でいろいろやられるわけでございます。総理御自身、私はアイデアにも富んでおられるし、新風をよく吹き込まれる方だと思って、政治家にしちゃ、これも失礼な言い方だけれども、ユニークな方だなと、私常々本当に敬服をしておるわけなんですけれども、今申し上げた政治手法が議院内閣制のもとにおける政党内閣としていいのかどうか。私決して総理がやっておられる諮問機関、否定しません。朝の話のようには私は否定しません。これも国民の声を聞くという面、また専門家の方々の鋭い御意見を聞く、こういうことでそれなりの大変有効な方法だと思いますが、こればかりではどうかと、こういう気もするわけでございます。  そういうことで、これからどういう方向でそういう政治の手法を行っていかれるか、これもあわせてひとつお伺いしたいと思います。
  243. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 審議会や懇談会を設けます私のやり方につきまして、いろいろ御批判をいただきまして恐縮に存じておるところでございます。  私は、政権担当しましたときから、国民にわかりやすい政治、また国民に語りかける政治ということを申してまいりまして、その根底には、現代社会は大衆民主主義の時代に入り、情報化の時代に入った、そういう点で五年、十年前と非常に大きく変わりつつある、この大きなマスメディアとか情報の時代というものにあっては、やはり丹念に国民から発想をいただき、そして国民にフィードバックをして、そして国民の声を十分聞かないというと政治はなかなか進めにくい、また政治力も発生しない、そういう考えを持っておりまして、一方においては議院内閣制のもとに政党政治というもの、あるいは議会というものを尊重するということはもとよりのことでございまして、その点についても戒心してまいりたい、またまいらなければならぬと思っておりますが、一方におきましてこの大きな情報化の大衆民主主義の時代に沿うようなやり方も追加していかなければならない、そう考えてきた次第なのでございます。  そういう意味において、審議会やあるいは懇談会を設けまして国民皆様方のさまざまな発想をとらえ、またそれが議論されることによって国民皆様方の関心を呼び起こして、そして支持なりあるいは反対なりというものが形成されて、国民が自分で判断する材料を得ていただく、そういう手法でやってきたわけであります。私は世論調査を見ますというと、私の内閣につきましては賛成と反対の支持者がはっきりしてきているという顕著な例が出ております。これはやはりそういうような手法というもので国民皆様方が自主的に御判断になる材料が今までよりはより与えられているのではないかと思います。これは私のやり方でございまして、もし悪いとすれば私の責任でございますけれども、私はそう悪いと思っていないし、大衆の時代あるいは情報の時代に沿うようなやり方でこれを補完している、そう考えておるのでございます。  しかし、お尋ねする問題も防衛やらあるいは平和の問題やらあるいは教育の問題やら等々で大体一応は今のところは終わりかけようとしております。新しい問題としては税の問題がございます。これもやはり国民皆様方の草の根の意見もお聞きして、そしてみんなで関心を持っていただいて、みんなに決めていただく、そういう手法がいいと思っているのでございます。こういう問題は残っておりますが、大体において今まで大事な問題については国民の皆さんにお聞きもしてやってきたと思っております。  そういう考えに立ちまして、法律で設けられている審議会はこれは別でございますけれども、いわゆる懇談会方式のものというのは、今残っているものは靖国懇等がございますが、等々で一応所期の目的を達しつつあると考える次第でございます。今後とも議院内閣制の本旨にのっとりまして政党並びに議会の皆様方の御意見も十分拝聴し、御批判もいただいて推進してまいりたいと思う次第でございます。
  244. 梶木又三

    ○梶木又三君 私も、先ほど申し上げましたが、決して総理政治手法をいけないんだと申し上げておるのじゃないんです。これはもう御理解をいただきたいと思います。あの方法と同時にやっぱり積み上げの方式もひとつお考えいただきたい、こういうことでございます。  そこで、次は靖国神社の公式参拝の問題に移るわけでございますが、その前に私はことしの二月十一日、建国記念の日に、総理、現職としては初めて出られまして、総理国民一人一人が遠く我が国のいやさかを願うまことに意義深い日、私も出ましたが、このように総理、祝辞を述べられました。私はこのことに対して深く本当に敬意と評価も申し上げたい、かように思うわけでございまして、ぜひともこの輪が広がって定着してもらいたいものだ、かように考えておるわけでございます。  そこで靖国神社の問題でございますが、この建国記念日と一緒に私はやはり国のために殉じられた方々、この方々をその遺徳をたたえお祭りする、これは当然のことだと思うわけでございます。私もビルマで戦いまして親しかった戦友が亡くなりましたし、目の前で何人かの方が純粋に国のために戦って亡くなられたわけでございます。こういう悲惨なことは二度とあってはなりませんし、そういう方々の私たまものといいますか、おかげで今日のこの豊かな平和な日本があると思うんです。そういうことを考えますと、どうも我が国、割り切るというのですか、ちょっと事が起きますと、それはだめだという意見があるんですけれども、そういう国のために戦った方々、亡くなった方々をお祭りするというのは、私はこれは洋の東西を問わない、体制のいかんを問わぬと思うんです。どこの国でもやっておる。ところが、残念ながら我が国は公式参拝できない。総理、韓国に初めてこの前行かれたときに、恐らく青瓦台ですか、お参りになられたと思うんですが、日本の国では外国の元首が来られても靖国神社へお参りできない。私は、大変悲しい気持ちでいっぱいになるわけでございます。総理初め閣僚の方々もお参りされておりますよ。ところが、これはあくまでも個人の資格なんですね。  そこで、今、官房長官、今も総理からもお話出ましたが、懇談会を持っておられますね。何だったか、閣僚の靖国神社参拝問題に関する懇談会、これ持たれていろいろ今やっていただいておると思うんですが、結論、これいつごろ出るか、これを官房長官からお伺いしまして、今私申し上げたように、どうしてもこれは公式行事にやっていただきたいという気持ちがいっぱいでございますから、基本的な総理のお考え、これをあわせてひとつお伺いしたいと思います。
  245. 藤波孝生

    国務大臣(藤波孝生君) 最初にお尋ねの時期の問題でございますが、閣僚などの靖国神社参拝に関する懇談会を昨年の八月に第一回をお願いをいたしまして、以来九回にわたって既に会合を重ねていただいてきておるところでございます。第一回の会合出発の際に私からごあいさつを申し上げまして、おおむね一年ぐらいをめどにして御意見をお寄せいただきたい、こういうお願いをしてきておるところでございまして、非常に精力的に回を重ねて御意見を出していただいているところでございます。第一回のときにお願いをいたしましたような見当で、まだ確たる日時を決めてあるわけではございませんけれども、ことしの夏ごろまでに御意見を寄せていただけるものと、このように御期待を申し上げておる次第でございます。
  246. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 靖国神社に対する閣僚以下の公式参拝の問題については、国民皆様方の中にもさまざまな議論があると思います。大体自由民主党の皆様方は公式参拝に踏み切れと、そういう議論が多いように思います。しかし野党の中には、いやそれは憲法に違反するという御議論もございます。内閣の法制局は今まで国会で御答弁申し上げてきたような見解を持っておるわけでございます。そういう中にあって、この問題をどう早く処理すべきであるかという観点に立ちまして、先般来懇談会を設けておるのです。懇談会につきましては、法学者あるいは宗教学者、あるいは民族学者、女性の方、さまざまな方々にいろいろな自由な見地で御議論を願っておりまして、非常にまじめな白熱的な議論が行われておる由でございます。それらの議論の跡をよく踏まえまして、その結果もよく参考にいたしまして政府としては慎重に考えてまいりたい、そう考えております。政府が先走ってああだこうだと申し上げるのは必ずしも適当でないと思いますので、そのように御了承をお願いいたしたいと思います。
  247. 梶木又三

    ○梶木又三君 官房長官、できるだけ早く結論を出していただきたいと思うんですよ。いい結論を早く出していただきたい、こういう気持ちでいっぱいでございます。総理がよく戦後の総決算というお言葉を言われますね。こういう言葉をよく使われる。私はこの問題が解決しなかったら戦後総決算なんてないと思うんですよ。ぜひひとつ、政府はつべこべ言う立場じゃないとおっしゃいますが、ひとつそういうお気持ちでぜひとも公式参拝うまくいくように取り運んでいただきたい、このことを強くひとつお願いをいたしておきたいと思います。  次は外交問題でございますが、先ほど申し上げました四十年たちまして大変結構な国になったわけでございます。それで、これからもやはり自由と民主主義という基本的価値観を一緒にする西側諸国を中心にしまして我が国もやっていかにゃならない、これはもう当然だと思うんですね。これからはやっぱり我が国、経済的にもいろんな意味でも大国とは言いませんが、まあ大国だな、やっぱり。大国になったわけでございますから、受け身じゃなくて主体的かつ積極的に平和外交を推し進めなければならぬ、かように思うわけなんですね。これに対しまして、ひとつ基本的なお考えを外務大臣並びに総理からもあわせてお伺いをいたします。
  248. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) おっしゃるように、世界の中で日本の果たすべき役割は非常に大きいわけでございます。また同時に世界日本に対して大変大きな期待を持っております。やはり日本の立場からすれば、こうした世界の信頼にこたえていくということが、今後二十一世紀に向かって日本国家として存在し、そして発展する基本になっていくのじゃないか、こういうふうに思うわけでございます。そういう意味で、日本のこれからの外交もまさに平和外交を積極的に、創造的に推進していくということが必要であろうと思いますし、現在も懸命にそういう努力を続けておるわけでございます。  今、米ソ交渉も行われておりますが、ようやく少し日差しが出てきた東西関係、この関係がさらに対話が進んでいく、そういう中で各地域の紛争も、これも米ソを背景とした地域紛争が随分あるわけでございますし、そうした地域紛争の平和的解決へ向かって日本日本なりの努力もしていかなければならぬ。日本は自由国家群の一員であるという価値をともにした連帯感のもとに一体となっての世界の平和への協力、さらにまたアジアの一員という立場もありますし、そうした立場でのアジアへの貢献、アジアとの協力関係ということも積極的にやっていく。  同時にまた日本はソ連とも国を接しておるわけでございます。こうしたソ連あるいは東側の国々との間の、立場はもちろん違いますが、そういう国々との間の協調ということも大事であることは申し上げるまでもありませんし、また特に経済協力の面につきましては、やはり日本がこれだけの力を持ってきたわけでございますから、開発途上国に対する経済協力、ODAを積極的に進めていくということがこれまた世界期待にこたえるゆえんではないか、こういうふうに思っております。そうした基本的な立場からの、これからの日本外交の進むべき道は非常に世界において責任の重いものになるであろう、また、そうであることは当然であろう、こういうふうに思っておるわけであります。
  249. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 第二次大戦後、瓦れきの中から国民の皆さんが汗を流していただいて、営々として築いていただいて、日本政治的にも経済的にも強い国に成長したと思います。この日本の国が持っておる力と申しますか、政治、経済、文化にわたるもろもろのこれらの力を、世界の平和やあるいは発展途上国の繁栄や、そういうものに有効あらしむるように発言もし、そして世界日本が存在しているという意味あらしむるように努力していくのが政治家の責任である、こういうふうに考えまして、今後とも努力してまいるつもりでおります。
  250. 梶木又三

    ○梶木又三君 よろしくひとつお願いをいたします。  そこで、総理が就任されまして二年数カ月の間に、アメリカを初め大分各国たくさんの国を訪問されました。それから、ことしになりましても、正月早々アメリカ、それから続いてASEAN四カ国を訪問されましたし、それから、この二年ばかりの間に外国からの首脳も、レーガン大統領あるいはコール西独首相、それから胡耀邦中国共産党総書記あるいはホーク豪首相、全斗煥韓国大統領と主要な国の元首が日本を訪問されまして、総理は首脳外交を積極的に推し進められました。私は大変結構なことだと思います。  最近一部に、通信が発達した時代に一々行く必要ないじゃないかとか、一々来てもらう必要ないじゃないかというような声もありますけれども、私はそうじゃない、やっぱり首脳がひざ突き合わせて、胸襟を開いていろいろ協議される、これは大変私は結構なことだと思うわけでございます。それだけに外国の元首、首脳と総理がお会いになりまして、いろいろ会談されまして、当然のことですが、約束されたことあるいは合意されたことなどもいろいろあると思うんです。  ファイナンスの一月号を私読んでおりましたら、この間亡くなった牛場さんが、これは外交界の大立て者なんですが、牛場さんがこういうことを書いておられました。これを引用しますと、「日本は約束は簡単にするが、いつまでも実行しない、あるいは、実行しても内容がすり変ってしまっているという批判が強い。こうしたことから、日本は不誠実である、アンフェアであるという不信感が生じてくるのであるから、百の約束より一の実行が大切であることを肝に銘ずべきである。」、こう書かれておるんですね。そして亡くなられたわけでございますが、この発言をひとつ総理どのようにお感じになりますか、お気持ちを伺うと同時に、今までいろいろ先ほど申し上げた合意された事項、約束された事項をどのように今まで実行されてきたか、あるいは今後されようとするか、これについてお伺いしたいと思うんです。    〔委員長退席、理事亀井久興君着席〕
  251. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 首脳外交について御指摘をいただきましたが、私は現代は首脳外交の時代であり、非常に重要な意味を持っていると思っております。これだけ情報が多様化して迅速に伝達されるということになりますと、結局は情報の大きさに振り回される。結局相手の親玉に会って確かめてみないと本物かどうかわからぬとか、あるいはどの程度の強さでこれが動いているかということもわからないとか、そういうようなこともありまして、情報時代になればなるほど首脳間の接触というものが今後は重大になり、そういう意味においては外交は手づくりである、そういうふうにも考えて、できるだけ首脳間の友情を増すように今でも努力しておるところなんでございます。  そこで、どういう約束をしたか。これはいろいろな人にいろいろな日本の国策を訴え、また相手の話も聞き、そして合意を形成してきたところでございますが、私は現内閣に関する限りは約束したことは誠実にやっていると思います。例えばフィリピンの円借款の問題等についても、野党の皆様方からはかなり厳しい批判がございました。しかしこれはフィリピンの現政権に対してやるものではない、フィリピンの国家あるいはフィリピンの民族、国民皆様方の民生安定のために約束していることなんだから、これはやりますといって、先にやらせていただいた。それが呼び水になって、IMFあるいはアメリカ等の行動が出てきて、フィリピン経済は難をしのいだという現状が一つ言えると思います。  例えば一つの例でございますけれども、そういうように約束したことは実行するということで、今後も努力してまいりたいと思います。それにつきましては、国内におきまして国民の皆様あるいは与野党政治家の皆様方に御理解と御支持を得なければなりませんから、それぞれの手続に従って今後とも御理解、御支持を得るように努力してまいりたいと思うところでございます。  今一番これからの問題としてあるのは、ニューラウンドの推進の問題でございます。これは保護主義との闘いの一環において積極的な自由経済、自由貿易というものを進める上に非常に大きな意味を持っておることなのでございまして、これらについてはアメリカ、カナダ、ドイツあるいはイギリス等が割合に前進の方向であり、ヨーロッパのECの国々等のうち、それらのものを除くものが割合に批判的な面を持ち、あるいは発展途上国においても非常に懐疑心を持って見ておるところが多うございますが、これらについても一つ一つ問題を解きほぐしまして、着実に前進してまいりたいと思っておるところでございます。  発展途上国の問題については、ODA予算をことしは思い切ってふやしまして、これらについても苦しい予算の中で努力しておる次第でございます。今後とも努力してまいりたいと思います。
  252. 梶木又三

    ○梶木又三君 ぜひとも、これからもやはり首脳外交を私は積極的にやっていただいて、親善友好の実を上げていただきたいと思います。もう目の前にボン・サミットも控えておりますから、ぜひともひとつ主導的な役割を果たしていただきたい、このことをお願いをいたしておく次第でございます。  次は、日本はもちろん日米友好というのが一番基軸でございますが、今、年ごとに厄介な問題になっておるのは経済摩擦でございます。この原因、これはいろいろございましょう。何といいましても貿易の不均衡だと思います。アメリカの対日赤字は五十九年度、昨年は三百六十八億ドルだと聞いておるわけでございますが、我が国として市場開放等でき得るものは、これは私もやらなければならないと思います。おとといの新聞かなんかに出ておりましたが、総理も積極的に取り組まれまして、OECDの理事会前の四月九日ですか、これをめどに通信機器等四分野にわたっていろいろ検討をして、そして具体策をつくれという指示をされたやに新聞紙上で見たわけでございます。このように、私は我が国としてももちろん誠意を持って市場開放等に努めて摩擦を少なくすることに努力しなければならぬと思うのですが、これは我が国だけではなくてアメリカにもやっぱり原因があると私は思います。あの大きな財政赤字あるいは金利高、ドル高、こういう問題、これも相当大きな原因でございますから、こういう点はやっぱり強く主張すべき点は主張されておると思うのですけれども、主張すべき点は強く主張していただいて、こういう問題、私は一方的にできるものじゃない。両国といいますか、双方が歩み寄ってこそ初めて円満な解決ができるのじゃないか、かように思うわけでこざいます。  そういうことで、これからの米国のそういう問題に対して、それを踏まえてどのような摩擦問題について対処されるか、総理外務大臣からひとつ簡単にお伺いいたしたいと思います。
  253. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) ロサンゼルスの首脳会談で日米経済問題が出まして、お互いに相協力し合い、相努力してこの市場開放を行い、さらにまた保護主義の防圧に努力していこう、こういう話し合いがなされたわけでございます。それに基づきまして今、日本においても種々の努力が行われておりまして、日本日本なりにやはり責任を果たしていく点はしていかなければならぬということで、今現在、日米間で問題になっておりますのは通信機器、それからエレクトロニクス、さらに医薬品あるいはまた医療機器、さらに木材等農産物、この四分野、MOSS委員会と言っておりますが、四分野に分かれて、実はきょうから積極的な会合、協議が行われるわけでありまして、私も対外的にシュルツ国務長官とこの問題を総括して話をしようということになっておるだけに、日本のこの委員会の推移を非常に注意して見守っておりますし、ぜひとも日本には日本なりのやはり責任を果たしていかなければならぬ。これは総理も閣議で強くこの委員会の進捗を早める、そしてOBCDの閣僚会議あるいはまたボン・サミットに向かって日本なりの責任を果たしていく努力を重ねるべきであるということを指示されたわけでございます。  これはこれなりに日本はやっていかなければならぬと思いますが、同時にまたアメリカはアメリカなりに、我々はアメリカに求めるものもあるわけで、これはアメリカのドル高であるとか、あるいは高金利であるというものが、これが日米間の何といいますか、大きな黒字、それの原因をなしていることはアメリカ自身も認めておるわけでございます。こういうところはやはりアメリカ自身の問題として適切に対応していただかなければならぬ。これはもう言うべきことは言わなければならぬわけでありますし、また日米間に問題になっている案件につきましても、日本にはできないことがありますから、それはやっぱり率直にアメリカに理解せしめるように言わなければなるぬわけで、これは政府政府なりにやりますけれども、やはりまた国会議員は国会議員同士で、アメリカの議会が大変今保護主義が台頭しております。そういう意味で、やはりアメリカの議会人とも話し合って日本の立場を主張していただかなければならない、私はこういうふうに思います。  同時に、今アメリカで非常に保護主義への動きが議会にあるわけであります。これはアメリカの政府も大変心配しておりまして、今度のボン・サミットで日本が提唱しましたニューラウンド、ぜひともこれはいよいよ準備段階をことしから始めて来年から交渉に入ろうじゃないか、こういう点についてボンのサミットで合意を見るべく日本が積極的に今根回しをいたしておるわけでございまして、これはニューラウンドを設定するということは、これからの保護主義の台頭に歯どめをかける基本的なやはり大きな一つの柱になるわけでございますから、自由貿易を進めなければならない日本の立場、また世界の経済の安定のためには自由貿易こそまさに最大の原則である、こういう立場からぜひともこれは成功させなければならぬ、このように思っております。  日米間、あるいはまた日米間だけじゃなくて東南アジア、ASEAN諸国もいろいろと農産物等の問題で強く日本に対して主張しております。また、不満も持っておるわけで、こうした世界の不満、そして日本だけが非常に大きな貿易黒字を持っておる、こういう状況をどういう形で世界とも話をし、さらに納得もしてもらい、また日本日本なりに責任を果たしていって、これをいかにして乗り越えていくかということは、今、日本の現在の国際的な立場から非常に私は重要な日本の課題である、そういうふうに考えております。
  254. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 現在、世界の経済上の課題として今指摘されておりますのは、アメリカのかなりの財政赤字、高金利、強いドル、それからヨーロッパの問題では市場の閉鎖性あるいは産業調整の未発達、それから日本については膨大なる貿易の黒字あるいは市場の閉鎖性、こういうことが指摘されておるわけです。今、世界経済というものは非常に有機的な組み合わせで動いておりまして、一つの国のプラスはほかの国のマイナスになる。しかし、そのマイナスがあるがゆえに、プラスが作用して世界経済を現在の繁栄を維持させる原動力にもなっておる。例えばアメリカの高金利というもので輸出は落ちていく、日本の輸出は伸びる、しかしまた一面において日本の資本がアメリカへ流入してアメリカの産業を活発ならしめて、牽引力にもなっておる。そういうわけで、有機的仕組みで世界経済は動いておるものであります。ですから、一方の国だけが一方の国を論難するという性格のものではないので、両方で直し合う、そういうことが大事である。したがって、我が方も言うべきことは十分言わなければならぬし、直すべき点は直さなければならぬ。我が方で直すべき点というのは、指摘されているのは、やはり市場の封鎖性、あるいはいわゆる不透明性とかという問題でございまして、これは一生懸命各省とも今努力しておるところでございます。これらについても真剣に努力してまいりたいと思っております。
  255. 梶木又三

    ○梶木又三君 やはりそういう努力をしていただきまして、保護貿易のそういう風潮がひとつ出ないように御努力を賜りたいと思います。  これに関連して、海外協力なんですが、外務大臣、ことしも大分努力願って、この厳しい予算の中で一〇%以上ですか、大分突出した予算を組んでいただいた。ところが、それでもDACの中でこれは十七カ国のうちの十二番ぐらいじゃないですか。それから、よその国のやつは贈与でしょう。我が国のやつは借款が多いんですね。そういうことを考えましたら、日本の今の経済力、これから見ても今少し御努力をいただきたい、かように思います。  それで、鈴木内閣のときできたやつがたしか今年で終わりですか、新しい第三次の倍増計画をつくられるかどうか、それと、今申し上げたこれからの海外協力のあり方、ひとつあわせて外務大臣のお考えをお伺いしたい。
  256. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 我が国の開発途上国、発展途上国に対する経済援助は着実に進んでおりますし、この努力に対しては世界の評価も非常に高い。DACの評価も高いわけでございます。しかし、全体として見ればまだGNPの〇・三三%程度で、〇・七%という目標からすればまだまだ下回っておるわけでありますが、しかし日本のGNPが大きいだけに量も非常に大きくなっております。そういう点では我々は世界に貢献している。例えば、無償協力援助等ももう千億を突破しておるという状況でございますし、全体的に見ればことしの予算、六十年度予算も一〇%、この財政の厳しい中で二けたを伸ばしていただいたのでございますから、国は総力を挙げてODA、海外協力に努力していただいておるということであろうと思います。その点も世界は高く評価をしておると思うわけでございますが、この努力をやはり日本はこれからも継続していかなければならない。日本が国際的な国家として責任があり、また貢献をしていくためには、この努力というものはやっぱり継続していかなければならないと私は思います。  そういう意味で、今度の六十年度予算で今までの五年間倍増計画はほぼ達成した、予算面ではもう九八%以上達成したわけですから、ほぼ達成したと言っても過言ではないわけですが、実質では、ドルベースではまだまだ全体的の多国間の協力であるとか、あるいはまた今の円安というようなこともありまして、実質面ではこれから様子を見なければならぬわけでございますが、この実質面についても我々は今後とも努力していきたいと思いますが、一応予算では達成したわけであります。  そこで、これからどうするかということになるわけでございまして、今関係各省庁でいろいろと協議をしていただいておるわけでございますが、私はこれからのやっぱり目標というものを立てなければならないと思います。やはり世界注目しておるわけでありまして、ですからこれからの目標を何も立てないで済ますわけにはいかないと思うわけであります。少なくともOECDの閣僚会議では経済協力の問題は大きな課題になると思います。一方においては、貿易の黒字という問題で世界からいろいろと日本の市場開放を求める強い圧力も来ておるわけであります。一面においてまた対外協力を進めるということは、そうした世界の動きの中でも非常に大事なことでなければならぬ。しかし、それではどういう目標を立てるかということについては、これはいろいろの役所の考え方もあるわけでございまして、そういうものを調整しながらとにかく何らかのひとつ目標を立てて、そしてこれを世界に明らかにして、そこに向かって努力をしていく、こういうことで今私自身も一生懸命にそのために努力を傾注している、こういうことであります。    〔理事亀井久興君退席、委員長着席〕
  257. 梶木又三

    ○梶木又三君 これは私は、今すぐにはアフリカの問題もありますけれども、開発途上国に対する我が国の責務だと思うんですね、海外協力。そういう意味で、今外務大臣おっしゃったように目標をひとつ立てていただいて、ぜひともひとつ第三次の倍増計画といいますか、計画をお立ていただきたいと思います。  次に、防衛問題に移りますが、防衛問題というのはもう私が言うまでもございませんが、国家の存立、民族の興亡にかかわる重要課題でございますから、私なりに衆参の代表質問あるいは衆議院の予算審議、けさも志苫委員の方から出ましたが、ずっとこの審議を見守ってまいったわけでございます。それなりに評価したいとは思うんですが、ただ、それぞれ各党基本姿勢というものがあって異なっておるとは思うんですけれども、どうも全般的に聞いておりまして、木を見て森を見ないとでも申し上げるか、初めから一%ある、初めに一%ありき、こういう感じの議論が多くて、防衛の本質、今我が国が置かれておる立場、こういう核心の、突っ込んだ議論がどうも不足しておるんじゃないか、こう思うわけでございます。  一%を守るのか、あるいは今後突破は必至じゃないか、これがずっと衆議院の予算審議等を見ましても議論の中心になっておると思うんですが、冒頭申し上げたように、国際政治世界じゅうの軍事情勢、これがどういうふうになっておるか。これにはいろいろ、朝も話になっておったSDIの問題もあろうし、ソ連のSS20とかSS24の問題もありますけれども、こういう問題、それからまた日本のぐるりにおけるソ連の異常なまでの軍事力の増強、あるいはまた日本が西側の一員としてどのような責任を持ってやっていくのだとか、こういう突っ込んだ議論というのは余りなかったように思うわけでございます。  私が今申し上げたようなことを踏まえて、政府として防衛政策、これをどうお考えか、総理よりひとつお考えを伺いたいと思います。
  258. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) おっしゃいますように、やはり防衛の本質というものは、日本を主体的に考えまして、どういう配慮と手配りによって日本の独立と安全を保障して国民の皆様に安心していただけるか、そういう問題でありまして、そこに本質があると思うのであります。  それを実現していくために、今まで憲法の範囲内におきまして安全保障条約あるいは自衛隊の設立あるいはそのほかの日米共同のガイドラインの設定等々、いろんな政策を行いましてやると同時に、総合安全保障のもとに非常に幅の広い、視野の大きい中に安全保障の問題をとらえて進めてきたところで、この方策で今後もいくべきものであると思っております。その過程におきまして、日本独特の個性のある安全保障政策を持っておりまして、非核三原則であるとか、あるいは専守防衛政策であるとかとらえておりますが、これらもやはり誠実に守ってまいるのが適当であると考えております。  ただ、防衛というものは相手との相対関係にあるものであります。したがいまして、防衛計画の大綱をつくりましたときも、やはり質的な弾力性というものは認められておりますし、またあのときの装備体系、編成のシステム自体を前提にしたものであって、変化の可能性も大綱の中では認められておるわけであります。  そういうような、あの大綱で決められた枠内における質的な弾力性というものも生かしつつ、今後も防衛政策を主体的に展開していきたいと考えております。  もとより一%の問題がありまして、これは今まで国会でも守りたいと答弁してまいってきており、国会の答弁のいろいろないきさつがございます。それら全部を踏まえましてこれを処理してまいりたいと考えておるところでございます。いろいろ今後ともお気づきの点、我々に御注意していただければありがたいと思うのでありますが、何といっても防衛の本質は国民の国を守るという気概が基本であり、それを守るに値するだけの戦術なり戦略というものが基本的にあって、それを実現していくということがやはり大事ではないか、そう思っております。
  259. 梶木又三

    ○梶木又三君 私も、今、総理おっしゃったように、防衛というのはもう国民が自分の国は自分で守るんだ、こういう気概が一番大事だと思いますし、それから憲法もあります、憲法のもとでやっておるのだし、もう常々専守防衛でやるのだとおっしゃっておるわけですし、それから現在見ておりましても、これは厳格な文官統制のもとでやっておられるんですから、一部で言われておるように一%を外れたからといって、私は、軍事大国になるのだとか、あるいはほかの国に脅威を与える、こんなことはもう常識では考えられない、かように思うわけでございます。  そこで防衛大綱、これをつくられたのは五十一年ですからね。これは言うならばデタント時代というか、そういうときにつくられた大綱で、今それにのっとって防衛政策をやっておられるわけなんですが、先ほど申し上げたように、もう情勢は変わっておる。我が国の周囲をぐるっと見ても情勢はすっかり変わっておる。  その一番いい例が日本の従来の国土であるべき北方領土にソ連はいろいろな軍事施設を設けてだんだん増強しておる、こういう状態ですね。これを踏まえて、我が党あるいはまたアメリカなどでも今の大綱でいいのだろうかという声が出ておる、これは直すべきだと思う。しかし、そこまで私は言いませんが、それはさておいて、現実としてまだ防衛大綱さえも達していない。この水準にやはり早期に達成することが私はとりあえずの重要課題だ、こう思うのですよ。これはまた責務だ。ですから、先ほど申し上げたように、専守防衛、これは決まっておるのだから、文官統制もやっておるんですよ。少なくとも大綱達成を早くやらなければいかぬ。このために一%突破してもこれは私はやむを得ぬと思う。これは当然だと思う。決して軍事大国になるんじゃない。でなければ西側の一員としての防衛責任は果たせない、かように私は思うわけでございます。初めに一%ありきというような防衛政策であっては、これは私は国際的見地から見ましてもおかしいと思うわけでございます。  これについてまず防衛庁長官、それから引き続きひとつ総理から基本的なお考えを伺いたいと思います。
  260. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 我が国の防衛政策は、梶木委員御指摘のとおり、新憲法の精神に従い、専守防衛、非核三原則の原則を厳守して、そして近隣諸国に脅威を与えないような、そういうことに配慮しつつという幾つかの基本的な原則があると思います。そして、その最後にしっかりとしたシビリアンコントロール、文民統制に従いという精神で運用されておりまして、その文民統制の最たるものは私は国防会議でもあるし、同時に一番最終的なものはこの立法府、国会における御議論であろうと思います。そして、その国会の御議論の背景には国民の防衛についての考え方、意思があろうかと思います。私たちが軍事大国に歩むような道をたどるようなことになれば、私は国民はそれを欲してない、その意思が明確にあらわされてくるものだと思いますし、そういう意味で私たちの国が軍事大国にならない保障というのは幾つかの面で非常に厳格に保障されているのではないだろうか、こう思っております。  そういう観点の中で、そういう精神に基づいてつくられておりますのが委員御指摘の防衛計画の大綱でございまして、これは節度ある防衛力のあり方、そして国民の防衛力がどこまでいくかという不安にこたえるという意味もあって作成されたものでございまして、そしてその規模は必要最小限平時において持ってなければならない、そういう防衛力の整備を定めているものであります。  十年ということを大体のめどにしておりましたけれども、現在約九年から十年、そして昨年栗原防衛庁長官が指示を出しました五九中業でその水準の達成を期するというのは、それがうまくいきまして六十五年、つまり五十一年から十四、五年たって初めて達成するという段階でございます。できるだけ早くこれを達成したいという歴代の政府の方針をできるだけ私たちは早く達成して国防に誤りなきを期したい、こう考えております。
  261. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ただいま防衛庁長官が申されたことと、先ほど私が申し上げたことに大体尽きると思っております。
  262. 梶木又三

    ○梶木又三君 どうも、やむを得ぬという私の意見に対して的確なお言葉がないんだが、まあ言いにくいだろうと思いますのでこれ以上追及しません。  ただ、やはり大綱の達成だけは防衛庁ひとつ一生懸命やってもらわなければならない。そうでないと西側の一員としてやはり恥ずかしい思いをしなければならない、このように思いますからよろしく頼みます。  もう一つ防衛庁長官にお尋ねしたいのは、今問題になっている自衛隊の衛星利用なんですよ。衆議院決議に「平和の目的に限り、」あるということは私も承知いたしております。ところが、この「平和の目的」という意味が単に軍事か、非軍事かという言葉の解釈ばかり議論されておるような感じがするわけですね、いままでの議論聞いておると。私は、我が国のみならず世界に対しても本当に平和の目的というのに何が合致するのか、一体何が平和じゃないのか、平和に合致しないのか、こういうことを論議していいのじゃないかと思うんですよね。今回あなたの方で出された直接殺傷力、破壊力として用いられる衛星は利用しない、こう言われたでしょう。これはこれで結構だと思うんですよ。ところが、今の専守防衛のためには先ほど言うように金も少ない、一%を問題にするぐらい金も少ない。それじゃせめて衛星から各国の情勢を見て対処しなければだめなんでしょう、そうでしょう。だから、当然私は衛星利用をやって、少ない予算でも国を守っていくんだと、こういう体制をとるべきだと思うのですよ。特に今回上げようとされておるのはフリートサットというのかな、通信衛星でしょう。だからこれと、私は偵察衛星だって今言うたようなことで当然やるべきだ、それが専守防衛だ、こう思うのです。このお考えを長官から伺いたいと思います。
  263. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 衛星利用につきましては、昭和四十四年に国会の決議をいただいたわけですけれども、その後、科学技術の進歩は私たちの予想を上回るものがあったように思います。そこで、一般に家庭の中でも通信衛星を使ってアメリカからのスポーツ番組を見たりするこの世の中で、自衛隊が例えば通信機能に着目した衛星の利用というものは、一般の人もやっておることだからいいのではないだろうかという議論も政府部内に強くございました。また、それは自衛隊が利用するのはすべて悪いという御議論もございます。また、自衛隊というのは平和の目的にあるのだから、自衛隊が利用するのは目的に合致しているのではないかという国会での御議論もございました。  そこで、いわゆる「平和の目的に限り」の「平和」とは何かとか、非軍事という解釈はどういうことなのかということでいろいろ考えた末、政府の方でもこの間、今梶木委員御指摘のああいった一応の私たちの解釈、統一見解を出したわけでございます。そこで、殺傷力あるものはだめ、それから一般化してないものは制約される、それ以外のものはいいのではないだろうかということで、今度のフリートサット衛星を使っての訓練用の情報をとるという、そういう予算を提出いたしておるわけでございます。この点につきまして御理解をぜひいただきたいと思います。  それから、委員が後段で御指摘になりました偵察衛星でございますが、私たちの国は専守防衛で、専守防衛というのは歴代の防衛庁長官が言っておりますようにウサギみたいなもので、耳を長くして本当に的確な情報を早くとるようにして初めて自分の国を専守防衛で守り得るのだ、そういう意味からも情報機能というのは重要なことだろうと思います。したがって、偵察衛星の利用につきましても、現在は一般化の考えからはなかなか難しいところでございますけれども、私たちとしても関心を持っておりまして、諸外国の動向をこれからよく見きわめながら考えてまいりたい、こんなふうに思っております。
  264. 梶木又三

    ○梶木又三君 時間が大分たちましたから、防衛問題はそのぐらいにしまして、次は経済、財政、税制、こういう問題に移りたいと思います。  まず経済問題ですが、五十九年度久しぶりに成長率五%台となりました。政府見通し六十年度も四・六%、このようにされております。五十九年度は、先ほど来、摩擦のところでも申し上げましたが、対米輸出が急増、外需主導型の経済でございましたが、六十年度は政府の方は民間設備投資や家計消費、いわゆる内需主導の経済をやりたい、こうおっしゃっておる、これは適切なお考えだと思います。ただ、それにしては政府支出の伸び、これを見ますと、名目で一・六%の低率なんですね。特に、刺激効果の多い固定資本の形成、これはマイナスの〇・四%になっておりますね。これじゃ内需拡大やるのだというよりもむしろ足を引っ張っておるのじゃないか、こういう感じがするのですが、経企庁長官ひとつお考えを。
  265. 金子一平

    国務大臣(金子一平君) 今御指摘の政府の支出が六十年度で伸びがぐっと落ちております。特に公的支出です。資本形成が〇・四というような状況になっておりますが、これは御承知のとおり財政事情が非常に厳しいものですから、私どもその点は大変残念に思っておる次第でございます。これがもし財政が許せば思い切った公共投資もやる、あるいは減税も大幅にできるということでございますが、それができないところに悩みがある。  ただ、お話しの公共投資でございますけれども、いろいろ工夫をして、ことしは一般公共事業につきましては三・七%程度の本年度に対する増を計上しておるような状況でございますし、また一方においては、設備投資減税等につきましても相当工夫を凝らして、前回やりました設備投資減税とあわせて企業の設備の拡充を図ってもらえるような誘発効果をねらってやっておるような次第でございます。
  266. 梶木又三

    ○梶木又三君 私も今の財政が厳しいことはこれはもうよくわかります。だから財政の何といいますか、予算たくさんつけて景気を上げろ、こう言っておるのじゃないのですよ。ただマイナスになっておるのはいかがかと、こういうことを言っておるわけなんです。  そこで大蔵大臣、公共投資の一時的な抑制、めり張りつけるのは実際問題難しいと思います。難しいと思うのだけれども、一時的な抑制をやられたばっかりに、地域あるいは産業間、これにいろいろな格差が出まして、例えば産業で輸出関係の電気、機械産業、こういうふうなものは好況なんですけれども、中小企業の、特に建設業関係なんかはもう倒産が非常に多いというようなことなんですね。だから、こういう状態を見ますと、私経済全体がうまくいっておるのだなとは思えないんですね。そこで難しいと思うのだけれども、投資予算をうまく運営というか、これやっていただいて、ひとつ内需拡大に政府としても、あるいは国の財政だけじゃなくて、よく政府で今おっしゃっておる民活もあるでしょう、いろいろなことを含めて内需の拡大、こういうことについてどういうお考えか、ひとつ大蔵大臣から御所見を承りたい。
  267. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いわゆる設備投資が拡大しておる、あるいは個人消費、住宅投資も緩やかな増加を続けておる。しかしながら、景気は全般的にいうと自律的な拡大局面にはあるが、業種間格差あるいは規模別格差、地域間格差、こういうことがあるということを我々も認めるわけであります。したがって、例えば公共事業のいわば箇所づけ配分ということになりますと、もろもろの諸指標を勘案しながらある意味における傾斜配分、こういうことも当然必要になってくるわけでありましょう。試みに既に議了していただきました補正予算、それらはそういう形で執行に当たらなければならぬというふうに思うわけであります。そうして工夫いたしましたのは、これは地方自治体等の協力のたまものでございますが、この予算が通過いたしましたならば、とにもかくにも国費はマイナスであるが、公共事業の事業費についてはいろいろな工夫をして前年度を上回ったということは私は御理解をいただきたい一つのポイントであろうかと思うわけであります。  さらにこれからやはり民間活力という問題がありますと、各種規制の緩和とか、その上に直接民間活動にインセンティブを与えるような、あるいは都市再開発とか、そういう予算にめり張りをつけることによって景気の持続的な回復に資するようにしていきたい。少なくとも、公的支出そのものがマイナスでありましても、全体の経済の中でそれが吸収し得るような環境の整備を行っていかなければならぬというふうに考えておるところであります。
  268. 梶木又三

    ○梶木又三君 私がもう先ほどから内需拡大を叫んでおりますのは、景気だけの観点じゃないのですね。外務大臣にもお尋ねしたように経済摩擦ですね、これの解消にも大変役立つ。ことしは三百六十八億ドルね、来年だって政府は三百四十億ドルとこう計算されておるわけでしょう。そのくらい見込んでおられるのじゃないですか、日本の経常収支の黒字が三百四十億ドル。これ以上になりましたら、私はもっと大きな声が上がってくると思うのですよ。非難の声が出てくる、こういう感じがするんですね。保護貿易主義が必ず私また頭をもたげてくる、こういう感じがするわけでございます。  今大蔵大臣から内需拡大の方策を聞きましたが、同じ質問なんですが、経済企画庁長官の内需拡大策、これはどういうお考えかお尋ねしたいと思います。
  269. 金子一平

    国務大臣(金子一平君) 御高承のように、アメリカに対する輸出はアメリカの景気がスローダウンするにつれて落ちてきております。しかし、昨年の日本の設備投資は輸出に支えられたものが非常に大きな部分を占めておりましたけれども、現在でも輸出産業に支えられた企業設備投資が大きいのでございますが、しかしそれが輸出と離れてハイテク、マイクロエレクトロニクスというようなことでどんどん新しい分野を開発しようということでの設備投資がふえてまいっております。これは私どもとしては非常に心強い感じでございまして、思い切ってこういった方面をうんと伸ばしていきたい。同時にまた、そういう方面への投資が伸びるということはやっぱり先の企業収益に大きな期待が持たれるわけでございまして、一時消費、一番大きいのは民間の消費でございますけれども、これが落ちてきておるのじゃないかという御心配をいただきましたが、まあ去年の暮れからことしの初めにかけては相当この方面も、給与が伸びている、賞与も伸びておるということで明るい見通しが出だしたという面での期待を私どもは大いに持っていいと考えておるわけでございます。  それから、大蔵大臣からもう既にお話ございましたけれども、やはり一番大事なことは、民間の活力をうんと活用することに重点を今後経済運営に当たっては置いていかなければなりませんから、今までいろんな面での規制が十重二十重にかぶせられておった、その規制緩和、デレギュレーションと申しますか、これを思い切ってやりまして、例えば都市の再開発にいたしましても、住宅建設にいたしましても、自由に民間の投資ができるように、しかもそれがペイできるような環境づくりをしっかりやっていく。あるいは大きなプロジェクトにつきまして民間が主体で、例えば関西国際空港が一番いい例だと思いまするけれども、そういうことをやっていく。あるいは第二電電ができようとしております。そういうようなやつを一つずつ着実に気長に進めることが私は内需拡大の一番大きな推進力になるのじゃなかろうかと考えて、今せっかくやっている最中でございます。
  270. 梶木又三

    ○梶木又三君 いよいよそれじゃ財政再建に移りますが、私はこの財政再建、歳出のカットですね、削減。これは基本だとは思います。だからこのことは決して否定しませんが、津々浦々で大蔵大臣、もう勘弁してくれ、もう我慢の限界だという声があることも事実なんですよ。そこで、今後とも歳出の削減というよりは合理化ね、合理化を推進していただきたいと思います。それで、当然努力をされるとは思うわけでございますが、これももうぼつぼつ限界があるのじゃないか、削減も合理化も。そういう感じもするわけなんですね。いつまで我慢するのか、もう我慢の経済というのはだんだん限界に来ておる、こう思うのですよ。それは大蔵大臣、もうテレビもあなた「おしん」も済んだんですよ。「おしん」済みまして、今「ラムネ」になっておる。一遍その間に「ロマンス」が入っておるんですよ。大分変わっておるんですね。だから、そういう我慢の経済、「おしん」哲学にいつまでも固執せずにやっていただきたい、こう思うのですが、大蔵大臣のひとつ所見を伺いたい。
  271. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私ども、昨年暮れ六十年度予算編成を終わった瞬間、概算閣議を終了した後、本当にもう予算削減といっても一滴も出ないじゃないかと、こんな印象を持ちました。持ったと同時に、ああこれじゃいけない、その瞬間から、いわゆる合理化努力に対するいわば歳出圧力に抗し切れない人間的な弱さが出てくるというので反省をいたしまして、翌日、勇を鼓して六十一年度も引き続き厳しい財政事情にあるという認識の上に立たなければならぬと、こうみずからに言い聞かしたわけであります。  そこで、やっぱり国民皆様方に御理解を得なければならぬのは、例えば先ほど来論議のありました設備投資にいたしましても、ここのところ約十五カ月、そして設備投資の水準は高度経済成長のときとほぼ同水準になっておりますし、ばらつきはもちろんございます。と同時に、アメリカに比べても約五割増しぐらいな対GNPに対する比率にはなっておるわけであります。世界的に見ますと、経済の諸指標はまさに先進国のどこよりも、あるいは実質成長率といい、また消費者物価の上昇率、超安定、あるいは失業率にいたしましても世界の国のおよそ三分の一ないし四分の一、そういうことからいたしますと、そういう指標そのものはいい状態が続いておるわけであります。これは日本人がどの国の国民よりも勤勉であるということがそういう状態をもたらしておるわけでございますけれども、いま一つ、このインフレなき持続的安定成長というのが普通の姿であって、かつての高度経済成長時代を夢見ることは国民の皆さん方とともにある種の意識転換をお願いしなければならぬじゃないか。だから、「おしん」という精神の中にもまたロマンを見詰めていかなければならぬじゃないか、こんな感じがしております。
  272. 梶木又三

    ○梶木又三君 財政再建、私は率直に申し上げて昨年だけじゃ無理じゃないか。先ほども申し上げた内需拡大によりまして自然増を図っていくとか、あるいは公平適正な税制改革をやって歳入増を図っていく。いろいろな方法を組み合わせなければ、一つの方法だけでは、朝もいろいろ議論が出ておりましたが、財政の再建は本当に困難な時期に来ておるのじゃないか、かように思うわけなんです。  今まで政府は増税なき財政再建、こういう目標を掲げてこられました。それなりに五十九年も六十年も、私ども不満はございますが、大分削減をされましてそれだけの効果を上げられたと思います。ただ、増税なき財政再建、これは理念だと、こうおっしゃるのですね。理念というのはちょっと私よくわかりません。この質問をやるために、理念とは何だろうと思ってゆうべ広辞林を引きました。難しいことが書いてあるんだ、哲学がどうのこうのと。そんな難しいことはわかりませんが、理念は理念で結構だと思いますけれども、くどいようだけれども、削減だけじゃ無理だ、こういう感じがしますし、いろいろな方法を組み合わせてやるべきだと思いますので、その点についてひとつ大蔵大臣の決意、所見じゃなくてもう決意だ、これをお伺いしたいと思います。
  273. 竹下登

    国務大臣竹下登君) おっしゃるとおり、増税なき財政再建というのは、理念としてこれを堅持していなければ、このかんぬきが外れた途端に歳出圧力に抗し切れなくなる、こういうことを絶えず我と我が身にも言い聞かしております。しかし、歳出削減というものは、やっぱりこうなりますと制度、施策の根本にさかのぼって、これは個人の分野に属する問題か、あるいは地方自治体に属する問題か、あるいは国と地方の役割分担、費用負担のあり方はどうか、こういうことでぎしぎしと今日までやってきたわけでありますが、これをさらに根本にさかのぼるだけの努力は引き続き傾倒しなければならないと思います。  しかし一方、歳入歳出はまさにこれこそ車の両輪であります。安定的な税収を図るということは、これはいつの時代にも必要なことであります。がしかし、まずは歳入の問題につきましては、いわば安定的収入ということはいつの時代にも必要でありますが、初めに増ありきとか、初めに財政再建のための税制改革だという考え方ではなく、税制そのものを、戦後今日までにゆがみを生じた税制を根本から見直すことによって、まずは国民皆様方にいわゆる公平、公正、簡素、選択という立場から理解と協力を得た後、さてどのような組み合わせでやるかということをまた国民皆様方に問いかけていく。したがって、日本国民の皆さん方は敗戦から今日まで今日のような発展、復興をやったその能力とプライドがあるわけでありますから、私どもは組み合わせはかくありたいと言う前に国民の皆さん方にいろんな資料を出して問いかけて、その中から国民のコンセンサスというものを引き出していくという、いわば、回りくどいようでございますが、そこに初めて国民総参加の財政改革というものもあり得るのではなかろうか、決意にしては歯切れが必ずしもいいとは思いませんが、そのような考え方を基本に持っております。
  274. 梶木又三

    ○梶木又三君 今、大蔵大臣から税制についてお話が出ました。  総理にその税制改革の基本的なお考えをひとつお尋ねしたいのですけれども、今も大蔵大臣がおっしゃったように、私も、税というものは国民にサービスをするものですから、いつも国民に自由な討議をやっていただきまして、公平、適正な税負担、これを追求していくものだと思うわけでございます。ところが最近、社会経済、これは御案内のとおり相当変化が激しい、特に目の前に高齢化社会が来ておるわけでございますから、こういうような問題を踏まえても、税制問題、現在の制度から見ましてもあるいは執行面から見ましても問題が山積しておるのじゃないか、かように思います。今申し上げたように、もうやらなければならない税制改革、こういうことでございますが、今の税制で手直ししてもとてもだめじゃないか、一部の簡単な手直しでは限界が来ておりまして、なかなか思い切ったことができない。例えば、法人税なんかも長い間四〇%だったのですが、あれが四二になり、去年五十九年でしたか、四三・何がしかになりましたね。これはもう私は限界だと思うんですね、法人税にしましても。そのように今の税制の範囲内でちょこちょこ糊塗的に直しても何ともならない、このような基本的な考えを私は持っておるわけでございますが、そこで、もう遅きに失しておるぐらいに思うのですけれども、速やかに本格的、網羅的な検討をやっていただきたい、かように思うのですが、総理のお考えをひとつ。
  275. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 同感でございます。日本の税制を見ますと、アメリカのシャウプさんが参りまして、かなり大がかりな税制改正をやりました。それから三十八年ですか、三十五年ですか、たっておりまして、その間にいろいろ高度経済成長もあり、さまざまな変化がありまして、税体系もいろいろなアネックスがくっつけられたり、建て増しが行われたり、そういう形で複雑怪奇な情勢にもなってきております。この際、シャウプ税制以来の根本的な改革をやる時期に来ているのではないかという感じもいたしまして、若干そういう考えを申し述べましたところ、国民皆様方与野党皆様方のほとんど大多数が、まさにそういう時期にもう来ているからやれ、早くやれ、そういうお声が強いようであります。私はこれらのお考えに励まされまして、これはいよいよやる段階に来たかな、そう思っておるので、いずれ、まあいつになりますかはまだ確定したことは申し上げられませんが、今の政府税調に諮問したらどうか、そういうことを大蔵大臣と相談をしておるのであります。政府税調は、根本的な改革をやるべきであるというふうな答申を既に出しております。そういうようなこともありまして、政府税調に対していろいろお尋ねするというときもあるべきである、そう考えておるのであります。  それで、どういうことでやるかということで、私がさきに公正、公平、簡素、選択ということを申し上げましたが、先ほど梶木さんのお話も伺って、活力というのが一つ要るかな、四つ言っていますから、五つにして、公平、公正、簡素、選択それから活力、そういうような原則で根本的な見直しをひとつやっていただいたらどうか。それはもとより増税とか増収、財政再建を目的としてやるのではない、この長い間のゆがみや国民の不満足感というものを解消して、すらっとした気持ちのいい簡素な税体系に改める。まずそういう面から見ると、国民がすらっとしたというような、やっぱりある程度重圧感から開放された、減税ということが大事ではないかという気がするのです。そういう意味で、所得税あるいは法人税の減税ということを総合的な体系の中でひとつ取り上げていただくということも大事ではないかと思っておるのです。  ここで参考になるのは、アメリカのリーガン財務長官が大統領に提出して、大統領がこの間大統領教書の中でも取り上げましたアメリカ流の税の改革論であります。これは公正とそれから簡素と成長と、それから中立でございましたか、そういうような原則をもってやろうとしておる。それで思い切った改革をやっておりまして、所得税がごときは三段階にしようとしておる、あるいは法人税にしても四十数%というものを三五%でしたか三三%でしたか、それぐらいに変えると、そのかわりいろいろな優遇措置やら特別措置をやめようと、そのどれを国民が選択するか、どっちを喜ぶかということで、大体所得税は相当な減になるが法人税は多少重になるというやり方でもあるようです。これがアメリカ議会でどういう取り扱いを受けるかということも大事なポイントであります。日本でも、そういうものを受けまして、所得税がごときも一〇から五〇%までの五段階にしてしまったらどうかという説を言ってくる方もおります。法人税についても簡素にしたらどうかという説もあります。  そういうようなことで、国民の皆さんが不満に思っていることを解消する、そういうことを目標にまず第一に取り上げて税制の改革ということをやったらどうかと、そういう気がしておるのであります。そういう意味で、情勢を見ながらひとつ判断を固めてまいりたいと思っておりますので、よろしくお願い申し上げる次第であります。
  276. 梶木又三

    ○梶木又三君 総理から指摘を受けましたあとの三点、私も追加しまして税制改革をお願いいたしたい。  それから、今総理お話ありました減税ですね、私、これも否定しません。しかし、やっぱり入るものがなければ、入るをはかってからでないとなかなか減税というのは難しいと思いますから、そういう点で税制改革にぜひとも一日も早く取り組んでいただきたい。その際、直間比率の問題が出ておりますが、これもあわせてやってもらいたいと思います。  そこで、税制でやっていただくときに、所得税制の問題なんですが、これは大蔵大臣にお伺いいたしますが、ぜひ検討願いたいのは、一家を支える中堅サラリーマン、この所得税なんですが、例えは四十歳、五十歳ぐらいの働き盛りの人、こういう方々の所得税、所得の一七%ぐらい税金で持っていかれておるらしいのですね。そういう方々はこの税金のほかに教育費が一番要る時期でしょう。それから住宅ローンも一番たくさん返していかなければいかぬ年齢層なんですね。だから日本の累進税率、これは急カーブで上がっておりますが、この累進税率の是正、私は特に今申し上げた四十、五十ぐらいの働き盛りの方々の税率、これはぜひひとつその際に、今、総理お話しになった税制改革、このときにお考えいただきたいと、かように思うわけでございます。と同時に、あれは十五段階ですかな、税率ね。これも大変多い。今お話しにございました、総理からもお話があったもっと簡素にやると、これももっと段階を少なくする、こういうこともあわせて検討願いたいと思うのですが、大蔵大臣のお考えをひとつ。
  277. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まさに今おっしゃいますこの考え方というのが、今政府が一番参考にしますのは、五十八年の暮れに出ました税制調査会の中期答申、これを見ますと、「所得水準の平準化の動向等にかんがみ、中堅所得階層の負担の緩和にも配慮しつつ、全体として、若干なだらかな累進構造とする方向で見直しを行うことが適当である」と、ちょうどおっしゃったように、刻みが減りますと、そういたしますと、いわゆる中間層と、今のお言葉をおかりしますならば、そこのところの重税感と申しましょうか、それが一番いい意味における影響を受けるわけであります。したがって、そういうことを基本に置いて今動いております五十九年度所得税の改正に当たっても、いわば十九段階あったものを十五段階に削減したところでございますが、恐らく今後の税制全般の見直しの中でこの議論を詰められますので、税制調査会の議論には、今のような意見を正確にお伝えすることによって議論の糧として提供すべきであるというふうに考えております。
  278. 梶木又三

    ○梶木又三君 次に、行政改革に移りますが、総理施政方針演説でいつも行政改革、教育改革、そして財政改革、この三つをおっしゃっておる。第二臨調の五次に及ぶ答申を踏まえまして、電電、専売の民営化、これはもう実施されました。それから年金、今参議院で一応やっておりますけれども、年金や医療保険制度、この改革も軌道に乗ってきたわけでございます。こういうことで、決して総理の熱が冷めたというわけじゃございませんが、教育問題、税制問題、こういう方向が余りにも強く出るために、何か一般に総理の行革に対する姿勢が若干トーンが落ちたのじゃないかと、こういうふうに一部で言われる声があるのですが、そういうことはございませんか。総理の決意のほどをひとつ。
  279. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 熱意が冷めるどころか、ますます猛烈に燃え上がってきていると思います。  これからやることは何かと申し上げますと、例えば年金が今御審議を願っております。七十年に向かっての大事業でございます。それから国鉄が出てまいります。それに地方行革の大きな仕事がまだ残っております。そのほか特殊法人の整理統合等の問題、あるいは定員管理の問題、こういう幾つもまだ問題が残っておりまして、これらにつきまして地方行革と同時にこれは権限の移譲、中央、地方の事務の調整という問題がございますが、それらの問題につきましてもこれから精力的に進めていく決心でございます。
  280. 梶木又三

    ○梶木又三君 私、総理が、冒頭申し上げました世論調査で大変高い支持率を得ておられる。これは外交も一つでしょう。この行革に総理が、二年半前に総理になられてから取り組んでとられたこの姿勢が国民の強い支持を得られておる、かように思うんですよ。今、総理おっしゃったように国民はいろいろなことを望んでおると思います。だから、今おっしゃったようなことでひとつ強力に今後もやっていただきたいと思います。  時間がなくなりましたので、いろいろ具体的な問題は省きまして、一つだけ総務庁長官にお尋ねしたいのは非常勤職員なんです。非常勤職員が五十九年七月の政府の資料によりますと、二十万一千百八十八人、こんな大きな数字になっておるのです。この中に、私は審議会とかいろいろなところの方もおられると思うんですよ。しかし、そんなのを除いても一般の非常勤職員も七万人か八万人ぐらいいるのじゃないかと思うんですね。正規の職員の定員管理をしっかりやっても、こういう非常勤職員が多いということになりますと、行政コストなんか決して安くならない、安い政府にならない、こんな感じがするんですね。ですから、今後こういう点のきちっとした整理をやっていただきたい、かように思うんですが、長官それについてひとつ。
  281. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) この御質問は、梶木さんが二、三年前に当時の中曽根長官に御質疑になった問題だと思います。役所の方の定員管理は、これはもう着実に進めております。問題は、定員を厳しくやると非常勤にいくと、こういうお話でございますが、非常勤の職員というのは臨時的な仕事、あるいはしょっちゅう変わる変動的な仕事、こういうので、定数内の職員で仕事をやらせるのは不適当というのを庁費の中でそれで賄っておるわけですが、私もその点については留意をしております。現在、非常勤の職員は十七万ちょっとおると思います。しかし、これはやむを得ないんですよ。実際はふえておりませんから、御質疑になった時期と今日を比べますとやっぱり減っておりますから、その点はひとつ御安心をしていただきたい。今後も御質疑のような点を踏まえまして、やはり大体定員でぐあいが悪いから非常勤に持っていく、仕事の性質が違いますから、私は必ずしもそんなことはないと思いますが、今後とも十分留意をして管理を厳正にやりたい、かように考えております。
  282. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 岩本政光君の関連質疑を許します。岩本君。
  283. 岩本政光

    ○岩本政光君 梶木議員の質問に関連いたしまして、私からは地方行政改革につきましての質問をさせていただきます。  まず最初に、先ほど中曽根総理からもお話がありましたけれども、私は、中曽根総理総理御就任以来、行政改革につきまして大変積極的に取り組んでまいられまして大きな効果を上げられましたことについて、心から敬意を表さしていただきます。さらに一層、行政改革の推進のためには、中央政府と地方政府が一体になりまして、いわゆる車の両輪という言葉で言った方がいいと思いますが、積極的な改革を進めていくことが必要だと私は考えるわけであります。私ども予算委員会は、実は二月の末に長崎、神戸、新潟で地方公聴会をしてまいりました。そのときの公述人の皆さん方も、基本的にはこの点について大きなウエートを置きましていろいろと公述をされておりました。  そこで、私は、まず総理が地方行政改革に取り組まれます基本的な姿勢につきまして御説明をいただきたいとお願いをする次第でございます。
  284. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 基本的には臨時行政調査会から五次にわたる答申をしていただき、また臨時行革審議会がそれを引き受けまして、今フォローアップをしていただいております。これらの方々の御意見等を十分踏まえまして、一歩一歩着実に工程管理表をつくりながら国民の御理解を得て進めてまいりたいと思っておるところでございます。  予算の編成について初めはゼロシーリング、それから三年にわたってマイナスシーリング、四年にわたってこのような厳しい予算の編成ができましたのも、これはまさに与野党の皆さんの御協力であると同時に、国民皆様方の御支援がありますからこれができておるのであります。まだ当分厳しい予算編成が続くと思いますが、こういうような国民の皆さん方の御支援を頼りにいたしまして、臨調答申の線に沿って今後とも一歩一歩着実に実行してまいるつもりでおります。
  285. 岩本政光

    ○岩本政光君 総理の行政改革に対する理念はよく了解をいたしました。そこで、この機会に、各大臣がおそろいでございますので、二、三続けて質問させていただきます。  まず第一に、自治大臣にお尋ねをいたしたいと思います。ことし一月の末の地方行政改革大綱を発表以後、これは中央政府の隠れた地方支配にねらいがあるのではないかとか、あるいはまた地方自治への不当な介入ではないか、こういう大変誤解に基づいたと思われる一部の批判が聞かれます。私は、地方自治が尊重されなければならないことは当然でありますが、たとえ三千余りの自治体のごく一部とはいいますけれども、給与や退職手当等で住民の批判を招く、そういうような地方自治の本旨にかんがみまして、運用を勘違いしている向きもあるというふうに感じられるわけでございます。  そこで、政府が六十年度から推進されようとしている地方行革と地方自治の関係及び地方自治の存在そのものについて御説明をいただきたいと思います。
  286. 古屋亨

    国務大臣(古屋亨君) ただいま先生の地方自治に対する問題につきまして、地方行革のあり方の問題についての御意見でございますが、やはり地方自治は民主政治の基盤であり、内政のかなめでありまして、我が国が民主国家として発展し、国民福祉の増進を図りますためには地方自治の充実強化が不可欠である、お説のとおりであります。特に、人口の高齢化、情報化の進展、安定経済への移行を加えまして、地方の特性や自主性を尊重した地域づくりということが大変重要視されておるところでございます。  したがいまして、住民に身近な行政はできる限り住民に身近な地方公共団体において処理されますよう事務の再分配を行いますとともに、地方公共団体の行財政基盤の強化を進める必要があると思います。地方公共団体として、最近の地方行財政をめぐる極めて厳しい環境の中で住民の多様なニーズにこたえますためには、総力を挙げて行政改革を進め、民主的で能率的な地方自治行政を推進していかなければならぬと思っております。このために、地方公共団体におきます行政改革の総合的指針といたしまして地方行政改革大綱を示しまして、地方公共団体に対して自主的、総合的な行政改革を推進するよう要請したものでありまして、地方公共団体におきましてはこの大綱に即して、大綱は基準を示しておるものでございますから、積極的に行政改革を、各地方の実情に即した充実を図っていただきたいと考えておる次第でございます。
  287. 岩本政光

    ○岩本政光君 この機会に私は例を挙げまして、神奈川県のことについてちょっとお伺いをしたいと思います。  この十五日、県職員に対しまして期末手当を一律二万五千円上積みをしまして支給することが決定したと聞いております。私は大変これを心配しておるのでありまして、同県は御承知のとおりラスパイレス指数や退職手当支給率とも全国で非常に高い位置にあると思っております。本来ならば、むしろ率先して引き下げを図り、地方行革の範たるべきにならなければならぬ。自治省は再考要請を大変したそうでありますが、これも無視されているというふうに聞いておりまして、私はこれは許すことができないのではないかと思います。こんなことが平気で通りますと他の自治体にも非常に大きな影響を及ぼすと思いますが、これらにつきまして、こんなことをしていて竜頭蛇尾にならないように私は毅然たる態度で政府に臨んでいただきたいと思いますが、自治大臣そしてまた総理の御見解をお伺いしたいと思います。
  288. 古屋亨

    国務大臣(古屋亨君) 今、先生のお話しになりました神奈川県の話は私どもも承知しております。新聞で御承知のように、期末手当を一定の基準のほかに一人に二万五千円ずつ出そう、こういう案でございます。神奈川県がこのような厳しい情勢に対する認識を欠いて期末手当のいわゆるプラスアルファを支給しようとしていることはまことに私どもは遺憾でありまして、慎重な判断のもとに再考すべきものと考えております。自治省といたしましても、神奈川県に対しましてかねてから再三にわたり給与、退職手当制度につきましてその適正化を図るよう指導してきておるのでありますが、いまだにその点は聞かれて実行されておりません。それで、このために自治省といたしましては期末手当のプラスアルファ支給を行わないように要請いたしますとともに、早急に給与、退職制度の適正化を図るよう県に対しまして公式の文書をもって指導したところであります。今後、神奈川県の対応状況を見きわめつつ、厳正な判断に立って対処してまいりたいと思っております。  そういうことでございまして、その先は、実は十五日が支給期日と言われておりますので、こういうような対応をしておるのでありますが、しからばこちらの再三の申し入れに対して県で聞いてもらえぬときはどうするかということでございますが、特別交付税におきまして、特別交付税に関する省令の定めるところに従いまして昭和六十年度の十二月分、つまりこの三月の十五日に支給されるということでございますので、この三月は十二日に特別交付税を組んで支給することになっておりますのでそれには間に合いません。省令によりまして、十二月分の交付税の算定に当たりまして超過支給額を減額とするように今のところは考えておる次第でございます。なお、必要によりまして、知事さんと私ともう一度お目にかかりまして、いろいろこちらの事情を申し上げたいと思っております。
  289. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今中央、地方一体になりまして行革を推進しているというところでございますから、みんなが一緒に手をつないで同じように汗をかいていただかないと乱れてしまうのであります。神奈川県に財政の余裕があるからといって、ほかの県の迷惑まで無視して、中央の基準まで侵してそれを行うということはいかがなものかと私は思います。もしそういうことが強行されるならば甚だ遺憾なことでありますが、そういうことがないように今後ともひとつ自治大臣、知事でいろいろ話し合ってもらいたいと思いますが、それでもおやりになるという場合には、中央としてもこれはお金が十分ある県であると考えざるを得ないですから、したがって、それ相応の対応をするのは当然のことである、そう考えております。
  290. 岩本政光

    ○岩本政光君 それでは続きまして、時間がありませんので簡単に聞かしてていただきます。  地方行政の効率化、減量化を図ると同時に、私は非常に注意しなければなりませんのは、地域間格差の是正も一緒に進めていかなければ大変なことになると思うのでございます。公聴会でもそういう話が大変出ておりました。  そこで、ちょっとお聞きをしたいのですが、これについて自治大臣はどう考えているか。また私の地域のことを持ち出して申しわけありませんが、北海道開発等につきましても、こういう均衡発展がある場合にどういうふうにやっていくのか、お聞かせを願いたいと思います。
  291. 古屋亨

    国務大臣(古屋亨君) 御指摘のとおり、地方行革を推進するためには国、地方を通ずる行政の簡素化、効率化、減量化ということが必要でありますことは先生のお話のとおりであります。そのために、国におきましては地方財政の膨張をもたらすような制度、施策の見直しを進めますとともに、地方公共団体におきましても事務、事業の見直し、組織、機構の簡素合理化、OA化、民間委託の推進等につきまして、先ほど申しました行政改革大綱を基準として自主的に、総合的に一層の努力をするよう要請いたしておるところでございます。
  292. 岩本政光

    ○岩本政光君 最後に、総理と大蔵大臣に要望とお伺いをいたします。  今まで申し上げましたように、地方行政改革非常に大事でございます。どうかひとつ、二十一世紀に向かっての新しい特色のある国づくり、そういう均衡のある地域開発の発展もあわせましてこの問題に取り組んでいただきたい。総理に重ねて要望を申し上げますと同時に、大蔵大臣に私はぜひ聞かせていただきたいのですが、ふるさと論を大蔵大臣はおっしゃっていますが、これも地域格差がないように進めていきたいと考えておられるのではないかと思いますが、大蔵大臣の地域格差と行政改革に関する関連もお聞かせを願って私の質問を終わりたいと思います。よろしくお願いいたします。
  293. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いわゆる地域間格差の解消、これはやっぱり政治家の取り組むべき大きな課題であると私も思っております。具体的には現在、国土庁におかれまして四全総、これの策定に向けて総合的な検討をなすっておる最中でございますが、我々財政当局といたしましても、そうしたものに絶えず注意を払いながら、そしていま一つは当面の範囲内で可能な限りの配慮とすれば、公共事業等々傾斜配分等に絶えず注目していなければならない課題だと思っております。
  294. 梶木又三

    ○梶木又三君 ただいま岩本委員から地方行革の問題が出ましたが、私ども今回、参議院も地方公聴会を持ちましてこの議題をやったわけですが、どこでも大体今のような問題が出ましたので、ひとつ政府としても地方の指導をよろしくお願いいたしたいと思います。  なお、ここで私、教育問題、今問題になっておりますから本当はやるべきでございますが、この教育改革については我が党に専門家の林健太郎委員がおられますので、二番手に教育専門にやっていただくことになっておりますから私は省略をいたしたいと思います。  そこで、科学技術の問題に移りますが、総理にひとつ基本的にお伺いしたい。  それは我々の日本の技術、これは今世紀の初めから、私考えまして、ほとんどが完成した科学知識を欧米から持ってきまして、そこに改良を加えてやっておった。これは鎖国から明治に入りまして、そういう日本の実情を考えたら、当時から追いつけ追い越せじゃなくて、追いつけ追いつけだったからやむを得なかったと思うのですが、今の日本の経済力、技術力から見まして、これからともにそういう物まね技術は許されないと思うんですね。ところが、癖がついておるのですな。そういうふうに追いつけ追いつけで向こうのやつをもらってきてやったものだから、自分でゼロから出発しましていろいろ考えていく試行錯誤、こういう苦労が我が国の技術あるいは科学関係にないのじゃないか、一部の方はどんどんどんどん独創的にやっておられる方もございますけれども、一般的に言ったら私そういうことじゃなかろうか。これについて、今後どうしても必要なんだから我が国で独創技術を育てていく。教育問題もございましょう。総理の基本的なお考えをひとつ伺いたいと思います。
  295. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まさに梶木さん御指摘のように、独創的、創造的科学技術、基礎科学技術の分野に力を入れる時代に入ってきたと思います。これは鎖国後追いつくということで忙しくて理解のできないことではないし、またその間におきましても湯川さん以下のような独創家も出てきておると思いますが、一般論としてやはりまだ非常に弱いと思います。そういう意味におきまして、科学技術会議におきまして独創的な、創造的な科学技術を振興するようにという先般の答申もありまして、それらを踏まえて予算的にも、あるいは人材養成の面から見ましてもそういう点に今後大いに力を入れていきたいと考えておる次第であります。
  296. 梶木又三

    ○梶木又三君 総理も御案内のように、参議院に改革の一環で特別委員会をつくりまして国民生活ですけど、その中に小委員会を設けまして、技術革新が雇用問題、産業構造、これにどういう影響を及ぼすかということがこれから重要な問題だということで小委員会をつくったわけですね。もう御承知のことだと思います。そこで去年ずっとやってきました。いろいろ勉強してきまして、もちろん各党各会派まとまった提言をするというところまでいっておりませんが、今までやりましたことをまとめて去年議長に中間報告を出したのですが、それを通じまして感ずることは、今まではME化が進んできましても割合に余裕があったといいますか、労使にも理解があった。こういうことでインパクトも少なくて割合混乱なく来たと思うのですが、しかしME化、これをもっともっと今後進めていかなければいけません、日本の経済活性化のために。これからどんどんME化が進むとなりますと、私はやはり相当なインパクトが出まして、雇用問題あるいは産業構造、就業構造、こういうようなものに影響が出てくると思うんですね。だから、今からそういうことに対して労使のいろいろな認識を深めていただくことはもちろんなんですが、国民全般のコンセンサスを求めることも大事だと思うんですね。そういう意味合いにおきまして、基本的にこれからそういう情勢を、ひとつ世の中をつくっていこうと、こういうお気持ちがあるかどうか、これはもう政府でそういうことをやっていただかなければならないと思いますので、これについてひとつ総理からお考えを伺いたい。
  297. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この点については政治一つの大きな課題でありますと同時に、労働組合の皆さんとお話ししたときも、その点に関する相当な懸念と政府政策を要望されておりました。そういう観点からもME化に関する雇用問題について、労働省等を中心にして、政府としても本格的に取り組んで、労働者の皆様方に御安心のいくような体制をとらなければならないと、基本的にそのように考えております。
  298. 梶木又三

    ○梶木又三君 だんだん時間がなくなりましたので次に移ります。  農業問題を二、三伺いますが、総理に基本的な姿勢だけひとつ最初に伺いたいのですが、農業もいろいろ苦しい面に直面いたしております。農業というのは、ずっといつでも苦しいんですけれども、最近総理よく、農業は生命産業だと、こうおっしゃっておる。そのとおりで、最近いろいろな意味注目期待を集めておるのも私は農業だと思います。こういう厳しい時代において総合的な自給力の維持強化、これを軸としまして、どうしても生産性を上げて、再編成しなければならぬと、こう思うのですが、それにつきまして基本的な農政の姿勢を総理からまず伺いたいと思います。
  299. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 農業が生命産業であり、かつ農は国のもとであるというのは私の基本的大原則でございます。しかし農業というものは、今個々の農家がおやりになっておるもので、農協を中心にして協力関係が確立されておるのですが、どうも今までの様子を見ると非常にマンネリズム化してきておるというように思うのです。この辺で自主、自立、自活の精神で農家に立ち上がっていただき、農協あるいは政府というものはそういう方向で農家にも協力していくと、そういう体系で農業を活性化する必要があるのではないかという気がいたしております。私は、個々の技術的な問題については素人でまだ立ち入るだけの力はありませんが、基本的にはやはり生産性の向上ということに重点を置いて、価格政策に頼る部面を漸減していくと、そして生産性の向上の方に重点を入れていくと、それが長期的に見た農業政策方向ではないかと思うのでございます。そういうような考えに立ちまして、これだけ情報化なり、かつ機械化が発展している事態を踏まえた農業のあり方というものも追求していきたいと考えておる次第でございます。
  300. 梶木又三

    ○梶木又三君 そこで、今の総理の基本姿勢を受けて農水大臣、私は構造政策の推進がやっぱり農政のこれから基軸になっていかなければいかぬと思うんです。その構造政策の中心のまたその中心が農業基盤だと思うんです。ところが農業基盤の進度を見ますと、これは第三次土地改良長期計画でやっておるのですけれども、これは五十八年度から十カ年間なんですが、五十九年度で一〇%ぐらい、ことしの予算入れましても一六%、こういうことなんですね。今後もやっぱりこれが軸なんですよ、軸。大臣のひとつお考えを伺いたいと思います。
  301. 佐藤守良

    国務大臣(佐藤守良君) 梶木先生にお答えいたします。  先生の御指摘のとおりでございまして、農業基盤整備事業というのは構造政策の基礎的な施策でございまして、これをぜひ積極的に推進しまして生産性の向上、農業生産の再編成、食糧自給の維持強化を図りたいと頑張っているわけですが、今先生御指摘のとおり、第三次土地改良長期計画は実は昭和六十年度まで計算すると進捗率が約一六%ということでございますが、財政的に大変厳しい状況でございますが、新規事業を抑えまして継続事業を推進しながら、長期的に達成を図りたい、このように努力したいと考えております。
  302. 梶木又三

    ○梶木又三君 その農業基盤に関連するのですけれども、大臣、もう御案内のとおり、今の農村というのは農民だけの社会じゃないんですね、混住社会。ですから農水省はこれから私は農業だとか農民、これを大事にしてもらわなければいかぬけれども、やっぱり農村全体というものをよくするんだと、こういう気概で進んでいただきたいと思うのです。農水省だけでできないものがある、それはもういろいろなところに注文出してもらって農村をよくするのは農水省だと、こういう気概で進んでいっていただきたい。というのは、やっぱり農村というのは私これから産業立地考えましても、昔と違って軽小短薄物をつくるから大きな工場要らぬものだから、きれいな水、きれいな空気ということで農村へ来るんですな、新しいICなんかの工場は。そういう意味で農村環境整備のあり方というものを私は大事にしてもらわなければいかぬと思うんですよ。今、集落体制やいろいろやっていただいた、大変私は評価しておるんですよ、これについてどうお考えか、ひとつお伺いしたい。
  303. 佐藤守良

    国務大臣(佐藤守良君) 梶木先生にお答えします。  先生の御指摘のとおりでございまして、近年農村は、御存じのとおり兼業化、混住化等の進展に伴いまして、住民意識の多様化、あるいは資源管理価値観の低下といったもので非常に変化してきております。そんなことで、実は今大切なことは農業の振興を図る上からも農村地域の活性化を図ることが必要となっております。そんなことで、農業生産基盤と生活環境の整備と、農村における定住力の整備と一体的に推進するということが大切なことでございます。具体的には、今先生がおっしゃいました農村地域住民の生活状況の改善等に大きく寄与しております農業集落排水事業、それから農村総合整備モデル事業、あるいは改正農振法及び改正土地改良法の効果的な運用によります活力ある村づくり、あるいは農村工業の導入、あるいはテクノポリス等による先端産業の導入等、農村地域活性化のための諸施策を今後とも積極的に推進してまいりたいと、そんなことで今、先生おっしゃいました農林水産業は私の方の責任ということで、全力を尽くして頑張りたいと、こう思っております。
  304. 梶木又三

    ○梶木又三君 農水大臣、もう一問だけお伺いしたいのです。  今度は国内と違って国外問題で農業の対外協力。私アフリカのああいう状態見まして、今直ちに食糧の援助、これも大事だと思うのですが、やっぱりこれから本当に日本がああいい国だと言ってもらうためには、向こうに自給体制を与えることだと、自立精神。だから、そういう人づくりの気持ちを込めて自立体制を整えてやる。そのために、今までどうもややもしますと大型機械を持っていくとか、立派なダムつくって立派な水路をつくってやる。そういうのは向こうのオーダーに合わないんですよ。すぐに簡単な井戸を掘って、竹筒でも何でも結構、水をかんがいしてやって、そして作物をつくっていくとか、こういう社会状態の、向こうの国に合ったやつをやっていただくことが本当に何と言うのか、息が合ってくるわけですよ。これが私は人づくりだと思う。こういうことについてお考えをひとつ伺いたいと思います。
  305. 佐藤守良

    国務大臣(佐藤守良君) 梶木先生にお答えいたします。  先生のおっしゃったとおりでございまして、アフリカ諸国につきましては近年相次ぐ干ばつ等によりまして食糧事情は極めて悪化しております。  我が国としましては、実は当面する対策と中長期対策がございまして、当面は今先生がおっしゃったようなことで、食糧援助を強化しておりますが、中長期対策としてはアフリカ諸国が、実は農業振興をどうするかということで、自助努力により農業振興を行うことが大切だ、そんなことで、そのような自助努力に対する国際的支援を行うことが大切だと、このように考えております。  そんなことで、我が省といたしましては、実はアフリカにつきましては農業知識が限度がございます。そんなことで、実情につき十分調査、検討を行いまして、これら諸国の農業条件や営農状況を踏まえまして、先生の御指摘のように、現地の事情に即したかんがい技術とか、あるいは人づくり等を含む協力を推進してまいりたいと考えております。
  306. 梶木又三

    ○梶木又三君 ぜひ、そういう指導をひとつ末端にまでお願いをしたいと思います。  今度は国土庁長官にお伺いしますが、先ほど農水省の問題でお尋ねしたとおり、大分産業立地なんかが変わってきたわけです。そういうことを踏まえまして、今、四全総をやっておられますが、これから分散型の国土づくりということに私はなってくると思うのですよ。だから、それに対応したところの交通体系だとか、通信網の体系だとか、こういうことで大変大事な作業だと思うのですが、基本的なひとつお考えを伺いたいと思います。
  307. 河本嘉久蔵

    国務大臣河本嘉久蔵君) 国土の均衡ある発展ということを国土庁は願っておりますが、今の先生のおっしゃる分散型国土ということも言えると思います。  私、先般長野県を視察したんですが、エプソンという先端産業が松本へ来ておりまして、非常に緑と空気のいいところで地域のために尽くしておられるのを見て感激した次第でございますが、今後とも四全総策定に当たりましては、そういうことを配慮して、各地の意向も聞いて十分尊重し、策定したいと思っております。  現在、首都圏、中部圏、近畿圏、ほかに東北、九州、四国、北陸と、各地区の御意見を今ヒアリングとして承っております。それをもとにして立派なひとつ四全総の策定作業を進めていきたいと考えております。
  308. 梶木又三

    ○梶木又三君 総理、今の四全総ができますと、今幸いいろいろやっていただいたおかげで土地の値段は割合に、二、三%ぐらいで落ちついておるのですけれども、ああいう計画ができてくる、おまけに今は金はアメリカへ行ったり国債買ったりしておりますけれども、十分国民は金を持っていますから、何かいいなと思ったらまた土地へ来ぬとも限らない。今までそういう苦い経験を持っております。ところが幸い今落ちついておるし、国民も土地は持つものじゃなくて使うものだという意識も定着しつつございます。  土地政策というのは各省にまたがりますが、総理から総括しましてこの土地政策についてのお考え、これを承りたいと思います。
  309. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 土地の総合的な、有機的な利用計画ということが大事で、これは従来の三全総、四全総、今四全総をやろうとしていますが、その中でも今心がけておるところであると思います。  しかし、最近におきまして東京の都心とか、そういうところで事務所をねらった土地の地価が上がりぎみであります。これは我々としても大きく関心を持って地価を抑制する方向政策を強化していかなければならぬと、そう思っております。全国的に見ますとやや落ちついております。この傾向をさらに助長していく必要があると思っております。  各県及び各市等におきましていろいろ工業団地の計画とか、あるいは住宅団地の計画とか、さまざまな計画がありますけれども、こういう新しい時代になりますと、情報通信体系あるいは交通体系、さまざまな変化がありますから、時代を先取りした、そして効率的な、しかも国土の大切性を尊重したような形の土地の利用、国土計画というものをぜひとも推進していくように努力したいと思っております。
  310. 梶木又三

    ○梶木又三君 次に環境庁長官、このそうそうたる閣僚の中で紅一点で頑張っておられる、まことに敬意を表したいと思います。  そこで公健法なんですがね。あれはもう、できて十年もたっておる。大分空気の状態変わってきましたね。SOxなんか完全によくなった。それで今、中公審ですね、私これ在任中諮問したんですよ。いろいろ言っておりますけれども、外野の声には迷わされずに——この外野じゃないよ、本当の外野。それで化学的な知見に基づいて、ひとつ早いこと結論を出してやっていただきたい、かように思います。ひとつ決意のほどをお伺いしたいのですがね。
  311. 石本茂

    国務大臣(石本茂君) ただいま先生御提言の公害健康被害補償制度につきましては、適切に運営していかなければならないと考えておるところでございまして、この第一種地域のあり方につきましては、もう御承知いただいておりますように、基本的に非常に重要なことでございまして、先生が大臣御就任中に中央公害対策審議会にこれは諮問をされまして、現在頻回に検討が進められておるところでございますので、私としましては中央公害対策審議会におきまして十分に検討されまして、一日も早く御答申をいただきたい。その答申を踏まえまして適切な措置を考えていきたいというふうに考えておりますので、先生よろしくお願いいたします。
  312. 梶木又三

    ○梶木又三君 本当にあれ大事な問題でございます。患者はふえていくし、金はだんだんかさむ。ひとつ真剣にお考えいただきたいと思います。  ことで、今度は緑の問題なんですが、これは総理にひとつお伺いしたいと思います。  私、緑というのは、これはやはりもう我々日本人というのは昔から、縄文、弥生の時代から先祖がずっと親しんできた問題なんですね。私は高度成長でみんな忘れておったと思うのですよ。これはやっぱり取り戻さなければいかぬ。そういうことで総理も就任早々、大分一生懸命やっていただきました。我が党でも花と緑ということで推進本部を設けて大分やっておるのですがね。私はやっぱり先ほどの公健法ですか、あれじゃないんですけれども、これから工業やいろいろなものが発展するについても、やっぱり自然を汚染しない工業というものを発展させていくのが先進国だ、このように思うわけですね。ところが、緑というのはやっぱりなかなか時間かかりますからね。そういう点で総理のお考えをひとつお伺いしたいと思います。
  313. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) おっしゃるとおりであると思います。  最近、緑に対する国民の関心が非常に高まりまして、特に市町村等の自治体側におきましても緑の大切なことについて非常に施策が伸びてまいって、結構なことであると思っております。  やはり、国民の生活を考えてみますと、清らかなもの、あるいは花や緑にあこがれるという本能的なものが日本人は強うございます。自然を愛する民族性というものを最大限に生かしつつ、この緑を都市においても、あるいは農村におきましても十分に展開するように積極的に施策を進めてまいりたいと思っております。
  314. 梶木又三

    ○梶木又三君 これで終わりますが、ただ最後に、いろいろ質問してきましたけれども、ひとつ中曽根内閣国民の先頭に立っていただきまして、この内外厳しい時代でございますので、私どもも、自民党も一生懸命やりますが、ひとつ先頭に立っていただきまして頑張っていただきたい。このことを最後に御要望申し上げて質問を終わりたいと思います。(拍手)
  315. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 以上で梶木君の質疑は終了いたしました。     ─────────────
  316. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 引き続き、派遣委員報告を聴取いたします。  大蔵大臣、農林水産大臣通商産業大臣、建設大臣、自治大臣、総務庁長官国土庁長官にはお残りを願いたいと存じます。総理大臣以下、他の閣僚は御退席くださって結構でございます。  本委員会は、昭和六十年度総予算三案審査のため、長崎県、兵庫県及び新潟県にそれぞれ委員を派遣し、去る二月二十一日、各地において同時に地方公聴会を開催し、つぶさに現地の実情を聴取してまいりました。  それでは、その概要について御報告を願います。  まず、長崎県につきまして、大河原太一郎君にお願いいたします。大河原君。
  317. 大河原太一郎

    大河原太一郎君 長崎班につきまして御報告申し上げます。  長崎班は、長田委員長、大河原、内藤、伊藤各理事、沢田、宮島、久保、安恒、中野委員の九名で構成され、二月二十日、五十七年七月水害の復旧状況を初め、長崎魚市場、三菱重工長崎造船所を視察し、翌二十一日、長崎市において公聴会を開催し、六名の公述人より、意見を聴取した後、派遣委員から熱心な質疑が行われました。  以下、公述の要旨を簡単に御報告申し上げます。  まず、国と地方の行財政改革のあり方につきまして、長崎県知事高田勇君、佐賀県副知事井本勇君から意見を聴取いたしました。  高田公述人は、長崎県としても、事務事業の見直し、補助金の整理合理化等行政の減量化、効率化に最大限の努力を傾注している。特に、会館等施設の管理、運営について、経費節減等の観点から民間委託を進めているものの、法令等により、職員の配置基準や特別な資格、職名を有する職員の設置義務があるため委託が不可能の例もあるので、これらの必置規制についてぜひとも改善措置を講じてほしい。  六十年度予算でとられた総額四千六百億円に達する国庫補助負担金の一律一割削減の影響額は、本県の場合約七十四億円、うち経常的経費分は約三十八億円と試算され、六十年度県税増収見込み額十八億円の二倍以上となり、その対応に苦慮している。  また、本県の六十年度の予算編成では、わずかに留保していた基金を取り崩し、景気への影響の大きい公共事業質の確保を図ったが、こうした地方への負担転嫁が行われると、本県のように生活保護比率及び公共事業依存度の高い県は、全国平均以上に影響を受けることとなり、ますます財政力が弱くなるので、このような地方への負担転嫁はぜひ六十年度限りの措置としていただきたい旨の意見が述べられました。  井本公述人は、佐賀県ではこれまで県内各有職者からなる行財政懇話会を設置し、事務事業、組織機構、財政等各般にわたり徹底した見直しを実施してきた。特に給与の適正化については、ラスパイレス指数で、五十年の一〇八・七から五十九年には一〇二・〇へと低下している。また行政組織についても、課、室の削減、出先機関の整理統合、再編を行っている。  国に対し特に要望したいことは、事務の簡素合理化、住民の利便促進の観点に立ち、機関委任事務のさらに一層の整理合理化とともに、法令や各省庁の通達、補助要綱等による民間委託等の制約についても、国の必置規制の整理合理化を強く要望したい。六十年度予算では、国庫補助負担率の引き下げにより、本県の負担は六十億円と見込まれるが、社会保障に係る歳出は、本来国に支出責任があり、単に国の財政支出を削減するために負担割合を変更すべきではない。また、地方交付税は地方公共団体固有の財源であるが、地方財政に対する国の責任を全うするためにも、地方交付税率の引き上げ、特例措置の活用等適切な措置を講じていただきたい旨の意見が述べられました。  次に、地域経済の動向、中小企業問題につきまして、清島省三君、松藤渉君より意見を聴取いたしました。  清島公述人は、長崎県の諸産業の現状を見ると、エレクトロニクス等新産業に乏しく、主力である造船造機は一昨年受注したバルクキャリアの建造が続いているものの、採算は芳しくなく、新規受注も厳しい状況にあり、また個人消費支出の動向も全国平均を下回るなど、経済全般にばらつきが見られ、本県経済は緩やかな回復にとどまっている。しかし、本県経済を長期的に活性化するためには、長崎の歴史的、地理的優位性を活用し、中国、東南アジアの国々と国際交流を促進していくことが肝要であると考えるが、こうしたソフト分野の開発を進めるためには、交通体系の整備、情報通信機能の強化等が不可欠であり、これらに対する国の協力をお願いしたい。  また佐賀県においても、経済は総じて最終需要の動きが鈍く、生産活動に回復の動きはあるものの、力強さに欠けている旨の意見が述べられました。  松藤公述人は、長崎、佐賀両県は中小企業の割合が極めて高く、両県とも九九・九%以上が中小企業で占められている。内需依存の強いこれら中小企業の昨年の倒産は、負債総額では前年対比九%減となっているにもかかわらず、逆に件数では七%も増加しており、中小企業の倒産が増加していることを示している。しかも総倒産件数のうち、約四割は建設業関連で占められており、地域経済に与える影響は極めて大きく、いまだ不況の域を脱していない。  こうした地域経済の状況にかんがみ、産業経済の発展を図る一つの手段として、新幹線あるいは高速道路の早期建設をぜひともお願いしたい。同時に、官公需の大企業中心への発注、また大型プロジェクト工事が工事主体のほとんどが大企業である現状を改め、地元中小企業への発注を図るよう特にお願いしたい。また、地元中小企業も新しい産業技術に対処するため、技術研究グループの結成を進めているが、新製品の開発には相当の負担、リスクを伴うので、国の特段の財政的援助をお願いしたい旨の意見が述べられました。  次に、離島振興に関する諸問題につきまして、津田豊水君、大瀧教恩君より意見を聴取いたしました。  津田公述人は、六十年度の離島関係予算は千五百三十三億円あるが、地方への補助率カットにより、うち百二十七億円が地方負担となっている。地方交付税特別措置や地方債の発行で補われることになっているものの、離島の財政力指数は全国平均の二分の一以下であり、特段の配慮をお願いしたい。離島では医師の確保が困難で、本県離島の医師数は十万人対比八十三人と、県全体の半分以下であり、医師の確保に特段の配慮をお願いしたい。また離島の病院経営も、現在の大幅な赤字経営から健全経営が可能なよう、援助をお願いしたい。  離島の振興は足の確保をおいてほかになく、県でも高速船艇導入協議会をつくり、ジェットフォイルの導入準備を始めたが、船価が四十七億円、導入後も毎年四億円の赤字が見込まれるなど、導入を断念せざるを得ない状況にある。こうしたことから、離島空港の運航時間を現在の八時間から十一時間に延長するとともに、対馬—大阪間の直行便の開設を図っていただきたい旨の意見が述べられました。  大瀧公述人は、壱岐の出身であるため、壱岐中心の話になることを断りながら、壱岐は農業、水産業の第一次産業、しょうちゅう、ウニ加工等の第二次産業のほか、観光関連産業があるが、島の人口は、昭和三十年をピークに今日まで確実に減少を続けている。人口の減少は特に後継者対策、産業の振興、医療の確保等の面にさまざまな問題を投げかけており、今後の島の発展にとって大きな障害となっている。  また本県離島の耕地は、面積で県全体の二八%を占めているが、傾斜地に分散しているなど条件が極めて悪い。この点で、団体常の農業基盤整備事業採択基準の離島特別措置である十ヘクタールを五ヘクタールに引き下げるよう、特に要望したい。  また、漁業では外国船の侵犯操業が続いており、取り締まり体制の強化と、外国船に対する強力な外交折衝をぜひともお願いしたい。  また観光についても、通年型観光への脱皮を図らなければならないが、魅力ある観光地づくりに国の一層の援助をお願いしたい旨の意見が述べられました。  以上、御報告を終わります。
  318. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 次に、神戸班につきまして、梶木又三君にお願いいたします。梶木君。
  319. 梶木又三

    ○梶木又三君 神戸班につきまして御報告申し上げます。  神戸班は、井上理事、太田理事、海江田委員、梶原委員、和田委員本岡委員安武委員柄谷委員、青木委員そして私梶木の十名で構成し、二月二十日、川崎重工業株式会社明石工場、田崎真珠株式会社を視察し、翌二十一日、神戸市において公聴会を開催、六名の公述人からそれぞれ意見を聴取した後、派遣委員から熱心な質疑が行われました。  以下、公述の要旨につきまして、簡単に御報告申し上げます。  まず、国と地方の行財政改革のあり方につきましては、兵庫県知事坂井時忠君及び神戸商工会議所会頭石野信一君より意見を聴取いたしました。  坂井公述人は、機関委任事務の洗い直し、地方事務官制度の廃止等地方への権限委譲の促進が必要である。特に住民に身近な事務については、地方団体の手にゆだねるべきである。地方制度調査会、知事会の提言等について国の態度を明確にさせ、実行に移すことが肝要である。国の予算編成における高率補助金の一〇%カットは行政の簡素合理化、行政改革にはつながらず、より基本的な問題の解決こそが望まれる。国庫補助金の申請事務量は膨大なものがあり、思い切った簡素合理化が必要である。零細補助金は一般財源に振りかえ、重点的に整理すべきである。国の地方出先機関の再検討、許認可事務の見直し等国において改革を要するものがあると述べられました。  石野公述人は、高度成長時代から低成長時代への転換に適応するため、行財政改革は避けて通れない。税制の問題以前に行財政の簡素効率化、徴税の公平、公正化を徹底すべきである。我が国の国と地方の関係は、米国の州とは異なったより密接な車の両輪関係にある。この相互依存関係をどう維持していくのかを検討すべきで、単に負担の押しつけ合いで処理すべきではない。兵庫県は高い民間活力を有しており、これを生かすため、工場規制三法の見直し、国有財産の開放等国の規制緩和に配慮を願いたい。近く大鳴門橋が完成するが、明石海峡大橋の建設が実現しないと既に行われた投資効果が発揮できない。財政再建の必要性と総需要の抑制とは混合すべきではなく、民間活力による総需要の拡大を図り、社会資本の充実、経済の拡大を図りつつ、財政支出の負担を軽減すべきであると述べられました。  地域経済の動向、中小企業問題につきましては、神戸貿易協会会長難波還君及び兵庫県中小企業団体中央会会長大塚宗元君から意見を聴取いたしました。  難波公述人は、米国の景気拡大の影響から世界貿易、我が国の貿易とも拡大している。しかし、神戸においては、貿易業界の小規模性、雑貨、繊維が多く、機械器具、エレクトロニクス関連商品が少ないという取扱品目の後進性並びに好調な米国向け輸出が少なく、大幅に減少した中近東向け輸出が多いことから輸出入取扱額の全国に占める比率も低下傾向にある。貿易摩擦に対応して、中国市場を新たに見直すとともに、貿易振興策として、中小企業等海外市場開拓準備金制度の恒久化措置等を要望したい。高度情報化時代に対応するため、中央の貿易情勢を地方へフィードバックさせるようなシステム化が必要であり、その投資に対する金融、税制上の優遇措置を要望したいと述べられました。  大塚公述人は、県下中小企業の動向は、五十九年以降も収益状況が依然低迷し、厳しい経営環境にあるのが実態である。兵庫県経済は、鉱工業生産指数を初め百貨店売り上げ、有効求人倍率等いずれも全国水準を下回っているが、倒産件数が顕著に少ないことが特徴となっている。経営環境は厳しいが、経営が堅実であり、先端技術志向の強いことがその理由と考えられる。地域産業の振興に当たっては、テクノポリス構想、新地場産業集積圏構想等国が企画する誘導政策が必要で、これが中小企業の意欲を駆り立てる。中小企業に対しては長期的、継続的な行政指導が必要であると述べられました。  新構想による都市づくり、民間活力の活用につきましては、神戸市長宮崎辰雄君及び大阪幻世紀協会専務理事加藤良雄君から意見を聴取いたしました。  宮崎公述人は、神戸市は民間活力を活用した都市づくりを取り入れており、国もこうした考えを導入することは賛成である。都市計画に際しては、担当職員がコスト意識を持ち、財源の裏づけのある中長期計画が必要である。神戸市は起債を積極的に導入し、西ドイツ、スイス等で外債も発行している。残債額は一兆三千億円と大きいが、償還のめどは立っている。土地造成については、公共デベロッパーとしての立場をとっており、乱開発、ミニ開発等の弊害をなくす意味から公の機関が行うべきである。その後の民間利用、払い下げについては、民間から計画を提出させ、審査委員会の順位づけを経て行っている。ポートアイランドを例にとると、市が二千五百億円の投資を行う一方、民間投資が二千億円あり、経済の波及効果をもたらしている。民活事業を行う場合にはそれに伴う公共事業が必要であり、補助、起債について各都市の特色を踏まえ、融通性のつく措置を要望したいと述べられました。  加藤公述人は、大阪には国際的、文化的機能が劣っており、三年前に大阪21世紀協会を発足させ、民間活力を活用しながら都市機能の強化に当たっている。国際的、文化的イベントを集中して行い、これがインパクトとなってさまざまな公共施設、社会資本が整備された。都市づくりは内需主導型であり、消費文化と結びつけることも重要である。関西の諸都市は、関西国際空港、関西文化学術研究都市、神戸研究学園都市等のプロジェクトを核として国際交流、文化、情報機能を逐次植え込み、経済の活性化を図る必要がある。これには民間のノーハウ、マネージメント、人材の起用も望まれる。硬直化した各種規制措置の洗い直しが必要であるが、公共の利益との調和を図るべきであると述べられました。  以上、御報告申し上げます。
  320. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 最後に、新潟班につきまして亀井久興君にお願いいたします。亀井君。
  321. 亀井久興

    ○亀井久興君 新潟班は、岩本、志苫両理事と増岡、志村、長谷川、高桑の各委員、それに私亀井の七名で編成。二月二十日、燕市の山崎金属工業株式会社及び新潟県醸造試験場を視察し、翌二十一日、新潟市で地方公聴会を開催いたしました。  公述項目は、国と地方の行財政改革のあり方、地域経済の動向、単作地帯農業の課題の三項目で、六名の公述人より意見を聴取した後、派遣委員から熱心な質疑が行われました。  以下、公述の要旨を簡単に御報告申し上げます。  まず、国と地方の行財政改革のあり方につきまして、新潟県知事君健男君、新潟市長若杉元喜君から意見を聴取いたしました。  君公述人は、飛躍的に発達した交通、通信や事務処理の機械化等を踏まえ、その有効活用を基本に、制度、施策、組織等を継続的、平常的に見直すことを行政改革の基本にすべきである。臨時に本来行革の対象となるべき人を集めて、改革案をつくっても改革の効果は上がらないばかりか、混乱を生じる弊害があるので、間断なき改革が肝要である。国と地方は相互信頼と協力のもとで、整合性を図って行革を推進すべきであり、特に住民の身近な行政は自治体の手で完結できる方向での行革を推進すべきである。そのためには、事務権限の再配分、特に機関委任事務、各種の必置義務、職員配置基準等の改正を行う必要がある。同時に自治体財源充実のための財源再配分並びに意欲的に行革を推進している自治体に、財源優遇等の奨励策も考慮すべきである。六十年度予算の高率補助一律カットの施策は、行革理念に従ったというよりも、地方への負担転嫁の嫌いがあり、ぜひ一年限りの臨時措置とすべきで、継続されると行財政運営に支障が大きい等の意見が述べられました。  若杉公述人は、行財政改革の基本は長期的な視点に立った、総合的計画的な行政諸施策の具体化に重点を置き、当面の財政収支だけを過大視してはならない。しかし、低成長経済と高齢化社会への変化を踏まえ、効率のよい行財政運営が必要であるが、その際効率化即行財政サービスの低下とならないよう、行政の質の面に十分な配慮が必要である。自治体にかかわる行革は、住民と行政の協力によって自治体が成立している点を踏まえて、市民意思の反映と市民参加が前提とされる行革でなければならない。そうした観点から、国と地方のあり方は、住民福祉増進の視点に立って、国、県、市町村はこれまでの権力的ピラミッド型及び下請機関型を排除し、国と地方を協同関係としてとらえ、その上に立った新しい機能分担と財源配分の明確化を図るべきである。特に注意すべきは、臨調行革の実施に伴い、自治体への負担転嫁や国の画一的介入の危険があるが、これは避けなければならない等の意見が述べられました。  次に、地域経済の動向につきまして、新潟経済社会リサーチセンター理事長伊奈重熙君、新潟県繊維協会会長今井茂君から意見を聴取いたしました。  伊奈公述人より、新潟県の景況は、公共投資が低調なほか住宅建設、個人消費も力強さを欠いている。しかし、生産面では、全国水準や近県に比べ低水準ではあるが、最近では前年同期を一割前後上回っているほか、企業の設備投資も拡大傾向が見られ、景気は回復傾向を持続している。部門別では、窯業、石油製品等が不振であるが、県の積極的な企業誘致により、電子部品関連工場が順次稼働し、生産を伸ばしている。金属洋食器も高水準の生産が続いているが、その反面、地場産業の絹織物、金属ハウスウェアー等は低迷状態にある。本県の鉱工業生産の状況は、全国水準、東北ブロック六県、さらに北陸三県の水準に比べて大変なタイムラグと格差が生じており、産業構造の転換及び地場産業対策を通じ、この解消の方策を立て、実行していくことが課題である等の公述がありました。  今井公述人からは、本県の繊維産業は、化合繊維物、絹織物、ニット製品等の総合産地として、従業員八万人、出荷額三千二百億円という大変重要な地場産業である。今日の繊維産業の置かれた状況下で、業界としては設備近代化と構造改善に必死で取り組んでおり、国において税制その他の面で強力な支援をお願いしたい。繊維製品については、秩序ある貿易拡大のため、国際繊維取り決めがあるが、これが輸出のみに適用され、繊維製品輸入は野放しの状況で、市場の攪乱と韓国、台湾、中国等の追い上げに片務的なものとなっているので、法制度の整備と運用の適正化を期せられたい。なお、最近注目を集めている大型間接税について、繊維業界は、製造段階が複雑で流通経路が長い等の特殊要因から、本税の導入には反対である等の公述がありました。  最後に、単作地帯農業の課題について、新潟県農業協同組合中央会会長村山正司君、日本農民組合新潟県連合会書記長目黒吉之助君より意見を聴取いたしました。  村山公述人は、十二月から三月まで積雪に埋もれ、収穫期に雨が多く、地下水が浅い等の諸条件が米の単作を強いることになる。幸いコシヒカリといった食味のいい米が栽培され、主産地と食糧基地の役割を担っているが、単作地帯に水稲の減反、転作は大変きつい。昨今の米の需給事情等を勘案し、米を中心にした複合経営を目標に努力中である。複合経営には土地基盤整備事業の推進が不可欠であるが、現在、汎用可能な農地は五四%足らずで、経営転換にはなお困難が多い。次に、ここ数年良質米奨励補助金削減の圧力が強いが、コシヒカリは栽培しにくい上反当収量が少ない事情を考慮し、農家収入補てんの機能を果たしてきたのに、これが減額されるとアキヒカリ等多収穫品種に転換する危険があるので、良質米奨励金はぜひとも継続すべきである。多用途米及びバイオテクノロジーを利用した多収穫品種等について政府は一層の努力をしてほしい等の公述がありました。  目黒公述人は、農基法農政を基本に進めてきた我が国農業が、今日大変深刻な危機的状況にあることをまず認識し、これを出発点に農政の全面的見直しと再検討が必要である。本県の農業は、米の減反政策で農家が生産意欲を失い、回復困難なところまで追い込まれてしまったのを初め、中核農家の育成、米の収益性向上等の失敗、さらに基幹農業従事者不足、転作、休耕による農地荒廃等深刻な問題を抱え、出口が見出せない状況にある。これまでの農業の近代化、合理化が、農業生産を縮小させる方向で進められてきたことを厳しく反省し、新たな目標を設定し農業再建の方途を探る必要がある。その際、農産物価格安定のための財政支出の増加、穀物生産、草地造成等の計画的拡大、集落協同化の農家経営等々を柱とすべきである。さらに農業経営を圧迫している海外からの農産物輸入の制限、六十年度生産者米価の引き上げ等について公述が行われました。  以上、御報告申し上げます。
  322. 長田裕二

    委員長長田裕二君) これをもって派遣委員報告は終了いたしました。  明日は午前十時に委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十四分散会