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参考人(
芥川也寸志君) 今
先生御
指摘の大きな問題につきましては、私、作曲家が本業でございますけれども、
著作権協会の仕事をしておりまして、日常的に細々とした仕事をしておりますけれども、ときどき
考えますことは、結局は何のためにこれほど努力しなきゃいけないのかと
考えますと、それは、とどのつまり、先ほど来お話の出ております
著作権思想の
普及ということに尽きるような気がしております。
著作権思想の
普及というものがありさえすれば
著作権に対する問題というのはほとんどがすべて解決するのではないかというふうに思っております。
貸しレコードの問題などもいろいろ問題を残しましたけれども、公衆に対する
教育という点では、反面
教師という面もありましょうけれども、大変大きな役割を果たしたんじゃないかというふうに
考えております。
それから、先ほどからお話の出ております世界
著作権大会、
著作権協会国際連合の総会も、実は私どもは
著作権思想の
普及というねらいもありましてやったわけでございまして、これから先もあらゆる方策を
考えていかなければいけない、一番大切なのはこの点じゃないかと思っております。その中で殊に大切なのは
学校教育ではないかというふうに思っております。ホームテーピングの年齢層は、先ほど申しましたけれども十三歳から二十二歳、これが八〇%ということを
考えますと、これは
中学校から高校、大学までのいわゆる若年層の年齢でございます。つまり、自分の
権利を守ろうと思ったら、まず人の
権利を守りなさい、自分の
権利を大事にするんだったら、まず人の
権利を大事にしなさいということを
学校教育の中で徹底的に教えていただくということが、やはり大きく言えば
日本の
文化を守るということにつながっていくのではないかと思います。
私から申し上げるまでもないと思うんですが、
著作権法というものは
権利者と
利用者との
関係を律するものでありまして、
権利者は原則として個個の
利用者を
権利行使の対象としているわけでございます。ところが、このホームテーピングの問題は、
利用が
家庭内である、プライバシーの中であるということから、個々の
利用者から報酬を徴収するということは事実上不可能でございまして、たとえその個々の使用者を支払いの義務者というふうに定めましても、それは実効性がほとんど期しがたいと言わざるを得ません。したがって、解決の方法は、既にいろいろ今までお話が出ましたように、西ドイツあるいはオーストリアの例がございますように、ホームテーピングの原因をつくっているそういう録音・録画
機器、機材のメーカーから賦課金を徴収するということよりほかに全く道がないように思われます。録音・録画の
機器、機材メーカーは、個人にこれらを提供しましてホームテーピングを可能にしておりまして、これによりまして莫大な経済的な損失を
権利者に与えている一方で利益を上げております。したがって、
機器、機材のメーカーは、個々の
利用者とともに連帯して責任を負うべきだというふうに
考えております。そして、私たちの賦課金についての
考え方は、基本的には著作者個人にこれを還元するというものでありまして、現在、そのような基本姿勢のもとにメーカーの
方々との合意の形成を図っているところでございます。
しかし、先ほども申し上げましたように、メーカーの
方々の消極的な姿勢というのは非常にかたいものがございます。
それと、これは非常に感情的な言い方になるかもしれませんが、現実の
状況とそれから法制度との間のギャップというものが、もう
技術革新が非常に急速に進んだために、余りにも大き過ぎるということが挙げられます。国会における附帯決議を踏まえまして、
文化庁が
審議会の中に第五小
委員会をつくりまして議論を始めました。これが
昭和五十二年でございます。四年間議論いたしまして、皆様御
承知のとおりに、
関係者の中で合意がない、
国民間のコンセンサスが十分ではない、
外国の国際的な傾向を見定める必要があるというようなことから、結論が出ないで、また懇談会で議論を続けているわけでありますけれども、もう八年を経過しております。この八年の間の
技術革新というのは非常なものでありまして、この
技術革新の進歩とあわせまして、法制度と私どもの現状とのギャップというのは非常に広がるばかりでございまして、正直申しましてもう待ち切れないというのが正直な気持ちでございます。